運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-02-22 第98回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十二日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       渡海元三郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       稲葉 誠一君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衛君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       野坂 浩賢君    市川 雄一君       鍛冶  清君    草川 昭三君       正木 良明君    木下敬之助君       竹本 孫一君    中野 寛成君       瀬崎 博義君    寺前  巖君       中路 雅弘君    藤原ひろ子君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府統計局長 永山 貞則君         青少年対策本部         次長      瀧澤 博三君         警察庁長官官房         審議官     鈴木 良一君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         警察庁交通局長 久本 禮一君         北海道開発庁総         務監理官    楢崎 泰昌君         北海道開発庁計         画監理官    竹下  淳君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         国税庁次長   酒井 健三君         国税庁税部長 角 晨一郎君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省社会教育         局長      宮野 禮一君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         水産庁長官   松浦  昭君         水産庁次長   尾島 雄一君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         海上保安庁長官 永井  浩君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         会計検査院第一         局長      佐藤 雅信君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   鍛冶  清君     市川 雄一君   正木 良明君     大久保直彦君   竹本 孫一君     中野 寛成君   三浦  久君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   中野 寛成君     竹本 孫一君   寺前  巖君     藤原ひろ子君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総括質問に続きまして一般質問、閣僚の皆様御苦労さまです。  昨日で御案内のとおり総括質問も一応終わったわけでございますが、財政問題につきましては肝心なところがまだ煮詰まっていないような気がするわけでございます。したがいまして、そういった点を中心質問をいたしたいと思うのでございます。  その前に、私、昨年もちょうど、議事録を見てみますと、昨年二月二十日に本院のこの委員会におきまして、敦賀にいま建設準備中の高速増殖炉、いわゆる「もんじゅ」の問題につきまして質問をいたしておるのでございますが、最近またこの建設問題にかかわる事柄につきまして地元で大変大きな問題を起こしておるようでございます。科学技術庁関係その他につきましては私から事前の調査もいたしておりますので大方御承知であろうかと思いますが、率直に申し上げますと、敦賀の「もんじゅ建設にかかわる問題について地元市長がお隣の石川県の羽咋志賀町、ことで中小企業関係広域商工会主催で「原発と地域」という演題で講演をいたしております。この中で、私どもとしては常識をもってしても大変理解に苦しむような演説がなされておるわけでございます。ちょっと参考までに録音テープで入手したものを読み上げてみますと、この講演は一月二十六日、いま申し上げた石川羽咋志賀町で行った演説の内容であります。  電源法交付金のほかに裏金(協力金)がある。これは立地市町村でお互いに幾らもらったかは言わないことにしておる。また、この高速増殖炉に係る「もんじゅ公開ヒアリングにゼスチュアで反対した。これはみやげがほしかったからだ。あるいは、原発は金のなる木だ。金ケ崎宮修復六千万、これは原電動燃寄附気比神宮三億円、これは北陸電力一億円、動燃一億円、原電一億円、それに運動公園とか火葬場とか高校、こういったものの施設に対して金が出るんだ。そして、五十年、百年後に生まれる子供が全部かたわになるかもしれぬが、いまは心配はない。  講演をした中身を紹介しますとそういう趣旨講演をして、地元では大変な問題を起こしておりますが、これは所管庁、特に科学技術庁としても御承知でしょうか。
  4. 高岡敬展

    高岡政府委員 お答え申し上げます。  一月の二十六日であったかと思いますが、いま藤田先生指摘のような講演敦賀市の高木市長がおやりになったということを承知いたしております。私ども録音テープは入手しておりませんので正確にどういう御趣旨講演をされたかということは承知しておりませんけれども講演の概要をまとめられたものは一読いたしております。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは敦賀市長がいま申し上げた石川県の志賀町で行った演説でございます。こういうことが事実として存在しているのかどうか。昨年も私、このこと自体は問題にしなかったですが、これに関連することで、この電源三法に基づく交付金の問題について、私ども愛媛県にも少しくかかわり合いを持つ問題について指摘をしたところですが、実際の問題としては、ここで市長が、原発誘致の自主的な全国協議会議長格もやっておる人ですからまさか私はうそは言っていないと思うのですけれども、実際にこういう形でたとえば神社仏閣に対して、今度の場合は神社ですけれども神社政府機関の金が流れていくということがあるのでしょうか。
  6. 高岡敬展

    高岡政府委員 ただいま御指摘金ケ崎宮改修の問題でございますが、これにつきましては、金ケ崎宮改修動燃が直接協力金を出しておるという事実はございません。敦賀観光協会というのがございまして、任意団体でございますけれども、規約上敦賀市長が会長をおやりになっておるようでございます。この協会に対しまして、昨年の九月それから十月にわたりまして一千万円の金を動燃事業団から、金ケ崎公園整備事業というものに協力をするということで支払っておる事実はございます。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ストレートで金を流すということになりますといささかこれは問題が多過ぎるということで、いわばクッションつきで、ワンクッションつきで国の資金がこういった憲法違反疑いがあるようなところに回っていく。いまの御答弁を聞いておりましても、動燃観光協会を通していわば地元公園整備というような形で金を出しておる、こう言っておるのですけれども、現実には敦賀市長が言っておりますように、実態論として金ケ崎宮で言えば六千万のうち一千万がこの動燃から寄附をされておる、そして気比神宮の方にはこれまた動燃から一億円の金が出ておる、こう言っておるわけであります。いまの御答弁では前段の答弁だけでありますが、気比神社の方はどうですか。そういう実態について一括して言ってください、私の方も録音テープから起こした記録も持っておるわけですから。
  8. 高岡敬展

    高岡政府委員 まず気比神社に対する協力でございますが、そういう一億円というような金はもちろんでございますけれども気比神社に対する協力計画といいますか、そういうことはございません。そういうふうに承知いたしております。  それから、いまの金ケ崎公園整備事業でございますが、これは三カ年の計画でございまして、いま御指摘のように六千万円の計画のように承知いたしております。それのうち、一千万円を動燃協力しておるということでございますが、協力金の具体的な使途につきましては、事実関係がまだ十分わかっておりませんので、調査の上、措置をしたいと考えておる次第でございます。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これはやりとりいたしましても、調査も不十分な点もあるかもわかりませんし、いま答弁をしておりますように、クッションつき資金を流しておるというようなこと以上には出ないかと思うわけであります。しかし、実態論としては、私が指摘いたしておりますように、地元敦賀市長が、こういった公開の場で講演をしておる中に、具体的な事実関係が明示されておるわけでありますから、これは私は少なくとも敦賀市長の言っておることはうそを言っていないと思うわけであります。したがって、これはぜひお調べをいただきたいということが一つでありますが、もし、このような私が指摘しておるようなことが事実であれば、これは憲法違反疑いがあると思うのですが、どうでしょうか。  これは、念のために憲法二十条は、「信敎の自由は、何人に對してもこれを保障する。いかなる宗敎團體も、國から特權を受け、又は政治上の權力を行使してはならない。何人も、宗敎上行爲、祝典、儀式又は行事に參加することを強制されない。 國及びその機關は、宗敎敎育その他いかなる宗敎的活動もしてはならない。」、これは、憲法の精神に照らしてこの種の行政行為を見ました場合に、私は明らかに憲法に抵触すると思うのですが、どうでしょうか。  また、時間の都合もございますので率直に申し上げますが、財政再建問題がこれだけやかましく言われているときに、金額の多い少ないは別にして、この種の性格の金が流れていくということについては、私はきわめて重要な問題だと思うのですが、それに対する財政当局見解も伺っておきたい。
  10. 竹下登

    竹下国務大臣 一般的な問題といたしましては、原子炉建設等について、地元のお方に御迷惑や御不便をおかけするという面もございますので、このため、地元の方々の御理解、御協力をいただくために必要な経費について、主務官庁の判断において社会的に相当かつ合理的な範囲内で配慮を行うということもあながち不当であるということは言えないと思いますが、いま藤田委員の御質問そのもの前提に置いてまいりますならば、公の支配に属せざる慈善、宗教、教育等団体に公金を支出してはならない、憲法八十九条でございますか、そういうことから見れば、私も同じような印象は受けます。ただ、主管庁の方で調査された結果に基づいて申し上げているわけではございません。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 財政当局からの一定の見解が示されたわけですが、所管庁長官であります科学技術庁長官見解を承りたい。  また加えて、この種の性格の金が出ておることについては、私が指摘しておる立場からする疑問が起こることは当然だと思うのですが、それに対する会計検査院見解をこれまた聞かしてもらいたい。  それと同時に、私は早急に科学技術庁並び会計検査院としてもこの実態を調べて、この予算委員会が少なくとも終わるまでに報告をしてもらいたいと思うのですが、どうでしょうか。
  12. 安田隆明

    安田国務大臣 藤田先生のいまの御質問でございますが、実はその羽咋志賀町、これは私のふるさとでございまして、四十一年に立地計画を進めまして、一生懸命にいま立地促進に向かって知事初め努力しているところであります。  そこで、高木市長発言でございますけれどみ、私もその実情を一部拝聴いたしました。それから、当庁の方へ来られまして、いろいろ行き過ぎもあったというようなお話もお聞きしておるわけであります。ただ、今度のこの支出そのものは、あくまでもこの公園事業に対する協力金、こういうことでございますので、この点はひとつ御理解願いたい、私もそのように理解しておるわけであります。  もちろん、これが神社仏閣と、こうなりますと、これは問題の派生は先生指摘のような理解の上に立つことになるわけでありますからして、いま先生指摘のように、私たちももう一遍調査をしろ、こういうことでございますから、私たちの手元でもう一遍十分に調査をいたします。そういうことで御了解願いたいと思います。(藤田(高)委員「いつごろまでに報告してもらえますか」と呼ぶ)  なるべく早く調査をいたします。よろしくお願いいたします。
  13. 佐藤雅信

    佐藤会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいまお話しございました金ケ崎公園整備事業に対する協力金、これは承知いたしております。ただ、これは五十七年の九月と十月に支払われたものでございまして、私ども、いま五十七年度の検査は本社について一部分始めたばかりでございます。この事業につきまして、どういう観点協力金が出されたのか、それから協力金が出された後どういうふうに使われたのかということは、この敦賀事業所検査しないことにはまだわかりかねる次第でございます。いま御指摘もございましたので、敦賀事業所検査は四月以降になるわけでございますが、早急に事業団それから科学技術庁とも話し合いをしまして、いろいろ説明を聞きたいと思っております。
  14. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これだけで時間をとるわけにまいりませんので、早急に調査をして、そして、かつ早急に報告をしてもらいたい、このことを強く要請いたしておきます。  それでは続きまして、所得税減税の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  けさの新聞を見ましても、この減税に対しては、石油諸税引き上げをやってそれを財源にするとか、(発言する者あり)あるいは戻し税減税一千億をやるとか、新聞もかなりでかでかと記事を掲載いたしております。後ろの方から、かつて経済企画庁長官をおやりになったような方がああいう不規則発言をされておりますが、減税については、すぐ財源石油諸税引き上げによってやるのだとか、あるいは赤字国債財源にするのだとか、事減税に関する限り、どうして特別のレッテルを張るのでしょうかね。私はこれがわからないのですよ。そうでしょう。減税分だけが、減税分の、たとえば一兆円やるとすれば、それに特別に判こを押してこれは減税分財源ですよなんということはやらないので、問題は、五十兆円の予算の中で減税というものが、もうすでに総理が言われておるごとく、当面する国政政策上の課題としては超重点課題として取り上げていかなければいかぬ、こういう認識が、与野党含めあるいは内閣を含めて大方のコンセンサスができておるわけですね。そうすれば五十兆円の中でどうするんだ、ことしの財源で言えば財源三十二兆何千億の中でこの減税をどうするんだ、こういう基本認識の上に立って財源問題については考えなければならぬと思うのですが、まずこの基本認識をひとつ大蔵大臣からお聞かせいただきたいと思います。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 御案内のように、五十八年度におきましては、とにかく今日まだ税収が歳出の六四%程度しかカバーしていないという低い水準にあること等々各般の検討を加えた結果、税制調査会の答申にもございますように見送らざるを得ない、そうして五十九年度以後、所得税減税の問題については各般の情勢を勘案して検討すべきである、こういう趣旨に従って今日に至っておるわけであります。  ただ、やはり所得税減税の問題が起こりましたのは昨年の本委員会における予算審議の際の問題でございまして、それが各党間の話し合いの場に持っていかれて、そうして議長見解というものをお出しいただいた。その議長見解の中にもやはりこの財源問題を含めてという前提の中に専門家皆さん方にお集まりをいただいて御検討いただいたという経緯からいたしましても、私はいまお出ししておる予算、御審議いただいておる予算というものは、現状においては政府一体、内閣一体責任において御提出申し上げて御審議をいただいておるわけでございますので、現状においてこれが最善のものであるという考え方であるといたしますならば、その歳出規模の中で検討するというものではなく、やはり従来の経緯の中でこの財源問題を念頭に置きながらお互い協議していくというのが筋ではなかろうか。ただ、藤田委員のおっしゃいます、ことほどさように国民全体の減税に対する要求が強いという認識そのものを持っていないというわけのものではございません。
  16. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは後でもさらに論議をしたいと思っておりますが、こういった減税問題や財政問題にかかわりますと、勢いのおもむくところ大蔵大臣中心になることはやむを得ないと思うのですけれども、やはりこの減税問題がここまで国民の強い要求になってきた、サラリーマン党ではございませんが、一つの政党をつくってこの社会的不公平の最たるものを是正しなければならぬという政治的な動きまで台頭してきた、こういうことを考えるときに、これは財政当局だけに任すのではなくて内閣全体の責任においてこの問題を処理すべきではなかろうか。  そういう観点からあえてお尋ねをするのですが、総務長官労働大臣どうでしょうか。この具体的な数字や、減税がどの程度必要であるかというようなことについて数字を操るつもりはございませんけれども、この数年間減税が見送られた経過の中で勤労者生活がどうなっておるか。特に総理府立場からいけば、労働者の可処分所得が低下もしくは横ばいをしておる、このことが景気にも重大な影響を与えていっておる、こういう実態から、総務長官立場から減税に対する考え方、見方はどうなのか。また、労働大臣は、これはもう労働者の、労働団体ではございませんけれども労働界挙げて、強い要求になっておるわけですけれども労働大臣はどういう決意で、労働者サービス省として、特に勤労者生活権利擁護をやっていく労働省として、この種の問題については特に、労働大臣の職をかけてでもこの減税はぜひ実現さすのだというぐらいな姿勢がなければ私はうそだと思うんですよ。やりとりだけ見ておりますと、それは大蔵大臣なり総理とわれわれがやっておって、あなたたちが静かに座って聞いておればいいというものじゃないだろうと思う。私はそういう立場から、ぜひ総務長官並びに労働大臣見解を聞かしてもらいたいと思うのです。
  17. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 藤田先生お尋ねは二点のようでございますが、お答えさせていただきたいと思います。  最初は、減税関係して、家計調査から見た最近の家計収支というものが大事じゃないか、これはどういうような動向であるか、まずそのお尋ねと考えますが、そのことにつきましては、実収入は昭和五十五年には実質減少に転じ、翌五十六年も実質横ばいに低迷しております。しかし五十七年、ここからでございますが、五十七年一―十一月期では実質増加に転じ、やや回復傾向が見られておるのでございまするが、不可分所得と申しますか手取りも、昭和五十五年から五十六年にかけて実質減少となっておりまするが、五十七年の一月から十一月期には実質増加となっております。それから消費支出は、昭和五十五年に実質減少となったが五十六年には実質増加に変わりまして、五十七年の一月から十一月期も実質増加となっておるのは事実でございまするけれども、そこで、働く者の生活、暮らしから考えて給与担当の大臣である総務長官はどう考えておるか、こういうお尋ねでございますから、これについてお答えをさせていただきたいと思います。  そこで、減税についてはもちろん私の所管ではないので直接申し上げることは差し控えたいと思いまするが、しかし、国民の間に減税を望む声が強いことは私も十分承知しておるのでありますが、この問題については先般税制調査会の出されているところであり、重要な問題でありますると同時に、国会の中で与野党で論議されておるのでございまするから、その見通しと申しまするか、それを見守って、今後慎重に検討していくべき問題であって、できるだけ私ども減税を望む気持ちでございます。  以上でございます。
  18. 大野明

    ○大野国務大臣 所得税減税につきましては、勤労者諸君の間に大変強い要望がある、また労働団体からも強い要請があることは十分承知いたしております。私としても多大な関心を払っておりますが、いずれにいたしましても、これはもう先生承知のとおり、さきの九十六通常国会で大蔵委員会の中に減税に関する小委員会が……(藤田(高)委員「経過はいいんだ」と呼ぶ)それにしても、そのとき、減税は行いたいということは各党一致したけれども、しかしながら財源問題において意見の一致を見なかったということがございます。  そこで、いずれにしても先般の政府税調においても、課税最低限の見直しであるとか、あるいはまた税率構造の見直しであるとか、すべての税制問題の中で考えていくべき問題であるということでございますし、また同時に、今国会におきましても、二日一日ですか、与野党の国対委員長会談でこの問題も現在論議されておられるようでございますから、私としてはやはりその推移を見守りませんと、国会軽視と言われたりいろいろございますので、その後においてまた藤田先生にお話しする機会を得られれば結構でございますが、私としてはその推移をいま見ておる、こういうことでございます。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は大変、こういう毒舌じゃないけれども嫌な言い方をしてなんですが、やはり所管大臣は、もっと勤労者なり直接自分の所管にかかわる問題については、大蔵当局は大蔵当局の事情はあるにしても、主体的な立場でその主張を国民の前に明らかにする責任があるんじゃないか。これは総務長官で言えば、あなたは米価問題や何かでは大変農民の期待にこたえて、それこそ何といいますか、この米価問題に対する農民の要求が通らなければ自分の職をかけてでもという気魄で取り組んでこられた大臣だと私は理解をいたしております。いまの御答弁を聞いておりますと、やはり気持ちはわかるがという程度で、強い要求があることは知っておるがという程度なんですね。そうではなくて、統計数字をいま御披露になりましたが、これを見ましても、勤労国民生活というのは上がっていないのですよ。ちょっと上向きになりかけただろうかなという程度なんですからね。そうでしょう。そうして、この減税問題というのは、本来減税と言うこと自身がおかしいので、増税なんですね。そうでしょう。これは新聞の報道じゃありませんけれども、この数年の間に自然増税という形で所得税の取り過ぎが五兆円ないし六兆円だということははっきりしておるわけでしょう。こういう御認識総務長官もしかとお持ちなんですか。どうなんですか。  それで、あなたはさっきの御答弁の中で、私はちょっとなにしたのですが、可処分所得というのはどういうものか、総務長官ちょっと説明してください。可処分所得をちょっと説明してくれませんか。そういう認識自体ができてないんじゃないですか。――だめですよ、大臣に聞いているんですから。そんな説明を君に聞くつもりはないんだ、こっちは可処分所得なんか知っているんだから。大臣に聞いているんだよ。
  20. 永山貞則

    ○永山政府委員 ただいま大臣のお答えになりました可処分所得は、実収入から税金及び健康保険等を差し引きましたいわゆる手取り収入でございます。
  21. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 藤田先生から御指摘いただいて大変恐縮に存じますが、私の言い違いでございまして、不可分と申しましたのは可処分所得で、あのときに手取りとつけ加えて申し上げたつもりでございますから、そこでひとつ訂正させていただきたいと思います。御了承いただきたいと思います。
  22. 藤田高敏

    藤田(高)委員 やはりこの減税の問題は、私はあえて、嫌な質問のように聞こえたかもわかりませんが、可処分所得というものの認識自身がきちっとできていないと、さっきの単なる数字の操りになるということを言いたかったわけであります。  そこで、私は、お二人の大臣だけを詰めるようでありますが、減税というものではなくて、勤労所得税に関する限りはもう増税で、取り過ぎになっておるんだから、それを社会的公平感の立場からも返すべきものだという基本的な認識についてはどうでしょうか、労働大臣
  23. 大野明

    ○大野国務大臣 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、私どもも、大蔵委員会の中の小委員会の結論を見ても、財源の問題ということでございますので、私としては気持ちがあっても、やはり財政当局との問題もあるわけでございますから……(「気持ちだけ言っていればいいんだよ」と呼ぶ者あり)いやいや、それはそうおっしゃるけれども、愛情があってもできない現実との板挟みで、本当はこっちも苦しい思いもしているところもございます。そういう意味ですから、これはやはり財政当局との問題ということについては、私から強い要請をすることは、当然労働大臣立場としても大野個人としてもそういう気持ちは持っておりますが、現実の金目ということになると、これは私の一存というわけにはまいらないと思っております。
  24. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、特に労働省あたりは大蔵省任せではなくて、われわれが国会でこういう議論をしておりますように、後から私は不公平税制の根本的な是正の問題に触れていきたいと思いますが、財源がないことはないんですよ。そうでしょう。去年だって所得減税に対する共同修正案をわれわれは出した。御存じでしょう。その充当財源の良否は別にして、たとえば外為関係資金を崩すとか、あるいは今度の国会でも出てきておりますように、税外収入としての補助貨幣の取り崩しとか、今度の予算でも一兆円余出してきておるじゃありませんか。そういうものをわれわれは去年出したんですよ。去年ですよ。いいですか、去年出したのです。ところが、私どもが去年要求した、そういう財源を見つけて出した、それは減税には使いません。しかしことしは税外収入で出してきて、そうして財源に使っておるじゃありませんか。そういう努力を労働省何かおやりになっておりますか。そういう努力をやるべきじゃないでしょうか。それで初めて勤労国民要求にこたえるということができるんじゃないでしょうか。財源は皆大蔵省任せ、そういうものじゃないと思うのですが、私が指摘しておるそういう面を含めてひとつ労働大臣の決意を聞かしてもらいたいですね。
  25. 大野明

    ○大野国務大臣 いずれにいたしましても、財源問題についてこれは労働省が把握、掌握しているものではございませんし、そういうものについての勉強はさせていただきますが、いま藤田先生がおっしゃるように、すべて労働省が金を出せというような御議論になると、これはちょっと無理だと思います。(「金を出せとは言ってない」と呼ぶ者あり)ですから、そういう勉強はさせていただきます。
  26. 藤田高敏

    藤田(高)委員 全く、政治家は大臣になることだけが目的ではなくて、私は、政治家はやはり何をなすべきかということによってその価値が判断されると思うのですよ。いまのような逃げ口上に近いような、言葉のやりとりだけの大臣の答弁をこれ以上聞こうとは思いません。しかし、私は特にお二人の大臣に申し上げておきますが、勤労者生活にかかわる所管大臣としては、事所得減税の問題についてはわがこととして財政当局にも迫っていく、こういう姿勢で取り組んでもらいたいということを強く要請をいたしておきます。  このことに関連をして経済企画庁長官並びに山中通産大臣にお尋ねをいたしたいわけでございますが、山中通産大臣の場合は、昨年の経緯を踏まえて、減税対策特別小委員長にもなられた。これまた、私は率直に言って、山中通産大臣は、所管は違いますけれども、事税制の問題を含め財政問題については、われわれ国会議員の中でも超一流の政治家だということは、これはもう決してお世辞でも何でもなくて、自他ともに認めておる山中大臣でございます。私は、そういう点からいくと、去年も五千億程度の財源を――去年ですよ、五十七年度ですね。五十七年度の減税について約五千億程度の財源を見出す作業がなされてきたというふうに理解をいたしております。ですから、これまた所管違いではございますが、そういう経過を踏まえて減税に対する見解お尋ねしたいのと同時に、今日置かれておる通産大臣の立場からいけば中小企業に対する投資減税も大事でしょうけれども、それ以前に所得減税の方が先行をして大事じゃないかという認識を私は持っておるわけであります。それはなぜかと言えば、今日の経済不況というものは、最終消費が伸びない、末端消費が伸びないというところに一つの大きな原因があるわけですから、いわゆる中小企業のつくった品物や製品が末端の市場で消化できない、売れない、これが今日消費不況と言われておる一番大きな原因だと私は思うんですね。そういう点から言いますと、この末端消費をふやしていく立場からも、これは通産行政の立場から見て所得減税というものは絶対的に大事じゃなかろうか。そういう立場から見て、積極的に財源は、それは内閣全体でお決めになることでありましょうけれども、もう今日ここまで、総理も何らかの方法で減税はやらなければなるまい、こういうところまで来ておるわけですから、そういうものを踏まえて、ひとつ通産大臣の御見解を聞かしてもらいたいと思います。
  27. 山中貞則

    ○山中国務大臣 余り現職以前の話は触れないことにしておりますが、しかし、どうしても話がそこに戻るようでございますから振り返りますと、議長見解を受けて衆議院大蔵委員会減税問題等小委員会を置くということで、私がその職を預かりました。その席はほとんど秘密会にいたしまして、忌憚なく与野党見解を述べ合うという形をとりましたので、非常に和気あいあいとして、そして国家の財政の危機も認識しながら、何とか新しい道を探りたいということで、しかし、具体的な減税財源の個々の項目になりますと、アイデアはたくさん出ましたけれども、なかなか合意を得られなかった。私は、もう少し続けて、その合意を得られないままでも減税をやり得る、すなわち、減税には賛成なんですから、財源は自民党の責任で出す。その財源対策については反対である、それは野党の方々ですよ。しかし、反対であっても、減税の目的を達成するためにいわゆる絶対に阻止するという意味ではなくて、反対の理由を述べてもらう。しかし、採決の結果、減税財源としてそれが決定されたというような形を想定して進んでいたのでありますが、突然の政変が近づきましたので、私としてはとりあえず議長に中間報告をいたしてございます。  それは、各党、与野党ともに所得税減税の必要なことについては意見の一致を見た。それについて、財源問題について各税目にわたって検討を繰り返したところであるが、その結論を得なかったので、引き続き検討を続けていく。その際の条件としては、長期税制改正の減税を行う。すなわち単年度の戻し税はとらない。すなわち、課税最低限、累進税率の外国に比してきわめて高い構造の是正、できれば最高税率にも配慮するという内容で、きちんとした恒久税制をもって対処すること、その財源はしたがって赤字国債にはよらない。それだけでしたかな。そこらの合意を得まして、そしてそれは与野党全員の委員の方の御了解を得た文章として、私から議長に提出をいたした経緯がございます。したがって、そのような道を今後も御検討願えればなという念願は持っております。  そこで、今度は産業政策でありますが、最近の日本の経済あるいは世界経済を見ても非常に暗い感じですよね。この暗い感じが、一九三〇年時代への、あのおぞましき時代への逆戻りの第一歩であってはならぬ、何とかして国民に明るい未来を、せめてともしび一つともしたいというのが、これは産業政策としても念願であります。  それは御指摘のように、国民の最終消費というものの実質成長、経済成長に占めるウエートからいってもそうでありますし、あるいは個々の月ごとの百貨店の売り上げの状態を見ても、消費性向というものが極端に低い、あるいは意欲を失っておる、買いたいものがあってもしんぼうしないと、生活が先だとか、あるいは買いかえの時期が来ていても、これはもう少ししんぼうして買いかえを先にやろうじゃないかという意識が国民全体に無意識に浸透しますと、これはやはり大きな消費支出あるいは消費性向の変更、あるいは多様化していく、ギャンブル等の収入は減るが、その他の方はまたふえた面もあるとか、いろいろなこともありまして、これをどういうふうに景気づけようか。  しかし、いずれにしてもまず一番弱いのは中小企業だということで、いまの減税論議の経過でもわかりますように、大蔵省の方には、一般会計歳入歳出のための財源がきわめて少ないし、苦し紛れの財源かき集めまでしておる状況を知っておる私でございますから、中小企業投資減税制度というものを、よくわかるのですけれども、これを最終的に大蔵省に要請すべきかどうか、私は多分に迷いました。迷いましたけれども、しかし、原案どおりやれば税額控除の、特償のといろいろな組み合わせがありまして、二千六百億もの財源が要るという構想でございましたので……(藤田(高)委員「投資減税以前に所得減税の方が必要じゃないかとお尋ねしたのです」と呼ぶ)わかりました。  そういうことで、大蔵省には財源的に相当苦労してもらったといまでも私は思っております。しかし、それは大局的に見て一番弱い立場の中小企業に対して配慮をしてくれたという政府の一般的な考えとしてそれを受けとめたわけでありますから、おっしゃるとおり、すべてに先立つものは、やはり国民の消費生活の減退あるいはそれの実質目減りというようなことのないような行政は絶対なくてはならない。したがって、総理も言っておられますように、何とかして減税の道があれば模索したいと言っておられますが、それは通産行政としても、最終消費を支えるものは個人所得でございますから、そこの所得の異常な過去の実質負担増というものが、一挙に解決されなくても、逐次その改正がなされていくということが、わが国の景気刺激のために、いわゆる暗いばかりの見通しの中に明るい見通しのともしびを点ずる意味で私も必要であると考えておりますが、これは通産大臣としての見解でございまして、政府全体の見解は、総理のそういう願望を受けた作業がどう進むのか、それについて私も見守ってまいりたいと思います。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 通産大臣は所管大臣の枠を超えての発言は、これはちょっとできがたいという心情で、精いっぱいのところを言われたような気がするわけであります、表情やその他から判断をいたしまして。したがって、昨年来の経緯がありますだけに、これはぜひひとつ財政当局を通産行政の立場からも鞭撻をされて、この予算委員会開会中――私は後で申し上げようと思うのですけれども、各党間の政治折衝ももとより大事です。大事ですけれども、私は、減税をやるかどうか、あるいはその財源は何によって大方見出すのか、またその時期はどうなんだ、減税性格は、戻し税減税はいかぬのであればどういう性格減税にするのかということは、本来大蔵委員会とか予算委員会でやるべきだと思っておるのですよ。そういう立場から言いますと、もう少し本音を出し合って減税に対する議論をやりたいものだ、そういう立場関係大臣の見解も聞かしてもらいたい、こう思います。  そこで、実は後でお尋ねしようと思っていたのですが、通産大臣も御予定があるようでございますのでここでお尋ねしておきますが、せんだっての日米、日欧間のいわゆる通商協議ですね。これは二月十二日の報道によりますと、総理がこの三極通商会談の中で、内需で成長を図っていく、アメリカのブロック代表が、「首相が景気回復のためリーダーシップを発揮すると信じている」、その前にブロック代表が、いわゆる中曽根総理が内需主導で国内経済を拡大させることを約束したということを言っておるようでございますね。この会議には当然通産大臣も御列席であったでしょうし、また記者会見にも参加されたのではないかと私は思うのですが、内需拡大、内需の成長といいますとどういう手だてがあるのでしょうか。その中にはやはり所得減税というものが具体的に一つの柱にならなければ内需拡大にならぬと私は思うのですが、この会談の中身は何だったのか、所得減税の問題が、そういう内容のものがあったのかどうか、これは総理がおりませんので、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。
  29. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この四極会談は、カナダを加えて四極でございますが、私が主宰をした形になったものであります。しかし、ブロック通商代表はまた別途アメリカ側の立場として総理を表敬した際にいろいろな話をしたようでありますが、その際は私は陪席しておりませんで、安倍外務大臣が陪席したと承知いたしております。したがって、私とブロックUSTR代表との相対ずくの個別会談ではその話は出ません。それから四極の会談でもその話は出ていないのが事実であります。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、通産大臣が同席してない場所のことでありますから、これ以上お尋ねしてもその点に関する限りは御答弁はできないと思いますが、少なくとも、外国の通商代表との折衝の中では話しすることはできるが、肝心な国会の中では腹を割った話ができぬというのも非常にさびしい気持ちなんですね。私は、少なくとも内需を拡大するということになれば、賃上げも大事でしょうね、それから減税も大事でしょうね、人事院勧告の完全実施も、できることならば完全実施もこれはもう大変大事な条件だと思いますよ。そういうことがやはり頭にあって、三極になるのかカナダを含めて四極になるのか知りませんが、そういう話が出てくると思うのですよ。この記事は非常に小さい記事ですけれども、重要視した記事として私自身は関心を持っておるわけであります。  ですから、私はぜひ内需拡大、沈滞した景気の向上のためにもこの減税というものが必要じゃないかと思うのですが、いま私が指摘したような観点から、どうでしょうか、同じ愛媛出身の経企庁長官でございますが、ぜひひとつ見識のある見解を承りたいと思うのです。何か財政とか経済審議会の何もかも情勢待ちなんていうことじゃなしに、それは河本経済企画庁長官責任でおやりになったことは、結果的に当たらなかったこともあったかもしらぬけれども、かなりバイタリティーのある、私だったらこうやるんだというものがあったと思うんですよ。その点ひとつあなたの見識のある見解を聞かせてもらいたいと思います。
  31. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 景気対策という、あるいは景気の刺激という大変企画庁長官には魅力のあるお誘いで、私も所得税減税についてはもう大変な関心を持っております。しかし、この問題を、私は、景気対策といった観点よりも、むしろ五年間減税をしなかった、収入に応ずる分以上に税がふえたという、サラリーマンを中心とする、所得税に対する何と申しますか、いらいら、これからきたところの政治問題であると考えているわけでございます。  減税が景気に対してどういうふうに影響をするかということを言えば、それも財源いかんによる。いま藤田委員のおっしゃったように五十兆の中で解決すれば別でございましょうけれども、その財源を、たとえば歳出の削減に求めたり、あるいはほかの税金を設けたりするならば、これはまたどのような効果を生ずるか、むしろ相殺的な効果が働いて、景気対策として所得税の減税を期待するということを言えば、これは企画庁長官としては落第になってしまうと私は思っております。  そうじゃなくして、政治問題としてここまできた所得税減税をどのように考えるか。しかし一方、私は、ここで伺っても大変白熱的な論議になりますように、鈴木内閣が政治生命をかけた赤字公債の減少、減額、これとどのように調和していくかの問題だけであろうと思います。したがって、やはり財政再建を害さない範囲においての財源を見つけての所得税減税は私はやるべきである、こういうふうに思っておるところでございます。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 さすが大蔵省出身の、(「愛媛県出身」と呼ぶ者あり)愛媛出身の大臣だけございまして、聞きごたえのある答弁。(発言する者あり)しかし、減税やるべしという意欲のほどはお伺いすることはできましたし、問題の性格は、後ろの同僚のやじではございませんが、塩崎経済企画庁長官見解を私は多としたいのです。  それは、私は何も景気対策だけにしぼったわけじゃない。問題の政治的な物差しの当て方としては、社会的不公平、社会的不公正を是正するという、これはいま非常に大きな問題である、そういう観点からまず減税問題を取り上げるという視点は私は全く同感であります。そういう意味で聞きごたえがあったというわけですね。しかし、現実の問題としては、景気対策にもこれは重要な影響があるんだというこの観点も私は軽視することはできない。そこを逃げますと、これはまた画龍点睛を欠くのじゃないか、こう思うわけであります。  そこで、最後の逃げはやはり財源だ、こういうことでありますが、そこで大蔵大臣お尋ねをいたしたいのですけれども財源問題を含めて、大蔵大臣どうでしょうか、やはり私はこの委員会で、先ほども触れましたが、各党間の折衝ももとより並行して大事でございます。しかしこの委員会で、できることなれば、財政担当大臣の責任において、私はできればこういう財源を見合いに減税をやりたい、こう思っておるんだというぐらいなところをひとつぜひ御答弁を願いたい。特に昨年来、ここにも持っておりますが、先ほど山中通産大臣が言われました議長見解なるものも、これはあなたが中心になっておまとめになられたものなんですね。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕  去年の三月の七日ぐらいじゃなかったかと思うのですが、実は私自身はああいう問題の処理の仕方についてはいささか抵抗した一人でございます。そのときのやり方としては、中長期ということで、中とは何だと言ったら、中というのは五十七年度だ、長というのは五十八年度だ。五十八年度は減税をやるということは、竹下副幹事長は五十八年度については絶対やるのだということを腹をたたいたとまで言われて、私らは報告を聞いた。五十七年度についてはなるほどむずかしいことであるかもしらぬが、減税財源をどうして見出すのだということで、この中という点についても五十七年だということを前提にして議論をした経過があるわけですね。そういうなにからいいますと、だれよりもこの当面する所得減税についての責任のあるのは竹下大蔵大臣ではなかろうか、私はこう思うのですね。しかも二度目の大蔵大臣ですから、いまわれわれが要求しておる一兆円そこそこの減税財源ぐらいはどこからでもひねり出すことができるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの御指摘のとおり、この議長見解ができましたときは、確かに私が各党間の協議に自由民主党を代表して出かけておりました。そして議長見解をつくって小委員会ができます際に、先ほど御答弁いただきました現通産大臣に小委員長をお願いするという、これは与野党の合意でありましたので、その経過をずっと見守ってきたところであります。  それで、私自身も当初三つの前提を置いていろいろ議論をしたことをいまでも覚えております。一つは、歳入欠陥が出るではないかという議論の場合に戻し税というのはやはりナンセンスではないか、こういうことが一つありました。いま一つは、今後大きな政策転換が行われるような場合には、これは言ってみれば、中期の問題としてとらえ得る可能性はあるではなかろうか。三つ目の問題は、オーソドックスに五十八年度予算審議の際にこれらの問題が議論をされて結実するではなかろうか。こういう前提があったことは事実でございます。したがって、私がいまその当時を想起しながらまさにさま変わりだと言うのは、そのときの議論の中では、六兆一千億の歳入欠陥が生ずるということだけはだれしも念頭に置かないで議論をしておった。それはやはり一つの大きなポイントではないかというふうに思うのであります。  したがって、当時の自分の発言を振り返ってみて、一つ一つその発言に対して精査をしてみまして、やはりその見通しができなかったということは、私自身もその責任を感じなければならぬ。が、さようしからば、いま再び召されて大蔵大臣になってみて、自分の能力で、そういういままさに政治問題としての認識、こういうお言葉がございました。実際それに対応するだけの財源というものを探索し得るかどうかということになりますと、もとより今日その自信はございません。そうして本音の議論をしろということでございますので、もとよりいまこれを現状においては最善のものなりとして御審議をいただいておるという予算そのものの中で、仮に減税の合意に達したとすれば、これは予算修正も伴う問題でございましょうし、そういうもろもろの状態を見ながら、ただそういう意欲が大変強いということの認識の中で各党間の協議を見守っておる。その各党間の協議の場はどこでやるべきかということになると、私的な考え方がないわけでもございませんが、これはハウスにおいてお決めいただくことでございますので、いま政府の一員になった場合、どの場が適当であろうというようなことは差し控えるべきではないか、こういうふうに考えております。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、昨年の経過の中で本音の御発言のあったことを多といたしたいと思います。確かにその時点では相当大きな歳入欠陥が生まれるということは、われわれその時点においても指摘をいたしたつもりでございますが、大蔵大臣自身は、その見通し、認識についていささか欠ける面があったのではなかろうかという、こういう率直な御答弁というものは、やはりそういうところから生産的な議論が発展するんだ、こう思うんで、その限りにおいては私、多といたしますが、私は事ここまで来れば、けさの新聞ではないですけれども、もう戻し税減税が一千億がいいとか悪いとか、石油諸税を一斉に上げて財源を二千億、三千億とか、こういうふうに大きく出てきますと、これはもう外が働いておる証拠なんですね。ところが一番おくれているのは、肝心なこの予算委員会なんじゃないですか。私はそうであってはならぬと思うのですよ。  さっきの政治論ではないですけれども、ここまで減税問題というのが政治問題の非常に大きな課題になってきておるわけですから、やはり財政当局として、大蔵大臣が少なくとも新聞や何かに出てくるよりも一歩先んじた形で国民政府の態度というものを表明していく、そういうものがなければ政府に対する信頼がない。また、減税問題に対して肝心な財政当向が後追いで引っ張られていってやるということになるのじゃないですか。私はそこらに非常なもどかしさを感じるわけであります。そういう意味で、せっかく総理も各党間の合意ができればこれを尊重すると言うところまでいっているのだから、担当大臣としてはその意を受けて、減税は、何としても昨年来の経緯がありますので、やるという決意で取り組みますというぐらいなことはお述べになっていいんじゃないでしょうか。決してこれは、私は不沈空母や何じゃないけれども、勇み足にはならないと思いますよ。どうでしょうか。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところが、一つの手法とでも申しましょうか、やはりある意味において、この議会制民主主義というもの、議院内閣制というものは、こういうハウスの中の論議に行政当局が引っ張られていくという姿が、ある意味においては民主主義のいいところじゃないかな、こういう感じが私は率直に言って平素からいたしておるわけでございます。ただ、総理からも申し上げておりますように、国民要求は強いことを十分認識しておる、そして模索しておる、こういうことをおっしゃっております。それからまた税制調査会の方でも、これは五十九年度以降という前提ではございますものの、検討すべしという方向が打ち出されておりますので、そういう線に沿っては絶えず自分の念頭から去らしてはならない問題だ。ただ、世論なり政治問題の解決というのは、やはり国民の代表の集まりである国会の中のこういう問答に、ある意味において、表現は適切かどうかは別といたしまして、それに引っ張られたりしていくということが、合意の形成というものの一番正しい姿ではないか、こういう感じがかねてからしないわけではございません。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は本来の財政再建の問題にまだ入り切れないわけでありますが、財源の問題になれば、大蔵大臣、このグリーンカード制の問題、これなんかはやはりやろうとすれば、利子配当総合課税への移行の中で財源がないことはないですね。あるいは俗にワリチョーと言われておる償還差益に対する課税の問題、これはグリーンカード制の問題と一体になっておるわけですが、この税率なんかわずか一六%ですね。これは本当に話にならぬですよ、不公平税制の中でも。こういうものを少なくともグリーンカード制を採用する中で三二%程度にするというのは政府の方針だったのでしょう。こういうものをやれば、これだって三二%にすれば一千二百億ぐらいの財源が浮いてくるじゃありませんか。そうしたら、けさの新聞じゃございませんけれども、一千億ぐらいの金は出そうと思ったらどこからでも出るのですよ。そういう努力を、そういう積極的な姿勢を示されるのが大蔵大臣としての今日置かれておる責任じゃないかということを私は言っておるわけです。どうですか。
  37. 竹下登

    竹下国務大臣 御指摘のように、そういう不公平税制という言葉自身は、これはある種の主観でもございますので人によってそのとり方はあるいは違う点もあろうかと思うのでありますけれども、こういう問答の中で指摘されるような問題を絶えず念頭に置いて対応していくという行政府としての姿勢は、やはり持つべきであるという気持ちは私も十分持っております。  ただ、グリーンカード問題ということになりますと、ここで種々申し上げる考えもございませんが、私自身当時提案者として、胸を張っておったわけでもございませんが、半分ぐらい胸を張って提案理由の説明をしたというようなことも想起しながら、したがって、なぜこれをまた延期する法案を出さなければならなかったか。そうすると、税制調査会というものは、本委員会の問答等を報告した上で審議していただくわけでございますが、それの結論の出るまでの間、いま御指摘のこの税制上の問題もそのまま継続するわけでございますので、そういう点についての御指摘もやはりいたくちょうだいしなければならぬ問題だなという考えは十分ございますが、私自身いまこれだけの財源をこのようにして生み出しますと申し上げるだけの環境にはございません。
  38. 藤田高敏

    藤田(高)委員 具体的に何を財源に充てるかというところまでは御答弁できがたい環境にあろうかと思います。しかし、総理もああいう形で各党間の合意ができれば減税についてはこれを尊重するということを言っておるわけですから、それをさらに、各党間の合意ができれば、主管大臣としては当然のこととして積極的に取り組んでいく、そういう決意のほどはどうでしょうか。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題につきましては、引き続き与野党間で御検討が行われておる、これを十分に尊重していく所存であるということは当然のことでありますので、それがさらに前国会からいろいろな経緯をも踏まえながらも、今日このような問答の中でも継続しておる、そういう政治的背景をも踏まえて考えるならば、私どもは最大限尊重すべき課題であるというふうに理解しております。
  40. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最大限尊重するということでございますので、これは与野党間の一応の決着を見ないことには、きょうの段階では大蔵大臣としてそれ以上の踏み込みはできないように判断いたしますが、ぜひ最大限の努力をしてもらいたい。強く要請をいたしておきます。  最後になりましたが、本題に入ります。  財政再建問題については、総括質問全般を通じていまだに明確にならない面がたくさんあるわけでございます。  時間の関係で具体的にお尋ねいたしますが、これはいままでの総括質問のおさらいを含めてですけれども、中曽根内閣の財政再建とは何なのか、この中身を具体的にひとつお示しを願いたい。  二つ目は、この財政再建を達成するために、財政改革をやるということは、しばしば総理ほか大蔵大臣からも言明をされておるのですが、その財政改革の中身、その手段ですね。段取りはどういう形でやっていくのか、お尋ねをいたしたい。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 これは財政再建、究極的には私は財政が対応力を回復するということであろうと思っております。したがって、お手元にお届けいたしました財政改革に当たっての基本的考え方について、かいつまんで申し上げますならば、先国会の御質問に対しましても、いわば五十八年度予算編成を通じて財政改革に対する考え方をまとめて本委員会予算審議に間に合うように御提示申し上げます、こういう答弁をしてきたわけであります。したがって、まずは五十八年度予算の編成に当たりましては、聖域を設けることなく、見直し、合理化を行ってまいりました。そしていわゆる五十六年の決算不足補てんに伴う繰り戻しも、これも一応きちんと行うことにいたしまして、そして五十七年度補正に比べてでございますので、当初予算に比べてじゃございませんが、一兆円の公債発行を減額さしていただいた。そういう姿勢でこれを行いながら、将来の財政改革に当たっての基本的考えをまとめてきたわけでございます。  したがって、やはりそういう方向を継続するとともに、さらに今度は、進め方といたしましては、まず一つには、守備範囲の見直しであり、二つには、いわゆる歳入の、公平、適正な税制のあり方についての検討であり、そして三番目には、五十九年度脱却を目標としてまいりました特例公債依存体質、これが脱却できなかったわけでございますので、新たにそれにでき得れば数年というめどをつけて、そして達成を図る努力を具体的に進めていく。大筋で言えば三つのことに財政改革の進め方はなるのではなかろうかな、こういうふうに思うわけでございます。  その中でやはり気になりますのは、されば特例公債の脱却年度が五十九年度ギブアップしたら少なくとも今度は一体何年にするんだ、これが一番気になることでございます。  たとえば臨調の部会報告を見ますと、財政の機動性、弾力性の回復には、六十年代を通じて努力が必要であると述べられております。とはいえ、六十年代を通じてというと十年先、こういうことになるといかにも長過ぎるのじゃないか。また他方、二、三年としたのでは現実的に無理ではないか。そうすると、お出しした五年と七年という試算B、Cというものがございますので、そういうものを一つの政策目標としてのめどに置くことが望ましいのではないかな。しかし、これこそまさにこれから経済審議会のお考え方等も十分に尊重しながら、財政当局独自できちんとしたものにだんだん詰めていく努力をしていかなければならぬのではないかな。なかんずく国会の場を通じての対話の中に、どの辺であるかということを探り続けていくというのが当面の私どものスタンスではなかろうかというふうに考えております。
  42. 藤田高敏

    藤田(高)委員 鈴木内閣の財政再建目標が失敗をしましたけれども鈴木内閣は五十九年だったら五十九年というものをめどにして財政再建をやるんだ、この意欲は私は非常に評価すべきだと思うのですね。なるほど失敗して責任もとられた。しかし、これは政党政治のたてまえからいって、自民党の内閣から、自民党の政権から、まあこれは仮定でありますが、社会党を中心とする連合政権だったら連合政権にかわるという場合に、三年間で財政再建をやろうとしたのが七年になろうと十年になろうと私は仕方ないと思うのですよ。しかし、政党政治の内閣の継続性からいって、前内閣が五十九年度までに財政再建のめどをつける、そのめどとは何か。これは赤字公債からの脱却だ。これが第一段階。その第一段階の脱却が七年もかかるなんてということになると、これは内閣の継続性からいって非常におかしなことになりませんか。そうして総理総括質問の中身を聞いておりますと、場合によったら十年になるかもわからぬなんて言っているのですね。これはもう私は大変なことだと思う。  第一勧業銀行が試算を発表しております。これは経済企画庁長官、成長率を一応六%で試算は出されておるようであります。いま大蔵省から出してきておるこの中期試算は六%ですが、第一勧銀の試算では五%の成長でいった場合は、これから特別間接税であろうと何であろうと特別な収入がない限り、四兆円程度の収入がない限り、いわばそういう増税策をとらない場合は、現在の赤字国債からの脱却は二十六年かかるのですね。この計算は六%ですが、私はむしろ成長率は低いだろうと思う。だから、この第一勧銀のなにじゃないけれども、二十六年かかるのですね。建設国債を含めて全部償還をしてしまうということになると四十二年かかるのです。これは二〇〇〇年代に入るわけですね。四十何年かかるのですね。大型増税を仮にやって成長率五%と見ても十五年かかるというのでしょう。そうすると、いま大蔵大臣の御答弁されておるなにからいったら、何年先を目標に赤字国債からの脱却をやるのだ、この目標ぐらいは出なければいかぬのではないか、これが第一段階のめどだと思うのです。第二段階は、既発債の少なくとも赤字国債を完全になくする。第三段階は、建設国債を含めた全部のそういう借金をなくするのがいつだ。こういう条件、目標を付して財政再建というものはなされなければならぬと私は思うのですが、どうですか。そういうものが何も明示されてないのですね。  そして臨時国会の中であれだけ財政再建大綱というものを責任持ってお出しなさい、出しましょう。ところが全くの試しの考え方だけしか示されていない。私はその点では非常なむなしさを感じるのですね。この予算委員会でいろいろ議論のやりとりはやったけれども政府責任ある財政再建と称するものに対する具体的なものが何もない。そうしていまそれを進めていく手だてにつきましてもお話がありましたが、ついこの間までは、適正な税制の改革なんということも余り強調されてなかった。私は不公平税制の是正という言葉を使わせてもらいますが、大蔵大臣は、先ほどのお話では適正な税制という言い方をされましたが、言葉はどっちでもいいと思うのです。しかし、今日既存税制の中で、やはりどう考えても社会的に不公平だというものに対して大胆にメスを入れなければ財政再建の手だてにはならぬと私は思うのですよ。  そういう点で、きょうもう時間がなくて、これは半分以上残りますが、少なくとも中曽根内閣の目指す財政改革の目標、基準は何なのだ。重ねて言いますよ。赤字国債からの早期脱却というのであれば、それは少なくとも何年に置くのだ。そして既存の赤字国債を完全に返す年度をいつにしていくのだ。そうしてできるものであれば、この国債依存率の二六%を七年先にはたとえば一〇%程度におろすのだとか、こういう目標を提示しなければ、これはもうとてもじゃないが私は財政再建なんという論議をしたことにならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに考え方の相違はございましても、財政再建計画を出せ、それが言ってみれば、いま少しこれを緩和して大綱のようなものを出さないか、これは私自身も評価をしてみたわけであります。確かに自由主義経済という基盤の上に立って国際経済がこれだけ不透明なときに、なかなかきちんとしたものが出しにくい状態の中で、少なくとも模索してみようというので作業を行いました。その結果がA、B、Cというようなものをお出ししたわけでございます。  したがって、当面いま藤田委員の御主張による赤字国債脱却のめどというものはいつか。これを私どもいまは数年と申しておって、経済審議会等の意見をも聞きながら、これをいつにするかということを、十分国会の問答等を聞きながら検討してまいります、こう答えておるわけです。そうすると、次の赤字国債がそのときにゼロになったといたしますならば、これが償還計画を見ますと、いわば赤字国債の完全償還の年次はいつになるかということは一応はめどがつくと思うのであります。ただ、その際に償還の財源をどうするかという議論が別の議論としては残ると思います。これは本委員会等で残る議論であろうと思います。  それから三番目が、いわば対応力を完全に回復するという時期をどう見ていくか、こういうことであろうと思うのです。だから、大変な長期にわたる見通しというものはなかなか立てにくい問題でございますが、いまのような御趣旨を体して、私どももできるだけ具体的なお答えができるような検討をこれから十分させていただきたい。  そしていろいろな見通し等が経済研究所等から出ております。ただ、その際はやはり今日の制度、施策を前提としてというのがおおよその考え方でございますので、したがって、現行の制度、施策そのものもある程度変わっていくということを考えながら模索していかなければならない問題だ。だから、おっしゃっておる意味は私も非常によくわかるのですが、それに明確に答えられない、事ほどさように非常に不透明な状態にある。しかし、いつまでもこんなことをしておって政治不信を重ねてはならないという認識は私なりに持っておるつもりでございます。
  44. 藤田高敏

    藤田(高)委員 事財政問題に関する限り、そういう大方の目標というものさえ出ないということになれば、中曽根内閣は仕事をする内閣だといいますが、これは仕事ができないのじゃないですか。やはり具体的な財政なくして社会保障もなければ、中曽根さんが言うような方向に軍備を拡大するにしても、財源がなかったら、目標なき、羅針盤なき船と一緒じゃないですか。全く仕事仕事と言って勇ましいことを言うのだけれども、それを裏づける財政的条件というものはいまだに不透明なんです。全く中曽根内閣の財政計画というものは不透明。その意味では、いまの大蔵大臣のなにじゃないけれども、大蔵当局は、この段階ではこの試算に基づいて、他の民間団体や第一勧業銀行の示されるようなあの試算は現行制度を前提にしてこうだと批判すべき立場ではないのですね。そういうものを参考にして、いま理論的にどうだこうだという、この間私があの赤字国債の現金償還の問題でやったときに三つの条件が出た、理論的だと。私は、あのときは議事進行のために協力したのです。  いまここでやっておるのは、学術会議的な理論問題や学問的な議論をやっておるのじゃない。国民生活に直接結びつく問題として、現実的な政策議論をやっておるのですよ。その答えが、これだけ時間をかけてお互いにやってきておりますけれども、いまだに出ないということは、私はきわめて残念だと思うのですよ。少なくとも、経済審議会かどこか知らぬけれども、そういうものの答申が出ないというよりも、この国会審議に間に合わさないところにあなたらの責任があるのじゃないですか、これは経済企画庁長官を含め、総理を含めて。みんなそこへ逃げ込んでおるじゃありませんか。そんな審議会だとか諮問機関か何か、そこへみんな責任転嫁で逃げ込んで、それができなければ具体的な責任ある財政再建の目標も示されないなんて、そんな内閣は信頼することできないじゃありませんか、これは本当に。私は、全く無責任内閣と言わざるを得ないと思いますよ。  ここで私は、時間がかれこれ来ましたので私のなにを申し上げておきますが、少なくともいま私が指摘したような形の財政再建計画というものを具体的に示してもらいたい。これはいつごろまでに出すのか、時期を含めて明示してもらいたいということが一つ。  今後の取り組みについては、財政改革の中身にまで触れることがこれまたできなかったわけでありますが、私はやはり、財政再建の大前提は、景気をいかにして浮揚さすか、そうして税収をどうしてふやしていくかというこの基本的立場がなければいかぬと思うのですよ。これはこの前の臨時国会のときにも私は言ったと思うのですが、これをまず第一に据えていく。  二つ目は、何といっても既存税制の社会的にどう見ても不公平な税制、これを根本的に改革する、これが二つ目の条件。  三つ目が、私はいわゆる歳出カットだと思うのですよ。それは、最近の世論調査じゃありませんけれども、防衛費なんかはもっと節約をしろ、削減をしろという声が強くなってきておる、そういう立場かち歳出カットの合理化問題を上げていく。  それでなおかつどうにもならないときに、負担増というものが出てくるのじゃないだろうか。  その次に出てくるものは、そういう操作をやってもどうにもならないときに、負担増との兼ね合いにおいて国債発行をつなぎ的な措置としてどうすべきかということが、財政再建の手だてとして上がってくるべき順序であり、課題であろうと私は思うのです。  そういう順序まで間違った形の財政再建の対処の仕方というものは、根本的に変えてもらいたいと思いますね。そういう意味合いにおいて、私は、二番目に挙げました不公平税制の根本的改革について、項目だけ挙げておきます。  その一つは、グリーンカード制の実施の問題、二つ目の問題は、先ほども言いましたが割引債の償還差益に対する課税の引き上げの問題。これは、繰り返しませんけれども、グリーンカード制のときに出されておった案からいけば、一千億や一千五百億の金は、財源はすぐ出るわけですから、そういうものの手だてをきちっとやる。そして、五十八年度の税制改正に向けて大蔵当局が政府税調に諮問をした項目ですね、交際費の課税、それから退職給与引当金の見直し、価格変動準備金の見直し、これは今度八十億程度なにしておりますが、こういったものの根本的な見直し、貸し倒れ引当金のこれまた現状に合った税制の改革、あるいは俗称言われてきております医師優遇税制の根本的な改正、あるいは減価償却期間の延長、さらには法人税の累進課税制度の採用ですね。  こういうものをやっていけば、私ども素人が計算しても三兆五千億から、計算の仕方によっては無理のない形で五兆円の財源が出るんですよ。これはわれわれ素人がやってもこの程度のことができるのだから、これだけ有能な人材をそろえた大蔵当局を含めてテクノクラートの集団を控えておる財政当局が、積極的にやろうと思えば財政再建は現実的に可能になる、いわんや所得税の一兆円減税のごときは、政府にそれだけの腹と意思ができればいつでもできる、こういうことを率直に申し上げておきます。  そういう私のいま矢継ぎ早に申し上げた物の考え方に対して大蔵大臣の最後の御答弁をお願いして、私の質問を終わります。
  45. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御提示になりました、一、景気浮揚、あるいは二、不公平税制、三、歳出カット、その上で初めて負担増なり、あるいは言外に償還財源としての借りかえ問題等が初めて議論に上ってしかるべき問題だ。私も考え方に大きな差異はございません。強いて申し上げますならば、景気浮揚、これはもとより自然増収もそれによって上がってまいりますし、一番結構なことであると思います。  ただ、いま私どもが国際会議に出かけましても、言ってみれば少なくとも若干ながら三%程度の成長率をもっておるのは日本の国だけじゃないか、そういう議論がいろいろある。その中に、先ほど来もちょっと議論になっておりました日本牽引車論という議論もときどき、警戒をしておりますが、ないわけでも全くない。したがって、景気問題というのは、これだけの国際経済社会の中に力を持った日本の国として、日本だけが世界同時不況と言われる中にあって例外であるというわけにはなかなかむずかしい。その狭い範囲の中で努力していかなければならぬ問題ではなかろうかと思います。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  そして、次の不公平税制、歳出カットという御議論でございますが、私どもの財政改革の基本的考え方では、言ってみれば歳出構造を先に出して、そして公平、適正な税制、順序が二、三が変わっておるわけでございますが、大筋において私はいまの考えを否定する考えはございません。  そうして政策理論の積み上げをこうしてやっておる、私もそう思います。結局、いろんな議論をしてみても、今日までの経過を見ても、政変は党内の政権担当者の交代であって、野党第一党へ政権が移るというのは議会制民主主義のルールであると私は思っておりますが、それは客観情勢がまだそうなっていない。その中に継続性を持ちながらも、それだけに、継続性があればあるだけに、こうした質疑応答を通じて国民世論を吸い上げていく、その糧がこの国会の問答の中にある。したがって、税制調査会にしてもあるいは財政審にしても、これはもとより権威ある機関ではありますけれども、それもまたこういう国民世論の土台の上に立って議論していただいて、初めて本当に実現性のある、実りの出るものではないかというふうに考えております。  そして、いま御指摘になりましたグリーンカード問題あるいは割引債の問題、退給の問題、価格変動準備金の問題、貸し倒れ引当金、医師税制、償却期限の問題、絶えず御議論にあります法人税の累進税率の問題。  法人税は、そもそも累進制度そのものが、中小企業対策としてなら別だが、法人というものが自然人との相違において合理性がないという議論も、あるいは私どもの方のサイドから言えばできるかもしれません。そして医師税制等、五十四年にやりました。あるいは変動準備金、今日やっております退給は、前回私が大蔵大臣のときに手をつけさせていただいた。グリーンカードは、たびたび御議論のとおりで、今後の税調の審議によってどう対応していくかということが決まっていくわけでございますが、そういう御提案に対しては、私は正確にこれを、私どもといたしますならば税制調査会にも報告するのも当然でありますし、われわれが今後議論していく上の貴重な素材になるという認織そのものは持っておりますので、この際申し上げておきたいと思います。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 どうも……。
  47. 久野忠治

    久野委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  48. 野坂浩賢

    ○野坂委員 きょうは各常任委員会が開かれておりますので、おいでになったところからお話をしていきたいと思います。  外務大臣に、この間総括質問の際に舌足らずの点がございましたので、それらの問題を中心にしてさらに詰めていきたい、こういうふうに思っております。  総理大臣や外務大臣も一月の十一、十二日、訪韓をされました。共同声明も発表されました。その際に、共同声明の中に朝鮮の和合統一というのが出ておりますね。これを進める。その後新聞では、全斗煥大統領から総理に対してクロス承認の方向というものが依頼されたというお話が出てまいりました。これについては一応の評価をするということを述べられました。しかし、朝鮮民主主義人民共和国の側は、このクロス承認というのは、一つの朝鮮ではなしに、二つの朝鮮が永久に分断固定化をする。したがって、一つの朝鮮というためには、この方法としては問題があるではないか、こういうことが繰り返されております。したがって、日本国としては朝鮮の統一を支持するということを一貫して述べられてきたわけでありますが、朝鮮の統一についてはどういうふうにお考えですか。
  49. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまお話しのように、わが国としては、何といってもいま朝鮮半島に緊張状態があるわけですから、これがなくなっていくということが日本の平和あるいはアジアの平和のためにも非常に大事である。そのためには、やはりいまの朝鮮半島が二分されている、こういうことはよくないわけですから、何とか統一が実現されることを心から期待をいたしております。そのためには、どうしてもやはりいまの両国が話し合い、対話を進めまして、そして統一の方向に進んでいくことが望ましいわけであります。韓国にしてもあるいは北にいたしましても、それぞれ自分の統一案というものを持っておるわけでありますが、しかしなかなかかみ合わない、対話も進んでいない、こういう状況にありまして、わが国としては、そういう中でこの両国の対話が進んで、そして統一が実現する、そのための環境づくりを日本としてもやっていくことが必要である、こういうふうに考えております。
  50. 野坂浩賢

    ○野坂委員 両者ともに朝鮮統一のことは提起しておるのだけれども、なかなかかみ合わぬ。過去実務者会談というのを八回やっておりますが、成功しなかったということがあります。  いまお話がありましたように、共同声明にもありますが、朝鮮半島の平和と安定は日本の安全にも大きな影響がある、それがアジアの平和と安定につながる、こういう認識は一致しておるわけです。そういう意味で、この間二階堂さんが中国側に打診をされた、そのことは新聞紙上等にも出ておりますが、正確にその内容。それから、シュルツ国務長官が訪中をされまして、その帰途成田でたしか外務大臣とお会いになって意見交換をするということでありましたが、両者について正確に御報告いただきたいと思います。
  51. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 正確にといいますと、いま議事録を持っておりませんけれども、その概要について一応報告させていただきます。  二階堂特使が行かれまして、中国の胡耀邦総書記であるとかあるいは趙紫陽首相その他要人と会われて、いろいろと世界の情勢あるいは両国間あるいは朝鮮半島の問題等について話し合いをされたことは事実であります。二階堂特使は、日本政府からもお願いをしまして、そういう中で日本の立場を表明されたわけですが、朝鮮半島の緊張が緩和されることが最も望ましい、そのためにはまず南北両鮮の対話が進むことが大変期待されるのだ、そういう環境づくりを日本としてもやりたい、こういう趣旨のことを言われて、それに対して中国の首脳の方から、高麗連邦共和国という構想が北にあるわけで、中国としてはこれを支持したい、こういうことだったわけでありますが、いずれにしても両国とも、朝鮮半島の緊張状態が緩和をしていくということについては望ましいことである、こういう点については基本的には考え方が一致をした、こういうふうに私は判断をいたしておるわけです。ただ、これをどういう形で実現するかということは、それぞれなかなかむずかしい客観情勢があることは御承知のとおりであります。  それから、シュルツ長官が羽田に寄られたときに私もお目にかかりましてお話を聞いたのですが、その際には、具体的に韓国と南北両鮮の問題についての話が出たということは聞かなかったわけです。ただ、韓国に寄られて韓国との間の話し合いでは、韓国側がこの緊張状態を緩和するためにクロス承認といったものも何とか一つの方法ではないか、こういうふうな趣旨発言があって、シュルツ長官は私に対しては、クロス承認というのも一つの方法かもしれないけれども、なかなかいまの情勢のもとではこれは慎重を要するのではないか、そう簡単にはいかないのじゃないか、こういうような判断を述べておられました。  私も実は韓国に参りまして、韓国側のそうした意向も承ったわけでありますが、私自身も、緊張緩和というためにはクロス承認というのも一つの方向ではないか、こういうふうには思うわけですが、しかし、いまの客観的な情勢からそれが果たして実現できるかどうかということについては疑問を持たざるを得ないわけで、やはりもっと客観的なといいますか、環境をもっとよくしなければならぬといいますか、環境づくりというのがもっと必要になるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  52. 野坂浩賢

    ○野坂委員 趙紫陽首相とそれから二階堂さんの話はいろいろあったけれども新聞でもいろいろ読んでおりますけれども、緊張緩和の状態をつくらなければならぬということでは意見が一致した。あるいは、シュルツ国務長官と安倍外務大臣とお話しになったときにも大体そういう方向が出た。言うなれば、いろいろ情勢はあるけれども、緊張緩和のために努力をしようということですね。  二月一日から始まっておりますチームスピリット83、約十九万人の軍人がこれに参加をした米韓大合同演習である。一方、朝鮮民主主義人民共和国、簡単に言うと北朝鮮、こう呼ばせていただきますが、これは準戦時態勢をしく、これは緊張激化の様相ですね。緊張緩和の方向というのは、具体的にそういう大合同演習等をやはり差し控えて、お互いに平和的な自主的な交渉を持っていくという環境づくりをするというのが当面一番大きな課題ではないだろうか、そういうふうに思いますが、安倍外務大臣としてはどうお考えでしょうか。
  53. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 米韓の軍事演習等につきましては、これは米韓の問題でありますから、日本がこれに対して何だかんだ言う筋合いはないわけなんですが、基本的には私は、先ほどから申し上げましたように、とにかく緊張状態が緩和するために環境づくりをしなければならぬ、そのために日本としてもできるだけのことはしていくべきだ、こういう考えは持っておるわけであります。
  54. 野坂浩賢

    ○野坂委員 日本はできるだけのことはしたい、しかし、米韓のああいう問題についてはおれはもう介入できぬ、ちょっと話としては矛盾をしております。  そこで、できるだけの環境づくりをしたい――総理はこの間訪米のときに、非常に人間的にもレーガンさんとは懇意になった。ロンとヤスだというような話までここの委員会であったわけでありますが、そうすると、あの朝鮮戦争の際の休戦協定というのは、朝鮮民主主義人民共和国とアメリカ軍と協定をして、韓国軍はオブザーバーとしてついておったという経緯がございますね。そういたしますと、環境づくりとして北側はぜひアメリカとそういう意味で話し合いをしたい、こう言っておるわけですよね。それについては、韓国側と日本というのは非常に懇意になっておるわけですからアメリカとの話もできる、そうすれば、そういう意味で具体的な環境づくりの一片としてできるんじゃないのかな、こういうふうに思いますが、やるべきことがあればという前提でございましたから申し上げますけれども、そういう意味で、朝鮮の平和、そのことが即日本の平和に大きな影響を与えるというために、アメリカ側と率直に忌憚のない意見を交換して、そのような話し合いに持っていくということも一方法ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 環境づくりをするといいましても、基本的に一番大事なことは、南北が対話を進めるということがまず基本的に大事なことじゃないかと思うわけですが、いまの状況では、それぞれの対話についてのあるいはまた統一についての、北は北、南は南の案は持っておりますけれども、それがかみ合っていないという状況であります。  そういう中で韓国は、いまおっしゃいますように日本とは非常に近い関係にありますし、北は日本は承認してないという関係にあるわけで、韓国側としても南北対話は進めたい、緊張緩和を進めたいというような熱意は持っております。そうした中から実はこのクロス承認というふうな考え方も、正式には出ておりませんけれども、生まれておるわけでございます。これは韓国としては、日本が中国とは最もいい関係にありますから、同時にまた韓国は中国とは関係を持っていない、そういうことで、日本が中国と話し合って中国が南を認める、そして同時に日本が北を認める、そういうことになれば一つの緊張緩和の大きな道につながっていく、南北の対話が進んで将来は統一へも向かっていく、そういう考えで一つのクロス承認案というものが、正式に要請があるわけではないのですけれども、出ておるわけでございまして、私は、先ほど申し上げましたようにそれは一つの前進である、これが実現できれば前進である、環境づくりのための一つの検討に値することじゃないか、こういうふうに考えております。  アメリカも決してそれを否定しておるわけではありませんが、しかし、現実に具体的にそれが実行できるかどうかということになると慎重な態度にならざるを得ない、こういうことでありますが、この辺のところは今後の情勢も踏まえながら何らかの努力を積み重ねていかなければならぬ。  いずれにしても、韓国ではオリンピックもあるわけですから、そういうことも踏まえて、そうした南北対話の機運が非常に高まっておることは事実でありますし、こういう一つの機運が出ておるときを十分踏まえて、日本としても環境づくりのための何らかの方法はないものかな、そういうことをこれからひとつ考えてみたい、こういうふうに思うわけであります。日本は北朝鮮との間には国交がないわけでありますが、しかし、人的交流、文化交流あるいは経済交流等もやっておるわけでございますし、そういう面についても、われわれは環境づくりの一環として、民間のそういう、国交はない中でも日本と北との関係が進むことを、日本政府としては期待をいたしておるわけであります。
  56. 野坂浩賢

    ○野坂委員 なかなかかみ合いませんが、安倍外務大臣は、クロス承認は統一のための一方向、こういう評価だ。シュルツさんは、まあそれはむずかしいよ、こういうふうに言っていらっしゃる。朝鮮民主主義人民共和国側は、それは二つの朝鮮になる、分断固定化されます、だからだめなんです、こういうふうに言っていらっしゃいます。だから、そういう意味ではまず当事者同士が話をするということは必要ですけれども、それができない場合はどうやってそういうふうな舞台に乗せるかというための努力をしてもらう、その一方向というのが、まずアメリカと北側、朝鮮民主主義人民共和国とが話し合ってみたらどうだろうか、その中で模索をしたらあるものが出るのではないかということを私は提案をしておるわけです。それが一点。  二点目は、その環境づくりに努力をするが、いまは外交がない、正常化はしていない、しかし、経済、文化、人事の交流はやって友好関係は強めていきたい、そのための環境づくりも一方法だ。その場合、人事の交流ということがありますが、やはり政治家レベルがおいでになって、自民党の皆さん方とでも隔意のない歓談をやっていくということの中から環境づくりというものが生まれてくるのではないか、こういうふうに思いますが、そういう人事交流の中に政治家レベルということは考えられないのか、考える必要があるのではないかということをお聞きしたい。
  57. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカと北朝鮮との間の話し合いを進めるべきじゃないか、これに対して日本がアメリカに対してもそういうイニシアチブをとる必要があるのじゃないかという第一の御質問だと思います。  アメリカもこの南北の統一というものは日本と同じように望んでおる、緊張緩和を望んでおると私は思うわけでございます。しかし、現在の客観的な情勢からなかなかこれが前に進まないということでありますが、アメリカはアメリカ自体でそういう問題についてはこれからどういう方向がとられるのか、アメリカの今後の外交の進め方というものを見ざるを得ないわけですが、しかし、シュルツさんなんかと話し合ってみましても、韓国とアメリカとの間には安保条約もあるわけですし、いわば同盟関係にあるわけです。しかし、北との間においても、一挙にこれが進むということを期待はされておるわけではないのでしょうが、やはり環境づくりのためにもアメリカとしても何らかの努力はしたいという気持ちは持っておられる、私はこういうふうに思います。  それから、人事の交流で政治家同士の交流、これはいままでも議会でやっておられるわけでありますから、これは議会関係で進んでいくとか、あるいは経済の交流、文化の交流、そういったものは国交がないといえどもそれぞれの立場で進められることについては、われわれも政府としてこれに対して何ら言う筋合いはないわけでありまして、これがだんだんと進んでいく、両国の関係も国交がない中でもいい関係が生まれてくるということは望むわけであります。ただ、そういう交流の中でお互い環境がよくなるという方向で交流が進めばいいのですが、せっかくのこの環境を南北対話とか統一とかそういうものがむしろ逆の方向に行くような交流というようなことは慎むべきではないか、こういうふうに思うわけです。
  58. 野坂浩賢

    ○野坂委員 なかなかかみ合いませんで、これで終わらなければなりませんが、私が言っておるのは、アメリカの外交を見守るという立場ですけれども、日本側としてそういうことをアメリカに提言をすることはできぬのか、一応話し合いの中にそういうことを提案をすることはできぬのかということが一つ、それは検討していただきたいというふうに思います。  それから二番目は、環境づくりが前向きになるようにするために、それが前提で政治家の交流は大いに進めるというふうに解釈してもよろしゅうございますか、これが最後ですから。
  59. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日米関係で、やはり朝鮮半島の緊張緩和の問題についてはしょっちゅう話し合いをいたしております。そして日米間でも、いわゆる朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくりにお互いに努力をしよう、こういう点は一致しておるわけでありますから、それぞれの国でやらなければならぬ、同時にまた、関係のある場合は相談をして進めていかなければならぬ、こういうふうに思います。  それから政治家の交流については、これは国が、政府が直接関与するわけではありませんが、そうした政治家の交流が進んで環境がよくなっていくということについては政府としても好ましいことである、こういうふうに考えております。
  60. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではもう結構ですから。  自治大臣にお尋ねをします。  地方財政の問題に関連をして進めたいと思うのですが、大平総理の時代から、地方の時代ということが全国を風靡するほど盛んに使われてまいりました。それは地方自治体が中心になって行政を進め、そして格差のないそういう時代をつくっていかなければならぬ、こういう意味だと思うのですけれども、地方の時代というのは一体どういうふうに自治大臣は受けとめていらっしゃいますか。
  61. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いま少しお話もあったようでございますが、要するにいま地方自治というのは、新憲法のもとで地方自治の本旨に従ってやる、これはやはり何といいましても民主主義の基本であるという考え方は動かせないことでございます。そういう精神に沿って今日まで地方自治は、旧憲法時代から見ればずいぶん進んできたなという感じがいたすのでございます。  しかし同時に、地方はやはり社会的、経済的にもずいぶん変化もしてきております。そういう情勢を受けて、住民と一番密接した行政を担当しておるという地方自治の立場からいいまして、やはり自律性を持って地方の住民の福祉を願い、地方の振興をやっていかなければならないということだと思っております。しかしながら、まだまだ今後の努力にまたなければならない点がある、かように思っております。
  62. 野坂浩賢

    ○野坂委員 地方自治体が自主性と自律性を持って進まなければならぬ、言うなれば財政も健全化をしていかなければならぬということだと思います。  いま地方自治体というものの地方財政は一体どのような状況になっておりますか。
  63. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 国も大変厳しい情勢にございますが、地方財政も大変に厳しい情勢下に置かれております。これは国全体の経済の動きにも大いに関係するわけでございますが、地方財政というのは、やはり一つには国の財政とも連動をしておる、関連があるという面が少なからずあるわけでございます。たとえば地方交付税のごときも、国の税収に影響されるところが大であるということでございます。そういう厳しい情勢の中でお互いに助け合いながらやっていかなければならないということでございます。  五十七年度は、経済の状況を反映して税収の落ち込みが相当ございましたために、地方財政は相当窮屈な状態になったわけであり、五十八年度につきましても、やはりまだまだ新しい展望というものは開けていないように思うのでございます。そういう中で、この地方財政を地方自治体もしかと認識をして、ひとつそういう事態に対応をしていかなければならない現況であろう、こう思っておるところでございます。
  64. 野坂浩賢

    ○野坂委員 地方自治体の五十八年度の予算は大体概算四十七兆円、負債総高大体五十七兆二千億ですか、そういうふうに理解しておりますが、そのとおりですか。
  65. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 負債総額は、一般予算で約三十八兆、地方交付税特会関係で十一兆ぐらい、あるいは公営企業で約七兆何がし、合計ただいまおっしゃられた五十七・二兆円程度になっておる、かように思っております。
  66. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十七年十二月二十二日に地方制度調査会の答申というのがありますね。臨調はとにかく何が何でも守り抜く、こう総理は言っていらっしゃいますし、山本さんもそうだと思いますが、この提言の中にこう書いてありますね。「地方税、地方交付税等地方一般財源を確保することとし、極力地方債の発行規模の増大を抑制する。」これを言っておりますね。いま五十七兆二千億の中で地方債の発行というのは三十八兆円に上っているわけです。これは最高のものです。ことしはたしか五兆円程度発行するわけです。前年対比三一・三%ですよ。一兆一千九百十一億の増になっておる。大変な額ですね。これは現実の問題として自治大臣としてはどういうふうにお考えですか。
  67. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 現在の地方財政をどう運営していくかという中で、一つは当該年度の財政運営の問題がございます。いまおっしゃられたそういう累積する公債、地方債の償還の問題がもう一つあるわけでございます。  これらにつきましては、御存じのように地方というのは何せ単位が三千数百もあるというそれぞれの単位で三十八兆円というものをそれぞれの償還計画を立て、また地方交付税特会の償還もそれぞれの償還計画を持っておるわけでございまして、それらをできるだけ財政のそれぞれの単位における切り詰めを行いながら償還もやっていくというそういう財政構造に何とか努力をしていきたい、こう思っておるところであります。
  68. 野坂浩賢

    ○野坂委員 人ごとのようにおっしゃっておりますけれども、非常に厳しいですよ、本当に。そういう姿勢では地方自治体の健全財政は守っていけませんな。  いま申し上げたように、ことしも三兆三千三百四十六億ですか、その程度の財源不足がありますね。財源不足があった場合には、地方交付税法の六条の三の二項というのがたしかあったと思います。こう書いてありますね。「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二項本文の規定によって各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。」と法律は書いてありますね。三兆円も変わってくるということになると、この六条の三の二項に抵触するということになるわけです。そういうことでしょう。それについてはどうお考えですか。
  69. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 確かにおっしゃる六条の文言から言えば交付税率の見直しその他の適切なる措置を考えなさい、こういうことでございます。  そういうことが考えられればできるだけ私ども立場としては考えていきたいところでございますが、国の財政の面におきましてもやはりそれなりの厳しい状態にあるわけであります。地方財政ももちろん厳しゅうございますが、同時に国の財政の状況というものもにらみながら、いわばいつも言われる言葉でございますが、国家財政と地方財政は相助け合いながら車の両輪のごとく運営をしていかなければならないという立場にあるわけでございます。  したがいまして、いま仰せられましたような確かに収支不均衡の状態にあるわけでございますが、当面は交付税特会の借入金などの措置をいたしまして、本年度はそういう地方財政の運営に支障のないようにという措置はいたしたつもりであります。
  70. 野坂浩賢

    ○野坂委員 閣僚の一員ですから、竹下さんもいらっしゃるし、自治大臣としてもっと地方自治体を守っていかなければならぬ、こういう姿勢でやってもらわなければならぬわけですが、いま申し上げましたように、財源の不足額の三兆三千三百四十六億、この内訳は、御承知のとおりに交付税の措置としての借入金二兆百億、建設地方債、いわゆる財源対策債が一兆三千二百四十六億、こういうことになっておりますね。これを合わせますと、交付税の率でいくと一三%になるのですよ。そうでしょう。一三%も不足しておるという結果になっておる。このことは御認識ですか。それをちょっと言ってください。
  71. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 交付税の計算は、そもそも国税三税の収入の三二%、そのルールでいきますと、国税三税の収入はたしか二十五兆円、それに対して三二%、それではじきまして八兆円くらいにたしかなる。ところが、御存じかと思いますけれども、五十六年度の決算によりまして八千五百億ばかり戻さなければならないということが、ことしに限りまして起こっておりまして、それらの影響もございまして、ただいま仰せられたような数字に相なった、こういうことでございます。
  72. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十七年度は交付税をもらうのを国に貸しておりますよね、ことしは入っておりますけれども。したがって、いままで交付税というものは四・九%減額になっております。そうですね。かつてないことですね。そういう事態でどうやってその償還をするか。国よりも厳しいですよ。国は税金のうちの七割取って、地方自治体は三割しか取らぬというのが実態ですから。そして財政金融政策は国が立てて、ある程度弾力性はありますが、地方の自治体は七対三という状況からは全く弾力性がない。そういう状態の中で償還をするという場合は、昭和六十五年になりますと国以上に厳しくなってくるというのはおわかりだと思うのですよ。  そういう中で、いままで、たしか五十三年度でありましたか、交付税は国が責任を持たなければならない。その原資を借入金で処理をして、二分の一は地方自治体、うちも二分の一は持つ、五十七年のこの間の臨時国会でもそうでしたね、半分持つ。持つが、利子は全額私の方で持ちましょう、こういう方針を国は出しましたね。今度五十八年度の予算を見ますと、利子も半分持ってくれ、元も半分持っておるんだから利子も持ってくれ、五十七年とは様相が変わってきた。ますます地方自治体としては圧迫されますね。これが利息だけで約三千億円に上りますね。いろいろ話があって、五年据え置き十年償還ということで六十四年から返そうか、その場合は二分の一また国が持つというようなことはやっておりますけれども、地方自治体としては法の原則に従ってこの利息はいままではみんな附則附則で、四項、五項でそれをつじつまを合わせておるわけですが、これはやはり利息は国が持つべきだ、こういうふうに考えるわけですが、どのように自治大臣はお考えですか。
  73. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 確かに、おっしゃるように従来は元金は二分の一、利息は全額、こういうルールでやってきたわけでございます。  この問題につきましては、大蔵、自治両省間で予算編成の際に相当議論のあったところでございます。私どもは、でき得べくんばひとつ従来のルールどおりということを主張したわけでございますが、その間地方財政の立場は守っていかなければならぬのはもちろんでありますけれども、国とのいろんな関連におきまして、五十八年度はそういう二分の一元金、同じルールで利子もやろう、こういうことに合意をしたような経緯でありまして、その点はひとつ御理解を賜りたい、こう思っております。
  74. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは五十八年度だけで、五十九年度からはそういうことはやらぬということですね、自治省としては。
  75. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 五十八年度についてそういうことをやるということでありまして、五十九年度以降につきましては、経済の状況あるいは財政の見通しなども考えながら、その点はひとつ改めてまた協議をする、こういうことになっております。
  76. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いや、協議をするということになっていますけれども、自治大臣としてはいまの地方財政の状況から見て、元金も利息も本来は国が持つべきものだ、こういうふうに認識しておるでしょう。どうですか。
  77. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 交付税特会でございますから、私どもは、そういう考え方で自治省としてはおるわけでございます。
  78. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それを早く言えばいいのですけれども。  大蔵大臣、いまお聞きのとおりなんですが、五十八年度の予算編成のときに、利息だけではなしに元金も全部地方自治体が持て、こういうような折衝経過があったわけですね。いま自治大臣としては五十八年度だけはやむを得ぬけれども、五十九年度からは元金も利息も含めてめんどう見てもらわなきゃならぬ、こう言っております。  大蔵大臣としては、法体系から、法律の上から考えればそのとおりなんですが、ただ、国の財政が逼迫しておるからということが理由で附則をその都度その都度つけて逃げておるということですけれども、少なくとも利息だけは、半分持てとか、いや四分の一持てとか、そういうことはいまの地方財政の実態から見て五十九年度からは実施すべきではない、こういうふうに考えておりますが、いかがでしょうか。
  79. 竹下登

    竹下国務大臣 お答えいたします。  まず国民経済のもとにおきますところの公経済の主体というものは、いわば車の両輪でございます国及び地方の財政がともに円滑に運営されるよう対処すること、これが私は基本であると思っております。  したがって、今年度予算編成に際しましても、事務当局あるいは大臣折衝等でずいぶん話し合いをいたしたわけでございます。今日まで、五十年度以降は地方財政対策としては国税三税収入の三二%分としての地方交付税交付金のほかに、国の一般会計が肩がわり負担をすることとして毎年度予算で手当てをしてきた。しかしながら、この交付税特会の借入金は地方団体に交付する地方交付税の総額を確保するためのものであるという考え方から、私の方では実質的には地方の借入金ではないか、そして利子の額ももうこれは七千億円を超える巨額なものになりました。こういう国の財政状況においては、このような形で国が地方に財源をお与えする余裕がない、こういう状況につきましてお話し合いをいたしまして、元金償還の国、地方の負担割合に応じて、利子についても地方負担を求めるという合意に達したわけでございます。  したがって、今後の扱いでございますが、五十九年度以降の取り扱い、これはまさに今後毎年度の予算編成の過程におきまして、国の財政状況、また地方の財政状況等を総合勘案して、地方財政対策の一環としてお話し合いをして決めていく、こういう考え方でございます。しかし、基本的に申しましたように、公経済の主体としてのまさに車の両輪でございますので、財政が円滑に運営されていくということを前提に置いて対応すべき課題であるということは理解をしておるつもりであります。
  80. 野坂浩賢

    ○野坂委員 竹下さんの答弁は非常に親切のようですけれども、余り中身がない。よくわからぬのですね。何か煙幕を張って、ああでもあるしこうでもあるし、ああでもないしこうでもないというような話で。  言うなれば、地方交付税法の第六条の三の二項、これを読んでみると、交付税が非常に切られた場合は、足りない場合は、行政制度の改革かあるいは交付税率の引き上げをやれと明確にしてありますね。これは国の責任なんですね、出せないというのは。車の両輪というような話ですけれども、明確になっておるわけです。  しかし、国の財政がいかぬからということで大蔵省が圧力を自治省にかけて、そしてとうとう有無を言わせず抑えつけた。いままでは元金だけだったのですよ。利息は見たのですよ。今度は利息も半分だというのですね。だからこれは五十八年度の措置で、本来やるべきことではないけれども、あなたが抑えつけたというかっこうはぐあいが悪いけれども、そういう協議をした。だから五十九年度からは少なくとももとに戻さなければ、国の予算が五十兆円で、五十八年度末には国債が百兆円になる。だから倍じゃないかということが言えますね。しかし、地方自治体は四十七兆円で、五十七兆円であるということは、より以上に厳しい状況にさらされておるということが私は言えると思うのですよ。だから、地方の時代で、そしてそれが発展をしなければ国の力は強くならぬということは竹下さんが一番よく知っていらっしゃるわけですから、少なくとも五十九年度はこの問題についてはやっぱり整理をしてもらわなければならぬ、こう思いますが、そういう方向でいく、いかぬということを明確にしてもらいたいですね。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 私の出身地も野坂委員の出身地も、言ってみれば国税還付倍率から言えば大変高いところでございます、私の方がなお高いのでございますが。そういう点からして地方自治体というものを考えた場合、念頭に置くのはどうしても、お互い選挙区を持っておればそういうものが念頭を去らないというのが政治家の常でございます。しかし、やはり国の財政というものを預かり、そして車の両輪であるという前提の上に立った場合、抑えつけるとか抑えつけられるとかいう性格のものではなく、やはり単年度主義の予算編成の中で、国、地方の財政状況を総合勘案して、地方財政対策の一環としての中で議論をその都度詰めていく課題ではなかろうかというふうに理解をしております。  これは、いまの御質問に対して大変いい答弁だと言っていただけないものであるということを承知の上で申し上げているわけであります。
  82. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いい答弁じゃないですね。しかし、十分地方財政の実態、そういうものを考えて自治省と協議をして、地方財政の健全化を図るために一層の努力をしていただきたい、こう思いますが、いかがですか。
  83. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの野坂委員の基本論については、私も毛頭異議を挟むものではありません。
  84. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほども話があったのですが、経済企画庁長官お尋ねをします。  原油の値下げがそれぞれ、北海原油を初め湾岸諸国では一バレル当たり五・五から七・五ドル下げる。アメリカのシュルツ国務長官はこれについて歓迎の意を表しておる。デメリットもあるけれども、メリットが全体的に多いじゃないか、こういうことを言っておりますが、日本の経済に与える影響、また成長率にもどのような影響があるかということをお尋ねをしたい。
  85. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 昨日も、原油の値下がりのわが国民経済に及ぼす影響につきましては草川委員にお答えしたところでございます。私もシュルツ国務長官以上に、原油の値下がりは全く油を産出しない日本にとって大きな影響、いい影響があると思っております。それはまず物価面であり、さらにまた企業のコスト面であり、さらにまた家計の生計費面であり、そしてまた円レートの面である、こんなような面からプラスである。  ただ、これが具体的にどのような数値になるかにつきましては、実は、古い、一九七八年の世界経済のモデルで計算いたしました数字を昨日申し上げましたが、それも一年目、二年目の数字で、いまちょっと手に持っておりませんけれども、そのような数字は少し古いものでございますから、これから具体的な値下がりの状況を見て新しく企画庁で世界経済モデルをつくり直してその影響をはかってみたい、こういうことを申しました。
  86. 野坂浩賢

    ○野坂委員 労働大臣、ことしの雇用者数、昨年よりも約五十五万人ふえる。これは前年対比で一・三%ということになっております。先ほども減税の問題が非常に議論をされまして、あなたの見解も求められたわけでありますが、雇用者の所得は昨年対比で約十兆円ふえるわけですね。雇用者の人数というのは四千百六十万人でありますから、これを単純にこの数字で割りますと二十四万円になりますね。新しく入ってくる人が五十五万人で、それを込みで、全部入れて十兆円を割ってみますと、一年間一人平均で二十四万円アップになる。大体私がいま申し上げておるのは季節労働者も含んでおります。新規採用の方も含んでいる。だから、一年間通じてお働きになっておる方以外の方も入っておるわけです。  そういう情勢から考えてみますと、ことし春闘はすでに始まっておりますが、大体平均賃金二十八万八千円だというふうに理解しておりますけれども、大体二万円は上がるのだ、こういうふうに理解していいでしょうか、労働大臣
  87. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えします。  雇用者所得の増加率と、いまことしの春闘というお話がございましたが、春闘のベースアップ率というものにつきましては、賃金の範囲というものが違いますので直接結びつけて考えるわけにはまいりませんし、また労働大臣といたしましては、いずれにいたしましても、本年の賃金交渉、やはり労使双方が国民的経済の視野に立って、自主的に、円満に、合理的に決めていただきたい。二万円が適当であるかどうかというお話についてはちょっと返答はしかねると思っております。
  88. 野坂浩賢

    ○野坂委員 経企庁長官、雇用所得六・六一%、これから見てそういうことになりませんか。
  89. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私どもは、政府の経済見通しにおきまして、雇用者総数は一・三%、一人当たり雇用者所得については五・二%、したがって結局雇用所得が六・六%の伸びと見ていることは御指摘のとおりでございます。これは春闘とかいう個別的なケースは別といたしまして、マクロ的な考察から推計したものでございます。
  90. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いろいろな、マクロ的に十分検討された結果であろうと思うのですね。五十七年度の補正のときは百四十九兆円ですね、雇用者所得は。今度は百五十九兆円で、上がっておるのは大体十兆円なのです。五十七年度の補正で雇用者総数は四千百五万人から四千百六十万人、五十五万人ふえておるわけですよね。これは一年間通じて働く方ではなくて、季節の方も入っておるわけですよね。全部入っておっても月に二万円上がることになるわけですね。そういうことでしょう。だから、一年間通じて働く人はその程度はあるのじゃないかという議論が成り立つのじゃないか。二万円ですよね。その程度上がるというふうに経企庁長官は見ていらっしゃる、こういうことでしょう。
  91. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 このマクロ的な数値の結果、そのような計算が出ますればそういうふうに見たことになります。
  92. 野坂浩賢

    ○野坂委員 経企庁長官が言っておるのに、労働大臣はまああなた任せというようなことでは、労働者を守っていかなければならぬのに、そんな答弁をしておったらだめじゃないですか。たとえば給与所得者は、一年間働いておる人は五十六年度で九一・五%も税金を払っておるのですよ。五十二年度は七四・二%、それから課税最低限がとまっておりますから毎年ふえておる。公務員等も入れてまいりますと本当に九二、三%も払わなければならぬ、こういうのが実態なのです、先ほど可処分所得問答がございましたけれども。そういう意味で、減税というものが前に出なければならぬけれども、もらうものももらっていかなければならぬ。経企庁長官がおっしゃったように、その程度の認識はしてもらわなければならぬと思いますね、ちゃんと書いてあるのですから。あなたも閣僚なのですから、労働大臣だけ別じゃないのですから。それなれば二万円程度は当然じゃないかというふうに考えるのですが、いかがですか。
  93. 大野明

    ○大野国務大臣 そのような認識はいたしておりますが、いずれにしても、賃金交渉というものにつきましては労使双方において円満に、自主的にお話し合いいただくということでございますので、私自身が認識はしておりますけれども、それをこうしろ、ああしろと言うわけにはまいらないと思っております。
  94. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いや、私はこうしろ、ああしろということを言っておるわけじゃないのですよ。結果的に経済の動き、税の動き、いいですか、税金もことしは、給与源泉所得税額というのは七兆六千六百八十億円なのですね、五十七年度の補正は。五十八年度八兆五千六百八十億円、九千億円の増加なのです。一一・七四%なのです。一二%に及ぼうとしているわけです、源泉所得税は。それは、大蔵省ベースで計算をしても経企庁が出しておりますこの経済見通しを眺めてみても明らかに出ておる。こういう認識だけはして、労使の交渉は自主的にやるけれども、二万円というのは、大蔵サイドから見ても経企庁サイドから見てもこのとおりはいくのだな、そういうふうなガイドラインといいますか平均というものは当然考えられるのだなという認識に立つべきではないのか、こう言っておるわけです。あなただけなのですよ、もたもたしておるのは。ほかはみんな指標が出ておる。どうですか。
  95. 大野明

    ○大野国務大臣 雇用者所得の増加率について二万円ぐらいあるではないかという認識はいたしておりますけれども先生はそれを、春闘においてそれがガイドラインになると言われても、ちょっとそこは返答しかねるということを申し上げておるわけであります。
  96. 野坂浩賢

    ○野坂委員 春闘は自主的に決めるものですが、内容としてはその程度上がるものだというふうな御認識だと思うのですね。  それから、先ほども藤田議員からお話があったのですが、「五十九年度に減税実施 間接税導入の含み 政府首脳語る」、こういうふうに新聞に出ておりますが、増税なき財政再建、こういう状況でこれから進むということを大蔵大臣はおっしゃっておられますが、五十九年度は減税を実施するという意向ですね。
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりかくありたいと思うことはそのとおりでありますし、そして五十八年度税制におきましても、税調の答申を見ましても五十九年考えろ、検討しろと書かれてあるわけでありますから、そういう方向に沿って努力し、検討しなければならぬと思っておりますが、単年度主義の予算を予見を持って確定的なことを申し上げるということは差し控えざるを得ない、こういうふうに考えます。
  98. 野坂浩賢

    ○野坂委員 五十九年度に結果的に間接税と直接税の直間比率というものは決めらるべきものである、このとおりおっしゃったのです。五十九年度には大型間接税というものは実施しない、こういうふうに考えてもよろしゅうございますか。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 これもいわゆる大型間接税という議論になりますと、いわば広く消費に着目をした間接税であって、かなりの増収を期待できるものというぐらいな定義しか現実にないと思うのであります。されば幅広いとはどこまでか、またかなりの増収とはどこまでか、こういうことになると定義そのものもなかなかむずかしい問題でございます。そして御指摘になりましたとおり、直間比率というのはいわゆるアプリオリに決めるべきものではなく、景気の状態等結果として出てくるものである、こういう認識をしておりますので、私どもといたしましてすべての税目を否定してしまうわけにはいかぬ。が、こういう国会の場の問答を通じたり、権威ある税調の御答申をいただいたり、その中で、従来も言われております公平適正な税制というものを模索していかなければならぬ。一般論をあえて申し上げたわけであります。
  100. 野坂浩賢

    ○野坂委員 審議会なりいろいろと諮問されるところはたくさんあって、参考に聞かれることは結構、国会でもそうですが。財政当局責任者としての大蔵大臣は、来年度は大型間接税というようなものについては導入する意思はない、こういうことですか、それともあるということですか。いろいろと検討するがということですけれども、あなたはどっちなんですか。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 大型間接税という定義のお話をいたしましたが、いまいわゆるこういう場で言われておる大型間接税というものは私の念頭にはありません。
  102. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それではまた途中で変えるかもしれませんが、自治大臣がお急ぎでございますから質問いたします。  貨物駅を廃止されますね。ずいぶん少なくなります。それから地方交通線はいまやっておりますね。この地方交通線というのは、たしか赤字というのは非常にわずかなものだというふうに理解をいたしておりますが、その進捗状態と現状について運輸大臣でも結構ですし、国鉄総裁でも結構ですからお話をいただきたい、こう思います。
  103. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 第一次交通線問題が出て、そしてそれがいま――電車、列車というものは大量輸送でございますが、非常な世の中の変わり方からしまして一日に二千人も乗らない線がたくさん出てきた。これが国鉄再建の中に一つの項目を占めておりますので、第一次特定交通線の廃止ということになり、第二次交通線がまた運輸省の方に上げられてきて、それをいま地方の方々に御協議を願うというふうなかっこうになっております。
  104. 野坂浩賢

    ○野坂委員 これは第一次線というのは総額にして百五十七億円の赤字ですね。国鉄は、五十八年度の予算見込みというのは大体一兆六千億の赤字が出るわけですよ。何%になるのかな。一%ですかね、その程度ですね。(「そのほか七千三百億補助金があるからね」と呼ぶ者あり)それも削っておるのです。それをすれば二兆円超すのです。そういう意味で地方の足を取ることになるわけですが、詰めて言うと、二千人以上乗らぬと切るぞ、いま協議に入っておるのです。各町長、行政は一生懸命やっていますね。一生懸命に乗せるような運動をしておる。この中で継続性と安定性があればということなんです。私のところも小さな県ですけれども、二つも、若桜線と倉吉線というのはその協議になっておる、山陰線が一本になってくる、こういう状態で異常な状況なんですけれども、これは何年間乗ったら残してもらえるのですか。
  105. 永光洋一

    ○永光政府委員 お答えいたします。  特定地方交通線の選定につきましては、輸送密度が二千人未満のものにつきまして、昭和五十二年度から五十三、五十四というこの三年間の実績を基準にしまして選定をいたすことにしております。御案内のようにその選定をする場合に、法令で、実績年度の輸送密度に、集団住宅とかあるいは学校とかいうもの、公的なそういう施設がつくられることによって輸送需要が確実に増すと認められた場合にはその輸送密度に付加することをしております。こういう形でローカル線のバス転換対策を進めておるわけでございますが、その場合に、たとえば協議会で協議を進めておる段階において、仮に輸送密度が、選定のときに二千人未満であったのだけれども現実に二千人を超えておるというときにどうするかという問題だと思います。これは先ほど申しました、基準を選定するときに将来確実に需要がふえると思われるものについて付加して選定を決めたという観点の均衡から、一応、協議会で協議をしている段階において実際に需要が増したという事実があった場合には、その継続性なり定着性というものを見て、そして基準を決めたときの均衡から考えまして、しばらく協議会で様子を見るという運用をいたしたいと思いまして、その運用でやっておるわけでございます。  いまお尋ねのように、どの程度の期間が定着であり継続性があるかということでございますが、確かに地方におきましては二千人ということで乗車運動というようなものがございますが、そういう一過性のものでないということで、これはやはり協議会で十分そのあたりを御相談願いたいと思うのですが、とりあえず過去一年間の実績を見まして、そしてそこで仮に二千人を超えておるという段階がありましたら、その後の推移を協議会におきまして半年程度見まして、さらにその検証に努めたい、こういうふうに考えております。
  106. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまの問題おきまして、自治大臣御退席ですので先に聞きますから……。  これ、たとえば取り外しをいたしますと、運輸大臣、後は第三セクターとか県なり町村でめんどうを見てくれぬかという勝手なことを言っておりますね、あなた方は。そういう点について、自治大臣は、そういうことになった場合にどういうふうにいたしますか。銭がないし、大蔵省は渋いし、やるやると言っても、地方自治体としては第三セクターはどういうふうにしようと御指導をなさいますか。
  107. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 この問題は、沿線住民としては大変な問題でございますが、いまお話しのように、一つの国の方針も決まったということで、その中で地方もできるだけの努力はしなければならぬと思います。ただ、第三セクターというやり方が一体どういうものなのか、その辺につきましては、これは赤字になっては困るし、先ほど来のお話のように、地方財政としてはいま非常に苦しい、厳しい情勢下にございますので、第三セクターについては、ひとつできるだけ民間でやっていただくようにぜひお願いをしたい、こういうことで、財政的な問題については地方公共団体はなかなかそれに関与は困難であろう、こういう見通しでおるのでございます。
  108. 野坂浩賢

    ○野坂委員 確かに、自治大臣がおっしゃったとおりですが、あなたのところは通達を出していますね、やらないようにと、事務次官通達を。いまでも変わりはないですね、事務次官通達で、そういうことは健全財政から見てできぬ、こういうことを言っておりますね。「採算の現況等からみて、第三セクターにより経営を行う場合であっても、赤字を生じるおそれが多分にあり、その結果、地方団体に負担が転嫁される危険性が大きいので、各地方団体は、第三セクターに加わることについて慎重に対処」せよ、前段を読みませんでしたが、中身は、やめろということなんです。そういう方針は変わりありませんか。
  109. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 現在のところ、その方針でおります。
  110. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もうお帰りいただいても結構です。  お話しのとおりでございまして、永光さん、一年間二千人乗っておれば、大体残すとはっきりしてもらわぬと、何か協議期間を延ばすとかいって、何ぼ一生懸命努力しても延ばすだけであって切ってしまう、こういうことであれば、地方住民の信頼を裏切ることになりますよ。少なくとも一年間継続をすればよろしい、こういうふうに認識をしてよろしゅうございますか、はっきりしてくださいよ。
  111. 永光洋一

    ○永光政府委員 いま申しましたのは、協議会が開催されて、基準に合致している線が、協議会が開催された時点を振り返ってその一年間の実績を見て、そして二千人を超えておるという実態があった場合に、それを検証するために、その定着性なり継続性を見るということでありまして、一年間あったから直ちに廃止を取りやめるということではございません。協議会を開いたときに、過去一年において実績以上に二千人を上回る数字があった場合に、それが定着性があるとか継続性があるかということを検討するという趣旨のことを申し上げたのでありまして、したがいまして、それで一応二千人を超えておる実績がありましたら、半年ほど模様を見て、そして半年後にまたもう一度定着性があるか継続性があるかということをわれわれとしては検討したい、こういうことでございます。
  112. 野坂浩賢

    ○野坂委員 ようわからぬな。一年間定着をする、半年間その継続性、半年もやるのですか、見るのですか。半年間協議をする、また半年やって、また半年めんどうを見る。こんなばかげたことがありますか。だから、一年間やって、大体それでよろしい、基準に入るということであれば、すぱっと残すということにしたらどうですか。  じゃ、提言します、あなた、もたもたしておるから。運輸大臣、どうですか。あなた、引っ張ってもてあそんでいるようなことはやめてください。
  113. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 問題は、大量輸送機関でございますから、公共的なそういう交通機関を本当に御利用していただきますことは、エネルギーの節約にもなることであります。ですから、いま地方で、おっしゃるとおり乗っていただく運動をやっておるところも知っておりますが、そういうものが一つのくせになりまして二千五百人以上ずっと乗ってもらうということの場合には、あなたの御提案のようなことも考えなければならぬ、こう思っております。
  114. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。それでは、一年で様子を見て、それについては十分対応するというふうにお答えをいただいたというふうに認識しておきます。  それで、貨物駅の問題でございますが、今度八百五十二駅を四百五十七にされるということですね、国鉄総裁。これにつきましては国鉄は、後がない、こういうようなお話をされております。これはいつから実施をされるおつもりですか。
  115. 高木文雄

    高木説明員 新しく計画を立てまして、私どもとしてそういうことにさしていただきたいということを決めましたのが一月末でございます。私ども計画では、暦年で申しまして五十九年の春、それから六十年の春と二回にかけて実施をさせていただきたいと思いますけれども、これはしかし、何分各方面、特に荷主さん等に影響がありますし、流通経済に及ぼす影響があるわけでございますから、十分お話し合いをしてのことでございますので、いまの申しました時期は、私どもはその時期にお願いしたいと考えている時期でございます。
  116. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話がありましたように、計画は考えておるが、消費者、いわゆる荷主あるいは通運事業者、こういう方々と話し合って合意の成立を見て実施をする、従来どおりである、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  117. 高木文雄

    高木説明員 原則的にはもちろんそうでございますけれども、しかし、地域、地域がそれぞれの御事情によって御主張になりますことについて、わかりました、なるほどということであれば、もちろんいま出しておりますいろいろなプランを手直しをすることはやぶさかでないわけでございますけれども、しかし、地方交通線の場合と同様に、やはりないよりあった方がいいということでがんばられる場合もあるわけでございますが、その場合には、Aの地域、Bの地域、Cの地域のバランスの問題もございますから、極力お願いをするということをいま考えておるわけでございます。  問題は、貨物の経営が大変ぐあい悪くなっておりますのは、どこへでも、どこからでも運べるということになっておることが大変便利なサービスではある反面、大変コストもかかり時間もかかってしまうということでございますので、そういう意味で貨物輸送は全体のシステムを直す都合がございますから、個別駅についての御事情ももちろんよく承りますけれども、そのことが全体のシステムチェンジをさしていただくことに支障がない範囲内でお願いをいたしたいというふうに考えております。
  118. 野坂浩賢

    ○野坂委員 原則的には話し合いをするけれども、システム化だからその範囲内だ、切り捨てもあり得る、こういうことですか。
  119. 高木文雄

    高木説明員 言葉として切り捨てということは考えてないわけでございます。あくまで御理解を求めるということでございますけれども、ただ、駅をやめるかやめないかということが、普通の旅客駅のどこかをやめるとかということと違いまして、貨物はずっといろいろな駅がつながっておってそれを一両の機関車で引っ張っていくということの関係がありますので、その意味では切り捨てとは申しませんけれども、ぜひともその辺の事情をわかった上でいろいろ話をさせていただきたいと思っておるわけでございます。しかしこれはいままで余りやったことがございません。これまでの貨物駅の廃止とは大分性格が違うものでございますから御理解を得るのにも時間がかかりましょうし、またよくお話をしなければならぬと思います。それらを含めまして、決して一方実施にならぬように配慮をいたしながら、かつ、しかし御理解を得て全体としてのバランスをとったものとして進めてまいりたいと考えております。
  120. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いままでの貨物駅の集約は、荷主なり行政の意向を聞いて合意を得て今日まで進んできました。したがって、従来どおりというのはそういう姿でありますが、今度は全国的にネットとして考えるんだということを御主張のようでございますが、一方的に実施はしないがシステム化がありますよというとちょっとひっかかりますので、従来どおり合意を得て進める、こういうふうにきちっと確認してよろしゅうございますか。
  121. 高木文雄

    高木説明員 あくまで基本的には地元の方を初め関係の、むしろ逆に地元でなくて送る方の、荷を出す方の御了解をも得なければならない。受ける方だけでなくて出す方の御理解を得なければいけませんし、また逆の場合もあり得るわけでございます。いずれにいたしましても、貨物を一列車、一列車ヤードでつないだり離したりすることはもうやらないで、旅客列車のようにつないだままで行ったり来たりするという方向にしたいと考えておるわけでございますし、それでどうにもならぬ部分はコンテナ化をしたいと考えておるわけでございます。コンテナの御利用をもってどこまで補えるかという問題もあります。そこらをすべてよくお話を承り、そしてまた私どもの輸送型が変わることの意味というものを御理解いただいた上で取り進めてまいりたいと考えておるわけでございます。とにかく決して全然耳をかさないとか一方的に実施するということは考えておりません。
  122. 野坂浩賢

    ○野坂委員 わかりました。一方的実施はしないということを確認をします。  いまお話がありましたように車扱いをやめるのですね。相当やめる。たとえばいまはワ列車というのはないのですからワムが最低です。これは十五トン貨車ですね。これを五トンコンテナにしますと三つ要るわけですね。そうしますと、たとえば秋田の横手から東京の小名木川に送る場合は一万九千六百円違うのですね。コンテナが高くなる。それから、いまお話があった藤田さんのところの愛媛県の八幡浜から汐留にミカンを送りますと大体一万六千三百円、これだけ違うのですね。高くなるのですね。それから荷主さんは、いままではすぐ送れたのですが、今度は基幹駅に到着をするわけですが、そこから通運事業者が運ぶということになると、二十キロも三十キロも離れたところに持っていかなければならない。運賃がかさむのです。いよいよ国鉄は貨物離れがしてトンキロ八%のものがゼロになってくるのじゃないか。いよいよなくなってくるのじゃないかということすら心配をするわけです。あなた方はこれをやってみてさらに深度化をするという言葉を使っていますね。深度化というのは廃止ということにつながります。国民のための国鉄といいながらいまやりょうりょうたるものでありますから、これらの問題についてはきちんと整理をして進めていただきたい、こういうふうに思います。  時間がありませんから多くを申し上げませんが、これらの集約なり廃止については、地元の合意が調った後に実施をする、一方的実施はしないということについて、付言をして確認をしておきたいと思います。  大変農林大臣には申しわけありませんでした。遅くまで待っていただきました。この間の総括質問の際にあなたにお伺いしましたが、牛肉とオレンジの貿易完全自由化の問題と枠の拡大の問題について、明快に農林大臣は、もちろん完全自由化もしないが、わずかな枠の拡大であっても私は断固拒否するということをお話しいただいたというふうに理解しております。しかし後で新聞等を読みますと、どうもダブル選挙らしいから、ダブル選挙が終わってからやったらいいじゃないかというようなことが出ておりますので、それはこのダブルの後にやるということは、選挙まではそうやっておいて、その後は枠の拡大で話をやる、一つのわずかな枠であっても許さぬということになるとアメリカとの交渉がしにくいというようなことの腹があるのじゃなかろうかということを私どもは心配をしたわけです。  しかし、金子岩三農林大臣はそういうことはないだろうと私は信ずるがゆえにあえて確認をいたしますが、前回御答弁をいただきましたように、自由化はもちろん、わずかな枠の拡大であっても断固拒否する、こういう立場で御折衝いただくということになるだろうと思いますが、そのとおりでございましょうか。時間があと二分しかございませんので、明快にお願いいたします。
  123. 金子岩三

    金子国務大臣 先般お話し申し上げたとおりでございます。選挙後云々ということは私は全く知らないことで、そんな新聞も私は見たことがないので、どうぞひとつ私の考え方は変わってないということを申し上げておきたいと思います。
  124. 野坂浩賢

    ○野坂委員 どうもありがとうございました。終わります。
  125. 久野忠治

    久野委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時八分休憩      ────◇─────     午後二時五十一分開議
  126. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡田利春君。
  127. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 エネルギー問題に関連して質問をいたしたいと思っておりますが、まだ通産大臣が参りませんから、その前に運輸大臣に、関係する問題について御質問いたしたいと思います。  特にいま問題になっておりますのは、ことしの一月三十一日に国鉄当局から、来年の二月を目途にして貨物量の十万トン以下の駅及び第二次の廃止ローカル線に決まっている路線については貨物の取り扱いをやめる、実はこういう伝達がそれぞれ行われておるわけであります。もちろん北海道の産炭地において、幌内線あるいはまた歌志内線、これはいずれも第二次の廃止線の対象になっておりますけれども、ここには百万トンの山がそれぞれ現存いたしておるのであります。歌志内線の場合には五十七年度大体四十万トンを超える石炭が貨車輸送される。幌内についても同様でありまして、これはいずれもその大宗は苫小牧までこの石炭が運送されるわけであります。もし、これを国鉄が言うとおり実施をするとすれば、山の存立にとって実は重大な問題になるわけです。もちろん、トラック輸送に切りかえるためには四億以上の投資が必要ですし、また運賃も、トラックに切りかえれば従来の運賃よりも大体四億若干の運賃増になる。これでは山がやっていけないという状況になるわけです。  しかし、現実の問題としては、すでに四十万トン以上の貨物量がありますから、決して国鉄はこのことによって赤字にはなっていないわけであります。もちろんこの第二次の廃止線の対象ではありますけれども、いますぐ、来年の二月に運炭をやめるということはきわめて重大な政治問題である、こう私は思うわけであります。したがって、第二次線として一体これをどうするかという問題は、昭和六十年度まで残されておる問題でありますから、そういう意味から言っても、この二つの路線について貨物の取り扱いをやめるということは政治的に考えても、社会的にも無謀な措置である、こう言わざるを得ないのであります。  この点について運輸大臣の見解を承っておきたいと思います。
  128. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 御案内のように、国鉄の貨物関係は大変な赤字であります。国が八千億くらい助成する中の七千億が貨物、こういうことですから、国鉄の経営のために拠点間直行輸送というものを今度やろうとして、その中にいまのようなことが行われ、あるいはまた第二次交通線というものも、空気を運んだりしているようなかっこうじゃまずいということで、国鉄再建の一つの柱として地方特定交通線の廃止問題が出ているわけであります。これはそれぞれ御協議を市町村長、知事さんにお願いするようにしておりますし、いまおっしゃった歌志内とか幌内の貨物駅の扱いにつきましては、四十万トンも出ているという話は私も地元の方々が来た場合によく聞きましたし、さらにはまた運輸省内部でもよく説明を聞いておりますので、そういうものは勘案しながら将来の問題に対処してまいりたい、こう思っております。
  129. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これが実施をされるとすれば、八月中にダイヤの編成にかかるわけですね。したがって、秋口までには大体ダイヤの素案が決まる、そして二月から廃止をするということになるわけですから、余り悠長に構えておられる問題では実はないのであります。いま、夕張問題で御承知のように、炭鉱は一社一山の形成でありますから、きわめて重大な社会問題が実は惹起をするのであります。私は、これらの問題を通産当局の意見を聞かないで一体国鉄がやっているのか、そういう四十四万トンも輸送する炭鉱が現存しているわけですから、国鉄は意見を調整しないでこういうことを発表するはずがないと思うのですけれども、通産大臣はいかがでしょうか。
  130. 山中貞則

    ○山中国務大臣 親友長谷川運輸大臣に申しわけないですが、何らの横の相談もなく行われております。
  131. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 開発庁長官にも、これは北海道にとって重大問題であります。特に長官は運輸関係の問題についてはいろいろ今日まで、これらの素案をつくるのにもかつては自分の意見を述べられてきたようでありますけれども、この実態はすでに陳情もされておると私は思うのであります。その点について御所感を承りたいと思います。
  132. 加藤六月

    加藤国務大臣 どう申し上げますか、歌志内線の問題につきましては、私の生涯記憶に残るような陳情を承っておりまして、北海道開発の立場から地域関係の皆さん、住民関係皆さん方の御意見を十二分に承りながら慎重に対処していただきたいように思っておる次第でございます。
  133. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 運輸大臣、これは政治論の面で、これは赤字ではないのですから、ほかは十万トンですけれども、ただ二次線というだけで四十四万トンも運んでいる炭鉱の現存している貨物の取り扱いを早急にやめる、これはむちゃだと思うのですね。その点は、国鉄当局が指示をしたんであろうかと思うのですけれども、もう運輸大臣の顔を見ていると、よくわかった、こういう顔をしているようでありますから、この程度でとどめておきたいと思います。結構です。  私は、当面のエネルギー問題に若干触れてみたい、こう思います。  御承知のように、今日の国際石油の需給動向をずっと分析してまいりますと、その予測と実績を調べますと、大体消費の予測については変わりはないわけですね。あるいはまた、非OPECの生産状況も若干上向きの状況で変わりがない、予測どおりにいっている。問題は、予測と反しているのはOPECの生産が減退をしている。そして、一方おいて在庫が減少している。総体の消費量が減っていないのでありますから、いわば在庫調整の中でOPECの生産がそれに見合って減っている。予測と実績はそう差がないというのが今日の国際石油需給動向であろう、私はこう思うのです。この認識についてはいかがでしょうか。
  134. 山中貞則

    ○山中国務大臣 価格を除いた需給の動向については大体おっしゃるとおりだと思いますが、しかし日本にとってみますと、非常に大きな変化が起きておる。すなわち、昨年の輸入石油量の総量は、石油ショックの起こります四年前、昭和四十五年当時の輸入量に落ち込んでおる。落ち込むという表現がどうかわかりませんが、その数量になっている。これは財政上も非常に大きな問題、石油税、関税等ございますし、一方た代替エネルギー、新エネルギー等への、そういういま緒につこうとしているもの、あるいは電力等のように石炭等に相当切りかえたもの、こういうものの問題等もありますけれども、全体としては、問題は価格の問題にこれから移ってくるのではないか。現にいまこれからお話し合いすることになるのでしょうが、OPECの協議が調わなかったことによる産油国の非常な問題ですね、そういう問題等がこれからのどう対応すべきかの問題に重点となってくるのだろうと思います。
  135. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま大臣が言われた価格の動向でありますけれども、非OPECの北海石油の値下げが行われて、OPECのナイジェリアの五・五ドルの引き下げが行われた。湾岸諸国の六カ国が近くこれに対して最終的な態度を決める。この見方非常にむずかしいと思うのですね。四ドルどまりで三十ドルにおさまる。あるいは五・五下げたんだから、五・五ドルから七ドルである。いろいろな説があるわけであります。しかし、大勢としては、わが国の石油消費の三分の二は湾岸諸国に供給を仰いでいるわけでありますから、そういう意味では、大体平均すると三十ドルを若干切って、二十ドル台の原油格になるであろうというのが常識的ではないか、こう私は思うのであります。  そうなってまいりますと、わが国が五十七年に大体二億キロリッター使用いたしておりますから、そういう意味で計算をしますと、今年度予想しているエネルギー特別会計の石油税ですね、これも当然それだけ下がってくるでしょうし、これは従価税でありますから下がる。同時にまた、一方おいては相当なやはりわが国の支出が減になるということになるわけであります。そういたしますと、今年予算審議しておりますけれども、すでに五十八年度の石油税の収入は減る。たとえば一〇%下がれば大体一〇%減る。恐らく一三、四%減るのではないか、こう思うのであります。その場合に、一体予算上どう対処すると考えられているのか、この点を承りたい。
  136. 山中貞則

    ○山中国務大臣 石油税だけで言いますとそのようなことになりますが、関税の方もありますからね。いずれにしても税収の面では減収になる可能性がきわめて強い。理論的にはバレル一ドル下がれば百二十億という歳入の方の減が計算的に出るわけでありますから、そうすると代替エネルギー、新エネルギー開発等に対してはどうするのだ。しかし、それはいま一時的な現象と見るか、今後長期的な現象と見るか、この分析をこれからやらなきゃならぬと思うのです。  湾岸諸国の会議はまだ続いているようです。したがって、結果はわかりませんが、いまおっしゃったような線に、ほぼそのあたりのところの値下げ発表になるのではないか。そうすると、わが国の国内についても、単に税収、これを財源にした計画の見直しとかいろんなこともありましょうが、ほかにわが国の国内に及ぼす影響は、レートの問題にも響きましょう。それから今度は債権国としての、メキシコとかベネズエラみたいな石油産油国でありながらわが国が債権国となっている国はいよいよ苦しいでしょう。それと、石油と関係ないブラジルあたりでも、ほかの国も含めて日本もまた債権国としての問題がある。あるいは一時オイルダラーと言われたものが世界にそれぞれ活用されているものが、日本でも証券その他ある。それが今度転移といいますか、バックといいますか、流動といいますか、そのような流れが世界の金融市場にどのような影響を与えるか。こういうところを十分踏まえて、これからわが国はどうすべきなのであるかという方針を早く決めないといかぬと思うのです。  経企庁は、ただ幾ら下がれば経済成長率が〇・幾ら上がってとかいう計算でいいのですが、通産省は生きている産業を預かっておりますので、いまそれぞれ局でずっと縦の仕事をしておりますから、それを全部、一応は二十五ドルにまで下がったときの問題あるいはその途中でとまったときの問題、そういうものをそれぞれの縦の局ごとにやらせまして、そして私の手元で事務次官、官房長も含めた全省議メンバー、トップクラスを集めて、わが国はこの石油の値下がりする事態に対してプラスの面、長期的には何といったってプラスには違いないのですが、それを余り手放しで喜べることなのかどうかというその検討をいまやっておりまして、近く私を交えて、わが国の産業行政と油の価格の変動に伴う今後の産業行政の方針、行方、見定めというようなものをつくり上げてみようと思って、いま、しかし今度はばたばたするというような意味じゃなくてクールに見ながら、しかも、なるべくきちっとした見通しを立てていこう。こういうことでいま作業をさしておりまして、近日それを私の手元でまとめたいと思っております。
  137. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この石油の価格の値下げ動向に先立って、経済企画庁で、しばしば当委員会でも問題になりました新経済五カ年計画の策定をめぐって、エネルギー問題の中で、通産省として新しいエネルギー政策の転換の展望を打ち出したものと私は理解をいたしておるわけです。  従来の柱は、第一に、まず石油の安定確保を図るのだ。第二には、石油代替エネルギーを開発する。第三には、電源立地の促進と電源の脱石油化を進める。第四には、省エネルギーを進める。こういう四本の柱にエネルギー政策は成り立っていたと思うのです。しかし、今回の計画策定に当たって通産省が出した方針は、在来型エネルギーというものを十分尊重して最適ミックスを目指す、ベストミックスを目指す、こういう思想の上に、政策転換の思想というものが私はここにあると思うわけです。まだこの計画は策定されておりませんけれども、大体この方向は、いま石油価格の動向から判断しても、この方針は持続されるもの、通産省の方針として従来の政策を一部補強するというか、転換するものと私は受けとめておりますが、いかがですか。
  138. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのとおりでこざいます。そのきちんとした姿勢を踏まえて、やはり国内で確保できるものはなるべく国内で確保しつつ、しかし、流体エネルギーへの固体エネルギーからの変遷、流れの変化といいましょうか、そういうものは確かに受けとめた新しい方向を出しておりますが、いまおっしゃった基本的な立場というものは変わりません。  たとえば、私がさっきなぜ二十五ドルということを言ったかといいますと、いま二十五ドルまで下がろうとは実は思わないのです。これはわかりません。私たちはそれを下げさせない努力も下げさせる努力も何にもできないわけですから。しかし、二十五ドルをなぜ言ったかといいますと、代替エネルギーの開発コストとそこのところで選択が起こるわけですね。これはアメリカでも同じだと思うのですが、しかし、私たちはやはり永続して――石油というものについては、たとえばまた再合意がOPECで成り立てば、ある日また突然三十四ドル五十セントに戻るかもしれませんしね。ですから、二十五ドルになっても、代替エネルギー、新エネルギー、そういうものに投ずる熱意あるいはそのスピード、そういうものは怠りなくやっておこうということだけは、一応私の考えとしては持っております。
  139. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 現在、外国炭の価格と石油の価格を比較しても、大体油が二十六ドルでペイする、輸入一般炭の価格と大体ペイする、こう言われておるわけですから、そういう意味で、油が安くなったから他の在来エネルギーよりも安くなるという単純なものでは私はないと思うのです。この点をやはり踏んまえてこれからのエネルギー政策を考えなければならぬと思うのですが、昨年、日本エネルギー研究所では長期の見通しを実は発表いたしておるわけです。  これによりますと、GNPが三・一%年率成長して、電力は二・八%、一次エネルギーでは一・五%伸びる。政府は四月には、一九九〇年、昭和六十五年には五億九千万キロリッター石油換算の一次エネルギーの目標を出したわけです。これに対してエネルギー研究所は、基準ケースで四億六千五百万キロリッター。したがって、政府見通しに対して一億二千五百万キロリッターのマイナス、減になっておるわけですね。しかも、これを個別にずっと見てまいりますと、石油の輸入量はマイナス一三・八%、原子力はマイナス二六・一%、LNGは、これは硬直化いたしておりますから一八・六%、一般炭はマイナス五三%、こういうような基礎の上に日本エネルギー研究所はすでに長期の見通しを発表いたしておるわけです。政府の見通しとは相当食い違っているわけです。この評価についてはいかがでしょうか。
  140. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは一応権威ある機関とは思いますが、純粋の民間団体でございますから、私たちもそれは参考にさせていただきます。しかし、私たちは国策としてどういう方向をとるべきか、その結果、エネルギーについては結果的に何が出てくるのかということでございまして、そこの乖離の大きさということが――政策を踏まえないで客観的な指数を計算していかれる方々の真摯な御努力は買いますが、私たちは生きた経済を相手に、要するに石炭一つとってみても、人間の生命の尊厳を毎日安全というものに信じ切って採炭をしておられる、そういう人たちを考えてみても、やはり生きている経済、まさに人間がそこで呼吸をしている、血が流れている経済を相手にしてやっていかなければなりません。見通しは私どもも参考にいたしますが、私どもは、日本はいかにあるべきかという政策の積み重ねの展望を持つべきことで、ときにその乖離があってもやむを得ないと思いますが、そこに提言されていることのおおむねの方向については、私もそう大きな間違いはないだろうと思っています。
  141. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、新経済五カ年計画の策定は、総理から差し戻しをされて弾力的にやるということで作業中でありますけれども、大体いまの石油価格の動向がほぼ落ちつきを見せれば、さきに昨年の四月に発表したわが国のエネルギーの長期見通しについては、当然私は改定しなければならないものだ、こう思うのですけれども、この点はいかがですか。
  142. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これでもう少し模様を見ようじゃないですか、いまの世界の石油価格の状態。アメリカなどもちょっとやはり国内の採掘費というのは高いですから、余り安くなると課徴金をかけて、そして、それでもうけた国内採油業者からは、今度はまたもうけ過ぎは税金を取るとか、そんないろいろな工夫をしておるようですから。けさの新聞の一部なんかには、石油の税を日本もかけたらどうか、所得税の減税財源なんてまで書いてありましたけれども、そんなに短兵急にやって、じゃ、それを使っちゃって、またあくる年値段が上がっちゃったら、それは財源なくなっちゃうじゃないかというような話のことになりますから、確かにそういう一部の見通しの違いは存在しても、政策の展開に誤りなきを期していく。結果、近づくこともあれば逆に反することもある。しかし、私たちのいま踏まえている方針というものはそう大きな違いはない。ただ、価格の問題が、いまおっしゃったように、二十六ドルという見方もあれば二十五ドルという見方もあります。しかし、二十五ドルのところでなおかつ私たちは、国内炭の生産目標にしても努力にしても、あるいは海外炭との代替のエネルギーとしての比較にしても、二十五ドルの線で大体議論しておけば二十六ドルの線はクリアできると思っていますから、そういうつもりでやっていることを御理解願いたいと思うのです。
  143. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大臣の答弁はわかりますけれども、暫定見通しについてはやはり一つの大きな指針になりますから、そういう意味では、修正するものはやはりできるだけ早目に修正するという姿勢が私は望ましい、こう思うのであります。特に、昨年はアメリカにおいてもヨーロッパにおいても、石油精製設備のスクラップをずっと進めてきておるわけです。わが国の場合にも石油の輸入量が減っておりますから、当然設備はもう稼働状況が六割を切っている、こういう状況にあるわけです。  通産大臣は、永山石連会長とお会いになったときに、次のようなことを述べておるわけですね。石油精製産業は国際競争力の強化が必要であるという前提に立って、産油国のダウンストリームへの進出が今日の石油情勢では予想される、これが第一点。第二点は、石油業法の運用等を含め対策、方法の再検討が今日必要である。第三番目には、産業政策の基本は保護ではなく国民経済全体の活力を引き出すという、いわばハードな面を非常に強調された、こう伝えられておるわけであります。  昨年以来の国際的な動向から判断しても、また当然これからの石油動向をずっと分析してみても、わが国においていままで懸案事項の石油業法の改正、それから業界のいわば再編成につながる設備のスクラップ化、あるいはまた石油価格の対策も、これはちょっと情勢が変わってまいりましたけれども、総合的に早急に進めなければならぬ問題ではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 永山石連会長に対して言ったことは間違いないのですが、しかし、その周辺には石連の役員が全員並んでいる中で申し上げた。一対一のあれじゃなかった。ですから、日本は九九・八%石油を輸入に依存している国であるにもかかわらず、現在の石油業界の体質はこれでいいと思われますか。正確には精製が二十九社、元売りが十三社、そういう国であっていいと思いますか。しかも、日本も石油の依存度を下げよう下げようといっても六四%くらいまで、六七でしたか、下がってはきておりますが、しかし、なかなか下がらないときに、業界が操業率は五〇%とかなんとかいったって、それはある意味では通産省にも責任が過去あったと思います。輸入はいまは行政指導で――それは言ってはいけませんが、石油産業だけが入れている形になっていますね。なっていますが、それはしかし、法律では石油産業のみが輸入できるということになっていないですよね。  しかし、それから入ってきたものを精製するキャパシティーといいますか、そういうものを決める場合には、きちんとして各社ごとに審議会で決めていって、それで手足の弱いところは、今度は精製しても、油種によってでもありますが、業転玉を出してしまって、それでもう末端の方で安売り競争のもとをつくるとか、やはり一貫して元売りの体制も、それから卸の体制も、あるいは小売の体制もいろいろ言われているように、いま石油の輸入から販売、そして代金を回収して税金の納付に至る百十日間のサイト、こういうものはこれでいいんだろうかという問題は、今度の国会には間に合いませんが、みんなでひとつ議論してみようじゃないかということを内部で言っておりましたので、あなた方企業も少し反省なさい。業転玉を出すといったって、それはあなた方の中で出しているのでしょう。  だから、私たちは石油産業の重大さにかんがみて御意見をこうして承って、私の意見も述べる機会をつくりましたけれども、甘えの構図というのはいけませんよ、自分たちで活性化を図りなさい、過剰なら設備を処理したらいいじゃないですかと、少し厳しく言ったものですから、あるいはあなたのお耳にまで届いたのかもしれませんが、しかし、やる気のない投げやりな、親方にすがっていれば国は何とかするだろうという産業は、少なくとも私はそれに対して力をかす気はないです。
  145. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今年度の予算策定に当たって、特にエネルギー関係予算についていろいろ自民党内でも議論があって、新鋭を課すべきである、しかしながら間に合わないで、このまま見送られておるわけです。たとえばLNGとか輸入石炭に対しても一定の税金をかける、これを財源にするということも検討されているわけです。しかも、石油価格が下がってくると、関税の場合には、これは従量税でありますから影響はないのでありますけれども、石油税は当然影響が出てくる。この面を判断しますと、新しいエネルギー政策に必要な財源の確保ということを改めて検討し直しをしなければならぬのではないのか、こう私は思うわけであります。  しかし、石油が下がれば負担能力があるからこれは減税財源に使うなんて、先ほど大臣が言ったような見方もあるわけでありますけれども、まず優先されなければならぬのは、この時期にどう代替エネルギーの政策をじみちに着実に前進をさせるか、こういうことが石油対策の面からいっても一番重要だと思うのです。それにはやはり財源がなければできないのであります。  その点について、今後のエネルギー政策を進める財源について大臣としてはどういう判断をお持ちか、伺っておきたいと思います。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 自民党の商工部会の方々の間で一応内定といいますか、そういう道もあるなという意味の合意は、確かにいまLNG等の課税という財源対策がございます。しかし、これはよほどよく考えてもらいませんと、たとえは何にたとえたらいいでしょうね。要するに代替エネルギーというものを日本に持ってくることは、それはエネルギー財源としてのプラスになる面があるから持ってくるのだ、しかも、それは代替エネルギーとしての価値を認めて持ってくるわけですから、それにも課税するということになりますと、では何のために運んできたのだ、悪いことをしたのかねという、理論的に――ちょっと表現は悪いですが、首をつろうとしている人を一人は上から助ける、一人は下から足を引っ張るというようなことに私は見えたものですから、税制調査会のまともな議論としてはしばらく、検討には値するけれども、いまおっしゃったように、財源というものに何か考えなければならぬというなら、直接代替エネルギーに課税するという考え方よりももっとほかにあるだろう、いろいろなことを研究してみようじゃないかということで、今日の段階に来ております。
  147. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは事務当局で結構ですから、この機会に改めて承っておきたいと思うのですが、為替レートが一円変動した場合に、油の場合は一体どの程度の変動が出てくるのか、あるいは電力の場合には、出水一%の場合は燃料費として換算した場合にどの程度の影響が出てくるのか、原子力の利用率が計画より一%上回った場合には一体どの程度になるのか、あるいは石油価格が一ドル下がった場合には、わが国の場合にはどの程度の影響が金額的に出るのか、この点ちょっと承っておきます。
  148. 豊島格

    ○豊島政府委員 最初の、円が一円高くなったときと安くなったときですが、そのときの石油の影響としては、大体日本としては四百六十億ドル輸入していますから四百六十億円、こういうことになるわけです。それから電力の場合、出水率一%向上すれば大体百十億円、原子力発電稼働率が一%上がれば百七十億円、それから原油が一ドル下がれば電力のコストにはどのくらいか、これは大体千億、こう考えています。ただ、いずれもその場限りのものです。全体の収支ということとはちょっと関係ないと思います。
  149. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きのうの質問で、電力料金の問題について経済企画庁長官が答えられておるわけでありますけれども、かつて昭和五十三年の十月から五十四年の三月までの間、この場合に円高差益が二千七百億円あったわけですね。そこで、電力の場合に還元をしたという措置がとられたわけであります。いまお話がありましたように、一ドル変動しますと、一ドル下がりますと、電力業界の場合には大体一千億から一千百億になるのではないか、六ドルになれば六千六百億になる、あるいは六千億になる、こういう数字が出てまいるわけであります。そうしますと、前は二千七百億円で差益を還元したわけですね。もし、四ドルなら四ドル下がるということになりますと、この水準の倍近い差益が出るわけでありますから、前例から言えば当然電気料金を下げるとか、あるいはまた、そのものを還元するとか、こういう措置がとられることが当然であると消費者は思っておるのでありますけれども、通産大臣としてはいかがですか。
  150. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私もせっかちな方の部類に入るのでしょうが、すぐに料金を下げろ、こういうと、では、その後どうなったのだというと、一年半後には十何%上げたでしょう。そうすると、いまもうしばらく円安が続きましたから、今度は相当な円安差損というものが蓄積されているはずですね。いまは、確かに円高の戻し傾向というものがありましたが、それの方で逐次埋めていきよるのでしょうが、さらに今度一斉に売り値が下がる、まさに奇跡ですが買い手市場みたいな状態が現出するとなると、これがどれぐらい永続するのか。ただ、そのときの単なる収支試算で電気料金をまず下げるとかということに政策的にいくことがあるにしても、これは相当な永続性がなければならぬ。過去の円安差損というものもコストですから、戻ってきたとき、若干のそれの埋めたものもまた差し引かなければならぬし、今回もし日本が永続する好ましい状態になったとしたら採算上どういうことになるから、そこで一般大衆に還元しなさいということになるでしょうが、私がいま通産省の各局に言っているのは、いまは三十四・五ドルの建て値から幾ら下がったという議論をしているのだが、実際は二ドル五十セントから三十四ドル五十セントに二回に分けて上がっていった経過というものの上に仕組まれた現在の経済状況なんだから、それによって下がることも、下がり方はもともと三十四・五ドルだったものが急に下がり出したのと違うのだから、そこの仕組まれていった経済の仕組みの過程をある程度戻すにしても、それは慎重に検討しろということは言ってございます。
  151. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 電力九社の中間決算をずっと見ますと、これは北海道、四国を除いて、期間収支では一割配当の利益がようやく確保できる、こういう決算内容になっておるわけです。今回の石油価格の動向でこれが大幅に変わってまいるわけであります。ただ、率直に言って、やはりいまわが国で問題なのは、電力料金が世界一高いということですね。それが素材産業に大きな打撃を与えておるわけです。同時にまた、各社間の格差もやはり開いてきたわけです。私の分析では、これ以上格差が開くということは、いままでの九電力の体制でいいのかどうか、少なくとも最低と最高の幅は現状幅の中におさめるという政策的措置が、これからわが国のエネルギー政策として特に大宗を占める電力の場合には重要である、これをさらに拡大していくような場合には、いまの九電力体制そのものを見直ししなければならぬというのが本当ではないか、私はそう思うのであります。  最近の動向を見てまいりますと、格差はやはり広がっていく傾向が強いと思いますね。四国なんか例にとってみますとそういう気がするわけであります。この点は産業政策の基本に関する問題できわめて重要でありますけれども、大臣の所見を承っておきたいと思います。
  152. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういうものを最もよく象徴したものが、福島県に東京電力が発電所をつくる、そして福島県の人たちは、東京電力並みの料金は保障されないで、東北電力の高い料金の方で生活させられておる、これはどこかおかしいのじゃないかという議論があって、電源立地交付金とかいろいろなことをやりながらそこらは急場をしのいでいますが、確かにおっしゃるとおり九電力の分割という問題は、分割のときには問題がいろいろありましたけれども、今日的に見ると、たとえば異常渇水準備金を税法上めんどう見てやろうといったって、非常に恩恵を受ける電力会社と、あんまり関係ないけれども九電力全部の陳情だから一緒に行こうやという程度の、極端に言うと差があるのですね。ただそれが、九電力に割ったためにそれぞれの地域の産業のコストの中ではまり込んでいるわけですね。ですから、格差が余り大きく開くことは確かに好ましくないのですが、それを再編成ということになると、またこれ、さっきの福島県の例をとったように、現実的には大変な問題が起こると思うのですね。  しかし、ほっておけない問題に、たとえば沖縄電力がありますね。これは沖縄の人たちは、二十七年の異民族支配の中で、いわば民族資本、沖縄県民資本でつくった電力会社であり配送電会社だったのだ、だからこそ国の方も復帰のときに全額に近い金を出して一本にしてつくってあげたのですが、しかし、いかんせん離島ばっかりの沖縄ですから、電力料金はどうしても抑えて抑えて、国が直接補助をしてあげる形でやってきてももう限度に近い。そこでどうするかということで、電力料金をせめて九州電力並みにとどめるためのいわゆる電力料金に重点を置くか、それとも誇り高さ、施政権下にわれわれはつくり上げてきたのだという誇りをとれば、どうしても一般財政下の援助には限度がありますから、ほかの九州電力とか四国電力、東京電力より高い電力料金を沖縄県経済はおんぶしなければならぬ。大変気の毒ですが、相入れない二つの問題を抱えているわけですね。ですから、西銘知事に対して、大変むずかしい選択であろう、しかし、どっちかを選択してほしい、そして、それをできれば県議会あたりで、議題は本会議じゃないでしょうが、全員協議会あたりで、県民のためにこの道がいいというようなものをつけて持ってきてくれれば私は沖縄の言うとおりにしますよと言っていますが、これがなかなかうまくまとまっていないようです。  そこらのこともございまして、確かに九電力体制の一部に問題が起こっておりますが、これをがらっと組みかえるのには大変むずかしい既成事実があるのじゃないか。そこらのところは、しかし御意見はごもっともな点があるわけですから、私の方でも念頭に置いておきたいと思います。
  153. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私の持論は、電発という特殊法人の会社があるわけですから、これはもちろん卸売電力会社でありますけれども、今度は二十万の石炭火力を沖縄につくるわけですね。そういう点を思い切って活用されればそういう点は解消できるのではないかという持論が実はあるわけであります。  いずれにしても、これからは電力というのは量の時代から質の時代、そしていま再編の問題を一応一定条件を展望して述べましたけれども、やはりそのためにはもう少し広域運営ということ、従来より発想を変えて運営が行われなければならない、そのためには質的転換を図る必要がある、私はこう思うのであります。要は、これ以上各電力会社の格差が拡大する場合には日本列島の均等な発展ができませんから、当然電力再編につながる、こういう点を踏んまえてこれからの政策立案に当たってほしいということを申し上げておきたいと思います。  そして、昨年十月に国際エネルギー機関、IEAが第二回目の国際エネルギー需給の展望を発表いたしております。これによりますと、大体一九九〇年には石油価格がバレル二十八ドルで維持をされた、こういう計算の上に立ってずっと見ますと、その場合には大体四百万バレル・デーの石油超過需要が発生するのではないか。もちろん経済成長率は三%ぐらいに見ております。一方においては、低成長の場合には二・五%強の上昇を続けて、石油価格は一九八五年からまたさらに三%ぐらいの値上がりはするであろう、こういう計算でいくと、昭和六十五年には大体タイトにバランスがとれる、いずれにしても余剰はないという予測を発表いたしたわけですね。これは中長期的に見る場合に非常に参考になるレポートではないか、私はこう思うのですが、この点についての大臣の所見を承っておきたいと思います。
  154. 山中貞則

    ○山中国務大臣 IEAの権威にかけての見通しでありますから、これはやはり尊重する気持ちで参考にしなければならぬと思うのです。しかし、それを途中で土手っ腹を突き破ったような大きな変化を起こしたのが、やはり今回のOPECの会議の協議相調わず、国際カルテルの崩壊、どういう状態になるか、だれも見通しがつかぬといういまの状態だと思います。したがって、その見通しはそう間違っているものではないと思いますが、基本的な仕組みの変化というものはその中には織り込まれていないわけでありますから、そこらは臨機応変に対応しながら、そして、やはりIEAというものは尊重していくという気持ちでおります。
  155. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 エネルギー問題、最後に、北炭夕張炭鉱の閉山が行われて、この再建についていま石炭協会で検討委員会が設けられて検討が続けられておるわけです。目途は四月というのでありますから、大体来月は議論がまとめに入っていくのではないかと私は思うのであります。この点の作業は一体どう進んでいるのか、これが第一点です。  第二点は、北炭幌内炭鉱の再建問題でかねがねいろいろ議論がなされておるわけであります。今日の出炭状況は、きわめて正常な目標出炭が達成されておる。しかし、中長期的に安定をさせていくためにはどうしても再建計画、少なくとも五年なら五年の再建計画が必要だ、私はこう思うのであります。そのためにはやはり安定生産のサイクルを一体どうつくるか、これがいま最大の問題ではないのか。もちろん三月末には十五億円程度のめど及び三井銀行の債務を一体どうオーバーするのか、ジャンプするのかという問題が実は横たわっておりますけれども、この点について通産省としてはどう受けとめられておるか、この二点について。事務局で結構です。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕
  156. 豊島格

    ○豊島政府委員 最初に、北炭夕張の問題でございますが、先生指摘のように、有吉石炭協会会長を委員長とする夕張新区域十尺層開発検討委員会というのが設定されまして、さらにその中に小委員会が設けられていろいろな角度から検討が行われております。  最初は九月二十九日に第一回を開催しまして、その後十月十五日、十一月十七日、十二月二十日とずっと続けてきております。それで、小委員会の問題を上げ、あるいは経理、技術面でいろいろフィードバックしてやっておりますが、いまのところ四月をめどに何とか結論を出すようにということで鋭意お願いしておる、委員会としてもそれを検討しておるということで、その結果を期待しておるところでございます。  それから、幌内でございますが、これにつきましては作業管理面、去年の七月以降非常に不十分であったということもあろうかと思いますが、出炭が非常に減っておりまして、日産二千五百トンか三千トンというところを低迷しておったわけでございますが、今月に入りましてからわりあい自然条件に恵まれたとか、切り羽が稼働し出したとか、それから、われわれも非常に要望し、会社も努力したわけでございますが、作業管理が是正された、あるいは機器の整備とかということで現在四千百トン出炭に回復しておるということでございます。しかし、この再建ということになりますと、すでにこれまでの出炭減による損失もございますし、それから現在の生産水準というのは相当長期に維持できるということが確保されなくてはいけないわけでございまして、そういうことにつきましていろいろと会社において鋭意再建計画を検討しておりまして、合理化その他やっておりますので、その結果を見た上でいかにこの再建を図るかということの態度を決めていきたい、このように考えております。
  157. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 北炭新鉱の場合、まだ労務債の関係の、もちろんある程度計画を立てていまやっておるわけですが、実はまだ完済はいたしていないわけです。その点について従来からの議論を踏んまえて、大蔵大臣おりませんから、大蔵省の方々もおりますので、大蔵省、通産省として、せっかく決まった労務債の完済計画というものが、一応立てた計画どおりといかなくても、ほぼそういう方向でこの計画が実行されるように、もう詰めの段階でありますから、この機会に強く要請をしておきたいと思うのです。  では、終わります。  次に、私は、酪農関係の問題、畜産問題について御質問いたしたい、こう思います。  今年の酪農の状況は、従来と違って大きな変化が見られる、私はこう思うのであります。生乳の需給関係は緩和から均衡、均衡から不足基調にいま推移している、これが今年の特徴である、こう私は思うのであります。ところが、今年特に需給関係が非常に不足基調に、わずかこと二、三カ月たってから不足基調に転化をしたというところに非常に大きな注目をしなければならぬのではないかと私は思うのです。このことは、やはり農林水産省の民間在庫の過大見積もりを行ったというところに原因があるのではないのか。大体五十五年末で農林省は二十五万トン、メーカーは三十万二千トン、こう言っておったのですね。ところが、その後検討してみますと、実際は十五万八千トン程度であったというのがここで明らかになってきているわけですね。そして、事業団在庫は、バターは全部放出してしまって逆に輸入しなければならぬという現象が生まれたわけです。脱粉についてもこれが大幅に下がってしまった。今日では一・九カ月分の在庫しか事業団は持っていない、こういう状況であるわけです。これは六年連続をしてほぼ乳価が据え置かれてきた、こういう生産計画をずっとやってきたという農民に対しては、農水省としては相当責任と反省を込めてこの間の事情を説明する必要があるのではないか、こう私は思うのであります。  そういう意味で、今日の需給関係から見てどういう反省を持たれておりますか、率直に承りたいと思います。
  158. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  五十八年度の保証価格については、畜産振興審議会の意見を聞いて、三月の末に適正に決定いたしたいと思います。
  159. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いまの答弁では――いまの場合には、これはもう在庫は民間の場合には大体二カ月というのが標準でしょう。もうそれを割っている状況でしょう。事業団在庫だってバターは〇・五カ月分でしょう、一カ月ないのですから。ただ、脱粉だけが一・九カ月あるわけですね。こういう状況にがらっと半年でさま変わりしてしまったわけですね。これは見通しの誤りでしょう。一方においては農民に生産調整をしなさいということで政策を組み立てたわけですね。だから、駄牛の淘汰の問題についても中間でやめたでしょう。あるいはまた、哺育乳についても原料乳に回しなさいということで、政策を転換したでしょう。これは農林省としては率直に反省をしなければならぬ点だと思うのです。在庫の問題について、いま大臣から答弁がありましたけれども、この点きちっとした総括というか反省がなければ、次への政策に対する農民の信頼を得ることができないのではないか、こう私は思うのです。
  160. 金子岩三

    金子国務大臣 正確なお答えをさすために政府委員に……。
  161. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の牛乳、乳製品の需給事情でございますが、先生の、民間在庫の見方を低く見ていたのではないかという御指摘は、実は一昨年の話でございまして、昨年の価格決定の際には悉皆調査をいたしまして、在庫は確認をいたしたわけでございます。  先生の御指摘は、乳製品について需給が比較的タイトになってきたのではないかという御指摘であろうかと思います。この御指摘につきましては、私どもかねがね、事業団が在庫いたしておりますものが乳製品の価格を圧迫する、かなり圧迫したというのは事実でございますので、五十七年度の需給計画を立てます際に、積極的に事業団在庫を減らす、したがいまして、事業団在庫は生乳換算いたしまして約三十万トン程度のものは取り崩すという前提計画を立てたわけでございます。その結果、五十七年度、現在進行中でございますが、バター、脱粉、先生指摘のような数字が放出されておりまして、生乳換算いたしますと、ほぼ三十万トン程度のものが現在使用されて、したがいまして、需給の均衡に到達しつつあるわけでございます。  御指摘は、特にバターの輸入に関しての御指摘かと思いますが、実は、当初審議会にかけまして御議論いたしました際にも、これも三十万トン程度の在庫の取り崩し、この程度のものは必要ではないかということでございましたが、残念ながら、その三十万トンの中身のバターと脱粉の関係におきまして、バターがわれわれが想定しましたよりも若干高い需要が起きたということは事実でございます。これからのプランを立てます際に、需給事情につきましては慎重に各社の意見あるいは生産者、関係者の意見を聴取しまして、なるべく実態の需給に近いものにつくっていきたいと考えております。
  162. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私は昨年の二月にもこの問題を質問しているわけですよ。そのときに、農林省の答弁は、五十六年十月末の在庫で、バターは一万三千トン、二・四カ月分が、民間ですが、ある、脱粉は二万三千トン、二・二カ月分だ、事業団が一万二千トンと四万四千トン、こういう数字を私に答弁しているわけですね。その後、四月からばたばたと事業団の放出が行われているわけですよ。すでに貸し付けがもうあの時点では行われておったわけですね。この点、いまの答弁では若干触れておりますけれども、私自身としては、こんなに急激に、三カ月前後で情勢が変化するということは、やはり民間在庫の見方が、捕捉が十分でなかったということを証明しているのではないか、こう思うのです。  時間がありませんから次に進みますけれども、では、五十七年度の暦年の生乳の生産は、用途別に一体どういう結果になっているのか。同時にまた、すでに中央酪農会議では、五十八年度の供給量について、総計六百八十八万八千七百トンの生産計画を立てておりますけれども、この点について農林省はどう評価をしているか、承っておきたいと思います。
  163. 石川弘

    石川(弘)政府委員 五十七年度年度途中でございますが、現在、私どもが把握いたしております四月から十二月までの用途別生産実績を申しますと、飲用向けにつきましては三百二十七万トンでございます。乳製品向けは百八十一万五千トン、それから、そのうち、いわゆる不足払いの対象になります特定乳製品向けが百五十七万トンでございまして、私どもが五十七年の需給を策定いたします際に考えておりましたほぼ上限に近い数字の生産が現在行われているわけでございます。
  164. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 中央酪農会議の五十八年度の計画はすでに出ておるわけですね。御存じでしょう。この点については、大体評価できると思いますか。これは前年度の実績に対して三・八六%の増ですね。計画に対しては四・八一%の増をもくろんで、それぞれ計画がすでに発表されているわけですが、農林省としての評価はいかがですか。
  165. 石川弘

    石川(弘)政府委員 中央酪農会議が、五十八年度につきまして数字を出しておりますのは、私ども承知をいたしております。  一般論として申し上げますと、従来、せっかく生乳全体の需給として均衡ぎみになっておりますが、先生も御承知のように、市乳の世界で乱売が行われているというのは、どうしても市乳に偏りがちに現実に乳が流れるということがございまして、現在、中酪が出しております飲用向けの伸び率は二・二%と、比較的抑えぎみとは思いますが、何しろ現実がまだなかなか値直しができぬという状態でございます。このあたりに一つ問題があろうかと思っております。  それから、乳製品の中の特定乳製品とその他乳製品の振り分けの仕方等についても、なお、われわれとすれば若干、意見を調整をする必要があろうかと思っております。
  166. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうしますと、いま触れられた飲用乳価の動向でありますけれども、市場調査をしますと、千ミリリットルの紙パック入りの小売価格は、現在は平均二百九円ですね。これは購入先別、ブランド別で見ますと、二百円以下で売られているものが八六・六%あるわけですよ。ですから、大体、生乳の一リットルは一・〇三キロに相当するわけですから、これで計算すると、普通は処理加工費をかけて百八十五円から百八十六円、小売マージンを含めて二百三十円というのが想定価格なわけですね。これがいま私が申し上げました実績にあるわけです。しかも、生乳の場合は量販店で取り扱っているのが四五%を占めているわけです。  一体、価格がこういう動向を示しているのは、単にいま言われた原料乳が市乳に回っているというだけで解決ができるとお思いでしょうか。
  167. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生指摘の、いまの二百九円前後というのは、特売除きの数字でございます。最初に申し上げておきます。二百九円とおっしゃいましたのは、特売を除きました平均価格でございます。  いま御指摘の小売価格の低迷問題でございますが、単にボリュームだけの問題ではございませんで、まず市乳、飲用向けの需給緩和ということは、確かにそういうことがございますが、そのほかに生産者といたしましては、極力有利なようにということで、生乳を飲用に向けるという、いわば産地間競争というのが大変激化をいたしております。  それからもう一つは、市乳のプラント自身が若干、過剰でございますが、このプラントの過剰ということのみではございませんで、御承知のように、商系にいたしましても、大手、中小ございますし、農協系も大型、中小のプラントを持っておりますが、こういう乳業者相互間の一種の不信と申しますか、非常に強い不信感のもとでの過当競争というのがなかなかやまないということがございます。  それからもう一点は、先生指摘のように、四七%のものはすでにスーパー経由で売られておりますが、いわばスーパーのバイイングパワーと申しますか、取引上限等についてかなり強い力を発揮している。  いま申しました四つの点がやはり飲用乳価を低迷させている大きな原因だと考えておりまして、それぞれに対して対応すべく関係者と協議をいたしているわけでございます。
  168. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 最近の乳製品価格についても、この動向は非常に価格が上昇ぎみになっていると思うのですね。大体、安定指標価格、バターはキログラム当たり千二百五十三円ですね。これは百十円上回っているわけです。脱粉については、二十五キログラム一万二千六百七十円、プラス千三十円になっていますね。この傾向は続くとお思いになりますか。
  169. 石川弘

    石川(弘)政府委員 価格の動向につきましては、四月、五月あたりから上がってまいりましたが、これにつきましては、御承知のように、当時国内の加工向けの牛乳が前年対比でむしろ少なかったわけでございます。むしろ、価格が上がってくるのに乳製品に回らなかったということがございまして、先ほど先生も御指摘になりましたように、いわば駄牛淘汰とかあるいは全乳哺育といったようなものを振りかえまして生産振興に努めたわけでございますが、おかげさまで、年を通して見ますればかなりふえてまいりました。特に、最近の北海道の生産というのはかなり伸びてきておりまして、こういうことも加味をいたされまして、大体年末をピークにして価格は安定をしてまいっております。さらに、最近放出いたしております、生産者団体の放出しているものについてはより安定的な価格になっている。私ども、余りこういう価格が上がりますことは、代替品との関係その他、決して好ましいことではございませんので、いままでの傾向から見ますと、もう少し妥当なところで価格がおさまった方が将来の乳製品の需給にはプラスになるのではないかと考えております。
  170. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今日の酪農経営の所得と負債の状況をずっと見ますと、所得の場合には、北海道の大型酪専で見ますと、五十五年、五十六年では五百二万八千円から四百四万五千円に所得は落ちています。これは、その他の都府県では三百六十三万二千円から三百二十万五千円、これも下がっています。負債について言えば、北海道では二千三百三十六万から二千六百五十九万にはね上がっています。その他の都府県の場合には、六百三十六万七千円から六百四十五万円と。五十七年はまだ正確な統計は出ておりませんけれども、大体横ばいと見るのが正しいでしょう。  こういう状況についても間違いがないと思うのですが、いかがですか。
  171. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のような数字になっております。ただ、五十七年度につきましては、私ども交易条件指数等を見ておりますと、乳量がふえ、あるいは乳価水準が若干でも上がり、かつ、えさ代が安いというようなことがございまして、五十五年、五十六年を底にいたしまして、五十七年から上向きに転じたと考えております。
  172. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 昨年の三月に行われた畜産振興審議会の酪農部会ですね、この場合の五十七年の推定、乳製品の需要量を想定したわけですね、算式がありますから。その結果、大体百八十四万八千トンから百九十四万トン、したがって限度数量は百九十三万トンに抑えたわけですね。これはもちろん、その他の生乳の消費量、それから事業団在庫の一カ月分を超える数量ですね、これを除いてそういう算式で出したわけですね。今日の状況でこの算式に当てはめて計算をすると、この中央酪農会が出している二百二十二万トン程度ですね、ほぼ、これがこの算式でいくと二百二十万トン程度が限度数量になる。当然だと思うのですが、これは同じ方式で計算しますとそうなりますね。間違いないと思うのですが、いかがですか。
  173. 石川弘

    石川(弘)政府委員 限度数量につきましては、先ほど申しましたように、昨年は相当の事業団在庫を放出するという前提で組んでございますから、それと同様な考え方をいたしましたとき、先生のおっしゃるような算式もあろうかと思います。私ども、百九十三万トンにこだわる事態ではないと思いますが、ただ限度数量の決め方につきましては、どこで支えるかという水準の問題、あるいはどれだけ生産できるかという生産の可能性の問題、さらには、いろいろ考えてまいりますと、財政負担等も含めまして、いろいろと考え方としてなお整理する必要がございます。したがいまして、いわば中酪がつくっております二百二十万トン前後の数字というものも、私どもそれが直ちに私どもの限度数量の算定方式に当たるものではないと考えております。いずれは、この限度数量の考え方につきましては審議会で十分御意見をいただきました上で決定するべきものと考えております。
  174. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 いま明確な答弁をもらうことは、審議会を前にして無理だと思いますけれども、大体私が指摘した方向でほぼこれは計算されなければならぬものだ、こう私は思います。もちろん、二百二十万トンどんぴしゃりになるかどうかは別にして、D1からSを引いてD2を引いて、去年の算式に合わせて計算をすると、ほぼそういう近い数字になることが妥当だということを指摘しておきたい、こう思います。  同時にまた、酪農経営負債整理資金昭和五十六年に設けられて、五十六年には百六十三億円、五十七年には百三十七億円、二カ年間で三百億が消化されておるわけです。これがいま効果を出しつつあると思うのです。しかし、この計画昭和五十六年から六十年の間、こう設定したわけですね。それが需要が多いものですから、二年間で消化をした。これはやはり継続することが最も大切であり、今日ようやくそういう条件が整備をされて、設備投資についてもそれぞれ抑えぎみに来ている。負債についても大体横ばいの傾向に入ってきた。ここをやはり進めていくことがいま酪農政策として最も重要なポイントだ、私はこう思うのです。この点はいかがですか。
  175. 石川弘

    石川(弘)政府委員 五十六、五十七年度につきまして、必要な負債整理を行いました。これは単に低利の資金に乗りかえというだけじゃございませんで、御承知のような経営改善のためにいろいろな努力をしてもらっておりまして、このことが経営上も大変プラスになっていると思います。  五十八年度以降の問題につきましては、現に五十六、五十七でやりました事柄の成果と、それから若干申し上げましたように、五十七年度以降条件が少しよくなってきているかと思いますが、その辺の事情も十分踏まえました上で、さらに関係者と協議を詰めてまいりたいと思っております。
  176. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これは五十六年、五十七年に、負債整理対策で金を貸す場合に相当厳密にやっているわけです。同時に指導も行われたわけですね。そういう成果が出てきているんだと理解する方が、末端単協で状況を見てもそういう理解が正しい、こう私は思っておりますので、この点も申し上げておきたいと思います。  そこで、需給関係がこういう非常に不足基調のような方向に推移をしている。もちろん、生産計画はぴしっと組んでいくというのが、政府もあるいはまた中央酪農会も農民の場合でも、一応合意として成り立っておる、こう私は思うのです。そういう面から考えてまいりますと、先ほどの質問のように、最近の乳製品の価格動向、また需給関係、そして五十七年五月以降の乳用牛の肉生産が伸び悩んでいるという状況、こういう点を勘案しますと、五十八年度の乳価については、基準取引価格についても十分検討しなければならぬ年ではないのかという気がするわけであります。これは結果がどうなるかは問題は別ですけれどもね。単に保証乳価だけではなくして、基準取引乳価についても十分検討しなければならない年だ、こう思うのですけれども、この点についての見解はいかがでしょうか。
  177. 石川弘

    石川(弘)政府委員 乳価につきましては、御承知のように、製品の価格でございます安定指標価格、それから助成なしと申しますか、要するに差額に対する不足払いなしに乳業が支払い得る、いま御指摘の基準取引価格、それと保証価格、三つを定めていくわけでございます。この三つのいずれについても検討すべき点はあるわけでございますので、もちろん、基準取引価格につきましてもその必要な試算なりあるいは物の考え方なりを十分生かしていきたいと思っております。
  178. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 私はちょっと注意を喚起しておきたいのは、五十七年度の場合にはいま質問したような状況でありますからやむを得ないと思いますけれども、暦年で見ますと、ことしの乳製品の輸入状況というのは、もうずっと、下降ぎみが逆に上がってしまったわけですね。そして、その中にはニュージーランドとの間で年間七千トンで合意をした調製食用脂についても実績は一万六千五百トン、一四・六%になっておるのであります。そして、総体的な対前年度比一〇・四%増になっておる。バターのごときはもちろん緊急輸入したわけですから大きな数字になるわけです。いままでは生産計画を組むということは、一方においては輸入についてもある程度管理的な面の機能を働かせる、そして生産者については生産制限をさせる、計画生産をさせる、両面が相まって合意が成立しておったと思うのですね。昨年は特殊事情かもしれませんけれども、この思想は今後も続けていかなければならないのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  179. 石川弘

    石川(弘)政府委員 酪農製品の輸入につきましては、御承知のように、国内ではとても生産ができるような価格でできないもの、典型的に申しますと、えさ用の脱脂粉乳とかあるいはカゼインといったようなものにつきましては輸入に頼っておるわけでございます。今回の輸入増の中でも大きいものはえさ用脱粉でございます。御指摘の調製食用脂等につきましては、これはニュージーとの間では三年間二万七千数百トンというような約束にいたしておりまして、その中で特にニュージーにつきましては協定の上に立ちまして比較的安定的に輸出をしてきているわけでございます。これらのものにつきましては、特に極力国内製品を使っていただくようにということで関係業界ともいろいろとお話し合いをしておるところでございますが、今後ともそのような考え方で押していきたいと思っております。
  180. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 結局、市乳で消化したものの残りが原料乳なりその他の乳製品の方に回るわけですね。価格差があるものですから、どうしても市乳傾向が非常に強い。特に、都市酪農といいますか、都府県などの酪農についてはそういう傾向が強いわけですね。やはりこの点のある程度の調整検討といいますか、なかなか歯どめをかうことはむずかしいのでありますから、何らかの対策を講じないと、どうしても原料乳で売って、限度数量を超えるものは安いわけでありますから、六十何円でありますから、そんなら八十円で売ってもいいという形で圧力が増してくるわけですね。このかぎを解くことが、大臣、非常に重要だと思うのですね。何か名案がありますか。
  181. 金子岩三

    金子国務大臣 名案といっても、いますっきりした名案を持ってお答えすることはできませんが、いろいろ実態は私もよく承知いたしております。やはり何らか対策を立てて、酪農業者を救い上げるというような政策を実施したい、このように考えております。
  182. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 わが国の大型酪専のモデル事業として、根室の地域に新酪農村の建設事業が行われて、本年度で完了するわけです。九十四戸が入植しております。そして、来年度から二十年年賦でこの農場を約一億円で農民が買い取るというシステムになっておるわけです。そうしますと、来年から五百万ないし六百万支払いをして、一億円を二十年で払って買い取る、こういうことになるわけです。  私ども実態調査から見ますと、特に五十三年、五十四年ころに入植した人はちょうど生産制限で抑えられておるわけですよ。五十頭以上の実績のある人はいいわけですね。三十とか三十五頭の実績で入った、生産を抑えられる、こういう状況が二、三年続いたものですから、やはり格差が出ているわけですね。大体支払い可能と思われるものは九十四戸のうち七割程度と思われます。三割程度の人は非常に無理だ、こういう感じがするわけです。無理やりやれば途中で放棄をして逃げ出しをしなければならない、こういう事態も私は心配されるのであります。  ですから、そういう意味で、ここ数年の酪農の動向から判断しますと、この点についてはやはり安定できるように弾力的に対応する必要があるのではないのか。買い取り条件を緩和するとか何らかの対応措置は絶対必要だ、こう思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。
  183. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生指摘のように、大半の方は順調に経営が拡大しているわけでございますが、後期の入植者で、特に入植いたします際にすでに負債が多かった方とかいろいろございまして、個別には御指摘のような事態があろうかと思います。私どもも、御承知のように、過去起きました事例につきましても自作農維持資金だとかあるいは負債整理のための酪農の乗りかえの資金というようなものを使いまして、極力そういう脱落がないように措置してきたつもりでございますが、今後の取り扱いにつきましては、先ほど申しましたように、五十七年から状況が少し好転の方へ来ておると思います。こういう好転のもとで個別農家の営農指導なりそういうものを徹底的にいたしました上で、それでもなおかつどうしても負債が渋滞するというような方については、北海道庁も含めまして、われわれもそういう負債整理のための手法も若干は持っておりますので、そういう手法に入るかどうか。しかし、何より必要なことは、ここ二年間非常に条件が悪うございましたが、これが好転する時期に営農改善を徹底的にやりまして何とか、七割以上だと思いますが、そのいい方の部類へ上がるような指導を徹底いたしたいと思っております。
  184. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今国会には酪農振興法の改正案も出されておるわけですね。これは単に肉専の関係の問題だけではなくして酪農振興法全体を見直しする時期に来ているのじゃないかなという気が私はするわけです。時間がありませんから、これはいずれ委員会でそれぞれ議論されると思いますので委員会の方に譲りたい、こう思っています。  次に、農林大臣に引き続き漁業の問題で承っておきたいと思うのですが、韓国漁船の問題に入る前に、大臣はまき網漁業の専門家でいらっしゃるわけですね。最近のまき網漁業というのはソ連から学んで着底まき網なんですね。そうしますと、七十メーターから九十メーターのところでは完全に着底するわけですよ。で、二キロなら二キロ四方にあれしてやりますから、言うならばかき回しの底びきのような関係になるわけです。これはいま百メーターでも百五十メーターでも着底できるわけです。非常に漁法は変わっているわけですね。そうしますと、近海で特に七十とか八十程度のところでまき網をやる場合に、着底させてしまうと、せっかく底びき漁業が禁止をされているのだけれども、このまき網漁業がそのまま続行されるとすれば、その意図に反してカニとかそういう資源が枯渇するという現象が北海道近海で出ているわけです。この点は従来の発想にはなかったわけです、着底は。  ですから、漁業政策から言えば何らかの検討をして、資源保護といいますか、そういう観点で何らかの調整をすべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  185. 金子岩三

    金子国務大臣 まき網でカニなどをとっているというような実態はございません。けれども、やはり沿岸のカニかご業者に大変迷惑をかけておるということをよく承知いたしております。毎年トラブルがありまして、休漁してその調整をしたりということを続けております。沿岸を荒らすということは沿岸漁民に大きな打撃を与えることですから、まき網業者というのは沖合い漁業で、どちらかというと大きい業者ですから、ともかく沿岸の小さい漁業者に迷惑をかけないようにというような基本的な考え方で私は強くそういう指導をいたしております。ひとつこれからそのトラブルもなくなるようにいたしたいと思います。
  186. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから余り私、説明しなくてもいいと思うのですが、ことしに入ってから韓国漁船の操業で違反操業がすでに起きているわけです。同時にまた卵だけを抜き出して魚体を捨てる、八十数トンのものが逆に日本の漁船の網にかかってくる、こういう事態も発生いたしているわけです。これはゆゆしき問題だと思いますね。前にも私が指摘をしましたように、スケトウ以外のイカ漁業等については大型の漁船でやっておる。しかも、これはイカの流し網だけでも三十三社、六十六隻が来ている。イカ一本釣りでは十四社、三十四隻だ。こういう状況なんですね。こういう状況が放置をされておったのでは日本の資源というものは枯渇する一方だと、こう思うのです。  そういう意味で、こういう違反事実が起きた場合にどう対応されているのか。同時に、やはり韓国漁船の操業には従来の協定ではもはや対処できない段階に来ている、こう思うのですね。西日本の方も、長崎漁組とかあるいは熊本の漁組、これらの漁組は、二百海里をしけという声が南の方からも出ているわけです。石川県の漁組はまだ反対だそうでありますけれども、いずれにしても合意が形成されつつあるのではないかという感じがするわけですね。したがって、十一月の期限が来た場合には、南北問題と、こう言われておりましたけれども、沿岸漁民という立場から見ればこれはもう捨てておけない問題だ。そういう意味では、二百海里施行の方向でやはり問題の解決に当たらなければならぬのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  187. 金子岩三

    金子国務大臣 襟裳以西、それから長崎、九州に至るまで、最近韓国の底びき網漁船は大変密漁をやって、みんな関係の漁民が困っておるわけでございます。最近の取り締まりの状況、その後のそれに対する対応等について、長官からちょっと内容を御説明申し上げます。
  188. 松浦昭

    ○松浦政府委員 お答えをいたします。  北海道の沖におきます韓国漁船の操業につきましては、昭和五十五年の十一月に、両国の政府間の話し合いの結果、一定の自主規制を行うようにいたしたことは先生承知のとおりでございます。この規制は比較的よく守られておったわけでございますが、昨年末から本年一月にかけまして、韓国漁船が襟裳岬以西の海域の禁止区域内で違反操業を行う、あるいはわが国の取り締まり船に対しまして毎日正午の位置通報をすることになっておりましたけれども、昨年十二月二十六日から本年一月十八日までこれを行わないといったような事態、あるいは両国民団体間の取り決めに基づきまして、わが国からの沿岸漁業の漁具設置通報を受け取ることになっておりましたが、昨年十二月二十六日から本年一月十三日までこれを受信しようとしないといったような事態がございました。また、取り決めにはございませんが、ただいま先生指摘のような、いわゆるスケトウダラの子だけをとって身の方は海中に投棄するといったような事態があったやに聞いております。  水産庁といたしましては、このような問題につきまして、外交ルートを通じまして繰り返し韓国水産庁に対しまして規制の徹底、遵守方を指導するように強く申し入れまして、韓国政府の方もこれを受けまして向こうの業界を指導いたしました結果、現在はこのような違反がなくなっているという状況でございます。現時点におきましても、なお問題が起こらないように、水産庁としましては三隻の監視船をこの水域に張りつけておりますし、また海上保安庁の巡視船あるいは北海道庁の監視船といったような船もお願いをいたしまして、合計八隻でこの水域の紛争の防止ということに当たっておりまして、現在は静穏に推移しております。  それから、西日本における韓国漁船の違反操業の実態でございますが、この点につきましては、御案内のように、西日本周辺水域におきまして、日韓漁業協定の合意議事録に基づきまして、韓国政府は韓国の底びき網漁船がわが国の底びき網漁業禁止区域で操業しないように必要な措置をとるということになっておるわけでございますが、長崎県の北部、特にここがひどいわけでございますけれども、そのほか山陰その他におきまして沖合い底びき網の禁止区域で違反操業を繰り返しているという状況でございます。  水産庁といたしましては、海上保安庁とも協力いたしまして取り締まり船を重点配置するといったようなこともやってまいりましたが、同時に、韓国政府に対しまして繰り返し外交ルートを通じまして違反防止方をお願いをするといったようなことのみならず、韓国の監視船を派遣してもらうということをやりまして適切な措置をとりました結果、依然として違反がときどきございますけれども、現在は比較的静穏に推移しているという状況でございます。私どもといたしましては、韓国政府と十分にこの点について話し合いをいたしまして、特に自主規制につきましては本年十月に切れるということになっておりますので、この北海道周辺海域の漁業資源の適正な保護あるいはわが国漁船との操業上のトラブル防止といったようなことで、韓国政府と十分話し合っていくという態勢をとってまいりたいというように考えている次第でございます。
  189. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 これはやはり非常に重要な問題で、もう少し中期的な展望を持ちながら今度の改定期には議論してもらわなければならない。もちろん拙速的に問題を解決する方がいいとは断定はしませんけれども、やはり中期的な展望に立った場合にどうなのか、こういう点で、これはもうずっと長い懸案事項でありますし、また、それ以外の魚種の問題も出てこないとは保証できないわけですね。サケ・マスもとるようになったら大変な問題だと思うのですね。そういう点も十分に踏んまえて進めてほしいということを申し上げておきたいと思います。  最後に、国際海洋法会議の問題について承りたいと思うのです。  率直に申しますと、昨年十二月の外務委員会で私が質問したときに、外務省の答弁は実は次のような答弁になっておるわけです。わが国としては条約案と国内法上の整合に二年から三年かかると、こう言うのですね。それから、批准、発効までは少なくとも政府の見通しとしては七年から八年かかると、こう堂々と述べておるわけです。わが国もようやく署名をして、しかも一カ国だけはもうすでに批准が行われた。六十カ国が批准すれば一年以内に条約が発効するわけですね。大体国際的な見通しとしては、六十カ国の批准はそう長くかからぬではないのか、したがって五十九年末ぎりぎりぐらいまでには条約が発効しないとも言えないという傾向もあると私は思うのです。外務省の認識と国際的な動きと、どうもぴっちり認識が一致してない、このように私は思うのであります。同時にまた、わが国の海洋国家としての立場から言えば、署名が一年おくれたということが大体問題なんです。同時に、署名をしたけれども、やはり少なくとも六十カ国が批准するとほぼ同じぐらいの時期に、言うならば六十カ国の一カ国としてわが国が批准できるようなぐらいの、海洋国家としての積極的な姿勢が望ましいのではないか、こう私は思うのです。いまでも外務省の見通しは前回述べている見通しと変わらないのかどうか、いま私が述べた、そういう積極的な立場に立って対応する考えはあるのかないのか、承っておきたいと思うのです。
  190. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 お答え申し上げます。  昨年の外務委員会におきまして、岡田委員指摘のような答弁を外務省の政府委員の方から申し上げたことは、そのとおりでございます。発効見通しについて、七、八年という数字が必ずしも適当なものであったとは、私、率直に申し上げて思いません。ただ、他方、一般的に申し上げれば、六十カ国の批准が出そろうまでにはやはり相当な年月がかかるであろうというのは、これは国際的に一般的な見方であろうということは申し上げられると思います。この点につきましては、現在も外務省としては、やはり多少の年月はかかるのじゃないかという見通しを持っております。委員指摘のように、五十九年中くらいには発効するのではないかと、そういう可能性も全く排除はされないかとは思いますが、大方の意見としては、やはりもう少しかかるのではないかという感じを持っております。  それから次に、第二点を申し上げますと、他方、そういう条約発効に備えまして、外務省といたしましては、国内法の整備のための検討は早急に真剣に行わなければいけないというふうに考えておりまして、近々関係省庁、多岐にわたる次第でございますけれども関係省庁の御協力をいただきまして、国内法をどういうふうに整備していったらいいかということは、早急に検討を始めたいというふうに考えております。  それから最後に、第三点といたしまして、批准の問題を申し上げますと、批准につきましては、わが国は海洋国家でございまして、今回の海洋法条約の成立というものは、基本的には歓迎して、これを支持するということで署名もいたしておるわけでございますから、基本的には批准の方向で進みたいというふうに考えておりますが、他方、条約の性質上、これは途上国、先進国両方含めましてやはり国際社会の大勢がこの条約を受け入れていくということが現実の問題としては必要であろう。したがいまして、政府として、最終的に批准の態度決定をするに当たりましては、そういう途上国、それからほかの先進国、そういう国々が条約を実際に批准して受け入れていくかというところも見きわめながら最終的な判断を固めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  191. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 きのうも農林水産大臣はカメンツェフソ連漁業相との会談も行っておるわけですね。日ソ、ソ日の漁業協定を長期化したい。カメンツェフ漁業相の方は、国際海洋法条約の関係もある、そういう点もにらんで、とにかく日本の主張はよくわかったということで、今後さらに話し合いが進むことになった、こう言われておるわけでありますけれども、私は、やはりソ連の場合には案外批准が早いのではないかと思うのですね。ああいう国というのは批准する場合には非常に早いですから、もし批准したとすれば、ソ連の立場というのは条約を批准した立場でこれから日ソ、ソ日の漁業協定を結ぶ、こういうような姿勢に当然出てくるだろうと私は思うのですね。わが国の方は、いや、その発効が遅いのだから国内法の調整に時間がかかってもいいといっても、もし二国間協定で相手国が批准をすれば、もうその条約に基づいた姿勢でこの二国間の漁業交渉が行われることは避けられないと思うのですよ。だから、国内法の整備もあるだろうけれども、それを急ぐべきではないのか。いつでもそういうことに対応できる態勢をとることが海洋国家として、漁業国家としてのわが国の姿勢でなければならぬということを言っているのですよ。だから、余り情勢が遅いからというのではなくして、早まっても対応できるというぐらいの準備をすべきではないのか、そのためにも各省間の協議もすべきではないのか、こう思うのですね。  外務省の見解はああいう見解でありますけれども、どうですか、漁業を担当している農林水産大臣としてはどう思われますか、最後に承って終わりたいと思います。
  192. 金子岩三

    金子国務大臣 世界の中で、わが国とソ連が二大漁業国でございます。いま岡田先生がいろいろと御意見を述べられたことはよく理解できます。
  193. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 終わります。
  194. 高鳥修

    ○高鳥委員長代理 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、市川雄一君。
  195. 市川雄一

    市川委員 私は、中曽根総理が就任以来、不沈空母を初めとするきわめて防衛優先の発言が続いているわけですが、こういう問題に関連しまして、集団自衛権の問題を焦点に伺いたいと思います。  まず最初に、外務大臣にお伺いしたいのですが、中曽根総理の就任以来の防衛に関する発言、積極的というのか大胆というのか、私たち立場から見まして従来の枠組みを超えたきわめて危険な姿勢と言わざるを得ないわけでありますが、マスコミの最近の各種の世論調査を見ましても、国民の多くが不安と危惧の念を持っていると思うのです。さらに、国際的には東南アジアの国あるいは中国などからもそういう不安な意見も出されているわけでございますが、こうした総理の一連の防衛に関する発言について、日本の外交にとって必ずしも好ましいものではないのではないかというように私たちは思うわけですが、外交の最高責任者としての外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  196. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 総理大臣の発言また中曽根内閣の基本的な外交政策あるいはまた防衛政策は、これまでの自民党の政策の基本を外れたものでは決してない、防衛におきましても憲法の範囲内におけるわが国の防衛の基本、そういう中で発言をしておられる、そういうふうに私は判断をいたしております。
  197. 市川雄一

    市川委員 それでは、順次具体的にお伺いしたいと思います。  まず、集団自衛権でございますが、集団自衛権と憲法の兼ね合いを伺いたいと思います。  集団自衛権につきましては、わが国は国際法上集団自衛権は持っていることは主権国家として当然である、しかしながら、集団的自衛権の行使を国権の発動として行うことは憲法の容認する自衛の措置の限界を超えるものであるという立場を今日までとってきたと思うのです。この政府立場というのは、憲法の九条あるいは前文の解釈から生まれたものなのか、それとも何か憲法の明文に根拠を置いた見解なのか、これをまず伺いたいと思います。
  198. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 集団的自衛権の行使は憲法上認められないということは、従来から政府見解として申し上げているところであります。いま御指摘もございましたけれども、それはそのままの明文の規定があるわけではございませんで、憲法九条の解釈として集団的自衛権の行使は認められないという解釈をとっている次第でございます。
  199. 市川雄一

    市川委員 これは単なる憲法の解釈の問題というふうにお考えでございますか、どうですか。単なる解釈問題ですか。
  200. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ちょっと御質問趣旨理解できませんが、単なるというのではなくて、きわめて厳正な意味における憲法の解釈として私どもはそういう見解をとっているわけでございます。
  201. 市川雄一

    市川委員 政府憲法第九条もしくはいまの憲法を解釈して集団的自衛権は行使できない、その政府の解釈は変更できるものですか、原理的に。事のやる、やらない、あるいはやることの是非は別として、政府の解釈は変更できるのかできないのか、その点はどうですか。
  202. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 政府のこの点に関する憲法解釈というのは、これを改めるつもりは全くないということは前にも申し上げております。ただいま論理的にというお話でございますけれども、私どもとしてはそういう解釈を変える気が全くございませんから、そういうことができるとかできないとかいうことについてお答えをすることは避けたいと思います。
  203. 市川雄一

    市川委員 できる、できない、やる気はありませんということを聞いているわけではなくて、それは当然そういうふうにおっしゃってきたわけですから、いわゆる原理的に憲法の解釈を政府の行政権の一環として一存でできる問題なのかどうか、これを伺っているわけです。できるのかできないのか、どうですか。
  204. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 憲法の解釈というのは、憲法に限らずすべて法令の解釈というのはそれぞれの人が解釈をするわけであります。最終的には最高裁が解釈をするわけであります。いま行政権の範囲内でというふうに言われましたけれども政府政府なりにこれが正しい憲法解釈だと信じているわけでありますから、その正しいというものが正しくないという変更をするということをしない限り、現在の憲法の解釈というものは変えられないといいますか、変えるつもりはないというのと同じだと思いますが。
  205. 市川雄一

    市川委員 なぜこういう質問をするか、もうおわかりだと思いますが、たとえば武器技術の問題についてはいわゆる政府の政策が変更したのだという形で変わりましたね。これも一片の官房長官談話かなんかで政府の集団自衛権に関する解釈が変わったのだ、こういう乱暴なことはなさらないと思いますけれども、そういうおそれなしとしない立場からいま伺っておるわけですが、それでは、そういう集団自衛権についてのいまの政府解釈を変えるためには、憲法の改正という手続をとらなければ変えられない、こうお考えですか、どうですか。
  206. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 武器輸出三原則の問題は、これは初めから政策の問題であります。したがいまして、いま私が申し上げている憲法解釈の問題とは全く別のレベルの問題であると思います。したがいまして、集団的自衛権の行使はできないという見解は、政策変更によって変更できるというような性質のものではないということは、まず申し上げていいと思います。  それからその次に、憲法を改正しなければできないかという御質問でございますけれども、これは、憲法改正などということは考える余地のない問題でございますから、憲法解釈を変えない以上そういうことはあり得ないという以外には申し上げることはありません。
  207. 市川雄一

    市川委員 ちょっと私の質問に答えていないのではないかと思うのですが、要するに、いまの憲法では集団自衛権は行使できない、これは政府の解釈である、こうおっしゃっておるわけでしょう。その解釈を集団自衛権は行使できるという解釈に変えるには、これは憲法の改正という手続を経なければその解釈は変えられませんねといま聞いているのです。どうですか、その点は。
  208. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 私は、憲法の改正というものを前提として答弁申し上げることを差し控えたいと思いまして、実は先ほどあのような答弁をいたしましたけれども、それでは、全く誤解のないようにお聞き届けいただきたいと思いますけれども、ある規定について解釈にいろいろ議論があるときに、それをいわゆる立法的な解決ということで、その法律を改正してある種の解釈をはっきりするということはあるわけでございます。そういう意味では、仮に、全く仮に、集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ないと思います。したがって、そういう手段をとらない限りできないということになると思います。
  209. 市川雄一

    市川委員 いまの法制局長官の、わが国の憲法では集団的自衛権の行使はできない、これは政府の解釈である、解釈であるけれども、この解釈をできるという解釈に変えるためには、憲法改正という手段をとらない限りできない。この見解は、外務大臣、防衛庁長官、一致ですか。
  210. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 法制局長官の述べたとおりであります。
  211. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 法制局長官の述べたとおりでございます。
  212. 市川雄一

    市川委員 次の質問に入る前に確認したいのですが、日本が有事でないとき、米国の艦船が日本の領海近くの公海上で攻撃を受けた、日本に救援を求めてきた、この場合、日本は米国の艦船を救出することができるのかできないのか、伺いたいと思います。     〔高鳥委員長代理退席、江藤委員長代理着席〕
  213. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国が武力攻撃を受けた際に、自衛隊が米側と自衛権の範囲内で共同対処できるということは十分御承知だと思います。わが国に対する武力攻撃がない時点においてアメリカに対する攻撃があったからといって、わが国が自衛権を発動することは考えられません。
  214. 市川雄一

    市川委員 その理由は何ですか。それができない理由、自衛権を発動できない理由は。
  215. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛権発動の三要件といたしまして、わが国に対する急迫不正の侵害があった場合に、わが国が他にそれに対抗する手段がない場合に、必要最小限度の自衛行動をとるというのが自衛権発動の要件でございます。この要件に当てはまらない限り、自衛権の発動はないものというふうに理解しております。
  216. 市川雄一

    市川委員 その事態は集団自衛権の行使になりませんか、いかがですか。わが国が有事でない、日本の領海の近く、近海、だけれども米艦が攻撃を受けた、これをもし日本の自衛艦が救出に向かった場合、これは集団自衛権の行使に該当しますね。防衛庁長官、どうですか。
  217. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 国際法的に見れば、これは集団的自衛権ということで観念される行為であろうと思います。
  218. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官、いまのはいいですか、長官に伺っているのですが。いまのは集団自衛権の行使ですね。ちょっと確認しましょう。
  219. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 外務省の答弁したとおりかと思っています。
  220. 市川雄一

    市川委員 そこでお伺いしたいのですが、去る二月四日、五日のこの予算委員会質問で、わが党の矢野書記長が質問いたしました。そのとき総理大臣は、日本が侵略された場合、日本の防衛の目的を持って救援に駆けつける米艦船が阻害されたとき、日本の自衛隊、自衛艦が救出することは自衛の範囲に入る、こういう見解を示したわけでございます。矢野委員は、これは従来の政府見解と違う、こうしたわけですが、政府側は、従来の政府見解と違わないという答弁に終始されたわけです。  防衛庁長官、この総理答弁は従来の政府見解と違っていないというふうにいまでもお考えでございますか、どうですか。
  221. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国に対する武力攻撃があった場合に、わが国に来援する米艦を守るということは、わが国を防衛するために必要な限度内と認められる以上、わが国の自衛権の範囲の中に入る、こういうふうに理解をいたしております。
  222. 市川雄一

    市川委員 いま長官がお答えになったことが従来の政府見解ですか。どうですか、長官に聞いているのです。自衛の限度内の行動であればというそれだけでございますか。
  223. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 もう一度重ねて答弁させていただきますが、わが国に対する武力攻撃があった場合に、わが国に来援する米艦を守ることも、みずからわが国を防衛するための必要な限度内と認められる以上、わが国の自衛権、自衛の範囲の中に入る、こう申し上げたわけでございます。
  224. 市川雄一

    市川委員 実はその御答弁は予想していたのですが、それはこの間二月五日に予算委員会で、まさに角田法制局長官がお答えになった答弁と同じなわけですね。  昭和五十年六月十八日、衆議院内閣委員会における丸山政府委員がそういう趣旨答弁をしている。その答弁を角田長官は引用されて、これがいままでの政府見解でございます、この見解と中曽根答弁は違っておりません、こういう答弁をなさったわけですが、そういうふうに防衛庁長官理解している、こういうふうにいま思っていいわけですか。
  225. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 もう一度申し上げさせていただきますが、わが国が武力攻撃を受けておる場合でございます。それに来援する米艦に対して、わが国を防衛するための必要な限度内と認められる以上、わが国の自衛の範囲内に入る、こういうことでございまして、重ねて答弁をするようで恐縮でございますが、以上申し上げたようなところでございます。
  226. 市川雄一

    市川委員 要するに、ここに角田長官議事録があるわけですが、その最後の方で丸山答弁を引用されて、「要するにわが国の安全のために必要な限度内であるかどうかというその事実についての判断、これがもとになるかと思います。」こう答えているのですね。  ところが、この答弁は、よく調べてみますと、答えた丸山さん御自身が、舌足らずの答弁でございましたと言って、二カ月後、同じ内閣委員会で弁明、釈明しているのです。こういう事実を御存じですか。
  227. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 日本が武力攻撃を受けた際に、自衛隊と米軍が個別的自衛権の範囲内で共同対処できるというふうなことを踏まえまして、わが国の防衛のために行動している米艦艇がある国から攻撃を受けた、ある国といいますか、敵方から攻撃を受けたという際に、その米艦を護衛するというのは、共同対処の一環として護衛するというのは、わが国に対する防衛というふうな見方ができる以上、必要な範囲でできるというのは従来の答弁といささかも変わってないのじゃないかというふうに思っております。
  228. 市川雄一

    市川委員 そういうことを聞いているわけではないのだ。法制局長官が予算委員会の席で、これが従来の政府見解でございますと言って例示した五十年六月十八日内閣委員会の丸山政府委員答弁、この答弁は、丸山政府委員自身が二カ月後、舌足らずの答弁でございますと弁明しているのです。こういう事実を御存じかどうかということを僕は聞いているわけです。知らないなら知らない、知っているなら知っている、答えは二つのうち一つです。どっちかというのだ。
  229. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 丸山答弁が六月十八日にそういう答弁をしたことは知っていますが、舌足らずであったというふうな表現については記憶ございません。
  230. 市川雄一

    市川委員 ここに議事録がございます。昭和五十年八月二十六日内閣委員会。角田長官が引用された五十年六月十八日の丸山政府委員見解、これは内閣委員会と外務委員会両方で同じことを丸山さんがしゃべっていらっしゃる。その見解を同僚委員の方が丸山さんに追及したわけです。そうしたところ丸山さんは、「いまお読み上げになったところ」すなわち議事録ですね、五十年六月十八日の議事録のところは「舌足らずの点で誤解を招くおそれがあるかと思いますが、」こういう前提で、もっと違う答弁をしているのだね、違う答弁。限度内だからできるというだけじゃないんだ。もっと違う答弁をしているのです。この点について長官はどうですか、法制局長官。  これは矢野委員に対して、矢野委員政府見解は変わったのかと聞いたのですよ、変わりません、変わらないという理由として挙げたのが丸山答弁なんだ。その丸山答弁を丸山さん自身が舌足らずでございますと弁明して、もっと違うことも言っているのです。これじゃ政府見解は変わってないということは言えないじゃありませんか。変わってない例で挙げた見解が崩れてしまったのです。違いますか。その点について、防衛庁長官と法制局長官の見解を伺いたい。
  231. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 矢野委員の四日の御質問は、矢野委員自体としては、公海上においては一切米艦防護のための行動は個別的自衛権の範囲には属しない、そういうことで御質問になったわけです。それで私は、公海上においても米艦を防護することがあり得る、個別的自衛権の範囲内において防護することがあり得るということを申し上げて、その上で丸山答弁を引用したわけでございまして、その限りにおいては少しも間違ってないと思います。  ただ、いま御引用になりました答弁はそれとは若干焦点が違いまして、「結果的」云々のお話じゃないかと思うのでございますが、もし、そうであるとすれば、その矢野委員の御質問の中では、いままで申し上げましたような公海上においてそういうことができるかどうかということだけが御質問の焦点でございましたから、私が丸山答弁を引用したのはそういう趣旨でございます。  「結果的」云々の話は、これはまた別の焦点といいますか、観点の問題であろう。丸山防衛局長が五十年の八月に「舌足らず」と言って、その後「結果的」云々という答弁をまたしておりますから、舌足らずの面はその辺のところにあるのじゃないかと思います。
  232. 市川雄一

    市川委員 これは全然違う。その点は同じですよ。公海における米艦を日本有事のときに自衛隊が守れるのか守れないのかという議論ですから、同じじゃありませんか。何もその点は違いはありません。同じですよ。まず水かけ論ですから、水かけ論じゃないと思っているのですが、次に問題をもっと具体的に進めましょう。それだけ指摘しておきたい。  わざわざ古い見解を持ち出して、本人が弁明、釈明した見解を隠して、二カ月も前の見解で、これが従来の政府見解でございます、ですから政府見解は、中曽根答弁と合わせても変わっておりません。ところが、二カ月後の答弁を持ってくるとこれは変わってしまうのですよ、中曽根答弁が。従来の政府見解とはみ出てしまう。だから、前の見解を持ってきたとしか思いようがない。それを申し上げたい。  じゃ、そこで丸山政府委員がどういうことを言っているかというと、要するに、日本有事で、公海で米艦を守れるのかどうかということについて丸山政府委員答弁は、「アメリカの軍艦を守ることがあるかということでございますが、それはいろいろ千差万様でございますので、当方が個別的自衛権の範囲内で行動している、その目的がわが国の安全を守るということに発しておるわけでございますけれども、結果的にアメリカの軍艦が助かったというようなことは全然皆無ではなかろうという考え方でございます。」こう言っておるわけです。いいですか。日本の安全を守るために自衛隊が活躍している。その結果として米艦が助けられたということが全然皆無ではなかろう、かなり消極的な言い方でしょう。総理は何と答えたか。総理は、「日本が侵略された場合に、日本防衛の目的を持ってアメリカの艦船が日本救援に駆けつける、そういう場合に、それが阻害された場合に、日本の自衛隊、自衛艦というようなものがそれを救出する、」これは自衛の範囲内でございます、個別自衛権でございます。  丸山答弁は、日本の防衛のために自衛艦が活躍している、それは結果として米艦船を守ることが全然皆無ではないと言う。総理は、駆けつけてくる米艦が攻撃を受けたら、米艦を守ることを目的として行くこともいいのだということを言っている。違うじゃありませんか。どうですか、防衛庁長官
  233. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 従来、公海上における米艦艇の護衛につきまして、わが国の自衛のためということを強調するために、わが国の自衛のために行動している、行動の結果として米艦艇を守るということを申し上げていましたけれども、これはわが国が自衛の目的以外に米艦を守れないということを申し上げたので、この点について首尾は一貫している、趣旨は同じではないかというふうに私ども理解しております。
  234. 市川雄一

    市川委員 そういう言い方は一回もしてませんよ。自衛の限度内、しかも、わが国の安全目的のために動く。動いたことは結果として――結果としてという言葉をそこらじゅうに使っている。  結果として守った、これはいいです。総理答弁は、米軍を守ることを目的にして自衛隊が動く。目的にして動くということと、結果として守るということは違うじゃありませんか。中曽根総理答弁と従来の政府見解の違いを聞いているのです。総理は、救出する、アメリカの艦船を守ることを目的に自衛艦が動くことがいいのだ、こう言っている。防衛庁は従来そういうことを言ってない。結果として守ることはいい。明らかに違うじゃありませんか。どうして違わないのか、論理的に説明してもらいたい。
  235. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 正確を期するために、まず御指摘総理答弁は、わが国に対する武力攻撃があった場合に、自衛隊がわが国を防衛するために必要な限度内、すなわち個別的自衛権の範囲内において米側と共同対処をできるという従来からの基本的な考え方というものを踏まえているということが第一点でございます。  そういった前提におきまして、日本が侵略された場合にわが国防衛のために行動しておる米艦艇が相手国から侵略された、攻撃を受けたという場合に、自衛隊がわが国を防衛するために共同対処行動の一環として米艦を防衛するということは、わが国の防衛のために必要な限度内と認められる以上、個別的なわが国の自衛の範囲に入るという趣旨でございます。  従来、公海上におきますところの米艦艇の防護については、わが国の自衛のためということを強調するために、先ほども申し上げたとおり、結果としてということを申し上げたわけでございまして、その趣旨は、わが国は自衛のため以外には行動できないということでございまして、この点は答弁のニュアンスというものが若干おとり方が違うかもしれませんが、私ども考え方としては首尾一貫しているというふうに理解しております。
  236. 市川雄一

    市川委員 それは全然違います。それは中曽根答弁が出た後考えたいまのは解釈ですよ、いってみれば。中曽根答弁と結果としての答弁とをどう結びつけようかと知恵をしぼった答弁じゃありませんか。それじゃ、なぜそういう答弁をしなかったのですか。中曽根答弁と従来の政府見解と違うんだと言ったときに出したのは、そういう答弁じゃないじゃありませんか。出したのは、五十年六月十八日の丸山政府委員答弁をもって従来の政府見解です、中曽根答弁とは違っていませんと言ったのじゃありませんか。じゃ、五十年六月十八日の国会で丸山さんがそういう答弁をしていますか、しているなら見せてください。してないでしょう、そんなの。出してくださいよ。
  237. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 五十年六月十八日の内閣委員会には、実は私もその席におりました。  そして、経過をまず申し上げますと、わが国の自衛のために必要であれば米艦を守ることがあり得るということを最初に丸川防衛局長答弁したわけであります。そうしますと、御質問者の方が、そういうわが国の自衛のために必要であるということは何でもできるようになるんじゃないかというような御感触でたびたび御質問になりました。そして、丸川防衛局長も最後には、実はそのときに結果として守ることがありますということをすでに申し上げているわけであります。  その丸山防衛局長が、六日十八日に結果として守ることがありますということを申し上げた趣旨は、先ほど防衛局長からも御答弁申し上げましたように、わが国の防衛のためということになりますと非常に広くなって、わが国の防衛のために関係のない米艦までどこまで行っても護衛する、守ることになるんじゃないかというような誤解を防ぐために、わが国の自衛のためということと結びついている米艦を防護するんだ、こういうつもりで丸山防衛局長が結果として守るということを申し上げたわけであります。実は私はそのそばにおってそういう印象を受けました。
  238. 市川雄一

    市川委員 そこまではわかるのです。しかし、結果としてというのは、じゃ、この予算委員会以後はもう使わないということですか。それも変更ですか。  要するに、この丸山政府委員答弁をもって従来の政府見解でございます、それと比べて中曽根答弁は変わっておりませんというのが皆さんのこの委員会における答弁だったのです。私はその丸山答弁を調べてみたのです。  丸山さんは、自衛の限度内で行動する、それが基準の判断でございます、こう言っているのです、確かに。それだけではない。しかも、結果としてそういうこと、米艦を守るということは全然皆無ではなかろう。これは、結果として全然皆無ではなかろうというのと、米艦を救出に行く、それを目的として向かっていくというのは意味違いますよ。違いませんか、これは。違うのがあたりまえじゃありませんか。納得できませんね、いまの答弁では。説明になってないと思う。  もう一つ申し上げましょう。  丸山さんは、さらに、五十年六日十八日、外務委員会で、いいですか、よく聞いてください、こういう答弁もしているのですよ。結果としてというのは、守る意思がなくて一生懸命日本の防衛のために戦ったら結果として守っちゃったという意味でしょう、これは。結果としてという意味は。中曽根答弁は、救出に行くというのだから、これは意思を持って、米艦を守る意思を持って行くということであって、意味は違う。全く違う。  違うことを丸山さん認めているのですよ。どういうふうに認めているかというと、いままで、その前に結果としてこうでございますと答弁した後、アメリカの船を守るということが目的として働くということはないということを先ほどから申し上げているのでございます、こう言っているのです。アメリカの船を守るということが目的で自衛隊が動くということを言っているのではありません、こう言っているのです。中曽根答弁は、自衛隊が米艦を守ることを目的に動くんじゃありませんか。結果としてじゃないじゃありませんか。違うじゃありませんか、これは。政府答弁は、従来の見解と中曽根総理答弁は違っていますよ、明らかに。
  239. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 何回もお答え申し上げますように、この六月十八日の丸山答弁も、アメリカの船を守るということが目的ではない、それだけをもっぱらわれわれも目的として、わが国の自衛と関係なく行動するということでなくて、要するに、先ほど来申し上げていますことは、共同対処をしているというアメリカの船を守る、日本の防衛のために働いているアメリカの船を守ることは、わが国の防衛に該当するというふうに認められる以上、それを助けに行くのはわが国の自衛のために必要なんだということで、それはアメリカの船を守る。それは結果としてということは、あくまでもその自衛のためにやるということを強調するためにそういうことを申し上げたのであって、あくまでもわれわれは自衛のために行動するという原則を踏み外してもいなければ、そこは首尾一貫しているのじゃないかというふうに思っております。
  240. 市川雄一

    市川委員 全然違いますね。全然答弁になっていませんね。全然意味が違うじゃありませんか。あなたのは、ただ、説明、解説をしているだけですよ、新見解の。僕が言っているのは、総理答弁と従来の政府見解が違っているということを指摘しているわけです。これについては何にも答弁してないじゃありませんか。何も答弁してない。それじゃ何でもできちゃうということだよ。中曽根答弁と防衛庁の答弁が違うということを言っている。これは納得できません。
  241. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 夏目防衛局長。――わかるように説明をすること。
  242. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私自身は非常にわかりやすく御説明申し上げているのでありますが、もう一度申し上げますと、政府は、自衛隊はもっぱら米艦艇を守るということを目的として行動するものではないということが第一。  一般に米艦艇はわが国を防衛するために行動しているということでない場合も多うございますから、そういう意味合いにおきまして、わが国を防衛するために行動している米艦艇を守るということがわが国の自衛のために必要であるというふうに認められる以上は、これはわが国に対する防衛行動ということで米艦を守ってどうしてこれが自衛権の範囲を逸脱するかということは、私どもには理解できないところでございまして、この点はもう丸山答弁以来何回かにわたって一貫した考え方であるというふうに思っております。
  243. 市川雄一

    市川委員 要するに、中曽根答弁は救出に向かう、政府答弁は結果として守る、これは違うのですよ。  いま夏日防衛局長が何かいろいろおっしゃいましたから、さらに申し上げますけれども、これはもっと慎重な言い回しで非常に抑制しているのです、この当時の防衛庁の答弁は。  いいですか、わが国を守るために行動するわけでございます、自衛隊が。その行動がアメリカの船を守ることはあり得る、結果としてあり得る、こういう言い方なんです。あるいは、「わが国を守るためにわれわれは行動する。わが国の安全のために必要な限度内において行動するわけでございますから、結果としてアメリカの船が」――そのわが国の安全のために行動する、その行動のために結果としてアメリカの船が守られる、「救われるということはあり得るだろう」というふうに考えます、「あり得るだろう」ですよ。あるというのじゃない。積極的に守るなんという見解じゃないです、これは。いまの見解でしょう。いまお話しになっておる見解、いまの防衛庁の見解ですよ。したがって、変わったんでしょう。中曽根答弁以来防衛庁の見解も変わっちゃったんだ。変わったなら変わったと言えばいいじゃないですか。こういう理由で変えましたと言えばいいじゃないですか。変わってないと言うからおかしいんだ。変わったと言っているんだ。もうちょっときちんと説明してくださいよ。これ以上質問できません、そんなことじゃ。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  244. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 二、三点非常に重要な点があると存じますので、まず、それを答弁させていただきます。  まず第一に、公海上の米艦艇はわが国防衛以外の目的で行動をしておることもあり得る、これが一つでございます。  それからもう一点は、わが国に対する武力攻撃があった場合には、わが国の自衛隊は米軍と共同対処行動をすることができる、これが第二点でございます。  そして、わが国の自衛隊は当然わが国防衛のために行動をいたしますので、どういう状態にどういう形になるか、それはそのときの状況によっていろいろかと存じますが、一番大事な点は、わが国が自衛の目的以外の場合については米艦艇を守れない、こういう趣旨を従来から述べておるわけでございまして、この趣旨につきましては、この国会におきましても、総理の御答弁の中におきましても、また私ども答弁させていただいている中におきましても、この趣旨は全く変わっておりません。
  245. 市川雄一

    市川委員 昭和五十年六月十八日の丸山答弁、それから八月二十六日の丸山答弁、中曽根総理答弁、いまの防衛庁の答弁、これは違うと思うのです。納得できません。ちゃんと全部合わせた答弁をしっかり持ってきてください。わからない。
  246. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 答弁の言い回しがいろいろと、その時点によってのニュアンスが、とられ方というのは違っているかもしれませんが、首尾一貫して変わらないことは、まず、自衛隊は自衛の範囲でしか行動しないということ、わが国を防衛するために必要な限度内で行動するというのが第一点、これは変わっていないということはお認めいただけると思います。第二点は、米艦艇の防衛を主目的として、もっぱらそれを目的として行動するということはないんだということ。それから第三点は、アメリカがわが国の防衛のために行動しているということ、そういう前提を踏まえて私どもがその米艦艇を守ることはわが国の自衛権の範囲ではないかということを申し上げているわけで、その基本的なラインというのは、丸山答弁以来いささかも変わってないというふうに思っております。
  247. 市川雄一

    市川委員 変わっているんじゃないですか。話がかみ合わないのですけれどもね。よろしいですか。中曽根総理に矢野委員が聞いたんですよ。そうしたら中曽根総理が答えたんです。日本有事のとき、日本の来援に駆けつける米艦船を日本の自衛艦が救出すること、これは自衛の範囲内でございます、こう答えた。これは明らかにアメリカの艦船を守る、助ける、これを目的として自衛艦が動くことを意味しているわけです。これも自衛権の範囲であります。ところが、その中曽根答弁は従来の政府見解と違うんじゃないのかと言ったら、違いません、こう政府側が答えた。どういうふうに違わないんだと聞いたら、五十年六月十八日の丸山答弁を引用して、この見解と違いませんと答えた。  ところが、その丸山さんの答弁は、丸山さん自身が舌足らずで私の真意を伝えてませんというので、二カ月後に弁明をして詳しく答弁をした。答弁の中身は、先ほどから申し上げているように、結果として米艦を守るということが全然皆無ではなかろうと思います。非常に消極的。アメリカの艦艇を守ることを目的に動くなんということはただの一言も言ってない。しかも、アメリカの船を守る目的だけで行くということはありませんとも言っている。違うじゃありませんかと言うんだ。  それだったら、なぜ中曽根答弁が従来の政府見解と違わない代表例として、いまあなた方がしゃべっているようなことをここでしゃべらないのだ。それからつくった言いわけじゃありませんか。僕は前の見解といまの見解が違うでしょうということを言っている。違うと認めればいい。認めなさいよ、違うなら違うと堂々と。そういうごまかしはよくないですよ。
  248. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 何回もお断りするわけですが、結果としてということを申し上げたのは、あくまでも自衛権の範囲内で行動するということを強調するためにそういう言い方をしたわけでありまして、自衛隊が行動するその制約条件、限界というものは、基本的なラインというのは、わが国はわが国を防衛するため必要な範囲で自衛権の範囲内で行動する、アメリカがわが国の防衛と関係ない行動をしているものまで防衛するものではない、そういうことをるる申し上げて、基本的な考え方というのはいささかも変わってないというふうに、私はいまでもそう思っております。
  249. 市川雄一

    市川委員 結果として守るということと、それを目的として動くということは、これは明らかに違いますよ。そんな答弁納得しませんよ。全然納得しません。しかし、時間の関係がありますから、次の問題へ進みます。全然納得しませんということを申し上げておきます。ごまかしの答弁はやめていただきたい。  外務大臣にお伺いしたいのですが、日本は国連海洋法条約に署名されました。この国連海洋法条約の議論の過程で、いわゆるグループ77というのですか、第三世界を中心にした国々は、国際海峡における沿岸国の国家管轄権を拡大する、こういう主張をされた。しかし、米国、ソ連は軍事目的、日本は通商目的から、言ってみれば自由通航をむしろ主張した。海底資源の問題で折れて、海峡問題では先進国の意見を取り入れ、海底資源では第三世界の意見を取り入れるということで決着がついた、こんなふうに聞いているわけですが、日本にとって国際海峡の自由通航というものは、ある意味では非常に死活の意味を持っていると思うのです。この点について外務省も同じお考えだろうと思うのです。  ところが、一方におきまして中曽根総理は、四海峡を封鎖するのだとか、そういうことをお話しになっている。日本は通商国家として、みずからの国際海峡を簡単に封鎖するなんということを軽々しく言うべき立場にはないと思うのですが、その点はどういうふうにお考えですか。
  250. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際海洋法条約は署名をいたしました。その間の議論につきましては、また条約局長からも答弁をいたさせますが、国際海峡が海洋国家として非常に重要であるということは、全く同じ考えを持っております。  なお、海峡封鎖の問題は、これは一朝有事の際の発言でありまして、それは国際海洋法の次元とはまた違った次元に立っての判断である、こういうふうに心得ております。
  251. 市川雄一

    市川委員 違った判断って、どういう判断ですか。日本はシーレーンを守らなければならないと皆さんおっしゃっているわけですが、それは、日本は通商国家である、こういう観点からおっしゃっているわけでしょう。ところが、軍事的な問題だけではないですよ。国際海峡を封鎖されたら、シーレーンを守るどころか、もうそれ一発で終わりですよ。したがって、国際海峡の自由通航ということは、日本にとって死活の問題ですよ。一方ではそういう認識を示しながら、一方では自分の国の沿岸の国際海峡は、何かいとも簡単に封鎖しちゃうみたいなことを言っている。これはまさに矛盾していると思うのです。それを申し上げている。別の判断で言っていいという問題じゃないんじゃないですか。国際海峡の封鎖とか封鎖でないとかいう問題は、日本はもっと慎重にやるべきだと僕は思う。それを申し上げている。どうですか、外務大臣。
  252. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国際海峡は非常に重要であるし、この自由はあくまでも確保する、これは日本だって当然のことだと思うのですが、いまの国際海峡の封鎖の問題は、特に日本の三海峡、そういうものの封鎖の問題は、日本が攻撃を受ける、日本が侵略を受けたときの問題でありますから、決していとも簡単にその自由を侵してしまう、こういうことではなくて、日本が侵略を受けたときの話でありますから、これは一般的な国際海峡の自由の問題とは次元の違った話である、こういうふうに私は言ったわけです。
  253. 市川雄一

    市川委員 何か最近、日本が侵略されてなくてもと総理はおっしゃっていますよ。  そこでお伺いしますが、防衛庁長官は日本有事以外は三海峡封鎖はできない、こういうお考えだと思いますが、そうですか。
  254. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 三海峡の防備につきましては、従来から一貫して申し述べておりますとおり、わが国が武力攻撃を受けない限りこれは行うことはできない、こう考えております。
  255. 市川雄一

    市川委員 そのできないという理由は、どういう理由からできないのですか。
  256. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国の憲法から由来いたしております。
  257. 市川雄一

    市川委員 憲法の何に由来しているのでしょうか。
  258. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 自衛権の発動でございます。
  259. 市川雄一

    市川委員 日本有事以外のときにできないというのは、憲法の自衛権の発動としてできない、こういうことですか、いまの御答弁は。日本有事以外のときですよ。
  260. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私は防衛庁長官として答弁をいたしまして、自衛隊の実力行使はただいま私が答弁をいたしました範囲の中で行うわけでございまして、私の答弁いたしましたことは、自衛隊といたしましては、わが国が武力攻撃を受けていない限り三海峡封鎖、こういうような実力行使に及び得ません。
  261. 市川雄一

    市川委員 日本が有事でない場合、何回か出ていますが、次の質問をお聞きするため確認でお伺いしたいのですが、米軍が日本の了解なしに単独で海峡封鎖ということが許されるのか、許されないのか。
  262. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいまの市川委員の御質問は、日本が攻撃されてない事態における米軍の行動の御質問だというふうに理解いたしましたが、この点につきましては従来から申し上げておりますとおりに、沿岸国としての日本の利害と重大な関心というものがございますので、アメリカの一存でそういうことができるというわけにはまいらないということは従来から申し上げておるとおりでございます。
  263. 市川雄一

    市川委員 米国が一存でやった場合は、これは日本の主権の侵害ということですか、どうですか。
  264. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御質問の御趣旨は、海峡の公海部分についての御質問だろうと思いますが、公海部分についてアメリカが日本の了解なしに一方的にやるということは、必ずしも主権の侵害という概念で法的にとらえるということではなかろう、かと思います。しかし、いずれにしても、国際法のもとにおいて認められておるアメリカの権利を越えたものであるというふうに観念されると思います。
  265. 市川雄一

    市川委員 領海の場合はどうですか、領海を含む場合は。
  266. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 領海でございますれば、これは明らかに日本の領域でございますので、そういう行為を日本の同意なしにアメリカが行うということはまず全くあり得ませんし、理論上の問題として仮にアメリカがそういうことをやるとすれば、それは主権の侵害ということになろうかと思います。
  267. 市川雄一

    市川委員 日本有事でないときに米軍が海峡封鎖をやる、日本がそれを了解した。領海、公海を含めて、日本が有事でない、米軍が海峡封鎖したい、日本政府は了解した、こういうことを了解することは日本の政府はできますか、日本が有事でないという前提に立って。
  268. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 ただいまの御質問は、昨日の当予算委員会の御質問でやはり同様の御質問が出まして、この点につきましては改めて政府の統一見解をお示しするということになっておるというふうに理解しておりますが、基本的な考え方といたしまして、総理からも御答弁ございましたように、アメリカが日本の了解なしに一方的にやるということは、これはあり得ない。日本がそれでは了解する場合があるかという御質問でございましたので、その点につきましては総理より、原則はノーである、しかし一定の場合に、日本の安全というものを確保するためにどうしても必要な場合には、留保しておく必要があるであろうということを総理が御答弁になりまして、それが政府考え方でございます。
  269. 市川雄一

    市川委員 それは承知しているのですが、その原則はノーであるというのは、なぜノーなのか、その理由をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  270. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 通常の場合でありますれば、わが国の安全を守るためにそのような米軍の行動というものがどうしても必要である、不可欠であるというふうにわが国として判断される場合ではなかろうということから、原則としてノーであるというふうに総理は御答弁になられたというふうに理解しております。
  271. 市川雄一

    市川委員 では、そういう趣旨だけではなくて、日本有事でない、米軍が領海、公海部分を含めて米軍の必要で単独で海峡封鎖したいと日本に要請してきた。日本政府は原則としてこういう要請に対してはノーである、こう総理は答えた。なぜ原則としてノーなのか。自衛権の範囲でないからノーなのか、集団自衛権に抵触するからノーなのか、この答弁を明らかにしていただきたいと思います。
  272. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これはアメリカの実力行使の問題でございまして、わが国の自衛隊あるいはわが国自身の実力の行使の問題ではございませんので、わが国の自衛権の問題ではないというふうに考えます。
  273. 市川雄一

    市川委員 日本政府が領海、公海を含めて、日本有事でないのにアメリカの要請にこたえて了解を出した場合、これは集団自衛権の行使というふうに受け取れますが、そういうふうに考えておりませんか、どうですか。
  274. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 わが国が同意をするということは、わが国自身が別に実力を行使するということではございませんで、理論的に申し上げますと、アメリカの実力行使をわが国として容認するということでございまして、これはわが国の集団的自衛権の行使というものには当たらないというふうに考えます。
  275. 市川雄一

    市川委員 米国が単独で行う海峡封鎖で日本有事でないとき、日本有事でないという前提ですが、米国が単独で行う海峡封鎖で在日米軍基地から行う場合には、これは日米安保条約第六条に基づく直接戦闘作戦行動に該当すると思いますが、そういう見解ですか。
  276. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 いわゆる海峡封鎖という行為が、軍事的に申し上げましていかなる具体的なオペレーションによって行われるものかということを、私自身軍事専門家でございませんので確信を持ってお答え申し上げることはできませんが、一般に通峡阻止と言われておる行動といたしまして、現実に実力の行使を行うということを目的として日本の施設、区域から米軍が発進するということであれば、これは御指摘のとおり戦闘作戦行動のための施設、区域の使用ということで、事前協議の対象になると思います。
  277. 市川雄一

    市川委員 その場合、日本政府はイエス、ノー、両方答えがあると思いますが、これはどういう基準で日本政府の態度を決めるわけですか。イエス、ノー。
  278. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 戦闘作戦行動のための施設、区域の使用についてのイエス、ノーの基準というのは、従来から政府が一貫して申し上げておりますとおりに、わが国の安全というものを考慮に入れて、わが国の安全にいわば直接、密接に関係がある場合にはイエスと言う。そうでない場合にはノーだ。イエス、ノーと両方あり得るけれども、イエスの場合は、いま申し上げましたようなわが国の安全というものと直接、密接にかかわりがある場合にイエスと言うんだというのが従来の政府見解でございます。
  279. 市川雄一

    市川委員 防衛庁にお伺いしますが、日本の自衛隊が、日本有事でない場合に、米国の要請によって海峡封鎖を行うことはできるのか、できないのか。できないとしたら、その理由はなぜできないのか、はっきりしていただきたいと思います。
  280. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般に海峡封鎖をするということは、一般的にはやはり一つの武力行使にも該当するということにもなりますので、わが国に対する武力攻撃、侵略がない時点においてそういうことをするのは認められていないというふうに理解しております。
  281. 市川雄一

    市川委員 認められていないというのは、どういう理由ですか。何を根拠におっしゃっているのですか。
  282. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛権発動の要件が整わない時点において、実力行使、自衛権を発動することはあり得ないという趣旨でございます。
  283. 市川雄一

    市川委員 日本有事でないときに日本の自衛隊が米国の要請で海峡封鎖した、こういう場合は集団自衛権とやはり抵触しませんか。そういうふうに考えませんか。どうですか。
  284. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いずれにいたしましても、わが国に対する武力攻撃がない時点においてそういったことを考えたことはございませんし、そういうことはわが国の自衛権の範囲での行動を逸脱することになるだろうというふうに思っております。
  285. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官にお伺いしますが、「防衛計画の大綱」ですね。この大綱は、仮想敵国を持たない、脅威対応論をとらない、小規模限定的侵略に対処する、したがって米ソ戦は想定せず、防衛費は当面GNP一%以内に抑制する、こういう考え方を基本につくられていると思いますが、もし、この申し上げたことが違うというなら反論していただきたいと思います。どうですか。
  286. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私ども、大綱と離れましても仮想敵国というものを想定したことはございませんし、「防衛計画の大綱」というのは、限定小規模の侵略に対応できるものに対しては独力で対応できるものを目標として整備をしていくことは御指摘のとおりでございます。また、GNPの一%については、去る五十一年の十一月でございましたか決められた閣議決定の趣旨というものは尊重する趣旨で現在おるところでございまして、その点については変わりございません。
  287. 市川雄一

    市川委員 仮想敵国は持たない、小規模限定侵略に備える、したがって米ソ戦は想定せず、こういう考え方なんですね。  そこでお伺いするのですが、谷川長官、二月四日の予算委員会で、シーレーン防衛について「私どもは、ある特定の海域あるいはある特定の場所だけを考えましてシーレーン防衛を考えておるのじゃございません」、こういうふうに答弁されておるのですが、間違いございませんか。
  288. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 シーレーン防衛につきましては、従来から御答弁申し上げておりますように、わが国有事の場合に、海上交通の安全を確保するため、わが国周辺数百海里、もし航路帯を設けるとすれば一千海里程度、こういうことを申し上げておりまして、特定の海域防衛というようなものの考え方はございません。なお、さらに特定の地点とかあるいは特定の港湾だけを特に防衛するとか、そういう発想はございません。
  289. 市川雄一

    市川委員 さらに防衛庁長官、二月四日の予算委員会で同じように「海域分担というような発想は持たないところでございまして、その理由は、海域を設定して排他的にすべての船舶を排除するというようなことはわが国の憲法では許されておりませんので、これは自衛権の中の個別的自衛権の枠外の問題だ、こう考えておる次第でございます。」こう答えておる。  もう一つは、「わが国の憲法のもとにおきましてはわが国をみずから守るということに限定をされておりますので、海域防衛という発想はわが国の憲法になじまない、わが国の憲法では、集団的自衛権に踏み込む問題として、これはわれわれとらないところでございます。」  非常に重要な発言をされているのですが、この答弁は間違いございませんか。
  290. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 間違いございません。
  291. 市川雄一

    市川委員 まず、特定の海域という問題でお伺いしたいのですが、総理は訪米の際、ワシントン・ポストでこういうことをおっしゃっておりますね。第三の目標は、海上交通路の安全確保と維持である。海上防衛網を数百海里まで延ばすべきである。シーレーンを確立することになるなら、グアム―東京、台湾海峡―大阪間のシーレーン防衛がわれわれの希望となろう。もし、シーレーンを確立することになるなら、シーレーン防衛をもしやるなら、グアム―東京、台湾海峡―大阪間のシーレーン防衛がわれわれの希望となろうと、はっきり特定の海域を、特定のシーレーンを総理はおっしゃっておる。あなたは、われわれは特定の海域を考えておりませんと答えておる。これもずいぶん違うのじゃありませんか、総理の言っていることと防衛庁長官の言っていることは。いかがですか。――これは長官に聞いている。長官発言総理大臣の発言を聞いているのだから、ここは防衛局長が出てくる場所じゃない。長官に聞いている。
  292. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 シーレーン防衛と申しますときに、再々答弁さしていただいてきておりますように、わが国周辺数百海里、もし航路帯を設ける場合には一千海里程度、こう答弁を申し上げてまいりました。その場合におきましては、二つの航路帯、南西航路あるいは東南航路、これを念頭に置いておることは、これは過去においても答弁をいたしてまいっております。
  293. 市川雄一

    市川委員 それじゃ、特定の海域あるいは特定の場所だけを考えましてというわけではございませんというのは撤回しますか。それは明らかに念頭に置いておるのでしょう。
  294. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 少し概念をといいますか、考えにつきまして整理をさしてみていただきたいと存じますが、私どもが海域防衛という言葉を使いますときには、その海域の中にいかなる国の艦船が出入りいたしましても、完全にわが方の支配を及ぼすという意味で海域防御という言葉を使っておりますが、そういうような海域防御の発想を持ちますと、従来からも答弁申し上げておりますように、集団自衛権の発動を許していない憲法趣旨に反するということで、私どもはこういう海域防御の思想は持ち合わさないわけでございます。
  295. 市川雄一

    市川委員 それは従来の防衛庁の見解と違うのではないですか、いまの長官答弁は。海域防衛は個別自衛権の枠外だ、集団自衛権に踏み込む問題だ。いまもおっしゃっていましたけれども、従来そういう答弁をしていませんね、防衛庁は。違いますか。
  296. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国の海上防衛に当たって集団自衛権の問題が出てくるのは、一つの海域分担ということを前提にしての御議論であろうかと思います。私ども、太平洋なら太平洋の海域をどこからどこは日本の責任分野、分担範囲ということをきちんと決めて、その中においてはわが国の防衛のみならず、わが国以外のいろいろな国の船をもわが国が責任を持って守るというふうな意味で海域分担をすることは、わが国の個別的自衛権の範囲に入らないということを申し上げているわけでございます。
  297. 市川雄一

    市川委員 防衛局長に伺っているのではなくて、防衛庁長官発言がおかしいから聞いているのです。だから、防衛庁長官が答えないと話にならない、これは。そうでしょう。だって、議事録をもとにして、防衛庁長官発言なんです。海域防衛が集団自衛権だとあなたはおっしゃっている。それでは訂正しますか。海域防衛が集団自衛権だったら、シーレーンの防衛はできませんよ。
  298. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 ただいま政府委員から御答弁を申し上げましたように、また私が従来とも答弁をいたしておりますのは、海域防衛という発想は、日本がその海域を分担するという発想を指しておるわけでございまして、海域分担ということになりますと、その海域には日本に対して敵対行為をしていない国々の艦船も通過するわけでございます。その海域を日本が分担をしなければならないということになると、全然関係のない国々の艦船までもわが国が防衛をしていかなければならぬ義務が生ずるということになるわけでございまして、こういうような考えはわが国の自衛隊の仕事ではございませんし、許されていることでもございませんので、私どもはこういう考え方を持たない、こういう意味で海域分担の思想は持ち合わさないと答弁をいたしてきておるわけでございます。
  299. 市川雄一

    市川委員 先ほどもここでおっしゃったことは、海域防衛の考え方は持たない。何か海域防衛と海域分担とをごっちゃにして議論されておるのですが、従来の防衛庁は、シーレーンというのはシーコントロールでございます、シーコントロールというのは一定の期間、一定の海域に排他的な支配力を持つのだということを答弁しているのですよ。いまあなたがおっしゃったことともまた違う。排他的な利用を、シーレーンの防衛というのは考えているのです。これは塩田防衛局長が答えている。いま、あなたのは排他的じゃないのだ、こう言う。ずいぶん違いますね。何か答弁があっちへ行ったりこっちへ行ったりなさるのですが、そういう排他的な海洋の利用、一定の期間、一定の海域を、支配力を及ぼして排他的にその海洋を使う、こういうことをやるのでございますと塩田さんは答えている。いまの防衛庁長官は違いますね。そういう排他的なことはやらないのだ、こう答えている。どうなんですか、長官長官発言ですよ。防衛局長発言じゃないんですよ、これは。長官発言なんだから。
  300. 久野忠治

    久野委員長 防衛局長答弁をいたさせます。
  301. 市川雄一

    市川委員 待ってくださいよ。長官に答えさせていただきたい。あなたが年じゅう釈明しているのではしようがないのですよ、これは。
  302. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 委員長の御指名がございましたので、答弁させていただきます。  排他的というふうに申し上げたのは、海域分担ということになりますと、わが国の船舶以外のもろもろの船も一切わが国の責任において守るということは、これはできないという意味で大臣がるる申し上げていることでございまして、いわゆるシーコントロールについての排他的というのは、わが国の船舶なり自衛隊が支障なくそこを利用できるように、一時的に敵の船なり潜水艦なり飛行機というものの妨害を排除しながらわが国の利用が可能になるように行動するということをシーコントロールということで申し上げていることでございまして、排他的というふうにもし過去使っているとすれば、そういう意味であろうかというふうに理解しております。
  303. 市川雄一

    市川委員 要するに、そのときになると、都合悪くなると、過去こう使った言葉はこういう意味でございますと言うんじゃ、これは幾らでもできるわけです、そういう答弁は。  もう一つお伺いします。  総理は、日本列島全体あるいは日本本土が、不沈空母のように、ソ連のバックファイア爆撃機の侵入に対抗する巨大な防衛とりでを備えなければならないということだ、バックファイアの侵入を阻止するのがわれわれの第一の目標だ、これは防衛庁の見解と全く一致した見解ですか。どうですか、防衛庁長官防衛庁長官ですよ、これは。総理防衛庁長官見解が一致しているかを僕は聞いているのですよ。いいかげんにしてくださいよ。長官、答えてください。
  304. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国の防衛に関しましては、従来から、いかなる侵略に対してもこれに対処できるように常に努力をし続けておるわけでございますが、今日のそういう努力の中には、当然でございますけれども、航空防衛ということがございまして、わが国に対する空からの侵略に対しても適切にこれに対処するという発想で私どもは努力をいたしておるわけでございます。
  305. 市川雄一

    市川委員 一般論を聞いているのじゃないのですよ。当たりまえな話でしょう。総理は、日本列島全体あるいは日本本土が、不沈空母のように、バックファイア爆撃機の侵入に対抗する巨大な防衛とりでを備えなければならない、バックファイアの侵入を阻止するのがわれわれの第一の目標だ、こう言っている。これは防衛庁と同じ見解かと聞いているのです。「防衛計画の大綱」と同じ見解ですか、これ。防衛計画もこういう考え方でつくったものですか。どうですか。違うでしょう、これ。防衛庁長官、どうですか。これくらいの御答弁はいただけないですか、長官として。
  306. 久野忠治

    久野委員長 政府委員をもって答弁いたさせます。夏目防衛局長
  307. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 総理発言趣旨は、ただいま大臣からも申し上げたとおり、わが国の防衛力整備に当たって、防空能力も含めて充実整備をしなければならないということを比喩的に申し上げたので、そういう趣旨においては、私どもが現在、大綱の精神にのっとって防衛力の整備を進めていることと変わらないんじゃないかというふうに考えております。
  308. 市川雄一

    市川委員 これは一般論だと思うのです。だって、「防衛計画の大綱」は、先ほど確認をしましたように、仮想敵国は持たない、こういうのでしょう。総理発言は、バックファイアの阻止が第一目標だ。バックファイアというのはアメリカの飛行機ですか。どこの国の飛行機でしょうか。ソ連じゃないんですか。バックファイアを阻止するのが第一目標だ、これは明らかにソ連の国を阻止するということを前提に立てた考え方。大綱と違うじゃありませんか。しかも大綱は、小規模限定侵略に対処するのですよ。日米安保条約の対ソ抑止力の網の目をくぐって、ある日突然奇襲的にどこかに上陸されて既成事実をつくられたら困る。だから、それを排除する力を持つというのが「防衛計画の大綱」の考え方じゃありませんか。バックファイアの侵入を阻止する巨大な防衛とりでなんという発想は、計画大綱にないじゃありませんか。これが防衛庁の見解かどうかということを聞いているのですよ。これも違うはずですよ。言い逃れですよ、いまの答弁。どうですか。同じだとは言えないでしょうな。
  309. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私ども、先ほども答弁申し上げたとおり、仮想敵国というものは考えておりませんが、わが国周辺諸国の軍事能力の向上、近代化というものは非常な関心を持っております。そういったわが国周辺諸国における航空能力の近代化、潜在的脅威の増大というものを念頭に入れて私どもが防衛力整備を進めているわけですが、総理の言われたのは、そういった航空防衛力、防空能力の近代化というものを周辺諸国の航空能力の近代化に合わせておくれないように整備を進めていく必要があるのではないかということをあくまでも比喩的に申されたということでございまして、私ども、それをもってわが国が仮想敵国を持たないということと矛盾するとは思っておりません。
  310. 市川雄一

    市川委員 非常に詭弁ですね。わが国周辺の国々の事態に備えて航空能力を備えなければならない、それは一般論だと言うのです。総理は具体論を言っているわけですよ。バックファイア爆撃機の侵入阻止と、ここまではっきり言っていて、そういう答弁をしていたのでは、本当に皆さんと防衛問題は全然かみ合いません。日本の国民も何の議論をしているかわからなくなってしまう。もうちょっときちっと答弁しなければいけませんよ。総理答弁がはみ出ているならはみ出ていると言えばいいじゃないですか、はっきりと。そこへつじつまを合わせていくと、「防衛計画の大綱」だっておかしくなると思うのですよ。  第二番目に、総理はこう言っている。日本列島周辺の四海峡を完全かつ十分に管理する。そして、ソ連の潜水艦や他の海軍艦艇の通過をさせないことである。勇ましいですね。ソ連の極東艦隊を日本海に封じ込める。こういう事態は日ソ全面戦争じゃなければ起こり得ないんじゃないですか。四海峡を封鎖してしまう、ソ連の極東艦隊を日本海に全部封じ込めてしまう、こんなのは「防衛計画の大綱」なんかに全然想定してないじゃありませんか。小規模限定的侵略に対処する。四海峡を封鎖してソ連の極東艦隊を全部日本海に封じ込めてしまう。あるいはシーレーンが攻撃されているかもしれない。これは完全な日ソ全面戦争ですよ。大綱が予想しているのはそういう事態じゃないでしょう。奇襲でしょう。ある日突然既成事実をつくられたら困るという、それを排除する力、それ以上のものについてはアメリカの来援を仰ぐというのが防衛白書に書いてある大綱の考え方じゃありませんか。これだって全然違いますよ、全然。  日本海にソ連の極東艦隊を封じ込めるような事態が、小規模限定侵略でございますか、どうですか。
  311. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国の防衛に当たりまして、一つには、まずわが国の本土防衛の面からも、さらにはまたシーレーン防衛という見地からも、三海峡の防備、海峡防備という問題は非常に重要な問題であるというふうに私ども認識しております。  そういう見地に立ちまして、現在の能力は必ずしも十分ではございませんけれども、通峡阻止能力、艦艇、航空機あるいは機雷の備蓄というふうなものの整備に力を入れているわけでございまして、そういったことを総理が申し上げているので、私ども考え方と本質的には同じことをおっしゃっているんだろうというふうに思います。決してそのことが直ちにソ連を仮想敵国視するというふうなことではなく、あくまでもわれわれは、いま先生指摘のあったような限定小規模侵略に対処することを目標にした「防衛計画の大綱」の枠内でそういった防衛努力を積み重ねているということを御理解いただけていると思います。
  312. 市川雄一

    市川委員 要するに、明らかに総理のおっしゃっていることと「防衛計画の大綱」は違いますよ。それは同じだというのは強弁です。すごくわかりづらい。そんな論理は通らないです。  時間が迫っておりますので、問題を変えてお伺いしたいと思います。  米第七艦隊の原子力空母エンタープライズが、新聞の報道によりますと、三月二十一日から五日間長崎県の佐世保に寄港すると言われておりますが、これは無条件で認める方針ですか、外務大臣。
  313. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 エンタープライズ日本寄港については、まだ正式にアメリカの要請を受けておりません。
  314. 市川雄一

    市川委員 もう一つお伺いしますから。  米国防報告によりますと、新鋭の原子力空母カール・ビンソンが北西太平洋方面に配備される。やがては第七艦隊に編入されて恐らく日本の横須賀とかあるいは佐世保という寄港問題が起きてくると思うのですが、米国から要請があった場合、日本政府は、従来エンタープライズを佐世保に寄港を認めましたが、その従来の方針どおりに対応するのかどうなのかということを伺いたいと思います。
  315. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはまだ正式な要請がございませんが、要請があった場合にはアメリカと協議して、日本の立場もありますから協議いたしますが、アメリカの要請にこたえる考えであります。
  316. 市川雄一

    市川委員 厚生大臣にお伺いしたいのですが、乳幼児に集中的に発病している原因不明の病気で川崎病という病気がございますね。私が住んでいるのは川崎市でございますが、川崎市民は、川崎病というネーミングできわめて被害を受けているわけでございます。神奈川県に住んでいる方でさえも川崎病というと何か川崎の風土病じゃないのか、あるいは公害病じゃないのかというふうにお考えの方がいらっしゃいまして、川崎市のイメージを非常に損なう。市民からこれは超党派で何とかしてほしいという怖い要望がございます。あるいは全国に川崎さんというお名前の方もいらっしゃると思うのです。  伺いますと、医師の個人名で病名が命名されて国際的に認められるということは、日本の医師にとって非常に名誉なことである、こういうふうに伺っております。それは非常に名誉なことだと思うのですが、そのお医者さんの名誉ではあっても、こういうネーミングというのはきわめて問題が多いと思うのですね。たとえば、昔は通用した言葉でいまは通用しない言葉がたくさんあります。聴力障害者であるとか、あるいは目の御不自由な方であるとか、差別という問題も世論は強い。こういう立場で、厚生省としてぜひ再考していただきたい、こういうふうに思いますが、厚生大臣の見解を承りたいと思います。
  317. 林義郎

    ○林国務大臣 市川議員の御質問にお答えを申し上げます。  川崎病というのは、確かに川崎市におられる方にとっては非常に困る名前だろうと思うのです。  ただ、いま御指摘がございましたように、川崎病というのは昭和四十二年に川崎富作先生によって報告された疾病でありまして、それで川崎病と呼称されるようになりましたが、実はもうすでに学会でもこの名前が川崎病ということで定着をしておりますし、国際的にも広く用いられているところでございます。カワサキディジーズ、こういう名前になっちゃっているものですから、この名称を変更するというのは非常に困難であろうと思いますが、名前をどうつけるかというのは基本的に関係学会において検討さるべき事柄だろうと思います。  川崎の方は不名誉だ、こういうお話でございますが、それは確かに配慮していかなければなりませんし、名称による誤解のないように周知徹底すべく、都道府県等へ指導を通じ一層努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  318. 市川雄一

    市川委員 できればこの川崎病のネーミングのあり方をもうちょっと厚生省として真剣に考えていただきたいと思うし、今後ネーミングに当たってはこういう発想はいかがなものかなと思うのですね。個人名をあっさり簡単につけてしまうというのは、同じ問題を引き起こすのじゃないか。御要望申し上げておきたい。  次に、建設大臣にお伺いしたいのですが、逗子・葉山地区に国営大規模公園をというのは御承知かと思いますが、昭和公園、昭和記念公園の絡みで引き続いてずっと地元が要望している、しかも超党派で要望している問題でございます。  この問題で、時間があればもうちょっと質疑したかったのですが、一つは、五十五年の四月二十一日、渡辺建設大臣が、どういう記念にするか、名称は別として、記念公園としての最有力候補地の一つである、逗子・葉山地区は非常に立地条件がいい、昭和記念公園に匹敵するような公園にしたい、こういうお考えを明らかにされて、五十六年三月二日には、予算委員会の分科会で同じく当時の斉藤建設大臣が、前大臣の方針を継承します、こういう御答弁をなさっているわけですが、どうでしょうか建設大臣、記念公園の最有力候補地としてというお考えは変わりありませんか、どうですか。
  319. 内海英男

    ○内海国務大臣 ただいまお話のありました逗子・葉山地区につきましては、昭和記念公園という候補地として最有力候補として挙げられており、調査を行っておる経緯もございまして、この方針を今後とも引き続き尊重してまいる、こういう考え方でおります。
  320. 市川雄一

    市川委員 防衛庁長官、外務大臣に集団自衛権等を中心にお伺いしたわけですが、きわめて納得のしない答弁が多かったということを指摘申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  321. 久野忠治

    久野委員長 これにて市川君の質疑は終了いたしました。  次に、中野寛成君。
  322. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、青少年を取り巻く環境、教育の問題を中心にしてお尋ねを申し上げたいと思います。  まず、お時間の関係もあるようですから、官房長官へのお尋ねを先にさせていただきたいと思います。  昨夜のNHKの「総理にきく」という番組で、中曽根総理が、最近の青少年の非行、特に校内暴力の問題等々大変憂慮して、その対策に内閣挙げて取り組むということをおっしゃられた。そしてまた、その舞台として青少年問題審議会の強化、また文部大臣や官房長官中心に検討を進めていく、これらのことの発言が記者会見等を含めてなされているようであります。総理がこの段階でこういう御発言をなさった真意、そして具体的には何をなそうとしておられるのか、そのことについて官房長官からお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、堀内委員長代理着席〕
  323. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 ただいまの御質問にございました青少年問題でございますが、総理発言は、いま、いろいろな御家庭で子供さんを持っておる親御さんが一番心配なのは子供の教育の問題だ。といいますのは、最近の一連の非行の行為が、われわれにはちょっと考えられないような事件が横浜であるとか、あるいは東京であるとかで起こっておりますが、これは全国にあるわけでございます。しかも、これは日本だけでなしに全世界いずれの国も悩んでおる問題だと思います。  そこで、従来から政府審議会等でいろいろ御提言もいただいておるのですが、こういった問題を考える場合に、こういった行為をわれわれはもちろん承認するわけにはいきませんけれども、考えようによれば子供自身が被害者ではないのか。つまり、青少年を取り巻く環境、これは非常に悪化をしておりますね。これは世の中全体の問題。同時にまた、学校の先生自身も一生懸命やってはいらっしゃるとは思うけれども、やはり与えられた時間だけ子供に接すればよろしい。つまり子供から見て先生自身が自分たちのことを本当に親身になって考えてくれているのかといったような点について、子供自身も疑問を持っているような先生方もたくさんおる。これは先生の教育の問題だと思いますね。  同時に、家庭を考えてみますと、私は、最近子供さんの数が少なくなったということもあるのかもしれませんけれども、親御さんの愛情が子供にだけ集中してしまって、その結果、一方では非常に甘やかしになっておる。同事にまた他方、働きに出る人はやむを得ぬとしても、比較的家庭に時間的ゆとりがある家庭がふえておる。そうすると、その奥さん方も案外子供さんをほっぽらかしになっておる。放任と甘やかしと両極端がありはしないのか、これは家庭自身の問題だ。  そこで、総理は、こういった問題を考える際には、やはり学校の教育の問題、さらには家庭の問題、あるいはまた世の中全体の問題、こういった幅広い今日の少年問題を取り巻く背景にまでメスを入れないと、これはとても解決しないのではないのか。ところが、これが今日の役所、いわゆる縦割り行政、少年問題には十数庁関係しております。そうなると、これはどうしてもばらばらになる。根源にさかのぼった対策が立てにくい。従来いろいろやってはおりますけれども、そういった観点できるに青少年問題審議会等の幅広い中身についても検討をし直して、そして、こういった方々のお知恵も拝借しながら、ひとつ関係各省協力をして対応策を抜本的に講じよう。これが今日一番、子供さんを抱えていらっしゃる家庭の悩み、それを解決する政府としての責任ではないのか。こういうことで、総理としてはこの問題を真剣に内閣全体の課題として取り組もう、こういうことを決めまして、きのう実は総理から私にそういう意味合いで内閣としても取り組んでもらいたい、こういう御指示があったわけでございます。
  324. 中野寛成

    中野(寛)委員 たとえばいま名前が出ております青少年問題審議会、これにいたしましても昨年六月二十四日に「青少年の非行等問題行動への対応」ということで答申をお出しになっている。そして、その翌日には「青少年の非行防止対策について」ということで閣議決定がなされている。そして、同じく非行防止対策推進連絡会議の申し合わせもなされているわけであります。そして、これ以外に、たとえば文部省で昨年三月に「生徒の健全育成をめぐる諸問題 校内暴力問題を中心に」というのが出されている。そして「豊かな心を育てる運動推進参考資料」も出されている。そのほかいろいろな、警察庁が出している手引等まで含めますと、ずいぶんたくさんの答申、そして問題提起等々がなされているわけであります。  結局、いまこの審議会で何かを審議するということではなくて、もはや分析もそしてその原因の追及もあらゆることが済まされていて、そして具体的に行動を起こすというその時期を迎えているのではないのか。それが今日まで具体的な行動になってあらわれていない。会議をやった、こういう審議をした、答申を出した、そのことが結局たとえば国会答弁のためのものであったり、または何かおざなりにこういうことをやりましたよという見せかけのものに終わってしまったり、本当は中身はずいぶんりっぱなものが答申されているかもしれないのだけれども、私はりっぱなものができていると思うのだけれども、しかし具体的な行動には移されていない。それはなぜそうなっていったのか。その原因がむしろいまは逆に問われているのではないだろうか。実行の段階、しかし、実行に移せていなかった。なぜなのか。そこをむしろ私は聞きたいと思うのです。そして、本当はそこに総理のリーダーシップが発揮されなければいけないのではないかと思うのです。これらのことについてどうお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  325. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 仰せのとおり、とかくこういった仕事は実行が非常にむずかしい問題でございます。そうなりますと、ややともすれば、いまおっしゃったように、会議を開いて答申をしてもらう、その印刷物をもらう、それをそれぞれの役所でそれぞれのルートで流していく、それで終わったといったようなことになりがちなわけでございますね。  そこで、私どもとしては、きのうの総理の御意見等も受け、それは従来からそういう案が出ておりますから、これらも踏まえながらこれをどのように行政の上といいますか、要するに国民運動的なやり方でやろうではないか、こういう話がきのうも出ているのです。そういった、どういう仕事の段取りで、どういう役所はどういう仕事を担当する、あるいは地域社会はどういうようなことをしていただく、その実行をどのようにして担保するかといったような具体的なやり方まで今回私どもとしては手を入れていきたい、こう考えておるわけです。  おっしゃるような弊害が従来あったことだけは私も否定をいたしません。しかし、今日それでは済まない、大変な問題でございますから、しかし、それじゃ実効がすぐ上がるかというと、これまた今日の世界各国の実情、どこの国も同じような現象が出ているわけですね。大変むずかしい問題。むずかしい問題であるだけにわれわれは政治の場で取り上げてやらなければならない、こういうように考えているわけでございます。
  326. 中野寛成

    中野(寛)委員 もう一つ、教育の問題を取り上げるときに、これを行政の立場で真剣に取り上げていく、そのことは必要なんですが、別の意味での政治的、意図的動きがその中に加味された場合には、これはまた大きな問題を呼ぶわけであります。むしろ私どもは、今日までの学校教育の荒廃があるとするならば、それは日教組対文部省の対決というふうによく表現をされますように、学校の中においても、先般来の事故が起こった、その学校ではむしろ組合員と非組合員との対立さえその中にあったのではないかと原因の一つとして指摘をされている状態さえあるわけであります。決して、政治的イデオロギー対決を教育の中に持ち込んでならないことは言うまでもないと思います。  その際に、私どもやはり危惧をいたしますのは、最近の一連の中曽根総理のタカ派的発言、そして、その中曽根総理のタカ派的発言が、教育問題を口にすると同時に、何か中曽根総理は教育を道具に使ってどこかへという心配を国民に与えることも事実であります。また、そういう時期にたまたま文部大臣の、今日のこういう状態が起こった原因の一つ、それは戦後の占領政策の中からその原因が生まれてきたという発言があったようでありますけれども、これらのことも私は、不用意におっしゃってもらっては困る、その真意が誤解されるような表現であっては困る、十分その内容が説明を尽くされるときでないとこういう表現はやはり誤解を生むもとだ、こう思うのです。教育の問題を取り上げようとするときに、まず導入部でこれらのことに十分配慮をしていただかないと効果が上がらない。効果が上がるどころか、十分な対策に手が届かないところでストップしてしまう、こういうこともあるわけでありますが、官房長官にこの点お聞きしておきたいと思います。
  327. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 教育の問題というのは、百年人を植える重要な仕事だと私は思います。まさに日本民族の運命がかかる問題だと思うのです。一内閣の政治的な問題なんということは絶対にあり得べからざることだし、こんなことはあるはずがありません。したがって、ただいまのような御疑念があるとするならばこれは払拭をしていただきたい。教育はあくまでも政治的に中立でなければなりません。  ただ従来、いまおっしゃったように、文部省とあるいは日教組との対決、そういう姿があったことも事実でしょう。その際に、管理体制ということも強化しなければいかぬだろうといったような議論もあって、やったと思います。私は、これは必要だと思う。しかしながら、管理体制の強化だけで今日の教育の現状が救われるとは私は思わない。さっき言ったようなもう少し根深いところにお互いが、これは政党政派を超えなければいけませんよ、そういう立場で話し合って、本当に次の世代、次の世代、百年人を植えるという心構えで私は教育の問題だけは真剣に取り組みたい、こう思っておりますので、御安心をしていただきたいと思います。
  328. 中野寛成

    中野(寛)委員 いまの御趣旨、御答弁をお聞きして安心をいたしましたが、この際、幅広い国民運動的な取り組み方をしなければならぬということをおっしゃられた。その場合に、私は、国民みんなが教育の問題を考え、そして参加をする、その体制が必要だと思うのです。  先般、本会議における代表質問でわが党の春日常任顧問からも御提案申し上げましたけれども、たとえば国民みんながわかりやすい言葉で、そして、みんなが当然と思うような子供たちのしつけ、道徳、倫理観の内容についてみんなが共通の意識を持つ。これは決して全体主義的人間をつくろうという意味ではありません。きわめて民主的で国際社会に視野を広く求める、そういう考え方のもとに教育憲章的なものを御提案なさってはいかがだろうかと再度御提案申し上げたいわけであります。  しかし、元総理が、期待される人間像だとか五つの何とかとか、それこそ何か選挙対策みたいな感じで突然に発表されますと、これはまた誤解を生むもとになります。むしろ私は、審議会等が中心になって広く国民にそれらの内容について募集をするとか広く学識経験者やいろいろな団体の皆さんの代表者に参加をしていただいてこれらについて審議をするとか、そして、それができ上がったときには広く国民がどういうプロセスでどういう中身ができたかを知っている、そのプロセスが大事だと思うのです。その過程において国民が参加する、そして国民みんなで日本の教育の指針をつくった、そういう意識というものを植えつけながら、たとえば教育憲章のようなものをつくっていく。これも一つの共通の教育指針をつくる上において効果的なのではないだろうか、私はこのように思うわけであります。  同時にまた、もう一つは、各都道府県に、長野県を除いて青少年健全育成条例等々がございます。私はそういうものを都道府県で先駆者的につくられたことは大いに評価をするのです。しかし、たとえば東京でビニ本の自動販売機を追放した。しかし、それは神奈川へ行って売られておった。これでは困るのですね。青少年健全育成のための基本法を国会でつくって、そして、みんなで今日の教育の問題について考える。私はまさに非常事態だと思うのです。非常事態宣言をする気持ちでこれらのことについて前向きにお取り組みいただけないだろうかと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  329. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 こういった問題を考えていく際の一つの有力な御提案として承っておきたいと思います。
  330. 中野寛成

    中野(寛)委員 それじゃ、官房長官へのお尋ねは終わりたいと思います。ありがとうございました。  それでは、文部省、そして警察の方へお尋ねをしたいと思います。  先般の横浜市での中学生を含む集団による浮浪者に対する襲撃事件、町田市での教員による中学生に対する刺傷事件、これは大変私どもに大きなショックを与えました。しかし、これは一つの象徴的な事例ではないだろうか。単に特異な事件だと見過ごすわけにはいかないと思うわけであります。これらのことを踏まえて、その背景となったいろいろなことをわれわれは分析しなければなりません。最近の校内暴力等を中心とした現象について、文部省と警察はどのように分析しておられますか、まずお聞きしたいと思います。
  331. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 中野さんのおっしゃるように、いわゆる少年の非行、校内暴力、家庭内暴力というようなことが近年非常に心配されておったさなかに、やや減少しておる傾向も一部見られておるという意見もあったわけでありますけれども、いまおっしゃるように、この間の横浜の事件あるいは町田市の中学校の事件と、非常に特異といいましょうか、非常にショッキングな事件で、まさに心を痛めておるというのが実情でございます。  この原因については、少年非行その他、校内暴力等については、いろいろあると思います。これは、私はまず第一に、子供の資質ということがやはり一つの要件であると思います。社会の問題もありますけれども、社会がこういう状況であるとか客観的環境が悪いということはありますけれども、環境が悪ければ全部そうなるかというと、そうでもないのですから、子供の資質の問題があると思うのです。それから、家庭の問題があると思います。家庭についてはいろいろ言われておりますけれども、最近のいわゆる高度成長した日本の経済、あるいはこの生活の状態の中で、子供が何となく疎外されておるような状況もある、あるいは学校の教育の指導の方法もある、いろいろな問題があると思います。  そういう細かい点については事務当局から、またいろいろ検討しておりますから御報告申し上げますが、そういうあらゆる分析をしたと言われますけれども、分析をした上に、それは非常にむずかしいですけれども、それじゃ、それをどういうふうにして対策を講ずるか。先ほどもお話がありましたように、これからの日本をしょっていくわれわれの後継者がこういう状態でいくということは、まさに、私は率直に言って、文部省だけの、あるいは学校だけの問題ではない、先ほど来お話がありますけれども国民全体が、これはどこにどういう原因があるんだ、どういうふうにしなければならないかということを考える時期だということを痛切に感じておりますが、どう分析しておるかということについては事務当局から、もし必要であれば、お答えをさせていただきます。
  332. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 警察庁から、最近の少年非行等の概況につきまして、特徴点などを御説明申し上げたいと思います。  少年非行は、ここ数年来著しい増加を続けてまいりましたが、昨年になりまして、増加率はやや鈍化をいたしました。昭和五十七年中の刑法犯少年は、前年比三・八%の増加ということでございます。触法少年は二・九%の減でございます。しかし、全般的に見ますと、中学生の非行が著しく増加をしておるというようなこと、非行の中核的な存在の様相を呈しておりますし、また、粗暴犯が依然として増加の傾向を示しております。また、シンナー等の薬物乱用少年も増加するというようなことが注目すべき点であろうかと思いますし、先生指摘のように、最近の横浜の事件あるいは町田の事件というような事件が、最近の少年問題を一つ浮き彫りしておるようなことであろうかと思いますが、今後とも私ども、いろいろな面で関係機関と協力しながら取り組んでいくというふうに考えておる次第でこざいます。
  333. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 お答えいたします。  最近の少年非行の全般的傾向につきましては警察庁の方からお答えしたとおりでございますけれども、私どもといたしましては、その中で特に教師に対する校内暴力が増加傾向にあるということにつきまして大変憂慮をしているわけでございます。  その背景にはいろいろな考え方があろうと思いますけれども、私どもとしては、やはり学校における生徒指導の体制、教育指導のあり方全般を含めまして、いわゆる落ちこぼれを出さないような授業をしているかどうか、あるいは問題の生徒に対しまして、校長以下一体となって毅然とした対応をしているかどうか、全般の地域社会あるいは家庭との連絡、地域社会における関係機関との連絡が十分行われているかどうか、この校内におきますところの対教師暴力につきましては、学校においてあってはならないものだという観点から、これをなくすための指導を十分に徹底していかなければならないというふうに考えているわけでございます。  実は昨二十一日に、この町田市と横浜市に起きましたところの事件につきまして、識者の御意見を聞くために緊急に会議を開きまして、この問題のみならず、この問題の背景となっておりますところの今日の状況についての御意見等を端的に聞いたわけでございますけれども、やはり現象としては、最近の、特にこの五、六年前ごろから子供たちの姿が変わってきているという御指摘がございましたのと、今回の特に横浜市のケースにつきましては、非常に特典なケースと考えられる、それは、弱者である大人に対しまして集団で、一人だけではなくて死に至らしめるような襲撃をしたということ、それから、非行の少年のグループの組み方が広範にわたっているというふうなことから、最近にない特異なケースではなかろうかということ、それから町田市につきましては、これは、ただいま申し上げましたような校内暴力、対教師暴力の延長線上にあるという考え方もございますけれども、横浜の問題と軌を一にするような背景、弱者である教師に対する生徒の暴力という意味で共通するものもあり、その社会的な背景なりいろいろなものを考えますと非常に根が深いというふうないろいろな御意見がございまして、それらを総合いたしまして、その原因なり背景なりを十分に考えてこれからの対応をしていかなければならないというふうに考えておるところでございます。
  334. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、この問題については昨年もお尋ねをこの席でいたしました。審議会に諮って検討をしている、その答えが繰り返されました。そして、あれから一年たちました。事件が起こりました。そして、こういうことをやったという答えはまだ聞けません。具体的にこういう行動を起こします、審議ではなくて、会合ではなくて、こういう効果的行動を起こしますという答弁も聞くことはできません。そのことが私は大変残念ですし、まさしくこれらの原因は文部省であり、そして政府である、まさに政治そのものにこれらの一連の事件の責任があると言っても過言ではない、こう言わざるを得ないと思います。  ちなみに、もう一つだけお聞きしますが、こういう校内暴力事件の発生のほとんどは公立校において発生をいたしております。たとえば、東京で私どもの友人が子供を学校に通わせている。小学校を卒業して中学校へ入ろうとする。公立中学校に子供を入れたらとても危なっかしくてこれは大変だと、無理をして私学に入れようとする、この傾向は大変顕著にあることはいまさら指摘するまでもないと思います。  なぜこういうことが起こったのでしょうか、まずこのことについてお聞きしたい。
  335. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 お答えいたします。  私立学校と公立学校を比べまして、確かに公立の学校におきまして校内暴力等が多いのは御指摘のとおりかと存じます。公立高校なり公立中学におきましては、すべての子供をその地域から収容いたしまして、いろいろと素質の違った子供を教育するわけでございます。私立の方は、その学風なり建学の精神等を慕って集まったある程度志を同じくするような生徒を対象といたしまして教育をしていくということがございまして、それだけが公立における校内暴力等が多発しているということではないと思いますが、一つの判断の基準としてはそういう点がございますのと、公立高校、公立中学等におきましては、やはり教員の人事あるいは校内体制、そのほか地域社会との連携という面におきまして十分に生徒の信頼を得ながら生徒指導なり教育をしていくという点におきまして徹底を欠いているという点があろうかと思います。
  336. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、それだけではないと思います。やはりあらゆる生徒、私立の場合にはそれなりに選んで入学をさせるけれども、公立はそうはいかない。果たして本当にそれだけでしょうか。私は、公立校の教育の体制や学校の体制そのものに大きな要因があるということをやはり考えざるを得ません。  もう一つ聞きますが、こういう状態の中で、本当に文部省はこれらの事態を真っ正面からそのまま、ありのままに見据えて、そして、その対策を講じようとしているのでしょうか。やはりいままでどおりおざなりに言い逃れの会合を繰り返し、答申を繰り返し、通達を繰り返すのでしょうか。具体的にどういう行動を起こそうとするのでしょうか。これらの傾向が出てから何年たつのですか。そして、文部省は何をしたのですか。ここで文部省のしっかりとした御答弁を改めて要求をしたいと思います。
  337. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 文部省におきましては、先ほど申し上げましたように、この非行問題、特に学校における暴力、とりわけ対教師に対する暴力は、学校教育の基本を損なうものだという認識からこれを絶滅するという気持ちで指導に当たっているわけでございます。都道府県教育委員会を通じましていろいろと指導しているわけでございますけれども、文部省におきましては、何といたしましても、長期的な政策といたしまして、一つは、対症療法という点からだけではなく、たとえば先ほど先生がお挙げになりましたような豊かな心を推進する施策の本部のようなものを小川大臣の指示のもとにつくりまして、これは学校、地域社会、家庭が一体となって取り組んでいく根源といたしまして、文部省が従来初等中等教育局を中心にしておりました生徒指導のみならず、社会教育、体育・スポーツ、あるいは管理局の持っておりますところの各種の予算等を集めまして、モデル市町村を指定して、地域ぐるみでこの問題に取り組んでいただくようなそういう施策を、予算を集中いたしましてやってまいったわけでございます。  それから、昨年の秋には初めて各県の生徒指導担当の指導主事、教員を集めまして、中央におきまして問題点についての報告会、協議をいたしました。  また、先ほど御報告申し上げましたような横浜、町だのケースにつきましては、きのう有識者による問題行動に関する懇談会等を実施をしているわけでございます。  長期的なそういう青少年の健全育成という見地からの対応と同時に、各県の地についた生徒指導を指導するために五十五年には指導の基本となります通達を出しておりますが、その趣旨は、第一は、学校におきます教育指導においていわゆる不適をなくすような丁寧な教育をすること、現在の学習指導要領の改訂もその趣旨に沿った改訂をいたしまして、五十五年度から小学校、中学校、高等学校という形で定着をいま図っているところでございます。  それから第二は、先生の御指摘になりましたように、学校におきます校内の体制、これは一般論といたしましては校長のリーダーシップのもとに全教員が一致協力をして当たる、また、問題行動に対しては毅然とした対応をする、その原則を示しまして指導をしておりますし、第三には、学校が専門的な教育機関としての責務を果たしながら地域社会なり家庭と十分な連携をとって、また必要があれば関係の機関とも十分連携をとってこの少年非行なり暴力の問題に当たるという三つの原則を示しまして都道府県教育委員会を指導しているということでございまして、私どもとしてはできるだけ長短期の施策をあわせながら、この校内暴力等の大変憂慮すべき事態が少しでも減るように努力を続けているところでございます。
  338. 中野寛成

    中野(寛)委員 いま御答弁の中にもありましたが、先日の町田市の事件、この事件に対する報道を読んでおりましても出てまいりますけれども、結局、あの生徒を刺した教師、それまでに幾たびか生徒からやはり逆な被害を受けていた、それを他の先生は見て見ぬふりをしている、または見て見ぬふりをしないまでも積極的にそれを助けるという協力関係にない。それを知っていたはずの校長先生は何をしたのかさっぱりわからない。警察への協力依頼も全くない。結局、PTAの総会等を開いたら校長先生に対する追及が父兄の中から特に強く出されたと報道されております。私は当然だと思います。現状のような状態の中で、もし問題児がいなくても学校の先生方は協力して教育に当たらなければならないはずです。まして問題児が出てきたときに、なお一層力を合わせてその対策に当たっていくという姿勢が必要ですし、そのような積極的な姿勢を持っている先生立場に立ってこれをバックアップする姿勢が特に校長先生には望まれるはずであります。  去年申し上げましたが、一つの報道された事例の中にもありました。学校の先生はそのまま全く転勤なし、それまで多くの事件が起こっておった、しかし校長先生が変わっただけで一年以内にその学校がモデル校のように変わったという事例さえも報告されているように、やはり校長のリーダーシップというのが私は大変重要だと思うのです。その校長の勇気ある行動を今度は教育委員会がどれだけバックアップするか、この体制が必要だと思うのです。このようなことがむしろおざなりにされているというのが実態なのではないでしょうか。現場の先生方を私も何人か知っております。そして、そういう先生方から幾たびとなく現場の具体的な声を聞きます。結局、本当に先生同士の連帯意識というものがきわめて欠けているということがいまの一番顕著な傾向だと私は思います。  なぜそういう事態を学校の中へ生んだのかの原因も追及しなければなりませんが、その具体的な対策を早急になす必要があると思います。校長先生の再教育、その資質、また校長への登用のあり方、そして、もう一つは、問題校へ具体的に教育委員会からベテランの先生方をむしろ送り込んで、その学校の先生方と話し合いをし、指導をしていく、そういう本当に足を運んでやる、行動を伴った対策というものが必要なはずです。  このことについて大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  339. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私は、まだ文部行政を担当して日が浅いのですけれども、先ほど来局長等からいろいろ説明しておりますように、文部省はその職責の重大さを感じて非常に努力をしておると思います。思いますが、しかし、現実にはいま中野さんが言われたような現象が起こっておるのですから、どこかに欠陥がある。まさに学校を指導する、管理する校長の責任もあろうと思います。あるいは子供に対する各先生方の愛情の問題もあると思います。  私は、こういうことを非常に痛切に感じたのですけれども、文部省に赴任をいたしましてというか就任いたしまして、大臣室に一つの小さな額がかかっておりました。これを見ますと、明治十九年、一八八九年ですか六年ですか、よう歴史に伝えられている森有禮氏が、「自戒」、みずからを戒めるという一文を書いたのが額にかかっている、小さなものでありますが。文教がいかに国を立つるに大事であるかという趣旨を書いて、最後のところに、その職の重大さには死をもって当たらなければならないというような意味のことが書いてあります。  私は率直に言って、最近の学校の問題、非行の問題、いろいろな問題がよう報道されますけれども、それを見ますると、いま中野さんのお話を承りながら、そういう責任の重大さを自覚しておらないのじゃないかと思う。その中に、いろいろな職があるけれども、他の職のことを考えたり職のあり方等を考えないで、この文教といいますか教育というものはいかに国家、国民のために大事であるかということについて死をもって当たるというような強い決意を持たなければならないという趣旨のことが書いてありましたが、その点に欠けておる点がある。まさに教育者が、学校の先生方が、問題があれば全部がこれに体当たりでもして子供を真っすぐに育てる、こういう姿勢が足らないのじゃないか。  これは非常に経験の浅い者が申し上げて恐縮でありますけれども、そういう点をもっと深く、これは文部省だけで指導のできるものじゃありません、おっしゃるように。初中は地方の教育委員会担当でありますから、そういうところとももっとよく相談をして進めなければならない、かように考えております。
  340. 中野寛成

    中野(寛)委員 文部大臣初め文部省にお尋ねをいたしますと、私ども質問に対して精神訓話やまたは精神論やそういうのが出てくるのですが、具体的な政策というのがなかなか出てこない。私は大変歯がゆいと思うのですね。教育というものはそういうものだと決めてしまうということも、また、これは困る。死をもって当たると大臣おっしゃるけれども、それだけでは問題は解決しないと思うのです。現実に、たとえば学校の先生方が力を合わせてやっていかなければいけない、大臣もそうおっしゃる。そういうふうに指導するためにはどうしたらいいのかというのをいま聞いているわけです。文部省はいかなる指導をしようとしているのか、さっぱりわからぬです。結局精神論ばかり聞かされる。それではやはり今日のこれだけ具体的に起こっている問題を解決することにはつながらないと思います。  ちょっとしばらく警察の方へお尋ねをしたいと思いますが、いろいろな事案が起こっております。学校からの協力要請というものはなかなか少ないようであります。  しかしながら、警察の方では、これから卒業シーズンを目前に控えて、「卒業期における校内暴力事件の防止について」というのをお出しになりました。もう一つ、大阪府の方においてきょうこういう資料が出されました。「大阪府教育委員会 対教師暴力に関する十項目のチェックポイント」「今日、中学生非行の中でも、粗暴化傾向は顕著であり、とくに対教師暴力の増加がめだっている。現実に発生した対教師暴力の本質をどのようにとらえ、具体的にどう対処していくべきか、生徒指導の資料として活用されることを期待する。」と言って、丁寧ですわ、ちゃんと絵が入っていますね。これ、いまの学校の先生はこのくらいの絵をちゃんと入れておかないと読み分けられないのかしら。別に大阪府教育委員会がいかぬと言っているのじゃないですよ。これだけのことをしたことを私は大変貴重なことだと思うのです。評価をしているのです。  しかし、こういう中で、十項目にわたってありますが、四項目目には「全員一致の指導体制ができているか。一人の名人芸よりも総体としての力量の発揮を。」というふうなことが書かれておりますし、そしてまた「保護者を学校へ呼ぶまえに家庭訪問をしているか。」そして「関係機関と真の連携はできているか。」というふうなこと等がそれぞれに書かれて、指導参考資料として出されております。  この関係機関の一つに、やはり警察もあると思うのです。私はこういう対症療法などというものはむしろ警察の分野であるとさえ思うときがあるのです。現実に教師の手に負えないということもある。または実際に警察が手を下さないまでも、そういう場合のプロとして学校の先生と十分連携をとって学校の先生をバックアップし、そして、アドバイスもして、それらの事案に対処していくということも必要だろうと思うのです。  これらのことについて、警察としての御意見を聞かせていただきたいと思います。
  341. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答えをいたします。  警察といたしましては、この種校内暴力の事件は、本来的には学校当局の適切な生徒指導によってその未然防止が図られることが最も望ましいことであろうかと思っておりますが、しかしながら、最近の校内暴力は、凶暴性の強い事件やあるいは校内の粗暴集団との関連において行われる事件など、ある意味では学校当局の手に余る事件が目立っておるわけであります。したがいまして、これに対処するためには初期の段階から警察と学校とが一体となった毅然たる措置が必要かと考えておる次第であります。警察といたしましても、先生指摘のとおり、教育委員会あるいは学校などと一層緊密な連携を、現在も図っておりますが、今後とも図りまして、この種事件の未然防止あるいは事件発生時の適切な補導措置をやってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  342. 中野寛成

    中野(寛)委員 その場合に、警察の方としては、もっと早く相談をしてくれたらとか、そういう声を現場でよく聞くのですね。学校の実態に対して私は文部省としてもやはりその辺のことは勇気を持って指導してほしいと思うのですけれども、もっと緊密な連携のとり方についてどういうふうにしたらいいというふうにお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  343. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 確かに先生の御指摘のように、学校におきましては、事件が起こりましてもできるだけ校内で処理をしようという傾向等もございまして、警察等外部機関に連絡を怠るというような傾向があることは御指摘のとおりかと存じます。それは問題を根本的に解決することにはならないと思います。私どもとしては、先ほど五十五年通達のことにも触れましたけれども、学校が第一番に責任を持つことは当然でございますが、この種の問題について、必要があれば直ちに地域社会の関係機関、御指摘のございましたような警察とかあるいは補導センターとか、そういうところに十分連絡をとってやるように指導はしているわけでございます。  この種の連絡の緊密化につきましては、都道府県教育委員会等を通じまして、各種の会議のたびに口が酸っぱくなるほどやっているわけでございまして、やはり都道府県教育委員会等が、個別の学校の生徒指導のあり方、校長の考え方等を十分にこの趣旨にのっとって指導していただくことが必要であるというふうに考えておりますし、また校長自身の研修につきましては、筑波の教育会館の分館等におきまして宿泊を伴う研修を続けているわけでございますが、そういう中におきましても、学校管理、生徒指導につきましては、そういう見地からの指導を十分に徹底して行っているわけでございます。なお、今後ともその趣旨の徹底には努めてまいりたいというふうに考えております。
  344. 中野寛成

    中野(寛)委員 それでは、今度は子供たちを取り巻く社会現象について少しお聞きしたいと思います。  去年は、この委員会にビニール本を持ってきて、参考資料として大臣にお見せをいたしました。いろいろな週刊誌その他で社会現象としてよく分析をしたり報道されたりするわけでありますが、ことしは、そのビニール本が今度はビデオテープにかわって、主流を占め始めているというふうな報道もなされております。しかしながら、いまなお、これらのセックス産業といいましょうか、これはますます隆盛をきわめていると言っても過言ではないと思います。そして、これらは子供たちのきわめて近くに存在し、そして子供たちの目につく形で売られているわけであります。  昨年、私は当時の総務長官にも、これらの規制について法的措置を含めて検討をなさるべきではないか、こう申し上げました。私は、決してすべてを規制すればいいというふうに申し上げているわけではありません。これらの問題を指摘いたしますと、必ず憲法論議が出てまいります。表現の自由だとか、そしてまた、いろいろな形での自由の問題が取り上げられてまいります。しかし一面、公序良俗に違反する行為をすることについてはやはり毅然たる態度でこれを制限していく、このことがやはり公共の福祉にとって必要ですし、また憲法の精神でもあると私は思うのです。ゆえに、たとえば最もセックス表現をストレートにした映画がつくられる、しかし、それは日本では修整をして上映をされる。それが外国に輸出されて、外国へ旅行団を組んで見に行くなどというこっけいな現象さえもあらわれる。しかし、私はそういう表現方法というのはもっと自由にしてもいいではないか。しかし、その公開のあり方については、きちっと子供たちの目からは隔離をする、その整備をきちっとするのだということであれば、私は決してとかくの論議を生むことにはならないと思うのです。  これらのことについてどのような検討をなさったか、そして前向きに対応する具体的な方針をおつくりになりつつあられるのかどうか、お聞きをしたいと思います。
  345. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 きわめて青少年の非行防止、健全育成について御熱心に取り組んでおっていただく中野先生が、昨年のこの予算委員会におきましても、総務長官に、ただいまお尋ねのような、また御意見のようなことを大変切実に訴えておられますし、また政府に対してしっかり取り組むようにという強い御要請もございました。  その御質問の内容等を私も速記録で読ませていただきまして、ただいま申し上げたように、先生が非常に熱心にこの問題に取り組んでおっていただく、この問題と申しますのは大変恐縮でございますけれども、青少年の非行防止と同時に健全育成について御熱心に取り組んでおっていただく、そういう意味からいろいろと御注意があり、政府に強い要請があったのでございますから、そのことを私ども十分心得まして、青少年を有害環境から守り、御指摘のありましたように健全に育成することは国民すべての願いである。これをやらなくちゃならない。  青少年を取り巻く環境を見ると、いまもお話のありましたように、出版物とか映画等で一部に青少年の健全育成にとって好ましくない影響を与えるものも見受けられる。この問題については、地域住民の意見を踏まえ、地域の実情に応じて対応することが望ましいとの観点から、条例などがございますけれども、条例によって青少年に有害な出版物に関する各種の規制が行われておりますし、今後、政府としても、条例の運用、指導等に関して一層の努力をしてまいりたい。これだけでは、先生のせっかくの先ほどの、やるやると言ったって何もやってないじゃないかというようなことになりますので、そういうことで努力してまいりました具体的な事例を、私も文部大臣と同じようにまだ総務長官を拝命いたしまして日がたっておりませんので、間違ったことを申し上げてはいけませんから、具体的にどのような措置をとっておるかということを事務当局から御説明をさせていただきたいと思います。  なお、この青少年を取り巻く社会環境の浄化を法律で規制すること、ただいまちょっとお言葉に出ましたが、これについては、なかなか憲法の問題だとか表現の自由だとかいうようないろいろなむずかしい問題があり、政府としてこれらの困難な問題にどう取り組むか、これまた真剣に取り組んでおるのです。しかし、これも取り組んでおると言って国会答弁のようなことでは誠意がないと思いまするので、どう取り組んでおるかということを当局から、いま取り組んでおりますことを詳細に、お許しをいただければ説明させていただきたいと思います。  ただ、私どもとしては、この問題については規制や取り締まりといった観点のみでいけるものではないので、ただいまもお話のありましたように、関係者の自主規制や地域住民の活動と相まって、地域住民の方々と十分心を一にして青少年を不良化から守っていくようにしたい、こう考えております。  お許しをいただけますれば、ただいま申しましたように、その後具体的にとっておりまする、また検討しておりますことは事務当局からお話をさせていただきます。
  346. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、長官はずいぶん正直な方だと思うのですね。ただ、国会答弁のようなことでは無責任になりますからとおっしゃられたのは、これは多分表現違いだろうと思います。そのまま受けとめたらこれは大変な問題発言であります。しかし、それはむしろ今日までの国会答弁の空虚な中身を反省した後ろめたさの表現をそういうふうにおっしゃったのだろう、こういうふうに受けとめたいと思うのです。
  347. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 まことにありがとうございます。そのとおりでございまして、私のいわゆる舌足らずであのようなことを言いまして、正直申しまして失言でございましょう。取り消しをいたし、先生からの御指摘のようなことでございますから、どうぞよろしくお願いいたします。
  348. 中野寛成

    中野(寛)委員 きょう私は教育の問題をやっているので、別に大臣の発言の揚げ足をとるつもりはさらさらありませんから、そのことはそのまま進めたいと思います。  しかし、いま大臣の御答弁の中にもありましたように、結局実のある、成果の上がる具体的なことを本当にこれまでとれなかったという反省をやはりお持ちだと私は思うのですね。その反省の上に立って、本当に真剣に考えた行動と施策を私はとっていただきたいのです。  私は、事務局から御答弁を求めようかどうしようかと、むしろ迷っているのですよ。本当に成果のある行動をとったと言われるならば、現実にそのようないかがわしいものが子供たちの目の前からは隔離されているか、またはその顕著な事例というものが起こっていなければうそですね。ところが、ますますはんらんすることはあってもなくなっているとは思えませんね。一部では確かに捜査が入ったかもしれません。そして、その本屋さんではピニ本が売られなくなったかもしれません。そういうケースが幾つかあることを知っております。努力されていることも知っている。しかし、トータルとしては決して減っておりませんね。中身はますますエスカレートしております。こういう事態に対応するためには、法規制も含めた毅然たる姿勢というものがもっと必要なんではないでしょうか。そしてまた、地方自治体で条例でもって規制をしておりますけれども、これらのことはむしろ法律でもって、青少年健全育成基本法というふうな法律をもって対応していくということが必要なのではないのでしょうか。同時に、そういう気持ちを国民みんなが一つに持つために、たとえばだれしもがわかるような教育の指針として教育憲章もどうでしょうか。それは、非民主的だとか押しつけたとか言われてはなりませんから、国民みんなが参加する形でつくったらいかがでしょうか。  これらのことについて私は先ほど後藤田官房長官お尋ねしましたが、このことについては官房長官には事前に申し上げていなかったからあれ以上追及しませんでしたけれども、こういう私ども一つの提案について、私は、長官から、また各大臣から本当に前向きの御答弁をお聞きしたいのです。そして、そのことを実際に御答弁どおりに実行してほしいのです。いかがでしょう。
  349. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 まことに恐縮でございますが、また怒られるかもしれませんけれども、感じとしては、私は中野さんと同じような気持ちを持っております。特にこの青少年の非行問題、校内暴力その他の問題、将来のことを考えますと。  ただ問題は、私は、これは文部省から出たとか政府から出たと言ったら日本では成り立たないのじゃないか、率直なことを申し上げますけれども。そういう社会情勢、何といいましょうか、価値観の多様化といいましょうか、そこに大きな問題があるということをざっくばらんに申し上げますけれども。ですから私は、いまおっしゃったように、国民的な合意ができなければ、この問題は、仮に何か法律をつくりましても効果ないと思うのです。それをどう発見するかということ。文部省が何かこういう教育憲章をつくりたいとかなんとか言ったら、これはもとからだめになると私は思っているのです。率直に言って、いまの現実を申し上げるのです。  気持ちは全く私は同じですけれども、私はこういうことを申し上げていいのかどうか、総理府かあるいは官房長官からでもいいのでしょうけれども、私、文部省、子供を預かっておりまして、何とかそういう方面はないだろうか。もっと簡単に子供たちが――私は本をここに持ってきておりますけれども、全部読む暇はありませんから、一部二部、学校の教科書等をちょっと見ておりますけれども、非常にいいことを書いておりますけれども、それだけでは子供の腹の中に入っていないのじゃないかという気がしておるわけなんです。もっと簡単に何か、人にはこういうことをしてはいかぬとか、たとえば、こういうことを言って恐縮でありますけれども、私は憲法を前から考えておるからこういうことを言うのですが、人のふり見てわがふり直せとか、自分の身をつねって人の痛さを知れというそういう教え方をする、そういう何か人間が生きる道というものを示すような方法があればもっと効果があるのじゃないかなと思っておるのですけれども、そういう国民的合意ができるかどうか。できれば国会でそういう憲章といいますか基準といいますか、国民の合意、それ以外にないと思う。全員一致でできるようなものができれば、これで完全にこういう問題がなくなるとは思いませんけれども、相当に前進するのではないか。もうざっくばらんのことを、私は気持ちを申し上げておきます。
  350. 堀内光雄

    ○堀内委員長代理 丹羽総務長官。(「国会答弁は誠意を持って答えなさいよ」と呼ぶ者あり)
  351. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 誠意を持って答弁させていただきますが、私はこれ以上誠意が、もう誠意の最大と申しますか、かたまりと申しますか、一生懸命お答えさせていただいております。     〔堀内委員長代理退席、委員長着席〕  私、いまの先生の御指摘のように、ここで答弁だけすればいいというような考え方じゃなくて、委員会をつくって検討する、善処すると言っても、実際においてこれが行われなければ誠意がないと言われてもこれは否定することはできませんので、今後私どもが誠意を持って事を進めていくように、ちょうどいま御指摘のありましたように、昨年先生からの御指摘で、六月の二十幾日でございましたか、たしか閣議決定をいたしまして、そして非行防止の推進の委員会をつくって、いいことを決めているのです。いいことを決めて、これをやればいい、これをやればいいと言ってたくさん決めておるのですけれども、実際に実行、もちろんそれはすぐやれることではありませんけれども、六月以降目に見えたものが出ておりませんので、先生からおしかりを受けるのは当然だと思っております。だから私は、いま誠意を持って答弁しろというお話でございますが、そのとおりですね。ただお答えすればいいというような気持ちじゃなくして、本当に実行していくような、心を込めてやっていくように努力させていただきたい、また、そうしなくちゃならぬ、こう考えております。  以上でございます。
  352. 中野寛成

    中野(寛)委員 これといって実効の上がることが十分できてなかったとお認めになられたわけですから、もうこれ以上お聞きいたしません。ただ、一つ言うならば、事態はそれこそもうここまで落ち込んだのですから、だから本当に後に引けない、その気持ちで真剣にお取り組みいただきたいと思います。  さて、もう一つ、私は、色覚異常者のことについてここでお尋ねをしたいと思います。  この本にも書かれてありますが、いわゆる「色覚が正常な人に、「あなたは、色盲検査をしたのをおぼえていますか」と尋ねると、ほとんどの人が「さあ」と首を傾け「あまり記憶していませんね」と答える。」ところが、色盲の人に聞きますと、「色盲検査の時間は、まさに地獄そのもの。ぼくは毎年春になると、どうしたらこの地獄の時間を切り抜けるか、そのことばかり考えていました」「高校では、毎年の色盲狩りが行なわれ、私はそのあわれな獲物になりました」。色盲者のいろいろな体験が語られております。  そして、子供のころに一つの職業に対する夢を描いて学校へ入った、色神検査をやった、色盲だ、色弱だ、その結果、その希望の職業につくことはできない。または、大学に進学をしようとしてその条件を見たら、色盲、色弱はその科目に入れない、または就職できない、こういう事例がたくさんあるわけであります。そして、この色盲という色覚異常は遺伝するわけでありますから、結婚の問題が当然心配の種としてよく言われるわけであります。かく言う私自身も色盲の一人であります。そして、運転免許を取ることもできません。  そういう状態の人たちが果たして何人いるのか、そして就職に進学にどれほどの障害となっているのか、その人たちがどんなに惨めな思いをしているのか、そのことを政府としてどの程度把握しておられるかを私はお聞きしたいと思うわけであります。  この色覚異常者は全国でどのくらいいるのですか。そして、それは何%ぐらいに当たるのでしょうか。厚生省はどういう対策を講じておられますか。
  353. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 文部省の学校統計によりますと、高等学校の男で三・七八%、女で〇・一四%、小学校等のパーセントで推計いたしますと約三百万人と言われております。
  354. 中野寛成

    中野(寛)委員 三百万人、私もそのくらいだと思います。  そして、同時にこの色覚異常は遺伝をするわけであります。遺伝子を持っている、またはそのおそれのある母親の心痛は、またどれほど大きいでしょうか。その色覚異常の子供を産む可能性を持つ母親を入れれば五百五十万人ぐらいはいると言われているわけであります。そして、これはそう簡単に治るものではない。治る、治らないの論争は、いまある二つの新聞社がやってくれておりますから、それはその結論をそちらの方にお任せをしたいと思います。  しかし、いずれにいたしましても、進学をする際、就職をする際、たくさんの障害があるわけであります。ここにこういう本があります。「全国大学・大学校の色覚異常に対する入試入学制限色覚異常を採用しない会社」、こういうリストがあります。ことにA、B、Cで書かれておりまして、Aは色盲であればだめ、Bは色弱でもだめ、そしてCは運転免許を持っている程度ならよろしかろう、こういうものであります。これは具体的にその会社の名前は申し上げませんけれども、ここにははっきりとその条件が書かれてあります。  学校の先生、都立の学校の先生、小学校の先生に、この色盲と言われる色覚異常者は採用されますか。警察官には採用されますか。まず、これをお聞きしたいと思います。
  355. 丹羽兵助

    丹羽国務大臣 お答えいたします。  すべてをちょっと申し上げますけれども、国家公務員の採用に当たっては、航空管制その他一部の例外を除いて色覚検査は実施しておらず、大半の職員については色覚異常の有無にかかわらず採用されております。  なお、航空管制官等一部の職種については色覚検査を実施し、色覚異常者を排除していることは、これは職務内容の性質上やむを得ないものと考えます。  そこで、警察官は適用する中に――ちょっと間違えるといけませんから申し上げますけれども労働基準監督官採用試験、航空管制官採用試験、皇宮護衛官採用試験、刑務官採用試験、入国警備官採用試験、航空保安大学校学生採用試験、海上保安大学校学生採用試験、海上保安学校学生採用試験、次にもう一つ気象大学校学生採用試験、これでこざいます。
  356. 中野寛成

    中野(寛)委員 警察の方はどうです。
  357. 鈴木良一

    鈴木(良)政府委員 お答えいたします。  警察職員の中には、大別して二通りございます。一つは、職務執行に当たります警察官、もう一つは、警察職員、一般職員と言われているものでございます。  警察官につきましては、その職務の性格上、やはり正常な色覚を持って対応することが必要であるという場面がございますので、この点につきましては色覚が正常であることを条件にいたしておりますけれども、いわゆる一般の職員につきましては、一部交通巡視員のように正常な色覚を必要とする者がおりますけれども、そうでない者につきましては、正常な色覚を採用の条件にはしてないという状況でございます。
  358. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 中野さん御承知だと思いますが、大学における教員養成あるいは理工学部というような色の識別をどうしても必要とする学科、あるいは図工といろいろあるわけでありますけれども、色の識別等がどうしても必要な学科については制限しておる部面があるようでございます。しかし、いまおっしゃるように、できるだけその程度なり何かをよく判定をして、道を狭めないようにということで指導しておることはやっておりますが、性質上どうしても色の識別等が必要な面は、将来その学問の研究もできませんし、学科の研究もできませんし、また将来職につくこともできないという関係がありますから、そういう関係で制限しておる面があるわけでございますが、できるだけいま申し上げましたように、程度等に応じて幅を縮めるように、こういう指導をしておるのが実態でございます。
  359. 中野寛成

    中野(寛)委員 労働省の御見解はいかがでしょうか。
  360. 谷口隆志

    ○谷口政府委員 就職に当たりましては、私ども基本的には能力と適性に基づいて行われるべきだという方針でございまして、したがいまして、身体上留意する事項があるということにつきましては、求職を受理します際に、求職票に仕事をする上で身体上留意する点というような事項について書き込むことにはなっておりますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、本来能力と適性に基づいて採用されるべきでございますし、色覚が異常であるというようなことで、正当な事情がないにもかかわらず、すなわち色の識別等が直接必要なそういう職種等につきましては別でございますけれども、一般的にそういうことで採用上不利に扱うというようなことはあってはならないことだと存じます。
  361. 中野寛成

    中野(寛)委員 厚生省に聞きますが、色覚異常、いわゆる色盲の場合は、これは障害者ですか、病気ですか、何ですか。どういう扱いになっておりますか。
  362. 大谷藤郎

    ○大谷政府委員 人にはそれぞれ資質がございまして、私ども、色覚異常につきましてはやはりそういった資質の一つであるというふうに考えておりまして、これをもってその人の第一条件とするような考え方は誤りであるというふうに考えておるわけでございます。
  363. 中野寛成

    中野(寛)委員 実は私、事前に厚生省へお聞きいたしましたら、結局この色覚異常のことについて担当する方がいらっしゃらない。ゆえに医務局長が、これらの実態実態というよりも、色盲そのものがどういうものであるかという観点から説明できるので出席をしてくださった、こういうことなんですね。結局、そのくらいにこの色盲、色覚異常の実態についての調査は、ほとんどと言っていいほど、どの役所においてもなされていないというのが実態だと思います。  しかし、現実には、たとえば一般事務処理にいたしましても、色のついた紙、色のついた文字、そういうもので分類をしたりするような時代にだんだんなってまいりますから、結局その就職分野の範囲という門戸は、だんだん色覚異常者には狭くなっているというのが実態なんです。そのことによってどれだけ多くの青少年が人生に失望をし、そして、みずからの人生をゆがめていっているかわかりません。こういうことをもっと真剣に考えて、そして対応をしていただきたいと私は思うのであります。  また、たとえば身体障害者の皆さんのために、そしてまた精神薄弱者の皆さんのためにいろいろな方策がとられます。社会参加、社会復帰、いろいろな形で努力がなされます。建物の形さえも、いまその方々のために変えてつくる時代なんです。そして、たとえば両手のない方でも運転免許が交付されて、車が運転できる時代なんです。私どものように両手両足きちっとそろっていても、あの信号機の見分けがつきにくいということで、運転免許を取ることはできないですね。たとえば信号を変えるには、それこそ大変お金が要るでしょう。しかし、たとえば本当に配慮をする気があるならば、あの青、赤、黄色の信号に丸、ペケ、三角をもしくっつけたとしたら、色覚異常者でも運転ができるということになりませんか。  決して色覚異常者は、障害者の中にも入れてもらえない、病気という判定もなされない、資質の一つなんです。それだけに、具体的な障害、具体的な差別を受けながら、放置されているというのがいまの日本の実態ではないのでしょうか。このことについて、私は政府としては真剣にお取り組みをいただきたいと思うのです。先ほど厚生省からもお話がありましたように、実に三百万人以上の方々が存在をし、そうして、そういう子供を産む可能性があるとして心を痛めて悩んでいるお母さん方を入れれば、五百五十万人にもなると言われている。決して少ない数ではありません。大変な数なんです。しかし、それが行政の対応の中からはぽっかりと穴があいたように抜けているのです。むしろ先ほどの就職について、試験を受けることについての制限があるように、制限をされることはあっても、具体的に配慮をされているということがないのです。  これらのことについてどうお考えになりますか。まず労働大臣、お聞かせいただきたいと思います。
  364. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  ただいま先生指摘のように、労働省といたしまして体系的にその実態を把握しておるというところまではいっておりませんが、現在、やはり色覚異常者の方々の就職促進ということについては、熱意を持って対応しておるところでございます。現実に公共職業安定所におきましては、色覚異常者の方々の就職相談に、その実態を把握しながら、その個人個人の方々の度合いを把握しながら、そして適切な職業紹介も行っております。また、企業に対しましては、現在、正当な理由なく、ただ色覚異常を有するというだけで採用しないということはいかぬということで、厳重に忠告もいたしておりますし、また同時に、その個人個人の方々のことにつきましても、事業主に対してこれもまた指導を十分にいたしておると思いますが、先生のおっしゃるように、私は十分と言いましたけれども、体系的に把握していない中での十分というふうに御理解いただければ結構だと思いますけれども、これを機会にひとつ関係の省庁と綿密な連絡をとって対処していきたい、かように考えております。
  365. 中野寛成

    中野(寛)委員 都立の小学校の場合には、色覚異常の場合には採用されないのですね。しかし、私は思うのですね。全盲の先生でも、その人格、能力がすぐれている方は当然学校の先生として活躍をされるし、また、していただきたいわけです。それと同じように、色覚異常者であるがゆえに学校の先生になれないというのも、私はやはりおかしいと思います。たとえば、警察官にももちろんいろいろな職種があるでしょうし、役割りがあるでしょう。しかし、だからといって、おしなべてそれが採用されないということがあっていいはずはないと思います。外国の事例もいろいろ調べてみましたが、日本ほど厳しいところはありません。むしろ、今日これほどに厳しい状態が、厳しい差別が日本の社会の中で行われて、これといって指摘されることもない。ただ、会社へ具体的に就職のときに申し込みをすると、言葉を濁して、そして、できるだけはっきりとした採用基準の中に色覚異常を入れようとはしない。そして、その実態は知らないうちに採用されない状態になっている。こういう状態を考えるときに、私はもっともっとこの色覚異常の問題については考えていただきたい。  子供たちの進路指導や教育のために現場の先生方が大変苦労なさっている実態も、文部省は本当は知っていていただかなければいけないわけです。文部大臣にもお聞きをしたいと思います。
  366. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 実は私は、大分前になりますけれども、友人の子供の就職を頼まれたことがあります。それまで自覚しなかったのかどうかわかりませんけれども、色盲があるからその職種はだめだ、こういう体験を持っております。いま中野さんの切実なお話、どういう状況になっているかよく調べまして、そういう色覚の欠陥がありましても、できる職種があるかどうかをできるだけよく検討してみたいと思います。
  367. 中野寛成

    中野(寛)委員 できる職種があるかどうかではなくて、できるように変えていくということが必要なのではないのですか。さっきの交通信号の問題だってそうなんですよ。実に三百万、まあ三百万全部の人たちが運転免許を取れないほど強度だとは言いませんけれども、しかし、少なくともそういう方向に社会の仕組みを変えていく、合わせていく。少なくとも障害者ではないとさえ私は思うのですよ、色覚異常とは言うけれども。むしろ、色の見る配置が、若干正常と言われる人たちとずれがあるだけのことなんです、本来。だから、あの信号を赤、青、黄色じゃなくて、ほかに変えればちゃんと見えるのですよ。少数者ではあっても、異常者ではないはずなんです。それならそれで、それにきっちり合った対応策が講じられるはずなんです。  たとえば交通信号等についてもどうですか、一回検討なさってみてはいかがでしょうか。これは警察の方でお答えいただけるのでしょうか。
  368. 久本禮一

    ○久本政府委員 お答え申し上げます。  先生の御提案、信号の様式等を変えるという点につきましては確かにいろいろ議論がございまして、示唆に富む御提案だというふうには思いますが、それを制度にするという点につきましては、光度の問題あるいは形状の識別等の問題が現実には一般の運転者の間に起こってまいりますので、現状ではなかなかむずかしいのではないかというふうに考えております。
  369. 中野寛成

    中野(寛)委員 私は、むずかしくない、むしろお金の問題さえ解決すればできるぐらいの内容のことではないかとさえ思うのですよ。やる気の問題ではないのですか。それは一朝一夕にできるとは思いませんよ。しかし、少なくとも色覚異常者をこの世の中から抹殺することはできませんよ。こういう人たちに対する配慮というものを、もっと前向きに検討していいのではないですか。そのことを改めて私はお願いを申し上げたいと思います。  どの大臣にそのことをまとめてお願いしていいのかわかりませんけれども、しかし、就職の問題、交通の問題、いろいろな問題がありますが、私はいまの警察の答弁には満足できません。むしろ公安委員長、大臣として責任のある御答弁の中で前向きにお答えをいただきたいと思います。
  370. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 中野委員が自分の体験でおっしゃっていることでございますので、私ども先ほどから耳を傾けて承っておったわけでございます。いま交通局長が御説明をいたしましたが、これはこの前からの検討課題にはなっておったようでございまして、警察としましても検討をしてきたようでございます。いまお答えを申し上げたような考え方で現在はいるということでございます。  もう一つ、これは道路標識あるいは信号に関する国際条約が一つありまして、これは国際的なそういう問題でもありまして、いま申し上げたこと以上に私がこの場でお約束することはなかなかできにくい、こう思っております。ただ、いまおっしゃったことにつきましては、私も十分に拝聴いたしましたということだけを申し上げさせていただきます。
  371. 中野寛成

    中野(寛)委員 時間が参りましたので終わりますが、きょうお尋ねしたことに対する一連の御答弁の中でも明らかになったことですが、教育の問題、そして、いまのようないわゆる福祉というのでしょうか、そういう分野にわたる問題、私は、まだまだ配慮が足りない、たくましい文化の国にはほど遠い現実があるということ、そのことが浮き彫りになった、自分で言うのもおかしいですが、そう思うのです。どうか、総理のあのたくましい文化の国をつくるのならば、それにふさわしい具体的な実効を上げて見せてください。そのことを最後にお願いをして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  372. 久野忠治

    久野委員長 これにて中野君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十三日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十六分散会