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1983-02-08 第98回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月八日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    上村千一郎君       小里 貞利君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    工藤  巖君       倉成  正君    栗原 祐幸君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       渡海元三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    浜田卓二郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    宮下 創平君       武藤 嘉文君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君       草川 昭三君    正木 良明君       岡田 正勝君    木下敬之助君       瀬崎 博義君    中路 雅弘君       正森 成二君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府恩給局長 和田 善一君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         国土庁土地局長 小笠原正男君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省中近東ア         フリカ局長   波多野敬雄君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省管理局長 阿部 充夫君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         海上保安庁長官 永井  浩君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 永田 良雄君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月八日  辞任         補欠選任   澁谷 直藏君     工藤  巖君   正示啓次郎君     宮下 創平君   武藤 嘉文君     小里 貞利君   村山 達雄君     浜田卓二郎君   竹本 孫一君     岡田 正勝君   三浦  久君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     武藤 嘉文君   工藤  巖君     澁谷 直藏君   浜田卓二郎君     村山 達雄君   宮下 創平君     正示啓次郎君   岡田 正勝君     竹本 孫一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、主として外交問題を中心にして質疑を行いたいと思うわけです。きわめて素直に私は質問いたしたいと思いますので、総理の率直な御答弁をまず心からお願いを申し上げておきたいと思います。  まず、本論に入る前に、一、二点について総理見解をただしておきたい、こう思うわけであります。  その第一点は、総理はこういう文章に恐らく御記憶があるのではないか、こう思います。一つは、「増税の問題は、行財政整理景気維持による自然増収で片付け、特に一般消費税や二〜三百万所得層への課税優制度廃止には反対です。」第二には、「国が滅びるのは外の敵よりも内が分裂し、腐敗した時です。いまこそ保守陣営を団結させ、政治をきれいにし、全国のみなさんの支持をえて国難を突破しましょう。」第三番目には、「着実な外交による石油・エネルギーの確保 食糧自給体制の推進 防衛力近代化と充実 により総合的に日本の安全をはかる。」  この文章については御記憶にございますか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは何回か前の選挙公報か何かに書いた文章ではないかと思います。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 第一点は、一九七九年の総理選挙公報に載せられた文章内容であります。第二点と第三点は、一九八〇年、前回選挙選挙公報に載せられた記事であります。  私は、この総理公約から考えてみますと、増税の問題は行財政整理が優先をする、そして景気維持による自然増収で片づけることがまず基本である、こう述べておるわけです。もちろん一般消費税には反対、あるいはまた低所得者課税最低限度額を引き上げる、こういう配慮が払われるべきだ。もちろんマル優制度廃止反対だ、こう明確であると思うわけです。今日も変わりがないでしょうか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その後二年ぐらいも時間がたっておるわけでございますから、客観情勢の変化に応じてまた政策も練り直して、時代に合うようにしていくのが政治家の務めであると思いますが、そういう気持ちは変わりないと思います。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 特に前回選挙で、私がいま申し上げましたように、まず外の敵よりも内部の腐敗、これが非常に恐ろしい、こう述べられておるわけです。いわば、いま政治倫理が問われておるわけです。  きょうは午後から与党野党の間で、田中議員辞職勧告決議案の取り扱いをめぐって協議をする予定になっておるのであります。どうもいままでの答弁を聞いても、田中議員政治的道義的責任、この点について見解を述べることをちゅうちょされておるわけです。少なくとも政治的道義的責任についての総理見解というものは、裁判には影響がないのであります。これを避けられるということはどうも国民は納得できない、ぜひ総理見解を聞いてほしい、こういう投書が続々と参るのであります。いま与党野党がこの決議案の問題をめぐって協議をするのでありますけれども、総理のこの見解内閣総理大臣として避ける、差し控える、いまでもその心境は変わりがありませんか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この席でもすでに申し上げましたような考え方でおります。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、国民はどうも、総理はわかりやすい政治と言うけれども、肝心かなめのところはタブーをつくって逃げる、これはやはり田中さんに借りがあるのではないのか、やはり内閣田中曽根内閣である、こういう強い印象がますます国民の中に定着することは避け得られないと思うのです。あなたはこれに対して積極的に解明するためにも、これらの点についてあなたの良心に基づいて見解を述べるべきである、こう思うのです。  再度念を押しますけれども、この点については変わりがありませんか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 こういう事態になっていることははなはだ遺憾であります。しかし、三権分立を厳に守るというのが私の基本的考えでございますので、行政権の首長といたしまして裁判影響を及ぼすおそれのあることは避けたいと思っております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、総理のそういう政治姿勢は、国民政治に対する信頼感というものを回復することにはならない、こう思うのであります。はなはだ遺憾であるということを率直に表明いたしておきたいと思います。  次に、私はもう一点お伺いをいたしておきたいと思いますけれども、「今こそ我等敗戦民族の悪夢を払い、」云々から「昭和革新の人柱となるを誓おう。明治憲法下日本は第一憲政時代である。マッカーサー憲法下日本は第二憲政時代である。」「我等は今や風雪の嵐の中に第三憲政の黎明に立つ。嵐よ来たれ。」という言葉について御記憶がありますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは昭和二十二年に青雲塾をつくりましたときの綱領宣言、たしか宣言の中に入っている文章であると思います。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は御記憶にあると思うのですが、この青雲塾の「我が宣言」に対して、昨年の九月に再び、この確信は不変であるということを明確に言明されておるわけですね。私に言わせると、いわば総理の再宣言である、こう受けとめておるのであります。この点は間違いありませんか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 青雲塾宣言というのは昭和二十二年にたしかつくりまして、二十八年に改訂追補を行った。去年は三十五年になりまして、それで回顧、展望を行ったものを出したわけでございます。その一番おしまいのところであったと思いますが、この基本的確信には変わりがない、そういうことを言っておきました。それは基本的確信、要するにそういうことを行っている基本的精神においては変わらない、そういう意味で申し上げておったわけであります。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 昨年の九月に同様の見解を表明されておりますね。私は、このことは政治家中曽根康弘としていまも変わりがない、こう受けとめていいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣という地位になりますと、その私的な青雲塾という私を中心にする集団の中における話と、総理大臣としての公的発言とはまた別になりますから、総理大臣立場としての発言というものは差し控えておきたい、そう思います。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、あなたは戦後一貫して、こういういま私が述べた立場をとっておられるわけです。これは内閣総理大臣になろうと何になろうと、国政に籍を置いている以上、政治家としての確信、このことに変わりがあっていいはずがないし、変わりがあるはずがないのが常識でしょう。これが政治家常識ではないでしょうか。いかがでしょうか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり個人というものと、こういう行政権の最高の責任者になった場合の考えとは違うと思います。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、いま私が読み上げた文書について、青雲塾の「我が宣言」、この文書について、あなたはいま何か修正されることがありますか、総理大臣として。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その文書は、たしか衆議院議員青雲塾長中曽根康弘、そういう名前で言っておるので、大臣という名前は一向使っておらないわけです。青雲塾長として青雲塾員に対して自分の所信を述べた、そういうことで御了解願いたいと思います。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 肝心なところに来るとウナギをつかむようなもので、するする、するする逃げの答弁がされている、私は残念に思うわけです。  ただ私は、やはり総理憲法改正論者である一貫した発言から考えて、しかも自民党綱領にある自主憲法制定総理自民党の党員であり総裁でありますから、そういう意味でも自主憲法制定への願望を常に総理は持っておる。そして、中曽根内閣としては憲法改正の発議はしないけれども、政治日程にのせないけれども、タブーとすることなく、憲法内容の問題については国民的な論議を期待する、こういう考え方総理のお考えではないかと私は思うわけです。大体いままでの答弁総括をすると、いま私が述べたことに集約をされるのではないか、こう思うのですけれども、いかがでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民主主義下においてはタブーがあってはなりませんので、憲法にせよ、教育にせよ、福祉にせよ、自由に御論議を願いたい、そういう希望を持っておるわけであります。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は、自主憲法制定への願望はお持ちじゃありませんか。願望ですよ、願望をお持ちになりませんか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は自由民主党総裁でありまして、総裁といたしましては、これは自由民主党政策綱領を遂行する責任にあります。それは私的な政党総裁という立場であります。しかし、公的な内閣の首班という立場になりますと、またおのずから別の立場になりますので、そういう私的なあるいは個人的な見解は避けたいと前から一貫申し上げているところであります。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうも総理は、正面から答えようとしない姿勢がありありとするわけです。だがしかし、他党のことを申し上げては失礼でありますけれども、自由民主党が結成をされて、この綱領が決まってもう時間は三十五年を経過しているわけですね。  いま自民党のいろんな政策でも、総理が言うように今日の情勢に適合するかどうか、そういう意味であらゆる政策が見直しをされる、政権政党としてそういう姿勢がなければならないと思うのですね。だから、三十五年前に決めた綱領、しかも、この自主憲法ですらも、平和主義主権在民民主主義やあるいはまた国民基本的権利を尊重する、これらを受け継ぐということが明確になっておるわけですね。しかも、いま自民党内であっても、私は、この憲法改正ということについて非常に多くの意見があることを承知をいたしておるわけですね、他党のことでまことに恐縮でありますけれども。  私は、そういう意味でも、この憲法問題については、政権政党であっても、全国民的な平和憲法の定着の状況から判断をして、憲法問題については、単なるあるグループ、ある一定の人々に焦点を合わして憲法問題を論議することはきわめて誤りである、非常に危険である、こう思うのでありますけれども、この点はいかがでしょうか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 百花繚乱といいますか百家争鳴といいますか、いろいろな御議論民主政治下にあってはいいと思いますので、それは自民党内におきましても、あるいは日本社会全般におきましても、いろいろな議論を闘わして、よりよきものへみんなで協力するということは、いいことであると思っております。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 残念ながら、どうも政治倫理の問題、総理のきわめて政治的な持論である憲法改正の問題、総理大臣になったがゆえにかみ合わないんでしょうか。私は、やはり政治家良心というものがあれば、自分政治信念というものは内閣総理大臣といえどもこれらの問題について述べて何ら差し支えないと思うのですね。むしろ国民は、はっきりしてくれ、総理見解を聞きたいということを私は期待いたしておる、こう思うのであります。  時間がございませんから、次に本論に進みますけれども、初めに日米首脳会談についてお伺いいたしたいと思います。  総理は、予算委員会でも問題になりました、国会決議に基づく武器技術供与をひっ提げながら日米首脳会談に臨まれたわけであります。しかし、日米軍事面を含むいろんな面で総理発言をされておるわけでありますけれども、アメリカの方の評価というものは、事前の予想を超えたものであった、こういう評価が強いと実は伝えられておるわけであります。それが一連の、日米運命共同体、そして日本を不沈空母化する、あるいはまた、有事の場合には三海峡を封鎖する、こういう大胆な軍事面発言になってあらわれておるわけであります。  私は、まずお聞きいたしたいのは、このような、私に言わせれば過剰とも言われる発言、そしてこれが結果的に対米公約として今日受け取られて、わが国にとって大きな荷物になっている。  中曽根政権はこれらの状況について、いま私が言ったように対米公約として受けとめられている、これがわが国一つの大きな荷物になっている、こういういま自覚を一体お持ちかどうかという点について、お尋ねいたしたいと思うわけです。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本憲法に基づく諸施策等をよく先方にお話をいたしまして先方の理解を求める、また先方意見もよく聞いてみましてこちらも先方考えをのみ込む、そういう形で両方の関係を調整して、おのおのの憲法に従った政策が両立し得るように協力していく、そういう立場でいったわけでございますか、虚心坦懐にある程度話しまして、牛肉オレンジの問題とかあるいは防衛問題とか、いろいろございまして、昨年十二月の状態では、アメリカの議会におきましては防衛やあるいは貿易摩擦等について厳しい状況日本があったと思いますが、そういう話し合いの結果、一応それはある程度解消し得た、そういう意味において一応のある程度の成果はあった。去年の十二月の情勢と今日の情勢とを比べてみますと、日本国民の皆さんもその点については安心していただけたんではないかと思います。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、総理のこの過剰とも言える軍事面コミット、この点の背景を私なりで分析をしてみたわけであります。そうしますと、大体次の四点が挙げられるのではないかと思うのです。  一つは、いわば総理持論である防衛力増強政策を展開するいまがチャンスだ。だから、レーガン政権の方針を受け入れて、そして中央突破作戦でこれを進めた方が得策である、こういう一つ判断。  第二には、総理は英文のパンフレットを就任のときにお渡しをしたそうでありますけれども、依然としてアメリカ側に残っている反米ナショナリストという中曽根イメージをこの際払拭しよう、こういう意図が第二にあった。  第三には、いま総理が述べられた牛肉オレンジなど農産物の自由化問題の決着を、わが国のいま予定されている一連選挙後まで引き延ばす、そういう意味で、軍事面で積極的なサービスをしておこうという戦術的な配慮。  そして第四には、しばしば国会で問題になりましたロッキード事件で封印されていると言われるP3C対潜哨戒機の導入にまつわる疑惑ですね。総理も証人として喚問されたことがあるわけであります。これがアメリカ側に握られているという不安から来るそういうもの。  私は、こういう四つの点がその一連軍事コミット背景にあったのではないのか、こう思うのでありますけれども、率直にお聞きをいたしたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは岡田議員独断の御推察でございまして、そういう点はございません。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、一つぐらいあるのじゃないですか、四つ挙げたのですけれども。いかがですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 わが国防衛政策をのみ込ませようという点はあったと思います。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、いままでの総理答弁を聞いていて、特に運命共同体日米は太平洋を挟んでの運命共同体だ、こう言われているんですが、総理は、運命共同体という解釈はどういう解釈をお持ちなんでしょうか、いろいろ言われておりますけれども。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは形容詞でありますから、そのときそのときによっていろいろ解釈の仕方は違うと思います。  たとえば、たしか日中の問題とかあるいはASEANへ行ったときに、日本有力政治家は、われわれは一つボートに乗っている、そういう表現を使った記憶があります。一つボートと言うと、これまた死なばもろともというような感じになります。それは一種の、仲よくいこうという意味の形容詞じゃないかと思うのです。運命共同体という意味にもそういう形容詞、比喩という意味がございまして、余り気になさらぬ方が私はありがたいと思っております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は、矢野公明党書記長のこの件の質問に対して、私は大正生まれだ、矢野さんは昭和生まれで、大正生まれの人間というのはよくこういう言葉を使うかのような御答弁をされたわけですね。私も大正末期の男であります。逆に、一国の総理であり、大正生まれの人間が使うから問題なんですね、この言葉は。そうじゃないでしょうか。戦後の教育を受けた人は違うんです、意識が。われわれは教育勅語、明治憲法下で育ってそういう教育を受けてきた。そういう大正生まれの、しかも一国の総理が使うからこれが問題なんですよ。われわれは、運命共同体というのは、運とか幸運とか不運がありますけれども、これは個人的な自由をお互いに認めない、いわゆる拘束的な社会関係を指して共同体、こう言うわけですね。それを総理は一蓮托生などという言葉でも表現されたんでしょう。  私はそういう意味で、少なくともいま今日の日米間の置かれている現状からいって、一国の総理がいとも簡単に、日米は太平洋を挟んでの運命共同体だ。しかも、わが国日米安保条約は締結をしておるけれども、これは相互援助協定ではないわけですね。アメリカが有事の場合に日本がこれを守るということはできないわけであります。この厳然たる事実からいっても、この言葉を使ったということは適切ではない。むしろ不用意であると私は言いたい。適切ではないというのが国民的な、全国民の見方である。恐らく自民党の国会議員でも、そういう批判をする方がたくさんおるわけであります。いかがでしょうか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)おりますよ。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党の方々は意外に、なかなかおもしろい言葉を使った、そう言ってくれる人が多いようです。まあジャーナリズムはいろいろありますが、ジャーナリズムの中にも、それは比喩であたりまえじゃないかというのも散見しております。ですから、やはり形容詞として皆さん受け取っていただいているんではないかと思います。  共同体ということを言う前にはちゃんと注釈がついておるのでありまして、つまり自由と民主主義をともに分かつとか、政治的信条を同じくする、あるいは膨大な文化と経済交流で相互依存関係にあるとか、あるいは安保条約で共同対処をする、そういうようなさまざまな、いろいろなそういう問題において運命をともに分かつ。だから、自由と民主主義の信念を共同に分かち合っている、それも共同という意味に入っているわけでありまして、そういう幅広い意味において使った。だから、運命共同体という一つの言葉はないわけでありまして、運命をともに分かつ、シェア・ザ・デスティニー、そういう言葉を使っておるわけであります。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし、普通一般の外交辞令で使うならいいんですけれども、やっぱり首脳会談でありますから。確かに運命という言葉については、運命共同体という言葉はないわけですね。しかし、運命に関することについて、いま述べましたように、それぞれの個々の自由は認めないいわゆる拘束的両国関係、これが共同体ですね。それに運命がつくわけでありますから、運命に関してでありますから。これは広辞苑の解釈なんですよ。一般的な解釈でしょう。学校の先生が聞かれた場合には、このように教えるわけであります。そのように聞いた子供は、運命共同体について非常に危惧を持ち、非常に問題の大きい言葉であるということに気づくんじゃないでしょうか。素直にやっぱり解釈して考えるべきだと思うし、いままでの歴代総理大臣も、ずいぶんやはり言葉を選んでいるわけですね。過去の日米会談の言葉をずっと見ても、非常に選んで、慎重にこの日米関係というものについて配慮を払っておるわけであります。私は、一国の総理としてそういう配慮が必要だと思うのですね。いまの発言はそういう点について欠くるものはない、こう言い切りますか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に強い連帯関係にある、そういう意味の表現であるとおとりくださるようにお願いいたします。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に私はお尋ねしたいのは、総理は、日本列島は不沈空母である、その後不沈列島と表現を変えられた。また、いろいろ弁解じみたことが述べられておるわけであります。しかし、空母というのは、きのうも質問がありましたけれども、守るものか攻めるものか、こんなのは軍艦マーチではっきりしているわけでしょう、「守るも攻むるもくろがねの」、海軍の将校でありますから、よくおわかりでしょう。私はそういう意味で不沈空母化するという発言、しかも、どうもその後発言を訂正されている。  率直に聞きますけれども、この表現はきわめて当を得てない、適切を欠くということをお認めになっている証拠だと思うのですね。そう理解していいですか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、自分の国は自分で守る、そういう決意の表明であるというようにおとりいただきたいと思うのであります。  私がなぜそういう表現を用いたかと申しますと、安保条約で日米が結んでいる、そういう中にあって、日本自分自分の国を守るという強い決意を持たずして、一朝有事の際に安保条約が有効に機能し得るであろうか、アメリカが本気で日本を守る気になるであろうか。やはり一国の総理大臣の任務にある者は、平和を守り国民の生命財産を守るということが第一義でありますから、国民の生命財産を守るという一番大事な第一義の問題を全うするというためには、まず自分自分の国を守るという決意をはっきりして、そして安保条約を有効に機能させる、そういう考えがあったわけであります。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理はかつて一九七〇年九月の九日、防衛庁長官として訪米されたわけですね。当時のレアード国防長官と会見をして、あなたは、日本海を日本湖、レーク・オブ・ジャパンという表現で軍事コンプレックスの編成について発言されているわけですね。もう十三年前ですね。ですから、今度の訪米で、首脳会談で、ワシントン・ポストであなたが述べられた軍事面コミットというものは一貫して変わってない。そうではないでしょうか。いかがですか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自分自分の国を守るという確信については、一貫して変わっておりません。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 したがって、軍事面防衛力に対する見解も、この一九七〇年に訪米したときの発言以来変わっていない、こう受け取ってよろしいですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その後十数年たちまして、基盤防衛力という発想が出てきたり、あるいは「防衛計画の大綱」というコースが生まれまして、その過程におきましてはその流れに従っておるわけであります。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理はしばしば、国民の生命と財産、私に言わせるとそれにもう一つつけ加えて、幸せな暮らしを守る、生命と財産だけでは不十分なんですね、幸せな暮らしも守るということになるのだ、こう私は思っておるのであります。しかし、これを守るためには軍事力に頼ることが一番賢明である、こう総理は第一義的に最も強く強調されているように思えてならないのであります。  先ほども選挙公報を読み上げましたけれども、この国民の生命と財産、豊かな暮らしを守るという点についてはいろいろな手段、方法があるのではないでしょうか。きのうも森林資源の問題がありました。緑を保全するということも国土を防衛することでしょう。あるいはまた、自然災害から国民の生命と財産を守るという積極的な施策をとることも、これも重要でありましょう。エネルギー、食糧問題も重要でありましょう。そういう意味で、国を守るというのはそういう大きなワイドの中で、もちろんその中に総理持論である防衛力も含まれるかもしれません。含まれるでしょう。だがしかし、それ以外の多くの要素があるわけですね。ところが、どうも予算と同じように、総理発言軍事面だけが突出をするわけですね。これは、近代政治家として、また今日の情勢からいって、あるいはまた日本の置かれておる現状、資源小国日本、加工型産業構造を持っている、輸出振興に頼っている日本、地理的なあらゆる位置づけからいっても、どうも軍事予算と同じように突出発言が強過ぎる、こう思うのですけれども、私がいま述べた見解についてはいかがでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 総合安全保障は必要であります。また、平時においては非常に重大な政策であると考えております。したがいまして、私も総合安全保障政策というのは強く前から言ってきておる人間でございます。しかし、ぎりぎりの場合を政治家考えておかなければなりません。そのぎりぎりの場合の一つは、日本に対する武力攻撃が発生した場合でありまして、そのときに備えて日米安保条約というものがあるわけです。その一番ぎりぎりの最も不幸な事態が起きたときにどうするかといえば、自分自分の国を守り、かつ安保条約を最も効果があるように発動させるというのが政治家のやり方であると思って、そういう考えに立って言っておるものなのであります。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 総理は、バックファイアとかあるいはまたソ連艦隊の封じ込め、一連のソ連を仮想敵国とみなした発言アメリカで行われたわけですね。その後、仮想敵国とはみなしていない、意図がないから、潜在的な一つの脅威ではあるけれども仮想敵国ではない、こういう見解でこの国会でも答弁をされているわけであります。そうしますと、ソ連は軍事的に非常に脅威であるということを総理も認められておるわけでありますけれども、ソ連がわが国を侵攻する意図はないということを明確に言われているわけですね。軍事的能力もいろいろあるわけでありますけれども、では、その軍事的能力で、日本を侵攻でき得る軍事力といいますか、陸海空がありますね、この点は総理として常にソ連ソ連という言葉を出すのでありますけれども、どういう軍事能力を問題にされていますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍事能力につきましては、防衛庁から御答弁させていただきます。
  49. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 能力の問題に入ります前に、一言申し上げさせていただきたいと存じますが、紛争の抑止力という考え方がございまして、この抑止が崩れたときにはきわめて危険な状態に陥る可能性がある、こう判断をいたしております。  なお、今日の国際情勢は、この紛争の抑止の信頼性を回復するということに西側のきわめて大きな意図が置かれておるのでございまして、わが国の周辺の状況につきましても、ここ数年来、極東におきまするソビエトロシアの各般の軍事力の増強は確かに顕著なものがございまして、私どもはこれを潜在的な脅威とは感じております。
  50. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんから詰めて議論ができませんので、後に譲りたいと思うのです。  私は次に、いま私が述べた一連総理発言、一月十九日、ワシントン・ポストの記者会見で述べられたわけですね。このワシントン・ポストの中で、同じD・オーバードーファー記者の会見記と別に、この記者が会見の解説記事を載せておるわけです。総理はこれはお読みになったことはありますか。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 読んでおりません。
  52. 岡田利春

    岡田(利)委員 この記事の要約が私の手にあるわけでありますけれども、この中には解説記事として、一つは、日本が任務を引き受けるのであれば——これは不沈空母のような、こういう意味も含まれているわけです。日本が任務を引き受けるのであれば、これまで予定されている以上の軍事力増強が当然必要となるであろう、これが第一点です。第二点は、バックファイア爆撃機の飛来を監視し、阻止するためには、さらに強力なレーダー能力と、もっと充実した迎撃能力が必要だろうと米国専門家は指摘をしている。日本は近く限られた数のF15戦闘機を取得をするが、発注済みの機数ではこの任務を果たすことはきわめて不十分と考える。第三番目、日本海でソ連艦隊を阻止するためには、はるかに多くの機雷と最新型機雷敷設用の艦艇、航空機も必要だろう。このような解説記事が同じ十九日のワシントン・ポストに載っているわけです。  これについて総理、この同じ会見した記者が責任を持って解説記事を載せていることは非常に重要だと思います。アメリカ側国民的にそう受けとめている。政府はもちろんそう受けとめておるということだと思うのです。この点はいかがでしょうか。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 わが国防の基本方針、国防会議で決定し、閣議でも決定しました方針は、やはり国力国情は応じて防衛力を漸増する、そう書いておるわけです。それから、安保条約においてもお互いに防衛力を増進していく、そう約束もしておりますし、それから鈴木・レーガン共同コミュニケにおきましても、「イーブン・グレーター・エフォーツ」という言葉を使って、より強化に努める、そういう約束をしておるのでありまして、国際的に見ましても日本防衛努力がわりあいに不足であるということは、ヨーロッパの国々あるいはアメリカの国々からも批判されておるところであります。  日本はやはり憲法に応じ、国力国情に応じてある程度の防衛力を維持していくということは、世界に対してその局部だけの脆弱性をつくらないという意味でやはり日本としても考えていかなければならない、国際的孤立を防いでいく一つの要件であると私は思っております。そういう意味において防衛力の漸増という方針をたどっており、かつ「防衛計画の大綱」が当面のわれわれの到達する目標として行われておる。その中には防空もあります。外国の飛行機が日本の領空を侵犯しないように、また、いざというときに日本を侵略しないように抑止する、あるいは海峡に対するコントロール力もふやしていく、あるいは周辺数百海里の防備も怠りなく行うというような方針がちゃんと決められておるのでありまして、したがって、外国航空機の侵略を阻止するという防空能力も高める。したがって、バッジとかレーダー網の整備も行われているし、F104あるいはファントムあるいはF15というように漸次優秀な飛行機を備えていることも、そのためにやっておるのでありまして、こういう一連の努力をわれわれは継続していくということの意味においては、オーバードーファー君の指摘していることは、われわれが努力していることでもございます。
  54. 岡田利春

    岡田(利)委員 この解説は、明らかに現在日米間で非公式に話し合い——非公式といいますか、話し合いされている防衛力の増強のための買い物リスト、いわば装備ですね、これらを、問題を部分的に反映していわばこの解説記事が述べられている、こう受けとめられておるのがアメリカでは常識になっておるようであります。しかも、現在どういうものが候補に上っているかという点がその背景から出てまいるわけであります。  第一には、最新レーダー網。そして第二には、P3C及びE2Cの増機。第三番目には、F15の増機。第四には、F18、幻の戦闘機。アメリカが採用する場合、日本にもやはり買ってもらわなければつまらぬ。これらの問題についても、すでに可能性について日米間で話し合いが行われる。あるいは準巡航ハープーンミサイルの採用問題。潜水艦装着の水中発射巡航ミサイル、トマホーク導入の可能性、こういう一連の問題について、あなたのブレーンもたくさんおるわけでありますけれども、そういう話し合いが水面下では非公式に行われているのではないですか。今度は防衛庁長官、三月に行かれるのでしょうか。いつになるのでしょうか。恐らく武器技術供与、この交渉と並行してこれらの問題についても話が積極的に進む、いわばそういう一定の方向の中で総理軍事面コミットアメリカで述べられた、これが大体アメリカ国内の一般常識になっているのですね。私はそう受けとめている。この点はいかがでしょうか。
  55. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国は、憲法に基づきまして基本防衛政策を持ち、それに従ってあくまで自主的に防衛力の整備に努めておるわけでございます。そして、現下大綱の水準を早期に達成をいたしたい、こう努力をいたしておるわけでございまして、全く装備につきましても、みずから判断をして検討を加えつつ、現在そのような作業を続けておるわけでございます。  なお、日米間の軍事のトップレベルの協議というものは過去においてもすでに何回か続けられておりまするし、私といたしましても、日米防衛問題について、アメリカの国防長官とできますれば機会を得て話し合いをいたしたいと考えておりまするが、目下のところ三月に訪米をいたすというような日程は組んでおりません。
  56. 岡田利春

    岡田(利)委員 まあそのような答弁になるだろうと、私もそう思って質問をいたしております。しかし、私が指摘したことが現実にならなければいいのでありますけれども、一連の流れは残念ながら私が指摘をした方向にいくであろう、こう私はまず指摘をしておきたいと思うのであります。  総理は、レーガン大統領との会談の中で、全韓国大統領やカナダ首相の意向を代弁するという形で、アメリカは自由貿易体制を守ってほしいとか、あるいはまたサミットの場合に、カナダ、アメリカ日本の三国の太平洋の首脳会談について述べられたわけですね。その中で、レーガン大統領はこれに答えないで笑った、こう述べられているわけですね。非常に意味があるのだと思うのですね。総理は、この場合にどのようにお感じになったでしょうか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 韓国の全斗煥大統領と話しましたときに、アメリカへ行った場合に、自由貿易堅持をチャンスがあったらレーガン大統領に伝えてほしい、そういうお話がございましたから、自由貿易を堅持して、保護貿易を廃絶する、そういう主張を述べましたときに、全斗煥大統領よりもそういう強い要請があったということは伝えました。  それから、カナダのトルドー首相と会見しましたときに、いろいろ話が出まして、サミットの話も出ました。あなたはサミットの一番のシニアメンバーになっておられる、五月に行われるが、私は新米なんでどういうふうにやってよいかわからぬが、コッを教えてくれませんか、そういう話をいたしまして、トルドー首相といろいろ話をしたわけです。その中に、太平洋問題という話が出まして、やはり太平洋の平和と繁栄というものを太平洋沿岸諸国は考えるのが望ましい、しかし、これには非常にデリケートな部面がありまして、ASEANの国々は、太平洋という大きな中へ埋没してしまうとASEANの個性がなくなる、そういう心配もしています。そんな話もあって、これは非常にデリケートな問題もあるからよく検討しよう、そういう話をした。  レーガン大統領との間には、太平洋の平和と繁栄、これは非常に大事である、そういう話はいたしましたが、具体的な話というものはありません。
  58. 岡田利春

    岡田(利)委員 ほかは大統領は全部あなたのお話には返事をしているのですが、ここは笑って答えなかったというのは、あなたはその場合どう感じられましたか。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、太平洋の平和と繁栄という点については、大統領とは意見が一致しておりました。
  60. 岡田利春

    岡田(利)委員 それは別な話ですね。その場合には大統領は答えなかったわけですね。私は非常に意味深長だと思うのですね。総理は全斗煥大統領やカナダの首相の言葉を通じてあなたの希望を述べられた、こう受けとめられたのではないでしょうか。あるいはまた、そういう意味総理一連発言、そして、この面に触れた気負い立った発言について、にやにやとレーガン大統領は笑って答えなかったというのが本当じゃないでしょうか。そのようにアメリカ側では受けとめておるという情報があるのですが、いかがでしょうか。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全斗煥大統領のそういう要請を伝えたときには笑って答えなかった、そういうことはあったわけです。しかし、太平洋の平和と繁栄という問題については、非常に積極的熱意を示しておられた。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 そこで、サミットの問題でありますけれども、今度のサミット会議、これ、まだ議題はもちろん決まっていないと思いますけれども、今日の国際情勢から言えば、非常に重要なサミット会議になるのではないかと私は思うのですね。  そういう意味で、今度のサミットについて、どのようなことが中心的に議題になる、議論される、こう総理は思っておられますか。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サミットの議題はまだ決まっておりません。  それで、二、三回、首相、大統領の個人的代表が集まりまして、どういうサミットにしようかという相談をしておる最中でございます。五月がサミットでございますから、恐らくその一、二カ月ぐらい前にはその主題も決まってくるだろうと思いますが、それに応じて私たちは準備をしていかなければならない、そう思っております。
  64. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今日の国際経済を分析する場合に、やはり経済問題が——大体サミットは経済的側面について話し合いをするということになっておりますけれども、特に今度のサミットの場合には、国際経済の問題が中心議題に当然なることは間違いないと思うのです。  その一つには、先進国がいま三千万人以上の失業者を抱えている、四苦八苦の状況にあるわけですね。一方、発展途上国は累積債務を抱えて、何か繁栄に対する希望を失っているというような状況も、発展途上国群の中には出てまいっているわけです。そうしますと、いずれにしても、国際経済をいかにして活性化させるのか、このことがいま国際経済で最大の課題である。だから、このことが中心議題になることは当然ではないか、私はこう思うのです。  では、どう活性化させるかという場合に、次の点が恐らく問題になるだろう。一つは、主要国の緊縮路線から協力による成長政策への発想転換、これをどうやるかという問題であります。そして、そのためには、かつてありましたように、もう一度日米の機関車論がこの中に台頭してくることは間違いがないのではないか。同時にまた、今日の国際通貨の動向を見ますと非常にフロートの幅が大きいのですね。これではやはり経済は安定しないのであります。したがって、国際通貨制度の改革を図らなければならない、見直しをしなければならないという問題が緊急課題であろうかと思います。したがって、現実的な為替レートのいわば変動幅をどう設定するか、そういう改革、見直しをしなければならないという問題が当然その場合に出てくるだろうと思うのですね。私はそう思うのでありますけれども、総理としてはいま私の意見に対してどういう御判断をお持ちでしょうか。
  65. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らく世界経済の活性化というものは出るだろうと思います。それとの含みで南北問題、発展途上国、債務国、こういう問題に対する対策も出るのだろうと思います。機関車論が出るかどうかは、これはまだ疑問の点があります。日本も機関車論というので、あれは福田内閣以降ずいぶん努力して、そのために公債がこれだけ累積してしまった、そういうこともございまして、こういう問題はよく検討していくべき問題であろうと思っております。
  66. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は機関車論というのは、主要国の緊縮路線から国際協力による成長政策への転換、そのことによって活性化を図ろうとすれば、そういうものが当然浮かび上がってくるということをあらかじめ指摘しておいたのであります。大体総理の御意見、不十分でありますけれども、ほぼ考え方については一致するのではなかろうか。非常に重要なサミットになるという点について、特に日本の対応がきわめて重要である、こう思いますので、私の見解を含めて御指摘を申し上げておきたいと思います。  時間がありませんので、次に、日韓の問題にちょっと入らさせていただきたいと思います。  日韓首脳会談について、ずっと共同声明を私は丁寧に読んでみたのであります。その三項では次のように述べられていますね。「日韓両国が自由と民主主義という共通の理念を追求する隣邦として相互に緊密な協力関係を」云々、こういう形で述べられておるわけであります。日本と韓国は隣邦国であって、あらゆる面でいろいろな緊密な協力関係を保っていく、そういうことが私は必要だと思うのですね。この点については異論がないのであります。  だが、しかし、今日の韓国がこの共同声明の三項で述べられているように、「自由と民主主義という共通の理念を追求する」という、そういう認識をわが国は韓国に対して持っておることが一般的なんでしょうか。自由と民主主義の国にクーデターで大統領が出現するなんということはないでしょう。あるいはまた、今日の強権政治で在日朝鮮人すらも弾圧の憂き目に遭っておるわけです。集会、結社、言論、出版の自由が果たしてあると思うのでしょうか。私はそういう意味で、この共同声明の三項のこの内容について非常に疑問を持つのでありますが、この点についてはいかがですか。
  67. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民主主義の成熟度というものは国によってみんな千差万別でございますが、韓国におきましては戒厳令が撤去されるとか、あるいは学生のデモが認められておるとか、あるいは政党がおのおの自由な政党活動をしておるとか、そういう意味におきましては民主主義体制がある程度成熟しつつある国である、そういう意味におきまして、日本と韓国はある意味における民主体制のもとにある。もちろん日本の方がはるかに成熟している国であるということは言えますけれども、そういうものではないか。  大体世界的に見ますと、いわゆるゼネラルデモクラシーという国が出てくるわけです。将軍が天下をとって、そして次第にそれを民主化していく。国の発展段階によっておのおのみんな国づくりのやり方が違いますから、外国に対してわれわれはとかく言うべき問題ではございません。しかし、学者の分類によればそういう分類もあるので、それも一つ考え方かな。そして、そういう国が次第に民主化していく、そして成熟していく。日本でも初めは太政官制度でありまして、ある意味においては専制権力のもとに明治維新がスタートしたわけですが、それが明治十四年の政変、明治十八年の内閣総理大臣制に移行して太政官制度を捨てた。二十二年に憲法をつくり、二十三年に議会政治が始まった。そういう過程を通って民主主義は成熟してきた。やはりそういう歴史的発展段階で、温かい目で見てあげるということが大事ではないかと思います。
  68. 岡田利春

    岡田(利)委員 温かい目で見てやるという最後の言葉は私はわかりますよ。よく理解できますけれども、どうもその前に述べられていることは次元が違いますね。やはりアメリカとの場合にも、自由と民主主義の価値観を共有するという、こういう表現を使っているわけですね。しかし、今回の韓国との共同声明のこの三項は、温かい目で見てやるという総理の気持ちはわかるけれども、共同声明に堂々とこのようにうたい上げたということについては、国際的な常識からいって、自由と民主主義常識からいっていかがなものであるか。きわめて迎合的にうたい上げた第三項であるという評価は免れないと思うのですね。しかし、総理はどう聞いても同じ答弁を繰り返すでしょうから、指摘をしておきたい、こう思うわけであります。  そして第二に、今日の韓国の経済は一体どういう状況にあるか、韓国の経済、国家としての位置づけはどういう状況にあるか、この点についてはどういう御認識を持たれたのでありましょうか。
  69. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 韓国は、御承知のように、国際的に見ればいわば中進国という立場にありまして、大体国民所得からいえば千七、八百ドルというふうなところではないかと思うわけでございます。それは韓国が経済的にこれまでいろいろな困難を乗り越えて今日に至っておる。しかし、第二次石油ショック以来、韓国もやはり世界の諸国と同じような経済的な困難に遭遇をいたしておるわけであります。そういう中で朝鮮半島が二分されておる、いろいろな制約等もありまして、防衛には大きく予算を投入しなければならぬということから、いま経済的にも相当困難な事態を迎えておる、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。
  70. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がないから、どうも答弁については了解できませんけれども、的確でないと思いますけれども、次に進めていきたいと思います。  共同声明の第四項ですね、この後段において、総理は、「朝鮮半島をとりまく現下の厳しい情勢下において韓国の防衛努力がかかる対話努力とあいまって朝鮮半島の平和維持に寄与していることを高く評価した。」こう述べられておるわけであります。しかし、韓国は朝鮮の脅威、北の脅威ということは言っておりますけれども、ソ連は脅威と認識してない、こうしばしば述べられておるわけですね。この点について、まず第一点、どうなのかという点であります。  それと同時に、わが国は中国と友好関係にございますから、中国とわが国の間には、朝鮮民主主義人民共和国、すなわち朝鮮が南進するということは絶対にないという保証を日本にしばしば与えておることも御承知かと思います。ソ連の見解もまた同じであることも確認されておるわけであります。そして、八八年にはソウルにおいてオリンピックの開催がすでに決まっているという意味は、国際的認識もそうであろうと思うのであります。  そうしますと、米韓の軍事同盟から見て、アメリカの方はソ連を含めた対ソ戦略でありますから、そういう点で韓国の防衛ということを問題にする。しかし、わが国はそれと同じような立場に立つ必要はないと思うのですね。そういう意味で、私に言わせると、米軍が韓国に駐留している現状等を総合的に判断して、過剰防衛ではないのか、こういう判断すらあるのであります。果たして韓国はソ連を脅威と認識しておるのでありましょうか、こういう点も含めてひとつ御答弁願えれば幸いだと思います。
  71. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまの韓国がソ連に対してどういう見解を持っておるかということでありますが、韓国自体の問題であります。いま韓国が直面しているのは、やはり北との関係における厳しい緊張の状況というものを、韓国は非常に強く意識をいたしております。そのための防衛努力というものに対して全力をささげておるということでございますが、同時に、共同声明の第四項に見られるように、韓国はそうした防衛努力とともに、積極的な南北対話の再開というものに向かって努力もいたしておる、こういう韓国の、朝鮮半島の平和維持というものに対して努力している点を、日本としてこれを評価した、こういうことがこの第四項の趣旨であります。
  72. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん韓国が北にどういう脅威を感じて、どう防衛能力を高めていくかということは、韓国自体の問題であります。しかし、韓国の認識とアメリカの認識、日本の認識と、当然今日の情勢分析の間には違いがあると私は思うのですね。これも詰める時間が実はないのであります。  そこでもう一点、非常に疑問といいますか、注意深く私は見るのですけれども、共同声明第六項の問題ですね。これは、総理は全斗煥大統領との間で太平洋首脳会談の構想の説明を聞いて、そして、これも総理は多としたわけですね。そして、両首脳は云々と書いてあるわけでありますけれども、かつて全斗煥大統領は太平洋NATO構想ということも打ち上げた経緯もあるわけですね。ですから、大統領の説明に対して多としたのでありますけれども、太平洋首脳会談構想という実質的な内容ですね、この点について、一体どういう構想なのか、この機会に明らかにしていただきたい。  同時に私は、中曽根総理はかねて太平洋経済文化圏構想というものを示しているわけですね。しかも、あなたの著書には、そのために云々という、高らかに自画自賛の内容もあの著書の中に含まれておるわけであります。これと一体波長は合っているものかどうか、その点も含めてひとつ御説明願いたいと思うのです。
  73. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この全斗煥大統領の太平洋諸国の首脳会談の開催の提案というのは、昨年の七月三十一日に発表されたわけでございますし、その後しばしば大統領はASEAN訪問等においてこれを述べられておるわけでございます。この構想によりますと、原則としては太平洋全域内のすべての国が参加をして、そして幅広い対話を図っていく、太平洋の安定と平和のための幅広い対話と協力を図っていこう、こういう趣旨であるというふうに私は受け取っておるわけでございます。これがしばしば新聞等では、いわゆる安保、太平洋安全保障というものに結びつけて考えられておりますが、これについては、韓国側はそうした安保問題についての会議ではない、純粋な太平洋の平和と安定を図っていこうという見地からのサミットであるということを言っておるわけであります。  そして、第六の項目については、こうした大統領の太平洋首脳会談に対する意見について総理大臣がその説明を多としたというふうになっておるわけでございまして、これについて積極的にこれを支援していくとか、ともに推進するとかそういうことじゃなくて、大統領が持っておる太平洋に対するそうした情熱といいますか、平和維持への努力について多とした、こういうふうに共同声明は述べておるわけであります。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、十数年前から太平洋経済文化圏構想というのを言っております。英語でPEACEというのですが、パシフィック・エコノミック・アンド・カルチャラル・エンクレーブ、そういう言葉で、PEACE、そういう略称で言っておるのです。  これは、いま太平洋を見ますというと、たとえば日本とカナダ、日本アメリカとの間にずいぶん多くの姉妹都市があります。それから、商工会議所とかあるいは知事会議とかあるいはJCの会とか、非常に多くの事実上の交流がありますし、経済的にもミッションが行ったり来たり、いろいろしております。また、日本とオーストラリア、日本とASEAN、あるいはアメリカとオーストラリア、アメリカとASEAN、みんないろいろなそういうものがあります。こういう民間のいまの経済文化交流あるいは学者の交流というものをだんだん集約していって一つの体系にまとめたらどうだ。それは民間と学者がまず主になってやってもらって、そして、ある段階に来て大体これがいいというときになったら政府が出ていく、それで集約したらどうか、当面はまず、学者あるいは民間人のレベルにおいて金や物や人間や文化のフローを研究しよう、流れがどういうふうに流れているか、それをまず研究してみて、そして、その流れを今後どういうふうに調整していったらいいかということを検討してみたらどうだろうか、そういう提言をしておるので、政治が先に出ることは、私の場合は後になっておる、そういうことであります。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうしますと、総理の構想と全斗煥大統領の構想は波長が合っていないということになるわけであります。しかし、いずれにしても、大統領構想というものをいま外務大臣からも説明がありましたけれども、いままでの大統領の発言の流れを分析しますと、どうも、いま外務大臣が説明したようにはならないのではないのか、そこに表現されていない意図が含まれている、こうわれわれは評価せざるを得ないのであります。  そこで、総理が記者会見の席上ということで述べておるわけでありますけれども、これは十二日の記者会見で、「アジアの平和安定を考えたとき、韓国が賛成なら南北同時国連加入を米日中ソが支持することが望ましい。そして終極的には、南北の平和統一という目標を掲げ、それを捨てないで進めることが望ましいことではないか。」こう述べたわけですね。今回シュルツ国務長官が来日をされたことを契機にして、これは向こうの方から、大統領からですね、正式に要請があった、このように言われ、しかも中国を訪問した場合にもこの面について中国の意向を打診しているということも実はいま伝えられておるわけです。  私は、韓国との関係の改善を図ることが朝鮮半島の政策に必要だ、こう言いますけれども、日本の政府の朝鮮半島政策というものを明確に聞いたことがないのであります。どうも漠然としておった。しかし、総理の記者会見、そして、その後の状況、きょうあたりの新聞報道では、日本としては韓国の国連加盟は北とは関係なくこれを支持する意向だということも伝えられておるのでありますけれども、いよいよ、いままでベールに包まれていたわが国の朝鮮半島政策というものが鮮明に浮かび上がってきたのではないのかという気がするのであります。  この点の一連の経過からいって、政府の朝鮮半島に対する統一的な政策、この点をきょう明確にしていただきたいと思うのです。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 けさの一部の新聞に、私が発言訂正したような記事が載っていますが、そういうことはございません。おとといでしたか、廊下を歩いているときに記者の諸君から質問がありまして、公斗煥大統領との間でクロス承認みたいな話はあったんですかという話がありまして、そういうような問題について話したような気もするけれども、よく調べてみないとわからない、調べてみましょう、そう言ったわけです。それから、きのうまたそういう同じような質問がありまして、けさの新聞に出ているような答えをしたのです。  ということは、まず朝鮮半島の平和安定という問題は韓国と北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国がみずから先におやりになることだ、朝鮮半島のことは、朝鮮に住む人たちがまず第一義的にみずからおやりになることであって、外からとやかく言うべき問題ではない、これが第一です。そういう意味で、南北平和統一のための対話をやるということは非常に望ましい。ぜひ積極的に実りあるようなことをやっていただきたい。  それで、最近全斗煥大統領が非常に積極的に対話を呼びかけまして、幾つかの対話の条件をお話しになりました。その中身を私も聞きましたけれども、それはまず憲法をつくるための研究の協議会をつくろう、それをまずたしか言われておったと思います。それから、常駐代表を両方で平壌とソウルに置こうではないか。それから、いままでの、暫定協定を結ぼう。たとえば休戦ラインを守るとか、あるいはそのほかの当面の案件を処理し、平和を持続するための暫定的な措置をやろうじゃないかというような提議を全斗煥大統領はしております。それに対して北の方からは、民間人等を主にする百人会議をつくろうじゃないか、そんなことで応答がいま進んでいるので、こういう対話が続いているということはいいことでありますから、それをどんどんどんどん進めていただく、つまり朝鮮半島の平和と安定の問題は、北と南の皆さん方御自身でおやりになることが第一義だ、それが第一であります。  しかし、朝鮮半島の平和と安定はアジアの平和と安定にも関係し、世界の平和、安定にも関係してくることでありますから、関係国としてこれは関心を持つのはあたりまえだ。そういう平和と統一が実現されるために周りにあるアメリカ日本あるいはソ連、中国という国々が協力してあげるということは望ましいことである、そういうことを私は言うたのです。  クロス承認を支持するとかなんとかという具体的な話は私はしておりません。いまのような関係四カ国が平和と統一のために協力し合うということは望ましいことである、そういうことを言うておるのであります。これがやはり基本的な立場であると私思っております。  韓国に対する政策等々につきましては、安倍外務大臣からお答えさせていただきます。
  77. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま総理のお話しのように、やはり朝鮮半島の緊張を緩和をするということは一番大事なことであろうと思います。そのためには、第一には、やはり南北の両当事者間の対話を深めていくということであるわけですが、同時にまた、環境づくりを周辺の国々がお手伝いをするということもこれまた一つの方向であろう、こういうふうに思っております。したがって、韓国としては南北対話について積極的な呼びかけをいたしておるわけでございますが、同時に、そうした南北対話を進めていく上においての環境づくりについての日本の協力というものも要請があることは事実であります。  具体的に、それでは南北の国連同時加盟であるとかあるいはまたクロス承認であるとか、そういう具体的な要請というものはないわけでございます。また同時に、韓国自体を日本が国連に承認を求めるということについては、なかなかいまの国連の状況から見まして困難であるということは韓国自体が一番よく承知をしておるわけでありますから、したがって、そういう情勢の中でクロス承認とかあるいは同時加盟といったような問題が起こっておるということではないか、こういうふうに判断をしております。  わが国としても、そうした緊張緩和の方向でお手伝いができるならば、これは積極的にお手伝いをしたい。クロス承認といった問題も、これは非常に真剣に検討するに値する課題ではないか、こういうふうにも考えますが、しかし、まだ韓国がそういう問題についてわが方に具体的な提案をしておるわけではないわけであります。
  78. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、確認しますけれども、全斗煥大統領は総理に、そういうクロス承認といいますか、韓国の国連加盟についての協力要請、これは全然なかったということをはっきり断言できるかどうか。  それから、いま話題になっている中国と日本がそれぞれの国を承認し、その後米ソが承認をする、いわば二段階クロス承認方式ですね。この点については総理は原則を述べられたわけでありますから、この点についてはいまとるべきものではない、こういうことは明確に言い切れますか。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その二段階とかなんとかという話は、私は直接聞いておらないのです。しかし、両方の当事者がそういうお気持ちであって、それが合意に達すれば、これも一つのいい案ではないかと考えます。しかしそれは、そういうものが実るかどうか、まだ疑問の余地もございます。
  80. 岡田利春

    岡田(利)委員 朝鮮戦争が終結をして、休戦協定を結んで以来もう三十年の歴史がたつわけですね。三十年間という時間がたっておるのであります。しかし、この休戦協定というのは国連軍が参加したのでありますから、最終的に国連軍を代表するアメリカと朝鮮との間に休戦協定を結んだわけですね。この歴史的な事実は厳然として今日残っていると思うわけであります。そうしますと、休戦協定を結んだ当事者がまずどういう認識でいるかということはきわめて重要視されるわけです。したがって、アメリカでは朝鮮半島の問題についてどのように考えておるかということは、非常に注目すべきだと私は思うのです。同時にまた、朝鮮半島の問題解決のためには、アメリカが果たさなければならない役割りはそういう歴史的な経過においてある、こう言わざるを得ないと思います。しばしば朝鮮民主主義人民共和国の首相もそういうことを述べておるわけですね。われわれはそういう意味で国際関係の改善を図るという熱意を持っている、ただ、それには順序があるではないかということが常に提起をされておる事実も御存じかと思うのであります。  そうしますと、わが国としてそういう歴史的な経過にかんがみて、アメリカに対してもわが国わが国立場から朝鮮半島の政策を進める、平和政策を進めるという意味においてアメリカに一定の要請をする、アメリカの果たす役割りについて日本側として堂々としてこれを要請するという態度があってしかるべきではないか、こう思うのでありますけれども、この点はいかがですか。
  81. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島における平和と安定の持続、長期的な安定を求めるということは、これは世界の平和のために非常に望ましいことでありまして、それはアメリカにおいてもソ連においても中国においても日本においても同じ気持ちを持っておるだろうと思います。それを具体的にどういうふうに展開していくかということは、やはり北と南の当事者のお考え中心で、まずみずから話し合って平和的統一を行うということが本義である、私たちはそう思って、そのお手伝いがまず第一ではないか、そういうふうに考えております。  アメリカに対しましては、私はいまの現実の問題として南北の関係というのはまだ厳しいものが非常にあると思っております。そういう意味において、在韓米軍を朝鮮半島に維持しておくということは非常に評価しているものなのであります。
  82. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は今回の四十億ドルの援助についても具体的に質問いたしたいのでありますけれども、時間がありませんから後からの野坂委員の質問にこれは譲りたいと思うのです。  ただ、日本の対韓援助協力というのは、一九六五年に日韓基本条約が締結された場合、対日請求権協定が結ばれて、そうして十年間に無償三億ドル、当時のお金で一千億円、そうして有償二億ドル、当時のお金で七百二十億円が供与されたわけですね。これは十年間で、こういう協定が結ばれたわけです。そうしてその後は、一九八〇年には日韓定期閣僚会議において、いままでの政府ベースの援助から民間ベースの援助に移行するということが確認されたわけですね。そして、実績的には一九八〇年に百九十億円。単年度ベースにしますと七百億円から百九十億円ということになって、民間ベースに移行されることが双方確認されたわけですね。これが対韓援助の経過なんですよ。  そうして、今回の四十億ドルというのはそういう意味では大変な巨額なお金なわけですね。これは非常に不可解なわけであります。ですから、この点については一点だけ私は伺っておきたいと思うのですが、わが国の政府開発援助、特に円借款の規定からいってもどうも不明朗だ。かつて十一項目のプロジェクト、私が質問した内容に櫻内大臣が答えているわけでありますが、この点が本当に詰まったのかどうか。もちろんこれは七年間でありますけれども、単年度に詰めていく、こうお答えになるかもしれません。しかし、四十億ドルという大枠を決めた以上ある程度詰まっていなければおかしいわけであります。国民は納得しないのであります。国民に納得できるように説明しなければならぬのであります。あるいはまた、いまのような歴史的な対韓援助の経過からいっても、あの日韓基本条約を結んだときでも無償三億ドル、有償二億ドル、金の価値は違ってもそう大きい金ではないでしょう。それが今回七年間で四十億ドル、しかも安保絡みではない、純然たる経済援助だ、こう言っても国民は納得しないわけですね。だから、こういう点についてぴしっと資料をもって説明ができるかどうか、この点だけを承っておきたいと思うのです。
  83. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国の対韓援助につきましては、これまでもずっと続けてやってきておるわけでございますが、今回の日韓の交渉によりまして一応四十億ドルを目途とする、その中でいわゆる円借は十八・五億ドル、こういう目途にはなっておるわけであります。  わが国の経済協力の基本方針というのは、人道的な立場、さらにまた相互協力というものを基本精神にいたしましてこれを進めておる。そうして、そのやり方は積み上げ方式、毎年毎年これをプロジェクトごとに精査をして、そして、これを積み上げていくという方針をとっておるわけでございます。今回の韓国に対する援助も、一応その目途というものは打ち出しておるわけでありますが、具体的にはどういう形でやるかというと、五十七年度はいまちょうど実務ベースの交渉が始まっているわけでありますが、五十七年度は五十七年度、五十八年度は五十八年度と、そのときどきのプロジェクトによってこれを進めるわけでございます。したがって、全体的にとにかく積み上がった結果としてそういうことになる可能性はあるということで、毎年毎年これはやってみないと、具体的なプロジェクトについて積み上げ計算をしてやってみないとはっきりしたことは出てこないわけでございます。したがって、わが国の経済協力の基本方針というものとたがうものではありませんし、これはLDCの国だけではなくて、中進国に対してもこれまでしばしばやってきておるわけであります。  今度の韓国に対する経済協力のやり方は、一応日本と中国との間は三千億をめどとして五カ年計画でやりましたが、あのいわば中国方式というものをとって今度の日韓の経済協力を進める、こういうことでございます。しかし基本的には、いま申し上げましたように、わが国の積み上げ方式によるところの基本的な経済協力の方針は貫いていかなければならない、これは当然のことであります。
  84. 岡田利春

    岡田(利)委員 いま中国方式、こう言われましたけれども、わが国の円借款方式は、中進国は中進国、発展途上国を主体にしてやるというのが方針ですから、韓国経済の状況は中進国、こう国際的に認定されているわけですね。中国と違いがあるわけであります。ただ、そういう点で客観的に見てもどうも納得できないというのが国民の偽らざる受けとめ方だと思うのです。だから、やはり朝鮮側が発表しているように、このことは結局、経済協力とは言うけれどもそのことによって韓国の予算の支出が軍事力の方に回すことができる、こういう側面が韓国内部では出てくるわけですから、したがって実質的には日米安保条約、そして米韓防衛条約、これを結ぶ経済協力、これは実質的に韓国のそういう軍事情勢防衛力の増強にも役立っていくという面で三角安保だ、韓国側もそういう認識でそういう発表をいたしているわけですね。この点は後に譲って、返答は要りません。  時間がもうありませんので、はしょって御質問申し上げておきたいと思うのですが、きのう日ソ関係で、領土問題で藤田委員の質問に対して総理は、わが国は領土の問題で譲ってもらうためにというか解決のために媚態は示さない、こう述べられたわけですね。媚態をもって対ソ交渉をやって北方領土の問題が解決すると思われて、あれを発言されたんでしょうか。もし、そう思われたというのであれば、私は非常に甘い認識だと思うのですね。そんな状況にないと思うのですよ。どういう意味を込めてあれは述べられたのでしょうか。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 藤田さんに私の真意を申し上げましたが、やはり主権と独立を保っている国としてのしっかりとした立場を堅持して、そして相手に対して話し合いを続けていく、話し合いは粘り強く行っていく、特に手ごわい国に対しては対話の道を閉ざしてはいけない、常に対話と話し合いの道を開いておくということが外交の要諦である、そういう意味で申し上げたのであります。
  86. 岡田利春

    岡田(利)委員 あたかも藤田議員が、そういう媚態を呈するような外交について質問したので、われわれそのように北方領土の問題をやる考えはないというような答弁をしたように受けとめられているわけですよ。真意を伝えられた、こう言うのでありますけれども、私はそう受けとめたわけですね。しかし、たとえばそういうような態度でやったとしたって、北方領土の問題は解決するものじゃないのですから、その点はどうも適切を欠いた答弁だと私は思いますので、指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、総理の施政方針の中でも粘り強く対話を進める、このことが明確に述べられておるわけです。しかし、今日の日ソ関係の現状というのは、その対話を通じて北方領土の問題を解決をして平和条約を結べるというような、そういう短期的な見方の情勢はないんだと思うのですね。私はないと思うのです。その点はどう思われているのか。  そうしますと、総理自身も日ソ関係の打開ということについて意欲を非常にお持ちだということも、いろいろ報道等あるいはまた側近を通じてそういう考え方が流されておるわけであります。その面から判断しまして、いまの日ソ関係というものをまず一定の関係改善を図る、そして国際的な環境も整備をしながら北方領土の問題、そして平和条約を締結していくという展望を構築しなければならない時期ではないか、私はそう思うのであります。  そうしますと、日ソ共同宣言、これが両国の条約として最も重要な条約であります。それから、田中・ブレジネフ共同声明、このことも私は重要な文書だと思うのであります。したがって、これらを基礎として日ソ両国間の、国家間の基本的な関係というものをまず原則的に確立をする。その上で堂々とソ連との土俵をつくって対話を進める、何らかのそういう手法がなければ、幾らしんぼう強く、粘り強くやると言っても前進しないのではないか、こう私自身は思うのでありますけれども、総理のお考えはいかがでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまお触れになりました共同宣言、それから田中・ブレジネフ会談、こういうものは非常に大事な外交資料であると思っております。そういうことを踏まえつつソ連との間に粘り強く対話と交渉の道を開いて打開していく、そういう努力をすることは正しいと思っております。  日本は、あらゆる国に対して友好と親善を求める、そういうオープンな態度を持っていることが非常に好ましいと思っておりまして、ソ連を敵視したり対決を求めるというような考えはございません。
  88. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、やはり短期、中期、長期に考えて、日ソ関係というのは、いま総理が述べられたように、この関係をぴしっと一定の基盤に乗せる、言うならば中曽根・アンドロポフ共同声明といいますか、そういう面できちっと確立をする、そういう土俵を構築をする、これくらいの意欲があってしかるべきだと思いますので、いまの答弁についても私はそういう前向きの方向で対処されることを特に強く希望をいたしておきたいと思います。  今月の下旬に永野さんが団長として訪ソ貿易経済代表団、二百二十名くらいの参加者の希望があります。十一月に、アメリカ側も二百名程度の代表団が訪ソいたしておるわけであります。永野さんも意欲をずいぶんお持ちでございまして、もちろんココムや対ソ経済措置には触れない範囲においていろいろな技術の協力についても考えたい、シベリア開発についても考えたい、アフガン以降中断されている日ソ経済合同委員会の幹部会も開きたい。アメリカも、昨年十一月に代表団が行って経済共同委員会を再開したわけですね。さきにシュルツ民はこの点についてちょっとコメントをしたらしいのですけれども、総理の方は、いやアメリカの方が先鞭をつけておるので、日本の方もそれに従って代表団が行くのでしょうと軽く切り返された、こういう記事も実は載っておるわけであります。  私の情報では、まだ確定的ではありませんけれども、チーホノフ首相もしくはアンドロポフ書記長とも永野さんは会談でき得る可能性があると伝えられておるわけです。決まったとは情報にはないのでありますけれども、特に永野さんは、もし総理がアンドロポフ書記長に対する書簡を出すお気持ちがあれば親書を携行したい、こうも述べておるわけですね。訪ソ貿易経済代表団のこのような団長の意欲あるいはまた考え方、これについて総理はどう評価をされておりますか。また、永野さんが求められて、アンドロポフ書記長と会見ができるという点がもしぴしっとセットされた場合には、積極的に何らかの親書の携行を依頼する気持ちがあるかどうか、これも含めて承っておきたいと思うのです。
  89. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 親書というものを出すのが適当であるかどうか、検討の余地があると思います。私は、余り適当ではないのではないかと思います。  しかし、永野ミッションあるいはそのほかの稲山さんも行くとか新聞に書いてありましたが、一連のこういうものに対してソ連側がどういうふうな態度に出てくるか、これは重大な関心を持って注目していきたいと思っております。
  90. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間がありませんので飛び飛びになって恐縮でありますけれども、一つは、中東の関係で、アメリカ側からかねて要請されていた在レバノン国連監視軍一個大隊、約千名ですね。四千百名ですか、いま派遣されているわけですが、この年間経費として一個大隊分二千万ドル、いまのレートでは四十七億円になるのでしょうか。この点が、シュルツさんにも正式に回答されたとも伝えられておるわけです。中東情勢を見れば一年で終わるというはっきりした見通しもないわけですね。二年になるかもしれません。この派遣費の負担は新しい協力援助だと思うのですね。経済協力とは違うと思うのであります。  したがって、もちろんこれには政府側の方も兵士の給料、銃弾などの兵たん費は含まない、補給に限定することを義務づけるということも述べられておるようでありますけれども、この予算は一体どこから支出をされるのか。同時にまた、こういう政治協力といいますか政治協力の協力費、これを支出する基準というものがやはりぴしっと定められなければならないのではないか、政府はかねて国連に対する協力の問題も述べておるわけでありますから。そうしますと、もしこれを支出をするとすれば、その支出項目、予算上どうなるのか。同時にまた、基準というもの、方針というものが明確でないと、国民に説明できないと思うのであります。そういう点をぴしっとするお考えがあるのかどうか、この点について承っておきたいと思います。
  91. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 レバノンにおけるいわゆる多国籍軍に対する協力問題につきましては、これは総理とシュルツ国務長官との会談におきましても、また私とシュルツ国務長官との会談においても出まして、そしてアメリカの要請もあったわけでございます。  わが国としては、アメリカの要請があったというだけの問題でなくて、レバノンの平和をこれから確立をしていく、さらに、これが中東諸国の非常な期待にこたえることになるわけでございますので、この多国籍軍に対する協力は、基本的にいたしますということはお答えをいたしておるわけでありますが、しからば、いまお話しのように、どういう形でいつどういうふうにして出すかということについては、いま検討中でございます。これは、これから財政当局とも相談をいたしましてその方策を考えていかなければならないということで、まだ目下検討しておる、こういう状況であります。
  92. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は、検討された結果、やはりしかるべき国会委員会に政府から明確に説明をして、それから支出をするということを約束できますか。
  93. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろんこれは予算措置でございますから、国会の御承認その他得なければ出せるわけの問題ではない、こういうふうに思っております。
  94. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今日の中東和平への努力、この情勢にどう対応するかというお話も聞きたかったのでありますけれども、時間がありませんので、もう一つイ・イ戦争の問題について承っておきたいと思うのです。  イ・イ戦争も何か拡大するような傾向も報道されておるのでありますけれども、実はもう三年目を迎えておるわけですね。そこで、日本とイランの関係というのは、貿易額でも十億ドルを突破する状況にあるわけですね。それから、原油の輸入契約は、全体の契約を見ますと三十万バレル・デーを超えている。かつて、十三年前ぐらいですか、総理は通産大臣時代にイランを訪れたことがあって、実は私もその当時イラクを訪れたことがあるわけであります。そして、そういう関係にあって、イ・イ戦争というのは米ソの背景というものがない特異な戦争ですね。そして、イランとの関係でいま述べたような状況にあるというのが、日本とイランの関係であるわけであります。  そこで、日本とイランの関係でかねて国会でも問題にたったイラン化学開発株式会社の問題ですね、ローンの返済問題があるわけです。この三回目がこの二月の二十七日に来るわけです。百十九億四千万円の元利支払いをしなければならぬわけであります。もちろん、これはいまの会社が支払うものでありますけれども、しばしば政府協力が問題になってきておるわけです。  いま、アメリカはイラン離れしてしまって、イランに対して全然窓口がないというのが本当でしょう。そういう意味で、日本がイランとは一番密接な関係にあるということも事実だと思うのです。もし、イランとイラクの戦争が終わった場合には、戦後復興の需要というものは一千億ドルに達するであろうということが一般常識として述べられてもおるわけです。したがって、日本を通じて、イランの情勢についてはアメリカも非常に関心があるというのは当然ではないかと思うのであります。そういう面から考えて、特に戦争が終結した後、IJPCに対する政府の協力というものは、従来の方針を継続して資金援助もやる、戦争が終わった場合にですよ。そういうふうな態度で当面の情勢を見ているかどうなのか、一体どう対応しようとしているのか、この点承っておきたいと思うのです。
  95. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 イラン・イラク戦争は現在も続いておりますし、最近の報道ではイランが相当な攻勢をかけ始めた、こういうことでもあるわけでありますが、日本としては、イラン・イラク戦争というものが一日も早く終局することを心から祈っておるわけであります。イランとの関係は、いまお話しのように、IJPCを初めとする石油の輸入を含めた、経済的にも非常に深いつながりがあります。これはイランだけではありません。イラクともまた大変深い経済的なつながりを持っておるわけでございます。これは日本のためというだけでなくて、中東の平和といいますか、世界の平和のためにも、一日も早く終息することを祈っております。  そのために、日本としてもこれまで、早期停戦あるいはまた中東諸国の和平調停等については積極的な支援を送っております。特にイランにつきましては、昨年も松永審議官中心にして使節団を送りまして、イランとの間の諸問題についての話し合いもいたしましたし、また、イラン・イラクの早期停戦について、日本が役割りを果たすことがあれば積極的に果たしたいということも申し入れをいたしておるわけでございます。  したがって、私たちとしては、今後ともこのイラン・イラク戦争というものが拡大しないように日本としてもあらゆる場において、また直接イラン、イラクに対しても働きかけて、この紛争の早期な解決というものに努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  96. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間が参りましたので、もう一問だけで終わりたいと思いますので、お願いをいたしたいと思います。  この委員会でもしばしば、八三年以降の国際情勢を一体どう見るかという点について、総理も若干の見解も述べられておるわけです。二年前と違って国際情勢は、この八三年の正月を迎えてやはり大きな転換期に立っておるし、転換しつつあると言わざるを得ないと私は思うのです。そういう国際的な努力の動きというものが非常に活発に今日、正月初頭から行われておるというのが事実だろう、こう思います。  そして、私はアメリカの国内情勢、もちろんソ連はソ連の経済情勢もありますけれども、アメリカ自体の世論とか国内情勢からいっても、アメリカ自体もやはり新しいデタントを求めて積極的に動き出す、いわばそういう対外政策の整合性というものがようやくアメリカにおいても構築されてきた。ある人はシュルツ効果とも言っておるのであります。  そういう状況の中で、私は米ソの新デタントの構築、そういう方向にまず進んでいく。そこには現在行われている核削減の交渉の進展も関係するでしょう。同時にまた、昨年変わった情勢としては、ソ連と中国の、われわれが史上経験しなかった社会主義国家間の関係改善、デタントがこれは前進をしつつあるわけです。しかし、一方中国は、今度のシュルツ訪中にも見られるように、決して従来のような米中関係ではなくして、お互いにしかし協力をする、台湾問題もありますけれども、協力をするという姿勢の中で中米の関係一つのデタント、こう言えるのではないか。そうしますと、これは三極のデタント攻勢、このことがやはり中心になってこれからの八三年、いや八〇年代の国際情勢は進展していくものと言わざるを得ないと思うのですね。  そういう一つの動きの中で、私はアフガンの問題の平和解決もなされていく。多少ジグザグがあっても、中東の和平問題も解決されていく。あるいはまた、イ・イ戦争の終結も図られていく。あるいはまた、これはカンボジア問題についても、新しい情勢が、時間はかかっても生まれてくる。朝鮮半島の緊張緩和といいますか、朝鮮半島における情勢も、大きく情勢は進展をしていく。そこにわれわれは、日本とソ連の関係、米ソの関係、朝鮮半島の政策関係、そしてまたASEANやあるいはまたインドシナ、アジア諸国との関係、こういう点についてそういう全体の流れを見ながらわが国外交は対応していく。いわば、そういう意味で、世界の三極デタントの流れに呼応してどのようなたくましい外交政策を展開するかということが今年の課題であり、いや八〇年代の課題だ、こう私は思うし、その信念を持って私は今日の情勢を見ておるのであります。  私は、そういう意味で、情勢認識については総理とそう意見の相違がないと思うのでありますけれども、この点しかと承っておきたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 世界の緊張緩和に向けて積極的に努力するというお考えには、全く同感でございます。  それで、最近の情勢を見ますと、ソ連にアンドロポフ新政権が出まして、いま政策形成期にあると思います。しかし、新しい政権が出てくるというときは、外交政策に変化を生む一つの転機になる、一つのチャンスでもあります。これはスターリンが死んだ後とか、そのほかいろんな例を見ればわかるところであります。アメリカ日本も、ソ連がいま政策形成期にあって、どういう態度に出てくるであろうかということを非常に重大な関心を持って見守っておる状況であり、ヨーロッパも同じだろうと思います。こいねがわくは、そういう緊張緩和の方向にソ連も出てき、アメリカもこれに応じて、そして世界的に安心を与えるという方向に進むことを、私は非常に強く熱望してやまないものであります。  そういう期待を持って外交政策も慎重に考えていく必要はあると思っておりますが、しかし、これは希望的観測の要素もかなりまだあります。現実にはアフガニスタン問題もまだ解決しておりませんし、カンボジアにおきましても動向はそう変化はございません。ただ、新政権が出てきて、そしてソ連も国内的には非常に厳しい問題を抱えておるし、共産圏自体が全体的にいま非常に困っている情勢である。アメリカも相当な予算の赤字に苦しんできております。  そういう全般的な状況観測を見ますと、みんなが良識を回復して、東西ともに世界の平和を考えるときに近づきつつあるのではないかと思うのです。私は、そういうことを希望しておりますが、日本もそういう世界緊張緩和のためには応分の協力をしていかなければならぬと思っておりますが、しかし、一国の外交でございますから、どういう変化が出てくるか、どういう兆しが出てくるか、慎重に見守っておるというのがいまの立場でございます。
  98. 岡田利春

    岡田(利)委員 終わります。
  99. 久野忠治

    久野委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後零時四十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ────◇─────     午後零時四十二分開議
  100. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  101. 正木良明

    ○正木委員 現在、非常に景気の状態が悪うございまして、五十八年度予算に期待する国民の気持ちというものは非常に大きいものがあると思うのです。そこで、本日は景気対策問題中心に、若干の質問をいたしたいと思います。  去る二月三日に、商工中金が、中小企業月次景況観測というのを発表いたしました。この中で、五百社の売上高を調査対象にしまして、十二月が前月比マイナス〇・九%、一月が前月比プラス〇・八%、二月はマイナス一・〇%になるであろうというふうに予測をされております。プラスの結果が一月には出ておりますけれども、これは前月〇・九%落ち込んでおるわけですから、そこからの出発でありますから、十一月よりもまだ低い、二月も低くなるという状況であります。また、総理府が労働力調査をいたしました五十七年の平均完全失業者が百三十七万人、失業率は前年比〇・二%ふえまして二・四%、これは昭和三十年以来の最高の水準であるというふうに発表をされております。  こういう状況の中で、私どもも党利党略を超えて、一緒に知恵を出しながら景気対策を講じていかなければ大変なことになってしまう。同時に、このことは後ほど申し上げますけれども、今後の国債償還の問題にも大きな関係があると言わなければなりません。  そこで、最初に経企庁長官にお伺いしたいのですが、いろいろわれわれはこうして予算委員会関係委員会で論議をいたしますけれども、やはり相当責任を持った見通しなり、それなりの政策的な見解というのを述べてもらわなければいかぬと思うのです。  実は臨時国会、昨年の十二月十六日にこの予算委員会で私が質問をいたしまして、あの五十七年度の補正予算によって、五・二%の実質経済成長率から三・四%に下方修正された成長率が確保できるのかどうか。特に、民間の経済研究機関の見通し等もおしなべて非常に低い。しかも、公共事業が非常に執行難であるということと、それから所得減税が行われないというような状況から、三・四%は不可能ではないのかという質問をいたしました。そのときに経済企画庁長官は、三・四%は達成できるということを明確におっしゃったわけですね。これが十二月の十六日です。そうして、十二月の二十五日、十日もたっていないのにもかかわらず、五十七年度の経済成長見込みをまた下方修正して三・一%にしているわけです。これは一体どういう理由なのか。十日余りで実質経済成長率が〇・三%も下方修正される。そのときにはそんな材料があったのではないか。それをどうしてこの国会の中で明らかにしなかったのか、それとも戦術的にそれを逃げたのか、そういう点について経企庁は実態をつかんでいたはずですから、お答えをいただきたいと思います。
  102. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  臨時国会におきまして、正木委員からただいま御指摘のような五十七年度の成長率について達成可能かどうか、非常に鋭い御質問がございまして、私は、厳しいながらも達成できると申し上げました。そのときの達成率は三・四%でございましたが、おっしゃるように、五十八年度の予算と常に一体といたしまして見通しを立てます際に、五十六年度、五十七年度の経済成長の実態を最近の数字で明らかにしたため、単に数字的な修正でございまするけれども、三・四%が三・一%になりました。この点は、実は五十六年度の経済成長を二・八%と低目に見ておりましたものが、逆にそのときの最近の数字を使いますと三・三%に上昇した。したがって、五十七年度のGNPの総額は二百六十七兆、全く変わりません。しかし、五十六年度の土台が二百五十一兆五千億から二百五十三兆八千億に上がったために、それで割りますと、五十六年度分の五十七年度は、三・四であるべきものが三・一になる。大変わずかの差で申しわけございませんでしたが、こんなようなことになったわけでございます。まだまだ五十七年度は、いま二月でございまして、三月が五十七年度の終期でございます。五十七年度のこの目標達成ができるかどうかは、夏ごろに明らかになる。それまで私どもは何としても三・四%の目標に向かって努力すべきものだ、こういうふうに考えております。
  103. 正木良明

    ○正木委員 私は、数字の問題はそういうことになるだろうと思うけれども、しかし、実態としてやはり五十六年度の経済成長の方が予測よりも高かったために、その差額である五十七年度の成長率が低くなったということをおっしゃっているわけですから、五十七年度は明らかに、やはり当初予想したよりも、ないしはそれが実態にそぐわないというので、第一次的に下方修正したよりも低くなっていることは事実なんですね。だから、これはやはり五十七年度の経済政策というものについては、大きな失敗があったと見なければならないと私は思うのです。  いずれにせよ、この経済見通しとかいうものは、経済は生き物でありますから、機械のように正確に、そして、それを責任をとれと言っているわけではないわけです。ないわけですが、しかし、いろいろの環境から必要以上に高い成長率を見込んでしまったり、これは税収計算の問題や何かで予算編成上そういうことが必要であったということは過去にあったわけだし、五十七年度は現にそれがあった。またその反対に、非常に低い見積もり方をしてしまう、そういうことがあっては、実際このような非常に敏感な経済環境の中で不況にあえいでいるという状況を好転させていくことは、不可能だろうと私は思うのです。したがって、ここで閣僚の皆さん方にお約束いただきたいのは、その場逃れやメンツにこだわって足かせになるというようなことはひとつやめてもらいたい。できるだけ正直に、実態に即した御答弁をいただきたいと思うのです。  そこで、三・四%の昭和五十八年度実質経済成長率というのを見込んでおられるのだから、これは恐らく三・四%の実質経済成長というものが必要であるというもとに、その方向を出されたのであろうと私は思うのです。私も、そのことについては決して反対ではありません。むしろ低過ぎるという考え方を持っております。特に政府は「昭和五十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」、これをお出しになっておりますが、この中で、五十八年度の経済運営の第一の課題として、「国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を実現し、雇用の安定を図ることである。」というふうに、雇用の安定を非常に重視をなさっている。これも決して反対ではありません。したがって、こういうふうな言い方をなさっているということは、三・四%の実質経済成長というものが雇用の安定に非常に不可欠のものである、ぎりぎりのものであるというふうに理解してよいのかどうか。  また、経済審議会が中期経済計画をいま策定、立案されているようでありますけれども、その経過報告の中で、六十二年度の失業率の目標を二%に置いているわけであります。そこで、では五十八年度に政府の言う雇用の安定というのは、失業率と失業者数ではどの程度に考えておられるのか、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  104. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  三・四%という成長率は望ましい、現状で考えられるところの私どもが努力すべき目標だと考えるところでございます。御案内のように、三十年から企画庁が成長率を示しております中で、これが三番目に低い成長率でございます。高度成長前の三十三年には三%、そしてまた四十九年の第一次石油ショック後に二・五%という成長率を当初に立てたのでございますが、当初で三・四%というこのような、いま正木委員がおっしゃいましたような低い率を打ち立てましたのは、これで三度目でございます。どうしても私はこの目標は達成したい、正木委員御指摘のとおりだと考えております。  その目標の中に、いま御指摘の雇用の安定ということがあることは言うまでもございません。そしてまた、中期の目標におきましても、二%という目標を立てていることも御案内のとおりでございますけれども、この三・四%によってどの程度雇用の安定ができるか、これは失業率でいまのところ計算いたしておりまして、二・四%の現在の失業率をできる限りふやさないような、二・三%程度にこれによってなることができるのではないか。したがって、五万程度の失業者が減少できるということが諸般の経済指標の中から計算される、こんなふうに見ているところでございます。
  105. 正木良明

    ○正木委員 したがいまして、二・四%の完全失業率を二・三%に〇・一%減らすためには、三・四%の実質経済成長率が必要である、これは期待しているんだと言う。果たしてそれじゃ、この三・四%の経済成長が可能なのかどうかというのをひとつ議論してみたいと思うのです。  政府は、五十八年度に三・四%の成長率を達成できる要素として、アメリカの経済の景気回復、さらに日本国内の物価の安定、在庫調整など内需の拡大を挙げておられるわけであります。私が、政府の演説やこの予算委員会を通じていろいろの議論を承っておりますと、三・四%の成長というのは、どうも現状で望み得るすべての好条件が出そろったときに、三・四%の経済成長が可能になるというふうに受け取らざるを得ないのであります。政府が想定しているいろいろの条件にマイナス要因が出てくれは、三・四%は不可能と私は思うのだけれども、その点はどうでしょうか。
  106. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま申し上げましたように、私どもは、三・四%の目標は確かに厳しい目標だと思っておりますけれども、努力によって達成できると確信しております。  いま申されましたように、私どもの前提は、海外の経済の回復が緩慢ながら行われる、それに応じて、五十六年以来わが経済は海外の経済の落ち込みと同時に落ち込んでまいったのでございますが、いま申しました回復につれて在庫調整も円滑に進展して、経済活動がだんだんと活発になってくる、こんなふうに見ているところでございます。  そこで、海外の状況の中に、たとえばアメリカの金利が果たしてどのようになっていくか。さらにまた、アメリカの大きな財政赤字を考えてみると、金利が下がっていくかというような不安な要素はございまするけれども、昨今の情報では、アメリカのレーガン大統領が、とにかく厳しいけれども景気回復の第一年目がことしだ、こんなようなことを言っておりますし、失業率が〇・五%下がったということで、レーガン大統領の誕生日に大変はしゃいだという話が伝わっております。  こんなようなことから見まして、私どもは、海外の経済が回復するという観測に全面的に同意して、それを前提に考えていくべきだ、こんなふうに考えております。
  107. 正木良明

    ○正木委員 ところが、アメリカの景気回復の見通しについては、非常におくれるという見通しが強い意見として出ているわけですね。たとえば、三カ月間で経済予測が非常に悪くなっているという実例を、アメリカの三つの有名な予測機関がやっているわけですね。モーガン・ギャランティー・トラストだとかメリル・リンチ・エコノミックスだとかゴールドマン・ザックス・エコノミックスというようなところは、それぞれ景気予想というものについては、三カ月間でずいぶん悪くなっているという予測を出しているわけです。  経済企画庁はこの経済見通しの中でも、「インフレの鎮静化と米国をはじめとする高金利の是正の動きを背景に景気の回復が期待される。」というふうに言っているわけですから、これが予測されたときと現在とでは、アメリカの経済環境というのはそんなに好転するという兆しが見えない。むしろこの中で経済成長率だとか失業率というのはずっと悪くなってきているわけなのですが、結論から申し上げると、回復の時期を一九八三年中と言っていたものが八四年中に延ばしている。したがって、わが国の経済企画庁が予測した八三年の後半回復という予測から見ると、非常に大きなマイナス要因とならざるを得ないと思うのですが、その点はどういうことになっていますか。
  108. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  確かにアメリカの統計資料、おくれる点もございますが、早い点もございまして、昨今の情報等を見ますと、たとえば小売売り上げ、さらにまた住宅着工、自動車販売等におきますところの一月の実績は好調だ、こんなふうに伝えられる点もございます。しかし一方、住宅着工についてはまだ不安な要素があるとか、金利の問題について不安があるというようなことも伝わっておりますけれども、全体としてアメリカの経済はもう回復基調であるということが、慎重ながらも楽観論が強まりつつある状態というような表現で言われておりますように、私は回復が緩慢ながら進んでくると見て、これが日本経済にいい影響をもたらす、こういうふうに見ているのでございます。
  109. 正木良明

    ○正木委員 これは見解の違いでございますし、予測するデータの読み方の違いもあるだろうと思いますけれども、私は、やはりこれは海外要因としてはマイナスの要素を非常に含んでいるのじゃないかというふうに考えます。  それともう一つは、アメリカの高金利というのは日本の公定歩合と密接な関係があるわけでありますが、この高金利の是正というものは、いま長官がおっしゃったように、われわれが期待したよりも非常に緩慢で、期待どおりいかない。たとえば、公定歩合の第八次の利下げが期待されておりましたけれども、アメリカのマネーサプライをコントロールするFRB、連邦準備理事会では、一たんマネーサプライ重視型から景気てこ入れ型へ金融政策を修正した。それに伴ってアメリカのマネーサプライの伸び率が非常に急上昇いたしまして、FRBの目標範囲であった前年比二・五%から五・五%と、昨年の十月以降約三%も上回ってしまったということなのです。  また、アメリカの財政赤字は高金利の主な原因と見られておりまして、財政赤字の縮小が急務になっていたけれども、レーガン大統領の一般教書や予算教書で容易に縮小されそうにない。これらの要因からFRBのボルカー議長は、今後の赤字幅は千七百五十億ドルから二千億ドルに上るだろうが、これは受け入れがたいという異例の強い調子で赤字拡大に警告を発したと伝えられております。これでは、財政赤字の縮小やインフレ収束に確固たる長期見通しがない以上、第八次公定歩合の引き下げが延びるというのが妥当だと私は思うのですね。そうすると、事実、円安警戒からアメリカや西ドイツと協調利下げを考えていたわが国の公定歩合の引き下げも延びてしまうのじゃないか。これはやはり完全なマイナス要因として見込まなければならぬのじゃないかというふうに思うわけでございます。現に経済企画庁がお立てになったこの経済見通しは、アメリカ経済で言えば公定歩合の第六次引き下げと第七次引き下げの間で、しかも五十七年内もしくは五十八年年明け早早には第八次引き下げが決定的と見られていたときに立てられたものでありますから、これはやはり経済予測といたしましては期待が外れたものになるのではないか、こういうふうに考えられるわけですが、どうでしょうか。
  110. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  昨日、日本銀行の総裁が、いま正木委員が御指摘のような御指摘で、日銀は公定歩合の引き下げに慎重であるというようなお考え方を示唆されたように思いました。  おっしゃるように、FRBのボルカー議長は大変マネーサプライがふえたために慎重になっておりまして、金利の引き下げの方向を非常にちゅうちょしているようでございます。それでまた、ドイツは御案内のように、三月六日に選挙がございまして、その選挙がどうなるか、その帰趨が非常に不安なものでございますから資本逃避などが行われておりまして、ドイツはもう当然と言われておりました金利の引き下げが延期されておることも御案内のとおりでございます。  こんなようなことから、金利の引き下げは直ちに行われるとは私どもは見ておりませんけれども、ボルカー議長がここに言っておりますように、議会が財政赤字を十分削減してくれれば金利引き下げの余地はある。しかもまた、レーガン大統領は予算の削減、財政赤字の削減に大変御熱心でございます。それとあわせて私は、アメリカも金利の引き下げは、時期はともかくといたしましてだんだんと行われてくるというふうに見るべきではないか。しかし、これが当然私どもの経済見通しの前提になっているという意味ではございません。これまでの過去におきますところの金利低下の傾向が織り込まれて、そして民間経済活動が活発になる、こういうふうに見ているところでございます。
  111. 正木良明

    ○正木委員 さらに、円安にまたなるのじゃないかという危惧があるわけです。日銀の調査によりますと、七円の円高があれば公定歩合は〇・五%引き下げたと同じ結果が出てくるというふうに言われているわけですね。事実、日銀もこれ以上不安ということになれば困るということから、公定歩合の引き下げには消極的にならざるを得ないでしょう。それはいま長官おっしゃったとおりです。私は、おやめになったことをこういうふうな言い方をするのはまずいだろうと思うけれども、やはり鈴木総理が非常事態宣言をなさってあの円安になったというのは、これは大蔵省は認めたはずです。だから、こういう状況の中で、それはまた財政試算の問題に入ってくるけれども、これからの財政再建の手順だとか具体的な方策というものを示さないでいるということが、また円安傾向を引き出していくのではないかという心配をしているのですけれども、その点、大蔵大臣経済企画庁長官、答えてください。
  112. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる為替相場の問題でありますが、確かにいま正木委員御指摘の、非常事態宣言というものが、ある投機筋から見た場合には破産宣言とかそういうふうにも受け取れたではないか、こういうことが円安傾向というものに拍車をかけたという議論は、そのとおり私どもも存在しておったという事実は認めます。その後、わが国の経済全体のファンダメンタルズは良好でございますので、いわゆる円高基調というものに定着しつつある。一時二百二十七円までつけましたときに、そういう印象がまた新聞論調等でもなされたわけであります。したがって、いまはそのいわゆる円高基調が少しぶれが大きかった、まあ小幅な揺り戻しというようなことで、しかし基調としては円高基調というものは続いておると認識すべきではないか。したがって、確かに財政改革、今後の見通し等というものも、これはファンダメンタルズの一つであると私は思いますが、こうして厳しい、いわゆる削減をした予算をつくったということは、またそれだけの国債発行額の減額ということが、金融政策の中で別の意味における経済の刺激要素としての役割りを果たすということになれば、この時点で予算編成に対応した態度というものは、決して円安を誘う要因にはならないではないか。しかし、やはり中長期にわたっての一つの見通しが全体的に安心感を与えるということが大きなファンダメンタルズの一つであるというふうには私も理解をいたしております。
  113. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま大蔵大臣が御答弁されましたが、私どもも、円高傾向の定着ということは経済の成長にとって大変重要な要素である、こういうふうに考えているところでございます。きょうは二百三十六円ぐらいであったようでございますが、ともかくも円高の傾向で安定させて、そして私企業収益の回復を図って、設備投資あるいは税収の増加、こういったことで経済の回復を図るべきときがだんだん来つつある、こういうふうに見ているところでございます。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  114. 正木良明

    ○正木委員 これらの問題は、一つは財政改革試算の問題と絡んで、後ほどまた改めて質問をいたします。  そのように、これは見方でありますから、私に言わせれば、政府のように楽観的な見方もできるかもわからないし、私たちはもっとシビアな目でこの問題を見詰めていかなければならぬと思っているわけです。したがって、要は、いま申し上げたことはすべて三つとも対外要因なんですね。ですから、アメリカの経済を初めとして海外経済の景気の回復というものに余り大きな期待をかけていると、日本の国が操作できないいろんな問題でマイナス要因が出てきたときに、大きくその政策が外れざるを得ないということで、これな度外視することは全くできないと思います、また、そんなむちゃなことを言っているわけのものではありませんけれども、しかし、むしろやはり日本の内需拡大という問題についてもっと意を用いていくことが重大ではないかというふうに私は考えているわけです。  そこで、しからば対内要因、要するに告内要因として三・四%成長を確保するような要因が整備されているかというと、私は決してそうじゃないと思うのですね。たとえば一番大きなシェアを占めるのが、御承知のとおりのあの個人消費でございますけれども、これは下支え対策のもう全部と言ってもいいぐらいのものだというふうに私は考えざるを得ないのです。  たとえば五十八年度の予算案で、政府は五十八年度の個人消費について、対前年度比、名目で七・四%、実質で三・九%伸びるというふうに見ていますね。また、実質で言うならば、三・四%の伸びのうち、個人消費は二・一%の伸びと見ていますね。内需全体で言うと二・八%になる。これらが個人消費で稼ぐというふうに判断をして、そして、この経済見通しを立てていらっしゃるわけです。これはきのう佐藤議員がいろいろと雇用者所得問題で質問をなさいましたから、その辺と重複しないように申し上げたいと思いますけれども、この二・一%の伸びというものに非常に疑問が多過ぎるのじゃないか。  私どもが計算いたしましても、大蔵省の計算によってもほぼ一緒だと思いますが、この五十八年度予算では、国家公務員の人勧の凍結というものについてどういうふうにしていくのか。これは一%しか組んでいませんからどういうふうな形になるかわかりませんが、人勧の凍結をやるとするなら三千三百八十億円、また、ことしと同じように、恩給、年金、各種手当が、人勧凍結が波及をしたり物価スライドの停止をやったりするということになると約千四百億円、地方公務員が人勧並みにベースアップをしない、凍結するとして、教員の給料を含んで四千九百二十億円、減税の見送りによって実質増税が一兆三百六十億円、約二兆六十億円のマイナス要因があると私たちは見るわけでありますけれども、さらにこの人勧凍結を盾にして民間企業が賃上げを定昇分の二%に抑え込むというようなことになったとしたら、消費は非常に大きなマイナスになってしまうと言わなければなりません。  たとえば、日経連の大槻会長の発言では、来年度の実質GNPはせいぜい三%がいいところだ。この人はもうすでに〇・四%削ってしまっていますけれども、就業者増加率は一%なので、それを差し引いた定昇のみの二%のベースアップが精いっぱいだ、こういう発言をしている。この発言をもとにして二%に抑え込むということを申し上げたわけでありますが、こういうことになってしまうと大変なことになってしまうわけであります。  この点について、いわゆる個人消費を伸ばしていくための措置というもの、下支えということについて、政府のおやりになることと政府が手を出せないものとがございますが、先ほど申し上げたような政府が手を出せるもの、要するに人勧であるとか、恩給だとか年金だとかのスライドであるとか、こういう問題についてどういうふうにお考えになりますか。どういうふうに期待をなさっているかということですね。
  115. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  政府がなすべきものといたしまして、消費支出に影響いたしますものは、いまおっしゃった人勧あるいは減税、いろいろございましょうけれども、まず私どもの見るところ、消費支出に一番の影響する要素は三つございます。名目可処分所得の増加が一つでございます。第二は、消費者物価の動向が一つでございます。第三は、消費性向と申しますか、消費者の消費性向がどのようになっていくか、この三つで影響されるわけでございまして、三・九%の実質伸び率は、これまでの趨勢から見まして、やはり毎月の勤労者統計等を見ておりましても、名目可処分所得の増加が堅実に行われておる。しかもまた、来年度はいま申しました経済成長の見通しのもとで生産活動が活発になるといたしますれば、いろいろ残業手当その他の所得も増加するという前提に立ちまして、雇用者所得の増を六・五%くらいに見ているところでございます。  さらにまた、消費者物価は大変安定することに成功しておる世界唯一の国だと言えるわけでございますが、そのために実質の消費支出がふえてまいりまして、これが三・九%の大きな原動力になっていることは御案内のとおりでございます。  さらにまた、これはいろいろヨーロッパ型の生活に近づいたというふうな見方があるかもわかりませんけれども、だんだんと消費性向が上がってまいりつつあるような傾向が見られるところでございます。ここ二、三年でも一ポイントぐらい消費性向が上がってまいっているようでございますので、そのために三・九%の伸び率は達成できる。たとえば、昭和五十五年度ではむしろ雇用者所得が九%も上がったのですけれども、御案内のように、消費者物価が七・八%上がったために消費支出の実質的な伸びは〇・八%になった。  こんなことを考えますと、消費支出の伸びの見方にはいまの三つの要素、これが大きく影響いたしますし、昨今では、消費者物価の安定こそこれに大きく寄与しているものだと言えると私どもは思いますし、それを大きく期待しているところでございます。
  116. 正木良明

    ○正木委員 昭和五十六年度の経済見通しをお立てになったときに、経済企画庁から御説明にお見えになりまして同じことをおっしゃったのですよ。こんなに五十六年度伸びを見ていいのか、個人消費もそうでありましたし民間住宅建設もそうでありましたが、そんなに大きく伸びを見てもいいのかと言ったときに、まず第一にお出しになったのが物価の安定ですよ。物価が安定しておれば消費行動というものは旺盛になるのだという、きわめて短絡的な発想でそれをお考えになっている。  確かに、それは消費行動に一〇〇%結びつかないというような言い方を私はしているわけじゃありませんよ。それは物価の上昇期よりも、物価の安定期の方が消費行動としては意欲が起こりやすいのは当然のことだろうと思うのです。しかし、それに余り大きな期待をかけているということになってくると困る。それよりも、あなたが一番最初におっしゃった可処分所得の増という方がよほど大きなウエートを占めているということを、私はここで指摘しなければいかぬわけです。ところが、実際に可処分所得の増のためにどんな努力を政府がしているかというと、結局給与は凍結してしまう、そして実質増税というものを進めてしまうということになってしまって、そうして実質的に可処分所得というのは期待するほど伸びていかないということになるわけですよ。  それと同時に、消費者の心理としては、先行ききわめて不透明であるというような状況の中で、自分がいま保障されているであろうと思われる年金も、果たして老後生活を保障するだけのものをくれるのかどうかわからない。僕らでも思いますよ、いま国会のことがねらわれているわけだから。僕らは年金をもらえることになっているけれども、その年金が果たしてちゃんと保障されるのかどうかということだって不安を持つ。だから、これは他の政策との整合性の問題があるわけですからこれだけとは言いませんけれども、しかし、そういう中で消費行動というものを起こさせていくためには何かと言えば、物価が安定しているだけではだめなのであって、やはり可処分所得というものを増加させる方法というものを考えなければだめなのではないかというふうに考えるわけです。どうでしょうか。
  117. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 正木委員の御指摘のように、可処分所得の増加が最も大きく影響することは、私も肯定いたしたいと思います。しかし、私が申し上げましたのは、五十五年の例で申し上げましたように、雇用者所得が九%伸びても消費者物価が七・八%伸びたために、実質は〇・八%になった例があると申し上げたわけでございまして、これが唯一の事例とは思いません。やはりいろいろ可処分所得の増加を図る必要がありますが、その一番の大きな原動力になりますのは経済活動の活発化であろう。人為的な増加よりも、それが最も大きく影響する可処分所得増加の原動力だと思いまして、そういった観点から、来年度は鉱工業生産指数が四・四%になる、したがって名目の一人当たりの所得は五・二%は伸びるであろう、こういうふうな見通しを立てているところでございます。
  118. 正木良明

    ○正木委員 最近の報道によりますと、これはあなたのところの経企庁の試算としてこんなことをおっしゃっているらしい。「輸出や設備投資の不振の影響が、所得の鈍化を通じ消費にもじわじわと及んできた」「所得回復のきっかけをつかめない場合、個人消費が再び長期停滞局面に入る恐れもある」、これはそうだと思います。そのとおりだ。むちゃなことを言っておりません。あたりまえのことを言っている。「日経連の言うようにベアなしの定昇のみ二%にとどまった場合、来年度の実質消費は前年比マイナス二%程度と落ち込む可能性がある」、こう言っている。もっともだと思う。次に、五十八年度の経済見通しは実質GNP三・四%、このうち個人消費で二・一%を稼ぐ見込み、消費が落ち込めばゼロ成長の危険性がある、こんな見方もあるんです。これは僕は実に冷静な現実的な見方だと思いますよ。  こういうふうに考えてきますと、人勧を凍結しながら民間のベースアップも抑えてしまう、こういうことを政府がみずから考えているのかどうか。もし、そういうことがありとするならば、いまおっしゃった雇用者所得六・六%の伸びというのは全く期待できないということになってしまう。ですから、この五十八年度の雇用者所得を伸ばすために何をするかということをまず、どっちが答えてくれますか、長官か大蔵大臣か。
  119. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  雇用者所得六・六%の増加見込みは、御案内のように、マクロ的な、経済全般的な統計数値から出ているところでございまして、人勧がどうなっておるとかあるいは春闘がどうなるであろうかとか、こういった見通しは入っておりません。過去の趨勢と、そしてまた五十八年度のこれからの問題でございます。これからの経済活動がこのようにだんだん上がっていくというふうな趨勢のもとに立てられたのが六・六%でございまして、先ほど正木委員が読まれました現在の消費の見方、それはそれなりに私は正しいと思いますけれども、だんだんとしり上がりに上がるであろうという想定に立っております五十八年度の経済見通しのもとで考えられる消費支出とは少し違ったかっこうになるのではないか、こういうふうに見ておるところでございます。
  120. 正木良明

    ○正木委員 長官、そんなこと言っていいの。これはまた大変ですよ。予算委員会であなたがそんなにはっきりと明言なさると、大変なことになりますよ。こうはいきませんよ。六・六%の五十八年度の雇用者所得の伸びというのは、前年度より〇・三%伸びるわけですね。これは、人事院勧告の国家公務員給与等が民間給与の伸びと同じように伸びるという見方をしてこうなるわけですから、それを全部織り込み済みなんです。五十八年度も人勧凍結の場合は、雇用者所得の伸びは五・九%というふうになって、政府の見通しより逆に、五十七年度より〇・三%マイナスになる可能性があると言われているんです。ということは、これだけでも一兆一千億円のデフレ効果と言われているんですが、五十八年度、人勧どうします、大蔵大臣
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十八年度の人事院勧告の取り扱い、こういうことになりますと、基本的には、昭和四十五年に定着をいたしました考え方に基づいて、その制度、趣旨からして、これは尊重すべきことであります。したがって、予算的な措置としては一%を給与改善費として計上し、今日御審議をいただいておる。そして、五十八年度具体的にどう対応するかという問題は、これは原則的に申し上げますならば、その人事院勧告が出された段階において、諸般の事情を考慮し、最大限これを尊重していく、こう答えるしかほかにありません。
  122. 正木良明

    ○正木委員 要するに、私たちがこういうふうにいろいろ申し上げて、こうしないとこうなりますよという警告というか御注意を申し上げて、それでそうならなかったときに、あのときに私たちが考えていたこととは事情変更の原則みたいなのがやたらに出てきてそのとおりになりませんでしたと言うのでは、これはもう議論にならぬわけですよ。だから、最初に、おっしゃることについてはちゃんと責任を持ってくださいよと申し上げているわけなんです。これは武器輸出の国会決議の問題から何から、いま中曽根内閣はやたらに事情変更の原則というのを使い出したわけなんです。やはりここで議論されたことは新聞等に報道され、テレビに報道されて国民が期待するわけですから、その辺をよく考えてもらいたいと思うのです。  ですから、大蔵大臣も、五十七年度の人勧を見送った、ベースアップを見送ったのを五十八年度どうするのかと言ったら、一%は組んでありますけれども、向こうから出てきてからでないとどうするかわかりませんなんと言うけれども、そんな一%でおさまるわけなんか絶対ありませんよ。少なくとも五十七年度分も含めて答申というか勧告が行われるに違いないのだから、ことし五%以下だからと言って逃げたような逃げ方は、もう五十八年度はできないのじゃないかというような気がいたしますね。そういう点では、いろいろな点で当然考えられることを考えないで、肩透かしというか、逃げを打っているとしか私は思えないわけなんです。  さらに、重要な要素は、公共事業の問題がありますね。経企庁の経済見通しでも、早くも政府支出、公共事業、地方事業などは昨年に比べて、実質マイナス〇・七%で実質GNPを〇・一%引き下げる。一般会計のうち公共事業を中心とした投資分はマイナス一・一%、五十七年度二千五百億円の先食い分を引くと、投資部門の支出は前年度当初比マイナス四・一%、小中学校の校舎建設など文教施設費は前年度当初比マイナス七・六%、約四百億円減額しています。これは文部大臣、後で聞きますから聞いておってください。  そして、建設省の試算によりますと、五十五年度から五十七年度まで、公共事業費が名目的に横ばいですね。金額は横ばいですね。この結果、三年間で事業量は約一〇%実質的に減っていますという報告がなされている。五十八年度も伸び率がゼロでありますから、この事業量の減少幅というのは一二%ないし一三%になるというわけです。これで、景気期待の問題、どうですか。
  123. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  公共事業費につきましては、正木委員御指摘のとおりでございます。しかし、五十八年度は当初の予算でございますので、そのようなマイナスが出ることに計算上なるわけでございます。それは過去において、御案内のように、追加支出額が補正予算等にあったような関係で、実は当初予算どおり六兆六千五百五十四億円の金額でいった年はほとんどございません。そのためにマイナスになった点がございます。しかし、マイナスはマイナスでございまして、私は、公共事業関連費につきましては、効率的な使用によって経済成長を促進するほかに、やはり民間住宅投資、さらにまた民間企業設備投資によって内需の二・八%を確保するものと、こんなふうに見ているところでございます。
  124. 正木良明

    ○正木委員 じゃ、いよいよ具体的な景気対策に入りましょう。  これだけマイナス要因というのをずっと私は出してきた、このほかにもあるのですよ。このほかにもあるのだけれども、時間を加減しなければなりませんので……。  どうしても景気対策をやらなければいかぬという理由、それは不況であえいでいる多くの国民の皆さん方、中小企業者ないしは中小企業で働いている人たち、倒産したところ、従業員の方で失業した人はまことにお気の毒だと思うのですよ。  この間、僕はいろいろ私の選挙区で話をしていると、失業した人や倒産した人よりももっとストレスのたまる人はだれかと言ったら、危ない企業とそこで働いている人なんだそうです。いつ倒産だと宣告されるかわからぬ、いつおまえ首やと言われるかわからぬ、ひやひやひやひや毎日暮らしているんですって。僕はその人たちの不安というものを考えたら、このままにはしておけませんわ。景気は二番底を割って三番底に近いなんて、そんな気楽な話じゃないのですから、その人たちは。そういう問題もありますよ。そういう問題もありますが、財政当局にとっても景気回復をしないと大変なことになる、こう思うのです。  政府は、租税弾性値を、昭和五十六年度は五十七年度の補正で〇・六三でしたかね。五十八年度は一・〇五にしてますね。そして、財政改革試算では、租税弾性値一・一にしてますね。ですから、財政的に考えても、租税弾性値の回復のためにも、景気の回復なんというものは必須の問題であって欠かせない。したがって、そういう面に限って申し上げますが、大蔵大臣は、景気回復というのは緊急非常に必要なものとお考えになりませんか。
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる国内景気の回復、これをどうするか、これは政治課題として、目下の経済政策の中で大きな課題であります。したがって、暮れに御審議をいただきました二兆七百億円の公共事業を含めたいわゆる十月発表いたしました経済の総合対策ということを着実に実行していくことによって、それがただ五十七年度の景気というのみならず、五十八年度の景気に対する下支えにしていかなければならぬという基本的な考え方で臨むわけであります。  ただ、ここのところで、私どもやはり国民に理解と協力を得なければならない問題といたしましては、今日内需を喚起するためにいろいろな方法がございます。しかしながら、いま世界の同時不況、こういうような状態の中において、あらゆる国際会議に出てみても、日本の経済政策あるいはそれに関する諸指標というものが、世界で見れば、むしろなぜこういう形で持ちこたえられるのかというような角度でこれを見ておられる。したがって、われわれもかつての高度経済成長時代のような体質、それから精神的にも脱却をしていかなければならぬということを念頭に置くべきである。しかしながら、世界の国に比べていいからそれでいいということを申すわけでもありませんので、われわれはそこに当たって、いわゆる公共事業の執行はもとよりのことでありますが、いかにして民間の設備投資等が喚起されるかという環境を整備し、また弾力的な金融政策等もこれに応じていかなければならぬ。ただ、財政そのもので景気の下支えをやるところの対応力は、残念ながら従来から見れば弱くなっておるということを言わざるを得ないというふうに考えております。
  126. 正木良明

    ○正木委員 そこで私たちは、景気対策という問題については、非常に微温的な政策しか五十八年度予算では盛り込まれてないというふうにしか感じられないのですけれどもね。さらに、アメリカの方の景気回復がおくれるというようなことになってダブルパンチを受けた場合は、私は日本の経済は失速するというふうに思いますよ。そして、どんどん縮小均衡へ向かっていく、非常に悪循環の中へ入っていく、すでに入りつつありますけれども、そう感ぜざるを得ないわけであります。したがって、ここで景気対策ということが、景気回復というものが非常に必要だということになるわけで、たとえばいま申し上げた租税弾性値の問題にしたって、あれだけ百十兆というような大きな借金を抱えながら、これは後ほど申し上げますけれども、昭和六十一年から一般会計の予算を償還のためにつぎ込まなければならぬというような状況の中で、できるだけ歳入を増加していく方途というものを考えていかなければいかぬのじゃないでしょうか。そこで、私たちはそのことを申し上げているわけです。  そこで、経済企画庁が「昭和五十七年経済の回顧と課題」の中で、景気対策の方策として金利の引き下げ、設備投資や住宅建設に対する減税、借地方式による住宅建設など工夫をこらした公共投資の促進、これらを挙げているわけですね。このうち住宅減税は、五十八年度一応措置されたと見ていいでしょう。金利の引き下げは、これは環境が整いませんし、また、にわかに政府がやるというわけにいかない問題でありますから。しかし、環境さえ整えば、ちょっと時間が置かれるかもわからないけれども、先行きそういう方向になるでしょう。そうすると、残るのは投資減税、いわゆる設備投資減税と効率のよい公共事業だということになるわけです。経済企画庁もそう言うておる。  そこで、中小企業の投資減税の問題ですね、通産大臣。五十八年度に措置されましたけれども、わずか二百二十億円です。これはどうも景気対策としては二階から目薬に等しいようなわずかなものでしかないというふうに思うわけです。通産省では、通産省の案のとおり三千四百億円程度実行すれば、実質GNPを〇・六%引き上げるというふうに試算しておりますけれども、このうち建物を除く部分の千五百億円程度でも追加して、実質GNPを〇・三%くらい引き上げるというような気持ちはありませんか、あなたのところの案だそうですけれども。
  127. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私どもは、総理と安倍外務大臣を除いて、ほとんどが昨年の暮れに入閣した者たちで、したがって、予算は前任者の手によって八月末に大蔵省に要求されておるわけです。したがって、それを大臣折衝を最終的にやって決めるわけですが、どうも自分考えている政策というものとぴったりというわけにはいかぬのです、ことに私のような自分考えと方針を絶えず模索し続けている者にとってはですね。  ですから、まず投資減税についても、原案は一〇%税額控除、特別償却の選択——選択は入っていなかったですね、というようなことになっていましたが、しかしながら私は、一方御一緒に勉強もした党の税制調査会長もしておりましたから、大蔵省の財政の中身、財布の中身を知らぬとは言えない立場にあります。そうすると、それに要する先ほど述べられたような膨大な数字を、その財源の見通しも全くないままに一方的に要求することはいかがか。私はそこで大変苦悩いたしました。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  しかし、その方針は、中小企業に対して何らかの一段の立ち上がりあるいは明るさというものを与えるためにどうしても柱を落とすわけにはいかぬ。その結果、昨年やりましたエネルギー関連に対する投資減税、七%の税額控除か特償三〇%の選択、これの結果がどうなっただろうかと思って追跡して調べてみたのです。そうすると、大体エネルギー関係ですから大企業も入っていますが、大企業の選択しているのは税額控除だそうですね。そして、中小企業が多く採択したのが特償でした。そこで、これは中小企業対策だから、選択制としても金額が張るし、金額も配慮しなければならぬし、したがって特償でいこう。その途中で建物、リース等の問題等最終的に財源状態を見ながら、後退したと言われれば後退したのですが、やはり国家財政というものは各省庁の行政と一体となっていなければなりませんので、そこで大蔵省も賛成する、編成権を持つ役所が賛成する内容でなければならないということで、最終的にはいま申されたような規模、三百億ぐらいにはなると思うのですが、これまでぐらいのもので特償一本にいたしました。  しかし、その結果についての経済効果ですね、これは、経済閣僚会議で私の方から、念のために経企庁事務当局に、今回の中小企業投資減税によってとった措置で実質成長率を押し上げる力〇・〇四以下ということがあるかと言いましたら、〇・〇四以下ということはありませんということですから、〇・〇四貢献するだけの内容はあるということで、ゼロではありませんから御理解を願いたいと思うのです。
  128. 正木良明

    ○正木委員 やはりそれは、通産省が持っていた原案は強引に、財源的な問題があるのでしょうけれども、それを押し通してもらった方がよかったような気がしますね。  そのほかに、これまた後ほど詳しくやりますが、所得減税の問題があるわけです。  日本経済研究センターのデータによると、一兆円の減税は実質GNPを〇・二%引き上げるというふうに試算しているようです。実質経済成長率三・四%が高いのか低いのかというような議論をしてもしようがないのだけれども、塩崎長官、一番高いのは四・一%、これは三菱総研でしょう。一番低いのが一・九%。それは各民間経済調査機関だっていろいろな経済見通しを出している。しかし、大体三・四%は高いという見方だな。〇・四%高い、いいところ三%ぐらいだ。私は、実質経済成長四%ぐらいが一番いいと思っているのですけれども、そのためにはどうも一%を何とか積み上げていく方策というものが景気対策として必要だというので、さっきから言っているわけなんです。それからいくと、さっきの投資減税は〇・三%ぐらいは確実に持ち上げるのですよ、〇・〇じゃなくて。そうだし、いまの個人所得減税で〇・二%ぐらいは持ち上がる。あと〇・五%ぐらいは公共事業でこれをやってもらいたいと思うのです。やはり一兆円程度の公共事業の追加をすれば、〇・五%ぐらい実質でGNPを押し上げる力があるというふうに計算されているようです。そうすると、投資減税と所得減税とそして公共事業の追加をやれば、これはまさに一%。三%と見ても、一%を上積みできるから、四%の成長ができるという計算を私はしているわけなんです。  ここで一番困る問題は何かといえば、その金がないという大蔵大臣の——顔に書いていますわ。ここではたと行き詰まってしまって、これはできないわけで、恐らく各省の折衝の中でもこの問題が出てくる問題だと思うのですよね。それで、わかりながらできなかったという面もあるかもわかりません。しかし、やはりこれは何とか方法を講じてやるべきじゃないか。いままでのああいう縮小均衡型のある種のデフレ予算というような形のものは、確かに歳出を切らなければなりませんから、行政改革で歳出をお切りになること結構です。しかし、歳出を切るにしたって、いわゆる行政改革が必要である、ぜい肉落としのための行政改革はどんどん進めていくべきだと思うけれども、将来の日本の経済を維持していくための景気対策の面というものは、それはそれなりに措置していかなければ、予算としては整合性を持たない。何でもかんでも切ってしまうという形なら、先ほど申し上げたようにデフレ予算になって、縮小均衡の方向へ行ってしまう。これが私は非常に心配なんです。  そこで、ひとつ公共事業で一兆円追加しろと言ったって、大蔵大臣、うんと言わぬでしょう。言いそうな顔をしていませんよ。  そこで、ちょっと建設大臣さん、おたくからいただいた資料がございまして、これはいつもいつも私は予算委員会のたびに言うている。それは要するに、効率的な公共事業をやってくださいということなのです。建設大臣、これは大蔵大臣か、ことしの公共事業の事業費の総額を言うてください。
  129. 竹下登

    ○竹下国務大臣 六兆六千五百億というふうに理解しております。
  130. 正木良明

    ○正木委員 これは一般会計だけですね。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一般会計だけです。
  132. 正木良明

    ○正木委員 あなたのところの資料を、あなたの口から言ってもらっておさらいしてもらったらいいのだけれども、「公共事業に占める用地費及び設備費率の推移」というのをもらったのですが、ありますか。あったら五十七年度だけずっと読んでください。
  133. 永田良雄

    ○永田政府委員 お答えいたします。  建設省の所管の公共事業費に占める用地費、補償費の割合は、大体ここ数年は二〇%から二五%の間で推移いたしております。五十七年度は約二三%くらいかと思っております。それから、五十八年度の予算につきましてはいま作業中でございますが、二〇%から二一%の間でおさまるのではなかろうか、かように考えております。
  134. 正木良明

    ○正木委員 ちょっとあなたの数字と違う。高目に言ったからいいわ。それで行こう。こんな状況なのです。  それで、五十一年度からの「建設省所管事業の用地費及び補償費率の推移」というのをもらったのです。私は、何遍となしにこの予算委員会でそのことばかり言っているわけです。これも、これから未来永劫にわたって大型プロジェクトはやるな、用地費率が非常に高い事業を一切やめてしまえとは言っておらぬのです。しかし、少なくとも財政再建のめどがつくまで、公共事業に予算がつけられないような状況の中では、土地代や補償費というふうに地主さんのふところに入ってそのまま銀行にいってしまうようなことではなくて、投資効率が非常に高い事業費をふやすという方向にやってくださいと言っているのにやっておらぬ、この数字を見ていたら。これは大体一緒だ。ついに五十七年度は二五%ですか。二一・三と書いてあるけれども、まあいいわ。ですから、緊急避難的に事業を精選して、平均してこれですから、東京なんというのは高速道路をつけたら、八五%土地代だというのだから、百億の事業だって八十五億土地代で持っていかれてしまう。十五億しか事業費としてないというわけです。これは全国平均だから二五%でしょう。  建設大臣、建設大臣だけじゃなくて、ほかにも皆事業をお持ちになっていますから、この中の一〇%だけ減らしませんか。そうすると、一兆の公共事業の追加が仮にできなくても、六千六百五十億円の事業がふえるのです。その事業は幾らでもあるのです。  ある研究所の調査によると、一日三十ミリ以上の雨が降ったら隘水する川が全国に三千河川あるという。河川のつけかえ等が必要なら新しい用地は必要でしょうが、それを改修するために新しい用地は必要じゃないのですよ。福祉施設だとか学校の老朽化の改修であるとか公営住宅だとか住宅公団の建てかえだとか、そんな方法は、私に言わせれば幾らでもある。そういう形で、景気回復のために何らかの手を打っていくようになさいませんかということを何遍も言うているけれども、やってます、やってますと言うたきりで、全然やらぬわ。全然やらぬと言ったら語弊がありますが、私の期待どおりはやってくれていないようですよ。どうでしょうか、それは。
  135. 内海英男

    ○内海国務大臣 御指摘の点はごもっともだと思っております。  私、就任いたしまして以来、用地補償というものに対してはできるだけ効率のある工事ができるように、予算の厳しい状況下にもありますので、その趣旨に沿って施行するように指示をいたしておりますけれども、ここ四年ばかりゼロシーリングということで公共事業が抑え込まれております。御指示のような趣旨に従ってずっとやってまいりますと、またその用地を買わなければできない事業も出てくる、用地のストックも幾らか減ってきたというような実情も聞いておりますので、大型プロジェクトで、新たに大がかりな用地買収を要するものについてはできるだけ御指示のように抑え込んで、実質のある公共事業の執行を図っていきたい、こう努力をいたすつもりでございます。
  136. 正木良明

    ○正木委員 だから、全部とめてしまえとは言っていないのですよ、ゼロにしろとは言っていないのだから。二五%のうちの一〇%だけ削ってくれませんか。その辺はひとつ趣旨をよくお考えいただきたいと思うし、大型プロジェクトといったって、新国際空港はちゃんとやってくれなければ困るよ。  住宅局長、来ていますか。——ちょっと話が細かいので、建設大臣が答えられないかわからない。住宅局長に答えてもらうことにいたします。  そこで、こんな案が出ているのです。これはうちがつくった案ではありません、よそからもらった案だけれども。東京都区内、大阪市内に敷地五千平方メーター以上で昭和三十九年以前に建設された公営、公団住宅は、東京で二百六十三カ所、敷地総面積四百八十万平米、大阪で百二十三カ所、同じく二百八十八万平米あると言われている。建てかえの話。これを、いま狭いと言っているわけですから、いま住宅の質が問われているときですから。また、こういうのはいいところに建っていますね、公営住宅でも交通至便ないいところに。同時に、これをやるということは、市内の再開発にもつながってくる。一戸当たりの専有面積平均七十三平米、共有部分を含めて八十六平米くらいにする。建物の規模は平均十二階建て程度の高層住宅にする。  このプロジェクトをやりますと、こんな効果が出るのだそうです。新住宅増加戸数が、高層化により既存住宅相当戸数に加えて、新たに東京で六万七千戸、大阪で四万二千戸、合計十万九千戸の住宅をふやすことができる。そうして、そのことによって新たに創出される都市面積が二百五十万平米、大阪で百六十六万平米、合計四百十六万平米。これは欲しかったら上げますよ。あるところからもらったのだけれども、なかなかいいことが書いてある。  これはまた大蔵大臣、金が要るから嫌がるかわからぬですけれども、しかし、ちゃんと返ってくるようになっているのだ。節約される開発コスト、東京で約一兆円、大阪で約四千億円と書いてある。要するに、これだけの土地を別途に買ったときにはそれだけの金がかかる、こう言っているわけですが、それが節約できるということですね。  そうして、これに誘発される需要額約五兆円と書いてある。これは税金もらえるよ。家賃負担の問題から、もう一切いろいろ細かいことを書いてありますが、こういう方法があるのだよ。だから、そういう点をよく考えて公共事業にもっと力を入れて、効率のいい公共事業にかえてもらうようにお願いしたいと思うのです。  そこで、こういう話がある。これは大蔵大臣、親が生きている間に子供に金をやって家を建てさせますと、贈与税といってごっつう金がかかってくる、生前贈与は。そこで、大体全国で平均的な建て売り住宅の価格というのは二千五百万円だそうですよ。これは、おやじさんが死んで、おやじさんの持っているやつをもらう相続税の場合は、基礎控除が二千万円あって、法定相続人一人について控除が四百万円ありますから、二千五百万円から二千四百万円を引いたら百万円、これが課税対象。百万円の場合は一〇%だから、十万円払うたら相続税はそれで終わりです。ところが、生前贈与の場合、これは年間基礎控除額が六十万円だから、二千五百万円から六十万円引いて二千四百四十万円で、二千万円から三千五百万円までは税率六五%だから、二千四百四十万円に〇・六五掛けたら千五百八十六万円贈与税がかかる。これは大体合っているかどうか、主税局長に聞かなければいかぬけれども、こういう計算をされている。  そうすると、これはまた金持ち優遇だという声が必ず出てきますね。それだから、それを防ぐために建設省はこんなことを考えているらしい。居住用不動産等の贈与に対する贈与税の軽減措置の創設をこういう適用条件でやろう。贈与を受ける者の所得が年間八百万円以下であること、子供、もらう方ですね。軽減税率の適用は二千万円までとする、被贈与者は受けた日から一定期間に自己の居住の用に供することというようなことをいろいろ考えているらしいです。  住宅局長、建設大臣、さっきの建てかえの話と二つやってください。住宅建たぬであなた悩んでいるのですから。
  137. 松谷蒼一郎

    ○松谷政府委員 お答え申し上げます。  最初に御意見のございました建てかえの問題につきましては、ただいま御指摘の試算につきましては後ほど十分詳しく聞かせていただきたいと思いますが、公営住宅の建てかえは、今後の新しい公営住宅の建設のために非常に有効な方策であると考えております。そのため、毎年建てかえの計画を事業主体に立てさせまして、できるだけ効率のよい建てかえを行うよう指導しているところでございまして、逐次建てかえの比率がふえてきているところでございます。東京都におきましては、都営住宅の五千戸中三千五百戸程度がすでに建てかえの建設をやっているという状況でございます。今後とも建てかえを推進をしてまいりたいと考えております。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  それから、住宅の生前贈与税を相続税並みに引き下げたらどうかというお話でございますが、確かに先生のお話は一つの御提案であると考えております。これにつきましては、ただ税の公平性の確保等の問題がございまして、これから先十分に検討してまいりたいと考えております。
  138. 正木良明

    ○正木委員 あなた、それは大蔵省みたいなことを言うたらいかぬ。せっかくこっちは応援してやっているのだから、喜んでもらわなければいかぬ。大蔵省が断らなければいかぬ。  それでは、大蔵大臣
  139. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの正木委員御指摘のとおり、そもそも贈与税の基礎控除は六十万円、それから相続税の課税最低限は二千万円プラス四百万円掛ける法定相続人、一人なら四百万円、こういうことになるわけです。したがって、この贈与税の性格というものから考えますと、相続によります財産の取得に対して相続税が課せられる場合には、生前に相続人等に財産を贈与することによって相続と同様の財産移転の効果を得るということと、それから相続のときの負担を回避するという事態に対処して相続税の課税の公平を確保するために負担を求めるわけでありますから、したがって贈与税については、いま申しましたように、相続税に比較して課税最低限は低く、かつ税率は高く定められておる、こういう性格でございます。  そこで、この問題について先ほど御指摘がありましたように、二千万円までの贈与は相続税率を適用して、その超える部分は贈与税率を適用したらどうか、あるいは十五年以内の年五・四%の延納を認めることにしたらどうか、こういうような議論はあったわけでございますが、相続税と贈与税の持つ性格からして問題が多い、こういうことで、その議論は今日まではその段階で課税の公平を損なうという問題がある、こういう結論になっておるわけです。  しかし、御提案の趣旨につきましては、私どもとしてはこの議論を税制調査会に報告させていただいております。そうして、その贈与税の性格に照らして大きな問題があるので、早急にいま御指摘のような方向でその報告に対する検討の結果が出てくる、こういうふうには考えられない。したがって、私どもとしては、いわゆる五十八年税制の改正においては、先ほど来ちょっと評価していただきました住宅建設促進のための取得控除、ローン控除というようなもので住宅対策というものに対応することにした。しかし、いずれにしても、税制調査会に報告させていただくということはお約束できることであります。
  140. 正木良明

    ○正木委員 いろいろこんなのは、黙っていたら親から金もろうてもわからぬじゃないですかと私は言ったことがあるのですけれども、税務署というのはきっちりしておるらしいですね。通知が来るのですってね。そうして、親からもらっておきながら自分の金だと言うと、自己資金だと言ったら、あなたの過去の所得はどれだけありましたか、それだけの金の出てくる余地はありますかということをちゃんと調べるのだそうだ。よそから、親から借りたのだとかなんとかと言ったら、返済の能力があるのかどうかということを税務署は聞くのだそうです。だから、このごろは相当苛斂誅求になってきてこういうふうな形になっていますから、やはりはっきりと親から金をもらって、そうして生前贈与を受けたという形をとらざるを得ないのじゃないかというふうな気がいたします。  ちなみに建設大臣、あなたのところ、家が建たぬと言って悩んでいるお役所でしょう。これは業界の話だと、これをやってくれたら年間十万戸よけい家が建つ、いささかオーバーな点があるのかもわかりませんけれども。だから、むしろそれは私が言うより先に建設省が推進しなければいかぬでしょう。それを、税の公平の観点がありますからいろいろと悩んでおりますというような程度ではだめで、これは何とか大蔵大臣してくださいよ。あそこに主税局長が座っておるけれども、主税局長も何とか考えてくださいよ。そして、税制調査会にも働きかけて、家が建つことだからという態度になってもらわなければいかぬと私は思うのですが、どうですか。
  141. 内海英男

    ○内海国務大臣 事務的には予算のときに大蔵省と折衝はいたしておるようでございます。ただ、住宅の取得控除の関係等で五万円を十五万円にしてもらったといういろんなやりとりの中で、そういうようなことで、財政の厳しいときだから引き下がらざるを得ないというような状況にもあるということを御承知いただきたいと思うのでございます。
  142. 正木良明

    ○正木委員 自治大臣、これはあなたのところですね。農地の宅地並み課税の問題は自治省ですね。  去年の予算委員会でこの土地税制の改正について、私は、自治省の税務局長さんだったかな、相当厳しいことを申し上げたのです。これは私どもの党の政策として、農地の宅地並み課税の問題については選択的な課税にしなさい、農業をずっと続けていくという人なら農地並みでいいでしょう、しかし、途中で宅地として売るというようなことがあるならば宅地並みの固定資産税を払っていただきましょうということを、その農地の所有者に選択させるというのが一番よかろう。農協の決起大会なんかにいつも引っ張り出されて、そして農地の宅地並み課税反対、撤廃と言われているのだけれども、片っ方は、やっぱり都市のサラリーマンなんかは、都市周辺の農地がこういうような形ではいろいろと不満がある、何とか調整しなければいかぬというので、そういうふうな政策をうちとして出したのです。うちが先か自治省が先かよくわからぬが、大体自治省がうちの政策をとったのだと思うけれども。  ところが、基本的に違う問題は何があるかというと、私のところはせめて二十年、二十年が長いとなれば十五年か十年は農業を継続していくという期間にしなければなりませんよと言っているのに、五年にしたんだ、自治省は。五年で見直しですから、だから五年間じっと抱いているつもりだったら、農地の固定資産税というのは、たとえば十年ということになると、九年目に売れば過去九年間の固定資産税を払わなければいかぬけれども、五年ごとの見直しということになると、九年目に売っても過去四年間だけ払ったらいいという形にしてしまったわけですよ。このために宅地供給は非常に少ないと思うのですが、宅地並みの課税の結果、宅地はどれだけ出てきたか、大臣、わかりますか。
  143. 関根則之

    ○関根政府委員 宅地並み課税の対象となります市の数は、全国で百八十七市あるわけでございますが、そのうち長期営農継続農地としての認定事務を終了した旨の報告のあった市が百五十六市でございます。その百五十六市につきまして認定状況を見てまいりますと、全部で宅地並み課税の対象となる地積が三万五千七百七十一ヘクタールございます。そのうち宅地並み課税を実施することとした農地は六千百六十五ヘクタールでございまして、率にいたしまして一七・二%であるわけです。従前AB農地の中で宅地並み課税されているものが千四百ヘクタールありましたのに対しまして、約四千八百ヘクタールほどが新たに拡大いたしましたC農地から出てきておりますので、宅地並み課税をすれば宅地供給の促進につながるのだという前提に立ちますれば、相当の宅地供給の効果はあったものというふうに考えております。
  144. 正木良明

    ○正木委員 そんなことはないですよ。宅地並み課税というのは全国全部じゃない。三大都市圏だけですよ。全国農業会議所の調査によったら、その中で八三%まで営農継続です。三大都市圏の中の農地ですよ。たった一七%しか出てこないということになっているわけですから。これはやはり宅地並み課税というのはかかっていないというのじゃなくて、一たんかけていままで全部戻しておったわけだから、自治体は。税金を全部戻してただにしておったわけだから、それをこういうふうに変えたわけなんですけれどもね。だから、これはやはり内容については再検討をお願いしたいと思うのです。大臣、どうでしょうか。
  145. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 この制度は、一方において住宅建設は土地問題だということだから、宅地の供給をふやさなければならない。しかし、一方においては、三大都市圏の中でも先祖伝来の土地を持ってやはり営農の意思を持ってやっていこうというまじめな農家がいっぱいいる。そういう二つの要請をどういうふうに調整するかというのが、私は今度の去年やったこの制度の改正だったと思うのですね。だから、一つ政策的な選択をしたので、一方から見れば不徹底、片っ方から見ればやり足らぬなというところはやっぱりあるのじゃないだろうか。  しかし、そこでいまおっしゃるように、もっと長い期間でやればよかったじゃないかというお話、これは十年ということで十年にしたならば、じゃ、よけい出たんだろうか。あるいは五年のところで切ったからよけい出たんだろうか。また、いまの一七%しか農地課税審査会でいわゆる宅地並み課税の対象にならなかったということでございますけれども、また、それが果たして今度は宅地として売りに出てくるのだろうかということもあると思うのです。税という一つ政策的手段で宅地の供給をふやすということにもなかなかむずかしい問題がある。やはり土地問題というのはむずかしい問題だな、やはり総合的な立場というものでやらないとなかなか出てこないのじゃないだろうかというような気がいたすわけでございます。  これはいろいろ議論のあるところだと思いますけれども、まあ去年やったばかりの制度でありますから、もう少し様子を見ていきたい、こう思っております。
  146. 正木良明

    ○正木委員 大臣の話を聞いていると、先祖伝来の土地を全部取り上げてしまうというように聞こえるけれども、そうじゃないですよ、あなたはおわかりだと思うけれども。先祖伝来の土地で農業をやりたいという人はずっとおやりください、それは農地の固定資産税で結構です、しかし、宅地として非常に大きな付加価値を持ったこの農地をいい時期が来たら売ってやろうなんて思っている人に対しては、営農の継続意思というのはそんなにずうっと長い間あるわけじゃないのだから、一定の期間を区切りなさい、五年間じゃ短過ぎるじゃありませんかというのがわれわれの意見なんですよ。この辺はよくお考えをいただきたいと思うのです。ここでやったって平行線になるでしょうから、また五年たったらこの問題やりましょう。それまで国会議員だったらの話だけれども。  大蔵大臣、国債償還の問題ですが、あれでは、六十一年度以降残高がゼロになる国債整理基金特別会計の資金にかわって、理論的には歳出カット、借換債、負担増。この負担増というのは増税その他の何らかの形ということなんだろうけれども、この三つのいずれか、あるいは組み合わせであろうということですね。  そこで、この歳出カットですけれども、政府機関や政府関係の財政審議会や税調、臨調などの答申では、いずれも歳出の伸びは名目成長率以下にすべきだと言っていますね。逆に考えると、名目成長率程度は伸ばしても認めるというふうに考えてもいいかもわかりません。事実、今回の試算でも、政府の名目成長率六%の伸びに対して歳出は、合計、五十九年度が六・四%ないし七・五%、六十年度が六・三%ないし七・三%、六十一年度が四・六%ないし五・五%の伸びとしていますね。国債費や地方交付税を除く一般歳出でも、五十九年度は五・二%ないし六・七%、六十年度は五・二%ないし六・八%、六十一年度は三・一%ないし四・六%の伸びとしているわけです。この歳出の伸びは、行政改革の推進から見ればいささか高いと言わなければならぬかわかりませんが、これはおくとして、もう一面、マクロ経済面から見ますと、国の予算が財政デフレで景気の足を引っ張るのをとめるとの観点からは、考慮すべき重要な問題だと私は思うのです。  そこで、例に政府の中期試算によると、国債整理基金の残高が底をついた六十一年度から六十二年度の一般歳出の伸びを名目GNPの六%とすると、その増加額は二兆二千億円ないし二兆三千億円になる。その上に六十二年度の赤字国債の四兆六千億円が加わる。計約七兆円の歳出増の要因になるのです。七兆円を六十一年度から削減するとすれば、単純に見て二〇%近いマイナス予算になってしまうのです、一般会計から借金を返す分を入れるわけですから。  増税なき予算ということになってくると、事実上こういうことになるのです。これでなお歳出カットできますか。歳出カットはもう無理でしょう。妙案がありますか。
  147. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大体この中期試算は、一定の仮定のもとに中期的視点に立った財政運営を進めていく上での検討に資するため、そのための手がかりを示すということでお示ししたものであります。そこで、特例公債の減額につきまして複数の試算をお示ししておるところでございますが、とにかくいまおっしゃったのが、それを単純に見た場合、多額な償還を要するときに至ったならば予算繰り入れをしなければならぬ、そういうことになれば、いま御指摘のような歳出カットについてはもうほどほど限度ではないか、そういう御議論であります。  したがって、五十八年度予算というものの編成の基本的考え方というものが、いわゆる財政改革ということに視点を置いてこれに取りかかったわけでありますので、いままでやったことが、言ってみればある意味においてぜい肉落としというようなものをやってきたかもしらぬ。これからは、まさに臨調あるいは財政審等で御指摘を受けておる問題等を中心にして、ここまでは個人とかあるいは企業とかに帰する問題、ここまではあるいは自治体に帰する問題、ここまでは国がやるべき分野、そういう歳出構造の見直しを徹底的にやるならば、私はこれ以上できないということは言えないと思うわけであります。  しかしながら、それには大変な国民的協力もいただかなければならない課題である。したがって私は、こうして国会等の問答を通じながらその実態が国民にも理解を得られる、それが大きな媒体となることでありますので、こういう問答を通じながら国民の理解を求めて、まずはやはり歳出削減というものに徹底的な努力をすべきものである。これ以上歳出削減というものは事実上困難だというような認識の上に立っては、それこそ財政改革そのものが進まないではないか、こういうふうに理解をいたしております。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  148. 正木良明

    ○正木委員 要するに、僕の言っていることは、歳出カットなんということは、かっこうよく言っているけれども、六十二年度の予算の中からは歳出カットなんかできる余地なんて全くないじゃないですか、したがって、あなたがおっしゃった三つのうちで歳出カットというのは不可能だから、要するに借りかえか負担増のあと二つしか残らないのじゃないですか、こう言うておるわけですよ。しかし、借りかえは実体的には赤字国債からの脱却ではありませんわな。総理は、できるだけ早い時期に特例公債から脱却、二回も所信表明の中で約束なさってますけれども、これはそんなに思うようにはいきません。借りかえすると、少なくとも六十八年度まで赤字国債から脱却はできぬでしょう、われわれの計算によれば。こんな六十八年というのは、われわれに言わせれば、できるだけ早い時期じゃないですよ。そうすると、残るところはもう増税しかないんじゃないですか。はっきり言われたらどうですか、大蔵大臣増税やるんやと。
  149. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま御指摘のありました中期試算における歳入歳出のギャップ、これは今後の経済情勢等をも踏まえまして、また、この特例公債の減額をどうするかという点についての国民の合意を得ながら、慎重にこの処理方法の検討を進めるべきものでありまして、いまこの時点で前もって具体的な処理方法、すなわち増税しかないとかそういうことを申し上げることは私はできない、あるいはこういうことを申し上げるべきでないというふうに考えております。  だから、申しましたように、広く国民の声に耳を傾けながら、経済社会情勢の進展に応ずるような歳出歳入両面にわたる構造自体を見直してこれに対応していかなければならないというふうに考えております。
  150. 正木良明

    ○正木委員 国民のコンセンサス、国民の声というのは、一番手っ取り早いのは選挙です。増税がいいのか悪いのかというと、やはり選挙の争点にせなければいかぬ。そうでなければ、国民のコンセンサスはどこはあるのか、国民の望むところはどこにあるのか、国民は何を支持するのかということははっきりわからぬのじゃないですか。少なくとも、一番近い国政選挙と言えばことしの夏の参議院の選挙だが、これを争点にするという気持ちは、総理、ありませんか。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは税そのものの問題でございますが、いわゆる国民の選択という問題は、選挙というものも一つの選択の場であると思います。しかし、現行の制度とかあるいは税にとって言えば、現行の税制とかいうものは、これは各国それぞれの歴史とか文化とか伝統とか、いろいろな中にいろいろな形の積み上げとして、すなわち国民の選択したその集積として今日現存しておるわけですから、その現存しておるものはもちろん絶対ではない、そうすると、この国会を通じての問答とかあるいは政府で申しますならば税制調査会でありますとか、そういう各方面の意見を聞きながら国民との合意を求めていくのであって、私は、この定時的に行われる一つ選挙に、増税というものは是か非かとか、あるいはそういうものが争点になるべき性格のものではないではないか、やはり現実に対応して、毎日の問答の中にこれは国民の合意というものを求めていく性格のものではないかというふうに思います。
  152. 正木良明

    ○正木委員 わが国は、個別の政策について国民意見を問う国民投票みたいな制度はありません。選挙というのは、その政党の持つトータルの政策についての賛否ないし支持、不支持です。その証拠に、皆さん方は選挙の後必ず、われわれは国民の絶対多数の支持を受けたのだからということで、自民党のすることは何でもいいと言ってきた。これは国民が支持していると言ってきたじゃないか。やはりそれは僕はまやかしだと思いますよ。可能な限り政策をきちんと国民に示さなければいかぬ。それによってはっきりとしなければいかぬ。それはもう争点にしないという方が私はおかしいと思いますので、これは私の強い要望として聞いておいてください。  そこで、大蔵大臣ばかり気の毒だけれども、グリーンカードが三年延期になりますな。私、どう考えても——これはいつから三年勘定するのですか。ことし五十八年から勘定するのですか。暦年ですからね、五十八、五十九、六十、もし、この三年間の猶予期間を仮に置いて、それでいよいよまた再びやると、こうします。そうすると、これは五十八、五十九、六十だから、六十一年は考える時間、準備の期間が要る。だから、六十二年からだ。このときには物すごく金の要るときです。それで私は、どうも考え過ぎと言われればそうかもわからぬが、そうすると、グリーンカードで予定されている歳入がなくなって、歳出がやたらにふえる。国債償還のための一般会計からの予算までつぎ込まなければならないような状況の中で、皆さん方は何を考えるかと言ったら、グリーンカードにかわるべき歳入というものが何かないかと、もういまから考えているだろうと思う、大蔵省の人は頭がいいから。これは何かと言うと、いままでにいろいろ巷間うわさされているところの少額貯蓄を保護するためのマル優の廃止というものですわ。マル優さえ廃止したら、グリーンカードもくそもない。これはどうですか。マル優の廃止ということを考えていますか。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆるマル優の廃止問題、これはやはり三年間延期する法律をこの国会でお通しいただきまして、そこで、今後の利子配当課税制度のあり方については、当国会での議論も踏まえ、そうしてその三年間の間に税制調査会等で検討をしていただく大きな課題である。——いや、いまの大きい、小さいは取り消させていただきます。いま、そういう御検討をいただくためには、検討の範囲を非常に制限するわけにはまいりませんから、そういう意味において御検討をいただきたいというふうに考えております。
  154. 正木良明

    ○正木委員 大蔵省の方向としては、グリーンカードにかわってマル優の廃止という方向が好ましいというふうにお考えになっていますか。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはり税制調査会で検討していただいて早期に結論をまとめていただくということでございますので、いま大蔵省がそういう方向の結論が出ることを期待しておるというような前提を申し上げるべき性格のものではない、こういうふうに思っております。
  156. 正木良明

    ○正木委員 慎重な竹下大蔵大臣がそこまでおっしゃるということは、やりたいというふうにとらざるを得ません。これは牽強付会の説ではなくて、そういうふうに思わざるを得ないですよ。だから、これはこれ以上言っても、恐らく押し問答が続くでしょう。  総理、最後になりますが、ことしの元旦の新聞に、「デノミ実施 首相、検討」という記事が出たのです。一月四日の記者会見で、総理はデノミについていまのところ考えていないと否定されましたけれども、戦後の総決算に全力を挙げて取り組む総理として、かつていろいろと言われてきたデノミネーション、特に総理は、通産大臣在職中の昭和四十八年九月の中曽根派の研修会で、デノミ実施を提唱して次のようにお述べになっている。  一、先進国でデノミを実施していないのは日本とイタリアだけだ。二、デノミの実施は国家の威信を高め、国民の節約心を助長する。三、通貨呼称単位を百分の一にして、百円を一円、一ドルを二円六十五銭にするというようなことをおっしゃったのですが、当時は、日本列島改造論だとか過剰流動性などから、インフレ、物価が非常に著しい上昇を示しておるときでありまして、そういうときになぜデノミを必要と判断したのか。しかも、いま必要でなくなったとおっしゃっているが、この点の真意をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当時の心境はいまのところまだよくわかりませんが、恐らく状況をよく見て、そして内外安定化をもたらそう、そういう考えがあって、直ちにやるという意味ではなくして、理論的にこういうものであるというように言ったのではないかと思います。私は、現在デノミのことは全く考えておりません。
  158. 正木良明

    ○正木委員 僕の周辺で、周辺といっても議員じゃありませんけれども、こんなことを言う人があるのです。いまの日本の経済というのは、国際経済の影響を受けて、これはいつも経済企画庁や皆さん方がおっしゃっておるが、大変だ。よっぽど目をむくようなドラスチックなショックを与えぬと、日本の経済というものはどうにもこうにもならぬだろう。いろいろ考えた結果、一番ショックを与える、しかも、そのショックによって物とか金とか動くのはデノミネーションしかないじゃないか。やったらどうですかというような話があるのです。私は別に賛成しておりませんが。  それと同時に、デノミネーションというのは、通貨の単位の呼称を変えるだけの話ですから、純粋には経済的には中立の政策です、これに付随していろいろな問題が起こってくるけれども。したがって、デノミネーションというのはある意味ではプラス面を持っているかもしれない。しかも、総理のお好きな、国家の威信を高めるとおっしゃっているのですから、まさにこのことで百分の一になれば国家の威信が高まる、要するに対ドルレートが三けたでなくなるということにおいて、国家の威信が高まるかもわかりません。  全然頭の中にありませんか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 デノミネーションというのは、ややもすれば誤解を生むファクターが多いと思います。呼称価値を百とか千とか切り下げて、そして新価値と旧価値とをしばらく共存させて、そして次第に片方を消していく、そういうようなのをフランスその他でやったことはありますが、よほどの事前の教育、あるいは経済的、社会的安定、それから国民の皆さんがよくなじんでよく理解した上でないと、思わぬところへ思わぬ結果が出てくる危険性があるものであります。そういう点も考えまして、軽々にそういうものは考うべきでもないし、言うべきでもない。私は全く考えておりません。
  160. 正木良明

    ○正木委員 私は、やると言っても恐らく無理だろうと思いますわ。要するに、財産を隠して持っている人たちはグリーンカードさえ実施反対だったんやから、デノミネーションやったら自分の財産は全部わかってしまう。少なくとも、新円と旧円との交換なんかやってそれで全部ばれてしまうから、これはもうアングラマネーの方へ逃げていくということも考えられますし、その辺の反対がやはり一番きついだろうと思うから、グリーンカードと同じような結果になるだろうと思います、やるとしたって。だから、できぬだろうと思うけれども。  そこで、最後に長官、あなたは「昭和五十八年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」というのを出しましたね。この中で、「第五は、今後策定が予定される新経済計画において示される長期的視野からの経済社会の展望と経済運営の指針により、我が国経済社会の中長期的に均衡のとれた発展の基礎作りを行うことである。」こういうふうに書いてありますね。  いま策定が予定されている新経済計画、この内容と、いつこれができるかというのを答えてください。
  161. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  昨日もこの点につきまして御答弁申し上げましたが、五十四年の八月に策定いたしました新経済七カ年計画は、第二次石油ショックの結果、大きく現実とも乖離いたしました。そこで、昨年の七月に鈴木内閣のもとで、新しい経済五カ年計画をつくっていただきたいという諮問をしたわけでございますが、昨年の十月、経済成長の見通しを五・二%から三・四%に下げるような大きな変動が起こったわけでございます。そこで、中曽根総理は、この機会に、新五カ年計画に対して、新しい観点から、五カ年と言わないでより長期の観点から、さらにまた、これまでのような流動的な経済、世界的な経済の現象から見てより弾力的な柔軟な経済運営の指針をつくりていただきたい、こういう諮問をいたしまして、そういった観点から、新しい方向でいま新経済の展望と経済運営の指針をつくりつつあるところでございます。  その内容につきましては、世界経済への調和とかいろいろあることはもう御案内のとおりでございます。
  162. 正木良明

    ○正木委員 いつごろできますか。
  163. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私どもの見通しでは、任期が四月末でございますから、できる限りそれに合わせてつくっていただきたいと言っているところでございますけれども、いま申しましたように、新しい諮問も、諮問と申しますか、新しい観点からの作成をお願いしたこともございますので、おくれる場合がありはしないかということをいま恐れているところでございます。
  164. 正木良明

    ○正木委員 もう一問だけ、済みません。  大蔵大臣、要するにあなたの財政改革計画というのは、今後の見通しが非常に不透明で、何もそれに準拠するような計画も出ていないし、なかなか立てられないんだというお話でしたね。したがって、国債償還の財源調達の計画というような問題についても、なかなかいま出せないんだということになったけれども、いま塩崎長官が言ったように、任期がこの四月までだそうですが、できればそれまでにこの新経済計画というものが出てくるわけですが、それにのっとって財政改革の計画というものはおつくりになってお出しになるおつもりはありますか。
  165. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま長官からお話がありましたように、経済審議会にお願い申し上げておるいわゆる中期展望ないしはその指針というものとは、言ってみれば、財政というものは表裏一体という表現もあるいは当たるかぐらいな問題でございますので、この経済審議会の推移とわれわれの作業というものも無縁であるべきものではないというふうに考えております。
  166. 正木良明

    ○正木委員 じゃ、どうもありがとうございました。これで終わります。
  167. 久野忠治

    久野委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、大内啓伍君。
  168. 大内啓伍

    ○大内委員 中曽根総理は、二月三日の答弁の中で、アメリカの戦略に日本が巻き込まれていくのではないか、こういう趣旨の質問に対して、こう答えていますね。アメリカの世界戦略に使われる日本ではない、アメリカにはアメリカ考えがあるだろうが、日本は、日本人の生命財産を守るために独自の道を歩む、こういう答弁をされておられます。私は、これは一国の総理としての心構えとしては理解できなくはないのでございますが、日本日米安保体制を堅持しながら、そして、アメリカの戦争抑止力に依存しながら日本の平和と安全を守るという立場にある日本が、やはり好むと好まざるとにかかわらず、アメリカのアジア戦略あるいは戦術とかけ離れて存在するかのような印象を与えた実はお答えであったと思うのです。私はむしろ、この総理のお言葉は、これから日本がとろうとしている防衛政策の実態とは合わないのではないか、こういう感じをもって実は拝聴したのです。  まして、総理は、昨日も非常に重要なことをおっしゃられたんですね。日本防衛力整備は、ソ連の脅威に対する均衡と抑止力を形成することにある。実はアメリカもヨーロッパもそう思っているんですね。だからこそ、これからの日米関係から日米欧の時代が到来してきているとさえ言われているんですね。もちろん日本日本の独自の道はございますが、安全保障とか防衛政策という面では、私はそれだけではいかない。それなら中立主義をとればいい、あるいは中立政策をとればいい。私はその辺を少し具体的に掘り下げたいと思うのです。別に私は揚げ足を取る意味で申し上げたんじゃないですよ。  そこで、昨年の九月二十五日から十月初めにかけて行われた、カムチャッカ半島のペトロパブロフスク東方七百二十四キロ、アッツ島付近におきまして、アメリカの海軍は大規模な演習をやっています。御存じのように、ウラジオストクとペトロパブロフスクはソ連の極東艦隊の二大基地と言われるだけに、この演習は軍事的に相当重要な意味を持っています。  そこで防衛庁、この演習の概要はどうであったか、説明していただきたいと思います。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんがいま御発言になりましたことについて、ちょっとお答えいたしておきます。  独自の道をとるという意味は、もちろん日本憲法の範囲内において日本は独自の道をとるものであります。しかし、安保条約を選択するというのも日本の自主性においてとる独自の道、そういうふうにお考え願いたいと思うのであります。  それから、ソ連の脅威云々というお言葉がございましたが、潜在的脅威ということを意味して発言していると思います。アメリカは、あるいはNATOにおいてあるいは日本との安保条約あるいは韓国との同盟条約あるいはANZUS、こういう世界じゅうの同盟、集団安全保障網をめぐらせております。それらはいずれも、ソ連との対ソ均衡による戦争の抑制、平和の維持のためにアメリカは努力しているものだ。アメリカアメリカの独自のそういう考え方に立っておやりになっておる。日本も、世界で戦争が起こることを防止するという意味においては、平和目的のわれわれの政策を持っておるわけでございまして、日米安保条約というのも戦争を誘発させないための一つの試みであり、仕組みであります。そういう意味において、世界で戦争を誘発させないという意味における意味は、相連携している中にあるという意味で申し上げたというふうに御理解願いたいと思います。
  170. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 御質問のございました昨年秋の米海軍のアッツ島付近におきまする演習につきましては、米側から通報を受けておるわけではございませんので、必ずしも詳細には御報告できませんが、概要につきましては政府委員から答弁をいたさせます。
  171. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御言及になりましたそのアメリカ艦隊の演習の場所は、まさにペトロパブロフスク東方約七百キロの海域でございます。それで、期間も九月二十五日から十二日間行われました。  それで、これに対しましてその参加したアメリカの戦力でございますけれども、エンタープライズ、ミッドウェーを含めまして水上艦艇十三隻、それに攻撃型の原子力潜水艦が参加しております。  他方、この間ソ連からいろいろな模擬訓練等が行われたわけでございますけれども、全体といたしまして、この期間にソ連からはバックファイア、バジャー、ベア等の爆撃機及び戦闘機、無慮延べで百三十機以上、これにさらにソ連側から水上艦艇及び原子力潜水艦が参加した。  お尋ねの核心でございますけれども、バックファイア……(大内委員「そこでいい」と呼ぶ)よろしゅうございますか。
  172. 大内啓伍

    ○大内委員 以上のとおりでございます。  そこで、防衛庁がどういう情報を入手しているかどうか重要なところが一つございますのは、このときにバックファイアが八機、たしか参加をいたしております。そして、米報道によりますと、そのバックファイアがアメリカの艦船に対しましてミサイル発射の模擬攻撃姿勢をとった。その地点は二百キロかなたからであった。これは後の論議で非常に重要なところなんですよ。それでわざわざこういうことの事実関係を確かめたのです。そういう情報を入手しておられますか。
  173. 新井弘一

    ○新井政府委員 私どもが承知するところは、ただいま先生がおっしゃったところと基本的に同一でございます。すなわち、バックファイア八機が二つに分かれて四機ずつ模擬攻撃訓練を行い、約二百キロの地点まで接近したというふうに承知しております。
  174. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、ここで少し想起していただきたい問題がございますのは、昨年、一昨年の夏のハワイ会談におきまして、アメリカ側から出てきておりますアミテージ国防次官補代理が、実は四つのプロポーザル、つまり日本に対する防衛責任の合理的な分担という意味で、実は四つの提案をやっているのであります。それより先、アメリカの筆頭代表でありますウェスト国防次官補が、対ソ基本戦略について四点にわたって説明した後に、実はこのアミテージ国防次官補代理がいま申し上げたような提案をしているのでありますが、その中で重要なことは、千海里防衛のための十分な海空防衛力日本は持ってほしい、もちろんこの千海里の中には海峡は含まれる、実はこういう提案をしているのでありますが、これは防衛庁、間違いありませんか。
  175. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一昨年の日米安保事務レベル協議、さらには昨年の事務レベル協議の両方におきまして、米側からわが方のシーレーン防衛能力の向上を期待するという旨の発言はございました。
  176. 大内啓伍

    ○大内委員 もちろん、アメリカの千海里防衛の中には海峡を含んでいるわけですね。まず、これが一つ確認できました。  そこで、昨年のハワイ会談におきまして、ビグリー統合参謀本部第五部長が、日本の役割り分担として非常に重要なことを二つ挙げておられますね。一つは、これは中曽根総理発言にかかわることなんでございますが、三海峡の封鎖という問題に触れまして、三海峡封鎖によって、西側シーレーンを脅かすソ連の攻撃型原潜が沿海州の基地、つまりウラジオストク等ですね、基地から太平洋に出るのを阻止してほしい。二つ目は、いま出しましたバックファイアの問題に関しまして、F15の大量配備でバックファイアが太平洋上に出るのを阻止してほしい。防衛庁、間違いありませんか。
  177. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 昨年夏の日米安保事務レベル協議におきまして、ビグレー統参本部の五部長、海軍中将が言われたことは、シーレーンの防衛というものは日本にとってきわめて重要なバイタルな問題である、そういう意味合いから見て、現在の、あるいは五六中業で達成されるであろう日本の海上防衛力をもってしても不十分だというふうに認識しているということの指摘はありましたが、いま先生のおっしゃったような、具体的にどの海峡を防備しろとか、してほしいとか、そういう要請ではなくて、もちろん海峡通峡阻止の話も出ましたけれども、一般的にわが方のシーレーン防衛能力が不十分である旨の指摘があったということでございます。
  178. 大内啓伍

    ○大内委員 バックファイアの点はどうですか。
  179. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 洋上防空の重要性についてもその際言及されたことは事実でございます。
  180. 大内啓伍

    ○大内委員 これは本当は日米間で外に余り言わないことにしておりますので、なかなかわからないですよ、本当のところ。いまの夏目さんの言ったことに本当に全部尽きるのか、そうでないのか、私が申し上げたことも全く出ていないのかということは、なかなか判定がつかない。しかし、私もやはり有力な情報を持って申し上げている。前のハワイ会談でも、これは政府からいただいた資料に基づいて、私はその言葉を選びながら申し上げている。私が勝手に創作しているものじゃないのです。しかし、この二つのハワイ会談を通じてアメリカ日本に対して三海峡の封鎖、つまりシーレーン防衛を含む三海峡の封鎖、これは逆であるかもしれません。さらにはバックファイア対策というものを非常に切実な問題として求めてきていることはまず間違いないと思うのですね。私は、ここにワシントン・ポストにおける総理発言の重大さがあると思うのです。非常に重要な関連があるのですね。  これはもう何回もここでも引用されましたが、簡単に申し上げますと、総理はこの二つの点についてこういう言い方をされたのですね。「ソ連のバックファイア爆撃機の侵入に対する巨大な防壁を築くことにある。」これが一つ。「第二の目標は、日本列島の四つの海峡を完全に支配し、ソ連の潜水艦を通過させず、他の艦船の活動を阻止することだ。」後で四つが三つに、間違えたという、私はこれは常識では考えられない。それよりさき、中曽根総理は韓国を訪問されて全大統領との間でもいろいろお話をされているわけでございますから、きっとそういうこともあるいは念頭にあったのかもしれますまい。しかし、きょうはそのことを深くお尋ねをするのはやめましょう。少なくとも中曽根総理がワシントン・ポストで述べられたその二つは、まさに、実はアメリカが、アメリカのアジア戦略遂行上日本に特に分担してもらいたいという重要な点であることだけはまず間違いない。  私は、いまその是非を論じているのじゃないのですよ。少なくとも総理のそうした発言アメリカの要求というものは、まず完全に一致していると見ていい。そして、それを裏づけるように、アメリカの一月三十一日の国防報告あるいは軍事情勢報告、まさにそのことを言っていますよ。そのさわりのところを見てみますと、その八四年度国防報告でこう言っていますよ。「同盟国や友邦のすべての戦力をアメリカの戦力と一体化する」必要がある。そして、欧州、日本、韓国など「こうした前進配備戦力は、同盟国と提携して直ちに戦闘に入れるし、平和時には同盟諸国との一体化を進めることができる。」これがアメリカの国防報告です。さらに、ベッシー米統合参謀本部議長が同じ日に議会に提出した一九八四年の軍事情勢報告では、もっと端的に言っています。「日本は、アジア・太平洋地域における安定を維持する上で死活的な役割りを果たしている。日本の協力は、アメリカのアジア戦略にとって不可欠の構成要素となっている。」  先ほど、日本は独自の道を歩むということについて総理はそれなりの釈明をされましたけれども、安全保障、防衛という面で、私はアメリカの戦略や戦術を無視することはまずなかなかできまいと見ているのです。それでは日本防衛そのものが日米安保体制の中で成り立たないであろう。にもかかわらず、何かいかにもアメリカと違った道を日本が歩んでいるかのような印象を与えようとされる。それは総理大臣の見識としてそれなりにわからないことはないが、現実の具体的な防衛政策という面ではそれでは説明不足になる。国民に対するミスリードになる。私はその点を実は厳しく申し上げたいのです。  そして、アメリカは「日本との関係はより行動的な防衛協力関係につくりかえられつつある。」これがアメリカの議会に対する軍事情勢報告ですよ。つまりアメリカは、防衛政策日本との戦略的一体化、そして、そのための防衛協力関係の新たな構築を日本との間に図ろうとしていることは否定できない事実じゃありませんか。ですから、二月三日にイクレ国防次官が記者会見で、日米韓の日本海における合同演習について説明されておりますが、これはまさにその実践なんです。その位置づけなんです。  私は、それらのことから、総理がおっしゃったことは必ずしも正確な御答弁ではなかった。しかも、総理はワシントン・ポストの中で、いま述べられた海峡封鎖についてもバックファイアにしても、あるいはシーレーン、つまり航路帯の確保、維持の問題にいたしましても、「これまでの日本政府は、この点であいまいにしてきた。」とさえ言っている。これは具体的にどういう点をあいまいにしてきたのですか、総理
  181. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、私がワシントン・ポストで申し上げたことは、もし日本に対する侵略があった場合、そういうことがまず前提で、そういう意味においては、日本の防空を全うして外国の飛行機の浸透、侵入を許さない。それは、もし万一の場合には、いかなる国の飛行機といえども武力攻撃した場合には浸透を許さない。それから、万一日本に対する武力攻撃が起こった場合には海峡コントロールを行う、そういうことを実は言っておるのであって、その点においては日本を主にして物を考えておる。そして、安保条約を最大限に活用して日本防衛を全うする、そういう考えであるわけであります。  日本の防空あるいは日本の万一の際の海峡のコントロールという面を日本みずからが行い、あるいはアメリカと協力して行うということは、日本防衛を全うするための国防の基本原則に合っている行為なのでありまして、しかも日本政治家としては、そういう有事の際にアメリカの力を最大限に発揮して日本防衛のために働いてもらうということは、これは心がくべきことである、そう思っております。  したがって、アメリカ側がいろいろ作戦的に考えておることと日本がみずから日本防衛のために考えていることと、同心円の中にあることも多いと思います。それは当然のことであります。それで、バックファイアの阻止とか、あるいはバジャーの阻止とか、あるいはほかの国の飛行機の阻止とか、もし日本に対する武力攻撃をやる国があったら、いかなるものであってもそれは阻止しなければならない。日本の自力において阻止し、自力において防止することが不可能な場合には安保条約を援用して阻止する、それが正しい道である、そう思っておりまして、その同心円に当たる部分まで否定しているものではありません。  しかも、一番大事なことは、その場合に日本はいわゆる盾の役目を果たしている、日本列島防衛を主にしてやるわけです。やりの役目の相手の攻撃という部面はアメリカに期待しておるわけであり、アメリカもそれを了解しておるわけであります。したがいまして、そのやりに当たる、攻撃性をもって日本を守る、そういう部面についてはまたアメリカを最大限に機能させるようにしておくことが日本防衛の目的に沿うゆえんで、心がけておくべきことである、そう私は考えておるのでありまして、アメリカ側がいろいろ国防報告とかその他のことで言っておることはアメリカ側立場であり、それをいかにまた日本の主体的立場において活用するかということは日本政治家の腕前である、こう考えておるわけです。
  182. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、それは総理の主観としてはわかりますよ。私が問うているのは、具体的な防衛態勢の問題なんです。いま総理発言ではっきりしましたのは、アメリカの戦略、戦術と一体化する分野が相当あるということをお認めになったわけですね。私は、あたりまえのことだと思う。しかし総理は、アメリカの世界戦略に使われる日本ではないなどと言う。私は、これが中曽根総理の一流の物の言い方なのかなというふうには理解しますけれども、一体化の分野があるということをお認めになりますね。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん、防衛の実態面においては一致する点がありますが、しかし、私は特にこの際申し上げておきたいのは、日本憲法の範囲内において個別的自衛権、日本列島の防衛というものを主眼にしてすべてのものを考えているということで、アメリカの極東戦略の手先になってやるという考えはない、しかし日本列島防衛という面において一致する、そういう部面においては同心円で協力することも十分あり得るということを申し上げたいのであります。
  184. 大内啓伍

    ○大内委員 くどいようですが、戦略、戦術が一体化する分野が相当あるということでしょう、同心円というお言葉を使いますと。そうですね。
  185. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 実態面で見たら、相当共通している部面もあると思います。
  186. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、バックファイアを一歩も通さないという式のその総理の決意、これはバジャーであろうがバックファイアであろうがベアであろうがという、これはまあたとえでしょう。その決意はわかるのですが、その総理のお答え、つまり結論というものと、その結論を導き出す具体的な計画との間に余りにも乖離が大き過ぎるのですよ。そう思いませんか。これ、具体的に詰めてみましょうか。まあいいです。後でまとめてお答えいただきましょう。  極東におけるバックファイアは何機で、どこにおりますか。
  187. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 極東におきますバックファイアの機数は、約七十機でございます。(大内委員「場所」と呼ぶ)海軍所属のものと空軍所属のものと二つに分かれておりますが、その具体的な配置個所については御容赦をいただきたいと思います。
  188. 大内啓伍

    ○大内委員 なぜ言えないの。これは日本の秘密でも何でもないじゃないの。どこにだって出ていますよ、そんなこと。言ってください。
  189. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 この種の情報の細部にわたって申し上げることは、情報の入手手段その他も明らかにすることになりますので、御容赦をいただきたいと思います。
  190. 大内啓伍

    ○大内委員 まあ深追いはいたしません。  じゃ、バックファイアにはどういうミサイルを積んでいますか。AS4とAS6でしょう。この性能は。
  191. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 バックファイアが搭載しております対地ミサイル、すなわちこれは通常AS4というふうに言われています。ニックネームはキッチンと称していますが、これは速度が約二マッハ以上、射程は三百から八百キロ、弾頭は核と非核と両用でございまして、大体二百キロトンというふうに伝えられております。また、その誘導方式は、慣性とアクティブレーダーもしくはパッシブレーダーホーミングというふうに聞いております。
  192. 大内啓伍

    ○大内委員 お聞きのとおりです。三百から八百の有効射程というのは、ちょっとまゆつばです。しかし、国際的には大体二百キロ以上有効射程があるであろう、こう見られています。つまり、先ほどの演習の中で、ソ連のバックファイアが二百キロかなたからアメリカの艦船、つまり、航空母艦に対して模擬攻撃をとったというのは相当重要な意味があるのですよ。つまり、二百キロ先からアメリカの艦船を攻撃し得る態勢にバックファイアはあるということです。それが沿海州と内陸部にわたって約七十機ある、こういうことなんですよ。これが事実か。  じゃ、ベアとバジャーはどうですか。
  193. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 バジャーはAS6というミサイルを積んでいるように聞いております。
  194. 大内啓伍

    ○大内委員 いや、ミサイルじゃなくて、ベアとバジャーの数。これは防衛庁に先に言ってあるんだから、ちゃんと答えなければだめだよ。
  195. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 爆撃機の数は大体四百五十機前後というふうに聞いておりますが、その具体的な細部については御容赦をいただきたいと思います。バジャーとベアを含んでおります。その中にはブラインダーもしくはバックファイア等も含んでおります。
  196. 大内啓伍

    ○大内委員 バックファイアの数が言えて、どうしてベアとバジャーは言えないの。SS20の数は言えて、どうしてそんなことが言えないの。言ってくださいよ、そんなことは。でないと物がきちっと解明できない。あたりまえじゃないの。論理的にだって矛盾しているじゃありませんか。バックファイアは言えて、ベアとバジャーは言えない、そんなばかな話ありますか。
  197. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 バックファイアについてはとみに関心が深いものでございますので、私どもとしてもそういった数字を公表いたしましたけれども、個々の爆撃機のそれぞれの数について申し上げると、極東ソ連空軍の兵力が具体的にわかる、そういうことからわが方の入手手段もわかるということから、御容赦をいただきたいと思います。
  198. 大内啓伍

    ○大内委員 委員長にお願いしたいのは、私は、ワシントン・ポストにおける中曽根総理発言の中で、バックファイアであろうがバジャーであろうがベアであろうが、それを一歩も侵入を許さない防壁をつくるんだと、こうおっしゃるから、それは実態に照らしてそういう事態があるかどうかをここで解明しなければならぬのです。そのためには相手の機数ぐらいは知らないと、私は立証できないのですよ、これから。これはちょっとおかしいじゃないですか、幾ら何でも。関心があるから数を申し上げた。ベアだってバジャーだって、われわれ関心ありますよ。総理だって関心あるじゃありませんか。これ、どうしましょうね。
  199. 久野忠治

    久野委員長 防衛庁当局の答弁を求めます。
  200. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ベアの数は、全ソ連の空軍機が約八百機あるうちの約三分の一ぐらいが極東にいるのではないか、それからバジャーにつきましては、二百機のうちの同じく三分の一ぐらいが極東所在に配備されているのではないかというふうに推定されますが、個々の数字についてはいま申し上げた程度で御勘弁をいただきたいと思います。
  201. 大内啓伍

    ○大内委員 いまのは、バジャーとベアで逆じゃないの。
  202. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 失礼しました。ベアが約二百機、バジャーが約八百機でございます。
  203. 大内啓伍

    ○大内委員 じゃ、極東のソ連の戦闘機はどうです。
  204. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 戦闘機の数は約千五百五十機、この中にはミグ21から23、25、27、スホーイの15、17、24というものが含まれております。
  205. 大内啓伍

    ○大内委員 ワインバーガー国防長官は、最近の、つまり一月二十四日の記者会見でこう言っていますよ。ソ連の極東の戦闘機の数は三千機以上。防衛白書は二千百二十機。日本の数字はみんな古いのですか。いまの数字も違いますね。
  206. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私ども承知しております数字では、極東ソ連の空軍機の数は約二千百二十機というふうに聞いております。
  207. 大内啓伍

    ○大内委員 ちょっとアメリカよりかおくれているだけですね。  このベアとバジャーにはどういうミサイルを積んで、その射程はどのぐらいあります。
  208. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 バジャーにはAS2キッパーというミサイル、それからベアにはASMカンガルーを積んでおります。
  209. 大内啓伍

    ○大内委員 いまお話がありましたように、バジャーにはAS2というのが積んでありますね。それから、ベアにはAS3というのが積んであります。これの有効射程はどのくらいかといいますと、やはり二百キロ近くあるんですね。これは防衛庁から出ている資料だから間違いない。これはお聞きのとおりなんですよ。  そこで、じゃ在日米軍の飛行機の数はどのくらいあります。こんなのは本当に基礎的な数字なんだ。——じゃ、私の方から申し上げます。  いまアメリカの極東における戦闘機は、空二百八十機、海二百八十機、海兵六十機、計六百二十機、その他の雑機を合わせますと約八百機。日本の自衛隊二百四十機。もちろん在韓米軍もあるんですよ、多少数字がね。これで、バックファイアであろうがバジャーであろうがベアであろうがというわけにはなかなかいかないですよ。これはソ連の戦力というのは相当なものですよ。(発言する者あり)いや、だから強化しろなんて、そんなことを言っているんじゃない。そんな議論をしようとしているのじゃない。誤解しないで。いや、僕は整合性をいま求めているんだから。そうでしょう。  つまり、総理の鉄の防壁をつくるという方程式と計画がなくて答えだけがある。私は学校のときに、答えだけ合って方程式が間違っていると、先生はゼロでした。私は気概はわかると言うのですよ、見識はわかると言うのです。しかし、総理がそう言う以上は、やはりそれを裏打ちする計画なりその過程というものがなければ、それは巧言令色という批判を浴びることになる。これ、総理、どう思われます。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本が国防を全うしようとして努力をしているときに、外国のいかなる爆撃機にせよ、戦闘機にせよ、これを侵略することは許さない、これはあたりまえのことでありまして、そのためにこそわれわれは自衛隊を持ち、防衛庁を設置し、国民の皆様方にも御協力をお願いしておるのであります。みずから自分の国を守るというその決意がまず出発点である、そういう意味で、日本総理大臣として自分自分の国を守るという決意をはっきり示しておく、そういうことから申し上げておるのであります。
  211. 大内啓伍

    ○大内委員 いま、私がさっき具体的なものを時間をかけて申し上げているのは、偶然に申し上げているのじゃないのですよ。たとえばバックファイア対策一つとりましても、日本の持っている地対空ミサイルで届きますか。防衛庁、届きますか。二百キロ先からミサイルを撃ち込んでくる。撃ったら回って逃げていく。このバックファイアに対して、日本の持っている地対空ミサイルで届きますか、どうですか。
  212. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 バックファイアが二百キロ先からASMを発射するとすれば、その母機に対してわが方のミサイルで要撃することはできません。
  213. 大内啓伍

    ○大内委員 お聞きのとおりです。日本の持っている地対空ミサイルの最長距離は百四十キロ。二百キロかなたから撃って逃げていくものに届きはしない。そうすると、航空機で対応するしかない。いまバックファイアに対応し得る航空機は、F15しか大体日本の場合はない。F4では能力が劣る。特にF4は、対地支援能力は全くない。そうすると、これに対する有効な手段はF15とE2Cの組み合わせしかない。  F15はいま何機お持ちですか。E2Cはいま何機お持ちですか。
  214. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 本年末におきますF15の装備数は二十三機、E2Cは、先般日本に到着いたしましたのを入れまして二機保有しております。
  215. 大内啓伍

    ○大内委員 E2C二機、それからF15二十三機。まだ訓練も行き届いてない。これで、バックファイア七十機、それからベアあるいはバジャー数百機、それから戦闘機三千機。ベアもバックファイアも入れないと言ったって、入ってくる。入ってくるというのは、ちょっと言い方が余り適当ではございませんでしたが、つまり私が言うのは、総理のおっしゃっていることといまの日本の自衛隊の実態との間にこんな長い距離があるのに、いかにもそれができるような印象を与えるようなことをおっしゃる、私はこれは無責任だと思うのです。  それなら、たとえば五六中業を達成することによってこのくらいの数がふえ、したがってソ連のそうした爆撃機に対して何%のものが日本において対応でき、その他の何十%はアメリカのこういう形でやることによって日本はそういう防壁をつくりたいと言うなら、一つの完結した議論。そして、日本日本の独自の道を行く。いかにも日本が大げさな一つ姿勢をとることによって、その実態を見たらいまお話ししたとおりであります。だからこそ、アメリカ日本に対して防衛力の改善を求め、先ほど申し上げたように、ピグリー第五部長は、バックファイアに対してこれを阻止するだけの力を持ってほしい、こう言い始めてきているのですよ。そういう意味で、総理はもちろん総理としての出発点としての決意を示すことは重要ですが、それは具体的な裏打ちがなければ、国際的にだって早晩信用を失います。  私の言っていることに非常な誤解や間違いがあるでしょうか。総理のこれからのそういう種類の発言としては何かお考えがございましょうか、仕方について。どうでしょう。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、政治家として日本防衛に関する原則的な発言をしておるのでありまして、こういう場合も、必要な場合があるのであります。詳細な勢力比を見詰め合って具体的にどういうふうに防衛計画をつくっていかなければならぬかということは防衛庁の仕事でありますけれども、政治家という立場にある場合には、安保条約をどうするとかあるいは日本防衛についてどういう基準に立って防衛考えているか、そういう観念の原則を示すということはやはり政治家の仕事であると考えておるのです。  それから、いま「防衛計画の大綱」をこの苦しい財政の中で整備しつつあるのも、それはもし日本に武力攻撃をやるという国があった場合には、いかなる国といえどもその飛行機その他、われわれはこれを阻止する、そういう決意を示すことは大事なのです。相手がいかに強大な力を持っているからといって萎縮して何にもしないという状態ならこの国はつぶれてしまいます。そういう国民としてのしっかりとした観念を持つことが私は一番大事だと思っておるのであります。この言葉は適当であるかどうか知りませんが、よく大国は覇権主義のもとに恫喝を加えてくる、大きなミサイルを移動するとかあるいは大きな飛行機でどうするとか、そして、いわゆるフィンランド化現象という精神的威圧を加えてくるということは間々あり得ることであります。そういうものにひっかかってはならぬ、そういう意味政治家としては大事な職分であると思っておるのです。
  217. 大内啓伍

    ○大内委員 私は総理政治家としての心構えや決意、そういうものをお聞きしているのではないのです。私は政策を聞いている、防衛政策を聞いている、その決意を裏づける政策を聞いている。その政策発言との間に余りにも乖離があれば国内においても疑心暗鬼を生み、国際的にも信頼を失う、そういうことについてもう少し慎重な発言をするということが総理にとって必要なのではないかということを申し上げているのです。総理はそういう面では私の問いに答えてないように思いますがな。中身がないのにあるようなことをおっしゃると、国民に対してもいろいろな疑心暗鬼を生みますよ。国際的にも、一時的に評価を受けても結局は信用を失墜しますよ。さっき私はそのために時間をかけて実態を申し上げたとおりなのでございます。むしろ総理からそういう面についてはもっと、防衛政策というのは非常に重要な問題ですから、真剣な発言をするように努力したいぐらいなことはあってしかるべきなんだ。私はそのために論証してみたのですよ。それ以上は言えませんか、いかがです。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 何のために「防衛計画の大綱」を一生懸命やろうとして努力しているか、F15、一機百億円以上もする高い飛行機を入れているか、E2を入れているか、そういう努力はみんなわが防空を全うしよう、わが国防衛を全うしようというその必死の念願から高い税金をいただいてやっておるのでありまして、それを逐次整備して、そして日本防衛を全うしよう、そういう一歩一歩築き上げていくということを私は申し上げたいのであります。
  219. 大内啓伍

    ○大内委員 私がさっき挙げたバックファイア一つとりましても、いまの「防衛計画大綱」だけでは無理なのですよ。とうてい対応できません、とうていですよ。バックファイアだけじゃなくて、その他の爆撃機だけを対象にしたってとうていできません。ですから「防衛計画大綱」を改定するというお含みをお持ちなのでしょう。じゃなければその結論は裏打ちできないでしょう。「防衛計画大綱」の見直しはお考えですか。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 わが力の及ばざるところは日米安保条約を有効に機動させるというところにわが防衛計画の一つのものがあるのでありまして、アメリカには航空母艦もあれば、そのほかの長距離爆撃機も持っております。そういうものもいざというときには活用できる、わが国防衛のためには活用できる。われわれはそういうものは持たないけれども、アメリカの力をフルに動かすということが防衛を全うするゆえんなのであります。しかし、日本が何にもしないでアメリカにのみそういうものを依存しておって自分の防空すら行えないという状態で、アメリカの機動部隊が、日本を一〇〇%勇気づけて守ってもらえるか、そういう連携というものも政治家としては考えておるのでありまして、日本ひとりでソ連の大きなあの力から列島防衛できるなどと考えてはおらぬのであります。アメリカのそういう航空母艦を含めたあらゆる力を、いざというときには列島防衛のために一〇〇%フルに稼働させよう、そういう意図で申し上げているということをぜひ御了解願いたい。
  221. 大内啓伍

    ○大内委員 私はそんな原則的なことは百も承知で聞いているのです。  それでは、アメリカの力以外の日本の力としてのバックファイア対策の計画を示してください。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画の大綱」をまず当面充実させまして、F15あるいはその所要の機材を整備していくということであります。
  223. 大内啓伍

    ○大内委員 しかし、バックファイアを日本には一歩も入れないということは、それだけでは全く不十分だとお思いになっているのですか、どうです。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一歩も入れない、領空の中へ浸透を許さない、そういうようなことは私は——F15はある程度整備され、あるいはミサイルそのほかが日本にもあるわけでございますから、あのときに発言したのは、列島に対する侵入を許さない、ペネトレートすることを許さない、そういうことを言っておる。長距離の問題はアメリカの機動部隊その他に依存する、そういう発想があるわけであります。
  225. 大内啓伍

    ○大内委員 私は余り断定することは避けたいと思いますが、やはり総理として留意していただかなければならぬのは、その結論、一つ政治家としての判断をおっしゃる場合、それを裏づける方程式とか計画というものがきちっと裏打ちにあって言われなければ、それは無責任発言になるということだけは申し上げておかなければならないし、ワシントン・ポストのその発言というのが非常に問題視されたゆえんも、私は一面はそこにあったと思うのです。  そこで、問題は、三沢へのF16の配置がアメリカから要求されていますね。この配置計画のねらいはどういうことでしょう、防衛庁。
  226. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、F16の配備の目的としましては、近来、極東における米ソの軍事バランスがソ連側に有利になったということのバランスを回復することが第一点。そのことによってわが国に対する紛争の抑止効果を高めるというのが第二点。そうした抑止効果を高めることによってアメリカ日本に対するコミットメントを確約するということを示す、確認するということが第三点。この三つがねらいであろうというふうに聞いております。
  227. 大内啓伍

    ○大内委員 それは抽象論としてはわからないことではありません。ソ連との軍事バランスの改善というのは、そのF16の配置によってどういう状態が起こるのでバランスの改善になる、その辺を具体的に言ってくれませんか。
  228. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 F16という飛行機は、空対空のミッションのほかに空対地のミッションも可能なように設計された飛行機でございまして、そういう意味ではいわば多目的の戦闘機でございます。そういった戦闘機を四十機ないし五十機の数をわが国に配備するというのは、わが国の能力の及ばざるところを補完するという意味合いから抑止効果も高めることになるのではないかというふうに申し上げた次第でございます。
  229. 大内啓伍

    ○大内委員 それは具体的に言いますと、こういうことでしょうか。極東のソ連基地をたたく能力をこれによって持つ、これが一つ。もう一つは、先ほど来話がございましたようなバックファイア対策が強化される。三つ目には、日本海、オホーツク海でのソ連の艦船に対する攻撃能力が増加する、それが対ソ軍事バランスの改善になる。こういう判断だと理解していいのですか。
  230. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いま先生が御指摘になったようなことを含めまして、総合的な判断がその背景としてあるものというふうに聞いております。
  231. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は余り深く時間はかけられないのでありますが……。  そこで、空に続いて海の問題なんですね。これもこの委員会で相当議論になりましたが、二月四日の本委員会における総理答弁で、非常に重要なことをおっしゃったのですね。日本が侵略を受け、日本防衛のためにアメリカの艦船が救援に来る場合、これを自衛隊が救出することは自衛の範囲内であり、個別的自衛権の枠内である、こう総理がおっしゃったのです。これは、聞きようによりますと、これまでの防衛庁等の政府委員が説明してまいりました結果防衛論といいますか、そういうものを何か一歩踏み出したような印象をわれわれに与えました。  そこで、私はこれを具体的に少し詰めてみたいと思うのですが、これは防衛庁長官だと思いますが、日本の領域内での武力攻撃がなされていないという状況の中で、日本防衛の任務を担っているたとえば第七艦隊のミッドウェー等の航空母艦に対して公海上での攻撃があった場合、これは日本の平和と安全を危うくするとみなして、日本の自衛隊等が護衛行動をとることができるかどうか。これはどうでしょうか。
  232. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 最初に、わが国に対して武力攻撃が行われていない場合と限定されましたが、その場合には集団的自衛権の発動になりまして、憲法に違反をいたしまして、できません。
  233. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ、もう一つのケースです。  わが国の領域内での武力攻撃が起こるおそれがある状態、つまり自衛隊法第七十六条の防衛出動命令が出されるような状態、同じような事態があったときはどうでしょうか。
  234. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 仮に防衛出動命令が下令されておりましても、いま先生の御指摘のような場合には、わが国自衛隊が実力行使をいたすことはできません。
  235. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ、第七艦隊は日本防衛のために大きな役割りを果たしていると認識していますか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのように思っております。
  237. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ、論理的に全然合いませんね。あなたのおっしゃったことは理論的に全然——いや、まだ質問していないのに答えられるはずがない。  だって、日本の自衛権行使というのは、わが国防衛するための必要最小限度の範囲内でやるのでしょう。それが自衛権の行使でしょう。日本を守るということは、日本だけで守れないのでしょう。アメリカの力も必要なんでしょう。そのアメリカの力が日本防衛にとって不可欠な場合に、そのアメリカの力が破壊されることに対して日本は何もしないというのですか。そんなことがアメリカへ行って通るのですか。
  238. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 条約上の関係もございまして、私から答弁を申し上げるよりもむしろ外務省あるいは法制局の方からの方がよろしいかと存じますが……(「命令するのは君じゃないか」と呼ぶ者あり)わが国の自衛隊は有事の場合に行動を起こすわけでございまするが、日本アメリカ日米安保条約は、第五条におきましてアメリカは、日本に武力侵略が行われた場合、武力侵攻が行われた場合に、日本と共同対処をする、こういうぐあいになっておりまして、自衛隊がみなして行動を起こす場合と米軍が日本の救援に駆けつける場合とは対応が異なっておるわけでございます。
  239. 大内啓伍

    ○大内委員 私の知っている軍事的な常識では、たとえばソ連のバックファイアが撃ち込むAS4というミサイルは第七艦隊に向けられているというのが常識です。これはアメリカの軍事専門家と話してもそうです。ですから、たとえば日本に対して侵攻しようとする場合、不思議なことに海上自衛隊はマークしてないらしいですね。あんなのをやっつけてもしようがないという。ですから、第七艦隊をまずやっつける。でなければ、たとえば日本に対する侵攻はできないであろう。これが軍事常識ですよ。つまり、現実の想定としては、日本の領域をたたく前に公海や公空で防衛態勢をとっているアメリカの艦船あるいは航空機、そういうものに攻撃を加え、その力の弱体化ないしは破壊をする行動に出てくるということの方が可能性大ですね。しかも、それは日本防衛について重要な役割りを果たしているのでしょう。つまり、日本が持っている自衛隊の何倍かの力をもって日本防衛に寄与しているのでしょう。  私は常識論を申し上げている。条約論を議論しようとしているのじゃない。しかし、日本の条約論からすると、いま防衛庁長官がおっしゃったように、日本の領域に対する攻撃がなされなければ安保条約第五条の共同対処の態勢はとれない。それで日本防衛が、防衛庁長官日本防衛責任を持っている最高責任者でしょう、まあ総理大臣はその上におられますが。それで日本防衛は守れるとお考えなんですか。それとも条約論と心中するのですか。どっちです。
  240. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 単なる条約論でございませんで、憲法解釈にも関係する問題でございますから、私から御答弁を申し上げます。  大内委員の先ほど来のお話を伺っておりますと、前提として、わが国に対してまず武力攻撃があった場合のその先の話ではなくて、まだわが国に対して武力攻撃がない場合の話として……(大内委員「そうです」と呼ぶ)そういう前提でお話になっております。(大内委員「おそれもありますね」と呼ぶ)  そこで、憲法九条の解釈として従来政府がたびたび申し上げているとおり、憲法第九条は、わが国の平和と安全とを維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じていないというふうに解しているわけでございますが、それはあくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるというような急迫不正の事態に対処して、これらの国民の権利を守るためのやむを得ない措置として初めて認められるものであって、その措置はこのような事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものと考えられるのであります。このように申し上げているわけであります。  また、同時に、わが国の自衛権の発動は、いわゆる自衛権発動の三要件を満たした場合に限られるということを申し上げているわけであります。その第一の要件としては、わが国に対する不正違法な侵害があった場合、すなわち武力攻撃があった場合に初めて自衛権を発動できるということを言っておりますから、その解釈からいいますと、憲法第九条の規定からいって、わが国は、わが国に対する侵略のおそれはあるけれども、なおかつ、わが国に対する直接の武力攻撃がない場合に自衛権の発動はできない。つまり、先ほど御説明になりましたアメリカの航空母艦が……(大内委員「個別的自衛権の発動はできないですね」と呼ぶ)そうです。個別的自衛権の発動はもとよりできないわけです。そういうわけでございますから、先ほど御説明になりましたような事態に対処することはできない、こういうことになるわけでございます。
  241. 大内啓伍

    ○大内委員 大体条約の解釈としてそうであるということを私は理解しているのです。知っています。それで、私はその上に立って防衛庁長官に聞いているのです。それで日本防衛はできますかと聞いているのです。
  242. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 お言葉を返すようで恐縮でございますが、先ほどの御質問の中に、日本に向けて救援に来た米軍と、こうございました。(大内委員「そう、総理発言の中に」と呼ぶ)いや、先生の御質問にもございましたが、実は私はそのところをお伝えいたしませんでしたが、あくまでわが国有事でない場合には日本に米軍が救援に来るという事態はないのでございまするが、その点が一点ございます。  もう一点は、日本の領海を、仮に極東に非常に緊張した状態がございまして、何か起こった場合に米軍の艦艇が通過をしていくということはあり得ると思うのです。それに向かってどこからか攻撃が行われれば、これは日本の領海におきまするアメリカ軍に対する攻撃でございまして、領土、領海、領空すべてにおいて、その中におきまする米軍に対する直接の攻撃は日本に対する侵攻とみなされて、その場合にはもちろん自衛隊は行動を起こします。  それから第三点。仮に公海で攻撃をアメリカ軍が受けても、日本の周辺に非常なきな臭い状態がありましても、あるいは日本を侵攻する意図がアメリカ軍を攻撃した側になかった場合に、直ちに日本がこれに対して米軍を守るというような行動に出た場合には、これは集団的自衛権の発動となって憲法違反になる、こういう意味で御説明を申し上げたわけでございます。
  243. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、大体お聞きのような状態なんですね。つまり、日本自分の力では守れない、限界がある。したがって、アメリカとの間に日米安保条約を結んで日本防衛について協力をいただいている。そして、その同盟国の艦船や航空機が日本の安全保障そのものに寄与している。その艦船や航空機が攻撃を受けた場合に、その艦船や航空機等に対して防衛することは日本防衛そのものではないのですか、内容は。その点についていまお聞き取りのような、つまり条約論に立ったいろいろな解釈があったのです。方針の説明があったのです。それで日本防衛が全うできますか。こういうケースはこうだこうだと、防衛庁長官のいままでやってきたことにつじつまを合わせる説明はよくわかりました。私はもっと端的に聞いているのです。それで日本防衛ができるのでしょうか。総理はいまのやりとりを聞きながらどういうふうにお考えでしょうか。
  244. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法は、それだけの重みを持っていると思っています。
  245. 大内啓伍

    ○大内委員 私にはそういう抽象的なお答えはわかりません。
  246. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法及びその憲法に基づいてできている日米安全保障条約、その重みというものは非常に重いものでありまして、その命ずるところに従って国政は行わるべきであり、防衛は行わるべきである、それを逸脱してはならない、これは鉄則であります。
  247. 大内啓伍

    ○大内委員 では、具体的に聞いておきましょう。  日本のF15やE2Cがアメリカの空母の護衛に当たる、それはもちろん日本の領域に対して攻撃がなされる以前ですよ。そういうケースがもしアメリカから要求されても、日本の航空自衛隊はそういうことに絶対に参加しない、こういうことを総理は断言されますか。これはしかしアメリカが求めているものなんですよ。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本に武力攻撃が発生してない、そういう状態で憲法や安保条約にたがうことをやることは考えません。
  249. 大内啓伍

    ○大内委員 これは有事の論争もございましたが、その場合の有事は、日本の領域内に対して攻撃ないしは攻撃のおそれが発生した場合であって、その他の場合は一切含みませんか。これは法制局長官ですな。
  250. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 わが国の個別的自衛権の発動としては、わが国に対する武力攻撃がなければわが国の自衛権は発動できません。ただ、先ほど来一応の例として領域というようなことを言っておられますが、それは公海上におけるわが船舶に対する組織的、計画的な武力攻撃というものをむろん含めた意味で私どもは理解したいと思います。  それから、アメリカのことを言っておられるとすれば、アメリカは、安保条約五条によってわが国の領域内における攻撃でなければ共同対処と申しますか、アメリカの集団的自衛権を発動する義務はございません。
  251. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いまの論議で、アメリカの艦船護衛に対する中曽根総理を初め政府の考え方が相当明確になりたということは、それなりに意義があったと思うのです。  ただ、それがどこまで通用するか。いま中曽根総理憲法の重みというものを十分受けとめておりますとおっしゃいましたけれども、中曽根総理自身が憲法改正論者であるということは総理自身が表明されていることで、これからアメリカがそうした意味での戦略、戦術の一体化という問題をだんだん強く求めてくるという状況の中で、日本のそうした対応をもってして果たしてアメリカとの関係がちゃんといくかどうか、私は疑問に思っております。  私は一年前にも武器技術供与の問題で議論しているのです。そして私は、きっと日本政府は武器技術の供与に踏み切らざるを得まいと客観情勢の中で判断しながらその答えを求めた段階では一切否定された。そして、それから十一カ月たったら、それが解禁になった。(「まだなってない」と呼ぶ者あり)いや、政府が解禁にした。私は、この問題もこれから政府が調整しなければならない重要な課題であろうということだけは申し上げておく必要があると思います。  では、ことしから始まる日米共同研究、いまこのシナリオについていろいろ議論されておりますが、これはどういうシナリオに限定して共同研究をやるのですか。
  252. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 今回のシーレーン防衛に関する共同研究というのは、わが国に対して武力攻撃があった場合に、シーレーン防衛についての共同対処をすることになりますが、そうした場合、いかに整合のとれた効果的な共同作戦が実施し得るかということについての研究をするものでございます。  この研究は、あくまでもわが国憲法の枠内で行うことは当然でございますが、その具体的なシナリオ等につきましては今後両者の研究が開始された時点で徐々に検討され、明らかにされていくべき問題であろうというふうに考えております。
  253. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、この共同研究は日本に対して有事が発生したケースについてだけに限定する、こういうことですね。
  254. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 そのとおりでございます。
  255. 大内啓伍

    ○大内委員 そこで、海峡の封鎖問題について少しお伺いをいたしたいと思うのであります。  これも海峡封鎖とよく言われるのでありますが、内容がよくわからないのですね。海峡封鎖ということはどういうことなんですか。
  256. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私どもは、海峡封鎖という言葉を使いませんで、通峡阻止、あるいは総理のお言葉ではコントロールという言葉をお使いになっておられます。  そして、実態といたしましては、海峡封鎖という言葉が余りにも強烈に響くものでありますから、機雷を使ってすべての艦艇をとめてしまうというふうに伝わりがちでございますが、私どもの考えております通峡阻止は、わが国が武力攻撃を受けて、そして、わが国みずからを守らなければならぬという場合に、持っております航空機あるいは潜水艦あるいはその他など、すべての手だてを使って、そして敵性の艦艇の通峡を阻止する、こういう努力をする、この行為を通峡阻止と呼んでおります。
  257. 大内啓伍

    ○大内委員 総理が海峡封鎖ということをおっしゃられましたが、防衛庁が通峡阻止という言葉を使っていることはよく存じております。  私がいま伺ったのは、その通峡阻止というものはどういう具体的な作戦があるのか、平時の場合はどういう作戦、有事の場合はどういう作戦、それを総合して通峡阻止、つまり俗に言うところの海峡封鎖と言っているのかということを聞いているわけです。
  258. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 必ずしも御質問の要点を的確に私がとらえておらないと存じますが、実は私どもの考えておりますことは、海上交通を含めた海上防衛の問題に従いまして、日本有事の場合にはあるいは海峡で通峡を阻止するというような行為に出なければならぬことが起こり得る、そういうことを前提にいたしまして、先ほど申し上げましたいろいろの手だてを考えてこの通峡の阻止を考える。ただし、一たん有事になったら、直ちにすべての海峡についてすべて通峡を阻止してしまうとかそういうことを申し上げておるのではございません。
  259. 大内啓伍

    ○大内委員 これは総理にお伺いする必要がございますが、海峡を完全に支配して、ソ連の潜水艦を通過させず、他の艦船の活動を阻止するという総理発言でございますが、これは日本の力だけでやるという意味でおっしゃられたのでしょうか、それともアメリカの協力が必要だというお話なんでしょうか。そして、協力が必要であるとすると、どういう分野で協力が必要だとお考えになってこういう発言をされたのでしょうか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、海峡のコントロールという言葉を使って、封鎖という言葉は使っておりません。コントロールという意味は支配力を持つことだ、そういうことを簡単に申し上げておきました。ということは、武力攻撃が行われた場合に、その敵性の船舶の通峡阻止等を考えるわけで、平和関係にある第三国の船舶にまで及ぶものでは原則としてないのであります。そういう意味において、コントロールという言葉を使って、封鎖という言葉は使っておらないのであります。  それから、具体的にどういうふうにやるかと言えば、これはいろいろな、潜水艦を探知する機器もありましょうし、あるいは潜水艦をもって相対するということもありましょうし、航空機でソナーをぶち込んでその相手方のエンジン音やその他を識別して爆雷を投下するということもありましょうし、情勢によっては機雷を一部投下するということもありましょうし、その態様はいろいろであります。その場合に、日米共同対処するということもあり得ると思います。
  261. 大内啓伍

    ○大内委員 なるほど、そこが聞きたかったのです。  それで、先ほどちょっと指摘しました一月三十一日の軍事情勢報告でこういうふうに言っているのですね。「ソ連太平洋艦隊は、日本海に面したウラジオストクのほか、カムチャツカ半島の北太平洋岸にあるペトロパブロフスクに基地を持っているが、ウラジオストクの戦力は太平洋への展開のためには日本と韓国に隣接した複数の海峡を通過しなければならない。これらの水域は、同盟諸国の戦力がいつでも展開可能である。」こういう報告が出ているのですが、日本はそういう状況にある、つまり、展開可能である、十分に対応できる、こういうふうに防衛庁長官はお考えですか。
  262. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 二つに分けて答弁をさせていただきます。  まず第一に、日米の間では、俗にガイドラインと呼ばれる申し合わせがございまして、日本が攻撃を受けた場合に、日本がみずからの自衛のために海峡通峡を阻止をするときには、日本の自衛隊が一義的にまずこれを行う、米軍はそれに対して援助を与える、こういう申し合わせになってございます。したがって、どういう時期にどういうような米軍援助があり得るかというのはそのときどきの状態でございまして、態様によって違いますので、ただいまここでは直ちには申し上げられませんが、そういう姿になっております。  それから、御質問の中心点だと思いますが、しからば、どの程度の通峡阻止能力を現在の自衛隊が持っておるか、こういう問題につきましては、必要あれば政府委員から答弁をいたさせます。
  263. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 もともと潜水艦の通峡阻止という仕事ははなはだ困難な仕事でございまして、その態様は、先ほど来総理大臣からも申し上げたとおりのことを要するわけですが、現在、私どもの通峡阻止能力というのは必ずしも十分でございません。  というのは、どういうことかというと、まず一つとしては、機雷の備蓄の数の問題があろうかと思います。それから、その機雷を敷設する能力、すなわち、敷設艦であるとか航空機が十分であるかどうか、それから、その機雷には調整能力、作戦というふうな問題が絡んできますので、そういった即応態勢の形で機雷を準備するといういわゆる管理体制の問題、この三点があろうかと思います。  さらには、大きな意味での通峡阻止能力という面で見れば、哨戒能力あるいは潜水艦の数あるいは航空機の数というふうなものがいろいろかみ合ってくるわけですが、そういったものを現在、私ども鋭意整備に努力をしておりますが、五六中業が達成されれば、現状に比して相当能力は向上するであろうということは申し上げられますが、具体的にどの程度、すなわち、通峡する潜水艦の何十%は阻止できるとかできないとかということを定量的に申し上げるのはなかなかむずかしいのではないかというふうに思っております。
  264. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、お聞きのとおり、海峡をコントロールするというのは並み大抵のことではないのです。まず、制空権という言葉は余り最近は使いませんけれども、そういうエアコントロールというものがきちっとしていなければ、海峡封鎖なんというのは、掃海艇やあるいは敷設船を持ってきたって、そんなものはできるものじゃないのです。しかし、このエアコントロールそのものが、実は、先ほど来議論したように、大変な体制がないとできないのです。  しかも、海峡封鎖ということは、ソ連にとってはまさに死活的な事態でございますから、それに対するソ連の対応というものも、これは大変な対応が起こってくる問題もあるのです。ですから、簡単に、海峡を完全に支配し、つまりコントロールしなどとおっしゃってもそう簡単ではない。しかし、総理は先ほど、アメリカとの共同対処によってこれをやるということでありますから、政策的には合理性はそこで出てくるかもしれない。しかし、それでもなかなか大変なので、アメリカはその海峡のコントロール、つまり封鎖といったような問題について、日本に対してあるいは韓国に対して要求を出してきているわけなんですね。その辺が非常に問題なんです。  そこで問題は、その自衛隊法第七十六条の防衛出動命令が出た段階において、日米でそうした共同対処が海峡封鎖についてできるかどうか。封鎖ということは余りこだわらないでください、俗論として申し上げます。それはできますか。
  265. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 七十六条による防衛出動の下令がございましても、必ずしもできるとは限りません。わが国に対する直接的な武力攻撃が行われておりませんと、海峡あるいは港湾の封鎖、こういったものはできません。
  266. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、日本にとって有事の事態になっても、アメリカのその面における共同対処は日本としては求めない、また、求められない、そういう立場ですね。間違いありませんね。これは後でそれぞれ皆さんを縛る問題なんですからね、責任のある答弁を頼みます。
  267. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 一般的に機雷をもって海峡を封鎖するということは武力の行使に当たるかと思いますが、この武力行使、いわゆる機雷封鎖を含めた武力行使というのは、わが国に対して武力攻撃があった場合、すなわち、おそれのあった場合では行使できないのではないか、わが国に対する侵略のおそれがあったときに、防衛出動の下令はできますけれども、それに伴う自衛権の発動、すなわち、武力行使の要件がまだ整わないわけでございますから、海峡封鎖はできない、こういうふうに理解しております。
  268. 大内啓伍

    ○大内委員 もう一点、海峡封鎖については日米韓で協議する、こういうケースはあるでしょうか。それともブリッジ方式でしょうか。
  269. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 海峡の通峡阻止はあくまでもわが国自衛権の発動の範囲の中でございます。したがいまして、韓国との間で協議するというようなものではございませんし、また、それはそういう形になっておりません。
  270. 大内啓伍

    ○大内委員 そう言わざるを得ないでしょうね。しかし、この辺も、私は実態としてはいろいろな問題が今後出てくるのではないか、必ず出てくる、そういうふうに思っております。  そこで、もう一つの問題、SS20の問題です。これは総理に聞いておかなければなりません。  私はタス通信を読みました。つまり、日本に対する核報復というものを含んだタス通信を読みました。総理はこれはもちろん御存じだと思いますが、日本はもちろん非核武装国家です。ソ連は強大な核武装国家、スーパーステーツです。そして、その核保有国は非核保有国に対して核の先制攻撃は行わないということを国際的にも言明している中で、日本の最近の防衛力強化に対して核報復というものを示唆したということは、私は非常に重大だと思うのです。総理はどういう御所見をお持ちでしょう。
  271. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 こちらの真意を理解せずにやった、はなはだ軽率な発言ではないかと思っています。
  272. 大内啓伍

    ○大内委員 軽率な発言というだけですか。その程度ですか。
  273. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 余り権威のある発言とも思えませんから、まともに取り上げるほどのことでもないと思っております。
  274. 大内啓伍

    ○大内委員 中曽根総理は、相当やっぱり大型ですよ。  問題は、SS20の移転についてソ連の指導者がいろいろ言っておりますが、最近中曽根総理はシュルツ国務長官と会談された際に、新聞報道で、欧州の利益になるが、他の地域に不利益になるような解決は図らない。これは実はアメリカ日本に対する本当の約束になるかどうかというところがなかなか問題なんですね。というのは、アメリカは恐らくこの極東に戦域核を配置したいという一つの計画を持っています。そうすると、このSS20というのはアメリカの極東における戦域核配置という問題を事前にチェックされるという問題を含んでいます。中国も、中国の核という問題がソ連からいろいろ言われてくるという面があるので、いまSS20の極東移転に対して敏感な反応を示していませんね。したがって、この極東移転というものを排除するということは、ゼロオプションとかそういう一つのたてまえ論としては非常にわかるし、このシュルツ国務長官のお話もそういうたてまえ論としてはわかるのですが、本当にそれをアメリカに不退転の決意を持って実行させるという面では相当問題を含んでいるようにも思うのです。このアメリカのシュルツ国務長官の言明をどのくらい約束させ得る、また、させなければならぬと総理はお考えでしょうか。
  275. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 SS20極東移転の問題は、実は非常に重大な問題を包蔵しておるのでありまして、全世界的にこの戦域核というものを削減、廃絶していくという大目標を途中でそらすような性格を持っておるものであります。そういう意味から、ウラル以東にこれを配置するということは、極東の平和及び安定維持に非常にまた影響するところであり、日本防衛にもまた響いてくる問題でありますから、この点についてはシュルツ国務長官に対して、ある地方の利益においてある地方が不利益になるというようなことはやめてもらいたい、ゼロオプションをぜひとも実現してもらいたい、そういうことを強く言いまして、先方も、日本の不利益になるような形でこの問題を処理する考えはないと言明をいたしました。これは公の会談における言明でありますから、約束は重んずるものと思っております。
  276. 大内啓伍

    ○大内委員 防衛当局に聞いておきますが、最近アメリカのワインバーガー国防長官、これは一月二十四日の発言でございますが、SS20の極東に配置されている数は百基、こういうふうに出ておりましたが、防衛庁は何基と把握されていますか。
  277. 新井弘一

    ○新井政府委員 われわれも約百基というふうに考えております。
  278. 大内啓伍

    ○大内委員 二階堂幹事長が訪中されますね。それから、三月の十日前後には日中の事務レベルの協議が行われます。四月には東京で日中の事務レベルの協議が行われます。実は、中国もこのSS20の極東移転については重大な関心を持っているに違いないし、日本と中国とはその点での利害は一致すると思うのです。これらの協議を通じてSS20の移転問題を中国との間に協議する、そういう方針を中曽根総理はお持ちでしょうか。
  279. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍事問題、防衛問題に関する協議は行いません。
  280. 大内啓伍

    ○大内委員 SS20の話も出さないという意味でしょうね。そうですね。
  281. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく、日本は、個別的自衛権の範囲内で自分の国の防衛のことをまず第一に考える、それから安保条約によりまして極東の平和及び安定維持に寄与する、そういう立場を持っておるわけでありますから、軍事問題等について中国と話し合いをすべき筋ではないと思っております。
  282. 大内啓伍

    ○大内委員 このSS20という問題は国際的な協力を必要とする問題ですね。しかし、アメリカとの間には条約があるから話す、中国との間には話さない、一つのけじめをつけていきたい、こういうお考えでしょうね。それはそれで結構だと思います。  もう一つの問題ですけれども、これは問題がずっと変わりますけれども、私は、昨年の国会でも、五十九年に防衛費が一%を超えることはまず必至であろうということを具体的に数字をもって、しかも、それは防衛庁の数字をもって実は申し上げた。そして、この問題についてもいろいろ御議論がございまして、私はいまも、五十九年度の段階で防衛費が一%を超えるであろうという想定をいよいよ深めていますが、総理もそのことはほぼお認めになっています。  そこで問題は、この一%にかわる新しい歯どめをどうするか。やはり国民の皆さんは相当不安になっている。恐らく今度の選挙等においてもその問題は争われると思うのですね。選挙が終わってから歯どめを出されましても国民は判定のしようがない。総理は、新しい歯どめという問題についてはどういうお考えをお持ちでしょう。
  283. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%の枠をいま変える必要はないと私は言明しておるのでありまして、一%の枠を超えもしないうちに次の問題の歯どめを考えることは適当でないと思っています。
  284. 大内啓伍

    ○大内委員 しかし、私の昨年の十二月十四日の質問に対して、総理はその可能性をお認めになったのですよ。そして、その当時、紙面トップを飾ったのですよ。いまそういうことは適当でないと言いますが、その可能性を総理は認めたからこそ実は重大な関心を持たれた。確かにいまはまだ一%を超えていない、だから新しい歯どめをいま言う必要がない、私は、そういう物の言い方というのは非常に官僚的だと思いますね。お互いに政治家同士が国民に、できるだけ政府の考えている腹、真実というものをこういう討論を通じて明らかにしていこうというのがこの討論ですから、そんな形式論的にお構えにならないで、そういうときにはこういう歯どめはやはり考えなければならぬだろうということぐらいはおっしゃったらいかがでしょう、それの方が国民は安心しますよ。いかがでしょう。
  285. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一%以内にとどめるように全力を尽くしてみたいと思っておりますし、また、一%を超えるか超えないかということは、その際大内さんにもお答えいたしましたが、経済の模様、GNPの問題、防衛費がどの程度になるか、そういう分母と分子の関係でそれは出てくるので、いま予断することはできません、そういうことを申し上げておったと思います。  そういう意味において、一%以内にとどめるようにできるだけの努力をしていくというときでございますから、それ以上のことは申し上げない方が適当であると思っております。
  286. 大内啓伍

    ○大内委員 その都度その都度、たとえば防衛庁長官は新しい歯どめをこれから考えなければならぬと言う。政府の重要な責任者がいままでもそう言っているのですよ。いろいろな発言ありますよ。しかし、そんな深追いしてもしようがないでしょう。  私はさっき冒頭に、昨日の中曽根総理答弁の中で、日本防衛力整備は、ソ連の脅威に対する均衡と抑止力を形成することにある、こういうことを御紹介しましたが、これ間違いございませんか。
  287. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連はまだ潜在的脅威の段階にあって顕在化しておらない、潜在、顕在というのは能力と意思にかかる、能力はあるけれども意思についてはまだそこまでは断定できない、そういうことを申し上げて、しかし、いま米ソ間におきましても、あるいは世界の平和維持、東西問題というスケールで考えてみましても、遺憾ながら、平和が維持されておるのは戦争を誘発させない力が均衡しているからだ、そういう意味において均衡に基づく抑止論という考えを展開したわけであります。日本の場合におきましても戦争を誘発させないようにある程度の抑止力をきちんとそろえておくということが大事であり、それはまた、日米安保条約を保持しているということが大きな抑止力になっているということも申し上げた次第なのであります。
  288. 大内啓伍

    ○大内委員 もちろんそれは潜在的脅威が顕在化するかどうか、しかし防衛力というのは、そうした潜在的な脅威、これが顕在化しないためにこそ各国家が防衛力整備をやっているわけですよね。ですから、総理のおっしゃっていることは、言いかえれば、ソ連の潜在的脅威に対する均衡と抑止力を形成するという意味でしょう。そうですね。違うのですか。つまり、ソ連の軍事力というものを念頭に置いて、その均衡と抑止力を形成することが日本防衛力体制の整備だ、こういうことと違うのですか。
  289. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連というものを、正面からまともに言葉を挙げて考えているわけではありません。一般論といたしまして、アメリカと提携して戦争を誘発させないような抑止力を保持していくということでございます。
  290. 大内啓伍

    ○大内委員 これは「防衛計画大綱」の基本に触れる問題でして、本当はここも少し議論したかったのですが、時間が余りありませんので、武器技術供与の問題についてお伺いをしたいと思います。  私は、昨年の二月の十四日にこの委員会で、アメリカ等に対して武器あるいは武器技術の輸出を慎むという意味をお尋ねしたときに、当時の田中通産大臣は、「「慎む」ということは、やはり原則としてはだめだ」ということです、こういうふうに答えられたのです。そして、武器技術の供与というのがアメリカから要請があったのは、少なくとも一昨年の六月のあの大村・ワインバーガー会談を一つのスタートとした。もちろんその前にも細かいものはあったでしょう。つまり、アメリカの要請というものがはっきり出た後に私が質問しても、「慎む」ということは原則としてだめだ、こう言明されたのですね。これが政府の態度です。ところが、それから十一カ月たった一月の段階においてこれが突如として変わってきた。国民の皆さん非常に不可解かつ不信感を持っているのは、こういう政府の言動が大きく変化する、突如として変化する、そう思いますが、これ、なぜ急に変化したのでしょう。
  291. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 武器技術供与の問題につきまして、いまお話しのありましたように、一昨年の六月にワインバーガー長官から大村長官に対して供与についての要請があって、それから政府としてはこの問題につきまして一年数カ月にわたりましていろいろな検討をいたしました。その検討の結果、政府の決定ということになったわけでありまして、突如ということではないわけでございます。
  292. 大内啓伍

    ○大内委員 でも、「慎む」というのは、原則としてだめだと言っておいて、いや、いいんだと言うのは相当の大変化、しかも、それは突然としか言いようがない。しかし、一年半も検討してきたという経緯は知っています。私もこれは詳細に質問していますからね。今度アメリカを例外的に取り扱う一つの理由として、安保体制の効果的運用を確保する上できわめて重要である、こう言っているのですね。それは具体的にどういうことなんですか。
  293. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 安保条約というのは日本の平和と安全を図るための条約でございますが、この安保条約というものをしっかりした基礎に置かなければならない。そのためには日米両国のいわゆる安保における信頼関係というものをやはりきちっとする必要がある。そういう立場から、この安保条約の効果的な運用を図るということが日米関係の信頼を確保し、なおかつ、これによっていわゆる抑止力をさらに確保する、こういうことがいわゆる効果的運用、こういうことであると考えております。
  294. 大内啓伍

    ○大内委員 アメリカに対する武器技術の供与というものは、政府がお立てになった武器輸出三原則には違反しない、抵触しない、こういうふうにお考えなんでしょうか。その理由と根拠はどういうことなんでしょうか。
  295. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 政府のこれまでのいわゆる武器輸出三原則から、アメリカに対する武器技術はこれを切り離したということでございます。
  296. 大内啓伍

    ○大内委員 これ、聞いていてわからないでしょう。三原則に違反しないという根拠と理由は何か、こう聞いているわけです。切り離しましたという理論を聞いているのじゃないのですね。つまり武器輸出三原則の基本目的というものに対する政府の認識をきちっと言わなければ、違反しないということだけでは……。というのは、武器輸出三原則は、政府はこれからも守っていこうと言明されているのでしょう。それに違反しない、だから技術供与をやるのですということが言われなければ無理でしょう。
  297. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府が立てました三原則、統一見解は修正するわけです、安保条約の適用に限って。そういう意味であります。
  298. 大内啓伍

    ○大内委員 わかりました。  だんだん形式論的に波及します。  そうしますと、武器輸出三原則は修正ですね。統一見解、つまり五十一年の統一見解も修正ですか。
  299. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 武器輸出三原則並びに統一見解、これも含めております。
  300. 大内啓伍

    ○大内委員 具体的にどのように修正しますか。
  301. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは武器技術につきましては、先ほどから申し上げましたように、安保の効果的な運用というものを確保するために、武器技術に限ってアメリカに供与するということをはっきり政府として決定をいたしたわけであります。その限りにおいては武器輸出三原則の修正ということに、政策の変更ということになるわけでございますが、その目的は、いま申し上げましたように、安保条約の効果的運用。しかし、同時にまた、これを具体的に行う場合においては、いわゆる日米相互防衛援助協定、MDAというものを通じまして、これに基づいて供与を行う。このMDAは、御承知のように、国連憲章を守るということが一つの主眼になった日米間の相互協定であります。これを通して武器の技術についてはこれを供与するということを決めたわけであります。
  302. 大内啓伍

    ○大内委員 総理と外務大臣のお答えを聞いておりますと、こういうふうになりますね。アメリカに対する武器技術の供与は、政府がそれまでに立ててきた武器輸出三原則並びに政府の統一見解に違反する行為である、こういうことになりますね。
  303. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 アメリカに対する武器技術の供与については、三原則並びに統一見解にはよらない、こういうことにいたしたわけであります。
  304. 大内啓伍

    ○大内委員 いや、ですから私が整理しているわけです。つまり、いままで立ててきた武器輸出三原則と統一見解、それとこの一月十四日からとろうとするアメリカに対する武器技術供与は相入れない、違反するから、したがって三原側と統一見解は修正しなければならぬ、したがって、その技術供与という行為、方針というものはこれまでの三原則と統一見解に違反する、そういう立場に立つのですね、こう聞いているわけです。いかがですか。
  305. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 違反ということは必ずしも適当ではないかと思います。ただ、政府の考え方といたしましては、安保体制の効果的運用という見地から重要と認められる武器技術供与というものを円滑に行うためには、ただいま大内委員の方から御指摘ありましたように、三原則のたてまえでまいりますと一般的には慎む、それから紛争当事国に対しては行わない、こういうことがございますので、こういうもとでは円滑に行うことができないというふうに判断いたしまして、本件に限って三原則の例外扱いとする、こういうふうに政府として決定したということでございます。
  306. 大内啓伍

    ○大内委員 武器の中に技術が含まれる、これは政府が言ってきたところ。三原則の第三項には、国際紛争当事国またはそのおそれのある国向けの場合と書いてありますね。そして、アメリカが紛争当事国になっても、武器及び技術については輸出は認めない、これが三原則です。ですから、その技術をアメリカに輸出してもよろしい、提供してもよろしいということはこの三項違反ですね、こう聞いているだけなんですよ。大したことじゃない。
  307. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 その限りにおきましては三原則によらないということでございますから、いわゆるアメリカが紛争当事国になったとしても、形の上におきましてはこれは武器技術の輸出の道が開かれた、こういうことであります。
  308. 大内啓伍

    ○大内委員 違反するという言葉にひっかかっているようですね。三原則のこの三項に反するですね。そうでしょう。だから、修正するのでしょう。そんなことははっきりした方がいいですよ。もう防衛問題や何かは、総理が逃げないで堂々と答弁すると言ってきているんだから、やったらいいじゃないですか。
  309. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ですから、堂々と答弁しているのですが、その道を開いた、こういうことでございます。
  310. 大内啓伍

    ○大内委員 政府はちょっとつまらないことを強弁されるからわかりにくい政治になるのですね。このぐらいで大体わかったと思うのですね。  問題は、武器技術供与アメリカに対する供与、これは無原則じゃないのでしょう。ですから、たとえば日米相互防衛援助協定、つまりMDAの中には幾つかの歯どめがあるのですよね、確かにね。他目的への転用禁止、これは通産大臣なんか特に関係のあるところですわね。それから、他政府への移転禁止、これは一条の二項と四項ですね。そのほかに、たとえば国連憲章に矛盾する使用の禁止といったような、そういうものがあります。  しかし、問題はここなんです。これはイエスもノーも言えるわけです。ですから、協定上は一つの歯どめのようになっておりますが、政府の意思によってそれは幾らでも歯どめでなくなる可能性というものを持っているわけですね。したがって、政府の態度として、無原則にアメリカに対し技術供与はやらぬぞという歯どめをこれで説明しようとしても無理がある。つまり、アメリカに対て技術供与をする場合、どういう条件、つまり、どういう条件と原則をとるのかということを明らかにしないと、これは第三国も不安になるし、民間の企業も大きな不安を受けるのですね。ですから、協定上じゃない、政府としての対米技術供与に対する歯どめをどうするのか、これを聞きたい。どうでしょう。
  311. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 第三国に対してアメリカ側日本が供与した武器技術を移転したいと思うときには、これは条約上の義務といたしまして事前にわが方の同意を得なければならぬことになっております。これは先生おっしゃったとおりでございます。アメリカ側からわが国に対してそういう要請が、あるいは同意を求めるようなことがございました際には、わが国としましては、これはいろいろ具体的な事例に即して考えなければならぬことはもちろんでございます。しかし、一般的に申せば、そもそも武器技術をアメリカに対して供与することにした趣旨、そして武器輸出三原則というものを踏まえまして、慎重に検討いたして回答するように考えております。
  312. 大内啓伍

    ○大内委員 もとよりこれは政府も武器輸出三原則の精神を守っていきたいということでしょうから、個々の事案について慎重に対応されると思うのです。私もそれは信頼しようと思っているのです。しかし、それにつけても、日本政府としては、アメリカに対して決して無条件で無原則に技術供与をやろうとしているのじゃありませんよ、少なくともこういう原則を満たさなきゃわれわれは認めないのですよということぐらいは、国民に対する政治ですから、そのぐらいはきちっと言わなければ、そのときに慎重にやりますというだけでは国民を納得させることはできない。総理、いかがでしょう。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 武器技術供与という道を開きます際には、その相互防衛援助規定に基づくその枠組みのもとで行うということになっておりまして、それを行う場合については、その実施についていろいろ相談をして、ある程度の話し合いと申しますか基準と申しますか、そういうものをつくるのがしかるべきであると考えております。
  314. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、個々の取り決めについての原則だけじゃなくて、それを包括する一つの基準というものを政府としては将来つくる、こういう意味ですか。
  315. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは御承知のように、MDAに基づきまして細目協定を結ぶわけでございますが、その細目協定を結ぶに当たりまして、御承知のように、MDAあるいはまた安保条約によります義務というものがもちろん存在をするわけであります。これはいまお話がありましたように、たとえば他目的には使わないとか、あるいはまた第三国に供与する場合は同意を得るとか、あるいはまた国連憲章によるところの自衛の目的以外にはこれを使わない、そういうことが条約の義務としてはっきりとここに明記をされるわけでございます。
  316. 大内啓伍

    ○大内委員 私が問うているのは、それはそのとおりなんですが、実はそれは時の政府の対応によって歯どめにもなるし、歯どめがなくなってしまう場合もあるので、そういう協定上の一つの歯どめを国民の皆さんに安心していただくような形で、実行に移していく場合にどういう原則や条件というものを確立されますかということをさっきから問うているのですけれども、その辺についてお答えがないということは、私は残念ですね。  私は、本当はここで武器技術供与に対する政府の統一見解をこの際出してもらいたいと思っているのですよ。でないと、歯どめ歯どめと言われても、歯どめにならぬのですね。  委員長、どうでしょうか。私の問うていることに外務大臣が真正面からお答えになっていないということはお聞きのとおりなんですね。したがって、この条件について政府が一つ見解を出すことが国民に対する責任だ、私はこう申し上げているのですが、いまちょっと時間がないので、こういうことでがたがたするのはいやなんですが、その辺はどうですか。何らかのものを、たとえば、細目取り決めで一つ一つ条件を詰めるという前に、一つの基準を出すということをこの際政府としては考えたいということをおっしゃったらどうですか。私はそれが政治だと言っているのですよ。
  317. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私はこの歯どめとしては、いわゆるMDA協定に基づく細目協定でございますから、MDAの協定第一条その他によって、国連憲章は守っていかなければならない、あるいはまた、これを他目的に使ってはならない、あるいはまた第三国に供与する場合は同意がなくてはできない、こういうこと等が、このMDAの協定のいわゆる条約の遵守義務として明確に規定をされておるわけでございますから、そこにはっきりした歯どめがある。  さらにまた、細目協定によってこれを詰めていく場合には、基本的に日米の安保体制の効果的な運用という立場、さらにまた第三国等への移転の場合は依然として武器三原則というものが存在するわけでございますから、そうした面でのチェック、そういうものが当然この細目協定を詰めていく場合には出てくるわけでございます。  そういう点で具体的に個々に詰めていくということですから、大きな歯どめとしてはMDAではっきり大きな歯どめができておる。さらに、細目協定を結ぶ場合において、個々の問題として具体的に安保条約の効果的運用あるいはまた武器三原則の日本立場というものを踏まえた中でこれに慎重に対処していこうということでありますから、全体的にもあるいは細部の面においても相当きちっとした歯どめが出てくる、こういうふうに思うわけでございますが、いまお話しのように、これをもっと総合的に具体的に統一した形で明らかにせよと言われれば、これを明らかにすることはやぶさかではございません。
  318. 大内啓伍

    ○大内委員 と申しますのは、細目取り決めをやりましても、この中身は国民には公表されない性格のものなんですよ。つまり、たとえば技術供与をアメリカにやりまして、そのやる条件等について細目取り決めをやるのですよ。これは国会の場でも要求しましたけれども、秘密事項で公表できないというのです。つまり、秘密のベールの中に入っているから、国民を安心させる上でも政府は、そのMDA上の協定についてイエスもノーもあり得るだけに、こういう基準、条件というものは守りますよということを国民の前にはっきりさせることが、政府が今度の新しい方針をとった上で国民を理解させる重要な政治ではないかという意味から私は申し上げているのです。  もう時間がありませんのでやめますが、最後にまとめてお伺いだけをしておきましょう。  この細目取り決めについてはどの程度まで公表されますか。つまり国会に報告をされますかどうか。私は、当然ある程度のものは報告してほしいと思っています。  それから、もう一つ重要なことは、八一年十二月の第三回日米装備技術定期協議日本側に示されたアメリカの意向は次のようになっているのですよ。これは重要なことを言っているのですよ。アメリカ側が装備技術の協力で考えているのは、初期的な共同の研究から武器の共同開発、製造の全般に及ぶものであって、日米防衛協力に貢献するすべてのものである、これがアメリカの技術供与の根本になっているのです。そして、このために企業に対する一切の拘束力を取り払うものであることを期待する、これがアメリカの技術供与に対する基本なんですよ。  今度の新方針は技術だけと言われていますが、私はこの論理はどんどん発展していくと思いますな。共同開発、これは言うまでもなく技術の総合ですな。武器とは言いますまい。共同開発、これについては日本としてはアメリカを例外として取り扱うのかどうか。つまり技術供与だけかどうか。  というのは、二月三日に予算の理事会でわれわれに非公式に示された自民党側のメモによりますと、武器技術に限ると書いてあるのです。したがって、共同開発まで含まないのかどうかということが一つ問題としてあるのです。つまり、試作品まで含むのかどうかという問題なんです。つまり、公表するかどうか、共同開発と試作品まではアメリカを例外扱いにするかどうか、この点について明確な答弁を求めて、私の質問を終わりたいと思います。
  319. 山中貞則

    ○山中国務大臣 総理から共同生産はしません、こういう答弁はすでにありましたね。いまは共同開発という話であります。ここらになりますと、実務の話ですから純粋の技術。技術の中には、頭の中に入れて向こうに渡っていく目に見えないものもありますね。あるいは、契約というものがあって、支払いがあって、外為に管理されるものもある。あるいは設計書を持っていくようなものもあるかもしれません。しかし、技術の終結点としてはある意味の試作品まではいかなければならぬですね。そこまでいくこともあると思います。しかし、試作品は、今度は武器への入り口ですね。したがって、これは向こうに供与するのであって、共同生産への段階である試作品を大量につくっていくということは日本はしないということを、共同生産はしないという総理の言葉が示していると思うのです。  第一、アメリカ姿勢だけを求めて、何が欲しいんだ、具体的に何か言われたかと防衛庁に聞いてみるんですけれども、何もないと言う。そうすると、その姿勢を示すに当たっては、私どもがアメリカ側に技術の協力をしますということについてはどこまでができるのか、そして、それはどういうような制限のもとにやるのかはいま安倍大臣が言われたとおりですが、私からちょっと。  まだ相談していませんけれども、国際的に毒ガスあるいは生物化学兵器とかあるいは大地震、津波を起こしたりするようなものとか、いろいろな国際協定に日本も入って禁止されているものがありますね。もちろん核拡散防止条約もそうです。そういうものに係るものは、私の見解はひょっとすると修正させられるかもしれませんが、私の、いわゆる輸出を管理する立場の者から言えば、当然外務省でしょうが、こういうものが上にかぶっている。これは国際的にみんなが認め合って、やらないということを言っているんだから、それの技術について日本側がアメリカに提供することもあってはならないことであろう。そこらのところはもう少し詰めますが、そういうことの前提のもとに、何を言って求めてくるのかわかりませんが、それは外務省の細目取り決めによって、私どもの方は外為、輸出、貿易管理、こういうものでもってアメリカ向けはオーケーである、その他の方は、堀田ハガネ事件で問題になりましたから、厳しく大蔵省の税関との間で相談がされておりまして、その部分では輸出承認の申請の中に様式も書きかえてありますし、内容を明白にしてありますし、承認、非承認の物資も分けてありますし、そのことに関する限り大蔵省の税関の役人は私が指揮するということになっておりますから、結局それは輸出のときに今度は私の方へ報告書が戻ってくる、こういうことになっていますから、その他の国に流れるということは絶対にない。その状態の中でアメリカにだけ穴をあける……(大内委員「共同開発と公表は」と呼ぶ)  共同開発は試作品のところまででありまして、したがって、それを共同開発とおっしゃるならば、それは共同開発でしょう。しかし、試作品を向こうに持っていってぽこっとはめるだけでいいというものを大量に生産するとなれば、それはまたおのずから別である。共同生産はしないと言われた総理の言葉で明確であるということです。
  320. 大内啓伍

    ○大内委員 公表は総理から……。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、大内さんは大事なことを言われておるので、たとえば日本の技術が入って、そして向こうがある物を試作する、その場合に何%ぐらい日本の技術が入っているものについてわれわれが発言権があるのか。九九%向こうの技術で、一%こっちが入ったもので、それは向こうは自分でほとんど開発したものだからいいじゃないかと言うかもしれませんね。そういう問題が将来起こらないとは言えません。そういう意味において、その点を詰めておくということは大事なことなので、そういうことはやらせるつもりでおります。しかし、どの程度公表できるかということはよく検討してみます。
  322. 大内啓伍

    ○大内委員 終わります。ありがとうございました。
  323. 久野忠治

    久野委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、野坂浩賢君。
  324. 野坂浩賢

    ○野坂委員 質問の順序を若干違えますが、しりの方から進めていきたいと思います。  まず、山本国家公安委員長にお尋ねをしたいと思いますが、昨年警察を巻き込んだゲーム賭博事件というのがありました。御存じですね。これは大阪市におけるゲーム賭博汚職問題であります。御承知のように、前大阪府警本部長でありました杉原正氏、この方が自殺をなすった。この警官を巻き込んだゲーム賭博については、現職の警官が三名逮捕されております。元警察官も二名逮捕されております。そして、自殺者が一名、杉原前本部長を含めて二名の自殺者を出しておる。そして、汚職の金額は、要求した十万円を、これは未遂に終わっておりますが、含めますと二千六百十七万円警察官がもらっておる、こういう状況であります。  これについては警察の威信はまさに地に落ちたというふうに言われなければならぬと思うのでありますが、この事件を見て国家公安委員長はどのようにお考えになっておるのか、まずお尋ねをしたい。
  325. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 今回の大阪府警における汚職事件はまことに遺憾な事件でありまして、しかも、その内容は、警察というところは規律ということが生命であるわけでございますが、そういう点にかんがみまして、将来、警察としては厳しく反省をして、世の警察に対する信頼を回復しなければならないと深く反省をしておるところでございます。
  326. 野坂浩賢

    ○野坂委員 このゲーム賭博機問題が終わりを告げますと、最近また大阪や静岡あるいは東京、埼玉県、いろいろなところで、通称パチスロと言いますね、これです、機械は。こういうの御存じですか。これはパチンコ型スロットマシンという機械であります。この原産地は、皆さんがよく御承知かと思いますが、ラスベガスです。ここから持ってきたものです。ここでは賭博機ですね。それがこちらに入って、いまやおととしの十月から始まってわずか一年足らずで七万台日本に入っておる、これが実情であります。  これは風俗営業法の第一条七号に従って警察庁は許可をされておりますね。これはどういう理由ですか。
  327. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答えをいたします。  いわゆるパチスロと申しますのは、先生御指摘のとおり、風俗営業の遊技場の許可対象遊技機として都道府県公安委員会において許可となっております回胴式遊技機の中の一つのタイプを指しておる言葉でございます。この回胴式遊技機と申しますのは、外見上はゲームセンターなどに設置されておりますスロットマシンと類似をしておりますけれども、スロットマシンの機械自体が偶然性だけに頼るものであるのに対しまして、許可対象の回胴式遊技機は、パチンコ遊技機と同様に、ある程度の技術介入が得られる構造、機能、すなわち著しく射幸心をそそるおそれのないようなものとなっておるものでございます。この機種のうちパチンコ遊技機と形状が似ておるものを業者間ではパチンコ型スロットマシン、略してパチスロと呼んでおるのでございます。  五十七年十月末現在。パチスロ型は、三十三都道府県の遊技場に約五万台設置をされております。いま先生御指摘の七万台といいますのは、パチスロ型以外の形のものがそのほか約二万台ほどございますので、回胴式遊技機としては全国で約七万台ということでございます。  これは許可をするに当たりましては、著しく射幸心をそそるおそれのないように、回転をするドラムの回転速度などについて一定の要件、基準を定めておりまして、この要件を備えているものについて承認をしておるものでございます。
  328. 野坂浩賢

    ○野坂委員 皆さんにはなかなかわかりにくいと思いますが、結局、ここにボタンを三つつけた、ボタンを押せば自分が思うところへとめられる、こういうことが理由になって、これがなければ賭博機だ。言うなれば、技術の介入ができるということが一つ。二つ目は、すぐメダルを買って換金しないで、二千五百円以下のものについてだけ品物と交換できる。これで抑えておる。こういうことになっておるわけですね。  ところが、いま全国的に問題になって、千葉県とか岐阜県とか福井県とか和歌山県、滋賀県、これは申請が却下されたというふうに新聞に出ておる。あるいは秋田、山形、福島等七県は申請が留保されておる。こういうことですね。警察庁に聞きますと、いや、それはまだ申請は出ていない、こう言うけれども、一つ一つ確認をしてみると、それは賭博性が高いということで却下されたのですね。留保されておるわけです。たとえば、静岡県警はこう言っておるのです。「法的にとばく性が高いかどうかを判断する一つのポイントは「技術介入の余地」があるかどうかで、この「余地」が多ければ、とばく性は低い。”技術介入”とは、パチスロの場合、遊んでいる人が停止ボタンを押せば自分が止めたいと思った絵のところで止まる可能性があるかどうかにある。しかし同県誓ではその機械を動かして「その可能性は少なく偶然性が高い」と判断。とばくゲーム機摘発のさなかに、とばく機とまぎらわしいパチスロを認可すべきではない、として申請を却下した。」以上、ほかの県も大体そういうことを言っておるのです。  それがこういう射幸心をあおる、賭博性が高いということになれば、先ほど恭順の意を表されました国家公安委員長にお尋ねをしなければならぬわけですが、この組合、これは日本電動式遊技機工業協同組合ということになっておりますね。そこでたばこをお吸いになってにっこり笑っていらっしゃる官房長官後藤田正晴さんがこれの顧問であるということの事実はそうですか。後藤田さんにお尋ねをしたい。
  329. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 事実関係を明らかにしましてお答えをしておきたいと思います。  昨年の暮れの十二月三十一日でございましたが、ある通信社から、こういう人間を知っているか、全く知らぬから、知らぬ。ところが、日本電動式工業協同組合ですか、これを知っておるかと言うから、それは知らぬ。そうしたらば、吉武君というのを知っていますかと言う、ああそれはよく知っている、それがやっている協同組合なら僕は顧問になっておりますよというお答えをしたのです。文字どおり私は顧問になっておりましたが、もちろん入閣した際にこれは辞退をいたしております。  ところで、そのときの質問は、もう一つは、顧問料というのはもらっておるか、もらっていない、会議に出たことがあるか、会議に出たことは一回だけある、こう申したのですが、当時、新聞に出ました。これは私が実はわからなかったのです、本当は。スロットというものがどういうものか、それから、いまお話しの何と言うんですか、パチスロ、これが何かもわからなかった。そこで、僕がなったのはスロットマシンの組合の顧問だよと言ったのは、これは間違いなんです。スロットマシンというのは、これは賭博の機械だそうです。後でこれはしかられました。  それからもう一点は、会議に出たかと言うから、一回出た、こう言ったのですが、これまた後でしかられまして、私が出たのは、ホテルでまるっきり違う会合と間違えちゃって出た。それで一回も出ておりません。  それから、何でその顧問になったのか、こういうことでございますが、吉武君というのは、これは古い警視庁の人ならみんな知っておりますが、ミスター警視庁と言われた人でございます。これは大変りっぱな男でございます。これが私のところへ一年半か二年ぐらい前に参りまして、それで私に顧問になってくれ、こう言ったから、ああいいよ、おまえさんがやっているのなら間違いなかろう、こういうことで、実はうかつと言えばうかつでしょう。しかし、この組合はいわゆるスロットマシンじゃないのです。許可対象になっておるその工業協同組合なんです。そして、とかく間違いを起こしがちだから健全化のためにやっているからということで、私が入ったことは間違いありません。  なお、それに絡んで、いまお話しの大阪府警汚職云々がありました。これはその後「現代」という雑誌に、私は全く夢物語のような記事を書かれた。そこで私は、まあ個人の場合は余りこんなことはやかましく言わないのです、年じゅう書かれていますから。しかし、いまは官房長官でございますから、迷惑をかけてはいかぬということで、告訴するという態勢で弁護士に手続をやらせました。ところが、講談社の方から編集長名で陳謝文が出ました。そして、三月号に訂正をするということで、事実に反して相済まなかったということでございますので、告訴は取りやめた。これが私の経緯でございますから、ついでですけれどもお答えしておきます。
  330. 野坂浩賢

    ○野坂委員 おやめになったということは新聞で読みました。あなたが国家公安委員長、自治大臣をなすっていらっしゃった間は五十四年十一月九日から五十五年七月十七日ですね。この許可になったのは、五十七年十月からずっと始まっておるのです。あなたがおやめになった途端に許可になっております。決して疑っておるわけではありませんけれども、まあ余りいいことではないな、こういうふうに思っておるわけですが、この組合の役員さんというのは、いま官房長官がお話しになったように、吉武辰雄という人ですね。高知県の県警本部長で、その前には警視庁の防犯部長だった。あるいは専務理事の柿内さんというのは、山形県の県警本部長であった。事務局長は関東管区の警察局の外事課長であった。すべて警察OBです。月給は、あなたはもらっておるかどうか知りませんが……。  これは金を渡してメダルを出すのです。去年等は一個十円だったのが、いまは二十円になっています。これを買ってやりますと、千四百ぐらいざらざらっと出るんですね。これで打ちどめということになる。二千五百円だと言われますけれども、何回もやれば一万円にもなる。私はこの間、友だちに、おれ質問するから行って見てこい、こう言ったら、いや、二千五百枚じゃなくて何ぼでも出る、後、換金はできる、そういうことになると、いまの射幸心をあおるという問題と、非常にいま問題になって、サラ金に走る者も出始めておる、こういうのが実情であります。したがって、これらの問題についていま十分に調査をしてみなければ、賭博性が高いではないか、たったこの間、大阪で事件があったという状況にあるわけであります。  したがって、私は特に国家公安委員長にお願いしておきたいのは、警察も、このパチスロという機械を中でIC産業が入って適当に改造をすることができる。技術の介入ではなしに、偶然性が非常に多い。許可を得て持って帰ってすぐ直せる、こういうことになっております。したがって、こういう新聞がありますが、警察庁は、ICのこれに対抗して検査機を各県警は買って全部調査したらいいじゃないか、こういうことを言い始めておるわけですから、それほど、警察も知っているほど賭博性が高まってきたということが、まず第一点言えると思います。  それから、いま吉武さんを官房長官は非常に尊敬していらっしゃるということでありますが、きょうの新聞に、吉武パチスロ協組理事長、児玉譽士夫氏とまことに親密、こういう記事が出ております。これは吉武さんの会社の筆頭株主が児玉譽士夫さんなんです。児玉譽士夫さんのビルに同居しておる。こういういろいろな動きがありまして、疑惑は疑惑を呼んでおる。証拠をいろいろと出せばいいのですけれども、いま私が皆さんに、国家公安委員長にきちんとしてもらいたいのは、そういう許可をした段階といまの段階と非常に違いつつあるという、これが現状である。国民の健全な娯楽から逸脱をしておるのではないのか、こういう疑いが濃厚でありますから、警察庁としては全部これらについては点検調査をして、健全娯楽の線から出ないようにしなければならぬのじゃないのか、こういうふうに思いますが、どのようにお考えですか。
  331. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 私もパチスロという言葉は何のことかわからなかった。私も全然見たこともないし、もちろんやったこともない。そこでいろいろ聞いたわけでございますが、要するに、一つの技術が介入することのできるような遊びなのかどうか、著しく射幸心をそそるおそれはないのかということが一つの標準のポイントはなると思うのです。  それから、いまおっしゃるように、簡単にこう何か改造ができるという話なので、改造すると賭博性が高くなる、こういうことらしいというお話なので、私も、その点は警察庁の方でこれからよく調査もし、そういうこともわかっておるはずでございますので、今後取り締まりの上において厳しくひとつやっていきたい、こう思います。
  332. 野坂浩賢

    ○野坂委員 何にも知らぬ。国家公安委員長とか自治大臣というのは座って寝ておるのが仕事じゃないわけですから、よく見てほしいと思うのです。仕事をする内閣がキャッチフレーズですから、もっと仕事をしてもらわなければいかぬと思うのです。  たとえば、警察庁の内部の雑誌に「保安と外勤」というのがありますよ。お読みになったことがありますか。勉強せぬですなあ。中の人がこういうことを言っております、中で論文を書いた人が。   これらの機具のうちスロットマシン、ピンボール等はもともと諸外国においてはと博のための機具として用いられているものあるいはこれに類するものであり、極めて偶然性が高いことから風俗営業の遊技場における遊技機としては許可されないものであるところから遊技の結果に対して賞品等は提供されずメダルを使用し遊技を楽しむことを建前で認められてきたものである。 そうじゃないのですよ。みんな賞品を出しておるわけですから。   なお、ここ数年来は、これらスロットマシン等のほか、いわゆる電光点滅式遊技機およびテレビゲーム機の名のもとにロタミント、 とかずっとありますが、  ギャンブルマシンと同様のゲームを組み込んだテーブル型のテレビゲーム機や これがこの間問題になったのですね。  スロットマシンと同様に偶然性の高いものであるところから、スロットマシン等と同種の扱いとされている。このような偶然性の高いスロットマシン等の機具を設置している 云々ですね。そういうことから考えて、  と博を行わせるもの、あるいはこれに類似した行為を行わせるものがあり、これらが相当の利益をあげていることを聞きその影響を受けまたリース業者の甘言などもあり違法行為であることを知りながら設置するものが多くなってきており、これが善良の風俗を著しく害しているばかりでなく、青少年の非行を誘発し、さらにはこれらをめぐって暴力団が介入し、有力な資金源としている傾向もでてきており、一層問題を深刻にしている。 これはあなたのところの内部の方が書いておる、名前は言いませんけれども。ちゃんと書いておるのです。  そして、この遊技機の組合員の中には、山口系の元準系列の方もいらっしゃいますよ。この間のゲーム賭博機で警察に引っ張られた方もいらっしゃるのです。それは言ってもいいのですけれども、間違いなく調査をされておる、こういう状況ですから、非常に問題なんです。それを知っていて官房長官は顧問になったのかと言ったら、そうでもないようだ。しかし、何にも知らないで、票にさえなれば何でも顧問になるというようなことは、今後自民党の皆さんを含めて、やはり慎んでもらわなければならぬ、こういうように思うのですよ。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕  だから、直ちに御調査をいただけますか。健全な娯楽よりも踏み出しておるではないのかどうか、こういう点について全国の一斉調査をしてもらいたい。いかがですか、公安委員長
  333. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 私も実態をよくわからぬものですから、しかし、いまのお話だとすればよく調査をいたします。
  334. 野坂浩賢

    ○野坂委員 時間がありませんから、次に進みます。  それでは、農業問題についてごく簡潔にお尋ねします。  総理大臣は、一月十八日にレーガン大統領とお会いになりました。防衛問題、不沈空母や、あるいは四海峡、三海峡問題について議論もあったようでありますが、同僚の皆さんから具体的にお話がありましたので、農畜産物の輸入自由化の問題にしぼってお尋ねをします。  総理は、訪米される前にこう言われておりますね。できるものと、検討するものと、できないものとちゃんと分けて話をする。できないものははっきりできないと物を言う、こういうふうにお話しになりました。このできないものというのは一体何ですか。
  335. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、アメリカの大統領、閣僚と、私とわが方の閣僚、大使等との合同会議で言った言葉でございますが、初めから、できることと、できないことと、検討すべきものがある、できないものはできない、そういうことをはっきり言いまして、そして、牛肉オレンジの問題については、これはいまはできない。この問題は、余りプレッシャーがかかって、そして興奮しているような状態で物を解決すべきではない。これは前からの約束のとおり、来年の三月までちゃんと割り当てが決められて話が済んでおる。三月以降の問題については、静かに、冷静に専門家で話し合わせることが適当である。そういうことを言いまして、向こうはそれを黙って聞いて、そして次の議題に移っていきましたから、大体了承したものだと考えております。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  336. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そうですね。一九八四年の三月までは決まっておるわけですね。問題はそれ以降なんですね、それまでは決まっておりますから。それについては自由化はしないということなのか、事務的に話し合いを詰めてほしいということについてはちょっとその辺が不明確なんで、八三年度以降、いわゆる八四年の四月以降についてはどういうふうにお話しになったのですか。
  337. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自由化をするという約束は、もちろんしておりません。それは専門家によって冷静によく話し合って解決してもらいたい、そう言ってあります。
  338. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういたしますと、専門家ですから農林大臣に聞かなければなりません。  十二月二十三日に衆議院で農林水産委員会が開かれまして、自由化反対の満場一致の決議がされております。農林大臣のそれに対する御答弁は、「御決議の趣旨のとおり、輸入の拡大あるいは自由化へ移行する方針とかあるいは枠の拡大等についてはこれまで以上に強い姿勢反対を押し切っていく、このように決意をいたしておりますので、皆さん方の御協力をお願いいたします。」こう述べておられます。これは枠の拡大も一九八四年以降も絶対に動かさない、こういうふうな御決意でありますが、そのとおりでございますか。
  339. 金子岩三

    金子国務大臣 枠の拡大も、明年三月までは一応このままの状態でいけるということで、一応枠の拡大も認めないということを申し上げております。それ以降のことは、やはりいろいろ経過がありますので、それを踏まえて慎重に、やはり日本の農民の期待に沿うような方向で私は努力をいたしたいと思います。
  340. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いまお話がありました日本の農民の期待に沿うようにというのは、日本の農民は輸入の自由化は反対、枠拡大の阻止、こういうことになっております。このことはよく農林大臣御存じだと思います。  この決議を受けてから、あなた記者会見をされてこう言っておられますね。自由化は絶対に許さない、そういう姿勢を強調して、枠ぐらい多少緩和してもよいではないかという声があることは承知をしておるが、農林大臣の私としてはどんな小さな枠拡大も受け入れない、その姿勢は守り抜くであろう、こう述べておられますね。だから、少しの枠の拡大もやらない、こういうふうにあなたは明確に言っていらっしゃるわけですから、そのとおりですね。違っては困りますよ。
  341. 金子岩三

    金子国務大臣 私の立場では、ただいま読み上げましたとおりの主張を今日もいたしております。
  342. 野坂浩賢

    ○野坂委員 このころに外務大臣は、輸入枠の段階的拡大もあってもいいじゃないかというようなニュアンスの発言があったとかなかったとかいうふうに、不明確ですが、新聞には報じられております。そういう考え方は全然ないと外務大臣は後で否定されたというふうにお聞きをしましたけれども、どうでしょうか。
  343. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そういう発言はしたような覚えはありませんけれども、日米間あるいは日欧間で市場開放という措置は、やはり自由貿易体制を守る立場からこれはやっていかなければならぬ、そういう一般的なことは言っておると思います。
  344. 野坂浩賢

    ○野坂委員 一般的な問題ですから、特定の牛肉オレンジについては農林大臣が、いま申し上げましたように、自由化も少しの枠の拡大も許さない、こういう方針であるということを予算委員会で明言されました。中曽根総理はそのことを確認しておいていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  345. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、専門家が静かに話し合って相談してもらいたい、そう言っておるので、そういう線を守っていきたいと思っております。外国に対して言ったことを、私はまた別のことを言うわけにはまいりません。
  346. 野坂浩賢

    ○野坂委員 農林大臣の御決意の表明はお聞きいたしましたが、農林大臣意見は中曽根総理としては了とされますか。
  347. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 農民の立場を守る農林大臣の言葉としては理解いたします。
  348. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、次は米の減反問題についてお尋ねいたします。  米の需給問題でありますが、五十八年、米の需給の見通しはどうなっておりますか。
  349. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  御指摘は、五十八米穀年度の見通しかと存じます。  昨年の十一月からことしの十月末までにわたります五十八米穀年度につきまして、御承知のように、生産量は千二十七万トン、これに持ち越し米が四十万トンばかりございます。さらに、五十三年産の業務用供給を含めまして千七十五万トン程度の供給が果たされることになるわけでございます。需要を千六十五万トンといたしますと、本年の十月末には十万トン程度の前年産の持ち越し、五十七年産米の持ち越しになると思います。  なお、五十八米穀年度に限って申し上げますならば、御案内のように、八月から五十八年産米の新米等が出回りますので、十月末までに政府米、自主流通米合わせまして三百万トン以上が集荷されますので、需給上は全く心配ございません。
  350. 野坂浩賢

    ○野坂委員 食糧管理制度については、その適切な運用を図る方針をもって臨んでいるのは承知しております。しかし、五十八年度予算の食管繰り入れは五千七百二十五億円で、前年対比六百七十八億円も圧縮しております。どこをどう切り込んでいるのですか。簡潔にやってください。時間がないですよ。
  351. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 五十八年度予算におきます食管の予算につきまして減額されました要因としましては、一つは、集荷量の減もございますけれども、先般、この二月一日からの麦価の改定によります増収部分、それから自主流通米の奨励金の削減あるいは管理経費等におきます過剰米等の処理に伴いまして減がございます。こうした点がございまして、食管会計の繰り入れは減になったわけでございます。
  352. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いままで農林水産委員会等で議論されております備蓄は、当初二百万トンというふうに何回も議論されております。議事録がありますが、いまのお話では、ことしの米穀年度の手持ちというのは大体十万トン、こういうふうにお話しになりましたね。備蓄はどういうふうに考えているのですか。
  353. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 五十八米穀年度末におきましては、申し上げましたように、十万トンになるわけでございます。そこで、ことしの十一月から始まります五十九米穀年度におきましては、需給にゆとりを持たせまして、さらに在庫積み増しを図るということで四十五万トンの在庫積み増しを図って、したがいまして、来年の秋には五、六十万トンの持ち越しになるように私ども計画いたしておるわけでございます。  二百万トンという従来から考えはございましたが、この考え方については、今後備蓄水準をいかに定めていくかは、私どもとしては第三期対策、いわゆる水田利用再編対策の五十九年度から始まります第三期対策において検討さしていただきたい、このように考えております。
  354. 野坂浩賢

    ○野坂委員 かつて石油問題が起きた際に仮需要が起きまして、砂糖とかあるいはトイレットペーパー等が異常なほどパニック状態に入ったということをよく覚えております。いま十万トンしかないですね。これが、食糧が足らぬということになって仮需要ができてきた、米を買っておかなければならぬということになれば、これはパニック状態なんです。しかも、財政、財政ということばかりに——今度の六百七十八億を切り込んだ一番大きな要素は千八百九十四億円、いわゆる予約限度数量よりも少なく集荷しておる。そうしなければ米が集まらぬ。だから、これによって金が要らなかったということが一番大きな減なんです。しかも、いままでは備蓄を二百万トンやると言いながら、たった十万トンなんです。大変な問題なんです。金がないから買わぬでもいい、集荷もしないという状況になるということは、本当はゆゆしき問題だ。これは農林大臣の重大責任ですよ、岩三さん。これらについて、一体どのように考えておるのか。  今度は、いままでは六十七万七千ヘクタールを第二期減反でやるということでありましたけれども、いまは六十三万一千ヘクタール、だから五十八年度からは六十万ヘクタール、こういうことにするのですね。これはもっとやっておかなければ、先ほど何遍も言われたように、一朝有事のときには何にも食わずにやるのですか。そういう体制をきちんとして、この三万ヘクタールだけでは問題じゃないのか、こう思いますが、金子農林大臣、いかがですか。
  355. 金子岩三

    金子国務大臣 備蓄の問題でございますが、早場米が八月から出ますので、十万トンを割っても十分心配はないというような説明を受けておるのでございますが、ただ、何か異常事態が生じた場合のことを考えて何がしか備蓄をすべきだ、いま企画室で検討を続けております。ただ、備蓄、米を保管するということは金利、倉敷等々で大変な経費がかかるものですから、慎重に検討させていただきたいと思います。
  356. 野坂浩賢

    ○野坂委員 慎重に検討すると言われますけれども、いまもう二月なんですよ。もう四月には苗を植えるのですよ。だから、三万ヘクタールでは少ないじゃないか、こういうことを心配しておるのですよ。前に二千億ももうけたじゃないですか。もうけたといいますか、金を余しておるじゃないですか。それが一つ。  それから、今度減反をする場合は、いままでは減反を一〇〇%要求して一一〇%になれば、一一〇%分の減反奨励金といいますか転作奨励金を出しましたね。今度も、この三万ヘクタールよりも少なく減反になった、その場合はそれぞれいままでどおりに奨励金を保障しますか、よけいになった場合、少なくなった場合、それの実態に合わせて保障いたしますか。どうです。
  357. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 お答えいたします。  予算上の転作奨励金は、目標面積に合わせまして六十万ヘクタール分を計上いたしております。従来も、転作目標面積を実績が上回りました場合には、その上回りました面積に応じまして奨励金の財源措置を講じまして支払いをいたしておりますので、五十八年度におきましても実際の扱いはこれまでと同様になろう、かように考えておる次第でございます。
  358. 野坂浩賢

    ○野坂委員 あれはどうなんですか、三万ヘクタールは。もっと検討したらどうですか、大臣
  359. 金子岩三

    金子国務大臣 これも五十九年度の予算編成時期までには、現在の作柄等の状況、植えつけが四月から始まりますが、その状況等を見てひとつ検討したい、そういうふうに考えております。
  360. 野坂浩賢

    ○野坂委員 僕は、五十九年度の話をしておるのではなく、いまの話をしておるのですよ。二カ月後の話をしておるのですよ。だから、五十八年度の様子を見てじゃなしに、ことしの十月は十万トンしかございませんよ、いいですか、ございませんよと。いままで三年間連続不作でありました。不作であった理由は、あなた方は天候の不良ということを言っていらっしゃいます。農業の実態を見てください。農家の皆さんは年寄りになりました。婦人になりました。そういう意味で生産性の向上がとまった、米の場合。そういうことも理由として挙げられるわけですよ。いま六十歳以上の皆さんが基幹農業従事者である。この実態から見て、三万ヘクタールの減反ということではきわめて問題があるではないかということを具体的に提起をしておるわけです。だから、それについて十分対応していただきたいということを言っておるわけです。
  361. 金子岩三

    金子国務大臣 私が申し上げておるのは、第三次のことを申し上げておるのでありまして、現在の第二次の減反は大体もう決まっておるわけなんですね。これによって各都道府県に割り当てを一応終わっておるわけでございます。御了承願います。
  362. 野坂浩賢

    ○野坂委員 もう終わりましたから何にもできませんというようなことでは、政治家の部類に入りませんよ。もっと農民の実態、需要の状況、こういうことを十分勘案していただきたいと思います。要望しておきます。  それから、いま御答弁が、質問もしないのにあったのですが、第三期の対策は、今日こういう状況ですので、農政審議会が提起をしております七十六万ヘクタール問題については白紙に返して、新たな状況を十分見て検討をすべきではないのか。言うなれば、私は、第二期で六十七万七千ヘクタールの目標を六十万ヘクタールにしたのですから、それでも十万トンしかないという今日の現状から見て、第三期対策の減反政策というものは、これで終わりということにすべきではないのかということを提案をしますが、いかがですか。
  363. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  先ほど御指摘のような備蓄の問題もございます。また一面、現在の米の需給上では他用途問題という新しい米の問題も出ております。これらを含みまして、今後の転作をどのように進めていくか、全体的に米の過剰基調は変わりませんが、そうした基調を踏まえまして、五十九年度予算編成までに私どもとしては実態に適合した新しい水田利用再編対策、需給対策を講じてまいりたい、このように考えております。
  364. 野坂浩賢

    ○野坂委員 十分考えて——いまの転作というのは定着をしておりません。私はおととい郷里に帰ってまいりましたけれども、残念ながら白菜等は箱代も出ませんので、トラクターを畑の中に入れて白菜を全部踏み込んでおる。これが農家の実態である。だから、やはり買ってもらえる米をつくりたいというのが農民の声であるということを頭の中にたたき込んで、第三期対策については十分に農家の実態を踏まえて、また食糧の需給等を十分考慮に入れて慎重に配慮していただきたいということをお願いしておきます。よろしいか。
  365. 金子岩三

    金子国務大臣 大体農家では米が一番単収の粗収が大きいので、これは米作地帯ばかりでなしに、西の方でも米、米、米と皆言っておるのですから、御趣旨はよく理解できます。
  366. 野坂浩賢

    ○野坂委員 この間、林業の問題についてちょっとやっておりますが、ぶら勤の問題がありました。国有林は非常に赤字であるという状況下にあるというお話があったわけであります。私は、はっきりしておかなければならぬと思いますが、いまの国有林の赤字の原因は一体何だ。国鉄もやみ手当とかぶら勤とか、そういうことが一番問題になった。やった。しかし、一向赤字は減らない。むしろ増大しておる、これが実態です。そういう意味から考えて、いまの国有林の赤字の原因を私はこう思っておるのです。外材が市場の七〇%を占有しておる、外材が市場を支配しておる、これが一つ。それから、木材価格の低迷がある、これが一つ。もう一つは、いわゆる経済林と非経済林といいますか、水資源涵養林とかいわゆる国土保全のための公益的な機能を保持しなければならぬ。そのために、金もうけというようなことよりも空気とかそういうものの公益的な機能を維持、存続をしなければならぬ。このために赤字がある。大体この三つだというふうに、検討すればそういうことになるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでありますが、いかがですか。
  367. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  最近におきましては、国有林、民有林を通じまして、木材需要の低迷、さらにはそれに関連しまして林業生産の停滞、そういう問題がございまして、私どもといたしましては、やはり四囲の状況が林業、林産業にきわめて不利な状況にあります。しかしながら、一方におきまして、国有林におきましては昭和三十九年から四十年ごろの一番増産した時代の要員が、現在極力適正化に努力しておりますが、いまだこの伐採量に対しますと要員が多いわけでございまして、五十三年以来その改善に努力してございます。
  368. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そういうことを認めてもらったわけですが、こういうことを認めると、輸入の調整の問題が出てくる。あるいは支持価格制という問題が出てくる。それから、林業に対する一般の財政措置をやらなければ、この赤字というものは解消できない、こういう結果になる。必ずそうなる。そういう意味で、これからいま林野庁は立木で売るというのですね。山のままで、それで幾らだと。いままで五十一年までは産業の育成保護という立場で随契で安く売っておったのです。これが一つ。それと、立木といわゆる素材にして販売をした場合は、素材販売の方が三倍の値段がする。これを立木で売れと言っているのですね、臨調は。これは本当は重大問題なんです。ただでさえ赤字であるのに、そういうかっこうにすれば赤字の追いかけをさせる。あるいは請負をやれと言っているのです。このごろ皆さん御存じのとおりに白ろう病というのがあります。振動病、だんだん腕が白くなってくるというのがありますね。だから、労災保険が林業に対しては千分の百を千分の三百にする、こう言われておる。いわゆる三割なんですね。十万円だったら三万円払わなければならぬ。これは経営者が払うわけです。払うということになれば、請負を高くしてもらわなければならぬという結果になってくるという、そういう矛盾があるわけですね。そして、いいところだけ伐採して、金にならぬところはパアになる、もう一遍入りていくということが繰り返されておるのです。そういう実態から見て、いままでどおり、立木は六割、あるいは素材販売は四割というようなかっこうで進められてきておったわけですが、これらについて従来どおりそういう方針を堅持をしながら進めていかなければならぬのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけですが、いかがですか。
  369. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  国有林野事業の運営の基本といたしまして、私ども国民へ木材供給機能をより高めるという側面と、もう一つは、森林の持っておりますところの公益的機能を確保しながら事業能率の向上にさらに努力をするという考え方でやっております。  そこで、これまでも立木販売あるいは事業の請負化を進めてまいったところでございますが、もちろんこの場合におきましても、私ども地域におきますところの林産業が丸太を需要している部分もございますので、そういう実態あるいは現在の民間の事業体の育成強化、さらには、林業労働者の雇用問題、一番基本的な問題といたしましては、国有林の果たすべき役割りから見まして事業形態はどうあるべきかというようなことを考えながら、現在努力しているところでございます。
  370. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それで、最後に農林大臣、膨大な赤字がある。いま林野庁長官が話しましたように、労使協力をして、本会議でも議論がありましたように、緑の地球という問題がありましたですね、総理大臣も賛成であるというお話がありました。その緑をお守りになるわけでありますから、そういう立場、そして国民の健康なりあるいは水資源の確保なり、それをやっておる。金はなかなかもうからぬ。いままで需要に応じて切ってきた。乱伐、過伐もあった。そういう意味から、皆さんのところには借金がありますね。借金がある。この借金については、借金返すかと大蔵省は言いますね。いや、返します、こう言います。しかし、木は利子ほど遠く大きくならない、これが実態でありますね。しかし、この資金運用部から借りるということになると、七・三%ですね。民間は三・五%で借りておる。せめて民間並みに、これが黒字が出ておればいいんですけれども、赤字ですから、せめて黒字になるところまでは、資金運用部の方から借りれば、それを三分五厘にしてくれということはなかなかむずかしいと思いますね、竹下さん、渋いですから、特に。顔はかわいいけれども、なかなか渋いのです。だけれども、それでその七分三厘は一般会計で何とかめんどうを見てもらわなければ、だんだん拡大しますよ。また、後追いはきかぬようになる、こう私は思うのです。  そういう意味で、一遍この一般会計でどうにかならぬかということを大蔵大臣と御相談になって、一生懸命働いて国のために尽くして、そして皆さんの健康を守って、こういう状況は、一生懸命やっておるということははっきりしたわけですから、それらの点について御相談されたらいかがか、こういうふうに思いますが、どうですか、あなた。
  371. 金子岩三

    金子国務大臣 御意見は竹下大蔵大臣もつぶさにお聞きになっていますから、よく相談します。
  372. 野坂浩賢

    ○野坂委員 金子農林大臣は、竹下大蔵大臣と相談してみたい、こういうことでありますから、財投の方でやるということはむずかしいと思いますが、それらの差額についてやはり一般会計の方で十分御相談をしていただいて森林を守り抜いていく、こういうことにしていただきたい、こう思いますが、竹下蔵相は御相談に応じられますか。
  373. 竹下登

    ○竹下国務大臣 農林水産大臣から御協議があれば、国庫大臣として相談に応ずるということは、これは当然のことであります。
  374. 野坂浩賢

    ○野坂委員 それでは、次に行きます。  国鉄問題です。  国鉄でありますが、きのうも同僚からお話がありました。国鉄は、昭和六十年度健全経営の基盤の確立を目指して日本国有鉄道経営再建促進特別措置法等を一昨年可決されました。同法に基づいて国鉄経営改善計画によって努力中と思いますが、現在の状況と今後の見通し、これについて簡単に御説明していただきたい。
  375. 高木文雄

    ○高木説明員 再建計画にはいろいろな要素を含んでおりますけれども、実は非常に申しわけございませんが、ここ二年ほどの間にかなり立案当時と様子が変わってきておりまして、それは輸送量が落ちております。特に貨物の輸送量が落ちております。その結果、収入の面で、計画を立案しました当時よりは収入が思うように伸びないという状態にございます。経費の方は、要員を減らすことによって縮小する。また、その他の面でもいろいろ切り詰めていくということで計画されておりますが、要員の面におきましては大体計画どおりに減少しておりますので、それに伴う経費は計画どおり減ってきております。  ただ、当時から問題でございました東北・上越新幹線の開業に伴います資本費負担の増加といったような問題は当時から予想されたことであり、それは計画にも注書きをいたしておったわけでございますが、それが現実に五十八年度から赤字額の増大という形で出てまいりました。いま御審議いただいております五十八年度の予算では、かなり赤字額が五十七年度よりもさらにふえるという状況になっております。  今後の問題といたしましては、いまの経営改善計画を最近の事態に合わしていろいろよく練ってみたいというふうに考えております。一日も早く赤字を少しでも減らしたいということで、もう一遍よく検討してみたいというふうに考えております。
  376. 野坂浩賢

    ○野坂委員 考え方はわかりましたが、五十七年度の決算の見通しは、国の補助金を含めて一兆三千八百五十三億円の損失見通しですね、五十七年度は。補助金をもらったことにしてですよ。これを入れれば約二兆円。五十八年度の資金概計を見ましても、国の補助金をもらったとして一兆六千八百九十億円の赤字であります。これをもらわないということになれば、優に二兆円の枠を飛び越えます。こういうことになりますね。ちょっと答えてください。
  377. 高木文雄

    ○高木説明員 いまお示しのとおりでございます。
  378. 野坂浩賢

    ○野坂委員 だから、国鉄当局が言っております六十年度に幹線で百億の黒字を出すというのは、非常に無理があります。なぜ赤字が出ておるかということであります。お客が少ない、貨物も少ない。貨物は今度八百五十一の貨物駅を四百五十に切っていく。直行型にする、ヤード系は全部切る、そして千七百億の黒字を出します、こう言っておりますね。これは言うだけなんです。できませんね。これはだめです。また、貨物の国鉄離れを一層促進します。そして、非常に国民の国鉄にならないようになる。ちゃんと言っておきますよ。  問題は、たとえば上越新幹線、東北新幹線、これで大体三千六百億程度の赤字が出ますね。それから、特定退職手当は二千七百億、ここに書いてありますね、あなたのものに書いてある。あるいは年金の損失相当額というのが一年間で二千七百億とありますね。内閣が約束をしておった公共割引が七百億ある。地方交通線もある。優に一兆円を超えるのです。これを称して構造欠損と言う。構造的欠損部分、これにどう対応するかということが焦点になります。  この現状から見て、長谷川運輸大臣はどのようにしなければならぬかというふうなことを御答弁いただきたい。
  379. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 赤字を国鉄が出していることは国民全部が心配していることでありまして、そういう中においてもいろいろ事情の変化で、貨物はどんどんほかのトラック会社の方がお客さんをとっていく。一方はまた、ときには親方日の丸はというふうな非難等々もある。こういうことからしますと、これは国民的課題である、こういうことで、そういう中にあっても、先ほどあなたのおっしゃるように七千三十億もことしは助成金を出しているわけでありまして、大いに議論された結果、この国会に国鉄再建監理法案というのを出して、そこでひとつしっかり政府も担当すべきもの、従来もやっております。この国会でも、また年金の問題等々も御審議いただくということでございますが、国のやるべきものをやる、そしてまた一方においては、三十数万の働く諸君がしっかりと職場規律等々を持って閣議の決定事項についてずっと推進していただくということで、国鉄監理法案の通過の後で、十分にひとつともどもにやってまいりたい、こう思っております。
  380. 野坂浩賢

    ○野坂委員 そんなふうになっていないのです。国の助成金は去年よりも三百億削ったのです。金がありません。去年一兆三百億の工事費を七千億に削っておるのです。三千億も削っておるのです。もうがたがたなんです。三千三百億削っておるのです。そういう状況にある。何だけをやったかというと、いわゆる国鉄再建法に基づいて、ことしは従業員は一万四千三百人整理をするということになっている。足らぬから、二万二千六百人やるのですよ。これだけで百六十四億黒字を出して、予算よりも上回って、あとは全部だめ。あとは、土地をいままで八百億だったものを千六百億売るのです。まだ足らぬ。それではおまえが金をつくれ。債券を、国鉄が自己でつくらなければならぬ。これで売らなければならぬ。これで二兆五千六百億つくらなければいかぬ。利子は一兆円超しました、利子だけで。運輸大臣がおっしゃっておるように、いや今度は法律をつくって、再建委員会にお任せをと、あなた方はいつもそうなんです。いつも先送り。四十二年から毎年先送りなんです、これ。もう入り口の辺で決着をつけぬと、この再建監理委員会は六十二年の七月三十一日までに結論を出すことになっているのです。この辺で整理しておかなければ、長期借り入れは二十兆円超しますよ。もう超します。だから、国はどこまでめんどうを見るのだ。七千三十億円補助金を出したのだからもういいじゃないか、あとはやれよといっても、二兆円優に赤字が出ておるというこの現状から見て、ちゃんと国の責任は、いつも閣議で、公共負担はいたします、厚生大臣いかがですか、文部大臣いかがですか、こういって聞くと、その学生の割引は、身体障害者の割引はちゃんといたします。一遍も要求もしませんよ。ほかのものが削られるものだから、自分のことだけで、ほかのことじゃない、こういうかっこうで要求した、こういうかっこうになっておるわけです。これは閣議で決まっておる。やろうとしないのですね、構造欠損部分。この構造欠損部分、あるいは新幹線、あるいは青函トンネル、これから考える四国大橋、これらは全部政府が持っていかなければ、いまの国鉄に要求して、一寸延ばしで問題を先送りするということはもはや許されない、私はそう思います。いかがですか。
  381. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 大変傾聴すべき御意見、ありがとうございます。もう断崖絶壁に立っておる国鉄です。先送りは許されません。ですから、今度の法案の中においてそこでいろいろ御議論いただいて、国のやるべきもの、さらにまた経営者であるところの国鉄の諸君がしっかりとやるべきもの、今度の補助金といえども、やはりいま一番大事なことは通勤関係さらにはまた安全の問題等々に重点的にそういう補助金を出すということで、いままでのようにとかくルーズなものではいかぬ。そして一方、国鉄の従業員諸君もここでしっかり働こうという気持ちを起こしていることに私は期待しておるものです。
  382. 野坂浩賢

    ○野坂委員 先ほど言いましたように、国鉄なりに一生懸命やっております。管理責任としてもやっておる。労働者もいろいろ指摘をされて、言われておりますけれども、本当にやっておるのは緊急十一項目だけですよ。現場協議制も廃止、われわれが要求した議員兼職もだめ、定期券もだめよ、一切合財権利を全部取って、職場では不満が渦巻いております。しかし、国鉄再建をしなければならぬ、こう言って労働者の皆さんは全力を挙げております。そういう実態なんです。しかも、一万四千人のを二万二千六百人も切られていく、こういう状況ですよ。それなのに、補助金を出せ、工事の安全もどうだと言われておりますけれども、いまの長期負債を一体どうするのだ、また、六十二年の七月までやってまた結論が出ないからまた先だ、これだけでは国鉄がいかに努力してもだめです。構造欠損部分はきちんと国がめんどうを見ますかということを私は聞いておる。見ますか、見ませんか。
  383. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 そういうことについても今度の国鉄再建委員会においてしっかりと御議論いただき、それをまた政府の方は直ちに八条委員会として総理に御報告があり、総理がまたそれを下命する、こういうかっこうでございます。
  384. 野坂浩賢

    ○野坂委員 私は、国鉄総裁がもはや当事者能力がなかなかない、こう思ったのですが、運輸大臣も当事者能力を失おうとしております。いままで何十年やっているのですか。十五年間です、この議論は。そして、六十二年にまた持ち越そうというのですよ。みんなそっちでやってくれよ、これではやはり仕事をする内閣ということにならぬではないですか。一遍整理して、国はこう考えております、したがって、このような姿でこれから進めたい、こういうものをもう打ち出すべき時期ではないですか。何でも先送りさえすればいいのだ、それこそあなたの考え方は親方日の丸ですよ。だから、この辺で構造欠損部分についてはきちんと国がめんどうを見る、このくらいなことを言わない限り、本当に国鉄の再建はできませんよ。  総裁はどう思いますか、私の言ったこと。
  385. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもとしては、まだいろいろやらなければならぬことが残っております。それを一生懸命やりました上で、かねがねお願いしておりますただいま御指摘の点について政府にお願いいたしたいと考えておりますが、政府もこういうことで、大変財政その他の事情がおありのことは私もよく承知をいたしておるわけでございまして、お願いもし、また、われわれも努力をして、少しでも早く何とかしていただきたいと思っております。
  386. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸大臣から先ほど御答弁いただきましたが、すべて先送りではなしに、運輸大臣としては現状を踏まえて善処されることが望ましい、こう思います。  続いて、もう一点だけ言っておきますが、いま国鉄の労働者は不満がありますね、一生懸命働くのにと。不安もあります。一体年金はどうなるだろうか、こういう不安があります。これも三年据え置くのだというお話がありますね。いま国鉄はたしか一七・七%払っておりますね。一番高いのじゃないですか。そして、厚生年金等はたしか一〇・六%ですよ。みんな電電とか専売とかは一二%台ですよね。これだけ高い諸君を、三年間、年金は金がないからやらぬ、こういうことが言えますか、やめていく人たちに。人並みにやりますか。よそ並にやりますか。どうですか。
  387. 林義郎

    ○林国務大臣 年金担当大臣としてお答えを申し上げます。  現在、三月を目途にいたしまして、国鉄、専売、電電と国家公務員の共済とをまとめていこう、こういうことで鋭意事務当局で話を詰めておるところでございます。中間的な話は聞いておりますが、国鉄の問題につきましてもいま御指摘のようないろいろな問題がございます。だけれども、全然払わないとかなんとかというような話ではないだろうと私は思いますが、大変に共済が苦しい事情は先生御指摘のとおりの状況にありますし、これをどういうふうにするかということになれば、やはり国鉄の当局の方も、また、これから年金を出す方の方も、また、これからもらう方もお互いに協力してやっていかなければならないものだろうと思うのです。そういったことを前提にしまして、ほかのところにもいろいろ話をしていくというような形で話が進んでいるというふうに私は事務当局から報告を受けているところでございます。いずれこの法案は三月にはぜひお出しをして御議論をいただきたい、こういうふうに考えております。
  388. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸大臣にもお尋ねをしておりますが、運輸大臣は年金の問題についてもほかの年金と差別をつけることはない、こういうふうに確認してよろしいか。
  389. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 あなたは御存じのように、国鉄が一番年金では重荷でございます。そういうことからしますと、ただいま厚生大臣からお話がありましたように、ほかの公共企業体がこれに協力して統合していただくということは、私は国鉄を見ている者として非常に実は感謝にたえないところです。そういう意味で、そういうものをしっかりやってまいります。
  390. 野坂浩賢

    ○野坂委員 運輸大臣答弁には不満がありますが、時間がありませんので、十分御検討いただきまして、担当大臣として国鉄の再建の方途を明らかにして、他力本願ではなしに、担当責任大臣として明確な態度で進めてもらうように強く求めておきます。  それでは、最後の問題でありますが、一月の十一日、十二日に中曽根総理は韓国を御訪問されました。この共同声明を見ますと、非常に丁重で友好的な雰囲気であった、こういうふうに発表されておりますが、特に十一日はお着きになったばかりで特別の歓迎宴があったというふうに聞いておりますが、非常に丁重で厳粛な歓迎宴であったわけですか。
  391. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 初めての公式訪問でございましたから、韓国側は非常に誠意を尽くして、温かい歓迎をしていただきました。
  392. 野坂浩賢

    ○野坂委員 新聞では、映画女優を含めて八人の女性が出席をして両首脳のカラオケ大会となった、中曽根総理は朝鮮語で「黄色いシャツを着た男」を歌ったし、全大統領は「影を慕いて」を日本語で歌った、こういうふうにありますが、そういうのは、両首脳というので、世界で余りこういう雰囲気を聞いたことがないのですが、中曽根総理はロン、ヤスというような関係になったと言われておりましたが、韓国ともチャン、ヤスというかっこうになったのですか。
  393. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やっぱり隣同士であり、東洋人でありますから、非常に友情が生まれまして、公式の晩さん会が終わった後大統領がもう一杯飲もうや、こういうわけで別席へ行きまして、韓国の若干の女性もおりましたが、テレビの司会者とかあるいは韓国固有の古典音学の名人とか、そういう人たちも一緒におりまして、非常に愉快な時間を送りました。(発言する者あり)
  394. 野坂浩賢

    ○野坂委員 不謹慎なという声も聞こえますが、中曽根総理のことでありますから、十分対応していただきたいと思っておるわけです。  そこで、共同声明について伺いますが、先ほど同僚議員からも話がありましたが、共同声明には、第三項でありますか、「自由と民主主義という共通の理念を追求する隣邦として相互に緊密な協力関係を維持発展させていくことが」云々、こういうふうにあります。この自由と民主主義ということでございますけれども、先ほどもございましたが、あなたがごく御懇意な金鍾泌とか、あるいは野党新民党の党首でありました金泳三とか、総理経験者である丁一権とか、たくさんの皆さんが政治活動を禁止されております。あるいは政治犯もたくさん逮捕、投獄されております。そしてあなたは、初日のわが党の平林書記長の質問に対して、政治倫理の問題の中でこう言っておられますね。民主主義とは基本的人権、言論の自由が確保されることである、こう述べられました。いまこれと韓国の実情を見て、そういう状況、言論の自由があるかというと、言論基本法というものでマスコミはコントロールされております。治安維持法とも言うべき資源管理法というものが提案されておる。こういう実情から見ますと、内閣は軍人が約半数を占めておるということを考えると、いまの現状から見て果たして自由と民主主義があるのかなというふうに首をかしげざるを得ないのです。それについては現状から見てどうお考えでしょうか。
  395. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 隣にある、友好な隣国の体制について批判がましいことは私は差し控えた方がいいと思いますが、各国ともみんな歴史的発展段階にあるものだと思っております。  わが国の例を見ましても、明治の太政官制度の独裁的な性格から明治十八年の内閣制度へ移り、それから憲法、議会政治へ移って、そして次第に発展してきたわけでございます。韓国においても、独立後まだ日もそうたっておりませんし、その上、北の脅威というものを南の韓国の人々は非常に大きく感じて、北の方はほとんど独裁政権で共産主義政権であります。そういうような環境の中にあって最大限自由と民主主義を発展させていこうと思って努力をされておる姿が、過渡期的な姿がいまのそういう姿であると思っております。やはりアジアの国々を見ましても、いわゆるゼネラルデモクラシーと申し上げましたけれども、将軍がデモクラシーの先頭に立ってデモクラシーに前進していく姿、そういうのがやはり歴史的にはあり得るのであります。そういうふうに、できるだけ自由と民主主義へ向かって前進しつつある国、環境が許せば一歩一歩着実に進もうとしている国に対しては、やはり温かい目で見てあげるのが、私は正しい態度であると思っています。  韓国におきましては、学生にはデモの自由もありますし、あるいは新聞も政府批判を書くときはびしびし書いておるようでありますし、また政党活動も自由活発に行われております。一部人権が日本ほど自由でないという点があるのは、これは北の問題等も抱えて同情できる立場であると私は思っておりまして、全般的に見まして、自由と民主主義へ非常に強い希望を持ちながら一生懸命努力している国である、そういうふうに解釈しております。(「総理の目から見たらそうだろうね」と呼ぶ者あり)
  396. 野坂浩賢

    ○野坂委員 後ろで言っておるように私も思うのですね。本当に自由と民主主義を志向しておるということになれば、資源管理法等はこれは余りよろしくないじゃないか。また、そういう共同声明をお書きになるならば、総理としてはここではそう言わなければならぬだろうと思いますけれども、お話しになったときに、政治犯の釈放は民主主義の一歩だ、言論の自由というのは民主主義の原則だというようなことが、それだけ友好な雰囲気の中だったら言われてもよかったのではなかろうかな、こういうふうに私は思います。  そういう意味で、あなたは十二日、韓国訪問を終えてお帰りになるとき、機内でこういうことを言っておられますね。全大統領と二次会をやって、おれはやくざ内閣の組長だからどうってことないよ、こういうふうに発言をされておりますね。ここにいらっしゃる方はみんなやくざ内閣のメンバーなんですか。どういう意味でこれは言われたのですか。
  397. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、ある雑誌にある有名な政治評論家がいろいろなことを書きまして、非常におもしろい記事があったたわけです。その中に、さすが言論の自由の国でありまして、やくざ内閣だ、そういうふうに書いてあったわけです。私はなかなかおもしろい表現を使うものだな、そう思いまして、まあ皆さんとウイスキーを飲んでやったときの話ですから、リラックスしてそういう友好的雰囲気のもとにそういう話を申し上げたのです。
  398. 野坂浩賢

    ○野坂委員 いつもまじめな総理は、いや、代議士のときと総理大臣とは違うんだ。あなたは総理大臣として行かれた。一中曽根康弘個人として行かれたわけじゃない。私は、やはりやくざ内閣だ、いやパチンコの顧問になっておるからやくざかもしらぬというようなことだってあるかもしれませんが、そういう意味ではやはり不謹慎だと思いますね、どうあろうと。私は、そういう点についてはやはり反省をすべきではないのか。機内であろうと内閣総理大臣であるというのは変わりないと思いますね。いかがですか。
  399. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 必ずしも言葉が適切でなかったと反省いたしております。
  400. 野坂浩賢

    ○野坂委員 共同声明には、第五項には、全大統領の卓越した指導のもとに政治、経済、社会等諸般の分野で着実な発展に敬意を表しておられます。そうですね。これは経済も着実に発展しておりますか。
  401. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 韓国は、国民所得パーヘッドはたしか千七、八百ドルになっておりまして、目覚ましい躍進を遂げた国の一つであります。日本も韓国に追いまくられて、造船とかあるいはテレビとか、そういう面でもひいひい言うくらいになってきている。そういう点では、アジア及びそのほかにある発展途上国の中では、韓国にまねしよう、そういう国すら出てきておるという点で、やはり国際的には注目されている国ではないかと思います。
  402. 野坂浩賢

    ○野坂委員 まさに後進国から中進国になった。経済発展もある。それだけ意欲的に経済発展があるならば、四十億ドルはもっとほかの方に回して、そういう援助をする必要はないじゃないですか。いかがですか。
  403. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは韓国に経済社会発展五カ年計画がございまして、そのインフラストラクチュアの充実、福祉のために協力を求められておりまして、そのインフラストラクチュア、福祉の充実のために御協力を申し上げた、そういうことであります。これは大体ほかの国の例との均衡も考えまして、可能であると判断した範囲内におきまして実行したことでございます。
  404. 野坂浩賢

    ○野坂委員 全斗煥政権は自由と民主を進めておる、政治、経済、社会とも発展をしておるということですけれども、いまあなたがお示しになりました第五次経済社会発展五カ年計画を見ますと、いままでは七九年の成長率は六・四%だった、いまの全政権ができて八〇年にはマイナス五・七になりました、失業率は三・八が五・二になりました。だんだんよくなってないですね。目覚ましい発展ではなしに、全斗煥政権樹立以来消費者物価も一八・三%から二八・七%と引き上がってきた、こういうのが現在の実情であるということであります。したがって、この五カ年計画等を見ましても、韓国の予算は年間大体十兆ウォンですが、その三六%は軍事費である。そして、借金はたしか外国債だけでも三百六十億ドル程度、こういうのが全斗煥政権経済の実情であるということが言い得るだろうと思うのです。そこで、この軍事費をやらなければならぬから残されたそういうものにはやらない、日本の手をかしてもらわなければならぬ、こういうことになるわけですね。外務大臣でもどっちでもいいですからお答えください。
  405. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに、韓国が軍事費につきまして全予算の三六%の予算を計上している。これは南北のああした緊張関係の中にあって韓国の独立と安全、平和を確保しなければならぬという韓国の決意がそこに表明されておると思うのですが、同時に、韓国の経済も最近は悪くなってきている、これもおっしゃるとおりであります。これは特に第二次石油ショック以来、全世界的にもそういう状況が出ておるわけですが、韓国も非常に発展をした、そして石油がない、そういうことで非常なショックがそこに生まれて経済が悪くなっておる。そのために五カ年計画をつくって新しい国づくりをやろう、こういうことでありますから、最も近いわが国としてこれに対して協力をするということは、これは大変必要なことではないか、当然のことではないか、こういうふうに考えます。
  406. 野坂浩賢

    ○野坂委員 四十億ドルというのはだれとだれとの会談でお決めになったのですか。
  407. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 四十億ドルというのは合意はいたしておりません。これは私と向こうの外務大臣との会談の中で、日本側としては日本の経済協力の方針に基づいて経済協力を進めていく。大体いまの見通しとしては、一応四十億ドルをめどとして、これから積み上げ方式によりて毎年毎年の話し合いで決めていこう、こういうことを私から一方的に言いまして、韓国の外務大臣も結構です、こういうことになったわけでありまして、合意をしたわけでもありませんし、文書を取り交わしたわけでもありません。
  408. 野坂浩賢

    ○野坂委員 四十億ドルはめどである、めどというのはそれ以下である、合意はしていないが何となく決まった。普通であると一兆円という大きな金ですからね、それは単年度積み上げ方式の日本立場があるから話し合いができない。四十億ドルめどについては合意をしたのですか。それが一つと、それから、具体的に事務折衝が始まっておりますね、一月二十八日、二十九日と。日本側は四百億と言う、韓国側は七百億と言うというような話を伝え聞いておるわけでありますが、それらの中身もこの際お聞きしたい。
  409. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 日本の経済協力の基本方針というのは積み上げ方式であります。したがって、韓国の出してきましたプロジェクトについての大体の計算をすると、まあそういうところになるわけでありまして、日本としてはもちろんその中で毎年毎年一つずつ積み上げていくということでありまして、五十七年度につきましてもすでに事務的な折衝が始まっております。どういうプロジェクトについてこの折衝が始まっておるかということについては事務当局から答えさせますが、韓国とのそういうめどを一応——これは合意ではありません。日本側が説明したわけですが、こういう説明をしたこの一つの前例としては、実は中国との間の経済協力問題がありましたとき、御承知のように、一応三千億円をめどとして中国にも五カ年計画に協力するという形で、毎年毎年積み上げ方式で中国に対しても協力を進めておるわけでございます。そういうことで、これは合意ではありませんで、あくまでも日本側のめどであるということで一応私の方から説明をいたしたわけであります。
  410. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 五十七年分といたしまして韓国側から要請がございましたプロジェクトを、これを韓国側の資料に基づきまして積み上げてまいりますと約七百億円程度となります。そのプロジェクトは、多目的ダム、それから上下水道、医療設備などの諸分野の事業でございます。
  411. 野坂浩賢

    ○野坂委員 このプロジェクトは、上下水道とか道路とか多目的ダム云々ありますね、十一。これについての具体的な積み上げはこの国会に報告をしてもらえますか。というのは、釜山の地下鉄建設事業というのがありますね。この前の六十億ドルのときにはソウルの地下鉄事業も中に入っておるわけです。その中に入っておりますが、特にソウルの地下鉄については、日韓癒着問題でたくさん疑惑が生じておるというのが実情であります。したがって、高い金でありますから、いまから日本の上下水道事業の業者等は、これが出るのではないのかということでいろいろな動きがあるということも聞いております。そういう意味で、それらについては一応の御報告がいただけますか。  さらに、先ほど言いましたように、韓国の副首相は、今度の協力に対してこういうふうに述べておりますね。金竣成という副首相ですが、経済企画院の長官でもあります。「韓日経済協力の活路」という座談会の中で、経済の協力問題が妥結をした点について、韓国の国際的地位が高まったことと北東アジア安保に対する日本の新しい認識によるものである、こういうことを明快に言っております。中曽根総理は、いや安保絡みではないとおっしゃっておりますけれども、新聞社は一斉にして、日米韓の三角安保、安保絡みの経済協力、こういう見出しでキャンペーンが張られております。そして、その実態は、いまお話があったように、全体の予算の四〇%に近いものが軍事費である、その穴埋めをするのだ、こういう認識に立っておるし、韓国側は安保であるということを明確に言っております。そういう意味で、この経済協力というのは日米韓の三角体制における一如の姿であるということが明らかではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  時間がありませんから、最後に総理にお尋ねをしたいのでありますが、きょうの新聞等を見てまいりますと、この韓国、朝鮮の統一問題が書かれております。議論がありましたようにクロス承認のこともあります。国連の同時加盟、朝鮮民主主義人民共和国が入らない場合は韓国だけでも国連へというような政府見解も出されております。  もしクロス承認ということになりますと、これは朝鮮民主主義人民共和国としては、いままで言ってきたのは、朝鮮の統一ではなしに朝鮮の分断が永久に固定化するであろう、朝鮮の人民の声は、北も南も同一民族であり同一言語を使用しておる、その願いは統一である、しかも自主的に平和統一を実現をしていかなければならぬ、こう述べております。日韓共同声明にも、いわゆる朝鮮の和合統一ということが書かれてありますね。クロス承認ではない。クロス承認というのは統一の一つの過程であるというふうに総理は認識をされておるだろうと思いますが、共和国の方は、いわゆるそれは永久分断固定化である、この認識は一致しておるわけですね。  中国もそうですね。そういう意味で、これから十八日には二階堂さんが中国にお行きになるそうでありますが、この朝鮮の問題について話をしてくるというふうに書いてあります。どういうふうに総理はお話をさせられるおつもりなのか。  そして、もう一点は、いわゆる韓国とはそういうツーカーの仲になったとお話しになったわけでありますから、十分あなたは信頼をしてもらって、それでは朝鮮の統一のために、私は朝鮮民主主義人民共和国との政治的な往来、また、どう考えておるということを生で、あるいは各大臣なりこちらの方の方を通じて話をしたい——いまのお座りになっておる予算委員長は、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国には非常に信頼が厚い。そういう意味で、それらを詰めながら政治家の往来も頻繁にし、中国との国交回復があった前提として、常駐記者の交流、そして、それができ上がれば通商代表部の設置、こういうかっこうで具体的に外務大臣は環境の整備をすることが必要である、総理大臣も環境の整備を必要とする、それで話し合いをする。当事者同士話することが一番いい、当事者同士話をせい、当事者同士が話したらいいじゃないか。それだけじゃなしに、日本がどういう役割りをするか、どういうふうに朝鮮民主主義人民共和国と接触を保つかということも考えていくべきではないのか。これが、朝鮮の平和はアジアの平和、世界の平和と安定につながるとおっしゃる中曽根さんとしての具体的な一歩ではないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょう。
  412. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ちょっと総理の前に御答弁申し上げますが、対韓経済協力というのはあくまでもこれは韓国のいわゆる国づくりといいますか、経済五カ年計画に協力するという立場でこれを進めておるわけでありまして、軍事的な面とか安保的な面とか、そういうものは一切これはないわけであります。毎年毎年プロジェクトごとに積み上げていきます。ことしもいまお話がございましたように、具体的にプロジェクトについて協議をするわけで、来年、再来年というふうに具体的にプロジェクトについて協議をします。これは上下水道であるとかあるいはダムであるとか、その他いろいろの公共、インフラ関係が出てくると思いますが、その時点ではっきりするわけでございます。  それから、韓国のいわゆる国連加盟、単独加盟という問題は、これはいまの国連の状況からしてなかなか困難であるということは、これはもちろん韓国政府が一番よく知っておるのじゃないか。そういう状況の中で環境を整備するためにいわゆるクロス承認であるとか同時加盟であるとかいう話がむしろ韓国側から出ておるということであろうと思うわけでありまして、われわれとしてもこの朝鮮半島の緊張緩和、特に私は、北も南も同時にお互いにやっぱり民族の統一といいますか朝鮮半島の統一というものは、同じように悲願としてこれを進めておる、こういうふうに思うわけで、そうした環境づくりのためにわれわれが協力するということは、これはもうわれわれの責任であると思うわけですが、なかなか、それでは具体的に、現実的にどこまでできるかということになりますと、これは今後いろいろと関係を通じまして判断をしなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。
  413. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 韓国及び朝鮮半島の問題は、これは韓国並びに北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国同士で話し合って、まず半島に住み合っている人たちが自主的にお決めになり、そして統一を完成することを私たちも強く望んでおるわけで、しかもそれは、平和的な話し合いによる統一ということが望ましい、武力統一というものは絶対これは否定すべきである、そう考えております。  そこで、そういう環境を馴致するために周りの国々が協力する、これもまた国際関係において望ましい事態でありまして、直接国際関係ということになれば、ソ連、中国、アメリカ日本、こういうものが関係者に登場してくるだろうと思います。それらの関係諸国の間におきましても、朝鮮半島が平和的統一が行われるように、われわれも機運を醸成して協力していくことが望ましいと思っております。現に韓国の全斗煥大統領は北に呼びかけを行っておりまして、そして幾つかの提案をなすっておる。北の方もまた、ある意味における提案をなすっておる。こういう双方の努力を積み重ねていくことが望ましい、そういうふうに考えております。  最近におきましては、全斗煥大統領は、オリンピックを近く控えておりまして、韓国のやはり国際的安定ということをかなり考えておられるのではないかと思っております。そういう意味におきましても、北に対する呼びかけを行って平和的な共存ということを強く考えておられると思います。平和的共存ということは、いまの現実問題としてはやむを得ない事態である、そうわれわれは考えております。  しかし、先ほども申し上げましたように、日本も朝鮮半島の推移につきましては非常に重大関心を持っておる一人でございまして、このほかの関係諸国とともに、朝鮮半島が、両方の人々の意思が合致して、そして長期的に安定する形がとれればまず一段階ではないか、そう思います。国連における同時加入とそれを起こすためのクロス承認というのも一つ考え方でありまして、万やむを得ない場合には、そういうのも一つ考え方かなと思います。両当事者がそういう問題についてどういうふうにお考えになっておるか、私はまだつぶさにしておりませんが、そういうことが可能であるならば、それはまた望ましい形ではないか、当面やむを得ぬ一つの、最終統一に至るまでの過程としてそれは容認さるべき一つの案ではないか、こういうふうに考えております。  北朝鮮との関係におきましては、われわれは文化とかあるいは経済とかスポーツとか、こういう交流、あるいは人間的交流等々も通じまして、事実上いま、ある意味における交渉を持っておるのでありますが、友好な関係を維持していくように今後も努力してまいりたいと思っております。
  414. 野坂浩賢

    ○野坂委員 終わります。
  415. 久野忠治

    久野委員長 これにて野坂君の質疑は終了いたしました。  明九日は、午前十時より公聴会を開会することといたします。  本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十分散会