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1983-03-23 第98回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十三日(水曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 葉梨 信行君    理事 石橋 一弥君 理事 狩野 明男君    理事 中村  靖君 理事 船田  元君    理事 佐藤  誼君 理事 馬場  昇君    理事 鍛冶  清君 理事 三浦  隆君       青木 正久君    赤城 宗徳君       臼井日出男君    浦野 烋興君       奥田 敬和君    久保田円次君       古賀  誠君    高村 正彦君       坂田 道太君    坂本三十次君       西岡 武夫君    野上  徹君       渡辺 栄一君    伊賀 定盛君       中西 績介君    長谷川正三君       湯山  勇君    有島 重武君       部谷 孝之君    栗田  翠君       山原健二郎君    河野 洋平君  出席国務大臣         文 部 大 臣 瀬戸山三男君  出席政府委員         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部大臣官房審         議官      齊藤 尚夫君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         文部省大学局長 宮地 貫一君         文部省学術国際         局長      大崎  仁君         文部省管理局長 阿部 充夫君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   森廣 英一君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     藤村 和男君         会計検査院事務         総局第二局文部         検査第一課長  向後  清君         参  考  人         (日本私学振興         財団理事)   別府  哲君         文教委員会調査         室長      中嶋 米夫君     ───────────── 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     園田  直君   浦野 烋興君     渡辺 省一君   高村 正彦君     野呂 恭一君   野上  徹君     橋本龍太郎君   三塚  博君     渡辺美智雄君 同日  辞任         補欠選任   園田  直君     臼井日出男君   野呂 恭一君     高村 正彦君   橋本龍太郎君     野上  徹君   渡辺 省一君     浦野 烋興君   渡辺美智雄君     三塚  博君 同月二十三日  辞任         補欠選任   三塚  博君     奥田 敬和君   渡辺 栄一君     古賀  誠君   佐々木良作君     部谷 孝之君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     三塚  博君   古賀  誠君     渡辺 栄一君   部谷 孝之君     佐々木良作君     ───────────── 三月二十二日  私学助成増額に関する請願武田一夫紹介)(第一六八九号)  私学助成増額等に関する請願外一件(上田卓三紹介)(第一六九〇号)  私学に対する国庫助成削減反対等に関する請願上田卓三紹介)(第一七〇七号)  障害児学校教職員増員等に関する請願外二件(広瀬秀吉紹介)(第一七〇八号)  同(後藤茂紹介)(第一七七四号)  四十人学級の実現、教科書無償制度の存続に関する請願松本善明紹介)(第一七九三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出第八号)  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤誼君。
  3. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 文部大臣所信表明について、わが党の湯山委員教科書問題についても質問しておりますが、後藤田官房長官出席要求ということで若干留保している部分がありますけれども、私の方からも引き続いてその点について質問したいと思います。  時間が六十分と非常に限られておりますので、私の方も端的な質問をしていきますから、特に文部大臣から端的な答弁をいただきたい。このことをまず最初に申し上げておきます。  そこで、後の質問関係ありますのでまず文部大臣に聞きますが、改善という日本語はどのような意味に使われているとお考えですか。
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 改善という言葉、私の理解ではよい方に改める、こういうことだと思います。
  5. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは引き続きまして、是正という日本語はどのような意味に使われている言葉とお考えですか。
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 これも、やはりよい方に改めるということだと思います。
  7. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 改善という言葉是正という言葉も、ともによい方に改める言葉ですか。重ねて文部大臣もう一度。
  8. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は国語の細かい研究をしておりませんから、意味といいますか趣旨はそういうことだと思います。
  9. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 改善という言葉是正という言葉も全く同じ意味だなどということは、小学校だって中学校だって、そんな答案を出したら零点ですよ。文部大臣、重ねて聞きますが、その答弁でいいですか。
  10. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 まあ字のとおり言うと、よい方に改める、もう一つ是正というと正しい方に改める、こういうことで、やはり大体同じことじゃないかと思います。
  11. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いま大変適切な答弁があったと思いますが、改善というのはよい方に改める、是正というのは、いま答弁されましたが正しい方に改める、こういうふうに言われましたね。正しい方に改めるのですから、その前の状態はどういう状態ですか。
  12. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 見ようによっては適当でない、こういうことです。
  13. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 適当でないという中には、誤りということも入っていますね、当然。
  14. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 場合によってはそういうこともあると思います。
  15. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 昨年教科書問題がずいぶん問題になりましたが、政府一つの言うなれば解決の方途として発表されたのが、例の八月二十六日でしたか、宮澤官房長官歴史教科書に対する談話ですね。その第二項の中に、「我が国としては、アジア近隣諸国との友好親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府責任において是正する。」、こういう文言があるわけであります。  そこで、その中の「政府責任において是正する。」というこの「是正」ということはどういうふうになりますか。――文部大臣に聞いているのです。私は前の流れからずっと文部大臣に聞いておりますから、文部大臣、答えてください。
  16. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 経緯がありますので、私から……
  17. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そんなのはだめだよ。私はあらかじめ文部大臣に聞くということでずっと続いて聞いてきているんだから。
  18. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 経緯のあることでございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、この件につきましては、昨年の八月二十六日の官房長官談話におきまして、第二項において「政府責任において是正する。」ということになっておりますが、これは現行の教科書検定制度の枠内で近隣アジア諸国との友好親善を進める上で、(佐藤(誼)委員「長々と答弁するな」と呼ぶ)教科書記述をより適切なものにするため政府責任において(佐藤(誼)委員「聞いていることに答えてくださいよ、時間ないのだから」と呼ぶ)必要な措置を講ずるとの趣旨を述べたものでございまして、この件につきましては昨年の八月二十七日の文教委員会におきまして宮澤官房長官に御質疑があり、その際に、教科書をよりよいものに改めるという趣旨であるということに答弁されまして、そのように私どもとしては理解しておるわけでございます。
  19. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 質問者答弁者に対して求めているのですから、その方が私の質問に対して適切に答えなければだめですよ。ちょっと時間を留保してください、時間をストップしてください。委員長速記をストップしてください、こういう審議じゃ、進められませんから。どうですか。――こんないいかげんな方が、こっちで求めない方が答弁をして、長々とやられたらかなわないじゃないか。
  20. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど初中局長がお答えいたしましたのは過去の経緯でございますから、私の就任前でございますから、そういうことだったと思います。私は、いわゆる官房長官談話というものでこの問題を見るよりほかにないわけでありまして、官房長官談話には第二項に、先ほど申し上げましたように「アジア近隣諸国との友好親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府責任において是正する。」とこうなっております。これは全部を見なければわからぬと思いますから、「このため、今後の教科書検定に際しては、教科用図書検定調査審議会の議を経て検定基準を改め、前記趣旨が十分実現するよう配慮する。すでに検定の行われたものについては、今後すみやかに同様の趣旨が実現されるよう措置するが、それ迄の間の措置として文部大臣が所見を明らかにして、前記二の趣旨教育の場において十分反映せしめるものとする。」云々と第四項までありますが、こういう趣旨でよりよいものにする、こういうことだと解釈しておるわけでございます。
  21. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私はそのようなことを聞いているのじゃなくて、これは文書として出ておりますから読まなくたってわかるのです。第二項にずっと書いてありまして、その末尾のところに「政府責任において是正する。」とこうある。是正ということは、先ほど文部大臣は、適当でないものを正しく改める、こういうことを言われ、しかも、適当でないという中には誤っているということも入っている、こういうことを言われました。だとするならば、前後の関係は時間の関係で読みませんから、「アジア近隣諸国との友好親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府責任において」適当でない部分について正しく改める、その適当でないという中には誤りも入っている、こういうふうに理解するのが私は至当だと思うのですが、文部大臣どうですか。
  22. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は官房長官談話意味を解しておるわけでございまして、字の是正とはどうだとおっしゃるから、場合によっては、正しくないことを改めるということにもなっておる、間違っておることを改めるということもあるということを答えた。そのやり方は、全体を見なければわからないと思います。
  23. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 全体を見なければわからぬと言うけれども、「政府責任において是正する。」という是正ということに対して、文部大臣は先ほどの解釈をされているのですから、したがって、これは同じ言葉をここに使っているのですからね、そういうことにはならないと思うのですよ。どうなんですか。
  24. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は、談話を発表した人の意味をこの文章で見るよりほかにないわけであります。なお、前のときにいろいろ議論されておりますが、速記録を見ますと、前の官房長官は「よりよいもの」にするということでございますと、これは談話を発表した人の意見であるからそういうふうに解釈しておる、こういうことでございます。
  25. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 文部大臣は、是正ということは適当でないものを正しく改めるということを言った。ところが、宮澤官房長官は去年の談話でこの部分について、よりよいものに改めるということを言った。ところが、この間の衆議院の予算委員会で、わが党の木島委員質問に対して後藤田官房長官はその点について、誤っていなければ直す必要がないわけです、やはりその点は日本側において誤っておった点がある、したがってそれは直しましょうということだ、こういう趣旨のことを言っておるわけです。同じ文面のくだりの中で、文部大臣はいまいみじくも言ったような、適当でないものを正しく改めるというふうに、その是正ということを解釈している。ところが、宮澤官房長官はその談話の中で、よりよいものにするのだということを言っている。現職の後藤田官房長官は、やはりその点は誤りがあったという点について直しましょうということだという趣旨のことを言っている。時間の流れの違いはあっても、同じ教科書を扱う中枢にある人々がそれぞれ違った答弁をされたのでは、私たちは国民から負託された者として、この先どのように議論するか、戸惑ってしまうわけです。  したがって、私はきょうここに後藤田官房長官出席を求めておるのですけれども、後藤田官房長官、来ておりますか。委員長、どうですか。
  26. 葉梨信行

    葉梨委員長 官房長官はただいま国務を遂行中で、ただいまは出席できないと聞いております。
  27. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、いま申し上げたように、その都度、政府見解がその人によって違うということでは、私の方では何をよりどころにしてこの是正問題を中心として教科書問題質問していったらいいか、わからないわけです。したがって、私は委員長に求めますが、この点については、政府統一見解を私は求めますので、委員長、取り計らってください。
  28. 葉梨信行

    葉梨委員長 ちょっと速記をやめてください。     〔速記中止
  29. 葉梨信行

    葉梨委員長 速記を始めて。  佐藤委員の御発言に対しましては、官房長官に適当なときに出席を求めることにいたしまして、質疑を続けてください。  佐藤君。
  30. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それでは、この部分については私の質問の時間を五分間留保しておきますから、委員長の方で、後藤田官房長官出席の中で私の留保の時間を質問するように配慮していただきたい。どうですか。
  31. 葉梨信行

    葉梨委員長 佐藤委員質問の時間を、五分留保いたします。
  32. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、先に進める関係上、もう一度大臣に聞きますが、くどいようでありますけれども、私はこの部分はきわめて重要だと判断しているものですから、「政府責任において是正する。」というこのことについて、政府責任において適当でない部分を正しくしていくのだというふうに、先ほどの大臣答弁から私は理解をするのですが、大臣、重ねて、どうですか。
  33. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 政府責任において近隣諸国理解を得られるような措置をとるということに解釈しております。それはやはり法律その他によって式が決まっておりますから、その手続によってやるということだと、全文から私はさように考えております。
  34. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 これは、そうすると、宮澤官房長官答弁の中で、よりよいものにするのだというふうにこのくだりを言っているから、そういうふうにするのか、あるいは文部大臣として、是正という言葉は適当でないものを正しく改めるということなんだけれども、しかし全体の文脈としてはそのように理解しているのだ、こういうことなんですか。その辺はっきりしてください。
  35. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 人が物を言いますときには、その一語一語じゃなくて、全体の言葉から、どういう気持ちで今度の措置をとったかということを判断すべきものだと私は思っておるのです。四項までありますけれども、先ほど長いからとおっしゃるから読みませんけれども、全体から見て、おっしゃることも無理はない点が感じられる、だから、手続に従って改める措置をとって、近隣諸国との善隣友好を深めていこう、こういう趣旨だと解しておるわけでございます。
  36. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、どうも国民は、皆さんの昨年以来の答弁をずっと聞いておって納得できないと思うのです。これはマスコミももちろんいろいろな報道をされていますから、皆さんお読みになっていると思うが、私から言わせれば、白を黒とする答弁だと思うのですよ。というのは、いまも大臣がいみじくも言われましたが、是正するという、このことは適当でないものを正しく改めるのだと言いながら、「政府責任において是正する。」というこの文言くだりについては、端的に言えば、政府責任でよりよくするのだ、こういうことにはならないんじゃないですか。どうしてそうなるのですか。そういうふうにこのくだり解釈づけるのは、日本語としていかなる国語的な根拠によって言うのか、そのことをはっきりしてください。
  37. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 「政府責任において是正する。」と言いましても、政府がやることは検定その他の法律に従ってやるほかはないわけでありますから、そのことを言っておるということに解しておるわけでございます。
  38. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それで、私は、いまのよりよいものにするのだというそのことは、どう見たって無理な解釈だと思うのです。  昨年の八月二十八日、人民日報はこの是正ということを受けて、ここにありますけれども、「糾正」という言葉を使っているのですね。この「糾正」という言葉、これは簡単に言えば誤りを正す、こういう言葉に使っているわけです。ですから、当然、中国なり韓国なりのそういう一つ要求、要望に従ってこの問題が発端し、政府としては「是正する。」という言葉で意思を対外的に発表した。その言葉中国人民日報は「糾正」という言葉表現している。これはいま申し上げたように、誤りを正すというふうに理解しているという言葉なんです。  それからもう一つは、「政府責任において是正する。」というその前段の方がどうなっているかと言えば、「韓国中国等より、こうした点に関する我が国教科書記述について批判が寄せられている。我が国としては、アジア近隣諸国との友好親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、」そして「政府責任において是正する。」とこうなっているわけですね。大臣、いいですか。  それで、韓国中国よりの批判というそのことはどうなっているかというと、これは昨年の韓国日本に対する要求の中に、「韓国側歪曲部分是正要求に対する」以下ずっとありまして「是正措置を強力に要求する。」と書いてあります。つまり、韓国側が言っていることは、歪曲している部分是正しなさいという要求なんです。それから、中国部分は、これは八月五日ですけれども、長いですから全部言いませんが、「歴史改ざんし」以下ずっとありまして「教科書検定の中の誤り」という言葉がありまして、ずっと言いまして「是正するよう中国政府要求する。」、こうなっていますね。  つまり、韓国なり中国なりが言っている、日本から言えば批判として言っていること、受けとめていることは、中国なり韓国から言えば、これは改ざんなり誤り部分是正しなさい、こういうことを言っているわけです。それを受けて日本政府是正という言葉を使っているのですから、当然これは改ざん誤り部分を直すというふうに中国なり韓国理解するし、また、日本国民もそう受けるのは当然だと私思うのです。是正部分を、ここの部分をどうしたって、よりよいものにするのだという解釈をしたり答弁することは無理だと思いますし、いみじくも先ほど文部大臣が言われた、適当でない部分、これを正しくするのだというこういう解釈なりとらえ方が常識的であるし、また、韓国なり中国批判にこたえる意味でもあるし、当然だと私は思うのですが、その点どうなんですか。
  39. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 同じことを繰り返すようでありますが、私は、この問題はその当時は直接担当したわけじゃありませんけれども、過去における歴史的事実は一つであります。でありますから、それをどういうふうに事実を記述をして、どういうふうな評価の表現をするかということは、人それぞれによっておのおの違う場合があると思うのです。だからそれが、たとえば中国あるいは韓国立場からすると、これはおかしいじゃないかという気が起こるのも無理がない、こういうふうな場合があるわけでございます。たとえば中国においては、あれほどの軍を出し、あれほどの戦争といいますか、やったわけですから、その表現はわれわれとしては承服できない、こういう気持ちがあるのは私は無理がないと思うのです。そういう意味で、こちらはこういう事実についてこういう表現をしておったが、向こう様から言われてみると、なるほど耳を傾けなければならない。そういう意味善隣友好を深めるためには、相手側理解を得るように、教科書の改めるところは改めていこう、それは手続に従ってやる、こういうことを申し上げておるわけでございまして、私の承知しているところは、中国政府といいますか、韓国の方も、その措置について了解をいただいておる、こういうことであります。
  40. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、官房長官談話を出した翌日の新聞にこう書いてあるのです。たとえばこれは五十七年八月二十七日、つまり翌日の毎日新聞社説です。「教科書問題の「政府見解」がようやくまとまった。「歴史教科書」についての官房長官談話という形で二十六日発表されたが、その趣旨は、戦前の過ちの反省を強調し、教科書記述に対する各国の批判十分耳を傾け、政府責任記述是正するとなっている。」と書き出し、さらに「政府検定誤りを認めたのは二十四年に検定制度が始まってから初めてである。」、こういうようなくだりがずっと社説にあるんですね。  私は、その当時の外交的な経緯、そして政府文部省が、あるいは外務省も加わっておりますが、とってきた経緯、そしてこの是正という言葉韓国なり中国批判にこたえるという形で使ったというこういうことから言えば、当然これは国民がひとしく、ああなるほどと言って受けとめた社説だと私は思うのです、その当時。その後いろいろな経緯をたどってきているようでありますけれども。この点について文部大臣は、この毎日新聞社説をどのように見られますか、否定されますか。
  41. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は、その社説を読んだ記憶はありませんから、それを否定するとかどうかという立場ではございません。
  42. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私がいま述べたことが――後で調べてもらって結構なんですけれども、こういう社説の事実は間違いないので、これを前提とする限り文部大臣どう考えますか。
  43. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 それは新聞はそういう考え方で書かれたのでしょうけれども、いま私が申し上げたように、政府としては先ほど来申し上げているような考え方で進めておる、こういうことでございます。
  44. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それじゃ、私、この問題は常識の理解を超えた答弁になっておりますので、何ともこれ以上――後藤田官房長官なりあるいは宮澤官房長官がしかるべき時点で来るかどうか。それからまた政府統一見解が出された時点でなおこの点については質問していきたいと思います。  なお、非常にくどいようでありますけれども、次の質問に関連しますから、私は重ねて一点だけ文部大臣質問をして次の質問に移りたいと思いますが、この点は確認をしておきたいと思うのです。  文部大臣は先ほど、是正ということは適当でないものを正しく改めることだということを言われました。この点、まず、いいですね。
  45. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 通常はそういうふうに使われると私は思います。
  46. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、次は「政府責任において是正する。」という、ここで使われている是正はどういう意味ですか。
  47. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 是正というのもやはり同じことだと思いますね。
  48. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 だとすると、長いから文章は言いませんが、最後の部分我が国としては、アジア近隣諸国との友好親善を進める上でこれらの批判に十分に耳を傾け、政府責任において是正する。」という、このことはどうなりますか。この場合の是正はどうなりますか。
  49. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 それは先ほど来申し上げておりますように、全部の文章流れから言って、手続に従って善隣友好を深めるための措置をとる、いわゆるよりよいものにする、こういうことでございます。
  50. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 なぜそう急に「よりよいもの」になるのですか、「是正」という部分が。いかなる根拠によってなるのですか。
  51. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いかなる根拠と私に言われても困るのでございまして、前にできている文章でありまして、その文章を書いた人がそう言っておりますからそう解釈しておる、こういうことでございます。
  52. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、前の人が言ったということは、宮澤官房長官が文教常任委員会でそういう答弁をしたからそうだということですか。
  53. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、第二項、第三項、第四項も少しありますけれども、その流れを見ますると、そういうふうに、そのためかくかくしかじかの手続をとって理解を深めるようにする、こうありますから、さように解しておるわけです。
  54. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 右左の答弁をしてもらっては困るのです。前の方がそう言ったからといま言われました。つまりそれは宮澤官房長官だと思う。ところが今度は重ねて質問すれば、前後の文章から言えばそうなるのだというふうにあなた流の解釈をしている。どっちなんです。
  55. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いや、佐藤さんがいろいろおっしゃるから私は申し上げておるのでして、文章から見るとなるほど宮澤官房長官がよりよいものにするのだということの意味が、そういうふうに二項、三項ずっと続けて見るとそう読めるということでございます。
  56. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 つまり、端的に聞きますが、これはあなたがそう思うのですか、宮澤官房長官が言ったからそうなるのですか。そこをはっきりしてください。
  57. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど申し上げましたように、これはこの文章を書いた人と、それから文章流れを見なければわからないわけでございます。われわれは後で立ち合っておるわけですから。でありますから、宮澤官房長官がよりよいものにするという意味だというふうに言っておられるようです。しかしそれは、このいわゆる談話文章の中にはそう書いてありません。でありますから、談話の中の一項から四項まで書いてある文章流れを見ますると、ああなるほどな、宮澤官房長官が国会で答弁しておるようによりよいものにするということの意味をこれに書いてあるのだ、こういうように見ておる、こういうことでございます。
  58. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、結論から言うと文部大臣は、いろいろな背景がありますが、よく読んでみるとよりよいものにするのだというふうに理解できる、こういうことなんですね。
  59. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 そういう趣旨でこの談話を出し、それから国際関係を円満にしようという措置をとられたのだ、こういうふうに考えております。
  60. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、どうもそこがわからぬのですが、いま文部大臣あなたは、「政府責任において是正する。」というその部分は、あなたの解釈として前後をずっと考えるとそのように理解する、よりいいものにするのだというふうにあなた自身考えられるわけですか。どうなんですか、そこ。はっきりしてくださいよ。どっちなんです。あなたがそう思うのか。
  61. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いや、私ももちろんそのとおり考えるわけです。それは先ほど来くどいように申し上げますけれども、これは前の別の人が書いた文章で、前の人がまたその文章意味を言っておりますから、それを私が見てなるほどそうかと判断をする、こういうことでございます。
  62. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 そうすると、その背景なり流れなりこの文章全体を見て、あなたは文部大臣として、「政府責任において是正する。」という、この是正するは、よりいいものにするのだというふうにあなたも考える、こういうことなんですね。
  63. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 さようでございます。
  64. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 だとすれば、私聞きますけれども、この是正という言葉は、適当でないものを正しくするのだというふうにこの是正という文言解釈しながら、あなた自身がこの是正ということを、よりよいものにするのだ、こういうふうになるのはいかなる根拠によってなるのですか、この言葉が。そしてまたそのことは国語辞典なり何なりをとった場合、いかなる根拠によって出てくるのですか。
  65. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 国語辞典にはこの問題については何も書いてないと思いますが、結局いろいろいざこざがあってこういうことになったわけでございますから、こういう方式で適当でないところを改めるようにいたしましょう、こういうことだと思っておるわけです。
  66. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 今度は適当でないところを改めるのだということを言われておるわけです。だから「政府責任において是正する。」というのは、適当でないところを改めるのだ、こういうふうにいま言われましたけれども、私はそのことは当たらずとも遠からずでありまして、たとえば日本のわれわれがよりどころにしている辞典にしたって、是正というのは誤りを正しく直すことだ、これは共通ですよ。だとするならば、いま文部大臣が言われた「政府責任において是正する。」、つまり端的に言えば適当でない部分を改めていくのだというふうに理解するというのは、私は常識だと思うのですが、そうなんでしょう。文部大臣、平易に答えてくださいよ。
  67. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 言葉意味はそうでございますが、その改め方はかくかくしかじかと書いてあるということを申し上げておるわけです。
  68. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大変理解の仕方に共通性が出てきたのですけれども、適当でない部分を改めていくのだという、やや共通の理解がこの是正ということで出てきたわけですけれども、これ以上私は深く突っ込みません。これはいずれ政府統一見解が出たところでまたその部分やりますからね。  ただ私は、そうだとするならば、この適当でない部分誤りであるのかあるいは日本語で言えばもっと緩やかな表現になるのか、適切でないというその中身の部分はいまはさておきましてもね。そうすると、適切でない部分を改めるというのですから、過去の検定教科書はいっぱいあるわけだ。これは適切でないものですよ、反対に言うと。したがって改める、こう来るわけだ。じゃ適切でない教科書はいつから改めるかと言えば、宮澤官房長官が言われるように、ずっと経過がありまして、検定基準を改めて直ちにその基準に従って改める部分もあれば、昭和五十八年から検定済みについては改訂検定をしていって六十年から使用する、こういうこともあるわけですね。そうすると、適当でないという部分が入っている改科書が経過的には五十八年、五十九年使われるわけですよ。これは宮澤官房長官談話にも言っておりますし、その措置でもその部分についてはそういう扱いになっておる。  そうすると、現場の教師なり生徒は適当でないものが含まれておる教科書を二年間も使わせられるということ、また教育行政としてそういうことをやるということが適当であるのかどうか、これは文部大臣どうですか。――ちょっと待ってください。その部分を、流れがありますから文部大臣ひとつ最初に。
  69. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 流れがありますから、従来携わっておりました初等中等教育局長に答えさせます。
  70. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 大臣の申し上げましたところを補足をいたしますが、これはいろいろと経緯がありまして、この点については官房長官談話の発表されました直後の当文教委員会におきましてるる質疑がありまして、小川文部大臣は、この点について間違っていたとか誤りがあったとかということではなくて、それぞれ理由があって検定を行ったものであり、ただその批判を受けてみますと、近隣諸国国民感情に対する配慮という点において足らざる点があったに違いないというようなことを言っておるわけでございまして、そういう見地からこのような措置をとるということを言っておるわけでございます。したがって、いろいろと御質疑があった点につきまして、これが誤りであったとか教育上支障があるとか、そういうことではないのでございまして、よりよきものに改めるというための措置を第三項においてとるということでございますので、仮にこの措置がとられまして、従来の改訂検定の時期でございますと三年後に改めるわけでございますが、それを一年繰り上げて適用する。その二年間どうするかということにつきましては、これは別に当該の記述誤りであるとか学習上支障があるというものではございませんので、そのままでもよろしいわけですけれども、しかしいろいろとこの二年間どうするのだというふうな御懸念については、文部大臣文部広報において所見を発表するという措置をとるということを官房長官談話の中で明示をしておるわけでございまして、そういう措置をとってまいったということでございます。
  71. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大臣、どうなのですか、いまの点。
  72. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私はその当時の流れに携わっておりませんから、いま初中局長からお答えしたとおりであります。
  73. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大臣は私の聞く限りにおいてはわりあいに常識の線に近い形で答弁されておりますから、私、それなりに仄聞できるのですけれども、ただ、いま初中局長答弁されたことは、問題の発端は「政府責任において是正する。」という、この「是正」の言葉をあなた方はよりよくするのだということで、日本語では通用しない。しかも韓国なり中国からいえば当然これは誤りを正すというふうに理解さるべきこのことを、よりよいものにするのだという解釈にねじ曲げて、以後そのボタンの違った部分をずっとそのままはめ違えてきた。私から言わせればそうなのですよ。だから、国民皆さんには、その当時の教科書の問題が是正ということで決着したことからいえば、かなりかけ離れた形で今日進んでいるということです。この問題はあなた方がどのように答弁しようと、これはマスコミやその他を見れは御案内のとおりなのです。ただ、私たちは、この部分は放置するわけにいかぬのです。したがって、きょうは時間がありませんし、政府統一見解が出たところでまたやりますから、そのところはこれで一応打ち切っておきます。  そこで、次に進みます。今日の非行、校内暴力問題についてですが、私は、今日の生徒の非行、校内暴力の主要な原因の一つは、学歴偏重の社会及び過熱した受験競争が指摘されていると思うのですけれども、文部省はこのことについて、まずどう思いますか。
  74. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 校内暴力を中心といたします非行の問題につきましては、特に最近中学生等に対教師暴力がふえているということについて文部大臣も大変心配されまして、その原因の究明等を私どもに指示をされておるわけでございます。私どもがいろいろな形でこれまでの事例から知り得るところでは、いろいろな原因、背景がございまして、一概に受験競争でございますとか学歴偏重とか――そういう風潮も確かにございますし、深いところではつながっている面もあろうかと思いますけれども、個々具体的にあらわれましたケースにつきましてはいろいろな原因が重複して絡み合っておりまして、必ずしもそのような一面的な一つの原因だけではないというふうに考えられるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういう長期的な対応と同時に、当面の非行なり校内暴力をどうしたら少なくできるかという見地から対応をしているところでございまして、原因の究明と同時に、これを学校からできるだけ解消するための努力をしなければならないということで、いまいろいろとしているところでございます。
  75. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 今日の非行、校内暴力は一つの原因だけで起こっているものではもちろんないわけですけれども、私はいまの学歴偏重といいますか、それから来る受験競争が大きな要因の一つになっておると見るのです。それは昨年の六月二十四日、警視庁調べですけれども、「逮捕、書類送検の扱いを受けた非行暴力生徒の調査」というのがあるのです。それによりますと、時間がありませんから細かいことはやめますけれども、いま申し上げたように逮捕され書類送検された生徒をずっと見ますと、大体家庭は中流、そして生活程度は中流であって、その子供の成績を見ますと、成績が悪いという子供が圧倒的に多いのです。そして本人の意識からいいますと、勉強についていけない、この差別感、それから孤独、欲求不満、こういうことをずいぶん述べているのですね。さらに六月の総理府の調査、「子供の意識に関する世論調査」を見ますと、勉強が理解できない、それから勉強や成績で悩んでいるという子供が圧倒的に多い。それから三重県の教育研究センターの研究によりますと、小学校の高学年になりますと半数以上が落ちこぼれだ、こういうふうに答えた教師が六六%おります。それから中学校の数学は同じように半数以上が落ちこぼれだというふうに答えた教師が八〇%あります。ですから、私はこの非行暴力の問題が、かつて言う家庭の中での片親であるとかあるいは貧困であるとかそういうことではなくて、むしろ中流家庭の中で彼らが一番悩んでいるのは成績の問題だ、こういうふうに思うわけです。  したがって、私はその成績の問題が彼らの孤独感というか欲求不満の非常に大きな原因をなしているというふうに思うのですけれども、その辺のことについてまずどう思いますか。
  76. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 家庭の背景でございますが、かつては確かに御指摘のように片親とかあるいは離婚したとか、欠損的な家庭が大部分であったというふうなことから、現在の家庭状況は、むしろ形式的には両親がそろって経済的にも豊かであるけれども、しかしその家庭の中における葛藤と申しますか親子関係、夫婦関係というふうなものは必ずしも円満にいっていないというような家庭が見られる。そういう家庭から最近の校内暴力等の青少年が出ているというふうなことも、ある分析では指摘をされているわけでございます。したがいまして、家庭の形は変わっておりますが、家庭に一つの原因があるということは、文部省教育モニターの調査によってもそのようなことが言われておりますし、家庭が全然変わってしまって関係がないということではないと思います。しかし、同時にやはりその家庭から出てまいりました子供たちの学校における学習の問題、学習の意欲を失うとか、あるいは学校生活に不適応を起こすとか、そういうことが重なってこのような問題が起こっている。さらに、それには教師の適切な指導というようなものが絡み合っておりまして、いろいろな原因なり性向を持っている子供たちも、学校におけるそのような指導でございますとかそういうものが適切に行われている場合にはそこまで至らないということでございまして、やはりいろいろな原因がございまして、一概に、先生のおっしゃいましたいわゆる落ちこぼれだけがそうなっているということではなくて、いろいろな問題を総合的に勘案しなければならないと思っているわけでございます。
  77. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 いまの非行、校内暴力ですね、その要因は複合的ですから、家庭もあれば学校もあれば社会もあれば、いろいろな側面からその要因をとらえることができる、絡まっていると思うんです。  しかし、そういう並列的なとらえ方では私は本当にそのことについて追っていくことにならないような気がするのです。確かにこれは関連しておりますけれども、それじゃ主要なる要因は何かというふうに私が思うには、先ほど申し上げたような逮捕、書類送検された警視庁の調査を見ましても、一番問題は――家庭の問題はいま申し上げたように大体両親健在、中流家庭ですから、そうすると彼らの一番のポイントになるのは、学業成績を見ますと十番クラスに入っているのが一人しかない、下から十番以下というのが大体八五%あるのです。そして、本人たちがどういう意識を持っているかというと、授業がわからなくてついていけない、それから他の生徒と差別をされている、久しぶりに学校に行くと嫌みを言われる、こういう学業成績が悪い、ついていけない、差別をされている、自分のはけ場がない、こういう子供が圧倒的だということですね。加えて、家庭の放任主義その他もあるでしょう。見ますと、確かに約七割近くが甘やかしているということを言っておりますから。しかし、その背景となるのは、じゃその大部分の生徒が学校生活で何を考えているかといえば、悩み、心配事のトップになっているのが勉強、成績なんです。それがだんだん小学校、中学校、しかも中学校の高学年、三年生になりますと六五%以上の悩みが勉強、成績なんですよね。それはもちろん受験競争です。そこにしのぎを削っていくのだけれども、どうしてもついていけない子供が落後してしまうということですよ。したがって、それは差別感、悩み、はけ口がない、こういうところに最大の要因があるのじゃないかというふうに私は思うんですね。そういう一つの状況というのが、先ほどあなたも答弁されたように、もう義務教育は有名校の予備校化している。学校では受験を目指した知育偏重の画一的な詰め込み教育をやる、そしてテストテストの偏差値人間をつくり出している。その中からは競争、差別、不信、そういう渦巻きが出てくる中でついていけない子供は落ちこぼれになってしまう。その子供はどこに行ったらいいかわからない。そういう中で欲求不満を外に向けていけば暴力になるでしょうし、内側にこもれば登校拒否になるだろうし、これは一番大きな問題じゃないか。  さらに、教師から言うならば、通達の中には学校一体の指導云々いろいろあります。確かに私もそのとおりだと思う。しかし、実際学校の一人一人の教師を見れば、簡単に言えば教育ママの目が厳しい、自分の子供は有名校に入れたい、それから学校では進学率が気になる、管理が厳しい、そうなりますと、おのずと生徒に対しては管理する加害者という立場になって、その箱の中でいかにして受験競争に勝つかという教師になっていってしまう。  それじゃ家庭はどうか。家庭は、両親があって共働き、中流家庭が多いですけれども、簡単に言えば、有名校を目指す、学習塾、テスト主義になってしまう。そして、テストの点さえよければ大抵ほかのことは大目に見る、金もやる、勉強部屋もNHKの調査では七五%が持っている、そういう甘やかしが家庭の中で横行している。中心は、有名校を目指す、学校の成績がよければいい、こういうふうになってしまう。  じゃ生徒はどうかといえば、親の期待をずっしり背負っている、学校では管理されている。そして、学校の中では知育偏重、偏差値人間、そういう形でもってぎゅうぎゅう締められている。したがって、あなた方が言うような、いろいろな対策の中で出てくるような知・徳・体の均衡のとれた生徒なんか出っこないわけです。そういう意味で、いまの有名学校を目指す受験競争、学歴偏重の社会の中で最大の犠牲者になっているのは子供だと思うのです。それは、いま申し上げたようないろいろな複合的な要因がありますけれども、受験体制の強化、義務教育まで予備校化している、その中でテスト、偏差値人間をつくり出していく、こういうところに最大の原因があるのじゃないか、したがって、それはだれがどのような背景のもとにやってきたかはっきりさせなければならぬと思うのです。  確かに社会的な風潮もいろいろあるでしょうけれども、文部省でいろいろな通達をいままでずっと出しております、一々挙げませんけれども。これなんか見ますと、いろいろな対策は出ていますけれども、私から言わしむればきわめて対症療法的な対策であり、何か起これば文部省から教育委員会に対して通達を出す、こういうことでやっているわけです。いまのような、複合的であり、学歴偏重、しかも受験競争のるつぼの中で、生徒が知育偏重、偏差値人間としてつくられていく中で、そういう一片の指導通達だけで果たしてできるのかどうか。  現に皆さんが知ってのとおり、非行、校内暴力の生徒は減るどころかふえているでしょう。質も悪化してきているでしょう。だとするならば、何が根本的な原因であるかもっと突っ込んだとらえ方と対応をしていかなければ、この問題に親や国民の期待にこたえて歯どめをかけ、一日も早くなくするということにならぬのではないかと私は思うのです。そういう意味で私は、確かに複合的でありますけれども、とらえ方がきわめて平板でないか、対策も対症療法的であり、その都度主義じゃないかと言わざるを得ないと思いますが、その点はどうですか。
  78. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 佐藤さんは教育の専門家でございます。私は教育面については、こう言ってはまことに恐縮でございますが、全くのずぶの素人といっていいわけでございます。今度文部省を担当いたしまして、私は法務大臣を担当したことがありますから、過去から青少年の非行問題を気にしてやってきておるわけでございますが、たまたま最近ああいう非常にショッキングといいますか、心配される事件が起こる、素人でございますから細かく分析してみずから対策を立てるなどという能力はございませんが、しかしこれは容易ならざる事態であるという感触を持っております。  もちろん文部省あるいは学校等でもいろいろ努力してもらっておることは想像にかたくないのですけれども、それにしてもこういうことになるのはどこかに欠陥があるのじゃないか。ちゃんとしておればこんなになるはずがない。世の中は何事も理想どおりにいきませんけれども、しかし余りに教育現場といいますか、将来を背負っていく子供たちがああいうふうになる姿は見逃すことができない、こういう感想を持ちまして、素人ながらちょっと考えついたことを八項目にわたって――一刀両断にいかぬと思います。教育の問題は、国家百年の大計と言われるぐらいの問題でございますから簡単にいかないと思いますけれども、この際、長い歴史と伝統を持っておる文部省文部行政あるいは教育であるけれども、一遍根本的に問題点を全部洗い直してみてもらえないかということで、八項目を役所の皆さんに私から思いつきみたいな案を出しまして、それを検討してもらっております。  それで当面やるべきこと、今後やるべきこと、長期にわたって考えなければならぬこと、いろいろあると思います。そう簡単なものじゃないことはよく承知しておりますが、いまおっしゃった学歴社会ということ、確かに昔から言われておりますが、これをどういう教育行政で直す方法があるのか。あるいはいま学業に追いついていけない、これは佐藤さんが言われたように確かにあると思いますよ。それは、過去において私が刑事政策上タッチした場合もそういう面が相当あらわれておりました。それで、一体いまの学校の小中あるいは高校まで入れて、教科書がむずかし過ぎるのかどうなのか。五十五年からやや緩和されたということになっておるわけでございますけれども、私どもの時代はそんなにむずかしい教科書教育はなかったから、時代が違うから感覚がずれておるのかもしれませんけれども、非常に詳細な、教科書にたくさん盛られておる。しかし、それを全部追いついていかぬというわけでもないのですから、おおよその子供たちはちゃんとしておる。全部非行に走るというわけでもない。一体教科書がむずかし過ぎるのかあるいは学校の指導の仕方がまだ十分でないのか、いろいろそこら辺に原因があると思います。また、学校の先生の立場から言わせると、私ども毎日のように各方面から手紙もいただいておりますけれども、うかつに手は出せないのだ、お母さん方や父兄がやかましくて、どうだこうだ、自分のところの子供はこうだといって、とてもじゃないがうかつに注意したりなんかできないという状況もあるらしい。私は、よけいなことを言いますけれども、全くいまの社会は気が狂っているのではないかと感ずるような状態でございます。  でありますから、私は、全部がこういうことでいいのかということを、教育についてはこの際考えてもらう時期に来ているのではないか、漠然たることを言いますけれども。ですから、根本をついて一挙に全部快刀乱麻みたいに解決はできないと思います。しかし、一つ一つどこに過重な点がありどこに欠点があるか。偏差値だとか輪切りだとか、私言葉に聞いておるのですけれども、これもしかし統計学上非常に有効な働きをしておる部面もある。しかし、そういうことまでしなければ一体社会人としてあるいは世界人として立っていけないのかどうか、ここら辺で一遍考え直すべきではないかという感じを持って専門家に検討を願っておる、これがいまの私の立場でございます。
  79. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 大臣の真剣な取り組む姿勢というのは私も理解できるのですが、ただ、時間がなくなりましたので突っ込んだ質問なり議論はできませんけれども、私はいまの学校なり学校をめぐる状況を見ますと、たとえば「青少年の非行等問題行動への対応」というのが昨年の六月二十四日にできておりますね。これに大変いいことをいろいろ書いてあります。その中に、どのくだりになるかちょっといまわかりませんけれども、こういう文章があるのですね。   今日の社会においては、学歴偏重の風潮が強く、そのための受験競争等から教育における知・徳・体の調和が崩れる傾向が見られる。こうした学歴偏重の風潮は、父母はもとより、学校、教師にも広く影響を及ぼしている。親や教師は、児童・生徒の個性や多様な能力を引き出す努力を払うべきである。特に、学校及び教師は、こうした学歴偏重の風潮に流されることがないよう積極的に努力すべきである。 結びがこうあるのですよ。そのとおりだと思う。最後の方も私賛成なんですが、ただしかし、実際にいまの学校を取り巻く状況の中でこういうことが言われたって、親や教師が多様な能力を引き出すべきであるとか学歴偏重の風潮とか受験に毒されるようにするななんて言われたってできない状態に置かれているのですよ、文部大臣。結局父兄は、簡単に言えば教育ママ、有名校にいかにして入れるか、毎日テスト、偏差値ですよ。教師もそういうところで追われているわけですよ。やろうたってこれはできないのですよ、このとおりなんだけれども。ここに問題があると私は思う。  その他いろいろありますよ。たとえば、魅力のある学習指導と人間味あふれた生徒指導をするべきである、これも私はそうありたいと思う。私もかつて教員をやったことがありますから。ところがそれができない環境に置かれている。それは何か。世の中全体が学歴偏重と受験競争の渦の中に巻かれておりますから、学校というのはその中の一部ですから。私は時間がありませんから詳細突っ込んだ話はしませんけれども。  それでは学歴偏重なりいま申し上げた受験競争、偏差値人間をつくるというこのもとは何か。いろいろな要因がありますが、今日の政治なり教育行政もある大きな意味では加担者になっているのじゃないかという気が私はしてならないのです。昭和三十五年に池田所得倍増政策がずっとできまして、その後皆様御承知のとおりの形で答申がいろいろ出ております。これは申しませんけれども、たとえば昭和三十五年に国民所得倍増計画、その次に中期経済計画、その次に教育の基本問題に対する提言。これは全部財界からあるいは経済審議会から出ております。そのちょうど中のところに中央教育審議会が、たとえば大学教育改善であるとか後期中等教育の拡大整備であるとかずっと入れています。これが私はすべてだと言わないけれども、高度経済成長の過程の中で教育が担うべき分野としてマン・パワー・ポリシー、つまり人的能力という、その能力も知育偏重の形の能力開発が鋭くドリルされてきているわけです。それが有名校を日指す学習、受験競争、偏差値人間という形でつながってきている。だから昭和四十五年のOECDの調査団が日本に入ったときに、端的に言えば日本教育が産業発展の手段になっているのじゃないかということがいみじくも鋭く指摘されていると思う。この辺までさかのぼらないと、単に学校の教師はああやれ、父兄はそういう学歴偏重になるな、いろいろなことを言われても、もっともっと根の深いところにあるということに私たちが思いをいたさなければ、この問題にメスを入れることはできないと私は思う。  きょうは十分時間がありませんから議論いたしませんけれども、私があれが悪いこれが悪いとか、ただ通達を一片流すということじゃなくて、いま国民にとってきわめて重要なのは、教育行政も過去のことを振り返り、反省すべき点があったら反省する、教育の現場もしかり、父母もしかり、しかし、いま一番重要なことは、教育現場の皆さん教育行政にある皆さんがいかにして知恵を出し合って協力し、そうして国民的課題ともいうべき非行、校内暴力をなくしていくかということが国民の非常に大きな期待だと思う。  教育現場といえばいろいろございますが、私は日教組もその一つだと思いますので、そういう意味文部大臣あるいは文部省もこの問題について日教組等とも積極的に話していいじゃないかというふうに私は思うのですが、最後にその点についての答弁を求めて、質問を終わりたいと思う。大臣どうですか。
  80. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 教育の問題は、先ほど経済政策等のいろいろな原因もお話がありましたが、そういう点もあると思います。余りに物質主義といいますか、経済主義になり過ぎて、人間の欲望を駆り立て過ぎる。私はそれだけが人生じゃないと思っております。しかし、それだからといって、それをとやかく言っても始まらぬのでありまして、改めることはもちろん改める努力を全国民がしなければ、文部省がそれを改めるとか学校の先生だけが改めるとか、そう簡単なものじゃない。おっしゃるとおりです。でありますから、この課題はいまや百年の歴史を持ってきて戦後三十五年たちました日本教育というものを、根本的にもう一遍全部考え直してみる必要があるのじゃないか、非常に抽象的でございますが、そう思っております。  しかし、いま日教組とか学校の先生のお話が出ましたが、それならばそれなりにそういう中でどういうふうにして子供を真っすぐにちゃんと一人前に育てるかということにそれこそ生命をかけるというと大げさでございますが、そういう姿勢でやってくださればもう少しいいのじゃないかと思う。私はそういう姿勢があればいつでも話し合って、何とかこういう大変な事態をお互いに力を出して、国民皆さんにも呼びかけ、また将来の日本の子供をちゃんと真っすぐに指導し教育するようにしたらどうかという話し合いをするのにやぶさかではありません。ただ文部省はけしからぬ、文部省が通達を出しますとあんなものは反撃だ、こういう態度では一体子供の教育ができるのだろうか、率直な感じがこういうことでございます。
  81. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 それは言い分もあるのだろうけれども、そう言い合えば教育の現場からだっていろいろ疑問なり意見もあるでしょうし、また、それらをまとめている日教組だって意見があるでしょうし、そういう次元の議論をやり合うことを国民は求めているでしょうか。私はそのことは求めていないと思う。事大きな非行や校内暴力の問題については、それらの立場立場としてあっても、やはり一つ土俵の中で話し合い、知恵を出し合って協力してほしいというのが偽らざる国民や父母の願いだと私は思いますので、その点、文部大臣は十分胸襟を開いていろいろな団体と話し合うということがあってしかるべきだと思うのだけれども、私、重ねて提言しますが、どうですか。
  82. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は素人ですから、いろいろな人の話や意見をできるだけ聞いて、毎日のようにいろいろな文書を送ってくださる方がある、手紙をくださる方がある、それを整理する暇がなくて困っておるのです。  特に学校の先生方、現場の先生方とお話をしたいのです。旗振りばかりしておる人と話したって話が余り通じないような気が私はいたしますから、本当に現場で苦しんでおる人と話をしたいのです。ですから私は、暇があれば学校現場をできるだけ見せてもらいたいと思っておるくらいですから、決してやぶさかには思っておりません。この事態は、全部が本当に知恵を出し合わなければ、もう少し虚心坦懐に知恵を出し合わなければ解決しない問題だと思っております。
  83. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 終わります。
  84. 葉梨信行

    葉梨委員長 中西績介君。
  85. 中西績介

    ○中西(績)委員 大臣所信表明の中にも、重要な事項として私学の振興について述べられています。特にその中におきましても、「わが国の高等教育において約八割を占める私立大学の質的向上に配慮する等、私立学校の教育研究条件の維持向上等に努めてまいりたいと考えております。」、こう言われています。この大臣が述べられた所信表明と全く相反するようなことが次々に大学の中で起こってきておる。私はできるだけ取り上げたくないと思っておるのですけれども、遠慮しておったのですけれども、今回の場合、これはどうしてもやっておかなくちゃならぬと思って質問をするわけです。  いままで私がやりましたのは、国士館それから北里大学です。これはもうすでにだれしもが認める多くの問題を抱えておる学校であったわけであります。そこで私は本日は、中村産業学園の九州産業大学、この問題について質問を申し上げたいと思うわけであります。  質問をする前に、内容的には大体御存じだと思いますから私はここでは多くを申し上げませんけれども、いずれにしても補助金の不正受給、裏入学、大学設置基準違反、さらに助教授を教授、助手を講師、職員を教員というように肩書きの改ざん、詐称、さらにまた大がかりな学生便覧、時間割り、入試要項を全部改ざんするという状況、あるいは理事長なり副理事長、報酬がどういう中身になっておるのか、さらに残念ながら、報道機関によると、文部省あるいは私学振興財団幹部を何回か接待をし、あるいは供応したかもわからないという状況まで出ています。  ところが、理事長を初めとして残念ながらまったく反省の色はありません。これは、私たち調査に入りまして、本当にこういう人が私学の経営陣、理事会の一員としておれるのだろうかというような感覚でしかありません。一つの例を挙げますと、一年間に十数億の補助金受給をしておる、その中のわずか一千万円程度を不正受給したのだから微々たるものだということを平気で言うわけです。さらにまた、九産大の理事会の行為が私学補助金制度を根底から揺るがすものになってくる可能性すらもこの中には秘められている。  こうしたことを考えてまいりますと、いま私たちが勇気を持って徹底解明をすることが大変重要ではないか、地元関係者はもちろんでありますし、多くの国民の信頼を回復する大変重要なかぎを持っておると私は思います。したがって、きょうおいでいただきました政府委員あるいは警察庁、会計検査院あるいは私学財団の皆さんにぜひお願いでありますけれども、逃げの姿勢でなくて真摯な取り組みをこの場で国民皆さんにわかりやすく、またわかるようにお示しいただきたいと思うのです。  そこで、まず第一に質問をしたいと思いますのは、文部省あるいは私学財団はこの問題についていつ、どういう手だてで知ったのか、そして本年度提示された補助金額は正式に幾らなのか、さらに返還を求めた金額は正式に幾らなのか、時間がありませんから簡単にお答えいただきたいと思います。
  86. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いま私学問題について御指摘がありましたが、私は所信表明でも申し上げておりますように、御存じのとおり日本教育の大半を担っておる私学でございます。しかも、その私学教育された人々がそれぞれわが国の発展のために貢献しておられる。すばらしい業績を上げておることを感じておるわけでございます。たまたまその私学の中にいま御指摘のように少なくとも教育上あるまじき事件といいますか、行為がみられることはまことに残念といいますか、遺憾至極に考えております。  でありますから、今年度の困難な予算編成、年末に行いましたが、その際、私学助成金は幾らか減りましたけれども、私学関係皆さん文部省に来られて、こんな状態の中で予算を確保してもらってありがとうというごあいさつがありましたときに、その前にこの事件を私承知しておりましたから、これほど国民の税金から教育が大事だということで幾ばくかの助成をして私学の振興をしたいということでやっておるのだ、お礼を言われるのはありがたいが、その前に、いかに国民の税金が大切なものであるか、教育が非常に大切であるからこれほど苦心した財政の中からでも私学助成に努力しておるのだから、もっとそれをわきまえて、補助金をもらい得だというような考えであっては困るのです、こういうことまで申し上げておるわけでございまして、そういう状況については他の大切な私学に影響を及ぼすおそれがありますから、厳重な措置をとるように指示をいたしております。  以下、詳細についてはそれぞれの部局から御説明を申し上げることにします。
  87. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 お答えをいたします。  九州産業大学の補助金の関係の事件につきまして私どもが承知をいたしましたのは、昨年の十一月九日の朝日新聞の報道によりましてその事実を知ったわけでございまして、早速その実態の調査に努めたわけでございます。この件につきまして新聞報道がなされる前に把握することができなかった点はまことに遺憾に存じておるところでございます。  なお、交付をいたしております補助金、該当の年度が五十二年度から五十六年度までの五年間でございますが、元本合計いたしまして四十七億五千万円余りの補助金を当該学園に交付をいたしておるわけでございますが、そのうち過大交付ということで返還を命じました額が一億六千五百万円余りということでございます。
  88. 別府哲

    ○別府参考人 日本私学振興財団理事の別府でございます。文教委員の先生方には日ごろから私学に対する助成金……(中西(績)委員「ほかのことは要らぬから答えてください」と呼ぶ)この席をかりまして厚くお礼を申し上げましてから御答弁申し上げます。  ただいま管理局長から御答弁がございましたが、私ども私学振興財団におきましても、新聞報道を端緒として大学の関係者から説明を求めたことによって事件を知ったわけでございます。  なお、五十二年度から五十六年度までの補助金の交付総額についてはただいま局長の御説明のとおりでございますが、過大交付額につきましては、先ほど局長が御説明になりました一億六千万円余りでございますけれども、日本私学振興財団から中村産業学園に対して返還を求めました金額につきましては、本年二月三日付でもって二十五億八千二百万円余りの金額の返還を求め、期限内の二月二十二日全額が返還をされまして、財団におきましてはこの全額を国庫に返納をいたしたところでございます。
  89. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、なぜこのような、普通の常識からすると過酷と思われるような返還がされたのか、その理由について簡単にお答えいただきたい。
  90. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私学に対する助成金につきましては、事柄の性格上、大学側からの申請を信用して、いわば、言葉は適切かどうかあれでございますけれども、性善説に立ってこれに対応してきたわけでございますが、そのかわり不正の事実があった場合には厳正な措置をとるということをあらかじめ学園側には明示をしてまいったわけでございまして、今回のようなケースについては、教育機関としての大学の信用にかかわる問題でもあり、私学全体の問題にもかかわるということで厳正な措置をとったわけでございます。
  91. 中西績介

    ○中西(績)委員 一口で言いますと、私学の信頼というものを全くなくしたということでこうした措置をとったということに理解してよろしいですか。
  92. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 こういうケースは非常にまれなケースと申しますか、私どももいわば最近では初めてのケースでございますので、私学全体がこうだということでは決してないと思いますけれども、こういう一件が、あたかもほかの私学についてもそういうケースがあるかのごとく見られるおそれがあるという点は大変憂慮をした点でございます。
  93. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、十一月九日以来の九州産業大学の理事長以下理事会の皆さんの態度あるいは言動について知っていますか。
  94. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 新聞で報道された点は新聞等によって拝見をいたしております。
  95. 中西績介

    ○中西(績)委員 それは正常と思われますか。
  96. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 事実関係がどうであるかということを把握できないので恐縮でございますけれども、学園の関係者、私どものところへ見える際にはきわめて遺憾なことをしたというおわびをされておるわけでございますので、具体に現地でどういう発言をされておるかということは、私ども、にわかに事実としてわからないわけでございますが、新聞報道のようなことが事実であるとすればまことに遺憾なことだと考えております。
  97. 中西績介

    ○中西(績)委員 特に私学振興財団、文部省あるいは政治家との関係などについて次々に発言していますね。事実、これはあるわけですから。しかも、私、正式な議事録まで持っています。正式の場でそれを発言しているのです。こういう状況というのは、私は、先ほどから言っているように一かけらの反省の意思もない、こう断ぜざるを得ないわけです。なぜ彼らがこのようになったのか。なぜ彼らはこういう強気の発言をするか。文部省は敵だとか、私学財団は敵だとか、そういう言葉が次々にぽんぽん出てくる。そして政治家の名前を出して――ここでは言いません。名前を出して、頼んであるとかいろいろなことを言っておる。あるいは文部省の高官の名前を出して、対応しておるというようなことを言っておる。なぜこのようなことが彼の口から出るのか。この原因、何かおわかりですか。
  98. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 いろいろ新聞等で報道されておるところは拝見をしておるわけでございますけれども、たとえば裏工作云々というようなことを拝見いたしましたが、当該学園の理事長が具体にどういうことをやっておられるかということは私どもとして全く関知をしていないところでございまして、文部省といたしましてそういう話にコミットをしたことは全くないということを明確に申し上げておきたいと存じます。
  99. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは聞きますけれども、先般、理事長参りましたね。参ったでしょう。文部省へ来たでしょう。
  100. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 二月二十六日に、文部省の行政指導に対する回答を持って見えたということでございます。
  101. 中西績介

    ○中西(績)委員 そのときに、こうした問題について追求いたしましたか。
  102. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 この件につきましては、事実関係はわかりませんけれども、当時、新聞に載りました際に、翌日でございましたか、ああいう発言をしたつもりはないというような弁明の連絡がございました。先日、二十六日に見えました際には、担当の者が理事長からの回答を話として聞いて、受け取ったということでございます。
  103. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、本人がわざわざ文部省に出てきても、そうしたものについては一切触れておらないということですね。確認しますよ。触れておらない。そのようにいろいろ取りざたされた問題等については一切触れてない。いいね。
  104. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 具体のやりとりの場でございますのでいろいろな話をしておりますが、触れていない問題もあり、触れた問題もあろうかと思います。
  105. 中西績介

    ○中西(績)委員 あいまいもことした答弁では困るのです。じゃあ何と何に触れて、何と何に触れなかった、それを答えてください。
  106. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 もちろん、先日見えました際には回答文を持って来られまして、それについての説明が行われたわけでございますので、回答の内容についてのそれぞれの説明が行われ、そしてさらに加えまして、いろいろ誤解を受けておるような点が出ているのはまことに申しわけない、こういう言葉があったそうでございます。
  107. 中西績介

    ○中西(績)委員 これは誤解じゃないのですよ。積極的に発言をして、みんなを説得をする材料に全部使ったわけです。たとえば九州産業大学の職員の諸君あるいは教授会の皆さんを説得をする材料にそれを正式の場で使ったということですよ。誤解じゃないですね。文部省はそれもわからなくなっているのですか。
  108. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 私ども文部省立場といたしましては、すでにその後必要な措置等を講じてきておりますので、それによって理解をされているというふうに感じておるわけでございます。
  109. 中西績介

    ○中西(績)委員 この点、私の方から今度は正式に文書でもって日時を追って出しますから、それに対してどう対応していくか、これはいまやると時間がございませんから、重要なところに入れませんから、それは全部今度明らかにしてもらいます。その上で今度改めて次回の委員会でもってこれらについて明確に正式にしていきます。そうしないと、いまの態度では、とうてい私学のこうした問題を除去したり、私学の信頼を回復するという条件はこの中から出てきません。したがって、これは保留します。  そこで、次に入ります。  私学財団あるいは文部省関係皆さん調査をした、あるいはいろいろ対応したといま局長は言いましたね。ところが、不正を働き、警察庁にこれから聞きますけれども、あるいは会計検査院に聞きますけれども、会計検査院の場合には、二回にわたって全然わからないように知能的に全書類を改ざんをし、わかってはならないやつは全部破って捨てておる、こういうことをやっておる人たちを呼んで調べるだけですよ。肝心かなめの人を呼んで調べるわけはありません。しかも、文部省は出向いていって調査をした形跡もありません。聞き取り調査をした内容もありません。ということになりますと、何を指導し、何を調査し、将来どうしようという考え方であるのか、この点私は全く不明確に思う。どうなんですか。
  110. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 九州産業大学、中村産業学園からの事情聴取でございますけれども、昨年十一月の九日に事実関係新聞報道されまして以来、その後十一月の十九日に理事長と教学側の代表である学長とお二人で私のところに見えました。その際、遺憾の意を表していかれたわけでございますけれども、私の方からは、実態を調査をした上で厳正な措置をとるつもりであるので、事実関係調査について正直に応じてくれという注文をいたしまして、それについては誠実に応じるという回答があったわけでございます。以後問題点を具体にこういう点について聞きたいということを先方に連絡をいたしまして、それについての資料等を持参の上、説明のできる人に来てもらいたいということで来省願ったわけでございまして、その結果、実際に見えた方は副理事長であったり、担当の課長であったり、課長補佐であったりというようないろいろな方がその都度見えておるわけでございます。なお、そのほかにも事務系あるいは教官系等から陳情というようなことでおいでになった方々にもお会いをして事情を伺うということはいたしておるわけでございます。さらに二月の三日に文部者側の判断を示し、行政指導を行いました際にも、理事長と教学側の代表者をぜひということで、学長代理ということに当時はなっておりましたけれども、その方においでいただいてヒヤリングをする、ヒヤリングと申しますか、指導をするというようなことをいたしてまいったわけでございまして、私どもとしてはそういうことで大体の概要はつかむことができたと思っておるわけでございます。
  111. 中西績介

    ○中西(績)委員 私はこれが大変甘いと思っています。したがって、この分については、また明らかにしてまいります。  そこで、私は会計検査院にお聞きしますけれども、会計検査員は五十二年と五十六年に二回にわたって検査をしておるのです。そして三回目はいつ、なぜしたのか、お答えください。
  112. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 第三回目の検査は、五十八年一月二十六日から二十八日まで延べ十二人日にわたりまして実施いたしました。その実施いたしましたのは、九州産業大学の補助金不正受給の問題が新聞等に報道されましたので、検査を早めて実施したということでございます。
  113. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、その際に参りました検査院の第二局文部検査第一課中村平副長という方が新聞でインタビューいたしまして、いろいろ言っています。会計課のすべてにわたってやりたいということを明言いたしております。  そこで、幾つかの点をお聞きしますが、まず第一に不正受給の問題です。職員を教員としてやられた。それは先ほど言われますように一億六千五百四十八万四千円、こうきょうは言っていますが、これは三回にわたって違いがあるのです。発表は次々に違ってくるのです。文部省なりあるいは財団の発表は違うのです。ところが、もしその職員を非該当とみなした場合には、二億二千万を超える金額になりますね。この関係がどうなのかということと、もう一つは、五十二年から五十六年ということになっていますけれども、五十一年以前はどうなっておったのか、この点おわかりですか。
  114. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 お答えいたします。  検査の結果判明いたしました金額は、先生先ほどおっしゃいましたように、一億六千五百四十八万余円でございます。これは検査院の検査の結果判明した数字でございます。  それから、五十二年以前の年度でございますが、五十二年からということで、それ以前は時効の完成ということもございましたので、検査の日程上から、五十二年度以降の検査に集中いたして実施したわけでございます。
  115. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、こうした問題について検査院、全く過去二回の検査の中では指摘する事項もなかったと私は聞いていますけれども、そのように帳簿上は完成されておったということで理解をしてよろしいですか。
  116. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 お答えいたします。  職員を教員というようなことで詐称いたしたわけでございますが、これを裏づけるための書類といたしまして、発令簿とか時間割り表とか学生便覧等の一連の書類を功妙に改ざんいたしておりまして、すべて符合しておるわけでございます。このため、検査時にこれらの書類からの矛盾が発見できませんで、不正な事態がわからなかったということでございます。
  117. 中西績介

    ○中西(績)委員 ということになりますと、きわめて悪質であると判断していいですか。
  118. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 過去の事例からいきますと、過去の事例にない、きわめて遺憾な事態であったと考えております。
  119. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで、これは五十一年以前にもあったと考えてもよろしいわけですね。ですから、その金額はこう示されておるのに、私たちが入っていっても、本人たちはわかっておるのに、調査に入ってわかっておるのに、平気で五千万円しかやってないということを言い抜くわけです。私は、財団なり文部省からそうした資料を入手いたしまして、これだけあるということを持っていっても、彼らはそういうことを平気で言うわけですね。しかも検査院が二回にわたってやってもそうです。これは三回目を早めてやったのだけれども、三回目をやってもわからなかっただろうと思うのですね。それくらい巧妙であり、悪質であるということがまず第一に指摘できると私は思うのです。  そこで財団の方にお聞きしますけれども、三回にわたってこれを変更したのはなぜですか、金額が変わったのはなぜですか。簡単に言ってください。
  120. 別府哲

    ○別府参考人 お答えを申し上げます。  数字がたびたび変わりましてまことに申しわけございませんが、変わりましたのは、昭和五十二年度の非該当教員の数について当時学校法人の方から提出されました資料が不十分なものでございましたので、後ほど会計検査院の検査もあり、これが発見をされたということが一つの要因でございます。なお、他の年度につきましても、ごくわずかな金額ではございますが若干の計算の誤り等がございまして、最終的に先ほど先生御指摘の金額になったわけでございます。
  121. 中西績介

    ○中西(績)委員 このようにわかっておっても、五十二年度分については依然として会計検査院が入って指摘をしなければ文部省にもあるいは財団にもこれがわからない、こういうことになっているわけですね。先ほど局長は、反省をしているとか誤解であるということを言った、こういうふうに答えましたけれども、これは誤解でしょうか、どうですか。
  122. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 いわゆる不正受領額の金額の点につきましては、先ほど来財団からもお答えを申し上げているとおりでございますが、この問題は財団が担当しておりますので私ども直接は聞いておりませんけれども、先方としては専任教員のカウントの仕方等について若干の意見があるということはあるようでございますが、その点は財団の側の判断によって今回は固めておるわけでございます。
  123. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですからこうしたごまかしを平気でできる、またされる。それでは、この間文部省なり財団は査察に何回行きましたか。
  124. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 五十二年から五十六年という該当の期間につきましては、文部省から実地調査等に行ったことはございません。
  125. 別府哲

    ○別府参考人 この事件の該当する年度におきましては財団が独自で現地に参ったケースはございませんが、会計検査院が現地に参りました昭和五十二年度、五十六年度並びに五十七年度において、それぞれ財団の方からも随行をして現地に参っております。
  126. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから完全にごまかされておったということになるわけですね。そこでこの不正受給について確認をしたいと思いますけれど、これはあくまでも補助金等適正化法違反、こう断じていいわけですね。
  127. 森廣英一

    森廣説明員 お答えいたします。  捜査を担当いたしました福岡県警察からの報告によりますと、同県警は、いま先生御指摘の補助金適正化法違反の容疑として立件をし、送致をいたしております。
  128. 中西績介

    ○中西(績)委員 そこで警察庁にお聞きしますけれども、立件し、そして書類送検をしておると言うけれども、その額はわずか五千五十余万です。ですから、このことを私らが入った際に理事長なり副理事長が答えておった、それで全部を覆い隠していこうという世論に対する対応をしたと思うのです。では、なぜこのような金額になっておるのかおわかりですか。
  129. 森廣英一

    森廣説明員 お答えします。  警察といたしましては、時効が完成しております五十二年以前の部分を除きまして、昭和五十三年以降の事案につきまして捜査の対象にいたしたと聞いております。そのうち証拠上犯罪を確定できるものに手がたくしぼりまして、いまお話のございました五千五十五万円余の事件といたしまして立件をいたしております。
  130. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは検査院に聞きますけれども、その中身ですね、たとえば非該当教員の分あるいは職員の分あるいは講師という。もう偽って幾つかのあれがあるわけで、そこから出てきているわけですから、そうするとその分のどこが立件でき、どの分が立件できなかったのか、この点をお答えいただきたいと思うのです。ですからまず検査院の方から、どの分とどの分とどの分が合算してこれだけです、こう言っていただければいいのです。
  131. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 お答えいたします。  事務職員を専任教員として偽ってカウントいたしましたもの、それから専任の教員でありましても、勤務形態からいきまして常時勤務者でないというものは補助対象になっておりませんので、これを除きます。こういう方々の合計が延べ八十九人含まれておりまして、その金額が一億六千五百四十八万四千円になるわけでございます。
  132. 中西績介

    ○中西(績)委員 重ねて聞きますが、いま警察庁からお答えいただきましたように、その分は補助金等適正化法違反として確認できるわけでしょう。
  133. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 お答えいたします。  私どもの取り扱いといたしましては過大交付額が幾らであるかというような把握をいたしておりまして、このうち補助金適正化法に違反するものが幾らであり、その他のものが幾らであるかというような分析はいまのところいたしておりません。総額でつかんでおります。
  134. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは財団に聞きますけれども、財団は法律に照らしてやっているはずですが、どうですか。
  135. 別府哲

    ○別府参考人 先生いま御指摘の県警が送検をいたしました金額と財団が過大交付額、つまり不正受領額として認定いたしました数字との違いを御説明申し上げますと、先ほど警察の方からも御説明がございましたけれども、送検の対象となった金額につきましては、まず五十三年度以降をとっておるということが一つでございます。それから対象の教職員の数の教え方でございますけれども、まず今回の不正受給の原因となりました教職員の数の問題につきましては、一つは職員を講師と偽ったもの、副手を助手と偽ったもの並びに集中講義等で専任教員とは認められないもの、あるいは講義時間が全然ないもの、さらに他に助手を講師と偽ったもの、あるいは助教授を教授と偽ったものというふうにいろいろ重なり合ってその原因が構成されているものでございますが、警察が送検の対象といたしました五千万円余りの金額の基礎となっておりますものは、いずれも言うならば職員を教員と偽ったもので、内容は職員を講師としたもの並びに副手を助手としたもの、この数字をもとにして計算をした金額が五十三年度から五十六年度までにおいて五千万円余となっているわけでございます。財団が不正受給額として認定いたしました数字は、年度が一年違いますもの、このほか集中講義等で授業時間数等から見て専任の教員としては認定されないもの、これを非該当教員として認定をする、そのほか……(中西(績)委員「私が求めている答弁に答えないから、やめてください」と呼ぶ)といったような原因でございます。
  136. 中西績介

    ○中西(績)委員 私が質問した内容について答えてください。補助金適正化法違反であるかどうか、これを聞いているのですよ。一々細かくそんなにされたのじゃかなわぬです、時間がたって。ちゃんと答えてください。
  137. 別府哲

    ○別府参考人 補助金適正化法違反であるかどうかの問題につきましては、先ほど警察の方からもお答えがあったところで、警察側としてこれに対して捜査をなさっておるということでございます。財団といたしましては、学校法人に対して補助金を交付した際の根拠法となっております私学振興助成金あるいはそれに基づく財団の定めに基づいて、不正な報告に基づいて補助金を受けたということによってこれを不正受給と認め、返還を命じておるということでございまして、これが補助金適正化法違反として財団としてどのように取り扱うかという問題については、現在のところまだ態度は明らかにしていないところでございます。
  138. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは警察庁に聞きます。  このようにして、一億六千万を超える金額は不正なものとして摘発されましたね。それは補助金適正化法違反にはなっていないのですか。差があるのですか。
  139. 森廣英一

    森廣説明員 私ども事件の詳細な証拠を全部見ておるわけではございませんが、いまおっしゃる一億数千万円と立件送致した額との差が主としていかなる原因によって生じてきたものかというこについては概括的に聞いております。それによりますと、いまもお話しございましたが、明らかに教員でない者が教員であるように偽られてそうして補助金を得ておるというような事案については明確に掌握できまして立件送致しております。しかしながら、主として授業時間数の扱い、こういう問題につきましては、果たして学校で講義をやったか、あるいは自宅で自習をしたか、あるいは研究室で指導をしたとか、いろいろな弁解が出ておりまして、そういうものにつきましては証拠上十分な認定ができないということで、おしなべて申し上げまして、時間数の問題につきまして非常に証拠上微妙な問題があって、主としてその理由で額が減っておる、かように聞いております。
  140. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうすると、副手を助手として認めることもその中には入ってませんか。これは除外したのでしょう。副手を助手として届け出、偽っておるという、こうした明確なものについても削除してますね。どうしてですか。
  141. 森廣英一

    森廣説明員 いまの送致金額の中で詳細にどういう名目によっていかなる金額を内訳として送致をしたか、立件したかということにつきましては、現時点で私も把握しておりませんので、ちょっとお答えをしかねるところでございます。
  142. 中西績介

    ○中西(績)委員 それでは、この点は保留をいたしまして、その分について後で詳細な資料を出していただきたいと思うのです。よろしいですか。委員長、お願いします。
  143. 葉梨信行

    葉梨委員長 警察庁、この件につきまして、資料を後刻提出していただきたいと思います。
  144. 森廣英一

    森廣説明員 送致をした先の検察庁とも十分相談をいたしまして、公判の維持等に支障のないものについては準備をいたしたいと思います。
  145. 中西績介

    ○中西(績)委員 次に、時間がなくなってきましたけれども、裏口寄附金について質問を申し上げたいと思います。  この分について、私はもう時間がありませんからしぼりまして、はっきりしてもらいたいと思いますが、先ほど言っておりましたように、文部省から私が取りました資料では、不明の部分だとか、あるいはどうなっておるかがわからぬというように、証拠書類がもうなくなってしまっている。したがって、会計検査院に聞きますけれども書類というのは、そうした分については大体何年存置させなくちゃなりませんか。
  146. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 お答えいたします。  学校教育法施行規則では五年の保存期間が決められております。
  147. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、これを焼き捨てた、破って捨てた、その理由はプライベートな問題が明らかになるから迷惑かけるので破って捨てたということを言っています。ということになりますと、これはまさに、残さなくてはならぬというそういうものがあるのにプライベートだということで破って捨てるということは、悪いことをしておることを立証しているわけですね。そうお思いになりませんか、警察庁の課長
  148. 森廣英一

    森廣説明員 御質問ではございますが、さような行為が証拠隠滅罪等に該当するということが立証できた場合には私どもがコメントできますけれども、そうでないものにつきまして、捜査もしていないままに、これがけしからぬというような批評の仕方というのは差し控えさせていただきたいと思います。
  149. 中西績介

    ○中西(績)委員 そういうように言うだろうと思いました。  そこで、人員の上で大変なごまかしをしておる。いいですか。五十六年には文部省からいただいたのでは六十七人になっています。ところが実際には百三十六人特別入学をさせています。それから五十七年が同じように四十四名になっておりますけれども、これは百二十五名になっています。しかもこの平均額は、五十六年は百万円になっていますけれども、私たちが裏づけで今度ずっと調査に入りまして聞きましたところ、五十六年の場合には一人当たり大体百四十万から百五十万ということを言っています。入って、直接その衝に当たった人から聞きました。この人には大変な嫌がらせが行われましたけれども。したがってこの金額差は、ここでは五十六年には六千六百八十万になっていますけれども、もしこの百万円で計算をしますと一億三千六百万円になります。同じように五十七年度は百三十七万になっていますから、これでいきますと、百二十五名となりますと一億七千百二十五万という金額になります。文部省の金額は六千六十万になっています。こういう中身の大きな違いとそれから平均金額が全然違うということ、これらは全部そうした内容を調査することができなくなるという仕組みになっています。  そしてもう一つ大事なことは、本年度、五十八年度の場合、特入、いわゆる特別入学はやめた、こういうように言っていますけれども、特別協力金なるものを取るようになっています。その特別協力金を見ますと、確かに説明はいろいろごまかせるようになっておりますけれども、それがごまかしがきかないんですね。ことしのものを見ますと、私、票を持って来ておりますが、これを見ていただくとわかります。これは「振込金領収証」「振込通知書」「振込依頼書」などとちゃんとつづりになっています。この中に「特別協力金」というのはすでにちゃんと刷り込まれていますよ。そして今度は、銀行に振り込んでくれ、こういうふうに言っています。その上に立って、金額の訂正してあるものは受け取らないでくださいというただし書きがついているのですよ。だからこれは、自由裁量によってやるという中身ではありません。これをしなければだめだというしろものなんです。ちゃんとそうしたことがことし使われているのです。十五万ですよ。一般の場合には十万、こういう式になっています。ですから、何人入学させているかということを聞きましたところが、大体二千九百人入学をさせるようになっています。ここの定員は二千百二十人です。ですから一三六%文部省指導より多いですね。そして、しかも推薦が千八百八十五人、一般が千十五人、これを計算いたしますと、推薦の場合が二億八千二百七十五万、それから一般の場合が一億百五十万です。合計しますと、三億八千四百二十五万になっています。しかも、これ以外に二またかけていて納めている人が千人くらいおるというのですね。ということになりますと、大体五億を超える金額になっている。これは強制じゃないと言っているけれども、事実取っているものを、これもごらんにになったらわかります。こういうやり方でやっておるということをお気づきですか。これは調査に入られたところ、検査院。
  150. 向後清

    ○向後会計検査院説明員 検査の対象といたしましては、先ほど申し上げましたように、五十二年度から五十六年度まででございまして、いま先生の、五十七年、五十八年度については検査の対象といたしておりません。したがいまして、寄附金の受領額は、私ども掌握いたしておりますものは、五十一年度以降五十六年までに十三億一千二百万でございます。ところが、寄附者の氏名、金額、その内容を明らかにいたします資料は破棄されておりますので、その実態は不明となっております。
  151. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなりますと、文部省はこれからどういう対応をするか、明らかにしていただきたいと思います。これは後で聞きます。  それ以外にもたくさんあるので、大変残念ですが、もう一点だけいま時間をお許しいただいて質問を申し上げたいと思いますのは、九州造形短大跡地と宗像の県有地との交換についてです。  この造形短大跡地は六千八百五十九平方メートル、宗像の県有地は十六万八千五十平方メートル、金額は七億四千五十万円と七億四千百万円、これで等価交換しておるのです。ところがおもしろいことに、五十四年の十一月に折衝を開始しているのです。そして五十五年の三月に農政部が県の管財課へ移管をしました。そして同じ月の二十二日に用途変更をしています。農地としては使わない、宅地に変更しています。これは、県という公的機関だから信頼されて直ちに宅地に変更ができた。一般的にはそう簡単にできません。こうやられたものが、五十五年の五月二十九日に等価交換をされたわけです。そしていまは市街化調整区域であるけれども、これをもし市街化区域にした場合には、計算をすれば直ちにわかりますように、平野という副理事長が、この前私たち調査に入ったときに、酒の席だからということを言っておりましたけれども、逆に本心が出たのじゃないかと思うけれども、十数億円もうけたということを皆さんに公言しておるわけです。こういうように、評価額は間違ってないということを盛んに言っています。県当局も言っています。私たち入った場合に言っていますけれども、問題になったからいまそういうように言っておるのであって、こういう大きな問題がいわゆる亀井県政の中におけるそうしたものと深いかかわりがあると言われております。そういう交換などによっていろいろやられておるということが明らかになってきています。  この点、警察庁、現地ではどうやられたか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  152. 森廣英一

    森廣説明員 私どもは、いま伺ったわけでございますが、福岡県警の方では昨年十二月の県議会で問題になったということは承知をしておりまして、関心は持っておるということでございます。ただ、犯罪がそこにあるのかないのか、そういうことももちろんわからないわけでございまして、果たして犯罪になるかどうかということも含めまして関心は持って、いろいろな情報の収集はしておる、かような状況でございます。
  153. 中西績介

    ○中西(績)委員 時間が参りましたので私はこれより以上できなくなってきたわけでありますけれども、大臣、挙げていきますと、私いま挙げたのは、不正受給の問題につきましても裏口寄附金の問題にいたしましてもまだまだ多くの問題が後に残されております。そのほか、挙げるとたくさんの問題が出てくるわけでありますけれども、きょうはこれを明らかにすることができませんでした。したがって、先ほど検査院も言われましたように、きわめて悪質である。それから、いま言うように、内容的には五千万円程度のものしか送検はされておりませんけれども、実質的には一億六千万という、こうした従来にない、しかもこれが長期にわたって、いまのところ問題になっているのは五年間ですけれども、それより前、しかも、私たち入ってわかりましたけれども、五十二年から五十六年までの公認会計士、もう名前は言いませんけれども、五十六年の七月に脳出血で死亡しております、この人がなってから特にそういう点が顕著になってきています。だから、公認会計士までこうして押さえ込み、またそれより以前に、しかも事件が起こってきたのはいまの理事長が実権を握るようになってきてからです。ところが、いま今度は出されております大学側から、五項目に対する指摘、それに対する回答として出てきておるものは、内容的に果たして納得できるものかどうか、私は大変な危惧を持つ中身になっています。しかも、降格をするという副理事長あるいは常任理事、それはいまもちゃんと常任でいっているんですよ。なぜなら、この機構を後でお届けしますけれども、全部その中にちゃんと部長として入っているのです。ですから、この人たちは全然やめないのです。降格はされるけれども、非常勤どころじゃないのです、常任でちゃんとそこに残り、いままでの組織、機構の中の重要なポイントにちゃんと入り込んでいる。それをかえるということじゃないんですね。  こういうこと等を考えてまいりますと、私は、いま文部省の対応の仕方は大変手ぬるい感じがいたします。ですから、学校教育法に照らしてちゃんとした措置をとるかどうか、その決意を――私は時間があればこれを全部やれば御納得いただけると思ったのです。しかしきょうは時間が大変制限されましたからそれまでに至っておりません。しかし、大体概要はおわかりいただけたと思うのです。この点について、学校教育法に照らして、これからどう措置するのか、この点を大臣の方からお答えいただきたいと思います。
  154. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 九州産業大学、中村学園の事態については、いまいろいろ御指摘がありましたが、その内容全部を私は知っておるというわけじゃありませんけれども、いままで報告を受けたりしておりますところを見ると、きわめて遺憾と申しましょうか、悪質であると思っております。学校という教育の場がこういうことであってはならないということ。特に私はあの教授その他のごまかしがあったということを聞きまして、これは私学振興財団に担当してもらっておるわけでございますが、書類だけ見ればそれで済むというようなことでは相ならぬということを申し伝えておるわけでございます。いままでは大学ですからそれを信頼するという気持ちもありますけれども、ただ書類だけ見てこれが教授であるかどうかということで判定するということは、大変な間違いを起こすおそれがある。今後厳重にしてもらいたいということを当局から伝えさせておりますが、いままだまだ、この九産大の経営体制の処理については文部省としてはこれで決着がついたと思っていないのです。御承知のとおり、信頼を受けるような体制にすることを期待して勧告しておるわけでございますから、まだその推移をもう少し見守って措置をしたい、かように考えておるわけでございます。
  155. 中西績介

    ○中西(績)委員 終わります。
  156. 葉梨信行

    葉梨委員長 午後零時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ────◇─────     午後零時四十六分開議
  157. 葉梨信行

    葉梨委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊賀定盛君。
  158. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ただいま御提案のありました国立学校設置法の一部を改正する法律案に関連して、若干質問をいたします。  まず、俗称教員養成大学の設置の経緯等について伺います。
  159. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 新しい教育大学の設置の経緯ということでのお尋ねでございますが、教員は御案内のとおり、高度な専門職としての資質能力を必要とするわけでございまして、その点は教員養成の段階でも資質能力の向上に努めることが必要であり、また教員としての経験なりあるいは不断の研修努力というものからそういう専門職が形成されるわけでございます。その研修努力を助長する趣旨から現職教員の研修を目的とする新しい構想による大学院と初等教育教員に幅広い統合的な学力を養うというようなことで、従来の教育学部とは違った形での工夫改善を加えました新しい構想による教員養成大学を創設するということにつきまして、昭和四十七年七月に教育職員養成審議会からも建議をいただいたわけでございます。  その建議を受けまして、四十八年度に新構想の教員養成大学に関する調査会を設けまして、その調査会では四十九年五月に教員の資質能力の向上のための新しい構想による教員のための大学院大学を創設する必要があるということ、そしてその基本的なあり方について提案をいただいたわけでございます。  この提案の趣旨を受けまして、昭和五十三年十月に兵庫教育大学及び上越教育大学ができ、また昭和五十六年十月に鳴門教育大学が創設されたわけでございます。  以上が設置に至りますまでの経緯でございます。
  160. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 兵庫教育大学が五十三年の四月に設置されたわけでありまして、もうはや数年経過しておりますが、現状をどう認識しておられますか。
  161. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 兵庫教育大学の現状についてのお尋ねでございまして、設置は五十三年度でございますが、大学院の学生から受け入れてきたわけでございます。昭和五十五年度は入学定員は百五十人に対して実際の入学者は百四十六人。五十六年度が入学定員二百に対して百八十六人。五十七年度は三百人ということで三百人が全体の完成年度でございますが、三百人の入学定員に対して二百七十六人の入学者でございます。ちなみに、これらの中で三年以上の教職経験を有する現職教員は、たとえば五十七年度の場合で申しますと二百七十六人中二百三十七人が現職教員ということで、現職教員の資質向上のためという設置の趣旨から見ますれば、入学者にそういう現職教員が入っているという点では設置の趣旨は果たされているのではないかと考えております。なお、学部学生については、昭和五十七年度から受け入れることになっておるわけでございまして、入学定員二百人に対して入学者は二百六人になっております。  以上が学生の状況でございますが、教官は現在百四十一名でございまして、今後さらに学年進行で整備が図られていく予定でございます。
  162. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 ここに前の文部大臣をやっておりました内藤誉三郎「戦後教育と私」という最近の本がありまして、これにこう書いてあります。「文部省が長い間、懸案としてきた現職教師の再教育を目ざす新構想の大学院にも比重を置いた教育養成大学は、ブロックに一ヵ所設置を目標にスタートし、五十五年春に兵庫教育大学が開校、五十六年に上越教育大学が開校、五十九年には鳴門市にも教育大学が誕生する。一般の大学院と異なり、ここでは小・中・高の現職教師を二年間(修士課程)現職のまま再教育する初めての試みである。また、この教育大学の学部には現職教育教育研究効果を及ぼすようにし、入学から卒業までの四年間、毎年教育実習を行うことにもしている。  このような養成計画が軌道に乗り、優れた教師が送り出される日が一日も早くと祈りたい気持ちである。」、そして同じく「第一次の教育革命は明治維新の学制発布である。」云々、「ついに明治二十三年、教育勅語が発布されるに至った。」後略、「第二次の教育革命は終戦後の六・三制の採用であった。このときは教育の機会均等が旗印で、従来の複線型の教育制度から、誰でも高校、大学に進学できる単線型の六・三制に踏み切った。その結果、教育はすばらしく普及した。第三次の教育革命は、当然、この第二次教育改革の欠陥を是正するものでなければならない。その意味で幼児教育や特殊教育の振興、あるいは入試制度の改善、教員の資質向上が取り上げられなければならないが、それより前に第三次の教育改革を貫く根本理念が欠けていてはどうしようもない。」以下、略します。内藤さんがごく最近出された本でこう指摘されております。  内藤さんという人は、長年文部省に育って文部大臣までおやりになった方でありますが、この記述をどう御理解なさいますか。
  163. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点、教員の資質向上が戦後の教育改革の中でも非常に大事な点について触れられている点でございまして、大きな流れとしては、教員の資質向上については、言われておりますように戦前の師範教育から戦後の開放制の原則に立ったわけでございますけれども、その開放制の中でも教員の資質向上ということが非常に重要な点であるという点は御指摘のとおりではないか、かように私ども考えます。
  164. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、「第三次の教育改革を貫く根本理念が欠けていてはどうしようもない。」というくだりにつきましては次の機会に譲らしていただきまして、教員の資質向上、教員の再教育という点についてのみ、きょうは触れさせていただきたいと思います。  そこで、私は先日、ちょうど兵庫県で近くであるものですから、兵庫教育大学に伺いました。そして一つ一つお伺いしたわけですが、まず第一に、大学院に入学する場合に、現職教員でありますから、ということは月給をもらったまま入るわけでありますから、したがって教育委員会の同意を要するということはわかる。そうしなければ月給もらえませんから。ところが、市町村教育委員会が同意をする場合の同意の基準がどうなっておるのか。  それから私は、昭和五十八年度兵庫教育大学大学院学校教育研究科の学則、案内状を全部もらいましてずっと読んでみたのですが、同意を要するという言葉一つもないのですね。この募集要項の第八ページに「兵庫教育大学の趣旨・目的」「(1)今日、教員には」云々、これこれとありまして、「学校教育に関する理論的、実践的な教育研究を進める「教員のための大学」、学校教育の推進に対し「開かれた大学」として構想され、」云々とあるわけです。この学則を見ると、開かれた大学だと言うのだけれども、一番大きな要素をなす同意という文字が一字もないということは、逆にこれは教員養成大学が閉ざされた大学ではないのかという印象を受けた。同意を要するということが学則に一つも書いてないのです。これはどういうことか。同時に、同意する場合の基準ですね。
  165. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 初めに、同意をする場合の基準についてのお尋ねでございますが、市町村立学校の県費負担教職員については、入学志願者からの申請に基づきまして市町村教育委員会が都道府県教育委員会と協議の上受験の同意を与えるということになるわけでございます。  そこで、同意を与える場合の基準でございますけれども、大学院入学時において教職三年以上という経験を持ち、かつ積極的な勉学意欲を有する者につきまして、一般的な基準といたしましては、入学志願者が修了後も都道府県において教員として引き続き勤務する意思があるということ、それから入学志願者の大学院への派遣が学校運営上支障がなく、かつ将来のため有益であるというようなこと、入学志願者の心身が長期研修に耐え得るものであることというような点が基準として挙げられているわけでございます。  お尋ねの第二点の同意についての問題点でございますが、私手元に持っております「昭和五十八年度 兵庫教育大学大学院学校教育研究料 修士課程学生募集要項」でございますけれども、その学生募集要項の中に「出願手続き」がございまして、「出願書類等」といたしまして、入学願書、受験票等以下必要書類が掲げてあるわけでございますが、その中に同意書というのがございまして、現職者については……(伊賀委員「僕も持っているよ、何ページ」と呼ぶ)募集要項の二ページであろうかと思いますが、その「出願手続き」の中に「出願書類等」というのがございまして、そこに同意書を掲げてあるわけでございます。
  166. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 わかりました。
  167. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 同意書が出願書類として添付されることになっているわけでございまして、そこにございますように、現職者については「現に学校、官公庁又は会社等に在職している者で現職のまま本学大学院に入学しようとするものは、本学大学院の受験についての所属長(例えば、公立の小・中学校の教員にあっては市町村教育委員会)の同意書を提出すること。」ということが定められているわけでございます。
  168. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこで、既存の大学の教育学部、教員養成大学が十あるわけですが、この既存の大学の大学院に組織の教員が派遣される場合、入学する場合はどうなっていますか。
  169. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 既存の教員養成大学の大学院の場合についてのお尋ねでございますが、現職のまま大学院に入学する教員については、大学としては入試事務の処理上あらかじめ現職のまま入学することについて教育委員会等の同意があることを確認しておくことは必要であると考えております。これは既設の教員養成大学におきましても、教員の場合に限らないわけでございまして、一般に、たとえば公務員でございますとかあるいは民間企業の社員が勉学のために大学院に入学するというに際しては、通例所属長等の受験承諾書の添付を必要とすることとされているわけでございます。
  170. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 現状は。
  171. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 現状についてのお尋ねでこざいますが、既存のものについて、たとえば東京学芸大学の場合で申しますと、受験手続としては官公署その他民間会社等に在職中の者は所属長の受験承諾書、たとえば横浜国立大学の場合についても申し上げますと、官公庁……
  172. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 いや、既存の十の教員養成大学の中に現職教員が行っておる場合の現状はどうなっていますか。
  173. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 質問趣旨を取り違えておりまして、大変失礼しました。  既存の教員養成大学の大学院に現職教員が何人在学しているのかというお尋ねでございますが、兵庫教育大学院を除きまして既存の教員養成系の大学院に在学している者の数でございますが、ここ数年来徐々に増加してきておるわけでございます。五十七年度において既設の十大学の研究科に在学する現職教員は全体で七十四名でございます。ちなみに昭和五十六年度以前の入学者が三十三名、昭和五十七年度入学者が七十一名という状況になっております。
  174. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 やはり給与は支払われたままですね。
  175. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 その現職教員の在学の形態についてのお尋ねでございますけれども、全体の在学者の中で、現職教員のうち、教育委員会等からの研修派遣という形で扱われておりますものが五十三名、ほかに時間外通学が十八名、休職の扱いが三名というような状況になっております。
  176. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうしますと、既存の十の教員養成大学があって、そこに現職のまま入学できるなら無理に教員養成大学、たとえば兵庫教育大学とか上越というような教員養成大学をつくる必要は、既存の大学の定員をふやしたらそれでいいことなんであって、どこに差があるのですか。
  177. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 最初のお尋ねの際に御説明もいたしたわけでございますけれども、新しい教育大学を構想しつくりました趣旨は、一つは現職教員の研修を目的とする新しい構想による大学院という考え方をまずとっておることが第一でございますことと、それと初等教育教員の幅広い総合的な学力を養うというような観点があるわけでございます。  具体的な点で若干御説明を申し上げますと、たとえば兵庫教育大学の場合で申しますと、現職教員として入っております大学院の学生がいるわけでございます。五十七年度から新たに学部の学生が入ってくることになったわけでございますが、たとえば教育実習というようなものにつきましては学部の学生の第一学年の段階から教育実習を実施するということで対応してきております。その際に、現職教員で入っております大学院の学生が教育実習については実質的に学部学生に対していろいろ助言をするというような具体的な学部学生と大学院学生との教育実習の面でのそういう対応ができておるというようなところが、具体的な実践的な教育研究が行われるということの一つのメリットがあるのではないか、かように考えます。  なお御指摘の点は、既存の教員養成大学の大学院の入学定員をふやして、そこで現職教員の受け入れをすればその点は達成されるのではないかということでございますが、既存の研究科のあり方とこの新しい構想の教育大学の研究科では、具体的な研究科の立て方につきましても総合的な実践的な教育指導に重点を置くというような考え方で対応しているわけでございまして、私ども兵庫教育大学の過去の大学院の学生、それから新たに受け入れました学部学生の教育につきましても、そういう意味で十分評価をされる中身の教育が実現をされている、かよう理解をしております。
  178. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そうおっしゃいますけれども、私時間が十分でありませんでしたから十分な調査ができておりませんが、この教員養成大学ができるときに国立大学はむしろ反対をしておられたのですね。そして教員組織表ももらいまして、その先生方一人一人の経歴とか経験とかいうようなものについてもと思いましたけれども、これはちょっとそこまでいままだ調査ができておりませんけれども、学長さんはどなたかと聞いてみましたら、谷口澄夫さん。どこからおいでになりました、岡山大学長をしておりました。専攻は日本史でございます。あそこには御承知の神戸大学の教育学部がありますから、神戸大学の教育学部と兵庫教育大学との協力体制というようなことはいかがですかと聞いてみました。まあ、できております、こういうことでして、それ以上は突っ込みませんでしたが、これは私の印象ですから的確な証拠があって言うわけじゃございませんが、設立の目的は確かに教員の再教育ということが大きな眼目で、いま御指摘になったようなものをねらいになったかもしれませんけれども、やはり教育は人ですから、だからそこにどういう教授が集まってというようなことを考えてみますると、私は、それは発足して間がありませんからまだ十分な体制がとれていないと言えばそれまでかもしれませんけれども、教員組織等におきましても、この言葉は適当かどうかわかりませんが、たとえば学問的な立場からいいますと、予備校とかあるいは後備役の方々が寄せ集めという言葉は適当じゃないかもしれませんけれども、何かそんな感じがしてしようがないわけで、本当に既存の教育学といいますかそれぞれ専門の学問的なそういう方々がこぞって、ないしは新進気鋭のそういう方々が兵庫教育大学に集まっておるとは考えられないわけです。だから事志と違いまして、現実には学問的といいますか人的といいますか、そうした学問的資源、人的資源の面においては文部省のお考えになっておることと逆にいっておるではないか、こういう感じがしてなりませんか、いかがでしょう。
  179. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 兵庫の教育大学の創設に当たりまして、教官の採用については、先生いま御指摘のような新しい教育大学の構想について十分理解を持ち、かつそれを積極的に実現していくような意欲のある教官にお集まりいただくということが大学の本来の趣旨を達成するために必要なことはもとより一番肝心なところであろうかと思います。兵庫教育大学の開設に当たりましても、その大学創設の趣旨を十分理解いたしまして、その実現に十分努力をいただけるような方々にお集まりをいただいたというぐあいに私ども理解をしております。具体的には、広く全国から公募を行っておるわけでございまして、たとえば既設の教員養成大学からは四十八名が採用をされております。全体の数で申せばほぼ三割近い数字になろうかと思います。  なお、兵庫教育大学、上越教育大学の場合もいずれもそうでございますが、既設の教育大学の組織でございます日本教育大学協会というものが組織をされておるわけでございますが、その中にもちろん加盟をしておりますし、教員養成に関して既設の教育大学と研究その他で交流を行っていることはもとよりでございます。いずれにいたしましても、既設の教員養成大学との相互交流ということは御指摘のように望ましい点でございまして、これらの大学が活性化を図っていくために一番大事な点は教員構成にあるわけでございます。そういうりっぱな教員構成になるような方向を今後とも努力をしてまいらなければならない、かように考えます。
  180. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 後ほど触れるつもりですが、これは御承知のとおり加東郡社町というところでして、人口が一万五千ほどの町なんです。新進気鋭の先生方が集まるということは、やはり人間ですから自分の子供さんの教育のことも考えるわけでして、なかなかあの田舎まで教育盛りの子供さんを持った先生方が既存の大学を離れて行くだろうかという疑問があるわけです。現に通勤は不可能でありますから、ずっと調べてみますと独身寮と世帯持ちの寮がありまして、世帯持ちの方を見せてもらいました。これは百世帯分、それから独身の方が、これは学生も含めてのようでありますが四百世帯ですかの新しいアパートがありまして、買い物なんかも、どこで買い物するのですかと言ったら、いや、この中にスーパーみたいなものがありましてと、そのスーパーも見せてもらいましたけれども、ざっとした日用品は整いますが、現実の問題として優秀な先生方が、学問の情熱に燃えた人たちが果たしてあの場所に行くだろうかという疑問を持ちました。  同時になかなかりっぱな建物でして、だから新設の兵庫教育大学というのは、学問的、人的資源は十分に活用されていないが予算面ではずいぶん手厚く優遇されているのだなという印象を受けましたがどうでしょう。
  181. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 施設整備につきましては、もちろん御指摘のように社町に校地、校舎を求めて新設をいたしておるわけでございまして、そういう意味では施設、建物につきましてはすべて新設の建物でございますので、予算的にもそのための必要な予算額を投入をしておるわけでございます。  立地条件についての御指摘があったわけでございますけれども、私ども社町の立地条件といたしましては、優秀な教官があそこでは来ないのではないかという御指摘でございますが、現在の教員構成から申せばその点は必ずしも私どもはそのようには理解をしていないわけでございまして、阪神地帯から車で約一時間弱で、車で交通もできる地点でございます。もちろん教員宿舎等については十分整えるということをいたしておりますけれども、全体的な立地条件から見れば必ずしも劣悪な条件のものではない、かように理解をしております。
  182. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 そこでもう一度戻りますけれども、既存の教員養成大学にも同意書があれば派遣されるわけでありますから、今後は兵庫教育大学や上越教育大学のみならず既存の教育学部に現役のままどんどん派遣するということになれば、私はもっと幅広く文部省のねらう教員の再教育というものは可能だと思います。したがって、今後既存の教員養成大学にも現職教員のまま派遣することにもう少し文部省も熱を入れるべきだ、こう思うのですね、いかがでしょうか。
  183. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 この新しい形での教育大学については、御案内のとおり兵庫と上越と鳴門と三教育大学をすでに整備することで法律上設置を見ておるわけでございます。ただいまのところ、私どもこれ以外に新しい構想の教育大学を考えているという点は現時点ではございません。したがいまして、このただいま御提案申し上げております法律案についても、既存の教育大学の大学院の整備について、奈良教育大学と福岡教育大学の大学院の整備について御提案申し上げておるわけでございますが、御指摘のように、既存の教育学部の大学院につきましても、それぞれ教員構成その他十分整備が整いましたものについては順次大学院の整備を進めていくということは、かねて私どもとしても進めてまいってきておる点でございまして、そういう意味では、先生御指摘のように、新しい教育大学を今後つくるということはいまのところ考えておりませんし、既存の大学院の整備ということについてはさらに進めていく考えでございますので、御指摘のような点もそういうような意味で、既存の整備をされてまいります教育学部の大学院で研修としての派遣の教員が受け入れられればそれだけその枠は広がるということになるわけでございます。
  184. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 次に給与、資格です。聞いてみますと、新教員養成大学では給与も資格も新しく付与されませんというのですね。既存の教育大学の場合には、修士課程を出ますると高一の免許が取得できます。ところが、兵庫教育大学では、局長おっしゃるように教員組織も優秀で、施設も優秀で、新しい教員養成の目的に合致しておる新制大学で二年間勉強しましても、資格は何も変わりございません、これは不公平ですね。
  185. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お尋ねの趣旨をあるいは私正確に把握しているかどうか、ちょっと何でございますが、御指摘の点は、既設の教員養成大学のうち大学院が設置されているもの、これは現在十大学あるわけでございますが、高等学校の一級免許状の課程認定を受けているものがその中でも六大学あるわけでございます。そしてその理由といたしましては、それらの大学の学部において高等学校の二級免許状を取得した学生が大学院に入学して高等学校一級の免許状の取得を希望するというようなこともございまして、教育職員養成審議会で御議論をいただいた上、教員養成大学の大学院についても、教育課程など適切なものについては、大学からの申請に応じて認定をするということになったものでございます。なお、このことについては、昭和五十五年でございますが、教育大学協会から教育学研究科に高等学校の一級免許状の認定の要望もございまして、それ以来、先ほど申しましたように、申請のありました大学院についてはその認定を行っているということでございます。ところが、一方、兵庫教育大学もそういうことになるわけでございますが、こういう新しい教育大学、兵庫、上越、鳴門の場合が該当するかと思いますが、これは先ほども申しましたように、初等教育教員の養成課程のみが置かれておりまして、高等学校教員の養成は行っていないわけでございます。これは本来この新しい教育大学が初等教育教員の養成、その資質の向上ということを基本的なねらいとしているわけでございまして、したがって、この兵庫教育大学の場合について申しますと、高等学校の二級免許状を授与する認定は受けていないわけでございます。大学院についても同様認定を受けていないわけでございます。そのような点で、高等学校の免許状が既設の教育学部の大学院で課程認定を経ておるものについては、そこを修了すれば高等学校の一級の免許状が授与されるということはございますが、兵庫教育大学の場合にはその点がない、あるいはお尋ねの点はこの点であろうかと思いますが、それは以上のような設置の趣旨がそのように、本来目的とする点が初等教育教員の養成なり資質の向上ということが基本的にあるわけでございます。
  186. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 資格上に差がないのですから、給与も当然それに右へならえということで、わかりませんけれども、時間がございませんから、次に進みます。  その次は、これは大きい県はそうですが、兵庫県には昔、御影師範と姫路師範というのがありまして、これは学閥として隠然たるものが――もういまはありません、神戸大学一本に残りました。ところが現場では、神戸大学教育学部を出た若い先生たちが、これは二つの組織がいまでもあるわけですが、その組織の会員にどんどんなっていくわけです。したがって、依然として学閥というものが教育界を阻害する、全面的とは言いませんけれども、ある種の要因をなしておることは御承知だと思う。そうしますと、同じ兵庫県に今度は、まだ卒業生が少ないからいいですけれども、兵庫教育大学出身の小中、幼稚園の先生と神戸大学教育学部の出身ということで、それで入学者の出身別を出してもらいましたら、やはり地元ですから、兵庫県が一番多いのです。これは昭和五十七年ですが、兵庫県四十一人、大阪三十三人、東京二十二人、広島十二人、奈良十一人、北海道十人、岐阜県十人、その他三十七県で百三十七人ということで、やはり兵庫県が一番多い。これは地理的にやむを得ぬでしょう。そうすると、将来少なくとも兵庫県の中では、神戸大学の教育学部出身と兵庫教育大学出身の大きな学閥が今後兵庫県の教育を阻害していくのではないかという心配が大いにあります。だから、逆に言いますと、私は無理に兵庫教育大学なんて言わなくたって、あんな片田舎に、むしろ神戸大学教育学部の社分校で十分だ、私はこう思います。いかがでしょう。
  187. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 最初のお尋ねにお答えした際に、新しい教育大学の設立の経過なり構想の考え方は御説明をしたとおりでございます。御指摘の点は、兵庫県内に神戸大学の教育学部と兵庫教育大学という二つのものができて、具体的に地理的な条件からすれば、御指摘のように兵庫教育大学の在学生についても兵庫県出身者が多いことは事実でございます。ただ、いわゆる戦前の師範学校時代のそれぞれ、従来兵庫の場合も御指摘のように二つの師範学枝があって、それぞれの学閥と申しますか、戦前は教員人事等についてもいろいろその弊害が見られたという点は御指摘のとおりでございますが、今日の開放性の教員養成制度になりましてすでに三十年も経過しているわけでございます。したがって、従来の師範学校卒業者が義務教育の学校の教員として在学している方々の数というのは、今日では数としてもきわめて少なくなってきておるわけでございまして、いわば原則的な四年制の大学を卒業した教員が教員構成の中でも大きい比率を占めてきているわけでございます。したがって、もちろん県内の大学なりあるいは他県からも応募をしてくるわけでございまして、教員採用に当たりましても、そういう他県の大学からも応募して入ってくるというような状況があるわけでございまして、御指摘のような、神戸大学教育学部と兵庫教育大学の卒業生が兵庫県教育のために将来禍根を残すようなことのないようにという御心配をただいま御指摘をいただいたわけでございますが、そういうことはゆめないように、これはもちろん県内の教育行政を預かります教育委員会も当然考えなければならぬことでございますし、大学は大学としてそれぞれの大学で必要な教員養成を行って送り出すわけでございますが、それぞれの大学はそれぞれの大学としてもちろん教員養成という観点から、先ほども申しましたような教育大学協会というようなところで、一つの組織のもとで、教員養成のための必要な研究、またその研究について交流し合うということも必要でございますが、そのことが、従来ございましたような師範学校によります学閥というようなことのないように運営されるべきことはもとよりでございまして、その点は開放制の教員養成制度をとってまいりましてすでに三十年を経ているわけでございまして、いわばその長所をますます伸ばすような形で、短所となるようなことが出てくることのないように、その運営については十分気を配ってまいらなければならぬ事柄ではないか、かように考えます。
  188. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 それから局長、卒業生が現場に帰っていくわけです。ところが、卒業生が現場で歓迎されない。というのは、同意をもらうのも何かこそこそと同意をしてもらって行くわけです。そうすると、普通ならば同じ職場で歓迎会だとか送別会だとか、帰ってくれば歓迎会だとかいうようなことで受け入れられるのですが、この兵庫教育大学の卒業生に限りましても、ぼつぼつ現場に帰る先生方がおるわけです。だから出るときも、何か現場の先生に聞いておると、あれ、新学期が始まっておるのにあの先生は来ぬではないか、どこへ行ったんやろう。しばらくしてから、どうも兵庫教育大学に入ったらしいな、こういうことのようですね。したがって、帰るときにも大手を振って現場に帰れない、やむを得ぬから市町村の教育委員会に入るというような、全部が全部じゃないでしょうけれども、ここら辺やはり兵庫教育大学というのは現場にもそういう波紋を及ぼしておりますし、本人も何か肩身の狭い思いでいるのが実情です。そういうことを御存じですか。
  189. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 いま御指摘の点は、恐らく研修ということで、もちろん給与をもらいながら大学院へ行って勉学をしていただくわけでございまして、最初のお尋ねの際にございましたような同意を与えるについての基準ということについて御説明申し上げたわけでございますが、積極的に勉学の意欲があり、かつ、大学院で二年間の勉学を終えた後さらに現場に復帰して教員となる意思を持っているというような方々に入学をいただいているわけでございます。御指摘のように、大学院については卒業生が出る年になったわけでございまして、それぞれ現場に復帰をするということになるわけでございます。いま御指摘の点では、その勉学をした学生自身が復帰に当たって必ずしも周囲から歓迎されていないというような事柄について御指摘がございましたが、私どもが理解しておる点で申し上げますと、やはり非常に意欲のある方々が大学院に入っていただいているわけでございまして、たとえば従来の大学でございますと、大学院の学生というものは、学部から直接大学院学生になったようなケースでございますと、いわば教職の経験のないままで大学院へ入ってくるわけでございます。それに比べまして、現場で三年以上の経験を経て、いろいろ現場でいわば直接現場の体験を経た問題意識を持っている人たちが大学院の学生で入ってきているわけでございまして、そういう点は、普通の学部から入ってきております大学院学生に比べまして問題意識が非常にはっきりしているし、教官との間でも非常に活発なやりとりをするということが現実に出てくるわけでございます。したがって、兵庫教育大学の大学院の先生方にしますれば、ぼんやりしておると学生からいろいろな点で突っ込まれるというようなこともございまして、いわばそういうような面でも非常に活発なやりとりが行われていることも聞いているわけでございます。そういう現場の経験のある先生方が、それも各地から集まってきて、それぞれ各地の現場で問題意識を持っておる先生方がお互いに、いわば切磋琢磨と申しますか、そういう機会があることは、そういう先生方の資質向上には非常に役に立っておる、また、その方々が現場に帰りましてほかの先生方に対してもそういう意味でいい意味での刺激になることが、この大学院をつくってまいりました一つの大きいねらいでもあるわけでございます。そういういい意味での刺激が新しい職場に広がっていくことを私どもとしても期待しているのでございます。
  190. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 しかし、そうばかりじゃありません。いま私が指摘をしたようなことが本当の姿なんです。局長はどこから聞いたかわかりませんが、それは雑音ですから、雑音に耳をかさぬように、現実を的確に把握してやってもらいませんと、やはり今後問題が起こるだろうと私は思います。  最後ですが、附属に幼稚園、小学校、中学校があります。神戸大学は神戸と明石に附属を持っておるわけですね。ああいう町なら隣にだれが住んでおろうとあいさつする必要はありませんし、隣の子供さんがどこの大学に行っておるか関係ないことですが、それが逆に忠生中学校みたいなことになったり校内暴力も生んだりしておるのですが、この社というところは、冒頭申し上げましたように、人口一万五千そこそこでして、地縁と血縁、これもいい面と悪い側面とがありますけれども、純朴な農村ですね。その中で、あれは附属の幼稚園、あれは附属の小学校、中学校だということで一つの連帯感といいますか、純朴さというものを破壊しつつあるわけです。こういうことにお気づきになったことがありますか。
  191. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 兵庫教育大学の附属学校につきましては、当初設置をいたしました際に、特に小学校について五十五年度から一年生及び四年生の受け入れを開始したわけでございます。そういうことで、五十七年度に学年進行で完成を見たわけでございまして、当初入学定員に対して在学者が少ないというような事柄もございまして、欠員を補充するための追加募集というような事柄を行いましたことについて、地元の一部から既設の公立学校の学級編制に影響を及ぼすというようなことが指摘をされて問題が提起されたことは、法案の審議の際にも御議論をいただいた点でございます。そういうような経緯がございまして、大学においては、五十七年度以降の募集に当たりましては、新しい一年生以外の学年の児童の受け入れについては一般的な公募は行わないというようなことで、指摘されておりました問題点をできるだけ解決しますように改善、工夫をしてきておるということを聞いているわけでございます。  そこで、現時点でございますが、小学校につきましても順次在学生が定員を満たす状況になってきておりまして、この点は、一つには幼稚園からの連係進学者というようなことも定員を満たすことになってきておる原因の一つであるわけでございます。  御指摘の点は、附属の幼稚園なり小学校へ行っている者と土地の学校へ行っている者との間に、格差感といいますか、そういうような気分を植えつけることになっているのではないかという御指摘で言われているわけでございますが、この教育大学にとってやはり附属学校は教育実習の場を確保するということで、これは教員養成大学であります以上はぜひとも必要なものでございます。なお、教育実習をやるに当たっては、地元の教育委員会なりあるいは学校の協力ももちろんいただかなければならぬ事柄でございまして、公立学校における教育実習の体験も持たせるということで、地域の公立学校の理解と協力を得て、附属学校と地元の公立学校との間の協力関係ということは大学の運営にとってもぜひとも必要なことでございますし、御指摘のありますようなそういう違和感というものが地域の方々に生じることのないように、その点は十分配慮をしてまいらなければならない点であろうかと思います。
  192. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 総括いたしまして大臣に最後に伺います。  内藤誉三郎さんは、現役の教員を再教育するために教員養成大学を各ブロックごとにつくるのだといってこの本の中で、大変息巻いてという表現もどうですか、おっしゃっておられるわけです。いま局長の話を聞くと、兵庫と上越と鳴門と三つしかつくらない。これは二階から目薬を差すようなものでして、経費を使うだけで実効は何にもないじゃないですか。そうすると、私が指摘しましたように、たとえば兵庫教育大学は神戸大学教育学部の社分校、いま幼小中の場合も教員組織それから現場の受け入れ体制等々から見まして、その方が私はより効果が上がるのではないか、こう思いますが、大臣いかがでしょう。
  193. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 お答えする前に、伊賀さんと久しぶりにお目にかかって、お互いに頭が白くなったなと思いながら承っておりました。  いわゆる教育大学、既設のものと違った形のものが先ほど来説明しておりますように三カ所できておる。これは教育関係の専門道を歩かれた内藤さんなんか書いておられますように、先ほど来お話がありますが、やはり教育は人なりというのでしょうか、教育者の人柄、見識、これが子供のあるいは学生の教育に非常に大きな関係があるわけでございますから、ただ各大学から出た人々を集めるだけでは必ずしも適当でない部面があるということで、専門的な教育者をさらに教育する学校をつくろう、私はこれは意味があるものだと思います。しかし、先ほど来いろいろ御指摘がありましたが、特に兵庫県は神戸大学と二つありますからいろいろな問題もあると思いますが、これはまだ経験が浅いわけですから、そういう御指摘の点なども改善しながら本当に意味のあるものに仕立てるということが今後注意すべきところじゃないかと思います。  なお、今後どんどんつくっていくということは、御承知のとおり行政その他の問題もありますし、これは一つの試みといいましょうか、それでやったわけでございますが、そういう状況を見ながら将来を考えなければいかぬのだと思いますが、どこでも各ブロックにつくるということまでは現在は計画を持っておらない、こういうことでございます。
  194. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 あと時間がございませんから、一括していま提案されております設置法の直接の問題ですが、高岡の短期大学について三点お尋ねいたします。  最近、新しい大学は筑波大学型と言われておるわけでありまして、筑波大学は国立学校設置法に第二章の二が起こされて、管理運営について特別の規定があるわけですね。今度の高岡の短期大学も、管理運営は筑波型ではないかと言われれておりますが、その他の大学は組織及び運営の細目については文部省令で定める、こういうことですが、どちらを活用されるのか、これが一つ。  二つ目は、専修学校との単位互換制がこの高岡ではとられようとしておるという話がありますが、これはいかがですか。  三番目は、教員任用基準の弾力化が云々されておりますが、これはどことどういう方法で教員の任用基準が弾力化されようとしておるのか、何がねらわれておるのかということについて。  時間が参りましたから、以上三点お答え願いまして、私の質問を終わります。
  195. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 お尋ねの第一点は、管理運営上いわゆる筑波大学型を考えているのかどうかというお尋ねでございますが、私どもこの高岡短期大学については現行の短期大学制度の枠内において地域の多様な要請に積極的にこたえる、そして広く地域社会に対して開かれた特色ある短期大学として設置しようとするものでございまして、管理運営面において筑波大学のように教授会にかわる人事委員会を設けたり教育組織と研究組織を分離したりするような意味での筑波大学型というのは考えておりません。既設の短期大学と同様に行う考え方でございます。ただし、地域との連携を重視した短期大学という形で、たとえば地域の声を反映させるための参与を置くことでございますとかあるいは副学長を置くというようなことで地域との連携の役割りを重視することについては考えてまいりたい、かように考えております。  お尋ねの第二点の専修学校との単位互換制が構想されているかという点についてのお尋ねでございますが、考え方といたしましては、短期大学の履修方法を弾力化することについてはかねて言われている点でございまして、専修学校の専門課程において履修した科目を短期大学の単位として認定することについては、ただいま設置審議会の短期大学基準分科会において御検討をお願いしている点でございます。短期大学の教育課程をより弾力的にするということから、すでに大学、短期大学間あるいは短期大学相互間の単位互換は制度として実現を見ているわけでございまして、専修学校の専門課程におきましても特定分野においてはすぐれた業績を上げているものがございまして、それを活用するということは有意義なことではないか、かように考えております。ただし、その具体的な単位互換をする認定をどうするかということでございますとかあるいは実施方法については、専修学校の実態も十分踏まえた上でさらに検討して結論を出していただくということにいたしております。  お尋ねの第三点の、教員任用基準の弾力化について具体的にどうするのかというお尋ねでございますが、短期大学の教員資格のあり方については、従来から、これは一般的な場合でございますけれども、たとえば教官の出身者ではございませんが裁判官でございますとか外交官とかあるいは専門技術者ということで、直接教育の経験はないけれどもそれぞれの領域で大変すぐれた実務なり経験を持っている方々にも、教育、研究上の能力があれば教官として入っていただくということがかねて言われている点でもございまして、この点も短期大学の基準分科会において御検討いただいているところでございます。基本的な方向としてはそのことは了承されているわけでございます。  高岡短期大学の場合で申し上げますと、たとえば特に産業工芸科というような学科を考えておるわけでございますが、その教育、研究の性格から、地元の伝統工芸産業、そういうところのすぐれた実務経験を持っている方々に教育研究に加わっていただくということは有意義なことではないか、かように考えております。  以上でございます。
  196. 伊賀定盛

    ○伊賀委員 終わります。
  197. 葉梨信行

    葉梨委員長 馬場昇君。
  198. 馬場昇

    ○馬場委員 最初に大臣に御質問したいと思います。  臨調答申の高等教育にかかわる部分について質問をしたいと思っておりますが、その前に、大臣文教行政に臨む姿勢がよくわかりますために、ちょっと大学と関係ありませんけれども、教科書の無償制度の存続について大臣はどういうお考えを持っておられるのか、まず聞いておきたいと思います。
  199. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 教科書無償制度については、御存じのとおりに臨調の答申といいますか意見を出されておりますのは、これの廃止をも含めてさらに検討する必要がある、こういう答申になっております。われわれ内閣としては臨調の答申は最大限尊重をして対応しなければならない、こういう考えを持っておるわけでございまして、そういう方針を決めております。しかし、物によっては必ずしもそのとおりいくとは考えられない。いまの教科書の問題については、文部省といいますか私、文部大臣としては、いわゆる無償を廃止するということは適当な措置ではない。これはいま中教審などでもどうあるべきかということをいろいろ検討願っておりますから、その意見を聞いてから政府としても検討しなければならないのですけれども、いま文部省大臣としての考えはどうかと聞かれると、私は廃止することは適当でない、結論だけ申し上げておきます。
  200. 馬場昇

    ○馬場委員 時間の関係がありますので結論だけで結構ですが、もう一つは、私学の助成につきましても臨調で触れておるようでございますけれども、これは総額を抑制せいというようなことのようでございます。この私学助成を今後拡大して強化していかれるのかどうか、これも結論だけ大臣の所信を聞いておきます。
  201. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私学については、たびたびここでもほかでも議論が出ておりますが、わが国の教育機関として非常に大事な部署を占めております。でありますから助成制度ができて今日に至っておるわけでございますが、これもやはり国民の税金で賄うわけでございますから、財政がこういうふうになりますと、私学のみならず可能な限りといいますか、教育に支障のない限りできるだけしんぼうしてもらう、これはよくわかるのです。でありますから五十八年度の予算でも、二百数十億ですか二千数百億ですか、いまちょっと数字を明確に覚えませんが、私学助成を減額いたしました。しかし、私学助成の総額は抑えましたが、遺憾ながら私学の中でも必ずしも教育的にこの助成が使われておるかどうかやや疑問の点も、先ほども議論がありましたが、たまにありますので、そういう点もよく整理をして、本当に教育に必要な部面に有効に使われるような配分をしなければならない。そういう意味考えまして、こういう際にはある態度の抑制はやむを得ない。と言いながら、また私学の振興は大事でございますから、御存じの他の新しい項目を設けて、新しい部面について新制度を設けて私学助成もやっておる、こういうことでございますので、できるだけ可能な限り私学の振興には努力をしていかなければならない、かように考えております。
  202. 馬場昇

    ○馬場委員 教科書問題につきましては所信として廃止は適当でないと、えらい歯切れがよかったのですけれども、私学助成については全然歯切れが悪くて何かよくわからなかったのですが、端的に言いまして増額する気があるのか、増額したいのか、あるいは抑制して減額していくのか。配分とかなんとかは要りませんから、今後私学助成について増額する方向で行くのか行かないのか、どうですか。
  203. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いま申し上げましたように、国民の税金でありますから勝手に増額するとかなんとか言えないのですけれども、方向としては財政の許す限り増額をしていくものだと思います。
  204. 馬場昇

    ○馬場委員 もう一点、育英奨学金の問題ですけれども、これについても臨調では利子をつけるとか償還免除をやめるとかいうようなことも触れられておるようでございますが、この育英奨学金の充実の問題についての大臣の所信を聞いておきたとい思います。
  205. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 これも御存じのとおり臨調で指摘されておりますが、今後検討を要する問題だと思います。育英資金はできるだけ拡充をしなければならない、かように考えておりますが、さればといってこれも国民の負担、税金でございます。臨調等で言われておりますのは、他の資金をこの面に増額するためにやって、可能な限りある程度の利子をもらえるところはもらったらどうかという意見が出ておりまして、これも簡単にそういうことはけしからぬという意見でもないと私は思いますが、この育英制度の本旨を、何といいますか崩さない範囲で検討を続けていきたい、かように考えております。
  206. 馬場昇

    ○馬場委員 この臨調の答申で大臣に望んでおきたいのは、国民の中には臨調によって教育と福祉が後退させられるのではないかという心配が非常にあるわけでございますね。そういう意味でこの点も実は質問をしたわけでございますが、いささかも教育に後退があってはならないということで、これは当然のことでございますので、いま大臣はその方向としてはということで私が言いました三点についてはお答えになったのですけれども、そういう立場で全力を挙げて努力をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  207. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 抽象的ではございますが、教育は短期的な問題でございません。まあ、そうは言っても皆経費負担するわけですから、それを忘れてはなりませんが、そういう意味でやはり長期的に考えて、余り銭の計算だけで教育の問題を考えてはいけないというのが私どもの立場でございます。
  208. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、高等教育にかかわる部分でございますけれども、国立大学の新設、学部学科の新増設、定員増等は全体として抑制というような方向のようでございます。これにつきまして国大協などは、長期的な政策の基調としては、国立大学の質的充実は当然ですけれども、量的にも拡大をする必要があるというふうな意見を出しておるようでございますし、十八歳人口の動向等から考えて見ますとやはり量的拡大もまた必要だ、こういうぐあいに私は思っておるのです。  そこで、まず局長に聞いておきたいのですが、いまの大学の進学率とそれから十八歳人口の大学進学希望者のパーセントとか、これはどうなっているのか、その数字をお示しいただきたいと思います。
  209. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 十八歳人口の高等学校の新規卒業者の大学、短期大学進学志願率で申し上げますと、五十七年度の場合四四%ということになっております。また、具体的に大学、短期大学に進学しております者の率は三六・三%ということになっております。なお、この進学率は五十一年の三八・六%が頭でございまして、それ以後大学、短期大学の進学率としてはほぼ横ばいで、若干下がっているというのが現状でございます。
  210. 馬場昇

    ○馬場委員 いまこの志願率のお話を聞いたのですけれども、世論調査というのではなしに調査しますと、やはりそれは本人もでしょうし、父母の要求もあると思いますけれども、十八歳人口の高校を卒業する者の男性で七〇%くらいの人はできれば大学に行きたい、そして女子でも、やはり男子ほどじゃございませんけれども相当進学希望が多いというわけでございまして、そういう希望はあるけれどもいろいろの条件で行けない、そういう希望をした者がいま言われましたように四四%ですね。それに三六・三%入っているということですから、大臣、こういう状況の中ではやはり量的拡大というのもまた必要じゃないでしょうかね。どうでしょう。
  211. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 一応抑制の意見が出ておりますけれども、やはり大学というのはむちゃくちゃつくってもしようがないのですけれども、必要な部面は拡大していく方向でいかなければならない、かように考えておるわけでございます。現状でいいとは思っておりません。
  212. 馬場昇

    ○馬場委員 局長、五十九年度以降の大学の新増設あるいは学部、大学院等の新増設計画があれば、どうなっているのか教えてください。
  213. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 五十九年度以降の新増設計画というお尋ねでございますが、恐らくお尋ねは国立の場合のことではないかと思います。  国立大学の大学なり学部の増設の問題については、それぞれの地域からいろいろな御要望をいただいているわけでございます。文部省としては、全体的な高等教育についての計画的整備ということから、それぞれの地域の収容力の格差とかあるいは専門分野構成を勘案して、特に地方の国立大学の充実ということを中心に従来施策を進めてきたわけでございまして、お尋ねの点は五十九年度以降どうかということでございますが、五十九年度以降の問題については、今後具体的なものを見て対応しなければなりませんが、現在までいろいろ調査費等を措置しておりますものについて申し上げますと、たとえば創設準備経費を措置しているものとしては、身体障害者の高等教育機関について、これは筑波でございます。それから医療技術短期大学については、これは医療技術者養成ということで、順次準備の整ったものについて整備を進めていっているものでございまして、これは五十九年度以降についてもやはり必要であろうかと思っております。それからほかに調査費を計上しているものとして九州工業大学の情報工学系の学部について調査費を計上しているわけでございます。そのほか地方の大学で人文系の学部その他についていろいろと具体的な調査に取りかかっているものもあるわけでございますけれども、全体的な整備としては、ただいまの時点では国立大学について申しますと、真に整備の必要なものについては取り上げて整備を進めていくということで対応しておりますし、また一面、必要なものについての学部、学科の転換、改組というような問題についても、それぞれ具体的な取り組みについては取り組んでおるというのが現状でございます。
  214. 馬場昇

    ○馬場委員 余り新増設計画がないようですけれども、五十六年からずっと見ますと、大臣、五十六年度は千百三十人生徒がふえておる。五十七年度が五百九十人、五十八年度が三百九十人、だんだんと下がってきておりますね。いま言ったように五十九年度もほとんど見るべきものがない。これはやはり臨調答申の抑制路線というのにきちっと乗っているのじゃないか。必要があればふやしたいという大臣の意思というのはやはりまだことしも出ていない。大臣になってそう長くないわけですから。  そういう意味で、やはり五十九年度の点についていまお聞きしたのですけれども、もう一つここで聞いておきたいのですが、五十四年でしたか、局長、これは高等教育の計画を策定なさっていますね。それによりますと、五十六年から六十一年までに年平均二千三百人ずつ国公立の定員をふやしていく、国立が二千人、公立が三百人ですね。それで合計国立で一万二千人、そして公立で二千人、これを五十六年度から六十一年までふやすという高等教育計画を策定しておられますけれども、これは変えられるのですか、このままやられるのですか、どうですか。
  215. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 後期の計画については、ただいま先生御指摘のような目途で整備を進めてまいるということで対応してきておったわけでございます。ただ、後期の計画についても述べられている点でございますが、やはり社会情勢の変化に対応して適時その見直しは必要であるということも言われておりますし、国立については二千人以下を整備目標ということで進めてまいってきたわけでございます。その国立の点についての整備が確かに、ただいま御指摘いただきましたように、五十七年、八年とこの点は国立大学の入学定員の増という観点から見ますれば非常に目標を下回った数値になっているというのは残念でございますが、そういう状況になっております。この点については、やはり財政再建という観点から、国立大学の整備についても基本的には真に必要なものに限って整備を進めていくという観点からすれば、その点はしぼらざるを得ないというのが現状でございまして、特に概算要求においてマイナスシーリングというようなことで基本的に概算要求の枠そのものについてきわめて厳しい制約が課せられているのが現時点の状況でございます。したがいまして私どもといたしましては、先ほど御説明したわけでございますけれども、真に必要なものの整備についてはぜひともそれは進めていくという考え方でございますが、また一面、指摘をされておりますように、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドと申しますか、そういう考え方考え方としてはやはり取り入れて改組、転換というようなことも具体的に取り上げていくということで対応しているわけでございます。  後期の計画について今後どう対応するのかというお尋ねでございますが、私どもとしましては、後期計画の見直しそのものはすでに計画分科会でいろいろと見直しもしていただいたわけでございます。そしてまた、やや御質問の点から離れるわけでございますが、後期計画以後の昭和六十年度以降の十八歳人口が、これは昭和六十七年度前後が二百万人にふえるという状況がございまして、さらに昭和七十五年には百五十万人台になるという、急激にふえて、さらにそれが急激にまた減っていくというところまで……(馬場委員「見直したのですか、見直さぬのですか」と呼ぶ)そういう点も踏まえまして後期計画についても見直し、そして今後の十八歳人口の急増、急減ということに対応する計画をどうするかということをただいま御検討いただいているところでございます。
  216. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、やはりずっと減っておるわけでして、この量的なそういう十八歳人口の希望もあるわけですから、ぜひこたえるようにがんばっていただきたいと思うのです。  そこで、臨調問題でもう一つだけ大臣の所信を聞いておきたいのですけれども、大学をどれだけふやしたって、大学の格差がありますと受験競争というのはなくならないわけですけれども、いま世の中を見てみますと、やはり学歴社会ですよ。その学歴社会の中から大学の格差がまた生まれてくるし、大学の格差の中から受験戦争が生まれてくるし、受験戦争の中から差別とか落ちこぼれというのが出てくるし、そういう中から青少年の非行だとか暴力とかいうのは起こってくるわけでございまして、不当に行政改革と言っていいのか、これから、教育改革ですけれども、こういう学歴社会の構造、そこにメスを入れてやることが本当の行政改革あるいは教育改革になるのじゃないかと思うのですよ。そういう点について大臣のお考えをぜひ聞いておきたいと思うのです。
  217. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 非常にむずかしい問題だと思います。いま馬場さんがおっしゃったように、そういう関連があることはいまに始まったことじゃないと思いますが、これは教育改革というよりも意識改革というところまでいかないとなかなか簡単には、文部省がどうせいこうせいと言うわけにはいかない問題でございます。しかし、最近見ておりますと、アメリカ流というのでしょうか、この点私はアメリカ流でも悪いことはないと思うのですが、実力本位ということが民間等でもだんだん用いられ、官界でも用いられてくるのじゃないかという感じがいたします。そこまでいかないと、過去の、学歴のみで人を評価し登用するという弊害がありますと、人間やはり欲望がありますから、それにつられていまおっしゃったような関連で受験地獄までいくというかっこうにどうしてもなります。しかし、ただそれだけ言ったってしょうがないのでございますから、国民的な運動と言うと大げさでございますが、意識革命みたいな、特に官界あたりではそういう頭で、人材登用を実力主義という考えでやるべきじゃないか、かように考えておるわけでございます。
  218. 馬場昇

    ○馬場委員 いま大学の格差が非常にありますね。大学の格差を是正するというのは、文部大臣としてはぜひ取り組んでいただかなければならぬわけだと思うのです。たとえば、いまは大学で何を学んだかというよりもどこの大学を出たかということがその人の一生を決めてしまう。一流、二流、三流と言うと語弊がありますけれども、そういう格差の中でそういうことが生まれてくる。これは、教育のあり方とか教育とは何だということにもかかわってくると思うのですよ。そういう意味で大学格差を是正するということに取り組む意欲がございますか。
  219. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 大学格差を取り除くということもなかなか簡単ではない。これは見ておりますと、国立大学というとすぐ東大という言葉が出ますけれども、これは明治以来いわゆる行政、政府要員をつくるために特別につくった大学でありますから、国立大学はだんだん、そういう系統できておりますが、社会におけるその学校の卒業生、先輩がたくさんおるとかいろいろなところがあるからこういうふうになってくるのじゃないかと思います。ただ、大学の格差をなくするというのは――地方に大学ということで最近大分できまして、いまも要望が各地からあるわけです。学部学科の増設なんかの陳情に見えますが、同じようなかっこうの大学をつくることはやめてください、あそこの大学に行けばこういう点があるという特色のある大学を地方でも国立大学でもつくることをしないと、同じ大学をつくるとやはりどこの大学ということになる、だれも来ない大学ばかりできるようになるのじゃないかということを言っておるのですが、一言で格差をなくするといってもなかなかですけれども、結局教授陣あるいは先輩とのつながり、こういうものを積み上げていくことが大事じゃないか、かように考えております。
  220. 馬場昇

    ○馬場委員 臨調答申では抑制がいろいろ出ているわけですけれども、今日、教育をどう改革しなければならぬかということは、いま大臣のお話も聞いたわけですけれども、学歴社会、その構造に立ち向かっていく、そしてその中で大学格差を是正していく、そういうところに熱心に取り組むのが改革じゃないかと私は思いますから、そういう点についても御努力を願いたいと思います。  時間がございませんので深く入れませんけれども、次の問題に移りたいと思うのです。  提案されております設置法の中で、筑波大学の第三学群に国際関係学類を設置するというのが出ておるわけでございますけれども、まず国際関係学類の教育研究の目的は何かということを簡単に説明してください。
  221. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 筑波大学の国際関係学類の目的でございますが、近年、あらゆる分野で国際交流が活発になり、国際関係も複雑化、多様化しているわけでございます。これらの諸問題に適切に対応する国際人の養成を目的としているものでございます。
  222. 馬場昇

    ○馬場委員 そうしますと、素朴な質問ですけれども、同学類の卒業者の進路は大体どういうところが想定できますか。
  223. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま申しましたような国際関係、これは社会全体が非常に複雑化し、そしてまた、企業について申しましても、国際的なことを抜きにしては企業そのものも成り立っていかないという状況になっているわけでございます。したがいまして、卒業生の進路として予想されるものは、民間企業で申しましても商社でございますとかそういうものももちろんございましょうし、そのほかあらゆる分野で国際関係について必要な知識が要求されているわけでございます。したがって、そういう意味では、この国際関係学類については非常に広い分野での就職予定というものが可能であり、考えられるものではないか、かように考えております。
  224. 馬場昇

    ○馬場委員 広い分野じゃよくわからないのですけれども。  そこで、この学類のカリキュラムはどうなっているのですか。
  225. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 カリキュラムについてのお尋ねでございますが、一つの特徴は、世界各地の歴史的、社会的背景等について理解を深める、そういう意味で、カリキュラムの中でも具体的に、たとえば英語による授業を大幅に取り入れるというようなことを考えておりますし、またいわゆる社会工学的手法も導入しながら、国際法、国際政治、国際経済等、国際関係に関する諸分野について総合的、多角的な教育を行うというようなことでございます。そのほか、国際的諸問題に対して科学的な分析能力や政策立案なり問題解決等の応用的能力を培うというようなことで、総合的な実力を備えた国際人の養成に力を入れたものになっております。
  226. 馬場昇

    ○馬場委員 カリキュラムなんか聞いていますと、この学問の分野というのは政治学とか法律学、経済学、社会学等で構成されておりまして、これは社会科学の分野が非常に多いと思うのですよ。第一学群の中の社会学類の方に持っていった方がいいのじゃないか、こういう感じがするのですが、なぜ第一学群に持っていかずに第三学群の方に持ってきたのですか。
  227. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほどカリキュラムの構成のところで申し上げましたように、基本的には、社会工学的な手法を用いました基礎的な学問を研究するというよりも応用的な分野と申しますか、そういうような分野を扱う分野であるというぐあいに理解いたしておるわけでございます。国際政治、国際経済、外交政策等、国際関係の分野に関する各種の総合的な教育を、ただいま申しましたような社会工学的手法と申しますか、社会現象に関する情報集約的な分析手法の活用でございますとか現実の問題解決志向の政策科学的な応用研究というような手法を用いて研究をし、教育をするということでございます。  第一学群と申しますのは、基礎学群とも言われておりまして、人文、社会、自然の基礎的分野における広い視野と学識を培うということを教育の目的にいたしておるわけでございまして、特定の専門分野についての清新で応用的能力を涵養する学類としてはほかの学群に所属をさせておるわけでございまして、したがって、この国際関係学類を基礎的な分野の第一学群に置くことは適当でない、私どもはかように理解をしております。
  228. 馬場昇

    ○馬場委員 私が聞いたところによりますと、最初筑波大学の中では、特別な学類ではなしに学群として設置したいというような意向があったのじゃないかということも聞いておるわけでございますけれども、学類として申請が来たということのようでございますが、一つ聞いておきたいのは、これはやはり学群にする、学類でも結構ですけれども、筑波大学の全学の合意、いろいろたとえば教員会議などをやりまして全学の合意を得てこういうことが行われておるのか、設置手続というのは完全に学内で踏まれているのかどうか、これはどうですか。
  229. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 概算要求に当たりましては、もちろん学内の正規の手続を経て、審議を経て要求されたものでございます。
  230. 馬場昇

    ○馬場委員 私の手元に社会科学系の教員会議だとかそういうところの人たちが、これは全学のコンセンサスを得ていない、だから一年間設置を延ばしてでも全学のコンセンサスを得るために話し合いをすべきだ、そういう教員会議の要望書が来ているのですけれども、こういうのは文部省に来ていませんか。
  231. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のような要望書については、私ども直接はもらっておりませんが、そういうような事柄については大学からもらって承知をいたしております。  なお、お尋ねの点でございますが、やや経緯について御説明をいたしたい……
  232. 馬場昇

    ○馬場委員 時間がないから、経緯は要りません。  ここに、私の手元にちゃんと社会科学系教員会議、社会学類教員会議の方からそのような要請が出ておるのです。こういうことを見ますと、全学のコンセンサスを得ておると私は思えません。筑波大学というと、聞くところによりますと、なかなか学長とかその他の独断専行が多いということも聞いておるものですから、こういうのが出ますと、非常に心配なんです。全学の意思統一ができるようにぜひ指導をしていただきたい、こういうぐあいに思います。  そこで、もう一つ質問をしておきたいのですけれども、私が聞いたところによりますと、筑波大学の方から五十八年度の概算要求、この学類を設置してくれという要求のときに、国際関係学類では政治経済の領域において軍事科学研究を行う、こういうことがカリキュラムの中に入って要求が行われたということを私は聞いておるのですけれども、こういう事実がありましたか。
  233. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 この学類のカリキュラムの中で、御指摘の点は軍事管理研究でございますか、そういうものが入っているというぐあいに御指摘がございましたが、そのような御指摘のような授業科目は企図されておりません。
  234. 馬場昇

    ○馬場委員 さらにカリキュラムの中に、きょうお配りいただきました中でざっと見たのですけれども、まだ見当たりませんけれども、私が聞いた、特に大学の国際学類の設置準備委員会、その中の教育課程専門委員会、こういう中で議論をしました内容が報告書が出ておるのですけれども、その中には、政治と軍事戦略の演習だとか、国家の安全保障演習とか、極東におけるアメリカの役割りの演習、超国家的統合の諸問題の演習、こういう科目が、私がいただいておりました学内で議論しました報告書の中にあるのです。ところが、文部省のきょう配ってもらいました中にも、こういうものはカリキュラムとして見当たりませんけれども、こういう科目があるのか、ないのか、結論として、どうですか。
  235. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私ども、大学から要求をいただいておりますものは、ただいま先生御指摘のとおり、学内で検討過程においていろいろ議論されておりますようなものについては、一切含まれておりません。ただ、お手元にございますように、安全保障研究については取り上げているわけでございまして、これはたとえば東京大学など既存の教養学部なり法学部なりにおきましても、国際関係論や国際政治学の授業内容としては、一般的に安全保障に関する理解を深める教育も行われているところでございまして、筑波大学の新学類も、国際関係教育組織である以上、それらと同様の教育は行われるもの、かように理解をしております。
  236. 馬場昇

    ○馬場委員 くどいようですけれども、きちんと念を押しておきますが、この学類で絶対に軍事研究は行わないということがはっきり確約できますか。
  237. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学でございますので、軍事研究等が行われることは断じてない、かように考えております。
  238. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、文部大臣にもさらに念を押しておきたいと思うのですけれども、やはり戦争を目的とする科学の研究は絶対行わないのは当然でございますし、教育あるいは研究というのは、人類の福祉とか世界の平和に貢献するものでなければならないということは当然でございます。とともにもう一点、産業界だとか、あるいはいままで言う自衛隊だとか、あるいは官僚とか、こういうものの意図が大学に入り込んできてはならない、学問研究の自由というのは当然守っていかなければならないと私も思うのですし、ちょっと心配して先ほどのような質問をいたしたのですけれども、そういうことはないというお答えで安心したのですが、少なくとも、いま言いました点につきましても大臣からも確認を願いたいし、教育研究というのは、憲法、教育基本法の枠内できちんとまじめに守ってそれをやるのだということを、大臣の決意のほどを聞いておきたいと思います。
  239. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 自衛隊関係では、もちろん職務上そういう軍事のことを研究すると思いますが、一般大学あるいは学校でそういうことを研究することは断じてない、また、やってはいけないと考えます。
  240. 馬場昇

    ○馬場委員 それでは次にもう一つの問題で、この委員会でも話題になっておるのですけれども、共通一次の問題について質問をしておきたいと思うのですけれども、この共通一次試験は、これは目標を達成しておるのですか、どうですか。結論から、まず聞きたい。
  241. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 共通一次試験が目的を達成しているかというお尋ねでございますが、従来御答弁申し上げておりますとおり、いわば一斉試験で実施される共通一次で、衆知を集めた適切な試験問題が出されるということで難問奇問が排除されたというようなこと、あるいは志願者の高等学校における一般的、基礎的な学習の達成程度を客観的に評価し、そして各大学が行う第二次試験によりまして、志望の大学学部の内容や特色にふさわしい能力、適性を見て、さらに高等学校の調査書の内容等も総合的に判定をするというような仕組みで選抜の適正を期するということと、高等学校における教育の正常な発達に資するというような点については、私どもこの共通一次試験が具体的にはメリットを発揮したもの、かように理解をしております。
  242. 馬場昇

    ○馬場委員 弊害も聞きたいのですけれども、弊害は私が言いますから、それについてどう対処していくかということを聞いておきたいと思うのですよ。  まず偏差値の、これは信仰と言ってもいいくらいだと思いますが、それが非常に過熱いたしまして、受験産業の点もあると思うのですけれども、まず第一に、国立、公立大学の序列化が進んで、極端に言いますと、どこの大学は何点大学と、そういう大学学部の点数化になってしまっておる。これは私は非常に問題だと思うわけですし、そしてまた、入れる大学という志向がふえてまいりまして、大学の画一化といいますか、あるいはさらに言いますと無気力化してきておる。こういうことも進んできておりますし、個性もなくなった、こういうことも出てきておるのです。こういう点についてどう考えておられるのか。  第二の問題は、国公立大学の受験が、一期校、二期校と二回チャンスがあったのだけれども一回のチャンスになってしまった。これはやはり受験制度というものが非常に問題だと私は思うのですが、こういう点についてはどういうふうに考えておられるのか。  それから受験生の負担というのが非常にふえたと言われておるわけでございまして、二回入試があるということと五教科七科目だということ、そういう点で非常に受験生の負担がふえたということも言われております。  それから、共通一次はマル・バツのマークシート方式なものですから大学生の学力が落ちた、そういうことも言われております。マル・バツ式、マーク式なものですから、そのうらはらとして思考力とか文章表現能力とか創造性が落ちたとも言われておるわけでございます。  それからさらに高等学校の側から見ますと、一月に試験があるものですから高等学校の学校行事に共通一次のしわ寄せが来ておるというようなことで、結論から申し上げますと、とにかくこの共通一次テストというのは教育の本質から完全に外れてしまっておると私は思います。  そういう意味で、メリットも少しはあったかもしれませんがデメリットの方が非常に多い、こういうことでございまして、文部省の方でも国大協の方でもこれを見直すための検討を行っておるわけでございますけれども、いま私が言いましたような点について、文部省はどう考えておられますか。
  243. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 確かに御指摘のような点がいろいろ言われておりますことも、私どもも十分承知しているわけでございます。したがいまして、文部省に置いております入試改善会議におきましても、具体的に今後の改善策をどうするかということについてはすでに議論を始めていただいておるところでございます。そしてまた国立大学協会におきましても、専門の委員会で具体的な議論について早急に結論を得るようにすでに議論を始めていただいているところでございます。大学入試制度全体の改善については、今日では与える影響が非常に大きいと申しますか、量的にも非常に大きい存在になっているわけでございまして、そういう意味で私どもこの改革については、特に共通一次について申しますれば、国立大学協会の大学全体の合意を得ながら改善をしていかなければならないものでありますので、その点で時間がかかるということも事実でございます。しかしながら、決して、言われている点についてそれが放置できるものでないということもまた事実でございまして、それらの問題点について、どういう方向で具体的な改善策を進めていくかということについては、関係者に御議論を十分練っていただきまして、できるだけ早く結論を得るようにしたい、かように考えております。  御指摘の点で、大学の序列化が進んだとか学生が無気力になったという点も言われております。それから、一回のチャンスということでございますが、共通一次を取り上げて、一回のチャンスになりましたかわりに志望校の変更を認めるというようないまの仕組みになっているわけでございますけれども、その点について、たとえば志望校の変更を認めないような形で考えればどういうことが考えられるか。あるいは一部の国立大学ではやっているわけでございますが、補欠の入学枠というものを確保して、補欠の入学枠についてさらに二回のチャンスを与えるような形で入学試験を実施する方法でございますとか、いろいろそれぞれの大学が持っております問題点と申しますかについては、それぞれの大学なりに真剣に対応策を考えていることであろうかと思っております。  それから負担が重いということも言われるわけでございますが、高等学校の一般的な学習度を見るためにはやはりこの程度の教科は必要でないかという御意見もあるわけでございます。それらの点について十分私どもも関係者の意見も伺いまして、改善策については積極的に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  244. 馬場昇

    ○馬場委員 研究なさっておることはわかったのですけれども、その小委員会をつくっておられるようですけれども、いつまでに結論を出すのか。できればいつからの入学試験から改善をしていきたいのか。この点は、この点はと中身があると思いますけれども、全体を一緒に変えるのか部分的に変えるのかということはあるかもしれませんが、おおよそいつごろには結論を出して変えたい、こういうスケジュールはございますか。
  245. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 新しい学習指導要領に基づきます大学の入試というのは、これは六十年度の入試につきましては新しいことしの高等学校の一年生の入試の問題でございまして、すでに六十年度の入試の実施につきましては具体的なやり方について定められているわけでございます。したがって、一番早くても六十一年度の入試からということになろうかと思いますけれども、しかしながら六十一年度に実施するとすれば、さらにその前に、もちろんこれは関係するところが大きいわけでございますので事前に結論を得なければならないのは当然のことでございます。先般もお尋ねがあったわけでございますが、私どももその結論はできるだけ急ぎたいということで考えておりまして、できますれば五十八年度内には結論を得るようにいたしたい、かように考えております。
  246. 馬場昇

    ○馬場委員 次に移ります。次は大学の定員外職員の問題についてでございますけれども、その実態等も資料をもとに詳しくお聞きしたいと思うのですが、時間がございませんので……。  定員外職員というのは、教育とか研究とか医療とかに必要であるからこれを雇用しておるものだと思うのです。これは必要なものであれば、定員外だ何だといって差別みたいにしたり賃金、労働条件が悪かったりするのはよくないことでございまして、これはやはり定員外職員は定員内に定員化すべきだ、私はこう具体的に思うのですけれども、定員外職員の必要性の問題、そして定員化に対する考え、それをまず聞いておきたい。
  247. 高石邦男

    ○高石政府委員 先生御指摘のように、必要な職員を定員で賄うということが原則であろうと思います。ただ、大学におきましては季節的な業務であるとかいろいろな臨時的な業務というのがございますので、全部を全部定員内で賄うということは現実問題としては不可能でございます。ただ、現実的にかなりの非常勤職員がおりますので、これをできるだけ定員化できるものは定員化していくという努力を四十七年度以来続けているわけであります。四十七年度では一万七百人余りいたのが五十七年度では七千四百人、約三千三百人程度非常勤職員の数が減少しているわけでございます。そういう方向で今日まで努力してまいっておりますし、今後もそういう方向での努力を続けてまいりたいと思っております。
  248. 馬場昇

    ○馬場委員 この定員外職員に対しまして五十五年以降の採用者について三年の期限をつけて一方的に解雇する、こういうことでちょうどことしが三年目に当たっているようでございまして、定員外職員の方々はもちろんのことですけれども、大学関係者全体が非常に困っておる問題でございます。そこで、先ほども言いましたように、定員外の職員というのは必要があって採用しておるわけでございますし、定員化するのが当然だという方向で文部省は認めておられるわけでございます。季節的なもの、その他のもの、もちろんそういうものがあるかもしれませんが、大学が必要に応じて雇っておるわけでございますので、文部省の方から、三年たったからおまえらはことしで解雇するのだということの一方的な強制というのはもちろんできないのじゃないかと思いますけれども、少なくとも三年たったことしの定員外職員の者の措置については、任命権者である大学の自主性に任せる、こういうような態度の指導を文部省としてはとるべきじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  249. 高石邦男

    ○高石政府委員 実は、三年というのは、各大学で給与面の処遇が長期化すると焦げつきまして不利になる、したがって純粋に非常勤職員としてちゃんと回転できるような形にしていかないと、いろいろな労務関係、給与面の問題が生ずるということで、それぞれの大学で大体三年くらいのローテーションにしていけばそういう問題が解消できるだろうということで大学自体が決めていることでございます。文部省が画一的に決めているわけではないわけでございます。したがいまして、この三年という制度は、それぞれの大学が自主的に決め、自主的に運用していくということで以上のような問題点が生じないようにということで努力をしておりますので、それはそれなりにいろいろな問題を派生せしめない対応として適当な措置ではなかろうか、こう思っている次第でございます。
  250. 馬場昇

    ○馬場委員 くどいようですけれども、やはりいま大学の中では、私が聞いたところといまの答弁は少し違って、違ったから少し安心しているわけですけれども、三年たったからこれは一律に解雇するのだ、そういうことが文部省から強く指導されておる、だから学長とか校長の判断ではなかなかできないのだ、そのような実情があるということを事は聞いておったわけです。いまのお話によりますと、私が思っておったように、少なくとも必要があるといって雇ったのは学長、校長だし、だからそれを一律に切るか切らないかというのは学長、校長の権限だ、その自主的判断に任せなさいと私は言いたかったのですが、そのとおりだということの答弁があったから安心をしたわけですけれども、この点につきましては、その任命権者、最終的な責任者は学長、校長なものですから、そこの判断によるのだということで、私が心配したように、文部省から押さえつけるというような指導のないようにぜひお願いをしておきたいと思います。
  251. 高石邦男

    ○高石政府委員 ちょっと誤解があると困りますので、実は、三年を限度とするというのはそれぞれの大学で決めているわけです。大学によっては二年ということを取り決めているところがあるわけです。したがって、自分たちの学内で取り決めた三年というローテーションで非常勤職員の採用を考えていくということをやっておりますので、そのこと自体は文部省としては適当であると考えているわけでございまして、押さえつけているというよりもむしろ学校がそれぞれの状況判断をしてそういう運用をしている、そのことは適当であろう、こういう意味でございます。
  252. 馬場昇

    ○馬場委員 次に、国立身体障害者短大の設置の問題について御説明をしておきたいと思います。  先ほど五十九年度の新設の中にこの短大も入っておったようでございますが、まず最初に、身障者の方々の一般大学への進学というのはふえておりますか、減っておりますか。最近の傾向をまず尋ねておきたいと思います。
  253. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 正確な数字は把握いたしておりませんが、お尋ねは身障者の方々の一般大学への入学者の数でございますが、五十五年当時は多分千人程度であったかと記憶しておりますが、五十七年では若干それが落ちているというようなぐあいに記憶をいたしております。
  254. 馬場昇

    ○馬場委員 私が調べたところによりますと、やはり身障者の方々の一般の大学への進学というのは年々増加しておるということを私は調べておるわけでございます。  そこで、基本的に局長にお尋ねしたいのですけれども、やはりこの傾向というのは、身障者の方々が自分の希望によって一般の大学で教育を受けたいということは、これは国際障害者年のテーマにもありましたように、障害者の完全な社会参加と平等という面からいって当然の傾向であり、喜ばしい傾向じゃないかと私は思うのですが、いかがでございますか。
  255. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 身体障害者の方々が一般大学に進学できるということは望ましいことでございまして、いろいろな機会にそのための特別な配慮をすべきことを私どもも指導しているわけでございます。たとえば共通一次についてもそのような配慮をいたしておるわけでございます。  それから具体的な数字でございますが、たとえば身体に障害を有する者の入学状況でございますが、順次ふえてきておりまして、五十四年度の千百名というのが一番大きい数字でございます。その後若干落ちている点もございますが、傾向としては順次ふえてきているということが言えるかと思います。
  256. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで、国立身障者短大の設置の準備状況をちょっと説明してください。
  257. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 準備状況についてのお尋ねでございますが、これについては五十三年以来調査費を計上して今日に至っておるわけでございまして、五十七年度も創設準備調査ということで準備を進めてきております。五十八年度の予算においては創設準備ということで予算措置をしておるわけでございます。なお、五十九年度から直ちに創設ということには、これは五十九年度の予算が今後の審議課題でございますので、私どもとしては五十八年度予算では創設準備ということで対応しているということで御説明させていただきたいと思います。  具体的な内容については、視覚障害者のための短期大学あるいは聴覚障害者のための短期大学ということでそれぞれ専門領域についての学科構成その他について御検討をいただいておるわけでございますが、これらについては、たとえば視覚障害者については鍼灸科、音楽科、理学療法科、情報技術科というような事柄が予定をされておりますし、また聴覚障害者については造形美術、医療技術、工業技術、情報技術というような内容の学科について構成をするというようなことで研究を進めているところでございます。
  258. 馬場昇

    ○馬場委員 ちょっと心配になる点をお尋ねしておきたいのですけれども、先ほども議論しましたように、身障者の方々も一般大学に行く方が望ましい、それは奨励したいという立場は変わりないわけですけれども、今度できます国立身体障害者短大が結局、一般の大学に身障者が入りたいというのを、こういう大学ができますと、そこから締め出して、あなたはその短大に行きなさい、そういう方向を助長するということになったら私は大変なことだと思うのです。しかし、そういう心配を私はだれでもするのじゃないかと思うのですが、この点についてのそういう心配がないようにどう措置をとるのかということと、やはりいま筑波大学に盲学校がありますね。そこに専攻科がありますね。ところが、そういうのは、たとえばこういう短大ができますと、専攻科が廃止されてしまうのじゃないかとかということの心配も実はあるわけでございますし、筑波大学盲学校だけでなしに全国に盲聾学校専攻科があるわけですから、そういうところを充実して、そこを短大にたとえば昇格させるというような方向をとった方が本当に高等教育を身障者の方々に受けさせるというのには親切な方向ではないのか、こういうぐあいに私は思うのですけれども、これについての御見解を聞いておきたいと思います。
  259. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 諸外国についても調査をいたしておるわけでございますが、身体障害者のための高等教育機関というものがそれぞれアメリカなりイギリスなり置かれておりまして、それらについても調査をいたしておるところでございます。  それから、お尋ねの中で、こういう身障者のための短期大学を構想することを通じて、障害者が一般大学へ進学することについて阻むことになるのではないかという御心配が指摘をされたわけでございますが、文部省としては、障害者に対する高等教育の充実と教育機会の拡大を考えて進めているものでございまして、こういうものをつくることによって、一部に指摘されておりますような一般大学への進学を阻害するというようなことは毛頭考えておりません。
  260. 馬場昇

    ○馬場委員 たとえば筑波大学の附属の盲学校等の専攻科というのは廃止されるのじゃないかという心配、もう一つは、全国の盲学校とか聾学校とかそういうところの専攻科を短大に昇格させた方がいいのじゃないかという私の意見に対する見解を聞いておきたい。
  261. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま具体的な構想について創設準備に向かって私ども検討している点でございまして、御指摘のありました専攻科との関連等についても、今後十分御意見等も参考にしながら対応は考えてまいりたい、かように考えております。
  262. 馬場昇

    ○馬場委員 全国の盲聾学校等の専攻科を短大に引き上げるというような私の提案に対してはどうなんですか。それが一番いいのじゃないですか。
  263. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 全国の盲学校の専攻科を短大に引き上げるという問題につきましては、これは事柄として大変大きい事柄でございまして、筑波で進めております身障者のための短期の高等教育機関をまず完成させることが私どもとしては当面取り組まなければならぬ課題だ、かように理解をしております。
  264. 馬場昇

    ○馬場委員 くれぐれも一般大学等から締め出すというようなことがないようにお願いをしておきたいと思います。  これで私の質問を終わります。
  265. 葉梨信行

    葉梨委員長 湯山勇君。
  266. 湯山勇

    湯山委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案につきましてお尋ねいたしたいと思います。  もう十四、五年にもなるでしょうか、OECDの教育調査団が日本教育調査をいたしまして、これにはライシャワー元駐日大使あるいはフランスの元首相フォール氏、その他ずいぶんりっぱな人が日本教育を視察して、そのときにややショッキングな提言として、日本の若い人で、十九歳というのがありましたが、十八か十九かの年齢の自殺が一番多い。その理由とするところは、大学入試でその人の一生が決まってしまう、どこの大学に入ったか、そのことによって一生が決まってしまう、そこで、悲観もするし無理もして自殺が非常に多いのだということがありまして、文部省は必ずしもそうでないという反論をしたいきさつがございましたが、局長、御記憶あるでしょうか。
  267. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 OECDの調査団が参りまして、日本の高等教育政策について提言をいただいたことについては承知をしております。
  268. 湯山勇

    湯山委員 そのときに、日本教育の崩壊というのはここからあるのじゃないかという示唆もあったわけですけれども、今日の教育崩壊の実態を見ますと、大学入試、そのために高校が狂奔する、あるいは偏差値で横切りをする、いろいろなことを見てみまして、それだけとは言えませんし、ここに考えなければならない問題があるということを痛感いたします。いま馬場委員質問の中にもそういう点がございました。  そこで、戦後の教育というのは大体アメリカの制度にならってできたものだということについては申し上げるまでもないことですが、問題はあるにしても、形の上では初等教育、中等教育ともに整っております。問題は大学です。     〔委員長退席、狩野委員長代理着席〕  大学の場合、アメリカでは、アメリカの人口約二億、日本が約一億として、アメリカの大学生の数は約九百万ある。日本はその約五分の一の百八十万程度である。人口が二分の一であるのに大学は五分の一しかないわけです。当然、六・三・三というようなアメリカにならった制度をとれば大学というのはもっとふやさないと、ここが交通渋滞のネックになりまして、そこまでの教育が全部その影響を受けている、こういうことではないか。臨調では大学の学部、学科の増設は抑制すべきだとありますけれども、将来の高等教育というものを考えていき、今日の教育の直面しておる危機というものを考えるときに、もっと大学をふやして、いまのアメリカに比べて、アメリカが日本の五倍もの大学、学部、学生を持っているというのに対応してさらにこれをふやしていく必要があるのじゃないかということを考えますが、この点いかがでしょう。
  269. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように、アメリカの場合、人口との対比で申せばただいま先生御指摘のような大学の規模、日本の場合がそれに比べれば確かに低いということは言えるわけでございます。申すまでもないことでございますが、高等学校教育については、それぞれの国によりそれぞれ社会的背景なり歴史的背景も異なるわけでございますから、単純に規模を比較するということは適切ではないかと思いますけれども、戦後の制度の仕組みとして、基本的にはアメリカの学制を受け入れて行われております日本の学制という観点から見れば、そういう点も指摘されるかと思います。ただ、先ほど来も議論があるわけでございますけれども、大学について今後さらにふやすべきでないかという議論については、一面、進学率の停滞というようなことから大学離れと申しますか、あるいは高等教育機関の多様化と申しますか、専修学校に進学する者の比率が今日相当ふえているというようなことなども言われているわけでございます。先ほど大臣の御答弁にもあったわけでございますが、特色のある大学づくりということはぜひとも必要なことでございますが、そういう観点から、今後の高等教育機関をどのように整備をするかということについては、具体的に大学設置審議会の中に専門委員会等も設けていただきましてただいま御議論をいただいているところでございます。
  270. 湯山勇

    湯山委員 大学がネックになって、そこへあらゆる教育のしわ寄せというものですか、弊害が集中してきているという事実は、これを厳粛に見ないと、私は将来にきわめて大きな問題を残すと思います。  高等教育の中で、もう一つこれと関連して大学教育で問題なのは大学院です。大学までは押すな押すなで、そうやって交通渋滞で、大学学部を抜けた後はがらあきなんです。しかもそのがらあきが、決して多くてがらあきではなくて、アメリカに比べますと、大学院の収容人員というものはアメリカでは百十万、それに対して日本では五万に足りない。アメリカに比べて人口は二分の一ですけれども、大学院生は二十分の一にも達しない。こういう事実を局長は御存じでしょうか。
  271. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 数字の点については承知をいたしております。
  272. 湯山勇

    湯山委員 そこで、さてそれでは、大学院も大学の学部に入るのと同じように情熱を持って入っておるかというと、これまたそうではなくて――大学院の入学定数と入学者の数、それはどうなっているでしょう。
  273. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 昭和五十七年度の大学院の入学状況でございますが、国立私立全体で修士課程は入学志願者が三万九千四十八人でございまして、そのうち一万九千七百十七人が入学をしているわけでございます。入学定員二万九千三十人に対する充足率は六八%ということになっております。また、博士課程は入学志願者が六千六百六十七名でございまして、そのうち四千九百十三人が入学いたしまして、入学定員一万一千二百四十七人に対する充足率は四四%という状況になっておるわけでございます。
  274. 湯山勇

    湯山委員 最高学府中の最高学府に当たる大学院が、修士課程で六八%程度しか入っていない。三二%は定員に欠けています。博士課程に至っては四四%入学者があって、過半数の五六%は空である。あれだけりっばな大学院という機関を持って、しかるべき教授、もちろん大学と兼任でしょうけれども、しかるべき教授を配置して待機しておる大学院が、修士課程でとにかく三二%はがらあき、それから博士課程で過半数があいているということには非常に大きな問題がある。ひょっとすると日本教育のガンというのはこういうところにあるのじゃないかとさえ考えられますが、この点局長どう考えますか。
  275. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、大学院についてこのような現象と申しますか、充足率が大変低い、博士課程に至っては四四%という状況になっている、そのよって来る背景と申しますか、わが国の大学において研究者ないし高度な技術者の養成機関としての大学院の位置づけがいまだ必ずしも定着していない点がまず原因の一つということで挙げられるかと思います。一方、また社会におきましても、学部卒業生を中心として採用するわが国の雇用慣行と申しますか、そういうものがございまして、大学院進学希望者が少ないことも原因の一端になっているのではないかというぐあいに理解をいたします。そして、こういう進学希望者が少ない上に、大学としては大学院学生に対して高度の能力を持つ研究者としての適格者を選抜するということがございまして、そういうことと、また他面、博士課程を修了して定職につけないいわゆるオーバードクターの問題等が生じておりまして、そのようなことも配慮して大学側としては入学者を一層厳選しているというような面があるのではないか、かように理解をしております。大学院は、研究者養成とともに大学の研究機能の向上を図る上で大変重要な役割りを担うものでございまして、科学技術等の発展のために高度の技術者を養成し、社会の各分野に積極的に進出し得る人材を養成することが必要なことであろうか、かように考えております。  このような点を受けまして、私どもも、具体的に大学院制度についてどうすれば定着ができるかというようなことについて、学識経験者による大学院の諸問題に対処する調査会を設けて、現在御議論を願っておるところでございます。その結論を得ながら、大学院にいてどのような方向で存在意義を持たせていくのか積極的な方策を考えてまいりたいと考えております。
  276. 湯山勇

    湯山委員 サッチャー首相が来たときにも、技術の応用面においては日本はすぐれておるけれども基礎研究においてはイギリスは負けないということをはっきり言っております。大学院というのは、それだけ大事なところがいま局長が言われたように機能していない、役に立てばずいぶん需要もあると思うのです。アメリカに比べて二十分の一程度しかいない大学院生ですから、本当に役に立てば、大学院が機能を発揮しておればオーバードクターなんてできるはずはないわけです。これは大学全体を含めて人材教育における大学の弱さといいますか、これが非常に極端に露呈しているのが今日の大学院じゃないかということを私は痛感いたしております。  そこで、それでは大学院を出て――それだけ開かれ過ぎている門の中へ入って、修士課程であれば必要な単位を取る二年間、あるいは博士課程であれば四年間ですか、学習をして終わった人で、修士の方は似たようなものですから時間の節約のために省いて、博士課程についてだけお聞きしますと、博士課程を修了してしかも学位を取れる者と取れない者との割合というか人数はどうなっておりますか。
  277. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 博士課程を修了して学位が取れる者と取れない者との比率というお尋ねでございますが、博士課程を修了して学位を取得をしてかつ学内で研究を継続している者、あるいは所定在学年数以上在学して必要単位を修得した後さらに学内で研究している者等の数、いわゆるオーバードクターというようなことになっておるかと思うのでございますが、合計の数で申し上げますと、博士課程修了者の数が全体で、これは五十五年度でございますが、三千八百八十七人に対して、課程博士の取得者が全体で二千二百九十名というような状況になっております。ただし、分野別によりまして大変ばらつきがあるわけでありまして、たとえば人文科学については、博士課程修了者が五百三十九人に対して課程博士の取得者が十二人、社会科学の分野については、博士課程修了者が四百九十七人に対して二十人ということで、博士課程は修了したけれども、博士が取得できないのが人文科学あるいは社会科学の分野では大変多いというのが現状でございます。
  278. 湯山勇

    湯山委員 いただいた資料、国立で言いますと、いまのと同じですけれども、あなたの直轄しておる国立大学で博士課程を終了して必要な単位を取ったという者が二千二百四十二名、その中で学位を取った者は四六%の千三十八名です。残りの過半数、五四%は、年数は在学し必要な単位は取った、しかし学位が取れない、この人たちはどうなるのですか。
  279. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の数字は五十五年三月での終了者数についての数字でございまして、お尋ねの点は学位を取得せずして満期で退学した者はどうなっているかというお尋ねであろうかと思いますが……
  280. 湯山勇

    湯山委員 いえいえ、ちょっともう一遍言います。  いまのことを聞きたいのです。つまり必要な課程を終了した、博士課程の単位は全部取った、そして学位は取れない。学位を取った者が四六%程度で、あとの五四%は学位は取れない。単位は全部取っています、必要な期間は終わっています。この人たちはどういう扱いがされるのかということをお聞きしておるわけです。
  281. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 個々のケースによって異なろうかと思うわけでございますけれども、博士が取得されていない場合に、引き続き学内にとどまるということもあり得るわけでございますし、また退学をして具体的な就職につく者もいるわけでございます。その点は個々のケースによってそれぞれ異なるのではないか、かように理解をしております。
  282. 湯山勇

    湯山委員 局長、ちょっと勘違いしておられるかもしれませんが、あなたの方の資料ではその人全部が満期退学者となっているのです。これはどうなんですか。
  283. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 確かに資料には満期退学者ということになっておるわけでありますから、具体的には博士課程から退学をしまして、それぞれ退学した上で研究生として残るか、あるいは就職をするかというようなことではないかと思います。
  284. 湯山勇

    湯山委員 したがいまして、過半数の学生というものはいまのように満期退学。人文社会ではいま局長言われたように五百三十人の中の十二名が学位を取って、これは無事ですが、あとの五百十八名はみんな満期退学。それから社会にしてもとにかく九〇%以上は全部退学生です。一体大学院というのは何をつくっておるか。博士課程というものは博士をつくる課程、ところが九〇%以上が退学者。退学者製造機関が日本の大学院です。これでいいのでしょうか。
  285. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御説明したわけでございますけれども、大学院の、特に博士課程のあり方について、やはり学問分野によりまして具体的な機能は大変異なるのではないか、かように考えております。そしてまた、従来の伝統ある考え方と申しますか、人文科学の系列では博士の授与というものがなかなか具体的に行われていない。この点は、むしろ従来の大学院の考え方を改めて課程博士となった大学院としての機能が必ずしも十分働いていない一つの具体的なあらわれではないかと思います。したがいまして、それらの点については今後改革を要する点ではないか、かように理解をしております。
  286. 湯山勇

    湯山委員 大学院の学位授与というのは昔のままなのです、権威主義で。ここを改めないと大学教育はもう、研究と教育が大学の使命で、その本来の重要なのは大学院ですからね、その研究機関が壊滅状態。ただ若干中途退学しないでまともにいけるのは医学部が七〇%くらいが学位を取るのじゃないでしょうか。それをのけますと、あとは大学院というのは中退学院と言わなければならない。ここへどうメスを入れるかということがなければ今日の大学教育全部だめになりますし、教育崩壊の一つの根源はここにあるということになります。そこで、なぜ一体そんなにむだなことをしているのか。学位というものについてはちゃんと決まりがあるのでしょう。完成されてりっぱな業績を上げた人が博士じゃありませんね、学位は。今日はそうなってないのじゃないでしょうか。局長、どうですか。
  287. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘のように、昭和五十年度の学位規則の改正によりまして博士の学位について、従来の「独創的研究によって新領域を開拓し、」云々とございまして、「研究を指導する能力を有する者に授与する」という規定でございましたが、それを自立して研究活動を行うに必要な高度の能力を有する者に授与するということに学位規則を改めたわけでございます。学位は大学院の課程と密接に結びつけられているものであることはもとよりでございます。  そうして、またよく言われます点の一つは、外国人の留学生に対する学位の取得が大変困難であるという点も問題点の一つとしてかねて指摘をされている点でございまして、この「外国人の留学生等に対する学位授与の改善について」ということで、五十七年九月の大学院問題調査会議の検討結果の取りまとめを受けまして、各大学に対して外国人留学生の特性に留意して一層改善を図られるように、私どもとしては各大学に通知もいたしたわけでございます。  先生御指摘のように、たとえば保健の分野は医学、医師の分野でございますが、これについては千百四十九名の終了者に対して博士が千七十一名ということで、ほとんど博士を取得している。ほかに工学の分野なども比較的高いわけでございますが、先ほど申し上げましたような社会科学の分野がきわめて低い、その点がまだ大学院の機能として十分果たしていないということが具体的にあらわれている点ではないかと思います。
  288. 湯山勇

    湯山委員 最高学府が機能を果たしていない。工学部だって多くないのですよ、局長、本当言えば。ただ、日本の中で比較的多いというだけのことで、決して多くはありません。いま外国人のことをおっしゃいましたけれども、日本の研究のために日本へ来てせっかく大学院へ行っても、この調子で学位をもらえない。日本学の学位を取るためにはアメリカの大学へ行ってアメリカの大学院を出て学位を取るというのが慣例です。それに対応していまのような措置をとられたとしても、それで日本の大学院はちっともよくならないのです。  この大学院をどうするかということですが、いま言われたように、学位規則ではその人の能力を評価して学位を与えておる。昔のように、やった業績じゃありません。ここが全然徹底してない。だから入る人も魅力がない。大学院に何の魅力もありません。これでは入学定数を割るのはあたりまえです。もっと本当に能力のある人にはちゃんと学位を与えて、そして将来研究していく、日本の研究を進めていくという任務を与える、こういうことがちゃんとできなければ、結局大学が終着駅で、ここが押し合いへし合いになって教育全体を壊す。これはどうなんですか。もっと、本当に学位規則にあるとおりの基準で学位授与はできないのですか。この点どうです。
  289. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 いま湯山さんの、いろんな大学院に対する御指摘をつぶさに承りながら考えておったのですけれども、実は私のところに、素人文部大臣ができたというのでいろいろと心配されるのでしょうが、あっちこっちからいろいろなことで手紙をくださったり、あるいは自分の著書を送ってくださったりして、毎日のように全部拝見するいとまがないぐらい来ております。その中に一つ、明確に覚えておりませんが、たぶん大学の教授のOBの方じゃないかと思います。いまの大学院のことについて、言葉はちょっと書いてあるとおりじゃないかもしれませんが、いまの大学院というのは大学の付属物みたいになっておる、あるいはアクセサリーみたいになっておって機能しておらないのじゃないかというお手紙をいただきました。  私も新しい最近の大学院のことは率直に言って詳しく知らないわけでございますが、先ほど来の御意見等承って、これは本当の大学院らしい大学院に、意味のあるものにしなければ、本当にアクセサリーみたいになってしまって、しかもそういう大学院を出たって世間が相手にしないというかっこうに、われわれたまに大学院を出た若い者を預かることがありますけれども、そういう状況になっているように思います。これはせっかくいま局長からもお答えしておりましたが、あり方について検討をお願いしておるそうでございますから、十分御意見等踏まえて、本当に生命力あるような大学院にしたい、かように考えております。
  290. 湯山勇

    湯山委員 大臣がおっしゃったとおり、私立の大学等にはアクセサリーで大学院を持っているところがあります。現実にあります。そして、私個人も、大学院にりっぱなものもありますけれども、日本の大学院は評価できません。これは非常に残念ですけれども、いまのような実情にあります。ただ、それだけじゃなくて、日本の大学院を出た人は、いまのように中退みたいなものです。退学生です。だから外国のいろんな場所に行って競争するときに、外国の大学院は学位を持ってきています。日本の学位規則と同じようなレベルで学位を持っている。日本のは学位を持っていない。能力を持っていても下につくのです。だから大学院に魅力がない。優秀な大学生は大学院に魅力を持ちません。よほどの物好きな、家に金があってというような人は別でしょうけれども、非常に悪い言葉で言えば、人材をむだにし学問を傷つけているのが今日の大学院だと言っても、決して私は言い過ぎじゃないと思うのです。それぐらいの決意をもって臨まなければ、日本の今後の基礎的な、しかも憲法でちゃんと言っている、大臣所信表明でもおっしゃりた文化国家、世界の文化をリードする立場にあるような国にしていこうというのには、やはり大学院がその役目をやらなければならない。これはもう教育機関というよりも、大学院は研究機関ですから。その大学院がいまのように定員はこれだけ入れるというのに希望者は半分も入ってこない。その入った中で、四年間やって博士課程をやって学位の取れる者が、またお医者さんをのければ二〇%そこそこでしょう。そういうことを何とか早急にやる必要があるのじゃないでしょうか。これから研究してじゃなくて、本当に真剣に文部省はこれと取り組む必要があると思いますが、いかがですか。
  291. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御説明した点でございますけれども、具体的には関係の方々にお集まりをいただきまして、大学院の諸問題に関する調査研究会議をお願いをしている点でございます。五十六年の十二月以来お願いをしておりまして、具体的にもうすでに十二回の検討を経ておるわけでございます。先生御指摘のように、大学院問題というのはわが国の高等教育の中で大変大きなウエートを占めている、今後の検討を要する問題点であるということは、私どもも十分意識をしておるわけでございまして、今後のわが国の高等教育の発展を図っていく上でこの大学院の問題が大変ウエートを持った重要な問題であるということを意識いたしまして、今後もそういう関係の方々の御意見をいただいて、大学院の全体の規模なり配置計画をどうするかということその他につきまして御議論をいただいて、全体の整備について取り組みたい、かように考えております。
  292. 湯山勇

    湯山委員 大学院の先生方の意識を変えてもらわないとこれは改まりません。自分たちが戦前の大学で勉強して、そして当時は学位を持つということは、あることについてはオーソリティーである――お医者さんの場合を言うと差しさわりがあるかもしれませんけれども、それをのけて考えれば、理学の分野においても文学の分野においてもオーソリティーが博士であった、そういう頭がやはりあるのです。そうじゃないのだ、いまの博士というのはこうなんだ、国際水準もこうなんだという理解がなければ、いやこんなのじゃ学位はやれない、こう突っ張っておったのでは、そのこと自体は学位というものの権威を守っているように見えますけれども、実は逆なんです。このことをひとつ徹底的にわからせない限り、これは改まりません。私の知っているのでも、阪大の工学部を出て五十何歳でやっと学位をとって、それでまだ助手です。こういう残滓が残っている。これをひとつ勇敢に大決断をもって文部省が取り組まなければ、極端に言えば、いつまでたったってこのしわ寄せは全体の幼稚園教育にまで及びます。今日の教育崩懐を救う道の一つは、小さいかもしれませんけれどもここにあるし、また日本の将来、次の世紀を展望すれば、この改革なくして日本の将来はないと言っても言い過ぎでないというくらいに私は思っておりますので、ひとつぜひこの際、行革も大事でしょうけれども、文部省はそんな行革じゃなくて、大学院をどうするか、これだけ国費をつぎ込んでおるのをむだにしない、それにはこの改革しかないという決意で臨んでいただきたいと思います。  大臣にもぜひこれをお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  293. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は率直に申し上げて、行革もいまの時代に非常に大事でございますが、それに劣らず教育の改革といいますか意識革命をすることが長い将来を考えて非常に大事だ、かように考えておりますので、湯山さんの御意見、十分にひとつ心に入れていきたいと思います。
  294. 湯山勇

    湯山委員 そこでついでにお尋ねいたしますが、初中局お見えでしょうか。――いま大学院の学位のことで質問しておるのですが、初中局にはそういう大学院を出た人もたくさんいるだろうと思います。ことに教科書検定に当たっておる調査官などは、ずいぶんそういう学問をした人も多いと思うのですが、教科書調査官で博士号を持っている人は、何人の中で何人おるのでしょうか。
  295. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 教科書調査官、現在四十五名おりますが、そのうち博士課程の修了者が十一人でございます。博士号の取得者が十一人でございます。両方、博士課程を修了し、号を持っているのも十一人ということでございます。
  296. 湯山勇

    湯山委員 同じですか。修了者と学位を持っているのとは違うのですよね。
  297. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 先生のお尋ねが博士号ということもございましたので、十一人でございます。どちらもたまたま十一人でございますが、人がそれぞれ別の場合もございますし、同じの場合もございます。
  298. 湯山勇

    湯山委員 その調査官がどれだけ権威を持っているかですね。そういう、大学院で学問した人だと思うのですが、どれだけ権威を持っているか、そのことについて、この前お聞きしておったこととつながってもう一度お尋ねしたいと思います。  それは、この前、資料でお配りした帝国書院の、いま使われている「地理」の見本、その中の正誤訂正で、帝国書院の分で、最初に原子力発電所の数の違いを直させたのはわかります。ところが、「温度の高い排水」という「排」というてへんの字の「排水」を、正誤訂正で「廃水」、すたれる、要らなくなった水というように訂正しています。これ、お手元にありますね。これは正誤訂正した方が間違いでしょう。もう一度聞きます。
  299. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この点につきましては、湯山先生からいろいろと御指摘がありまして、御議論のあったところでございますけれども、教科書調査官の報告によりますと、原子力発電所につきまして「排水」と表記する一方、当該教科書の他の個所では「工場の廃水」という表現をしておりますので、表記の統一を図らなければ学習上支障を生ずるとして正誤訂正の申請が行われたものでございまして、検定規則十六条四号に該当するということで承認したということになっております。
  300. 湯山勇

    湯山委員 それは大変な間違いなんです。私も、そういうことを前の局長がちらっと言いまして、そこで科学技術庁から通産省、全部聞きました。しかし、いま局長の言われたようなことをやっているのは見たことない、いずれも。ただその場合に、「温度の高い排水」はてへんですけれども、そのほか汚れた水の「廃」の場合は廃水とは言わないで廃液という言葉を使います、これが専門家の意見です。だから、どうも文部省調査官も、大学院を出たり学位を持っている人があるにしても、まことに勉強はしてないと言わざるを得ない。  そこで、これは前の局長は、間違いですから通知して周知させますと約束したんだ。教科書、直っておりますか、課長。通知して直しましたか。私にそう答えておるのですよ。
  301. 藤村和男

    ○藤村説明員 確かに湯山先生から御指摘がありました件につきまして、その後会社を呼びまして、私の方から、これは専門用語であるてへんの「排」の方に将来なさったらいかがですかという指導でございますね、をいたしました。しかし、会社としましては、従前の記述でまいりたいということで、現在の教科書はそのままになっております。
  302. 湯山勇

    湯山委員 これは私には、前初中局長が適当でない、直しますという約束をしておったのです。まだ全然直ってない。黙ってほっておいていいかどうかです。しかも、専門家に聞いてごらんなさい。科学技術庁なり通産省なりの原子力発電の専門家に聞いてごらんなさい。こんな字は使いません。もし使えば廃液というのが、温度に関係なく、機械を洗ったり汚れたりしたものを、廃液という言葉はあります。温度の高い廃水というのはありません。だから調査官を呼んでくれと言うのです。わかりますか。対応できませんよね。直さぬといかぬですよ。見てごらんなさい。そんなつり合いのないのないです、これ。専門家が見たことがない字です。  それからついでに聞きます。もう一つ前の清水書院ので、「反対運動で建設できなくなった例もある。」というのを「例もみられる。」と直している。いいですか。正誤訂正している以上は、明確に直すだけの理由がなければならない。「例もある。」というのでは学習を進める上に支障になって、「例もみられる。」ならば支障がないという、これ説明を願いたい。
  303. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 この点につきましても種々御議論がありましたので、私どもの承知しておりますのは、やはりこの「ある。」が「みられる。」になったと同時に、その前に「地元の人々の不安も大きく、」というところ、この「大きく、」という表現が現在の原子力発電に対するいろいろな客観的な評価と申しますか、そういう点において非常に総合的な理解を与えるのに適当でないという観点から、ここのところが「あり、」となりまして、それに伴って、この見本本にございました「ある。」が「みられる。」というふうになったのでございまして、やはりこれは一体として表現されているものとして、学習上支障があるという観点から承認したものだというふうに承知しております。
  304. 湯山勇

    湯山委員 学習ということがわかっていないのです、局長。学習というのは、それを使って子供に教えていく、その過程でどうなるかというのですから、文書で書いて出してください。いまのじゃ、わかりません。  あなたが広報に書いてあるように、正誤訂正というのは簡単なことで、明確でなければならぬとちゃんと書いてあるのですから、明確にしてください。いまのじゃわかりません。――いいです、時間がないから。  もう一つ聞きます。検定意見というのには、検定規則によれば、私は二つあるとは思っていません。検定規則をごらんになると、修正意見というのはありますけれども、改善意見などという検定規則ありますか。
  305. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 規則には、第九条に修正意見というのがございます。改善意見は私ども指導としてやっておるわけでございます。
  306. 湯山勇

    湯山委員 それじゃ念を押します、局長改善意見というのは検定規則にはありませんね。
  307. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 検定規則にはございません。
  308. 湯山勇

    湯山委員 ところが、あなたの、広報には、検定意見には修正意見と改善意見があると書いてある。間違いですよ、これ。いいですよ、いま、もう検定意見、ないと言うのですから、もういいです。私は時間がないから、きょうは指摘だけしておる。それだけです。  それから、まだあるのです。宮澤談話ですね。これは今回の基本になるものです。ところが、宮澤談話文部大臣談話とは違う。宮澤談話ではどの教科書が該当するのだ、「それ迄の措置」だから終わりを示してある。文部大臣のは、どの教科書というのわからない、そして「今後」となっていて、向こうを示しています。ここまでこの前指摘しました。局長は、それは宮澤談話とあわせて読んでもらえばわかるということですが、文部広報のどこに宮澤談話は出ておるのでしょう。その重要な宮澤談話はどこに出ておりますか。――言いますから、こっちが持ってきておるから――示してください、どこに出ておるというのを。
  309. 鈴木勲

    鈴木(勲)政府委員 先生お持ちでございますが、これは二ページの下の方に官房長官談話が出ております。
  310. 湯山勇

    湯山委員 一番大事な宮澤談話は、文部大臣談話については一面の一番初めに七段抜きでこれだけ大きく出ておる、大事な宮澤談話と見比べてみればどの教科書へ該当するのかわかると局長言われたけれどもないんです。こうやって見てもないんです。どこかと思ったらこの一番下の端っこに、しかもばらばらにして出ている。この広報は、いまのように、正誤訂正についても正確でありません。検定意見が二つあるなんて間違いも書いてあります。この談話自体、私はやがて後藤田官房長官がお見えになったときの質問に――きょう調査官呼んでもらうというのに見えないから調査官に聞くことをお聞きしたまでです。指摘にとどめます。  時間も早くやめるようにということでございますから、これでおきますけれども、さっきの正誤訂正の分は文書で下さい。私はもっと精細に点検する必要があると思いますから、いま局長がお答えしようとしたこと。前に具体的に社会科――理科のことは私が例示しましたから、それ以外でこれが正誤訂正に当たるのだという正誤訂正の第四号、学習を進める上で支障があって、速やかに訂正を要する具体的な例、つくり話でもいいから出してください。まだ出ないのです。これだけ要求して、一応終わります。あと留保しておきます。
  311. 狩野明男

    ○狩野委員長代理 鍛冶清君。
  312. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 国立学校設置法の一部改正の法律案につきまして若干質問をさせていただきます。  最初に、高岡短期大学の新設並びに山形大学の工業短期大学部の廃止、これの関係についてお尋ねをいたします。短期大学を高岡につくる、これは新設することが一つ、それから山形工業短期大学を廃止することが一つ、これの相殺でどうも因果関係ができておるようでありますけれども、新設と廃止の関係性についてまずお尋ねをいたします。
  313. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 新設と廃止については直接の因果関係があると私どもは理解をしていないわけでございまして、高岡短期大学の設置につきましてはかねて調査を進めてきておったものでございまして、わが国の高等教育の整備という観点から、特にこの高岡の短期大学については幅広い地域の要請に適切に対応し得るように短期大学の多様化が促進されることが望ましいということは高等教育計画についても言われている点でございます。そういう点を踏まえまして、地域の多様な要請に積極的にこたえ、広く地域社会に対して開かれた特色ある短期大学として創設をするということで準備を進めてまいっておりましたものを五十八年度予算で創設に踏み切ってお願いをしているものでございます。  山形大学の工業短期大学部について今回廃止をいたしまして、四年制の昼夜開講制ということでの夜間の工学部の学科に切りかえることにした点でございますけれども、これは短期大学の志望者等について必ずしも定員を満たしていないというような状況があること、さらに短期大学では十分でなくて、やはり四年制の学部で養成することが望ましいというような事柄もございまして、そういう点を踏まえて、片っ方の短期大学部を廃止し、四年制の工学部の夜間コースということで対応をしているものでございます。直接の因果関係はないわけでございますが、先ほど来御説明をいたしておりますように、それぞれ真に必要なものについては設置を進めてまいり、改組転換等を図るものについては転換を図るというような考え方で対応しているものの一つでございます。
  314. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この短期大学は今回初めて国立でつくられているわけです。大体いままで公立でつくられてきたと思うのですが、国立で短大をつくった理由をお答えをいただきたいと思います。
  315. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立で設置いたした理由でございますが、高岡の短期大学についてはかねてから国立の高等教育機関として整備をするということで調査を進めてまいってきたものでございまして、いわばその延長線上で対応しているものでございます。御指摘のように、従来国立の短期大学には相当以前には独立の短期大学であったものもございますが、それがそれぞれ四年制の学部に転換をするとかあるいは高等専門学校に転換するというような形で、現在ではただいま御提案申し上げておりますような形での国立の短期大学はないわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、地域の要請にこたえた新しい形での短期大学について、国立でいわば新しい短期大学の行き方というものを一つ先導的な試みとして積極的にやることによりまして、将来地域社会と連携を持った短期大学の整備を行っていく場合の一つの指標と申しますか、モデル的なものとしてこれの創設に取り組んでいるわけでございます。そういう形ではいわば全く新しい試みをこの国立の短期大学で行おうと考えているものでございます。
  316. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いまの御答弁の中にも、高岡の短期大学は地域の多様な要請にもこたえるためだ、また新しい構想でモデル的にやりたい、こういうお話しがございましたが、具体的にはどういう形でこの短期大学を生かしていこうとお考えになっているのか、もう少し突っ込んだところでお答えをいただきたいと思います。
  317. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 地域の要請にこたえて地域との対応を積極的に考えている一つのケースで申し上げますれば、この大学について具体的に実習を行う際に、たとえば県立の工業技術センターというものが設けられますればそれらと連携して運営を図っていくというような事柄なども、具体的な計画としては県側とも十分、今後設置をし、整備を進めていくに当たっても、そういう点も具体的に対応できるような形で整備を進めていくということなどを考えております。
  318. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 抽象的なお答えですからはっきりわかりにくいのですが、モデル的にやるということは、今後こういった新構想による国立の短期大学というものをこの推移を見ながらまたつくっていく、新設をしていくお考えがあるということでしょうか。
  319. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 地域の要請にこたえた高等教育機関の設置ということについて、いろいろ多様な対応が必要であろうかと思っております。この短期大学についてはいわばそういう意味一つのモデルとして考えておるわけでございまして、これを一つの参考とされまして、将来地域社会と積極的な連携を持ったものとしての短期大学の整備というものは、たとえばコミュニティーカレッジというような形でいろいろ言われているものもあるわけでございますが、そういうものの整備に当たっては、たとえば第三セクター方式というふうなことも言われているわけでございまして、そういう運営が可能なものを私どもとしては模索をしてまいりたい、かように考えております。
  320. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 つくるかつくらないかというのがはっきりしませんけれども、つくる以上はぜひ効果あるものにしていただきたい、こういうふうに思います。  続いて、山形大学工業短期大学が廃止されて山形大学工学部に夜間主コースを設置する、こういうふうになっているわけでありますけれども、この入学定員とか学科等の教育研究組織といったものはどういう形で行われるようになるのかお尋ねをいたします。
  321. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 山形大学工学部の夜間主コースについての考え方でございますけれども、高度な専門技術者が近年求められるということになりまして、従来の短期大学部を転換いたしまして工学部に主として夜間において授業を行うコースを設定しようとするものでございます。  高分子材料工学科に入学定員十人、機械工学科に三十人、応用化学科に三十人、電気工学科に三十人、情報工学科に二十人、合計五学科に入学定員百二十人を設けることとしておるわけでございます。ちなみに、廃止をいたします工業短期大学部の入学定員は二百名ということになっているわけでございまして、入学定員の点で申し上げますれば八十人の減ということになるわけでございます。
  322. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは短期大学が今度は山形大学の工学部になるわけでございますけれども、そこでちょっと気になるのは、入学者選抜方法それから入学資格等について共通一次試験との関連が考えられるわけですが、これはどういうふうに考えておられるのか、ちょっとお尋ねをいたします。
  323. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 入学者選抜についてのお尋ねでございますが、新設予定の学部、学科等の入学者選抜につきましては、五十二年に各国立大学長に通知をしているところがございまして、各大学でこれに基づきまして入学者選抜方法を決定し実施をしているわけでございます。その通知では、学科の新設の場合は文部省令の制定または予算の成立の日以後において実施する原則的な方法と、主として既設学科の改組により学科を新設する場合には既設の学部、学科等の入学者選抜に含めて実施する方法の二種類を示しているわけでございます。  山形大学工学部においては、同大学の判断によりまして夜間主コースの入学者選抜は後者の例にならって既設の学科を系列に整理した昼間主コースに含めて募集し、合格者を決定し、関係法令、予算の成立を待って夜間主コースに振り分ける方法をとっているわけでございます。  なお、この工学部では、既設学科において推薦入学を実施しておるわけでございまして、新設予定の夜間主コースでも既設学科に含めて社会人あるいは工業高校卒業見込者等について推薦入学を行っておるというぐあいに承知をしております。
  324. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では、夜間主コースについては、結局共通一次は免除になるのですか。
  325. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 推薦入学の部分については免除になるわけでございまして、推薦入学は五〇%実施をしているというぐあいに承知をいたしております。
  326. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 社会人の高等教育の機会を確保するためには、夜間教育それから通信教育の拡充改善というものが非常に必要になってくるわけでありますけれども、昼夜開講制等の試みといったものを今後国立大学において、また短期大学を含めて、推進をしていくお考えがあるのかどうかをお伺いいたしたいと思います。
  327. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 社会人のための夜間学部なり通信教育の拡充という点は、特に勤労学生の勤務の状況、業態に応じた就学の機会を拡充するという観点から必要なことでございまして、従来からもその充実、振興を図っている点でございます。夜間主コースは、千葉大学工学部、福島大学経済学部、愛媛大学法文学部に設置をされておるわけでございますけれども、ちなみに昭和五十八年度では、ただいま御説明をいたしております山形大学工学部のほかに、愛媛大学法文学部の文学科にも五十八年予算では設置をするということで御提案を申し上げているわけでございます。これらの点の充実については今後とも取り組みたい、かように考えております。
  328. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この夜間主コースの設置してある大学が幾つかあるようでありますけれども、その大学にどういう大学があるのか、また、そういう夜間主コースを出た卒業者の就職などはどういう形になっているのか、状況を把握しておられるようでしたらお答えをいただきたいと思います。
  329. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 夜間主コースを設置している大学についてはただいま申し上げたような大学でございまして、具体的にどういう運営が行われているかという点でございますけれども、昼夜開講制は大学における履修形態の一つとして、昼間部、夜間部の区別をしないで昼夜にわたって授業を開設するということで対応をしているわけでございます。これは学生の生活実態に応じた履修を可能にするという点に具体的なメリットがあろうかと思います。  夜間主コースの在学生で有職者の昼間の単位の修得状況は個人によって大変差があるわけでございます。三交代の勤労者等の場合でございますと一年で二十単位程度修得しておりますが、全体の平均としては数単位程度ということになっております。  なお、夜間主コースの出身者の就職状況についてのお尋ねでございますけれども、夜間主コースの在学生には有職者が含まれているわけでございまして、したがって、卒業予定者のうち就職希望者の占める割合は必ずしも高くないということがございます。そして就職を希望する者の就職決定状況でございますけれども、昼間主コースに比べてやや劣るものになっているというのが私どもの把握している現状でございます。
  330. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 質問申し上げないことまでお答えいただいて大変ありがたいのですが、続いてちょっとお尋ねをいたします。  今回提案されております短大の創設、大学院の拡充整備ですね。これは先ほどの質問の中にもちょっと出てまいりましたが、後期の高等教育の計画の中でいろいろと策定がされているわけですが、それが若干そのとおりにふえてきてないというような状況もある中で、後期計画は見直しをすべきであるというようなことも再々言われているわけですけれども、そういう後期計画の中の一環としてこれは今回提案がなされたのかどうか、この点をお尋ねをいたします。
  331. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 全体的な把握といたしましては、高等教育計画の計画的な整備ということで、後期計画に即して実施をしているものでございます。したがって、後期計画に含まれるものかと言われれば、基本的にはその中に含まれるものでございます。
  332. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、これも先ほど前の方が質疑を交わされた中で出ておりましたけれども、国立大学については年平均二千人程度の増が一応言われているわけですね、後期計画の中で。ところが、本年度は三百九十人と低くなっているわけですが、十八歳人口の動向から見て、こういう形で差し支えないのかどうか、ちょっと心配になる点もあるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  333. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御説明したわけでございますけれども、十八歳人口の全体の動向は、今後、昭和六十年から六十七年ぐらいに向けて大幅にふえてまいりまして、二百万人を超えるという状況になるわけでございます。さらに、それが昭和七十五年ごろには現在規模程度に、百五十万人台というような状況に、急激にふえてさらに急激に減っていく状況があるわけでございまして、そういう姿を把握いたしまして、今後の高等教育計画の整備をどう進めていくかということについては、ただいま大学設置審議会の計画分科会でいろいろと御議論をいただいている点でございます。  そこで、御指摘の点は、特に国立大学の入学定員について、たとえば五十八年度が三百九十人というようなことで大変低い数字になっている、それでは後期計画で示されている点から大幅に落ち込んでおって、大学全体の、高等教育機関の全体の整備から見てどうかというお尋ねではないかと思うわけでございますけれども、国立の整備については、確かに五十六年、七年、八年と、このところ基本的には国家財政全体の大変な厳しい状況下にあることを受けまして、全体的には予算要求そのものもマイナスシーリングということで、前年度予算を下回る予算要求をせざるを得ないというような対応が迫られているわけでございます。そういう中で私ども真に必要なものの整備については積極的に進めていくということで、それらの中で、たとえば改組転換も図っていくというようなことで具体的な対応をしてきておるわけでございます。確かに国立大学の整備というものが入学定員から見れば非常に制限されたと申しますか、低い水準で行われておりますので、これらの点が高等教育の計画的整備の全体の中では非常に落ち込んだ形になっている点は、確かに御指摘のとおりでございますが、全体的な流れとしては、私立大学等の定員増の状況その他全体的に国公私立を通じて把握をし、さらに高等教育機関の多様化と申しますか、専修学校の専門課程というようなものの進学者がふえてきておるとか、そういうような全体的な姿の中で高等教育機関の整備をどのように進めていくかということを把握する必要もあろうかと、かように考えております。
  334. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 最後の方の御答弁と関連のあることだと思いますが、これも先ほどの委員質疑の中で、新しい高等教育の長期計画の策定、これをやらなければならない時期に来ているので、その検討に入っているのだというふうにたしか御答弁があったように思いますが、この検討は具体的にはどういう形でいま進められているのか、お尋ねをいたします。
  335. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 具体的にただいま調査を進めております状況でございますけれども、大学設置審議会の設置計画分科会に検討をお願いをしているところでございます。そして主な観点と申しますか論点としては、先ほども申し上げた点でございますけれども、十八歳人口が今後ふえ、さらにその後また減っていくという非常に大きな変動が予想されるわけでございまして、これに対してどのように対処すればいいか。  一つには、今後ふえることに対して入学定員をそれに見合った増をするとすれば、昭和七十五年時点の事態について、大学全体として、それでは減った時点で入学定員を減らすというような対応ができるかどうかというようなことなどが具体的な検討課題の問題点の一つであろうかと思います。  それから、これも先ほど御説明した点でもございますけれども、大学なり短期大学への進学率は、横ばいないしやや鈍化をしているという現状がございまして、他面、専修学枝の専門課程の進学率がふえてきておる。現在の時点では、専修学校の専門課程は、ほぼ短期大学の規模と同じ程度の規模になってきておるわけでございます。そういうような傾向についてどう分析し、今後の進学動向をどのように考えていくか、基本的にはやはり高等教育機関が多様化をしてまいるというような姿が想定をされるわけでございます。  それと第三点といたしましては、大学なり短期大学が大都市ないしその周辺に集中しているわけでございますが、今日までの計画的な整備に当たりましては、大都市集中の点をなるたけ地方分散にという形で整備を進めてきておるわけでございますけれども、地方分散と申しましても、私立大学の場合には立地条件、経営的な問題その他がございまして、地方に私立大学を積極的に伸ばしてもらうこともなかなか困難な問題がある。他方、十八歳人口というのは主として大都市周辺、首都圏ないし近畿圏あるいは中京というような大都市圏中心に十八歳人口も大幅にふえるわけでございまして、それらの点を今後どのような形で整備を進めていくかという点も大きな観点の一つであろうかと思います。  以上のような点が問題点でございまして、私どもといたしましては、鋭意その作業を進めておるところでございまして、五十八年度末までにはそれを取りまとめるようにいたしたいと、かように考えております。
  336. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、教員養成大学についての大学院の設置でお尋ねをいたしたいのでありますが、既存の教員養成大学に大学院を設置するという方向、これは今後計画的にお進めになっていくのか、この点をまずお尋ねをいたします。
  337. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 既設の教員養成系の大学院の設置の今後の見通しということについてのお尋ねでございます。  教員養成大学学部を基礎とする大学院につきましては、昭和五十三年の国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議におきまして、その整備充実の推進が求められているわけでございます。文部省といたしましてもこの附帯決議を踏まえまして、各大学学部における大学院構想の進捗状況と申しますか計画の成熟度と申しますか、その充実のぐあいを見まして設置が適切なものについては逐次取り組んできているところでございますし、その点については今後も引き続き取り組んでまいりたい、かように考えております。
  338. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大学院は大体そのほとんどが課程が修士課程になっているようですが、博士課程を設置するお考えはあるのかどうか、この点をお尋ねいたします。
  339. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 将来博士課程の設置を考えているのかというお尋ねでございますが、当面は、ただいまのところ修士課程の設置状況の推移あるいは教員養成大学学部の教育研究活動の進展状況を見きわめながら、既存の教育学研究科の博士課程は北海道大学以下いわゆる旧帝国大学ないし広島大学に置かれているものがあるわけでございますが、それらとの関連も勘案しながら今後慎重に検討してまいりたい、かように考えております。
  340. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この大学院がだんだん整備されていくに伴いまして、義務教育学校における教員免許状の種類をひとつ考えてもいいのじゃないかと思うのです。その基礎資格を修士の学位を有するというようなことにして、いわゆる上級免許状を設けるというような考え方もあっていいのじゃないかという気もいたしますが、こういった点についてはいかがでしょうか。
  341. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 確かに御指摘のように、教員養成大学学部の修士課程の大学院の整備が今後さらに進んでまいり、現実に修士課程の修了者で教員になる者がふえてくることが予想されるわけでございます。また、現職教員の資質向上という観点から、現職教員の大学院修士課程の修了者も今後数がふえていくということは十分考えられるわけでございます。  そういう点を受けまして、既存の免許状の体系の中でさらに上級の免許状ということについて検討すべき課題であるということは私どもも十分承知をいたしております。そういう免許状の種類を含めまして、全体的に養成制度の改善については今後さらに検討してまいりたい、かように考えております。
  342. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大学院修士課程を修了した人たちが教員等に採用されて就職していくという状況は現状で大体どういうふうになっているのか、わかっておればお答えをいただきたいと思います。
  343. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 既設の教員養成系の大学院修士課程の修了者の就職状況でございますが、昭和五十七年三月修了者の昭和五十七年六月現在の数字でございます。修了者全体で二百八十七人のうち教員として就職した者が百三十三人、率で言いますと四六%になっております。教員以外の就職者、この中には大学なり短期大学の教員も含まれておりますけれども三十五人、未就職者が百十九人というような状況になっております。なお、未就職者のうち教員志望の者もおるわけでございまして、六月以降さらに教員になった者もある程度いるというぐあいに想像されるわけでございます。
  344. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大学院を修了した人たちの教員になる率が現実にだんだんふえてきているわけでありますから、先ほど御答弁ございましたが、教員養成等についてもいろいろな角度からこういう機会に御検討を願いたいと御要望を申し上げておきます。  続いて、大学の弾力化ということについて、これは臨調答申に基づいていろいろと御検討をなさっていられるようで、大学の修業年限の弾力化の必要性についても指摘をされておったわけでありますけれども、この臨調の基本答申を受けて文部省は昨年九月に大学設置審議会基準分科会に、三年修了程度で大学院へ行けるというような形の弾力的な考え方を制度の中で設けていくべきではないかというような内容のことを諮って、これまでに三度ばかり自由討議が行われた、こういうふうにいろいろ報道もされておるわけでありますけれども、この基準分科会に文部省がお諮りになった内容は具体的にどういうふうな形でやられたのか、また、差し支えなければ自由討議の内容等についてお聞かせをいただければと思います。
  345. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学の修業年限の弾力化の問題については、かねて昭和四十六年の中央教育審議会の答申でございますとか、その他、たとえば昨年七月の臨時行政調査会の基本答申等においても提言をされているところでございまして、大学制度について余りにも画一的ではないかというようないろいろな議論が行われているわけでございます。  私どもも、大学制度全体の弾力化ということについては、かねてたとえば単位の互換でございますとかいろいろな形で、大学制度を非常に固定化し画一化したものでないような形で運用すべきでないかというような基本的な考え方でいろいろと制度化も具体的に進めてきておるわけでございます。いわばその中の一つとして大学の修業年限につきましても設置審議会基準分科会において御議論をいただいておるわけでございます。  実は、この法律案ではございませんが、今国会に学校教育法の一部改正の提案をお願いいたしておりまして、その点は獣医関係の修業年限について改正をお願いをしている点があるわけでございますが、それらとの関連も特にあるわけでございまして、大学の修業年限一般についてもこの際基準分科会で御議論をいただきたいということで御議論をいただいているというのが現状でございます。  いろいろと御意見はあるわけでございますが、ただ、一般的な修業年限を動かすということになりますと、短期大学の修業年限と四年制の既存の一般大学の修業年限との関連でございますとか、あるいは一般教育をどのように扱うかというような基本的な大学教育の中身そのものについての議論も十分いたさなければならないというような点もあるわけでございます。したがって、ただいまいろいろな角度からの検討はお願いをしているわけでございますが、これらの議論が最終的にどういう形でまとまってまいりますか、その点については今後十分慎重に議論をしていただきたい、私どもかように考えております。
  346. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この中で弾力化していくについて、若干お触れになっていたようでございますけれども、障害といいますか問題点といいますか、こういうものがいろいろと出てくるようであります。考えておられるものがどう出てくるかによって違うのかもわかりませんが、そういう弾力化した場合の問題点はどういうところに出てきそうだと具体的にお考えでございましょうか。
  347. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 いろいろあるわけでございますけれども、先ほどもちょっと申し上げました点で、たとえば短期大学との関係をどのように考えるかという点がまず一つでございます。それから全体的には、戦後の教育の基本的な根幹になっております六・三制の現行学校制度との関連もやはり検討をしなければならぬ課題として出てくるわけでございます。そのほか、いわゆる大学の基本的な考え方の中に、卒業の要件としての百二十四単位の単位の修得という考え方があるわけでございますが、単位の修得について基本的にどのように考えるかというような問題があるわけでございます。それらの点が関連するところが大変広いし影響するところも大きいわけでございまして、大学関係者だけの議論でこのことについて結論を出すということも大変むずかしい問題ではないかと思っております。しかしながら、やはり事柄としては十分大学関係者にも御議論をいただくことは必要ではないかということで、基準分科会で御議論をいただいているというのが現状でございます。
  348. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは大体いつごろそういう基準分科会での御意見がまとまって出てくるのか、またそれが出てきた時点で、恐らくは中教審にもおかけになるのかなというふうな気もいたしておりますが、ここらあたりの今後の見通しの関係を含めてお答えをいただきたいと思います。
  349. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま申し上げましたように、事柄としては検討しなければならない課題でございますから、大学関係者に御議論をいただいているというのが現状でございまして、これを制度としてどのように今後扱っていくかということは影響するところも大変大きい問題でございまして、具体的な制度の面でどのように取り組んでいくかということについては、私ども具体的な日程と申しますか、そのようなものを現時点では考えているところではございません。
  350. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 先ほども局長、御答弁の中で、六・三・三制との関連もちょっとお触れになったのですが、報道されている内容をちょっと読んでみますと、そういう六・三・三制のいわゆる学制改革という立場からの視点が必要じゃないかという御意見も出たというふうに私も読んだのですが、まさにそういう形の立場考えていかなければならないし、その必要がむしろ強いのじゃないかという気もしているのでありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  351. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 学制問題とも基本的には絡む問題があるわけでございますが、そういう点で事柄としては大変大きい事柄になるわけでございますので、ただいまのところは大学設置審議会の基準分科会において大学内部での検討ということで議論をいただいているというのが現状でございます。
  352. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ここでは学制改革についてもちょっとだけ触れさせていただきたいと思いますが、私どもはこの学制改革というものが、これからは議論しなければならないときであるし、大変必要なときだ、こういうふうに理解もしておりますし、またいろいろと国内でもこの論議が盛んに行われてくるようになっておりますし、総理もこういった点にも触れられているようでありますが、現行の学制、六・三・三制について、戦後ずっと行ってきて、その功罪、メリット、デメリットといいますか、こういったものは文部省ではどういう形でとらえていらっしゃるのか、ひとつお答えをいただければお答えください。
  353. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 六・三・三制の功罪ということは、とりもなおさず戦後の学校教育制度の評価にほかならないと思うわけでございます。この評価につきましてはいろいろな観点からいろいろな評価が可能でございますし、また人によって見解も大きく異なるのではないかというふうに感じられるわけでございますが、戦前の日本の学校教育制度あるいは現在ヨーロッパ諸国で見られるような学校制度と対比して一言で申し上げますれば、教育の普及といいますか、教育人口の量的な拡大にきわめて有効な制度であった、そういう意味国民全体の資質の向上にきわめて効果があった、これが功の第一に挙げなければならぬことだと思います。  それから、これに伴って罪といいますか、その点については評価が分かれるかとも思いますけれども、特に最近言われております点は、他のヨーロッパ諸国との比較から考えてみまして、国民の能力、適性に応ずるという点で余りに画一的に過ぎるのではないかという批判がかなり出てまいっておるように承知しているわけでございます。  この点に関しましては、戦後の学校制度のもとにおきましても昭和三十年代の半ばに高等専門学校という制度もできまして、また五十年代の初めには専修学校制度も創設される、そういうことで高等学校の職業学科とともに、そのような実際的あるいは実学といいますか、そういう教育の場もかなり整備されてきているというふうに考えるわけでございます。また、高等学校につきましては、教育課程をかなり思い切って弾力化をいたしまして、必修単位数もかなり削減をするというようなことで、高等学校教育の多様化も実現可能なように教育課程の面で工夫もいたしてきておるわけでございますし、また大学教育、高等教育につきましては、先ほど大学局長からお話がございましたような弾力化、多様化を図ってきておるわけでございます。  総じて言いまして、現行制度の持つ欠陥と言えるかどうかわかりませんけれども、その問題点を解消するために、六・三制の基本を維持しつつ、能力、適性に応ずる教育の工夫に努めてきているというのが現状だと理解しております。
  354. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっときょうの議題になっている内容と離れてくるので、あと簡単に御質問申し上げて終わりたいと思いますが、きょう初中局長、専門的にお答えいただくということでお願いしてありませんので、お答えいただける範囲でお答えいただきたいのです。一応六・三・三制を認めた上で改革をするというこの考え方というものは、もうずいぶん前から、中教審の答申があった以後からそのことを言われて今日まで来ているわけでありますけれども、いろいろと考え方はあると思うのですが、文部当局としてはやはりいまの時点では六・三・三制の具体的な改革という学制改革までいく必要はないというふうにお考えなのか、やはり検討する必要があるというふうにお考えなのか、そこらあたりをお答えをいただけるならひとつお答えください。
  355. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 現在の初等中等教育の改革の問題につきましては、いろいろな立場の方々から、あるいはいろいろな団体から、いろいろな御提言も受けているわけでございます。現在文部省では中央教育審議会が審議を開始しておりまして、主として初等中等教育教育内容の今後のあり方について検討しているわけでございますが、その教育内容の審議に関連をいたしまして、いわば当然に学校制度についても議論がなされるというふうに予想しておるわけでございます。このような審議の経過を踏まえまして、文部省考えていきたいというふうに考えております。
  356. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 学制改革等についても四十六年でしたか中教審答申で触れられておりますし、その折に先導的試行ということもたしか触れていたと思うのですね。こういう関係というのは、僕はこういう問題ではもう早くから始めておいてよかったような気がするのですけれども、また、いまからだってやってもいいような気がしますが、この点についてはどういうふうにお考えなのか、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  357. 齊藤尚夫

    ○齊藤(尚)政府委員 昭和四十六年の中央教育審議会の答申以後、いろいろな形でその提言に対する勉強をやってまいっておるわけでございます。ただ、中教審の答申は現時点考えますと、特に高等教育の急速な普及向上の段階でございますし、現在はいわば量的普及というものが頭打ちといいますか、成就した段階と申しますか、そういう社会的なあるいは教育上の実態がかなり変わってきておるわけでございます。研究は継続しておりますが、四十六年の提言の趣旨に沿った教育改革ということが果たして現状で可能であるかどうか、これは大変むずかしい問題であろうかと考えております。
  358. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっと案件と外れてきましたので、最後に、これは大臣質問通告という形ではしておりませんでしたけれども、総理もこの六・三・三制問題については触れられておりますし、この学制改革の問題は、これはちょうどその時期に来ているし、真剣に取り組まなければいかない、こういうふうに私どもは考えているのですが、大臣にそのお考えを一言お聞きしまして、若干時間が早いのですが、終わりにいたしたいと思います。
  359. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 六・三制が施行されましてからもう三十五年もたちました。先ほど事務当局から御説明申し上げました、また御存じのとおりに、教育の機会均等、国民一般に対する教育の普及等、やはり相当大きな成果があった。しかし、三十五年たってみますると、各方面から、先ほど来話が出まするようにいろいろな欠点といいますか、指摘されて意見が出ておりますけれども、さればこれだというような意見はなかなか――まちまちな、それぞれ思い思いの指摘がございます。  たとえば、いまの中学三年が精神的にも、肉体的にもちょうど一番動揺する時期で、これは最高学年であるというところがいまの非行、暴力等につながっておるのだ、厳に指導するといいますか、抑えるといいますか、そういうところがないところに問題があるとか、いろいろ言われております。それから教科内容等に問題があるということでございますので、御承知のとおりに中央教育審議会で教科内容等を含めて御審議をいただいております。  学制というのは、これは言うまでもなく国民全般に将来にわたって大きな影響のある大問題でありますから、思いつきや軽々にはなかなかやれないと思います。各方面の意見を聞きながら、これだという合意ができそうな場合には改めるところは改めなければならない、こう思いますけれども、それでは、いますぐどういう方法で改めるか、こういうことは、先ほど来お話しのように大学制度その他にも関係がありますから慎重に考えたい、かように思っております。
  360. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この問題はまた別の機会に少し立ち入って議論をしてみたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  361. 狩野明男

    ○狩野委員長代理 三浦隆君。
  362. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 国立学校設置法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。  初めに改正法案と行財政改革との関連について大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  先ごろの大臣に対する質問、そしてそれに対するお答えの中で、行財政改革も大事だけれども、教育の将来を考えて行財政改革以上に教育が大事だと言えるようなニュアンスのお言葉があったように思うのですが、いかがでしょうか。
  363. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 当面の行政あるいは財政の問題からいいますと、行政改革、これは戦後の状態から今日に至りましていまや改革すべき時期である、こういうふうに国民大多数も考えていられるのじゃないかと思いますが、内閣でも、臨調の答申をいただきまして、その線に治って改革を進めよう、こうしておるわけでございます。  でありますから、学校制度あるいは整備等についても、これは政治の一端でございますので、その精神を無にするというわけにはまいらない。しかしながら、申し上げるまでもなく教育というものは一時期の問題でございません。長い目で見て継続的なものであるという考え方から重要視しなければならない。財政を無視するわけにはいきませんけれども、その範囲内ではできるだけ力を入れるべき問題である、かように考えておることを先ほど申し上げたわけでございます。
  364. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いろいろとお尋ねしたいことがたくさんあるものですので、大変恐れ入りますけれども、より簡潔にひとつお願いを申し上げたい、このように思います。  行革も大切だし、教育も大切だ。聞きようによってはいい言葉なんですが、どちらかといま迫られた場合にどちらをとられるのかということをお尋ねします。
  365. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 教育が大事だと思います。
  366. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 首相は施政方針演説の中で「私が内閣総理大臣就任以来、最重要課題の一つとして行財政改革に取り組んでまいりましたのも、それが国政の基本的見直しと新しい進路への出発に際しての大きな課題であり、国民の一致した要請であると考えたからであります。」と述べておりますし、昨日の本会議でもこれに従った答えがあったというふうに思います。これに対して大臣所信表明演説の中にはこの行革という言葉が載っておらぬということにおいて、中曽根総理大臣の行革に対する姿勢ほどには大臣は受けとめておらない、いまの言葉の中でもそういうことが出てくるのだろうというふうに思います。ということは、現在の日本の財政状況がどうなっているかということの認識が首相ほどには大臣には余り響いておらぬのじゃないかというふうな感じがいたします。少なくともこの改正法は新たに学部の増設並びに短大、大学、大学院の新設を決めようというふうな筋のものでして、これは明らかにいま行われようとしておる行財政改革の流れとは異なる方向を歩む。少なくともいまの時点と言えばそうなると思うのですが、大臣はどうお考えですか。
  367. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど来御説明をしてきておるところでございますけれども、行財政改革……
  368. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 大臣、ちょっと時間の都合がありますので、行財政計画の基本的な理念で、技術的な問題じゃないので……
  369. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 基本的な理念に沿った形で私どもこの整備をお願いしておるわけでございます。
  370. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 ちょっと困るのですよね。いわゆる大臣見解なんです。
  371. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 最初に申し上げましたように、行財政改革、現下の大問題でありますから、これを中心にしてやっておるわけでございますが、さればといって教育もその範囲で重視しなければならないという意味で私は申し上げておるのであって、財政を忘れて教育でも何でもできません。できませんが、私は、銭金を先に考えるということは教育の問題では適当でないという考えを申し上げておるわけでございます。
  372. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それが答えになっておらぬのです。いわゆる小学校が不足である。たとえば教室をふやしたいあるいは四十人学級どころか三十人学級にしたい、あるいは中学校もふやしたい、高校もふやしたい、短大もふやしたい、大学もふやしたい、大学院もふやしたい、社会教育でもこれこれしかじかで予算をふやしたい。それは教育だけではないのであって、福祉関係であろうとどこであろうとふやしたいというところはたくさんあるわけです。ただ現実にふやすには、国民の税金などから出る収入によって歳出を賄うというところにおいていまその限界が問われようとしておる、その中にあってどうするのかという土壇場の問題にいま来ているのだろう、こう思うのです。  その場合に、たとえば定員削減計画の第六次の実施という問題について昭和五十六年の九月に閣議決定がなされております。これによると、「昭和五十六年八月二十五日閣議決定「行財政改革に関する当面の基本方針」の第二の一の(一)に基づく国家公務員の定員削減は、下記により実施するものとする。」とありまして、記の第一「内閣の各機関及び各省庁の定員削減目標は、別表1のとおりとする。」とあります。そして、この別表1によりますと、文部省の削減目標数が四千七百九十七人となっておりまして、各省庁においては一応一番大きな人数表がここでは出ておるわけなんです。そして一方の総定員法の附則第二項の特例によりまして、いわゆる文部省だけが一応外されるかっこうになっております。しかし、そうでない、特例を持たない各省庁は、いま現実に大きく人員削減を要求されているわけであります。そうした他の省庁とのかかわりをどう理解されようとするのか。  もう一つには、文教予算がいま行き詰まって一定の比率しか取れない、一定の金額しか取れないというときに国立関係の予算が増大するということは、相対的に私立関係の予算にしわ寄せがきて減る可能性を強く持っているわけです。あるいは学校予算をふやすということは相対的にいわゆる社会教育の分野が減る可能性を持っているということなんです。そういう相対的に考えた場合、不公平なくして何とか各分野の人になるほどと思わせなければならないところに、今日の行財政改革、その中に立ち向かう教育の大変むずかしい問題があるのだと、私はこう理解いたしております。ところが、大臣答弁にはそうした感覚というか、考え方がさっぱりと浮かんでこないのです。もしこの改正法がよしとするならば、余り言葉はよいとは言えませんが、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドというか、過去においてたとえば明治、大正、昭和これまでにおいて大変にすばらしい効果を果たした学部、学科があったとしても、現在及び未来に向かってはより必要性の度合いが薄いから、大変役割りは評価しつつこれはスクラップする、あるいは統廃合する、一方で、現在から未来を見通して、これはどうしても新しい学部学科として必要だからこれをふやすというのであるならば、総予算の限られた限界の中で古きを捨て新しい学問を求めるという論旨は出てくると思うのです。これに対して、古きはそのまま残しておいて、ただ新しきはふやすという論旨でいけば、財政的に必ず破綻するというふうに私は思うし、少なくとも総理大臣が行革への強い決意を持たれている閣僚の重大な一員として、私は大変大きな問題を呈するのではないかというふうに思います。大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  373. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 予算の内容について私から補足して御答弁申し上げますが、国立学校特別会計の五十八年度予算で申し上げますと、一般会計繰り入れは前年予算に比べて削減、三角を立てているわけでございます。また、定員につきましてもただいま御指摘がございましたが、既設の一般大学の定員については削減をするという対応をいたしております。したがいまして、御提案申し上げている点は、新たに学部なり短期大学をつくる法律案について御提案を申し上げておりますけれども、国立学校全体の内容といたしましては、十分行政改革について御指摘をいただいているような点についても私どもは真剣に取り組んで対応している、かように理解をしております。
  374. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 限られた時間の中の質問をしているのであって、答弁要求していない方からこう答えられても、私としては大変困るのです。限られた時間だということです。  ここで私が言っているのは、もちろんここで言っている一つ一つが悪いのじゃない、私もいいと思っておるのです。そうではなくて、これをつくる、あるいはつくってはいけないという論旨のこういう技術的な問題に、それを支えるいわゆる基本的な考え方大臣にお尋ねしておるのです。細かい部分的な問題はこれから質問するのであって、大臣に基本的な考え方をお尋ねしておるのです。少なくともおかしいのではないか、こう思うからお尋ねしている。いかがでしょう。
  375. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 もし私の言い方が悪ければお許しいただきたいと思いますが、私は財政を無視して教育をやらなければいかぬということを申し上げておるつもりじゃございません。財政もちろん国民の負担でございますから、しかし、その中でもできるだけその範囲で、教育については長期にわたる根本問題でございますから努力をしなければならない、こういうことを申し上げておるわけでございます。このいま御提案申し上げておる問題は、過去からずっと計画を進めてまいっておりまして、その範囲内でこういうものは必要だということで御提案を申し上げておるわけでございます。
  376. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 質問のポイントが大分ずれておるので、依然として大変残念であります。言うならば、こうした行財政改革というのは、個人にとっても、各省庁にとっても大変大きな痛みを与えようとするものであります。しかし、その痛みを乗り越えて何とかしなければならなかろうというのが、国民の合意をいま次第に得ているところだ、こう思うのです。ただ、そのときにおいても、他の省庁との関係においても、あるいは国立対私学関係においても、不公平感というものをよけいにいたずらに与えるべきものではなかろう、こう思うのです。そして同時に、先ほど言ったように、これまで大変重大な役割りを果たしたすばらしい学部、学科があった。しかし時代が変わってきたんだ。たとえば第一次産業を中心とするわが国が、いまや第二次、第三次産業の時代へ入ってきているわけです。そういった時に、第一次産業を中心として日本の大学が明治時代にできてきた、そのための学部は大学は大変にたくさんあるわけであります。いまやその役割りはもう少し薄れてきた、私はそう思うのです。あるいは終戦直後医者が大変少なかった場合における医学部、そうしたものの養成というのは大変に必要性があった。いまそれもどうやら頭打ちになってきた。このように、時代の流れによって学部、学科というものを重視するのと比較的そうでないものと出るでしょうと私は考えたいわけです。すなわち、限られた予算の中から振り向けるからであります。それを全部、過去も認める、これからつくるのも、毎年毎年つくるのも認めていくとすれば、恐らく文部省は来年も国立学校設置法を改正してまたこれをつくりたい、再来年もつくりたい、その次の年もまたつくりたい、恐らくこうなってくるのであります。しかし、限られた予算なんです。間もなくや利息の払いだけではなくて、元利そろえて返す時代がやってこようとするときに、果たしてそれで文部省というものはやっていけるものだろうかというふうに考えるので、こうした細かい技術的な問題の前に、それを支える論旨というか、そのお考え大臣から私は承りたかった、こう思ったわけであります。しかし、そのお答えが聞かれませんので、先に進ませていただきます。  次に、大学院の新設の問題についてお尋ねをいたします。  これは衆議院の文教委員会調査室の調査資料でありますが、これによりますと、「高等学校新規卒業者の大学、短期大学への志願率の推移」というのに、昭和五十一年度以降、男女平均四七・七%をピークといたしまして、五十二、五十三、五十四、五十五、五十六、五十七と次第に志願率は減少してきているわけであります。将来的にはさらに、小学校の子供たちが昭和五十六年度がピークでありますから、この影響がさらに大学、短大へと大きく及ぶものと推定されるわけであります。としたときに、大学院の学生だけがいま年々増加しようとしてきているわけであります。  これも同じ資料によるものでありますが、「大学院の整備状況」あるいは「大学院を置く大学数」というふうにございますけれども、いわゆる志願率なりあるいは学部学生数が頭を打とうとしてきているときに、大学院だけがどんどん増加していくということは、これは果たして質的向上と言えるものかどうか。これまで唱えられておったのは、量を大切にするのか質を大切にするのかといったときに、量ではなくて質を大切にしたいということが、このところの文教の論議であったと思います。これに対して、大学院をずっとふやすという意向は、これは大変におかしいと思うのですが、大臣どうお考えでしょうか。
  377. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学院をふやすこと自体は、質を高めることに私どもはつながっていると理解をしております。
  378. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これは人数をふやすということが質の増強につながると考えたら、大変おかしいのだと思います。医学部の場合、たとえば創設したばかりでも国家試験をほとんどがとれていたのに、だんだん医学部の学生数がふえるに従って国家試験をパスする者が現実に減ってきておるのです。昔の明治、大正、昭和の初期と比べれば現在の方があらゆる面で学生数が大変ふえてきております。にもかかわらず中学生の課程を満足に終え切れない者がたくさん出てきて、現在いろいろな問題を提起している。それが、中学で終わればよかった者がいま高校へ多く上がろうとしている、本来高校で教えるべきものが中学の素養がないために高校のレベルが下がってきて、中学の復習すらしなければならない。それらの高校でやめればいい者が大学へ上がってくるから、本来高度な研究教育をなすはずの大学がまことにお粗末な高校以下の教育を再び復習せざるを得なくなってきているわけであります。  こういう現状を無視していま大学院をつくるということは、ただ大学院数をふやすということは、もうすでに現在の大学院生数というものは昔における大学生総数をはるかに上回ろうとしてきておるのです。これが質的増強と言えるのでしょうか。特に高度な研究をするには、特に高度な研究をなし得るだけの大学院の研究施設から、それを教えるに足る先生がいなければ実情としてはでき得ないのです。これは単に水増しをするにすぎないではないか。それでは大学院をふやせばふやすほど質が上がる、そういうことが果たして実証的に言えるのでしょうか。ひとつ大臣の方から大学院についての基本的なあり方ということで、数はどうでもいいですから、大学院とはいかにあるべきものかということからお尋ねしたいと思います。
  379. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほども大学院のあり方については湯山さんからいろいろ御意見がありました。これは私は外部からもそういう指摘をいただいておりますが、そういう問題を含めて大学院のあり方を根本的にもう一遍再検討しなければならない、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  380. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これから大学院の基本的なあり方も研究検討したいというのですが、これから研究検討したいということは、現在確固たるお考えを持っていないということであります。確固たる考え方を持たないのに現実に大学院をふやすということは、はっきりよいという結論が出ていないのに数だけふやすということ自体考え方が間違っている、こう私は思うのです。  それではもうちょっと技術的な問題に移ります。先ほども質問がありましたが、ドクターコースをとりながらドクターになれないドクター課程終了者という名称の人がたくさんふえております。そしてドクターを取れるのは比較的医学部課程の人に多い、あるいはまた歯学部課程等に多い、あるいは比較的工学部課程に多くて人文、社会一般関係は大変にむずかしいという状況になっております。しかしそれですらも私は、大学院というのはそれほどドクターをむやみやたらとふやせばいいというものではない、こう思っております。オーバードクターの問題というのは、すでに個人の問題を越えて社会的な問題と言ってもよろしいです。私のところに全国の大学院学生から、オーバードクターの問題をどう理解するのかというふうに再三再四の陳情が現に来ておるわけです。終戦直後は大学院を卒業しますと、私もそうですが、大学の研究室に入る道があったのです。本当に好きな研究の道にいそしむことが可能であったのです。しかし現在は、大学に残ることが実情としてほとんどでき得ないのです。あるいは民間であれば研究施設に入ることすらでき得ないのであります。せっかくのマスター、ドクターの研究成果を世に問うことが現在ですらもできない多くの人たちが現実にいるのです。その人たちの救済策が満足に講じ得られないときに、いたずらに大学院生をふやすことがよいのだという論旨は私としてはとても納得し得ないところでありますが、大臣いかがお考えですか。
  381. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 オーバードクターの問題は、確かに御指摘のような問題点があるということは私どもも理解をいたしておるわけでございます。ただ、本法律案で御提案申し上げておりますのは、教育大学の修士課程の大学院について御提案を申し上げている点でございまして、いわゆるオーバードクターの問題とはかかわりのない分野の問題だと理解をしております。
  382. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それは詭弁というものでありまして、学部以上の勉強をしようというところからマスターの問題が出、ドクターの問題が出ておるのです。ここではもちろんマスターの数もわかっているし、ドクターの数もわかっているわけです。そういうことを承知の上での質問であります。少なくとも学部に比べてマスターのコースは、これはドクターでもどちらでもいいですけれども、それは大変少人数教育を中心とするものです。しかも、大変な少人数でありながら、できるならマン・ツー・マン方式でいきたいくらいにすぐれた教員スタッフを要するし、また学部以上にすぐれた研究施設がなければ、これは大学院の研究とは名のみであります。大変に金がかかるのです。金のかからない大学院なんというのは考えることだけ愚かだと私は思うのです。文部省というのはそれだけ予算があるのですか。
  383. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御説明したわけでございますけれども、五十八年度の国立学校特別会計全体の予算で申し上げますれば、いわゆる一般会計繰り入れの金額は対前年度削減の設置を講じているわけでございます。そして他の歳入措置を講じまして、国立学校特別会計予算について御提案申し上げているわけでございます。もちろん大学院について必要な経費については、御提案申し上げておりますものについてはそれぞれ予算措置を計上いたしているところでございます。
  384. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 限られた予算の文部省には、学校教育のほかにも社会教育などそれぞれありますし、学校教育にもいま言ったように小中学校もあれば、あるいは高等教育の段階もあるわけであります。とにかく予算総額は限られておるわけですよ。どこかがふえてどこかに伸びるということは、相対的にどこかが減るであろうということぐらいはきわめて常識的なことじゃないか。ということは、これは少なくとも質的向上ではなくて、水に薄められたような教育になることは必然の傾向ではないかというふうに思います。私の考えている大学院というのは本当に存在として学部以上に位置づけられる大学院であり、研究者になってもおかしくないくらいの実力がつき得るだけの大学院であって、単なるマスターの資格を取った云々だなんていうそんな情けないような大学院を私は考えているわけではないのであります。そういう意味で、文教予算がこれからますます限られてくる中での大学院というものをもっと基本的にお考えいただきたいと思います。  大臣答弁でも大学院のあり方その他これから検討しようということですが、少なくとも、よくわかりもしないうちに大学院をどんどんやって後で失敗した、つくり過ぎたというふうなことにならないようにしていただきたい。そういういわゆる見切り発車をすることによって教員がふえた、あとは要らないからあなたは首だということになったら、これはそういうことをされる方の身にも大変つらいことであります。あるいはそこの学校に誇りを持っている者があなたの大学はもう要らなくなったと言われるのも大変つらいことでありますから、そういうようにならないようにしなければいけない。昨日の国鉄法についての問題も一部はそこにあったのだろうと思うのです。これは基本的には、現在一生懸命働いている人たちに別段特に責任があるわけではないけれども、いまやそうは言っていられない状況になってきたわけですね。ですから国鉄の二の舞をしないように、そうなる前に教育だけは実のある教育が行われるように、数をふやせば質的向上だなどというそんな甘ったれた教育論をここで言われるのは、素人ならばともかく、本職としては聞きがたいというふうに思います。  そこで三番目、教員養成のあり方に関連してお尋ねします。今回教育についての大学院が設置されたわけですが、教育学部はすべて大学院を設置したいという意向をお持ちなのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  385. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、既設の教員養成系の大学学部につきましての大学院の修士課程の設置につきましては、それぞれの大学の教員組織の充実状況その他整備状況を見た上で順次整備を図ってまいるというのが基本的な考え方でございます。
  386. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これまでに、たとえば京都教育大学、宮城教育大学というふうにまさに教育を売り物としている大学が現にあります。ここには大学院がないわけであります。やはりこれらも大学院はつくられますか。
  387. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 教員組織の整備状況ないし充実状況を見た上で今後対応すべき課題だ、かように考えております。
  388. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 今回の法案によりましてできます福岡教育大学などもそれぞれ時期を見てやはり大学院をつくられますか。
  389. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 今回の改正法案で奈良教育大学と福岡教育大学について大学院の設置をお願いしているわけでございます。
  390. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうすると、ほかにも特に教育大学とはうたっておりませんけれども、国立大学に教育学部を有するものとして、特にその中でも大変教育のすぐれている大学が全国にたくさんあります。一々例を言うほど時間もありませんが、北から数えて弘前、岩手、秋田、山形、福島、茨城、宇都宮、そのほか全国的にいって約三十校近くあります。こうした国立大学の教育学部にも、そこが充実して大学院を置くにふさわしいとあれば大学院を置かれますか。
  391. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま御指摘のありましたものについて直ちに大学院が設置されるとは私ども理解をしておりませんが、一般原側といたしまして、教育学部の整備充実状況に応じまして修士課程の大学院を整備するというのは、考え方としてはそういう考え方で対応しているものでございます。
  392. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 そうすると、教育学部、少なくとも教育を専門とする大学あるいはその学部というのは、充実とともどもに行く行くはほとんどすべてもといってもいいくらいが大学院化されるというふうに理解してよろしいのですか。
  393. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国立大学における大学院の設置状況全体から申し上げますと、大学において修士課程のみを置くものが三八%現在あるわけでございます。それに対しまして、教員養成一一%ということで、全体の比率から見ましても教員養成の修士課程の整備というのはおくれていることは事実でございまして、整備状況に見合いまして、教官組織その他が充実いたしましたものについては修士課程の整備を図るというぐあいに考えているところでございます。
  394. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 これも質問に対する答えが違うのでありまして、私が言ったのは国立大学の教育学部と名のついたようなところが、いわゆる教員の人的な要素であれ、あるいは施設等の物的な要素であれ充実したらば、教育と名のつくものはあらかた大学院化されるのかということをお尋ねしたわけであります。
  395. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 あらかた設置されるかというお尋ねになりますと大変お答えがむずかしいわけでございますけれども、整備の状況に見合って考えるということは基本的な考え方でございます。  そのことは、教員養成そのものをどのように考えていくかということとやはりかかわるわけでございまして、教員の資質向上のために、たとえば教員を現在の四年制学部の卒業よりもさらに資格についてより高度の資格を要求するということも一面議論としては言われているわけでございます。それらの全体の制度の今後の対応がどのように変わっていくか、そういうことも十分勘案いたしながら教育学部の修士課程の整備というものについては取り組んでいかなければならない課題だ、かように理解をしております。
  396. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 教育に限りませんで、これまで医学部の場合にもほかの人文学部系統と違いまして医学博士というのは大変に多かったわけです。多かったというのは、国立の医学部にはほとんど大学院が設置され、それがマスターからドクターへと進んできたからであります。現在時点でも国立の医学部で大学院を持たないところもありますが、これは大変数が少ない。本来的でしたら、そこも恐らく大学院ができたのだろうと思います。ところが、いま医者の養成その他という問題が、医者と医師養成制度かな、それがかなりのところまで進んできているからこれ以上医学関係については大学院は要らぬのじゃなかろうかということもあって、一つはとまっていると思いますし、もう一つにはそうした予算的な問題も私はあったと思います。  この場合、教育学部だけがいわゆる人的にも物的にも充実していけば、教員の資質向上という名目のもとにあらかた大学院設置されるというのは、やはり考え方が合っているようで、行革という大きな、将来はわかりませんが、現在ではまず一つ問題があります。  しかも、実はそれだけではないのであります。いま答弁がありましたように、教員養成のあり方と深くかかわってくるからであります。すなわち、現在は、先生になっている人たちの卒業資格、卒業の学歴等が必ずしも教育学部出身ではない、あるいは教育のいわゆる大学院卒業生ではない、そういう者が教員のまずかなりのものを占めているわけであります。こうしたときに、それらはふさわしくないのであって、教育学部を出た者が教員にふさわしい、あるいはその大学院を出た者が教員にふさわしいというふうにお考えなんですか。
  397. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 戦後の教員養成の基本的な原則は、開放性ということが言われているわけでございます。したがいまして教員については、一般学部の卒業生も、もちろん教職科目、教職専門科目をとることが必要でございますけれども、教員になる道が開かれているわけでございます。しかしながら他方、本来教育学部は教員養成を目的とした学部でございまして、そのような学部においては教員養成のための専門科目でございますとか、教職科目あるいは教育実習等についてもほかの一般大学、学部よりはより充実した内容が期待されるわけでございます。教員構成の全体といたしましては、両者が相まって教員構成がなされることが望ましいことと私どもは理解をしております。
  398. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 医学部を卒業しあるいは医学のドクターを持っている者であっても、医師としての国家試験にパスしなければ医者にはなれないわけです。医学部を卒業しようと医者の、ドクターの肩書きを持とうと、医師の国家試験にパスしなければ医者にはなれない。ところが、そこまで進んで医者になれない者がこれからふえたとすると、これはそういう学部のあり方なりそういう医学の大学院の設置のあり方に問題がある。いわゆるよっぽどレベルが低くなってきたからだろうと思う。しかも、そこまで行きながら、なり切れなかった者は使い道に困ってしまうだろうというふうに私は思います。  逆にもう一つ教育学部を出たから必ずしも教員になれるというものではない。教員採用試験を受けなければいけない。その場合の教員採用試験というのは、教員の筆記試験、ペーパーテストを卒業した者だけが果たしてよしと言えるかどうかもわからないわけであって、いわゆる教育学部を卒業しあるいは教育系統の大学院を出たからといって、教員になり得ない者は幾らでもあり得るというふうに思うのです。逆に言って、またもしその人たちが教員の資質向上に役立つからみんないいのだと言えば、本当に戦後の教員養成のあり方が抜本的な大きな転換を迎えることになってしまう。むしろ戦前の師範学校的な発想というのかな、そういうふうなものに変わっていくのだと私は思うのです。そういう意味では先ほど来の答弁で、教員の資質向上という角度からすれば教育学部の上に教育専門のマスターコースなり、四年を六年なりやらした方がいいのだとする見解は、戦後の教員養成のあり方と今度は財政問題を離れた基本的な視点において大きく食い違う可能性を持ってくると思いますので、今度は技術問題、大臣から教員養成の基本的なあり方としてお尋ねしたいと思います。
  399. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 専門家じゃありませんが、私は、教師というものはただ学問ができるだけでは適当じゃないのじゃないか、やはり教育、子弟を指導するいろんな能力を備えておらなければ、ただ学問だけ――人間をつくるということが特に初中教育では必要だと思っておりますので、そういう意味で教員養成がきわめて大事だ、かように認識しておるわけでございます。
  400. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 いわゆる戦前の教員養成というのは、師範学校を出ていわゆる教員のプロ養成を中心としながら、その人たちによる教育がなされてきたわけであります。そして、それがもしよいものならば、戦後もそして現在もそれがつながってきているはずのものなんです。ところが、それが一応清算されました。本来教員でも何でもない、教育学部でも何でもない一般の各学部、どこの大学であろうと、一定の教員にとっての必要な科目をとり、そして教員採用試験を受けて入りさえすれば教員になれるという道は、昔の閉ざされた教員の道に比べると、大変開かれた考え方なわけであります。基本的に違うのです。教員に向く向かない、何がしといった財政問題その他も含めて、教員養成のあり方が基本的に違っているということなんです。これに対する答弁は、大臣を初め、とにかくポイントがずれているというふうに思います。  時間がありますので、先に進みます。  四番目は、筑波大学における国際関係学類の新設に関連してであります。今回の法案では、国際関係学類を社会工学等の第三学群にこれを位置づけようといたしております。一応の説明をすでに事前に承っておりますけれども、改めてお伺いしたいと思います。
  401. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 筑波大学の国際関係学類の設置の趣旨でございますけれども、先ほども御説明したわけでございますが、あらゆる分野での国際交流が活発になってまいりまして、各種の国際関係も複雑化、多様化しております中で、こちらの問題に適切に対応できる国際人の養成を目的としているものでございます。そして、その教育課程の特徴といたしましては、各地域の歴史的、社会的背景等についての理解を深めながら、たとえば特に英語による教育、授業を大幅に取り入れるなど社会工学的手法も導入しながら、国際法なり、国際政治、国際経済等、国際関係に関する諸分野の総合的、多角的な教育を行って、国際的諸問題に関して科学的分析能力や政策立案なり問題解決等の応用的能力を培うことを目的といたしておるわけでございます。そういう意味での総合的な実力を備えた国際人の養成に力を入れたものとなっているわけでございます。
  402. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 この法案について附帯意見をつけようじゃないかという意見もあります。そうした一つ考え方の中には、この筑波大の新しい国際関係学類というところで、軍事技術工学のようなそうした軍事教育も行われやしないか、ならば、そういうことは将来とも行ってはいけないということを加えようという考え方がそこにはあります。しかし、私がいただいております第三学群のカリキュラムには、そうした軍事教育的なニュアンスのものは一つも載っておらないわけであります。にもかかわらず、そういう誤解が生ずるとするならば、私はあり得るのだろうというふうに考えております。といいますのは、一般にいま大学院段階で国際関係を扱っているのは、私の手元にわかっているのは東京大学だけでありますけれども、そこでは社会学の分野の中に組み入れているわけです。それから、学科として、筑波大ではありません、よその大学の学科としてあるところでは、東京大学では、教養学部の中に相関社会科学という名目で、一橋大学では、法学部の中に第三課程として国際関係、横浜国立大学では、経済学部の中に国際経済学科、山口大学でも経済学部の中に国際経済学科というふうにあります。それから公立の大学では、神戸商科大学で商経学部の中に国際商学科という似たようなのがあります。  私立としましては、国際商科大学が、教養学部に国際学科があります。青山学院大学には、国際政治経済学部の中に国際政治学科と国際経済学科があります。亜細亜大学では、経済学部の中に国際関係学科があります。上智大学には、法学部の中に国際関係法学科があります。中央大学には、経済学部に国際経済学科が一部と二部とにあります。津田塾大学には、学芸学部の中に国際関係学科があります。東海大学には、教養学部に国際学科があります。日本大学は、文字どおり国際関係学部としておりまして、学科として国際関係学科、国際文化学科を持っております。摂南大学は、国際言語文化学部の中に国際言語文化学科、九州産業大学は、経営学部の中に国際経営学科、西南学院大学には、文学部の中に国際文化学科いうのがありまして、国際関係とあるいはそれに類接する分野というのは、いわゆる人文あるいは社会学類の中に入っているわけでありまして、社会工学、いわゆる工学というふうな分野に入っているものはどこもないのであります。  第三学群は「社会工学、情報及び基礎工学」とありますが、こういう工学というのがつくところになぜ組み入れなければならないのか。そこにいわゆる軍事技術というふうなものが浮かんできてしまうということなんであります。あらぬ疑いがそこにかけられかねないというふうに私は思います。もしそれを強いて第三学群に入れたとすれば、第一学群が「人文、社会及び自然の各基礎的分野に関する教育を行なう学群」とある中の「基礎的」という言葉にひっかかりを持ったからであろうかというふうにも思いますが、それならば素直な表現であれば「基礎的」という言葉を省くことによって第一学群に組み入れるのが最も自然のあり方だろう、こう理解するのですが、いかがでしょうか。
  403. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 国際関係学類を第三学群に置く理由についてのお尋ねであろうかと思いますが、先ほども御説明したわけでございますが、第一学群は、基礎学群という形で人文、社会、自然の各基礎的分野における広い視野と学識を培うことを目的としているわけでございまして、特定の専門分野についての清新で応用的能力を涵養する学類は、たとえば第二学群の比較文化学類、第三学群の社会工学類などに属しているわけでございまして、そのような意味で、私どもこの国際関係学類は応用的分野の学問を研究するものというぐあいに理解しておるわけでございます。  そして、第二学群と第三学群は、基礎的分野の教育を行う第一学群に比較しまして、広い意味での応用的分野の教育を行うものでございますが、沿革的に申しますと、旧東京教育大学で有しておりました分野が第二学群に属しておりますし、それ以外の新たなものを第三学群に区分整理をしたというふうな経緯があるわけでございます。国際関係学類の帰属につきましては、以上のような経緯を踏まえまして、その教育手法なり、第三学群の社会工学類と近接しているというようなことでございますとか、あるいはまた、第一学群及び第二学群の入学定員が四百名で、第三学群が三百六十名というような規模の点からの学群の管理運営上のバランスというような、いろいろな点を総合的に勘案いたしまして、筑波大学においてこの国際関係学類を第三学群に属させることが適当だというぐあいに判断したものと理解をしております。
  404. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 人数の問題や何かで考えられるという発想自体がおかしいのでありまして、どういう学部学科はどのような科目、カリキュラムによって構成されているか、どういう学生を養成しようとしておるのかといった、教育の内容から語ってほしかったと私は思います。単なる定員、学部の人数がどうだこうだということから分類を考えようとするのは大きな過ちだと思います。少なくともわれわれが考えている社会工学という名前であれ、あるいは基礎工学という名前であれ、工学という学問というのは、われわれには一応の既成のイメージというものがあるのです、工学部、工学というような感覚は。そうだからこそ、これまである国際関係という科目に類似しているものは、どれ一つとっても、いわゆる何々工学部なり何々工学が所属するところとは一つも一致しないのであります。  同時に、ここで一応予定されております第三学群国際関係学類の履修計画表というのが手元にございますが、それによりますと、科目を社会学類開設科目あるいは比較文化学類云々あるいは社会工学学類云々というふうに分けられております。科目の中で社会工学のいわゆる同じ流れだと言われる科目をたとえば見てみますと、私は全部と言っても本当はいいのですけれども、たとえば財政学、国際金融論、国際経済学、社会調査方法論、日本経済論、こんなのは各大学では経済学部というところで扱っているものでありまして、工学部で扱っている大学なんというのは私は聞いたことがないのであります。金融論、経済学論、どこの大学であろうとこれは経済学部の分野ですよ。工学部の分野ではないのですよ。なぜ筑波大学だけがこういう科目を全部社会工学というたぐいに入れようとされるのか、大変そこに無理があると私は思うのです。そういう無理を冒そうとするから、工学という言葉に何がしかひっかかりを持って、ここにはない科目が将来できるのではなかろうかという疑いが持たれてくるのだろうと思います。ですから、一番素直なのは、第一学群の基礎的という言葉を省いて、どこの大学でもやっているような第一学群的な流れに入れるのがきわめて自然である、工学部的な発想ではないんだと思いますが、再度御答弁をお願いしましょう。
  405. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど先生の方からも御指摘のございました、たとえば東京大学の教養学部の場合で申し上げますと、東京大学の教養学部の教養学科第三の相関社会科学というところで、広く言いましていわゆる社会工学に関する相関社会科学の分野と国際関係論という分野でくくられて教養学科第三というものが組み立てられているわけでございます。  したがいまして、筑波大学の今回の分類の仕方というものが既存のほかのものと決して著しく異なった対応というぐあいには私ども理解をしていないわけでございます。
  406. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 著しくという日本語についてむしろお尋ねしたいのでありまして、私は先ほど各大学各学部の例をたくさん挙げたわけです。そういうこととそれこそ著しく合わなかろうと私は思います。それから、いま言った、実際の現実に国際金融論なりあるいは財政学なりそうした科目というのは経済学部で普通やるのが、私が少なくとも考えている、恐らくここにいる皆さんだってみんなそう考えていると思います。そういう金融論や経済学が社会工学の方が近いのだと言われる感覚というのは私にはやはり大変解せない、おかしい。感覚の問題ですから、感覚だけ、大臣いかがですか。  大臣にお尋ねしたいと思うのです。いいですか、国際金融論あるいは財政学、金融論とか財政学というものは工学という言葉に親しみますか、経済という言葉に親しみますか、お尋ねしたいと思います。
  407. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私はそういう方面の学問はよくわかりませんから、局長からお答えさせます。
  408. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点は、社会工学類でやるのはいかがかという御指摘でございますが、考え方としては、計量経済学とか経済統計、国際経済学等、いずれも計量的な手法で把握をしアプローチをするという考え方からすれば社会工学類に属していて、私ども、筑波大学の考え方としてそのような分類をしていることについては別段異議を狭むことはないものであろう、かように考えます。
  409. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 経営分析あるいは市場調査という分析、調査というのは経営学部とかそういうところで普通は扱っておりまして、私、いまほかの全国的な大学の、国立でもいいですが、私立でも結構です、工学部という中のカリキュラム構成を見て、きわめて異例な答弁であったと思います。  時間ですので先へ進みます。  私が手にしております国際関係学類の履修計画表というのがありますが、このほかに別表のようなものがございますか。
  410. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ございません。
  411. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私の拝見させていただいた資料には別表が、I、II、III、IV、Vというのがありまして、そのVという中に軍備管理論演習というふうな科目が書かれております。こういう事実は全くございませんか。
  412. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ございません。
  413. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 としますと、将来軍事技術工学の科目その他を踏まえて、軍事教育に筑波大学は走るのではないかということは、全くそういうことはあり得ないと理解してよろしいわけですか。
  414. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御答弁申し上げたわけでございますが、そのとおりでございます。
  415. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それでは最後にこのことで大臣から御確認をいただきたいと思います。将来とも筑波大学においては軍事教育のたぐいというものはしないというふうにお答えいただけますか。
  416. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほども馬場委員にお答えしておるわけでございますが、そういう大学で軍事教育をする、軍事研究をするようなことは断じてないと思います。
  417. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 それでは先に進ませていただきます。  昭和五十六年度に私立学校法等の改正法案が出されて、衆議院は通ったけれども、参議院は通らなかったわけですが、この問題に関連してお尋ねをしたいと思います。  いわゆる私立学校法及び国立学校設置法の一部を改正する法律案は昭和五十六年四月から五月にかけまして衆議院を通過し、しかし参議院で審査未了となりました。このため私立学校法附則第十三項は昭和五十六年三月三十一日をもって期限切れとなりました。したがって同附則第十三項とその趣旨を同じくする国立大学設置の抑制の規定も現行法上は全く存在しません。そこでその後、これは議員立法ではありますけれども、こうした法案に対して、文部省もこうした抑制の法理というものに対して賛意を表する御答弁を何回となく述べられたわけですが、文部省が両法改正案を今度は議員立法という形ではなくて、政府提案の形であれ文部省としての提案としてであれ、そういうものを再提出しようとしなかったのはなぜでしょうか。
  418. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御案内の私立学校法附則第十三項を延長するための私立学校法及び国立学校設置法の一部を改正する法律案が提案されましたが、成立に至らなかったわけでございまして、附則十三項は五十六年三月末をもって期限が切れたわけでございます。しかしながら私ども五十六年度を初年度とする後期計画においては、私立の大学、短期大学につきまして基本的には量的な拡充よりも質的な水準の向上を図るということが言われていたわけでございまして、それらを受けまして、五十六年六月でございますが、大学設置審議会及び私立大学審議会におきまして私立大学の設置等に関する取扱方針が決定を見まして、当面、従来どおりの抑制措置を継続するということが確認されたわけでございます。したがいまして、私どもはこの方針によりまして、私立大学等を設置しようとする者に対しましては必要な行政指導を行っているところでございます。
  419. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 私立学校についてはむしろ期限切れとなったのですから、本来の私学法だけで足りるのであって、抑制する法理は法上ないのであります。行政指導はどうか知りません。法上、ない。国立大学の場合には国の基本方針というものがどう反映するかによっては、国が積極的に大学を拡充してふやそうという時期もあるでしょうし、いまの時期は国の方針として抑えたいという時期であるとするならばむしろ国立にこそ抑制の法理は現状時点においては働く可能性があるのだろう、このように思います。少なくとも抑制する気があるのかないのかが大きなポイントになってきております。私学にしろ国立にしろもっと積極的にふやす方向がもしあるとするならば、文部省もそれをよしとするならば、文部省は自信を持って出すべきなんだろうと思うのです。出さないことが、私には、逆に言えば抑制する論拠というものは文部省は持ち得ない。  もう一つ、二点。このときに実は論議になりましたのでかなり大切な問題があります。それは時間がありますので一括して質問をさせていただきます。  私立学校法附則第十三項に規定いたします文部大臣の認可という言葉意味についてであります。といいますのは、第一にはいわゆる法律行為的行政行為のうち命令的行為である許可の中に、法令上許可、免許、認可等の用語が用いられています。また、形成的行為である直接相手方のためにする行為としての特許も、実定法上では許可、認可、特許など種々の用語が用いられています。また、同じく形成的行為である第三者の行為を補充してその法律上の効力を完成させる行為としての補充行為も認可と言っています。このように認可という用語は許可、特許、補充行為などいろいろなところで用いられているわけです。そこで、私立学校法附則第十三項に言う認可あるいは私学法上ほかに使われている認可という言葉はこのどれに該当するのか、その法的性質についてまず第一問お尋ねをしたいと思います。  その次に、この認可というものが覊束行為であるか裁量行為であるかという問題であります。  覊束行為であるという論拠としては、「別冊法学セミナー」の教育法に関する基本法コンメンタールの中の解説の教授の見解でありまして、「法律の定める要件を具備しておれば、認可権者は必ず認可を与えなければならない。」とするものであります。それから、いまちょっと手元に六法がありませんが、教育六法の附則第十三項の解説のところ、いま前に座っている文部省関係のお役人は皆さん持っていますが、その教育六法の解説にある見解もまた覊束行為をとっております。果たしてそれでよいのかどうかということ、あるいは覊束行為でないとすれば法規裁量、言いかえて覊束裁量であるのか、自由裁量、言いかえて便宜裁量なのかどうか、そしてまた、もしどちらかとすればその理由はなぜであるのかということ、これはきょうは時間いっぱいでございますが、その次の時間に質問させていただく布石になりますので、認可の法的な意味その他についての御答弁をお願いしたいと思います。
  420. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 認可についての法的性格についてのお尋ねでございますが、これはいわゆる認可と解します説といわゆる特許と解する説とがあるわけでございます。その間に裁量の範囲に差があると言われておるわけでございますが、実務上は特許と解する場合と認可と解する場合とでその取り扱い上大きな差があるものではないと私どもは理解をしております。  次に、お尋ねの裁量行為であるかどうかの点でございますが、私どもこれは裁量行為と理解をいたしております。ただし、裁量の範囲についてはきわめて限られたものがあるというぐあいに理解をしております。
  421. 三浦隆

    ○三浦(隆)委員 時間なわけでありますけれども、しかし、許可も特許も補充行為としての認可もさほど違いがないというのは、いわゆる行政法という学問上は大変ゆゆしき問題であって、旧来の学問体系が一挙に壊されるような気が私はするわけでして、そう簡単な問題ではないというふうに思います。あわせて覊束行為か裁量行為かの問題についても、これもまた大変問題点があります。  時間ですので残念ですが、次回に回させていただいて、質問を終わらせていただきます。
  422. 狩野明男

    ○狩野委員長代理 山原健二郎君。
  423. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の国立大学設置法について、賛成する部分もありますが、非常に問題を感じておるところもありますので質問をいたします。  筑波大学における国際関係学類の設置の問題でありますけれども、筑波大学の学内として類を設置するという機関はどこでしょうか。
  424. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 学内のそれぞれの組織から提案をされて、最終的に決定されるものは評議会であると理解しております。
  425. 山原健二郎

    ○山原委員 評議会はいつ国際関係学類を設置することを機関として決めているのでしょうか。
  426. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 筑波大学から文部省に対する昭和五十八年度概算要求が、第三学群に国際関係学類の設置をということでありましたが、そこに至るまでの学内における取りまとめの経過について御説明いたしたいと考えます。  五十七年六月十七日開催の評議会におきまして国際関係学群の設置要求が、予算全体の厳しい対応ということから内容の変更があり得る旨の留保つきで承認をされたわけでございます。評議会から具体的な検討対応をゆだねられた国際関係学群の設置準備委員会の同年六月二十九日の会議におきまして、国の財政状況等諸般の情勢を検討の結果、国際関係学類の設置要求が適当であるとの結論を得まして、これに基づいて同大学としては同年七月九日付で文部省に対し概算要求資料を提出したわけでございます。  学内規定によりますれば、学類を新設するときは所属学群の発議が必要なため、夏季休業中という特殊事情下で、八月二十七日開催の第三学群教員会議において同学類設置の発議がなされ、九月十四日開催の教育審議会においてそれが承認されたわけでございます。なお、九月十六日開催の評議会において一連の経過等について報告が了承されたというぐあいに私ども承知をしております。
  427. 山原健二郎

    ○山原委員 いま経過が話されましたが、私、資料を全部ここへ持ってきているのです。時間の関係で全部読み上げるわけにいきませんが、いまお話のあった六月の十七日の評議会の「五十八年度概算要求主要事項」によりますと、「学部などの創設など」の項目で「国際関係学群(仮称)の創設準備」、こうなっております。ここに出ておりますのはあくまでも学群であって、そうして創設準備であるわけです。これが六月十七日ですね。  それから、私もなぜ創設準備かということで調べてみますと、昨年の三月十日に筑波大学国際関係学群設置準備委員会が出している「国際関係学群及び関連大学院について」の報告書によりますと、報告書はこれですね、お持ちだと思いますが、これによると、昭和五十四年から審議してきて五十六年の五月に評議会で準備委員会が設けられ検討してきた。今後の準備の基礎資料をつくるように努めてきた。「しかしながら検討すべき事項はまだ多く、教育課程の具体的内容、既存の研究科等との関係、研究組織等については今後更に検討を進めなくてはならない。本準備委員会は、所期の目的の半ばしか達成できなかった」、これが報告書ですね。まさに今後の検討課題であり創設準備の段階であるということです。  さらに七月十五日に評議会が開かれておりますが、その議事録も持ってまいりましたけれども、この議事録を見ますと、国際関係学群及び学類については何ら検討も報告もなされていません。これが評議会の姿ですね。ところが、八月三十一日に文部省が概算要求として発表されました文書の中に突然「国際関係学類を第三学群に設置する」、これは三浦さんからもお話がありましたように、「第三学群に設置する」、相当無理な異例の概算要求書が出てきたわけですが、これは何を根拠にしてやったのですか。
  428. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 経過については、私ども承知している点は先ほど御説明した点に尽きるわけでございます。筑波大学からの概算要求に基づきまして、私どもとしては要求をいたしたものでございます。
  429. 山原健二郎

    ○山原委員 概算要求書をここへ出してくれますか。
  430. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいまこちらに概算要求書を私ども持ち合わせておりません。
  431. 山原健二郎

    ○山原委員 それは概算要求書ぐらい、大学設置審議会、しかも筑波大学の問題はきょうの一番大きな争点になろうとしていることは承知されておりますから、持ってこないとおかしいと思いますが、とにかく評議会では「関係学群の創設準備」となっておりまして、それが突然筑波大学の概算要求の中に類となり第三学群に設置する、どこでこう変わったのか。少なくとも大学における大学の自治と大学の民主主義の立場から言うならば、全く突然ここで出てくる、それを説明してください。
  432. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 経過については先ほど御説明をしたことに尽きるわけでございます。私どもといたしましては、最初に経過の第一の点で申し上げましたようなことで、当初は国際関係学群ということで、これは御指摘のように昭和五十五年度から、五十五年度は第三学群国際関係学類の創設準備、五十六年度が国際専門学群の創設準備、五十七年度が国際関係学群の創設準備というようなことで要求が出されてきた従来の経過はあるわけでございます。それを受けまして、五十八年度の要求に際しまして、考え方としては、当初は独立した国際関係学群という要求で出されるということについては、学内では議論があったことと私ども承知をしております。しかしながら、先ほど経過で申し上げましたような評議会において、全体的な予算の態様として学群の設置では無理な場合には内容の変更があり得るという留保つきで評議会で了承されたというぐあいに理解をしておるわけでございます。その後、先ほど御説明したような経過で、第三学群の中の国際関係学類ということで要求が出てまいったものでございます。
  433. 山原健二郎

    ○山原委員 私が聞いておりますのは、突然どうしてそうなったのか。これは六月十七日の評議会の決定ですが、大学の「学部等の創設等」については「国際関係学群(仮称)の創設準備」。もう一つ聞きますけれども、この後に六月十七日の評議会の決定では、入学定員の改定の問題で、第一学群の社会学類の学生定員を八十名から百二十名、四十名増員の要求が決定として出ております。これは、いまおっしゃる筑波大学から出ました概算要求書の中に出ていますか。
  434. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 ただいま御指摘の点は、筑波大学からの要求書には出ておりません。
  435. 山原健二郎

    ○山原委員 問題は、十年前の筑波大学法案のときに半年この委員会で大もめにもめた評議会ですよ。しかも、大学の自治を評議会で守れるのか、守れます、大学の自治を侵すようなことはありません、というのは、当時の文部大臣であった奥野さん、そして木田大学局長が繰り返し巻き返しここで答弁した。そしてあの法律は通ったわけですね。ところが肝心の大学自治の一番大事な、言うなれば最高決議機関である評議会は違うことを決定しているわけです。すなわち「国際関係学群の創設準備」それが消えてしまう。しかも、第一学群の社会学類の八十名の学生定員を百二十名にするという要求は消えてしまう。大学の自治の一番もとである、各学群から出てきた人たちによって構成されておる評議会の決定がどこですりかわったのか、評議会の決定にないものが何でこの筑波大学の概算要求書となってあらわれたのか、はっきりさせてもらいたい。
  436. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 私ども、筑波大学からの五十八年度の概算要求についての経過につきましては、最初に御説明いたしたことに尽きるわけでございます。したがいまして、私どもは筑波大学が正規の要求として出されたものとしてこれを受けとめまして、概算要求文部省としては全体を取りまとめていたしたものでございます。
  437. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすれば、だれかが評議会の決定を改ざんしているわけですね。大学の自治の立場から言うならばこれは重大な問題でありまして、評議会の決定と違うものが突然八月ですか、私もここに概算要求書を持ってきておりますけれども、全然違ったものが出てくる。そうするとどこかで勝手気ままに、いわば大学の最高の決議機関であるところの、あなたもそれをお認めになった評議会の方針がここで変えられていく、あるいは取捨選択されていくわけです。私は本当言ったら、ここに持ってきております筑波大学の概算要求書は、これは謀略的な文書ではないか。それをいきなりあなたの方は受け取って、そして八月三十一日の文部省の概算要求書をつくられている。こういうふうになりますと、これはもう本当に重大な問題でありまして、評議会に聞いてみますと、筑波大学の五十八年度予算の概算要求書を知らないのですね。評議会が知らないのです。それが文部省に文書となって出てきているわけでございまして、この点は後でも申し上げますけれども、非常に重大な問題です。第一学群の社会学類の定員増の問題が消えてしまう。そして、いままで検討してきました第一学群に国際関係学類を置くというような検討は消えてしまう。そして、突然第三学群に学類が設置される。それだって、いまお話があったように非常に異例なことですね、社会工学の部類に経済学科その他が入るというわけですから。そういう無理なことが、大学自体の民主的な組織であるものが知らないままに行われる筑波大学の体質というものが問題になってくると思うのです。  しかも評議会というのは、もう釈迦に説法ですから大学局長に申し上げる必要はないと思いますけれども、筑波大学の評議会の設置については当時大論議がありまして、評議会設置をした国立学校設置法第七条四に評議会は運営に関する重要事項を審議する、この項に基づいて施行規則二十条の十六などによりまして、筑波大学の評議会規則が決められております。     〔狩野委員長代理退席、委員長着席〕 その筑波大学の評議会規則には、審議事項は次に掲げるものとするということで、すなわち学類をつくるかどうかということはここに入るわけですが「教育研究組織の設置又は改廃に関する事項」「予算概算の方針に関する事項」、予算概算は、評議会が決めるのです。それから「学生定員に関する事項」、こういう重要なものが評議会の決定権に所属しているわけでありますが、それがどうして変えられるのか。評議会の決定もないものが何で文部省の概算要求になったのか。再度お伺いしておきます。
  438. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど来御説明している点に尽きるわけでございますが、文部省と大学との関係について申し上げますと、大学の最高審議機関であります評議会の議を経たものでございますので、問題はないと理解をしておるわけでございます。  そして学内手続に関して申し上げますれば、夏季休暇に当たっておりましたために、その学内手続の一部が事後的になりましたうらみはございますけれども、評議会において学類要求となることを含めまして包括的に了承されていること。第二点として、五十五年度概算要求の際、今回と同様の第三学群への国際関係学類設置に関する要求がなされて以来、数年にわたる学内検討の経過もございますし、この間、学内的には合意されながら検討が進められてきている問題であること。第三点として、事後的ではございますが、所定の審議を経まして形式的にも手続上の瑕疵が治癒されたと考えられるということなどから、このことについては問題はないものと理解をしておるわけでございます。  なお、第三学群で要求をするに当たりまして、社会工学に含まれるものというぐあいに私ども理解をしたわけでございますが、それらの点についてなお疑義があるということであるならば、その点は法律改正をお願いしまして、第三学群の中に、社会工学、国際関係、情報及び基礎工学の各分野に関する教育を行う学群ということを明確に法律で規定をすることをお願いいたしまして、それを受けて国立学校設置法施行規則で学類を決めるというような手続をとることにいたしたわけでございますので、私ども手続的にもこの間について何ら御指摘を受けるような問題点はないものと理解をしております。
  439. 山原健二郎

    ○山原委員 大学局長がそんなことを言ってどうなりますか。大学の組織である、決定機関であるところの評議会の、いま後で事後承諾を受けたとかなんとかおっしゃっていますけれども、そこのところを踏まえなかったならば大変なことになりますよ。評議会の議を経たと言う、これは評議会の議を経ていないのです。たとえば、筑波大学と別の大学のことを言えば教授会が最高決定機関でありますけれども、その教授会の決定も経ていないのに学長が勝手なことをやったら大変な問題でしょう。それを筑波大学においては認めるのですか。  経過を申し上げますと、筑波大学において第三学群に国際関係学類を設置するという論議が出ましたのは、こういうことです。  第三学群国際関係学類の新設についてという発議がなされましたのは、第三学群教員会議議長でありますところの升田公三氏から教育審議会会長である茂木勇氏に出たのが八月三十日ですよ。公式文書の中では初めてここで出てくるのです。第三学群にこの国際関係学類を新設するというのは初めてここで出てくる。しかもこれは、ここに文書がありますけれども、受け取っているのが九月一日です。八月三十日にこの発議がなされまして、その翌日、八月三十一日に文部省の五十八年度概算要求予算が発表されるわけです。これは前日ですよ。しかもこの発議が、受け付けは教育審議会に受け付けられたのが、ここに日にちが出ておりますけれども九月一日なんです。文部省が概算要求を出した後でこの教育審議会に提出をされているわけです。全く不思議なことなんですね。そしてその中に、文部省要求段階では、いま言いましたように、筑波大学の機関としての決定は何もなかった。言うならば幻のものを文部省は概算要求にしたと言ってもいいのではないかと思います。  そして、結局どうなったかというと、いま事後処理の話が出ましたけれども、九月十四日の教育審議会で発議を承認している。教育審議会というのは、言うならば評議会の下ですからね、下級機関です。九月十四日になって――わかりますか、八月三十一日に文部省の概算要求が出ました。出た後の九月十四日になって教育審議会でこの第三学群に類を設置するということが承認されている。評議会じゃないです。評議会の決定はいまだないわけですからね。  その中には、教育審議会の議事録要旨を見ますと、これは持ってきていますが、こう書いております。「議長から、「昭和五十八年度概算要求の国際関係学群については、文部省折衝の過程で、諸般の情況により当初計画を変更することとなり、国際関係学類として第三学群に含めることとなった。」旨の計画変更の経緯について説明があった。」というのがこの議事録で出ているわけですね。だから、文部省がそういう指導をしているのです。文部省は大学の運営についてそこまで指導するのですか、そういう権限があるのですか。
  440. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 最初の御説明の際に申し上げたわけでございますけれども、五十七年六月十七日開催の評議会におきまして、学群の設置要求が、全体的な予算緊縮というような状況で内容の変更があり得る旨の留保つきで承認をされているわけでございます。いわばその後の学内手続としては、先ほど御説明したような経過があるわけでございますが、私どもといたしましてはそういう形で、さっき申し上げましたように、文部省と大学との関係について申せば、筑波大学からこれらの要求が出されたことについては、正規の手続がなされておるというぐあいに理解をしておるわけでございます。
  441. 山原健二郎

    ○山原委員 いま、文部省の折衝過程でという言葉が出てまいりますので、ほかの大学にはこんなことは私はないと思います。異例のことです。全く先例がありません。今度の三重大学の人文学部の問題にしたって、去年やるものがことしになっているわけですね。それからまた、私学の新設にしましても三年はかかるのです。大学の評議会でまだ創設準備段階。しかも第一学群にというような話がまだ煮詰まっていない段階で、いきなり筑波大学の国際関係学類というのが出てくるわけでしょう。予算について、もう間もなく生徒を四月から募集するというのですからね。こんなことはいままでないのです。何でこんなことが起こるのか。  さらに、第三学群に含めることになったという文部省折衝過程の問題ですが、第三学群に含めるなどということは学内では一切論議されておりません。なぜなら、創設準備で進めてきているわけですからね。そして学群をつくるということで来ているわけですから、どこの学群に置くかなんというのは論議になるはずがないのです。それが突然、学内では何にも決定がないのに第三学群に置くという、これは本当に幾らここで強調しても大学の自治の関係から言いますと、ちょっと許しがたいことなんです。  もう時間もそんなにありませんから言いますけれども、これは筑波學生新聞で、これを持ってきておりますが、いま大学の中では一定の混乱が起こっております。これは十一月十日付の新聞ですが、第三学群に設置されることについて「社会科学系教官の反応が〝怒り〝であったとすれば、社会工学系教官の反応は〝戸惑い〝であった」、そして社会工学系の先生方が全く唐突だ、社会工学類の授業で手いっぱいであるときに、これ以上の負担は困る、これは学内の新聞ですよ。そういう混乱を引き起こしておる。にもかかわらず、なぜ第三学群にこの類を新設しなければならぬのかということですね。学内ではコンセンサスはないわけですよ。  そして去年の十月二十日になりまして、社会科学系教員会議及び社会学類教員会議の両者の名前で「「国際関係学類」の新設に対する要望」が出ております。これはいままで全く筑波大学ではなかったことです。  この要望書を見ますと、ここではさすがにもう押し切られたかっこうになっていますからね。設置には反対しないが、少なくとも五十八年度開設、学生募集を再検討し、改めて関係学系、学類を中心とした全学的協議に付すべきであることを要望する。これは、筑波大学開闢以来の要望書がこの社会科学系教員会議及び社会学類教員会議の名前で提出をされておるわけでございまして、これが十月二十日のことでございますから、いまだにここでも、この四月に開設することについては合意は得られていません。新設は反対はしないけれども、しかし学生募集の問題等についてはもっと検討すべきであって、全学的な合意が必要であるという異例の要望書がここで出ているわけですね。  ところが、これに対して評議会から返事はありません。返事しようにも、評議会そのものは、機関の決定していないものですからね。だから、評議会の回答がないものですから、この学群におきましては、入試業務の非協力という問題まで呼び起こしているわけでしょう。  こういうことを考えますと、確かに福田学長から、九月の十六日になりまして、評議会に対しては諸般の情勢からということで経過報告がなされておるようであります。こういう経過をたどっておりまして、私たちが筑波大学法案の審議をしましたときに、本当にこの大学の自治が守られるのかということをあれだけここで論議をして、その心配はございませんと言ったことが、評議会の決定もなしにそれが改ざんされて、全く違ったものが文部省に対して概算要求として出てくる、文部省はそれを直ちに文部省の概算要求として出す、こういう経過を見ますと、どんなに弁解をしようとも、少なくとも、大学の中には決議する機関があるならば、その決議がなければだめでしょう。そんなことを認めるのですか。だったら、どこの大学だって、教授会の決定もないのに学長が勝手に教授会の決定を変えて文部省に申請し、それを文部省が認めるということになったら大学の自治はどうなりますか。戦後、大学の理念は大学の自治なんでしょう。その自治がこういう形で侵されている。しかもその間に、文部省との折衝の過程における諸般の情勢によるということになると、文部省とこの筑波大学のだれか知りませんが、あるいは学長か執行部との間のつながり、結託があるのじゃないですか。そう見ざるを得ないのです。どんなに文書を見ても、文書の中には評議会の決定はないわけですからね。これは厳重に反省してもらわなければ困るわけですが、その点いかがです。
  442. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 経過については先ほど来御説明している点に尽きるわけでございまして、私ども、正規の手続を経てなされたものというぐあいに受けとめておるわけでございます。  ただ、社会学類の方々その他から学内でそのような意見があるということについては、これは筑波大学自体としましても、もちろん関係者全体が筑波大学として新たなものについて取り組むについては、それぞれ関係の部門の協力を得ることはもとより必要なことでございますので、それらの点については大学みずからが当然に合意を得ながら進めていかなければならない事柄だ、このように理解をしております。
  443. 山原健二郎

    ○山原委員 大体問題のあることをいままでもいろいろうわさでは聞いておりますけれども、これほど、評議会という機関がありながら、その評議会の決定、それを変えるという、どんなに弁解しても弁解することはできませんよ。  そして、ことしの二月十五日に教育審議会に「第三学群国際関係学類案内」というのが示されています。それによりますと、「「一般英語」の授業が一年次の第一学期に集中的に行われ、」「特に、入学当初に外国語の高度の運用能力を身につけるよう配慮されているのが、本学類のカリキュラムの特色のひとつです。」、こういうふうに出ております。  ところが、その会に出席しておりました外国語センターのセンター長さんが、そんなことは準備できていない。これはことし学生募集するわけですが、その一番最初に英語を集中的に高度の運用能力を身につけさせるというのですけれども、これは本当に困っておられるわけです。私どももこれは聞きたいですね。どうするつもりか。  ここでお聞きしますが、この学類についての教官の組織表、教員所属学系、こういうものは大学設置審にかけておりますか。
  444. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 制度的な点で申し上げますと、大学設置審議会については、国立大学の学部等の増設については、学部については意見を伺うというような従来からの慣例でございます。しかしながら、本件はいわば通常の学部の学科に当たる組織でございますので、従来の扱いからすれば、特に大学設置審議会の意見を伺うというような対応を要しないものでございます。
  445. 山原健二郎

    ○山原委員 これもおかしいのですよ。文部省はこの前の学群と学類の問題について、当時の木田大学局長はどういう答弁をしておるかといいますと、群は単科大学である、単科大学に匹敵するのだ、類は学部だと言っているのですよ。これがこの委員会における答弁なんですよ。だから、この類の設立に当たりましては、当然私は大学設置審議会にかけまして、そして教官の組織表あるいは教員所属学系、これがわからなければ、実際、私らだって審議のしようがないでしょう。先ほど三浦さんからもお話がありましたように、中身を見ましても、本当にこれはもう全く材料なしで私たちは審議をしなければならぬということになっているわけです。  それはどこから出てきたかというと、結局、余りにも強引なやり方ですね。ほんの八月、九月の段階まで、国際関係学群を設置するという、しかも創設準備としてきたものがもう、他の大学は新設を要求したって何年もかかるのに、この大学だけは、大学の中の意思統一もできていないのに、いきなり八月三十一日になって文部省の概算要求の中に組み込まれて、そして大学の中では全然論議されていない第三学群の中にこの国際関係学類を置くということが出てくるわけですから、だれが考えても異常なんですよ。こんな異常なことをこれからもやるのかどうか伺っておきたい。
  446. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど来の答弁に尽きるわけでございますが、私どもとしては、筑波大学から正規の要求として出されたものについて、受けとめて要求をしたわけでございます。  ただ、御指摘のような、学内で異論のあることについては、もちろん学内でそのことについては十分論議を尽くして、事柄について全体合意を得るべきことはもとよりのことでございますが、私ども文部省と大学との関係で申し上げれば、先ほど申し上げたような経過を経まして、私どもとしては受けとめて要求をしたものでございます。したがって、今後こういうことをやるのかというお尋ねでございますが、私どもとしては正規の手続を経たものについてもちろん要求をすることはもとよりでございますが、しかしながら、その正規の手続要求するに当たって、学内全体が、大学みずからの決定に当たってもちろん大学の自治が尊重された形で決定されなければならないことは当然のことでございます。
  447. 山原健二郎

    ○山原委員 本当に当然ですよ。評議会があって評議会の決定はあるわけですから、評議会の決定は、何遍も言いますけれども、国際関係学群の創設準備、そして第一学群の社会学類の学生定員の四十名増員という要求。ところが、この評議会で決まった四十人増員のものは概算要求の中では全く消えてしまっている。そして学群であったものが学類になり、第三学群の中に学類として含まれるというようなことになりますと、これは学長が書いたのですか。学長が勝手に書いたのでしょうかね。文部省は、学長から出てきたものだから、これはそれで内部手続のことは知らない、正式のものだと受け取った結果出しているのだということを言われますけれども、大学の自治の観点から言うなら実に乱暴なやり方ですよ。謀略ですよ、これは。そして、その内容にも問題があります。これは先ほど馬場議員あるいは三浦議員からもお話がありましたけれども、「国際関係学群及び関連大学院について」の三月十日の文書があるわけです。この中には、授業科目の中に軍備管理論、演習、国際緊張、冷戦論の演習、国際安全保障論の演習など、きわめて軍事的な意味が含まれている。そして、文部省の「履修計画表」が先ほど出されましたが、これによりますと、「国際調停交渉研究」「国際秩序モデル研究」「安全保障研究」などが入っているわけです。「安全保障研究」というのは軍事的なものはないなどと先ほどおっしゃっておりました。お気持ちはわかりますけれども、安全保障というのは一体何か。これは大平さんのときに出されましたところの報告書でございますけれども、安全保障というのは初めから軍事問題です。もちろんほかにも国際エネルギー問題その他の安全保障問題はありますけれども、軍事問題のない安全保障科目なんてありませんよ。それが文部省もみずから出してきておられるこの中にあるでしょう、「安全保障研究」ですね。これはどういうことですか。
  448. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほども御答弁を申し上げたわけでございますが、「安全保障研究」については、たとえば既存の東京大学の場合には教養学部において安全保障論が授業科目として上げられているわけでございます。それぞれ法学部なり、国際関係論や国際政治学の授業内容としては一般的に安全保障等に関する理論を深める教育もなされているわけでございまして、筑波大学の新しい学類についても国際関係教育組織である以上はそれらについて同様の教育が行われることはもとよりのことであろうかと思います。先ほど来筑波大学において軍事研究そのものをやるのではないかというお尋ねでございましたが、大学であります以上はそういうことはございませんということを明確に御答弁申し上げてある点でございます。
  449. 山原健二郎

    ○山原委員 先ほど大臣も明確に答弁されておりますので、私は疑うわけではありません。その決意で当然やっていただかなければならぬと思います。ところが、この筑波大学における国際関係学類の経過を見ますと、相当きな臭いにおいがいたします。  たとえば、筑波大學新聞、ここへ持ってきておりますけれども、この中にはことしの一月二十五日、福田学長の談話が新春会見として出ております。「総合安全保障などのテーマも学際的なものであり、本学で是非研究を推進したい」、こういうふうになっておりまして、結局総合安全保障の問題が前面に出てきているのです。  そして、ここで幾つか申し上げたいと思うのですが、これは福田さんの考え方がここに端的にあらわれておると思いますけれども、七七年の十一月「ナショナル・ゴール研究中間報告会」がなされておりまして、このときの委員長が福田信之さんでございます。この委員長の報告の中に「大学や各自の職場において安全保障・防衛の問題についての教育的実践を行なう。軍隊の経験のない青年がいる国となれば、これは日本だけではないと思うが、たとえばゼミの学生とともに自衛隊の体験入隊などするのも非常によい教育的効果がある」、こういうふうに述べておられます。もちろん個人的な見解だと思いますけれども、しかし学内の大学新聞に公然と、総合安全保障問題については「テーマも学際的なものであり、本学で是非研究を推進したい」、こうなってまいりますと、これは一個人の問題ではなくて、筑波大学学長、国立大学の学長の発言でありますからちょっと見逃すわけにはいかない言葉になってくるわけです。「学際的なものであり、本学で是非研究を推進したい」、こういうふうに言われておるわけであります。  こうなってまいりますと、いままであなたが述べておられましたどこそこの大学に国際関係の学科があるというお話、それは私も持っております。先ほども提示されたわけでありますが、それとは違った内容を持っている。まさに大学安保ではないかということを心配、憂慮せざるを得ないような風潮が学長みずからによって醸し出されておるとするならば、これは重大であります。しかもそれが、言葉は少し変わってきますが、文部省の履修科目の中に安全保障という言葉が出てくるに至りましては、先ほど大臣もきっぱりとそういうことはないとおっしゃいましたけれども、私は、これに対しては本委員会において相当な歯どめをかけるという明確なことをしておかなければならぬと考えておりますが、そういう心配は全くないとお考えなのかどうか、いまの私の言いました経過を踏まえてお答えをいただきたい。
  450. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 安全保障論の授業科目が既設の大学についてもあることは先ほど御説明をいたしたわけでございますが、さらにもう一点補足して申し上げますと、たとえば京都大学法学部の国際政治学の場合、安全保障政策の諸形態というようなものについてももちろんそれの授業科目の内容としては入ってくるということが、既存の大学の場合でも言われておるわけでございます。私どもは、筑波大学においても既存の大学で行われているものと同じようなそういう研究が行われることは当然のことであろうというぐあいに理解をしております。  ただ、御指摘の学長の発言については、仮にそのことが誤解を与えるようなことがあるとすれば大変遺憾なことでございますが、私どもとしては先ほど来御説明を申し上げているような形での内容であると理解をしております。  また、歯どめについてのお話がございましたが、この文教委員会におきます審議そのものが、先ほど来御指摘の点を十分踏まえた対応をするということについて国会の御審議をいただいている点が何よりもの証左ではないか、かように理解をしております。
  451. 山原健二郎

    ○山原委員 それだけではなくて「国際関係学群及び関連大学院について」の報告書を出された中心になられた方、中川さんという助教授の方でございますが、論文が出ております。「改憲の機は熟した」というまさに憲法改正論ですね、憲法第九条についての改正案を出しているのですから。こういう雰囲気の中でつくられる筑波大学の国際関係学類というのは、ただ他の大学において、いま局長があそこにもありますここにもありますとおっしゃったように、ほとんど社会学系の中でやられておるものが今度は突然大学のコンセンサスもなしに社会工学学類の中に入れられるわけです。そういうことを考えますと、手続上も不備がある、唐突である、学内の意思統一はできていない、評議会の決定とは違うものが出てくる、そして何となくきな臭い、本大学においても当然これを研究しなければならぬというようなものが重なってまいりますと、ただ単にそんなことはありませんとおっしゃっても危惧の念を持たざるを得ないのは当然じゃありませんか。そして、この学類ができましたときにスタッフはどうなるのでしょうか。五十九年度には二名増員で、逐次増員して十八名増ということになりますが、この教官その他の中に自衛官は入るのでしょうか。
  452. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 教官組織についてはもちろん大学が選考を行うことでございますけれども、そのような話は伺っておりません。
  453. 山原健二郎

    ○山原委員 現在この大学にはいわゆる公費で学んでいる大学院生、すでに三十名自衛官が入っております。そのほかに私費で行っている方たちも多いと思うのですけれども、これは院生ですから、内部はよくわかりませんけれども、かなりの状態が出ておるというふうに思いますし、また履修課目にしましてもこれは教授会その他によって変更することができますからね。文部省が幾らないないと言ったってどうでも変更できる面もあるわけでございますから、そういう点については私どもは本当に誤りのない歯どめをいまきちっとかけておかなければ、この学類が発足しましてどういうふうに進んでいくかわからぬということになりますと、やはり問題は日本国憲法と教育基本法の平和的条項に即して、この大学の学類がその枠の中で進むのかどうかということは当然考えておかなければならぬ問題だと思います。  それからまた、筑波大学でやらなければいかぬことはたくさんあるわけですよ。たとえば第一学群の定員を見ましてもばらばらですね。たとえば社会科学系の定数と現員の関係を見ますと、五十二人の定数に対して三十六名。だから、この社会科学系では、社会科学系の学問の基礎となる刑法、労働法、刑事訴訟法、行政法あるいは行政学、経済史、経済学、これは全部非常勤でやっている。本当に筑波大学がやらなければいかない仕事は、こんな学類を大学のコンセンサスもなしにいきなりつくることではなくて、いまの大学を充実させていく、こういう非常勤でもう定数減、しかも多少の定数減はどこでもあるとしましても、定数と現員とが五十二対三十六なんという状態、これを改善することが先じゃないですか。  それをしかも、いままで問題になりましたように、国立大学においても私立大学においても三年間新増設は抑制するというようなことを皆さんおっしゃっているわけでしょう。その中でここだけがどうしてこんなに出てくるのか。先ほど言いましたように、三重大学の場合は去年やるというのがことしに延びておる。筑波大学は何のコンセンサスもないのにことしぽかっと出てきて、四月から学生募集するというのでしょう。その学生募集するのに、カリキュラムほどうなるか、先生方の配置はどうなるか、一切私はわからぬ。ここにおられる議員の皆さんだれもわからない。性格もわからなければどういうふうな教育が行われるかわからないのにここで審議をしているわけでございますから、私どもは、そういう点では文部省は本当にいろいろむずかしい問題が次から次へとありますけれども、ここはやはり大学の自治の問題、戦後大学の理念の立場というものを、憲法と教育基本法の立場に立って貫いていく、その意気込みを絶対見せてもらわなければここで引き下がるわけにはいきません。どうですか。
  454. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の大学において学問の自由が保障されることはもとよりでございますが、そこの教育日本国憲法なり教育基本法の趣旨を十分尊重しつつ自主的に行われなければならないことは、私から申し上げるまでもないことでございます。
  455. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっといまの質問は、時間がありませんので後へおきまして、高岡短大の場合、私はこの設置に替成なんですが、文部省の方から基本構想をいただきました。その教員組織につきまして、広く民間企業云々の人たちを採用する。実は二月八日に出ております官庁速報に「技術一筋のたたきあげ職人も登用できる道を開く。」というふうに書いておるわけでございますが、文部省としてもこういうお考えが構想の中にあるのでございましょうか、伺っておきます。
  456. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学設置審議会の短期大学基準分科会でいろいろ御検討いただいている点でございまして、先ほども御説明を申し上げた点の一つでございますが、たとえば教職の経験がなくとも従来の経験からいたしまして、これは一般の説明でございますけれども、裁判官なり外交官なり専門技術者というような方々がその実務経験を生かして、教育研究上の能力のある者については教官として認めていくということによりまして弾力化を図っていくということは、考え方として基本的に了承をいただいている点でございます。高岡短期大学の場合の特に産業工芸学科というような内容になりますと、その教育研究の性格からも、地元の伝統的な工芸産業の事業所等におきますすぐれた実務経験を持っておられる方が教育研究上でも能力があれば、その方々にお加わりいただくということについては、この大学の趣旨を生かす上からも必要なことではないか、かように考えております。  もとよりこういう方々をどの程度採用するかというようなことは今後の検討にまつわけでございまして、具体的には教員全体でそういう方々がどのような割合になるか、ここでただいま明確に申し上げられるわけではございませんけれども、基本的にそういう方々が比率として大きくなるということはなくて、そういう道を開きましてももちろんそういう方々はその全体の中の一部になろうか、かように考えます。
  457. 山原健二郎

    ○山原委員 これは私はその一つ一つもちろん反対ではありませんけれども、やはり短期大学の設置の基準から言うならば、短期大学の設置基準の問題で現在審議中じゃないでしょうか。たとえば専修学校との単位の互換の問題や昼夜開講制の問題、あるいは社会人学生の場合社会体育によって単位を与える問題などなど、これはもちろん積極的な面もありますけれども、しかしこれは設置審議会で検討中のことではないでしょうか。その設置審議会の検討中のものを、むしろこの法律が先取りをしていくという結果になっているのじゃないかと思いますが、その点はどうかということです。そして、それは同時に短期大学の設置基準を変更する中身になるのではないか。これは一応この委員会としては論議しておく必要があると思うわけですが、その点は文部省としては矛盾を感じておりませんか。
  458. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 大学の弾力化の問題は、一般論としては積極的に進めるという方向で従来からも施策を進めてきておるわけでございまして、具体的にたとえば単位の互換の問題でございますとか、そのような点で制度としても進めてきておるわけでございます。御指摘のような問題点については、すでに短期大学基準分科会においても検討をお願いしておりまして、基本的な方向としてはそういう弾力化の方向については御了承をいただいておるわけでございます。  なお現時点では、検討のまとめといたしましては教官の組織については先ほども申し上げましたように、裁判官、外交官等専門技術者で教育の経歴はないが、当該専門領域に関しすぐれた実務経験を有する者のうち、教育研究上の能力のある者の任用を認めることができるというような方向。それから入学資格の問題につきましても、社会人で相当程度聴講生として履修した者については入学資格を認める問題でございますとか、あるいは昼夜開講制を導入する問題でございますとか、そのほか履修方法としても社会体育における学習の単位としての認定を行う問題でございますとか、これはすでに放送大学の際にもいろいろ御議論をいただいた点で、そういう弾力化の方向については、基本的にはそういう方向で進めさせていただいているわけでございます。  専修学校の専門課程における履修の単位としての認定の問題については、その履修しました授業科目を短期大学の単位として認定することについては、その認定のあり方なり履修方法については、なお引き続き検討をさせていただくというような現在対応になっていまして、私どもといたしましては法案の御審議と並行いたしまして、基準分科会でもそのような点について御議論を進めていただいておる点でございまして、この点については分科会の結論が出る方が先であるべきではないかというあるいは御指摘かとも伺うわけでございますけれども、およその方向はいただいておるわけでございまして、ただいま申し上げましたような細部の点について、なお検討課題が残っているというのが現時点の状況でございます。
  459. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、私も少し声を大きくして申し上げましたが、なぜこんなふうに大きな声を出したかといいますと、最初に申し上げましたように、筑波大学法案が出ましたときに、いままでの大学というのは教授会を基礎にして大学の自治――教授会にはいろいろな問題があろうとも、時間がかかろうとも、とにかく全学一致する方向の大学の自治を尊重するという立場で戦後の大学の理念というのは来たわけですね。それを筑波大学によって教授会をなくし、そして参与を置き、いろいろな形態が出てまいりまして、その中で論議をし尽くした上、評議会というものがある。その評議会によって大学の自治は守られていくのだ、そして、評議会は、先ほど言いましたように評議会の規定によりまして、法律に基づいてこれこれの仕事があるのだということですね。それは研究の設定であるとか、たとえば先ほど言いました学類をつくるときは、当然そこの評議会の仕事でございます。学生の募集定員の問題とかあるいは概算要求の決定、方針を出すとか、一番大事なものを評議会は持っているのです。その評議会が、どこを探しても議決がない、しかも評議会の出している議決と違ったものが筑波大学の概算要求書となってあらわれてきたわけです。これですけれども、それを見ると、評議会の決定とは違って、一番大事な部分が変わっている。しかし、文部省は、これは大学から出たのだからということで、何ら矛盾はないということで、直ちに文部省の五十八年度概算要求にこのまま出ていくということになりますと、言うならば大学の意思というのはどこで決定をするのかという、そういう疑問が出てまいりますので、私はこれは納得できない。この手続上からいっても、もっと民主的な手続を踏んで、決議機関にかけて決定をしていく、それは困難であってもやる、そして、それが仮に一年かかろうが次の年までにコンセンサスを得るという努力があってこそ初めて大学というものではないのか。それもなしに、いきなり学生募集が四月から始まる。そして、私たちはここで採決を迫られてくる。実際に考えてみますと、本当に委員会審議としては残念ながら不十分なまま採決に入らざるを得ないという問題がありますから、そういう意味で大学の民主的な運営のために、あえて大きな声を出したわけですが、この点について大臣の所見をお伺いしたいのが一つです。  もう一つは、先ほど明確に御答弁がありましたけれども、私はいままでの経過からいって、このできた学類が国際関係学類という名前であるけれども、安全保障の問題を含め軍事研究にあるいは軍事技術の研究に進んでいくのではないかという、そういう危惧の念を払拭することができないものですから、この点については当然何らかの歯どめの申し合わせなり決定なりすべき必要がある、こういう考え方質問をしたわけでございますが、この二つの点について、文部大臣の明確な御答弁をお伺いしたいのであります。
  460. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 先ほど来山原さんが情熱を傾けて、大学のあり方を中心に筑波大学についてお話がありました。局長がたびたび御答弁申し上げておりますように、文部省といたしましては、筑波大学の公式な申請がありまして、それによってやる。内部で多少異論があるのじゃないかと私も想像しながら承っておったわけでありますが、望むらくは、いま評議会もあることでございますから、学内が一致して意思統一をされることを期待して、民主的な運営を願っておるわけでございます。  それからもう一つ、先ほど来数氏から、今度の国際関係の教科の中で軍事研究が入るのじゃないかと。私も軍事研究は断じてあり得ないし、ないと申し上げております。  ただ、国際関係について理解を持つ人材を養成するについては、いろいろな国際関係の動きを知らなければなりませんし、国際関係の軍事情勢がどうなっている、軍縮問題がどういうふうに運んでおるのだ、こういう教育といいますか、研究をすることは当然でございましょうが、軍事技術を研究するとか武器の研究をするとか、そんなことはとうていやるべきでないし、あり得べからざることだと、かように御理解をいただきたいと思います。
  461. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  462. 葉梨信行

    葉梨委員長 河野洋平君。
  463. 河野洋平

    ○河野委員 もう設置法についてはかなり同僚議員が御議論になった後でございまして、極力重複も避けたいと思いますので、私は順番上いわば締めくくりみたいなかっこうになりましたので、一、二点だけ文部省にお伺いをしたいと思います。  国立学校設置法というのは、かなり頻繁にこの委員会に毎年毎年のように提案をされてくるわけでございます。そして提案されるや否や、これは一番急ぐのだ、日切れ法案だ、急げ急げ、こういうことに毎年、毎回なるわけです。今度の設置法の中で、急いで法律ができないと大変困る部分はどことどこですか。
  464. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 この改正法案では、五十八年度に三重大学人文学部、奈良教育大学及び福岡教育大学の大学院を設置することが含まれているわけでございます。この改正法律が年度内に成立しなかった場合には、これらの学部、大学院における学生の受け入れがおくれまして、それらの教育に支障が生ずるというようなことがございますので、御審議を尽くしていただいた上、速やかな御賛成を賜れば大変ありがたいと、かように思っております。
  465. 河野洋平

    ○河野委員 もうちょっと具体的に言いますと、三重大学ですけれども、三重大学においては、従来の学部はすでに新入生の選抜は終わっておりますか。それともまだこれからでございますか。
  466. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 そのとおりでございます。従来の既存の学部については、入試は共通一次を経、大学の二次試験を経て終わっておるわけでございます。
  467. 河野洋平

    ○河野委員 そうすると、この法律が衆参両院で成立をいたしますと、新たに三重大学人文学部は学生募集をするわけですか。
  468. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 この法律の成立を見次第募集をするということになるわけでございます。したがって、共通一次はこの件についてはかぶらないことになるわけでございます。
  469. 河野洋平

    ○河野委員 共通一次はかぶらない。共通一次はかぶらないが、国立大学として三重大学の人文学部は、新たに二百二十名の学生を募集する。これは、新たな学生募集についてはどんな方法、手段――公募するわけですからね、学生さんに新しくこういう学部ができました、さあ受験なさい、どうやって周知徹底できるのですか。
  470. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 事柄そのものについてはすでに予告はいたしておるわけでございます。成立し次第、県内の高等学校でございますとか、そういうところを通じまして募集の手続をとることになるわけでございます。
  471. 河野洋平

    ○河野委員 多分法案は成立するだろうという予想のもとに大体予告はしてあるというような御答弁でございますが、やはり国会の審議というものは相当権威のあるものでなければならぬわけでございまして、私は別にとやかくいちゃもんをつけるつもりは全くないのです。受験生の心情その他を考えれば、こうした法案をこういう無理な形で審議をさせて、ことし学生を募集することは本当は無理なんじゃないのか。  これは大臣ちょっとお聞きをいただきたいと思うのですが、かつてこの文教委員会の議論の中で、この種の設置法はやはり一年前に法案をちゃんとつくっておいて、来年の新学期から学生を募集するということを、少なくとも半年や一年前にはそういう法律も整備されて、そして全国の受験生には告知ができるということにするのが受験生に対する親切というものじゃないか。法案が通るか通らぬかわからぬ、まあ自民党絶対多数だから通るだろう、多くの人はそういう予想をしているかもしれないけれども、これがまかり間違って国会でも解散になれば、法案は廃案になってしまいますよ。そういうことになればことしは募集できないということになる。そうなったら、この学部を当てにしている受験生諸君にとっては相当なマイナスになるわけでございまして、この種の法律案がいろいろ国会の審議の事情もあって相当おくれて成立をしたということも過去に何度かあって、一番おくれて成立をして、なおかつその年の学生を募集したというのは、これは正確じゃなくていいですけれども、夏ごろまであったのじゃないかとか秋ごろまであったのじゃないかとか、御記憶ありませんか、大学局の方、どなたか。
  472. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 正確な記憶ではございませんが、旭川医科大学の創設の際に相当期間おくれたということがあると記憶をいたしております。したがいまして、そういうようなことの経験も踏まえまして、その後大学なり短期大学の新設に当たりましては、たとえば御提案申し上げております高岡短期大学も同様でございますけれども、大学はこの十月に開学をしまして、学生受け入れはそれから二年半後というようなことで、これは新設の場合でございますので、施設を整えますとか、教官組織を整備するというようなことで十分な期間を置くというような形で設置をしているわけでございます。たとえば新設の医科大学等についてもその後はそういう対応をしてきたわけでございますけれども、大学の中の学部の場合には通例翌年度四月から募集をする対応で、きておるというのが、若干の例外がございますが、従来の例でございます。
  473. 河野洋平

    ○河野委員 私は、いま局長がおっしゃったことがやはりいいと思うのですね、大臣。少なくとも高岡の短期大学について、これは問題も全くなくはないけれども、学生募集への姿勢としては、いまここでもちろん法律も整備され、建物も整備し、何年後には学生を受け入れますよということをいまからやる、こういう姿勢がやはり大事なんで、その間にはもちろん教職員のスタッフも整えるということが大事なことなんで、私は、新設について現にそういう配慮をしてやっておられる文部省当局が、どうして従来の大学の学部増設というとこんなにあたかも駆け込むがごとく急遽やるのか。これはかつては大蔵省との関係で、法律ができないと大蔵省が予算をつけてくれませんとか、いろんな大蔵省とのやりとりなどが理由になっていたようにもうかがえますけれども、大蔵省とのやりとりもさることながら、やはり受験生つまり学ぼうとする立場の人たちのことを考えると、こういう駆け込み審議というのはどうもぐあいが悪いのじゃないか。  かつてずいぶんおくれて、夏休みをつぶして勉強させてみたり、レポートで一年目だけははしょってみたりした例がたしかあったような記憶を私はいたしておりますけれども、こういう審議のやり方、しかも急がなければ大変だ大変だといって、国会の審議まで急がせるというやり方はもうそろそろ改めないといかぬ。私はこの法案については、学生諸君を待たしてもうここまで来ているのですから、この三重の人文学部を学生募集は来年からにせいなんということを言うつもりはありません。しかし、これは委員長にもお願いをいたしますけれども、そして主として文部省にお願いをいたしますが、文教委員会審議のあり方から考えても、こういうやり方で四月から新入生を募集する、国立大学だけれども、共通一次はこれだけは特例でかぶらせずにやりますというようなやり方を毎年毎年続けることはもうおやめになるべきじゃないか。  これはこういうふうにせざるを得ない理由が何かあるのでしょうか。もしこうせざるを得ない理由があるなら、ちょっと御説明をいただいておきたい。
  474. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 御指摘の点は私どもも検討しなければならない課題というぐあいに受けとめさせていただきたいと思います。  事柄としまして、たとえば学部の増設につきましてもやはりその事前の整備の段階があるわけでございまして、たとえば三重大学の人文学部についても、いわば準備の整いましたものについてお願いをしているわけでございます。そういう意味では、その場合学生受け入れをさらに一年延ばすというような対応についてはやはり検討すべき問題点もあるのではないかというぐあいに考えます。  そしてまた、御指摘の点かもしれませんが、定員措置がこの国立学校設置法については設置法定員が規定されておるわけでございまして、いわばこれも峠は越したわけでございますけれども、新設医科大学についてはこの設置法定員で定員措置が行われるわけでございます。これが年度を過ぎるということになりますと、その設置法定員の定員の措置についていろいろと具体的な技術的な点で対応しなければならない問題点があるということはあるわけでございます。
  475. 河野洋平

    ○河野委員 お話しはよくわかります。よくわかりますが、大学の方の準備が整ったからやるよとおっしゃるけれども、やはり法律が整備されるということも準備が整う一番重要なことなんです。もっと言えば、法律が先行して、法律が通らなければ本当は準備だってできないのですよ。法律が通るか通らぬかわからぬうちから準備を進めると言ったって、本当は準備の仕方が逆転していますよ。本来から言えば法律を先に――もちろんその計画ができて、そして法律を通して、そして準備が進んで学生受け入れ、こうなるべきもので、国会の法案審議は一番最後で、内部的に準備がどんどん整って、準備ができたぞ、それことしからいくぞ、決めてから法案を出してくる。最終決定を国会にゆだねるのだから、そういう順番なんだと言われるのなら、それも一つ考え方かもしれませんけれども、繰り返し申し上げますように、受験生の立場に立てば必ずしもいい順番だというふうには思わない。  これは大臣に伺ってこの話はやめますが、大臣どうでしょうか。私の言っていることは無理だとお思いになりますか、妥当だとお思いになりますか。
  476. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 私は文教委員会、きわめて日が浅いのでございますけれども、いま河野さんが言われたことは至極もっともだという考えを持っております。ただ、三重大学なんかは地元が一生懸命首を長くして待っておるという事情がありますものですから、この際何とか皆さんの御理解を得て、それから福井、香川その他の新設医大の病院も、これはどうしても早くしなければなりませんので、そういう意味もありますからひとつよろしくお願いしたいと思います。
  477. 河野洋平

    ○河野委員 私はこの法案についてはもう結構だというふうに思っております。ただ、恐らく来年も国立学校設置法はお出しになるのじゃありませんか、どうですか、局長
  478. 宮地貫一

    ○宮地政府委員 先ほど申しましたように、国立学校設置法に定員措置を規定している部分がございますので、これは学年進行で順次定員措置をつけなければならぬ問題がございますから、少なくともその点に関してはやはり御審議をお願いしなければいかぬ点がございます。
  479. 河野洋平

    ○河野委員 少なくとも既設の大学に学部を増設をするなんという計画を国会にお出しになるならば、それはもう明らかにどうやってみたってこの通常国会で議論をするのはこの時期になってしまいますよ。衆参両院の予算の総括質問だ何だという従来の慣例、慣習を、これは慣例、慣習を全部破るのだと言えば別ですよ、だけれどもそれは前提に考えざるを得なければこうなる。というなら、少なくとも既設の大学における学部の新設増設、そういうものはこういう審議のやり方はやめて、もう一つ余裕のある審議のやり方をしよう。少し文部省ががんばって大蔵省との折衝が進んで、たとえばせめて秋の臨時国会にやるとか、あるいは一年ずらすとか、そういう方法をとることがベターだと思うのですが、もう一遍大臣答弁ください。
  480. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 実際問題としていろいろな事情があると思いますが、いまお話しのことは理にかなったことでございますので、よく工夫をしてみたいと思います。
  481. 河野洋平

    ○河野委員 あと私は少しオーバードクターの問題でございますとか、行政改革に伴う定員増の問題とか、少し御議論申し上げたいと思うこともございますが、私はこの法案について概略は過日の大臣に対する質問で行っておりますので、本日はこの法案に対する質問はもうこれで終了したいと思います。  いま申し上げました今後の法案の取り扱いについてだけはくれぐれも善処していただきたいということだけお願いして、質問を終わります。
  482. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  速記をとめてください。     〔速記中止
  483. 葉梨信行

    葉梨委員長 速記を始めてください。     ─────────────
  484. 葉梨信行

    葉梨委員長 この際、本案に対し、山原健二郎君外一名より日本共産党提案に係る修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。山原健二郎君。     ─────────────  国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  485. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党を代表して、国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する修正案を提出いたします。  修正案の趣旨。  改正案中、筑波大学に関する項、すなわち第七条の二第二項の改正規定を削除する。  修正案提出の理由。  本改正案中、第七条の二第二項の改正規定は、筑波大学の第三学群に国際関係学類を設置できるようにするための改正であります。  この国際関係学類の設置に至る経過は、非民主的であるとともに、大学自治のじゅうりんの心配があるからであります。かかる国際関係学類の設置を認めることは、今後学部、学科等の創設に当たって禍根を残しかねないと思うからであります。  しかも、その教育研究の内容たるや軍事色が強く、「真理と平和を希求する人間の育成を期する」とした教育基本法の精神と相入れないとの危惧を持つからであります。  一方、三重大学の人文学部設置、奈良教育大学及び福岡教育大学に大学院を設置すること、高岡短期大学の新設、山形大学工業短期大学部の廃止等は賛成するものであります。  学生募集などの関係から、筑波大学の国際関係学類に関する審議によって成立をおくらせることには問題があります。  以上の点が筑波大学に関する部分の分離を求めた趣旨でありますが、法案採決に当たっての技術的な問題もあり、削除する修正案を提出することになったものであります。  同僚各位の御賛同をお願いし、提案理由にかえます。  以上です。
  486. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  487. 葉梨信行

    葉梨委員長 これより国立学校設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  まず、山原健二郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  488. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  489. 葉梨信行

    葉梨委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  490. 葉梨信行

    葉梨委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、船田元君外四名より自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  本動議を議題とし、提出者より趣旨の説明を求めます。佐藤誼君。
  491. 佐藤誼

    佐藤(誼)委員 私は、提出者を代表して、ただいまの法律案に対する附帯決議について御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国立学校設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、左記事項について特段の配慮を行うこと。  一 国立大学の役割とその重要性にかんがみ、今後とも、行財政事情並びに私学の果たす役割にも配慮しつつ、その整備、充実を図ること。  二 国公立大学の共通一次試験については、種々の問題が指摘されているので、その改善について十分な検討を行うこと。  三 筑波大学の「国際関係学類」においては、平和な国際社会に対応できる能力を備えた人材の養成に努めること。  四 高岡短期大学については、教育研究諸条件の整備を図り、高等教育機関としての充実に努めること。   右決議する。 以上であります。  その趣旨につきましては、本案の質疑を通して明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。  以上であります。
  492. 葉梨信行

    葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく本案に対し附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  493. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、本附帯決議に対し、政府の所見を求めます。瀬戸山文部大臣
  494. 瀬戸山三男

    瀬戸山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしてまいりたいと存じます。     ─────────────
  495. 葉梨信行

    葉梨委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  496. 葉梨信行

    葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  497. 葉梨信行

    葉梨委員長 次回は、来る二十五日午前九時二十分理事会、午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時九分散会