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1983-02-23 第98回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥田 幹生君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       岸田 文武君    倉成  正君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       谷  洋一君    渡海元三郎君       丹羽 雄哉君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       森田  一君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君      平石磨作太郎君    木下敬之助君       浦井  洋君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         総理府恩給局長 和田 善一君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         警察庁警備局長 山田 英雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         環境庁水質保全         局長      小野 重和君         国土庁地方振興         局長      川俣 芳郎君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省立地         公害局長    福原 元一君         工業技術院長  石坂 誠一君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         運輸省港湾局長 松本 輝壽君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省自動車局         整備部長    丹羽 一夫君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       増田 雅一君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 永田 良雄君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省道路局長 沓掛 哲男君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         参  考  人         (日本道路公団         総裁)     高橋国一郎君         参  考  人         (住宅都市整         備公団総裁)  志村 清一君         参  考  人         (住宅都市整         備公団理事)  救仁郷 斉君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         理事長)    井上啓次郎君         参  考  人         (日本原子力船         研究開発事業団         専務理事)   倉本 昌昭君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事長)     瀬川 正男君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   金子 一平君     岸田 文武君   根本龍太郎君     谷  洋一君   村山 達雄君     奥田 幹生君  市川 雄一君     平石磨作太郎君   藤原ひろ子君     浦井  洋君 同日  辞任         補欠選任   奥田 幹生君     丹羽 雄哉君   岸田 文武君     森田  一君   谷  洋一君     根本龍太郎君 同日  辞任         補欠選任   丹羽 雄哉君     村山 達雄君   森田  一君     金子 一平君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。瀬崎博義君。
  3. 瀬崎博義

    瀬崎委員 中小企業の深刻さは、各種の経済指標とか、あるいは中小企業金融公庫や商工中金など政府関係金融機関のいろいろな報告にもはっきりあらわれているわけですが、特に、私は、日常的に中小零細建設業者との接触が多いわけですが、一番悩んでいる問題というのは、早朝から深夜までも、あるいはまた遠方へでも、どこへでも飛んでいって大いに働こうという気持ちは十分あるのだけれども、あるいはまた経営努力をしようという気もあるのだけれども、しかし、努力をしようにも働こうにも仕事がない。ここで皆悩んでいるわけですね。  現在、こうした中小零細業者が、仕事がなくて言葉には言いあらわせないぐらい苦労している。この事実を政府はお認めになっているのかどうか、まず建設大臣に伺っておきたいと思います。
  4. 内海英男

    内海国務大臣 中小建設業者の問題につきましては、その受注の機会をできるだけ多くして、その確保を図っていくように建設省は考えておるわけでございます。
  5. 瀬崎博義

    瀬崎委員 では、いま言われたように、中小零細建設業者、さらにはその周りに多くの中小業者仕事確保努力している、現実の中曽根内閣の姿はどうなっているか。私たち共産党は、大量の国債発行による公共事業拡大政策が近い将来財政破綻を招くことを指摘して、減税とかあるいは福祉、教育の充実で消費購買力の向上を図る政策を重視するよう、繰り返し繰り返し主張してきたわけですが、歴代自民党政府は、大量の国債発行によって、昭和四十六年後半、四十七年、四十八年、それから第一次石油ショック後、列島改造型の公共事業拡大とかその他大規模な公共事業拡大策をとってきたわけですね。  たとえば、第一次石油ショック後の国会論戦を振り返ってみても、当時福田総理みずからが、「いま日本社会には不況感というものが満ち満ちておるというような状態になってきておるわけです。」「私ども公共事業が一番適確経済効果を発揮する、こういうふうに考えておるのです。」とか、「その財源調達の方法、それはたなに上げておくといたしまして、同じ一兆円の金があれば、いま問題は、景気を浮揚させる、そして社会活力を再現させる、こういうことでしょう。そうなれば、何が同じ金を使って有効に働くかというと、これは文句なく公共事業です。これはもう定説といたしまして」、定説だなどとも言っていたわけです。さらに、「限られた財源ならばどうだ、こう言うと公共事業費の方が減税よりは決定的に効果がある、」あるいは「個人消費雇用問題に関係はない」とは言わぬが、「減税よりも公共投資の方が雇用効果は大きい、これは私は絶対的に大きいと思って」いる。  まあ、連日予算委員会で二回も三回もこういうことを繰り返して、結局、公共事業の方が景気対策としては決定的に、文句なしに効果がある、こう言ってきたわけですね。そうして、現に五十一年一九・七%、五十二年二〇・七%、五十三年三四・五%、五十四年二二・五%と、猛烈な勢いで公共事業拡大した。ところが、一転して五十五年からは、今度は財政事情を理由として伸び率をゼロにしたわけですね。しかも、五十八年度公共事業伸び率ゼロですが、そのうち二千五百億円は五十七年度補正で先食いをしている、こういうふうな経緯になっていると思うのですね。  急激に拡大させた公共事業がここへ来て予算上完全に伸び率ゼロ、実質的に減ってきている、こういうこれまでの公共事業経緯、私は特徴だけ触れたわけですが、この点で大蔵大臣、私の説明した経緯に間違いないかどうか、確認しておきたいと思います。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 確かにおっしゃいますように、このドルショックあるいは第一次、第二次にわたるオイルショック、その際、公共事業の持つ内需を中心とする景気浮揚役割り、これは偉大であったと私も思います。  その裏づけは何で行われたかと言えば公債政策、そうして、その公債政策というものがある種の限界に達したときに、いわば物価上昇ももたらして、五十五年といみじくもおっしゃいましたが、五十四年度公共事業を五十五年度に繰り延べをいたしまして、そうして物価の安定と相まった平均的公共事業景気に対する対応策、こういうものをそのときからやったと私も思います。したがって、それが財政事情と、まさにいわゆる財政対応力の問題から横ばいになってきております。しかし、その中でもいろいろ効率的な投資ということには、それぞれ配慮されておるというふうに私は理解しております。
  7. 瀬崎博義

    瀬崎委員 確かに、予算の数字の上では横ばいなんですよ、五十五年以降ね。しかし、この間、それは部分的、一時的には価格の下落したものもあるでしょうけれども、全体として見れば、土地は相当上昇しているし、建築資材もやはり上がっておる。ですから、結局国費による公共事業は実質縮小しているわけですね。  ところで、自治省に伺いますが、地方単独公共事業費の方なんですが、この方もたとえば五十三年度二五・九%、五十四年度二〇・二%、五十五年度七・五%、五十六年度八%、五十七年度八・五%と、とにもかくにも対前年比ではふえているんだけれども、五十八年度はこれも伸び率ゼロ、こういうことになっているのではないかと思うのですが、どうですか。
  8. 石原信雄

    石原政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、五十三年度は二五・九、五十四年度は二〇・二、それから五十五年度が七・五、五十六年度も八・〇、五十七年度八・五と伸びてまいりましたが、五十八年度につきましては前年同額を計上いたしております。
  9. 瀬崎博義

    瀬崎委員 さらに、過去の政府の主張から私は言っているのですが、景気論争のとき、これも福田首相言葉なんですが、公共事業の中でも「私どもが一番とにかくこの際やったらいいだろうというふうに考えておるのは住宅なんですが、これはまあ景気に対する波及効果が非常にまんべんなく行き渡るというメリットを持っております」。  ところが、この住宅建設がどうなっておるかは、もう説明するまでもないと思うのですね。昭和四十七年度百八十六万戸であった。これが四十九年度に百二十六万戸まで落ち込んで、一たん百五十三万戸に回復するけれども、その後ずっと下がってきて、特に五十五年、五十六年と急減して、そして五十七年も暦年ベースで見ますと、年間実績は古十四万六千戸で対前年比マイナス〇・五%になっておる。政府の目標百三十方戸自身も低いわけですけれども、それ日体に及んでないわけですね。  これが年度で見たことし三月までに回復するというふうに建設大臣見ていらっしゃるのですか、どうですか。
  10. 内海英男

    内海国務大臣 率直に申し上げて、百三十万戸達成は無理だと思っております。
  11. 瀬崎博義

    瀬崎委員 そうしますと、大蔵大臣、さっきいろいろと公債発行政策の言いわけをされたわけですが、結局、減税も六年間見送ってしまったわけですね。人勧は凍結する、社会保障も切り詰める。だから、消費の冷え込みに拍車をかけることばかりやった。それから、政府の持論だった公共事業も、いま言った国費ベースはもちろんマイナス地方単独マイナス住宅建設も率直に言ってだめ、これで一体どこに中小企業やそこに働く労働者期待を持てと言われるのか。もし、活路が見出せると言うなら、根拠を示してほしいと思うのですがね。
  12. 竹下登

    竹下国務大臣 かつての高度経済成長、そして、あるいは世界経済の中で五十二年でありましたか、日本世界景気牽引車役割りを果たすというようなサミットの話があったようなとき、そういうときからの経過を考えてみますと、世界経済全体がいわゆる不況色、そして停滞をしておるという中に、日本だけが全く例外であり得るということは、私は非常にむずかしい話だと思います。  したがって、この住宅問題について申しますならば、税制とかいう問題での措置が行われたということ。したがって、ただ建築戸数等のみに視点を置くことなく、あるいは増築はもちろんでありますが、内部の改造とかそういう需要というものがそれぞれ喚起されておる。それには、やはり私は政府関係、いわゆる財政の出動しての政策だけでなくして、民間活力というものを助成していく状態というものが必要ではないか。したがって、中小企業そのものに対する公共事業が果たしてきた役割りというのは、それは従来ほどにはございません。しかしながら、それなり効果は現実上げてきておるではないかというふうに理解しております。
  13. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局、国として住宅建設を押し上げる努力はしないで、民間活力期待をするというだけの当てのない話なんですね。そしてまあ結局、何かと言えば世界経済のせいにしちゃう、これでは中小業者はたまったものじゃないと思うのです。公共事業の中でも、たとえば高速道路を見ますと、国費ベースで五十五年三百二十億であったものが五十六年五百十七億、五十七年五百七十五億、五十八年七百三十四億、四年間で二・三倍になっているのですよ。本四架橋を見ますと、五十五年四十五億、五十六年八十一億、五十七年百二億、五十八年百三十六億、これは三倍になっているのですよ。公共事業費全体の伸びが四年間ずっとゼロなのに、高速道路二・三倍、本四架橋三倍という破格の伸びになっている、これは事実なんですね。  一方、社会福祉施設整備費保育所とか老人ホーム建設費用、五十八年度予算案では五百十億で対前年比百十億のマイナス、一七・六%のマイナスになっている。公立学校施設整備費、これは小中学校ですけれども、五十八年度予算案では三千九百四十七億でマイナス百六十四億、四%のマイナスになっているわけですね。これはいかにもアンバランスではないか。まさに今日のこの窮屈な時代公共事業は、本来これは逆になっていなければいかぬのじゃないかなと私は思うのですね。  共産党は、何でもいいから公共事業をふやせと言っているんではないのです。むしろこの際、不要不急事業は思い切って削減すべきだと考えています。しかし、同じ公共事業をやるのなら、国民にとって必要性緊急性の高いもの、国民生活に密着した事業に重点を置く。同時に、公共事業の執行に当たってむだ、浪費を徹底して省く。また、発注に当たっては、中小企業受注確保あるいは地域の雇用経済発展に寄与するよう十分配慮する、こういうことが今日の時代公共事業のあり方の基本ではないかと考えるのですが、大蔵大臣いかがですか。
  14. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘になりました、あるいは保育所でございますとか学校の新改築でございますとかいう問題は、やはりわが国の充実した時期においてある程度それらのものが整備された。そして、それのいわば更新期とでも申しましょうか、その時期にはいま至っていない。だから、とはいえ要求に対してこたえ得るには余りにも少ない予算だとは、私は思っておりません。それなりの積み上げた、要求にこたえ得る予算であるというふうに考えております。  ただ、いまその点は別として、中小企業者に対する受注確保のための努力をしろという意味においては、私どももそれは心がけるべきものであって、いわゆる発注標準の遵守でございますとかあるいは分割発注でございますとかあるいは共同請負制度の問題でございますとか、そういう点についてはきめ細かい配慮がそれぞれの当局で行われておるというふうに私は理解をしております。
  15. 瀬崎博義

    瀬崎委員 さて、その行われておるはずの努力の実態なんですが、結局、巨額の国債増発という財政破綻の危険を冒しながら進められたこれまでの自民党政府公共事業政策は、大きなむだ、浪費を残しながら、私は率直に言って破綻したと思いますよ。中曽根内閣は、いかなる分野にもタブーも聖域も設けない、こうも言っている。では、本当に公共事業分野にも聖域をつくらずメスを入れているのかどうか。むだや浪費については、その原因、責任を明らかにして抜本的な見直しを行っているかどうか。いま言われた各省庁の努力の中身に焦点を当てて質問してみたいと思うのです。  その一つは、住宅都市整備公団におけるいわゆる未利用地とか未入居住宅の問題なんですね。昨年の十二月行管庁が、公的住宅建設及び管理に関する行政監察結果報告書を出しました。それに関して伺いますが、住宅都市整備公団賃貸住宅の最近の応募状況を見ますと、これは五十七年度なんですが、たとえば光が丘パークタウンゆり木通り北、この応募倍率は二十・九倍なんです。東大島駅前ハイツ、これは十二・三倍なんですよ。南永田第二、これは横浜ですが十一・三倍、サニータウンにれの木台、千葉市ですが八・八倍、広島市のフラワープラザタカノ橋、こういう地方都市でさえ四・七倍になっている。また、空き家の方は、たとえば荻窪とか中野桃園町は三千六百五十四倍の倍率ですね。二子玉川、平塚二丁目二千九百二十七倍。なお、二千倍以上の倍率になっているところは六つぐらいありますね。年度間の平均応募率の推移を見ても、五十四年一・三倍だったのが五十五年一・六倍、五十六年一・五倍、五十七年は十二月までですが一・六倍、これも上昇傾向を示している。  そして、行管報告では、「近年、住宅建設は、景気停滞等もあって低調となっており、特に、公営、公団等賃貸住宅建設の減少が著しく、民間住宅供給では適正な住居費負担の限度を超えるなど、自力では最低居住水準の確保が困難で、公的住宅の供給が必要とされている階層に対する住宅供給が十分には行われていない状況にある。」として、さらに公的賃貸住宅の供給を促進すること、こう指摘しているわけですね。これは、五十六年四月から六月に実施された調査に基づく結論ですが、先ほど申し上げました実績等を見て、行管庁は公団賃貸住宅供給の必要性は今後さらに大きくなるであろうと見ているのかどうか、伺いたいと思います。行管庁長官
  16. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えいたします。  お述べになりましたように、五十六年の四月に実地調査をいたしまして昨年の十二月に勧告をいたしたわけでございますが、公的住宅の供給につきましては、住宅需要の実情に即してないところが地域的にあることは私は認めざるを得ない、これはやはり是正していただかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  17. 瀬崎博義

    瀬崎委員 今日、実態も、また行管庁も認めておられるように、公団住宅、特に賃貸住宅に対する期待が改めて強まっていることは事実なんですね。しかし一方には、未入居住宅とか保守管理住宅、長期未利用地など、いわゆるずさん経営と言われるものについて世論の厳しい批判があることも事実だ。だから、そういうことの起こった根源とか責任、こういうものをこの際明確にして改善を行って、公団住宅に寄せられた国民期待にこたえるのが公団総裁の任務ではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  18. 志村清一

    ○志村参考人 お答えいたします。  行管から御指摘になりました未入居等の空き家あるいは会計検査院からも御指摘を受けました未入居等の空き家の問題につきましては、私どもといたしましてもこれをできるだけ早期に解消いたしたい、かように考えております。  空き家等につきましては、五十二年当時は約四万戸を超えるという相当大きな戸数がございましたが、その後努力いたしまして、五十六年末におきましては二万五千戸程度、五十七年末におきましては一万九千戸というふうに順次減っております。本年も、私どもも街頭に出ましてキャンペーン等を行い、相当の成果を上げて、五十八年度の終わりにはほぼランニングストック以外はないということに持っていきたいというような努力をいたしている状況でございます。
  19. 瀬崎博義

    瀬崎委員 行管庁報告書では、五十五年度末の保守管理住宅建設完了後同年度末までに要した累積利息は百九十一億一千八百万円、こう報告されておりますね。一戸当たりに直すと百万円だということなのです。これは結局、「募集する時点で、家賃あるいは分譲価格の原価に算入されることになっている。」こう指摘があります。これは調査時点での話ですが、家賃あるいは分譲価格を率にすればどれだけ押し上げることになるのでしょうか。
  20. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 数字にわたることでございますので、事務当局から答弁させます。
  21. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  賃貸住宅関係でございますと、それがはね返りの家賃として月で二千六百円でございまして、五十五年度平均の家賃等で見ますと五万円ちょっとでございますので、約五%かと思います。それから、分譲住宅の方でございますと、御指摘のように百万円、平均の分譲価格、二千百五十万と見ておりますので、四・七%ぐらいになろうかと思います。
  22. 瀬崎博義

    瀬崎委員 やはり相当な家賃の押し上げになるのですね。  次いで、未入居住宅及び長期空き家、つまり保守管理はまだ募集に至っていないところだけれども、募集したけれども人が入らない未入居及び長期空き家による収入減相当額が五十九億三千百万円、管理経費が九億六千百万円と報告されているのですが、これはすでに募集が開始された住宅ですから、人が入らないからといってその間かかってくる金利とか管理経費を家賃にすぐには上乗せできないと思うのですね。しかし、当然減価償却は見ていかなければいかぬ。それじゃ、この収入がない間の減価償却費相当額、管理経費等のそのツケは結局どこへ行くのでしょうか。行管庁はどういうふうに調べました。
  23. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  非常に技術的な問題になろうかと思いますが、私どもの見ております収入の減収の相当額は約五十九億円、それから、それにかかります管理経費が約十億弱でございます。この管理経費につきましては、毎年度の一般管理経費の中ででございますので、そのやりくりの中で処理されるのではないか。それから、家賃の減収でございますが、これは収入の関係と経費の落とし方の問題になりますが、諸種の引当金等がございますのでそこでの経理になろうか、そういうふうに存じております。
  24. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局、引当金で落とすということになると、やはりその部分の引当金だけ余分に見なければいかぬということになりますから、これも家賃を押し上げる要素にならざるを得ないと思うのですね。  それから、行管庁が調査した長期保有土地は、これは十九地区と四十四地区に分かれるのですが、十九地区だけ、一番問題の多い方だけ見ても千三百十五ヘクタールあって、その価格千八百二億円、五年経過後の利息だけでも百二億円かかる、こういう指摘があるわけですね。結果的には、高遠狭のもとは、こういう非常に場所や条件が悪いのに値段の高い土地が災いするわけですが、問題はこうした事態をどう見るかということになると思うのです。一つは、やはりこれだけの資金を寝かし、要らぬ金利がかかるのですから巨額の公共資金のむだになるし、一つは、結果的には家賃や分譲価格の値上がりとなって、いずれにしろ国民にはね返ってくる。こういう点では、見通しを誤ったとか、あるいは経済情勢の変化などということでの言い逃れは許されない問題だと思うのです。  行管庁は、報告の中で建設省に対しても、「今後長期間事業に着手できないような用地を取得することのないよう、公団を指導する必要がある。」と指摘しているのですが、具体的にはどういう内容の指導が必要だと行管庁は思っているのですか。
  25. 中庄二

    ○中政府委員 お答え申し上げます。  建設省なり住宅公団にいたしましても、何も長期の保有をするために買っているのじゃございませんで、いろいろな努力はやっているわけではございますが、私どもの監察の結果から見ますと相当長期のものがございますので、建設のスケジュールをそれぞれつくって、まずは五年ぐらいのところをめどにしたスケジュール表で購入を図るのがいいのではないかというふうな具体的な手順の問題を考えるべきではないのか、まず用地が必要であるから何でもすぐ手当てをするということではなくて、計画性を持つ必要があるのではないか等々のことを勧告したわけでございます。
  26. 瀬崎博義

    瀬崎委員 ところが、ちゃんと公団にも、土地取得については、日本住宅公団時代ですと、土地取得事務取扱規程とか、さらには、その細則に当たる住宅建設事業および宅地開発事業の用に供する土地等に係る鑑定評価の依頼について、こういうものも相当事細かなものです。土地買収に当たっての手続を決めているわけですね。  時間がありませんからほんのポイントだけを見てみますと、まず、土地取得交渉開始に先立って支社長等は、土地取得交渉価格、損失補償見込み額等について支社地区選定審議会の意見を聞いて承認申請書を総裁に提出して、その承認を受けなければならないことになっている。これを通俗A審と呼んでいるようですね。  次に、今度土地取得をいよいよ決定するという場合にも、改めてまた土地取得予定価格、損失補償予定額について、いま言った審議会等の意見を聞いて、そして承認申請書を総裁に提出して承認を得なければならない。これをどうもB審と言っているようですね。  さらに、総裁は、その承認を与えるに当たっては、あらかじめ理事会の議を経なければならない。  それからなお、取得しようとする土地の評価は、土地を国から取得する場合等を除いては不動産鑑定機関の鑑定評価、これをつけなければならない、こうなっているのですね。  行管庁は、公団のこうした土地取得の方法とか手続について問題あり、欠陥ありと見ているのですか、どうですか。
  27. 久野忠治

    久野委員長 中君に申し上げますが、もう少し大きい声で答弁してあげてください。
  28. 中庄二

    ○中政府委員 はい。お答え申し上げます。  建設省なりの承認を得て公団が決めました規則でございますので、規則としてはいいものだと思っておりますが、問題はその運用にあろうかと思います。公団自体あるいは建設省自体でできない問題等がございます。客観情勢の地方公共団体とか交通機関の問題とか、そういう思わぬ事態も起こってまいることでございますし、購買の予定者等も状況の変化もございますので、必ずしもすべての責任が公団にあるというわけでもございませんが、ただ、その辺の周辺事情も全般を見渡してやる必要があるのではないか。規則そのものの問題もございますが、むしろそれは運用の問題ではないかというふうに考えております。
  29. 瀬崎博義

    瀬崎委員 あなた方が調査された十九地区等のあなた方の指摘を見ても、そういう周辺条件だけが問題ではない、いわば不良な土地を抱えているということなんでしょう。  いま申し上げましたような、相当詳細な用地取得に当たっての手続を決めておきながら、なぜ国の機関である公団がこういう土地を大量に抱え込むことになったんだろうかというこの不思議。私は用地買収の困難を十分承知した上での話ですが、これを解明してくれているのが、いま資料としてお配りしている資料1の左の文書であります。これは公団の現状を憂えている職員と思われる方から届いた手紙の一部分であります。こう書いてあります。   公団職員ハ誰デモ一般論トシテハ 安ク土地ヲ入手スルコトヲ願ツテイマス トコロデ公団ハ 複数ノ責任アル不動産鑑定機関ノ評価額ヲ基準トシテ土地ヲ購入スルコトトシテイマスカラ モシモ余リ安イ鑑定価格ガ出マスト 実際問題トシテ 土地ノ購入ガ出来ナカツタリ 交渉ガ難渋シマスカラ イクラカ高目ノ評価額ガ出ルコトヲ 交渉担当者ハ期待スルノデス   ソコデ予メ 数社ノ不動産鑑定機関ノ評価ヲ サウンドシテ 比較的高イ評価ヲ付ケタ機関ヲ選ンデ正式ニ鑑定依頼ヲスルヨウナコトガ幹部モ承知デ行ナワレルノデス 又高イ評価額ガ出ナイカ鑑定機関ト相談スルコトモアリマス   コウシタ メイキング(内部デハ コウシタ操作ヲ メイキングトヨンデイマス)ガ行ナワレルコトモアリマスカラ 公団ガ 地価ヲツリアゲルト非難サレルノデス   兎ニ角ク 地価ハ一般ニ高クナリ 住宅建設費ノ内ニ用地費ガ占メル割合ハ四十八年頃カラ急ニ高クナリマシタ   彼様ナ メイキングハ ドンナ理由ガアロウトモ 不当デアルト我々自身反省シテオリマス つまり、不動産鑑定機関の評価はつけなければいかぬことになっているんだけれども、そこで粉飾操作が加えられているという指摘なんですね。しかも、そういう粉飾操作が行われる背景について、  我々ノ事務的立場カラスレバ 買収ニ消極的ナ所デモ 本社ノ「土地ハ腐ラナイ」トノ方針ノ下ニ購入ニフミキツタ所モアリマス コンナ土地ノ相当部分ガ イワユル遊休地トナリ 又コンナ土地ニ ノルマ消化ノタメニ建設シタ住宅ガ 空家トナルノハ当然ノコトデス こう述べられているわけですね。表面的にはきわめて厳重なチェックシステムがつくられているのだけれども、にもかかわらず不良な土地の大量購入が行われる、この原因にこの手紙は明確に答えているわけですね。  これをいただいて、私も複数の公団職員の方に、サウンドとかメイキングといった社内用語で行われている粉飾操作の有無を確認しました。残念ながらこれは事実だというのですね。  そこで、公団総裁に伺いますが、サウンドとかメイキングといった社内用語で行われている土地鑑定評価の粉飾操作、これはもう土地買収に当たっては必要なこと、必要悪といいますかやむを得ないことだ、そういうふうにお考えなんですか。
  30. 志村清一

    ○志村参考人 お答えいたします。  私は昔、鑑定評価制度の創設にもかかわりました者の一人でございます。鑑定評価というのはまことに公正なものでなければならぬ。鑑定士あるいは鑑定事務所等は、ほかに影響されることなく公正妥当な評価をしなければならぬ、こういうことになっておりまして、倫理規定等々につきましても、鑑定を行う方々については非常に強い要望等がございまして、内部規律としてもいろいろやっているように承知いたしております。さような意味におきまして、ただいま先生から御指摘のようなことは、私、鑑定評価制度の創設にかかわった者としてはあり得ないというふうに考えております。  また、私どもが鑑定をお願いする機関でございますが、場所場所によりまして、その土地柄に詳しい鑑定ができるような鑑定業者等を選ぶとか、あるいは非常に世間に信頼感の高い鑑定評価を行う業者を選ぶとか、おおむね三社ぐらいを選定しておりまして、それぞれにつきまして余り大きな懸隔があれば、おかしな鑑定評価をした者は直ちにわかるというふうなかっこうになっておりますので、さようなことはなかろう、私はかように確信いたしておりますが、先生の御指摘もございますので、私も帰りましてから調査をいたしたい、かように考えます。
  31. 瀬崎博義

    瀬崎委員 実は公団のこの土地取得規程も、五十四年四月に改正されていますね。先ほど、現在のシステムはこうなっているということの三番目に、総裁は承認を与えるに当たって事前に理事会の議を経なければならぬ、こういう規定は実は五十四年四月の改正から入ったことでしょう。さらに、不動産鑑定機関の評価を付さなければならない、これも五十四年三月以前は格の低い細則で定められておった。これがいわゆる土地取得取扱規程の本則に組み入れられたのも五十四年の四月からでしょう。私は、そういう規則の改善を行っているのは前進だと評価しているのですよ。だがしかし、これはあくまで仏をつくったにすぎないと思うのです。魂を入れぬと実際には効果が発掘できない。魂とは一体何か。  実は長いのでここには割愛しましたが、この手紙は引き続いてこう言っているのです。   ソコデ次ニ申シ上ゲタイノハ コノ様ナ事態ヲモタラシタ公団内ノ責任ノ問題デアリマス   コノ事態ガ次第ニ明ラカニナッタ五十一年頃カラ 国会ヲハジメ各方面ノ批判ガ公団ニ集中シ五十二年九月南部総裁辞任ニ迫イコマレマシタ シカシ ソノ翌年空家・遊休地問題ハ少シモ解決サレズ 公団職員ハ苦闘シテイル最中ニ彼ハ団地サービスノ社長ニ高給ヲモッテ天下リマシタ   コレ程巨額ノ損害ヲ公団ト国家ニ与エタ最高責任者ガコノ時期ニ団地サービスニ天下リスルトハ世間ヲ馬鹿ニスルモノト 心アル者ハ公団幹部ノ見識ト南部氏ノ良心ヲ疑イマシタ こう明示しているのですね。  なお、その後、特定分譲住宅で問題になっているあの民賃の返済滞納問題、こういう問題も、職員からかねがね指摘があったのに幹部がいわゆる建設戸数をカバーするために強引にやって当然の結果だという指摘もあり、「我々ハ改タメテ南部氏以下ノ責任ヲ追求スル者デアリマス」「役員ノ自任モ同時ニ明ラカニ」してほしいのだ、こういう趣旨のことが書かれているのです。私はまさに当然の指摘ではないかと思うのです。  そこで、公団の天下りですね。これもよく指摘されているが、どうなっているのか。この資料を資料1と2につけました。  まず、その一つのパターン。政府建設省からは住宅都市整備公団に天下り、公団からは団地サービスに天下るという、このパターンですね。これは、五十六年四月現在といえばまだ日本住宅公団時代です。このとき公団では、十四人の役員中、天下りは十一人だった。団地サービスでは、十六人の役員中、公団からの天下りは八人だったのです。これでも相当批判を受けたのですよ。それが行革だといって宅開公団と統合して現在の住宅都市整備公団になった。その現在はどうか。まず、公団の方を見ますと、役員二十人、これも本来十九人を常任参与をくっつけて二十人にしている。このうち実に十八人が政府建設省からの天下りですよ。それから、団地サービスを見ますと、役員十五人中、十一人までが今度は公団からの天下りですよ。逆に天下りが強化されているのですね。まあ本当に政府の行革が本物でない証拠がここにもあらわれている。  もう一つのパターン。それは、住宅公団から大量の受注を受けている会社、この三年間の上位十社をとってみました。これが十六社あるのですが、このうち公団、建設省の天下りのない会社というのは三つしかないのですよ。残り十三社は住宅公団か建設省の天下り会社なんですね。遊休土地や遊休住宅をつくった幹部が天下って、この手紙のとおり退職金ももらう、高給もいただく、そして涼しい顔をしている。残った職員が悪戦苦闘する。これで一体世間が許すかどうか。職員が本当に苦労しがいがあると感ずるかどうか。まあ俗な言葉で言えば示しがつかぬということですよ。天下る幹部の方は、とにかく公団で数年間、失敗しようが何しようがおとなしくしていれば、また次のポストが保証される。まさに無責任体制もいいところだと思うのです。ですから、こういう指摘に率直にこたえて、責任体制を明確にするためにも、また過ちを繰り返さないためにも、また公団も二十八年の歴史を持つ、団地サービスも二十二年の歴史を持つ、りっぱに社内で人材の蓄積もできているのです。そういう人にもがんばりがいのある立場を保証する。こういう点から、建設大臣としては、この天下りに毅然とした態度をとるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  32. 内海英男

    内海国務大臣 現在は人事院等のいろいろな制約もございまして、いきなり天下りというのはほとんどございません。しかし、現実の問題といたしまして、政府関係の最も密接な仕事をやっておる公団としては、やはり政府との連絡調整、こういった意味で、形の上では天下りということになりますけれども、実務を執行する上においてある程度やむを得ない、こう思っておるわけでございます。  それから、民間の会社に天下りの問題でございますが、これはそれぞれある程度能力を持った人が、第二の人生として、まだ残されておる人生を有効に活用するという機関があってそれが受け入れた、こういう事態でありますので、私どもからとやかく申し上げることもないのではないか、こう思っておるわけでございます。
  33. 瀬崎博義

    瀬崎委員 およそ中曽根内閣、行革内閣と言われている内閣の建設大臣がこの状態です。これじゃ天下りなんて改まりっこないのです。われわれとしては、今後ともどしどしこういう実態を国会で明らかにして、世論に訴えて改善を図っていきたい、そういう決意を言っておきたいと思います。  次に、これも行管庁指摘しております工業団地の遊休用地の問題です。  行管庁は、五十六年の十二月、工業再配置施策に関する行政監察結果報告書というものを出しました。この中で「工場の受け入れを予定して工業用地を確保した地方公共団体等の中には、遊休の工業用地を抱えているところが少なくない。」「工業再配置に関する現行の施策について基本的な見直しを行うことが今後の大きな課題となっている。」と指摘しているわけです。  この指摘によれば、五十五年九月三十日現在で造成工事を開始している工業団地は全国で千五百四団地、工業団地の面積は十万二千五百四十四ヘクタール、これはあくまで計画面積だと思います。このうち道路その他を除いた実質工場用地面積は、計画予定面積で七万二十八ヘクタールであるが、分譲済みはわずかに四万六千八百六十六ヘクタール、六六・九%にすぎない、こういう指摘をしているのです。現在分譲中並びにまだ売り出していない未分譲を合わせますと、つまり遊休工場用地は一万二千四百四十六ヘクタール、五十三年―五十五年の年平均需要が千百六十八ヘクタールだから、実に十一年分の遊休工場用地があることになる。現在つくられている分だけですよ。そういうのが行管庁の御指摘なんです。しかも、工業再配置がその趣旨とした太平洋ベルト地帯以外の工場団地の分譲済み率はさらに悪くて半分以下の四三・六%、こういう指摘もされております。  行管庁から「基本的な見直しを行うことが今後の大きな課題」と指摘された通産大臣に伺いますが、通産省が、通産大臣が同じ認識に立っていらっしゃるかどうか、また本気になって通産省が見直しに当たっているのかどうか、また、どういう見直しをすべきだと考えているのか、伺いたいと思います。
  34. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この団地の問題はちょっといままでの議論と性格が違いまして、地方公共団体がそれぞれの都道府県の未来図を描きながら、その上に立地する産業のことも考えて、それぞれ造成がなされている。しかし、高度成長期を終わるに従って企業の地方への進出、まあ地方が多いわけですから、それが非常に困難な客観情勢になってきたこと、さらに地方としても、地方自治体は造成費あるいはまたそれの抱えている土地の処分ができなくて困っておるという財政上の問題等も引き起こしていると思うのですが、国の方で強制的にここにつくりなさいといった形はありませんけれども、しかし、この状態はやはり日本の産業構造の変化に伴って起こった見込み外れが相当ある。ただ、うまく活用してきたところは、その県内の金属団地とか木材団地とか家具団地とか、いろいろなもの等でりっぱに整備されて活用されているところもあります。しかし、国全体の経済の中から自分たちの地域への産業誘致というような形で計画していたところなどは、そういう思惑違いもあったのではないか。  行管庁指摘が、ちゃんと行政管理庁の名において指摘されているのでありますから、通産省として委員会をつくりまして、そのことについていろいろと研究をしてみたのですが、なかなかその造成地にぴたっと通産省の力で民間企業を、あなたはあそこに張りつきなさいというようなことの言いにくいことは御存じのとおりでありますから、したがって、そういうものを考えながら、地方への工業の転換あるいは工業再活性化による地方の新しい時代をつくるにはどうしたらいいかというようなことをいろいろと研究してきたのですが、その結果、今後御相談を願うテクノポリス構想等も団地造成地の未補充問題に密接に、そこから発した問題ではありませんが、工業の地方分散、それによって工業が地方で新たなる地域の活性を持ったものとして地方からまた起こってくる工業、こういうような構想でテクノポリスを一つの手がかりにしてみようかなということを考えておりますが、行管指摘そのものにずばりこたえるような命令権の行使もできませんし、実はこの問題は自治省の、地方自治体の抱えている問題でもあろうと考えて、この指摘の処理をどのようにしたらいいか、まだ行管庁にこういうふうにいたしましたという報告をするところまで至っていないのが実情でございます。
  35. 瀬崎博義

    瀬崎委員 結局、自治体のせいにしちゃいましたね。実は私は、これは当然自治体も絡むから自治大臣にも質問をしたいと言ったら、この行管庁の勧告は自治省には出されておりません、だから、これについてとやかく言えません、こういう話なんですね。結局みんな責任逃れしているわけなんです。  細かい数字は別として、要は国がつぎ込んだ助成金とか利子補給金とかあるいは財投、これを合わせますと約一兆五百億円ぐらいになるのです。こういう点でも莫大な国民の金がつぎ込まれている。このことはやはり念頭に置いて考えなくては、そんな無責任なことは許されないと思うのです。  そこで、こういう莫大な資金を投入し、しかも相当な部分が公有水面の埋め立てという環境破壊の危険を冒しながら進められた工業団地でもあるのです。なぜ国の行政機関が、それぞれ行政指導するチャンスもあり、あるいは許認可権を行使する立場にもありながら、事前にこういうものがチェックできなかったのか、こういう点が問題だと思うのです。  なぜこんなことになっていくのか、その具体的な例を愛媛県の西条東部臨海工業団地に見てみたいのです。  この団地は全部埋め立て方式で、五十年十一月着工、一号地は計画面積が百四十八ヘクタールで、うち二十五ヘクタールの埋め立てを終わっております。二号地は計画面積百七十七へクタール全部の埋め立てを完了しております。  この工業団地の公有水面埋立法に基づく埋め立て免許なんですが、運輸省は昭和五十年三月十二日に申請を受理し、五十年七月三十一日に免許を出している。その間わずか四カ月半なんです。それで、四十九年四月以降の同規模程度の埋め立て免許と比較した場合、大阪港埋め立てが、三百七十八ヘクタールでありますが、五十一年六月七日申請受理、五十二年九月二十七日免許で、一年三カ月かかっている。阪南港が二百四十三ヘクタールで、五十二年二月十日申請受理、五十三年七月二十日免許で、一年五カ月かかっている。北九州港、若松区、二百十六ヘクタールの埋め立てで、五十二年七月二十三日申請受理、五十三年七月二十八日免許で、これは一年かかっている。これらと比較して、正式には東予港というようですが、この西条東部の埋め立て、余りにも期間が短い。これは何か特別な理由があったのでしょうか、運輸大臣。
  36. 松本輝壽

    ○松本政府委員 お答えいたします。  埋め立ての認可の期間につきましては、具体的に各個別的な埋め立てでもって違います。ただいま先生の挙げられました例は一番長い方の例でございまして、平均的には大体三カ月というふうに考えております。
  37. 瀬崎博義

    瀬崎委員 規模の小さいのをひっくるめればそういう話になるので、同規模で、しかも、これは瀬戸内海なんですね。実は、四十九年三月に公有水面埋立法が改正されて、環境庁長官の同意が必要とされることになった。特にこれは瀬戸内海などを対象に考えての話なんですよ。では、その環境庁の方の審査に当たった期間はどうか。環境庁は五十年の六月五日に送付を受けて、七月三十日に同意を与えている。この間二カ月足らずなんですね。特に慎重を要する瀬戸内海であること。それから、西条市の開発公社が、公有水面埋立法の改正前、四十九年一月に駆け込み申請をして、一遍取り下げているという事実まであること。それから、これは運輸省段階で百カ所の正誤訂正、その中に重要な正誤訂正も含まれているのですが、本来なら申請のやり直しをさせなければいかぬのに正誤訂正で済ませてしまっているということ。それから、先ほど三つ挙げましたが、大阪港の場合の環境庁の審査、これはほぼ一年かかっています。阪南港の場合は一年二カ月かかっています。北九州港の場合は一年かかっています。こういう環境庁の審査期間と比べても、この西条の場合たった二カ月足らずとは余りにもこれは短過ぎるのですね。何か特別な事情があったのでしょうか、環境庁長官
  38. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 お話のとおり六月の五日に申請がありまして、同じ年の七月の三十日に所要の意見を述べたわけでございますが、その間鋭意慎重に検討いたしまして、支障ないということで同意したわけでございます。
  39. 瀬崎博義

    瀬崎委員 特別な事情は何も説明していませんね。私の方から説明します。  実は、五十年八月一日の西条市議会の全員協議会で伊藤市長がこういう報告をしているのですね。「最後の大詰めとも言える七月三十日には、議会のお力をお借りするべく、正副議長、常任委員長、都市開発特別委員の方々と共に上京し、漸く国を動かしたということであります。」それから、当時の五十年七月二十九日の愛媛新聞には、白石知事が記者会見して、田中派として有名な知事ですね、記者会見で、「環境庁とも話し合いがついた。ほぼ申請どおりである」「今週中に認可があるだろう」と語った。そのとおりになっているのですね。ことしの一月十七日の毎日新聞「いま、検証 角栄の世界」の連載記事の中に、「当時、瀬戸内の汚染が社会問題化していたが、西条市が先走って六億円の漁業補償を支払ってしまった。期限切れ直前になっても環境庁の許可がおりず、六億円がムダ金になる瀬戸際に、白石は目白邸へ駆け込んだ。田中は直ちに「環境庁へ行け」と指示。同庁長官田中派の小沢辰男。二つ返事でOKが出たという。」どうでしょう、こういうのをお聞きになったらおのずからおわかりだと思うのですね。  公有水面の埋め立てに当たって、せっかく環境庁長官の同意を必要とする制度に改正しても、こういう政治家の圧力によって環境行政がゆがめられたのでは、これはやはり役に立ちませんね。恐らく、政治的圧力で環境行政を曲げたのじゃないかと言っても、そうだとはお答えにならないだろうと思いますから、まず、この背景になっている事情を申し上げておきます。  そこで、こんなにまでして認可を急いだこの工業団地、では、現状は一体どうなっているか。全部の埋め立てを完了している二号地の工業用地は百三十五ヘクタールですが、操業中はわずかに四社、九ヘクタール。現在工場建設中が二社、二ヘクタール。分譲契約のみが十八社、二十五ヘクタール。あと全部残っているわけです。しかも、現在操業中とか分譲契約を終わった二十四社の中には、埋め立て願い書を提出したときに計画されていた企業七社、これは全然入ってないのですね。まるっきり違うものになっているのです。  しかも、資料の順番がちょっと逆になっていますが、資料4の一番右下をごらんいただきたいのです。昨年の予算委員会で私は三井建設の内部文書を明らかにしましたが、その中にこの西条埋め立てに関する記載が出てくるのです。これは中本正則取締役土木営業第三部長の営業報告書でありますが、五十五年の二月十六日、「愛媛県清家土木部長 指名受領の件 ①三井物産から知事あて、特別要請の必要があること ②西条市にある埋立地に軽工業の誘致を企画すること 以上を条件として考えるとのこと」、つまり愛媛県の土木部長は、強引に進めた西条埋め立て団地に思うように工場が進出してこないので、三井建設の営業部長が工事の指名をくれと言ってきたのをこれ幸いと、工場誘致あっせんの交換条件を出しているわけですね。  そこで伺いますが、工事指名と企業誘致を取引するような公共工事の発注の姿勢、これが公正な公共事業発注の姿勢と言えるかどうか、これは建設大臣。  それから、こんな無理なやり方をしないと企業が進出してこないような工業団地の造成を計画したり推進したり、途中で見直しもしなかった。こういうことに問題があるのではないかと思いますが、これは通産大臣に伺います。  なお、いま申し上げましたように、一号地の八割以上はまだ埋め立てが残っているのです。それから、全国的にも、さっき言いましたように、まだ手をつけていない未造成、工事に着工していない部分が一万七百十六ヘクタール、こういうものは当然見直しをしなければならないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  40. 内海英男

    内海国務大臣 御案内のとおり、公共工事はとうとい国民の血税をもって実施するものでございます。したがいまして、その発注に当たりましては、従来から指名基準に従って、優良業者の中から特定の業者に指名が偏ることのないように、公正適正に指名業者の選定を行ってまいったところでございます。今後とも、公共事業発注をめぐって国民の疑惑を招くことのないように厳正に行ってまいりたいと思っております。
  41. 福原元一

    ○福原政府委員 お答えいたします。  地方自治体の工業団地の造成につきましては、自治体それなりに工場誘致の目的、考え方があって行われておるものと存じますが、これにつきましては、国といたしましても工業の過密過疎を同時に解消するという意味におきまして、過密地帯から過疎地帯への工場の誘致ということはこれを推進しておるところでございますが、さらに自治体を十分指導いたしまして進めさせてまいりたいと……(瀬崎委員「残っている計画を見直すのか、見直さないのかと言っているのです」と呼ぶ)これは基本的には自治体のお考え方でございますが、自治体を指導してまいりたいと思っております。
  42. 瀬崎博義

    瀬崎委員 なお、つけ加えておきますが、今年……(発言する者あり)委員長、こういう雑音、困りますね。今年二月から建設着工予定の……(発言する者あり)それじゃあなたも質問台に来てやればいいじゃないですか。  今年二月から建設着工予定の木村化工機という一部上場会社があります。これは筆頭法人株主が東レ、最大の仕入れ先が三井物産、つまり県が三井物産あるいは三井系にいろいろ働きかけていたことがこういう結果にもうかがえるわけです。  それからなお、環境庁長官の答弁を求めようと思いましたが、先ほどの答弁からもう求めるにも及ばぬと思いますが、およそ環境破壊の危険の高い、それを緊急に必要だというので免許に同意する、結果はこういうことになるのです。だから、急がないものに環境破壊の危険を冒す埋め立ての同意などは軽率に与えるべきじゃない。環境サイドからも一遍全国の埋め立ての結果がどうなっておるか調べてみるべきじゃないかと私は思います。そのぐらいのことはやってしかるべきじゃないですか。一言答弁を求めます。
  43. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 急ぐべきであるか急ぐべきでないかというのは私どもの判断すべき問題じゃございません。それぞれの主務大臣が御判断になることでございます。まあ一遍御指摘のとおり見直してもいいわけでございますが、それほど問題があるということはいまのところ聞いておりません。
  44. 瀬崎博義

    瀬崎委員 なお、こういう遊休工場用地に工場立地をいろいろやるといいますが、これは小手先では解決しないと私は思います。根本的にはやはり多面的な活用を考えなければならないし、より基本的な問題というのは、国内の消費景気をよくすることによって初めて工場立地も進むのであって、そういう意味からも、減税とかあるいは福祉その他の充実で国民消費購買力の向上を図ることが、遊休工場団地の活用という点からいっても必要だ、こういうことも一言つけ加えておきたいと思います。  時間がないので、次の問題に移ります。  先ほど来、内海建設大臣は、中小業者仕事確保に努めているとかあるいは発注の公正に努めていると言われたのです。ところが、現実には中小企業仕事確保には役立たないで、政治家の利権と大企業の仕事確保に役立っている公共事業のゆがんだ発注の姿を新潟三区に典型的に見ることができるのです。これが資料の3と4であります。  これは、公共事業を大企業といわゆる田中系企業等で独占する、越山会にでも入っていないと仕事がとれぬと言われてきたのですが、その全体像がなかなかつかみにくかったのです。いろいろと努力をして、私の方で、まず五十六年度建設省の、新潟三区内に四つの工事事務所がありますが、一件一千万円以上の全部の工事について分析を行うことができました。  この表で、Aというのは新潟県外の大手企業であります。一部中堅が入りますが、要は県外企業であります。Bというのは田中系企業または親田中系企業と言われるグループであります。田中系と言われるのは長鉄工業、中越興業、越後道路サービス、大石組、長岡舗道、吉原組、山崎組、それから親田中系と言われるのは星野組、福田組、福田道路、植木組、丸運建設、興和地下建設、本間組、加賀田組です。それから、Cというのは越山会系の企業であります。Dというのは非越山会系及び区分不明、あるいは共同企業体になっているために一応非田中系あるいは非越山会系とみなすというものを含んでおります。  これはもうごらんになったら説明は要らないと思うのです。たとえば信濃川工事事務所について見ますと、総工事件数八十件、総工事額三十五億四千五百九十万円。このうち県外大手への発注は二件、一億九千十万円で、率にして五%であります。次に、田中系及び親田中系への発注十五件、八億九千八百九十万円、これは二六%です。越山会系企業への発注四十件、十七億九百五万円で、これが四八%を占めます。したがって、大企業と田中系・親田中系と越山会系を合わせますと、実に二十七億九千八百五万円、七九%、八割に達してしまうのですね。  実は、越山会系企業の業者名、工事名もわかっているのですが、多くは越山会の幹部の企業なんですが、中には、新潟三区の状況では越山会に入ったことになっていないと工事がとれないものだから、心ならずも越山会員を名のっている人もあるわけですね。そういうことも配慮して、ここには個々の工事や名簿は出さなかったのです。  長岡国道工事事務所、総工事件数百十六件、九十億九千九百三十五万円です。県外大手への発注四十件、五十三億八千七百九十万円、これは件数と金額からもわかるように、そう大きい規模の工事は余りないのです。必ずしも県外大手でなくてもやれるのでしょうが、これも政官財癒着によって大手がとる。次に、田中系及び親田中系二十七件、十五億二百二十五万円、一六%。越山会系企業三十六件、十四億二千二百四十五万円、一六%。そこで、大企業と田中系・親田中系、越山会系を合わせますと百三件、八十三億一千二百六十万円、九一%に達してしまうのですね。  三国川ダム事務所などはちょっと特殊なんですが、公平を期する意味で新潟三区内四工事事務所全部についてトータルしますと、資料三の合計欄のように、県外大手と田中系及び親田中系と越山会系を合わせまして百九十三件、百七十七億、八九%、九割をとっている、こういう姿になっている。世間のうわさが決して単なるうわさではない、まさにこういう事実を反映している、このことをはっきり指摘しているわけであります。  私は、昨年の予算委員会で、政官財癒着の談合によって入札以前に本命が決められ、入札は儀式化されている、このことを厳しく批判したのです。昨年は三井建設の内部資料でこのことを明らかにしたのですが、今回のこの新潟三区内建設省工事事務所の発注状況は、結局、指名競争入札の指名権を握った建設省が、言わずと知れた政治家の圧力に屈してこういう発注状況を招いている、これはもう弁解の余地がないと思うのです。  今日、特に中小企業仕事確保が、われわれ国会議員にとって、政治家にとってまさに焦眉の急務なんですよ。そういうときに、その政治家自身が自分で会社をつくって、そして、その政治的地位を大いに利用して公共事業をどんどんとっていく、こういうことが政治家の政治的道義的責任として許されるのかどうかです。ほっておけばこういう傾向は強まると思いますが、建設大臣としてこういう事態をどうごらんになりますか。
  45. 内海英男

    内海国務大臣 ただいま資料を拝見いたしまして気がついたことでございますけれども、御指摘の面もあるかと思いますけれども、見ますと、建設省では、大体指名をする場合にはランクというものがございまして、何ぼ以下の予算事業についてはどのクラスと、いろいろランクがあるわけでございます。したがいまして、細かく区切って中小地元業者の方に発注の機会を多くするという形がここに逆に言えば出ておるような感じもいたします。したがいまして、大手の人がとった件数が少ない、地元業者のとった数が多い。地元業者といえば政界癒着というようなことに御指摘があるかと思いますけれども、それは評価の違いでございまして、地元業者の中小業者によけい発注の機会を与えたのがこの資料になっておるように一面とれるような感じもいたします。私の感想も述べてお答えとしたわけでございます。
  46. 瀬崎博義

    瀬崎委員 わが田中派の建設大臣らしい答弁だったと私は思いますね。  この長岡国道工事事務所のちょうど真ん中辺のちょっと上、管内橋梁補修工事というのをごらんください。二千四百万円で越後道路サービスに発注していますね。これは、昨年私がここで質問したときに当時の丸山官房長は、建設省においては、個々の工事を発注する場合には、次官通達で定められた指名基準に従って適正に指名を行っているんだ、こういうふうに言っているし、これはしょっちゅう言っているわけです。その指名する場合の基準には、不誠実な行為の有無とか技術的適正というのがうかがわれるわけです。ところが、この越後道路サービスについては、周知のように、去年の二月十九日付で、建設業法違反で一部の許可の取り消し、それから一部の三カ月の指名停止、こういう重大な処分を受けているし、それから四月九日には新潟県警が同社と風祭社長などを建設業法違反で書類送検までしている会社です。  実はこの管内橋梁補修工事の内容というのは、新潟地震を教訓にしての落橋防止工事、すなわち伸縮継ぎ手工事という、まさに橋の安全性にかかわる重要工事なんですよ。これを、およそ実体もないし、建設業法違反もはなはだしいと処分された、そういう越後道路サービスに、建設業法の最も厳格な遵守を指導しなければならない建設省発注している。一体どんな指名選定をやったのか、どんな審査でこれに発注したのか疑わしいわけですね。  一体なぜこんな会社にこんな重大な工事を出したのか、伺っておきたいと思います。
  47. 豊蔵一

    ○豊蔵政府委員 お答えいたします。  ただいま資料を見せていただきましたので、詳細わかりませんが、この資料は昭和五十六年度の新潟におきます工事事務所の一千万円以上の発注状況の資料であろうかと思います。したがいまして、その段階におきましては特段にこの会社が問題があったということでなかったため、適正な手続により発注いたしたものと存じております。
  48. 瀬崎博義

    瀬崎委員 それでは、あなたの答弁からいけば、この発注時点ではちゃんと建設業法に適合した会社であった、それ以後に不適合になった、こういうことなんですか。
  49. 永田良雄

    永田政府委員 この企業は知事業者でございます。私ども建設業法で知事が処分したと聞いておりますが、いま急のお話でございますので、いつの時点で処分したのか、それから発注がいつになっておるのか、そこら辺を明確に調べた上で御答弁申し上げたいと思います。  なおまた、もう一点申し上げますと、処分したからといって永久に指名しないというような話になりますと、これは企業がぶっつぶれますので、やはり企業のことも考えなければいけませんので、指名停止というのは適当な時期に適当な期間をやる、後はやらないというかっこうになっておりますので、御了承いただきたいと思います。
  50. 瀬崎博義

    瀬崎委員 いまの建設省の論法でいきますと、要は知事の許可さえとっておったらフリーパスだということになるのですよ。ところが、一方では、田中系とか越山会系でない企業は、りっぱな許可業者であってもどんどんふるいにかけられて落とされる、片一方、建設業法違反で処分されるような業者が、厳正に指名基準に従って指名しているというその建設省の指名にパスする、こんな矛盾した話がありますか。  次に、もっとひどいのが日本道路公団の関越自動車道の発注状況で、これは資料4を見ていただきたいのであります。  ここでAというのは県外の大手建設会社であります。Bというのが田中系及び親田中系企業であります。すべてジョイントであります。第一グループは県外大手と県外大手のジョイントで、これが三十四件、九百二十九億ですね。次が、県外大手と田中系または親田中系のジョイント、これが十二件で二百六十六億であります。第三グループが、田中系及び親田中系同士のジョイントでありまして、これが三件、四十五億であります。締めて一件十億円以上の関越自動車道の工事は大手と田中系及び親田中系で一〇〇%受注しているというのがまさに実態なんですね。世に関越自動車道は大企業と田中系企業のために発注されているのだ、やられているのだと言われているが、これもまた明確な事実であることがここに証明されている。  さて、この中で長鉄工業が受注しておりますね、植木組とのジョイントで十五億。もちろんこの企業は先ほどの建設省工事もどんどんとっていますね。資本金五億円のうち田中角榮議員が二億一千九百万円を出資して筆頭株主、社長が田中議員のおいの風祭康彦氏、その他役員に田中秘書の山田泰司氏とか、あるいは株主でもある田中直紀氏も最近補強されたと言われている田中直系企業であります。  建設業法では、特定建設業者が、公共性のある重要な工事の元請となった場合、そして一千万円以上の工事を下請に出す場合、監理技術者、レベルの高い技術者ですね、監理技術者を工事現場ごとに置かなければならないことになっているのじゃないですか。
  51. 永田良雄

    永田政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、建設業法では、特定業者が発注者から直接工事の発注を受けて、公共性のある一定規模以上の工作物について一千万以上下請は出すという場合には、工事現場ごとに専任の工事監理者を置かなければいかぬという規定にはなっております。
  52. 瀬崎博義

    瀬崎委員 この長鉄工業はもともとは砂利業者なんですね。土木関係は、昭和五十一年完成工事高五億円が、五十六年には二十四億円と五倍は急成長しているわけであります。技術の一指標であります技術職員一人当たりの完工高は、長鉄の場合は九千四百万円で、これはいわゆる一流企業と言われる会社の二倍近い数字なのです。ということは、長鉄の工事はほとんどが下請や外注に出されているということ、だから技術者一人当たりの工事高が上がるのですね。しかも、現場の管理監督体制が弱体であること。これは地元でそういう苦情の絶えない企業です。  当然長鉄は特定建設業者ですから、自分が元請となった公共性のある重要な工事については、一千万円以上の工事を下請に出す場合、現場ごとにこの監理技術者を置かなければならないのだが、五十四年十月二十二日提出の、つまり直近の許可申請書を調べてみましたら、そこに記載されている監理技術者、これは建設業法技術者該当区分のところに明記されてありますが、これで見ますと、土木一般では三人、舗装工事では一人、両方合わせてもたった四人しか載っていない。この四人で、下請に出している率が非常に多い、公共工事をたくさんとっている、こういう状況のもとで、果たして工事現場ごとにこの監理技術者が置けるのかという疑問が起こってくるのですね。  そこで、各現場ごとに、一体だれが監理技術者をやっておったのか、このことを調べて明らかにしてもらいたいし、もし、そういう体制が十分でないと判明した場合には、当然建設省、公団ともにこの指名等については厳正な措置をとるべきだと考えるのです。答弁を求めます。
  53. 永田良雄

    永田政府委員 長鉄工業というのはいま初めてお話を伺ったのでわかりませんが、知事業者か建設大臣が許可した業者かということによって対応が多少違ってくるだろうと思います。知事業者であれば、都道府県知事がまず第一義的に調査されて対処されるのが適切かと思います。建設大臣の業者であるとすれば、私の方でやるべきものと思いますが、その点を調べてみたいと思います。
  54. 瀬崎博義

    瀬崎委員 監理技術者がついていない工事を発注するのかということです。
  55. 永田良雄

    永田政府委員 そこら辺は、建設業法違反に対しては、必要な対処をしなければいかぬということでございます。
  56. 瀬崎博義

    瀬崎委員 さらに、不可解に感じられることがあるのですよ。道路公団の関越自動車道、一件十億円以上の工事四十九件の受注企業を見ますと、ほとんどは大手であります。中堅企業の場合でもすべて資本金は一億円以上であります。いま申し上げました長鉄工業の場合でも、資本金はやはり五億円ありますね。  ところが、この四十九件の中にたった二社例外があるのですよ。それは中越興業と吉川組であります。この中越興業の資本金が四千万円、吉川組の資本金は三千万円にすぎないのです。このうち中越興業は、例の風祭康彦氏が役員をしている田中直系企業と言えば、ははん、なるほど、こううなずけるのです。吉川組は、一体なぜ三千万円の資本金の会社がこういう大きな工事がとれるのだろうか。この吉川組の社長吉川和雄氏は、今度の参議院選挙の、まあ新潟選挙区ですね、旧地方区の田中派候補吉川芳男現県議の身内で、その会社なんだということですね。この会社も、長鉄工業と同じようにもとは砂利業者で、五十年の完成工事高九億円が五十六年には三倍強の二十九億円に急成長した。  そこで質問なんです。これは道路公団に聞きます。  第一は、中越興業や吉川組がなぜ指名を受け、かつ十億円以上の工事をそれぞれ二件も受注できたのか。四十九件中それぞれ二件ずつ受注している。  それから、質問の第二は、昭和五十年の官公需受注実績は、この吉川組はたったの三千七百七十六万円です。それがその翌年、五十一年四月、道路公団の湯沢工事取りつけ道路一億一千九百万円を受注するのですね。前の年の官公需受注実績がたった三千万円ほどしかない企業に、なぜ公団が一億一千万円からの工事を発注したのか。これが第二点。  それから、第三の質問は、神谷工事の十億四千五百万円の場合、これは資本金十億円の奈良建設と資本金三千万円の吉川組のジョイントなんです。ところが、こんな月とスッポンほど会社の資本金は違うのに、JVの出資比率ではこれが五対五、対等になるのです。こういうことを公団はどうして認めたのか。  それから、質問の第四。この許可申請書の更新等に伴う変更届に記載された工事実績なんですが、北陸自動車道刈羽工事、これは大成建設の下請工事で、五十五年八月の届けでは三億一千四百五十万円となっているのです。ところが、これが次の年の五十六年四月の届けでは一億二千三百十四万円に訂正されているのです。また、長岡ニュータウン中央地区第二工事、これは大成建設の下請ですが、五十五年八月の届けでは五億六千五百十九万円となっているのが、翌年四月の届けでは三億八千三百七十四万円、これもがたんと減るのです。これは代表例だけ挙げたのですが、ほかにも、こういう工事金額の一種の訂正といいますか、減額みたいなことが行われている。これはわれわれは推測ですが、実はこの五十六年三月には、この表にありますように、道路公団関越自動車道湯沢インターチェンジの工事二十億三千二百万円の受注をしている。その指名を受けるために、直近の五十五年八月の届けでは工事額を水増ししておったんではないか、こういう疑問も浮かんでくるんですね。こういう工事経歴について、公団はちゃんと実態を調べて指名に入れているのかどうか。  以上四点、お答えをいただきます。
  57. 高橋国一郎

    ○高橋参考人 お答え申し上げます。  最初に、日本道路公団につきまして、先生の資料によりますというと、大手業者とそれから田中系業者が非常に多いというふうな御指摘がございましたが、これについて一言お答え申し上げます。  私ども日本道路公団の事業は、非常に職員が少ないために、また工事の質の高いものを要求されるために、工事の規模を大変大きくしております。ごらんのように十億以上というのが大部分、これは本社で指名することになっておりますけれども、これがかなりの数を占めておりまして、大きいものは三十億、四十億のオーダーのものもございます。したがいまして、高度の技術レベルを必要といたしますので、きちんとした基準を設けまして、たとえば二十五億以上の工事につきましてはAとAの業者ないしはAとBの業者でなければならぬとか、そういうふうな細かい基準を決めております。したがいまして、発注の規模が大きいだけに大手業者が多くなるということはやむを得ないというふうに私どもは考えております。  それから、その次に、地元の田中系企業と申されておるようでございますが、私どもは、工事の規模によりまして、たとえば二十億から十二億程度の工事につきましては、ジョイントを組む場合に、先ほど申しました技術力の非常に高い大手と地元の業者をかみ合わせる、これが原則でございます。これは単に新潟だけではございません。全国至るところにおきまして、地元の業者をなるべくジョイントとして入れるように取り計らっております。先生の御指摘のものが田中系企業かどうかは私は存じませんが、新潟県におきます上位の業者であることは間違いございません。したがいまして、先ほどのことにつきまして申し上げましたように、私どもは厳正な基準に基づきまして指名をいたしておりますので、大手と地元系業者が入るのは当然だというふうに考えております。  それから、吉川組の件につきましては、私も詳しくは存じませんので、後でお調べ申し上げまして、間違っておりましたらお答えを変更させてもらいますが、資本金によりまして業者のランクを決めているわけではございません。二年に一度私ども建設業者の希望ある者には道路公団の建設事業に参加するための資格審査をいたしまして、A、B、C、D、Eというふうなランクづけをしておりますが、吉川組は、記憶違いでなければ、Cランクに該当しているのではないかと存じます。そうでございますと、基準に従いまして、たとえばその十億以下とかいうような場合にはB・Cジョイントも可能でございますので、当然入ってくるんじゃないかというふうに考えております。  あと、次の四番目の御質問がちょっとよく理解できなかったのですが、工事した後、後でもって工事変更して多くなったかということのように聞きましたが、私どもの工事というのは、最初設計しましたものが、工事している間に工事の変更が必ず伴います。したがいまして、ときにはかなりの大きな変更になることもございます。  なお細かいことにつきましては、よく調べましてまた御返事いたしたいと思います。
  58. 瀬崎博義

    瀬崎委員 時間がなくなったので、最後に一点、再処理工場問題でお伺いして、終わりたいと思います。  一つは、科技庁長官に伺うのですが、われわれもかねがね指摘しておりました、再処理工場ではその心臓部に当たる溶解槽ですが、去年R11がピンホールがあいて使用不能に陥った。そして今度は、残るR10がまたやられてしまって、これで全面運転不能になっているわけですね。  実は過去こういう問題をわれわれが何回か指摘したときに、たとえば佐々木科技庁長官は、その過程、ウランテストですが、においてそういういろいろなトラブルが起きたということは、不幸ではありますけれども、考えようによっては、それを直さずして発見せずして最終段階に入った場合にはもっとおかしなことになりますから、その原因を十分究明し、最終的な実験に支障のないようにさせる、こう言っていたんですね。そのためにテスト中はいろいろトラブルが起こるのだ、実験段階に入れば大丈夫です、こういう話だったのですが、まさにその逆になっている。この点でも科技庁としては、今回のこの重大事故、まさに再処理工場の生命にかかわる事故についての教訓から、再処理工場の将来について根本的に方針を見直すべきだと思うのですが、そういう見解があるかどうかということ。  それからもう一点、一緒にやります。動燃事業団の理事長に……。  そこの資料の4の右側につけておきましたように、五十七年十月二十五日、上級管理者研修における理事長訓話というのが「人事部月報」に載っているのですね。そこを見ますと、「先日土光さんら顧問団と昼食会をした時、我々の考えを説明し、それに異論はなかったが、土光さんから「それにしても再処理の故障はなんとかならないかね!」としみじみした言葉で云われた。関係者に聞くと、あのプラントでは「無理だ」とか「故障を修理していくのが精いっぱいだ」と云うが、これで良いのだろうか。」それから、ちょっと中間を飛ばして、「このま々では、おそらく第二再処理は、全面的に海外技術に依存ということになるだろう。確かに、最近の五年間を見ても、フランスなどは、色々の機器開発に、我々よりもはるかに時間と金をかけているわけで、それなりに技術を取入れざるを得ないだろう。」こうなると、せっかく苦労いただいているわが国の再処理技術開発は、一体どういう位置づけになるのだろうかという疑問が起こりますね。これに対する理事長のお考えを聞きたい。  それから、土光さんがこれだけの疑問を動燃事業団の顧問会で提起されたのですが、これが臨調で問題にならなかったのかどうか、これは行管庁長官に伺って終わります。
  59. 安田隆明

    ○安田国務大臣 お答えいたしますが、二月十九日に動燃事業団の方からトラブルの御報告を受けました。そして、環境並びに従業員には支障なし、こういう御報告もいただいておるわけであります。  私ども当庁といたしまして、同時にまた政府といたしまして、原子力委員会といたしまして、核燃料のサイクルは、これは至上命令として今日取り組んでおることも御理解いただきたいと思っておるわけであります。トラブルが起きた、これに対していま原因を究明しております。やはりこういう過程の中においていろいろやってみますると、そこに貴重な研究の問題が提起される。しかし、日本のいまの頭脳、いまの科学技術をもってすれば、いま先生の御指摘、御心配になるようなそういう問題は必ず克服できる、こういうふうに私たちは自信を持ってやっておるわけであります。そういうことでひとつ御理解願いたいと思います。
  60. 瀬川正男

    ○瀬川参考人 先ほど人事部資料の中の、私が発言した点についてお尋ねがあったわけでございますが、私は、内部の中堅幹部の研修会におきましては、いつでもかなり冷酷無残な言葉で内部を叱咤激励する癖がございまして、かなり部下にも煙たがられているのではないかと思うわけでありますが、いま御指摘のポイントにつきましては、確かに土光さんから、故障続きで、もっとがんばれという意味の激励もありましたし、かなり外部から、なかなか満足に動かぬではないかという批判もあるという事態をとらえて、内部の中堅幹部に対するハッパをかける意味で言うたわけでございます。  しかし、いずれにしましても私どもは、この東海の再処理工場が日本で最初の、小規模でありますが、日本で最初の再処理工場である、最初は技術導入で出発しましたが、運転技術、保修技術につきましてはできるだけ国内技術によって修理その他を進めておるわけでございまして、昭和五十二年の本格運転以来、私どもは現在までに使用済み燃料は百七十トンくらい処理したわけでございます。それとあわせて、御指摘のように、トラブルもまたしばしば起きるということに関しては、保修上の技術開発とかあるいは運転上の検討とか、かなりのそういう意味における実績は積み重ねてきたつもりでございますが、さらに今回の熔解槽の故障は、御指摘のように、非常に重大な問題だと私も受けとめておるわけでございまして、御指摘のように、昨年R11号が溶解槽が故障を起こしまして以来、その故障の位置の確認とか、あるいは保修のための……(「時間が過ぎておりますから簡単に」と呼ぶ者あり)遠隔保修技術等を現在開発しておりまして、その技術で、ぜひともR10号もわれわれの開発する遠隔保修技術でトラブルを克服していきたいと思うのですが、いずれにしましても全員一生懸命努力しておりますので、われわれの現在までのそういう経験が、将来の民間の第二再処理工場に十分反映されることと思います。  ただ、このままでは第二再処理工場も海外技術導入になるのではないかという御指摘がございましたが……
  61. 久野忠治

    久野委員長 簡潔にお願いをいたします。申し合わせの時間をすでにはるかに超えております。
  62. 瀬川正男

    ○瀬川参考人 はい、もう終わります。  海外の技術も、多少の導入はあろうかと思いますので……(「そんなことだから事故が起こるんだ」と呼ぶ者あり)以上で答弁を終わりたいと思います。
  63. 中庄二

    ○中政府委員 臨調関係の御質問についてお答え申し上げます。  御存じのように、特殊法人の関係の策は最終答申に入りますので、三月に入ってからのことかと思います。その前の部会段階の報告でございますが、これは個別問題と一般方策とございますので、これは後刻先生の方へ臨調から御説明申し上げたいと思います。
  64. 久野忠治

    久野委員長 これにて瀬崎君の質疑は終了いたしました。  次に、川俣建二郎君。
  65. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣がみんなそろうまで、ちょっと時間管理のことでお願いなんですが、一般質問に入って、法案を抱えておる各委員会が一斉に、予算委員会の大臣との関係で審議に入っておるわけです。大蔵大臣はいないわけにはいかない委員会だろうが、私も理事会の関係で最初の方に繰り上げていただいて、佐藤委員と交換してもらったので、ちょっと大臣の都合の時間が混乱しておるので、ひとつ委員部の方で整理して、何時から何時まで大臣が入るかということ、それからもう一つ、大蔵大臣は、きょうは十時から入ったので、私は一時に終わるはずなんですが、これだと七、八分超過しておるので、ほかの委員会に約束もありますから、一時で退席して結構です。それだけ言っておきます。  そこで、それでは農林大臣、なるべく順番にやっていきますが、その前に、こういう岐阜日日新聞というものをいま私のところへ持ってきた方がおりまして、大型所得税減税ということで大野労働大臣が記者会見したのが出ておる。いま持ってきたので、コピーも何もとっていない。  ところが、私は、こういう関係で労働大臣を呼んでいない、必要ないということになっておる。ところが、たまたまロボットの絡む労働災害の関係で、一部局長の人方が見えているようだから、ちょっとそれをどう処理するか、この質問中に答えてもらえるように手配できるかどうか、ひとつ委員長の方でやってもらいたいのですが、こういうことです。これをあえて取り上げるのは非常に不愉快だというのは、いままで何回も、何人の委員の方からも政府と受け答えやりましてとうとうきょうセットされた代表者会議で答弁するという場面になっているのは、委員長も御承知だと思う。  それよりさらに私は不愉快なのは、きのうの時点で、うちの同僚の藤田委員があれほど大野労働大臣に詰め寄った、しかも皆さんの応援もあって、担当大臣としてどう思うのか、こういうことで詰め寄ったのを大蔵大臣も聞いておりますが、いや財政関係もあってということで、一切前向きの答弁がなかったので非常に残念だったのです。これは自民党の高鳥委員も、人勧に絡めて大変に模範的な質問をしておったのでございますが、あらましこういうことを言っておるのです。これは今後の委員会の運営、理事会の運営等もあると思う。  これは十二日の――十二日というのは、いろいろ難問が山積しておる、武器問題等、お互いに調査研究し、あわせて、括弧書きでしょうが、わが党の平林書記長に対する弔意もあって、休みにした。その十二日に、岐阜市で催された大臣就任祝賀会に出席し、記者会見でのあらましが非常に簡潔に出ているわけです。「景気浮揚対策は必要であり、」括弧書きになっております。「景気浮揚対策は必要であり、所得税減税はその大きな要素」である。内需を非常に認識した上でお話しされております。そして、「(減税を)やる以上は中途半端ではいけない」、大型の所得税減税を支持する、こういう発言を記者会見でなされておる。こういうことをおっしゃってて、その御本人が、きのうのような――非常にいいことを言っております。きのうのようなことで、これは大蔵大臣も聞いておると思うのですが、もう一切財政問題、財政問題ということで、労働大臣の担当としてのあれは一切出なかった。岐阜というのは私は余り行ったことのない県で、ただ関係の神岡鉱山にときどき行くものですから、その程度で、岐阜日日新聞というのは初めて見たのですが、こういうのをいま持ってきたわけですから、これがもしもきのうありましたら、とてもじゃないが、委員長、こういうスムーズな予算委員会になっていなかった。  こういうように、地元に帰ると、そちらの方からこういうような発言をやられるとどうなるんだということなんで、これは総理にも聞かせたいし、官房長官にも聞かせたいところだが、私はきょうは結構ですと言うた手前上、もし、この質問の時間中におられれば何とか出席されて、これに対して明らかにしてほしいということを委員長に申し上げておきます。  そこで、もしも労働省の局長のどなたか、大臣にその旨を伝える、そういうように取り計らうということであれば、どなたか……。
  66. 久野忠治

    久野委員長 ただいまの川俣委員の御要請につきましては、でき得る限り努力はいたしますが、御要請がございませんでしたので、できるだけ手配をいたしたい、かように存じます。  労働省から担当の政府委員が出席しておられるようでございますので、労働省の担当の政府委員からしかるべく答弁をいたさせます。谷口職業安定局長
  67. 谷口隆志

    ○谷口政府委員 労働大臣も担当局長も実は出席いたしておりませんで、恐縮でございますけれども、私もただいまの新聞記事等初めてお話を承りましたので、その辺は大臣によく伝えまして、委員会の方で大臣の出席等については取り計らっていただきたいと存じます。
  68. 川俣健二郎

    川俣委員 委員長の計らいで御努力していただくよう、ぜひ図ってもらいたいと思います。理事会でも話が出ると思いますが、なるべく一時八分までの間にぜひお願いしておきたいと思います。  いま配っていただいたものをもとにして、日本の食糧、特に主食という問題でお互いに考えてみたいと思いますが、その前に、米以外の、麦、肉、大豆等の自給率を、ちょっと担当の方から説明してくれませんか。
  69. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 小麦の自給率、五十六年度の速報でございますが、一〇%、大・裸が一五%、大豆が五%でございます。
  70. 川俣健二郎

    川俣委員 このとおり、きわめて大事な、主食と言ってもいいほどのものが、これは自給率があるというものじゃない、これは自給率なんというあれには入らない数字なんですが、ただ、これを自給率を上げようという――自給率がさらに低下するというように私は質問していくのですが、自給率を守る、自給率を引き上げるというような農業政策に見えないの、私のあれでは。ただ、オレンジや牛肉を自由化から守るというだけであって、主食そのもの全体を自給率を高める、自給率低下から守ろうという、そういう農業政策が非常に少ない。農林大臣もこれには全く同感だと思うが……。  そこで、まだ大豆や麦等は、まずおまんまさえあればいい、米だけあればいいということである。ところが、その米の問題をずっと、うちの方の各組織なり、私、個人的なスタッフ等で、全国的と言っては悪いが、ある程度追跡調査してみると、どうやら米も不足してきたんじゃないか、こういうことが出てまいりましたので、どうかなと思っておったら、たまたまきのうの夕刊、朝日でしたか、一面にトップで、「減反・不作でコメ不足の恐れ」、農協を通じて集荷督促に大わらわだ。これは通達のメモも持っています。農林省が出したとは言わない。これはえらいことだな、やはり心配しておったとおりだったのかと思うのです。  そこで、論議のきっかけに、皆さんに配っていただいたものをちょっと農林大臣、見ていただきますと、まず例の過剰米、この処理で非常に苦慮したという時代があったわけです、六百五十万トン。そこで、これを持ちこたえるためには、一年間の倉敷料、これが一俵保管するのに千三百円、それに十六・五俵掛けると一トン、二万円。二万円の六百五十万トンだから千三百億。もしもなかりせば、この千三百億が浮くんだ、これほどむだなのはないから何とかしろということから、その処理をするのに食管会計のルールがあるので困るという答弁だったので、そこにおられる大蔵大臣以下みんなのお知恵を拝借して、食管特別会計のところを直してもらって、過剰米の処理状況と今後の計画、今後というのは五十八年、こういうことになって、約束どおり五年間で全部六百五十万トンが処理される、こういうようになったわけですが、やはり東南アジアの人方は、日本のようなねばねば米は食わないんだとか、いわゆるジャポニカ米は食わない、インディカしか食わない、こう言い張っておったのが、物すごく売れ行きがいい。ただし、値段は安い。ただし、値段が安くても、とっておくと千三百円かかるものを、千三百円だけでも経費が浮くではないか、こういうことになって、大蔵大臣もたしかそのころお座りになっておったと思うのですが、こういうことになった。  これは私がいろいろな資料を集めてつくったものであり、したがって「川俣」というサインを押してます。「農林省」とは書けないと思うのですが、これは大丈夫な資料ですか。
  71. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 過剰米処理につきましては、当初六百五十万トンの予定でございました。工業用、輸出用、飼料用、その当時としては六百五十万トンの見込みでいたしましたが、注に書いてございますように、そのうち約二十万トンが、これは外食産業への業務用でございますが、主食等になりまして、全体で、この五年間で約六百三十万トン処理されるという見通しでございます。
  72. 川俣健二郎

    川俣委員 いや、この資料、大丈夫ですか、お認めですか。
  73. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 このとおりでございます。
  74. 川俣健二郎

    川俣委員 だとすれば、自信を持ってこれからお話し申し上げたい。  これは一つの例で出したが、食管会計を手直しするということになると大変な問題になるが、ようやく皆さんのコンセンサスを得まして直してもらって、こういうようにさばいておるわけだが、そのときはっと思ったのは、これは日本国民の主食にたえられないという主語が入っているわけです。これが六百五十万トン。ところが、ひょっと見たら六百三十二万トンなんです。そうすると、約二十万トンはどこへ行ったんだろうか、こうなるのは当然なんです。どういうわけですか。
  75. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  過剰米処理につきましては、特別会計法の改正によりまして、おかげさまで五年間で順調に処理が進んでまいりましたのは、表のとおりでございます。そこの表の注にございますように、その当時、主食の用に供せざるものといたしまして、輸出用あるいは加工原料用ないしはえさ用に向けるものといたしまして、当時としては六百五十万トンを見込んでおったわけでございますが、その後、五十三年産米の低温保管をしております主産地で、かなり上品質なものについての評判がよろしくて、主食用に一部、二十万トンが回ったというのは、注に書いてあるとおりでございます。
  76. 川俣健二郎

    川俣委員 時間があれば一つ一つ例を挙げたいのですがね、これはそうじゃないと思うんだ。これは処理してよかったと思う。なぜかというと、処理しなかったら、これは配給のルートに乗せられて、いよいよ米離れの原因になる。二十万トンは、結果的には主食にたえられた、低温保管で。しかし、五十三年の米なんです。これは上の方をずっと見ていくと、思惑どおりに、端境期の十月末の米穀年度に残りがなくなった。だから食わしたのでしょう。どうなんです。
  77. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 全体に、五十八米穀年度――この一番下の欄で「五十七(見込)」となっております五十七年産を中心にいたします五十八米穀年度の需給は、ここに生産量千二十七万トンとなっております。そのほか四十万トンの持ち越しがございまして、全体需給からいたしますと、需要量千六十五万トンに対しまして、ただいまの五十三年産米も加えまして、年度末におきましては、一番右の方にございますような十万トンの前年産の持ち越しになるというのは、この表のとおりでございます。
  78. 川俣健二郎

    川俣委員 そうなると、長官、こういうことかね。一たんは主食にたえられないということで御承認をいただいて、食管会計の改正版にした六百五十万トンであったが、二十万トンというものをその中から摘出して食わせて、なおかつ十万トンしか残らなかった。もしも、この主食にたえられないというものをだんだん売ってしまっておったら、この十万トンがマイナス十万トンになるんだなというように思っていいんだな。わかりますか、私の質問が。二十万トン食わせて、十万トン残るわけでしょう。
  79. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 この五十七年産の表のところでは五十八米穀年度になりますので、五十三年の低温としては八万トン程度というふうに私ども予定しておるわけでございます。もちろん、その前の五十六、五十七米穀年度にそれぞれ売却いたしましたのを合わせまして二十万トンになる、こういうことでございます。
  80. 川俣健二郎

    川俣委員 そうしますと、もう一遍聞きますよ。  もしも主食にたえられないということで処理しようとした六百五十万トンを、改正どおりに六百五十万トン処理したとすれば、十万トンぐらい足りなかったわけですね。もっと具体的に言うと、八万トン足りなかったわけですね。
  81. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 御指摘のように八万トンを回さなければ、これは十万トンマイナス八万でございますから二万トン、ほぼゼロに近い数字になるわけでございます。
  82. 川俣健二郎

    川俣委員 そういう言い回しもあるだろうけれども、古い、主食にたえられない六百五十万トンがなかったとすれば、全部会計の改正どおりに処理をしたとすれば八万トン足りなかったでしょうと聞いているのですよ。
  83. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  過剰米六百五十万トンの分がなければ、確かに御指摘のようなことになるわけでございます。
  84. 川俣健二郎

    川俣委員 だから、これはやはり重大な段階なんですよ。  そこで、米の集荷の督促風景が農村で物すごいのですよ。米の集荷、もっと具体的に言うと、農林の先輩方がおられるので、一軒の家で一俵ずつ出してくれ、こういうおふれが出ております。御存じですか。保有米を出してくれという……。
  85. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  集荷の督励に関することかと存じます。昨日の一部新聞にも報道された点でございますが、この点は昨年改正食管法施行以来、特に不正規流通の取り締まりということで、私ども販売、集荷両面にわたりまして集荷の督促を行っておることは事実でございます。その一端としまして、農協なりでそういう指導が一部あったというふうにはうわさは聞いております。
  86. 川俣健二郎

    川俣委員 このうわさはよそごとじゃないんだよ。わしらの問題、一億全体の問題。主食であるから、まして農林省はうわさじゃ済まされない。これは一体どうするかなということでいろいろと……。今度は、一方農民から見ると、精白した自家消費米まで出せと向って歩いているわけだ。農協というのは、私も推薦は受けているが、評判は悪い。評判が悪いけれども、借金を全部しているものだからどうにもならないという状態です。これは包み隠さず話すとそういう状態になる。ところが、その農協の理事さんや食糧事務所を回ったところがあります、その県は言いませんが。こうなると、農民から見ると、一体農業政策というのはどうなっているんだろう、これは何となくその一部だけ見ると、終戦後の強権発動を思い出すというのです。そう思うのも無理ないですか。どうです。
  87. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 集荷の関係について、基本的に申し上げますと、これは本年、年越ししましてからの督励だけではございません。昨年も同趣旨で私どもは徹底いたしております。と申しますのは、改正食管法の際にやはり集荷、販売両面にわたりまして不正規流通を取り締まることが附帯決議でもいたされましたし、そうした意味では現在食糧事務所、都道府県を通じまして、こうした適正な集荷を実施するように指導しておるところでございまして、昨年も本年も同様にいたしたところでございます。  そうした趣旨におきまして、販売面なりは相当、小売の不正規流通の業者は現在整理もされてきております。集荷にいたしましても、不正規流通の根源になりがちな農家が保有する過剰な米穀の出荷指導や、農家の通年出荷に対応できる検査なり買い入れ体制の整備等を内容といたしまして指導いたしておるわけでございますが、私どもの方から見ますと、予約限度数量については従来から非常に御要望がございまして、私どもできるだけこれに応じてまいったわけでございますが、地域の作況指数に比べまして限度数量が未達成な地域もかなりあるわけでございます。やはりそうした場合には限度数量に達するように集荷はしていただかなければならない。主食であります米穀を供給するのはやはり農業サイドにおきます重要な任務でございますので、そうした意味で、私ども不正規流通の取り締まりとあわせて、集荷の督励をいたしておるわけでございます。
  88. 川俣健二郎

    川俣委員 事務当局の話を聞いてみると、大臣、督促というのは例年行っている状態がことしもあるだけで、ことし特に際立った、変わった光景じゃないとおっしゃるのですか。少し強まった感じがするといううわさですか。どうです。
  89. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 昨年、本年と、指導の基本的態度については変わりございません。ただ、末端におきまして、若干去年よりも強目に受けとめたところがあるかもしれません。そういうふうに認識しております。
  90. 川俣健二郎

    川俣委員 最後に、かもという答弁の仕方ですが、かもじゃないんだ。そういう地域かもじゃないんだ。私だけ言うんじゃないんだ。追跡している人方、ほかの新聞社だってみんな追跡しているんだ。これはやっぱりみんな書きたいと思いますよ。これはなぜかというと、ほとんどの農村風景はそういう状態ですよ。  したがって、大臣、私以上に先輩方がおられますが、たんぼというのは、一たん休んでしまうと、工場と違って、整地をしてひとつ操短しようというわけになかなかいかないんだ。さあ足りないというので起こそうといったって、そこに底なし田と言って野ネズミやいろいろなあれでばい菌等がありまして、さあそれじゃ米に返れというわけにいかない。だから、減反というのは定着しない。  なぜかというと、こういうことがあるということを一番よく知っているのは農民なんです。このたんぼに何を植えれば一番いいかということを知っているのは、農民が一番よく知っている。ここは米しかできない。米は一等地。それを一律に減反だと言うものだから、逆な意味で言うと、たとえば兵庫県の淡路島というのはタマネギで一等地なんだ。ところが、タマネギ畑の段々的な土地を、減反奨励金をくれるそうだからというのでたんぼの形にして、タマネギを植えるのをやめて米を植えようとも思ったが、国策に従って休みますからちょうだいという、いまこういう農業政策に結びついたわけですよ。  したがって、私ら言うのは、当時も正式に言っておりますから、さりとて黙ってつくらせれば千四百万トンつくる、しかし、千百万トンから千七十万トンしか要らない、そうなると何らかの方法が要るじゃないかという論議になった。そこで減反ということになった。さてそれじゃというので、いまは亡き中川農林大臣が、国の奨励金を出すからにはある程度の制度化をしないとおかしいよ、ことしは財政がないから減らすよ、ちょっとゆとりが出てきたら奨励金をやる、あそこはうるさい県だから少し奨励金を出そう、これではどうにもならないから、やっぱり制度化しなければならぬじゃないか。福田総理から何から、後ろの法律に詳しいだろう法制局長官も、制度にはなじまない、協力代だ。協力代にしてはペナルティーをかけるというのはどういうわけだ、協力してくれと言っておいて協力に応じなければ罰則を加えるというのはどういうわけだというので、通達を出し直してもらった委員会もありましたね。私はそれをやったのですから。  そこで、私が思うには、根本的に見直す時期が来たんじゃないかな。どうです。余り詰められないが、大臣、どうです、減反政策というのは。  もっと言いますと、大蔵大臣もおられるが、一一聞くあれはないのですが、この十年間の減反政策にかけた金、これは農林省からはじいてもらったからうそじゃないと思うが、二兆五千億、それから減反を進める上におけるいろいろな圃場整備その他減反奨励、転作するためのそれが二兆五千億、合わせて五兆円、この五兆円をたんぼの中にまいたわけだ。ところが、大蔵大臣の方のあの当時の考え方は、米以外の自給率が足りないので、転作物が定着するまで何とかしなければならないという農林省の考え方を受け入れた。ところが農林大臣、皆さんも聞かれていると思うが、特に、米が一等地、米以外のものには適さない土地の単作地帯の農民はわれわれに向かって、先生、減反というのはいつ解除になるものですか、こういう質問をされるでしょう。そういった面どうですか。  大臣、いままでの話をずっと聞いて、大臣も大分農業政策を御勉強なされたと思うのですが、一一質問しませんが、これから一体、米のこの不足の事態、それから減反が農民の身についてない、土地に定着していない、それでも奨励金をじゃかすか出すか、協力願いで。ところが、投資効果、これは企業だったら、投資効果で経理部長首だよ、経理担当常務首だよ、僕も企業におったけれども。  そういった面をずっと少しおしゃべり願えませんか、一々質問しないから。
  91. 金子岩三

    金子国務大臣 大変御造詣の深い御趣旨のお話を伺いました。私も百姓に少し関係がありますので、御意見のとおりでございます。したがって、見直す必要、発想の転換はどうだろうというような御質問と思いますが、いまの生産過剰時代を調整して六十万へクタールを一応減反しておりますが、これが三年に一度この減反の数量を減したりふやしたりされると、これほど農家にとって迷惑な話はないと思うのでございます。ここらでもう、大体十年たっていますから、日本の米の需給の実態は結論が出てもいいんじゃないか、このように考えます。したがって、減反は六十万でやるのか、第三期を四十万にするのか、一応取り決めたならば、ひとつ長期的なビジョンに立って、そして水田を畑地にして、足りない小麦とか大豆を生産させようとする場合、相当基盤の整備に金がかかります。こういうこともあわせて、どのように金を使った方が農家の人のためになるのだろうか、政府も、いわゆるこの国の存亡のもとになる食糧を安定して確保を図るというような観点から見直すべき時期が来ておるのではないかと私も考えます。
  92. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣は国の存亡にかかわると言われた。特に主食だから、農は基本なりだから、政の基本なりだから、皆さんが選挙演説でおっしゃるのはそれだと思うのですかね。胃袋の大半をどこかの国に支配されて、これは何もバックファイアとか関係ないよ。胃袋を押さえられれば日本人なんてものは終わりでしょう、もうこうなれば。だから、せめておまんま、主食、これが崩れたら――あるいは、うがったことを言うようだけれども、カリフォルニア米を持ってきて街頭の試食会をやった。これはまさか農林省が奨励した風景じゃないだろうけれども、そういったものを考えると、これは待てよ、次の輸入品目は米かな、こうなる。そういう心配が非常に多い。だから、いまは農業という観点、わかりやすく言えば農民代議士というような言い方ではなくて、消費者全体が貿易自由化に非常に関心を持つようになった。  農林大臣どうですか、そのように御認識ですか。その辺どう思いますか。
  93. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 米の自給の問題につきましては、これは基本的に国内で生産できるものでございますし、現に相当な生産能力を持っておるわけでございます。したがいまして、私どもはこれを輸入に頼るということは毛頭考えておりません。
  94. 川俣健二郎

    川俣委員 大変なそういう決意をやはり政策にあらわしてもらいたいと思うために次の質問に入ろうと思うのだが、いまの減反政策はことしで終わりです、計画としては。ただし、終わらせないのだと思うので、第三期というのを皆さんがお手元で検討しておるのだが、それが来年からです。そこで、第三期再編対策というものの際に、もしあればここでお示し願いたいが、ありますか。ちょっと、それでは……。
  95. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 第二期の最終年がこの四月から始まるわけでございます。第三期が、御承知のように、五十九年からでございますので、五十九年度予算編成期をめどに骨格を固めていきたいということでございまして、現時点におきましてお示しできるようなものはございません。
  96. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、いい機会だから。まだ練っているという段階だ、お示しできるようなこともない。いい機会だから、この辺で丹羽兵助大臣あたりは答弁をしたいところなのだろうけれども、きょうは時間もあれですから……。  どうですか。第三期減反政策をいま練っておる、この機会にいままでの、ずっとここへ出た受け答えの場面を少し加味して基本的な農業政策の転換をやる。この辺でそこに総理大臣がいるといいところですかね。農業基本法というのは、後ろにおられる藤田さん、先生方が昭和三十六年に中央地方の公聴会――こんな分厚い議事録を私は後輩として見せていただいておりますが、とにかくバラ色の農業になる、こういうお勧め品だった。周東農林大臣だったかな。それで、池田総理だと思ったのですが、社会党と民社は対案を出して、これはいかぬと言ったけれども、やる。これはバラ色でないもんな、消費者が大変なことになるから。  そういうことなので、この第三期を出す機会に、食糧問題を含めて基本的に見直す、どうですか。
  97. 金子岩三

    金子国務大臣 時間的に見直す時間があるかどうか問題ですけれども、私は、いま川俣委員の申されておることはよく理解できております。関東から東北の米どころではやはり米が一番粗収入が大きい。ところが、無理やり水田を畑地に転換させて、いわゆる大豆をつくれ、麦をつくれ、こういう奨励をしておるような形になっておりますので、もっときめ細かく適地適作をやることにしたならば農家は大変喜ぶんじゃないかなと、そしてまた、生産性の拡大も私はこの方が効率的だ、このように考えております。したがって、御意見は大いに検討に値しますので、十分ひとつ検討を続けてみたいと思います。
  98. 川俣健二郎

    川俣委員 本当にこれは党派を超えて取り組まなければいかぬ。国民食糧だもの。丹羽先生うなずいておりますけれども。  そこで、大蔵大臣、これはいま見直すという方向を示してくれたやに思えるのですが、大蔵大臣いいですか、これは財政との絡みがどうしても出てくる、基本的に考えると。時間がないから来年の通達に間に合うかどうかという言い方ではちょっと、せっかく働こうかい、まじめな内閣として発足したのですが、大蔵大臣の方から見てどうです。やっぱりこれは考える時期だ、減反奨励金を湯水のごとくやって何も定着していないんだから。そのはね返りが、いつ減反を解除してくれるんですかという質問になるのだと思います。大蔵大臣からその辺をひとつ……。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 今日までの水田利用再編対策における奨励補助金というものは、米の需給均衡の確保でありますとかあるいは麦、大豆等の自給力向上の必要性の高い作物の生産とか、そういうものにそれなりに一定の成果を上げてきたというふうに、私はそれはそれなりに考えております。きわめて財政的な見地からだけ見れば、たびたび本委員会で毎年川俣委員が御議論なすっておるいろんなものをいま拝見しておりますが、確かに財政的に見ても、いわゆる飼料用と主食用以外の用途に過剰在庫を招来して負担した場合ということから考えれば大きく上回る財政負担になりますので、財政当局から見ればそれなりのまたメリットもあった。が、いまの問答を聞いておりながら、私も出身地は農村でございます。いろいろな、お互い選挙区のさがとでも申しますか、そういうものを念頭に置きながら、いい話だなと思って聞いておりました。  しかし、さればとて大蔵大臣が、農政上の問題で感覚だけで物を申し上げたら、場合によっては取り返しのつかぬことになるような気も、私の農政に対する基本的政策能力の欠如からすればそのおそれもある、こういうような感じがしまして、いいお話を聞かせていただいたということで御勘弁いただきたいと思います。
  100. 川俣健二郎

    川俣委員 余り感心ばかりしないで、おたくだって隣の席に座る場合がそう遠くないと思うから。  農業問題というのはみんなで考えていくという時代になりましたということを言いたいので、ぜひこれを――この間は、国民病というか、死亡率一位のがんの問題を、総理がせっかく、厚生省の問題だけじゃなくて内閣全体の問題としてやるという前向きの答弁があったように、この食糧もやっぱりみんなで考えていく大きな問題だと思いますよ。いつ、どこかの敵が攻めてくるかという閣議よりもむしろこの食糧をどうやろうかということの一つで、魚の問題にもなるが、この間ちょっと、外交案件だと言うから農林大臣を解放いたしましたが、日ソ漁業交渉、新聞には出ておりますが、これは外務大臣にも後で聞きたいところです。水産庁でもいいですけれども、やっぱり農林大臣の方がいいと思うが、例の合弁会社、私らが思っているように当然外為にかかわる相互主義、これを相手がすとんと直ちに承認ということにならぬだろうが、しかし、一つは政治的に政経分離という歯どめだけはしないでくれよ、渋い顔はしないでくれよと言ったら、総理大臣はそのとおりしますということだったので、その辺は自信を持って交渉されたと思うのですが、いかがでございましょうか。農林大臣、水産庁でも結構ですから、果たしてこの次の交渉はいつごろなのか、せっかくあなたが出るんならそういったところもひとつ……。  それから、外務大臣には、そうなると、当然日ソ政経分離という話も出てくるが、これに積極的に取り組んでいく、バックアップするという意思表示をしてもらいたいと思うが、どうだろうか。
  101. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答え申し上げます。  先般、金子農林水産大臣とカメンツェフ・ソ連邦漁業相との間でいろいろな事項で話し合いが行われましたが、ただいま先生御指摘になりましたソ連と日本の合弁事業という点についても話が及んだことは事実でございます。その点につきまして大臣から御回答なさいました趣旨は、外国企業との合弁につきましては、わが国では外国為替及び外国貿易管理法に所要の規定が設けられておりまして、現在の法律のもとにおきましては、いわゆる相互主義の観点から、わが国からの投資が自由に行われない国からの投資を受け入れることは困難であるという状況になっておるわけでございます。ソ連は現在、外国からの投資に対しまして厳しい規制を課していると私ども承知しておりますので、この点から、大臣からはカメンツェフ大臣に対しましてわが国国内法についてよく御説明をいたしまして、現行国内法から見ましても先方の提案を受け入れることはなかなか困難であるという説明をいたしました。同時に、カメンツェフ大臣からのせっかくの提案でもございますので、今後具体的な内容を含めましてソ連側の考え方を十分聞いた上で、その意向を関係大臣にもお伝えし、検討してみることにいたしたいという旨を向こう側に回答いたしたわけでございます。  今後のこの問題につきましての話し合いでございますが、その他の問題につきましても全部含めまして実はいろいろと事務当局間でも相談をしようということになっておりますので、そのような機会を求めてこのような話をさらに詰めていくということになると思いますが、なお、カメンッェフ大臣の方から、先般金子大臣の訪ソの御要請もございました。大臣はこれを感謝をしてお受けする、ただ、その状況等によりまして、具体的な内容については今後とも相談してまいりたいということを申しておられますので、総体的に申しまして、さような機会にもこの話が出る、このように考えておる次第でございます。
  102. 川俣健二郎

    川俣委員 外務大臣に答弁してもらう前に、せっかくだからもう一つ答弁していただいて退席していただいて結構ですが、私は非常にいい機会だと思います。日ソのいろいろぎくしゃくしている問題を、大砲を向けょうとしておって領土を返せなんと言ったって、こっちはとてもじゃないが力づくで返せと言える国でもないし、こうしたものを一つ一つひもといていくべきではないかというあれから、ぜひと思っている機会です。しかも、大臣に、向こうからやってきて、おいでくださいと言っているのですから、その辺の外務大臣のあれを少し……。  それからもう一つ、ついでですが、ブロック通商代表、これがこの予算委員会中に来ておりましたが、たしかそうですね。ところが、ブロックというのは、日本の国で有名なのはブロック書簡、こんなことをする男だろうかと思ったり、自動車を持ってくるかわりに農産物を持っていけという物騒なことを言ったりするんだが、きょうは通産大臣を呼んでないんだが、ブロック氏が来ているのになぜ農林大臣と会う場がないのだろうかなと思ったのです。ところが後だ、話はわかったのかなと思ったら後だ。後というのはどうも選挙の後だろうか、こう感じざるを得ないので、その辺の感触を聞かしてくれませんか。
  103. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まず、ソ連との関係ですが、もちろんわが国としては、ソ連といたずらに対立を好むわけではありませんし、やはり対話も進めていかなければならぬ、こういうふうに思います。  そういう中で、漁業協定といった実務的な交渉が、今回カメンツェフ漁業大臣を迎えて金子農林大臣との間で行われたということは大変結構だと思いますし、また金子農水大臣がソ連に行かれるということも大変結構だと思うわけです。同時にまた、永野ミッションがいま訪ソいたしております。民間の立場で経済の交流が進められるということも結構だと思うのですが、ただ、日ソ関係を考える場合には、何といいましても領土問題、北方四島領土問題があるわけでございますから、こうした領土問題を解決して平和条約を結んでいかなければならぬ、日ソの間にはそうした根本的な大きな懸案が横たわっております。したがって、実務的なあるいは民間の交流というようなものはやはり積極的に進めていく、あるいは政府間でも対話を進めていくことは必要だと思うのですが、いまのそうした大前提を考えますと、政経を分離してソ連との関係を進めるということはなかなか困難だ。やはり日本の立場としては、あくまでも政経不分離という形でソ連に対しなければ事を誤ると私どもは考えておるわけであります。  それから、ブロック通商代表の問題ですが、これは今回日本に来られまして、残念ながら金子農水大臣とは日程の都合で会えなかった、こういうことでございます。私はブロック通商代表にもお目にかかりまして、ブロック代表から、農産物についてもアメリカ側の強い要請を受けました。特に牛肉あるいはオレンジの自由化についてアメリカは非常に強い考えを持っておりまして、これは強い要請を受けたわけですが、これに対してはわが国政府としては、これは中曽根総理も首脳会談ではっきり言っておりますが、自由化を認めるわけにはいかない、ただしかし、かつての中川・シュトラウスあるいは牛場・シュトラウス会談で、来年の三月三十一日まで一応クォータは決まっておる、そして来年の四月一日から切れるわけですから、その間に今後のことについては話し合いをしよう、こういう約束もできておるわけでございますので、自由化は絶対にわれわれは認めるわけにはいかないけれども、しかし、首脳会談でも出たように、実務会談、この期限が切れる、今後どうするかといった実務会談はやはり行おうということで、ブロックさんとの間では、農林省とも相談して話をいたしたわけでございますが、これをいつ始めるかということになると、これは農林省当局とも相談をしましてアメリカ側と打ち合わせをしなければならぬわけでありますが、これについてはいつからということがまだ決まっておるわけではありません。これから相談をして、いずれにしても始めなければならぬことは事実でありますが、その具体的な時日というものは両国間でまだ話がついてない、こういう現状であります。
  104. 川俣健二郎

    川俣委員 外務省の事務当局も出席されておりますから、いまのせっかくの大臣の考え方を、政治家同士の話なんだから、これをよく休して、余り渋い顔とか、特にいま永野経済使節団、いままでにない大型になっているわけですが、いろいろとなれないところで、しかも、いま一番寒いときだ。モスクワにいる高島大使、われわれにも余りよく会ってないのに民間が来たってというあれもわからぬでもないが、この機会にぜひその件を、ぎくしゃくしないように、テレもあるし電話もあるわけだから、やっていくべきだというように思います。これは質問じゃありませんから……。  それじゃ外務大臣と農林大臣、結構です。  それから、私がいま取り上げようとするのは核問題、さっきも話が出たと思ったのですが、原子力船「むつ」というのは、核は危険であるという形で取り上げるよりも、これは古くて新しい話なのでここでも出して――これもまた、亡くなった中川さんとやり合ったわけですが、もう大概にしてやめる、あきらめる時期だ、こういう意味で取り上げていきたいと思うのです。  それはどういうことかというと、今度の予算を見ると七十六億円のっております。これからいよいよ帰ってきた定係港、中川さんの語録によると、かわいいむつ子ちゃんが帰ってきた、こういうことで受け入れてくれ、ところが漁民の方は、いや、どら息子が帰ってきたって、傷だらけになり刃物も持っているし、危なくてうちに入れるわけにいかない。そしたら、だれだったか、科学技術庁の女優さん上がりの女の政務次官、あの人が、たまには危ないこともあるから研究するのだ、こういろいろなことをおっしゃってにぎわした語録を残しておるのですが、これから定係港をつくるとすれば最低六百億、これは答弁に出ておる。  つらつら考えてみると、昭和四十四年の進水でしたか、四十九年の八月に、さてそれじゃ洋上に出て出力上昇試験をやってみようかと出た途端に、四日後ですが、放射線漏れで大騒ぎになった。五十日間洋上を漂流した。つながれた。動くな。それで、修理港を決めなければならぬ、大騒ぎをした。これに四年。つかみ金を持って行った。ついに佐世保。大騒ぎした。それで、今度は新母港を探さなければならない。これにまた四年かかった。都合八年。  さて、現在大湊港につながれておるが、いままでかかった金は、つくった金が七十六億、それから母港の建設が二十六億、修理が百億。それから青森、長崎に四十二億。この四十二億は何だというと、簡単に言えば説得料。つかみ金を持っていって説得料。これを説得した者は、商店街を利用して、特別に商店の融資金を倍にしてあげる、こういう場面もあったという。これは地元の代議士に聞いておる、資料を持っておるのです。  ところが、さて今度は、出力上昇試験をどこでやるかもまだ決まってない。ただ定係港をつくろうかということの段階の予算だ。ところが事業団は、国会で参考人に呼ばれた方が発言した言葉を引用しますと、それはなかなか事業団なり役所としては言えないと思うが、こういうようにおっしゃっております。五十五年ですか。まだやはり「むつ」を完成させた方が得だと考える、そちらの説をとっているわけですが、だから予算にのせているわけです。余りこれがこじれるようではもうあきらめた方がましだというような感じはいまだに持っておるわけです、これがせいぜいの役人なり事業団の発言だと思います。  そうなると、政治決断をしてあげないと、政治判断をしてあげないといかぬと思う時期に来たと思う。ところが、これがまだ遅くない、予算がまだ発動されてないわけだから。これはもし調査費、賠償費、そうすると百打億か六百億をめぐって、土建業が群がると言っちゃ悪いが、公共事業がないから、これはいいものが来た、少しぐらい危なくたってやろうじゃないか、こういうムードになっている。これは関質問、地元の関晴正委員がいろいろ各委員会でやっておりますから私もわかっております。  そこで、したがって、そういう意味もあって行管の齋藤大臣も呼んでおるのですが、どうです、科学技術庁の長官にまずその件を、この方が、実際当たっている方が、いまだにこじれるようではもうあきらめた方がましだというような感じはいまだに持っておるわけです、こういうようにおっしゃる。  ところが、諸外国を見ると、ソ連は砕氷船ですか、アメリカはほったらかし、後は舶用炉に使っているという程度。もう大概にしないと、これから触れようとする、さっきも触れておったが、東海村のあれがとまっているというような問題だって、これは研究開発費が足りないからなんですと言うておるのだから。ところが、これが毎年足手まといになっちゃって、これを持ちこたえるために科学技術庁の予算の枠がゼロシーリングかマイナスシーリングになっておるのだから、この道楽息子と言っちゃ悪いが、大概に考え直す時期に来ているのではなかろうかというような感じかするわけです。政治家としてその辺を少し聞かせてくれませんか。
  105. 安田隆明

    ○安田国務大臣 五十六年十月三日、川俣先生から貴重な御質疑、問答、その経過を私もよくよく勉強しました。そして、そのときに、時の鈴木総理もお答えいたしておるわけでありますが、まず第一点は、本当にこれは長期展望に立った場合に、エネルギー資源のないわが国が果たしてこの原子力を手から放してしまう、この政策の選択は可否を考えれば考えるほど、われわれは絶対にこれはやはり長期展望に立って、しかも、これは経済性を含んでという意味でありますが、手から放すことはできない。  第二番目には、これは造船国、しかも海運国、これは国際市場、熾烈ないま競争をやっているわけでありますが、本当に海運立国、造船立国として、これを手を緩めてしまうということの可否、これも政策上どうしても手から放すことができない。  第三番目でございますけれども、もういま川俣先生おっしゃいましたように、先進国はすでに開発炉を手に入れ、かつまた手に入れるために一生懸命にいまは研究開発をやっているわけであります。いろいろ考えれば考えるほどこの問題は、わが国の科学立国として重要な意味を持つもの、こういうことでございますし、そこにあのような不幸な問題ができた、これは本当に、川俣先生おっしゃいますように、反省を込めてわれわれはおるわけであります。  したがいまして、今後の問題でございますけれども、いろいろ紆余曲折がございました。その中で、先ほど申しましたような歴代政府の立場としては、絶対これはもうなし遂げ、手から放さない。もう執念を持って、悲願としてこの問題を達成する、こういうことでございますから、一日も早く新定係港をつくっちゃって、そして実験段階に入る、こういう方針を堅持しておりますので、ひとつ御了解を願いたいと思います。  以上であります。
  106. 川俣健二郎

    川俣委員 悲願という言葉で……(発言する者あり)まあそれほどら息子ほどかわいいというお話も後ろから出ておりますが、一体何年かかるの、これ、定係港。  それから、時間もないのだが、やっぱり海の底へ構築物をつくるわけだから、これは一番、私は鉱山におったけれども、技術屋じゃないので、活断層というのが非常に気になる。東大の研究室から、活断層がここにある、こういう文献も持っていますが、ないということでいっていると思うが、その辺、政治的な発言じゃなく、せっかく、工業技術院でしょうから、純学問的に担当官のお話を聞かしてもらいたいと思う。  まず、事務当局から、期間、どのくらいかかるか。大臣がこのような悲願論を言われたのじゃ、まさか事務局は、やめた方がいいと思って悩んでいるということは言えないと思うのですが、実際問題どうなんです、これは。
  107. 高岡敬展

    ○高岡政府委員 お答え申し上げます。  「むつ」が去年の九月に大湊に再入港いたしますときに、地元の県、むつ市、県漁連と約束をしておるわけでございます。  かいつまんで申し上げますと、むつでの停泊というのは一時的なものであって、新しい母港を必ずつくるんだということが前提になっておるわけでございます。そういう地元の了解に基づきまして新定係港の建設準備を進めておるわけでございまして、今年の秋には、順調に参りますれば着工をしたいというふうに考えております。  そういたしまして、科学技術庁といたしましては、六十一年の九月ごろには新しい定係港として使えるようにしたい、供用開始をしたいというふうに予定しておるわけでございます。  以上でございます。
  108. 石坂誠一

    ○石坂政府委員 お答え申し上げます。  関根浜沖の活断層につきまして、存在しておるかどうかという点の御質問でございますが、残念ながら、工業技術院に地質調査所というところがございまして、活断層の勉強もしておるのでございますが、その当該の地点につきまして実は従来調査したことはございません。したがいまして、ここで確言することは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  109. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは、調査してないというのに出せと言ったってあれなんだが、それぞれ地質調査所の先生方は、役人さん方は、あの文献を見ないわけじゃないので、東大が、ある、こういう文献を見ておると思いますので、その辺はこの委員会に、急に私の質問の時間をもらえればまた伺いますけれども、その辺の感想を、東大の研究したものに対する感じが、言い方があるならいいけれども、いま出ないと思うから、そのときにぜひ聞かしてもらいたいと思います。  それから、この問題に直接結びつくわけじゃないが、核燃料の問題で大変またお待たせして悪いんですが、各大臣方の組み合わせが、いっぱいほかの委員会との関係がありまして、自治、環境、運輸等にお待たせしておるのですが、核燃料物質の運搬の問題です。これは原発、これは非常に住民にも公聴会を通じて知らせているというか、もう少しやり方、スタイル、方法がないものだろうかと思って私ら見ているのだが、この運搬の問題は、「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物による災害を防止して公共の安全を図るため特に必要がある場合として政令で定める場合に該当するとき」、運搬させる側、運搬する側、発送地、もちろん着地の都道府県公安委員会に届け出なければならない。届け出を受けた公安委員会は、運搬経路となっている他県の公安委員会に通告し意見を聞かなければならない。届け出を受けた公安委員会が運ぶ側に指示しなければならない事項の一つとして、「見張人の配置その他核燃料物質等への関係者以外の者の接近」、いわゆる一般者の「接近を防止するための措置」を挙げているのだが、この辺の法律は大丈夫ですね。法律どおりやっておりますね。どうです。
  110. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 届け出を受けます公安委員会の立場につきまして御説明を申し上げますが、原子炉等規制法に基づきます核燃料物質等の運搬制度の適正な運用を図るために、運搬の届け出を受理した場合には、運搬の日時でありますとかあるいは経路あるいは車両の速度あるいは伴走車の配置など事前の確認を行い、交通事故であるとかあるいは盗難等の防止について所要の指示をいたします。先生の御指摘のとおりでありまして、また必要に応じましてパトカー等を配備するなど、安全な運搬対策を講じておるところでございます。
  111. 川俣健二郎

    川俣委員 いろいろの法律がありますが、いま質問しようとするのは、この運搬の途中の住民との関係なんです。これは法律にないんだな、これはないんだ。ところが、経路を見てみますと、いま、つくる方は神奈川ですか、それからさっき話が出た茨城の東海、いま増殖炉が全面ストップだそうだから、事故を起こして。それから熊取、これはどこでしたか、大阪でしたかね。この大きな三カ所からつくって、原発、いまもう二十カ所ぐらいありますか、そこへ運ぶ。夜中に運ぶと思うのだが、そうしたら、ある住民が新聞社と一緒に、だれか、こうやっている。全然不用意だ。ところが、パトロールカーが先導する車もあるが、こう言っては悪いが、夜中だからいいだろう、ざあっと行ったってわからないだろう、こういうこともあるんだ。ところが、通過市町村への通知義務がないんだからやる必要はないんだ、役人としては。ところが、これは大変に、接近防止措置は、運ぶ側だけではなくて通過自治体並びに住民の協力がどうしても必要なんだ。これは住民が、夜中と言ったって夜中ばかりじゃないわけだから歩いたりする。何も知らないで、普通のトラックだろうと思ってそばへ寄る、こういうような場面もあるのだが、その辺はどう思いますか、運輸大臣。運輸大臣から自治大臣、環境庁と、こう聞いていきます。やっぱり何か歯どめが必要のような気がする。
  112. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 核の問題は慎重に扱わなければなりませんから、運輸省とすれば公安委員会とかあるいは科学技術庁と綿密な連絡をとり、そして私の方は所定の法律に従って、途中事故のないように、こういうことでやっているわけでして、幸いにいままで事故のなかったことは非常に私は結構なことだ、こういう体制のままずっと続けて、法律に基づいて安全を確保しながら運搬に御協力申し上げたい、こう思っております。
  113. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 この問題は非常に特殊の物質の輸送でございますから、きわめて慎重に政府としてはやっておると思います。そこで、この輸送に当たってはやはり安全輸送という観点から、これは原子炉等規制法という法律に基づく規制によって輸送の基準が決められております。それにのっとって警察としては公安委員会に届け出を受けましてやっている。だから、その基準に基づいてやっているのであります。警察としては、この基準に従って忠実に安全輸送に協力をしておるものと私は考えます。
  114. 川俣健二郎

    川俣委員 環境庁長官にもひとつこの問題について……。
  115. 梶木又三

    ○梶木国務大臣 核燃料は環境庁、所管いたしておりませんので、御了解いただきたいと思います。
  116. 川俣健二郎

    川俣委員 安田さん、これはちょっとどういう法律立てになっているんだか、野放しにできない感じがするね。通過住民に一切協力を得ない、知らせない。どうです。
  117. 安田隆明

    ○安田国務大臣 川俣先生おっしゃいましたように、もう規制法でこれを明定いたしておりまして、運輸大臣それから警察庁、いま自治大臣いろいろお話ございましたけれども、本当に安全の確保ということで一切合財、もうがんじがらめのああいう法定の中でこれを輸送する。そして、初めて日本に原子力の火がともりましたのが昭和三十八年でございますけれども、今日まで二十年間、全く事故なしに今日まで至っておる、こういうことでございますから、現体制でひとつこれを進めていく、こういうふうに私は理解いたしております。よろしくお願いいたします。
  118. 川俣健二郎

    川俣委員 ちょっとメモで気になったんだが、検討外だというんじゃないでしょうね。私の言うのは、発送地、着地、管理等はがっちりできているのですよ、網目が。途中の住民との協力関係が一切ないわけだ、法律に。そうなると、途中の住民というのは、たとえば東海村から繁華街を通っていって、新宿通るか銀座通るか知らぬけれども、夜中だって昼のようなところも通るんだから、人の往来の多いところ、そういうところを考えると、やっぱり検討してみる必要があるなということですか。
  119. 安田隆明

    ○安田国務大臣 お言葉を返すようでございますけれども、私どもの考え方は、現体制で行きます、やらしていただく、こういうことでひとつ御了解願いたいと思います。
  120. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、これ以上一切法律のあれは検討する必要はないと言うのですか。
  121. 安田隆明

    ○安田国務大臣 そのように考えている、こういうことで御了解を願いたいと思います。(「事故が起きたら大変なんだよ」と呼ぶ者あり)
  122. 川俣健二郎

    川俣委員 安田さん、ずいぶん自信のあるところを見せるんだが、そういうものですかね。後ろの声じゃないが、私は、起きてからじゃえらいことになると思うよ。全部がパトカーのサイレンで行くんじゃないんだ。では、全部パトカーのサイレンにしますか。あなた、できますか。規定どおりやれますか。
  123. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、安全運搬につきましてはいろいろ配慮をしているわけでございますが、車列の編成につきましても、一番台数の多い場合でも八台に限定をしております。しかも、その場合でも、現実にこういった物質等の運搬をしている車両は真ん中に挟むというような形にして少なくしてございます。  すべての場合と言いますと、すべての場合にパトカーをつけるかどうかは、その輸送の実態、輸送経路、輸送の距離あるいは輸送時間、道路事情等を勘案してやっておるという状況でございます。
  124. 川俣健二郎

    川俣委員 そういう状態なんだ、大臣。大臣が直ちに答弁に立たないだけに、そういう状態なんだ。あなたの頭にはないんだ。全部つくものだと思っているんだ、あなたは。だから、自層があるんだ。そういう状態なんだ。全部パトカーを一々つけるあれはないんだから。だから、絶対事故は起きませんという自信のあらわれが言う答弁なんでしょう。やはり検討してみる必要があるんじゃないですか。必ず直せと言っているんじゃないんだ。検討してみる必要があるでしょう。どうです。
  125. 安田隆明

    ○安田国務大臣 これは科学技術庁の立場とちょっと離れるわけでございまして、警察庁、運輸省、ここのサイドに今度移るわけでございますが、いま川俣先生がおっしゃいましたことをよく踏まえまして、一遍われわれも相談させていただきます。
  126. 川俣健二郎

    川俣委員 担当大臣としてはそうあるべきなんです、その法律は運輸大臣、自治大臣等いろいろ分かれますから。だけれども、核そのものは、この核はいい方の、別の核だろうが、あなたは相談するということで僕も引っ込みますから、これはぜひ検討してみてください。結構です。  それから、これも党の政策の方から頼まれているのですが、社労でもちょっと取り上げられたことがあるのですが、ちょっと大事な話なんです。いわゆる人間の死亡の判断基準というか死亡判定基準でいまにぎわしているのは脳死ですね。厚生大臣、お待たせしました。  そこで、こういう論議になっておるんだが、亡くなった、死亡時刻、死の判定、死亡宣告、この基準は、心音、呼吸停止、瞳孔の散大、この三徴候説で日本は現在やっておったが、脳死説というのが非常に浮上してきた。私は、この三つが全部機能が停止した段階が死亡宣告だ、死亡の判断だ、こう思っておったが、専門の方から言わせると、いや心臓手術、心臓移植等必要なときには停止しているんじゃないか、しかし死亡じゃないのじゃないかという反論があるが、それはレアケースであって、これは腎臓移植するのに、死亡した、脳が死んだんだから死亡したのだ。しかし、腎臓は生きているからこれだけとって持っていく。だから、死人からとっていく、こういうことになるが――時間があと三分、時間を守りましょう。  そこで、これは悪用されるおそれはないのだろうか、悪用されるおそれがある。たとえば、たまたま御夫婦が一緒に亡くなって遺産相続の問題が出てくる。そうなると、遺産相続を絡めて、三機能が全部死んだという基準であればいままでは問題なかったが、いや、こちらの方はちょっと動いている、こちらの方はちょっとあれだ、だから、これだけ死んだから死んだ。先に御主人が死んだ、遺産相続する、こういう悪用されるような場面があるので、厚生省はこれに対して、専門的になって交通整理が非常にむずかしい段階だろうが、私は専門的には知りませんから。ただ、この脳死というものを死の基準にしてほしいという立法化の動きがあると思います。その辺はどう考えておられるか。
  127. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員にお答え申し上げます。  先生いま御指摘のとおり、従来までは呼吸停止、心搏停止、要するに脈が、心臓が動かぬ、瞳孔が散大する、目があいちゃってどうにもならぬ、こういうことだったのですが、いまお話のありましたように、いろいろな形で脳波と脳死に関する委門会というのが、日本脳波学会というのでいま議論されていることでございます。新聞等でもこれは大変にいろいろと出ておりますが、御指摘のように、死んだときの後、遺産相続をいつ、どうするかというような判断まで出てくるわけでございますから、私たちとしては、この問題につきましてはいろいろと考えていかなければならない問題があると思います。それは単に医学的に脳波がとまったらどうだ、こういうことではない。やはり一般には、世間常識では心臓がとまるというのは、お互い持っているところのいままでの一つの常識だろうと思うのです。だから、そういったものをどう考えていくかというのは、やはり倫理、宗教、哲学あるいは法律学、多方面にわたって学問的領域でも深く関係をしているところでもありますし、また国民一般の死に対する考え方、こういったことをどう判断するかということでありますから、この辺につきましては、幅広い国民のコンセンサスが得られた段階で出てくるものではないかと私は思っているわけであります。  もう一つ申し上げますが、この前優生保護法がありましたね。そのときにも、これはやはり……(川俣委員「宗教」と呼ぶ)宗教の問題があるのです。と同時に、生というものと死というものを一体どう考えていくかというのは、お互いやはりもう少しじっくり議論しなければならないことだろうと思っているところであります。
  128. 川俣健二郎

    川俣委員 あなたが優生保護法と言われれば、私も言わねばいかぬのだが、そんな優生保護法じゃないはずだ。優生保護法はなぜひっかかっているかといったら、党内事情だけでしょう、それ以外はないでしょう。わかっているよ私は、そんなことは。  だから、いまの脳死の問題は、医務局長、何かつけ加えることありますか。ありませんか。――ありませんね。  それでは、時間になりましたが、ひとつ委員長、一番先ににわかに出した問題、大野発言。地元の記者会見。これは非常に大きな問題ですよ、委員長理事会にも出ると思うので、これは私個人の質問ではなくて、代表者会議の重要課題でもあるから、これで委員会が終わるわけじゃないですから、この問題を取り上げていきますから。きょうは私は、これはさっき見たばかりなものだから労働大臣は要求していませんでしたので、こういう時間になりましたが、むしろ藤田委員が質問した問題と非常に関係があるので、そういった処置をとりたいと思います。よろしく。
  129. 久野忠治

    久野委員長 川俣委員の御提議の問題につきましては、理事会をもって協議を進めたいと存じます。  これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十分休憩      ────◇─────     午後二時一分開議
  130. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  131. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 厚生省関係を先にやらしていただきます。  この前、中曽根さんが、がん対策を非常に重要視するというお話をされたわけですね。それで私も、がん対策の予算というのを聞いたわけですよ。ところが、さっぱりわからない。あっちこっちにいっぱいあってわからないのですが、一応がん対策について予算上どういうふうになっておるか、それから将来どういうふうにするかということを含めて、ひとつ厚生大臣からお話し願いたいと思います。
  132. 林義郎

    ○林国務大臣 五十八年度の厚生省関係のがん対策費は三つに分かれておるということが言えると思います。一つはがんの予防対策であります。二つはがん研究の推進費でありますし、第三番目はがん診療施設の整備を図るための費用でございまして、この三つを合計いたしまして総額百九十四億円ということになっております。  実は先般の国会でもいろいろと総理からもお話がありましたし、総理もがん対策につきましてはやろう、こういうことで緊急に少しがん対策をまとめてみようではないかという御下命をいただきまして、早急にがん対策の基本方針を策定すべく鋭意研究中でございまして、私も事務当局を叱咜激励いたしまして、大いにいま努めているところでございます。
  133. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いまお話があった中で、それは医療施設の整備等だというようなことを言われますけれども、たとえば国立がんセンターの経費というのは前の年よりも減っているのじゃないですか。これはどういうわけですか。
  134. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 先ほどから大臣が申し上げましたように、予防、研究、施設整備の三本柱で、予算書では特別会計予算の中にそれぞれ分かれて予算が計上されております。先生御指摘のように、がんセンター等につきましては病院経営費の中で予算が組まれているわけでございます。
  135. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 前より減っていると言うのだよ。減っている理由だ。前の年より減っているでしょう。
  136. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 これにつきましては、がんセンターは病院あるいは研究所等、過去十年来建設を進めてきているわけでございまして、昨年一応完了いたしましたので予算が減っているわけでございます。
  137. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、この前も川俣委員が質問されましたし、それから去年の、僕は秋のような気がするのですが、新聞の投書欄にも出ていたわけですね。アメリカのがん対策費と比べてみて非常に少ないというのが出ていたわけですね。もちろんGNPが違う、向こうは世界の二〇%、こっちは一〇%、人口も違う。いろいろあると思いますけれども、アメリカのがん対策というものを厚生省ではどの程度のものとしてつかんでおって、それで日本としてそれに見習うべきものがどこにあるのか、こういうことについてはどうですか。
  138. 林義郎

    ○林国務大臣 稲葉議員の御質問にお答え申し上げます。  アメリカのがん対策費は一九七九年予算で約十一億ドル、国立がん研究機関、NCIと申しますが、そこで約九億ドル、基礎研究に三億ドル、応用研究四億三千万ドル、開発研究一億七千万ドル、その他二億ドル、こういうことになっております。
  139. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、日本円に換算して一体日本との比率はどの程度になっていて、どこに学ぶべき点があるのかということを聞いているわけで、それに対して、総理もああいうふうに言われたのだから、ほかのものもありますけれども、がん対策予算について来年度どういうふうに措置したいと思うかという点は後から大蔵大臣に聞きますが、アメリカの予算をただドルで並べられても、こっちはわからないわけだからね。だから、円換算したときにどの程度になって、日本の何倍ぐらいだということまで、全体を説明してもらわないとわからない。
  140. 林義郎

    ○林国務大臣 先ほど十一億ドルと申しましたが、それが二千七百五十億円でございますから、日本の十三、四倍、こういうことだろうと思います。  そこで、どこのところがどう違っているかというのも、実はまだ私の方も十分調査をしておりませんが、やはり研究費であるとか応用研究であるとか、いろいろなことをやっておられるのだろうと思います。そういったことも少し含めまして私もよく勉強いたしまして、これから基本的にやっていかなければならない、こういうふうに考えているところでございます。
  141. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 大蔵大臣、この社会保障関係は後からまとめてお答え願います。  いまの話、大臣、ワシントン大使館には厚生省からアタッシェが行っておるわけですから、これは幾らでも資料をとって勉強しようと思えばできるのでね。これはもう前からの問題ですから、しっかりやってもらいたいと思います。  それから、文部省と科学技術庁というのも分かれてしまっておるのですね。だから全体を含めて展望しないといけませんし、この問題で悩んでいる方がたくさんいらっしゃるのですから、その対策のためにもしっかりやっていただきたいというふうに思っております。  それから、これは全部後でまとめますけれども、二番目は川崎病の問題なのです。これは実は私も誤解をしておりましてね。世間の人も誤解しているのじゃないかと思うんだな。川崎病というから川崎市に多く発生しておる病気じゃないかというふうに誤解している方もあるのですよ。私も初めそういうふうにちょっと思っていたのです、ぜんそくなんかあったから。これは川崎富作というお医者さんが発見して命名したから川崎病というのだということですが、病気の名前は別として、この前、土曜日に私どもの方の宇都宮で、川崎富作先生が、日赤医療センターの小児科部長ですか、おいでになりまして講演をされたわけです。そうしたら、子供をしょったお母さんなども一生懸命たくさん来られましてね。これは国際ソロプチミストという御婦人の集まりですね、そういうところなんですが、非常に来られて大変に、早く治療法を見つけてくれというふうなことで一生懸命になっておられるわけですね。  そこで、この問題について現状がどういうふうになっておるか、その原因はどうか、それからどういう対策を立てているか、こういうようなことですね。これは、川崎先生によりますと、去年の一月から六月が非常に多かったらしいのですが、ここで一万二千人ぐらいだ、三年間隔に多発して、日本は特に増加傾向にある、こういうふうなことを言われておるようなのですね。そういうようなことを含めまして、病状、原因、対策等今後の処し方全体について厚生大臣から、あるいは専門的な点は政府委員でもいいですが、お話し願いたいと思います。
  142. 林義郎

    ○林国務大臣 川崎病というのは、いまも御指摘のありましたように、川崎市の病気ではないかということで間違えられることが多いのです。実は私も、正直なことを申しまして、初めは川崎で起きる病気かな、こう思っておったのです、これはずいぶん前から出ておりましたから。最近になってそれが川崎先生が発見された病気で、川崎ディジーズという名前がついている、こういうことでございますが、御指摘のように病気は、まず申しますが、症状は首のしこり、高熱の持続、全身に発疹、発赤、赤くなること、手足の浮腫が特徴で、これらの症状は数週間で消失をする。ただし、心血管系の異常を付随することが多く、これによって突然死を来すことがある。致死率は約〇・三%であるということでございます。  患者の発生状況は、いま先生御指摘のように、五十七年の六月までに一万二千人発生をしたということでございますが、これは著しく発生率が高いのでございまして、五十六年は推定で六千三百人、その前の五十五年は三千九百三十二人ということになっております。そして五十七年、前半で一万二千人も発生したので、後半は大分鎮静化しているというふうな報告を受けておるところでございます。  これに対しまして、いま原因及び治療方法の研究を進めているところでございますが、病状が慢性化した児童について、その医療費を小児慢性特定疾患治療研究事業において公費負担の対象として、患者家庭の経済的負担の軽減を図っているところでございます。一日も早く川崎病の原因が明らかになり、患者の不安が解消されるように今後とも一層研究の促進を図ってまいる所存でございます。
  143. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは四歳以下の子供さんが圧倒的に多いですね、八割ぐらいですね。多くて、お母さん方は非常に心配されて、それで、病状なんかを間違えたりする場合もあるようですね、熱が出たり何かしますと。だけど、いずれにしてもといいますか、お母さんやお父さん方は非常に心配されているものですから、しっかりとした治療法を早く見つけて、万全の対策を厚生省としてもやっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  あと二つになりますが、もう一つは、人工透析の患者ですね、腎友会というのが全国的にあるのです。私、この前病院に行きまして実際に人工透析をやっているところを見てまいりました。お医者さんなどや患者の方々ともいろいろお話をしてまいりまして、人工透析患者実態調査報告集というのが全国腎臓病患者連絡協議会から出ているわけなんですが、そこで聞きますと結局こういうことなんですね。医療費の改定がありましたね。いまからいうとおととしになりますね。おととしの六月、四千点が二千点になったわけでしょう。このなった理由は、器械が発達したとか時間も短くなったとかいろいろ理由はあるのですが、まずあなた方の説明する理由と、それから、その結果として病院や患者にどういうしわ寄せが来ているかということを厚生省側はどういうふうに把握をしているか、これを説明願えませんか。
  144. 林義郎

    ○林国務大臣 腎の透析につきましては、診療報酬の改定で医者の技術料と薬の費用を分けたというのが主なことでございまして、私どもは、そういったことを分けたことによって特に病院の経営がどうだというふうには受け取っていないわけでございますが、若干専門的な話にもなりますから、担当局長の方から御説明をさすことをお許しいただきたいと思います。
  145. 吉村仁

    ○吉村政府委員 お答えを申し上げます。  一昨年の六月診療報酬で人工透析の点数が下がったわけでありますが、これは従来、技術料とダイアライザーの費用が一本になっておりましたのを、技術料とダイアライザー、技術料と物の値段と二つに分けまして、それが一昨年六月の改正であったわけでありますが、そのダイアライザーの値段が下がったものでありますから、全体的にモデルで計算いたしまして一七%ぐらいの引き下げになった、こういうことでございます。
  146. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、その影響が、あなた方の方に言わせると病院にも患者にも来ていないということですか。そんなことないですよ。よく聞いてごらんなさいよ。私、林さんに人工透析をやっているところを一遍よく見てくださいという話をしましたね。その結果を後で説明してください。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 その結果として、私どもが直接聞きますと、この点数が下がったために経営ができなくなって病院を閉鎖したという例があるとか、あるいは夜間透析の方はちょっと点数が高いわけですね。それはあるのですが、結局いままでは病院で持っていたものが患者の負担になってきておるというのが非常に多いのです。これは厚生省はどうつかんでいるのですか。  たとえば私が聞いたときに、血どめのバンドがあるのですね、あれするときに。そのバンドは全部病院で支給しておった。それが全部自分持ちにされたということを言っておる。それから綿とかちり紙とかなんとかも自分持ちにされてきたとか、結局点数が下がったために経営があれになるものだから、余り看護婦の希望者もいなくなるとか、職員がかわってしまう、そういうようなことがあって患者の人が非常に困っているという話を熱心にされるわけですね。私は聞いてきた。そして、たとえば弁当なんかもそうなんですね。弁当は五百円なんですか、五百円出るのですか、食事代として一日五百円なんですね。実際は半額ぐらいで、その金を浮かして別の方に回しているというような話もするわけです。  それは私も詳しく証拠を集めてきたわけじゃありませんけれども、そういうことを訴えるのですから、決してあれではないと思うのです。だから、医療費の改定問題が非常に大きな影響を与えているということは事実のようなんです。これはよく実態を調査して、あなた自身も患者の方とよくお会いをしてお聞きを願いたいと思うわけですが、そういう点についてはどういうふうにお考えですか。
  147. 林義郎

    ○林国務大臣 いま人工透析が非常に普及をしてきておるわけでありますが、御質問のございました中で、たとえば夜間にはなかなかできないから、夜間につきましては透析の加算の大幅な引き上げをしますということで、百五十点から四百点に上げましたり、弁当の話が出ましたけれども、食事加算の新設ということで五十点など、きめ細かい対応はしてきたところでございます。患者の社会復帰を推進するということが非常に大切なことだろうと私は思いますし、関係各方面の御意見を踏まえてやってきた、こう思っておるところであります。  ただ、いろいろな点で御意見がございますでしょうから、その辺の御意見は私も素直に承って今後の改善に努力をいたしたい、こういうふうに考えておるものでございます。  実は、稲葉先生からもお話がございまして、私もこの前病院に行って実際に透析をやっているところを、ちょうど夕方でございましたけれども見せてもらいました。  率直な感じを申し上げますと、日本の医学というのは大変進歩したものだな、昔は腎などということになると、あいつはもう腎でだめだからという話だったのですが、ああいった形でやれば復帰できるというのは大変な進歩をしたものだなということと、それから、ダイアライザーというのはこのくらいのものでございますね、先生御承知のとおり。腎臓というのはソラマメぐらいのものですから、まだまだ技術改良の余地は相当あるんじゃないだろうかという気もいたしました。患者さん方も皆非常にそれぞれ静穏な形で透析を受けておられる姿を見たわけでございますが、いろいろな点でまだまだ技術的にも改善が図られていかなければならない分野はあるように私は思いましたし、そうしたことが発達いたしまして、腎臓の病を持っておられる方々の社会への復帰、一般的な健康体への復帰というものが早くできますことを私も心から期待をしているところであります。
  148. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 難病対策の問題については、これは厚生省については大変お骨折り願いまして、難病対策課がなくなったわけですけれども、それはそれとして、かえって人数がふえたというところもあるようですし、一生懸命やってもらっているのはよくわかるのですが、現在の難病というのは、いわゆる特定疾患ですね、これはいま二十五ですか、いろいろあるわけですけれども、具体的に幾つくらいあって、どういうふうなことで難病対策というものに厚生省が取っ組んでおられるか、こういうことをまず最初にお伺いをしたいというふうに思います。
  149. 林義郎

    ○林国務大臣 難病対策につきましては、たしか昨年の臨時国会でも稲葉先生から御指摘がございまして、私も御答弁申し上げましたし、総理からも、特に厚生省の方で難病対策をしっかりやるようにと、こういうふうな御答弁をしてございます。  五十八年度予算では、本年を上回るところの総額五百九十億円の難病対策関係予算をいま御提案をしておるところでございますし、特に患者の医療負担の軽減を図るために、五十八年度におきましては、第一に特定疾患治療研究事業の対象疾患を二十四疾患から二十五疾患に拡大すること。第二番目といたしまして、小児の慢性特定疾患治療研究事業についても対象範囲を拡大し、内分泌疾患のすべての通院治療を対象としてこれを取り上げるということにしたわけでございます。  難病というのはまさにむずかしい病気でございまして、病気の原因がまだ解明されていない、あるいは治療方法がまだ確立されていない、こういった病気でございますので非常にむずかしいところでございますけれども、やはり国民の健康というものを最大限に考えてやらなければならない厚生省といたしましては、今後も一層の努力を傾ける決心でございます。
  150. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 去年の十二月十三日に私が質問いたしまして、中曽根総理大臣が、「厚生省によく検討してもらいまして、難病とか特定の病気については特に心を込めてやるように進めてまいりたいと思います。」こういう答弁をしているわけですね。今度はがん対策のことについて特にやるという話がありまして、竹下さん、そういうふうなものを受けて大蔵省としてはどういうふうに対処していくのか、こういうことですね。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 五十八年度予算編成に当たりましても、もとより聖域を設けることでなくという厳しい態度で、その以前マイナスシーリングというようなことでやってきたわけであります。したがって、社会福祉関係につきましても〇・六%の増、しかし、その中でそれなりのアクセントはつけた。それらのアクセントはどういうところでついたかといえば、やはりこういう国会の問答とか、そういうものが大きな政治的背景になったと私は思うのであります。  したがって、財政事情の厳しさはさらに増すでございましょうから、具体的考え方でお答えするわけにはまいりませんが、経費の重点化とか、あるいは厳しい中にも優先順位とかということを要求される官庁の方へもお願いして財政改革を進めるという立場に立ちつつも、まず原則的には要求を待ってそれに対応していく、こういうのが原則であろうと思っております。
  152. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 厚生省というのは非常に重要な役所ですからね。範囲が広いし、それから非常に重要な役所ですし、それから今後、将来ますます重要になっていくところですから、大蔵省もその点十分配慮してしっかりやってもらいたい、こういうふうに考えております。  公安委員長、お忙しいようですから一問だけお聞きしておきますが、警察関係で、青少年対策、これについて現状をどう踏まえて今後どう処理をしていくのか、こういうことをひとつ総論として、それから各論としては、横浜の事件、それから例の町田の中学の事件、学校の先生の問題ですね、そういうことについて実情報告をお願いをしながらお答えを願いたいと思います。
  153. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 最近われわれの常識を超えるような少年非行が起こったわけでございますが、これらの警察の窓から見たそういう問題の把握並びにそれに対する対応策といったようなものをわれわれの領域として考えていかなければならないと思います。  今度の事件の特徴は、最近非常に年少者、つまり年齢層が非常に低くなってきたということは非常に注目すべきことである。校内暴力のもう九三%は中学校で起こっておるということでございまして、いまの少年非行は中学生によるものが大変多い。ことに最近は、校内暴力も教師に対する暴行というのがふえてきておるということでございます。  横浜の事件は、家庭にやはり問題があった、親に監護能力がないという子供であったということでございます。家庭では何か精神的に支えてくれるところがない、放任をされている、学校では落ちこぼれになっておって学校へは行かない、したがって成績は悪い、結局非行に走る、こういうようなことでございます。  警察といたしましては、やはり補導活動というものは強化をしていかなければならない、こう思うのでございますが、問題の所在をどう把握するか、これは警察よりはもっと広い領域で問題点をつかまえて対応策を考えていかなければならぬというのは一致した御意見だと伺いますが、その中で警察のやらなければならないこと、またひとつぜひ今後とも補導活動を中心としましてやらしていただきたい、やっていきたいと思っておるところでございますが、同時に、家庭教育の問題もございますし、学校の中でもより以上の対策も立ててほしいということであり、また、子供を取り巻く地域社会の環境というものについても考えるべき点もある、こう思うのでございまして、警察といたしましては警察の受け持ち得る領域内において全力を傾倒して努力をしていこう、こういうつもりでおります。
  154. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 山本さん、あの事件、特に町田の事件については、私は、多少先生が逃げたとしても逮捕するまでの必要はなかったのじゃないかという意見を持っているのですけれども、検事のところで釈放になりましたし、それはそれとして、またいまの問題については、きのうですか、瀬戸山さんの記者会見後の発言なんかもありまして、恐らく文教委員会や何かでもいろいろ問題になっているのじゃないかと思います。ああいうように短絡的に物をとらえる形では、瀬戸山さんに悪いけれども、問題は解決しないのじゃないかと私は思っておるのですが、それはまた別の機会に、恐らく同僚議員やほかの方から基本的にいろんな問題を含めてお話があるかと思いますので、きょうは、本当は法務委員会で警察の方に来ていただいて聞く予定だったのですけれども、こっちがあるものですからこちらでちょっとお聞きをした程度です。どうぞ結構です。  そこで、私が問題に考えますことの一つは、防衛関係、外務省関係といいますか、その中で、安保条約というものについていろいろバランスシートというものを考えなければならない。やはり冷静に考えてみる必要があるのではないかと思うのですが、その前に一つお聞きをいたしたいのは、防衛庁、有事法制というものについて、一種と二種と三種があるわけですね。これは御案内のとおりですね。これはどんなものですか。
  155. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 これは政府委員から答弁をいたさせたいと思います。
  156. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答えいたします。  先生御承知のように、五十六年の中間報告の際に申し上げた分類でございまして、三つの分類に分けて研究をしておるという御報告をいたしました。第一分類とは防衛庁、自営隊の所管する法令、第二分類が他省庁の所管にかかわる法令で、有事の際に自衛隊が行動する際に問題になるおそれのある関係条文等について検討すること、第三分類はいずれの省庁の所管にも属さざること、すなわち、たとえば民間防衛であるとか避難誘導の問題であるとか国際法上の諸問題、こういう問題を第三分類と称しております。
  157. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 第三分類というのは、他省庁に属さないというよりも、内閣全体として考えられる問題だ、考えなければならない問題だ、こういう言い方の方が素直ではないのですか。どちらでもいいですけれども。  そこで、問題になってくるのは、徴兵制度は憲法の規定でできない。これは私の質問主意書で答えが出ておるわけですね。そうすると、民間人の徴用の問題については、一体これは憲法上なり何なりでできるという理解の仕方をしているのですか、できないという理解の仕方をしているのですか。どちらなのですか。
  158. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 旧憲法下におきましては、国家総動員法に基づく国民徴用制度、さらには物資の徴発制度というようなものが存在しておりました。たまたま国民徴用制度につきましては一昨年の三月に参議院の予算委員会で私、答弁しておりますが、そういう制度は現憲法下においては許されないであろうということを申し上げました。  それから一方、御案内のように、自衛隊法の第百三条に基づく従事命令の制度だとか、物資の使用、収用の制度というものがあるわけでございます。これらにつきましては、政府といたしましては合憲であるという立場をとっていることは、これも御承知のとおりだと思います。  そこで、御質問の民間人の徴用とか船舶の徴発とかそういう問題につきまして一言でお答えをすれば、そういう問題について私どもとしては具体的な研究とか検討というのを全く現段階においてはやっておりません。したがいまして、今日の段階では一般論として申し上げるほかはございませんけれども、まあ一応の定義が必要かと思いますので申し上げますと、徴用については、公権力が法律で定める一定の要件のもとにおいて一定の公的な業務に国民をして強制的に従事せしめる、そういうことが基本的な要素であろうと思いますし、また、徴発につきましては、公権力が法律で定める一定の要件のもとにおいて一定の軍需を私人に負担せしめることを基本的な要素とするというふうに考えていいと思います。  そこで、いつか稲葉委員からも御指摘がございましたけれども、両者を統一して公的負担あるいは防衛負担というようなことで言うわけでございますが、このような役務の提供の強制、あるいは物的負担の強制が許されるかどうかということにつきましては、これも前に五十六年の五月に衆議院の安全保障特別委員会で私が答弁いたしたことがございますけれども、要するに、公共の福祉のために基本的人権の制限が許されるということが政府の基本的な立場でございますから、そういう制限が許される場合に該当するかどうかということであろうと思います。したがいまして、そういうものの目的なりあるいは内容等をしさいに検討いたしまして、それぞれのケースに応じて総合的に判断をすべきものだと私どもは考えております。
  159. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そうすると、徴兵制度は明確に憲法違反だからできない、とは違うわけですね。
  160. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 徴兵制度につきましては、これまでたびたびお答えを申し上げましたとおり、公共の福祉の要請に応じて国民が負担すべき範囲内に入らないということで、憲法上許されないということになっております。ただいま御指摘のような問題については、具体的にそういう問題を一々検討しておりませんけれども、明らかに徴兵制度とは多少違った考え方をとる余地があると思います。
  161. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは非常な問題になってくるのですね。そうすると、たとえばシーレーン防衛というようなことを含んで、それが戦闘区域になっているというところと戦闘区域になっていないところとある場合に、戦闘区域の方へ船なり人間を徴用していくということは、これはどうなんですか、できるのですか、できないのですか。
  162. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、そういう具体的な態様に応じてどういうことが考えられるかということについては、私どもは一切そういうことを研究していないわけでございます。したがいまして、余り先走っていろいろなことを申し上げるのは差し控えるべきじゃないかということも前に申し上げたと思います。今日の段階では一般論として申し上げるほかはないと思いますが、そういう目的なりあるいは負担の内容、程度というものを総合的に勘案して、具体的ケースに応じて判断をする、こういうことしか申し上げられません。
  163. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 しかし防衛庁としては、その問題については――いま言ったように明確な憲法違反だということについては、防衛庁としてもこれは研究できないでしょう。いま言ったような徴兵制度の問題は研究できない。しかし、いま言ったように公共の福祉との関連で場合によっては許されるということならば、防衛庁としてはいわゆる第三種の研究の中に入れておるということになるのじゃないですか。
  164. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 ただいまお尋ねの件は百三条の業務従事命令にかかわる問題かと存じます。御承知のように業務従事命令は都道府県知事が、第二項地域と呼んでおりますが、非戦闘地域において医療関係あるいは建設関係、輸送関係、運輸関係の業者に対して業務従事命令を出すことができる、こういう条文だろうと思います。これは先ほど法制局長官の御答弁にございましたように、憲法二十九条の範囲内で、災害救助法の従事命令に非常に類似したものでございますので、違憲だとは考えておりません。  しかしながら、一項区域、すなわち戦闘地域において業務従事命令を出せるかどうかと申しますと、百三条の解釈上は、一項地域、すなわち戦闘地域では従事命令は出せないだろうと解釈されます。現時点において防衛庁におきましては、先ほど徴用と徴発と両方ございまして、徴用は人間の方だと思いますが、人間については非常に慎重に考えておりますので、仮にこの従事命令に違反をしたからといって罰則を設けるかどうかという御質問がかつてございましたが、これについては防衛庁としては余り考えていない。物資のいわゆる収用または使用、これにつきましては憲法二十九条の精神によって、私有財産に対しましては公共の福祉のため合理的に許容される範囲内での制限が加えられることでございますが、その際も災害救助法の精神にのっとってこれに対する必要な補償は行う、こういう考えでございます。  したがいまして、物と人と若干違います。人の問題については慎重に検討しておるところでございますが、一項地域すなわち戦闘地域においては百三条のたてまえからは従事命令は出せないだろうと解釈されております。したがいまして、第一分類すなわち防衛庁の所管にかかわる自衛隊法百三条の問題として勉強しておりまして、第三分類の問題、いまの御指摘のどこも担当していない問題あるいは政府全体で検討すべき問題として検討はいたしておりません。
  165. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 あなたの話を聞くと出せないだろうという話ですね。どうして出せないとはっきり言えないのですか。どうしてだろうという言葉を使うの。
  166. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  再々御答弁いたしておりますように、五十六年の段階でようやく中間報告をいたした段階でございまして、最初から五十三年の九月二十一日の有事法制の研究についてという統一見解、この見解の中で示しておりますように、近い将来立法を準備してやっておることではございません。現在の法律の解釈、運用、大体その有事に際しての基本的な法律の骨組みはできておるけれども、何か問題はないかどうかという検討をしておる段階でございまして、先ほど申し上げましたのは、まだ検討段階の中間報告でございます。  したがいまして、断固としてこれはだめであるという結論がまだ出ておりませんので、私どもの解釈では、一項地域における業務従事命令は百三条のたてまえでは出せない、こういうふうに考えております。それで、だろうと申し上げたわけでございます。
  167. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは非常に問題になってくるところですね。  もう一つ、たとえば自衛隊に国民への司法警察権といいますかな、そういうようなものを場合によっては与えようというような意見もあるのですか。研究課題になっているのですか。
  168. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 自衛隊には、御承知のように、長官直轄部隊としての警務隊というものがございます。この警務隊は自衛官にかかわる犯罪その他の取り調べについて司法警察職員としての権限を行使する場合がございますが、現在私どもの検討の対象としては、警務隊のことかと思いますが、自衛官にそういう司法警察職員の権限を与えるということはございません。  司法警察職員の権限を自衛隊員が取得いたしますのは、たとえば自衛隊法第八十二条、海上警備行動が発令された場合、海上自衛官の一定の階級以上にある者については司法警察職員としての権限が与えられますが、そのことはちょっと七十六条の事態とは違う、八十二条のいわゆる日常における自衛隊の警備行動あるいは警察活動、これにかかわる権限かと存じます。
  169. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 実は私は申しわけないのだけれども、安保条約ができましたね、五条ができたでしょう。その後からアメリカで戦争権限法という法律ができたわけですね。この法律は全くよくと言っていいくらいわからぬ法律であることは、まあできた経緯がベトナム戦争――戦争じゃないのだ、あれは紛争か。いずれにしても、それに関連してできたことですけれども、そのことを聞くのですけれども、結局そのことのポイントはどこにあるかというと、こういうことですね。  こういう質問があるのですよ。これは参議院の予算委員会で、昭和五十五年の三月十九日ですけれども、これは後からあなたの方で戦争権限法の概要を説明してもらいたいと思うのですが、あんまり詳しく説明されると時間がなくなっちゃうからあれですけれども、そこで自民党の玉置君が質問しているわけだ。ということは、一たん、上下両院の同意が要るわけでしょう、同意を得て、アメリカ軍隊を戦争に投入しますね。役人したときに、またこれは日にちが限られていますね、六十日と三十日と日にちが限られているわけでしょう。そして、それが今度は撤退する場合があるわけですね。撤退することについて、こういう質問があるのですね。  玉置村が、これは淺新一郎さんだからアメリカ局長かな、に対していろいろ質問をしておる中で、この議事録で言うと十五ページになるのですけれども局長が答えて、そして「重ねて聞きますけれども、軍隊投入後、アメリカ議会によって同意決議に基づく撤退命令の可能性は否定はできませんね。」こう質問しているわけですね。そうしたら淺尾局長が、「もちろん論理的な問題として、先ほどから参考人からも御説明」――参考人というのは国会図書館の人ですが、「御説明がありましたように、これは否定できないと思います。」こう言っているのですね。これは投入した後の話ですよ。  これから逆に考えていって、前のところで、安保条約の五条で、憲法及び手続に従うということが出ていますね。「自国の憲法上の規定及び手続に従って」、こう出ていますね。これは戦争権限法ができない前です。そうでしょう。戦争権限法は一九七三年にできた法律ですね。そうすると、この戦争権限法との関係によって、日本が仮に外国から攻撃を受けたとしても、直ちにそのまま自動的にアメリカが日本に軍隊を投入するという義務は負わなくなってきたのではないかということが考えられてくるのですが、その点はどういうふうに理解したらいいですか。
  170. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 戦争権限法、なかなか複雑な法律ですから、後で政府委員から答弁させますが、いずれにしても、安保条約ができた後で戦争権限法というのができたわけでありますが、しかし、やはり大事なことは、安保条約は米国の行政府が締結したということだけでなくて、米国の議会によっても承認をされております。したがって、米国は、行政府のみならず議会をも含めて、日本に対する武力攻撃が発生した場合、安保条約第五条の行動をとることを宣言しているということであります。  すなわち、安保条約第五条の規定する米国の対日防衛義務は議会を含めた米国の国家としての対日義務を設定をしたものであり、この義務を承認した同じ議会が地方においてこの義務の履行を妨げるごとき措置をとるというふうなことはとうてい考えられないということでもあります。  また、国家としては国内法のいかんにかかわらず条約の義務を履行すべきであるということは一般国際法上確立した考えでありますし、わが国としては、日米国家間の関係としてはあくまでも安保条約第五条を念頭に置いて本件に対処すべきである。  同時に、また、戦争権限法成立後しばしば日米首脳会談というのが行われまして、そこで米国の大統領が日本側に対して、安保条約第五条の米国の義務を遵守するということを誓約し続けておるということから、わが方としても、右に述べた観点から理解をいたしておるわけです。
  171. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 それは外務大臣の言うのは希望であり期待であるわけですよ。いいですか、それなら戦争権限法というものは意味ないわけですから。だから、ここに局長が言っているように、論理的に言えばということになるのですよ。論理的に言えばアメリカは自動的に日本を助ける法律上の義務というものは負わないのですよ、これは。そこで議会は上下――普通なら上院だけですからね、アメリカの場合は、条約のあれとかなんとかは。これは上下両院が必要なんですから。だから、そこで、あなたたちは言いにくいかもわかりませんけれども、これは論理的に言えば、あなた方の希望なり期待は別として、論理的に言えば、これは自動的にその義務を負ってない、こういうのが正しいのじゃないですか。
  172. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  安保条約五条の、自国の憲法上の手続と申しますのは、直接的に、委員指摘の、たとえば戦争権限法でございますとか、その他理論的にはいろいろな国内法があり得るかと思いますが、そういう国内法を必ずしも念頭に置いたものではございませんで、委員よく御承知のように、アメリカの憲法第一条におきましては、議会に戦争宣言、宣戦布告の松眼を与えておる。それから他方、憲法第二条第二節におきまして、大統領は合衆国陸海軍及び合衆国の現役に招集された各州の民兵の最高司令官であるという規定がありまして、これによりまして大統領に最高司令官としての権限が与えられておる。そういう憲法上の権限規定に従って「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」ということをアメリカに義務づけておるわけでございまして、これに基づきまして、アメリカとしてはわが国の領域に対して武力攻撃が行われた場合にこれに対処する条約上の義務を負っておる。その後、戦争権限法を含めましていろいろな国内法が仮にできましたにせよ、そういう国内法によりましてそういう条約上の義務、アメリカの議会も承認した条約上の義務というものが修正されることはあり得ないということが従来から政府が申し上げておるところでございます。
  173. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、それは日本のあなた方の期待であり希望なんですよ。それじゃ、ここで撤退の場合のことを「否定できない」と淺尾さんが言っているのは、これはどういうふうは論理的にくっつけるのですか。
  174. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま先生御指摘委員会におきまして玉置和郎先生の御質問に答えて淺尾政府委員が、もちろん論理的な問題としてそれは否定できないと思いますというふうに答えております。これは、戦争権限法の中に、七条、それから五条(c)項でございますか、撤退のことが書いてございますが、こういう規定がありますので、政府委員から申しておりますように、論理的にはこういうことはあり得るということでございます。  しかし、同時に、先生よく御承知のように、この戦争権限法というのは、その成立の過程から、あるいは経緯から申しまして、アメリカ国内においてもいろいろな解釈がございます。また、この戦争権限法の中にも一見して多少矛盾しているような規定もございます。たとえば八条の(d)項。  八条の(d)項は、この共同決議、すなわちこれは戦争権限法のことを言っておりますが、「いかなる規定も現行の条約の規定を変更することを意図するものではない」、こういう規定がございます。したがいまして、先ほどから大臣及び条約局長からも御説明申し上げておりますように、日米関係という観点から考えますと、あくまでも、日米安保条約五条によるアメリカの対日防衛義務というもの、これは単にアメリカの行政府の義務ということではなくて、それを承認した議会を含めてアメリカ全体が国家として日本に対して持っておる義務というふうに私どもは解釈しております。
  175. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 ここでこの議論をやっていると、これは本当は一日ぐらいやらなければいけない、率直に言ってむずかしい法律ですよ。中を読んでみましても、わからないと言うと語弊がありますけれども、むずかしい。  北村さんは参事官のときに答弁していますね。あなたは、アメリカの法律に対しては有権的な解釈ができないと言っているじゃないですか。いまはここで有権的な解釈をしているじゃないですか。まあそれはいいけれども、あなたが政府委員としてやっているのは有権的な解釈として見ていいわけなんだ。  確かに問題がある法律ではあります。だけれども、直接的に、すぐ自動的にアメリカが日本を防衛する義務なんというものは法律的には出てこない。希望は別ですよ。期待は別だけれども、こう論理的に考えていいんです。そこに安保条約のバランスで日本の一つのデメリットがあるというか何というか、そう理解していいんじゃないでしょうか。バランスシートの問題になってくると、こういうことになるんじゃないでしょうか。  まず一つの問題は、じゃアメリカにとってこの安保条約はどういうプラスかということですよ。アメリカはプラスだから結んだんでしょう。それはどうなんですか、外務大臣。
  176. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 やはりアメリカも安全保障政策の基本は何といいましても紛争の抑止にあるというふうに考えておりますし、そういう観点から、アメリカ政府としてもみずからの防衛力整備のための努力を継続する。ともに価値観を同じくしておる、日本もアメリカも同じ自由民主主義という価値観を持っておるわけですが、そういう国との間の協力関係の維持発展を通じて世界の平和であるとかあるいはまた安全の確保に努めておるというのがアメリカの基本的な考え方じゃないか。そういうことから見ましても、アメリカとして同じ価値観を持っておる日本との間に安全保障条約を結んで、日本が攻撃を受けたときにこれを守るということは、アメリカ自体にとっても世界の安定あるいはまたアメリカの平和と安定という立場から見ましても大いにプラスである、こういうふうに判断をしておる、私はそういうふうに考えております。
  177. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、アメリカのプラスのときに、問題は理解の仕方ですね。膨大な軍事基地をアメリカの自由な使用にゆだねているわけでしょう。その価値を金銭的または兵力に換算して仮に計算したとすれば、日本の基地を全く利用できない場合と比べてアメリカは莫大な利益を得ているというふうに考えられるんですよ。だから安保ただ乗り論なんて、そんなばかな話はないわけですよ、理屈は。そういうふうに考えられる。あなた方から言わせれば、日本それなりに利益を得ているということになるでしょうけれども日本は、逆に今度はデメリットというものもこれによって現実にだんだん生まれてきているということになるのではないでしょうか。  そうすると、あなたに言わせると、じゃ日本に基地がある、外国から日本関係ないところの戦争で日本の基地が攻撃をされる、日本が戦争に巻き込まれるということはない、絶対にない、こういうふうに断言できるんですか、どうなんですか。
  178. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに安保条約によりましてアメリカの基地を日本が提供しているわけですから、その限りにおいてはこの条約が片務的とは私は言えない、こういうふうに思うわけなんですが、いまお話しのように、この安保条約というのはあくまでも日本の安全の確保ということでございますから、そのための米軍の安保条約に基づくところの駐留ということでありますので、その日本の安全が侵される、あるいは極東の平和という面から安保条約を通じて以外に日本の基地の攻撃が一般的にあるというふうには、ちょっと一般的には考えられないわけであります。
  179. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、基地があるということによって日本が受けるプラスと、同時に攻撃をされるという危険性というものもまた持っておる、両面性がある、こういうことは認めざるを得ないのじゃないですか、どうですか。
  180. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本に確かにアメリカの基地があります。ですから、観念的、理論的に言えばそういう場合も、それは私なんかちょっと想像できないわけですけれども、考えられないことはないわけですが、しかし、むしろ日本に基地があるということによって日本の平和と安全というものは確保される、そのメリットは非常に大きいものがある、はかり知れないものがある、今日の日本の平和と安全がずっと維持されてきたということは安保条約によるものである、こういうふうに私たちは考えておるわけです。
  181. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、再三もういろいろな議論が出てきているわけですね。その中で防衛庁、たとえば実際に日本の潜水艦なりなんなりが宗谷海峡でも日本海でも、そこで絶えず、絶えずというかもぐったりなんかしておって、ソ連の船や何か、ソ連かどうか知らぬが、まあソ連の船でしょう。潜水艦なり何なりを発見する。そうした場合に、日本としてはソ連の潜水艦がこっちに向かって攻撃をしかけてくるということをアメリカに通報することになるのでしょう。これはどういうふうになるのですか、そのときは。
  182. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国とアメリカの間には安保条約というものがございますので、アメリカとの間において各種の情報交換というのは平時を問わずいろいろやっております。ただ、いま先生御指摘のようなことについての御趣旨というのは、具体的にどういうことかというのはちょっとわかりかねますので、いずれにせよ情報交換というのは、必要に応じて必要な資料を必要なときに日米間で交換をしているということでございます。
  183. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、日米間で情報交換をしているわけでしょう。そのために安保条約があり、そしてアメリカ軍が日本に駐留をして、日米で共同作戦や何かいろいろな練習をしたりなんかしているわけですから、そうなってくると、日本がいろいろ発見をした情報を向こうへ流すというか渡す。そのことによって、流すということ自身がもう役割り分担なのじゃないですか。これは日米共同作戦の一つのタイプなんで、そのことによって、それを受けたアメリカはそれを活用する。そして、相手方のソ連ならソ連というものは、そのことによってアメリカから攻撃を受けるということになれば、またソ連は日本に対して攻撃を加えてくる、こういうことにならざるを得ないのではないですか。そのことはあたりまえのこと、あたりまえというか認めざるを得ないのではないですか、どうなんですか。
  184. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほど私が一般的な意味での情報交換ということを申し上げたわけですが、いま先生の御指摘は、いわば何といいますか、相手の潜水艦の位置の通報であるとかいう、いわゆるタクティカルな情報の交換ということになります。そのことについては、平時そういうことをする必要もございません。一切していません。日本が攻撃をされた場合にわれわれとしてはそういった行動をいたしますが、それから、共同対処のためにそういうこともあり得るかもしれませんけれども、いま私が一般的に申し上げたのは、平時における情報交換を行っているということでございまして、平時からそういったいわゆる第三国の潜水艦の位置について一々通報するというようなことについては、特にいまやっているわけではございません。
  185. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 じゃ、平時からやってなければいつごろからそれをやるようになるのですか。アメリカはそれを日本期待しているのじゃないですか。安保条約があればあたりまえの話じゃないですか。アメリカはそれを期待しているから安保条約を結んでいるのじゃないですか。だから、ソ連の潜水艦がどこにある、どっちの方向へどうやって進んできているか、こういうことを知りたいから、それで、平時じゃなくて、平時から戦時にいきかける段階のときに、それをアメリカへ日本は通報する。したがって、それを受けたアメリカは、それをもとにしてソ連ならソ連に攻撃を加える。ソ連は日本に対して、日本を敵対視して攻撃を加える。そういうことから日本が戦争に巻き込まれていくのじゃないですか。あたりまえというか、普通の筋ではないですか。どうなんですか、それは。
  186. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 有事の際に具体的にどういう情報交換をするかというのは、いま直ちに具体案を持っているわけではございませんで、実際にわが国に対する武力攻撃があった際に、アメリカと日本の自衛隊は共同対処をすることになる。その際に必要ないわゆる情報交換のあり方については、先般決められたガイドラインに基づく研究の中でいろいろ研究するわけでございますが、具体的にどういう情報をやるかということは、いまお答えする材料の持ち合わせはございません。
  187. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 いろいろ納得できないというか、いろいろあるのですが、いままで私も何回も聞いた中でどうもよくわからないことの一つに、ライセンス生産の話があるのですね。これは前にも別のときに質問したことがあるのですが、P3CにしろF15にしろE2Cにしろ、ライセンス生産、国内生産とそれからできたものを輸入するのとに分かれておるわけですね、物によっては。そうすると、ライセンス生産というのは具体的にはどういうふうな形で行われておるのですか。
  188. 木下敬之助

    木下政府委員 アメリカの武器を日本でライセンス生産する場合に、アメリカの企業と日本の企業との間で技術援助契約を結んで、それでその技術をもらった上で武器を日本でライセンス生産するわけでございますが、その場合に、単に企業間で技術援助契約を結ぶだけで足りる場合と、それから政府間で取り決めを結びまして、その取り決めに従ってライセンス生産をする場合がございます。P3CとかF15というような重要な武器につきましては、日米相互防衛援助協定の一条に基づきます細目取り決めを結びまして、その細目取り決めに基づいて今度は企業間で技術援助契約を結んでライセンス生産をやっておるわけでございます。
  189. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、そのライセンス生産ということで、予算書の中にP3C、F15、E2C、みんな入っていますね。一機百二十何億と入っているでしょう。それではその中にライセンス料というのは一体幾らくらい入っているのですか、一機の中に。
  190. 木下敬之助

    木下政府委員 広い意味でアメリカからそういって技術をもらって生産をします場合に、企業間の間でライセンスフィーあるいはロイアルティーを払うということはございますし、それからP3CやF15の場合には、アメリカの開発費について開発分担金を払っておりますので、それについては今度は日本政府からアメリカに払うというような形になっております。  ただ、予算上は、すべて日本で生産をいたしますP3Cの生産会社あるいはF15の生産会社に対しまして飛行機の代金という形で全部払うことになっておりまして、それで開発分担金につきましては、日本の企業が日本政府からもらった金を使ってアメリカ政府に払っていく。それから企業間のライセンスフィーとロイアルティーについては、アメリカの企業に日本の企業が支払う、そういうような形になっております。  それで、全体の額につきましては、企業間のライセンスフィー等については企業の商業上の秘密もございますし、それから開発分担金につきましては、日米両国間で一応部外には出さないというような形になっております。したがいまして、個個の数字について詳しく申し上げるわけにいきませんが、P3C、F15等の場合にライセンスフィーあるいはロイアルティーそれからそういう開発分担金全部合わせまして一割に満たない程度の額だということでございます。
  191. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だからP3CにしろF15にしろ、その内訳金額があなたの方では端数まで書いてちゃんと出ているのですから、その内訳を出してもらわないと、こういうふうなものが一体高いか安いかと言われたってわけがわからないのですよ。われわれとしては判断できにくいのですよ。だからちゃんとした内訳の数字、たとえば本体が幾らになるのだ、ハードウェアが幾らになるのだ、ソフトウェアが幾らになるのだ、そういうちゃんとした具体的な数字を出して、そして予算の審議に当てるというふうにしたらどうなんですか。
  192. 木下敬之助

    木下政府委員 日本の企業がアメリカの企業に払いますライセンスフィーやロイアルティーにつきましては、現実に契約を結びます場合に、私どもの方で国の予算を使って結局その部分を支払うわけでございますから、十分内容についてはチェックいたしております。  それから開発分担金につきましては、先生すでに御承知かと思いますが、アメリカ政府がその機種について従来払っておりました開発費を、アメリカ国内の生産機種、量、あるいはアメリカがほかの国に生産させている場合、あるいはほかの国に売っている場合、そういうものを全部足しました総数で割りまして、それで一機当たりの費用というのを出して、その費用に当たるものを日本政府が払うことになっておるわけでございますが、この額につきましては、従来からもこの委員会で御説明しておりましたが、アメリカ政府との間で表には出さないという形になっておりますので、差し控えさせていただきたいと思います。
  193. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは出さないと言うけれども、アメリカの場合は、自分たちは開発分担金というものをこれは払わないのでしょう。すでにもう払ってしまったというかもうできてしまったかもわからぬけれども、その部分についてもそれを含めてといいますか、全体を日本の方に開発分担金としてかぶせてくるというと言葉が悪いのですけれども、そういうふうな形にしておるのじゃないですか。だから具体的内容というのは出るはずですよ。何も特に秘密にする必要はないんじゃないですか。
  194. 木下敬之助

    木下政府委員 F15にいたしましてもP3Cにいたしましても、日本でライセンス生産する場合と、それから一部FMS契約でアメリカから完成機を輸入しているものもございます。完成機の輸入分につきましては、完成機の代金というものの中に当然、先ほど申し上げました開発分担金に当たるものはアメリカ政府がそれまで負担しておるわけでございますから、入っておるわけでございます。  したがいまして、ライセンス生産したときだけ開発分担金を払うというわけではございませんが、ただその単価につきましては、従来から申し上げておりますように、アメリカとの間で外には出さないという形になっておりますので差し控えさしていただきたいと思います。
  195. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは私前にもずいぶん聞いたことがあるんだけれども、何だかさっぱり要領を得ないのですよ。じゃこういうふうに聞きましょうか。E2CにしろF15にしろP3Cにしろ、ずっと前のときですね、たとえばE2Cのときは、最初四、五年前のときはたしか九十二億くらいだったはずです。それがいまは百二十何億になっているんじゃないですか。ずいぶん上がっているので、それはインフレかもわからぬけれども、上がり方が激し過ぎるのではないですか。そういう点についてはどうですか。
  196. 木下敬之助

    木下政府委員 いまE2Cにつきましての価格についてのお問い合わせがございましたが、五十四年度と五十六年度に四機ずつそれぞれ契約をいたしております。それで、五十四年度の契約につきましては、フライアウエー・コスト、FAC単価と言っておりますが、裸のコストでございますが、それで六十八億円、それが五十六年度に契約しましたときには九十二億円ということになっております。二年の間に相当の値上がりがございましたが、ちょうどそのころアメリカでは非常に一般物価の値上がり等がございまして、ほかの民間航空機についても毎年十数%あるいは二〇%というような非常な値上がりをしているときでございましたので、その値上がりの影響を受けて価格が二年の間にそれだけ上がったわけでございます。
  197. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これは本当は、本当というか、一つ一つ品物がなぜ必要か、どれだけの金額がどこから出てきたのかということを詳細に分析をする必要があると私は思うのですよ。それでなければ予算にならないと思うのですけれども、これは内閣委員会なり何なりでやることになろう、こういうふうに思います。  そこで、きょうはせっかく企画庁長官に来ていただいておるので、あなたにお聞きをいたしたいのですけれども、一般消費税なりあるいは大型間接税なり何なり、あるいは付加価値税なりそういうふうなものが仮にできたときに、それが物価に対してどういう影響を与え、景気に対してどういう影響を与えるのかということについて、企画庁長官としての御意見をまず承りたい、こう思います。
  198. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 一般消費税あるいは大型消費税については政府は導入の考えもありませんし、また具体的に検討の指示もしていないということでございますので、私どもも具体的にその及ぼす経済的な影響等についてはまだ検討はいたしておりません。私がときどきいろいろ新聞記者等に聞かれまして申し上げるのは、日本では税制の経済に対する影響の議論がきわめて少ない。歳入歳出の均衡とかあるいは直接税、間接税の分類とかその性格というような議論が多過ぎて、経済影響は少ないというふうに私は考える。外国のようにもう少し経済影響は考えていただかなければならないと思うわけでございます。  ただ、一般消費税あるいは大型間接税がどのようなものであるかによっていろいろ影響は変わりますし、それが景気のどんなような局面において行われるか。これはなにによっても変わりましょうが、一般的には税制の教科書によりますれば、消費に対する税金は消費を抑制して、そして購買力を少なくならしめる、直接税のように所得あるいは利潤にかかるものは投資の方に落ちていくということでございますので、そこの二つの差がある、こういうことが一般的に言えようかと思います。
  199. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 一般的という形であなたの御意見を述べられた、こういうふうに聞いているわけです。  そこで大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのは、私も前から疑問に思っていることですが、法人からなぜ税金を取るか、この理論的な根拠ですが、これはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる法人税のよってもって存立する意義、こういうことになりますとやや専門的でございますので、正確を期するために事務当局からお答えさせることをお許しいただきたいと思います。
  201. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そんなのはあたりまえの話なんで、別に専門家に聞かなくたって、法人が社会的実在として活動しているから法人から税金を取るだけの話で、あたりまえの話なんですよ。  そこで問題は、法人税というものは、あなたといつか議論をしたときに四〇%から四二%にしましたね。そのとき花村仁八郎さんが六回もあなたのところに来ていろいろ陳情した。それは柔道のことで補助金をくれとかなんとか言って陳情したとかあなたは言われておられましたけれども。そこで、私は前から思っているのだが、たとえば資本金一億円以上でしょう、その場合に、法人税率を単一比例にしなければならないという理由はないのじゃないですか。だから、それは多数段階説でもいいのじゃないでしょうか、理論的には。現にアメリカは五段階でしょう、それからイギリスは三段階ですか、こういうふうに分けてやっているのじゃないですか。アメリカは最高を四六%にしましたね。これは四八%だったのを減税で二%下げたわけですね、法人税。日本の場合は法人の数が多いというけれども、それは有限会社がいっぱいあるから、法人の数が多いということで法人収入がほかより多いということになるかもわかりませんけれどもね。そうなってくると、だから、何も単一比例税率でなければならぬという積極的な理由はないのじゃないかというのがまず第一点。  第二点は、アメリカのように五段階、イギリスはいま三段階ですかな、いろいろあります。フランスやイタリアは制度が違いますから別ですよ。そういうふうな形で分けていってもいいのではないか、こういうことが考えられるのですが、その議論はどうでしょうか。
  202. 竹下登

    竹下国務大臣 これは稲葉さんと議論をいたしました後、五十五年十一月七日、稲葉さんの議論を税制調査会に報告したわけです。それに対する答えというと、第三者が答えを出したという意味に受けとっていただいてもいいのでございますが、非常に正確に書いてあるなと思います。  その第一の問題については、法人税の税率構造について、法人所得に応じた累進税率制度を導入すべきであるという意見があって、累進税率の考え方の基礎にあるとされている所得の限界効用逓減や所得再分配という観念は、本来自然人である個人についてのものであることからすれば、累進税率はそもそも法人課税にはなじまない、一応こういう大原則になっています。それで後、いわゆるこの会社を分ける傾向が出てくるじゃないかとか、いろいろなことが書いてありますが、基本的にはそういうことかなと思います。  そこで、今度は他の国の税制等からこれを見てみましても、いま御指摘になりましたが、主としていわゆる段階税制というべきものというよりもむしろ中小企業対策という意味でそういう課税がなされておる。これを見ますと、「諸外国の税率構造をみると、西ドイツ、フランスは単一の比例税率となっている。また、アメリカやイギリスは単一の比例税率を基本としつつ一定金額以下の所得につき多段階税率制度をとつているが、これは累進税率制度によるものではなく中小企業対策のための特別措置とされていることに留意する必要があろう。」  これは企業課税小委員会の報告でございますが、私の意見を申し上げるよりも、稲葉さんと私とのいわば質疑応答を通じて報告されたものが税調の結論となって出た、これをお読み申し上げた方が適切かな、こう思って準備しておりました。
  203. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 だから、ただ単一比例税率という考え方と、それから累進構造という考え方と、それから多数段階税率という考え方と、これはそれぞれ特徴があって違う、こう私は思うのですね。確かにそれはアメリカやイギリスの場合、西ドイツやなんかの場合は全然税制が違いますから、これは間接税中心だから別ですけれども、その法人税の場合には確かに中小企業に対するあれはあるかもわかりませんけれども、アメリカの場合は四八%だったわけですから、それをレーガンの前かな、わざわざ二%下げたわけですからね。それでも四六%まで取っているわけでしょう。イギリスは五二%まで取っているのじゃないですか、最高税率。そのことから見れば、日本の四二%というのは低いというふうに理解できて、仮にそれを上げたところで、そのことによって日本の企業がそんな大きな影響を受けて損失をこうむるとかなんとかというところまでいかないのじゃないですか。あるいはそうなれば企業を小さく分割してしまおうじゃないかということを言うかもわからぬけれども、そんな分割をしたらかえってみっともないから、そんなことはしないということも考えられる。  だから、企業は利益は全体としては決して減っているのじゃないのですよ。上がっているわけですよ。しかも、その中に貸し倒れ引当金の問題だとかそれから退職給与引当金の問題があるでしょう。退職給与引当金はいまもう七兆円以上、もっとあるでしょう。それから貸し倒れ引当金だってもう三兆幾らあるのじゃないですか。だから、貸し倒れ引当金を西ドイツのように実績主義にするとか、退職給与引当金、これは保障も何にもないわけですからね。しかも、それは大企業だけがほとんど利用しているわけでしょう。これの繰り入れ率を変えていくということによって、幾らでも減税財源というものはできてくるのではないですか。その点についてはどうお考えですか。まず退職給与引当金の問題、それから貸し倒れ引当金の問題、実績主義をとっているところもあるわけでしょう、その点どうですか。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘のありました退給は、私が前大蔵大臣のときに行った。それで、御審議いただいて可決をいただいたわけであります。ですから、このときにおきましても、いま花村さんがお見えになりたという話もありましたが、これは確かに法人税というものがあの当時私の念頭にも非常にありました。したがって、いろいろ御議論した結果、五十五年は退給に手をつけさせていただくことによって結果的に予算が組めたとでも申しましょうか、そういうことになったわけでございます。だから、言ってみれば、確かにこの問題につきましてはいろいろな議論がございます。しかし、制度自体を政策税制と考えるものではないといたしますと、やはり減税財源に充てるためにその対象として引当金制度の縮減を行うということは考えておりません、この問題は。  それから、前段の問題につきましては、専門的な議論になりますとこれは複雑になりますが、いまおっしゃいました、税率の引き上げが法人経営を圧迫したり従業員の解雇とか景気停滞を招くという説については、稲葉さんはそうとらない、そうは考えないという御見解でございますね。しかし、やはりこれはそれに影響のあるものだと私は思うのです。(稲葉委員「大企業の場合だよ」と呼ぶ)大企業といえども、必ず利益が上がるものという前提でこれをとらえるべきものではないではないか。だから私は、率直に言って、この議論が何回行われても結構な議論だと思うのです。
  205. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 誤解されるといけないわけですけれども、そのことについては大企業と中小の企業とに分けなければいけませんよ。いいですか。大企業の場合は内部留保が非常に多くなっているのです。いまの退職給与引当金でも、いま全部で幾らぐらいありますか。七兆を超えているのじゃないでしょうか。その内訳はどうなっていますか。大企業とあれに分けてごらんなさいよ。貸し倒れ引当金の実績なんか全部見てごらんなさいよ。大企業と中小企業というものを分けてみてそれはどうなっているか。そういう点でも大企業の方は、それはもう部分的に悪いところはあるかもわからぬけれども、そのことによって従業員に大きく影響を与えるとかなんとかということは、普通はあり得ないのですよ。そういう場合はそういう場合でまた救済すればいいのであって、利益が上がっているわけですからね。利益がふえているところもあるのですよ。だから、そのことで法人の税金をもっと上げてみてもいいわけです。  あのときあなた方と議論したときには、花村さんが来たというのは、五十五年度は参議院選挙があるから法人税率を上げてもらっては困るからというので、それで来たのが本筋ではありませんか。まあ、昔のことを言ってもしようがないかもわからぬけれども。それで、あのときあなたは六回来たと言いましたね。花村さんが六回来たと言ったのだから。僕は、何で六回も大蔵大臣のところへ来るんだと言ったのだよ。そうしたら、柔道の補助金をもらいに来たんだとあなたは言われた。あなたも柔道をやって花村さんも柔道をやっているからと言ったのだけれども、柔道の補助金をもらいに大蔵大臣のところに六回も来る人はいないんじゃないかと言ったら、あなたも何だかわかったようなわからないようなことを言っていて、それで次の年は上げますと言ったのだ。あのときに大蔵省が考えたのが、大体一%で二千百億から二千二百億ぐらいの収入がある、増税になる、増税という言葉は悪いかもわからぬけれども、収入になるというふうに考えたわけですね。その後のときには二千三百億ぐらいになったのでしょう。だから、これは大法人に対して税金を上げろという意味ではなくて、多数段階税率というものをつくったところで、そのことの大きな影響というのは日本の場合にはないと理解していいのですよ。  では、退職給与引当金といまの貸し倒れ引当金が幾らぐらいあって、それが大企業、中小企業別にどういうふうになっていますか。
  206. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 まず貸し倒れ引当金でございますが、五十六年度末の数字で申し上げますと、総額で残高が三兆四千八百三十五億円でございます。資本階級別に分解いたしますと、大ざっぱに申しまして、資本金一億円以下が三割、一億円から百億円までの段階が三割、百億円以上が三割強、そういった展開になっております。  それから退職給与引当金、五十六年度末で七兆三千六百八十八億円でございますが、資本金百億円以上が四二%ということでございます。
  207. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 その統計はちょっと古いのですけれども、まあいいでしょう。それなら繰り入れ率を変えれば幾らでも減税財源もあるのですよ。  そこで、時間もありませんから大蔵大臣、二百一万五千円でずっと据え置きになっておるわけですね。これはそのとおり。これは計算方法も議論があるように私は思うのです。これは私も研究が足りません。また別の機会にしましょう。  そこで、それらの人々が据え置きになっているので、そしてその後給料やなんかふえて、税収がうんとふえてきて実質的に増税になっておるということは大蔵大臣は認められるのですか、認められないのですか。どっちですか。
  208. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、わが国の累進構造の中において所得が上がれば税もそれはそれなりに上がっていく。だから平素比較されるのは、所得の上がりの比率に対して税の比率が大きいじゃないか、だから増税だという議論は必ずしもなじまない。だが、税が増しておるという意味においては増税だ、こういうことは言えると思います。
  209. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 そこで、結論的に言うと、そうするとそれらの方々に対する減税の問題については大蔵省としてはどういうふうに考えたいということですか。国会の意思を尊重して、この減税の問題については真摯に、まじめに当たりたい、こういうふうにお聞きをしてよろしいですか。
  210. 竹下登

    竹下国務大臣 従来の考え方は、五十八年度の税調によって見送らざるを得まいという意見が多数であった。しかし、五十九年度以降、いろいろなことも考えてこれは対して十分検討しろというスタンスの上に立っておるのですね。しかしこういう議論があるごとく、これが与野党間というだけでなく大きな政治問題になっている。そこで、各派代表者会議でございますか、去年は私がやっておりましたが、そういうところへ場所が移されておるということになると、そこの議論というのはやはりハウスの意見としてこれは尊重しなければならぬ。ふまじめに聞いているなんということは全くございません。
  211. 稲葉誠一

    ○稲葉委員 これで質問を終わります。  私は、何もあなたがふまじめに聞いているなんて言っていませんよ。あなたは非常にまじめな、いい方だと思っていますから、まじめに皆さん方聞いておられる、こう思っているので、だからいま言った最後のところですね、それは本当にしっかりやってもらいたいということを要望して、私の質問を終わります。
  212. 村田敬次郎

    村田委員長代理 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤観樹君。
  213. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 最初に、この委員会でも各委員からいろいろと議論をされたわけでございますけれども、どうも中曽根内閣の姿勢を見ておりますと、大変危なっかしい感じがしてならない。日本人が一体どこへ連れていかれるのだろうか、これで世界から見て平和日本というのは一体どこへ行ってしまうのだろうかという気がしてならぬわけでございます。  私は、最初に、非核三原則と安保条約の効果的運用について、その関連について簡単に外務大臣に確認をしておきたいわけでございます。  と申しますのは、いま大変大きな問題になっております武器輸出三原則、この政府政策を変更されたのは、安保条約の効果的な運用のためである、こういうことの御説明がありました。それで、しからばこの非核三原則もアメリカに対しては武器輸出三原則のように優先をするということになると、大変問題になっております核の搭載艦の領海通過なりあるいは一時寄港というものについても、安保条約の効果的運用という前にそれも認めていくような方向になるのではないかということを私は大変心配するわけでございます。  そこで、簡単なことでございますが確認をしておきたいのでございますが、この非核三原則、持たず、つくらず、持ち込ませずのうち、核を搭載した米軍によるところの寄港あるいは領海通過、これも持ち込ませずの中に入っているのだ、こういう説明を今日までしてきたわけでございますが、それはよろしゅうございますね。
  214. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 核搭載艦の寄港や領海通過は、もちろん持ち込ませずの中に含まれておるわけであります。
  215. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そして、持ち込ませずについては政府は従来事前協議の対象である、そして核の問題については事前協議の場合にすべてノーである、こう言ってきたということも変更ございませんね。
  216. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 変更ありません。
  217. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、非核三原則の三つの中で、いわば持ち込ませずの三項目目の中にこの寄港あるいは領海通過というのも入っている。そしてこの場合についても、従来から政府が言ってきたように事前協議の場で絶えずノーという答えであるという理論的な組み立てになりますならば、トランジットだけは切り離して、日米安保条約の効果的運用というそのために非核三原則のいわば〇・五と言われている部分、つまりトランジットは非核三原則から外れて、日米安保条約の効果的運用という前に外してしまうということは、いまの組み立てからいってできませんね。
  218. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 重ねてはっきり申し上げますが、安保条約上、核搭載艦の寄港や領海通過を含め、わが国への核の持ち込みが行われる場合はすべて事前協議の対象となるわけであります。また、その核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には、常にこれを拒否する政府の立場には何ら変わることがございません。政府としましては、平和憲法の精神、わが国が唯一の被爆国であるとの事実を踏まえ、核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませずの非核三原則を今後とも堅持していく方針であります。
  219. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 なぜ私がこんなことを聞いたかといいますと、国防報告あるいはアメリカの国防予算、これ等を見ましても、エンタープライズを初め第七艦隊の中には約二百個ぐらいの核が積まれているのではないかということも言われておりますし、またエンタープライズの入港という問題もございます。そういったことから考えてみますとどうも危なっかしくてしようがないので、その辺を外務大臣に確認をしたということでございます。外務大臣、ありがとうございました。  次に、実は昨日も、国民の最大の関心の一つになっております減税問題について、わが党の藤田委員からいろいろな角度から国民の要望に沿って質問がされたわけでございますけれども関係大臣各位、まあ本来ならば大臣という立場からそう財政の問題を前面に立てて言うことはないのではないかと私も聞いておりながら思っていたわけでございますけれども中曽根内閣の大臣といたしましてどの大臣も財政問題を前面に立てて、そして拒否をなさる。一体だれが国民の、サラリーマンの、働く者の味方の大臣なのだろうか、せめて労働大臣ぐらいはと藤田委員がお伺いをしましても、とんと、勤労者の方々がさすが労働省の大臣だなという、そういう答えは返ってこなかったということについてはきわめて遺憾に思っておりましたところ、実は国民向けには全然別のことを言っていたということがきょう判明をいたしましたので、その問題につきまして藤田委員の方から、私に関連をいたしまして、きのうの質問の続きということで質問をしていただきたいと思います。
  220. 村田敬次郎

    村田委員長代理 この際、藤田高敏君より関連質疑の申し出があります。佐藤観樹君の持ち時間の範囲内でこれを許します。藤田高敏君。
  221. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いま同僚の佐藤議員の方から触れましたが、労働大臣にお尋ねをいたしたいと思うわけであります。  私はまずお尋ねをしたいのですが、いやしくも、国務大臣ならずともお互い政治家というのは、国会の中において議論をし、自分の所信あるいは見識というものを表明したことと院外における発言というものは一致すべきではないか、こう思うわけであります。そうしなければ政治家、政治に対する国民の信頼というものはかち取れないと思うのですが、この基本的な姿勢をまず一言お伺いいたしたいと存じます。
  222. 大野明

    ○大野国務大臣 私も、先生のお説のとおり、もっともだと思っております。
  223. 藤田高敏

    藤田(高)委員 けさ、これまた同僚の川俣委員から二月十三日の岐阜日日新聞の記事を引用いたしましてお尋ねをいたしましたが、労働大臣どうですか、あなたは去る二月の十二日、地元岐阜市において、労働大臣就任の祝賀式でどういう御発言をなさっておりますか。一言で言えば、所得減税は絶対必要だ、景気浮揚対策のためにも必要、特に労働省、労働大臣としては、雇用を守るためにも景気浮揚は絶対必要であり、その大きな柱は所得減税でなければいけない、しかもその所得減税たるや小規模のものではだめだ、大型のものでなければならぬという発言をなさっておりますが、そのことはきわめてりっぱな御発言だと思いますけれども、その御発言があったかどうか。それと、昨日私の所得減税についての質問に対する答弁との間に食い違いがないかどうか、お考えを聞かしてもらいたい。
  224. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  ちょっと時間をとらさせていただきますが、正確を期すためにちょっと読ませていただきますけれども、岐阜日日、ここに書いてございますように、「景気浮揚対策は必要であり、所得税減税はその大きな要素。また、やる以上は中途半端ではいけない」と私が申し上げたことは事実であります。しかしながら、大型減税を支持するというのは、これは新聞社が後でつけ加えたのだろうと思いますが、私としてはやはり財源、こういうことを考えなければならない立場でございますけれども、といって、労働大臣でありますから、雇用の安定を期するためにはやはり景気の浮揚をやってもらいたい。そのために何といっても公共事業の前倒しが大切ですね。金融面からやることも大切です。それで、財政面があるけれども、この所得税減税はやってあげたいなという気持ちで申し上げた。(「それじゃなぜ言わないのだ、それを」と呼ぶ者あり)  ところがきのうも、今度はもう一つ、正確を期するためにちょっときのうのあれを読みますが……(「きのうの答弁とは全然違うじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはないです。(「大蔵大臣の顔色を見ながら言ったじゃないですか」と呼ぶ者あり)いや、そんなことはないですよ。藤田先生の二度目の、最初の前段はやめますが、二番目に私が立ちました。(藤田(高)委員「私が言いましょう、それ」と呼ぶ)いや、私が言います。(藤田(高)委員「もっと早く言ってください」と呼ぶ)言いますよ。  そうはおっしゃるけれども、愛情があってもできない現実との板挟みで、本当はこっちも苦しい思いでいるところでもございます。そういう意味ですから、これはやはり財政当局との問題ということについては、私から強い要請をすることは、当然労働大臣の立場としても大野個人としてもそういう気持ちは持っておりますが、現実の金目ということになると、これは私の一存ではいきませんと、こういう御答弁をした次第でございまして、決して新聞の記者会見のあれと気持ちは全然変わっておりませんし、逆に言わしていただければ、先ほども川俣先生から御激励いただきましたけれども、そういう労働大臣として所得税減税をやってもらいたいけれども、なかなか厳しいことも知っておりますので、環境づくりをしたというくらいな私は気持ちを持っておるところでございます。
  225. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは労働大臣、新聞記事は前段だけ読まれておりますが、全部読みましょう。  景気浮揚対策は必要であり、所得減税はその大きな要素だ、まずそういったことを指摘していますね。減税をやる以上は中途半端ではいけない。続いて同大臣は、景気が回復しないと雇用が安定しない。これはもう実にいいことを言っている。景気浮揚策の必要を強調し、その上で、公共事業の前倒しだけでは不十分、第二、第三弾の浮揚策が必要、金融面での施策もあるが、内需を喚起するには所得減税も考えねばならない。これは全くいいことを言っているのです。  しかし、財政的なことを考えるのであれば、第二、第三の公共事業を起こすんだったら、財源はあるのですか。ここで議論をしたように、減税財源はないけれども、そうしたら公共事業財源はあるのですか。そういうことになるでしょう。いずれにしても、景気浮揚策のためには公共事業とかそれから減税とか、そういう積極的な発言をされて、最後に、減税問題や他の施策との関連もあるが、中途半端ではいけないし、それならやらない方がいいというぐらい積極的な発言をなさっておるのです。このこと自身は、私どもはいけないというのではなくて、労働大臣の職務を遂行する上からもきわめてこれは適切な御発言だ、このことは私は認めておるわけです。     〔村田委員長代理退席、高鳥委員長代理着席〕  ところが、昨日の御答弁は、いいですか、いろいろな経過を言ってきて、最初の答弁は、いろいろな推移を見守りませんと、国会軽視と言われたりいろいろございますので、その後においてまた藤田先生と話する機会を得られれば結構ということで、ここでは何も所得減税の積極的な発言はないのですよ、第一回の答弁では。いいですか。  第二回目の答弁では、これは、というのは減税は、やはり財政当局との問題ということについては、私から強い要請をすることは、当然労働大臣の立場としても大野個人としても気持ちはあっても、私の一存というわけにはまいらない。こういう形でこれまた逃げておるのですよ。いいですか。  そして三回目の答弁では、財源問題についてこれは労働省が把握、掌握しているものではございませんし、そういうものについての勉強はさせていただきます。勉強しますという形でこれまた逃げておるのですよ。  地元におけるいまの新聞記事の積極的な発言とはこれは全く違うと思うのです。私は前労働大臣の御発言を引き合いに出しまして失礼ですけれども、藤尾労働大臣は、本会議でも社労の委員会でも労働大臣としての立場はきちっとおっしゃられたと思う。そういう見識のあることを、やはり自分の考え方というものは、この言論の府において表明されるなら表明する、そして財源上の問題は財源上の問題としてと、こういうやはりきちっとしたことをおっしゃって、少なくとも選挙民に対してはいいかっこうをする、選挙向けの御発言をなさる、しかしこの院内においては、失礼な言い分じゃないけれども大蔵大臣やあるいは総理のお顔を見ながら発言なさるような、そういう使い分けをされることは、これはやはり労働大臣、国務大臣としての見識を問われるのではないか。  したがって、私は、関連質問ですから、結論として申し上げるのは、岐阜市におけるこの新聞記事の御発言、地元の祝賀会におけるごあいさつときのうの予算委員会での所得減税に対するお考えは同じものである、こういうふうにお認めになりますか、あなたは。
  226. 大野明

    ○大野国務大臣 私といたしましては、先ほども申し上げましたように、この岐阜の記者会見の発言、それから昨日の予算委員会において藤田先生にお答えしたのと、私の気持ちとしては全然変わっておりません。私は、労働者、勤労者諸君の立場を考えた上でやってもらいたいという希望は十二分に持っております。ただ、財政ということになりますと、これは私は当局じゃないから、そういう点をこれから労働大臣の立場で大蔵大臣や何かに強く進言するということでございます。
  227. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この一言で終わりますが、いまの最後の御発言を聞いておりましたら、きのうの答弁とは違って、やはり一歩前進した、いわゆる労働大臣として積極的に所得減税に向けて財政当局にも強い要請をする、こういう御発言のように受けとめました。そのように理解してよろしいかどうか。そういうことであればあの地元における先ほど私が紹介をいたしました新聞の記事と同じことになる、こういうふうに理解をするのでございますが、よろしゅうございましょうか。
  228. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えします。  いま藤田先生がおっしゃったとおり、私の気持ちは先ほどから変わらない。そしてここで実際私としては、岐阜の発言というのは無責任でなく、そういうような環境づくりをしていきたい、これは勤労者諸君のためにやってあげたい、こういうことでございまして、昨日と岐阜と全然変わりません。これからより一層努力させていただく次第でございます。
  229. 藤田高敏

    藤田(高)委員 終わります。
  230. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、電電公社の経営形態の変更問題についてお伺いをしたいと思うのでございます。  きょうの日経新聞を見ますと、中曽根総理の方から郵政省に対しまして、なるべく早く電電改革については自民党と連絡をとって法案をつくるようにという指示があったということでございますが、それは事実でございますか。
  231. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お答えをいたします。  御承知のように、中曽根総理は行革に大変熱心な方でございますので、折に触れて郵政の関係の行革も真剣に取り組んでくれよというお話がございまして、昨日も閣議の後で総理からそのようなお話があったわけでございます。
  232. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで大臣、電気通信あるいは情報処理というのは、これから戦略産業としても、また国民生活に大変関係が深いという面におきましても、どういうふうに経営形態を変えていくかという問題は私は大変重要な問題だと思っているのです。そこで、臨調での答申と比較をしながら、若干大臣及び電電総裁の御意見を伺っておきたいと思うわけでございます。  一つは、いま電気通信事業を取り巻く状況というのが、まさに大変な転換期と申しますか、内容的に大変変わってきているということですね。これはもう大臣にくどくど言わなくて済むと思いますけれども、たとえば光ファイバーの問題にいたしましても、衛星を打ち上げてやる通信技術にいたしましても、あるいはコンピューターに関係をいたします情報処理にいたしましても大変拡大発展をして、しかもそれが融合して一体化していって、新しい、たとえばケーブルテレビにしろ、キャプテンにしろ、文字多重放送にいたしましても、そういうような全く新しいものができてきて、電気通信と放送あるいは電気通信と郵便、こういったものが混合するような、従来のような電気通信という範疇で割り切れないものが出てきている。あるいは一方では、公衆電気通信業務にいたしましても、本電話機の開放をしたり、あるいは昨年の十二月二十三日でございましたか、データ通信回線の第二次開放をするというように、従来の公衆電気通信業務の範疇も、民間との開放というような問題もございまして、やる範囲の見直しということが行われているというようなことをとりましても、大変中身がさま変わりをしつつあるというのがいまの状況ではないかと思うのでございます。  そうなってまいりますと、次に最もそれに合った形態をつくるということになってまいりますと、いま申しましたような通信技術あるいは情報処理技術、こういったものが一番発展しやすく、しかも国民にサービスが十分できるためにはどういう政策をやっていかなければならぬか、その総合的な政策を長期的にあるいは全体的に、従来の枠組みにとらわれることなく、その経営主体である電電公社というものをどういうふうにしていくことが一番将来のそういった新しい変化に対応できることになるのか、こういった総合的な電気通信事業のあり方というものを考えていく必要があるのではないか、それに合うような経営形態というのが必要になってくるのじゃないか、こう思うのでございます。  まず、その辺の今日の電気通信事業を取り巻くさま変わりの環境変化及びそれに対応する経営形態というものを考えていかなければならぬということにつきましては、大臣もたびたび逓信委員会の方でそういった総合的な政策をつくっていかなければならぬということを言われているようでございますが、その御認識はいかがでございますか。
  233. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 御指摘のように、電気通信を含む通信情報の世界は新しい時代を迎えておるというふうに私どもも認識をいたしております。専門的なことは、総裁もお見えでございますからお話があらうかと思いますが、御案内のような光通信時代、またデータ通信の時代、宇宙衛星通信の時代ということになっておるわけでございますので、今後日本の電気通信というものがどうあるべきか、またどのように誘導すべきかというような問題も念頭に置きました上で経営形態のことを考えるべきであるということについては、私も同感でございます。
  234. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一つ非常に重要なことは、まさに先々もそうでございますけれども、単にそれは国内の市場だけの話ではなくて激しい競争が外国と行われているという認識ですね。端的に言えば、たとえばIBMと三菱商事が技術提携をして新しいものを始めるとか、あるいはすでに電電の資材調達の問題でもいろいろと議論がございましたけれども、そういうような問題とか、こういうようにいわば日本国内の将来に向けてのさま変わり、発展の問題だけに限らず、実はそれは大変技術戦争を外国とやっているんだ。したがいまして、そこで次に考えられる経営形態というのは、それに十分対抗できる、しかも扱っているものが国家の神経機能ともいうべき通信業務でございますから、いわば国家の主権にかかわるようなそういう大変重要な問題を内包してのこの情報通信産業でございますから、そういう面で外国との激しい競争激化に耐え得る体制、そして片方では通信の秘密を守りながらなおかつ国家としての情報の漏れることのないような、いわば国家主権の確保、こういうことにも重点を置きながら次の経営形態というのは考えていかなければならぬのじゃないか、こういうふうに思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  235. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 先進国の情報通信手段の著しい発展が一方でありますと同時に、途上国における情報の停滞ということからいわゆる南北問題が起こっておりますし、先進国間におきましても情報蓄積の量というものについて大変な格差があるということで、これまた西側陣営の中でも問題があるわけでございます。そうして、この情報システムそのものが将来の国の経済活動、国民生活のみならず経済活動自身も制約をするといいますか、大変な影響を及ぼすという事態が考えられるわけでございますので、御案内のように、通信主権と言えば少しオーバーになるかもしれませんが、長期的に見ました国益を守っていくためにどうするかという問題も、やはり経営形態の問題の際には考えなければいけない。ただ、そのときに現在の公社の形態のところで背負う部分と民間で背負う部分をどう考えるかということも、あわせて考えなければいけない問題であるというふうに思っております。
  236. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私は、この問題は、そういった単なる、臨調で指摘をしているような効率化、効率的運用といういわば最終目標に行くまでの手段、本来手段であるべき効率的追求の方が逆に目的になっているような、そういう臨調答申に対して大変疑問を持っているわけでございます。私たちも大変効率化ということは重んじなければいかぬことは当然でございますけれども、どうも目的と手段が逆になってしまっているのではないか。その意味では、いま申しましたように、新しい戦略産業として十分技術変化に対応できるようなそういった体制、あわせてこれはまさに国家の神経部分でございますから、重要な部分につきましてはやはり公共性を重んじつつやる体制ということでなければ、次の経営形態というのはいけないのではないかと思うのであります。  あわせて、地域分割ということが出ておりますけれども、もう一点お伺いしておきたいのでございますけれども、確かに情報通信産業は目覚ましい発展を遂げておるわけでございますが、国民生活から見ますと、やはり電話という通信手段というのがメーンになっていくだろう、大宗である、しかも全国的に張りめぐらされました全国ネットワークのこの通信網というのがやはり一番基本になってくるのではないか。確かに、企業なりあるいはそれを使ってやるところのそういう会社は、新しいINSの中の新しい情報通信産業を利用しますけれども、一般国民から見ますと、一番間近で、一番重要なのは、いわば電話を中心とした電気通信だと私は思うのでございます。そういうように一番そこの基本にあるものは、全国ネットワークのつくられておりますこの通信網、やはりこれが全国、北は北海道から南は鹿児島まで全部つながっているという、こういう大変なメリット、このことはまた忘れてはならぬと思うのでございますが、その点はいかがでございますか。
  237. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 通信というものの最小限の条件は、接続をしておるということでございます。でございますから、将来の電気通信網というものは当然一種の技術的な整合性のあるものでなければ成り立たないということは、御指摘のとおりであると思っております。
  238. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いまここで大臣に地域分割なんてナンセンスということを言わせようとは思いませんが、いまの大臣のお言葉の中には、大体そういうニュアンスがあったとだれでも理解するのではないかと私は思うのであります。  次に、いま私、若干臨調の問題でも触れたわけでございますけれども、どうも臨調の答申を読んでまいりますと、効率化追求の面が非常に強くなってしまって、いま触れましたように手段と目的が逆になっているのじゃないかという気がしてならぬのであります。どうも臨調の答申を読んでまいりますと、効率化追求。では余っているところはどこかというと、人件費しかいわば抑圧するところはないんだ。削れるところというところは、装置産業、技術産業としてはあと圧迫できるものとすれば、人件費しかないんだというふうにとれてしようがないわけであります。  そこで、臨調の第四部会長の加藤寛先生が書いている「国鉄・電電・専売 再生の構図」という本がございますけれども、これを見てみますと、とにかく大変な余剰人員が存在をしているんだ、保守部門の二分の一は余剰化しており、残りの二分の一は技術力不足だ、したがって実稼働率は四分の一しかない、民間企業並みの労働密度であれば二分の一で十分、もう余剰人員の存在は疑いようがないんだという、そういうことが活字で書いてあるわけでございます。  一体、総裁、いまこんな実態なんでしょうか。むしろ、技術力不足といいますけれども、私も大蔵委員会にいたものですから、銀行の関係の問題、特にオンラインシステムの問題をやっていて、電電公社を使っておりますとパンクしちゃった、よく聞いてみると、大変技術力が進み過ぎちゃって、もうとてもじゃないけれども、なかなか全部が全部それの進む技術力に対して対応ができない。しかし、二十九万従業員のうちの二十三万人が一年間で技術の再訓練をやっているわけですね。そういうことを全く無視をして、二分の一は技術力不足だというのは、かなり実態を無視をしておるのではないだろうか。  しかも、その上に乗ったということはないんだと思いますけれども、漏れ伝わるところによりますと、どうも電電公社の方でも九万人、将来に向かって削減できるんだ、部署まで書いてあるわけですね。どこから削減できるかという部署まで書いてある。ということになりますと、どうも臨調の考えているベース、しかもそれは私が先ほど申し上げましたように将来に対する戦略産業としてまさにいろいろ発展をしておる、しかも従来の枠組みでは考えられなかったようなものに新しいものができていくこと、あるいは外国との激しい競争の中でやっていくということは二の次にして、とにかく民間が電電公社をタコの足をあっちから食い、こっちから食いのようなかっこうで食っていくというような図式にしか私には見えない。しかもそれは結局人を削減をしていくという答申にしか見えないわけでございます。  どうなんですか総裁、いま電電公社の中の実態というのは、加藤寛さんが書いているような、そんなに人が余って、とにかく余剰人員が民間で言えば、真藤総裁民間から見えられましたけれども、約半分でできるというような状況なんでございましょうか。また、電電公社もそんなような認識で、新しい経営形態の変更について、いわば減らせるところは人件費しかないんだから、人件費の部分、つまり人を削ってINS体制、高度情報通信体制というものに将来移行していくんだ、こういうお考えでいらっしゃるのでしょうか。総裁、いかがでございますか。
  239. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えいたします。     〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕  いまの御質問にありましたINS、いわゆる高度情報通信ができるようにわれわれの設備を変えていくということは、これから先の日本の、わが国の通信事業者にとっては、いかなる条件があろうとも外国におくれないようにやらなくちゃならぬ義務であるというふうに考えております。  なぜかと申しますと、これができている国とできてない国は、社会的な活動の総合力にけた違いの差が出てくるということが想像できるわけでございます。ちょうど昭和三十年代に福岡―東京の長距離電話が特急で申し込んで一時間たっても十分でなかったのが、当時すでにアメリカはハワイから合衆国全土に即時通話ができておった。この差がまた再現する可能性があるわけでございまして、どうしても国際競争という立場から高度情報通信網を急いで質のいいものに変えていかなければならぬということは、これはもう先決問題でございます。  ところで、もう一つ問題がございますのは、技術的にそういうものができることと、それを使う料金体系が合理的でかつ一般の家庭の可処分所得の中に入って利用される可能性を持たせるということが、また私ども当事者にとって社会的義務だというふうに心得ておるわけでございます。  それで、いま御質問の中にございますこれから先の経営形態がどうあるべきかということについては、それが実現できると思われる可能性のある経営形態ということが望ましいわけでございまして、これが一つでございます。  それから、効率性と公共性でございますが、私ども当事者の立場としては、公共性の責任を全うするためには、財務の基盤が健全であって初めて公共性の責任が全うできるというふうにかたく心得ておるわけでございます。財務の基盤を壊して公共性を云々してみたところで、公共性を全うする力はどこからも出てまいりません。これだけは私ども当事者として厳重に考えなければならぬ問題でございます。そういう意味で効率性が要るのでございまして、効率性が先じゃなくて、公共性が先なのでございます。ここのところは間違いなく私ども心得ておるつもりでございます。  さっき申しましたように、これからそういうことに移っていきますが、技術的には一応問題は解決しております。  それから、外国におくれぬように変わっていきます投資の能力でございますが、私どもが赤字にならぬ限りは、何とか間に合わすことができる能力を持っております。赤字になりますと、これがもう途端にだめになってまいりますので、やはりここにも公共性を全うするためには財務の基盤が健全でなければならないということでございますが、今日まで公社の歴史を見ますと、支出の伸び率と収入の伸び率マイナスギャップ三%以上ございました。それを、ここ二、三年で大分ギャップを縮めてまいりました。いま一%半ぐらいのマイナスギャップになっておりますが、これを何とか支出の伸びと収入の伸びの率を平行線に持っていくことができればこういう変革に対する基本的な投資能力は保っていけるというふうに考えておりますので、まず当面そこに全力を充てる方策をいま実行し始めているところでございます。  ただ、終局的にでき上がった姿がさっき言いましたような社会的な要請がございますので、やはり長い時間をかけて社会的に無理が起こらない方法でそういう形に到達できる経営形態に御決定いただくことをお願いするというのが私の立場でございます。
  240. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 余剰人員の問題。
  241. 真藤恒

    ○真藤説明員 現在、余剰人員の問題は、民間に比べますと、余裕がないとは申されません。しかし、いま御質問の中にあったように、半分でいいとかなんとか、そんな乱暴な姿にはなっておりません。
  242. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 いま総裁の御意見を伺ったわけでございますけれども、財務の基盤が非常に重要である、まさにそのとおりだと思いますし、私も公共性と言うときには、国鉄の問題のときのように、とにかく不採算部門であろうと構造的な欠損が出る問題であろうと、全部国鉄にしりを持っていくというような意味での公共性を言っているのではなくて、私も、公共性といっても、それはやはり、とにかく結局は国民が負担をするのでございますけれども、しかし、効率性というもの、いろいろな意味での能率というものを考えていかなければならぬし、会計というのはそれなりに部門部門で切れているわけでございますから、企業体おのおのでやっているわけでございますから、私の言っている公共性というのは御理解いただいていると思いますが、そういう意味ではなくて、まさにいま広い意味で、将来に向かってあるいは対外国との関係においても十分耐え得る体制という意味での公共性ですから、総裁の言われるとおりだと思うのでございます。  そして、いま財政基盤の問題、お話がございましたけれども、国は電電公社に対して、国庫納付金の問題のときにもいろいろと議論をいたしましたけれども、とにかく大変な負担をさせているわけですね。五十八年度予算でも、遠近格差の値下げを見込んでいるわけでございますが、一体この遠近格差をなくすということで、これは五十八年、五十九年、どのくらいいわば減収になるのでしょうか。  あわせて、こういう調子でいきますと、国庫納付金も五十九年度分も千二百億円国に前納させるということですから、まさに総裁言われましたように、経営基盤からいってこれは借入金であって、金利負担は電電持ちということになっているのだと思いますけれども、こういうことをやっていきますと、一体いまの黒字基調というのはいつごろまでもてるだろうかなというふうにごらんになっているのでございましょうか。
  243. 真藤恒

    ○真藤説明員 いまの遠近格差、今度の法案を提出されておりますが、平年的に計算いたしますと、約千五百億ぐらいの減収になります。ですけれども、通話料を落としますと、幾らかやはり通話の時間が長くなるあるいは通話の回数がふえるという、過去の日曜とか夜間の割引のときのプラス弾性値の経験がございますので、まるまる千五百億は減らぬだろう、一年ぐらいたてば九百億ぐらいの減収で済むのじゃなかろうかというふうに考えております。  一方、収支、バランスの傾向が、五十五年、五十六年、五十七年、五十八年というふうに、皆の努力がだんだん結実してまいりまして、さっき申しました収支差額がぐんぐん締まっております。この調子で全員が協力してくれさえすれば、大体五十八年の末か五十九年には平衡に持っていく可能性があるのじゃないかというふうに思いますので、もし平衡あるいはそれ以下まで持っていけますと、理屈からいいますと永久に赤字にはならないということでございますが、五、六年ぐらいは何とか持ちこたえ得るのじゃないか。  もし世の中が変わってまいりまして、収入がまたふえてくるということになれば、やはり余裕がある限り最優先的に長距離料金をいまのうちに下げておきませんと、さっきのINSになりましても、このINSという通信設備の使い方の性質上、遠近格差があっては全然これは使い物にならない性質のものでございますので、少々の遠近格差はありましても非常に軽微な遠近格差で、全国ほとんど同じ料金でこのINSを使えるというところへ持っていかないとINSをつくりたって意味がないものでございますから、そういう意味で極力いま長距離料金を下げ下げしながら持っていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  244. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一問だけ総裁にお伺いしておきたいのでありますけれども、ここまで公社制度の限られた枠の中で、私は電電というのは大変うまくいっているところだと思うんですね。私も世界的な公社制度というのはイギリスを中心にいろいろと調べてみましたけれども、電電というのは大変うまくいっている、いやむしろ国会からもいろいろな制約その他があるものですから、もう少し本来フレキシブルにできるところができないという問題があると思うわけです。そこで、こういうふうにある程度の成果を上げ得たというのも、やはり中で働いている三十一万人の方々の努力というものなしには達成できないと私は思うのであります。  いま総裁が言われましたように、確かに事業の成果というものは、借入金が大変多いわけでございますからこういったものの返済に充てる、事業基盤を確立していくということにも使われますし、あるいは国民に還元をしていくということも当然でございますが、やはりそこの中で働いている三十万人余という方々が、自分たちがそれなり努力すればそれなりに待遇面でも十分やってもらえるのだという、働く意欲というものが出てくる体制というのが必要なのではないかと私は思うのであります。  その意味で、総裁、どうなのでございますか。いまの公社制度の中で総裁もいろいろなところから大変期待を持たれて総裁に御就任いただいたわけでございますけれども、いまの制度の中では当事者能力といいますか、もう少し発揮できるのではないかということも言われているのでございますが、なかなかいまの中では、政府、とりわけ大蔵省の竹下大蔵大臣等が、何も言わないけれども見ているからなかなかやりにくいとか、そういうようなことがあって、民間から来られて、やはりどうも日本の官僚システムの中で公社といってもなかなかこれはお役所だなということで、総裁という大変な権限を持たれてもどうも十分発揮できないというふうに感じられていらっしゃるのか。もう少しできるのではないかと言われる方もいらっしゃいますが、その点いかがでございますか。  あわせて、これから新しい経営形態をつくるときに、郵政大臣の前でございますが、いま以上に郵政省の監督権限が強くなるようなことでは、何も経営形態を変える必要はないのではないかと私は思うんですね。ちゃんと電電公社――そのときは公社じゃない、電電何とかに責任を持ってもらうけれども、しかもそれをおのおの報告はしていただきますけれども、しかし自由に、自由にと言うとオーバーでございますが、一定の枠の中でいまよりもより緩やかな形で国家機関との関係をつくっていく。あわせてその中で、当事者能力というのは、働いている人がより意欲を持って当たればそれが自分たちに還元をしてくる、国民に還元をしてくる、経営基盤が強くなってくる、そういう方向に行かなければならぬと思うわけでございますが、総裁、いかがでございますか。
  245. 真藤恒

    ○真藤説明員 いまの経営形態のままでは、合理化といいますか、効率化といいますか、そういうものをやりましても、非常に底が浅くしかできないことは否定できません。いまお話がありましたように公共企業でございますから、臨調の書いてあるようになれば新規参入とかなんとか競争の原理が入ってまいりますけれども、いずれにいたしましても公共事業でございますので、世の中の加入者と業者の間の関係は、これはあくまでも政府がきちっとした統制能力を厳然と保持される必要があると思います。  問題は、組織の中の経営のあり方はできるだけ最大限度に組織の責任者に責任を持たせていただく、また責任を委譲するという形をやっていただかないと、底の浅いところで行き詰まってしまう、それを強行突破するとすると、社会的な重大問題を起こすということは間違いないと思います。その辺のところがいろいろ今度の改革のときに御考慮いただかなくてはならぬポイントだというふうに考えております。私どもは、公共性という意味から、厳重な国家統制の枠のもとにその面においては置かれるということは当然だ、またそうでなければならぬというふうに考えております。
  246. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 実はもう少しいろいろとお伺いしたいのでございますし、また郵政大佐の方も私が言ったことに一言言いたいような顔をしていらっしゃいましたけれども、この際余り言っていただかない方がいいように思いますので、この問題につきましては時間が参ってしまいましたから、また改めて別の機会に経営形態問題についてもさらにお伺いしていきたいと思います。ありがとうございました。  次に、通産大臣にお越しをいただきましたので、逆オイルショックと言われている問題と金融不安につきまして、通産大臣、大蔵大臣経済企画庁長官にお伺いをしたいと思うのでございますが、大変時間も迫ってまいりましたので、少し私の方からささっと言って、御意見をお伺いしたいと思うのでございます。  毎日のように逆オイルショックなどという言葉が出ているわけであります。果たしてこれがショックかどうかということも後でお伺いしたいわけでございますけれども、値段的にも、ナイジェリアあるいは北海、あるいはきょう決定したようでございますが、サウジアラビアを中心とする湾岸六カ国の石油相会議でも値段が下げられるというようなことで、石油価格が引き下げられていくということがだんだんと起きてまいりますし、やがてそれは日本の方にも響いてくるわけでございますが、これは何ドルまでいくというよりも、一定の経済原則である限り歯どめがあるわけですね。また、これが十ドルとか十五ドルなどに戻るとは私も思っていないわけでございますし、一体いま起こっている現象というのは、一番最初のところで大体ここで終わるというふうに見るか、あるいはまだ第二弾、第三弾、第四弾とかなり長期的にいくというふうに見られるか。これはいわば世界経済のいまの停滞をどう見るか、あるいは代替エネルギーなり省エネルギーなり、そういった進展ぐあいとの兼ね合いでどうなっていくかということもあると思うのでございます。  そのあたりで、一体経済的にいまのこの状況というのはかなり長く続くと見てわれわれは物に対処すべきなのか、いわばこれから世界的な会談を少ししてもらわなければいかぬと私も思うのでございますけれども、そういうことでやっていけばそう不安にならずに安定的な状況に推移していくのではないかと見られるか、その点、通産大臣いかがでございますか。
  247. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、逆オイルショックという言葉は余り使いたくないのです。ということは、もともと二ドル五十セントぐらいのものが十倍にはね上がったときに第一次石油ショック、そのときには碓かにトイレットペーパーの買い占めとか洗剤とか、本当にショックみたいな現象が起こりました。しかし、二次ショックとわれわれが呼んだものの、社会現象、政治現象としてはそのようなことは起こりませんでした。そして、われわれがそれをいままだ乗り越え切らないでいますが、そこで今度は輸出国のOPECのカルテルが、どうやら枠組みが崩れかかっておるということから、一挙に思惑を秘めて五、六ドルあたりの値下げというものが行われつつあるわけでありますが、シュルツ・アメリカ国務長官はきのう、私はちょっとその前提がわかりませんが、二十ドルになったときを前提としていろいろと話をしております。そのときに、それによって最も利益を受ける国はアメリカと日本である、こういうことを言っておりますね。私はその意味では、確かに長期的に見てこれが続くならば、もともといまの三十分の一ぐらいだったものが五、六ドル下がっただけだと言っても、三十四・五ドルというもので長い間仕組まれてきた石油を中心とする経済構造、生活に至るまでの仕組みがずいぶんゆとりがあって楽になってくるということにおいては歓迎すべきことだと思うのですが、反面、私たちはこの石油ショック以来しみじみと知ったことですが、今日の経済外交においてもそうですが、相手の国はいまどういう立場に立っているんだということを絶えず配慮しておく必要があるということを感じます。  ということは、武力を背景とした恫喝とか行動とかによって資源その他を得られない日本、絶対に相手の国から平和に売っていただけて、その上で付加価値をつける仕事日本の宿命なんですね。そうすると、いまいわゆるカルテル崩壊に瀕しているOPECの国の人々はどういう気持ちなんだろう。たとえば日本がこれに対処するのに、それ、いまだ、安物のスポットを買いあさってどんどん備蓄しろ、というようなことを仮に通産省あたりがそういう考え方を持ちますと、では今度は、向こうの方でまたカルテル機構が回復して、みんなが白いベールをかぶって輪をはめて集まって、ときに、この間おれたちが一番困ったときにこずるく買いまくって、スポットをたくさん買った国はどこだったっけな、日本だ、けしからぬ日本は、われわれの弱みにつけ込んでという、そういうときには、日本は一体それに対して言いわけができるか。報復されても仕方がないぞという、相手方の立場も考えなければならぬ。  そこで私は、純粋にコスト面から見て二十五ドルというものを、代替エネルギーのコストすれすれですね、これ以上下がって、代替エネルギーの意欲とか計画とか、新しい、挑んでいく姿勢が弱くなってきてはいけないので、そこのところを考えていって、そしてそれによって日本の基礎的条件もよくなりましょうから、円もさらにレートの面で強含みに向かうであろう。それから、そういう仕組みの中で日本に石油が入ってきて、しかしその数量は大分減ってしまっておる現状では、関税収入の減、それから石油税の減、それに対する政策はすぐに歳入歳出で直接に来るわけですから、そういう検討はしなければなりませんが、その先はいまエネルギー庁とか基礎産業局とか、いろいろ私どもの通産省の中の局とか庁にそれぞれの分野で命じまして、自分たちの分野から見たら、今回のこの現象というものは、仮に最高二十五ドルまで下がったとしたときにどういうふうな影響が出るか。それはプラス、マイナス両面出しなさい、それを全部集めて、私のところで首脳部全員が集まって、石油のこの現在の状態に対して日本の産業界はこのような見解を持つべきであり、そういう見解に立って、こうような展望を持って前進すべきであるというようなものを今回は明らかにしたい、そう思っていま作業を非常に急いでおります。  しかしながら、国際的に見て、産油国であっても、メキシコとかベネズエラなどというのはコストの面で累積債務がふえるでしょうし、あるいは非産油国であるブラジル等のようにいたずらに債務がふえるだけの国もあるでしょうし、そこらのところで、今度日本はその意味では債権国の立場にあるわけですね。民間金融機関も含めて、それに対して日本は、国際機関の協議も要るでしょうが、どうしたらいいのか、あるいは目で見えないのですが、確かにあると見られる証券市場とかあるいは金融界へのオイルダラーの動きはどのように日本の金融界に影響を与えるだろうか、そういう問題を総合的に、国際的に検討して、日本の進むべき現時点における姿というものをなるべく早く描き出したいと思っています。
  248. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 よくしゃべられますな。まだそこまで話が行ってないのに大臣はもう先の方までずっと……。  そこで大臣、ひとつ認識を統一していかなければいかぬのは、簡単でいいんですが、これは少し長期に続くという、二、三年ぐらいこういう状況が続くと見るか、いやしかし、いま大臣言われたように、私もいまお伺いしたいと思っているのは、まさに火事場泥棒じゃございませんけれども、上がっていくときには大変だ、大変だというので、ひとつ消費国と産油国と一緒に会議をやるというようなことでやってきた。今度は下がって、まさに大臣が言われるように、向こうが困っているときには、こちらが、それ、いまだというようなことではまさに国際社会の中で生きる日本としてやるべき態度ではないと私は思うのです。むしろ年間四百五十億ドルも五百億ドルも石油を入れる日本としては、この際価格の安定ということも考えつつ、国際的には産油国と消費国と言うんでしょうか、消産会議と言うんでしょうか、こういったものを呼びかけて、これは後で大蔵大臣にお伺いしたいんでございますが、国際的な金融不安を起こさないエネルギー面での協調ということを考える、そういう国際的な場を少し早目に持っていくべきではないか。そういうことをすればそんなにはいまの問題というのは――私はショックという言葉は先ほどかぎ括弧をつけて申しましたけれども、そんなに、何かあした世界が破裂をしてしまう、金融恐慌になってしまうような状況にならないのではないかなと思っておるわけでございますが、そうは言ってもなかなか、値崩れが次から次へ続いて少し長期になってしまうのではないかという見通しなのか、あるいは、いや、これはそんなにはならぬのじゃないかという感触なのか。  もう一つは、いま申しましたように、いわばここで少し日本が音頭をとってエネルギーの安定的供給のために世界的に先進国も含めて何をやるべきかという会議等を持つ必要があるのではないか。まだいまその手順は早いということかもしれませんけれども、その点について簡単で結構でございますから……。
  249. 山中貞則

    ○山中国務大臣 二、三年ぐらいと見てます。  それから、その呼びかけの会議の時期はまだ早過ぎると思っております。
  250. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、日本の国内経済への立場からちょっとお伺いしておきたいのでございますが、経企庁長官、おたくの方で石油が下がった場合の日本経済に与える影響等をはじいていらっしゃるようでございますが、その点と、その場合に当然石油価格が下がってくればそれに関連する商品も下がるという前提で恐らく計算機に入れるときには入れて、成長率が幾らか上がりますよ、あるいは若干円は強くなりますよ、こういうふうにはじいているんだろうと思うのでございますが、その日本経済に与える影響及びそういう前提で私は恐らくそういう数字は出てくるのだろうと思うのでございますが、その点についてちょっと御説明いただきたいと思います。
  251. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ここで二回ばかり逆オイルショック、これはかぎ括弧かもしれません、の日本経済及び世界経済に及ぼす影響についてお話し申し上げたわけでございますが、先ほど御指摘のように、一つの前提がございまして、この企画庁の経済研究所が開発しましたものは一九七八年までのデータに基づいて作成されたということでございます。しかもまた、試算しました影響の大きさも第一次石油ショック後の時点で石油価格が一〇%下落した場合という前提を置いておりますので、第二次の場合の影響が漏れているというようなこともございます。  これはもう大変時間もかかりますが、そういう前提を置いて考えますと、いま申されたようにGNP、国内物価、為替レート、総輸出、このような各項目に相当な影響があるわけでございます。逆という言葉がついておりますように、いずれもオイルショックで受けた逆の好影響と申しますか、たとえばGNPなら一年目は〇・二三%の上昇期待される、二年目には〇・六二%の上昇期待される、物価ならマイナス一・三六%、二年目は二・五九%、為替レートなら一・四一%、二年目は五・〇八%、これは円高の傾向を来すということでございます。輸出は、最初は恐らく産油国に対する輸出の減少も含めて〇・一の減と出ておりますが、その次には〇・〇一の輸出増というふうな数字が出ておりますが、いま申しましたように各種の前提が変われば変わることは当然でございまして、これらにつきましては、いまの何年続くという問題もございましょうけれども、なお私どもで詳細に新しいデータで研究しなければならないと思っております。
  252. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、私の二番目の疑問なんですが、いまはじかれているその数字というのは、石油価格が下がれば、原料が下がれば電気代もおのずと下がるだろう、石油化学製品の原材料も下がるだろう、あるいはわれわれが乗る自動車のガソリン代も下がるだろう、こういう前提で消費物価が下がったり経済成長が上がったり、そういう前提なんじゃないですか。ちょっと専門家、そこが大事なものですから、技術的なことですから。
  253. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  先ほど大臣が言いました経済研究所が開発いたしました世界経済モデルを使った場合でございますが、一つの資料は、先ほども申しました話と重複しまして恐れ入りますけれども、七八年までのデータだということ、それからこういうモデルの場合一般的にそうでございますけれども、大きな変動、急な変動があった場合いけないということでございます。  そこで、何を動かしたかということになりますと、石油価格を一〇%下げたという動かし方をした場合には、いろいろの構造式を使いまして、それが物価に動くとか、先ほど言いましたようにレートに響くとか、そういうことを通じまして、全体としてGNPならGNPで見ますと、先ほどお答えいたしましたような変化が出るということでございまして、動かしたものは石油の価格を動かしたら全体が動いてくる、こういうことでございます。
  254. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 ですから、石油の価格を動かしますと、それを大量に使うところのものは原則的に大体下がっていくという前提で結論が出てくるんじゃないですか。
  255. 廣江運弘

    廣江政府委員 モデルの仕組みがそういうふうになっておる、石油の価格を動かせば全体の世界の経済の構造はそういうふうに動くようになっているということを前提にしているということは言えると思います。
  256. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで通産大臣、確かに石油価格が下がってくるということは日本経済にとりましてはプラスになるわけで、その意味では確かに経済企画庁でも、いま塩崎さんから御説明があったようにいい効果物価が安くなる、経済成長が伸びてくるという面ではいい傾向だと私も思うのであります。  ただ、その際に、たとえば石油会社もかなり赤字を抱えていますね。したがって、下がりた分だけ全部赤字の穴埋めに使われてしまって、実はちっともガソリン代も下がらないわ、電気代も下がってくれないわというように、そういう石油関係のものがいわば途中でクッションに吸い込まれてしまったんでは、これはせっかくの経済にとってのプラス面というのが途中でとまってしまうわけですね。その点については通産大臣、まだサウジが下げたものがいまここに来ているわけじゃございませんから、少し先の話でございますが、われわれのところに来るころには恐らく統一地方選挙くらいやっているときですから、いま少し御見解をお伺いしておくわけでございますが、やはり石油価格が一円下がったから直ちに一円ということで私は言うのではなくて、全体的に日本経済にいい影響を与えるような行政指導と申しますか、そういう方向というのは考えてもらわないと、国民の側から見ますと何か原価は下がったらしいのだけれども、ちっとも来ないわということではいかぬと思いますので、その点についてはいかがでございますか。
  257. 山中貞則

    ○山中国務大臣 おっしゃるとおりの配慮をいたしております。
  258. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、大蔵大臣、大変お待たせをしていて恐縮でございますが、国際金融面から見て、理屈上は産油国の外貨が減ってくるのでいままで投資したものが減ってくるだろう、取り崩しが行われるだろう、短期的に見ればそれにつれて値崩れを起こすのではないか。しかし、引き揚げたお金はまたどこか消費に回るわけですから、理屈上はそう心配する必要はないのではないかということでございますけれども――私もこの逆オイルショックという言葉は経済をやる者としては余り適当な言葉ではないと思うのでございますが、この石油価格の大幅な下落ということが起こった場合、国際経済に与える影響、国際金融面から見て、財政を担当される大蔵大臣として御心配ないのか。  そして、あわせて、IMFの暫定委員会あるいは十カ国蔵相会議等が行われてIMFの増資あるいはGAB等も新しい取り決めができて、それなりの体制を整えておるわけでございますけれども、いま新たにサミットの前に、世界的にこういった国際金融不安を起こすようなことのないように先進国で金融面で集まろうや、通産大臣にお願いしたのはエネルギー面での話でございますが、金融面でひとつ世界的に不安のないように、世界経済も、発展途上国の累積債務の問題はありますけれども、アメリカ経済も幾らか明るさが見え始め、少しいいところに行こうじゃないかというときに、こういう状況でございますから、何とかそれを是正していくためには、そういった国際会議を設けて不安を除くということも私は必要だと思うのであります。ただ、サミットもございますので、少し推移を見るということなのか、その点はいかがでございますか。
  259. 竹下登

    竹下国務大臣 まさにいま御指摘がありましたようは、GABの問題が十カ国蔵相会議の問題であって、そうして今度は今月でございましたから国会があって行けませんでしたが、IMFの暫定委員会がございました。そのときも、いわゆる債務国に対するいろいろな議論をしてきたわけであります。さま変わりだなと思うのは、五十五年にお許しを得て国会開会中にIMFの暫定委員会に行って帰ってきたときに御質問を受けたときは、いわゆるオイルマネーのリサイクリングの問題、だから、確かにさま変わり、そのリサイクルということからすれば、逆という意味が成り立つかもしれません。したがって、これは大事な問題でございますが、世銀・IMF合同開発委員会がどうせ四月にはあります。それから五月にはサミットがあります。そういうところが、私はこれらが議論される一つの場所ではないか。表現はいささか適切を欠くかもしれませんが、あわてふためいて、あした集まるということは避けた方がいいのではないかという感じでございます。
  260. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 あわせて言えば、世界の途上国に貸し出されている額が、少ない額で六千億ドル、多い人は九千億ドルというふうに言うわけでございますし、日本の融資につきましてもかなり、先進国が危ないのではないかといってやらなかったところに最後に出かけていっている等とも言われているわけですね。しかし、債権国側としまして、だからといってこれを早く引き揚げるということをやれば、いろいろな金融不安を呼び起こすわけでございますから、いろいろな形で、IMFを中心にしながら、世界的な金融不安というのをなるべく取り除いていく必要があると思うわけであります。  そこで、大蔵大臣として、なかなか抽象的な言い方でしかできないのでございますけれども、各金融機関に対して、今後ともある程度、たとえばメキシコにしろブラジルにしろ、その他金融不安があるところは、政府の方でバックアップするから、IMFも通じていろいろとバックアップするので、ひとつ貸し出して不安をなくするようにしなさいというふうな方向をとられるのか。いまこういった海外債務についての準備金を設けるべきではないかというくらいまでいろいろと国内で言われている中で、まあ少しこの際は慎重の上にも慎重を側して、少し渋くと申しますか、シビアと申しますか、しぼって貸し出しすべきではないかというような方向で指導されるのか、その点はいかがでございますか。
  261. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御指摘のように、非産油国の開発途上国の経常収支の赤字、これは多少原油価格の下落によって相違はあるものの、やはり続きます。そこでさらにメキシコ、アルゼンチン、ポーランドとか債務返済に困難を来す国も出ております。ただ、今日の時点においては、債務国、債権国政府また民間銀行、そしてIMF等の適切な対応によりまして、国際金融市場の混乱を招くことは避けられるではないかというふうに期待をしております。  さて、民間銀行の指導という言葉になりますが、諸外国の銀行と協調して適切に対応していくことがこの問題の解決にとって肝要でありますよということは、機会あるごとに伝えております。具体的には、民間銀行が考慮することが重要であるという問題はおよそ次のようなことかなと。一行だけが債権の回収を図ることを回避する、抜け駆けとかそういうことでありましょう、下世話な言葉で言えば。それから、債務国の厳しい経済情勢の努力を見守りながらそれに沿って、貸し付けについては向こうの国の経済努力に沿って対応するべきであると。もとより、大蔵省はこれまで銀行の国際業務の健全性を確保するという観点からして、一国に対する与信限度の問題でございますとか、あるいは外貨資金の運用、調達の問題などの面では、これは適切な指導をしてきたところでございますが、あえて私見を申し上げれば、この間来、債務国の関係者がいらっしゃいますが、要するにアメリカのように一万五千も銀行があるとか、日本のように相互銀行を入れたって百五十七ぐらいでございますか、そうすると、ある種の信用度というものは日本に非常にありますだけに、日本が危ないぞ危ないぞと言うことは、それは大変な影響もあるというようなことも考えながら、そこのところは、やはり世界一頭のいい日本民族でございますから、世界にも迷惑をかけないように適切に対応していくことに対して、行政指導の面でもまた誤りなきように期したい、このように考えております。
  262. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 答えになっているような、なっていないような気もしますけれども、時間がありませんので、最後に一つ、グリーンカード制、総合課税化の問題についてお伺いしていきたいと思うのでございますけれども、この問題につきましては、私も国会へ出てからほぼ十五年、ずっとこの問題をやってきたわけですね。もうすでに昭和四十五年の税調のときから、総合課税化しなきゃいかぬということはずっと言われてきたわけでございますけれども、やっとグリーンカード制ということでやるかというふうになったら、これはとにかく三年間延期をするということで、過日のこの委員会での大蔵大臣の答弁というのは、もう一回税調にひとつ検討してもらうということを言われているわけですね。  しかし、大蔵大臣は一番よく知っていると思うのでございますが、税調では、私たちも大蔵委員会でずっと何度か何度かやって、源泉分離の課税もずっと引き上げてきて三五%まで持ってきて、なおかつ、もうこの制度しかないという、論議に論議を重ねてグリーンカード制度というのができたわけですね。いまさらちょっと、税調にもう一回お願いをすると言っても、一体税調自体が何を審議していいのか、私は困るのじゃないかと思うのですね。  それで、ではたとえばグリーンカードをやめるにしても、総合課税化その他いろいろ新しい制度が言われました。たとえば五〇%なり八〇%の源泉分離の課税をかけて、そして、多いと思う人は、ひとつ確定申告のときに出しなさいという制度もありますが、こんなことをやったら業務上、とてもじゃないけれども収拾がつかないということで、これもだめ。緑の手帳方式にしたらどうかと言いましたけれども、これもなかなかこのままでは限度管理ができないということもありましたし、あるいは納税者番号では少しきつ過ぎるのじゃないかというようなことがあったり、いろいろなことが言われた末に、このグリーンカードということに落ちついたわけです、総合課税をする限りは。そうなってきますと、税調にもう一回戻すと言うけれども、税調で一体何を審議をしてくれと大蔵大臣は言うつもりなんですか。私は、言われた方もこれは過去の経緯からいって困ると思いますよ。大臣は何を税調に期待をして、一体どういう審議をする余地があると思って言われているのですか。
  263. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のことは、私にもよく理解できるところでございます。が、確かにこれは長い間の議論でございました。しかし、私はこれに対して税調というものを意識したときに、私なりに、あるいは適切な比喩にはなりませんが、かつての一般消費税の税調の議論をずっと見てみたのです。そうすると、これが国民の理解を得なかったので、これは財政再建の手法としてとらないという御決議をいただいたら、それに基づいて税調はまたそれなり対応策をずっと審議していただいておる。  だから、このグリーンカード問題というのも、当時税調の積み上げの結果答申を得て国会で賛成いただいて通ったわけですが、それがその後、いわば事情変更の原則とでも申しましょうか、いろいろな予期せざる事態が発生したということになって、ついにこれが延期の法案を出さざるを得なくなったというこの環境を認識してもらえば、私は、税調というのはそれは偉い先生方ばかりでございますから、それに対応してもう一度、基本的な適正公平な利子配当課税という意味においての御議論はしていただけるものだ、甘えるようでございますけれども、やはり思い余って駆け込むところは税調かな、こういう感じがつくづくといたしております。
  264. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 大臣、税調の論議の経過は大体御存じだと思いますが、端的にお伺いしますが、総合課税化ということはやるのですか、やらないのですか。イエス・オア・ノーで結構です。
  265. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに適正公平な利子配当課税を実現するという政府の基本方針には変わりはないということでございますので、まさにそれもこれも含めて総合的に御判断をいただく、こういうことであろうと思います。
  266. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 総合的にということは、その総合課税の考え方自体をやめる場合もあり得ると。要するに、全くちゃらから、ちゃらという言葉は余り予算委員会で使う言葉じゃありませんが、総合課税が正しいあり方かどうかも含めて税調で審議してもらうということですか。
  267. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、いままさにいいお話でございまして、こういうようなところの、この国会でまたいまその凍結法案を御審議いただいておるわけですから、したがって、当国会での御議論等を踏まえて、このような国権の最高機関では御議論がございましたということを含めて総合判断してもらおう、こういうことでございます。
  268. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは長い長い経過がありまして、大臣御存じのように、すでに四十五年の税調答申で「利子・配当所得の税制上の優遇措置は、貯蓄奨励の観点から多年にわたり継続されてきた特別措置である。それだけに、制度の改廃が預金者心理や貯蓄の動向に対して与えるかもしれない不測の影響について慎重な考慮を要する問題であり、当面は、現行の特例をそのまま維持すべきであるとする意見もある。 しかしながら、所得税が納税者の担税力に適合した近代的な租税とされるのは、すべての所得を総合してそこに担税力の基準を見いだし、これに累進税率を適用することを前提としているからであつて、利子所得の分離課税の措置は、累進税の機能を減殺し、所得税負担の公平をそこなうという見地から批判の多い制度であるといわざるをえない。」ということから、ずっと長いこと十何年間かかってきて、そしてグリーンカードという制度でもつくらぬことには公平にできないということで来ているわけですよ。  これをまた総合課税化すること自体、全部否定をしていくということになりますと、一体いままで何のために議論をしてきたのか。一体、竹下大蔵大臣の言う――税というのは執行面においても税制面においても公平じゃなければいかぬと私は思うのですね。その公平な一つのあり方としてこの利子配当の総合課税化ということが長年言われてきて、各政府とも公約してきたことなんですよ。ですから、その根本からまた税調に議論を始めてもらうということになりますと、十年たったら竹下さんと言われた総理候補としては、これは識見を疑われる大変重大な問題だと思うのです。ですから、あと残された道といったって、いま言ったように、一体総合課税化を外してしまってこのまま続けていくのか、あるいはもうマル優制度自体を全部やめにしてしまって百万円の預金の金利にも税金をかけるのか、あるいはいろいろな手間は大変でございますが、グリーン制度にかわる、たとえば先ほど触れましたような緑の手帳なり高率の税率をかける制度なりに変えていくのか。いわばやり方としてはこの三つしかないのですよね。少なくも延期の法案を出される限りは、国民にとって一番身近な預金という問題でございますから、この問題についてははっきり大蔵大臣の見解を出していただかないと竹下大蔵大臣としての識見を疑われますし、また過去の経緯からいって、ああそうですかということになるような問題ではないと私は思うのでございます。  時間が来たようでございますから、最後に大臣の御意見をお伺いして、この問題はまた次の方に引き継ぎをしておきたいと思いますが、大臣いかがですか。
  269. 竹下登

    竹下国務大臣 だから、いま言われたような議論を踏まえて税調で総合的に議論をしていただこう、やはり私はそれしかないかな。  見識の問題でございますが、私いまの御指摘は当たっておると思うのであります。で、事実私自身、これはいわば具体的に申し上げる言葉ではありませんが、信任を否定されるようなことがあっても覚悟をしなければならぬくらい大きな問題だと実は思っております。それだけに、だれがやるかといえば、やった者がちゃんとまたやった方が一番いい、それが責任のとり方だ、このように思っております。
  270. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 これは大変重大な問題でございます。ただ大蔵大臣の責任云々という問題よりも、長い長い経緯を経てここまで到達した問題をまたもとに戻すということは、政治のあり方としても私は大変な問題だと思いますので、その点について申し上げておきまして、この問題につきまして私の後のまた質問者に譲ることにいたしまして、私の質問を終わります。
  271. 久野忠治

    久野委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、平石磨作太郎君。
  272. 平石磨作太郎

    ○平石委員 最後になりましたが、大臣の出席の都合がございまして、通告順位に基づいてはちょっと都合が悪いので変更させていただきます。  まず大蔵大臣にお伺いをしたいと思います。  それは予算編成ということについてでございます。もちろんいま非常な財政危機に見舞われて、大蔵大臣としては予算の編成には大変な御苦労があろうかと思うわけであります。したがって、この予算編成に当たりまして、昨年はゼロシーリング、今年はマイナスシーリングという方式をとられて、それぞれの省庁において大体整理をした、そして概算要求という形において予算の編成がなされておるわけであります。この方法が悪いとかどうとかいうことは申し上げません。だが、やはり国として一応の予算をつくり、そして国民に対する均衡のあるサービスを提供しようということになりますと、それぞれの省庁にはそれぞれの事情がございます。まして予算の性質からいったときに、後年度に延ばしてもいい、あるいはこのことについては、特に公共事業等につきましては、一応それぞれの省庁において後年度に繰り越すとか、いわゆる自由な選択ができるというような省庁もございます。ところが、社会保障費につきましては、いまの状況から考えたときに、高齢化社会のまさに入り口に立ったというような状況の中で、当然増として経費がかさんでくることは当然のことです。そういうようにいろいろと事情が異なっておりますが、特に私は社会労働委員会に所属をして社会保障費についての予算の編成については常に関心を持って見守っておるわけですが、こういうような状況があるということ、これは大蔵大臣、いま申し上げたように事情は十分御認識だと思うのですが、一言簡単にお願いしたいと思います。
  273. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えいたします。  五十九年度概算要求のシーリング等、五十九年度予算編成の具体的な対処の仕方ということになりますと、今後の財政改革への取り組みをさらに具体的に検討していきます中で改めて考えるというのがたてまえになります。が、歳出面について申しますならば、厳しいシーリングの設定等による規制をやはり考え方の中では引き続き行っていく必要は、これは否定できないというふうに率直に申し上げるべきだと思います。
  274. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの大臣の答弁は――私はいわゆるゼロシーリングとかマイナスシーリングをやるなと言っておるのではない。それは当初申し上げたとおり。ただ事情が違うぞ、ここを私が申し上げておるのでして、その点の認識は当然あることだ、その返事をもらいたいと思ったのですが、いまのような返事ですが、すれ違っておりますけれども、これは当然私は、世間、世の中は生き物ですから、これはあるということを、もうその前提に立ってお話を申し上げてみた。  そこで、今年の予算編成におきまして、特に五%のマイナスシーリング、こういう形であったわけです。それがどのように影響が出てきておるか。私はやはり先ほど申し上げましたように、もう社会保障費というのは、いわば平口に言って国民の生活費、要求だ、朝から食べるものがないんだ、こういう状況の中で、五%だから来年に回してください、こういうことは言えません。そういうようにせっぱ詰まった、生活に関連をし、生活に直結をした、そういう費目でありますから、これを一律に画一的に五%減ということを省庁に強いるということは、私は、余りにもそういった認識に欠けておると思いますが、大臣いかがですか。
  275. 竹下登

    竹下国務大臣 いま平石委員の前提として、社会保障費というものは公共事業などとは違って、これは翌年度で間に合うものという性格のものでない、概念的には私もそれはそのとおりだと思うのであります。ただ、予算編成をいたしますに際しては、やはりそのときの財政事情等を考えながら、国民の負託に、いわば富の再配分をどうしていくかということに立った場合には、当然そこにはバランスも必要であろうし、そして、いわゆる聖域というものをつくった場合には、主管主管によってはそれぞれが皆聖域化していくというたてまえ上、予算編成への姿勢としては、これをいわば聖域にするということは、ある意味において技術的な面も含めて当を得ていないではないかな。だから一律という言葉も、最終的な決定の際のアクセントは別として、前提として御提示を申し上げるというのが、手法としてはそれしかないのかな、私はこういう感じがしております。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕
  276. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで、そういったような考え方で一律にやられますと、大変無理のいくところができるんだぞ、私はこういうことを申し上げておるわけです。それとさらに、ちょっと数字を見てみますと、昨年五十七年度、これは厚生年金国庫負担の面につきまして千八百三十億、それから国民健康保険の助成について千八百億、そして都合合わして三千六百三十億。これがゼロシーリングのときでございます。それから五十八年が、結局、厚生年金の国庫負担、これは三年間ということでいろいろ論議はありましたけれども、それの方が二千百七十億、それから今回国民年金の国庫負担について平準化の問題として三千百八十億、合わして五千三百五十億。これが厚生年金については、来年にもこれは続くわけです。  結局省庁としたら、こういう当然増として生まれてくるそういった当然増経費を埋めるためには、何とか省庁の中でそういった工夫を考えなければならぬ。これは省庁だけで考えたのか、大蔵からの話によってしたのか、そこはわかりませんけれども、こういったへんちくりんなテクニックになっておるわけです。しかも、昨年大変な論議になりましたが、この厚年の国庫負担については必ずお返しをします、こういうことの答弁がなされておりますが、いつ返すということは一言も言うてない。  それから今回の国民年金の国庫負担につきましても、これも五十八年から七十二年にわたって十五年間ずっとそういったことを行おう、そして六十四年までは減らしていくが、六十五年からはまた国庫負担をふやして、都合一兆二千億何がしのものを平準化していこう、そういうテクニック、これはまさに粉飾と言えば粉飾。やはりそういったようなことをやるべきではない。するのであれば、これは明らかに特例公債でやるべきであって、そんなやみ起債的な、そういうテクニックを使って緊急避難的なことをする、これは非常に財政秩序を乱してしまう。  ここに臨調の第二部会の報告があります。これは大臣、ごらんいただいたと思うのですが、この中にこういう指摘があります。「制度の根本的改革につながらない一時的ないわゆる緊急避難的措置については、今後、極力回避するとともに、既往の措置はできる限り早期に解消する。」こう書いてある。まさにこのことの指摘ですよ。だから大蔵大臣が、ただ省庁に、金がないということだけでそういうことをやるということは、やはりいかに大蔵大臣予算編成権を待っておっても、これは許されることでない。私は、正しい予算のつくり方、そして必要な財源であるのなら特例公債によるべきであって、いわばこんなテクニックを使ってやるということはもうやめてほしいと思う。お考えをいただきたい。
  277. 竹下登

    竹下国務大臣 いまテクニックというお言葉がございましたが、予算編成も、それは多くのテクニシャンによってやられるわけでございます。ただ、いまのは非常に具体的な問題でございますので、私の答弁が正確を欠く危険性がございますので、主計局長からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  278. 山口光秀

    山口(光)政府委員 厚生年金の国庫負担金の四分の一カットの措置は、実はこれも臨調答申に基づいて行ったわけでございます。すなわち、昨年の七月十日に出ました臨調答申の中で、年金制度の抜本的改正を検討しなければいかぬけれども、当面公的年金に対する国庫負担については、各制度間のバランスに配慮しつつ負担率を引き下げる等の措置を講じろというところがございまして、それに基づきまして、昨年、明けて一昨年の暮れのいわゆる行革国会に行革関連特例法の内容としてお出しいたしまして御審議いただいたものでございます。十分合理的な理由があるというふうに考えられます。  それから、国民年金の国庫負担金の繰り入れの平準化につきましては、いま御質問でも仰せられましたように、ここ数年は非常にふえる。後、むしろずっと減っていく、負担を平準化する措置というのは、財政運営に当たって合理的に考えられていいのじゃないか、こういう考え方でございます。
  279. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そのことそのことを見てみますと、これはそれなりの理由と筋とを立てておると私は思います。思いますが、テクニックと言うては表現が悪いのですけれども、やみ起債的なことはやるべきではない、このことを私は言うておる。これは厚生大臣も非常に関係のあることですので、厚生大臣の所感も一つ伺っておきたい。
  280. 林義郎

    ○林国務大臣 いま平石先生からお話がありましたように、やみのようだとかテクニックであるとかというお話がございますが、私はそうは思わないのでございまして、財政が非常に厳しい折でありますし、その中でいろいろと予算編成をやる。そのときに、厚生年金の行革特例というのは国の財政負担の軽減を図るための臨時応急的なものである、こういうふうに考えておりまして、私の方でも厚生年金なり国民年金いろいろとやっておりますが、それの信頼性はこれによっていささかも傷つけられるものではない、こういうふうに考えているところでございます。
  281. 平石磨作太郎

    ○平石委員 もうこれで論議はしたくありませんが、一言言っておきます。厚生大臣もよく聞いておいてもらいたい。この中に、一時的ないわゆる緊急避難的な処置については今後極力回避せよ、こういう指摘があります。これは、大蔵大臣も厚生大臣もこのことは一応頭に入れておかないと、私は、こんなことが恒常的なことになっては困る、こういうような気がするので、指摘にとどめてこれは終わります。  次に、大臣がまだお見えにならぬ方もおられますので、もう一つ大蔵関係に関連をしたことですが、年金会計は当然厚生省の方によって厚生年金、国民年金ともに保険料の徴収がなされ、そしてそれが特別会計として大蔵省の資金運用部、いわゆる財投資金としてこれが総合運用をされておる。そういうことが今日まで行われてきておるわけでありますが、いま高齢化社会の入り口に立って、年金問題が大きなこれからの問題点として国民的な関心も呼んでおるし、また将来の年金に対する不安といったようなことも生まれておる。こういうようなことを考えてみますと、やはりいま財投に預けて、そしてざっと四十兆円になんなんとするこのお金、これが財投で一〇〇%いわゆる資金運用部において運用されておるわけですが、これはやはり将来の保険料負担の増大、こういったことを考えたときに、この資金については十分有利な運用をしなければならぬ。いま大蔵省が運用しておるものについて、これは七・三%という利子をもらって、運用利子が入っておるようでありますが、他の年金制度等においては自主的運用が認められておる。こういうことを考えたときに、やはり私はこの資金についても有利な自主運用を認めるべきではないか、そして将来の年金保険料の急激な負担増に対してある程度の緩和、こういったことをも考えていく時期に来たのではなかろうか、こういう気がしてなりません。  そこで、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、この四十兆円のいわゆる自主運用ということについてどのようにお考えなのか、簡単にお聞かせをいただきたいと思うのです。
  282. 竹下登

    竹下国務大臣 これは資金運用部資金法によりまして、まさに「資金運用部資金として統合管理し、その資金を確実且つ有利な方法で運用することにより、公共の利益の増進に寄与せしめることを目的とする。」こう書かれてあるわけでございます。そしてまた、「すべて資金運用部に預託しなければならない。」こういう項もあるわけでございますが、結局この問題は、私はまあ非常に次元の違ったところで言えば、努力して集めた者が運用すべきである、こういう本能的な願望というものが一つあります。しかし現実問題として、総合的には国の制度と信用を通じてこれは集められたものである。だからやはり統合して一元的に管理運営するということがたてまえであって、原則は、まず一つは、政策的重要性に応じてバランスのとれた資金配分ができるということ、二つ目には、財政金融政策のまさに整合性、財政とそして金融、これの整合性、これがわが国の経済運営すべての基礎の一つとなるものでありますだけに、これを確保することは何よりも大切ではないか。それから三番目には、やはり効率的な資金運用を行うためにも最も合理的な運用の仕組みではないか、今日の資金運用部資金法という法律そのものが。したがって、自主運用をせよという御指摘は確かにたびたびございますが、やはり私は国の資金の統合管理運用の仕組みというのは、これは筋として堅持すべきものではないか。で、簡保資金の問題は、言ってみれば戦前からの歴史的経緯に基づく唯一の例外であるというふうな認識で、財政金融の整合性のもとにおける一元化運用ということがたてまえとして貫かれるべきものではないかというふうに考えております。
  283. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そういうこともあろうけれども、ここにおたくからいただいた制度の積立金の運用状況を見てみますと、国公共済いわゆる国家公務員共済は三一・七%が自主運用されている。それから地公共済、地方公務員共済は二四・九%、それから公企体が二六%、私学共済六四・三%、農林共済六七・一%、こういう自主運用がなされておるわけです。いま大臣のおっしゃったことから、それだったらこれも一切国家が運用したらどうです。  こういうことを一方で認めておるから、ここに「厚生年金保険制度改正に関する意見」という社会保険審議会厚生年金保険部会からの答申があります。「積立金の管理運用のあり方については、従来から当部会が繰り返し要望してきたが、政府は自主運用の問題を含めて現行の管理運用の仕組みを再検討し、当面、すくなくとも共済組合程度の自主性を確立すべきであり、また、保険料拠出者の意向反映について一層努力すべきである。」こういう答申がなされておる。そして、ここに社会保障制度審議会においても「保険料負担に限度があると考えるなら、増大する給付費を賄う方法は、おのずから積立金の運用如何にかかわることになろう。そこで、積立金の運用に対するさまざまな制約は緩和し、できうる限り有利にその運用をはかる方法を考えるべきである。」こういう提言がなされておるわけですよ。  厚生大臣、あなたは大蔵の次官までやった人です。だから、ひとつこのことについてどうか、所見を伺いたい。
  284. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問にお答えいたします。  厚生年金、国民年金それぞれ来年度を目途といたしまして見直しをしていかなければならないということは、先生もよく御承知のとおりでございますし、高齢化社会を控えて抜本的な改革、統一的な考え方を打ち出していかなければならないと考えておりますが、その際、給付水準の適正化を図る一方で、従来と同様に保険料の負担増をお願いせざるを得ないものというような実態にあるだろうと私は思います。この場合に、やはり年金財政に資するためには、年金積み立ての有利運用その他所要の方策について負担増を緩和する努力を行うこともやはり必要だろうと思いますし、国民の納得を得る上でこのことは大変重要なことではないかと思っております。年金問題が非常に国民的な関心を呼んできているときでございますから、そういったものも含めてやらなければならないと思っておりますが、いまいろいろな審議会で御論議を賜っているところでありますし、八月ごろには厚生省の考え方もまとめて出したい、こういうふうに考えておりまして、現在鋭意作業をしているところでございます。  御指摘のいろいろな問題は、いまの社会保障制度審議会であるとか、あるいは国会の社会労働委員会でもたびたび附帯決議その他をいただいているところでございますし、特に平石先生からの御提言もございましたので、十分考えて対処いたしたい、こういうふうに思っているところでございます。
  285. 平石磨作太郎

    ○平石委員 これは一応外国の例等も参考までに申し上げてみますが、アメリカ、フランス、西ドイツ、ともに運営委員会をつくって、アメリカの場合は財務長官と労働長官、それから健康福祉長官、こういった委員会によってこれの運用がなされておるわけです。それからフランスの場合は、やはり金庫の監督は労働省と保険省と大蔵省。そして金庫の運営については、被用者代表、事業主代表を入れてこれの運用がなされておる。それから西ドイツにおいては、やはり被用者代表、事業主代表等を加えて運用がなされておるわけです。  これはいわゆる先進諸国においてもそういったことが行われておるということ、そして日本においては、いま大臣がおっしゃいましたが、いわゆる共済等については、あるいは簡保、これは過去の一つの経緯がありますというようなお話でありましたが、やはり諸外国のこういった状況等をも考え合わせ、そして制度審なり、あるいは一方の社会保険審議会部会等のこういった建議、報告、それからいま厚生大臣が言った、いわゆる研究をしていただいておるということ等をあわせ考えて、私は、少なくとも共済年金がやっておる三〇%、五〇%、この程度は自主運用に任すべきではないか、こういう気がしてなりません。したがって、一〇〇%、四十兆円を全部いただいて全部やります、これはやはり金融市場の混乱の問題とか、いろいろな問題が出てきますから、一概に私はそのことを全部云々とは申しませんが、考える時期が来たのではないかということを言っておる。もう一回大蔵大臣のお言葉をいただきたい。
  286. 竹下登

    竹下国務大臣 これは平石委員の従来から御関心をお持ちになり、そして検討を重ねた上での御提言であると、私もそのことは理解できます。が、この問題は率直に申しまして、いわば、たとえばそのよって立つ基盤そのものの背景を踏まえた審議会等からはそれぞれ異なった意見が出てくるわけであります。したがって、先進国においても傾向としては一元化問題の方向がむしろ財政、金融の一体的整合性を持っての運用からすればいいではないか、こういう意見も確かにあるわけでございます。だから興味本位で見る人は百年戦争じゃないか、こういう表現もあるくらいでございます。  おっしゃる意味は私にも理解できますが、いわば国共済の問題とかいうものと、そして言ってみれば、いま御指摘のものとは、それの仕組み、成り立ちからいたしましても異なっておる面がございますので、原則的には私はやはりこの整合性の上の一元化運用というのが、国の責任において集めた金ということになれば一元化こそむしろあるべき姿ではないかな。これはあえて反論として申し上げるわけではございませんが、私の認識をあえて強調さしていただいたわけであります。
  287. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの大臣のお言葉でもう一回言わねばなりませんが、国共済とか地公済あるいは公企済、こういったことはいわゆる政府資金でないんだ、こういうお言葉だと思うのです。したがって、政府が云々ということはこれはできがたいことであって、そういった自主運用が認められる、これは一部わからぬことはありません。  そうすると、この資金運用部資金法の中に、これは第二条ですが、簡易生命保険、郵便年金、これは政府が行うことなんです、それで政府が同じように行ったものが、除外されておるわけです。これにも何らかの理由はあろうかとは思うけれども、同じ政府が行う厚生年金、国民年金、それからこの郵便年金――郵便年金は自主運用させます。整合性がないのです。この点、もう一言お願いします。
  288. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘のありました簡易生命保険及郵便年金特別会計の積立金、この問題との比較でお話があったわけでございますが、これとて大変強い、いわば自主運用の要請がございます。しかしながら、ことしもそれが議論にわたったわけでございますが、結局一元化運用というものの意義についての御理解をいただいて、過去五年間の財投資金の平均値、七二%をまず財投資金に出したそのあとを運用して、その運用もまた厳しい自主規制をされまして、いわば金銭信託とかあるいは銀行預金とか外債とか、そういう元本保証のあるものというところでその範囲を自主的に考えられたというようなところが、やはり総合的な問題の中で一元化というものがたてまえとしては貫かれるべきだという考え方の中に得られた結論ではないかというふうに思います。私は平石委員の立場に立っての御主張を理解していないという意味で申し上げているわけではございませんが、そのような経過も申し添えさせていただいておきます。
  289. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そのことにつきましては、もうこれにとどめておきます。  次に、運輸大臣、お見えになっておるようですが、国鉄再建法に基づいて特定地方交通線、これが第一次に四十線、それでまた第二次を申請をしておるのですが、いわゆるローカルの交通線については前々の国会から論議はありましたものの、一応再建法によっていま処置が進められておるわけです。したがって、四十線は一応協議会に入って第三セクターで云々ということがなされて出るわけですが、これの進捗状況はどういう状況か、お知らせをいただきたいと思うのです。
  290. 永光洋一

    ○永光政府委員 お答えいたします。  五十六年九月に第一次特定地方交通線として選定、承認されておりますものが四十線、七百三十キロメートルでございますが、会議開始希望日の到来している三十八線につきましては、すべて対策協議会の会議が開催されております。この三十八線のうち、白糠線を含む三線ほどはもうわりに具体的な話しに進んでおりますし、さらに四線、第三セクターの話がある線もございまして、それらを含めまして現在具体的な転換計画を策定しているところでございます。それ以外の線につきましても、種々協議を進めておりまして、今後円滑な転換が可能になるように地元の方々と話を進めていきたい、こういうふうに考えております。
  291. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまの御報告にありましたように、進んではおるもののまだ遅々としてこのことが、協議会は持っておられるようですが、これが話し合いがついた、そして第三セクターによって運営がなされるというところまで話がついたというのはきわめて少ない。これはなぜか。なぜこんなに遅くなっておるかということをひとつお考えをいただきたい。  そして、結局こういったいわば国鉄の再建という形で地方のローカル線が、表現は悪いけれども、切って捨てられる。国鉄の方は一応公共性と企業性があるけれども、企業性が相立たぬがためにもう手を引きます、何とか地方の方で、民間の力もおかりをし、地方の団体の力もかって何とか足だけは確保したいというのが趣旨だと思う。その趣旨がそのままできていくかというと、これができない。それはやはり国鉄が四十線というものを選定したように、ここはもう企業性が成り立たぬというような羽目になっておる。そして、私の選挙区のことを申し上げて失礼ではありますけれども、特に話はよく聞くから例として挙げるわけですが、まさに知事さんも関係者も思案投げ首です。やっていいか、やらぬがいいのか、だが足だけは確保したいが、こういうことで現実にはどうにもならないというのが現状です。したがって、そこにはやはり採算がとれないという大きなネックがあるわけですから、私はここで国の方が果たしてこのまま突き進めて、これは法律ができておるから一概にどうのこうのは言いませんが、このまま突き進めて足が失われてしまうということに陥る懸念がある。したがって、新線は当然そこでストップしておるわけですから、ここで私が申し上げたいことは、第三セクターで新線建設をということについて、将来赤字を、建設はもちろんセクターでやればつくってくれますけれども、後の運営に当たってある程度国がめんどうを見てくれるだろうかどうだろうか、ここにかかってくるわけです。ここにかかってきますからどうにもならなくなってきておる。したがって、私は、あの法律ができておるからそれをどうのこうのは言いませんが、もっともっと早く協議を進め、そして第三セクターでやりますと言うて手を挙げて地方から来るようにするためには、そういった赤字の補てんといったようなことについて国は明らかにしなかったら、そのままいまの新線はつぶれてしまう、こういうことになろうかと思うのですが、ひとつ大臣のお考えをいただきたい。
  292. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 大変、特定地方交通線に対しての御理解あるお話、恐縮でございます。  いずれにいたしましても、地方で協議会がそこまで出ているということ、話し合いをしていただくことは、これは鉄道を仮になくすにしても、ある場合にはバス転換、地方の交通をどうかして維持したいという大事なお話が進んでおられることで、敬意を払うわけです。その間においても、しかも第三セクターでやっていこう、こういういままでにないことをおやりいただくということ、これもまた大変勇気の要ることだと思って、そのやろうとしておられるいまの会社を見守っているわけであります。  だんだん経過を聞きますと、第三セクターで運営することになった国鉄新線、三陸鉄道、それから野岩鉄道、それから宮福鉄道でありますけれども、よく聞いてみますと、開業時は三陸が五十九年、野岩線が六十年四月、宮福線が六十三年四月と、それぞれ予定しながら工事を進めているわけです。これには政府の方から建設費が補助されているわけです。そして、収支につきましても、三社とも開業後五年目には大体償却後損益が黒字に転換するのじゃなかろうか、こう予想もし、そのもとにおいて進めておりますが、さて、委員がお話しのように、将来の問題になります。  何さま、いままで国鉄がやっていたことをその方々が地方でおやりになることですから、新しい一歩を踏む新しい経験でございますので、事業者の適切な経営努力を前提としておりますものの、地方鉄道に転換後五年間についてはその欠損額の二分の一を国から補助しよう、こういうふうな方針を立てておりますことも御参考にしていただきながら、経営の安定と改善に向かっていただきたい、こう思っております。
  293. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま大臣の非常にいいお言葉をいただいたのですが、この五年間については一応運営費補助、こういうことになっております。そう書いてあるが、いま大臣のお言葉では、欠損金に対する二分の一の補助、こういうことですね。――そういうことですね。  そこで、五年経過以後について、これは検討中となされておるわけです。五年間はまあまあ何とかいくでしょう。それまでに何とか経営が相償うような方途を当然考えなければなりません。そして、むだを排して、何とか運営ができるということを考えねばなりませんが、特に四国の地方なんかにおきましてはなかなかそれがむずかしい。そして、当然永久的に赤字が予想されるということも、これは覚悟しておらねばなりません。それで、一生懸命にやったが、なおかつ五年経過後においてもそういったことがある場合に、赤字に対する補てんが検討中となっておりますが、どういうように検討がなされておるのか、ひとつお答えをいただきたい。
  294. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 これは平石さん、五年間はちゃんと二分の一というて、五年たってまた赤字になるだろうということじゃ経営努力が足りないことでございますから、ひとつそのときはそのときの御相談ということにしないと、とても大変でございますね。その辺は御理解いただきたいと思います。
  295. 平石磨作太郎

    ○平石委員 そこで私、大臣に申し上げたいのですが、この検討中というのはいつごろまでですか。  いわゆる五年はありますけれども、私の言いたいことは、検討中、検討中で、見切り発車の二年が過ぎてからこういたしますと言っても、もうつぶれてしまっています。そうでしょう。二年の見切り発車の中で、この十一月が来れば最初の二年が来るわけですよ。だから、検討中というような形でそのままおいて、さあ地方の方では、何とかそこに期待を持ちつつも何の話もないので、これはもうとてもできない、こういうことにならぬとも限らぬ。だから、同じ検討をしていただくのなら二年のうちにやってもらわなければならぬ。
  296. 永光洋一

    ○永光政府委員 先生御承知のように、再建法によりまして鉄道を、第三セクターの場合には五カ年間二分の一を、運営欠損と申しますか、補助するという形になっておりますので、いま協議会をそれぞれやっておりますけれども、担当する者としましては、やはりこれは五年間は二分の一の補助があります、その間に経営を安定させ、基盤を確立して自立するという前提のもとに第三セクターをお願いしたいということで話を進めておると思います。  ただし、その後どうなるかということを地元の方々が強く言われますので、それは今後の検討課題であるということを言っておると思いますので、五年後ということにつきましては、いま直ちにわれわれとして明確に申し上げるわけにまいりませんで、現時点におきましては、五年間は経営の安定のために二分の一の補助をするというたてまえになっておるわけです。しかし、今後、さらにその後につきましては検討課題であることはわれわれも十分認識をいたしております。
  297. 平石磨作太郎

    ○平石委員 それでは、ちょっと公共性と企業性ということを論じなければ事足らないのです。  いま、鉄道の時代はもう去ったと思っていますか、どうですか大臣、一言。
  298. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 依然として中距離関係は国鉄の時代だと私は思っております。そういう意味で、再建させたいということで監理法案を皆さんにお願いするわけです。
  299. 平石磨作太郎

    ○平石委員 鉄道は、やはり私は非常に時代が変わった。いわゆる日本の運輸交通のいままで主役をしていただいた。だが、だんだんと時代が変化をし、このような状況になって、鉄道の持つシェアもだんだんと少なくなってきている。だから、これからは新しい時代というか、そういう社会経済情勢が変わった中でどう鉄道が生き延びていくか、ここを考えなければならぬ。  そこで、その一方で、私は国民の足の確保、これもしていかなければならぬ。そういう場合に、一方では東北新幹線ができてくる。上越新幹線ができる。私はこれをするなとは言わぬのですよ。鉄道のこれからの役割りがあるのですから、当然やっていただいて結構です。しかも、それには税金を投入して建設をする。これが公共性ですよ。そして、後の運営については何とか企業性でやってください。ところが、その企業性の相償わないところは、これはある程度国の方でてこ入れをいたしましょう、これは私は、決して国に向かってむちゃを言うておる話ではないと思う。しかも、一方で、地方ローカル線においてはわずか七百億か八百億の赤字ですよ。これを切ろうか、こういうことになって、やっておるわけですが、一方で、東北新幹線にしろ、いわゆる幹線においては三千億とか一千億とか、そういう形の赤字が予想されるわけです。どうにもしようがない。そういうように、それらを一応見込んだ上で国民の足を確保し、貨物の流通その他について果たすべき役割りというものを国は認めておるからやっておるわけです。だから、これからの地方の、そういったローカルにおけるところの運輸の中における国鉄の役割り、そして、それが単なる企業性のみに頼った行き方というのは、私はいまのこういう人口が偏在をし、しかも非常に厳しい状況の中では、国鉄にのみこれを任すということは当を得ていないと思う。そうすると、そういったローカルについては一応国の方で力をかしてやるということがあってしかるべきだ。これがまさに公共性なんです。いかがお考えですか。
  300. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 一つは、何といったってすばらしいモータリゼーションで、地方では鉄道が風を乗せていくというふうなかっこうがあることが一つ。その間において、いままでの鉄道というものをそれではどうするかということになりますと、これは地方の方々の足を確保しなければなりませんから、お願いして、バスへの転換とか、その間に、それではひとつ自分の方でやってみようという第三セクター等々があるわけです。  政府としますと、新幹線もつくります。それは本当に大きな投資でございますけれども、いろいろな話を聞きますと、十五年、二十年後にはそれが黒字になる。やっぱり苦しいけれども、あるときは借金して、それが国の財産になりお互いの交通機関になり、そして、それがペイするというところに一つの目標があるわけです。一方また、地方で過疎バスということになりますと、これは皆さんの御協賛を得て、各地方のバス会社にバスを買う金を補助申し上げたりして、そういう足の確保に努めているということをやっておることもよく御理解いただきまして、いかにしてその時代時代のニーズに合うように、変化しながらも皆さん方の交通機関を確保するということをやっておることも御理解いただきたい、こう思います。
  301. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま代替バスの話が出ましたが、あれは五人から十五人ですよ。だから、鉄道がなくなって、五人から十五人程度のところまではずっと何にもない。そこへ行かないといかぬわけですが、これは本論ではありませんからその点はいいとしまして、やはり第三セクター云々ということについて、二年間という見切り発車をして検討してもらっておるのですから、これは二年間のうちに、さっきも事務当局からお話がありましたけれども、これはひとつやっていただかないと、せぬのならせぬ、もう公共性はやめた、勝手にしなさい、こういうことにするのならしていいのですよ。ところが、いや、やっぱりということであるのなら、私はやっぱりしてもらいたいのですが、二年のうちに、見切り発車になるまでに、あの検討中と書いてあるものを、五年の間赤字に対する二分の一の補助というものを延長するのかどうなるのか、見通しをひとつ大臣言ってください。
  302. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 五年間、二分の一を出すということに決めて、そしてまた、それが進んでいる途中でございますから、しばらくひとつその辺は御猶予をお願いし、検討をさせてもらいたい、こう思っております。
  303. 平石磨作太郎

    ○平石委員 大臣、それは検討をしておるということですが、二年のうちにしてくださいよと言うておるのですよ。二年が過ぎてからやりますと言っても、もう手おくれです。お願いしておきたいのですが、二年のうちには検討するということを、大臣だからがんばってくださいよ、それは。もう一回、えらいしつこいようですが……。
  304. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 大いにがんばることにいたしましょう。
  305. 平石磨作太郎

    ○平石委員 このお言葉をちょうだいしておきます。  それから次に、今度の新しい法律、法案が出されておるわけですね。これは臨調からの答申に基づいて新しい法案が出てきておるわけでございますが、いわゆる臨調の答申を尊重して、こういうことになっておるようですが、臨調は一応分割民営ということを提言しておるわけです。分割民営を提言せられますと、このことについては特にいまのようなローカルのところ、四国地方についてはなかなか採算性が出てこないから、一応民立で、民間が引き受けて運営をしましょうということがなかなか出てきにくい。そうなりますと、そのままずっといきますと、これも結局在来幹線は廃止の憂き目になる、これを心配するわけですよ。だから、廃止の憂き目になりますと、これは明治時代に返るということです。  もちろん、そういった地域性がありますから、そのような地域性についてはやはり国土の均衡ある発展ということを願い、しかもこの間、日本列島が青函トンネルで北海道と一緒になった。九州とは関門、あれで一緒になっている。今度、本州と四国は、本四架橋によって日本列島が一緒になってくる。これはやはり国土の均衡ある発展ということを願ってのそういう仕事なのですから、当然そこには四国のようないわば過疎の中では、これを民立でやってくださいということに分割をせられた場合に、どうにもならなくて、結局廃止の憂き目になる。せっかく本四架橋が仕上がっても何にもならぬということになる。  そこはひとつ大臣に、時間がありませんので端的に言いますが、そういういわゆる在来幹線についても、廃止の憂き目にならないように赤字の補てんはするかどうか。これはやはりそこらあたりを考えて、私は今回のこの監理法というものを提案しておると思うのです。これも切って捨てます、こういう憂き目になっては、これはちょっと許されません。  国土庁長官、国土の均衡ある発展のために御努力いただいておるわけですが、四国地方はそういった形において、どの統計を見ても非常に低位にあるわけです。そして、国民所得を見ましても八〇%ですよ。いかにもそういったような働きの悪いところとは言えません。よそに負けぬだけ働くけれども八〇%にしかならないというのは、いま言う交通輸送機関、産業基盤がないからです。これを引き上げるのは国土庁長官仕事ですわ。長官、そこをひとつ均衡ある発展のために、さらに在来線が廃止の憂き目になるようなことはとめてもらいたい。ひとつ一言。
  306. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど来平石委員と運輸大臣の質疑応答を拝聴しておりまして、身が引き締まる思いで承っておりました。委員おっしゃるとおり、四国地方はいろいろな問題についてなお整備を要するものがたくさんあると思っております。特に先ほど委員がおっしゃいました本州四国連絡橋、その中の児島―坂出ルート、いわゆるDルートは昭和六十二年に開通いたすようになっておるわけでございます。それに従いましての高速道路あるいは域内の道路交通網体系というものも整備を促進し、そして域内の皆さん方が要望されております四国縦貫自動車道、四国横断自動車道等の整備等を促進しまして、四国地方開発促進計画のより一層の充実発展を図っていきたい、この気持ちでがんばっていきたいと思いますので、よろしく応援のほどお願いいたします。
  307. 平石磨作太郎

    ○平石委員 十分ではないけれども、時間がありませんので先に行かせていただきますが、要は、均衡ある発展のために在来幹線が今度の新しい法律によって廃止の憂き目にならないように、ひとつ運輸大臣がんばっていただきたいと思うわけです。これは特に後々またたびたび私が言いますので、忘れぬようにお願いしたいと思います。  それから、建設大臣、お見えになりましたか。――それでは、ちょっと建設大臣に、お見えいただいておるようですから……。  いまだんだんお話を申し上げましたように、鉄道についてはまことに悲観的な状況です。そして、いま建設省の方で努力をいただき、道路公団でやっていただいておるこの四国縦貫自動車道、まさに六十二年に本四架橋が仕上がりましても走る道がない、こういう状況でございます。これはもう篤と御案内のとおりだと思うのですが、これの進捗状況をきわめて簡単にお話しをいただきたい。
  308. 内海英男

    内海国務大臣 国土庁の長官の方から一応お答えが出ましたので、私はもう用がないのかと思っておりましたけれども、御質問でございますので申し上げます。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  四国横断自動車道につきましては、すでに用地買収や工事を展開しておる区間を中心に今後整備を推進してまいります。本州四国連絡橋、児島―坂出ルートの完成が予定されております昭和六十二年度までには、善通寺―川之江間三十六キロメートル及び大豊―南国間二十一キロメートルを供用させる予定でございます。その他の区間につきましても鋭意工事を進めていきたい、こういう予定でございます。
  309. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いま一般的なお話をいただきましたが、これは用地の買収その他大変な問題があると思います。したがって、香川県にも関係がありますし、また高知の場合は部分開業といったような形で供用開始が大きくおくれる、こういったような問題等もあります。したがって、鉄道についてはいまのような話でまことに悲観的なことばかりなんですが、少なくともそれにかわるものとして早く自動車道をつくっていただいて、そして産業基盤をとにかく充実強化していく、こういうことにしないと均衡のある発展にはとてもならない、こういうような気がしますので、これはもう時間の関係で、もっと詰めたいのですけれども、ひとつお願いをして終わらせていただきます。  次に、年金の問題ですが、いま非常に高齢化社会という形で、高齢化社会に入っていけば当然そこには平均余命の延長、寿命の延長、こういったことから老後保障ということが社会保障の大きな柱になってくる。したがって、その老後保障の柱の一つは何かということになりますと、やはり年金というのが柱の一つになろうと思うわけです。  この年金につきましては、大臣も大変御苦労なさっておられることだし、その一方で年金財政というものは将来非常な不安がある。こういう不安の中ではとても老後保障はむずかしい、こういう時代になってきた。ここで今国会に、いわゆる年金を統合して、できればみんなでお互いに将来の財政基盤を固めつつ、そして老後保障をしていこうという趣旨で今回法案を出そうとしておりますが、特にその中で私、申し上げておきたいことは、この社会保障については従来、どっちかといいますと、いわゆる八つの保険というものがそれぞれの沿革と特異的な特質を持って各論的に発展してきた。総論がなかった。そして、そこには整合性というものも欠けておった。いろんな欠陥を持っております。いろんな欠陥を持っておりますが、そういったことを一応整理しながら、今回国共済と公企体のものをまず出そう、こういうことになっておるようであります。  前の国会におきましても当時の大蔵大臣に、ただ集まりなさいや、こう言ってもそれはなかなか大変ですぞということを申し上げたことでありましたが、よくわかっております、いま大蔵省の中で検討しておりますので、その検討を待ってということで答弁はありました。竹下大蔵大臣も後を引き継いでおられるわけですが、私が指摘をしたような形にしかならない。そういうものがそのまま出てこようとしておるのですが、これについて電電公社の方からは、私はもうとても一緒になれない、こういったようなことまで上がっておるように聞いております。これが一体そういった形に統合ができるのかどうか。あの反対ということを聞いてみますと、なかなかむずかしいんじゃないかという気がいたしますが、大体の見通しがあるのかどうか、そこらあたりひとつ厚生大臣、よろしくお願いしたいと思います。
  310. 林義郎

    ○林国務大臣 平石議員の御質問にお答え申し上げます。  年金の一元化というのは、相当長い期間を、また将来を展望いたしましていろいろと作業をしていかなければなりません。一気に解決するものではありませんから、当面この国会に国家公務員共済と電電と専売と国鉄、この共済をとりあえずお願いをする、こういう形でいま鋭意事務当局間で話を進めているところでございます。  御指摘のようなお話もいろいろとございましたようですが、三月十一日でございますか、法案の提出を政府の方で予定をしております期限までには何とか形をつけて出したい、こういうふうな形で鋭意現在努力をしているところでございます。
  311. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間かないので走り走りになって恐縮でございますが、電電公社の総裁、お見えになっておりますか。――電電公社はこの統合には反対だということが過日新聞報道等にもなされましたが、反対の理由をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  312. 真藤恒

    ○真藤説明員 御説明申し上げます。  私ども、平面的に反対と申し上げているわけではございません。国の全体の社会の変革に応じて在来の年金制度というものが修正されなくちゃならぬというのは、よくわかっております。したがいまして、国全体の年金制度をどうするかという骨格をきちっとお決めいただいて、その一環として電電の共済組合はどうあるべきかというお話であれば、御相談に当然積極的に乗るべきものだというふうに考えております。  しかしながら、その問題が確定しない形で、当面の問題としていまの御計画で進んでおるわけでございまして、この年金というものの中には、御存じのように、職員が多年にわたって自分の給料の中から蓄積したものがあるわけでございまして、それが私どもの組織の中の動きの結果としてそういう形にしなくちゃならぬ、端的に言えば拠出しなくちゃならぬというならば、それ相当の、平たく申しまして職員に対する何かのお礼があってしかるべきじゃないかというのが、平たく申し上げて職員のナイーブな気持ちであることも、これは否定できません。  したがいまして、この年金、共済組合は会社側と組合側との両方で構成されているわけでございますが、会社側の方も組合の方も、そういうお話に乗らざるを得ないから乗るように努力するんだけれども、こういう条件をお願いしたいんだということを申し述べておるのでございますが、それがまたほかの問題にひっかかりまして、いまなかなか難航いたしておりまして、確約をいただく状態になっておりませんで、私ども、ことに組合サイドの方も非常に難渋しておる、内部をまとめるのに難渋しておるというのが、偽らざる現状の姿でございます。
  313. 平石磨作太郎

    ○平石委員 いまのお話をお聞きしまして、まさに昨年の予算委員会で私が渡辺大蔵大臣指摘したとおりです。そういう形で電電公社総裁からいま大変言葉を選んでお話がありました。  そこで、こんな大きな大事業を進めなければならぬわけですが、この大事業を進めるに当たって、昨年の九月二十四日閣議決定がなされて年金担当大臣まで決められた。したがって私は、その年金担当大臣がこれだけ――いま総裁がおっしゃったようなことは一部です。いろいろなところにいろいろな、それぞれの御意見があろうと思うのですが、これらを説得をし、そして統合をしていかなければならぬ。その責任著としてあなたが、厚生大臣が選ばれた。したが、その権限はどういう権限なのか。単なる調整の権限か。それぞれの制度にはそれぞれの所管大臣かおるわけです。その所管大臣を指揮監督できるのか、単なる調整機関なのか、お聞かせをいただきたい。
  314. 林義郎

    ○林国務大臣 私は、年金制度の改革及び年金行政の一元化を円滑に推進するための、各省の所管する事務の調整を行う年金問題担当大臣の指名を総理から受けております。もとより担当大臣というのは、法律上の権限を持っているものではありませんし、また内閣総理大臣の指揮監督権限の委任を受けているわけでもありませんが、年金制度の改革及び年金行政の一元化のために関係大臣と、それぞれ権限を持っておられるわけでございますから関係大臣とよくお話し合いをしまして、所要の調整を行ってまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  315. 平石磨作太郎

    ○平石委員 法的な権限はありませんと、こういうことですが、行政組織法とかあるいは厚生省設置法とか、あるいは年金事業を進めるのには、ただ閣議の中で総理が言葉であなたがやりなさいと言うだけでは、私はこんな大事業は進まぬと思いますよ、本腰やるのなら。したがって、いま電電公社の総裁の非常に選んだ言葉で反対の話がありましたけれども、ここを一応説得をして進めていくためにはそれだけの裏づけになるものを、権限と責任というものを明らかにしないとこれはできないと思いますが、これはその用意があるのですかどうですか。これはどなたに聞いたらいいかわかりませんが、お答えをいただきたい。
  316. 林義郎

    ○林国務大臣 平石さんの御質問にお答え申し上げます。  法律上の権限は各省大臣に属していることは御指摘のとおりでありますが、年金制度の改革というのは、先ほど来お話がありましたように、いろんな複雑な問題を抱えているわけでありまして、しかも、その改革はぜひともやらなければならない。そういったことで、問題点の整理、話し合いの促進等の事実上の調整を通じまして整合性のある年金改革の方途を探っていくことが適切ではないかというふうに考えておりますし、私もその方向で一生懸命努力をしてみたい、こういうふうに考えているところでございます。
  317. 平石磨作太郎

    ○平石委員 年金担当大臣の心意気はいま聞きました。一生懸命やりますという決意はいいのですが、その決意を実現するためには、いわゆる内閣がそういったことの整備をして担当大臣に仕事を与えないと、単なる厚生大臣という形で年金担当大臣を併任されて、がんばりますということではできないのじゃないか、ここを私は指摘しておきたいと思うのです、本腰やるのなら。  そこで、竹下大蔵大臣にお聞きをしたい。  竹下大蔵大臣は、もちろん三公社と国家公務員共済とを統合しよう、こういう大蔵省の中におけるいわゆる通常今井委員会と言いますが、この委員会からの提言等を踏まえてこの法律案を出そうとしておるわけですが、これはいま電電公社からお話がありましたように、ただ一緒になりなさい、こういうことだと思うのです。私は去年申し上げたが、結婚をするについて、ただ一緒はなればいいと言ってもこれはできません。それと同じことだから、できるような条件整備をしなければならぬということです。  そういうことがなしにやるということは、一元化ということ、一元化ということは、何を目的に、どういうことをするために一元化をするのか。端的に言うて、国鉄共済の財政がピンチに陥ったのでこれを救済するために一緒になってくれ、これが理由なのか。いろんな考え方はありますよ。いろんな考え方によってそのやり方も違ってくるのですが、いま出そうとするこの統合法案は何を目的に一元化へ行こうとしておるのか。いまの言葉にあったように、全体像が見えないわけです。全体像がないわけです。去年私、全体像も言ったんですが、全体像があって、その一つのステップとしたら協力にやぶさかでない、こういうお話がありました。したがって、どういう条件、そしてビジョンはどうなのか。そしてやることが――今度の法案ですよ。今度の法案は、ただ一方の特定の共済の財政危機を救うためにするのか、はっきりしていただきたい。
  318. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの御指摘でございますが、まさにいろいろな経緯がございましたが、この間、電電公社さん、労使ともども初めての土俵についていただいた、こういうことでございます。そうして、そのことを踏まえて翌日、年金担当大臣の御招集で行管長官と私と内閣官房長官、この四人でとりあえず第一回目の相談をした。しかし、そのときの電電公社さんが大所高所に立って土俵に上がってもらったその背景には、いま委員指摘のまさに全体像というものをまず示してもらいたい、そしてまた言葉を非常にお選びになっておる、私もあえて言葉を選べば、いわば経営形態の問題等との関連もあるでございましょう。そういうことが協議しております間にわかり過ぎるほどわかりますだけに、その全体像を含めて理解がいただける、いま条件整備というお言葉をお使いになりましたが、環境整備をとりあえずやって、そうして期待にこたえなければいかぬ、だから、大変言葉を選ぶようですが、慎重かつ綿密にお互いの立場を理解しながら話を進めていく、こういう姿勢でおりますので、しばらく御注目いただき、また絶えず私どもに対して鞭撻なり助言なりを賜りたい、このように思います。
  319. 平石磨作太郎

    ○平石委員 自治大臣、お見えになっていますか――自治大臣にもこの問題についてお伺いを申し上げたいんですが、この地公共について十六のものを一本にしよう、こういうようなことがなされるわけですが、一応いま本当に一部のお話を聞いたんですが、私は、それぞれ問題を抱えておると思います。もろ手を挙げて賛成というわけにもいかないと思う。しかも、短期間にこれを説得をし、一緒にしよう。いままで相当な根回しと言ったら悪いんですけれども、相当いろいろとPRをし、そして、その保険の共済からも意見を聞いて、そういったものの上に立ってこれをするというような手順、手続といったようなものは当然必要なことなんですが、そういうことがなされて行われておるかどうか、そしてこれには、出そうとする法律にけちをつけることは私は好まぬのですけれども、余りにも問題が大きいから申し上げておるのですが、そこらあたりの手続の問題と見通しについて大臣のお答えをいただきたい。
  320. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 公的年金制度の一元化というのは、やはり将来の展望としては望ましい方向であろうと思うのです。そういう方向に沿いまして、地方公務員共済につきましても何らかの形で統一をしていくという方向をとらなければならないであろう。そこで、おっしゃるように保険単位がたくさんございますから、大きいのもあれば小さいのもあるということでございますが、それらを何とかこの際保険単位の統合をして将来への布石としたい、こういう希望を持っていま関係組合とも鋭意折衝中、意見調整中というところでございまして、私どもの考えでは、いま進行形の形でございますが、だんだんに終点に持っていくように努力をして、今国会にでき得れば法案として提出したい、こういう心組みでいまやっておるところでございますが、おっしゃるように、これはそれぞれの組合には長年の沿革があり、経緯があるわけでございますので、それらの点については十分ひとつ意見調整をしていきたい、こう思っておるのでございます。
  321. 平石磨作太郎

    ○平石委員 時間がないので、一元化についての将来ビジョン等についてもひとつ御意見を伺いたいと思ったのですけれども、そういう時間がございません。これはまた次の機会に譲るといたしますが、いずれにしましても、この公的年金を一応一つのものにしようとするのなら、将来ビジョンの全体像を早く描かなければならぬということ、それからもう一つは、どういうスケジュールを持っておられるのか、これもおわかりならひとつお示しをいただきたい。自民党の方でいろいろそういったようなことは報道の中にありましたけれども、大臣としてどのようなスケジュールを持っておられるか、お聞かせをいただきたい。
  322. 林義郎

    ○林国務大臣 お答えを申し上げます。  先ほど来御議論のありました三公社と国家公務員共済を今国会に出しましょう、地方公務員の方もいま自治省でやっておられますからこの国会でお願いをしたい、こういうことでございまして、五十九年には厚生年金と国民年金、これは大変な大どころのものでございますが、この問題をやりたい。これにつきましては、ことしの八月ぐらいまでに厚生省の案というものをお示し申し上げまして、その上でやっていきたい。臨調答申にも、公的年金の一元化をやっていけ、こういうふうなお話がありますから、そういった趣旨に沿いましてこれからも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  323. 平石磨作太郎

    ○平石委員 この閣議決定の中でも、そういった早くやれということが出ております。しかも、これは五十八年、五十九年、それから各共済についてもそういった年次でもって行おうとしておる。これはそれだけ急ぐわけですが、それなればこそ、年金担当大臣としての権限付与を内閣としてやらなければいかぬ。これは総理がおらぬからどうにもなりませんけれども、私は、それだけのことは閣議の中で決めてはっきりやっていかなければいかぬじゃないかということを強く指摘をしておきたいわけです。  それともう一つ申し上げておきたいことは、公的年金と私的年金、この公的年金と私的年金ということについては、経済審議会等からいろいろ資料ももらっておりますが、将来先行き非常に国民の不安といったようなものが出てくるような、そういうようないろいろな考え方が出ております。私はここで、公的年金と私的年金とはどういう違いがあるのか、このことも担当大臣としたらはっきり概念を踏まえておかないとえらいことになるというような気がいたします。このこともきょうここでひとつ論じてみたいと思ったのですが、これも次の宿題にいたします。したがって、私的年金的な考え方ではこれは乗り切ることができませんので、この点もひとつ十分お考えをいただき、次の機会に大臣のお考えをただしてみたい、こういうような気がしております。  時間が来ましたので終わらしていただきますが、十分な論議に踏み込めなかったことはまことに残念ですが、ひとつ大蔵大臣、非常に財政的なピンチにも陥っておる状況から考え、そして特別会計とはいえ、この特別会計もそういった意味で大変なことを迎えておるわけです。担当の大蔵大臣として一般会計、特別会計、責任を持っておるわけですが、今後年金の統合については、いま話のあったスケジュールでもって、しかも条件整備をしながら、権限をつくりながらやっていただけるかどうか、ひとつ決意のほどをお聞かせいただいて、終わらしていただきます。
  324. 竹下登

    竹下国務大臣 本来、年金担当大臣からお答えがあるべきかとも思いますが、恐らく財政担当者としての御質問であろうと思います。  本日承りました貴重な意見を踏まえて、私どもとして全力を尽くしてこれに当たる決意を披瀝いたします。
  325. 平石磨作太郎

    ○平石委員 どうもありがとうございます。
  326. 久野忠治

    久野委員長 これにて平石君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十四日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十六分散会