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1983-02-02 第98回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 江藤 隆美君 理事 高鳥  修君    理事 堀内 光雄君 理事 三原 朝雄君    理事 村田敬次郎君 理事 川俣健二郎君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    石井  一君       上村千一郎君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       栗原 祐幸君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    稲葉 誠一君       岩垂寿喜男君    大出  俊君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       小林  進君    佐藤 観樹君       沢田  広君    野坂 浩賢君       平林  剛君    草川 昭三君       草野  威君    正木 良明君       薮仲 義彦君    木下敬之助君       竹本 孫一君    瀬崎 博義君       中路 雅弘君    正森 成二君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         総理府人事局長 藤井 良二君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         国土庁長官官房         会計課長    金湖 恒隆君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省立地         公害局長    福原 元一君         労働省労政局長 関  英夫君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治大臣官房審         議官      吉住 俊彦君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員異動 二月二日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     石井  一君   沢田  広君     平林  剛君   大久保直彦君     草野  威君   矢野 絢也君     薮仲 義彦君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     大村 襄治君   平林  剛君     沢田  広君   薮仲 義彦君     正木 良明君 同日  理事藤田高敏君同月一日委員辞任につき、その  補欠として藤田高敏君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  昭和五十八年度一般会計予算  昭和五十八年度特別会計予算  昭和五十八年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、藤田高敏君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 久野忠治

    久野委員長 昭和五十八年度一般会計予算昭和五十八年度特別会計予算昭和五十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括議題とし、総括質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  5. 平林剛

    平林委員 私は、日本社会党護憲共同を代表いたしまして、主として中曽根総理大臣に対しまして質疑を展開いたしたいと存じます。  本願に入ります前に、二つばかり総理に対しましてお尋ねをいたしたいことがございます。  一つは、ことしの一月に各新聞社が新しい内閣にまずやってもらいたいことということで世論調査を行いましたが、これを見ますと、圧倒的に景気物価減税福祉となっております。景気は、この調査によりますと二六・三%、物価は二四・〇%、減税は二一・六%でございます。これに対しまして、行政改革というのは一一・五%、防衛というのはわずかに〇・六%でございます。  また、NHKが行いました世論調査所中曽根内閣に求める政策というのを見てみますと、第一番に強かったのが景気対策強力推進、これは五一・四%。第二は、福祉政策を後退させないということ、四一・七%。三番目は、所得減税の実現、三六・二%。そして、増税なき財政再建を貫くというのが三三・二%。防衛という問題もございますけれども、これについては、防衛費を抑制せよというのが二四・三%でございます。  私は、この世諭調査にあらわれました国民政治に対する期待、それから中曽根内閣姿勢というものを比較いたしますと、余りにも落差がある。国民期待に背を向けた政治中曽根さんはおやりになっているのじゃないか。昭和五十八年度の国家予算を見ますと、端的に言いまして、防衛費は前年対比六・五%の突出、社会福祉関係費は戦後最低の伸び率の〇・五%、こういうことを考えまして、総理大臣はどういう御感想をお持ちでございましょうか。まずお尋ねしたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 世論調査の動向というのは、いつも平林さんお示しのような方向を示していると思います。やはり物価景気減税経済問題が上へ来ておりまして、それから福祉。そういういままでの例を見ますと、意外に教育が低いのですね。それで、環境が非常に低い。それから、安全保障そのほかも低い。それから、政治倫理等もそれほど高くない。世論調査はいつもそうなっておるのです。やはり経済問題が主である。  そういういろいろなことを見ますと、これは専門家の分析をまってみないと言えませんが、私、独断で感じを申し上げますと、やはり環境とかあるいは安全保障とか、そういうようなものは空気や水みたいなもので、保障されているのがあたりまえだ、空気や水はただでもらえる、そういう感じ国民の中にも多いのではないだろうか。それで、そのかわり景気とかあるいは減税とか、非常に欲しいものについては、ぐっとそれが強く出ておる。しかし、いざというときのことやあるいは大事さというものを、表層意識深層意識で分けてみますと、国民の表の意識と、それから意識の中でも深いところにある、わりあいに確認された意識と申しますか、そういうものから見ると、意外に環境とかあるいは安全保障というものは、そういう問題が出てきたときにはぐっと上がってくる。しかし、ふだんの状態で物が流れているというときには、やはり物価減税というようなものが強く出てくる、こういうような傾向にあるのではないかというふうに私は解釈いたしております。
  7. 平林剛

    平林委員 同じNHK世論調査所中曽根内閣のイメージというのを調査結果を見ますと、あなたは田中元首相の影響を強く受けている内閣であるというのが七五%、いや、そうじゃない、そんなことはないというあなたの味方になっているのは七・五%でございます。それからもう一つは、どうも中曽根内閣は右寄りの体質で不安な内閣だという答えが四八%、こういう状態でございます。  いま総理の御見解を承りましたが、これから総理施政方針演説を聞いて私の疑問とするところをひとつお尋ねをしたいと思います。  総理は、施政方針演説におきまして、いま日本は戦後史の大きな転換期に立っておる、国の歩みの選択が個人の運命を左右すると演説をされております。率直に言って、中曽根内閣はこの日本をどうしようとしているのか、国民の多くは大きな疑問と不安を覚えまして、中曽根内閣の言動にある危険を感じているのではないだろうか。これが世論調査にあらわれていると私は思います。  中曽根さんは大変雄弁家で、かつ、かっこうよくて、歯切れがいい話し方をされておる。美しい形容詞を並べまして多くのことを語ります。ときどき、言ったとか言わないとか、記憶違いとか記憶にないとか、取り消したり別の表現に変えたりいたしまして、雄弁のわりあいには国民の多くは、一体どれが本当なのかということが多いのじゃないかと思うのです。特に私は、総理が、いまこそ、戦前戦後の歴史の中から、後世のために何を残すか、何を改むべきかと述べておりますが、これは一体何を意味するのか、さっぱりわからないのであります。この点、戦前戦後の歴史の中から何を残し、何を改めるのか、これはひとつ端的にお答えをいただきたいと思うのであります。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点につきましては、本会議でも一部お答えいたしましたが、「戦前戦後」という言葉を使いましたのは、戦前日本と戦後の日本を比較して言った言葉でございます。  戦前は、わりあいに国家主義的で、軍事的膨張中心日本政治が行われておった、自由も人権もいまほどは保障されてなかった。しかし、戦後においては、いまの憲法あるいはそのほか大きな変革が行われまして、それによって明るい、人権、平和、国際協調、こういう時代が出てきた。  それで、戦前のそういう強い、行き過ぎた国家主義あるいは軍事国家的な性格に対して、戦後は、国民はあの瓦れきの中からまず文化国家ということを求めた。しかし、あの当時の文化国家という言葉は、おなかがすいて、理念として求めていたものだ。それから、学者やジャーナリズムでは福祉国家理念が唱えられた。英国でビバリッジの社会福祉制度が大々的に展開された影響もあります。それで、福祉という言葉が非常に叫ばれた。これも瓦れきの中でおなかのすいているときに言われておった、むなしい言葉ではあったと思います。  しかし、経済のこの大きな成長を経まして、それが手に届くところまで参りまして、一部もうすでに実行している。そういう意味で、文化福祉の国をつくるということは現実的に可能になったので、その道へ行きましょう。しかし、それはあくまで自主自立個人の充実、それから社会への連帯隣人愛というものを考え個人、そういう物の考えに立ったもので、それはだから「たくましい」という言葉をつけました。これは自主自立というものを基本にして、いわゆる英国病とかドイツ病とかという、余り国家や他人にのみ頼るというものじゃなくて、みずから生きましょう、そういう自主自立中心に、しかも社会連帯隣人愛というものを考え考え方でいきましょう。それで「たくましい」という言葉をつけました。それで、戦前に対比してたくましい文化福祉の国をつくろう、これが戦後のわれわれの大きな目標じゃないでしょうか、そういうことを申し上げたのでございます。
  9. 平林剛

    平林委員 やはり中曽根さんのお話を聞いておると、一般論的なお話が多くて、国民が聞かんと思う核心についてはちっとも答えていない、そういう感じがいたしてなりません。  特に総理は、施政方針演説の中でこう述べています。自由世界第二の経済大国日本に対する世界の目は想像以上に厳しく、貿易防衛経済協力等の各分野でわが国への期待と要求は一層強くなっておる。特に国際問題の多くは、当面の負担を受け入れることがどのように国益に結びつくか、目に見える形で示しがたい性格のものであるだけに、いろいろな考えや利害の対立が生じやすい、こういうことを言われておるわけでございまして、これからあなたが政治を具体的に進めていく上におきまして、恐らくそういう問題が数多く発生するだろうと見ておるわけでございます。  この意味で、私は、これから政治倫理確立とか憲法、それから国民生活に関する問題、財政再建及び日米日韓首脳会談など、中曽根内閣姿勢全般にわたりまして質疑を展開するつもりでございます。  まず第一番に取り上げたいのは、政治倫理の問題であります。  総理施政演説で、政治に携わる者はその使命を自覚して、常に国民模範となる行動を続けること、清潔な政治を目指し、政治倫理確立に努める、こう言明をされたわけであります。りっぱな言葉であります。  しかし、中曽根内閣閣僚の顔ぶれを見ますと、ときどきその閣僚の後ろに田中角榮総理の影が映りまして、ああ、これはロッキード問題の判決に対する布陣じゃないのか、清潔な政治とか政治倫理確立とかと言うけれども、そういう言葉とはずいぶん遠いなという印象を受けざるを得ません。国民の目にはそう見えるんじゃないでしょうか。特に、東京地裁受託収賄の罪を問われて、懲役五年、追徴金五億円の論告求刑を受けた田中総理に対する総理見解を聞きますと、その思いは一層強いのでございます。  総理、私は、ロッキード問題で裁かれているこの事件総理大臣犯罪容疑は単なる刑事事件じゃない、国会議員一人が裁かれているのではなくて、これにどう対応するかという議会政治そのものが問われておる、私ども政治家政党、すべてが問われている、そういう認識でございまして、これは政治問題だと考えておりますけれども、総理の御見解はいかがでしょう。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理の問題は、お示しのとおり、私は、各政党あるいは議会政治家全部が負っておる大きな政治的課題である、そのように考えております。
  11. 平林剛

    平林委員 肝心の問題になるというと言葉が少なくなるというのが中曽根さんの性格であると私はにらんでおります。  しかし総理は、私は、この国権最高機関を構成する国会議員地位は非常に重視しておる、これは主権を構成する一つの機能だ、これを法律によらずして第三者に強制的に切断する力があるかどうか、非常に疑問に思う、このような厳粛な問題は本人決断をまつべきではないかと言って、個人判断に全部任せてしまっておるわけであります。私はそこに、中曽根さんはこの問題を政治的道義的な問題として、また議会が問われている問題としてとらえていない、こういうふうに感ずるのでございます。  国会議員地位を重視するという考えは、私はそのとおりだと思います。しかし、世間では、中曽根内閣政治倫理の問題はタブーなのか、田中総理の支持でいま総理大臣になった内閣なので物を言えないのか、こう言っております。一般国民は、政界というところはなぜいいことと悪いことの区別ができないのか、悪いと指摘されても責任はとらない、刑事被告人が、議員をやめるどころか、政治の中枢で事実上大きな影響力を持ち、支配力を発揮しておる、こう言っております。もしこれが、国家公務員汚職とか収賄の疑いで起訴されれば、直ちに休職処分を受ける。民間会社であれば、会社の名誉と信用を傷つけたということで、上司から自発的に退職を強要されておるのであります。なぜ、政治家、それも最高責任者であったほどの人が政治的道義的責任感じないのか、これが私は、多くの国民の怒りであり、政治に対する不信だと思うのであります。  被告となりました元総理もこの点はよく考えておりまして、被告陳述の中で、起訴事実のあるなしにかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職容疑で逮捕拘禁され、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損なったということになり、万死に値する、この意味において国民に深くおわびして、みずから政界から身を引くことによってすべてが解決し、それが日本国のためになるのであればそうしたいと考えたこともあったと述べています。  私は、この原点に実は返ってもらいたいと思っておるわけであります。中曽根さんは、この原点田中総理に対して決断を要請するというようなお考えはございませんか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理の問題は、非常に重要な問題であると私も心得ております。  ただ、私がお答え申し上げましたように、公務員任命とかあるいは会社採用とかというものと議員が形成されるというところは、基本的に違う仕組みになっております。公務員任命とかあるいは会社採用という場合には、本人会社なりあるいは国家というものとの契約関係と申しますか、そういう関係でできております。しかし、議員に関しましては選挙民選挙という公の大きな仕事でできておるわけであります。  したがいまして、議員進退という問題につきましては、これは選挙民意思ということがやはり非常に大きな要素になってくるのではないだろうか。しかし、議会政治の秩序を維持していく、そういうためには懲罰であるとかあるいは選挙争訟であるとか資格争訟であるとか、そういう制度制度的にもつくられておるわけです。したがいまして、議員進退個人進退、そういうものを決するという場合には、やはり選挙民意思とかあるいは本人意思とかというこの関係を重視するということが、主権を構成する国会——国会主権というものを構成する大事な一つ要素でございますが、その主権を形成するその根本をつくっておるという意味におきまして、選挙民というものとの結びつきというものを非常に重要視せざるを得ない、私はそういうふうに考えておるわけでございます。
  13. 平林剛

    平林委員 いまの総理大臣の私の質問に対する答弁は、テレビを通じて国民の皆さんが聞いておると思います。どの主張が正しいかということは、やがて国民判断をすると思います。しかし、いまお述べになった点で、二つ、あなたには根本的な間違いがあります。  一つは、国会議員はもちろん国権最高機関の一員でございますけれども、同時に、一般の人とは違った意味政治的道義的については国民模範にならなければならない、こういうことがあなたの認識に欠けておるということです。  それからもう一つは、あなたは、国会議員選挙によって選ばれるものである、だから、そういうことを重視しなければならぬという意味のことをお話しになりましたけれども、どんな悪いことをしても選挙に勝てばいいのですか。  汚職あるいはその他の罪で裁かれておりましても選挙に勝てばいいんだ、そういう考え方にもし立つならば、国会議員すべては、これはもう選挙に立つために自分の選挙区に利権あるいはその他利益誘導、いろいろなことをやりまして、そして、どんなに悪いことをしても選挙に勝ちさえすればみそぎを受けるという考えに立ったならば、議会政治というものはそういう形で彩られる。つまり腐敗政治の温床というのが広がるだけである。あなたはそれを許容しているという答弁であります。  受託収賄の罪で裁かれている田中被告が、この事件に関し、たとえ国民の多くからどのような指弾を受け、どのような非難、中傷を受けようとも裁判決着するまではすべてに耐え抜きたいという心境にあると言っておられるようでございます。これは私は、政治家政治的道義的問題を離れて、刑事の問題にすべてを決着させようとしている考え方だと思います。  確かに、田中総理にも反論があるかもしれないと私は思います。新憲法における総理の名誉と権威を守りたい、そういう態度はあるいは一つの見識であると見る人もあるでしょう。しかし、この六年間、日本議会政治に対して国民不信感はどれほど政治そのものを毒しておるか、自覚のない権力者主張だと私は考えております。最後まで裁判決着をつけるという気負いがそのまま日本政治に対する支配権力支配意欲となりまして、目白のやみ将軍と呼ばれるように、権力志向日本政治を汚染しているのじゃないでしょうか。  私は、田中総理がどうしても最後まで裁判決着をつけたい、クロシロをつけたいというならば、一般民間人と同じように一審、二審と争うことはできると思います。総理大臣という政治最高責任者になった政治家が、その政治的道義的責任を重く見て自発的に決断を求めたい、これが私の心境であります。  それにしても、一体総理、これから何年間、重苦しい、そして政治倫理確立をいつも論じなければならないような時間を過ごさなければならないんでしょうか。是は是、非は非、私は田中総理に諫言する人がいないということを残念に思います。政権政党は、清潔な政治を目指すとか政治倫理確立を説く資格があるのか。自由民主党にもりっぱな政治家がおります。実際に仕事のできる人もいる。そしてまた有能な人たちがたくさんいます。しかし、その中のだれ一人として、田中総理に対して、あなたはこういうふうな態度をとるのが正しいということを諫言する人がいない、これが私はいまの日本政治の悲劇だと思っています。その最高責任者である中曽根さん、もう一度あなたの御見解を承りたい。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 平林さんの御発言は理解できる点も多々ございます。しかし、議員の身分という問題につきましては、これは国会あるいは議会政治というものの基本的な哲学あるいはよって立つ制度の本質というものを考えて厳粛に考えていかなければならない、そう考えておるのであります。私がこういうことを申し上げているのは総理になってから申し上げているんではなくして、行管長官のときから、ここで御質問があればずっと一貫して同じ御答弁を申し上げているのであります。  これはやはり議会主義、議会政治に対する基本的な考え方という点で自分の信念となっておるものであります。つまり、国家主権というものを国会は形づくっている大事な要素である。その国会というもの、主権を形成するその一番一つの基礎になっているのは、選挙民による選挙、そして議員がつくられて出てくる、こういう一つの基本的な仕組みであります。その基本的な仕組みについて、私は非常にこれを厳粛に重んじるという考えに立っておりますから、やはりそれは本人がやめると自分で決断をしてやめるかあるいは選挙民が落選させるか、そういう基本的な仕組みというものを尊重する。第三者がその関係を切断するというには、よほど大きな事由で合理的なものがなければそれはできない、そういう意味におきまして、それは基本的には本人決断にまつべき要素が多いのだということを前から申し上げてきておるのでございます。それは議会政治に対する基本的な、非常に厳粛な部面でございますから、私は何回も同じ信念を繰り返して申し上げておるわけであります。
  15. 平林剛

    平林委員 中曽根さんの政治倫理の正体はこんなものであるということが、私ははっきりしたと思います。  ただ、あなたは、いまここで強調されました議会政治の重要性、御発言になったことはお忘れなく、これからの私の質問に対しましてもそのことを心にとめて今後の回答をしてもらいたい、お答えをしていただきたいということを念を押しておきたいと思います。もうこの問題については、これ以上私は追及しても無意味だと思っております。しかし、社会党は田中角榮議員がどうしても政治的道義的責任感じない、いまの態度を押し通すというのであれば、議会政治、そして政治倫理確立するために辞職勧告決議を提出せざるを得ないと申し上げておきたいと思います。  ただ私は、田中総理議員辞任だけが清潔な政治政治倫理確立につながる、それだけだというふうには考えておりません。そこで私どもは、わが国の経済政治に温存されている腐敗の構造にメスを入れるべきである、たとえば政治家と高級官僚の資産公開法であるとか、会計検査院法の改正であるとか、あるいは高級官僚の大企業との癒着防止のために天下り人事の適正を図るとか、議院証言法の改正をやるとか、あるいは汚職腐敗防止法というような法律を考えるとか、具体的に提案をしておりますことは御承知のとおりでございます。  中曽根総理は自民党の総裁として、こういうような汚職防止のための提案が政治倫理確立に役立つと考えまして、このことにこそひとつリーダーシップを発揮してもらいたいと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ただいま御指摘になりました諸項目については、理念としては私は非常に共鳴するものが多うございます。具体的な法案の内容とかやり方等につきましては各党間におのおのお考えがございまして、いま各党間で話し合い、折衝をしている点も多々ございます。したがいまして、その推移を見守ってまいりたい。しかし、政界を浄化しなければならぬというそのお考えについては、私も完全に一致しているつもりでございます。
  17. 平林剛

    平林委員 次に、私は、憲法の改正問題につきまして総理の御見解をただしてまいりたいと思います。  一月二十二日の自民党の大会の決議で憲法改正問題が取り上げられまして、自主憲法について、広く国民の理解を求めるというような決定をしたと伝えられております。世間では、これはいよいよ自民党は憲法改正に向けて一歩前進したのじゃないのか、こういうふうに見ております。特に、私は、改憲論者であるという中曽根総理大臣になりましてから、自民党はこの機会に改憲の機運を高めようということから積極的運動を始め、憲法改正の準備に入っているのでないかという疑いを消すことができないのでございます。  総理は、憲法改正は政治日程にのせていないと言明をしておるわけでございますが、しかし、決して憲法の改正は考えていないとは答えておらないのであります。まして施政演説におきましても、日本は、戦後史の大きな転換期に立っている。二度の石油危機を経て、いまや事態は一変し、世界の荒波は容赦なくわが国に押し寄せてきている。このような時代に対応して、従来の基本的制度や仕組み等について、タブーを設けることなく、新しい目で見直すべきである。こうなりますというと、これは中曽根内閣憲法改正の伏線を敷いておるのではないかという心配もあるわけであります。  一体、この従来の基本的制度を新しい目で見直すべきであるというのは何なのか。これはひとつ総理大臣にお答えをいただきたいと思います。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 施政方針演説でも申し上げましたが、一つは、世界に開かれた日本になろう。いろいろな利害関係もあり、いきさつもあるでしょうけれども、われわれ日本にとって一番危険なことは世界から孤立することであります。第二次世界大戦というようなものも、日本が日独伊三国同盟を結んで全世界からは孤立してしまった。その孤立というものがいかに日本にとって不幸なことをもたらすかということをわれわれは経験しておったわけです。  最近の情勢を見ますと、今度は経済的に非常に膨脹してまいりまして、そして世界から孤立する危険性なしとしない。そういう世界からの孤立をいかに防ぐか、そのためには、いままで日本がやってきたことや制度等についても見直そう、そういう意味におきまして、関税率の問題であるとかあるいは輸入の手続や安全保証の基準とか、そういうものについても思い切って改革をやって世界に開かれた日本になろう、そういう意味において洗っておるわけであります。  また、内政におきましては、戦後三十八年たちまして、いろいろ経過はありましたけれども、高度成長、それから石油危機、そういうことによって様相はがらっと変わった。そういう意味で行財政改革に乗り出しております。臨時行政調査会におきましてはもう二年にわたりまして日本のあらゆる制度を全部見直しておるわけであります。それから、財政につきましても、いよいよ財政改革という考え方をもちまして、歳入の構造、歳出の構造、全般的に見直すべきときに来つつある。これは税調でも、政府税調におきましてもそういう答申が来ておるところでございます。そういうような意味におきまして、内政、外交全般について見直すというときに来ておるものですから、そういうふうに申し上げておるわけであります。
  19. 平林剛

    平林委員 財政とか経済とかという問題につきましてはまた後でお尋ねすることにいたしますけれども、いま総理お話しになった、世界から孤立をしないためにいろいろなことを考えている、安全保障の問題まで考えているというようなことは非常に重要でございます。中曽根さんはしはしば戦後政治の総決算という言葉を使います。これも、私は、平和憲法を否定した、憲法改正についての長期的な戦略があるように受け取っておるわけであります。  特にあなたは、アメリカでワシントン・ポストの首脳と朝食会を持って、その単独会見の中で、「憲法問題は、きわめてデリケートな問題である。私は、長期的な時間表を心中抱いているが、あえてそれを国会で言うつもりはない。憲法を批判するのは、これまでタブーとされてきたが、私は、民主的社会でタブーがあってはならないと信じている。」こう言ったと伝えられております。中曽根総理の言う「タブー」とは一体何か、また、「長期的な時間表を心中考えている、あえてそれを国会で言うつもりはない。」というのは、これは一体どういうことなのか、これをひとつはっきりしてもらいたいと思う。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御指摘の点は、まず第一に、民主主義社会においてはタブーはあってはならない、特権もあってはならない。そういう意味におきまして憲法も同じようなことである。行政改革についてもタブーはあってはならないというので、行政改革はあらゆる面にわたって進めようとされつつあるわけであります。民主主義社会におきましては、基本的人権とか言論の自由とかそういうことが基本的にあるわけでございますから、やはり言論の自由というものがある以上はタブーがあってはならぬということであると思います。したがって、憲法につきましても同じように、改正あるいは擁護、自由に議論を述べていただく、そして、よりよきものへ前進していくのが民主主義社会だ、国民の皆さんの議論、対話を通じてよりよきものを見出していくというのが民主主義社会の基本的な姿勢であると思います。そういう意味におきまして、憲法につきましてもタブーの中にあってはならぬ、こう申し上げておるわけであります。  それから、ワシントン・ポストの中の話でございますけれども、憲法に関する長期的な発想と申しますか、これは私、この間本会議で一部申し上げましたけれども、明治十四年の政変というものを頭の中に置いておって言っているわけです。つまり明治十年の西南戦争があり、明治十四年になりましていわゆる自由民権派が憲法の制定を非常に強く迫り、民選議院設立の運動を強力に、しかも急激に進めてきたときがございます。その非常な政治的ピンチがあったときに、明治十四年に中長期の構想をつくりまして国政を安定させた。明治十八年に内閣制度をやろう、太政官制度をやめよう、二十二年に憲法をつくろう、二十三年から議会政治を始めよう、そういう中期の大目標を掲げまして、それで民選議院派も納得して、そしてその道に日本はばく進したがゆえに明治の大発展をなした。そのために、伊藤博文は憲法調査するとか、あるいは十八年にはすでに内閣制度に移行したとか、そういうようなことで国政がわりあいスムーズに進行したのでございます。それは国民的合意をそこで形成して安定したわけです。  ですから、憲法のようなこういう重大問題については、もう短期にやろうというようなそんな気持ちじゃなくして、中長期の国民的コンセンサスをいかにしてつくっていくかという方法について、与野党なり国民全体の合意を形成することが望ましい。そういう意味におきまして、明治十四年の政変というものを、明治人の知恵を、われわれは今日学ぶべきではないかということを申し上げた、また考えた次第なのであります。
  21. 平林剛

    平林委員 私は、中曽根さんの頭の中には大きな間違いをしておると思います。なぜかというと、いまいろいろな議論にタブーはないということで、行政改革の問題と憲法の問題を並べてお答えになりました。行政改革のような、国内政治に関してこれからどうするかという問題について大いに議論が起きることは私は結構だと思います。しかし、憲法という問題は国の基本法であります。この基本法について、あなたはその論議を、タブーはないとあおり立てて国論を二分するようなことを考える、非常に危険な考え方だと思います。  それで、いま私がお尋ねいたしましたワシントン・ポスト紙の単独会見の話については、明治時代の話をしてごまかしている。明治の時代は、封建時代からそして明治維新というものを通じまして、新しく日本の国の行き方を決めるために憲法論議をやった。これは何もないところから新しいものをつくろうとしてきた。この間、私は大いに議論があってもいいと思います。しかし、戦後わが国は平和憲法というものを持ち、それを国の基本とし、国民の中にもすでに定着をしておる。その問題と明治の時代とは情勢が違うのじゃないですか。私は、そういうごまかしだけでこの国会が通るという考えを持ってもらっては困る。  中曽根さんが国会で今日までいろいろ憲法の問題について質問を受け、それに答えてまいりましたけれども、総理の今日までの態度を見ておりますと、私は、憲法第九十九条「天皇又は攝政及び國務大臣、國會議員裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」こういう条項に照らしましても大きな問題があると思います。現行憲法には、確かに第九十六条に改正条項というのはございます。ございますが、総理の発言は、ただこの改憲論議をあおり立てて、民主主義にタブーはないというごまかしの言葉を用いながら現行憲法に挑戦する、そして、その言葉の陰に憲法を擁護するような発言は一言もない。憲法の改正は政治の日程にはのせないと言いながら、一方において憲法論議にタブーはないと矛盾したことを平気でしゃべっている。総理大臣国会議員としての中曽根総理大臣を区分して、自分はみずから改憲論者であると発言をする。これは憲法第九十九条の擁護義務に反しているとまでは言わないけれども、少なくとも忠実でない総理大臣であるということは確かだと私は思います。そうは思いませんか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そうは思いません。  私は基本的な考え方を申し上げたのでございまして、よく主権というものを考え国民の皆さんに申し上げたことがあるのであります。主権とは何だといえば、国民の基礎にある力です。国を支えている、国をつくっている基本的な力が主権だろうと思います。主権在民というのは、それが国民にあるということを示しておるのだろうと思います。この主権というものは、あるフランスの学者は、憲法制定権力ということを言っております。これが憲法をつくる力だ。いまの憲法あるいは明治憲法というのはつくられた法である、根本法である。これはつくられたものである。このつくられたものをつくる底力が国民主権であり、それが憲法制定権力である、こういうふうに言っておるわけであります。この憲法制定権力というものが発動して明治憲法になり、あるいはいまの憲法にもなってきておるということで、一番大事なのはこの民族の、国民の底にあるバイタリティーと申しますか、国を支え、つくっていく力が一番大事だ、そう私は思うのであります。そういう意味から、この現存憲法についてもいろいろな議論があってよろしい。守ろうとする力も、これは憲法制定権力であり、主権の力である。改正という考え方も、同じようにこれは主権の一部であります。そういう意味において、タブーがあってはならない、そういうふうに私は申し上げております。  内閣総理大臣とかあるいは内閣の一員となってまいりますと、これはおっしゃるように九十九条の擁護する義務がございますから、それは遵守しなければならない。法律にせよ憲法にせよ、現存するものについては、これはその地位にある者は守っていくべきことは当然でございますけれども、しかし民主政治の基本観念というものを私はまた別に申し上げているのでございまして、これにつきましてはタブーはあってはならないし、さらによりよきものへ進もうというもの、あるいはこれが一番いいんだといって守ろうとするもの、この切磋琢磨と申しますか、このエネルギーの強さというのがやはり民主政治の強さを決めていく、そういうように私は考えておるわけでございます。
  23. 平林剛

    平林委員 総理大臣、あなたは、主権国民だ、こう言われました。その国民は、憲法の改正を願っていると思いますか。それとも、あなたが頭の中で独断をし暴走している、国民の気持ちは離れている、こういうふうに思いませんか。国民は、憲法を改正し、そして憲法論議にタブーはないなんというような考え方を持っている人が多数を占めていると思いますか。あなたは、その国民に定着した憲法にあえて挑戦しておるというふうに見ておりますけれども、いかがでしょうか。総理は、あなたは、いまの憲法を守る気持ちがあるのですか、ないのですか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん内閣総理大臣は守らなければならないし、またいま、その憲法によって私は総理大臣になっておるわけでありますから、この憲法によって内閣もつくられ、総理大臣にもなっておるわけでございますから、したがって、憲法を守っていくということは当然のことでございます。  しかし、ただいま申し上げましたように、タブーがあってはならないというのは、私は、国民の大多数はそう信じておるのではないか、少なくとも自民党支持者という方々は、タブーはあってはならない、それが議会政治であり民主主義の根本であると考えているのではないか、私はそう思います。
  25. 平林剛

    平林委員 自民党の議員さんが果たして全部あなたと同じような考えを持っておるかどうか、私はそこに必ず議論があると思います。従来の内閣は、憲法に対してきわめて慎重な態度をとってきた。あなたは違う。だから私は、自民党の中に、あなたの考えと、その憲法に関して全く同じだ、みんながそうだ、こう思ってはおりません。  中曽根総理、あなたは訪米をいたしまして日米協会で、憲法条項の拡大解釈についてアメリカの元高官から秘伝を授かったが、日本のマスコミが騒ぐからこれは話さないと得々と話をされたという記事を私は読みました。  総理の外国における発言と国内向けの発言と比べてみますと、また国会答弁を見ましても、どうもあなたにはごまかしがあり過ぎる。国の基本である憲法に、私は、ごまかしは許されない。  そこで、改憲論者である中曽根総理お尋ねをいたします。  総理は確かに施政演説でも、現行憲法の果たした大きな役割りは評価している、こう言っております。しかし、その一方で、常によりよきものを志向し、勉強し、検討し、研究することは正しい態度だと必ずつけ加えて、判こで押したような答えをいたしておるのであります。  まあ、一つだけあなたの発言で正しいなと思いましたのは、昨年十二月九日の衆議院本会議で、現行憲法の民主主義、平和主義あるいは基本的人権国際協調主義というのをつけ加えておるのですが、これはすぐれた理念で、今後も堅持していくべきであると答弁をしております。私は、このことは評価いたしております。  そこで伺いたいのですが、現行憲法の民主主義、平和主義あるいは基本的人権国際協調主義等はすぐれた理念で、今後とも堅持していくべきであるというならば、これを堅持して、なおよりよき憲法を志向するというのはどういうものなんですか。どういうものですか。それをちょっとお聞きしたいのです。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、ここで申し上げますように、世の中には完全無欠というものはない。歴史が進むにつれてみんな脱皮しておる。よりよきものへ進んできておる。だから、人類の文明はこれだけ進んできておる。そういう意味において、憲法につきましても、これは社会制度一つでありまして、よりよきものへ志向するというのは、民主主義的観念からくる当然の考え方一つではないか、そう思っておるわけでございます。  いま国務大臣とかあるいは総理大臣という地位にある者は、九十九条によって憲法を守らなければなりません。しかし、民主主義というたてまえから考えますと、自由に一般国民の皆さんや議員の皆さんは論議していただき、そして、よりよきものへ道を探っていくという態度は正しい態度ではないかと思うのであります。
  27. 平林剛

    平林委員 私は平和、民主主義、人権、それ以外にどういうよりよき憲法というものがあるのか、こう言ったが、あなたはちっともそれには答えてない。  具体的に聞きますが、あなたは憲法第九条の改正を考えているのではないのですか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 具体的条文に関する個々の考え方を申し上げることは国務大臣として差し控えた方がいい、こう思って一貫して申し上げておるのでございまして、差し控えさせていただきたいと思うのでございます。
  29. 平林剛

    平林委員 総理大臣は現行憲法の民主、平和、人権という考え方についてはこれを堅持すると言いました。具体的条項を私指摘しませんよ。具体的条項は指摘しませんが、民主、平和、人権、これは堅持をすると言われました。それなのに、憲法第九条についてはこれは言えないというのは矛盾ではないですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昨年の臨時国会でもその御質問はございまして、そのときにも申し上げましたように、国務大臣は憲法を遵守するそういう立場にありまして、個々の条文についてこの際申し上げることは、いろいろ誤解を与えることにもなりますから差し控えさせていただきます、そう申し上げておる。しかし、一般論といたしまして、この現憲法に盛られました基本的人権の尊重あるいは主権在民あるいは平和主義、民主主義あるいは国際協調主義、こういう原則的な考え方というものは、これは非常に輝かしい、りっぱな考え方であり、人類文明の方向を示している考え方でもあります。そういう意味において、抽象論としてそれは堅持すべきものであると確信をしておる次第なのでございます。
  31. 平林剛

    平林委員 しかし、あなたは個別の問題は答えないと言いますけれども、あなたの腹の中には、現在の自衛隊を晴れて軍隊にする、これを軍隊として認知をするというような憲法の改正を考えているのではありませんか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほどから申し上げていますように、個々の条文に対する具体的な問題につきましては私の考えは申し述べないと申し上げておるのでございます。御了解を願いたいと思います。
  33. 平林剛

    平林委員 私が具体的に憲法問題を問いただしておりますのは、いままでの総理大臣とはあなたは違って、あなたはみずから私は改憲論者だ、こう言っておるから、私は具体的にお尋ねをしておるわけなんですよ。国民の心配も実はここにあるわけです。  あなたはしばしばみずからの国はみずからの手で守ると言いまして、国民に呼びかけていますね。この呼びかけから連想するのは徴兵制度。改憲論者である総理は、やがて憲法改正の機運が高まってくれば徴兵制度を取り入れるということを考えているのではないか。これをお尋ねします。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 個々の問題について発言を差し控えさせていただいておりますと申しておりますが、いまの憲法でも徴兵制度というものは合憲ならず、そういう判断をしている、そう思います。そういうようなものはいまの憲法においても認められていないと私は考えております。
  35. 平林剛

    平林委員 あなたは、それでは徴兵制度は改正の中に取り入れるということは考えていない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 徴兵制度なんかは考えていませんということは、前から私申し上げておるところです。
  37. 平林剛

    平林委員 この徴兵制度につきましては、私はいまの言葉を確認をいたしておきます。  しかし総理、あなたは憲法改正は日程にのせない、こう言っておりますが、それはまだ国民の世論というものが現在の平和憲法を支持し、これを国是として国民の心に定着しておると判断をして、時期の熟するのを待っているのじゃないのか。また、時期が早く来るようにその条件づくりを考えているのじゃないか。どういう条件づくりかというと、小選挙区制のようなことを考えているのではないか、こういうふうに見ておるのでございますが、いかがでございましょうか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はいま小選挙区制は考えておりません。
  39. 平林剛

    平林委員 そうすると、目白におる田中角榮さんとは違うのですな。  田中さんはきのう自由民主党のどこかの政治家の激励会に行きまして、派閥の問題になぞって、もし派閥なんかなくなるというようなことがあれば、当然小選挙区制でも考えたらいいというようなことを言われましたが、その小選挙区制は考えていない、田中さんの考えと私の考えとはそこの点は違う、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 田中さんは田中さん、中曽根康弘中曽根康弘でございます。
  41. 平林剛

    平林委員 総理、先ほど総理憲法第九条の改正を考えていないかという質問に対しまして、まあ答弁は差し控えるということでありました。しかし、徴兵制度考えていない、こういうふうにお答えになりました。しかし、幾つかの重要な質問に対しまして答弁は差し控える、こういう答えをしましたが、その答弁の裏側には、いまは言いたくない、いまは言えない、しかし、将来は憲法第九条は考えているのじゃないかというふうに受け取れるわけでございます。  総理のいままでの持論から考えますと、あなたはまたこの憲法第九条の改正とともに安保条約も改正をしたいというふうに考えているのではないでしょうか。先ほど戦後の日本のすべてを見直すという中に安保条項ということも触れておりましたけれども、その考えがあるのじゃないのか。それとも、憲法論議にはタブーはないけれども、あるいは憲法の見直しは提言をするけれども、安保条約はタブーである、こうおっしゃるのでしょうか。いかがですか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 安保条約は改正する必要ないと考えております。  私はこの安保条約ができるときに、たしか昭和二十七年であったと思いますが、この安保条約はよくないと思いました。なぜかといえば、あのころ米軍の兵士の行った行為について裁判権が日本になかったり、あるいは安保条約に期限がなく無期限であったり、あるいは日本に内乱があった場合に米軍出動ができるというような内乱条項があったり、そういう点で日本の独立国としての体面を傷つけられるような内容があったから、私はこれはよくないと思っていた。しかし、それらは昭和三十五年、つまり一九六〇年の改正で完全に改正されまして、そして私らが心配していた点は全部直ったわけであります。したがって、改正する必要はない、そういうふうにいまは言っておるし、また、そう考えておるわけであります。
  43. 平林剛

    平林委員 この問題に関しての本音も、角度を変えてお尋ねをしたいと思っておりましたが、時間の余裕がございませんから割愛をいたします。  しかし、いずれにしても、この質疑を通じましてはっきりしてまいりましたことは、中曽根内閣は、来るべき国政選挙において、みずからの国はみずからで守るという扇動をしながら、憲法改正を国民に呼びかけて、日本を、戦後史の大きな転換にさせようとしておるということだと思います。私は、この日本国憲法のもとにおける総理大臣として、みずから改憲論者だと言う中曽根さんは、本来総理大臣のいすにお座りになるのにはふさわしくない政治家であると考えております。日本社会党は、この中曽根内閣の隠された憲法改悪路線に対しまして、来るべき国政選挙におきましては、憲法の改悪か、それとも私どもの唱える護憲かと国民の選択を求めまして選挙戦を戦う決意であるということを申し上げまして、次の問題に移りたいと思います。  次に、私は対米武器の技術供与の問題につきまして論点を移してまいりたいと存じます。  総理、あなたは、アメリカからかねて要請のありました武器技術供与につきまして、これを全面的に応ずるとの政府方針を決定しました。これは日本国憲法の平和主義を実質的に支えてまいりました国策を、日米安保条約の効果的な運用ということで、中曽根総理政治決断をもって、国会の意思も無視して一方的に変更させたものであります。憲法問題の質疑でも明らかなように、憲法第九条の政府解釈が変質していく中で、この武器輸出三原則の重要な国策がまた一方的に変更されていこうとするのは重大であります。これは明らかに中曽根内閣が西側同盟の一員として軍事的責任分担へ大きく踏み出したものであります。実質的に平和主義を支えるものは何であるかと言えば、徴兵制度の禁止であるとか、それからシビリアンコントロール、集団自衛権の問題、そして非核三原則、防衛費をGNPの一%に抑える、いろいろの国策がございましたけれども、一つ一つこれが崩されていくのではないかという危惧が生まれておるわけであります。  中曽根総理は、訪米をいたしましてレーガン大統領と会談するに際しまして、貿易摩擦の解消とか市場開放とか、アメリカ側の強い要求をかわすために、訪米をするみやげとして対米軍事技術供与を総理の裁断として政府方針としたと伝えられておりますけれども、かりそめにも滞貨一掃とか仕事をする内閣とか米国に対する同盟のあかしとか踏み絵にするというようなことでこの供与を決めたといたしたならば、まことに許しがたいものがある。果たしてこの政府の方針はどういう意味を持つのか。今日まで何回か実は国会の論議を続けてまいりまして、いつもすれ違いでございます。政府の一方的な解釈とこれに対する批判、追及ということだけに終わっております。  そこで私は、きょうは、国会の決議というものと対米武器技術供与の問題について、国会議員である平林剛と、国会議員である、そして内閣総理大臣である中曽根康弘さんと、お互いに国会議員の立場で国会決議に関して一問一答をしてみたいと思うのです。よろしゅうございますか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、内閣総理大臣という地位にございまして、一国会議員という立場をとろうとしてもとれない、内閣総理大臣という地位の方が重く責任があるという立場でございまして、平林さんとは別の部屋で二人で話すならいいですけれども、予算委員会で公の場所でやる場合には、やはり内閣総理大臣という地位の重さがのしかかってくる、そう考えております。
  45. 平林剛

    平林委員 中曽根さん、あなたもう総理大臣ではあります。しかし、同時に一人の国会議員であります。そのバッジをつけているでしょう。ですから、その総理大臣である中曽根さん、国会議員の一人として質問を展開していきたいと思います。ですから、そんなにむずかしいことは言いませんよ、そんなにむずかしいことは言わない。だけれども、お互いに国会議員の一人として国会の決議を考えていこうじゃないですか、お尋ねしますから。国会決議について、いいですか、中曽根さん。  国会でなされた決議、特に本会議において全会一致でなされた決議について、私たちは、つまり国会議員のサイドとしては、次のように理解をしております。すなわち、国権最高機関であって国の唯一の立法機関である国会において、多くの国民から選挙によって支持された国会議員全員によってなされた決議は、形式的には法的拘束を有しないとはいいながら、政治的には憲法と同次元に位置するくらい重いものであり、一たん決議されたからは、立法府はもとより行政府もその決議に反することは政治的にはできない。言いかえれば、国会議員全員一致の決議は、日本国民の総意の意思であると見るべきである、国会においては決議をこういうふうに実は理解しておるわけであります。これは恐らくどなたも異論がない。  国会議員であり、行政府の首長である中曽根総理は、どういう認識をお持ちでございますか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の決議は、国会が政策あるいは方針等についてそれをお決めになったのでございまして、政府としてはこれを極力尊重して実行していくべきものである、守るべきものである、そういうふうに考えております。
  47. 平林剛

    平林委員 国会議員の全員によってなされた決議というのは国是だと思いますが、いかがですか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国是という言葉が来ると、ちょっとどうかと思いますね。なぜならば、国是という場合には、たとえば行政府と立法府が一致した考え方とか、あるいはさらに憲法というような立法、司法、行政、三権が統合されているもっと大きな方向であるとか、そういう場合は国是と言われましょうけれども、議院だけが決議をした場合に、それが国是と言い得るかどうか、私は疑問の余地があると思います。
  49. 平林剛

    平林委員 私は、政府の見解を聞いているんじゃないのですよ。国会議員として、あなたもこの決議に参加したといたしますかな、その決議というものは、全会一致ですよ。全会一致でやった決議というものはやはり国是だと考えていいのじゃないでしょうか。国会において、政府は別ですよ、国会としては、国会議員としては、これは国是である。行政府の話をしているんじゃない。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはやはり国会の御決議であり、国会の御意思である、そういうふうに解釈するのが正しいのじゃないでしょうか。
  51. 平林剛

    平林委員 国権最高機関たる国会において全会一致でなされた決議は政治的に非常に重い決議である、その決議を行政府が一方的に変更することは三権分立の原則からいってできない、国会はそう理解をいたしております。  行政府の首長たる総理見解を問います。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の御決議に対しまして、そのとき、政府は答弁をしていると思います。その答弁のとおり実行すべきものであると考えます。
  53. 平林剛

    平林委員 持たず、つくらず、持ち込ませず、これはいわゆる非核三原則。この決議はたびたび国会で全会一致で決議をされている、国是になっています。この非核三原則の決議は、政治的に重い決議であり、行政府が一方的に変更することはできない。当然だと思いますが、いかがですか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 このときにも、恐らく政府は答弁をしていると思います。その答弁どおり実行すべきものと思います。
  55. 平林剛

    平林委員 もう一度、非常に大切なことでありますから確認をしておきます。  非核三原則について政府が一方的に、アメリカによる核兵器の持ち込みが日米安保体制の効果的運用を確保する上できわめて重要になっていることにかんがみ、アメリカは非核三原則によらないこととするということは絶対にいけないと思いますが、いかがですか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、非核三原則を守る、こう申し上げており、いまも申し上げましたように、国会決議に対しましてはたしか答弁をしていると思いますが、その答弁を現内閣も守っていく、こういうことであります。
  57. 平林剛

    平林委員 非核三原則の決議について、日米安保条約があるからこれは別枠だということは断じて言えないと思いますが、いかがですか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく、非核三原則は守りますとはっきり言っておるのでございまして、そのとおりでございます。
  59. 平林剛

    平林委員 日米安保条約があるから別枠だと絶対に言えないと思うかという質問に対して、そのとおりでありますと答えましたが、確認をいたします。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、私が申し上げたのは、守ると申し上げた、そのとおり守るのであります、そういう意味でそのとおりということを申し上げたので、理由は、私はいまのところ云々申しておりません。ともかく非核三原則というものについては、政府はこれを守ります、また、国会決議につきましても遵守いたします、政府答弁どおりでございます、そういうことを確認しておるわけでございます。
  61. 平林剛

    平林委員 いま私がお尋ねしておりますのは、非核三原則について政府が一方的に、アメリカによる核兵器の持ち込みが日米安保体制の効果的運用を確保する上できわめて重要になっていることにかんがみ、アメリカは非核三原則によらないことにする、こういうようなことは絶対に言えないと思う、日米安保条約があるからこれは別枠だと言うことは断じてできない、言えない、いかがですかと聞いているわけでございます。本会議答弁を聞いているんじゃないのです。いま、私の質問に答えてもらっているのです
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核三原則につきましては、これを遵守いたしますと重ね重ね申し上げているのでございまして、理由はどういう理由であるにせよ、ともかくこれは守りますというふうに申し上げておる次第でございます。
  63. 平林剛

    平林委員 私の質問に的確に答えておりませんが、私が申し上げた趣旨はあなたも同意ですね。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま申し上げましたように、すべてを含めまして国会決議を遵守いたします、そういうことを申し上げているのでございます。
  65. 平林剛

    平林委員 私の質問に対しては否定はしていない、こういうふうに確認をいたします。  憲法の第六十五条は「行政權は、内閣に屬する。」こう決めておりますね。しかし、だからといって、内閣は行政権の行使について何でもできるというものじゃない、憲法に反するような行政権の行使はできない。当然だと思いますけれども、御確認をいただきたい。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん憲法を守ってやらなければならぬものであります。
  67. 平林剛

    平林委員 次に、先ほど来論議をしてまいりました国会議員による全会一致でなされた国是たる決議、これに反するような行政権の行使は政治意味からいってもできない。当然なことだと思いますが、確認をしておいていただきたい。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府が、遵守する、そう答弁しておると思いますが、そのとおり政府は実行しなければならぬと思います。
  69. 平林剛

    平林委員 恐縮ですが、さらに続けますよ。  俗な言葉でありますが、「行政權は、内閣に屬する。」といっても「その行政権の行使について一定の枠、すなわち憲法や国会決議の枠の中でしか行政権は行使できない。当然のことでございますけれども、再度御確認をお願いします。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法の場合はもう当然でございます。国会決議につきましては、そのときの政府の答弁のとおり実施しなければならぬ、あるいは発言のとおり実行しなければならぬと思っております。
  71. 平林剛

    平林委員 ときどきごまかしがありますが、これはどなたも否定できない問題点だけを私は申し上げておるわけであります。中曽根さんは絶えず私の質問に何か逃げよう逃げようと考えているから、ときどきアドリブみたいなのを言いますが、国会議員としてこういう問題をどう考えるかということはやはり共通の認識がなければだめですね。  私は、次にお尋ねしますが、昭和五十六年三月二十日、衆議院で決議された武器輸出問題等に関する決議、これは自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、新自由クラブ、社民連が提出をしまして本会議で全会一致で可決された決議であり、当然国会サイドとしては国是という認識を持っている。  行政府の首長たる総理はどういう認識をお持ちですか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の御決議、ただいまの武器輸出に関する国会の御決議は守っていくべきものであると考えております。
  73. 平林剛

    平林委員 ここで言う武器輸出決議は、共産圏諸国、そして国連決議によって禁止されている国、国際紛争の当事国またはそのおそれがある国、さらに、以上述べた国以外の国に対して武器輸出三原則、昭和五十一年の政府統一方針に基づいて、政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもって対処せよという国会の意思を表明したものであります。当然政府もそう理解しているはずだと思いますが、いかがですか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の御決議を遵守してまいると先ほどから申し上げているとおり、もう一回申し上げる次第でございます。
  75. 平林剛

    平林委員 わかりやすく説明いたしますと、この決議は、たとえばソ連が日本に対して武器を輸出してくれと申し入れがあっても、立法府は、行政権を持っている政府に対して、武器輸出三原則にのっとり、武器輸出を承認するなという国会の意思を表明したものだと思いますが、いかがですか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三原則を遵守すると、そう言っておりますれば、共産圏という言葉がございますから、適用されるのではないかと思います。
  77. 平林剛

    平林委員 くどいようですが、さらにお尋ねいたします。  南アフリカから武器輸出の引き合いがあったといたしましても、武器輸出三原則にのっとり、立法府として、行政権を持っている政府に対して、武器を輸出するなという国会の意思を表明したものだと思いますが、いかがですか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 具体的解釈の問題でございますから、法制局長官から答弁させます。
  79. 平林剛

    平林委員 いや、要らない。私はいま国会議員として国会議員総理と話をしているわけです。行政府が入る余地はありません。国会議員同士の話をしているのです。行政府が国会決議に対して何だかんだ言う資格はないのです。要りません。中曽根さん、答弁してください。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、内閣総理大臣として答弁を申し上げているのであり、法制局長官に聞きましたら、国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合、これに該当するそうであります。
  81. 平林剛

    平林委員 そんなことは聞かなくたってわかっているのです。国会議員中曽根さんがそのくらいのことの常識を持たなければだめですよ。  もう一つお答え願います。イラン、イラクから武器輸出の引き合いがあっても、立法府としては、行政権を持っている政府に対して、武器輸出三原則にのっとり、武器を輸出するなという意思を表明したものだと思いますが、いかがですか。重ねてお尋ねします。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは第三項の国際紛争当事国またはそれのおそれのある国向けの場合、これに該当すると思います。
  83. 平林剛

    平林委員 それでは、次に聞きますが、韓国から武器輸出の引き合いがあったとしても、昭和五十一年政府統一方針にのっとり、武器輸出を慎めという国会の意思を表明したものである、そのとおりですね。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは第三項には該当しませんが、韓国には武器輸出することはいたしません。
  85. 平林剛

    平林委員 このことはイギリスであろうとフランスであろうと、当然武器輸出を慎めという国会の意思である、そうですね。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当時の通産大臣の答弁を調べてみますと、「政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を体し、今後努力をしてまいる所存であります。」こういうことであります。
  87. 平林剛

    平林委員 一緒に国会で決議をした国会議員同士として、このことの意味は、イギリスであろうとフランスであろうと、武器輸出を慎めという国会の意思であるというふうに理解してあなたも私も国会決議に賛成をした、これを決めた。全部の人が決めた、全会一致で決めた。当然アメリカに対しましても、国会の意思として武器輸出を慎めということであります。アメリカが紛争当事国となった場合は、武器輸出はだめという国会の意思を表明したものである、そう理解しておりますか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカに対しましては日米安全保障条約というものがございまして、日米安全保障条約におきましては、国連決議、国連の精神、あるいは平和主義、それのもとにこれはカバーされており、かつ、アメリカに対する武器技術の問題は、この安保条約のもとにおける相互援助協定の枠組みのもとにこれが行われる。その相互援助協定の枠組みというのは、国連精神や平和主義のもとに行われるのでございまして、これは国会の御決議に反するものとは考えておりません。
  89. 平林剛

    平林委員 私はいま国会決議のことを聞いているのです。政府の解釈を聞いているのじゃない。国会決議について、中曽根さんも国会議員として、私も国会議員として、ここにおられるすべてもこの決議に参加した国会議員として、聞いているわけなんです。政府の解釈を聞いているのではないです。国会決議の解釈を聞いている。  当然アメリカに対しても、国会の意思として、武器輸出を慎めということである。安保条約とかなんとか、そんなことは書いてないですよ、国会決議には。(「安保条約はあったんだから」と呼ぶ者あり)そうです。おっしゃったとおり。そのとき安保条約もあったのです。その中で決議しているのですよ。間違ってはいけませんよ。開会決議のことを聞いている。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この五十六年三月の国会決議は、例の堀田ハガネの問題が出まして、それを取り締まるという関連等から出てきた決議で、そういうようなことのないように、武器の輸出については厳正かつ慎重な態度をもって対処するとともに、実効ある措置を講ずるということで、武器の輸出とまず言っております。武器技術とは言っていない。それから「厳正かつ慎重な態度をもって対処する」ということを言っております。これらの文章並びにこの文章が出てきたいわれ等を考えますと、あのとき社会党の方におかれては、政府の三原則をそのまま確認して、それをそのまま適用するというふうな御方針であったのを、自民党が反対をして、そして、いまのようなこういう文章になったことのいきさつを私も承知しております。  そういういろいろな経緯等を考えてみますと、安保条約のもとに調整措置を講ずるということは国会決議に反した行為ではないと考えております。
  91. 平林剛

    平林委員 いろいろな環境だとかその前提だとか聞いているのじゃないのです。私は国会決議のことを聞いている。国権最高機関である国会で、国会議員の全員でなされた決議を政府がああだ、こうだ、どうであった、ああであったというようなことの理由をつけて、勝手に歪曲した解釈は絶対にできない。そんなことをすれば国会軽視である、私はこう考えるのでありまして、いまの答弁、満足できない。あなたは国会決議を踏みにじった、歪曲した。これは国会の決議に反しておる。行政府はそんなことは許されない。だから私は、この政府の方針は撤回すべきである、こう思うのです。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府として私は御答弁申し上げておるわけでございますが、政府は、政府がいままでやってきました武器輸出に関する三原則の方針につきましては、これを適用しない、例外措置とする。そういう意味においては、政府の措置につきましては修正されていると考えますが、国会決議につきましては、その御趣旨のもとに行われていると考えております。
  93. 久野忠治

    久野委員長 この際、大出君より関連質疑の申し出があります。平林君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大出俊君。
  94. 大出俊

    ○大出委員 堀田ハガネ、また武器輸出禁止に関する国会決議の話が出ましたので、これは私の当時の質問に直接絡んでおりますから、関連して、論点を明らかにさせていただきたい、こう存じます。  堀田ハガネがあったからと本会議でお答えでございましたが、実はこれは堀田ハガネだけじゃない。私の当時の質問を見ていただければわかります。そのはるか以前にフィリピンに対する手りゅう弾等の信管、雷管等の部品数十万個の輸出もございまして、これは判決が出て有罪になっております。台湾に対するものもございまして、これは私、指摘しておりますが、引き合いの相手方の住所、氏名まで挙げて申し上げてあります。政府は調査したがわからぬというお答え。マレーシア等等は関してもございました。しかも、フィリピンへの輸出で有罪になりました商社、七、八名の小さいところでありますが、われわれだけが有罪というのは不当である、大きな企業がみんなやっているじゃないかという実は御答弁がございました。したがいまして、氷山の一角として出てきた堀田ハガネでございまして、だから審議中断に伴って、ここにもおいでになりますが、皆さんの方から、どなたでも御存じの皆さんの党を代表される方がお見えになりまして、何とかこの際、中断をいたしておる状況をもとに戻したいというお話、ごもっともでございまして、どうしたらいいかとおっしゃるから、武器輸出禁止法をつくってもらいたい。御相談の結果、とてもできないというので、それにかわるものは何かないか、それでは武器輸出禁止三原則並びに五十一年政府方針を国会決議に上げていただけぬかというお話をして、いろいろなことがございましたが、結果的に国会決議になった。だから、決議そのものは確かに武器と書いてある。ありますが、これは武器輸出三原則、そして政府統一方針を国会決議に上げたという認識を全部がお持ちでございます。決して堀田ハガネだけではない。  だから、政府答弁が明確にございまして、まず、園田さんが外務大臣でございましたが、ここに園田さんの御答弁がございます。きわめてはっきりいたしておりますけれども、憲法や三原則や国会決議には抵触しないということがアメリカに対する武器輸出の前提でございます、武器技術輸出の前提でございます。これはアメリカに対する武器技術輸出ですね。対米武器技術輸出、これが「憲法や三原則や国会決議には抵触しないということは前提でございます。」はっきりしている。明確であります。  さらに、通産大臣の答弁等もございまして、非常に具体的な結論が出ておりますのは五十六年十月十六日でございますけれども、通産省の広海説明員「お答えします。通産省といたしましても、今後とも武器輸出三原則及び政府統一方針、それから先般の国会決議を踏まえまして、対米関係についても対処する方針でございます。」はっきりしているでしょう。  それを政府がごまかして、決議の文章の一端をとらえて、そこで決議に含まれていないというふうに苦し紛れに逃げようという論法、これはいま申し上げましたように、政府の皆さん自体が、だから一年半もかかって何とか枠内でというのでずいぶん苦労なさった。つまり、この国会決議は、武器輸出禁止三原則と政府統一方針を厳守せよという決議なのです。そして、武器輸出三原則と政府統一方針の中には武器技術が含まれている。なぜか、この点を最後に明確にいたしておきます。  昭和五十一年六月十日の決算委員会における当時の河本通産大臣の答弁で、質問者は、武器の技術、軍事技術、こうわが党の原茂さんが聞いておりますが、「第一の生産技術の輸出問題でありますが、これはいまお話しのように、武器の輸出三原則に照らして処理すべきものだと思います。」つまり武器というのは武器技術の集合体であるという答弁が出てまいりまして、だから武器の中に武器技術は含まれる。したがって、河本さんは最終的に、武器の輸出三原則に照らして軍事技術輸出、武器技術輸出、生産技術の輸出についても同じように扱うということを明らかにされた。  この答弁以来、もうちょっと詳しい答弁が、さきの国会の宮澤さんの答弁がございます。これは公明党の坂井さんの御質問に答えておいでになりますが、河本さんの答弁で武器技術輸出、軍事技術輸出は三原則の枠内である、技術の集合体が武器である、これは坂井さんもそういうふうに御質問になっておいでになりますが、そのことを前提として宮澤さんは、いま私が取り上げた河本答弁で、武器技術の輸出は、三原則の枠内で、できないということになっている、だが、それがより正確にはっきり完備したのは昭和五十三年の四月である。制度本来から申せば、五十三年の四月にまずまず完備をした。輸出手続を許可制にしたのです、具体的に。そこで押さえることにしたのです。これはもう通産省の方はよく御存じであります。完備した。つまり明確にこの段階で、武器三原則の武器の中に武器技術、武器は武器技術の集合体であるということで同じように含まれているという解釈で、武器技術も共同開発も——四十一年の共同開発の覚書が日米間にございます。これは私が追及いたしまして明確に通産大臣等もお答えになりました。安倍さんの御答弁もたくさんございます。引っ張り出す気はありませんけれども、この中で、共同開発ができないのは、武器技術輸出が武器輸出禁止の中に含まれているから、武器技術輸出ができないからその限り共同開発もできない、こうなっているわけであります。明確でございまして、だから、ここまで言ってしまいますが、私はこれは後に引き下がれません、口火を切りましたからには。  これは中曽根さん、あなた御自身の答弁がある。いままで全然出ておりませんが、五十七年、昨年の十二月二十一日です。国務大臣中曽根康弘君「行政府といたしましては、国権最高機関である国会の諸決議については原則としてあくまで尊重していくべきものであり、政府はそのようにいままで答弁してきておると思います。その答弁は遵守していかなければならないと思っております。」こういうふうに中曽根さんは参議院で赤桐さんの質問にお答えになった。  これは、対米武器輸出については当時新聞にいっぱい出ておりましたから、二十一日の日でございますが、この前の国会の、ついこの間でございます。その点を、対米武器輸出はできないじゃないか、国会決議があるからというので詰めた。そうしたら、次の答弁。「原則として枠を超えることがないようにすべきである、」国会決議の枠を超えることがないようにすべきである。「これが基本的立場でございます。もしいろいろな変化が出てくるという場合には、これは国会は政党間の交渉によって事実上機能が形成されておるわけでございますから、それらの諸手続を行うことが好ましいことであると考えております。」総理答弁ですよ。いいですか。この国会決議——三原則を厳守せよ、政府統一方針を厳守せよというのが三原則の国会決議だと本会議総理答弁されている。この厳守方針を決議しているのだから、これに反すること、はみ出すことなどなどということになった場合には、国会は政党間の話し合いで構成されているんだから、あなたは「政党間の交渉によって事実上機能が形成されておるわけでございますから、それらの諸手続を行うことが好ましいことである」。総理が「好ましいことである」とおっしゃったら私どもはそれ以上質問しませんよ、信用しますから。もし、こういうことをなさるなら、当然あなた方はわれわれの側に相談があってしかるべきものだ。あたりまえでございましょう。国権最高機関と行政府という関係は、平林書記長がお述べになったとおりであります。  もう一つだけ念のために申し上げておきますが、あなた方は十四日の日に、これは記者の方に私は聞いてみました。こういうことなんですよ。「政府は十四日の閣議で「米国に対しては武器輸出三原則によらないで武器技術の供与を行う」との方針を了承し、十七日からの首相訪米を前に日米間の懸案になっていた」、つまり、われわれは手みやげだと思うのでありますが、「同問題に決着をつけたが、国内的には国会決議との関連をどうするかが残る形となった。」  そこで、「この点について政府首脳は」、名前もわかっておりますが、十四日の晩に記者の方々といろいろ御相談になっている。これは官房長官が談話を出した晩だ。いいですか。記者の方々が聞いたのは「国会決議は法律ではないのだから、」この問題だ。「国会決議は法律ではないのだから、それを行政府が全面的に守らなければならないというものではない。しかし、行政府として(武器輸出三原則という)政策の一部修正を行ったのだから国会決議についても(立法府に)再考をお願いしたい。そのための何らかの措置を取りたい」。これは半オフレコという面があったから名前は伏せられています。しかし、記者の方々たくさんおいでになる。そんなことはわかっておる。そうでしょう。これは政府の腹でしょう。それを途中から、国会に手直し要請という記事になった途端に、手直しをしようといったって、決議の再決議という先例はない。この国会決議に、一番最後に、アメリカだから別だとくっつけようたって全会一致にはならないというところに気がついて、国会の中に任せるということにした。任せてみてもどうにもならぬということになったから、文章を読んでいって、武器、武器と書いてあるじゃないか、技術は別だという解釈をとって、よらないことにした。これをもって舌先三寸小細工と言う。  そして、もう一つ結論を申し上げておきますが、ごらんなさい、すでにアメリカから第一号「国防総省、技術提供を要請 レーザー誘導の対戦車ミサイル 川崎重工」、レーザー誘導の対戦車ミサイルというのは、レーザー基地をつくってアメリカ側から戦車を走らせる、レーザー光線で相手の戦車の弱点を一遍で見つける、戦車砲を発射すると百発百中命中をして戦車は壊れる、人は死ぬ。この戦車が今度戦争に行ってごらんなさい。日本の武器技術が人を殺したことになりますよ。  これを売り込もうという今度は死の商人。こんなに大きな、ごらんになったらわかるでしょう、これは日商岩井さんです。日商岩井さんは、アメリカに武器技術輸出会社を設立した。「”解禁”受け巨大市場発掘」、そこで何と言っているかといいますと、日米間の軍事技術交流は今後ますます活発になり、いずれ共同で開発する時代が来る、土屋武彦取締役。はっきりしている。つまり、さっき私が申し上げた四十一年日米間の共同開発覚書、この歯どめになっているのは、武器技術輸出が、三原則で、統一方針で禁止をされている。だから、できない。これを野放しにすればたちどころに共同開発は成り立ってしまう。だから、先取りをして会社までつくっている。アメリカに本社を置いて、こっちにも、東京にも大阪にも営業所。こういう姿になっていることを、私は、後世の日本の後を継ぐ方々を含めまして——中曽根さんは海軍ですが、私は陸軍でございますが、私の同期は沖縄でほとんど死んでしまっている。こういうことを認められない、平和憲法の趣旨に照らして。そういう決議でもございます。ごまかさないでいただきたい。  だから私は、平林さんがおっしゃいましたように、この御決定は、行政府が国会の意思に反してお決めになっている。両立をしない。武器輸出三原則と対米輸出は両立をしない。武器技術輸出は両立をしない。しないから、よらないことにした。武器輸出禁止三原則と五十一年統一方針を厳守しろという国会決議だと総理は本会議答弁されている。にもかかわらず、この三原則、統一方針、政府方針から、よらないことにする、全くおっ外してしまっている。七割従うとか八割従うとか九割従うならまだいい。全く従わない。厳正に履行せよというのに全く従わない。ということになると、われわれは撤回を求める以外に道はない。御撤回を願いたい。
  95. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は、先ほど来申し上げておりますように、国会決議は尊重しておるのでございます。その枠内におきましてこういう措置をとった次第でございます。  国会決議の解釈におきましては、日米安保条約によるこういう調整を行うことまで排除しているものではない、そういうふうに解釈しております。しかし、政府が決めました三原則につきましては、これをそれによらないで例外措置として行う、こういう解釈を申し上げて、国会の決議はあくまで尊重していくという考えでおります。(「全然答弁になっていない」と呼び、その他発言する者多し)
  96. 久野忠治

    久野委員長 平林君に申し上げます。質問を継続してください。(「だめだよ。答弁しろよ」と呼び、その他発言する者多し)——平林君に申し上げます。質疑を続行してください。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この国会の御決議と政府の答弁とを正確に調べてみますと、国会の御決議は、「わが国は、日本国憲法理念である平和国家としての立場をふまえ、武器輸出三原則並びに昭和五十一年政府統一方針に基づいて、武器輸出について慎重に対処してきたところである。しかるに、近時右方針に反した事例を生じたことは遺憾である。よって政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもって対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである。」こういうふうに国会で申されておりまして、それに対して当時の田中国務大臣は、「政府といたしましては、ただいま採択されました御決議の趣旨を体し、今後努力をしてまいる所存であります。」こう答えておるわけであります。  この一連の解釈の問題になりますが、まず、この文章を、御決議をつくるときの各党間の折衝等の経緯を考えてみますと、社会党の側におかれては、政府の武器輸出三原則をそのまま文章にして、それで、やってはいけない、そういうふうにお書きになろうとしたわけです。それに対して自由民主党等から意見がありまして、それは直接引用して、そして、やってはいけないとは書かない。そこで、「慎重に対処してきたところである。」そういうふうな表現になったわけです。ところが、こういう堀田ハガネその他の違反事件が生じてきたので、慎重な態度で対処せよ、同時に、制度上の改革を含めた実効ある措置をとれ、こうおっしゃっておりまして、それであのとき、輸出貿易管理令でございますか、そういう法制上の処置について通産省でいろいろ検討して、所要の改正措置あるいは行政措置をたしか講じたはずでございます。大体この御趣旨については、政府は誠実にいままで守ってきたと思っております。  それで、政府といたしましては、政府がつくった武器輸出三原則並びに五十一年の統一方針、これにつきましては、今回の措置、これは修正される、例外である、そう考えますが、国会の御決議に関しましては、いま申し上げたような経緯にかんがみまして、この御趣旨を体して努力されているとわれわれは考えておる次第なのでございます。
  98. 平林剛

    平林委員 同会決議に関しまして、私の具体的な議員同士の質疑応答から、最終的に総理答弁に窮しまして、あの決議は武器の輸出である、技術は含まれていない、こういうふうに終わりまして、私は憤激したわけであります。これについては大出さんからの発言があるように、武器の枝術ほついてもやっぱり含まれているのだ、こういうことでございますから、答弁になっていないのです。  それからもう一つは、私は、国会決議の解釈について、いま政府が、何党は何言った、何党は何言ったなんというようなことを言われますが、これは行政府の長である総理が勝手に言うことはないです。国会決議の解釈は、ここにいる各党、国会議員全員が相談をしなければならぬ問題なんですよ。それを、あれがあった、これがあったなんというような言いわけはできない。私の言いたいことは、国会の決議、しかも全員でなされた重大な決議そのものは政府は一方的に変更することはできない、こう言っているわけであります。もし、その場合には国会が相談しなければならぬですよ。国会、何も相談してないのですよ。われわれはそれについて、アメリカはどうの、ここはどうのなんて言ってないのですよ。私は、そういう意味で、国会決議は行政府が勝手に変更することはできない、したがって、これは撤回をすべきである、こう言っておるわけでございますから、ひとつ国会のサイドにて御善処をいただきたい。
  99. 久野忠治

    久野委員長 平林君に申し上げます。  ただいまの質問の件につきましては留保していただきまして、他の質問に入っていただきたいと思います。  しかし、時間も参りましたので、午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕