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1983-02-05 第98回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月五日(土曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    澁谷 直藏君       砂田 重民君    玉沢徳一郎君       渡海元三郎君    中村正三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       村山 達雄君    山崎  拓君       与謝野 馨君    岩垂寿喜男君       大出  俊君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    小林  進君       佐藤 観樹君    沢田  広君       野坂 浩賢君    草川 昭三君       草野  威君    矢野 絢也君       木下敬之助君    竹本 孫一君       塚本 三郎君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    不破 哲三君       松本 善明君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣審議官   林  淳司君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府人事局長 藤井 良二君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         行政管理庁行政         監察局長    中  庄二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         科学技術庁研究         調整局長    加藤 泰丸君         科学技術庁原子         力局長     高岡 敬展君         科学技術庁原子         力安全局長   赤羽 信久君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         国土庁長官官房         会計課長    金湖 恒隆君         国土庁土地局長 小笠原正男君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁次長   酒井 健三君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省体育局長 西崎 清久君         厚生大臣官房長 幸田 正孝君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房会         計課長     坂本 龍彦君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業大臣官         房審議官    野々内 隆君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸大臣官房長 犬井 圭介君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         郵政省電気通信         政策局長    小山 森也君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君         郵政省人事局長 奥田 量三君         労働者職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         建設省計画局長 永田 良雄君         建設省都市局長 加瀬 正蔵君         建設省河川局長 川本 正知君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房長 矢野浩一郎君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   仁杉  巖君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   吉村  恒君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   倉成  正君     与謝野 馨君   正示啓次郎君     中村正三郎君   藤尾 正行君     玉沢徳一郎君   武藤 嘉文君     山崎  拓君   竹本 孫一君     塚本 三郎君   渡辺  貢君     松木 善明君 同日  辞任         補欠選任   玉沢徳一郎君     藤尾 正行君   中村正三郎君     正示啓次郎君   山崎  拓君     武藤 嘉文君   与謝野 馨君     倉成  正君   塚本 三郎君     竹本 孫一君   松本 善明君     不破 哲三君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  この際、昨日の矢野委員質疑に関し、後藤田官房長官から発言を求められておりますので、これを許します。後藤田官房長官
  3. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 矢野委員御指摘の国会決議についての政府の解釈につきましては、立法府行政府関係にかかわる問題でありますので、これを重大に受けとめ、真剣に検討いたします。しかしながら、公聴会終了まで時間をおかしいただきたいと思います。     ─────────────
  4. 久野忠治

  5. 矢野絢也

    矢野委員 委員長並びに理事委員各位に御苦労いただきましたことにつきまして、感謝申し上げたいと存じます。  また、私の後に質問をされる予定の方々に時間帯の上で御迷惑をおかけいたしておるわけでございますが、御協力について感謝申し上げる次第でございます。  そこで、いま官房長官から政府としてのお考えをお示しいただいたわけでございまして、これはそのとおり承っておきます。したがいまして、政府から改めて御見解が示された時点におきまして質問をさせていただく、質問を留保させていただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  そこで、次の質問に移るわけでございますが、総理、昨日、安全保障防衛の問題でいろいろとお伺いをいたしまして、総理からきわめて含蓄に富んだ御答弁をいただいたわけでございますが、私どもの立場からいけば、かなり問題のある御発言が多かったように思います。そのすべてについてここで議論することは時間の都合上できませんが、ただ一点だけ確認をさせていただきたいと思います。  私の質問は、極東有事において米海軍増援部隊公海上で自衛艦が護衛することは個別的自衛権範囲内か、あるいは集団的自衛権かということをお伺いいたしました。総理は、日本が侵略された場合、日本防衛目的を持って救援に駆けつける米艦船が阻害されたとき、日本自衛隊自衛艦が救出することは自衛範囲内に入るのではないかとの感触を持っている。これは個別的自衛権であり、日本防衛のための行動である、このように御発言をされたわけでございます。  しかしながら、私ども理解、さらにまた従来の政府のこの問題についての見解は、明らかにいま読み上げた総理の御答弁と違うわけでございまして、重ねて伺いますが、いま、総理が申されたことを私は引用したわけでございますけれども総理が言われたような状況下におけるわが国自衛隊行動、それは個別的自衛権範囲内である、このようにいまでもお考えでございますか。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのう御答弁申し上げたことはそのとおりでございます。  日本武力攻撃を受けた場合に、日本救援、来援するアメリカ艦船等に対しまして、その日本に対する救援活動が阻害されるという場合に、日本側がこれを救い出す、こういうことは、領海においても公海においても、これは憲法に違反しない個別的自衛権範囲内である。ただ、その場合、これはケースバイケース考えなければならぬ余地がございまして、たとえば日本から非常に離れた遠いところにある場合、あるいは日本近海にある場合、あるいはそのときの日本武力攻撃に対する様相がどういう情勢になっているか、そういうようなさまざまな条件はあると思います。しかし、原則として、ただいま申し上げましたことは、私は、個別的自衛権範囲内のことである、そして日本防衛のためにそれが行われるならば、それは憲法上差し支えないことであると考えております。  御質問の趣旨は、極東有事という御質問でございました。これになりますと、情勢は変わってまいりまして、日本防衛目的でないほかのことになりますれば、それはおのずから別のことになると考えております。  具体的には法制局長官から御答弁申し上げます。
  7. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 まず、原則を申し上げますが、わが国に対する武力攻撃があった場合に、自衛艦が、わが国防衛するため必要な限度内すなわち個別的自衛権範囲内において、米艦船共同対処行動をとることができるということは、従来から申し上げているとおりであります。  次に、その具体的な態様は、ただいま総理からもお答えがありましたが、個々の状況に応じて異なりますので、一概には申しがたいと思いますが、昨日の総理答弁は、日本救援のために日本の近くまで来た、これを「駆けつけた」と言われたと思いますが、アメリカ艦船がそういう場合に相手国から攻撃を受けた、それを総理は「阻害された」というふうに言われたと思います。そういう場合に、自衛隊わが国防衛するための共同対処行動一環としてその攻撃を排除する、これを総理は「救出する」と言われたと思いますが、そういうことは、わが国に対する武力攻撃からわが国防衛するため必要な限度内と認められるから、わが国自衛範囲内にあろうということを言われたのだと思います。そういう意味では、集団的自衛権行使につながるというような例を想定されて言われたものではないというふうに私どもは承知しております。
  8. 矢野絢也

    矢野委員 私ども理解、さらにまた政府の従来の御答弁——個別的自衛権というものは、大ざっぱな言い方をしますと、自分の国、厳密に言えば日本施政権下攻撃された場合には日本の力で守る、これはまず個別的自衛権範囲内ですね。これは当然だと思いますね。二番目には、日本の国、厳密には日本施政権下が侵された場合、その範囲内で自分の力と他国の力で守ることができる。つまり私が申し上げたいことは、公海でそういう行動がとれるということは個別的自衛権範囲内でない、集団的自衛権の問題であり、これは憲法は厳に戒めておることである、これは法制局のお考えであり、従来の政府のお考えだったと思いますが、いかがでございますか。
  9. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 わが国集団的自衛権行使はできないということは、再三申し上げているとおりであります。  それから、わが国個別的自衛権範囲内において活動する場合におきまして、無論わが国領域内において活動することもあります。しかし同時に、公海上に出かけていくこともあるということも、従来から申し上げているとおりであります。  それで、公海において、たとえば米国艦船攻撃をされて、いまだわが国に対する武力攻撃がない場合に、わが国に対する武力攻撃と同じように考えて、そして、わが国自衛権を発動するのは、ただいま申し上げたまさにわが国集団的自衛権行使になるわけで、これは許されないと思います。しかし、いまは、すでにわが国に対する武力攻撃がありまして、安保条約第五条の規定に基づいて、わが国はあくまで個別的自衛権範囲内、アメリカアメリカとしての集団的自衛権を発動して、共同対処行動がすでに行われているわけであります。その際に、どこまでわが国アメリカ共同対処行動が行われるかということについては、先ほども申し上げましたように、具体的な態様が違いますから一概には申し上げられませんが、わが国個別的自衛権範囲内における活動というものがわが国領域内に限られるということは、従来から政府は申し上げておりません。公海においても共同対処活動をすることがある、ただしその場合でも、わが国としてはあくまで個別的自衛権範囲内においてやるというふうに申し上げているつもりでございます。
  10. 矢野絢也

    矢野委員 日本施政権下あるいは領域下において、日本の力、さらにまた、この場合具体的にはアメリカの力、これで守る、その範囲、そこまでであって、幾らわが国が攻められておるといっても、公海上においてそのようないわば共同作戦、これが行われるという答弁はなかったように私は理解しておりますよ。  もっと端的に申しますと、この歯どめがなくなりますと、それはいろいろなケースバイケースがあるとおっしゃるが、これは主観的な問題です。たとえば、これは極端な例を申しましょう。ハワイにあるアメリカ航空基地、ここから発進する航空機が日本防衛のために必要である。現に日本攻撃をされておる。何とかハワイからの援助を得なくちゃならぬ。しかし、そんなことをされたのではいけないということで、別の国がその米軍行動を阻害するために、ハワイにおけるたとえば米軍飛行基地あるいは航空母艦、これを攻撃する。それじゃ困るといってそれを救援することが日本自衛隊が可能になってくるのです。日本攻撃されているという前提ですよ、いま。おわかりになりますか。いままでの個別的自衛権というものは、あくまでも日本施政権下においてという厳しい歯どめがあった。日本攻撃された場合、公海においても、日本を助けに来る米国艦隊をどこかの船が攻撃した、それを守る、そんなことが許されたらどこまでも歯どめなく、これは米軍日本自衛隊との共同作戦共同行動がそれこそ歯どめのないことになってしまうじゃありませんか。  総理お答えください。そういうことになるのですよ、論理的には。
  11. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自衛行動範囲内という御質問に当たると思いますが、日本防衛する、そして日本に対する武力攻撃があった場合の日本防衛活動というものは、領海のみにはとどまらない、公海におきましても、対潜哨戒を行うとかソナーを落とすとかいろいろな行為があるわけであります。自衛隊法におきましても、そういうことを基礎にしていろいろな防備活動を行っておるわけでございます。したがって、領域のみに限定しておるということには従来も解釈しておりません。
  12. 矢野絢也

    矢野委員 私、それは中曽根内閣政策変更である、こう思っておりますが、政策変更ではないとおっしゃるのですか。
  13. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自衛隊法ができ、防衛庁設置法ができてから一貫してこのことは認められて、歴代政府が言ってきておることであると思います。
  14. 矢野絢也

    矢野委員 事は個別的自衛権集団的自衛権、これは平和国としての日本憲法との関連がある問題でございます。個別的自衛権、いま総理が言われたようなことが憲法で禁止されておる集団的自衛権ではない、個別的自衛権行使なんだ、これは憲法にかかわる問題でございます。昨日は行政府立法府の問題で大変皆さんに御迷惑をかけましたが、それ以上にこれは重大な問題だ。  委員長、この問題、はっきり答弁させてください。
  15. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 先ほど、従来から私ども答弁はこういうものであるということをお答え申し上げました。  その例を申し上げますが、昭和五十年六月十八日衆議院の内閣委員会で、丸山政府委員が次のように答えております。「わが国アメリカと共同して対処する。安保五条に基づく場合であろうと、単独で対処する場合であろうと、いずれの場合におきましても、わが国の安全のため必要な限度内において行動するということでございまして、その場合、領海、領空に必ずしも限られず、公海公空にも及び得るという御答弁をいままで申し上げておるわけでございます。したがいまして、公海公空に及びまして日米共同対処しているという場合でございましても、あくまでもわが国の安全のため必要な限度ということでございまして、いまのような御設問の問題についていろいろ条件下があると思いますので、一概お答えはできませんが、要するにわが国の安全のために必要な限度内であるかどうかというその事実についての判断、これがもとになるかと思います。」こういうふうな答弁をいたしております。
  16. 矢野絢也

    矢野委員 その答弁は私も承知いたしております。公海上において、日本有事のときに米軍行動をとるということをあなたのいまの答弁では言っておられる。私が言っておるのは、公海上において米軍救援するという共同行動については、そんな見解はなかったんですよということを言っているのですよ。単なる自衛権行使の問題を言っているのじゃない。公海上においてアメリカ軍を援護するということは、こういう共同行動はいままでの政府見解ではなかったと言っているのですよ。
  17. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 いま私が申し上げたとおりだと思いますが、公海上においても米軍共同対処行動をすることがあるということは御理解いただけると思います。その共同対処行動一環として、先ほど総理が言われましたように、米艦船が、たとえばわが近海において敵国と申しますか、わが国に対する攻撃国からの攻撃を受けている場合に、それはわが国から見れば、同時に、わが国に対する攻撃国つまり敵国攻撃が行われているわけでありますから、それをわが国米軍と一緒になって対処するということは、これは共同対処行動一環として当然許されるであろうということを申し上げたわけであります。(矢野委員質問に答えてないです」と呼ぶ)
  18. 久野忠治

    久野委員長 矢野絢也君質問を続行いたします。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 どうも理事皆さんに御苦労をかけております。  私が申し上げておりますのは、日本有事の場合、この前提ですね、単なる自衛権範囲、そのための自衛隊行動、そんなことを私が言っているわけじゃないのです。つまり、自衛権行使公海に及ぶのか及ばないのか、そんなことを聞いているのじゃないのです、私が言っているのは。それに対して、公海に及ぶんだ、公海自衛隊行動することはいいんだという意味の御答弁をなさっておる。私が言っておるのは、たとえ日本有事といえども公海米軍艦船自衛隊が守ることは個別的自衛権範囲を越えているでしょう。自衛隊の単なる行動を言っているのじゃないのです。米軍を、アメリカ艦船を守るということは、いままでとは違うでしょうと言っているのです。  ですから、そういう意味で、政府見解を変えたのか変えてないのか、それだけ答えてください。
  20. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 政府見解は変えておりません。  先ほど委員が御指摘になったような、非常に遠いところで、もっぱら日本防衛関係のある行動を必ずしもとっていない、そういう米軍艦船日本自衛艦が出かけていって護衛をする、そういうような事例は、もとより私ども憲法のもとにおいて許されないと思っております。ただ、わが国の来援のために駆けつけたアメリカの軍艦が、わが国の周辺で作戦行動をしているわけです。日本を守るための行動をしているわけです。そのときに、敵がいるわけですから、その敵を日本自衛艦攻撃をすれば、そういう事態は、これは共同対処行動のきわめて典型的なものとして、それは日本自衛権の発動のためになされた行動だということで許されるであろうということを申し上げているわけでございます。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 近海であろうが遠海であろうが、日本施政権下においてそのような共同行動個別的自衛権範囲内という意味で可能である、こういう御答弁であったように私は思う、いままでの政府の御答弁は。  ですから、委員長、これは私、次の内政問題、経済、財政、福祉、お尋ねしたいことが山ほどございます。きわめてこれは重大な問題でございますので、理事会においてこの問題についてのけじめをおつけいただきたいと存じます。委員長、いかがでございますか。
  22. 久野忠治

    久野委員長 後刻、理事会において協議をいたしたいと存じます。
  23. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、この問題につきまして私の質問、恐縮でございますが、留保させていただきたいと存じます。  次に移りたいと思います。  五十八年度の政府の予算、GNPに対しまして防衛費の予算が〇・九七八%、GNP一%にもうすれすれにまで迫っております。五十九年度は、私どもの計算、後ほど申し上げますけれども、確実に一%を突破するのではないか、こういう推定をするわけでございますが、総理、五十九年度の政府予算における防衛予算は一%をオーバーさせない、こういうお約束をいただけますか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 GNP一%以内で防衛費をやっていくという従来の考え方は変えません、変える必要はございませんといままで申し上げてきたとおりでございます。五十九年度がどういうふうになるかということは、GNPがどの程度に上がるか、あるいは防衛費がどの程度伸びるか、つまり経済の問題とか物価の問題とか、そういうものに非常に影響されるわけでございますから、ここでいま確約を申し上げることはできません。五十九年度予算概算請求が七月ごろ出そろうという状況でございますから、いま五十八年度予算を御審議願っている最中にその予測はまだつかないというのが正直な話でございます。
  25. 矢野絢也

    矢野委員 総理は、御答弁の前半では、GNP一%以内、防衛費の歯どめ、これは守っていきたいと思う、こう言われつつも、五十九年度予算については、まだ予算編成の段階ではないから、また物価その他経済成長率等々GNP、つまりいつも総理が言っておられる分母が確定しないから、したがって一%以内か以上かここでは言えない、こういう意味のことをおっしゃっているのだろうと思いますが、私はそれはおかしいと思うのですよね。一%以内にとどめるという総理の政策判断あるいは決意があれば、分母であるGNPが幾らになろうとも、一%になるように防衛費を調整なされれば一%になるわけでございます。GNPが大きくなろうが小さくなろうが、これはおっしゃるとおり不確定要素という面があることは私も認めます。しかし、これとても政府はGNP、これはいつも当たっておらぬから余り言うと気の毒だけれども、名目成長率、これはいつも計算して出していらっしゃるわけですよ。ですから、政府がいままでの分母分子の議論でなさるよりも、決意として五十九年度予算は一%をオーバーさせないという総理のポリシー、政策、これを伺いたいと思うのです。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 願望としてはそういう願望を持っておるわけであります。できるだけそういうふうな形でおさめたいと思っておりますが、一方において政府は「防衛計画の大綱」というものを持っておりまして、これをできるだけ早く実現したいということも内外に向かって言っておりますし、わが国防衛の必要上われわれはあれが正しいと思って「防衛計画の大綱」というものを支持しておるわけでございます。そういうこともございまして、経済の情勢を見つつ、できるだけその範囲内におさめるという努力をしてまいりたいと思っております。
  27. 矢野絢也

    矢野委員 名目成長率五・六%、五十八年度経済、これで概算の計算をいたしますと、五十九年度のGNPは、五・六%名目成長の場合は二百九十七兆、こういうことになります。一%ということになりますと、二兆九千七百億、これが一%以内ということです。  しかし、後年度負担、莫大にいまこれはあるわけです。後年度負担につきましては、具体的に数字を申し上げますと、現時点において五十九年度以降の後年度負担は、防衛費だけで申しますと、つまり兵器を契約だけして手付金だけ打って、後でお金を支払わなければいかぬツケ、このツケだけで一兆九千七百五十億円借金があるわけです。そのうち、私どもの計算、これは防衛庁もお認めになっていると思いますが、五十九年度に歳出として予算で払わなければならないのが一兆九千七百五十億円のうち九千九百億円あるわけです。どうしてもこれだけは歳出化していく、九千九百億円。本年度の、後年度負担の歳出化した金額は八千五百五十二億円でございますから、その差額の千三百四十八億円は、ことしの防衛予算よりも後年度負担分が歳出という形で来年はふえるわけです。千三百四十八億円ふえる。私どもこれは五十七年、五十八年人事院勧告の問題でやっておるわけでございますが、まさか来年も人勧凍結なんということはおっしゃらない、そんなむちゃなことはなさらないと思いますが、そういう人件費、これだけでも当然増という形で五十七年度分が仮に実施されたということになりますと五百五十億円、五十八年度分でも、現在一%予算として計上しておられますけれども、私どもの計算では四百四十億円、こういうことになるわけでございまして、明らかに、いま申し上げた後年度負担、人件費、これだけを単純に計算いたしましても、申し上げたGNP一%の金額を五十九年度で突破するわけです。ですから、やってみなければわからぬじゃなくて大体わかっているんです、このままほうっておけば、五十九年度には防衛費はGNP一%を突破する、簡単な計算でこれは推測できるわけです。ですから、計算してみなければわかりません、予算編成の段階にならなければわかりませんじゃなくして、いま国民は、この一%の歯どめがなくなったら、わが国防衛費はどこまで膨張するのかという心配をしているわけです。  ですから、いま私が一つの試算を申し上げたわけでございますが、そういう状況下ではあるが、何としてでも中曽根内閣としては五十九年度予算においてGNP一%以内にとどめたいという決意をここでひとつお述べいただきたい。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまの後年度負担の件は、私も気になっているところであります。しかもまた、一面においては「防衛計画の大綱」というものをわれわれは採用して、これを遂行していくという確固たる考えを持っております。したがいまして、そういう面も片っ方ではあるので、矢野さんにここで確実に約束できるかなと、その点はよくいま考えているところでありまして、しかし、願望としてはそういうものを持っているが、しかし、ここでお約束することは御容赦願いたいとお願いいたす次第でございます。(発言する者あり)
  29. 矢野絢也

    矢野委員 何かこちらの理事の方が、総理は正直なんだとおっしゃっているわけです。まあそうかもわからないですね。ここのところは一%にとどめておきますと約束しておいて、あと半年くらいしたら、しょうがなかったんやと言うのが従来型テクニック。ひょっとしたら一%以内にとどまるかもわからぬという願望を持ちつつも、どうなるかわからぬという言い方は、あるいは正直なのかもわからぬ。僕もそんなような気がするのだけれども、正直ついでに、実は鈴木総理もそういうことを前におっしゃっておったわけです。しかし、分母分子論をおっしゃりながらも、鈴木内閣としては、GNP一%以内を堅持します、鈴木内閣のポリシーとして堅持しますということを、どうなるかわかりませんと言いつつも総理としての決意を述べていらっしゃったわけです。これは議事録にたくさんございます。何回もおっしゃった。鈴木内閣としては、いろいろな厳しい条件がある、防衛力整備大綱を達成しなければならぬ、しかし、わが内閣においては、何としてでも一%以内にとどめます。ですから、中曽根内閣においてはそうします、こうおっしゃっていただきたい。その方が僕は国民に対しても本当の意味の正直な御答弁になるのではないか。平和を求めているという国民の気持ちに沿った御答弁になるのではないかと私は思います。でないと、鈴木内閣はその約束を守った、中曽根内閣は約束できない、それはそう受け取られてもしようかない。それはおれの本音やと総理がおっしゃるなら、それはしようがないということですけれどもね。どうなんでしょうか、それは。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ一%以内にとどめたいという強い願望を私は持っております。しかし、鈴木内閣のときはそれが言えたかもしれません。なぜなれば、「防衛計画の大綱」の推進という点においてまだ余裕があったと思うのです。しかし、正直に言って「防衛計画の大綱」を、わが自衛力を増勢していくために、平和を維持して戦争を防止するために、これはある程度推進していかなければならぬという自民党やわが政府考え方から考えてみますと、鈴木内閣がおやりになっていたときと財政の状況とか諸般の情勢が変わってきておるわけでございまして、鈴木さんほど余裕のない状況にいま私の立場はなっていると思います。ですから、正直にあなたに申し上げて、できるだけ努力いたしますということで差し控えさせていただきたいと思うのです。
  31. 矢野絢也

    矢野委員 まことに残念な御答弁でございます。  防衛費については、そのような、私から言えば、何とも納得のできない、防衛力拡大に傾斜した御答弁をなさっておる。また、予算の面でも事実五十八年度予算はそうなっておる。ところが、社会保障の関係は、これはあなただけじゃない、五十四年以降ずっと下降したり停滞をしておるわけでございます。防衛費の方は、財政が悪化している中で非常にこれだけが突出しておる。政府は、大砲かバターか、言葉は適当かどうかわかりませんが、社会福祉よりも軍事力拡大の路線を選択しておられる。大変残念なことでありますけれども、そう判断せざるを得ません。  そこで、厚生省並びに総理に伺いたいわけでございますが、総理は、盛んに不沈空母だとか運命共同体だとかバックファイア阻止だとか海峡封鎖だとか、そっちの方は妙に歯切れがいいのですけれども、福祉とかあるいは文教とか経済とかになりますと、途端にトーンダウンして声まで低くなって、本当ですよ、あなたの所信表明演説。そうして、中身はきわめて抽象的になっている。これは非常に私は困るわけで、そういうところでむしろ仕事をする内閣の真価を発揮していただかなければならぬと私は思うのです。  社会保障長期展望懇談会が指摘しておりますけれども、世帯の小規模化が進んでおる。しかも、老齢化してきておる。家庭の持つ扶養機能の弱体化が問題になっておる。また、寝たきりのお年寄り、どんどんいまふえてきております。総理は、家族制度、家制度に対する期待を述べておられるわけでありますけれども、それだけじゃ困るわけなんですよね。何ぼ期待述べられたって、寝たきりのお年寄り、あるいは言葉は適当でないかもわかりませんが、痴呆性のお年寄りの方々がふえてきていらっしゃるわけです。こういう方々に対する具体的な未来展望のあるお考えをひとつ聞かせていただきたい。
  32. 林義郎

    ○林国務大臣 矢野議員の御質問お答えいたします。  総理からもたびたび「たくましい文化と福祉の国」ということで申し上げておりますし、われわれとしても福祉政策の充実をやっていかなければならないということは十分に考えているところでございますし、特に、今回の予算におきましては、老人保健の充実の問題であるとかあるいは在宅老人の手当て等について、大変厳しい財政事情の中でございましたけれども、これを拡充を図ったりいろいろな施策をやっておるところでございます。特に、御指摘のように、頼るところのないお年寄り、こういった人につきましては、私たちも非常に意を払いまして、本当ならば在宅でやってもらうことが一番いいであろう、しかし寝たきりでひとり暮らしである、こういう方につきましては、特養施設等を増加するとかというようなことをいろいろと考えて万全の配慮をいたしたい、こういうふうに思っているところでございます。
  33. 矢野絢也

    矢野委員 万全な配慮は、少なくとも予算の上ではうかがえないのが大変残念でございます。さらに私どもこの問題の解決のために、政府に対して強く要求をしていかなければならないという決意をしております。  自立とか自助、社会連帯、こういう気風を育てるため社会保障制度を見直さなければならぬ、こういうお考えのようですけれども、自立といっても、自立を可能にする所得、雇用の政策、これがなければ自立できません。勝手に自立しておれといったって、それは殺生です。たとえば高齢者雇用、お年寄りの方々を雇用する、それが達成していない企業が五〇%もあるわけです。働きたいと思っても、中高年をめぐる雇用環境というのは、実に厳しい問題がたくさんあります。高年者の雇用保障制度の確立、これがいま非常に中曽根総理に望まれておる重大な、それこそこれからの新しい時代の日本考えたときに、日本は高齢化社会になる、高年者の雇用保障制度、これを何とか確保しなければならない。  また、母と子供の御家庭、今回私ども総理に陳情いたしましたら、交通遺児の育英資金につきましては格段の御配慮をいただいた。この席で私は、このことだけに限って御礼を申し上げておきたいと思います。これは大変御配慮いただいた。しかし、全般的に母と子供の家庭は、非常に厳しい状況にあります。就職できたとしても、大体その所得は九万円、一般労働者の平均賃金の四三%にすぎない。これは統計で出ておる。また、老後の生活を支える年金、厚生年金平均十万円。年金水準以下の低い賃金で暮らしている人々や、厚生年金よりはるかに水準の低い老齢福祉年金に依存しておる人々がたくさんおるわけです。こういったことに総理は、仕事をする内閣、この面目を発揮していただく必要があるだろうと私は思います。  私は、こういう具体的に申し上げたことにつきまして厚生省のお考えを伺いたいと思います。私その後、年金の問題をお尋ねして、あわせて総理からまとめて御答弁いただきたいと思います。
  34. 林義郎

    ○林国務大臣 矢野議員の御質問お答えいたします。  私たちといたしましても、御指摘のありましたような母子の問題、そういった問題につきましても、貸付制度の充実を図ることであるとかその他のことを、厳しい財政の事情の中では一生懸命やってきたつもりでございますし、御指摘のような問題たくさんあると思いますし、厚生省の関係の中におきましてもいろいろとやっていかなければならないことはたくさんあるだろうと思います。単に予算をということではなくて、いろいろな形のことをこれからも考えていきたい、こういうふうに思っております。
  35. 矢野絢也

    矢野委員 年金制度、いま民間の年金についてのいろいろな制度といいましょうか、商品といいましょうか、そういった民間の年金、これをセールスされる方々は、公的年金は心配だから民間の企業の年金にお入りになった方が安全ですよという意味のことをおっしゃっているわけです。これはお仕事熱心さの余りそうおっしゃっているのだろうと思いますけれども、そう言わざるを得ない心配というものが公的年金の将来にあるわけなんですよ。ですから、御家庭の奥さんやだんなさんは、現在元気で働いている方々が、自分の年金どうなるのだろうか、こういう心配をして家庭で話をしている、こういうケースが多いのですよ、総理。  ですから、この公的年金をどのようにして確立していくか、国民の信頼をもっと高めていくかということは、重大な問題だと私は思います。公的年金制度信頼確保のための対応、特に基本年金制度についてどのようにお考えになっておるか、厚生省から御答弁いただいた上、私がるる申し上げた点について、総理からお答えいただきたいと思います。
  36. 林義郎

    ○林国務大臣 年金問題につきまして、いま矢野議員御指摘のようないろいろな問題があることは、私も非常によく聞いているところでございます。いかにしてこの年金制度を安定的なものにしていくか、国民に安心を持っていただけるような制度にしていくかということについては、いろいろな点から考えていかなければなりませんし、臨時行政調査会の方でも御指摘がありますように、将来の一元化という方向がやはり一つの大きな方向だろうと思うのであります。そういったことを踏まえまして、われわれとしても鋭意いま努力をやっているところでございますし、今国会にはとりあえず国家公務員の共済年金と三公社の持っているところの年金を統合化をしていこうということを手始めにして、五十九年度に諸方策ができるようにいま鋭意検討しているところでございます。  年金問題につきましては、官民格差であるとかいろいろな問題がございます。そういった問題がいっぱいありますから、広く国民各位の御意見を聞いていかなければならないという問題があります。そうした意味で、現在アンケート調査などもやっておりまして、広く国民からお話を聞いていくという形で進めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  37. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野議員のお考えは、社会的に苦しい方々、弱い方々に特にめんどうを見よという御趣旨であると思います。私も、今回予算編成に際しましては、特に大蔵省、厚生省にお願いしまして、重度身体障害者であるとか寝たきり老人であるとかあるいは子供を抱えた未亡人の家庭とか、そういうものに特に目を配った予算をつくるように特に私からも指示いたしまして、そういう一部につきましては約八%増にしたつもりでございます。しかし、全般的に見ればまだまだ努力すべき点が多うございまして、それらの点は引き続いて努力してまいりたいと思っております。  それから、高齢化社会を迎えまして、確かに老人の仕事という問題を真剣に考えなければならぬと思っております。私は前から、いままでは人生五十年だったけれども、人生七十五年になったから、設計変更しなければいかぬな、五十年の基準から七十五年の基準に人生計画も社会計画も設計変更しなければならぬときが来た、その準備をしようということを前から言っておりまして、私、総理になったときから、そういう方面についての勉強をいまやらしておるところでございます。それを具体的にどういうふうに展開していくか、これから煮詰めた上で具体的にやっていきたいと思っておりますが、とりあえず高年齢層に対する就職問題というものは、生きがいの問題にも絡みまして、私たちも努力してまいらなければならぬと思います。  それとの関連で、厚生年金や国民年金に対する信頼度というものを高めていくことは非常に大事であると思っております。いま厚生大臣から御答弁になられましたように、とりあえずは、国鉄の年金がもう危ない状況でございますから、これを何とかしなければならぬというので、三公社と国家公務員の共済組合の統合をできるだけ早く今議会に出させるように努力していますが、いずれは国民年金あるいは厚生年金も含めた問題も考えなければならぬ、安定感を与える方向でいかなければならぬ、そう思っております。これも厚生大臣に同じように、次の大きな課題として勉強していただくように私からもお願いしてございます。そういう点については、特に今後も注意してまいる所存でございます。
  38. 矢野絢也

    矢野委員 総理、勉強していらっしゃるということでございます。勉強だけに終わらぬように、実行していただかなくてはなりません。  私ども公明党も「福祉社会トータルプラン」という政策、財政の裏づけというものを基本にしながら、このようにすれば国民に対してそれにふさわしい福祉水準を確保することができるという具体的な提案をしておるわけでございます。特にお年寄りの問題、母と子供の家庭の問題、高齢者の雇用の問題——年金問題につきましては、これは与党、野党ということではなくして、それだけの掛金をしていただいておる国民に対する、これは政府あるいは立法府としてもみんなの、政治家の責任であると私どもは思うわけでございまして、そういう意味で、私どもも真剣な提案を従来もしてまいりましたけれども、今後もしていきたいと思います。  ただ、この五十八年度予算を見る限りは、国民の期待を裏切っておる、残念ながら期待に反しておる。行政改革の名において、年金、恩給の物価スライド分、これを削減するとかカットするとか、人事院勧告の凍結であるとか、その他福祉面においても予算の伸びが小さいとかあるいはほぼゼロに近いとか、こういうことでは、勉強と言われても国民は御納得されないのではないかと思いますので、今後の努力を強く要求しておきたいと存じます。  さてそこで、大蔵大臣、「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」という資料をちょうだいいたしました。これをやり出すと本当は一時間以上かかるのですが、総理も財政再建という言葉を財政改革という言葉にいつの間にか変えておられる。私たちは、再建でも改革でも言葉はどっちでもいいのですけれども、その中身が知りたいのです。言葉だけ変えたからといって問題が解決するわけじゃない。一つの資料としてこの「基本的考え方」というのが出ているわけですけれども、これは単に仮定の経済成長率というものをもとにいたしまして、電卓をぱちぱちぱちと使いまして、そして引き伸ばしただけの、全くもう政策的な判断も入っていなければ何にも入っていない、とにかく、失礼な言い方ですが、でっち上げたということにすぎない。総理の財政改革の中身がこういうことだとすると、AだとかBだとかCだとか、一体どっちを向いているのということにこれはなるわけでございまして、大蔵大臣、これはもうお話にならないのですよ、財政改革の議論をしようと思っても。  そこで、いろいろと聞きたいことがあるけれども、端的に言って二点にしぼって伺います。  私どもは、これはもう私、この予算委員会において毎年申し上げておるわけでありますけれども、行政改革は一方において推進しなくてはならぬ。そして、財政改革は、たとえば五年先の仮定の数字をもとにして、五年後にはこうなるのだから、あるいはいま予想される仮定の成長率をもとにしてではなしに、来年度予算においては、この費目についてはこういうふうに伸ばすのだ、こういうふうに削るのだというような積み上げ方式による財政計画をお出しにならない限り、いつまでたっても毎年違う数字を、しかも当座の間に合わせの、電卓で——電卓電卓と憎たらしいけれども、これは全く電卓的「基本的考え方」であるということになってしまうわけです。  ですから、私どもは、従来政府が財政収支試算というものをお出しになっておった、これでは議論の対象にならぬ、そういうことで、経費というものを踏まえた財政展望という方向に大蔵省も、かなりいろいろ外国に調査団を派遣されて勉強されたという経緯を私は存じております。その御苦労には私は大変敬意を表しておった。ところが、にわかに本年になってから、少しばかり前進しかかった財政計画への芽生えというものがなくなってしまった。最初言うた財政収支試算よりももっとお粗末なこの「基本的考え方」。大蔵大臣、これは一体、財政改革というのは何もやらぬということですか、どうなんですか。
  39. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの御指摘でございますが、これは矢野委員、十年ぐらいおやりになったと思うのであります。最初、収支試算、これでは、言ってみれば財政計画と矢野委員がおっしゃっているものに余りにも遠いではないかというところから、要調整費というような発想が、これが前回私が大蔵大臣のときにお約束をいたしまして、それに基づいた試作品を五十六年度予算審議の手がかりとしてお出しをいたしますと。そこで、いろいろいま評価していただいた勉強したりして、出したわけであります。したがって、今度五十八年度予算編成に当たって、五十六年、五十七年のそれらの指標を見ながら、やはり事ほどさように国際経済が不透明であって、そして矢野委員にお示しした翌年度あるいは翌々年度の収支を見ましても、実際問題、編成したものとは大変な乖離が生じておる。そうなれば、いま一度、やはりここで、この五十九年度赤字国債脱却ということを数字の上でもできませんということを明瞭にしたわけでございますから、したがって、いわゆる三年、五年、七年というようなものを審議の手がかりとしてお出しをした。だから私は、矢野委員が一つのフィロソフィーを持ってずっとこう指摘されておるようなものについては、近づけようという努力をしつつも、やはり自由主義経済というものを基盤に置き、なおかつ、国際経済の動向がこれだけ不明瞭であった場合においては、それに近づける努力はするものの、御満足のいただけるようないわゆる計画というものは御提示することは困難である。したがって、予算審議の手がかりとしてということで一生懸命衆知を集めてつくったというふうに、評価していただきたいとは申しませんが、御理解をいただきたいということであります。
  40. 矢野絢也

    矢野委員 手がかりだそうですから、これを手がかりにしてやりましょう。  ここで私は言いたいことが山ほど実はあるのだけれども、時間も余りありません。  この表を見ますと、国債整理基金への定率繰り入れを五十九年度以降は実施する、こういう前提でこの表ができておる。しかし、赤字国債を五十九年度においても大量に発行されておる。なおかつ、五兆五千億の要調整額というものが出てくる。いいですか、大蔵大臣。一方において赤字国債が大量に出ておる。一方において、にもかかわらず五兆五千億という財政赤字が出ておる。それで、一兆五千億を超える国債整理基金の定率繰り入れが五十九年度にできるとお約束できますか。
  41. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの国債整理基金定率繰り入れの問題でございますが、五十七年、そして五十八年も繰り入れの停止ということにいたしたわけであります。したがって、これは一般論として申し上げますと、定率繰り入れを停止すれば、その分だけ将来予算繰り入れが必要となる、だから後年度の財政負担が増大する、これは御指摘のとおりであります。だが私どもは、やはり従来の国会の答弁なり法律の趣旨なりからすれば、精神としては、いわゆる定率繰り入れの停止をすること自体が例外であって、やはり法律に基づいてきちんとした措置を行うべきである、こういう精神を貫いて、これは法律も一年一年ごとに御審議いただいておるわけです。したがって、五十九年度以降もいわゆる定率繰り入れの停止を行いますというようなイージーな考え方であってはならぬ。まずそれよりも、それだけいわゆる国債を減額するということに重点を置いて編成作業に当たるべきである。(矢野委員「では五十九年度は定率繰り入れは一体なさるのですか、なさらないのですか」と呼ぶ)  五十九年度において、ただいまのところ、定率繰り入れを停止するという考えは、現時点において持っておりません。
  42. 矢野絢也

    矢野委員 ということを前提にしてこの表で計算しますと、いやおうなしに、総理、いままで嫌だ嫌だと言いながらも出してきた赤字国債、この償還が迫ってきているわけです。いやでもおうでもこの償還が迫ってきておる。六十一年度に赤字国債から脱却する、これがAケースですね。このAケースというのは六十一年度に赤字国債から脱却する。しかし、BケースとかCケースでは赤字国債からの脱却は六十三年度、六十五年度になっておる。そこで、五十九年度以降定率繰り入れ、行うか行わぬかわからぬけれども、やりたい、こう言っている。とにかく定率繰り入れをやる、その前提に立って、しかも国債整理基金に集まっておるそのお金の運用利益というものを、こちらが、めんどうだから計算した。そういう運用益を加えた国債整理基金のお金、これで償還期限が来た赤字国債の償還がどこまで可能なのかということを計算いたしますと、たとえばこのBケースである六十三年度、これは国債整理基金のお金はゼロです。そこから先は返そうたって償還できなくなってしまう。Aケースの六十一年度から償還資金がどうなるか。もし来年の定率繰り入れができなくなったら、Aケースの場合だってできなくなってしまう。  こういうようなことで、私どもいろんな計算をしたわけでございますが、いずれにしても六十一年度には償還はしなきゃならない赤字国債三兆五千九百億。六十二年度には四兆六千億。六十三年度には三兆四千億。そして、六十三年度には、Bケース、この場合、国債整理基金の残高はゼロになっておる。こっちがゼロになっておって、償還しなければならないお金が三兆から四兆というものが、手形の書きかえじゃありませんけれども、期限が迫りてきておる。これは私が言わなくたって総理の方が実態をよく御存じだと思います。  そこで、大蔵大臣、こういう客観状況というものがこの「基本的考え方」に何にも反映されてない。たくさん発行されておる赤字国債の償還なんというものは私、知りませんという前提でこの「考え方」が成り立っているのです。端的に言えば、定率繰り入れを、いま大蔵大臣言われたように五十九年度からやっていく、そういう前提考えましても足らなくなってくる。ゼロになる。そのときには赤字国債を発行して償還期限が迫ったものの穴埋めをするのか、あるいはそうでないのなら、少なくとも要調整額の金額はふえるというぐらいの良心的な計算をされるのがあたりまえじゃありませんか。返さねばならない赤字国債のその金額がどこにも入ってないというような、こんなことで財政改革の検討ができますか、大蔵大臣。これをちょっとお答えください。  あわせて、その場合、国債整理基金がゼロになっておる、その状況において、期限の来た赤字国債に対してどういう扱いをされるのか。借りかえということをなさるのか、あわせて伺いたい。
  43. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの御指摘のとおり、いわゆる要調整額の問題、いずれにいたしましても大量償還期に達しましたならば、当然最終的には国債を持っていらっしゃる人には現金が行き渡らなければならぬ、しかし、その手当てというものについてはどのようにしてやるか、ある年度までは整理基金でその余裕がある、なくなった場合における措置というものについて、借りかえをするかとか新しく国債を発行するかとか、あるいは経費を削減するとか歳入の道を図るとか、予算繰り入れをしなければいかぬ時期が来るわけであります。そのときに当たりまして、やはり基本的な姿勢としては、私は借りかえというものを念頭に置いてこれに対応することは、私どもとしてもこれは不見識のそしりを免れないではないかというふうに思います。ただ、いまおっしゃいますように、いわゆる国債整理基金というものが特別会計の形になっておって、それの償還というものが将来どのような形で行われるかというものについては、これは五十五年度予算審議の際にも中途でその表等をお出ししたことがございますが、御指摘に当たって前提を置いたものとしたら、早急にこれは提出してごらんに入れるべきものだと私も思います。
  44. 矢野絢也

    矢野委員 いま申し上げた私の方の試算ではまだ若干の誤差があるかもわかりませんから、正確な国債整理基金の運用状況についての資料をお出しいただきたい。  借りかえということは不見識——不見識どころではない、これはもう重大なことなんでありまして、不見識であるとかないとかで済まされる問題ではないですが、しかし、この「基本的考え方」を見る限りは、やり方はどうであれ、びしっと財政再建ができた状況において、つまり国民からの税収というものを原資にした形で、後に借金を残さない形で赤字国債の償還はできない、ということは、どういうやり方であれ借りかえなんですよ、これは。一遍現金で返して、そこへまた赤字国債を発行してお金をつくってそれを持っていけば、これは形はどうあれ借りかえなんですよ。言葉はどうあれ、そんなこと関係ないのですよ。要するに、その赤字国債を償還するために新たな借金を生じさせないということならりっぱなんですけれども、そうにはなりそうもないと思いますが、大蔵大臣、どうですか。
  45. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる特例公債については、従来からの国会の答弁、それから法律上の規定からいたしましても借りかえをしない、こういう方針をとっております。そこで、したがって五十八年度に発行いたします特例公債につきましても、同機の法律上の規定を置くことにしておるわけです。法律そのものにきちんとそれを毎年書いておるというところでございます。したがって、四条公債につきましても特例公債につきましても、先ほども申し上げましたように、償還については、それを所有する者に対して現金償還を確実に行うということが何よりも大切である。そこで、その財源をでき得べくんば特例公債によらず、特例公債から脱却をして、そして、きちんとやっていくのが筋であります。したがって、これからもいわゆる財政改革というものに最大限の努力をまず払うということが何よりも先決である。いま特例公債の償還財源を借りかえるということは、不見識とか言いましたが、やはり全く念頭にないという考え方を貫くべきである、このように考えております。そうなると、結局は歳出カットでやるのかあるいは増税か、あるいは公債発行、その形態は借りかえも含んだ公債発行ということ、この三つの中に求めざるを得ないということは、それは御指摘のように事実だと最終的には私も思います。今後財政改革を進めていく過程でまさにそういう事態になれば、それこそ国民の選択に帰する問題と考えておりますが、それはその時点の経済情勢なり財政状況を見て、そして各方面の広い意見を聞いて慎重に回答すべきものである。(矢野委員「国民の選択って何の選択ですか」と呼ぶ)  国民の選択という意味は、すべて現行制度というのは長い間の国民の選択の中に存在しておるわけです。だから、選挙とかそういう意味ではなく、そういう意味において国民がいずれを選択するのか、あるいはいずれの混合した政策を選択するのかというのは、積み上げの中でその時点で判断すべき課題である、こういうことに考えております。
  46. 矢野絢也

    矢野委員 都合が悪くなると国民に選択してもらって、直間比率の見直しをするとかなんとかかんとか、しようがないと思うのですけれども。  ついでだから、大蔵大臣、あなた大蔵大臣のときにグリーンカード制度をつくったんですよね。非常に張り切って、不公平税制の是正はこれしかない。公明党は、そうだと言って御協力を申し上げたのでございますが、あなた皮肉なことに今度また大蔵大臣で、どないするのですか、このグリーンカード。あのときの張り切ったお言葉からいけば、断固これは実施するということでなければ、それこそあなたの政治家としての御見識が疑われると私は思うのだけれども、どうなんですか。
  47. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに五十五年の通常国会におきましてグリーンカード制度の法律案を提案した責任者は、当時の大蔵大臣竹下登であります。また、今度これを三カ年間凍結いたします法律の提案の責任者も私であります。  私ども、当時不公平税制を是正するという一つの考え方としてこれを提案し、大方の御賛同をいただいたわけです。が、結局今日顧みれば、その後諸般のいろいろな状況というものが出た。なかんずく、多数の議員の皆さん方の御提案によって、これを延期すべきという議員提案の法律も出たという状態を見通せなかったというのは、まさに私の責任であるというふうに考えております。したがって、そういう精神を踏まえつつも、今日、これは議員立法でそれらの法律が出されおてるから、引き続き議員立法にゆだねるべきだという議論も確かに経過においてはございましたが、やはりむしろ提案者たる私の責任で、また延期の責任もとるというのが政治責任の正しいとり方ではないか、このように考えたわけであります。
  48. 矢野絢也

    矢野委員 先の見通しが悪かったという責任を感じていらっしゃるようでありますけれども、絶対に間違っていなかった、いまだってグリーンカード制度はおやりになるべきだと思います。  これはもう時間がございません。(「時間が過ぎておる」と呼ぶ者あり)まだ過ぎていません。あと数分でございますから、私、質問を保留しておるわけでございますので、これで質問を終わらしていただきます。  委員長、どうもありがとうございました。
  49. 久野忠治

    久野委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  次に、塚本三郎君。
  50. 塚本三郎

    塚本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面する内外の諸情勢につきまして、許された時間内、力いっぱい国民の立場から質問を申し上げてみたいと存じております。  昨日来、武器輸出三原則国会決議をめぐりまして事態が紛糾をいたしております。  申し上げるまでもなく、武器の輸出については、平和国家としてわが国の立場から、それによって国際紛争を助長することを回避させるために、政府みずからが五十一年に方針をお決めになったところでございます。ところが、政府の決められた方針に対していささか疑義の出るような輸出が行われておるということから、後日、五十六年の三月に政府考え方を本院におきましてきちっとただしました。そうして、政府の方針をかっちりとさせるために、いわゆる政府の方針を土台として国会の決議がなされております。だから、根は政府の三原則の方針にあることは間違いありません。政府の方針だから政府がそれを勝手に解釈を違えるということは、それが国会でがっちりと固められた決議になっておる以上は、勝手にその方針を変えるということについては問題が多過ぎると思います。  特にその国会決議のなされるときに、政府は御承知のとおり、その武器の輸出については技術も含むという説明をなされております。まして、アメリカに対しても禁止の対象となると約束をなさっておるわけです。私どもは、日米安全保障条約を、いまの日本安全保障の立場からは必要だと思っております。その日米安全保障条約を効果的に運用するためには、そんなにいいかっこうをなさって大丈夫であろうか、日本防衛に対して、アメリカからじゃんじゃんとは言わないまでも、特に航空機などにおきましては設計図も向こうから相当に買っております。いや、P3CであるとかF15も買っておることは御承知のとおりです。相手方からどんどんと武器の供給を受けておりながら、特にこのような事態で、いわゆる同盟と言葉を表現するような事態になってきたときに、こちらは分けていただくけれども、向こうへは技術さえも出さないということを、政府がそのようにきちっと言い切ることは大丈夫かなという若干の危惧が私たちはございました。しかし、政府が自信を持って御発言をなさるから、それは結構なことだ、私たちは反対じゃありません。ですから、その決議に賛成をいたしたことは御承知のとおりです。  ところが、その後、中曽根総理におなりになってから、いや、どうしてもアメリカからの強い要望がある。当時はそうでなかったかもしれませんけれどもわが国の科学技術の進歩は目覚ましい。特にアメリカからは、日本の技術に対する強い希望がすでに五十六年当時からも出ておったことは御承知のとおりです。だから、貿易摩擦あるいは防衛摩擦という立場から、これはもう防ぎ切れないと総理は御判断なさったのではないかと推察をいたします。  総理がそのように決断をなさったら、ここが大事なところだと思います。私ども、佐々木委員長のお供をいたしまして、たしか十二月の二十八日でしたか、党首会談をいたしました。その日は恐らく各党の党首が総理にお会いになっておいでになる。そのときに、政府としてはこういうふうに方針の変更をしたい、アメリカに対する技術だけは、これはうちの三原則から外したいと思うということの事前の了解を党首会談の際に説明をなさるべきではなかったか。  あるいはまた、一月十四日に政府が閣議で決定なさったときに、官房長官がこのような文書をお読みになりました。日米安全保障条約に基づいて、自主的に防衛が全的にできないとする以上、アメリカ防衛の協力をいただくことはいたし方がない、こういう立場から考えておるとするならば、私はこういうふうに踏み切ることはやむを得ないと心底思っております。しかし、それは国会の決議にはやはり抵触するものであることには間違いがありませんので、十七日のワシントンにおいでになる前に、意を尽くして各党にいち早くそのことの了解をお求めになるだけの努力と手続をなさるべきではなかったでしょうか。問題はそこにあると思います。  その努力と手続を怠ったということが、社会党さんからあるいはまた公明党さんからのいわゆる問題の指摘で、答えることができない問題になっております。防衛はどうでもいい、安全保障は反対だという単なる西と東の対立ならば、これは力で押すこともいたし方ありません。公明党さんのごときは、自衛隊の立場は民社党と同じように認めてあげよう、それは世界の中における日本の今日の置かれた立場を理解しておられるからだと思います。にもかかわらず、国会の決議をこんなにいとも簡単に踏みにじるということは国会軽視じゃないか、その手続をおとりにならなかったことに、今回総理の最も大きな問題が浮かび上がってきたのではないか。  この点を重大に受けとめられまして、国会に対して、後日とるといたしましても、やはり軽視をしたということに対して、反省と陳謝の意を表していただくことがこれからの出発に対して大切だと私は判断いたします。総理、いかがでしょう。
  51. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 去年の暮れ党首会談をいたしました際にはこのことには触れませんでした。これは、まだ政府の方針が各省調整ができておらなかったからでございます。しかし、いまおっしゃられますように、各党に対して事前に懇切に御説明申し上げるという御忠告は感謝して拝聴いたした次第でございます。  政府といたしましては国会決議に違反しない、そういう考えを持っておったものでございますからそういう態度をとった次第でございます。また、そのときには、両院の議長、副議長さんにはたしか私からお電話で事前に御連絡を申し上げた次第でございますが、しかし、各党に対しまして事前にそれを行わなかったということは大いに反省いたしておる次第でございます。
  52. 塚本三郎

    塚本委員 御反省なさって、各党に対して、これは国会を軽視したんだ、その陳謝の意と受けとめて私は進みたいと思いますが、それでようございますか。
  53. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結構でございます。
  54. 塚本三郎

    塚本委員 それでは次に、安全保障の問題を最初に御質問をいたします。  すでに今週、憲法改正に対する総理のお考えと社会党代表からの御意見とを私は静かに拝聴いたしました。憲法第九十六条の改正の手続というものと九十九条における遵守、そしてまた擁護の規定と、相反する規定が憲法上できております。片や内閣や議員や公務員はこれを遵守し、擁護しなければならない。しかし一面におきまして、改正の手続が九十六条にとられております。日本の政治制度が議院内閣制であります限り、これは相反する二つのものが一つになって運営しておりますので、総理は巧みにこれを使い分けて、時に自民党総裁としてこれを改正することに進軍ラッパをお吹きになり、時に内閣総理大臣として九十九条で遵守いたし、擁護するの御発言をなされておることが、実は二重人格だという非難を受けておられると思います。私は、このことに対しては、いまどちらが正しいとかどうこうしようと思うものではありません。  私は、この憲法問題で一点だけ総理にお尋ねをいたします。  憲法第九条は、戦争放棄と学者がこの条項を言っておることは御承知のとおりであります。先月の暮れのわが党代表春日一幸常任顧問の本会議における質問に対して、日本自衛隊憲法第九条違反ではないということの問いをいたしましたとき、違反ではないと明確にお答えになりました。それは結構です。しかしながら、去る二十二日、自民党の大会におきまして、自主憲法制定について理解を求めるの決議が決議せられたと報道されております。それは自民党の御信念でおのおの勝手だと思います。その自主憲法制定に理解を求めるという、そして調査に着手をされるとき、憲法第九条のこの条項の変更について、総理はどのように自民党の中における動きを考えておいでになりますか。改正しようとする態度でいま検討を進めておられるのかどうか、この一点だけお伺いしたいと思います。
  55. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自民党は、立党のときの政策におきまして、自主憲法制定ということをうたっております。それを相継ぎ、今回の党大会におきまして決議ということになって、自主憲法について国民の皆さん理解を広く求める努力をする、そういう趣旨の決議をいたしました。これは、立党のときの政策を踏まえまして、なぜそういうことを考えているのかということを国民の皆さんによく御理解願うことが先決だ、そういう意味で、国民の皆さんの御理解をいただく努力をことしはみんなでやろうじゃないかという趣旨の決議をしたわけでございます。  中身をどうするかということは、どこをどう改正するかということがまだ党議では決まっておらないわけであります。自民党の憲法調査会におきまして、いまいろいろ検討しているというときでございます。したがいまして、九条を含めましてどれをどうするということは、党といたしましてもまだ決まっておらない状態で、ただ自主憲法をつくらなければならぬという考えにおいては皆さん一致している。立党のときの重要政策にそれがあるわけでございますから、ありますけれども、具体的な条文やら内容になりますと、いろいろ皆さんまた議論があるわけでございまして、党内のそういう調整及び勉強をこれから懸命に続けていく、そういうことであると御理解を願いたいところであります。
  56. 塚本三郎

    塚本委員 巷間伝えられるところによりますと、この自主憲法の制定に対して理解を求めるというとき、中曽根新総理は、九条を改正して堂々たる防衛自衛隊をつくろうではないかという進軍ラッパを吹かれたやのうわさが立っております。それは全く間違いだと受けとめてようございますか。
  57. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは全く間違いで、誤伝であります。
  58. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。  安全保障について。今日の厳しい国際情勢のもとでわが国防衛力を着実に整備していくことは、日本の安全にとって不可欠であるばかりでなく、世界平和に対する西側の一員としての責任でもあると私たちは信じております。しかし、それは無原則であってはなりません。民社党の十五日から開かれる党大会で、防衛の政策におきましても、日本の置かれた国際情勢や周囲の軍事力とのバランスを考えていくべきだ、これが一つ。二つ目、日本の平和戦略とのバランスを考えていかなければならない。武器だけ、防衛だけでは本当の平和ではない、そういう意味で日本の平和戦略とのバランス。三つ目が、財政事情とのバランスなどが不可欠である、私たちは、着実な防衛力の整備を期待しながらも、そのことだけは忘れてはならない、こう党大会で打ち出すことに方針を決めております。  中曽根総理は、去る一月十八日アメリカのワシントンに行かれ、貿易摩擦やあるいは防衛摩擦に対して、いま日米間に横たわっておりまする摩擦の問題等一応修復をなさってこられたと私どもは受けとめております。それはそれなりに意義があった、相当に肌荒れをしておったところ、よくなったかどうかは別にして、危険な状態を先に延ばすだけの効果はあったというふうに私たちはそれなりに評価をすることにやぶさかではありません。しかし、問題は、すでに多くの委員がここで提起いたしましたように、その後行われましたワシントン・ポスト紙におけるオーバードーファー氏とのインタビューの中身であります。特に彼は東京の支局長を七六年か七七年までしておられまして、日本のことは十分知り尽くしておる方なんです。御承知のとおりですね。しかもそこには、外務省の代表とは言えませんけれども、外務省も出席をせられておりますので、彼は公式の発言と同じように受けとめておるのです。  その中で三つの問題点、一つは、日米は運命共同体である。二つ目、不沈空母という形容詞をお使いになりました。そして三つ目は、三海峡封鎖という発言をなさったことによって、特にソ連に対する大きないわゆる影響力を与えてしまった。この三つの点について私は指摘を申し上げてみたいと思っております。  運命共同体という言葉は、まあ総理もよくおっしゃった。私ども、年は大分違うかもしれませんけれども、戦時中に学生として育ちました。しかし、運命共同体となれば、先ほどからの矢野委員の御質問のごとく、アメリカがやられたらこちらが応援に行かなければならぬじゃないかという大ざっぱな気持ちというものを助長してしまうのです。かつて日本は、満州と運命共同体だと言って中国にまでずるずると入っていった過去は御承知のとおりです。ヨーロッパにおきましては、この言葉はドイツのヒトラーが初めて用いたと伝えられております。イタリーが侵略を受けたときに、運命共同体としてドイツはムソリーニの救援に向かいました。このとき運命共同体という言葉が使われた。だから、戦後は、運命共同体ということはヨーロッパにおいては禁句になっておることを総理御承知でしょうか。この表現は、相手を喜ばせるといっても、すでに彼らにおいてはタブー視されておるのです。だってアメリカでもすでに、そういうお言葉を使われますると、これは集団防衛なんだ。先ほどから何度も矢野委員への説明の中で、個別防衛と集団防衛とのとき、アメリカは集団防衛の中に日本を誘い込みたい、しかし、こちらは憲法のたてまえからいいまして、そういった環境に置かれた日本の立場からして個別防衛なんで、集団防衛は大変なことだというふうに歴代の総理及び防衛庁長官はこの辺のガードだけはきちっと固めておいでになったと思います。  そのとき、いかにも日本総理は、今度は集団防衛に踏み切ったのだというようなそういう印象を与えてしまいまするから、もうきのうあたりから合同演習、合同演習と言って、すでに海上自衛隊に対してお誘いが来ておることは御承知のとおりです。この集団防衛というのは非常に軽率な御発言であったと思いますが、総理、いかがです。
  59. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 集団防衛という言葉は、私は使ったことはありません。運命共同体という言葉は使いました。それから、海峡コントロールということも使いました。不沈空母という言葉も使いました。それはワシントン・ポストとの朝飯会で使ったのであります。しかし、そのいきさつは、いままで申し上げたとおりであります。  それで、運命共同体という言葉は余り外国語にはないようですね。ただ、コモンデスティニーという英語はあるようです。あるいはシェア・ザ・デスティニーとかシェア・ザ・コモン・デスティニーとか、そういう言葉はあるようであります。したがいまして、この言葉を訳したときも、私が前に申し上げましたように、民主主義、自由主義をともに信条とする、それから文化や経済の膨大な相互依存関係を持つ、それから安保条約で共同防衛を行う、こういうさまざまな点において運命を分かち合う、そういう訳になっておるのです。運命共同体という訳には直接的にはなっておりません。ただ、私が運命共同体、これこれのことがあって運命共同体のようなものだということは言ったことは事実であります。しかし、それはいま申し上げましたように、自由主義とかあるいは膨大なる経済相互依存関係とか、そういうものを形容する意味で言ったのであります。それは集団的自衛権を意味しているのではございません。
  60. 塚本三郎

    塚本委員 もちろん、そのつもりでおやりになったことは承知しているのです。しかし、向こうには言葉がないのですね。だから、通訳もそれをどう訳すかということでずいぶん困られたということも伝えられておりますが、そのことがいわゆる集団防衛だと受けとめられるように向こうは思いがちなんです。そのことがきわめて危険だということを私どもは心配いたしております。  二番目の不沈空母でありますが、あなたは海軍の将校だということですが、空母というのは本体じゃないんです。出城なんですね。だから、敵を本体で受けとめる前に出城で守るというときに空母、まあ空母は攻撃という表現がありますが、攻撃といっても爆撃機は積めませんから、戦闘機が中心ですから、守ることが中心であることは間違いない。でも、それはいわゆる空母そのものが本土じゃないのです。本土を守るために先に行って防衛するのです。総理、御承知でしょう。かつて太平洋戦争で日本が危なくなったとき、台湾は日本の不沈空母だと日本政府は言ったのです。本土を守るために台湾を不沈空母と言ったのです。マニラが陥落をしたとき、日本の軍部は沖縄こそ日本本土における不沈空母だと、こう言っているのです。わかりますか。  日本を不沈空母と言うことは、どこから見てでしょうか。だからこそ、どこかの飛行機バックファイアが来たときには食いとめてみせると言うと、日本人を犠牲にしてあなたたちを守らせていただきますよと相手方が受け取ったら大変だと思います。まさか総理はそんな御意思はみじんもないと私は信じております。でも、その言葉遣いというものはきわめて危険な方向に、言ったじゃないかと、運命共同体というものが共同防衛にというように持っていかれるような心配というものを、合同演習年三回か五回のやつが毎月一回ずつやろうじゃないかという形に持っていかれる心配がすでに出てきておるということじゃないでしょうか。  三海峡封鎖、これ、本当にできましょうか。私は本委員会において二年ほど前にこの点を提起いたしました。機雷はあらかじめ爆薬を装てんしておいたら危ない、だから緊急事態のときに一つ一つ爆薬を入れ、電池を仕掛けて、そして、その海峡まで持っていく作業というものは呉だけでは三カ月かかりますよ、なぜ横須賀を早くやりませんか、もし、その意思があるならということを私はここでただしたことがあります。いま計算をいたしましても、三海峡を封鎖するために、やはり機雷中心で考えるとするならば三カ月かかるのです。戦争は終わってしまっておるのです。できもしないことを相手方を喜ばせるような議論は危険でございますよ。まして、津軽海峡は国際航路だと聞いております。さすれば、それを封鎖するということになれば、これは相手方でも怒ると思うのです。歴代総理の中で海峡封鎖など——いや、いざとなったらやるという腹はみんな持っておる、どの総理でも。また、守るためには当然だという気持がおありでしょう。でも、平時においていわゆる公の海を封鎖するなんというようなことは、これは危険な発言ではありませんか。いずれもアメリカがやってほしいと望んでおることばかりであります。日米間における摩擦を修復なさるというけなげな総理の気持ちは多といたします。しかし、よって立つそのような総理の御発言の結果が、すでに十八日になされたら十九日には、ヨーロッパにおきますところの巡航ミサイルとSS20等の撤去、その撤去されたものはウラルを通って極東に配備するとボンにおりましたグロムイコ・ソ連外相はおどしをかけてきております。明くる日には、モスクワからわが党、民社党に対して、非核三原則を堅持してくれるならば極東におけるところのいわゆる戦域核についても考えようじゃないかというお誘いで、わが党に対して呼びかけをなされて、平和攻勢への手を向けてきておることは新聞で御承知のとおりです。  総理の御発言というものは、一ワシントン・ポストにおける懇談ではあったでしょうけれども、さまざまな国際的な影響というものが、あなたがお偉い方であるためによけいに世界に及ぼす影響は大きい。しかも、それができることならばそれは一つの方策でありますが、できもしないことまで含まれておるというところに総理としての御発言はもう少し慎重になさるべきでなかったか、こう申し上げたいのですが、いかがでしょう。
  61. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本さんの御発言は傾聴いたしておりますが、一面におきまして、やはり自分の国は自分で守るんだとはっきり世界に宣言をする、総理大臣もその決心でこの国を守るんだということを外国の首脳部にも外国の議会にも徹底してもらう、それはまた非常に大事な効果を別に持ってきておると思うのです。  いままで、ややもすればアメリカの議会筋やあるいはヨーロッパ筋等におきましても、日本は一体自分自分の国を守る気持ちがあるのだろうかという誤解やら懐疑があったと思います。だからこそ、彼らが日本防衛力をもっとふやしてくれとか、何とかかんとか言ってきておるのは、そういう日本自分自分の国を守る決意が欠如しておるのではないかという誤解から、そういうものも来ておることが多々あったと私は思うのです。それを、やはり自分の国は自分で守るということをはっきり総理大臣が言うということは、一面において、日米安全保障条約を結んでいる相手が本気で守るんだな、それじゃこっちも一生懸命守ってやろう、いざというときには日本を助けなければいかぬ、そういう気持ちも起こすことができると思うのです。  私は、アメリカ議会やアメリカのホワイトハウスやアメリカ行政府等は、私のそういう発言によってやはり日本をある程度見直してくれたんじゃないかと思います。本当にこれはやるつもりだな、それじゃ、安保条約をいざというときには発動して日本を守らなければならぬ、そういう効き目がなきにしもあらずと私は思っております。そして、その決意は実行していかなければならぬと思っておるのであります。  しかし、いま海峡コントロールについて御発言がありましたが、できないということではないのです。相当程度やれるのです。私は防衛庁長官をしておるときに白書をつくったりいろいろいたしましたが、あのころからもうすでに海峡コントロールという政策は海上自衛隊の中に入っておるわけであります。そのためにいろいろ訓練もし、努力も実はしておるわけです。いまおっしゃる機雷の問題は確かにございます。ありますけれども、それはそういう情勢が出てくるまでには、たとえば情勢分析やらそういう情報その他によりまして見当がつく、すぐ防衛出動というわけではない、事前にいろいろな問題もまた出てくるわけであります。その前にもいろいろ外交活動もございましょう。そういう面から、海峡コントロールを日本自衛隊ができないと断定なさることは非常に私は危険であると思っております。相当程度やれるのだ。しかし、一〇〇%はもちろんやれっこない。その練度を上げていく、それがいま海上自衛隊考えておる努力であるということを申し上げたいのです。
  62. 塚本三郎

    塚本委員 総理自分の国を自分で守るという決意は、私もそれはすばらしいことだと思いますし、それは独立国としての責任者の御発言で当然だと思います。しかし、それがために誤解を招き、あるいはできないような問題を含んでおりはしないか。私は、御無礼ですけれども、あなたの決意はいいんです、だが、具体的にやってみるとできなくて、後から相手を怒らせるようなことをしなさるなと、言いたいのはこれなんです。  あなたは四十五年の一月から四十六年七月まで佐藤内閣の二十五代長官として防衛問題と取り組まれました。五十一歳の若手長官としてさっそうとして六本木においでになりました。直ちにジェット戦闘機にお乗りになったり、あるいはまた自衛隊の隊舎に入って一緒に生活をなさった。まさに総理就任後韓国に飛び、ワシントンに飛ばれたと同じような機敏な行動をなさった。そういうあなたの本質というものを私はとやかく申し上げません。  しかしながら、就任直後の四十五年三月、外人記者クラブで講演をなさって、これからは海上自衛隊の小船艇を充足し、日本列島や三海峡の防衛を充実する、おっしゃったとおりです。また、米軍基地を自衛隊が管理して共同使用を図ると語っておられます。これは四十五年三月でございます。  次に、三月十九日、自民党安全保障調査会で、三十二年五月の「国防の基本方針」なるものは、閣議決定は、有事の際に米軍の来援を主体にしてわが国防衛政策の基本としているが、自主防衛こそ独立の防衛のあり方だ、これは今回おっしゃったと同じ信念だと思います。自分の国は自分で守る必要がある、こうりっぱに御発言をなさっております。外部からの武力侵略は、日米安保により米軍の来援を待たずに自衛隊だけの力で撃退するように「国防の基本方針」を全面改定すべきであるとも提唱なさいました。  そして、先行きの見通しとして、四十七年度から始まる四次防の防衛力整備計画の策定に当たっては、あなたは総額五兆三千億円で陸上自衛隊十八万体制を叫ばれました。すなわち、陸上自衛隊十八万人、現在でも十五万五千ですよ。戦車一千両、航空機九百二十機、艦艇二百隻、こうあなたはその策定で申されました。ところが、十八万と四十七年におっしゃってから十年たっておりますが、まだ十五万五千です。戦車一千両は八百九十両です、十年たっても。航空機九百二十機は半分以下の四百機です。艦艇二百隻は百六十三隻、二十四万トンとおっしゃったが二十一万トンです。 十年前に壮大な防衛力整備計画を発展さしていこうとおっしゃられたけれども、御就任後わずか半年早々でこれだけの計画を発表されたその結果がどうであったのか。小艦艇の拡充計画はその場限りの発言に終わり、米軍基地の自衛隊管理もいまだに実行されておりません。「国防の基本方針」の全面改定は、四十五年七月、自民党本部で当時の川島副総裁や田中角榮幹事長らが協議して見送りとなりました。四次防計画に至っては全くのペーパープランであることは、先ほど数で申し上げたとおりであります。大蔵省が、中曽根構想は社会資本の充実を圧迫することになり、予算編成上無理であると難色を示し、一夜にして消え去ってしまいました。  御決意はいいのです。だけれども、その決意が、長官がそれだけのことを語り発表なさって、ほとんどできなかったということ。今度も、その決意はいいのです。だが、具体的なことまでおっしゃると、できなかったときにアメリカは、また前総理のごとくうそを言ったと食言のようなことになったとき、相手方の不信と怒りは倍になってくることを私は心配いたしております。  続けて申し上げますならば、当時の防衛庁幹部は、あなたの指示に従って、喜んで、おれたちの立場に立つ若き長官がおいでになったと一生懸命に作業を続けられた。画期的な拡充計画に喜んで働けた。そのあなたの進軍ラッパに踊らされた幹部の方々の落胆ぶりが目に見えるようであります。  総理、そのことの御記憶はおありでありますか。
  63. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまのお話は四次防の草案をつくるときのお話なので、草案というものは最終的には大蔵省とのかけ合いでみんな縮小されるものなんです。防衛庁の原案、草案というものをいまお読みになった。しかし、たとえば陸上の十八万人体制というのはいまでもそうです。それは定員が十八万人になっておるのです。これを十九万とか二十万にふやさない、陸はもう定員はこれでよろしい、そういうストップをかける意味で十八万体制ということを言っているので、実員は十五万くらいしか充足されていない。それは当時もいまも、いまはもっといいと思いますけれども、大体変わらないのです。  それから、艦艇につきましては、私は大体海空重視の思想を持っておりましたから、できるだけそちらの方を充実させようという方向で四次防をつくるように努力をいたしましたが、いずれにせよ、それは草案でありまして、最終的には大蔵省と金の相談でへっこまされる、それがそういうふうになったというわけであります。  それから、アメリカとの関係におきまして約束したというのはありません。私は、約束したと言えば、それは鈴木・レーガン会談の共同コミュニケは守ります、それを言ってきました。それは約束と言っていいでしょう。それ以外新しい約束はしておりません。  それから、できるできないというのは、これは水かけ論みたいになりますけれども、たとえばあの当時の私の思想は、大型の、昔で言えば巡洋艦とか大きい船をつくるよりも、むしろ日本海沿岸に防備隊をうんとつくって、そして六十ノットくらいの高速ロケット艇を配置した方がいい、そういうことを考えまして、そして、その試作をやらしたのです。たしか林兼で下関でつくったと思います。ところが、それをやってみたところが、日本海は冬は非常に波が荒い。そのために安定性がないというのでいろいろ議論がありました。しかし、それでもいままた見直されてきまして、いまはそういうような、ヨーロッパでも大体イギリスあたりがそういう思想に変わってきまして、高速ロケット艇を整備しようという方向に非常に最近変わってきております。  こういうわけで、この防衛思想、防衛構想というものは、時代により、兵器の進み方あるいは相手方の出方、そういうものによっていろいろ対応が出てくるんだろうと私は思っておりまして、一概に断定することはいかがか。  それから「国防の基本方針」につきましては、私はあれをしさいに点検いたしまして、大体よくできていると思うのです。しかし、最後のところが、たしかこの思想といたしまして、日米安保条約を主にして、そして自衛隊が従になるような印象の表現になっておる。ここはよくないじゃないか。むしろ自衛隊自分自分の国を守る、それを日米安保条約で補完する、それが防衛の本質じゃなかろうか。自分自分の国を守れもしない人間を外国が助けてくれるはずがない。そういう意味から、まず自分自分の国を守るということを先に強く出して、そして安保条約で共同防衛する、そういうふうなのが適当ではないかと考えて、当時官房長官は保利さん、それから外務大臣の、だれでしたか、お亡くなりになった方といろいろ相談をしまして、何回か会議をいたしました。しかし、そのうちに私らの任期が切れまして、防衛庁長官をやめまして、それで、それはさたやみとなった。こういう次第で、自民党側がどうこうしたということは私の記憶にはございません。それは愛知外務大臣です。
  64. 塚本三郎

    塚本委員 私、長官在任当時のおっしゃったことを否定しているわけじゃないのです。今回おいでになったその精神は、アメリカにおいて語られたこともその精神は私はいいと思うのです。だけど、余り具体的なことを言われることによって、内閣総理大臣でございます、防衛庁長官でございます、この立場でおっしゃると、それはやはり実現されるものというふうに見るのがあたりまえなんですよ。だから、その思想は残っておりますで済まされていいのか、ここが問題のところなんです。ようございますか。あなたが言ってみたって何にもできやしないじゃないか。それは一年半でおやめになったんだからいたし方ないじゃないんです。  その後、あなたは通産大臣をおやりになった。総務会長二回もおやりになった。党の最高の実力者である幹事長までおやりになった。当時における予算は、だぶついておったとは言いませんけれども、いまのようなみじめな状態じゃなかったのです。やれるときにもっとやっておいてくださったならば、今日こんな状態にはならなかった。あなたがそれから第一線をお引きになるなら別なんです。予算編成における最も実力者でありまする総務会長や幹事長をおやりになったじゃないか。そのときに、私がやめたからというだけで、それはやはり中曽根先生はおっしゃる道はいいけれども、中身はないな。彼らは何と言っておるか、御存じでしょうか。部隊視察に行かれたときに、便所の中のトイレットペーパーが、自分で金を出さなければならなかったから、しりふくぐらいは出すべきだと言ってトイレットペーパーだけは無料支給をなさったから、長官のなさったのは在任中でトイレットペーパーだけをただにしたんだという皮肉な言葉が残っておるのですよ。  そういうような状態になることを、いわゆる自衛隊だけではなくして、日米間においてそのような期待に反するようなことになったら大変だということで、その精神なら精神だけにしておいていただかなければ危険だということです。具体的にそういうことまでおっしゃって、バックファイアだなんてことを言いますと、これはやはりアメリカに対する防波堤の役目を果たす決意をしてくれたんだというようなふうに向こうは受け取ってしまうのです。このことが重大だと言うのです。あなたが精神的なことをおっしゃる、それは賛成です。しかし、それはその限度にとどめておかれるのが一国の宰相としての配慮だというふうに私は申し上げておるのです。  それよりも、やはり防衛なら防衛でもって、具体的にもっと日本の国の防衛を充実するような方法をお考えになることが必要ではなかろうか。特にお金がないときだったならば、法制的に、有事になった場合にどうするんだというようなことならお金要らずに済むでしょう。奇襲の場合に対処する場合どうするんだ。部隊が具体的に動くために通信網はどうしたらいいのかとか、土地収用はどうするんだとか、その場合において土地を収用されたところの国民のいわゆる所有権はどう補償するんだとか、退去をせしめたときのその職業選択と生活はどう保障するんだとか、その奇襲に対していわゆるけが人はどこが責任を持つんだとか、そういう具体的な——いま正面装備でもって、F15が何機、あるいはまたP3Cが何機というような正面装備の金のことはどうでもいいというのじゃなくして、こういうときにこそ静かに、お金は要らないけれども実質的に必要なものをわれわれは整備するような有事法制を検討していくことが必要ではないか。有事法制と言うと、戦争をやるための準備だというふうに一部の政党が誤解をしておられるようですが、そうじゃなくして、お金を使わずに、国民の生活の安全のために、部隊が一〇〇%自由に動けるというためには、現在そこで生活をしておるところの住民の保護と補償はどうするんだ、部隊の活動とその被害を受けるところとのバランスをどうとるんだというような法律的な整備は当然なさるべきではございませんか。  こういう点について、防衛庁長官、どういう検討がなされておるか、御報告いただきたい。
  65. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 有事法制について御報告を申し上げます。  有事法制の研究につきましては、五十六年四月に、第一分類として区分いたしておりまする防衛庁所管法令についての問題点を中心に報告を行いましたが、引き続きまして、さらに、この第一分類についての細部の検討を行うとともに、第二分類の他省庁所管の法令について防衛庁としての立場から問題点の拾い出しに重点を置いて検討を進めてきております。  それから現在、防衛庁としての立場から拾い出しました関係法令の条文の解釈や有事の際の適用関係関係省庁に照会するなどの作業を行っておるところでございます。  第一分類の防衛庁所管法令の検討につきましては、五十六年四月の中間報告で問題点を一応整理したものと考えておりますが、自衛隊法第百三条の政令に盛り込むべき事項を初め、細部の検討を要するものについて引き続いて検討を加えているところでございます。  以上でございます。
  66. 塚本三郎

    塚本委員 長官 、それは何にもしてないと同じこと。三年半検討なさって、それでいまだにこういう状態だから。  私はもう時間が少ないからここでどうせいということを申し上げませんけれども、私は注文をつけておきます。  やはりこういうとき、お金のないときには、現在できた武器というものを、いわゆる国民の生活安全のために最大限に動き得るためにはどう処置したらいいかという自衛隊の一〇〇%効果的な動き方、さすれば現在そこで生活をし、そこでいわゆる仕事をしておられる国民というのは、専守防衛ですから行くのじゃないのです、向こうからやってくる場合の処置なんですから。そのときの住民の権利保護、権利制限はどの限度にとどめるべきだ、その場合の補償と職業とはどうするんだということを、双方から法律的にきちっと検討していただく必要があるというふうに注文を申し上げておきます。ようございますね。  さて、もう一つ、奇襲に対処する場合において、すでに一機百十億と言われておりますF15戦闘機が二十機、もういま製造の過程にあることは御承知のとおりです。ところが、奇襲で来たときに、真っ先にこれが攻撃の目標になることは御承知のとおりです。百十億もするような高い機械で、しかも、これは弱いのです。やられたら一たまりもないのです。これは雨ざらしなんです。北海道の千歳において、二機だけがシェルターがあるだけのようでございます。やっぱりこれを守っていかなければならぬじゃないでしょうか。あるいはまた、ガソリンタンクはどうしておりますか。少なくとも地下ごうの中に入れておかなかったら、タンクさえ爆破してしまえばもう一機も飛べないじゃありませんか。こういう問題等、具体的にいま正面装備とともにいわゆる抗堪性というのですか、私は具体的な言葉を知りませんけれども、これがいつでも奇襲に役に立つように守っていくということも大切な道ではありませんか。それはどうしておるのでしょう。
  67. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 抗堪性の問題並びに継戦能力の向上の問題につきまして、今日いろいろ議論がございます。  ただいま先生御指摘のように、特にこの抗堪性の問題につきましては、五十八年度におきましてただいま審議を賜っておりまする予算の中では、短SAMやあるいは携帯SAMの問題や上へかぶせる航空機掩体あるいは滑走路の復旧マットその他につきましても努力をいたしておりますが、実は、この経費につきましては若干経費減を余儀なくされたところもございます。  これは実を申しますると、こういう厳しい財政事情のために、主として正面装備の充実の方に資金を回して、長期を要するこういった正面装備品等を相対的に優先せざるを得なかったという事情でございまして、確かに御指摘のようなところがございますが、私どもといたしましては、今後とも、ただいま御指摘のような問題点につきまして努力をなお一層続けていきたい、こう考えておる次第でございます。
  68. 塚本三郎

    塚本委員 一機つくれば百億を超えるP3Cあるいは百十億のF15、これをシェルターならその十分の一以下でできるのでしょう。でしたら、もう少しできたものを大切にするということでないと、いざとなったときにだれだって考えるのは、真っ先にガソリンタンクをやりますよ。P3Cを七十五機今度国防会議でつくる、現在七機でございますけれども、これだって百億以上でしょう。こんな百億以上のものをつくると言っておいて、これは幾らです、潜水艦のスクリューの音波をとらえてこれがどこの船であるかという、ASW OCと言うのですか、私は技術的なことは知りませんが、厚木基地にあるところの、その電波をとらえてどこの潜水艦なのかすぐ打ち返すところのこれ一基ぼんとやられたら目つぶしに遭ったようなもので、七機は全部機能を果たさないのです。それが掩ごうもなければ地上に野ざらしになっておる。  こういう姿は、いかにも私は、日本防衛のためだと言いながらアメリカさんに対してこれだけやっております、これだけやっておりますという言いわけのためにしか聞こえなくなってくるのです。  だから、それ一機を減らすことによってそういうものが十機助かるのであるならば、その方を考えるべきじゃないか。だから、金かないというのじゃなくして、全体の中でそういうことを考える必要がありはしないか。それが本当の意味の国民の生命を守るところの防衛の道だと私は判断いたします。総理、いかがでしょう。
  69. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ごもっともなお話であると拝聴いたしました。
  70. 塚本三郎

    塚本委員 海上自衛隊アメリカの艦艇とが合同演習を年に四、五回行っております。そのとき、太平洋上において日本は補給艦がいなくてガソリンがないときは、アメリカの艦艇に補給を頼むのだそうです。後から、横須賀基地に帰ってから金を払うのだそうです。アメリカの艦艇が補給艦を持っていなくて日本の艦艇にガソリンを分けてくださいと頼んだときは、ノーだそうです。仕方がないから横須賀基地まで補給に行かなければならない。これが日米におけるところのいわゆる防衛力整備で、あるいは同盟という言葉を使っておる相手方の立場でしょうか。聞いてみると、物品管理法によって日本から貸してやれないのだそうです。富士山のふもとで演習をしておるときガス欠を起こした、日本軍貸してください、ノーだそうです。こんなばかなことで断る方も肩身が狭いと艦長は嘆いておる、向こうじゃ一体どういうことなんだと。ところが、自衛隊に入ってきて見学やそういうときには、自衛隊宣伝のためだから貸してあげられます、大事な運命を決する訓練のときはだめだ、こうなんだそうです。  聞いてみますと、六〇年安保以来アメリカが中心で日本は後からこちょこちょとついていったのだから、まさかアメリカに補給してあげるなんてことは想定しなかったのだそうです。これじゃどうにもならない。こういう問題を一つ一つ、いまや本当に信頼、揺るぎなき信頼関係総理がおっしゃったならば、直ちに、こういう法制の整備等は金が要るわけじゃないじゃありませんか。長官、どうでしょう。
  71. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まことに御指摘のとおりでございまして、この問題につきましては、有償と無償によって法制度がちょっと変わってつくられてもございまするし、海と空と陸との間でもまたいろいろと使い方が変えられておりまするが、精神から申しますると、この問題につきましては、わが方としても目下鋭意関係省庁と詰めに入るように努力しつつあるところでございます。  必要あれば、この問題につきましてはさらに細部、政府委員から答弁をいたさせます。
  72. 塚本三郎

    塚本委員 もう欠陥があることだけお認めいただければ、総理、こういうものを督励していただいて、せっかく総理がそこまで日米間において心を砕いておいでになるなら、とんでもない状態になっておるというふうにお気づきいただけたと思いますので、直ちに手がけていただきたいと思います。  昨日の午後五時三十七分、種子島における宇宙センターから実用静止衛星CS2が打ち上げられました。その後軌道に乗ったかどうか、いまごろだろうと思います。ところが、この通信衛星は、災害時などで地上の通信施設が被害を受けても、送受信用アンテナを使って災害や非常時の通信確保に役立ち、さらに離島との通信回線を設定する等を容易ならしめることができるようになっておるということですが、科学技術庁長官、そうですか。
  73. 安田隆明

    ○安田国務大臣 釈迦に説法のようなことになりますけれども、宇宙開発事業団法、これを御審議願ったときに、この法案の趣旨は、日本の宇宙技術開発はあくまでも平和でいきなさいよ、平和に徹しなさいよ、こういうことと、同時に、各両院の委員会の審議、附帯決議でもって、全会一致でこれが利用についても平和に徹すべし、こういうことでございますから、当庁といたしましてはこの法並びに附帯決議、この線上においてこれを使う、開発する、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  74. 塚本三郎

    塚本委員 そこなんです、問題は。それじゃ、自衛隊は平和のためには役立たないという規定になっておるようですが、そこが問題なところなんです。災害を中心にして考えていっておって、一番災害に役に立ち、必要で、そして知事さんから要請があったら出なければならぬのは自衛隊なんでしょう。宇宙におけるところのいわゆる条約というのは、お月さんや天体に核その他のものを載せてはいけないという趣旨の平和利用であって、空間自身には何ら触れていないはずなんです。そのとき、通信連絡やあるいは災害出動のため、そういうことに自衛隊が使えないというような状態にしておいて果たしていいのでしょうか。  平和の目的に限り、それはいいことです。平和とは何だといったら非軍事だ、こう言うのです。そうすると、災害出動は非軍事ではないのか、自衛隊の諸君はそう言うのです。はるか離れた父島と母島は、電話回線が東京都内並みなんです。ところが、もう一つ先の硫黄島には、百人を超えるところの自衛隊員がおりますけれども、これは電話が届きません、こうなんでしょう。おれたち日本人じゃないのか、妻子をふるさとに置いて第一線で命をささげてがんばっておる、彼らはそういう気持ちでしょう。電話回線をなぜ通さないんだ。これからシーレーンはどうするんだ。彼らにしてみるならば、宇宙条約に違反するというのだったら、米ソはどうしているのだということです。  その趣旨というものは、核その他の危険なものを宇宙に載せてはならないということであって、あの通信衛星の中に核やそういう危険性なものを載せているはずないじゃありませんか。レーダーにおけるところの通信ぐらいのことをこわがってしまって、日本だけがそういうふうにしておるということは、一体それじゃ自衛隊の災害出動は、これからは軍事でありますから来ていただかなくて結構ですと言うだけの自信はありましょうか。総理、この点どうでしょう。——君は総理じゃないだろう。
  75. 加藤泰丸

    加藤(泰)政府委員 事務的なことでございますので、研究調整局長から先に御答弁さしていただきます。  先ほど科学技術庁長官から答弁申し上げましたように、わが国の宇宙開発は平和目的に限りということで、国会の御決議並びに宇宙開発事業団法第一条の規定によりまして、平和目的に限りこれを推進しているわけでございます。  したがいまして、自衛隊がこれを利用するということは、これは私どもの平和の目的というのに合致しないということで、いまのところ、いままでの非軍事というところで、私ども自衛隊がこれを使うということをいまの段階では予定していないわけでございます。
  76. 塚本三郎

    塚本委員 総理、この話を聞いて心痛みませんか。そういう狭い解釈で、そして自衛隊の通信そのもの自身を否定するというのは、十四年前、本委員会における社会党の石川委員質問にうっかり答えてしまったのですよ。それ以来、十四年間ょう直さずにおるのです。防衛庁だって、国土庁だって、直したいという気持ちがありながら、よう直さずにおるのです。勇気のある総理としては、私は心痛んでおられるだろうと思いますので、私は軍事目的に使うなんてとんでもない、そのことは、はっきり私もその点は否定させていただきます。しかしながら、災害時の、あるいはまた家族との電話回線ぐらいは許してあげるのが当然じゃありませんか。ただでさえも日陰の子と扱っておる彼らを、この際、中曽根総理のできたときぐらいは、きちっと歯どめをかけて利用の道を開いてあげる、私はそのことを進言いたしますが、総理、いかがでしょう。
  77. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民社党がそういうお考えでありますならば考えてみます。
  78. 塚本三郎

    塚本委員 悪用しないように、きちっと歯どめをかっていただいて、御検討いただきたい。  さて、政治倫理の問題に移らさしていただきます。  本国会における最も重大な問題の一つは、一月二十六日に行われました田中総理に対する論告求刑をめぐって、倫理の確立が強く求められております。総理以下各大臣や自民党代表の方々の御意見は、一様に、裁判制度と国会の関係を論じ、求刑の段階で議員辞職を求めることへの拒否の気持ちと非難の声を制度の面から論じておられます。第一審においてやめろと言うのは、これは裁判制度を否認することじゃないか、その御意見は、その限りにおいては、あなたたちの御意見は正論だと私も思います。一審でやめろなんというようなことを言うこと自身は、法律の制度としてはそれを言うことは無理だということを知っております。  昔から、警察と検察の二察が一つになって政治に手を出してきたときには、一たまりもなく民主政治は崩壊してしまいます。まして、検察が単独で動き出して、第一審の求刑の段階で直ちに野党やマスコミがやめろやめろということで騒ぐことに対しては心配だという皆様方の考え方も、私はその限りにおいては正論だと思います。  しかし、野党の私たちは、そんな立場からおやめなさいと言っておるのじゃないのです。それでは、私たち野党は、今秋行われるところの秋の第一審判決まで黙っていろ、最高裁の判決まで黙っていろといって、黙っておるべきでしょうか。世間の人たちは、野党は一体何しているんだ、国民やマスコミが間違いだとは非難をするとき思いませんね。どうしてでしょうか。私は、刑事事件における裁判制度がいかなるものであるか、第一審の判決が下されるまでは待つべきだという考え方に対して、いや、それは、待つということに対しては、事は余りにも重大過ぎるというふうに思うのであります。  それは総理、決して田中総理に対する私情だとか、あるいはまた憎しみやかばうという気持ちではなくして、刑事被告人となって、最高の五年という求刑がなされた、この方は、やっぱり被告人らしく、つつましく、謹慎をなさるのが本当じゃないでしょうか。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕 何千人という聴衆の前で堂々と議論をなさり、あなたのお株をとって解散の時期まで議論をされるという状態を、野党は黙っておれということができるでしょうか。問題はそこなんです。  何かの会合でもって、自民党を責任とって離党なさった方でしょう、にもかかわらず、ぐずぐず言うなら自民党から出ていってもらおうじゃないか、あなたがおっしゃるようなことを田中さんがおっしゃったとマスコミは報道いたしております。これは人間として、あれだけ信頼をなさるお方ならば、無罪の判決が出るまでは、訪ねてこられる人を追っ払えとは言いませんけれども、何千人なんという会場へお出しなさるな、私は当然そのことを要求するのが国民の気持ちじゃないでしょうか。  大体こんなところへ、決議文なんかをわれわれに出させようとするのが間違いじゃありませんか。われわれはもう、第一審の求刑だけでいわゆる対決をして、法制を破ろうなんという気持ち自身がばかなことだということは、国会議員だったら全部知っていますよ。知っておるのにかかわらず、その政治的影響力をお考えにならずにお逃げになるところに一番の問題がありはしませんか。田中さんのかつてのすばらしい能力があればあるだけに、その点がわれわれにとっては余りにも大きな影響力となり、しかも悪い形で影響を与えておると受け取っているのは当然じゃないでしょうか。総理、その点どうお受けとめになりますか。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 塚本さんのお言葉として、謹んで拝聴いたす次第であります。
  80. 塚本三郎

    塚本委員 あなた、田中さんが引退なさったら総理大臣としての務めができないわけじゃないでしょう。あなた、田中さんがああしてホテルでもって家の子郎党何十人あるいは百人くらいを前にしてぶっていないと、中曽根総理、不安だとおっしゃい、それなら。どうですか。
  81. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前にも申し上げましたように、田中さんは田中さん、中曽根康弘中曽根康弘であります。
  82. 塚本三郎

    塚本委員 十二月二十二日のロッキードの公判におきまして、田中さんは、みずから初めて裁判長の質問に対して、政治家の第一歩は、外国の第三国人からの政治献金は絶対受けてはならないということで、これは大原則だ、自分でそう信じておっしゃってみえるんでしょう。そう言ったことを、檜山氏、丸紅の当時の社長さんが渡したと言ったものだから、あなた受け取っておるんでしょうと言われたのに対して、檜山氏が言ったとすれば人格を疑うと答えております。外国からもらった、そのことだけでこれはならぬことだと、みずからそういうふうにおっしゃってみえるんですね。もらったとするならば、それは大変なことだというふうにみずから語ってみえるんです。  ところが、二十六日の求刑で懲役五年、追徴金五億という空前の刑が言い渡されたとき、その主任検事は自信に満ちて、ロッキード事件がアメリカで報告されたとき、五億円という金をもらっちゃったけれども、これもう一遍返すけれども受け取ってくれぬかと言って田中さんみずからが、渡した丸紅に対して返す交渉をしたということまでつまびらかにしておるんです。返済ということを、そう言って事件はなかったことにしてくれと丸紅に言われたそのやりとりまで、全部相手方はしゃべっているのです。  私も、学生時代に刑事訴訟、犯罪捜査を六年間やってまいりましたけれども、共犯はばれるんです。単独犯は逃げおおせますよ。だが、相手方があるんだから、共犯は必ずばれるんです。相手方が全部具体的に言ってしまっておるんでしょう。そして、丸紅の社長が本委員会に呼びつけられるときに、うまくやれよ、かりそめにもとこう言って、渡したなんということを言うなよということまで電話で頼んだことまで、実は検事の前でしゃべってしまっているんですよ。ここまで授受が明らかですよと検事は論告の中で語っておるんですね。さらに、御承知のとおり、運んだところの秘書の榎本氏の前の妻三恵子さんが、有名なハチの一突きで国民に生々しく語っておられることは事実なんでしょう。  だから私は、有罪であるか無罪であるかで刑事のことを言っているんじゃない。受け取っちゃならないとみずから言ってみえるんだけれども、現に受け取ってみえるということは、余りにも生々しく出てきておるんです。判決を受けられるまでたなざらしにしなさるな、こういうことじゃないでしょうか。  さらに、五十一年の十一月、本院ロッキード特別委員会の秘密会で、当時の法務省安原刑事局長、いまの検事総長です。彼は本院に出てきて何と言っているか。ロッキード社の資金三十ュニットの中の一部、一千万円を丸紅の伊藤宏から田中氏の秘書榎本氏を介して受け取り、収賄したと認められますと、こう断定しているんですよ。いいですか。しかし、いまおっしゃったとおり、この件は請託の事実がないため単純収賄罪となり、五年ではなくして三年、単純収賄ですと三年ですから、公訴時効が完成していると認められると本院で答弁しておられますので、だれが考えてみても、もうこのことは現検事総長である当時の刑事局長が、一千万円を受け取ったということをすでに本院でもってきちっと言っておるのです。刑事局長が本院で、金を受け取ったということを述べておられる。その刑事局長答弁まで否定なさるわけではないと思うのです。もちろんそのことは、外国から金を受け取ったことは政治資金規正法の違反でもあることは、御承知のとおりでございます。  ですから、これはどう考えてみても、判決までわれわれにやいのやいのあおり立たせて、そして政治の中心に、政治問題の中心に巻き込みなさるな。これはこの際はいわゆる責任をおとりいただくように、ここで議論をする前に、あなたの先輩か友人か、どちらかは存じませんけれども、きちっとそのように、聡明な田中さんのことですから、あなたが意を決してお話しになったら、きちっと処置をなさるんじゃありませんか。私は、犯罪としてのそれをしてからとやかくする前にそのことをなさるのが、あなたの友人としての立場じゃないかというふうに思いますので、意見として受けとめますなんて、国民がごらんいただいたら、あれだけさわやかに御答弁なさる中曽根先生にしては、これはオチコだなと思われますよ。どうでしょう。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまのお話の内容をお聞きしますと、裁判で争われている検察と弁護人との攻撃、防御の内容にわたることに触れておられますので、内閣としては発言を差し控えた方がいいと思います。裁判に対する影響を恐れて申し上げる次第であります。
  84. 塚本三郎

    塚本委員 田中総理がおやめになるとき、昭和四十九年十一月二十六日、前総理みずからおっしゃってみえるんです。「私個人の問題で、かりそめにも世間の誤解を招いたことは、公人として、不明、不徳のいたすところであり、耐えがたい苦痛を覚える。私は、いずれ真相を明らかにして、国民の理解を得てまいりたいと考えている。」と述べておられます。  これらの経緯にかんがみ、一国の総理をお務めになり、わが国憲政史上かつて見ないようなたくさんの友達をお持ちになったところの、国会議員の信奉者をお持ちになった方が、野党に大罪人呼ばわりされるようなそういう中において、そうして攻防戦をこれから展開することは、私は、政治のいわゆる歴史の中ではまさしく大きな汚点だと言わなければなりません。われわれがこのまま引き下がって、十月あるいは十一月まで待つことが国民がりっぱだとおっしゃるなら、私たちは喜んで下がりましょう。しかしそれは、国民もあるいはまた心ある人たちも、一人もそういうりっぱな人がいなかったのか、野党は何をしておったのだというような形に非難をされることを、私たちは配慮せざるを得なかったわけでございます。どうぞ、田中さんが無罪になられたならば、それこそ堂々とまたひのき舞台に出ていただくとして、その間だけはお下がりいただくことが本当の道だと私は思います。  いまの裁判の問題を離れて、あなたが友人として——官房長官、あなたは最も信願を受けておる人だというマスコミの高い評価がありますので、裁判の問題を離れて、この際田中先生、やっぱりりっぱな人であったと言われるためには、裁判の結果が出るまではお退きいただけませんかと、友人としてあなた、忠告なさる意思はございませんか、官房長官
  85. 後藤田正晴

    後藤田国務大臣 事柄は、官房長官として答える筋合いではないように思います。まあ、せっかくのお尋ねですけれども、私個人としての見解で差し支えありませんか。(塚本委員「ええ」と呼ぶ)  これは私は、御自身が判断なさるべきことだ、こう考えております。同時に、この日本の社会といいますか、世の中のことについては、一つはやっぱり倫理の問題、道徳の問題、ことに政治の社会では大変重要です。しかし同時に、日本は法治主義である。法治主義の原則、ここらもやはりあわせ考えなければ、私は、一方的な言い方だけではぐあいが悪いのではないか、かように考えております。
  86. 塚本三郎

    塚本委員 私は、法律的な立場で申し上げておるわけじゃないということを前提にして、ともかく友人としてこういう状態にさらしておきなさるなということを申し上げたかったわけでありますけれども、立場上そうおっしゃるより仕方がないというならば、これ以上は時間のむだだと思います。  ここに、「五つの大切、十の反省」という、自民党がかつて田中内閣のときにお出しになった選挙向けの印刷があります。ここに、たくさん田中総理の写真等が出ております。この中にも、約束にたがうことはなかったかといういわゆる反省をしております。あるいはまた、十の反省と五つの大切なものという中で、いろいろとこのことを述べておられます。いまこそ、これらの問題をみずから語ったこととして、それを実行していただくことが、りっぱな元総理としての道ではなかったか。それをおやりにならなければ、いたし方がございませんので、これはやっぱり勧告決議案として激突せざるを得ない。そういう道に進んでいくと申し上げなければならぬことを私は残念に思います。  この点で秦野法務大臣、あなたが検察に対して、ときどき警察と検察は行き過ぎることもあると述べておられるし、指揮権発動はやろうと思えばやれるし、やってみようという気持ちもある、しかし、やれば別の怨念が拡大再生産されるので簡単にやってはいけないというような御発言をなされておられます。これは一般論として言ったんだというふうに申されておいでになりますが、大学の刑事訴訟法の講義でこれをおっしゃるならば差し支えないんです。おっしゃるとおりなんです。ですけれども、あなたは現職の法務大臣でしょう。そして、あなたから直接指揮監督を受けるところの検事総長が指揮をして、元総理に対して論告求刑をなさるその当日にこういう発言をなさるということは、これは公私混同になってしまっておるし、また混同することをあえて意図してあなたは発言をなさっておる、そういう小ずるい発言ではないか。明るい性格のあなたにしてみてはちょっと小ずるいやり方だなという印象を私は持っておりますが、いかがでしょう。
  87. 秦野章

    ○秦野国務大臣 ただいまのお尋ねの問題は、たしか一部の新聞に出たことが根拠だと思いますが、率直に申し上げますと、去年の十二月に、来年一月の下旬に私に話をしてくれぬかという石原慎太郎氏のあれがあって、内輪の会合で、ごく限られたものだから講演を頼むということで、私も率直に言って余り出たくなかったけれども出たんですよ。それが二十六日だったわけです。二十六日というのは全く私は意識していなかった。なぜ意識していなかったかというと、裁判の日とかそういうものは法務大臣とは関係なく進んでいるわけですよ。それで、私が三十分ばかり講演した中でしゃべったことがつまみ的に新聞に載ったのですけれども、私は検察に対する批判なんか全然していないのです。  それから、いま塚本さんがおっしゃったような、やってみようかという話、これは暮れの例の臨時国会で私にいろいろ御質問があったから、集中攻撃的に御質問があったからそれに答えたのですけれども、つまり指揮権の論理を話したのですよ。その論理というのはどういうのかといえば、要するに制度としてあるのだから、制度そのものは悪じゃないというような筋の話をしただけであって、新聞がちょっと曲解しているのが事実でございます。どうぞそれは信用してください。私はそんな小ずるい人間じゃないと思っております。
  88. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。あなたは言い過ぎることがあっても、ずるく言っている男じゃないというふうに私は思っていたのです。ですけれども、見ると何か小ずるく逃げ道だけつくっておっしゃったのかなと私が誤解したのかもしれませんけれども、新聞記事には出ておるのですよ、石原慎太郎さんの会合でしゃべったそれが。ですから、それは違うなら違うという訂正をしておいていただかぬと、いつまででもあなたはそのことを取り上げられますから。私が言っているのは、後からつなげ合わせたのじゃないのですよ、記事を読んで私はこれを言っているのですから。だから、もし何だったら私は後からその記事をお届けしてもいいし、お持ちでしょうから、もし、それが違うなら訂正なさっておいていただいた方がいいと思います。
  89. 秦野章

    ○秦野国務大臣 当然、そのことは間違っておりましたから記者会見をして真相を話して、そして、そのことは後の記事に修正されたような形で出ておりますので、御了解願います。
  90. 塚本三郎

    塚本委員 わかりました。  もう一つ、これは政治倫理の話で、私ども最近非常に頭にきている問題があるのです。それは高級官僚の政界進出なんです。  各省庁の官僚が議員候補者として、いわゆる国家権力を盾にとって選挙運動をやっておられるのです。これも、もとをいえば田中角榮元総理のときにこういうことをやりまくったことから悪い風習ができたと、私は御無礼だけれども判断しておるのです。OBの候補を抱える中央省庁の地位利用、職権乱用まがいの露骨な事前運動が目に余っております。出身省庁の組織や監督下にある業界団体、許可認可権を悪用して後援会を組織せしめている。  彼らは後援会を引き受けた理由として、魚心あれば水心でございますと、こう語っておるのです。ようございますか、選挙運動を省ぐるみでやっている。これは目に余るのです。かつては、そのOBが個人とのつながり、個人とのつながりで、何省の者が出先にと、こう言っていたうちはまだいいのですが、最近は、十万人どうしても党員をつくらなければいけない。国家の指定する団体ですよ。たとえば医師会であるとかあるいは歯科医師会であるとか薬剤師会なんというのは、聞いてみると、それはアウトサイダーが許されないような状態なのです。そこへ向かって党員の割り当てを押しつける。特定郵便局長やその親戚の者が本省の元人事局長とどうつながっておりますか。顔を見たことのあるのは三人か五人でしょう。にもかかわらず何万という党員をつくらなければならぬということで、監督権限を通じてこんな入党運動をさせて、いつまでたったって自民党天下が続くのだと言うのですけれども、国家そのものが選挙運動で許認可権を振り回せば、どうしようもなくなってくるじゃありませんか。  運輸省の港湾局長が、船の中のいわゆる荷役にまで入党を勧められておる。そうやってその数を競って現職とのランク争いをさせられておる。そうやって十万つくった、十五万つくったといって大騒動しておる。もちろん党費は会社が立てかえ払い。これが党員というのはおかしいのですけれども、本省の局長がそういうことを強制的にやられて、これでいいんでしょうか。  通産省の元次官、ガソリンスタンドのおやじたちがみんな入党させられておる。私たちが二十年間かかってつくり上げたところの後援会組織まで、おれは民社党だと言ってもだめだなんというのです。採決したら十六対三で負けてしまったのです。なぜならば魚心あれば水心、これは一体どういうことなんですか。  文部省の局長が、後から言いますけれども、学校給食を放さぬのはわかったのですよ。業者までそうしてひもつけておいて選挙運動に利用しなければならぬものだから、行政改革に反対する意思の底の中には、選挙運動に監督権を及ぼすために民間業者にまでその手を広げておる。あなたが一生懸命行政改革をやろうと思っても、わずかばかりの補助金でもって票田を奪われるということの問題の方が重大だという、こういう形なんです。  田中総理の政治倫理も大切ですが、この現職の局長どもの政治倫理をどうしてくれるのですか。まじめになって私たちが中小企業、零細企業の諸君に対して相続税の問題どうしてあげるのだとか、支払い手形どうしてあげるのだと言っているときに、監督権限だけでもってざくざくと党員をつくり、企業に対して立てかえ払いの党費をやらせて、それが天下を背負っておる大自民党のなさることですか。業界の諸君の心の中がどんなに痛んでおるか。これは自由とか民主主義という名前をかぶせられる大政党のなさることではないというふうに思っております。私は、だれがどうやったということを申し上げようと思ったけれども、いかにもそれでは露骨過ぎますので、きょうはこの点で控えますけれども、しかし、全部その会合にはテープレコーダーが持ち込まれておりますから、どうぞ告示のときにはそこに並んでおる局長さんたちは首を洗って待っておってほしい。全部テープレコーダーとってありますから、立候補のときには全部首を洗って待っておってほしい。覚悟はできておるでしょうね。  私たちも、命運をかけて選挙法の改正に対して議論をしてまいりました。ああいう醜い選挙運動はやめるべきだということを皆さんがおっしゃった。私たちは反対して、野党の皆様方とボイコットしようと思ったけれども、それは議会制民主主義に反するということで、歯を食いしばって闘ったけれども負けました。その結果が、こんな姿でもって業界を揺さぶり、監督権限をこのように悪用なさって、果たして行政改革が進むとお思いでしょうか。行管庁長官、どうですか。
  91. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 行政改革は行政改革でございますので、そういう問題を離れて、筋を通してやっていきたいと私は考えております。
  92. 塚本三郎

    塚本委員 中学生の言葉ならそれぐらいのことで結構なんです。だけれども、そういうことが行政改革を阻害しておるのですよ。中曽根総理がどれだけ御苦労なさって行政改革を進めておいでになるか。土光さんが八十六歳になっても、なおかつ納税者の立場に立って、政府の財政を立て直してあげようと努力をなさってみえるとき、その横からぶち破るような形で、特殊法人だけではないのです、公益法人の中までもぐり込んできているのです。建設省だけだって公益法人は百六十あるのですよ。これはあなたの手も届かないところにいっているのです、百六十。建設省においては、市街化に対する、植林に対する金は幾らできました、君のところから、補助金がいくから予算出しなさい、そして、おれたちのOBのおるここの法人に事業を注文しなさい、本省の課長がわざわざその市町村に行って、注文先まで指定してくるのですよ。そして、そこで何をやるかと思いますると、仕事で金をもうけるだけではなく、関係の業者、知事さんを中心にして集めて、そして説明に行くのですと言って、関係のないところの建設省の候補者が来て、選挙運動だけやって帰っていっている。その選挙運動個所だけだって百六十カ所あるのですよ。これでは自民党が勝ったのじゃないじゃありませんか。国家が、日本政府と五十兆の予算を乱用して選挙運動をやっているのじゃありませんか。これで野党はどうして太刀打ちできましょうか。陸海軍の重装備で戦っておる。われわれは日本刀一つの武芸者じゃありませんか。それで野党はふがいないとかわれわれ言われて、これはいかにも不公平ではありませんか。よくありませんね、考えてみたら。どうでしょうか。  高級官僚の天下りに対しては二年間の就職の禁止の答申が決められて、いま守っております。せめてこの際、お役人をやめてから二年間だけは立候補はできないようになさったら、その疑いは晴れると思いますが、いかがでしょうか。二年間だけは立候補しないということにお決めいただくか、あるいは次の選挙だけは一期見送るという方針をおとりになったらいかがでしょうか。そのお考えありませんか、総理。——総理、先にあなたの考え方を聞かせてください。
  93. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 高級公務員の立候補制限の問題、これは実は三十年代に選挙制度審議会で話し合いが行われたこともございますが、立法技術上いろいろな問題がありまして、実現を見るに至らなかったのであります。立候補制限の中身につきましては、これは非常な議論があるところでございます。法律上の規制をするにつきましては、またこれは選挙制度全体の問題とも関連しますので、与野党とも話し合いをして、結論を今後とも踏まえていきたいと思っております。
  94. 塚本三郎

    塚本委員 山本さん、あなたもそういうことでは痛い目にお遭いになった経験がおありになりますけれども、かつて選挙制度審議会の答申で、高級官僚の地位を利用した選挙運動は行政の中立性に対する国民の信頼を失墜しかねないとして、退職後の最初の参議院全国区への立候補を禁止する案を示した。これは選挙制度審議会がやったのですよ。当時の内閣法制局も合憲との判断を示した。いま山本さんがおっしゃったとおりなんです。だから総理、選挙制度審議会がこれはまずいということで、かつて御反省になって、法制局でも合憲であるという判断を示したのだ、こういうふうに記録が残っているのです。  総理、いまどうこうではないのですけれども、これはやはり考えなければならぬという気持ちにおなりになりませんか。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 問題は、公務員が職権を乱用して、そして、よこしまな選挙をするということだろうと思います。この点は厳重に取り締まらなければいけないと思います。しかし、立候補云々というような問題は、やはり基本的人権の問題とも関係いたしまして、いま法制局の御見解がありましたけれども、果たしてそれが法制局としていまでも持っている考えであるかどうか、検討を要すると思います。
  96. 塚本三郎

    塚本委員 それだけ重大な問題になってきておりますので、これはやはり選挙制度審議会とよく御相談をいただきまして、尾を引かないようにひとつきちっとした処置をしていただきたいというふうに希望として申し上げておきますし、そして自治大臣も行管庁長官総理も、この事態というものはもう一刻も早くブレーキをかけてくださらないと、告示のときに、ああいう犠牲者がさらにさらにふえますよ、このことだけは私ははっきりと忠告をいたしておきます。どこの業界だって、自民党さんだけじゃありませんよ。各党ともに手ぐすね引いて、みんなテープレコーダーを持ち込んでおりますから、ゆめゆめ軽くごらんいただかないように御注意を申し上げておきます。  さて、私は、次は行政改革に移りたいと思います。  民社党は、最も熱心に行政改革と取り組んでまいりました。ときには臨調与党という表現まで使ったこともございます。それは御承知のとおり、時代に適合した行政をしていただかなければなりません。最初つくった法律も、最初出発した制度というものも、時とともにもっと必要になるときもありますし、もはや必要がなくなったものもたくさんあります。  とりわけ私どもが一番指摘をしてまいりたいのは、戦後、政府が行わなければならなかったし、民間においては採算に合わなかったという事業自身を政府が手をつけて、力を入れて今日まで発展をさせられた部門もたくさんあります。だが、もう民間で自由にやれるようになった。そのとき、民間と政府あるいは特殊法人が競争して、片や一生懸命お金を銀行から借りて、税金を払って、そうして悪戦苦闘しておるとき、政府が、赤字になれば助成金をいただいて、のんびりと役人仕事で公平公平という立場で事業の分野をどんどんと広げてしまって、高齢化社会で税金を納める人と、いわゆる養っていただく年輩との数の比率が、だんだんとお年寄りがふえていくように、お役所で税金を食らう部門だけがどんどんふえてしまって、まじめに働いて世界的企業としてがんばっております日本産業、税金を納めるところの産業界がだんだんとそのお役所の力によって活力を失ってしまっておる。それを見直すことが行政改革にとって最も大きな柱であろうと思います。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕  それともう一つは、やはり国際化、世界は狭くなってまいりました。日本だけではどうしても生きるわけにはまいりません。その複雑にして狭くなった世界に対応するために、日本の国はやはり彼らとおつき合いができるように、いわゆる許可認可も簡素にし、そして向こうからも十分に受け入れ、こちらの物も買っていただかなければならない、こういう意味で行政改革はぜひ行わなければならない重大な仕事である。そのことを一生懸命なさったからこそ、総理はかつての業績にかんがみて総理大臣になられたと評してもいい一面があると私は思います。  特に最近は、政府の財政が赤字になったので、だから、どうしても支出を削らなければならない、むだを省けという新たなる財政再建がここに加わってきて、行政改革は財政再建と一体になってしまいましたが、本来は、これは新たに加わったものと見るべきだと私は思います。したがって、中曽根総理は、総理になられても、行管庁長官当時の熱意をいまもなお持ち続けて、具体的に実行しようとする決意をお持ちかどうか、まず最初に確認をとらしていただきたいと思います。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不退転の決意で実行いたします。
  98. 塚本三郎

    塚本委員 本年三月十五日で第二臨調は幕を閉じることになります。しかし、行政改革は御承知のとおり即効薬でありません。いわゆる息の長い仕事であろうと思います。したがって、答申が出てもそれを果たして政府が実行してくださるであろうか。さらにまた、その答申で二年の間にはまだまだ手が入れられなかった問題等を提起していかなければなりません。そういう意味で、行政改革推進の立場からさらに意見を引き出し、これをフォローするところの機関が必要だと私も思います。  そういう意味で、行政改革推進委員会なるものを行政組織法に基づいて提案していただきたいと臨調の方から政府に申し上げておるよるであります。これに対して政府は、三月十五日でこれは打ち切りでなく、新たに行政改革推進委員会という新しい名前で、今度は臨調に引き続いてそのような機関の法律をお出しになる予定なのかどうか、その点をお尋ねいたします。
  99. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 行政改革は息の長い、相当時間のかかる問題であることはお述べになりましたとおりでございます。  そこで、土光臨調もいよいよ三月十五日で期限が切れるわけでございますので、その前に、各部会からの報告をもとにした最終答申が三月の上旬に出ることになっておるわけでございます。出先機関の廃止や中央官庁の部局の整理の問題、許可認可の問題、たくさんあるわけでございます。そういうようなわけで、最終答申が出ますればその実施の責任は政府に移るわけでございますが、臨調の内部には、いまお述べになりましたように、民間有識の方々を中心としたそういう推進委員会をつくって、今後の実施状況を見守ったり、さらにまた、今後新しい角度で行政改革を推進するという意見を述べたらどうだ、こういう強い意見が出されておることは私は十分承知いたしております。したがって、そうした御意見がただいま臨調において慎重に審議されておりまして、恐らく近くその答申が出るのではないだろうか、かように考えております。答申が出ますれば、当然政府としては、従来とも最大限尊重するというのが政府の方針でございますから、答申が出た段階でこれに対応する政府の方針を決める、こういうふうにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  100. 塚本三郎

    塚本委員 出していただけば私どもはぜひ賛成をさせていただき、引き続いてその実行を強く援護してみたいと思っております。  私は、本委員会で三年続いて国鉄問題を取り上げました。おかげで臨調は具体的にこれが民営化の方針を打ち出されました。政府はそれを受けて国鉄再建監理委員会なるものを設けて、そして具体的にこれが管理監督等を行っていこうというふうな状態になってまいったと思います。総理も施政方針演説の中で、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法案についてぜひ通したいというお話がございました。民社党は基本的にこの法律案に賛成をいたします。ぜひひとつ、いま国家財政の最も大きな赤字の元凶と言うと恐縮ですけれども、第一の問題のこの国鉄を解決していただきたい。  ただ、その監理委員会の人選に当たっては、これまた足を引っ張るようなお役人上がりで、いわゆる民間経営の経験のないような人たちをたくさん入れられたら何にもならないと思います。私は、責任者には、本当に民間の経営者で血の出るような思いをして何度も再建をなさったような経験者をぜひ据えてほしい。だれとは申し上げる立場ではありませんが、その監理委員の人選がこの法律案を生かすか殺すかの一番決め手になると判断いたします。運輸大臣、いかがでしょう。
  101. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 総理からも御答弁があったように、今度の行政改革の目玉商品はまさに国鉄再建と思っております。そこで、監理委員会法案は前回から出しておりますが、いま継続審議で、まだ審議されておりませんので、これが通過を心から願っており、監理委員の任命につきましては、ただいまあなたのおっしゃったようなことで、まず全般的に影響力のあるような人とか、あるいは財政に詳しい人とかという方々を、委員会法案が通過したら直ちにひとつ総理と相談の上で皆さん方に御報告申し上げたい、こう思っております。
  102. 塚本三郎

    塚本委員 おかげで国鉄労使ともにその経営と作業に対する姿勢が変わりつつあります。これは大変いいことだと思います。もう少し早く、赤字をこんなに積み重ねない前にやってくださったらなという気がして仕方がございません。しかし、もうこれは相当のめどがついてきたこと、臨調の皆様方の努力に深い敬意を表したいと思います。  そこで、第二の点は電電公社であります。  電電公社は、国鉄と違いましていまだ経営は悪い状態ではありません。しかし、やがては、今日までずっと加入者がふえてまいりました上り坂とは違いますので、これもまた第二の国鉄になるという心配があることは御承知のとおりでございます。したがって、やがて分科会報告から臨調報告になって出てまいるでございましょうが、経営者も労働組合ももはや民営化、特殊会社か株式会社かはよくその辺のところはまだ詰まっていないようですけれども、やがては民営化の道を切り開いて、そうして競争条件に合うように分割の方向にまで持っていっていただく、こういうことが必要だというふうに臨調はその分科会報告で指摘をいたしておりますので、これも時期は若干おくれるとしても、国鉄とよく似たような形で民営化の法律をお出しになるべきだというふうに思いますが、長官、いかがでしょう。
  103. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 電電につきましては、昨年の第三次答申の中ですでに答申が出ておるわけでございまして、その答申に基づく行政改革大綱をすでに政府決定をいたしております。その内容は、すでに御承知のように、民間活力を導入する、民営分割、こういう趣旨の答申でございますので、その趣旨を踏まえて、ただこの問題は、非常に関係するところがむずかしい問題がたくさんありますので、関係方面の意見を十分聴取して成案を得るように努力して、できるだけ早く法案を国会に出したい、こんなふうに考えておるところでございます。
  104. 塚本三郎

    塚本委員 その法律案の提出がいつごろになるかという御質問と、専売をいかがなさるか。専売もまた同じく民営化すべきであるというふうに思います。その法律案の提出時期と、それから専売についての考え方を続いて御質問いたします。
  105. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 たばこ専売の問題につきましても、行政改革大綱の中で記されてすでに閣議決定をされておりまして、答申の趣旨に沿うて関係各方面の意見を十分聴取して、できるだけ早く国会に提案をしたい、こういう考えでございます。  ただ、提案の時期はいつかということをおっしゃるわけでございますが、いまのところ、いつということを明言することは非常に困難でございます。この問題は関係するところが深いわけでございますので、十分関係方面との意見の調整を済ましてから提案をするようにいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  106. 塚本三郎

    塚本委員 時期は明示できないけれども、それでは今国会中に出すことはできましょうか。どうでしょう。
  107. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 行管長官の立場としては、できるだけ早く国会に出せるようにしたい、でき得べくんば、この国会に提案をしていただきたいと熱望しておるという程度にさせていただきたいと思います。
  108. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵大臣、専売について、今国会中に出したいと熱望しておると申しておられますけれども、いろいろな議員さんの方から大蔵大臣の足を引っ張っておって、あなたも困ってみえるようでございますが、そういう足を引っ張る諸君ははねのけて、今国会中にという行管庁長官の意に沿うように努力していただけましょうか。
  109. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま行管長官の方から、この行革大綱の線に沿って、今——できるだけ早い機会に提案することを熱望しておると、その熱望にこたえるべく、各方面と十分な協議を続けなければならぬ、こういうふうに考えております。
  110. 塚本三郎

    塚本委員 いま、今国会と言おうとなさったけれども、思いとどまって、そうして、できるだけ早い機会というふうにのど元で実は表現をコントロールなさったようでありますが、御苦心のほどはわかりますけれども総理、これはあなたの責任で、電電と専売は今国会中に行管庁長官の希望のごとくになさることが、前長官として、しかも不退転の決意とおっしゃったあなたの使命だと思いますが、いかがでしょう、総理
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ間に合わせるように努力いたしたいと思います。(「そう簡単にいかない」と呼ぶ者あり)
  112. 塚本三郎

    塚本委員 自民党さんの中に、そう簡単にはいかないという、何々族の声が聞こえてまいります。利権をむしり取られるからというふうなはしたない気持ちは申し上げるつもりはありませんけれども、しかし、やはりこれは今日の事態にかんがみて、もうやがては電電にしましても——専売は別でしょうけれども、特にたばこ耕作者の問題は別途勘案をしていただかなければならぬことは含みの上でこのように申し上げておりますので、第二の国鉄にならないように、早い機会にメスをふるっていただくことを強く希望いたしておきます。  それとともに、特殊法人、認可法人につきましても、臨調は精力的にいろいろな点において切り込んでおっていただくようでございます。私は一つ一つこの問題を取り上げたかったのでありますけれども、時間の関係で割愛をさせていただきますが、私はその中の一つだけ代表的に申し上げてみますならば、私はかつて本委員会で学校給食会なるものを取り上げたことがございます。これが他と一緒になって健康会になりました。やがてはオリンピック何やら施設と一緒にしようということですが、一緒にすることによって三つが一つになっても、お金と役員の数が減らなくてむしろふえていけば、これは焼け太りではないか、こう見えるのは当然であります。外から見た数が幾つかじゃないのです。むだな仕事は削りなさい、仕事を削らなければお役人の数は減りませんよ。いや、その仕事がなくてならないものならば、それは当然損得にかかわらず、国民生活の必要上私はふやしなさいと申し上げる立場であります。  しかし、かつて食糧不足のとき学校給食をして、米が配給制度であったから民間ではそれが取り扱うことができないためにとか、脱脂粉乳をアメリカから下さったものを始末するためにとか、そういう指定物資四品目であったものが承認物資でどんどんとふえてしまいまして、しまいには、そのあたりの魚屋さんから缶詰屋さんから八百屋さんの仕事まで文部省のお役人が引き受けて、そして、そのセンターだといって建物から冷蔵庫の金まで文部省の金を引き出し、果ては、それを運ぶところのトラック屋さんからいわゆる配送センターまで、運送会社の仕事を横取りして、何だということです。こんなことまで文部省がやらなければなりませんか。税金を納めている業者はどうなるのでしょう。しかも、それがために、今度は文部省の役人が出て、その業者たちに入党勧誘をしておるじゃありませんか。こんな実態があるからこそ行政改革ができないと先ほど申し上げたのです。臨調の委員に聞いてみたら、もう今度は指定四品目に削ることに約束はできております。そうしたら、文部省の局長が飛んでおいでになって、頼む、それだけは勘弁してください、そんな意思はありません、こうなんですよ。  総理、あなたのお仕事も大変なんです。決意にかかわらず、土光さんの御努力にかかわらず、お役人の諸君というのは、あらゆるいわゆる植民地を放そうとしない、ここに最も大きな問題があるじゃございませんか。そうして、ことしもそれに対して施設補助費でございます。見てみたら、一億円余分についているじゃありませんか。センターをまたつくれば、その中は空っぽにしておいては回転率が悪くなるから、また品目を維持しようとする。二十一品目の承認物資を削ると約束をしながら、そんな一億も金をかけて、二カ所、五千万ずつまた施設をつくるのですよ。お金のないときにどうしてそんなものを削れないのですか。考えてみますと、総理のそういう誠意にもかかわらず、末端における彼ら局長さんたちのおやりになっておられることは、全然違ったことをやってみえるのですよ。いけませんね、これは。  総理、やはり臨調答申は断固としてこれを貫き通す、そういう局長どもは許さぬ、はっきりとここで言明していただきたい。
  113. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調の答申は、最大限に尊重してこれを実行するようにいたしたいと思います。
  114. 塚本三郎

    塚本委員 私は、きょうは特に国有林野の問題を取り上げてみようと思います。これもこれからの大きな問題になるところでございましょう。山の中だから、国民の監視が届かないのです。国鉄ならば、お客様が、態度がいいとか悪いとか、あるいは仕事ぶりがどうだとかということ、少なくとも駅舎ぐらいはわかるのです。ところが、山の中だからわからないのです。ある新聞が調べにいったならば、大変な事態になっております。国鉄よりひどい作業現場がありますから見てくださいという投書によって私は取材してまいりました、こう言って、新聞でそのルポが書かれております。中身については私はもう読み上げることは省かさしていただきますが、こうして、ぶら勤といって仕事をせずにぶらぶらしておるのが、少なくともこの林野だけでも千五百人はいるというふうに推定されております。(発言する者あり)違うなら読んでみましょうか。  しかも、なぜこんなばかなことになったのか。労働組合が二つありまして、全林野と日林労というのだそうです。その全林野の諸君は、仕事をよけいするとノルマが課せられるから、一日にこれだけだ、大体自分たちの給料分だけ切って、あとは終わり、こうなるのだそうです。だから、よけいに仕事をしない。大体、監督の目が届かないのだから。信賞必罰がないのだから。(「耳が痛いな」と呼ぶ者あり)そうなんだよね。身に覚えがあるようですから。ですから、こういう形になれば、まじめに働いておる諸君はいわゆる悪者になってしまうのです。  職場に信賞必罰がなければ、能率が上がるはずがない。私は国鉄問題で三年間、この場から説明をし続けました。木を切るときにチェックをするだけ、チェーンソーで切る人は切る人だけ、こういうような非能率的なことをしておったのでは——だから、もう仕方がないから、それを直用ではなくして請負に渡せば、請負は倍から三倍ずつ能率を上げてくるのだそうです。わざわざそうしているんだというのです。この姿が、見るも無残な赤字の国有林野になってしまいました。さらに、御承知のとおり住宅建設が少なくなって、そうして木材価格が下がってまいりましたので、なおさらのことであります。この点、やはりもっともっと信賞必罰をきちっとしていただきまして——というのは、山の中で、しかも何十人とおるのじゃないのですね。三人か五人ずつなんです。監督の目が届かないのです。だからもう、人間そのものが仕事なんですから。こういうりっぱな、判断する人は神様か仏様だけなんです。木を切り出すなら何本切ったということになるのですけれども、やはり山の中においては枝をきれいに切っておけば節のないりっぱな材ができます。下刈りをきれいにしておけば成長が速いんです。林道がきれいになっていくんです。この仕事は何本切ったという証拠がないんです。二十年先にしか結果が見えてこないんです。まさに人間だけが財産なんです。そのときになまくらな労働組合が勝ちを占めてしまって、そうして同時提案、同時決着で一方がうんと言うまではまじめに働こうとする連中も話し合いの対象にしてくれない、一緒でなければだめだ、こうなれば、能率の悪いとは言いませんが、能率の悪い諸君と一緒にしか仕事がさせられない形にさせられておるのです。管理者が悪いんです。そういう管理者がきちっと能力を発揮しないからなんです。農林大臣、いかがでしょうか。
  115. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  ただいまの塚本委員発言は、私、全く同感でございます。最近、内容をよく検討いたしますと、やはりただいまの御意見がほとんど真実のようでございます。したがって、五十三年から自主的にこれの改善を図っておりますけれども、依然として赤字は解消しませんで、むしろ業務収入よりも労賃の方が多くなるようになって、毎年累積赤字は大きくなっております。したがって、臨調から部会報告で厳しい報告が参っております。当然来月は本答申が出てまいると思います。この際、答申に従ってひとつ抜本的にこの国有林経営の改革をやりたい、このように考えております。
  116. 塚本三郎

    塚本委員 農林大臣お気づきのようですが、管理者がしゃんとしていないからこういう形になってきたんです。そして、まじめに働いておる、ああいう山の奥において、そして寒いところで文化とはきわめてほど遠いところで、たまに行けばいい静かな職場だと思うけれども、三百六十五日大変な職場だと思います。しかも、一般公務員に比べて二万五千円も給与が低いんです。それをそういうしだらくのままで捨てておいて赤字だからといって悪い給与で捨てておくということは、挙げて管理者の責任じゃないでしょうか。まじめに働いた諸君がもっと能率を上げて、私は採算に合わないことを非難するつもりはありません、いや採算に合わなくて林野だけは結構なんだ。治山と治水は全部彼らがやっておるんです。しかも、二十年たったら何十倍という資産になって、いまは内材がわずかに三五%、二十年たったら世界一の日本は森林国になる。国内需要の七〇%を超えるところの杉、ヒノキ等のりっぱな材ができるんです。いまこのときにこれをきちっとさせるようにしておかなかったら、切る材がないからで人を捨ててしまうのではだめなんです。そういう切らなくてもきちっと材を育てるような管理をしておくならば、われわれは給与も直してあげなさい、そうして、もっとりっぱな森林資源をつくりなさい。ほかの電電や国鉄と違って、あるいはまたほかの事業と違って、林野だけは必ず元が引けるんです。このことをわれわれは考えて、いわゆる本当に目の届くような状態に置きなさい。  民社党は、決して人を減らすことが仕事ではない。必要なところはふやしなさい。余分なところで邪魔になるものはどんどんと整理をしなさい。そうして、その所と時代と目的に合うようにさせるのが真の行政改革じゃございませんか。私どもはそういうふうに提案をしておるんです。  もう一度きちっとした、重ねて申し上げますが、採算に合わないことを意にしなさるな。それよりも、だれが見てもりっぱに働いているように見えるんですが、見に行ったらあちらもこちらも相手がおらぬからといって火に当たっておる、そんな者が幾らでも目につくようなばかな職場にしておきなさるな。それじゃまじめに働いておる者が、ごますりだといっていじめられるじゃありませんか。それを改めなさいというふうに提議しておるのです。もう一度決意のほどを伺いたい。
  117. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  御指摘の点、よく理解をいたしております。これはやはり職員の積極的な協力がなければ答申を実行することもなかなか容易じゃないと思いますので、林野産業の職員の積極的な御協力を得まして御期待に沿うように努力をいたしたいと思います。
  118. 塚本三郎

    塚本委員 私は、次に農業問題について所見を交えながら御質問をいたします。  ある週刊誌に、農業に関して、こういう記事が出ております。ちょっと短い文章だから見出しだけ読んでみます。「ゆすり、たかりはチンピラや極道のやることと思ったら大間違い。それに、彼らのそれはせいぜいが小遣銭程度。ところが、日本の農民は、何と一年間に二兆円ものたかりをやって平気な顔をしているのである。農家一軒当りが手にするその補助金という名の”アブク銭”は、年間四十万円。そして、ゆすられ、たかられた上になお、高い米や牛肉を食わされているのがサラリーマンなのだ。が、”極道農民”はそれでも涼しい顔をして「牛肉、オレンジの自由化断固反対」を叫んでいる。こんなバカな話があっていいわけがない。」こういうふうにある週刊誌で書いております。  私は、こんなひどい記事が出ておって、政治家として黙っておるわけにはいかないという気持ちになりました。言われた農民も、これを読んだときにはどう受けとめられるでありましょうか。しかしまた一面、都会の人から見るならば、そうだ、そうだという気持ちをときどき私は耳にいたします。一体、政治の立場から見て、こういう記事が出たときに何と受けとめるべきか。農民の立場から見たら、この記事はいかにも残念だと受けとめるでしょう。これは事実であるかどうか。これは権威ある雑誌のことですから、この表現の事態それ自体は事実だと受けとめるべきでしょう。しかし、政治の立場から見たとき、これをどう受けとめるのかということに私は正直に言って迷いを禁じ得ません。  総理、この記事を一度私がずらっと読んだだけですけれども、その御感想をまず伺いたい。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の農業には構造的な問題があると思っております。したがいまして、一概に農民を責めるばかりが能ではない。まじめに一生懸命やっておる農民もおりますし、また生産性を上げるために一生懸命、組合におきましても団体におきましても努力をしておる点があると思います。しかし、臨調やあるいは一般消費者の方から指摘されるような面が絶無とは言えない。そういう意味におきまして、農業は大事な産業でございますから、政府といたしましても、政治といたしましても、この大事な産業が衰微しないように注意しながら、バランスのとれた農政をやっていく、その目標は生産性を国際比価に近づけていく、そういう方向で構造的に努力していくべきであると考えております。
  120. 塚本三郎

    塚本委員 世界のどこの国でも農業を守って、そして自給率を高めるために精力的に努力をしておられると思います。それは国民の命を預かっておる仕事であるからだと思います。  ところが、最近はアメリカからいわゆる自由化の声がかまびすしく日本にやってまいりますし、あるいはまた、臨調におきましては農業補助金の問題が鋭く非難の対象になっておることは御承知のとおりであります。貿易摩擦と、こう言うと、牛肉、オレンジ、こういう名前が出てきて農民が対象にされてしまいます。行政改革と言うと補助金、そうすると、その相当部分が農民という形になってしまいます。赤字財政と言うとトーゴーサンとかクロヨンとかいって、一番税金を納めていないと農民が対象にされてしまいます。あるいはまた、景気回復は住宅だ、それは土地だと言うと、都市近郊のサラリーマンにとっては農民の持っておる土地がいわわる一番目のかたきにされてしまっております。まさに農業問題というのは日本政治の中の非難の集中の舞台にいまされておると思います。  しかしながら、私は農業が国家における最も大切な命の綱であることを信じつつ、日本の政治と行政はこの日本の農業をどのように指導育成していくのか。農家の立場になると、これからの日本の農業はどうなるんだ、その不安が絶えないと思います。彼らが一番心配なことは、おれたちこれからどうなるんだということです。日本の農業を、自給率をできるだけ高めるというだけではなくして、農業が産業として太刀打ちするようにするのか、いや農業というのは、生命が大事なんだから、安全保障なんだからいわゆる計算なんかは仕方がないよ、こうなるのか。日本の農業をこれから政府はどのように指導していこうとしておられるのか、総理ないし農林大臣に御所見を伺いたい。
  121. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  農業、漁業両面とも、なかなかこの農業、漁業を産業として成り立たせるということは容易ならないことである。もちろん金融機関においても、戦前から戦後にかけましても一番融資の中のランクの低いのは、農業、漁業は危険産業だ、こういう定評を受けておるのでございます。それほど自然の影響によって業績が変化する、こういう悪条件が伴った産業でございます。  しかし、やはり食糧の自給率を高め、食糧による国家の安全を思う場合、何としても、漁業は危険産業であっても農業だけはやはり安定した産業に持っていくべきだ、このように考えております。したがって、いわゆる中核農家の育成あるいは後継者の養成あるいは規模拡大という方面で、ずいぶん最近金をかけております。かつて過去の十年は基盤整備で十三兆円、ことしから十カ年の第三次基盤整備は三十二兆八千億ですか、このようにして一応先般の閣議で了承も得ております。こういうことを続けていきますと、やがて農業だけは産業として成り立つことができる、私はこのように確信を持っております。
  122. 塚本三郎

    塚本委員 農水大臣、農業を産業として確立できると、これはりっぱなことをおっしゃったんですが、これは本当にできますか。後継者の育成とおっしゃるんですけれども、昨年農業高校を出た人は五万三千九百六十二人、ところが農業についた人は四千人ですよ。農業専門の高校を出ておきながら、十分の一も農業をしてないんですよ。ほかに就職した人が四万二千人。十倍の人は農業高校を出ながら他に就職なさっておいでになるんですよ。後継者育成のための農業高校ですよ。こんな状態になってしまっておるんです。  確かに、理想からいうならば農業は知識集約の産業なんだ、もう途上国の産業じゃない、農業こそ最も近代的産業なんだ、だからこそ、南米に比べて最も近代的な経営をしておるアメリカが世界一の農業王国になっておるんだ、こういうふうに言われておるから、間違いありません、あなたのおっしゃるのは正しい。ならば、いつの時点でアメリカと太刀打ちできるようにするのか。補助金はうんと上げて結構なんだ。だけれども、それならばそれで、三年先なり五年先なり十年先にはきちっと世界に太刀打ちできる農業にできるからするんだというふうに見通しをつけて、そうして、はっきりとそのことを指導して、それについてこない人は、脱落はいたし方ありません、産業として太刀打ちするだけの意思があるならば、うんと助成をして、その期限内において自立する立場に指導していこうじゃありませんか。一貫性のあるそのような方策をお立てにたることが必要じゃないでしょうか。そういう方針、お持ちですか。
  123. 金子岩三

    金子国務大臣 お答えいたします。  ただいま高校卒業生の就労の数字をお述べになりましたが、先般地方農政局長会議をやりまして、いろいろ報告を承りますと、昨年になりますと全国的に、一遍都会に出た人がUターンをして農村に皆舞い戻っておるようでございます。特に定年で職場が終わった人は、ほとんど自分の郷里に帰って農業をやっています。これは兼業農家であった人でありますけれども、やはり土地の流動化をこれから盛んにやっていきますと、相当内容の充実した農業従事者になると思います。  若い人がどうしたら農村に魅力を持つようになるか、これは大変な問題でございます。ただ、農業の基盤整備だけじゃなくして、やはりいろいろ環境整備をあわせてやっていって、そして農村にいて農業に励むことに誇りを感じ、そして都市産業と同じような労働条件で、そして文化の恩恵にも浴する、こういうものをすべてあわせて考えて進めていきたいと思います。  これが十年や二十年で外国からの輸入農産物と競争、太刀打ちできるようになるかというお尋ねですが、ここ十年いたしますと、ヨーロッパには、EC方面とは牛肉だけは大体肩が並べる、豪州、アメリカにはまだ十年やそこらでは追いつけません。少なくとも二十年、三十年これを続けていくと日本の農業は相当力がつく、私はこのように考えております。
  124. 塚本三郎

    塚本委員 農水大臣は水産のことは専門家のようですけれども、Uターン現象というのは失業のプールにさせられておるのです。おれは本当に農業をやるんだという計画を持って帰るんじゃないのです。そこが問題のところなんです。耕作をさせずに減反しておいて、そうして仕事をさせずにお金を与えるというこの基本はいつまで続けるのでしょうか。減反政策、四分の一、耕作をさせずにお金を与えておる。ならほ、干拓をして水田をまだどんどんこしらえているのはどうしてでしょうか。一貫性がないのです。私は、そのときそのときにおいては政策の意義があっておやりになったことを否定はいたしません。でも、やはりきちっと時に応じてそれは軌道修正をしておかなければなりませんよ、農業は息の長い仕事ですから、工場生産のようにやれませんから、先の見通しをつけてやらないと大変なことになりますよということを私は申し上げたかったわけでございます。  特に、補助金という問題は大変問題があるのです。補助金を上げるときは必ず年限をつけなさい。農業経営としてやっておられるときには、補助金をいただけばだんだんと温室育ちになり、もやしになってしまうんです。中小企業経営のように農業をなさっておられる方は、これを補助金と言わないのです。金融制度と言うのです。お金は借りるのです、そのかわり期限には利息をつけて返します、こういうのは必ず成功しているのですよ。補助金をもらったやつは、返さなくてもいいからだんだんとだめになっていく。わかりますか。  しかも、この補助金が問題なんです。補助金をこの種類、たとえばミカンでも、雑種はだめです、温州ミカンです、これならばたくさん補助金をいただける、これ以外には補助金がいただけないというと、わあっと日本じゅうが温州ミカンになるのです。できたときには豊作貧乏で、たんぼに捨ててしまうんですよ。相当の人が、逆にアメリカに輸出をなさっておられる農家まで出てきておる。きちっとその見通しを立てていくならば、オレンジ、何を言っているんだ、おれはアメリカにミカンを輸出しているんだよ、こういう農家まで出てきておるのです。だから、補助金というのは、金をいただけるのだからということでわあっとそこに集中してしまう。農家の意見を聞いてみると、農水省の指導と反対のことをやれば必ずもうかると言うのです、指導の方へ集中するから。身に覚えがあるでしょう、大臣。そういうふうになるのです。  だから、そういう点をきめ細かく考えて、彼らの行っておるところの問題点というものを、ぐずぐずと金さえいただけばいい、しかも補助金をいただくときには何々先生が中に介在をする。そうすると、その先生の指定した業者に仕事を注文せぬと困るなんというようなことになってしまって、農民の陰口は変なところへ行ってしまっておる。だから、補助金自身が農家に対する非難の集中になってしまっておる。農民は大変な迷惑じゃございませんか。こういう状態にいま日本の農業は立たされております。どうぞ業種ごとに、品種ごとに、ずいぶん問題の多い農業でありますが、この際はやはり是は是、非は非として、本当に食糧自給のために絶対に必要なもの、損得にかかわらず確保しなければならないもの、将来、農業はまさに産業としていわゆる成長の可能性があるからこそ助成をするのです、そういうふうにきちっと見通しをつけた農業指導を行っていくことがいま最も必要なときだというふうに思います。  したがって、そういう特に米を除いた他の品種あるいはまた種類について、産業として太刀打ちするならば三年先にはこれはこうします、畜産はこうします、果樹はこうします、野菜はこうします、こういうふうにきちっとした、しかも、そのときにははっきりと、いままでのようにぼちぼちやりなさるな。堂々と世界じゅうの産業に太刀打ちするような、日本の農業は現在でも、品種といわゆる反当たりなりあるいは坪当たりの収穫は、世界で一、二を争うだけのいい品種で、そうして多量に生産する能力を持っているのです。遺憾ながらノー政、政が農業についてはないのです。そうして、あれをよこせ、これをよこせと言って、補助金でもって食いららかしてしまっておる。  農水大臣、いま農業に対する補助金が何百種類あるか御存じですか、ちょっと答えてみてください。
  125. 金子岩三

    金子国務大臣 一昨年の臨調の答申の前は一千百七十件ですか、その後五百八十になりまして、それから三十ぐらい減らして、いま五百四、五十でございます。件数ですね。  塚本先生の御指摘は全く同感でございまして、私は水産ばかりではない、百姓もやっておるわけです。そして、農協長もいまだに田舎でやっていろいろお世話をしていますから、ただいまの御意見は私は全く傾聴に値しました。大変参考になる、ありがたい、お礼を申し上げたいと思います。
  126. 塚本三郎

    塚本委員 大臣がそう言われても、都会の諸君もこういう記事を見ますといら立ちの気持ちがよけい立つのです。だから、彼らのいわゆる補助金はこれは事実なんだから、これをもっと将来に生かしなさい。それでなかったら彼らだって、現在では三倍の肉を食べさせられておるのじゃないか、五倍の米を食べさせられておるのじゃないか、カリフォルニア米の方がおいしいですよなんていう話をあちこちで聞かされるたびに、私たちはやりきれない気持ちになるのです。やはり彼らの不満というものを、これはこれだけ限りですよ、やがては安い食料になるのですよというふうに持っていかなければ政治家として心が痛むではありませんか。  五百種類に減りましたけれども、中身は一つも減っていないのです。マツタケの栽培とキノコの栽培とを一つにしたから半分になっただけのことなのです。同じタケなのですよ。そういうのを、どこに補助金があるかということを、町役場の仕事をしておるよりも月に一回ずつあなたのところへ通って、一事務官にごまをすって、そうした補助金のあり場所を教えてもらって取ってきた方がいい村長さんだ、いい町長さんだと言われるようなばかなことをいつまでもさせておかずに、これはこれであなたの町はこういうふうに利用できますよというふうにもう少し親切にやられて、東京へ東京へと町会議員さんや市会議員さんたちが押しかけてくるのを、もっと徹底をさせて、これはあなたたちには不適作ですからやめなさい、これがこの地方の産物です、そういうふうにきちっとなさったらいかがでしょうか。古い村長さんだけが補助金を全部頭に入れておってりっぱに村長が成り立つ、こんなばかなことを言われて、それが農政でございますということはいけないと思います。  どうぞひとつ、農業の問題はなかなかむずかしい問題でありますし、まさに食糧安全は国民の生命であるということと、しかし、これも産業なんです。だから、いただくところの税金と比べて出す金が多過ぎるじゃないかというような非難を都会のサラリーマンの諸君が盛んに私たちのもとに訴えてこられるとき、現時点においてはそれは事実なのです。ならば、それをがまんしてください、やがてはこの金は生きてくるのですということの言えるように大切にこれを活用していただかなければならない、このことを強く希望申し上げておきます。  次に、一兆円減税について大蔵大臣にお尋ねいたします。  すでに五十七年度におきまして、私ども野党各書記長、幹事長があなたと一兆円減税について詰めを行いました。しかし、昨年それが残念ながら小委員会において実現をしませんでした。あのときたしか竹下幹事長代理は、五十八年度はやるべきだと思いますし、やりたいという意向を私どもに漏らしてくださったはずであります。そうして政府も、できるならばもう今年度は一兆円減税は実施すべきだという意向はしばしば本委員会において述べられております。  財源につきましては、減税のために赤字国債を出すというわけにはまいらぬ、そういう気持ちもわかります。私は、本委員会におきまして、昨年は日銀総裁などには来ていただきまして、日銀の予備金のほか、たしかあの当時九千億あったはずです。そこから四千億を出していただいたら、電電と専売から三千億ずつで、一兆円を大蔵省の案以外の中から金を集めて減税に充てていただくわけにはまいらぬかということも本委員会で提議いたしました。あるいは減税小委員会を初め、私どもの書記長と竹下幹事長代理との話し合いの中でも、補助貨幣に対する何とかというむずかしい文句の、いわゆる硬貨に対してお金が一兆円ありました。この金を利用なさるべきだと主張いたしたとき、大蔵省は、あの金は使うことのできない金ですとお答えになりました。できない金をなぜことしは使って予算の中に編成なさったのでしょうか。野党の要求には使えないけれども自分たちの政策実現には使えるとでもおっしゃるのでしょうか。これはいかにも多数ならば何でもできるという、いわゆるわがままな御発言だと思いますが、私はいまそのことを非難するよりも、御承知のとおりもう六年間減税の実施はしておりません。サラリーマンだけが他の産業や納税者に比べてきわめて重い重税感、圧迫感を持っておること、これが大きな不満となってまいっておりますことは、農業問題に対する先ほどの意見のみではございません。もうこれは常識化されております。よく隠忍自重しておってくれると労働者の諸君に対して私たちは気を使っておるのが今日の立場です。どうぞ今年こそは一兆円減税は、もちろん財源の問題もあるでしょうけれども、ぜひ実施なさるべきだというふうに提言申し上げます。御答弁いただきたい。
  127. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる減税問題、一兆円という数字につきましては野党の御主張であり、幹事長・書記長会談におきましても、その数字は別といたしまして、減税問題を調査するために小委員会を議長見解でつくっていただこう、こういう結論に到達いたしまして、その後、小委員会等で種種御議論をいただいて、もうすでに申し上げるまでもなく中間報告、あるいは新しい小委員会におきましては議まとまらず、こういう御報告もいただいておるところであります。  減税の要求が強い、こういうことについては、総理からもたびたびお答えがありましたように、その望む声が強いことは十分承知しております。しかしながら、今日の深刻な財政状態ということから見ますと、とにもかくにも一般歳出を前年度同額以下とする等の歳出削減、そして税制面でも租税特別措置の整理合理化等税負担の公平化、適正化を一層推進することといたしておりますが、それでも税収による歳出のカバー率は六四・一%と見込まれております。大変低い水準にございます。また、課税最低限の据え置き等によりまして、個人所得に対する所得税負担の割合が上昇してきております。これは事実。しかし、昭和五十六年度で四・九%と、国際的に見ればまだ低い水準にある。  そこで、景気対策としていろいろ議論をした中の一つでございますが、所得税減税を行うといたしましても、その財源をいわゆる大量の国債増発に求める、こういうことになりますと、いろいろな角度からの議論のあるところでございますが、金融市場に与える影響等の観点からして、結局景気回復そのものには素直につながらないのではないか、こういう議論もいたしました。  そういうことから、とにかく幹事長・書記長会談で議論いたしましたときは、何としても昨年の三月の五日であり六日でありました。しょせん、当時、六兆一千億のいわゆる歳入不足が生ずるという前提の上に立ってわれわれも議論したわけでもございません。そういう情勢のもとで、私どもがそこによすがを求めます税制調査会の今年度の税制改正の答申におきましても、結局、所得税の見直しを行うことは財政状況等から見て見合わさざるを得ないとの意見が大勢を占めたという御答申をいただいたわけでございます。したがって、所得税減税を見送ることにしたということにつきましては、御理解をいただきたいところでございます。ただ、この問題につきましては、答申が指摘をしておりますように、昭和五十九年度以降できるだけ早期に税制体制の見直しを行う中で所得税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要がある、このような答申もいただいておるところであります。  なかんずく幹事長・書記長会談のときにも議論されましたのは、財源としての補助貨幣回収準備資金、この問題でございます。これについてもいろいろな議論を省内でも重ねてみました。いわゆる補助貨幣の信用度という問題について、大きなそれなりの意義を持った今日までの会計であります。が、結局これを取り崩すということにいたしましても、やはりこれはいわゆる恒常的性格を持って減税財源として取り崩すということは、まさに一過性であり一時的なものであるだけに、一遍でなくなってしまうものでありますだけに、これは適当でないという答弁は、その後本院におきます前大蔵大臣の答弁の中においてもなされてきておるところでございます。いろいろな立場から取り崩しの可否についての検討を表明して、そして行ってきたわけであります。そこで、この五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出に対処する必要があるという、このいわゆる一時的支出に充てるという趣旨で今回補助貨幣回収準備資金の取り崩しを行う、こういう結論に達したわけでありますので、補助貨幣の問題につきましては、財源としてやはり恒常的なものに充てるべきでなく、一時的なものに充てるということでこれに踏み切ったという趣旨の御理解もまたいただきたいと思います。
  128. 塚本三郎

    塚本委員 大蔵省は便利なものでございまして、自分たちの政策を実現するときには、後から理屈をつけて、そして、どんなことでもするのです。総理、予算編成のときに、これはどんなことをしてみたって年内編成は無理なんだ、一月の十五、六日までかかると吹きまくっておいて、いざやってみたら十二月の三十日にもうできてしまって、そして三十一日はもう終わりと、こういうふうなんです。自分たちが実施するときにはどんなことでもできるのですよ。そして野党にはできないできない、こういうふうな形で持っていく。  それなら、政策が違います、いわゆる労働者に対する減税をするほど温かい気持ちは政府にありませんとおっしゃったらどうでしょうか。やるつもりはあるんだけれどもお金がありません、赤字国債を出すことは、そうです、そんなことは私たちもいいことだと思いません。ならば、今年は赤字国債は一円も出しませんとおっしゃるならいいのですよ。自分たちの政策実現のためには建設国債を含めて十何兆という金をお出しになっておきながら、哀れとは言いませんけれども、低所得者、勤労者に対するわずか一兆円の減税に対して、それはできませんというような扱いで国民は納得しましょうか。大蔵大臣の立場から言えばそれなりに、それはずっと続く財源であり、いっときだけですからやがては戻すつもりですと言いたいところでしょうけれども、庶民の気持ちにはそぐいませんぞ、これは。  やっぱりこういう考え方はあなたたちも必要だとお認めになったら、私が提言したように、日銀の中に九千億残っているじゃありませんか。いわゆる予備金のほかにあるのですよ。あるいは電電だって専売だって、葉たばこだって二年分のやつを三年分お持ちの上に、なおかつ六千億余分にあるのですよ、専売に。調べてきているのだから。その中から三千億ずついただいて六千億、日銀から四千億持ってこられたらどうでしょう。それくらいのことをなさったらどうでしょう。そうして政策が一致するなら、そういうふうにおやりになるべきじゃありませんか。労働者にはわが党は冷たく当たりますというのだったら、それはできませんとおっしゃるのですけれども、財源がない、財源がないといって、そんなことをおっしゃってはいけませんね。政府は、日銀や電電や専売に対して——電電だって、五千億納めなさいとか四千億納めなさいと言ったら、千二百億ずつにちぎったのでしょう。彼らにはちゃんと三千何百億という余分に利益があるということがはっきりと出たじゃありませんか。では、三千億出しなさい、専売から三千億持ってきなさい、日銀九千億の中から四千億持ってきなさい、それくらいのことをこの際なさったらいかがでしょう。総理、決断できませんか。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 減税に関する御要望が強いことはよく承知しておりますが、いまのような財政状況で非常にむずかしい事態であることを御了承願いたいと思うのであります。
  130. 塚本三郎

    塚本委員 やる気がないし、出すだけのいわゆる温かみもないと宣言されたとしかとれませんので、労働者の諸君はがっかりいたしますし、やがて来るであろう選挙のときにはこれは一矢報いるであろうと労働者の諸君は心に銘じたと思います。そんなつまらぬことはなさるべきではないというふうに私は思います。  それじゃ、人事院勧告はいかがでしょうか。私たちは、お役人の数は減らせ、人件費の総数は減らしなさいということは強く主張いたしております。いま国家公務員や特殊法人、地方公務員等五百三十万人ほどのいわゆる公務員がおいでになります。四%ずつ自然減なんです。それを二%補充をして二%ずつ補充をしないでおけば、五年間で一〇%、五十万人が自然に減るではありませんか。四百万円ずつの給与として二兆円になりますぞ。最初の年は四千億ですけれども、八千億、一兆二千億とふくらんでくるのですから。この際、そういう意味で総定数を減らすことは徹底的に行政改革でおやりなさい。  しかし、雇っておられるところの公務員に対してはピンはねはしなさるな。私たち民社党は、国家公務員などはストライキは禁止している、遵守させております。そのかわり人事院が民間に比べて幾ら幾らの給与を上乗せしなさいということをしてくださるから、どこかの政党のように、いわゆる法律を踏みにじってでもそれやれという気持ちはいたしません。私たちはきちっと法律を守りなさいと注意しておる。政府が踏みにじっておればもはや守る必要はないという結論になってしまいますよ。それは国家秩序に対してきわめてよくないことではありませんか。だから、人件費の削減は、総定数の枠を行政改革の本旨にのっとって縮めなさい、しかし、まじめに働いておられるところの公務員さんに対してのピンはねはしなさるな、こう主張しておるのです。幸か不幸か一%の、予算の中にいわゆる頭だけは出してくださったが、やはりこの人事院の勧告だけはまじめに実施していただくべきだと思いますが、政府いかがでしょう。
  131. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国庫大臣でございますので、私の方からお答えをいたします。  今年度の人事院勧告の取り扱いにつきましては、まさに人事院勧告制度はこれは尊重すべきである、そういう基本的たてまえに立ちながら、また御主張のありましたように、労働基本権の制約と良好な労使関係の維持等、そういうことに配慮しながらたびたび議論を重ねてきたところであります。しかし、国庫大臣として、まさに六兆円を超えますところのいわゆる巨額の減収が見込まれるに至ったという前提、そこで政府としては既定経費の節減に努力をいたしました。しかし、そこには依然おのずから限界がありまして、そういう未曾有な危機的な財政事情のもとにおきまして、国民的課題である行政改革を担います公務員の方が率先してこれに協力を示し、そして痛みを分かつ、こういうことにも御理解を得るべく努力をいたしまして公務員給与の改定の見送りを決定した、こういうことであります。  五十八年度予算につきましても種々議論をいたしましたが、やはり昭和四十五年以来の一つの考え方の基調に立って一%分を給与改善費として計上し、ただいま御審議を願っておる、こういうことであります。当然、人事院勧告が夏なされた場合におきましては、それを尊重して対応するといういままでの精神で対処しなければならないというふうに考えております。  所管とは別に、財政当局という立場でお答えをいたしました。
  132. 塚本三郎

    塚本委員 五十八年度の勧告が出た場合には誠実に受けとめて実施するというお約束をいただいておりますので、それがどの程度になるのか、注意深く見守ってまいりたいと存じますが、しかし私どもは、先ほどから申し上げておりますように、出せ出せじゃないのです。それよりもっと大きく切りなさい、切れる道があるではありませんかというふうにきちっと、いまの人事院勧告を実施する何倍かのお金を切ってくださいということもいま申し上げたとおり提言をし、このことは中曽根総理及び行管庁長官の主張しておられるところの行政改革の本旨にのっとってその道を主張申し上げておるつもりです。ただよこせよこせという立場では断じてないということだけはっきりと申し上げまして、この際切るものは切る、出すものは出すということで、時代に即応した行政にしていただくのが本当の意味の行政改革なんだということを重ねて希望とともに申し上げておきます。  最後に、私は住宅問題に移ってまいりたいと思います。時間が少のうございますから簡単に答えていただきたいと思います。  景気回復の決め手は住宅建設だ。政府は五十七年度百三十万戸の建設を予定いたしましたが、果たして百万戸を超えるかどうかと心配されております。いま衣食住の中で、ウサギ小屋という他の国からの酷評がありましたとおり、住宅だけが手のつけられていない産業であります。これはいわゆる日本産業に対する明るい見通しでもあるのです。これから十年間住宅産業でいわゆる欧米並みに住まいをつくり直そうじゃないか、ここにわれわれの産業の大きな希望があると申し上げておきます。そのとき最も大きな問題が宅地であることは御承知のとおりです。  いま建設省はその宅地の利用について、市街化区域と調整区域との線引きの見直しをしておられるはずですが、いつまでにそれが完了するのか、簡潔に説明をしていただきたい。
  133. 内海英男

    ○内海国務大臣 お答えいたします。  昨年から線引きの見直しの作業を各都道府県でやっておりまして、ことしの春ごろまでに大体出そろって、秋までには線引きの見直しが正式にできると思います。
  134. 塚本三郎

    塚本委員 以前線引きをしたところで、使えないところがたくさんあるようです。最初は錯誤がありまして、何でも市街化に入れた方がいいという一面もありましたし、いや、そんなことをしたら農地がなくなってしまうからと言って、一部の都市近郊においては、いわゆる必要があってもそれが中へ組み込めなかった等の錯誤がありました。そういう意味で、ただ使っていないたくさんの市街化があると言われるけれども、それは利用できない遠いところやあるいはまた地域的、地理的にだめなところがあるのです。だから、いわゆる二十万ヘクタールですか、市街化の中にありながら使えないときは、もはやないものとして、この際一刻も早くその線引きを都市近郊、特に東京、中京、近畿、この三大都市圏を中心にして、できるだけ住宅建設を促進せしめるように、幅の広いところ、これは自治省ともあるいは国土庁とも相談をしていただいて、もうほうっておけばまたいわゆる力の強いものが、損だ得だという形でスプロール化されてしまいますので、政府みずからが、現地に即応する、あるいはまた過去におけるところの開発の申請等の状況の経過を見て、広くその土地を住宅地に供給していただきたいということをまず注文をつけておきます。  そこで問題は、この宅地開発についての地方自治体における態度でございます。公共負担が余りにも大き過ぎる。第一、土地を一年間くらいかかって手に入れます。開発の準備から許可を受けるまでに五、六年かかる。それから造成をするに三年かかる。販売に一年かかる。十年かかってしまうのだそうです。これじゃ、十万円で買ったものが金利で倍以上になるのです。さらに、そのときに土地に対して五〇%は取り上げられるというような状態にいまなっておるようであります。公共負担、公益負担、それ以外にもう大ざっぱに五〇%出せよ、こういう形になっておること、御承知のとおりです。こんなことでは、また半分しか利用できませんから、金利で、十万円のものが二十万円になり、半分しか販売できませんから、まず最初から四十万円になる。それから造成費十万円加えて、あれは十万円だと思っておったら、五十万円から売り出しが始まるのです。こんなことは、土地がないんじゃなくして、行政の怠慢と言わなければなりません。  第一、地方自治体は完全主義なんです。一つでも落ち度があったら、すぐはねくってよこすのです。各市において二十の課を完全にして、また各県において三十の課を経たならば、五年、六年かかってしまうのです。昨年も私はここで申し上げたはずです。一団地を形成するのに、二トントラックにいっぱいの書類が要りますよ。これじゃ住宅建設を阻害しておることになりませんか。少なくとも、いまのお役人のセクト的なやり方は、横断的にすぐできるような形で、せめて二年くらいで開発許可ができるようになりませんか。建設大臣、決意のほどを。
  135. 内海英男

    ○内海国務大臣 各地方自治体におきまして、宅地開発指導要綱というのを個別につくっておりまして、その指導要綱が相当厳しいという点は承っております。したがいまして、昨年七月十六日に、手続の簡素化を図るために期間を短縮するように、さらに十月二十七日に、自治省と私どもの方から両方から、過重負担をしないようにという通達を出して、簡素化促進を図っておるわけでございます。
  136. 塚本三郎

    塚本委員 そうして、開発指導要綱は憲法違反だという訴訟が九州においてなされております。その業者側に言わすと、必ず憲法違反という判決が下されるであろうというふうに言われております。なぜならば、開発業者が、まあ学校から消防署等つくらせるのはともかくとして、余った土地まで余分に一般会計の中に繰り入れておるのです。  その一般会計に取り上げておるところの市町村は、財政が苦しいかというと、そうじゃないんです。むしろ、東京や大阪等近郊における市においては、国が決めたところの給与のラスパイレスの一二〇という数字のところほど、実はよけいに取っておるんです。財政が苦しくてみんなが苦しいならば、一般会計、給与にまで使ってみてもそれはやむを得ぬと思う。しかし、国の決めた一〇〇%以上、一二〇%も給与を取っておるような役場ほど、よけいにその土地まで取り上げてしまっておる。これでは、来てほしくないということになってしまいはしませんか。少なくとも五〇%を出せなんて頭から決めずに、道路はこれだけでございます、用水はこれだけでございます、街路はこれだけです、使った土地が四〇%ならば、六〇%は業者が販売できるようにという、そうするのが本当じゃありませんか。厳密にそのところを一々チェックすべきだと思いますが、いかがですか。
  137. 内海英男

    ○内海国務大臣 お答えします。  各地方自治体が個別にやっておりますので、建設省としては、細かくチェックはできませんけれども、今後とも引き続き指導して、そういうことのないように、できるだけ業者の負担の軽減を図って、宅地開発が進められるように指導してまいりたいと思っております。
  138. 塚本三郎

    塚本委員 大臣、そんなよけいじゃないのです。千葉県とか埼玉県とか神奈川県の一部とか、あるいは大阪におけるごく一部とか、あるいは名古屋のすぐ隣のどこどことか、挙げてみたら十か十五の市町村なんです、そういうところは。ですから、そんなのは全部大臣が視察に回ったって一日で回る、一日じゃひどいかもしれませんが、二、三日なら回れるぐらいですから、熱心な国土庁の長官と二人で点検なさるぐらいのことをするなら、びりっとして、一挙に住宅建設が進み、一挙に景気回復への導火線に火をつけることができるというふうに私は判断いたします。ようございますか。  もう一つ、五〇%なり四〇%その自治体が取ったときには、それを取り上げなさるな。せめてその半分だけは地方債で、地方自治体が債券を発行してその金は払ったらどうでしょう。五〇%なら、二五%だけは地方が債券で返す。その債券の引受手は、業者が自分たちが全部買い受けますと、こう言うのです。だって、いいですか、黙って公共資産を寄附していただけるんでしょう。固定資産税が入るんでしょう。交付税が人頭割でふえるんでしょう。この三つでもって、きちっとそれだけの分は債券は返済できるから、十年ぐらい据え置きにしておいて、あと五年ぐらいかかって、金利は一%かそこらで結構だ。そういうふうにして、公共資産なんだから、本当は市でやるんだけれどもそれができないんだから、金だけ負担しろや、半分だけは地方債を発行してそれを償還させるというような方向について検討なさるべきではないか。  そうするなら、ずうっと百五十万戸の建設は必ず進みます。需要は旺盛なんです。だけれど、収入に対して、マンションならば四年分、一戸建てならば六年分以上だったら、もう手に入らないんです。なぜならば、住宅金融公庫や銀行のローンや会社のローン、三つ合わせてもそれは手に入らないという、限界を超えておるからなんです。それだけのことをしてくださるならば、マンションなら三年か三年半で手に入る。一戸建てだって五年分で手に入るようになるのです。それならば、百万戸といわず百五十万戸出てしまう。ですから、これは一番景気回復の決め手になるというふうに思いますので、地方債について自治相と二人が御相談いただいて、検討していただきたいと思います。いかがでしょう。
  139. 内海英男

    ○内海国務大臣 地方公共団体に関係することでございますから、自治省とよく相談して前向きに検討してまいりたいと思っております。
  140. 塚本三郎

    塚本委員 自治大臣、いかがですか。
  141. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いま土地のお話が出ましたが、大体土地は、公共あるいは公益用地として宅地造成上必要な面積として御利用する、こういうたてまえになっております。たとえば道路とかあるいは公園、緑地を置くとか、一つの町ができるぐらいな大きな開発がございますから、それぞれの自治体としては相当の問題でございます。したがいまして、そういういろいろな公共施設はつくっていかなければならない。それにはいろいろな、中には補助のあるものもございます、しかし、補助のないものもつくっていかなければならないということもございますので、そういうことを考え合わせますと、四〇%、五〇%まで、確かに非常な広範囲の地域開発にはそういう用地を使っておるようでございますが、しかし、それを直ちに地方公共団体の負担として地方債でいまお話しのようなことがやれるかどうか、これは私は相当検討を要する問題であろう。現在の地方自治体は、大変財政は厳しゅうございます。加えて私は、どうも最近の地方自治体は、こういう人口がいまふえていくことを余り歓迎しないような空気にあるのではないか、こう思っております。それをもしその自治体で開発をどんどんやっていくというためには、やはりもっと考えてやらなければならぬ点もあるのではないだろうか、全体の宅地開発として検討すべき問題はないのだろうかという気がいたしておりまして、それらもひとつ将来の課題として考えていきたい、かように考えます。
  142. 塚本三郎

    塚本委員 大臣おっしゃったとおりです。もうはっきり言いまして、来てほしくない。来てもらえば、学校はつくってくれたとしても、それに伴うあらゆる施設が必要になってまいりますし、先ほどお話がありましたように、ごみの処理から汚物の処理から、もうあらゆる問題を全部かぶせられてまいりますから、実際はけしからぬというよりも来てほしくない、こういう形になっております。しかし、それでは事は運ばないことは御承知のとおりですから、これは財源とともに考えてあげなければいけない問題ですから、重要な問題ですから、自治大臣は大蔵省や建設省と十分話し合っていただきまして、事が成るように希望いたします。  最後になりましたが、私は一つだけこの際、エネルギーの問題の中の特に油の問題について触れておきたいと思います。  いっときのような状態から逆になってまいりました。大変結構です。いまこそ油の問題を冷静に考えていかなければならぬときが参りました。私は、一昨年でしたか、本委員会におきまして、外資系の油は安く入ってくる、民族系は高くしか入ってこない、高いものに高い税金をかけ、安いものに安い税金をかけておるから、ますます格差が広がってしまうから、入ってきた量に税金をかけるべきだということを提言しておきました。その後若干訂正をしていただいたようでありますし、また、むしろスポット買いでもっていわゆる民族系が相当に安い油が入ってくるようになったことは幸せだと思います。  しかし、いままでの蓄積から考え、もう一つは、通産大臣御承知のとおり、ガソリンというのはもうかるのだそうです。だから、もうかるものだけはじゃんじゃんと外資系は製造しておるが、産業に必要なC重油等のもうからないものは品切れになる。そのときあなたが御指導なさって、民族系はそれについていかれるけれども、しかし、外資系は要らぬことだといって、むしろそんなことくちばしを入れてほしくないということで、もうかるものだけに力を入れておる。だから、財務の中身がこんなに違ってしまうというような問題が大変大きな問題になってきている。  それでは、ガソリンの販売量を独占してはいかぬから規制するぞといって、またあなたたちが苦労なさると、今度は回転率のいいところの都会周辺のタンクにしてしまって、いわゆる山の中の運賃等や保安施設のうんとかかるようなところは民族系に渡してしまうというような形で、いわば通産省、政府の指導に従ったところはいつもばかを見る、従わない者はいつも得をするというような状態に至っておるという大変な不満があります。むずかしい問題でありますけれども、通産大臣、勇断をふるってきちっとどう解決をなさるのか、これが一つ。  それから、ガソリンスタンド等におきまして、日曜日は販売を、当番だけで、禁止しておるようです。あるいは安売りはやめようじゃないかということになっておる。どちらが正しいか、私は言うつもりはありません。利用者の立場になれば、もうダブついているのだからそんなことはするなという意見も正しい。値段を協定することは独禁法違反だということも一理あります。でも、あなたたちは、業者をもつぶれてはいけないから保護してあげようということで苦労してみえると思う。そうすると、これはまた、守るところのいい子は損をし、守らないところの悪い子だけがもうけからかす。これが第二。  それから、最後のもう一つは、いまのようにドルの値段が下がってくるときはいいのですが、この間のようにぼんと上がってしまうと、どうしようもありません。もはや企業経営のらち外に置かれておる。しかも、これは膨大な金額なんです。だから、もう業界では、いろいろな経営努力の外の方が何倍も大きいものだから、これはやはり安いときにはもうかったものを取り上げてプールしておいて、高いところと——何か油だけはそういうプールする機関でもつくっておかないと、彼ら自身として安定した経営をすることができませんし、消費者にとりましても、損得勘定は燃料の多寡によって決まるんだというようなことでは困ると思うのです。  この三点についてお尋ねをしたいと思います。
  143. 山中貞則

    ○山中国務大臣 その最初の民族系と外資系、この問題は、まず戦後の日本の占領されたときに新潟の一部にごくわずかの量の精製が認められたけれども、太平洋岸の全体の精製というものは、占領末期ごろになってようやく外資との提携を前提として太平洋岸の精製会社というものが日本に逐次発展していった、その中途で民族系資本の育成ということの必要さに気づいて、そうしてやってきたのが今日の状態だと思うのです。  ところで、日本の場合には根本的に、日本に油を持ってきて現地精製というような状態で来ましたが、しかし、サウジアラビアの例を引くまでもなく、あるいはシンガポールの例をとるまでもなく、産地、産油国も付加価値を高めた製品で売ろう、こういうことになってきますと、現在日本が輸入の窓口から精製の規模、これは認可制、そして元売り十三社、一体これは日本の九九・八%輸入しているような国のあり方かどうか、しかも精製四十三社、こういうことをまず何とかしなければいかぬ。そういう体制から業転物等が出る。安売りを始めると、スタンド業界は道路沿いに並んでいますから、安い方へ左へならえをする体質を持っている。  そういうようなことがいろいろありますので、ただいま御指摘のあったような民族系、外資系の問題もありましょうが、問題点は、いまおっしゃったように、為替変動というものによって大きく企業経営の努力などは関係なく吹っ飛んだり、また思わぬ、安くしろと言われるような為替差益を生んだりする。そういう環境の中で、さらに今回は、OPECの会議が事実上いまのところは決裂をして、値下げ競争が始まっていますね。このときに一体国家としてはこれにどう対処すべきか、民間にどのような対処をすべきかをいま検討をしております。  第二点、第三点、いずれもむずかしい問題でございます。小売店、販売店の方も、これは通産局への届け出でございまして、これを断ることはできないというような体制もありますから、そこらをいろいろと法律的にも、現在の様変わりの緩んだ状態の中、昭和四十五年ごろの輸入量に落ち込んでしまったというような背景もございますから、全体を立て直して、やはり日本民族の未来を、LPガスも含めて、いろいろと考えていかなければならぬときに差しかかっておりますから、十分いま検討中でありますし、私の意見も持っておりますから、そういう方針をひっくるめて出していくつもりでございます。
  144. 塚本三郎

    塚本委員 終わります。
  145. 久野忠治

    久野委員長 これにて塚本君の質疑は終了いたしました。  次に、不破哲三君。
  146. 不破哲三

    不破委員 私は、日本共産党を代表して、政府の内外政策について、中曽根総理及び関係閣僚に質問したいと思います。  まず第一に、今回の首相訪米に関連をした日米安保条約の問題であります。  今回の訪米の結果、そこで総理アメリカその他に約束をしたこと、これは日本国民の今後の平和と安全にとってきわめて重大な意味を持つものだと私ども考えております。そういう角度から、総理の特に訪米中の発言の問題についてまずお聞きをしたいわけであります。  総理は、レーガン大統領との会談で日本アメリカ関係を運命共同体と特徴づけられました。これについていろいろ解説がありましたが、一番わかりよかったのは、帰国後の記者会見でこれは一蓮托生ということだと言ったのが、国会での説明よりも非常にわかりやすかったと思います。一蓮托生というのは、さまざまな問題が起きたときに、アメリカ日本が同じ立場に立つ、同じ運命を共通にする、そういうことであります。  この点について、この問題はきわめて具体的に重要な意義を持つので、いわゆる気分的な御答弁では困るわけでありますが、運命共同体と日米関係を特徴づけた総理の立場から言えば、たとえばアメリカが何らかの国際紛争に加わった場合に、日本は必ずアメリカの側に立つ、そういう意味を持っているのか、それとも紛争それぞれについて日本政府独自の判断で、アメリカの側に立つこともあるが立たないこともある、そういう立場を意味しているのか、まず明確に伺いたいと思います。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 後者であります。
  148. 不破哲三

    不破委員 そうすると、特に軍事紛争の場合に、アメリカが第三国と軍事紛争の状態になった、そのときに日本が必ず軍事的な協力者になるということを意味しないわけですね。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりであります。
  150. 不破哲三

    不破委員 次に伺います。  総理は、ワシントン・ポストの社長及び編集部との朝食会において、有名な不沈空母発言を行いました。この不沈空母発言の際に、重要なことは具体的な内容であります。そこであなたは、私なりの防衛論と言って、三つの柱から成る防衛論を展開しました。第一は、ソ連のバックファイアに対して日本が迎撃態勢をとり、防壁になるということ、第二は、当時四海峡と言っていましたが、要するに海峡封鎖をやって、ソ連の潜水艦その他を日本海に封じ込めるという課題、第三は、シーレーンの防衛であります。  日本防衛をこの三本柱で位置づける、日本防衛の中心がこの三本柱から成る、この方針は一体政府のどこで決まった方針でしょうか。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法に従って専守防衛あるいは非核三原則、そういう従来の諸原則を守って防衛をやるという場合に、陸海空三つの部門で分担しておりますが、航空自衛隊においては、まず領空侵犯を行わせない、そして空の守りをやる。武力攻撃が発生した場合に、このようにして空の守りをやるということがまず第一です。それから、海の部門におきましては、やはり日本列島防衛一環として海峡のコントロールをやる。それから、周辺数百海里、もし将来仮に航路帯を設けるという場合には、南西と南東と二航路帯を考慮する。それから、国土それ自体の防衛、これは陸上自衛隊がやる。海の方は海上自衛隊がやる。大体においてそういうような体系が日本防衛の中身をなす。もちろん、それには国民の意識あるいはいわゆる抗堪力というものもございますが、そういうものも含めまして、防衛は大体そういう面で行われると考えておるわけであります。
  152. 不破哲三

    不破委員 私が聞いているのは、あなたが挙げられた目標が、個々の点で日本防衛政策の範囲かどうかという問題ではなしに、日本防衛方針をその三本柱で意義づける、あなたは、第一の目標はこれだ、第二の目標はこれだ、第三の目標はこれだと三つの目標を中心目標として提起しているわけですけれども日本防衛の中心がこの三目標にあるという方針は、あなた個人の考えですか、それとも国防会議あるいは自衛隊考えですか。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治家としていままで考えてきた私の考えを申し述べたものであります。
  154. 不破哲三

    不破委員 私が非常に奇異にたえないのは、一つは、あなたは一国の総理としてアメリカを訪問したんだが、そのときに、一番大事な日米間の懸案になっている防衛問題について、日本政府が決めた方針ではなしに、一政治家としての中曽根個人の考えを述べたというのであるとするならば、これはきわめて不見識なことだと言わざるを得ないと思うのです。  それからまた、第二に、内容上疑問に思うのはたとえばこれは去年の防衛白書ですが、この防衛白書を見ますと、日本防衛ということを言った場合に、三つのことが重要だと書いてある。第一は、陸海空の戦力をもってわが国に着上陸侵攻する場合の対策、第二は、海上または航空戦力をもってわが国の産業基盤等を攻撃する場合の対策、第三が、海上または航空戦力をもってわが国周辺の海上交通を妨害する場合の対策、この三つが日本防衛方針の三つの大綱だと書かれています。  ところが、あなたの三つの防衛論には、着上陸の侵攻阻止とか、わが国の産業基盤の破壊に対する対策とか、いままで政府が説明していた、日本列島をハリネズミにするとか、防衛する上だったら欠くことができないと言われていたはずのことが全く欠落している。この点でもあなたの説明は、政府がいままで展開をし、あるいは正式に決定してきた防衛方針と大分違うと思いますが、この欠落はどういうように説明されるのですか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 似たようなものだと思います。
  156. 不破哲三

    不破委員 あなたが、この防衛白書に書かれている三つの柱と自分で展開した三つの柱が、これが似たようなものだとお考えであるならば、あなたの防衛に対する知識とか認識とか、きわめて大ざっぱで粗雑なものだと言わざるを得ないと思うのです。バックファイアを阻止し、それから艦隊を日本海に封じ込め、そしてシーレーンを防衛する、このどこに着上陸阻止の具体的な対策がありますか。私は、これはまさに奇々怪々な防衛論だと思うのです。  それで、一体なぜあなたからそういう発想が出てくるかということを考える場合に、これがアメリカ日本に求めている注文をあなたがそのまま述べたんだとすれば、これは理解がいくわけであります。  たとえば、ここにカウフマンという、これは現在アメリカのマサチューセッツ工科大学の教授ですけれども、ケネディ政権からカーター政権に至るまで国防総省の顧問をしていて、七三年度から八一年度までの国防報告の執筆の中心者だったと言われている人物であります。この人物が、いまから二年前の六月に日本の新聞のワシントン特派員に対して、アメリカ日本に求めている三つの柱というのを説明したことがあります。  ちょっと読み上げてみますと、具体的にアメリカが求めている分担は何かというと、日本列島は南北に五千キロ近く広がり、戦略的に動かざる空母の性格を持つ。具体的に言うと、第一に、ソ連の爆撃機バックファイアに対する迎撃態勢の強化が求められる。第二に、緊急時にソ連の潜水艦隊を日本海に封じ込める役割り、対馬、津軽、宗谷三海峡の封鎖が求められる。第三に、日本に至るシーレーンの防衛、この三つがアメリカ日本に求めている防衛分担だ。これは七〇年代ずっとアメリカの国防報告を執筆していた中心人物の日本に対する注文であります。  この動かざる空母という形容詞が沈まざる空母に変わっただけで、あなたはこれと全く同じ考えのことをワシントン・ポストで説明された。これは、作家だったら盗作問題が問題になる性質のことであります。しかも、この同じ三本柱の要求が、その年の六月に行われたハワイ協議ではアメリカから持ち出されたことは周知のことであります。  あなたは、アメリカ日本防衛分担としてこの三本柱の要求を求めてきていることを御承知の上で、あえてワシントン・ポストでこの話をされたのでしょうか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は知りません。私は、そのほかに日本列島の防衛ということを言っておるのです。ジャパニーズアーキペラゴー、そういう言葉で言われておりました。
  158. 不破哲三

    不破委員 ところが、その日本列島の防衛と国会であなたが強調されていることが、具体的な三つの目標には何にも入っていないのが特徴なんです。  しかも、カウフマン教授のこの解説には、わざわざ「ソ連の日本本土侵攻といった事態は現実にはあり得ないが」ということを注釈をして、ソ連の日本本土侵攻といった事態を想定しないもとで、アメリカが求めている防衛分担だという注釈までついて要求しているわけであります。ですから、彼は、別の場合には、いまはバックファイアに対する対策はアメリカが引き受けているけれども米国日本が装備し始めた最新鋭F15迎撃機を第七艦隊の防御に回すよう求めているということまで言っているわけであります。  だから、あなたが、日本の国防会議で決定したのでもない、防衛白書にもない、そういう独自の三本柱論を展開された根拠というのは、どう考えてもこれはアメリカ日本に求めている要求をオウム返しに繰り返したと実は言わざるを得ないわけです。  それで、もし、あなたがそうでないと言われるなら、私はさらに質問したいと思います。  あなたの三目標の中では、三海峡、四海峡、海峡封鎖ということが非常に重要な重点を占めています。しかし、一朝日本有事の際、つまり、日本が外国から攻撃を受ける、武力攻撃を受ける危険が生まれた場合に、あなたが想定している仮想敵とは言わないけれども、相手と想定している国の艦隊を日本海に閉じ込めて集結させるということは、日本防衛上一体どういう利益があるのですか。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 仮定の問題についてお答えすることは適当でないと私は思います。
  160. 不破哲三

    不破委員 あなたは、ワシントン・ポストでは仮定の問題をどんどん挙げて、ソ連の艦隊を日本海に封じ込めるとか、ソ連のバックファイアを阻止するとか、外国では仮定の問題に答えられるが、日本の国会では仮定の問題は答えられないと言うのですか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ソ連とかなんとか名前を出してそういうふうにお挙げになっておりますから、こういう場所で仮定の問題についてお答えするのは適当でない。しかし、私が申し上げるのは、国土防衛、それを列島防衛という名前で言っております。これは上陸を阻止するという面が当然出てまいりますし、それから防空、それから海上、大体戦略的に考えるとそういう点がやはり日本防衛の一つの急所になるだろう、これは当然考えられることであると思います。
  162. 不破哲三

    不破委員 バックファイアというのはどこの国の飛行機ですか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはソ連の飛行機です。
  164. 不破哲三

    不破委員 ワシントン・ポストではソ連の飛行機に対する対策を述べられて、国会ではそれについての考えを言えないというのはどこに根拠があるのですか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞のインタビューと、国会の予算委員会で内閣総理大臣として答えるのと、ちょっと性格が違いますし、それから新聞のインタビューの場合でも、もし万一日本に対する武力攻撃、あのときは侵略という言葉を使いましたが、それがあった場合、そういう条件つきで話しているわけです。
  166. 不破哲三

    不破委員 ワシントン・ポストでは、後でテープを点検してみたら有事という言葉が落ちていたというのは訂正がありましたが、それが日本有事だという限定は、ワシントン・ポストの訂正報道にはありませんでした。ですから、それは私は発表されたワシントン・ポストの事実の方が問題だと思いますが、それなら次に進みます。  あなたは、アメリカが世界戦略として、日本有事でなくても、三海峡封鎖をアメリカの戦略上の必要事としているということは御存じだと思うのです。  たとえば、去年の六月、アメリカの上院外交委員会で元海軍作戦部長のハロウェー氏が、太平洋の安全保障問題について証言をしていますが、そこで、「欧州でのいかなるNATO・ワルシャワ軍間の紛争も同時に太平洋での米ソ戦争となる」、だから、その場合にはもう日本状況なんかは無関係に、欧州でNATO・ワルシャワ軍間に衝突が起こったら、米国太平洋戦域戦略は、米国と同盟国が「日本海の出口を閉鎖し、ウラジオストクのソ連艦隊を釘づけにする能力」、それから「ウラジオストクを基地とするソ連長距離航空機による太平洋のシーレーンに対する行動を阻止するための日本航空基地の活用にかかっている。」こういうことをはっきり元海軍作戦部長が証言しています。  これで重要な点は、アメリカのいまの戦略では、「欧州でのいかなるNATO・ワルシャワ軍間の紛争も同時に太平洋での米ソ戦争になる」、だから、われわれが安保で論じてきたような、日本武力攻撃があるというのは、日本有事であろうがなかろうが、アメリカは世界のどこか、特に欧州や中東で米ソの衝突が起こったときにはソ連艦隊を日本海に封じ込める海峡封鎖を戦略上の絶対要件にしているということであります。  それからまた、これは正式の国防報告でありますが、八一年度の国防報告には、やはりヨーロッパその他で紛争が起こったときに、「われわれとわが同盟諸国が」、ヨーロッパ部分は抜かしますが、「オホーツク海と日本海からの太平洋への主な出口を閉鎖することができると確信している。」これもアメリカの側から言えば、日本有事であろうがなかろうが、ヨーロッパやアジアで紛争が起こったときには三海峡封鎖が絶対要求だ。その場合に、アメリカだけでなしに、同盟国軍、少なくともその中には日本自衛隊が入っていると思いますけれども、同盟国軍の協力を当てにしている、これがアメリカ側の認識及び要求であります。  それで伺いますが、そのもとでアメリカからそういう要求を出されているんだが、あなたは日本に対する武力攻撃、つまり安保の第五条が発動するような状態がない限り、あなたが三つの目標の第二番目に挙げた三海峡封鎖の作戦は日本はしないということをここではっきり確認できますか。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、日本に対する武力攻撃が行われた場合と言って私は言っておるんでありますから、当然のことであります。NATOあるいはワルシャワ条約の間でどんな紛争が起ころうが、戦争が起ころうが、日本に対する武力攻撃が発生しない限りは、日本が発動することはないのです。
  168. 不破哲三

    不破委員 もう一つ伺いますが、その際に日本自衛隊行動しない、アメリカの軍事力が日本領海を含めて三海峡封鎖に出ようとする場合、日本に対する武力攻撃がない状態のもとでは、日本政府はそれを認めませんか。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本の列島防衛に関する限りは、日本の首権の範囲内においてこれは行われることで、われわれは外国のものに対してそういうことは認められないと思います。
  170. 不破哲三

    不破委員 これは大事な発言として確認をしておきます。  ところが、政府はそうやって中曽根総理が挙げた三つの目標、バックファイアに対する対策あるいは海峡封鎖、シーレーン防衛、これは全部日本有事のためだと言って説明をしている。ところが実際には、アメリカからはいま言ったように、アメリカ有事の際の対策として要求をされている。前提条件が違うんだが、実際にやっていることは、日本有事のためだ、日本有事に備えると言いながら、実際にはアメリカが要求しているとおりの軍事準備が進められている。私はここに非常に重要な問題があると思うのです。  防衛庁の長官に伺いますが、八二年のハワイ協議の際にアメリカから、中東や韓国など西側にとってきわめて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、日本がそういう課題に取り組むように、そういう問題が持ち出されたことはありませんか。八二年のハワイ協議であります。
  171. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 十四回の日米協議、俗にハワイ協議と呼ばれておりますが、この中で各種いろいろなテーマが出ましたので、その詳しくは政府委員からこれを答弁いたさせます。
  172. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私、昨年の八月の三十日から九月の一日にかけての第十四回の日米安保事務レベル協議に出席いたしましたが、そういう話を耳にした記憶ございません。
  173. 不破哲三

    不破委員 これはもう各方面で非常に広く報道されているわけですね。この会議の二日目に、アメリカの統合参謀本部のビグリー第五部長が、日本本土及び周辺海空域、一千海里のシーレーン防衛——これは日本が、日本有事の際ということで、鈴木訪米以来取り上げている問題であります。このシーレーン防衛は、日本有事だけでなしに中東、韓国など西側にとってきわめて重要な戦略地域に紛争が発生した際に、米本土からの大規模な軍事力投入とその長い補給路確保のために不可欠の要素だ、だから、日本有事の際だけでなしにそういう場合のことを含めて日本は検討せよということを発言をした。それで、それについて防衛庁の代表が、こういう問題を含めていま制服間で行われている協議の中で議論をしたいということでおさまったということが報道されております。こういう事実は全くありませんか。
  174. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 会議の二日目に、ビグレー統参本部の五部長から、シーレーンの防衛日本防衛にとってもきわめてバイタルな問題である、そういう意味合いから、米側の分析によれば、日本側の現在の防衛力というものは必ずしも十分でないというふうな指摘がありました。これに対して、私どもとしては五六中業その他で十分努力をしているつもりであるが、米側の意見というものを聞いた上で、いろいろそういった有事における共同対処ということの作戦計画について研究することはやぶさかでないということを提案したわけでございまして、いま先生御指摘のようなことは一切ございませんでした。
  175. 不破哲三

    不破委員 実際にアメリカと協議している内容と、日本の国会及び国民に説明することとのこの使い分けが、私は日本の国益にとって一番最悪のやり方だと思うんですよ。たとえば去年のハワイ協議にしても、アメリカ側のステートメントが公式に発表されている。そこでは日本の一千海里のシーレーン防衛政策について論評を加え、このステートメントはアミテージ国防副次官補が発表したものですけれども、それが米国が太平洋及びインド洋に展開している攻撃的あるいは防衛的軍事力を維持する問題との関連をアメリカ側から指摘したのだと、わざわざこの発表があるわけです。つまり、日本有事の際の防衛の問題ではなしに、アメリカがインド洋と太平洋に展開している攻撃的あるいは防御的な軍事力を維持する問題、そういうグローバルな戦略の中で日本のシーレーン防衛という課題が持つ意味をアメリカ側からわざわざ提起したのだ、そのことをアメリカの公式の声明はハワイ協議の後で明らかにしているわけです。これは日本にとっては非常に重要な問題ですよ。日本の国内では、すべては日本有事の際、日本に対する武力攻撃があったときということで説明されている。ところが、実際の日米の協議では、そのことに加えて、日本攻撃がなくてもョーロッパや中東の有事の際の問題としてシーレーン防衛が議論されている。そこでオーケーと言ったとは書いていませんよ。その提起された問題を受けとめて、それをことしからの制服間の協議で取り入れていこうということになったというのは、これはアメリカ側の発表に照らしても明白であります。そういう問題を国民に隠したまま、問題は日本有事の際のことだということで真実をごまかしながら突き走る、これは私は日本の国民と本当の国益を代表する政府のとるべき態度ではないと思う。この点は真相を明確にすることを要求したいと思います。
  176. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまの発言は重大なる誤解か、さもなければ曲解であると私は思います。日本防衛庁あるいは日本政府代表は、常に憲法範囲内において個別自衛権の問題として日本防衛問題を論じておるのであって、集団的自衛権の問題として論じたことは一回もないはずであります。そのことはわれわれの方からきつく戒めてきたところであり、また国会におきましてもそういう趣旨の御発言を非常にいただきまして、戒めてきておるところであります。
  177. 不破哲三

    不破委員 では、聞きましょう。  いまの日米の制服間の共同作戦の協議はガイドラインに基づいてやられておりますね。あのガイドラインが決められたときの統合幕僚会議の議長と事務局長はどなたですか、防衛庁長官
  178. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 五十三年当時の防衛庁長官は山下元利……(不破委員防衛庁長官じゃないですよ、統合幕僚会議の議長と事務局長」と呼ぶ)高品武彦統幕議長だと思います。(不破委員「事務局長は」と呼ぶ)ただいまちょっと手元に資料がございませんので……。
  179. 不破哲三

    不破委員 統幕の事務局長ぐらいわからないのですか。
  180. 久野忠治

    久野委員長 いま調査をいたしておりますので、調査の上答弁をいたさせます。
  181. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 突然の御質問でございますので、そこまで資料を準備してございませんので、しばらくの御猶予をいただきたいと思います。
  182. 不破哲三

    不破委員 では、私の方から言いますと、左近允氏ですよ。左近允何と読むのですか。(「そんなことを手柄にしちゃだめだよ、共産党は」と呼ぶ者あり)そんなもの手柄にしますか。尚敏氏ですか。それで、この左近允氏が、これは安全保障制度調査会という、統幕の事務局長をやめられた後での話ですが、調査会で——これはガイドラインの研究会なんです。この研究会に出ている顔ぶれを見ますと、高品当時の統幕の議長も出ていますし、それから竹田議長、中村議長、白川議長と統幕の議長が四人も出ている会合で、彼がガイドラインに基づいていま日米間で行われている協議のシナリオを説明しているのです。  この説明を言いますと、第一のシナリオというのは、日本に対してソ連が攻撃してくるシナリオだ。それから、これから始まるのが、中東なら中東で紛争が起き、あるいはその他の地域で起きて世界戦争になるシナリオだ。これが第二、第三、第四のシナリオと出てくるのでしょう。それについてガイドラインを実際につくり、衝に当たり、その後の協議に当たった左近允氏がこう言っているわけです。「第一のシナリオ、すなわち日本に対してのみソ連が攻撃してくるということは、極めて考えにくい、日本自衛隊がソ連軍と戦うのは、どうしても他の地域、例えば中東なら中東で紛争が起き、拡大して米ソが戦い、所謂、世界戦争の一環として日本はソ連と戦うということ、それ以外はちょっと考えにくいのであります。そのように認識しております」。  これは統合幕僚会議の事務局長として、あのガイドラインの作成と制服組の協議に実際に当たった中心人物の発言ですよ。総理は、そういうことはアメリカ考えであって、日本自衛隊の当事者や防衛の当事者は、世界有事の際に自衛隊が参加する、そんなことは考えていないと言うけれども、実際に協議の衝に当たっている人物は、いろいろな話が出るから、第一のシナリオはこうだと自分で言いはしないけれども、結局のところは、こういう第一のシナリオというのはわれわれは考えていないのだ、考えているのは、中東なら中東で紛争が起きてそこから米ソ対決になって世界戦争になって、そのアメリカ側の一員として日本が戦う、自衛隊が戦う、それがわれわれの実際の想定だ、アメリカ側もそう言っている、日本防衛当事者もそう言っている。それで制服組の協議をやっているのだったら、幾ら総理がここで否定してみても、事態はまさにアメリカの集団防衛体制に日本がまっしぐらに進んでいる、そういう方向に進んでいることは明瞭じゃありませんか。
  183. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまの話は民間人の話だろうと思います、第一に。  それから、第二番目に、それは仮定のシナリオを幾つもつくって、そして専門家が勉強したり研究したりしている。しかし、そういうケースがもし万一、万に一つあったとしても、それはやはり日本に対する侵入が行われた場合の話で、世界戦略上いろいろなところで火の手が上がって、そして日本をどうしても奪取する必要があるというのでどこかの国がどこかの島へ入ってくるとか、本土へ出てくるとか、そういう場合が想定された場合の話でなければ日本憲法上それは許されない、そんなことはあたりまえのことであります。
  184. 不破哲三

    不破委員 誤解があるといけませんが、この会議は民間の会議であります。そこに出た左近允氏は、元自衛隊の統幕事務局長として講師として報告をしています。報告をしている中身は、彼が統幕の事務局長であった当時に関与したことについての話であります。私が言った第一のシナリオ、第二のシナリオというのは、この研究会のシナリオじゃないのです。いまガイドラインに基づいてアメリカ日本の制服組の間でやられているその協議にどんなシナリオが問題になっているか、それについての話であります。その話が出たときに、この実際の担当者が、まあ以前の担当者といいましょうか、われわれはこういう考え方で仕事をしていたんだということを、彼が統幕の事務局長をやめてまだ一年もたたないうちにここで話しているわけですね。それは日本がいきなりソ連から攻められるという話じゃない。アメリカがどこかで戦争を始めて、世界戦争が始まって、その世界戦争の一翼、いわゆる西側同盟国軍の一翼として自衛隊が参戦する、それ以外にはちょっと考えにくいんだ、われわれはそういう認識で仕事をしている、こう言っているわけですから、これはいまアメリカ側の軍政首脳部がアメリカの議会でいろいろ発言していることと全く同じなんです。あなたはこういうことがあるとしたら憲法違反だと言われましたけれども、それならガイドラインに基づいてそういうシナリオをいろいろ立てて、そのときに自衛隊が参戦する研究をやっておること自体が憲法違反じゃありませんか。これについて、どんな研究がやられていて、これから何をやろうとしているのか。あのガイドラインに基づく日米間協議というのは全く秘密に包まれていますけれども、それを公然とタブーなしに国民に報告するのが責任じゃありませんか。
  185. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 外国の侵略から国の独立と安全を確保するというのは、すぐれて大きな課題でありまして、自衛隊といたしましては、常にいかなる事態に陥ってもわが国に対しては侮りと侵略は受けないという準備と態勢を整えなければならぬ、こう覚悟をいたしております。  なお、昨年のハワイ協議後、日米の間におけるガイドラインに基づく各般の研究につきましては、これは内容についてすでに日米の間で協議が進んでおる基本的な考え方がございますので、この考え方につきましては事務当局よりただいまから報告をいたさせます。
  186. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 日米ガイドラインに基づく日米の共同作戦の研究というのは、わが国に対して武力攻撃があった際に日本アメリカ軍が共同対処する、その共同対処の仕方をいかに整合のとれた効果的なやり方でやるかということを研究するものでございまして、具体的にどういう設想でくるかということよりも、むしろわが国に対して武力侵攻があった場合にどう対処するかということに重点のある研究でございます。  その内容につきましては、事柄の内容、性格上、公表することは差し控えたいというふうに思っております。
  187. 不破哲三

    不破委員 それは違いますよ。ガイドラインには第一項目、第二項目としては日本に対する武力攻撃に対する行動が挙げられているけれども、第三項目には日本以外の極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合の日米間の協力、つまり日本攻撃されない場合の対処までガイドラインに決められているわけでしょう、研究対象として。だから、あなたの説明のように、日本攻撃されたときの話だけを協議しているというのはガイドラインとも矛盾するじゃありませんか。それが問題なんですよ。日本有事だけじゃなしに、極東有事とか中東有事とか、その際の日米の軍事協力がいまひそかに研究されている、それはないんですか、あの制服組協議の対象には。
  188. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ガイドラインの中身というのは幾つかの項目に分かれておりまして、一つは、侵略を未然に防止するための態勢ということで、この中に有事の際に備えていろいろ事前にやっておこうということが含まれております。それから第二は、実際にわが国に対して武力侵攻があった場合にどういうふうに対処するかということについて、あらかじめ相談をしておこう。第三には日本以外のいわゆる極東有事という場合におけるわが国の便宜供与のあり方について研究するという三つの点が含まれておるわけでございますが、現在御議論をいただいておるのは、そのうちの第一の侵略を未然に防止するためにあらかじめやっておくことの中に共同作戦計画の研究という項目が入っているわけです。その研究の中身をいま申し上げておるということでございます。
  189. 不破哲三

    不破委員 だから、第三が入っているわけですよ。つまり、日本有事でない極東有事とか中東有事の際の協力問題が入っているわけですよ。だから、さっきの政府委員の説明とは違うんです。そこをごまかすから私が突いているわけですよ。極東有事の際の問題をこの制服組の協議ではやらないというんならやらないとはっきり言ってください。それで、しかも日本有事の研究がほぼ終わって、これからいよいよ極東有事の研究に入ろうというのがいまの段階なんでしょう。極東有事の研究はやらないんですか。
  190. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 俗に申します六条研究につきましては、これは防衛庁が主管せずに外務省が主管する事項になると思いますので、外務省からお答えがあろうかと存じます。
  191. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいま先生がおっしゃいました日本以外の極東の地域における事態で日本の安全に重大な影響のある場合に、日本が在日米軍に対していかなる便宜供与ができるかということを研究するのがこの六条事態の研究でございまして、これはあくまでも便宜供与でございます。すなわち、便宜供与と申しますのは、あくまでも実力の行使に至らないいわゆる便宜供与でございまして、先生が御指摘になっておられるような、そういうアメリカ日本とが一緒に集団的自衛権行使する、そういう意味での研究ではございません。
  192. 不破哲三

    不破委員 そこにごまかしがあるのですよ。たとえば、三海峡封鎖の準備を日本有事前提にして全部整えたら、これはやろうと思えば、極東有事とか中東有事でも、やる気になればいつでもできるわけですよ。実際に、ガイドラインで日本有事極東有事を一緒にしておいて、日本有事という名目で、だれもこんなことがあるとは思っていないのにアメリカが求めているすべての準備を整えてしまおう、それが私は中曽根さんがワシントン・ポストで麗々と言われた三目標だと思うのです。ここに私はいまのやり方の危険があると思うのです。  それから、たとえばアメリカから一般的に言って軍備の拡大を求められている、それに対してできるだけ西側同盟国の一員として応じていきたいというのが総理からいつも披瀝される。ところが、アメリカの要求というのは、決して抽象的に、何%にふやせとか軍事費をどれだけにしろとか、中身は構わぬということを言っているわけじゃないわけですね。ハワイ協議で何遍も持ち出された具体的な軍拡要求は、全部この青写真に沿って、P3Cを何機とかきわめて具体的に出されているわけです。だから私たちは、いまこの財政危機の際に二兆七千億円を超える軍事費を計上したが、これは日本防衛の費用とは全然思っていない。まさに、いざというときに日本の国民とかかわり合いのない戦争に日本を参戦させるための準備、まさにアメリカ有事の参戦準備費用だと考えているわけです。だから、われわれはこの大幅な削減を要求しているわけですが、日米間ではまさに具体的にそう進められているわけですよ。  私は次に行きますけれども、そういう要求に沿って、私は中曽根内閣のもう一つの危険性は、いままで軍事問題で歯どめとなっていたさまざまな問題を、確かに仕事師内閣にふさわしくどんどん取り外す仕事、これは二カ月間にきわめて精力的にやってきました。  それで、あらかじめ総理に聞いておきたいんですけれども、きょうも行政府立法府関係が問題になりました。単に国会決議行政府が拘束されるだけじゃなしに、行政府がこれまで国会に言明したこと、これは立法府行政府関係政府を拘束するものであります。中曽根総理は、特に安全保障の問題、軍事問題、安保の問題で政府がこれまで国会で言明してきたこと、これが政府の方針だとしてきたこと、そういうこれまでの政府答弁している立場を尊重するつもりがありますか。それとも、私の内閣はこれまでよりも明快だと言って、過去のことは御破算にするつもりですか。その点を、まず基本姿勢の問題として伺っておきたいと思うのです。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、不破さんがさっきおっしゃいましたお言葉の中には重大なる曲解がありまして、われわれの真意をたがえるような、誤解を与えるような御発言がありましたので、それは重大なる曲解であり、あるいは共産党流の表現であるというふうに申し上げるものであります。  それから、国会でいままで政府発言してきたものにつきましては、もちろん尊重してこれを履行していくというのは基本原則であります。しかし、時代の進展に応じて政策は変更され、あるいは前進していくものでありますから、その点はまたそういうように対応していくということも申し上げておきます。
  194. 不破哲三

    不破委員 私が言ったのは誤解じゃない、正解であります。  それで、国会の問題ですが、時代の発展とともに政府答弁したことも変わっていくんだ、こういうことを一概に言えば、これは全部御破算論なんですよ。政府はいままで、憲法解釈の問題とかさまざまの問題で重大な言明をしてきています。これがいわば国会と政府の了解事項として、日本のいろんな問題の歯どめにもなり支えとなっている。それを全部、これは時代の発展とともに変わるんだということで一切もう無効だと、あるいはどんどん変えて構わないんだというようになったら、いままで一体どういうつもりで、どういう立場で国会の論戦を積み重ねてきたのかわからぬことになる。だから、私はあえて聞いているんです。  一体これまでの政府の国会での言明——あなたは総理になったときに、鈴木政治の継承者になる、継承ということをうんと強調しましたけれども、これまでの国会の言明を安易に投げ捨てない、発展させるときにはちゃんとそれなりの言明と責任ある対応、変更が必要であるはずであります。そういう点では、過去の政府の言明に対して責任を尊重する、こういう態度を持っているかどうか、もう一遍伺いたいと思います。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自由民主党内閣がいままで言勤してきたことについては、一応これを守っていくというのが基本的態度でありますが、人類の歴史は創造的進化の歴史でありまして、それに対応していくというところに日本の前進もあるわけであり、自由民主党の政策も、そのように時局に対応し得るように政策もまた前進していくわけでありますから、そういう意味におきましては、一定のところに固着しているような保守主義者ではない。われわれは、ある意味においてはあなた方よりも進歩主義者であるかもしれない、そう思っております。
  196. 不破哲三

    不破委員 だけれども、中曽根総理のこの予算委員会での答弁を聞いていますと、たとえば自分が政策の変更をした場合に、政策の変更だと明瞭に言わない。たとえば武器輸出三原則の問題にしても、ある場合には武器技術は三原別に入っていなかったということを予算委員会の冒頭で言いました。きのうはまた、アメリカは武器輸出三原則にわれわれは考えていなかった、これがあの国会決議をやったときの自民党側の考えだったということを言いました。ところが実際には、これはきわめて明確でありますけれども、去年の一月の参議院の本会議で、あなたの前任者である鈴木総理自身が、米国に対する武器技術輸出につきましても、基本的には武器輸出三原則に基づいて対処をすると、一年前にあなたの前任者が米国に対する武器技術の輸出についても三原則で対処すると答弁しているわけですね。これを今度は三原則によらない、明確な政策の変更であります。  ところが、あなたは今度の国会に臨むに当たって、最初は武器の中には技術が入っていないと言い、今度はアメリカが入っていないと言う。国会に対して、これまでの前任者の政府がどういう答弁をしてきたかを知っていれば、とうてい答えられないような答弁をしている。たとえば、きょう問題になったアメリカの空母に対する護衛の問題があります。これについても、これはちょうどいまから十年前の一九七三年の六月ですが、衆議院の内閣委員会で楢崎委員質問に対して、政府防衛庁側の政府委員と外務省側の政府委員は、有事の際に日本自衛隊米国艦船や航空機を防衛する責務を負うかという問題について、憲法上及び安保条約上できない、こういう答弁をしているわけですね。  これは古い話じゃない。七〇年代、いまから十年前の話ですよ。現安保のもとでの話ですよ。ところが、そういう答弁が、憲法上できないというのは憲法解釈の問題ですね。時代とともに憲法解釈が変わられたらかなわぬわけです。ところが、きょうになるとこれもすぐ、任務としてできる、駆けつけるのはあたりまえだということになる。そういうように、これまでの政府答弁がころころと変えられる。しかも、きわめて無責任に安易に変えられる。私はこれでは、議会制民主主義の日本として、国会で議論してきたすべてを、まさにあなたの好きな言葉で言えばクーデター的にひっくり返すことになる。しかも、それが安保最優先だということになると、まさにこれは安保ファッショと言わざるを得なくなる。  この二つの問題で、過去の政府答弁と現在あなたがとってきた、この予算委員会で述べたことと、この整合性があるのか、矛盾性があるのか、これは十分調査してこの予算委員会に答弁願いたいと思うのですが、どうでしょう。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴木さんが去年一月におっしゃったことは速記録をよく見ないとわかりませんが、その前後に言葉があるんじゃないかという感じもいたします。「基本的には」という言葉を言っていらっしゃる。この間、矢野さんの御質問でも、外務省の淺尾政府委員答弁を見ますと「基本的には」とやはり前のところで言っておるのです。「ただ、アメリカとの間には安保条約あるいはその他の条約がございますので、これとの関連で、どういうふうに今後取り進めていったらいいかという法的な側面について現在検討中でございます。」こういうことを言っておりまして、安保条約を持っておるアメリカとの場合はいま検討中ですと言っておる。ここはお読みにならなかった。したがって、この安保条約を結んでおるアメリカとの関係は留保されておるわけなんです。こういうところがまた別の場所にもあります、淺尾政府委員答弁で。  「基本的には」という意味は、そういう意味でアメリカとの関係、つまり安保条約を持っておるアメリカとの関係というものは常に留保されて考えられてきたのではないかと私は想像をいたします。また、それが正しい態度であろう、それは国会決議に違反しておるものではない、そう私は考えております。
  198. 不破哲三

    不破委員 あなたは日本語の読み方をよく知らないのですよ。米国に対する武器技術輸出についても「基本的には」と書いてあるのですよ。だから、アメリカが除外されておると書いてないのですよ。その後に確かに、日米安保関係まで検討していると書いてありますよ。しかし、検討した結果ならば、これは政策の変更になるのですよ。現時点では、米国に対する武器技術輸出についても、抜本的には三原則に基づいて対処する考えでございますと。これから検討してこれを変えるなら変えるという結論が出るのでしょう。あなたはきのうは、これはもともと最初からアメリカは外してあったんだという意味のことを言っていたじゃないですか。  だから、あなたはそういうこれまでの行政府の長を引き継いだのだから、全くないところでいきなり中曽根総理大臣が生まれたわけじゃないのです。あなたは継承ということで全部引き継いでいるわけですよ。その引き継いでいる人が政策を変更するのに、いままで行政府が国会に対して何を言ったかをきちんと調べないで、それでわれわれから言わせれば口から出任せとも思えるような言葉がしばしば山てくる。これでは全く立法府に対する軽視であり、そのことをきちんと調べた上でいま言った二つの問題、一つは、武器輸出三原則を技術提供に関してアメリカを外すというのが政府のこれまで国会に対して述べた態度の変更になるのかどうか。それからまた、公海アメリカ航空母艦の護衛に、それを任務として日本の海上自衛隊や航空自衛隊が駆けつけるというのがこれまでの政府答弁の変更になるのかどうか。この点は、この場の思いつきじゃなくていいですから、きちんと調べて私は回答願いたいと思うのです。
  199. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 四十八年六月に、いま御指摘になったように、「日本側としては責任を持たないと思います。」という答弁をしたことは事実であります。それは憲法上そういう責任を持つことはできないという意味でありまして、現在でも変わっておりません。つまり、私どもはいま自衛のための必要最小限度範囲内の行動しかしない。つまり、個別的自衛権行使しかしないというわけです。ところが、憲法上あるいは条約上そういう責任を持つということになりますと、そういう個別的自衛権範囲にかかわらず一切責任を持たなければいけない、そういうことはあり得ないわけでありますから、ちっともその当時の見解は変わっておりません。  なお、つけ加えて申し上げますが、その後五十年の八月二十六日に共産党の中路委員がやはりその問題をお取り上げになりまして、当時の丸山防衛局長が私の趣旨と同じように、責務はないと言っておりますのは、そのとおりでございまして、われわれが行動をするのは、あくまでも個別的自衛権範囲内において行動いたすのでございますというふうに答弁いたしております。
  200. 不破哲三

    不破委員 つまり、それも詭弁なんですよ。そういう任務を持つかどうかということなんです。任務は持てないのだ。それで私も、五十一年の国会でずいぶん質問をしましたが、そのときには、つまり日本自衛隊自分を守るために行動する、それが結果としてアメリカを守ることになることもある、こういうのが答弁だったですよ。ところが、中曽根さんの発言はそうじゃなしに、来援に来るアメリカの機動部隊を援護するために自衛隊が任務として出かけるということがあるのだ、話が違うのですよ。だから、ここでいいかげんな話をしないで、私は、これまでの政府側の答弁をきちんと調べて、それで、この二つの問題については責任ある回答をしてもらいたいと思います。  続けます。それから、それでしかも大事なことは、こういういままで中曽根内閣になって外してきたいろいろな問題が、これもやはりアメリカの要求に出ているということですよ。たとえばカーター政権の時代でしたら、現在アメリカ日本大使であるマンスフィールド氏がアメリカの本国へ帰ったときに、アメリカ側の人たちに対して日本防衛政策を説明して、比較的好意的な説明をしたことがあります。日本には軍事的役割りを大幅に拡大することに制約がある。一つは、非核三原則、これは日本国民が核兵器を嫌悪しているからだ。もう一つは、平和憲法自衛隊の海外派兵を禁止していることだ。三番目に、日本政府の兵器輸出禁止政策、これも国民の広範な支持を得ている。つまり、アメリカ側の代表でも、武器輸出禁止の三原則は、非核三原則憲法の海外派兵禁止と並んで、日本の非常に大事な制約と見えていたのです。これはカーター政権の時代です。  ところが、レーガン政椎になったときに、最近も文書を発表したから新聞でも見ましたが、レーガン政権のブレーンと言われるヘリテージ財団というのがあります。レーガン政権ができたその年の五月に、「日本防衛政策」という報告書が出されています。これによると、現在日本防衛政策を再検討して外さなければいけないものが四つあると言っている。一つは、軍事費一%の上限といった無意味なタブー——タブーを外すというのもこれもヘリテージ財団、レーガンのブレーンが好きな言葉のようでありますが。それから、憲法による自衛隊の海外派兵の禁止、非核三原則、武器輸出制限の撤廃、この四つをレーガン政権のブレーンと言われる財団の研究報告書が、日本防衛政策上外してもらいたいタブーとして挙げているわけです。そのうちの二つまで、一%条項の問題とそれから武器輸出禁止の三原則、二つまであなたの内閣はこの二カ月に手をつけて外し始めた。これはだれが何といっても、まさにレーガン政権の要求どおりにやっていると言わざるを得ないのです。そうなると、非核三原則の問題、憲法の問題、これがこの次の日程に上ってくることを心配せざるを得ないのは、これは日本の国民として当然であります。  次に、憲法のことを伺いたいと思いますが、あなたはワシントン・ポストのインタビューの中で憲法の問題を聞かれて、私は長期のスケジュール表を持っているのだという意味のことを言いました。これはどういう意味ですか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前にもここでも申し上げましたように、明治十四年の政変というものを頭に置いて、そして中長期にわたる国民的コンセンサスをつくり上げる、そういう段取りが好ましい、そういうふうに考えておるわけであります。
  202. 不破哲三

    不破委員 あなたが憲法改悪の手本として明治十四年政変を挙げられるというのは、私は民主主義の政治家としての見識を本当に疑います。  明治十四年の政変に始まって、確かにあの年に憲法発布の約束がされました。明治二十二年に憲法ができました。あなたはそれを国民的コンセンサスでやったと言うけれども、あの憲法は明治二十二年の二日十一日に発布されるまで、日本の国民はだれ一人として知らなかったわけでしょう。全くの秘密のうちに審議をされて、枢密院を中心に、わずか二、三十人の人間だけが参画をして、国民は官報でこれを知った。  あのときにベルツというドイツ人の医者が日本にいて、戦前はベルツ水なんて有名になったものですけれども、彼がその当時のことを日記に書いて、憲法公布の二日前、二月九日の日記に、もう東京では憲法発布の準備だって大騒ぎをしているけれども、こっけいなことに日本の国民だれ一人中身を知らない。つまり国民のコンセンサスなしに上から強行したことで、国際的には笑い物になったのが明治十四年から始まる憲法制定経過なんです。おまけに、あのときにだって民主主義の主張はあった。ところが、明治十四年の前に集会条例や出版条例の鎮圧法がありましたが、それに加えて、新聞紙条例とか保安条例とか、言論、出版、集会、結社の自由をすっかり抑えつけた上でやったのがあの過程であります。  だから、あなたが明治憲法制定過程に非常に感心をして、これをまねしたい、自主憲法をつくるということだけは言うけれども、中身は国会で聞かれてもさっぱり言わぬ。最後になって初めて国民がわかる。まさにこれは独裁的なやり方じゃありませんか。だから、私はこの点ではあなたの見識を疑いたくなるが、歴史論をやっても切りがありませんから、先へ進みましょう。  それで、そういう長期的な目標を持っているという場合、問題はどういう方向に何を改定する目標をあなたは持っているのか。あなたは有名な改憲論者だから、憲法改定の中身の目標なしにスケジュールだけを頭に描いていることはないでしょう。一体、何を重点に日本憲法を変えようと思っているのですか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 明治十四年の政変の件は、私の本にも書いてありますし、それからたしか昭和三十八年ごろ、憲法調査会で総括発言をしたときにもそのことに言及しておる、長い間私が考えてきておることであります。それはちょうど、あのころ大隈さんや板垣さんの自由民権派が国会開設を非常に要求した。片っ方の藩閥政権の方はそれに対して対抗しておったわけです。そうして、非常に政局が混乱をしてピンチ状態になった。そのときに両方がその線で一致した。中長期の計画をつくって、そうしてお互いが——あのころ昔は、壮士なんというのがおって、刀を使ったり何かした時代ですね。そういう争乱をやめてそして平和的に国づくりをやろう、そういう方法論で一致した、それを私は言っているのです。ですから、いまわれわれの方と、共産党や社会党さんや皆さんと必ずしも考えは一致しませんね。自由民主党は自主憲法制定という政策を持っておりますし、そういう中において国民的コンセンサスをどうつくっていくか、そういうような点でみんなで考えてみたらどうか、そういう方法論を私は言っているので、中身のことを言っているのではないのです。共産党の皆さん方はそれに対してどういうお考えをお持ちになるか、まだやってみなければわからぬわけですから、みんなで、だれかがそういう発想を出し合って、少なくとも国民的コンセンサスを獲得して方法論において一致する、そういう形でまず段取りをするのがいいのではないか、そういう考えを持っているわけです。
  204. 不破哲三

    不破委員 私が聞いたのは中身の問題で、あなたがどういう考えを持っているか、それはどうですか。
  205. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中身は、それは各党によってみんな違うわけですから、ある党は反対だと言って寄ってこないのもあるでしょう。しかし、その中身の問題については、まずテーブルの上にのっかって、それから話し合ってみんなで合成していけばいい、私はそう思っております。
  206. 不破哲三

    不破委員 そうすると、中曽根氏としては憲法改定についての中身の考えはないわけですか。
  207. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は持っています。それは個人中曽根康弘としてはありますよ。しかし、内閣総理大臣中曽根康弘として申し上げることは私は慎んでおります、そういうことを申し上げておるのです。
  208. 不破哲三

    不破委員 しかし、たとえばあなたは社会党の平林議員の質問に対して、徴兵制は入るのかと聞かれたら、それは中身については入らないと言う。全く中身について言わないわけじゃなくて、ぐあいの悪いことはこれは入らないとかはっきり答えを言う。ところが、第九条を改定するのかとか、自衛隊を認知するのかと聞かれると、それは中身の問題ですから言えませんと言う。これは全く使い分けじゃありませんか。  それからまた、あなたは国会では中身の問題一切言わないというけれども、あなたが総理大臣になった日に外人記者クラブに配った文書の中には、憲法改定の二つの重要な中身をあなたの現時点での信念として書いてあるじゃありませんか。一つは、私は自前の自衛力の保持について疑問の余地を残すような憲法は改定されるべきだ、この自分の主張を引いて、この主張はいまでも変わっていないと書いてあります。  それからもう一つは、「これからの目標」というところに、国会が首相を選ぶ制度を改めて国民が首相を選び、その首相が大臣を任命し、その大臣は国会議員と兼任すべきでない、つまり国会から完全に独立した大統領制をやるべきだということをいまの時点の考えとして書いているじゃありませんか。  外国人特派員にはそういうことを説明できて国会には説明できないのですか、総理大臣として。
  209. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは昔の考えを、首相公選論というものを前にも言った、あるいは憲法問題についてはいろいろな意見も昔はあった。しかし、それを特派員の皆さんによく理解していただいて、そして、ややもすると私に対する誤解があったので、過去の誤解を払拭するためにその文書はつくられた、そういうふうな趣旨も序文のところに書いてあるはずで、そういうことで御理解願いたいと思います。
  210. 不破哲三

    不破委員 それは過去のことを言いながら、その考えはいまでも変わっていないとか、新しい憲法をつくることは私の終局の目標だとか、これは全部現時点のことにつなげて書いてあるんですよ。そのことをわざわざ内閣総理大臣に就任した日に自分の基本的な考え理解してもらう文書として外国人特派員には配る。外国向けにはそういう人物だ、そういう政見だということを明らかにする、国内ではそれを隠す、まさに使い分けじゃありませんか。
  211. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは総裁になった日にたしか配れと言って、総裁就任と同時にやったと思います。しかも、それは内閣総理大臣中曽根康弘と書いてやっているのではないのであって、衆議院議員であったか、あるいは中曽根康弘であったか、そういう資格において世の誤解を払拭するために、自分は過去にこれこれの言動をやった、しかし、これはこういう意味である、こういうことを言われているけれどもこれはこういう誤解である、あのとき言った演説を引いておりまして、そして一々論証して誤解を払拭させた、そういう作業がその文書になっておるわけであります。
  212. 不破哲三

    不破委員 それはあなたは去年の国会でもそう言いましたけれども、最後にあなたのサインのある送り状がついているんですよ。私がこのたび総理大臣及び自由民主党総裁に選出されたことの関連で質問お答えします、総理大臣に選ばれたから質問が来たのでそれに答えるのだということをあなたのサイン入りで書いているんですよ。それをわずか二カ月前のことをそうまたすぐ変えて、あれは総裁になったばかりでまだ総理になっていないのだとか、そういう言いわけはやはり責任ある政治家としてやるべきではないですよ。
  213. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 しかし、その序文に書かれておる趣旨というのは、過去の私の言動に対する誤解を直すためにやっているんだということをはっきりそういうふうに書いてありまして、中身にあるものは、私が政治家になってから行政管理庁長官時代まででありますか、その間におけるいろんな言動に対する誤解を一々論証して払拭した、過去のそういうことを論証しておるというふうになっておるわけであります。
  214. 不破哲三

    不破委員 それは経歴と同時に自分見解を書いてあるのですよ。序文には経済、防衛などの問題についての私の見地を明らかにするために書いたのだ、ただ歴史を明らかにするために書いたと言っていないのです。  それから、これでもう一つ重大なことがあります。この中には今日の政策の問題として、海外派兵に触れた問題がある。私の考えでは、日本が要請を受けた場合、国連の平和維持活動に協力することは決して憲法をじゅうりんするものでも自衛隊の精神に反するものでもない、こう明言されていますが、これは過去の問題ではなしに、まさにいまの問題として書かれているわけです。  あなたは、国連の平和維持活動に協力することが自衛隊の精神に反しない、憲法に反しない、そう考えているのですか。
  215. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それも過去の、そういう考えを持っていたことがあるという意味で書いておいたのであります。
  216. 不破哲三

    不破委員 これは本当に詐欺的な答弁ですよ。あなたのこの文章は、過去を説明しながら全部現在の自分防衛と経済に対する見地を説明しているのです。  では、あれですか、あなたは国連の平和維持活動に協力することは憲法自衛隊の精神に反するというようにいまでは考えているわけですか。
  217. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は非常にむずかしい問題で、いま私がここで即答するには適当でないと思うのです。しかし、いま政府自衛隊法を改正して、そして、そういうことまでやろうという考えは持っておりません。
  218. 不破哲三

    不破委員 ここに私は原文を持ってきておりますけれども、決して過去形で書かれていないのです、この自衛隊問題は。現在形で書かれているのです。しかも、総理大臣になった中曽根氏が、自衛隊の国連に応じての海外派兵は、私は自衛隊の精神に反しないということを明言しているわけですから、これについて……(「昔の話だ」と呼ぶ者あり)昔の話じゃない、現在の話で書いてあるのです。  ですから、あなたはいま答弁を保留されましたが、これは明確にこの予算委員会に現在の考えはどうなのかということを、まあ考えがまとまってからで結構ですから答弁を願いたいと思います。
  219. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現在の考えは、いま申し上げたとおり、自衛隊法を改正してそういうことをやろうとは考えておりません。
  220. 不破哲三

    不破委員 そうすると、自衛隊の海外派兵があなたの考えには合致するし自衛隊の精神なるものには合致するが、自衛隊法には違反する、国連の要請でも。これはお認めになるわけですね。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それが合憲なりや否やという点は法制局長官に聞いてもらいたい。  私の記憶では、それが平和維持活動である場合には憲法違反ではないという解釈をかつてしたことがある。そのためには、しかし自衛隊法でそれは書いてないから、それはできません、したがって、それを行う場合には自衛隊法を改正しなければできない、そういうふうに私の記憶の中にあるわけです。ですから、憲法上の見解については法制局長官答弁させますが、私はいまそういうことを改正してやるという考えはないとはっきり申し上げているのです。
  222. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 たびたび申し上げておりますが、総理がいま言っておられる意味は、武力行使とかかわりのない職務として、自衛隊をたとえば国連監視団に参加させるとか、あるいは避難民の輸送に従事させるとか、そういうものを平和維持活動として言っておられるのだと思います。そういうものであるならば、それは憲法第九条との関係において問題にはならない。ただし、現在そういう職務は自衛隊法には書いてございませんから、仮にそういうことをやろうとするならば、自衛隊法の改正が要る。言いかえれば、現在それをやれば自衛隊法違反になる、こういう理屈でございます。
  223. 不破哲三

    不破委員 問題はきわめて明瞭だと思うのです。これは従来の考えですよ。だから、中曽根総理総理になった日に、自分の海外派兵に対する考え方を外国人特派員に配った。その中に自衛隊法を改正しなければできないようなことを、私の考えでは、これは憲法にも自衛隊の精神にもかなっているのだということを書いて、外国人特派員に配った。これは一体、総理大臣として適当な行動ですか。
  224. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 総理大臣としてやったのではないのです。たしか前の日の、総裁に就任したときに持っていったはずであります。しかも、それは総理大臣中曽根康弘ではなくて、衆議院議員であるかあるいは個人中曽根であるか、そういう名前でやっておるはずであります。総理大臣としての考えは、いま申し上げたとおり、はっきりいたしております。
  225. 不破哲三

    不破委員 だけれども自分がサインした文書は、文章ぐらい読んでから配るべきですよ。総理大臣と自民党の総裁に選ばれたことに関連して、質問があるから私の見解を述べると書いてあるのですよ。これをはっきりさせてくれなければ……。はっきり書いてありますよ。あなたは読んでいるのでしょう。だから、この点については、もし中曽根総理がこの文章に正確に記憶がないのなら、お持ちのはずですから、やはりこれについての明確な見解ですね、総理大臣になった日にアメリカ及び各国のジャーナリストに対してやった国際的な一番最初の発言でしょう。その中にこういう問題が書いてある。このことについての見解を、彼は総理になる前だと言うのだが、現物にははっきり書いてあるわけですから、総理及び自民党総裁としての中曽根康弘質問が来て、それに答えるのだと書いてあるわけですから、これをちゃんと見た上で答弁をいただきたい。  それで、委員長に求めたいのですが、先ほど言った集団自衛権の問題と、それから武器輸出三原則の問題、過去の政府答弁との関係でのいまの総理大臣の答弁の整合性の問題ですね、それから、これについての見解、この三つの点について、きちんと政府から後日回答を求めるように理事会でよろしく処理を願いたいと思います。
  226. 久野忠治

    久野委員長 中曽根総理大臣の答弁を求めます。
  227. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままでみんなその問題についてはここで明確に御答弁申し上げているので、私は、その必要はないと思っております。
  228. 不破哲三

    不破委員 それは、中曽根さんが言う行政府立法府関係で、立法府の方が理解できないと言っているのだから、立法府の中の私が立法府委員長久野さんに言っているわけですから、それは委員長、処理を願います。
  229. 久野忠治

    久野委員長 不破君に申し上げます。  総理大臣よりただいま答弁しておられますから、その答弁の内容について御不満であれば、質問を継続していただきたいと存じます。(発言する者あり)中曽根総理大臣は明確にお答えになっておられます。(「明確じゃない」と呼ぶ者あり)お答えになっておられます。御不満だということであれば、質疑を継続してください。
  230. 不破哲三

    不破委員 事実が違うと言っているのです。ここに明確に総理として書いて言っているわけだから、それを彼は総理ではないと言っている。(「委員長、もう少し議事運営には公平を期さなければいかぬ」と呼ぶ者あり)
  231. 久野忠治

    久野委員長 私は、公平を旨として運営をいたしております。
  232. 不破哲三

    不破委員 ここに書いてあるんだよ。あなたのサイン入りで、ここに。見るのがこわいんですか。(発言する者あり)
  233. 久野忠治

    久野委員長 中曽根総理大臣の答弁を求めます。
  234. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来、米の軍艦あるいは米の部隊に対する救援、個別自衛権発動の場合における御答弁、これも明確に申し上げたつもりであります。法制局長官答弁申し上げたと思います。  それから、いまの私のペーパーにつきましても、それは過去の私の考えについていろいろ誤解があるから、それを直すためにそういうものをつくった。ですから、題も「私の政治生活」とかなんとか、そういう題になっておるはずであります。そういう意味で、いままでこういうことを考えたし、やったし、そういうことを一々論証して説明してきた。未来のことについては、これから始まるわけですから、その未来の総理大臣になってからのことについては、この国会で御答弁申し上げているのが最も正確な事実であります。そのように御認識願いたいと思っております。
  235. 不破哲三

    不破委員 幾ら事実を隠そうとも、これは公開されているものですから、未来のことも書いてあるわけですよ。将来の目標、究極の目標、書いてあるわけですよ。ですから、これはあなたが幾ら否定されてもやがて事実が明らかになりますから。  じゃ私は質問を続けましょう。  ヘリテージ財団のプログラムによる四つ目の問題、非核三原則です。武器三原則、それから一%条項を外して、憲法の海外派兵の禁止の問題についても、中曽根氏はこういう点で国際向けにはきわめて明瞭に自衛隊法の改正の必要があることまで宣言している。最後は非核三原則ですが、これがいま非常に重要になってきていると思うのです。  というのは、先日の国防報告でも、太平洋方面に、特に日本海に、いままで余り作戦がなかった日本海にまで空軍の作戦を広げるということまで含めて新しい配置が問題になっている。特にエンタープライズの日本寄港とかいうこともすでに契約されているように聞いています。それからまた、核ミサイルは少し先になりますが、巡航ミサイルを積んだ戦艦ニュージャージーが第七艦隊にことし配備になった。そういう点で、日本への核持ち込みの危険の問題、疑惑の問題、改めてきわめて重大な段階になっているというふうに思います。それだけに非核三原則、特に持ち込ませずを堅持することが重要だと思いますが、この点についての総理見解はいかがですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核三原則は、これを遵守してまいります。
  237. 不破哲三

    不破委員 その非核三原則の遵守という場合、従来から問題になっていて非常に灰色といいますか、そうなっている部分にトランジット問題というのがあるのですね。つまり非核三原則の中の持ち込ませず、英語で言えばイントロダクションは事前協議の対象になるということなんですが、一体、アメリカの軍艦が横須賀や佐世保に寄港するとき、その軍艦が核を積んでいる場合、これがイントロダクションに入るのかどうか、あるいは横田の基地や嘉手納の基地に核を積んだアメリカの飛行機が着陸や発進するとき、これが、一時通過ですけれども、核持ち込みに当たるのかどうか、これが例のライシャワー発言以来大問題になっているわけです。いまだに明確な答えがないわけですね。  それで、私は端的に伺いたいのですが、一体、一九六〇年の日米安保条約改定交渉以来、アメリカ日本の間にトランジットもイントロダクションの一部として事前協議の対象になる、一時立ち寄りも事前協議の対象になる、こういうことで日米両国政府の間に明確な合意があるかどうか、あるとすれば一体いつ、だれによる、どこの交渉でその合意が行われたのか、これを伺いたいと思います。
  238. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 従来たびたび、それから特に不破委員御指摘のいわゆるライシャワー発言なるものがございましたときに累次政府側から御答弁申し上げましたが、寄港、通過を含めて事前協議の対象になるということにつきましては、例の岸・ハーター交換公文、それから岸・ハーター交換公文の内容について藤山・マッカーサー間に交わされましたいわゆる口頭了解というものにおいて明確になっておるということは、累次政府が申し上げているとおりでございます。
  239. 不破哲三

    不破委員 ところが、この藤山・マッカーサー了解というのは、外務省が提出したのがありますけれども、核弾頭のイントロダクションは対象になると書いてあるだけで、イントロダクションの中にトランジットが入るかどうか、一時立ち寄りが入るかどうかは何にも書いてないわけですね。このイントロダクションの中に立ち寄りが入るということを藤山・マッカーサー協議で確認しているのですか。
  240. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これも従来から申し上げているとおりでございますが、核弾頭及び中長距離ミサイル持ち込み、いわゆる核兵器の持ち込みでございますが、英語でイントロダクション・インツー・ジャパン・オブ・ニュークリア・ウォーヘッズ云々というものにつきましては、これは単に陸上に配置するとかいうことにとどまりませず、いわゆる寄港、通過も含めて入るということについては、日米間に了解があるということは従来から申し上げておるとおりでございます。
  241. 不破哲三

    不破委員 どこであるのですか、その了解は。藤山・マッカーサー会談ですか。
  242. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 藤山・マッカーサー口頭了解と事前協議に関する交換公文から、これは文理上明らかであるということを従来から申し上げておるとおりでございます。
  243. 不破哲三

    不破委員 ところが、相手側のマッカーサー氏は、これは二年前の四月ですが、日本の新聞記者とインタビューして、立ち寄りの問題が話し合われた記憶はありませんとはっきり言っているわけですね。それから、こちらの交渉当事者だった藤山外相は、やはりその問題について、これは一昨年の五月ですけれども、立ち寄りの問題で話し合った記憶は全くないのですと言っている。交渉の二人の当事者が全く話し合った記憶はないと言っている。それから、そのときの政府の責任者だった岸氏も、やはりこれは別の新聞のインタビューですけれども、そのときには、いわゆる通過とか寄港とかいうものを事前協議の対象とは考えていなかったと言っている。彼の言葉で言えば、私の当時の考えは、核持ち込みとは核の装備であり、寄港や領海通過は含まないというのが考えであった。つまり、その当時交渉に当たったアメリカ側の交渉当事者も、それから日本側の交渉当事者も政府の責任者も、一九六〇年にはそんな交渉は全然出なかったのだと言っている。どこからそういう話が出てくることになるのでしょうか。だから私は、一九六〇年になかったのなら一体どこで日米間に了解があるのか、これは政府は明確にする責任があると思うのです。
  244. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 これも従来からたびたび申し上げておるとおりでございますが、安保国会以来一貫して政府は、寄港、通過——無害通航の問題はちょっと別でございますが、そこは省かしていただきますと、寄港、通過を含めまして事前協議の対象になるということは、安保国会以来累次申し上げておるとおりでございます。  そういう経緯も踏まえまして補足させていただきますと、不破委員よく御承知の藤山・マッカーサー口頭了解の内容というものを文書にいたしまして、昭和五十年にアメリカ側と確認をいたしまして、アメリカ側もそのとおりであるということをアメリカ政府の意向として確認してまいっておる。これも従来から申し上げておるとおりでございます。
  245. 不破哲三

    不破委員 全然質問に答えていないんですよ。藤山・マッカーサー口頭了解を日本語から英語に直してアメリカと了解をとったというのは、さっき読み上げたイントロダクションなんですよ。このイントロダクションの交渉をしたときに、マッカーサー氏も藤山氏も、核の陸上装備は考えていたけれども、寄港とか通過は考えていなかった、両方とも、交渉した記憶がない、全くしていないというふうに言っているわけですから、幾ら藤山・マッカーサー口頭了解の日本語と英語を出してみても、これは問題は解決しないのです。この事前協議の対象になる持ち込みに寄港や通過が含まれるということをアメリカ日本の間で合意しているかどうかが問題なんです。その合意はいつ、どこであるんですか。このイントロダクションではだめですよ。
  246. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 イントロダクションではだめですよということをいま不破委員御指摘になりましたが、イントロダクションという意味は、寄港、通過を含めてわが国の領土、領海、領空内に核兵器を持ち込む、これが事前協議の対象になるというのが藤山・マッカーサー口頭了解であり、かつ日米間で文書になっておる岸・ハーター交換公文の内容であるということを従来から政府は申し上げておるわけでございます。
  247. 不破哲三

    不破委員 総理及び外相に伺いますが、経過はこのとおりですよ。つまり、両者の間には一九六〇年以来トランジットが事前協議の対象になるかどうかについて何の合意もない、交渉がないのですから、当事者が交渉してなかったと言っているわけですから。ところが、その後で政府が、これは対象になる、これは日本向けに言っている。しかし、国際問題では、幾ら日本向けに国会で言っても相手に対して拘束はないわけですよ。日米両国間にこの一番肝心な問題で合意がないから、軍艦が来るたびに疑惑が広がるわけです。中曽根総理はもうタブーはないということを言っているわけですから、私はこの問題もタブーにすべきじゃないと思うのです。そういう合意がないんなら、それでしかも、日本政府が責任を持って国会と国民に対してトランジットは事前協議の対象になる、だから、アメリカが事前協議をしてこないんだからエンタープライズも核は入っていない、ミッドウェーにも入っていない、こういう説明をしてきているわけですから、その国民に対する責任を果たすためには、これだけ日米間に合意があるかないかと聞かれて、いつでも合意がどこであったとか言えない立場にあるわけだから、このタブーは大胆に破るべきだ、本当に合意がないんならですね。  いままでもいろいろなことを言ってきましたよ。佐藤・ニクソン共同声明とか園田・マンスフィールド会談とかインガソル・安川合意とか、どこにもトランジットは一言も触れていないのです。この二十数年間この一番大事な問題に、まるでそれこそタブーにして、さわるのがこわいようによけてきたのがこの面での日本外交じゃないですか。タブーに挑戦するのがあなたの一番誇りを持つところであるならば、私は、この面でもタブーに挑戦して、アメリカの大統領やアメリカ政府との間に、日本政府は国民に向かってこう言っている、明確にイントロダクションの中にはトランジットも入る、トランジットも事前協議の対象になる、こういう点について国民の疑惑を解くようにやはり交渉を提起すべきだ。お互いにロンとヤスと呼び合うばかりが本当にタブーのない外交じゃないわけでしょう。私は、このことを総理に求めたいと思います。
  248. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま栗山条約局長が申し上げたとおりだと思います。政府もしばしば寄港、それから通過につきましては事前協議の対象になるということをはっきり国会で申しておりますし、これはアメリカ側も十分承知しておるところであります。
  249. 不破哲三

    不破委員 違うのです。一番大事な問題をつかれると、政府は国会に対してこう言っているのだからアメリカが知らないはずがない、そういう答弁でしょう。ところが、われわれが、アメリカ政府アメリカの議会で言っていることをここへ持ってきてこう言うと、それはアメリカが勝手に言っていることであります、あなた方はいつもそう言うじゃありませんか。つまり、ほかの国の政府自分の国の議会に何を言っていようが、それは相手の国を拘束するものではないということは、あなた方がさっきの有事の問題でも明快にしているじゃありませんか。日本政府が国民に対して、国会に対してこう説明しているんだから当然アメリカは知っているはずだ、そんなことで外交ができるものじゃないのですよ。この重大な問題は、よそを向いてひとり言を言っているからわかるだろう、そういうことで解決できるものではないのです。やはり正面から、これだけの日本の国民の疑惑があり、疑惑には根拠がある。なぜ根拠があるかと言えば、この合意がないからですよ。これに対して交渉するつもりはないですか。交渉する勇気はないですか。
  250. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 国会で申し上げておることが一方的なことであるということではございませんで、これは条約の解釈の問題でございますので、国会で政府が申し上げておることというのは、条約の解釈としてそういうことを申し上げておるわけでございます。その点も十分踏まえまして、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、藤山・マッカーサー口頭了解の内容を英文にいたしましてアメリカ側に確認を求めて、これでよいか、アメリカ側もそのとおりに了解しておるということを言ってきておるということでございます。
  251. 不破哲三

    不破委員 もう一遍聞きますが、じゃ、藤山・マッカーサー口頭了解の英文にはトランジットという言葉が入っているのですか。
  252. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 トランジットという言葉はございません。
  253. 不破哲三

    不破委員 入っていないから問題であって、そこに解釈が分かれておるわけですよ。それを日本の文法上はこうだとか言ったって、これは外国には通用しないのです。肝心の日本の港に軍艦を入れているアメリカ政府も軍部も拘束をしないのですよ、これは。あくまであなた方の日本国会での答弁にすぎないのです。だから、この問題を明確にするために、これだけあいまいな問題になっているのに、何で交渉できないのですか。なぜ交渉できないのかという理由は、行政の長である中曽根総理、明確に答弁願います。
  254. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはもう先ほどから何回も言いましたように、日本政府が公式の場で国会におきまして、いまの条約解釈の中で寄港、通過というのはイントロダクションの中に入っておると公式な見解を明らかにしております。そのことについてはアメリカも十分承知しておるわけですから、日本アメリカというのは非常に強固な信頼関係にあるわけですから、私はそれで十分だと、こういうふうに考えます。
  255. 不破哲三

    不破委員 それなら、日本政府はその解釈を当のアメリカに説明したことがありますか。いつ、どこで説明しましたか。トランジットが入るという解釈を当のアメリカに説明したことがありますか。
  256. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 国会で申し上げておることはアメリカ政府にもお話をしておりますし、先方は十分承知しております。(不破委員「いつ、どこで言いました」と呼ぶ)累次説明しております。
  257. 不破哲三

    不破委員 この重大な問題で私はいま何回も聞きましたが、いつ、どこで説明したということを一度も言えないのですよ。つまり、そういうことが言えないくらい揺るぎない信頼関係だと言えばかっこうはいいけれども、それが質問できない関係にある。これは、実際は事実があなた方の説明と違っていることをあなたはよく知っているからなんですよ。やぶ蛇になることを恐れて質問できないんじゃないですか。行政の長ということをあなたはあれだけ言うのだから、長としてこのあいまいな問題を日米交渉で明確にする意思があるかどうか、それともこれは今後やらないつもりか、それだけ伺います。
  258. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これはもう、いま条約局長が申し述べましたように、これまで外務省もしばしば国会で議論、そして政府も明確な回答というものをアメリカ当局に伝えておるということでありますから、この間においては毫末も疑惑はない、はっきりしている、こういうふうに考えます。
  259. 不破哲三

    不破委員 結局、私ずっと中曽根内閣の外交、防衛路線について、特に今度の首相訪米で大きな一つの転機をなした問題についてずっと聞いてきましたが、もうこの道は明瞭だと思うのですね。日本有事ということで国民には説明しながら、実際にはアメリカが要求していた三本柱の参戦構想を私なりの防衛論と称して、これに重点を入れていく。三海峡封鎖、バックファイアの迎撃、それからシーレーンの防衛、これはアメリカが、中東有事やヨーロッパ有事の際に一番求めている日本の参戦要求ですよ。これは忠実に果たしていく、そのために必要な軍備を拡大する。しかも、これで一たん戦争が始まったら、アメリカが、レーガン政権が核の先制使用を公言していることは今度の国防報告を見ても明瞭であります。相手が通常兵器の場合でも、それで不利となったらアメリカはいつでも核を使う。しかもその場合には、ヨーロッパやアジアや出先だけで核の撃ち合いをやる限定核戦争構想、これは明瞭なんです。今度の国防報告でも宣言しているわけですから。そういう構想の中に日本がもろに突っ込んでいきはせぬか。そこへ核を持つ危険が九九%ある軍艦や飛行機が入ってきても、それについて、それが事前協議の対象になるような交渉をやろうとしない。これで一体、あなた方よく言うけれども、本当に日本の国を日本政府が守る立場でしょうか。アメリカが、中東やヨーロッパ有事で戦争が起こったときには、真っすぐに日本がその戦争に巻き込まれる。しかも、それはいつ核戦争に転化するかわからない危険な計画であります。  私たちはこれに対して、ここまで安保条約の危険な役割り、あなた方の西側一員論、軍事同盟論の危険な役割りが明瞭になっている以上、私たちが一貫して述べてきた軍事同盟から抜け出した非同盟中立の道のために、私どもいよいよ全力を挙げるつもりですけれども、あなた方の今回の答弁でも肝心かなめのことは全部逃げて、国民の前からこの危険な真相をそらそうとしている。しかし、肝心な交渉は何一つしようとしない。これは明瞭じゃありませんか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 何かいままで話を聞いていると、不破さんは自分で推理小説をつくって、それに酔っておられるような感じがいたします。われわれは憲法を守ろうと言っているのですけれども不破さんは憲法を破れというような、そういう集団自衛権日本がはまり込む、破れというような、そういうような印象を私禁じ得ない。われわれは必死になって憲法を守ろう、個別的自衛権でいこう、そう思って歴代内閣やってきているし、私もそれをやってきているのですから、それを曲解されないでいただきたい。どうも何か推理小説に酔っておられるんじゃないかという気がいたします。
  261. 不破哲三

    不破委員 私は一つ一つ事実を挙げて、アメリカ側の計画や発言、それからまた日本防衛担当者の考え方、それからまた核問題の交渉の経過、全部事実を挙げて述べておるわけです。それに対してそれが推理小説としか見えないとしたら、これはあなたの頭の問題であります。しかし、幾らあなたの頭の構造が違っていても、あなた方が進んでいる道と危険性は、これは安保が始まってから最大のものですよ。朝鮮戦争、ベトナム戦争、こういう戦争がありました。このときに日本は基地になる危険を冒しました。そのときに椎名外相は、ベトナム戦争に基地を貸しただけで、ベトナムが遠いからいいけれども、これが近くだったら日本攻撃されても仕方がない、そういう立場にあるんだということを椎名外相は国会ではっきり言いました。ところが、いまあなた方が進めている戦争の構想は、ただ基地を出すだけじゃないのです。まさに自衛隊が軍事的役割りを担って参戦しようということです。しかもその戦争は、椎名外相が、ベトナムは遠くて、遠い兵器を持っていないから大丈夫だと言ったような状態じゃないのです。だから、私はあなた方のこの政策の危険性はきわめて明瞭だと思う。事実を挙げて論証したつもりであります。時間もありませんから、この論争を最後の最後までやるわけにはいきませんが、ここに問題があるということを申し上げて、次の問題に移りたいと思います。  次は、内政の問題、経済の問題であります。  いま中曽根内閣のもとで大きな問題は、いま言った安保、外交の問題とあわせて経済政策、あなた方は財政改革とか行政改革とかくっつけておりますが、日本の国民の経済をどうするかという問題、ここに非常に大きな問題があります。  御承知のように、いまの日本経済の不景気は非常に長期かつ深刻であって、ヨーロッパやアメリカよりはまだましだと言って済ましていられるような段階ではなくなりつつあります。特に不景気が深刻になる場合に、私は、日本の経済、各階層の中でだれが一番被害を受けるかというと、この被害は中小企業が一番大きいものがあると考えます。これは統計を見ましても、一千万円以上の借金、赤字で倒産するケースを見ても、中小企業が九九・八%を占める。しかも、中小企業というと何となく比重が小さいような気がしますけれども日本の労働人口五千七百万のうち中小企業者、商工業者というものは千二百五十万、約二二%であります。それから、中小企業に働いている労働者を合わせると約四千万に近づいて、まさに日本の有業人口の六六%、三分の二が中小企業関係者なんです。比重から言えばこれは大企業関係者よりも圧倒的に大きな比重を占めています。そういう意味で私は、景気対策の第一の問題として、そういう点での中小企業への援助と救済の問題に問題点をしぼって伺いたいと思います。  それから、もう一つの角度を言いますと、ことしは中小企業基本法ができて二十年であります。私どもは、二十年前に基本法が制定されたときに、大体これは大企業中心の高度成長政策のいわば附属品として扱われている、中小企業の振興にとって実がないということから賛成しませんでした。しかしそのときに、政府はこの基本法を提案した際に、この基本法によって日本の中小企業の地位を抜本的に改善するんだということを、時の通産大臣はたしか福田さんだったと思いますが、非常に強調されました。それから二十年であります。(中曽根内閣総理大臣「福田さん、通産大臣やったことないですよ」と呼ぶ)議事録、福田さんですよ。総理じゃないですよ、前の。福田一さんです。いろいろいるんですから。(中曽根内閣総理大臣「ああ、議長の福田さん」と呼ぶ)それで、大いに強調したものであります。それから二十年たって、一体その当時政府が抱負を述べた中小企業政策の目標と今日の現状はどうなっているか、これは私は、日本政府として総括し、点検する責任があると思います。  通産大臣に伺いますけれども、たとえばあの中小企業基本法では、大企業と中小企業の生産性格差の是正ということが一番大きな問題であって、これも福田さんですが、その提案をしたときに、格差の縮小ではだめだ、大企業と中小企業の格差の解消までいかにゃならぬ、これがこの法律の目標だということまで強調されましたが、二十年たって現状どうなっているか、現状を伺いたいと思います。
  262. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは統計的な数字の問題その他は事務当局にやらせますが、中小企業基本法制定のときの目標というのは、確かに中小企業こそわが国の産業の基盤をなすものである、したがって、ともすれば弱い立場の中小企業というものに対して国がいろいろなその後の法律や税制改正、金融等で手当てをして今日に至っていることは間違いない事実であります。  大企業、中小企業との格差といいますけれども、大企業の中でも、たとえば今度国会に法律をお願いしようと思っております基礎素材産業というようなものは、やはり大企業のうちに入りますが、非常な苦境にあえいでおる。一方、中小企業というものの中でも、先端産業の分野とかあるいはまたサービス業の分野とか、非常に就業労働者数も最近ふえ、あるいはまたそれらの営業係数も非常に体質的によくなっている新しい分野等も次次に興っております。一概に倒産件数だけで言えないということは、確かに倒産件数もありますが、しかしそれよりも、新しい企業に生まれ変わったり、新しいものが興ったりして中小企業の件数はふえております。  しかし、その体質等については、いま言いましたように、企業城下町と言われるような法律の中でも、特に中小企業関連下請等が困るだろうから、そういう配慮も今度の国会でお願いしようと思っておりますが、二十年を振り返って、いろいろな波がございましたが、日本の中小企業はよく耐えてきた。それを政府の方も、余り通産行政で立ち入って政府の介入というような形をとらないで、徐々に自力によって立ち上がっていく人たちを助けていこうという手段でいろいろな政策をとってきていますから、おっしゃるように、二十年目というのは一つの区切りになりますので、ただいまのお話を受けて、私自身も二十年目の中小企業ということをやはり考えてこれから政策を展開していくよすがにしたいと思います。(不破委員「格差はどうですか」と呼ぶ)  格差については、じゃ、事務の方から統計の問題について説明いたさせます。
  263. 神谷和男

    ○神谷政府委員 労働生産性格差、賃金格差等が格差の指標として一般的に用いられますが、労働生産性格差指数につきましては、三十八年、大企業を一〇〇にいたした場合に、中小企業が五〇・三でございます。その後、高度成長の時期にこの格差は逐次縮小いたしまして、五十年で五四・八まで縮小いたしましたが、二度のオイルショックの後、現在やや格差が開いてまいっておりまして、四七・七ということになっております。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕 賃金格差は、三十八年、同じく大企業一〇〇に対して中小企業七五・〇、ピークは四十七年でございまして八一・二、五十五年が七七・九という数字になっております。第二次オイルショック以降、この格差が開いてきております。原因としては種々ございますけれども、その中で最も大きな要因は、業種別あるいは構造別の要因、これが大きく響いていると考えます。
  264. 不破哲三

    不破委員 いま格差の数字の話がありましたが、中途経過を抜きますと、二十年の総決算というのは、付加価値生産性格差で言えば、五〇・三から四七・七に逆に広がっている。つまり、二十年間この面では基本法行政は功を奏してこなかったと言わざるを得ないわけですね。ここに私はいろいろな問題があると思うのです。  たとえば、いろいろ施策をあの基本法には書いてあります。書いてありますけれども、何といっても圧倒的に予算が少ないですよ。さっき言いましたように、中小企業というのは、日本の有業人口の中で三分の二を占めている、部門としては最大の部門ですね。それに対して、たとえば今度の予算では、五十兆の予算のうちに二千四百三十四億円、中小企業対策の予算が。〇・四八%でしょう。  ちょっと中小企業庁に伺いますが、中小企業基本法が出発したときの一般会計中の予算の比重と、それからこの二十年間に一番率が高かったときの比重をちょっと教えてください。たしかお願いしてあるはずですが。
  265. 神谷和男

    ○神谷政府委員 一般会計歳出総額に占めます中小企業対策費の比率は、昭和三十八年度に〇・四二%でございます。ピークは昭和四十二年度で〇・七〇%、五十八年度予算案は、ただいま御指摘のように〇・四八%でございます。ただし、一般会計歳出総額から国債費と地方交付税交付金を除いた一般歳出に占める比率は、昭和三十八年度〇・五四%、ピークが四十二年度で〇・八八%で、五十八年度予算案におきましてはこれが〇・七四%、こういう数字になっております。
  266. 不破哲三

    不破委員 いま数字が挙げられましたように、一般会計全体で言いますと、基本法をやったときに〇・四二、それから最初の数年間は上がって、上がったピークでも〇・七〇なんですよ。あのときに、たしか基本法の議論の中では、これも大臣からの説明ですが、中小企業の比重からいって農業並みの予算にふやしたいというような、かなり大きなふろしきの広がった話もあったのだが、ピークで〇・七〇。しかも、それがピークで、後ずっと昭和四十九年から五十四年ぐらいまで〇・六〇前後に下がって、最近、歴年下がり方は激しいですね。五十五年が〇・五七、五十六年が〇・五三、五十七年が〇・五〇、五十八年が〇・四八、ピークのときよりもはるかにまた下がり始めている。しかも、ことしは絶対減でしょう。  日本経済の中であれだけ大きな比重を占めている中小企業の対策を基本法までつくってやろうというのに、高い場合でも〇・七ですが、一%以下の状態を二十年間続けてきた。しかも、それがことしは絶対額まで減額しているというのは、これは私は、さっき山中さんは政府が介入しない方がいい、介入は確かに悪いけれども、あなた方が決めた中小企業基本法では、大いに支援をして、国の力で持ち上げるということを約束した。それがこんなにやられてこなかった。これは私は重大な問題だと思うのですね。  ですから、たとえばあの法律を見ますと、一番最初の章に、構造の高度化とかそれから設備の近代化ということを挙げられている。ところが、調べてみますと、これは貸付ですからあれですけれども、だんだん年々中小企業の組合に対する貸付件数の割合が減って、たとえば五十六年度、全国に各種組合が五万四千あるうちで、利用できたのはたった五百四十六、もうわずかに一%ですね。設備近代化資金に至っては、借りられたのは五十六年度で七千わずかですから〇・一%、千分の一の企業しか利用できない。まさに狭き門なんです。  それで、この点が特に私は産業行政として非常に不公平だということを感ぜざるを得ないのは、この中小企業基本法で言っている、国の施策の目的として挙げている技術の研究開発の推進です。これは基本法の目的の第二項に挙げられています。  中小企業の技術の研究開発予算というのは、研究所への支援とかいろいろありますけれども、たしか私が聞いたところによりますと、企業へ直接与えられる援助としては技術改善費補助金、これが唯一のものだと聞いております。この技術改善費補助金の一番新しい実績ですね。年間どれぐらい補助金を出しているか、それから基本法制定以来総額でどれぐらいの補助金が出ているか、これもお願いしてあったと思いますので伺いたいと思います。
  267. 山中貞則

    ○山中国務大臣 中小企業対策の予算が大したことがないじゃないかと言われますが、これは私は行政経費だと思うのです。ことしはマイナスシーリングですから、最初に通産省全体でこれはやはりマイナスになるように、それぞれの各省の中の局と、外局がありますれば外周の長が相談して、それぞれ対前年比マイナスということで要求したせいもありますが、ただ考え方は、中小企業に対しては、いまもちょっと触れられましたけれども、政策手段というのは税と金融に尽きると思うのですね。そうすると、今度私どもが中小企業投資促進税制というものをすでに税制上は決定をしておりますが、これは確かに行政経費としての予算の面にプラスにはならないでしょう。しかし、これによって、主税局の計算する大蔵省の歳入に及ぼす面では、最低三百億ぐらいの財源を要するわけであります。それはやはり個々に中小企業の予算にはのりませんが、大蔵省の税制改正を通じた歳入の中でそれだけのものをこの厳しい中で割いて、そして、この投資促進税制というものを実現せしめたのだ。  あるいはまた、これも金目としては出てきませんが、しかし、結果的には大蔵省の歳入には欠陥に出てくるはずである中小企業の承継税制というのは、やはり戦後の荒野の中にバラック建てから始まった商店街の人たちが、いまやきれいな地方地方の商店街を形成するようになったのに象徴的に見ますように、一生懸命みんな働いてきて、日本も豊かになって、ところが、ふと気がつくと自分たちがもう老齢期に差しかかっておる、世がわりの時代が来たということから、この二、三年、承継、すなわち後継者に譲り渡す際の遺産の問題、相続の税の問題、こういう問題が深刻に議論される背景があると思うのであります。これは大変むずかしいのですけれども、中小企業に限ってのみ、今回は四〇%の特別の配慮を中心とするいわゆる事業用の資産の評価の減額、あるいはまた非上場株式の評価の仕方等々、詳細は避けますが、そういう配慮などもいたしております。したがって、これは中小企業庁の予算にそれが出ているわけじゃありません。結果的に中小企業の運営、世がわりに大きく貢献するであろうという意味では、そういう背景も見ていただかなければならぬ、私はそう思います。  あと、数字については長官より……。
  268. 神谷和男

    ○神谷政府委員 技術改善費補助金につきましては、実績という御質問でございましたので、決算額で申し上げますと、五十六年度八億九千四百万円でございます。四十二年度から五十六年度までの累計約六十四億円ということになっております。ただし、技術関係予算につきましては、近年中小企業庁といたしましては特に力を注いできておりまして、五十八年度御審議いただいております予算案につきましては、中小企業の技術力を抜本的に向上させるために、地域フロンティア技術開発事業の創設といったようなものを中心といたしまして一八・三%、全体でマイナスシーリングの中で特に力を注いでおり、総予算五十一億円を計上をいたしておる次第でございます。
  269. 不破哲三

    不破委員 いま言われたように、直接中小企業へ援助する技術改善補助金が五十六年度八億九千万円で、中小企業基本法が始まってから総額が六十五億円だと、こういう話ですが、これを大企業にやっている技術開発の補助金と比べてみると、余りにもひどい低さが明瞭になると思うのですね。たとえば、時間の節約上、私、言いますと、五十六年度三菱重工に渡している補助金が、計算しますと五十六年度実績で三十八億なんです。日立に渡しているものが五十六年度三十七億なんです。これは委託金抜きの補助金ですよ。この二社の一年分七十五億で、この二十年間に中小企業に出した技術改善補助金をはるかに上回る。しかも、私ども予算からずっと計算してみますと、この大企業に渡している補助金というのは、昭和五十三年度大手五社だけで三十五億円だったものが、今度の予算では合計百六十億円ぐらいの勘定になっている。急成長ですよ。  一方でそういうことをやっていながら、一方で中小企業に対しては、わざわざ基本法第二項で技術開発の促進ということをうたっているのに、この程度のことでお茶を濁していると私は言わざるを得ないと思うのです。山中さんは、このほかに税制がある、金融がある、税制と金融が対策の基本だと言うけれども、それだけでは足りないので、もっと格差是正の具体的措置をとるということを基本法で約束したわけでしょう。その執行の内容がきわめて貧弱だということですよ、これは。  それから、全部総ざらえすると本当にびっくりするわけですが、あと若干の点を言いますと、たとえばあの基本法ができたときに、こういう話もありました。これも福田大臣が言ったことですけれども、中小企業対策というのは、やはり一番小さいところ、従業員一人から三人ぐらいの生業に近いところが一番大事だと思う、この点は政府はまだ十分統計も整えていないので、統計もよく整えてしっかり対策をやりたいと、これは二十年前の政府発言なんですね。  統計ということで言いますと、日本には明治から始まっている統計で、工業統計調査というものがあります。それで、これは生業に近いところまで含めて全数調査が昭和十四年から始まっています。ところが、その十分統計が整っていない小企業、零細企業の調査をここでわずかにやっていたわけですが、昭和五十五年にすそ切りをやっちゃったでしょう。昭和五十五年度から、全数調査は金がかかるというので、一人から三人規模の事業所三十万の大部分を切り捨てて、これはもう調査しないということになった。  私、この決定を知って、いろいろな県に電話してもらって状況を聞いてみました。たとえば中曽根さんの群馬でも、群馬県は決して革新の知事じゃないですよ。しかし、全数調査が原則なのにそれがやられないので大変都合が悪い、地場産業対策に困ると言っている。山中さんの鹿児島県でも、国がやるのが当然なのに国がやらなくなったので、仕方がない、県がやらざるを得ない、地場産業対策もこれなしにはできないし、それから本当の生業対策もできないと。すそ切りで三年に一度になっちゃったんですね。  不景気が進んでいる五十六年度と五十七年度は、全く大事なときに統計の調査さえやめてしまった。これは施策の対象から切り捨てるということでしょう。ことしは三年ぶりだから初めてやるそうですけれども、こういうやり方というのは、まさにあなた方が基本法で約束したことさえ真っ向から振り捨てて、もう生業に近い零細企業というのは調査の対象にさえしない、こういうことにならざるを得ない。  こういう点は、私は改めることを求めると同時に、そういうところに看板倒れで本気で中小企業の施策を考えないやり方があらわれていると思うのですが、すそ切りの現状はどうですか。
  270. 江藤隆美

    ○江藤委員長代理 だれに質問をしますか。
  271. 不破哲三

    不破委員 通産大臣でも中小企業庁長官でもいいです。
  272. 神谷和男

    ○神谷政府委員 調査統計部の方といたしましては、できるだけ正確な把握をしたいということでございましょうが、御承知のように、非常に数の多いものでございますし、やはり統計の一つの効率性というものを考えて、そのような形で行われることになったのだと承知をいたしております。  私どもといたしましては、もちろんできるだけ毎年の統計が得られることが行政上ありがたいことは事実でございますけれども、やはりそういう全体の効率性のもとにおきまして、不足している部分につきましては商工会、商工会議所等におきます現状、経営指導員等からの聞き取りの調査あるいはサンプル調査、さらには政府関係金融機関を通じての調査というものでこれをこの間補足し、私どもとして行政の指針としておる次第でございます。
  273. 不破哲三

    不破委員 それから、もう一つ例を挙げますと、例の官公需問題です。国の中小企業への発注問題。  内閣総理大臣が、官公需の発注はできるだけ、五〇%まで中小企業比率を高めたいと言ったのは、いまから七年前です。ところが実際には、現在中小企業への発注はまだ三七%程度ですね。これは中曽根さん関係があるのですが、中曽根さんが行政管理庁長官だった最後の時期に、この官公需発注についてどうもぐあいが悪い、各省庁よくやっていない、実際に中小企業にやるべきのをやっていなかったり、大企業に注文しているのを帳づらだけ中小企業に書き直して申請したり、ともかくだめだということを行政管理庁が調べて警告したことがあります。私は、その警告をしたときの行政管理庁の長官が今度は総理になったのだから、こういう点では、官公需の引き上げですね、大いに、それこそ勇断をふるわれるだろうと思っているわけです。  たとえば現在、国と公団の発注だけで十兆円ありますから、三七%をもし一〇%上げれば一兆円以上の新しい受注が中小企業に来ることになる。これは本当に力を入れるべき分野だと思うのです。ところが、そういうことをやっているわけだから、私はこれを受けて、この現状三七%程度の国の中小企業発注の比率を高めるための目標と体制を現内閣はお持ちだろうと思うのですけれども、それはどうでしょうか。
  274. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 昨年の九月でございますか、監察をいたしまして、契約目標を、三七・三ですか、二ですか、それを守っているかどうかというふうなこととか、受注機会の増大のためにどういうふうに努力しているかとか、そういう監察を行ったわけでございますが、その結果によりますと、若干やはり契約目標に達しない、そういう省庁も少しあるようでございます。  そんなようなこともありましたので、その契約目標を設定をし、そして十分受注機会を確保するようにということで勧告をいたしました。その勧告の結果、全部ではありませんが、大体半分以上報告が来ておるわけでございますが、その報告によりますと、今後は勧告の趣旨に従って契約目標を守ったり、受注機会を確保するように努力いたしましょう、こういうふうな各省からの回答が来ておる、これが現状でございます。
  275. 不破哲三

    不破委員 その勧告を本当に実行して、実行だけじゃなしに、七年前に政府、首相が約束をした五〇%水準へ引き上げるということをやるためには、推進体制が要ると思うのですね。政府の各省庁の機構ではどこがこの推進に当たっていますか。
  276. 山中貞則

    ○山中国務大臣 当然ながら、中小企業庁、所管の通産省であります。事実は、勧告を受けました時点では三七・二%、おっしゃるとおりですね。金額にして三兆九千百八十億。ですから、そうひどい状態ではないと思うのですが、勧告もあったことでありますから、中小企業庁が先頭に立って、各省庁の協力をいただきながら、行管等にも報告をし、この比率を高めたいと思いますが、中小企業の製品も優秀なものも多いのですけれども、しかし、五〇%という一応の目標はだれかが過去に言ったんでしょうが、すぐに一両年で達成できるかというと、実態を調べてみますとなかなかむずかしい問題がある。しかし、逐年この実態が高まっていく努力はしなければならぬ。私どもが先頭に立って引っ張ってまいります。
  277. 不破哲三

    不破委員 中小企業庁の何課でやっているか、御存じですか。
  278. 神谷和男

    ○神谷政府委員 下請企業課でございます。
  279. 不破哲三

    不破委員 私は、そこに政府の姿勢があらわれていると思うのですよ。つまり、全官庁それから全公団を相手にしてそれで動かさなければいけない仕事が、中小企業庁の下請企業課のサイドワークにされている。私は、下請企業の問題を取り上げたことがありますけれども、下請対策でもこれはなかなか大変なところですよ。膨大な下請企業に対して、わずか二十何人でやっているわけでしょう。そこのところのサイドワークに、この全官公庁の十何兆円に上る受注の管理、推進を委託している。調べてみましたら、一人か二人でやっていて、もう各省庁の実情報告を資料にするのと会議に出るのとぐらいで手いっぱいな状況のようでありますけれども政府が非常に大事な方針だといって打ち出しておきながら、これを推進する体制は本当に投げやりにしている。大きな権限を持った独自の部門も何もない。下請企業課というのがどれぐらいの実力を持っているかは私は知りませんよ。しかし、下請企業課のサイドワークで、せいぜい一人か二人でこれだけ大きく取り上げた問題を扱わしている。ここら辺で済ましているところに、いわばこの中小企業問題というものに対する、言葉だけあって余り実の伴わない政府の姿勢があらわれていると思うので質問したわけなんです。  こういう例を挙げれば切りがないけれども、二十年たって、政府が約束した実績がほとんど上がらないで、むしろ格差が広がる、倒産が広がる。世界でも、ヨーロッパやアメリカに比べて日本は中小企業は比重は大きいけれども、社会的経済的扱いがおくれているというのは顕著なことでありますが、この状態が放任されているのには、そこに問題がある。  私は、この問題の最後に、内閣の長である中曽根総理に、中小企業問題について、やはり事の比重からいって抜本的な見直しをすべきだと思いますが、その点についての見解を求めたいと思います。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が行管長官時代に行いましたことにつきましても御言及がありましたが、中小企業問題は非常に重要な問題であると心得ております。  政府の側としてやることは、やはり受注率を上げるということが当面やり得ることであると思いまして、努力してまいりたいと思います。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  281. 不破哲三

    不破委員 それから、景気の問題でもう一つの全国民的な問題は、私がいま挙げたのは、いまの不景気から国民が受けている被害を防衛するための一つの焦点として中小企業問題を挙げたわけですけれども、もう一つの大きな問題は、現在の不景気を打開するのに政府が何をなすべきかという問題だと思うのですね。  それで、この点について、経済見通しとの関係もありますが、政府の経済見通しを見ますと、ことしはGNPが実質三・四%伸びるというように言われています。  これは経済企画庁長官に伺いたいのですが、三・四%伸びる、この伸ばす力ですね、個人消費とか設備投資とか公共投資とかいろいろありますが、三・四%はどこがどれだけ寄与して伸びるという見通しなのか、これをちょっと伺いたいと思います。
  282. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  三・四%の成長率の根拠は、根本的には、五十八年度において日本経済が、世界経済の回復の基調に応じて回復のペースに乗っていく、こういう考え方に立ちます。したがいまして、経済活動が五十七年度に比べまして活発になっていく。その一つとして、民間消費支出が三・九%、民間住宅投資が二・六%、そしてまた民間企業設備が二・九%。これら内需によりまして、三・四%のうち二・八%は内需によって占める、こういう計算でございます。
  283. 不破哲三

    不破委員 確かにそういう計算をしているわけですね。つまり、三・四%上がるといううちの二・八%は内需だ。そのうちの二・一%、つまり全体の六二%に当たる分が個人消費の伸びだという計算ですね。つまり、これだけの個人消費を伸ばさないといまの政府の経済見通しは実現しない、こういう上にあなた方の予算も立てば、全経済政策も立っているわけですよ。  ところが、じゃその個人消費を伸ばすための政策を何をやっているか。減税がないわけでしょう。それから、人勧は凍結で、民間はそれに連動して賃上げを抑える、それから社会保障は抑える。つまり、経済見通しではかっこよく、個人消費がどんどん伸びるから三・四%伸びるのだ、それで税収がこうなるとかいろいろ計算しているけれども、肝心の政府に責任がある行政の施策の方は、減税をしないとか、いま言ったように年金を抑えるとか賃金を凍結するとか、つまり、自分の見通しの足元をひっくり返すことばかりやっている。つまり、政府のいまの政策を発表されておるとおりやったら、経済見通しなんか狂ってくる。個人消費が上がることに依拠してやっているわけですから、私は、そういう矛盾がいまの政府の財政経済政策には非常に大きな問題としてあると思うのですね。  そういう点から、もう時間もありませんから、端的に一点だけ伺いますが、いろいろな切り詰め政策をやっている。その中で、私ども以前から一兆円減税ということを言っておりますし、去年の暮れの党首会談でも、まず何はさておいても消費を起こすてこに政府の施策がなるように一兆円減税をやるべきだということを申し入れましたが、この点についての政府考えを、これは総理から伺いたいと思います。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 景気の高揚につきましては予算の範囲内で極力努力したところでございまして、たとえば住宅関係にいたしましても、サラリーマンのローンに対する控除額を五万円からたしか十五万円ぐらいに引き上げたり、あるいは住宅金融公庫、公的関係の住宅資金等につきましてもいろいろ配慮いたしました。いろいろな努力とあわせまして目標どおりの成長率を達するように努力しているところでございます。  なお、財政が出動することはかなり厳しい情勢になっておりますので、金融関係と相組みまして機動的な措置を行うようにしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  285. 不破哲三

    不破委員 こういう問題を要求しますと、政府は必ず財政の出動は困難だ、財源がないというのをそれこそ防壁にして、沈まざる何か知りませんけれども、防壁にしてお答えになる。  この点で、私はやはりこの財政改革の問題あるいは行政改革の問題について政府と臨調が取り組んできた方向をどうしても吟味せざるを得ないと思うのです。というのは、政府にしても臨調にしても、財源がないと言いますが、行政改革なるものの対象として制度的な変更とかあるいは人員の問題とかいう問題はあなた方なりの角度から取り上げるのに熱心である。しかし、私ども日本の行政を見た場合、最大の浪費はそういうところじゃなく、別のところにある。政府の政策決定の誤りあるいは間違った方向、道理に合わない方向、その方向に政府の政策決定があったために政府の意思決定の責任による浪費、これが非常に大きいものがある。これは実際には行革の吟味の対象から全く外されているのです。たとえば、さっき言った参戦準備のための軍拡の費用なんというのは、これは制度の問題じゃない、政策の問題です。それによって莫大な浪費がある。これはほかの分野にも非常に多いわけですね。その一例として、私、今度の国会で政府が大きな問題にしようとしている国鉄の問題についてちょっと意見を述べたいのです。  国鉄が大変な赤字だ、年間二兆円の赤字になると言われている、赤字が出ている。ところが、この点で私は最大の責任ある原因の一つが、七〇年代初めの設備投資政策の転換にあると思うのですね。六〇年代の末には国鉄財政再建推進会議の意見書を受けて、内閣自身が、いまの国鉄財政の赤字の原因は、大きな一つが過大な設備投資にある、そういうことを認定をして、十年間で三兆七千億円を限度とするようにいまの設備投資計画を縮小すべきだ、これは昭和四十三年の意見書であり、四十四年の内閣の決定でした。つまり六〇年代までは、設備投資の過大が赤字の原因だから縮小すべきだ、一応こういう点で国鉄と内閣の合意があったわけですね。それが七〇年代に入ってから、新幹線は別枠だ、これはほかで財源をつくろうから、これは別枠でどんどん大きくしようじゃないかと新幹線計画が出てきた。それから、それに続いて四十八年には新しい内閣の決定があって、それまで国鉄の投資は三兆七千億円を限度とすると決められていた前の内閣の決定をひっくり返して国鉄投資分も十兆五千億円に、一挙に約三倍近く引き上げた。私はこれは重大な政策転換だったと思うのですよ。  実際に私ども計算してみましたら、七〇年度の末にあった国鉄の長期債務二兆六千億が、八一年度までの十一年間に十三兆五千五百億円ふえて十六兆千五百億円になった。この九〇%以上は設備投資による債務ですよ。まさにあのときの設備投資の大転換が、国鉄財政を悪化させた、ただ一つと言わないまでも、最も重要な責任のある政策決定だったことは間違いないと思うのです。そのときに、まあいまになってみれば、十年たって、見通しが狂ったり、いろいろあるわけだと思いますが、そこに一つの原因があったことについて、あなた方、前を振り返ってそこに反省を持たれるかどうか、運輸大臣に伺いたいと思います。
  286. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 組織としますと、国土審議会とか鉄道建設審議会とかいろいろなところで御相談いただいて、やはり世の中どんどん変わりますものですから、モータリゼーションの発達もあるし、かといって都市間輸送の非常なニーズもあります。そういう中にいまの新幹線計画というものが行われた。それが今日、将来の赤字の材料だ、こう言われておりますが、こうした中から、このままではだめだということで国鉄再建委員会というのをお願いし、そして、そこで御協議を願って、こういうものに対しての対策を立てよう、こういうことです。
  287. 不破哲三

    不破委員 過去の責任がないのですね。しかし、これは重大な問題なんですよ。あの政策決定をやったときには、昭和五十七年には国鉄の輸送は、人間で三千二百七十億人キロの輸送量になるだろう、貨物で千四百十億トンキロの輸送量になるだろう、こういう見通しを立てて、十兆円の設備投資をやったわけですね。五十六年度の実績、どうだったかというと、千九百二十一億人キロですから、予想の約六割です。貨物に至っては三百三十億トンキロですから、予想の約四分の一ですね。つまり、完全に政府が立てた予想が狂って、この十兆円の投資がまさに過大投資になったことが明瞭になった。そういう結果として、去年東北新幹線と上越新幹線が生まれましたね。  国鉄総裁、お待たせいたしましたが、国鉄側に伺いたいと思うのです。  東北新幹線と上越新幹線、動き出したわけですが、採算見通しはどうですか。
  288. 高木文雄

    ○高木説明員 東北新幹線なり上越新幹線につきましては、いずれも鉄道というのは大変初度投資が大きいものでございますから、最初からバランスがとれるというわけにはなかなかいかないわけでございます。ただ、計画当初では、それぞれ十五年前後で大体バランスがとれるようになるのではないかと考えておったわけでございますけれども、その後の、ただいまお示しのような需要の減といったこともございますし、それから建設期間が大変よけいかかったためにその期間中の金利負担がふえるというような問題も出てまいりました。最初に考えておりましたように十四、五年でバランスがとれるという考え方は、今日では率直に言って大変甘かったのではないか。どうも二十年くらいしないとバランスがとれないのではないかといま考えております。  しかし、そもそも鉄道の建設につきましては、最近行われております都市におきます地下鉄整備等におきましても、かなりの期間たちませんとなかなかバランスしてこないという性格を持っておるわけでございまして、今日ただいまでも、若干時間的に当初の見通しとは狂ってまいりましたが、十五年ないし二十年くらいの間に何とかバランスがとれるようなことになるであろうというふうに見込んでおります。ただ問題は、その間の、アンバランスの期間のまた利子の負担の問題といったような問題がございまして、よほど締めてかからないと楽観は許さぬという緊張した気持ちでおります。
  289. 不破哲三

    不破委員 雲をつかむような話なんですけれども、ともかく二十年間は黒字にならぬ。国鉄からいただいた資料でも、上越は毎年千二十億円の赤字がついてくる。それから、東北は政府の補助金を抜きにすると千九百六十億円の赤字だ。つまり、新線ができたことによって、毎年三千億円の赤字が積み重なっていくわけですね。それが二十年続くが、二十年たったら黒字になる保証はないわけですよ。  しかも、たとえば東海道新幹線で言いますと、岐阜羽島という駅があります。これは政治駅で有名な駅でして、東海道新幹線の中で一番乗降客の少ないところです。これは聞いてみますと、一番新しい数字で七千四百七十一人というのが一年間の一日平均の乗降客ですね。ところが、東北新幹線で大宮と盛岡の起点を除きまして、中間に十一駅がありますが、実績でこの岐阜羽島以上の乗降客を持っているのは三つしかないのですよ。上越新幹線に至っては、起点の大宮と新潟を抜きますと駅が七つありますが、岐阜羽島以上の乗降客を持っている駅は一つもないのですね。全部が、政治駅と言われてあの閑散駅と言われた岐阜羽島以下なんです。国鉄の発表でも一日九百人とか千二百人とか二千二百人とか、そういう乗降客の駅がどんどんできている。  それで、しかも、私は、そういう線をつくるのに、この間ずっと見て歩いたのですけれども、財源を気にして節約しながらつくったという気が全然しないのです。  たとえば、国鉄総裁に伺いますが、東北新幹線はあなた方がつくったわけですけれども、この点は財政的にはどういう気持ちでつくられたのですか。かなりやっぱり節約しながらつくったのですか。
  290. 高木文雄

    ○高木説明員 その点は両面あるわけでございます。東海道新幹線は、残念ながらいまは非常にいっぱいいっぱいに使っておるわけでございまして、そのために非常運行に困難を来している面がございますので、今度東北新幹線をつくりますときには、もう少し最初の設備をよくしておかなければいけない。それから、ちょうど東北新幹線の建設当時に、東海道地域で環境問題、騒音問題で非常に強い御指摘を受けまして、確かに環境問題との対応という点で東海道の新幹線の姿はよくないということで、二度とこういうことにならぬようにということも考えました。そういう面を入れますと、どうしても建設費が上がってこざるを得ないという面があったわけでございます。  しかしその後、建設期間中に鉄道全体の需要が縮小ぎみになってくるという状態になってまいりましたので、いろいろできるだけの知恵を出して建設費を切り詰めるという努力を試みましたけれども、実はもうすでにやや時遅しという感がございまして、全体としての計画もできておりました関係で、御指摘のように、切り詰めについての努力が十分であったとは言い切れない面もあると反省をいたしております。  今後の問題といたしましても、いろいろ計画があるわけでございますけれども、建設費の切り詰めにつきましては、なお一段とある意味では頭の切りかえをやって、やっていかなければならぬという反省は持っております。
  291. 不破哲三

    不破委員 ここに国鉄が出しているPR雑誌で「R」という雑誌の東北新幹線の特集号があって、高木さんが書いているのですよね。ちょっと読んでみますと、要するに、金に糸目をつけないで、やや理想的なものをつくった、東海道新幹線のときには、朝鮮動乱後の復興経済だったから、そんなに金を使って大丈夫かねと言われながらつくったものですから、建設費の圧縮に相当重点を置いてつくった、今度は技術陣のつくりたいものをつくった、これははっきり書いているのですよ。  ちょっと時間がありませんから仁杉さんのことを伺いませんけれども、また鉄建公団の総裁は、これは「交通技術」というやはり雑誌で、ともかく上越新幹線全般を見て、非常に金がかかり過ぎていると自分で言っているわけですね。  それで、もう時間がありませんから簡単に言いますけれども、私も本当に見て驚きましたよ。こういう危機だと言われながら、設備投資にこんなに穴があいていたのでは改革があるはずがない。たとえば新潟に浦佐という駅があるのです。これは、私行ってみましたが、一日平均乗降客千三百人足らずですよ。ところが、そこに三階建ての駅を五十億円かけてつくっているのです。これはレール部分、高架部分全部抜いて駅舎、駅の建物部分だけですよ。東海道新幹線の静岡と浜松は五億円でつくったのですね。確かに時期はたっています。しかし、建設省の使っている土建のデフレーターを使ってみましたら、三倍くらいしか値段が違っていないのですよ。五億円のものをいまつくったら十五億円です。ところが、そこに五十億円かけて駅舎をつくっている。これが標準型なんですね。しかも、静岡や浜松はいまの乗降客は、静岡が二万六千人、浜松一万七千人です。浦佐は千三百人弱です。ところが、浦佐という駅は、駅舎の面積が一万二千六百六十平米あるのです。巨大な空間をだれもいなくてもてあましていますよ。みんな上越新幹線の駅は、一階は無料駐車場にして、いまは巨大な駅を無料駐車場にするなんというのは実際もったいない話ですが、使い道がないものですから、新幹線に乗るお客はただで使っていいという無料駐車場にしている。それでも空間が余って困っているのです。浦佐の一万二千六百六十平米に対して、二万六千人のお客が乗りおりしている静岡の新幹線の駅は四千四百平米ですよ。  こういうむちゃくちゃなことを、新幹線計画で国鉄が傾いているときに平気でやってきている。同じことが青函トンネルでやられているでしょう。あれ国鉄で引き受けたら年間九百億円の赤字だという。本四架橋を引き受けたら年間四百億円の赤字がまた来るという。そういうやり方に抜本的な反省を加えないで国鉄改革を言って、労働者がけしからぬ、労働者がけしからぬと言っても、赤字はさっぱり片づかないのですよ。  端的に伺いますけれども、そういう状態のことに反省をしないまま国鉄が走ったら大変なことになります。ところが、今度の予算では、懸案になっていた整備五幹線にまた予算つけましたね。たしか中曽根さんは去年の十二月、富山の応援に行ったときに、あの整備新幹線、北陸新幹線を、政府の最初の案では凍結になっていたのを、凍結をやめさせて当面見合わせるに書き直させたのは私です、できるだけ早く実現するために全力を挙げるということを富山でたしか言われているはずです。私は新聞記事を見ましたし、演説の速記も読みました。  しかし、これだけのことを起こしておきながら、それについての抜本的な反省もない、新しい赤字をつくらないで新幹線を走らせる新しい工夫もない、そのまま乗りかかった船だということで既定方針どおり一方で走る。一方では国鉄改革を特に労働者に攻撃を向けたり、それからまた分割民営化などをやったり、赤字ローカル線——赤字ローカル線を全国集めたって、新しい新幹線の赤字に比べれば微々たるものですよ。そういう方にばかり重点を置いた国鉄改革をやるというのは、私は、政府の意思決定による浪費にほおかむりをした間違った政策の一番の典型だと思うのです。こういう点について抜本的な洗い直しをして、この面は政府の責任があるのだが、これはこう反省してこう改める、そういうことを一緒にやらないで、痛みをともに分かつと言っても、国民が痛みをがまんするはずがないでしょう。そういうことをやらないで、財源がないから要求は聞き入れられませんと言っても、国民がそれについて納得するはずがないと思うのですね。  それについて最後に、中曽根総理の行革及び政府のやり方の見直しについても答弁を求めたいと思います。
  292. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全般的な合理的経営と改革に力を入れて刷新してまいりたいと思います。
  293. 不破哲三

    不破委員 質問を終わります。
  294. 久野忠治

    久野委員長 これにて不破君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る七日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十分散会