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1983-04-12 第98回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)     午前十時十一分開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 熊川 次男君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       大西 正男君    高村 正彦君       高鳥  修君    山崎武三郎君       石橋 政嗣君    栂野 泰二君       安藤  巖君    林  百郎君       田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君  出席政府委員         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君  委員外出席者         法務省民事局参         事官      濱崎 恭生君         建設省計画局建         設業課長    藤原 良一君         建設省計画局不         動産業課長   斉藤  衛君         建設省住宅局民         間住宅課長   鹿島 尚武君         建設省住宅局建         築指導課長   片山 正夫君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ───────────── 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     伊藤宗一郎君   亀井 静香君     木野 晴夫君   木村武千代君     中尾 栄一君   高村 正彦君     佐々木義武君   白川 勝彦君     小山 長規君   森   清君     石田 博英君   山崎武三郎君     三池  信君   栂野 泰二君     前川  旦君 同日  辞任         補欠選任   伊藤宗一郎君     今枝 敬雄君   石田 博英君     森   清君   木野 晴夫君     亀井 静香君   佐々木義武君     高村 正彦君   中尾 栄一君     木村武千代君   三池  信君     山崎武三郎君   前川  旦君     栂野 泰二君     ───────────── 四月六日  建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出第四四号) 三月二十九日  刑事施設法案の廃案に関する請願渡辺貢紹介)(第一八二〇号)  国籍法の一部改正に関する請願寺前巖紹介)(第一八六九号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一八九四号)  同(土井たか子紹介)(第一八九五号) 四月六日  国籍法の一部改正に関する請願土井たか子紹介)(第二〇三八号)  同(土井たか子紹介)(第二一〇〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  刑事施設法案等反対に関する陳情書外一件(第一〇七号)  スパイ防止法制定に関する陳情書(第一〇八号)  外国人登録法改正に関する陳情書(第一〇九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案内閣提出第四四号)      ────◇─────
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  内閣提出建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、趣旨説明を聴取いたします。秦野法務大臣。     ─────────────  建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 秦野章

    秦野国務大臣 建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、最近における区分所有建物に関する管理及び登記等実情にかんがみ、区分所有建物に関する管理充実及び登記合理化等を図るため、建物区分所有等に関する法律及び不動産登記法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  まず、建物区分所有等に関する法律につきましては、第一に、区分所有建物とその敷地の一体的な管理を図り、かつ、区分所有建物に関する登記合理化を図るため、専有部分敷地利用権とは、原則として分離して処分することができないこととしております。  第二に、区分所有建物に関する管理を適正化するため、共用部分変更及び規約設定変更または廃止は、現行法原則として全員合意によることとされているのを改め、集会の特別多数決議、すなわち区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議によってすることとしております。  第三に、区分所有建物に関する管理充実を図るため、区分所有者は、全員で、区分所有建物等管理を行うための団体構成することを明らかにするとともに、区分所有者の数が三十人以上であるときは、その団体は、右と同じ特別多数による集会決議に基づき、法人となることができることとしております。  第四に、区分所有者共同生活維持を図るため、区分所有者共同利益に反する行為をした場合には、右と同じ特別多数による集会決議に基づく訴えをもって、その者の専有部分使用禁止、またはその区分所有権競売請求することができることとしております。  第五に、老朽化等により区分所有建物建てかえを相当とするに至った場合における区分所有者間の利害の合理的な調整を図るため、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数による集会決議に基づき建てかえを実現することができることとするための措置を講ずることとしております。  次に、不動産登記法につきましては、専有部分敷地利用権とを分離して処分することができない場合には、専有部分登記用紙敷地利用権の表示を登記することとした上で、専有部分及び敷地利用権についてされた処分に関する登記は、この登記用紙のみにすれば足りるものとすることとしております。  以上がこの法律案趣旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。
  4. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  5. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高村正彦君。
  6. 高村正彦

    高村委員 今回の区分所有法改正のため法制審議会では昭和五十四年から審議をしてきたと聞いているわけでございますが、この改正審議を始めるについては、建物区分所有をめぐる法律関係についてどういう社会的背景があったのか、また、どのような経過を経てこの法律案国会に提出するに至ったのか、御説明をいただきたいと思います。
  7. 中島一郎

    中島政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、現行区分所有法昭和三十七年に制定をされまして三十八年四月一日から施行されているわけでありますが、その後、いわゆる中高層分譲マンションというのは特に都会地におきまして飛躍的にその数が増加をいたしまして、その普及に伴いまして区分所有建物に関する管理及び登記等に関していろいろの問題が生じてきたわけでございます。  まず管理に関しましては、現行法のもとでは建物共用部分変更を加えたり、規約をつくりあるいは変更するためには区分所有者全員合意が必要であるということになっておりますために、一人でも反対があれば建物の大修繕をしたり管理のために適正な規約を定めたりすることができないなど、共同管理の仕組みが実情に合わないという問題がございます。さらには、時代の推移に伴いまして、共同生活の規律に従わない者に対する措置でありますとか、あるいは建物が老朽化した場合の処理につきましても検討しなければならないという実情が生じてきたわけであります。  次に、マンション敷地登記に関してでありますけれども一つ登記用紙に多数の区分所有者権利に関する登記複雑に記載されますために、その敷地登記簿が非常に膨大となり、複雑となり、一覧性を欠くということになりまして、登記簿を見てもその権利関係理解が非常に困難であると同時に、登記所事務処理も大変なロスがあるという問題を生じてきたわけであります。  このような実情にかんがみまして、法制審議会では昭和五十四年から区分所有法改正のための審議に着手いたしまして、約四年間にわたって関係各界の意見をも聴取しつつ慎重な検討を行いました結果、本年二月十六日に改正要綱取りまとめ法務大臣あてに御答申があったわけであります。  法務省といたしましては、この答申を受けまして直ちに法案の作成の作業を進めまして、区分所有法改正法律案不動産登記法改正法律案というふうに取りまとめまして、このたびこれを国会に提出した次第でございます。
  8. 高村正彦

    高村委員 現在でも一般マンションでは任意に管理組合なるものを設立して、これによって区分所有者によるマンション自主的管理が行われているようでありますが、この管理組合と第三条に言う団体との関係はどうなるでしょうか。  また、もう一つ伺いますが、管理組合法人格を与えると、その理事者法人格を悪用して一般第三者に迷惑を及ぼしたり、あるいはその地位を利用して構成員である区分所有者に迷惑を及ぼすといったような事態の発生が懸念されるのでありますが、そのような心配はないのかどうか、その二点についてお答えいただきたいと思います。
  9. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有者は当然に一つ団体構成いたしまして区分所有法に従って建物とその敷地共同管理していくものでありますから、第三条におきましては、その趣旨国民一般の皆さんに理解しやすいようにするために確認的に宣言をしたものであります。現在でも、ただいま御質問にありましたように、ほとんどの区分所有建物におきまして任意に管理組合結成をするという形をとっておるわけでありますけれども、この管理組合結成という行為は、ただいま申しましたような考え方から申しますと、法律上当然のことを区分所有者間で確認し合うものであるというふうに考えられるわけであります。区分所有者全員構成をして区分建物とその敷地管理を行う団体が第三条に言うところの団体であるということになるわけであります。そういたしますと、現在のいわゆる管理組合はこれらの要件を満たしておると申しましょうか、当てはまるわけでありますから、第三条の団体にほかならないということになるわけであります。  それからもう一点、管理組合法人格を与えた場合の問題でありますけれども管理組合法人という制度は、対外的な関係管理組合法律上の人格を付与するというものであります。共同管理の内部的な運営のあり方につきましては、法人になった場合とならない場合とでは変わりがないわけであります。したがって、管理者または理事者不適任者を選任した場合に区分所有者がこうむるかもしれないという不利益は、法人になった場合でもならない場合でも等しくあり得ることでありまして、法人になることによって初めて生ずるという問題ではないわけであります。このような問題は、共同管理のために一定事務執行者を選任する場合に必然的に生じてくるわけでありまして、区分所有者が自分の選任した理事者事務執行を監視するということによって阻止すべきものであろうというふうに考えております。管理者または理事者解任権でありますとか、あるいは事務報告義務でありますとか、法人になった場合の監事の制度というようなものをこの法律でも用意しておりますので、こういった制度によって理事者業務執行を監視していただくということになろうかと思います。  それからもう一点、理事一般第三者に迷惑を及ぼすおそれはないかという点でございますけれども、これが公益法人などでありますと、実体のない法人をつくりまして甘言を弄して第三者を信用させる、そして損害を与えるというような事例も聞かないわけではないわけでありますけれども管理組合法人の場合には実体があるわけであります。区分所有者が三十名以上の団体という実体があるわけでありますし、しかもこの管理組合法人の目的というものは決まっておるわけでありますから、それに関係のない営利活動をすることもないわけであります。これによって第三者が不測の損害をこうむるということも考えにくいのではなかろうかというふうに考えております。
  10. 高村正彦

    高村委員 区分所有者または専有部分賃借人等占有者共同利益に反する行為をした場合、またはその行為をするおそれがある場合について第五十七条から六十条までにおいて種々の措置をとることができるとしているわけでありますが、そのような行為に対して、その行為を差しとめるための手段充実すれば、専有部分使用禁止したり区分所有権競売してその所有権を失わせてしまうというような手荒な制度を設けるまでの必要性もないのではないかということも考えられるわけですが、その点はどういうふうにお考えになったわけでしょうか。
  11. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有者あるいは占有者共同利益に反する行為をいたしましたとき、あるいはそのおそれがある場合には、五十七条の規定によりましてその行為停止または予防のための請求をすることができるということになっております。これは新しく設けた規定でありますけれども、従前も、規定はないにいたしましても、民事法一般原則によってこういう差しとめの請求はできるというふうに解釈されておったわけでありますけれども、それだけでは区分所有というきわめて密着した関係にある共同生活の破壊を防止するためには十分でないわけであります。たとえば区分所有権または区分所有者身体そのものに重大な影響を及ぼすような違反行為のおそれがあるような場合でありますとか、あるいは停止などの裁判を受けてもそれを守らないような場合でありますとか、あるいは停止等裁判実効性が乏しいと考えられるような場合があるからであります。このような事由によりまして共同生活維持が危殆に瀕しているというような場合には、その共同生活維持のための最後の手段といたしまして、当該違反行為者区分所有関係から一時的にあるいは永久的に排除する必要があると考えます。  そこで、違反行為等による共同生活上の障害が著しく、その行為停止等請求をもってしては共同生活維持を図ることができないことを要件といたしまして、集会の四分の三以上の特別多数決議に基づく訴えをもって、専有部分一定期間使用禁止または区分所有権競売裁判を求めることができるということにしたわけであります。  このように厳重な要件と手続を要求いたしておりますので、現実にこの権利が発動されるという事例はそう多くはないのではないかというふうに考えておりますけれども違反行為に対しては最終的にはこのような強力な措置をとり得るということを明らかにすることによりまして円満な区分所有関係維持に役立つところが大きいのではないかというふうに考えております。
  12. 高村正彦

    高村委員 多数決による建てかえという制度を認めるわけでありますが、これを認めると、反射的に少数者利益を犠牲にしてよいかどうかということが当然に問題となるわけでございますが、この点については法務省としてはどのように考えているわけでしょうか。また、この点について法律案において何か配慮をなされておるかどうか御質問したいと思います。
  13. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有建物の各専有部分は物理的に一体不可分であるにもかかわらず、それぞれ独立の所有権の対象とされておるわけであります。このために、建物が老朽化いたしまして、大多数の区分所有者がこれを建てかえたい、そして敷地権利合理的に利用したいというふうに希望いたしておりましても、現行法のもとにおきましては、一人でもこのままでよいと主張する者がおりますと、建物が物理的に朽ち果てるまで現状のまま維持せざるを得ないわけであります。区分所有者の数がある程度以上になりますと、全員合意に達するということは、これは事実上不可能に近いわけであります。そうなりますと、いわゆるマンションにつきましては物理的に朽ち果てるまで待たなければならないということになるわけであります。  このような制度のもとにおきましては、現状維持を主張する者の区分所有権の絶対性は保証されるわけでありますけれども土地利用価値を実現したいと希望しておる者の権利は著しく制約を受けるということになるわけであります。一体不可分建物の各部分に対する区分所有権という制度を認めた以上は、その区分所有関係の継続が著しく不合理になった場合には、何らかの形でその関係を整理するための措置を講ずることが不可欠であろうと考えるわけであります。  そこで、老朽化等によりまして建物が全体としてみて社会的、経済的に効用を失ったと言えるような場合に限定をいたしまして、区分所有者及び議決権の各五分の四以上というきわめて厳格な特別多数決議をもってこの建てかえの決議をすることができるということにしたわけであります。もっともこの場合には、ただいま御質問にもありましたように反対少数者権利と申しましょうか利益を十分に配慮しなければならないわけであります。  そこで、まず建てかえの決議をすることのできる要件というものをきわめて厳格なものにしたわけであります。また、建てかえ不参加者に対しましては、建てかえ参加者時価をもって区分所有権を買い取ることといたしておりますが、この場合の時価は、建てかえによって更地価格が回復されることを前提にしたものでありますから、経済的に申しますと不参加者にとってもむしろ利益にこそなれ不利益はないはずであります。また、売り渡し請求権が行使されると、時価による代金支払いと引きかえに不参加者建物を明け渡さなければならないのが民法の原則でありますけれども、直ちにかわりの住居を見つけることができない者のために裁判所がその明け渡しにつきまして一定猶予期間を与えることができるという法律上の手当てもいたしまして、まず代金支払いを受けてその間に代替の住居を見つけることができるような余裕を与えるということも考慮したわけでございます。
  14. 高村正彦

    高村委員 マンション建てかえの問題は、あと十年後、二十年後には大都市においてきわめて重大な社会問題となる可能性があるわけでありますが、そのような事態に対応すべき措置としてこの区分所有法改正だけで足りると考えておられるのかどうか。  建設省お尋ねしたいわけでございますが、大都市における住宅問題としてはマンション維持修繕費用調達円滑化のための金融、税制上の措置等これから取り組むべき問題が他にもあるのではないかと思うわけでございますが、その点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  15. 鹿島尚武

    鹿島説明員 ただいま先生から二つお尋ねをちょうだいしたと理解をいたしておりますが、まず一つ建てかえの問題でございます。  いわゆるマンションと申しますのは、昭和四十年代後半から大都市圏を中心にいたしまして飛躍的にその建設が図られてまいったわけでございまして、現在では百十万戸を超えるという推計もございます。当然のことながらこのマンションと申しますのは将来建てかえを必要としてくると考えられるわけでございます。  そこで、将来このようなマンション建てかえの必要性に対処するために、今回の区分所有法改正案におきましては建てかえについての制度の整備がなされることになっておるわけでございますけれども、私どもこの建てかえにつきましては、住宅政策推進の立場からも重要な課題であると理解をいたしておるわけでございます。そこで、このたびの区分所有法改正とあわせまして、たとえば建てかえに要する資金の調達方策をどのように進めていったらいいだろうかというようなこと、あるいはまた建てかえに当たりましていろいろ技術援助等の要請もあろうかと思います。そういうものにどのように対応していったらいいだろうかというようなこと、あるいはまた法的な規制等も各種ございますので、その辺のところを勘案いたしましてどのように建てかえ策を進めたらいいかということ等々につきまして今後とも十分に検討させていただきたいと考えておるわけでございます。  二つ目は、維持修繕費調達に関連いたしましてのお尋ねでございました。マンションの居住というのが今日では都市におきます一つの様式として定着してまいっておるわけでございます。そういたしますと、マンション維持修繕というものを含めましてマンション管理の問題というのは非常に重要な問題であると考えておるわけでございます。そこで、私どもといたしましては、このたびの区分所有法改正とあわせましてマンション維持修繕等管理が円滑に行われますように、たとえば修繕積立金等として適正な額を積み立てるように標準管理規約普及等を通じまして現在指導を行っておりますが、こういうものをさらに進めていくということ、あるいはまた修繕積立金が不足している場合におきましては、昭和五十六年度からスタートいたしておりますけれども、住宅金融公庫の住宅改良融資制度を活用していただくというようなことで進めるとか、いろいろな措置を今後とも検討し、講じさせていただきたいというふうに考えておるわけでございます。
  16. 高村正彦

    高村委員 先ほどマンション関係登記簿膨大複雑なものとなっているため登記事務処理がきわめて困難になっているという説明があったわけですが、そのような状況を改善するために今回どのような措置を講ずることになっているのか、その要点説明していただきたいと思います。
  17. 中島一郎

    中島政府委員 区分建物登記に関しまして問題になりますのは、その敷地登記簿が、先ほど申しましたように膨大となり、複雑となり、一覧性を欠くということになっておるわけであります。どうしてそういうことが起こったかと申しますと、敷地登記簿土地一筆ごとに一登記用紙を備えることになっておりますので、その中にそれぞれの持ち分が連綿として記載されることになるわけであります。登記簿のそういった弊害を解消いたしますために、簡明にし、その公示機能を回復させなければならないわけでありますが、今回の改正案におきましては、専有部分土地利用権一体性原則というものを採用することにいたしております。  一体性原則と申しますのは、専有部分とその敷地利用権とは原則としてこれを分離して処分することができないこととするものであります。そして、実体法上この原則によりまして専有部分敷地利用権とが一体的にしか処分することができない場合には、それらの処分登記土地建物登記簿の両方にする必要はないことにいたしまして、建物登記簿のみに登記をすれば足りるということにしたわけであります。そのために、専有部分と分離して処分することができない敷地利用権がある場合には、これを専有部分表題部に書き込むことにしております。そして、その後に専有部分登記用紙所有権の移転あるいは抵当権設定等登記をいたしますと、その登記には敷地権についても同一内容の登記をしたと同じ効力を有するものということにしたわけであります。  でありますから、専有部分登記簿を見れば土地権利についての権利関係もわかる、そして専有部分登記簿専有部分ごとに一登記用紙を備えることになっておりますから、整然と整理されておる、こういうことになるわけであります。そのために、先ほど申しました敷地登記簿膨大となり、複雑となり、一覧性を欠くというような現在起こっておりますいろいろな弊害は解消することができると考えております。
  18. 高村正彦

    高村委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  19. 綿貫民輔

    綿貫委員長 横山利秋君。
  20. 横山利秋

    ○横山委員 マンションについて質問いたします前に、緊急の問題について御報告を求めます。  津の三重刑務所におきまして、受刑者のうち三人が急死をし、そして二百人近い人が集団かぜという状況が出ました。まことに驚くべきものでございます。三月九日午後七時に三十九歳の人が苦しみ出して、駆けつけたときには心音が停止しておった。翌三月十日に二十八歳の人がやはり変死をした。朝になって刑務官が見つけた。こういうことは不可思議な話で、しかも同じところで二百人が相次いで集団かぜに似た現象を起こす。事件が刑務所の中であるだけに異様に感ずるわけでありますが、どういう状況でございましたか、御報告を求めます。
  21. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘がございましたように、三重刑務所におきまして、三月九日と十日、それから二十四日に急死者が出ましたことと、三月二十日ごろから感冒様の症状を呈する患者が多数発生いたしましたことは事実でございます。私どもも、これは大変異常と申しますか異様な事態でございますので、その原因解明及び患者の診察、治療ということに全力を傾けているところでございます。  多少細かく申し上げますと、まず急死者でございますが、最初は三月九日の午後七時ごろ、雑居房といいまして数名の収容者が一緒に入っておるところでございますが、ここにおりましたある収容者、受刑者が突然苦しみ出しまして、吐き気を催し嘔吐を繰り返すという状況になりましたので、同房者の通報によって医務課職員が駆けつけて人工呼吸、心臓のマッサージ等をいたしますとともに医師の来診を求めたわけでございますが、医師が到着して診察いたした段階ではすでに死亡という状況でございました。  それから第二の例の急死者の場合には、三月十日の朝、起床するときに起きませんため、同房の者が揺り起こそうとしたのですが、返事がなく、そのため異常に思いまして職員に通報したのでございます。現場に急行した職員が観察いたしましたところ、すでに顔や手が青白く、身体が硬直し、脈拍がないという状態であったわけです。急報によって登庁した医務課長が診察いたしましたが、睡眠中午前二時ないし三時ごろ死亡したというような推定でございます。  それから、第三の例は三月二十四日に起こったわけでございますが、この収容者は独居室に寝ていたわけでございますが、起床時に本人が起きてまいりませんので、職員が不審に思って調べましたところ、すでに身体が硬直し、脈拍がない、こういう状態であったわけで、直ちに登庁した医務課長がその死亡を確認したわけでございます。  これらの例につきましては、第一の例、これはそのときまで大変元気にしておった収容者でございますので、一体どういう死因であるのか、どういう原因で死んだのかということに大変不審を抱きまして、刑務所内部だけでこの死亡の確認をするというだけでは困りますので、検察庁に連絡をいたしまして司法解剖することにして、三重大学の法医学教室の教授に解剖をお願いしたわけでございます。死因は急性心不全という診断がなされたわけでございます。それから、第二、第三の例につきましてもやはり司法解剖が実施されたわけでございますが、いずれも急性心不全という診断がなされておるわけでございます。  他方、感冒様の症状のある患者が集団で発生したという点でございますが、三月二十日ごろから関節痛、胸や手足の筋肉痛、頭痛、目まい、吐き気、発熱等を訴える患者が散発的に出始めたわけでございますが、二十二日ごろになりますと、そういう症状を訴える患者が相当多数発生いたしました。こういう異常な状況でございますので、集団で発生しておるということから何らかビールス性の感染症ではないかという疑いを持ちまして、直ちにそういう症状を訴える愚者を休養させますとともに、全収容者に対して入浴あるいは運動等を停止し、就寝時間を繰り上げるという措置を講じ、さらに二十五日からは炊事夫等を除きまして刑務作業を全面的に停止するという措置をとったわけでございます。  こういう異常な事態でございましたので、三重刑務所におきましては、刑務所の医療スタッフだけでは十分でないと判断いたしまして、三重大学医学部に原因の調査及び診療を依頼することにいたしまして、三月二十四日から同大学の医師数名に来ていただきまして、また名古屋等近隣の施設の医師、医官にも応援を求めまして、患者の診察、検査のための採血、心電図等の諸検査を実施いたしまして、三月二十五日には全収容者について健康診断を行ったわけでございますが、その後も三重大学及び他の施設の医師の協力を得ながら診察及び検査を続行しておるわけでございます。  こういう診察等によりまして、休養を必要とする患者——休養を必要とするというのは、いわゆる病室に収容しておく程度の必要があるという患者でございますが、その数が三月二十二日の段階では五十九人であったわけでございますが、三月末には二百五十八人にまでふえたわけでございます。その後減少いたしておりまして、四月九日以後五十二名程度について休養扱いをいたしておるわけでございます。休養になっておる者の症状を見ましても、一時よりは軽快しておる者が大部分でございますので、人数の点からいいましても、また症状の点からいいましても、現在は終息の方向にあると考えております。  なお、刑務作業につきましては、三月三十一日から一部の者について再開いたしましたが、今週の初め、四月十日からは大部分の収容者について作業を再開したという実情でございます。  この感冒様症状が一体何に原因するかということ、それから二十四日に急死した収容者の死亡原因とこの感冒様症状との関係等につきましては、現在三重大学の医学部にその究明方を依頼しておるところでありまして、現在までいろいろお医者さん等のおっしゃるところがら見ますと、コクサッキーB型ウイルスというビールスの疑いがあるわけでございますが、まだ現段階では科学的にこうであるという結論は出ていない状況でございます。
  22. 横山利秋

    ○横山委員 状況はよくわかりましたが、何としても、急性心不全、それはよくあることではありますけれども、短時間の間に三人もそれで死ぬ、一方では二百数十名にわたるかぜが出るということはいかにも異様に感ずる。刑務所ではてんやわんやの大騒ぎがあったと思うし、いまお話を聞けば、いろいろな手当てはなさっておられると思うんだけれども、情報によりますと、三月九日の三十九歳の人が七時に苦しみ出して、そして医者が来るまで二時間ぐらいかかっておる、こういうわけですね。  刑務所におけるお医者様というのは、私ども何回も見ているのですけれども、日中はいるのですけれども、夜は帰るのでしょう。話を聞けば、医務課長が不在だったというお話ですが、刑務所における緊急救急医療体制というものがちょっと不十分な点があるのではないかという感じを持ちますが、いかがですか。
  23. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 一般的に申しまして、刑務所の医療体制につきましては、私ども、これは収容者にとって一番大事なことでございますので、その充実ということに努めておるわけでございますが、実際問題として、お医者さんの確保あるいはお医者さんとお医者さんを助けるパラメディカルスタッフと申しますが、看護婦、看護士等の不足、いろいろ問題はあるわけでございますが、この三重刑務所におきましては、お医者さん一名、それから准看護士、これは准看護婦(士)の資格を取った職員でございますが、この准看護士が三名配置されておりまして、診察等の業務に当たっておるわけでございます。  夜間、休日につきましては、診療の必要が生じ次第、との医師が直ちに登庁できる体制をとっておるわけでございますが、とにかく一人でございますので常にということにはまいりませんので、そういう場合には近隣の医師、近隣の外部のお医者さんに来てもらって診察に当たるということにいたしておるわけでございますし、それからまた、患者が発生しておるような場合につきましては、そういう緊急の医療体制をさらに確実なものにするという措置をとっておるわけでございます。そういう意味で、この救急医療体制には万全を期していたところでございます。  ただいま御指摘の三月九日に急死した患者の場合でございますが、これは七時ごろに苦しみ出したわけでございまして、医務課長がたまたま不在でございましたので、近くのお医者さんに来ていただいたわけでございますが、お医者さんは八時十分、すなわち一時同ちょっとたってから来たわけでございますが、すでに手おくれであった、こういうことでございます。
  24. 横山利秋

    ○横山委員 とにかく閉鎖社会でありますし、考えましても、外と接触するについては、普通の家庭において苦しみ出したら、何はともあれ間髪を入れずにお医者さんということになるのであるけれども、一応刑務所内で処置しようという意識が恐らく働くものだと思うのであります。しかし、刑務所で病気で死なせるということについては、やはり刑務所としての看護責任というものがきわめて強いのでございますから、その点については、今後緊急救急医療については遺憾のないようにとにかくしてもらいたいと希望します。  次に、この間嫌がらせで裁判を受ける権利を侵害された事件ですが、子供の水死事故をめぐり、子供を預かった隣家の夫妻が監督義務を怠ったとして五百二十六万円の損害賠償を命ぜられた三重県鈴鹿市の隣人訴訟、結局てんやわんやの大騒ぎで、嫌がらせの電話や手紙に耐えかねて双方とも取り下げてしまった。これについて法務省が見解を出しました。まことにタイムリーな見解で、もっと早くそういうことはなさるべきであった。人権擁護局なり法務大臣が、この種の問題について、頼まれなければやらないんでなくして、社会の状況をにらんでおって、積極的にこの種の問題については人権擁護の立場から、あるいはまた裁判を受ける権利というものが阻害されるということであるから、速やかにこの種の問題については発言をしろ、みずから積極的に前へ出ろ、こう私はかねがね言っておったわけでありますから、この意味においては、遅きに失するけれども法務省の見解が出て、裁判を受ける権利をお互いに尊重しようじゃないかという点を提起されて社会に訴えられたということは大変私は結構なことだと思うのです。  新聞に「異例の見解」というタイトルがついている。何が異例だ、あたりまえのことじゃないかと思うわけでありますが、この見解を出された法務大臣、御意見を一遍伺いたいと思います。
  25. 秦野章

    秦野国務大臣 当然のことなんで、確かに異例でないと言えば異例でない、ああいうことがあれば人権の立場からは当然意見表明があってしかるべきだということになろうかと思いますが、ちょっと時間的におくれた理由は、私も多少いらいらしたのだけれども、当事者が何か口がかたくなってしまって、どんな手紙が来たんだと言ってもなかなか見せてくれないとか、何というかな、ああいう雰囲気の中で、そういうことがあって現場で調査に非常に苦労したというようなこともあったようでございます。  今後とも機会あるごとに、そういう点はなるべくスピーディーに対応していかなければならぬ、こう考えております。
  26. 横山利秋

    ○横山委員 きょうは裁判所は御出席を願っておらぬのでありますが、人権擁護局長にお伺いをいたしますが、この種の問題については、和解の方法というものは、お互いに、隣の子供を預かった、見ておったけれども過失で死んじゃった、双方善意と善意から始まったものでありますだけに、金銭の問題、まあ必ずしも金銭の問題ばかりではないと思うのですが、私の推察するところ、恐らく双方とも感情的になり過ぎた、真ん中に立った人がいろいろと説得をして情義を尽くした方法があればこの種のような問題はなかったのではないかと思うのでありますが、この問題を扱って人権擁護局としてはどんな感想でございますか。
  27. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 お答えいたします。  一審裁判所でも和解を試みようとしたことがあったけれどもうまくいかなかったと聞いておりますが、この種事案はいろいろ事情がありまして一概には言えませんが、やはり和解で片をつけるというのが好ましいことだと考えておるわけでございます。権利を害されたという者が訴訟を起こそうかどうかというようなことを弁護士のところに相談に参りましたら、弁護士も事案を見て和解が適当だと思いましたらやはり和解を勧めます。あるいは仲介の労をとるということもあるわけでございます。あるいは訴えを提起しない玄でも、裁判所の調停に持ち込む。仮に訴えを起こしましても、裁判所は事案を見て和解をすべきものだと思うものは和解を勧めるわけでございます。判決をするにいたしましても、特殊事情というものは配慮することと思われます。  さらに、判決があっても、控訴審に参りますと裁判所もかわる。一応一審の判断も出るということで、当事者が改めてこれからのあり方ということも考える機会が出てくる。それから、控訴審では日時もたって当事者の感情の方も鎮静化してくるということになりますと、和解の可能性も多い。こういうことでございまして、やはり本件につきまして残念なのは、訴えを取り下げさせたという点でございます。もし控訴審で事件が扱われましたら、いま申しましたような和解というような方法もあったにと思うわけでございます。
  28. 横山利秋

    ○横山委員 ですから、お話しのようになかなか言うてくれないという点があったとは想像はいたします。想像はいたしますが、もう新聞でどんどん取り上げておることなんだから、問題提起がなくても、人権擁護部に言ってこなくても、この種の問題が潜在する重要な問題なんだから、訴えがなくても人権擁護部が前へ出て問題の処理に当たるということをこの際十分考えておいていただきたいと思います。  さて、本論に入りますが、この法律案をずっと熟読玩味いたしました。法務省から問題が提起された積極的な要因は、登記複雑ということなんであります。けれども法案をずっと見てみますと、登記の問題よりもマンショントラブルということの方に力点が置かれておる。登記を簡素化するということがこの法案の骨格の一つでありながら、陰に隠れてしまっておるという感じがしてならないのであります。一体これは法務委員会で議論することなのか、建設委員会でやるのが本当じゃないかという感じすらするわけであります。一体法務省は、登記から始まったことではあろうけれども、この種の具体的な紛争事例をどの程度把握しておるのか、たくさんの紛争事例を現地に当たって調査して、そして、こういうことだからというて具体的に対処する意味において法案をつくったのかどうか、その点はどうなんですか。
  29. 中島一郎

    中島政府委員 登記の問題がさしあたり表面に出てくる、形としてあらわれる可能性がありますので、これがまず頭にあったというようなこともあります。あるいは法務省所管の、法務局の直接所管する登記の問題でありますから、そこから出発したという説明をしたような時期もあったかもしれませんけれども、決してそうではございませんで、一方において登記の問題があり、一方において管理の問題があった、そこでこの区分所有法改正が日程に上ってきた、こういうふうに御理解を賜りたいわけであります。  たとえば管理につきましては、建てかえで困っているケースが幾つか出てまいりました。大多数の人は老朽化等によってマンション建てかえたいと思っておるにもかかわらず、少数の人が現状のままでいいと言いますために、全員一致が得られなくて建てかえができないというようなケースが出てまいりました。それにつきましては、法制審議会審議を始めるに先立ちまして、建てかえに関するヒヤリングを行いまして、デベロッパーから聞いたり居住者から聞いたりということで、幾つかの事例を明らかにいたしております。  それから、義務違反で困っているケースというようなものも、その実態の把握に努めたわけであります。  さらには、そもそも全員一致が得られないために規約がつくれないというような例も聞いておるわけでありまして、そういった点について、分譲業者、管理業者、それから区分所有者等からヒヤリング等を通じて実情の把握に十分に努めたわけであります。それで、極端な例では、管理費の額を規約で決めてしまいましたために、全員一致が得られなくて値上げもできないというような例もあるということから、そういった点についても十分にいろいろなケースを聞いて実態の把握に努めたわけであります。これでは余りに硬直であって適正な管理ができないので何とかしてもらいたいというような声がありまして、そういう声にこたえるという面をも考えて今回の改正考えたという次第でございます。
  30. 横山利秋

    ○横山委員 私が考えますのに、マンションがブームになってきたのはまだ最近だと思うのです。これからが問題が発生する時期であって、いままだ予測の段階だと思うのですよ。戦後、マンションがどんどんできたというのはまだ最近ですからね。これが壊れかけた、修理をしなければならぬ、建てかえ準備金をつくらなければならぬということは、まだ五年先、十年先のことだと思うのです。予想するのに、なるほどそういう問題があるということは確かに認めますけれどもね。だから、私はこの法案というものは法務省登記問題から始まって、そういえばこれから五年先、十年先に大変な問題になるぞ、これはいまのうちにつくっておこうということだと思うのです。  だから、現実的にいま緊急の必要性が必ずしもあるわけではないと私は思うのです。しかし、それでもやはり将来のためにつくっていくという必要性については認めないわけではない。ただ、そういうことから言うと、実際問題として、想像とか予定される問題について対処する法案で、現実的課題から出た法案ではないというところにポイント、問題があると思います。  まず第一に、この法案は非常にむずかしい。一生懸命読んだけれども、ああいう場合はどうなるか、こういう場合はどうなるかということを予想して大変解釈に困ることがずいぶんあるわけです、予想ですからね。これが施行されたときに、マンションで、さあ管理組合をつくらなければならぬ、これは一体どういうことだろう、だれに相談したらいいだろうか。それは弁護士さんに一遍……。そんな金のかかることはよした方がいい。法務局へ行っても、法務局はだれに聞いたらいい。登記の人に、第五十七条「共同利益に反する行為停止等請求」とはどういうことですか。わしは知らぬ、それはわしの所管ではないので知らぬ。それでは建設省、地方建設局へ行って聞いてみようか、そんなものはわしのところの所管ではない、法務省が通させたのでわしは知らぬわ。県庁や市役所の建築課へ行ってみよう、それはまだ勉強しておりませんでわかりません。こういうことになると思うのです。  だから、法律の周知については法務省は多少の銭を使って、余り銭はないけれどもおやりになると思うのです。けれども、実際に運用相談する役所は一体どこなんですか。だれに相談したらいいのですか。その点のフォローは一体どう考えているのですか。
  31. 中島一郎

    中島政府委員 いわゆる区分所有法マンション区分所有者を初めとして国民一般の皆さんに大変関係の深い法律でありますから、十分にこれを認識していただきまして、理解していただきまして、これを活用して適正な管理に役立てていただきたい。そのためには周知徹底について私どももできるだけの努力をしなければならないというふうに考えておるわけでありまして、まず考えられますのは、新聞、テレビ等の報道機関を介していろいろとPRをしていただく。私どもの方も資料の提供についてはできるだけの御協力をしたいというふうに思っております。  ただ、実際の運用相談ということになりますと、弁護士会でやっておられる、あるいは市町村や学校、大学などでやっておられます法律相談を利用していただくということになるわけでありまして、そういったところがこの法律について相談を受けるためにいろいろ勉強したいというようなことであれば、私どもとしてもできるだけの御協力をしたいというふうに考えております。
  32. 横山利秋

    ○横山委員 PRやマンションの人をみんな集めて講演会をやるなら、それでいいですよ。横山マンションをつくった。さあ、区分所有者三十人おって、てんやわんやでがたがたやる。そういうときにどこの役所に行ったら相談に乗ってくれるか、こういうことなんだ。
  33. 中島一郎

    中島政府委員 これはそもそもは民法の問題でありまして、民法によって私人間の法律関係を決める。その適用の場面場面におきましては、当事者である各人各人が自分の権利を守るために法律理解する、こういうことになるわけでありまして、やはり本来的には法律の専門家である弁護士あるいは各団体でやっております法律相談を利用していただくということになります。関係のある行政官庁、たとえば法務省どもその周辺の問題につきましては関係のある行政官庁ということになろうと思いますが、少しずつはその法律相談、運用相談等にも関係をするという面があろうと思いますけれども、本来はやはりそういう行政官庁によって運用の責任を持つ、そういう法律ではないという面もあるわけであります。
  34. 横山利秋

    ○横山委員 これは大臣、どう考えておられるのか。断られた、役所へ相談に行ってもらってもしょうがない、こういう話だ。そんなばかなことがありますか。地方建設局、法務局、県庁の建築課、市役所の建築課、役所へ行ったってしょうがない。民法の問題で来たってだめだ、こう言っておるが、どうしますか。     〔委員長退席、熊川委員長代理着席〕
  35. 秦野章

    秦野国務大臣 役所が一番よく知っているわけですけれども、しかし、おっしゃるように実際はこの法案をつくる経過の中で、いろいろな団体、民間関係団体ができていますよ。マンションを持っている団体、建設関係、それからマンションを経営する団体、こういう団体が非常に関心を持っておるということを僕は知りまして、そういう人たちが関心を持っておるということは、こういう法律をつくってくれ、できたらいいなという団体ですから、これはやはり現実的にはそういう団体理解してもらって、マンション建てかえるといったらそういう人に相談に行って何かするでしょうから、そこが窓口に実際なると思うのですよ。法務省には、おっしゃるように余り来ないでしょう。けれども法律関係法務省がつくっておかなければしょうがありませんから、つくっておいて、その周知徹底の問題というものは、現実に利害がある団体などによくわかりいいようなものをつくって、そこでもってよく相談に乗ってもらう。これしかないし、また現実的にはそうだと思います。  ただ、建設省なんかにはやはり理解してもらわなければいかぬから、この法案の作成の経過の中では必ず建設省の役人に入ってもらって、そしてまた建設省関係団体マンション建設やマンション運営のいろいろな団体がありますよ、そういうものに徹底させるということが一番現実的だ。その点、私もこの役所に参って、早速これをよく見たら横山先生と同じ感じを持ったわけだ。これは一体法務省でやっているけれども、現実的には住宅政策という観点があるから、この方も建設省がしっかり関心を持っておらなければ困るし、それからいままで五階建てマンションが古くなったから建てかえるときに七階にする、十階にするという問題が、土地有効利用の関係で当然あるわけです。むしろそっちの方にメリットが大きい。やはり量より質だという住宅の現在の状況というものをにらんだら、まさにそういう意味では建設省こそしっかりやってくれ、こう言って私も建設大臣に頼んだことがある。それはもちろんそうだということで早速建設省も乗ってきておりますので、お説の点、御心配の点は私もよくわかりますから、よく関係団体等の連係プレーで、実際に現実的に必要性を感ずるマンション自体の人たちが働きかける、あるいは相談に行く、そういうところにまずこの問題の理解をしてもらえば、利害がとにかく直接つながりますので、一番手っ取り早いだろう。テレビで法律説明したって、なかなかむずかしいだろうと思うのですよ。そういう感じのものだろう、こう思っています。
  36. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、いまのお話のとおりで、法務省は全く産みっ放しで、法務省は精子を出して、卵子は建設省で、腟外で試験管ベビーのようなものだ。産みっ放しで、わしはもう知らぬ、わしらの方はPRだけするが、後、相談はわしらの方へ来たってしょうがないぜ、こういうことなんですよ。それで私が考えましても、本件は本来的に法律の運用から言うと建設省なんですよ。建設省で、この審議は建設委員会が本当の審議をするところじゃないかと思う。だから、きょうの理事会で話がございますように、建設委員会が連合審査を申し入れてきたことはあたりまえのことだと思うのです。委員長、ですから、一遍連合審査を受けてやってもらいたいと思いますが、いかがですか。
  37. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 御趣旨はわかりますけれども、また個人の権利義務、こういった面についても非常に密接な重大な関係がある問題ですので、御趣旨を参酌しながら、また理事会でお諮りいたしたいと存じます。
  38. 秦野章

    秦野国務大臣 いまの先生の補足をちょっと。  建設省が運用面で相談に乗るというようなことでは非常に関係がある。そっちへやはり関係を持たさぬとうまくいかぬと思いますが、しかし、基本的にはやはり法律関係なんですよ、これは一から十まで。法律関係ということになると法務省が十八番で、これは民事局がなかなかよく骨を折って、私が言っちゃおかしいかもしらぬが、少数者利益を守るとか、細かなところまで配意して、いい法律ができたな、こう思っているんで、そこのところはやはり十八番のところに審議中心にしていただけば、まずこの運用は余り問題はないだろう、でき上がれば、そういう感じがいたしますので、よろしくひとつお願いいたします。
  39. 横山利秋

    ○横山委員 産みっ放しの法務省ですな。ところがその建設省が——ここに去年の一月二十八日、住宅宅地審議会の「宅地建物の取引の公正と流通の円滑化を図るため宅地建物取引業制度上講ずべき措置についての第二次答申」を持っておりますが、これに標準管理委託契約書の案がありますね。「中高層共同住宅標準管理規約」、もう第一章から第八章六十六条にわたる「○○マンション管理規約」というものがありますね。  これを見てびっくりこいちゃった。これは一体何だ。聞くところによれば、これはもうすでに建設省は通達でこういう管理規約をモデルにしてやれというふうに出しちゃっておるというのですな。そして後になってから法務省がこの法案を出してくる。一体、何だ。この標準管理規約、これはもう実際問題として動いちゃっているわけですよ。そんなばかなことがありますか。この法案が出て、この法案に基づいた管理規約が出るならいいけれども、これは先に先行しちゃって動いて活動しておるじゃないの。何でそんなことになるの。大臣は、おい、おまえのところ何やっておる、おれのところの仕事を先取りしてやってしまって、この法案これから出すじゃないか、待てと何で言わぬの。これ、どんどん動いちゃっているがね。これとこれとの整合性というのは一体どういうことになるの。
  40. 秦野章

    秦野国務大臣 この法律が通るまではいままでの法律関係を前提にいろいろ考えざるを得ないだろうと思うのですよ。法律が通ってしまえばやはり新たに考えていいのじゃないですか。矛盾するところがあれば変えたらいいだろうし、それは自由自在にしていったらいいんだろうし、それからまた、この法律を多分まだ熟知していない人が書いたかもわかりませんね、まだ法律が通っていないんだから。それはしようがないですよ。この法律が通ったら心機一転で非常に合理的な管理というものを、つくるのですから、それにのっとってやってもらう。そういう切りかえをするということは当然必要があればしてもらえばいいんだろう、こう思います。
  41. 中島一郎

    中島政府委員 先ほども申しましたように、区分所有関係というのはそもそもが民法から出発したわけであります。旧民法には二百八条という規定がありまして、本来ならば、一物一権主義ということで一つの物の上に一つ権利しか成立しないという原則があるわけでありますが、それを修正いたしまして、区分所有建物の場合には一棟の建物を区分した幾つかの建物部分について所有権が成立するという特例を設けまして、そしてそういう場合には区分所有相互間の法律関係はこうだということを二百八条という規定が一条だけ規定しておったわけであります。それでは、戦前の日本の国のように区分マンションあるいは区分建物というようなものが少ない時代はよかったわけでありますが、戦後、区分建物というものがだんだんふえてまいりまして、これに対する法律規制をもっと細かくする必要があるということで、昭和三十七年に現在の区分所有法ができたわけであります。  できまして、その区分所有法のもとでいろいろ管理規約をつくったり、管理者を選任したりしてマンション共同管理をするわけでありますが、その場合に管理規約はどういうふうに具体的に定めればいいのかということになりますと、一つのモデルがあった方がいいということで建設省審議会においてこのモデル規約をおつくりになった。これはあくまで昭和三十七年にできました区分所有法のもとでつくられた管理規約のモデル、こういうことになるわけであります。多くのマンション等におきましては、そのモデル管理規約に基づいて管理規約をつくって現実に管理が行われておるわけでありますが、そういう実態がだんだんふえてまいりましたので、法務省としても現在の区分所有法にもっと細かい規定をいろいろと置く必要があるのじゃないかということが問題になってきたわけであります。  それを検討いたしますためには、当然、現在実態として行われておるマンション共同管理というのはどういうふうになっておるか、そのためにはこのモデル規約などを勉強するのが一番適切な方法でありますから、このモデル規約などを十分に検討いたしまして、そしてそれをなるべく取り入れるようにして、そごしないようにして細かい規定を設けていったというのが今回の改正であります。でありますから、今回の改正法案とこのモデル規約はそごするところはございません。(横山委員「ある」と呼ぶ)私どもはないというふうに理解しておりますけれども、新しい法律ができましていろいろ規定ができたわけでありますから、新しい事態に応じて整合性などについても改めて検討していただくというようなこともあるのかもしれませんけれども、現在は特にこれを直ちに手直ししなければ混乱が生ずるというようなことはないというふうに私ども理解いたしております。
  42. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ建設省にお伺いしますが、いまのお二人の話だと、現行法に基づいて建設省はこの管理規約の案をつくった、しかし法律が今度動き出せば、そごはないと思うけれども法律に基づいて改善さるべきだと思う、期待する、やってもらいたいということなんですが、そのように理解をしてよろしいか、これが第一。  時間がありませんから、一つ一つずっと並べていきますけれども、たとえばモデル規約の七条二項の三「窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。」うちのマンションのその窓ガラスは専有部分でない、廊下の向こうの窓ガラスは専有部分だ、これは常識だろうな。窓ガラスは専有部分に含まれないというのはどういうことか。  それから七条の三項「第一項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。」何を言いたいかわけがわからぬ。もうちょっとわかりやすく書いてもらわぬと、それこそどこへ行っていいかわからぬ。区役所へ行ってもだめ、市役所に行ってもだめ、建設省へ行ってもだめ。  十二条「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」マンションで横山株式会社の看板を上げてはいかぬのか、なぜ商売をやってはいかぬのか。そのことは憲法上あたりまえ、自分のものではないか。なぜこの標準規約の中でいかぬと言うのか。  十五条五項「第三項にかかわらず、当該貸与の期間が、三年未満であるときは、当該駐車場の専用使用権は消滅しない。」三年未満であるときには自動車駐車場の専用使用権は消滅しない、何の根拠を持ってそういうことを言うんだかよくわからない。  二十三条の二項「管理費及び特別修繕費の額については、各区分所有者の共有持分に応じて算出し、組合費の額については、各区分所有者が所有する住戸の数に応じて算出する」。住戸の数とは何だ。私がマンションの中で一軒持っておれば一軒、二軒持っておれば二軒ということか。マンションにも一つの大きなマンションの中で区分所有者が大きく部屋をとっている場合と小さく部屋をとっている場合とある。大小にかかわらず戸数でやるというのは組合費として一体適当であろうかどうか。  三十三条、理事長は、「理事の互選により選任する。」こんなことを何で決めなければならぬ。理事の互選というと、三十人以上仮にあったとする、三十人の中で理事を五、六人出す、五、六人の中から理事長を選ぶ。何でそんなことは全員の投票によってやらぬ。大きなマンションと小さなマンションとそれぞれニュアンスがあるのにかかわらず、理事長、副理事長、会計担当者は理事の互選によって選任するというふうに理事会で決めなければならぬというのは画一的ではないか。  四十二条は組合員が四分の一以上で総会を招集した場合には議長は理事長がなってはいかぬ、そういうことですよ、第二項は。いつもは理事長が議長になるんだけれども、四分の一以上で総会を開けと組合員が言った場合は理事長が議長になってはいかぬということですね。何でそういうことまで決めなければならぬのか。  四十四条「住戸一戸につき二以上の組合員が存在する場合のこれらの者の議決権の行使については、あわせて一の組合員とみなす。」マンションの中に住戸一戸について二以上の組合員がある。たとえば、私が一人、それから私の家内が人に貸してある、その二人議決権がある。ところが、私も家内も一票しかいかぬ、こういうことでしょう。何でそんなことを言わなければならぬか。  それから四十四条、代理人ですが、この代理人、どこかに代理人の制限があったような気がするのです。どこにあったかな。少数者、五十名の中で二人ばかりが反対する、その反対する人間でなければいかぬというようなことらしいのだが、代理人はだれでもいいのかということ。  それから四十七条。四十七条は、書面でみんなが同意したときには総会の決議があったものとみなす。そんなことならいつも四十七条が援用されてしまって、みんな考えて、こういう議題でございますがお願いしますと言えば、マンションなどは彼女がおったりセカンドハウスになっておったり、隣は何するものぞ、そんなおつき合いは全然あらしません、めんどうくさいでみんな委任状出しておくまいかということで、四十七条が一番運用、利用されるのじゃないか。何でそんなことを認めなければならぬか。  五十七条。五十七条の四項「組合員は、納付した管理費等及び専用使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない。」わしが組合費を出しておいた、管理費や専用使用料を出しておいた、おいたら、その計算が間違っておる、あるいはそこで不正が行われた、余分に取っておった、返してくれと言っても五十七条の四項では請求ができない。そんなばかなことがどこにある、そんなばかなことがあっていいものか等等、まさにこの管理規約については問題があり過ぎると私は思う。これが民事局長の言うところによれば、大変よくできていますから、そごすることはない。それは法案と見比べてみてそごがせぬでも、法案の精神から言うとそごするところがあるのじゃないですか。建設省はいかがですか。全部が全部逐一やっていると時間がたつが、どうしよう。
  43. 鹿島尚武

    鹿島説明員 まず一つは、私ども指導させていただいております住宅宅地審議会からの答申に基づきます標準管理規約でございますけれども、これにつきましては、現行区分所有法のもとにおきましていろいろ別段の定めというものが認められておりますので、できるだけ合理的に管理の中身が決められるようにということで審議会にお諮りを申し上げまして御決定いただいたものを標準管理規約のもとにいま指導させていただいているところでございます。このためにいろいろ規約変更とか共用部分変更等につきまして、今回の区分所有法改正というものを先取りしたようなかっこうと理解をさせていただいておりますが、これにつきまして大きな手直しというものは必要はないというふうに考えております。ただ、部分的には、たとえば集会の招集手続等につきまして、そごというわけではございませんけれども、不都合な個所も出てまいるものというふうに考えられますので、今回の改正を受けまして標準管理規約の手直しと申しますかにつきまして、可及的速やかにやるようにいま準備を進めさせていただいておるところでございます。  それから、先生から各条項にわたりましてただいま懇切なるお話をちょうだいいたしました。  それで、一つ一つで恐縮でございますが触れさせていただきますと、まず第一番目の七条二項三号につきまして、窓ガラスはなぜ専有部分じゃないのかというお話がございました。私ども標準管理規約におきましては、共用部分というものを二つの見地から考えたわけでございます。一つは、共同の住宅でございますので、利用制限を付すべき部分というもの、これを考える、二つ目は、複数の住戸によって利用される部分考えるというようなことといたしまして、これを共用部分といたしたわけでございます。  そこで、その他は一応専有部分になるということになるわけでございますけれども……(横山委員「子供が窓ガラスを割ったら共用部分か」と呼ぶ)そこで窓ガラスにつきましては、共同の住宅でございますので、外観保全上の観点からやはり利用制限を付すべきものではないかというような考え方に基づきまして、住戸の区分所有者の専用使用を認めるというたてまえのもとに、共用部分ということの理解をさせていただいたわけでございます。もとよりこの区分と費用の負担とは直接関係しないわけでございまして、窓ガラスの補修等につきましては各戸の区分所有者等の方々において費用をお払いいただくということになろうかと思います。  それから七条三項でございますが、ちょっと説明を要するわけでございまして、なかなか理解しにくい向きもございます。そこで簡単に申し上げますと、七条の二項によりまして専有部分共用部分との境界につきましては、天井とか床とか壁につきましては結局躯体部分を除く部分専有部分として内のり主義というものをここで考えたわけでございます。一方、設備につきましては、専有部分の専用に供されるものをもちろん専有部分というふうに言うわけでございますけれども共用部分内にあります部分につきましては共用部分考えたわけでございます。専有部分の専用に供されるかどうかというのは、その設備、機械が当該住戸専用のものかどうか、共用のものかということで決めてまいりますけれども、具体的な例で申し上げますと、配管、電線等の本管につきましては、これは共用部分でございます。枝線、枝管につきましては、これは専有部分考えておるわけでございます。もとより枝管でございましても共用部分の中に埋まってしまっているようなもの、これは共用部分というふうに理解をさせていただきまして整理をされているものでございます。  それから次に十二条でございますが、営業行為につきまして関連してのお話でございました。現行区分所有法の五条一項では区分所有者は「建物管理又は使用に関し区分所有者共同利益に反する行為をしてはならない。」というふうにされております。そこでこの標準管理規約におきましては、住居専用のマンションを対象に頭に置きまして、もっぱら住宅としての使用を念頭に考えたわけでございます。そこで住宅としての使用ということになりますと、居住者の生活の本拠があるということにもちろんなるわけでございますけれども、その利用の方法につきましては、もとより周辺の平穏さを害してはならないということになろうかと思います。したがいまして、営業行為とは別の観点から、客観的に住宅としての使用方法としてどういう方法が一番いいのかということ、これをこういう表現で記載をさせていただいたわけでございます。したがいまして、具体的な例で申し上げますれば、たとえば一般的な内職を部屋の中で静かにおやりになるというようなもの、これを一々禁止をするというわけにもまいらないと思います。個々のマンションごとの私的自治によりましてこの辺の中身をお決めいただこうという考え方で整理をいたしたものでございます。  続きまして……
  44. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと待ってください。こういうふうに説明を伺っておったら、これは時間がかかってしまうんだ。私の二時間を超過してしまうのだ。いいですか、委員長
  45. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 先生の御質問がありましたので、問いに対して答えているわけでありますが、先生が……
  46. 横山利秋

    ○横山委員 そうなんだけれども、彼は非常に親切だ。親切だが、話が違うんだ。「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」内職するのはいい。それから区分所有現行法は、なるべく住宅の平穏を害してはならない、他に迷惑をかけてはいけない、こういうことだな。ところがこの管理規約は「他の用途に供してはならない。」と書いてあるんだ。それをやり合ったら、二時間では済まないのだが、どうしよう。それでいいですか。
  47. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 先生、簡潔に。
  48. 横山利秋

    ○横山委員 簡潔にと言ったって、私の質問に……
  49. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 ちょっとお待ちいただけないでしょうか。簡潔にお答えいただけるような御質問の形態をおとりいただければ……
  50. 横山利秋

    ○横山委員 とれぬがね。  それじゃ、鹿島さん、文書で提出してもらえぬですか、次の委員会までに、いまの質問に対して。それで、切り口上でなくして、解説的な意味において、これは前につくった規約であるけれども法案に基づいて手直しをする、そういう意味合いにおいて、この十二条は該当するとか、そういう文書で提出してもらえぬですか。
  51. 鹿島尚武

    鹿島説明員 御指示でございますが、委員会の御指示に従いましてやらせていただきたいと思います。
  52. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、どうですか。それでいいですか。
  53. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 それではこの点も後ほどの……
  54. 横山利秋

    ○横山委員 後ほどいかぬと言ったら私は往生してしまう。後ほど理事会でなくて、委員長権限で、それじゃ文書で提出しろと言ってもらえば、それで次に移るわ。
  55. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 それじゃ民間住宅課長、いまの御意見はよろしいでしょうか。御期待に沿えますか、建設省の方は。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 それでいいですか、回答を文書で本委員会に提出する。
  57. 熊川次男

    ○熊川委員長代理 建設省、いかがでしょうか。
  58. 鹿島尚武

    鹿島説明員 それでは御指示に従いましてやらせていただきます。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 それじゃ、質疑応答でないから勝手に書いたっていい、怒りはせぬと思ったら大間違いだ。その文書いかんによってはまたやります。いま十二項目言ってありますから、基本的な問題を含めてお願いをいたします。  それから、マンション紛争をいろいろ考えてみますと、マンションの基本構造の不適、手抜きがある場合に、管理組合は当事者として訴訟ができるかどうかということをお伺いをいたしたいと思います。
  60. 中島一郎

    中島政府委員 管理組合の業務と申しますのは、繰り返し申しておりますように、その区分建物とその敷地管理ということであります。ところが、ただいま問題となっておりますのは、マンションの基本部分に欠陥があるということで、それについての責任を追及するということでございますので、それは区分所有者建物の買い受け人として、あるいは区分所有者がその区分建物の所有者として個別的にその区分所有者に帰属しておる権利を行使するという形になるのではないかと思います。したがいまして、それは管理組合の業務の範囲外である、別の言葉で申しますと、いま問題になっております権利というのは、区分建物管理の範囲には含まれないということになりますので、管理組合が訴訟を起こす権利を行使するということは認められないというふうに思います。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 マンション業者が建築業者につくらせて、マンション業者が区分所有者に売る。区分所有者管理組合をつくる。管理組合に渉外とか、いろいろなことをやってもらう、こういうことになっておるわけですね。ところが、五年たったら基本構造に手抜きがあった。手抜きがあったからこれはけしからぬと、マンション業者を訴えるか、建築業者を訴えるか、何とかしなければいかぬ、これはちょっとやそっとではないという場合、どうしたらいいですか。
  62. 中島一郎

    中島政府委員 したがいまして、マンションの購入者があるいは売買契約上の瑕疵担保責任を問う、マンションの売り主であります分譲業者に対して瑕疵担保責任を追及するというようなことが法律的には考えられましょうし、あるいは場合によれば、所有者として工事人に対して、建設業者に対して不法行為責任というようなことも考えられるのかもしれません。したがって、方法はあろうと思いますけれども、それは区分建物の所有者が個別的に行使すべき権利であって、管理組合として行使するのは無理ではないかというふうに考えております。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことになると、管理組合は何だと。区分所有者がみんな管理費も出し合って管理組合をつくって理事長を置いて、そしてやっておるではないか。おまえさん、ひとつわれわれの代表になって建設業者かあるいはマンション業者に、けしからぬ物をおれらに買わした、訴えてくれというて、管理組合がよしわしがやりましょうというてみんなを代表してやるのが何で悪い。当事者適格は何でないのですか。
  64. 中島一郎

    中島政府委員 欠陥があります場合に、これを修繕する、そして快適な住環境をつくるということになりますれば、これは管理組合の仕事ということになりますけれども管理組合の仕事は管理でありますから、その管理に含まれない購入によって生じた権利関係等については、個々別々に行使することになるわけであります。  ただ、そういう者が複数おります場合には、全員がそれぞれ訴訟するということではなくて、選定当事者その他の訴訟形態を利用するということはできましょうけれども権利はやはり個人個人が行使する、こういうことであります。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 このマンションの問題というものは、これから予測される中にそういう問題があると私は思うわけであります。  それで、ちょっとこの機会に建設省にお伺いをいたしたいことがあります。  先般、私が昨年でございましたか、建設委員会へ問題を提起をいたしました。それは徳祥という建設会社と株式会社青柳地所代表取締役青柳昌樹、いま紛争審査会に入っている問題なのであります。  要約いたしますと、四十五年に新築した六階建ての新マンション、建築基準法に基づいた建物を施工業者である徳祥に依頼し、設計監理を野生司設計事務所に依頼した。ところが、引き渡し後も雨漏り、クラック等がひどく、施工業者徳祥に誠意がないので、他の建設会社に何度も瑕疵を補修するためにやらせて、十年間に六千万円以上の費用をかけて、いまもなお維持管理をしているが、五十六年十月にわずかな地震で、東京都水道局検計課により使用水量が極度に異常なため、調査修理をした。水漏れの行方がわからない。原因を探求するため掘ってみたところ、確認の図面上では二本あるべきくいが一本であり、しかも柱の中心部より極度に外れ、大きく偏心している。そのために一本しかないくいそのものが異常に曲がり、まさに折れようとしていた。そこでさらに建物の四隅の三カ所を掘って調べたところ、驚いたことに、二本あるべきくいの一カ所は全くくいがなく、残りの二カ所は全部ずたずたに折れていた。  大臣、ちょっとこれを見てください。こういうことです。  これではだれが見ても建物の安全確保、危険切迫による住民の安全確保不能のために、行政庁による早急な本格的調査、救済をお願いしたところ、建設省、東京都、新宿区を回ったところ、責任の所在が不明。で、私が建設委員会で取り上げた。住宅局長の返答は「基準法上の指導の範囲内で考える面があると思いますので、東京都を通じまして多分担当の区の方で現場を知っていらっしゃると思いますので、よく調査しまして必要な措置をとるように指導してまいりたいと思っております。」という約束をした。去年の四月。  新宿区の建築指導課とは、それ以前より現在まで六カ月にわたり交渉を続けてきたが、何らの対策及び措置も持たれない。発見された四カ所のくいについては、フーチングの下わずか二メートルの位置であり、くいの埋設長さは十六ないし十八メートルもある。しかもほかに調査してないくいは二十数カ所もある。この残りのくい位置に対しても同様に懸念される。  にもかかわらず、当該建築に対して、当時東京都が建築確認、完成検査を行い、まして検査済証まで出しており、現在東京都材料検査所に保管されている当時の工事施工報告書等によれば、未完結処理されている。つまり未完結処理というのは書類提出がない、試験成績書がない。したがって、手続の経過に重大な瑕瑾があり、ここでのチェック及び指導が相当に行われていたならば、被害は未然に防げたはずであり、行政面における指導等はそのためにこそあるべきと思量されるということなんですね。  こういうことなのですから、まことに私といたしましても、住宅局長がやりますから、ひとつ指導いたしますからと言っておいて一年間もそのままだ。そして紛争審査会は六回ぐらいやっているけれども、いつのことやらわけがわからぬという状況なのであります。  建設省の報告を求めます。
  66. 藤原良一

    ○藤原説明員 お答えいたします。  御指摘の案件につきましては、五十七年の三月に民事紛争事件として準司法機関であります中央建設工事紛争審査会に仲裁申請がなされまして、先生おっしゃるとおり、現在係属中でございます。案件が、確かに両当事者によりまして言い分が相当かけ離れておりますので、仲裁審理も非常に苦労しておるようですが、現在まで五回の審理がなされております。私どもとしてはできるだけ早くこの仲裁判断が出されることを期待しておる状況でございます。
  67. 横山利秋

    ○横山委員 藤原さん、建設委員会で私がお願いしたことは、紛争審査会に持っていくからそこで頼むとは言っていないんですよ。こういうことは、住宅局長が、基準法上瑕瑾があると思うから、私の方でも新宿区役所でも一生懸命やるから、私が指導すると建設省みずから言ったんですよ。それを何もやらずに、いま話を聞けば紛争審査会でやっておるからその結果を待ちたい。無責任もはなはだしいじゃないですか。
  68. 片山正夫

    ○片山説明員 昨年の四月に建設委員会で先生からマンションの欠陥につき調査をしろという御指摘がございました。これにつきまして早速に都を通じまして調査をお願いいたしまして、建築行政上必要がありますれば適切な指導をするようにという指示をしてございます。  その後、都の指導を得ながら新宿区役所におきまして調査をし、その結果、五十七年の八月二十日に新府区の建築課長から青柳さんあて、勧告の文書を出してございます。これは調査の結果、二カ所のくい頭部につきましては亀裂が現にございまして、これの原因は定かではございませんが、くいの鉄筋の防錆上、亀裂部分をモルタル等で充てんする等の補修を行う必要がある。そのほかの状況についてははっきりいたしておりませんので、くいの状況等を十分調査し把握し、安全性を検討して適切な措置をとるよう勧告するという文書を出してございます。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 原因はわからぬと言ったって、大臣ごらんになって——マンションの下の方ですよ。縁の下ですよ。原因がわからぬと言ったって、何か青柳が壊したかのように、そんなことはおっしゃらぬけれども、原因がわからぬとは何ですか。建設業者のあたりまえの責任ですよ。二本打ってあるところが一本しかないのですよ。そこにもうひびが入っているのですよ。入っているのに原因がわからぬとは何事だ。どうにもがまんがならぬことは、建設委員会で、私の方で調査し指導いたしますと言っておきながら、ここへ来たら紛争審査会にお任せ、お任せ、結論はお待ち願います。  で、いまの勧告のように、危ないからそこだけ手直ししたらどうだという勧告を出したというのですね。それは建設業者にも出したのですか。出したのですね。いいですよ、両方出したと私は思っておる。両方出したとすれば、責任はだれにあるのですか。直す責任はだれですか。徳祥でしょう。それは上に乗っておる人は危なくてしょうがないわ。けれども、それをごらんになってもわかるように、あなたは何遍もよく見ておるからわかると思うのだが、ちょこっと手直ししたぐらいで話はおさまらぬですよ。基本構造部分に瑕疵があるのだから、やるならもうたたき壊さなければならぬのだ、実際は、もうそんなことだったら。いまからくいをもう一遍下へやってこうやったり、そのひびの割れているところをセメントで塗ったり、そんなことぐらいでは追っつかぬですよ。  しかし、それにしても、まあしゃあしゃあと、ひびが割れておるから勧告をして、とりあえず手直ししろ、そんな無責任なことをだれに言うのですか。それで勧告は行われたのですか。行ってないじゃないですか、だれも。もしも徳祥と青柳両方に勧告したというなら、どっちがその勧告を守る責任があるとあなたはお考えなんですか。それが行われてないことに、勧告が空文化しておることについて、建設省は、わしはやるだけやった、文書を出したから知らぬ、こう言うつもりですか。
  70. 藤原良一

    ○藤原説明員 本件のように非常に厄介な民事紛争事件でございますので、われわれ行政サイドでいろいろ指導できる限界があろうかと思います。そういうことで、関係者の方でも準司法機関である紛争審査会の方に仲裁裁定を申請されたわけでございますので、ここで客観的な状況に基づいて適切な判断が下されるものと思っておりますので、それによって事件のできるだけ円満な解決を図っていただきたいと考えておる次第でございます。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 それなら、何で住宅局長は、去年、私の方で指導します、基準法上の瑕瑾があるから私の方で指導しますと言ったのだ。そのときにそう言いながら、いまになって審査会のことだからわしは知らぬと、無責任もはなはだしいじゃないか。住宅局長をここへ呼べ。人をばかにするな。あのときはああ言っておいて、いまになってわしは知らぬことだ、審査会でやっておるのでわしは知らぬ。何だ、これは。
  72. 片山正夫

    ○片山説明員 昨年の四月二日の建設委員会で、先生から確かに欠陥マンションの調査の御指摘がございました。これにつきまして、住宅局長が、建築行政上の問題がございますれば、調査をしまして指導いたしますということを申し上げておりますが、調べました結果、先ほど御説明申し上げましたように、くいの亀裂の部分はとにかく見つかりました。それは確認をされました。それについては、先ほど御説明を申し上げましたように、モルタルで補修する必要はございます。そのほかのくいの状況というのがまだ全体がどうなっているかということがはっきりいたしておりませんが、その点につきまして具体的に調査をし、補修の必要性があるならばその判断をして適切な措置を講ずるよう、こういうふうに青柳さん並びに業者の方に勧告の文書でもって指導したところでございます。委員会で先生が御指摘のことがございましたので、そのように指導したところでございます。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 委員長、あなたもお聞きのとおりに、どう考えてもこれは建設省としては不行き届きだと思うのですよ。  マンション紛争もいろいろある。これは青柳がマンションをつくって賃貸しで貸している問題ですから、この法案とは直接関係はありません。けれども、この法案マンションにしたところで、今後起こり得べき問題だと思うのです。マンション業者がマンションをつくった、それを全部売っ払っちゃった、わしは知らぬということはあり得ることですね。  だから、区分所有者建物の瑕疵が見つかった、管理組合にやってと言ったら、民事局長は、そんなことは、管理組合管理だけだから当事者適格がないかのごとくおっしゃる。そうすると、区分所有者はまた相談せんならぬ。相談して全員の投票を得なければならぬ。会合を開くにも隣は何する人ぞ、こういうことになるわけです。肝心の基本構造部分に対する紛争についてこの法案は何ら触れていない、こういう紛争について。それ、どう思いますか。
  74. 中島一郎

    中島政府委員 ただいま御質問を聞いておりますと、これはただ分譲マンションだけに特有の問題ではなくて、賃貸マンションにも起こるし、あるいは自己所有のビルにも起こるという一般的な問題でありますので、民法一般の問題として請負とか売買とかいったような法律関係によって解決を図らなければならない問題であろうかというふうに考えております。  区分所有法が対象にいたしましたのは区分所有建物でありまして、しかもその区分所有者相互間の法律関係あるいは共同管理の仕組みというようなことが中心になっておるわけでございます。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 これは問題が残りますね。  それから建設省、これは時間がないからこれ以上言いませんけれども、紛争審査会の審議前にこんなひびが割れておる、そして危険があるというようなことを放置しておいていいんでしょうかね。紛争審査会でどっちが悪いか決まるまではわしは知らぬとおっしゃるけれども、現にそこに居住しておる人の生命、財産に関係がある、緊急性があるという問題だというのに、建設委員会局長がいばって、いや私、指導しますと言うておいて、いまあなた方がそんな不誠意なことでは私は納得しませんぜ。きょうは時間がないから、一遍私の会館に来てください。いいですか。  次の質問は、この法律は強制をするわけではないわけですね。つまり管理組合をつくらなければならぬとか、つくらぬと罰するぞということではないわけですね。それから、登記も、現在、現状によって登記してあるのを、この法律が通過したらこれを専有部分敷地の一体化を登記をし直せと強制しているわけではないわけですね。
  76. 中島一郎

    中島政府委員 おっしゃるとおりでございまして、既存の建物についての適用関係につきましては附則で定めております。ただいま御指摘の点は、附則の五条、六条というところがそれに当たるわけでありますが、まずこの法律施行の際、現に存する専有部分及びその専有部分に係る敷地利用権につきましては、この法律施行の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から適用するということになっております。でありますから、五年を超えない範囲内で政令で定めた日から既存の建物についても適用があるわけであります。ただし、その政令で定める適用日以前でありましても、法務大臣は専有部分の数でありますとか、専有部分及び建物敷地に関する権利の状況等を考慮いたしまして、建物を指定して、この建物については何月何日から適用するという指定をすることができることになります。でありますから、特定の建物につきましては、その適用日から適用があるということになるわけであります。  ただ、この指定は職権でやるわけでありますけれども、あらかじめその旨を各区分所有者または管理者もしくは管理組合法人理事に通知をすることにいたしておりまして、区分所有者の四分の一を超える者から異議の申し出をしたときはこの指定をすることができないということになっております。逆に指定を求めたい場合には、四分の三以上の区分所有者から指定の請求をした場合には法務大臣はこの指定をしなければならないということになっておるわけであります。大臣が官報で告示をするというような形を考えておりますが、ただ、いろいろとその建物実情を調査したりして具申をするのは法務局長ということになろうかと思います。こういうことで五年を超えない範囲内に徐々に移行をしていくわけでありまして、指定を受けないで政令で定める日が到来いたしましたときにはすべての建物について適用があるということになります。ただ、その場合に、規約で分離処分可能の規約をつくったとみなすということにいたしておりますので指定を受けなかったものは、現在の法律のもとにおける仕組みがそのまま続いていく。登記に関しましては、一体化に関しましては、現在の法律関係がそのまま続いていく、こういうことになっております。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 そこのところはどう考えたらいいんですか。私はこの法案はずいぶん実施及び運用になかなか話がまとまらぬと思うのですよ。マンションヘ、この間の選挙でも、横山利秋でございます、何某をお願いいたしますと言っても、しんとしておる。おらへんわ。洗濯物干しておっても、こっちを向きへんわ。本当にマンションというところは——まあマンションにもいろいろありますけどね。ともかく自分たちだけがひっそり隣とのおつき合いもせずにやっておるところなんですね。そういうところが、強制力を用いないで、大臣指定といったって、いまのお話によれば、向こう様から申請があって数が足らぬで指定してくれというときに指定するというのでしょう。そうなんだな。そうすると、何もやらぬところはそのままずっと未来永劫現状が続く可能性がある。案外ばかにならぬ、それが多いんじゃないかと予想するんですが、どうします、それで。     〔熊川委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 中島一郎

    中島政府委員 先ほども申し上げましたように、区分建物敷地登記簿が非常に膨大になり、複雑になり、ちょっと見ただけでは権利関係がわからないということになっております。でありますから、早くその登記簿を新法のもとにおける一体性原則のもとに書き直して、そして敷地登記簿膨大になり複雑になるのを解消したいわけであります。しかし、そのためにはいろいろと手数がかかるわけであります。先ほど申しましたように、敷地利用権専有部分表題部に書き込むというようなことが必要であります。そのためには敷地利用権があるのかないのかということを調査しなければならないということになるわけでありますから、一挙に移行するということができないわけであります。ですから、そういった実情を十分調査いたしまして、書きかえて新法を適用した方がメリットの多い建物から徐々に移行していくということになります。そのためには法務局の事務処理能力というようなことも勘案しなければならないかと思っております。  そういうことで、五年を超えない期間内に徐々に移行をしていく。ただ、それは余りにも区分所有者の意向を無視して行うというわけにもまいりませんので、区分所有者から異議の申し立てを認め、あるいは指定の請求権を認めるということになるわけであります。新法のもとにおけるような登記簿に書きかえました場合には、登記所事務処理労力も軽減されますけれども、それにも増して利用者の国民の皆さんが大変便利を感ぜられるわけでありますから、多くの場合は、書きかえと申しましょうか新法の適用を望むという方向にいくのではないかというふうに考えております。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、きれいごとをおっしゃっているが、私はこの書きかえがそう順調にいかないと思っているのですよ。たとえば私どもの名古屋のど真ん中でも、田舎へ行けばなおさらだが、お父さんが死んだ、兄弟がぎょうさんおる、財産分与で登記の書きかえが、財産の書きかえが進まぬ。この前でもそうですよ。市内のある税務署長のお父さんが死んだ。相続税を納めたけれども登記はそのままだ。だれの登記になっているかといったら、ひいじいさんになっているというのですね。税務署長でも家族間の紛争その他がややこしいと登記をしやせぬ。いつまでたってもそうだ。だから、一つの区画整理のときでも、近隣の同意が必要だ。同意書に判こをもらいに行くのに、こちらの人は死んでおる、こちらの人は行方不明、こちらの人はずっと昔の人になっておる、そういうことがいっぱいなんですね。だから、私はこの法律がなるほど——なるほどと思うよ、思うけれども、何かの方法を考えないと実際問題としてはうまくいかぬぜ。これからつくるマンションはまあいい。いままでのマンションは切りかえがそううまくいかぬよ、こうやっていったら。そう思うが、あなたはどう思うかね。素人の話を聞いた方がいい、大臣の話。
  80. 中島一郎

    中島政府委員 まず私からお答えさせていただきます。  区分所有者に任せておけば、ただいまおっしゃいましたような懸念も十分考えられるところでありますが、今回は法務大臣が職権で指定をしていくということでありますので、法務局が中心になって積極的に指定を進めてまいるわけであります。それに必要な人員あるいは予算についてもまたいろいろとお考えをいただかなければならないわけでありますが、そういうことでありますから、任せきりにしておる場合と比べましてかなり移行が進むというふうに期待をしておるわけでございます。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 あなたが言わぬでも、それを大臣に言わせようと思ったのに。本当にそんな人間やそんな予算はいま法務局にはありませんぜ。登記所へ行ってごらんなさいよ、ごった返しておるがね。だれが一体これをやるの、そんなことを。PRをやって、おまえのところは登記を新法で切りかえよ、やれといって調査したり勧告したり、その仕事をだれがやるの。だから、この法案は実際の運用がだめなんだ。これからできるものは、向こうから言ってくるものはやってやる、けれどもこっちから行くなどということはとてもできないよ。何とか工夫を考えなければね。どうですか、大臣。
  82. 秦野章

    秦野国務大臣 これは区分所有者利益という観点があっての立法ということもありますので、やはり利益があればやらざるを得ぬし、やりますよ。  それから、おっしゃるようにそれは物事百点満点にはいきませんけれども、だんだんと古くなるマンションもあるし、この立法をすることは客観的に見て時宜に適しているのじゃなかろうか。利益が全然区分所有者にないというのならなんだけれども、やはり区分所有者修繕したい、建てかえしたいといったようなニーズは必ず出てくるわけですよ。もうすでに古いマンションならそういうものがあるわけですから、その辺のところを大きなメリットにして漸進的にやっていけば、これはやはり大変貢献していくのではなかろうかというふうに思うのです。先ほど来承って、法律関係でいろいろむずかしい問題もありますけれども、やはり民事的な秩序を基本的にはきちっとしておかぬといけませんので、その点はぜひひとつ評価をしていただきたい、こう思うのでございます。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 私の言っていることに答えていないのです。これをPRし、はい、おまえのところもやれ、おまえのところもやれという銭と人は法務局にはおりはしませんよ。だから、これは仏つくって魂入れずで、魂が入っておらぬ。銭と人間とがおらないのに法務大臣がやるやると言ったってできはせぬじゃないか、こう言っておるわけですよ。  次は、この法案区分所有者の義務が非常に多い条文ですね、それは義務とか権利もあるけれども。ところが、実際そのマンションを使っておるのは賃借人ですね。また占有者ですね。自分は区分所有者ではない、しかしそこに住まっておる。この法律体系は区分所有者権利義務等をやっておる。区分所有者管理費を出せ、あれを出せ、これはやらないかぬ、こう言っておる。区分所有者占有者である私に、おい、管理組合で決まったんだからおまえ守ってくれよと言うわけです。それで、私の義務は、占有者であり貸借人である義務を皆区分所有者が約束してくるわけです。区分所有者が約束してくる。そして、費用も区分所有者が出すわけです。実際私が守らねばならぬことばかりなのです。一体これでうまく法運用ができるだろうかという感じなのです。  それはマンションだから区分所有者占有者である場合が多いとは思いますよ。思いますけれども、長年たつうちに区分所有者占有者が分かれていくわけです。そのときに、占有者権利というものがこの法案の中にはないわけです。窓ガラスは共用だ、植え込みはああせないかぬ、こうせないかぬとか、共用部分はこうせないかぬ、ああせないかぬ。みんな私の義務ばかり区分所有者管理組合に行って決めてくるわけです。そういう点に矛盾が感じられる。そういう点で法運用がうまくできないと思う。その点はどうですか。
  84. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有法は、原則として区分所有者相互間の法律関係の調整あるいは共同管理について規定しておるということは先ほど申し上げたとおりでありますので、条文と申しましょうか、法律はどうしても区分所有者中心になるわけでありまして、区分所有者によって共同管理を行うその仕組みを中心として定めておるということになります。しかしながら、適正な管理を行うためには居住者に守ってもらわなければならない義務というものもかなりあるわけでありまして、その点については、この新法律におきまして幾つかの手当てをいたしております。  たとえば第六条で、区分所有者建物の保存に有害な行為その他建物管理または使用に関して共同利益に反する行為をしてはならないと区分所有者に対してまず規定をいたしておりますけれども、その第三項によりまして、いまの一項の規定区分所有者以外の専有部分占有者に準用するという形で占有者に義務を定めておりますし、その他の、六十条では、極端な場合には占有者に対して明け渡しを命ずるというような手続も定めておるわけであります。でありますから、これでさしあたり、ただいま御指摘になりましたような占有者の義務ということの関連で共同管理がうまくいかないのではないかという問題は一応手当てがしてあるというふうに私ども考えておるわけでございます。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 要するに、管理組合というのは大家連合ですね。そして占有者は借家人ですね。いま町の中では、大家がみんな決めて借家人にああやれ、こうやれと言ったって借家人は守りませんよ。だから、借家人が管理組合へ出ていく権利はない、総会で発言する権利はない、借家人は義務だけ守れ、守らなければ出ていかせるぞ、こういうところがどうも釈然としない、私はそう思うのですよ。何か言いたいことがありますか。
  86. 中島一郎

    中島政府委員 集会等におきましてもいろいろと占有者の遵守すべき義務等が問題になるわけでありますから、その場合に占有者の意見陳述権というようなものを保障しておるわけでありまして、第四十四条によりますと、「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、」すなわち占有者は「会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。」ということになっております。したがいまして、その場合には、集会を招集する場合に区分所有者に招集通知を発するばかりでなく、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示をする、そしてそれによって占有者にかくかくの問題について集会が招集されるのだということを知らせるような方法をとっておるわけでございます。  それから四十六条などを見ていただきますと、「規約及び集会決議の効力」といたしまして、区分所有者あるいはその特定承継人が規約及び集会決議の効力に服することはもちろんでありますけれども占有者もその集会決議に基づいて負う義務と同じ義務を負うのだというような規定も置いておるわけでございます。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 その点も問題が残りますが、管理組合の運用のあり方といいますか、マンション管理組合考えますと、マンションは、先ほどから何回も言いますように、大体隣は何する人ぞ、アパートよりももっとひどいと思いますね。その中には生活をしておる人もあるけれども、その人でも隣様と余りおつき合いはしない。いわんやセカンドハウスにしておったり彼女のうちにしておったりすると、全然隣近所と交際がない。そういう人は集会に出席はしない、白紙一任だ、あるいはそれもしない。運営に参加しないですよ。結局は管理組合理事長なり副理事長なりが少人数で仕事をする、そして少人数で仕事をするようになるとだんだん独善が起こる、組合の運営についてあれもやろう、これもやろうということになってだんだん手を出す。いわんや十年、十五年たったら、これは建てかえをしなければならぬというわけで管理費や組合費や建てかえ準備金や、そういうものを計算したらあっと驚くような金をみんなからもらうことになる。そしてそんなもの出せるかという話になる。管理組合の幹部の不正行為や、あるいは独善的ないろいろな問題が起こる可能性がこのマンションの中には潜在しておる。  管理組合の運営というものについてよほど注意をしないと、何もしない管理組合と、あれやこれややって不正を起こす管理組合というものとが想定されるが、いかがか。
  88. 中島一郎

    中島政府委員 確かに区分所有者マンション管理について理事者任せ、管理者任せになる、一部の者に任せっきりになるというような実態も全くないとは言えないと思います。ただ、自主的管理必要性というものが徐々に認識されてまいりまして、そのためには現行法管理の仕組みでは非常に硬直であるから、その仕組みを何とか実情に合ったような方向に改正することが望ましいというような声もありまして今回の改正も行われるわけでありますから、これを一つの契機として、自主的管理必要性についての認識が一層深まるようになることを実は私どもとしては期待しておるわけであります。  特に、だだいま御指摘になりましたセカンドハウスというようなことになりますと、常時居住していない者も多いわけでありますから、管理のあり方についても一般マンションとは違う、居住用のマンションとは違うというような面もあろうとは思いますけれども、やはり基本的には何から何まで任せきりということではなくて、せめて一年に一遍ぐらいは理事者から事務報告を聞く、そしてこれをチェックする必要があるのではないかというふうに考えるわけでありまして、快適な住環境と自分の財産の価値を守るためにはぜひ必要なことである、これは区分所有者自身の問題であるというふうに考えるわけでありまして、その理事者を監視するいろいろな制度につきましてもこの法案は配慮しておるつもりでございます。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 たとえば、マンションができた。私がマンション業者であるとしますね。そうして、さあ買ってちょうだい、さあ買ってちょうだいといって手を広げる。それで来た。ありがとうございます、それじゃどうぞといって銭をもらう。ところでちょっと中島さん、あなたお入りになるについては、建設省から案が来ておりますからモデル約款で御承認を願います。中島さんがそれを見ておかしいな、何かおかしいけれども、おれ一人文句言ったってしようがない、おれはこれが欲しいからいいわと言う。そして、どうぞどうぞ課長さん、清水さんもよろしくということで、マンション業者が建設省から来た標準約款を自分で勝手に都合のいいように書いて、そして駐車場は私の権利でございますから毎月金をいただきます、ここはマンション業者の私の権利でございますというのを勝手につくって、しかも見渡したところ自分の意に沿うような人間はだれがあるか、うん、あの鹿島さん男っぷりがいいからあの人を理事長にしよう、綿貫さん、あなたは副理事長を頼みますよ、まあ仲よしだからうまいことやろうじゃないかというわけですね。  そういうことで勝手に規約をつくって、勝手に役員を決めてみんなに押しつけてしまう。そうでしょう、それはそうしますよ。それで今度は、みんな入ったが一人の人がぶうぶう言った。あの綿貫という副理事長はちょっとどうかと思うよ、あの人はおかしなことばかり言うということになった。それで総会を要求する。そうすると、ほかの人たちは、そんなことを言ったって入ったばかりで隣近所とけんかするのは悪いぜ、そのままにしておきましょう、こういうことになる。どうですか。
  90. 中島一郎

    中島政府委員 最初につくられます規約につきましては、確かにただいま御指摘のように、分譲業者がまず規約案をつくりまして、それに購入者から個別に印をもらいましてそれが規約になるというような実態があることも私ども否定できないところであろうと思います。ただ、そうだからと申しまして、それでは規約も何もつくらないで、区分所有者が全部決まってから自分たちだけでおつくりなさいという方がいいのかといいますと、やはり初め何らかの規約があった方がいいんじゃないだろうかというふうにも考えるわけであります。先ほど問題になりましたモデル規約というようなものもあるわけでありますから、そうおかしな規約があるというふうにも私ども思っておりません。もし、おかしな規約があるということになれば、事後にこれを変更するということも可能でありまして、今回の改正法案においてはその変更の手続を、従来全員合意が必要であったものを四分の三以上というようなことで要件を緩和しておるわけであります。  それからもう一つ理事者等について非常に不適な行為があったという場合には解任権を行使するということもありますし、それから裁判所に対して解任請求をするというような手続も今回認めておるわけでございます。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 私の答えになりませんね。マンション業者が最初に示した約款なりあるいは役員は、少なくとも一年間の有効期間にすべきである、そして半年ないし一年過ぎたら新たに居住者をもって選出ないしは約款の確定を行うべきである。そういうことは建設省の第二次答申の中に出ておりそうなものだと思うが、どうですか、建設省。そういうことは考えなかったですか。何もあらへんがな、何でそういうことを考えぬかね。もうちょっとマンションの実態なり庶民の世界の実態というものを勉強してもらわないかぬな、御意見ないかね。
  92. 濱崎恭生

    ○濱崎説明員 御指摘の、最初業者が用意した規約というものを見直すというような機会を考えたらどうかということは、法制審議会においても先生御指摘のような議論も一部に問題提起があったわけでございます。しかしながら、現行法のたてまえは、規約は案を分譲業者が用意をするといたしましても、法律上は、全員がそれを承諾して、承知の上で全員合意によって規約をつくったということになるわけでございますし、そのためには、規約を十分に理解した上で購入するということが前提になるわけでございますけれども法律上はそういうことになっておりますので、当然にそれが一定期間しか効力を有しないということにするような制度は、区分所有法上むずかしい。  それから、いまモデル規約の方で手当てをすべき問題ではないかという御指摘がございましたが、それはまさに区分所有法の問題でございまして、指導運用でそういう手当てをするということができるという性質のものではないというふうに考えます。  それで、局長から御説明を申し上げましたとおり、これまでは一たんつくってしまえばもう全員合意心がなければ変えられないということでございましたけれども、そういうことではいま御指摘のような問題も対応できないということから、規約変更要件を緩和するという措置をとったわけでございまして、そういう点もいま御指摘の問題を考慮した上でそういう法律案を作成しているわけでございます。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 それは、買うときに規約を示されて、これで御了承願いますというときに、自分がこのマンションを気に入ったから入る、第何条がおかしいからこれを変えなければわしはうんと言わぬ、そんな人はおらぬですよ、実際問題としておらぬですよ。そんなことおれ一人言ったって、ほかの人はみんな買った、あんた一人だけ文句言ったってしようがないということになるのだから。一遍マンション業者がつくった規約というものは、そんなものを容易に総会で変えられるものじゃないですよ。普通の町の町内会だったら、それは別ですよ。マンションという特殊性の世界で、そんな、いけなかったら首を切ったれ、裁判訴えて首を切ったれ、そんなうまいぐあいにいきゃへんだわ。  それから、この法案の一番のポイントになりますのは、建てかえになる、おまえさん、わしは反対だという人の少数者の問題ですね。この少数者がどういう人があるか。たとえば暴力団が入っておったとか、あるいは忌避さるべき人種の人間が入っておったとか、そういう場合もあるけれども一般的に想定されるのは、マンションを買うときにローンで買った、ローンがまだ済んでおらぬというじいさん、ばあさん、年金生活者、こういう気の毒な人のことを考えなきゃならぬ。六階建てを次に八階建てにするのだから、買い取り請求があるからあんたのは買ってやるからどこかに出て行ってくれということですわな、結局は。そういうことだけで、一体話が片づくだろうか。そんな新しい負担に、私は年金生活者としてとてもたえ切れません、頼むでここへ置いてちょうだい、もうじき死ぬで、という人のことをどう考えるかということですね。  私はいろいろな意見を聞いてみると、そういう人がおるために、悪い人といい人と両方考えておるのですけれども、手続をもっと敏速化して、裁判所の機能もかりて早く処理をできるようにという意見もあるし、それから、じいさん、ばあさん、あるいは身障者、そういう人たちについては本人の意向というもの、本人の今後の生活を十分見てやる方法はないかとか、二様の意見があるわけですね。これは、買い取り請求をしたから、あんたのところのマンションは買ってやるから出て行けだけでは済まぬところがあるんじゃないか。これは建設省にも考えてもらいたいのだけれども、そういう場合に、その再建費用を本人に貸してやる、あるいは役所で建ててそれを本人に賃貸ししてやる、そういうような将来何か方法があるならば別だけれども、過渡的にもう一味、何か考えることができないものか。それがないから、この法案の一番急所というのは、いい少数者、気の毒な少数者をどうするかというところがわれわれ野党としても一番頭の痛いところなんですよ。何かそれは知恵はないのかね。法案を作成したときに、知恵はないのか。銭さえ払えばいいじゃないか、出て行ってくれということで済むものかどうか。
  94. 中島一郎

    中島政府委員 今回の区分所有法改正は、繰り返しになりますけれども区分所有者相互間の権利関係を調整するということに主眼があるわけでありまして、従来は全員一致でありましたために、一人でも反対をいたしました場合には、それ以上一歩も手続が進まなかった、建てかえの話し合いも進まなかったという実態にありましたために、まずこの一歩をともかくも乗り切るためにはどうしたらいいかということで、厳格な要件のもとに、五分の四という非常に多数の特別多数決によって建てかえの決議をすることができるという道を開いたわけであります。  この建てかえの決議の後で建てかえの手続をどう進めていくかというようなことにつきましては、区分所有法において一応の筋道、手続は決めておりますけれども、それを踏まえてと申しましょうか、そういうものを背後にして、そして関係者の話し合いによって円満な解決を図っていただくことが望ましいわけであります。  その場合に、あるいは建てかえ決議の効力を裁判所の許可に係らせるというようなことも考え方としてはないわけではございません。裁判所が非訟手続によって諸般の事情をすべて勘案をして、そして貧困者と申しましょうか経済的弱者に対する手当てなどもした上で建てかえの手続を進めるというようなことも、考え方としては全くないわけではございませんけれども裁判所の本来の仕事であります、一定要件法律で定めておいて、そして事実調査をして証拠によって事実を確定して権利があるかどうかを判断するという、いわゆる三段論法ということから言えば、それは裁判所の役割りというのには合わないんじゃないか、ふさわしくないんじゃないか、あるいは、この建てかえの決議が有効か無効かというような重要な問題を非訟事件で裁判所が決めてしまうというようなことには、憲法上の問題はないだろうかというようなことを考えますと、やはりこういう、ただいま申しましたような方法もとることができないということになりますので、どうしても今度私どもが用意いたしました法案のようなことに落ちつかざるを得ないわけであります。  あとはいろいろな社会的経済的な施策等によって妥当な解決を図っていく、そのためには、それぞれの所管のところでいろいろとお考えをいただかなければならない問題もあろうかと思っておりますけれども、今回私どもが準備いたしましたのは、そのうちの法律的な制度の面でありまして、それと社会的経済的ないろいろな施策とが相まって、この建てかえを円満に適正に処理していく手続を生み出していくことが望ましいというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
  95. 秦野章

    秦野国務大臣 いまの先生の御意見は、私も非常に大事なことだと思っておったわけです。  実際問題としては、結局古くなって建てかえというときですね、いま百十万戸マンションといいますけれども、大体三大都市圏なんですね。したがって、古くなったら必ず地代が上がっているのですよ。したがって、古くなったものを建てかえる場合には、できれば五階を十階にするとかそういうことも考えていかなければならぬし、土地の値段が上がるから、結局出ていく人もかなりの金額を取得していくことになるだろう。  やはりよき弱い人ね、いまおっしゃるような。これが一番心配なんだけれども、これは経済的な、社会的な一つの展望の中では、そういうようなものが当然考えられる。地代の法則も、大体長い間にはやはり土地が特に都市の場合は上がるということ、それから五階を十階にすれば非常に値打ちが違ってくるということで、取得する金額が高いであろう。それからまた、法律の中にはそういう非常に困ったときに、何かちょっとその人の移転のために延ばしてやれという規定もあるようですから、その場合の延ばすという意味は、やはり管理組合は一種のいい意味の隣保組織になって、そういう困った人に行き先を見つけるとか、そういうふうにリードしていかなければならぬと思うのですよ。  弱い者を切り捨てるようなことはいけないことで、その点については経済的な面と、それから管理組合が法的な管理組合だという理解だけじゃなくて、一種の隣保の精神でもってやっていくというようなことに指導していく、これが非常に大事だ。そういうものが実っていけば、大変うまくいくんじゃなかろうか、決して気の毒なようにもならぬように、むしろそれなら結構だというようなふうに持っていく可能性というものは大変あるのではなかろうか、こういうふうに思いますので、ちょっと補足をしてお答えをしておきます。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと時間がなくなってしまいましたけれども、貸しビル、複合ビル、住宅金融公庫、住宅公団のマンション、本法の適用がみんな区分所有者が存在しておればあるわけですね。そうですね。まず第一に、区分所有者がほんの二つ三つだ、たとえばこのくらいのものだ、大きな会社が一つ全部持っておって区分所有者が二件しかない、こういうときには管理組合なんかつくる必要はなくて、区分所有者同士の協定でいいのではないか、これが一つね。  それから住宅・都市整備公団の団地ですね。これは大きな団地で、この法案趣旨だと全員総会を予想しておるようですね。そんな集まるところがありはしませんぜ。それで一棟ごとでなくて全般の組合を望んでいるでしょう。全員集会、そんなものは集まるところありはせぬわ。そうすると、何で代議員制を考えなかったかということが一つ。  それから、たとえばいまこの区分所有者が、小さいものが三つ、四つあって大きなものが一つある。そういうところで議決権がみんな一、一、一、一なのかということ、いかがですか。
  97. 中島一郎

    中島政府委員 最初の問題でありますけれども区分所有者の数が非常に小人数であるという場合でありますけれども、その場合でもやはり区分所有ということでありますから、区分所有法の適用はあるわけであります。そういうものについてまでは区分所有法の適用から外したらどうかということでありますが、確かに今回の区分所有法改正はかなり大人数の区分所有者がいる区分所有形態というものを頭に描いて立案をしておりますけれども、小人数の区分所有者区分所有建物についてこれを適用しましても決して不都合な結果は起こらないというような配慮をいたしております。たとえば、規約でありますとか管理者でありますとかというものは任意的なものといたしておりますから、必要のないところでは置かなくてもいいということになるわけであります。  それから、その次に代議員制はどうかという点でありますけれども、これは特別多数決議を要する決議事項とそうでない決議事項とがございまして、特別多数決議を必要とする決議事項につきましては、集会を開いてその四分の三以上の特別多数決議でなければ議決できないということになっておりますので、その他の方法、たとえば代議員制というようなものはとれないわけであります。ただ、一般決議事項につきましては、集会の過半数で決議するのが区分所有法規定でありますけれども規約で別段の定めをすることは許されております。適宜の定めをすることができるわけでありますから、代議員制をとるということは可能であります。  それだけでよろしゅうございましたでしょうか。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ議決権が、大きいものも小さいものもみんな一か。
  99. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有法は「区分所有者及び議決権の各四分の三以上」というような規定を置いておりますので、それは頭数も四分の三、議決権も四分の三という意味でございます。したがいまして、頭数の四分の三ということでありますれば、それは一人一議決権ということになりますが、議決権議決権割合による四分の三ということになれば、それは床面積割合による四分の三以上ということになるわけでありまして、重要な問題につきましては、頭数と議決権割合と両方の四分の三以上を要求しておるというわけであります。
  100. 横山利秋

    ○横山委員 まだ非常に質問事項があるんでございますが、時間を超過いたしました。大変残念でございますけれども、私の質問を終わることにいたしますが、事ほどさように、これは実際問題を例示して話をいたしますと、ずいぶん問題があり過ぎるような気がいたします。  したがいまして、冒頭に申しましたように、この法律の運用というものは、相談相手がない。法務省も、私はそう相談に乗れぬよ、県や市も相談に乗れぬよというようなことはまことに遺憾千万でございまして、これでは法運用が全きとは言えない。数々の問題があるように思います。  いずれまた、時間がございましたらもう一度質問をさしていただきたいことを希望いたしまして、終わることにいたします。
  101. 綿貫民輔

    綿貫委員長 午後一時四十五分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ────◇─────     午後一時四十六分開議
  102. 綿貫民輔

    綿貫委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。沖本泰幸君。
  103. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほど大臣からこの法律案趣旨についての御説明がありましたが、この法律案が主として目的にしているところについて、この時点において改正しなければならない理由を端的に御説明いただきたいのです。
  104. 中島一郎

    中島政府委員 先ほど大臣から提案理由の説明で申されたとおりでありますけれども現行区分所有法の施行以来十数年を経過いたしまして、区分所有建物に関する管理及び登記に関し、現行法規定では十分に対応することができない種々の問題が生じてまいりましたので、これに対処するために今回の法律案を準備することにしたわけでございます。  その主な目的の一つは、管理充実を図るとともに区分所有関係合理的な調整を図るということでございます。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕  そのための改正といたしまして、共用部分変更及び規約設定変更等の要件を緩和し、集会の権限を強化し、管理組合法人制度を新設するほか、共同利益に反する行為をする者に対する措置を定め、建物が老朽化した場合等における建てかえの制度を新設するなどの措置を講ずることとしたわけでございます。  主な目的の第二は、区分所有建物敷地登記簿膨大かつ複雑なものとなっている現状を是正し、その登記のあり方の合理化を図ることであります。  このため、区分所有法改正といたしまして、建物専有部分とその敷地利用権とは原則として一体的にのみ処分することができるものとするとともに、不動産登記法改正といたしまして、このように専有部分敷地利用権について一体的にされた処分については、専有部分登記簿にのみ登記すれば足りるということにしたわけでございます。  このような改正は、一般マンション居住者を初め関係各界からかねて強い要望のあるところでありますし、また登記については、日々新しく建築されるマンションについて一日も早く新しい合理的な制度に乗せる必要があるわけであります。ぜひともこの国会において成立させていただきたいと考えております。
  105. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この法案は主としてマンション、中高層分譲共同住宅の管理及び登記を主眼としてできたように思いますが、参考資料の十八ページの中の区分所有建物の棟数からいきますと、約三十二万棟になりますが、専有部分の個数別で見ますと、専有部分の数が二個から九個のもの、小規模な区分所有建物の棟数が二十八万棟、全体の約九〇%弱を占めております。この中には木造の棟割り長屋のようなものがたくさん含まれると思われます。区分所有建物というと一般にはマンションといったものを想像しがちになるわけですが、区分所有建物の大半はこのような棟割り長屋ないしその延長ともいうべきタウンハウスと呼ばれているものであるということになるのじゃないかと考えますけれども、このような小規模な区分所有建物にとってこの改正はどのような実益があるのか。かえってこんな建物に適用することに無理があるのじゃないか。  いわゆるマンションと呼ばれるものと小規模な区分所有建物とでその適用を区分するという方法は別になかったのかどうか、この点はいかがなんですか。
  106. 中島一郎

    中島政府委員 今回の改正案は主としていわゆるマンション、ただいまおっしゃいました中高層の分譲住宅というものを念頭に置いて、これに関する管理充実を図るとともに登記合理化等を図るということを目的とするものでありまして、御指摘のように、きわめて小規模な区分所有建物については、その改正の必要が必ずしも大変大きいというふうには申せないわけであります。  そこで、いわゆるマンションと呼ばれるものと小規模の区分所有建物でその適用を区別するということも考えられないわけではございませんけれども、そのためには専有部分の数でありますとか、あるいは区分所有者の数、あるいは建物の構造等によって区別するということになるわけであります。ところが、専有部分の数とかあるいは区分所有者の数というものは増減の可能性がございますし、それを無視して構造のみで区別するということも適当とは考えられませんので、このような区分は立法技術上非常に困難であると思うわけであります。そればかりでなしに、建物の規模によって二種類の管理の体系を準備するということになりますと、いたずらに法律複雑なものにするわけでありまして、国民の理解しがたい法律になるのではないかということを恐れるわけであります。そこで、今回の改正におきましては、マンション等の管理を念頭に置きながら、他方、これを小規模の区分所有建物に適用しても不都合を生ずることのないようにという配慮をして立案をいたしておるわけであります。  具体的に申しますと、たとえば専有部分敷地利用権の一体化につきましては規約で別段の定めをすることができるという方法を認めておりますのもその一例でございます。また、管理に関しましては、管理者の選任や規約設定は義務的なものとしておりません。任意的なものというふうにいたしております。それから集会に関しましては、区分所有者全員の書面による合意をもって集会決議にかえるという道が残されております。あるいは、区分所有者全員の同意があれば集会の招集手続を省略して集会を開くことができるというふうな配慮をしておるわけでございます。したがいまして、今回の改正によって小規模な区分建物区分所有者に特別の不便を生ずるということになるおそれはないというふうに考えておる次第でございます。
  107. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この改正案で、建物専有部分とこれに対応する、いまお話が少しありましたが、敷地権利敷地利用権とは原則として一体的にしか処分することができないこととしておりますが、この点はマンションについてはきわめて適切であり、当然の措置考えられるのですが、木造の棟割り長屋のようなものまでこの原則を適用するのは持っている人にとっては非常に迷惑になるのではないかという考え方がありますが、この点はどうでしょうか。
  108. 中島一郎

    中島政府委員 先ほどもちょっと触れたところでございますけれどもマンションの場合には非常に適切な方法でありましても、小規模の木造区分所有建物につきましては必ずしも適当でないというようなこともあるわけでありますから、それは規約でこの一体化を外すということができる道を開いておるわけでございます。したがいまして、規約でこの区分建物とそれから敷地とが分離処分可能であるということを決めますと、これは新しい一体化の原則の適用を受けないということになるわけであります。  それからもう一つ付加して申し上げますと、今回この一体化の対象にする敷地利用権というのは共有のものに限ったということでございます。二戸建て一棟の建物を所有しておりまして、その敷地についてはそれぞれが自分の建物の直下の部分敷地を分有する、それぞれ単独で所有するというような形態があるわけであります。大阪近辺に特に多い区分所有建物の形態であるというふうに聞いておりますけれども、そういうものにつきましては一体化の対象にしないという手当てをいたしておりますが、それもただいま御指摘になりましたように、一体化を適用することがふさわしい区分建物とそうでない区分建物があるということを前提にいたしまして立案をしたことでございます。
  109. 沖本泰幸

    ○沖本委員 管理組合法人格を取得する道を設けることにしておりますが、その趣旨は、要するに管理組合法人格を取得すればその法律関係が明確になって活動がしやすくなるということにあると考えるのですが、そういうことになりますと、区分所有者の数が三十人未満の管理組合にとってもそのメリットがある限り法人となる道を開いておくべきではないでしょうか。この案では三十人未満の管理組合を差別しているのではないかと考えられるのですけれども、その点はいかがですか。
  110. 中島一郎

    中島政府委員 管理組合法人格を取得する道を設けるということにいたしましたのは、ただいま御質問の中でも触れられましたように、主として第三者との取引関係における法律関係の明確化を図るというためでありますから、法人化のメリットということになりますと、それは区分所有者の数が多い区分所有関係ほどメリットが大きい、あるいは区分所有者の数の多い区分所有関係に限りメリットがある、こういうふうに言えるかと思うわけであります。その必要性が乏しい区分所有者の数の少ない団体にまで法人格の取得を認めるということになりますと、法人登記を取り扱う登記所事務処理上の問題もあろうかと思うわけであります。このような点を考慮いたしまして、また、この試案を公表して各界の御意見を伺いました際に、各界から寄せられました意見の中にも大体三十名程度というような御意見が多かったというようなこともございますので、新しい制度をつくるわけでありますから、まず区分所有者三十人というところで線を引いてスタートすることにしたような次第でございます。  それで、法人化の意味というのは先ほども申しましたとおりでありますから、区分所有者構成する団体としてどのような範囲のことをすることができるのか、あるいはこの法律の定めるところによって規約及び集会決議に従い共同管理をしていくという点においては、法人になるとかならないとかということで全く変わりがないわけであります。また、法人になることによって税法その他の面で有利な取り扱いを受けるというようなこともございません。そういうことを考えますと、区分所有者の数が三十人未満の区分所有者団体に対して不合理な差別をするものではないというふうに言えるかと思っております。  なお、この制度の運用の結果によりましては、将来この人数制限についても再検討することはあり得ようかというふうに考えております。
  111. 沖本泰幸

    ○沖本委員 では、これはいまの御説明からいきますと、原則としてこういう形にしておいて、将来いろいろ問題が出てくればそれに従ってもう一度検討するということになるわけですか。
  112. 中島一郎

    中島政府委員 人数のことでございますので、二十人ぐらいから五十人ぐらいというような御意見があるわけでありますが、その中で一番多い御意見は三十人ぐらいということでありまして、私どもも、登記所事務処理能力の問題でありますとか、あるいは区分所有建物区分所有者の数による分布の状態でありますとかというものをいろいろ考えますと、三十人ぐらいが適当ではなかろうか、現在のところは三十人というところが一番適当な数字であるというふうに考えておるわけであります。  ただ、新しい制度でありますから、これを施行してみての実績というようなものも将来はあるわけでありますから、三十人が決して将来にわたって長く固定しなければならない数字ではないというふうに考えておるということを申し上げたわけでございます。
  113. 沖本泰幸

    ○沖本委員 駐車場の使用につきまして最高裁の判例が出ておりますが、これは大阪地裁、大阪高裁、最高裁の判例になるわけで、上告審の裁判要旨には「マンション分譲業者がマンション敷地の持分と右敷地内の付属の駐車場専用使用権とを別個に譲渡することが同一土地から二重に利益を得ることになるものと速断することはできず、マンション購入者の全員において、駐車場専用使用権を土地マンション本体の分譲とは別個に購入者に対して分譲する権利が分譲業者に留保されていること並びに右専用使用権の分譲を受けた者及びその譲受人が右駐車場を専用使用することを容認・承諾して、分譲業者とマンション分譲契約を締結したことなど原審認定の事情のもとにおいては、右駐車場専用利用権の設定に関する約定が公序良俗に反するものとはいえない。」こう出ておるわけです。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕  これは、分譲業者がマンションとともにその敷地権利も譲渡する一方、その敷地の一部を駐車場として使用する権利を自己に留保した上、その使用権を特定の区分所有者に別に売りつけたという事例ですが、このようなやり方が分譲業者の販売の仕方として好ましくないことは明らかであるわけです。  そこで、このようなやり方を規制する法律がない以上、この判例の結論はやむを得ないかもしれませんが、今回の改正審議では、このような駐車場利用権の留保を制限するということは検討されなかったのかどうか。駐車場利用権については、このほか、マンションを譲渡するときにこの利用権をそれとともに譲渡することができるのかどうか明らかでないという問題もあると聞いておりますけれども、まずこの点はどうですか。
  114. 中島一郎

    中島政府委員 専用使用権の問題、特に駐車場の専用使用権につきましては、分譲業者等が敷地の一部について専用使用権を留保することは不当ではないかという御指摘がありまして、法制審議会においても十分に検討されたところでございます。しかし、分譲業者あるいは元地主というような者が専用使用権を留保するということは、民法上は契約自由の範囲内の問題でございます。一律にこれを禁止するということは適当ではございませんし、むしろそのような留保を認めることが必要な場合もあろうかと考えております。たとえば、敷地の供給を促進するというような面から必要な場合もあるわけであります。  要は、分譲に際しまして、専用使用権が留保されていることを購入者に十分に理解してもらっておったかということにあると考えられるわけでありまして、分譲住宅の取引業法上の規制にゆだねるべき問題であるというふうに考えて今回の改正法案には取り上げられなかったわけであります。宅地建物取引業法がこの点について改正されまして、その三十五条の一項第五号の二というものが追加されまして、現在は妥当な規制がされておりますので、最近分譲される建物につきましては適切な運用が行われておるというふうに聞いておるわけでございます。  それからもう一点、駐車場の専用使用権については、専有部分を譲渡するときに、専用使用権をも専有部分とともに譲渡することができるのかどうか明らかでないというような問題もあるのではないかという御指摘がございましたが、契約あるいは規約で譲渡できるとか譲渡できないというふうに決めておくことができるようにしておくことがよいと考えられるわけでありまして、区分所有法で画一的に規律するのは必ずしも相当でないというふうに考えております。
  115. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それからこの案では、共用部分変更規約設定変更、廃止はこれまで区分所有者全員合意によることとされていたのを改めて、結局「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会決議によってする。」こととしておりますが、この中に「区分所有者及び議決権の各何分の何以上」という書き方があちこちに出てくるので、その意味についてまず御説明いただきたいと思います。
  116. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有者の何分の何以上と議決権割合による何分の何以上という意味でございます。それで、区分所有者の四分の三以上といいます場合には頭数の四分の三以上ということでありますし、議決権割合の四分の三以上という場合は原則として所有床面積割合による四分の三以上、その両方を含むという意味でございます。
  117. 沖本泰幸

    ○沖本委員 共用部分変更とか規約設定変更等は区分所有者権利にきわめて重大な影響を及ぼすのでありますが、特に規約では、マンションで営業してはならないとか、家畜を飼ってはならないといったマンションの利用方法の規制もされるわけです。そういうことで、このような事項を多数決で決めることになると少数者権利を害することになりはしないかという点があるわけですが、こういう面についてどういう手当てをお考えになっているのか。
  118. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有権といえども所有権でありますから、所有権の絶対性を強調すれば、そこに規約等を定める場合に多数決を導入することは考えられないということになるわけでありますけれども区分所有権というのはあくまでも区分所有権という特殊な所有権であります。というのは、対象が独立した一棟の建物ではなくて、一棟の建物を区分してその部分部分をそれぞれ独立の所有権としたという非常に特殊な所有権でありますから、その共同管理のためには多数決の原理の導入もやむを得ないということになるわけであります。ただ、その場合に単純多数決でいいかということになりますと、それは事柄によりまして非常に厳格な特別多数決を導入する、こういうことになったわけであります。  その場合に、反対者あるいはそれによって不利益をこうむる者に対する配慮をしなければならないということは全くただいまの御指摘のとおりでありまして、たとえば三十一条の規定では規約設定変更等は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会決議によってすることができるわけでありますが、この場合において、規約設定変更等が一部の区分所有者権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならないという規定を設けまして、その規約設定変更、廃止等によって影響を受ける少数者の立場を保護しておる次第でございます。
  119. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまおっしゃった中に「特別の影響」という文言があるわけですが、特別な影響というのはどういう意味合いなのでしょうか。
  120. 中島一郎

    中島政府委員 規約設定変更でありますから、当該の建物内におきましてすでに営業を営んでおる区分所有者があります場合に、新たに営業をしてはならないというような規約を設けることは、その区分所有者にとりましては原則として特別の影響を及ぼすものということになるわけであります。ただし、そういう規約がすでに存在していると否とにかかわらず、その営業行為が、すでに当該区分所有者が行っております営業行為が新しい法律の六条一項に該当するような場合、すなわち建物の保存に有害であるとか共同利益に反するようなものであるという場合には、これは営業してはならないという規約を待つまでもなく営業してはならないわけでありますから、この場合には「特別の影響を及ぼす」には当たらないということになります。  もう一つ例を申し上げますと、たとえば夜十時以降はピアノを防音装置なしでひいてはならないというような規約を設けるというような場合のことを考えてみますと、先ほど申しました六条一項の趣旨からこれは当然のことでありますから、特別の影響を及ぼすという問題は生じないということになるのではないかと考えるわけでございます。
  121. 沖本泰幸

    ○沖本委員 義務の違反についての処置で五十七条から六十条までの間の問題で、五十七条では区分所有者違反行為がある場合には他の区分所有者全員がその行為停止等請求をすることができることとしておるわけですが、この意味は、他の区分所有者がそれぞれできるということなのでしょうか、区分所有者全員でできるということに当たるのでしょうか。
  122. 中島一郎

    中島政府委員 ただいまおっしゃいました後の方、すなわち他の区分所有者全員全員でという意味でございます。
  123. 沖本泰幸

    ○沖本委員 全員であるということになりますと、それぞれの区分所有者、特に違反行為によって被害を受ける区分所有者は、個人でその行為停止等請求をすることができないのでしょうか、できるのでしょうか、その辺は。
  124. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有者が他人の行為によって受忍限度を超えて生活妨害を受けたというようなときには、区分所有権の侵害を理由にいたしましてその妨害行為停止等を求めることができると解されておるわけでございますが、この権利区分所有法規定を待つまでもなく出てくる権利であるということになろうかと思います。  ただいま御質問になっております五十七条の権利というのは、区分所有者共同利益のために区分所有者全員で行使をする権利ということになるわけでありますので、その権利についての権利の存在と行使の方法について定めたものであります。被害を受けた個々の区分所有者が有する権利についてはこの区分所有法は触れていないというわけでありまして、このような権利は五十七条の規定するところとは別に各区分所有者が行使することができると考えております。
  125. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この停止を求める訴訟を起こすには、結局集会決議を要することにしておるのはどういうわけでしょうか。一々集会を招集しなければならないのでは緊急の事態が起こったときには対応できないわけですけれども、その辺の解釈はどう考えたらいいのですか。
  126. 中島一郎

    中島政府委員 いま問題になっております区分所有法六条一項違反の行為、その行為停止または予防を求める権利区分所有者共同利益を守るために存在しておるわけでありますから、第一次的には違反者を除くその他の区分所有者全員で行使すべきものであります。あるいは管理組合法人となったときは、その法人が行使すべきものであるということになるわけであります。そして、そういうような共同権利である以上は、これを裁判請求する場合には区分所有者団体の意思決定機関である集会決議によるとすることが妥当であると考えます。  次に、緊急の事態についての御指摘があったわけでありますけれども、緊急の事態に対処することができるようにということだけを考えました場合には、規約管理者等にこの訴訟を提起することができるというふうに定めておくことも考えられるわけでありますけれども、それでは乱用のおそれというものも全くないわけではないということが考えられます。この五十七条によって訴訟を起こされるというようなことは相手にとっては大変重大問題でありますから、慎重を期して「集会決議によらなければならない。」というふうにしたわけでございます。なお、緊急の場合には、先ほども申しましたように、被害を受けた個々の区分所有者から差しとめ、停止等請求をすることができるということになりますから、それによって対処していただくことになろうかと思います。
  127. 沖本泰幸

    ○沖本委員 五十八条及び五十九条では、違反行為による共同生活上の障害が著しく、他の方法では共同生活維持を図ることが困難であるときは、一定期間使用禁止または競売裁判請求することができることとしておりますけれども、この法制審議会の要綱では競売裁判制度のみを設けるべきこととなっております。この法制審議会の要綱と違って、使用禁止請求をすることができるようにしてあるのは、どういう理由でこうなるわけですか。
  128. 中島一郎

    中島政府委員 確かに法制審議会の要綱においては、区分所有権競売措置のみを講ずるべきこととされておったわけでありますが、一般共同生活維持を困難にするような事由というものは、その区分所有者所有権を有していること自体にあるのではなくて、そこに居住していることにあるというふうに考えられるわけであります。でありますから、競売によって所有権を失わせるまでもなく、一定期間使用禁止によって目的を達することができる場合が多いのじゃないか、そういうような場合はその使用禁止請求にとどめるべきではないかというような御意見もありましたために、より慎重を期するということでこの制度を設けることにしたわけでございます。
  129. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この制度を設けますと、多数派と少数派が対立して、少数派が多数派に圧迫される手段として利用される、村八分的な問題が起こるのじゃないかと新聞等で指摘がたくさんあるわけですけれども、これについての考え方はいかがですか。
  130. 中島一郎

    中島政府委員 多数派と少数派が管理組合運営のことで対立をしておるということでありますが、どのような具体的な状況にあるということはわかりませんけれども、ただ運営について意見の対立がある、互いに対立をしておるというだけでは、とうていこの五十七条以下の義務違反者に対する措置が問題になる余地はないというふうに考えられます。  五十八条以下の使用禁止あるいは競売ということが問題になり得るのは、あくまでも区分所有者が六条一項に定めます建物の保存に有害な行為その他建物管理または使用に関し共同利益に反する行為をした場合であって、しかも、それによる共同生活上の障害が著しく、その差しとめや予防措置をとるというような請求をすることだけでは対処することができないという非常に極端な場合に限られるからであります。もっとも、対立が次第にエスカレートをいたしまして、実際に五十八条とかあるいは五十九条に該当するような行為が行われ、そういう状態になったということになれば、これは区分所有関係から排除されても仕方がないのではなかろうかというふうに考えております。
  131. 沖本泰幸

    ○沖本委員 五十八条の使用禁止請求で、「前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるときは、」こう出ておるわけですけれども、五十九条の競売請求の方は、「第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるときは、」こういうふうにあるわけですが、この趣旨から見ますと、どういう事例があるのでしょうか、事例について説明していただきたいのですが。
  132. 中島一郎

    中島政府委員 ただいま申しましたように、建物の保存に有害な行為あるいは区分所有者共同利益に反するような行為をいたしますと、まず考えられるのは差しとめ請求であります。あるいは、そのおそれがあるときには、その予防を請求するということになるわけでありますが、たとえば深夜に至るまである区分の部分で騒音を発して、管理者等から何回も差しとめるように要求をしても言うことを聞かない。訴訟をやって判決が出てもそれに従わないというような場合には、その「区分所有者の生活上の障害が著しく、」かつ差しとめ請求等によっては「その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるとき」に当たるだろうと思われますので、その場合には使用禁止を求めることができるということになるわけであります。  その使用禁止という方法があるわけでありますけれども、その使用禁止によってもなお「共用部分の利用の確保その他の区分所有者共同生活維持を図ることが困難であるとき」という場合には競売が認められるわけであります。たとえば使用禁止をいたしましても、それは一時的な使用禁止でありますから、二年なり三年なりは使用しないでおりましても、また将来使用させた場合には違反行為を繰り返すということが確実である場合でありますとか、あるいは、使用禁止でありますから、第三者に貸すことはいいということで第三者に貸すわけでありますが、その第三者に貸す場合に、どうも問題を起こす者に貸す、そしてそれを繰り返すというような場合には、この五十九条の要件に当たってくるということになろうかと思います。
  133. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この五十八条の「当該行為に係る区分所有者による専有部分使用禁止」という意味はどういう意味になりますか。また「相当の期間」というのは、どの程度の期間であるのか、だれがどのようにして定めるのか、この点について。
  134. 中島一郎

    中島政府委員 まず「当該行為に係る区分所有者による専有部分使用禁止」という表現でありますけれども共同利益に反する行為をし、またはその行為をするおそれのある当該区分所有者が当該専有部分をみずから使用することを禁止するという趣旨でございます。  それから、相当の期間の使用禁止でありますけれども、「相当の期間」といいます場合には、共同生活維持を図るためにその使用禁止するのが相当と認められるようなそういう期間という意味でありまして、裁判所が判決の中でその具体的な期間を宣言するということになるわけであります。所有権を有しているということを前提にしながらその所有者自身の使用禁止するということでありますから、事柄の性格上、永久的ないしはそれに近いような期間の使用禁止を命ずるということは、これは不適当であろうと思います。まずまず長くとも数年程度の期間ということが一応の限度になるのではなかろうかというふうに考えます。それ以上の長期間にわたって使用禁止を命ずるのでなければ共同生活維持を図ることができないと認められるようなときは、むしろ競売裁判によるべきであろうというふうに考えるわけであります。
  135. 沖本泰幸

    ○沖本委員 団地の管理の場合ですが、団地全体で一個の管理組合をつくって、その管理組合で団地内の共同施設だけでなくその他の建物管理も一括して一本で行っている場合が多いように思いますが、この団地の管理の実態に今度の改正案が対応できるのかどうかという点について。
  136. 中島一郎

    中島政府委員 団地内の建物管理についてでございますけれども区分所有法上は各棟ごとにその区分所有者団体管理を行うということをたてまえとしておるわけであります。ところが、団地の管理の実際は、ただいまもおっしゃいましたように、原則どおり各建物のことは各建物ごと管理組合を設けて管理しているところもございますけれども、団地内の建物管理をも含めて団地全体の管理組合管理をするという方法をとっておるところがむしろ多いわけであります。そのいずれの方法をとるかということは法律で画一的に定めることは適当でないわけでありまして、当事者の自治によってそのいずれをも選択することができるものとすることが適当であろうというふうに考えまして、このことを法律上明らかにしておるわけであります。  そこで、この法律案では、団地の団体でどの範囲のものを管理すべきかということは団地の規約で定めることができる、それに各棟ごと団体の意思ももちろん反映させておりますけれども原則は団地の規約で定めることができるというふうにいたしております。
  137. 沖本泰幸

    ○沖本委員 六十六条には、建物区分所有に関する第一章の規定のうち必要な規定を団地の関係に準用するという規定のようでありますが、長文で難解なんですが、このような規定一般の人、団地の管理に当たる人に理解ができるのか、もっとわかりやすい条文にはならないのか、この点の工夫はあるのかないのかという点。
  138. 中島一郎

    中島政府委員 確かに六十六条の準用規定、特に読みかえの部分等は大変読みにくい条文であるということになろうかと思いますけれども、この規定は、団地関係管理を適正に行うことができるように区分所有関係における管理に関する必要な規定を準用いたしておりまして、そのために必要な読みかえをしたものであります。  現行法のもとでは、団地の規約で何を定めることができるかという点が必ずしも明らかではございません。団地の管理のための経費に関する債権の優先的確保も図られていないなどなど、団地の適正な管理のために十分でなかった点もありますので、これらの点を明確にするために今回の改正をしたわけであります。そのために、その読みかえ規定現行法より大変詳細になったというようなことになっております。団地内における管理の仕組みを区分所有関係における管理の仕組みと同様に詳細に規定するということになりますと、どうしてもこのように読みかえ規定が長文になる。一見してやや難解の感じを与えるということになるわけでありますが、これを各条文ごとに読みかえるべきところを置きかえて文章化するということをいたしますと、決して理解に困難を来すという条文ではございませんで、かえって団地の管理関係は、現行法に比べてはるかに明瞭になったというふうに考えるわけでございます。これを別条文にして書き直しますと、別に三十五条の条文を書かなければならない。その方がはるかに煩瑣になるというようなこともあるわけであります。そもそも管理に関する基本的な構造が区分所有関係に関する管理関係と同様でありますので、立法技術上は、このような準用規定で表現するよりほかに方法がないというような次第でございます。
  139. 沖本泰幸

    ○沖本委員 不動産登記関係ですが、建物専有部分敷地利用権とを一体としてしか処分することができない場合には、その処分に関する登記は、建物専有部分登記用紙にのみ記載すればもう事足りるということでありますけれども、民法の第百七十七条の規定ですと、不動産の物権の移動は、登記をしなければこれを第三者に対抗することはできないことになっておりますが、敷地権利の変動についてどういう対抗要件を満たすことができるのでしょうか。
  140. 中島一郎

    中島政府委員 専有部分と分離して処分することができない敷地利用権は、これは敷地権として専有部分登記用紙中にこれを書き込む、表示の登記をするという方法をとることはすでに申し上げたとおりでありますが、そういたしますと、この敷地権の表示を登記した専有部分についてされた権利に関する登記、たとえば売買の所有権移転でありますとかあるいは抵当権設定でありますとか、そういう権利に関する登記は、敷地権についても同一の登記原因による相当の登記としての効力を有するということにいたしております。これは新しい不動産登記法の百十条の十五あるいは百四十条の三の第二項であります。  そうなりますと、専有部分敷地権とについて一体的にされた処分に関しては、専有部分登記用紙登記をすれば、土地登記用紙には登記をしなくても、敷地権について民法百七十七条の規定する対抗要件としての登記をしたことになるというのが新しい制度でございます。
  141. 沖本泰幸

    ○沖本委員 建物専有部分登記用紙にのみ記載すれば足りることにするのであれば、敷地登記用紙は不要になるのではないのでしょうか。この場合でも、敷地登記用紙を閉鎖することはしていないようでありますが、この理由をお聞かぜいただきたいと思います。
  142. 中島一郎

    中島政府委員 敷地利用権につきまして、土地登記簿権利の変動を公示する役割りは、新しい制度のもとでは現在の制度に比較すれば著しく減少するということは御指摘のとおりであります。しかしながら、その登記簿を閉鎖することができないのは、一体性原則に反しない敷地権のみの処分等があり得るわけでありますから、その登記はこれを土地登記簿にすることを認めなければならないからであります。  たとえて申しますと、所有権敷地権であるという場合に、区分所有者がその土地に用益権を設定するというような場合がございます。たとえば、その土地の地下に地下鉄が通る、地下地上権の設定をしなければならないというような場合、あるいは団地内に店舗を建築するために敷地の一部に賃借権を設定するというような場合がございますが、こういう場合には一体性原則に反しないわけでありますから、その設定登記を認めなければならないわけでありまして、その登記土地登記簿にするほかはないということになるわけであります。したがいまして、土地登記簿はまだきわめて限られた範囲内においてその効用を果たす、こういうことになるわけでございます。
  143. 沖本泰幸

    ○沖本委員 一応終わります。
  144. 綿貫民輔

    綿貫委員長 岡田正勝君。
  145. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 冒頭に大臣にちょっとお尋ねいたしますが、今回の法改正は、所有権というものが多数者によりまして非常に影響を受けるという特徴のある法案でありますが、この点に関しまして基本的な考え方を大臣はどのように持っていらっしゃいますか。
  146. 秦野章

    秦野国務大臣 御指摘のとおり、今回の法律案においては、共用部分変更規約設定集会の四分の三の特別多数決によってすることとし、また一定要件がある場合には集会の五分の四という多数決で建物建てかえをすることができるというふうにするなど、大幅に多数決処理の方法を導入することにしております。建物の各専有部分に対する所有権は独立の所有権であるといっても、物理的に一体として不可分の一つ建物の各部分に対する所有権であるという特質がありますので、お互いに所有権の絶対を主張し合ったのでは、結局それぞれの所有権の権能を全うできないという考え方に立ってこのような多数決処理制度を導入したわけであります。  ただ、決して多数決万能という考え方をとっているわけではなくて、少数者利益との兼ね合いを図っております。たとえば規約設定変更が一部の区分所有者権利を害するときは、その承諾を必要とする。あるいは多数決による建てかえの制度の導入に当たっても、その要件や手続においてできる限り少数反対者の利益の保護に意を用いておるというような趣旨でつくられております。
  147. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 局長さんの方にお尋ねいたします。  区分所有者住居をめぐる法律関係に直接影響を及ぼす重要な改正がたくさんあるわけですね。この問題に関しまして、法制審議会審議並びに立案に当たりまして、居住者の意思というものをどういうふうに把握をし、反映をされたかということについて説明願います。
  148. 中島一郎

    中島政府委員 今回の改正は、区分所有者権利あるいは義務に直接非常に重要な影響を及ぼす改正であることはただいま御指摘のとおりでございます。可能な限りその意思を法案に反映させるということに努めたわけでありますが、まず法制審議会の民法部会において管理に関する問題点の検討を開始するに先立ちまして、分譲業者、管理業者等の関連業界のほか、管理組合その他の区分所有者団体、さらにそれらの者から日ごろ相談を受ける立場にある建設省、住宅公団等の担当者から区分所有建物管理実情と当面している問題点について意見の聴取を行いまして、これを踏まえて審議を行ったわけでございます。  意見聴取をした区分所有者等の団体と申しますと、マンション問題を考える会あるいはマンション問題で行動する会、住宅管理組合連絡協議会、関西分譲共同住宅管理組合協議会、それから京滋マンション管理対策協議会、欠陥住宅を正す会その他であります。  そういうことで審議を行いまして、五十七年の七月に試案を公表いたしまして、そしてその試案に基づいて意見の聴取を行いまして、また審議を続けたわけでありますが、この試案に対して寄せられました区分所有者団体ないし個人の意見を十分に参酌をしたような次第であります。さらに事務当局におきましては、各問題点ごとに必要の都度これらの団体に対しまして実情の調査及び意見の聴取を行いまして、これを民法部会の審議に反映をさせましたし、また住宅公団や建設省の行いました調査にあらわれました区分所有者の意識というものをも十分に参考にさせていただいた次第でございます。
  149. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、この問題で日ごろ一番大事なと言っては言葉が適切でないかもわかりませんが、平生管理の問題で非常に大事だというのは、健全な管理維持をしていくためにはやはりその管理経費が必要ですよね。この管理経費の徴収といいますか積み立てといいますか、これがいろいろ出された資料によりますと非常に十分でないということが一つの大きな問題点になっておりますが、やはりせっかく法案をつくられるのですから、どこかでそういう点に何か対策が立ててあるのだろうか。この法案の中で積立金を十分にさせる。いわゆる積立金がないためにずいぶんトラブルが起きておりますので、そういう点の対応はしていなさると思うのですが、どういう対応をしたかお知らせください。
  150. 中島一郎

    中島政府委員 共同管理をどのように行うかということは、これは管理費の額に影響してまいりますし、修繕をどの程度行うかということは積立金の額にも関係してくるわけでありまして、この額を決めるのはそれぞれの区分所有者あるいは区分所有者団体に決めていただくということで、この法案はその点には介入をしておらないわけであります。で、規約その他によりまして管理費の額あるいは修繕積立金の額が決まりました場合には、その徴収のための法律制度を整備するというのがこの区分所有法の対象と申しましょうか、賄うべき守備範囲であるということになるわけであります。  そこで、この改正法案はこの点についての手当てといたしまして、先取り特権の問題と、それから特定承継人に対する請求規定充実したということでございます。これによりまして、規約等によって共同管理の経費として区分所有者が出捐すべきものとされた管理費あるいは修繕積立金等については広く先取り特権が及び、かつ区分所有者が交代した場合にはその承継人に対しても請求できることになったわけであります。また、管理費の取り立て等については規約または集会決議によって管理者に訴訟追行権を与えたというようなこともございます。この点は現行法では必ずしもはっきりしていなかった点でございますので、これらの改正によりまして法律制度としてはかなり整備されたというふうに考えております。
  151. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、これだけいわゆる管理に必要な費用の積み立てあるいは先取り特権、そういうものを法律の上で対応なさったということになれば、三十戸以下のマンション、そういうところは、われわれの方にもぜひそういうものを適用してもらいたいなという気持ちが当然あろうかと思いますが、三十戸以上ということに限定してありますから、三十戸以下の分についてはこの新しい法案による対応はやはりありませんね。
  152. 中島一郎

    中島政府委員 区分建物につきましては、区分所有者が当然に団体構成しましてその団体によって共同管理を行っておるというのが実態であり、かつ法律上の形であろうかというふうに思うわけでありまして、一般管理組合というふうに呼ばれておりますが、その管理組合法人化する道を開けということが今回の改正に先立って御要望が強かったわけであります。しかし、この管理組合法人化するということのメリットは、区分所有者の数が多い管理組合の場合には大変メリットが大きいわけでありますけれども、少人数の区分所有者しかいない管理組合についてはそれほどメリットがないと申しましょうか、全くない場合もありますし、あるいは逆に法人格を乱用するというようなマイナスの面もないではないということで、どの辺のところに線を引いて法人格を取得することができるようにするかどうかということが一つの問題であったわけであります。  それについてはいろいろな、二十人、三十人、五十人というような御意見もあったわけでありますけれども、先ほど申しましたような法人化することによるメリットの問題あるいは登記所事務処理能力の問題、いろいろなことを考えますと、三十人以上ということが現段階では適当ではなかろうかということで三十人以上ということにいたしましたので、この法律によりますと、区分所有者の数が三十人以上の場合には法人格を取得して管理組合法人となることができますが、三十人未満の場合には法人格を取得する道はない、こういうことになるわけであります。
  153. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 次に、特別多数決で活動がしやすくなったということはここでよくわかるのでありますが、そのために理事者の勝手な行動があるとしたならば、区分所有者に対して被害が大きくなってくる、いわゆる被害を受ける危険性が大きくなるというようなことが出てこぬでしょうか。もしそれが出てきたときに、それは一体だれがチェックしてくれるんだろうかという心配があるんですが、その点はいかがですか。
  154. 中島一郎

    中島政府委員 管理組合法人格を取得いたしません前には、管理者というものを選任して業務の一部または大部分を任せるというようなことが行われるわけでありますし、これが法人になりました場合には理事を選任してその理事法人の業務を執行する、こういうことになるわけであります。でありますから、法人格を取得するにいたしましてもいたしませんでも、管理組合はその業務の一部または大部分を他人に広い意味で委任しなければならない、こういうことになりますから、その者の業務の執行を監視することが重要になるわけであります。監視を怠りますと、理事者が勝手なことをして区分所有者損害を与えるおそれが抽象的にはあるわけであります。  そこで、これは他の団体も同様であろうと思いますけれども区分所有者はそれぞれ自分の選任した管理者あるいは法人理事に対しまして監視をする方法というものを区分所有法も幾つか設けております。  まず、理事なりあるいは管理者を選任するのは区分所有者集会において選任をするわけであります。解任も同様であります。それから理事者には事務報告をする義務というのを認めておりますので、義務として事務の報告をしなければならないというようなこともあるわけであります。さらには、法人になりますと監事という職を設けておりますから、その監事が理事の業務の執行を監督する、監視するというようなこともあり得るわけであります。あるいは理事者として不適当である、不適任であるというような場合には区分所有者裁判所に解任の請求をすることができるというような制度も設けております。でありますから、区分所有者はこれらの手続、制度を十分に活用しまして理事者の勝手な行動を監視するということになるわけであります。
  155. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 先ほどおっしゃいました管理組合の中における監事というのは、一般常識的に見ますと、官庁におけるところの監査と同じように、金銭出納に対する監事というふうについ受け取られがちでございますね。この法律では、私、読み落としかもしれませんが、監事の任務というのはいま言う理事者行為に対してもこれをチェックする機能を持たせるように何条かでなっておりますか。
  156. 中島一郎

    中島政府委員 管理組合のうち管理組合法人には監事を置かなければならない、こういうことになっておりまして、監事につきましては民法の規定を準用いたしております。  民法の五十九条というのを準用いたしておりまして、民法の五十九条によりますと「監事ノ職務左ノ如シ」とありまして、一が「法人ノ財産ノ状況ヲ監査スルコト」、二といたしまして「理事業務執行ノ状況ヲ監査スルコト」、三といたしまして「財産ノ状況又ハ業務ノ執行ニ付キ不整ノ廉アルコトヲ発見シタルトキハ之ヲ総会又ハ主務官庁ニ報告スルコト」等々あるわけでありますから、会計関係のみならず理事業務執行全般について監査をするということになるわけであります。
  157. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今度の法案では管理者区分所有者にかわりまして訴訟をするという権限を与えておりますが、その理由は一体何でしょうか。まず、それから答えてください。
  158. 中島一郎

    中島政府委員 管理者ということになりますと、規約または集会決議によりまして、区分所有者全員を代理いたしまして第三者である修繕業者との間で修繕契約を締結する、あるいは区分所有者全員を代理して各区分所有者から管理費等を受領することができることになるわけであります。しかし、修繕業者に対しまして、修繕業者が完全な修繕をしてくれない場合にその契約の履行を求めるとか、あるいは区分所有者に対して管理費の支払いを求めるというような訴訟を提起するまでの権限ということになりますと、現行法上それが管理者に与えられているかどうかということは必ずしも明らかでなかったわけであります。むしろその点については消極説が有力であったということが言えようかと思うわけであります。  そういたしますと、ただいま申しましたような訴訟はだれが提起することができるのかということがはっきりいたしません。区分所有者全員で提起をすることができるということは、これはまあはっきりしておるかもしれませんけれども区分所有者全員が訴訟提起しなければならないということでは実務上大変不便であります。そこで、区分所有者の意思によりまして共同管理のための業務執行者としての管理者が選任されております以上は、この管理者にただいま申しましたようないろいろな訴訟を提起させる、そして区分所有者全員にかわって追行させることができるようにすることが適当ではなかろうかというふうに考えたわけでございます。  ただ、訴訟追行はきわめて重要な事項でございますから、管理者が選ばれておれば法律上当然にかつ包括的に訴訟追行権を有するということにいたしたのでは危険であります。そこで、区分所有者の特別の授権のためには規約または集会決議で訴訟追行権を与えることにしたらどうかというのが今回の改正法案の立場でございます。
  159. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、いまお話を聞いた段階では非常に明瞭であると思いますね。たとえば、全員を代理するという権限をもらい、修繕契約などをした場合、それの遂行が完全でないというときにはそれに対して訴訟権をもって当たる、あるいは管理費を徴収する、しかるに納めてくれない者がおる、なかなか応じない、そういう場合には訴訟をする、これは非常に明瞭でありますが、それ以外にはどんな訴訟をどんな要件で行うことができるか、あるいはもうそれ以外は全然ありませんということなのでしょうか。
  160. 中島一郎

    中島政府委員 それ以外の訴訟ということになりますと、五十七条の「共同利益に反する行為停止等請求」がございます。区分所有者建物の保存に有害な行為あるいは共同利益に反するような行為をし、またはそのおそれがある場合には、他の区分所有者全員共同利益のためにその停止を求め、その行為の結果を除去するような訴訟を提起することができるわけでありますが、これを管理者または集会において指定した区分所有者集会決議によって代行させると申しましょうか、訴訟を提起させることができるということになっております。
  161. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、いま御説明のありましたたとえば共同利益に反するような行為あるいはそのおそれがある場合、集会決議をもって管理者に訴訟を代行せしめるということですが、集会決議がなくても、共同利益に反するあるいはそのおそれがある場合には管理者考えでやれるわけですか。
  162. 中島一郎

    中島政府委員 五十七条の「共同利益に反する行為停止等請求」は非常に重要な訴訟であるというふうに考えておるわけでありまして、これについては区分所有者全員が訴訟を提起する場合でも集会決議によらなければならないというのが第二項の規定でございます。その集会において管理者その他の者を指定して全員のために訴訟を提起させることができるという制度にしておるわけでございます。
  163. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 念のために重ねて質問をいたしますが、いままでの御説明を聞いてみると、管理者が勝手に裁判をやって区分所有者たちに迷惑がかかるというような弊害は全然ありませんね。
  164. 中島一郎

    中島政府委員 管理者が訴訟をやるわけでありますが、集会決議に基づいてその都度管理者がかくかくの訴訟をする、あるいはこの訴訟追行権は、被告になる場合もございますので、被告になったということで集会を開いて報告をする場合はいいわけでありますが、規約によって包括的に訴訟追行権を与えられております場合に、管理者が訴訟をやって、訴訟のことでありますから、もし敗訴いたしますとそれが全員に効力が及ぶことになります。  そこで、その場合には、管理者は「原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。」ということにしております。これが二十六条の第五項の規定であります。この通知を受けまして、区分所有者は、管理者管理費の請求訴訟を起こしたあるいは修繕義務の履行を求める訴訟を起こしたことがわかりますから、この訴訟は管理者に任せておいたのでは危ないということになりますと、区分所有者利益があればその訴訟に参加することもありましょうし、あるいは弁護士さんはだれを頼んだのだというようなことで介入していくこともできるということにしておるわけでございます。
  165. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 建設省の方へこれをお尋ねした方がいいのではないかと思いますが、このごろは非常に大規模なマンションがふえておりますので、その大規模なマンション管理ということになりましたら専門的なノーハウを必要とすることが非常に多うございますので、専門会社が介入してくることが必要となるのじゃありませんか。そのことについてどう考えていらっしゃるか、これは管理会社等の指導監督は建設省が当たるということになっておりますので、質問しているのです。
  166. 斉藤衛

    ○斉藤説明員 いま先生御指摘ございましたように、マンション管理は非常に広範囲な仕事をやらなければならないわけでございます。しかも、専門的なものを要するわけでございます。そういう意味で、通常の場合見てまいりますと、ほとんどが業者に管理を委託しているケースが多いわけでございまして、私どもの方といたしましてもそういう業者の健全な育成を図っていく必要があろうということで、昭和五十四年の十二月になりますが、社団法人で高層住宅管理業協会というものの設立を認可いたしまして今日に至ってきているわけでございます。そこの団体が現時点で見ますとかなり広範囲な業務をやっておりまして、現存いたします民間のマンションの約七割ぐらいはこの団体管理をさせていただいているのではないかと思いますが、そういう団体につきまして適切な管理ができるように管理委託契約のようなものを示すなりいたしまして指導をしてきているところでございますが、今後ともますますマンションの数等がふえていくことになろうと思いますので、一層指導を強めてまいりたい、こんなふうに考えております。
  167. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 今度多数決による建てかえというようないままでなかった区分所有者所有権の制限をしていくという非常に大胆といいますか画期的といいますか、こういう法律になりますので、それに関連いたしまして二、三質問をいたしたいと思いますが、この制度を設けたという趣旨、この制度を設けなければならぬと思ったその趣旨は一体何ですか。
  168. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有建物ということになりますと、各専有部分は物理的には一体不可分である、それにもかかわらずそれぞれが独立の所有権の対象にされているという特殊事情があるわけであります。そのために、建物が老朽化いたしまして大多数の者がこれを建てかえて敷地権利を有効利用したいというふうに希望いたしましても、現行法のもとでは一人でもこのままでいいということを主張する者がありますと建てかえすることができない、建物が朽ち果てるまで待っていなければならないということになるわけであります。区分所有者の数が少数の間はいいかと思いますけれども、大きな大人数の建物マンションになりますと、全員一致を得るということはもう事実上不可能に近いということになるわけであります。そういうことを考えてまいりますと、一体不可分建物の各区分に対する区分所有権という制度を認めます以上、この区分所有関係の継続が著しく不合理になったという場合には、少なくとも多数決原理によってその関係を整理するという方法を講ずることが不可欠ではなかろうかというふうに考えるわけであります。  そこで、老朽化等によって建物が全体として見て社会的経済的には効用を失ってしまったというふうに見られるような場合には、区分所有者及び議決権の各五分の四というきわめて厳格な特別多数決をもってその建てかえを実現する道を開いたというのが今回の改正案の態度でございます。
  169. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 これに似たような、このような法律というものが外国にはあるのですか。
  170. 中島一郎

    中島政府委員 区分所有関係を整理する手段ということになりますと、たとえばアメリカの統一共同所有不動産法というのがございますが、その中には五分の四以上の多数決によりまして建物敷地を一括売却する、そういう決議によって建物敷地を一括売却してその代金を分配するというような方法が決められております。そういう方法ということになりますと、これはわが国の国民の意識には必ずしもマッチしない。多くの区分所有者は同じ場所に再建をする、マンションを再び建てかえることを希望しておるというのが実態ではなかろうかということを考えまして建てかえという制度を採用することにしたわけでございます。
  171. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 アメリカのような土地が非常に広い、日本と事情の違うようなところ、そういうところでしたら既存のビルに爆薬を仕掛けて瞬間にばんと全部つぶしてしまってそれで新しく建てかえる方法もできるし、それからめんどうくさい、こんなところ使うなというので新しい土地へばっとデラックスなものを建てて移ってしまうというようなこともできますから、一括してこれを売却する、そして分配するというような方法もあります。その他ヨーロッパにおきましても、あるいはドイツとイタリア、ああいうところにもたしかあったと思うのですが、それでもその法の適用というのを非常に慎重にして、管理組合はつくっておっても実際には余り使っていない、できるだけ特別多数決議というのをやりませんで、話し合いにゆだねておるというようなことも聞いておりますので、また後で質問の段階で出てまいりますが、外国にはそうそう例はないということだけは確認しておいていいのではないかと思いますが、それに異議はございますか。
  172. 中島一郎

    中島政府委員 ヨーロッパの実情でございますけれども、私どももその運用の実態を十分細かく承知しておるわけではございませんけれども、こういう特別の制度というものはないようであります。どうしてであろうかということを考えてみるわけでありますけれども、石づくりの建物が多いので、二百年なり三百年なりもつということでありますから、いままでに余り切実な問題として建てかえの問題が起こっていない。それを法制化しなければならないほどの現実の必要性がなかったのではなかろうかというようなことも考えておるわけであります。しかし、近時は建てかえについての立法がだんだん検討されるようになってきておるというふうに聞いておるわけでございます。
  173. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ここで余談でありますが、建設省の方、ちょっと予定してないことで御迷惑でしたらお答えいただかなくとも結構です。  いまお話がありましたように、ヨーロッパなんかでは地震等の関係の事情が違いますので、石づくりの非常に古いりっぱな建物がある。だから、ほとんど内部の改装をちょこちょこやる程度でずいぶん長く慎重に使っていらっしゃる、大事に使っているというのがほとんどでありますが、わが日本の場合、非常に近代的なマンション建てながら、実際には売買しているときにはどういう宣伝をしているのか知りませんが、日本人の一般的な印象といたしましては、鉄筋コンクリートづくりの近代的なマンション、こうなったら永久的に使えるのだろうという考え方を持っておる者が多いのです。たとえばシロアリというのがおります。木造家屋なんかを建ててシロアリにでもやられたらえらいこっちゃぞということは日本人にはぴんときます。ところが、実際にはシロアリというのはコンクリートもやっつけちゃうのです。コンクリートもシロアリにはかなわないということは案外日本人は一般の人は知らないですね。  それで近代的なマンションの中に入っておって、たとえば汚水管が詰まったりなんとかというようなことはわかりますが、それは詰まった場合にはどうするという対応もちゃんと立てて建築許可がおろされてあるはずなんです。マンションというものがもてはやされて三十年たっていますか、まだ三十年たってないくらいじゃないかと思うのです。えらいこれは早過ぎるな、えらいぼろだなという、われわれの国の言葉で言いますと、えらいものを建てさせているなという感じがするのでありますが、ヨーロッパの建物と比べて日本の現在のマンションというものに対して何か反省点がありますか。もし嫌だったら結構です。
  174. 鹿島尚武

    鹿島説明員 先生御指摘のとおり、マンションと申しますのはやはり永久の構造物であるというふうに一般理解をいたすところであろうかと思います。しかしながら、配管の例で仰せられましたとおり、なかなかその建築の設備等によりましては耐用年数というのがそれぞれ違っておること、これはもう常識の部類であろうかと思います。  そこで、別途私ども国会で御審議をお願いを申し上げておりますが、建築基準法の改正という形でたとえば三階以上の三百平米以上の共同住宅につきましては、その建物維持保全に関する準則あるいは計画をつくりまして、将来にわたって計画的に維持修繕管理を行っていくというような指針をつくるようにということでいま御審議をお願いを申し上げているところでございます。やはり何かそういう指針をつくりましてやっていくということが必要であろうかと思います。また、私ども標準管理規約ということでマンシヨンの分譲の業者等を通じましていろいろ指導をさせていただいておりますが、マンション管理に当たりまして、先生御指摘の設備等の維持修繕のあり方につきまして、修繕費の積み立て等の奨励をするとか、いろいろ措置を講じまして、周知徹底の方もやらしていただいているというような状況にございます。
  175. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 時間がありませんので、次に進ましてもらいます。  老朽化による建てかえが非常に難航しておったということはよくわかりました。反対者は一人であっても建てかえができないので困ってしまうんだ、だから今度の法改正だ、こうおっしゃるのでありますが、その反対者というのはおおむね老人世帯の人とか、あるいは経済的な余裕のない人が主であると私ども聞いております。これを無視していいんだろうか、この兼ね合いは一体どうするんだろうかというふうに思うのでありますが、いかがですか。
  176. 中島一郎

    中島政府委員 建てかえ賛成派の立場、これも考えなければなりませんけれども建てかえ反対派の立場というものも十分に考えなければならないわけであります。特に建てかえに賛成したくても経済的その他の事情によって賛成することはできない、こういう方々のおられることも十分に配慮しなければならないわけであります。  そこで、今回の建てかえの制度におきましては、多数決によって建てかえの決議をすることができる要件というものを非常に厳格にしぼったわけであります。その区分建物が社会的経済的に見て効用を失ってしまったというふうに認められる場合というふうに非常に厳格にしぼったわけであります。  そういった場合には、しかも五分の四というかなり多数の特別多数決議によりまして、しかもそれも頭数と議決権割合の両方の五分の四以上という厳格な特別多数決の決議によらなければならないというふうにしたわけであります。その上で反対者、不参加者の従前持っておりました区分所有権なり敷地利用権なりというものに対しましては、これを賛成派、すなわち建てかえ参加者に売り渡すように請求をすることができる、その売り渡しは時価によって売り渡すんだということにしたわけであります。  この場合の時価と申しますと、これは建てかえの決議がすでにあったわけでありますから、建てかえを前提にしまして、土地は一たん更地に戻る。したがって、その更地価格が反映をした時価、こういうことになるわけであります。建てかえしない古い建物のままでありますと、五分の四以上の者が建てかえを望んでおるようなそういう老朽化した建物については著しく低い価格でしか取引はされないでありましょうし、むしろ取引の対象にならないのではないかというふうに見るのが常識的であろうかと思いますが、今回の場合は建てかえの決議を前提として更地価格を反映させた時価で買い取ってもらう、こういうことになるわけですから、不参加者も経済的だけからいえばこれは決して不利益はない、むしろ利益になるんじゃなかろうかというふうに考えるわけであります。  ただ、建物区分所有権でありますから、経済的な問題だけでなしに、その建物に将来もっと住んでいたいとか所有していたいとかいうような、そういう感情と申しましょうか気持ちというものも無視することはできない、あるいは生活の必要性ということも無視することができないわけでありますから、この法案におきましては、本来ならば買い取り請求時価支払い建物の明け渡しとは同時履行になるのが原則でありますけれども、特別の事情がある場合には一定猶予期間を設けるというような制度も新設をいたしまして、経済的弱者と申しましょうか、そういった人たちの立場についても配慮をしておる、こういうことでございます。
  177. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ちょっと建設省の方の御用件があるようでありますから、そちらの方だけ先にさしていただきます。  建てかえという大問題は、区分所有者の利害調整の見地からだけではなくて、大修繕というようなことを含めまして、税制あるいは金融等の措置、あるいは都市開発や建築基準法というような面での手当てなどもたくさん必要ではないかと私は思うのです。そういう手当てができたということをまだ私は聞いてないのです。そういう手当てができてないのにこの法改正だけが先に進んでいって果たしてトラブルが起きぬのかな、そういう感じがするのですが、建設省の立場からごらんになりましていかがでしょうか。  なぜこんなことを聞くかというと、先ほども大臣の御答弁を私、はたから聞いておりましたときに、建てかえを特別多数決議でやりましても、三大都市圏の中ということになれば大体便利のいいところへ建っていますので、それが老朽化して建てかえなければならぬ、こうなった場合、いままでのたとえば四階建てを八階建てにするというふうに、土地も便利がいい、そしてしかも建物もりっぱになる、そして戸数もたくさんになるというようなことから、決してマイナスではないと一応の御説明があったのでございますけれども、いままで建っておるマンション等にいたしましても、私も設計技師なんですけれども、その容積率、高さ制限、日陰制限、そういういろんなものがありますね。それをぎりぎりいっぱい、壊せと言われない程度までぎりぎりいっぱい欲張って建っています。それを壊したからといってどうしようもないのですよ。前と同じものしか建てられないのですよ。欲張ってぎりぎりですから。容積もいっぱい、高さもいっぱい、日陰制限があるから頭を外っちゃえというので、頭が斜めになったのもたくさんありましょう。それを今度は建てかえるからといってどんとはできないですね。だから、私が言うのはそれを言っているわけです。  そういう建築基準法上の制限あるいは都市開発の制限、あるいは今度は金融の問題、税制の問題、そういう関係等の手当てがなしにこれをやってええんかな、ただ希望だけばあっと持たして、実際には特別多数決議までやって、やろうかと思ってみたら何にもできぬぞということになっちゃさっぱりだがな、こう思っておるのでありますが、建設省の立場からお答えください。
  178. 鹿島尚武

    鹿島説明員 いわゆるマンションと申しますのは、四十年代後半から大都市圏を中心に飛躍的に増大をいたしまして、現在では百十万戸を超すというふうな推計もなされているような状況にございます。こうしたマンションは将来建てかえを当然必要としてくると考えるわけでございますが、私ども建設省といたしましても、建てかえと申しますのは住宅政策推進の立場からも非常に重要な課題でございますので、その推進策ということを今回の区分所有法改正とあわせまして進めなくてはいけないというふうに考えているところでございます。  たとえば建てかえに要する資金の調達につきましては、現在、住宅金融公庫におきまして、共同で個人が建てかえる場合に各個人個人に融資をするという制度はつとにございます。こんなものを活用することはもちろんでございますが、さらに、その資金調達の方策について必要な措置についてはもちろんこれから検討を進めていかなければいけないというふうに考えます。  それからまた、御指摘のとおり法規制がいろいろございます。容積率一つをとりましてもなかなかむずかしい問題がございますが、たとえば、すでにスタートしている制度でございますけれども、市街地住宅総合設計制度というものをスタートさせております。これは一定の空間、公開されます空地をとりますと、それに応じまして容積率の割り増しを行うというような制度でございまして、こういう制度も活用していただきまして共同でたとえば建てかえをするというふうな方法もあろうかと思うわけでございます。足らざるはさらに検討をしなければいけないと考えるわけでございますが、さらにまた、建てかえに当たりましていろいろ技術援助等でき得る援助をさせていただくというような内容につきましても今後十分に検討させていただきたいというふうに考えております。  それから維持修繕、大規模な修繕ということでございますが、これも修繕積立金というような形で適正な額を積み立てていただきましてそのときに備えるようにということで、標準管理規約普及等を通じてお願いをいたしているわけでございますけれども、実際に工事するときになかなか金が足りないという場合があろうかと思います。そこで、昭和五十六年度からでございますけれども、住宅金融公庫におきましても、共用部分のたとえば修繕等につきましても融資をするという制度を発足をさせていただいております。こんな制度も活用いただきまして適正な管理が推進されますように期待をいたしているところでございます。
  179. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 建設省の方、ありがとうございました。  それでは先ほどの続きに行かしていただきます。  建てかえ決議というのは、老朽化または維持あるいは回復するのに物すごい費用がかかる、いわゆる過分の費用がかかる、そういうものが必要となったときいわゆる建てかえ決議ができるんだよ、こういうことになっております。こんな要件がないのに建てかえ決議がされたというような場合は一体どうなさるのか。  なぜそんなことを聞くかといいますと、その要件というのはだれが決めるんですか。それで、だれが判定をしてくれるんでしょうか。それで、その争いが起きたときにはどこで争えばいいんでしょうか。そういうことがどうも不安でなりません。だから、言葉の上では老朽化または維持、回復に過分の費用が必要となったときすなわち建てかえ決議はできるんだよ、特別多数決議はできるんだよ、こういうことになっておるのでありますが、それほどでもないのになあ、見る人見る人によって違うと思うのですね。そこらがなかなか判定のむずかしいところじゃないかと思いますが、しかし、それでも建てかえ決議はされたということになれば、片方は組合でありますからどうしようもないということになりますので、その要件の存否というのは一体どんな方法で判定されるのか、あるいはどうやって争われるものかということを教えてください。
  180. 中島一郎

    中島政府委員 まず第一次的に要件があるかないかということを考えるのは、これは集会であります。集会で、要件があるから建てかえの決議をしようということで賛成者が五分の四以上になった場合には建てかえの決議をするわけであります。反対者は、要件がない、したがって建てかえ決議は無効であるということで、無効確認の訴訟を裁判所に提起するということも認められると考えております。そうなりますと、要件があるかないか、したがって建てかえ決議が有効かどうかということを裁判所が判決で決める、こういうことになります。しかし、そういうふうに反対者から建てかえ決議無効確認の訴訟を提起いたしませんでも、次の段階といたしまして、建てかえ決議がありますと、賛成者が反対者に対して区分所有権敷地利用権を売り渡すように請求するという段階に進んでまいります。売り渡し請求権を行使いたしますと、もし建てかえ決議が有効であるならばそこに売買が成立をして、所有権売り渡し請求権を行使した者に移転をするわけであります。  反対者と申しましょうか、不参加者としては、その段階まで待っておってもいいわけであります。賛成者が、あの区分所有権は自分の所有に帰したから従前の区分所有者は出ていってもらいたい、明け渡しの訴訟を起こしてくるという段階になります。その明け渡しの訴訟において反対者は被告になるわけでありますから、建てかえ決議は無効であるというような問題その他もろもろの点について争うことができるわけでありますから、そこで建てかえ決議要件の存否ということが争われるわけであります。建てかえ決議が有効である、すなわち要件を満たしておるということ、それから決議の多数決等についても法律の違反はないということ、その他すべて手続が正当に行われてきたという場合には明け渡しの判決がある、こういうことになるわけであります。
  181. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 そこで、建てかえ決議がなされたとき、たとえば裁判所に持っていったとします。裁判所に持っていった場合に、裁判所は総合的に判断をして諾否をお決めになると思いますね。ところが、総合的に判断するという範疇の中には、いわゆる建てかえ決議はこういう場合においてなされるべきものであるという要件を満たしておるかないかということを総合的に判断なさるのではないか。それだけではないか。それからはみ出てしまう老人世帯とか経済的弱者の立場、そういうものは全然裁判所のいわゆる判断の外にあるのではないかというふうに受け取られるのでありますが、そういう弱者の立場をも考慮して裁判所が決定をするという制度であるべきじゃないかと私は思うのでありますが、このような検討はされておりますか。
  182. 中島一郎

    中島政府委員 確かに裁判所において判断をする対象は、この改正法案のもとでは、ただいまおっしゃいましたように建てかえ決議が有効であるかどうか、そのためには建てかえの決議にこの法案の六十二条に言うような要件があるかどうか、あるいは特別多数決議という手続が正当に行われたかどうかということが中心になるわけでありまして、いまの問題になっておりますような経済的な弱者でやむを得ず建てかえに参加できない者がいるかどうかとか、そういう一切の事情というものは考慮の対象外ということになるわけであります。そういうものも一切含めて裁判所が後見的にと申しましょうか、非訟的にと申しましょうか、裁量的にと申しましょうか、判断をして、建てかえの決議の有効、無効を決めるべきであるという御意見もないわけではございません。  法制審議会においてもないわけではなかったわけでありますけれども、そういう手続というものは裁判所としてはどちらかというと本来の裁判所の機能からいうとむしろ例外的な場合でありまして、最近あるいは家事審判その他の手続においてかなり非訟的な、後見的な、裁量的なそういう役割りを裁判所が果たすようになってきておりますけれども裁判所の本来の機能ということになれば、それは法律で厳格に建てかえの要件というものを定めておいて、そして裁判所が厳格な証拠法則によって証拠を調べて事実の存否を確定して、そして三段論法で権利があるかないかということを確定するということが裁判所の本来の機能でありますから、こういった問題についてただいま御指摘のような非訟的な手続を導入するということには消極であったというのがこの法案ができるまでの経緯でございます。
  183. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 この決議をされました後、賛成者の人が反対者に対しまして一方的に売り渡し請求ができるという制度になっておりますね、今度の法案は。そういうことになっておりますが、反対者保護という立場から、反対者の方から買い取ってくれという請求をすることができるという制度をやはり考えてやるべきではないかというふうに思いますが、どう思われますか。
  184. 中島一郎

    中島政府委員 反対者といたしましては、あえて買い取り請求まで行使しないで、そのまま自分の所有権に基づいて居住を続けておればいいわけであります。建てかえの決議がありましても、やはり賛成者の方で、熟慮してみれば反対者の区分所有権まで買い取って建てかえをやって大丈夫だろうかというような問題もあるわけでありますから、一定の期間内に売り渡し請求を行使しなければ建てかえ計画は一応立ち消えになるわけであります。でありますから、反対者としては売り渡し請求権を行使されるのを待っておればいいわけでありまして、自分の方から進んで所有権を失うために買い取り請求権を行使するという必要はない、実益もないわけであります。
  185. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 反対者が時価で買い取られるということになるわけですけれども、先ほどおっしゃいました更地にした時価ということでは、メリットがあるかないかは私はわからぬと思うのですよ。なぜならば近年のように、大昔のことを言えば別ですよ、いまから三十年前に建ったのだから、いまごろになってみなさい、すごいもうけだよということにあるいはなるかもしれませんけれども、世の中は動いておりますので、これからあるいはゼロ成長が続くかもわからぬ、あるいは二%か三%ぐらいの成長かもわからないというような状態の場合、三十年前に買ったときよりもいま更地にして売った方が値段ははるかに大きいですね。はるかに大きいが、それでは今度はいまの世の中で、そのマンションから出て同じような広さの同じような住み心地のところへ住むということが果たしてできるかどうかということが、やはりメリットがあるのかないのかという一つの判断の基準じゃないかと思うのですね。  いまのところを全部ぶち壊して土地を更地にして売ったら、たとえば一人当たりが二千万なら二千万もらえた。二千万だったら、いまがたとえば八畳が二間、それ以外に全部入れて三LDKだというようなことであれば、それだけと同じ面積のものを、しかもそう余り距離も変わらないところでそういうものが手に入るかと言えば、恐らく私は、それは一つの例ですけれども土地代の自分の分け前ではその近くへ同じような広さのものを求めるということはとてもとても不可能じゃないかというふうに思うのです。  そこで、建てかえてその足らず前をちゃんと自分が出すことができて賛成者の立場になって新品のところへまた住むという人は、全然別の意味でのメリットがあります、自分の目的が達せられたのですから。だけれども、出ていく者にとっては余りメリットは考えられぬのではないかというふうに私は思うのです、その点どう判断されるかということが一つ。  それからいま一つは、いわゆる時価ですね。いまさっき、一つ説明は、建っている古い建物は全部壊してしまって更地にして売ったとして幾らだと決めるんだよというふうにおっしゃいましたが、全くそのようにして決めるのですか。だから、建物を壊してしまう前に、更地であるとして、たとえば土地売買業者に競争入札をさせるとかなんとかいうことをしてその時価というものは値段が決まるのですか。どういう決まり方になるのでしょうか。
  186. 中島一郎

    中島政府委員 これはケースは千差万別でありますから一概に言えないと思いますけれども一般的にはこういうことであろうかと思います。建てかえの決議があったわけでありますから、その建てかえの決議の中で建てかえ建物の設計の概要というものを決めることになっております。何階建てのどういう構造の何室ある建物建てる、こういうことが建てかえ決議によって決まるわけであります。そういたしますと、そのための建築費というものも出てまいりましょうし、それを仮に処分した場合の客観的な価値というものも算定が可能であろうと思うわけであります。でありますから、その客観的な価値から建築に要する費用を差し引いたものが現在の区分所有者等が持っておる価値ということになるわけでありますから、それを補償する、こういうことになるわけであります。  ケースが千差万別であるというふうに申しましたのは、建てかえる場合に土地の一部を他に売却するというようなこともありましょうし、あるいは、先ほどから問題になっておりますように、いままで三階建てだったものを十階建て、十五階建て建てるというようなこともありまして、そこに建った従来にプラスされた分を他に売却してそこから利益が上がるというようなこともあります。でありますから、そういうものを差し引きあるいはプラスして時価相当額が出てくる、こういうことであります。
  187. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ちょっと時間オーバーして恐縮ですが、だめ押しでお尋ねしておきたいのですけれども、いま御説明のありました分からいきますと、いまここに古いものがあります、それを壊す費用、それから新しく建てる費用、それを、もし売るとした場合の更地にした土地代金から引いて残ったものを所有者の数で分けたものの一人分という意味ですか、いわゆる売り渡し請求をして本人に渡す金額というのは。それとも、現在ある建物を全部壊してしまって、何にもないよ、土地だけですよ、これを幾らで買ってくれますかと言って買ってくれる値段が決まった、それを、所有者と床面積と両方ありましょうけれども、それで案分比例をした一人分あるいはその一人分の面積の金額を売り渡し代金として渡すのですか。
  188. 中島一郎

    中島政府委員 土地代金ということは一応客観的に出てくるかと思いますけれども、今回の場合は、そこに特定の規模の特定の構造の建物建てるということが前提になっておるわけでありますから、その特定の建物を前提とした土地利用価値ということが問題になろうかと思います。それを前提として時価を算定する、こういうことになろうかと思います。  先ほどお答えを忘れましたが、どこでどのようなふうにして決まるのかということでございますが、これも最終的には裁判所が決めるということになります。やはり第一次的には売り主、買い主の協議によって決めるということになりましょうが、協議が調わない場合には裁判所が決める。これは明け渡しを求める側から明け渡しの訴訟が起こりますれば、その訴訟で、代金金何万円の支払いと引きかえに明け渡せ、こういう判決になりましょうし、あるいは売り主の方から、明け渡すことについては自分は異議がないのだ、ただ時価の算定について意見が違うのだ、買い主の方は一千万だと言うし、自分の方は一千五百万だと言うのだという場合には、積極的に代金支払いの訴訟を起こすということも可能であろうかと思います。
  189. 岡田正勝

    ○岡田(正)委員 ありがとうございました。  時間が切れましたので、また次回に質問させていただきたいと思います。
  190. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、来る十五日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十一分散会