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1983-02-07 第98回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月七日(月曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    上村千一郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       片岡 清一君    金子 一平君       倉成  正君    栗原 祐幸君       近藤 元次君    澁谷 藏蕨君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    宮下 創平君       村山 達雄君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衛君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君       草川 昭三君    正木 良明君       木下敬之助君    竹本 孫一君       栗田  翠君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    三浦  久君       楢崎弥之助君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣総理大臣官         房会計課長兼内         閣参事官    渡辺  尚君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         警察庁警備局長 山田 英雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         国土庁土地局長 小笠原正男君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁次長   酒井 健三君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部大臣官房審         議官      齋藤 尚夫君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省体育局長 西崎 清久君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         特許庁長官   若杉 和夫君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月七日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     宮下 創平君   越智 伊平君     片岡 清一君   武藤 嘉文君     近藤 元次君   矢野 絢也君     正木 良明君   不破 哲三君     栗田  翠君   楢崎弥之助君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     越智 伊平君   近藤 元次君     武藤 嘉文君   宮下 創平君     相沢 英之君   栗田  翠君     三浦  久君   山口 敏夫君     楢崎弥之助君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口敏夫君。
  3. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、中曽根総理初め関係閣僚の方々に、内外当面する諸問題について御質疑を申し上げたいと思います。  私も中曽根外交の評価をいろいろ集めてみましたが、あなたの評判は、残念ながら、ワシントン周辺では大した人気でございまして、日本にも吉田茂さん以来の久々の国際派総理大臣が実現をした、こういう恥ずかしくなるようなお褒めの言葉を言う人もおりました。確かにはっきり物を言う総理大臣は久しぶりですし、テレビなどニュースで見ておりましても、背も高ければ男前でもある、言うことなし、こういうことだそうでございます。しかし、あなたの盟友である田中総理も、就任当初は大変な期待の中で政権をスタートしたわけです。政治家運命一寸先はやみとも言われますが、中曽根総理もひとつ自重自戒して、日本国日本国民運命を正しく謙虚に受けとめていただいて、大きな責任を果たしていただきたいと考えます。  そこで、上げたり下げたりで恐縮でございますが、率直に申し上げて、外国の評判と異なり、日本の国内では大変あなたの行動を皆さん心配をしておられるわけです。国会のような専門的な論戦だけでなくて、普通の家庭奥さんですね、ふだんは御亭主の世話ですとか子供さんの教育で、率直に言って、政治だ、防衛だと言っても関心は薄い、そういう家庭奥さん方も、最近は非常に政治ニュース関心を持ち始めた。生活の問題とかあるいは戦争の問題まで心配をしている。私は、国会合意をとる努力を放棄して、国民的なコンセンサスを求める努力をさておいて、独断専行的に進め進めと言う中曽根政権の、誕生してまだ二カ月ですね、私はこの状態は異常だと思うのです。  こういう国民皆さん中曽根政権に対する考えを分析してみるならば、中曽根政権に対する三つの不安と七つ危険性を指摘をしている、こういうふうに感ずるわけです。そういう中曽根政権における三つの不安と七つの危険というものを国民は見抜いているから、中曽根政治に非常に一つのこわさを感じておるということだと思うのです。  三つの不安とは、生活が破綻をするんじゃないかという不安。生活軽視中曽根内閣だ。そして、戦争への不安。中曽根軍国青年が、軍国壮年ですかが日本を一体どこへ連れて行ってしまうのだろうか。戦争か平和か。また、経済破産への不安。長引く不況に対して、防衛突出であるけれども、国民生活というものの有効な政策を打ち立てておらない。  そして、七つの危険とは、一に、議会軽視であります。二に、憲法改悪志向、ロッキード隠し、防衛突出行革放棄増税志向、そして弱者切り捨て、こういう七つの大きな危険性をあなたは内蔵しておられる。  そこで、私は、国民皆さんの感じている中曽根政治独断専行強権政治に対して総理の真意をここでただしたいと考えます。中曽根総理の好みの言葉で言えば、まさにこの予算委員会国民の歓呼の声に送られて、天にかわって不義を討てと、こういう一つ使命感責任を持たされて私はこの委員会質疑をしなければならない、こういうことだと思うのです。総理の誠意ある答弁をお願いしておきたいと思います。  そこで、中曽根総理政治倫理の問題でございますが、総括質問の最後でもございますので、ひとつ伺っておきたいと思います。一問一答形式でやりますので、あなたの内なる政治倫理、ロッキード問題の本音をひとつ聞かせていただきたいと思います。  ここ数年の世論調査で最も望まれる首相候補は、中曽根さん、あなたでした。あなたは自信家だから当然だとお考えでしょうが、しかし、総理大臣就任後は、残念ながら不支持支持をはるかに上回っている。韓国へ行ったりアメリカへ行ったり、商社の社長さんのように仕事をする内閣としてがんばっておられるわけですけれども、中曽根内閣人気はいま一つ上がらない。不人気の原因は一体何なのか。中曽根内閣田中首相影響力を強く受けている、そう思われているゆえだと総理はお考えでしょうか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 山口さんがいまおっしゃいましたいろいろなことにつきましては、私もよく反省もし、また、自粛自戒もいたしまして政治を行わなければならないと思います。国民にかわってこの内閣を任されておるわけでございますから、国民皆さんの隅々の声まで耳を澄まして拝聴しながら過ちなきように戒めてやってまいりたいと思っております。  それから、私ぐらい、しかし戦争を嫌っている者はないと思います。それは、われわれの年代は、たとえば櫻内君にしても園田君にしても江崎君にしても、戦争へ行って一番戦争の悲惨を体験している人間なのであります。そういう面から見ましても、いかにして戦争を防止するか、日本を再び戦場にしないようにするかというところに政治家の大きな責任がかかっていると考えております。私の弟も現に海軍で戦死しておるものなのであります。そのときの父親の悲しみ、母親の嘆きというものを考えますと、戦争はどんなことがあっても避けなければならない、われわれの世代に再び戦争を起こしてはならぬ、次の世代にも言い伝えていかなければならない、そういうような気持ちで実は一生懸命努力しているつもりでございます。  この戦争を防止するために何が大事かといいますれば、最近の国際情勢を見てもわかりますように、やはり侵略を誘発しない体制を整えておく、それが国民の生命、財産を守るもとである。侵略を誘発しないためには何が大事か、残念ながらある程度力を持っていなければ暴力が侵入してくるという社会であります。そういう意味からもある程度の力を持って暴力を侵入させない措置を講じている、それが日本憲法下における自衛の精神でございまして、この精神に基づいてやっていこうとしておるところです。ただ、いままでその努力が必ずしも十分なものとは言えませんでした。国際的にもいろいろ批判もされておりました。そこで、憲法範囲内において、また財政の許す限度におきまして努力をして、国際的なそのような批判をなくし、そして国際的にも安定した孤立しない日本にしていこうという努力をいましておるのでございまして、その点は御理解をいただきたいと思う次第でございます。  それから、政治倫理の問題でございますが、これは前から申し上げますように、政治家としても政党としても非常に大事な政治の基本にある問題であると考えておりまして、われわれは誠心誠意努力してまいらなければならぬと思っておる次第でございまして、今後とも、政治家としても自由民主党の総裁としても誠意を持って努力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  5. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、中曽根総理武器技術の輸出の問題とか、あるいは日米首脳会談における軍事同盟論等々、これは憲法範囲をむしろ逸脱をしておる。いままで日本国民世論国会における合意に基づいてその範囲内で歴代内閣努力をしてこられた。そうした国会の意思というものよりも、むしろレーガン政権との友好に力点を置くことによって、むしろ国際緊張を一層激化させる立場日本をあなたは引っ張り込む危険性があると私は思うのです。  しかし、それはそれとしまして、いま最初に政治倫理の問題を質問しているわけですから、中曽根政権田中首相との関係を聞いたわけですが、私はさらにロッキード疑獄事件というのが、総理は、これは政治収賄事件じゃなくて、この問題は政治権力闘争に利用されたんだ、自民党政治の流れを変えようとした人がいて、政治の腐敗や堕落を公にして党内の主導権争いの陰謀としてこれが利用されたんだ、要するにむしろ政治的な問題であって疑獄事件ではないんだ、こういうようなお考え総理はお持ちですか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題に関する人々の考えは、百人百様であるかもしれません。しかし、いま刑事事件として問われまして、法廷で争われているという現実を見ますと、そのような問題として考えなければいけないと思います。
  7. 山口敏夫

    山口(敏)委員 こうした総理大臣までされた方が、疑獄事件として一般国民にも知られるような形で公の場で裁判を受けている、こういう状態を見て、総理は、これは日本民主主義の健全な姿だ、こういうふうに理解をされておりますか。それともこれは魔女狩りだ、こういうあり方というものはとんでもないことだ、こういう認識で受けとめておられるでしょうか。その点もお伺いしておきたいと思います。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この事件は、はなはだ残念な事件でございます。しかし、法のもとにおける平等あるいは法の支配というものが厳然と示されているという点において民主主義的な世の中、日本民主主義が保全されているというふうに考えております。
  9. 山口敏夫

    山口(敏)委員 民主主義が保全されているということでございますが、私どもニュースを見ておりまして、自民党総裁選挙のときには、当時の中曽根総裁候補は、実力者田中角榮氏としばしば相談、御一緒の様子でしたが、総理大臣就任後も、あるいは一月二十六日の論告求刑の後も引き続きあの予備選のときと同じように大事なことはすべてお互い相談してやっておられるんでしょうか、どうでしょうか。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 相談しているというようなことはありません。
  11. 山口敏夫

    山口(敏)委員 予備選のときだけということだと思いますが、では、中曽根内閣にとって党外支配者たる田中氏は、政権を運営していく上において中曽根さんにとって頼りになる存在ですか、それとも行く末は危険な存在とお考えですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ここでも前に申し上げましたように、田中さんは田中さん、中曽根康弘中曽根康弘、私は、日本国内閣総理大臣としてその責任を引き受けて独自の見解でやっておるものであります。
  13. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、かつての自民党同志として、総理田中さんを好きですか、嫌いですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 個人的には私は、昭和二十二年に同期生として国会に当選をしまして、自来長い間保守陣営に属して政治をいろいろやってきた間でありまして、個人的には私は友情を感じておりますし、それが人間の道であると思います。そして、こういう事態になったことは、まことに不幸で遺憾なことであると思っております。
  15. 山口敏夫

    山口(敏)委員 確かに田中首相も、日中国交回復など国家のためにも貢献された。そうした世界でも有能な政治家が、後の時代に追放されるなど悲劇的な形をとっていると言う人もたくさんおりますね。田中さんの後援者の中にも、角さん、もういいじゃないか、帰ってこいよ、こう言って、田中氏を愛するがゆえにその気持ちを吐露しておる人もおるわけですけれども、あなたは、総理大臣としての立場での法律論やたてまえ論ではなくて、友人として、同志として、心から政界からの引退、勇退を勧めてあげたことはございますか。この七年間、一度もございませんでしたか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 個人的な関係のことは、こういう公の場所で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  17. 山口敏夫

    山口(敏)委員 公の場所であなたが示された姿勢、議員の身分は議会政治の基本的な哲学、制度の本質に立っているから厳粛に考える必要がある、こういう見解のもとにあなたは二つのケースを示されたわけです。本人が決断してやめる、選挙区の人が落選をさせてやめさせるということですけれども、総理は、本人がいまでも決断をしてほしい、やめてほしいという気持ちまで立ち至っているか、あるいは選挙区の人が佐藤さんなり田中さんなりを落選させてあげて楽にさせてあげたら、こういうふうにお考えですか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、民主憲法下における議会制度の基本的な思想を申し上げたのでございまして、どの人がどうということは、この際差し控えさせていただきたいと思います。裁判にいささかでも影響を及ぼすというおそれのあることは慎んだ方がいいと思っておるわけであります。
  19. 山口敏夫

    山口(敏)委員 大事なところは裁判への影響ということですけれども、もう一つ伺いたいのですが、それじゃ徳川家康豊臣秀吉関係中曽根さんと田中さんにたとえて、田中秀吉の力のあるうちは恭順の意を示しつつも、一たび中曽根家康が完全に権力を握れば、全国に覇権を求める。田中さんの首に鈴をつける人、ロッキード事件の決着をつける男、政治道義を確立する人は結局は中曽根康弘氏であるという期待を持ってあなたを見守っている人もおるようです。数の大小はわかりませんが、おるようです。この期待は果たして果たされるでしょうか、それとも期待外れに終わるのでしょうか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、家康にあらずして康弘であります。
  21. 山口敏夫

    山口(敏)委員 さすがは、世上田中軍団の不沈空母だ、こういうことを中曽根さんを称して言っている人がおりますけれども、なかなか守りがかたいようでございますが、私も、一部の田中批判というのは行き過ぎた面もあると思います。この間も、大阪の警官汚職事件のときに、南町奉行なんという警察の看板を張ってあったり、あるいは革新陣営田中邸御用御用だというデモを、ちょうちんをぶら下げたり、いずれにしても日本は、保守革新封建思想ですよね、御用ちょうちんぶら下げて。だから、建設大臣田中派でなくても一つ文句を言ってみたくなる気持ちもわかりますけれども、しかし、私は総理の御発言を聞いておりまして、防衛問題や外交問題に比べてもっと、これはレーガン中曽根さんが会うだけで解決しない問題がたくさんあるわけですけれども、この問題は、自民党総裁として元総裁とひざを交えて、その政治的な道義的な問題についての折り目筋目をどうつけるべきか、こういう率直な話し合いをすれば、私は一つ事態の解決につながっていく、国民政治的な信頼も回復するということだと思うのですけれども、そうした行為というものを何らなされておらない。  いまの答弁を伺っておりまして、そういう中曽根さんの一貫した内なる政治倫理の問題というものが、いかにウエートが軽き状況にあるかということを指摘せざるを得ないわけです。しかし、いまは総理大臣立場自民党内における最高の影響力を持っている人との関係ということですけれども、総理自身が、ロッキード事件が起こったときは三木内閣の幹事長だったのですよね。与党の幹事長として、あなたのこの問題に対する談話は、どの党の談話よりもきわめて率直明快で、いまのあなたと同じように勇ましく、かっこうよく、非常に歯切れがいい談話を発表しているのです。これは中曽根さんの癖なのかもしれませんけれども、当時の中曽根幹事長談話を読んでみましても、事件の徹底的究明、解明を期するんだ、捜査当局が厳正に速やかに真実を明らかにすることを望む、今後の検察、警察当局の活動を大いに期待する、まことに勇ましい談話でございます。しかし、そうした真相究明、解明と司法当局に対する激励の姿勢と今日の国会における消極的な総理答弁、これとの落差、私は、国民の方はどうも合点がいかないということだと思うのですが、その幹事長時代の中曽根さんの政治倫理に対する姿勢があなたの本物なのか、いまの消極的な姿勢があなたの本質なのか、その辺を御本人みずからひとつお聞かせ願いたいと思います。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 両方とも、私はそのときそのとき時宜を得た行動をすべきであると考えております。あのころは、まだ刑事事件として裁判所に係属されている問題ではない未知の状態であったわけです。そして、国民皆さんが非常に重大な関心を持ち、山口さんなんかも自民党を脱党して新自由クラブをおつくりになった、そういうような時代であります。しかし、いまはもうすでに刑事事件となって裁判所につながれている問題になっておりまして、法治国として法の規制のもとにその問題は処理されつつある事態になりまして、状相は一変したわけでございます。したがいまして、その状況状況下に応じて筋のある行動をとるというのが、私は正しい態度であると思っております。
  23. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そうじゃないのですよ。総理は幹事長の時代に、事件が解明された後、田中さんのことを、同君はみずから辞職すべきだという趣旨の発言もしているのです。一部の報道にもそこまで言い切ったものが出ているのです。そして記者団の、党として何らかの措置をとるのかという質問に、田中首相は党員じゃないのだから、これからはどうということはないだろうと言って、突き放した言い方をしている。ところが、田中さんがいまでもこれだけ政界に隠然たる力を持っている、復権をしている、そういうのを読み取れなかったから、そのころはどうということはないだろう、こう言ったのかどうかうかがい知れませんが、しかし、あなたは同時に国民に向かって、幹事長として「綱紀粛正、党の大改革に不退転の決意でのぞみ、国民の信頼を回復する」のだ、こう言っておるわけです。公約しておるのです。どの部分が不退転で臨んだ結果なのか。どこをどうロッキード事件後、この国民政党たる、政権政党として政治の大改革をもたらしたのか、中曽根総裁総理自身からさらに伺っておきたいと思うのです。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は幹事長時代、田中さんが議員をやめたらいいなんということを言ったことは一回もないと思います。  それから、その後のいろいろな問題については、自民党も大いに努力をして、事態の解明に協力もしてきたつもりでおります。議長裁定があったり、たしか国会決議等がありまして、そして本件の政治的道義的責任を明らかにする、そのためにロッキードの調査委員会をつくるとか、あるいは政府が解明について便宜供与を最大限行うとか、そういうようなことはたしかあのときの決議で行われまして、自民党はそのとおり努力してやってきたと思っております。
  25. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういうことを中曽根さん自身が言ったことがあるとかないとか、私も五十一年の六月、七月ごろの新聞や記録を読み起こしてこの場で質問しているわけですから、言ったということがわかるとまずいということなのか、それは後ほどまた申し上げますけれども、要するに、私のこの質問が終わると、各党の総括質問が一巡をする。当然野党でいま提出している辞職勧告決議案がもうすでに衆議院議長のお手元にあるわけでして、自民党総裁として、総理としてこの決議案を総理はどう受けとめ、措置されるお考えなのか、基本的な見解をひとつ承っておきたいと思います。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 決議案として上程されますと、もう国会の仕事になりまして、行政府としてとやかく言うべきポイントではなくなってまいりまして、各党各派でこの案件の処理に協力していただいたらいいのではないかと思います。
  27. 山口敏夫

    山口(敏)委員 それじゃ各党各派ということですが、この問題で党首会談を開くお気持ちはございますか。われわれ新自由クラブ・民主連合としては、党首会談を提案しているわけですが、自民党総裁としてお受けになりますか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党は公党でございまして、いろいろな機関がございまして、その機関が決定していったものが積み重ねられて党の方針になるわけでございます。その上に立って各党とまた樽俎折衝が行われるわけでありますから、各党の折衝の模様をまず見させていただく、そういう立場におります。
  29. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ロッキード国会と言われた七十七国会ですね、先ほど総理もおっしゃられましたけれども、あのときは国会決議をめぐって四十数日間も審議ストップして、国民皆さんにも大変迷惑をかけたわけですね。衆議院議員のあっせんのもとに各党党首が集まって、政治道義確立のために一つ合意がなされた。日本政治的な危機が、こうした各党の最高首脳の率直な意見交換の中で事態の打開を見たわけですね。  この国会は、総理自身もたびたび予算委員会や本会議で言っているように、経済的にもあるいは外交面においても、まさに内外ともに非常に重大な局面、懸案を解決しなければならない国会ですね。その国会が、これはもう決議案の取り扱いをめぐって非常に審議というものに支障を来す、国会運営に非常に大きな影響をもたらすということは明白なんですね。だから私は、それこそ武器輸出の問題や防衛問題だけをどんどん自分で決断してやるのじゃなくて、こうした問題にも総理の実行力、決断力というものをやはり持たれる必要があるのじゃないか、そういう意味で再度こうした問題を党首会談に上げるような、そういう立場中曽根さん自身も話し合いをする、各党各派の首脳と心からの意見交換をする、こういうお気持ちをお持ちいただけないでしょうか、再度提案申し上げたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、各党各派の話し合い、協議を見守ってまいりたいと思っております。
  31. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、大事な問題になると、党内の力関係があるのか、あるいは総理自身が野党の立場というものをとにかく力で押してしまえばいいんだ、こういうお考えなのか、とにかく政治家としての国政の場における自浄への努力、意欲というものを率直に言って感ずることができない。  それで、総理答弁を聞いていると、議院は国権の最高機関だから、国会の構成員の辞職は慎重にしなければいけないのだ、最終的には本人に任せる、選挙に任せればいいんだ、こういう言い方をしているわけですけれども、ところが一方においては、国会の審議権を保護されておる国会議員に対して、何か国会事態が行き詰まってくると、解散解散という言葉を使って非常に国会運営を牽制をしているわけですね。あなたの言っていることは論理が一貫していない。詭弁を使っているとしか私は言いようがない。だから、では国会審議を優先するのか、あるいは二言目には解散だ解散だと言って、何かの一つ覚えみたいに、解散だと言えば国会は、野党は妥協してくる。こういう、議員の立場を尊重されなければいけないのだというお考えと、国会が行き詰まればもう解散なんだという総理見解とは、どこで論理の一致点があるのでしょうか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのうも宇都宮で記者会見しまして、解散をやる気持ちはないと言っておるのであります。
  33. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、解散への気持ちが修正をされた、こういうことですね。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は初めから解散するとは言っておらないのです。新聞がめたらやたらそういうふうに書き立てておるのを見まして、はなはだ迷惑をしておる次第なのであります。
  35. 山口敏夫

    山口(敏)委員 新聞やニュースがでたらめ三昧を書きなぐっている、こういうことですね。  私は、いまの与党の国会運営というものは間違っているというふうに考える一人なんです。ですから、たとえば決議案の問題、予算の問題、これは野党といえども国民生活責任を持っているのですから、この審議を積み上げて、政府の見解をただして、よりよい予算づくりのために、国民生活のために努力をしたい、これはだれも皆思っているわけですよ。しかし、政治的な問題というか対決をそういった国会の運営にも持ち込んでくる。この間も与党議員がレフチェンコ事件を取り上げたわけですけれども、これは一般的には、その真相解明、究明というよりも、何か野党の一部をそういう意味で牽制をしておる、恫喝をしておる、こういうとらえ方をする人もいるのです。  ロッキード事件のときもその真相究明、解明は国会の名のもとにおいて行ったのですから、そういう何か一方的に疑惑があるような形でこうした――もしそれが本当だとすれば、私は、党利党略、派利派略の問題ではないと思うのですよ。ですから、ロッキードのときと同じように、これは予算委員長にお願いをしたらいいのかあるいは議運の委員会にお願いしたらいいのか、私は各党各派で御協議をいただいて、官房長官がこれは政府としても資料の提出を求めるということでございますけれども、現在ある資料も含めて、あのときも秘密会でやりましたね、ロッキードのときも。あれと同じように、金額の大小が違うからいいんだということで済まされない、やはりソ連に日本国家的、国民的な利益を売り渡すような事実があるとするならば、あの自衛隊の幹部だってちゃんと逮捕されて罰を受けているのですから、私は、政治家の場合は時効だとかなんとかという形で済まされる問題じゃない、委員長としてこの問題はひとつ各党各派の協議の場を設けていただくということを提案しておきたいと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  36. 久野忠治

    久野委員長 私は、論議を通じて予算委員会の場でそれぞれの立場で明らかにしていただきたい、かように存じます。
  37. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういうことで、そういった日本国家としても大事な問題を党利党略、派利派略に使うことなく、正しく公正な形で真相を究明するものはする、そして国会審議は審議で与野党とも誠実にこれを実行していくということが与党の皆さんにも望まれることだというふうに私は思うのです。  私自身、過去の国会運営を少し調べてみますと、第一次佐藤内閣以降だけでも十人以上の閣僚が国会とのかかわりで罷免されているのですよ、国会との関係で。これは憲法に関する発言をしたとかあるいは国会軽視に関する発言。これは、野党がそのころは力があった、いまは力がないみたいですけれども、もう前だったら中曽根さんの一つ一つの発言問題は、これは大変ですよ。総理大臣も二回、三回やめる程度では済まされない。そういう経過があるのですね。野党が横車を押しただとか泣く子と地頭には勝てないとか、いろいろ国会運営上の与党の不満もあるかもしれないけれども、しかし、その当時でも自民党は三百議席あったですね。いまの与党と野党の議員差よりももっと開いていた。にもかかわらず、そうした措置がとられたということは、野党がしっかりしていたということよりも、私は、むしろ与党が責任政党としての自覚、自信、そういう誇りを持っていたから、野党にも譲歩することもできれば話し合いにも応ずることができた、国会としての折り目筋目をつけるという姿勢も貫くことができたと思う。  ところがいまは、政治倫理委員会の問題でも議院証言法の改正でも、あるいは減税の問題でも――減税なんかは衆議院議長の裁定のもとに与野党が協議を始めたわけですね。ところが、結果的には金がない、財源がないということで、これもあいまいな形で五十七年度は見送られてしまった。こういういまの国会の状況というものは、これが正しい姿だと総理自身はお考えでしょうか。総理が三十数年、御自分の人生を国政という場にかけてきて、そして、いまの与党と野党のその国会の状況、不毛の論議というものはあなたの望まれる姿なんでしょうか、この実態が。私は、総理として、与党の、政権党の総裁として、こういうあり方についてひとつ見解を承っておきたいと思うのです。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政府の責任者といたしまして、国会運営等を論議する立場にはございません。私は、自民党も各党各派も、みんな議会運営を円滑にして国民期待にこたえるべく努力していると考えております。
  39. 山口敏夫

    山口(敏)委員 それでは、そうした辞任勧告決議案も各党各派が話し合いをする、それについて総裁としてひとつ的確な指示を出す、こういうお考えでございますか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 十分話し合いをしていただきたいと思います。
  41. 山口敏夫

    山口(敏)委員 あなたの尊敬する吉田茂さんも、やはり社会党が政権をとった時代もあった、そのぐらい保革が伯仲しているような状況のときでも、常に議会政治、民主政治の発展のために政権交代可能な二大政党というものを念頭に置いておられたということは、中曽根さんもよく御承知だと思うのですね。やはりそういういまの中曽根さんの政治姿勢、国会に対する認識は、あなたが三十数年間も国会議員としておられたその国会というものを余りにも軽視していると思うのですね。やはり武器技術輸出の問題にしてもそうですし、それから財政再建、行革の問題に対しても同じような認識を持っておられる。この二カ月や三カ月は新政権の物珍しさも手伝っていくかもしれませんけれども、こういうようなあなたの議会軽視の姿勢というものでは、私はそう長く続くものとは考えないのです。ですから、ひとつここで心を新たに、国会議員に初めて当選してあの白亜の殿堂をくぐったときの感動、初心に立ち返って、やはり議会政治というものは、国民の代表者たる国会一つの話し合いの上で、合意というものを、憲法以上に、そして外国との交渉以上に尊重してこれを進めていくということに立ち返っていただきたい。特に議員辞職勧告決議案等々については、さらに総裁としてのお考え、リーダーシップのもとにこの取り扱いを円滑に進めるべくひとつ責任を持っていただきたいと思います。  そこで、私は秦野法務大臣に指揮権の問題に関係して伺いたいと思ったのですけれども、秦野さんがどういう趣旨で問題を提起されているか。あえて新聞や世論の反発を承知の上で制度上の問題、法律の問題としてあなたがたびたび発言をされておられるということは私もよく承知しています。しかし、これはもうたびたび各党から議論されましたように、法務大臣が指揮権を発動できるのは検事総長ですね。現場の検事の方々にまで法務大臣の指揮が直接影響するということではない。その検事総長が司法の権威を守るという立場でこの問題に取り組んでおるということになると、あなたは、犬養さんは間違いだった、やめるべきでなかったという発言ですけれども、あの佐藤さんのときでも、検事総長がやめるか法務大臣が責任をとるかという重大なことなんですね、やはり日本の司法制度立場から言っても。だから、検事総長をやめさせるわけにいかないから法務大臣が責任をとった。あれも決していいことじゃなくて、やはり日本政治史、司法制度の上においては、私は一つの不幸な事件だったというふうに思うのですね。  そうすると、国民の方々は六法全書を片手に毎日生活をしているわけじゃないわけですよ、秦野法務大臣みたいに。六法全書を片手に農家の人が野菜をつくっているわけじゃないのです。そういう一般国民の方々からすると、法の番人たる法務大臣が、この問題に関して指揮権、指揮権の発言をすると、何かたとえば田中さんが、あるいは佐藤さんが、起訴された段階で政治家としての折り目筋目をつけるのだと言って辞職をされるというケースもあるわけですね。しかし、この二人はやはり法治国家としての国民の権利として裁判で身の潔白を証明するのだ、裁判でクロ、シロをつけるのだということでいま法廷闘争をやっているわけでしょう。そうすると、仮に百歩譲って判決で無罪が出たというときも、余り法務大臣の心意気で、日本の司法制度あるいは法律というものを国民にもよくわかってもらうために、あえて非難を覚悟で提起していることが、逆にあだになるという場合だって私はあると思うのですね。やはり裁判そのものも政治的に影響されるのではないかという誤解を招く場合もある。ということは、あなたの本意とする法律の民主性というか、国民的なレベルでの一つの法律認識を深めるということが、逆にあなたの意図と反して、法の番人たるあなたの発言によって法の不信が拡大をする、こういうことも私はあると思うのです。ですから、その点をひとつ申し上げておきたい。答弁は結構です。――答弁したいですか。じゃ、ひとつ法務大臣から。
  42. 秦野章

    ○秦野国務大臣 大変御親切な御質問でございました。  指揮権の問題につきましては、私の方から発言したというよりも、臨時国会のときにいわば集中的に私に向かって、秦野が法務大臣になったら指揮権発動するだろう、おまえ、するかしないかというような御質問が物すごくあったわけですよ。それに答えなければならぬ。それに答えるには、指揮権というものはこういう制度でございますよということは私の立場として言わざるを得ないし、また、検察庁法などという法律は、正直言って国民は余り知らないのですよね。知らないのも当然だと思うのですよ。だから、ああいう質問のときに、やはりこういうことになっているのですよと言わざるを得ないという立場で、むしろある種の、ロッキード事件そのものじゃなくて、つまり指揮権の論理というものを申し上げたわけでありまして、それを余りもう――私は、この前のロッキード事件に関連しての指揮権発動問題は、ロッキード事件そのものじゃないんだけれども、指揮権の問題で終始しましたが、前回の臨時国会ぐらいで大方卒業させてもらったと思っておるのですけれども、しかし、なおいろいろ話があって、いまお話しの例の造船疑獄がどうのこうのというお話があったでしょう、あれは曲解なんですよ。私はあんなことを言っていないのですよ、この前ちょっとここで申し上げましたけれども。そんなことで私もいささかもうげんなりぎみなんですよ。もうぼちぼちわかっていただいた、こう思っておりますから、御注意の点はよく私も気をつけてまいりたいと思います。
  43. 山口敏夫

    山口(敏)委員 総理も、解散は言っていない、言っていない、新聞が先走りするだけだ、法務大臣も、真意は違うんだ、こういうことですけれども、やはり政治家、特に議員と閣僚は違うということをたびたび言っているわけでありますから、言葉がひとり歩きして国民の公正な感覚を混乱をさせないように、ひとつ今後とも御認識をいただきたいというふうに思います。  そこで、時間がございませんので、私は、国民生活関係する予算を通じて、ひとつ財政の問題をちょっと触れてみたいと思うのですが、五十八年度の一般歳出予算は多くの経費にメスが入れられている、昭和三十年以来、久方ぶりに伸び率ゼロということでございまして、行政改革との関係等々もあり、専売納付金を初め、税外収入もきちっと確保されておる、こういうことで私は努力は評価されると思うのであります。  そこで、大蔵大臣に伺いたいのですが、臨調の第一部会長の意見メモというのが五日に出ましたね。それは、歳出の徹底削減を掲げる土光路線から現実路線に転換をされた、さすが根回しの竹さんというぐらい、大蔵大臣になっても臨調相手にいろいろ調整をして、いわば経済運営、財政運営のフリーハンドを大臣が握られた、こういうことだと思うのですけれども、短兵急な国債減額よりは中長期的な削減へ転換をしよう、こういう政策転換と受けとめてよろしいわけですね。
  44. 竹下登

    ○竹下国務大臣 梅本第一部会長の御報告でございますが、現実的な御報告であるという評価はいたしておりますが、私どもが臨時行政調査会に対して私どもの立場からいわゆる根回し的発言をする機会とか、そういうものは持っておりません。これはこれで厳正にさまざまな御指摘をいただく、この筋に対して私どもは厳正にまた対応しなければいかぬというふうに思っております。  ただ、いまおっしゃいましたように、中曽根内閣ができましてから、いわば経済の展望、指標、そういうものについてもやはり自由主義経済を基調とするわが国の経済運営であり、そしてまた国際経済というものがことほどさように不透明な今日、中長期的な立場に立ってこれらの点に対して経済審議会に対して御意見を求めるというような御方針に従って、財政問題につきましても、現実的な中長期的な視点からこれらに対するさまざまな検討を行って、行政改革というものを貫いていこう、こういう方針であります。
  45. 山口敏夫

    山口(敏)委員 先週の予算委員会でも、大蔵大臣は国債整理基金がなくなった場合は借換債を発行することになるが、できれば財源は借りかえの赤字国債によらずにいくのが筋だと言って、歳出カットとか増税とか国債借りかえのどれか組み合わせをして国民の選択を待ちたい、こういう御答弁をしているわけですが、大蔵大臣としては直間比率の是正をお考えになっている、こういうことですな。
  46. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先日この委員会におきまして、公明党の矢野書記長に対する御答弁の中で、将来の対応策として三つを指摘いたしましたことは、御指摘のとおりであります。  一つは、いわゆる国民のサービスというものに対して、歳出カットという形で現状に比してこれを低下させる。次は、いわゆる借換債議論のときでございましたが、いかなる形にしろ、後年度にツケを回す、いわば国債の増発によってこれに対応するという問題と、そしていま一つは、いわゆる国民受益に対する負担という考え方から、増税という言葉を使いましたが、一般的にその言葉を使ったことはございますが、正確に申しますならば、社会負担その他もございますので、その他新たなる歳入、こういうふうに申し上げた方が適当かと思うのであります。  したがって、その議論に当たっての直間比率の問題は、昭和五十四年、五十五年にわたって議論されますときには、直間比率という問題は、いわゆる一般消費税(仮称)そのものである、こういうような感じに受けとめられがちであった。ところが、その後、いろいろな場合、本院における議論の場を通じましても、直間比率というものに対して検討を加えるべきだ、これは税制調査会の意見の中においても出されておる、したがって、私どもとしても税制調査会の審議等を見守りつつ、直間比率というものに対しては真剣な検討を加える環境は熟しておる、このように考えております。
  47. 山口敏夫

    山口(敏)委員 直間比率を是正する場合は、官房長官が徳島で七対三を五対五ぐらいにすべきだ、こういう趣旨の発言をされましたけれども、これは大蔵大臣としても、そういう比率を大蔵省としては検討しているということでよろしゅうございますか。
  48. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは直ちに何対何ぼにする、こういうことではなく、基本的にその数値をあらかじめ定めておるわけではございません。先進国等々の例をも見ながら、そして最も現実的な――税制そのものは長い積み上げの中に現行税制が存在しているわけでございますから、それぞれ国家、民族のニーズに応じてそれが存在しておる限りにおいては、必ずしもどこを参考にする、必ずしも絶対的な数値というものではありません。したがって、今日の数値が直接税依存度が高い、こういう感じは持っておりますが、どこまでという数値について絶対的なものが念頭にあるわけではございません。
  49. 山口敏夫

    山口(敏)委員 じゃ、官房長官が示された五対五という根拠は、これは大蔵大臣に聞く方がいいと思ったのですが、それじゃ官房長官からどういう趣旨で御発言になったのか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  50. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私も税金屋を四年ぐらいやりましたから、各国の税制、日本の税の現状を、ある程度それなりの理解はしております。そういう立場に立って一般的な私の感じを申し上げたにすぎません。それをどうするかということは、いま大蔵大臣がおっしゃったとおりだと思います。
  51. 山口敏夫

    山口(敏)委員 やはり中曽根内閣の官房長官なんですから、大蔵大臣、これは官房長官が示された五対五というぐらいのものはあなたの念頭の中にも一部ある、こういうふうに理解していいわけですね。
  52. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは後藤田官房長官のお答えのとおり、自治省の税務局長であった時代もありまして、私どもといたしましても、いま後藤田官房長官が述べられた数値というものも念頭にあることは事実であります。が、これがいわば絶対的な一つのガイドラインとかということで考えておるものでは必ずしもないということでございます。
  53. 山口敏夫

    山口(敏)委員 これは国民生活にとっては非常に重大なことだと思うのですね。いま五十八年度予算ベースで考えると、直間比率は七対三ですね。一般会計三十四兆円、これを五十八年度ベースで五対五にすると、二十四兆対十兆だったものが十七兆、十七兆でセパレートされると、単純計算で言えばとにかく間接税の枠が七兆円にふえるということなんですね。個人消費が百七十兆円ですからこの四%程度ですけれども、食料など生活必需品等は抜いて、半分が非課税対象措置ということになると、とにかく個人消費の一〇%が大体間接税の規模になる。これは欧州でやった一つの直間比率と同じなんですけれども、ヨーロッパにおいては間接税が、制度がスタートしたときは一〇%だったものが、いまはもう二〇%になっておるわけですね。  ですから私は、いまの大蔵大臣の答弁の中に、財政再建の本音としては、歳出カットよりも直間比率を名目にした増税志向がどうしてもあるのではないか。行革を放棄して大型増税を検討している、こういう判断をせざるを得ないわけです。  特に、この間大蔵省が出した財政の中期展望を見てみますと、五十九年度、六十年度は一般歳出を五・二%増大を見ているんですね。そして五十八年度、いま大蔵大臣よくやりましたねとほめさせていただいた税外収入も二兆円も減少しているんですよ、五十九年度においては。だから、この大蔵省の中期展望でいくと、もう五十九年度において四兆一千六百億円から五兆四千五百億円の不足が生じる、こういう一つの数字が成り立つわけですね。じゃ、この金は一体どこから持ってくるかというと、五十九年度においては直間比率の是正というたてまえのもとに一つの間接税の導入が、まあ七兆円までは計らえないまでも、六対四にしたって景気に相当な影響を及ぼすような間接税がもうすでに政府の中で内々検討をされておる、政府の最高首脳の頭の中にはそうしたものがきちっと位置づけられておる。こういうことで、この問題も中曽根総理流に、国会合意国民のコンセンサスもないままにどんどん先行されると、これは一挙に国民生活国民経済は破綻するというような状況にもなりかねないと私は思うのです。  この間、自民党の有志議員が呼応して、増税なき財政再建に向けて財政再建議員研修会というのがあった。これは大型間接税等々には断固反対をする。さすが自民党だと思うのですけれども、一方においてはこういう声も上がっているわけです。私はあくまで増税なき財政再建というものを、やはり総理は行管庁長官のときにも、土光臨調にも、再三国民に対しても、自民党予備選挙を通じて訴えているときも、常に増税なき財政再建ということを明言していたわけですから、これはまだ一年も前の話じゃない、二十九年前の憲法改正や徴兵制の問題じゃなくて、去年の話ですからね。総理が増税なき財政再建に取り組むんだという決意を再度この予算委員会の場でひとつ表明しておいてください。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 増税なき財政再建の基本方針は守っていきたいと思います。
  55. 山口敏夫

    山口(敏)委員 もし基本方針を守れないときは、総理としてどういうお考えですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本方針をできるだけ守って、貫いてまいりたいと思っております。
  57. 山口敏夫

    山口(敏)委員 ですから、鈴木さんも財政再建の公約が破綻をしたので退陣をされた。中曽根さんにどうも勝てそうもないからやめたということではないはずでありまして、やはり国民に約束したことが実行されない、土光臨調に約束したこともまた実行できない、こういうことで政治責任をとられたわけでありますから、中曽根総理もそうした決意のもとに増税なき財政再建に取り組むんだ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 増税なき財政再建の基本方針を全力を尽くして守ってまいりたいと思っております。
  59. 山口敏夫

    山口(敏)委員 その先を一言、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一生懸命努めてまいります。
  61. 山口敏夫

    山口(敏)委員 一生懸命やるのは別に中曽根さんだけじゃなくて、全国会議員が一生懸命国家国民のためにやっているわけですから、やはり総理大臣の地位は重いわけですから、その総理大臣の地位をかけてこの増税なき財政再建に取り組む、こう理解してよろしゅうございますか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 とにかく一生懸命やります。
  63. 山口敏夫

    山口(敏)委員 私は、総理答弁にどうも限界があるようですから、国民皆さん方に、ことしは政治決戦と言われている。政治決戦と言われているということは、言いかえてみれば生活決戦だ。この増税をしないで歳出カット、行革を通じて財政再建をするという哲学、理念を、総理はどうも一生懸命やるという抽象的な言葉に終始をしておる。これは主権者たる国民皆さん方に増税か行革かということで選択をしてもらわなければならないということを私は申し上げておきたい。  そこで、大蔵大臣に財政を説明するのも恐縮ですけれども、新自由クラブの政策室でもいろいろ試算をして、まあさっきの五十九年の要調整額の部分を含めて、どうしたら増税をしないで予算を組むことができるかということで、五十九年度の一般歳出の金額を五十八年度の水準に凍結をするんだ、そうすると一兆六千八百五億円の不足が解消する。行政改革の促進の見地から税外収入を五十八年度並みに、五十八年度の税外収入確保の実績をもってこれに取り組む、こういうものを進めていくだけで一兆六千五百億にも達するわけです。五十八年度と同じく国債整理基金の定率繰り入れ停止を続行することにより一兆六千億の不足が解消する。そうした項目を合計すると、大型増税を回避することができる。日本銀行なんかの納付金も一兆円のようですけれども、あと五千億ぐらいは、きょうは日銀の総裁が来ているかどうかわかりませんが、見込まれる。こういう試算も成り立っておるわけでありますから、ひとつこれはやはり中曽根内閣があくまで土光臨調、国民世論との合意に基づいて、総理が増税なき財政再建を図るんだという決意で取っ組めば、まだまだ工夫する余地はたくさんある。やはりあなたが戦後の総決算をしたいというのならば、防衛や外交問題だけじゃなくて、国内における諸矛盾に対してもその決意で臨まれるということが、よけいなことですけれども、中曽根内閣国民支持の基盤にもなると私は思うのです。その辺、総理としてどうお考えか、お聞かせ願いたいと思うのです。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その決意で臨もうと思っております。増税なき財政再建を守って一生懸命努力するつもりでおります。(発言する者あり)
  65. 山口敏夫

    山口(敏)委員 まあ、同僚議員から財政再建ができないときの責任を追及しろということですけれども、時間の関係がありますので、これは国民皆さんが、できないときは中曽根内閣にどういう判定を下すかということで、やはり国民一人一人の方も真剣に考えてもらいたいというふうに思います。  そこで私は、財政問題の中でいま一つだけ伺っておきたいのですけれども、課税最低限が五十二年から据え置かれている。税の負担が年々国民にふえている。こういうことで租税負担率が、国、地方を入れて昭和五十二生の一九・三%から五十八年度予算の二三・七%になっておる。こういう負担率を、パーセントや何かじゃ実感がわかないからお金にすると、五十七年度補正予算で三十兆四千七百八十億円、五十二年度は十七兆三千三百二十二億円ですから、実に十三兆円税負担がふえている。この間の国民所得は、百五十二兆円からいま二百十三兆円ですから四割しかふえていないのに、税負担は倍になっている、こういうことなんですね。  私は大蔵大臣に、あなたニューリーダーなんですからね、安倍さんも竹下さんもやはり政治家として国民のためにもっとがんばってもらわないと、党内派閥の動きだけじっと見ているようなことのないように、ニューリーダーは国民のために何をなし遂げてニューリーダーになったかということの上においてひとつ御判断いただきたいと思うのです。  そこで、質問の趣旨は、単純に言うと、五十二年からいままで六年間、税収がふえた分を単純計算すると何と四十五兆二千八百四十三億円になるわけですよ。私が言っているのは、五十七年、五十八年度並みに予算を歳出カットに努力して取り組んでいれば、五十二年をベースにして自然増収分を積み上げていけば四十五兆円になるということなんです。そのうちの十五兆三千百九十三億円は源泉所得税から繰り込まれているわけですね。  こういう議論をすると、それじゃ減税分はいままで足していけば百兆円ももう減税しているじゃないかという理屈と同じになるわけですけれども、私が申し上げたいのは、この四十五兆円、源泉所得税だけでも十五兆円、この六年間で国民皆さんが一生懸命働いて納めていただいているわけですね。だから、政府は何かというと財源がない、財源がないと言うけれども、この十五兆円の金は社会福祉にも回っているでしょう、国を守るための防衛費にも回っているでしょう、国民経済を活性化させるための公共事業にも回っているでしょう、しかし同時に、国鉄の赤字に三兆五千億円とか食管会計に四兆七千億円とか医療費とか、あるいは国債の利払いだけでも二十一兆円この六年間に払っている。ということをすると、政府が一兆円や二兆円の減税ができないはずがないと私は思うのですね。本当に一生懸命働いて国家社会のために貢献をして、一生懸命協力をしてくれている方々に対して、国民に対して、子供たちが一生懸命働いているのに、おやじの放漫経営で、放漫財政で、全部これが国民の側に還元されておらない。極端に言えば還元されておらないということも言えるわけですよ。そこを財政当局と、やはり議院内閣制なんですから、与党たる立場において、そうした国民の側と行政当局、財政当局との理屈をどう調整するかというのが政党の責任じゃないかと思うのです。  なぜ減税ができないのか、なぜやらないのか、総理はやる決意があるのか、それをひとつ総理からお答えいただきたいと思うのです。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昭和五十三年以来、いろいろ基礎控除とかそういう課税最低限の規定が動いておりません。そういう意味におきまして、税負担が重くなっているというふうにわれわれもよく理解しておるわけです。そういう意味からも、できるだけ減税のチャンスを見つけなければいけないと思っておりまして、国会の皆様方にもいろいろ御努力を願ってきたところでございます。しかし、遺憾ながら財源の問題にぶつかりまして、日の目を見ないのは大変残念なことでございますが、しかし今後ともそのチャンスを模索して努力してまいりたいと考えております。
  67. 山口敏夫

    山口(敏)委員 日の目を見ないのが残念なのは総理じゃなくて国民の側なのでありまして、やはり主権者たる国民の協力のもとにこの中曽根政権も運営されていくわけでありますから、ひとつもっと真剣にまじめに財政再建と、増税を阻止する、そして減税の可能性というものを模索していくということで政治がリーダーシップを発揮をしていただきたいというふうに思います。  そこで、行革も「活力ある福祉社会の建設」「国際社会に対する積極的貢献」、こういう二つの大きな理念を持って臨調も進められているわけですね。私は、これ以上進んでいくと、それこそ勤労者の勤労意欲が減退すれば生産性も低下する。長期的に見れば、国民的な国家的な利益を大きく損なうということなんです。きのうも全民労協が減税闘争で政府にも申し入れた。また、国会デモも請願もしておる。こういう事態が続くと、労働者も、無視し続けるなら決意をしなければならない。決意とは、源泉徴収をやめて申告制に変えるんだ。こうなったら、それこそ税務署の窓口は大混乱です。これは実現性があるなしにかかわらず、そういう気持ちに納税者が向かいつつあるということを、やはり総理は国の責任者としてもっとまじめに考えてもらいたいと思うのです。  ですから、総理大臣防衛防衛だと言って、仮想敵国がソ連なのかどこなのかわかりませんけれども、国民立場から言えば生活防衛しなければならない。その仮想敵国は中曽根政権であるかもしれない。中曽根政権だ。だから、平和憲法を守るのだ、増税は絶対させてはならないのだ、行革を投げ出すようなことは絶対させない。国民の側における中曽根政権に対する三海峡封鎖ですよ。とにかく増税はさせない、行革を放棄させない、そして平和憲法を守らせるのだ、こういう国民中曽根政権との対決、こういうことは、吉田茂さん以来の大政治家が出てきたという外国の方々の思い入れを幾ら何でもわれわれ日本国民がそれを足蹴にするということはしたくないわけでありますから、ひとつ総理がみずからのリーダーシップで増税なき財政再建、行革を推進をするということの決意をいま一度お聞かせ願いたいと思うのです。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行革はこれを忠実に断行してまいりたいと思っております。私も行政管理庁長官として臨時行政調査会をつくった責任者の一人でございまして、あれだけ土光さん以下御労苦を願っておるわけであり、全国民皆さんにもこれを御支持していただいておるわけでございますから、出てきた結論に対しましては、誠実に不退転の決意で実行してまいりたいと思います。
  69. 山口敏夫

    山口(敏)委員 それから、やはり行革も、臨調はいろいろ取り組んでいますけれども、なかなか五兆円に上る補助金の見直しは、まあ各利害関係がありますから、どうも努力の割りにはいい結果があらわれていない。中曽根総理も行管長官時代に、行政改革はまず政治家、そして役人が痛みを受け、それを国民にお願いするのが筋だと言っていますけれども、実際はいろいろな各党各派、総論賛成、各論反対、政党といえども与党、野党ともに票をもらわなければ当選できないわけですから、また必要でない補助金というのはないのですから、必要があるからいままで補助金も出してきたわけですから、それを切るということはなかなかできない。これはそういう意味で、総論賛成、各論反対にならないように、行管庁長官、副総理に、この臨調の審議を踏まえて最終答申が国会に出されますが、それをやはり一括して審議をするというような形が私は大事だと思うのです、この前の国会と同じように。法律も、委員会も、そこは国会でみんな各党決めるわけですけれども、個々の委員会だとそれぞれいままでの行きがかりもありますから、総合的な特別委員会を設置するとか連合審査の方法をとるとか、まあこれは国会の問題ですけれども、政府としても一括法の形式で国会に提出をするということによって行革の実を上げていくということはどうでしょうか。
  70. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 臨調におきましても、もう最終答申を三月の上旬には提出する、こういうことになっておるわけでございまして、いま臨調で慎重に審議をされておる状況でございます。  そこで、総理がたびたび申されていますように、答申が出ましたときには、最大限にこれを尊重して実行に移すというのが政府の方針でございますから、その答申が出た段階においていろいろな問題を考えていかなければならぬと考えております。  山口委員の仰せになりましたように、関連した法律は一括して出すという御意見、私は貴重な御意見だと思います。それは十分承っておきますが、何しろまだ答申が出ない段階でございますから、いまそういたしますとは言えませんけれども、山口委員の御意見は貴重な御意見として承っておきたいと思います。  なお、国会云々の問題は、これはもう国会マターのことでございますから、私がとやかくのことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  71. 山口敏夫

    山口(敏)委員 では、行革の答申が出たら一括して法律として国会に提出する、こういうふうに理解してよろしゅうございますね。
  72. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 山口委員の御意見は貴重な御意見として承って、努力をいたしたいと考えております、こういうことを申し上げたわけであります。
  73. 山口敏夫

    山口(敏)委員 そういう含みをもって取り組んでいただくということでお願いしたいと思うのです。  そこで、ちょっと時間がないので、最後に、新自由クラブ・民主連合としても武器技術の問題について触れておきたいのですが、これは山中通産大臣、この間、先週の新聞に、日本の半導体保護策を批判、米業界、ということで、アメリカの業界と政府が一体となって、自動車や電化製品と同じように、このままでは日本の先端技術が世界市場を席巻してしまう、そういう意味でひとつ抑えておこう、こういう趣旨の対抗策を相談して申し入れているわけですけれども、通産大臣として、これをどう受けとめておられますか。
  74. 山中貞則

    ○山中国務大臣 アメリカもまあよう言うわというぐらい次から次にいろいろな問題を言っていますが、ついには産業政策まで言い出したので、近くブロックUSTR代表が来ますから、こちらもブロックして、そんなむちゃな話をするなよ、内政問題は内政問題、その国の発展はその国の政策とエネルギーだ、おまえさんたちもちっとは日本を見習ったらどうだというぐらいの交渉をやるつもりでおりまして、時間もないそうですから、一応これだけ答えておきます。
  75. 山口敏夫

    山口(敏)委員 せっかく山中大臣の国士的な決意というものもあるわけですけれども、捕らえてみたらわが子なりということわざがありますよね。敵はアメリカの産業界、政府だと思っていたらば、どうも日本の国益を、産業界をいろいろ手かせ足かせをしてしまうことに同意をしてきたのは中曽根総理大臣じゃないかというふうに私は考えるのですけれども、たとえば日米相互防衛援助協定、これが今回の総理が言う武器技術との一つのかかわりになる協定ですね。これをやると、時間がないから簡単に言いますが、政府間の協定で民間企業は規制をしていいのか、それから、これが今後の日本の企業にどういう影響を与えるか、それから、企業に拒否権はあるのかということの三点。  それから、別に中曽根さんのときにレーガンが頼んできたわけじゃなくて、歴代内閣のときに武器技術協力というのはアメリカ側からいろいろ要求されてきたわけです、陰に陽に。それを通産省が日本の技術を守るというか、日米間の一つの調整の中で何とか抑えてきたし、その歯どめというか、国会の決議というものもまたそこに存在をしていたわけですね。ところが今回、中曽根さんが、あれよあれよという間に、早撃ち何とかで、とにかく結んできてしまった。こういうことで、日本の産業界を守り発展をさせる立場の通産大臣としてひとつどういうお考えか、この問題も含めてお聞かせ願いたいと思うのです。
  76. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は実務を主管しておりますから、外為法、輸出貿易管理令その他の根拠によって、堀田ハガネのときに指摘された、国会でもっと厳密にきちんとやれということでありましたから、その処置も、その後申告する書類の内容まで全部手落ちのないように税関当局まで報告書が出るようにさせてあります。したがって、これからもそれを踏まえて、米国以外の国にはその方針でいきますが、米国については、官対官ですね、防衛庁対国防省か国務省ですね、そのルートはまた別途ありますから、私のところは、大体民間企業からアメリカのいわゆる官公署の方へなのか、あるいは民間対民間へなのか、そこらのところはこれからの具体的な事例が起こったときに結ばれた取り決めに従って行動するのですが、要点は、先端技術等を向こうが欲しがった場合に、日本の方でもその先端技術を海外に流出したくないという民間企業はいっぱいあると思うのですね。たとえばUSI等は、これは防衛庁の所管ですが、あれは武器ではないから一応輸出してもいいということになって、各国から消防用とかあるいは救急用とかでいろいろ発注があったけれども、一件も成約していないのですね。これは高過ぎるということが主な原因らしいのですが、逆に、民間企業が売らないというものを売らせることは絶対にありません。民間サイドの話になったら取り次ぐが、民間の方で出したくないというものについては、国は、国家は何の権力的な関与もしない、純民間のいわゆるコマーシャルベースの判断にまつだけであるということでございます。
  77. 山口敏夫

    山口(敏)委員 やはり政府から補助金も出ているわけですからね。また、通産省とのいろいろ調整もあるということで、業界自体は、出したくない技術を守るということはやはり実際的には非常にむずかしいと思うのです。しかし、通産大臣がそういう立場できちっと折り目筋目はつけるのだ、こういうことであるとするならば、その努力を大いにひとつしていただきたいというふうに思います。  そこで総理、いまあなたが国会合意国民のコンセンサスを待たずに、レーガンとの取り決めで約束をしてきてしまったという問題は、これはやはり歴代内閣も皆、鈴木さんも国防省あるいは大統領府から陰に陽にいろいろな要求をされているにもかかわらず、国会合意国会の決議という問題を踏まえて、結局日米関係が多少ぎくしゃくしても万やむなしというような形で、アメリカの政府も大事だけれども、やはり日本国会国民の代表者たる国会の決議を優先させなければならない、こういう姿勢だったわけですよね。ですから、中曽根さんになったら、国会の決議というものは、これは技術は除かれているのだ、アメリカは例外なんだ。ところがこれは、同僚の楢崎弥之助議員が、すでにこういう雰囲気というか状況があったので、内閣に対して意見書、質問書を出している。「その行政を行うに当たっては例外措置も含め、これらの決議に反することのないよう厳粛に受け止めるべきであると考えるが、内閣見解を問う。」ということに対して、「決議は、国権の最高機関たる国会を構成する衆議院において議決されたものであり、政府は、その趣旨を今後とも尊重してまいる所存」でありますということになっているわけですから、例外措置は、あなたは詭弁で逃がれたけれども、ない、こういうことなんですね。ですから私は、塚本議員も言ったように、こういう問題は短兵急に結論を急がずに、あるいは日米安保条約の絡みの中で技術協力は、供与はどうしたらいいかということは、われわれだって十分討議をすれば合意ができないことはないかもしれないのですよ。昔の、三十年前の日本とアメリカの関係、二十年前の日本とアメリカの関係、今日の日本とアメリカの関係、米ソの国際緊張等々、そういう点では国会合意が一〇〇%といかなくても三分の二の合意はとれるかもしれない。そういう国会を無視してやるということは、やはり主権者たる国民考えを無視して独断専行するということでもあると思うのです。  ですから、そういう意味で、今後、もうあらゆる内外の諸問題が総決算、――まさに総理のいうように総決算の時代だと思うのですよ。それだけにもっと国会立場というものを総理が十分尊重していく。国会合意の中でこの総決算の一つ一つの問題を解決していくという決意がなければ、よけいなことかもしれないけれども、私はあなたの政権は半年ともたないと思うのです。この大事な時期に派閥抗争や党内抗争あるいは政治抗争の中で、政権が党利党略、派利派略の中で動かされるということは国民も望んでないと思うのです。そういう意味で、もっと謙虚に、国民合意イコールこれは国会の決議というものも含めて、修正するなら修正する、あるいは議論を提起するなら議論を提起するということの中で一つ一つの問題を解決していくということが私は大事だと思うのです。  最後に、時間になりましたので、そのお答えと、それから、さっき私は財政問題の中で一つ落としましたので言うのですけれども、建設大臣に伺いたいと思ったのですが、要するに、住宅も百十万戸と落ち込んでいますね。それが百三十、百四十万戸になれば、一軒一千万としたって十四兆円、十五兆円。一般消費の部分の電化製品だあるいは家具だということになれば四十兆、五十兆の景気対策にもなる。容積率をいまの都市計画法の見直しの中で、きょうも建設大臣、新しい制度考えたようですけれども、容積率をいままでの倍にすると、マンションなんかは三分の一安くなるというのですよ。三千万のマンションが二千万円で供給できる。二千五百万のマンションが千六百万ぐらいで供給できるということになると、年収の四倍、五倍ならばまだ買える人がたくさんいるわけですよ。いま年収の七倍、八倍、十倍だから住宅需要が落ち込んでいるわけですから、こういうのは建設省の努力で、都市計画の見直しの中で、容積の見直しの中でやれば、一方においては歳出カットを思い切ってやっても、政府が跳んだりはねたり景気対策しなくても、いままでの法律の規制や何かを国土庁長官建設大臣が一生懸命やれば、これは民間需要の中で景気対策にもなり得る。  ですから、こういう考えは、お互い知恵を国会で出せば、まだまだいっぱい出てくると思うのです。そういう中で、できるだけ財政国民経済を直結してだけ考えないで、総理の言う総決算の意味でもっといろいろ見直し、手直ししていけば国民経済も活性化され、内需も喚起され、総理レーガンと約束したことも果たされるということだと私は思うのです。  ですから、私が申し上げたいのは、与党あるいは政権が、一人一人の閣僚が、もっと真剣に自分の行政範囲の中で、官僚の出したものだけに目を配っておるだけじゃなくて、みずからのオリジナリティーでもって社会的現実と合わして仕事をしていっていただきたいということを特に要求して、そして最後に、総理の決意、認識をお聞かせいただきたいというふうに思います。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会決議は今後とも尊重してまいりたいと思っております。  なお、武器輸出三原則あるいは政府の統一見解というものは、今後とも遵守してまいるつもりでおります。  それから、いまおっしゃいました容積制限等のお考えは私も非常に同感でございまして、いままで政府も若干努力してまいってきております。都市計画法とかあるいは建築基準法とか、そういう面で努力しておりますが、私は全く同感でありますから、さらに検討させていただくようにいたしたいと思います。
  79. 山口敏夫

    山口(敏)委員 どうもありがとうございました。
  80. 久野忠治

    久野委員長 これにて山口君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十三分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  81. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  82. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうの午前中の質問で、各党いわゆる一巡の代表総括質問が終わりました。いま当面いたしておりますわが国政の重要な問題点については、私、大方出そろったような気がするわけであります。  そこで、私、まず冒頭に、きわめて率直かつ素朴な質問をしてみたいと思うのでございますが、いま国民は国政に対して何を求めているであろうか。わけても、いま開かれておるこの通常国会に対して、国民は最も何を強く求めているであろうか、こういうことを実はそれぞれの代表質問を聞きながら、また、総理の御答弁を聞きながら、私自身も考えてみました。なるほど総理が言われるように、防衛力の問題に関心を持たれておる方もございましょう。あるいは財政再建問題について関心の高い方もあられるでしょう。財政問題が非常にむずかしい事情の中にあるけれども、特に年金やあるいは恩給生活者、ボーダーライン層と言われる国民層は、社会保障を充実さしてもらいたい、こういう要望もございますでしょう。  しかし、私は、それにも増して、そのような具体的な政策も大事だけれども、政策以前の問題として、いま国民は、これはひとり中曽根内閣だけではございませんが、自民党の政府に対して、いわゆる政治倫理の確立、政治家も政党も、いわゆる政治家に対するモラル、政党に対するモラルの確立を最も強く求めているのではないだろうかというふうに私は強く感じたわけでございます。  この点に対する、私の感想に対する総理の御所見をまず伺ってみたいと思います。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御指摘のように、政治モラルの問題についても非常に大きな関心が高まっていると思います。  しかし、また一面におきまして、国民皆さんは、生活防衛という問題をやはりいざということになりますと一番御心配なすっておる。特に世論調査を見ますと、物価、減税、景気というものが一番上へ来ておりますし、それから教育問題では受験問題、子供の試験問題、これはやはりいま最大の関心事になっておるんではないか、そのように考えております。
  84. 藤田高敏

    藤田(高)委員 世論調査にあらわれたそれ自体の問題でやりとりをしようとは思っておりません。しかし、私は、政治倫理確立に関する問題は、各党の代表からもしつこく、特にロッキード裁判にかかわる問題について質問がございました。私も、ずっと総理の御答弁を聞かしてもらいましたが、いまなお釈然としないわけであります。  この国会は、言うまでもなくわれわれ国会の、国民に対して、ロッキード裁判にかかわる政治倫理の問題に対して果たすべき役割りというのは、法律や裁判上の問題ではない、いわゆる政治道義政治モラルの問題について、お互いに国民が納得し得るような、そういう解答を出すことではないかと思うわけであります。  そういう立場から物差しを当てて考えますときに、私は、田中総理ロッキード事件で問われまして、いわゆる初公判廷において、元総理が、総理大臣の職にあった者が起訴されたこと自体が議会政治あるいは国会に対して大変な権威を失墜することになった、これはまさに万死に値するということを法廷で披瀝されました。  私は、いま被告人である田中総理自身のこの御発言が、明確に国会議員としてあるいは元総理としての政治的道義的責任を十分自覚された発言だと認識をいたしておりますが、総理のお考えはどうでしょうか。これが一つであります。  二つ目には、この問題に関連をいたしまして、もし中曽根総理が、今日いうところの田中被告人の立場でありましたら、あなたはどういう政治的道義的責任を感じられるでしょうか。このことについても、あわせてお答えを願いたいと思います。
  85. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 田中さんがどういうふうにおっしゃったか正確には承知しておりませんが、それは御本人のお考えであると思いまして、他人のいろいろな言動に対して内閣総理大臣として論評することは差し控えたいと思っております。  また、おまえがその立場になったらどうするかという御質問でございますが、そういう仮定の問題につきましては、御答弁を同じく差し控えたいと思います。
  86. 藤田高敏

    藤田(高)委員 こういうやりとりはしたくありませんが、総理は、都合の悪いことに対しては、いわゆる逃げるにしかずと、三十六計逃げるにしかずというたとえがありますが、そういう姿勢でこの国会論議に対応しておりますことに対して、私は非常に遺憾に思うわけでございます。  総理は、総理大臣立場で現在係争中の問題に総理としての所見を披瀝することで裁判に重大な影響を与えてはならぬ、こういう意味のことをすでに御答弁なさっておりますが、私は、裁判所自身は、政治的道義的責任について総理が率直な御感想なり見解を述べられても、法律上の問題には、裁判上の問題にはさしたる影響がないと思うのですが、どうでしょうか。
  87. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり立法、司法、行政と、三権の分立は憲法上も明定されておりまして、この限界は厳重に守らなきゃならぬと思います。したがいまして、行政関係の最高責任者にある者が、いささかなりとも価値批判めいたことを申し上げることは、やはり終局的には裁判にも影響すると考えられますので、差し控えたいと思うのであります。
  88. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、この問題に対しては、若干の表現上や対応の仕方においてニュアンスあるいは強弱の違いがあったかもわかりませんけれども、前鈴木総理といえども、たとえば灰色高官に対する証人喚問の問題についても、議院証言法の改正を促進さし、あるいはその上に立って証人喚問をやっていくんだ、こういうやはり積極的な姿勢というものをこの国会の中で明確にされたと思うのです。そういう前総理あるいは前内閣との比較において判断をします場合に、私は、中曽根総理政治倫理確立に対する問題、なかんずくロッキード裁判にかかわる問題については、鈴木総理よりも後退をした、こういうふうに認識せざるを得ないわけでありますが、そのように判断をしてよろしいかどうか、お尋ねをいたします。
  89. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議院証言法の問題は長い間の国会の懸案でございまして、私は、早くこれが解決されることは望ましいと思っております。各党の間において協議を進められまして、早く解決されることを私も希望いたしております。  いろいろな人によって考え方、人生観、あるいは民主主義に対する基礎観念等、やはりニュアンスはあるだろうと思います。私はわりあいに三権分立を厳に守る、そういう考えに基づいておりますので、そういう立場で申し上げているわけであります。
  90. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この問題につきましては、総理のその種の消極的な態度なり姿勢に対して、きわめて残念である、遺憾であるということを申し上げ、次に進みたいと思います。  二つ目の問題は、当面の中曽根内閣の基本的な政治姿勢についてでございますが、いろいろこの総理の基本的姿勢の物差しとして幾つかありますけれども、すでにこれまた議論をされてまいりましたように、だれが何と言おうとも、総理の御答弁を聞いておりましても、当面の国政に対処する基本的な一番中心点というのは防衛力の強化にあるのではないか、このように私ども受けとめざるを得ないわけであります。いろいろ財政再建の問題についても、これから私、特にスペースを割いて質問をしたいと思っておりますが、財政再建についても、大変失礼だけれども、いま私どもの手元に出ておる材料なり予算書で見る限りは、財政再建についてはきわめて消極的ではないか。極端な言い方をすれば、他人任せ、あなた任せじゃないか、こう思うわけでございます。いわんや社会保障の問題については、財政再建に名をかりまして、年金や恩給生活者に対する物価スライドさえ認めない、こういうことでありますから、これまたきわめて冷淡な態度に終始をされておる。  政治倫理の問題につきましては、いま私からも質問をしたような態度でございますから、これまた都合の悪いことは八十六計逃げるにしかず……(「三十六計」と呼ぶ者あり)こういう態度でございまして、もう実質的に力点を置いておるのは、この防衛力の強化拡大ではないか。そういう意味において、私は、この三十六計逃げるにしかず、余りすぐやじに答えますと調子が悪いですから少し間を置いて申し上げましたが、やじも聞こえておるわけでございます。  さてそこで、私、けさのある社説を読みまして、非常にそうだな、国民皆さんはそういうふうに受けとめているんじゃなかろうか、こう思いましたのは、もういきなりこの社説の冒頭に「閣僚経験のある自民党の長老議員が「どうも危なっかしい。女房も娘も、こんな調子では自民党に投票できないといいだした。不安なことです」と述懐するのを聞いた。危ない、という声が野党だけでなく、与党の中にも、街にもふえている。」これはこの社説の冒頭の声でございます。  こういう観点から私考えるわけでございますが、これまでの歴代の内閣は、われわれの批判もありましたけれども、歴代の政府はそれなりに平和憲法の枠内で、そうして、わが国は軍事大国にはならないんだ、いわば防衛の問題についても専守防衛立場を堅持するんだ。そのいわば自民党政権が言ってきた平和国家と称するものの枠組み、この枠組みの骨組みというものを私なりに考えてみたんですが、その骨組みは、大きく分けまして五つあるような気がするわけであります。  その一つは、平和憲法がある。この平和憲法がある限り、専守防衛立場に立って、海外派兵も行わないんだ。二つ目は、これまた論議をされてまいりましたが、その防衛費においてもGNPの一%以上を超えないんだ、それ以内でやるんだ、これが二つ目の歯どめ。三つ目は、いわゆる非核三原則。四つ目は、順序不同でございますが、この国会で一番問題になってまいりました武器輸出三原則の問題。いま一つは、いわゆる日本国民は非常に反核思想が強い。こういう条件がある限り、わが国は軍事大国にはならないんだ、これが歴代の自民党政府の、軍事大国にはならないという大きな枠組みであったと私は思うわけであります。中曽根内閣になってからこの枠組みが音を立てて崩れ出した、こう思うわけでありますが、どうでしょうか。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍事大国にならないという方針はあくまで堅持してやっておる次第でございます。
  92. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この五つの枠組みについては、憲法がある、憲法があるとはいいながら、もうすでに中曽根総理になってからは、これは先般の訪米を含めてそうでありますけれども、中曽根総理個人としては、みずから改憲論者であるということを内外に言明をされている。そうして、せんだってのレーガンとの会見の中でも、対米交渉の中でも、いわば改憲に向けての長期のプログラムを持たれているような発言をなさっている。こういう一連の言動から見て、これはやはり憲法改正、改悪の意図というものが非常に明確にある限り、第一のこの条件は私は崩れつつあるというふうに見ざるを得ないわけであります。  GNPの一%の問題についても、これまたいままでの代表質問の中で、若干計算の仕方にもよりましょうけれども、場合によっては、GNPと防衛費との関連において、来年五十九年度の予算ではもうすでに一%の枠を超えるのではないか、こういう問題点が指摘をされております。私も後ほど、これらのことについて、さらに時間があれば指摘をいたしたいと思いますが、そういう危険性は十分にあるわけであります。  いわんや武器輸出三原則については、これはもう明確に中曽根総理御自身がその枠を取っ払われた。そうして、レーガンとの首脳会談で約束をされてきた。  こういうふうに見てまいりますと、いま何とかこの枠が外れてないと言えると思われるのは非核三原則ではなかろうか。しかし、この非核三原則とても、きょう私、それ自体の問題について深く突っ込んだ議論をする余裕を持っておりませんが、近くエンタープライズが入ってくるとか、やれ新鋭の空母が入ってくるとかという寄港問題に関連をして、これまた、実質的な面においてこの非核三原則の枠も中曽根内閣の手によって崩すのではないか、私はこういう憂慮を非常にいたしておるわけであります。  いま総理から、そういう軍事大国にはならないという御答弁がありましたが、一つ一つ因数分解的に問題を整理していけば、いままで歴代の内閣がやってきた平和国家の枠組み、自民党が言うところの平和国家の枠組みから、私が指摘したような条件については大きく枠外に出てきておると認めざるを得ないわけでありますが、この点については率直にお認めになるでしょう。
  93. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平和国家としての国の姿はあくまで守っていくつもりでおりますし、その政策を実行しておると思います。やはり藤田さんとわれわれとは、一つは、防衛力、自衛力を認めるか認めないかという点においてまず違うと思います。それから、安保条約を認めるか認めないかという基本において違います。そういう面から、私が実行したことにつきまして違和感をお持ちであると思いますが、やはりいまの憲法のもとに自衛隊は認められ、防衛力は必要最小限、質の高いものを整備するという方針で進められておりますし、日米安全保障条約はまた同じように条約として尊重されつつある、こういう現実を踏まえて実行しておるのでありまして、その点はやはり基本的な立場の相違からそういうお考えが出てくるのではないかと私は思います。
  94. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が指摘をいたしましたような観点は、先ほど紹介をいたしました社説の、かつて閣僚を経験した自民党の代議士でさえそういったことを言われているということを率直に指摘をしておきたいと思います。  そこで、この日米会談にかかわる総理のとってまいりました一連の態度、これは今日の世界的な情勢に逆行するものではないか。これは中ソの関係、米中の関係、あるいは米ソの関係、あるいはインドとパキスタンとの関係、あるいはソ連とヨーロッパとの関係、あるいはベトナムとカンボジア、中国との関係、こういうふうに情勢の分析がありますが、総じて言えば、少々ぎくしゃくしておるところは残っておりますけれども、二年、三年前とは大きく違って、今日の世界の情勢というものは俗に言うデタント回帰、緊張緩和の時代に向かいつつあるのではないか。特に、ソ連のブレジネフ書記長が亡くなった後、ソ連の新政権ができました以降の情勢というものは、デタント回帰への方向を求めておると思うわけであります。  もちろん中ソの関係におきましても、私も毎年のように中国にはお邪魔をいたしておりますが、昨年の十一月、鄧小平さんとの会談を通じても、いま表に出しづらいこともありますが、率直に言って、時間はかかりますけれども、あれだけ仲の悪かった中国とソ連においても、外相レベルの交渉が展開をされるようになった。党と党の次元における友好関係にはさらに時間がかかるかもわからないけれども、国家国家という国家関係においてはかなり積極的な改善というものが見られていくのじゃなかろうか。現実的には、中ソの国境問題についても一定の話し合いの条件が見出されつつありますし、あるいはアフガンに対する問題なり、ベトナム、カンボジアの問題につきましても、これまた双方が具体的な外交折衝のレベルにこれらの問題を乗せている。こういう一連の動きを見ますときに、政府の、というよりも中曽根総理のおとりになっている外交、防衛の政策というものは、非常に世界の情勢に逆行しておるのじゃないかということを私は率直に心配をするわけであります。  それと同時に、そのことに関連して、後ほど私が質問をいたしたいと思っております財政再建の問題とも関連をいたしますときに、今日わが国の財政がここまで赤字公債からの脱却がむずかしくなってきた、百兆円を超える借金をどうして返していくのかという具体的な方策も、具体的なプログラムも国民の前には明示されないまま防衛突出政治を行うということになれば、その財源はどこに求めるのだろうか、こういう重大な問題が発生してくると思うわけであります。  そういう点について総理はどのようにお考えになっているだろうか、これまた、私は総理見解をただしておきたいと思うわけであります。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国際情勢をどう見るかということは、われわれの方も深甚の関心を持っていま視察をしておるところでございます。しかし、基本的に、歴史的にも見まして、また理論的にも見まして、共産圏、マルキシズムというものは力の信奉から出ている哲学だと思います。したがって、そういう力の信奉というものが背後にある、それが直接出るか間接的に出るかは別として、ともかくそういうものが基本的にあるということから、やはり均衡を維持する、それが戦争を回避するもとである、すなわち抑止力理論というものが出てきて現実の世界の平和は保たれていると思います。  いまの現実を見ましても、アフガニスタン等に対する膨大なる援助や何かで、ソ連も相当くたびれてきているだろうと思いますし、国内経済的にも相当むずかしい段階に来ておると思います。そういうわけで、デタントと申しますか、そういう方向へ切りかわる可能性ないとは言えない。しかし、過去において膨大な軍備強化をやりまして、それが極東方面においてもあるいはヨーロッパ地域におきましても、かなり顕著にそれが強化されていることは事実であります。私はいま、北方領土返還の日で、領土要求大会に出てまいりましたけれども、われわれの北方領土にも軍備が非常に強化されているということは皆さん周知の事実であります。  こういうようなところから、均衡と抑止という考えに立って、西欧の国々、アメリカ、あるいは日本日本独自の見地から防衛考え努力をしておる、それが戦争を起こさせない一つの力になっている、そういうところできておったところに、いまの時点でブレジネフさんがお亡くなりになってアンドロポフさんが政権をとって、政権交代というときは、政策が変わってくる可能性がいままで歴史的に見るとあるときであります。果たしてどういうふうに出てくるか、非常に重大な関心を持って世界も私も見詰めておるところでございますが、しかし、抑止と均衡という考え方はやはり基本的には持っていかざるを得ない、それがわが国の独立と平和を維持しているという考え方が基本にありますから、そうせざるを得ないのであります。
  96. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ソ連との関係でいえば、アンドロポフ政権になってからどういうような平和政策が展開をされているか、私、手元には五つ六つの材料を持っておりますが、きょうはそのことは申し上げません。しかし私は、やはりこの新しい政権というのは、少なくともイデオロギーの対立を、いま総理がおっしゃったように、前面に出してくるのじゃなくて、やはり平和共存ですね、社会主義と資本主義、共産主義と資本主義の対立はあっても、国家間の調整をお互いにとり合って共存をしていこうという平和共存の、いわゆる古くから言われてきた平和五原則を基調として、平和共存の国際づくりというものが展開されていくんじゃないか、私はそう思うわけであります。  たまたま総理が、私、次に質問をしようと思ったことに触れられてお答えになられたのは、きょうは北方領土返還の日でございます。総理もごあいさつに行かれたようでございますが、私はこのことに関連して考えるのですが、総理の今回の訪米、訪韓にかかわる一連の政治行動というものは、北方領土の返還を促進することには余り役に立たない。ソ連の感情を逆なでする。総理は、御答弁を聞いておりましても、ソ連を仮想敵国にはしてないと言いますが、バックファイアと言えば、これはソ連の代名詞ではないですか。四海峡封鎖と言えば、これはソ連の艦隊を封じ込んでいくという重大な対ソ戦略でしょう。これらの一言一言は、明らかにこれはソ連仮想敵国の代名詞だと私は思うのですよ。そういうようなことをやられておいて、一方では北方領土の返還を国民に対して呼びかけていっても、国際的にも、なかんずくソ連に対しては、そういったことは映らないのではないでしょうか。  北方領土は、国際法上から見ても何から見ても、わが国の固有の領土であることは間違いない。ですから、私どももこの北方領土の問題については強く返還を求めます。しかし、この返還を求めるためには、緊張を激化していく、ソ連の感情を逆なでするような雰囲気の中では、言うべくして逆の結果が生まれてくる。北方領土返還の日であればあるだけに、きょうの日を一つの重要な契機にして、訪米にかかわる総理のとってきた態度も、これは少なくとも根本的に修正せざるを得ないのではないか。われわれとしては、北方領土の返還を含めて、日ソの友好関係というものを強めていく。  そのためには、十年前のあの日中国交正常化、五年前の日中平和友好条約、反覇権で結ばれた平和友好条約ですね。私は、外交、防衛については素人であります。しかしながら、私は十年前のことを考えてみますと、それまでは安保条約というものがある。安保条約の軍事的な面からいくと、非常に素朴な言い方ですけれども、銃口は中国とソ連の方を向いておった。ところが、国交正常化によって、中国に向いておった軍事的側面がなくなってきた。それまではどうですか。自民党政権はもとよりですけれども、特に自民党に代表される勢力というのは、やはり中国を仮想敵国視するような考え方があったと思うのですよ。しかし、国交の正常化なり平和友好条約が結ばれてくれば、そういう国家関係が反覇権の条件によって、政治的条件によって結ばれてくれば、今日言うところの安保条約を中心とする軍事同盟の強化ということは必要なくなってきておるじゃないですか。そういう条件をこの日ソとの関係においてもどうつくるかというのが、今日わが国政府に課せられた重大な政治的任務じゃないでしょうか。  私は、そういう点からいくと、この北方領土返還の問題についても、政府は言うこととやることとは全く逆立ちした対応をしておると指摘せざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は独立の主権国家でありまして、自己の主権を守り、平和と独立を守るためには、毅然たるものがなければならぬと思います。そういう意味におきまして、友好国との間を調整し、あるいは友好関係を緊密にするということは、先ほど申し上げましたように、日本独自の見解に基づいてやり得ることでありまして、何も領土を欲しいというので媚態を呈して遠慮する必要はない、そういうふうに私は考えております。  しかし、外交交渉というものは相手があることでありますから、このむずかしい状態を打開していくために、お互いが誠心誠意を尽くして友好関係を回復する、増進する、そういうためには誠意を持って努力していかなければならぬ、そういう面はもちろんあります。ありますけれども、自己が存立し、平和を守っていくという点について、これを譲ってまでもやるという必要はないと考えております。
  98. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、総理の御答弁の中には非常に挑発的というか、私どもが自衛力を持つかどうかという問題あるいは非武装問題という次元で議論をしていない段階に、すとんと非武装中立の問題を持ち出してすりかえるようなことをやられておりますが、少なくとも私ども社会党も、今日の現実の中から何をなすべきかという現実を踏まえて論議をしているつもりであります。その点では、いま、平和を守る、国を守るということについてでありますが、われわれは軍事的な面を前面に出して、力と力の政策を前に出して国の防衛の問題を考えるよりも、いわゆる平和外交、国と国との平和的な話し合い、そういうものによってこの国を守り、平和を守っていくというのが今日のわが国平和憲法の中に盛られておる精神であり、その精神に沿って政治をやるというのが、わが国政治の方向でなければならぬという立場から議論をやっておるのですね。  それを、何だか日本社会党の議論を聞いておると国を守る考えがないのだというようなことをあたかも言わんとしておりますが、これはもう私ども社会党にとってはきわめて無礼千万な、他党を何だかそういうものによって政治的に傷をつけるような御発言でありまして、私はきわめて遺憾であります。そういう点ではもっとお互いの議論を、まじめに議論の焦点を合わしてひとつ御発言を願うように、これは要請をいたしておきます。少なくとも、政府は政府なりの見解に基づいてわが国の平和と安全を守ろうとしておる熱意、われわれ日本社会党も中曽根総理以上の熱意と情熱を持って、わが愛する日本の平和と独立と、そして安全を守るために真剣に取り組んでおるということだけは明確に申し上げておきます。そうしないことには、いまの御発言は、私はきわめて遺憾であります。できれば訂正をしてもらいたい。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本の平和と独立を守っていくために、自分のよって立っておる基礎だけはきちんと固めておいて、その上に立って外国と樽俎折衝をする、そういう自分の足元を固めないで相手方と交渉してもそれは弱いものである、そういう意味で申し上げておるのであります。
  100. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理が実質的には少し勇み足的な発言のあったことは、いまの御答弁でいわば、あえて言えば、訂正をされたというふうに私は理解をいたします。お互いそれぞれ公党の立場もあるわけですから、そこは尊重し合って議論いたしましょう。  そこで、私、総理とのやりとりだけですが、外務大臣、どうでしょうか、少し暇そうでこざいますから、失礼ですが、いま総理がおとりになっておるような態度なり方針でやってまいりますと、外交を担当なさっておる新外相としてはちょっとやりづらい面も出てくるのじゃないかと思いますが、そこらはどうでしょうか。
  101. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは、私も中曽根内閣の閣僚でありますし、やはり外交というのは、総理大臣と一体で進まないと日本立場をきちっと守っていけない、そういう意味で対米外交、対韓外交ともに一緒になってやっておるわけで、意見の相違はございません。
  102. 藤田高敏

    藤田(高)委員 外交、防衛に関する、また中曽根総理の基本的な政治姿勢の問題につきましては、私は軍事突出のそういう姿勢ではなくて、やはりお互いに話し合い外交といいますか、平和的な外交折衝というものを重点に置いて、わが国の平和と安全を守るために、いわゆる国際的には緊張緩和の方向に、わが国政府が大きな役割りを果たす方向でぜひ努力すべきであるということを強く求めておきたいと思います。  時間の関係もありますので、これから財政質問に入りたいと思います。  まず第一の質問は、私、この問題につきましてはもう四、五年来この議場を通して議論をやってきた一人でございますが、特にそういう関連からいきますと、臨時国会の延長的な立場において以下質問をいたしたいと思うわけであります。  まず第一に、率直にお尋ねをしたいのですが、鈴木内閣が倒れた。みずから辞任をされたわけですけれども、実質的には政権交代がなされた。その一つの理由は、これはいろいろ判断のしようがありますけれども、鈴木内閣というのは、鈴木総理というのは、私は非常にまじめな方であったと思うのですね。財政再建の問題についても、結果的には失敗をいたしましたけれども、赤字国債からの早期脱却を目指して五十九年度からは赤字公債発行をゼロにするのだ、そうして一方では臨調との関係、行革との関係もありますから、増税なき財政再建を目指してやるのだ、こういうことを国民に公約された。そして、非常にまじめに取り組んでこられた。しかし、志と違った結論になったものですから、国会で追い詰められるよりも、その前にみずから潔く引退をされたというのが鈴木総理の引退劇の実態であろうと思うのですよ。私はそういう立場に立つのです。それがすべてではありませんよ、しかし、それが一つの大きな柱、条件だと思うのです。  そういう点で見ますときに、鈴木内閣にかわって中曽根政権が生まれた。この中曽根政権は、それでは何をなすべきか。少なくとも鈴木内閣のできなかったことを今度はやり遂げるのだ、これだけの能力と資格を持った者でないと新内閣、新政権としての存在価値がないのじゃないでしょうか。鈴木内閣がやろうとしてできなかった。だから、できなかったことを克服するだけの能力と力を持っておる内閣が出て初めて国民が信頼するのですね。ところが、それよりも後退する、後退するかしないか何だかわからない、基準さえも明示しないようなそういう内閣というものは、存在の価値がどうもないような気がするのですが、どうでしょうか。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 藤田さんのお話を承りまして、部分的には賛成もあり、部分的には反対もあります。やはりよりよきものへ、そういう方向へ一歩でも前進しなければいかぬという点は全く賛成でありますが、しかし、また内閣によって個性があるものだろうと私は思っておるわけです。そういう意味で、鈴木さんの個性と私の個性は違いますから、自民党の政策の枠の範囲内でおのおのの個性を出し合ってやっている、そういうふうに心得ております。
  104. 藤田高敏

    藤田(高)委員 鈴木内閣との関連において、それでは率直に質問しますが、私、昨年暮れの臨時国会でもしつこくそのことを大蔵大臣、総理にお尋ねしたのですが、物のみごとに五十九年赤字国債発行ゼロは破綻をした、失敗をしたということの宣言は、この五十八年度の国家予算の審議に当たって明確に言明できるでしょうね。どうでしょうか。
  105. 竹下登

    ○竹下国務大臣 去る臨時国会におきまして、藤田委員から、私どもが五十九年赤字国債からの脱却はきわめて困難になった、これをもっと明確にしろという御指摘がありました。その際、総理からも私からもお答えいたしましたのは、五十八年度予算編成を通じてある程度やはり数字の面でも明らかにしてから正式に困難になりましたと言明すべきであるというお答えをしてまいったわけであります。それに基づきまして、このたび予算審議の手がかりとして御提案申し上げましたいわゆる中期試算等におきまして、五十九年の脱却というものは困難になりましたということを明言する立場に今日至った、このように考えております。
  106. 藤田高敏

    藤田(高)委員 言葉のあやとか言葉じりをとるわけではありませんが、困難になったということともうできなくなったということとは違うと思うのですね。もう失敗でした。現実にあなたが、中曽根総理がお出しになっておる、後でも具体的に言いますが、五十九年に実質的に国債発行をゼロにするわけにはいかぬといういわゆる中期試算を出してきておるのに、三年で赤字国債をなくするケース、五年、七年でなくするケースですから、どんなにひいき目に見てもまだ三年先、一番早くても三年かかるということを言明したわけでしょう。そういう意味では破綻したと言わざるを得ないでしょう。
  107. 竹下登

    ○竹下国務大臣 困難になったという表現を数字をもって明示するということはできません、こういう答えをすることであると思います。
  108. 藤田高敏

    藤田(高)委員 もうこれは万人認めるところですから、その言葉自身のやりとりは余り生産的でないですから、やりません。しかし、お互いにもっと率直に、中曽根内閣国民にわかりやすい政治をやると言って登壇された内閣。五十九年から赤字国債は出しませんというのが、政府がいま私に、全議員に出してきておるこの中期試算によって、私はそんなことを仮定で言っておるのではなくて、ここへ出してきておる中期試算表によったら、いま申し上げたように、一番早くても三年かかる。どうも中曽根内閣のとろうとしておる計画というのは、七年のケースを考えておるのじゃなかろうかとさえ思われる。これはもう大蔵大臣、出しておるのでしょう。(竹下国務大臣「出しております」と呼ぶ)出しておりますね。これは五十九年、出しておるじゃないですか。これでいったら、一番短いケースでも四兆六千五百億出しておるのですよ、赤字国債を。そうでしょう。これでいくのかということは後でお尋ねしますが、これではどうもいけそうにない。七年のケース、C案でいくとすれば、これは六兆円からの国債発行を五十九年は出さざるを得ないのですよ。そういう点からいったら、はっきりそれは失敗でした、しかし、こういう方向でやりますということは素直に言った万がいいのじゃないですか。困難になったとかどうとかこうとか、ちょっと聞いておっても見苦しいですよ、率直に言って。これは失礼な言い方ですね。失礼な言い方かもわからないけれども、わかりやすい政治というのはそういうものじゃないですか。  総理どうですか。その点あなたのお考えを聞かせてください。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 数字的に見ますと事実上できない状態であると認めざるを得ない、こういうことを申し上げております。
  110. 藤田高敏

    藤田(高)委員 ようやくにして認めました。私もう昨年の暮れ以来執拗に言ってきたのです。余りこんなことで時間を費すのは本当に惜しいと思いますが、しかし、私はそのことによってどうだというような追い打ちをかけようとは思いません。しかし、これからどうするのだということについては、これはわれわれも国民責任を持つ立場から十分議論をしなければならぬと思っております。  そこで、私、具体的な質問、議論に入る前にお尋ねをしたいのでございますが、それでは財政再建の基本的な方針として、赤字公債からの早期脱却、また増税なき財政再建、こういう二つの柱で今後の財政再建に取り組むお考えでございましょうか、それとも条件が変わっているのでしょうか。
  111. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、財政再建の一つの大きなめどとして、五十九年度赤字国債脱却、これを掲げてきたことは事実であります。したがって、財政改革というものを唱えるに当たりましても、基本的には財政の対応力というものをいかに回復するかということでございますので、できるだけ早い機会に赤字国債からの脱却を図りたいということは、もちろん念頭にあります。  それから第二番目の、増税なき財政再建ということは、引き続き私どもの財政改革に当たっての理念としてこれは持ち続けなければならぬ、こういうふうに考えております。
  112. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理の施政方針演説の中には、極力赤字公債からの脱却を図りたい、こういうことですから、そこには幅があるのです。しかし、そういう方向で努力したいという、これは努力方向としては理解することができます。  二つ目の問題は、どうでしょうかね、これまた増税なきという、増税とは何だ、ここで言う、政府が言おうとしておる増税とは何だ、これも聞かしてもらいたいのですが、私はどうも、そのことがいいとか悪いとかという判断は別にして、現在置かれておるわが国の財政事情からいうと、一般的に言うところの増税がなくして財政再建の財源は出てこないと思うのですが、どうでしょうか。その点は余り理念と現実の政策というものを分離したようなことを言わないで、現実の対応策を中心にひとつ御答弁願えませんでしょうか。
  113. 竹下登

    ○竹下国務大臣 増税なき財政再建、こういうことを先ほども申し上げたわけであります。この増税なき財政再建というのは、まずもって、歳出構造の見直しに当たって安易に増税を念頭に置いてはならぬという戒めであるというふうに考えております。  したがって、いわゆる増税なきというものは基本理念として堅持してまいるのは当然でありますが、さて、それでは増税なき財政再建とは何ぞや、こういうことについて、前国会でもいろいろ議論をしてまいりました。いわゆる臨調の御答申にございますことを念頭に置きながら、現行の租税負担率というようなものも念頭に置いてこれに対応しなければならぬ。しかし、されば、その租税負担率はということになれば、これは経済情勢の変動によって分母である国民総生産も変わってまいりますので、それを確定することについては、なかなかこれは困難な問題があるという感じを率直にいま持っております。  しかし、いずれにしましても、やはりまず、さらにぜい肉落としにとどまらず歳出構造を徹底的に見直しまして、いわゆる歳出の、それぞれ個人に帰する問題あるいは企業に帰する問題、地方自治体に帰する問題、国に帰する問題、そういう区別というものも、これから財政改革の過程において行いまして、そうして、さらに税制のあり方につきましても、かねて御主張になっておりますその公平感というようなものについての検討を総合的に行っていくのがやはり財政改革そのものである。したがって、短絡的に、私どもがいまお出ししております試算をごらんいただきましても、私自身も藤田委員に御説明申し上げました、五十五年のときに出した収支試算から見ますと、今日余りにも乖離が生じておるわけであります。しかしながら、そのときにおよそ考えられた五十八年度予算というものの姿からすれば、その規模はうんと圧縮されてきておる。だから、まずはやはりその規模の圧縮、そこへ重点を置いて、そうして、こうした藤田委員と私どもの問答を通じたりしながら、最終的にその足らざるところは受益と負担の関係でどうするのかというぎりぎりの時点でいわゆる新しい負担を求める、すなわち、その中には増税も含まれるわけでございますが、これに踏み切るべきである。安易な増税というものを念頭に置いてはならぬというのが基本的な考え方であります。
  114. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きわめて素直に理解しますと、財政再建に向けては増税にすとんと短絡的に落として考えるのではなくて、不公平税制の是正もやりましょう、受益者負担という、まあこの中期試算、今度出したこの中にも書いておりますね。政府としても増税というのは言いにくいのでしょうね、特に選挙前ですから。そんな感じがします。ですから、いまの御答弁を聞いておりましても、受益者負担の増という中に増税というものも入っておるのだ、こういうことでございますから、それはそれなりに理解をいたしましょう。  しかし、それにしましても大蔵大臣、去年まで出された財政の中期展望と今度出されましたこの中期試算、これを見て、これは大蔵省の皆さんにも大変失礼な言い分だけれども、私はもう非常にがっかりしましたね。というのは、六十年の段階における税収の見通し、これは去年の時点で三年先を見越した見通しと一年たった今日からそれを見通した条件の中で、税収が、中期展望ではかれこれ五十一兆円入る、こうなっておるのですね。ところが、今度の中期試算では三十六兆円。たった一年違う間に十四兆五千億から――十四兆五千億というたら、ことしの五十八年度の税収の四五%に匹敵するのですよ。ことしは三十二兆五千億ぐらいですからね。一年違う間に税収が十四兆五千億も違うなんて、そんな財政の見通しをやるというのは、これは大蔵省の権威にかかわるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうかね。  もう極論をしますと、こういうずさんな見通ししかできないのであれば、これは大蔵省なんかなくたっていいぞ、私は、こんな個人的なことを言うようだけれども、去年の国会論議のときに、当時の主税局長は、私の見通し、大蔵省なり政府の見通しが間違ったら私が責任をとる、こう言って胸をたたかれた。これはどうですか。去年は六兆円からの赤字が出てきた。そうして、これは今度の試算との開きでは、かなりな乖離どころか、十四兆から十五兆円からの開きが出ておるのですが、これに対する御感想はどうでしょう、大蔵大臣。この現状認識をきちっと踏まえてやっていかぬことには、とてもじゃないが、財政再建なんというのはできないし、われわれもまじめな議論はできないですよ、大蔵省からこういうようなものが次から次へ出たって。私は最初、これが出てくれば、大蔵省のエリートの諸君が頭をひねってやったものだから、やはりこれを土台に議論しなければいかぬと思って一生懸命やってきた。やってきたって、何のことはない、こんなに違う、お月さんとスッポンぐらい違う。こんなことでは議論にならないのじゃないでしょうか。その出発点と反省をきちっと折り目をつけてください。そうして議論しましょう。
  115. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も、いま藤田委員の御指摘を否定する考えは全くありません。私なりに過去と現在との比較をいたしてみますと、私の責任において提出いたしました五十五年度予算審議の際のいわゆる財政収支試算、そのとき五十八年度を推計をいたしますならば、歳出規模は五十九兆一千億になっておるわけであります。しかしながら、今日の歳出の計は五十兆四千億、まあこれはそれなりにいわゆる等差、等率でそれぞれ伸びるということを前提にしたものが、いろいろな御協力なり努力によってこれだけ減額されたという一つのデータにもなると思うわけであります。そうして、いま藤田委員が御指摘になりましたのはその税収の問題であります。本年度御審議いただいておりますものが一番現実的でありますので、それを見ますならば、五十五年御提示申し上げましたときには四十三兆三千、それから、さらに五十六年には四十二兆二千、そして五十七年度予算のときには四十一兆、それがすでに三十二兆三千、こういうことで、税収そのものは、この数字から見ます限りにおいては大変な乖離を生じておるわけであります。  これは私は、計画経済というもの、しかしながら自由主義経済政策の中においてもある種の計画性というようなもの、一つの展望、指針、これは必要であるということを否定する考えはございませんが、やはりまた、角度を変えてみますならば、いわゆる世界の中においては、経済に関する諸指標が、すべて優等生であると言われても、事ほどさように、世界全体のいわゆる同時不況の中に、われわれが展望できなかったもろもろの客観的要素もあったということを率直にお認めいただきたいと思います。しかし、それによって責任を回避するという考え方で申し上げたわけではありません。
  116. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、その点、政治責任は重大ですよ、重大だけれども、この前じゃないけれども、そのことによって大蔵大臣の責任を具体的にどうするんだなんていうことは言おうと思っておりません。しかし、この今度出してこられた中期試算を見ても、この説明書きの中に、たとえば特例公債依存体質から五十九年度脱却を目標にしてやってきたけれども、これが果たし得なかったことは、第二次石油危機を契機とする世界経済の停滞等、わが国財政を取り巻く環境が変わったからだというふうに書いておるのですよ。この第二次石油危機を契機として、世界経済が、今日言うところの同時不況だ、そういう状態に変わりつつあるということは、これは一般的にもわかっておったわけですからね。私の言いたいのは、こういうところへ全部逃げ込んでしまって、大蔵当局なり財政当局が自分たちの情勢分析あるいは計画をするに当たっての努力というか、分析力が足らなかったということに対する自己責任ですね、その自己責任というものはどこにも出てないのですよ。いままでの国会答弁を聞いてもそういったことは全然ないのですね。私は、そういう点については、何もつまらぬ政治責任を追及しようとは思いませんけれども、やはり自分たちの側にも主体的に責任があります、この認識を明確にした上で議論をやりましょうや、こう言っておるわけですよ。その点では同感でしょう。どうですか。
  117. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは私ども、かねて私が高度経済成長期の官房長官をしております当時は、いわゆる諸指標の年度内見通しが一番違わないのが政府見通しだ、こういうことを諮っておりましたが、最近確かに、他の民間機関の統計あるいはOECDの統計もそうでございますが、それぞれにおいて政府見通しの方が多く違っておる、こういうこともございます。事ほどさように世界経済が不透明だということになりますが、しかし、私どもは、だからすべてを、世界経済が不透明だからもうこれはとうていわれわれの判断のらち外にあるというような無責任なことを申し上げようとは思いませんし、藤田委員のような御指摘を受けながら、絶えずその御指摘に沿うような努力をしていくということがわれわれに課せられた責任のとり方ではないかというふうに思っております。
  118. 藤田高敏

    藤田(高)委員 やはり私は、そういう率直な問題の受けとめ方、そういう理解の仕方、そういうものを基礎にして議論をし合いたいものだ、こう思います。その点で、私は、いまの大蔵大臣のそういう答弁の姿勢に対しては、当然とはいいながら、敬意を表したいと思います。  そこで、私、具体的にお尋ねをしたいのですが、さて、ここに出してきたこの中期試算は、何をいま私どもに言おうとしておるのですか。それで、国民から何を引き出そうとしておるのですか。このことを一つお尋ねするのと、時間の関係もありますから、二つ三つあわせてお尋ねをいたします。  この試算表からいきますと、いわゆるAという案は三年間、六十一年で特例公債を出さないようにする。毎年二兆三千三百億ずつ減らしていけば、六十一年には赤字公債は出さなくできます。B案は、一兆四千億ずつ減らしていけば、五年先には赤字公債を出さないことになります。七年時間をかしてくれたら、毎年一兆円ずつ減らしていけば七年かかりますが、赤字公債を出さないで予算を組むようなことができようかと思います、こういうきわめて平面的な案なんですよ。しかし、財政当局としては今日の段階ではどの案を中心に財政再建をやろうとお考えになっておるのか。これが二つです。  三つ目は、A案、B案、C案のどの計算でいきましても、先ほどから申し上げておりますように、それでもなおかつ財源不足。要調整額というものは、一番なだらかといいますか、赤字公債たれ流しを七年間続けていっても来年は四兆一千億、六十年の再来年は六兆四千億、六十一年は七兆六千億、いわば六十年からいよいよ赤字公債に対する現金償還が始まる。後で言いますけれども、その財源がなくなってきた。約束はしておるけれども、その財源がないという中で、これだけのまだ財源不足が起こりますよというのがこの政府の案でしょう。この要調整額というものを何によって穴埋めしようとなさっておるのでしょうか。その財源をどこに求めようとしておるのでしょうか。そのことがこの中に出てこないと、こういうふうに赤字が出ますよ、赤字公債のたれ流しをやってもまだ七年間、四兆も七兆も八兆もの財源不足が生じますよ。これでは単なる財政の現状報告書ですよ。どうでしょうか。この試算表からわれわれが何をつかんだらいいのだろうか。財政再建に向けていかなる処方せん、いかなる方策で、それは事のよしあしは別にして、増税でやるのか、不公平税制の是正を思い切ってやるのか、あるいは臨調が言うような行政サービスを下げても歳出削減でやっていくのか、そういうものが何にも明確でないのですよ。そのあたりが、そういう方策に合わせていわゆる何年がかりでこうやりますというものが何にも出てない。このお答えを。  ひとつ三つ答えてくれませんか。そうしないと、議論にならない。
  119. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政の現状報告書ではないか、この御指摘は、当たらずとも遠からずという表現は適切を欠きますが、一つの見方であると私も思うわけであります。  そもそも財政の中期試算というものは、国の一般会計におきまして財政の姿を将来に投影することによって、いわゆる中期的な財政の姿を試算したものであります。まさに中期的財政の姿を試算したものであります。したがって、歳出の推計につきましては、五十八年度予算におきますところの制度、施策、いまやっておる制度、施策をまず前提に置いて、そうして、これを将来に投影するといういわゆる後年度負担額推計、こういうことで基本的に描いたものであります。  また、歳入につきましては、これまた五十八年度予算を前提といたしまして、一定の仮定のもとに、税収等につきましては等率、公債金収入についてはいま御指摘のように等差ということで、これの推計を示したわけであります。  そこで、大まかな姿を示したということになります、われわれが基準とすべきものとして、経済審議会の審議経過報告というものがございます。それの経済指標を参考にしながら――経済審議会においては引き続き中長期的展望、指針について御検討が行われるわけでございますから、いまは経済審議会の審議経過報告というものだけを基礎に置きましてこの中期試算というものをつくりましたので、私は率直に申し上げまして、やはり財政運営を進めていく上での中期的視点に立った検討の手がかりである、そして財政についての一定の仮定のもとでの試算である、だから、これがわれわれが望む将来の展望であるとかいうようなことは申し上げる性格のものではない、こういうふうにまず御理解をいただきたいわけであります。  そうなると、今度は、いわゆる等率、等差というもので試算を出したものについては、言ってみれば、そういう姿になるときにどのような施策をもって特例公債脱却を図っていくかという手法ということになりますと、いつでも申し上げておりますように、それぞれ歳入歳出の構造の見直しを行って、まず切るべきは徹底的に切っていく、その上で、それこそこうした問答を通じたり、あるいはまず財政制度審議会とかそういうところの意見をも通じたりしながら、最終的には国民の選択に帰する問題だ。ただ、選択に帰するということはたびたび使う言葉でございますが、税制で言えば現行税制、施策で言えば現行の施策というものは、すべて長い国民のいろいろな議論の積み重ねの中における選択の集積が現行の施策というものになっておる。それをどう変えていくかということでございますから、それはまた、国民との問答の中にその選択の方向がおのずから出てくるというような構えでこれに対して対応しなければなりませんので、何年にはこのような新たなる負担を求める措置を行いますということを言う前に、まず私どもとして、構造の見直しを行って、切るべきものは切って、国民の皆様方の選択にゆだねる、こういうことが筋ではなかろうかというふうに考えております。
  120. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの答弁を聞いておりますと、大変失礼ですけれども、全く財政再建についての無定見さを大蔵大臣みずから表明されたような気がするわけであります。大変失礼ですけれども、そんな感じがしてなりません。  なるほど、今日の流動的な国際経済の中で、かちっとした財政展望案を出すことはむずかしいかもわからない。しかし、そうかといって、いまわが国の国政の中で何が一番大事なんだ。それは優劣つけがたいものもあるかもしらぬけれども、財政再建なくして国政はないですよ。後で言いますけれども、財政再建のあり方いかんによってはわが国政治の方向が決まるんでしょう。財政再建の具体的な手だてというものがここに、われわれの手持ちには何にも材料がないのです。少なくとも不公平税制の是正ぐらい思い切って抜本的にやるんだ、そのファクターだけを入れれば、せめて五兆円だったら五兆円の要調整額、財源不足額はそのうちの何割は減りますというめどぐらいつくらなければ、社会主義経済の計画経済じゃないと言うてみたりして、そういう詭弁に近いようなことではわれわれは納得できませんね。  私はその意味において具体的に要求しますが、この要調整額と称する不足額を何によって解決するんだという一つの試算を出してもらいたい、これが一つ。  それと、時間の関係がありますが、実際これは予算審議にならないのですよ。定率の繰り入れはやるんですか、やらないのですか。ちょうど予算が始まる直前になって何か資料をもらいました。減債制度の定率繰り入れは五十七年と五十八年は停止しましたね。そのために、大蔵省からいまもらった資料ですから、私もそう専門家じゃないですからすぐわかりませんけれども、この資料によりますと、定率繰り入れ財源を含めて六十年から現金償還をやる財源は二兆一千九百億しかない。ところが、六十年からは三兆一千億の現金償還をやらなければいかぬのです。六十年の段階で二兆一千億しかない、それで建設公債、赤字公債を含めての償還額が三兆一千億、はやもうここでなくなってくる。この大蔵省からいまもらった資料からいきますと、六十一年からは残金がゼロなんです。ゼロで、六十一年には驚くなかれ四兆五千億の赤字国債の現金償還をやらなければいかぬ。これに対しても、何で手当てをするのか、何で払うのかということが全然ないのですよ。このようなもので、権威ある国会が審議せいと言って審議できますか。これはどうですか。  委員長、どうですか。委員長、お聞きになっておってもできないでしょう、審議が。政府は、十年ものの国債は昭和六十年から現金で払います。何で払うのですかということ、これ数字の上に、財源には何もないのです。私は、このことはここ二年来指摘してきた。その回答が二年たっても出てこないのですよ。どうですか、これだったら、ことしもまたこの国債発行、何兆もやっておるわけですけれどもね、国債発行に対する国民の信頼もなくなるじゃないですか。定率繰り入れをやるのかやらないのか、どうでしょうね、これは。
  121. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御議論のあるところでございます。  いわゆる後年度負担推計によって要調整額を出しておる、その要調整額というものを何によって充当するか、こういう御質問でございますが、この要調整額自身を見てまいりましても、今日まで、かつて推計したものから見れば大変な乖離が生じております。したがって、要調整額というものは現行の施策をあくまでも基準に置いたものでありますので、まだまだ私どもとしては、いわゆるサービスの低下をも含めた施策の転換、歳出の削減ということも十分考え得る一つの方法であります。  そして、定率繰り入れをやるかやらないか、この問題でございます。御指摘のように、五十七年、そして今度また御審議をいただいておりますが、五十八年、定率繰り入れをしない。だから、これを一年限りのと法律にも書いて御審議をお願いしておりますのは、やはりこれに対して確かにいろいろ議論がございます。定率繰り入れをやれば結局それだけのものが赤字国債の増発ということになるではないか、こういう議論も何回も重ねたわけでありますが、やはりこれを考えた時点、国債の持つ国民に対する信用度の維持ということからしても、この定率繰り入れというものは基本的の考えとしてはその底に存在しておるべきものではないか。したがって、一年限りという考え方で去年もそしてことしも御審議をいただいておる、こういうことになるわけであります。  そして今度は、償還計画というもの、あるいは広範囲な国債管理政策ということかとも言えるわけでありますが、これにつきましても、基本的に決まっておるのは、手持ちの、国民が持っております国債をそれに見合う現金でお返しします、これだけは基本的に決まっておるところでございます。一時国債の乗りかえ議論というものが出ただけで、証券業界に大変な問い合わせが多く出たという事実もありますので、何回も申し上げますように、それは、国債を現に保有しておる方に対する償還は、これはきちんと現金で行うべきものであるということは論をまたないところであります。そして、その償還に伴う財源をどうするか。いまの計画から見れば、藤田委員は必ず予算繰り入れが必要になってくるじゃないか、そうすれば、そこで予算繰り入れをするのか、あるいはその予算繰り入れの財源をどうするのか、それはいわゆる乗りかえをするのか、あるいは借りかえをするのか、新たにまた特例債の発行をもってその財源に充てるのか、いろいろな議論が出ると私は思うのであります。しかし、私どもは、あくまでも現金でお支払い申し上げますということを前提に置いて、だから当面はいわゆる赤字国債というのをいかに減らしていくかということに全力を傾注して、そして、国債整理基金の原資が枯渇いたします御指摘の時点までに、中長期的な考え方に立ってこれは結論を出すべき課題であるというふうに考えております。
  122. 藤田高敏

    藤田(高)委員 中長期的な観点で何とかと言いますけれども、大臣、失礼だけれども、何も回答になっていないのですね。これは六十年から現金償還が始まる、そうでしょう。いまのを繰り返すようですけれども、これは時間の浪費ですけれども、六十年には三兆一千億返さなければいかぬ。ところが、きょうもらった資料では、六十年には二兆一千億しか財源がないのです。六十一年になったら四兆五千億現金償還しなければいかぬのに、きょうの資料からいったらゼロなんですよ。これは一般財源でやるのか、それとも借換債でいくのか、ここはやはり具体的に説明をしてもらわなければいかぬと思いますね。  それで、定率繰り入れというのは五十九年から復活すると言いますが、これはずっと復活するのですか、一時停止したりすることはしないのですか、この点お尋ねしておきます。  それといま一つは、ここでこんなことで時間をとって本当にもったいないわけですけれども、定率繰り入れをやめようという発想の中には、一方では赤字国債を出しておるのだから、赤字国債の額を少しでも減らすためには定率繰り入れの財源をそっちに回したらどうだなんて、これは減債制度の本質にかかわる問題なんですよ。そろばん勘定の問題ではないのですよ。  これは昭和五年、昭和六年当時、私、ここに資料も持っておりますけれども、今日の政治情勢というのは昭和五、六年の時代と実によく似ておるということを言いますが、財政問題、財政事情、特に赤字国債との関係からいきますと、年代を繰ってみますと、昭和四年に世界恐慌が始まるのです。これはちょうど今日で言えば、世界同時不況的なものですよね。そして、昭和五年には例の軍部ファシズムが激化する。今日、ちょっとこれはオーバーかもわからぬけれども、中曽根内閣の日米軍事同盟、軍拡強化に匹敵するような動きが出てくるのです。そして、昭和六年にはいわゆる満州事変が起こるのです。この満州事変が起こったときに財政的にどういうことをやったかといいますと、いま私がここで問題にしておりますように、国債償還資金に対する定率繰り入れ制度を停止しておるのですよ。昭和六年に停止しておる。そのときの言い分がいま大蔵大臣が御答弁になった答弁と一緒なんですよ。赤字国債を一方で出しながら、定率繰り入れをやるぐらいな財源があるのだったら赤字国債を発行するのを少し抑えたらどうかと言って、いわゆる定率繰り入れをやめたのですよ。そして、翌年からはその率を下げましたけれども、結局はそれは赤字国債を減らすことにはならないで、逆に赤字公債が雪だるまのよううにどんどんふえていって、その財源がどこに行ったかと言えば、満州事変から日支事変、日支事変から六東亜戦争へ発展していく、いわゆる戦費調達の財源になっていっておるのですよ。  私はこのことを歴史的に見ますときに、今日のわが国財政の問題、いま私がここで問題にしておる定率繰り入れをやるのかやらないのか、赤字国債償還のために金がないが、借換債をやるのかどうかという問題は、単にそろばん勘定、この試算表の上における数字のつじつま合わせだけではないのですよ。政治の本質にかかわる重大な中身を持っておる。それだけに、私は、大蔵大臣に対しても赤字国債償還の具体的な計画案というものを出してもらいたいのですよ。そうしなければ本当にこれは審議にならないでしょう、委員長、私がいま質問しておることを聞いていただいておっても。(発言する者あり)これを出してくださいよ。出せるのか出せないのか。赤字国債の現金償還の具体的なものを出してくれるのか、くれる用意があるのかどうか、それをお聞きして、都合によったら一服いたしましょう。
  123. 竹下登

    ○竹下国務大臣 詳しくは事務当局からお答えをいたしますが、定率繰り入れというものは、いま藤田委員おっしゃったとおりの歴史的経過がございます。私どもも、定率繰り入れを一時的なものでなく、恒久的にこれをやめるという考え方はございません。  それから次は、やはり何としても、審議するためには、大きく言えば国債管理政策、すなわち償還時に達した場合における償還財源についての、まあ確たるものではなくても一つの方向を示した財源を示せ、こういう御趣旨の御提言でございます。だから、私どもがいま申し上げておりますのは、これだけの数字になってまいりますと。そこで、それをどうしてやるかということについては、それこそ方法といたしましては、歳出の削減と、そして新たなる負担を求めるかということと、そして、いわゆる借りかえ等も含めた公債の発行と、その手段はどうありましょうとも、国債整理基金の場合の借りかえか、その借りかえをしないためにまた新しく発行するか、いずれにしても公債発行という、こういう三つの方法があると思うのであります。  その方法というものをどうしてやるかということは、このような形の問答の中でお互いがその時点に立って中長期的に考えることであって、いまからこの自由主義経済下において、その際は償還財源はいわゆる借りかえで幾らやります、増税で幾らやります、歳出削減で幾らやりますというものを念頭に置いて対応すべきものではないではないか。  だから、その点についての藤田委員の御指摘の御要望に対応できる資料を出す努力をすることは、これはやぶさかでございません。しかしながら、いまおっしゃったような、確然たる計画というようなものが言える性格のものではないではないかということを私はここで申し上げておくわけであります。(発言する者あり)
  124. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは重大な発言だと思いますよ。財政法の基本にかかわる問題ですからね。だから、赤字国債を発行するときに、私どもはもう十年来この問題をやかましく言ってきておるのですよ。本当に、何とかの一つ覚えではないけれども、われわれだって同じことを、来る国会、もう毎国会言いたくないですよ。しかし、ここまで強く求めてきたのは、今日のような事態が起こるのではないか、赤字公債を発行してその償還、返還をしなければいかなくなったときに、その財源さえなくなるのではないかということを今日まで指摘してきたのです。ところが、いま言ったような御答弁でしょう。これはあなた、手持ちに対し空手形みたいなものだよ。つかみどころがない。水に映ったお月様じゃないけれども、すくったってすくったって実のない答弁ですよ、これは。いや本当に。こんなことでこの重大な問題を、五十八年度の予算審議せいと言ったって無理ですよ。  委員長、ちょっとその点注意してください。私は質問をちょっと一服します。(発言する者あり)
  125. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、幾ら御指摘いただきましても、いわゆる公債の償還財源を、この期に及んでその実行計画を示せということは、私は、これは作業が事実上不可能ではないかと思うのであります。(「いま始まったことじゃない、毎回だから」と呼び、その他発言する者あり)
  126. 久野忠治

    久野委員長 委員皆さんに申し上げます。  ただいま藤田君の提言は、将来の財政の基本に関する重要な課題であります。であるだけに、御疑念があるということであるならば、藤田委員は、徹底的にこの問題を取り上げて、質疑を通じて国民の前に明らかにしていただきたい。(発言する者あり)  政府は、この藤田君の質疑に対して、十分内容を検討した上、しかるべき答弁を通じて処置を講じられたいと思います。  政府側の答弁を求めます。竹下大蔵大臣。
  127. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それでは、正確にもう一度申し上げます。  いわゆる償還計画の具体的な実行計画を提出せよ、こういうことに対するお答えであります。  これは、財政法第四条に規定します公債の償還計画は、公債の年度別償還予定額を示すもので足りるというふうに解されておりまして、従来から毎年度予算に添付して国会に提出しておる、こういうところでございます。したがって、この償還計画表の中身、内容につきましては、従来とも財政制度審議会からもいま申し上げましたような趣旨の報告をいただいております。  そこで、将来の具体的な償還財源の調達方法まで含めた償還計画表を提出せよという御指摘につきましては、そのような償還計画を作成いたしますためには、長期にわたります歳入歳出両面の具体的な実行計画を前提とせざるを得ませんが、将来の経済財政状況の見通しが不確実なものである以上、そのような具体的な計画を作成することは不可能でありまして、したがって、いま御指摘のような償還計画表を提出するということは、これはやはりここで明瞭にその提出はできませんということを申し上げておくべきではないか、これが素直なお答えであると思っております。(発言する者あり)  ただ、私どもが申しますのは、藤田委員とここでこうして毎国会問答を重ねておるわけでございますから、具体的にこのような時点においての資料を検討してみろ、こういう御要望に対しては、一生懸命それは応じます、それは応ずるとお答え申し上げるのが当然の義務であります。ただ、きょう議論をいたしました限りにおける償還計画表というものを出せ、こうおっしゃっても、それは出すことはできない、こういうことを言わざるを得ない。また……(「毎年言っているのだよ」と呼ぶ者あり)毎年おっしゃっておるわけであり、そして、毎年それなりのこの御要求にこたえる作業をいろいろ繰り返しておる。しかし、現実この実行計画を伴うものを出せとおっしゃっても、それをお出しすることはできないということであります。(「だめだ、だめだ」と呼び、その他発言する者あり)
  128. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの答弁では、私は納得いきません。(発言する者あり)
  129. 久野忠治

    久野委員長 理事皆さん、お集まりください。  ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  130. 久野忠治

    久野委員長 それでは、速記を始めてください。  この際、竹下大蔵大臣より発言を求められております。これを許します。竹下大蔵大臣。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいま理事間で御協議をいただいた由であります。藤田議員の意見をも踏まえた御質疑に対しまして、総合してお答えをいたします。  まず、国民に対して償還期限の参りました国債につきましては現金で償還をいたします。これは最も大切なことであります。  次に、お出しいたしましたいわゆる仮定計算によりますと、六十一年度から予算繰り入れが必要となります。が、大量の予算繰り入れが必要になるのは六十二年度以降からであります。それをどうするかという御質問の趣旨でございます。  しかしながら、六十二年度は四年先のことでございますので、それまでには、今後の経済事情、歳入歳出の動向等を踏まえて検討をしてまいる課題である、このように認識をしております。したがって、いまの段階でははっきり申すわけにはまいりませんが、そもそも仮定計算が現行の政策を前提のもとに置いて後年度負担推計をしたものでありますから、理論的には、要調整額に対しては歳出カット、負担増あるいは借りかえということも含めてのいわゆる公債発行の三つ考えられるところであります。しかし、借りかえということにつきましては、いままでの国会答弁また法律からしても、これはいまこのことをやると決めたわけではもちろんございません。今後どうするかという検討課題であるというふうに存じております。
  132. 藤田高敏

    藤田(高)委員 予算の理事の各位にいろいろ御協力をいただきまして、大方いま大蔵大臣から御答弁のあったような趣旨のコンセンサスといいますか、今日の予算委員会の審議を進めるという意味合いにおいて、私からあえて言わしてもらえば、半ば政治的な意味において、そういうことで予算審議を進めてもらいたい、こういう強い要請もございますので、そのことも十分かみしめながら私の見解を申し上げたいと思うわけであります。  その第一は、現金償還をやらなければいけない国債の償還につきましては、これは必ず現金で償還する、これはもうあたりまえ過ぎるほどあたりまえのことですから、これは当然のことでございます。  二つ目の問題は、仮定計算ですね。けさというよりも昼前に手にいたしました大蔵省から提出した仮定計算書によりますと、いま大蔵大臣が言われたように、いよいよこの六十年から、現金償還の始まる年度にはもう財源が実質的にはない、こういうことになってまいりますから、この仮定計算書によりましても、六十一年からもう生のままで一般財源からの繰り入れが必要になるという数字が出ておるわけであります。とりあえず六十一年の数字は三千億程度でございますが、六十二年になりますと三兆八千億、六十三年はちょっと下がりまして二兆六千九百億ですけれども、これとても大きな数字でございます。六十四年になりますと五兆四千、続いて六兆二千というものが一般財源から繰り入れられるということになりますね。そうすると、とてもじゃないが、予算書の予算総額はこれだけであっても、中身は、実際一般国民生活に密着した予算の財源というものは、もう本当にこんなに圧縮されるわけですね。そんなことが実際問題としてできるだろうか。これはいまも言われたように、理論上はそういうことになると言いますけれども、私は六十二年から始まる、六十二年の三兆八千億という一般財源を国債償還に充てるというこの計画は、現実にそぐわない、実際問題としてはできないだろうということを率直に指摘をせざるを得ないと思います。  そういうことになりますと、それでは、この一般財源からのこういった財源の調達をどうしていくんだということになれば、今日ただいまの段階で、ここからこれだけ、あそこからこれだけというわけにはいかぬが、いまの御答弁では、一つには、歳出カットをやっていきましょう。第一のこの歳出カットですが、これも言うべくしてもう大蔵省御自身が手を上げられておるのじゃないかと思うのですけれども、もう五十八年度の歳出カットが大方限界に達しておるのじゃないか。これとても、私はそういう意味合いにおいて、いまから申し上げておきますが、歳出カットは言うべくして、歳出カットから出てくる財源というものは非常に少ないものじゃないだろうか。  二つ目の問題は、増税とは大蔵大臣はおっしゃらないのだけれども、いわゆる負担増。この点は、負担増というのは新規の増税も含まれるということでしょう。これはひとつ後で御答弁を願いたいのですよ。これは理論的なことを言っておるわけですからね。現実的なことでいくのだったら、私はこれは承知しませんよ。これは断っておきますが、これはどう言われようと承知はできない。しかし、これは一つの理論的というのだから、そういう意味合いにおいて、私は一定の理解を示そうとしておるわけですから、この点は負担増という限りにおいては、いわゆる増税なき再建と言いながら、実質的には増税も考えざるを得ないということが含まれておるのでしょうね。これについては私どもは基本的に賛成するわけにはまいりません。なぜなれば、まず、不公平税制の徹底的な根本的な改正をやるべきだという観点があるからであります。これはきょうは時間がないから、私は具体的な対案を持っておりますが、きょうは触れません。  三つ目の問題が、先ほど私が言及いたしました、ある意味では一番大きな問題でございます。これがいわゆる借換債の問題でございまして、これは理論的な観点からいったら、現段階では明確に言えないにしても、これだけの一般財源からの持ち出しになるわけですから、その段階になれば借換債を発行するかもわからない、こういうことでありますが、この最後の問題は、私どもとしては賛成することはできない。理解することもできない。  なぜなれば、まず第一点は、今日この現行法、財政法の四条には、建設国債は許されても、特例公債、今日言うところの赤字国債を出すことについては非常に厳格な償還計画というものがなければ出せないんだということを書いているのです。それ以上のことはできないというのがこの法律ですからね、財政法ですから。ここでいま問題になっておる借換債はできない。いわば、実質的な意味において赤字公債のために赤字公債を発行するような、そういう借換債はできないということがこの法律の趣旨なんです。これは議員の皆さんには釈迦に説法ですけれども、この財政法四条というのは、今日の平和憲法に照らして言えば、憲法九条に匹敵する腰でございまして、これは財政法の一番大きな柱になっておるわけです。ですから、そういう意味合いから言って、私は、いまのお話を聞いておりますと、ここでは借換債ということになりますと、これとは別の、これに抵触しない法律をつくらなければならなくなるわけです。私は先ほども昭和五、六年当時のことを申し上げましたが、そういう借換債をやるということは、私ども社会党としては賛成するわけにはまいりません。  こういうわが党の、といいますか、私自身の見解を率直に申し上げて、議事進行には協力をいたしたいと思います。  ただ、先ほど申し上げた、何だかわかったようなわからないような負担増というものの中身について、いま少し具体的な御答弁を煩わしたい。
  133. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど申しました、いわゆる負担増という問題でございます。あくまでも、藤田委員御指摘のように、理論的には負担増ということには税の自然増収も含まれますが、新たなる負担という意味においては、おっしゃった増税というものも含まれる、理論的にはそのように思います。
  134. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の持ち時間はあとわずかでございますが、本来なれば、持ち時間の範囲内で所得減税の問題なり予算質問の通告をいたしておりました不公平税制の問題なり、その中身につきましては、グリーンカード制の問題あるいは割引債の償還差益の問題、さらには農畜産物の自由化問題について触れる予定でございましたが、御承知のようなことで時間が足らなくなりましたので、これは一般質問の中に譲りまして、残余の時間はこれを留保して、私の質問を終わります。
  135. 久野忠治

    久野委員長 これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  136. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、質問の第一に、倫理の問題に関しまして中曽根総理大臣に御質問申し上げるつもりで、実はこれだけ資料を用意いたしてまいりました。けれども、この質問台に上がりまして、若干心境の変化を来しましたので、一言だけ総理に申し上げておきたいと思います。  それは、五十二年の四月の十三日でありますが、総理は、そのときは自民党の幹事長でいらっしゃったと思ったのですが、この衆議院のロッキード特別委員会に証人にお立ちになったことがありました。いわゆる宣誓をされて、そして証言をなすった。主としてロッキード問題あるいは殖産住宅の問題あるいはその他いろいろございましたが、それが終わった後で、総理は一方的に、もうこれで私のロッキードその他に対する灰色の問題は終わりになったんだ、こうおっしゃったが、当時の委員を含め、理事も含めて、あの総理――総理じゃありません、あのときは幹事長だ。あの中曽根さんの答弁では何一つ解明されていない。解明されていないから、これは再びこの証人台に立って再喚問に応じてもらわなければならない、こういうことであなたを再喚問するという手続を私どもはしていたのであります。その手続の最中いろいろの問題が起きると同時に、じんぜん日が過ぎて今日に至っている。だから、率直に正確に申し上げますると、あなたの証人喚問の事件はまだ未解決だ。このまま今日に至っている。でありますから、私はいま一度やはりこの仕上げをする意味において、あなたに総理大臣としてじゃない、証人として再びひとつ喚問台に立っていただく、こういう意向でおります。私もまたその準備を進めたいと思っておりますが、これに対してあなたはひとつ御所見がどうか。――まあ聞かぬでもいいが、そういう問題があるということだけ一言申し上げておきます。  その内容は、ここにはたくさんありまして、とても申し上げるほどの時間のいとまもない。まず、たとえて言えば、あなたは児玉譽士夫氏とはもう年に一回か何日かしか会っていないというのだが、そういうような回答をしておいでになるけれども、われわれの調査によれば、昭和四十五年、四十六年には週に一回は必ず、しかもそれが木曜日、日にちを決めて児玉邸に参上せられていたという、そういうことも上がってきておりまするし、数え上げればいとまがない。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 まあそんなことをやっていると、時間のいとまがありませんから省略するにいたしまして、われわれの方でいま最も疑問に思っていることは、あなたはともかく、コーチャンから児玉譽士夫氏が委託を受けて、それで児玉譽士夫氏がコーチャンのいる前であなたに長い電話をかけられた。その長い電話の結果、いわゆるロッキード社のエアバスを日航に売り込むというその計画を、一夜にしてそれを覆した。やはり全日空に買い上げてもらうように最大の努力をしますというような言質をあなたは与えられている。それがコーチャン証言の中に出ている。そういう明らかな事実があるにもかかわらず、あなたは全部それを否定してこられたが、否定、肯定は別にいたしまして、殖産住宅の五億円の問題もそうでありますよ。またあなたは、新政同志会あたりで七億円の、いわゆる脱税じゃありません、全部虚偽の申告をされたことも、これも事実だ。いろいろ数えればいとまがない。これは一晩じゅうやったって切りがないようなものだ。実に多い。  ただ、その中でわれわれが最もまだ不可解にたえないことは、そこに加藤君もおる。加藤君も運輸省の政務次官として、ロッキード社から回ってきた金を三百万円ももらったとかもらわないとか、二百万円をもらったとかもらわないとかということがあるが、そういうことから関連すると、あなたは児玉氏やあるいはロッキード社を通じて最も重要なポイントだ。まさに、このエアバスを買うか買わないか、P3Cがどうなるかという重大なときにあなたは遭遇していられるのだから、だれが考えてもこの推理、いわゆる環境の方から類推をしていけば、あなたのふところへ入った金は、まあ三百万円や五百万円や一千万円、そんなものではないだろうという推定が一つ成り立つのだが、それがやはりあなたの知能犯と言っては悪いが、そういう言葉はよくありませんけれども、頭がいいから、田中総理は五億でひっかかった。あるいはだれかれは五百万円でひっかかった。あるいは二百万円でひっかかった。けれども、あなたに関する限りは、金銭の授受だけはどうしてもつかめないという、これだけがどうも不思議でならぬ。この点をいま少し究明の必要ありというのが、あの五十二年四月十三日からのロッキード問題に対するいまなおずっと尾を引いている問題であるということを申し上げておきまして、この問題は後日にひとつまた対決をすることを楽しみにいたしまして、次の問題に移りたいと思いますが、そのかわり第一問に用意しておりました山本君、秦野君、加藤君に対する質問は、これで省略をいたします。そんな安心したような顔をしなくたっていいですよ。きょうは許してやる、また次の楽しみにしておくということでございますから。  そこで、私は第二問に入りたいのですが、総理、これは単純な質問ですが、あなたは国を守る、国を守るとおっしゃるが、国を守るということは一体どういうことなんですか。国というものを構成している要素は何でありますか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま小林さんからロッキード事件その他のお話がありましたが、私は国会で申し上げたとおりでありまして、いまおっしゃったような事実はございません。  それから、国を守るということは、これは「国防の基本方針」というのがございまして、その第一に掲げられているところでございますが、直接または間接の侵略に対してこれを排除する、そして日本の平和と独立を維持していくために必要にして有効な防衛力を整備していく、そして自由、民主主義を基調とする日本を守っていく、そういう趣旨であると思っております。
  138. 小林進

    ○小林(進)委員 国に対する直接、間接の侵略を防御するとおっしゃるが、その国の何を防御するのですか。  時間がありませんから私は続けて言いますが、国、国家、あなたは国を守るとおっしゃる。その国を構成しているものは何ですか。まず教えてください。これは何です。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは領域、つまり領空あるいは領土、領海、それから国民あるいは国民の生命、財産あるいは文化とか伝統とか、そういうものを一切含めた価値である、そう思います。
  140. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、大分おもしろい総理の御見解を承った。私は、自分のいままでの概念としては、国というものを構成するのは国土と主権と国民だ、この三つの要素によって国というものが成立していると思う。あなたは国を守る、国を守るとおっしゃる。国を守るということは一体国土を守ることなのか。主権か、いわゆる独立国家の独立を守ることなのか。そこに住んでいる国民を守ることなのか。私はそれを聞きたいわけで質問をしているのです。一体どれを守るのですか。領域も何も全部を守るのですか。微に入り細に入り守ることなんですか。どうもそれはおかしい。いま一度そこをお答え願いたい。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 簡単に申し上げると、民主主義を基調とする日本の平和と独立を守る、それが国防という概念になっております。
  142. 小林進

    ○小林(進)委員 これが非常にあいまいだから、いまの国の防衛だとかあるいは自衛隊というものの存在がふらふらしているのです。  防衛庁長官にもお尋ねするが、一体、自衛隊はいま二十八万だかおらっしゃるけれども、その自衛隊にあなた方は何を守ることを教えているのですか。やはりいま総理と同じように、そういう抽象的な国を守る、国を守るということでそれをうっちゃらかしておられるのですか。これは基本的な一番重大問題ですよ。自衛隊は何を守るのか。国土を守るのか、主権を守るのか、あるいはそこに住んでいる国民の生命と安全を守るのか。これはきちっと教えてください。どういう教育をしているのですか。
  143. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 先ほど総理から御答弁がございましたように、「国防の基本方針」にもございますとおり、「直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守る」、これを自衛隊隊員に教えておる、こういうことでございます。
  144. 小林進

    ○小林(進)委員 ところが、この問題については、まだ日本の学者とか専門家の説は定着していない。時間がないからここでも私の調べたことを言うのだが、みんなそれぞれ意見が違っている。  防衛庁の防衛白書の昭和五十六年には、一体守るべきものは何だと言ったら、これは国民である。これは五十六年の防衛白書です。「国民であり国土であると同時に、多様な価値観を有する国民にそれを実現するため、最大限の自由を与え得る国家体制」を守るのだ、こういうことを言っているな。  ところが、あの著名な栗栖君は、一体何のために軍隊があるのか、だれのために戦うのかということに対して、これは野坂昭如氏と対談をしているのだが、その中で野坂君が、生命と財産と社会の仕組み、文化を守るのだ、こういうことを言っていることに対して、栗栖君は発言なし。論議する必要だけは認めた。栗栖君は、何のために国を守るのだということに対する論議だけは認めたけれども、特別に発言をしなかった。彼自身もどうも迷っているらしい。  それから、これは時間もないから急いで行きますけれども、小谷秀二郎君の「国防の論理」、これには守るべきものは、現在の生活様式を守ることだ、国防の目的は、現在の生活様式を守るのがいわゆる国を守る本義だと言っている。ところがまた、これは防衛考える会事務局編、この事務局がやっている「わが国の防衛考える」、これは昭和五十年、若干古いが、その中には「国土と国民の安全を守る」のが目的だ、こう言っている。みんなこれは違ってきている。それから清水幾太郎さんですか、この人は、「日本国家たれ」という昭和五十五年に出された本の中で、私たちとしては日本が一片の自由もないソ連のような国になることをあくまで防ぎたいと思う。国としての日本を守っていきたい。これはやはり自由を守るということでしょうな。非ソ連的な体制を守るためにやっていきたい、こういうことを言っているわけです。いいですか。今度は海原君だ。これは国防会議の事務局長をやられた。彼が何と言ったか。安全保障とは外交、経済、防衛・軍事、この三つの力を総合することによって国の安全を守るのだ、こう言っているのだ。  そこで、防衛というものは実に多様で、これは一々挙げていたら切りがない。私は博学の士ですから、一生懸命図書館に入ってこれをできるだけ勉強してきたのですが、またこういう意見もあるのです。久保君等は、守るべき対象は、自分と家族と国家三つを守るのだ、これが防衛の本義だ。こういう説をなす者もある。久保君は「国防論」の中にも繰り返して、国の安全と独立を守る、これが防衛の目的だと言っている。猪木正道氏は「軍事大国への幻想」という本の中で、昭和五十六年だが、およそ国家防衛力というものは、国際社会の一員として領土と領空と領海に責任を持つという意味だ、だから、主権と独立を守るための権利であると同時に義務でもある、猪木さんは、国を守る目的をかように解釈しておられる。ところが、おもしろいのは、森嶋通夫とおっしゃるのですか、「自分流に考える」という、これは昭和五十六年、この人はなかなか変わった人ですね、この人は、国防問題はマクロ的に見れば政治、経済あるいは戦略、イデオロギー等の問題であるが、マイクロ的に見れば、国防は自分の命の問題である、したがって、宗教及び哲学の問題でもある、人生観が人ごとに違うのだから、国防観も十人十色であってよろしいと言うのだな。こういう意見があるのだ。何のために国を守るのだといったら人それぞれの意見に従ってやればいい。自分の宗教観、自分の命観、それに基づいて考えてやればいいのだ、こういうことになっている。  いまの日本は、あなたは防衛庁の自衛隊、自衛隊といって、一生懸命にない金を出して軍事力を増強しているけれども、いまの自衛隊員を一人ずつつかまえてごらんなさい。あなたは何のために自衛隊に入って、何の仕事をやっているのだ。さっぱり一人一人意見ができておりません。私は職業を覚えるためにやった。技術を身につけるために来たのだ。私はサラリーマンです。そういう形ですよ。  あなたは、それほど国を守るということが大切ならば、新憲法に基づいて、きちっとそこら辺を哲学的に不動のものをつくったらどうですか。いま防衛庁長官が言ったような、あんなあいまいな説明で、それであなたの大好きな国が守れると一体お考えになっているのか。これが一番中心ですよ。中心が外れているよ。いかがですか。
  145. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 防衛庁という役所のやります仕事も全くの行政官庁で行いますが、この行政官庁たる防衛庁の基本方針というものは、すでに「国防の基本方針」として先ほど御紹介させていただきましたように、昭和三十二年に閣議決定をいたしてございます。なお、先ほどはその「国防の基本方針」の中の特に中心になるところを御報告、御説明申し上げましたが、さらに、そのほかに四項目にわたって詳細に詳述されておりまして、それに基づきまして自衛隊法その他隊員の訓練、教育についての基本的な方策を決めておるわけでございます。
  146. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、先ほどからあなたがお読み上げになったことは全く了承できないし、それがまた自衛隊員をして国家大事のときにいわゆるやらせるだけの迫力もないです。  中曽根さんも僕も古い男だから知っている。一体、明治憲法に制定せられる国防の概念はどこにありましたか。何を守るのが明治憲法の概念でありましたか。これは総理御存じでしょう。明治憲法で守る、いわゆる国防の中心はどこにありましたか。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もう大分昔のことでよく覚えておりませんが、陸軍がたしか国防の本義とか、そういうものをつくったりして、主として国体というものを中心に物を考え考え方であったのではないかと想像しております。
  148. 小林進

    ○小林(進)委員 いまあなたはいみじくも国体とおっしゃった。それですよ。明治憲法は国を守るのが目的ではなかった、軍隊は。国民の命を守るのが目的ではなかった、領土を守るのが目的ではなかった。天皇御一人のために命をささげるのが国防の本義だったんだ。そうじゃないですか。国民は天皇の赤子だと言った。わが日本は一天万乗の天皇が統治まします国だと言った。「大君の辺にこそ死なめ」「海行かば水漬く屍山行かば草むす屍」、かくのごとし、大君の辺にこそ死ぬというのが国防の本義なんですよ。だから、死んでいくときも国家万歳なんと言ったらこれは非国民だ、天皇万歳と言って死ななければいけない。これが明治憲法の本義でしょう。明確なんだ。  ところが、こんなことを言っているのは、あなたの答弁を聞いているとどうも明治憲法がしっぽについているのだな。明治憲法に対する郷愁をお持ちになっているのではないかと思ったからあえてお聞きしたのだが、明治憲法は明快だけれども、しかし今度は新憲法のもとに一体われわれは何のために国防に参じ、何のために死ななければならぬのかということがちっとも明確じゃない。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕  防衛庁長官、そんなような定義でわれわれは簡単に命なんかささげられないよ、安全と平和のために。もし、これからの近代的な戦争が起きるとすれば、一番大事なものは人の命だ。国土でもない、主権でもない、国民の命です。その命を守るところに国防の本義があるとするならば、国を守るということで一番大事な命をぽかぽか持っていかれては、時勢は逆になってしまうじゃないですか。そこら辺をきちっと定義を決めなければ、それはいかに国防費をたくさん出したところで、そんなものは無用の長物だ。怠け者のサラリーマンをつくるようなものです。いかがですか、あなた。私の言うことに間違いがありますか。
  149. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 国の安全を確保し、独立を維持していくということはきわめて大きな重大な事業だ、こう考えます。そして、今日に至るまで防衛庁といたしましては、先ほど来答弁申し上げさせていただいておりまするように、「国防の基本方針」に基づいて努力をいたしてきておるわけでございますが、この「国防の基本方針」の中には、ただ侵略からわが身を守るというだけではなくて、もっと高い理念でありまする「世界平和の実現を期する。」とか、あるいは「民生を安定し、」「国家の安全を保障するに必要な基盤を確立する。」とか、あるいは「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する。」とか、あるいは最後には、先ほど来申し上げておりますように、「外部からの侵略に対しては、将来国際連合が有効にこれを阻止する機能を果し得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する。」こういうふうに定めておるわけでございます。
  150. 小林進

    ○小林(進)委員 私は先ほど来聞いているんだ。そういう国の安全を守る、外国の侵略から国を守るということで、一体自衛隊なるものに魂をつぎ込んで、優秀な防衛軍に育成することができるか。同時に、いまの小中学校の子供に義務教育の中で、国の安全のために、君たちも国のその第一線に出なければならぬなんというような教育をしておりますか。あなた、子供にそれを言ってごらんなさい。私は国の安全のために命を投げ出すなんて御免こうむりますと言う、子供は。それが実情です。それが実情だから、そこら辺をいま一度考え直してみたらどうかということを私は言っている。  あなた方、一体、自衛隊の統治者はだれですか、自衛隊の統制者は。
  151. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 法制上最高の指揮官は内閣総理大臣でございます。
  152. 小林進

    ○小林(進)委員 内閣総理大臣。そうすると、内閣総理大臣のために、では国民に、いわゆる安全のために死ぬということか。これもまた重大な問題が考えられます。いいですか、これは冗談じゃないのだ。国の基本に関する問題だ。  明治憲法の時代には、いわば天皇のために死ぬんだ。「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」、いまあなたは、同じだと考えているみたいだ。第二条、皇位は男系の男子、これを継承する、第三条「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」。この三条は、いわゆる三分の二をもってしても憲法の改正はできない、これは永久に改正することのできない絶対不変の一つの条項であると言われたけれども、戦争に負けたらぽかぽかっとなくなっちゃった。なくなっちゃったけれども、いわゆる陸海空軍で言わせれば、天皇は陸海空軍を統率する、明らかだ。  一体、内閣総理大臣は陸海空軍を統率するとどこに書いてある。どこに書いてありますか。
  153. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛隊法でございます。
  154. 小林進

    ○小林(進)委員 だから、あなた方は、憲法の改正をおやりになるということで、中曽根さんは旧憲法、天皇制の時代を思い出しているのじゃないですか。どうですか、あなた。だから、天皇は国の象徴であるということを改めて、天皇は国の統治者であるということをあなたは考えているのじゃないか。そして、陸海空軍の統帥をまた天皇のところに持っていく。そして、その下で命を投げ出して、いわゆる天皇の赤子でございます、身は鴻毛よりも軽しという、そういう軍隊をつくりながら、日本国を不沈艦にして、そして国土は残るけれども、そこに住んでいる国民の命は全部絶えてしまうという防衛体制をあなたはつくり上げることを考えているんじゃないか。私はそれを非常に恐れているのです。どうですか、あなたの不沈艦論はそこから来ているのじゃないですか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、前から申し上げますように、日本国憲法が出てきたこの歴史的意味を非常に高く評価しておる。そして、この民主主義、平和主義、国際協調主義、基本的人権の尊重、こういうような基本原理はあくまで護持すべきである、そういうことも言っておりますし、自由民主党の政綱においてもそういう考えを述べてあります。したがって、旧憲法に戻ろうとする考えは、毛頭持っておりません。
  156. 小林進

    ○小林(進)委員 そこで、私は、この問題できょうはここで結論を出そうとは思ってはいない。いないが、何のために国を守るということに対して、いま言われるように、国の独立を守る、安全を守る、領土を守るという、そういうことで地球よりも重いこの命をそのためにささげようということは、もう近代的な民主主義社会ではそれは通じない。とうといものは国土でもなければ国の安全でもない。それよりも国民の命だというところに、近代的な国防のいわゆる頂点がいかなければ、私は本当の国防の倫理は出てこないと思う。これは私の主張です。主張だから、あなたたちがここで、私の時間が来れば質問をやめるだろうから、それはちょろまかそうといったって、いま私が言ったように、わが国防理論を代表する日本の学者たちが、一人として何のために国を守るかということに統一した意見一つ持っていない。そういうところで国防論をやったところで、子供の魂を動かすこともできなければ、国民に本当に国の大切さを教えることも出てくるわけがないだろう。私は、いま一度白紙に戻して、何のために国を守るかということを、それこそ日本人の英知を集めてその結論を出すような作業をひとつやってもらいたいと思う。これは私の注文です。どうですか、総理大臣
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一つの御意見として拝聴しておきたいと思います。
  158. 小林進

    ○小林(進)委員 総理は拝聴しておくと言うのだから、拝聴の裏にはそれを実行化する御意思があるものと私は好意的に読みまして、ひとつこの問題はおさめることにいたしましょう。ともかく、いまのようなそういう概念では、とてもそれはもうだめですということだけを申し上げておきましょう。  それから、第二問で、私は同じ国防問題でお伺いしたいのだけれども、あなたは、お聞きすると軍備の均衡、均衡ということを盛んに言っていられる。言いかえれば、米ソ両国が核兵器でも何でも均衡を持ちながらそれを徐々に縮小していくととろに、いわゆる軍備縮小と平和への道が開かれる。不均衡ではどうも世界の平和を招来することは困難だということをしばしばあなたは言っておられたが、ここでお伺いしたいのは、一体米ソ両国のこの軍事の均衡をだれが判定するのでございますか。これをお聞かせ願いたい。
  159. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私どもといたしましては、常に紛争を抑止するということを第一義といたしまして、その紛争の抑止の信頼力を常に持ち続ける、それによって最終的には軍備の拡張に歯どめをつけていく、こういう形になって動いておるわけでございまするが、その紛争の抑止力についての判定につきましては、従来から申し上げておりますように、両陣営、俗に西側あるいは東側という呼び方がございますが、この両陣営が大変大規模な通常戦力による攻撃をお互いにしかけ合うというようなことがないような形でのみ初めて抑止力が有効に働くものだ、こういうふうに判断をいたしておるわけでございます。そして、この判断につきましては、従来ともわが国はわが国の政府としてこの判断をいたしてきておる、こういうことでございます。
  160. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたの答弁は、私の質問に答えていませんよ。いわゆる東西間の軍事力の均衡だけがすなわち戦争の抑止力になっていると言うが、それに対して、米ソの間で不均衡だから、あなたたちはアメリカをもっとソ連と均衡を持つような軍事大国にしなければならないと言っているが、その問題についても私どもは私どもで情報をとっている。  たとえて言えば、同じアメリカでもエドワード・ケネディさん、次の大統領選挙にお出になるかどうか知りませんが、ケネディさん、マーク・ハットフィールドあるいはマクナマラさん、前の国防長官、世界銀行の総裁、それからジョン・K・カプイス、ハリマン、クリフォード元国防長官、こういう人たちは、アメリカで最も権威のある防衛専門家でありながら、彼らは、これに対して、米ソの核軍備はバランスがとれている、ソ連に対してアメリカはちっとも劣っていない、だから相互検証可能な核兵器の生産、実験、配備の凍結を目指して、これを凍結しようという交渉をやるべきだと言っている。これはアメリカの内部で非常に有力な意見として世論を喚起しつつある。  これに対して、そうじゃないんだ、依然としてアメリカの方がソ連に対して劣勢であるというのがレーガンさんだ。あなたが会ってこられたレーガンさん。そこで、レーガンさんは、現在の米国はかつての米国と違って国力が非常に低下をしているから、独自でソ連と対抗することができない。そこで、NATOや日本にも応分の負担をしてくれというのがレーガン説だ。で、あなたはそのレーガンの主張に同情してこられた。共鳴をしてこられた。応分の負担をすることを承諾をしてこられた。ここに私どもの了承できない基点があると言うのですが、どうですか。この問題についてあなたは、本当に心からアメリカの軍事力が核も含めてソ連に劣っているとお考えになっておりますか、総理。――新井参事官ではない、総理
  161. 新井弘一

    ○新井政府委員 委員長の御指名でございますので、私から答弁をさせていただきます。  均衡についてのお尋ねでございますけれども、確かに二つの国の均衡、パリティ、どういうふうに判断するか、これはたいへんむずかしい。質、量、そういういわば静的、動的な要素に加えまして、当然のことながら、戦略環境あるいは戦略ドクトリン、同盟国の貢献度あるいは兵隊さんの練度、モラール等々いろいろな要素を総合的に判断をしないとにわかに言えない。そういう意味で確かに黒白は一概につけ得ない。しかしながら、明確にわれわれどもの判断として言えることは、現在少なくも静的に見た場合、米ソの軍事バランス、これはほぼ均衡しているだろうということでございます。しかし、いま放置しておきますと、遠からずソ連の軍事力が優勢になる、そういう顕著な趨勢にあるということでございまして、この認識はわれわれの認識であり、同時に西側のコンセンサスであろうというふうに判断しております。  以上でございます。
  162. 小林進

    ○小林(進)委員 私はここで、時間もありませんが、一つだけ参考までに総理とか閣僚に提起しておきたいと思う。  これは六〇年、ケネディ氏とニクソン氏が大統領を争われたときの記録です。いわゆる大統領選を激しく争っているときに、これはケネディさんがわずかな票で勝ったのですが、ケネディさんは現職の副大統領だったニクソン氏に対し、米ソのミサイルギャップの増大を盾にとり、激しくアイゼンハワー政権の国防政策の不備を責め立てた。ケネディ氏によれば、ソ連のミサイル優位は明らかだ。しかも、アメリカの劣勢は深まる一方であり、これはアイゼンハワー政権の失政のもたらすものだという攻撃をやったわけだ。やがて、接戦の末ケネディ氏が大統領に就任をした。そこで、ミサイルギャップの実態についての報告書とその具体的な是正策の提示を新任のマクナマラ国防長官に命令をしたわけだ。これほどソ連に対して核兵器は劣っているのだから、どれだけふやせばいいかというその報告書を早く持ってこい。そこで、マクナマラ長官自身の報告書と、それからペンタゴン独自の報告書がケネディのいわゆる大統領の執務机の上に届けられた。いずれもアメリカによるミサイルの増強を訴えた上申書とともにである。これは、やはりふやさなくちゃならぬという上申書である。マクナマラのそれは、さらに四百基をふやし、現在の五百基と合わせて九百基のレベルに引き上げることを上申してある。一方、ペンタゴンは、さらにそれを上回る増強を進言していた。これが先なんですよ。  ところが、驚くまいことか、選挙の主要争点としてケネディが持ち出したミサイルギャップなるものは、幻も幻だ、現実には存在しなかったのである。アメリカは劣位どころか、はるかに優位に立っていた。驚いたケネディは、直ちにマクナマラを呼んで、わが国が優位にあるにもかかわらず、何ゆえ膨大なコストをかけて四百基も増強せねばならぬのかと詰問をした。そうしたらマクナマラ長官は、四百基の増強はソ連とのかかわりで必要なのではない、わが国の軍部との平和を保つためにこそ必要なのですと吐き捨てるように答えた。これは、六〇年代初めのアメリカの国防、ソ連劣勢に対する裏話です。  こんなことは、裏話だけではないのです。私はマクナマラさんには数回会っている。そして、このことも私は聞いているのです。これがそれぞれの国における政府と軍部との関係ではないかと思うのです。それだから、私は米ソの軍備の均衡論についてもお尋ねする。特にソ連なんというものは、いまの新しい書記長も、軍の支持があったればこそアンドロポフさんも書記長になられたということで、軍のいうことは一から十まで聞かなければならぬ体制にあると私は推定をしているが、アメリカにもそれがあるのではないか。  そういう状態を一体、日本の政府はその真実を調査する何か機関をお持ちですか。政府の中にそれがあるかないか、私がお聞きしたいのはそこなんです。
  163. 新井弘一

    ○新井政府委員 米ソの軍事力の実態等につきましては、私どもいろいろな手段を講じまして冷静かつ客観的に判断しております。これはNATO諸国も同じであり、いわんやアメリカにおいてそのとおりでございます。  そこで、若干敷衍して先生の先ほどの御発言、ミサイルギャップについてのお尋ねであって、要するに軍事力というのは、そのときどきの軍部が、あるいは政府が一方的に特定の国内的な目的でそれを外に喧伝する、そういう要素があるということで、恐らくは現在のレーガン政権のソ連の軍事力に対する見方についても疑問を提起しておられるというふうに私は推測いたしますけれども、遺憾ながら実態は、私が先ほど言ったように、過去二十年間、特にミサイルギャップと言われた後キューバ危機がございましたが、それ以後二十年間、ソ連がGNPで一二ないし一四%、これをつぎ込んで軍備拡張をやってきた。これに対してアメリカはどうであったかといいますと、七〇年代、これはむしろマイナス成長、実質ではアメリカの十年間の軍備というのはマイナス一八%なんです。この結果、まさにほうっておくと形勢逆転するという状況になった。  そこで、先生に一言情報としてお耳に入れておきたいと思いますけれども、現在ソ連自体が、数年前から米ソの軍事力は均衡になったと発言するようになった。これは多少ともソ連を勉強している者にとっては驚きでございます。理由は、もしお望みなら私お答えいたしますけれども、以上でございます。
  164. 小林進

    ○小林(進)委員 おれは大体君たちの答弁は全く聞きたくないんだ。防衛庁あたりにいて、いま日本防衛庁は、日本の軍備はこれです、国力はこれだけですからこれだけの整備でよろしゅうございますと、明治の初めから今日まで言ったことがあるか。朝から晩まで考えていることは、いかに軍備を拡大するかしか考えていない。そういう生き物なんだ。そんな者から答弁聞いたって何の参考になるか。むだだ、質問するだけ。ここに出てくるのは、これは出さないでおいてもらいたい。私は政府と質問の交換をしているのに、そういう事務的なことを言っている。  第一、マクナマラというのはどうですか。アメリカで最も著名な国防長官だ。その国防長官が、そういう政府と、大統領府とアメリカの軍部との関係のいわゆるインチキ性というか、それをみずから暴露していて、そして、いまでもアメリカにおいては一番平和論者だ。最近だって、あのレーガン氏に対して早く核先制不使用の宣言をしなさい、あるいはアメリカの国防は断じてソ連に劣っていないという、切々として客観的にだれもが信用するような説をしている。これが本当の国を愛する国防長官ですよ。ここらにもたくさんいますけれども、同じくそれくらいの見識を持たなければいかぬが、日本のはどうかということを私は言っているのです。  だから、その意味において、そういう軍部の偏狭的な者の焦りをチェックをするような、そういう一つ制度が私は内閣の中にあっていいじゃないか、総理府の中にあっていいじゃないかということを言っているのであって、それをおやりになるかどうかを聞いているのですよ。おやりになるのですか、どうですか。総理大臣、それをあなたに聞いているのです。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛を担当する者は虚心坦懐に、あらゆる人の話をよく聞いて分析して、自分の判断を決めていかなければいけないと思っております。そういう意味におきまして、そういう機関をつくるかどうかは別として、あらゆる方面にそのような手を伸ばして、虚心坦懐に聞ける機会をつくっていく必要があると思っております。
  166. 小林進

    ○小林(進)委員 昔のように天皇をシャッポにして、三軍の統帥権は、われわれは天皇直属だと言って、陸海軍がいわゆる内閣やその他の編成権を踏みにじって、統帥権干犯だなどと言って政治がそれに介入することを許さないで、だんだんだんだん戦争に飛び込んでいった。まだ日本の自衛隊は、私はそこまではいっていないと思っているのだ。そこまではいっていないが、こういうような総理大臣をつくって、このまま野放しにしていくと、だんだんだんだんその道に進んでいく危険があるということを私は考えています。それだから、それをチェックする機関は、何ぼ早くつくっておいたっていいのです。何ぼ早くつくってもいいから、いまのうちから内閣の中に、そういういわゆる軍国主義者の陰謀を最初からチェックするような制度をひとつおつくりになったらどうかというのであります。私の一つの提言ですから、まじめに聞いてください。
  167. 久野忠治

    久野委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  168. 久野忠治

    久野委員長 では、速記を続けてください。
  169. 小林進

    ○小林(進)委員 天皇をシャッポにという言葉が軽率に聞こえれば、それは取り消しますよ。けれども私は、決して尊敬云々を言ったわけじゃない。けれども、天皇は三軍の頂点に立っていられるんだ。そうでしょう、天皇は。その意味において言ったのでありまするが、それが軽べつしたように聞こえたら取り消しますからどうぞ。しかし、天皇は憲法に基づいて陸海空軍を統率することになっているのです。その統率をどう軽く訳すかは別にいたしましても、統率となっている。(「一番頂上にいる人をシャッポと言うんだ」と呼ぶ者あり)そう私ども普通言うが、あなたに失礼に聞こえたら、それはひとつ置いておきましょう。  そういうことにして、総理大臣が今度は天皇に成りかわって三軍の統率者に事実上なられるというのだから、そこへひとついまの自衛隊が立てこもって、ときには国会における予算編成権までもじゅうりんするような形に飛んでいったら日本はもはや歯どめがきかぬじゃないか、こういうようなものは早目にやっておいた方がよろしいというのが私の意見なんです。いいですか。誤解ないように聞いてください。  時間がないから私は次へまたいきますが、総理は、最近アメリカの国防省で回覧されている秘密の政策指針という文書をお持ちになっておりますか。――これは出てくるなと言うんだ。そんなのに聞いているんじゃないんだよ、これは。
  170. 新井弘一

    ○新井政府委員 せっかくでございますけれども、再び委員長の御指名でございますので、お答え申し上げます。  恐らくこれは国防省が……(「参事官のさっきの答弁は何ですか」と呼ぶ者あり)国防省が毎年業務計画と申しましょうか、五年間の国防計画を、あるいは戦略を含めたそういう報告を出すことが慣行になっておりまして、それが昨年の春に出たというふうに新聞報道でありますけれども、極秘文書でありまして、私どもは入手しておりません。
  171. 久野忠治

    久野委員長 政府委員も言動には十分注意してください。
  172. 小林進

    ○小林(進)委員 これによりますと、ワインバーガー米国務長官が八二年の三月二十二日署名した、レーガン政権の対ソ核戦争などに備える機密文書、国防指針一九八四年から一九八八年会計年度の内容について、これをつまびらかにしたものであります。全文が百二十五ページとも、あるいは百三十六ページとも言われている。  その文書の内容は、どうもそれを聞いていると、あなたがこの国会で発言されていることと実に相通じている。だから、あなたが少なくともアメリカへ行ってこの秘密文書に盛られている日本の役割り、その日本の役割りをあなたが了承してこられたと思わせる部分が非常に多い。そこで私は非常に恐怖を感じている。  ところが、恐怖を感じているのが私ばかりだと思ったら、けさいみじくも、新聞を見ていたら、私ばかりじゃなくて、ここにも国民の声を代表した記事が蔵っている。「「危ない」の声をどう聞く――一連の首相発言と防衛姿勢」、こういうのが載っている。「閣僚経験のある自民党の長老議員が」となっている。社会党じゃないですよ。「どうも危なっかしい。女房も娘も、こんな調子では自民党に投票できないといいだした。不安なことです」と述懐するのを聞いた。危ない、という声が野党だけでなく、与党のなかにも、街にもふえている。」(「そんなのいないよ」と呼ぶ者あり)あなた、不規則な発言しなくたって、これに出ているじゃないか。どうです。それにはそういう言葉が書いてある。だから、あなたはワインバーガーとその話をされた。  この秘密文書によれば、アメリカはこの四年から八年までの間で一兆六千億ドル。いまアメリカは赤字で、不景気で、インフレで困り抜いているのです。あのアメリカの今日の不況とインフレとあの高金利の来た原因は、みんなこの無鉄砲な軍事拡火から来ている。私が総理大臣でアメリカへ行ってレーガンに会ったら、これを言いますよ。何をおいてもこんなばかなことをやめて、高金利をやめて、アメリカの高金利のためにいま世界じゅうがまいっているじゃないですか。あれは言いかえれば、世界じゅうに害毒を流しているのがアメリカだと言ってもいいくらいだ。よって来るところがいまの国防です。その国防が、本当にソ連よりいわゆる劣勢にあるのかといえば、先ほども言っているように、だれが見ても劣勢にも何にもなっていない。にもかかわらず、その米国の軍事力を世界にまたがって投入するというんだ。これからまた投入する。これもまた世界に向かって、ソ連の首を押さえて世界的に優位に立つためには、いわゆる海兵隊を含め現在展開されている部隊、戦闘機、空母等のさらに五割以上を必要とするという見積もりだっていうんだ、あなた。こんなことをやられたら、一体これはアメリカだけの問題でおさまりますかね。  この国防の指針は三軍に対して今後五年間の編成方針を示したものであるというんだが、これは一々読んでいると身ぶるいがするようなことがたくさん書いてある。時間がありません。これは私に三時間も五時間も下さるのならゆっくり説明いたしますけれども、時間がないから、これで最後の結論にいきますがね。これは実に長いのですよ。  この指針書の中の日本との関係だけを申し上げますよ。日本との関係で重要なのは、西太平洋に残された米軍部隊は、汎世界的な戦争の遂行上不可欠なソ連の脆弱点、いわゆる西太平洋にいる米軍が、汎世界的なというのは、これはペルシャ湾だとかヨーロッパの方です、その戦争の遂行上不可欠なソ連の脆弱点、弱いところをつき、ソ連の戦力を防衛に追い込むための攻撃作戦を実施することになろうとされている。このコンテクストでは、北鮮やベトナムやソ連の沿岸地域に対する反攻の機会を利しての作戦展開が具体的に挙げられている。  どうですか、このお話されたでしょう。してきたでしょう、あなた。ちゃんとあなたの顔には書いてあるんだよ。結局西太平洋や南太平洋におけるアメリカの軍隊がペルシャや中近東や西ヨーロッパへ行って空白になったときに、ソ連の脆弱と言われるいわゆる日本海の対岸地帯や北鮮やベトナムを、日本や韓国軍でかわりに攻撃させるということがこの文書なんだ。不沈艦もバックファイアもここからでてくるのですよ、あなた。  それで、この文書に言わせると、ニューヨーク・タイムズのハロラン記者が、ソ連との戦争に関しまして、世界的な規模の戦争では、これはアメリカですね、第一番に、一番最高の順位だ、アメリカは対ソ戦争でどこに重点を置くか。まずハワイ、アラスカ及び接続水域たるカリブ海域、キューバですよ、カリブ海域を含む北アメリカ、次いでNATOの地域及び同地域に至る海上交通路、これをアメリカは第一優位にして、このために戦争の重点を置くのです。第二順位が、南西アジアの石油へのアクセスを確保すること。次いで、太平洋の同盟諸国、インド洋と太平洋の海上交通路の擁護並びにラテンアメリカとアフリカその他の友邦国の防衛に置かれるとされている。だから、日本なんかまだこの第二順位に入らない。日本の重大事に対しては、アメリカが日本を守ってくれる守ってくれると言うけれども、アメリカが守りかつ戦う順位には出てこないんだよ。  これに対して、その次に、日本の役割りは何かといえば、この指針は、さらにその他の地域で米国にとって重要な利害のあるところ、これが日本なんだ――ところでは、緊急事態の際、かかる利害を守るためソ連の脆弱な点、一番弱い点を利し、その注意と戦力をヨーロッパや南西アジアからそらす作戦に出ることにしている。この作戦に出るのが日本に与えられた役目なんですよ。韓国に与えられた役目なんだ。だから、さすがにあの韓国さえもこの秘密文書を手にして、韓国のいわゆる個別防衛に対する重大なる違反であると言って、さすがに韓国の全斗カン大統領閣下でも怒っている。にもかかわらず、日本首相は怒らない。  いわゆる日本とか韓国、ベトナム、あるいはウラジオストクも入っている。ウラジオなど、極東におけるソ連の利害関係地域に対してこれを攻撃して、ヨーロッパや南西アジアや中近東に至るソ連の勢力を削減する、その任務を日本に与えるというのだ。  これが書いてあるじゃないですか。あなたはそれを約束してきたのでしょう。お約束になりませんでしたか。その文書をごらんにならなかったとあなたはおっしゃったけれども、私はその言葉を信ずるわけにはいかない。それはアメリカの国防の重要なるところだ。どうですか。ひとつ正直にお話しください。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本は主権独立国家でありまして、憲法を持って、憲法のもとに政治を行っている国であります。前から申し上げるように、日本の国土防衛、列島防衛を主にわれわれの防衛は行うようにちゃんと決まっておるのでありまして、人の用の役に立つためにこそこそ出かけたり何かするということはやらない、そういうことははっきりしていることであります。
  174. 小林進

    ○小林(進)委員 あなた、そうおっしゃるけれども、先日何とおっしゃった。公海に出ているいわゆるアメリカの軍艦、艦船は私どもは進んで行ってそれを守りますと言ったじゃないですか。これは人のためにやることじゃないですか。違うか。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはとんでもない間違いであって、日本が武力攻撃を受けたときに日本救援に駆けつけた米国の艦船がやられる、そういう場合に、日本防衛するために来てくれるものを助けるのはあたりまえじゃないか、そういうことを申し上げた。ただし、これもそのときの態様によって行われるべきである。どの程度の距離だとかそのときの状況とか、それが日本防衛を主としてやっているかどうか、それが中心に考えられなければならぬということであります。
  176. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、先日のあなたの言葉言葉じりをとらえようというのじゃないですけれども、日本にいらっしゃるマンスフィールドという大使は非常に立派な方ですよね。前に民主党の上院総務もおやりになった方で、思想は非常に穏健かつ平和的な方でありまするから、その方の言葉を写すんじゃないけれども、この方はこういうことを言われておりましたよ。  一千海里というそういうシーレーンがあるが、そのシーレーンの内部に入っているアメリカの戦艦や船舶が敵の攻撃を受けているときに日本の自衛隊が黙って見ているというようなことは、これはアメリカとしては了承するわけにはいきません、必ずアメリカの不満が爆発いたしますよということを言われた。それは何も日本を助けに来るとか日本防衛に来るとかいうことではない。たまたま通過しているときに敵にやられたという場合にも助けてくれなければ、それは不満は爆発しますよと言われている。どうですか、この問題は。話がちょっと違うでしょう。
  177. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 他人様が何を言おうと、いま内閣総理大臣が言ったことが正しいし、われわれの政策はそれを貫いていくということです。
  178. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは、マンスフィールドさんの話は別としても、このアメリカの国防省から出ております秘密文書の問題は、いま私は若干申し上げた。時間がないからこれを詳しく説明をしている余地はありませんけれども、日本に非常に重大なる関係がありますから、この資料はひとつ入手をしていただいて、どうしてもそれをわれわれに配付をしていただきたいと思う。入手することができるかできませんか。外務大臣、どうですか、この文書は。
  179. 新井弘一

    ○新井政府委員 先ほど私の答弁で申し上げましたとおり、本件は極秘文書でございまして、入手は不可能でございます。  ただ、右に関連しまして一言つけ加えさせていただきます。  先ほど先生がハロランの記事等を引用なさいまして種々アメリカの防衛政策におけるプライオリティーについて言及がございましたけれども、この点については国防省が、これは正しくない、正しい理解ではない、あくまでもディフェンスガイダンス、これはアメリカの国防政策の基本である防衛及び抑止戦略の枠内での指針であるということを明確に述べているということを一言申し上げます。
  180. 小林進

    ○小林(進)委員 それは要らない、君の答弁なんて。生意気なことを言うな。君にそんな政治答弁を求めているのではない。質問もしないことを答えてけしからぬ。何だ、一体。思い上がるんじゃない。聞いたことに答えればよろしいのだ。  委員長、君は私の言葉を注意するけれども、ああいうものの注意は何もできないのか。
  181. 久野忠治

    久野委員長 私からもよく注意をいたしました。
  182. 小林進

    ○小林(進)委員 間違っているよ、君は。質問に答えればいいのに、思い上がっている。
  183. 久野忠治

    久野委員長 政府委員答弁も、慎重かつそれは丁寧でなければなりません。
  184. 小林進

    ○小林(進)委員 なお私はひとつお伺いしますけれども、これも簡単な問題だが、どうもアメリカに対して日本は安保ただ乗り論というようなことがいまでもまだ自民党筋や国民の中の一部に出ているが、実際に安保にただ乗りしているかどうか。この点ひとつ総理にお聞かせ願いたいと思う。
  185. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 総理大臣からずっと引き続いて御答弁なさっておられますように、わが国の防衛は、わが国がみずから考え、みずから行動してこれを行っております。  なお、その範囲防衛費について御答弁申し上げますると、大変厳しい財政事情でございますが、国際環境その他を勘案をいたしまして、私どもといたしましてはぎりぎりいっぱい努力をいたしてきておるところでございます。
  186. 小林進

    ○小林(進)委員 君は僕の親友だから余り君に意地悪く言いたくないけれども、恐らく質問したことに答えてないよ。だから、のこのこ出てくるんじゃないんだよ。日本の国防のことを聞いているのじゃないのだ。日本はアメリカとの安保条約をやってもらって、そしてアメリカの軍備にただ乗りをしている、だからアメリカのためにもっと尽くさなければならないという意見があるが、このただ乗り論というのは本当にアメリカの軍備にただ乗っているかどうかということを私は聞いている。いいですか。あなた出なくてもいいから、総理に聞いているんだ。総理どうです。
  187. 中曽根康弘

  188. 小林進

    ○小林(進)委員 もうあなたの答弁はよろしい。  そこで、いまの内閣は実に勉強してないから言うんだけれども、これも最近ですよ、マンスフィールド大使がこういうことを言っているわけです。  日本の中にも安保ただ乗りなんていう意見があるけれども、あれは間違いです。日本はアメリカに対して二つの大きな軍事協力をいたしております。一つは、いわゆるアメリカ軍隊のために軍事基地を提供してくれて、そのために――アメリカの軍隊が日本に四万六千人いるそうですな。これはマンスフィールドさんが言うのだから、私が言うのが間違ったらマンスフィールドさんの間違いだ。四万六千人いる。その軍事基地に滞在するアメリカ軍のために、日本は一年間十億ドル以上の金額を支出しております。これに比較いたしまして西ドイツには、NATOに基づいて二十四万人のアメリカの軍隊が駐留をしている。その二十四万のアメリカ軍の駐留に対して、西ドイツが出している一年間の金額は十三億ドルだ。西ドイツは十三億ドル。日本は四万六千人に対して十億ドル以上の金を出しているから、非常にアメリカに対して協力的です。ただ乗り論なんということは絶対ありません。  なおいま一つ、アメリカに対して日本の軍隊が非常に軍事基地を提供してくれるために、私どもはベトナム戦争もできた、朝鮮戦争もできた。これがもし日本にこの基地提供がなければ、ハワイだとか本国からわざわざ飛んでこなければならないがために、そのために失うアメリカの軍事費というものは膨大にならざるを得ない。それもみんな日本が提供してくれているではないか。この基地の提供、軍事費の負担、これはわれわれは、むしろアメリカは日本に対して感謝をしなくちゃならぬ、こういうことを言っている。  こういう重大な問題は、国民に漏れなく知らせるようにしてくださいよ。そうして、ただ乗り論なんというばかなことが国民の中から出てこないように、ひとつ注意をしていただきたいと思う。
  189. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 条約に基づきまして、わが国の義務として果たしております基地の提供その他につきまして、ただいま御指摘のありましたとおり、わが国といたしましては、米ドルに換算をいたしまして十億ドル以上の負担はいたしております。ただし、この金額の中には土地使用料その他も含まれておりまして、必ずしも西ドイツとそのまま同じように対比するわけにはいかないかもしれませんが、ただいま御指摘のとおりでございます。
  190. 小林進

    ○小林(進)委員 それはいい。私はマンスフィールドさんの言葉をそのままお伝えした。実にりっぱな方であることもつけ加えて御報告したわけでありますので、誤解のないようにしてください。  時間がないから、これも私は続けていけないのが残念ですが、次に私が聞きたいのは、いわゆる地域安全保障の問題です。  これは総理大臣、いま、去年から反核軍縮平和運動というものが世界に巻き起こっている。いまアメリカにも反核平和運動、市民運動、草の根運動というものができ上がっている。レーガンさんだけがアメリカを支配しているわけじゃないのです。恐らくもう次の大統領選挙には、レーガンさんは出られないんじゃないかと思う。次には、また一つの平和的な、恐らく軍縮、平和の大統領が出てくるかもしれない。そういう長期の観点に立って、わが日本は独自の国とおっしゃるならば、独自の立場でひとつこの日本の安全というものをお考えになったらいかがですか。  あなたの頭の中には、国家の安全というものは武力だけしかないようだ、軍事力しかないようだけれども、いわゆる国を守るということは武力だけじゃないのでしょう。その意味において、私はいま世界のこの反核、いわゆる軍縮運動、これを見ながら、私はここにいろいろな資料がありますけれども、読み上げている暇もありませんが、日本でひとつそういう反核軍縮運動を政府みずからが主導しておやりになったらいかがですかということを私は申し上げている。どうですか、お考えになる気はありませんか。
  191. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 この軍縮につきましては、日本は、御承知のように、広島とかあるいは長崎でああいう核兵器の惨禍を受けた国でありますから、他の国よりも最も熱心に軍縮については主張いたしております。これは国連総会におきましても、昨年も鈴木総理が出席をされまして演説をされましたことは皆さん御案内のとおりでありますし、また核実験の禁止措置等につきましても、毎回軍縮委員会あるいは軍縮総会等でこれを強く主張しておるわけであります。  ただ問題は、やはり軍縮といっても、これは実効性がなければどうにもならない。ただ夢のような話をしても、実効、実現が伴わなければ、これは意味をなさないわけで、そこに現実的な問題があるということは、私が言うまでもなく、小林委員が御承知のとおりであろうと思います。
  192. 小林進

    ○小林(進)委員 去年の六月には、いまのスウェーデンの首相のパルメさん、まだ首相にならない前――私どもが五十二年に行ったころには、まだそのときにはスウェーデンの首相であったが、その次保守党にとられて、また去年の十月には復活して、社会民主党、日本で言えば社会党のパルメさんがまた政権をおとりになった、そのパルメさんが去年六月にロ本においでになって、地域安全保障のお話をおやりになった。御存じですか。地域安全保障しか平和の方式はないじゃないかといって多くの日本の著名人と会議をし、その足で八月の国連軍縮総会に行かれて、そして、やはり世界の地域安全保障の実現に現実的な主張をしていられたのです。  ところが、これがいま世界で波を打っていますよ。日本にもこの運動、民間運動が盛んに起きています。起きていますよ、あなた。時間があれば、私は説明してもよろしい。たとえば、前の文部大臣、いまの文部大臣とは天と地くらいの差がある。いないな。どこへ行っちゃったのか。いませんね。いませんが、永井道雄さんがこの地域安全保障の問題で強くいま主張を続けておられる。あるいは東大の坂本義和先生も、これは国連の組織の下に地域安全保障の機構をつくって、それで地域安全保障の問題をやるべきだということを盛んに言っている。日本総理大臣がそれをおやりにならぬと言ったところで、日本にも、この国会の中にも実はその運動はあるのです。あなた御存じないですか。地域安全、ひとつアジア・太平洋地域を非核武装の地域にしようという運動がずっと続いているということは御存じありませんか。  あなた、戦争することだけ考えているからそういう安全保障は考えないだろうけれども、日中平和友好条約に関係しまして、去年はたまたま教科書の問題が大きなうねりでもってやられた。いわゆる条約あるいは共同声明に対しては、ともに忠実にこれを実行しようじゃないか。日本はそれをやっていないと言った。その日中平和友好条約の中で忠実に守らなければならないという点は何だ。中心点は二つなんです。  一つは、日本が敗戦国で無意味な侵略戦争をしたというその反省をひとつ忘れないでくれというのが一つ。これが一つです。それを忘れたから教科書問題を起こした。いま一つは、これは日本と中国だけの子々孫々に至る友好ではなくて、この条約をもってアジア・太平洋、世界の平和のためにこれはひとつ貢献しようじゃないかというのが第二番目の約束事項です。いいですか。アジア及び世界の平和、安定に寄与しようという約束ができておる。どうですか。この約束をお互いに実行する責任がある。だから、この国会の中でもこの問題が大きく取り上げられて、それぞれこの運動は続いてきたわけでございます。  それで、まあ話がくどくなりますから、この平和友好条約の前に、田中さんが結んできたこの日中共同声明、四十七年の九月二十九日、その中にまずこの問題が出ておる。いいですか、共同声明の第七項ですよ。「日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、」――覇権というのは、武力をもって敵の領土やあるいは経済やあるいはその他を脅迫することだ。それで「覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。」という、ここにアジア・太平洋地域における両国の平和の海をつくるという協定が結ばれている。いいですか。  ところが、この条文の原案はどこから出ているかというと、この田中・周恩来の北京協定ができる前の、同じ四十七年の二月二十七日、当時のアメリカの大統領のニクソンとそれから周恩来総理のいわゆる共同コミュニケというものが上海でつくられた。これを俗に上海コミュニケと言う。この上海コミュニケの中の一には、どちらの側も、米中ともにアジア・太平洋地域で覇権を求めるべきではない。いずれの側もいかなるその他の国あるいは国家集団がこうした覇権を打ち立てようとすることに反対をする。アメリカがアジア・太平洋地域にそんな武力を持ったり、あるいは敵の領地を荒らしたり、経済的圧迫を加えたり、そういうことをすることはいたしません。アジア・太平洋地域は平和の海にします。こういう米中の協定がちゃんとでき上がっている。  だから、このアジア・太平洋の平和を守ろうというのは、日本とアメリカと中国の三国の間でちゃんと協定ができ上がっているんだから、あとはこれを実行するだけである。  さっき外務大臣は、実効が伴わなければだめだと言ったけれども、そんなことはない。すでにでき上がっているやつをまた引き受けて、今度は五十三年に日中平和友好条約ができ上がったときにまた入ったのが第二条だ。第二条に、「両締約国は、そのいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」これは福田首相のときの園田外務大臣が行って結んできた日中平和友好条約だ。アジア・太平洋は平和の海にしますよ、それを侵すものに対しては断固として反対するよという明確な規定がある。これほど重ね重ねて言明をし、約束をしていることが実行されないということは一体どこなんだ、どこにあるんだ。  そこで私は、この問題をとらえて、あなたの前の前の大臣、これは三木内閣からみんな資料があるんだ。一々みんなこれを見せてやりたいくらいだけれども、暇がないからしようがないけれども、ここにある。三木内閣第七十六国会、第七十七国会、それから福田総理の第八十五国会と、私は歴代の総理大臣にこの問題を質問いたしてまいりました。なぜこの条約を実行しないのですか。なぜこの共同声明を実行しないのですか。平和憲法を持ち、アジア・太平洋のいずれの国に対しても仮想敵国は設けない、武力は用いない、平和な日本として立つという大義名分ができ上がっているじゃないですか。その大義名分に基づいて、しかも、こういうりっぱな約束ができ上がっているんだからなぜこれをやらないかと言った。三木さんも答えていますよ。福田さんも答えていますよ。さあ、あなたが答える番です。答えてください。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本はそのとおりやっていると思うのです。アジア・太平洋に覇権を求めない。つまり、国の防衛日本列島防衛に限る、憲法を遵守して、そして非核三原則あるいは専守防衛、軍事大国にならない、そういう諸原則をもってみずからを律して、厳格にそれを守っている国であると考えております。
  194. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、あなたの答えを聞いて全く落胆をいたしました。実に短絡的な思想だ。何もこれを具体的に実現しようということではない。だから、前の総理大臣もあなたのようなそんなお粗末な答弁をしておりません。いま一回見直してください。  三木さんはこう言われた。日米中三国のように交わされたそういう平和のための協定は、実はアメリカとソビエトロシアとの間にもありますよ。これは三木総理が答えている。正確に言いますと、アメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦間の関係の基本原則というのだ。一九七二年五月二十九日、これは同じ四十七年二月、ニクソンが上海協定を結んだその三カ月後に、やはりアメリカはソ連へ行っているのです。ニクソンはソ連へ行っているのです。それで、このアジア・太平洋地域を平和にするということは、ソ連、あなたを仮想敵国にしていることじゃないんだ。あなたも仲間に入って、そして、みんなで仲よくアジア・太平洋地域を平和の海にしようという形でこの上海コミュニケをつくってきたんだから、ひとつあなたとも、ソ連とアメリカの間でも基本的な協定を結びましょうと言って――ここにみんなあります。十二条からでき上がっている。格調の高い文章です。この中には本文では、第一条、両国は、核時代において、平和共存の基礎に立って両国の相互関係を進めよう、武力は用いない、話し合いでもっていこうという、これを読んでいたら切りがない。(発言する者あり)これはみんな、わからないのがいま何を言うか知りませんが、そんなのかまわないでおきますけれども、双方は実行可能な分野において合同委員会というものを米ソの間に設けて、そしてお互いにひとつ話し合いでいこう、こういう問題ができ上がっているのであって、三木総理は、太平洋を囲む四つの国の中では基本的な原則論はでき上がっている、しかし、これを政治の日程にのせるにはまだ若干困難のところがあるのではなかろうかという、そういう答弁。  ところが、かわって、今度は福田・園田内閣になったときに、例の園田さんが、七八年、あの国連の軍縮第一回の総会に行って、いまでもこれは格調の高い軍縮大演説をぶった。日本はソ連なんかとも、いずれの国とも仲よくしていくんだ、日本がアメリカの先棒をかついで軍備拡張をやるなんということは、絶対そういうばかなことをやったら日本は終わりですという、あなたが聞いたら飛び上がるようなことが園田文集にありますよ。みんな原稿ありますよ。  そういうことを言っているんだが、いまアジア・太平洋地域にはこういう協定の申し合わせがあるから、日本と中国がよく話をする、アメリカとも話し合いをする、その中へソ連を入れて四つの国が同じテーブルについて、このアジア・太平洋地域の非核武装の問題も話をやったらいかがですか。できないことはないでしょう。どうですか、答弁
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 理念としては非常にりっぱな理念であって、われわれもあくまで追求すべき理念であると思いますが、現実問題でそれが具体的にどう出てくるかとなりますと、やはり軍縮については相互の信頼感が確立されなければできない。相互の信頼感は、具体的な検証であるとかそういうような有効な保証的な措置が講ぜられなければなかなかできない。そういうもので行き詰まっている状態なのであります。だから、理念としては私たちもこれを支持いたしますけれども、現実的には一つ一つのそういう具体的問題を片づけていくじみちな作業が必要であると申し上げたいのであります。
  196. 小林進

    ○小林(進)委員 自分では手も出さなければ足も出さないで、初めてアメリカあたりへ飛んでいって、ソ連は仮想敵国だから日本不沈列島、不沈艦にして、その上で日本国民が全部死んじゃっても日本列島だけは沈ませない。それは陸だから沈まないよ。沈まないけれども、核戦争のさなかにソ連とこんなことでやったら、それは君、原爆の世の中だ、日本国民は全部死んでしまうでしょうがね。あなたは、日本国民の命を犠牲にしても島だけは沈めない、不沈艦にするという、そういうばかげた約束をしてきている、それじゃ向こうだって、相手だって信用しないのはあたりまえですよ。あたりまえだ、そんなことは。やってみなさいよ。  あなた、まだ哲学を知らないな。客観的と主観的なものがあって、たとえて言えば、あなたの好きな靖国神社。靖国神社に対しても、靖国神社の英霊をお祭りしたいと心の中で自然に祈ってうちの中で寝ているのと、こんちくしょうと思いながらも、靖国神社に行って、たいしたことねえやと言いながらかしわ手を打って頭を下げるのとどっちが本当かというんだ。これが主観論と客観論の極端な一つの解説だ。どっちが本当だ。わからないだろう。哲学を知らないからやんなっちゃうんだ。  これは客観論で、だから腹の中でどう思っても、行動がそれに伴っていればそれは本物だ。いまソ連の腹の中は何であろうとも、話をし、ソ連が中央アジアに対して非核武装地帯をつくろうというその主張がどうであろうとも、言っていることが本当であれば、それに乗っていけばいいじゃないですか。いま日本がこれから非核武装地帯をソ連にやろうじゃないかと言って、腹はどうでもいいや、話に乗ってきたらそれを進めていけばいいじゃないですか。私はそれを言っているのですよ。  時間がないけれども、何も日本だけじゃありませんよ。この話を持ってアメリカへも四回行っているのですよ。これは全部記録があります。四回行っている、アメリカへ。四回行ってアメリカ政府と交渉している。いいですか。その中の第一回目は、わが社会党の調査団でありました。江田三郎を中心とする調査団で参りましたが――もう時間になったか。(「だめじゃないか、本だけ配っておいて」と呼ぶ者あり)本だけ配っちゃったけれども、よし、それじゃもうやめますが、大蔵大臣、あなたもこの非核武装地帯をつくろうというときには一緒に行っているのだよ。防衛庁長官、あなたも行っているのだ。  当時の予算委員長は荒舩清十郎、りっぱな人でしたよ。死んでも名前は残る。その荒舩清十郎氏が、衆議院の安全保障問題等で調査に行こう、外交問題は行政だけじゃない、立法府でもやろうじゃないかと言って、調査団をつくって、そして、あのときアメリカの政府と国会のいわゆる両院議員の交渉に行った。団長は荒舩清十郎。小山長規、小平忠、小林進、田中武夫、竹下登、谷川和穗、湊徹郎、彼はもう幽明境を異にしてしまったけれども、そういう諸君がみんな行って、そして交渉したときにアメリカの政府は何と言った。シュレジンジャーなんかも、いいじゃないか、その安全保障地帯をつくることは原則として賛成だと言った。ただしかし、中南米やアフリカと違って大国の利益が錯綜しているから困難とは思いまするけれども、その努力を高く評価しますとはっきり言ったじゃないですか。  そのとき荒舩清十郎氏は何と言ったか。竹下君、思い出してくれたまえ。あの荒舩清十郎氏が、ソ連を説得して四つの国が非核武装地帯をつくるためにはアメリカ、あなたが指導力を握って、あなたがソ連を説得してくれと言ったのです。そのときに下院議員の軍事委員長ストラットンが、アメリカはソ連といろいろ錯綜した問題があるから、いま直ちにアメリカが説得してこの会議の中に入れることは困難ではあるけれども、日本も大いに努力をしてまず中国と日本とでやってくれないか、しかしアメリカはいつでもその話には乗りますよと、まあ数えれば幾つもあるけれども、これは日本がやるべき仕事なのです。  何であなたはやる気にならないか。頑迷固陋だね、あなたは。やる気になりませんか。私は、時間がありませんから詳しく言っていませんけれども、私の言っていることを理解されたら、少しはやる気になりませんか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 理念としては非常に貴重なものであると思いまして、尊重していきたいと思います。そして、現実的にそれがどういうふうに具体的にできるか、検討していきたいと思います。
  198. 小林進

    ○小林(進)委員 よし、検討していただく、その言葉はいただきましょう。どうか内閣の中に、それは研究機関ですか、どうかひとつ特別の研究機関を設けて、どこまで現実にいけるか、私は持っていきたいと、これはお願いします。外務大臣、よろしゅうございますか。防衛庁長官、よろしゅうございますか。ひとつ内閣につくってもらいましょう。私どもは民間としてずっとやってきたのですから、これはまた民間の部隊としてひとつ精力的にやりますから、どうぞ了承していただきたい。  三江平原の問題が出てきましたけれども、三江平原は、率直に言えば、ここにも書いてありますけれども、歴代総理大臣、外務大臣が全部やってくれた。中川君の写真も入っております。これは総理大臣の大平さんがいかに努力してくれたか、全部入っております。私は、決して小ちゃな政党問題にこだわってこれを論じているわけじゃない。  いまアジアは食糧が不足している。世界も食糧が不足しているのです。同じ食糧が不足しているその中でも、中国もまた食糧が不足です。大体去年あたりは豊作で三億三千万トンくらいもつくっているけれども、まだしかし人口が伸びていくのです。十億の人口だ。中国はいま人口の伸びに悲鳴を上げて、二十一世紀まで十二億の人口にとどめたいと思った。そのためには、去年の七月やったセンサスで十億にとどまってくれればいいと思ったけれども、十億を出ちゃったものですから、これじゃ二十一世紀までに十二億でとどめられない。そこで中国は、それに該当した食糧問題その他をひとつ計画を練り直さなければならないという困難に遭遇している。  それに対して日本はどうかと言えば、御承知のとおり七割は外国の食糧に依存している。非常事態が起きた、異常の事態が起きたときに、日本人を一体どうしてこれは生かしていくのですか。あなたは口を開けば、国防というのは戦争だと思って人殺しばっかり考えていられるけれども、本当の国防は人間に食わせることじゃないの。一体、この非常時の場合に人間の命をどう保つのか。七割の食糧を外国に依存している日本はどうするのか。  さすがに、同じ総理大臣でも大平さんはりっぱでしたよ。大平さんはちゃんと食糧に関する自分の、私設の食糧問題研究機関を持っていられた。大平さんは持っていて、そして、そういう異常な事態における日本の食糧をどうするかということを真剣に研究された。短期の場合、長期の場合、あるいはイモをつくるの、ゴルフ場をつぶすのと言っているけれども、そんなことで長期の日本の食糧が満足するわけじゃないのです。  そこで、日本のためには、この日本の後方基地ですよ。日本海を越えた一番近い中国にひとつ大きな食糧基地をつくっていただいて、どうせ戦争でお世話になった中国だから日本も力をおかしして、まず中国の食糧の自給体制をつくり上げる。土地は広い、土地はあるのですから、拾い上げて、そこで食糧が余ったら、東南アジアは皆飢えている、東南アジアに対して食糧基地的役割りを中国と日本の共同合作でやったらいいじゃないか。だから、三江平原というのは、大きく言えばアジアの食糧問題を解決する基地をつくる、中国のいわゆる自給体制をお手伝いをしてこれをつくり上げる。  そして、長期の段階では、これは三年や五年の話じゃありませんから、十年、二十年――まだ三年や五年は、いま中国から食糧を買うなんと言ったら、アメリカは飛び上がって驚いてしまう。だから、アメリカからいま買わなくちゃならぬから、三年、五年は中国から何一つ買う必要はありません。大豆も要らぬ、何も要らない。要らないが、十年、十五年の長期の展望に立ったときには、日本日本の後方にちゃんと安心した食糧基地を設けておかなければならぬ。そのためにお手伝いを、たまたま中国の方から、この三江平原は中国におけるいわゆる食糧増産の最大の最優先基地だから、日本も若干技術の手伝いをしてくれないかという申し入れがあったのであります。  これは、私がそれを受けた。で、私が政府に持ち込んだ。大平内閣、大平さんです。あの人は真剣にこれを受けてくれた。りっぱな人でしたな。何回繰り返しても同じだ。いまの政府は、通産大臣というのは佐々木君のことを言ってましたけれども、どうもハイカラなことをやりたがっている、土木プロジェクトだとか、港湾だとか、鉄道だとか、石炭だとか、エネルギーをやりたがっているけれども、小林さん、それよりいま日中永久の親善と、日本が生きるためには泥臭いことが必要なんだ。この泥臭いことをひとつ真剣にやろう、あなた方根回ししてくれれば総理としての私もお手伝いするにやぶさかではない。ちゃんとその言がみんなここに書いてありますから。写真も入れて大平さんの言が書いてありますから、後で帰って読んでください。そこでこの問題が軌道に乗りました。  若干言いますけれども、三江平原というのは大体十万平方キロ、一千万ヘクタール。日本は三十七万平方キロですから、その大体三分の一弱です。その中で、いまあそこには三百万ヘクタールの既墾地がある。それで、いま日本に技術協力を求めてきたのは百三十万。開墾可能にしてなお未墾地である百三十万ヘクタール。どうですか、三百万既墾地に百三十万の可能地を含めると、四百三十万ヘクタールでございましょう。日本の田畑を合わせた全部の耕地は幾らですか。これは総理、御存じでしょう。五百五十万ヘクタールですよ。日本の全部の田畑、その五百五十万ヘクタールにちょっと劣る四百三十万ヘクタールが三江平原の広さなんです。それが既耕地化されたときには広大なものだ。それは全部平原です。  そこをひとつ日本の技術で協力しないかというので、技術協力を申し入れて、よかろうというのでずっと歴代の農林大臣、鈴木さんから始まって、それから中川君、それから前の大蔵大臣の渡辺君、それから武藤君、そこまでずっと交渉を進めてまいりまして、例の亀岡君のときに、八一年の十二月に中国へ行って調印をして、両国が協力してやりましょう、やるためにはあそこに四万ヘクタールのモデル地区をつくって、そこでひとつ調査、いわゆる建設の図上計画をつくりましょうと、これは一九八一年ですね。二年、三年と、三年計画でその四万ヘクタールのプロジェクトをつくると約束した。これはモデル地区ですけれども、モデル地区といっても、群馬県の農地幾らありますか、十万ヘクタールなんかないでしょう、あの大きな群馬県だって。その半分の地区を単なるモデル地区として、日本の技術屋が二十五名も入っていまやっているのです。これをあなたに理解をしていただいて、大きくは世界の食糧問題をひとつここで解決するぞと……。一つは、中国に対して、あれほどの無謀な戦争をしながら、無賠償、無分割の原則だ、賠償金は一円も取らない、領地は一寸も分割しない、昔のことは忘れましょうという、その恩義に報いる気になったら、何でもできるじゃないですか。そこへ力を入れて、堂々とこの食糧問題をひとつ解決するという構えを見せてもらいたいというのがお願いです。いいですか、先生。  いまのところは三年の技術協力ですから、モデル地区だけですから、出している金は一年間に三億円でたった十億円ばかりしか出しておりません。今度これがいよいよ実施期間に入るわけです。二年くらいの実施計画期間を置いて、実施期間に入る。その実施期間に入れば、今度は日本に対して一年間百億ぐらいの協力援助を得たいというのだけれども、百億といったって三年間で三百億だ。大した金じゃありませんよ。あなたは韓国へちょっと飛んでいって四十億ドル置いてきた。四十億ドルといったら一兆円ですよ。韓国へ一兆円も援助するなら、中国へ一年間に百億を十年やったって千億だ。韓国に対する援助金の十分の一にもならない。スズメの涙だ。だから、そういう金は、いま中国へやっているプロジェクト、いま五百億ばかりでやっていますけれども、五百億円なんかのああいう金とは別個にこれを切り離して、農業の援助資金なんというものは利息をつけた金じゃ長期の農業開発はできませんから、別個の枠にしてこれをひとつやっていただきたい。  ところが外務大臣、さしあたり三江平原では約十億円ぐらいで農業機械センターをつくりたいという希望がある。わずかに十億ぐらいだ。去年の六月から約束がある。前の農林大臣の田澤君というのは偉い人だった。りっぱな人だった。去年の九月のあの忙しいさなかに三江平原まで飛んでいったんですから。三江平原というのは、ハルビンからジャムスまで汽車に乗って十時間かかる。そのジャムスから今度はジープに乗って六時間もかかるのです。頑健な体でなければ行けないところへ彼はジープで六時間も乗っていって、この三江平原の中心地をながめて、これは有望な地域だ、私の命にかけても協力しますと約束したのです。ところが、聞いたらまだできていないそうだ、機械センター。それは国際事業団のあれだと思いますけれども、あなた、すぐ命令して、そんな金はすぐ出してやるようにお示しいただきたいと思います。  どうもさっぱり話が進みませんが、総理大臣、この問題に対して答弁してください、三江平原の農業協力の問題は、世界的な問題です。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 せっかく本をいただきましたから、よく勉強をしてみまして、その上で考えをまとめていきたいと思います。
  200. 小林進

    ○小林(進)委員 前向きでひとつ御協力いただくことにいたしまして、ただ、もう私は時間が来て、金大中の問題に触れる時間はありません。  そこで一言だけ言っておきます。ここにありまするけれども、福田総理大臣は言われました。事実関係が明らかになったときには、政治的結末、あれは二回やっている、政治結末は御破算で、白紙で出直すのであたりまえでございましょうと、これは福田総理が言明しています。金大中問題で田中総理政治結末をつけたけれども、あれはみんなうそだということが明らかになりましたから、金大中事件はひとつ改めてやり直していただかなければなりません、さもなければ内閣がうそを言ったことになりますから。  以上申し上げまして、私の質問を終わります。
  201. 久野忠治

    久野委員長 これにて小林村の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤観樹君。
  202. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 総理、大変遅くまで御苦労さまでございます。私で十人目の質問になるのでございますけれども、私は主に経済の問題についてお伺いをしたいと思いますが、今日までずっと総理の御答弁を聞かしていただきまして、若干総理政治姿勢についてお伺いをしておいた方がいいなと思うので、まずその問題からお伺いしたいと思うのでございます。  総理は、施政方針演説の中で、ことしという年は戦後史の大きな転換点であるということで、施政方針演説の中では必ずしも全部よくわからないのでございますけれども、いわば制度的な見直しの大きな節目であるということを言われているわけでございます。確かに、私たちも政策をやる者といたしまして、日本が大変な高齢化社会になっていく、あるいは学歴的にも大変高学歴化社会になっていく、あるいは産業の面から見ましても非石油のエネルギーということを考えていかなければなりませんし、あるいはこれからの日本を引っ張っていく産業政策からいって、高度先端の産業社会ということになっていくでありましょうし、あるいは社会的には大変価値観が多様化していく、こういう意味で、私たちも政治の面でそういったものに備えをしていく、このことについては非常に重要な時期ではないかと思うわけであります。  そういう意味ならば私もある程度理解はできるのでございますけれども、どうも総理のお話を聞いていますと、余りそういう方向ではなくて、何かお話の中身というのは、まあ色で言えばカーキ色というのでしょうかね、音で言いますと軍靴の音が大変聞こえてきて、そして不沈空母に乗せられて日本人は一体どこへ行くのだろうかと、そういう部分だけがどうも色濃く出てくるわけなんですね。  一つ総理にお伺いをしたいのは、時間が限られておりますので、近世、近代二百年をとってみて、私は、戦後のこの三十八年間というものは大変いい年だったのじゃないだろうか。たとえば農民の方にとりましても、かつてのような水のみ百姓と言われた時代から比べて、それはいろいろ小さな問題はございますけれども、しかし農業をやっていらっしゃる方でも、とにかく基本的な人権が守られたり、農業政策ということを一生懸命いろいろな形でやっていくという面、その他、この二百年の中で考えてみて、この三十八年間というものは私はまあ一番いい年じゃないだろうか。ただ、いろいろ問題もございますし、これからも備えていかなければならぬ問題はあるわけでございますけれども、この二百年という年を考えてみますれば、三十八年間一回も日本自身は戦争がなかったという面からいっても、大変いい年だったのではないだろうかと私は思っているわけでございます。  その陰には、いろいろと議論がございますような平和憲法の問題、あるいは平和に徹するということで産業自体が平和産業で今日まで来たということ、こういったこともいろいろとそれに寄与しておりますでしょうし、あるいは議会制度なり民主主義というものが少なくとも戦後はいわば確立をする方向に行ってきたこと、あるいは私は日本人というのは大変優秀な民族だと思っておるわけであります。世界を回れば回るほど大変そう思うわけでございますが、その優秀な民族に加えて高度成長ができ得る諸条件がいろいろあった、こういったことが私は今日の日本を持ってきたと思っておるわけでございます。  そういった面から申しますと、総理が言われます歴史の転換点というのはどういうイメージなんだろうか。自民党さんの方では憲法改正の草案づくりをやっていらっしゃるようでございますけれども、まだ確定はしてないというものの、自民党憲法改正の理念あるいは価値観というのはどうも九条のただし書き、これを改めて自衛隊の位置づけをはっきりさせること、あるいは天皇の地位について元首にという話も聞こえてまいりますし、あるいは基本的人権はいいけれども、もう少し義務規定というのがあっていいのではないか、そういう理念ということが自民党憲法改正の理念あるいは価値観という中にどうも出てくるように思えてならぬわけでございます。  総理が言われますこの戦後史の大きな転換点、それはある程度私も理解をしているつもりでございますが、転換をした後、一体日本という国をどういう国にしたい、どういう価値観のある国にしていきたいのか、その点について、ひとつ総理のその転換した後の理念についてまずお伺いをしたいのでございます。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が数年前に書きました「新しい保守の論理」という本をお読みいただくと、あなたと同じようなことを言っているのをいま思い出したわけです。  戦後の日本の平和な繁栄というものを見ますと、これは徳川時代以来いろんな時代があったけれども、あるいはその前の織豊時代あるいは元禄の文化あるいは明治維新以後の日本、大正の民主主義、そういういろんな中でも最も輝かしい時代が後であの時代であったと言われるのじゃないだろうか、それは汎国民性という面において元禄時代よりまさっているし、非軍事性という面において明治時代よりまさっているし、そのほかいろんな面において文化の融合をもって非常に輝かしいピラミッドをつくったと歴史的に後で言われるのではないだろうか、そういうことを言っております。  しかし、その中でもまた考えるべき問題点は幾つも出てきておる。完全なものはないのである。そういう意味でこの戦後の日本というものを見詰めておりますが、しかし三十八年たちまして、やはり歴史の流れの中にあるわけでありますから、一つの転換点に達した、それはどういうことであろうかと考えますと、一つは、もう少し世界に開かれた日本にならなければ孤立してしまう危険性が出てきた。  それから、内政の面におきましては、行財政改革を思い切ってやって、将来に向かって対応力をつくり上げていかなければならぬ。そういう基礎工事をやりながら、二十一世紀に向かって、物すごい高齢化社会も参りますし、先端技術の時代も参りますし、われわれが考えられないような新しいものが出てくるであろう。それに対応し得るだけの政府あるいは社会をつくり上げていこう。それで結論として、この戦前戦後を考えてみると、戦前の軍国主義的な、国家主義的な傾向に対して、戦後のわれわれの目標は「たくましい文化と福祉の国」である、そういうことを私ははっきり定義づけて申し上げておる次第なのであります。
  204. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 実はこの問題も非常に重要な問題なものですから、もう少し議論をしたいと思うのでございますけれども、いま総理が言われましたように、戦前の軍国主義的な、国家主義的な、そういう方向への歴史の転換点というのではわれわれあるいは国民皆さんも大変困るわけでございますから、ひとつその辺もわれわれはこれから注意をしていきたいと思っておるわけでございます。  次に、ことし一九八三年というのはちょうどアメリカの大恐慌から五十年目になるんですね。一九二九年から始まっておりますが、三三年のときが一番激しい恐慌になったわけでございますが、ちょうどそれから五十年たっておるわけでございます。いま世界の経済は、御存じのとおりでございますが、大変な不況になっておりますし、一番私が懸念をしますことは、その過去五年前、六年前の不況のときには、あるいは十年前のときにはそれぞれの手段というものがあって、こうすればとにかく世界の不況はある程度直っていくのだといういわば教科書があった。ところが、いまの不況というのは非常にみんな世界的に気迷いをしているのではないだろうか。何か、こうすれば必ず不況が直っていくという、そういう一つの方向性というのをどの国も見出せないでおるのではないだろうかという気がしてならぬわけでございます。  また、ことしは、不思議なことに、ちょうどアダム・スミスが「国富論」を書いて二百年になるのですね。この中で、自由主義、自由経済、競争、市場原理、これを非常に中心に置きながらやったわけでございますけれども、なかなかそれも思うようにいかないということで出てきたのがマルクスになるわけでありますが、マルクスが死んでちょうどことしは百年になるのだそうでございます。しかし、計画経済を出してみたけれども、御存じのように、なかなかこれはうまくいかない、いろいろな政治制度の欠陥もあったものでなかなかこれもうまくいかない。  そこで出てきたのがケインズなのでありますが、ケインズは生誕百年にことしなるわけであります。ケインズで有効需要を拡大をする、完全雇用を達成をするということで、今日まで約五十年間、ちょうど第一次石油ショックまでは大体このケインズの需要拡大論というのがうまくいっていたわけでございますが、しかし、成長力自体がなくなってまいりますと、結果的にこれは大変な財政赤字を後に残すということになってきたわけでございます。  で、どうもケインズだけではうまくいかぬぞということで、いまアメリカのレーガンなりあるいはイギリスのサッチャーのいわばマネタリズムといいましょうか、レーガノミックスと申しましょうか、こういういわば供給サイドの経済学というのでうまくいかないだろううかということで、そういう経済理論をもって経済がうまく回らないだろうかということをやってきたわけでございますが、一九八四年度のアメリカの予算教書を見ましても、みずからどうもレーガンさんの言ったことは否定をしているような状況になっております。これは後から若干触れさせていただきますが、そういう意味で、ケインズの需要拡大政策だけではどうもうまくいかないということで、もう一度自由資本主義経済に返れという、そういう方向にいま行きつつある国もあるわけであります。しかし、御存じのように、レーガノミックスにしろ、サッチャーのイギリスにしろ、大変な失業者が出ているわけですね。イギリスが約三百万、三百八十万ぐらいになっていますか、アメリカが約一千万余を超えているということで、実はこのマネタリズムの考え方というのも大変な失業者の群れを出すという結果になって、これもどうもうまくいかない。  じゃ、中曽根総理はどういう方向で行かれようとしているのかな。いわば第二臨調路線というのは、その意味で、私は、方向性としてはもう一度経済自身を、資本主義経済というものをもっと市場原理なりあるいは競争原理、こういうものに返すという方向なのではないだろうか。たとえば第二臨調の中でいろいろ議論されておりますように、いわば官業は民業を補完をするものである、こういう理念、この理念も私はその一つではないかと思いますし、これは郵政事業をどうする、あるいは電電事業をどうするということにもあらわれておりますようにいわば民間企業優先論、もう少し自由にやらしてその活力を使った方がいいのではないかという考え方、この路線は通じていくのではないだろうか。いま、これから論じられますように、財政におきます収支のバランスあるいは利益の追求という方向に行く、あるいは人件費をとにかく切るだけ切るという方向というのは、そういった意味ではいわば第二臨調路線ですが、それはこのイギリスのサッチャーなりあるいはレーガノミックスなりこういった方向に経済の理念、哲学としてはあるのではないか、そんな気がしてならぬわけでございます。  中曽根総理、僕たちも細かく見ておりませんけれども、通産大臣時代は、ある程度政府が民間の経済に少し介入をしないことには活性化はできないんだ、こういうようなことを言われていたわけでございますけれども、いまのような第二臨調路線なりこういった経済運営で一体公共の福祉なりサービスという、いわば政治が目的といたします目的、これが達成されるのだろうか。私は、国民皆さん方の税金でやっていることでございますから、行政自体が大変効率的であることはもちろんだと思うのです。むだはなくさなければいけませんし、貴重な税金ですべてやるわけでありますから、その意味ではそういったものを切り詰めていく、最も効率的にやっていくというそのことは非常に重要だと思いますが、一体それだけで総理が言われますような「たくましい文化と福祉の国」というそれをつくるための経済運営というのはできていくのだろうか。いま日本経済をあるいは世界経済をこの不況から脱出をさしていくためにどういう方向をとったらこの経済は活性化をし、もう一度公共の福祉なり国民へのサービスというものが十分できる経済をつくり上げていくことができるのか。アダム・スミスから始まってマルクスかケインズかあるいはサプライサイドの経済か、総理の頭の中ではどういう経済運営をしたら一体日本経済はもう一回本当に活力のある経済につくり直すことができるのか、どういう方向を考えていらっしゃるのか、その点についてお考えをお伺いさしていただきたいと思います。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本はこれだけの経済大国にわずか三十年ぐらいの間にのし上がりましたが、やはりまだ混合経済的要素は社会経済の中に必要であると考えております。たとえば下水道の整備とか、都市の再開発とか、公園の問題とか、あるいは社会福祉の一部とか、そういうことを考えますと、やはり混合経済的要素は残っていると私考えております。しかし、この高度経済成長の前後に行われました膨大な水ぶくれというもの等を見ますと、当面の処方せんとしてはフリードマンのメスをかりなければならぬ。最近やはり顕著に出てきていることは、経済原則を無視したものは長続きしない、やはり経済原則というものは凛然として表へ出てきていると思います。それで各国ともその面でいろいろな試みをやってきておるのだろうと思います。  ですから、政府は政策を担当しているものでございますから、要するに処方せんをどうするか。処方せんは一つのプリンシプルだけでできるものではない、やはり薬をいろいろ合わせて調合するようにいろいろな要素を入れてその病気を治していく、そういう形になると思います。当面は、やはり経済原則を無視したものは長続きしない。そういうことがかなり必要になってきておる、そういうように思っております。
  206. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 総理の言われること非常によくわかるので、私も最終的には混合経済の形態だと思うのです。問題は、民と官とのウエートをどういうふうにするかという、そのあたりが一つ問題だと思うのです。  もう一つは、いま総理が言われましたように、経済原則ということは、言いかえてみれば私は合理性だと思うのですね。効率を重んじ、なおかつやはり合理的な、いわば筋道が立った、一面では数学的な論理の組み立てのようなもの、それが私は経済原則だと思うのですね。そういった意味で私も、総理が言われますように、最終的には、中身はどうであれ混合経済的なやり方だと思うのです。  ただ、なぜ私がこのことをお伺いしたかと申しますと、総理が行管庁長官をやられ、総理になられ、どうもその意味では考え方として官業は悪である、つまり、いま総理が挙げられましたようないわば国民共通の福祉ともいうべき下水道なり公園なりそういったものをなるべく民間に譲っていくという方向になっていってしまってはいかぬので、私も効率性なり合理性なりそのこと自体を重んずることについてはやぶさかではございませんが、そういった意味で、国民へのサービス、これは挙げて国民の税金でやることでありますから、最も効率的に使われなければなりませんが、それゆえに、単に人件費を切ったりあるいは収支のバランスだけを考えては政治の最終目的であるところの公共の福祉というのは実現できないのではないか、こういう考え方から私はお伺いをしたわけでございますが、大体そう理解してよろしいですね。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、昭和二十二年に出てきましたときに佐藤さんのお父さんと一緒で、お父さんは社会党でしたけれども、われわれは一緒に勉強会をやりましていまのようなことを論じておったのを非常になつかしく思い出しました。大体意見が合ったのです。合ったというのはいまのような線で合ったわけです。そういう意味でいま非常に耳を傾けて拝聴いたしました。  おおむね私は似ているのではないかと思います。ただ、景気を回復していく、何でやるかという問題が残っておりますが、これは新しい技術革新、イノベーションが出てこないと長続きした景気は回復しない。戦後のあれだけの大きな景気というものは、やはり戦争中の軍事技術が平和産業に転用されて、あるいはレーダーがテレビになるとか、あるいは軍艦が大きなタンカーになるとか、あるいはコンピューターはそのもとはファイア・コントロール・システムである、射撃管制装置である、それがみんな平和利用に大きく転換してこれだけの需要をつくったと思うのです。しかし、いまそれが一巡しまして、それでくたびれてしまったと思うのです。やはり何か新しいそういう科学技術の芽をつくらぬと新しい需要と生産性は起きない。それが核融合であるかあるいは光ファイバーであるか、あるいは新しいエレクトロニクスの世界、情報、衛星通信、そういうようなものになるか、われわれはそういう点でいま模索しておるときだろうと思っていますが、何かやはりそういう科学技術の大きな発展を遂げさせるように国際協力をしていく必要がある。  もう一つは、戦後の発展は、新興の国がうんとできたわけであります。国連にいま百六十も新しい国が入っていますが、これがみんなインフラストラクチュアの改革等をやりまして、需要を非常に起こして資源が開発された、世界経済が拡大された。その新興国がもう一段落して百六十ぐらいでストップして、あとは二万とか三万の国が国連に入ってくるという状態になってきております。そういう点も一つはある。  そういう意味において、世界経済全体をどうして活性化していくかということを真剣にわれわれは考えていかなければならぬと思っている、そういうように思っております。
  208. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこまで総理のお話がございましたので、私も次のテーマに移る前に若干述べておきたいのでございます。  これはわが党の委員から前年お話があったかと思いますけれども、いまの総理のお話の中で、やはり世界経済をもう一回再活性化させるというためには、いま新興国を含めて百六十カ国という話がございましたけれども、もう一回、世界的なレベルではケインズ政策というのはでき得るのではないだろうか。つまり、いま軍事費は約五千億ドル、六千億ドル、百二、三十兆円という大変大きな額を使っている。私は、この一%でも二%でもいいからひとつカットして――これはアメリカとか西側だけじゃないのです。ソ連も本当はカットしなければいかぬのです。ソ連も含めて、たとえば、いわば南の国、発展がおくれております南の国にひとつ世界的な規模での公共事業をやったらどうだ。これはもう総理御存じかと思いますけれども、すでに第二パナマ運河の話がございますけれども、第二パナマ運河をつくることによって、エネルギーの面からいっても大変なプラスになるわけでございまして、その意味では日本も技術やあるいは資金も出して、いまの軍事費に使っておりますそのわずか一%、二%の、年間百五十億ドルとか二百億ドルとか出すことによってそういう大きな世界的なプロジェクトができるわけですね。いま現実に青函トンネルの技術を使って今度はジブラルタル海峡にトンネルを掘ろうという話がございます。それで日本の国鉄の技術陣が行くようになっておりますけれども、あれもいわばつくることによって南アフリカの食糧をヨーロッパに入れる。ところが、ECとの間になかなかむずかしい問題がございます。ございますが、それはちょっと横に置いておいて、そういった形で軍事費の削減をして、そして、ソ連も含めてひとつこういった世界的な、地球的な公共事業をやっていこう。それによって、そのために資材が要る、技術が要る、あるいは人が要るということで世界経済の活性化をやっていこうという話があるわけでございます。  そういった意味で、これはアメリカもソ連もヨーロッパも含めて全部がひとつ軍事費をカットして、そして、そういったいわば世界経済の活性化にこれを使っていく。そして、戦争になってもここでつくったものは絶対にどの国も攻撃を加えちゃならぬ、こういう世界条約をつくって、まさに軍縮をし、そして世界経済の活性化になり、そして南北問題の解決の大きな一助になる、こういう方向性というのを日本がみずから国連を中心にしながら提唱していく必要があるのじゃないだろうか。  五月に行われますサミットの中で、ひとつ中曽根総理がそういった意味で、これは軍事費を全部減らせと私は言わないですよ。本当はそれがいいけれども、軍縮に向けてせめて世界的におのおのの国全部が二%から三%出せば、第二パナマ運河もジブラルタル海峡もあるいはサハラの砂漠の緑化のこともヒマラヤで大きな水力発電を起こすことも技術的にも経済的にも可能でございますから、二十一世紀までにこういった大きなプロジェクトをやって、世界経済の活性化を図っていこう。これは日本がみずから先頭を切って提唱し、その実現に向けていくことは、いまや日本中曽根ではなくて世界の中曽根にますますなっていくのじゃないかと私は思うのでございますが、総理いかがでございますか。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に気宇雄大な御構想を承りましたが、私は基本的には賛成であります。鈴木前総理が軍縮総会へ出ましてこのような趣旨の演説をなさいましたが、私も同感であります。  問題は、具体的にどういうふうにそれを確実に進めていくか。軍縮ということになれば、アメリカだけじゃなくてソ連もあるいは中国も、全世界が公平に参加するということが必要であります。いま佐藤さんも同じような趣旨のことをおっしゃっておりました。そういうことで、全世界の人たちが地球の上に一緒に住んで、運命共同体でおる、そういう感覚に立って、そして、そういう大きな麗しい理想に向かって進んでいくように、私たちも善意をもって協力していくべきだと思います。  特に、いまのような大きな地球的意義のプロジェクトというものは、これからの世界の需要を起こす非常に大きなファクターになっていくだろう、三菱総合研究所の中島さんでしたか、これを訴えておられますが、私は基本的には必要になってくるだろうし、また、あるいはサミットのような場合には、いわゆるワールド・ニューディールしという、そういうような発想がまた論ぜられるのではないかという気もいたしております。
  210. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ぜひ具体化には、これは西側だけというのではなくて、本当は東西両方入れることが意義があるし、いわば軍縮の具体的に目に見えるものが地球に存在するということは私は大変意義があることではないかと思いますので、私たちもこれからいろいろな形でこの構想を前に進めていきたいと思いますので、ぜひ総理にもこの先頭に立っていただきたいと思うわけでございます。  その次に、五十八年度予算と経済見通しの問題、そして景気対策との関連でお伺いしたいわけでございますけれども、五十八年度経済見通しでは名目五・六%の成長、実質三・四%の成長を目指す、その寄与度は内需が二・八、外需が〇・六ということで、内需に八割余をかけるというかつてないほど大変内需中心型になっているわけでございます。  問題は、これまでの委員会の中で塩崎経済企画庁長官の御答弁をお伺いしておりましたが、あくまで世界経済がずっといくことによってその上に乗って日本も経済成長が確実になっていくんだというお話が基本になっているわけですけれども、しかし、OECDの予測を見ましても日本が一番経済成長が高いわけですね。とてもじゃないけれども、日本がどうしてくれるかと世界は持っているというのがOECDのあの数字だと私は思うのです。そういう観点からいたしましても、一体、経済企画庁長官が言われるように、世界が経済成長する上にいわば日本が乗るような形で基本的に日本経済というのは回復していくだろうかということが一つでございます。  それとあわせて、アメリカの一九八四年度の予算教書が出されましたけれども、八二年度が千百六億ドルの赤字、八三年度が約その倍の二千七十七億ドルの赤字、八四年度が千九百億ドルの赤字の予算が組まれているわけですね。もうそろそろアメリカも、いままではこんなに国債依存度が多くなかったのでありますが、八三年が国債依存度二五・八、八四年が二二・三と、いわば日本のことしが二六・五でございますが、この国債依存度に大変近くなってきている状況でございます。アメリカの八三年の実質経済成長率一・四、八四年が三・九というようなことを構想しているようでございますが、アメリカがこれだけ財政赤字が続いて、世界の経済の中で大変大きなウエートを持つあるいはリーダーシップを持つアメリカの経済が、さっきちょっと触れましたように、大きくレーガノミックスが転換をして、減税をしてそして経済を活性化をしてそうすれば増収になるんだというのはどうもうまくいかないということで、やはり増税路線に走らざるを得ないというような状況になってきているアメリカ経済。そのアメリカ経済がこんなような状況で、一体日本の経済成長名目五・六%というのは可能なのだろうかということについて、私は非常に疑問を持っているわけでございます。外需は今度は〇・六とウエートは軽いのでありますけれども、日米の貿易の関係からいってもこれもどうかなと思わざるを得ぬのでございますけれども、その点についてはいかがでございますか。
  211. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  世界経済の回復に応じて日本経済が回復過程を歩んでいくということに対しまして、現実に三・四%の成長率が果たして達成されるかという疑問、たくさんの方が出されることも私も十分存じております。しかし、民間研究機関が最近立てました予測では四・一%から一・八%まで。このような傾向が示しておりますように、どんな研究機関でも世界経済は回復過程に入るであろう。OECDは、一九八二年はマイナスでございましたが、一九八三年はアメリカほどではないにいたしましても一・五%の成長率はある。それからアメリカは、レーガンがこれからは息の長い回復過程の一年目になるんだというふうに国会で教書の中で発表しましたように一・四%の成長を見込んでいることから見て、日本の成長力の強さから見て三・四%の成長率は当然達成してしかるべきものだ、私はこんなふうに考えているところでございます。
  212. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 アメリカ経済の見通し自体も必ずしも、なかなか見通しというのはむずかしいわけですから、それ以上それを進めてもちょっと議論が進まないと思いますので、直接関係します内需の方でございますけれども、この民間最終消費支出は百六十九兆三千億という数字を一応立てて、前年度の伸びとしては十一兆七千億、七・四%の伸びを見通しているわけですね。これも果たしてどうかな。と申しますのは、雇用者総数が一・三%伸びる、それも含めまして、一体雇用者所得の伸びというのはどうなっているか、とりわけ一体五十七年、五十八年の雇用者一人当たりの所得の伸び、これはどういうふうになっているか。これは事務当局で結構でございますが、長官ですか。
  213. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  個人消費支出が内需の中の大きな要素を占め、三・九%であることは御案内のとおりでございます。一人あたりの雇用者所得の伸びはその大きな要素でございますが、五十七年は四・八%、五十八年は五・二%と見て、そこで、消費者物価の状況、さらにまた平均消費性向、これらの動向を見まして、三・九%の消費支出の伸びは期待できる、こういうふうに計算したところでございます。
  214. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま数字のお示しがございましたけれども、五十八年度雇用者一人当たりの所得の伸びというのは五・二を見ているわけですね。一体これが達成できるかどうかによって、私は、一番大きなウエートを占めます民間最終消費支出、この行方が決まると思うのです。  事務当局で結構でございますが、民間最終消費支出の中に占めます雇用者所得のウエートというのはどのくらいございますか。
  215. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 ちょっと御質問の趣旨が必ずしもはっきりいたしませんが、雇用者所得は、ただいま大臣から申し上げましたとおり、五十八年度一人当たりにいたしまして五・二%、雇用者所得全体で六・六%でございます。そのほかに財産所得、企業所得等がございまして、その所得の中から消費に回るわけでございます。したがいまして、全体としての消費性向ということになりますと、八割をちょっと超えているという状況でございます。
  216. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ちょっと私の質問が悪かったのかもしれませんが、民間の最終消費支出の中に占めます雇用者の総所得ですね、これは大体三分の二ぐらいウエートを占めているのじゃないですか。
  217. 田中誠一郎

    田中(誠)政府委員 国民所得に占めます雇用者所得の割合は大体三分の二でございます。
  218. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで、雇用者の所得の伸びというのが民間最終消費支出に大変大きな影響があるわけですね。いま御説明がございましたように、一人当たりの伸びは五・二と見ている。ところが、いま、まだ春闘は本格的には始まっておりませんけれども、財界は、大体定昇も、これは高度成長のときの遺物であって、定昇もやめにしたらどうだ、大体ことしはベースアップはゼロにしましょうやという話がありますね。それで、御存じのように、組合側は五%から七%ぐらいの要求を出しているということです。  財界が言うように、たとえばこれをゼロにしたとき、ゼロでは、塩崎経企庁長官が言うように一人当たりの伸びは五・二なんて、とてもじゃないけれどもできませんね。一体政府としては、これはなかなか政府の手の届かぬところでもございますけれども、財界が言うゼロに抑えようというのと、それから組合側が要求しております五%から七%という数字、どちらをとった方が都合がいいのですか。
  219. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  いま佐藤委員のおっしゃられるのは、春闘の雇用者所得に及ぼす影響だと思います。雇用者所得の見方は、企画庁はマクロ的に見ておりまして、春闘で対象となります雇用者所得はその半分ぐらいだ、こういうことになります。しかし、全体として五・二%の伸びが達成できますれば消費支出の三・九%は達成できるということになりますが、そこは春闘に影響を受けることはもちろんでございます。私は、全体として五・二%、これは見通しとしていまのところは達成できる、こういうふうに見ておるところでございます。
  220. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 確かに、春闘でカバーできるところの限界はありますが、しかし、去年の春闘を見たって、春闘で出るような大きなところと、出ないような小さなところと比べれば、いま一番問題なのはこの乖離、つまり、春闘で上げたところは、たとえば七%とか六・何%とか大きいけれども、いわばその春闘の相場なんかに出ないところの方はもっとずっと下がっている、この幅が大変大きくなったことが問題があるわけですね。  ですから、恐らく聞いていらっしゃる方は、何となく経企庁長官の言うことの方が何でも正しいように聞こえたかもしれませんが、春闘ですら最低せめて七%ぐらいにならないことには、この一人当たりの所得の伸びというのは、これはもう平均したって五・二なんか出てこないのですよ。さりとて塩崎長官が、なるがゆえに財界に、春闘はひとつ私が見通したとおりに出してくれということが言える状況でないことはわかっておりますけれども、しかし、この経済見通しによって税収を立て、日本経済をうまくしよう、そういう構想のもとに立てられている予算である限りは、やはり国民の前に、いや、やはり春闘では五%から七%ぐらいのベースアップがないことにはこれはうまくなりませんということは言えるんじゃないですか。
  221. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 たびたびお答え申し上げましたように、この雇用者所得の見込みは、春闘のベースアップが幾らになるかという見通しとは関係はございません。
  222. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、それはわかっているのですよ。わかっているけれども、それだって大きな要素である。  別な言い方をしましょうか。たとえば、実績ですから、おととし、五十六年度の賃金総額を見ましても、名目で五・一%伸びているのですね。そして、それが民間最終消費支出にどれだけ響いたかといいますと、名目で五・四にしかなっていないわけであります。そうしますと、皆さん方が比較をしておりますように、民間最終消費支出が、五十六年度のパターンを見ても、ほとんど数字は一緒なんですよ。いまあなたが、一人当たりの伸びは五・二だと言うのだけれども、五十六年の実績というのは五・一です。ほとんど数字は違いはない。そして、最終消費支出にどうなったかといいますと、それは名目で五・四にしかなっていない。  確かに家計調査を見ますと、いま大変物離れが進んでおりまして、その意味では、耐久消費財というのは大変ウエートが少なくなって、ほぼ一割ぐらいしかありません、大体洗濯機もテレビもみんな行き渡りましたから、ありませんけれども、民間最終消費支出には、言うまでもなくサービス業等が大変含まれているわけでありますから、そういった意味で、確かに傾向は変わってきているとはいうものの、五十六年度の実績から見ましても、一人当たりの所得の伸び五・二が完全に達成されないことには、塩崎先生も大変苦労なさって、なるべく現実との乖離をなくそうということでこの経済見通しを立てられたのだと思いますけれども、やはり春闘でそれなりの七%近いものが出てこないと、この経済の見通しというのはうまくいかない。したがって、またそこで狂ってまいりますと、後で触れますけれども、ことしの税収というのは、大変かたく見積もってございますけれども、それもまた狂いが生じてくる可能性があるのではないかというふうに私は思うのでございますけれども、あなたは直接春闘をどうしろこうしろと言える立場じゃないことは私もわかっておりますが、私の言うことが間違っておりますでしょうか。
  223. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 おっしゃる点は、春闘がもちろん雇用者所得に影響する点は間違っていないと思います。いま御指摘の五十六年度の数字を見ましたら、私はもう一つの要素があると思います。当時の平均消費性向は八〇・七であった、五十八年度はだんだんと消費性向も高くなりまして八二・四というふうに、消費性向も高まるというような要素も考えておりまして、だんだん消費支出の範囲がGNPを持ち上げる力がヨーロッパ並みの六〇%程度になってきたというようなことを考えた結果がこの三・九%という数字でございます。
  224. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 何とか逃れようとしているようでございますけれども、あなたの方で民間最終消費支出の伸びを七・四と見ておりますけれども、その中でも、いろいろと議論がございましたように、一人当たりの所得が五・二伸びたといたしましても、御存じのように、これは累進税で大変税の負担が重くなってくる、税外負担ともいうべき社会保険料は名目できますからこれにとられてくる、物価上昇も三・三と消費者物価も見ていらっしゃる、これにずっと食われちゃうわけでございますし、消費性向といっても、先ほど触れましたように、いま商品の中で、耐久消費財なり半耐久財、こういったウエートが大変減ってきまして、むしろサービスの方がウエートが大変高くなってきているわけですね。しかもこれは、塩崎さん、何か伸びていると言われますけれども、この前も出ておりましたように、実は国民は、特にいま最低のものは買わなきゃいかぬ、とりわけサービスの中には、子供の塾だとかあるいはおけいこごとに行っている、こういったものも大変このごろはウエートが高いわけで、これは子供の手前払わなければいかぬということで預金を取り崩してこっちに回しているということがあるわけでありまして、そういった意味で、何とか塩崎長官も言い逃れをしようと思っていらっしゃいますが、いずれにしろ、今度の春闘で、財界が考えているようにゼロに抑えるんだ、あるいは大変な低率になれば、私はこの経済見通しというのは大変狂ってくるぞということを言わざるを得ぬわけでございまして、これ以上長官に言っても何とか逃れようとするだけの答弁でございますからそのことは触れませんが、私はこのことだけはっきりと申し上げておきます。  その次に、五十八年度予算の枠組みについてお伺いをしておきたいのでございますけれども、今度の予算というのは、まあ安いてんぷらのように大変周りをいろんなもので粉飾して、通常なかっこうにしますと実はエビが大変小さいものだから、何とか衣を大きく大きくして、ことしは何とかひとつこれで食べていただけませんでしょうか、こういうかっこうでつくった予算、よく言えば緊急避難的、悪く言えばきわめて粉飾の多い予算ではないかと思うのであります。  主計局長にちょっと数字のことでございますからお伺いをしたいのでございますが、まず歳入面でことしは何と税外収入が二兆一千億増という、従来が二兆円ベースだったものに加えて約倍税外収入が入っておるのですね。一体これはどういうことをしたのですか。
  225. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ただいま御指摘のように、ことしは税外収入を四兆七千百九十六億円計上いたしております。昨年が当初予算で二兆六千百六十八億円でございますから、前年に比べて二兆一千億円余りよけいに計上しておるわけでございますが、ことしは五十六年度の決算のときに国債整理基金から借りました二兆二千五百億円余り返さなければなりませんので、そういう一回限りの支出に充てるためなれば一回限りの財源をできるだけ集めてみよう、こういうことで最大限の努力をいたしました。つまり、かねてからいろいろ御議論のございました補助貨幣回収準備資金、これも受け入れることにいたしました。それから、外国為替資金特別会計、それから自賠責、専売公社、電電公社等の御協力をいただきまして、特別財源対策と考えられますものが二兆一千五百億程度でございます。減税財源との関係もございましたけれども、一回限りの財源で減税に充てるということが適当でないことはかねてから私ども申し上げてきたところでございます。
  226. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは本論に入る前にちょっと言っておかなければいかぬのでございますけれども、私たちも、去年減税を要求したときに、確かに意見としては、この際景気回復のためには、六年、当時は五年間でございますが、据え置かれている課税最低限をこのままにしていくということは大変不公平であるということで、とにかく一兆円減税をしなさいということで、確かに景気回復という面からいえば三年間ぐらいやらなければこれは意味がないのではないかという意見もありました、ありましたけれども、とりあえず去年の場合には、この一年間とにかくやろうじゃないかということで議長裁定にもなった話でございます。何も何年も何年もやれということで各党が全部動いたわけではないのであります。盛んに山口主計局長は一回限りの、一回限りのと言っておられますけれども、あのとりあえず五十七年度に話をしたときも、これもとにかく一兆円減税というのはとりあえず五十七年度一回限りということであったわけであります。そのときに、補助貨幣回収準備金というのがあるではないかということを私たちも申し上げておったわけでございます。しかし、主計局長も、大蔵省の方は、豚の子を殺すようにぴんぴんぴんぴん、これはとにかくなければ日本国家が破産をしちゃうがごとき大騒ぎをして、とにかくだめだ、だめだ、だめだと言っておきながら、自分たちの財源にはちゃんと入れる。これはもう、減税問題に関係をした者のみならず、きわめて大蔵省というのは手前勝手、これは本当に腹の煮えくり返るような大変なことでございます。ですから、局長は幾らこれは一回限りの、一回限りのということでも、前提は初めから一回ということを言ったのですから、いかにもこれを使っては国家が破滅をするようなそういう言い方をしておきながらこれを中に入れてくるというのは、よく恥ずかしげもなくと私は申し上げておきたいわけであります。  そして、いま主計局からもらいましたこの税外収入を見てまいりますと、日本専売公社の納付金、これは法律が通ってたばこをまた上げて、一本一円ずつ上げて国に納めてくださいというもの。あるいは大きなもので言えば日本銀行納付金。あるいは日本中央競馬会の納付金、これは数字としては五百億ではございますが、それから電電公社の臨時納付金を来年の分もとっちゃっているのですね。来年のものを食っちゃっているのですね。千二百億先食い。国有財産の売り払い収入、いわばこれはタケノコ生活であります。外国為替の資金の特別会計の受入金、これも二千六百億円。それから産投会計、これは数字は小さい。そのほか大きなものでは自賠責の特別会計の受入金がございますが、これはたしか借入金になっているわけでございますから将来返さなければいかぬはずでございます。それから、大きなものが補助貨幣の回収準備金の資金が一兆四百二十九億円と大変大きいのでありますが、いまざっと挙げた中で、いま局長が言われましたように、これはみんな一回しか使えないものだということを強調して言われましたけれども、たとえば来年もまた法律を直したりして使えるものというのはあるのですか。  あわせて、私もずいぶん特別会計を見てみましたけれども、これは説明書だけではなかなかわかりにくいのです。来年もこのように特別会計の中から、いや実は一兆円ぐらいこれは使えるのですよと出せるものはあるのですか。
  227. 山口光秀

    山口(光)政府委員 来年のことではございますが、ことし最大限の努力をいたしまして、各省あるいは各機関にお願いしたところでございます。来年についてこういうような大きな財源が確保できるという考え方は持っておりません。
  228. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、たとえば専売公社の納付金にしましても、これはまた来年上げるということになればまた法案を通さなければいかぬ。しかし、約三千億本に消費は戻ったようでございますけれども、値上げしますと三千億本に戻らないですね、やっと最近戻ったということですから。まさかこれ来年またたばこの値上げということは恐らくできぬと思うのです。  それから、強いて使えるかなと思えば、外為特会の受入金。しかし、これももう中身ほとんどありませんね、使ってしまっているから。これは為替の変動の幅によりますからどうなるかわかりませんけれども、これが強いて言えば使えるかな。産投特会は五十九年度までということになっておりますが、この中身自体はそんなに多くありませんから、そういった意味では、歳入の面でも、いわば恐らくこの二兆一千億というのを特別にことしつくり出してしまって、来年使えないだろうと思いますし、いま局長からお話がございましたように、特別会計の中を少しこうやってゆすってみて、またそこから大きく一兆円台近く持ってくるということは、私の調べた限りでは恐らくできないようであります。  もう一つ、歳出面でも、大分予算書というのはいろいろと、ごまかしと言うと怒られるかもしれませんが、とにかく五十八年度は臨時的な措置ということで、本来予算に組まなければいかぬものを、借りてくるとかいろいろなことをやっていますね。どんなことをやっていますか。
  229. 山口光秀

    山口(光)政府委員 一番大きなのが、国債費の定率繰り入れをことしは停止するという点であろうかと思います。そのほかでは、社会保障の関係で、国民年金の国庫負担金の負担を将来にわたって平準化する。最近、ここ数年の間非常に急増いたします。後に至ってうんと楽になるものですから、それを平準化するという措置を講ずることにいたしております。主なものはその二つかと思いますが、いずれも法律をもって国会の御審議をいただくことにしております。
  230. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 だれも、私ごまかしていると言っているのじゃない。それは法律でございますが、そのほか、これは行革に関連すると言ってもいいかもしれませんけれども、たとえば給与改善費、ことしも一%しか組んでいないということ、あるいは年金、恩給は据え置きになっていますね。こんなことをまた来年も再来年もできると私は思っておりません。それから住宅金融公庫の利子の補給金ですね。これを資金運用部資金から借り入れをして振りかえています。約七百七十八億円というようなことで、必ずしも数字が出ないものもございますけれども、一番大きな国債整理基金の定率繰り入れ、こういったものを含めてざっと大変な額になってまいりますね。  それじゃ、歳出を削った削ったと言いますが、行革によって一体歳出減はどのくらい出ていますか。
  231. 山口光秀

    山口(光)政府委員 行革によってと申しますが、象徴的な意味で臨調答申をどう実現しているかということでお答えにかえさせていただいてよろしゅうございますか。
  232. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間がないから数字だけで結構です。
  233. 山口光秀

    山口(光)政府委員 実は、数字的にこれこれというのは大変申し上げにくいのでございます。そこで、臨調答申の項目のうち、どの程度の項目について実現ないし実現への方途を講じているかということを申し上げたいと思うのでございますが、数え方はいろいろ考え方があろうかと思いますが、私ども約九十項目が歳出予算についての御指摘かと思っておりますが、そのうち約七十項目は大体実現しておる。あと九項目は一部実現しておる。それから、大きな問題は数年にわたって改革を要するわけでございますが、そういうものは改革の手順を具体的に定める、策定するというようなことをやっておりまして、それが七項目あるということでございまして、九割以上項目数について実現ないし実現の方向へ向かって前進している、こう申し上げてよろしいかと思います。金額的にはちょっと申し上げかねます。
  234. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 主計局から出してもらいましたいまの臨調答申の措置の状況の中で、数字がはじけるものだけを足してみたわけでございます。そうすると、これは政策的にはいい悪いの価値判断はまた別に申し上げまして、それは別といたしましても、八千九百九十五億、約九千億円これで削れているわけですね。とにかく数字的に見れば削れているわけです。ただ、この中でふえている部分があるわけです。たとえば私学助成の中で二十五億ふえているとか、それからもう一項目、百八十八億ふえているものがございますから、差し引きして約八千七百八十二億になります。今度の中で、たとえば麦価の値上げだとかあるいは授業料の値上げ等でそういった増収を図っておりますね。これが四百十六億増収になりますから、結果は九千百九十八億ということになるのでございます。  ただし、いまもう時間がございませんから、補助金の方が最終的に二千六百六十二億減らしましたけれども、これが、いま申しました臨調のものとダブっているものを差し引きいたしますと、結局最終的に幾らになるかといいますと、行革による歳出減、いま数字がはじけるものだけ言いますと、皆さんのいただいた資料でざっと五千億であります。行革によって五千億、いわば削った、中身はいい悪いはありますが、削ったことになるわけであります。  こういう土台、材料をもとにして、一体五十九年度、これがどうなっていくのかということを考えてみますと、歳入の方では、いま申しましたように二兆一千億はとにかく無理無理つくってきて、これは来年使えるようなものはほとんどありませんから、二兆一千億というのは来年歳入に立たない。加えて歳出の方で、この国債の定率繰り入れ、約一兆四千億になると思いますので、先ほど申しました歳出で今回来年度無理無理削ったものを含めますと一兆九千億近くになりますから、ここでざっと四兆円、今度の予算というのは歳入、歳出とも約四兆円無理をしているということになるわけであります。ただし、いま申しましたように行革によるところの歳出減が五千億ございますから、それを差し引きますと三兆五千億。三兆五千億、実はことしの五十兆何がしという予算は無理に無理を重ねて衣を着せて何とかとにかく、もちろん国債も十三兆発行しましたけれども、それでつじつまを合わしたということになるわけですね。  したがって、来年税収がどうなっていくかといういろいろな要素がございますけれども、もう二度と使えないこの歳入面、歳出面、これはもちろん皆さんの方では、いや、来年もベースアップ・ゼロと言うかもしれませんよ。しれませんけれども、そんなことは許されるわけはないのでありまして、そういったものを入れてまいりますと、ことしは何とかこういった形でつじつまを合わせたけれども、実はこれは実態ではなくて、本当は五十八年度予算というのはさらに三兆五千億近く赤字国債なり発行していかないと、通常ノーマルなかっこうで実は予算が組めなかったのだ、こういうことになってくるわけであります。大蔵大臣でも主計局長でも、いかがですか。
  235. 山口光秀

    山口(光)政府委員 ただいまお話のございました三兆五千億というものを簡単に分解いたしますと、税外収入が二兆一千億余り多いじゃないかということと、それから定率繰り入れの停止での一兆四千億があるじゃないかということの合計に大体なるじゃないかと思うのです。  税外収入の二兆一千億につきましては、先ほども申し上げましたとおり、ことし一回限りの収入という頭で、そこで五十六年の決算不足の補てんに使った。したがって、本来の歳入歳出の構造に組み込んでないとお考えいただいていいと思うのです。  国債費の一兆四千億につきましては、なるほど来年これを停止を戻しますれば来年は一兆六千億ぐらいふえる予想になる。その間の事情は、先日お示しいたしました財政の中期試算をごらんいただければ明らかでございます。
  236. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、とにかく総予算の五十兆の中でしていたものですからそういうことになるわけでございますが、いずれにしろ一番心配をしておりますのは、一体これで五十九年度予算は――五十八年度予算が通らぬうちに五十九年度予算の話をしていてもこれもおかしなものでございますが、一番心配をしておりますのは、いまのように大変いわば必要なものは、負担の部分は大分先送りをして、何とか五十八年度予算は組んだ。しかし、いま申しましたように、確かにその分、二兆を引きましても実は定率繰り入れ等もやっていないということなものですから、何とかこういう数字合わせになっているということなんですね。五十九年度予算を見ていった場合に、一体、いま申しましたように、歳入面ではもう手品はありませんよ。歳出面は確かに、中身のいい悪いは別でございますが、行革による歳出減というものは若干ありましょうけれども、しかしそれとて、では、さらに一兆も二兆も切り込めるかといいますと、これは恐らくなかなかむずかしいだろうと私は思うのであります。  そういったことを考えてまいりますと、きょうは藤田委員が中期展望を中心にして皆さんの方のお考えをお伺いしましたけれども、どうもこのままいきますと、増税なき財政再建ということが言われていますが、やはり増税なき財政再建でなくて、財政再建なき増税ということになるのではないかということを心配せざるを得ないわけであります。このあたりはまたきょうの午後の一番の質疑に戻りますが、大蔵大臣、私の心配というのは杞憂にすぎないのだろうか。いかがですか。
  237. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、佐藤委員のいろいろな御指摘でございますが、いま佐藤委員佐藤委員の計算に基づいて三兆五千億、こういうことをおっしゃっておりました。これもたまたま、試算の仕方の相違がございますけれども、たとえば昨年御提示申し上げました財政の中期展望、そして今年度予算そのものを五十八年度ベースで計算しましても、一般歳出がまさにちょうど三兆五千億、計算はその限りにおいては合うわけであります。したがって、この中期試算におきます五十九年、こういうものを考えたときに、いま委員の御指摘のように、一体五十九年度予算は組めるだろうか、こういう感じは、私自身が予算編成を終了してほっとしたときに、そういうある種の危機感を感じました。  しかし、いろいろまた激励する向きは、毎年必ず予算編成作業が終わった場合には、だれしも一体来年どうなるだろうか、こういうことに対して自信を失う、そういうことであってはならぬというもろもろの激励にこたえて、私自身もその後それなりの勉強をしてまいったわけであります。したがって、やはり総理就任以来お使いなっております財政改革というものを本気に考えていかなければ、すべてのものが現在の施策、制度がそのまま継続したという前提の上に立って考えた場合、おっしゃるような指摘を否定するだけのだれしも数字的な自信もないだろう。それだけに、まさに歳入歳出を通じて全くその構造的な見直しを行うことによって努力を重ねて国民の負託にこたえていかなければならぬ、このように考えております。
  238. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 大蔵大臣として、また言葉として私はそういうことは言えると思うのですね。しかし、なかなかそれは来年度の五十八年度予算を見てもそうはいかないだろうということを、きょうは枠組みを少し細かく見てみたわけであります。  あわせて、きょうは藤田委員からも指摘がありましたように、どう見たって国民は、鈴木さんが増税なき財政再建と言っているときだって、大体知っている者は、どうせできはしない、五十九年度赤字国債ゼロということはできないということは大体知っていたわけですよ。しかし、鈴木さんはごりっぱにも、そのためかどうかわかりませんが、責任をとられたわけでありますから、それはそれといたしまして、もう一つ総理及び大蔵大臣の頭の中に入れておいていただかなければならぬのは、国会決議があるのですね。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕 一般消費税によらない、恐らく竹下大蔵大臣は「いわゆる一般消費税(仮称)」と、ここまで読んでくれないと非常に御不満かと思いますが、「いわゆる一般消費税(仮称)」によらないで財政再建をするという決議が五十四年の十二月二十一日に行われているわけであります。それに伴いまして、増税なき財政再建ということで来たわけでございますけれども、総理の本会議におきます答弁の中にも、いわゆる一般消費税は頭の中にありませんとか、あるいは大型間接税は頭にありませんとか、こういうふうに言われているわけであります。  私はそれはそれなりに結構だと思うのでございますが、国会決議との関係で確認をしていきたいのでありますけれども、実はこの財政再建に関する決議の方は、あの武器輸出三原則のように大変議事録が残っていて、そしてこの決議の内容自体を補完をしておるようなそういう決議ではないのであります。その後、大蔵委員会等でいろいろと竹下大蔵大臣あるいは渡辺大蔵大臣等との質疑はございますけれども、必ずしもはっきりしないところがあるわけであります。  そこで、一般消費税なりあるいは大型間接税の導入を考えていないということは結構でございます。結構でございますが、きょう大蔵大臣が、これからの財政を中期的に考えた場合に四つの方法がある、その中に国民への負担増ということを言われておりますが、その負担増という中には増税ということも当然入ってくるわけであります。その際に、確認をしていきたいのでありますが、いま一般消費税と言わないで大型間接税という言葉を使っているのですね。何かいつの間にか言葉がこう変わってきちゃったわけでございます。これもなかなかむずかしいのでありますが、この税調の文章をそのまま使えば、五十五年度の政府税調の中期税制答申には、大型間接税というのは課税ベースの広い消費に着目をした間接税であるという書き方になっているわけであります。しかし、税をやっている者から見ますれば、恐らくその大型間接税というのは、EC型の付加価値税というのが分類をする場合に概念として一番近いのではないだろうか。そして、いわゆる一般消費税という場合には、前段階取引高控除方式ということを指しているんだろう。で、竹下大蔵大臣の頭の中には、この国会決議の「いわゆる一般消費税(仮称)」という中には、いわばEC型の付加価値税、前段階税額控除方式というものは入っていない、いわゆるいま俗称いうところの大型間接税というのはこの国会決議には入っていないんだ、こういうお考えできょうの藤田委員の御質問にもお答えになっているんでしょうか。
  239. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに御指摘のように、財政再建に関する決議、これは五十四年十二月二十一日、これは当時税制調査会長でありました山中大蔵委員にお願いをいたしまして、野党の方との折衝もしていただいてつくったものでございます。私、いつもこれを見ておりますが、これ、まことによくできた決議でありまして、「財政によるインフレを防止するためには、財政再建は、緊急の課題である。」そうされて、一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造につき、十分国民理解を得られなかった。したがって財政再建は、一般消費税(仮称)によらず、行政改革による経費の節減と歳出の節減合理化、そして税負担公平の確保と既存税制の見直し等を抜本的に推進することによって財源の充実を図るべきである。これはやはり私は大変りっぱな決議だと思っております。  そして、いままた御指摘がありましたように、五十五年に、このいまおっしゃいましたいわゆる「課税ベースの広い間接税に着目する必要があろう。」こういう中間答申をいただいて、そして五十七年の十二月二十三日には、「税制の基本的な見直しは避けて通れない喫緊の検討課題となっている」、こういう答申をまたちょうだいをしておるわけであります。  したがって、私がいま、いわゆる一般消費税(仮称)の手法はとらないと申しましたのは、まさにあのとき具体的方策として検討したが、十分国民理解を得るに至らなかったというものそのものを指しておるわけであります。したがって、いわゆる直間見直しとかいうような問題は、この一般消費税(仮称)とは別に、全く新しい観点から総合的な角度で検討すべき課題である。いまEC型のものを念頭に置いているとかそういうものではなく、まさに間接税そのものとして、この五十五年の御指摘のような考え方で私どもはこれに対応していかなければならない課題だ。だから、ここまでが否定されたもので、ここから後はまだ否定されたものではないという大変な垣根をつくって議論をするという考え方はございません。
  240. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いや、考え方はございませんと言ったって、この財政再建に関する決議というのは、これは、いま大蔵大臣の説明はわかりますよ。これはいわば、ここに言うところのいわゆる一般消費税というのは五十三年税調に大綱がいろいろ書いてあるわけでございます。一般的に言えば、前段階の仕入高控除方式ですよね、内容を俗に言えば。それをあなたは、それはとにかくこの国会決議というのは否定されているというのはお認めになるんでしょう。あわせて、それでは、いわゆるEC型付加価値税方式と言われております前段階税額控除方式――間接税一般と言えば、これは酒税にしろあるいは物品税にしろいろいろございますし、あるいは庫出し税もあるし、単段階のものもある。それもあるでしょう。あるでしょうけれども、いわゆる五十三年十二月に税調から出されたこの大綱、一般消費税の大綱というのがございますね。これは否定をされた。しかし残りの、いま申しました間接税、とりわけ前段階税額控除方式ですね、いわばEC型の、これが恐らく一般的には大型間接税と言っているものでありますけれども、これは国会決議の中には入っていない、あなたはこういう認識なのですか。
  241. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは率直に言えばいまの御指摘に沿う答弁になるわけでございますが、やはり五十五年の十一月七日の答申、最終的には「課税ベースの広い間接税に着目する必要があろう。」ということが書かれてございますが、その前段、「我が国の場合、民間最終消費支出に対する間接税等の割合が主要諸外国に比して低く、しかも、この割合が長期的に低下傾向をたどってきているが、これは、酒、たばこ、自動車、揮発油、軽油といった個別の品目に対する課税がこれまで間接税の大宗を占めてきていることによるところが大きい。このような傾向は、所得課税とあいまってバランスのとれた税制を形成し」云々と書かれてあるわけであります。したがって、やはり安定的な税収を確保するという見地からは、私は、ここでやはり課税ベースの広い間接税ということに着目するという意味におきましては、いま佐藤委員の御指摘のもの自身もその検討の対象になり得るものであるというふうに理解しています。
  242. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それじゃ全然私の質問に沿うていないじゃないですか、いまの答弁は。これは武器輸出の問題じゃございませんけれども、これも国会決議なんですよ。この中で、先ほど、もう時間がありませんので余り詳しく言いませんけれども、前の答弁には、いわばここで五十三年税調答申で言われた一般消費税は国民によくわからなかったので否定されたということで、しかし、さらに幅広い意味での間接税、それは大型か小型か、単品か、単段階か多段階かは別としまして、それ以外はあなたはこの国会決議には否定されていないということなんでしょう。結論だけでいいです。イエスかノーで結構です。
  243. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そのとおりであります。
  244. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 恐らく私はそう考えているのじゃないかなと思ったから……。  そこで総理、この問題の最後に詰めておきたいのでありますけれども、きょう藤田委員からも御説明があったように、国民も、一体財政はこれからどうなっていくんだろうか、それから、一体われわれの負担はどうなっていくだろうかということを大変心配をしているわけですね。まだそれは人によっては行革が足りないじゃないか、あるいは、後から若干私触れたいと思うのでありますが、こういうことをやれば税は取れるじゃないだろうかという考えをいろいろ持っているわけです。しかし、それもせずにして、すぐ大型間接税であり一般消費税である、そういう方向に走る考え方というものについては、国民はそう簡単に納得しないと私は思うのであります。  どうも、いま大蔵大臣の御答弁は、国会決議で言われたいわゆる一般消費税(仮称)以外の間接税あるいは、それは多段階のものも単品目のものもいろいろとありますが、それはどうもいいということでいろいろと御答弁があったようであります。しからば、私は、この問題は国民に直接負担をかけることでもございますし、あるいは五十四年の選挙でも、いまいみじくも大蔵大臣が答弁なさいましたように、この財政再建に関する決議の中でも、要するに、国民に余り理解されなかったのだ、納得されなかったのだ、したがって、それによらないということを言っているわけでございますから、私は竹下大蔵大臣とその後大蔵委員会で議論したことがございますけれども、やはり国民の前に、いや行政改革もやります、その他の方法もとりますが、なおかつ足りないので、ひとつ増税をお願いをしたいというのだったら、はっきりと、国政選挙もございます、六月の選挙ですね。それまでにやはり、先ほどの藤田委員の質問に対する答え、あるいは、私いまお伺いをしております、一体どうやって財政再建をするのか、それはどういう方法なのかということを国民の前に明らかにする、このことを私は、財政民主主義からいっても、あるいは国政選挙が六月に、これは必ずあるわけでございますから、それまでに答えを出して、国民皆さん方に財政再建はこうやりますということをやはりちゃんと出すというのが民主主義のルールではないか、国会国民とを結ぶ選挙の中で一つそれは重要な争点にすることが民主主義のルールではないか、私はこう思いますが、いかがでございますか。
  245. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは財政体質を改善するための税制上のとるべき方策についての中間答申としていただいて、絶えず私どもが念願に置いて検討すべき課題である。したがって、いわゆる財政改革に当たって、まず歳出歳入両面にわたってどれだけの構造の改革ができるか、それを徹底的に、まず五十八年度予算編成がその一歩であったと思いますだけに、その議論を通じながら、将来への展望を国民の皆様方に理解してもらうことであって、まだ一層の努力をする前に、かくすれば増税しかございません、したがって増税是か非かとかいうことを国民の皆様方に訴えて、その審判を受けるというテーマには現実なじまない課題である、私はこのように考えております。
  246. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 なぜ私がこういう一見先走ったようなことをお伺いしたかと申しますと、もう財政も、あと実は私は利子配当の総合課税、グリーンカードの問題もやりたいし、それから、うちの書記長から申し上げました土地の再評価税の話もやりたいと思うのでございますが、そういうように私たちが提案をいたします財政再建のための増収策、これも真剣にやらなければいかぬと思うのであります。しかし、今日までの議論ではちっともやらないものですから、どうも皆さん方の考えていることはやはり増収策、とりわけ大型間接税なりそういう方向しかないのではないか。ちっとも答えが出てこないわけです。国民は大変不安に思っているし、その点が大変不満であります。  そういった意味では、六月には参議院選挙もあるわけでありますから、その場に――いいですよ、そこに公約がなければ、その後三年間は絶対そういった増税はしませんということを答弁してくださるなら、選挙の争点にする必要はないと私は思うのであります。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、どうも言葉の端々に私たちはそうとれないものですから、それならば、ちゃんとそのことを国民の前に明らかにすべきではないかということにしたわけでございますが、いずれにしろ、衆議院選挙、いつあるかわかりませんが、今度の来る六月の参議院選挙、ここに幸いにして一般消費税なり大型間接税なりその他の間接税、これが出ないということならば、その後三年間は絶対――ルールからいっても、そういった形の増税案というのは、いわば行政の責任側としては、国民に問わずして、ことしの秋になって、九月になったら、いや実はこれしかありませんでしたからと出されたんでは私は困る。その御決意は、総理、よろしゅうございますか。
  247. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国政選挙にいわゆる財政改革の問題が大きな争点になる問題であるとは私も思っております。しかしながら、今日われわれが努力をしておりますのは、いかにしてその歳入構造の見直しをしていくか、まずこういうことでございますので、国民の方自身が、ことほどさように見直しをして、なお受益と負担の関係考えて、なるほど新しい負担もやむを得ないかな、こういう認識をしていただくまでには私はかなりの時間もかかると思うのであります。したがって、これが争点になる問題であるとは思いません。  そうしてまた、今度の選挙の公約というものが、言ってみれば、税制そのもので言えば誤解を受けがちでございますが、選挙のときにお約束をした問題が三年間の国政すべてを拘束するものではない。いわゆる客観情勢の変化等が、これは一税制の問題に限らず、経済、外交すべてにあり得ることであろうというふうに考えております。
  248. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、しかも二兆、三兆という大きな額の話になるでございましょうから、やはり国民にその問題で信を問うということは、議会制度のルールからいっても非常に重要だと思います。いまの御答弁についてはきわめて不満でございますが、時間が大変迫ってまいりました。実は、本当は一番やりたかったグリーンカードの問題について、竹下大蔵大臣が生み出しておいて、それを直ちに里子に三年間も出すというような、こういうあり方について私は大変問題があると思いますので、そのこともお伺いしたいと思いますし、インフレ利得が入っております土地というもの、これについての再評価、こういったところから財源が出るのではないかという具体的、建設的な提案もしたいのでございますけれども、時間があと十分になってしまいましたので、予算の地域配分の公平性について若干お伺いをしておきたいのであります。  「新潟県は全国の平均成長率の倍ぐらいはこれから十年間は確保できる。なぜかといえば、公共投資が集中している。新幹線が終れば北陸高速道路、関越高速道路、電源開発、新潟県にはずっと公共投資がやってくる」「私がね、大臣になった時は新潟県には国道は四本だけ。それが今や二十四本。道路や橋は県や市だけの力じゃできない。」これは田中総理が最近地元へ帰って述べられている言葉でございます。  実は、この委員会に四人か五人、いまは四人ですが、新潟県の方がいらっしゃるので少し言いにくいのでございますけれども、人口十七万の長岡市に昭和五十三年に国がつぎ込んだ公共事業が、約七百億という大変膨大な額になっているわけでございます。それで私も、自治省がつくっております行政投資実績という一番新しい五十五年度のものを見てみたわけでございます。そうすると、五十五年度は、目的別の県民一人当たりの行政経費というのは新潟県が一番でございます。指数にしますと、平均値一〇〇に対して一六一という、県民一人当たり一番ですよ。二番が北海道の一五八ということになっている。  前をずっと見てまいりますと、五十四年が第二位、五十三年が第二位、五十二年が六位、五十一年が七位、五十年が十四位、四十九年が同率の十七位、それから四十八年が十六位、四十七年が同率の十四位、四十六年が同率の十三位、四十五年が同率の五位であります。四十四年が四位、四十三年が四位であります。ただし、これは統計自体が、四十九年以前は専売公社、電電公社が入っていないのです。四十九年度から専売公社、電電公社が入りまして、それから五十年以降には国鉄あるいは鉄建公団のものが入っているということでございまして、その辺を少し精査しないといかぬのでございますが、いまの表を見て私は非常におもしろいなと思ったわけですね。  後藤田さん、にこにこしなくても。おもしろいなと思いましたのは、田中さんが幹事長時代の四十六年くらいまでは大変高位にあるんですね。そして、その後一年通産大臣やられておりますが、通産大臣、総理のころはあんまり地元へ落とさなくても人気が高かったせいか、いま申しましたように十三位とか十四位とか十六位ということになっているんです。それから、五十一年の七月二十七日に逮捕されますが、それ以降は七位、六位、二位、二位、一位、こういうふうにぐっと上がってくるんですね。ただし、いま申しましたように、国鉄あるいは鉄建公団あるいは専売公社、電電公社、こういったものを入れますと、少しどういうふうに変わってくるかということはございますけれども、いずれにいたしましても、田中さん自身が言っているように、新潟県は行政投資が大変多いんですね。都道府県別に見ますと、新潟は一人当たり投資されている額が三十八万三千七百二十六円であります。  一体、税金はどれだけ納めているかといいますと、これはなかなかむずかしくて県別にちょっと出にくいのであります。たとえば東京に本社があって支社が新潟県にあるものを一体どういうふうに入れるかというのはなかなかちょっとむずかしい話でございますので、それは出にくいのでございますが、全国平均をしてみまして五十五年は租税負担額がどのくらいであったかと出しますと、国民一人当たりの租税負担額は三十七万八千三百二十一円であります。新潟県の方に聞いてみますと、新潟県は租税を納めている順番が三十二番とか、大変下の方でございますから、この平均値より少ないのでありましょう。いわば国民一人当たりの租税の負担額、これは恐らく国も地方も全部含めてだと思いますが、三十七万八千三百二十一円でありますが、新潟県に投下された行政投資一人当たりは三十八万三千七百二十六円と、いわば全国平均の租税負担の額よりもこの新潟県に投下をされました公共事業、行政投資というのは多いわけであります。  また、国と県と市町村ということでどんなふうに負担をしているかと見ますと、経費負担別の行政投資額を見ますと、国が四九・三%、ざっと半分であります。都道府県が二〇・四、市町村費が三〇・四、こういうことになっておるのでございますが、新潟県は、五十五年だけとりますと国が五九・九、ざっと六〇%、一〇%高いのですね。伴いまして、県費、市町村の割合は、県費が一八・四、市町村が二一・七。これまた四十三年くらいからずっと見ますと、それはそれなりの一定の方向があるのでございますが、時間がございませんからこれについては触れません。  こういうふうに見てまいりますと、確かに県の情勢によっては、島が多いところ、あるいは山が多いところ、あるいは都会で過密化しているがゆえにいろいろな施策をしなければいかぬところ、おくれております下水道をつくらなければいかぬところ、いろいろ県によりましては特徴があるわけでございますから、そこに投下されますいわゆる広い意味での公共事業、これは一概に全国平均みんな一律でなければいかぬということは私は申しません。申しませんけれども、田中総理自身がそう述べ、あるいは自治省がつくったそういう資料でも、最近はとみに新潟県に投下されている行政投資というのは大変多い。これは私のところは、私は愛知県出身でございますが、愛知県はずっと下の方だから別にひがんで言うわけではございませんが、やはり少し何かこれは、関係の建設省、運輸省、厚生省、田中さんに弱いんじゃないでしょうかね。だから、田中さんのところの新潟県にはずっとふえてしまうのではないかという気がして、一納税者といたしましてはやはり、何も私は全く一律でなければいかぬと言っているわけじゃないですよ。そんなことではございませんが、やはりこれは少しアンバランスじゃないかと思うのでございます。  たまたまというのか、どういうわけか建設大臣田中派、それから厚生大臣も田中派、それから運輸大臣は違うということでございますが、いやもう別に田中さんから言われたのではなくて、結果的にこういうふうになっただけなんだということなら納税者は納得すると思いますが、時間がありませんので、簡単に一言だけ御三人より答弁をいただきたいと思います。
  249. 内海英男

    ○内海国務大臣 御指摘でございますから、お答え申し上げます。  昭和五十五年度の自治省の発表を基準にしておっしゃられたので、新幹線のピークのときの数字が入っておると思います。建設省関係だけで申し上げますと、五十六年度では、新潟県は全国で一人当たりの事業費は十番目でございます。五十七年度につきましても十番目でございます。これは一番あれしておるところが、五十六年度では島根県、その次が高知県、福井県、鳥取県、沖縄県、こういった順番でございます。したがいまして、新潟県は十番目ということでございますから、そう御指摘のようなことではないということでございます。
  250. 林義郎

    ○林国務大臣 佐藤議員にお答え申し上げます。  突然の御質問でございますので数字等は持っておりませんが、私の方は、厚生行政は全国にいろいろな福祉施設その他がございますから、できるだけ各地の御要望に沿うようにやっておりまして、特に新潟県どうだということは考えておりません。
  251. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 運輸省関係、特に新潟県だからといって特別に見ているわけじゃありません。ただ、考えられることは、新幹線は地元負担がありませんから、そういうものが大量に計算されているのじゃなかろうか、こう思っております。
  252. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 私の省のまとめた統計数字をおっしゃいましたから、数字だけちょっと申し上げておきます。  五十五年度の都道府県別の行政投資額は、総投資額で言いますと、新潟県は十番であります。上の方から言いますと、東京、北海道、埼玉、千葉、神奈川、愛知、大阪、兵庫、福岡、こうなっております。ですから、いま申し上げたような県の次で、十番目ならそう新潟は高くはないのではないか、こう思います。それから、この十番目というのは、四十五年から調べてみますとほとんど十番か十一番でございまして、総投資額におきましては順位はほとんど変わっておりません。  一人当たりの投資額になりますと、これは人口の少ないところほど一人当たりが高くなるという傾向がございまして、従来のものを調べてみますと、四十七年から五十年までは福井県が一番であります。今度は、五十一年から五十三年までは高知県が一番であります。というようなことでございまして、この辺になってまいりますと、新潟が一人当たりどうして高くなってきたのか。人口で言いますと新潟は十四番ということもありまして、いま運輸大臣からもおっしゃいましたが、大型プロジェクトが来るとやはり上がる。これは府県別にどうも分けておるようでございますから、そういう傾向があるんじゃないだろうか。そうしますと、たとえば新幹線とかあるいは高速道路というような大型プロジェクトが自分の県内に行われるときにはやはり総投資額は非常に上がる、こういう傾向になっております。
  253. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ですから、私は総投資額で申し上げなかったのです。それは北海道とか過密の東京とか、そういうところは絶対多いですよ。愛知県は大県ですから、衆議院の選挙区では六つまである大県ですからね、それは総投資額で言えば多いんですよ。だから私は、一人当たりの投資額ということで、お互いに税金を納めるんだから、まあ余りバランスが崩れないようにということで、一人当たりということでお伺いしたので、自治大臣はその辺を巧みに言われたわけです。  最後に、時間が来てしまったのであれなんですが、ちょっと総理一つだけお伺いしておかなければいかぬのは、私も実は国会議員になってからずっと選挙制度の問題をやってきておるわけであります。それは、選挙制度というのは議会制度日本民主主義を支える非常に重要な要素だからと思うのでございますが、いまとかく衆参ダブル選挙ということが言われておるわけですね。  前回、ほぼ三年前にあったわけでございますが、これについてその後いろいろとやはり問題が出てきて、問題があると申しますのは、衆参ダブルでまたまたやるんだったら、参議院要らないじゃないか。そんな同じ時期に民意を問うのだったら、二院制自体が崩壊をしていくのではないか。あるいは、同時に民意を問うということは、有権者にとりましても大変大きな負担になる。本来衆議院というのは、非常に微妙な短期間の民意の変化というものにこたえているので、そのために解散があるのだ、参議院の方は余りそういう短期間のものじゃなくて、より安定的に継続的に民意を問うのが参議院の定期的な選挙だということからいって、ダブル選挙というのは、長い目で見て日本議会制度の二院制というたてまえからいっておかしいのではないかという意見がございます。  憲法の五十四条との関係で、参議院の議員の半分が選挙をやっているときに緊急事態が起こったとき、一体緊急集会というものができるのだろうかという疑問も出てまいります。ただ、これについては佐藤達夫元法制局長官が、いや、参議院というのは三分の一議員がおれば会議ができることに五十六条でなっているので、したがって、それは成立しているからいいのだと言われているということもございますが、いずれにしろ私は、衆参ダブルという同時期に民意を問うということは、長い目で見ればこれは参議院の、二院制の持つ意味というものをなくすことになってくるのじゃないだろうかと思うわけでございます。  これは総理の大権の一つでございますし、公定歩合の問題と解散の問題はうそをついていいことになっておりますので、やる、やらないの問題は私お伺いしませんが、やはりダブル選挙が二回、三回と続いてくるということは、お互いに議会人として慎まなければいかぬことではないかと私は思いますが、最後に総理のお考えをお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 衆議院の解散は考えておりません。(佐藤(観)委員「いやいや、解散があるないの問題ではなくて」と呼ぶ)したがって、ダブル選挙考えておらないのであります。
  255. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 終わります。
  256. 久野忠治

    久野委員長 この際、沢田広君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。沢田広君。
  257. 沢田広

    ○沢田委員 大変遅くなって、それぞれ関係者御苦労さまであります。しかし、これは私の責任ではありませんので、念のため申し添えておきたいと思います。  最初に、日銀の総裁においでをいただいておりますからお伺いをしておきたいと思うのであります。もう時間もたっておりますし……。  今日の世界情勢、経済情勢も、それぞれECの諸国も失業に悩み、あるいは経済成長率にも悩み、あるいはまた物価、インフレにも悩んでおる、そういう状況であるし、また、円相場もきわめて流動的でありまして、言うならば不安定要素が非常に高い。一部には、これはこれからの財政再建とも関連いたしますが、インフレ待望論みたいなものもなくはないようでありまして、日銀の総裁としても、その点はいろいろな角度から意見が述べられているのだろうと思うのであります。  第一点は、この公定歩合について、いまの財政状況あるいは現在の景気の動向、そういうものの立場に立って、公定歩合に対するどういう御理解なり認識をお持ちになっておられるか、その点をお聞かせをいただきたい。  また、五十八年度予算、非常に国民には耐乏生活を強いるという結果になっているわけでありますが、また、五十八年度の経済成長等に対する見通しとしてもどのように御理解なさっておられるか、願わくはあわせてお答えいただければ幸いと存じます。
  258. 前川春雄

    ○前川参考人 公定歩合の問題についてお尋ねがございました。  いまの景気の状況は、総体として見ますると停滞傾向が続いておる。若干強まっておるかなという感じすらするわけでございます。世界同時不況というふうに言われておりまするけれども、海外の不況の影響日本の輸出の伸びを非常に制約しておるということが一つの大きな要素であろうと思います。また、貿易摩擦等の問題もございまするのでなかなか輸出を伸ばせないということが、限界的には需要を制約する要因になっておるというふうに思います。国内の方の内需も同様でございまして、余りぱっとしたものはいまのところないということでございます。  一方、いまお話もございましたが、インフレ率の方は、日本は物価が非常に安定しておりまするけれども、海外の状況も、さしものインフレもだんだんおさまってきておるという状況でございます。いまの景気の状況、あるいはいま申し上げました物価の状況、あるいは金融面から申しますると、金融の量的な面、マネーサプライの状況などから見ますると、まあ金融政策において機動的にこれを考えるということは、一応考える余地があるというふうに思います。  しかしながら、一番の問題は、通貨価値の対外的な価値、いわゆる円相場であります。円相場は昨年大変大きな変動をいたしまして、これが国内の経済にもいろいろ悪い影響を与えたわけでございます。昨年の十一月にはついに二百七十八円の円安まで参りましたけれども、幸いその後この円安の修正が続いておるわけでございます。ただ、これが今後どういうふうに動きまするか、最近の状態を見ますると、一ころかなり円高の方に振れましたけれども、また円安になっておるということでございまして、国内の物価に対する将来への危惧ということから申しましても、あるいは円安に余り振れますると、これが貿易摩擦をさらに激化するというおそれもございまするので、公定歩合の問題というのは、そういういろいろの要素を総合的に判断いたしまして、機動的に対処していかなければいけない問題ではないかというふうに考えております。  これからの経済の見通しを予算に関連してどういうふうに見ておるかという御質問がございました。  五十八年度、なかなか厳しい状態が続くであろうというふうに思います。政府の見通し三・四%の成長というのも、成長が高いことはもちろん望ましいわけでございまするけれども、まだ年度も始まっておりませんので、なかなか年度を通じての予想をいま立てることは困難であります。願わくはこの成長が実現できることが望ましいと思いまするけれども、海外の影響というものを非常に強く受ける最近の日本の経済でございまするので、必ずしも手放しでこの成長が実現できるというふうには思いません。いろいろ努力を要するところではないかというふうに考えております。
  259. 沢田広

    ○沢田委員 大変予定の時間より遅くなっておいでいただきましたから、また機会を改めまして細かい点質問をさせていただきますが、きょうは、あとは大臣の方に聞きまするから、どうもありがとうございました。  そこで、中曽根総理にお伺いいたしますが、きょうまでいろいろな問題が出てきておりますけれども、主として防衛問題、この予算委員会を通じてそれが一番大きい材料になっているわけです。  そこで、お伺いするのでありますが、七カ年計画、これは経済企画庁の方でありますが、これは放棄をしたと解釈してよろしいのでありますか。改めて審議会の方に出しているという話もありますが、一応前の分は白紙に戻った、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  260. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  この点につきましては、中曽根総理からたびたび申し上げたところでございます。五十四年の八月にでき上がりました新七カ年計画は、その後の情勢で大きく変貌せざるを得ないというようなことで、五十七年の七月に再諮問をいたしたところでございます。しかし、十月にあのような五・二%の成長率を三・四%に修正するような大きな変動があったことから、中曽根総理は、このような流動的な情勢のもとで新しい経済の展望と指針をつくるには、もう少し弾力的で、そうして、より長期な観点から見てもらいたい、そのような経済運営の指針をつくっていただきたいということで、先般、一月十三日に、経済審議会に再諮問を――諮問と申しますか、総理からお願いをしていただいたところでございます。これはもうすでに諮問をいたしておりましたけれども、諮問の具体的な説明の中で、このような方向でぜひともお願いしたい、こういうふうに申し上げましたので、このような観点から新しく検討が行われ、答申が行われる、私どもはそのように期待しているところでございます。
  261. 沢田広

    ○沢田委員 七カ年計画は放棄をしたものであるのかどうか。要するに、もう白紙に戻した、こういうふうなものなのかどうか、その点だけイエスかノーか。
  262. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 七カ年計画はもうすでに実態に即しないものといたしまして、新しく五年計画で諮問をしたのが昨年の七月でございます。これをまた新しく、説明の中でございましたけれども、経済運営の指針として、より弾力的なものを求めたところでございます。
  263. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ総理、結果的には、社会主義社会じゃありませんから、完全なる計画経済を日本がいま直ちに実現できるとは私も思っておりません。しかし、あの七カ年計画は、ある意味においては国民に対する公約であった。国民生活水準なり、あるいは住宅なりその他の水準はこうなります、こういう一つの指標を与えたことは間違いがない。ですから、それを白紙にするのに、この間全然、今後向こう三年なり五年であろうと何年であろうと、今年度の予算もそうでありますが、果たして何を目標にどの道を、東海道を歩いているのか中仙道を歩いているのか、あるいは山陰道を歩いているのかわからぬという、そういういわゆる方向性が明確でない。要すれば、国民は何年後にはこういう水準にいろいろな分野にわたってなります、そういう指標が少なくとも出されなければならないのではないか。だから、いま白紙にしてしまって後はない、これは若干ひきょうじゃないかという気がするのでありますが、その点、いかがお考えになっておりますか。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 七カ年計画は、鈴木内閣のときに変更いたしまして、五カ年計画で改めていただいた。それを私のときになりまして、その主文、諮問の主文は変えませんが、説明のところにある五カ年というのをより長期より弾力的、そういうような意味でより長期というふうに改めまして、そして、これこれの社会をつくっていくについてより弾力的より長期でひとつ構想を考えてください、そういう命題は与えておるわけであります。それは具体的には企画庁にお聞き願いたいと思いますが、これこれのことをやっていくために長期的にどういうふうにやったらいいか教えてください、そういう趣旨のことでやっておるわけでございます。
  265. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると、今年度の予算は、その計画の中の手になっているのですか、足になっているのですか、顔になっているのですか。どういう位置づけをしているかということはわれわれに説明できないのですか。
  266. 竹下登

    ○竹下国務大臣 五十八年度編成に当たりましては、もとより当初いわゆるこの経済計画の概案というようなものが念頭に全くなかったわけではございません。しかしながら、総合的な判断から経済計画につきましては、中長期的にこれの展望なり指針なりを御検討願おう、まさに私ども財政当局から見ましても、財政そのものもそれと一体となって中長期的に検討すべきであるという判断の上に立っておりましたので、今日財政の展望、そして、その指針につきましてもそのような考え方に立っておるわけであります。したがって、今年度の予算というものを編成するに当たってまさにそのような考え方になった。したがって、今年度の予算がこれからの経済のいわばスタートに立つものであるとかいうような確定した概念は存在していないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  267. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると、今年度の予算は無性格であり、また無目標である。要するに国民に対してどういう生活の水準、先ほど例に出されました下水道一つ例を挙げましても、これからどういう状況の生活形態になるのか、あるいは雇用関係はどうなっていくのか、そういう指標というものは示されていない。残念ながらこの予算は、その意味においては無性格である、どっちに行くかその意味においては不明である、こういうふうに言われても仕方がないのではないか。この予算をたとえば実現することによって、国民には、あすといいますか何年後といいますか、そのときにはこうなりますといった一つの目標というものを与える義務が政治家としてはあるのじゃなかろうか、その場しのぎで済まされるものではないのだろう、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  268. 竹下登

    ○竹下国務大臣 しかしながら、私どもが念頭に置きましたのは、経済審議会の審議経過報告、すなわち、このお出しいたしました中期試算につきましては、経済審議会の審議経過報告、これの名目成長率なり実質成長率なり、そういうもののいわゆる中間値というものをとって予算審議の手がかりとしてお出ししておるという内容のものでございます。何としましても、中長期のそういう展望なり指針を出していただくにいたしましても、まず財政改革に対する基本的な考え方というものをその前に打ち出すべきであるという考え方のもとに立って、これまた配付申し上げておりますところの基本的な考え方というものがその位置づけの根本に存在しておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  269. 沢田広

    ○沢田委員 今年度の分はこの説明書の中に書いてありますからわかります。しかし、結果的には、いい悪いは別として、将来に対する展望というものに対してはきわめてあいまいな性格しか持っていないというふうにこれは断ぜざるを得ないのでありまして、きわめてその点は遺憾だと思っております。  若干話を戻しまして、総理、いままで言われているように、防衛問題が、アメリカに行ってきたり韓国に行ってきたりして、この予算委員会の主要な議題になっている。簡単な質問なんでありますが、軍事経済といわゆる平和経済、もっとわかりやすく言えば大砲とバター、これは両立するものとお考えですか、いかがでしょうか。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の場合は、大砲の比率というのは非常に少ないわけです。GNP比にいたしましても一%にもいっていないわけです。金額にしても防衛費が二兆七千億円くらいで、社会保障関係は九兆を超しているだろうと思います。そういうわけで、バター、バター、バター、それから大砲、そういうくらいの比重ですから、アメリカやソ連経済とはまるきり違った経済でございます。
  271. 沢田広

    ○沢田委員 いや、いわゆる両立するかしないかという設問ですから、たとえば、いまは、両立するというお考えで述べられたのだと思うのであります。  しかし、いまは一%という枠がありますが、これからはどうか。実際には現在の防衛庁が持っている財産は十何兆に及ぶ財産になるわけですね。まさに相当なものを持っているわけでありますが、そういう条件の中において、果たしてこれが両立をしていくのか。あえて言わなくてもわかると思うのですが、兵器産業とかあるいは軍備というのは、化け物みたいにどんどんどんどんふくれ上がっていくものでありますし、科学が進歩すれば前の機械では役に立たない、また新しい機械、こういうことになっていくのが必然的な結果であります。でありますから、必ずこれに対しては無尽蔵というか、無制限なる費用の要請を必要とする。そういうようなものがいわゆる武器なりあるいは軍備というものの性格だと思うのですね。ですから、ある一定のところで、この戦車でいいや、この艦船でいいやという歯どめがきかない。相手がもっと厚いものができればもっと厚くしなくてはいけない。あるいはもっと遠くに飛ぶものができれば、もっと遠くに飛ぶものがつくられなければならぬ。そういう一つの必然性を持っているわけです。そういうことがどれだけ国民生活を圧迫するかということの比重の問題だと思うのですね。ですから、その意味において両立するかどうか、基本的な考えとしてもう一回お伺いをいたしたいと思います。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん両立し得るものであると思います。
  273. 沢田広

    ○沢田委員 これは両立しないということを私は説明をしたわけなんでありまして、パイは一つしかないのでありますから、そのパイの中から一方に支出が多くなれば、一方のパイは必ず少なくなる。これはいやおうなしにそのことは必然なんでありますので、その点は両立すると考えていられる総理がこれは少し間違っているのではないか。たとえば今年度の予算の中でもそういうことが言えると思うのです。これは防衛費がふくれ上がれば何かが切られる。これは限りあるパイの分け方ですから、その意味においてやはり基本的には両立をしない。しかし、当面、総理の言から言えば、そのことが必要最小限度の要件である、その分のマイナスは国民の犠牲としてがまんしてもらうのだ、こういう論理じゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛費というものをどういうふうに見るかという観念からもくる問題じゃないかと思います。防衛費というものを全然要らないものである、ゼロでいいものである、そういうふうにお考えになる発想からすれば両立しないというものになると思いますが、防衛費も相対的にある程度は必要である、そういう考えからすれば、そのやり方いかんによっては両立し得るものであると考えます。
  275. 沢田広

    ○沢田委員 では、一歩譲って、ある程度は許されると仮定をした場合に、チェック機関というものがなければならぬ。シビリアンコントロールという言葉がありますが――それはいま自民党が絶対多数であります。ですから、要するに、それの抑止的な勢力は野党がいま担っていると思うのですね。ですから、もし今後そういうことの発想を考えるならば必ず野党と合意をする線、絶対反対とかなんとかいろいろあるでしょうけれども、とにかく野党とある程度合意をする線において抑止をしていく。そういうことがやはり国会運営なり国民に対する責任を果たすという意味において必要な要件じゃなかろうか。それがないといわゆる一つのごり押しみたいなかっこうで多数で押し切ったりなんかしていく、言うならば暴走をする危険性を持ってくる。ですから、何かの抑止力が必要だとすれば、やはり国会の野党の意見を十分参酌をしていく、そういう姿勢がどうしてもこの防衛の問題には必要になってくる。このように思いますが、いかがでしょうか。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外交、防衛というような問題はできるだけ超党派的にいきたいと思いますし、そういう理想を掲げていきたいと思います。  しかし、現実問題といたしまして、やはり基本政策においてかなり隔たりがある情勢でございますから、その基本的なことが合わない限り、上部構造は接近するということはなかなかむずかしいのではないか。野党の中の一部の野党ではかなり近寄ってきているところもあると思いますが、かなり隔たり過ぎておるところもあるように思いまして、努力はいたしてみてもちょっとむずかしい情勢ではないかと思います。
  277. 沢田広

    ○沢田委員 全然それは違ってしまっているから相手にしないということではない。やはり国民に選ばれた議員であることには変わりはないわけです。ですから、それがどんなに意見が食い違っても、やはりそういう点においてお互いが意見を交換し合っていく。そして、相手の野党の意見もやはり耳を傾けながら、その点を考慮の中に入れていく、そういう姿勢、全然違った立場であってもやはり意見を聞いていく、そういう努力をしていくのが民主主義一つの大前提じゃないか、こういうふうに思うのです。あれはもう全然反対なんだから相手にしないという問答無用はやはりこういう問題には通用しないのじゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は同感でございます。  やはり考えの違う方々の考えをよく虚心坦懐にお聞きして警告と受け取り、あるいは自分たちを反省する資料として受け取るということは大事なことだと思います。
  279. 沢田広

    ○沢田委員 それは要望で、次の問題にいきます。  防衛庁の問題を若干聞きますが、先ほども、これは防衛庁長官なんですが、予算は財政法によれば総理府に一応帰属をしている。それから会計法によっても、これも総理府に帰属する。それから、物品管理法においても総理府に帰属をする。総理府の長官はいかなる立場でこの防衛庁の予算執行及び物品管理並びに会計処理、どういう責任を持って対応しているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  280. 丹羽兵助

    ○丹羽国務大臣 ただいまの御質問にお答えさせていただきます。  総理長官の長は財政総理大臣であり、予算要求につきましては、防衛庁を初め法律で国務大臣をもってその長に充てることと定められている外局は、それぞれ予算要求書を作成し、これを取りまとめ、総理大臣が大蔵大臣に送付することになっております。したがって、総理府総務長官は、総理府設置法により内閣総理大臣を助け、府務を整理することとなっておりますので、各省庁の連絡を十分とらしていただいております。
  281. 沢田広

    ○沢田委員 連絡をするというのではなくて、これはいわゆる財政法の中では衆議院、参議院、会計検査院というふうに各省と分けて、要するに防衛庁は一人前になれない。防衛庁は総理府の一予算部門にしか属していないわけです。物品の管理についても同じであり、会計の処理についてもそのとおりである。これは財政法がそういうふうに定められているわけでありますから、そういうふうに理解して、ただ総理府が連絡機関である、そしてあとは総理大臣がチェックするのだ、そうすると、総理大臣はそういう点についてチェックしておられるのですか。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣法及びその他の法によりまして内閣総理大臣及び各省大臣がその主任の事務について処理する、そういうふうに決められておりまして、予算請求等は内閣総理大臣及び各省大臣ということであります。したがいまして、総理府の外局の庁である環境庁、防衛庁そのほかは内閣総理大臣が行う。しかし、実際は、予算折衝でも原案作成でもみんな各外局の長がやっておりまして、手続的な経由するプロセスとして考えているというのが現状でございます。
  283. 沢田広

    ○沢田委員 結果的には、法体系としてこういう特別庁といいますか各庁と、財政法では「以下各省各庁」と、こう書いてあります。しかし、庁はその中には入っていないのであります。でありますから、略称としては各省各庁と言っておるのでありますが、結果的には総理府が所管をしておるわけであります。総理府は、いま答弁されたように、総理府の長官としての任務を果たしていないで、これは総理大臣の連絡機関です、こういうような答弁なんで、この点は法制局ですか。  法制局長官、どういう位置づけで財政法と物品管理法及び予算編成の中の執行と同時に監督、どのように解釈をされますか。
  284. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これは財政法とか物品管理法の定め以前に、内閣法なり国家行政組織法で決められておりますわが国の行政組織の根本に実はその問題があるわけでございます。と申しますのは、内閣法で「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。」ということになっておりまして、その主任の大臣というのは、国家行政組織法の第五条で、「総理府及び各省の長」ということになっておりますので、そこで、いま御指摘のような国務大臣を長とする総理府の所属の庁の大臣は、ここで言う各省の長には当たらないわけでございます。  じゃ、なぜそういうことにしているかといいますと、これは御承知だと思いますけれども、経済企画庁であるとか、国土庁であるとか、あるいは科学技術庁であるとか、防衛庁であるとか、それぞれ一面において総合調整的な機能を持つ、あるいは縦割り行政となじまない総合的な役所である。そういうところから内閣総理大臣を長とする総理府という総合調整的な役所に属せしめることが適当であるということで、これは総理府の中の外局になっているわけであります。そういう関係で、それを受けて財政法なり物品管理法がそのまま総理大臣及び各省の大臣というふうに押さえているものですから、そこで、どうしても内閣総理大臣が頭になる、こういうことになっているわけです。  ただ、現実の事務としては、先ほど総理も言われましたように、実際の予算要求などはそれぞれ防衛庁なり科学技術庁で、実際上大蔵省との折衝その他実質的な事務は処理しておりますから、これは実際上は差し支えないと思いますが、先ほど最初に申し上げたようなわが内閣法なり国家行政組織法のたてまえから言うと、形の上では直接予算を出すということができない、こういうことになるわけでございます。
  285. 沢田広

    ○沢田委員 ですから、各省庁をつくる場合には、財政法もあわせて――私は財政法の方が根拠法規になると思っておりますね。だから財政法も、もし各省庁を独立させるならば、そのときには財政法の中にちゃんと含めて別個に予算建てをするというのがやはり適切な対策であったので、財政法までいじるのはおっくうがって、結果的には雨後のタケノコのごとく各庁ができた。だから、長官もこじつけみたいな解釈はしないで、本来はそうすべきであった。それを一応便宜的に財政法の中に含めさせている、そのように私は解釈しますが、まあいいです。  これは、だれが答弁するのかわかりませんが、五十六年度の決算に、一兆円の用品を購入しております。一兆一千七百四十八億購入をしております。ところが、九千九十三億、これは減額しているのであります。これはどこの企業に行ってもそうでありますけれども、一兆円の物品購入をして、やや一兆円の物品減をやっておる、こんな形が通るかどうか。  中を見ますと、車両などは一万一千二百五十二台買って九千六百八十四台をぼっこしているのですよね。それから、防衛用武器も九千百六十一買って七千九百三十七ぼっこしている。その次には、防衛用電気通信機器の二万五百四十三を買って一万三千八百四十一をこれもぼっこしているのでしょう。それから、防衛用航空機用機器は二万一千八百三十五増備して一万九千七百五十一台いわゆる減額にしている。減額というが減損している。そういう状況で、自動車も一台三百十七万くらいになるのですね。それから、防衛用武器も千九百十六万くらいになる。  こういう形において、これをどういうふうに説明されるのか。五十六年だけとりあえずお伺いしますが、こういうのは常識では考えられない増減なんであります。防衛庁長官、知っていたらお答えください。
  286. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 この問題は事実関係でございますので、政府委員から答弁いたさせます。
  287. 木下博生

    木下政府委員 五十六年度の物品増減及び現在額報告書には、いま先生がおっしゃいましたような数字が上がっておるわけでございますが、防衛庁の場合に増額または減額が非常に多い理由は、防衛用の武器等につきまして、補給処等から部隊みたいなものに物を移すわけでございます。そういうようなときには、ある物品管理官から他の物品管理官に物をかえるということで、片方で増になり、片方で減になるというような形で運用しておりますために、防衛庁の関係では非常に数が多くなっているわけでございまして、分任物品管理官を合わせまして百六十名ぐらいおりますので、それらの間で物が動けば、片っ方で増になり、片っ方で減になるということでございます。
  288. 沢田広

    ○沢田委員 結果的に防衛本庁は一つでしょう。その内部の移動がどうして増減になって五十六年度末現在が差し引き計算されるのですか。差し引き計算をされないで、当然それならば前の数字が出てくるはずじゃないですか。片っ方のところへ行って、片っ方へ転移したのならば、これは物品転換ですから、総合計は少なくともふえていかなければおかしいでしょう。
  289. 木下博生

    木下政府委員 確かに物品増減及び現在額報告書の分類は防衛本庁となっておりますけれども、防衛庁及び各自衛隊全部含んでおりまして、私さっきちょっと御説明しましたとき、物品管理官の数をちょっと間違えましたので、訂正させていただきますが、物品管理官という名前がついておりますのは、それぞれの機関の幕僚長、それから分任物品管理官は七百五十七人おりまして、それらの間で物を移動しますときに、規定上片方で増で片方で減という形になりますために、こういうようなことになっているわけでございます。
  290. 沢田広

    ○沢田委員 結果は累計が増減されているのはどういう意味だと言うのです。だったら、プラスされなければならないでしょう、防衛庁本庁としてはちっとも変わっていないわけですから。
  291. 木下博生

    木下政府委員 防衛庁全体として購入しておりますものは毎年少しずつふえていくわけでございますので、購入しましてふえたものは増の中にも入っておりますし、それから、ある物品管理官から他の物品管理官へ移るものでも増で入ってまいります。それから、かわっていったもとの物品管理官の方からは減というかっこうになりますので、全体としては毎年少しずつふえていくわけでございます。
  292. 沢田広

    ○沢田委員 その五十六年度末現在が増減をしてしまうというのはおかしいじゃないかという質問なんですよ。それは減ずる理由にならないでしょう。結果的には増と減をした、プラス・マイナスをした分だけ足しているというのはおかしいでしょうということを言っているのですよ。それだったら、同じ防衛庁本庁にあるんだから両方が合計の中に出てこなければおかしいでしょう。
  293. 木下博生

    木下政府委員 書き込む規定がちゃんとできておりまして、それに基づいて書き込みますとさような数字になるわけでございますが、その数字についてちょっと調べまして、後で御説明させていただきたいと思います。
  294. 沢田広

    ○沢田委員 いわゆる解釈がいいかげんな解釈で、庁内に物が移動したから増減するなんて、そんなばかなことは日本の国じゅうの常識の中で通らないですよ。しかも、合計は五十五年度末が一兆八百六十七億になっていますが、そして片っ方の五十六年度末ではその差額しか増えていない、こういう計算をする増減だなんていうことはあり得べきではない。だから、これをずっと計算していきますと、解釈の内容はこれからだと言うから、一歩譲ってやって時間を与えて正確な回答をしてもらいますが、そんな説明で納得できる内容ではない。わかったのなら答えてください。
  295. 木下博生

    木下政府委員 五十六年度の増の中には、先ほど申し上げましたように、新規に購入しました分と、移しかえたために移しかえを受けた方の増の分が入っております。それから減の方は、移しかえたために減った方の分任物品管理官の数字が入っているわけでございます。それにごく若干使用廃止になって落ちたものも入っておりまして、その差し引きを差し引きとして出しておりまして、五十六年度間の増減では、増は一兆一千七百四十八億、それから減は九千九十四億、差し引きしまして二千六百五十四億が差し引きの数字ということになるわけでございます。
  296. 沢田広

    ○沢田委員 昭和五十二年度の残額は、五千八百六十五億が五十一年度末現在だったのですよ、それで、昭和五十二年度末からずっと累積で増、減はいわゆる滅却すべきものが正規の手続で若干処理をされていると仮定しても、合計しますと、これは飛行機の方も同じなのでありますが、合わせますと八兆二百六十一億になる。だから、同じこの防衛庁の中での転移を、国会へ出す資料として防衛本庁の中の移動を増減で出してくるなんて、そんなあほうな計算なんというものを国会へ出してくるなんて、これはあり得ないはずですよ。それは、防衛本庁から出てほかへ行ったのなら減でもいいですよ。しかし、防衛本庁の所管の中にあるものを減として出してくるというのは常識外ですよ。これは訂正して出してください。
  297. 久野忠治

    久野委員長 木下装備局長。正確にわかりやすく答えてください。
  298. 木下博生

    木下政府委員 先ほど申し上げました記入の仕方は、昭和四十年四月六日、大蔵省主計局長から各省各庁の会計課長に出されておりまして、その中で四項としまして、「前号の場合において、管理換に係る物品については、当該物品の管理換を受ける物品管理官の管理換についての管理行為が行われたときに、当該物品を管理換する物品管理行為が行われたものとみなす」ということになっておりまして、一つの物品管理官から他の物品管理官へ管理がえをしましたときにはそのように書けということになっておりますので、そういう数字になっております。したがいまして、全体としての働きを見ていただきますのによろしい数字は、むしろ差し引きの数字で見ていただいた方がよろしいかと思います。
  299. 沢田広

    ○沢田委員 いずれにしても飛行機なり艦船などについて考えてみました場合には、それはどこへ移動したか、その内容をわれわれはいま知ろうとしているわけではない。現在物品がどういう状態になっているかということの確認をわれわれはするわけで、物品増減及び現在額報告書、その中で、防衛本庁として、防衛用品として総括表が書いてあるわけです。だとすれば、中でどう移動しようと、防衛本庁防衛用品としての欄は少なくとも一本で出てこなければならないはずなんですね。実際に壊れたものとか破損したものとかは減で結構ですが、その内部の移動、それは手続上の問題であり、国会へ出してくる筋のものではないでしょう。それこそ総務長官へ出したり、総理大臣に出したりすべき性格のものなので、庁内の処理の問題なんだ。国会へ出してくるものは少なくともその結果を出してくるのが筋じゃないですか。
  300. 山口光秀

    山口(光)政府委員 突然のお尋ねでございますが、物品管理法を所管しております立場で申し上げます。  実はお尋ねのとおりでございまして、この表は五十五年度末現在の高と、それから五十六年度末現在の高と、数量、価格をそれぞれお示ししてあるわけでございます。防衛庁につきましては、防衛本庁と防衛施設庁と二つに分かれておりますから、したがって各幕に属する現場も防衛本庁に含まれる、こうお考えいただいていいと思うのです。  そこで、五十五年度末現在高と五十六年度末現在高との間ではどう増減があったかということが示されているわけでございます、途中の経過として。そこで、差し引きこれだけ増減があったという表になっておるわけですが、それをさらに細かく増の要素と減の要素と二欄設けて丁寧に御説明申し上げておる、こういうわけでございます。
  301. 沢田広

    ○沢田委員 防衛本庁が、ちっともふえたものでないものをふえたごとくあらわしている、こういうことですね。減ったものでないものを減ったごとくあらわしている。結果的には、中間は小計なんでしょうけれども、結果的に一兆八百六十七億。だから、五十六年度から言えば、増が一兆一千七百四十八億あった、減が九千九十三億あった、これは何をあらわすかというと、中でぐるぐる回しているのです。公務員じゃないけれども、あっちの書類をこっちへやって、ああ忙しい、ああ忙しいと言っているのと同じなのだ、これは。わざわざよけいなものを足してみて、そして、むだな計算をやっているという以外の何物でもない。そして、結果的には一兆三千七百二十一億になりました。そうすると、合わせれば一兆八百六十七億から一兆三千七百二十二億の差額、大体三千億ぐらいがこの年度ふえた増になる。それならそれの増としてあらわすべきものだと思うんですね。防衛本庁がこう移動をしているのですから、差し引き計算して減がこれだけあると、減の中身は何だということになりますよ。あなたの説明は説明にならない。これは何も防衛庁だけじゃないのだ。全部がそういうやり方で出している。いままで国会議員の人も皆見ていたのだろうけれども、これはずいぶんふやしてずいぶん減らしているなと。ところが、わりあいにほかにはない。ほかの各省全部見たけれども、それほどない。防衛庁が一番多い。  だから、その中で、では実際に減損したものは何なんだ、それはどこに行っているのかわからない。実際に廃棄処分にしたものは幾らあるのか、言えるというなら言ってみてください、この差額の中で。
  302. 木下博生

    木下政府委員 国の機関の場合には、それぞれの機関で物を移動することがあるわけでございますので、会計帳簿みたいに、片方で出て片方で入るというようなことになることもある程度やむを得ないかと思います。  防衛庁の場合には、ここに挙げておりますのは機械及び器具の三百万円以上のものでございます。外されておりますのは消耗品が外されておりますし、航空機や艦船も国有財産ということで外されております。したがいまして、たとえば艦船や航空機に機械を載せてしまいますと、今度は国有財産の方に行ってしまう。そうしまして、国有財産は国有財産の方の増減報告というものがありまして、そちらの方に載ってくるということでございますので……(「飛んでいった弾はどこへいくのだ」と呼ぶ者あり)弾は消耗品でございますから最初から外れているわけでございますが、そういうようなことでございまして、差し引きの部分の数字を見ていただければよろしいかと思うわけでございます。
  303. 沢田広

    ○沢田委員 ちっとも答弁になっていないのですよ。委員長だって、いまの、わからないでしょう。どこに具体的な減損がどれだけあったのかというのが、この表の中にどこに出ているのかということを聞いているのです。どこにも出ていないじゃないですか。移動した数だけを挙げているだけであって、実際の、たとえば車両なら車両は何減繊損した、これは全然出ていないじゃないですか。あるいは入っているのかもしれませんよ。しかし、そのことをあらわすのが国会に出す報告なんであって、庁内で移動したものを一々国会に出してきて、これが増になったんです、減になったんですと白々しくそんなことを持ってくるなんというのは、幾ら大蔵省の通達にしたって、それは庁内の扱いの問題だよ。北海道から沖縄へ行ったとか、そんなものは庁内の扱いじゃないですか。日本国じゅうの全体としてどう動いたかということを国会に出すのですよ。それははっきり答弁してください。実際に減損したものは、では何が何台、何が幾ら、それを言ってくださいよ。
  304. 山口光秀

    山口(光)政府委員 防衛庁なら防衛庁の本庁ですね、防衛本庁でどう増減があったか、プラス・マイナスして減とか増とかあったかということはこの表に示されているわけでございます。ただ、その増減のまた内訳を増と減に分けてお示ししてある。それが所管がえも含めた増減という数字であらわされておるのを、もっと細かく所管がえを除いた数字であらわせとかいうお話ではなかろうかと思います。
  305. 沢田広

    ○沢田委員 違う、違う、そんなむずかしいこと言っていない。その防衛本庁の中の移動は問いません。防衛本庁の移動は聞きません。防衛本庁から、いわゆる現在物品として保管をしているもの、管理しているものの増減を報告するのがその義務でしょう。だから、実際に減損、廃棄処分にしたものは、その中の何が幾らで何台なのですか。それを報告するのがこの国会に出す書類の内容じゃないですか。中の移動した報告をわれわれは求めているのではありません。それを言ってください、こう言っているのですよ。
  306. 木下博生

    木下政府委員 物品増減現在額報告書の中に、細かくはいま主計局長の方から御説明があったような形で書いてありますので、その廃棄分は廃棄分としましてまとめました資料を別途つくりまして御説明させていただきたいと思います。  それから、購入の方は、ここで御審議いただいている予算書の中に入っているわけでございます。
  307. 沢田広

    ○沢田委員 では、続いて、その国有財産となっておりまする飛行機、船舶の方も同じなんでありますね。これは増となったものが五十二年度から計算すると三兆一千五百五十四億になる。しかし、これも船なんだから、あっちに行ったりこっちに行ったり、どこに所属するのかこれはわからぬ。きょうは向こうかと思えばきょうはこっちだということになる。そんなものが一々移転して計算されてたんじゃ、これは一隻が五隻にもなったり六隻にもなったりする。だから、結果的にはこれを、不明瞭だから、本当に減損して使わないものは幾つでどれなのか、そういうものをやはりあらわしておいてもらいたい。  あわせて、ここで言うと五十六年度では五十二隻が増になって五十六隻が減になった。これはどこからどこへ移動したのかわからないし、廃船になったのかもわからない。そういう不明瞭なものを、総理大臣、こんな細かいことを言っちゃ悪いけれども、防衛となるとこっちも気がはやるものだから、やはり心配するし、われわれの目の届かないところで何やっているかわからないんだし、金歯も入っちゃうような時代なんだから、そういうようなことでわれわれやはり若干の不信感を持たざるを得ない。そういうためには、これはシビリアンコントロールの実を上げるためには、やはりそういう内容がきちんと点検できる仕組み、そういうものができてなければならぬ。大蔵省だってわけのわからない答弁しているんですよ。ですから、総理府はもちろんこれは答えられないでしょうしぬ。防衛庁長官だってこれはチェックしてないでしょう。実際に何と何が今年度廃棄処分になったかというのは知らないでしょう。鉄砲玉なんというものじゃないですよ、機械ですよ、自動車ですよ、戦車ですよ、飛行機ですよ、そういうものを、では本当に廃棄処分になったのがどうなのかという実情を把握していかなければならぬとわれわれは思うのです。  ですから、その意味においてこれは訂正をしてもらう。これは訂正をしなければおかしいですよ。こういう中の移動を国会へ出してきて、これが増です、これが減です、そういう出し方は少なくとも国会へ出してくる書類としては不適当ですよ。そういうことから言ったならば、これはほかの省も皆同じだ。自分の庁内だけで動いているのを、それを一々増です、減ですなんて、そんな出し方をして国会に出してくるのは、それは至急改めて訂正して出してくださいよ。
  308. 山口光秀

    山口(光)政府委員 先ほど御説明申し上げておりましたところから先を申し上げればよろしいと思うのですが、その内訳を示せというお話だと思うのです。ですから、そういう内訳につきましては御要求に応じまして御説明するようにいたします。
  309. 沢田広

    ○沢田委員 これは基本的に改めるものは改めてもらって、一歩譲って、その内訳だけは後で提出をしていただきたいと思います。  では、続いて次の問題に入ります。  アングラマネー、こういうふうに一応言われている、世間でも盛んに言われているわけであります。また、現実問題として、地下経済の跳梁という言はによってもあらわれているわけであります。現在までのところは警察の方の届け出、通告によって、大蔵省徴税がそれから乗り出すというようなことが現実的な対応であって、大蔵省自身としても、これはなかなかつかみにくい。やはり警察がある程度真剣に取り組んでいかない限り、この中身というものは、のみ行為がどれぐらいあるか、あるいは覚せい剤がどれぐらいあるか、あるいはその他の債権取り立ての暴力関係がどのぐらいあるか、あるいは風俗営業等のものがどのぐらいあるか、こういうところがつかみにくい。ですから、関係各省がひとつ一体になって、これで大体九十兆とも言われているし、あるいは三十兆とも言われているし、非常にここはつかみにくい金額なのでありますが、それは課税対象になるだけであっても一兆円や二兆円の減税は十分できる財源になり得るだろうと思うのです。ですから、ちょっと本腰を入れて扱ってもらえばその点は十分可能になるじゃないか、こういうふうに思います。  それで、外国だの何かその他の例も調べてみましたけれども、それぞれ大変苦労はしながらも対応しているようであります。そういうような意味において、これは結局、大蔵省からとりあえずはお伺いしますが、いわゆる関係各省の連絡機関を設置して、警察の通報で上がっている金額は現在では大体四十億から六十億あるというふうに言われているわけでありますが、その意味においてのいわゆるアングラマネー、地下経済に対するメスを改めてここで入れて、そして徴税の方も大変でしょうけれども御苦労いただいて、こういう財政再建の時期でもありますし、また、われわれは減税してもらいたいと願っておりますし、いわゆる適正課税、こういう立場に立ってひとつその機関を設置して対応していただけるかどうか。  どこに答弁していただきますかね。警察関係でありますか、警察関係もそれに力を注いでひとつ大蔵へ連絡をしていただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょう。
  310. 竹下登

    ○竹下国務大臣 このいわゆる地下経済に対する徴税でございます。  そこで、地下経済につきまして統一的な定義はございません。麻薬売買、売春等の非合法な経済活動から、合法、非合法を問わず税務当局の追及を逃れている経済活動を一般的に論ずるものであって、その範囲、規模については必ずしも明確ではない。  そうして、地下経済の規模につきましてはいろいろな議論がございますが、定義や範囲が必ずしも明確でありませんことや、そして推計方法、その結果にもかなりの差異が認められるというようなことで、いま御指摘がありましたが、日本の学者の指摘の中ではあるいはGNPの九・七%、二十三兆とか、あるいは一三%とか、アメリカの場合は少し多いのでありますが、そういうようないろいろな議論があるというふうに承っております。  したがって、この問題は、いま御指摘になりましたとおり把握が非常にむずかしい点がございますけれども、国税当局としてはこれに強い関心を持っておりますし、今後ともこれは警察当局の御協力を得るなどして資料、情報の収集に努めて課税の充実に一層努めなければならぬ。いわゆる非合法な経済活動による所得以外で当局の追及を逃れておる所得、こういうことになりますと、税務申告とこれに対する調査実績から見ますならば、巷間言われるほどにこの把握漏れはないというふうに考えております。  過少申告。を行う不誠実な納税者がおるということは、事実、例もあることでありますので、これからも納税環境の整備、税務調査の充実に一層努力すると同時に、さらに警察当局等の協力を得てこれに対応をしたいというふうに考えております。
  311. 沢田広

    ○沢田委員 山本国家公安委員長、ひとつ正確にお答えをいただきたいし、その意思のあるところをひとつ御披瀝いただきたい。
  312. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 徴税の方は国税庁の所管でございますから、そちらにやっていただくわけでございますが、少なくもいまおっしゃいましたような警察の取り締まり対象となったようなものは、もちろん国税庁の方にも連絡をし協力をしていく。今後とも警察としましても、麻薬などは相当厳重に取り締まらなければならぬ対象でございますから、相当力を入れて取り締まっておるところでございますので、いまのお話のように、今後とも国税当局と協調して、徴税の上において誤りのないようにしていきたい、こう思っております。
  313. 沢田広

    ○沢田委員 関連しまして、これに近い利潤を得ているものに株の取引があります。現在、年五十回、二十万株以下でありますけれども、財政再建までの間これを縮小をして、そして、ある程度の株でもうけたもの、損をしたものの収支報告をさせて、年間でどういうふうになっているかということを把握をしながら、その点の協力を仰ぐ。これも一般国民のいまの生活実態から見れば、株が野放しにされてそれだけ利益を得ている者は得ている、こういうような状況は許されることではないだろうと思います。  そういう意味において、これも賦課条件もありますから、五十回以上、二十万株以上、これ以下は全部無税、こういうことになっているわけでありますので、これを圧縮をしていく方向で検討をしてほしい。いまここで圧縮しろと言ったって、すぐするとは返事しないでしょうから、一歩譲って、これをやはり財政再建期間はもう少し縮小をして、ある程度の収支報告を出してもらう。株で損をする人もいるわけですから、損害は損害として計上して申告制を取り入れる、こういう形でひとつ措置をしてほしい、こういうふうに思いますが、これは大蔵大臣、いかがでしょう。
  314. 竹下登

    ○竹下国務大臣 当委員会等において提案された問題につきましては、それを整理して税制調査会にこれを正式に報告する、その上で御検討をいただくというような手法を従来ともとってきておりますので、ただいまの意見につきましても正確にそれを報告して御検討を仰ぐ、こういうことにいたします。
  315. 沢田広

    ○沢田委員 次に、おとといでありますか、さきおとといでありますか、林業の問題が提起されました。これは農林大臣と総理にお伺いするわけでありますが、お疲れのところどうも恐縮であります。  林業というのは、私は、国土の重要な一つの資源であると同時に、洪水を防止するし、あるいはわれわれの国土を擁護をする、こういうことであって、そこに働く人は、言うならば森林保安官あるいは森林警備員あるいは森林警察官であると思うのでありますね。そういう意味において、これは一回が三十年なり四十年の回転でなければ資金の回収ができないわけですから、資本の回収率から見れば一番率の悪い職業といいますか、そういう実態にあるわけであります。  でありますから、まず第一点としては、そういう認識でこの林業というものを見ていかなければならぬし、われわれはもっと木を植えてもらいたいと思うのです。この間の台風十号や十八号の台風を受けたわれわれ埼玉県の人間としてみれば、これはもっと上流にダムがありあるいは森林が多ければさらにその被害は防がれたのではないか、こういうふうにさえ考えるわけですね。ですから、森林というのはわが日本を守っていく上の、防衛の中の最大の一つの要件である、そういうふうに思います。  その認識はまず農林大臣なり総理に持ってもらいたいという気がするのでありますが、その点に対する見解をまず承りたいと思います。
  316. 金子岩三

    金子国務大臣 御意見のとおりでございます。森林がいかに大事な産業であるか、そして、いま、現況は非常に木材は低落をずっと続けておりますし、輸入がどんどんふえるし、大変悪条件のもとに、特にこういう国有林の経営は行われておるわけでございます。民有林もあわせて、森林というのは本当に行き詰まりを来しておるというような状態でございます。しかし、こういうときにこそやはり政府が誘い水的なものをひとつ出して、そして森林産業に従事しておる方々に活力を与えるというような考え方で取り組んでまいっております。
  317. 沢田広

    ○沢田委員 ちょっと大臣、そのままで恐縮ですが、私は、森林は――警察官は何を生み出しているかと言えば、交通違反で八百億ぐらい違反の金は取っていますよ。だから、森林警察官、森林保安官あるいは森林警備員、そういう者に、歳入を当てにしていくべき性格のものではないだろう、そういう認識を持ってもらわなければ困るということがまず第一点あるわけなのです。その点をひとつお聞かせいただきたい。
  318. 金子岩三

    金子国務大臣 国有林の場合、いわゆる営業収入で人件費を賄い切らないということをおととい私は申し上げましたが、その点の含みを塚本先生やら申されておりましたが、これは経済問題だけで律するわけにいかない。先ほどからお述べになっておりますように、水源の涵養を初め緑を守るために、国土保全のために大変重要な使命を果たしておる森林業でございますから、十分その点は――ただ人件費と売り上げとをにらみ、バランスをとって経営をどうこうということは考えてないのですよ。それはやはり国が持ち出しても森林は守らなければならないという基本的な考え方で国有林は経営しております。
  319. 沢田広

    ○沢田委員 森林の経営については、そういう立場で物を見るという原則がまず一つ必要である。  それから、もし人間を配置する場合には、やはり適正規模というものが必要になってくると思うのです。ぽつっぽつっとあるものを監視すれば、それは相当の人数が必要になるわけですね。ですから、国の政策としてできるだけ買収をしていく、そして、ある一定の規模で対応する人間で管理をする、そういう適正規模形態をとる必要性があると思うのですね。だから、いま国有林がそこにちょこっとあるから、やはりある程度の人間が必要なんです。それが十倍に広がったとしてもほぼ同じ人間で管理できるのですね。いわゆる適正規模というものがあるわけです。一反のたんぼからは三十俵も米はとれないのですよね。やはり八俵なり十俵なりになってしまうわけです。ですから、そういうところに一つの集団化を図っていくというやはり政策構想というものを持たないとどうしても人のむだというものが目立ってくるということになりますから、売る人があればそれを買いながら国有にしていくということが必要なんではないのか、こういうふうに思いますが、その点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  320. 金子岩三

    金子国務大臣 大変御造詣の深い御教示をいただきましたが、いろいろ臨調からの答申がありますし、抜本的に、特に国有林の経営、運営にはひとつ考え方を変えて、新しい政策を打ち出したい、こういうことで取り組んでまいっております。
  321. 沢田広

    ○沢田委員 もう一つは、民間と国営との差別といいますか格差があるわけですが、いわゆる民間の貸出期間、それから金利は、いま言ったように四十年なり三十四、五年で一回転していくわけですから、農林漁業金融公庫にしても十七年か二十年ぐらいですね。市場だってそのくらいになって扱われているわけですし、そういう状況から考えていくと、林業の採算性から言えばもっと長くなければならないわけですね。ですから、そういう長さからいけば、いまのような貸付条件と金利七・三%ですか、そういうようなことであったのでは少し酷である。採算性から見て無理である。ですからこれは、三・五%というのは無理かどうかわかりませんけれども、それくらいな程度の水準でなければいわゆる森林の業としての運営というものは賄え切れない、こういうふうに思います。ですから、直ちに私はそうしろと言っているのではありませんけれども、いわゆる民間との格差だけは少なくとも解消していく考え方、これだけは確保してほしいととりあえず思いますけれども、いかがですか。
  322. 秋山智英

    ○秋山政府委員 事務的な範囲でございますので、私からお答えいたします。  国有林七百五十万へクタールございますが、脊梁山岳地帯の山と下流の採算がとれる山といろいろございますので、私どもやはりそれぞれの森林の最も効率的な運用を考えていかなければならぬということで、これからは経営区分をはっきりいたしまして対処してまいるわけでございますが、と申しましても、奥地の水源林地帯の採算の合わぬところについてはどうするかということにつきましては、ただいま御指摘ございましたが、今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  323. 沢田広

    ○沢田委員 いわゆる民間の貸付条件との格差の解消――私は当面は切るなと言いたい。私はいまの国有林は切るなと言いたいんです、率直に言えば。もっと育てて、もっとざっくばらんな話をすれば、いまは輸入である程度賄っていっても日本の森林というものを最後まで確保していく、これはあくまでも日本一つの大きな財産である。これを乱伐したりなんかしていくことは国土の荒廃につながる。これは中国へ行った人はよくわかるでしょう。毎年四百万本植えてもなおかつあのはげ山が今日続いているわけでありますから、そういう状況を考えてみたときには、やはりその前提としては、民間との格差の解消は眼低限度ひとつ図るべきである。  それから採算は、さっき農林大臣が答弁したんですから、採算のことはあなたが言わなくてもいいんで、警察官が採算のこと答弁する必要がないのと同じなんだから、そういう意味においてひとつ御答弁をお願いします。
  324. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業の経営改善、現在努力しているわけでございますが、高度成長期に国内の木材需要の増大に対処しまして伐採量を相当委託したことも事実でございます。したがいまして、現在の国有林の森林の構造は、奥地の保安林等の制限林と、それから戦後植えましたところの若い人工林というふうな、そういう資源構造になっておりますので、現在の伐採量は一番多い時期に比べますと約六割にダウンしております。したがいまして、私どもは決して全部切るということではございませんが、やはり森林は適正に管理して初めて機能を発揮してくるわけでございますので、禁伐ということはまずいわけでございますので、適正に管理しながら進めてまいるという姿勢で今後ともやってまいりたい、かように考えております。  なお、仕事をするに当たりましては、現在相当の財投資金を使っておりますので、あくまでも効率的にやらなければならぬということも大事でございますので、そういう考え方でこれからも経営改善に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  325. 沢田広

    ○沢田委員 そういう答弁ではないのです。民間との格差をなくすように措置しなさい、こう言っているわけですから、これは大蔵大臣、内容、おわかりでしょう、民間よりも非常な厳しい条件で国有林が運営されておる。期間が短い、そして金利が高い。そういう条件を、せめて民間並みの扱いにしていくという必要性はあるんではないか。これは採算性は度外視するとしても、一応その条件は満たされなければならないのではないか、こういうふうに思いますが、大蔵大臣、ひとつそのように取り計らっていただきたい、こういうふうに思います。
  326. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる民有林と国有林の問題でございますが、民有林というものは、個人個人の所有しておる面積というようなものはまさに多岐多様にわたっております。およそ、本当に民有林としてそれが林業として採算性がとれるとすれば、これは恐らく数百ヘクタールというのが一つの適正規模ではないか。私も森林組合連合会長をしておりますので、そういうことをいささか承知をしておるわけであります。ところが、国有林の場合は、その面積から言いますと、総体の国土面積のうち国有地が二三・何%ありまして、その九〇%が国有林、こういうことです。したがって、大きな面積の中で今日まで完熟したいわゆる独立採算制というものがとり得る環境自体には、ある時期までは私はあったと思うのであります。しかし、そこにいわば乱伐、過伐の問題とは別に、労務関係上の問題等におきまして、元来あるいは民間委託であるべきものが常用のいわば現業の公務員になったとか、そういうような労務管理上の問題からと、また木材価格の値下がり等からいたしまして、経営が従前のように行われなくなったというところに、その補完する立場から財投資金というものが入ったという意味において、その経過からして、民有林に対する国土保全の立場からの融資に対する利子問題と、国有林の経営改善なりまた独立採算制を確保するための意義からこれが入ってきた財政投融資資金の金利とは、私は差があらざるを得ぬではないか、言ってみれば、いまのお尋ねにイエスではないような御答弁をした、こういうことになろうかと思うのであります。
  327. 沢田広

    ○沢田委員 なお、いま直ちに御返事がいただけない分がありますけれども、もし採算性を臨調の答申を受けて追求していくようになるとすれば、先ほどの森林保安官あるいは警備員、こういうような立場に徹すれば別でありますが、そうでなく、もし、そういうものを幾らかでもこの財政再建の間追求するとするならば、そういう貸付条件についても配慮しなければならないのではないかということが私の言わんとしている視点なんであります。ですから、それはもう度外視していいという考え方になって、赤字が出てもしようがないということになって財政再建の対象からは外していきますということになれば、これはどういう貸付条件であろうとそれは問題にはならない。ただ、その赤字が一般会計へ食い込む、こういうことになるだけの話でありますから、その点は問題ないのであります。しかし、ある程度そこで自給自足ですか、自立体制を求めるとするならば、それは民間との格差の解消は必要な要件になるんじゃないか、こういうふうに思いますので、その点は御検討いただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか、大蔵大臣。
  328. 竹下登

    ○竹下国務大臣 それはやはり私が検討すべき課題ではないと思いますので、予算編成、財政投融資等々、その時点においていわゆる国庫大臣として相談をすべき対象でございますので、私から答弁することは差し控えさせていただきたい。
  329. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、昭和五十三年以来財政再建をめどに経営改善を進めておりまして、ただいままでに組織機構の簡素化の問題、要員の適正化の問題、生産性の向上問題等やってまいっておりますが、残念ながら、木材価格の低迷等によりまして現在人件費を業務費で賄えない状況になっているのは事実でございます。したがいまして、私どもは将来に向けまして、森林資源がいずれ将来は非常に重視されるわけでございますが、それまでの間はさらに一層この経営改善に努力してまいらなければならぬという姿勢で今後ともやってまいりたいと思いますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。
  330. 沢田広

    ○沢田委員 では、要望して、次の問題に参りたいと思います。  次に、若干あちこちいくようで悪いのですが、いまはわれわれ都市サイドに住んでいる人間が見た林業の位置づけという立場に多くウエートがあったと思うのであります。今度はまた同じようにその立場から見ると、牛肉の問題あるいはオレンジの問題は、国会挙げて反対という立場で今日来ておりますが、しかし、食べる者の立場から見れば、やはり安い牛肉を食べたい、こういう願望は捨て切れないものがあるわけであります。それがやはり国際の貿易摩擦あるいは国内産業の保護という立場でこの輸入は好ましくない、こういうことで国会の意思として反対の御決定をいただいたわけであります。  そういう時期でありますから、今日畜産事業団が独占企業として存在しているわけでありますが、その中での運営状況を見ると、今日の国民がいま求めているこの情勢の中で、減税もできない、課税最低限も動かない、生活は苦しくなる一方だ、そういう中で、せめてこのためてある牛肉の安売りデーをふやしたり、あるいは庶民が安い肉を食べる条件をつくったり、そのために独占企業として畜産事業団が存在するのだろうと思うが、それが何ら働きもしないし、便々としている。しかも、いまもうかっている鶏卵や豚の方にまでたくさんの補助金が十年一日のごとく出ていっている。こういう点については、もっと消費者に還元してもらっていいのじゃないか。もうけちゃいかぬとは言わない。もうけるのはもうけても結構だが、やはりそれは消費者にも還元されるべき性格のものが含まれているのではないか、こういうふうに私は理解します。  ですから、牛肉の輸入制限は結構でしょう。しかし私は、出しても商品価値からいったら十分太刀打ちはできるのじゃないかという気がするのであります。やはり日本の和牛の方がうまい、そういうふうに庶民は選択されるだろうと思っていますがね。しかし、そのことが選択されない心配があるからこわいのだろうと思っておりますけれども、そういうことはさておいて、ともかく畜産事業団の独占的な企業の中で、もう少し庶民に温かい思いやりのある行政ができないものか。こういう財政再建だ何だといって、人勧も実施しない、今日賃金まで抑えている中で、ぬくぬくと黙って十年一日のごとき行政をやっているという畜産事業団は大いに反省してもらわなければならない、こういうふうに思います。  農林大臣、これは厳しくこの内容に当たって審査をしてもらって、もう少し放出できるものは放出する、そして、こういう厳しい生活条件の中では、せめて肉だけでも庶民の中に、温かい思いやりの政治というならば、そういうものがもう少し週二日なり三日なりの安売りデーができるように、そのくらいな考え方を持つのは大臣として当然じゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  331. 金子岩三

    金子国務大臣 大体牛肉の値段は、第二次オイルショックの後に穀物が非常に値上がりいたしまして、そのえさ高によるいわゆる畜産の生産の停滞があったので、昭和五十三年、四年、暴騰した時代があります。その後は非常に安定した値段でずっと続いております。  それから、事業団の差益を消費者価格の方に補てんすべきじゃないかという御意見でございますが、大体調べてみますと、七〇%はいわゆる畜産の生産基盤の整備の方に回しています。三〇%はやはり末端価格のいわゆる価格補てんをやっているのが現状でございます。
  332. 沢田広

    ○沢田委員 大臣も内容はよく知っておられるのだろうと思いますから、私も畜産局からいろいろ資料をもらったし、説明も聞きました。だから、多くは申し上げません。いまの言いわけみたいなものではない。やはり牛肉を、輸入をとめたらとめたなりに消費者にも還元していくという政治的な配慮が必要である。この考えはいいでしょう、そういうことが必要だということ。そういう考え方が反対だというのならば、もう少しまた内容を詰めていきますがね。それは産業対策だけではない、やはり消費者対策もその中には含まれるのだ、そういう配慮がなかったならば、これはまた話は別になります。
  333. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘のように、国内の牛肉需要は徐々ではございますがふくれておりまして、国内生産を充実させておりますが、やはり輸入は各年必要なものを入れているわけでございます。現に先ほど御指摘のありました五十四年の時点でも、現在とほぼ同じぐらい、十三万四千五百トンという枠づけをいたしておりまして、価格安定帯におさめるための必要な輸入は行うという形で運用をいたしております。  それから、御指摘の差益の使い方でございますが、御承知のように、内外格差がだんだん縮小しておりまして、差益自身のボリュームはだんだん小さくなっておりますけれども、その中で、大臣からお答えしましたように、七割ぐらい、あるいは七割若干超えますものを生産基盤の強化に向けまして、国内生産の牛肉の価格が上がらないようにという施策をやりますと同時に、先生も御承知のような国内における流通の改善、消費者対策というような観点から、御承知の二千三百店余りの指定店を通ずる安売りとか、あるいは最近におきましては国内牛肉をいわば産地から消費地に直接売るための助成事業、そういうような国内価格安定のための施策が約三〇%ぐらいございまして、この両者を併用しながら安定に努めたいと思っております。
  334. 沢田広

    ○沢田委員 行政管理庁長官も、おれのことには関係ないような顔をしていたけれども、ちゃんとあなたの方からも勧告が出ている問題なんですよね。だから、いまのような答弁ではちょっと了解しがたい。その点は、いまの制度をやめろとは言っているわけじゃないし、輸入化をどんどんやれと言っているわけでもないから、もっとそういう範囲内においてそういう対策を講ずるということは必要な要件だ。これは閣内でもぜひ、あなたの言っていることといまの農林大臣の意見が違うのですから、統一をして、やはり一応の政策というものをつくって対応してほしい、こういうふうに思いますが、そういうことでよろしいですか。
  335. 齋藤邦吉

    齋藤国務大臣 畜産事業団に対しまして先般勧告をいたしたわけでございますが、相当その趣旨に沿わないものがあるではないかというようなことで勧告をいたしたわけでございますから、事業団においても、その勧告の趣旨を理解して改善策をとっていただく、こういうふうにお願いしたい、私はさように考えております。
  336. 沢田広

    ○沢田委員 時間がちょっとこれでかかり過ぎました。  国鉄総裁が来ておりますが、国鉄はとにかく悪者の張本人みたいにいままで言われ続けてきているわけですし、政府もやや国鉄が行革の目玉商品だとここでも答弁しているくらいでありまして、国鉄が解決すれば行革はあとはどっちでもいいやといったような雰囲気もなしとしません。総裁も苦労されているのですが、国鉄は公共企業体として、公共性と経営と二またこう薬で、一方では公共性、一方では企業性、こういう二足のわらじを履いて商売がうまくいくはずはないのですよ。どちらか、これもさっきの林業と同じなんですね。公共性に立つなら公共性で完全に通さなければいかぬし、企業性に立つならもっと企業性に徹底して立たなければこれは話にならぬ、こういうふうに思います。だから、そういう意味において、企業性を追求するなら私はまたその道はなきにしもあらずだと思うのであります。  そこで、まず青函トンネルの問題をちょっと聞きますが、この間もちょっとどなたかが触れておられました。青函トンネルを、七千億ぐらいの金をかけて、これから国鉄は受け取るのですか、受け取らないのですか。それで、こんなものを受け取った日には元利合計で二兆四千億もこれから払っていかなくてはならない。三十年で毎年八百億ずつこれは払うわけですね。上越線とその他については触れておられましたから私もあえてそれには触れませんけれども、そういうときにきちっとした協定を政府と結んで、向こう十年なり二十年なり上越線にしてもあるいは東北線にしても当然もう赤字が予想されるわけですから、その分を国鉄が払えるわけないのですから、払えないなら払えないと運転を拒否するなり、そうして民営ででも何でもやってもらっていいじゃないですか、それこそは。  どうせ赤字ならどうにもならないのですから、そんなものを請け負う方が悪いのだ。だから、この赤字分は、精いっぱいやりますけれども、これは政府で負担してもらわなければ困る、こういうふうに割り切って対応しないと、何でもかんでもが、さっきの質問もそう、この間の質問もそうだが、何か職員が悪いのだと。一人一人の職員は何も知りはしませんよ。自分の与えられた仕事を一生懸命やっているだけですよ、時計の歯車みたいなものですから。そういう全体的な理論の場になってきたときには、管理者がよく知らせないとか、あるいはPRが足らないとか、あるいは意識に対する認識が甘いとか、そういうことはもちろんあるでしょう。あるでしょうけれども、経営者としたらばその立場はやはり堅持してもらわなければならぬ。  ですから、どちらにウエートを置くのか。私は、夜中の電車なんかはもっと早くやめろと言っている。酔っぱらいのための電車じゃないと言う。それぐらい酔えるほど飲める優雅な人は、タクシーででもハイヤーででも帰ったらいい。あるいはビジネスホテルへ泊まってもいいじゃないですか。そういうようなことで、十二時、一時、一時半まで働いている人が現実にいるかと言えばそうないのだから、そういうような意味において、私はそういうことまで国鉄にも忠告をしているわけです。朝も四時二十一分なんという発車をする必要はない。何もハゼ釣りに行く人間を乗せるために運転することはない。昔、神田にしか市場がなかったときは別だけれども、いまはこれだけ地方に市場ができたのだから、せめて六時の新幹線に間に合う時間に発車をすればいいのじゃないのか、こういうふうにさえ言っているわけであります。  とにかく総裁も来ていることですから、きわめて短い時間でありますが、決意のほどを示し、そして今日これだけいじめられている国鉄が怒らなかったらおかしい。で、私はこう思う、そういう信念を示しながら、国鉄というものをやはり守っていくという根性をひとつ答弁の中に示していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  337. 高木文雄

    ○高木説明員 公共性と採算性の間に立ってどういうふうに運営していくかということは、日々の私どもの仕事にとりましてきわめて重要であると同時に、その判断は個々のケースについて大変むずかしい問題で、いつも悩まされておるわけでございます。ただ、現在の日本国有鉄道法の第一条「目的」欄におきまして、能率的な運営により、鉄道事業その他の一切の事業を発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として、ということになっておるわけでございまして、あくまで能率的な運営ということが前提になって、それを果たすことによって公共的役割りを果たすというふうにつながっておるわけでございますので、私どもも、この法に明示されましたところに従いまして取り組むべきであると考えております。  そういたしますと、世の中の変化に伴いまして鉄道の有効性というものがだんだん下がってくる。飛行機、自動車との関連において有効性が下がってまいりますので、前の時代と同じようなやり方ではこの能率的な運営というのがなかなか維持できないということになってまいりますので、いままでありましたからといってただそれを続けていくということではいけないのではないかというふうに考えております。  そういう意味で、いま一例をお挙げになりました始発の時間を遅くするとか終電車の切り上げをやるとかいうことも、やはりそういう見地から考えるべきではないかということでございまして、五十三年の十一月のダイヤ改正の際に、山手線、京浜東北線の始発時間を繰り下げました。また、五十五年の十月の段階で大阪地域の始発を繰り下げました。そういうことをいたしておるわけでございまして、先般、五十七年十一月の段階でもいろいろ検討いたしましたが、前回の繰り下げの結果、やはりいろいろ支障のある分野も出てくるということがありましたので、五十七年はこれを見送りました。始発、終発の問題につきましても、そのような形で具体的にお客様の需要を見守りながら能率的な方向へ全体として持っていくためにはどの程度までそれを詰めることができるかということを考えながら取り組んできたわけでございますが、ほかの問題につきましても同様な考え方で臨みたいと考えております。  それから、青函トンネルにつきましては、建設は日本鉄道建設公団で行われておりますが、公団法の前提では、そこでつくられましたものは国鉄が引き受けて運営するという前提になっておりますけれども、ただ唯一決まっておりません問題は、その建設費をどう負担するかということは明確に決まっておらないわけでございまして、AB線のように国の方で建設費をお出しになる場合と、CD線のように国が一部金利を負担する等によって建設費を軽減する場合とが大宗でございますけれども、青函トンネルにつきましてはE線という名前がついておりまして、ABでもCDでもないということでございます。このE線という意味は、今後その負担関係を決めるという御趣旨と解しております。したがいまして、鉄道建設審議会等の場におきましても、私どもといたしましてはこの負担関係についてしかるべき実情に即した御裁断を願いたいということを繰り返し申し上げておりますが、今日までまだその御決定がないということでございます。
  338. 沢田広

    ○沢田委員 とにかく労使関係もきわめて悪くてという話も聞いておりますし、総裁の威令も行われないということも聞いておりますから、われわれももちろん自粛自戒ということは必要でありますけれども、ひとつ国鉄当局もその立場に立って過ちなきを期すよう、とにかく切望してやまない次第です。  続いて、お手元に配付してあります年金の第一条をごらんになっていただきたいのであります。  厚生年金では、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする、こういうふうになっております。それから、国民年金では、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基づいて云々となっております。それから、国家公務員共済組合では、年金の問題については相互救済を目的とする制度を設け、そして公務の能率的運営に資することを目的とする、こういうふうに書いて、地方公務員共済組合から以下各組合の第一条の目的があります。年金問題はこれはもう三十分ぐらいかけなければだめなんですけれども、もう時間がないですから、遅くなっておりますからなお節約をして皆さんに協力したいと思いますが、この第一条の目的の統合をどういうふうにこれから考えていくか、まずこれが第一点です。年金の統合を考える場合には、いずれにしても第一の問題は、この第一条の年金の目的をどのような位置づけにするかということが基本的な課題ですよ。ですから、これが一つ。  それからもう一つは、軍人恩給にだけ一部改正を行って、そして共済年金やその他については一部改正を行わなかったことは、これは行政のバランス上好ましくない。軍人恩給のみを優遇したというそしりを免れない。そういうことで、これは総理、知っていたかどうかわかりませんけれども、軍人恩給だけは一部改善をした。ところが、その他の厚生年金や共済年金等では改善を全然していない。これは差別である。そういう点、これは許されることではないと思いますので、これはせめて同じような改善は最低限度するべきではないか、これが第二点です。  それから第三点目は、これからの年金制度は個人年金なのか、世帯年金に徹することなのか、その方向について御見解を承って、減税の問題はやりたかったのでありますが、時間の関係もありますから、これでその回答をいただいて、私の質問は終わりたいと思います。
  339. 林義郎

    ○林国務大臣 お答え申し上げます。  いま資料をいただきまして、厚生年金保険法の第一条と国民年金法の第一条のところにわざわざマークをしてありまして、私も読んで、この辺の統合をすることというのは、大変これからわれわれが考えていかなければならない大きな問題だろう、こう考えておるところでございます。その点については意見は全く同一でございます。  ただ、年金制度の改革につきましては、私、総理から年金担当大臣ということで、一元化をやれということで言われております。また、臨時行政調査会の方からも年金の統合化について答申も出ておることでございますし、一気にこれをなかなかやるわけにはまいりません。当面、臨調答申の趣旨を踏まえつつ、この三月までに国家公務員の共済年金と三公社の年金との統合の問題につきまして法案を提出して御議論をいただくという話にしておりまして、現在準備をしておりますし、その次に、厚生年金と国民年金の統合を五十九年度にできますように、いまのところ厚生省内部でいろいろと議論をしているところでございます。  将来的には年金というものは、いろいろな問題がございますが、全体をやはり統合化していくということが必要なことだろう、こう私は考えておりますし、そういったものを踏まえながらこれからやっていかなければならない問題であるように考えております。  それから、軍人恩給のみをやったのは差別ではないか、こういうふうな御指摘がございました。恩給の改善を今回やりましたのは、長期在職の旧軍人、老齢者等の仮定俸給の改善及び傷病者遺族特別年金の改善ということでございまして、実は恩給の中でのバランスをとらなければならないということでございまして、年金の方と恩給とのバランスを考える場合には、物価スライドをどうするかという問題でございまして、これは国家公務員の給与が人事院勧告を凍結する、こういうふうな形になっておりましたので、やむを得ず見送りということになっておりまして、その辺の年金と恩給とのバランスは、私の方はとれている、こういうふうに考えております。  第三番目の問題といたしまして、個人年金にするか、世帯年金にするか、こういうふうな問題でございますが、この辺は御家庭におけるところの婦人の地位につきましていろいろ問題もございますし、その辺の問題も踏まえてこれから検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  340. 沢田広

    ○沢田委員 二番目の回答は、これは許しがたき答弁でありまして、もう一回政府部内において検討をして、軍人だけ優先をするというような方向は、ますます中曽根内閣のこれはマイナスにもなることはもちろんのこと、いわゆる国民を無視する政策がより一層強度に遂行される、こういうことで、われわれはもう絶対にこれは容認できないことでありますので、念のため申し添え、反省を心から望んで、私の質問を終わりたいと思います。
  341. 久野忠治

    久野委員長 これにて佐藤君、沢田君の質疑は終了いたしました。  次回は、明八日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五分散会