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1983-02-23 第98回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十三日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 綿貫 民輔君    理事 太田 誠一君 理事 熊川 次男君    理事 中川 秀直君 理事 羽田野忠文君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君 理事 岡田 正勝君       今枝 敬雄君    上村千一郎君       高村 正彦君    森   清君       山崎武三郎君    石橋 政嗣君       栂野 泰二君    鍛冶  清君       塚本 三郎君    安藤  巖君       林  百郎君    田中伊三次君  出席国務大臣         法 務 大 臣 秦野  章君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君  出席政府委員         警察庁長官官房         審議官     鈴木 良一君         法務大臣官房長 根岸 重治君         法務省民事局長 中島 一郎君         法務省刑事局長 前田  宏君         法務省矯正局長 鈴木 義男君         法務省保護局長 吉田 淳一君         法務省人権擁護         局長      鈴木  弘君         法務省入国管理         局長      田中 常雄君  委員外出席者         警察庁刑事局暴         力団対策官   川畑 久広君         警察庁警備局外         事課長     吉野  準君         外務省欧亜局ソ         ヴィエト連邦課         長       丹波  実君         法務委員会調査         室長      藤岡  晋君     ───────────── 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件      ────◇─────
  2. 綿貫民輔

    綿貫委員長 これより会議を開きます。  法務行政検察行政及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉委員 大臣所信表明をきのうお聞きをしたわけですが、これを聞いておって感じましたことは、まず第一、第二、第三と順序の並べ方の問題が一つあるわけですけれども、それと同時にいま委員長も言われましたように、国会調査要求承認の中ではちゃんと人権擁護に関する事項というのが、一が裁判所の司法行政に関する事項、二が法務行政及び検察行政に関する事項、三が国内治安及び人権擁護に関する事項となっているわけです。そしていま委員長人権擁護に関する事項質問に入るということを言われたわけでしょう。ところがこれを見ると、だれが書いたのか知りませんけれども、独立の項目になっていないのです。これは非常にそういう面は配慮が足りないというのか、あるいは配慮し過ぎたのかよくわかりませんけれども、ちょっと全体として余り形がよくないといいますか、内容的によくない、こういうふうに考えるわけですね。特に質問をするという意味ではありませんけれども、この点については十分お考えを願いたいというふうに思います。  そこで、この中に「検察行政について」ということで一番最初に挙がっておるわけですね。その中に「悪質な贈収賄事犯」というのがここに書いてあるわけですね。これは、ロッキード事件はこの中に入るというふうなお考えなんでしょうか。法務大臣考え方をお聞きしたい。
  4. 秦野章

    秦野国務大臣 いかなる事件であろうと、要するに汚職事件刑法贈収賄事件というものは、日本の社会を健康的に維持するためにこの追及というものは大変重要な検察の業務である、こういう考え方でございます。
  5. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはわかるのです。「悪質な」と書いてあるんだ、ここに。だから、ロッキード事件というのは悪質な中に入るんでしょうか。大臣が書いたのかどうか知りませんよ。でも大臣が読まれたわけだから、悪質な中に入るのか入らないのかということを私はお聞きをしておるわけですね。
  6. 秦野章

    秦野国務大臣 個々の事件が悪質であるか悪質でないかという評価は、人によって違うと思いますけれども、やはりこれは一般的な常識から判断するほかはないと思います。御承知のとおり、ロッキード事件が悪質であるか悪質でないかということは、目下公判係属中ですから、私が一つ一つ事件について、これが悪質でこれが悪質じゃないというふうに並べることは適当ではない、こう考えます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは公判中の事件であるからね。ここに書いてあるのは、全部公判中の事件なり捜査中の事件のことが書いてあるんじゃないですか。「悪質な贈収賄事犯」とか「大規模な脱税事犯」というのは、これは皆公判中の事件のことを書いてあるんじゃありませんか。だから、ロッキード事件が悪質なものに当たるか当たらないかということは、大臣としては国民感情を踏まえて当然言えることじゃないですか。何もそういうことで、逃げの姿勢とは言わぬけれども、あなたらしくないような印象を受けるのですが、どうなんでしょうか。
  8. 秦野章

    秦野国務大臣 重ねてお答え申し上げますけれども、そこに書いてあるのは、要するに一般的な問題として言っているわけでございまして、一つ一つ事件について、たとえば法務省の統計の中でも、こういう贈収賄が悪質で、こういうものが悪質でないとかというようなことはやらないのですよ。要するに贈収賄事件というものは力を入れてやらなきゃならぬ、この姿勢を特に所信表明では示したわけでございます。どうかそういうふうに御了解願います。
  9. 稲葉誠一

    稲葉委員 「悪質な」というようにわざわざ書いてありますから、私もこの中にロッキード事件が含まれるのだろう、こう思っておったわけですけれども、どうもあなたのお答えは、含まれるというようにもとれるし、それについてはノーコメントだというようにも考えられるし、悪質でないというようにも考えられる。要するに、それについてはノーコメントということでお聞きをしてよろしいでしょうか。
  10. 秦野章

    秦野国務大臣 いわゆる重大な事件だと思いますよ、これだけ世間で騒いでいるし。だけれども、悪質か悪質でないかという問題についてはやや価値判断というものが入りますから、目下公判係属中の事件でありますので、そういう表現で私が決めつけることは適当でない、こう考えております。
  11. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、あなたのお考えの「悪質な贈収賄事犯」の「悪質」とはどんなものでしょうかね。(発言する者あり)大臣に聞いているわけです。いま不規則発言があって、事例を二、三挙げよというのがありましたけれども、それは事務的なことを聞いているわけじゃない。あなたが書いたことかどうかは別として、あなたが読んだんだから、あなたの考え方を聞くのはあたりまえなんだ。きょうは本当はほかの人は要らないのですよ。要らないけれども、そんなことを言っちゃ悪いけれども、きわめて技術的なこともありますから、それであなたにお聞きしているわけですよ。だから、どんなのが悪質なのか、ちょっとこれではわからぬな。
  12. 秦野章

    秦野国務大臣 重大な犯罪か重大でないかということは、比較的に常識的な判断として言えると思うのですけれども、悪質かどうかという問題になると価値判断評価の仕方がいろいろあろうと思うのですね。いま具体的にロッキード事件とおっしゃるから、これは公判係属中なのだから、私はそういう評価をここで私がすることは適当でない、こう思うのでございます。
  13. 稲葉誠一

    稲葉委員 問題は、私が常々疑問に思っておりますことの一つに、あなたも議員のときに言われたことですから、議員のときに言われたことと大臣になって言われたことは別だということは、私はよくわかります。ただ、法律的にこの外為法とそれから受託収賄というものの関係が、これが併合罪なのかいわゆる観念的競合なのかということについては、議論があるはずですね。私どもは、片方が形式犯ですし、常識的に見てこれは併合罪になる。そうすると、範囲は七年半の宣告刑になるわけですね。そういうように理解をするのが相当であると思うのですね。これを観念的競合ということで、重きに従って処断するで五年が最高だ、こういうふうに考え根拠は一体どこにあるわけですか。
  14. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御指摘のいわゆる受託収賄罪外為法違反罪質論でございますけれども、これについては稲葉委員仰せのように、いろいろな考え方があり得るわけでございまして、併合罪と解する考え方もございますし、観念競合考え考え方もあると思います。具体的な事件のことでございますから、余り詳しく申し上げるのもいかがかと思いますけれども、当面ロッキード事件についての起訴の時点における考え方、これは併合罪というふうに解していたと思いますし、それを変えていないと思います。ただ、ただいま稲葉委員のお言葉にもありましたように、典型的な併合罪といいますか、そういうものではないわけでございまして、まあ法律的に言うとややあいまいな言い方になるかもしれませんけれども、形式的には併合罪というふうに見ざるを得ない面があるけれども、事を実質的に見れば観念競合に非常に近いような実態であろう、こういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、形式的な面から言いますと、いわゆる処断刑上限というものは七年半になり得るわけでございますけれども、事を実態的に考えれば、併合罪であれば直ちに宣告刑、つまり求刑を決める場合に一・五倍ということを考えるようなことは実務ではないわけでございまして、要するに実態をにらんでこれはどういう刑が最も適当か、むしろそちらから考えていくというのが実務であること、これは稲葉委員も御案内のとおりであろうと思います。  そういう意味で、事を非常に実質的に考えると、法律的な罪質論はもちろんございますけれども、実質的に言えば受託収賄罪事件というふうにとらえて、外為法違反というのはどちらかというと情状的なものだというふうな理解が十分成り立つわけでございますから、そういう意味求刑を決める場合にも受託収賄罪法定刑というものを特に念頭に置いて決めるということであるわけでございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉委員 私、いま宣告刑と言ったと思いますが、法定刑処断刑宣告刑、この三つの刑の関係、これをちょっとわかりやすく説明してください。
  16. 前田宏

    前田(宏)政府委員 稲葉委員に申し上げるのは釈迦に説法みたいなことだと思いますけれども法定刑と言いますのはそれぞれの罪について刑法の上で決めておる刑でございます。ただ、併合罪とかいろいろな罪質関係等ございまして、たとえば併合罪で言えば、総則の規定によって平たく言えば重い方の一・五倍、それが処断刑上限になるというふうに言われているわけでございまして、処断刑というものは宣告刑、具体的にその裁判で宣告される刑の範囲を決めるその上限ということになるわけでございます。したがいまして、上限を超えてはならないということで、その中で宣告刑が決められるというふうになるわけでございますが、先ほども申しましたように、宣告刑検察立場で言えば求刑でございますけれども、それを決める場合には、その処断刑上限を超えるようなことを考える場合にはやはり上限ということは気になりますけれども、そういうものを超えないような刑を相当だと考える場合には余り処断刑上限ということは考えないということでございます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉委員 私、いま宣告刑処断刑、ちょっと間違えたので、これは整理させていただきます。  ある方が書かれた書物、これは魚釣りの本ですけれども魚釣りの本の中にこういうのが出てくるのですね。七月二十七日の前の日の「三時頃、東京から電話ですというので」云々、こういう話があって出てくるのですが、結局刑事局長から検察首脳会議を開いて、前総理田中角榮に対して「逮捕状を請求したいとのことですが、大臣のご許可を頂きたいのであります。逮捕は明朝七時を期しているそうです」云々。「罪名は何か」「外為法違反です」「外為!」「ええ、しかし収賄容疑充分で、取調べが進めば収賄起訴もすることになるでしょう。」「公判維持の自信は充分あるかね」云々といろいろなことを聞いて、結局「ご許可頂けますか」というようなことで、許可しないわけにはいかぬということで許可になったというふうに出ているわけですね。  そこで、これはどなたが書いたもので、どなたとどなたの間の問答であるかということについては、私もよくわからないというとおかしいけれども言葉をあらわしませんけれども、問題は、この中で、大臣、よく聞いていてください。逮捕許可を求めているというふうに言葉が出ているし、それからその受けた方も逮捕許可というふうにとっているようですね。これは法律的に言いますと、刑事局長があれに対して言ったのは、法律的にはどういうことになるのですか、性質は。何を求めたということになるのですか。どういうことですか。
  18. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いまの御指摘になりました具体的なやりとりのことは、そのとおりであるかどうか、私はよく存じないわけでございますけれども、いまのお尋ねに即して言えば、逮捕許可という言葉が仮に使われているというふうにいたしますと、許可というのは正確な意味許可ではなくて、了承とでもいいますか、そういうような意味を言っているのではないかと思います。
  19. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、大臣に対して了承を求めるというのは、どういう根拠によってそういう了承を求めるということになるのでしょうか。これは許可という言葉についても、受けた方は鮮烈な印象を受けたと言っているのですから、私が考えるのは、その場合に、もしこの方が、外為法だからだめだ、これは形式犯だ、だめだ、こう言ったときに一体どうなるかということなんですよ。問題はそこなんです。それを私は前から一つの疑問に思っているわけなんです。どうなんでしょうかね。
  20. 前田宏

    前田(宏)政府委員 仮定のことでございますから、仮定のことを想定してお答えするのもいかがかと思いますし、先ほどから申しておりますように、許可という言葉が使われたかどうかということもはっきりしないわけでございますし、稲葉委員のように、仮にだめだという言葉を使われた場合に、それがいわば法律的にといいますか、整理してどういう意味を持つかということを確定しないと、何とも申し上げられないことだと思います。
  21. 稲葉誠一

    稲葉委員 だって、許可ということは、それはとにかく鮮烈な印象に残っている言葉の中に許可という言葉が入っているというふうに理解できますから、そうすると、これはだめだと言えば、結局指揮権発動になるのじゃないですか。直接的にはそれを通じて検事総長になるかもわからぬけれども指揮権発動になるので、その指揮権発動するかしないかのチャンスが、この前の日に非常にあったということで、非常に重要な問題だ、こういうふうに私は考えておるのです。  そこで秦野さん、あなたの場合だったならば、いまのようなことで許可を求めてくるというふうな場合にはどういうふうにされるわけでしょうか。
  22. 秦野章

    秦野国務大臣 私の場合どうするとおっしゃっても、具体的に先生自身がいまの事例余りはっきりしたものではないとおっしゃっているので、そういういきさつというものはまさに現実の問題にならぬと判断のしようがないのじゃなかろうか。いろいろな条件があるので、下からいろいろなことを言ってきても、意見を述べることは可能なのですから、確かにおっしゃるように、これもかなり仮定になってしまって申しわけないのだけれどもお答えのしようがないからあえて申せば、許可してくれとかしないとかといったような簡単な問題でもなさそうな気もするのですよ。もっと事情を話す、報告をきめ細かくするというふうな状況の中でしか判断できないので、単純に許可するかしないかみたいな話とはちょっと違うのじゃなかろうか。もっとより重大な問題であろう、重大な問題だということは、事情というものをよく聞いたり、また問うたりするような場面があっての話ではなかろうか、実際問題としてはこう思うのですけれども……。
  23. 稲葉誠一

    稲葉委員 はっきりしないと言ったのは私が言ったのじゃないですよ。刑事局長がはっきりしないということを言ったので、これは書物の中でははっきりしているのです。ですから、それはちょっと話が違うと思うのですが、あなたのお話を聞いていると、検察庁法の十四条によって、もちろん抽象的には十四条というものは指揮権発動できるということが書いてあるわけですから、それはできるわけですけれども、そうすると、あなたのお話を聞いてみると、よく事情を聞いてからでないと判断できない。ということは、よく事情を聞けば、それを許可しない場合もあり得る、こういうことになりますね。
  24. 秦野章

    秦野国務大臣 それは制度の中の可能性の問題として、一般論として法的な制度ではそういうことがあり得る、こういうことを前の国会でも申し上げたのですけれども、そういうことでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、この外為法違反というのは形式犯である、それは、本件の逮捕別件逮捕ということになるのですか、ならないのですか。
  26. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まずお尋ねの前提で外為法違反形式犯であるということでございますけれども、そのこと自体にもいろいろの見方があろうかと思いまして、直ちに形式犯と言っていいかというふうにも思いますけれども、それはそれといたしまして、また別件逮捕かどうかということにつきましても、別件ということの使い方がいろいろあるわけでございます。  別件逮捕はよくないというふうに使われる場合の別件逮捕は、本来そういう逮捕するような事実では起訴もできないような軽微なものといいますか、そういうようなもので逮捕しておいて、ねらいとする重大な方の事件捜査をする、それに利用する、そういうことは適当でないという意味に使われるわけでございます。  しかし、最初逮捕した事実と次に捜査した事実、二つある場合に、最初の事実がそれなりに重要な事件であって、結果的にも起訴されているというふうなことでございまして、そういう面からいたしますと、それをいわゆる別件逮捕といいますか、適当でない別件逮捕というふうにとらえることは適当でないというふうに思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉委員 大臣にお聞きをしたいのは、ずっと審理が進んできて求刑があって、もちろんまだ弁論がない段階ですけれども、そこでいま田中議員辞職勧告決議案というものが国会の中に出ているわけです。それについて大臣として、私は本人自身が態度を決めるべきものだ、こういうふうに思いますけれども、それをしないでこういう勧告決議案まで出ているということについて、非常に悲しむべきことだとか、いろいろな感想があると思うのです。大臣としてのといいますか、あるいは秦野さんとしてのといいますか、御感想があればお聞かせ願いたい、こう思います。
  28. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ね決議案上程云々の問題に関連しての私の意見というのは、法務大臣としてはその問題に判断を加えることは適当でない、これは裁判係属中の問題でもあるのだし、なるべく——なるべくというか、もうさわらない、裁判をやっているんだから、私はそれをこうやって見ていればいいというような気持ちでございますので、意見を差し述べるのは適当でない、こう考えております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉委員 いろいろお聞きをしたいこともあるわけですが、いまの点はその程度にしておきましょう。  そこで、少年非行というふうな問題が非常にいま起きておる。ただ、それについてはいろいろな見方があると思うのです。たとえば、横浜事件あるいは町田——町田事件は必ずしもすぐ少年非行ということになるかどうかは別として、そういうふうなことが現在どういうふうになっているかということの概要をまず御説明を願いたいというふうに思います。
  30. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いわゆる町田事件捜査状況でございますけれども、これは御案内のとおり、二月十五日に中学校先生がその中学校の三年生の生徒から殴打されかかったということで、持っていた果物ナイフでその生徒の胸を突いた、そして約十日間の加療を要する傷害を負わした、こういう事件でございます。刑事事件として警察捜査をいたしまして、十七日に東京地検八王子支部へ送致されております。そして八王子支部において被疑者あるいは関係者も一応調べをいたしまして、身柄勾留の必要はないということでとりあえず釈放をいたしまして、引き続き捜査を続けている、こういう状況にございます。  それから、もう一件、横浜事件でございますが、これは十四歳から十六歳にわたります少年十名が二月五日の夜に横浜市の山下公園で、そこにおったいわゆる浮浪者風といいますか、そういう方に対しまして手で殴る、あるいはビール瓶、スコップで殴るというふうな暴行を加えまして、その人に頭部挫傷等傷害を負わしまして翌々七日にその人が亡くなった、こういう事件でございます。そして、その加害者である少年十名は十二日と十三日に警察逮捕されまして、それぞれ横浜地方検察庁に送られております。現在、いわゆる勾留のまま取り調べ中でございまして、きょう、あすがたしか勾留の十日間の満期になるはずでございまして、まだ取り調べは十分できていないということでございますから、勾留期間延長請求ということになるのだろうと思います。
  31. 稲葉誠一

    稲葉委員 この所信表明の中にも少年非行の問題が出ておりますね。  そこで、たとえばいまの二つの問題、いろいろ問題があると思うのです。ことに町田事件については文教委員会なりあるいはその他のところでいろいろ論議をされることだ、こう思うのですが、法律的に言うと、これは一体逮捕する必要があったのかどうか。最初逃げたとかいう話がありますけれども逮捕する必要があったのかどうかという点が一つのポイントですし、これは検事の方は調べて釈放したようですけれども、ここでかれこれ言うべき筋合いのものではございませんけれども、いま言ったように処分保留ですね。処分は非常にむずかしいですね。     〔委員長退席中川委員長代理着席〕 むずかしいことは私もよくわかります。各方面のいろいろな事情をしんしゃくし、相当調べた結果でないと、この処分をどうするかということについては非常にむずかしいといいますか、注視の的であるということですから、その点は十分踏まえて検察庁としてもしてほしいというふうに思います。これ以上のことは、私どもがここで言うべき筋合いではございませんから、その程度にいたします。  いま言ったようなこと、それから少年非行、そういうようなものが非常にふえておるということについて、これは大臣としてはどういう原因でこれがふえておるか。ただ、ふえておるということがまず第一に言えるかどうかの問題があるんですが、私どもは横ばいだというふうにいままでずっと聞いておったわけですよ。それが何かいまになってくると急にふえてきたような、新聞や何かに出るからかもわかりませんけれども、ふえてきたような印象を与えていると思うのですけれども、その数字とかなんとかそういう点については政府委員の方からお答え願うとして、こういうようなこと全体を通じて、一体、大臣はどういうところに原因があり、どういうふうにしたらいいというふうにお考えになっておるか、こういうことをお聞きします。
  32. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの問題でございますけれども少年非行については戦後第一のピーク、第二のピーク、第三のピークとよく言われておりまして、いま第三のピーク。やはり第三のピークと言われるだけに量的にもふえておるという傾向はあるようでございます。しかし、問題は、稲葉先生おっしゃるように、一体どういう原因なんだろうかということを考え一つの方法として、私がこの間うちから私の立場の上で考えていることは、法務省というところは、御案内のとおりいろいろ非行犯罪者にタッチしそれを収容する機関を持っておるわけでございますから、そういう収容されたいわば後始末をしている、身柄を預かっている、そういうことの中で一体どういう動機でそういうふうになったのか、どういう環境でなったのかといったような調査あるいはアンケート調査なり、あるいは一々の本人に聞くなりしてそういうデータを収集するということについては絶好の持ち場を持っているわけでございます。それは今日までもやってまいりましたけれども、少し角度を変えて、いまおっしゃるような疑問に答えるような材料を持ち出す責任がわれわれの中にあるのじゃないか。  いま考えられていることで大ざっぱに申しますと、たとえば、一ころ前は片親、母子家庭の子が多いとか、親がない子が多いとか、離婚した家庭の子が多いとか、そういうことはよく言われるし、報道なんかにもよく出るのですけれども、そういうパターンは依然としてあるだろうと思うけれども、最近の事例におきましては、両親があっても、両親に預けたらもう大丈夫だろうと家庭裁判所が思っても、両親に預けてもだめなんだというような、言うならば家庭の問題というものが新たに俎上に上ってきているという感じがするのです。つまり親が機能を喪失している、それに近いような状況が出てきているような事例が、私も少し施設を回ってみまして、そういう感じを受けました。  しかし、こういうものをもう少しデータをもとに出して、そして後始末をしている私ども立場の中から、社会にあるいは教育に家庭に材料を積極的に提供し、いろんな審議会等に反映していく、そういう必要があるのじゃないか、かように考えておりまして、いまお説の、御質問の趣旨にぴたりこれが原因だというようなお答えを申し上げることは目下の段階でなかなかむずかしいと思うのですけれども、傾向としてそんなことを感じております。  なお、これは刑務所を回ってみると、暴力団が非常に多くなっていますね。こういうものは恐らく町の風紀の中でかなり悪影響を及ぼしているのだろうと思いますけれども、いろいろそういった材料を背景にそのための法律をつくるとかなんとかという問題じゃなくて、資料を積極的につくり出してみるという気持ちで努力してみたいと思っております。
  33. 前田宏

    前田(宏)政府委員 統計的な数字でございますが、先ほどお話のありましたように、第三のピークというような状態になっているわけでございまして、五十七年におきます主要刑法犯の検挙人員、警察の統計でございますが、二十四万九千二百四十八人ということでございまして、前年の五十六年が二十四万二千七百二十九人ということでございますから、率にして約三%近い増加だということになるかと思います。しかし、五十五年と六年との間では一〇%以上の増加でございましたから、そういう意味では伸びが少し鈍化しているというふうに言えるかと思いますが、依然として減ってはいないということになっております。  それから、よく問題として指摘されますのは、成人との対比でございますが、いわゆる検挙人員全体の中で、五割を超えるのが少年になっているというようなこと、また、いわゆる人口比と申しますか、人口千人当たりの率、これも成人が約三人ぐらいであるのに少年の方は約十四人くらいになっているというような点が指摘されているわけでございます。  そういうことで、数におきましてもふえておりますし、そういう成人との対比においても問題が指摘されているところでございます。     〔中川委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 稲葉誠一

    稲葉委員 きのうの夕刊で、瀬戸山さんが記者会見でいろいろ述べておられる。これは一つの新聞だけじゃなくて全部の新聞に出ていますから、恐らく言ったことは間違いないと思うのですね、共同記者会見ですからね。瀬戸山さんは法務大臣もやられましたし、瀬戸山さんなりのお考えがある、こういうふうに思うのです。  これを見ますと、少年非行——まあ校内暴力なんかは文部省関係ですから、あるいは文部省が中心かもわかりませんが、青少年非行、校内暴力の「一番深い根は(アメリカの)占領政策の影響だ」、こういうことを言っておられるらしいんですね。日本古来の伝統的な道徳、風俗、習慣の意義を強調して、「昔流の教え方を研究したらよい」とか、いろいろ言っておられるわけです。また、人権とか自由というのは「わが身をつねって人の痛さを知れ」とか「自分の欲しないことは人にもやるな」というようなことから、結局、親を大切にするということを教えてはいけないといったものが占領政策なんだ。そういうようなところにも一つ原因があるんだ。こういうふうな言い方を瀬戸山さんはされているようなんですね。これは私はいろいろ問題がある、こう思いますけれども法務大臣としては、秦野さんとしてはこういう考え方についてはどういうふうにお考えでしょうか。こういう少年非行やなんかがふえてきたのは戦後の占領政策やアメリカの政策の影響があるとお考えになるんでしょうか。
  35. 秦野章

    秦野国務大臣 少年非行がこういうふうな今日のような状況になったという原因を一義的にこれだと言って言い切るほど私も勇気もないし、またそれだけのデータもないわけで、瀬戸山先生は瀬戸山先生なりの御識見でおっしゃったんだろうと思います。それに私はとやかく申し上げる必要もなければ立場でもないし、また、それだけの材料もないわけですけれども、私自身は、少年問題というものは、言うならば大人の社会の反映だという面もあるし、それから、歴史の流れの中でとらえなければならぬ問題があることも確かに事実だと思うのです。要するに、多様な要素があるだろう、背景があるだろう、学校教育の問題ももちろんあるだろう。いろいろな要因があって今日の事態があるんであって、そういう意味においては、何が原因かという問題については、少なくとも所管の私どもとしては、できるだけ的確なデータ等、先ほど申し上げましたようなものを積み上げて、そして当たるかどうか、的確かどうかわからぬが、できるだけ真実に近いものに迫っていくということしかないんじゃないか。また、私ども以外の政府諸機関あるいは民間の諸団体等々がそれぞれの立場でこの問題を憂えてらっしゃいますから、そういうものを集約して対応していくということしか申し上げることはできないいまの現状でございます。
  36. 稲葉誠一

    稲葉委員 その問題はまた別の委員会なり別の機会に幾らでも聞くことができるというふうに思うわけですが、どうも少し短絡的に考え過ぎる傾向がいまの意見なんかを見ましてもあるように思いますので、十分な原因の究明なり配慮といいますか、その上でやはり対策を立てるべきであるというふうに私も考えるわけです。  そこで、これは大臣が非常に熱心にやられましたところの難民の問題に関連をするわけですけれども横浜の入国者収容所というのがございますね。私もそこへ行ってみたいというふうに思っておったんですが、ちょっと時間の関係で行けなかったんですが、そこへ入っておるインドシナ難民といいますかあるいは流民というのですか、その人たちが仮放免になっておる、私は非常にいいことだ、こう思うのですよ。日本は難民に対して非常に冷たいんだ、ことにアジアの人々に対して冷たいんだということが非常に言われておりますから、そういうふうな意味においても非常にいいことであるというふうに考えておるんですが、この難民対策といいますか、あるいは流民というのですか、これらのことに対する基本的な大臣考え方をまずお伺いをさしていただいて、事例については入管局長の方からお聞きをしたい、こういうふうに思っております。基本的な態度についてお考えをお聞かせ願いたい、こう思います。
  37. 秦野章

    秦野国務大臣 難民問題につきましては、実は私も法務大臣になる前に外交部会長を党でやっておりまして、いま少し日本が前向きの姿勢をとれぬものかということでささやかな努力をしてまいりましたが、お金の方は、国連機関を通じたりしてアメリカの次にお金を難民問題に出すような立場になって、かなりの努力をしておるわけでございます。  問題は、具体的な難民に対する対応でございますけれども、正直に言って、インドシナ難民の人たちというものは、日本に来るよりもアメリカに行きたい、ヨーロッパに行きたいという空気が御承知のとおり非常に強いわけですよ。しかし、それにもかかわらずある部分は日本で定住して働きたいという人もあるわけでございますから、そういう人たちに対しては、温かい姿勢でアジアの仲間として積極的な対応をしていくべきである。  ただ、一番事務的なネックとして、入管局、難民対応の陣容が実は乏しいわけですよ。できたら、ほかの方からも人を回してでも処理をしていかなければと思うのですけれども法務省というところはなかなかじみな役所でございまして、先生案内のとおり八二%も人件費なんだけれども、人の役所なんですね。その人の役所が人が少ないというときに、行革とか臨調といういまの体制の中で実に困ってしまうのですよ。ほかの役所からもらってくるわけにもいかぬし、そんなことで部内でもっていろいろ工夫をしまして、できるだけ優先順位をそこへ置いてスピーディーな処理をしていきたい。  たとえば難民だったら、難民条約に基づいて難民の認定をしていかなければならぬ。その認定の作業でも大変なことでございます。それから、おっしゃったようにいま流民の問題というのは、要するにフィリピンとか台湾とか、ワンクッションを置いて日本に来る。その人たちが何か出稼ぎに来て、観光旅行に来て、どうも調子がいいから日本にいようかみたいな、何というか安直なことでやられても困るし、たとえばフィリピンとか台湾におる家族とか子供をおっぼり出して、自分だけ気持ちがいいというようなことで日本におられることでも、果たして妥当な措置かどうかもわからない。そういうことをよく調査しなければならぬ。これまた調査というものに大変人手がかかるということで、若干御期待に沿うていない面もあろうかと思いますけれども、全力を挙げて、いま先生おっしゃるような方向で認定なり事務的なさばきをしていこうということで取り組んでおります。  流民の開題につきましては、収容しておった横浜の部分についてはもう仮放免は全部したはずでございますが、まだ認定をしていかなければならぬ人たちもずいぶんおるようでございます。できるだけひとつ努力をしてまいりたいと思います。
  38. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ入管局から……。ここに十二人の人たちがおられたわけですね。四人、五人、それから二月十六日に三人、だから全部仮放免になっておるわけですね。ところが、入っておる人はずいぶん長く入っておるのがおるわけですね。何か三年をめどにというか、三年がマキシマムだということを言われるけれども、実際に入っておるのは、この中で一年三カ月ぐらい入っておる人もいましたよね。それから、大村収容所に行くと、どのくらい入っているのがいるのかな。三年近く入っている人もいるんじゃないですか。これはいろいろな事情があるかもわかりませんが、とにかく長く入っておるのですよ。これはいろいろな議論があるのです。収容所には裁判官の令状がなくて入るわけですから、いろいろな議論があるのですけれども、ここではそれは別として、その十二人の人たちの仮放免になる経過ですね、どうしてこんなに長く入れておかなければならないのか、こういうような点について経過や何かちょっと御説明願えませんか。
  39. 田中常雄

    田中(常)政府委員 お答えいたします。  横浜収容所に十二名の難民が収容されていましたが、現在まで全部仮放免されました。その理由は、十二名のうち二名は病気治療または看護のためでございます。それから一名は自費出国準備のためでございます。残りの九名は、現在行政訴訟が係属中で早期送還のめどが立たないため、収容が長期化するという見込みを考慮いたしまして、残りの九名も仮放免いたしました。したがいまして、先生が特にお尋ねの非常に長いということでございますけれども、これは行政訴訟が係属中なもので近々にその結論もなかなか出ない、そういうことも配慮した次第でございます。
  40. 稲葉誠一

    稲葉委員 私が長いと言うのは、行政訴訟の結論が出るまで長いというのではなくて、入っておる期間が長過ぎるじゃないかと。たとえば大村なんか三年近い人がいるはずですよ。これは後で調べていただけばわかりますけれども、そういうふうなことを言ったわけです。  この問題はこれで結構なんですが、そこで、いま大臣がちょっと言われましたが、法務省は非常にじみな役所だ、こういうお話ありましたよね。警察から来るとどうですか。法務省に来て、法務大臣になって、警察と比べてみるとどういうふうな感じを受けられますか。じみと言うだけでなく、具体的にどこがどういうふうにじみなのか、いろいろ御感想なり御説明なり聞かせていただけたら参考になると思います。
  41. 秦野章

    秦野国務大臣 私がじみだと申し上げましたのは、要するに、政策官庁ではございませんから——政策がないということはない、あることはあるのですけれども、要するにはでな政策はないという意味で私はじみな官庁だと申し上げたわけでございます。予算的に言うならば、とにかく八二%が人件費。会計検査院がトップですよね、人件費ばかりというのは。これはあたりまえでしょう、何の事業もないのですから。調べて回ってまずいところを見つけるんだから。その次が裁判所ですよ。これも二番目なんですよ。法務省は、とにかく刑務所だけ考えても収容者五万人おるのですよ。そういうことを考えても、じみだとは言いながら五万人の収容者を持ち、また職員もたまたま五万人近いのですがね。五万人なんですよ。それから民間の司法保護司とかなんとか、こういうある意味で、広い意味でボランティアと言ってもいいような、無償で、ほとんど実費で働いてくださるような一つの組織がございますけれども、これが五万人。これだけの膨大な一種の組織がある。しかし、考えてみると、仕事もいろいろで、刑務所のようなじみな仕事でかつ収容者が五万人おるような仕事、余り人から喜ばれるような仕事じゃないかもしれませんが、要するにじみな仕事、こういう感じが私の率直な感じで、刑務所はいま、先生案内のとおり、移転問題なんかあっちこっちあるのですけれども、移転をしょうと思えばどこでもむしろ旗を立てて反対をする。しかし、やっぱり刑務所は国家にとって絶対必要ですから。刑務所のない国家なんてないんだから。それにもかかわらず、自治体なんかみんな反対だ。それじゃどこへ行く。海の上に行くわけにいかぬでしょう。そういうことで国家にとって非常に重要な仕事をしているのだけれども、その認識をしてもらうことに大変骨が折れるということで大変じみな役所でございます。  警察と比べても、役所がまるで違うのですから、ここが違う、あそこが違うと申し上げても……(稲葉委員「感じだな」と呼ぶ)感じは、まあ警察の場合は、何といいますか、末端で民衆との接触等がある。交通だ、防犯だなんていってかなり一般との接触等があって、多少検察庁よりは——やっぱり検察庁の方がじみな仕事だという感じですね。そんなことで、しかし、じみであるからある意味では目立たないかもしらぬが、重要な仕事だな。あの建物をごらんいただいても、明治二十八年にできた。あの建物ができたのは、日本の独立には司法権の独立が大事なんだということで近代化はまず建物から始まった、こういうような感じもし、それがいまでも残っておるわけでございますけれども、非常に大事なところではあるが、じみなところであるという感想が一番端的な私の感じでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉委員 民事局長おいでになっておられるので、これはまたちょっと専門的になるものですから局長の方の答弁になると思いますが、いま民事局関係で立法関係、ある程度進んだものもあり、これから進むものもあるとか、いろいろあるわけですね。そういうふうなことについて、どういう法律関係があるのかを概要御説明願えませんか。  たとえば建物区分所有法ですね、改正の問題がありますね。それから大小会社区分立法の問題がある。あるいは株券の振替決済制度の問題もある。大体大きく分けて三つだと思いますが、そのほかにもあるかもわかりませんけれども、どういうふうに進んでおるのか、こういうことをひとつ御説明願えませんか。
  43. 中島一郎

    ○中島政府委員 一番準備が進んでおりますのが、ただいまおっしゃいましたうちの建物等の区分所有に関する法律の改正問題でございます。これは大臣所信表明にもございますように、法制審議会の審議を煩わしてきたわけでありますけれども、先日、二月十六日の総会におきまして御答申をいただきましたので、ただいまその御趣旨に沿って鋭意法案化の作業を進めておるところでございます。われわれの気持ちとしては、今国会に法案を提出させていただきたい、こういうふうに考えております。  それから、その次に進んでおりますのが、いろいろ見方があるわけでありますけれども、国籍法の改正問題がございます。これは現在、法制審議会の国籍法部会において審議をされておるわけでありますが、二月一日に中間試案というものを発表いたしまして、ただいま各界の御意見を聞いておる段階でございます。各界の御意見を春までに伺いまして、それを参考にしてさらに国籍法部会で審議をしていただきまして、恐らく秋ごろには御答申をいただけるものというふうに期待をしておるわけでございます。  それから、もう一つかなり進んでおりますのに、先ほどおっしゃいました株券の振替決済制度というものがございます。これは昨年の十月でありましたか、民事局の参事官室の名前をもちまして、商法部会の振替決済制度小委員会の審議の結果を踏まえて試案を公表いたしております。それについて各界の御意見を伺ったわけでありますので、いまその御意見をも参酌して、振替決済制度小委員会において審議が行われている段階でございます。  それから、先ほどおっしゃいました大小会社の区分の問題でございますけれども、これは商法部会において審議が行われておりますが、昨年の十二月二十二日でありましたか、大小会社の区分の問題をまず取り上げるということがはっきりいたしまして、第一回の商法部会が行われたかと記憶しております。したがいまして、この点はまだ第一歩を踏み出したと申しましょうか審議が緒についたと申しましょうか、そういう段階でございます。  ほか、身分法小委員会あるいは国際私法の小委員会などそれぞれ動いてはおりますけれども、特に審議が進んでおる、かなり具体的な案にまで煮詰まってきたというものはございません。  以上でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまの国籍法の改正につきましては、御案内と思いますが、当委員会で請願がありましたときに、自民党の理事の方から請願は採択してもいいということで、これは去年の暮れ、臨時国会ですかね、請願は採択になっておりますね。採択になっておることは御案内と思いますので、その趣旨を酌んで早急に立案をして提出していただきたい、こう思うのですね。これは、人権規約との問題とか差別撤廃条約だとか、いろいろな問題が出てくるわけです。国際的なあれも多いわけですから、ひとつ早急にその作業を進めていただきたい、こういうふうに思っております。いまのところめどは、いつごろには提出できるということですか。ちょっと聞き漏らしたものですから。
  45. 中島一郎

    ○中島政府委員 私どもも一日も早くというふうに考えておりますけれども、事柄が非常に重要な法律でありますし、ただいま申し上げましたように、いろいろな関係が出てまいりますので、審議会の審議が、非常に充実しておりますけれども必ずしもとんとんと進まないというような状況もございまして、現在のところ、中間試案を発表したという段階でございます。それで、各界の御意見を伺いまして、審議会の審議が本年の夏を挟んで行われることになろうと思いますけれども、まあ、これは審議会の審議でありますから、見通しを私の方で申し上げるのもどうかと思いますけれども、本年後半、秋ごろには御答申ということになっていただきたいし、なるのではなかろうかと見ておるわけでありまして、御答申をいただきました上は一日も早く法案化を進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  46. 稲葉誠一

    稲葉委員 「商事法務」の九百六十二号に中島さんが「年頭に想う」という随想を書かれておりますね。「年頭に想う」と書いてあるけれども、何か忘年会のころに書いたと書いてあるから、年頭に書いたわけでもない。  この中で、鈴木竹雄先生が顕彰を受けられたというふうなことが書いてあって、「商法の全面改正の残された部分の完成にご尽力下さるよう、お祈りしたのである。その商法改正のための商法部会は十二月二十二日に開かれ、大小会社の区分の審理の進め方について各委員から意見が開陳され、審議は軌道に乗った。」こういうふうに書いてあるわけですよ。  そうすると、まず、この「商法の全面改正の残された部分」というのは何を指しているわけですか。
  47. 中島一郎

    ○中島政府委員 四十九年の前回の商法改正の後でいわば商法の全面改正の作業が始まったというふうに私ども理解をしておるわけでございます。そのうちの前半の部分を、前回、会社の株式制度の問題、機関の問題、計算・公開の問題というようなものを中心に取り上げたわけでありまして、あと、そのときも問題になりましたように、残っております問題が、企業の社会的責任の問題、大小会社の区分の問題、それから企業の合併などを含みます結合の問題というようなものが残っておると言えば残っておるわけでありまして、それを取り上げるということであります。その点につきましては、五十六年の商法改正の際にも法務委員会において附帯決議があった次第でございます。  そのうちどれを取り上げるかということが審議会でも議論になっておったわけでありますけれども、まず大小会社の区分の問題、中小会社に対して適当な法律を制定することというような形で附帯決議があったかと思いますが、この問題を取り上げるということが秋ごろから議論されておりまして、十二月二十二日の審議においては、まずこれを取り上げるということは決まったわけでありまして、そういう意味において審議が軌道に乗った、議論が軌道に乗ったというふうに私ども理解をしておるわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉委員 「大小会社区分立法の方向」というので参事官が論文を書かれているわけですけれども、これは断り書きがありまして、「法制審議会商法部会における議論・意見ないし法務省当局としての公式見解とは全く無関係なものであることについては、特に留意願いたいと思う。」こういうふうに書いてありますから、私もそのとおりにとるわけですね。ですから、このことについてまだそこまでいってないのにかれこれ申し上げるあれはないのですが、ただ、問題点は一体どこにあるのですか、大小の会社を区分して、そしてなぜそういう必要があるのかとか、それがまた有限会社法の改正——有限会社法というのは非常にむずかしいですね。準用が非常に多くてなかなかわかりにくい法律です。だから、一体、問題はどこにあるのですかね。小規模閉鎖会社とか有限会社制度のあり方とか、いろいろな問題が出てくるわけですけれども、そういうふうなところ、一体、問題としてはどういう点が問題になっておるかということだけは御説明願ってもいいと思うのです。それに対するあなた方の、こう思うんだということは、いまの段階ではまだいいですけれども、どういう点が問題なのかということだけは御説明願いたい、こう思うのです。
  49. 中島一郎

    ○中島政府委員 小規模会社あるいは小規模閉鎖会社というふうに言った方がいいかもしれませんが、につきましては、現在の会社法というものが必ずしも適当な法律と言えないんじゃないかというようなことは従来から御指摘を受けておるわけでありまして、その点を何とか改善して中小規模の会社に対して適当な法規制を考えるべきではないか、現在の会社法とは違った適当な法規制を考えるべきではないかということが問題の出発点であろうかと思います。そうなりますと、中小会社あるいは閉鎖的会社ということはどういうことで区別するのかというようなことが問題になってまいります。それに対してふさわしい法律というのはどういう点が問題になるのかということが次に浮かび上がってまいります。そうなりますと、その次に、いまもおっしゃいましたように有限会社法との関係はどうなるのか、こういうことになるわけでありまして、問題点は、ごく大ざっぱに言えばそういうことであろうかと思いますけれども、各委員の先生方がお考えになっている点が全くいろいろでありまして、現在のところは審議会においていろいろと御意見の開陳はある、意見の交換はあるわけでありますけれども、それをどういうふうにコンセンサスを図っていくかというような、そういう段階にあるわけであります。
  50. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、この区分といいますか、それのおおよその今後のめどというふうなものはどうなんでしょうかということが一つですね。もちろんまだはっきりしたことはわかりませんけれども、おおよそのめどと、それから株券の振替決済制度、これは私が聞いていた範囲では簡単で早く立法できるように聞いておった、最初の段階は。ところが、おくれているのは大蔵省との間の話がまとまらないのですか。ことに証券業界の中でいろいろ意見というか実情を中心として利害というか、いろいろな問題が出てきておるから、これがおくれているということになるのですか、どうなんでしょうか。
  51. 中島一郎

    ○中島政府委員 大小会社の区分の線をどの辺に引くかということは、これはもう大変大問題でありまして、いろいろと審議をしていく過程においておのずから一つの線が出てくるのじゃないかというふうに私どもは見ておりますけれども、現在はそういう段階でございます。  それから株券振替決済制度でございますけれども、大蔵省の方の証券取引審議会でありますかにおきましては一つの要綱が出ております。法務省の法制審議会の小委員会におきましても一つの試案というものが出ております。ただ、これにつきましては実務界でもいろいろな意見がある、またあり得るというふうに聞いておるわけでありまして、大ざっぱに申しますと、証券会社としては大変賛成をしておるけれども、発行会社の方で若干消極的と申しましょうか、そういう意見もあるというふうに聞いておりますし、基本的な構想はまとまっておりますけれども、それを具体的な手続にどういうふうにまとめていくかという点については、まだ必ずしも煮詰まってないという点もあるわけでありまして、私どもとしては法制審議会の答申をいただいた上で作業を進めていくという立場でありますから、現在のところ法制審議会の審議を見守っておるという状況でございます。
  52. 稲葉誠一

    稲葉委員 日本の場合は、特に証券取引法をめぐっての理解が非常に足りないわけですね。法律関係者も証券取引法のことについて余りよくわからないから、したがって証券取引法違反というものが日本では非常に少ないですね、警察もよくわからぬし。大臣、兜町があるでしょう、あそこの警察は中央警察か。あそこの警察も管轄だけれども、なかなか株のことはよくわからないし、検事もなかなか株のことはよくわからないですね。第一、株券を持っている人なんか余りいないかもわからないし、よくわからないので。ところが、株の問題をめぐっての事件というのは刑事事件として非常に多いのですよ。証券取引法違反事件というのは今後も大きな問題になってくると思うのですが、それはそれとして、大体民事関係お話はお聞きをいたしました。いずれにしても十分意見を聞きながら、立法化すべきものは立法化する方にひとつ努力を願いたいと思っております。  そこで、これは刑事関係の問題なんですが、私がこれまたよく問題に思っておりますことの一つは刑訴の三百四十三条です。一審の判決があったときに保釈の効力を失うという規定があるわけですね。これは英米法から来た考え方であることは間違いないわけですけれども、どこから来た考え方なのか、どうも必ずしもよくわからないのです。有罪判決があったときに保釈の効力を失う。そうすると、具体的にどういうふうになるのか。有罪判決がある前と後とでどういうふうに違うのか、法律的な身分その他の問題についてどういうふうに違うのか、ここら辺のところを説明願いたいと思うわけです。
  53. 前田宏

    前田(宏)政府委員 御指摘の刑事訴訟法の三百四十三条には「禁錮以上の刑に処する判決の宣告があったときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。」後段といたしまして「この場合には、あらたに保釈又は勾留の執行停止の決定がないときに限り、第九十八条の規定を準用する。」これは収監の規定でございます。それに続けて三百四十四条がございまして、「禁錮以上の刑に処する判決の宣告があった後は、第六十条第二項但書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。」ということでございまして、八十九条というのはいわゆる権利保釈に関する規定でございますし、六十条二項ただし書きというのはその八十九条を受けて、勾留期間の更新の制限の規定であるわけでございます。  したがいまして、この三百四十三条と三百四十四条自体の問題としては、禁錮以上の刑に処する、いわゆる実刑の判決の宣告があった場合の身柄の扱い方を決めているわけでございます。いま申し上げましたように、保釈の効力が一応失われる、もちろん再保釈の場合はございますけれども、一応失われるということでございます。いま申しましたように、保釈はもちろんできるわけでございますけれども、それ以前のように権利保釈とかいう規定は適用がございませんし、勾留期間更新についても緩やかになる、こういうふうになるわけでございまして、それはいろいろな理解があると思いますけれども、有罪の実刑判決があったことに伴う身柄の扱い方としては、一審の実刑判決といいますか、有罪判決のあったという事実、これに着目して、それ以前と以後ではいわば事情の変更があったということであって、したがってそれに応じた保釈、身柄の取り扱いが変更されるべきである。つまり、従来は権利保釈ということが認められた時代においての保釈でございますから、その保釈について改めて裁判所が再考、つまり再度の考案をして、その保釈の当否を改めて決するということが適当であるという考え方に基づいたものというふうに理解されるわけでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま言ったことはわかっているのです。  そこで、だから一審で有罪の判決があると、保釈は権利保釈の効力を失う、これはあたりまえの話ですね。だから、検事が保釈の求意見については、全部不相当ですね、しかるべくと書くのは原則としてない、事実上ないのではないかと思いますが、あるいは時たま病気とかなんとかの場合にはあるかもわかりませんけれども、それと無罪の推定というのとはどういうふうな関係になるのですか。有罪判決があるでしょう、すると保釈の効力を失うでしょう、それと無罪の推定とはどういう関係がそこに生まれるわけですか。無罪の推定というのは元来何なのですか。
  55. 前田宏

    前田(宏)政府委員 無罪の推定ということもいろいろな意味で使われるわけでございますから、一義的に申し上げられないと思いますが、別な言い方をすれば、疑わしきは罰せずという考え方にも通ずるものだろうと思います。  いま御指摘の、一審で実刑判決があった場合の身柄の取り扱いに変化を生じる、保釈の当否について改めて検討するということにした理由としていろいろな説明がなされているわけでございまして、現行の刑事訴訟法では、これも稲葉委員案内のとおりと思いますけれども、一審の重視という思想が強く打ち出されているわけでございます。したがいまして、一審で一応そういう判決があったということの重みをそこに反映させるといいますか、そういうことになるわけでございまして、その説明ぶりとして無罪の推定との関連を論じているものもございます。その場合に、それまでのような無罪の推定に変化が生じたのだ、こういう言い方になるだろうと思います。  それはあくまで一審判決があったという、未確定の状態のことでございますから、身柄の扱いの面ではそういう変化があったというふうに言えるわけでございましょうけれども、逆にその実体の問題、つまり有罪か無罪かという実体の問題について言えば、やはりまだ上訴審があるわけでございますから、そういう意味においては無罪の推定は続いているということでございまして、その適用場面によって使い方といいますか、理解が異なってくるだろうと思います。
  56. 稲葉誠一

    稲葉委員 判決の確定とはもちろん違うわけですよね。判決の確定は、あなた、それは控訴、上告もできるわけです。それが終わらなければ確定いたしませんけれども、一審で有罪判決があって保釈の効力を失うというのは、無罪の推定が崩れたからこそ保釈の効力を失うということになっているのではないのですか。どうもあなたの説明はそういうふうにずっと聞こえたけれども、最後のところになってくると、そうでもないようにもちょっと聞こえてしまうのですけれども、そこはどういうことなんですか。
  57. 前田宏

    前田(宏)政府委員 別に矛盾したことを申し上げたつもりはないわけでございまして、身柄の扱い、具体的に保釈の関係で言えば、確かに、先ほど申しましたように、無罪の推定状態が前と異なってくる。それを破れるとか、覆るとか、あるいは薄まるとか、いろいろな言い方があると思いますけれども、そういうことも言われておるわけでございますし、またそれの関連で勾留、保釈で一番問題になります逃亡のおそれ、これが実質的に高まる場合が多いというようなことが保釈の再検討をする実質的な理由だ、こういうふうに説かれているわけでございます。  したがいまして、その面から言えば、無罪の推定状態が、有罪の一審判決があるまでと、あった後では変化が生じているということは確かに言えると思うわけでございますけれども、それでは、そこで確定的に無罪の推定がなくなってしまうかということになりますと、それは先ほど申し上げたように、実体の、有罪か無罪かという裁判そのものといいますかについて言えば、やはりまだ裁判が確定していないわけでございますから、それを有罪扱いするわけにはいかないという意味においては、その実体面では残っているだろうというふうに申し上げたわけでございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉委員 一審の有罪判決があれば、保釈の効力を失うわけですから、無罪の推定がなくなるという説もあるし、それから薄められるという説もいろいろありますけれども、あった場合と、確定してませんよもちろん、だけれども、前と後とで違うことは、これはあたりまえの話なんです。  そこで、日本の場合はアメリカの制度と非常に違いますね。アメリカの制度は、起訴なんかはあっさり起訴しておおらかに裁判を受けるというのか、制度が日本と全く違いますから、だから、普通の事件で無罪率が一割か二割ぐらいありましたかな。FBIの場合だと半分ぐらいあるという説もあるけれども、これはちょっと実態がよくわからない、FBIの場合。わかりませんけれども、だから、アメリカの無罪率というものと、裁判制度が違うからあれですけれども、日本の場合の、ことに日本の場合は法定起訴じゃありませんから、起訴便宜ですから、日本の場合の無罪率とどういうふうに違うのか。ことに日本の場合の無罪率というのはどの程度なんですか。むしろ逆に有罪率というか。
  59. 前田宏

    前田(宏)政府委員 日本の場合の無罪率、ほとんど変化がないと思います。年度ごとに同様だと思いますが、全事件で言えば〇・〇一%ということになるわけでございますが、その中には略式命令事件も入るわけでございますから、そういうものを除きますと〇・二%ぐらいであったと思います。それに比べまして、アメリカの方は、いま御指摘のように二〇%とかあるいは五〇%近いとか、そういうふうに言われているわけでございますから、相当な開きがあるということは言えると思います。
  60. 稲葉誠一

    稲葉委員 相当な開きでなくて、全く裁判制度というか検事起訴制度が違いますからあれですが、そこで、日本の場合には九九・何%が有罪ですからね。  そこで、一審で有罪判決があった場合に、普通の裁判所では何か検察事務官が二人後ろの方に来ていますね。来て、そして有罪判決があると、待っていて、来てくれと言って地検へ連れていくんですか。どういうふうにやっているんですか、普通の裁判所で。普通の裁判所と言うと語弊があるけれども、一般的にどういうふうにやっているのですか。
  61. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど申し上げました刑訴法の規定によりまして、実刑判決がありますと、それまでの保釈の効力が失われるということでございまして、準用規定がございますから収監の手続をとる、こういうふうにつながるわけでございます。  そこで、実際の実務はケース・バイ・ケースということにもなるかと思いますが、いまお話がございましたように、収監の手続をとるために検察庁へ同行してくるということが必要でございます。したがいまして、その間に逃げられても困るということでございますから、身柄が確保できるような状態を確保、維持して検察庁の方へ来てもらいまして、それから収監、つまり監獄、拘置所の方へ身柄を移すための書類等の手続をいたしまして、それから拘置所の方へ身柄を連れていく、こういう段取りになるわけでございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉委員 私の聞いているのは全く一般論を聞いているわけですよ。特定の事件のことを聞いているわけじゃないんですからね。特定の事件を聞いているというふうにお聞きになった方がとるのは、これは各人の自由だから、私の知らないことですから。  そうすると、いま言ったことだと、検察庁に同行することは必要なんですか、まず。裁判所へ置きっ放し、置きっ放しと言うとおかしいけれども裁判所にいたままで再保釈の申請についてそのままにしていくということはないわけですか。
  63. 前田宏

    前田(宏)政府委員 これは事務の便宜といいますか、実務的なことでございますから、通常は裁判所にそのままずっと置くというわけにも、裁判所の御都合もございましょうから、検察庁の方に来ていただくというのが普通であるわけでございますけれども……(「来ていただくとは何だ、特定の人の話みたいじゃないか」と呼ぶ者あり)しかしその場合に、先ほど申し上げましたように、再保釈という手続も当然あり得るわけでございます。なるのかならないかは裁判所の御判断でございますけれども、そういうわけでございますから、それが非常に手際よくといいますか進行いたしますと、その方が先行する場合もあり得るということでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉委員 手際よくというとその意味がよくわかりませんけれども、あなたが何を考えて言っているのか、ちょっと僕もよくわからないのだけれども、(「誤解しているよ、それは」と呼ぶ者あり)誤解しているわけでもないだろうけれども、これは正解しているのかもわからぬわ。そうすると、普通の場合は、主文の言い渡しが終わって、主文を先にやる場合もありますけれども、全部判決をずっと言っていますね、それを終わってからでないと同行できませんわな。  そうすると、主文の終わった段階ですぐ控訴して再保釈を申請してしまえば、そのままの状態、法廷に本人がいる間にまた再保釈になっちゃう場合、それはないですね、同じ裁判官がやるのだから。同じ裁判官が法廷に出ているのだから、そういうことはあり得ませんね。原則としては東京地検だと一階の奥の方ですね、トイレのこっちの部屋だな、あそこへそれこそ来ていただくわけだ。そこで、いま言ったのは一般論ですよ。東京の場合はどういうふうにするのですか。七百一号室か何号室か知らぬけれども、あるいはどこからやってきてどこを通ってどういうふうに普通行くのですか、あれは。これまた一般論ですよ。
  65. 前田宏

    前田(宏)政府委員 結局、具体的なやり方の問題でございますから、そのときの状況にもよるわけでございますけれども、法廷でいま仰せのように裁判が行われますと、そうしますと、実刑であれば収監の手続きを始めなければならないということになるわけでございまして、その場合に身柄検察庁の方に同行するということになるわけでございますから、どの階段を通ってどの廊下を通っていくということはそのときの状況にもよると思いますので、ここで一概に申し上げるわけにもいかないと思います。
  66. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、僕は一般論を聞いているのだから、何も個別的なことを聞いているわけじゃないのですよ。ただ、あそこは行くところがないのですよね。下へ出てきて、東弁の前のところから前へ出て、そして地検の方へ行って、地検の一階へ行く以外にないものね。日比谷公園の方を通っていくわけにいかぬからな。普通あそこでしょう。またあそこ大変だな、人だかり——まあ、よけいなことですが、それは大変だな。それは別として、一般論ですからね、よけいなことを言うと怒られるから、そこで終わりにしておきますけれども。だから、あらゆる事件について特別扱いしませんね。
  67. 前田宏

    前田(宏)政府委員 同じような御質問を前に受けたような記憶をいま持っておりますけれども、理由もないのに特別な扱いをするということは当然できないわけでございますが、たまたまいま稲葉委員が仰せになりましたように、大変だなという状況があれば、それに応じた措置をとると思います。
  68. 稲葉誠一

    稲葉委員 大変だなどとよけいなことを言ったのはまずかったけれども、いずれにしても特別扱いをしてはいけませんよね。そういう点についてはしていただきたい、こういうふうに思います。  そこで、私どうも疑問に思っていることは、しかし、大体はその日のうちに再保釈が許可になりますよね、待っててもらえればね。裁判所も特別便宜を図るし、検事も一般的に——もう検事意見は不相当に決まっているのだからね、権利保釈じゃないのだから、不相当に決まっているからどんどんいくのですけれども、ただ、裁判は宣告が長い間は裁判長は中へ入っているわけだから、その宣告を下した裁判長が保釈を決めるわけですから、終わらなければ決まりませんからね。その間の時間的な経過でおくれる場合があるということになろうか、こう思いますね。  そこで、私は、偽証になるかならないかというふうなことに関連してお聞きをいたしたいんですが、まずわからないのは、偽証というのは三月以上十年以下でしょう。私ちょっと勘違いをしておったのですけれども、十年未満と以下と違いますからね。以下だから、公訴の時効は七年になるわけですが、そこで、偽証罪というのは、一体、前にも聞いたことがあるのですけれども、要領得ないんですね。被害法益というのは一体何なのか。キリスト教国ならわかるんですよ。神に対する冒涜なんですよ。日本の場合は一体何なんですかね、これ。どういうふうに理解したらいいんですか。公共の利益みたいな、利益というのもおかしいけれども、何になるんですか。
  69. 前田宏

    前田(宏)政府委員 いま御質問の偽証というのは、刑法の偽証罪であるのか、あるいはいわゆる議院証言法の偽証罪であるのか、どちらかはっきりいたしませんけれども、普通の偽証罪であれば、裁判におけることでございますから、その裁判の適正な裁判がなされることの支障ということになるでございましょうし、国政調査権の方の関係では、国政調査権に支障があるというところがその処罰の必要性ということになるんだろうと思います。
  70. 稲葉誠一

    稲葉委員 それで、これは御案内だと思いますけれども、昭和五十二年四月十三日に中曽根康弘さんがロッキード問題に関する調査特別委員会で宣誓をして証言してますね。それから昭和五十二年五月十一日に同じ調査特別委員会で東郷民安さんが宣誓をして証言をしておる。これは事実ですから、公知の事実で別に争えないわけですが、それに関連して、東郷民安の事件で一審、二審の判決がありました。いま上告中ですが、お尋ねをいたしたいのは、高裁の判決がいつあって、いつ上告をしておるかということですね。
  71. 前田宏

    前田(宏)政府委員 一審の判決がございましたのは五十二年の三月三十一日でございまして、二審の東京高裁の判決は五十五年の七月四日でございます。(稲葉委員「いやいや、上告、上告」と呼ぶ)上告の日はちょっと定かでございませんが、その後間もなく上告であろうと思います。
  72. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、間もなくといったって、十四日以内だからね。わかってるんじゃない、それ。
  73. 前田宏

    前田(宏)政府委員 同月の九日でございます。
  74. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、昭和五十七年の十二月二十二日に参議院の予算委員会で最高裁判所長官代理者として刑事局長がこういうふうに言っておるんですね。これは私は衆議院でやったわけですけれども質問者は、所得税違反のことについてどういう事実認定をしているんでしょうかということを聞いているわけですが、まず事実認定ということが非常に問題になってくる事件ですね。それは別として。そこで、最高裁の刑事局長は、一審と二審との「用語と申しますか、表現が違う点がございますので、二審の判決に従って概略要旨を申し上げたいと思います。」こう言っているわけですね。そこでずっとこう言っております。「被告人」、被告人というのは、これは議事録を私読むわけですよ。   被告人は、殖産住宅の代表取締役社長の職にあった者でありますが、旧制静岡高校時代の同級生であり、旧知の間柄にある中曽根康弘代議士から、「総裁選に出馬するためには二五億円位必要になると思うので、殖産住宅の株の公開の機会を利用させてほしい。」旨の依頼を受けていたところ、殖産住宅が株式を上場、公開するに際して増資新株九百四十万株を発行することになっていたことから、同人の希望をかなえてやろうという気持ちになって、昭和四十七年の八月ごろに、新日本証券の専務や野村証券の社長らに相談を持ちかけて、その後野村証券の企業部長らの指導によって、野村証券が買い取り引き受けをする一般公募株二百十万株のうち百万株を殖産住宅の親引け株の引き受けの形をとって、殖産住宅の関連会社十社を選定して、その名義で増資新株のうち百万株を引き受けることとし、百万株の引き受け代金などを十月の二日の上場日にこの百万株のほかに二十万株を値つけ株として放出して、この売却代金から銀行の借入金を返済し、その後中曽根代議士に対して、五億円ぐらいお渡しできそうだと話し、その後同人の指示で同人の秘書である上和田義彦名義で三井銀行の預金口座を設定して五億円を入金し、殖産住宅の秘書室長がこの通帳と印鑑を保管した。   その後十一月の十三日ごろに、同月十八日号の週刊新潮に、「絶対騰る要素がないのに騰つている黒い政治銘柄リスト」と題して、この殖産住宅の上場に絡んで一日で二十五億円をP代議士がもうけたという記事が掲載されたことを知って、中曽根代議士と話し合いの上、同人との話は白紙に戻すこととして、預金は翌四十八年の一月八日に解約して、元利合計五億二百二十万一千九百九十八円が被告人の三井銀行口座に戻された。   こういう事実を認定しております。 こういうふうに最高裁の刑事局長が概略要旨を述べておる。このことは間違いありませんか。述べておること自身は間違いないですか。
  75. 前田宏

    前田(宏)政府委員 そのこと自体はそのとおりでございます。
  76. 稲葉誠一

    稲葉委員 この中でこういう事実を認定しておりますというふうにさっきから刑事局長は言っております。これは質問にちょっとつられて認定をしたというふうに言っておると思うのですね。最初の方は認定という言葉を避けておるのですけれども。これはあれですが……。  そこで、この五十二年四月十三日の中曽根さんの証言の大要は、同日の議事録によりますと、議事録の十六ページが中心ですけれども、  いきさつを申し上げますと、 いきさつというのは、五億円が上和田名義で入金されているということですが、  そのいきさつを申し上げますと、東郷君が自分の株を、自分の会社を防衛するためにいろいろ人の名前を、名義を借りて口座をつくって株式の売買をやったようです。 こういうふうなことをいろいろ言っておって、その次にまた三段目ですね。最後のところで  一朝有事の際には頼みますよと真剣に実は頼んだことは事実であります。それで、たしか木部君のお祝いのときに、大ぜい人がおったその中で、応援を頼む、何か上場するというお話だけれども、その際に多少でももうかればおれの方の政治資金を応援してくれよ、同窓生のことだからそんなことも頼んだ記憶があります。その後、ある人が私のところに来まして、殖産の株が上場されるについては利益が出るはずだ、それを自分も買いたい、しかし自分の名前を出すのはまずい、あなたの名前で東郷君に頼んでみてくれないか、そういう話がありまして、じゃ頼んでみてあげましょうというので、東郷君にその話をしまして、どれくらい買うのかと言うから、たしか二十億でも三十億でも多々ますます弁ずだ、そういう話だと言って別れました。その後会ったときに、一体だれがそういうことを言ってきているのかということだから、これこれの人だと言ったら、それはだめだ、それはおれの会社をねらっているやつだ、だからだめだ、そういうことでしたから、そのことを先方に伝えてその話はおじゃんになったわけです。   しかし、一方、東郷君は私のために同級生として応援してやろう、そういう気持ちがあったと思います。それと同時に、また自分の会社を守ろうという気持ちも間違いなくあったと思います。それで、私のために彼が独断でいろいろ取り計らってくれたのではないか、 というふうなことを言っているわけですね。ちょっと最後のところは省略しましたけれども、こういうふうに言って、これが議事録の中に出ておることは間違いありませんか。
  77. 前田宏

    前田(宏)政府委員 議事録にそのようになっていることは、そのとおりでございます。
  78. 稲葉誠一

    稲葉委員 昭和五十二年五月十一日の議事録、これは私の質問に対する東郷証人の答えが中心ですけれども、四ページ、たとえば「一条」での話で  中曽根代議士が御臨席になりましたときに、どうしても隣の席に座ってくれということを言われまして、それで隣の席に移ったわけでございます。そのときに いろいろあって、  いま名前は言えないけれども、二十五億ばかり都合してくれる方がいるから、何とかこれを元手に資金をつくりたいんだ、あんたのところも株を上場するそうじゃないか、 云々という話があった。これが一つの議事録。  それからそれに関連をいたしましてというか、六ページ、これは私の質問ではないのですが、小林進さんの質問に対してですけれども、東郷証人がいろいろ答えております。  野村証券も最初から中曽根代議士のためということでやっていただいております。私も中曽根代議士のためのあっせんであるということでやっておりました。資金の払い込みは、借入金の名前は私の名前でいたしましたけれども、これも中曽根氏のための借入金でございまして、私自体が使う借入金ではございません。したがいまして、その百万株が売られてできたお金というものは、全部すべてのものは中曽根氏のためということでできた金でございます。したがいまして、十三億幾らかできましたが、法人十社を使いましたその税金関係、法人十社に対する謝礼関係等、お渡ししても絶対大丈夫な数字というものが五億円という数字でございます。したがいまして、五億円について、その処置方について御指示を得に参りましたら、秘書の上和田義彦氏の名前で預金しておいてくれということで、その御指示どおり、陽室長にその御指示を実行させたわけでございます。 こういうふうに議事録になっておるのですが、これは間違いございませんか。
  79. 前田宏

    前田(宏)政府委員 議事録にはそのようになっていると思います。
  80. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、まず最高裁の刑事局長が述べておる事実の認定ですね、二審の判決の概略要旨というものと、中曽根さんの証言というものが違っておる。このことは認められますか。
  81. 前田宏

    前田(宏)政府委員 二つの点を外形的に対比すれば相違があるということは言えると思いますけれども先ほど稲葉委員御自身で申されましたように、事実認定というふうに言えるかどうかという問題もあるわけでございますから、その点はまた別問題であろうと思います。
  82. 稲葉誠一

    稲葉委員 事実の認定は証拠による。罪体の事実は厳格な証拠によらなければいけませんからね。この捜査は確かに問題があるのです。どういう点が問題かというと、これは中曽根さんも不満を述べておられますように、中曽根さんを調べていないのです。事情聴取を全然してないのですね。それでこういうふうな事実認定というか、あれだと、一審で無罪になって検事控訴をしながら、検事も調べていないのですからね。これは私は議論があると思いますよ。この検察庁のやり方については議論があると思うのだけれども、それは別として。  そうすると、問題は、いま言った昭和五十二年の二つの国会における証言がありますね。これが食い違っておる、客観的な事実が違いがあるということは認められますか。
  83. 前田宏

    前田(宏)政府委員 違いがあるということで一言で言うと、また問題もあるかと思うわけでございまして、必ずしもぴったり一致していないという言い方の方が正しいかもしれません。
  84. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはあなたの立場も私もよくわかるのですが、あれでしょう、中曽根さんの言っているのは自分は関係ない、東郷が全部勝手にやったんだ、独断でやったんだと言っているのでしょう。東郷の方は、最初から中曽根さんが元手に資金をつくりたいのだということを言っていて、そして一々御指示を得たり何かしてやったんだということを言っているのですから。御指示を得に行って、そしてあれだということになっているのです、五億円についても。中曽根さんの方から上和田の名義にしておいてくれということで上和田名義にしたと言っているのです。そうすると、まず食い違いがあることがわかった。  それから、脱税事件ですから、五億円が税の逋脱の金額の中に入っていることは間違いないのですか。
  85. 前田宏

    前田(宏)政府委員 要するに、課税金額と申しますか課税所得と申しますか、東郷氏個人に帰属する所得といいますか、そういうものの中に含まれているということでございます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、この五億円は中曽根氏の指示によって中曽根氏の口座に——上和田の名義にしても、秘書ですから、振り込まれたということで中曽根氏に帰属するものだということになれば——一たん東郷に帰属して、それから中曽根氏に帰属したということなら、これはまた東郷の中の五億円に入るかもわかりませんけれども、そこは非常に微妙なところですね。単なるトンネルみたいなものだということになれば、五億円は逋脱から外れるということになりますね。そこら辺のところで食い違いがあるということになってくる。だから、これはこの事件についてどちらかがうそを言っているのですよ。主観的なことはわからないかもしれぬけれども、とにかく食い違っていることは間違いないということなら、常識的に言えばどちらかがうそを言っているということにならざるを得ない。ということになれば、それはどちらがかわかりませんよ、どちらがということは言いませんけれども、とにかく偽証の——私は通告にはインテロゲーションマークをつけておりますよ。つけておりますけれども、どちらかが偽証の疑いを持たれることになるのじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  87. 前田宏

    前田(宏)政府委員 国会における証言について偽証であるかないかという判断は、国会でまず第一次的に御判断いただくべき事項であると思いますので、それに先立って私どもがどちらかにせよこれは偽証であるということを申し上げるのは適当でないと思います。
  88. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、私は偽証であるということを言っているのではないのですよ。偽証の疑いがあると——国会の委員会であろうと告発がなければ捜査できない。告発が条件になっていますけれども、それは起訴条件なのであって、それに対して議事録にちゃんと出ているのだから、議事録に出ていれば、それに関連してとにかく食い違っていることをあなたは認めるのですから、どちらかが虚偽の陳述をしているということ自身はもうしようがないのじゃないですか。偽証だということを言っているのじゃないですよ。どちらかがうそを言っているのだ、こういうことにならざるを得ないのじゃないですか。そのことについてはあなたの方では国会で解明してくれ、こういうことになりますか。
  89. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど偽証ではないか、少なくとも偽証の疑いがあるのではないかという言い方でお尋ねを受けたと思いましたので、ああいうふうに申し上げたわけでございますし、先ほど稲葉委員のお言葉の中にもあったかと思いますが、主観的な問題あるいは受け取り方の問題、いろいろな問題もあろうと思いますし、事実がどちらかということについては、仮に事件になれば十分な捜査をしなければわからないような微妙な問題も含まれておるわけでございます。したがいまして、そういう面からも確定的なことは申しかねるということを申し上げたわけでございますし、私の方で国会で解明していただきたいというようなお願いをする筋合いではございません。
  90. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間が来ましたので、私は時間を守ります。  この問題は、一審の検察庁の段階で中曽根さんを調べるというか、事情聴取すべきをしてないのは、あの当時の状況としてはいたし方ないと私は思うのです。一審で無罪になってしまったのですからね。無罪になった理由は、御案内のとおり中曽根さんのためにやったのだというようなことばかりじゃありませんけれども、ほかの理由もあって、とにかく無罪になったわけで、検事控訴しているわけですからね。検事控訴をして、結局、検事控訴の中で認定というか判決が出て、そして五億円については問題が通脱の金額の中に入っているわけですからね。そうなれば、その段階で中曽根さんに対してその事情を聞くなり、あるいは項目ごとに質問依頼書みたいなものをちゃんと出して、それに答えてもらう、こういうのが私は筋だと思うのですよ。それをやってないから——これは結局事件がまだ最高裁に係属していますから、どういうふうになりますか、最高裁に係属しているものについて、私がここでかれこれ言うのは最高裁に対するあれになってもいけませんから、その点は言いませんけれども、いわゆる偉い人に対しては検察庁はどうも遠慮をしておる。そうしてそのかわり、たとえば大津の事件がありますけれども、あれはむずかしい事件だ。むずかしい事件だということは私よくわかりますけれども、再開申請二回もして、無罪になってどうなりますか。そういうようなことで、偉い人だとなると遠慮をするというやり方はいけないと私は思うのですね。  それだけのことを言って、この捜査については非常に不備があるということを指摘をしておきます。
  91. 前田宏

    前田(宏)政府委員 現にまだ裁判係属中の事件でございますから、詳しいことを申し上げるのは適当でないと思いますが、この事件は改めて申し上げるまでもなく東郷氏のいわゆる脱税事件でございまして、先ほど来問題になっている五億円の献金についてどういう指示があったとか了解があったとかということ自体は、先ほど稲葉委員お話にもありますような犯罪事実そのものの事実認定の対象になる罪体事実ではないわけでございます。むしろ五億円献金をしようがしまいが、それが必要経費でないということがわかれば脱税事件としては十分なわけでございまして、稲葉委員案内のように、一審では無罪になりまして、そのときに中曽根氏の依頼による取引の疑いもあるということが一部の理由になっておりますけれども、そのことを東郷本人の供述なりその他の証拠で控訴審で立証すれば十分であるということで、現に検事の控訴の趣意のとおりに認定がされているわけでございますから、そういう意味では必要なことはやり、必要でないことはやらなかったというだけでございまして、だれか特定の人に遠慮をしたということではないというふうに私どもは、理解しております。
  92. 稲葉誠一

    稲葉委員 時間が一、二分過ぎましたから、私はこれで終わります。ただ、いまのはちょっとおかしいですよ。私は検事控訴をした段階で調べなければいかぬと言うのですよ。あたりまえの話じゃないですか。だって、五億円が課税金額の中に入るか入らないか、どこに帰属するかということが争いのもとになっているわけですからね。それを調べる必要があったのだ、私はこういうふうに思いますよ。  現に最高裁に上告中の事件ですから、それに影響を与えるようなことを私ここで申し上げるのは適当でないと思いますので、これで私の質問を終わらしていただきます。どうもありがとうございました。
  93. 綿貫民輔

    綿貫委員長 熊川次男君。
  94. 熊川次男

    ○熊川委員 私は、いわゆるレフチェンコ証言問題に関連をして、二、三の質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、きわめて御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席いただきました官房長官に感謝を申し上げます。時間の関係もありましょうから、最初に官房長官にお尋ね申し上げます。  先般、米国政府関係筋から明らかにされたように、東京から米国に亡命した元ソ連の国家保安委員会の少佐であったレフチェンコ氏は、米国の下院情報特別委員会において証言をされましたが、それによると、同人が日本におる間に同保安委員会の秘密協力者として働く日本人がかなりいたと述べられております。これはわが国の基本的な安全の問題に関連する重要な内容を含んでおるのではないかと思われますので、現時点までにおけるこれに関する内閣の姿勢をお伺いいたしたいと存じます。
  95. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 レフチェンコのアメリカ下院における証言、これはレフチェンコ自身が四年余り東京に住んでおって、そしていわゆる積極工作員として活動しておった人物である、その人物が宣誓の上米国議会においての証言でございます。しかもその中身は、わが国益の上から見てもきわめて重大な内容もあるように証言自身見ただけで了解できるわけでございます。それだけに、政府としては、先般の予算委員会でもお答えしましたように重大に受けとめている次第でございます。  この事件、政府としてはいま外交ルートを通じて詳細な資料の提出をアメリカ政府に要請をしておるわけでございます。しかし、こういった事案の性格上、国会の証言そのものは当然秘密会における証言であっても、あれだけ一部リークされているわけですから、これはちょうだいすることはできると思います。ただしかし、証言以前の段階におけるアメリカの何らかの政府機関において当然詳細なる取り調べ、供述が行われておるはずでございますが、これらについては相手方の機関の性格もあり、いま外交ルートで照会をしておることに対するアメリカ政府の回答の有無、あった場合において、その内容次第によって、その段階で政府としては改めて何らかの措置をとるべき必要性を認めるということであるならば、その時期において政府として処理をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  96. 熊川次男

    ○熊川委員 政府としての真剣な取り組みに対し安心はいたしましたが、現段階までにおける証言以外の資料の存否の蓋然性、あるいはそれらがあるとすれば、わが国に協力してくださるところの可能性、あるいはさらには、それらを一日も早く督促、協力方の姿勢というようなものをあわせてお伺いいたしたいと思います。
  97. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 それ以外何らかの資料がいま日本政府の手元にあるのかどうか、こういう御質問だろうと思いますが、あるともないとも、この段階では明言を差し控えさせていただきたい、かように思います。
  98. 熊川次男

    ○熊川委員 事の性質上おのずからまだまだTPOというものも考えなければいかぬかもしれませんが、国際情勢、現今の状況を見まするときに、やはりこの辺で独立国としての体面をきちっと樹立させなければならないとも考えますので、国会でもすでに何回かお答えくださっておるようでありますが、どうか一段とスピードアップをしていただけたらありがたいと思いますので、期待を込め、お願いを込めて、かつ御感想があれば、さらにつけ加えていただけたらありがたいと思います。
  99. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 この種の事件は、国益上も大変重要な問題を含んでおるわけでございますが、同時にまた、とかくこういう問題の場合には、意識的に協力しておるというような場合であれば私は問題にならないと思います。しかし、同時に忘れてならないことは、相手は積極工作員でございますから、無意識的に利用せられた、不用心といいますか、そういった方を相手方としては、意識的に協力しておったんだ、こう認めておることもあり得るわけでございます。そういった人のお立場というものも十分考えてあげなければ、名誉の問題がございますから、あるのではなかろうか、こういう面も含んでおると思います。同時にまた、厳しい国際社会の中で、東京を中心にこの種の活動が大変活発に行われておるということ、これまた疑いのない事実であるし、過去においてこれが刑事事件というような面を帯びて検挙せられたような実例もあるわけでございます。  この問題は、こういったいろいろな側面があります。しかも、海のかなたでこういうものが出ると日本国民は大騒動する、これはまことにみっともない話でございます。そういう側面もあるし、同時に、日本国内ではこういった活動に対する防止の活動をしておる政府機関もあるわけでございますから、これらの活動が果たして十分に作動しておるのかどうかといった問題もあるわけでございます。いろいろな複雑な側面がございますから、今回のこういう事件を契機に、きちんとすべきところはきちんとしなければなるまい、かように考えておる次第でございます。
  100. 熊川次男

    ○熊川委員 お忙しいので失礼しようかと思ったのですが、いま長官からあるいは個人の名誉云々ということもありましたので、いろいろな際どい点もあるかもしれませんけれども、個人あるいは党というようなもので、特にその後進展しておるとか、あるいはより明白になり、かつ早急にそれらの人々の名誉回復のために明確にしなければならないというような事情でも述べられるものがあれば述べて、感想をつけ加えていただきたいと思います。
  101. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 一番最初に御答弁を申し上げましたように、いま外交ルートを通じて米政府に要求しておる段階でございますから、それらの結果を見た上で政府としての対応を考えたい、かように思っております。
  102. 熊川次男

    ○熊川委員 では、お忙しいところをどうもありがとうございました。  次に、外務省に対しお伺いいたしたいと思います。  御案内のとおり、これはただ単に国会内とか、あるいは国会対策マターというような問題ではございませんで、一国の外国との信頼関係あるいは日本の独立関係というようなことを考え合わせるときに、幅広くあるいは根の深い問題を内包しているかと思われますが、現段階において外務省はこれにどう取り組んできたのか、現在の分析状況を簡略にお伺いしたいのです。
  103. 丹波実

    ○丹波説明員 お答え申し上げます。  昨年十二月九日に公表されましたレフチェンコの証言録の中で、レフチェンコ自身が、KGBの活動をするに当たって日本ほど容易な国はないということを証言しておるわけです。私は日ソ関係を主管する外務省の主管課長として、大変に彼のこのステートメントを重大に受けとめております。そういう観点から、まさに私たちとしてはソ連の対日外交活動の裏表を知る上においても、本件レフチェンコの活動の内容の詳細を知りたいということで、先ほど官房長官が申しましたとおり、外務省の外交ルートで米政府に対して情報の提供方を求めておる、こういう状況でございます。
  104. 熊川次男

    ○熊川委員 現在、さらに入手可能な資料をアメリカにお願いしているというのはわかりましたが、現在入っただけの資料でもって、一体レフチェンコ氏はどんな目的でどんな活動をし、あるいはどんなグループあるいは人と接触し、かつそれらの行動に対しどのような対価的なものが支払われていたのかどうか、おわかりでしたら簡潔にお願いしたいのです。
  105. 丹波実

    ○丹羽説明員 ただいままでに私たちが入手しておりますのは、ここに私持っておりますけれども、この分厚い下院の証言録でございます。その中にまさにレフチェンコの証言があるわけですが、彼はソ連の日本におきます積極工作の目的として七つくらいこの中で挙げておりますけれども、要するに、簡単に申し上げますと、いかに日米間に不信感を呼び起こすかというためにいろいろな工作を日本の中でやっておるというような問題、それから、日中関係というものの間にもいかに不信感を植えつけるかということでいろいろな情報工作をした。そういうために社会党あるいは自民党のいろいろな方にも働きかけた、それからプレスの関係者にも働きかけたということを言っております。それから最後に、見過ごすことができない問題として、北方領土の問題に触れておりまして、ソ連が北方領土に軍隊を展開したのは、まさに軍事的な理由のほかに政治的にも北方領土はもうだめだよということを日本国民にはっきり印象づけるためであったというようないろんなことを言っておるわけです。  対価その他につきましては、証言その他の中で、たとえば数万円あるいは数十万円あるいは百万円単位の金額のことを彼は言っております。  以上です。
  106. 熊川次男

    ○熊川委員 ただいま七項目ほどの目的が要約できると言いましたが、その中にこんな目的が入っているかどうか確認させていただきたいと思います。「日米中の反ソ三国協力関係の形成の可能性を如何なる手段を使つても除去すること。」そういうものがあったかどうか。  さらには、いま党名が出ていろいろな方と、具体的に言うと社会党、自民党のいろいろな方というふうにお話がありましたが、そのいろいろな方々という中には、さらに分類するとどんな分類であるのか、お伺いいたしたいと思います。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕
  107. 丹波実

    ○丹羽説明員 いま私申しましたのは、簡単にまとめれば七項目と申し上げたのですが、レフチェンコ自身は具体的に十項目を挙げております。その中に先生がいま言われた問題として、第四項目目に「日米中の反ソ三国協力関係の形成の可能性を如何なる手段を使つても除去すること。」これがその一つの目的であった。  その次の項目として、第五項目目に「まず、自民党の、そしてその後、社会党の著名な政治家の間に、新しい親ソ・ロビーを作ること。」が目的であったということも言っております。
  108. 熊川次男

    ○熊川委員 そうしてみると、レフチェンコ氏が日本に入ってきて最初に最も親しくなった方というのはどんな方かおわかりでしょうか。
  109. 丹波実

    ○丹羽説明員 必ずしも私、レフチェンコが東京に来てだれと最初に親しくなったのか、そこまでは承知しておりません。
  110. 熊川次男

    ○熊川委員 それでは、昭和五十七年十二月十日付のソ連課の「ソ連の積極政治工作」と題する書面の存在することは御存じですか。
  111. 丹波実

    ○丹羽説明員 これは、昨年十二月九日に、先ほどから問題になっております証言録が公表されまして、その主要点は日本の各紙も大々的に報道いたしました。私たちのソ連課におきましても大体主要点をまとめまして、関心を抱かれておられる国会先生方あるいはプレスの方にお配りしたのがこの五十七年十二月十日付の資料です。大体新聞に報道されたものと内容は同じでございます。
  112. 熊川次男

    ○熊川委員 その書面の一ページの2の下から四行目から三行日あたりをちょっと読んでいただけますか。
  113. 丹波実

    ○丹羽説明員 「着任後二週目に、自分の前任者が日本社会党の著名人物に自分を紹介してくれた。」
  114. 熊川次男

    ○熊川委員 同書面の三ページの6にこういう記載があるかどうかお伺いいたします。  「最も有用なエージェントの中には、元閣僚、議会の主要公的組織の長、日本社会党の上級党員数名」云々、これは間違いないですか。
  115. 丹波実

    ○丹羽説明員 この書面は私の課員が仮訳したものですから、英文的に一〇〇%正しいかどうかは別として、大体そのような表現はこの中にございます。
  116. 熊川次男

    ○熊川委員 優秀な方々がそろっているわが国の外務省ですが、そうしてみると、これらの著名な人物とかあるいは上級党員数名、こう限られた説明を見ると、こういった方の固有名詞もすでにおわかりではないだろうか。もしないとするならば、いまどのような手段、方策で入手の努力をしているのか。いわゆる公開資料として先ほどそこでお見せくださいました書類のほかに、一体どのような部類のものにアプローチをしているのか、お伺いいたしたいと思います。
  117. 丹波実

    ○丹羽説明員 まず、先ほどお示ししました分厚い英文の資料、これは下院の公聴会の書類でございます。もともと秘密聴聞会として行われたものですけれども、秘密聴聞会で現実に行われたものと公表されたものとの間にはほとんど違いはないというふうに私は聞いております。  それから、いまのいろいろな関係人物の個々の名前、まさにそういったものを含めた関連情報について、外務省が外交ルートで現在米国政府に対して情報を求めておる。こういう状況でございます。
  118. 熊川次男

    ○熊川委員 それでは、その求めている日本の態度に対し、アメリカ側では現在どのような協力態勢をとっておられるのか、まず現時点までの協力態勢のほどを簡潔にお伺いいたします。
  119. 丹波実

    ○丹羽説明員 米国政府に、具体的には国務省でございますが、要請いたしましたのは一月の末でございます。今日まで時間がかかっておりますのは、私の全くの推測でございますが、一月の末以降、シュルツ国務長官及び日本関係の上級国務省員がずっと中国、日本その他を旅行して歩いていたということで、そういうことと関係があるんじゃないかと思っております。私の全くの推察ですが、現在は恐らく国務省はCIAその他の関係省庁と、どういうふうに日本に対応するか協議中ではないかと考えております。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  120. 熊川次男

    ○熊川委員 協議中ではないかと思うということですが、一番重要な大先端でありますので、どうか一層この事案の重要性というようなことを認識して、早急にさらに拍車をかけていただかなければならないのではないかと思っておりますが、御感想をお聞かせいただきたいと思います。  また、この件に関してはレフチェンコ氏は、聞くところによると、書物を出版するというようなことも新聞紙上でうかがい知ったわけですけれども、その書物はおおよそいつ、どのような時期の、どんなことを書こうとするのか、あるいはその内容などというものもある程度推測つくのかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  121. 丹波実

    ○丹羽説明員 外務省におきまして主管課長として朝から晩まで、いわば夜中まで毎日ソ連を問題にしている私といたしましては、はっきり申し上げて、日本の中で私ほどこの問題に関心を持っている者はないと思っております。真剣に取り組んでおるつもりです。  それから、本の点につきましては、レフチェンコ自身が昨年の十二月に記者会見で述べておりますが、ジョン・バロンという人間がおります。これはリーダーズダイジェストの幹部でございまして、いままで「KGB」という、大変にこれもベストセラーの本を出した男です。それから、たしかミグ25事件についても本を書いております。このジョン・バロンがレフチェンコの東京におきますところの活動に大変興味を持ちまして、レフチェンコと二人で本を書こうじゃないかということで現在本を書いておる。その本が公開されるのが恐らく四月か五月じゃないかということが言われております。  そういう状況です。
  122. 熊川次男

    ○熊川委員 大先端で非常に力強く取り組んでおられる情熱のほどを聞いて安心いたしておりますが、一層の努力と、できますれば本を待たずに、あるいは直接ジョン・バロン氏あたりとの折衝などを通して、一日も早く、固有名詞に近い名前の挙がった方々などの、一方においては名誉回復というか、場合によっては真実発見のために、国家安全のためにも一段の御努力を特にお願いいたしたいと思います。その辺の御感想をつけ加えていただけたらと思います。
  123. 丹波実

    ○丹羽説明員 先ほど官房長官も御答弁しておられたとおりでございます。結論的に、官房長官の申し上げたことに私としてもつけ加えることはなく、先生の問題意識はよくわかります。
  124. 熊川次男

    ○熊川委員 では一言、警察庁にお尋ねしたいと思います。  この問題について警察庁での現段階における分析、認識並びに近い将来におけるところの展望というか、その取り組み姿勢というものをお伺いいいたしたいと思います。
  125. 吉野準

    ○吉野説明員 お答え申し上げます  ソ連のKGBが、先ほどお話に出ておりますように、日本においてもアクティブメジャーズと称するいわゆる政治工作、非公然の政治工作をやっておるということはかねがね承知しております。また、問題のレフチェンコが日本におりましたときに、KGBの機関の一員としてその工作に従事しておったということも私ども把握いたしております。御指摘を待つまでもなく、私どもとしましては、これは重大なことであるということで重大な関心を持ってかねてから受けとめておりますし、また実態把握に努めておるところでございます。その結果、過去ソ連の情報機関員を何度か検挙いたしております。今後ともまたそういう方針で臨みたいと思っております。  また、このケースにつきましては、現在のところ、私どもも証言内容以上のものは持っておりませんので、さらに詳細な情報が入りました段階で、違法行為があればこれに対処していきたいというふうに考えている次第でございます。
  126. 熊川次男

    ○熊川委員 では最後に、お聞きのとおりではありますけれども、事の重大性、あるいはまだ資料入手の努力の過程ということでお伺いするのもどうかとも思いますが、現段階における法務大臣のこれに対する認識並びに将来の取り組み姿勢、覚悟のほどをお伺いしたいと思います。
  127. 秦野章

    秦野国務大臣 ただいまお話を伺いながら私ども感じておりますことは、国家の独立と安全を守るのは軍事力だけじゃない、いろいろな方法がある。これは人類の歴史、国家の歴史を見れば歴然たるものであります。今日、先進国でもいずれの国でも、いわばスパイを防止するというような立法を持っております。いろいろ伺っておりますと、いまの政治謀略工作そのものがイコール・スパイではない。スパイ的なこともあったかもわからぬが、スパイではない。それから、スパイが日本では犯罪かと言えば犯罪でもない。ただ刑事特別法とか国家公務員法とかにひっかかるとかいう程度でございます。  そういう点で、一体いいのであろうかという疑問を私はかねがね持っておるわけでございます。よその国並みに、それも国家の安全と独立を守る一つの道だということは間違いないと私は思うのだけれども、しかし、これを立法化するという問題になると、いろいろ日本の国情はむずかしい事情もあろうかと思うのでございますが、国家公務員法なんかになるとじきに時効になってしまいますし、例の宮永事件も実に軽微な犯罪になっております。果たしてそんな対応でいいのかという疑問を持つわけでございますが、目下のところはスパイ防止法といったようなものは研究段階だ、法案を準備するとかといったような段階までいまは正直言って至っておらぬし、これはまた党の方でも十分御検討を願わなければならぬ問題だ、こんな感想を持っております。
  128. 熊川次男

    ○熊川委員 ありがとうございました。  これをもって終了させていただきます。
  129. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと関連をしまして。いまの問題、重要ですから。  ただいまの発言を聞いておりまして、熊川委員が最後に、そういう人たちの名誉回復のためにも早くやれという結語をされましたから多くは申しません。しかし、質疑応答の中に何となく前提があるようであります。私は、日ソ親善協会の実は理事長をしておるわけです。赤城先生が会長でございます。中曽根総理も外務大臣も日ソ親善の必要性は言っておられ、私も同感なんでございます。そういう意味合いで、その仕事をしております立場からもちょっと言わしていただきます。  私はレフチェンコなる者に会ったことも見たことも何にも一切関係ない立場でございます。レフチェンコがKGBの秘密工作員であった。そしてソビエトでおまんまを食っておった。それが亡命をしてアメリカへ行った。まさに諜報組織の最も先端的な相手方のふところへ飛び込んだ。そこで飯を食わしてもらっている。そこで言いたいほうだいのことを言っておる。あるいは事実もあるであろう、あるいは事実でないところもあるかもしれぬ。そういうレフチェンコの言ったことが、いま熊川委員の質問の仕方は、すべて真実である、どうもそういう立場に立っているかのごとき印象を受けた。これが第一であります。  第二番目に、名誉回復を一刻も早くさせたいと言いながら、実はその名前を出せ、名前を出せというような迫り方は穏当でないと私は思います。私どもは、その意味におきまして、本問題については、政府がレフチェンコの言うことをうのみにせずに、その裏づけもとり、慎重な上にも慎重な調査をしてもらわなければ、これは熊川委員が最後に言った名誉回復のためにはならない、そういうふうに考えます。その点では、外務省、いま調査中だそうでございます。重要な問題であることについては私も決して否むものではありません。  本件は予算委員会で取り上げられた問題であります。しかも予算委員会で、レフチェンコが言ったことをそのままうのみにして天下の公党の名前を軽々に出す、そして元閣僚だとか、あるいは党の幹部だとかそういうことを言って自動的に人の名前が想像できるようなやり方は穏当ではないではないかという問題提起があって、了承されておることも同僚諸君御存じのとおりでございます。でございますから、そういう点については、私の注文でございますが、外務省の調査について十分配慮をなさらなければいけませんよと申し上げたのですが、いかがでございますか。
  130. 丹波実

    ○丹波説明員 まず第一に、先生が言われたこと、きわめてもっともなことで、私は何らの異論ございません。  現在、外務省がやっておりますことは、レフチェンコが亡命したときに、先ほども官房長官が言われましたけれども、CIAを初めとするアメリカの関係の省庁がレフチェンコから一定の話を聞いたであろうということは常識だと思います。それで、レフチェンコが本当にどういうことを言い、どういう活動をしていたのかということについて外務省として知りたいということを要請しておるわけです。  外務省としては、流れてくる情報がすべてそのまま正しいというふうに考えるほど私たちの組織は単純ではございません。私たちは、そういう情報が来た場合に警察当局その他に裏づけをしてもらう、そういうプロセスも必要であろう、そういうふうに考えております。おっしゃることはよくわかりますので、慎重に対応したい、こういうふうに考えます。
  131. 熊川次男

    ○熊川委員 時間が来ていますが、つけ加えて一つだけ述べさせていただきます。  私は、事法務委員会において重大な事案、ケースであればあるほど予断というものを持って質問するというようなことはきわめて危険であると思っております。かような前提に立って先ほど質問、応答の経緯を熟読していただければありがたいと思いますけれども、かくかくの文書が存在するかどうか、いかに書いてあるかどうかということだけで私は何ら偏見を持っての質問ではなかったという主観的認識でありますが、これが異なっているとすれば、私の不勉強のいたすところでやむを得ませんけれども、少なくともそのような主観のなかったこと、そういう姿勢でもって質問したのでないことは、議事録を読んでいただいてから私はさらに御訂正方を願うことになるかもしれませんけれども、そのような形でもって、偏見を持っていたわけではございませんので、できるものなら横山委員の先ほどの偏見を持ってというような、あるいは先入観を持ってというふうに伺えたという点は撤回できるものなら撤回していただきたいと思いますし、事が重大だけに、仮にそういう個人が想像できるような人がいるのかどうか私は全くわかりません、いただいた文書だけで、あるいはすでに入手している文書では全くわからないので、そのような方がいるとすれば大変なので、個人の利益と国家の利益の妥当なバランスを、調和を保つように早急に努力してほしい、こういう念願で述べたものでありますので、この点を篤と留意いただきたいと思います。
  132. 綿貫民輔

    綿貫委員長 ただいまの熊川君の発言にありましたが、議事録を見て、またいろいろと御相談させていただきたいと存じます。  午後一時十分再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ────◇─────     午後一時十分開議
  133. 綿貫民輔

    綿貫委員長 休憩前に引き続き開議を開きます。  質疑を続行いたします。横山利秋君。
  134. 横山利秋

    ○横山委員 ここに文春三月号ですか、「榎本敏夫7年目の新証言」という田原総一朗氏との原稿がございます。これは速記をしたようでございまして、かなり雰囲気が如実に出ておるところであります。これは新聞にも問題になり、そして裁判長がこれを取り上げて検察陣並びに弁護士両方を呼んで、一体どうなっておるということを異例の会談をしたそうでありますが、それに対して弁護陣は、私の承知しておるところを見ますと、榎本は余分なことを言うたと恐縮しておるという話だそうであります。それを聞いて奇異に感じました。  榎本のこの新証言を私なりに考えてみますと、「榎本 というのは、ロッキードの金ではないけれども、丸紅から金は貰っていますからね。その話を私がしていると、全部向こうの、その、結びつけられてしまうのですよ。」丸紅からもらっておるということであれば、外為法違反にはならないという伏線をしようとしておるのであろうか。あるいは「榎本 総理になって間もなくか、あるいは翌年(七三年)か、とにかくロッキードとは関係ない、全然ちがうと思います。ただ、私は、「いつだ」といわれると、特定する資料もないし、はっきりしないんですが。」というこの時期的な問題を考えて、一九七三年、七四年なら四十九年ころですか、時効になるということを意識してしゃべっておるのであろうか。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕 あるいは「榎本 それは、「選挙も大変でしょうから」という、あくまでも政治献金ということで。」ということで、政治献金なら受託収賄罪にならぬ。もらったことはもらった、イギリス大使館の裏ではない、伊藤さんのうちである、こういうことで、もらったことを言いながら、実は案外考えて物を言っているのではないかという感じがするわけであります。しかし、いずれにしても田中被告弁護団の一切もらっておらぬという主張、それから検察陣のいやイギリス大使館を初め、これは丸紅の金ではないという主張、いずれにも相違点がある、こういうふうに考えるわけであります。  予算委員会で刑事局長は本件についてはっきりしないことを言うておられるのでありますが、田中弁護団から、榎本が恐縮してあれはまあえらい申しわけなかったと言うて、裁判長に言うてくれと言うているから、言うならば、なかりしものにしてくれとでもいうことですか、弁護再開をしないことになるという話でありますが、一体この榎本が言ったことを否定をしておるのか、それともまあ取り上げないでくれと言っておるのかということについて、この新証言について刑事局長はどういう判断をしておみえになりますか。
  135. 前田宏

    前田(宏)政府委員 榎本被告がいま御指摘のような発言をしていることは報道等にも出ておることでございまして、私どもも十分承知しておるわけでございますが、その真意といいますか、意図といいますか、そういう点につきましては、御本人のことでありますから、私どもとしてははかり知れない点があるわけであります。したがいまして、それについてとやかく言うのもいかがかと思うわけでございますが、予算委員会でも申し上げましたように、現在裁判所で裁判が行われている被告人が法廷外で発言をしたということでございまして、形式的かもしれませんけれども、法的には裁判所の判断の対象にならない、つまり、事件の審理とは法的には関係がないというふうにしか言いようがない性格のものであるわけでございます。  ただいま横山委員も仰せになりましたように、裁判所の方で、裁判所のことでございますから、これも私どもの方から申し上げる筋ではございませんけれども、弁護人の方に釈明的なことをされて、それに対して弁護団の方から一応の説明があったというふうになっているわけでございます。  したがいまして、さしあたり検察当局として具体的にどういう措置をとるかということになるわけでございますけれども、当面はそういうことは考えていないといいますか、そういう状態にあるわけでございます。しかしながら、弁護団の最終弁論が五月に予定されておりますし、また被告人の最終陳述ということも機会としてはあるわけでございますから、そういうときにどのような対応がなされるかということにもよるわけでございまして、そういう状況——まあ、それまでの状況もまたいろいろあるかもしれませんけれども、そういう状況に応じて必要なことがあれば必要な措置をとるというしか申し上げられないわけでございます。
  136. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、検察陣としては、起訴事実とこの榎本の新証言とは違うけれども、今日のところ起訴事実の変更、榎本新証言に対する対応は一切しない、こういうことでございますか。
  137. 前田宏

    前田(宏)政府委員 検察側といたしましては、過日の論告で検察側の立場において従来法廷で取り調べられた証拠についての総まとめをし、検察官としての意見を述べたところでございまして、検察官としては従来の立証、主張、それによって公訴の維持が十分果たせるというふうに考えているわけでございまして、今回の榎本発言というものは、法的には先ほど申し上げたようなことでございますから、それに直接影響を及ぼすものでないというふうに考えているわけでございます。  したがって、すぐにどうこうするということにはならないと思いますけれども先ほど申し上げたように、今後またどんなことが起こるかわかりませんし、今後の公判の審理のこともございますから、それに応じて必要があれば必要なことをするというしか現段階では申し上げられないわけでございます。
  138. 横山利秋

    ○横山委員 きょうは最高裁は来ておみえにならぬですが、岡田裁判長が両者を呼んで、榎本証言について改めて、一体どうするつもりですかと言うて聞いたということは、公的なことであって、秘密でやったことではないのです。弁護側は、いや榎本恐縮しているから取り合わぬでくれという。検察陣は、もう求刑をしたことだから、今日まで言ったことに変わりはない、ほかっておくということですわね。しかし、世間は一体それでいいのでしょうかね、裁判官はそれでいいのでしょうかね。榎本がこう言ったことが真実であるかどうかは議論があるところであろうけれども、もらわぬと言っておったものをもらったと言っておる。そういうことは世間としては、そうか、やっぱりそうだったなということではあろうけれども、被告側の中の中心人物の一人がもらったと言っておる。そういう証言というものは法廷の中で言われたことはないことである。法廷は、法廷の中へ集まった証拠で言い合って、そして裁判官が判断するのだけれども、法廷外でもらったと言っておるものを、いままでどおりの主張で、それはもらっておらぬ、それはもらっておるという論争の中で、そのまま議論がもうない、そして後は最終弁論、判決だけだということでは、一体、裁判所としては、それでいいのだろうか。裁判官は、おまえどうなっておると言って両者を呼んで、調べてくれ、どういう対応をするかやってくれと言った手前は一体どうなるのでしょうかね。きょうは裁判所来ておらぬけれども、これはどなたが答弁したらいいのだ。法務大臣、そういうときは何か言いますか。——言うことないの。刑事局長、言うことない。——そうかね。それは今度ひとつ裁判所に聞きますけれども、世間はこんなことは納得しません。なるほど、法廷内のことだから証拠だけでやるよりしようがないじゃないかということはあるけれども、世間は、何だあれ、もらったと大きな声で言っておるのに、裁判所はそんなことは採用しないというのはおかしいぜ、こう言うわね。ただ、前田さん、榎本新証言へ取りついていくと、あなた方の言っている起訴事実もちょこっと間違っておる、あれはうそだったという茶の木畑に入っていくかもしれぬので、そんなもの取り合わぬ方がいいという気持ちじゃないの。
  139. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どういうふうにお答えしたらよろしいかと思いますけれども先ほど来繰り返して申しておりますように、法廷外の発言でございますから、仮にもらったということが有罪の証拠になるという見方をいたしましても、法的にそれは証拠にはなり得ないということでございまして、そういう意味では、裁判の対象にならないというふうに申し上げるほかないわけでございます。したがいまして、法的には、今後先ほど申し上げた弁論等でどういうふうに言われるかということが公的な問題になるわけでございますから、それによって必要があれば必要なことをすると言うしかないわけになるわけでございます。  そういう発言はいま申し上げましたように、法的には証拠にならない、つまり判断の材料にならないというわけでございますから、おのずからそういう結論になるわけでございますが、あと、裁判所がどういうふうにこの事件を処理するかということは、裁判所の判決、裁判でいわば公的な判断が示されるということになるわけでございまして、余りにも形式的な言い方で恐縮かと思いますけれども、それ以上のことは申し上げられないわけでございます。
  140. 横山利秋

    ○横山委員 あなたに聞いてもしようがないと思うのですけれども、そこで、検察陣としては判決の見通しは大体いつごろだと思っているのですか。
  141. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど申し上げましたように、一応いまの段階では五月に被告人側といいますか弁護人の最終弁論があるという予定になっておりまして、その期日も決まっているわけでございます。その後のことは裁判所の問題でございますから、私どもとして予測するというか、こちらで決めるべきことでもございませんので、はっきりしたことは申しかねるわけでございますが、そんな二年も三年もたつということは常識ではないだろうというふうに言うほかないと思います。
  142. 横山利秋

    ○横山委員 大体の見るところ、秋か冬かに判決がある、みんながそう思っておるわけであります。  午前中、稲葉委員前田局長のいわゆる一般論を興味深く聞いておったわけです。稲葉さんと、逮捕許可をもらいにいったその許可という性格論を議論なさっておったのですけれども、すべての人が有罪になるだろうというふうに見ていますわね。けれども、また、すべての人が控訴するだろうというふうに考えていますわね。控訴になった過程でいまの榎本発言がもう一遍議論になる可能性はあるでしょうか。
  143. 前田宏

    前田(宏)政府委員 その前提の有罪になるだろう、控訴するだろうということも仮定のことでございますから、何とも申し上げられないわけでございますが、一般的に言えば、上訴審で新たな立証が補充的に行われるということはないわけではございません。
  144. 横山利秋

    ○横山委員 これは一般論ですが、判決があったときに、検事側が控訴する場合もありますね。そういう場合に、一般論で、法務大臣に、あなたの言葉でいくと了承を得るという仕事はいつでもやりますか。どういうときにやるのですか。この判決は不服でございますから、控訴いたしたいと思いますがということをいつでもやるのですか、特別の場合だけ法務大臣了承を得に行くわけですか。
  145. 前田宏

    前田(宏)政府委員 まさしく一般論としてのことであろうと思いますけれども法務大臣検察官につきましても一般的な指揮監督権を持っているわけでございますから、大臣の御判断を仰ぐべき事項、これはいわばケース・バイ・ケースということになるかもしれませんが、事柄の性質に応じて大臣の御判断を仰ぐということもあるといいますか、そういう一般的なことしか申し上げられないわけでございます。
  146. 横山利秋

    ○横山委員 ケース・バイ・ケースで大臣判断を仰ぐ。先ほど了承だったけれども、今度は判断を仰ぐということですね。控訴するときに何が何でも全部やっているわけじゃないでしょう。そうですね。そうだとすると、本件はいわゆる御判断を仰ぐ事例になりますか、そういう場合は。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  147. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どうも本件はと言われましても、本件が何であるかがよくわからないわけでございますので、何とも申し上げられないわけです。その判断を仰ぐということもちょっと補足した方がいいかと思いますが、検事総長大臣の指揮を仰ぐということになりますと、それは正式なことになるわけでございますが、私ども大臣を補佐する立場といたしまして、検察当局でいろいろなことが日夜行われるわけでございますから、その状況は把握していなければならないのは私ども立場でございます。そうして、私の立場検察当局の動き、現場でこういう問題が起こっているとか、そういうようなことを取捨選択いたしまして、それに応じて大臣のお耳にも入れるということは常務としてやっているということでございます。
  148. 横山利秋

    ○横山委員 今度はお耳に入れるというふうにだんだん軟化したな。了承を得るから、御判断を仰ぐ、その次はお耳に入れる。お耳に入らぬ場合はどうなるのでしょうか。  ところで、田中被告の保釈金は幾らでしたか。二億円でしたか。
  149. 前田宏

    前田(宏)政府委員 たしか御指摘のとおりだったとお思います。
  150. 横山利秋

    ○横山委員 私は素人でわかりませんけれども、まあ有罪、五年か四年か、まさか三年ということはなかろう、これはちまたの話でそう言われておるのですが、先ほどの話のように、有罪になれば拘禁されるということなら、一たんは二億円は本人に返されるわけですね。しかし、もちろん控訴するとなりましょう。控訴した場合には、素人ですからわかりませんが、二億円はパアになって改めて何億円ということになるのですか、それとも、前二億円だからもうちょっと積めということになるのですか。こういう場合には、前の保釈金よりも後の保釈金の方が高くなるものですか、どんなものですか。
  151. 前田宏

    前田(宏)政府委員 どうも余り生々しいような話になりますので、何ともお答えがいたしにくいわけでございますけれども先ほど稲葉委員とのやりとりで申し上げましたように、一審で実刑の判決がございますと、収監の手続がとられることになるわけでございますが、実際に収監される前に再保釈ということもあるわけでございます。いま保釈金額の話でございますから、これも裁判所がお決めになることでございましで、どういう金額が相当かというのはそこで改めて決められることでございます。(横山委員「通常高くなるのですか、安くなるのですか」と呼ぶ)通常というのが、これもなかなかむずかしいわけでございますが、一般的に保釈金ということになりますと、逃亡防止というところに主眼があるわけでございますから、その事案なり被告人の状況、そういうものが具体的に勘案されるわけでございますので、高くなる場合もかなりあるというふうに申し上げたらいいかと思います。
  152. 横山利秋

    ○横山委員 いまあなたのお話の中に、収監される前に再保釈になる場合もあると、暗になぞというか伏線を張られたのですが、その判決があって先ほどお話のように裁判所から検察庁へ移す、その日のうちに保釈金を決定、保釈金の納入、そして再保釈、電光石火のごとくそううまくいくものですか。保釈金はだれが決めるのですか。裁判所ですね。裁判所と検察庁との話し合い、保釈金もあなたの方は相談に行くのですか、行かないのですか。電光石火のごとく、そんなにうまくいくものですか、通常はどうですか。
  153. 前田宏

    前田(宏)政府委員 電光石火というわけにもいかないと思いますけれども先ほどは手際よくというようなことを申したわけですけれども、若干の時間がかかることは当然でございます。それも事案によって裁判所の判断が速やかに出る場合と、いろいろと裁判所がお考えになる場合もありましょうから、そこにも時間の長短があるわけでございまして、そういうことで金額のことも裁判所がお決めになるわけでございます。そういういろいろな裁判所の御判断のために時間がかかることもあるでしょうし、また、いま保釈金の納付の話が出ましたけれども、これもすぐに用意している場合と、用意してないので金策をして持ってくるというような場合もあるでしょうし、そういう具体的なもろもろの事情によりまして、早くいく場合もあれば、かなりの時間がかかる場合もあるということでございます。
  154. 横山利秋

    ○横山委員 私のような素人にはよくわからぬのですが、形式的に言うと、判決がある、保釈金は幾らくらいだと相談に行く、そしてそれじゃ二億だけれども、もう一億積んでくれと言う、それで一億探しに行く、そして持ってくる。高い安いはあるかもしれぬけれども、がたがたやって大分時間もかかる、日にちもかかると思うのですが、あなたの話だと、手際よくということは、有罪判決の前にちゃんと何年だったら保釈金幾らと内々の話を済ませておいて、きわめて手際よく、判決、保釈金、納入、仮保釈、そんな手際よくやれるものですか。特別扱いだな。
  155. 前田宏

    前田(宏)政府委員 手際よくと言いましたのは、検事が手際よくやるのじゃなくて、弁護士さんが手際よくおやりになるということでございますので、その点は誤解をいただかないようにいただきたいわけですけれども、要するに、先ほども一般的に申しましたように、裁判所が保釈をするかどうか、また、その保釈金額は幾らであるべきかということの御判断をするわけでございます。  それで、弁護人の方で保釈の請求をするわけでございますし、保釈金の用意も弁護人の方でするわけでございますから、これはよけいな差し出がましい話になりますけれども、弁護人の方で相当な金をあらかじめ用意していれば、すぐにも積めることになるだろうと思いますし、その辺はむしろ弁護人側の用意、準備の問題であろうと思うわけでございます。
  156. 横山利秋

    ○横山委員 とにかく最高検からの話があって、前田さんがまた法務大臣の部屋へ行くわけだな。そして、許可を得に行くか、了承を得に行くか、お耳に入れに行くか、とにかく行くことは間違いないですね。これは有罪は万間違いないと思うし、まさかと思うのですけれども、もし判決が思うようにならなかった場合においては、検事側の控訴もないとは言えないわけですね。これは一般論ですがね。検事側の控訴があった場合あるいはそのほかの場合、法務大臣指揮権発動をなさるおつもりがおありでしょうか。
  157. 秦野章

    秦野国務大臣 いまの御質問に対して、まず第一に、刑事局長検察の問題について私のところにいろいろ相談に来たり報告に来たりするということは、これは私の部下だから当然なのですよ。それで当然なのだけれども、ただ個々の事件については、大きな事件以外は余りないのです。大きな事件では多分報告に来るじゃろう。来ると思いますよ。来ても、ああそうかというのが——大体私は検察についてはプロじゃないので素人だ。だから、スタッフの意見に従って裁くというのが大原則であって、九九・九九九%そういう姿勢で私はおるわけですよ。だけれども、将来の事件仮定の上に立って、おまえはそのときに指揮権を使うか使わないかというお話になってくると、指揮権というものは制度としてあるのだから、可能性としてありますよ。しかし、いままで予算委員会その他でも申し上げたのだけれども、私は健全な常識によって判断をするのだ。最後はそれしかない。仮定の問題に立って、そのときに指揮をどうするこうするというようなことは、横山さん、ちょっとそれは無理でしょう、私に言えというのは。しかも、いま公判が係属中だから、私がこう言ったああ言ったというようなことが影響しないとも限らない。私は法務大臣なんてそんなに偉いのかどうかわからぬけれども法務大臣という職責から、やはり裁判中の事件については余りとやかく私は言わぬ。裁判官が中心になって、検事と弁護団が当事者訴訟主義でやっておられるのだから、それを大方見守っておればいいのであって、判決が出たって、それは裁判所がするので、そういうような感覚で私は対処をしていくつもりでございます。
  158. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはときどきそういうことをおっしゃるけれども、どうも庶民的感覚から言うと、あなたの言っていることは、あたりまえ、自分がそうだと思っておっても、受け取る方は違うんですよ。どこに乖離があるかというと、とにかく検察陣は、歴史始まって以来、ロッキード裁判に全力をかけている。検察陣の全力を込めてこの問題に立ち向かっておる。そして、有罪だということで求刑しておる。法務大臣は、検察陣を信頼しておるというなら、それは起訴事実やあるいは求刑をしたことについて全幅の信頼を置いておると言わなければうそです。あなたは最高裁長官じゃないんだ。神様でもないんだ。検察陣の親方ですよ。その親方が、指揮権発動するとも言えない、しないとも言えない、それはあたりまえの理屈だ。けれども、あなたも私も政治家ですよ。そういうことをことさらに強調すると、検察陣のやっていることとあなたの言っていることとは乖離があるのですよ。そこをみんなが疑っているんですよ。そうでしょう。あなたが検察陣を信頼しておる、起訴事実も求刑した内容も全く私、異存ない、こう言えばそれで済むところだ。それを、ことさらに何で理屈ばかり言って、指揮権発動はやるともやらぬとも言えぬ、裁判に任しておる、何で人ごとみたいにそういうことを言うのです。あなたがそういうことを言えば言うほど、検察陣はあなたを横目で見ていますぜ、本当に。どういう人やろう、何かやれへんかと。最近はちょっと慎重になったようだけれども、私ども常識的に、これだけおれらが一生懸命にやっておるのに、法務大臣は理屈を言っておる、理屈が間違っておるとは言わぬ、間違っておるとは言わぬけれども、おれらの気持ちをどうしてくれるという気持ちでおる。それを名古屋弁で言うと、どう思いやあすというのだ。そういうことをどう思いやあす。
  159. 秦野章

    秦野国務大臣 どうもいま横山先生の御意見の方が、何か先入観を持っていらっしゃるように私は思う。法務大臣というのは、一々の裁判について、こういう判決が出たら控訴して、控訴したらどうするかとかこうするかとかいうことを言ってはいけないでしょう。そういう立場にないのですよ。そんなことに一生懸命興味を持って、ああしたらいい、こうしたらいいというようなことを言うべきではないというのがむしろ常識だと私は思うのだ。  そういうことでは検察陣が私についてこないかついてくるかという問題は、検察はそんなにもろくもないし、そんなことがわからないはずはないのです。私も周辺の連中にちゃんと聞いてやっているのですよ。これは私の個人の見解じゃないです。そういうことが論理だ。このことをはっきりしておくことは大事なことだ。私が先走って、御質問に答えて、指揮権発動しません、しますと、そんな先のことを、先物取引みたいに言ってはいけないのですよ。この点だけはぜひひとつ、制度の本質というものからそういうふうになるので、まだ先のことでしょうが。まだ目の前に判決も何もない。控訴するとかしないとか、そんな意見もない。報告もない。どうして私がそんなことを先に言わなければいけませんか。そのことは、私の言っている方がはるかに論理的であるし、世間は納得すると思いますよ。  ただ、世間の中には変なイメージで、むしろ変に前提を持ってごらんになる人もおるので、そういう人たちにとってはそれは別かもしれません。私は公平な立場に立って考えているつもりであります。これはもう信じて恥じない。
  160. 横山利秋

    ○横山委員 そんなところに公平はつかぬですよ。あなたは検察陣の親方だ。おれを信頼してついてきてくれという気持ちがなければうそだと思うのです。指揮権発動は特別な法規定であるけれども大臣だったらだれだってそういう意味指揮権を持っておるのですよ。あなただけがそのことを強調するの余り検察陣から横目で見られるおそれがある、私はこう言いたいのであります。  大体あなたは、おれは素人だと先ほどおっしゃったんだが、あなたは素人じゃないわ。法務大臣の玄人じゃないかもしれぬけれども警察の親玉だからぶちとだと私は思う。決してあなたは素人じゃない。ただ、あなたは型破りの法務大臣で、法務大臣になる人じゃないと私は思う。ほかの仕事をやっていればいいという意見があるが、私はそうだと思うな。あなたの略歴もいろいろ調べてみました、聞きました。本当に何というか、発想豊かで、これは褒めているのですよ、柔軟性があって型破りだ。けれども、その型破りというのはどこから出てくるかというと、警察的発想じゃないかと思うのです。警察人と検察人とは私はやはり体質が違うと思う、さっきもあなたは言及されましたけれどもね。警察的感覚と法務的感覚といいますか、警察は機動性があり庶民性があり、あるいはある意味では検察人よりも開放性があると思うのです。ところが、検察人となりますと、これはやはり安定性というか慎重性というか、より大きな立場というか、私は素人ながらそういう特質があるんじゃないかと思うのです。  あなたが議員の際に、外国人も日本の大学へやったらどうかとか、あるいはまた教科書に超法規的な感覚を持ってやっていいんじゃないかとか、あるいは中近東の外交だとか、なかなか発想豊かにがんばってきたことは特筆に値すると思うのですよ。しかし、法務大臣になれば、いままで法務大臣指揮権発動をしないと言っておったのを、それは理屈が違う、おれは理屈どおりに言うということは、やはり型破りかもしれぬけれども、一抹の暗雲を投げかけたということに、どうしてもそうなると私は思うのです。  私は従来から、法務省というところは機動力が足りないとか、余り慎重でとっとと仕事をしてくれないと言っておるけれども、根っこにはやはり長期安定性というものが法務行政の中にはなくてはならぬ、そういう意味合いでは、その土台の上にひとつ花を咲かしてもらいたいという希望なんですよ。それから、法務行政の中には二つの側面がある。一つは、いい意味の権力行政、一つにはサービス行政です。この二つの側面がある。どうも法務省は、権力行政ばかりがイメージアップして、国民に対するサービス行政、たとえば民事局だとか人権擁護局だとか、そういうところがちっとも充実されないという感じを持っておるのですよ。それはあなたがもう少し重点を注いでもらいたい。法務大臣になったら、何となく指揮権発動ばかりが新法務大臣の顔だ。あなたは顔がごついからいかぬわ、もうちょっとにこやかに、法務大臣のそちらの方を少しイメージアップしてもらいたい。指揮権発動だけがあなたの顔に見えてしまって、非常にダメージを与えたのではないかと思います。そういう感想について伺います。
  161. 秦野章

    秦野国務大臣 私がいま法務大臣の部屋におって、いろいろ報告を聞いたり、また私自身がいろいろ指示をしたりするようなことが毎日の業務でございますが、指揮権の問題についてはほとんど話をしたことがない。指揮権を毎日考えているなんと言うが、ひとつも毎日考えてない。出ているのは新聞か皆さん方の御意見でございまして……(横山委員「不徳のいたすところと言わなければいかぬ」と呼ぶ)不徳のいたすところかもしらぬが、御質問だがら私はまず真実を言わなければいかぬから……。  私は本当に日常の業務でそんなことを考えたことはないですよ。法務省の仕事というのは、官房、ほかに七局ありまして、正直言って長い伝統の中でたくさんの仕事がある。しかもじみだから世間には十分にわからない。何とか理解をしてもらいたいと同時に、民間の協力なんかを得るためには、やはり法務省の仕事がどういうことをやっているのかということをいろいろデータを出したりして理解をしてもらわなければならぬ、民間の協力も得にゃならぬ。それからおっしゃったように、どっちかといったら権力型の役所でございます。しかし、権力というものは思いやりもある権力でなければならぬし、権力の本質には一種の菩提心のようなものもなければならぬ。そういう意味においては、各局の仕事がそういうような思いやりを込めた仕事で運営されることを期待するためには、私もいろいろ部下の諸君と相談をしながら展開をしていかなければならぬ問題がたくさんあることはお説のとおりです。私はいまそういう方面に一生懸命やっておるわけでございまして、現に裁判が係属されているような事件については、正直言って聞きもせぬし、ほとんど報告もないですよ。指揮権の問題なんかもまるっきりないですよ。どうかその点は実際の姿というものを、お越し願ってもいいんだけれども、見ていただけたらおわかり願えると思うのです。
  162. 横山利秋

    ○横山委員 百日の説法へ一つという言葉があるが、そのあなたが衆議院で田中代議士に対して、私も見ておったけれども、こういうかっこうじゃありませんか。田中代議士がずっとこちらへ来て、いよっと言ったら、あなたは壇上の法務大臣席から手を差し伸べてこうやる、あの写真が満天下に流れておる。あれは本当にどういうことかと皆さん言っておりますぞ。刑事被告人じゃないか、法務大臣じゃないか、その法務大臣大臣席から身を乗り出してこうやってありがとうございますとやっておる図はどう理解したらいいかと言うんですよ。これは本当にあなたの真情がそこでぱっと出た。御厄介になった人かしらぬ。けれども、五百十一人の国会議員が見ておる、傍聴席で数百人が見ておる目の前で、何で法務大臣が刑事被告人に体を乗り出してこんなことをせんならぬ。どういうことですか。これは説明になりませんぞ。
  163. 秦野章

    秦野国務大臣 写真に撮られて、確かにそういう御批判もあったことは私も承知しております。しかし、両手を出したんではなくて片っ方なんですよ。写真をよく見ていただけばわかるけれども、両手を出すわけがないですよ。しかも私の二席か三席のところにおられて向こうからとっとっと来られたから、私は背が低くて大臣席でしょう、こうやらなければ届かないわけだ。(横山委員「こうやっておればええがな」と呼ぶ)いやいや、向こうで手を出したから握手したんだ。手を出せば私はどなたでも握手をするのです。握手をしないでこうやっちゃうのは人間的じゃないという気持ちがあるのですよ、これはだれでも。私はそういう気持ちでおるわけであって、格別のことはないですよ、あたりまえのことだと思う。
  164. 横山利秋

    ○横山委員 いかぬ。それは、あれだけやられておるから、あなたもじくじたる思いをしておると思うから余り言いませんけれども、あなたがいろいろここでおっしゃった気持ちをそのままに受け取っても、世間はそういうところであなたを評価するのです。これも身の不徳のいたすところですよ。  私は、議員の倫理ということについて、刑事被告と政治倫理ということを区別をしたいと思っているんです、お互いに政治家ですからね。私はその意味において、社会党のこの種の問題のプロジェクトチームの主査をしておるのですが、「国会議員の本質や特殊な立場を明らかにし国会法又は他の方法で規定する必要がある。」と言っている。国会議員とはどういうものかということであります。  私は五つ挙げました。一つは「議員は憲法に基づき、国権の最高機関の一員として主権者である国民に責任を負うものである。」二つ目が「議員は、その政治活動については、全人格的に、かつ不断に任務を果す義務がある。」昔のように名誉職ではない、われわれはプロである、だから全人格的に夜も日も問わずわれわれは任務を果たす義務がある。三つ目は「議員は所属する政党の規範の外は、いかなる団体及び個人からも独立性を保つべきである。」私もいろいろ顧問をやっていますよ、組合にも関係していますよ。けれども、最終的には所属する政党の規範には従うけれども、あらゆるものから独立をしなければいかぬ。四つ目は「議員は、選挙を含めてつねに自らの言動すべてについて信託をうけた国民の批判の下にあることを受け入れなければならない。」つまりわれわれは受忍義務がある。国民の批判に対する受忍義務がある。自分が正しいと思っておっても、国民の批判を何言っとるというわけにはいかぬ。われわれは政策を選挙で訴えたけれども、同時に、自分というものを、横山利秋を信頼してくださいということで言った以上は、政策以前の自分の言動について受忍義務がある。第五番目は「議員は、憲法によって付与された不逮捕特権や院内の発言・表決について責任を問われない特権をはじめ議員であることの権利を、自己又は特定の者の利益や、公共の利益を侵害することに利用してはならない。」これが私の倫理五原則なんです。  これをあなたに披露したゆえんのものは、やはりいまお互いに罪に問われなければいいという問題ではない。やはり国会議員としての倫理という上からみずから判断をし、この五原則の中で自分の責任は果たさなければいかぬ。そういう点で私どもこの田中議員の辞職勧告決議を出すゆえんなんであって、なるほどまだ確定はしていない。けれども、一国の総理大臣がこれだけ総理在任中のもので罪を問われて裁判に付せられておる、その者のあるべき姿として当然まず辞職をすべきではないか。世間では、まあそういう人たちは、いや選挙の洗礼を受けたと言うけれども、しかし、その選挙は、私はもらっておらぬという立場でやったことですから、いわんや国家公務員は警察に引っ張られただけでも、起訴されただけでもみんな休職ですよ。もっともっと厳しい政治倫理をわれわれはお互いに甘受しなければならぬじゃありませんか。そういう点でどうお考えですか。
  165. 秦野章

    秦野国務大臣 政治の倫理の問題で、横山先生独特の見解をいま拝聴をいたしました。私は、いまここで政治倫理の問題に関連して辞職すべきかすべきでないかという問題は、ちょっと私の立場法務大臣としてはちょっと管轄外というのか、所管外というのか、いささか立場が違いますので、その問題についてのお答えはちょっと私がここで公的に申し上げることは適当でない、こう思うのでございます。  ただ、いまおっしゃったように、政治家がやはりあくまでも政治家としていくゆえんのものは、国民から信頼を得た者でなければならぬ。信頼を得るためには、国民に対して道義的にも十分に責任にたえる者でなければならぬ、これは当然のことだと思います。  その点は全くどうということはございませんけれども、それだったら、どういうふうに具体的に田中さんがやめるべきだどうだという問題は、いま国会の中の政治問題としての論議をされている問題で、法務行政の私の立場でとやかく言うことはちょっと適当じゃないんじゃないかというふうに考えますので、その点はちょっとひとつ御了承いただきたいと思います。
  166. 横山利秋

    ○横山(利)委員 私は、あなたが法務大臣である以前に、政治家として、一個の同僚国会議員としてお話をしているつもりなんで、隠れみのをそういうところへ持っていかないようにしてもらいたいと思うのです。  次に刑務所の問題にちょっと触れてみたいと思うのです。  この間法務委員会が福岡の刑務所に行きました。銃をつくっておるかどうかということで調べたんですが、焼き入れするところがないから、そんなことはありませんでしたよ。ないということで、委員長以下そんなものかな、なるほどそう言われれば焼き入れするところがないわなと思ったんです。ところが、後で聞いてみますと、部品がガスのジューっとやるやつ、あれでできるんだそうですね、できたんだそうです。これはもう警察起訴しておるわけですから、福岡刑務所の中で、そこで組み立てはやったわけじゃないらしいですが、銃の部品ができたことはまあ争うことのできない事実だと思いますね。まことに驚くべきことだと思います。こんなばかな話がとうして——刑務所で銃の重要な部品ができたということは、日本の刑務所の歴史の中でも本当に初めてだろうと思うのですよ。恐らくもう矯正局長を初め震駭させたと思うのですが、一体その結末はどうなっておりますか、まず報告を願いましょうか。
  167. 前田宏

    前田(宏)政府委員 刑事事件として処理状況だけを申しますと、ただいま御指摘事件は大変遺憾な事件でございますが、それだけに現地の地検といたしましても、警察当局と十分な連絡協調をしながら事案の真相の解明に努めたところでございまして、その結果、昨年の暮れに三名の者を起訴しておるわけでございます。  その事実は、福岡刑務所内で散弾銃に該当する銃を二丁製造したということになるわけでございます。
  168. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 ただいま刑事局長からお答え申し上げましたように、この事件は三名の元収容者が共謀して銃二丁を作製したということでございます。  当初こういう話が出ました際に、私どもといたしましては、とてもそういうことはあり得ないと考えておったところでございますが、捜査の結果、こういう事実はあったということになりましたし、その捜査の結果を踏まえて、私どもの方でそれに合うような状況があったかどうかという点も確認いたしたわけでございますが、銃をつくるのに使われた材料等も刑務所の中で入手可能なものが大部分であったということでございますし、先ほど指摘のような焼き入れの問題につきましても、これは本当の焼き入れということになりますと相当の手数がかかるわけでございますが、実際には溶接機をもって器具のほんの一部分を焼き入れしたというような状況でございます。  こういうことがもし行われるとすれば、こういうことが行われないような環境をつくるために刑務所としてはもちろん努力してまいったわけでございますが、一番大きな事情といたしましては、当該工場が約千六百平方メートルという大変大きな工場でありまして、そこの中には旋盤、フライス盤等の機械が林立と言うとちょっと大げさかもしれませんが、しておりまして、しかも就業時間中には煙等が立ち上っておるというような状況でありまして、そこに約六十名ちょっとの受刑者を作業につかせておったわけでございますが、それに対して、これを監督いたしております工場担当という職員が一名だけであったという事情もございまして、そういう監視のすきをつかれてこういう事件が起こったわけでございます。  御指摘のように、本当に例のないことでございますし、私どもとしては大変残念にも思い、世間を騒がしましたことについて恐縮いたしておるところでございますが、事実としては、先ほど刑事局長から申しましたように、銃を作製した事実があるということでございます。
  169. 横山利秋

    ○横山委員 この前、去年行ったときに、あれは十月でございましたか、私ども視察をいたしました。いろいろ実感を持ったわけでありますが、羽田野委員長の記者会見で、受刑者六十人に刑務官一人という監視体制に問題があるのではないか、適正配置がどのくらいであるか、はっきりさせなければならぬという感想を羽田野委員長が言われたのです。ここに九月二十七日の新聞でありますが、生々しい刑務官と暴力団との癒着の実態というものがインタビューで出ております。これは、勤続十数年という三十代の刑務官A氏、途中省略しますけれども、   A氏 長く刑務官をやっていれば、連中もこっちの顔を覚える。あいさつされれば、こっちも応える。それで、顔なじみになってしまう。連中は出たり入ったりしているので、たまたま町で会うこともある。   ——あなたも、そんなことがあったか。   A氏 それはあります。中洲(福岡市の料飲料街)で飲んでいた時、暴力団の組長が手下を連れて歩いているのとバッタリ出会った。組長が「一緒に行こう」と誘うので断ると、手下が腕をつかみ「親分の言うことがきけんのか」と強引に高級クラブに連れていかれた。勘定は向こう持ちだし高いし、他人が見たら、癒着だと思うでしょう。   ——たびたびそんなことがあるのか。   A氏 ウチに暴力団の幹部から電話がかかってくることはある。   ——刑務所での知り合いか。   A氏 去年まで入っていた福岡県内の組長だ。もちろん、所内では顔見知りだった。ただし、この人は父の知り合いでもあり、悪い人ではない。電話もわたしの留守中にあっただけだ。   ——その人に誘われたら、断れるか。   A氏 誘われたことはないけれど、誘われたら断りきれぬこともある。   ——しかし、受刑者を監督する立場の刑務官が暴力団におごられるのはまずいと思わないか。   A氏 それはそうだが、ここはいろいろ難しい。五年前、わたしも若かったから、規則にのっとってビシッとやっていた。すると、満期出所二日前の暴力団員が房舎内でわたしの名を呼び「お前が厳しすぎたから仮釈放がもらえなかった。このウラミは忘れない。お前を散弾銃で撃ち殺し、子どもは池に沈めてしまう」と脅された。   ——警察には届けたのか。   A氏 (目にうっすら涙を浮かべ)上の者に報告したが、警察への告訴はできなかった。結局、外に出てしまえば、関係ない人たちの暴言として泣き寝入りするしかなかった。私はいい、でも、子どもまで殺されると脅された気持ちがわかりますか。   ——そんなことが重なると、所内でも暴力団に甘くなるのではないか。   A氏 いや、私はそんなことはない。でも、そういう人もいるかもしれない。(しばらく黙り、突然、意を決したように)ここまできたら、言わせてもらう。幹部たちが今度の事件(銃密造)で所内の規律のことを格好よく言っているが、何をいまさら、という感じだ。わたしたちは毎日、体をはって暴力団と接している。その危険もわかりもしないで、幹部はみんな二年ぐらいでどんどん異動していく。ここから出ていくことのできないわたしたちにとって、暴力団がどんな存在か、圧力のこわさをわかってくれない。だから、暮れになって暴力団から忘年会に誘われると行かなければいけないこともある。これはわたしだけではない。 これは本当に生々しいですね。  こういう紙面を見て、刑務所内のその場の情景が、これがすべてだとは思いませんよ。しかし、暴力団がたくさんおるところでは、私ども視察したときには、本当に警備も完壁で、皆さん礼儀正しくやってくれたけれども、こういう記事を見ますと、本当に刑務官の人が気の毒に思うのですよ。刑務官の人たちに安心して任務を尽くせと言葉で言っただけではだめなような気がしますね。どうお考えになりますか。
  170. 秦野章

    秦野国務大臣 私も就任早々刑務所を一、二カ所見て回って、見て回ったときは、当然向こうもわれわれが行くということで、正直言って、それじゃわからないのですよ。だけれども、刑務官が武器も持たずに多くの囚人者を頭と手腕でリードして非常によくやっているなということは事実なんですよね。したがって、こういう事件を聞きますと、実に残念でもあるし、ああいう一生懸命やっている中でもこういうことが起きたのかと愕然とするような事態で、これは担当者も非常にショックを受けておりますから、再びこういうことが起きないようにという決意とそれから具体的な対応、これについては、たとえば刑務所の囚人者のうち、聞いてみたら、半分は暴力団なんですよね。少年だったらどのくらいか。少年だったら大体一割だと言うからちょっとほっとしたものの、一割というのも考えてみれば、これは少年囚の一割というのはこわいですな。普通の刑務所では、半分が暴力団だ。都市部なんかそうなっておりますから、どういうふうに連絡をとるかというようなことを考えただけでも、ちょっと大変な管理の機能が要るんだということを私自身も痛感をいたしまして、いまおっしゃったような事案については全くショック、歴史的にもめったにないようなことがあったわけですから、いろいろ現場では対策を具体的にとっております。後で政府委員から説明をいたします。  それからいま一つ仰せの中にあったように、人も足らないという問題もあるようでございます。これがやはり一つの問題なんです。行革の時代で、人をふやすということはなかなかむずかしいのですけれども、何とか定員をほかの部署からでも少し回すことができないものかなという検討と具体策を、目下法務省の中でも具体的に進めております。私もこれは何とかそういうバックアップもしてやらぬといかぬのじゃないか、中だけの問題では、これはやはり解決すると言ってもむずかしいような、それだけでは十分ではない、そんなような感じでおりますが、あとは政府委員から答弁させます。
  171. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 ただいま委員から御指摘になりました中で、刑務所の第一線の職員が監督者に対して不満のようなものを持っておるという場合が一つあり得ることは事実でございます。ただ、お読みになりました新聞記事の信憑性につきましては、私ども調査いたしました限り、果たしてそういうような会談があったのかどうか、これはわからないところでございますので、そこは何とも申せませんが、ただ、実際問題といたしまして、刑務所のような組織を運営するに当たりまして一番大事なことは、やはり職員が上も下も一体になって収容者の処遇に当たっていくということでございますので、私どもとしては、常に上の者の意見が下に十分に通じ、それから下の者の意見あるいは希望等が十分監督者に通ずるようにということで指導をいたしておるわけでございます。  特に暴力団員が多いB級の刑務所におきましては、暴力団から施設の中で本人に対しいろいろ誘惑あるいは脅迫もございますし、それから施設の外で本人あるいは家族に対して誘惑、脅迫等もあるわけでございます。そういうのに対していかに対処していくのかということが、職員に対する教育の一番大きいところでございまして、その点についてどの施設でもできる限りの努力を払っておるところでございますが、それにもかかわらずそういうような誘惑、脅迫の例があるわけでございまして、大変残念ではございますが、ごく少数の場合にそういう誘惑に屈したという例もないわけではございません。私どもはこういうことがないようにあらゆる手を打っておるわけでございまして、特に監督職員と現場職員との間の意思の疎通を十分にする、現場の職員を孤立化させないということに施設に対する指導の一つの大きな重点を置いておるところでございます。  それからもう一つは、暴力団員が、有罪判決を受けた場所の刑務所に入るというのが原則になっておるわけでございます。したがって、そういう暴力団員は大体土地の暴力団員であるということが多いわけでございまして、これがやはり施設の職員に対する脅迫あるいは誘惑の原因にもなっておるという面もございますので、従来でも、暴力団の大変重要な幹部につきましては、別の刑務所に移送をして、そこで処遇をするということを考えてきたわけでございますが、今度の事件を契機にいたしまして、もう少し広く、たとえば小さな組でもその幹部をしておるというような者は他の施設へ移送する、あるいはその施設ではトラブルを起こしそうだという者については、これも他の施設に移送するというような両方の面をという、一種の分散収容の政策をとりまして、その面と、それから職員の孤立化を防ぐという面と両面から対処しようとしておるところでございます。
  172. 横山利秋

    ○横山委員 刑事施設法と留置施設法の問題なんですが、午前中にも報告がありましたように、刑事施設法は日弁連と協議をしておるということだそうですね。それがまとまるまでは私ども審議はちょっと御遠慮申し上げて、この前の弁護人抜き裁判の法律のように法曹三者の意見がそういう意味でいつも話がまとまるように期待したいと思うのです。ところが、どう考えても留置施設法が邪魔者なんです。法務大臣、あなたは警察庁の偉い様だから聞きたいんだが、留置施設法さえなかったら刑事施設法は話がもっとうまくいくのですよ。いまあなたが法務大臣になったものだから、ひとつ警察の方に、おまえの方はあきらめてくれ、刑事施設法はかねての懸案で野党からも人権の問題で言われておるんだから、この際ひとつ刑事施設法だけ今国会なり優先通過をしたい、その意味では日弁連と話がまとまるからというふうに、あなた、あっせんの労をとりませんかね。
  173. 秦野章

    秦野国務大臣 留置場、代用監獄の問題も、それから刑事施設法もすでに閣議決定を経て国会に提案されているわけですね。そういうことで、仰せの趣旨はわからぬでもないけれども、すでに提案をされて国会の継続審議になっておる問題でございますので、目下は鋭意日弁連の先生方ともお話し合いを進めて、そして私どもの法案をぜひひとつお願いしたい。そのために留置施設法を閣議決定して法案が提出されているものを私が引っ込めろというようなことまでは、やはりあれもあの立場で、代用監獄を大幅に改善している面もありますので、いまの御意見のようなふうに、じゃやりましょうというだけの気持ちには私もまだちょっとなれないのですよ。御趣旨のところはわからぬでもないんだけれども、まあその辺のところをひとつ御賢察の上、反対をされる方々にはよくひとつ理解を求めるような努力をしてまいりたいし、また警察庁の方は警察庁の方でそれぞれの努力もしているんだろうと思うのですよ。そういう努力をするという方向の中でいま途上にあるわけでございますから、その辺御了承願いたいと思います。
  174. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは法務大臣であるけれども、経歴その他からいって警察に影響力も強い人ですから、閣僚の一人として一遍警察庁、自治・公安委員長と話をしたらどうですか。これ、あきませんぜ。お互いに国会状況なり政治的展望を考えてみると、切り離さなければ解決はありませんぜ。  私はこの間、代用監獄の問題があるものだから見にいきました。名古屋の拘置所を見たんですよ。気持よく案内してくれて、「横山さん、おかげさまでええものが建ちます。五月には竣工がやれます」という話でした。まありっぱなもので、「おれも一遍泊めてもらおうか。法務委員も一遍視察に行って一晩体験入獄でもしようか」と言って笑っているぐらいりっぱです。帰りに警察署へ行って、「おい、留置場を見せてくれ」と言ったら、断られました。「何でいかんね」と言ったら、「いやあ横山さん、悪いけれども入っておるで、人権の問題があるで、未決だで、済まぬけれどもひとつ勘弁してくれ。もうごらんにならなくても床はなめたようにきれいになって、掃除もきちっとなっておるで御心配ない」、こういうわけですね。「何がそんな、きれいかきれいでないか見に来たわけじゃない」と言ったのだけれども、署長がそう言うので、「まあええわ、何もどうしても見せろというつもりはない」と言って帰ってきたのです。  ところが、日弁連にその後会ってみたら、弁護士でも、代用監獄が大問題になっているものだから見にいったら、絶対見せぬそうですな、刑務所はみんな見せてくれるんですわ。私が行っても案内して説明もしてくれる。何でこれほど留置施設法が問題になっているときに法務委員が行って見せてくれぬのか、不思議だと思ったら、日弁連は、「それはだめですよ、横山先生警察庁から見せるなという通知が来ておりますようですよ」。日弁連が視察に行っても見せぬというわけですね。警察庁、来ているの。おまえさんのところは何で見せぬの。
  175. 鈴木良一

    鈴木(良)政府委員 お答えいたします。  お尋ねの点につきましては、特にまず昨年五月に先生が中警察署においでになられましたこと、訪問されたことはよく承知をいたしております。御存じのとおり留置場はほとんどの者が逮捕されて間もない人間であるわけでございまして、そういうことで、留置人のプライバシーの問題また心理的な動揺による不測の事故を防止するという見地から、部外者の方には留置場の見学は原則として御遠慮願っている、こういう状況でございます。  日弁連についてのお話がございましたけれども、例の監獄法改正の要綱をまとめる際には、日弁連の代表の方々には見ていただいております。それで、法案審議に関連いたしまして、先ほど申しましたように、原則的にはそういうことで部外者の方には御遠慮いただいておりますけれども先ほどのように要綱をつくるとか、あるいは法案審議に関係するという場合には、この点につきましては警察庁の方にお申し入れをいただければ所要の措置をとりたい、かように考えております。
  176. 横山利秋

    ○横山委員 それは、だれだって物見遊山で留置場を見たいというやつはあるはずがないし、そんなものは断ればいいですよ。しかし、留置場を見たいというのはそれだけの目的があって行く人間ばかりですよ。それを原則的に見せぬということは見せぬというのと同じことなんですよ。通達で出しておるかどうか知らぬけれども、日弁連の並みいる諸君が「横山さんそれはだめですよ」、こう言っているのですから。法案審議であろうとなかろうと、われわれ、弁護士なりいろんな人が見せてくれと言ったら、原則的に見せぬでなくて、原則として見せます、しかし差しさわりのあるものは断るということならいいけれども、原則として見せぬということがおかしいですよ。それは見に行く人間だって、そんなもの、中へ入っていっていろいろ被勾留者に迷惑をかけたりプライバシーを侵そうというような気持ちはさらさらないんだから。どういうふうに代用監獄がいま運営されておるか、衛生その他の状況はどうかということの目的を持って行くんですから。そんなものを、原則的に見せぬとは何事か。一々あなたのところへ言わなければ見せてくれぬのか。九州の果てや北海道の果ての留置場を見せてくれと警察庁に電話をかけなければあかんのかね。
  177. 鈴木良一

    鈴木(良)政府委員 先ほどお話し申しましたように、留置場の場合は、逮捕されてからほとんど間のない人間だということで、留置人の立場を十分考えてやらなければいかぬということがどうしてもあるわけでございまして、そういう意味で、受刑者等を主体として収容しておる拘置所の場合と若干性格が違う点があるのではないかということでございまして、その点は十分ひとつ御理解を賜りたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、そういう特別の法案の審議であるとか要綱であるとかというようなものをまとめる場合には、現に見ていただいているケースもあるわけでございますし、今後も法案審議ということになれば、そういう点で十分配慮してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  178. 横山利秋

    ○横山委員 十分それは考えてもらわぬと、いよいよもって留置施設法はだめですよ、そんなものは。そんな、われわれ調べに行っても断る。私、法務委員の名刺を出したのだけれども、私の場合は警察署長知り合いだから、最初電話かけたときに、「いいですよ」と言っておったのだ。出かけていったら、課長が言うで、「横山さん勘弁してくれ」「知り合いだから、まあいいよ。何もおれ見なければ話が進まぬわけではないんだから、まあいいよ」と言ったのだけれどもね。だから、要するにそれは上から言っておるわけだ、原則として見せるなと。そんなことやっておればよけいに留置施設法はだめだ、そんなものは。絶対通さぬ、私どもは。だから法務大臣、その辺のあうんの状況をよく考えてもらって、日弁連と早く話をつける、留置施設法はこの際御遠慮願うということにして処理をなさるようにお勧めしておきます。  大臣、金大中氏の問題ですが歴代の法務大臣、特に田中法務大臣は、法務大臣在任中に、これはゆゆしい人権の問題であり、法務大臣としても閣議の中で発言をされた問題です。私は質問するたびに、一つ忘れていやせぬかと、法務大臣というのは人権の大とりでである、このことを忘れてもらっては困ると言っている。  人権擁護局の仕事が私は不満なんです。なぜ不満かと言うと、一言で言うと、頼まれたからやる、陳情があったらやるということだ。それから、権限が何もない。だから限界がある。それでも地をはうような、家庭的な問題や差別の問題をやっておられる。ここへ活を入れるためにはどうしても法務大臣が、市井の問題社会の問題事人権の問題が起こったら、自分が一言物を言うくせをつけてもらいたい。それがどんなに全国の人権擁護局の委員、人権擁護委員、それらに活を与えるか。人権擁護局の仕事は、法務大臣の仕事の中の本当の片手間で、だんだん人間も減っていく。年に一回人権擁護連盟の大会をやって、それで万歳やって終わりというふうな雰囲気が徐々に私はあると思うのですね。これではいかぬと私は思っておるわけです。  その中で、金大中の問題は古くして常に新しい問題です。アメリカへ行って、金大中氏が、とにかく日本政府に言いたいことがある、だけれども、日本政府がやはりそれに対して本当に考えて、耳を傾けてくれるかどうかにかかっておると言っておる。これで、安倍外務大臣がこの間、いやアメリカに実は接触しているんだという話をされた。ああいうことは、やはり外務大臣が言う前に法務大臣が、金大中がアメリカに行ったときに、これは聞き捨てならぬということを言ってもらわなければいかぬですよ。午前中にレフチェンコの話が出ましたね。私は、KCIA、韓国の秘密諜報組織、それからCIA、アメリカの秘密諜報組織、ソビエトの秘密諜報組織、どこの国もやることは同じだと思っているのです。ひとりソビエトじゃないですよ。その中で、白昼堂々日本の主権の中で、花の大江戸八百八町のど真ん中の九段のグランドパレスホテルから金大中を連れ去られて、そして指をくわえて見ておって、そうして政治決着だなどと言われて、あとはもう世界じゅうの笑い物、こんなばかなことがあろうかと思って嘆くのですよ。KCIAが何やった、CIAがチリのアジェンデの転覆事件にどういうことをした、であれば、そんなことは五十歩百歩なんで、それで物事の本質を間違えては困る、日ソの親善を間違えては困る、あるいはこのことがあるがゆえにいろいろなことを間違えては困る、そういうふうに思うのです。  金大中事件というものはなおかつ今日的な話題なんです。安倍外務大臣がアメリカに照会をすると言っているんだが、法務大臣はそういう点について外務大臣と連絡をなさったか、法務大臣としては、人権問題としてどういうふうに処置をなさったか、伺いたい。
  179. 秦野章

    秦野国務大臣 金大中事件についてのいまお尋ねの問題は、政府の部内で話をして、外務省が、とにかくこれは決着をつけなければいかぬということで折衝しているということを私どもも相談の上やっているわけです。やはりこれは筋を通さなければいかぬ。筋を通すということは、捜査が未解決なんだ、未解決だから向こうへ行ったとき、米国に行ったら、それは何とかできるのじゃないかという期待は私ども持っております。期待を持っていると同時に、いま折衝中ということですから、この折衝は成功させたい。その結果、これは大体警察がいままで捜査をやっておりましたから、そういう方向で警察も善処するもの、私はそういうふうに考えております。
  180. 横山利秋

    ○横山委員 警察、言うことがあるの、ないかね。
  181. 吉野準

    ○吉野説明員 金大中氏がアメリカへ渡られたということで、私どもとしましては、金大中氏は事件の被害者でございますから、被害者から事情を聞くのは捜査の常道でございますし、第一歩でございますので、可能ならばぜひ聞きたいという考えを持っておりました。それで、この機会をとらえましてこういう希望を実現させたいという観点からいま手続をお願いしているところでございます。これは、金大中自身の同意はもちろんでございますけれども、アメリカの同意と協力がぜひとも必要でございます。そういう意味で、外務省を通じまして現在必要な打診、手続をお願いしているところでございます。
  182. 横山利秋

    ○横山委員 とにかく金大中の問題これは日本の主権にかかわる問題ですからね。御存じのように、西ドイツが、韓国人の学生をKCIAが西ドイツから韓国へ連れ去ったときには、国交断絶をも経済断交をも辞せずと言ってがんばって、とうとう取り返したことがあるわけです。そういうことを考えてみまして、政治決着なんてわけのわからぬようなことをやって、金大中氏及びその周辺の人々、韓国民にぬぐうべからざる傷を与えておる。これは日本の国辱ものですよ。これを政治決着だなんと称していつまでもほかっておくということは言語道断で、しかも金大中氏がアメリカへ行って、日本政府に言いたいことがあるというならば、どんなことがあっても、これはやはり警察検察ともども問題の処理をきちんとしておかなければいけませんよ。  その次は民事局の問題であります。  午前中、中小株式会社の問題で質疑応答がございました。私が商法の改正のときに附帯決議を出しましたときの気持ちを申し上げますと、午前中は適当でないとかいうような言葉がございましたけれども、要するに中小企業、零細企業には商法観念がないということが一つのポイントでございました。うどん屋株式会社で専務が裏でおむつを洗濯しておる、そして株主総会なんかやったことも聞いたこともない、そのまま税理士さんや公認会計士さんが適当にこさえて判こをつくだけだ、取締役の変更なんかも、そんなこと知らぬ、そんなもの届けなきゃいかぬのか、こういうことですね。商法を守らせるという実効を担保する方法がない。監督する役所がない。しかもなおかつ商法を守らせなければならぬという社会的な積極的な必要性が、一体どこにあるだろうか。  なるほど株式会社と名前を名のっている以上は、会社らしいことをやってもらわなければあかぬぜということはあるかもしれぬけれども、もっぱらそれは税法上の問題に堕してしまっておる、社会のメンツということにだけなってしまっておるという点から、商法概念、商法理念、商法を守るということの論争の焦点になったのは、大企業で社会的責任のよりある会社の問題が政治的にも社会的にも問題になったのだ。そうだとすれば、中小企業特に零細企業に商法の存在の必要性が一体本当にあるだろうか。どうしてもあるとするならば、これだけは決める、決めたことだけは守ってもらいたい、そういうことにしたらどうであろうか、それは新しく規制をしたり、新しく何かむずかしいことを決めるという気持ちではないですよ、こういうことを申し上げてあったわけです。現状はそれに即応しておるかどうか、御報告を願いたい。
  183. 中島一郎

    ○中島政府委員 中小企業に適当な法律を新設するという問題は、ただいまおっしゃいましたことがまさに問題でありまして、現在の会社法は資本金何百億という大々会社から資本金百万円にも満たないようないわゆる小会社にまで一律に形式的には適用されておる、そこに問題があるわけであります。小会社については、それにふさわしい新しい法制度というものを考案すべきだという点は、私どももそのとおりに理解をしておるわけでありまして、法制審議会の委員の先生方ももちろんその点はそのとおりに理解をしておられるわけでありますが、それを実現するためにはどういう内容、どういう手続で進めていったらいいかという点について委員の方々の中にはいろいろな御意見の方があって、現在、意見の交換を通じてだんだんと法制審議会としての意見をまとめていっておられるという段階でございます。
  184. 横山利秋

    ○横山委員 あわせて民事局にお伺いをいたしたいのですが、行政改革と司法書士及び土地家屋調査士の問題であります。  私はいま社会党の行政改革の許認可問題の責任者をやっておるわけですが、この臨調の考え方の中で私と共通する部面があるわけであります。それはこの種の許認可について政府がやっておる仕事を民間団体に移せということであります。司法書士会の意見も土地家屋調査士会の意見も徴しておるのですが、その以前に司法書士法、土地家屋調査士法の改正をしましたときの附帯決議にもございますし、その際の私の意見としても申し上げてあるわけです。あなたの方もずいぶんそれについて前向きに取り組んでいらっしゃるようではありますが、資格取得の問題、登録の問題、懲戒の問題、会則の変更の問題、これらの問題についてとにかく会にやらせてみるという大乗的な見地にやはりもうぼつぼつお立ちになった方がいいのではないか。もちろん、去年の暮れあなたもずいぶん骨折られた全法務との調整の問題は非常に御努力を願って結構でしたけれども関係団体との調整をしながら、基本方針としては速やかにその方向に行った方がいいのではないか、これが一つであります。  それからもう一つは、公共嘱託法人設置の問題であります。これも何回ここで私が物を申し上げたかわかりませんが、遅々として進まない。それは非常に残念であります。だから、これらを含めて、司法書士法の改正、土地家屋調査士法も含んで法律改正案を次期国会には上程をしてもらいたいと思いますが、その点はいかがですか。
  185. 中島一郎

    ○中島政府委員 司法書士法の改正のありましたのは昭和五十三年でありましたか、調査士法の改正が五十四年に行われたわけであります。そのときには法務委員会における附帯決議というようなものもございまして、私ども絶えずよりよき司法書士制度あるいはよりよき土地家屋調査制度の実現のためにはどのようにあるべきかというようなことは考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、ただいま御指摘ございましたような公嘱の問題、公共嘱託の問題あるいは登録事務を業界に移譲する問題等あるわけでありまして、これらの点につきましては、私どもは方向といたしましては業界の健全な充実のために、そしてまた自律機能を高め、さらには責任感を醸成するというような見地からいいまして大変好ましいことであると考えておりますので、将来の方向としては前向きに考えておるわけでございます。  ただ、司法書士会あるいは土地家屋調査士会の受け入れ体制が必ずしも十分でないというような点も現段階ではございますし、公共嘱託の受託機関の法人化の問題につきましては、どういう法人をつくるかということについて基本構想はもうまとまっておりますけれども、その具体的な一つ一つの内容につきましては、司法書士会あるいは土地家屋調査士会自体まだ十分確定という段階まで至っていないというような状況もございますので、そういった諸条件の整備されるのを待ちまして、先生指摘のような方向に進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  186. 横山利秋

    ○横山委員 御存じのように、いま非常に不況でございますので、この両会の仕事が非常に減っておるわけです。報酬の改定も必ずしも十分ではございませんから、大変な収入減になっておる。だから、その意味では公共嘱託が、いまでも任意な法人の中で公共嘱託をやっておるところはありますが、やはりどうしても役所相手のことになりますと法人化をすることが必須の要件だと私も思うがゆえに、長年の間公共嘱託法人の設置を急いできたわけであります。  お話しのように、これはやはり両会の受け入れ体制といいますか、それがどうしても必要である。しかし、まあ鶏が先か卵が先かといいますと、法改正の機運が醸成され、国会に上程されれば、私は体制はどんなことがあってもとり得る、とらせ得る、こう思っておるわけであります。ですから、ひとつ鋭意督励をして、次期国会に提出をしてもらいたい。先ほどその点がはっきりしなかったのですが、いかがですか。次期国会といいますと、これは解散になるかならぬかわからぬけれども、少なくとも四海波が静かであれば来年の国会ですね、来年の国会に上程のつもりで準備をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  187. 中島一郎

    ○中島政府委員 いままでのいきさつもいろいろございますし、私としては来国会にと申し上げたいのはやまやまでございますけれども、ただいま申しましたように、何分相手のある仕事でございます。それから、私の方といたしましても、今国会に区分所有法の改正をお願いしたいと思っておりますが、この法律によりましていろいろとまた登記上の問題が起こってくるわけでありまして、たまたま所管の課が第三課ということで、司法書士問題とこの区分所有登記の所管の課が同じでございますので、そういった私の方の作業の能力というようなことも考えますと、次の国会にということはお約束はいたしかねるというような状況でございます。
  188. 横山利秋

    ○横山委員 忙しいからできない、そんなことは理屈になりませんよ。必要性があるならば、私どもだって、そんなもの国会議員だって寝もせずに仕事をするときがあるのですから、役所が忙しいからといってむずかしい、そんなことを言っておってはいかぬ。もっと督励してやらせなさいよ。  大臣にちょっと伺いたいのですけれども、これは厚生省の問題ではございますけれども刑法との関係がありますので、優生保護法について伺いたいと思います。  厚生省が優生保護法改正の準備を進めています。それで、これは婦人団体挙げて反対です。自民党でも、生長の家のバックで玉置参議院議員が一生懸命になっている。しかし、そうかと思うと大鷹さんや女性議員は挙げて反対、こういうことになっておるわけであります。要するに、問題は現在の優生保護法の経済的理由を削除するというところにあるのであります。妊娠中絶は是か非かという論争は、要するに母体、お母さんが大事か、胎児が大事かということの、お母さんの人権か胎児の人権かということにもなりましょう。それから経済的理由を削除する、銭がないからおろしてくれということをいいといったものをいかぬということは、影響するところは、銭があるないということの層に大影響を与えることは言うまでもありません。金持ちはいかぬぞ、貧乏人はいいということばかりでもございますまいが、法律の経済的理由を削除することによって与える一般のお母さんへの影響は実に甚大だと思うのです。  これは哲学的な問題もございますし、宗教的な問題もございましょう。しかし、婦人団体は総じて挙げて反対ですね。お母さんの立場としては、それは私が決めることだ、何で法律でそんなことを決めなければならぬか、こう言っておるわけです。現在刑法に堕胎罪があるわけですね。優生保護法はその特例とでも申しましょうか、そういうふうに決まっておるということについて、厚生省であるんだが、厚生省の作業は協議があなたのところにありましたか、また、あったとしたらどういう返事をなさっていらっしゃるのでしょうか。
  189. 秦野章

    秦野国務大臣 ただいまの問題、優生問題は、問題点はいま先生がおっしゃったことで全部尽きていると思いますので、改めて申し上げませんが、正直言って厚生省も弱っている。自民党も二つに割れているような感じでございますから、そういう中で、まだ厚生省が私どもに相談をしてこういうことでいきたいとかなんとかという段階にまで来ておらぬような、そういう感じでございます。おっしゃるように、確かに哲学まで含んだ大問題でございますから、まだちょっと時間がかかるのではなかろうか、こんな感じでございますが、私としては、私個人としてもこれはなかなかむずかしい問題だ……(横山委員「あなたは判断していないの」と呼ぶ)私もちょっと判断がなかなかし切れない。生命の尊重というふうなことになると、なるほどそうだなと思うけれども、それだけでも片がつかぬなという面もないではない。私はそういうことで、私自身がちょっと結論も出しにくいし、まだ相談も受けていないという段階であることを御了承願いたいと思います。
  190. 横山利秋

    ○横山委員 あなたに聞いているのだが、あなたは返事をしないが、実は私は経験があるのですよ、いろいろな家庭的な事情で。どんなに夫が言ったところで、お母さんが判断するということはどこの家庭でも普通だと思うのです。おまえおろせと言ったところで、お母さんが嫌だと言えばどうしようもないですからね。やはりそれが通例だと思うのです。お母さんが判断するときに、銭がないからとかということばかりではなくて、いろんな事情判断をするわけですから。これはうっかりすると選挙の大論争になるもので、婦人問題と言えば、いまこの優生保護法です。どこへ行っても、しかるべき女性団体の中では優生保護法ばかりが話題の中心になっています。そして反対派が言っていることですが、玉置さんのところは宗教団体からいっぱい金をもらっていっぱい自民党にばらまいて、全国の各県で優生保護法改正決議とかなんとかやらせて、自民党はいろいろやっておりますよと宣伝をしておるというわけです。  そういうことで、優生保護法の経済的理由削除ということが政治問題化してしまっている。これは私は余り好ましいことではないと思うのです。国会議員は男が多いですから、男ばかりがそれをいいか悪いかと言って議論したって仕方がないと思うのです。これはほかっておいて本当に社会に害毒というものが実在するか。道義的な問題だとか宗教的な問題は残らぬとは言いません。私も京都でずらっと数百の水子地蔵を見てきて感慨無量の点がありましたけれども、だからと言って法律でこれをとやこうするということは私は適当ではないと思います。  法務大臣は、問題の所在はきわめて明白でございますから、優生保護法の改正に反対か賛成か一言言ってください。
  191. 秦野章

    秦野国務大臣 一言で言えとおっしゃられても、いま申し上げたようにむずかしい問題になって、法律で禁止したらすべてやまるかというたら、もぐりが出てくるということもあるし、最近、私もテレビ討論なんかで女性同士の対決した場面も拝見しまして、どっちもなかなかの理屈があるということで、厚生省の裁断、ある程度の結論を私どもとしては見ていくのが政府の中における私の立場だ、こう考えております。
  192. 横山利秋

    ○横山委員 こういうところであなたの株を上げることを考えてやったのに、どっちともよう言わぬのですか、情けないな。せめてあなたが反対だと言えば、法務大臣大分見直されると思うのだけれどもね。  刑事局長、まだ何の相談も受けておりませんか。
  193. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど大臣も申されましたように、厚生省においていろいろと検討はされておるようでございますが、私の方に具体的な意見といいますか、相談は受けていないわけでございます。
  194. 横山利秋

    ○横山委員 相談があったら意見を言うつもりですか。
  195. 前田宏

    前田(宏)政府委員 これも先のことでございますから、どういうふうに厚生省の方から御相談があるかによりまして、私ども立場で言うべきことがあれば申し上げることになろうと思います。
  196. 横山利秋

    ○横山委員 午前中話がございました年少者犯罪について重ねて伺いたいと思います。これはひとつ法務大臣の率直な感じを承りたいと思うのです。  町田先生生徒を刺した。学校の先生は全員そろって警察へ嘆願書を出した。PTAの総会も先生しっかりしろ、校長先生、そのときにおまえさんだったらどうするんだという意見やら、学校側が悪かったといったことに対してごうごうたるやじや罵声がきた。先生しっかりしろ、しっかりしてもらいたいということで、いままでの先生がちょっと子供をぶん殴っただけでもすぐおやじさんが警察に訴えるというような雰囲気が最近ころっと変わりましたね。それから被害者の少年のお父さんも「被害届だけは出した。しかし、これは自分の子供が全部悪いというふうな見方もつらいから被害があったことだけ出したので、先生処分してくれとは必ずしも言っていない、こういう雰囲気ですね。  それから、それと対照的なのが戸塚ヨットスクールです。これはいま警察調査していますね。この戸塚ヨットスクールはそういう問題児ばかり集めて、ヨットから突き落としてとにかく自分で生きる、自分で処置するというスパルタ教育をやっているところです。二人ばかり死にましたね。それが業務上過失致死になるかならぬかで警察がやっているのですが、その学校の先生は、おれのところを非難をするけれども、希望者がある限りは学校を続けると言ってがんばっていますね。毀誉褒貶相半ばしておると言った方が適当であると思います。横浜の浮浪者殺しはもう問答無用で、あっけにとられるというか慄然たる思いというところだと思うのです。  ただ、共通するところを考えますと、年少者が多いということです。われわれは従来少年法の改正についてずいぶん議論を尽くしてきました。法務省少年法のことについていろいろと作業をしておったのですが、あのときの少年法の改正の焦点は、十八、十九の青年を成人的に見る。成人者と準成人者とそれから少年と三つに分ける、ここが問題だったのですが、いまはここが問題でなくて年少者が問題ですね。だから、少年法の改正という点では、あのときの構想がころっと変わったのじゃないかと思うわけです。  そんなようなことを考えてみましてあなたの所信表明をちょっと拝見したのですが、余りいい知恵が出ておりませんね。もちろん法務大臣は大体後始末の仕事ではある。しかし、午前中おっしゃったように、後始末をしながら何でそうなったかということを調べて前向きに物を言うということなんですが、丹羽(兵)総務長官がやっておる仕事について、始まったばかりですが、法務省としては関与しているのですか。どういう関与の仕方をなさるおつもりですか。それに関与しながら年少者犯罪についてどういう立場で臨もうとなさるのですか。
  197. 秦野章

    秦野国務大臣 最初にちょっと政府委員から……。
  198. 前田宏

    前田(宏)政府委員 政府におきましては、御案内のとおり青少年対策本部があるわけでございますが、それ以外にも関係省庁がたくさんあるわけでございまして、私どももいま横山委員の仰せのような立場関係をしているわけでございます。審議会も別にございますし、また、その答申を受けた政府として具体的な対策を総合的にやっていくという意味関係省庁の連絡会議も設けられているわけでございまして、実はけさも朝八時から九時までその会議が総理府でございまして出席しておったような次第でございます。
  199. 秦野章

    秦野国務大臣 私の所信表明では大して知恵が出ていないという御評価もごもっともだと思うのです。いまおっしゃったように、何かいままでとは違った対応をしていかなければばいかぬという感じが正直言って町田事件横浜事件等々見ながらしておるわけでございまして、いままでよりも違った対応をしていくその対応の仕方というものを知恵を出し合っていこうではないかというのがいまの段階で、総理府等のいろいろな機関なんかもその気持ちでこれからやるわけでございますけれども、さしあたり法務省としては、先ほど申し上げたこととやや重複するかもしれませんが、一口に言って法務省はそういう少年問題についても、全部が全部じゃなくてかなりの部分がこっちに入ってくるわけですね。こっちに入ってこない部分もある。入ってこない部分にもかなり問題があるのではないか。家裁の判断法務省まで来ないという問題についても、それでいいのかなという裁判所の方でもいろいろ考えていただかなければならぬ問題があるであろう。  そのことの一つの中に、さっき申し上げた、要するに親の機能の低下という時代を迎えているということと、非行の主体の少年の年齢が中学生にまで下がってきましたね。中学生に下がってきたということになると、これを保護したり指導したりする体制まである程度考えなければならぬ。しかも、それを親ができなかったらどうするのだろうということまで考えますと、やはり新しい対応をしていくという工夫が要るのだろうと思うのですよ。さしあたり私がいま関係局にデータをと言っているのはそこのところなのでございます。少なくともわれわれの領域に入ってきた分についてひとつ詳細なデータを出そうではないか、そこから何か出せるのではないかという感じでございます。  簡単に先生が悪い、親が悪いということだけ言っておったのでは片がつきませんので、いましばらく時間をかしていただいて、いま先生御心配のようなことは私も全く同感でございますから、何とか一生懸命努力をしてまいりたい、かように存じます。
  200. 横山利秋

    ○横山委員 それで思い出したのですけれども、あなたの所信表明の中で、「保護観察官による処遇活動の一層の充実を図るとともに、保護司との協働態勢を強化し、また、処遇方法の開発、処遇の多様化に努める」とありますね。     〔委員長退席、羽田野委員長代理着席〕  その保護司の問題なんですが、私が十年にわたって保護司の問題を取り上げた中で、六十や七十のおじいさんに若い者の気持ちがわかるのか、保護司の選出方法はどうなっておると何回も言うておるのです。ことしも各局から社会党の法務部会へ御説明願ったので、また改めて言ったのですが、考えてはいらっしゃるらしい。ところが、ちょっとも保護司の平均年齢が下がっていかぬわけですね。これは結局法務局長があなたに上申するわけでしょう。たしかそうだと思うのですけれども、地方における責任者が、市町村だとか保護司連盟だとか町内会のボスだとか、そういうものから推薦を受ける。その推薦の分野に限界がある。野に遺賢がないかどうか聞いてごらん、目を離してごらん、労働組合の役員の中に優秀な保護司がいないとも限らぬではないか。そういう推薦母体が決まっているから、出てくる人間が大体わかっておる。そして、ひどいことを言うようだけれども、もう一期やらしてもらうと褒美がもらえるでよ、頼むわというのがあるのですよ、実際。中には、何の実働もしませんけれども、深い理解を持っておってぽんぽんと大枚を寄附してくれる人がある。それはそれなりに能力のある人、金のある人が協力してくれることは私はいいんですよ。中にはそういう人がおりますよ。それは得がたい人材だと思うけれども、一件も扱っておらぬとか、そういう人がおるんですよ。褒美目当てにやってもらってはこっちはかなわぬですよ。だから「保護司との協働態勢を強化し」と言っておるけれども、保護司を一遍洗い直したらどうですか。これだけ年少者の問題があるときに、六十のおじいさんが中学生に、おまえどうだ、まじめにならぬかと言ったってだめですね。いま問われておることは、大体共通点として、いろいろな要件があると思うのですけれども、まともにぶつかってくれる先生がいいという意見がありますね。状況はわからぬけれども、子供と立ち向かって、短刀を出したことがいいか悪いか議論があるにしても、まともに生徒とぶつかってくれる先生がいいと言う。それから生徒は、強い者、権力的なものに対して反抗して、弱い者は反抗ができぬから弱い者に、先生でも強い先生でなくて弱い先生にぶつかっていく、女の先生にぶつかっていくという傾向があるということは、とにもかくにも自分と胸襟を開いて話をしてくれる、そういう条件下の人でなければ話が合わぬと思いますね。だから法務省として、こういう所信表明の中にございますいろいろな項目をずっと読んでみまして、刑務所や少年院等の中におる人たちについては方法ははっきりわかっておるけれども、保護司に関係するところとかそういうところでは、いままでの感覚を変えなければいかぬのではないか。これはもちろん家庭裁判所の問題や警察との問題、いろいろなこともございましょうけれども法務省所管の問題ではもうちょっと工夫が、新たなる観点が必要なのではないかと思いますが、いかがですか。
  201. 根岸重治

    ○根岸政府委員 所管局長がいまおりませんので、かわってお答えいたします。  いま横山委員御指摘の点は、いずれもごもっともなことでございまして、法務省といたしましてもかねてから問題にしておるところでございますので、いまの提案の御趣旨を十分に踏まえまして検討いたしたいと思います。いま仰せのことは担当局の方にもよく伝えて、検討させていただきたいと思っております。
  202. 横山利秋

    ○横山委員 難民とか中国孤児とかいろいろ問題は残っておりますが、時間がありませんので、法務大臣にもう一つ嫌みかたがた御注文をしたいと思うのですが、賭博機械のことです。  私は、パチンコが発祥地の名古屋なものですから、パチンコの業界のことはよく知っているのです。パチンコも、戦後だれでもかでもやった時代と違いまして、いまではかなりの資産投下しなければできません。そして、防犯任務もかなり徹底しておるというように、パチンコ産業とかパチンコ機械メーカーというところでは歴史を持っているわけです。だから、安定していると思うのです。威令も指示も行き届くわけです。パチンコ機械は言うまでもありませんが、店舗は認可業務、届け出が厳しい。余り厳し過ぎる、各県ばらばらだと私は言っているのですが、それに比べますと、いま話題になっている大阪を中心にいたしますいわゆる賭博機械、何が違うかというと、私なりの解釈によれば、景品がつくかつかないかということです。パチンコは景品がつくから射幸心をそそるというわけで許可営業、許可機械ということになっておる。ところが、いまの賭博機械というものは景品がつかないわけですね。ですから、原則として機械の許可が要らないのです。要らないことをいいことにして喫茶店その他で賭博が始まっておるということだと思いますよ。これが均衡上一体適当なのかどうかということが一つです。  それからもう一つは、パチンコもそうですし、特に賭博機械等、景品のつかない遊技具、そちらの方にとにかくおびただしい警察のOBが入っているわけです。これはあなたも御存じだと思いますが、警察の人は長らく勤めても行くところがないということもあるかもしれません。あるかもしれませんが、この種の産業がいまや収入もかなりの額に達しておるし、それからこの不況下にこの種の業務がはやっておるものですから、行く先としてはいいところですね。収入のあるところです。けれども、はしなくも今度の大阪の問題で、大阪の府警は一体どうなっておる、兵庫県の警察はどうなっておる、全くめちゃくちゃではないかと言われておるのですよ。私は名古屋もそうかなと思って調べてみましたところが、名古屋は大阪とは体質が違うというのですね。財団法人で景品交換をする組織が大阪にはあるそうですね。それが社会保障の方へも金は出しているかもしれませんが、そういうところへ警察のOBが天下りして本当にたくさん行っているわけです。  私は、刑法に触れる触れぬ以前に、警察として少し考えてもらわなければいかぬのではないか。だれも行っていかぬとは言いませんよ。しかし、圧倒的に警察のOBが入り込んでおる、たむろしておる、ここが天下りの受け入れ体制の根拠地になっているということは余りいい話じゃないと思いますよ。官房長官もそういうことだったので、この間予算委員会で釈明されたようですね。あなたも官房長官も警察の親玉だった人なんだけれども、親玉として少し考えたらどうですか、後輩にそういうことはいかぬぞと。  それから風俗営業法の適用のあり方についても、これは景品がつくから許可制度、景品がつかないから無許可だ、それが賭博の温床になっている。私は行ったことはないですけれども、コーヒー屋でそのゲーム機を中心にして賭博が堂々と行われ、コーヒー屋のおやじがそれで銭を出すというようなことが白昼まかり通っておるようですね。それをメーカーはじゃんじゃん出しておる。そんなことは、熊襲を討つよりも新羅を討てという言葉がありますね。これは許可の必要でない機械ということも問題があるでしょう。あなたも参議院議員当時恐らく御存じなかったわけでもないでしょうが、どうしたらいいと思いますか。あなたもOBとして先輩として、刑法に触れる触れぬ以前の問題として、是正措置について何か考えたらどうですか。
  203. 秦野章

    秦野国務大臣 大阪で大変な問題になった事案というようなものはもうお話にならない、どう批判を受けても、警察としてはOBのみならず現役を含めて大変な反省の材料だと思います。  私は実はああいう小さなオペレーションの、ああいう悪いことをした連中の団体なんて夢にも思わなくて、そういう団体ではなくて、私が見たのは、要するに大型のコンピューターを入れたり輸出産業になっているような機械のメーカーが中心で、これは東京と神奈川なんですけれども、これが協会をつくっていた。これは、外国人も展示会をやるといっぱい買いに来る、見に来る、通産省も後援をしているといったような団体だったものだから、ああいう事態は全く考えていなかったし、また現にあの事態を起こしたのはちょっと別の団体のようでございますけれども、まあしかし、いずれにしても少しでもつながりが感じられるようなものをやはり前向きに廃絶をしていくという方向に努力しなければならぬ。もっとも定款にはそういうことの努力をするということが書いてありました。そういう努力をするために私をちょっと引っ張っていったような感じがしないでもないんですけれども、とてもそんなことで手に負えるものではない。  いま先生おっしゃったように、警察のOBがそこへ入り込むというようなことは、何ぼほかに職業がないからといっても、これは問題にならないことであって、ほかに探すようなことをすれば幾らかそういうことが防げるということも事実ですから、それはそれとして、私どもも実はある程度そういう努力はかつてしてきたんです。してきたんですけれども余り言い逃れができないようなことでございますので、職業がないからといってあんなところへ勤めるというか、顧問になったり金をもらったりしていいということは全くありませんから、この点は大いなる参考として、教訓としてこれを受けとめなければならぬ、こう考えております。
  204. 横山利秋

    ○横山委員 質問時間が終了いたしましたから申し上げませんが、本件に関する法務大臣の新聞記事を集めてみました。多くは申しませんが、いろいろ法務大臣になられる前には大臣としても御弁解をされる点も恐らくあるだろうと思うけれども、いやしくもいま法務大臣でございます。先ほどから長時間にわたっていろいろ私の注文も申し上げたことも含めて、法務大臣らしくない法務大臣という批評を私が言っているわけですが、それがいい方へひとつ向けていただきたいし、過去いろいろととやこう言われることについては、顧問も辞職をされておるそうですし、いろいろとあったことについては身辺をきちんとしていただいて任務にひとつ邁進をしてもらいたい。もしそれ、今後そういうことが、これほど新聞で言われ、私もここで嫌みたらたらいろいろ申し上げたにもかかわらずということがあっては困ります。慎重に、しかもいろいろと御希望を申し上げたことについて十分努力をされるよう期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  205. 羽田野忠文

    ○羽田野委員長代理 沖本泰幸君。
  206. 沖本泰幸

    ○沖本委員 私も、法務大臣所信表明に基づきまして今後の法務行政、当委員会で扱う問題等に考えをいたしながら御質問したいと思います。  先ほど横山先生の御質問の中で金大中に関する御質問があったわけですけれども大臣がいまこの問題に決着つけたい、こういう御意見をお述べになったわけですが、原状回復という問題と、それからこの問題に対する政治決着と政府が決めておる問題に対して、これを御破算にして、改めて正式のいままで問題になったことすべてについて決着をしようというお考えなんですか、どうなんですか。
  207. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの問題は、確かに政治決着がついて解決した部分が私はあると思うのです。ただ犯罪捜査という問題は、これは除かれているわけですよ。だから、やはり犯罪捜査というものは未解決の部分を解決するという方向に努力しなければいかぬ。理想を言えば、本当は主権侵害なんだし、原状回復というものが理想だったと思うのですよ。しかし、もう済んだことですから、いまの段階では韓国からアメリカに行って、被害者として日本側の捜査調査を受けていいというような状況のようだし、アメリカの政府さえそこのところで了解してくれれば、原状回復という一般論じゃなくて犯罪捜査についての筋をきちっと通せるのではないか、こういう意味で申し上げた。さしあたりこれは警察がやっておりますけれども、治安の問題として私もそのような関心を持ちながら前々からおるわけでございますが、やっとこれである程度やれるんじゃなかろうかという感じがしているんですけれどもね。
  208. 沖本泰幸

    ○沖本委員 金大中さんがアメリカで述べていらっしゃる中には、日本政府の問い合わせに答える意味で日本へ一たん寄ることが原状回復という意味にとれるお話もありますし、さりとて政府が政治決着しておるというその上に重ねての事情聴取ということになれば、これは問題が違うというような御意見を述べていらっしゃるように私考えるわけですけれども、いま大臣がおっしゃったのは、捜査当局が捜査している段階で拉致されてしまったということで、捜査当局の捜査は続けられているという考えに基づいてこういう問題に対する決着をしたい、こういうことなのか、政治的な判断あるいは日本政府とのかかわり合い、国際的な大きな問題になってきておるわけですから、法務大臣お一人のお考えでいくわけにもいかないし、外務大臣の発言もありますし、外交上のいろいろな問題もある、いろいろなことが重なり合ってきてはおりますけれども、金大中さんが求めるように、主権国家として、拉致されたということに対していわゆる金大中さんが日本に寄るなり、あるいは政府の事情聴取に応じてもとの時点の原状回復を図れるようにすべきであるというお考えなのか、政治決着という段階は、いま大臣も片づいた問題であるからという御発言があったわけですけれども、そういう観点に立った上で話を進めると、金大中さんは、御破算だ、話にならぬ、こういうふうにお話しになっているわけですけれども、その辺はどういう御判断でいらっしゃるわけですか。
  209. 秦野章

    秦野国務大臣 私も、つまびらかなところはいま折衝の過程の問題でよく承知しておりませんけれども、私が意見として申し上げたのは、捜査というものはやはり最後まで決着した方がいい。そのさしあたりの問題は、要するに被害者の金大中さんから物を聞くということ、外務大臣の折衝というのか方向もそういう方向にあるわけで、そのラインの線上で進めた方がいい、こう私は申し上げているわけでございます。     〔羽田野委員長代理退席、委員長着席〕
  210. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この問題は、韓国の人たちの考えの中には金大中さん的な考えを持っている方もいらっしゃるでしょうし、金大中さん的な解決をすることが日本と韓国との間の問題をより民主化していく問題でもあるという点で見ている方もいらっしゃるでしょうし、いろいろな角度があると思うのですね。しかし、当事者である金大中さんがアメリカへ行って一応は自由な身になられた段階で意見を述べていらっしゃることが伝えられてきておるわけですから、やはり問題点を解決する方向で政府も動いていただきたい、こういうふうに考えるわけですけれども大臣の御意見を。
  211. 秦野章

    秦野国務大臣 その問題は、私も当面責任の当事者ぴしゃりというわけでもございませんので的確な御答弁ができませんが、先ほど申し上げたような趣旨で、私は、政府の方針が外務大臣のラインで進んでいるということはいいことだ、そういう方向で何とかいま一歩前進してほしい、こう思っているわけです。
  212. 沖本泰幸

    ○沖本委員 本題に入ります。いまのも本題なのですけれども先ほど横山先生も最後にいろいろ御質問になっておった非行の問題について先にお伺いしますが、所信表明では、途中からになりますが、「犯罪の態様はますます悪質巧妙化してまいっております。特に覚せい剤事犯が依然として増加し、その乱用者層が一般国民に広く拡大しつつある上、覚せい剤の薬理作用の影響による殺傷事犯が続発しており、また、少年非行も逐年増加しつつ低年齢化及び悪質化の様相が一層顕著となり、過激派集団の動向にも予断を許さないものがあるなど、今後の推移には警戒を要するところが少なくないと存じます。」こうなっておるわけです。  いろいろなものがいま申し上げた中に入っておるわけですが、特に少年非行の問題につきましては、横山さんがおっしゃったような点で同じ意見ではあるわけですけれども、この中で特に二番目に挙げていらっしゃる「矯正及び更生保護行政」という点についてです。保護司については先ほど横山さんが相当深くお触れになったのですが、それについては保護観察なりあるいは少年院なり、こういう受け皿がいろいろあるわけですし、これに携わる方々の考え方なり、あるいは業務の内容がいろいろあるわけです。そうすると、大臣が触れておられましたけれども、非常にむずかしい問題だ、だから改めてこれはもっと検討しなければならぬから、その資料、データを出してもらうようにしておるということなのですけれども先ほどの保護司との関係がありますように、お年寄りでは全く判断しにくいいまの少年状況になってきておりますし、学校の先生でさえ対応がもう狂ってしまっておる、家庭の状態も大変な状態になってきておるということになるわけですから、そういう問題点を拾い出していって、いまのままの法務省主管のものに対する対応のままでいいのかどうかという点に重大な問題があると思うのですね。  少年院なら少年院が受け入れる年齢もずっと下へおりてきているし、それがどういう限度にかかってくるのかという問題、あるいは保護観察官の動向にしても対応はいろいろあるわけですから、そういう問題を、ことし一年かかって資料をとってみて一応検討を加えていこう、こういうことではないと思うのですね。だから、早急に現場に即して内容を検討していっていただかないと、全体的な見地からの対応がおくれてしまうということにもなるのではないかと思うのです。社会の問題それから父母の問題、教育の場の問題、環境の問題、いろいろ重なっておるわけですけれども、少なくとも法務省が受け持つ段階の中で、現状でいいのか悪いのか、どこを改めるべき問題であるか、どうしなければいけないかというようなことは早急に検討していただいて対策を立てて、それはわれわれにも教えていただきたいし、社会にもその対応を迫っていく、こういうことであっていただきたいと思うのですが、その辺はいかがなんですか。
  213. 秦野章

    秦野国務大臣 おっしゃること全くそのとおりなのですけれども先ほど申し上げたことに若干補足を兼ねてお答え申し上げますと、青少年問題を解決するためのデータというのか資料というのか教訓というのか、こういうものはある意味法務省は宝庫でございます。とにかく、そういう悪い連中を収容しているという宝を持っている。これは宝なんです。ごみだと思ったらそうじゃない、宝なんです。そこから教訓を学べるという意味において私は宝だと思う。しかも、これを研究する陣容というものは、私自身も驚くくらいなのだけれども、たとえば大学の教育学部を出た方々や心理学を学んだ方々とか、そういう研究集団といいますか陣容は、多分法務省が日本で一番誇るべき陣容を持っていると私は思います。そしてまた、実際に事件をさばく経験があり、またそれだけの知識のある検察官あるいはまた判事の方、そういった陣容で法務省というのはでき上がっているわけですから、この陣容がいまの事態に即して発奮、奮起するならば新しいデータは出せるものだ、それが一番大事だ、私はこう思っているわけです。そういう陣容があるということは大変ありがたいことでございまして、そこのところから入ることが一番いいのではなかろうか。たとえば、いまマスコミ等でよく言いますけれども、弱い者いじめとか甘えの構造とかいうのがはやり言葉のようになってきた。確かにそういうことはあるのだろうと思うのです。そういうような体質がどうして出てきたかということは、これはいろいろな角度からの研究が必要であることは間違いないと思うのですけれども、そういうようなことを膨大な研究集団を持っている法務省は、まあ政府関係当局と連絡をとって結論は導くのでありますけれども、その中で大きな任務と役割りを持っていけるのではなかろうか、こう考えております。  お説の点は先ほどの横山先生も同じなのだけれども、私もこれは本当に大きな仕事だと思っておりますが、ただ、右から左に来月できるとか再来月できるというふうなものでもなさそうな感じで、これはやはり相当の時間がかかると思いますけれども、かけても先生方にも御報告できるようなもの、あるいはいろいろな審議会その他に提示できるもの、学校にも参考にしてもらえるようなもの、そういうものをひとつ生み出していきたい、こう考えております。
  214. 沖本泰幸

    ○沖本委員 何度も触れるようですが、結局、法務省の施設へ来るのは最終的には受け皿みたいな形になるわけですし、その場合でも、結果的には更生させてりっぱな人として社会へ送り出していかなければならない役割りがあるわけですね。そういう立場から考えますと、いまの保護観察の施設そのものがそれに合っているのか、どの辺が合わないのか、あるいは少年院の機能なり規模なり施設そのものが現在の青少年の動きに対して合っているのか合っていないのか、これは実際にやっていらっしゃるわけですからいますぐおわかりになると思うのですね。その点いかがなんですか。
  215. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 非行少年を扱う機関といたしましては警察から検察庁、家庭裁判所、それから法務省の保護観察所、さらには少年院、少年鑑別所というのがあるわけでございます。矯正局では少年院と少年鑑別所を所管いたしておるわけでございます。このうち鑑別所は、非行少年の疑いを受けた少年の資質等を調査いたしまして、これを主として家庭裁判所で審判なさる際のお役に立てていただくということでございます。非行少年であるということがはっきりした少年を処遇すると申しますか再教育するという仕事は少年院で行っておるわけでございますが、現在全国に五十幾つの少年院がございまして約四千人の少年を扱っております。  これは私の個人的な考え方でございますけれども少年院に入ってくるような少年の多くはやはり家庭でのけものといいますかになったり、あるいは学校で成績が悪いために相手にされなくなったりというような子供たちがかなり多いわけでございます。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕 子供たちが書いた手記等によりますと、自分は少年院へ来て初めて親身になって世話をしてもらった。これは、厳しいけれども非常に温かいあれを受けたということがもとになって更生をするという子供たちも少なくないわけでございます。  現在、少年院の成績についていろいろ調査をいたしております。これは昭和三十年代からほぼ十年置きに、少年院を出た者がもう一度少年院へ戻ってくる、あるいは刑務所へ行くという割合を調べておるわけでございます。昭和三十年代に調べましたときは二十数%が帰ってくる。ところが、四十年代になってからの調査では、それが一四、五%になっておる。それからさらに昭和五十年代の初めに出た者について見ますと、一〇%足らずになっておるという数字が出ておるわけでございます。これはいろいろな要素がありますので、少年院の処遇がどんどんよくなっているということだけが理由であるというふうには申せないかもしれませんけれども少年院の処遇を充実さしていくということの希望が持てることではなかろうかというように考えておるわけでございます。  現在、少年院で特に力を入れておりますのは、やはり入ってくる少年がそれぞれ違った問題を持っておりますので、その個々の少年が持っている問題に応じて適切な処遇を与えていこうということを考えておるわけでございます。その一番大きな分け方といたしまして、これは法律で初等、中等、特別、医療というような分け方がございます。その中の初等少年院と中等少年院につきましては、昭和五十二年から短期少年院というのとそれから比較的長期のものとを実際分けまして、短期で済む者はなるべく早く、これは平均四、五カ月で出られるようにし、長期の者はそれより少し長くなるというような分け方でやっております。短期の中で、最近社会問題となっておりますたとえば校内暴力の問題、これはまだ在学中でございますので、できる限り早く学校へ帰すということを考えております。関西のある少年院では、通常の場合の半分ぐらいで一度学校へ帰して、そこで卒業をしてもらうというやり方をとっておりまして、これはかなり成績がいいという報告を受けておるわけでございます。こういうような処遇をとりますためには、少年院と、それから社会へ出てから処遇に当たる保護観察所、それからさらに学校、家族、そういうものと非常に緊密な連絡をとりながらやっていく必要があるわけでございますが、そういうような方法で新しい非行の形に対応しようとしておるわけでございます。将来も保護観察所、学校、家庭と一緒になって進めていくという処遇の面をさらに充実さしていこうということを考えておるわけでございます。
  216. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういう細かい御説明は要らないのです、ほかの一般質問のときにいろいろやっていきますから。ただ聞きたいのは、いまの少年院の機構で—少年非行ということが一番重大視されているわけですよ。社会的な問題になり、総理大臣も発言している。いま国じゅうの問題になってきつつある。そういう段階の中で、少年院なら少年院、鑑別所なら鑑別所が対応できるだけの施設なのか。悪いならどの辺が違うのか、どの辺を検討してこれに対応していくようにしようかという辺のお考えをお伺いしたいわけなのです。何かあるのか、いまのままでいいならいまのままで対応できますということなのか。頭数にしてもずっとふえてきているわけですから、いまのままでは施設が足りませんとかあるいは職員が足らぬとか、内容が甘過ぎる、もっと検討しなきゃいけないのか。だから、局長さんのお話大臣お話では大分食い違いがあるわけですね。
  217. 秦野章

    秦野国務大臣 私はまだ全部見たわけじゃありませんが、二、三の現場を見まして、職員の中にはなかなかいい人が来てくれているというような感じがしておるわけでございますけれども、施設の問題なんかについては、これは少年関係だけでもないのですけれども、建てかえだとかあるいはもう少し拡張したいとかいう点は確かにお説のとおりたくさんあるわけでございます。そういう点については、予算とも関連してなかなかむずかしいのですけれども、最近この少年鑑別なんかの問題では、特殊な学者といいますか、そういう人たちもだんだんふえているような感じもいたします。いい人をいただいて、足らぬ分はというと、これまた行政改革でなかなかむずかしいのですけれども、私どもの部内でもいま相談しつつありますが、施設、そういったものの充実については、非常に困難な条件の中ですけれども、またこれ先生方の御協力を得て充実を図ってまいりたいと思います。現実にどこのところが足らぬかという問題は、また政府委員からちょっと御説明させます。
  218. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 施設の問題につきましては、これは少年院だけではございませんけれども、大変古くなって処遇の上でも困りますし、生活状況も非常に悪いという施設がかなりございまして、私どもの計算で建てかえ等を必要とする庁が約三分の一ございます。そういう施設についてはできる限り早く建てかえたいというように考えておりますが、地元の問題、お金の問題等で私どもが意図するほど早いペースでは改善できないという状況でございます。  それからもう一つは、職員の数の問題でございますが、少年院、それから少年鑑別所に入っております子供の数が、昭和五十年ごろには、これは一日平均でございますが、合計して三千人ということでございましたが、現在は一日平均をいたしますと両者合わせて五千人入っておるわけです。その間に職員の方は、職員の定期計画削減ということで毎年二、三十名ずつ減っております。そういう意味で、収容される少年は倍近くにふえておりますのに職員の方はむしろ減ってきておる、こういうような状況でございます。これは私どもの希望だけでいろいろできる問題ではございませんで、全国家的な立場で、どこにどれだけ人を割り振るかという問題だと思いますので、私どもは、当面は自分たちの持っておる陣容でできる限りのことはやっていくということを努力するわけでございますが、同時に、増員あるいは施設の改善という点についても十分努力を続けていきたいと思っております。  それから、実際に子供を扱う方法につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。
  219. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣先ほど、親の機能の低下あるいはだんだん低学年に問題が移っていっているという点もいろいろ御指摘ありましたし、それから、刑務所の中の暴力団の関係の御発言の中でも、少年の中で約一割が暴力団関係である、これは少ないけれども大変なことだという大臣考えをお述べになっていらっしゃったわけですけれども、そういうところから、たとえて言うなら、三十年、四十年前の少年院の機能がそのままにある。このごろの子供は非常に豊かな生活をしているわけですね、甘えという問題も出ましたけれども。豊かなところがら三十年、四十年前の昔の施設へどおんとほうり込まれると心理的にどういう影響を受けるのか、そういうことのままでいいのか。あるいはそういうところで教育され、いろいろと更生させられて出てきたのが、果たして今度は社会に出たときにそこで箔がついたと言って、より悪くなるのか、逆転する問題も出てくるんじゃないかと思うんですね。  そうすると、鑑別所自体の施設、機能も現状のままでいいのかどうかという問題もあるわけです。ですから、やはりいま社会が一番大きな問題視をしている次代を担う青少年がこれほど荒れてきたというのは、時代の流れもあるでしょうし、経済的な移行もあるでしょうし、豊かな生活もいろいろあるでしょうし、親の機能の低下もいろいろあるでしょうし、そういうところでいま法務省が果たそうとしている青少年の問題に対することはどうしたらいいかということの検討をやっていただきたい。それに対応したものを早急にやっていただきたい。でないと、法務省関係だけがぽんとどこかへずれてしまっているということになりますからね。それは法務省だけで済む問題でもありませんし、文部省との関係もあるでしょうし、厚生省との関係もあるでしょうし、いろいろ起こってくる事件の中にある問題との関連もあると思うのですが、むずかしい質問かもわかりませんが、そういう意味合いで、いま法務省はどう対応をなさろうとしているのかということをお伺いしたかったわけです。
  220. 秦野章

    秦野国務大臣 いま局長からいろいろ申し上げましたが、少年刑務所にしても鑑別所にしても、刻々に改善をする、対応を改善するという努力はしておるわけですよ。少年刑務所、たとえば作業をやらせる。昔から同じようなことをやっていたのではしようがない。いまの若者が好むような方向に、そしてそれを通じて改善される、一人前になっていくという、そういう若者の気持ちを酌んだ、そしてまた時代にも合った、そういうような方向で刻々努力していることは事実なんです。  私も現場を見て、たとえば自動車の修理工場で修理工を覚えさせるとか、こういうようなことをやっているところもある。私は、もっと枠を広げて、やはり遊ばしておくのではなくて、作業を通じて人を鍛えるということがいいのですから、その作業の種類なり、その作業が現代の世相とマッチするような問題はやはり考えていかなければならぬ。そういうことについては、中の職員だけでは片がつかぬ問題もありますけれども、中央もそういうものをバックアップして、できるだけ研究していく。いろいろ足らぬところはいっぱいありますけれども、その与えられた条件の中で一生懸命工夫をしながら、決して固定化された状態でいるということではない。できるだけの努力はしながら道を開きつつあるというふうに私はいま看取しているわけでございますけれども、決してそれが十分でないことは、先ほど来申し上げているいろいろな条件がございます。予算とか人の問題とか、いろいろなものに関係しますけれども、大いに努力をしてまいりたいと思います。
  221. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それと、先ほど横山先生お話しになっていた保護司の関係ですが、おっしゃるとおり六十のおじいさん、七十のおじいさんがいま保護司でいわゆる推薦されて出てくる。だから、その仕事を本気になって全うすることが青少年対策にマッチするか、現代社会にマッチするかというのは、さっきの横山先生と同意見なんですけれどもね。そうすると、結局は肩書きとそういう人がおるだけで、何の役割りも果たさずに、そういうものがあるということだけで終わりそうな気がするのです。これは私もずっと前からお話はしてきておるわけですけれどもね。  ですから、いっそのこと転換してしまわなければならぬような大きな問題が保護司なら保護司の中にあるのじゃないかというように考えられるわけです。横山さんから、労働組合の中にはそういう有能な人もおるはずだということもありましたし、だから、そこで考え方を変えてもらって、もう機構を全部変えるような必要があるのじゃないかという考えを持っているわけですけれども、その辺はいかがですか。
  222. 秦野章

    秦野国務大臣 保護司の方は、大体いまは六十歳以下ということにして選考しているようでございますが、それにしても、おっしゃるように若い者にそういう仕事で働いてもらうということは大変いいことに決まっているのですけれども、まあ働き盛りの人はまた一方において仕事も忙しいというようなことも現実にはあるのだろうと思うのですけれども、それにしても、やはり保護司の問題というものは、両先生がおっしゃったようなことでいろいろ考えていく問題があろうと思います。  ただ、私が率直に感じたのは、あのボランティアのような、実費ぐらいの金で、いま全国で五万人ですよ。これがやはり相当役に立っている。私は、これは日本の一つの文化だと言っていいと思う。言うならば、ただ働きのようなことで悪い者の後始末のめんどうを見てやろう、いい方に持っていってやろうというようなシステムというものは、法務省というか、日本の歴史、政府の直接の機関というよりも、そういうミックスの、民間であると同時に政府の気持ちもかかっているような、そういう、まる抱えの政治じゃないが、篤志家ということでそういうふうな働きをして今日まで延々と続いてきたということは、これはこれなりにやはり評価しなければならぬし、また相当の成果も上げてきたと思うんですよ。ただ、時代の移り変わりなり、少年非行なりがふえてくるということになれば、それの対応力というものを考えたときに、お説のようなことを当然考えていかなければならぬと思いますが、いずれにしてもひとつ十分研究させていただきます。
  223. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いろいろあるのですけれども、時間 の都合でこれぐらいにして、また後に問題を譲りたいと思うのですが、ここでもあります過激派の動向ということでは、先ほども右と左の過激派の問題について御指摘があったわけですが、この中にある「各種凶悪重大事犯、悪質な贈収賄事犯、大規模な脱税事犯が跡を絶たず」とあるのですが、きのう、きょうのニュースによると、広島の拳銃で広島県警の方がイタリアまで調べに行ったということが出ておりましたが、暴力団の拳銃ですね、武装問題について新聞記事を読んでみますと、昔は拳銃一丁持ったら十人の組員にかわると言われておったのが、このごろはアクセサリーみたいに一人一丁持っているような時代になってきたということも言われますし、百丁みつかって弾が三万発出たということは、国民にとってみればショッキングな話でもありますし、しかし、それが同じ人が持ち込んだのが恐らく五百丁、七百丁ではないかということもニュースで流れてきておりますし、それと時を同じくして暴力団がぼんぼん拳銃の撃ち合いを始めた。前からもあったわけですけれども、特に出て、いつ善良な市民がその中に巻き込まれるかわからない現状ということなんですね。そういうことですから、これはゆゆしい問題であるということが言えるわけですから、とにかく問題を明らかにしてもらって、そして厳重に暴力団を取り締まってもらって、国民、市民が安心して社会生活ができるような回復を特に図っていただきたい。  これは結論になるわけですけれども、そういうことでいま申し上げたようないわゆる一人一丁のような時代になってきたということになれば、果たして拳銃だけ皆持っているのか、一人一丁平均持つようなそういうふうな大きな数になってきておるのか。では、いままで関係当局はどんな取り締まりをしてきたのだろうか。あるいは、ひょっとすると、暴力団が武装蜂起をやったらいまの警察能力を上回る武装集団になるのではないだろうか、そういうふうなのが大組織でぼんぼんやり出したら、そこらここらにおれないのではないだろうか。いろいろ心配が広がっていくわけですね。  そういうことで、では現在までどのような取り締まりをして——恐らく厳重に取り締まってはこられたのだろうけれども、なおかつこういうふうになってきた。新聞を見ると、ときどき象の置物の中に入れてきたとか、その他に紛らわして持ってきたとか、自分がおもしろ半分に外国で拳銃を手に入れてきたのではなしに、このごろはほとんど密輸で入っているわけですね。それがほとんど暴力団に流れているということになると、一体、実態はどうなのだろうか。今後どういう心配があるのだろうか。心配しないでいいのだろうかという点について、警察庁の方はこの問題を言えないところもあるのではないだろうかと思うのですが、ある程度これだけですと言うと、何だ、それぐらいしかわかっていないのかと、かえって暴力団がにた笑いするようなこともあるかもわからないし、というようなこともあるわけですけれども、明かせるだけ明かしていただいて、そして現状とこれからの対策というものについてお話しいただきたいわけです。
  224. 川畑久広

    ○川畑説明員 お答えいたします。  まず、拳銃の武装化の問題ですけれども、具体的に武装化が進んでいるかどうかと言われますと、なかなかわれわれも把握が困難でありますが、いままでの取り締まりの状況から見まして、まず暴力団による対立抗争事件、それから銃器発砲事件、これが昭和五十五年を境にしまして非常に増加傾向に転じております。先ほど先生がおっしゃいましたように、本年に入りましてからも、すでにきのう現在で四十件、これは昨年同期が十一件ですので、二十九件増加しておるということが言えると思います。  それでは、暴力団の武装化が進んで、その結果どうなるのかというお尋ねですが、もちろん拳銃使用事犯等が増加しておりますと、治安上少なからぬ影響があるということは言えると思います。それでは警察庁として一体いままでどうやってきたのだというお尋ねになろうかと思うのですが、いわゆる武装化傾向に対しまして、警察といたしましては拳銃等武器の摘発、それから押収を暴力団対策の最重点施策の一つとしまして、主要な都道府県には拳銃捜査専従班を置きまして、体制を整備して強化しながらやってまいっております。昨年ではその体制で全国で一千百丁余り拳銃を押収、摘発しております。しかし、いま御指摘がありましたように、広島における拳銃の大量押収事件、それから大阪でいま発生しております抗争事件、このようなこともありますので、これも事実でありますから、警察といたしましては暴力団になお大量の拳銃があるということを考えまして、今後も拳銃等の武器の摘発、これを最重点の一つとしまして、なお一層強力に推進してまいるつもりであります。  それから、拳銃密輸の手段、方法はどうかというお尋ねでしたが、五十七年、昨年押収した拳銃の密輸の手段、方法をちょっと見てみますと、搬送の方法、手段としましては、全体の六九・二%が航空機利用、それから残る三〇・八%が船舶利用というような形になっております。  それから隠匿の方法というのは、スーツケースとかその他携帯小荷物の中に隠匿しているのが六九・二%ぐらい、これが最も多いわけです。続いて別送の航空貨物、これが二三%ぐらい、それから別送の船舶が七%ぐらい、このような形になっております。  以上でございます。
  225. 沖本泰幸

    ○沖本委員 数字的にお話しになればいまのようなお答えが出るのだろうと思いますけれども、しかし、百丁の拳銃がイタリアから入ったという点についても、比較的ずさんだったところの輸入の車の中に入れてきたとか、それぞれの盲点なり穴なりを探して入れてきているわけですね。ということでもありますし、それから、いままでは確かに改造銃が新聞記事をにぎわしておったわけですけれども、いまはやはり改造銃でなしに本物が出てきてぽんぽんやっているということになりますし、私は大阪の西成ですけれども、飛田のあの辺を組内のおるあたりを車で通る。そうすると、機動隊の車がとまっておって、防弾チョッキに鉄帽をかぶった警察官の人がずっとその辺を警戒している。いわゆる物々しい状態ですね。市民として考えると、なぜ暴力団を守らなければならぬのかという疑問なり反発なり出てくるわけですし、やはり治安を維持してもらって安心した社会生活ができるようにということにもなるわけですけれども、いつまでもあんな状態が続くと、不満もいろいろ出てくるわけですが、やはり数の点ではふえたのじゃないかというふうに受けるわけですけれども、その辺いかがなんですか。
  226. 川畑久広

    ○川畑説明員 お答えいたします。  確かにおっしゃるとおり、真正の拳銃の割合がずいぶんふえております。昨年、五十七年で見ますと、暴力団の関係で押収したのが千百三十一丁、その中で改造拳銃というのが三百九十一丁、真正の方が七百四十丁とありますので、これは逐年真正拳銃の方がふえているということは言えます。ですから、それは法律の規制でモデルガンが改造しにくくなったということに起因していると思われます。  それからもう一つお尋ねの、暴力団の事務所を守っているのじゃないかということでございますが、あれは決して事務所を守っているわけではございませんで、次のいわば報復だとか、あるいはそこから出撃していくとか、そのようなことがないように十分警戒、張り込みをしているわけでございまして、あのような事態にならないように、今後とも十分取り締まりを続けていきたいと考えております。
  227. 沖本泰幸

    ○沖本委員 見ていると、そう思わざるを得ないような状況に出つくわしますので、これで拳銃に関する御質問を終わりたいと思うのですが、先ほども、モデルガンがむずかしくなったので本物の拳銃が入ったんだろう、こういうお話なんですけれども、結局は以前から見ればどんどんふえてきておるわけなんです。それは何らかの厳重な取り締まりがあるのにふえてきているということになるわけですから、そういうお話を伺うと、国民は心配なんですね。さっきお話ししたように、一人一丁時代になったのか、あるいは、何かのことで大衝突があると無警察状態が起こるのではないかというような不安も出てくるわけですから、この点について、お答えは、厳重に、全力を挙げるというお答えに終わってしまうと思うのですけれども、その辺、もっと国民が納得できるような治安維持のあり方というものはないのでしょうか。
  228. 川畑久広

    ○川畑説明員 警察といたしましては、突き上げ捜査を徹底して行います。それからもう一つは、ただいまおっしゃったように、空港とか港に到着した段階、すなわち水際においてそれを摘発するということで、関係機関と協力して強力な捜査をするということに尽きるわけですが、詳しく述べますと、空港とか港を管轄している警察署におきましては、関係機関、これは税関とか出入国管理事務所あるいは空港、港湾関係の者、それから通関業者、こういう人と密輸入に関する情報交換を現在行っております。また、関係国との情報交換によりまして被疑者の追及、割り出しを行うというようなことをやっておりまして、今後とも強力に推進してまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  229. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この問題に対して法務省の方はどういう御対策なんでしょうか。
  230. 前田宏

    前田(宏)政府委員 暴力団の事件、特に拳銃等を使用します区悪事件につきましての取り締まりは、第一次的には警察当局でございますけれども、その事件の処理は検察庁の方でやるわけでございまして、私どもといたしましては、警察とも十分連絡をとりながら事案の真相を解明するといいますか、特に組織的な事案が多いわけでございますから、その根源にさかのぼるような徹底した捜査を行うというようなことにも努めておるわけでございまして、最近数的には、資料をちょっと持っておりませんけれども、たとえば勾留請求率とか起訴率とかいうものが非常に上がっているというようなことが、私どもの分野としてこういう事件に対して厳正な態度で臨んでいることのあらわれとして御理解いただけるのではないかというふうに思うわけでございます。裁判所の科刑につきましても、十分、検察立場で厳正な科刑の実現を図る、そういう扱いで臨んでいるところでございます。
  231. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間が余りないので、もっと要求しておけばよかったのですが、質問が飛び飛びになるかもわかりませんが、刑法の改正につきまして、前の坂田法務大臣は保安処分関係でヨーロッパを視察してこられた。帰ってこられて間もなく交代が始まったわけで、そういう点につきまして、坂田前法務大臣から秦野法務大臣は何か申し送りなり何なりというものをお受けになっていらっしゃいますでしょうか、どうでしょうか。
  232. 秦野章

    秦野国務大臣 前法務大臣の坂田先生がヨーロッパを回られた、そのことは言葉と文章で拝見しております。特に刑法の中の保安処分といったような問題については、よく各国をごらんになったようでございます。  その中に書いてあることをかいつまんで言いますと、ヨーロッパは大体の国が治安処分のようなもの、つまりそれは法律家とお医者さんと政治家と、要するにいろいろな学際的な結晶としてそういう制度を設けておるということですね。ただ、フランスがまだ設けてなくて、フランスは例の有名なナポレオン法典というような古い刑法でございますけれども、しかしフランスでもそういうものが必要だ、精神障害者のような者が犯罪を犯すというようなことで、全く縁もゆかりもないような者が被害を受けることに対応しなければならぬということで検討中だというようなことが坂田さんの報告の中にございまして、私どももその点はその報告の中からいろいろ勉強さしてもらっているということでございます。
  233. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この保安処分につきましては、先ほどからもお話がずっとあるわけですけれども、日弁連と法務省との間でまだ話し合いもついてないし、大臣お話でも今後もっと話を詰めていきたい、こうおっしゃっておるのです。それはそれなりに十分お話し合い、議論もしていただいて、国民の立場からより安心して任せられる法律改正ができればそれにこしたことはないわけですけれども、その対立の中で、結局、厚生省の病院を使わないで法務省の方に収容する病院をつくるということが新聞記事に出ておったわけです。それから精神耗弱者もその中に含まれるという話もあるというようなこと、それでその病院に入っている期間は刑期の中に入るのか入らないのかという問題もいろいろ出ているわけですけれども、その辺、新聞に出たとおりのことが日弁連との話し合いにも出てきておるのでしょうか。あるいはそういう問題、内容を込めて話し合いの準備をしておって、日弁連に対しては以前より変わった形で、一歩前進したこういう形のもので話をしておるので、日弁連もその話に恐らく応じてくれるであろうとか、いろいろな展開があると思うのですが、その辺、現状ではどうなんでしょうか。
  234. 前田宏

    前田(宏)政府委員 刑法改正全般の問題につきましては、いま御指摘のように日弁連との意見交換を十数回も続けておるわけでございますが、具体的にいわゆる保安処分、治療処分の問題についてのお尋ねでございますので、その二、三の点について申し上げますと、新聞等に最近出ておりましたのは、前回の意見交換会で従来若干未検討といいますか検討中であった点についての考え方の概略を説明したということが新聞記事に載っていたわけでございます。  たとえば、いまおっしゃいました施設の問題でございますが、その点につきましては、前々から厚生省の国の病院等を使えないかというようなことで厚生省とも御協議を重ねているところでございます。そういう意味で、まだ最終的な結論は出ているわけじゃございませんけれども、いろいろな面で厚生省の方の病院を使うことが困難だということになりました場合には、法務省の方で独自の施設を準備しなければならないであろう、その場合には病院というのにふさわしいような、病院にまさるとも劣らないような施設を設けたいということで、その具体的な構想といいますかそういうものも詳しくその意見交換会で申し上げたということでございます。  また、心神耗弱者の扱いでございますけれども、これも前に発表しました骨子というものでは若干検討が残っているような表現になっていたわけでございますけれども、この制度をつくる場合にはやはり耗弱者も含めた方がいいであろうというような方向であるということを申し上げて、要するに、いままで若干はっきりしていなかった点の方向づけを示したというふうに御理解いただきたいわけでございます。  それから三点の刑の執行との関係でございますが、これについてもいろいろと議論といいますか、考え方があろうと思いますけれども、方向的にはやはり身柄の拘束という点におきまして共通する点もございますので、それが二重にならないような調整といいますか、それはやはり必要だろうという考えを持っておるわけでございまして、その点もあわせて申し述べたということでございます。  要するに、従来から何回も治療処分の問題につきましては意見交換を重ねておりまして、たとえば私どもの細かい手続の問題であるとか、実際に制度ができます場合の処遇のやり方であるとか、そういうことについても詳しく申し上げておるわけでございます。それを随時検討を重ねた結果をそれぞれ御説明をしているということでございまして、大体全部済んだとまでは申しかねるかと思いますけれども、相当な意見の交換が重ねられて、議論が尽きたと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、相当重ねられたというふうに私どもとしては考えているところでございます。
  235. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この点も刑法改正の問題と、それから刑事施設法の問題点——刑事施設法の方が先になっているわけですけれども刑法改正の方が前から議論が続けられておった、そういう経緯もあるのです。刑事施設法に関しては、先ほど横山さんもお触れになったわけですけれども、日弁連のお話、いろいろあるわけですが、とにかくこの施設法、監獄法改正については、骨子に対していろいろ注文をつくっておったんだ。ところが、法律をつくる前に相談するということになっておるのに、何らの相談もなしにいきなりばかっとなった。これは留置施設法の方が先行したといういきさつもあるようですし、そういう点が日弁連としては非常に御不満でもある。  それから日弁連の方でいろいろ指摘しておられたわけですけれども、前国会の終わり目に、修正すべき点は修正すると、修正に応じますというような事柄で国対の方で継続の取り扱いがあったといういきさつがあるわけです。しかし、現実的な日弁連からの指摘は、やはり運用についての中身がより多く指摘されている。いわゆる交通の禁止であるとか、あるいは持ち物を調べられるとか、その点については矯正局長も、前よりよくなるんだ、いろいろなお話があったわけですけれども、そういう運用についての留置施設法との関係の中で、警察畑からの御出身の法務大臣に役割りを果たせというふうな横山さんの御注文でもあったわけです。  そうすると、この運用なり何なりについて、留置施設法の方がひとり歩きするわけですね。いままでは監獄法の規則の中にあったわけですから、そういうことのむずかしさというものがいろいろ介在してきておるわけです。そういう面についてもっと日弁連と話し合いをしていただきたいし、要望するものは要望するものでお聞きになっていただいて、直すものは直す。ただ、直すべきところを法務省の方で勝手に直して、法案を直すというわけにもいかぬでしょうから、委員会で質問して、直すところは直していくことになるかもわかりませんが、とにかく当事者同士が一番よく話し合って、了解を得てこの法律が成立するということが私は一番大事だと思うのです。そういう点で、やはり法曹三者の話し合いということは大事であるでしょうし、日弁連と法務省とがいろいろな議論をやって、前向きにこの話が煮詰められていって法律が成立していく、あるいは修正されていくということであっていただきたい、私はそう思うわけですけれども、その運用面についてのいろんな問題点は、大臣はどういうふうに扱ったらいいとお考えですか。
  236. 秦野章

    秦野国務大臣 いま沖本先生のおっしゃる運用面というのは、結局二つの法案の持っていき方でございますね。これは、警察警察でそういうものがやはり必要だ。私どもは刑事施設法は何とかしたいということで、いずれも継続審議になっているわけですよ。それで、もちろん日弁連とは話し合いを続けて、何とか折り合いをという気持ち、それからまた、政党の中でもまだまだ話をしていかなければならぬという段階ですけれども、継続審議になっているといういまの段階から一歩でも二歩でも進めて、何とか国会で成案を得たい、とにかくそういうことで努力をさせていただきたい、いま私どもの気持ちはそうなっておりますので、御理解を願いたいと思います。
  237. 鈴木義男

    鈴木(義)政府委員 基本的な考え方はただいま大臣から申されたとおりでございます。  具体的なことを申しますと、私ども、昨年の夏から、日本弁護士連合会の方に対して、もし不満なところがあって、それが法制審議会から出されました監獄法改正の骨子となる要綱の趣旨に合致するものであるならば、法務省といたしましてはその修正、これは国会等で修正されることに応ずるのにやぶさかでないということで申し入れておったわけでございますが、具体的な交渉というところまで来るのになかなか時間がかかりました。しかし、昨年の十一月ごろからこの点の話がだんだん煮詰まってまいりまして、つい今月から話し合いを始めようということになりまして、去る九日に、お互いの話し合いに出てくるメンバーがまず顔合わせをいたしまして、明日、二月二十四日になりますが、第一回の実質的な話し合いを行おうということにまで来ているわけでございます。私どもといたしましては、国会での御審議の日程等もあると思いますので、三月中には日弁連と私どもの方の間の話し合いを済ませて、何とか解決を見出したいというふうに考えておるわけでございます。  解決の線といたしましては、法制審議会の要綱というのは、法務省も弁護士会選出の委員の方々もこれでいこうということで意見が一致したところでございますので、そういう線をもとにすれば何とか解決が見出されるのではないかというように考えておるところでございます。
  238. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これで時間が来ましたので終わりますけれども、特に刑事施設法の方はとにかくもう出てきているわけですから、今国会中にいろいろということはありますけれども、その前提に日弁連との十分な話し合いの上に立って、法案がどっちになるかわかりませんけれども、議論されていくということが望ましいと私は思いますので、その辺は大臣も十分御配慮いただきたいと思います。  以上で終わります。
  239. 太田誠一

    ○太田委員長代理 安藤巖君。
  240. 安藤巖

    ○安藤委員 法務大臣所信表明をもとにしていろいろお尋ねしたいと思います。  この所信表明で言うておられるように、法務行政の使命は法秩序の維持と日本の国民の権利の保全ということに一番大きなポイントがあろうかと思います。そういうことになりますと、その最高の責任者である法務大臣、もちろん国民からしっかり信頼される人でなければならぬというふうに思うのですが、この点については異存がないと思います。だから、別にお尋ねしません。異存はないと思います。異存があるんだったら言ってください。異存はないですね。  ところで、この所信表明の第一は検察行政について述べておられるわけですが、先ほどからもいろいろお話があって、各種凶悪重大事犯とか悪質な贈収賄とか、あるいは脱税事件とかコンピューターシステムを悪用する新たな形態の犯罪の発生とか、それから「特に」というところで覚せい剤事犯、それから少年非行、過激派集団がいろいろ挙げられておるわけです。  私、所信表明を拝見いたしまして、これは暴力団の人が喜んでいるんじゃないのかなという印象を受けたのです。先ほど警察庁の方は暴力団に対する取り締まりの問題は最重点施策だというふうに言うておられたのですが、法務大臣のこの所信表明の中に、暴力団に対する取り締まりをきちっとやっていくということがどうも抜けているような気がするのですが、こちらの方は第二、第三というふうにお考えになっておられるからこういうふうになっておるのでしょうか。
  241. 秦野章

    秦野国務大臣 暴力団の取り締まりは、先ほど刑事局長も申しましたけれども、実際問題としては警察が第一線に立ってやらぬといかぬ問題、しかし無論検察はその背後というか、検察行政の中で重点というのか、大きな関心を持っていることは当然でございますが、どちらかというと街頭犯罪的な要素があるものだから、警察がまず奮起していただく。われわれも、もちろんそれに呼応して一生懸命やるということは従来から当然でございます。たまたまそこのところに重点みたいなことを書いてなかったとしても、そのことは私ども決しておろそかにするつもりは毛頭ございません。
  242. 安藤巖

    ○安藤委員 もちろん、おろそかにしていただいては困るわけですが、いまおっしゃった御趣旨からすると、おっしゃったような理由で暴力団関係はここに挙げてないんだ、こういうふうに理解をするわけですが、その関係は後でまたお尋ねします。  ところで、刑事局長さんにお尋ねをしたいのですが、昨年の六月十八日だったと思うのですが、右翼暴力団が日教組の本部を襲って書記局に入り込んでピストルを乱射して書記局員に重傷を負わせたという事件がございますね。その事案の内容、それからその捜査、それから処分の結果、それから関与した人物、団体等についておわかりの範囲お答えいただきたいと思います。
  243. 前田宏

    前田(宏)政府委員 お尋ね事件は、昭和五十七年六月十八日に、先ほど仰せになりましたように日教組の本部が置かれている日本教育会館に、いわゆる右翼団体修己館の前館長であった山田恵男という者が拳銃を携えまして侵入いたしまして、そしてそこにいた組合の書記の方に対しまして拳銃を発射して全治約四週間の傷害を負わせた、また同会館の事務局長に対してもわき腹に拳銃を押しつけるなどの脅迫を加えたという事案でございまして、警視庁の方から事件の受理をいたしました東京地検におきまして、同年七月十二日に東京地裁に対して、建造物侵入、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反という罪名によりまして公判請求をしておるわけであります。  なお、関連いたしまして、いま申しました山田という犯人をかくまった者二名も事件として受理しておりまして、これは略式命令で起訴しておるわけであります。  公判請求いたしました山田恵男なる者につきましては、現在東京地裁で裁判が行われているわけでございますが、おおむね証拠調べも終了して、近く結審の予定というふうに承知いたしております。
  244. 安藤巖

    ○安藤委員 その修己館というのはどういうような団体なんですか。
  245. 前田宏

    前田(宏)政府委員 一応私どもの聞いておりますところでは、事務所が広島市にございまして、構成員の数が数名程度と聞いておるわけでございますが、広い意味での右翼団体と申しますか、そういうものの一つであろうということでございます。
  246. 安藤巖

    ○安藤委員 かくまったというふうにおっしゃったんですが、かくまったのはどういう人だったんですか。
  247. 前田宏

    前田(宏)政府委員 先ほど申しました山田という者をかくまった者といたしまして、滝口という者と宮本という者二名につきまして処理をいたしておるわけでございますが、これはその修己館の正式構成員ということではどうもないようでございます。それの知り合いといいますか同調者といいますか、そのような立場にある者というふうに聞いております。
  248. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほどおっしゃった滝口というのは名前は倫雄というので、これは国志会という団体の会長をしておる男ではないでしょうか。
  249. 前田宏

    前田(宏)政府委員 滝口という者の名前はいま御指摘の倫雄という名前でございまして、一応いまおっしゃいました国志会という名前を名のっている団体の会長といいますか代表者といいますか、そういう者であるようでございます。
  250. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほど、山田恵男が前館長をしておった修己館が広い意味の右翼団体だとおっしゃったんですが、この国志会というのも名前からしてそうだろうと当然思われるのですが、修己館と同じような種類の団体というふうに認識をしておられるわけですか。
  251. 前田宏

    前田(宏)政府委員 その国志会なるものの活動状況の詳細までは十分承知していないわけでございますが、同種の団体と言ってもよろしいかと思います。
  252. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで大臣、これはいまお聞きになっておられておわかりのように、右翼団体が民主的な労働組合、ここヘピストルでもって襲撃を加えて中の人に重傷を負わせる、またさらにはピストルを押しつけるというようなことは、明らかに右翼のテロ行為だと思うのですね。これはもう民主主義を破壊するとんでもないことだと思うのですが、許すわけにいかぬ行為だと思うのですが、どうでしょうか。
  253. 秦野章

    秦野国務大臣 全くお説のとおりだと思います。
  254. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、こういうような団体に対しては厳しい態度でもって臨んでいただく必要があろうかと思うのですが、どうでしょう。
  255. 秦野章

    秦野国務大臣 全くそのとおりでございます。
  256. 安藤巖

    ○安藤委員 先ほど所信表明のところで暴力団関係のことで少し気になることを申し上げた趣旨は、先ほどもいろいろゲーム機協会の顧問を大臣がしておられた云々のこともあって、そしてその協会の一部が賭博ゲーム機を扱っておった。そしてその中に暴力団の関係者がいた、あるいは背後に暴力団関係者がいたというような関係がありまして、大臣はどうも暴力団関係に対して甘いんじゃなかろうかという懸念をやはり国民の多くが持っているのじゃないかと思うのです。私もそういう感じがしますし、いろいろ聞いてみますと、ええかいなという話も聞くのですよ。だから特にお尋ねしたのですが、そんなことはないのでしょうね。
  257. 秦野章

    秦野国務大臣 暴力団に甘いということでは、私の立場、職責が尽くせません。また、私の経歴からいっても、こういう問題については厳しく対処していかなければならぬというのが私の信念でございます。
  258. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、大臣は、先ほど日教組の本部を襲撃していま裁判を受けている山田恵男、この男をかくまった国志会という右翼団体、これを知っておられますか。
  259. 秦野章

    秦野国務大臣 全く存じ上げておりません。
  260. 安藤巖

    ○安藤委員 あなたはこの国志会から選挙資金を受け取っておられるのじゃないですか。
  261. 秦野章

    秦野国務大臣 全く身に覚えがございません。
  262. 安藤巖

    ○安藤委員 身に覚えがないとまでおっしゃられると何ですが、忘れたとかなんかじゃなくて、身に覚えがないというふうにおっしゃるのですが、あなたは三年前の同時選挙、そのときに陣中身舞い、いわゆる選挙費用ですね、陣中身舞いをこの国志会から受け取っておられるのではないですか。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  263. 秦野章

    秦野国務大臣 そこまでおっしゃられると、新聞記事になったことで思い出すのですが、神奈川新聞一九八二年十二月十一日の記事でございます。この記事の中で、右翼団体が現金を贈るという記事が出ているのです。この中を読みますと、これはある大学のグループが、われわれは秦野さんを推すのだというようなことで事務所に来たという、私は知らないのですけれども、事務所に来て選挙運動を手伝ったという記事なんです。そのときに、その連中が十五万円ですか、十五万円出して、それで自分たちが飯を食ってそれですぐ行っちゃったみたいな話ですけれども、この新聞記事を見ると、政治資金報告書に十五万円ですか報告があるというような記事もあるのですが、これは調べてみると、全く覚えがないのです。私は、秘書から何から全部聞いてみたのです。十五万円の政治資金の報告というのもちょっとおかしいのですけれども、私は少なくとも全然知らないし、秘書も知らない。ただ、参議院選挙で大ぜいいる中で紛れ込むということもあり得たのかな、私の率直な感じはそうなんだけれども、これは私自身が大変迷惑しているわけでございます。選挙を手伝ったということが本当かどうか知りませんけれども、いずれにしてもこれは私としては全く知らないことだし、政治献金などというものをこういう人たちからもらうほど、私も正直言ってそんな気持ちも毛頭ないし、考えも及ばぬことでございます。
  264. 安藤巖

    ○安藤委員 いまいろいろ弁解じみたことをおっしゃったのですが、ここに証拠があるのです。いまのその記事の中にも載っておるみたいなことをちょっとおっしゃったのですが、昭和五十五年政治資金公表つづり。これは自治省へ行って写してきたのです。これはコピーにとってこれませんので、こうやって写してくるよりしようがないのです。私の秘書が克明に写してきたのですから間違いないと思うのですが、これによりますと、収支報告書、政治団体の名称、国志会。主たる事務所の所在地、東京都港区六本木五ノ十ノ二十八、恵伊幸ビル四〇一号、代表者の氏名、滝口倫雄、先ほど山田恵男という男をかくまって犯人の逃亡を幇助したということで逮捕された男ですね。これが会長。そして政治団体の区分としては、その他の政治団体。活動区域の区分、全国。これは二都県以上で全国と言うのですが、そういうことでちゃんと報告書が出されておるわけです。  中身は、支出の目的、陣中見舞い。いまおっしゃった十五万円。昭和五十五年六月秦野章。こうなっているのです。はっきりしたのがあるのです。そしてこれには宣誓書というのがついて、領収書等の写しというのもあるのです。  となると、どこかから紛れ込んできたんじゃないかなみたいなことで、わしゃ知らぬということでは通らぬと思うのですが、どうでしょう。
  265. 秦野章

    秦野国務大臣 いや、私もこの新聞が出たときに調べさせたら、本当に私はもちろんのことだけれども、秘書も知らぬと言うのだけれども、そういう十五万円国志会からもらって届け出が出ているということ自体に私は非常に奇怪なことを感ずるのです。私は、正直言ってそんなばかなことがあるはずがないと思っているのだけれども、おっしゃるようにそういう文書があることは事実なんでしょう、私も見ておりませんが。全く私の心にもないことで、全く接触もないのだし、しかし、そういうことがあるのなら、十五万円という歳入の方に入ったのかなと、驚きでございます。ただ、この新聞なんか見ても、この十五万円は、手伝いに行って、何か飯を食って帰っちまったんだみたいなこともあったようでございます、そういう話も。当時、私もそう聞いておるのでございますけれども、私はそれはもう大変残念なことだと思っております。
  266. 安藤巖

    ○安藤委員 この種政治献金、陣中見舞い等々の関係については、大抵の方はいまおっしゃったような趣旨のことを大体おっしゃるのです。全然私は知らなかった、いつの間にそんなのが紛れ込んだんだろう、かえって迷惑だというふうにおっしゃるのですが、これは先ほど言いましたようなここに証拠があるでしょう。大臣は否定なさるけれども。確かに献金したことは間違いないことなのです。あなたの事務所で受け取っておられることも間違いないことなのです。ということになると、これはやはり元警視総監、現法務大臣秦野さんが右翼団体と関係があると思われてもしようがないじゃないですか。しかも、そういうテロ行為をやるような、あるいはやった男をかくまって逮捕された男、略式裁判とはいえ一応裁判にかけられた男、それが会長をしている右翼団体から陣中見舞いをもらって、選挙をやって当選してきた、こうなったら、これは一体どうなっておるんだ、国民はこういうふうに思いますよ。いまあなたがおっしゃったように、選挙を手伝ったかどうかしらぬけれども何かようわからぬ、私は迷惑しておるということだけでは、これは済まされぬと思うのです。国民に対して大臣はどういうふうに釈明なさるのですか。いまのようなことでは通りませんよ。
  267. 秦野章

    秦野国務大臣 常識からいって、正直に言って、さっきも刑事局長が言いましたけれども、この国志会という名前からして右翼だと思うのですね。そういう右翼から十五万円もらったといって届け出が出ている。これは会計をやっている連中は右翼だと思ってなかったのじゃないかと思うのだ。私の参議院選挙なんかで十五万円もらって政治資金で届ける、それはもらったら届けるのだけれども、きわめてまともに国志会と書いてあるということなら、むしろ知らないのですよ。右翼であれ、そういう者であったらもらうわけがないのですよ。知らないで現場の会計がやってしまったのかな、これは困ったことだなとそのときに、これは五十五年のときに新聞に出ましたから、私はそう思ったのですよ。そういうことで、これは右翼とのつながりの証拠だとおっしゃるけれども、私が国志会から十五万現金を受けて届け出があった、だから、私が右翼とつながりがあるのだということだけは、それが証拠だとおっしゃるけれども、これは証拠じゃないのですよ。それは全くうっかりして、そういうこととは知らずに事務の処理の中でやったのだろう。しかもそれは、多分自分たちで飯を食っちゃったか何かして受け取りをくれよ、こう言ったのじゃないかと思うのです。それがわからないのですよ、実態が。わからないけれども、受け取りをくれというそういう手口がよくあるわけです。そうしてこっちは一杯食ってしまうわけです。  どうも私の感じからいって、まあ投票は私の方にしたかもしれぬけれども、それとこれとはまるで違った話で、安藤先生、それがあるから暴力団の証拠だなどということは、これはぜひひとつ御勘弁くださいよ。取り締まりの対象であるし、歴然とそこに文書に書いて国志会と言っているのだからこそむしろそうではないのじゃないかというふうに御推量いただけませんか。もしいただけないとしたら私の不徳のいたすところだ。私は断じてそんなところがら銭を十万、十五万円でももらって正直に届けるようなばかでもないし、人間でもない。私の立場はむしろそういう者は遠ざけねばいかぬのですからね。遠ざけるのがあたりまえですよ。選挙運動をすると言っても遠ざけなければいかぬ。いわんや金などというものは当然のことでございまして、国志会を何か大学のグループのあれと思ったのか、私は書いた者をしかるだけでは済みませんけれども、そんなようなことであったのではないかと、当時新聞に出たときもそうだったのだけれども、いまそう思っています。ぜひひとつそういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  268. 安藤巖

    ○安藤委員 いろいろ弁解をなさるのですが、そしてこの政治資金収支報告書は証拠ではない、そんなことはないです。これはりっぱな証拠ですよ。そして弁解をなさるのですが、何も私は、だから暴力団に甘いのじゃないか、そう短絡的なことはあえて申し上げませんが、基本的にそういうようなもやもやとしたものを秦野さんは持っておるのではなかろうかという疑惑を国民は抱かざるを得ぬのじゃないかということを言っているのです。  それで、不徳のいたすところだというふうにいまおっしゃったのですが、まさに遠ざけねばならぬでしょう。国志会という名前だったら、あ、これは右翼だなと普通だれだってわかりますよ。あの装甲車のような車でしょっちゅうがなり立てて走っているあの車には、たいていこれによく似た名前が出ていますよ。だから受け付けた人もぴんと来るはずですよ。ところが、そういうことではなくて、わずか十五万円とおっしゃるけれども、びた一文だっていまおっしゃったようにもらってはならぬし、遠ざけねばならぬし、厳重に監視の目を光らせて取り締まらなければならぬ立場でしょう。しかも、先ほど言いましたように、これは断固として厳しく取り締まらなければならぬとおっしゃったテロ行為をやった男をかくまった団体、そこからの陣中見舞いなんですよ。だから事は重大だと私は思うのです。その辺の重大さは思われるでしょう。テロ行為をやった男をかくまった団体から秦野さんが陣中見舞いをもらっておったということになったら、これはどえらいことじゃないですか。
  269. 秦野章

    秦野国務大臣 テロ行為はその後でしょう。そのころも私が見たらそれは右翼とぴんと来る。ところが、選挙の事務所にはいろいろな何というか、まあ先生方の方は知らぬけれども、私の方は寄り合い世帯で女の人も男の人もいろいろな人が手伝ってくれるので、いろいろな陣中見舞いをもらったり何かする人までも必ずしもたとえば一人や二人の秘書がやらないわけですよ。そういうことでそんなことになったのだと思うのです、わざわざ届けているのですから。これは私が暴力団とつながりのある証拠だというふうに決めつけられることはちょっと勘弁してもらいたいと思うんだな。そんなばかなことはあるわけがない。私は暴力団の取り締まりにかけては、自慢じゃないけれども、私が前に警察にいるときにも、たとえば全国一斉暴力団取り締まりというのをやったのは私が最初の計画ですから。治安の維持ということについては暴力団はやはりガンでございますから、そんなところまで国志会というものを広げて考えることはぜひ御勘弁願いたいと思います。
  270. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、こういうようなつながりがあるということになれば、幾ら大臣が過去においてこうやった、これからもやっていくんだということをおっしゃってもこれはしり抜けじゃないかというふうに私も危惧するし、国民もやはり危惧するのではないか、こういうことを思っているわけなんですよ。その辺のところを、いや、それは何かちょっと間違えて気がつかずに受け取ってしまったのだとか、そんなはした金をもらう必要はないのだとかというようなことでは済まされない問題だということを認識していただく必要があると思うのですよ。その辺の認識はどうなんです。
  271. 秦野章

    秦野国務大臣 とにかく済んでしまったことでしょうがないのだけれども、そんな者からもらうということ、それから国志会という名前を見ただけでぴんと来なかったということは非常に残念だし、申しわけないと思っています。その点はどう言われようとしようがないのだけれども、ただ、先生がおっしゃるようにこれが暴力団とのつながりの証拠だなどと言われたのでは——ひとつぜひ実績を見ていただいて、それを暴力団とのつながりの証拠にされるようなことだけは御勘弁願いたいと思います。
  272. 安藤巖

    ○安藤委員 次の質問に移ります。
  273. 秦野章

    秦野国務大臣 いまちょっと調べたら、右翼の方が政治資金の届け出をしているのですね。私の方がしているのじゃなかった。私もいまおっしゃるとおり余りにも素直に聞き過ぎてしまったのだけれども、右翼の方が届け出をしているのですよ。だから、それが本当かどうか。私に届けていれば箔がつくのかな。何かちょっとこれはおかしいよ。そういう意味からいっても私これは大変疑問があります。ひとつ御検討を。
  274. 安藤巖

    ○安藤委員 私は先ほどからそのように言うております。証拠だと言っているのもそれです。私は何も大臣をひっかけようなんてさもしい根性は毛頭持っておりません。  次の質問に移ります。  これは申し上げるまでもないですが、大臣には憲法九十九条の憲法擁護の義務があるわけですね。だから、法務行政を行うに当たっても、これはあたりまえの話なんですが、これは異存はないと思いますが、どうでしょう。
  275. 秦野章

    秦野国務大臣 全く異存ございません。
  276. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、大臣は国際勝共連合あるいは統一協会、こういうような団体、御存じでしょうか。
  277. 秦野章

    秦野国務大臣 はい、存じております。
  278. 安藤巖

    ○安藤委員 この勝共連合あるいは統一協会の問題につきましては、これまで再三再四にわたって私がいろいろな問題を当委員会で取り上げてきておるのですが、幾つかの反社会的な行為、不法事案、刑法に該当するような行為等々も挙げてお尋ねをしてきておるのですが、法務省の方で、これは主として人権擁護局の方かもしれませんが、この勝共連合、統一協会の行為について、反社会的な行為あるいは人権侵害の行為について把握しておられる事案があったら説明していただきたいと思います。
  279. 鈴木弘

    鈴木(弘)政府委員 私どもが扱いました人権侵犯事件というのは二件ございます。  一件は、昭和四十六年に東京法務局に入信者の母親から投書のあった事件でございます。投書の内容というのは、統一協会が親兄弟の意見を無視して予告もなしに入信した娘を家出させて激しい布教活動をさせている、それで善処してほしい、こういうようなものでございました。そこで、東京法務局では、この投書を投信者の居住地を管轄します秋田地方法務局に回付いたしましたが、同局において調査を行いましたところ、入信した娘がすでに帰宅していたことが判明いたしまして、同人から具体的な事実を直接聴取しようとしましたが、両親の方から、娘が帰ってきてあれこれ聞かれるというのは困る、つまり調査を拒否されました。したがいまして、結局は、具体的な人権侵犯の事実を確定することができなかったというのが一件でございます。  それからもう一件は、昭和四十九年十二月に旭川地方法務局に入信者の母親から親告のあった事件でございます。親告の趣旨は、統一協会が入信した娘に勤務先を無断欠勤させ家出させたので、善処してほしいというものでございました。そこで、同局が入信した娘から事情を聴取しましたところ、同人も、全く自由意思で入信し、両親が納得してくれないのでやむなく家出したものであるとのことでございます。したがいまして、人権侵犯事実を確定することができなかったわけでございます。  そういう事案を人権侵犯事件として受けております。
  280. 安藤巖

    ○安藤委員 人権擁護局の方の話ですが、そのほかに私の方からいろいろ取り上げた詐欺に類する薬品あるいはつぼとか印鑑の販売あるいは薬事法違反とか監禁とか、そういうような事案について刑事局の方で把握しておられることはありませんか。
  281. 前田宏

    前田(宏)政府委員 薬品とか、印鑑の販売等につきましては前回も当委員会でお尋ねを受けたようなことがあったと思いますが、具体的な事件といたしましては、薬事法違反ということで、五十二年二月に東京検察庁で処理をした事件がございますし、さらに五十三年十月に山口の検察庁で受理した事件がございます。また、監禁事件といたしましては、大阪で受理した昭和四十五年の事件がございます。
  282. 安藤巖

    ○安藤委員 そのほかに、一々お尋ねをしませんけれども、新聞にもいろいろ載っておりますが、——大臣、よく聞いておってくださいよ。いま勝共連合、統一協会の話をしているのです。あなたと関係があるのですから、よく聞いていてください。いま薬事法違反というようなものも含めていろいろありました。そのほかに新聞などでも、アメリカにおいて脱税をしたとか、不法滞在をしたとか、不法入国をしたとかいうような問題もいろいろたくさん出てきている団体ですね。あなたは、この勝共連合とかかわり合いはないのでしょうか。
  283. 秦野章

    秦野国務大臣 かかわり合いは、私は別に役員でも何でもないし、知っている人がおるかおらぬかと言えば、知っている人はおります。私の事務所にも向こうの勝共連合の人が、学生さんかな、見えたりしたことはございます。
  284. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、昨年の十一月二十八日です。これはあなたが法務大臣になられた二日後ですね、たしか二十六日でしょう。この勝共連合の横浜総支部の結成大会というのが、これは日本大通ビルの七階というところで行われたんですね。知っておりますか。
  285. 秦野章

    秦野国務大臣 場所はどこでしょうか。
  286. 安藤巖

    ○安藤委員 日本大通ビルです。
  287. 秦野章

    秦野国務大臣 ちょっとビルの名前がわかりませんが、勝共連合の会合に出たことはございます。
  288. 安藤巖

    ○安藤委員 会合に出られたというのはいつごろの話ですか。
  289. 秦野章

    秦野国務大臣 ちょっといまここで日時を確実に思い出せませんが、もちろん法務大臣就任前の参議院議員時代に出たことはあります。
  290. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、その出たというのは何か来賓祝辞とかいうようなことで出られたのでしょうか。
  291. 秦野章

    秦野国務大臣 これは閣僚になる前ですから、普通の議員として、たしか祝辞か何か述べたと思いますよ。
  292. 安藤巖

    ○安藤委員 いま私がお尋ねしているこの昨年十一月二十八日横浜大会、横浜総支部結成大会と括弧で書いてありますが、これを見ますと、「世話人・賛同者」に「秦野章(参議院議員)」というのが載っているのです。御存じないですか。
  293. 秦野章

    秦野国務大臣 そうなっているかもしれません。
  294. 安藤巖

    ○安藤委員 お見せします。——それからついでにお尋ねしますが、昨年の十二月十九日、今度は川崎大会、川崎総支部結成大会、これがニューハトヤというところの六階で行われておるのですが、御記憶ありますか。
  295. 秦野章

    秦野国務大臣 これははっきり記憶しておりますのは、法務大臣就任後ですから、そういう会合に出ておりません。
  296. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、これにも「世話人・賛同者」「秦野章(参議院議員)」とあるのですよね。そしてこちらの方には「顧問」というふうに、これは正確に言いますと「総支部役員(案)」となっておりますが、このように決められたというふうに思うのですけれども、ここに顧問としてやはりあなたの名前が出ているのです。(秦野国務大臣「何の顧問」と呼ぶ)この川崎支部ですね。よろしゅうございますね。この十一月二十八日の横浜大会と十二月十九日の川崎大会、この大会の世話人・賛同者になられた御記憶はありますか。
  297. 秦野章

    秦野国務大臣 ちょっと、横浜のは記憶があるのですけれども、そのほか、とにかく一切そういう会合に出てませんから、余り記憶にないのですよ。横浜も発起人になったのだか、——参考人ですか、発起人ですか、なったのだからこっちもなってくれるだろうというような編集かもしれませんよ。私は、閣僚になったら余りいろいろなところに出ることはちょっと暇もないし、控えています。
  298. 安藤巖

    ○安藤委員 出ることは暇もないし、控えておられるということですが、こういう大会の賛同者・世話人になることあるいは顧問になることは別に差し支えない、こういうふうにお考えなんですか。
  299. 秦野章

    秦野国務大臣 閣僚になってからは控えておるのです。ただ、いままでそういうふうにかつてなっていたものが、これはほとんど国会議員、自民党の国会議員はほとんど入っているでしょう、神奈川県の場合も。そういうことで、慣例的なものとして編集者が編集するということはあると思うのですよ。私もそれに目くじらを立てて、けしからぬと言うほど怒る問題でもないな。法務大臣なんて書いてないでしょう。(安藤委員「参議院議員です」と呼ぶ)だから、そう考えています。
  300. 安藤巖

    ○安藤委員 ところで、これは両方とも同じ趣旨のことが載っておるのです。「大会賛同者承諾のお願い」という文句が両方にありまして、この中にこういうことが書いてあるのですね。「一大反核キャンペーン」、核兵器反対だね、「反核キャンペーンが展開されています。「反核」「軍縮」「平和」を旗印にしたこの運動は、日本国民に内在している、核、戦争、憲法の三大アレルギーに乗っかって、国民の大半を巻き込みつつあります。」こうなっておるわけです。両方とも同じ文句があります。となると、核、戦争、憲法を同列に置いて、憲法は三大アレルギーの一つだ。これは、反戦も悪、反核も悪、憲法も悪だという考え方なんですよ。これにあなたは賛同者として名前を使われても別に気にしないということは、容認するということです。大臣と書いてなければいいじゃないか。ということになると、憲法は悪だと考えておる団体、そういう趣旨の大会、その賛同者あるいは顧問、これは別になってもおかしくないでしょうか。
  301. 秦野章

    秦野国務大臣 その中にどういう文章が書いてあるか私もしさいに存じません。いろいろその主催者というか団体等が団体の意見として書くことはあるだろうと思いますが、それを一々私が承認をしたのだ、レッテルを張ったのだというわけのものでもなかろうと思うのです。きわめて融通無得なそういう団体の言論だ、こう考えてください。
  302. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、団体の言論はいいのですよ。ところが、いま言いましたように、憲法を反核あるいは反戦と同列に置いて悪だと決めつけている。これに、あなたが大臣になった後の十一月二十八日、十二月十九日の大会に、あなたの名前がちゃんと賛同者・世話人、そして一つの方では、川崎の方では顧問ということになっておる。これは、あなたは大臣になってからですよ。しかし参議院議員と書いてある以上は別にそう目くじらを立てるほどのことではないということになれば、あなたはそれを容認していることになるのですよ。憲法は悪だと言っている、そういう集会、そういう団体、それにあなたは賛同者ということになっておって、憲法を擁護する大臣立場と矛盾しやせぬですか。
  303. 秦野章

    秦野国務大臣 いろいろ物は言いようでということだと思うのです。それは向こうの人たちがいろいろ書いているんだ。私が検閲して、私が書いたんでもないでしょう。それを、おまえここに書いてあるからおまえもそういう考え方かと言われてもちょっと困るんだね。それから、大体私は閣僚になってから一切の顧問をやめているんですけれども、それも行き届かなかったかもしれぬ、やめるということは。しかし、憲法を悪だと別に私が言っているということないでしょう。いまの憲法は守るということは間違いないのですから、これは常識ですから。ただ、いまの憲法は守るが、ただ憲法を守るということだけではなくて、憲法はこれでいいのかという気持ちがないことはない。たとえば中曽根さんも、憲法改憲論者と前に言っておられましたね。そういうふうに、やはり憲法でも法律でも、人間がつくったものなんだから、いろいろな議論があっていいんだということだけは間違いないだろうと私は思っている。一言で憲法を悪だなんて、そういう低次元の議論なんか私持ってませんよ。いろいろ論議をして、まずいところがあれば直すというようなことが当然あるだろうということを議員のときに私言ったことは事実ですよ。それを、憲法は悪だと、それほど幼稚な考えを私持ってないつもりです。
  304. 安藤巖

    ○安藤委員 いや、そういうことを私はお尋ねしておるんじゃないのですよ。あなたが大臣になった後でこういう集会が行われている。ですから、大臣になった後につくられたものです。それにあなたの名前が載っておって、そしてこの趣意書には、憲法を核兵器と戦争と同列に置いて、三大アレルギーだというふうに言っている。となると、いまあなたが言ったようなことでは処理し切れない。憲法を擁護する義務がある大臣として、ほかっておいていいのかと思うのですよ、まず。そしてこういうのに秦野さんの名前が、大臣としてではなくても載っておる、顧問になっている、賛同者になっている、世話人になっているということになったら、あの人本当に憲法を守ってくれるのかいなということを国民は思うじゃないですか。その辺の考え方、認識、意識、そういうものをあなた全然持ち合わせてないんですか。そんなもの、勝手だからいいじゃないか、これでは済みませんよ。
  305. 秦野章

    秦野国務大臣 ちょっと見せてください。——これは川崎に配っているのですから大体川崎の国民なんですよね。川崎の国民なら私のこと大体知っているんだ。憲法を悪だなんて、そんな感じのことを言う男ではないと大体信じていますよ。そんなもの、あなた、憲法を一言で悪だなんて議論を、国会議員になって言う者は一人もいないでしょう。私は、憲法はいまのままでいいと、このころですよ、このころというか、まあ国会議員として、そういうことについては議論をしたことはありますけれども、それと、これは先生、これ私知らないんだよ、正直言って。行ってもいなければ、知らないときにできちゃったんだ。これも向こうの言論の自由でしょう。そうじゃないですか。言論の自由ですよ、向こう側の。私はこの中の顧問か何かになっているけれども、それほど責任ある立場じゃないんだ。世話人・賛同者ですね。国会議員みんな入っている。これは私だけじゃないんだ。その辺、やわらかく、世の中言論の自由ということもあるんだから、これをもって私は憲法を守らない男だなどと言う人は少なくとも川崎にはいないですよ。大丈夫だよ。大丈夫ですよ。
  306. 安藤巖

    ○安藤委員 そういう問題じゃないんですよ、私が言っていることは。あなた、まだわかってないんだね。いいですか。あなたが大臣になった後でもこういう文書が配られて、あなたが顧問になって、世話人になって、賛同者になっている。これに憲法は悪だと書いてある。この問題の重大性というのをあなたちっともわかってない。私はそこは問題だと思いますな。そんなものは言論の自由だ、勝手だ、歯牙にもかけないということですか、念のために伺っておきます。
  307. 秦野章

    秦野国務大臣 そこに書いてある名前が、世話人・賛同者となっておりますね、私の肩書きが。それは文章に対するどの程度の責任があるのか、私も正直言ってよくわからぬけれども、その文章をつくったことには全く加担をしていませんしね。しかし、まあこれから、私は顧問とかそういう名前は閣僚になってから一切やめるというふうに言ってあるので、そういうのもとめますよ。私も知らなかったんだ。それはとめますよ。顧問とか何か、閣僚がむやみにそんなことやっちゃいかぬから、それはとめますよ。
  308. 安藤巖

    ○安藤委員 質問を変えます。これは法務省の保護局長さんですか、恩赦の問題についてお尋ねをしたいと思います。一転して変わります。  恩赦の種類あるいはその効果等々は恩赦法を見ればわかりますので、説明はしていただかなくてもいいのですが、どういうような場合に行われるのかということをお伺いしたいのですが、これは特定の者に対して行われる特赦、それから刑の執行停止ですか、それを除いて政令で罪の種類を決めて行われる恩赦がありますね。大赦あるいは減刑、復権、これはこれまでどういうような機会に行われたかということと、その罪種はどういうものがあったかということをお伺いしたいと思います。
  309. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 戦後で申しますと、政令で行われる性質の大赦につきましては四回行われております。それから特赦、これは政令ではございませんが、基準を決めてあとは個別的に審査を行うという恩赦でございますが……(安藤委員「特赦はいいです、政令の方」と呼ぶ)はい。それから政令では、減刑が政令で行われる場合があります。これについては戦後三回、それから復権令が、個別で行われる場合と政令で行われる場合と両方ございますが、これが戦後六回行われております。  そこで、どういう罪種についてかというお尋ねでございますが、まず大赦について申しますと、第二次大戦が終局いたしましたときと日本国憲法が公布されたとき、このときはほぼ似た罪種についてでございまして、たとえば不敬罪あるいは陸海軍刑法の罪あるいは戦時経済統制法、そういうような罪が大赦になっております。それから、昭和二十七年、平和条約が発効したときに大赦が行われておりますが、これは主として占領軍の占領目的遂行のために定められた命令等に違反する行為が大赦の対象になっております。それから昭和三十一年、国連加盟のときは選挙違反などがその対象になっております。  特赦につきましては、これは政令ではございませんので、この程度でまず説明を終わります。
  310. 安藤巖

    ○安藤委員 その中の大赦の罪種ですが、選挙違反等、三十一年のときですね。終戦直後のものはわかるし、二十七年の平和条約発効のもよくわかりますよね、中身は。なるほどなと思われるような罪種ですが、三十一年の国連加盟のときの選挙違反等、「等」の中にはどういうものが含まれているのか。端的にお尋ねしますと、収賄罪というのは含まれているのかいないのかということです。
  311. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 含まれておりません。
  312. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、そういう収賄罪というような破廉恥罪は恩赦の対象にはならない。政令恩赦の方ですね、大赦というふうに限定してお尋ねしますが、大赦の対象にはならない、そういう破廉恥罪は含まないのだ、こういう考え方で来ておるというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
  313. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 恩赦につきましては内閣が憲法で決めるべき事項になっておりますので、その基本的な考え方について私から申し上げるのもどうかと思いますが、ただいまのような罪名については大赦の対象になった先例はございません。
  314. 安藤巖

    ○安藤委員 先例はないということはわかりました。これからもそういうことはないだろうというふうに理解してよろしいでしょうか。
  315. 吉田淳一

    ○吉田(淳)政府委員 ただいま申しましたように、恩赦につきましては内閣が決定すべき事項でございます。したがいまして、法務省の事務当局が、今後どのような罪種についてあるとかないとかということを一般的に申し上げるのは必ずしも適当でないと思いますので、御了解いただきたいと思います。
  316. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が迫ってまいりましたので、最後にもう一つだけ質問をしたいと思います。  大臣お尋ねします。  ロッキード事件についての指揮権発動の問題ですが、総理はこのロッキード事件についての指揮権発動の問題についてどういう態度を国会で答弁しておられるか。当然知っておられると思うのですが、知っておられますか。
  317. 秦野章

    秦野国務大臣 速記がないから余り的確には言えませんけれども、大体のところは、指揮権なんというものは余りやってはいかぬ、やるべきではないというニュアンスで答弁していたのではないですか。それは私もそう考えているのだけれども、そういうニュアンスで答弁しているでしょう。
  318. 安藤巖

    ○安藤委員 いまニュアンスの話がありましたが、速記録を持っております。全部を申し上げる時間的余裕もないし、むだですが、これは去年の十二月二十四日、参議院の予算委員会です。「ロッキード事件に干渉するなんということは絶対ありません。それは天地神明に誓って私は申し上げます。」こういうことですね。それから、これも昨年の十二月十四日、衆議院の予算委員会です。「ロッキード事件について指揮権発動するという考えはございません。」「絶対にございませんか。」「ございません。」こういうことですね。  となると、法務大臣としてもこの総理の答弁と同じような態度をおとりになるのが筋ではなかろうかなと思うのですが、大臣はどうです。
  319. 秦野章

    秦野国務大臣 総理の答弁にもありましたけれども、この権限は法務大臣にあるのだ、こう言っていましたね。権限を持っている私の立場では、制度があるんだよ、制度があるけれども、この制度はむやみに使うものではないんだということは同じですよ。それは、制度があることに意味があるみたいな制度なんですよ。そういうことで、大体健全な常識というものがもとなんだ、物の判断は、特に法律の運用は。私はそういうことで申し上げております。
  320. 安藤巖

    ○安藤委員 何かよくわかりませんが、総理の考えと一緒なのか違うのかということなのです。どっちですか。
  321. 秦野章

    秦野国務大臣 この問題で総理と一遍も話したことはありませんから。話さなくたって、あうんの呼吸でわかるんだろうと私は思っていますから。
  322. 安藤巖

    ○安藤委員 そうすると、あうんの呼吸で、総理がそういうふうに答弁しているのならわしもそうだ、こういうふうに理解してもいいのですか。
  323. 秦野章

    秦野国務大臣 これは一種の行政権限ですよね。行政権限というものは、存在するということは可能性があるということだけは理解しておかなければいかぬ。そういうことは絶対ない、こう言い切ってしまうことは行政長官としてどうかいなという気もするのですよ。めったに使わないし、こんなものは使うためにあるというよりも、むしろ伝家の宝刀という、あるいはまた検察に対する民主的基盤をつくっているというところに意味があるのだ、こういうふうに私は理解をしていますので、余り御心配は要らないのではないですか。
  324. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたから最後に一点。  くどいようですが、総理はそういうふうに答弁をしておるけれども、そういうお考えだけれども、権限があるのは法務大臣の私だ、だから、私はまた私として別の考えがあるのだ、こういうようなことになるのですか。どうです。
  325. 秦野章

    秦野国務大臣 総理もたしか言っておられましたけれども、そういうような事態が来たらおれのところへ相談に来るだろう、相談に来たらまたいろいろ相談するよ、権限は法務大臣にあるのだから、こういうことを言っていますから、またそれが常識だと思いますよ。法務大臣がそんな重要な権限を単独でやるはずがないです。だから、その辺のところは両方の答弁を御勘案願って御判断いただければいいのじゃないかと思います。
  326. 安藤巖

    ○安藤委員 時間が来ましたから、終わります。
  327. 綿貫民輔

    綿貫委員長 次回は、明後二十五日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十二分散会