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1983-02-21 第98回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十一日(月曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    今井  勇君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       片岡 清一君    金子 一平君       倉成  正君    砂田 重民君       田中 龍夫君    泰道 三八君       津島 雄二君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       武藤 嘉文君    山崎  拓君       山下 徳夫君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君       草川 昭三君    木下敬之助君       竹本 孫一君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    三浦  久君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  禿河 徹映君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府人事局長 藤井 良二君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局取引部長 奥村 栄一君         公正取引委員会         事務局審査部長 伊従  寛君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁警備局長 山田 英雄君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁計画         局長      下邨 昭三君         科学技術庁振興         局長      原田  稔君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         環境庁自然保護         局長      山崎  圭君         国土庁長官官房         会計課長    金湖 恒隆君         国土庁計画・調         整局長     白井 和徳君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部大臣官房会         計課長     國分 正明君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁医療         保険部長    小島 弘仲君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省基礎         産業局長    植田 守昭君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         特許庁長官   若杉 和夫君         運輸大臣官房総         務審議官    西村 康雄君         運輸省海運局長 石月 昭二君         運輸省自動車局         長       角田 達郎君         運輸省航空局長 松井 和治君         気象庁長官   増澤譲太郎君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   今井  勇君     泰道 三八君   金子 一平君     津島 雄二君   正示啓次郎君     片岡 清一君   藤本 孝雄君     山下 徳夫君   武藤 嘉文君     山崎  拓君   東中 光雄君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     正示啓次郎君   泰道 三八君     今井  勇君   津島 雄二君     金子 一平君   山崎  拓君     武藤 嘉文君   山下 徳夫君     藤本 孝雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川俣健二郎君。
  3. 川俣健二郎

    川俣委員 農林水産大臣は、外交案件で席を立たれる、早目に解放してくれという連絡理事会にありましたのですが、したがって、ちょっとこの質問要旨に入っておりませんが、さきの代表質問中で、代表質問ですからテレビで全国的に流された、山林労働者労働態度の問題に対してかなり地方では混乱しておるようでございまして、それで私はちょっと明らかにしておきたいと思います。  林業を取り巻く情勢というのは、民有林、国有林問わず、きわめて厳しい状況であることは御案内のとおり。そのよって来るところいろいろあるが、何といったって木材需要の低迷、住宅建設等でございますが、さらに外材輸入に歯どめがない。加えて山林地域過疎化、したがって思うように労働力が手に入らない。労働者が思うように集まらない。しかし一方、こういう収支状況にとらわれないで、やはり国土保全水資源の涵養のいわゆる公益的機能、そろばん上ではプラスに出しにくいことも認識しなければならないのは総理も御案内のとおりであると思います。  ところが、その代表質問というのは、私はここで聞いておったのですが、ある新聞ですか週刊誌だったのか、何かとげとげしいことを言うておるので耳をそば立てたのですが、これを一々読み上げるあれはないのですが、ちょっと抜粋してみますと、「新聞でそのルポが書かれております。中身については」、この質問者のあれをそのまま速記をとってきたのですが、「私はもう読み上げることは省かさしていただきますが、こうして、ぶら勤といって」、ぶらぶらして怠け者ということのようですが、「ぶら勤といって仕事をせずにぶらぶらしておるのが、少なくともこの林野だけでも千五百人と推定される。」二つ目は、「ノルマが課せられるから、一日にこれだけだ、大体自分たち給料分だけ切って、あとは終わり、こうなるのだそうです。」三つ目は、いま直用請負か、特に国有林労働者が直接やるか、民間に請け負わせるかということで、労使でいろいろな観点から改善等を含めて詰めておる段階であり、一つ一つ労使で話し合ってやっておる折ですが、この段階で、三つ目は、こういうことをこの記事は書いております。書いておるということは、そのようにしゃべっております。「直用ではなくして請負に渡せば、請負は倍から三倍ずつ能率を上げてくるのだそうです。」こういう三つの問題を私はそばで聞いておったのですが、私も、これはどういうことかなと思いまして、まあこういった中身については当然林野当局事務方から答弁があろうかと思ったのですが、大臣がいきなり答弁に立ったところにも問題があると思うのですが、大体いまの三つの問題、林野庁の方でどう考えておられますか。
  4. 秋山智英

    秋山政府委員 お答えします。  国有林野事業につきましては、五十三年以来、経営改善計画に基づきまして鋭意経営改善に努力してまいっておりまして、これまでも組織の統廃合、それから要員の適正化あるいは生産性向上につきましてそれなりの成果は上がってまいってきております。  先般の御指摘がございました点につきましては、私ども、現場職員の説明が舌足らずの面がございまして誤解を招く面があったかと思いますが、たとえば素材生産業生産性を見てまいりますと、この四年間に一二五と、二五%の生産性向上もしておりまして、鋭意これからもその問題につきましては努力してまいるつもりでございますが、いずれにしましても、そういう御指摘を受けること自身は、私ども、これは率直に反省いたしまして、今後そういう批判を得ないようにさらに一層改善努力をしてまいりたい、かように考えております。
  5. 川俣健二郎

    川俣委員 一つ一つ詰めたいのでございますが、こういうような答弁であれば、私もこの質問はなかった。ところが、委員長の指名で大臣がいきなりお立ちになって、いまのものを全部読み上げてから、私も全く同感であります、こうおっしゃったので、私も二度びっくり。どうも心臓に悪い。中曽根内閣は、どうもおどかすというか、心筋梗塞を起こしそうな発言がときどきあるのでございますが、これは大臣、どういう意味ですか。あなたが責任者なんだ。労働者はこれをビデオにとって、後でみんなで見て、このぐらいしかわれわれのだんな、大臣は思っていないのだろうか、こういうふうにやけくそになるのは無理ないと思うよ、これは。大臣、どうですか。
  6. 金子岩三

    金子国務大臣 私が先般お答えいたしましたのは、批判されたような事実があってはならない、また、一般職員はもとより、管理者がしっかりしなければならない、こういう点に対して前回答弁において同感の意を表したのであります。
  7. 川俣健二郎

    川俣委員 まあそういうことになるかと思って速記を起こしてみたのですが、そういう言い方の言い回しではないんだよ。あなたがいきなり立って、ただいまの御指摘は全く同感であります、こういきなり持ってきたわけだ。どうなんですか、これは。みんな聞いておったですよ。それでびっくりしたんだ。速記が何よりの証拠です。いまのような答弁じゃなかったでしょう。どうですか。
  8. 金子岩三

    金子国務大臣 私が答弁いたしましたのは、質問者からかくかくしかじかの質問があったので、そういう意見に対しまして、前回答弁においては同感の意を表したということで、全く同感でありますということを申し上げたのでありまして、別に私の私見はそのときには申し上げていないと思うんですがね。全く御意見同感でありますと、こう申し上げておるのであります。
  9. 川俣健二郎

    川俣委員 具体的な問題を質問者指摘して、それは具体的な問題だから当然事務当局が答えるものだと思っておったわけだ、みんなが。そうしたら、いきなり大臣が立って、「金子国務大臣」とおっしゃった。「お答えいたします。ただいまの塚本委員発言は、私、全く同感でございます。」こうおっしゃるから、いまのきょうの答弁とは違うでしょうと言うんだよ。だから、同感というのは、いま言った羅列されたものの三つの問題に同感ではなくて、管理者はもっときちんとしなければならぬとか、労使でいろいろ改善を詰めなければならないというような意味同感なのか、どっちなんです、同感というのは。
  10. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、塚本委員質問をずっと承っておりまして、その質問の内容を私なりにいろいろ理解いたしまして、かねて私が林野行政について考えておりましたことと塚本委員の御意見がやや同じでありましたので、私は同感の意を表したのでございます。  ただ、どの項がどうだということを一つ一つ取り上げてこれはどうだと申されても、長い時間の質問ですから、これはそうだ、これはああだというようなことは私は申し上げにくいのですけれども、総じて意見全体が全く同感であるという感じから、同感の意を表したのであります。
  11. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、あなたを早く漁業交渉に解放したいからもう少し協力してくださいよ。いいですか。質問者がずっと羅列したのは、国有林労働者態度というものでずっと詰めていっているわけです、質問が。したがって、具体的になっているわけですよ、さっき挙げた三つが。それは当然事務当局答弁と私は思っておったのだが、事務当局がいま答弁したものはなるほど私もわかった、したがって、きょうの質問はなかったはずだ。ところが、いきなり農林大臣は、全く同感でありますというと、ぶら勤も肯定、それから二割ないし三割節減できるというのも肯定、それから給料分だけ切ればいいんだ、国有林労働者はそういうようにされているんだ、林野庁の指示で、それも肯定ということになるのです、肝心な三つが。それが同感という意味ですかと聞いているのです。わかっていますか、質問は。秋田弁だからわかりませんか。
  12. 金子岩三

    金子国務大臣 いろいろ塚本さんの質問の中、御意見の中にはたくさんのことが含まれておりまして、ただ、いま川俣委員指摘されております労働関係の問題について、私は、具体的にいろいろ報道されておる事実があるというようなことも承知していませんし、また、そういうことはないものと考えておりますので、別にぶら勤などを含めて私は同感といった意味ではございません。それは職員が非常にまじめで、労使協調して国有林経営が行われておるということはかねてよく承知いたしておりますから、この報道されておる事実があるということも考えてないし、ただ単なるこういう報道があっておるということは承知しておりましたけれども、それは私は肯定するわけではありませんから。職員は総じてどの組織林野には大変協力をいただいて今日の国有林経営が成り立っておる、このように考えておりますので、その点はひとつ誤解のないように御理解をいただきたいと思います。
  13. 川俣健二郎

    川俣委員 誤解は私じゃなくてあなたの部下が誤解しているわけだ。テレビで放映されたものだから、全く同感でありますと。ただし、いまはっきりしたことは、一部報道されているような事実はないということだから、否定だ。ところが、同感でありますとおっしゃったものだから、肯定かなと思って地元では大変に混乱しておるので、どうですか、事務当局最後に確認したいのですが、何らかの方法で、いまの大臣の意を体して文書なり連絡なりして、そういうことはあり得ない、いろいろな問題があれば労使関係で話し合ってやっておるのだということを伝えないと、働く気がなくなったらえらいことになりますよ。山奥の吹雪の中できこりして帰ってきてビデオを見たら、大臣はわれわれをその程度にしか見ていないのかという、労働者にしてみればかなわないから。いいですか、その辺どうです。
  14. 秋山智英

    秋山政府委員 お答えします。  私ども、先ほど触れましたように、現在鋭意経営改善に努力しているわけでございますが、これはやはり職員職務意欲向上が大前提でございまして、これは一緒にやっていかなければならぬわけでございますので、私どもそういうことがあれば遺憾なことでございますので、十分これにつきましては徹底して、そういうことのないように、批判を受けないようにこれから努力してまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
  15. 川俣健二郎

    川俣委員 それでは、ぜひひとつ現場の方に連絡徹底――大臣の本当の意思はこういうことだった、同感意味はこういう意味だったということを伝えてもらいたいと思います。  ところで大臣大臣専門専門でしょうが、漁業問題。山林と違ってあなたは手にとるようにわかっておられると思うのですが、いまソ連漁業大臣が来られて日ソ交渉をやっているということは報道だけではなくて理事会でも何回もお話を承ったわけです。そこで、二月の十六日の成田のお迎えからずっと今日になっておるわけですが、きょうは最後交渉になるようでございます。したがって、私の伺いたいのは、向こうさん、ソ連の方はどのようなことを提案してきているのか、報道には一部ありますけれども。それから、こちらの方は、大臣はどのようなことを提示しておるのか、この辺をまず聞かせてもらいたいと思います。
  16. 松浦昭

    松浦政府委員 お答えをいたします。  金子農林水産大臣カメンツェフ・ソ連邦漁業大臣の間で、日ソ間の漁業関係は安定的に推移しているもののなお未解決の問題があるということで、二月の十七日の第一回の会談におきまして、それぞれが解決を希望する事項を出し合いまして、本日の会議でさらにこれを協議するという段階に至っておるわけでございます。  金子大臣が御提案なさいました事項は、日ソソ日漁業協定長期化日ソ漁業協力協定長期安定化日ソ漁業損害賠償請求処理の促進、日ソ漁業技術協力推進等でございます。  カメンツェフ漁業大臣提案をいたしておりますのは、日本水域におけるソ連漁船操業条件改善漁業に関する日ソ合弁会社の設立、ソ連漁船の修理のための寄港等でございます。
  17. 川俣健二郎

    川俣委員 伺ってみると二つあると思います。一つは、お互い漁業技術を協力し合おう――この間から対米武器技術の供与の問題があるのですが、これは今度はそうじゃない、漁業技術提携をしようじゃないかという提案。これは大変ないい提案だと私ら思っています、総理。それから、もう一つ大事なのは、合弁会社をつくってくれ。そうなると、外為法、相互主義お互いの国に相互主義の理念で立てていかなければならないということも私ら承知しておりますが、これはやはり日本国として真剣に対処すべきだと私は思っております。  そこで、もう農林大臣を解放いたしますから、一、二点だけ確認しておきたいが、私らの感じでは、いままでの論争から、武器問題で仮想敵国という話も出ておったのを私も耳にしております。やはり日本海米ソ戦争勃発を見るなんという想像じゃなくて、日本海を生けすにしてともに漁業技術提供をしよう。かつては東海大学の松前さんが鯨の人工ふ化、養殖、こういったもので十何年前大分にぎわしたことがあるのですが、やはり非常に大事な問題なんで、これに積極的に取り組む時期であり、取り組むべきだと私は思うのです。  ところが、ちょっとひっかかるのは、たとえば明日ですか、永野さんの大型使節団ソ連に向かわれる。そうすると、新聞報道じゃないが、外務省は渋い顔、政経分離等々出ております。ところが、私は思うには、かつて歴代の政府自民党内閣が、日中国交をわれわれが訴えた際に政経分離というのがかなり出てまいりました、国交回復前に。しかし、それをわれわれは推進をしていったわけです。自民党の中にも非常に強力な推進グループがありまして、このように非常にめでたく日中国交回復になっておるわけですが、この渋い顔、これが政経分離という理念で、きょうこれから農林大臣が向こうの漁業大臣と、この日ソ合弁会社を国内の外為法による相互主義にのっとって、これが向こうに理解されればそれじゃ積極的に取り組んでみようという気持ちに農林大臣がなろうかと思います。当然そうなるべきだと思うのですが、そういうように積極的になるべきだというタイミングだと思うのですが、総理、その辺……。  そうしたら、きょうの新聞でしたが、毎日新聞ですが、ちょっと拝借しましたのですが、こういうのが出ていた。見出しは「急げ!日ソ国交回復」「二十七年前の中曽根さん 鳩山首相に”熱血書簡”」、思い出しますか。アジア運命共同体論も展開しておった、こういうことで、この運命共同体はいろいろと中身はまた別のあれですが、その言を考えますと、この「急げ!日ソ国交回復」、まだ、この新聞によれば黒髪がふさふさと――いまもふさふさではございますが、失礼します。こういうことをいまでも変わりありませんか、そういったもの。
  18. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 日ソ関係を打開しようという熱意はいまでも変わりありません。いまご指摘のことは事実でございまして、まだ日ソが国交を回復していなかったころ、いよいよ国交回復のチャンスが来たと思ったときに、鳩山先生を非常に激励したいと思ってお手紙を差し上げました。  その真意は、こういうような状態になって日本が世界的に認識され、国交を広げていく、それが貿易を拡充して日本が経済的に立ち直っていく非常に大事なポイントになってきておる。したがって、いろいろな問題で条件が合えば、勇断をふるって日ソ国交回復をやった方がいい。特に国連にはいれるということ、それからシベリアにおる大勢の同胞、抑留されているわれわれの戦友を一日も早く帰してもらうということ、それを非常に念頭に置きまして、鳩山先生を御激励して、やりましょう、私も協力します、総理、勇気を持ってやってください、そういう趣旨の手紙を出しました。  その考え方は基本的には私は変わっておりません。今日におきましても、私はよく一番手ごわい相手と粘り強く対話をやると言っておりますが、いまも打開するということもここで申し上げておるわけです。それはもちろん、日ソ間においてはその国交回復のときに領土問題という問題がやはり懸案で取り残されておりました。領土問題は基本的な重要問題であります。しかし、そのほかに、いまの漁業問題もありますし、あるいはシベリアにおける経済協力問題もございますし、あるいは科学技術や文化の問題についても過去においていろいろ話し合ってきたことも事実であり、人間の交流もございました。したがって、日ソ間にはその領土問題を基本にしつつ、いろいろな経済的にもそのほかの面におきましても友好を深めていく問題はあるのであります。そういう観点に立って、総合的、包括的にこの問題を取り上げていきたいと考えておる。もとより領土問題というものも基本的な重大問題でありますが、領土問題だけではない、ほかの生活に関連する幾つかの重大問題もあるという認識を私は持っておるのであります。  しかし、アフガニスタン問題とかあるいはポーランド問題とか、いろいろな問題がありまして、われわれは自由世界の一員として自由世界連帯の行動をとっております。したがって、そういう点についてはわれわれも連帯者としての、一員としての立場をわきまえてやっていかなければならぬと思っておりますが、日ソ間の、二国間の問題という問題については、敵対意識とかあるいは対立、対決するという考えは毛頭持っておりません。できるだけチャンスを見つけて、そして粘り強く打開していく、それが政治の本来の姿であり、私の年来の考え方であるということを申し述べておきます。
  19. 川俣健二郎

    川俣委員 いまの答弁は大変気に入りました。いままでにない感じがいたしたわけですから、ひとつ農林大臣、いまの総理の意を体してがんばってください。これからお始めになるそうでございますから、そういう考え方で勇気を持って、ひとつがんばっていただきたいと思います。  そこで、ちょっといま資料も配る準備をしておるのですが、大臣が時間がないようでございますので一般質問に譲ります。ここで、こういう質問をしたいということだけ農林省に申し上げておきたいと思います。  一つは、需給問題を質問要旨に書いておりますが、いま日本の国は大豆、大麦、小麦等々、主要食物は五%から一〇%ぐらいの自給率で低迷しております。米だけは何とか一〇〇%ということでありましたが、どうも、私もある程度倉庫調べをさせました。新聞社にもお願いしてさせましたが、この十月末で、これは気象任せもあるのですが、きょう気象庁来てもらっていますが、もうお帰りくだすって結構ですから。どうも残りが危なっかしい。十万トンとは出ておるが、危なっかしい。この需給関係を数字を挙げてこの次に出してもらいたい。  それから二番目は、いまの再編対策ですが、これを法律でいくか協力願いでいくかということで大論争をここでやったわけですが、時の、いまは亡き中川農林大臣が、協力願いでいく、法律にはなじまないということでありながらペナルティーというのをかけるのはおかしいということで、通達を出し直したという一幕があった。  それから三つ目は、減反奨励金というのは一体どのぐらいの累計になっているか。十年間で田んぼの中に何ぼつぎ込んだか。果たしてこのつぎ込んだのは、かつて五十六年でしたか、同じ大蔵大臣竹下さんは、このやり方は好ましいとは思わない。そこで私たちとしては、企業でいえば投資効果、一体この減反奨励金の投資効果というのはあるのだろうかということを問いたいので、その辺を。  それから、よくわれわれが聞かれるのですが、ここにおられる先生方も聞かれると思います。農民の言葉は、減反はいつ解除されるんだろうか。減反というのは解除されるんだろうか。これは定着してないという意味とうらはらになるわけですが。  それから、今後はどうするつもりか。来年から第三期再編対策になるのですが、まだ検討中とは言わしたくないので、その辺をぜひ聞かしてもらいたいと思います。  以上、こういった面を農林大臣から少し聞かしてもらおうと思いましたが、時間がありませんので、どうぞ結構ですから。  そこで、次の質問に入るのですが、厚生省の問題で、医療問題に入らしてもらいたいと思います。  これは、私も社会労働委員会で長年やってきましたが、いよいよ日本の医療法、この大改正が、何年かぶりで改正するという意思表示が国会になされております。そこで、いままでなぜ改正案を出す出すと言って出せなかったんだろうか、こういった問題とか、何が障害であったんだろうか。そして、この予算委員会の場でも、十全会病院、都病院、そして去年、おととしあたりは富士見病院――女性の蔵器を全部摘出してもうけておったという富士見病院、いわゆる悪徳医療、医師ということで大騒ぎになったわけですが、そういうものも踏まえて医療法というのを改正するつもりだろうと思うのですが、その辺をまず最初に聞かしていただきたいと思います。
  20. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員にお答えいたします。  医療法は、御承知のとおり昭和二十三年に制定されまして、その後十八回にわたって改正が行われておりますが、この中で、昭和二十五年に医療法人制度の導入をいたしましたし、昭和三十七年に議員立法で公的病床規制の導入をしたのが大きな改正でございまして、今国会に改正案を出すとなると、それから約二十年ぶりの改正をいたしたい、こういうふうに考えておるところでございます。  御指摘のように、園田厚生大臣が五十五年の十一月に検討する旨を発言いたしましてから、鋭意関係方面と意見の調整に努力をしてきたところでございますが、医療関係団体との調整など残された問題があったことから、残念なことに、昨年までの国会に改正法案を提出するに至っておらないのが実情でございます。  御指摘の富士見病院、十全会病院、都病院等悪徳医の事件がたびたび国会でも御議論いただいておりますけれども、そういったものを十分に踏まえてこの改正案を出さなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
  21. 川俣健二郎

    川俣委員 「”薬づけ” ますます」という見出しもいまだに新聞から消えていない。「半分は薬と一部検査料」、いまやもうすでに国民総医療費が年間十三兆円から十四兆円近くなっております。そこで、こういった問題を、この医療費を医療法の改正でかなり大胆に積極的にやるつもりがあるかということと、それから、それにひっかけまして、この二月一日から問題の老人医療法というのが施行されまして、各自治体ではいろいろなそれぞれの混乱ぶりを見せております。自治体でいままで無料にしておったのを、国の法律ができたからというので有料にするのもいかがかという自治体の問題もありまして、いろいろとあるんだが、いずれにしても二月一日から実施しておる。  そこで、薬漬け等々で医療費が十三兆円以上になってきたという問題は、この場でも論議になりましたが、診療報酬の立て方にも問題があるのじゃないだろうか。総理大臣、日本の国はいま単純出来高払い制といいまして、とにかく治ろうが治るまいがと言っては失礼だが、どなたに注射しても、これさえ打てば何点、この薬をやれば何点という単純出来高払い制で、諸外国とはかなり――大体世界に五つぐらいあるのですが、そこでこの診療報酬体系というのをもう少し検討してみたらどうか、各国を研究してみたらどうか、諸外国に研究員を派遣して検討しろ、こういうことを言った記憶があるのですが、それをなさったのかどうかということが一つ。  それと、今回の老人医療法の内容を見ますと、なるほど老人には痛いからというので注射する、それで点数を稼ぐということを野放しにする単純出来高払い制というのはなじまないということで、ようやく改正されて、老人医療法にはその単純出来高払い制というのは修正の形で入っております。ところで、国民医療が十三兆、十四兆とウナギ登りになることを考えますと、老人だけではなくて、すべてにある程度これを加味する段階に来たのではないかと思うので、その二点だけを林さん、ぜひ聞かしてもらいたい。
  22. 林義郎

    ○林国務大臣 先ほど御質問ありました中で、医療法の今国会提出をお話し申し上げましたが、私はいま御指摘のように、国民医療費が相当の額に上っている、これをやはり適正なところへ持っていかなければならないというのが一つの大きな使命だろうと思います。ただ、医療法の改正で、先ほどお話しを申し上げました非常に悪徳の医師に対する処分、その他医療法人に対する処分を厳格にするということだけでは、私はなかなかこの問題の解決にならないと思うわけでありまして、広く国民医療費の適正化対策というものを各方面にわたりましてやっていかなければならないと思いますし、厚生省の中におきましても、そういった対策本部を設けまして鋭意努力しているところでございます。  いま御指摘のありました諸外国の例はどうなっているか、研究に行ったかというお話でございますが、実は先生から五十六年二月二十八日、当予算委員会の分科会で御指摘がございまして、五十六年の九月西ドイツ、フランス、五十七年の一月に西ドイツ、フランス、イギリス、五十七年一月にフランス、イタリア、オランダ、五十七年十月にカナダ、アメリカ等に担当官を派遣いたしまして、また五十六年度には厚生科学研究費補助として主要国における診療報酬に関する研究を病院管理研究者に委託をいたしましてやっておるところでございます。この報告は、五十七年の四月二十一日に、衆議院の社会労働委員会に高齢者に関する基本問題小委員会というのがございますが、それに対しまして「諸外国の診療報酬支払方式」ということで御提出を申し上げておるところでございます。  出来高払いの問題でございますが、診療報酬体系を一昨年五十六年六月の改正で、技術料重視の診療報酬体系の確立を目指して大幅な見直しを行ったところでございますし、同時に、老人診療報酬につきましては、老人の心身の特殊性を踏まえた新たな診療報酬を設定をしてやるということにしたわけでございます。  一般診療の見直しをしろという御指摘でございますが、これは省内に設置しました国民医療費適正化対策本部の診療報酬部会におきまして検討中でございますし、中医協でも審議が進められる予定になっております。こうした審議状況を踏まえまして対応をいたしたい、こういうふうに考えております。
  23. 川俣健二郎

    川俣委員 その問題はまた専門委員会でやられると思うのですが、いま猛威をふるっておるがんの問題に入る前に、これは総理に非常に関係する自民党党内の問題等もあるというふうに私が感じておるのは、優生保護法のことをちょっと先に片づけたいと思います。  この優生保護法というのは、今回出されれば私たちの年代で三回目です。私たちで三回目の提案になるが、常に廃案。やる気のある人とやる気でない人が提案の党の方にいるように私には感じられるのです。  そこで、いろいろな社会問題を起こしておりますね。「産むのは女性の権利」「産めない女の状況は」「行き過ぎた権利意識」いろいろと新聞も取り上げ、あるいは御記憶あるかと思うのですが、中ピ連という組織までつくり上げられた時代もありました。  そこで、総理大臣よりやはり林さんに聞いた方がいいんでしょうかね。党内事情もこれありのようですが、いろいろと考えてみると、三月になれば意思決定するという答弁かもしらぬが、いまの段階ではいわゆる二つの項目だけですから。経済的な理由、母体の危険性の問題、この二つの理由のうち経済的な理由を外す、そうすると、やみからやみへと出ていくよということの反論と女の権利という問題からかなり社会問題になっていると思うのですが、何せ総理・総裁、自民党の中が出せというのと出すなというのと、もう大変ににぎやかなようなことも聞こえてきます。しかし、厚生大臣としては、そうはいかない、担当大臣ですから。もう大概にしてこれは取りやめるべきだ、こういうように私は思うのですが、その辺少し……。
  24. 林義郎

    ○林国務大臣 川俣議員御指摘のとおり、この問題は大変に内外で議論を呼でいるところでございます。党内でも改正反対の御意見がありますし、また大変たくさんの方々が、ぜひ改正をすべきだという御意見もあるところであります。  私は、この前の臨時国会でもお話を申し上げたのでございますが、この問題は単に母体の保健とかあるいは優生保護とか経済的理由だけの問題――まあ法令はいまそうなっておりますが、そういった問題だけで律することのできない深い問題を持っているのではないかと思うわけであります。やはり出生というのは、人類のこれからの生存、発展のために私は非常に必要なことだと思いますし、また、それに対しましていろんな物の考え方があるわけでございますから、単に、産む権利であるとか生まれ出る権利であるとかということをもう少し深く考えてみなければならないのではないか、こういうふうに思いまして、いままで公衆衛生審議会の優生保護部会で、主としてお医者さん、母体の関係の方々にお話を聞いておったのですが、そうでなくて、宗教学者であるとかあるいは倫理学者、そういった点からも考えていかなければならないのじゃないか、こういったことで、いま一生懸命勉強をしているところであります。  いまいろいろなところで議論を聞いておりますが、たとえばキリスト教と仏教というのは大分物の考え方が違うようであります。キリスト教ではモーゼの十戒で、人を殺傷することなかれということがある。だから、やはり生まれ出る子供も殺傷することはない。ところが、仏教の方では必ずしもそういうことではなく、殺生せず、こういうことなんです。殺生せずというのは、非常に広い意味にとりますと、牛や豚なんかも殺してはいけない、こういうふうな考え方もある。それから、大乗仏教の考え方もあるわけでございます。  そういういろいろな考え方があるわけでございまして、そうしたことならば、人間が生きていくときに、やはりそういった物を食べなくちゃならない。そのときに人間のことだけ考えていいのかねという気持ちがあるわけでございまして、どうもその辺はもう少し私も勉強してみなければならないと思いますが、輪廻の思想というのがあるのですね。仏教では、人間やはりあの世に行くということ、そういったようなこともありますので、その辺も踏まえながら、また、いろんな御意見を聞きながらやはりやっていかなければならない問題だろう、こう考えておるところでございます。できるだけ予定の時日には間に合わせるように私も鋭意努力を傾けてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  25. 川俣健二郎

    川俣委員 結局結論はわかりませんでしたが、時間がむだですから……。  ただ、後ろの方に大変な先輩、ベテラン、専門の小林先生もこれを取り上げるというお話もあるが、しかし政治家同志だから、結論だけ言いましょうや。あなた、これから勉強すると言ったって、武器技術と同じようなことを言うね。勉強中だけはやめなさいよ。もう一週間、二週間ないでしょう。見切りをつける時期でしょう。政治決断しちゃいなさいよ。いろいろとあろうが、ことしの国会には間に合いそうじゃないぐらい言いなさいよ、腹にあることは。私はあなたのお母さんの代弁をしているのじゃないのだ。あなたのお母さんは婦人会長をやっておられるようだが、それを代弁しているわけじゃないのだが、はっきり言いなさいよ。あなたは新進気鋭で将来を嘱望されている大臣の一人なんだから。
  26. 林義郎

    ○林国務大臣 いろいろな御意見があるところでございますから、私もいま鋭意慎重にやっておるということを現在申し上げておきたいと思います。
  27. 川俣健二郎

    川俣委員 これが大臣答弁と言うのですよね。  それでは、次の質問に入らせてもらいます。  いまや、がんの問題は他人ごとではない。大変な猛威をふるって、ついに五十六年から死亡率第一位にのし上がったわけです。死亡者七十万人中十七万、二二%、もう体のあらゆるところへがんがむしばむわけですが、この問題は追及とか質問ということよりも、総理、ともに考えていこうではないか、また、ともに考える年齢でございます。私らもそうですが、そういう意味もありまして、それぞれの分野からいろんなお手紙その他が来ておりますが、代表的な問題を取り上げるとすれば、一つの例ですけれども、各国会議員全員に、いわゆる市民から言わせると直訴ということになろうかと思いますね。これは皆さん方の秘書さんがそれぞれ処理したと思うのですが、私もこれを読みまして、しかも公務員吉井さん――仮名でございますが、奥さんに知らせていないだけに、これを仮名で通してくれという本人の希望でございます。本名は出ております。皆さん方への手紙に来ている方には本名でございます。しかし、それはお互いに守りましょう。吉井さんという人がこういうタイプ印刷の手紙を各先生方に出しております。立法府である国会とは、わが国の国民生活におけるすべてについて御審議をなさる場と理解しております。すべての問題でやっております。実は、私の妻のためにお願いがありまして、このような手紙を出すことを決心した。私の妻はがんに冒されてあと数カ月の命です。三歳の娘を残してこの世を去らなければならない死の宣告を受けたが――いろいろと本人にしてみれば、医者じゃありませんので、素人ながら研究してみますと、昨年の八月でしたかね、私も頭にあります。医学の研究会で発表された、これはという感情を当然持つなと思ったNHKの報道がありました。これはがん患者並びに家族としては当然だと思います。私もあのNHKのあれを見て感じたのですが、それは東大の医科研、白金ですか、あそこの医科研の原中先生が中心になってアメリカに長いこと留学して、成分――薬品ではありません。成分、たん白質だそうですが、TNF、これは抜群の効果があると考え、その上に動物実験でもすばらしい成果をおさめたことを報道機関が伝えております。――これは本人の手紙を読んでおります。しかしながら、人体に使用できる時期にはなっていない。慎重の上にも慎重に行動しなければならないということはわかっておりますが、妻にはその時期が来るまで待つ余裕がありません。妻のようにがんに冒されて死を待つばかりの人に対しては、その薬が有効であると思われるときには、何らかの行政措置がないだろうか、こういう切実な訴えでございます。後回しにして、その患者の同意を得られれば、その薬を使用させていただきたいと思うのが素直な気持ちです。私も、家内のお母さんも、私の母も、みんなこれには賛成だ、こういう訴えでございます。  これが各先生方に来ておりますが、これは、この若い公務員の方の奥さんだけではなくて、いまやもう死亡率一位という猛威をふるっておることであるだけに、これはやはりこの辺で篤と考えるべきではないだろうか、こう思いまして、私も薬を使う、投与する認可制というのはよく知っております。医者ではありませんが、社労に小林先生、それこそ先輩の皆さん方にいろいろと御指導いただきながら十何年間、知っております。知っておりますが、私がどうしてもこれを取り上げる気持ちになったというのは、余りにもこの訴えが身近であり、他人ごとではないな、こう思ったからであります。  そこで、きょうは月曜。金曜日ごろに質問要旨を出してほしいということなので、これを出したが、この方は、この八月のNHKを見てから、何回もチラシをまき、訴え、そして年末の十二月二十五日、きょうは予算の内示を出します、こういうのを知って、厚生省の予算は余りにも乏しい、特にがんの研究費は乏しい、こういうのもあって、「総理大臣殿」という直訴の手紙も出しております。総理はごらんになっておるかどうか、それは別ですが、出しております。  そこで、私はおやっと思ったのは、一つは、この特別扱いの薬の投与というものが一つであるのですが、もう少し積極的な、死亡率一位、がんというものに取り組む姿勢がなぜ行政府にないのだろうかという意味もあって、取り上げようと決意をしたわけです。まだ動物実験の段階で薬はそう簡単に投与できないということは知っておっても取り上げようという気持ちは、もう少し積極的にその人に当たるとか、直訴まで来ておるわけだから、「総理大臣殿」という特別なお手紙も行っているわけだから。ところが、これは毎日でしたかどこでしたか、おとといの土曜日の夕刊によりますと、おとといようやく厚生省の担当課長が出向いた。その調布の奥の果てまで、自宅まで出向いた。これを見て、もう少し早目に説得するなり、愛情があるなりこれに積極的な気持ちがあるなら、おれが取り上げるという前に行くべきではなかったろうかと思ったが、果たしてこれは、担当課長が行ったように書いておりますが、大臣、行くように指示したのですか。その辺の積極的な姿勢とあわせてまず質問したいと思います。
  28. 林義郎

    ○林国務大臣 がんの問題は、いま川俣議員から御指摘のように、死亡率第一位となって、やはりわれわれとしても積極的にこれに取り組んでいかなければならない問題であります。実は、私のところにも九段の宿舎に手紙が入ってきました。私も読みまして、本当に心を打たれたわけであります。やはり何とかしなければならない。そういった最愛のがんの妻を持っておられるということについては、私はわらにもすがりたいというお気持ちがにじみ出ておる文章だと思いましたし、何とかしなければならない、こう思ったわけでございます。  ただ、薬を使うということになりますと、もう先生御指摘のように、いまの薬事法でははっきりと有効性があり、また安全性のある薬でなければ使わないというたてまえになっていますから、それでないものを使わせるというわけには公に認めるわけにいかない。私もいろいろ考えまして、担当の古川君に個人的な資格で行ってよく話を聞いてみてくれぬか、それがまず第一歩ではないか。いろいろとこうした先生のところへ来たのと私は同じだと思うのです。そういったことでございますから、私も担当の課長さんに、個人的にでもいいからひとつ行ってよく話を聞いてみてくれないか、こういうことで行ってもらったわけでございます。私の方からお呼びつけをしてやるのも、向こうも先生でありますから非常にお忙しいし、行ってもらったわけでございますが、なかなかむずかしい問題が、このTNFというのを投与するのにはあるのではないかということが――非常な御要望はありました。ありましたが、いまの患者の御主人の方もよくおわかりのところのようでございます。  ただ、がん対策というのは、これからいろいろな点でやっていかなければならない問題がたくさんあるように私は思っております。
  29. 川俣健二郎

    川俣委員 もう少しはっきりしゃべりましょうや。声が低いしね、大事な点になると。  そこで、偶然だったんだろうか、おととい。個人的に行くというのはどういう意味かなと思うのです。それは本人にしてみれば、ああよく来てくれたという、肩書き見るわけだから、名刺交換となると。個人古川で行くということはないですからね。だからまた、おとといになって、偶然だったんだろうか。これはひがむんじゃないですよ。ひがむんじゃなくて、何でもう少し早くできなかったかということがどうしても私はすとんと落ちない。それが一つ。  それから、いま取り上げようとするこの成分、薬名ではないですが、TNF。往々にしてがんの新薬というのは正常組織を傷つけるというのが非常に難点ですが、これは正常組織も傷つけず、がんだけを殺す力のある新顔の生体物質であるということの発表がなされたわけでございますが、こういうようなあれも専門の先生方が中心になってやっておられることが一つ。  それから、やはり大事なのは、これはこの方一人ではなくて、社会的にも非常に反響がある。この方も制がん剤をということで、寒風をついて大手町だ、池袋だといって、三十五歳の悲痛な叫び声を駅頭でなされた。あるいは「がんばれ吉井さん 励ましの声続々 ガン患者抱えた人々から」、これは当然だと思う。  こうやって見ると、次の質問に、予算の問題に入る前に、もう少し積極的な姿勢があるとすれば、おとといが偶然だったのかというのがひっかかる。  それから、新聞報道によれば「拝啓総理大臣殿」、これが出してあると書いてあるが、出ておりますか。
  30. 林義郎

    ○林国務大臣 もう少し早く行かなかったか、こういうふうなお話でございますが、私のところに、宿舎に「林義郎議員殿」と、こう来ましたのが月曜日ぐらいでありまして、私も読みまして非常に心痛んだわけでございまして、私の個人の資格で医師である国立病院課長に行ってもらいたい。役所としてやるということになると、また非常にいろいろ複雑な問題があろう、薬事法を抱えておりますし。薬事法の問題がありますから、大臣個人の使者として行ってみてくれぬか、こういうことで担当課長にお願いしたわけでございます。  薬の評価、いろいろな問題がございますが、この辺は専門の方の担当局長からお答えをさせたい、こう思います。
  31. 持永和見

    ○持永政府委員 詳しいお答えをいたします。  先生御指摘のTNFでございますが、現在動物を使用して、有効性、安全性を確認するための動物実験を行っている段階でございまして、先生お話しのように、医科研その他で実試を行っているところでございます。したがいまして、まだ前臨床、人への臨床試験も行っていない段階でございます。そういう意味合いにおきまして、いわゆる医薬品としての有効性、安全性というものはまだ確認されていないというようなことが申せるんじゃないかと思います。
  32. 川俣健二郎

    川俣委員 大臣、まあ詳しい、薬務局長も大変りっぱなベテランでもあるということは知っておるんだが、時間がないから、また政治的な話ですから……。  というのは、私は、動物実験の段階で人体に、これは医学上、倫理上できないということは知ってはいるが、いま制がん剤というのは百四十ぐらいありますね。品目で百三十五ぐらいあるはずです。それで成分というのは三十何ぼあるわけでしょう。これは、TNFは成分の一つに加わるかどうかということです。加われば、もう使ってもいいということになるわけでしょう。そうですね。まあそういうわけです。したがって、問題は、大臣答弁という、いわゆる世に言われる大臣答弁ではなくて、これ一つだけまず詰めましょうや。  これほど訴えられて、しかも、これだけ権威のある先生グループが動物実験で成功している。さて、これから投与の認可に行政府に上がりつつある段階ですが、末期患者、がん末期の人方が訴えているこの段階で、行政上特別な取り扱いというものを積極的に考える段階だ、この制がん剤だけは。そこを僕は言うておるので、あなたはどうです。これだけあなた、政治家だもの、返答ぐらいできるだろう。
  33. 林義郎

    ○林国務大臣 いま御指摘のございましたTNFでございますが、先ほど御指摘のあった原中先生が一生懸命研究をしておられるところであります。動物実験もいまやっている、こういう段階でございまして、原中先生の方では、まだ使ってもらっては困るというようなお話でもございますし、実は主治医の方にも患者の方から、どうだろうかというようなお話があったのですが、主治医も、まだ使うのはいかがか、こういうふうなお話をしておられるというふうなお話でございます。そのときに行政当局がそこをしゃしゃり出てやるというのはいかがなものであろうか、私はそう思うわけでございます。  しかし、丸山ワクチンであるとかいろんなものがございます。そういったようなものにつきましては、いわゆる治験薬という形でいろいろと使うということはやっておるところでございまして、私は今回のこのTNFの問題についてすぐにどうだということは、むしろ消極に解すべきではないかというふうに考えておるところでございます。
  34. 川俣健二郎

    川俣委員 この辺で齋藤邦吉厚生関係のベテランに聞きたいところでありますが、これはやはり三十年前ですが、その当時の議事録を見てみたんです。結核、これはどうにもならない。死の宣告。それで特効薬ストレプトマイシンというもの、それで難病を退治して、いまほとんど絶滅状態。このときもそういう論議が非常になされておった。しかし、行政府といたしましてはと言ったって、行政府にお医者さんが百人いるんだから、行政府に、厚生省に百人いるんだから。そのこともあって、患者は使わせてほしい、医者はまだ早いと思う、これは当然だ、医師の倫理上も。それのために行政府はあるんだよ。だけれども、何らかの特別な措置を検討してみる、できないかもしれないが検討してみるぐらいはできるのじゃないの。そういう返事できないの。総理大臣だって聞いているよ。そのぐらいできるだろう、林君、と言っているじゃないか。
  35. 林義郎

    ○林国務大臣 薬というものは、先ほど来御答弁していますように、その有効性と安全性というものが確保されなければ、薬全般にわたりますところの信頼性というものが失われるということでございまして、私どもはその辺の取り扱いは非常に慎重に取り扱っているわけでございます。  しかし、私も非常に心を打たれたところでありますし、わざわざ林義郎厚生大臣の個人的な使いとして行ってみてくれ、こういうふうに私が申し上げたのは、何らかそこに打開する方法はないだろうか、その第一歩としていまやったところであることを御了解いただきたいと思います。
  36. 川俣健二郎

    川俣委員 あきらめてほしいという特使じゃ、これはちょっとね。あきらめてほしいという特使に聞こえるんだよ。そうか。
  37. 林義郎

    ○林国務大臣 私は、あきらめてほしいということで行ったわけではない、行かしたわけでもないわけでありまして、あの新聞報道も二つの報道があるわけでございます。何とか考えてみなければならないので、いい方法はないだろうかどうだろうか、そのためにはまずやはり患者の御主人、一番身近な方でございますから、その方のお気持ちを確かめて、それからやったらどうだろうか、こういうことでございます。患者の方からすれば非常にむずかしいいろいろなバリアがある、いろいろな障壁があるということは先生よくおわかりのところでございますけれども、そういったものを乗り越えてどうしてやるかということではないだろうか、こう考えておるところでございまして、決して私はあきらめてくれなどという気持ちで課長をやったわけではない。あきらめてくれというのでしたら、そんなことはわざわざやる必要はないと思うのです。私としては何とか考えてあげたい、何とか方法はないだろうか、こう思ってやったということは御了解いただきたい。そういった意味で、いろいろとこれからも役所の中で、果たしてそんなことができるのかどうかということは、私も担当の大臣として鋭意考えていかなければならないところだろうと思うのであります。
  38. 川俣健二郎

    川俣委員 大分理解が深まってきましたが、総理、お聞きのとおり、この次総理質問することがあるので……。  このとおり、二人のやりとりを聞いていると思うが、非常にこの問題はむずかしい。担当大臣であるだけに、またむずかしい。われわれがやれと言うのは無責任のように聞こえるだろうが、しかし私は、薬の投与の枠を超えて特別扱いをせいと言っているのではない。何か検討の余地があるのではないか、検討に値するのじゃないかと思って言っているので、総理大臣、関心もおありだろうと思うのですが、その辺ちょっと一言。
  39. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私がいま一番重大関心を持っておりますのは、一つは、少年非行の問題とがんの問題であります。  少年非行の問題は、新聞にも出ていましたように、浮浪者をやっつけるとか、あるいは学校の先生との間で痛ましいことが起きておる。これはもう放置できない。一文部省だけの問題ではない、内閣全体としてこれは取り組むべき問題である、そういうふうに実は考えて、いずれ文部省の連中やあるいはほかの各省の人を集めて話を聞いて、そして、どういうふうにこれを処置するか。青少年問題審議会というのが内閣にありますが、ああいうマンネリズム化したものではもういかぬ、そういう気が実はしておる。  もう一つは、がんの問題でございまして、これも私、その吉井さんの投書を読みました。それで、新聞の投書を読んで非常に心を痛めたところで、恐らくがんらしい病人をお持ちの全国の皆さんがお悩みの問題ではないかとも思っております。  それで、アメリカあたりでは、前のカーター大統領でありましたか、政府が相当な金を出してがんだけを撲滅しようと、対抗しようというんで措置をとったという記憶がございます。  このがんの問題については、これまた同じように全国民関心の重大問題でございますから、いままでの行政の取り扱いを超えた、もっと内閣全体としての、がんという問題にどういうふうに対抗していくかということをやってみたいと実は考えておったところでございます。  近く各省の事務次官に来てもらって説明を受けますが、それを経た上で、実は私自体が科学者、医学者の専門家の話を直接聞いてみて、自分自体でもこの問題を勉強して、どういうふうにやっていこうか。少なくとも全国民の生命、財産を預かっておる政府としては、一番大きな死亡率になっているこの問題について内閣全体としてこれは立ち向かうべき問題である、そういうふうに考えておるところでございます。
  40. 川俣健二郎

    川俣委員 さすが総理大臣だと思いましたが、そこまでおっしゃるんでしたら言わなくてもいいと思うが、ただこういうことだけは、もちろん総理はお読みになっていると思いますが、予算はわずか二百億、ここにも行政官庁としては苦しいところがあるんですよ。  そこで、これは報道ですが、アメリカの七〇年代――予算はないとは言わせない、財政難だからできなかったということではなかったという国のこれは一つの紹介です。七〇年代といえば、いろいろな事件が起きた年代です。ウォーターゲート、ベトナム戦争、ドル下落、インフレ、オイルショック、イラン人質問題、こういった問題が起きた年代に、この十年間に、まず七一年の十二月に、がんに関する基本法をつくったというんだ。がんに関する基本法、がんとの闘い、がんへの宣戦布告ですよ。そこで二つ目は、全米で三カ所しかなかったがんセンターが、いま二十カ所になったそうです。この二十カ所の内容も、研究、教育訓練、治療、啓発だけじゃなくて、非常に注目しなければならぬのは情報交換。患者と家族と地域、そこへ入っていっていろいろな面でやっていく。このためには予算が必要なんだ。患者、家族、地域と研究機関、これに非常に成果をおさめた理由があるだろう。  そこで、予算はどうだろうかと思って見ますと、一九七一年二億三千万ドル、約五百五十億円ですか、それが八〇年十億ドル、四倍半、日本の金で二千五百億。日本の国は二百億。二百億といったら戦闘機何ぼ買えますか、皆さん。この二百億というところに問題があるんで、いま総理がおっしゃったように、これは一厚生省の問題ではない。厚生省の問題ではなく、もう国全体、内閣全体の問題だと位置づけて申し上げようと思ったら総理の方からありましたので、ぜひこういったものを参考に、さらに一層踏み込んでいっていただきたいということを強く、これは質問とか追及じゃないと前もって断っておきますので、積極的な取り組み、予算の増額、がんの基本法――社会党は、この総括質問がきょうで終われば、一般に入れば組み替え予算を出します。出す予定になっています。そこで、予備費であろうが組み替えであろうが、何としても、これは勝利なき闘いに挑むことになるだろうが、内閣全体としてさらに一層やるということをぜひもう一度お聞かせ願いたいのです、総理
  41. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は、就任以来この問題を実は考えておりまして、いま川俣さんのそういう積極的な御発言もありますので、大いに勇気を持って取り組んでまいりたいと思います。
  42. 川俣健二郎

    川俣委員 そうなると、私も、これは一般質問大臣方にお願いしておったのですが、時間がないので、総理の政治姿勢に移らなくてもいいぐらいの姿勢をいま示してくれたのだが、ただ、二点だけ伺っておきたいのです。  一つは、やはり予算委員会の主役である大蔵大臣一つ総理ですが、きょうで総括が終わるわけですが、理事会協議という問題で、こんなに多く理事会に任せられたことがない。委員長も困っている。これは、この課題の数が多いというだけではなくて、難問というか、いろいろとあるのですが、一つだけ申し上げます。  大蔵大臣、財政再建論議でうちの藤田委員でしたか、国債の償還問題で中断しまして、理事会協議という場面があった。その理事会事務当局、主計局長においで願いまして、いわゆる審議を促進する責務のある理事同士ではどう対処したらいいかということを論議したところへ山口さんに来てもらいまして、償還計画はあると。これはあるのです。法律にちゃんと書いてあるから、計画も何もない、人為的にはできないのだ。問題は、六十一年から大型償還になるがどうするかということになりまして、これは大蔵大臣、やはり事務当局では理論的ということしか言えない。したがって、山口さんの方で、主計局長の方で、理論的には三つある、歳出カット、借りかえ、負担増、この三つがある。ところが、それ以上になると政治決断になるのでということになるので、大蔵大臣にお伺いしますが、御承知のように、これからまた、あしたなりあさって、理事会で詰めなければならない問題がたくさん出てきます。その中の一つなんですが、理論的にはこの負担増の中に、税のスタイルは別として、増税というのが含まれると考えるべきだろうか、その辺だけ。
  43. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま理論的とおっしゃいますと、負担増と言えば、これはちょっと検討しますとなかなかむずかしい問題は、いわゆる歳出をカットして、そして、それが受益者負担というものにストレートにつながった場合は、それも負担増のワン・オブ・ゼムになる。それから、社会保障負担、これも負担増の一つであります。あるいは広義な意味においては、自然増収というのも結果から言えば負担増になるかもしらぬ。そしてまた、新たなる税目による増収を図るというのも、これはいま御指摘のように負担増の一つであろう、このように考えます。
  44. 川俣健二郎

    川俣委員 そうすると、増税は当然入る、こう考えてよろしいのですか。それは、学生討論会をやっているのではなくて、政治家同士で、理論的ということには入るが、いま私はここで聞いてみると、増税というのは、スタイルは別として、増税論議が大蔵大臣発言の中から見えたり隠れたりする。どちらの方に考えたらいいのだろうか。見える方に考えたらいいのか、隠れる方に考えたらいいのか、どうですか。
  45. 竹下登

    ○竹下国務大臣 見え隠れというのは、客観的に、あるいはそれぞれの持つ主観の問題、こういうことになりますが、理論的という前提を置いていらっしゃいますから、これは理論的には負担増の中にあり得る、こういうことだと思います。
  46. 川俣健二郎

    川俣委員 まあまた理事会でやらなければならないのですから……。  時間があれですから最後最後で、やはりこれも理事会協議になっておるのでございますが、武器技術の対米供与と国会決議との関係は、総理、私は私なりにこう思っておるのですよ。  一つは、立法権と行政権だと思うのです。三原則なり政府の統一方針というのは行政権の範囲内にある、こういうように私も思っております。ただし、その上に国会決議が乗っておるのだから、政府の裁量でできるものを直せば、柱を短くしたり長くすれば、上に建っている構築物は倒れるのはあたりまえじゃないかというように一つは思っています。  もう一つは、武器には武器技術が含まれるかどうかというのは、これは質疑応答の中で解消しましたね。  ところが、行政府から立法府に対して何らかの手続が好ましいという総理の国会答弁、このことから考えますと、これは質疑応答の速記を読む時間がないのですが、単なる手続論に総理は逃げようとしておる感じを受けたのですが、そうではなくて、三つの問題を取り上げると、一つずつ解消しなければならないので……。  行政府から立法府に対して何ら相談がなかったということで、質問者は、年末、党首会談もあったじゃないか。いや、あったけれどもうかつだった。それは陳謝の意か。そのように解してよろしい。しかし、両院の議長、副議長には連絡、話をして行きましたというのは、私ちょっと聞き漏らしたのだが、アメリカに行ってまいりますというごあいさつの意味だったのか、この問題を了解してくれという意味だったのか。その辺、ちょっと私聞き逃したので、総理答弁を。
  47. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 武器技術の問題に関する国会の決議は関しましては、いろいろ御迷惑をおかけして恐縮に存じますが、社会党を初め、各党には各党の御所見があると思います。わが方の考えにつきましては、官房長官談話やあるいは私の施政方針演説等でもわれわれの考えをお示し申し上げた次第でございまして、当時のものや、あるいは関係大臣から必要あらば御答弁願いたいと思っておりますが、国会との関係で、両院議長さんに対しましては……(川俣委員「副議長も」と呼ぶ)副議長さんも含めておりましたが、アメリカへ行くごあいさつをいたしましたが、そのときに、こういう決定をいたしたいと思っておりますと、そういうふうなことを御連絡申し上げた。御了解をいただくという意味ではございません、政府はこういう解釈をいたしておりまして、こういうふうにいたしたいと思っております、そういうことで御連絡を申し上げたと記憶しております。
  48. 川俣健二郎

    川俣委員 この問題は、やはり政治家同士で明らかにしなければならぬと思うのですが、お立ちになったのは十六日でしたかね。前の日、私も議長室、副議長室に呼ばれまして、あのテレビを見ていると、立法府になぜ一言なかったかという場面から、その問題については両院の議長、副議長にという云々から判断しますと、議長さん、副議長さんから言わせれば、何を、こういう気持ちになったと思うのです。  ところが、いまは所属は変わるルールになっておりますが、うちの方から衆議院なり参議院の副議長を出しております。したがって、われわれが呼ばれていったのは当然だと思います。お一方は岡山、夜中と聞いたが、あした行ってくるがと。それからお一方は北海道、美唄の後援会の事務所に長距離電話がかかってきた。これは何のことかいなと思った。これはあいさつでもあり、了解してくれということのようにも思えるが、これは了解しろといったって長距離電話で、しかし待てよ、議長はお二人とも東京都におられるのだから、これはどういう意味だろうかというので非常に苦悶したというのです。  それで、この問題は、時間がありませんから、後ほどまだ社会党が四十分残っておりますので質問を続けさせてもらいますが、どうもその辺が、両院議長、副議長さんには私からお電話で事前に御連絡を申し上げた次第でございますが、各党に対しては事前に行わなかったということは大いに反省しておりますということは、何となく御本人から言わせれば、各党には連絡もなし了解も得ないが、私らには、議長、副議長には長距離電話でもあったが、事前に御連絡をしてこの話は済んだものと思っておったというような含みに見えたというのです、テレビ放送だから。その辺は非常に大事な問題で、立法府の何といったってトップの方でございますので、その辺を、時間がありませんからあとの四十分で少し詰めさしていただきたいと思います。  それから、私はなぜこれを取り上げるかといいますと、これ非常に理事会でも苦慮しています、正直に言いますと。なぜかといいますと、国会決議変更の方が必要なんじゃないか、国会決議の変更の方をお願いする方が必要なんじゃないだろうか、こういうような場面にもなりかねないので、ちょっとこういうのが、これも報道でございまして恐縮なんですが、自民党にはいろいろグループがございますが、かつて通産大臣でこの武器問題で関連した河本さんの方のグループですが、対米武器技術供与は、武器輸出禁止三原則に反するため、供与には国会決議の変更が必要だと思う。わが国の先端技術を供与することは、日米安保条約との関係から言ってやむを得ないという点では一致したものの、国会決議、つまり憲法を優先させるか、論議になっておった安保条約を優先させるかということだが、安保条約を憲法に優先させるという議論には無理がある。どだい無理がある。国会の意思を反映していくことが、これがいわゆるシビリアンコントロールなんだ。これしかないんだ、シビリアンコントロールというのは。鈴木内閣では、国会決議の重みがあったため、供与という問題が何回も出たが、ついに踏み切れなかったのはここにあったのだ、こういうようにおっしゃっておるわけです。いまのところ自民党というのじゃなくて、あなたの党でございますが、技術供与そのものには賛成だが、武器輸出に関する国会決議を無視した形で政府が決定したのは手続上問題があるという手続論だけではなくて、国会決議の例外的措置とする方針に切りかえたことははなはだ無理がある。そこで、あれを私は理事の一人として理解したのだが、その当時の防衛庁長官、伊藤前防衛庁長官も、鈴木内閣時代もこの問題は非常に出た。対米技術供与については政府内で議論が沸騰した。ところが、国会決議との兼ね合いがあり、最後まで踏み切ることはできなかった。鈴木政権下では、日米安保条約が国会決議に優先する考え方はなかったから当初は踏み切れなかったということで、やはり自民党の一グループではあろうが、自民党内でもこれは無理がある、国会決議をやはり無視しておる、国会決議の方を直してもらうか、こういう論議に発展しておるわけです、この考え方は。  その辺は総理、総裁として、どうわれわれは理解したらいいのでしょうかね。あさってまでに返事するとは言うが。
  49. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 自民党の内部の問題に関しましては、役員会、総務会あるいは政務調査会、それぞれ所定の機関につきまして所定の手続をして了承してもらったところでございます。また、政府・与党首脳会議いおきましても了承していただいたところであります。  ただいまお読みになりました新聞記事については、必ずしも全部そのとおり正確でないところもありますので、通産大臣から御答弁願うことにいたします。
  50. 山中貞則

    ○山中国務大臣 河本さんの発言ですか。(川俣委員「ええ、河本さんの発言になっていますね」と呼ぶ)これはもちろん事実誤認があるといけませんから、私の方は局長をして説明にはやらしてありますが、国会決議について通産省が有権解釈をするという立場にはございません。政府全体の決断に従って通産省は手続を行うということであります。
  51. 川俣健二郎

    川俣委員 ただ、行政権の継続性という問題もあって、片や河本さんは経済企画庁長官であった。それから、片や防衛庁長官であった。そして、河本さんが通産大臣の際もこの武器問題で答弁しておる議事録も出ておりますが、行政権の継続性からいっても、いまのような通産大臣答弁でいいのかな。これは総理もう一遍、私は通産大臣に聞いているのじゃなくて総理に聞きたい。
  52. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が、その新聞記事が出まして、いろいろその後の状況をお聞きいたしましたら、政治家もあるいは内閣に列しておる国務大臣も、あるいは関係各省の局長そのほか関係責任者も参上しまして、たしかいろいろ御説明申し上げた、その結果がどういうことになったか必ずしも正確には聞いておりませんが、ああそういう事情かというような御理解はいただいた、そういうような話を聞いておりましたので、いまのようなことを申し上げた次第でございます。
  53. 川俣健二郎

    川俣委員 この問題は、幸いうちの方の時間が残っておりますので、ほかの方に質問してもらって、私が理事の一人として聞いております。委員長、この問題はそうでもしないとなかなか理事会ではいかぬと思うので、そういうことで、どうか午後に積極的に論議に入ってもらいたいことを要望しておきます。  そこで、まだ三分あるので一つだけ伺います。  せっかく労働大臣にお願いしておるのですが、私も大した優秀な大学生ではなかったが、労働問題と社会保障ということで郷里の先輩である平田冨太郎、大学でも教わって、いま中労委の会長をやっておられますが、「年頭所感」ということですが、一つの論説的に書いておられるものが非常に目を引いたわけでございます。  というのは、「昨年十月でわが国の失業率は二・四%、有効求人倍率は〇・五八倍、完全失業者は百三十九万人にのぼった。賃金面でも規模別・地域別・男女別格差は広がる一方であった。マイクロ・エレクトロニクスの急速な発展・導入も雇用に次第に強い影響を与える傾向にある。」MEです。「エレクトロニクスの性能、コスト両面におけるいちじるしい発展によって、ロボットとOAはいまや第三の産業革命をもたらすと言われている。」ロボットの労働災害を取り上げたかったのですが、「産業用ロボットは高生産性でコストも安く、しかも経済の「不確実性時代」に適応可能な弾力性に富み、かつ価値観の多様性に対応できる多品種少量生産に向いている生産装置であるから、今後人間労働力にとって代わることは確かである。したがって」、これからなんですが、「新たな雇用労働問題を発生せしめるであろう。ましてこれからの低成長時代には重労働に堪え、不平もいわず、食事や雑談もせず、残業・深夜業手当も要求せず、勤勉、従順でストライキも起さない産業ロボットが」、産業界から見ると「比較的低廉にしかも大量に導入されるようになれば、」いろいろ労働問題が新たに発生するであろう。  そこで、私が言いたいのは、これにひっかけましていろいろと書いておりますが、一億一千万の人方がこれだけの狭い国土でお互いに暮らさなければならぬのだ。わらじをはく人、わらじをまた編む人、つくる人、かごを担ぐ人、乗る人と。もうわらじをつくる人は要らないからおまえは首だということではいかぬのだ、みんなで分かち合って暮らそうではないかということを切々と訴えるようでございます。これが行政だと思うのです。  この言を、新進気鋭な労働大臣でございますが、一言その辺を。その質問で終わりますから。
  54. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま川俣先生御指摘の点につきましては、私も大臣就任直後の記者会見でるる申し上げました。現在労働問題を取り巻く環境というものは非常に多様化してきた。これに伴っての雇用の安定ということは、やはり雇用が不安定であれば社会不安等を惹起するというような点がございますので、いま御指摘の、たとえばロボットであるとかOAであるとかMEであるとか、あるいはまた高齢化社会であるとか、本当に私どもが経験しないことをいまからより一層先取りして、そして雇用の安定に資するように鋭意努力をいたしておりますので、もうしばらくの時間をいただきたいと思います。
  55. 川俣健二郎

    川俣委員 時間でございますから終わります。
  56. 久野忠治

    久野委員長 これにて川俣君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十三分休憩      ────◇─────     午後零時四十二分開議
  57. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草川昭三君。
  58. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  まず最初に、特別会計、なかんずく自動車損害賠償責任再保険特別会計からの一般会計への納付についてお伺いをしたいと思います。  自動車損害賠償責任再保険特別会計、自賠責と称しますけれども、今回の歳入を見ますと、五十八年度の財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置によりましてこの自賠責の再保険の保険勘定の方から二千五百億円、保障勘定から六十億円、計二千五百六十億円を一般会計に繰り入れる、こういうことになったわけでございます。  問題は、実はこれは五十七年度の運輸省の概算要求の中にもさかのぼらなければいけませんが、私、当時決算委員会で塩川運輸大臣にもこの問題を取り上げたことがあるのですが、自賠責の方から国鉄の助成として九十億二千九百万円、それから同じく国鉄の踏切保安施設整備費で三十億、これを運輸省は概算要求をしたわけです。この自賠責から欲しい、補助金なり貸し付けで欲しい、こういう要求をしたわけでありますけれども、これは自賠責特会の本来の趣旨に反するのではないかというので、大蔵サイドでこの話はなくなったわけですね。  こういう歴史がありますが、そのとおりであるかどうか、お伺いします。
  59. 山口光秀

    山口(光)政府委員 五十七年度予算要求で、いま仰せがありましたように、国鉄の踏切整備に三十億、それから民鉄の踏切整備に四億四千七百万、それから大都市交通施設整備に、国鉄に対しまして九十億円、いずれも約でございますが、要求がありまして、いま仰せになりましたように、この自賠責の特別会計から国鉄に出すのはいかがなものであろうかということで、一般会計で、金額は多少違いますけれども、たとえば踏切でございましたら国鉄に二十億とか民鉄は四億、それから大都市交通施設整備であれば、九十億の要求でございましたが、五十億というふうに出したわけでございます。
  60. 草川昭三

    ○草川委員 私がいま聞きたかったのは、いかがなものかと大蔵省の内部で意見があったということだけ聞きたかったわけであります。  問題は、大蔵省の中でもこの自賠責の方から国鉄だとか踏切改善等にお金を回すことは問題があるとまず認めたわけであります。そこで今度は、大蔵省はまた別の意味で法律改正をして一般会計の方に持ってこよう、こう計画をしたわけであります。ところが、私どもが言いたいのは、自賠責の特別勘定というのは、同じ政府の中における特別会計とは言っても本質的に違うということを言いたいわけであります。いま約四千二百五十六万の車の保有台数があります。私もその一人です。恐らく多くの方みんな強制保険で掛けておられる。その金はもう前々から自賠責の中の審議会でも議論をされておるように、保険給付の改善に使うなら使う、あるいは運用益があるならばいわゆる保険料を下げるために私どもはこれを積んでおるわけですね。ところが今回は、これはどういうことか知りませんけれども一般会計に二千五百六十億持っていってしまうわけであります。しかも、利子なしで持っていくわけですね。しかも、その返済計画が法律によって明確になっていないわけです。  ところが実際上は、ここに五十七年十二月二十五日に大蔵大臣竹下さんのお名前と運輸大臣長谷川さんとの間で覚書が結ばれているわけであります。一般会計への繰り入れは五十八年度限りの特例措置ですよ。二番目に、自賠特会から一般会計への繰り入れ相当額は、原則として昭和六十一年度から昭和六十七年度までの間に分割して一般会計から自賠特会に繰り戻すことになるという覚書があるのです。これは法的な根拠があるのかないのか、あるかないかは別として覚書を書いちゃったのです。  問題は、自賠責の方から持ってくる財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律案をつくったときに、これは内閣法制局長官にちょっとお伺いしますが、こういうような覚書があったということは承知をしてみえなかったと聞いておりますが、承知してみえたのですかどうですか。
  61. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 承知しておりませんでした。
  62. 草川昭三

    ○草川委員 内閣法制局長官が承知していない覚書で自賠責特会からお金を持っていっちゃうのですよ。これはきんちゃく切りじゃないですか。こういうのはきんちゃく切り予算と言うのですよ、大蔵大臣。どうしてこれは法律ではっきりと昭和六十一年度から分割して一般会計から返すということを言わないのですか。これはわれわれのお金ですよ。どうですか、大蔵大臣
  63. 竹下登

    ○竹下国務大臣 われわれの金とおっしゃいました、確かにそのとおりでございます。したがって、私どもも、このお金をいわゆる今日の財政危機に当たって税外収入としてお願いするということについてはたびたび運輸大臣とも協議をいたしました。その上で私どもといたしましては、御指摘のような形の、いわば両者の間で覚書を書きまして、それでもってとうとい税外収入源としてお借りするという決着を見たわけであります。したがって、言われるように、言ってみれば一般会計から支出してそれがどうなっておるというものではなく、われわれの金そのものではないかとおっしゃる意味は、それはそれなりに私も折衝の過程でそういう意識を持っておったわけであります。ただ、元来短期的なものであって、運用益というものについてはやはりお願いができるというある種の、私どもの方の期待感を持ってお願いをした、こういう内容であります。
  64. 草川昭三

    ○草川委員 保険財政は二年間の設計で払ったもの、そして出すものは出す。だから、それだけでいいじゃないかという考え方が大蔵サイドにはあると思うのです。だから、預かって国が運営して、その中からできた利益について半分貸せ、一言で言えばこういうことですよね。それだったら法律ではっきりと返済計画を書きなさいと言うのです、私は。実は五十六年の予算委員会でございましたか、同じように本来一般会計が負担をしなければならないいわゆる建設省所管の住宅金融公庫の逆ざやの利子補給六百六十一億、これを財投に肩がわりをしたわけです、資金運用部の方に。おかしいではないか、予算書の中にどこに出てくるんだ、この金六百六十一億は。どのようにして返済をするんだ、こういう話がありまして、そのときはここで結論が出なかったのですよ。それで、昨年の予算委員会で建設省は、これは財投計画にも予算書の中にも載せましょうというので、去年住宅金融公庫法を改正をして返済計画をはっきりと載せたのです。そうではないですか、建設大臣
  65. 内海英男

    ○内海国務大臣 住宅金融公庫の補給金の繰り延べにつきましては、昭和五十六年度におきまして国会の御審議をいただいて、種々御指摘のあったところでございます。したがいまして、五十七年度においては公庫法を改正して、繰り延べに関する諸規定を整備したところでございます。  昭和五十八年度におきましては、この法律に基づいて七百七十八億円を特別損失として繰り延べ、六十一年度以降五年間で措置することといたしております。  以上です。
  66. 草川昭三

    ○草川委員 どっちにしても、そのとおり、私どもの指摘で住宅金融公庫は変わったわけですよ。きちっとこの予算書にも出てくるわけです。そうすると、何か問題提起をする法律についてはいまのように法律で明記をされる。問題提起をしない法律についてはこういう覚書で適当に、私はごまかしたとは言いませんけれども、何となくわかったようなわからぬようなことをやるわけですよ。わが国の法律というのはそういうものですか。しかも、特別会計からお金を借りる場合に、そういうようにはっきりするものとはっきりしないものがある。これは私はどう考えてもおかしいと思うのですよ。しかも、この覚書は、内閣法制局長官が知らないわけでしょう。覚書は一体借金証文としての根拠はあるのでしょうかな。竹下さんはいずれ総理大臣になられるかもわかりませんけれども、総理大臣にならないとこの証文はおかしくなりますよ。どうしてもなってもらわなければいけないことになるのかもしれませんけれどもね。  それから、さらにこれは大蔵省に言いたいのですが、きょうの新聞にも出ておりますけれども、自賠責の単年度だけの問題を取り上げると、入る金よりも出る金が大きいので赤字になる、だから自賠責を三〇%上げなければならぬという記事が出ておるじゃないですか。自賠責審議会に出しておる資料を見ますと、汚いんだな、大蔵省のやり方というのは。単年度の収支が悪い悪いというそれだけの資料しか出していない。五千億の運用益があるという累積の資料を自賠責の審議会に出していないのですよ。だから、審議会は、単年度が赤字になるというなら三〇%の値上げをしなければいかぬと言うのですよ。どういうことですか。片一方は、皆さん方、これでよく選挙やれますね、四千二百五十六万台あるのですよ。そういう人の目の前で、あなたたちの積んだ自賠責特会を国がいただくのだ、利子なしで借りるのだ。そして、片一方で三〇%の自賠責の料金を上げるなんということは通らない話ですよ。  これは、最終的な予算折衝のときに中曽根総理大臣が最終的な決裁をしたというお話ですが、総理はこのようなことを承知をしてやられたのですか、お伺いします。
  67. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの、法律上の問題がございますので、その辺正確に主計局長から答弁さすことをお許しいただきたいと思います。
  68. 山口光秀

    山口(光)政府委員 通例、一般会計と特別会計の間でいわば貸借が行われる場合に、利子はつけないのが原則でございます。ただ、たとえば特別会計がやっている事業が保険でありますような場合に、保険経理上利子を織り込んで料率を決めているというような場合には、保険経理が狂ってまいりますので、そのような場合にはむしろ例外としてつけるというやり方をとっております。  それから、この覚書でございますが、このような難問でございまして、一般会計が二兆二千五百億という五十六年度の赤字の後始末をしなければならない。これを、赤字公債を発行して利子を支払ってそれを返済するということでなしに、利子のかからない金を政府の中で集めて返済しようという方針のもとに、各省に御協力をいただいたわけでございまして、運輸省も御協力いただいたわけでございます。その際、両大臣間で覚書をつくっておりますが、これは両大臣の合意を覚書にしたものでございまして、法律的な効果というものはございません。  ただ、この中で、原則として六十一年から六十七年の間に分割して払うのだ、繰り戻すのだということをうたっておりまして、つまり、そういう合意でございますから、法律になじまないのじゃないか。別途御審議を賜る予定にしております財源確保法においても、結局後日繰り戻すものとするということにしておりまして、それは通例、一般会計、特別会計の間の関係を規定するやり方として普通のやり方をとっているわけでございます。
  69. 草川昭三

    ○草川委員 だから、私どもが言いたいのは、そういう法律的な裏づけのない覚書を結ぶなというのですよ。はっきりと法律に書きなさいというのですよ、人の金を借りていくなら。国でしょうが、きんちゃく切りのような予算をつくるなというのですよ、僕たちに言わしてみれば。だから、一般会計が赤字になるなら、はっきりと赤字を出せばいいのですよ。  いまから言いましょうか。大体資金運用部資金というのがありますね。皆さん方の郵便貯金です。われわれの納めた厚生年金の金を原資とした資金運用部、それが財投に回っております。しかし、四十八年に政管健保、これは四十八年に三千三十三億、これは赤字だというので棚上げしたわけです。ところが、これはほったらかしの間に六千二百三十二億になってしまっているわけですよ。どういう形でこの金が運用されておるか。短期で回していくわけでしょう、財投の中で。あるいは日雇い健保、これもいつの間にか赤字が出て七千四百六十七億になっているじゃないですか。これも資金運用部資金の短期借りかえでいくわけです。われわれの知らないやりくりというのがずいぶん出ておるわけです。本来は一般会計で持たなければいけない、しかし赤字公債がふえてはぐあいが悪いからというので、資金運用部あるいは財投の方に、ずいぶん水面下に隠れておるわけです。有名な地方交付税借入金の償還等についても、すでにこの特会の借り入れは十一兆五千二百十九億に及んでおるじゃないですか。こういうものが全部水面下に隠れておるわけです。だから、そういうものを一回明らかにしながら、われわれは財政再建というものを考えなければいかぬのですが、財政再建ではなくて、国民のわれわれが言いたいのは財政の健全化なんですよ。わかりやすい国家財政なんです。われわれのようなぽっと出の人間だっておかしいと言うのだから、専門家から見ればもっとおかしいですよ、この国の予算は。そうじゃないですか。  こういう議論こそ、私はぜひ予算委員会でやっていただきたいと思うのでありますけれども、たとえば財政投融資計画の内容につきましても、不用額はもう二千五十八億になっているのですよ、財政投融資全体で。財政投融資については、基本的に私は見直すべき時期が来ておると思うのです。政府系の公社公団、ずいぶんと長い歴史的な経過があって、日本も高度成長をしました。財投のおかげで、私は日本というのは世界で非常にすぐれた国になったと思うのですけれども、使い残しが増加をしている。いま言ったように不用額が二千五十八億になった、あるいは繰り越しは三兆二千百九十億にまで繰り越しておるわけです。  財投の中にも、私は名前を挙げて悪いのですが、開発銀行などというのは、大きい企業、電力、製鉄、エネルギー、これはこれでいいのです。ところが、最近は日本の中でも優良企業がもう自立をして資金不足ではないものですから、借りるところを探すのに大苦労しているわけでしょう。中華料理屋の東天紅まで開発銀行の金は回っているのですよ。何でラーメン屋に開発銀行の金を回さなければいかぬかというのです。よく調べてみたら、消防の防火施設として借りているからいいじゃないか、こういうわけです。これも政策融資でしょう。だけれども、そういうことをやるから民間金融機関と競合ということになるわけです。私は基本的にこれは見直さなければいけない時代が来ておると思いますし、時間が余りございませんからあれでございますけれども、資金運用部の保有する国債残高も十六兆を超すようになりました。国債発行高の二〇%を占めるようになりました。ここらあたりは、ぜひ短期運用という中で運用部資金の中身を少しわれわれに明らかにしてもらいたいと思うのです。大蔵省の理財局はもう十分皆さん方に提示をしてあると言いますけれども、お金が一体幾ら公庫公団から戻ってくるのかというのは逆に調べていかないと出てこやせぬのです。国会に提示をする公社公団全部出てきませんからね。だから、五年以上のものについては長期でいろいろと発表されますけれども、五年以内で繰り越していきますと、たとえばいま申し上げた地方交付税なんかももう実質的には十五年になるわけでしょう、返済が。だから、この特会は十五年かかるものが水面下に隠れておるからわれわれにはわからぬわけですよ。こういう運営についてどういうように考えられますか、大蔵大臣
  70. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、いま御指摘のありましたように、いまなおこれはもちろん財投資金の要請は強いわけでございますけれども、私、前回大蔵大臣をしております当時、ずいぶん指摘を受けました。不用額が多いじゃないか。それで、これを見ますと、五十三年度は確かに八・五%、それがいま五十六年度が〇・九%というふうに、これは逐次解消されて、いわば小さい摩擦的な額とでも申しましょうか、その範囲にとどまっておるわけであります。しかし、財投計画そのものについて、これは予算審議の場で草川委員が御指摘なさった問題は、われわれとしてやはり絶えず念頭に置かなければならない貴重な御提言だ、このように理解しております。
  71. 草川昭三

    ○草川委員 ぜひ私は、特別会計に対する短期融資の問題点というのは山ほどあるわけですから――こんなことは余り声を大きくして言うことではありませんけれども、短期の中身というのは、これは絶対わからぬようになっておるわけですよ。だから、この短期融資の中身を握っておるのが私は大蔵省という役所だと思うのです。これを持っておりますからこそ、大蔵省というのは一段と各省に対するにらみもききますし、大蔵省の幹部の方々の天下りも公庫公団には優先的に入っていくわけですよ。だから、私は、そういう時代は一応過ぎたんだから、改めて財投計画の役割りというのは終わったと見ていいのではないか。  しかも、これからまた触れますけれども、これは非常に零細な国民の方々の預金というもの、国というものを信用して預けておるわけですからね。有利かつ安全ということで信用して預けておるわけです。最近、中曽根内閣の姿勢がどうも軍国化しておるんじゃないか、このままで郵便貯金をやっておっていいのかどうかという心配をずいぶんする人がいるのですよ。特に、五十代、六十代というのは、戦争中にいやというほどインフレで価値がなくなったということで骨身にしみておりますから、もうこれは危ない、下手して戦争になったら、郵便貯金をやめて金にしようじゃないか、金塊をためようじゃないかともし国民の皆さんが言い出したらどうなります。財投は破滅になりますよ。資金運用部に金が集まりませんよ。日本の産業は破綻しますよ。国鉄はつぶれますよ。そういうことになるわけでありますから、私は、根本的にこの財政投融資というもの、なかんずく資金運用部、国を信用して預けている国民の切なる願いということを考えてもらわなければいかぬと思うのです。  その点について大蔵大臣なり、これは総理大臣、私は一遍総理に聞きたいと思うのですが、どうでしょう。
  72. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、いま草川委員指摘のように、草川委員と同じような御指摘とでも申しましょうか、臨調においてもこういう御指摘があっております。率直に申しまして、財投を取り巻く環境条件に大きな変化が生じている。財投が産業の振興、社会資本整備等に果たした役割りは大きかった。今後ともそれは役割りは果たすと思われる。しかしながら、いろいろな変化の中に、財投資金を配分する必要性は従来に比べて相対的に低下しているというようなことも指摘されておるわけであります。したがいまして、国民のまさに零細な預金等々が原資になっておるわけでございますから、これは国会においては予算総則の中において御審議いただいておるわけでございますけれども、十分その意を体して財投計画につきましては心して対応しなければならない第二の予算とも言われる課題でございますので、重要な御提言だと理解をいたしております。
  73. 草川昭三

    ○草川委員 ちょっとここで中曽根総理に、いま国民の心配ということをちょっと私触れたわけですが、たまたまきょう昼のテレビでも、中曽根総理は、外交案件が落着をし、この予算が成立をしたら、閣内挙げて中学生の非行あるいは少年非行の解決に力を注ぐ、こう言っておみえになったようであります。非常にこれは重要なことでございますが、具体的に総理はどのようなことを考えておみえになるのか。たとえばかつてのような道徳教育のようなものまでひとつ新しく立ち入っていこうとお考えになっておられるのか、お伺いしたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先般来先生方に対する子供の暴力とかあるいは家庭内における暴力とか非常に悲惨な問題が続きまして、私もかねがねこの青少年問題については心を痛めておったところです。それで、先般青少年問題協議会の総会の席がありまして、そこでも私は私の所信を述べてまいりましたが、私が青少年対策本部長という地位を内閣総理大臣としてまた持っておるわけでございまして、この問題をどういうふうに解きほぐして平和な家庭、平和な学校、それから子供たちが喜んで勉強し得る環境をつくり上げていくか、そういう大きな課題に向かって内閣の力を挙げて実は取り組んでいきたい、そう考えて、具体的にどういうふうにやるかということは、これから党及び内閣と具体的に相談しまして方法をつくっていきたい、そう考えておる次第です。
  75. 草川昭三

    ○草川委員 また別の機会にその具体的な内容については他の同僚委員の方からもお伺いすることがあると思います。  では、最近非常に産油国の方の原油価格が引き下がっておるというようなニュースが非常に多いわけでございます。あるいはOPECの会議等におきましても調整に失敗をしておるようでございますし、英国の石油公社が十八日にバレル当たり三ドル、あるいは本日の新聞等によりましてもなお他の国々の産油国からの動きが出ておるようでございます。  そこで、低エネルギー時代の到来については日本としてはこれはいろんな意味での影響力が多いと思うのですが、経済企画庁長官に、ひとつ、わが国に対する影響はどのようなことになるのか、お伺いしたいと思います。
  76. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  逆オイルショックの影響につきましては企画庁でいろいろと研究をしておりますが、最近の数字に基づいてたとえば成長率にどのように影響するか、これはまだまだこれからの状況でございますが、一般的に申せば、もう言うまでもなく、国際収支面、さらにまた企業面、家計面、さらにまた物価面において、オイルショックと逆の良好な状態を生ずるかと思います。  これは古いモデルでございまするけれども、一九七八年までのデータに基づいて作成しましたシミュレーションでは、御案内のように、これはいま直ちに当てはまるとも思いませんが、当時の状況で想定いたしますと、たとえばGNPが一年目には〇・二三%、二年目には〇・六二%というような好影響が生ずる、こんな研究を発表しておりますが、これはまだまだ古い数字でございまして、新しいモデルでやることはこれからまた検討問題だと思っております。
  77. 草川昭三

    ○草川委員 すでに民間では、バレル四ドルの値下げではGNPは〇・一%ぐらい押し上げるだろうというようなデータも出ておるわけでございますし、こういう時代でございますからこれはもう非常にクイックアクションで見通しを立てていただきたいと思うわけであります。  さらに、物価に対する反映でございますけれども、一部の情報でございますが、原油の値下がりがバレル当たり八から十ドルと大幅に値下げになる場合には、電力料金を引き下げるよう通産省や電力業界にも働きかけることが必要ではないだろうかということも言われておるわけでございますけれども、長官としてはそのようなことについてどうお考えになられますか。
  78. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 電力料金につきましては、円高とあわせまして石油価格が大きく影響いたします。しかし、まだ具体的な確定的な引き下げ額が決まっているわけではありません。さらにまた、御案内のように、長期の契約のものもございます。これらの影響につきまして、電力料金にどのように影響するかは今後の検討問題だと思っております。
  79. 草川昭三

    ○草川委員 同じように、いま国際金融不安というのが発生をしておるわけでございます。過日来のこの委員会におきましても、公述人等が非常に問題提起をされておみえになったわけでございまして、私ども非常に参考になるわけでございますが、邦銀の国際金融不安、いわゆる邦銀が抱え込んだ長期の不良債権というのは一体幾らぐらいあるのか、どこまでが不良債権なのか、どこまでが通常の融資なのか、いろいろと問題があるわけでございますが、いずれにいたしましても、私は、産油国がこれで赤字補てんになるわけでございますから、ユーロ市場から資金を引き揚げてくるということが当然のことながら予想されるわけであります。たとえば、メキシコへの融資のため日本の銀行も、この市場からオイルマネーが引き揚げられるということになりますと、当然のことながら需給が引き締まるということになりまして金利にも非常に影響することになります。債務返済延期あるいは追加融資ということがいろいろと言われているのでございますが、邦銀の行政指導というのですか、回収不能になった対象額は幾らか、あるいはまた、いま海外債権の損失勘定を創設をして一定率を有税で引き当てをしようというようなことがちらほら発表をされておるやに伺いますが、具体的にまだお伺いをしておりませんので、これはひとつ大蔵大臣からお伺いをしたいと思います。
  80. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる国際金融不安の危惧の問題でございますが、これにつきましては、実は私どもも、先般十カ国蔵相会議に出かけましたのも、大きな一つの議題でありました。したがって、今日までにおきましては、この債務国、債権国政府、そして民間銀行、さらにはIMF等が適切な対応をやりまして、国際金融市場の混乱を招くことは避け得るというふうに期待をしております。そうしてまた、いま御指摘のありましたように、海外債権損失引当金、民間金融機関が目下これを検討しておるという話も承知しております。ただ、いまのところ適切な助言等におきまして、直接大きな被害の懸念というものはないと思っておりますが、さらに具体的な問題でございますので、事務当局からお答えいたしますことをお許しいただきたいと思います。
  81. 大場智満

    ○大場政府委員 ただいま御指摘の債権のうち非常に心配になっているものはどこかというお話でございましたけれども、私どもはまだ具体的に心配といいますか、取り立てができないという判断はしておりません。  中南米諸国につきまして特に懸念がございますけれども、リスケジュールとかリファイナンス等の措置をとりまして中南米諸国も対応しておりますし、また、わが国の銀行を初め各国の銀行が協調して新たな融資を行うことによりまして、中南米諸国の立ち直りを期待している。それからまた、これら中南米諸国もいま非常に厳しい経済調整を進めておりますので、私は、この問題が国際金融不安といいますか、大きな不安にならないで収拾されることを期待しているわけでございます。
  82. 草川昭三

    ○草川委員 それはそのとおりだと思いますけれども、私どもは、さっきの財投の方にも戻りますけれども、政府系の機関と民間銀行との競合が非常に露骨になる。そして、民間銀行としては、貸出先の優良企業が資金を求めていない、お金持ちになったということから、勢い金利の高い海外融資というところに目が向いていくわけであります。あるいは日銀が、どこか、だれかが論文を書いておりますように、銀行としてもいわゆるサラ金業者に資金源を提供するというように非常に危険な動きがあるわけであります。  私ども、国民の一人として、日本の国民というのはやはり日本の国はいい国だと思っているのですよ。だから、まじめに働いて、お金をためて、そして老後は安心して暮らしたい、こういう素朴な気持ちが国民の声だと私は思うのです。だから、少なくともいま財投のあり方を見ても、資金運用部のあり方を見ても、われわれがお金を預ける銀行も、非常に泥沼の中に入っていくわけですよ。私は、着実に入っていくと言って間違いはなかろうと思うのです。  そういう意味で、いま海外になぜこんなに、数字は発表されておりませんけれども、二百億ドルを超すであろう不良債権を抱えてしまったのか。いま大蔵省の方は大したことはないとおっしゃいますが、大したことあると思うのです。やがてこれは銀行の再編成につながるのですよ。東京銀行は、どうなるかわからぬ、こう言っているのでしょう。そういうことぐらい私は国会ではっきりと言ってもらいたいと思うのですよ。いまのようなことは、時間がないから私やりませんけれども、国民の心配の声をここで明らかにしてもらいたいわけですよ。僕の考え方くらいのことはみんな思っているのだから。それを全然すりかえ答弁をするというような大蔵省だからこそ、私どもは腹が立つわけです。だから、普通ならばもっと小さい声で紳士的にお話をしなければいかぬのですが、どうしてもわれわれ後援会の皆さん方の声を忠実に国会で反映しようと思うと声が大きくなるのです。私は、大蔵省はひどい役所だと思います。  ということで、次は、ちょっと防衛医大の方へ話を進めます。  そこで、実はこの国会の中でも中曽根総理になられましてから非常に活発な御意見が出ておりまして、わが国はわが国で守ろう、自衛力についての非常に明快なお約束を国際的にもされておるわけでございますが、足元を見てまいりますと、かなり問題があるわけでございます。  たとえば、防衛医科大学の問題をやりたいのですけれども、その前に、日本の将来の防衛庁をしょって立つ防衛大学というのがありますね。防衛大学の学生の任官率が最近非常に悪くなってきているわけです。防衛医大も、これは中曽根総理がかつて長官時代に非常に強く言われておるわけでございますけれども、これはひどい例でございますけれども、昨年の防衛大学の卒業式で、――防衛大学ですよ。鈴木総理の前で答辞を読んだ方がやめてしまったのですね。何か、中曽根さんがどうも戦争をやりそうだからやめたと言っている人がいま多いというのですよ。一体これはどういうことなんでしょうね。答辞を読んだ人がやめたことは間違いないのでしょう。
  83. 西廣整輝

    西廣政府委員 間違いございません。
  84. 草川昭三

    ○草川委員 これは、中曽根さん、ちょっと一言だけでいいからコメントを出してください。もういまおわかりのとおり、どう思われますか。総理大臣の前で、わが国を守って一生懸命がんばろうと答辞を読んだ人です。その方がやめたわけです。ショックじゃないですか。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 非常に残念なことであります。
  86. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、私どもはもう少し防衛力の問題について自分たちの足元を見直して、本当に何が日本にとって必要なのか、何ができるのかという議論をしなければいけないと思うのです。たとえば陸上自衛隊の問題等につきましても、陸上自衛隊の最重要地点は北海道であることは間違いがございませんけれども、北部方面は形の上では四個師団が配置をされておりますけれども、いまの充足率を見ますと、将校は九三・六%、曹は一〇二・三%、兵隊というのか、士は五七・六%にすぎぬわけです。いわゆる将校だとか下士官の定員は一〇〇%充足しておるのに、肝心の兵士は半数近くが不足をしておるわけです。したがって、師団といっても実際は連隊規模にすぎません。曹クラスが立哨勤務をしておるわけでありますし、准尉が隊内の雑役をやっておみえになるという実情であります。  兵員に比べて幹部の数が多過ぎる。兵員の充足率が五〇%なら、幹部の充足率も五〇%にして、本当に師団編成も変えてやることがいまの予算の中における本当の陸自のあり方だと私は思うし、逆にそういうものを取り上げて、陸上自衛隊の軍縮ということを、いま現実に応じたことでございますから、それを言って、そういう中で本当に世界平和のための日本の姿勢を訴えられることの方が日本の国民が安心する方法になるのではないか、私はこう思うのですが、どうでしょう。
  87. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 各自衛隊の充足率につきましては、後ほど政府委員から御答弁をいたさせますが、基本的な問題として、御指摘のございました、特に陸上自衛隊の編成についての御指摘もございましたが、こういう編成につきましては、常時われわれとしても十分考えていかなければならぬ問題だ、こう考えておりまして、過去においても幾つかの施策をとってきたところでもございます。
  88. 草川昭三

    ○草川委員 ですから、部隊の編成の中にも非常に大きな役割りを果しますのが、いわゆる防衛医科大学の卒業生の医官ですね。いわゆる昔の言葉で言えば軍医の役割りでございますけれども、非常に軍医の充足率も悪いというので、中曽根さんが四次防のときに非常に力を入れられまして防衛医科大学校というのを創設をしたわけでございます。この防衛医科大学はその後順調に実は生徒を卒業させてきたわけでございますが、一期生がどういう実情になっておるかといいますと、これは五十五年に卒業したわけですね。六年間の幹部自衛官としての養成勤務を行い、いわゆる医学を学び、五十五年に国家試験をそれぞれ受けられたわけでございますが、当時四十人の卒業生、これが現在、陸上に二十四名配置をされておったわけでございますが、退職者が半分の十二名に及んでいると言われております。さらに、この残った在職者の十二名の中でも三名がやめたい、こう言うわけであります。いま必死になってそれを押さえておるわけですね。空の場合も八名配置をされましたが、一名やめておられます。ですから、卒業生が四十人のうちで、現在やめられたのが十三人、二十七人より残っていません。あるいは二期生も全部で七十四人採用をいたしまして、それぞれ陸上に四十七、海に十四、空に十三と配置をしたわけでございますが、陸上で四名やめてしまいました。それで空も二名やめてしまいまして、現在七十四が六十八名より残っていないわけであります。  これは一体いかがなものかということでございます。どういう理由でやめていくのだろうか。いろいろと私どもが考えるわけでございますが、これも大変な予算をかけるわけですね。全部で、卒業生に対して膨大な予算がかかるわけですが、これは私が余りしゃべってもあれでございますから、やめたことが事実かどうか、そして、いわゆる国家試験を通り、そして二年間の研修、これを通って任官するのに一体幾らぐらいの費用がかかるのか、防衛庁から答弁を願いたいと思います。
  89. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 ただいま最後のところで御質問のありましたことにつきましては、後ほど政府委員から答弁をいたさせますが、御指摘のございました自衛隊医官の不足、これを抜本的に解消する目的で設置されたのが防衛医大でございます。その防衛医大を卒業した医官の中から、強いわれわれの慰留説得にもかかわらず退職者が生じていることはきわめてこれは遺憾でございまして、これは事実でございます。  そこで、私どもといたしましてはこの事態をきわめて現在深刻に受けとめておりまして、現在、庁内におきましても鋭意この問題について検討を進めておるところでございます。  そこで、ただいま御質問のございました数字その他につきまして、ただいまから政府委員をもって答弁をいたさせます。
  90. 島田晋

    ○島田政府委員 お答えを申し上げます。  防衛医大卒業生の定着が悪いということで、ただいま大臣から大変遺憾の意を表されたところでございますが、その理由といたしましてはまことに種々多様でございまして、ある者は両親の病弱を理由に家庭の事情ということで故郷へ帰る者、あるいはまたある程度、相当数の者はこの自衛隊の勤務環境下におきましては自分たち専門医としての高度な知識、技術を修得することができないというようなことで、医師としての将来を不安に思っている者、そういうようなものがあるわけでございまして、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、医官たちが永続的な勤務意欲を有するように、医官が部隊に配置された後におきましてもさらに高度な知識、技能の修得ができるような機会を与えようというようなことで、ただいまその具体策について鋭意検討を進めておるところでございます。  いずれにいたしましても、私ども重大な問題と受けとめておりまして、今後、入試の時点での問題あるいは入学後の教育の問題、さらに先ほど申し上げました医師としての研修の問題等を含めまして、ただいま衛生局を中心にいたしまして関係部門とプロジェクトチームをつくりまして、その具体策を鋭意検討しておるところでございます。  さらに、第二点の御質問でございますが、予算ベースで申し上げますと、学生一人当たりの養成経費、維持的経費、また活動的経費を含めまして、初年度でございます四十九年度は一人当たり約五百万円、五十七年度が一人当たり約七百二十万円、これが一応の経費でございまして……(草川委員「六年間で」と呼ぶ)六年間を通算いたしますと、たとえば仮に第一期生にそれぞれ当てはめますと約三千二百万、第四期生に当てはめますと約三千九百万ということになっております。
  91. 草川昭三

    ○草川委員 たとえば、五十二年度から五十七年度分の合計で、医官を育てる経費が三千九百四十六万円になるわけです。そして、とにかく国家試験を通ってやめたと言ってやめる場合に、実は防衛医大は九年間の勤務の義務があるわけであります。ですから、九年間の義務を放棄をいたしますと、ペナルティーとして一期生の場合は千六百万円返せばいいわけです。二期生の場合は千九百万円返せば、ライセンスだけ取ってそれこそやめたでいいのです。  これはまさしく医官ではなくて遺憾です。どうですか、それは。腹が立つんじゃないですか、これは。これこそ税金泥棒と言うべきじゃないでしょうか。こういう現状を一体どのように考えられますか、お伺いします、もう一回。
  92. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私は、この問題に関しましては、非常に深刻に考えております。なお、返せばよろしいという問題ではないとも思っております。法制度から申しましても、九年の義務づけの法がございまして、むしろ返すことの条文はその後についておる条文でございまして、やはりこの問題について相当われわれといたしましても、先ほど担当局長答弁がございましたように、内部におきましても鋭意努力して検討を加えなきゃならぬ問題だ、こう考えておる次第でございます。
  93. 草川昭三

    ○草川委員 やめた理由が余り明確になっておりません、いま局長からもお話がありましたが。  実は私はここに一期生のアンケートを持ってきました。一期生のアンケートです。これはちょっと悪いですけれども下手な字の人ばかり書いてあるので読みにくいのですけれども、これは大変恐縮でございますが、私が責任を持って持ってきた資料であります。ちょっと読みます、問題点だけ、いかに内容がひどいかということを。これは卒業してから衛生学校の中にいる十九人のうち十五人の方々が書いたアンケートであります。  たとえば、配置をされていま部隊にいるわけです、そこは地区病院。四流以下の病院だというのです。世間に通用する医者が少ないというのです。自衛隊の中から、少なくともわれわれだけは通用できるようにしたいというのですよ。だから、卒業したけれども、配属になっているのだけれども、医師としての腕がないと言っているのです。四流以下だというのです。  自衛隊員が地区で腹が痛い、かぜを引いたと言っても、医官のところへ行かずに町の病院へかかると言っている。どういうことですか、これは。せっかく育てた医者がいるにもかかわらず、やぶだから町へ行くというのですよ。これは事実だから、書いているのだから。胸を張って患者を診れるような医師にしてくださいというのです、この一枚が。これは切実な声じゃないですか。逆には、胸を張って患者を診れるような医師になってないわけですよ。だから、やめちゃうのです。  自衛隊の医療は永久的にだめである、これが結論、たったこれだけしかない。  これは細かい戦傷病学がどうだとかというようなことも言っておりますけれども、実にくだらない、これからの後輩たちは不幸だ、一期生の運命は、非常に早くやめてみずからのドクターの道を歩んだ方が賢明のようだ。医官の待遇の悪さ、患者を診られない医官をどのようにしてフォローするのか、こういうようなことも書いてあります。  それから、衛生学校でいろんな教練をやるのでしょう。ピストル射撃で一日をつぶしたが、いまこれを実施すべき理由があるのか、われわれは幹部候補生学校でこれはもう済んだことだ、こういうようなことを言ったり、お粗末な地区病院のゆえに、隊員は本人も家族も満足な治療を受けられずに部外受診をしている、そして多額の金を民間に支払っている。組織の要求とはいうが、隊員はだれも治療小隊長に診てもらおうとは思っていない、命令なら別だけれども。命令でないと医官に診てもらわないというのを衛生学校の人が言うというのもあれでしょうね。  すべては幹部の停年前の図上想定である、従えぬ者はやめろか、よろしい、朱に交わらぬうちにやめよう、しかし防衛庁の医師つぶしは国家に対する犯罪だぞ、これは。こう書いてありますね。  まあこれ、ずうっと読んでいきますと切りがないぐらいにありますけれども、医官、幹部自衛官、指揮官という概念を捨ててもらいたいことだ、早く教育体系をつくってもらいたいというようなことが、もう、もろもろに、切々と訴えられております。  将来の構想が変わらない限り退職者は後を絶たず、自衛隊の医師不足は解消されないだろう。臨床症例の少なさ、駐屯地医務室の貧弱さ、兵隊さんの仕事の魅力のなさ、体制の変革がなされない組織は滅びる以外にはないのだ、本当に時間のむだだというようなことがずっと書いてあります。  まあ時間がありませんからこれでやめますけれども、防衛医科大学というのを中曽根さんのときにつくったけれども、それっきりになっておるわけでしょう。本当に総合医というものをつくるためにどのような愛情を持ってやったのか。防衛医大の学長は、日本医師会の武見さんの推薦で教授の経験のない人が学長になっておるのですよ。いいですか。教授の経験がないのですよ。教授の経験のない方でも、確かに臨床経験があるかもわかりません。だけれども、いま必要なのは体系が必要だ、こう彼らが言っておるわけです。  日本の防衛庁の中における医官というのは一体どういう役割りを果たすのか。昔の軍医さんなのか、総合医なのか。総合医なら、二年間の研修期間に総合的な研修をしなければいけない。ところが、臨床経験が少ない。全部で十一科目、内科、外科ありますけれども、二年間でわずか一カ月ぐらいしか特定のところへ行かないわけですから、完全な総合医になれっこないわけですよ。外科一カ月間、内科一カ月間、総合医ですから産婦人科も一カ月間。もっとも自衛官の中にも婦人自衛官もおりますから、それはいいんですが、われわれが願う、恐らく当初四次防の中で計画されたものはもっと違う総合医をつくるという話だったと思うのです。だから、ほったらかしなんですよね。入った人間は頭がいいですから国家試験だけは通るわけですよ。だけれども、臨床の経験をやれっこないから。健康な自衛隊さんを相手だったら、せいぜい、かぜですよ、腹痛でしょう。そうではないわけですよ。本来ならば救命救急のそういう大学に話をつけて、そこにほうり込まなきゃ。そこで医道というものを教えなければ、総合医なんかできっこないわけです。  だから、予算をつける、はい、防衛医大をつくりましょう、アメリカとも交流をしましょう、中曽根さん、そう言ったんですよ、つくったときには。アメリカとの交流もありません。防衛医大というものは中途半端な形に終わっていますから、とにかくここで四千万か五千万かけて、国家的な試験だけ通れば、どこかの病院に早く行って一人前の医者になりたいわけです。ですから、彼らも博士号取りたいわけですよ。博士号取る場所がどこもないわけですから、防衛医大では。何やっているんですか、たくさんの教授がいて。せめてそういう若い人たちの声を聞いて博士号を取らせるようなことをしなさいよ。臨床の教育ができるような関連病院をつくりなさいよ、町で。僻地山村ではだれも医者のいないところがまだあるんだから、そういうところへ行って、本当に愛される自衛隊になり、医官もそこで腕をふるう。そして、りっぱな医者になってもらいたいと思うのですよね。全くこれはむだな、ふざけた話も多過ぎると思うのです。  中央病院のベッド数だって、半分、五四・九%ですよ、稼働率は。こんなむだなことをやれるならば、いま医師はどんどんふえていくわけですから、だから医師を、卒業した人から防衛庁が任官させて、幹部候補生へ行って目的意識を持った人にやってもらった方がいいと思うのですよ。  大体、これはきょうは労働省には私、質問通告もしておりませんけれども、労働省は特別会計でお金があると産業医大をつくるわけです。自治省は自治医大をつくるわけ。防衛庁は防衛医大をつくるわけ。各県に一つ一つ私立病院も国立病院もつくるわけです。いま全国的に八千人も医者が出てくるわけですからね。これはまた後で質問をしますけれども、根本的な立て直りを求めなければいけないと思うので、これはこの辺で終わります。  総理からひとつ、総理がそもそもこれはつくろうと言ってやられたのがこういう結果になっておるわけですから、御見解を賜りたいと思います。
  94. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 当時は自衛隊の中に著しく医官が不足しておりまして、部隊の中に医者がほとんどいないという状態で、町医者に通ったりあるいは来てもらったりするという状態でありましたので、防衛医大をつくることにし、武見さんにも非常に御協力をいただいてやったわけであります。  しかし、その後の経過を見ますと、御指摘のように、現に修業し、あるいは卒業した人たちがかなりの不満を持っているということは、かねてから仄聞しておりました。特に、広範囲にわたる診療に当たれない、あるいは博士論文を出す大学というものがないとか、おっしゃるとおりのことを私も仄聞しておりまして、去年からそのことを防衛庁に連絡いたしまして、改革をしてくれということを私からも直接お願いしておったところです。そういうところから、防衛庁の内部におきましてもこの改革についていろいろいま措置を講じつつあるというところでありまして、御指摘の点等については深く考えて改革してもらいたいと思っております。  なお、防衛医大の運営につきましても、普通の医科大学あるいは教授会というような権威がなくて、そういう点においても運営上問題があるというようなことも仄聞しておりました。
  95. 草川昭三

    ○草川委員 それから、これは防衛庁長官にもざっくばらんに申し上げますが、私もここで取り上げた以上、退職者の方々全部にはお会いができませんでしたけれども、何人かの方々に私も直接会ってまいりました。それぞれの悩みがありました。それから、後輩の方々も言っておりますけれども、いまのこの中曽根内閣になってからの非常に軍備拡張というのですか、従来にない踏み外した態度を、防衛医科大学の学生はかなり深刻に受けとめております。これは考え方が甘いといえば甘いかもわかりませんけれども、下手をすると、これは本当に戦争になるかもわからぬな、こう言うんですよ。(「自衛隊の中で」と呼ぶ者あり)中で。これは実に私もショックだったですね。なぜあなた最初、防衛医大へ入ったんですか、目的を持って入ったんじゃないですかと言ったら、いやと、こう言うんですね。そんなに深刻に考えていません、とにかく医者になりたいから入ったんだ、こう言う人もいるんですね。だから、戦争に本当になるなら私、この際やめる、こう言うのです。  防衛庁の人に聞いたら、いや、だからこそ、やめたいやつはやめさせればいいんだ、総理大臣の前で、がんばりますと言って答辞を読んだって、やる気がないのだったらどんどんやめさせるのだ、こういうのが防衛庁の考え方でしょう。どうなんですか、その辺は。
  96. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私どもといたしましては、いずれにいたしましても、私どもが所管をいたしておりまする大学校でございます。この中における教育、さらに養成、こういう問題は非常に重大なものとして受けとめております。  なお、現在の状態につきまして、たまたま防衛医大卒業生の中で退職者がこのところ目立ってきたということが問題で、いま先ほど私が答弁に立たしていただきましたような形で防衛医大の改組を考えているのじゃございませんで、もっと本質的な問題が出てきておるというふうに考えております。先ほど担当局長答弁をさしていただきましたように、やはり現代の医学とそれからわれわれが目指しておりまする養成の問題、こういう問題につきましても、識者を集めてやはりこの際検討を加える必要もあろうか、そういう意味で目下庁内において、まず最初検討のタスクフォースをスタートさせた、こういうことでございまして、大変ありがたい御指摘をただいまちょうだいをいたしましたので、鋭意われわれもこの改組については努力をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  97. 草川昭三

    ○草川委員 では、次にひとつ移ります。  医療問題でございますけれども、これは臨調でも非常に強く指摘をしておるところでございますが、特に医療の中における薬価というものについて非常に臨調は問題提起をいたしております。  御存じのとおり、ことしの一月一日から薬価が四・九%下がりましたが、これが国の財政に及ぼす影響は約二千三百億、こう言われております。ですから、薬の値段が下がったわけですから、われわれは非常に喜ぶわけです。ところが、実際は上がってきておるわけですよ。薬価というのが実勢価格は上がってきておるわけです。これは一昨年の行革国会のときにも申し上げて、中曽根当時の行管庁長官から、それは初めてだという御答弁を聞いたことがありますが、これはどうして薬価が下がっておりながらも実勢価格が上がり、そして実際の医薬品の生産金額というものが、薬価を下げたとは別に金額的にも横ばいになったり、私どもの資料がまだ全部正確には出ておりませんけれども、上がっていくのかという問題があるわけであります。  きょうは余り細かい資料を実は皆さんの方にお示しをいたしておりませんけれども、たとえば日本で一番代表的な大学病院では東大の附属病院があります。東大の附属病院はちょうどこの五十六年の四月から十二月までの期間で幾らの薬代を払ったかというと、購入をしたかといいますと、十三億八千二百万円購入をしたわけです。ところが、その後のちょうどこれは六月に薬価が一八・六%下がっておるんです。だけれども、その翌年の五十七年の四月から十二月の一年間を比べてまいりますと、十三億八千万が十七億五千四百万に上がっておるわけです。一八・六%下がっても二六・九%、東大病院が払う医薬品というのは上がっておるわけです。代表的に京都大学を言ってもいいですよ。京都大学でも、この同じ五十六年の四月から十二月に十八億二百万。これが五十七年の四月から十二月までには二十二億に支払いがふえております。二二・一%伸びるわけです。  これは薬は、厚生大臣にちょっと聞いておっていただきたいのですが、もう繰り返し申し上げませんが、同じ材料を買ってきて、厚生省が指示する同じやり方で薬を生産をしてお医者さんのところへ持っていっても、銘柄、レッテルによってAランク・Bランク・Cランク、上下の幅が三倍も四倍も違うのです。なぜ違うのかというのは、町で流れている金額がそういうお金だから高いものは高く薬価が決まるわけです、中身は全く同じでも。だから私どもは、中身が同じならば安いところで薬価を決めなさい、こう言うのですがね。  ところが、大手の方々は話し合いをしてまいりまして、やみカルテルをやって、そして価格を引き上げるわけです。あるいは新しい薬を開発をしますと、昔とそんなに変わらぬのだけれども、カメの甲でちょっと化学方程式を変えると、新薬に収載をされますと、非常に高い薬になるわけですね。だから、医薬品というのは薬価を下げても上がるのです。  だが、臨調はここのところを御存じないわけでしょうね。だから臨調は、一年一回ずつ薬価調査をして、そして厳正にやればやればとおっしゃるけれども、実際は医薬品はふえていくのです。  公取お見えになっていますか。――ちょっと公取にお伺いをしますが、一昨年公取はメーカーのやみカルテルの問題について立ち入り調査をしましたね。これはもうそろそろペナルティーというのですか、これがあるいは下ると思いますが、その間の経過についてお伺いしたいと思います。
  98. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 医家向けの医薬品につきまして価格維持または再販売価格の維持が行われているのではないかという容疑でございまして、五十六年の十一月に栃木県中心で立入検査を行いました。相当膨大な証拠を収集いたして検討を加えたわけでございますが、その結果、あるいは全国的な規模に及ぶのではないかということで、全国的な規模で一昨年の十二月に立入検査をいたしております。さらに、それを補足いたしますために、五十七年八月以降、大体大どころを網羅しておると思いますが、メーカー約八十、卸売業者百二十、病院千三百、それぞれについてアンケート調査をやったわけでございます。現在では関係人からの事情聴取も一通り終わりましたので、問題点を詰めております。  こういう審査中の事案でございますから、結論の見通し等について申し上げるのはお許し願いたいわけでございますが、いまもお話ございましたように、一年以上経過しておる事件でございますから、できるだけ早く結論を出したいということでいま作業を急いでおる次第であります。
  99. 草川昭三

    ○草川委員 これは、公取は本当に姿勢をしっかりしていただきませんと、とかくいま製薬メーカーをめぐる政治的な動きが話題になっておる時期であります。公取はひとつ真剣に、このよって来る原因を徹底的に追及をして対応を立てていただきたい、こういうように思います。  厚生大臣は通産省の御出身でございますから、一物一価という考え方をずっと貫いてきておみえになると思うのです。薬がこんなに同じ内容、中身で上下の幅が違うということについてずいぶん驚かれたというお話を聞いております。アメリカはMACという一つの保険制度がございまして、日本と同じようにいろいろな値段の薬があっても、保険で請求する場合、これは救急医療のような場合でございますが、これ以上は幾ら高い薬を使っても払いませんよ、こういう一つのシステムがあるわけでありますね、御存じのとおり。このことについてある人は、日本にも同様な制度を導入をすると少なくとも五千億から五千四百億円ぐらいは薬剤費が下がるのではないか、こう言われておるのです。しかも、国立病院だとか大学の附属病院は、ほとんど一番高い薬を使うわけですよ。  厚生省は最近は、大学病院は一点十円を八円か七円に下げたいなんてことを言っておるようでございますけれども、その問題はさておきまして、どのような考え方を持っておられますか。
  100. 林義郎

    ○林国務大臣 草川議員にお答えいたしますが、MACというアメリカの制度は私も勉強させていただきました。マキシマム・アローアブル・コストですか、こう言うんだろうと思いますけれども、本当に緊急な場合または困窮な方々のためにそういったものをやっているというふうな制度と承っております。私はそれも一つの考え方だろうと思いますが、ただ、これを全体のいまの医療の問題に及ぼすわけにはなかなかまいらない点が多多あるだろう、こう思います。一つの御提言として私たちも検討してみたい、こういうふうに考えております。
  101. 草川昭三

    ○草川委員 それから、きょうは余り時間がございませんので、きょう午前中もいろいろとがんの問題が出たわけでございますが、いま国民の皆さんは本質的に、医療行政もさることながら、医薬品について非常に強い不信感を持っておるわけです。最近、昨年もかなりたくさんの企業の中から、データの捏造だとか大学の教室との不正な癒着だとかいろいろな話が山ほど出ました。それで厚生省の方も、実は薬効再評価といいまして、いままで認めた薬だけれども効くか効かないかというので再評価をしておるわけですね。  ところが、その再評価の結論がなかなか出ないのです。いいですか。おわかりかもわかりませんが、昭和四十二年十月以前に発売された薬の再評価をいまやっているのです。まだ結論が出ないのですよ。昭和四十二年です。何年前ですか、十五年前。これは効くか効かぬかと言って学者を集めたりいろいろな人に審査をさせているのです。いまもってその薬が効くか効かぬかという結論が出ないのです。その間、どういうことになっていますか。その薬が販売されていなければいいですよ。その薬がどんどん販売されているのです。  たとえばグルタチオン、山之内のタチオンというのは一年間百五十二億です。それから、協和のアトモランでも四十八億、持田のグルタチンなんというのは八十一億、杏林のアギフトール四十一億、それから大鵬薬品のグルタチオン・タイホーというのが三十八億、その他のサイクロモンBだとか塩酸メクロフェノキサート七十二億、むずかしい名前ですけれども、再評価にかかっているものが販売されている。皆さんがどこかの診療所なり病院で飲まれる薬の中には――これは最もポピュラーな薬なんです。腹痛だとかかぜ薬だとか、そういう薬が、四十二年から効くか効かぬかわからぬよと厚生省が言っているのですが、いまもってその結論がおりてないのです。そうでしょう、厚生省、その事実だけちょっとお聞かせいただきたい。
  102. 林義郎

    ○林国務大臣 草川議員にお答えいたしますが、医薬品の再評価につきましては、中央薬事審議会におきまして現在まで二十回にわたる答申が行われておりまして、医療用単味剤の有効成分数で約九割、医療用医薬品全体で約八割が評価を終わっているところでございます。今後の予定といたしましては、今年五月ごろまでに第二十一次の再評価結果を公表することとしておりますが、残る品目につきましても、できるだけ早く再評価ができるように作業を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  103. 草川昭三

    ○草川委員 どっちにしても十五年間かかっているわけですから、これはいかに日本の薬事審議会なりその審査に携わる学者が悪いかということなんです。全部メーカーと結託しているのですよ。だから、メーカーが学者に早く結論出すな。その間はその企業は独占になりますから、ほかの企業が私もつくらせてくれと言ったってつくれないのですよ、これは。再評価中だからだめだ。だから、再評価中なら、その薬の生産をとめなければいかぬのです。とめないものだからその間だけ、それをいいこと幸いに薬の生産が独占的にできるわけです。だから、新しい人に言わしてみれば、これは効かない薬かもわからぬわけですよ。そうでしょう、厚生省が再評価と言っているのだから。効くか効かぬかわからぬから調べろと言っているのだから。十五年間も独占を許すなんというのは、私は厚生省の姿勢がうかがわれると言うのです。どうですか、それは。悪いと思いませんか。
  104. 林義郎

    ○林国務大臣 薬の再評価は、現在の進歩した医学、薬学の学問レベルにおける評価方法に基づいて、いままでありました薬の有効性、安全性を再検討する作業であります。これは先生御承知のとおりでございます。  私は、その独占の問題というお話が出ましたが、独占という問題になりますと、やはり工業所有権その他の問題にも絡んでくる問題があるだろう、こう思います。そういった点も私たちは考えてやらなければならないことではないかというふうに考えているところでございます。
  105. 草川昭三

    ○草川委員 どっちにしても五月ごろだというのですから、早急に対応を立てていただきたいと思います。  それから、これも余り時間がございませんので、具体的な資料を出して御説明申し上げますが、私がいまから申し上げる資料は、本当にニュースソースが限られておりますので、私を信用してもらいたいわけでございますが、これはある国立病院の薬の発注書なんです。  これは、わかりやすく言うならば、外科の一カ月間なら一カ月間、これだけの薬を持っていらっしゃいよと言って入札をさせるわけです。これを見た卸問屋なりメーカーのプロパーが、薬価マイナス何%と言って入札をするわけです。この入札については、去年やりました。それはそれでいいのですけれども、実に微妙なことを――最初に公取のお話を聞きましたが、公取が一生懸命カルテルだとかやみだとか言って調査をしている間に、こういう利口なことを考えてきたのです。  たくさんの薬の名前がありますが、普通、薬というのは、千錠だとか二千錠だとか三千錠だとかいう箱になっているのです。常識的にラウンドナンバーの数になっているわけです。これだと神田の現金問屋も入札をしますし、卸問屋がたくさん入札をします。あるわけですから、メーカーから買ってくるわけです。ところが、ある薬一つだけに三千三錠という発注になるわけです。たった三錠だけプラスするわけです。すると、三千三錠なんという薬は町に流れてないのです。特定のところしかその三千三錠というのはいかないわけですよ。ということになると、これだけ厚い入札書をもらっても、たった一つだけ三千三錠という薬がないために入札できないのです。全部で百の薬があって、九十九までは私は入札できるのだが、たった一つだけ三千三錠というのはない。ほかは、いままでは三千錠の箱なんですね。三千三錠の入札資格があるのは、メーカーの、直結をした卸問屋だけなんですね。だから、結局、厚生省は、いま卸の再編成をやろうとしていますね。そして同時に、この辺をずっと伝っていきますと、私がかねがね主張をしておる、値段が、同じ内容でも、AとかBとかCとかというように分かれている銘柄別収載をやっていく限りは、ゾロゾロと言われる後発メーカーがつぶれるわけです。そして最後に残るのが、大手の企業の製薬メーカーだけが残る。薬価に反映をする三百何社の中で、六十社ぐらいにメーカーが再編成されるのではないかと言われているわけです。繊維の再編成のときには、通産大臣もお見えになりますけれども、必ずお金を出して機械を買い取り、造船の再編成の場合にも、ドックを買い取り、いろいろな基金をつくって行政指導をするわけです。製薬メーカーの再編成だけは、鉛筆なめなめで、幾らでも薬屋さんが再編成をされるわけです。私は、時間があと十分でございますのではしょりますけれども、こういうやり方については問題があると思うのですね。  ですから、これはひとつ厚生大臣とそれから公取にお伺いをいたしますが、いわゆる最近の厚生行政のあり方を見ておりますと、中小メーカーあるいは現金問屋排除の姿勢がいまのようなことからもうかがえるのではないかと思いますし、最近、近代化協議会でモデル契約書の策定作業が進められていると聞きますけれども、この契約書の締結を励行させる上で流通過程のチェックなんかが行われるということになりますと、実質的には現金問屋なんかが排除されることになると思うのですが、その点についてどのようにお考えになられるか、厚生省と公取の御意見を賜りたいと思います。
  106. 林義郎

    ○林国務大臣 草川委員にお答え申し上げますが、薬品業界と申しますか、製薬業界というのは、私はほかの産業界とちょっと実態が違うようにはっきり思うのです。それはやはり薬価基準というものがありまして、政府がコントロールをしているという部面もありますから。しかし、流通形態というのは、私は、自由主義体制のもとで、自由な公正な競争ルールが確保されなければならない、こう思うのです。先ほど御指摘がありました三千三錠というようなお話は、私、初めて聞かしていただきましたけれども、もしも、そういったことがあれば、そこはやはり直していかなければならない問題であろうと思います。  私も、厚生大臣に就任いたしまして、いろいろと勉強さしていただいておりますが、どうもやはり一般の産業界とずいぶん違ったところがある。薬の特異性というものがあるのかもしれませんが、やはり一般の自由社会の持つところの経済競争ルールというもので律してやらなければならないし、その前提には、独禁法の持つところの公正ルールというものが貫徹されるべきであろう、私はこう考えているわけであります。そうした意味で、当省におきましても、医薬品産業政策懇談会というものを設けまして、いろいろな角度から私は検討してまいりたい、そういうふうにいまやっているところでございます。
  107. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 医療用の医薬品でございますから、有効性、安全性、その確保が求められますし、また薬価基準との関連もある、それは特殊性でございますから、その点は認識しておるわけでございますが、そういう特殊性を持っておるといたしましても、医療用の医薬品の取引が自由競争、市場メカニズムの有効適切な発揮ということの中で行われなければならないということは、申し上げるまでもないというふうに思います。  昨年の当委員会でも、草川委員から某大学の一山買いの御指摘等もございまして、私どもは去年の六月、医療用薬品の流通実態について調査報告を出しました。その中で、卸売業者の系列化とか、それから自由な価格形成の制約とか、自由な流通の阻害とかのおそれのあることにつきまして、いろいろ指摘をしておるわけでございます。先ほどもお答え申し上げました独禁法違反被疑事件と関連する面もございますから、どのような具体的な指導を行うか、現在、検討いたしておるところでございますが、先ほどお尋ねのございました、中小問屋、現金問屋というものが流通から排除されていくのじゃないかという点でございますけれども、現在、厚生省で進めておられます医薬品流通近代化協議会、ここで取引条件の改善を図っていく施策の一つとして、モデル契約の策定を進められておるというふうに伺っております。現在、まだ具体的な検討には入っておられないようでありますが、その成案ができてまいります段階で、御懸念のことが起こりませんように流通に関する施策が実施されてまいりますように、関係省庁から相談があれば、適切に対処してまいりたいというのが私どもの考えでございます。
  108. 草川昭三

    ○草川委員 最後になりますので、これ三つだけまとめて質問をしますから、厚生省の方でお答えを願いたいと思うのです。  私、さっきちょっと忘れておりましたが、薬価が一月から引き下げになったのですが、実は、昨年の八月十二日に新しく薬価基準に収載されたセドラール、ナウゼリンというのが、昨年の八月に新しく薬で認められておりながら、ことしの一月に引き下がっておるわけですね。薬価の調査の対象にならないものがどうして下がるのかというのが第一問。  それから第二問。最近、医師会と厚生省との間の意思疎通がかなりいろいろな面であると言われておるのを私、聞いております、細かいことは申し上げませんけれども。その中に、実は、お医者さんの逆ざやというものもございまして、これ以上医師がふえるというのは問題があるのじゃないだろうかというので、医師の定員というもの、医学部の学生の定員ですね、入り口の学生の定員を削減をしたらどうだろうという声がかねがねありますので、これは厚生省と文部省でお答え願いたい。  それから最後に、再診料ということで具体的な例を申し上げますけれども、いまの、これは午前中にもちょっとあったかもわかりませんけれども、診療報酬をどうしても変えてもらいたいという声が、医師会というよりは、診療機関側の中にあります。薬価の差益というのが非常に少なくなったために、その声が出てきておるわけでございますけれども、たとえば再診料は、内科で再診をする場合には六十点つきます。ところが、眼科だとか泌尿器科だとか外科の先生方が処置をして再診をする場合には、三十五点プラス処置料というのをそれぞれ十二点とか十四点とか十点足しますから、外科の場合は処置をすると四十七点より請求できないわけですね。眼科の場合は四十九点より請求できない。泌尿器科の場合は四十五点より請求できないわけですから、内科の先生は――もちろん、内科の先生も六十点がいいというわけではありません、これをもっと上げてくれと言っておるのですが、それに比べますと、処置をした方が点数が低い。一体、厚生省は何を考えているのだ、こういうおしかりをわれわれも非常に受けるわけであります。  ひとつこの点をまとめてお伺いをいたしまして、そして最後に、これは総理から、いまこれも薬価というものを中心に、特に臨調が行革ということを言っておりまして、ここにも非常に強いメスを入れておる、総理は行管庁長官のときには物すごく行政改革に熱心だったと私も思うのですね、ところが、総理になってからは一段とトーンが落ちておるような気がしてなりません。それで、そんなことはないかあるか知りませんけれども、あるという人もおればあれだと思うのですが、もうちょっと全体的に、もう総理大臣になるとあれは忘れてしまうのでしょうかね、そんなこともないと私は思うので、ぜひ最後にその決意を賜って私の質問を終わりたい、こう思います。
  109. 林義郎

    ○林国務大臣 三問ほど御質問がございました。セドラール、ナウゼリンというのですか、それがどうなったかということ、それから眼科、外科、その他のところで診療報酬が異なっておるという問題、これは後から事務当局の方から答弁させますが、二番目の医師がだんだんだんだんふえてきておる、こういうことでございます。  確かにわれわれ考えておりまして、百五十人という一つの目標をつくってやりまして、これは六十年にそのくらいは達成しよう、こういうことでございましたが、本年中に大体これは達成できるようでございます。そうした状況でございますが、それでは全部医者がもう過剰になって、どこでも余っておるかと言えばそういうことはないわけでございまして、非常に過疎もありますし、それから人口急増地域で足りないというようなこともあるのでございますから、そういったものも踏まえてこれから考えていかなければならないと思いますし、いまお話しのございました医学部の定員等につきましては、そういった実情を踏まえまして文部省とこれからも相談をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  私も、いろいろな点がありますけれども、医療というものが適正に行われなければならない、同時に国民に信頼されるような医療でなければならない、こういったことを念願にしまして、医療の適正化にこれからも十分努力を払っていく決心でございます。
  110. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 従来医者が足らないということで、御承知のとおりに、医科大学やあるいは大学の医学部、こういうものを増設してまいっております。しかし、最近の状況を見ますると、どのくらいお医者さんがおったらいいんだということはなかなか簡単ではありませんけれども、御承知のとおり大体十万人に百五十人ぐらい、これは諸外国の例等も見てそういう想定でやってきておりますが、もうすでにいま厚生大臣からお話しのように五十八年で大体そういう水準に達する、こういう見方になっておるわけでございます。  ただ、今後は、常に言われておりますように、人口の、人間の高齢化あるいは医療水準の高度化とか多様化といろいろありますから、そういうものにどう応ずるかということで、医療の内容の充実、質の向上、こういう面に文部省としては力を入れていかなければならない。新たに医科大学あるいは医学部を増設するということはしないという方針をとっておりますが、しかし、どのぐらいが適当であるかというようなことは、これは医療との関係でございますから、厚生省とよくいま現に相談を続けておる、こういう状況でございます。
  111. 吉村仁

    ○吉村政府委員 第一のセドラール、ナウゼリンの問題でありますが、新薬につきましての価格は、昨年新医薬品の薬価算定に関する懇談会の報告に基づきまして、新薬であっても、比較対照薬が変動した場合にはその変動を考慮して薬価を改定する、こういう方針になっておりまして、その方針に基づきまして今回改正をしたわけでございます。なお、セドラール、ナウゼリンだけではございませんで、今回の薬価基準におきましては、このような例に該当するものといたしまして十四品目につきましては改定を行っております。  それから、第二番目の再診料における各科のアンバランスでございます。おっしゃるような点は確かにございますが、私どもとしては全体的にいろいろな形でバランスをとっておるつもりでございまして、なお御指摘のような点につきましては、今後中医協の議論を経まして少しずつ是正をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  112. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は行管長官を拝命して行革を一生懸命やってきたつもりでございますが、それを引き受けまして、今度内閣総理大臣を拝命しまして、いわゆる中曽根内閣の仕事の本命は行革である、そう実は考えておってきたわけです。このことは総裁公選のときにも自民党の有権者にそれを訴えてき、国民の皆さんは御存じだったと思います。  ただ、いままで外交案件で積み残しの仕事がかなりありまして、しかも対米関係の経済摩擦あるいは安全保障問題、それから韓国との関係における信頼の増幅あるいはECとの経済摩擦の危機、こういう問題が目の前に迫っておりまして、これはもう急を要する仕事でございましたから、そちらを優先して、ある程度これを打開したつもりでございますが、幹事長にも中国へ行っていただいて、先方の御了承、御理解も十分得られたと考えまして、あとはソ連関係、ASEAN関係が残っております。ASEANは私も自分で参るつもりでありますが、ともかくけさほども申し上げましたような考えで、対ソ関係についても総合的にまた考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  緊急措置みたいな考えで、現在の外交案件を目前の問題として処理してまいりましたが、いよいよ本命は行革であると思っておりまして、いま臨時行政調査会の答申を待っておるわけであります。  それから、内部におきましても、国鉄監理委員会設置に関する法律を上程し、また年金問題についても近く自民党の案を、国鉄やそのほかのいわゆる公的年金の統合ですね、この問題につきましてもいま鋭意党内で努力を願っておりまして、そうして、いよいよ臨時行政調査会も三月十五日で終わるということになって、その前に最終答申が出てまいりますが、これをよく点検をして、いままでのような精神に沿ってこれを実行していく、これがこの内閣の出てきた大きなゆえんでもあり、私の決心でもあるのであります。  そういうことで、熱意はいままで以上に燃え上がって、いまそれを待機している状態だ、そういうふうに御理解願いたい。この内閣の本命は行革だと、実はなったときから考えておるわけであります。
  113. 草川昭三

    ○草川委員 ありがとうございました。終わります。
  114. 久野忠治

    久野委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  115. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いよいよ総括も最後になったわけであります。大体世論の示すところは、いま程度の自衛隊は必要ではなかろうかという世論が七、八割ある。一方においては、憲法は守るべきであるという世論も同じように七、八割ある。これは一見矛盾するように見えますけれども、国民の一つの知恵だと思うわけですね。そこで、現在の自衛隊と護憲というこの二つの問題をどう調和させるかというのが国会議員としてのわれわれの一つの大きな課題であろうと思うわけです。  そこで、自衛隊が専守防衛という枠内であって、しかも憲法の歯どめあるいは軍事大国化しないようにいろいろな歯どめがある。その歯どめだけはきちんとしてもらいたいというのが、私は国民のおおよそのコンセンサスではなかろうかと思うのであります。私は、憲法上の歯どめあるいは軍事大国にならないための歯どめ、この座標軸と申しますか、メルクマールについて八つばかり挙げてみたいと思うのであります。これはいままでの長い国会の論争の中でも浮かび上がった問題でありましょう。  まず一つは、徴兵制度は違憲である。海外派兵は禁止をされておる。三番目に、非核三原則。四番目に、武器禁輸三原則。五番目に、費用の面から歯どめをかけるGNP一%の問題。そして、戦略的には集団自衛権はだめですよ、専守防衛の枠内ですよ、これが六番目。七番目には、やはり国際的な軍縮は大いに進めなければならない。そして八番目には、シビリアンコントロールを十分きかすべきである。私は大体こういう座標軸を考えておるのですが、その点は総理とコンセンサスができましょうか。
  116. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 同じであると思っております。  ただ、武器の問題につきましては、先般来いろいろ御議論がございますような次第でございます。
  117. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体論争の広場、共通点を持ち得ましたので、以下私は、わずか三十分でありますのでその時間の許す内でできるだけ問題点を詰めてみたいと思うのであります。  まず、この八つの歯どめのうち、いままで今国会では取り上げられなかったシビリアンコントロールの問題について取り上げてみたいと思うのであります。  自衛隊は、入隊をするときに日本国憲法を遵守しますという宣誓をして入隊しますね。もし、ほかの合格の条件が全部そろって、この憲法の問題で宣誓をする際に、私は、憲法については中曽根総理と同じ意見です、個人的には改憲すべきだと思います、そういうことを表明して宣誓を拒んだら入隊を許しますか、どうしますか。――いや、総理に。国防長官ですから総理の見解を聞いているのです。
  118. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 自衛隊隊員は国家公務員でございまして、国家公務員たるものは個人の各種の思想、信条を持つことはそれこそ個人の自由でございますけれども、国家公務員として行動いたすときにはおのずから制約がございます。したがって、ただいま御指摘のような憲法に反する言辞を自分で行うということを公然と入隊の時期において申し述べるような隊員は採用するわけにはいかない、こう考えます。
  119. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、中曽根総理と同じような感覚を持った人は自衛隊にははいれませんね。――いや、いまそうおっしゃっている。  次にお伺いをいたしますが、昭和五十一年の七月にさる自衛隊の基地内で「粛軍 政治と財界の癒着糾弾 田中角榮追放」のビラがまかれました。御存じですか。
  120. 上野隆史

    ○上野政府委員 いま先生の御質問の件につきまして、私、正確には記憶しておりませんけれども、自衛隊の施設内におきまして各種の反戦ビラあるいはその逆のものといったようなビラはよく配られるように理解しております。
  121. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは配られた。このとき、関係筋は、ロッキードクーデターが起きるのではないかと神経をとがらしたのであります。事実であります。  次に、防衛庁長官にお伺いしますが、昭和五十年二月に、私は予算委員会で、陸上自衛隊幹部学校のクーデター研究の内容を明らかにいたしました。当時の防衛庁長官は坂田道太議員であります。で、おやめになって、これは五十三年十月二十五日発行の「憂鬱なる密閉軍団」と題する田原総一郎さんの著書があります。その中で田原さんは、この元防衛庁長官坂田議員と対談をいたしております。この中で、緊急時の有事立法がいろいろできていないという問題が取り上げられた際に、坂田元防衛庁長官は、その経験に基づいて、このように言われております。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  「それ以上に怖いのは、」それ以上というのは緊急時の問題です。「それ以上に怖いのは、平時における自衛隊の存在でしてね」。田原さんが「クーデターですか?」と聞く。坂田さんはこう答える。「そうですよ。野党がね、いや、政治家が、そしてあなた方マスコミが一番心配しなければならないのはこの点なんですよ。」「巨大な武装集団ですからね。その気になれば、法律など犯してやってしまえばいい。げんにタイやチリではそれをやったわけだ。」「自衛隊をコントロールし、的確に管理し統御する仕組みができていない、国会が、いいかえれば国民がちゃんとコントロールできる仕組みができていない、ということなんですよ。わかりますか。シビリアン・コントロールがはなはだ曖昧である。現在のままでは危険きわまりない、ということなんですよ。わかりますか」。田原さんに坂田さんは念を押しているのです。  あなたは防衛庁長官としてそういうことを感じますか。
  122. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 現在そういうような不穏な空気が隊内にあるとかそういう意味感じ方ではございませんが、いやしくも自衛隊員たるものがみだりに政権について実力をもって転覆することを計画するとか、あるいは今日のわが国の憲法で認められておりまする各般の自由、特に、たとえばわが国におきましては現在政党政治でございますけれども、そういう問題につきまして行動をもってこれに何かを示すというようなことは、私は、現在の自衛隊の中にはまさかそういうことはないと確信をいたしておりますが、しかし、万が一誤解を招くおそれのあるような言辞、言動をなす者がいるとすれば、これは厳重に調査の上、対処する覚悟でございます。
  123. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 元防衛庁長官の坂田さんはこういう心配をされておる。平時の自衛隊の存在というものを非常にこわく感じられておる。これは、私は、重大な指摘であろうと思います。  私がいま、以下明らかにする問題は、決して政府を、中曽根総理を追及する、そういう立場ではありません。ある事実を明らかにして、これは相ともにわれわれが真剣に考えなければならない、そういう意味で取り上げるわけでありますから、決してこの問題を機密漏洩事件に切りかえたり、かつての沖縄密約電報のように切りかえたり、あるいは谷川さんもおっしゃったけれども、私は決して関係者を弾圧しろというような気持ちでやるのではない。そういう次元をはるかに超えて、本当にいまこの点が一つの盲点になっておるのではなかろうか、だからシビリアンコントロールを、制度はあるけれども、もう少し実効あるものにすべきではなかろうか、有効性のあるものにするためにはどうしたらいいか、そういう立場から明らかにいたしますので、その点は誤解のないようにひとつお願いをしたい。  事実はこういうことであります。  「五十四年国体改造論(クーデター)」未遂事件であります。「決起予定年月日」は「五十五年六月×日」である。五十四年から五十五年にかけ七カ月問計画を練る。決行日は関係将校全員が当直日に当たる「五十五年六月×日」とする。「決起部隊」、参加予定総員数は「一個師団規模」、つまり九千人ないし一万人であります。「陸上自衛隊、クーデターの主力部隊は名古屋の第十師団」、当時の大隊長補佐中隊長が問題を提起しております。「及び千葉習志野の第一空挺団。」「海上自衛隊は大湊地方隊、航空隊など。」「航空自衛隊は浜松の第一術科学校など。」  「計画の概要」、「浜松より飛来する航空機がナパーム弾二発で首相官邸を爆破、国会、NHK、自民党本部、社会党本部などを占拠、首都道路、海上を封鎖、制圧する。次に戒厳令をしき、臨時首班はあらかじめ決定、X氏になっておる。第一空挺団が決起すれば予定外の部隊も蜂起する予定。成功率は五〇%。ただし、決起部隊を鎮圧する部隊は恐らくないと確信し、現在の上層部には鎮圧する力はないと判断する。」  これは未遂になっておる。未遂の原因と結果はこうなっておる。「第一空挺団の動きが鈍く、同志の間で脱落する者があって五十五年四月ごろ決行寸前に自衛隊の誓務隊が情報をつかみ、内閣調査室も動いて未遂に終わった。」  どういう処分が行われたか。「処分、これが公になれば参加予定者はもちろんのこと、上層部にも責任が波及することを恐れたと同時に、全員がほとんど教官資格者で処分をすれば防衛に穴があくということで図上演習(治安行動研究あるいは暴動鎮圧研究)」この図上演習の行き過ぎという名目で極秘のうちに部内的に処分が行われております。連行されて事情聴取を受けた者は下士官ばかりであります。そして、処分の対象になった総員は百十二名。第一線勤務から外され、閑職に回されております。配置転換であります。航空自衛隊の場合は准尉クラスを含む将校四十二名が処分の対象になっております。  これは、私はこの計画に参加した人から聞き、ある程度の資料を持っております。先ほど申し上げたとおり、今後どうするか、これを望んでおりますがゆえに、その点は私は伏せます。真剣に受けとめていただきたいということが私の願いであります。  こういう計画は、あの三矢計画以来毎年行われておる。しかも、第一線の指揮官が参加している。そして五・一五、二・二六事件の失敗を教訓として綿密な計画が立てられております。時期的に言えば秋の御殿場演習のときが一番要注意の時期であります。関係者は、このまま現状が変わらないとすれば、四、五年じゅうに必ず起こるであろうと言っております。私はおどかしを言っておるのじゃない、関係者の言をそのまま伝えておるのであります。これら一連の計画には政治家や右翼は絡んでおりません。  そこで私は、今後どうすべきか、それについて提言をしてみたいと思います。  この関係者の、なぜこういう気持ちになったか。こういうことを言っておるのであります。  その第一は、政治不信であります。政治倫理が確立しない。一体何をやっておるのか。あのビラに言われるとおりでありましょう。したがって、政治の自浄能力喪失に対する絶望感というものが根底にある。  二番目に、産軍癒着に対する不信感があります。上級幹部の関連産業への天下り、政治家と防衛関係産業、商社との癒着、官民一体の堕落に対する憤激。そのとおりに言います、私は。言われたとおりに。  三番目に、教育不信。総理も先ほど言われました青少年の非行化の問題であります。学校内の暴力の問題であります。あるいは受験地獄、こういった教育の荒廃に対する失望があります。  四番目に、ここも大事であります。総理は、日米は同心円と言われましたけれども、日米安保体制に対する不安を自衛隊は持っておる。どういうことか。一体日本有事の際、日米共同作戦が行われたとき、統一指揮官はどっちになるのか。日本なのかアメリカなのか。アメリカの場合は、自分たちはアメリカの盾になるんじゃないか、われわれ自衛隊員は。そういう不安を持っておる。それから、有事の際に本当にアメリカは来援に来てくれるのであろうか。現にそういう心配を持っているんですね。  そうして、一番最後に、私はこれは特に訴えたいのでありますけれども、これは問題のあるところであります。つまり、自衛隊認知の問題でありましょう。現実に自衛隊員の諸君は、われわれはそうでもないけれども、やはり白い目で見られておる。あるいは日陰者だというような意識が根底にある。一生懸命、命がけで訓練しているのに、そういう感情があるのは事実であります。しかし、この自衛隊認知の問題は、憲法とかかわる重大な政治問題である。とはいえ、現実に三十万人近い武力集団である自衛隊員が存在をしておる。この存在を無視することはできないのであります。したがって、自衛隊認知にかかわる政治問題は、自衛隊員個々の責任ではない。個々の責任ではない、そこに一つの問題がある。したがって、自衛隊員に、やはりまじめな自衛隊員も多いのですから、誇りと使命感を持たせるためにはどうすべきかというのは、国民が七、八割支持しておる以上、国民の責任でもあると私は思うのであります。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 したがって、私は、国民がその責任をどう果たすか、これはシビリアンコントロールの有効性、これを確保するための最も基本の問題であろう。したがって、私も個人的にはいろいろ見解がありますけれども、私が提案したいのは、この問題についていつかは結論を出さなければならない。したがって、真剣にこれは国会としても政府としても取り上げるべき問題ではなかろうか、こういうことを非常に今度の事件を聞きまして痛感をしたのであります。  それで、私は、シビリアンコントロールの活性化の問題について幾つかあるうちで二、三提案したいと思うのであります。  制度的にはあります。まず、防衛庁に内局がある。シビリアンでなくては大臣になれない。国防会議があります。閣議があります。国会があります。制度的にはあるんです。しかし、実際にはどれほどの有効性を持っておるであろうか。たとえば、国防会議は、防衛庁設置法でつくられておる諮問機関であります。もう少し、現実に武力集団がある以上、私は、内閣が責任を持って、内閣直属の安全保障会議というようなものをつくるべきではないか。そしてそこで、単にその武力の問題だけでなしに、広く総合的な安全保障を検討する、責任を持たせるべきではなかろうか、これが一つであります。  それからいま一つは、国会のシビリアンコントロールであります。われわれもいろいろ主張をしまして安保特別委員会ができました。私はいいことであると思います。ここで大いに私は議論をしてもらいたい。もう少しこの特別委員会が権威あるものになるべきであろう。本当にコントロールできるような何らかの仕組みを工夫すべきではなかろうか。そのための一つ提案としては、情報を知らなくてはコントロールしようがないわけです。しかし、防衛情報というのはマル秘が多い。この国会の安保特別委員会だけにはできる限りの防衛情報を提供をして、そして真の歯どめを考えるべきではなかろうか、そういうことを私は考えるのであります。  以上の点について、総理あるいは官房長官の御見解を承りたい。
  124. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 楢崎さんが御提示になりました、この自衛隊のクーデター計画、私は今日の自衛隊にそのようなことがあろうとは思いませんし、ないことを確信をいたしておるわけでございます。といいまするのは、ちょうど私が大平内閣におりましたときに同じような趣旨の御質問が参議院であったわけでございます。その際にも、防衛庁長官等からもそういう事実はない、心配はない、御安心願いたいといった趣旨の答弁がございましたが、それのみならず、私自身自由民主党の安全保障調査会の副会長をやっております、そういうような観点から、いま御質問のようないわゆる自衛隊のクーデター計画、たまさかそういう風評を耳にすることはあるわけでございますが、私も私の立場上、それなりの調査はその都度やっておるわけでございますが、いつの場合にもそれらはいずれも事実無根ということであったわけでございます。こういう経験に徴しましても、ただいまの御質疑はないことを確信をいたしておるということでございます。  しかし、事は武装部隊のことでございまするし、また同時に、こういった席での楢崎先生の御発言でございます。やはりそれなりに重要に受けとめまして、それに対処していくという心構えもなければならぬ、そうすることが国民の何よりも不安感を一掃するゆえんであろう。同時にまた、日夜教育訓練に汗を流しておる自衛隊の名誉のためにも、私は調査をしてはっきりさせるべきことははっきりさせなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  なお、御提言のシビリアンコントロールの問題は、今日のこの自衛隊存立の基盤でございます。そういう意味合いから、やはり私はただいま御提言の趣旨等も踏まえて、シビリアンコントロールが完全に作動するように取り組んでいきたい、かように考えております。
  125. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ぜひそうお願いをいたします。  次に、時間がもうないのですけれども、土曜日に岩垂議員とのやりとりの中で、総理はどうしても非核三原則を国是だとおっしゃいませんね。なぜなんです。あなたは定義が何とかかんとかおっしゃいますけれども、いいですか、学研の国語大辞典見ても岩波の国語辞典見ても、決まっているのです。「国家や国民がよいと認めた国政上の基本方針」「国家としての方針」、これを国是というのです。総理が別に中曽根国語辞典研究所をつくられるなら別の解釈ができるかもしれないけれども、大体こういうことなんです。そういう意味でみんな使っているのですよ。国会もそういうことで決議をしているのです。  ちょっと私まとめておきますけれども、過去非核三原則を含んだ国会決議は五回行われております。第一番が、非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議、これは昭和四十六年十一月二十四日の衆院本会議、全会一致であります。次に、核兵器の不拡散条約に関する件、五十一年四月二十七日衆議院外務委員会、全会一致であります。三番目、国際連合軍縮特別総会に関する決議、五十三年五月二十三日衆議院本会議、全会一致であります。四番目、核軍縮に関する決議、五十六年六月五日衆議院外務委員会、全会一致。五番目、第二回国際連合軍縮特別総会に関する決議、これは昨年五月二十七日衆議院本会議であります。  この五つのうち、いま申し上げた二番目から五番目は全部非核三原則は国是であると文章に書いてあるのです。さらに、五十三年五月三十日、園田外相は非核三原則を国是として次のように国連軍総総会で述べておるのです。これは原稿になっておる。いいですか、「議長 核兵器の廃絶に対する日本国民の強い願望を背景にして、わが国は、核兵器を開発しうる能力を持ちながらも、あえてこれを持たず、作らず、持ち込ませず、という非核三原則を国是として堅持しております。」国際的に公約しておるのです。次に、これは私も現場に行って聞いております。昨年の六月九日です、あの国連本部で。第二回軍縮総会で鈴木総理は次のようにやはり国是として訴えております。「わが国は、この憲法の下、軍事大国にならないことを決意し、核兵器については、持たず、作らず、持ち込ませず、という非核三原則を国是として堅持しております。」これほど国際的に宣言をしておる。  この国是をあなたはどうして認めないのです。なぜ認めないのです。もし、あなたが何か意識して、含むところがあって認めないなら、これは非核三原則のこの政策をどこかで変えようという意識があるのですか。素直にどうして認めないのです。国際的に公約しておるじゃありませんか。
  126. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国是という言葉の定義にもよると私申しておきましたが、そのときの発言も、非常に重要な国の基本政策でございますと、そういうことも申し上げておりまして、いわば国是と申しても差し支えのないものであると私は思っております。  ただ、いままで私が承知したところでは、外務委員会でその決議が行われたことがあったそうです、国是と称しての決議は。(楢崎委員「本会議でもそうです」と呼ぶ)本会議では国是云々という正式の決議は……(楢崎委員「いや、ありますよ、そんなことを言うのが間違いというのですよ」と呼ぶ)国是という正式の名前がはっきり出ていた、国是になぞらうとか、あるいはいわば国是というがごときとか、そういう間接的な表現が用いられていたと私は勉強しておったのです。(楢崎委員「そんなことを言うからまた訂正しなくちゃならぬのです」と呼ぶ)もし私の考えが間違っておりましたら、よく注意して調べてみます。
  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうも、何でそんなにこだわるのですか。私がいま五つ並べました、全部言ってください。
  128. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いま法制局長官の話によりますと、五十三年の五月の決議にあるそうです。したがって、私の考えを訂正して、あなたのお考えのとおりにいたします。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうでしょうが。素直になられていいのですよ。私は何もあなたの揚げ足を取ろうというのじゃないのですから。  それではもう一つ、この点私が非常に心配をするのは、四十五年あなたが防衛庁長官のときに訪米された。九月の九日午前十時五分から十一時五十分までレアード国防長官と会談をされました。同席したのは牛場大使、穴戸局長、松金陸将補、桃井防衛研究所員、清水防衛駐在官、アメリカの方はウェアー国防次官補、ドーリン極東担当及び官補代理外、非常に正式な、あなた、わが国を代表して行かれたわけであります。このときあなたはレアード国防長官に対してこう言われておりますね。三十二年五月二十日国防の基本方針が決められた。その国防の基本方針を十三年間も経たから、その当時、四十五年当時国防の基本方針を改正すべく検討中である、その検討する中で、このように変えたいという希望、あなたの考えが述べられている。国防の基本方針の中に、どう変えて入れたいというあなたのお考えであるかというと、こうです。米国の核兵器の再導入、つまり導入ですから恐らくイントロデュースを使われたんだろうと思うのですね。あるいは、再がついているから、リイントロデュースと使われたかもしれぬが、米国の核兵器の導入については留保しておく方がよいと考える。これは事前協議の対象となるものであり、選択の可能性を残して留保しておくのが賢明と考える。改定はなし得れば今年秋までに実現したい。非常に具体的にあなたはおっしゃっているが、いまもその考えは変わらないですか。このときにはすでに非核三原則はあったのですね。この非核三原則の持ち込みという点について、あなたは留保した方がいい、そういう考えですよ。
  130. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 レアードさんと核の持ち込みについて話したことはありません。私が申し上げましたのは、一つは、日米安保協議という場合において、こちらの方は防衛庁長官、外務大臣が出てくる、しかし向こうの方はアメリカ大使と太平洋軍司令官である、これでは格が合わない、こっちが大臣が出ていくならば向こうも大臣が出てきなさい、その話をしまして、それは研究しようということになったが、結局防衛庁長官が相互に行ったり来たりするという形でこれが解決しまして、そういうことをいたしたわけです。  それから、国防の基本方針について、具体的にそんなこと、人に相談したりなにかすべきものではないのです。ただ、私があのころやりましたのは、官房長官と外務大臣防衛庁長官で三者協議の機関をつくりまして、基本方針も含め、外交、防衛全般に関する総合的な勉強、検討をしていこうじゃないか、そういうのでやりまして、保利さんと愛知さんと私で何回か会合しました。  そのときに私がなぜそういうことを言ったかといいますと、あなたおっしゃるように、国防の基本方針の最後の部分はどうだろうかという気がしておったのです。というのは、最後の部分は、日米安全保障条約を基調として日本は国を守るとかなんとかという、そういう文章になっておったわけです。私は、日本はまず自分で自分の国を守る、足りない部分を安保条約で補完する、そういうふうに書くのが主ではないだろうか。  自衛隊ができ、あの国防の基本方針ができたのは昭和三十二年ごろだったと思うのです。三十年から三十二年ごろです。全く微弱な時代、自衛隊の力がなかった時代ですから、安保条約を主にして、そして自分で守るというのを後にしてあるのです。しかし、四十五年ぐらいにもなって、そして相当の力もだんだん持ってきているわけですから、やはり自分で自分の国は守る、足りないところは安保条約で補完する、そういうふうにすべきであるという考えを私持ちまして、その話を持ち込んで、官房長官と外務大臣と三人で話しましたが、あのときの保利さんは、こういうものは静かにしておこうや、そういうことでそのままになったといういきさつがあります。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私が聞いてないことを長々言われても困るのですよ。そういうことも、あなた全部言っているのだ、この中で。その中にこれがある。  じゃ、あなたはこの考えはないですか、これを別にして。留保するということは、持ち込みについて留保するという考えはないのですか。
  132. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 それはいままでの政府答弁と同じであります。したがって、法制局長官から答弁させます。
  133. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 この議事録は非常に重大ですよ。いいですか。そうしたら私はこの議事録の信憑性――あなた、何、議事録を知っているの。議事録のことを私は言っているのですよ。信憑性について、私は理事会で明確にしてもらいたい、関係者を呼んで。
  134. 久野忠治

    久野委員長 法制局長官から答弁いたさせます。
  135. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 非核三原則は、いかなる場合においても厳守するというのが政府の方針であります。
  136. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたにそんなことを聞いていないのだ、何言っているのだ。委員長、この議事録は重大ですよ。これがにせものなら私は撤回しますよ。これは、理事会でひとつ関係者を呼んで、明らかにしてください、そんなごまかしを言うんだったら。(「時間、時間」と呼ぶ者あり)私のときだけ時間、時間と言うが、じゃ一問だけ聞きますよ。いいですか。  戦艦ニュージャージーがこの八月から第七艦隊の守備範囲に入ってくる、御案内のとおり。これはトマホークを積んでくるのです。これは、ロング太平洋司令官が昨年の四月二十六日にハワイで、リムパックの後で日本人記者会見をやって、明らかにしておる。トマホークは中距離弾道弾ですね。したがって、事前協議の対象になりますね。第七艦隊の守備範囲に入ってくれば、当然佐世保、横須賀に寄港の問題が起こる。  じゃ、もう時間がないから続けて聞きます。  まず、これは中距離弾道弾であるかどうか。三千二百キロの射程を持っている。核の場合は二百キロトンです。広島の十六倍、長崎の九倍の威力を持ったトマホークです、核の場合は。核でなくても、中距離弾道弾、中距離ミサイル、これが中距離ミサイルであるかどうか確認をしてもらいたい。二番目に、寄港する場合に事前協議の対象になるかどうか。三番目に、寄港の要請があったら受け入れるかどうか。この三点について御見解を聞きたい。
  137. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 具体的には政府委員から答弁させますが、わが国は、いま法制局長官が申し上げましたように、非核三原則を厳守するわけでございますから、事前協議があった場合においても、核の持ち込みについてはすべてノーということでございます。
  138. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 非核の場合はどうですか。
  139. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 御承知のように、核兵器の持ち込みについて事前協議の対象になっておりますから、非核のトマホークのミサイルがあれば、それは事前協議の対象になりません。
  140. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは重大ですね、あなた。指摘だけしておきますよ。いいですか。藤山・マッカーサー口頭了解ではどうなっていますか。そして、四十四年二月十四日外務省発表、これはゼントルメンズアグリーメントの内容です。(発言する者あり)
  141. 久野忠治

    久野委員長 御静粛に願います。
  142. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 「装備における重要な変更」の場合」は、「核弾頭及び」――「及び」です、核弾頭とほかに「中・長距離ミサイルの特込み」となっている。これが事前協議の対象になるようになっているのだ。非核でもそうなんです。どうしてか。あなたが答弁しているよ、私に。中距離弾道弾も非核であっても持てません。なぜか。それは攻撃的兵器であり、外国に脅威を与えるから持てない、こうあなたは答弁している。いいですか。非核だったら事前協議の対象にならないなどというのは、いままでの口頭了解の違反ですよ、これは。全部そういうふうにしてあなた方は壊していくんだ。後で私はまた別の時間にこれは徹底的にやりますよ。  終わります。
  143. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 藤山・マッカーサー口頭了解の内容が、核弾頭、中長距離ミサイルの持ち込みというものが事前協議の対象になっておるということ、そのとおりでございます。ただ、ここで申し上げておる中長距離ミサイルというのは、あくまでも核兵器としての中長距離ミサイルであることは、従来から、安保国会以来一貫して政府が御説明しているとおりでございます。
  144. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃ、中長距離ミサイルは非核だったらいいの、それはいいの。いままでの答弁をあなた、ぎりぎり変えちゃ困るよ。
  145. 久野忠治

    久野委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次に、大出俊君。
  146. 大出俊

    ○大出委員 先ほどの楢崎質問にちょっと関連をいたしまして、私もどうしても心配になりますから、重ねて承りますが、非核三原則は国是である、国是として堅持する。いまの総理答弁は、であれば、五十三年とおっしゃいましたかね、国会決議があるというので、私の見解は訂正しますと、こう言う。重要な政策であるというふうに答えている見解を訂正いたしますと言うだけのことで、非核三原則は国是として堅持するとおっしゃらない。中曽根さんのことですからまた後になると、私は私の見解を訂正いたしますと言っただけだ、こうおっしゃりかねないので、ここのところをひとつはっきりしていただきたいのでありますが、国会決議で国是というふうにうたったのはないとしきりにおっしゃったわけでありますので、きっちり申し上げておきます。  たくさんございますが、五十三年の五月二十三日の国際連合軍縮特別総会に関する決議、本会議決議であります。二つ目に「唯一の被爆国であり、非核三原則を国是として堅持する我が国は、」明確であります。「非核三原則を国是として堅持する我が国は、」云々。  次、昭和五十七年、昨年であります。五月二十七日、第二回国際連合軍縮特別総会に関する決議、二行目に「平和を願い非核三原則を国是として堅持する我が国国民の一致した願望であり、」ここにも明確に「非核三原則を国是として堅持する我が国国民の一致した願望であり」。  これは、かつて内閣、外務、安保三委員会合同審査がございまして、鈴木さんの時代に、国是論争というのがございまして、国是とは何か。国民のほとんどの方々が支持する政策、国の政策、国会が満場一致で、全会一致でお決めになった、だからほとんどの国民の方々が支持する重要政策、そういう意味で国是でございますというふうに鈴木さん、お認めになっている。  そのことをあえてこの際つけ加えておいて、さらに外務委員会の五十一年四月二十七日の決議にも「国是」と入っております。「政府は、核兵器を持たず、作らず、持ち込まさずとの非核三原則が国是として確立されていることにかんがみ、」主語は政府でございます。  さらに五十六年六月五日、核軍縮に関する件、ここでも「唯一の被爆国として、持たず・作らず・持込ませずの非核三原則を国是としているわが国は、」と明確でございます。  後のことがありますから念のためにつけ加えますが、鈴木総理の施政方針演説、五十六年一月二十六日、「わが国の防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国とならず、さらに、非核三原則を国是とすることをその基本方針としています。」明確であります。  中曽根さんは鈴木政治の方針を踏襲するというふうに述べておいでになりますが、だとするならば、非核三原則をわが国は国是として堅持する、あなたも国是として堅持する、そのことをお認めになる、こうお答えいただきたいのですが、よろしゅうございますか。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 先日はとっさにお聞かれしたものですから、私は勉強不足でありました。私の記憶にはたしか外務委員会で何とかという、かんがみという言葉があったのでいまのような答弁をしましたが、いまいろいろ御指摘をしていただきますれば、確かに国是であると私も認める次第でございます。
  148. 大出俊

    ○大出委員 ようやくおっしゃいましたな。  これもひとつあわせてお認めいただきたいのでありますが、五十三年の五月三十日に園田外務大臣が、国是である国会決議、これをお受けになりまして国連の軍縮特別総会に御出席になりまして、世界各国の方々がおいでになるところで、「核兵器の廃絶に対する日本国民の強い願望を背景にして、わが国は、核兵器を開発しうる能力を持ちながらも、」大事なところであります。「あえてこれを持たず、作らず、持ち込ませず、という非核三原則を国是として堅持しております。またわが国が核不拡散条約の締約国となったのも、核廃絶への願いからであります。」こう演説をされております。  さらに五十七年の六月九日、昨年の六月九日、「我が国は、この憲法の下、」その前に平和憲法を述べておりまして、これは鈴木総理がわざわざ御出席になっての御発言であります。「我が国は、この憲法の下、軍事大国にならないことを決意し、核兵器については、持たず、造らず、持ち込ませず、という非核三原則を国是として堅持しております。」これは国連総会の鈴木前総理の演説でございます。  国際的にも明確になっているという点について、非核三原則は国是である、そのことが国際的にも明らかになっているということをお認めいただけますか。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 お認め申し上げます。
  150. 大出俊

    ○大出委員 そこで、川俣委員から、後、私の質問があるからということで先ほど発言がございましたので申し上げたいと存じます。  実は、この武器技術輸出禁止国会決議に対する行政府の、私に言わせれば言語道断な勝手な解釈、これはもう何とも許しがたいのでありますが、これを深く触れてまいりますと進行不能になりますので、その入り口だけひとつ取り扱いを明らかにしていただきたいのでありますが、先ほど川俣委員から申し上げましたように、塚本さんの御質問の中で、簡単に申し上げれば、国会で国会決議にもなっている、それを政府が行政的に一つの解釈をなさろうというならば、何で一体各政党にあらかじめ、党首会談もあったのだから、政府側で意を尽くした話をしないのか、当然なことではないか、そのことが大変にまずかったのじゃないかという追及でございました。  これに対して、総理が何と申されたかといいますと、これは速記でございますが、「そのときには、両院の議長、副議長さんにはたしか私からお電話で事前に御連絡を申し上げた次第でございますが、しかし、各党に対しまして事前にそれを行わなかったということは大いに反省いたしておる次第でございます。」両院の議長、副議長に武器技術対米供与に関してあらかじめ電話で事前に御連絡を申し上げてございますという御発言がございました。  これに対して、わが党出身の副議長さんもおいでになります。車の中でカーラジオで聞いておられて大変に御立腹なさいまして、ふざけたことを総理は言うというので、直ちに連絡をいただきました。わが党出身の参議院の秋山長造副議長さんでございます。  私も実は秋山さんに早速、川俣君に連絡がありましたからお話し合いもしてみました。これこそまさに国会軽視だと、彼、副議長さんは大変なお怒りでございまして、なぜかというと、あなたは、武器技術供与どころではない、武器のブの字も何も言わぬと言うわけですな。ちゃんと御本人――あの方は皆さんがよく御存じのように大変まじめな方でございまして、どなたもお認めになるとおりであります。いいかげんなことを言う方ではありません。  秋山さんはこうおっしゃっている。いや、大出君、私、岡山の自宅におったのだ。成人式という日でございます。もう実は休んでおりました。私にも大変丁寧な口のきき方をなさいます。多分夜の十一時半近かったと思う、こう言う。中曽根さんからだと言うので、いや、こんな時間にと思って、これはだれかのいたずら電話に間違いないと思って出てみた。ところが、どうも総理のようであった。そこで、どういうことでございますかと言ったら、韓国にかくかくこういうわけで行ってまいりました、これから訪米をいたします、ごあいさつをと思っておりましたが、電話で失礼をさせていただきます、すぐに帰ってまいりますので、どうかよろしくお願いをいたします。これだけであります。二分かそこらの電話であったと。武器技術のギもブも何にもない。それでここでこういうふうにお述べになるという。これは私は確かに――秋山さんは早速速記を起こしてお読みになったが、何となく事前に御了解願いたいという意味の電話を入れたようにも受け取れる、しかし、私はれっきとした参議院の副議長で、一言半句も武器のブの字も聞いていないのに、何としてもこれはみずからおさまらぬというわけですね、黒白をはっきりさせてくれ。ここのところ、うそを言うような方じゃございませんので、ひとつ承りたいのでございます。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私が、武器技術輸出の問題につきまして、やはり国会の関係が非常に頭にありまして、両院議長、副議長さんには御連絡申し上げ、御通知申し上げなければならぬ、そう思っておりまして、記録を調べさせました。  正確な記録をたどってみますと、福田議長さんには一月十五日の朝十時ごろ福井の事務所へお電話を申し上げました。そのときに、訪米のごあいさつとあわせて、武器技術対米輸出について政府の方針を申し上げました。これは事前でなくて事後であったわけです。この点は間違いでありました。  また、調査しましたところ、岡田副議長さんに対しては、同じく一月十五日土曜日のお昼ごろ、北海道美唄市の事務所の方へ同じように御連絡をし、御通知申し上げました。  徳永議長さんは、最初十五、十六日が休暇で、成人式とかそういうことで連休で休んでおったころでございます。十七日の月曜日に議長公邸へお伺いしまして、遅くなりましたが、これこれでというふうに申し上げました。  秋山副議長さんに対しては、一月十五日の夜だったと思いますが、お電話をしました。岡山市の事務所だったと思います。しかし、私は申し上げたつもりでありますが、副議長さんがその点は聞かなかったとすれば私の誤りであるかもしれません。その点は、間違っておりましたら御迷惑をおかけいたしましたと申し上げる次第でございます。
  152. 大出俊

    ○大出委員 中曽根さん、秋山さんは、言いもせぬことをなぜうそを言うかということなんですよね。総理答弁、とかく軽く出てまいりますけれども、一言も武器のブの字も言わぬ。武器のブの字ぐらい、聞いておれば記憶に残らぬことはない。日にちが幾らもたってない。だから、あなたの御発言を受けてとっさに電話をかけてくる。当然でしょう。しかしどうして総理は、事、予算委員会の席上ですよ。これこそが国会軽視だと秋山さんおっしゃっておりますが、私どもにすればこれは明確なうそだということになる。総理にうそを言われたり、ごまかされたりされて黙っているわけにいきませんよ。どう決着をおつけになりますか。はっきりしてください。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ただいま申し上げましたようないきさつが調査をしましたらわかりました。そこで、秋山副議長さんにもしそのことを申し上げておかなかったとしたら私の落ち度でございますから、ここで訂正さしていただき、また陳謝申し上げる次第であります。
  154. 大出俊

    ○大出委員 御本人が非常に腹を立てておいでになりますが、私もどうも総理がそういうふうに――最近少し姿勢が大分変わりましてね、総理、何か気味が悪いみたいですがね。  ところが、妙なことをまた、そう言っていながらおっしゃるので、これまた気になりますから承りたいのでありますが、いまの件はそういう事情でございますから、総理がお考えになって、そのようにひとつ御処理を願いたいと思うわけでございます。  どうも、海峡封鎖という問題をめぐりまして私が御質問を申し上げたときには、ワシントン・ポストに対して、いざというときという表現をした、そこが欠落しておった。いざというときとは、つまり日本が侵害を受けたとき、こういうことだ。まだ議事録ができておりませんので、私行って細かく私と総理のやりとりを――できるだけ総理にお話をいただきたいと思って質問をいたしましたので、大変長く延々と総理は物を言っておいでになりますが、要約をいたしますと、つまり、私は、三月十七日のギン在日米軍司令官の下院の外交委員会における太平洋問題小委員会、ソラーズ委員長のところでの証言を引き合いに出したりいたしまして、アメリカとソビエトが戦わない、そのときに日本とソビエトで戦争が起こるなんということはあり得ない、つまり、米ソ戦争というものからして日本にソビエトとの紛争、戦争が起こる、それしかあり得ない、こう言っているところをとらえて、だから四海峡封鎖、完全にコントロールする、十分にというようなことを言えば、アメリカにやれと言われたらどうするんだ、こうやるんじゃないのかと言ったら、わが国のいざというとき、つまり侵害を受けたとき以外は一切そういうことはさせない、こうお答えになっている。  また、土曜日の午前中、わが党の岩垂君がそこだけ抜き出してあなたに聞いたところが、これまた同様に明確に、アメリカが言っても日本が直接攻撃をされていないというのであれば、これはノーですとはっきり言われました。ところが、午後しばらくたったところでほかの方が質問をされたところが、東中さんでございましたか、妙なことが出てまいりましたね。  谷川さん、あなた、私の質問にも答えているんですよ。あくまでも海峡封鎖というのは日本有事のときである。ほかの国が言ったってそれは認めない。しかもあなたは、NHKの討論会で私が物を言ったら目の前で答えたでしょう。国民の皆さん御心配ございません、アメリカがとあなたはおっしゃるけれども、日本が攻められたときだけと、ここに江藤先生もお見えになっておりますが、あなたは落ちついてはっきり答えられたですよ。  そのあなたが突如として豹変をされて、ここで、防衛庁長官という立場ならばこれはノーでございます、ただし政府ということになりますと、一防衛庁長官というわけにまいりません、こう言い出した、私も聞いておりましたが。妙なことでございまして、国民の皆さんが見ておいでになる席上で私が物を言ったら、あなたはきちっとお答えになっている。みごとなもので、感心して私は承った。そこまではいいのだが、さてそこから先、政府全体ということになりますと、私は一防衛庁長官でございましてと来る。  そうしたら中曽根さんが出てこられて、とは言っても、わが国が侵害をされていないというならば、それは原則ノーである、ただし、日本への武力攻撃の可能性が非常に緊迫性を持っていると判断される場合とか、日本の船舶が国籍不明の船などで甚大な被害を受ける場合には、そのときの状況によります、こう答えた。そのときの状況による限りはイエスがございます。  これは一つの予算委員会でございまして、私どもが質問をした。直前に岩垂君が同じことを質問した。ノーである、原則も何もおっしゃっていない、谷川さんにしても。ところが、途端にそれが変わるというのは一体何です。私はそんなふざけた答弁は許しがたい。  何かがあったというならば、それはいみじくもアメリカ側で議会証言がございます。レーマン海軍長官以下の海軍の三高官、それからワトキンス海軍作戦部長、いろんなことを言っておいでになりますが、何かがなければそう変われるはずはない。何にもなくて変わったんだというならば取り消していただきたい。私どものみならず質問者ほとんど全部の方々に、この問題に触れた方々に同じように答えておいでになるはずだ。総括の終わりに近づいていきなりぽんと変わるとはどういうわけですか。  しかも、そのことは立場が違っても国民全体が心配している。さっきの自衛官の皆さんのお話もありましたが、草川さんのお話もありましたが、巻き込まれるということだけは避けたいという気持ちは防衛庁の中にもある。私も古いからよくわかっている。部隊を歩くといったって、私がこの二十年間一番よけい歩いているかもしれない。知らなくはない。だれしもそこを心配する。日本は攻撃されてないのだが、アメリカが勝手に封鎖をする、そうすれば、これは戦争になるのじゃないか、こうなるでしょう、だれが考えたって。何があったのです、一体。何もないのなら変えてください。撤回してください。
  155. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 先般の岩垂議員並びに東中議員に対します私の答弁は、お二人の委員の御質問のようなそれぞれの状況におきまして米国から同意を求められた場合に、わが国としていかに対応するかということにつきまして、防衛庁のみによって判断し得る問題ではないが、これを前提とした上で一般的状況下における防衛庁の見解を述べました。  私はここではっきりまた繰り返させていただきますが、特に東中委員の御質問に至るまでの私の答弁と、それから東中委員の御質問に対する私の答弁において、答弁のニュアンスが違うような答弁になったように御印象いただいていると思います。その点につきましては、私のいままでの答弁がきちっと整理をされずに、そのときに答弁をいたしたと思います。  そこでもう一遍申し上げますが、東中の御質問があるまでの答弁と、それから東中御質問がありましてから後の答弁とは、実は防衛庁の立場としては全く違っていない答弁をいたしたつもりでございます。一つ、私は防衛庁長官以上の答弁をつけ加えた、閣僚の一員としての判断をつけ加えたというのは私のそこつさでございまして、その点につきましてはここで陳謝を申し上げさせていただきます。私は防衛庁長官としての答弁に徹すべきであった、こう考えております。
  156. 大出俊

    ○大出委員 そんなことじゃないのです、これは。予算委員長、そんなことじゃないのです。明確に違う。  いいですか、これを見てごらんなさい。これは十七日のアメリカ下院の軍事委員会の公聴会の証言、レーマン米海軍長官ら米海軍三高官の証言、「日本の海峡防衛が「ソ連海軍力の太平洋進出を防ぐ」ための米戦略の一環として組み込まれていることを強調するとともに、」つまり日本の海峡封鎖が、ソ連の太平洋進出、これを防ぐアメリカの戦略の一環だということを強調したというんですね、ここで。そして「同盟国周辺での機雷作戦の実施を求める方針を明確にした。」アメリカがやろうという機雷作戦だ。そして「特にワトキンズ海軍作戦部長は「米国が機雷封鎖を実施する必要があると認める海峡がたまたま同盟国に接しているケースが多く、その代表的な例が日本だ」」日本だと明らかにしているでしょう。アメリカに行動の余地を残そうという配慮が、背景に何があったか知りません、なければ、あの答弁は出てこない。  防衛庁長官としては、攻撃されてないのだからノーでございます、ただし、政府全体としては一防衛庁長官の答えられないところであります。総理が出てきて、ただし日本への武力攻撃の可能性が非常に緊急性を持っていると判断される場合とか、日本船舶が国籍不明の船などで甚大な被害を受けている場合には、そのときの状況によります。これは明確にイエスがあるじゃないですか、総理。なぜ変わるのですか、総理に聞きたい。なぜ変わったか。何があったか。
  157. 久野忠治

    久野委員長 谷川君に答弁に先立ちまして御注意を申し上げます。  委員会で、委員並びに議員に対しては尊称を用いることになっております。ただいま私がお聞きをいたしておりましたら、「東中」と、こうおっしゃいました。東中君とか東中委員とか、敬称を用いてください。御注意申し上げます。  谷川防衛庁長官
  158. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 大変失礼いたしました。  午前の質問と午後の質問の間に、私に対しまして政府部内で何らの御指示はございません。私の一存で、午前の答弁と午後の答弁をさせていただきました。  それから、午前の質問は実は自衛隊に関しての質問でございましたので、防衛庁長官として答弁をいたしましたが、午後の質問は米海軍に関しての答弁でございまして、これは防衛庁長官として答弁をいたすべき範疇を越えておったので、私が答弁をいたしましたのは行き過ぎだったことを改めて陳謝を申し上げます。
  159. 大出俊

    ○大出委員 私はいま総理答弁を求めたのですが、総理が御答弁くださらぬというのなら私も質問をいたしません。
  160. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私がいろいろ考えてみまして、日本が武力攻撃を受けた場合に日本が海峡をコントロールするということは、いままで言ってまいりました。武力攻撃を受けた場合の例でございます。日本が武力攻撃を受けない場合に、米軍がやりたい、そう言ってきた場合にどうするかという、これはケーススタディーみたいなものです、むずかしい問題ですと、そう申し上げて言ったのでありますが、そのときに原則的にノーです、こう申し上げました。それはもう大体、来たらノーと答える、そういう考えでおるわけです。  ただ、いろんな場合を自分でも考えてみておりまして、たとえばさっき申し上げた日本の船舶が甚大な被害がある、国籍不明の潜水艦によってやられている、そういうふうな状態が出た場合には、恐らくガソリンも灯油も不足してきて国民生活は逼迫するだろう。ちょうど石油危機みたいなパニックが起こるかもしれぬ。あるいは食糧が途絶してきて、また食糧の買いあさりが国内に起こるかもしれぬ。そういう騒然とした状態ができないとも限らない。そういう場合には、国民の意見を聞いて政治家が考えるのがいいのではないか。したがって、この点は留保して、そのときの国情あるいは国民世論あるいは議会筋のお考え方、そういうものをよくお聞きして判断する余地を残しておいた方がいい、そういうふうに考えてあのように御答弁申し上げた、しかし基本的にはノーというのを基本的に持っているというわけであります。
  161. 大出俊

    ○大出委員 これは私は許しがたい答弁だと思っているのですよ。これは中曽根流ですけれども、あなたがいま言われる、横の方にちょっと物をつけ加えるということはどういうことを意味するかというと、いいですか、いまのお言葉の中に、繰り返しますが、アメリカが、日本が攻撃されていないのに三海峡を、これは特に宗谷海峡ですが、ここを封鎖しろと言ってきたという場合にノーと言うつもりでおります、つもりでおりますが、灯油が逼迫するような、船が沈められたなんということになると、その場合は留保しておいた方がいい。この間の東中さんに対する答弁からすれば、武力攻撃の可能性が非常に緊迫性を持っていると判断をした場合、それから日本の船舶が沈められるというような場合、こういうふうに言っておりますが、この場合にはいまのお話でいえばイエスということが予測される。  時間があれば私はここで詰めたいのです、どういうことになるかということを。大変に時間はないのだが、私は海峡問題、機雷封鎖という問題を専門的にずいぶん調べてみた。そうしますと、これは左近允さんという方でありますが、もう皆さんがよく御存じの自衛隊においでになった有名な方であります。統合幕僚会議の事務局長をおやりになっておりますからね。この方が書いておりますのを読みますと、時間がありませんから一々挙げませんが、日本には、ここに書いてありますけれども、機雷敷設艦二千百五十トン、搭載機雷数は推定二百個というふうなものがある。だけれども、これは宗谷海峡には使えない。そして宗谷海峡というのは航空優勢をとれない。そうすると飛行機を投入するしかない。ソビエトが一番に必要としているのはこのシーレーン、宗谷海峡というシーレーン。対馬海峡へ来ると、戦闘機の足がない。バックファイアやバジャーは裸では来られない。だからここはしてもしなくても問題ない。津軽海峡というのは、足があるから危険はある。だけれども狭い。両方とも日本だ。そうすると、宗谷海峡だけ。ソビエトはそうなったら津軽や対馬へ下ってはこない、水上艦船は。はっきりしている。アメリカともずっとガイドラインの問題で話してきている過程で触れている。そうするとサハリン寄りを通る。そうなると日本は手も足も出ない。アメリカにやってもらうよりしようがないということですよ。  ここで、竹田五郎空幕長、永野陸幕長それから大賀良平海幕長、ついこの間までやっていた方々ですよ。何と言っているかといいますと、竹田空幕長は、質問が出て、「航空優勢確保の手だてというのは宗谷海峡でありますか。」「宗谷地域では確保できないと思います。」宗谷地域では航空優勢は確保できないとはっきり言い切っておられる。しかも、「敵の基地をたたければ別ですが」と言って、さて、「この敵の基地をたたくとなると、日本が全部負けて落とされちゃったというのじゃ話にならぬ」と言っている。サハリンから向こうには、それだけ基地がたくさんあるんですよ。  しかも、大賀良平さん、この間まで海上幕僚長をやっておられたでしょう。ちょうどこの日本が海上封鎖に出なければならぬという情勢というのはどういう情勢かというと、「攻勢作戦、攻めるのは安保条約によって米軍にお願いすることになっていますが、米軍が中東にスイングしていて西太平洋にはいないというときだ。」中東で戦争が起こらなければ三海峡封鎖は出てこない、はっきりしている、アメリカの戦略は明確なんだから。防衛庁よく知っているでしょう。そうすると、大賀さんが言うとおりなんだ。西太平洋には第七艦隊がいない。そうなると日本だけでやらなければならぬ、やれと言われれば。そうでしょう。三人の方々がみんなそう言っていますよ。そうすると、これはアメリカに頼む以外にない。  時間がありませんが、ここで一つ承っておきたいのは、一体この宗谷海峡を封鎖するとすれば、まずずらっと答えていただきたいのですが、どこからどこまで何キロ、まあおおむね西能登呂岬まで五十キロということなんですが、何キロ、深さはどのくらい、そしてソビエトの飛行機の基地はこの周辺に幾つあって、そこにはどういう種類の飛行機が何機くらいありますか。  それから、この海峡が浅いとすれば、浅い海峡に機雷を投入するとすると限度がある。潜水艦では無理だということになる。きわめて浅い海峡、しかもここは非常に低気圧の通りの激しいところで、荒れる。浅い。百メートルないんですよ。お答えいただきたいが、そういうところですよ。アメリカの太平洋司令部、ここもこの問題を研究しておられるですよ、宗谷海峡は。これは特殊な機雷、デストラクター、これを千五百発ぐらい持っていってほうり込まなければ封鎖ができない。日本にはまた例のC130というのはほとんど来てないでしょう。日本のいまの輸送手段では封鎖のしようがないのだ。しかも、向こう側はソビエトの基地だらけでしょう。天寧や東沸の基地が国後、択捉にあるでしょう。樺太には六つも七つも基地群だらけでしょう。だから航空優勢がとれないというのでしょう。どこがやるの。これはアメリカしかやりようないじゃないですか。べらぼうな量の機雷を投入しなければ、機雷封鎖にならない。機雷作戦の世界一と言われるほどの相手はソビエト、できないでしょう。  それをお答えいただきたいのと、あわせて、だから総理、日本にはできない。しかも、一番先にアメリカがやらなければならないのは宗谷海峡なんだ。なぜならば、ペトロパブロフスクにみんな出ていってしまったら、戦略原潜もいるのだから、アメリカ自体の問題になる。シーレーンだけじゃない。そこにいまの証言が出てきて、私どもに言わせれば、総理がここに余地をあげておこうとする、またそうしておかなければならぬ問題の焦点がある。  防衛庁、ちょっと簡単に答えてください。
  162. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、事実関係からお答え申し上げますが、宗谷海峡の幅は約二十海里、うち公海部分が七海里ということでございます。それから津軽海峡は十海里、うち公海部分が四海里、対馬海峡の東水道は二十五海里のうち十九海里です。  それから水深でございますが、宗谷海峡の水深は大体三十メートルから六十メートル。  それから第二の御質問でございますが、極東におけるソ連の航空機の数は約二千百五十機、航空機基地の数は大体百個程度というふうに予想されております。  とりあえず事実関係だけ……。
  163. 大出俊

    ○大出委員 総理、改めて細かい問題でございますけれども、さっき申し上げましたように、ハワイのアメリカの太平洋軍司令部、こっちは、浅いいま申し上げたようなところですから、潜水艦でというわけにいかないのですよ。一遍で捕捉されてやられてしまいますから、基地は目の前にあるのだから。そうすると、たとえばコーラルシーみたいな空母を持っていって、艦載機を使って上をこういうふうにやっておいて、C5ギャラクシーを使うというのだ、ビルみたいな大きいやつを。それも三機持っていって二・五回、千五百発からの、全部入れると七百五十トンぐらいになるかもしれませんが、大変な機雷を入れなければ――いろいろな機雷があります。感応機雷もあれば係維機雷もありますし、磁気機雷もあります。あるいはキャプター型のホーミング、一万メートルも追っかける機雷もあります。ありますが、浅くて季節風で荒いから、役に立たないのですよ。単純な機雷を入れるのですよ、三線ばかり。それは日本の自衛隊にはどうにもならないのです。その前に向こうの基地をたたくことになっている。できないのですよ。だからはっきりできないと言っているのです。そうでしょう。宗谷はできない。だから、そうなるとアメリカしかない。アメリカは一番そこを早くやりたい。そこにいまの答弁が穴をあけておくということになる。私は、これは前の答弁と全く食い違うので、御撤回を願いたい。
  164. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私がここで御答弁申し上げました中で、かたく条件をつけているところがあります。  それは一つは、日本に対する武力攻撃が緊迫してきたと見た場合で、中近東とかほかのところの場合には全くこれは問題にならない。ノー一本であります。日本に対する武力攻撃、侵犯の危険性、緊迫性が非常に強まってこなければ問題になりません。ですから、中近東とかほかの場でどんなことが起きても、それは拒否するに決まっております。  それから第二番目に、日本に対する武力攻撃が発生しない限り、自衛隊がやるということはありません。自分でやるということはありません。  それは、二つはぴしっと言っておりまして、もう一つ、必ずそういう場合といえどもアメリカが日本に同意を求めてこなければならない。それはそのようにやらせる。無断ではやらせません。そういうことをここでもはっきり申し上げておきました。  そして、武力攻撃の非常な緊迫性が出て、みんな危ないということがわかる。いま衛星が発達しておりますから、そういうものはある程度わかってくると思います。それから、日本の船舶が撃沈されて、しかも被害甚大、そう言っておるわけです。一隻や二隻撃沈されたというのじゃなくて、被害甚大と言われるぐらいそういう現象が出てきて、そのために国民生活が逼迫してきて、石油が足らぬとか灯油が暴騰するとか、食糧の危機が出てくるとか、そういうような場合に限定しているわけです。  そういう場合は、やはりそのときの国民世論とか、あるいは議会の御意見とか、あるいは国際世論とか、その一番大事なのは国民世論であります。そういうような、騒然としてきたり、物資が逼迫して国民生活が全く絶望的になるという危険性が出てくるという場合に国民が何を望むであろうか、その国民世論というものもよく考えなければならぬというので、これはそれを見る必要があるので留保しておいたという考えで、私の立場は原則的にノーである、こういうふうにお考え願いたい。
  165. 大出俊

    ○大出委員 これはすれ違いますが、はっきりさしていただきたいのは、私ども社会党は、私から始まって一貫してこの問題に触れておりますけれども、すべてノーで皆さんは通された。総理初めみんなノーで通された。ここまで来てお変わりになったんだが、ここでわれわれのいままであなた方からいただいている答弁を変えるとおっしゃるなら、撤回をなさらぬとおっしゃるなら、防衛庁長官とも違うのですから、あなた方の統一をしたいまの理由を明確に付して、国民の皆さんとおっしゃるんだから、わかるように理由を付して、こういう状況でこうだから私はこういうことなんだということを政府の方針でお出し願いたいのですが、いかがでございますか。そうでなければ明確にならぬじゃないですか。
  166. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 承知いたしました。そのように努力いたします。
  167. 大出俊

    ○大出委員 それじゃ、その問題は、その考え方を統一見解でお出しをいただいたところで承りたいのでありますが……。
  168. 久野忠治

    久野委員長 理事の皆さん、協議をいたしますので、お集まりをいただきます。――大出委員に申し上げますが、ただいま政府理事の皆さん協議をいたしておりますので、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。  大出委員に申し上げます。各党の理事並びに総理政府側といろいろ協議をいたしました結果、統一した見解をお述べになるということでございます。後刻でございます。
  169. 大出俊

    ○大出委員 お断りいたしておきますが、私は、先ほど私なり私どもの党の岩垂君なりがいままで質問してまいりまして、土曜日の午前中までは、ノーである、日本が攻撃をされておらないという場合はノーである、こういうことなんですが、総理答弁が非常に複雑に変わってきておりますから、それでは困るから総理の考え方を、防衛庁長官とも多少のニュアンスのずれもありますから、おまとめをいただいてお出しをいただきたい、こう申し上げているので、それを私どもが認めるという意味ではございません。私どもはあくまでもノーでございまして、日本が攻撃をされたというのであれば、安保五条が発動いたしますが、これは国連憲章でございまして、その場合も積極的な自衛権は国連憲章五十一条は認めてないのが当時の議事録で明らかでございますから、そういう立場でございますが、違った御答弁をなさるので、いろいろ違いますから明確にしてくれと申し上げているので、したがって、その点はしかと、私どもはあくまでも絶対にノーでいっていただきたい、こういう考えでございますから申し上げておきます。そして、混乱を避ける意味で、後刻ということで了承をいたします。  最後に一件だけ、これは調査のお願いをいたしたいのでありますが、時間がありません。たくさん写真も来ておりますが、下関と釜山の間の関釜フェリーの会社がございます。関釜フェリー、ここを通じまして大変たくさんな軍用機器、いろいろなものがございますが、これが一九七五年以来八〇年まで韓国にいろいろ運ばれております。  写真がたくさんございますが、迷彩服を着た米軍が乗り、迷彩を施した車が走っている。下関という町、あそこは基地がございませんから、岩国はありますけれども。だから、町の人の話もここに載っておりますが、非常にびっくりいたしまして、何かどうも基地の町になったのではないか、何か安保条約というものがあるんだが、半島がおかしくなった場合に一体これはどうなるんだろうとか、町の人のいろいろな不安が、私、横浜におりますのでわかりますが、ベトナムの戦争のときにたくさん軍用車両が通る。市民、大騒ぎを起こしましたが、この下関の町もそういうふうな動きが方々にございます、こんな車両が積まれていくわけですから。  そういう意味で、まずもって一体これはどのくらいの車両がいかなる目的で関釜フェリー株式会社のフェリーを通じて米軍の、つまり軍人を乗せて韓国に、釜山に運ばれていっているのか。これを見ますというと、一九七五年から載っておりますが、どのくらいになるのか、そして何の目的で一体どういうものが運ばれているのか、ここのところを御調査をいただきたいのであります。  そして、一つだけつけ加えておきますが、あるいは地位協定十二条ということをおっしゃるかもしらぬ。ここには調達できるという文言がございますから、役務の調達になりますが、ただ、私は長らく地位協定も手がけてまいりましたが、施設、区域の提供を六条で認めている。この施設、区域の枠内で軍人軍属、家族がいるわけでありますが、ここで必要な場合に調達ができるというのがたてまえでありまして、したがいまして、フェリーを調達したがどんどん韓国に運ばれていく、こういう性格のものではない。確かに地位協定は、成立に当たって議論不十分のものがございますから、有権解釈という意味ではたくさんの議論がありますけれども、私は、あくまでも施設、区域内、その必要のために調達が行われるものと理解しているわけでありまして、そういう意味で不可解でございまして、将来ともにやたらこれはいろいろなフェリーを使う、民間の船をチャーターする、しきりに軍事物資が、軍事機器が韓国に運ばれていくなどということになってしまうことを見過ごすわけにはまいりませんので、そういう観点で御調査をいただいて、これは通産にも御関係がございましょうし、横浜の例でありますと、そういうものの中に、チャーターしたものの中に弾薬が積まれていた、普通の人にわからない、民間の契約があった、あったのがわかって、あわててその契約を民間の運送会社が破棄をした例などまであります。したがいまして、そういう場合にはそれなりの取り締まり法規がございます。また、関税法の特例もございましょう。そういうことも含めまして、どういうところに該当してこれらのものが運ばれているのかということ、あわせてひとつ御報告をいただきたいと思っているわけでございます。外務にも関係ございます。通産にも関係ございます。施設庁にも全くないとも申せません。そういう意味でお出しをいただいて、その上でひとつこれは御質問したいと思っておりますが、よろしゅうございましょうか。
  170. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 一応いまの件についてお答えいたしますが、なお詳細につきましては、また後日場合によっては御報告をさせていただきたいと思います。  政府としては詳細な報告を受けているわけでありませんが、御指摘の車両は在日米軍岩国基地の化学消防車等で、昨年十一月から本年にかけて数回にわたり、関釜フェリーを利用して下関から韓国に向け輸送をされたものである、こういうふうに承知をいたしておるわけでございますが、いまお話がありましたように、地位協定がございまして、米軍は、輸出貿易管理令に規定する義務または制限は免除されております。  なお、今次の在日米軍が岩国基地の化学消防車等を関釜フェリーを利用して韓国に輸送するに当たっては、門司税関において所要の手続がとられた、こういうふうに承知をいたしておるわけであります。
  171. 大出俊

    ○大出委員 これは法的な問題もございますし、市民感情もございます。そういう意味で、後刻御調査をいただきまして、一般質問等ございますので、その席で改めて御質問をさせていただきたい、こう思っております。  以上で終わります。
  172. 久野忠治

    久野委員長 これにて大出君の質疑は、保留した問題を残して、終了いたしました。  以上をもちまして、総括質疑は終了いたしました。  引き続き、一般質疑に入ります。  答弁を求められている大臣以外の大臣は、御退席いただいて結構です。  質疑の申し出がありますので、これを許します。高鳥修君。
  173. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうも大変御苦労さまでした。今回の予算委員会は、初めは新幹線こだま並みなどと言われたんでありますけれども、大変途中から難航いたしておりましたが、ようやく総括質疑が終了いたしまして、一般質疑に入るわけであります。その第一陣を承りまして、同僚委員からかなりお触れになった問題も多いわけでありますが、ここで多少私の見解を挟みながらお尋ねをいたしてみたい、このように思います。  そのまず第一は、外務大臣にお伺いしたいわけでありますが、今国会の総括質疑におきまして石井一君から、レフチェンコ証言問題について質疑があったわけであります。これを聞いておりましたところ、中曽根総理も、きわめて重大な問題であると受けとめておりますという答弁をなさいました。かつまた、政府側におきましても、アメリカ側に対して必要な資料の提供等を求める趣の御答弁があったと思います。この石井質問を聞いておりますと、公党の名前も出ておるというようなことでありまして、これがもし事実でないとすれば、非常に大きな御迷惑をおかけすることにもなるわけでありまして、石井君の責任もきわめて重大である、このように思うのであります。そういうことからいたしまして、やはり問題になりました以上は、できるだけ速やかに真相を明らかにされるべきである、このように思うのでございます。そういうことからいたしまして、外務大臣としては、その後この問題についていかなる措置をおとりになったか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  174. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 外務省としましては、レフチェンコ証言の内容は、わが国におけるソ連の秘密工作活動であるということ等にもかんがみまして、外交ルートを通ずる照会になじむかどうかという点も含めて、諸般の角度から慎重に検討してきたわけですが、可能であれば、さらに関連情報を収集することがわが国の国益上有益であるとの観点から、去る一月の末に在米わが方大使館を通じまして米国務省に照会を行ったわけでございますが、米国側からは、わが方のこうした要請に対しましては、まだ回答が寄せられていないというのが今日の実情でございます。アメリカ側にはいろいろな事情があると思いますが、いましばらく米国側の対応を見た上、近いうちにさらに米国に対して回答を督促したい、こういうふうに考えております。
  175. 高鳥修

    ○高鳥委員 これはマスコミ等ですでに報道されているところでありますが、七月十三日及び十四日の米下院情報特別委員会の秘密聴聞会においてレフチェンコ氏は証言をしておるわけであります。これが十二月の八日に、その全部かあるいは一部かわかりませんが、公表をされておるということでありまして、雑誌等にもそれのコピーらしきものが一部写真で掲載されて、報道されておるのも事実であります。この公表された部分については、外務省はすでにお持ちでありますか。
  176. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 米国の下院の情報委員会における証言についての公表分については、もちろん外務省としてはこれを入手いたしております。
  177. 高鳥修

    ○高鳥委員 私どもも非常に重大な関心がございますので、もうすでに公表されている部分でありますので、仮訳等をつけて、日本に関する部分についてだけで結構でございますが、資料としていただければ大変幸いであります。
  178. 加藤吉弥

    加藤(吉)政府委員 要約及び仮訳を作成してございますので、いつでも必要に応じてお手元に差し上げる準備は整ってございます。
  179. 高鳥修

    ○高鳥委員 ただいまのようなことでございますので、後ほど理事会にも申し上げますが、資料としていただきたい、このように思います。  それから、一応報道されているところによれば、これはただ単に政治家だけではない、学者、それからマスコミ関係者等も含まれておる、こういうことであります。不偏不党を標榜するところのマスコミが、外国の諜報機関から資金の提供を受けておるということであるならば、これは非常に重大な問題だ、私はこのようにも思うのであります。学者の言うことについては、あるいは国民の皆さんはさほど細かくごらんにならないかもしれませんけれども、マスコミが報道するということについては、国民が重大な関心を持つことは当然であります。そういうことからいたしまして、そうした面についてもできるだけ明らかにしていただくことが望ましい、このように思うわけであります。  外務大臣、結構でございます。  そこで、官房長官にお残りいただきまして、大変恐縮です。  いろいろ聞いておりますと、どうもこの問題は官房長官が一番詳しく御存じのような感じがするわけであります。ただいま中川一郎先生が自殺をなさいました。大変痛ましいことであります。ところが、その自殺をなさいました原因の中に、あるいはレフチェンコ関係のことがあるのではないかというようなうわさが流れたときに、官房長官は言下に、いやそれは違うと言ってきっぱりと否定をされた、こういうことであります。きっぱりと否定をされたということでありますが、どうも公表されております資料によりますと、「アフォーマーメンバーオブザキャビネットオブミニスターズ」ということで、かつて閣僚の一員であった一人ということでありまして、しかも「ヘッドオブアメジャーパーラメンタリーパブリックオーガニゼーション」、これは恐らく多数党である自民党の役員、こういう意味合いなんだろうと思います。したがいまして、自民党の閣僚であった者一人が含まれておるということであります。そういうふうなことになりますと、それ以上の具体的な名前は公表はされていないわけであります。  そこで、後藤田さんがきっぱりと否定をされた根拠は一体何であるか。これは後藤田さんが日本のJCIA長官だなどと言われたり、あるいは日本のアンドロポフだとかいろいろ言われておりますので、一体公表された以外にあなたは何か資料をお持ちでそのようにおっしゃったのかどうかということを承りたいと思います。
  180. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 お答えを申し上げます。  何か変なことがあると必ず後藤田ではないか、まことに私も迷惑をいたしております。  中川先生お亡くなりになったときに、一部の週刊誌等でそういうことがございましたので、私は、中川先生の名誉のために、さようなことは絶対ありません、こう申し上げたわけでございます。事実ございませんが、その根拠は何だ、こうおっしゃいますが、その根拠はいずれ、いま外務省当局から外交ルートを通じまして、資料が来るか来ぬかわかりませんよ、わからぬが、ともかく現在照会をしておるさなかでございますから、それらの結果を見た上で、私のその根拠を示せとおっしゃるならば示したい、こう思います。
  181. 高鳥修

    ○高鳥委員 あるいは第六感でということをかつて田中法務大臣がおっしゃったことがありますが、後藤田さんもあるいは第六感でおっしゃっているのかもわかりません。ただ、石井君のこの前の質問を聞いておりまして、アメリカのCIAがすでにレフチェンコ証言に関する日本のいろいろな具体的な事項についてアイデンティファイしているということを彼は質問の中で言っておるわけですね。アメリカのCIAが日本で活動をして、そしてKGBの具体的なそういう事実関係をアイデンティファイするというようなことであるならば、これは本来は日本が当然やっておらなければならないことではないか、このように思うのです。かつて警察庁長官であられた後藤田さんは、恐らく非常に情報通でいらっしゃいますし、日本でもかなりそれはつかんでいるから、中川さんでは絶対ないというような御答弁につながっていったのではないか、こう私は推察したのですが、後藤田さんの御感想はいかがですか。
  182. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 もちろん警察当局は、こういった諸外国の東京における情報活動あるいは謀略活動、これに対する防御の仕事はいろいろやっておることは当然でございます。今回のこのレフチェンコについても、恐らくやそれはそれで見ておったと思いますが、私がその警察の情報からそう言っているのかあるいはCIA当局から聞いて言っているのか、こう言われますと、いまの段階では私はその答弁を差し控えたい。先ほど申し上げましたような、外務省当局がせっかくいま外交ルートを通じて照会をいたしておるさなかでございますから、それらの結果を見て、有無の返答あるいはその返答の内容、それらを見た上で必要であるということになれば、そのときにはそれ相応の処置を考えたい、かようなことでございます。
  183. 高鳥修

    ○高鳥委員 レフチェンコ問題については、政府側のきちっとした対応をこの際要望いたしておきます。  長官、結構です。  それでは次に、国土庁長官にお尋ねいたします。お母上様御逝去になられまして、心からお悔やみ申し上げます。御心痛の中お残りいただきまして大変恐縮に存じますが、せっかくの機会でございますので、若干国土庁長官の御所信を承りたい、このように思います。  最近国土庁は何か非常に影が薄くなったような感じがいたしまして、何か建設省国土局だなどという悪口も言われておる昨今であります。私は、加藤長官が入閣をされました最大の理由は、これは何といっても、仕事をする内閣の最も働き者、こういうことで着目をされて入閣されたというふうに理解をいたしているところであります。もうすでに二十一世紀は目前にございます。そしてまた、今後の日本のあり方というものを考えてみた場合に、いかなる国土を形づくっていくのかということは非常に重大な問題でありまして、われわれとして関心を持たざるを得ない。そういう中で、私は、働き者の加藤長官にぜひこの際、百年の大計にたえる、国家百年の大計ともいうべき構想を確立するための少なくとも足がかりぐらいはつくっていただきたい、このように思うのであります。  かつて、田中総理が日本列島改造論などということを唱えましたし、あるいはまた、金丸国土庁長官は遷都構想、首都移転構想などというものもお唱えになりました。いずれにいたしましても、国土庁がこのまま地盤沈下をするということはまことに情けないことでありますので、長官の抱負なり御所信なりをお聞かせいただきたいと思います。
  184. 加藤六月

    加藤国務大臣 高鳥先生にお答えいたします。  現在わが国は、内外ともに非常に厳しい中に置かれております。そういう中において、今後国民皆さん方に夢と希望を持っていただき、長期的なわが国の国土づくりを期待していただき、また頭の中に入れていただくものというのははっきり打ち出していかなくてはならないときに来ておるのではないかと思います。  ただ、今日わが国の国土づくりというのは、昭和五十二年十一月に閣議決定いたしました第三次全国総合開発計画、これにのっとりまして過密都市を抑制し、そして地方を振興する、そしてその柱は定住構想推進を通じて行うのだ、こういうことで昭和五十二年に決定しまして今日までやっておるわけでございますが、冒頭申し上げましたような内外ともに非常に厳しい問題が起こってきた。そしてまたその間、経済社会情勢も大分変化してきました。その中で一番大きいのは、高齢化の進展ということと産業構造の変化というものが著しいものでございますが、こうした変化に弾力的に対応していくために、昭和五十六年より国土審議会において三全総のフォローアップ作業を行っているところでございます。国土庁としましては、この三全総フォローアップ作業の成果を踏まえつつ、ことしから、昭和五十八年度から、二十一世紀に向かっての国土づくりの指針を示すための新たな全国総合開発計画、仮称は四全総と、こう言うわけでありますが、策定準備作業に入りたいと考えておるわけでございます。  この新計画の内容につきましては、今後国、地方を通ずる各界の意向を踏まえつつ練り上げてい、くことになるのではないだろうか、こう思っております。  大変お褒めいただきましたが、現時点においての私見としましては、新しいこれからの国土づくりの根幹に三つの大きいものを考えております。  第一は、高齢成熟社会に備えた安全で安定感のある国土づくり、これが一つであります。それから第二番目は、都市と田園を結ぶ美しく快適な国土づくりというものを強く打ち出していかなくてほならない。そして第三番目は、世界に開かれた活力と安心感のある国土づくり、こういう点を考慮した国土計画、国土づくりにしたいと個人としては考えておるわけでございます。  先生御指摘の国家百年の大計づくりの必要性、責任の重大さを痛感しております。今後とも人と土地と水と緑などの自然との調和のとれた国土行政に全力を尽くしまして、国土庁設置の趣旨に沿い、国土庁設置法の原点に返って、これから一生懸命やっていきたいと思います。
  185. 高鳥修

    ○高鳥委員 大臣、この十年間ぐらいは、後ほど大蔵大臣あるいは経済企画庁長官にいろいろと承りますが、いずれにしても厳しい財政事情の中ではでなことはできないと思います。しかしながら、はでなことができないからといって、国家百年の大計を忘れてはならないわけでありまして、そういうときにこそうんと頭を使って十分に構想を練り上げていくということがきわめて重要なことであろうと私は思うのであります。  先般来、たとえばわが党の江藤さんなどは、日本列島は確かに非常に狭隘である、しかしそれだけに、たとえば仮に十二海里の領海というものは、これはもちろん領海でありますから領土と同様に考えていいわけでありますが、その領海のいわば地盤と申しますか、その下は当然のことながら日本がだれにも遠慮なしに開発のできるところである、したがって、もしそれを国土に合算するということになれば日本の国土というのは非常に広いものになるではないか、こういうものをひとつ大いに調査をすべし。これはわが党の江藤理事の持論でありますが、ひとつそういうこともおやりになったら大変いいと思うのであります。  それからまた、先ほど国土庁長官は、既定の方針として、いわゆる首都圏の過密状態の解消、それから地方生活圏の育成ということが大きな柱である、このようにおっしゃいました。しかし、最近どうも必ずしもそういう方向にいっていなくて、たとえば先般も報道がありましたが、非常に不況で困る、ついては中小企業の工場などについて首都圏に限って新増設の条件緩和をする、規制緩和をするというようなことが方針として打ち出されておるやに承っておるわけであります。それは不況対策としてやむを得ない点もあるかと思いますが、しかし、従来せっかく立てた過密過疎の同時解消という方針からいたしますと、どうも逆行しているのではないか、こんな感じがするわけであります。  それからまた、遷都論というものをかつて金丸長官は盛んにお唱えになりました。政治の中心と経済の中心と、日本に二つの中心があってもいいのではないか、そんなふうに私も思うのであります。たとえばこの間から公明党の坂井さんが二十四時間体制の国際空港を一つ泉州沖につくれという非常に強い御主張をなさいました。仮にそういう空港が泉州沖にできるといたしますれば、それとのアクセスというものを考えた場合に、そういうことを念頭に置いた主都の移転というものもあるいは考えてもいいのではないかというふうな気もいたします。東海大地震がありますので、残念ながら東海地方というわけにはまいりません。堀内さんが富士山ろくにしろとこの前おっしゃいましたけれども、何か富士山も大爆発すると言われておりますから、これもどういうものかなと私は思いますが、江藤さんの高千穂の峰まで戻るわけにもいきませんし、そういうことになりますと、たとえば奥野先生の奈良県あたり、そこら辺に新幹線で国際空港とアクセスをつくってそしてすっと行ける、また、たとえばわれわれの地方も北陸新幹線をずっと通していただきまして、そういう問題は運輸大臣よりも加藤長官の方がはるかにいままでずっと手がけてこられてお詳しいわけでありますが、これを京都、大阪を通してたとえば奈良まで持っていくとか、そういうふうなことをするならば、われわれの方も向こうに移転してもらったってちっとも構わない、こういうことであります。  そういうふうなことを含めまして、ひとつ国土庁長官、少し張り切って仕事をしてもらいたい、こう思うのであります。
  186. 加藤六月

    加藤国務大臣 領海における調査の問題でございますが、これも国土行政の一環であるということで相当進めておりまして、今後のわが国土の十分な活用、発展の一端にいたしたい、このように考えておる次第でございます。  それから、大都市における中小企業の規制を緩和するんではないか、これは本来の大都市における過密を調整し、地方振興をする精神と外れるんではないか、こういう御趣旨の御質問がございましたが、先ほど申し上げました三全総の精神、大都市における過密を調整し、地方振興を行っていくという大精神のもとに考えておるわけでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。  それから、遷都論のお話がございました。考えてみますと、戦前は東京と大阪という二大巨大都市がわが国にはありまして、うまく均衡、調和がとれておったわけであります。それが東京都二十三区内というところに極端に中央管理機能が集中してきたわけであります。そこでいろいろの方法を考えております。  遷都論だけについて申し上げますと、最近大都市圏整備構想素案というのを発表しまして、国土庁は遷都というのをあきらめたのではないかという考え方が非常に強いようでございますが、決してそうではございませんので、この席をかりてちょっと御説明しておきたいと思います。  全国を百数十のブロックに分けまして、そしてその中で得点を、遷都してきた場合のプラスの点、それからここはどういう条件が悪いかという消去法と二つを加味しまして、十数カ所の遷都候補地というのははじき出しておるわけであります。  その次は、一体遷都に伴う経費はどのくらいかかるかという数字も出しております。あるいは遷都に伴う人口はどのくらいであるかという問題も出しておるわけでございまして、それらは相当精巧緻密なものをつくり上げておるわけでございます。ところが、高鳥先生がおっしゃったように、わしのところでもいいぞとおっしゃるのですが、いざこれをやると、われわれが適地らしきと考えておるのは十数カ所あります。一体これをだれが決めてくれるんだということから、たとえばそういう中枢だけでも最低七兆円くらいかかると思いますが、その金をどうするかとかいろいろな問題があります。  しかし、遷都というのは、国民にこれまた一つの夢と希望を与え、あるいはいろいろな新しい刺激を与え、そして民族的に国家的に大変考えていただくという問題でございますので、決して遷都はあきらめておりませんが、当面やっていくのは展都でいこう。しかし、先ほど具体的に関西国際空港のお話が出されましたが、私が、新しい全国総合開発で世界に開かれた日本ということを申し上げた。それは、ある面では大阪を中心としたいろいろなものも考えていかなくてはならないと思っておるわけでございまして、国土庁も一致結束して、苦しい中に国民に夢と希望を持っていただく案を今後推進していこうとがんばっておる次第でございます。よろしく応援のほどお願いする次第であります。
  187. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうも長官御苦労さまでした。  次に、経済企画庁長官にお伺いいたします。  まず、私は、この前本会議におきまして、わが党のたしか田中政調会長が代表質問をされたことに対する総理の御答弁であったと思いますが、どうも聞いておりましてちょっと異様な感じを持った節があります。  それは、本来なら総理に御質問申し上げるべきところでありますけれども、一般質疑では総理に大いにほかの政務に御尽瘁いただくことになっておりますので、したがって、それをお聞きになった経済企画庁長官の御感想をむしろ承りたい。どのように受けとめられたかということであります。  書かれてみますと話されたときとニュアンスが若干違いますので、耳で聞いたのと字で読んだのでは少し印象が違うのでありますが、総理は何と言っておられますかといいますと、新経済五カ年計画でありますが、「現内閣が成立以来、私はこれをよく検討いたしました結果、いままでのような考え方のいわゆる計画経済的な色彩の強いやり方は適当でない。」こういうふうに言われまして、ここに「第二番目に、」という言葉が入っているのですけれども、これをそのままずっと読んでみますと、「いわゆる社会主義的計画経済でいきますと、数字で詰められて動きがとれないという危険性が出てまいります。自由主義経済においては、いわゆるそのような計画経済的なことは適当ではない。」こう言っておられるわけでありまして、これもあのときに聞いておった感じでは、従来やっておった手法というものがどうも社会主義的な計画経済であるから、それはとらないんだ、こういうふうな御答弁感じに聞こえまして、字を読んでみるとずいぶん感じが違うのですが、そういう感じに私はどうも聞こえたわけであります。  そこで、そういうことになりますと、歴代内閣が少なくとも自由民主党内閣として閣議決定をして決めてきた計画が社会主義的であるということになったら、これは自由民主党内閣としては非常に重大な問題であります。したがいまして、経済企画庁長官はあの御答弁をどのようにお聞きになったか、そしてまた、いまどのようなお感じを持っておられるか。
  188. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 この点につきましても、たびたび御説明を申し上げましたし、そして総理ともいろいろお話をして、私は自分なりにこのように考えてきておるところでございます。いま文章で読むのと耳で聞いた感じでは違うというお話がございましたが、私は文章で読まれたような感じの方が正しいと思っております。総理の言われるのは、これまでの経済計画は社会主義諸国にあるような経済計画と同じものである、こういった趣旨ではないかと思いますが、そうじゃございませんで、ともかくも固定的あるいは拘束的にこれを考えて、そしてこれを一本でやっていく。たとえば一つの決まった数字をもうこれしかないのだ、そしてまたこれで予算を取るとかあるいはこれしか経済成長の率はないのだとか、こんなふうに考えることが弊害が多いから、これをひとつその弊害が生じない方向で一遍経済審議会に諮問してみたらどうか、こういうお考えだと思うのでございます。
  189. 高鳥修

    ○高鳥委員 計画をつくる以上は数字がついて回るのは当然でありまして、数字がついて回れば整合性ということが必ず問題になってまいりますから、弾力的といってもおのずから限界があることは申すまでもないわけであります。仮に数字があったからといってそれで縛りつけ切れるものでもないということもまた当然のことでありまして、そういう点では、実は最近、経済企画庁はこれまた地盤沈下がはなはだしいというふうに言われておるわけであります。どうもさっぱり経済予測というのは当たらないではないか。昔はフグを食ってあたりたくなかったら気象庁気象庁と言えばあたらぬと言ったのですが、最近経済予測に関して言われていることは、経済企画庁と唱えれば当たらない、こういうふうに言われるくらいに大変どうも外れっぱなしであります。  これは必ずしも経済企画庁だけの責任ではなくて、この間正森さんなんかも指摘をしておられましたが、たとえば昭和五十九年までに赤字国債をゼロにするとすればという大前提があっていろいろな操作をしてきたわけでありますから、外れたとしてもあながち経済企画庁だけを責めるというわけにもまいらぬと思いますけれども、経済企画庁はいつも大変ずるいのですね。見通しは出すのですが、その次に実績と対比をした数字はなかなか出さないのであります。  たとえば、私どもがいただいております税制改正要綱の一番おしまいに主要経済指標の見通しというのがございます。その一番上に国民総生産がありまして、五十六年度の実績がございますが、五十六年度の年度当初に幾らを見通したかというのは全然書かれないわけであります。それから五十七年度の実績見込みをお書きになっておりますが、五十七年度の当初に立てた見通しは幾らかというのは全然数字をお出しにならないわけであります。これは数字をお出しになると大変不都合な数字が出てくるから、恐らくどうも出しにくいねということでお出しにならないのじゃないかとこっちは勘ぐっておるわけであります。  たとえば乖離のはなはだしいのは民間最終消費支出でありますが、五十七年度の見込みが八・六に対して実績が、対前年度比でありますけれども七・二という数字でありまして、その中の民間住宅投資でありますが、これは五十七年度の見通しが、調べてみますと五十七年二月二日に経済企画庁は見通しを発表いたしておりますが、一四・三という対前年度比の伸び率であります。ところが実績は一・九という数字でありまして、大幅に狂ってきておるわけであります。これは狂う方があたりまえでありまして、調べてみますと、五十五年度がマイナスの二・八、それから五十六年度が実績で二・四、それが一挙に一四・三に上がる。それはいろいろな政策的な手法を行いましたというのが当時の説明ではありましたが、一挙に五倍強も上げたのですから、これは達成できなかったとしてもあながち経済企画庁だけの責任とは私は申しません。しかしながらこのように違っておるのです。そして違っておる数字を絶対にお出しにならないで、結果だけこういうふうにお出しになるわけであります。  その次に民間企業設備というのがありますが、これまた五十七年度の実績は〇・二でありますが、五十七年度当初における見通しは一〇・五であるということでありまして、非常に大きく外れたわけですね。それがひいては、それを基礎にいたしまして計算をいたしました歳入の欠陥というところにも関連をしてまいったわけでありまして、非常に残念なことだと私は思うのです。  そこで、塩崎さんは率直に申しまして河本さんよりも経済や財政、特に税の問題などは大変専門家でいらっしゃいまして、河本さんは経済の専門家だ、専門家だとはおっしゃいますけれども、やはり素人の専門家である、あなたは本物の専門家であると私は思うのです。そういう点で、今後の経済企画庁の威信回復のためにどのような御決意を持っておられるか、承りたいと思います。
  190. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私は、河本大臣といえども意識的に乖離をつくったとは思いませんけれども、ともかくも経済の変動の激しい今日でございます。私どもはその事実を、あるいは実態をできる限り把握して適正にやっていく、これしかないかと思います。
  191. 高鳥修

    ○高鳥委員 ひとつ経済企画庁長官もたまには――河本さんのときには経済企画庁長官はこういう政策を持っておるぞということがちょいちょい出ましたが、塩崎さんになってからちっとも出ませんので、少し出るようにおやりになったらいかがか、このように思います。
  192. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに日本の経済政策と申しますか経済の成長は、これまでケインズ流の財政金融政策で支えられてきて、これが一番成功をもたらしたと思っております。しかし財政の問題は、言うまでもなく五十五年くらいから財政上の困難からその選択に限界ができてきた。その限界ができたのにこれを使うということは、私はなかなかむずかしいかと思うのでございます。それから第二に、金融政策も御案内のように金利政策を使いたいところでございまするけれども、円レートの関係からこれも制約が出てきた。このように政策の選択の幅に大変限界がございますので、そういった意味の財政金融政策に大きな政策を打ち出すことができない、大変残念なことであると私は思っております。いま高鳥委員ははでなことはできないとおっしゃいましたが、まあそういうことでございましょう。  しかし、今後私は、財政のあり方もよほど考えていただかなければならない。たとえばこんなようなときにいつも言っておったのですが、増税というような、薬を間違えて政策をとるようなことは避けていくべきだというようなことも含めて、ひとつ今後のあり方、特に、御案内のようにどこの国に比べても貯蓄率が高い日本でございますから、この貯蓄率の高いことをどのように利用するか、こんなような点を中心として財政金融面で政策を打ち出していって、やはり適当な成長、少なくとも三%ぐらいの成長はどんなことがあっても到達すべき目標だと思いますので、考えていかなければならぬと思いますし、少なくとも例の財政のシーリングをつくる前にこの問題は検討すべきであって、シーリングができてから財政金融政策を新たに考えるということはなかなかむずかしいので、私も沈黙を守っているような状態でございます。
  193. 高鳥修

    ○高鳥委員 沈黙は金とも申しますが、余り沈黙ばかりしておられますと、いよいよ日本経済はどこに行くのかという不安を持ちます。そういうことからいたしまして、企画庁長官は経済演説の中でもお述べになっておりますが、昭和五十八年度の経済運営の基本的態度の第一にとして、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現し、雇用の安定を図る、こういうことをうたっておられるわけであります。これを実現するためには、具体的に一体どのような方策を考えておられるのか。しばしば当委員会においても御質問があったところでありますが、もう少しお述べいただきたいと思います。
  194. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま申しましたように、限られた財政金融政策の中でございますので、そんなにはでな政策がないことは言うまでもございません。  そこで、内需が二・八%、外需が〇・六%ということになっておりますけれども、その内需の中で、御案内のように民間住宅投資が二・六%の伸びがある。これは言うまでもなく住宅金融公庫の貸し付けの緩和、さらにまた住宅取得控除の引き上げ等を念頭に置いて考えているところでございます。さらにまた、民間設備投資についても、ある程度の金利の引き下げ、さらにまた中小企業の設備投資の特別償却ですか、このような政策を頭に置いておりますけれども、かつてのように大きな政策ではないことは言うまでもございません。
  195. 高鳥修

    ○高鳥委員 長官は三%程度ということでありますが、実質経済成長率で三・四%程度を見込むということが五十八年度の方針のようであります。消費者物価が三・三%程度の上昇ということを見込んでおられるようであります。  ところが、後ほどこれは大蔵省にも関連をして質問をいたしたいと思いますが、最近の様相というのはどうも大分変わってきたのではないかというふうに思います。特に、北海原油がすでに引き下げを発表いたしまして、これに追随してナイジェリアですか、五・五ドルの引き下げをやるということになってまいりまして、これが日本経済に及ぼす影響というのは、石油の最大輸入国の一つでありますだけに非常に大きな影響があるというふうに思います。この問題は後ほどもう少し細かく承りたいと思いますが、そういうことからいたしまして、物価についてはまず懸念はない、むしろ超安定的な形で推移をするのではないか。そのことがもし景気の浮揚につながらなければ、これは逆に非常に経済成長率そのものが名目でおっこちてしまう。そしてまた、それが税収の減退につながるというようなことになったのでは、これは大変なことであります。  でありますから、この際、特に塩崎先生はかつて増税なき財政再建、一般消費税反対ということに大変御熱心でございましたが、それならばなおさらのこと、どうも三%台の経済成長では、とてもじゃないが財政再建はおぼつかないというふうに私は思いますので、この際かなり大胆な政策転換が必要なのではないか、このように思うのですが、御見解はいかがですか。
  196. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 大変むずかしい御質問でございますが、先ほど来答えておりますように、私は財政再建も大事な一つの目標だと思います。つまり、大きな財政赤字は、金利の低下の邪魔をするような効果がある。さらにまた、日本はまだ貯蓄率は高いからそのおそれは少ないのですけれども、やはり民間設備投資の方に金が流れることを阻害するおそれがある。こういうことを考えますと、私は財政再建もやはり景気対策の上からやっていくべき必要があろうかと思うのでございます。  しかしながら、財政を再建するためには、やはり現在のような経済状況のもとでは、おっしゃるように確かに自然増収が少なくて財政再建がかえってむずかしくなる。五十五年度から自然増収の金額を見ますと、かつては四兆五千億まで生じておりました自然増収が、三兆円から二兆一千億、一兆五千億、こんなふうに減っておりますことを考えると、この点は何らかの形で一つの、財政がと申しますか、景気が縮小に陥らない方向での転換を考えなければならない。しかし、それは多分に国民の貯蓄率の高いところに着目することであろう、こんなふうに考えております。
  197. 高鳥修

    ○高鳥委員 長官、お忙しくなければもう少しいていただきたいのですが、よろしゅうございますか。――それでは、後でまた若干お尋ねするかもしれませんので……。  それでは大蔵大臣、大変お待たせいたしました。お疲れのところ恐縮でありますが、財政問題について若干お尋ねをいたしたいと存じます。  ともかく私、五十八年度予算をざっと拝見をいたしましたときに、この厳しい中でよく予算を組めたなということで実は感心いたしたわけであります。竹下大蔵大臣がこの前大蔵大臣であられましたときには、ともかく赤字国債を減らすんだということで一兆円の減額を実現されまして、そのときに竹下さんがおっしゃられたことを私はまだ覚えておるのですが、財政再建元年の前の年だ、こうおっしゃったわけであります。そこら辺が竹下さんらしいな、こういう感じがするのでありまして、普通なら、赤字国債を一兆円減らしたんだから財政再建元年だ、こういうふうに胸を張られるところでありますが、それを元年の前の年だというふうに表現をされたわけであります。  ところが、二年たって戻っていらっしゃいましたら、これは財政再建どころか、まさに……(「破綻だ」と呼ぶ者あり)いま破綻だという声がありましたが、率直に言って破綻だと言っても過言ではない、そういう状況になっておるわけであります。  しかしながら、中曽根内閣は鈴木内閣の方針を継承する。鈴木内閣の方針というのは一体何であったかと言えば、昭和五十九年度に赤字国債をゼロにする、それに政治生命をかけるということが鈴木さんの大きな公約であったわけであります。それだけに鈴木さんは、それがなかなか達成至難だということを踏まえて、恐らく政治責任をおとりになったというふうに私は思うのであります。  そこで、五十九年に赤字国債をゼロにすることはむずかしくなったが、さらばどうするかということでありますが、依然として中曽根内閣としても増税なき財政再建の方針は堅持するというふうに言っておられますので、しからば、それはどのような方策をもって実現するのか。ただそう言っているだけではこれは実現できないわけであります。  大蔵省の中期試算でありますが、財政改革に当たっての基本的な考え方ということで、A、B、Cといろいろ出ております。そのうち、すでに大蔵大臣自身もどうもお認めになっているようでありますが、A案はとてもじゃないがええ案ではない。そこで五―七年という、大蔵大臣はまたいろいろな言葉を発明してくださいますが、五―七年でもさてどうなるかねというのが、率直に言って私の感想であります。にもかかわらず財政再建を増税なくしてやるとするならば、一体、大蔵大臣はいかなる方策を胸のうちに秘めておられるのか。これは大蔵大臣、先ほどあなたに総理になってもらわなくちゃいけませんという御発言もどこかにありましたが、あなたがずっといろいろな立場で今後とも、総理になるかどうかは別問題といたしまして、恐らくずっとおつき合いをしていかなくてはならぬ。そして、この問題をみごとに達成されれば、十年たたずして――十年たったら竹下さんではなくて、十年たたずして竹下さんになるのだろう、こう思うのであります。そういう意味合いにおいて、大蔵大臣の御所信をまず承りたいと思います。
  198. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かにいま御指摘がございましたように、私も五十五年度予算編成をいたしましたときには、何分民間の、言ってみれば自助努力によりまして、五十四年に自然増収が出ました。したがって、当初発行を予定しておりましたものよりも一兆八千億、結果として発行しなくて済んだ。そういうことになりますと、五十五年度予算でよしんば一兆円の減額をいたしましても、前年度の実績から比べればまだ八千億よけい出したことになる。ということになりますと、財政再建元年と言って胸を張るような気持ちにはなれなかったわけであります。クリスマスにはイブがあるごとく、言ってみれば前の晩ぐらいかなという自己採点をみずからいたしたわけであります。  そうして、今度帰ってみますと、確かにさま変わりであります。若干傾向が似ておると言えば、前回になりましたとき、為替レートが二百四十二円、やめますときが二百十九円二十銭でありました。今度なりましてから二十数円、円高になっておりますことだけが若干似ておるかなというぐらいな感じで、やや身の引き締まる思いであります。したがって、やはり私は、鈴木内閣でお約束になりましたまさに増税なき財政再建、この基本理念は貫かなければならないと自分でもみずからの心にも言い聞かしておるところであります。  したがって、さてどうするか、こういうことになりますと、私なりにかつての数字から見ますと、たとえば、これは計算の方式もずいぶん変わってきておりますけれども、五十五年度予算につくりましたときの収支試算で五十八年を見ると、五十九兆一千億の予算になっておる。それが現実五十兆四千億。それはもちろん歳入も減っておるわけですが、したがって、やはりこれ以上今度は歳出をカットするということになれば、それこそ、ここは個人または企業の自助努力にまつべき分野、あるいはここは地方自治体で引き受ける分野、あるいはここは国そのものが関与すべき分野、そういう意味におけるいわば歳出構造の見直しをまず徹底してやらなきゃならぬじゃないか。その上に立って初めて、こういう国会の議論を通じながら問答を繰り返しつつ、いろんなことをこれから考えていかなきゃならぬ課題ではなかろうか、このように思うわけでございます。  したがって、いろんなところから御提言がなされておりますが、やはり具体的な項目で申しますならば、たとえば臨調の答申、昨年末ちょうだいいたしました財政制度審議会の「歳出節減合理化の方策に関する報告」というようなものに盛られておりますのをこれからさらに一つ一つ精査をいたしまして、まず歳出の構造改革というところから手がけて国民の理解と協力を得ていかなければならないではないか。いささか話が饒舌に過ぎましたが、そのような感じを持っております。
  199. 高鳥修

    ○高鳥委員 増税なきということでありますが、この国会、当委員会における質疑をずっと拝聴いたしておりますと、大蔵大臣の心も大分揺らいだところがあるではないかなという感じがしないでもありません。たとえば直間比率についていろいろとお触れになりまして、五、五というのは、あれは何か、私聞いておりましたら、竹下大蔵大臣が言われたのではなくて後藤田さんがどこかでしゃべった話らしいのでありまして、私は、竹下大蔵大臣から五、五という話はどうも聞いておらないわけでありますが、たとえば直間比率見直しという中において何らかの改善措置を見つけたいというようなニュアンスの話があったり、あるいはよく竹下さんがおっしゃるわけでありますが、一般消費税(仮称)にかわるもの、こういうことに言及をされたり、いろいろとお話しになっておられるわけであります。  実は、一般消費税の問題が提起をされましたときには、いろいろ検討段階では私は大蔵政務次官をいたしておりまして、大倉真隆さんが大変熱心で、あの当時説明を聞いたわけであります。一般消費税については、私は率直に申しまして初めからこれはなかなかそう簡単にはできないというふうに思いました。しかしながら、大蔵省は非常に熱心にあれば検討され、これ以外に数兆円規模で税収を上げられる方法はないということでお取り組みになったわけでありますが、結果的には国民の拒否に遭ったという形で葬られたという姿だと私は思うのであります。一般消費税そのものについては自由主義諸国の相当数においてやっておることでありますし、かつまた、あのときにはほとんど何といいますか、よく理解されないままに――たとえば私は魚屋さんの大会に行きましたら、一般消費税反対というスローガンが掲げてある。ところが、あのときに考えられておったのは、主要食料品にはかけないということでありまして、まして生鮮魚類に一般消費税にかからないということが当時考えられておったわけでありますから、十分PRもされないままに、いわば水子のまま葬り去られたという感じが非常に深いわけであります。  かつまた、当時私は大蔵委員会におきまして、後に財政部会長として質問昭和五十四年度にいたしておりますが、財政特例法の質問をいたしました際に、仮に一般消費税を言われるがごとく導入いたしましたといたしまして、それも昭和五十五年度早期に導入する、仮にそういうことにしたとして、一%で約六千億、それで五%なら三兆円、こういう計算になるということであったわけであります。ところが実際には、これ全部を国でもらうわけにいかぬ、中央が二兆円で、たとえば地方が一兆円、二対一ぐらいの割合に分けざるを得ないだろうということになりますと、仮にあの当時、五%の一般消費税を導入したとしても三年はもたない、三年たてばどうしてもこれは一〇%に引き上げなければならぬ、一〇%に引き上げてもまた三年ともたない、そういう状況にあるということを私は大蔵委員会の財特の審議の際に指摘をいたしたわけであります。  ところが結局、そういう手だてもできないままに来たわけでありますから、今回非常に熱心に歳出カットをなさって何とか予算編成をなさったその御努力は非常に高く評価するものでありますが、一体、増税なき財政再建ということを口で言われながら、かつまた大蔵大臣自身の心境はいろいろと揺らいだのだろうと思います。この際、国民の皆様方に、やはり中曽根内閣というのは軍拡・増税内閣であるというような印象を非常に、マスコミが故意にまたそれをPRいたしますから強く持たれておるこの際でありますから、大蔵大臣がいろいろ言われました真意をこの際はっきりと御説明いただきたいと思います。
  200. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、私が本委員会においていろんな問答の末に、きわめて言葉の使い方も下手でございますし、誤解をあるいは招いたような発言もあったかと思います。率直に申しまして、私は、直間比率という問題が、いわば勉強の環境が熟した、こういうお答えを申し上げましたのは、私自身の体験からいたしまして、昭和五十四年度、五十五年度、いわゆる直間比率の見直しなどと言えば、すぐいわゆる一般消費税(仮称)を考えて言っているんじゃないか、こういうような雰囲気であったと思います。ところが、今度来てみますと、五十五年の十一月の報告、答申を見ますと、幅広く消費等に着目した間接税をというようなお話がありましたり、あるいはその後、五十二年、五十三年等の答申を見てみますと、それこそまさに税体系の見直しを検討しろ、こういうことがある、そうしてまた、臨調の答申を見ましても、ここでも直間比率という言葉が使われておるわけです。  本来は、直間比率というものは、これはあらかじめアプリオリに決めるべきものでなく、結果として出てくるものでありますので、本当は、直間比率というのは結果として出る数値であって、予見を持って設定すべきものではないだろうと私は思います。しかし、権威ある答申の中にも結構そういう言葉自身がひとり歩きしておるわけであります。その意味においては、いわば税体系の見直しという中へ含めるとすれば、それは絶えず勉強していなければならぬ課題ではないか。そういう意味において、それぞれ権威ある議論あるいは調査会等でそういう言葉がどんどん検討の課題として出てきたということは、それなりにうんと勉強しなければいかぬ環境は当時とはまさにさま変わりだな、こういう心境を私の体験上持っておるわけであります。ただ、直間比率を見直してみなさいということの指示を受けたこともなければ、またこれを検討しておるという問題ではございません。  それからまた、いわゆる一般消費税(仮称)の問題につきましても、私はあの当時この決議案をおつくりいただきますときに大蔵大臣でございましたので、党の税調会長であったいまの通産大臣にお願いをし、そして野党の税の専門家さんともみんな相談いたしまして、私自身もお願いして筆を入れた。そうすると、確かにいま高鳥委員指摘のように、国民の理解を得るに至らなかった、だからこの手法はとるな、こういうことです。そこで私なりに考えたのは、幅広く消費等に着目した間接税を全部この際否定してしまうということになれば、税制の理論として学問的にこれは適当でないというので、私から発言もしお願いをして、そういう考え方でないということであの決議案をおつくりをいただいたわけであります。  そういうところからいきますと、これから税制調査会をどうするか、こういうことになりますと、税制調査会に大体諮問いたしますのは、三年に一遍任期が参ります、そうすると国、地方を通じての税制のあり方について諮問を申し上げます、こういう諮問になっておりますから、個々の具体的な諮問ではない。そうすれば国会決議等も十分に参酌していただける権威ある調査会でございますので、自分の方から特にこの問題は範囲に入る、この問題は範囲の外にあるという手かせ足かせをしてこの諮問をすべきではない、こういう立場をとっておるわけでございますので、いわゆる大型間接税――これもまたどこまでが大型かという問題になりますと定義もございません。強いて言えば、広く消費に着目したかなりの額の上がる税制、こういうことしかないと思うのです。かなりの額とは何ぞや、大型とは何ぞや、その定義もありません。したがって、やはり私どもといたしましては、すべて例外をつくるとかいうことでなく、国会の問答は全部そのまま税制調査会には御報告申し上げるわけでございますから、そういう議論の上に立っていつでも幅広く御検討をいただくべき課題であって、いま大型間接税なんというものが私の念頭にあるわけでもなければ、また指示をしたことも、されたこともない。まずはやはり歳出構造の見直しというところに力点を置かなければならぬなと、こういうふうに思っておるところであります。
  201. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうも大蔵大臣の御答弁を聞いておりますとわかったようなわからないような感じがしてならぬわけでありますが、いずれにいたしましても、当面、前内閣の方針を踏襲して増税なき財政再建を貫く、こういうことを至上命令として取り組んでいこう、こういう御決意だというふうに承っておきたいと思います。  私も、実はいろいろと計算をしてみたわけであります。たとえば、これは全くの私見でございますので、私が試算してみただけでありますので、そういうふうにお聞き取りをいただきたいわけでありますが、試算Cを仮に基準といたしますと、要調整額というのは、五十九年度でありますが、四兆一千六百億ないし四兆六千八百億ということになりますが、実は特例公債というものが、本来はこれは実質的には赤字公債でありますから、これもその中に加えるといたしますと、実際の赤字幅は十兆一千四百億、その翌年が十一兆三千五百億、その翌年が十一兆六千二百億、こういう計算になるのだろうと思います。これは下段の括弧の部分を除いて合算いたしております。  いま日本は租税負担率が比較的低い、欧米先進国に比べて低いということが言われておりまして、これを増税賛成論ととられては困るわけでありますから、そういう意味合いで申し上げるのではないのでありますけれども、仮にアメリカ並み、アメリカが一番租税負担率が少ないわけでありますが、アメリカ並みの国税、地方税を合わせての二八・五%に仮にする、日本の租税負担率を仮にそこまで引き上げる、そういたしますと一体どういう結果になるかということでありますが、わが国の国民所得の五十八年度の見通し額が二百二十六兆二千億であります。これに二八・五%を掛けますと六十四兆五千億であります。六十四兆五千億から既計上額を引き去りますと、これが五十三兆七千億でありまして、差し引き残りというのは十兆八千億であります。これを大ざっぱに国税と地方税とたとえば七、三なりあるいはいまの六・六対三・四に仮に分ける、こういたしますと、いまの要調整額が、ここで三年間の合算をした要調整額を平均いたしますと六兆であります。不思議なことにちょうどそれに見合うというくらいの金額になるではないかなと。したがって、アメリカと日本の場合と根本的に違いますのは、アメリカの場合この高い租税負担率は一体どこに金が使われているかといえば、それの相当部分は軍事費に使われておる。日本よりもはるかに高い国民所得対比の軍事費負担をいたしておるわけでありますから、したがってアメリカの方が税金が高くて日本の方が安いのだと一概には言えない、そういう性格のものだと私は思いますが、いずれにいたしましても、もし要調整額を埋めるとすればそこまで、アメリカ並みの租税負担率まで持っていかなければならないというふうなことになるではないかということであります。  それからもう一つ、財界は盛んに歳出カットでやれということで、この前当委員会における公述人の方でも、石田さんでしたか、ずばずばと切ればわけはないというお話をなさっておられたわけであります。一体どの程度切れるものかねということをいろいろ考えてみたわけでありますが、少し細かくなって恐縮でありますが、一般会計の主要経費別分類というものを見ますと、社会保障関係費が九兆一千三百九十八億、文教、科学振興費が四兆八千百八十六億、その次の恩給、地方財政関係はちょっとなかなか切るに切れないでしょうから、防衛関係費が二兆七千五百四十二億。切るということになれば、防衛は聖域だということを私は言っておられるようななまやさしい状況ではないというふうに思います。公共事業関係については、六兆六千億の大部分がこれはいわゆる建設公債で裏づけされておるわけでありますから、したがってこれは切っても切らなくても結果は同じ。経済協力費や中小企業対策、エネルギー対策などは切れない。食糧管理費、その他の事項経費など、これを全部合算いたしますと、その合計額は二十二兆円余りであります。いま私が申し上げました社会保障、文教、それから防衛、それから食糧管理その他、これの合計が二十二兆であります。それに対して、仮に六兆円を切る、いまの要調整額の平均額が約六兆円でありますから、六兆円を仮に切るといたしますと、三七%切らなければ前が合わない、こういうかっこうになるわけであります。  それから、いろいろ申し述べまして大変恐縮でありますが、仮に経済成長でそこまで持っていく、そういう計算も実はやってみました。経済成長でこの不足額を埋めるだけの、税収に充てるだけの経済成長率は幾らかという計算をいたしましたら、何と一八%上積みをしないとこの数字が出てこない、そういうふうな数字になったわけであります。これらのことを考えてみますと、これからいかに大変かということが如実にわかると思うのであります。  これは大蔵大臣、大変なことはよくわかりますので、だからどうするということをお尋ねしても、これはしようがないので、これからお互いに一生懸命考えていかなくちゃならぬと思いますが、私は、さらにその後に来るものとしてやはり大きな問題になるのは厚生年金などの将来だろう、こう思うのであります。たとえば一九八〇年を指数一〇〇といたしまして、受給者の数が西暦二〇〇〇年には三八五になる。給付額が同じく指数一〇〇に対して四八一、約五倍くらいになるということでありまして、いわゆる社会保障関係の負担というものはこれから大幅に増加をしていくであろうということがすでに予見されておるところであります。  そういうようなことを考えてみますと、これから大蔵大臣をおやりになるにしても、総理大臣をおやりになるにしても、なかなか容易なことではないな、こう思いますが、いま私が一連申し上げましたことについて大蔵大臣の御所見を承りたいと存じます。
  202. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かにいまの高鳥委員の仮定計算はそのとおりだと私思います。それだけに大変だなという気持ちを十分持つわけでございますが、確かにいろいろな各方面の御意見の中には、とにかく十四兆もある補助金をばさばさやればいいじゃないか、こういう御意見がございます。しかし、それもひっくくってみますと、社会保障、文教、公共事業、それが大体、アバウト八〇%になりますし、地方を通じて出すもの、これがまた、くくり方で見ますと八〇%にもなります。  そういうことから申しますと、実に観念的に十四兆あるのをばさばさ切るというようなことの非常な困難性をお互い認識しなければならぬ。したがって、それだけにまさにいわゆる個人企業の自助努力にまつべきもの、自治体の努力にまつべきもの、国が分担すべきものというようなところからもう一遍見直さないと、今日まで国民の選択の集積である現行制度、施策をそのまま基準に置いた財政運営というのは結局不可能だという結論に到達せざるを得ないわけであります。そこのところがむずかしいことでございまして、やはり国権の最高機関たるこういうところでいろんな角度から問答を重ねて、そうしたものの集積の中に方途を見つけていかなければならぬという感じがしみじみといたしております。むずかしいな、こういうことを率直に申し上げるべきである、このように感じております。
  203. 高鳥修

    ○高鳥委員 いまいろいろと御指摘申し上げましたように、私は土光さんという方は大変りっぱな方だと思いますし、心から尊敬を申し上げておりますが、ただ、土光さんがおっしゃるような方途で、そう簡単に歳出カットだけで財政再建ができるものではない、そういうことはいろいろ数字を挙げますと明らかになっておるわけであります。  そうして、これは私の持論でございますので、ほかの委員の方はあるいはおまえそれは違うよとおっしゃるかもしれませんが、何と申しますか、歳出カットというものはやはりこれは一つの国民への負担転嫁である。しかも、歳出カットをするという場合には、どちらかというと声なき民の方にカットの方向が向かっていきやすい。いろいろな圧力団体なりバックなりがあるところの方がなかなか切れない、そういうふうな方向になっていくではないか。  私は、税というものは本来やはりあるところから取って、そして必要なところにこれを配分をする、だからその資源再配分機能というものをやはり考えてみた場合に、増税というものは全部いかぬのだという考え方もいかがなものであるかな、これは決して金のない者から取るということではないので、やはりあるところから取るということの方が本当なんでありますから、したがって、増税が全部不可なものであるということを言うことは少しおかしいではないかな、こんなふうにも思うのであります。  一般消費税のことについて、私自身もそれはだめだよとは言い続けてきましたけれども、たとえば一般消費税にしても、これは免れて恥じない消費強者といえども負担をするということになるわけであります。消費の強者がよけいに負担をする、そういう機能は当然あるわけであります。所得の多い者であって、かつまた脱税をしておる者であっても、一般消費税はよけい所得があればよけい消費をするわけでありますから、当然に払うというようなことになるわけであります。したがって、そういうふうに税の増税が全部いかぬということはいかがなものであるかな、こういうふうな感じを私は持っておるわけであります。  かつまた、増税ということを選挙の争点にしろ、こういう御意見がございますが、私は、本来増税というものは選挙の争点としてなじまないものである、国民に負担の増大を求めるということに賛成の人はどこにもいないと私は思うのであります。そういうことからいたしまして、日本の国民にとっていまの財政状態を踏まえつつも、一体どんな形の税が一番望ましいかということをいろいろと専門的に検討をして、それをかつまた、たとえば国会の大蔵委員会なり何なりで、専門の立場で十分に与野党間で意見を交換して、そして固めていくべきものであって、これを、増税を賛成か反対かというような選挙の争点にするということはどだいなじまないものである、私はそのように思うのでありますが、大蔵大臣はどのようにお考えでありますか。
  204. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの御意見の中で、歳出カットも消極的な意味における負担増ではないか、私もそのとおりだと思うのであります。今後いろいろ見直しを行ってまいりますと、結局財政は国民のものであって、負担する者も国民で受益者もまた国民である、これは原則であります。そうなりますと、一部の施策を国なり自治体が行うべきでないという結論になれば、その施策は受益者にとってはみずからの負担と責任でこれをカバーするということになりますので、御指摘のとおり、歳出カットも消極的な意味における負担増だというふうに私も考えます。  そもそも税というものは、確かに富再配分とも言えるものでございましょう。しかしそこに、直接税といえばみずからが痛みを感ずる、その痛みを感ずればこそまた歳出に対する監視の眼もきつくなる。消費一般にかかる税制の場合は選択の幅も広い。しかしながら、それはいわば重税感のないままにこれに対応しておった場合、歳出に対する監視というものがどうも緩みがちだ、こういう嫌いがもとより基本的にあるわけであります。したがって、税というものはやはり国民の長い歴史の中の選択の集結が今日の税制として存在するという意味において、ヨーロッパはヨーロッパの積み上げの中でそういうものが今日現存しておるわけでございますので、やはり国会の場等において、その立場こそ異なれ、いろいろな議論なり問答をする間に国民の選択肢の方向というものが出てくるものではないか、こういうふうに理解しております。したがって、やはり税制調査会という権威ある機関もありましょうし、何よりも国権の最高機関たる国会という場がある、そういうところの問答の中に国民の選択肢というものをおのずからお互いが察知すべきものであって、選挙の争点などという性格のものではなかろう、私もこういうふうに考えるわけであります。
  205. 高鳥修

    ○高鳥委員 まあ、いろいろと申し述べてきましたが、私は、最近のオイル関係の大きな変動のこの時期に、いわば逆オイルショックともいうべき時期になってきた、こう思うのです。この際に私はやはり大胆な政策転換が必要である、このように思います。  そこで、時間も大分迫ってまいりましたので、幾つかの提言を率直に申し上げますが、これは日銀総裁の権限に属することではありますけれども、まず第一に公定歩合ですね、これは積極的に、大胆に下げるべきである。これは国が一銭も金を出さないでできるわけであります。しかも公定歩合を下げることによって設備投資意欲も上がりますし、まさに景気浮揚にもなるわけであります。いままで大体日銀のとってきた態度は余りにも少ない、そうして余りにも遅いという批判があることは御承知のとおりであります。もちろん海外の円安だとかいろいろな条件があるからとは思いますけれども、金融政策としてはどうも怠慢のそしりを免れないということをはっきり指摘をしておきたいと思います。  それから次に、先ほど塩崎経済企画庁長官にも伺いましたが、内需拡大策ですね、これはもう積極的におやりにならなければいけません。四ドル下がるとGNPで〇・二三%上がる。経済企画庁なんか翌年〇・六二GNPで上がるというような計算をしておられるようでありますし、日興リサーチだろうと思うのですが、四ドル下がれば六千億減税に匹敵するというような計算もいたしております。でありますから、まずはそういうふうな状況の中で、内需振興のためには国も積極的にやるが、地方公共団体にも協力を求める。  さっきから人勧人勧と言っておりますが、私は、人勧の、初め凍結と言っておられましたので、凍結というのは春になると解けるのだと思っておったわけであります。ところが、凍結をやめまして、これは中曽根さんが行管庁長官としておやりになったのだそうでありますが、先ほど来の質問を承っておりますと、凍結はやめて見送りにした。見送りということはどうも五十七年度やらないということかね、そんなふうなニュアンスになったのかな、こう思うのでありますが、まだ各党代表者の会談では「誠意を持って検討する」という条項が残っておりますし、「五十八年度人勧は尊重し、実施する」という各党代表者の申し合わせがあるわけであります。わが党内においても、あるいは政府においても、政府はたとえば総理府総務長官、当時田邉さんでありますが、人勧の見送りというのはどうもやはりなかなか重大な問題だというような指摘もしてこられたわけであります。  このような状況の変化を踏まえて、やはり人勧にしても、あるいはもう春闘とか賃金闘争とかいうことになれば、これは民間の話でありまして私どもがとやかく申し上げることではございませんが、財界あたりもけちってばかりいないで、この際少し高めの誘導をするということもあってもいいんじゃないか、私はそのように思うのです。政府によけいなカットをやれやれなんてばかり言っていないで、少し一生懸命みんなで知恵を出して、賃金もよけい払って、ひとついい国にしようじゃないかという努力をこの際できそうな状況が出てきたわけでありますから、やってもらえば、国もよくなるということだろうと私は思うのです。  それから三番目に、これは私見にわたることでありますが、国際金融についてひとつイニシアチブをとってもう少し積極的に取り組んでいかなければいかぬと思うのであります。これはもう時間が迫ってまいりましたのでごく簡単に申し上げますが、ソニーの会長の盛田さんがここで意見を述べられまして、変動相場制というものは株を相手にして品物を売っているようなものだ、これではとてもかなわぬねというお話をなさっていかれたわけであります。日本は最大の貿易国でありますから、もっとこうした問題に日本が率直に先陣を切って提言をするというくらいのことがあってしかるべきだ、私はこのように思うのであります。たとえばターゲットゾーン方式とか、いろいろ考えられておりますが、それらのことについて一体あなた方はどんなことを考えておられるのかということを承りたい、このように思います。  それからなおもう一点、石油の値下がりということで一つ懸念をされますことは、代替エネルギー対策ですね、これがしぼんでしまいはしないかという懸念であります。たとえば一バレル当たり二十五ドル以下になるということになれば、石炭液化プロジェクトだとかその他大多数のプロジェクトがおかしくなってしまうということであります。そういうふうなことに対する配慮というものを、せっかくここまできたんですから、やはり二十一世紀を見渡していった場合には石油が将来どうなるかということは予測ができない。かつまた、中近東において一朝事あるということがあってはいけませんが、仮に紛争が起こるというようなことがあればいつ石油がとまるかわからぬ。そういうきわめて不安定な状況にあるわけでありますから、代替エネルギー対策というものをやはり積極的に取り組んで進めていく必要がある、そのための配慮は当然やるべきではないか、このように思います。  それから、先ほど若干触れられましたが、いわゆる対外債務の非常に大きな国、特に中南米十二カ国が合計で六十二兆円という膨大な債務を持っておりまして、その中で一番危ないと言われておるのがメキシコだということであります。なぜならば、メキシコの対外債務はほとんど石油輸出によってこれを決済するということになっておって、その石油の値段が下がりかつだぶつくということになれば、メキシコ経済はなお一層のこと破産をするのではないか、それが世界大恐慌の引き金にならなければいいがという懸念をされておることは御承知のとおりであります。  ただ、一つ心配をいたしますのは、これはIMFを中心にして各国が協力をして援助をしていかなければなりませんが、どうも聞いておりますと、日本人は本質的に根性がいいんでしょうかね、アメリカが引き揚げていく裏へ裏へとどうも日本が融資をしていって、最後にばばをつかむのは日本ではないかという懸念をされておる趣があるわけであります。そういう点について大蔵省としても、何といいますか十分その注意をして取り組んでいかなくてはならぬ。これは国際的な協力を求めることは当然でありますが、日本がばばをつかむことのないようにしなければならぬ、このように思うわけであります。  以上、いろいろ申し上げましたが、まだまだ申し上げたいことは山ほどございますけれども、私の質問はこれで一応終わりますので、御答弁がありましたらどうぞお答えください。
  206. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きわめて簡単に申し上げてみたいと思います。  公定歩合の問題は、実際この国会でこういう公定歩合の議論をいただけるようになりました。昭和五十五年までは、少なくとも公定歩合の操作は予算審議中はこれを明治以来行わないとか、そういう変な慣例がありました。それが金融が事ほどさように国際化した今日、そういうことはすべきでないということで、いつでも弾力的に対応できる、そういう意味のシステムとでも申しますか、そういうものは整っておるわけでありますが、いずれにいたしましても、日銀の専権事項でございますので、いろいろな状態を勘案して考慮されるであろうというふうに思っております。  それから、人勧凍結の問題が出ました。確かに凍結というのはフリーズでありますので、だから解けることもあるがまた解けないこともあるという意味においては、恐らく見送りという言葉が適切ではあったのではないかな、こういうふうに思っております。そうして、民間賃金の問題は、これは労使間の自主的交渉によって決定されるものでございますので、物価とか経済情勢を勘案して適切な御決定がなされることを期待をしておるにとどめておきたいと思います。  それから、為替レート論の問題がございました。これはちょうど私が官房長官のときにいわゆるフロートいたしまして、一体どうなることか、まだ国会ではフロートした当時は必ずしも質問は余り出ませんでした。これは答える方も質問する方も、余りこの変革の大きさに諸準備がなかったということも言えるのじゃないかと思うのであります。スミソニアンレートを経て、すでに十年の歴史を経ている。しかし、ただ何分ほかの国と比べてみますと、日本とほかの国とは大変に失業率とかそういう問題が違っておりますので、そういうまだ各国のファンダメンタルズがいわば一定の基盤で議論ができない状態ではないかな。いわゆる盛田さんのよくおっしゃるワイダーバンドを設けたらどうだというのも、もちろん一つの見識だと思いますが、いま直ちにそういう環境にはない。きょうは二百三十三円台でございましょうか、やや円高基調が続いておりますが、この問題は確かに、今後はやはり国際協調で介入政策等もある程度考えていかなければ真の効果はないのじゃないか、こういう感じがしております。  それから代替エネルギーに対する問題ですが、私どもも素人ながら、原油価格が下落いたしますと、代替エネルギー関係の株価が下落するのは別といたしまして、いわば情熱が失われてくるんじゃないか。したがって、今年度予算の中でも六・一%増ということでエネルギー対策費を計上しておりますが、これからも官民一体となって、これには重要な問題であるという認識の上で対応していかなければならない問題だと思っております。  それから、債務国に関する問題がございましたが、この場でもお答えいたしましたが、今日それこそ債権国、債務国、その金融機関あるいはIMF等で、いまのところまだ心配はない。特にメキシコの問題を例としてお出しになりまして御指摘がありました。確かにアメリカの銀行は、銀行の数も一万五千くらいもありますからではございますものの、引き揚げたところもあるじゃないか。日本は正直にみんなこれに対応しているじゃないか。それはまた考えようによれば、日本の銀行が国際的信用が高いということでもあり、しかしそれが、いまおっしゃった言葉をそのまま使わしていただくならば、ばばをつかまないようにという意味の行政指導は、かなりそのつどきちんと国際金融局の方で対応しておるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  207. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 二点ばかりお答え申し上げたいと思います。  高烏議員のおっしゃられた第一点の、金利、円レートの安定の問題、石油の値下がりの問題、この三つを手段として政策上に活用して、内需拡大、さらにまた財政再建に持っていくということは、私も大変同感でございます。  しかし問題は、私は具体的な手段だと思うのでございますが、いまおっしゃいました大蔵省から出ております中期試算というのですか、あの中で、私は先ほども御指摘申し上げましたが、六・六%の自然増収だけで、そしてそれでもって財政上のつじつまを合わして考えていくことは、これは大変な危険性がある。そういった意味で、今度の経済審議会にお願いしておりますところの経済計画のもとでは少し長目に見ていただく。御案内のように、昨年まで出されておりました財政試算では弾性値は一一・二であり、一二%で見ておりました。したがって、自然増収が四兆五千億から四兆九千億で、したがって五十九年度で赤字公債はなくなるという判断ができたわけでございます。ところが、その半分以下の二兆円くらいの自然増収で、そして、それのもとですべてを考えていくところに無理がある。この二兆円をやはり四兆円にし、五兆円にしていくところの経済政策をとって、その後に財政再建をやっていかなければならない、私はこんなふうに思うのでございます。  そういう意味で、私は、いまおっしゃいました内需拡大の方向も中心はやはり公共投資にあると思います。民間設備投資は過剰設備の状況でございますので、社会資本の乏しい公共投資、これを財政の大きな中心でやっていく、こういうふうに考えているところでございます。そして、いまおっしゃった内需拡大の方向から見たら、一般消費税のようにやはり消費の選択の余地のない税金はこれは避けるべきであるし、しかもまた、キッシンジャーが今度の中央公論によく書いてあります、消費を抑制して、そして輸出を促進していくようなやり方は各国に保護主義の台頭を招くだけであるということでございます。やはり私は増収措置は必要だと思います。しかしそれは、旧税は良税、新鋭は悪税という昔のことわざを思い出して、現行の税制を十分検討してから財政再建を考えるべきである、こんなふうに私は考えております。
  208. 久野忠治

    久野委員長 これにて高鳥君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十二日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会