○佐藤敬治君 私は、ただいま
議題となりました
地方交付税法等の一部を改正する
法律案に対して、
日本社会党を代表して、
反対の
討論をいたします。
昭和五十八
年度の地方
交付税総額は八兆八千六百八十五億円で、前
年度に比べ四千六百十五億円、四・九%の減少であります。地方
交付税総額が前
年度に比べてマイナスという
事態になったのは、地方
交付税史上初めてのことでございます。これによって、地方
交付税の歳入総額に占める割合も、五十七
年度の一九・八%から一八・七%へと下落することになりました。
地方
交付税の減少がこのように著しくなったのは、国税三税が二〇・八%も落ち込んだことに原因があります。もちろん、前
年度の国税三税の収入見込みを過大に見積もったこと、あるいはまた、五十六
年度の地方
交付税の精算額が八兆五百二億円にも達していたことも大きな要因でありますけれども、しかし、最大の原因は、このように地方
交付税額の法定分が急に減ったのに対し、多額の地方
財源の不足が明らかになった段階で、法的に義務づけられている地方
交付税率の引き上げの
措置等、抜本的な解決を
政府が回避したことにあります。
地方
交付税は、地方税と並んで地方財政を支える最も重要な柱であります。この総額を
確保することこそが地方財政の死命を制するものであると言うことができます。そのため、地方
交付税法は六条三の二項に、明確に制度の改正または
交付税率の引き上げを明示しているのであります。
しかるに、
昭和五十
年度以降、この六条三の二項が全く無視され、有名無実と化しております。国の財政窮迫を理由に、制度の改正の本来の意味を故意に歪曲し、毎年毎年
借金による穴埋めを繰り返し、そしてあたかもそのことが地方
交付税制度の本来的な当然の
措置であるかのように
政府は言い張ってまいりました。
問題は、
昭和五十
年度補正予算に始まります。
政府の
経済政策の誤りによって、地方財政に二兆一千八百三十一億円という膨大な赤字が発生いたしました。その解決策として、不足
財源の二分の一を赤字地方債で処理し、残りの二分の一を地方
交付税
特別会計の借り入れとし、その返済については、元金の二分の一と
利息の全額は国の負担、元金の二分の一は地方の負担とするという、いわゆる二分の一方式で埋め合わせました。そして、自治省は、これを制度の改正であると詭弁を弄してまいりました。
わが党は、これを制度の改正と言えないばかりではなく、将来地方財政の重大な負担になるとして、
交付税率の引き上げを極力主張してまいりました。その後、自治省は、胸の痛みに耐えかねてか、五十三年にはこれを法制化して、今度こそ制度の改正だと主張してまいりました。しかし、五十一
年度以降も膨大な
財源不足が続いて、これを二分の一方式という
借金によって穴埋めしてきたために、果たせるかな、いまや地方財政はまさしく破滅のふちに立たされております。
すなわち、五十八
年度末の地方債の累積残高は三十八兆九百十三億円、
交付税
特別会計における借入残高は十一兆五千二百十九億円に達し、この合計は実に五十兆円にも上っております。四十五
年度における地方財政の借入残高は二兆九千七百四十五億であるから、十二倍以上、
交付税
特別会計は八十億円であったから、実に千四百四十倍もふくれ上がっております。この間、地方財政計画の規模は約六倍程度の増にすぎませんから、いかに地方財政が急激に悪化したかがわかるのであります。
五十八
年度の地方財政の不足額については、前述のいわゆる二分の一方式によって、地方
交付税
特別会計において一兆八千九百五十八億円を借り入れておりますけれども、はなはだおもしろくないことは、従来国が負担してきました借入金の
利息七千四億円の約半分、三千四百四十六億円を自治体に負担させるということであります。これでは
交付税率の引き上げどころか、まさに切り下げであります。
この利子の全額国の負担については、大蔵、自治両大臣の間に数回にわたって覚書を取り交わし、
委員会における幾多の議論によって疑いもなく確立しているところであります。
まことに噴飯物なのは、国がこの三千四百四十六億円の
運用部
資金からの借り入れを認めて、返済に際しては、その元利の半分を新しいルールによって地方が負担せよということであります。これでは国は、実質的に利子の四分の一しか負担しないことになります。自分が負担すべき
利息を他人に払わせて、その金を
貸し付けて、それからまた半分利子を取る。いまどきの高利貸しだって、こんなあこぎなまねはしないことでしょう。ここまでくると、でたらめというか、行き当たりばったりというか、まことに無軌道と言うほかはありません。
この
措置は五十八
年度限りというけれども、大蔵省の態度を見る限りでは、来
年度にもとに回復されるという保証ほどこにもありません。それどころか、大蔵省は、来
年度はさらに進んで、
交付税
特別会計の借入金返済の元利全額の負担を地方に迫っているのであります。大蔵、自治両省の覚書の趣旨は、まさにあしたに一城、夕べに一城と次々に抜かれて、地方の時代はいまや中央の時代であります。こんな無軌道なことを要求する
大蔵大臣も
大蔵大臣だけれども、これをあっさり受けてくる自治大臣も自治大臣であります。
国の財政が苦しいからといって、世界第二の
経済大国を誇るわが国が、吹けば飛ぶような弱い自治体を金持ち呼ばわりして、九年も前にさかのぼって一方的に約束を破るなどということは、全く国のエゴとしか言いようがありません。お互いに苦しいんだから、約束したことは歯を食いしばっても守っていかなければ、信頼感を失われて、何の取り決めもできなくなってしまうことでしょう。
元来、地方
交付税法六条の三の二項に言うところの制度の改正とは、地方税制の改正、国庫負担対象経費の範囲または負担率の変更、国と地方を通じての事務配分の変更あるいは事務の改廃等、要するに、それによって構造的に生じている地方財政の過不足を解消できる程度のものでなければならないのであります。そうでなければ、
法律が
交付税率の変更と並列して取り扱っている趣旨に合致しないのであります。それにもかかわらず、安易に
借金でつじつまを合わせて、制度の改正だと詭弁、強弁したところに、今日の地方財政危機め真の原因があるのであります。
いまや、
政府の言う制度の改正という詭弁は完全に破綻いたしました。残るは
交付税率の引き上げ以外に道はありません。先般行われた衆議院地方行政
委員会における
参考人の意見聴取におきましても、
交付税率の引き上げの意見が圧倒的に多いのであります。国の財政窮迫のとき、
交付税率の完全引き上げを主張するつもりはありませんけれども、せめて、わが党と全野党が一致して
提案した
修正案、すなわち五十八
年度の不足額を補うに足る八%程度の引き上げを実施すべきであると思います。
重ねて申し上げます。このままずるずると地方財政が
借金を重ね、しかも地方
交付税
特別会計の借入金は地方自身の借入金として、地方が自己の責任において負担することが肝要であるという財政制度
審議会の一方的な意見によって、現状の改革もしないで国の責任を地方に押しつけることになれば、早晩地方財政は文字どおり破綻いたします。財政の混乱しているいま、制度の改正をやるべきではないという意見がありますけれども、財政窮迫のいまだからこそ抜本的な改正ができると思います。
政府の勇断を期待して、私の
反対討論を終わります。(
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