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1983-01-27 第98回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年一月二十七日(木曜日)     ─────────────  議事日程 第三号   昭和五十八年一月二十七日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ───────────── ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後一時三分開議
  2. 福田一

    議長福田一君) これより会議を開きます。      ────◇─────  国務大臣演説に対する質疑
  3. 福田一

    議長福田一君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。飛鳥田一雄君。     〔飛鳥田一雄登壇
  4. 飛鳥田一雄

    飛鳥田一雄君 私は、日本社会党護憲共同を代表し、総理施政方針に関して、国民の声を代弁しつつ質問を行いたいと存じます。(拍手)  昨日、ロッキード疑獄事件田中角榮被告に対して、懲役五年、追徴金五億円の求刑が行われました。その衝撃は、いまや改めて国民の中に大きく広がりつつあります。  総理、私たちは一体この事件を純真な青少年や子や孫たちにどう説明したらいいのでしょうか。国政の最高責任者であった者が、破廉恥な犯罪者として起訴されている。しかも、その当人が、この議場内に席を温存しているばかりか、いまなお与党自民党の命綱を握るほどの支配力を発揮している。わかりやすい政治ということをモットーとされる中曽根総理は、このわかりにくい政治の仕組みを国民に向かってどう説明せられるのか。総理自身ロッキード疑獄及びきのうの論告求刑に関する所感を含めて、率直に語っていただきたいと思います。(拍手)  あなたは、行政官としてこれは言えないとテレビで語られたと伺いますが、事は総理政治責任に関することを伺っているのであります。お間違えのないようにお願いをいたしておきます。  すなわち、ロッキード疑獄こそ、警察官までが汚職に狂うという社会の汚れ、すなわち日本列島汚職構造の頂点であり、田中角榮被告はその元凶であります。すなわち、田中議員が罪を犯したのは内閣総理大臣としての在職中のことであり、その道義的政治的責任は他の議員とは比べものにならぬほど重く、また、内閣総理大臣公務員としてもその最高の地位にあるのであります。普通の公務員でさえ、刑事訴追を受けた場合には、通例、起訴休職の取り扱いを受けて公務から排除されるという厳しい措置がとられているのであります。いわんやその最高責任者たる者に例外が許される道理がありません。  かつてロッキード裁判冒頭陳述の際、田中被告人も、起訴事実の有無にかかわらず、いやしくも総理大臣在職中の汚職の容疑で逮捕、拘禁せられ、しかも起訴に至ったということは、それだけで総理大臣の栄誉を汚し、日本国の名誉を損なったこととなり、万死に値するものと考えましたと率直に述べていたではありませんか。この言葉にうそがなく、田中議員政治的道義的責任を償う一片の気持ちがあったとすれば、とっくに議員を辞し、政治の場から退いているべきであります。それにもかかわらず、田中議員がいまなおしぶとく生き残り、その支配力をふるっているのはなぜか。中曽根総理、あなたにも重大な責任があるのであります。(拍手)  すなわち、前国会でも私が指摘したとおり、あなたの背後には田中議員支配力があり、いま中曽根内閣組閣そのものが逆に田中議員を勇気づけているからであります。国民はこのことに深い疑惑を持っています。したがって、論告求刑があったいまこそ、田中議員はみずから辞職をすべきであり、また中曽根総理は、この機会に内閣の刷新を図り、国民政治不信の高まりに具体的にこたえるべきであります。そうしてこそ初めて政治への失われた信頼を回復し、政治倫理の再生へ向かう第一歩となり得るのであります。  もし、田中議員みずから辞職の意思がないというのならば、やむを得ません、われわれは田中議員辞職勧告決議案を本国会に提出したいと考えておるのであります。(拍手)総理はこれに対してどのようにお考えになっていらっしゃるか。もはや個人的次元の問題にすりかえてはならない。日本国総理であった者の政治責任に関する問題として明確にお答えをいただきたい、こう存ずるのであります。(拍手)  次に、私は、最近行われた中曽根総理の訪韓、訪米に関してお尋ねをいたします。  総理は、昨年十二月の臨時国会会期中、ひそかに韓国訪問を準備していながら、所信表明でも、委員会答弁でさえも、一切これに触れることなく、秘密のうちに交渉を進められました。そして、本国会の再開直前国民の声すら聞くことなく、急遽訪韓をして、軍事優先の偏った姿勢で四十億ドルもの援助を決め、韓国の国防努力の評価の上に立って、新たなる次元の日韓関係と称する盟約を全斗煥との間で結びました。  さらに、武器輸出三原則に関する国会決議に背いて、対米武器技術供与の方針を強引に決め、防衛費突出の予算とともに、盛りだくさんな手みやげを携えて、ワシントンにレーガン大統領を訪れられたのであります。  わが国民の多くは、総理のこの秘密、独断、冒険外交の中に、日米韓軍事同盟の危険な姿を感じ、日本の将来と平和への深い憂いを抱いているのであります。私もその憂いをともにする立場から、若干の質問をいたします。  まず総理は、日米首脳会談で事もなげに、日米同盟には軍事的側面を含む、日米両国運命共同体と強調されましたが、これはわが国総理として戦後初めての公然たる軍事同盟宣言ではありませんか。日本アメリカと生死をともにするということを、いつ、どこで決めたのですか。日本の死活にかかわるこの重大事を、国会の議をも経ず、条約も定めず、総理だけで決められるのですか。この際、このことを国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。(拍手)  言うまでもないことですが、レーガン大統領は、一昨年十月来、同時多発戦略と呼ばれる新たなる世界戦略を進められています。これは地球上どの地域で米ソ間に軍事的衝突が生じた場合でも、すべての米軍及び同盟軍が直ちに全面的に対応することを想定した戦略であります。かかるとき、総理は、一千海里のシーレーン防衛日本海に通ずる海峡封鎖に責任を持つことを約束してこられました。端的な話、たとえば中東で米ソが衝突をすれば、わが国が攻撃を受けていない場合でも自衛隊作戦行動を命令されるのですか。それとも、集団自衛権は憲法に背き、日米安保条約の「極東」の範囲すら超えるとの理由を貫いて、たとえ在日米軍が出動しても自衛隊参加協力は拒否されますか。この点、いずれかを明確にお答えをいただきたい。(拍手)  軍事的には、わが国土が攻撃を受けた後の海峡封鎖は無意味であります。また、対馬海峡一つを考えても、米韓両軍との共同作戦抜きで封鎖することは不可能であります。総理は、この間の事情を十分に御承知の上で、国民に隠して恐るべき決断をなさったのではありませんか。  もちろん、私たちは、日米運命共同体、日韓新次元、日本は不沈空母などという気負い立った総理の言葉だけで、私たちの疑い、不信を持っているのではありません。それ以上に、すでに日本海北西太平洋で展開され、回を追って規模を広げている日米共同演習の実態、シーレーン防衛海峡封鎖機能の強化に重点を置いた防衛力整備計画の推進、米国原潜原子力空母等日本立ち寄り頻繁化、F16の配備計画、さらには軍事費に充当できるつかみ金四十億ドルもの対韓援助全斗煥とのホットラインの新設といった数々の事実を見て、たとえば日本を不沈空母にするという言葉への深い不安が生々しく実感となってこざるを得ないことを御了解になれるはずであります。(拍手)  念のために申し上げておきますが、空母は攻撃兵器であり、核の反撃を受ければ、不沈の日本列島といえどもことごとく廃墟と化すよりほかに方法がないのであります。つまり、総理は、日本列島アメリカのためのとりでとなさるおつもりかどうか、ここにはっきりと伺っておきたい。(拍手)  総理は、今回の訪韓、訪米に先立ち、武器輸出三原則やGNP比一%以内という防衛費の限度などの軍事大国化への歯どめをなし崩しにする態度を露骨にされましたが、次は非核三原則すら危ないというのが国民の率直な不安であります。  総理はまた、アメリカでの記者会見において、国会でも明らかにしていないが、憲法改正に関する長期のプログラムを持っていると言明せられました。国会無視もはなはだしい。プログラムがあるならば、いまここにお出しなさい。(拍手)それとも、国会を無視し、秘密外交制服組の独走によって軍事力増強安保拡大をさらに進め、憲法改悪への段階を登り詰めるおつもりかどうか、ここにはっきりと伺っておきたいと存じます。(拍手)  ともあれ、私は、以上すべての事実に照らしてみて、アメリカ日本の安全に寄与するという従来の政府が主張してきた日米安保の枠組みすらすでに過去のものとされ、いまや日米韓一体ブロックぐるみレーガン戦略の示す世界安保の体制に組み込まれつつあると考えざるを得ないのであります。軍事大国への日本の道は、中曽根内閣の手で急激に加速されていると判断せざるを得ないのであります。総理は、これに対していかにお答えになりますか。  総理、あなたはかつて「新しい保守の論理」という本を出されました。その御本の中で、外交はかけのように行ってはならない、国家の力を超えることをしてはならない、歴史の流れをつかみそれに乗ずること、外交を国内の目的に使ってはならない、正常な外交手続を無視してはならないと五つの原則をお述べになっておられますが、今回の訪韓、訪米はことごとくこれに違反しているではありませんか。運命共同体論は、すなわち、かけの外交そのものではありませんか。不沈空母などとは国の力を超えているものではありませんか。軍事費の突出は、軍縮機運の高まる世界的な歴史の流れに逆行しておりませんか。アメリカの圧力を国内に利用し、軍備強化への選択を進めていらっしゃいませんか。民間人まで使った訪韓秘密外交は、正常ルートを無視するものではありませんか。  しかも、この御本の中で、中曽根総理御自身は、第二次大戦の悲劇はこの五つの原則を無視したことから起こっておると書いておられます。私は、ここにあなた御自身の言葉をもって、今回の中曽根総理の外交について猛省を促し、厳しく国民とともに糾弾するものであります。(拍手)御所見をお尋ねいたしたいと思います。  以上、私は種々質疑をしてまいりましたが、この際、憲法に基づく平和外交の観点から、逆に当面政府がとるべき態度について若干の提案を行っておきたいと存じます。  まず第一は、日米韓軍事同盟への危険な急傾斜を改め、当面——まさに当面ですよ。最低限、福田内閣のころ掲げた全方位外交の地点に立ち戻るべきであります。  それにはまず、作為的なソ連脅威論の押しつけをやめなければなりません。総理は訪米中、北方領土にソ連のミグ23が常駐して脅威を加えていると語られましたが、防衛庁の幹部すら、それは間違いではないか、防衛庁は確認していないと首をかしげておられるのであります。根拠のないことまで言い立て、ソ連をことさら敵視する態度では、とうてい平和外交を進めることはできません。  いま緊急に必要なことは、ソ連、中国を初め、東側の国々とも、南の国々とも積極的に交流して、相互不信を解き、信頼関係を積み重ねることです。韓国だけではなく、朝鮮民主主義人民共和国とも平等互恵の交流を進め、朝鮮の自主的平和統一を支える国際環境づくりに協力することであります。  第二には、国際緊張の緩和と軍縮の推進に徹することであります。総理は、アメリカの危険な側面とだけ提携をしておられますが、そのアメリカの動向にさえ、さきの中間選挙以来、国防予算の削減、MXミサイル配備予算の否決など、軍縮を求める世界の大勢に押される兆しがあらわれつつあります。レーガン軍拡路線はいまや下り坂になりつつあります。それに同調するのはまさに時代錯誤と言わざるを得ないではありませんか。(拍手)  いまからでも遅くはない、武器技術供与など憲法の許容しない軍事的役割り分担を取り消し、非核三原則を厳格に徹底的に守るべきであります。同時に、アジア・太平洋地域非核平和地帯を創設するための外交手段を尽くし、国連を中心に、緊張緩和と軍縮を目指すあらゆる機会と方法において、日本の政府が最も積極的かつ有効に活動することを求めます。(拍手)  第三には、世界の経済危機を救う積極的構想の確立と推進であります。  まだ発展途上の国々では一日に四万人の人々が飢餓のために死に、先進諸国でも三千万人以上の失業者がちまたにあふれています。六千五百億ドル、約百五十兆円の対外債務が焦げついて世界金融市場の混迷が続く一方、ほぼ同額の軍事費が軍拡のために浪費をせられているのであります。平和と軍縮への転換を基本の軸として、いまや発展途上国をも含む地球規模経済社会開発構想の確立、推進こそ全人類の火急の課題であります。世界第二の経済力を身につけ、平和憲法を持つ日本こそ、その構想推進の最も積極的な役割りを担うべきであります。(拍手)五月と伝えられる総理東南アジア歴訪、続くサミットにおいて、総理がこのような方向で、あなたのいわゆる仕事をしてくれることを国民は求めているのであります。  総理いかがですか。以上の三つの私たちの提案に対しても、十分なる御見解をお聞きいたしたいと存じます。(拍手)  次に、財政経済政策についてお尋ねをいたします。  総理、あなたは、五十八年度の政府予算アメリカを向いた風見鶏予算だと言われていることを御存じですか。百兆円の国債残高を抱える財政危機のもとで、超緊縮、マイナス予算を組みながら、防衛費だけは総理の決断で前年比六・五%も伸ばしています。一方、社会保障費の伸びは、わずか〇・六%にすぎません。戦後最低の伸び率であります。文教関係費マイナスではありませんか。最大の人権問題である同和対策さえ後退しているではありませんか。  総理、これから厳しい受験シーズンに入ります。大学生の約八割は私立大学です。この私大経費補助が六十五億円も削られ、授業料入学納入金の値上げがいまや行われようとしています。高齢者のいる世帯は最近十年間に二倍にふえ、年金を受けている世帯は千百万を超えていますが、年金の物価スライドが初めて凍結され、お年寄りは大変な不安を覚えているのであります。  このうらはらに防衛費だけを突出させるのでは、アメリカに顔を向けた、国民にそっぽを向く予算だと言わざるを得ないではありませんか。(拍手)  さらに重要なことは、景気が冷え込んでいるこのときに、国民がまんの行革を優先させて、公共事業費伸び率はゼロ、所得税減税は六年間連続見送り、加えて人勧凍結賃金抑制に躍起となって内需を抑え込もうとしていることであります。このため、勤労者の賃金は六年間で一・四倍にしかならないのに、税金は二・七倍になりました。したがって、消費は落ち込み、これでは中小商工業の売り上げは伸びず、景気回復は望めず、その結果、税収が伸びず、それでは結果として財政再建もできないということにならざるを得ないではありませんか。  総理、あなたは、一月四日の記者会見の際、古い形の財政再建ではなく、伸び伸びとした財政改革による立て直しということをおっしゃいましたが、一体何を考えていらっしゃるのですか、増税なき再建はもうできないということをおっしゃりたかったのですか、伺いたいと思います。  また、総理は、作成中の新経済五カ年計画に対して、期間も名前も変えろとやり直しを命じたと言われています。これは、財政再建の見通しが立たないため、国民の目から目標を遠のかせ、政策をあいまいにしてしまい、わかりにくい政治で責任追及を避けようとしていらっしゃるのではありませんか。政府は、直間比率の是正を含めた税収構造の見直しを提唱すると伺っておりますが、それは大型間接税を導入し、大衆増税をやる時期をねらっているという意味ではありませんか。新経済計画決定の時期を予定された四月から夏へずらし、参議院選挙が終わってから途端に大衆増税を躍り出させるお考えではないのですか。  もし、わかりやすい政治と言われるのならば、政府の財政計画国民の前にはっきりと示すべきであります。大型間接税導入をやるのか、やらないのか、総理の明確なお答えをいただきたいと思います。(拍手)  お断りしておきますが、わが党は、税の不公平をそのままにして大衆増税を押しつけるなどというやり方には、絶対に反対であります。  元来、財政再建は、不公平税制の是正、軍事費の削減を初め、国民にとって不要不急な経費やむだの節減によってこそ行うべきであります。行革デフレを招くような国民に対してだけの総がまんを押しつけることをやめ、所得税減税生活関連投資を中心に景気対策を進めるべきであります。  すなわち、このためには、一兆円以上の所得税減税を行うこと、あわせて住民税減税を実施すること、年金の物価スライドを行い、人事院勧告完全実施のための公務員給与改善費を計上すること、私学助成費の減額などをやめ、公共事業事業量を維持し、生活関連投資をふやすこと、及び防衛費は五十七年度水準で凍結することなどを、この際最低限実施すべきであります。(拍手)  特に、構造不況地域不況に対して特別措置を講じ、農業、中小企業を振興し、雇用の安定を図り、格差と不公平の是正と国民生活の安定、不況打開を積極的に図るべきときだと考えますが、総理の御見解を伺いたいと思います。(拍手)  私たちは、その財源については、利子配当所得総合課税の実現、貸し倒れ引当金の圧縮など特別減免税措置徹底的整理を行うこと、土地増価税創設によるインフレ利得の吸収、富裕税の新設など資産課税の強化、また、大企業向け補助金補給金を廃止、削減することなどによって新しい財源を十分に確保できると考えています。いかがお考えになりますか。  ところが、中曽根内閣は、不公平税制の是正どころか、全く逆なことをやっていらっしゃいます。政府は、五十八年度の税制改正企業向け租税特別措置の二件を廃止する一方、新たに三件を創設し、逆にふやしているのではありませんか。  総理、われわれは利権と結びつく補助金を整理せよと主張し続けてまいりました。ところが、臨調は初めから補助金の整理には及び腰でした。十五兆円に及ぶ補助金のうち三兆円だけを対象に三十三項目の改革案をつくりましたが、それさえ大幅に後退してしまい、補助金廃止は米の流通促進奨励金一件だけということになってしまったではありませんか。  一方、大企業に対する産業助成は財界、官僚の圧迫ですべて温存され、土光会長自身出身企業にも研究開発助成費が流れているというではありませんか。(拍手)すなわち、総理のおっしゃる行革とは、財界の既得権は守り、福祉、教育費切り捨て防衛費だけを突出させる、軍拡への地ならしではありませんか、伺いたいと思います。  総理、あなたは、昨年五月、前内閣の行政管理庁長官だった当時、「生長の家」のある集会で次のようなあいさつをなすったと伺っております。それは、すなわち、まず行政改革を断行、成功させよう、この大きな仕事に失敗したならば教育の改革もできず、防衛の問題もだめになる、いわんや憲法をつくる力はだめになってしまう、行政改革で大掃除をしてお座敷をきれいにし、りっぱな憲法を安置する、これがわれわれのコースであるとおっしゃるのであります。  総理、行革に失敗したら防衛もだめになるとはどういう意味ですか。やっぱり防衛費を突出させるために福祉を切り捨て国民がまんの行革を押しつけようということでありますか。行革で大掃除をして、新しいお座敷に新しい憲法を安置するというのはどういう意味ですか。はっきりとお答えをいただきたいと思います。御自分のおっしゃったことですから、はっきりとお答えをいただきたいと思います。(拍手)  臨調は、本来の任務である行政機構改革の枠を超えて、国の安全など、国政の基本に関することにまでいまや介入しようとせられております。これは国権の最高機関である国会を軽視し、民主政治の原則を踏みにじるものであります。中曽根総理は、国会を軽視し、臨調を使って憲法改悪地ならしをしようとお考えになっているのではないか、総理の意図について明確にお答えをいただきたいと思います。(拍手)  中曽根総理、いま財界の団体である経団連が、土光臨調会長の意向を受けて、国鉄の民営分断化総ぐるみで支持し、受け皿づくりにまで踏み込んでいると伺っております。国鉄の分断民営化の問題はこれから国会で審議をする重大な問題であります。国鉄は国民の共有の財産であり、そのあり方については、国民の声、地域住民の声、関係自治体の意見などを民主的に聞くことが第一に必要であります。国会を無視してこのような財界の行動が行われてよろしいのでありますか。臨調と財界が国民共有の財産の分捕りに動き出すことこそ、民主政治に対する挑戦ではありませんか。(拍手)  政府は、公共企業体の持つ公共性を十分に尊重しようとする意思が一体おありなのかどうか。総理は、国民の安心よりも財界の安心を優先されて考えておられるのかどうか、はっきりとお伺いしておきたいと存じます。(拍手)  総理は、戦後三十八年目の今日、タブーに挑戦すると気負い込んで、日本の進路の重大なる転換を図ろうとなすっていらっしゃいます。しかも、それは国民にとってきわめて危険な方向と言わざるを得ません。第二次大戦後における平和国家日本の歴史に挑むものと言わざるを得ないのであります。  総理、あなたに歴史を変える権限がどこにおありですか。せめて、国民はあなたに、輝かしい日本国憲法民主政治の原則に対して、そらぞらしい言葉だけではなく、実行において少なくとも謙虚な姿勢だけは保ってほしいと言っておるのであります。  力を頼み、民衆を権力で抑え込めると過信する政治家は、必ず民衆の反撃によって挫折することにならざるを得ません。(拍手)私はこのことを厳しくあなたに申し上げて、私の質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘君登壇〕
  5. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 飛鳥田委員長お答えをいたします。  まず、昨日のロッキード裁判における所見でございますが、政治家の一人といたしまして、厳粛な気持ちでこれを受けとめており、冷静にこの推移を見守っていきたいと思っております。  組閣につきまして御批判をいただきましたが、前にも申し上げましたように、私は、仕事本位で人材を抜てきする内閣をつくる、こういう考えでやっておるのでございまして、内閣を改造する意思はございません。  また、ロッキード事件につきましては、現在公判係属中の事件でございまして、行政府最高責任者として私が意見を申し述べることは、この際差し控えさせていただきたいと思います。  さらに、辞職勧告決議の問題でございますが、これは国会重要事項でございまして、そのような決議案が出てきた場合には、各党間で慎重に協議さるべきものであると思います。また、国会議員身分に関する重要な問題でございますから、この前申し上げましたように、この国会議員身分の処理につきましてはきわめて慎重を要するものである、こう考えております。  次に、日米関係の問題についてお話がございました。  同盟ということを使ったが、いかなる意味であるかということでございますが、私は、日米間は、まず第一に、民主主義自由主義、こういう重大な信条をともにする関係にあります。第二番目に、経済、文化の膨大な交流関係を持っておりまして、お互いの関係は実に相互依存関係にあるわけであります。第三番目には、日米安全保障条約を通じまして、日本の安全及び極東の平和及び安定維持という関係で結んでおる重大な関係にあります。この三つの重大な連帯関係、これを示しまして運命共同体、こう言ったのでございます。(拍手)  こういう日米安全保障条約を通じます日米関係は、やはりいまのような自由主義民主主義という共通の価値観を持っておったり、文化や経済におきまして重大な連帯関係を持っておったり、あるいはさらに、防衛につきまして共同に協力しているという意味におきまして、これは一種の同盟関係にあると私は考えております。(拍手、発言する者あり)  さらに、自衛権の問題にお触れの御質問がございましたが、もとより集団的自衛権を行使することは憲法上許されておりません。したがって、あるいは中近東その他におきまして米軍が万一出動するような事態がありましても、わが国に対する武力攻撃が発生していない限り自衛隊が武力行使することはあり得ないのでございます。  さらに、いわゆる海峡封鎖の問題で御質問がございましたが、私は、日本防衛のために、憲法及びわれわれがすでに申し上げている非核原則、専守防衛、これらの原則を遵守して、もし万一日本に侵略が行われた場合にはわれわれは本土防衛をやらなければならない、その本土防衛の一環としてわれわれに重要な海峡の防衛もしなければならない、そういう意味においてこれを海峡のコントロールという名前を使ったのでございます。これは国土防衛を行う上において当然の行為でございまして、異を差し挟むことはないと私は確信しておるのであります。(拍手)別にいままでの政府方針を変更したわけではございません。  いわゆる不沈空母という表現がございましたが、これは、日本列島を守るという意味におきまして、空母という言葉が必ずしも適当であったかどうかはわかりませんが、一つの比喩として用いたのであります。言いかえれば、日本列島は不沈のものである、沈まざるものである、そうしてみずから守らなければならない、それを強調したのであります。(拍手、発言する者あり)  もし万一侵略があった場合には、まず、みずからの国民の力によってみずからの国を守ることは当然のことであります。そして、日本の行政の最高責任者が、みずからの国をいかなることがあっても守り抜くという決意を表明することが、日米安保条約を有効に機能させるもとである、こういう信念を持って申し上げた次第でございまして、(拍手、発言する者あり)いわゆる不沈空母という名前は、いわば不沈列島、そういう意味で使ったということを御了承願いたい、一種の比喩であり、形容詞であるとお考え願いたいと思うのであります。  わが国防衛政策基本は、平和憲法のもとに、専守防衛に徹し、非核原則を堅持し、そして日米安保体制を有効に機能させつつ、自衛のため必要最小限度の範囲内で効率的な防衛力を整備する、これがわれわれの基本方針でございます。防衛費のGNP一%の問題に関しましては、現在のところ変える必要はないと考えております。  次に、対米武器技術供与について御質問がございました。  防衛におきまする日米間の技術の相互交流を図ることが、日米安保体制の効果的運用を確保する上で重要になっている、そういうことにかんがみまして、かかる相互交流の一環として供与する道を開いたものでございます。  本件供与は、日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとでこれを実施いたしておるものでありまして、もとより、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出原則等のよって立つ平和国家としての基本理念はもちろん確保されるものであります。  なお、武器輸出原則等は、今後とも基本的には堅持していく方針でございます。  いずれにせよ、わが国防衛は、他国に脅威を与えないように、軍事大国になることを回避しつつ、あくまで専守防衛の概念に徹して行うものであるということを申し上げておきます。  次に、私の訪米中の発言について、憲法改正プログラムがあるのではないか、こういうお話がありましたが、私は前から申し上げておりまするように、憲法につきましては、これを研究し、議論し、勉強し、見直すということは、これは結構なことである、こう申し上げておるわけであります。  私がこのプログラムとかということを申し上げましたのは、国民的コンセンサスを形成していく上について、私はある勉強をいたしたのでございます。それは、明治十四年の政変を頭に置きまして、あのときに自由民権派の大隈さん一派が内閣を出まして、政局が重大な危機に襲われました。そのときに、中長期の計画を国が決めまして、明治十八年に内閣制度をつくる、明治二十二年に憲法をつくる、明治二十三年から国会を開設する、そういう中長期の、長い、ある程度の時間的余裕を持った国の歩みをつくることについて、国内の世論を統一いたしまして、時局は鎮静化し、そのとおりの道を日本は進んで、あのりっぱな明治時代をつくり上げたのでございます。明治十八年には内閣制度をつくり、二十二年には憲法をつくりました。  そのことを考えまして、憲法問題につきましては、できるだけ国民全体のコンセンサスをつくることが望ましい。ですから、私は、現在、中曽根内閣憲法改正政治日程に上せることはしないと言っておるのでありまして、中長期の目標のもとに、そういうような国民的コンセンサスをつくる方法を、与野党、国民全体で相談したらどうかなと、そういう意味で申し上げたのでございます。(拍手)  それから、外交基本方針でございますが、わが国外交基本方針はあくまで平和外交でございます。それと同時に、この平和外交を通じて、国力に応じて国際的な寄与を行う、そして世界から孤立を排するというのがわれわれの目標でございます。私が申し上げたいわゆる外交原則も、このような観点に立って申し上げたのでございます。  しかし、現在の世界情勢を見ますと、ある意味において、力の抑制力、これがお互いの均衡——阻止力が平和を維持しているということは現実の事実であって、これは否定できません。しかし、この抑制力あるいは核の均衡というものを、いかに現実的な方法を通じてレベルダウンしていくか、減殺して減らしていくかということが軍縮の課題である、そう思っておりまして、その道をわれわれは進んでいきたい、そう思っておるわけでございます。  次に、日韓関係について御質問がございましたが、今回の日韓関係の改善は、外務省を通じて、正規の道を通じて行ったのでございまして、いわゆる秘密外交というようなものではございません。  日韓関係におきましては、教科書事件等、不幸な問題がございまして、若干ぎくしゃくしたところがございました。しかし、その間におきましても、特に両国の日韓議員連盟の皆さんが非常な努力をしていただきまして、友好関係の維持に努めていただいたのでございます。その時期がようやく実ってまいりまして、外交当局を通じて折衝いたしました結果、両方の意見が合いまして、私の訪韓ということになり、いままでの問題、このわだかまりを解消いたしまして、日韓友好親善の方向へさらに前進したことを喜ぶものであります。(拍手)  さらに、わが国外交方針につきまして御質問がございましたが、われわれは、平和外交をあくまで基準にしつつ、一面におきましては、日米友好協力関係外交の基軸としつつ、アジアの近隣諸国を初め、各国との友好協力関係を維持発展させ、また、わが国の立場から、政治経済役割りを積極的に果たしていくことによって、世界の平和と繁栄に貢献していきたい、これがわれわれの基本方針でございます。  全方位外交という御指示がございましたけれども、われわれは あらゆる国と友好協力関係を結ぶという考え基本的に堅持してまいります。しかし、これは無原則に国交を保つという意味ではあらずして、相手国の性格や、わが国の国益に照らしまして、おのずから相手国に対してニュアンスの差があることは当然でありまして、いわゆる無原則な等距離外交という方針はとる考えはございません。  われわれは、第一に、自由世界の一員といたしまして自由世界の連帯強化に努め、さらに、いわゆる発展途上国、第三世界等に対しまして友好協力の輪を広め、そして、共産圏に対しても、できるだけ友好親善の道を開くように努力してまいりたい、このように考えておるわけであります。(拍手)  北方領土を含む極東ソ連の軍備増強の事実は、これは事実でありまして、北方四島におきましては、約一個師団の兵力がすでに展開されてあり、ミグ21が飛来してきているということは認められておるところでございます。  しかし、われわれは、ソ連との関係におきましても、領土問題を解決して平和条約を締結する、そういう方針を堅持しつつ、あくまで粘り強くソ連と交渉を続けていく、そういう考えに立っていきたいと思っておる次第でございます。  次に、サミット及び第三世界その他に関する協力関係でございますが、私は、このウィリアムズバーグで行われるサミットにおきましては、やはり平和と軍縮の問題、それから世界経済活性化の問題、あるいはさらに発展途上国に対する協力の問題、あるいは科学技術その他の分野における協力問題等々の問題が議題になり得るのではないかと思います。  これらは、いずれ各国の代表が交渉いたしまして、議題を決める予定でございますので、そういう議題決定を待って私たち態度を明確につくってまいりたいと思います。  いずれにせよ、わが国は、国際的地位にふさわしい国際的協力関係を行わなければ孤立化する危険があり、また、自由貿易を堅持して保護貿易を排除するという断固たる方針をわれわれは持っておるのでございまして、そういう意味におきましても、国際的孤立を排除するという意味から、特にLDCや第三世界等に対しても積極的に文化、経済の協力を行いたいと考えております。市場開放あるいは先進諸国との科学技術分野での協力、産業協力あるいは開発途上国に対する経済協力等もそれらの一環でございます。  次に、五十八年度予算につきまして御批判をいただきました。  五十八年度予算は、非常に厳しい財政事情のもとに、しかも高齢化社会を目前に控えているという、こういうむずかしい情勢のもとに、いかにわが国の財政の対応力をつくり上げていくかという観点に立ってつくったものでございます。歳出のすべての分野について徹底的見直しを図り、一般歳出を全体として前年度同額以下に抑制した次第でございます。  そして、社会保障関係予算につきましては、諸施策の長期的有効性を確保するために施策の合理化、適正化に努める一方、七・八%増となった在宅福祉対策を初め老人保健事業等、真に必要な、真に困った人たちに対しては、これを徹底的に行うような重点政策を配慮したつもりでございます。  なお、国民生活にとっても重要な住宅対策につきましては、住宅金融公庫融資の拡充、これは財投規模で六・四%増になっております。税制上の改善、これは住宅取得控除限度額を五万円から十五万円に今度引き上げました。これらの充実に努めたところでございます。  文教予算につきましては、臨調答申を踏まえるとともに、実際は児童生徒数が減ってまいりました。そういう意味におきまして対前年度マイナスという形になったのでございますが、基礎科学研究の推進、生徒指導の充実等、緊要な政策については重点的に配慮しております。  同和対策につきましては、啓蒙啓発予算の大幅な増加、地域福祉対策、雇用対策等の内容改善等を図りまして、十分な配慮もいたしておるところでございます。  防衛予算につきましては、現下の国際環境に照らしまして、自主的な判断のもとに、必要最小限の経費を計上した次第でございます。  なお、年金等の給付水準の据え置きは、現下の厳しい財政事情及び物価動向の安定にかんがみましてかく措置いたしたものでございます。  さらに、五十八年度予算景気対策との関係の御質問がございました。  現在はわりあいに物価が安定してきておりまして、さらに、個人消費が少しずつふえてまいりました。内需中心の成長に移行する、こういう方向で努力を続けておるところでございます。  しかし、輸出の減少、あるいは生産、出荷の伸び悩み等の厳しい現実が、やはり現在存在しておる実情でございます。われわれは、この厳しい中におきましても、財政の対応力を至急回復いたしまして、そして、一面において、歳出面における切り詰めを行いましたけれども、公共事業費関係等につきましては、昨年度と同額の予算を確保し、また、民間資金の活用等によりまして事業費の確保を図る等、景気維持拡大にも努力してきたところでございます。  なお、さらに、財政改革を通じまして財政の対応力の回復を図ることが、わが国経済の発展の上で非常に重要なことであるとも考えております。  次に、五十年度以降大量の国債に依存いたしました結果、わが国予算の硬直性に悩んできた次第でございます。五十八年度予算の編成に当たりましては、先ほど申し上げましたように、一般歳出を前年度以下に切り詰める、税外収入を確保する、そして公債発行額を五十七年度補正予算後に比べまして一兆円減額した次第でございます。それと同時に、「増税なき財政再建」の基本理念を堅持しつつ、財政改革にさらに一歩前進したいと考えておる次第でございます。今後は、新しい観点に立った長期的な経済展望のもとに、歳出歳入の徹底的な合理化、適正化を進め、できる限り早期に特例公債依存体質からの脱却、そして、公債依存限度の引き下げに努力してまいるつもりでございます。  財政改革に当たっての基本考えにつきましては、できるだけ明らかにいたしたいと考えておりまして、近くこれをお示しすべく検討しておるところでございます。  なお、歳出歳入構造の見直しに当たりましては、受益と負担の関係、直接税と間接税とのバランスをどうするか等の問題、これらは、究極的には国民の合意と選択にゆだねらるべきものであると考えております。  次に、税制の問題でございますが、所得税減税及び住民税減税等につきましては、財政状況から見まして、これを見送ることは税制調査会の答申におきましてもやむを得ない措置とされたところでありまして、遺憾ながら財政上やむを得ぬ措置といたした次第でございます。  さらに、これからの不況打開の対策でございますが、当面の経済運営に当たりましては、物価の安定を基礎としつつ、国内民間需要を中心とした景気の着実な拡大を図り、雇用の安定を確保して、引き続き努力してまいります。  さらに、基礎産業、素材産業の再活性化を図るなどの政策を進め、さらに生産性の向上を基本とする農林水産業の体質の強化中小企業の振興につきましては、いわゆる承継税制問題について改革の一歩を進め、あるいは投資減税についても一歩前進させたところでございます。  また、雇用対策として、特定の不況産業及び不況地域に対する失業の予防と雇用の安定のための諸施策を充実強化しておるところでございます。  数点について御指摘をいただきましたけれども、必ずしもお考えには同調できないところがございます。  配当利子所得の問題でございますが、適正、公平な利子配当課税を実現するという政府基本方針にはいささかも変わりがございません。今後における利子配当課税の適正なあり方については、早い機会に税制調査会で検討していただき、結論をいただきたいと思っております。  さらに、租税特別措置の見直し、この特別措置の見直しにつきましては、従来からも整理合理化を進めてきているところでございますが、企業関係特別措置の減収額は必ずしも大きな額ではございません。大部分が中小企業とかあるいは資源エネルギー対策の項目になっておるのでございます。昭和五十八年度におきましても、しかし見直しを行いまして、各種特別償却や準備金制度について縮減を行おうとしております。また、貸し倒れ引当金につきましても、実態に応じて見直しを行っておりまして、五十八年度におきましても、金融機関の貸し倒れ引当金について、手直しを行うことといたしております。  なお、土地増価税、富裕税については、種々の問題が指摘されておりまして、五十八年度において、これを財源とすることは適当でないと考えております。  さらに、補助金につきまして御質問がございましたが、先端技術の開発については、非常に長期間、相当の額の資金を要する、しかもリスクがかなり多い、諸外国においてもある程度の援助措置を講じている、こういう状況にかんがみまして、五十八年度予算におきましては、ある程度総枠を縮減する、あるいは補助率の引き下げを行う、こういう対策をとった次第でございます。  不公平税制是正するということは、政策目的の意義の薄れたもの、あるいは効果に疑問のある租税特別措置これらについては放置することなく、常に見直しを行ってきております。そして、社会経済情勢の変化に応じて、また必要となるものについては、やはり新しい措置を講じていくことも必要であると思っております。五十八年度の税制改正におきましても、引き続き厳しい見直しを行いまして、その結果、特別措置二件を廃止する一方、構造的不況に悩む基礎素材産業の構造改善対策等、新たな情勢に応じて必要と認められた三件については、最小限の措置を講ずることといたしております。  補助金につきまして、御質問がございました。  補助金のあり方につきましては、臨調を含め、各方面でもいま見直しをやっておるところでございますが、五十八年度予算編成に当たりましても、全般にわたって見直しを行いまして、積極的に整理合理化を推進いたしました。五十八年度予算における補助金整理状態は、全額で約四千七億円に上がっております。千六百十四件でございます。  さらに、昨年五月、私がある集会で講演しましたことにつきまして御質問がございました。  これは、いわゆる国をつくる基本的な力という意味におきまして、私は講演を申し上げたのでございます。言いかえれば、主権在民の日本にありましては、国民の力、国民意思というものがすべての根源でございます。これが憲法をつくり、憲法を擁護しあるいは憲法改革するという原動力になるわけでございます。国民の主権者としてのこの力というものが国を進める一番大事なものであるということを強調したのでございまして、そして、これがあるいは行政改革を行う一つの原動力にもなる、あるいはさらに教育推進する一つの情念的原動力にもなる、あるいは憲法を守り、あるいは憲法改革せんとする国民の活発なエネルギーの原動力になる、このエネルギーの原動力を重視した。そういう意味で、行政改革につきましてもこの力が大事なのであるということを強調した次第なのでございます。(拍手)  国鉄再建につきまして御質問がございましたが、いま国鉄は相当な危機にありまして、相当な税金を一般会計におきましても国鉄の方に向けておるわけでございます。一日も早く国鉄改革を行いまして、国民の税金を国鉄の赤字に向けない方向に持っていくということが財政改革にも沿うゆえんでございます。そこで、国鉄再建監理委員会設置のための国鉄再建臨時措置法案を提出して、御審議をお願いいたしておるところでございます。この法案やこのような国鉄改革考えは、財界が支持しているだけではなくして、全日本国民が強く支持していると私は確信しておるものであります。(拍手)  次に、平和国家日本歴史を変える考えでいるのかという御質問でございますが、私が申し上げましたのは、いま日本は戦後三十八年目になりまして重要な転換点に来ておる。したがって、新しい世界情勢に適合していくためには、諸制度の見直しを行って改革を行うときに来ている、そういう意味のことを申し上げた次第でございます。  その方向として第一に申し上げたのは、世界の孤児になることを防がなければならない。自由貿易体制を堅持するために、ぜひともわれわれは国際的に窓を開いていかなければならない。  第二に、日米関係を基軸にして、韓国、中国、ASEAN等、アジア・太平洋諸国との友好を重視していかなければならない。  第三に、軍備縮小への努力、みずから国を守る決意を明確にして、日米安保条約の有効な機能保持に心がけなければならない。  第四に、社会連帯の中で国民個々人が生きがいと安心を見出せる「たくましい文化と福祉の国」を目指す必要がある。個人の生きがいが国をつくり、国の方向の選択が個人の運命を左右する、こう申し上げておるのでございます。(拍手)  五番目に、行財政改革推進して、新しい国づくりの基礎をつくる必要がある。  最後に、自由主義経済原則を尊重する新しい長期展望をつくって、今後の経済社会の発展方向を示す必要がある、そういう数点を国の行くべき道としてお示し申し上げたのでございまして、これらは国民の皆さんに自由に御論議願いまして、この自由な御論議を通じまして、新しい、たくましい豊かな日本方向を見出そう、このような考えに立って申し上げた次第でございます。(拍手)     ─────────────
  6. 福田一

    議長福田一君) 田中六助君。     〔田中六助君登壇
  7. 田中六助

    ○田中六助君 私は、自由民主党を代表して、中曽根総理施政方針演説に対する質問を行います。  総理は、その演説の冒頭で、わが国の内外の諸情勢は厳しく、そして今日、わが国が大きな転換点にあることを指摘されております。そして、明るい平和な日本を切り開くために、不動の精神を持って、身を挺してこれらの諸困難に当たる決意を示しております。総理就任以来、幾多の諸問題の解決に鋭意努力され、大きな成果を上げられています。この見識とこの決断力に対して、私は深く敬意を表するものでございます。(拍手)  総理は、わが国の今日が大きな転換点にあることを指摘しておりますが、私は、世界の情勢もまた大きな転換点にあると信じております。政治的な困難、それから経済的な不安、それがそうでございます。政治的には、国際連合という大きな機構がございます。この国際連合があるおかげで世界の平和は保たれておりますし、大きな戦争もございません。しかし、本来の国連の機能である全体的な安全保障体制はいまだしの感がございます。いま世界には、広島型の原爆の核弾頭の数は約百万発散在しております。  経済の不安におきましても、ガット体制とIMFの体制にひび割れが来ております。第一次、第二次オイルショックにおきましても、これを克服するだけの機能がIMFとガット体制にあるかどうか、私どもはこの体制の新構築をやらなければならない時期に来ておるのではないかと私は思います。皆さんが世界の状況を見てわかりますように、失業の増大、保護主義貿易の台頭、そして世界信用不安、これらの諸情勢は、まさしく一九三〇年代の不況を思わせるような世界同時不況の状況でございます。日本世界の中でGNP一一%という大きな責任を背負っております。このような世界不安、このような政治経済社会不安に対して、責任あるわが国世界の中の日本としての責任があります。  私は、この際、総理が新たな機構、新たな世界への体制づくりにお考えがあるかどうか、あるいは、あるとするならばどのような構想をお持ちか、お聞きしたいと思います。(拍手)  次に、政治倫理の問題でございますが、この問題は古くて新しく、新しくて古い問題でございます。私どもは、国会の栄光の座と職業としての政治家の大きな責任を常に感じておかなければなりません。  マックス・ウェーバーは、「職業としての政治」の中に、政治とは何ぞやという設問をしております。つまり、問いを設けております。その中に、彼はいわく、政治とは権力に参加しようとする努力、あるいはまた、権力に影響を与えようとする努力と指摘しております。しかも、その権力とは何ぞやという設問に対しましては、人の力、その人の力、政治家の力の中には善悪が渦巻いておる、きょう善と思えば悪になる、悪からまた善が生まれる、これを指摘すると同時に、それに対する答えといたしましては、禁欲ということが政治家の大きな課題であると言っております。つまり、物欲をなくすること、物に対する欲をなくすることが、職業としての政治家の大きな務めだということを指摘しておるのでございます。(拍手)私どもは、常にこのことを念頭に置いて倫理問題を考えていかなければならない立場にございます。  総理に、この政治と倫理について、本格的な軌道に入ろうとする中曽根政権がどのようにお考えか、お尋ねしたいと思います。(拍手)  次いで、憲法問題でございます。  あの焦土と化したわが国が今日あるのは、いまの平和憲法基本的人権、主権在民の憲法が根底に強く存在しておったからだと私は信じます。(拍手)この憲法の前文には、そもそも国政国民の厳粛な信託により、その権威は国民に由来し、そしてその国権は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民が享受するということになっております。明らかに主権在民でございます。平和主義でございます。基本的人権を守らなければならないという点でございます。  私は、特攻隊員として実戦に参加しました。多くの戦友、同僚、教え子、部下を雲流るる果てに散華させました。無残なことです。この戦死した戦友の一人に中曽根良介君がいます。これは中曽根総理大臣の実弟でございます。総理が常にこのことを胸に抱いて行動しておるということはよく私は知っております。(拍手)  わが国憲法は、占領下に制定されたということもありまして、英文で読んだ方が非常にわかりやすい点もございます。また、憲法九十六条は改正規定でございます。したがって、私どもがこの憲法の改正について勉学をし、研究をし、学習することは当然でございます。(拍手)ただ、その憲法流れる精神、平和主義、主権在民、基本的人権の擁護というこの精神だけは常に忘れてはならないと思います。  総理、この憲法問題に対する総理の御見解お尋ねしたいと思います。(拍手)  次に、行政機構改革の問題でございますが、総理行政管理庁長官として臨調から三たびの答申を受けております。まだまだ緒についたばかりでございまして、国鉄改革問題、社会保障制度の改善問題、公務員制度の改正あるいは地方行財政の改定など幾多の課題を抱えております。  特に、三月の初めには最終答申が出ます。この答申では、中央省庁の統合、地方出先機関の整理統合がうたわれます。すでにこれら諸機関の大きな反対、そしてまた多くの団体の圧力がひしひしと迫っておる感じを受けるわけでございます。私どもは財政再建のためにも、将来の日本の子や孫のためにも、行政肥大化を排して財政をうまく持っていかなければなりません。総理がおっしゃるように、行政改革は一朝一夕にはできるものではありません。一政府、一政党の問題ではないと思います。この点について新たな総理の御見解をただしたいと思います。(拍手)  次いで、財政再建経済の問題でございます。  五十八年度予算における国債残高は百十兆に達しようとしております。新年度予算の中にも十三兆三千四百五十億という国債が含まれております。すでに国債費は八兆二千億に達しようとしております。これでは財政が硬直化せざるを得ません。私どもが歳出のカットに苦労するのはそのためでございますが、いつまでも歳出カットにばかり寄りかかり国民に大きな迷惑をかけるわけにはまいりません。私どもは新たな発想をしなければならない時期に達しております。  総理経済の見通しの暗さが多くの企業の活力を喪失さしております。新たな中期見直し、新たな中期展望が、いまこそ必要な時期でございます。  この点についての総理のお考えをただすと同時に、わが国の税構造についてでございます。  わが国の税構造は、欧州諸国と違って、その直間比率のバランスがとれておりません。直接税偏向のために所得税の五年も六年もの減税ができないのも、私はやはり間接税と直接税のアンバランスが原因だと思っております。したがって、財政再建を行うならば、私どもは、この直間比率の見直しこそやるべきことではないかというふうに考えます。(拍手)  総理のこの二点に対するお考えがあるならば、その点をお聞きしたいと思います。  次は、貿易バランスの問題でございます。  総理は、先ほども、わが国世界に開かれた日本にしたいということを申しておりました。まさしく世界に開かれた日本をつくり上げるためには、私どもは保護主義貿易を排する態度に出なければなりません。日本があの焦土から今日の繁栄があるのは、多くの受益を各国から受けたのが原因でございます。保護主義貿易を排して自由主義貿易に私どもが努力したことが大きな原因となっております。過去の日本、現在、そうして未来の日本を切り開くためにも、保護主義貿易を排して、開かれた市場、関税障壁の撤廃、これこそわが国のとるべき道でしょう。しかし、この方法国民に多くの痛手を与え、痛みを強く与えます。しかし、総理のより善なる指導でこの点を排除しつつ、わが国の貿易の開かれた世界への道を行うことを心から念ずるとともに、総理の指導性をお尋ねするわけでございます。(拍手)  次いで、外交問題でございます。  日米関係は、あくまで私どもの中心軌道としての外交展開でなければならないと思います。総理が、新年になってアメリカに行かれ、レーガン大統領との話、米国の首脳との懇談でより一層の信頼関係を強めたこと、そして大きな成果を上げたことは、私は心から喜ぶと同時に、今後の日米関係をますますよきものにしなければならないと思います。  一つの課題となっておりました武器技術の供与の問題がございます。  政府決断を下して、この武器交流を開始することを決めました。私は当然の措置だと思うのです。ただ、国会決議武器輸出原則がございますが、これらとの関係について総理の詳細な御説明をお願いしたいと思います。  韓国との問題でございますが、日本総理が正式に韓国を訪問したのは戦後初めてでございます。朝鮮半島の平和と北東アジアの平和のためにも、私は非常にいいことを総理決断されたと思います。日韓関係が新段階に入ることこそ、朝鮮半島の平和と北東アジアの平和につながると思います。今後の総理日韓関係に対する態度、あるいは具体的にどのようにお進めになるか、お尋ねしたいと思います。  日中の問題でございますが、国交回復して十年に達しようとしております。この間中国の中に微妙な動きも見られますが、やはり中国との関係も強く結ばれて、将来ともますます私どもは信頼関係を深めていかなければならない大切な国でございます。  さらに、ASEAN諸国の問題でございますが、いまマレーシアの総理が来て、たび重なる総理との懇談でASEAN諸国との交流を深めるお話を進めておりますが、ASEAN諸国はアジアの活力ある国であると同時に、世界の活力ある国でもございます。こういう点からも総理は、マレーシアの国だけではなく、十分ASEAN諸国に大きな態度でもって臨み、大きな助けをこれらの国々にすべきではないか。  私がここで提案したいのは、アジア・太平洋地域のサミット会議を、こういう時期にこそ、日本が十分な相談の上、提唱すべき時期ではないかと思いますが、総理、いかがなものでございましょうか。(拍手)  次いで、日ソ関係でございますが、ソ連は相も変わらず北方領土に軍事基地を設けることを進めております。しかし、アンドロポフ新政権がこれからの世界外交世界の中のソ連という位置をどのように持っていくかは、冷静に判断し、冷静に見守っていかなければならないと思います。日ソ関係の親善も大いに必要でしょう。この点からも、私は、相手側の新政権の手前もありますけれども、こちらもまた、総理はどのようにソ連に対処していくかをお尋ねしたいと思います。  最後に、安保体制の問題でございますが、日本の安全保障につながる国防費を、五十八年度予算におきましても、政府案といたしまして二兆七千五百億の計上をしております。これは福祉切り捨てではないかという論もございますが、福祉予算は九兆一千億に達しております。私は、日本のいまの政府案の一般歳出五十兆三千七百九十六億円からすれば、二兆円はある程度当然の国防費だと思います。自分の国は自分で守るということ、このことに対する防衛計画の一端を示したまでで、国民の絶大な信頼があると思います。(拍手)また、近隣諸国も、この程度の予算は認めておると思います。  ただ、警戒しなければならないのは、軍事大国の軍備拡大競争の悪循環の中に巻き込まれてはならないという注意でございます。この点の配慮も含めまして、総理わが国の安全保障に対する考えをお聞かせ願いたいと思います。  以上、私は、私の所見を交えつつ総理質問をいたしました。この質問の特徴は、古くして新しい、いままで促進剤であったものが阻害要因になり、安全であったものが本当に不安なものとなっております。つまり、大きな壁が現在われらの前に、国内的にも国際的にもはだかっております。これらの壁を打ち破るためには、まず職業としてり政治家の私どもが心の壁を打ち破ることが先決でございます。シュンペーターの言う創造的な革新、革新的な創造というのは、私はこの点にあると思います。精神革命を私ども自身国民の前に示しつつ進まなければなりません。  私は、おしゃべり六助という異名をとっております。総理の舌もときどき非常に滑らかで、国民は大いに困惑するときがあると思います。しかし、総理の情熱、判断力、決断力、洞察力、これはだれにもすぐれたものをお持ちです。総理のこれから出発する門出に当たって、ますます御精進あらんことを心からお祈りして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  8. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 先ほど、飛鳥田委員長の御質問の中で、国会を軽視し、臨調を駆使して憲法改悪地ならし考えているのではないかという御指摘がございましたが、御指摘のような意図は全く持っていないことを申し上げる次第でございます。  ただいま田中政調会長から御懇篤なお言葉をいただき、大変恐縮に存ずる次第でございます。(拍手)該博な学問的御見識のもとに、あらゆる方面にわたりまして御質問をいただきましたが、詳細に御答弁申し上げたいと思います。  まず、わが国外交基本方針でございますが、この基本方針に対する認識につきましては、私も同感でございます。やはり現在の国際環境の中には厳しいものがございます。原爆を抱えて、しかも全人類が苦悩しているというのも現実でございます。あるいは、二度にわたる石油危機によって世界経済が沈滞をして、先進国も発展途上国も、産油国も苦労しているというのもまた現実でございます。しかし、このような厳しい現実の中にあっても、私は、どの国も人類としての良心を失ってはいない。人類を信じ、かつまた日本国民を信じて誠実な政治を行っていくというのがわが国外交基本方針でなければならない、こういうふうにまず基本的に考えておる次第でございます。  当面の問題といたしましては、経済あるいは外交上の問題として、日本世界から孤立することをいかに防ぐかという問題がございます。この問題につきましては、自由貿易を幅広く広げ、保護貿易を阻止するために、われわれみずからなすべきことをまたなさなければなりませんけれども、外国の誤った考えや硬直した考えについては、またわれわれはわれわれの国益を主張しなければならないと思っております。  先般、訪米いたしました際も、レーガン大統領と種々会談をいたしましたが、われわれの考えを率直に申しまして、できることとできないこととある、また相談をして継続していくということとある、そういうことを明確に申し上げまして、私たちの守るべき国益は守り、また行わなければならないことは行うと約束して帰ってまいりました。  さらに、現在のこのような国際状況にかんがみて、国際機関、世界機構を見直す必要はありはしないかという御質問でございます。  この御質問は、非常に重要な問題を御指摘いただいた御質問であると思っております。たとえばガットにおきましても、昨年のガットの閣僚協というものは、アメリカ、ヨーロッパが激烈な対立をいたしまして、日本もその間にあって非常に苦労した点でございます。傾向から言えば、ヨーロッパはややもすれば閉鎖的になろうとしており、アメリカは国際経済を開放的に持っていこうとしているわけです。日本は開放的な方向に真っ先に進んでいる国でございます。そういう意味におきまして、自由世界の中におきましても、国際経済の問題になりますと対立がございます。また、アメリカの高金利を是正するようにいままでかなり厳しく要請してきたところもございます。自由世界の内部を見ただけでもこういういろいろな問題が起きておる情勢であり、さらには、発展途上国の中には、すでに指摘された数カ国のように債務の負担に悩んで借金を返せないという国が出てきつつあります。ソ連の衛星国の中にもそういう国が出ております。考えれば、あの超大国のアメリカソ連ですら経済問題には深刻に悩んできているというのが情勢ではないかと思うわけです。  そういう意味におきまして、第二次世界大戦以後つくられた世界銀行なり国際通貨基金なりあるいはガットなり、そういうものは果たしてこのまま機能を続けていけるのかどうかという疑問がいま出つつある状態でございます。あるいは為替の変動率が多過ぎる、したがって、ヨーロッパがやっているように、例のある程度の管理通貨、いわゆるトンネルの中の蛇というような、ああいう一定限度の安定帯を設けた形で為替相場を安定させたらどうかという意見も産業人の中に出てきておる状態でございます。  そういう諸般の問題を考えてみますと、世界機構、これを政治並びに経済機構につきましていかに活性化させていくか、そして、世界経済を拡大と発展の方向に持っていくかという重大な課題をわれわれはいま抱えておるのでありまして、わが政府におきましても、各省を動員いたしまして、いまこの勉強をやらせ始めようとしておるところです。恐らくウィリアムズバーグのサミットにおきましては、この問題は列国の首脳部の共同の課題になると考えておりまして、われわれも御指摘のとおり真剣な検討を行ってまいりたいと考えておるところでございます。  政治倫理の問題につきまして、マックス・ウェーバーの言説をお引きになりまして御指摘がございました。禁欲ということを申されましたが、公の立場にある人間の一番守るべき急所は、やはりそういう言葉ではないかと思います。自己の欲を節制する、そうして公人としての自覚に徹する、これがやはり政治倫理基本でなければならない。このように考えます。(拍手)  それと同時に、政党は人間の集団でありますし、国会はまた政治を行う機構でございます。そういう意味におきまして、個々人の政治倫理観の確立の上に立って、さらに集団としてあるいは機構としてこの政治倫理をいかに具体化していくかということも、議員たるわれわれの職責ではないかと思います。これらの問題につきましては各党各派におのおの御研究があると思いますが、各党各派におきまして協調して同一の賛成し得る成案ができることを期待しておる次第でございます。  次に、憲法に関する御質問がございました。  私は先般申し上げましたように、現在の日本国憲法を非常に高く評価しておる一人でございます。それは、現在の戦後の日本を構築した土台が三つあると申し上げました。一つは憲法です。もう一つは平和条約です。もう一つは日米安保条約であります。この三本の土台の上に戦後の日本はスタートをして今日の繁栄が築かれた。そして特に戦前と戦後を比べました場合に、戦前はややもすれば過激な軍国主義が走り過ぎたり、社会に暗い面がなきにしもあらずでございます。しかし戦後におきましては、女性に選挙権が付与され、そして自由と人権が確立され、非常に大きな、明るい伸び伸びとした世界がここに展開してきたと思うのでございます。それはやはり憲法の持っておる大きな効果ではないかと思うのでございます。私は、そういう意味において憲法を評価しております。  しかし、前に申し上げましたように、いかなる制度におきましても完全無欠というものはあり得ない。成立につきましていろいろ因縁やらいろいろな事情のあるものもございますし、運用の実態に即して改むべきものが出てきていると認められるものもございますし、あるいは将来に向かってよりよきものをつくるためにさらに努力しなければならぬものもございます。恐らくそういう諸制度、一般的に考えまして憲法も同じような諸制度の一つでございまして、われわれはさらによきものへ努力していく、その意味において、これを検討し、勉強して見直すということは正しい態度であると重ねて申し上げている次第なのでございます。(拍手)  恐らく、戦争につきましてその悲惨さを一番知っておるのは、戦争に行った国民あるいは戦災に遭った当時の国民ではないかと思います。しかし、世界的な現象といたしまして、最近の若い世代は、もう戦争はかなたのものに行っております。あの第二次世界大戦を起こしたドイツのヒトラーの例でもございますが、あの原動力になったヒトラー・ユーゲントというものは、第一次世界大戦を知らない子供たちがヒトラー・ユーゲントになっておったのは事実でございます。  そういう意味におきまして、われわれはこの日本の世相の推移というものをよく見詰めつつ、正しい、世界的に開かれた、世界的に生きていける日本をつくるように、そして戦争の悲惨を再び繰り返さないような慎重な配慮を行いつつ政治をし、知らない世代に対してはそれを教えていくということがまた大事であると考えておるものでございます。(拍手)  しかし、そのことと、自分で自分の国を守ることが必要であるということは別のことであります。およそ独立国を形成している以上、現在の国際情勢を見れば、どの国際関係を見ましても、危機とか脅威というものは出てくる可能性はあるわけでございます。遺憾ながらそういう現在の国際情勢を考えてみますれば、自分で自分の国を守るということは当然のことでございまして、それは世界平和を維持するための共同の責任の一端を担うという意味でもあると私は思います。(拍手日本もみずから自国の防衛については責任を果たしていかなければならないのだ、このように強く感じておるところでございます。(拍手)  次に、行革に関して御質問がございました。  行政改革は、国づくりの基礎工事というべき、現在の政治課題の最重要課題でございます。全国民が期待をし、かたずをのんでその成果を見守っておる、われわれの最も大きな責任をしょっておる政策ではないかと思っておる次第でございます。  臨時行政調査会におきまして、いま鋭意最終の詰めを行っておりまして、臨時行政調査会は三月の十六日がたしか終期でございますけれども、三月の初めには最終答申を出していただけると承っております。  今日の国会におきましても、国鉄関係の法案とかあるいは、来るべき三月、四月ごろまでの間に、専売や電電に関する改革案あるいは年金の統合問題、あるいは臨調答申が出てまいりました場合の各省の改編の問題や地方出先機関の整理の問題や、これらの諸問題につきましては、答申をいただきまして、できるだけ迅速にこれを検討して、方針を決め、国民の皆様方にも御協力をいただき、議会の皆様方にも御報告を申し上げて、できるだけ答申を最大限に尊重して、早くこれを実施していくように心がける決心でございます。(拍手)  次に、財政問題について御質問がございました。  先ほど来申し上げましたように、財政事情は非常に厳しくなっておりますが、高齢化社会を目の前に控え、かつ、国際的関係におきまして日本責任と負担が増大してきております折から、何としても財政の硬直性を直して、そして日本の財政に弾力性を与えて、活力を回復させるということが当面のわれわれの目標でございます。  そういう意味におきましていままでいろいろな努力をしてきたところでございますが、わが国の国債累積額はこの五十七年度末におきまして実に九十七兆、約九十七兆になります。そして、五十八年度末になりましたら現在の状態で百十兆になる予定でございます。こういうような膨大な国債を抱えまして、この停滞している不況期に国を運営していくということは並み大抵のことではないのであります。甘いことばかり言っていてそれで通るというような時代ではないのでございます。やはり、わが政府といたしましては、改革方針を明示し、展望を国民の皆様方にお示しいたしまして、国民の皆様とともに、御協力をいただきつつ前進していく、そういう態度で、わかりやすく、また、われわれの方から積極的に御説明を申し上げまして、国民の皆様方の御協力を得るように今後施策を展開してまいります。  新しい中期計画、中期展望について御質問がございました。  実は、社会経済発展七カ年計画がございましたけれども、これが、昨年度は六兆一千億円に及ぶ税収減を招きまして、時代に合わない情勢になってきておりました。そこで、前内閣当時これを再検討していただくような措置を講じて、再検討してきたところでございます。  今度の新経済五カ年計画という方向で検討していただきましたが、現内閣が成立以来、私はこれをよく検討いたしました結果、いままでのような考え方のいわゆる計画経済的な色彩の強いやり方は適当でない。世界情勢がこのように不安定であり、いろいろな条件が低迷しておる今日におきましては、まず五年という長さが短過ぎる。やはり五年以上相当長期にわたった展望力が必要である。第二番目に、いわゆる社会主義的計画経済でいきますと、数字で詰められて動きがとれないという危険性が出てまいります。自由主義経済においては、いわゆるそのような計画経済的なことは適当ではない。むしろ、民間の活力を思う存分動かし、働かせるというところに経済の主眼点がなければならない。国が先に計画をつくって民間を引っ張っていくという考えよりも、ガイドラインなり指針をつくって、民間の力を発揮するために誘導していくなり環境をつくるというのがわれわれ自由主義経済における考え方である、こう考えております。(拍手)  そのような転換を行いたいと思いまして、先般、経済審議会に諮問をして、答申をお願いいたしておる次第でございます。  なお、直間比率の見直しについて御質問がございました。  臨時行政調査会の答申におきましても「増税なき財政再建」ということの定義の中には、国民所得に対する租税負担率を変えない、そういう範囲内における歳入構造の見直しということは認められておるのでございます。五十九年度、六十年度における予算編成がどういうような状況のもとに行われるかはまだよくわかりません。いま、五十八年度予算を皆様方のところへ御提示して御賛成をいただいておる状況でございます。したがいまして、今後の経済動向を考え、さらに、先ほど申し上げました経済指針、経済展望等も考え、それらとの関連におきまして新しい財政計画も策定をいたしまして、それらの中でこれらの問題をどう処理するかということを検討してまいりたいと思っておる次第でございます。  次に、貿易摩擦の問題について御質問がございました。  保護貿易主義を排除して自由貿易主義を貫徹せよという御趣旨には、全く同感でございます。政府は、先般来一連の市場開放措置を進めてまいりまして、昨年の五月から比べてみますと、約三百二十三品目の関税率の引き下げあるいは是正をある程度行っております。さらに、最近十二月におきましては、農産物につきまして六品目の割り当ての拡大を行い、特にたばこ等につきましては、三五%の関税率を一挙に二〇%に引き下げまして、農民の皆様方には御苦労をおかけしておるところでございます。そのほか、この一月になりまして輸入手続を簡素化する、あるいは製品に関する安全、標準というものを見直そう、そういう意味におきまして、官房長官を主にする検討、推進調整の本部をつくりまして、そしていよいよその作業を開始したところでございます。  わが国に対する外国の非難は、関税率につきましては、もはや外国は余り非難できない情勢になっております。全品目を調べてみますと、日本の関税の平均が約四%台です。アメリカは五%台です。ヨーロッパは六%台でございます。これを見ますと、ケネディ・ラウンドを先に実行している日本の関税は、世界で一番進んだ安い関税率に平均的にはなっておるのでございます。(拍手)問題は、輸入手続や製品安全に関する国内措置が晦渋であり、あるいは相手方に理解できないような要素があることでございます。今回はこの問題に手を染めまして、各省自分の担当分野につきましては全面的に見直して、三月までにそれを洗い直して改革案を持ってくるように現在努力を始めたところでございます。  さらに、アメリカ訪問につきまして御意見がございました。  今回のアメリカ訪問によりまして、レーガン大統領との間に信頼関係確立し、そしてさらに、日米関係に起きました若干の誤解やらわだかまりを解消いたしまして、幅広くさらに強い友好親善のもとに前進することができるようになったことは、御同慶の至りであります。  首脳会談におきましては、きわめて建設的な意見の交換が行われました。アメリカ大統領は、わが政府が最近行いました輸入措置、あるいは関税あるいは貿易摩擦の問題等についてとりました行為について、感謝と敬意を表明いたしました。私の方は、また一面におきまして、わが国の農産物やら関税の引き下げの状況等も説明し、また輸入手続の改革等の情勢も説明をいたしまして、お互いが合理的な認識に立って話し合いで解決していこう、冷静に解決していこう、こういう点において一致をいたしました。さらに、世界の平和及び軍縮等の問題についても話し合ってきたととろでございます。  私は、アメリカにおきまして一連の発言をいたしましたが、その趣旨とするところは、日本アメリカとの間は、日米安全保障条約によって強く結ばれておるところであります。アメリカの議会筋におきましては、日本防衛努力に関する不満やら、これを不足と考えるような考えがかなり強く出ておりまして、アメリカの上院におきまして決議が行われたということも事実でございます。したがって、日本防衛について、われわれが苦しい財政の中でいかに苦労しているかという、この努力の状況を綿密に説明してきたところでございます。  それと同時に、日本の国はあくまで日本人が守る、そういう自国は自国で守るという決意をはっきりと明確に示しまして、(拍手)そして、アメリカに対して信頼感を増すように努力したのでございます。  日米安全保障条約というもので結ばれておりますけれども、日本が自分で自分の国を守る断固たる決意を示さずして、有事の際にどうしてアメリカが完全に日本を守ってくれるか。(拍手、発言する者あり)それは人間関係において考えられることです。アメリカは、ベトナム戦争以来海外出兵についてはきわめて憶病になっております。  政治最高責任者仕事は、日米安全保障条約がある以上は、有事の際に、一〇〇%これが有効に機能し得るように常に心がけておくことが政治責任者の仕事であると思っております。(拍手)そういう観点から、私は、自国防衛に対する日本国民の決意も伝えてきたのでございまして、そういう意味であるということを御理解願いたいと思うのでございます。  しかし、また一面におきまして、平和と軍縮の問題につきましても、いろいろレーガン大統領意見交換してまいりました。私は、意外にレーガン大統領がこの面に熱心であり、いわゆるタカ派と思っていたのが非常にソフトな面があるということを実は発見いたしました。昨日のアメリカ国会における大統領の演説を見まして、あ、これがあったのかなという気がしたのでございます。やはり核を中心にする軍縮については、レーガン大統領も非常な熱意を持っておりました。  しかし、それは、このような軍縮の努力は確実な保障のもとに国民安心し得るような状態で的確に進めていかなければならない、単なる演説だけで軍縮ができるものではないということを考えている、このように思った次第でございます。(拍手)われわれは、やほり確実な保障のもとに的確に一歩一歩着実に軍縮を進めていく、しかし軍縮は進めていかなければならない、そのようには申し上げておきたいと思うのでございます。(拍手)  次に、武器技術の供与の問題について御質問がございました。  いまや、防衛分野におきます米国と技術の相互交流を図ることが日米安全保障体制の効果的運用を確立する上できわめて重要な段階になりました。このような新しい状況に応じて、相互交流の一環として日米相互防衛援助協定の枠組みのもとで米国に対して武器技術を供与する道を開くこととして、その供与に当たっては武器輸出原則等によらないこととすると決定した次第でございます。  同協定においては、供与される援助については、国際連合憲章と矛盾する使用や第三国への移転等に関しては厳しく規制しております。したがって、この措置は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を確保しつつ行われるものであるということを御了解願いたいと思うのでございます。  昭和五十六年三月の国会決議がございますが、この国会決議は、堀田ハガネの問題で違反事件が生じましたことにかんがみ、そのようなことがないように武器輸出について厳正かつ慎重な態度をもって対処するとともに、実効ある措置を講ずるということを政府に求め、政府は、その趣旨を尊重して努力すると答弁しておるところでございます。したがって、同決議が政府に対して、武器輸出原則について、わが国の平和と安全を確保するため必要不可欠な基盤をなす日米安保体制の効果的運用のために必要な手直しをするところまで禁じたものとは考えてはおらない。(発言する者あり)政府としては、今回の決定は国会決議に反するものではないと考えておる次第であります。(拍手)したがって、今後とも政府は、基本的には武器輸出原則を堅持していく考えであることは申すまでもございません。  韓国の訪問について御質問がございました。  韓国訪問は、幅広い国民的基盤に基づき、自由と民主主義という共通の理念を追求する隣邦として両国間の関係を発展させることに合意をした次第であります。このような平和と友好の輪をさらにアジア・太平洋に向かって拡大していくというのがわれわれの考え方でございます。  アジア・太平洋の問題につきまして、首脳会談に関する御提言がございました。韓国全斗煥大統領は、この首脳会談について非常に熱意を持った御発言をいたしておりました。アジア・太平洋地域の首脳者が集まりまして、この地域の平和や交流につきまして対話することは、私はきわめて有意義であると思っております。  しかし、これらにつきましては、ASEANあるいは豪州、ニュージーランド、そのはか各地域地域には各地域地域考え方がございます。私は、一昨日来マレーシアのマハティール総理とも話をし、アメリカへ行く前にはカナダのトルドー首相とも話をしました。いろいろこういう問題について話し合いもしたのでございます。これらの首脳会談につきましては、十分な準備を行って効果的に行う必要があると思っておりまして、検討してまいりたいと思っておる次第でございます。(拍手)  中国との関係につきましては、現在友好協力関係の安定した基礎がございます。この基礎の上に両国関係の一層の発展を図っていくべく努力してまいりたいと思います。  ASEANにつきましては、その構成国であるマレーシアのマハティール首相を今回公賓としてお迎えいたしましたが、私は、さらに、できるだけ早い機会にASEAN諸国を訪問いたしまして、これらの諸国との友好関係の促進を図ってまいりたいと考えております。  先ほど申し上げましたように、この首脳会談につきましては、いろいろ事前の準備が必要である。しかし、これが行われればきわめて有意義な会合になるであろう、そのように考えておることを重ねて申し上げる次第でございます。  次に、日ソ関係について御質問がございました。  日ソ関係につきましては、北方領土問題を解決して平和条約を締結し、真の相互理解に基づく安定的な関係確立することが課題であります。現在、北方領土の問題やアフガニスタンへの軍事介入やポーランド情勢などの問題があり、遺憾ながら引き続き厳しい関係にあることは事実であります。しかし、政府といたしましては、今後とも日ソ外相協議等を通じまして、ソ連側に対しましても粘り強くこれらの問題の解決を求めていく考え方でおります。  次に、国の安全保障につきまして御質問がございましたが、「防衛計画の大綱」に定められました水準に着実に前進して到達したいというのが当面のわれわれの目標でございます。  わが国防衛は、先般来申し上げますように、まず第一に、自分で自分の国を守るという決意を明らかにして、それを守るということ、日米安全保障条約を有効に機能させる方途を講じておくこと、あるいは軍縮やあるいは経済協力やそのほかの環境整備に努めて平和外交を進めていくということ、この三つから、われわれの防衛、安全保障政策を総合的に行うというのがわれわれの考え方であり、その際、非核原則を守り、専守防衛に徹して、近隣諸国に軍事的脅威を与えないような配慮をするということは当然のことでございます。  大体以上で御質問に対してお答え申し上げたと思いますが、いまや世界の情勢は、御指摘のとおり非常に厳しい状況でございます。われわれは、誠心誠意努力して平和を守っていくつもりでございます。(拍手)     ─────────────
  9. 福田一

    議長福田一君) 中村茂君。     〔中村茂君登壇
  10. 中村茂

    ○中村茂君 私は、日本社会党護憲共同を代表して、飛鳥田委員長に続き、中曽根総理施政方針を初め政府演説に対し、質問をいたします。(拍手)  中曽根総理は、思いやりと責任を基調として「わかりやすい政治」を目指すと言っておりますけれども、総理施政方針演説は、私の聞く限りでは、美辞麗句を並べますけれども、何も実のないヤマブキの花のようなものであるというのが私の実感であります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕  いま国民政府に求めているのは、平和のための反核・軍縮推進であり、金権腐敗の一掃であり、景気の回復であります。この三つの緊急課題を総理国民にわかりやすく、積極的に進めることではないかと思うのであります。(拍手)しかし、総理の就任以来の発言とその行動はことごとく国民の期待を裏切るものになっているということを指摘せざるを得ないのであります。  世界は、軍縮を求める人々の声で満ちあふれております。米ソ中心とした核軍拡競争は、限定核戦争の可能性を現実的なものにしてきております。限りない軍拡は、国家財政を硬直化させ、世界経済危機をもたらしてきております。その不安と怒りが、世界軍縮を求める共通の声となっているのであります。(拍手)  私は、総理訪韓訪米外交を見て、軍縮なき軍拡外交と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  訪韓外交は、まさに秘密外交でありました。韓国の報道機関は一斉に韓米日三角安保と報道し、四十億ドルの経済援助は安保協力と伝えています。ところが、会談の内容はわが国には一切報道されておりません。総理は、伝えられておりますように、本当に韓国防衛努力を高く評価されたのでしょうか。  全斗煥政権は、二十名を超える在日韓国人を政治犯として弾圧しております。間もなく三回目の死刑判決が言い渡されようとしている大阪の孫裕炯さんは、日本の主権を侵害したと言われておりますKCIAの変身であるKNSPによって、日本国内において証拠固めがいま行われております。総理は、人権問題について、全斗煥に対し、毅然たる態度を示したのでしょうか。  総理訪韓は、朝鮮半島に新たな緊張をもたらそうとしております。軍拡をあおるものにほかなりません。もし総理がそれを否定するなら、あなたは朝鮮民主主義人民共和国とどんな関係改善を具体的にお持ちでしょうか。また、わが党は非核武装地帯の設置を呼びかけておりますが、それにかわる対策をお持ちでしょうか。  さらに、この春予定されている米韓合同演習に自衛隊制服組の派遣は行うべきではないと考えますが、総理の御所見をお伺いいたします。(拍手)  私のところに一通の手紙が来ております。その内容の一部を御紹介いたします。「代表質問に立たれると聞いて、一筆啓上いたします。中村さんにはまことに失礼ですが、私は自民党の支持者ですけれども、中曽根総理にお伝えください。総理として、外国に行って間違うような英語を使わないで、堂々と日本語を使ってください。自分が発言したことは隠し立てをしたり、取り消しをしたりしないで、発言に責任を持ってください。あなたは日本の国を代表する総理ですから、日本の恥をさらすようなことにならないようにしてください。私は戦争は反対です。日本憲法を忘れないでください。」以上のように、支持政党を超えて、国民総理訪米外交についていら立ちと不安を持ったということではないでしょうか。(拍手)  アメリカにおける総理の発言は、国民の多くが唖然としております。軍事同盟発言、運命共同体、不沈空母発言など、いままで日本が取り続けてきました平和外交原則を突き崩そうとしていると指摘せざるを得ないのであります。  一九七八年の園田外務大臣及び一九八二年の鈴木総理大臣の第一回、第二回国連軍縮総会においての演説は、平和憲法を全世界に誇り、武器輸出原則非核原則を誇らかに宣言しております。総理は、平和憲法を忘れ、世界に対する約束を破り、国民信頼を裏切ったものであると言わざるを得ないのであります。(拍手)  私は、昨年の臨時国会における総理の発言である第一に自主防衛、第二に安保、第三に国際環境づくりという防衛問題に対する考え方に大きな危惧を感じておりました。総理は、海峡を封鎖し、またバックファイアの侵入を阻止するとしています。そのため「防衛計画の大綱」の次のシナリオづくりを考えていると発言しておりますが、これは軍事大国の道を目指すものであると言わざるを得ません。海峡封鎖はもともとアメリカの要求であり、そのため、昨年ハワイで開かれた日米安保事務レベル会議では、GNP一考以内の枠はもとより、五六中業におげる十六兆四千億円の二倍から三倍の防衛費を必要とする軍事力強化アメリカから要求されたと言われております。これが次のシナリオではないでしょうか。総理の全方位外交を軽視し、隣国であるソ連を敵視し、軍拡を進める姿勢は、平和を目指すことではなく、戦争を目指す道に通ずるものであると思うのであります。(拍手)  総理施政方針演説の中で、アメリカへの武器技術供与に関し、「武器輸出原則等によらないこととすることを決定」したとする反面、後段では、「政府としては、今後とも基本的には武器輸出原則等を堅持し、国会決議の趣旨を尊重していく考えをいささかも変更するものではありません。」と述べています。都合の悪いことは例外とするという論法でいけば、国会決議は形骸化され、国民意思を無視されることになります。対米武器技術供与の閣議決定の撤回を強く要求するものであります。(拍手)  昨日、田中角榮被告に対し、検察が、民主政治の根幹を揺り動かしたものであるとして、懲役五年、追徴金五億円の論告求刑が行われました。政治家の収賄事件としては史上最高求刑をしたこの意味こそ、きわめて重大であります。  田中角榮被告は、元総理大臣として、憲政に汚点を残しました。きょうもこの本会議に田中角榮議員は出席しておりません。議員の果たすべき役割りの第一は、まず本会議に対する出席から出発しなければならないと思うわけであります。(拍手、発言する者あり)ここで、残念でありますが、ここに見えておりませんけれども、田中角榮被告の残されている道は、みずから議員辞職することではないかと思うのであります。  また、国民中曽根総理の動向に注目しております。総理は、田中被告を友人と呼びました。しかし、いまあなたは総理大臣です。日本民主政治を守り、政治倫理確立するためにも、田中議員辞職勧告決議案国会で採択するよう、自民党の総裁としても決断すべきであります。  同時に、あなたは、佐藤孝行被告、加藤六月国土庁長官、二階堂進自民党幹事長についても、国民の要求に沿った厳正な処置をとるべきものであります。政治倫理政治家一人一人の問題だと逃げることなく、総理の明快なる御所見をお伺いいたします。(拍手)  総理は、閣僚人事に当たり、警察官僚や灰色高官を起用したのはロッキードシフトではないかという批判に対し、仕事本位の人事であると強弁してまいりました。  ところが、秦野章法務大臣は、事もあろうに、昨日の田中角榮被告に対する論告求刑の行われたこの日に、法務大臣として講演を行って、指揮権発動はやろうと思えばやれる、野党やマスコミはばか騒ぎをしてい過ぎるなど、不見識な発言をしています。(発言する者あり)秦野章議員は、いまは法務大臣であります。それが検察を批判したり、ロッキード裁判について中傷するような態度は、法務大臣として全く不適格のそしりは免れません。(拍手)これは、総理政治姿勢の根幹に触れる問題であります。明確なる御所見をお伺いいたします。  総理は、政治家汚職再発防止について、どのような対策をお持ちでしょうか。いま、企業政治政治と官界、官界と企業という一連の癒着構造が、汚職金権の温床となっています。政治家が利権と結びついたとき、汚職が生まれます、政治政策がゆがめられます。総理大臣の犯罪も金脈も利権から出発していることを、私どもは見抜かなければなりません。  わが党は、企業政治献金の禁止、倫理委員会の設置、政治家の資産公開法、汚職防止法及び議院証言法の改正など、具体的に提案をしております。政治家政治姿勢を正し、政治倫理確立するため、わが党の案を受け入れる考えがあるかどうか、総理見解をお聞きいたします。  また、政治に対し中立であるべき官僚が、現職のうちから特定政党の予定候補者として事前運動を行い、所属官庁が選挙担当者まで配してこれをバックアップし、関連企業に票集めと金集めを任せるなど、行政腐敗ははびこっているのであります。官僚の天下り押しつけなどに際して割愛文書をとる破廉恥な官庁もあれば、部落問題について差別発言を行う高級官僚もおります。政府の長として、とうした官僚の腐敗をどのように考えているのか、見解をお聞きいたします。(拍手)  私は次に、経済、財政政策について質問いたします。  政府は五十八年度予算案において、前年度当初より三兆円多い十三兆三千四百五十億円もの巨額の国債発行を予定し、政府財政再建が破綻したことをみずから明らかにしております。加えて、今後の財政再建方向が明らかにされていないことが最大の原因となって、わが国経済の混乱と不況を滞留させているのであります。  国民は、大蔵省によって持ち出されようとしている大衆大型増税に大きな不安を持っております。中小企業は利益減と将来の不安から投資を控えております。さらに、百兆円を超える国債発行残高が長期金利の高金利化を引き起こし、不況を長引かせております。したがって、政府は早急に財政再建計画国民の前に明らかにすべきであります。  財政再建のためには、わが党が主張しております大企業向け補助金を思い切って削減すること、薬漬け医療などにおいては経費のむだの節減を図り、租税特別措置法の改廃や富裕税新設などの不公平税制是正により税収を確保することが必要と考えます。政府見解を求めるものであります。  政府は、来年度経済見通しにおいて、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図ることとしており、実質GNP三・四%成長を見込んでおります。これを実現するには個人消費の拡大がかなめとなっております。そのためには勤労国民の所得の伸びを今年度より〇・四%高い五・二%と見込んでおりますが、これは今年の労働者の賃金を七%以上引き上げなければ達成できない数値であります。ところが実際には、政府は今年度の人事院勧告を実施せず、来年度の年金物価スライドを行わず、財界と呼応して勤労国民の所得の引き上げを抑制する姿勢を明らかにしてきております。このような賃金抑制策は、政府経済見通しの実現をみずから阻むものであります。政府は、七%賃金引き上げの妥当性を認めるとともに、賃金抑制策の不当性を認め、人事院勧告の凍結、年金据え置きをやめ、さらに、衆議院議長見解でも示された五年間据え置かれている所得税の一兆円減税及び住民税減税を実施すべきであると考えますが、総理見解を求めるものであります。  不況対策についてお尋ねいたします。  いま、不況対策として新構造不況法ともいうべきものが用意されていると聞いております。確かに、構造的な不況に苦しむ基礎素材産業は、その産業のみならず、地域経済や雇用問題に与える影響も大きくなってきております。政府としても、税制、財政、金融上の措置を講じ、また、原材料、エネルギー対策に手を打つなど温かい支援を行うべきであります。  しかし、昨年十二月に出された産業構造審議会の答申は、合併や生産販売の共同化といった実質的な競争制限を行うきわめて産業統制色の強いものであります。このような産業再編成が進めば製品の値上げや関連中小企業の倒産が増加し、下請企業切り捨てや労働者の解雇など、弱者にしわ寄せされるおそれが十分あります。  政府構造不況業種に対する救済は、本来、側面的な支援にとどめ、独占禁止法の厳格なる運用で効率的な産業調整を行うべきものであります。また、地域産業を振興させるという観点からも特定不況地域の認定の権限は大幅に地方自治体に移譲すべきであると考えますが、政府の御所見を伺うものであります。(拍手)  次に、地方財政について質問します。  昭和五十年度以来毎年度多額の財源不足を生じている地方財政は、構造的な危機に陥っております。政府は、地方交付税法の規定を無視し、多額の借金政策を八年間にわたって地方財政に押しつけてまいりました。そればかりではありません。政府は、五十八年度において新たに交付税特別会計借入金の利子についてその二分の一、三千四百四十六億円を地方負担といたしました。  そこでお伺いいたします。  この措置は一体どのような理由によるのでしょうか。  地方財政の財源不足対策に当たる交付税特別会計の借入金償還については、国は元金の二分の一を負担することが法定化され、利子は全額負担となっていることが大蔵省、自治省両省によって、また国会においても確認されているところであります。大蔵省はこの確認を踏みにじったものであります。これは明らかに行政の不遡及の原則に反するものであります。  同時に、私は、国の地方財政対策がますます不透明となり、その積算や算定が国民の理解しがたいものになっていることを強く指摘し、政府の猛省を促すものであります。(拍手)  私は、複雑化し、小手先でごまかされてきた地方財政対策をやめるとともに、税源の再配分こそが地方財政対策の基本であり、税源再配分計画確立を図るべきであると考えますが、政府の明確なる御答弁をいただきます。(拍手)  次に、総理は、行政管理庁長官当時、「行政改革は、まず政治家、官僚が痛みを受け、それから国民にお願いするのが筋」と言われておりました。しかし、政治家、官僚がどのような痛みを受けるのでしょうか。また、大企業がどんな痛みを受けるのでしょうか。  先般報告された臨調の部会報告を例にとってみますと、国鉄の民営分割によって生活の足を奪われ、高負担を強いられるのは国民であります。  郵政事業の見直しは、国民へのサービスの低下、金融資本の利潤拡大と労働者への労働強化をもたらすものであります。  住宅・都市整備公団はきわめてずさんな経営をしてまいりました。いま、そのツケは公団住宅の家賃値上げという形で入居者に転嫁されようとしております。  犠牲の転嫁は農民にも及んできております。五十五年四月の国会におけるいわゆる食糧自給力強化に関する決議も全然守られておりません。貿易摩擦も農家の犠牲で処理されようとしてきております。行革推進するなら、国民だれもが望み、国民生活を豊かにする行革を進めるべきであります。  たとえば、公共事業費の多くを食っている住宅難、ローン地獄の元凶となっている土地対策になぜ手をつけないのでしょうか。いま地価は鎮静化されつつあります。いま土地神話を打ち破ることは、国民経済に大きなプラス要因を与えるものとなるでしょう。土地増価税の導入、保有税の強化による土地の放出、そして、その土地債券の発行による取得を通じて公共用地を拡大し、公共住宅を初めとする生活施設空間への利用を図るべきであります。  また、公共事業において、談合入札もその解消を図るべきであります。事業量の拡大と税金の節約になります。一昨年からの談合入札の追及により、建設省は及び腰ながら指名業者数の拡大、入札経過の公表に踏み切りました。制限つき一般競争入札の導入など根本的な改革は、土建業者が委員となっている中央建設業審議会に諮問し、建設省はその責任を回避しました。建設省を除く他の省庁、特殊法人は、中建審の答申を待つとして、一年間何らの改善も行っていません。  このようなさまざまの問題は、いま申し上げましたように、国鉄、郵政、住宅・都市整備公団など、国民への犠牲を強要するのでなく、土地対策や談合など大企業の不当な利益を温存する行革ではなしに、国民のための行革を進めるべきであると思いますが、総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)  総理は、「たくましい文化と福祉の国」づくりを政治目標として掲げております。その柱に国を置いております。あなたの改憲志向を見ても、その発想には国家主義的な色彩を色濃く感じます。いま国民が孤立感、不安感を持っているのは、限りない核戦争への危機、福祉切り捨て経済の破綻に対してであります。総理の目指す国家への帰属心の向上は、国民の平和に対する不安を高めるものであります。総理の「たくましい文化」とは、レーガンの中身のない西部劇調の「強いアメリカ」と同様、空虚な国家主義であると思わざるを得ません。  あなたは、障害者、母子家庭、寝たきり老人などに対しては、できるだけ温かい配慮を払うと言われております。それは全斗煥レーガンへの思いやりや、刑事被告人に対する思いやりではなく、年金の引き上げや減税など、国民に顔を向けた政治を行うべきであります。(拍手総理は、予算案で防衛費突出させ、福祉、文教、農業対策費を切り捨てたことはきわめて明らかであります。あなたの言う社会的弱者に対する思いやりなど、どこを見ても発見することは困難であります。(拍手)  最後に、総理は、アメリカ国会解散に言及されましたが、国会は何のためにあるのでしょうか。議論をし、世論を吸い上げ、国民の合意に基づいた政治を行うためにあるのではないでしょうか。  予算案に対する国民の批判が大きければ修正するのは当然であります。法案に問題があり、誤りがあれば修正、廃案もあり得るのであります。あなたの発言は、国権の最高機関である国会を無視し、民主主義を否定するものであります。そのねらいは、野党の国会追及を封じ込め、田中角榮議員の政界追放を求める国民の声を圧殺しようとするものであります。一国の総理たる者は、国会解散などに軽々しく言及すべきではありません。私は、総理の身勝手な恫喝的政治姿努に対し、猛省を促すものであります。(拍手)  以上の私の質問に対し、中曽根内閣総理大臣は二枚舌などのすりかえ答弁ではなしに、誠実な答弁を期待して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣中曽根康弘登壇
  11. 中曽根康弘

    内閣総理大臣中曽根康弘君) 中村議員お答え申し上げます。  まず、私の韓国訪問でございますが、全斗煥大統領とは、国際関係及び日韓関係につきまして幅広い会談を行いました。この内容は、記者会見及び共同声明で発表いたしました。  朝鮮半島の情勢につきましては、全斗煥大統領より、厳しい緊張状態が存在するとともに、南北対話に努力しているという御説明がございました。わが国も朝鮮半島の平和と安定の維持のために、韓国による防衛努力と相まって、南北対話への努力が重要であるとの考えを説明した次第であります。  いわゆる日米韓の三角安保がごときは、もちろん議論もされず、考えておりません。  日韓両国関係につきましては、国民的基盤に立脚した交流の拡大が重要であるという点に認識が一致いたしました。一番近い国が仲が悪いということは不適当である。同じ自由と民主主義を奉ずる間におきましては、特に一番近い関係をお互いが大事にし合おう、こういう考えで一致しておるのでございます。  経済協力問題につきましては、韓国経済社会開発、民生安定、社会福祉の向上のために行ったものでございまして、防衛分担的発想に基づく協力ではございません。現に共同声明でも、経済社会開発五カ年計画中心とした政策に対する協力であると明記しておる次第でございます。  また、在日韓国人の政治犯の問題につきましては、これは基本的には韓国国内問題であります。人道的配慮を希望するとの立場は、従来から随時韓国側に表明しておるところでございます。  さらに、朝鮮半島における永続的な平和は、南北間の対話があって初めてもたらされるという立場を強く表明いたしました。これは共同声明でも盛られておるところでございます。  わが国としては、今後とも韓国による南北両当事者間の対話再開への努力を支持するとともに、朝鮮半島における緊張緩和のため、わが国としてできることがあれば積極的に貢献していくという考えであります。  なお、いわゆる非核地帯設置につきましては、現実的な環境はまだ整っていないとの認識でございます。  朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北朝鮮との関係については、貿易、経済、文化等の分野における交流を漸次積み重ねていきたいと考えております。  米韓合同演習へ自衛官を派遣するというようなことは考えておりません。  次に、訪米時の私の発言について御言及がございましたが、すでにここで飛鳥田委員長に御説明申し上げましたとおり、同盟関係というのは、自由と民主主義を信念とするこの関係、文化、経済における膨大な連帯関係及び日米安全保障条約という、これを通ずる運命をともに分かち合う、そういう意味同盟関係にもあるという意味でも申し上げた。もちろん、この中には安全保障条約関係が含まれるから、防衛上の関係は含まれておるわけでございます。また、運命共同体という意味も、いまのようなことで申し上げた次第でございます。不沈空母という意味につきましても、これは不沈日本列島というふうに解釈願えればありがたいと思います。(発言する者あり)要するに、形容詞の問題であります。  それから、いずれにせよ、日本防衛は、平和憲法のもと、専守防衛に徹して、近隣諸国に脅威を与えないよう、軍事大国とならず、非核原則を堅持してやっていくというものであります。  対米武器技術供与につきましては、これも飛鳥田委員長に御説明申し上げましたが、日米安保体制の効果的運用を確保する上で重要であり、かつ、わが国及び極東の平和と安全に資するためのものであります。  なお、武器輸出原則等につきましては、今後とも基本的にはこれを堅持していく考え方でございます。  「防衛計画の大綱」の次は何か、シナリオがあるのか、こういうお尋ねでございますが、政府としては、「防衛計画の大綱」に定める防衛力の水準をできるだけ早期に達成するように全力を尽くすことが目下の考え方でございまして、これを改正する考えはございません。  また、防衛費のGNP一%に関する昭和五十一年の閣議決定は、現在のところ、これを変える必要はないと考えております。  対米武器技術供与問題について重ねて申し上げますが、本件対米武器技術供与に道を開くことは、日米安保体制の効果的運用を確保することできわめて重要であり、わが国及び極東の平和と安全に資するためのものであります。  本件供与は、日米相互防衛援助協定の関連規定に基づく枠組みのもとで実施することとしており、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出原則等のよって立つ平和国家としての基本理念は確保されることとなっております。  御指摘の国会決議は、「武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもって対処する」というふうに書いておるのでございまして、政府としては、この国会決議が、武器輸出原則等について、わが国自身の平和と安全を確保するため必要不可欠な基盤をなす日米安保体制の効果的運用のために必要な調整をも禁じたものとは考えておりません。したがって、政府としては、今般の決定を撤回する考えはありません。  なお、政府としては、今後とも基本的には武器輸出原則等を堅持し、決議の御趣旨を尊重していく考え方でございます。  田中議員ほかの議員身分に関する御質問がございましたが、政治国民信頼の上に行われていくことはお説のとおりでございます。したがって、政治に携わる者といたしましては、使命を深く自覚して、常に国民の模範となるように心がけなければならないと思います。  その辞職勧告問題につきましては、そういう御提案が出てきた場合に、各党間で協議されることとなると思いますが、国会議員身分に関することであり、かつまた裁判係属中の問題でありますので、慎重に考うべき問題であると考えます。  また、国会に対する議員の喚問等につきまして、その根拠となる議院証言法の改正については、現在、各党間で協議中でございますので、速やかにその結論が出ることを期待しています。  加藤国土庁長官、二階堂幹事長の任命、任用に関する御質問がございましたが、数回の選挙も経ており、かつ、得がたい人材でございますので、政党人として党及び内閣で御活躍を願っておる次第でございます。  秦野法務大臣の昨日の発言は、近代裁判制度やあるいは指揮権の問題について、そういう物の考え方、いわゆる思考の論理というものを述べたものでありまして、ロッキード裁判やあるいは検察批判を行ったものではないという報告を受けております。  次に、政治家汚職再発防止に関して御見解をお述べいただきました。  基本的には、政治家個人が主権者たる国民から負託された政治の使命を深く自覚して、常に国民の模範となるように心がけなければならないことであると思っております。同時に、政治倫理確立を期するために常に制度面からの検討も必要であると考えております。  貴党御提案企業政治献金禁止、あるいは倫理委員会の設置、政治家の資産公開、あるいは汚職防止法、議院証言法の改正等の問題は、いずれも政治基本に触れるきわめて重要な事項でありますので、今後各党間で十分論議を尽くしていただく必要があると考えております。  国家公務員の選挙の事前運動に関しましては、いやしくも国民の批判を受けることがないように、綱紀の粛正について厳正に努めてまいりたいと思っております。  財政再建について御質問がございましたが、この点につきましても、昭和五十八年度予算は厳しい中での編成を行いまして、いま御提案申し上げている次第でございます。  先般申し上げましたように、社会経済発展七カ年計画経済五カ年計画と変えることにつきまして、若干の変更をお願いいたしまして、これをやや長期の経済指針あるいは経済展望という方向に編成がえをお願いをいたしました。この見合いにおいて財政改革案、この長期展望をつくっていただき、その上で具体的な財政改革を実施していきたいと考えておる次第であります。  賃上げの問題でございますが、五十八年度の経済運営に当たりましては、物価の安定を基礎としつつ、国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図る所存であり、これにより五十八年度の経済成長は実質三・四%となる見込みでございます。そして、一人当たりの雇用者所得につきましても五・二%程度の伸びとなる見込みであります。しかし、これと春闘の賃上げとは、対象となる賃金の範囲等が異なり、直接対応しておるものではございません。  いずれにしても、民間賃金の決定につきましては、労使間の自主的な話し合いにまつべきものであると考えております。そして、賃上げの問題につきましては、労使が自主的な話し合いを通じて解決をし、ことしの賃金交渉においても、国民経済的視野から十分論議を尽くして、円満かつ合理的な解決を期待しておる次第でございます。  所得税減税について御質問がございました。  昭和五十三年以来、課税最低限の据え置き等によりまして、所得税負担が上昇して、減税を望む声が強いことは十分承知しております。しかしながら、昭和五十八年度におきまして、一方において歳出削減に努める一方、租税特別措置整理合理化等を中心にして大いに努力をいたしましたが、税収による歳出のカバー率は六四・一%と、非常に低い水準になっております。また、個人所得に対する所得税負担の割合は、五十六年度において四・九%でございまして、国際的に見ればかなり低い水準にあるわけであります。地方財政につきましても、国の財政と同様、厳しい状況にあるのでございます。  以上のような点を踏まえまして、昭和五十八年度におきましては、所得税、住民税の減税を見送らざるを得なくなったことは遺憾であります。しかし、税制調査会の答申におきましても、やむを得ない措置と言われておるところでございます。税調答申にもありますように、この問題につきましては、昭和五十九年度以降できるだけ早期に税制全体の見直しを行う、そういう中で課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行うことが必要、これは税調答申にそのように書かれておるところでございます。  産業構造の転換につきましては、通産大臣から御答弁があると思います。  行政改革につきましてはすでに御答弁申し上げましたが、行政改革は全国民的な重大な政治課題でございまして、政府の重大責任をしょっておる分野でございます。そして、特に政治家公務員が率先して痛みを受けるという考え方には変わりがございません。  臨調審議のいまは中間段階でございまして、特殊法人の整理等に関しましてもさまざまな部会報告が出てくる途中でございます。臨調はいま最終答申に向けて審議しておるところでございまして、この経過を見守って、最終段階でわれわれの考え方をはっきり決めて申し上げたいと思う次第でございます。  国鉄再建につきましては、再建監理委員会設置を内容とする国鉄再建臨時措置法案を提出して審議していただいておりますが、全国民とも国鉄改革を強く望んでおると思いまして、国鉄改革については臨調答申の線に沿って努力してまいるつもりでおります。  郵政事業の見直し、あり方についても、臨調においていま審議が行われておりまして、部会報告の段階で政府見解を述べることは差し控えたいと思っております。  また、住宅・都市整備公団の問題につきましては、未入居住宅等の問題があることは事実でございますが、これらの問題につきましては特に建設省等にも指示いたしまして、鋭意公団を督促して解決するように努力して、ある程度実績が上がってきた状況でございます。  公団の家賃の改定は、新旧家賃の格差の是正の見地から、現在公団において検討中であると聞いております。建設省において適切に対処していくものと考えております。  わが国の農政の動向につきましては、食糧の安定供給、健全な地域社会の形成、国土、自然環境の保全、こういう面から見ましても、農業は非常に重大な意義を持っておるわけでございます。  農産物の市場開放につきましても、一面において関係国との友好関係にも留意しつつ、国内農産物の需給動向も踏まえ、わが国農業の健全な発展と調和のとれた形で行われることが重要である。  今後の農政の展開に当たりましては、食糧自給力強化に関する国会の決議の御趣旨を踏まえまして、施策の充実を図り、生産性の向上を基本として総合的な食糧自給力の維持強化に努力してまいる次第でございます。  地価の問題について御質問がございましたが、近年、経済社会情勢の変化に加え、一連の土地対策の展開もありまして、地価は比較的安定的に推移しております。このような状況を踏まえ、国土利用計画法の的確な運用等によりまして地価の安定傾向を定着化させていくということが必要であり、計画的な土地利用の促進を図るための諸施策を積極的に推進してまいりたいと思います。  なお、土地税制につきましては、昭和五十七年度税制改正により、総合的な観点から見直しを行ったところであります。公共用地の拡大については、先行取得制度の活用を含め、必要な量の確保に努めているところであります。  入札の合理化問題につきましては、現在中央建設業審議会で検討がなされておりまして、結論が得られ次第所要の改善措置を講じていく決意でございます。  行革につきましては、現在の行革は、未来に向かって新しい時代を創造していくためにどう行政があるべきかという課題を視点として見直しを行っておるものでございます。国民企業とを単純に対立的にとらえた御批判は当たらないと思います。今後とも各界各層の御意見等にも留意して、広く国民の御理解と御支持を得るように努力してまいりたいと思います。  「たくましい文化と福祉の国」につきまして御批判をいただきましたが、社会連帯の中で新しい生きがいと安心を見出させつつ、能動的な自己開発の力を導き出す、そのための環境づくりが重要であるということを申し上げました。そうして、個人の充実を基礎に、その活動の方向を積極的に家庭や社会に、そして国にと振り向けさせることが重要であると考えているということでありまして、別に国家主義的色彩があるとは思っておりません。  なお、社会保障につきましては、自立自助、社会連帯の精神による日本的な充実した福祉を目標としている、こういう考えに立ちまして、在宅福祉に重点を置き、寝たきり老人や社会的に弱い立場にある人たちについてかなりの努力をしたものでございます。これらの経費は大体八%増ぐらいの予算を組んでおる見込みでございます。  なお、老人や障害者、老人保健事業の推進については、特にまた考慮をしてまいるつもりでございます。  国会解散につきましては、国会議員は任期いっぱい務めるというのが普通のことであり、望ましいと考えておりまして、国会解散は考えておりません。(拍手)     〔国務大臣竹下登君登壇
  12. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私に対する御質問に対してお答えをいたします。  まず一つは、財政再建計画の問題でございます。  これにつきましては、私ども、まず財政改革基本的な考え方について、財政の中期試算等をも含め、近くこれをお示しすべく鋭意検討をいたしておるところであります。  それから次に、大企業向け補助金、薬漬け医療、そして租税特別措置の改廃、さらに富裕税新設提案、これについての見解を求められたわけであります。  これにつきましては、まず技術開発補助金等につきましても総額を縮減するほか、補助率の引き下げ等を行う等、厳しい節減合理化を行ってまいりました。  そして、薬漬けにつきましては、薬価基準の適正化、医療機関に対する指導監督の強化等、各般の適正化対策を強力に推進することといたしております。この効果も勘案いたしますと、国費で約二千二百億円の節減を図った、こういうことでございます。今後とも努力をしてまいりたいと思います。  その次の問題が、租税特別措置でございます。  これにつきまして、もろもろの問題につきまして種々検討をいたしまして、租税特別措置整理合理化によって多くの増収を期待できるものではございませんが、しかし、税負担の公平確保が一段と強く要請されておる、こういうことから企業関係租税特別措置につきましてさらに見直しを行いました。価格変動準備金の廃止年度の繰り上げを行うほか、各種特別償却や準備金について、その縮減を行うことといたした次第であります。  さらに、富裕税新設の問題でございます。  この富裕税を導入するにいたしましても、所得税の補完税として機能し得る範囲は狭くて、多くの税収を期待することは困難でございます。特に不表現資産の把握等、執行面でむずかしい問題もございますのは議員御承知のとおりであります。  そこで、さきの税制調査会の中期答申、これは、富裕税については「今後の税制のあり方等との関連において、引き続き、検討を重ねていくことが適当であろう。」とされておりますので、こうした観点から今後引き続き勉強を続けさしていただきたい、このように考えておるところであります。  そうして、地方財政との関連についてのお答えでございます。  これにつきましては、交付税特会におきます借入金等の利子について、御指摘どおり、五十年度以降地方財政対策として、国税三税収入の三二%分としての地方交付税交付金のほかに、国の一般会計が肩がわりして負担することとして、毎年度の予算でこれを手当てをしてきたわけでございます。しかしながら、交付税特会の借入金は、地方団体に交付する地方交付税の総額を確保するためのものでありますので、実質的に地方の借入金である、こういうことも言える、そして、利子の額も七千億円を超える巨額なものとなりまして、現下のきわめて厳しい国の財政状況においては、このような形で国が地方に財源を付与する余裕は残念ながらない、こういう考え方から、借入金の元金償還の国、地方の負担割合に応じて地方においても負担をお願いする、このようなことにいたしたわけでございます。  ただ、借入金等利子の地方負担を行うこととしておりますが、それによって生じる財源不足、これにつきましては、この財源不足対策によって完全に補てんをしておるところでございます。したがって、五十八年度の地方財政の運営に支障が生ずることはない、このように考えております。  そうして、御意見を交えての御質問の中で、現下の情勢にかんがみまして、地方においては、まず私どもといたしましては、歳出の徹底した節減合理化等、行政の減量化を推進することが肝要であろう、税源の充実につきましては、地域間の経済力の格差が大きくて、したがって税源の偏在が著しいし、税収に偏りが生ずる、こういった問題がございますので、財源調整制度の活用を図ることが重要であると考えております。  国と地方の財源配分の問題につきましては、単に地方税だけではなく、地方交付税、地方譲与税制度、国庫支出金のあり方、さらには国と地方の行政事務配分のあり方等、総合的な勘案の上で慎重に検討していくべきものである、かように考えております。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣山中貞則君登壇
  13. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 深刻な構造不況に悩む基礎素材産業対策でありますが、いま、ほうっておくわけにはいきませんので、立法中でございます。  その基礎的な考え方は、政府の法律に甘えて、そして自己努力を怠るような企業というものは厳しく峻別する、しかも、国家的な見地からそれを拾っていくということでやっておりますが、確かに独禁法との問題では、共同行為等の場合のカルテルあるいは合併の際のシェアというのは法律には書いてないのですが、公取委に内規みたいなものが、二五%というのがありまして、そういうことでは企業の設備廃棄、統合ということで対処できないというような問題等があります。しかし、これらはやはり国民的に見て必要な産業、先ほどおっしゃいました、場合によっては失業者等の問題も生じかねないし、その対処も考えてやらなければならぬということでありますから、公取委といま十分話し合いをしながら、表には出ませんが、何とかの水かきをやっている最中でございます。  それからいわゆる企業城下町法と言われている方の法律の方でございますが、こちらの方は、文字どおり地方城下町なんだから、大幅に都道府県知事等に権限を移したらどうかという御意見でございます。  私ども、確かにそういう点もあるかと思いますので、いま法律改正中の中身の一部に、都道府県知事の承認に係らせるもの、こういうものをやはり置いた方がよかろう。しかし、全般的には、その法律を改正することによって、国の与えている税制、金融、財政上の優遇措置も、全国一律に眺めてみて、その展望の上に立ちませんと、地方税などは、勝手に地域でやられると交付税等で配慮する際に大変困るわけでありますから、そこらを調整中であります。  陳情や請願等で来られる関係の市長さんたちの話を聞きますと、特定不況地域という「不況」という字が、どうも最初はそのとおりだと思ったのだけれども、このごろは、あそこは不況だからということで少し身構える感じがあって、一般的にどうも商店街等困るので、「不況」という言葉を取ってくれぬかという話がありますから、これは名前だけの、言葉だけの話ですけれども、法律の名前等に「不況」というのを入れるか入れないか、そういうことを考えながらやっております。いずれ近く御提出して、御審議を仰ぐということになります。(拍手)     〔国務大臣山本幸雄君登壇
  14. 山本幸雄

    国務大臣(山本幸雄君) 地方財政について二点ばかりお尋ねをいただきましたが、ただいま大蔵大臣からもお答えがございましたが、まず、交付税特別会計借入金の利子のことでございます。  これはお説のとおり、従来国の一般会計からの繰り入れによる予算上の措置をしてきたところでございます。ただ、昭和五十八年におきましては、国の財政全般の厳しい状況にかんがみまして、地方財政としましても、交付税特会においてその一部を負担するということにいたしたものでございます。  しかしながら、五十八年度の地方財政につきましては、ただいまの利子負担分も含めまして、地方財政対策といたしまして、財源不足額全体を補てんすることといたしまして、地方財政の円滑な運営には支障を生じないという措置をいたしたところでございます。今後とも、地方財政の健全化については努力をしてまいりたいと存じます。  次に、税源の再配分ということでございます。  国と地方との間の税源の再配分といった根本的な地方財政対策につきましては、今後真剣にかつ根本的に検討すべき課題であるとは存じております。具体的には、国と地方を通ずる事務の配分、さらに、これに伴う財源対策といたしましての税源の調整の問題等、地方行財政制度全般のあり方とも関係をする大きな問題であります。したがって、税制調査会あるいは地方制度調査会等の御審議もいただきながら、われわれといたしましては今後十分に検討をしてまいりたい所存でございます。  以上でございます。(拍手)      ────◇─────
  15. 保利耕輔

    ○保利耕輔君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されんことを望みます。
  16. 岡田春夫

    ○副議長(岡田春夫君) 保利耕輔君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 岡田春夫

    ○副議長(岡田春夫君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時十四分散会