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1983-03-30 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三十日(水曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    桜井  新君       志賀  節君    田名部匡省君       高橋 辰夫君    津島 雄二君       羽田  孜君    平沼 赳夫君       保利 耕輔君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    串原 義直君       島田 琢郎君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    竹内  猛君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       菅  直人君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         林野庁長官   秋山 智英君         林野庁次長   島崎 一男君  委員外出席者         外務省北米局北         米第二課長   七尾 清彦君         外務省中南米局         中南米第二課長 浜野美智夫君         文部省初等中等         教育局小学校教         育課長     熱海 則夫君         林野庁林政部長 後藤 康夫君         林野庁業務部長 田中 恒寿君         労働省労働基準         局監督課長   野崎 和昭君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 三月三十日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     平沼 赳夫君   小里 貞利君     津島 雄二君   佐藤  隆君     桜井  新君   前川  旦君     島田 琢郎君   阿部 昭吾君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   桜井  新君     佐藤  隆君   津島 雄二君     小里 貞利君   平沼 赳夫君     上草 義輝君   島田 琢郎君     前川  旦君   菅  直人君     阿部 昭吾君     ───────────── 三月二十九日  沿岸漁場整備開発法の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  肉用牛生産振興施策充実強化に関する陳情書(第一三一号)  水田利用再編対策推進に関する陳情書(第一三二号)  農産物輸入自由化枠拡大阻止に関する陳情書外一件(第一三三号)  森林資源保全等に関する陳情書(第一三四号)  昭和五十八年度畜産物価格等に関する陳情書(第一三五号)  中国山地における農用地の整備並びに維持保全対策推進に関する陳情書(第一三六号)  島原半島における広域営農団地農道早期完成に関する陳情書(第一三七号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)  農林水産業振興に関する件(畜産蚕糸問題等)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保利耕輔君
  3. 保利耕輔

    保利委員 一昨日、昨日と畜産振興審議会が開かれまして、昭和五十八年度の畜産物価格について政府の諮問が行われ、そして審議会からの答申が出たわけでございます。これを受けて昭和五十八年度の畜産物価格が決定される運びとなるわけでございますけれども価格決定に際しまして、政府としては当委員会が行った畜産物価格等に関する決議というものを十分に尊重していただきまして、そして価格並びに周辺対策の問題につきましては十分にこの意向を酌んで対処をしていただきたい。初めに強く御要望を申し上げる次第でございます。  畜産物価格等に関する決議の中では、加工原料乳保証価格でございますとか、あるいは限度数量、肉の安定基準価格、子牛価格安定制度、あるいは自由化及び輸入枠の問題、輸入乳製品の問題、酪農負債整理資金の問題、あるいは飲用牛乳の秩序ある取引の問題等を取り上げているわけでございます。 そしてこの決議の中でも、最後ではございますが、第六項に飼料安定供給ということを取り上げております。  日本畜産というのはもちろん飼料によって行われておるわけでありますが、その濃厚飼料の大部分輸入に依存しているというのが現状ではないかと思うわけでございます。畜産局がおつくりになりました「飼料関係資料」の三ページを見ますと「純国内産濃厚飼料自給率」というのが出ておりまして、これによると昭和五十三年度は九・五%の自給率である。そして昭和六十五年度には八・四%と逆に自給率が下がるというふうな数字を見ることができるわけでございます。いずれにいたしましても、濃厚飼料の九〇%以上が海外依存ということでございまして、飼料の大部分海外に依存しているというのが日本畜産あるいは酪農の特徴だと言えるのではないかと思うわけでございます。そこで、この飼料というものは畜産を支える大きな支柱でありますが、同時にまた、この飼料の情勢というものは日本畜産アキレス腱であるというふうにも考えられるわけでございます。  そこで、この飼料はかなりのパーセンテージをアメリカに依存していると思いますが、飼料用穀物の最近における輸入量と対米依存度がどういうふうになっているか、概況をお答えいただければありがたいと存じます。
  4. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、粗飼料につきましては極力国内生産を増強しようと思っておりますが、飼料穀物につきましては広大な土地が必要でございますので、安定的に、しかも比較的安く手に入れます場合には、どうしても輸入に依存するわけでございます。  最近の状況を申し上げますと、一番最近時点の五十七年の輸入量は、畜産物の需要の伸びの鈍化ということもあって飼養頭羽数が余り伸びていないということもございまして、前年から若干下がりまして一・四%減、トン数で申しますと千四百八十二万五千トンでございます。  このうち、アメリカへの依存度が一番大きいわけでございます。 アメリカからの輸入は、これも前年から比べますと七・六%下回りましたが、千二百二十五万二千トン、全体に占めるシェアは若干下がりましたけれども、依然として八三%がアメリカから入っているわけでございまして、アメリカにおける飼料生産状況わが国畜産大変影響が強いわけでございます。
  5. 保利耕輔

    保利委員 いまのアメリカから輸入されております千二百二十五万二千トンの飼料のうち、トウモロコシがどのくらいになっているか、数字がございますか。
  6. 石川弘

    石川(弘)政府委員 トウモロコシは九百九十四万五千トンでございます。
  7. 保利耕輔

    保利委員 千二百二十五万二千トンのうち九百九十四万トンがトウモロコシである、飼料の大部分トウモロコシであるということがわかるわけでございますが、この主要飼料穀物トウモロコシ相場については、アメリカシカゴ相場というものがわれわれには資料として入手できるものでございます。  先ほどいただきました畜産局がおつくりになった飼料関係資料には、シカゴ相場の推移がずっとグラフで出ております。 それを見ますと、五十七年の秋に非常に下がりまして、一ブッシェル当たり二ドル二十セントぐらいのところまで落ちているように思います。資料の十四ページに出ております。そしてその後、去年の秋以降反転して、シカゴ市場価格相場が上がってきております。そしてつい最近の時点では、そのグラフによりますと五十八年二月現在で二ドル七十三セントまで上がっておる数字が出ております。そこで、最も新しいシカゴトウモロコシ価格は一ブッシェル当たり幾らになっているか、お手元に資料がございましたらお知らせいただきたいと思います。
  8. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一番最近時点でとりました数字は、ブッシェル当たり三ドル十一セントでございます。
  9. 保利耕輔

    保利委員 最近の新聞を見てみますと、アメリカでは史上最大穀物減反計画があるということが報道されております。その穀物減反計画概要を御説明いただきたいわけでございます。また、この減反に伴いまして、穀物生産を減らす農家に対しては政府備蓄穀物現物給付するといういわゆるPIK計画ピック計画と言われているそうでございますけれども、その概要もあわせて御説明いただきたいと思います。  そして、畜産局としては、特に今回の減反わが国輸入する飼料穀物価格にどういう影響を及ぼすと考えておられるか、もし御意見があればあわせてお答えをいただきたいと思います。
  10. 石川弘

    石川(弘)政府委員 アメリカ政府は、史上二番目と言われる大変な過剰在庫を持っておりました関係もございまして、極力需給均衡を図るということから、本年度から穀物等につきまして作付制限を図ることとしていたわけでございます。この削減計画を一層強力にするという観点から、先生指摘PIK計画現物支給計画を実施することとしているわけでございます。  この計画は、作付削減に上乗せをしまして、穀物等減反を実施いたします生産者に対しましてその減反面積に応じまして政府が保有しております穀物等支給するというものでございまして、生産者はその支給された穀物等商業市場等で自由に処分することができるという考え方でございます。さらに、このPIK計画につきましては、立法措置は何ら講ぜられておりませんので、行政府の権限で実施されているというように理解をいたしております。  農務省が、本年産穀物等作付削減、それからPIK計画への参加申し込み状況を先日発表したわけでございますが、それによりますと、減反申し込み面積は八千二百三十万エーカー、これは総作付面積の約三六%に達するものでございます。作物別に見ますと、トウモロコシソルガム、こういうものが三九%、小麦が三五%というような数字になっております。減反申し込み面積は、発表がありました際若干大きく伝えられましたように、政府とかあるいは民間が当初どのくらい入るかと言っていた予測を大分上回る数字でございまして、このような予測を上回る申し込みがありましたことにつきましては、穀物価格が大変長期的に低迷をいたしておりますことのほかに、減反奨励金制度現物支給をするというPIK計画が織り込まれているということによって大いに参加意欲が増したものと思っております。  これが国内にどのように影響するかということでございますが、そのときの発表の中で向こう農務長官が申しておりますが、減反自身は確かに大きくございますし、相当実効も上がると考えられるわけでございますけれども、実は穀物在庫量自身史上二番目の在庫を現在持っているわけでございます。したがいまして、直ちにそれがたとえば輸出数量を抑えるとかあるいは価格を直ちに引き上げるというようなことはないということを向こうも言明はいたしております。 それから、これはアメリカ計画でございまして、その他の穀物生産国がこれにどう対応するかということも問題であろうかと思います。 そういういろいろな条件がございますので、いま直ちにこれが将来穀物価格を大変つり上げるというところまで判断することは困難だと思いますが、やはり条件一つとしまして、どちらかというと穀物相場を堅調にするという要因はあろうかと思います。  御承知のように、日本輸入しまして使います場合には、穀物価格のほかに円のレートというのが大変大きな変動要因でございます。さらにフレート等もあるわけでございますが、われわれといたしましては、海外から入ります穀物が極力安定的な価格で入ることが望ましいという意味で、各種の情報等を収集しまして、極力その安定を図るような輸入を行うわけでございますが、そのほかに海外価格変動というのはある程度避けられないということでございまして、御承知のように一つ備蓄という形で、国内に必要なものを備蓄をしておるという実情がございます。備蓄によって変動をなるべく緩やかにする要素がありますと同時に、もう一つは、これは生産者それからメーカーあるいは国も金を出しております配合飼料価格安定制度がございまして、万が一大きな変動をしそうなときにはその変動幅を小さくするための補てんを行うということで、極力穀物価格変動をなだらかにして国内生産者影響の度合いを少なくするという制度があるわけでございます。いま直ちにこれを発動しなければいけないような状況になるとは思っておりませんが、そういう既存の施策も十分活用いたしまして、向こうにおきます減反問題が国内生産者に極力影響を与えないようにやっていくつもりでございます。
  11. 保利耕輔

    保利委員 シカゴ穀物相場が上がったからといってすぐに日本輸入飼料価格が上がるというわけではないし、また、それに対応する諸施策を講じてあるというお話でございます。しかし、特に濃厚飼料は九〇%以上がアメリカからの輸入であるということを考えますときに、注意をして常に監視の目を怠らないようにしておく必要があるのではないかと思うわけでございます。  そこで、きょうは外務省おいでになっておると思います。外務省にこのPIK計画についてもう少し詳しく御説明をいただきたいと思っているわけでございます。  特に、PIKというのは英語ではペイメント・イン・カインドというふうに言われておりまして、字引を引くと物納というふうに書いてあります。物で払うということのようでございます。したがって、輸出補助金あるいは補助金を物で政府側が払うというふうに字面はとれるわけでございます。ところが、穀物輸出する場合にこのPIKを当てはめるといわゆる輸出補助金というのになるのではないかということで、アメリカブロック農務長官あたりは反対の意向を表明されておる。そうすると、いわゆる輸出PIKというものがだめだということになってくると、それだけ輸出価格はやはり上げざるを得ないのではないかというふうにも考えられるわけでございます。  そこで、最近の新聞を見ると、三月三日にアメリカ上院農業委員会農産物輸出拡大法案というものを可決いたしておるようでございます。そして、この農産物輸出拡大法案の目玉としては輸出PIK計画というのが入っているということのようでございます。上院はこれを承認したようでございますが、目下下院審議中ではないかと私は推察をいたしておりますが、この下院での審議状況がいまどういうふうになっているのか。そして輸出補助金といいますか、これは物納補助金がつくわけでございますけれども、この輸出PIKというものをアメリカ政府としてはどういうふうにとらえているのかというようなことについて、もし外務省として情報をお持ちでございましたら御披瀝をいただきたいと思います。
  12. 七尾清彦

    七尾説明員 先生指摘輸出拡大法案関係は、まさにそのような状況でいま審議が進んでおる。加えまして、それ以外にも農産物でいわば目には目を、歯には歯をといいますか、相互主義法案的な法律もいろいろ出ておりまして、この行方はまさに慎重に注意深く見守っておるという状況でございます。  それから補助金絡み議論につきましては、私どもも耳をそばだてて、特に欧州とアメリカとの間のやりとりあたり注意を払っております。もちろんこのPIKにつきまして事実上の輸出補助的な性格がないとは言えないという目では見ていく必要がございますけれども、いわゆる典型的な国内価格国際価格との差を政府財政資金によって補助するという形はとっていないということもございまして、いまなおしばらく様子を見たいということで、情報収集に努めておるところでございます。特にヨーロッパから、輸出補助金ではないかという形でアメリカをたたくというような特段の議論が出ておるようにはまだ私ども把握しておりません。
  13. 保利耕輔

    保利委員 もうしばらくアメリカ下院での審議状況を見たいということでございますが、これは日本輸入する穀物価格に大変大きな影響があろうかと思いますし、ある意味では日本畜産あるいは酪農というものがこれによって首根っこを押さえられているということも言えるわけでございますから、十分に注意をしていただきまして、そして外務省あるいは農林省連携のもとにこの情報収集に努めていただきたい、このように要望を申し上げておきたいと存じます。  もう一つ、せっかく外務省おいででございますから、日本飼料輸入に絡みまして私が大切と思います点について御質問をしてみたいと思います。  八十数%の穀物アメリカから輸出をされてくる。その輸出基地というものは大体メキシコ湾岸にございまして、ニューオーリンズのあたりには日本の全農も輸出基地をつくっているという状況でございますが、メキシコ湾から日本に大量の穀物が輸送されてくるその経路にはパナマ運河があるわけでございます。中米といいますと、このところニカラグアとホンジュラスの間の緊張が非常に高まっているということが伝えられております。ニカラグアのもう一つの隣はコスタリカで、その隣がパナマだ。もう非常に紛争の近いところにこのパナマ運河がある。そのパナマ運河を通って日本飼料穀物が来ているわけでございますので、これを考えますと、パナマ運河安全通航と申しますか、安全運航日本飼料輸入、ひいては畜産業あるいは酪農業に対して大きな影響があると考えていいのではないかと思うわけでございます。  聞くところによりますと、パナマ運河に対しては、パナマアメリカとの間には新運河条約が結ばれておって、一九九九年末までアメリカが管理し、一九九九年末をもってパナマに全面返還されるということであります。その返還されるまでのパナマ運河防衛権アメリカが握っているというふうに聞いているわけでございますが、このパナマ運河安全保障はどのようになっているか、外務省から御意見を聞かせていただければありがたいと思います。
  14. 浜野美智夫

    浜野説明員 お尋ねパナマでございますけれどもパナマにおきましては他の中米諸国と事情がちょっと異なりまして、反政府ゲリラと申しますか、反政府分子、そういったもののゲリラ活動といったものは今日のところまだ見られておりません。パナマという国は事実上パナマ運河でもっているというところが非常に大きいわけでございますけれども、それに限らずといいますか、パナマ運河を初めといたしまして、パナマのいわば地の利を生かして、自由貿易港であるとかあるいは国際金融センター、そういったものを通じまして自国経済発展を図っておるわけでございますが、そういうことを行うに当たりまして、パナマ自体の政治的社会的安定といったものが何よりも大切である、パナマ政府はよくこのことを認識しておりまして、不断に自国の政治、経済、社会の安定に非常に意を用いていると申し上げてまず間違いないだろうと思います。  お尋ねの第二の、パナマ運河通航の安全でございますけれども、一九七七年のパナマ運河条約というものによりましてパナマ運河の管理、維持、運営というものが行われておるわけでございますが、先生指摘になりましたとおりに、一九九九年の十二月の末日、それまでの間はアメリカパナマ運河防衛につきまして主たる責任を負っておるということになってございます。
  15. 保利耕輔

    保利委員 アメリカパナマ運河をしっかり防衛している、そこを日本に入ってくる飼料穀物が必ず通ってくるというような状況でございます。パナマ運河の安全というものをわれわれも大いに考えざるを得ません。そうすることが日本畜産業振興していくことにもつながってくるということを理解したわけでございます。  時間がありませんので、あと一問だけお伺いをしたいと思います。  濃厚飼料の大部分輸入をされているということでございますけれども、国産の濃厚飼料として注目を浴びておるものにえさ米というのがあるわけでございます。畜産振興審議会飼料部会で、石川局長お話だと思いますが、最近の米の需給動向や今後の見通しを十分に勘案して、水田利用再編第三期対策との関連においてこのえさ米の問題を現在検討中であるというふうに述べられているのでありますが、この第三期対策との関連においてという意味はどういう意味か、お答えをいただきたいと思います。
  16. 角道謙一

    角道政府委員 私からかわりましてお答えを申し上げます。  御承知のように、現在水田利用再編対策は第二期に入っておりまして、五十九年度からいわゆる第三期対策に入ります。その際に、現在の水稲の転作面積を第二期は六十七万七千ヘクタールとしたわけでございますが、五十五年以来の三年の不作のために今年度から六十万ヘクタールに削減をした。そこで、第三期以降どういう転作面積にするか。その場合に、現在政府の米の在庫水準も相当減ってきておりますし、この備蓄を考えまして在庫をどの程度まで持っていくか。あるいは原材料用の米につきましても、いままで過剰米を充当しておりましたが、この過剰米も大体五十八年度中に処分をするということになってまいりますと、今後の第三期の転作面積をどのように考えるかという問題がございます。  私ども将来の転作面積を考えました場合には、やはり米の消費というものはこれからも減っていくということを考えますと、転作面積をさらに拡大をしていく。たとえば政府の六十五年見通しにおきましては、六十五年におきまして大体七十六万ヘクタール程度転作が必要であるというふうに考えておりますが、現実の転作を進める上におきましては、すでに湿田等におきましてはなかなか転作は困難である、また、転作の定着につきましてもいろいろ問題もあるというようなことも伺っておりますので、これらをひっくるめまして、水田の持っております生産力を生かす。また、先ほど来保利先生指摘のように、飼料穀物につきましてはわが畜産の非常に弱いアキレス腱のような問題もあるというようなことで、この水田生産力を生かすために、米を先ほど申し上げました原材料用米あるいは飼料用という方に使えないかということも考えまして、今後第三期対策の段階でこの他用途米原材料用えさ用、場合によりますとアルコール等も入るかと思いますが、こういう他用途米をひっくるめてどのように対処していくかということで第三期対策を考えているということで、恐らく畜産局長が第三期対策との関連においてというふうに答えたかと思っております。私ども現在省内に米需給均衡化対策のための検討委員会を設けておりまして、この中で、飼料用を含めた米の他用途利用というものにつきまして第三期対策の確立までに結論を出したいというように考えております。
  17. 保利耕輔

    保利委員 残念でございますが、時間がないので以下余り質問ができませんが、大臣にひとつ最後にお伺いいたしたいと思います。  昭和六十五年度までの食糧の消費見通しというものによりますと、たとえば小麦、野菜、卵、砂糖というものは大体横ばいだろう。しかし、果実でありますとか魚介類は一〇%くらい伸びるのじゃないか。あるいは牛乳乳製品油脂等は二〇から三〇%伸びるのじゃないか。そして、肉類は三〇%ぐらい伸びるのじゃないか。一方、米は二〇%ぐらい減るのじゃないか。こういうふうな見通しが出ているわけでございます。  そこで、肉の需要がふえていくということに絡みまして、酪農振興法というものの改正が今国会で農林省から準備をされているというふうに聞いております。大臣の所信表明の中では漁業の問題についてはかなり具体的にいろいろと述べられているようでございますけれども畜産については直接的には余りお触れになっていらっしゃらないようでございます。ただいまのえさをめぐる状況について私が御質問申し上げ、さらに肉の問題については自由化の問題あるいは輸入枠拡大等に対して反対の動きがあるという問題、あるいは日本型食生活を守っていかなければならないというようないろいろな要素がある。そういった要素をひっくるめて、畜産振興に対してどういうふうな御意見大臣としてお持ちになっていらっしゃるか、御所見をお述べいただければありがたいと思います。
  18. 金子岩三

    ○金子国務大臣 いろいろいま御意見を承っておりますと、大体よく実情を御承知になっておるようでございますが、日本の食糧政策は非常に複雑なんです。米を減らし過ぎて困るような事態が発生するおそれもある。いろいろ六十五年の日本需給数字をいま述べられておりましたが、これとて果たしてそのようにいくのかどうか、非常に問題があるんじゃないでしょうか。  そこで、畜産振興するにはいろいろ手だてはありますけれども、まず、飼料をほとんど九〇%外国に依存しておる、ここに大きな問題があるわけでございます。何か異常事態が発生した場合に、畜産振興事業、いわゆる畜産農家は一体どうなるだろうかというような心配もあるわけでございます。したがって、その経営を健全ならしむるために、やはり飼料自給率を高めなければならないということになりますが、これとて狭隘な耕地によって、それをいま九〇%輸入しておるものを、自給率をどのようにどれだけ高めていくかということも大変問題でございます。  いろいろ考えてみると大変むずかしい日本のこれからの食糧政策、慎重にひとつ取り組んで、努力してまいりたいと思います。
  19. 保利耕輔

    保利委員 どうもありがとうございました。終わらせていただきます。
  20. 山崎平八郎

  21. 島田琢郎

    島田委員 乳価について、保証価格について若干の質問をしたいと思います。  まず需給表についてでありますが、ことしの「生乳需給表」を見ますと、いままでとちょっと違った点が幾つか新たに盛り込まれております。  たとえば、私がこの農水で幾度か需給表作成に当たっての問題点を指摘をいたしました。特に輸入にかかわる乳製品、これが需給表から欠落をしている。これでは正しい国内需給というものの見通しを立てる上でも、あるいはそれを実施していく上でも大変片手落ちではないか、こういう指摘をいたしました。私が指摘をした点の全部が数量的に盛り込まれておるわけではありませんが、ことしの需給見通しの中では、昨年とやや同数量の百十六万九千トンというのを新たに輸入部分として盛り込んで需給表が立てられている。これは半歩前進といいますか、評価をしてもいいと思うのであります。願わくは、推定二百五十万トンを超えるであろうと言われる乳製品の生乳換算の輸入量というのが全部これに取り込まれて需給表が立てられていくということがより正確な需給表の立て方ではないかという点を、まず冒頭に指摘をしておきたいと思います。  それからさらに消費関係でありますが、総消費量のところを見てまいりますと、現在の市乳、飲用乳と加工乳とあるいはその他向け等のバランスをやや欠いているのではないかというふうな感じを持つのであります。たとえば全体の需給表を見てみますと、昨年よりもことしの伸び率、伸び率といいますか、増量分を少なく見ていて、四万九千トンしか見ておりません。しかも、その中で、飲用乳と加工乳のバランスということで申し上げましたが、飲用乳については十万トンほど消費が伸びるという予測を立てています。それから、加工乳については四万トン減るという見通しを立てています。私は、ここはちょっと問題だろうと思うのです。というのは、飲用乳は、先ほども指摘にあったわけですけれども、この一年有余にわたって非常に乱売あるいはダンピング、非常に市場の原理を損なうような、そういう状態がずっと続いていて、これから先もいまの状態ではなかなか解消できないのではないか、こんな感じを持っているのです。  ですから、私どもは従来主張してきましたのは、飲用向けと加工向けとは相互に非常に関連があって、加工乳のところをぐっとしぼりますと、それが飲用乳に流れ込んでいく。それから飲用乳のところを余りしぼり込みますと、それが今度加工の方に回ってくる。こういう関連性を持ちますから、このいわゆる計画の立て方というのは非常に市場を誘導し、あるいはまた、全体の見通しを立てていく上でも正常さを欠く場合がこの点にも非常に多くあるという指摘をしてまいりました。こういう飲用乳の方に十万トンもふやすという考え方は、私は乱売を促進してしまうという懸念を持っています。ですから、そういう点で言いますと、もう少しタイトに計画を持つべきではないのか、それがいま一番大事なときである、こういうふうに思うのです。  それから加工乳の方に四万トン減らしたということは、足りなければ輸入をしてくるということになります。現に足りなくてバターが輸入された。こういうことになりますから、輸入に道を開くということになってしまうのであります。  こういう点について、私は今度の需給表を見て大変懸念を深く持つのですが、この点はいかがですか。
  22. 石川弘

    石川(弘)政府委員 この需給表はあくまで一定の推算でございますけれども先生十万トンを飲用の増、それから五万トンを製品の減とお話しいただきましたが、多分前年度の数字と私どもが幅を出しております数字の中央値の差額をおっしゃったんだと思います。  私どもこの需給見通しにつきまして幅をつけましたのは、何しろ御承知のように、牛乳乳製品消費は天候その他いろいろなことで大きく変わりまして、一本の数字でやりました場合に、大変、何と申しますか、当てにくい性質を持っております。したがいまして、一種の上限下限のような数字を使いまして、その中へなるべく誘導しようということでございます。したがいまして、いま先生指摘のようなたとえば中央値に特に意味があるわけでございませんで、万が一その需要が堅調に推移すれば大きい数字、それから需要が弱目に推移しますれば下限値というような意味でつくっているわけでございます。  私ども、実は昨日の審議会でもこの需給表の見方についていろいろの委員各位の御質問があったわけでございますが、やはりなかなか当てにくいことであるということは各人お認めをいただいた上で、どちらかといいますと、乳製品等につきまして昨年までの大変大きな伸び率、特に一昨年まで大変大きな伸び率で需要が伸びたのは、価格が非常に下がったということによるものではないか。今回の改定におきまして価格を若干引き上げるという前提で組んでおりますので、これは総需要の見通しの話ではございませんが、たとえば政府の算定いたしました二百十五万トンの限度数量についても、過大ではないかというような御指摘もあったわけでございます。したがいまして、私ども、この上下限の中に極力入るようになれば生乳需給とすれば安定すると思っておりますので、これを加工用あるいは乳製品用に振り分ける振り分けの仕方として、何か修正をした方が適当だとは実は思っておりません。極力この両者の幅の中におさまるようになれば、生産に対しても順調に対応できると考えているわけでございます。
  23. 島田琢郎

    島田委員 昨年の需給表を見ますと、期首在庫は、一昨年と比べてみますと、五十六年は八十七万三千トンというのが期首在庫になっています。本年度、五十七年度は六十八万トン。見込みで言いますと六十四万八千トン。しかし、ことしは五十万トン。これはもっと減るかもしれない、こういう性質のものであります。しかも、いま誘導するということを言いましたが、私もその考え方に立っているから、政策あるいは行政が誘導していくという場合に、この数字が市場に大変微妙に、あるいは大きく影響を及ぼす性質のものですから、したがって、需給表というのは大変大事なんですね。それを最初から加工の方を四万トンも減らしたというその理由は、私はどうも理解ができない。  というのは、一ころのようにどんどん在庫がふえていくという状況ではいまないですね。一昨年は民間在庫を取り崩しました。昨年は事業団在庫を取り崩した。ことしは、事業団にまだ脱粉は若干ありますけれども、しかし、ややタイトであります。そうすると、ことしは取り崩すというところがありません。そうしますと、いまのようにつくれば売れる、売れば一定程度の値段で市場が維持できる、こういうよい条件というものはいままで余りなかったわけでありますから、こんないい条件のときにこそ加工乳をしっかり確保するというのが、これは生産者の願いばかりじゃなくて、一般の加工の段階の人たちも、あるいは消費者の皆さんもそういう期待があると僕は思うのです。その期待にこたえていくというのも需給表のもう一つ持っている役割りじゃないですか。この需給表を見ながら、ことしはどうなるかというのをみんな見ていますから、それで加工乳の方が今度は減った、しかも飲用の方に十万トン回っていく、これじゃまただぶつくのではないか。それでなくたって、ダンピングであります。乱売です。一向に直らない。この間局長指摘されておりましたけれども、常識で考えられないような小売乳価がまかり通っている。これはいま重大なときにあると思うのです。  この飲用乳問題をきちっと整理しないと、日本酪農乳業も、あるいは消費者も含めて大変混乱する。こういうことでありますから、この加工原料乳価格決定に当たってはいつもと違った考え方をここに盛り込んでこなければならない。というのは、飲用乳のところもきちっと見張りながら、そういう中で需給表をまずしっかりつくって、それによって誘導を図っていく、そしてまたそういう効果を期待する、これが行政の姿勢だと私は思うのです。そういう点で、私は疑問なしとしません。もう一遍お答えをいただきたい。
  24. 石川弘

    石川(弘)政府委員 飲用牛乳の伸びをどう見るかということは、これは大変大事なことでございまして、この表にもございますように、五十七年度見込みで二・六飲用が伸びるという見込みがございますのに対して、私どもは、これを低く見積もります場合に二・〇、それから若干高く見積もりましても二・七という数字でございまして、どちらかというと飲用の伸び率は抑え目に積算しているわけでございます。先生が御指摘の、乳製品は三角だとおっしゃいますのは、どちらかといいますとその小さく見積もったときのマイナス二・七と多く見積もりました場合のプラスの〇・五、中央値にとりますと三角だ、こう御指摘なんだろうと思いますが、私ども、この乳製品については、ここ数年間ずっとこの量を抑えてきたプロセスの中で初めてかなり思い切った量の増、少なくとも限度数量の増をとってくるわけでございまして、この場合に、比較的楽観的にまだまだふえると見るのか、それとも去年あたりに相当量がふえてきた——先ほどちょっと申しましたが、審議会委員の方々の中にも、昨年の状態を通常と思ってあの程度どんどんいくのだと思うことは大変危険だという、ある意味ではメーカーと申しますか、現に委員をなさっている方の御意見等もございまして、最終的には限度数量ということに関しまして大方の先生方がこういうことではないか、意見とすればもっと多くていいじゃないかという御意見と、もっと小さくていいじゃないかという御意見がありましたけれども、大方の御意見はこういうところではなかろうかなということの御意見をいただいているわけでございます。
  25. 島田琢郎

    島田委員 総消費量のところは例年にない過小見通しである。せっかく環境がよくなった、いままでとは違って何とかほの明るい部分が見えてきた、こういうときに、生産者にもいままで生産調整を強いてきたわけでありますから、この際、その明るさをもう少し大きくしてやる、そういう行政の親切があってしかるべきだという立場から、今度の需給表の見通しはきわめて親切さに欠けるのではないか、私はこういうふうに指摘をしておきたいわけであります。  ところで、限度数量お話がございました。限度数量を二十二万トンふやしまして二百十五万トン。昨年からの実績を見ますと、総体の加工向け認定量からいいますともう少しふやしてもいいのではないか、こういう感じがいたします。  それは、一つには基準取引価格との関連になるわけであります。今度基準取引価格を手直しされましたし、その基本になりますのが安定指標価格の値上げであります。これはかなり大幅に値上げをいたしました。この部分消費者が負担する部分ですね。それを差し引きますと、メーカーの負担はこれまたやや過小ではないか、こういう感じがいたします。その分を限度数量をさらに上乗せをする、あるいはまた保証乳価の引き上げを図る、こういう点でもっと配慮があっていいのではないかと考えます。  特に生産者の立場で言いますと、昨年政府が補給いたしました補給金の予算は四百七十四億であります。ことし見ますと、今度補給金の単価が二十一円七十一銭に下がりましたが、二百十五万トンに乳量をふやしたことによって、総体の予算というのは一般会計で持っております予算とやや同額である、こういう数字になっているようであります。しかし、実際に去年払われたのは四百七十四億でありますから、四百六十七億といえば七億ほど予算が削られたということになりますね。消費者にも持たせ、メーカーにも負担させ、九十九円六十八銭の生産者の要求乳価も大幅に削り、政府だけ七億もうかったような話というのはおかしいのじゃないですか。 昨年四百七十四億という予算を持って執行されたのでありますから、当然これはこぎらないで全額これに充ててほしい、こういう気持ちがありますが、この点はいかがですか。
  26. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生よく御承知の仕組みでございますので、私から特に申し上げる必要はないと思いますが、要は各価格、安定指標価格、基準取引価格、それから生産者に対する保証価格、そういうものは別々の原理でつくられまして、それともう一つ、その別々でつくられました原理で生まれます差額の補給金の単価に、御承知のような限度数量を掛けまして、そこで補給金総額が出るわけでございます。初めに金がございましてその金をどう分けようかという論理ではございませんで、別々につくりました価格差で出てくる補給金単価に限度数量を掛けまして、それを予算で何とかこなせるかどうか。御承知のようにことしの予算は約四百六十五億、詳しく申しますと四百六十四億九千万の予算措置がされているわけでございますが、その予算措置に事業団が持っておりますいままでのこのための資金を若干使いまして、予算額の四百六十五億を上回ります約四百六十七億をこれに充てようとしているわけでございます。  したがいまして、前年どういう金を使った、それと同じ金を使うために価格をどうするとか限度数量をどうするという論議は理屈の上ではあり得ぬわけでございますので、私どもとしても、現に予算で用意しました額を若干上回る額は現在の運用の中でできるということでこういう価格にしたわけでございます。
  27. 島田琢郎

    島田委員 私は、予算編成上の政府のそうした基本的な考え方を理解しないで言っているんじゃありませんよ。ただ、素朴な生産者の側の考え方として考えてみれば、いまゼロシーリングなんて厳しい予算の中でせっかくある予算です。総体予算の九八%分が一般会計、あとの分は事業団、こういう仕組みも一つありますね。ですから、素朴な皆さんの気持ちから言えば、何も減らさなくたっていいじゃないですか。みんな使ってくださいよ。使ってもらいたいし、それはあえて言えば既得権みたいな感じがありますね。編成上の、あるいは予算の仕組みとか、個別の持っている一つの性格の区分なんという、そういう理屈はわれわれにはわからないですよ。また、必要もないんです。あなた方の方は必要かもしれぬけれども。そこが予算の要求であり、乳価の闘いであり、いろんな形になるわけですから、この点を理解しなさいなんて言ったって、それは私は理解できません、こうなりますね。これは十分使って、やはり目いっぱい——いままでとにかく生産者は栄養失調みたいになっているのです、乳価も抑えられ、限度数量も据え置かれて。ですから、この際、腹いっぱい食わしてくれとは言わぬが、やや満腹感を与えるような、そういうミニマムは昨年の四百七十四億という、その原資に期待をかけるというのは当然じゃないでしょうか。ですから、そういう意味で言えば、たとえば価格を上げるとすれば三十五、六銭まで上げられますよ。乳量で言えば三万五千トンくらい、七億相当分でふやすことができる。そのアローアンスを、予算のたてまえ上のあれからいってそれは違うものでありますからと言えば、取り上げられたという感じになるわけであります。この際、目いっぱい出してください。大臣、どうですか。私の言っているのは理屈に合わないですか。これは素朴な酪農民の要求なんです。
  28. 石川弘

    石川(弘)政府委員 予算の仕組みをむしろよく御存じでそういう御意見がいままであったわけでございます。何か一般会計繰り入れが九八%でその他の財源が向こうにあるんだというようなことをいままでも説明されたことがございますけれども、予算書をごらんいただきますれば、四百六十五億という金が一般会計についているわけでございます。私ども畜産局の予算もことしのマイナスシーリングの中でいろんな削減を受けたわけでございますが、私どもはこの不足払いの原資につきましては何としても前年同額を確保するということで、一銭も削らずに前年同額をやったわけでございますが、〇・九八というような理屈は入ってないわけでございます。要するに、われわれとすれば、一般会計から受けられます金を使って、それにこれはあくまでも予算でございますから、一銭一厘違わないように四百六十五に計算してみるという方が無理でございますから、現実に私どもはそれを上回る資金でございますが、現在の畜産振興事業団の大きなこの補給金の中では上回っても可能であるということでやったわけでございます。  ですから、かつて幾ら使ったかということがいままさしくおっしゃったように既得権ということでございますと、逆に言って、来年以降のわれわれの予算の組み方は大変困難になるわけでございます。私の畜産局にはいろんな酪農以外の施策も必要なわけでございますが、私は、この補給金は削減対象、いわゆる一般的な補助金削減対象からはぜひ外したいということで前年同額をやったわけでございまして、これは、いままでのこの種の資金の使い方をよく御存じの方が何かほかにまだあるんだというふうにお考えになる方が、今後の財政の組み方からすればまことにむずかしくなってくる、そういうことでございます。私は、この四百六十五という数字を幾ら上回ったらいいんだとかということではなくて、極力この種の大きさの金に近いところで運用ができれば、それがいいのではないか。それがあるから幾らにできるというのは、この制度からいいますと、いわば答えが先にあって何か答案を書くようになるのではないかと思います。
  29. 島田琢郎

    島田委員 私は財政論をやるつもりはありません。酪農家の素朴な要求をぜひ政府は考えてもらいたい、こういう切なる願いで言っているのであります。未来永劫既得権を固執してなんて、そんなことは考えておりません。ただ、いままで余り抑えられてきましたから、手をまるっきりこれだけ上げさしてくれとは言いません、ちょっとこれくらいの気持ちにさせてほしいということを言っているのであります。  特に先ほど飼料お話がありましたけれども、五十三年から五十七年の十二月までの飼料の値上がりというのは、最近上がってないと言うけれども、一二一・六%も上がっているのです。ところが、保証乳価はどうかというと、わずか一・四%しか上がってないのです。しかも、一ころのように法外な価格要求をいたしているわけでありません。九十九円六十八銭、ものすごく内輪です。それで経営が成り立つなんという農家は何%もいない。それでも、こういう御時世だからがまんして、われわれも耐えるところを耐えて、要求は内輪にしなきゃならぬ。限度数量も本当は三十万トンくらい伸ばしてもらいたいけれども、しかし、もう二、三万トン上に乗せてくれ。そのくらいのことはいまの残っている予算の中でできるんじゃないですか。ことしは目いっぱいの予算の中でひとつ政府の温かさを示してもらいたい、こういう気持ちで申し上げているのでありますが、財政論の方に流れてきわめて残念であります。財政論はまた後ほど時を置いてやりたい、こう思っています。  ところで、牛乳が大変上質になった、これはお認めになりますね。たとえば脂肪率も、この十年間を見ますと大変上がってまいりました。特に脱脂粉乳をつくります無脂固形分というものは、これもまた大変な生産者の努力によって向上してまいりました。これは加工する段階で大変量が少なくて済む、つまりコストが安くつくということになるわけです。  脂肪の場合は、いまの取引の中で〇・一当たり一円という、これも私はそろそろ改定しなければいけないんじゃないか、こう考えていますが、いまのところ一円というものが支払われていますから、これは全く脂肪率の向上部分が無視されているということではない。しかし、いま脱脂粉乳をつくる場合にも無脂固形分というものが大変重要視されてきて、すでに取引の中では無脂固形分というものが意識されてくるような段階になりました。ただし、残念ながらまだ無脂固形分は、何%を基準にして、それを〇・一上回るごとに何ぼ出すといったような、バターみたいなそういう取引の形態にはなっておりません。しかし、これだってそろそろ改定といいますか、一つの方向をきちっと出していかなくちゃならないときに来ているのではないか。これは課題としてお預けをしたいのでありますが、この問題に取り組む御意見があるかどうかということが一つです。  それから、良質の牛乳になったということによって製造に必要な乳量というのは変わってこなくちゃいけませんね、いま申し上げましたように。ところが、バターについては制度発足以来一キログラムのバターの製造に必要な乳量は十三・四九キロ、今日まで変わっておりません。脂肪率が高まってきたのに、使用する場合の乳量が変わっていない。脱脂粉乳は四十八年に改定がなされましたが、百六十九・一二キロが百六十四・二五キロと、このときに変わっただけで、今日まで同じ量になっているわけであります。これもきわめて不合理だと私は思います。この点も含めて改定すべきだ、こういうふうに思うのですが、そうした点について政府側として検討しようという姿勢があるかどうか、この際伺い、あるとすれば早急にそういう問題を解決するためにひとつ力を入れてもらいたい、こういうことで課題を政府側に預けたい、こう思うのですが、いかがですか。
  30. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の無脂固形分につきましては、よく御承知のように、四十八年度以降、基準取引価格の算定に当たりまして八・三六%という数字を採用いたしておりますが、牛乳全体がそういう水準に達しましたのは、これは乳業技術協会の調査でございますが、五十四年にようやくその水準に達したわけでございます。その後若干向上はしてきていると思っております。  これをどうするかということでございますが、先ほど乳脂肪でおっしゃいましたように、これをある程度算定して、ある程度高くしたら高いだけのものを別途取引上の要件にしようという、これは無脂固形分を取引の一つのメルクマールにしようという動きが北海道を中心にあるということは事実でございます。そういう方向なのか、それともそもそも基準とします八・三六を若干動かす方がいいのか、このあたりは取引の実態等も調べてよく調査をする必要があろうかと思っております。現に北海道ではそういう動きがあることは存じておりますけれども、この場合北海道だけというわけにはまいりませんので、全体としてどちらに動くということは、生産の組織なりあるいはメーカーともよく相談をする必要があろうかと思っております。
  31. 島田琢郎

    島田委員 時間が来ましたので答弁は要りませんが、一つだけ私の考えていることをお話し申し上げて強い行政指導をお願いしたい。  市乳の乱れは目に余る、こういう状況の中で、近ごろは牛乳と同じ棚に並べられて、大豆でつくられた豆乳が出回っております。私はここで一つ問題だと思うのは、豆乳製造合戦といいますか、販売合戦に従来の大メーカーと言われるものまで一緒になってやっておる。まるで大学生が幼稚園の子供と一緒に遊戯をやっているような、なりふり構わず何でもやればいい、こういう姿勢は市乳を一層混乱に陥れるだけではなくて、命取りになりかねません。プライドも何もかなぐり捨てたこういうやり方がまかり通るような、そういう状況を行政は許しておいてよいのでしょうか。この点について強い行政指導を望みたい。  以上申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  32. 山崎平八郎

    山崎委員長 小川国彦君。
  33. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、最初に鶏卵問題についてお伺いをしたいと思います。  実は卵の価格というものが非常に低迷をしている。先ほど来質疑にも出ておりますように、アメリカからのえさ供給事情が今後いろいろな多難な事態が予想される、そういうような中で、卵の生産価格という面でのいろいろな経費増というものが予想されるわけですが、一方、市場における卵というのは、単価が非常に安いために、たとえばスーパーなどでも柱の陰に卵が置かれている。なぜかというと、卵は一個当たり、ともかくキロ当たりでも値段が安いですから、商店やスーパーでも取り扱っても利益にならない。ですから、利益にならないものは余りお客さんの目につくところに置く必要はないというので、販売面でも卵というものが日陰に置かれている。  そういう状況にありますときに、やみ増羽の問題が全国的に起こりつつある。たとえば岩手の方で、あるいは千葉の方で、最近また商社を背景としたやみ増羽が進みつつある。そういうことは全国の養鶏生産農家にとって大変な脅威になっているわけです。ところが、それに対する農水省の指導というものが、どうも靴の上から足をかいているような感じがありまして、もう一つびしっとした行政指導が組めないものか、こういう声が高まっているわけです。  特に最近千葉県などでは、イセグループというのが千葉県の下総町に五十ヘクタール近い用地を確保して大規模な養鶏生産に入ろうとしている。あるいは佐原市で十ヘクタールの用地を取得して、これは名前はまだ出してないようでありますが、やはりこのイセグループという商社グループの養鶏商社が生産設備をつくろう、こういう計画を進めているということでございます。そこで、こうした商社のやみ増羽に対する農水省の毅然たる行政指導の態度というものをこの際明確にしておいていただく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけです。
  34. 石川弘

    石川(弘)政府委員 養鶏につきましては、御承知のように各経営の規模もかなり大きくなりまして、自主的に生産活動をやっていただくわけでございますけれども、いま御指摘のようにみんなである程度の生産の大きさを決めて、それによって極力価格安定をするという、いわば羽数の登録の制度をやっておりますが、残念ながら二、三——二、三と申しますか、これは経営体数もわかっておりますが、そういうやみ増羽というのが行われたわけでございます。したがいまして、これを一度正規の数に入れるために、ある程度実情を認めた上で、その飼養羽数を抑えて、これからはそういうことがないようにということで、国、県それから養鶏団体一緒になりましてやったわけでございます。  そういうことで効果が上がりまして、ある程度値段が上昇してまいりますと、こういう値段であればまたよけいつくってもいいのではないかというようなことで、御指摘のような、いわばやみ増羽と言われますものがほとんど全県的に出てまいっておりまして、そういうことも一つのきっかけとなりまして、今年のお正月以来、御承知のような二百円というような卵価が出現いたしましたが、私ども、その以前の時点で、こういうような増羽数が多くなるとまた不幸な事件が起こるということで、養鶏者はもちろんのこと、ひなの業者の方、それからえさの業者の方々にも、養鶏に関しては需要がもうほぼ一巡しているからこれ以上の増羽がないようにという指導をいたしました。幸いにいたしまして、二月の終わりごろから卵価は上昇しまして三百円を超えまして、現在二百九十円ぐらいの相場まで来ておりますけれども、やはりそういうものが完全に一掃されておりませんので、中央におきますそういう調整の会議はもちろん、私どもも出先の農政局を通じまして各県にそういうやみ増羽につきまして期日を定めて減羽をするようにという指導を行わせております。  それから、御承知のように、このようなやみ増羽をしました者に対しては卵価安定基金とかえさの安定基金には加入をさせない、行政指導としてはかなり強いことも含めてやるつもりでございます。
  35. 小川国彦

    ○小川(国)委員 具体的に名前を挙げさせていただきますが、イセグループというものの実態、これは五十三年ごろにもたしかやみ増羽問題があり、そしてまた本年度に入ってそういうような動きをしているわけでございますが、この会社の態様、やみ増羽の実態、こうしたものについて、農水省はどういうように実態を把握されておりますか。
  36. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、五十三年当時、イセグループの宮城県下の農場とそれから茨城の小川町、この二カ所でやっておりましたものが、宮崎では約六十七万羽、それから茨城では十五万羽というやみ増羽がございまして、これを指導しました結果、宮崎の方は無断増羽しましたものは現在完全に解消されておりますが、茨城のものはその十五万羽のうちまだ五万羽が増羽をされておるということで、十万羽は減っておるわけでございますが、これをさらに増羽がないように指導中でございます。
  37. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いまの答弁で、最初は、局長、宮城県と言われて、それからまた宮崎県と言われているのですが、どちらが正解でございますか。
  38. 石川弘

    石川(弘)政府委員 宮城県でございます。
  39. 小川国彦

    ○小川(国)委員 イセグループの全国的な生産状況、それから養鶏場の配置状況、こういうものの実態についてはいかがでございますか。
  40. 石川弘

    石川(弘)政府委員 イセグループと呼ばれますものは、富山県に本社を持ちますイセ株式会社というのが親会社でございまして、そこから幾つかの子会社、イセファームとかイセ食品とかイセヒヨコとか、いろいろな子会社を持っております。海外にも子会社を持っておりますが、現在、全体で約三百三十万羽の養鶏事業体でございます。
  41. 小川国彦

    ○小川(国)委員 ここのグループは、卵価安定基金とか飼料安定基金とか、こういうものを使っておりますか。
  42. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いずれにも入っておりません。
  43. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、農水省としてはなかなか法的な規制はむずかしい。それからもう一つ、この基金にも入ってないということになると、現実に手をこまねいているしかないという状況に追い込まれると思うのですが、これに対して農水省が行政指導として考えるとしたならば、どういう手だてが考えられるかですね。
  44. 石川弘

    石川(弘)政府委員 基金には加入をしておりませんが、われわれといたしましては、業者として呼びまして、こういう全体の生産調整を守るようにという行政指導はいたしておりまして、担当者が会いましてそういう自覚を促すことをやっております。
  45. 小川国彦

    ○小川(国)委員 本年度になって起こりつつあるこの千葉県でのやみ増羽状況、こういうことについても調査をし対応する、対策を立てる、こういうお考えはいかがでございますか。
  46. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありました件につきましては、関係いたします県から聴取をしたことを申し上げますと、イセファーム株式会社が、茨城県内の養鶏場の周辺が宅地化されるということで六十一年までに移転せざるを得ないということで、関連の食品工場をも含めまして移転計画を、現在千葉県と茨城県境の地域を物色中ということでございます。その中で、千葉県の香取郡の下総町が過疎対策ということもあって誘致の意向を示していると聞いております。  養鶏場の移転につきましては、鶏卵の計画生産のルールに従って行います限りはわれわれとしては認めておるわけでございますが、用地の取得とか公害防止とか、そういう問題もございますので、そういう規則を遵守した上で、いま言いました計画生産に従って行うようにという指導が行われておりますが、こういうルールどおりに行ってくれるのでございますれば、両県とも問題がないということを言っているわけでございます。
  47. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私が調査した過程では、佐原市の方は明確な申請書が出ているのですが、下総町当局はいまの局長の答弁と食い違っておりまして、下総町の産業課長に伺った限りでは、誘致という意向はまだ明確にはなっていない。ただ、イセグループが不動産業者の案内で来て、どこか用地はないかということで一、二、候補地についての物色のような話はあった。しかし、用地買収はまだ全く行われていない。それから、いまおっしゃった公害問題とか周辺への影響、それから養鶏団体からの要望、そういうことも踏まえて町当局としてはこれからこの問題の対処を考えたいということを言っているわけであります。  ですから、もう少し農水省の方もそういう実態把握をしっかりされて、そして農水省の行政権限の中で指導監督できるものについては、計画生産の国の方針に従ってそうしたものがきちっと対応していくように、そういう指導方針が望ましいと思うわけでありますが、いかがでございますか。
  48. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま私お答えをいたしましたのは千葉県を通じて聞いた事実でございますが、さらに深く事情を確かめてみようと思います。  それから、計画生産を守るというようなことにつきましては、県だけではなくて、大きな会社でもございますので、国からも直接要請をし、そういう確約のもとに行動できるようにさせたいと思います。
  49. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、畜産局の予算というものは、中央競馬会の剰余金といいますか、国庫納付金といいますか、そういうものがふえてまいりますればそれだけ畜産局の予算もふえる。先ほど来問題になっておりますことしの畜産価格の問題は、島田議員から切々訴えられたように、巨額の負債を抱えた農家にとってみれば、ことしの価格決定に対しては全く非常な不満があるということが率直に述べられております。われわれも、これでは酪農あるいは畜産生産農民の期待に本当に農水省はこたえたのかというふうに思うわけですが、農水大臣として、ことしの価格についてこれで畜産農民の期待にこたえられたのかどうか、その辺、本心ではどういうふうに考えておりますか。
  50. 金子岩三

    ○金子国務大臣 畜産物価格については、いろいろ省内でも慎重に検討を続けましてあのような結論を出したわけでございます。
  51. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、まだ検討中なんですか。
  52. 金子岩三

    ○金子国務大臣 検討中です。
  53. 小川国彦

    ○小川(国)委員 じゃ、いつ結論が出されるということになるのですか。
  54. 石川弘

    石川(弘)政府委員 政府案を出しまして、答申を、肉につきましてはおとといでございますが、きのう決められまして、きょう実は周辺の関連対策等を議論いたしまして、私どもとしては本日中に決定をし、明日告示をする予定でございます。
  55. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、正式にはいまの局長の答弁のようになるのですが、もうすでに各紙に既定事実としての議論がなされているわけですよ。局長の答弁でもそうなっているわけですが、その出された保証価格なり畜産価格について大臣としてはどう考えておるのか、こういうことなんです。農民の期待にこたえられた価格だというふうに考えられておるのかどうかということです。
  56. 金子岩三

    ○金子国務大臣 農家ではいろいろな価格引き上げの要望がありまして、私の方もずいぶん陳情を受けました。いろいろ農産物全体の価格のこの一年の動きを検討しまして、畜産農家に対してはまことに相済まないがというような気持ちで据え置きの方針を一応出したわけでございます。
  57. 小川国彦

    ○小川(国)委員 大臣、相済まないかという、言葉ではそういうことになるのだろうと思うのですが、しかし、現実の巨額な負債を抱えた農家にとってみれば、海外からの輸入も現実に行われている、それからかなりな需要の伸びもある、そういうような状況の中でこれはやはり思い切って前向きに、この際、価格決定の中で少しでも負債解消ができる、生活安定ができるというような見通しがこの中から生まれてくる、そういう展望を切り開くという考え方かないと、畜産農家の後継者、酪農家の後継者というのは今後育ってこないだろうというふうに思うのですよ。だから、やはりそういう将来展望というものを持った農林省としての腹構えが必要なんじゃないかと思うのですが、そういう積極的なお考えというのは持てないですか。
  58. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御承知のとおり、牛肉とオレンジの問題が大変問題になっておりますように、こういうことを考えますと、やはりわが国畜産農家を健全に育てていきまして、コストダウンもいろいろな面で政策を取り入れて将来考えていきまして、せめてEC、ヨーロッパ並みのコストまで生産性を高めていくというようなあらゆる政策を打ち出していかなければならない。外圧が非常に強いことも、畜産物価格を上げるか据え置かざるを得ないか、いろいろな考量の中に、検討する中にそのアメリカ輸入圧迫も入っておるわけですね。  したがって、生産者の立場をよく理解しておりますけれども、ことしのような厳しいときにはやはり価格はいじらない方が畜産農家のためにも将来を考えると得策ではなかろうか、こういうような考え方に私は立っておるわけでございます。
  59. 小川国彦

    ○小川(国)委員 おかしいと思うのですね。私ども指摘しているのは、国内的な畜産物なりあるいは乳製品なりあるいは飲料としての牛乳なり、そういうものの消費動向というものをにらんで価格決定というものが第一に決められるべき問題だと思うのですよ。大臣が言う外圧というのは、それは牛肉にしてもオレンジにしても大臣みずから反対し、この問題については、輸入拡大も許さない、制限撤廃などはとてもできない、こういう強い姿勢で臨んでいるわけでしょう。その大臣が外圧のゆえに農林省は据え置きを決めたんだと言うことは、これはやはり納得されないと思うのですよ。今度の決定というのは、外圧の要因というものがそんなに大きな要因になっているのですか。
  60. 金子岩三

    ○金子国務大臣 それは考え方なんですけれども生産者の側が生産意欲を高揚さすとか、あるいは経済面でも当然畜産経営が将来とも安定して伸びるというような、いちずにそれを考えて、ほかの、いま問題となって大変騒がれておるこの輸入畜産物について、国民の世論、支持は、今度の場合一体どのような取り扱いをした方が国内畜産業者のために将来とも利益になるかというような、そういう考量を私はめぐらして、ことしのようなときは、大変気の毒だけれども、やはりじっと据え置いて、まず外国の圧力をかわすために国民の支持も受けたい、こういう考え方も入っておるということをひとつ御理解いただきたいと思います。
  61. 小川国彦

    ○小川(国)委員 畜産局長はどのようにお考えですか。
  62. 石川弘

    石川(弘)政府委員 まず肉類でございますが、御承知のように、算定をいたしました結果、これは昨年と全く同様な算定方式をいたしました結果、牛肉につきましては中心価格が二・〇上がるという数字が出ました。それから去勢乳雄につきましては、中心価格は全く変わらない数字でございます。それから豚肉につきましては、中心価格がマイナス〇・二という数字が出ました。  したがいまして、価格安定帯という考え方をしました場合に、乳雄と豚につきましては数字が全く変わらぬ情勢でございますし、特に変動させる必要はない。それから、和牛をどう考えるかということでございましたが、和牛がプラス二・〇に出たのを、それじゃ二%価格を上げるかどうかという判断があるわけでございます。これにつきましては、まずその二%上がりました原因を見ますときに、どちらかというと、たとえば飼育期間が長くなったとかそういうことから出てきます経済効率がむしろマイナスと申しますか、肥育期間の長期化とかそういうことから出てまいりました数字がこの二%押し上げにかなり効いていたということ、それからいま大臣もおっしゃいましたように、まさしくいまこの肉の問題というのが国民的関心事の中で、安定帯、要するに上下の幅の中で価格を安定させるという制度でございますから、この二%を動かすことの当否という場合には、大臣からのお話もございましたように、牛肉をめぐります諸般の事情を考えたときに、これをあえて二%上げるという必要はなかろうということが政府の原案でございます。  これにつきましては、審議会でもいろいろ御議論がございまして、これは若干上げろというお話もあると同時に、この際むしろ下げろ、蛮勇をふるっても下げろという御意見もございましたが、政府の諮問案は妥当であるという結論をいただいたわけでございます。  その次に、酪農でございますが、酪農につきましては御承知のように従来と全く同じような計算の手法でやりました結果、保証価格につきましては〇・七八%、七十銭の引き上げという数字が出てまいりました。限度数量につきましては、需給の実態その他を勘案しまして百九十三万トンから二百十五万トンへふやすという数字が出てまいりました。それからそういう計算の基礎としまして、安定指標価格につきましては、いろいろな品目によって違いますけれども、三%台の上げ、それから基準取引価格につきましてはさらにそれを若干上回る上げという数字が出たわけでございます。  実は私どももそういう試算を見まして、そういう数字がどのように農家経済に及ぶかということを試算してみたわけでございますが、加工原料乳の不足払いというのは大体八割が北海道に参るわけでございます。この基準価格の上げとそれから限度数量の引き上げは、北海道のこの不足払いをもらっております農家、一農家に分けてみますと、売り上げで百万円をかなり超える金額でございます。酪農の所得率は三二%と言いますけれども、今度のような場合は何か新しい投資をして所得が上がるということではございませんから、粗っぽく言いますれば三二%を相当上回る所得になることは確実でございまして、そう考えてみますと、今度の限度数量の引き上げとかそれから単価の引き上げといいますものは、酪農家にとってはかなり大きな水準のものではなかろうか。これは何と申しましても、ここ数年間価格も据え置き、また限度数量もほとんどふやせなかった、こういう事態の中で努力されました。計画生産に従って環境をよくしたということでございますので、私は、今回の決定につきましては、酪農家の方々からは相当の評価があるのではなかろうかと思っております。
  63. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは政府側の自画自賛だと思うわけですが、皆さんの御努力は認めるにしましても、しかし、畜産価格の問題にしましても、外国との関係の事情ということは、日本の農業の自立を達成していく、こういう考え方に立てば、そういう諸事情に左右されずに、たとえばECの農業政策のように国内農産物価格を安定し、引き上げていく、そういう基本方針に立っていけば、そういう諸事情に左右されるというあり方は考慮の枠外じゃないか、私はこういうふうに思うのですが、その点はまたこれからの同僚議員の質疑にゆだねたいと思います。  最後一つ、先般来中央競馬会に対する農水省の指導監督、競走馬輸入事件で起こった不祥事があった。そういうことのために本年の約十五億円と見込まれる競走馬の輸入予算がストップをしている、いや、これから組まれるというわけでありますが、その前段の問題として、先般、三月五日の予算分科会で、金子国務大臣は事実関係を十分調査させたい、こういう答弁をなさっているわけですが、この問題について早期に農水省としての調査結論を出す、そして、馬の方の畜産生産農家にとって要望されている競走馬の輸入というものを再開するということは農水省の責任の問題だというふうに思うわけですね。それだけに、昨年の不祥事の調査というものを早期に完了する必要がある、こういうふうに考えておりますが、このめどは農水省としてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  64. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありましたようなことでございましたので、私どもも極力早期に事実が解明されて、それから先生も御指摘のように今後そういう間違いのない姿で競走馬を生産者のために入れるということもしたいと思っております。  この前、たしか競馬会の理事長から調査中の事情は御説明したと思いますが、私どももこれは時間を余りかけ過ぎるというわけにまいりませんので、調査を急がせておりまして、その調査結果がわかりました段階で所要の措置をとりながら誤解のない形で再開ができるようにというつもりで努力をするつもりでございます。
  65. 小川国彦

    ○小川(国)委員 早期の結論を期待いたしまして、私の時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  66. 山崎平八郎

    山崎委員長 武田一夫君。
  67. 武田一夫

    ○武田委員 三点お尋ねをいたします。  私たちは、去る三月の二十五日、大臣畜産酪農経営の安定的な今後の推進を目指しまして、価格問題等を含めて八項目の申し入れを行いまして、厳しい情勢の中で十分救済措置を講ずるようにお願いをしてきたわけでありますが、いまるる質疑の過程の中で非常に厳しい対応を迫ってきたわけでございます。私は宮城県を中心とした東北の地方を眺めたときに、北海道も非常に大変であるが、われわれの周辺にもかなり大変な畜産酪農家が出てまいりまして、多額の借財を抱えているケースが出てまいりました。特に過去三年にわたる冷害というのがそれに拍車をかけている。総合的に苦労しているわけであります。こういうときを考えますと、こうした価格の据え置きやらわずか〇・七八%というスズメの涙以下のような状況では、こうした方々への対応としては非常に残念だと私は思います。  ある酪農家の中心になっている方が言っていました。日本の技術は非常に誇りを持てるぐらいりっぱなものである、またわれわれも一生懸命努力している、ですからこの借金がなければEC並みの対応というものにはわれわれは自信を持って取り組めることができるんだということを言っているわけでありますから、こうした彼らのそういう決意とか努力というものを相当評価しながら対応していかないと、やはり生産意欲等も非常に弱まってくるんじゃないか。特に後継者の皆さん方はそうしたことに敏感でございます。  そういう意味で、私は、時間もございませんので、こうした多額の負債を抱えている方々への対応というもの、特に畜産金融対策の強化というものを一層この際明確にしてほしい、こういうふうに思うわけでありますが、今後の取り組みを具体的にどういうふうになさるか、これを簡潔にひとつ御答弁をいただきたい、こういうふうに思います。
  68. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の、酪農ないし肉用牛生産といった方々の負債問題と申しますか、金融問題ということでございますが、まず負債問題から申し上げますと、何と申しましても、酪農につきましては、計画生産ということに入りました段階から、せっかく投資はいたしましたものの生産が順調に拡大できないということで固定化負債が増高をいたしました。したがいまして、私ども負債整理の必要性を痛感をいたしておりまして、五十六年度に酪農につきまして負債整理の制度つくりまして、思い切った長期低利資金三百億を投入いたしまして、五十六年、五十七年の間実施をしたわけでございます。これは、単に金利を借りかえるというだけではございませんで、生産、経営、家計といったところまでいろいろと関係者に指導をお願いをいたしまして、本当に経営が立ち直れるようにということを二年続けてやったわけでございますが、予定の三百億円は五十七年度をもって使い切ったわけでございます。われわれの調査によりましても、やはりもう少し資金を投入すればこの際立ち直れる方が十分あるんではないか。今回のたとえば限度数量拡大等によって経営も拡大をできる素地ができたわけでございますので、数日中にこの負債整理の総枠なり考え方なりを決めまして、関係者に実行してもらうつもりでございます。  もう一つ、肉用牛とか養豚経営、ブロイラー経営というような肉畜問題につきましては、ここ数年の間に素畜が大変高くて、それにえさが高い、しかし仕上がった製品が安いというような事情があったりしまして、肉用牛生産農家、養豚農家等で、これは酪農とはちょっと違った形でございますが、負債が累増したということがございまして、昨年の三月の価格決定の際に総枠一千億という負債整理資金を同じく設定をしたわけでございます。これも酪農と同じようにかなり厳しく内容を精査しながらやりました結果、総額六百五十億程度が流されておりまして、これはたまたまその後経営の基盤でございますえさの問題とか素畜問題が有利に働いてきておりますので、かなり好転をしていると思っております。  この資金の延長問題につきましては、いろいろ御議論があるところでございまして、目下精査中でございます。どうするかということについては、現段階では判断しかねておるところでございます。  そういうどちらかといいますと負債整理問題のほかに、前向きの資金もやはり有利に貸さなければいかぬということで、今回、当委員会で御審議をお願いをいたします酪農振興法の一部改正案の中で、肉用牛経営を行っていただく方には現在三年据え置き十五年償還という肉用牛経営にお貸ししております資金がございますが、これは、計画を立てて改善をなさっていただくという条件はございますが、据え置き期間を三年から八年、それから償還期間を十五年から二十年といずれも五年ずつ延ばして、そういう初度投資をしてもすぐ返さなくてもいいという形にしながら経営を強化するという資金の改正をお願いをいたしております。また、これは運用でできることでございますが、たとえば肉畜経営を拡大します場合、飼養頭数を拡大していきます場合に、農業近代化資金というものを借りるわけでございますが、これはいままで増頭分だけにお貸しをしていたわけでございますが、今回からは増頭分だけじゃなくて、そもそも素畜の全体の金についても貸し得るというような制度を考えまして、これも今回の法改正と同時並行的にやろうと思っております。  いずれにいたしましても、そういう前向きの資金なり、あるいは後ろ向きというと若干語弊があるかもしれませんが、負債整理の資金につきましてもできるだけのことをしていきたいと思っております。
  69. 武田一夫

    ○武田委員 それから、二番目にちょっとお尋ねします。  経営診断システムの普及の問題です。  最近聞くところによりますと、酪農経営にかかわる技術革新の一つとしまして、牛群検定とかあるいはフォーレージテストといった形で、コンピューターを使った経営診断システムが徐々に普及してきているということでございます。北海道などにおいては、他の府県などよりは普及率は高いということですが、しかしながら、まだまだ酪農家の強い需要には応じ切れない状況だということを聞いております。  私は、今後政府は農畜産物価格をEC水準まで持っていくという一つの目標を掲げておるわけでありますので、こうした技術革新を抜きにしてはこの問題は解決できないのではなかろうかというふうに思っております。そこで、いろいろ調べてみますと、日本酪農というのはアメリカよりも二十年もおくれていると言う人もいるわけです。そのアメリカでさえも、最近もう経営診断システムを無視できない、こういうものを無視した者は生き残れないという段階まで来ているということを聞きます。  そういう意味で、私は、今後酪農は、何といいますか、知的産業として日本人には非常に適した産業の一つではないかというふうに思っているわけでありますので、農水省は、技術革新に相当力を入れまして経営の合理化対策というものを推進していくのが大きな課題ではないかと思うのです。こういう一つの方向、スケジュールとか対応というものをひとつ聞かしてもらいたい、こういうふうに思います。
  70. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のとおりと考えておりまして、たとえば根釧等の大規模酪農を考えますと、優に一億ぐらいの資金を投入する仕事になっているわけでございます。したがいまして、いままで言われているような農家の経営才覚ということだけではなかなか大変な仕事でございまして、いま先生が御指摘になりましたコンピューターまで使ってというのは、現にそういう地域におきましても行われているわけでございますけれども、やはり経営の問題の分析も必要でございますし、それから先生も御指摘の牛群改良のような技術の面での改善も必要でございます。私ども昨年来畜産総合対策という総合補助金を持っておりまして、この中でいま御指摘のような技術の問題、経営の問題、そういうように使えますいろんな事業を用意もし、たとえばいま申し上げました情報システムなんというのはことしの新規にも入れておりまして、こういうソフトな事業を相当程度普及をしていくということがこれからの酪農経営には必須の条件だろうと思っております。  いわば施設を援助するとか基盤を整備して差し上げるとかいったようなハードな事業も大切でございますが、いま御指摘のようなこういうソフトの事業もあわせて行いますことによりまして、酪農の合理化あるいは肉用牛生産の合理化というものを一層進めたいと思っております。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 ずっと回ってみますと、やはりこの経営というものの診断、これは非常に問題なところも見受けます。また、金を、これは貸す方も悪いのですが、そういう収支を度外視したようなものもときどき見受けます。一昨年か二年前ですか、北海道に行ったときなんか非常にそういう傾向がありまして、指摘をしておいたのですが、やはり逐次状況を適切に指導してやる、その中で金が十分に生きていくようにしなければならないと思うだけに、ひとつ今後この面には相当力を入れてほしい、こういうふうにお願い申し上げます。  最後、時間が来ましたので、飲用乳の広域流通体制の問題ですが、私は早期に確立する必要があると思う。  前に私はミルクボード構想というものはどうなんだと言ったら、これは検討してもどうもやはり独禁法への抵触などでいろいろ問題があるということで見送られている状況であります。しかしながら、飲用乳市場が依然として混乱が続いているということはやはり非常に問題だと思うわけでありますから、こうした広域流通体制の確立ということによってそうした混乱等を未然に防ぐということは、私はこれは大事な課題ではないか、こう思いますが、この点についての取り組みをひとつお答えいただきたい、こういうふうに思います。
  72. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のありました市乳混乱といいますことは、私どもも大変心配をいたしておりまして、せっかく加工原料乳等につきましていろいろ政策をやりましても、市乳のところで混乱が起こって農家の手取りが上がらないとか、そういうことになりますと、非常に問題でございます。  約一年間かけましてこの市乳の調整のあり方というものを勉強してまいったわけでございますけれども、基本的に申しますと、要するに、どちらかといえば生産者の組織、これは指定生乳生産者団体がその県における生乳の流通を一手に握るわけでございますが、自県向けには大変硬直的な価格、どちらかというと値段は下げない。しかし、一歩県を出まして他県に売り込みます場合は、それを大変下回りますような価格で売り込む。結局いま御指摘のように、広域に流しますときに安売り競争をして足を引っ張って、その結果がとんでもない安売り牛乳が出るということでございますので、私どもやはりこれは県の指定団体を強化しまして、県内のいわば調整能力を高めると同時に、比較的似通った地域の中のブロック間の調整をとっていただく。たとえば関東ならば関東圏とか、それから関西ならば関西圏といった、そういう比較的似通ったブロック間における価格なり数量調整を御努力いただくと同時に、ブロックを越えて流れます乳につきましては、たとえば北海道から関東へ来るといったこういうブロックを越えます乳につきましては、各ブロック間の代表者が相互に調整し合うというようなシステムを導入をしまして、これが円滑に運用されるようにやっていく。御承知のようにいまは市乳の世界では、どちらかというと相互不信というものが横隘いたしておりまして、生産者間ですら信頼関係が失われておりまして、ましてやメーカー間ではいろいろな不信によるいろいろな乱売がありますけれども、やはり牛乳のような基本的食品が余りに価格差があるということはかえって消費拡大の面でもマイナスがあると思いますので、いま申しましたようなブロック間の調整ということをできますように、組織化なりその指導に当たってまいるつもりでございます。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、二、三分時間があるので、大臣にちょっとお尋ねします。  今回の価格の問題で、新聞を見ますと、政治加算で救うしかないのじゃないか、こう言っているのですが、こういうことはありますか、大臣
  74. 金子岩三

    ○金子国務大臣 そういうことはありません。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、終わります。
  76. 山崎平八郎

    山崎委員長 神田厚君。
  77. 神田厚

    ○神田委員 畜産価格の問題について御質問申し上げますが、すでに食肉部会におきましては据え置き、それから酪農部会におきましては、ほんのちょっとでありますが、これを値上げをするというような方向が出ているようでありますが、最初に、五十八年度の加工原料乳保証価格についてであります。  昨日の農林省の諮問では、ごくわずかでありますが、これを上げるという方向で出ております。さらには、限度数量も二十二万トンふやすということでありますけれども、再生産を図る、さらには所得補償をきちんとするという観点から見ますれば、もう少し保証乳価の場合でも引き上げの幅を大きくし、さらに限度数量の場合は、この後御質問を申し上げますけれども限度数量の場合ももっと枠を拡大してもらわなければいけない、こういうふうに思うのでありますが、まずその保証価格の問題について、なぜこのぐらいの程度しか値上げできないのか、その点はどうでありますか。
  78. 石川弘

    石川(弘)政府委員 保証価格につきましては、御承知のように、再生産確保という問題と酪農の合理化の促進という、そういう観点で算定をするようにということになっておりまして、決められました算定方式の中で、たとえば労働費だとかあるいは地代だとかあるいは資本利子といったもの、そういう評価がえをいたしますものと、物財費のように最近時点の物価に修正する、そういうルールで算定をしているわけでございますが、今回の算定に当たりましては、私どもは昨年と全く同様の算定方式をとりまして算定をしたわけでございます。  これは、現在の生産が実は順調に拡大をいたしておりまして、昨年、特にこの加工原料乳地帯の北海道で申しますと、昨年の四月からことしの一月までの間の生乳生産の伸びは前年対比六・五%でございます。大変順調な生産拡大をしている。かつてのように、何か限度数量で抑え込むというような必要はございません。そういう意味では、何か生産を抑圧する必要もないと同時に、これ以上特段に生産を伸ばすという必要もない。いわばニュートラルと申しますか、アクセルも踏まずブレーキも踏まずというような感じで算定すべきものと思っておりますので、昨年の算定方式に従いまして、たとえば評価がえをいたします際に、北海道の五人以上の労働賃金の水準をとるとかあるいは地代につきましては借入地地代水準をとるとかいった、いままでとりましたルールをそのまま当てはめて積算をしたわけでございます。数字の面で申しますと約七十銭、〇・七八%というものでございますが、私どもはそういうニュートラルな姿で積算したものでございますから、そのまま価格を微調整するということで決めたわけでございます。
  79. 神田厚

    ○神田委員 御説明でありますが、この算出に使われております生産費のとり方が一昨年に直されました。改悪したというふうに私ども言っておりますけれども、地代、資本利子の評価、これを一昨年のままにとっておりまして、価格を低く抑えている、こういうふうに思っております。その辺はどうでありますか。
  80. 石川弘

    石川(弘)政府委員 評価方式は、御承知のように本来払っていないものでも払うとすればこれだけのものがかかる。自分の土地をお使いになるわけでございますから、自分の土地に地代は払うわけではございませんが、もし借りてやったとしたら幾らぐらい払うかという意味で借入地代をとるとか、資本利子は自分の現ナマを使うわけでございますからこれは別に金利が要らないのですが、やはり評価がえするとすればということで農協の普通預金の金利を使うというところでございます。  したがいまして、このあたりはいろいろと政策的に、大いに伸ばす場合とかあるいは若干抑制的にするという場合に何を使うかという判断がございますが、私どもは先ほど申し上げましたとおり、いまはブレーキも踏まずアクセルも踏まずということでございますので、ニュートラルな、昨年同様の評価がえをとったということでございます。生産者の方々には、もっと高いものを使えば上がるのではないかという御指摘があることは十分承知をいたしております。
  81. 神田厚

    ○神田委員 やはり抑制価格をつくるという、そういうふうなものが大変顕著に出ておりますことはまことに残念であります。従来からの徹底的に抑制をするという方向からすれば一歩踏み出してはいるわけでありますが、なおこの保証乳価の諮問につきましては、さらに上積みをした形での方向が欲しかったというふうに考えておりまして、答申をそういう形で待っていきたいというふうに思っております。  次に、限度数量の問題でありますが、最近の乳製品の需要の増加あるいは価格の動向、そういうものを見ておりますと、もっと大幅にこの数量を引き上げてもよいんではないか、こういうふうに考えておりますが、その点はいかがでありますか。
  82. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のような御意見があることは承知いたしております。実はここ数年来百九十三万トンという数字で固定をいたしておりまして、昨年は百九十三万トンの限度数量のほかに、畜産振興事業団が持っておりますバター、脱粉、生乳換算約三十万トンを投入いたしまして需給の正常化を図ろうとしたわけでございます。幸いにいたしまして、畜産振興事業団の過剰在庫は解消の方向に向かっているわけでございますが、今回私どもは二百十五万トンと、二十二万トン増のかなり思い切った拡大をしたわけでございますが、この限度数量には実は二つの、もろ刃のやいばといいますか、そういう面がございまして、生産者の方々のお立場としてなるべく多くをつくりたいという面で拡大の御要望がありますと同時に、これは要するにバターにしろ脱粉にしろ、市場で形成されます自由な価格で取引されるものでございますから、たとえばその限度数量が多くてバター、脱粉がっくり過ぎるという条件になれば酪農製品の価格は値下がりをする。私ども、数年間、バター、脱粉が大変過剰になりまして、事業団の在庫が累積する。累積するだけではとどまりませんで、価格自身が低落をいたしまして、そのことが生産者に大変御迷惑をかけたという、不幸な苦い経験をつい最近まで持っているわけでございます。  今度ふやします際も、過剰を再びつくり出すような条件はつくってはならないという大前提のもとで、しかも国内酪農家の方が無理なく生乳をつくっていっていただいて、それが市乳にも売れ、それからその他製品にも売れて、しかる後バター、脱粉の現在の需給状態に合うような数量はどういう数量であろうかというようなことをいろいろと試算をいたしました結果、現在政府案として出しまして、昨日畜産振興審議会から御答申いただきました二百十五万トンという水準を決めたわけでございます。
  83. 神田厚

    ○神田委員 次に、豚肉、牛肉の安定価格について、これは、私どもとしましてはぜひとも引き上げを図るべきだと考えておりますが、この安定価格の問題についてはどうでありますか。
  84. 石川弘

    石川(弘)政府委員 肉につきましては、三つに分けて安定価格帯をつくっておるわけでございます。  最初の和牛でございますが、和牛につきましては、昨年と全く同様の試算をとりまして算定をいたしました結果、中心価格が前年比二%高という数字が出てまいりました。その他の去勢牛、要するに乳雄でございますが、乳雄につきましては全く変わらない、昨年と同じ水準が出てまいりました。豚肉につきましては、マイナスの〇・二という数字が出てまいりました。したがいまして、同じ数字をとりましてやりまして、去勢の乳雄の方と、豚肉についてはマイナス〇・二でございますから、特に問題とする数字はないということで、この二つは文句のない据え置きの水準であろうと思いましたが、和牛につきまして二%上がるのをどのような考え方で処理をするかということが問題になりました。  この二%値上がりの非常に多くの部分が何によって起こるかといいますと、五十四年と五十五年に高い値段があったことが計算上出てくるという要素のほかに、和牛の肥育の期間の長期化、これは非常に長期になりますとそれだけ肥育効率も落ちますし、えさの効率も落ちてくるという、われわれとしましては、合理的な生産と申しますか、極力安くつくっていただくという面ではマイナスに働く要素がこの二%の押し上げ要因になっているということが一つの問題でございます。  もう一つは、大臣からも申し上げましたように、肉をめぐりますいまの国内あるいは国際的な諸情勢というものを考えました場合に、乳製品価格のようにそれが直ちに農家の手取りにつながるということではございませんで、卸売価格を安定させますための一つの基準となります上限であり、あるいは基準価格でございますので、二%中心価格が上がりましたけれども、微小の差であるということで据え置いたというわけでございます。
  85. 神田厚

    ○神田委員 この食肉の問題では、一つは、再生産を確保できる形ではない算式が使われているということが問題である。もう一つは、生産性向上のメリットが農家に帰属しない形になっている。たとえば豚肉の政府算定方式では需給調整係数を乗じることで調整をしておりますが、この需給調整係数のとり方等にも非常に問題があるということで、私どもやはり再生産確保ということを第一の政策として政策価格の決定を要求したいというふうに思っております。
  86. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御指摘の算定方式の物の考え方でございますが、御承知のように、いわば労働評価がえ等をして再生産を確保するための所得を確保するという考え方が価格政策の一つにあるわけでございます。いまの肉、豚の価格安定帯の思想は、いわば需給実勢方式と称しまして、現実に市場で実現をいたしております価格のもとで農家が再生産を確保し、順調に拡大をしていっているというこの事実をとらえまして、そういう安定帯の中に価格をおさめようということでございます。たとえば労働費を評価がえいたしまして、現実に取引されております価格よりも高い水準に万が一設定をいたしたとしましても、それが市場でそういう価格で売れるという保証がないわけでございますので、私どもは現在の段階ではこの需給実勢方式が適切ではないかなということでございます。  それから、農家の合理化メリットが吸い取られるのではないかというお話でございますが、農家としまして、特に養豚、肉用牛生産ともにそうでございますが、現在、経営規模を拡大しながら生産性を上げる、そういうことを実施中の段階の経営でございます。そういうものが、生産費の経年、これは七年とか五年の間でどのように動いたという変数は使っておりますが、これは必ずしも農家の生産性向上部分を全部取り上げるということではございませんで、そういう経年の変動というものを現時点に直すという手法でございます。  最後におっしゃいました需給調整係数は一でございまして、一ということは需要増進とか削減とかに格段に働かせずに現在使っているわけでございますので、これは特段問題はなかろうかと思います。
  87. 神田厚

    ○神田委員 いろいろ議論もしたいのでありますが、時間がありませんので、あと二点ほどお聞きをしたいのであります。  一つは、牛乳の取引の正常化及び飲用向け生乳価格の安定を図るため、行政施策をもっと強化をしてほしい、強化をすべきである、こういうふうに考えておりますが、その点をどういうふうに考えますか。
  88. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、ここ数年の飲用乳価の乱れと申しますか、あるいは取引の混乱というものが、生産者にとっても決して好ましいものではなかった、あるいはメーカーにとっても、ひいて言いますと消費者にとっても決していいものではなかったということがございまして、約一年間、この問題の検討を続けてきたわけでございます。  そういう中で、先ほどちょっと申し上げましたように、まず生産サイドで申しますと、指定生乳生産者団体が県内の牛乳を極力強力に把握できるようにするということ、さらにそれが同じような経済基盤のブロックでブロック間のそういう調整ができるようにすること、さらにはそういうものが全国段階でブロック間調整ができるようになる、そういう一種の取引のための組織化みたいなことが生産組織として要るのではないか。それから、メーカーについて申しますと、どちらかというと過剰設備を持ってお互いに不信感の中で乱売し合っているわけでございますから、乳業用の施設の整理統合、これは廃止も含めて、そういうことで施設の規模自身を調整しますと同時に、大手、中小、農協系、いろいろあるわけでございますが、こういうメーカー間の協調がぜひ必要であるということで、そういうこともやる必要がある。いろいろな形で、指導だけではなくて、ある程度は各生産者組織なりあるいはメーカー組織で自主的におやりになっていただくことが多いわけでございますが、それに加えて、行政もそういう方向に向けて援助をしていくということで、早急に取りかかりたいと思っております。
  89. 神田厚

    ○神田委員 先ほど酪農経営の負債整理資金の問題につきましては御質問が出たようでありますので、そういう形でなお努力をお願いをしたいと思います。  最後に、肉用子牛の価格安定事業の交付準備金の問題で、この準備金に不足が生じた場合には、これに充てるための融通資金の大幅な拡充と、さらには融通条件の改善、緩和を図るべきであるというふうに考えますが、その点、いかがでありますか。
  90. 石川弘

    石川(弘)政府委員 県にあります基金がかなり活動をいたしておりまして、そのことによって、子牛の価格が低迷をいたしておりますけれども、農家の所得を支えているわけでございますが、御指摘のように、ある県におきましてはやはりその準備金の不足というような事態も考える必要があろうかと思います。今回、酪振法の一部改正法案で、この子牛の価格安定の制度を法制化するということをお願いをいたしておりますが、そういう法制化と同時に、いま御指摘のありました中央における融資のための原資というものを、かなり思い切った拡充をするつもりでございます。
  91. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  92. 山崎平八郎

    山崎委員長 寺前巖君。
  93. 寺前巖

    ○寺前委員 前回ときょう朝からいろいろ質問がありまして、もうかなり詰められておりますから、わずかな時間でもありますので、ちょっと確認的な質問をしたいと思います。  まず第一点は、先ほどから論議になりましたが、乳価の決定において、長期にわたって肉の方も据え置きだし、それから乳価についても据え置き。今回〇・七八のアップをしたといっても、微々たるものだ。だけれども、かなりの魅力があるのではないかと言わんばかりの話を局長さんはされました。果たしてそうなのかどうかということなんです。  この間も、私のところに長野県の野辺山農協のお話をしに来てくださった方があるのです。聞くと、昭和五十二年から五十四年にかけて、かなりの設備投資と規模拡大をやった。サイロ、畜舎、農機具など、五、六戸共同で三、四千万円の設備投資をやってきた。ところが、その途端に生産調整、乳価低迷、えさ高ときて、経営に負債が広がった。五十三年、一千万円以上の負債農家が十戸であった。それがいまでは二十三戸にふくれ上がっている。これはこの農協に限りません。多くのところでこういう事態が生まれてきていると思うのです。この四年間に、この地では六十六戸あった酪農家が三十八戸にまで減ってしまったと非常に嘆いているわけです。それだけに、今度の乳価決定に対する期待は大きいものがありました。  さて、先ほどの局長さんの話と実際の農家が受け取っている話はどうなるだろうか。局長さんのは、積算の仕方は個々にわたっていろいろやるので、総額予算から割り出すものではないとはおっしゃったけれども、国のお金としてめんどうを見るお金の総枠を減らして、そして若干の、〇・数%の値上げがあったからといって、今日まで負債を背負ってきた者に対して果たして展望が開かれるという性格になるのかどうか。私は、そういうものにならなかろうと思うのですが、大臣はどのように評価をしておられますか。絶対にもうこれで、これから希望を持って、負債を持っている諸君たちがやめていくという事態にはならない、安心してくれとおっしゃれるのですか。——私は大臣の見解を聞きたいと思うのです。時間がないから、あなたはいいですよ、さっき聞きましたから。
  94. 石川弘

    石川(弘)政府委員 最初に周辺事情でお話ししますが、いま農家が減っていくというお話でございますが、これは酪農の場合は、そういう地域地域で本当に酪農を専業的におやりいただいて残っていただく方が、数は減りましたけれども、力強い形で残っていただくということで実はいまの規模拡大等が行われてきたわけでございまして、そういう意味で、農業の中では規模拡大、専業化の努力を非常になさってきた分類に入ると私どもは思います。価格とか限度数量ということは毎年やることでございますし、それから、経済条件としまして、たとえば長野の例をお引きになりましたが、長野の場合でございますと、加工原料乳だけではございませんで、むしろ、多分市乳の比重が高いのだと思いますが、そういう市乳の取引条件とか、いろいろ問題はあるわけでございますが、一般的に申し上げますと、酪農経営にとりましては、五十五年と五十六年が底でございまして、五十七年度から交易条件もよくなってきておりますし、今回の価格なりあるいは限度数量の引き上げが酪農全般にかなりプラスに動きますことは間違いがないと私は思っております。
  95. 寺前巖

    ○寺前委員 私は大臣の話を聞きたいのだが、いつの間にやら大臣がかわってしまったのかどうかしらぬけれども……。
  96. 金子岩三

    ○金子国務大臣 見解は、ただいま局長が御説明申し上げたような理由によって、酪農業者にこのたびの私どものとった手段が非常に大きな失望を抱かせておるとは私は思っていません。
  97. 寺前巖

    ○寺前委員 これから酪農民が減っていくということは依然として続くのではないか、展望がこれでは持てぬのではないかということを私は大臣に聞いているのですが、引き続きその御答弁をお願いしたいのと、加えて、大量の乳製品輸入が一方でなされている。片方では計画生産だと言いながら、片方でどんどん外国からの擬装乳製品なんかが大幅にふえてきているという事態を見ておって、これまた、果たして展望を開くことができると言えるのだろうか。この点でも、規制を大幅に考えなかったならば展望を持たすことにならぬと私は思うのですが、大臣、いかがなものですか。——また大臣が二人できましたのか。私は大臣にそんな細部の話を聞いているのではないのだから、きちんと押さえていただきたい。
  98. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御承知のことでございましょうが、酪農製品につきましては、一番大事なところは事業団一元輸入という形で完全にコントロールをいたしております。  その周辺でございますが、御承知のような、たとえば関税割り当てという形で抑え込んでいるものもございます。  それから、いま御指摘のは、多分調製食用脂のような一応自由化されておりますものをどうコントロールするかということかと思います。私どもは、必要なものは国内で極力生産するというたてまえでやってきておるわけでございますし、現にそういう形で運用されておるわけでございます。それから、調製食用脂は自由化されたものではございますが、これはバターとの代替性が大変強いものであるということから、ニュージーランド等とも協議をいたしまして、一応の自主的な調整をしている。  多分、御指摘最後のココア調製品かと思いますが、このココア調製品と申しますのは、いわばチョコレート等の原料ということでございまして、国内の全粉乳等が代替をする可能性があるとは申しますけれども価格関係ではなかなかそう容易ではないということから、私どもは、これは日本で買います方の側を極力指導するという手法しかないということで、これも御承知のような指導体制をしいておりますが、残念ながら、チョコレートの需要自身が増高いたしておるという背景がございまして、これが少しふえているというのは御指摘のとおりでございます。しかし、私ども関係者に対しましては、やはり自粛してもらうという基本は変えないつもりでございますし、今後もそういう指導を続けるつもりでございます。
  99. 寺前巖

    ○寺前委員 大臣はもう答えぬのですか。
  100. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの御説明をお聞きになると、詳細は大体御理解いただけると思います。
  101. 寺前巖

    ○寺前委員 どうも一々局長大臣代理をやらないことには困るらしいのですが、改善をしていただきたいと思います。  それで、これも先ほど出た話ですけれども酪農経営にとって借金が非常に大きな問題になってきていますが、五十六年度より負債整理資金制度が発足しております。三ないし五%の、償還十五年ないし二十年という非常に有利な資金であるものですから、期待が非常に大きいです。  ところが、先ほど私が紹介いたしました野辺山というところにおける一千万円以上の負債者が五十三年度で十戸、五十七年度で二十三戸というふうにふえてきているわけですが、ここでお借りをすることができた人というのは二戸だというのですね。厳しくてなかなか借りられない。せっかくいい制度をやったのだったら、積極的に貸してあげたらよさそうなものなのに、なかなか借りられないということでは、この制度は困ったことになるのではないだろうか。  大体、聞いてみると、お国の方で積極的にいろいろな酪農拡大の指導をおやりになった。それが第二次構造改善事業、畜産環境整備事業など、国の補助事業で広範に行われて、画一的な規模拡大の指導までがなされてきている。さらに、昭和五十五年になると、第四次の基本方針で、北海道では四十頭、都府県では三十頭を基本とする目標まで設定されてやってきているというのだ。こういうふうに積極的な指導がなされるもとで行われてきているものであるならば、もっと整備の段階においても指導性を発揮してもらったらどうなんだろうか。これからいよいよこの需要がふえていくわけですけれども、どのぐらいの人が借りると見ておられるのですか。それから、その制度は、いまの実情から見るならば規模をもっと拡大しなければならないことになるのではないかと思うのですが、拡大をするという方向で検討しておられるのかどうか、お聞きをしたいと思うのです。
  102. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもも農家の方々とよくお話しするのですが、農家の方が負債とおっしゃいます場合に、これくらい借りているという意味で軽く負債とおっしゃいます場合と、われわれが負債整理と称しております場合の負債の間には若干ニュアンスの違いがございまして、私どもの負債整理と申しておりますのは、いわば固定化負債、通常の経営活動では償還困難になっているような負債を長期に借りかえるということでございます。  何度も申し上げますが、拡大の過程にございましたことから、負債も大きいけれども資産造成も大変大きいという経緯をたどってきたわけでございますが、それが順調に回転なさった方は、借金の額そのものは大きゅうございましても返済はある程度可能だ。しかし、そういう負債の一部というものがすでに固定化をして、そういうものをもし返すならば経営費も出ない、そういう方々を負債整理で何とかしようということでございます。農家数は、約三千三百戸が現在負債整理の対象となっております。  枠でございますが、これは三百億円を五十七年度までに使い切っておりますので、五十八年度以降につきましても継続の必要性があると思っておりますので、近日中にその取り扱いを決めたいと思っております。
  103. 寺前巖

    ○寺前委員 枠はふえますか。
  104. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ふやすつもりでございます。
  105. 寺前巖

    ○寺前委員 かなりの枠の拡大をしないことには期待にはこたえられないのじゃないだろうか、私はそういうふうに思いますので、十分要望にこたえていただきたいと思います。  先ほどちょっとお話が出ました肉畜の経営改善資金ですが、これも負債の問題としては非常に大きな期待を持たれておるわけなんですが、いよいよこれは打ち切ろうじゃないかという話が出ているということが先ほども出ていました。  聞いてみると、この資金は七年間で再建できる見通しのある農家についてだけ金を貸すのだ、それ以上かかる人にはだめなんだということで、この間私のところに来られた人は、五十四年に農林中金から九・五%の利子の資金を借りて六十頭の肥育をやっているのだけれども、三年前に肉安えさ高で借金がたまって一千二百万円からになっているのだ、そんなに負債が多いあなたにはお貸しするわけにはいかないという話が出た。こんなことになってきたら、再建できる見通しのある農家についてだけ貸すということでは、本当に困っている人みんなにめんどうを見てやることにはならないのじゃないだろうか。だから、そういうことから考えて、この七年間という期間というものは少し改めてもいいのじゃないだろうか。あるいは、ことしでもってこの措置は終わりだというようなことをせずに、まだ現実に事態が起こっている以上は引き続きめんどうを見るようにすべきではないのだろうか。いかがなものでしょう。
  106. 石川弘

    石川(弘)政府委員 畜産の特別の事情の中でつくった制度がこの畜産資金でございます。それ以外に、御承知のような自作農維持資金というような資金とか、恒常的にある資金というのはかなりございます。私どもは、この畜産の特別資金をつくりましたのは、過去の数年間起こりました事態を畜産というサイドから一応負債整理をしようということでつくったわけでございまして、打ち切りとかどうこうということではございませんで、あのときに単年度限りの措置としてやるからできるだけその前に整理をしてもらいたいということでやったことでございます。  いま御指摘の、七年のこの資金では返せないということにつきましては、私は、個別事案でございますから事情をよく聞きますけれども、たとえば、こういう資金ではだめだけれども自作農維持資金のこういう資金と組み合わせればいいとか、それから、私どもも今度はかなり厳し目の指導はいたしておりますけれども、他にいわば資産がありながら全部これで乗りかわってくれというのは困るから、ある意味では、これはきつい言い方からしますと、資産処分も含めて経営再建に乗り出してほしいとか、いろいろなことを申しております。  御指摘の事案がどういうものか私もわかりませんので、お教えいただければ、何らかの対策があるものかどうか、考えてみたいと思います。
  107. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、また細部、せっかくのやっていることが生きてくるように御検討いただくことにしまして、最後に、大臣に一言だけお聞きをします。  肥育をするのには二十カ月とか、かかります。ですから、外国から肉を輸入をするのかどうか、自由化にするのか、枠を拡大するのか、こういう動向一つが、時間がかかる先のことですから、値段に直接非常に影響してくる。ですから、農畜産物輸入問題、なかんずく牛肉の問題について、オレンジの問題について、いま態度をどのようにとられるかという問題は、いまここで牧畜の話をやっているわけですけれども、この分野にとっては決定的な要因を占めると思うのです。  ですから、私は大臣に改めて、この牛肉の輸入自由化と枠の拡大に対して絶対にさせないというのかどうか、お答えをいただいて、終わりたいと思います。
  108. 金子岩三

    ○金子国務大臣 今日までたびたびお答えしておるとおりでございます。
  109. 寺前巖

    ○寺前委員 明確に、どういう態度をおとりになるのか、しないのかどうかということです。それだけです。
  110. 金子岩三

    ○金子国務大臣 私が今日までこの問題でお答えしていることは、自由化はこれは絶対やらない、やってはよくない。日本のいわゆる畜産農家、柑橘もあわせて、この農家を守るため、日本の農業を守るために自由化は絶対いけない。その他、枠の拡大については、需給関係があります。いろいろ不足するものはやはり入れなければならない時期もあるでしょう。これは日本の食糧の安定を図るためでございますから、私はそういう考え方で、ただ、現時点では枠の拡大の必要はない、こういう主張をしておるのでございます。
  111. 寺前巖

    ○寺前委員 時間が来ましたので、やめます。
  112. 山崎平八郎

    山崎委員長 午後一時十分再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ────◇─────     午後一時十六分開議
  113. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  114. 串原義直

    ○串原委員 政府は、本法案提出の趣旨の中で、林業活動の停滞、森林及び林業をめぐる諸情勢の変化という意味説明をされているわけでございますが、その具体的な内容はどういうふうに理解されていらっしゃるのか。  なお、その情勢変化を踏まえまして、今日の林政に対する基本的な認識についてまず大臣の所信を伺っておきたいと思います。
  115. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私の方から、提案の趣旨説明の中におきますところの最近の林業をめぐる厳しさの具体的な問題についてまず申し上げたいと存じます。  最近、木材需要の低迷、それに伴いまして林業生産関連経費の高騰と、両方の問題が一挙に参りまして大変厳しい状況でございますが、それを具体的な指標で申し上げますと、まず第一に素材生産量でございますが、四十五年に対しまして五十六年におきます素材生産量は大体七割に落ちております。それからまた人工造林の面積でございますが、これも四十五年に比べまして五十六年は四割強に落ち込んでおるわけであります。それからもう一点、今回の法案との絡みできわめてかかわりの深い間伐並びに保育でございますが、これも停滞が見られまして、昨年都道府県が行いました調査結果によりますと、間伐または保育を早急に実施する必要のある人工林の面積でございますが、これは全面積の約三割に達しているというふうなことでございます。  以上申し上げましたような指標でおわかりのとおり、最近の林業をめぐる情勢というのは大変厳しいところでございます。
  116. 串原義直

    ○串原委員 つまり、したがって山をめぐる情勢というのは大変好ましくない情勢であるということですね。  大臣からちょっと御答弁を願いたいのでございますが、いまも具体的に数字を挙げて御答弁願いましたように、山と緑を守る仕事というのは大事なんだけれども、遺憾ながら年々後退をしてきている。したがいまして、この山を守るという仕事は公益的要素が強い、こういう認識に立つべきである、位置しなければならない、私はこう思っておる。つまり、森林は水源涵養あるいは治水、土砂流出防止あるいは酸素供給など公益的機能がとても高いわけであります。いま長官が説明してくれたように実態は後退してきたということは、つまり木材価格が安い、採算に合わない、それだから山に手を入れることはできないのだ。つまり、経済性ということからそういう現象が起きているんだろうというふうに私は考えている。  そこで、大臣に伺いたいのは、緑の問題、山を守る、林政を取り扱うということは経済性だけで考えてはいかぬ。つまり、経済性だけで判断していきますならば、後日に重大な失政を残すことになるだろう、私はこう考えている。大臣の考え方を伺いたいのです。
  117. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘のとおりでございます。  いろいろ森林、林業について大変むずかしい問題がありますけれども、当面、経済性を余り考え過ぎて森林の持つ公共性を失うようなことがあってはならないということを十分念頭に置いて、これから林業の政策に取り組んでまいりたいと思います。
  118. 串原義直

    ○串原委員 公共性を大事にしていきたい、公共性に沿って施策を講じていきたい、こういう大臣の答弁です。  そこで、長官に私はもうちょっと具体的に伺いたいのですけれども、さっき御答弁をいただきましたように、遺憾ながら林政は年々後退の一途をたどっていると言ってもいい状態であることは間違いない。その原因は、つまり経済の立場から考えると、価格が安くて採算に合わない、これが一つ。いま一つは、過疎化、それから労働力の老齢化。いま一つは、大事なことでありますけれども、年々外材に国産材が押されてきている。ほかにも原因がありますけれども、大きな柱はこの三つであると私は実は考えているところなのであります。  したがって、先ほど長官から答弁を願いました現状も踏まえて、私がいま指摘をした三点を含めて、林業をめぐる諸情勢の変化につきまして、政府としては具体的にこの情勢を踏まえてこれからどう対処していこうとするのか、打開策をどういうぐあいに求めていこうと考えていらっしゃるのか、お示しを願いたい。
  119. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども申し上げましたような大変厳しい事情の中で、これから林業を振興をし、さらには緑資源としての強い要請にもこたえていくということになりますと、まず第一には、林業生産の基盤となります造林、林道の整備が第一だと思います。  それから第二は、戦後植えられました一千万ヘクタールの人工林がちょうど間伐時期に来ています。そういう森林の健全性を確保するために、間伐、保育というふうな施業を適正に実施するということが第二点です。  第三点は、ただいま先生から御指摘がございましたように、国産材の安定供給体制でありまして、生産基地を造成して、足腰の強い国産材の生産基地をつくっていくというのが第三点だろうと思います。  それから第四点といたしましては、これは山村地域の定住条件整備の問題もございますし、林業経営をより近代化するために林業構造改善事業をさらに積極的に進めていくという問題もございます。  それからその次に第五点といたしましては、やはり林業の担い手は山村の方々でございますので、活力のある山村を育成すると同時に、林業の担い手を育成する、確保するという問題が第五点としてあるわけでございます。  これらを私ども現在の林業政策の重点として考えておるわけでございますが、特に五十八年におきましては、その中で緑資源の確保と森林管理の適正化の問題を第一点として挙げ、第二点におきましては、国産材の安定供給体制を整備するというものも新たに取り入れております。それからもう一つ、緑資源の確保の国民的要請というものは、特に森林の持っております水源涵養機能を高める面にもございますので、奥地の水源地帯における森林において涵養機能を高めるような、そういう水土保全機能を強化するというようなことも五十八年は考えていこうと思っておりますが、これによりまして山村の森林はより整備されると考えております。  また、今国会で御審議いただきますこの法案におきまして、間伐あるいは保育を整備するに当たりましては、まず中心になりますところの市町村に森林整備計画をつくっていただくという新しい制度を創設すると同時に、今度はもう一つは、都市の皆さん方に森林造成、緑資源確保に対する理解と協力をいただきながら、一緒になりまして緑づくりをするという面から分収育林制度の導入等を講じてまいりたい。こういうことによりまして、地域地域の特性を生かし、自主的にこの地域の林業を振興すると同時に、一般の国民の皆さんの御理解、協力をいただいて進めてまいる、そういう考え方で対処してまいりたいと考えております。
  120. 串原義直

    ○串原委員 いま重要な問題を御答弁で指摘されたわけでありますが、なかなか大変なことでありますけれども、ひとつ積極的に取り組んでもらいたいと考えておりますが、その立場に立って、以下、何点か質問をしてまいります。  いま長官の御答弁の中に、まことに大事な問題が指摘をされておりますけれども、きょうは時間の関係で全部それに私触れるわけにはまいりませんが、いまその中で、奥地の水源確保のために水源地涵養林の問題も五十八年度には積極的に取り組んでいきたい、こういうお話が答弁の中にございました。  そこで、私、触れてまいりたいわけでありますけれども、私の地元でございますが、長野県の南部地域の町村とそれから愛知県あるいは岐阜県、こういう下流の関係町村との連携の中で、つまり受益者という立場における下流の皆さんから上流の長野県に対して、水源涵養林という立場で整備費を拠出をして、上流、下流連携をとりながら山を育てていこう、こういう行動が数年前から実は起きてきているわけであります。その内容に触れる時間がないことを実は私は残念に思いまするけれども、おおよそ長官も御承知のところかと考えておりますが、私は、この種の具体的な自治体等における行動を積極的に国が取り上げる、あるいは援助を与えていく、こういう立場で取り組むべきではないかと考えるのでございますが、その点はいかがですか。
  121. 秋山智英

    ○秋山政府委員 いま先生指摘のような、いわゆる下流の方々が奥地の水源林地帯の森林造成に、水源の造成に参加するというのは、全国各地で行われております。私、将来の方向としましてはそういう形に持ってまいりたいと思っておりますが、まずその前提といたしまして、ことし、五十八年から進めてまいろうと考えておりますところの水土保全のための水土保全強化モデル事業と申しますのは、そういうことを実施する前提において、水源涵養機能を高めた場合においての受益される方々の量の高まりを計数的にとらえながら進めてまいることも必要だろうと思いまして、すでに昭和四十八年以降、応益分担のための調査をずっと続けてまいっておりますが、それを最後に仕上げるためには、そういう具体的な実験的なモデル事業をしながら、すでに全国で十二、三カ所ございますが、そういうものを将来発展的に持ってまいりたいという考え方もございます。
  122. 串原義直

    ○串原委員 つまり、五十八年から実施しようと考えているモデル事業は、私が先ほど指摘をいたしましたような上流、下流の協力の中で山を守る、水を守る、水源地を守っていく、こういう事業に発展をしていくために国が取り組む前提だ、こういう理解でいいわけですか。
  123. 秋山智英

    ○秋山政府委員 いま先生指摘のとおり、そういう考え方でこれをやるわけでございますが、特に今回の事業と申しますのは、拡大造林をいままでしてまいりましたが、今度はそれに対して複層林をつくる、二段林にして水源涵養機能を高めるとか、埋設ダムをつくって水源涵養機能を高めるとか、いろいろそういうふうな水源涵養機能を高める工法を新たに導入しながら、機能の高まりを計量しつつ受益者の皆さんにも御理解いただくということが将来応益分担の道につながる非常によいデータになるということで、現在考えておりますのは、ことしは四カ所でまずそれを進めてまいろうと考えております。
  124. 串原義直

    ○串原委員 検討は要するでしょう。要するでしょうけれども、先ほど私が指摘したような事業を国で取り上げていくということを基本にして、具体的に五十八年度はモデル事業を何カ所か取り上げる等々も含めて、今後の問題としては前向きにその方向で取り組んでいくのだ、こういう理解でいいわけですか。
  125. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そのとおりでございます。
  126. 串原義直

    ○串原委員 では、いまの話につきましては積極的な取り組みを見守ってまいりたい、こう思います。  そこで、具体的に法案の問題に関連して伺っていきたいわけでありまするけれども、いま長官から話がありましたように、山を守るということは広範な努力と施策が必要である。たとえば造林の問題、林道の問題、植えた山を保育する問題、労働力の問題あるいはこれにまつわる機械設備の問題等々ございますね。それから、いま言われるように水源涵養に対する施策問題等々もございますが、今回の法改正が間伐、保育を主体とする計画ということに限定をされたということについてはどうした考えであったのか、そのことについて御説明を願いたいと思います。
  127. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども触れましたが、戦後営々として造林しました人工林が一千万ヘクタールにも及んでおりまして、そのうち間伐対象として考えられる林分が約半数もあるわけでございまして、将来よりよい山にするためには早急に間伐または保育をしなければならないという状態に現在立ち至っているわけでございます。その問題解決に必要な法的措置といたしまして、間伐または保育等森林整備を図るために行政の第一線でございます市町村に森林の整備計画をつくっていただきまして、その計画に基づいて森林整備を達成するために必要な勧告の権限等を町村長に与えましてこれを進めてまいろうということであります。  この森林整備計画と申しますのは、全国一円でつくりますところの全国森林計画と各県でつくります地域の森林計画制度を補完するわけでございます。したがいまして、この計画は間伐、保育を中心としているわけでございますが、この目的を達成するために必要な事項につきましてはあわせてこの計画に盛り込みまして進めてまいる。しかも、この計画樹立に合わせまして、林業政策の各種事業を関連づけまして、優遇措置をここにとりまして、まず森林整備計画と各種のそういう助成措置、予算措置を関連づけましてこの森林整備と林業振興を進めてまいりたいという考え方でございます。
  128. 串原義直

    ○串原委員 つまり、先ほど長官から答弁を願いましたように、この林業をめぐる諸情勢の変化に対応していくには積極的にやらなければならぬ仕事が幾つもある。各種の施策を求められている。しかし、当面法改正ということをやって間伐、保育を主体とする計画を進めていこうとしたのは、間伐、保育という問題を急いでやらなければならぬところへ来ているのだ、こういうことなのですね。
  129. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そのとおりでございます。
  130. 串原義直

    ○串原委員 急いでやる必要があるのだ、このまま放置していたのでは大変なのだというふうに考えたからその問題に法改正までやって取り組もう、こういうことになったということですね。  したがいまして、その立場で私は伺いたいわけでありますけれども、人工林の実態、間伐を要する山の現況、あるいはその人工林というものはいままでどのくらい間伐が行われてきているのか、あるいは急がなければならない施策であるけれども間伐をしないまま放置していたということになるとそれらの山はどの程度公益的機能が失われるということになるか、これは大事なところだと思いますので、伺っておきたい。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  131. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず最初に、現在間伐を必要とする森林の現況はどうかということでございますが、まず民有林に限って申し上げたいと存じます。  わが国の民有林におきますところの人工林は、昭和五十六年四月現在で約七百五十万ヘクタールございます。これは全体の森林の四三%に当たりますが、このうち初回に間伐を実施するというのは普通大体十六年生から二十五年生ぐらいの人工林でございますが、そういう時期に来ております森林が二百六十八万ヘクタールございます。それから、二度目の間伐を実施するのは、大体これは十年たってからなされるというのが普通のやり方でございますが、二回目の間伐の時期に該当する二十六年生ないし三十五年生の人工林というのが百八万ヘクタールございます。  これらの間伐期に来ている林分というのがなかなかできないという理由は、先生からも御指摘ございましたけれども、間伐材というのは切るに当たりましては主伐よりもコストが高いとか、あるいは需要面で開発が不十分であるとか、あるいは戦後人工造林をされました、いわゆる拡大造林をされました方々の中には、初めて森林をつくるというようなことから間伐に対する知識が少ないというふうなこともございまして、適正に行われない森林がふえているわけでございます。  そこで、私ども昭和五十六年に間伐促進総合対策というのを発足させたわけでございますが、それが発足する前は年間大体十万ないし十五万ヘクタールの水準で間伐がされてきたわけでございますが、五十六年には約二十三万ヘクタールに実績が上がってまいりまして、大分増加したわけでございます。しかしながら、先ほど触れましたように、第一回の間伐並びに第二回の間伐をすべての対象林分に行おうとしますと年間約四十万ヘクタールが必要でございますので、まだまだ不十分であるというふうに認識しております。  第二点の、間伐を行わない場合の森林の機能、とりわけ公益的機能がどういうふうに損なわれるかという御指摘でございますが、間伐と申しますのは、御承知のとおり、最初へクタール当たり三千本植えた山を伐期に七、八百本の健全な林分に持っていくための過程におきまして、抜き切りをして健全木を成長させるという手法の一つでございますが、この間伐がおくれまして林分がうっ閉してまいりますと、下層植生が全部枯れまして、土壌の流亡というようなことも出てまいりますし、それから風とか雪とかいうものに対する被害も出てまいりますし、また、一部におきましてはそういうことが原因で害虫の被害の対象になるというようなこともございますので、やはり風通しをよく、陽光が絶えず森林に差し込むような状態で管理するということが必要だと思っております。
  132. 串原義直

    ○串原委員 したがって、好ましい山にしていくということから必要だということでございますが、間伐をしなかった場合、手おくれになった場合の失われる公益的機能というのはどの程度というふうに林野庁としては考えているか、これを伺いたい。
  133. 秋山智英

    ○秋山政府委員 定量的に見てどの程度公益的機能が失われるかということについては、現在もいろいろ調査しておりますが、まず第一は、大雨が降った場合におきまして、土壌に下層植生が全然なくなりますと、それによって土壌の流亡という問題が出てまいります。それによりまして林地の浸食という問題が出てまいりまして、それが将来の被害に結びつくという問題がございます。  もう一点は、五十五、六年ごろに異常降雪等によりまして、雪害によりまして大分折損木が出るというようなことになりまして、それによりまして結果的には今度は林地が露出して、それによる土壌の流亡問題が出てまいりますし、また、暴風雨によりまして根倒し等の状態が出てまいりますから、やはり粘りのきいた健全な山に持っていきませんと、そういうふうな面でも大きなマイナスが出てくるというふうに理解しております。
  134. 串原義直

    ○串原委員 つまり、健全な山を育てないと災害をもたらすということになり、水を確保するというようなことの機能は全く失われるという結論にもなりかねない、そういうことなんだ。そこら辺が心配になる、こういうことなんでしょう。つまり、私は林野庁や長官が考えている健全な山づくりというのは、しっかりした山にしていくためには粘りの強い健全な木を適正な間隔で育てていくという、健全な山でなければならぬのだ。だから、公共的な力を差し伸べてもそういう意味で山を育てていくんだ。つまり、結論としては災害防止にもそれは大きくつながっていくんだ、こういうことですかな。
  135. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そのとおりでございます。
  136. 串原義直

    ○串原委員 理想的な間伐林というのは大体年間四十万ヘクタールくらいずつやっていけるようになれば好ましいと、先ほど面積的な御答弁をいただきました。そこで、五十六年度の場合は若干ふえてきて二十三万ヘクタールくらい間伐をされたように思う。だから、理想的には四十万へクタールであるので、この法改正によりましてぜひともそれを達成していきたいんだ。この法改正をやっていったならば四十万ヘクタール間伐をされて健全林が育っていく、こういうようになりますか。
  137. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げました森林の整備計画つくりまして、これをつくるに当たりましては市町村長がその地域の条件に合った形で、自主的に、しかも関係者の皆さんの意見を聞きながら作成する、こういうことであります。また、私どもといたしましては、その森林整備計画と地域の林業振興の育成対策事業というものを結びつけまして、間伐保護対策であるとか林業構造改善事業であるとかあるいは森林総合整備事業というふうなものをかみ合わせまして、両者相まちまして地域の間伐促進、林業振興につなげてまいろうという考え方でございますので、私どもとしては、そういう方向に向けまして極力努力をしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  138. 串原義直

    ○串原委員 この計画が対象とする地域、市町村というのはどんな地域に重点を置こうと考えていらっしゃるか。それから、その地域の対象の数というのはおおよそどの程度にいまのところお考えになっていらっしゃるのですか。
  139. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず森林整備の市町村の指定要件でございますが、私どもやはりこういうふうな育成をやらなければならない森林を持っておる町村を広く対象にしてまいりたいと考えておりますが、具体的要件としましては、まず第一に、法律の第十条の七の一項の一号に書いてございます関係で見てまいりますと、民有林の面積規模あるいは人工林率というのを一つの尺度にしておるわけでございます。  そこで、やはりこの制度が実効あるものにするためには市町村の森林面積が一定規模以上であることが望ましいということで、民有林面積がたとえばおおむね二千ヘクタールあることを要件とすることにつきまして現在検討しております。しかしながら、一方におきまして林業意欲のきわめて高い町村ですが、民有林面積がこの基準を下回るために該当しない場合も出てまいりますので、その場合にはその町村の人工林の率が少なくともその県の平均を上回るというふうな、そういう人工林率をまず基準として検討したらどうかということで現在いろいろと進めております。  それから、この間伐を進めるに当たりましては、計画的に、かつ、まとめて一体的にするというふうな一つの考え方でございますので、やはり相当規模以上の人工林が集団的にまとまっていなければならぬわけでございます。そのまとまりの規模はおおむね三百ヘクタール以上で、しかも、まとまっている森林の六割以上が人工林であるというふうな、そういうようなところを進めてまいろうと考えておりますが、現在対象として考えております市町村は約二千二百ぐらいに上るというふうに考えております。
  140. 串原義直

    ○串原委員 なるほど。そこで、先ほど長官から間伐の第一回目、第二回目についての説明がありましたが、最も力を入れて急いでやろうと考えていらっしゃる標準的な樹齢といいますか、林齢といいますか、どこに一番重点を置きたいと思っておりますか。
  141. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これは、現在、人工造林地の樹種と申しますか、木の種類、それから地域の条件、植えつけ本数も、何と申しますか、比較的柱材をつくるというようなところであるとか、あるいはもっと大径材をつくるというようなことで植えつけ本数も違いますから、一概には言えません。また、土地条件がいいところと悪いところというふうなこともありまして、地域によってそれぞれ違いますが、まず杉で見てまいりますと、大体第一回目に行うのは十六年から二十五年ぐらい。九州の方ですと十五、六年でやれますし、関東周辺ですと二十年ないし二十五年という幅がございますが、そういう林齢の中でまず第一回。それから五年ないし十年置いて次回をやる。こういうふうなことが現在一般に考えられておる間伐の基準だと言ってよろしいと存じます。
  142. 串原義直

    ○串原委員 いま長官が答弁をされた考え方に基づいてこれから具体的に仕事を進めていくとしたならば、さっき御答弁になりましたように間伐が非常におくれている、おくれているが、いま言われているような方向を踏まえて具体的に取り組んでいった場合に、およそどのくらいの年限がありましたならば理想的な山に日本じゅうの山をつくりかえる、間伐のできた山にすることができるか、おおよそ見当はつけておりますか。
  143. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在は対象市町村二千二百と申しましたが、これは、実行するに当たりましては市町村の実行体制という問題が出てまいります。したがいまして、私どもといたしましては、実行体制ができたところは逐次森林整備市町村に指定いたしまして、そこで進めてまいるということに相なりますので、この指定にもやはりそういう体制との関係がございますから、当面まず三百か四百くらいの市町村は指定できると思いますが、逐次指定してまいるということで、指定にも相当時間はかかると思います。何年で全部できるかということにつきましては、指定並びに実行計画を見ながらできるだけ早くそういう体制に持ってまいりたいと考えております。
  144. 串原義直

    ○串原委員 これはむずかしい質問だったでしょうね。私もそう思う。ということは、つまり国が考えることと県の皆さんの努力と市町村の取り組む姿勢という三つが結合しないとなかなかうまく進んでいかないと思うわけですね。したがいまして、指導性という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、積極的な取り組みがないとなかなかこの種の仕事は計画どおりにいかない、こう思う。  そこで、具体的にその立場で伺いますけれども整備計画の樹立、市町村長の勧告に係る執行体制というのが、いま長官から御答弁ございましたが、遺憾ながら実態はなかなか十分でない。市町村の執行体制が十分でない。私はそう思う。ということは、山に対して市町村の取り組む姿勢が若干後退したことは否めない。そういうことも含めて、執行体制というのはとても十分とは言えないように私は思う。これに対して、林野庁としてはどう取り組んでいきますか。
  145. 秋山智英

    ○秋山政府委員 昭和四十年代の後半から、私どもの林業政策におきまして、主として予算措置からでございますが、町村を対象とした政策展開をしてまいっております。特に最近におきましては、先ほどちょっと触れました林業振興地域の育成対策事業とか林業構造改善事業、森林総合整備事業と申しますのは、市町村の機能を活用して展開するというようなことでいままでずっとやってまいってきておりまして、だんだんと町村が行政面で森林、林業につきまして体制が整備されてきておりまして、現在、林務行政を行うための課だとか係というものを専門に設けている町村が約九百ございます。それから、農林係とか林業水産係とか、他の農林関係の業種と係を一緒にしているのが六百ほどございます。合わせますと千五百くらいそういう執行体制ができております。しかも、いま触れましたような各種の事業を最近強力に進めてまいっている関係でだんだんと意欲的になってきておりますので、そういうところからまず始めて、逐次拡大をしていくというふうな考え方で進めてまいりたいと私は考えております。
  146. 串原義直

    ○串原委員 そこで、計画樹立のための市町村に対する事務費補助というようなものはどんなぐあいに考えておりますか。
  147. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど触れました林業地域の振興のための育成対策事業というのがございますが、私ども、うまく活用いたしますと森林整備計画と各種の林業振興のための施策がうまくリンクして実施され得るわけでございますので、その樹立をするための経費はいま申しました林業の地域振興育成対策事業を活用してやってまいりたいと考えております。
  148. 串原義直

    ○串原委員 そこで、次の問題に移りますけれども、山が放置されているのは山間地に人間が住んでいないということなんですよ。山林は国土の七〇%を占める広大な土地である。そこに人間が五%しか住んでいない。いまでは老齢化したわずかな人たちの手に山の管理が任されている。ここが問題ですね。ここを解決しない限り、山を守るということは演説のようなわけにはいかぬ。法改正して取り組んでみてもなかなか実効が上がらない、私はこう考えているわけです。過疎化するという状態の中で、山を守るということは空論になるだろうと私は思っているわけです。  したがいまして、山を守る、緑を守るという立場で山村振興政策というのをどういうふうに考えていらっしゃるか。具体的に山を守る立場での山村振興策を積極的に取り上げていかなければならぬ、こう私は思うわけでございます。それに対する長官の考え方を伺っておきたいと思います。
  149. 秋山智英

    ○秋山政府委員 何と申しましても山村の林業を中心としました各種産業を活性化することが基本でございますし、定住条件整備することが大事でございます。また、定住条件整備する一環としましては、生活環境の整備の立ちおくれをどうして改善するか、これを積極的に進めるか、こういうことに相なろうと思います。  まず山村地域で一番大事なものは基盤整備、特に林道のようなものが生活関連にも影響しまして一番大事でございますので、これまでもいわゆる造林、林道の基盤整備を進めてまいりましたし、また、林業構造改善事業も第一次、第二次新林構というのをやってまいっております。もう一つ、昨年からは特用林産による村づくり事業と申しますか、どちらかといいますと林業というのは長期生産事業でございますので、年々の収入も上げていかなければいかぬわけでございますので、そういう意味で特用林産とうまくリンクさせるというようなことで林産集落の対策事業等も進めております。やはり林業自身を魅力のあるものにすることが必要でございますし、また、担い手を育成するということも大事でございまして、そういう面から私ども対策をとってきておるわけでございますが、もう一つ、この法改正によりまして都市の人たちの参加による森林整備というようなことによりまして林業活動を今後さらに活発化するということも大事でございますので、こういう考え方でこれからさらに進めてまいりたい、かように考えています。
  150. 串原義直

    ○串原委員 つまり、山で働く人たちがそこにいなければ山は守れないということだと思うのですよ。山で働く人たちの生活を保障する、いま一つは、安心して山の仕事に従事できる権利というものも含めて保障する、こういうものがなければ山に住む、山で働く人たちがふえるというわけにはいかないと思う。私はきょうは余り深めてまいりませんけれども、法改正をも含めて山で働く人たちの労働力確保、生活あるいは権利の保障、こういうものに取り組んでいかなければならぬ時代に来ているのではないか。その姿勢がなければなかなか山は守れない、プランを立てておくだけに終わってしまうのじゃないかと私は非常に心配するわけであります。その辺に対して、長官、どう考えられますか。
  151. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、やはり山村地域での定住条件整備するということが非常に大事でありますし、林業自身を魅力あるものにするための基盤整備を進めていかなければならないわけでございますし、また、その一環としまして、農林業の複合経営というような形で年間働ける場をつくるということも必要でございますので、まず私どもとしましては、そういう年間働けるような場をつくり、林業を魅力のあるものにし、農業、林業を複合した形での定住条件整備する。もう一つは、環境をよくするための諸施策を積極的に進めていくというようなこと、まずそれをやらなければいけないと思います。それに関連しまして、後継者育成のための対策をとるとか、あるいは林業労働の各種条件整備をするというようなことも同時並行的に進めていかなければならぬということで現在進めておるわけでございますが、さらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  152. 串原義直

    ○串原委員 きょうの議論だけで尽きる問題ではありませんけれども、いま長官が答弁されたように、まさに農業と林業との結合ということが、いま触れられましたけれども、欠けているのです。一番大事なところであるのに、どうもいまのところ農林水産省の取り組む姿勢を見ていると農・林の結合に欠けている。重要なことだと思っているわけであります。いまちょっと触れていただきましたから、私、あえて質問をいたしますけれども、農・林の結びつき、複合経営、この問題について具体的にこうあるべきだという関係機関との検討協議を進めていく時期に来ているのではないか、やらなければいかぬのではないかと思う。いかがですか。
  153. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この点につきましては、先生指摘のとおりでございまして、私ども農林水産省といたしましても、農・林・畜の複合経営のためどうすべきかということを現在検討を進めておるわけでございます。  また、特に私どもとしましては、畜産との関係も有機的にやらなければならぬという一環としまして、バイオマスの方の試験研究の中でも、たとえば広葉樹林から飼料をつくって、それで今度は畜産と林業をかみ合わせるというようなことも、前向きで現在検討しておるところでございます。
  154. 串原義直

    ○串原委員 大臣に伺いますけれども、私がいま質問したこと、長官が答弁したことを含めまして、大臣の立場で農・林の複合、非常に重要な問題でありますから、このことも含めて、改めて農林省としてこの複合経営、結合、これができるような検討機関を設けていくという考えはありませんか。
  155. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大変貴重な、適切な御意見を拝聴いたしました。ひとつ御要望に沿うような検討をしてみたいと思います。
  156. 串原義直

    ○串原委員 時間が来ましたから、ちょっと国有林の問題について触れさせていただくことにいたします。  国有林経営改善計画というのはどうも予定どおり進んでいないように私は思います。最も近い時点、つまり五十七年度末というのがよろしいでございましょうが、収支はどうなるのか。あるいは国有林会計の借入金の状況というのはどんなぐあいになるのか、予定といいますか、予想といいますか、お示しを願いたい。
  157. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業におきましては、五十三年以来、国有林野事業改善特別措置法に基づきまして改善計画つくりまして、鋭意努力をしておるわけでございます。私ども、機構の再編整備、簡素化の問題、要員の適正化の問題あるいは事業能率の向上の問題等につきまして、各般の努力をしてまいったつもりでございます。しかしながら、五十五年秋以降の木材価格の低落の問題、あるいは資源構造から伐採量を当分の間減少しなければならぬというふうな状況、さらにはいろいろと構造的なその他の問題もございまして、自主的努力にもかかわらず、残念ながら五十六年度末におきますところの累積欠損金が三千四百九億円でございます。それから、五十七年度末の長期債務の残高見込みが七千六百五十四億に達しているわけでございますが、私ども今後さらに一層経営改善に積極的に取り組んで、できるだけ早く健全性を確保したい、かように考えているところでございます。
  158. 串原義直

    ○串原委員 私は、実は単純に収入不足金というのを欠損金と呼んでいいかどうか、国有林野会計の場合ちょっと疑問に感じておる者の一人でありますが、大変厳しい情勢のお話があったわけでありますけれども、私が質問を始めました当初に申し上げましたように、経済情勢その他から見て、山を守るということはもう経済性重視では無理なんだ、だめなんだ、だめというよりはそういう見方は正しくない、私はこう考えているわけでございます。経済性だけを重視する考え方をこの際変えて、経営改善計画というのはいささか社会情勢の変化も踏まえる中で変えなければならない時期に来ているんではないか、私はこう思うのです。いかがですか。
  159. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業につきましては、やはり三本柱と申しますか、林産物の計画的造成供給という問題、国土保全等の公益的機能の発揮の問題、それから地域振興への寄与というふうなものが総合的に達成されるように経営していかなければならぬということで、現在、改善計画の基本もそういうところに置いてあります。  特に、四十八年以降におきましては公益的な機能を重視した新しい森林の施業方法というのを取り入れまして運営をしてまいってきておるわけでございまして、私どもは、健全な森林を管理経営することによりまして、いま申し上げましたようないろいろな機能が十分発揮できるものと考えております。
  160. 串原義直

    ○串原委員 いまのところ計画を変更するというふうには考えていない、こういうことですか。
  161. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども申し上げましたように、五十三年以来経営改善に努力してきたわけでございますが、伐採量の制約の問題あるいは材価の低落というふうなことによりまして、財務事情が大変厳しい情勢になっているわけであります。このような実情に対処しまして、私どもとしましても経営改善を一層促進、深化を図るということで取り組んできたところでありますが、今回の臨調の答申も出ましたので、その趣旨も踏まえまして、その具体化をこれから考えていかなければならぬと思っております。  特に臨調答申におきまして、林政審に特別の部会を設置して現行の改善計画の見直しの検討を進めよというようなお話もございますので、私ども、これから十分意見を伺いながら今後の改善路線を固めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  162. 串原義直

    ○串原委員 時間がだんだん迫りますから、端的に私伺いますけれども、国有林はほんのごく一部を除いて国土保全という公共事業だと私は思っているのですよ。そういう立場で取り組まなければ大変な事態を将来もたらすだろう、私はこう思っているのです。  そこで、経済的に採算の合う経済林、それからとても経済的には採算の合わない非経済林と言ったらいいんでしょうか、つまり国土保全、その地域、これは公共事業として考えていく、きちっと二分をしながら、公共事業の部分はここ、それにはこれだけの人が要る、予算も一般会計から投入をする中でこれだけ要る、こういうものをきちっと立てて取り組んでいかなければもう限界に来ているのじゃありませんか。私はこう思うのですよ。思い切って取り組む時期に来ているのじゃないか、こう思うのです。いかがでしょうか。
  163. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回の臨調答申にも御指摘いただいておりますが、国有林は全国に七百五十万ヘクタール余が分布しておるわけでございますが、脊梁山脈地帯もございますし、経済林として十分成り立つというところもございます。私ども、やはりそういうものについては区分をして、それぞれの森林にどういう取り扱いをすべきか、またどういう森林施業をすべきかということを、これからひとつ所要の措置も含めて検討してまいりたいと考えております。
  164. 串原義直

    ○串原委員 つまり、緑資源確保に対する重要性について触れてまいったところでございまするけれども、この緑資源確保に対する世論づくり、社会的条件づくりといいましょうか、まことに重大な時期にあると私は思っております。今日、緑を守ろうという声は国内外に高まってきております。時間が少のうございますから余り詳しくは触れておれませんけれども、去年のケニア・ナイロビにおける国連環境計画特別会議の開催、あるいは国内におきましては昭和五十七年に緑の地球防衛基金というのが設立をされる。報道機関の皆さんもグリーンキャンペーンを展開していただいて、この影響もいささか大きい。実は、私の地元の信濃毎日新聞というのが去年一年にわたって「森をつくる」というキャンペーンを張ってくれた、私は高く評価しているところでありますけれども、たとえばそういうことも含めて関心を呼んでいるわけでございますが、しかし、それにしてもまだ山に対する真の理解というものはなかなか得られがたい。  いま申し上げましたような情勢を踏まえまして、林野庁は、思い切った、世論づくりという表現がいいかどうかわかりませんが、世論づくり、社会的条件づくりに取り組むべきだ。重大な責任があると私は思う。今回の法改正も、姿勢は私はよろしいとは思うけれども、そういう世論づくり、社会的条件づくりがマッチしていきませんとなかなか実効は上がらない、こう思う。いかがでしょうか。
  165. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘のように、この緑資源の確保問題は最近大変いろいろなところで言われるようになってきたわけでございますが、私どもも、これまでも林業諸施策推進あるいは国土緑化運動の推進というようなことで、森林、林業の御理解をいただいてきたところでございますけれども、さらに私どもこれから特に主張すべきは、緑の問題はただ放置しただけではいかぬのでありまして、適正に管理して、機能がより高まった森林を維持、造成していくということがきわめて重要でございます。  そういう観点から、私ども、やはり適正な森林管理をするためのグリーンキャンペーンも五十八年度から従来に増しましてやってまいると同時に、いままでの国土緑化運動の推進につきましても、植樹祭のほかに育樹祭という、育樹の方にも重点を置く。さらには、今回の法案で御審議いただきます分収育林制度推進しまして、これによって一般の国民の皆さんの森林造成に対する理解と協力をいただくというようなこともしてまいりたいというふうに考えておりますが、当面のわが国の森林につきましては、森林を適正に管理するというところに特に重点を置いた緑キャンペーンなり、御理解をいただく運動を進めることが大事だろうと考えております。
  166. 串原義直

    ○串原委員 文部省に伺いたいわけですけれども、これもまことに時間がありませんから、端的に伺います。  文部省は、五十五年、教育指導要領から、山を守る、あるいは森林についての教科というものを除いた。私は、このセンスを実は当時疑ったものであります。識者も、これはどういうことなのかなと、大変批判をされていた。いま若干の議論をしてまいりましたように、緑を守ることは非常に重要な国家的課題である。したがいまして、子供のときからの教育というものにも大きな力点を置かなければならぬのではないか、重視されなければならぬのではないか、こう考えている者の一人であります。考えているなんというものではなくて、痛感している者の一人なんです。いま一度、指導要領に山を守るという教科を復活する考えはありませんか。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕
  167. 熱海則夫

    ○熱海説明員 お答え申し上げます。  ただいま学習指導要領の中から森林ということについて削除したというお話でございますけれども、ちょっと詳しく申し上げると、たとえば森林の重要性、森林の公益的な機能、こういったものについては、小学校四年では資源の確保とか、五年では国土の特色、あるいは理科の部では植物の成長と環境とか、こういった側面からまさに森林の公益的な機能については小学校からきちっと教えているわけであります。  ただ、今般いろいろ言われております削除したという話は、小学校で従来いろいろな産業という中で林業というものも扱っておったのですが、今回、言うなれば内容の大幅な精選というようなことから、小学校、中学校を見通して相当大幅な内容の精選を教育課程審議会の答申の中で指摘を受けましてその整理をしたわけです。その中で、林業に関しては、特に中学校の一年のところでやはりいろいろな産業の学習がありまして、そこでは十分取り扱っているわけでありますが、小学校については食糧生産と工業生産ということに重点を置くことにして、農業、水産業、工業、こういったものを重点に小学校では扱おう。ただし、もともと社会科というのは地域の問題を学習するものですから、それぞれの地域で取り扱う場合に、もちろん林業といったものも取り扱うことに指導しているわけであります。  ですから、いま教科書その他を見ても、記述の量は減りましたけれども、各教科書会社では、林業の取り扱いはもちろん教科書でもやっておるわけでありまして、義務教育全体からいって中学校で重点を置いてやる。そのかわり、小学校でももちろん地域のそういったかかわりの中で林業を扱う。それから同時に、先ほど申し上げましたように、森林の重要性については小学校、中学校を通じて相当強調してやっておるわけであります。  なお、昨年から全国に百数十校の勤労生産研究指定校というようなものを予算化いたしまして、その中では、植物を育てる、あるいは先ほどから申し上げておりますように、学校林、こういったものに対する作業というようなものを学校教育の中で積極的にやらせるような施策も現在とっておるところであります。  全体としてそういった考え方で、決して軽視しているわけじゃございませんで、今後とも充実してまいりたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  168. 串原義直

    ○串原委員 時間が過ぎたという紙がここに来ましたけれども、ちょっと一言だけ。  大臣、時間が参ってしまいましたので遺憾でありますが、いま文部省にお聞きをしたわけでありますけれども、義務教育が山に対する教育後退の姿勢があるとするならば大変に遺憾だという立場で伺いました。そこで、積極的に取り組んでいくという意味の答弁もいまなさいましたけれども、私から見るならば、どうも教育指導要領からだんだん後退をしていっているように見えてならない。そこで、総理も緑を守ろうという提起をされているようでありまするから、緑を守るということ、緑資源を確保するという重要な施策の上に立って、農林大臣から、閣議の際、文部行政も含めて、子供の教育から始めるのだという意味を含めて、政府全体が積極的に取り組むのだ、改めてそういう提案をしてもらいたい。そのことをここで約束してもらいたい。いかがですか。
  169. 金子岩三

    ○金子国務大臣 貴重な御提言でございます。御期待に沿うように努力いたします。
  170. 串原義直

    ○串原委員 終わります。
  171. 山崎平八郎

  172. 島田琢郎

    島田委員 最初に、林野の年度末手当についてお尋ねをしておきます。  新聞報道等によりますと、一般公務員については〇・五カ月分の年度末手当が三月十五日に支払われ、公企体の中でも電電、専売、郵政、印刷、造幣の五つの企業においてはすでに労働組合との間で支払い額や支払い日について合意が成立しています。仲裁裁定と同じように、林野庁の職員についてはまたぞろ支払いどころか回答さえいまだ示されていない。これは一体どういうことでありますか。
  173. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業の年度末手当につきましては、現在、諸般の情勢を総合的に勘案しつつ真剣に検討しているところでございます。あすがタイムリミットであるということを十分念頭に置きまして最大限に努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  174. 島田琢郎

    島田委員 おっしゃるように、五十七年度はあしたがタイムリミットですね。しかし、最大限の努力をするとおっしゃるが、すでにタイムリミットを越えた。技術的といいますか、支払いの時期としては、手続とかいろいろなものがあって、とてもあしたじゅうに支払いできないですね。あすがタイムリミットなので最大限努力をするということは、つまり債権債務の確定を行うというところまで腹を決められたと理解してよろしゅうございますか。
  175. 秋山智英

    ○秋山政府委員 重ねて申し上げて恐縮でございますが、現在まで諸般の事情で回答していませんが、とにかく時期が切迫していることは十分私も念頭に置きまして、最大限の努力をやってまいりたいということで御理解を賜りたいと思います。
  176. 島田琢郎

    島田委員 努力はもちろんしてもらわなければいけません。しかし、払うのが技術的にむずかしいのじゃありませんか。そうすれば、もう債権確定もして労働組合との協定に入らなくてはいけませんね。そのタイムリミットがもう来ているのじゃないですか。そのことを私は指摘したのです。
  177. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そのことも踏まえて、鋭意努力したいと思っています。
  178. 島田琢郎

    島田委員 昨年の仲裁裁定のときも同じことを私は申し上げたのでありますが、新聞なんかがかなり誤解をしている向きもあるようでありますし、また政府筋には、林野庁が赤字だから年度末手当は出さないとか、あるいは格差をつけるとかいったようなことを言っている向きがあるようであります。これはまことに事情を知らない者の言い分でありまして、この際、やはり認識をもう一度持ってもらわなければならぬ、こういう立場で私は若干質問をしておきたいと思うのです。  第一に、林野が今日財政事情が悪くなった、こう言いますけれども、これは先ほど串原委員質問の中にもお答えになっていたようでありますが、戦後の政策的需要というものが非常に大きくて、そのために過伐、乱伐も行われてきた。これは時代の要請という中でやむを得ずそういう資源の食いつぶしに近いようなことが行われた。それが現在不足を来していて、まさに再投資の時代に入っておるということで、一般的な企業の赤字と同列視することのできないものである。つまり、裏を返しますと、それは林野職員の責任でないということも一面には言えますね。他動的要因によってこういう経緯が生まれてきた、こういうことであります。  それから第二には、三十九年の仲裁裁定によって期末手当というものは公務員に準ずることとされた。もし業績が上がれば特別業績手当を支払うことができるのだ、こう定められたわけでありますが、残念ながら、以降、期末手当は一般公務員の支給率に準じて行われてはきましたものの、業績手当という点では行われてきませんでした。業績がないかと言えば、決してそうではない。いま再投資の時期に入って、現に汗を流してみんなが一生懸命がんばっている、こういうことでありますから、これを支払わないということについては問題があると私は思っている。  こうした一連の経過から見ても、林野庁は第三者の最終判断である仲裁裁定を尊重するという義務が課せられていることは間違いがない。そうした意味で、この手当に差をつけることは許されない、私はこのことを、仲裁裁定のときに同じことを申し上げたわけであります。当時の御答弁は、そんなに後ろ向きではなかったように思います。その見解はいまも変わっていませんね。
  179. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業の経営問題につきましては、長期的な構造要因によるところが大きいものととらえまして、現在、私ども、自主的努力を含みまして経営の健全性の確立を図ることにさらに一層努力する必要があると実は考えておるところであります。  いまお話のございました林野の期末手当でございますが、従来、一般公務員に準拠してきている経緯は私どもも十分承知しておるわけでございます。林野庁といたしましては、公共企業体につきまして、その事業の性格などから当面の経営状況によって職員の給与に差をつけることは、基本的には好ましくないと考えています。しかし、いずれにいたしましても、本年度の年度末手当につきましては、諸般の情勢を総合的に勘案いたしまして決定する必要があると私どもも考えておるところでございます。
  180. 島田琢郎

    島田委員 私は、諸般の事情というものが大変気に入らぬし、ひっかかるのですけれども、三十九年の仲裁裁定はその後の経緯からいっても遵守すべきものであると考えられるという林野庁の考え方、それを、基本的にとか諸般の情勢とかいろいろ言っておりますけれども、諸般の情勢は、私は前段で申し上げたとおりであります。何もいまの山の状態を生んだのは林野庁の職員の責任だと言うだけで済む問題ではありません。そうではなくて、むしろよそから強いられてこんな状態が生まれてきたのですから、汗を流して一生懸命がんばっているという事実は尊重されているわけであります。そういう点を考えますと、ここで差をつけるなんていうのは言語道断だ、私はこう思っています。しかも、ぎりぎりまで来ました。もう一遍長官のお考えを聞かせていただきたい。
  181. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど言いましたように、あすがタイムリミットであるということを十分念頭に置きまして最大限の努力をこれに注いでまいりたい、かように考えております。
  182. 島田琢郎

    島田委員 もう一遍聞きますが、私は、仲裁裁定はいわゆる特別業績手当の制度化に関する裁定と理解しておるわけです。したがって、同裁定の期末手当は公務員の例に準ずるとの指摘があるわけですね。公企体の職員の給与についての基本的な考え方を示されたという理解からは逸脱していないのでしょうね。
  183. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘昭和三十九年の仲裁裁定でございますが、いわゆる特別業績手当の制度化に関する裁定と理解しておりまして、同裁定の期末手当等は公務員の例に準ずるとの御指摘でございますが、これは公企体等の職員の給与についての基本的な考え方として示されたものと理解が一致しております。
  184. 島田琢郎

    島田委員 大臣、いま長官とのやりとりをお聞きになっていたと思います。大臣の決断を促したいと思いますが、いかがですか。
  185. 金子岩三

    ○金子国務大臣 時間も余り残されていませんし、最大の努力を続けて善処したい、このように考えております。
  186. 島田琢郎

    島田委員 大丈夫ですね。本当ですね、大臣。これは大臣の決断が要るんですよ。大丈夫ですね。
  187. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大丈夫ね、こう言われても、大丈夫ですというようなわけには現時点では申し上げにくいことなんでございますので、ひとつ最大限の努力を払いますということで御了承願います。
  188. 島田琢郎

    島田委員 心もとないけれども、きょうの本題に入っていきたいと思います。  二十四日に続きまして、きょう森林法の一部改正その他についてそれぞれ委員から非常に突っ込んだ質問がなされ、政府側からも、不満足な点はありますけれども、それなりに取り組む姿勢というものがおおよそ輪郭として明らかになってまいりました。私は、総体を通じて若干の質問をしてまいりたいと思っております。  何といっても、先ほど串原委員が強く指摘しておりましたように、山村振興というものをいましっかり考えていかなければいけない、それが第一であり、第二の点は、国土の七割を持っているセクション、林野庁は、その守備範囲において他の追従を許さない、そういうものを持っているという点で、一面では誇りを感じて、意気に感じてがんばってもらわなければならぬわけですが、残念ながらいま山の状態は感心できる状況にはない。そこで、何といってもみんなが山に目を向けて、そこに意識を集中させてしっかり基礎から山づくりを始める、官も民も含めてみんな一生懸命にならなければならぬときだという問題点の認識においては同じだろうと私は思うのです。それに対していろいろ法律とか制度とかを直したり使いながらやっていくわけでありますけれども、そういう意味では、本法の改正は一定程度踏み込んだという理解を私どもはしております。まだ完全に評価をするには至っておりませんが、そういう点では踏み込んだというふうに見ております。  ただ、問題は、あくまでも本法改正の趣旨を実効あらしめるということが林政全般をめぐる情勢に対して大変必要なのでありまして、その裏打ちというものが出てこないといけないわけで、そういう点では、法律の細かなところをいろいろ目を通していくとどうもまだオールマイティーとは言えない。いや、それどころか、大事な、肝心なところが欠けているような感じが強くするのであります。特に、過疎に伴いまして山村に住む限られた人たち、この人たちが何よりもみんなが参加をし、みんなが問題意識を同じくし、そして行動に移していく、こういう一連の一貫性を持った林政というものが地域を中心にしてつくられていくということが大変大事ですね。 そういう意味では、林業の整備計画、森林の整備計画などは従来の手法と違って、町村に上から押しつけるというのではなくて、下からつくり上げていくというピラミッド型の林政を展開していきたい、こういう点について踏み込んでいるという評価を私はしているのであります。  ところが、肝心かなめのところがまだどうも欠落しているなという感じが強くするのは、そうやって地域林政、地域の人たちにみんな参加してもらい、みんなの知恵をそこに出し合ってもらうというその一番大事な踏み出しのところにどうもあやふやな点があるんじゃないか、こういう感じかいたします。つまり、具体的に言いますと、せっかく市町村計画を立てるというものが取り込まれてきましたが、それは市町村長の裁量でやるなんということは技術的にも具体的にもできませんね。そこに、前段から申し上げてまいりました地域住民の参加が必要だ。ときには、極端なことを言えば、その町に住んでいて自分たちの緑を、そして森林を守る、また林業をしっかり根づかしていくために力が要るとすれば、商店のおやじさんにも床屋のおかみさんにも参加を願うことも必要かもしれません。でも、私はそこまでは言いません。山を自分で持っていて、山に関心があって緑を守っていかなければならぬ、どういうふうにしようかという知恵を持っておられる人たちは、やはり町村長のところに知恵を集めるべきだ。  ところが、そういう組織上の問題になってきますと、どうもはっきりしていない。そういう方向で指導していきたいというお考えは、委員の皆さん方の質問に対して一定の答え方をしているようでありますが、いまのお考えとしては、この法律の中にそういうものをしっかりとやはり明定して、町村長が責任を負う場合でも、みんなのコンセンサスで責任を負っているというのとひとりよがりでやるというのとではずいぶん違うわけですから、むしろ名前は何でも結構でありますが、山に対してみんなが集まってきて協議ができるという協議体みたいなものを法律の中にきちっと定置をさせた法律であれば、一〇〇%評価していいと私は思ったのです。そこら辺のところがどうも余りはっきりしていないのではないか、こんな感じを持ちますが、長官の意見を聞きたいと思います。
  189. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回の森林整備計画の対象となっておりますのは、御承知のとおり、間伐、保育のおくれた森林の整備充実強化するということでございます。  本来、間伐あるいは保育と申しますのは、それぞれ森林所有者の皆さんが自主的に自分の考え方に基づいて実施するというのが基本的な考え方でございますが、それが行い得ない客観情勢の中にございますので、行政指導によりましてこれを進めてまいる、こういう考え方に立っているわけでございます。私ども、そういうたてまえに立ちました整備計画を立てるわけでございますが、実効性を確保するためには、樹立に際しまして必要に応じまして関係者の方々の意見を聞くというのが望ましいわけでございますので、地域の実情に即しまして、市町村長の自主性を踏まえて、この協議会等の開催等によりましてそういう場をつくるように指導していきたい、このように考えているわけでございます。
  190. 島田琢郎

    島田委員 行政指導でおやりになる、こういうことでありますから、つまりは通達のようなものでその義務づけをするといいますか、方向性をきちっと明示する、こういうことだろうと私は思うのです。ただ、町村長の好みで選ばれたのでは何の意味も持ちません。あいつは好きだから入れる、こいつはいろいろやかましいことを言うやつだから排除する、これでは本当の協議体になりませんね。真剣に山を考える人であるならばそういう人たちを参加させる、こういうことが必要だと思うのです。その範囲をどのように考えていますか。
  191. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども触れましたように、今回の森林整備計画を立てるに当たりましては、その実効性を確保しなければこれは画餅に帰するわけでございます。したがいまして、それぞれの市町村における事情というものがございますので、そういう事情に応じまして、私どもは、森林所有者その他林業関係者によるところの協議会の開催等によりまして関係者の意見を聴取するというふうなことを考えていきたいと思っております。
  192. 島田琢郎

    島田委員 どうもはっきりしません。森林所有者、山に関係する人たち、これもかなり抽象的ではありますけれども、私は先ほどから何回も言っておりますが、山づくり、山村振興に積極的に参加をする、そういう気持ちを持っている人たちは山の関係者という範囲に定義的には入るかもしれないが、具体的にはまだ入っておりませんね。山持ちだ、これだけでは不備だと私は思うのです。いまおっしゃったように、実際に事業の実効、事業が前に進むということがねらいでなければいけませんから、そうであると、ほかの職業と違って山というのはひとりで山づくりができるわけではありません。山持ちができるわけではない。造林にしたって植林にしたって伐採にしたって、あるいは林道一つつけるのだってやはり人手が要りますね。つまり、これは労働者というのが大変必要なセクションです。そういう人たちの意見も聞くということは大変大事だし、そういうまさに山に命をかけた山男がいるのですし、また専門家もおります。知識と自分の体験、そして山にかける熱意、こういうものを持っている人が少なくありません。それも入れると理解していいですか。
  193. 秋山智英

    ○秋山政府委員 地域のそれぞれの特徴、事情によりましてその対象の範囲には若干の相違はあると思いますが、これは基本的には市町村長の自主性に任せて、私は、林業関係者の方々を中心とした協議会で進めてまいりたいと思っております。  なお、重ねて申し上げますが、間伐、保育と申しますのは、本来林業経営者自身がやるべきものをできないために行政的に指導するというたてまえがございます。したがいまして、そういうことを踏まえてやりますと、やはり森林の持っております公益的機能の問題とそれから森林所有者の林業経営との接点の問題がございます。その辺は十分踏まえて考えていかなければ本来の実効性を上げられないという面がございますので、あくまでもこの整備計画の実効性を確保するという観点から協議会の内容を決めていくものであろうというふうに考えております。
  194. 島田琢郎

    島田委員 本法の改正のねらいという点でいまお話があったわけでございますけれども、市町村の整備計画、これは今度の法律のねらいは間伐、育林、こういうことに目的を置いているようでありますけれども、しかし、間伐をする、育林をするといっても山そのものが全体あるわけですからね。そして、間伐をするにしても育林をするにしても、林道も必要になるでしょう。間伐であろうと造材であろうと何であろうと、木を切るという作業がそこについてくるわけです。ですから、この事業計画の内容を間伐、育林だけに限定するということは、地域林業の振興という立場から言いますと私は片手落ちだと思う。  当面問題になっているのは間伐だ育林だということは、問題意識としては私はわかります。しかし、そんな局部的な、局面的な一面だけを見てやっていくと、それこそ山を見失うということになりかねない。だから、少なくとも地域の林業振興というものが大命題としてあるのであれば、整備計画の内容というものがそういうものに沿ったものでなくてはいけないと私は思う。必要最小限な事業計画はここに盛り込むということが基礎にあって、そこから間伐、保育という問題を事業執行の上で手厚くやっていく、こういうことならわかりますけれども、そうではないようなお考えがいま示されているのですが、これはせっかくの整備計画ですから、そこまでやっていかないと山はよくならない、こういう感じを私は強く持ちますので、再度お考えを聞かせていただきたいと思います。
  195. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども触れましたとおり、この森林整備計画は間伐、保育を主たる計画事項としておりますが、必ずしも間伐、保育に限らず、この制度の趣旨に合致する限りにおきましては、「森林の整備に関する基本的事項」あるいは「作業路網その他森林の整備のために必要な施設の整備に関する事項」、さらには「その他森林の整備のために必要な事項」という項目がございますので、この計画事項の中で定め得ることにしております。その場合、保育、間伐以外にどのような内容を盛り込むかということにつきましては、各地域の市町村によってそれぞれ事情が異なりますので、私どもといたしましては、一律に指導するよりもこの点はむしろ市町村の自主性にゆだねてまいりたい、かように考えております。
  196. 島田琢郎

    島田委員 市町村の自主性に任せたいというお考えは、私は否定するのではありません。確かにその町村、その地域の森林の実態、置かれている山村の状況はそれぞれ違いますから、そこに自主性と創意性、オリジナル性というものを取り込んだ山の新しい物の見方、考え方というものは正しいことだと思うのです。  ただ、くどいようですけれども、それにしても限定された人たちでちょこちょこと話をしてということになったら山はおかしくなる。いままでもそうだったのですから。先ほど言いましたけれども、町村長のえり好み、好き好みで気に入る者だけ集まってきて、まあ一生懸命知恵を出せよ、そういうやり方をしていたのでは山はよくならない。そこを、くどいようですけれども私は言っているわけであります。  長官の腹の中には私の言っていることと同じような思想が、言葉に出てこないだけで、あるのかもしれません。善意に解釈して私はそう理解をしておきますけれども、しかし、それを誤ってほしくない。だから、長官通達をお出しになるときにも、確かに大命題、いわゆる表題としては自主性、独創性というものを尊重しますよということでいいのでありますけれども、それだけでは困るので、その場合に大方のアウトラインとしてかくあるべしという行政の責任においての指導をやはり行う。そして、そこから地域林業の振興、山村振興というものを林野庁のサイドからも誘導していく。そういうものが今度の法律になければ、せっかくつくったものがつくっただけに終わってしまうのではないかという心配を依然払拭できずにいまいるのです。何か私がすとんと納得するようなことをお答えいただけませんか。
  197. 秋山智英

    ○秋山政府委員 通達を出すに当たりましては、私もその辺を十分踏まえまして検討いたしたいと存じます。
  198. 島田琢郎

    島田委員 先ほど竹内委員がこのことを盛んに質問されたのでありますが、どうも答えは同じような範囲を出ないようであります。  時間が限られているものですから、先へ進まざるを得ないのでありますが、そこで、町村の自主性、確かにそれはありますし、余り手足を縛るのはいかぬということは、民主的な立場から言えばそのとおりであります。しかし、正直言って、実態は果たして法律が志向するような方向でそう簡単に行けるかどうかとなりますと、話はまた別であります。第一、全国の市町村の中で林務課あるいは林務部、または林政を取り仕切るという市町村の体制にあるのかどうかというと、大変お粗末な気がします。全国的にはどういう傾向になっているのか、お調べになったことがあれば御発表いただきたい。
  199. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在、市町村におきまして林務課あるいは林務係という林業単独のセクションを持っております市町村は約九百ございます。それから、農林係あるいは農林水産係というふうな係を持っておりますところが約六百ほどございます。  私ども昭和四十年代後半から五十年代にかけまして、予算措置といたしまして各種の林業施策を展開するに当たりましては、町村を中心とした施策をだんだんと多く盛り込んでまいっておりまして、市町村におきますところの林務関係の機能もだんだんと高まってまいっております。私どもは、そういう機能の強化を今後さらに森林整備計画の策定ということを踏み台にいたしまして拡充強化してまいりたい、かように考えております。
  200. 島田琢郎

    島田委員 当面そこまで拡充強化をするというのには多少時間がかかるのじゃないか、私はこう思います。早速、この法律が効力を発揮してまいりますと、全国に幾つかのブロックといいますか、町村指定が行われるわけです。  その場合、何といってもやはり農林課みたいなものの中の林というのは大変力が弱い。総体的には六百あるといっても、私は弱いのだろうと思うのです。ですから、どこかがお手伝いをしていくという必要があるでしょう。今度臨調の押しつけによって林業改良普及員、指導員というところの問題がやはりこの法律の中に出てきております。よもや林野庁は臨調の意見に従ってこの指導体制を弱体化するなどという考えはないと思いますが、いま全国を歩いても、県の林業指導所というものの機能というのはまだまだ十全とは言えないと思います。  そういう意味で、私は林業改良普及員や指導員の人たちが本当に縁の下の力持ちのような立場で、しかし一生懸命がんばっているという点を考えますと、むしろ臨調の言い分に反対攻勢をかけるような形で、そういう人たちの役割りなりあるいは仕事の守備範囲なり、そういうものを広げていって彼らの仕事に生きがいを与えるということが林野庁としては前向きの姿勢だと思うのです。具体的には、そういう市町村整備計画が立てられたような段階で、積極的にその人たちが参加をして、実際に鉛筆をなめて計画を立てていくというところからこの人たちが力を発揮できるようにしてあげる、こういうことが必要だと思うのです。これは道の職員、県の職員という立場はございますけれども、そこのところは自治省と話し合いはつくだろうと私は思うのです。何も仕事を減らすとか奪うとかじゃありませんから。いまのままにしておったら、臨調の方ではそれをなくしたいという気持ちがあるから交付金制度に変えたわけで、ねらいは明らかなのでありますから、そういうことがないように森林法の改正に当たってむしろ積極的な立場に置きかえていく、こういうことをお考え願いたいと思っていますが、どうですか。
  201. 秋山智英

    ○秋山政府委員 普及指導員、指導職員につきましては、これはやはり日ごろ現地におきまして森林所有者に直接林業技術あるいは防除技術その他の指導を行っておるわけでありまして、現地について一番詳しいわけでございます。したがいまして、私ども、今回の市町村の森林整備計画をつくるに当たりましても、この方々の役割りというのはやはり大きく評価しているわけでございます。  そこで、具体的にこの計画をつくるに当たりましては、樹立に対しましての助言であるとかあるいは間伐、保育を行うに当たりましての技術指導、こういう問題につきまして、現地の実態に即した形で対応させてまいりたいと思っております。  そこで、やはりこれからの普及がそういう形できわめて重要でございますので、今回交付金の方式を導入しましても、従来の都道府県の負担部分と申しますのは、その財源は地方交付税に算入されることになっております。また、国は都道府県の自主性を尊重しながら、今後の普及指導員の適正配置については私ども十分指導をするつもりでございまして、決して私どもこれを弱体化させるということはなく、むしろ積極的に自主性を生かしながら能率的、効率的に進めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  202. 島田琢郎

    島田委員 そうしますと、それだけのお考えがあるのであれば要員はちゃんと確保する。  それから、今度は交付金制度に変わるということでありますから、お金の流れというものが必ずしもいままでみたいに明確ではない。その反面、県の立場では積極的にやれるということもあるわけですね。ですから、交付金の上に積み増しをして山を守るということが大事だということの認識がその県の知事にあれば、これは前進するでしょう。しかし、ややもすると、地方財政もこう窮屈になっていますから、何となしに切りたくなる。一等先に切りたくなるのはそういう改良普及員、技術員、試験場の職員みたいなことになりかねないのがいままでの流れであります。そういうことはないようにするといういまのお話でありますが、やっぱり財源の確保というのが大変大きな課題でありますね。同時にまた、物価が大きく変動するなんという場合にも、それがきちっとフォローされるということの条件が出てこないとこれはいけません。この点も大丈夫でしょうか。
  203. 秋山智英

    ○秋山政府委員 財源確保の問題でございますが、この事業の実施主体は御承知のとおり都道府県であることは当然でございまして、この普及指導職員の必置義務は従来どおりでございます。 そういうこともございますので、事業実施の経費の相当部分は本来は事業実施主体が負うべきものでございます。また、各都道府県の事業量でございますが、これは交付金を交付する段階におきまして十分国と話し合いをしながら定めてまいりたいと思っています。また、従来の林業普及指導事業に係るところの都道府県の負担部分に相当する財源でございますが、これは地方交付税の基準財政需要額に算入されることになっております。したがいまして、これらのことから従来どおり相当の経費の負担がなされるものと考えております。  先生いま御指摘の、それでは今後物価の変動、給与の変動によって、その場合にどうするかということでありますが、私ども、この総額につきましては、物価、給与等の著しい変動によりましてこの事業の円滑な実施が損なわれるという場合には、そういうことのないように林野庁といたしましては予算折衝を通じまして適切に対処してまいりたい、かように考えておるところであります。
  204. 島田琢郎

    島田委員 ところで、先ほど申し上げましたが、この事業の実行に当たりまして大変大事なのは林業労働力の確保であります。この状態はいま大変憂慮される状態にある。山で稼いでいる人たちも一生懸命がんばっておるのでありますが、雇用が必ずしも安定していない。そればかりではない。現に稼いでいる人たちの社会的な保障もきわめて貧弱である、むしろないに等しい、こういうことも言えるのではないかと思います。特に、すでに森林組合の中には労務班というようなものも組織されて事業の執行に当たっているわけであります。  きょうは時間がもうなくなってきましたから、主として民間の林業労働の実態について問題の提起をしておきたい、こう思うのです。  森林法の第一条によりますと、「森林の保続培義と森林生産力の増進」云々、そしてその目的達成のためには、森林を守り育てる林業労働者の問題というのは、計画制度のあり方とこれはまさに車の両輪的役割りを果たしている、きわめて重要だ、こう思うのです。幾ら計画がよくても、山を実際によくするという実動部隊がなかったら山はよくならない。こんなことはあたりまえの話ですね。それは、国有林は国有林労働者が分担していますが、民間における労働者、ここに大きな期待をかけなくてはならない。  ところが、いま言いましたように、雇用が非常に不安定である。社会保障も十分でない。まさにないに等しい。そして、職業病に冒されたり死亡災害の悲惨な実態に置かれたり、こういうことが問題として大変指摘をされています。ですから、そろそろこの辺で本腰を入れて民間林業労働者の問題に手をつけるべきときではないか、私はこう思うのです。  そこで、森林組合労務班、これは組織されており、森林組合という認知された組合の中におる職員でありますから、ここはちゃんとなっているかな、こう思ったが、調べてみますとここだって大変問題がありますね。たとえば社会保障の関係でいいますと、社会保険には幾つかございます。労災、失業保険、いまは雇用保険、健康保険、日雇い健保、そして退職金の共済、いろいろあります。この加入の実態を見ますと、これは五十五年度の統計数字だから少し違っているかもしれませんが、森林組合作業班というのは六万三千七百二十名おる。そのうち、労災はさすがに加入率が高く、六万五千人おって、一〇二・六%加入しています。雇用保険は二万三千人の加入者で三七・二%。健康保険が五千人で七・六%。日雇い健保はなきに等しい。二百九十九人で〇・五%という加入率だから、これは話にならぬ。せっかく中小企業法に基づきます退職金共済制度が新設されましたが、これも三年目に入っているはずでありますが、まだ一二・九%の加入率でしかない。  組織されたところでさえこの始末です。いわんや民間で働く山の労働者たちが大変な状態にいま置かれていることは、容易に想像できるわけであります。こういう人たちは働くのに精いっぱい。毎日毎日の糧を求めて、自分のことさえも考える暇もなく働き続けている。だから、その結果振動障害にかかったり、死亡災害という大変な状態に追い込まれている。  そもそも死亡災害一つ見てみても、これは時間がないから私の持っている数字で申し上げます。間違っていたら反論してください。どれぐらい起こっているか、五十年からずっと見てみますと、五十六年までに約九百人が死んでいます。毎年実に百二十八人が山で働き、とうとい命を失っている。これ一つを見ても、ほっておけないのではないでしょうか。炭鉱にも大変な大災害が、夕張何とかでも起こった。その後も起こりました。大変な人が亡くなったと社会問題化しているのでありますが、それに比べて、年間平均で言いますれば、山で働く労働者が亡くなっている率は実に六倍にもなっているのです。  それから、問題になりますのが白ろう病に象徴される振動障害。これは、現在認定されている人だけが国有林で三千五百八十七名、民有林では七千二百九十七名。これは認定されている人だけですよ。実に一万人の人たちが職業病に苦しんでいる。これはまさに氷山の一角と言ってもいいのではないか。潜在的にはもっとたくさん職業病に苦しむ人たちがいるということは容易に推測できることですし、現に私どもはその事実を承知しているわけであります。認定というところまでいくのはなかなか大変であります。そういう中から、職業病の発生がきわめて異常な状態にある。  私も全国をずっと、ほとんど行かないところはないくらい歩きました。行った先々で民間労働者の皆さんから訴えられているのはこの職業病の問題、白ろう病の問題です。しかも、手を握ってみますと明らかにこれは重症だ、仕事ができる状況にないという人たちが現にチェーンソーを持って山で仕事をしている、相当数の人たちに私は会いました。だから、私は、山の問題を取り上げますと白ろう病をほっておけないということを叫び続けているわけであります。  そういう人たちに、なぜ健康診断をして認定手続をしないのだ、こんな状態なら廃人になってしまうじゃないですかと言いますと、振動病だなどということが親方に知れたら仕事ができなくなってしまう、取られてしまう、こういう訴えをする方が非常に多いのです。首になっては元も子もない、こういう恐怖感が強く皆さんにあるようであります。だからといって、このままで働くなどということはとんでもないことになるじゃないか、こう言ってもなかなか、きょう食べるそのことに一生懸命にならざるを得ない。きょうは、労働省もおいでですね。労働省も篤と聞いていてください。これは何回もやったから耳にたこができるかもしれぬが、改めて私はこの実態を訴えておきたい。  特に、これは山形の例でありますけれども、山形県で健康診断を行った結果、治療が必要と判断された人が当時四十五人おりました。この四十五人の追跡調査を行ってまいりますと、そのうち労災認定をしている者がたった四名しかいない。労働省、よく聞いていてください。一体これはどういうことなのだろうか。そして、四十五名のうち、いまなおチェーンソーを持って山で働いている人が十五人いる。その他の人たちも病気を隠し、もちろん治療はしていない、こういうことであります。  ですから、潜在患者というのは相当いるのではないか、私はこういうふうに思います。なぜこんな実態になっているかということをお話しする材料として、私は、林野庁がお調べになった中の大事な点だけ抜いてお話をします。いまのは山形県だけです。これからのお話は山形県だけの話ではございませんが、一般的にこういう傾向。これは林野庁がお調べになっている。  二時間規制について、四十五年の二月二十八日に通達が出されております。百三十四号であります。以来、十三年経過している。しかし、二時間規制を知らないという人がいる。これは、チェーンソーを使っている人で一二%もいるのです。五千八百十六名も二時間規制なんておれは知らなかったという人がいる。刈り払い機がありますが、刈り払い機に至っては、約一万人の人たち、つまり三〇%の人が二時間規制は知らないと答えている。私が調べたのではないですよ。林野庁がお調べになったのですよ。時間がないから、私はそのことをお聞きする前に、私の手にした資料によりますとこういうことなんです。これはまさか否定なさるまい、林野庁がお調べになっているのだから。そしてまた、二時間規制を知らない人も知っている人も含めて、現に二時間規制を守っていない人たちがチェーンソーの使用者の中に四二%。刈り払い機では二人に一人が二時間規制を守っていない。  それから、労働省がお決めになった三G以下のチェーンソー、これは政令で決められておりますが、三Gを超えるチェーンソー使用者は、依然として、あれだけチェーンソーの買いかえだとかいろいろなことをやったけれども、まだ六%、三千人も三Gを超えるチェーンソーを使っている人がいる。特に、三Gなんていうそんな政令を知らなかったという人が、驚くなかれ一万五千人、三〇%もいるわけです。これはゆゆしき一大事と言わざるを得ないんじゃないでしょうか。  しかも、林業白書を、四十七年から五十六年までの中の八年間をずっと見てみますと、林業労働の動向に関する林業白書がこう言っていますね。高齢化、女子化、そしてこういう職業病の認定にかかわるような問題を持っている者が相当数いることは認める、特に高齢化、女子化の傾向というのは一層顕著になっていると四十七年の林業白書は述べています。  そして、それではこういう実態を踏まえて、この対策はどうあったのかといいますと、幾つかここに出されています。特徴的なものを挙げますと、学校教育の充実だとか、通年就労促進対策で通年就労奨励金の助成を行うとか、林業労働環境の整備を促進していくための助成であるとか、失業保険の季節的受給者通年雇用奨励金の制度化を図るとか、社会環境の整備制度的にやっていくとか、大変きれいごとが並べられている。しかし、それが六年、七年たった今日実効が上がったのかといえば、全く上がっていないばかりか、ますます高齢化、女子化が進んでいる。災害も依然として、さっき申し上げましたように、死亡災害一つとってみても六倍も七倍もの、他の業種と比べて驚くべき死亡災害が起こっている。何にも変わっていないですね。  林業白書なんていうのは、何となしに決められているから書けばいいんだ、こういうものではないと僕は思うのです。しかも、これは毎年同じことを言っている。林業労働力対策の中で学校教育の充実、同じことを言っていますよ。全部同じことを言っている。ちっとも実効は上がっていない。さっき串原委員が文部省にただしましたけれども、それは文部省の所管だから私は知らぬ、こんなわけにはいきません。としたら、五年くらいたったら、学校教育の充実という文句ぐらいはなくなってしかるべきじゃないですか。同じですね、これは。しかも、就業者の動向というのは、四十年のときに二十六万四千人、それがどんどん減っている。いまは二十万人を切るような状態ではないか、こんなふうに見ていいと思うのです。  そうしますと、私は、大変残念ながら林野庁は民間の大事な労働者のことを考えていないのではないかと思わざるを得ない。これは労働問題ですから、労働省も関係がある。この実態について、労働省は承知をしていますか。承知をしていれば見解を承り、今後どうするべきかもあわせてお話し願えればありがたいと思いますが、どうですか。
  205. 野崎和昭

    ○野崎説明員 先生お話しのような林業労働の厳しい状況、特に厳しい自然環境の中で危険度の高い作業に従事しておられますし、また、他産業に見られません振動障害も多発しております。そういった点は十分認識しているつもりでございまして、特に安全衛生の確保という点に重点を置きまして監督指導に鋭意努めているところでございます。
  206. 島田琢郎

    島田委員 林野庁林政部長、担当ですが、いまの実態について、一生懸命やっていますと言っていますが、林野庁として満足していますか。
  207. 後藤康夫

    ○後藤説明員 林業労働の問題は、将来のわが国の森林の整備とか森林資源の充実のためにも非常に重要な問題だと考えております。この問題につきまして、私ども、振動障害問題を初めとして、労働省、それからまた問題によりましては厚生省とも連携を年々密にいたしながら、御質問の中にございましたようにまだまだ充実すべき点が残っておると思いますけれども、年々努力を積み重ねてまいってきております。今後とも労働省と十分連携をとりながら努力をしてまいりたいと思っております。
  208. 島田琢郎

    島田委員 高齢化とともに、婦人の山林労働としての働く場所が非常に多くなっています。それに伴って、御婦人が山で働いている数がふえています。婦人対策について、労働省として何かお考えがあれば聞きたい、こう思います。
  209. 佐藤ギン子

    佐藤説明員 いま先生から御指摘ございましたように、最近、林業関係につきましてもかなり女子の労働者が多いわけでございます。その中には刈り払い機の仕事に従事しておられる方もおられるわけでございまして、私どもとしても実態把握に努め、今後対策に努めてまいりたいと考えております。
  210. 島田琢郎

    島田委員 統計的数字がないというお話を前にも聞きましたから、ぜひひとつ関心を持ってこれからこの問題に取り組んでもらう。特に、山の問題では林野庁も責任があります。御婦人の進出が非常にふえている。  さて、このように述べてまいりますと、この森林法の改正に当たって、一番大事な山の実行部隊、実効が上がるようにがんばらなければならない、また、がんばってもらわなければならないこの労働対策というものが、この法律の中では全く欠落をしている。本来なら、これと一緒に民間の林業労働者のための労働法ぐらい出てこなければ本当はおかしい。その点のフォローがありません。  したがって、わが党としてはここに林業労働法というものをいまつくっているところであります。それは、いま申し上げましたような点、いつまでもこんなことをほっておかれないじゃないか。社会的大問題である。同時にまた、山づくり、山づくりと幾ら言ったって、こんな状態が片一方で生まれている、これをそのままにしておいてわが国の山がよくなるわけはない。こういう点で、森林法という大事な法案が皆さんのところで検討されて提起されたのであるならば、あわせて、山の労働問題についても真剣に考えるという考え方が出てくる。私をして言わしめれば、これはまさに実施法の中の最大の目玉だ。いま一番大事な点だ。ここを考えていかなくちゃいけないと思うのです。政府はそういうお考えを出しておりませんから、わが党は近くこの国会に林業労働法を、いま申し上げましたようなものを全部盛り込んで、山で真剣に働いていただく限りは私たちがしっかりと守ってあげる、こういうことにしていきたいと考えて作業が進められているところでございます。  わが党の林業労働法に対するおおよその中身は林野庁も労働省も大体検討されているのではないかと思いますが、私としては、そうした問題については、行政もわれわれ立法府も含めて真剣に考えていくという問題意識をきょうはしっかり統一しておきたいという願いを持っているわけです。お考えがあれば、この際、両省からお聞きしたいと思います。
  211. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業労働法の法的な措置の要否の問題につきましては、基本的には労働行政の立場から判断すべきものでございますので、そういうことを前提といたしまして申し上げますと、ただいまお話のございましたとおり、林業につきましては規模の零細性の問題、あるいは労働そのものに季節性というような問題がございまして……
  212. 島田琢郎

    島田委員 一般論を聞いているのではない。時間がなくなったのでもう一遍質問し直します。  つまり、そうした労働の問題というのは大事だ。したがって、労働法という具体的な問題についても考えなければならぬとお考えになっているか、必要ないと思っているか、そこのところだけ聞かしてください。
  213. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現段階におきましては、それよりまず前提といたしましていろいろの条件整備をやらなければならぬということに私ども重点を置いて対処してまいりたいと考えております。
  214. 島田琢郎

    島田委員 わかりました。
  215. 野崎和昭

    ○野崎説明員 先生指摘の林業労働法案の要綱につきましては、先般私どもも拝見させていただいておりまして、省内各局にまたがる重要な問題でございますので、現在、各局各課で勉強させていただいている段階でございます。非常に重要な問題提起かと思いますので、この場でコメントすることは控えさせていただきたいと思いますけれども、引き続き勉強させていただきたいと思っております。
  216. 島田琢郎

    島田委員 時間が来ましたのでこれで終わりたいと思いますが、国会に提出されましたときには与党の自民党の皆さんも御協力くださるように、この際、お願いいたしておきたいと思います。  以上で質問を終わりたいと思います。
  217. 山崎平八郎

    山崎委員長 吉浦忠治君。
  218. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最近、開発途上国等におきましても森林の破壊と砂漠化現象というのが大きな問題になっているわけでございます。いわゆる緑の保全が地球的規模で問題視されているわけでありますが、日本の場合は幸いにしてまだ国土の約七割が森林でありますし、法案の提案理由説明の中にもありましたように、人工林が一千万ヘクタールになっているとのことであります。森林は木材を生産するばかりでなくて、国土の安全あるいは水資源の涵養、生活環境の保全など国民生活に欠かせないものでございます。これらの森林が木材需要の低迷、林業の経営費の増高などの理由によりまして十分に管理されないまま放置されているものがふえているということは、まことに憂慮すべき事態だというふうに思うわけでございます。  このようなときに、この事態に対処すべく市町村における森林整備計画制度の導入、分収育林制度の創設等を図り、森林の整備推進するための法案が提出されたものでありますが、まずこの森林整備計画制度について幾つかの質問を申し上げたい。  森林整備計画制度は、間伐、保育等を推進し、林業生産活動の活性化に資するとしておるわけでございますが、林業生産となりますと、一般的には農山村の市町村が多いというふうに考えられるわけであります。私の住んでおります千葉県もその例で、山武林業地帯と言われてまいりましたが、林業地帯はその一部でありまして、一般的には林業振興を図るような地域は少ないわけであります。これは何も千葉県に限ったことではないと思うわけでありまして、都市近郊の地域について言えることだろうと思います。しかしながら、一方において、人工林率は全国平均よりも高くなる。間伐、保育を実施しなければならない森林は、現在、相当存在しているというふうに思うわけであります。  このようなことを考えて、まず、森林整備市町村となる具体的要件というものはどういうふうに考えていらっしゃるか、この点をお伺いいたしたい。
  219. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回の整備計画におきましては、ある程度まとまって一体的かつ計画的に間伐を実施しなければならぬ、そういう面から考えてまいりますと、やはり森林面積が一定面積以上なければならぬ、また人工林面積も相当なければならぬということで鋭意検討しているわけでございますが、まず、市町村の森林面積が一定規模以上あるということから考えまして、おおむね市町村で二千ヘクタールを要件の一つ検討しているわけでございます。しかしながら、先生指摘のとおり、中には、二千ヘクタールございませんがきわめて林業意欲があり、人工林率が高い、そういう町村がございますので、そういう町村も対象にするためには、各都道府県の平均以上の人工林率を持っている市町村をその対象にしていったらどうかということで現在検討しております。
  220. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 また、都市近郊の市町村であっても森林整備市町村として指定されるのかどうか。この点、いかがでございますか。
  221. 秋山智英

    ○秋山政府委員 ただいま申し上げましたような条件に沿い、かつまた林業関係につきまして意欲的な町村につきましては、私ども積極的に指定をお願いして進めてまいりたいと思っております。
  222. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、森林整備計画制度は、指定された市町村が森林整備計画をつくって計画の達成上必要な場合に所要の勧告ができるというふうになっておりますが、現実には簡単に勧告できるものではないだろうというふうに思うわけであります。それは、勧告によって計画を達成しようとすることは無理だろうというふうに思います。いろいろな助成措置を講じてこそ勧告ができるのではないかというふうに思うわけでありまして、そこで、この森林整備計画をつくった市町村に対してどのような助成措置を講じ、また、その実効を図ろうというふうにお考えなのか、この点をお伺いいたしたい。
  223. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林整備計画をつくるに当たりまして、私どもやはり林業関連施策を同時並行的に進めなければならぬということで考えておりまして、当然、地域林業整備育成対策事業というものを同時並行的に進めてまいりまして、これを活用しながら、間伐促進対策事業であるとか森林総合整備事業であるとか、そういう各種の事業をうまくかみ合わせながら実効を上げるように進めてまいりたいと考えております。
  224. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 森林整備計画達成のための施策についてお尋ねをいたしますが、今回の計画制度の体制では、間伐や保育の促進を図ることになるということにありますけれども、特に間伐の施業を推進するために間伐材の利用の拡大あるいは価格の安定ということが大事だろうと思うわけでありまして、こういう点に対する対策をどのように講じられるのか、また、このことについてどのようにお考えなのか、お尋ねをいたしたい。
  225. 秋山智英

    ○秋山政府委員 従来間伐がなかなか促進しなかった理由と申しますのは、伐採された間伐材を有効利用するための手だてが必ずしも十分でなかったということにございます。したがいまして、私ども、やはり木材需要の中における間伐の利用対策というものをさらに積極的に進めていかなければならぬわけであります。  もちろん間伐材を出すための林道あるいは作業道の整備は当然でございますが、出てくる間伐材というのは、どちらかと申しますと小径木でございますので、その利用開発、たとえば集成材にするとか、あるいは、何と申しますか、丸棒のような形で各種の木工品に使うとか、さらにはセブンバイセブンというような形で現在開発しておりますところの住宅に活用するとか、そういうふうな利用開発を進めながら、一方におきましては、従来間伐材の需要と供給がうまくいかなかったのはやはり情報、流通が必ずしもうまくいっておりませんので、これにつきましては情報銀行というのをつくりまして、生産情報と供給情報をうまくリンクさせながら供給するというような方法も現在実際に検討し始めています。  さらには、この間伐材を利用するに当たりましての促進資金というものがやはりなかなか不十分であったために、これを昨年から国産材産業振興資金の中に特にまた別枠で設けましてその資金を使うというふうな、流通面、伐採促進面、金融面というような各種の部分でやると同時に、需要開拓を進めていくことがきわめて重要であると考えています。
  226. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 価格の安定の面ではいかがお考えですか。
  227. 秋山智英

    ○秋山政府委員 間伐材と申しますと、価格安定というのは、需要開拓をしながら、代替材にかえられぬような形に持っていくことがきわめて重要でございまして、逆に価格維持する形になると代替材に負けるというようなこともございますので、むしろ生産コストをダウンいたしまして、需要を開発するという方に重点を置く方がもっと重要ではないかと考えています。
  228. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 林業普及指導事業の成果についてお尋ねをいたしたいのですが、林業普及指導事業は発足以来現在まで三十四年になっているわけですけれども、森林あるいは林業及び山村をめぐる諸情勢の変化あるいは林政の動向等に対応しつつ発展してきたところでありますが、この事業が林業の振興あるいは林政の推進に果たしてきた成果をどのように評価なさっているのか、この点からまずお尋ねをいたしたい。
  229. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘のとおり、すでにこの林業普及事業が始まりましてから三十有余年の月日をけみしているわけでございますが、特にこの中で一番大きなポイントは、一千万ヘクタールの人工林を達成するに至ったこの造林推進問題であろうと思います。それからもう一つは、林業機械化によりまして生産コストダウン、合理化という面に尽くした側面があると思います。さらには、経営の合理化、またもう一点は、森林病害虫の防除というふうな面において大変この林業普及指導事業というのは効果を果たしてきたわけでございます。  これからは、むしろ今度はさらに、今回の法案で検討していただきますような間伐、保育というような側面がこれからもさらに重要なものになると思いますし、また、林業生産地帯の定住条件整備ということになりますと、シイタケ生産と林業をどうリンクするかというようなことも重要でございますので、こういう側面がこれからはさらに加わってくると考えています。
  230. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 戦後の荒廃した林業の指導ということですが、個別的なものからやはり変えていかなければいけないんじゃないかと考えますけれども、その点、どういうふうにお考えでございますか。
  231. 秋山智英

    ○秋山政府委員 かつて林業経営は、どちらかと申しますと個別的な側面が強うございましたが、これからはやはり地域をまとめて、いわゆる地域林業地帯を形成するということに相なりますと、これは、林業生産にあずかっている森林組合の皆さんはもちろんでありますが、それから伐木、造材、流通、加工というふうなそれぞれの組織が一環となりまして、その地域の特徴を生かした生産地帯を形成するということになりますと、勢い指導事業と申しますのも、そういう広範な中でのそれぞれの技術をどう組み立てるかというシステムのとらまえ方で指導していかなければならない面が大分これからは強くなってくると思います。
  232. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に進めさせていただきますが、分収育林関係について、二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。  千葉県におきましても、林地が宅地に転用されるなど、近年都市化の進展に伴いまして緑資源の確保に対する県民の要請はきわめて強いわけであります。また一方では、木材価格の低迷と林業労賃のアップ等によりまして、林業経営の採算性の低下やあるいは林地価格の上昇によって造林投資意欲が減退しておるわけでありまして、このような点から、本県においては山武林業地という、杉を中心とした古くからの有名林業地があるわけでありますけれども、このような地域においても、最近の林業をめぐる環境が反映して、きわめて厳しい状況下にあるわけであります。  このような状況の中で、今回の分収造林特別措置法の一部改正によって、一般の都市住民が費用負担者となっての分収育林を推進する、また、林業に外部資金を導入して林業経営の改善や森林の整備に資する、こういうわけでありますけれども、そこでお尋ねいたしたいのは、改正法で規定されている都道府県知事の勧告あるいは公表といった手段だけで適切な契約の締結、こういうことができるのかどうか、この点をお尋ねいたしたい。
  233. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収育林契約は、御承知のとおり、これは私的な契約でございますが、本来的には当事者相互間でやらなければならぬ、また、そういう責任があるわけでございますけれども、いまお話しのとおり、これからの分収育林を進めるに当たりましては、広く都市の方々と一緒になりまして緑づくりをするということに相なりますと、やはり応募者は森林のある地域から離れている、そういう実態にあるわけでございまして、そういう方々が森林の価格を見積もるというふうなことはなかなかできない点がございます。それから、募集いたしまして、分収林契約をするという場合には、当然のことながら、契約条項等がぴしっと決まっていなければいかぬわけでございますが、それについては、変更というような問題についてはなかなか実質的には応募者の方々ができないわけでございます。また、一度契約いたしますと、これは長期にわたる契約でございますので、それなりの確固としたものがなければなりません。同時に、これは契約しますと林木を共有するということになりますので、それからの脱退という問題はなかなか困難である。さらには、契約いたします場合に、それから先の保育、育林の経費と申しますのは前払い形態をとるというようなことに相なるわけでございます。そうしますと、前払いした金額に応じた適正な森林施業ができるかどうかということが大変重要になってくるわけでございますので、そういう側面から見てまいりますと、やはり適正な契約を締結するということと、間違いないその履行を確保するということが大事でございますので、そういう面で一定の行政指導のルートに乗せていくということが必要でございます。  そこで、いま先生指摘のとおり、まず契約事項については事前に届け出をしてもらいまして、その届け出事項がよいか悪いかということをチェックする。さらには、もし不適当となればそれを変更勧告をするとか、また勧告に従わない場合には公表するとか、さらには、届け出した事項について今度は実際に遵守するように勧告するとか、さらにまた、適時報告を徴収するというふうな、そういう権限を実は付与しておるわけでございます。これはいずれも森林の施業方法を適正にするということと、やはり費用を出していただくいわゆる費用負担者の正当な権利を保護するというたてまえから、この権限を適正に行ってもらいまして、間違いのない分収方式による育林を進めてまいりたい、こういう趣旨でございます。
  234. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 いずれにいたしましても、この新しい制度の普及、定着というものを図るためには、これを推進する組織体を整備する必要があるというふうに考えるわけでありますが、現在林業あるいは造林公社が設立されていない都道府県について、政府はどのような対応をなさろうとなさっているのか、お尋ねをいたしたい。
  235. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収育林制度あるいは分収造林制度を進めていく上におきまして、造林公社がいままで分収造林の側面できわめてりっぱな成果を上げておりますので、私どもこれからの分収育林を進めるに当たりましても、造林公社を所要の条件整備をいたしましてひとつ積極的に森林整備法人としまして育成、強化していこうと思っています。  そこで、御指摘の現在設立されていない都道府県でございますが、もし既存の公益法人で適当な内容を持っておりますものがございましたならば、たとえば国土緑化推進委員会のようなもので、社団法人でそれなりの仕事をしているものがありますれば、所定の定款変更等を行いまして森林整備法人として進めていただくとか、場合によりましては新たにつくっていただくというような方法をとって進めてまいりたいと考えております。
  236. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この制度がどのくらい地域林業の振興に役立つというふうにお考えなのかどうか。出された以上はこれは役立たなければなりませんから、どのようにとらえていらっしゃるのか。
  237. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これからの地域林業を進めるに当たりましては、私は、川上から川下まで、森林所有者を初めとしまして関係の皆さんはもちろんでありますが、下流で森林の効用を受益する方々も一緒になりまして森林造成をするということが一番大事なことだろうと思います。  そういう意味におきまして、育林分収ということで一緒に森林経営に参画し、かつまた緑の効用をそれによって理解し、緑資源の適正管理がきわめて重要であることを一般の方々が身をもって体験することが、今後の地域林業の振興にきわめて役立つと思います。これからの林業の応益分担方式にもこういう考え方が逐次敷衍することによって効果が出てくると思っておりますので、私どもとしましては地域林業の振興に大きな役割りを果たすと思っております。
  238. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、松くい虫関係について少しばかりお尋ねをいたしたいのですが、松くい虫被害が激甚をきわめてなかなかその被害を鎮静化させるに至っていないわけでありますけれども、森林所有者の経営意欲の低下あるいは一般市民の森林に対する関心の薄さ等が被害蔓延等の原因になっていることも一つでございます。あるいは、被害対策推進する上でのいろいろネックがあろうと思いますけれども、昨年この改正を行いまして、被害対策の充実あるいは強化を図ってきたわけでありますが、これがうまくいっているかどうか。いわばこの森林法改正が目指している森林管理の適正化あるいは緑資源の確保ということがうまくいくかどうかにもつながるわけであります。  このような観点から、松くい虫の被害対策に関して二、三お尋ねをいたしたいわけでありますが、五十七年度の被害状況は、概略で結構でございますので、どういうふうにとらえていらっしゃるか、お尋ねをいたしたい。
  239. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十七年度被害につきましては、現在まだ実行中でございますので、確たる数字にはなっておりませんが、春の天候が比較的特別防除をしやすい状況にございました。それから、御承知のとおり、新しい法律に基づきまして特別伐倒駆除を初めとしまして新しい施策が実行に移されました。またさらに、夏が比較的雨が多く冷夏であったということもございまして、現段階で全国的に見てまいりますと、十二月末現在で前年同期に比べまして七割程度になっております。
  240. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その新しく導入しましたいわゆる特別伐倒駆除の実施状況についてお尋ねいたしたいのですけれども、特にチップ化については、あるいは関連業界、あるいは森林組合等との連携が不可欠というふうに思うわけでありますが、こういう点はうまくいっておりますかどうか、その伐倒駆除の実施状況についてお答えをいただきたい。
  241. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生の御指摘は、特別伐倒駆除のことでございますね。チップ化でございますね。(吉補委員「そうです。特別伐倒駆除です」と呼ぶ)私ども、松くい虫被害対策特別法案の審議の過程で申し上げましたが、やはり被害木といえども有効な資源でございますので、このチップ化等による有効活用の面につきましては、法律が通りましてからすぐチップ関係業界、パルプ関係業界の皆さんと話し合いをしまして、それの利用方につき促進し、また、各ブロックごとにもそういう連絡調整の場を設けまして、実は鋭意努力をしてまいってきておるところであります。  現段階におきましては、特別伐倒駆除によりまして実施した数量は大体十三万立方メートルに達しております。
  242. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、一点だけお尋ねをいたします。  松くい虫被害の原因に関して最近新しい説が出ておりますね。青変菌説というふうなものが出されているようでありますが、こういう説について政府はどのようにお考えなのかどうか。この点、一点だけお尋ねして終わりたいと思います。
  243. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在の激害型の松くい虫の被害は、御承知のとおりザイセンチュウによるものであるというふうに林業試験場が断定したわけでございますが、その過程におきまして青変菌等の接種試験もしておりますし、また、各種のいろいろの方法を講じながら、消去法方式でだんだんと元凶を見つけてまいる過程で、ザイセンチュウが激害型の松の被害原因であるというふうに判定したわけでございます。  先生指摘のとおり、最近の新聞紙上におきましてまた別の新しい青変菌の話が出ています。これはまだ学会で発表されておりません。したがいまして、私どもといたしましては、これはやはり一つの研究成果でございますので、林業試験場等におきまして十分横の連絡をとりながら、これの追試験と申しますか、研究をしながらどういうものかをさらに重ねて研究してまいりたいと考えています。
  244. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 以上で終わります。
  245. 山崎平八郎

    山崎委員長 武田一夫君。
  246. 武田一夫

    ○武田委員 前回に引き続きまして、二、三質問いたしたいと思います。  現在、わが国の林業というのは、木材価格が大変低迷している、こういうところで沈滞ムードが漂っているわけでございます。これについての対応としては、大きくは景気回復を図るというような問題も含めましていろいろと考えられますが、私は、いまここでより現実性のある提言、すなわち、停滞している木材産業の活性化方策、これがひいてはわが国林業の活性化をもたらすものであるということから、この木材産業を活性化させるための一つの提言を行いたいと思います。そして、それに関して長官あるいは大臣お尋ねをしたい。このことは、森林の国土保全とかあるいはまた緑の効用ということの重要性以上に、われわれの林業行政といいますか、そこにかかわる重大な問題だと私は思いますし、林野庁としてはより以上心すべき重要な観点だ、こういうふうに思うわけでございますので、いろいろとお尋ねしたいと思います。  それは、木材の流通それから販売のあり方に関することでございまして、このことにつきましては、わが党が昭和五十四年でしたか、党大会における政策として提起して以来一貫して主張している問題でございます。今月の十九日、参議院の予算委員会においてもわが党の同僚議員も触れておりますので、大臣も長官も御承知と思います。  簡潔に申し上げますと、木材というのは市場情報を的確に把握して、そして消費者のニーズに合わせた形で造材、玉切りという言葉で言われるそうでありますが、造材あるいは製材それから加工、販売等を行いますと、同じ樹種でありましても大変有利に販売できるということでございます。現在銘柄材として高価に販売されておるものが多いわけでありますが、かつてはこれらのものも二束三文で売られていたものであります。これが銘柄化に成功したというその要因を考えますと、その材が持っている価値はもとよりでありますけれども、同じ樹種であっても、いま申し上げました造材あるいは製材、販売などのあり方を消費者のニーズに合わせて販売するようになったということがこの成功の原因だ、こういうふうに言われております。  このような発想に立ったとき、日本の木材の中にも材としての潜在的な有用性、価値を持っていながらも、その価値が十分評価された形では販売されていない木材が多いのではないか、こういうふうに考えられるわけであります。  というのは、一つの事例を申し上げますと、青森ヒバあるいはまた秋田の人工杉、俗には造杉と呼ばれるそうでありますが、これまで青森ヒバの多くは東京の市場に土台角として安く出荷されまして、そして米材といういわゆる外材と競合するような形で販売されてきております。それからまた、造杉の多くは、同じく東京市場にぬきとかあるいはたるきとして安く出荷され、これはいわゆるソ連からの北洋材と競合したような形で販売されているわけであります。これらをごく最近、試験的により高度な造材、製材の技術を使い、あるいは新しい販売ルートに乗せて販売しましたところ、何とこれまでの数倍の価格で、安くても確実に二倍の価格で売られるようになったということでございます。また、そのほかトチやナラ、クリなどといったいわゆる広葉樹種であっても数十倍、物によっては数百倍の価格で売られるようになったという事例が見受けられるわけであります。  そこで、長官にお伺いしますが、こうした事実を長官はどのように受けとめられるか、まず御所見をひとつお尋ねをしたい、こういうふうに思います。
  247. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私ども、現在の林業政策の推進の重要な柱にしておりますのが地域林業振興ということであります。その中にありまして、国産材の足腰の強い体制をいかにしてつくるかということが課題でございますが、私ども、現在国産材の安定供給事業で考えておりますのは、いま先生お話に出てまいりましたが、いわゆる森林所有者、それから流通関係、製材関係のその地域の皆さん方が一緒になりまして、市町村長ももちろん入っていただきますが、情報流通システムを確立させながら、その地域に合った銘柄のものを製作し、それを計画的に供給する体制をつくることがきわめて重要でございます。そういう地域地域の特徴を生かした生産地帯を形成するということがやはり木材価格を高く有利に売れる体制につながるものでございますので、私どもといたしましても積極的に進めてまいりたいと考えています。
  248. 武田一夫

    ○武田委員 ここにいろいろと細かい値段の内容がありますが、これは申し上げませんが、ちょっと信じられないような現象が起きている。なぜ起きたか。私は、林業生産者あるいはまた木材提供者が消費者サイドのニーズを知らな過ぎたのではないかということの問題があると思います。これは、一つは、生産者サイドと消費者サイドの間においての情報交流がきわめて不足であったということに起因しているのではないかというふうに私は思います。  そういう意味で、私は、今後林野庁としましては、もっと市場情報調査をして、向こうの言葉で言えば、マーケティングリサーチと言うのですか、そういうような市場情報調査をまず徹底して行いまして、その情報を的確に分析をして、これを生産者に提供していくということが今後きわめて重要な仕事として浮かび上がってくるのではないか、こう思いますが、この点についてひとつ簡潔にお答え願いたい、こういうふうに思います。
  249. 秋山智英

    ○秋山政府委員 市場の情報を的確に迅速に把握し、進めていくことがやはりこれからの重要な課題でございますのはおっしゃるとおりでございまして、間伐材につきましても、昨年からデータバンクというのをつくりまして、需要情報と生産情報をリンクさせるようなシステムを現在各都道府県につくりつつありますが、それもそういうふうな考え方の一環でございます。
  250. 武田一夫

    ○武田委員 いま私が申し上げましたことはこの間伐材についても例外でない、長官もそのことは十分認識しているわけでありますが、市場調査を行えば、私は、今後相当の需要があるものと確信をしております。  そこで、このことは山村についてはなかなかわからない問題でありまして、やはり都市側あるいはまた消費者サイドに深く立ち入った調査というものに踏み入らなければわからない問題だということをひとり認識をしてもらいたいものだ、こういうふうに思います。  そういうことで、間伐材の活用ということも含めまして、徹底した調査を行いまして、これを踏まえて、さらに現在の木材販売のあり方を改めるためのより具体的な提言をしたい、こういうふうに思うわけであります。  それは、一つには、現実に高度な造材ですか、製材、販売を行えばいかに有利に販売できるかを、実際に実物を使って林業関係者を啓発していく体制を確立すべきではないかと私は思います。この場合、国有林が多い地域では、国有林こそがその指導的役割りを果たせるように努力をしなければならない、こういうふうに思います。そうでない地域は、県あるいは市町村あるいは森林組合員はもちろんですけれども、木材協同組合関係とか、あるいは木材や製品市場関係者もばらばらでなくて、みんな一緒になってそのような実施教育といいますか、そういうような体制を整備してはどうか。たとえばモデル製材工場などもつくりまして、そこでみんなが一緒になって、経済的に非常にいい、そしてもうかるという観点、お互いにそれが利益につながるという観点からそういう体制を整備していくというのは、私は林業、森林業の活性化の大きな流れになるのではないかと思います。  それからもう一つ、このようないわゆる新しい高度な販売術というものを改良普及職員こそが率先して習得していくべきではないか。これを民有林関係者にも普及させていくことが私は重要であると感じます。ですから、そのための予算的な裏づけといいますか、措置を、やはり同じ一つの重要な課題として体制整備を図ることも肝要ではなかろうか、私はこういうふうに考えるわけでありますが、この二点についていかがお考えになりますか。
  251. 秋山智英

    ○秋山政府委員 第一点のお話につきましては、私どもも全くそういう方向がこれからの足腰の強い国産材生産地帯をつくり上げる一つの方向であると思います。地域林業につきましては、国有林、民有林関係者はもちろんでありますが、森林所有者も流通業者も、あるいは製材業者も一緒になりまして、地域の特徴ある銘柄を育成しながら進めていくことが必要だと思います。私どもが考えております国産材の生産基地造成というのも、そういう考え方で進めてまいりたいと考えております。  それから二つ目でございますが、需要拡大するに当たりましては、やはり木材のよさということを十分理解をしていただくと同時に、従来の利用方法だけでなく新しい需要開拓をし、新しい製品をつくり、一般の皆さんに御理解をいただくということが必要でございますので、そういう観点から、私ども、先ほどもちょっと触れましたが、住宅・木材技術センターでの開発あるいは情報銀行等を通じての各種情報交換その他の方法を駆使いたしまして、国産材のより有効な、より効率的な生産体系をつくってまいりたいと考えております。
  252. 武田一夫

    ○武田委員 私は、いまいろいろと申し上げてきたのでありますが、理解をしてもらえることだというふうに自信を持っておるのですが、林野行政にあっては技術対策はきわめて重要な位置にあると思います。そういう意味で、ある意味からいいますと、下手に補助金をたくさん使うこと以上に技術対策の強化のために予算を使う方が、国民の税金をより効果的に有効に使えるとさえ私は思っております。  そこで、この際確認をさせていただきたいのでありますが、今回の改正で盛り込まれているいわゆる市町村の森林整備計画の作成に当たりまして、改良普及職員はどのような形でこれに関与するのか。それから、普及職員の皆さんももっといろいろと勉強していただく。そして、森林整備計画の策定にあって大きく貢献できるような体制を確立してほしいと思うわけでありますけれども、改良普及職員の職務規定等にかかわる通達文書の上でこのようなことを明確にすべきであると考えますが、林野庁としてはそういう考えをお持ちかどうか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  253. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず第一点でございますが、いま御質問ございました仕事を進めていくに当たりましては、技術を改良しなければならぬ、また、新しい技術を習得しなければならぬということでありまして、林業改良指導員の役割りというのはきわめて大きくなってくると思います。  そこで、私ども、特に森林整備計画を立てるに当たりましては、この普及指導職員が立て方についての助言をする、また具体的に間伐をし、保育をする林分について技術的な指導を行うことが大事だろうと思います。  そこで、現在、林業改良指導員の職務でございますが、これは森林法の百八十七条の第三項におきまして森林の施業に関する指導も行うというふうにされておりますし、また通達におきましても、市町村、林業関係団体等に対する森林、林業に関しての必要な知識、技術についての指導、助言またはその連絡調整を行うということになっておりますので、私どもはいま申しましたような考え方をベースにして、これからの森林の適正管理につきましてはこの林業改良指導員を大いに活用していきたいと考えているところであります。
  254. 武田一夫

    ○武田委員 最後に、木材の需要を阻んでいる要因がいろいろとあると私は思います。たとえば建築基準法とか消防法あるいは労働安全法とか、そういういろいろなものがあるのでしょう。そういう基準法の存在が木材需要を阻んでいる要因になっているのじゃないかな。そうした中身を十分検討しながら、木材がもっと多く使われるような取り組みが必要ではないか。いま、利用価値がないといって捨てられるというケースがずいぶんあります。  たとえば、木は壊れやすいという観念がある、あるいは燃えやすいという観念があるが、果たしてそうか。聞くところによると、枯らした木を水に漬けてそれを使いますとなかなか燃えないとか丈夫だとかという、これはある方から聞いたわけであります。また、コンクリートや鉄筋コンクリートなどよりは木造の方がきちっと長もちをして、いまだに地震にも耐えて残っているというケースがある。私は宮城県沖地震を経験した一人でありますが、そのケースをこの目で見ているわけでありますから、いま三階以上は消防法でだめだけれども、果たしてそうかというようなことを考えたときに、その中身を各省庁と話し合いながら検討して、一層活用ができるような対応を林野庁として進めるべきではないか、こういうふうに思うのでございますが、いかがでしょうか。
  255. 秋山智英

    ○秋山政府委員 木造住宅というのは、従来からずっと使われてきたという惰性もございまして、最近の若い方々には必ずしも木材の持つよさあるいは特性というものが十分理解されていない面もございまして、私ども従来からそれらのPRには努力してまいったわけでございます。  さらに今後におきましては、まず第一には、先ほど触れました日本住宅・木材技術センターでございますが、ここで新しいニーズに合った利用開発あるいは木質住宅部材の耐火性とか耐久工法の確立という問題について積極的に取り組んでいますし、また、そういうものができた成果が十分PRされていない面もございますので、そういう木材のよさとか新しい木材利用技術のPRあるいはテレビその他においてもこういう問題について十分理解をいただきながら、国民の皆さんの理解の深化を図ってまいろうと思っております。  なお、先ほどちょっとお話がございましたが、建設省とも連携をとりながら、木材の公営住宅の建設を都市部まで拡大をするというような方法も可能になってまいりましたし、三階建ての木材住宅の問題あるいは大断面集成材と申しますか、大きい太い集成材を活用するとかいう方法も現在建設省と一緒になってやっております。 今後とも木材の利用問題については、関係の省庁とも十分連携をとりながら進めてまいりたいと考えております。
  256. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので終わりますが、いずれにしても十分に山が活用できるという、これがやはり欠けている観点だろうということで、いろいろ申し上げました問題については今後ひとつ大きな課題として取り組んでほしいし、われわれもそのためにはあらゆる協力を惜しまず、日本が森林の、そして山の多い国として世界に最たる自慢のできる国でもございますから、できるならばいずれ将来は日本の木材などを外国の方に逆輸出していくというくらいの、そういう活力ある山林行政をやっていただきたいということも私は考えておるわけであります。  以上要望しまして、質問を終わります。
  257. 山崎平八郎

    山崎委員長 神田厚君。
  258. 神田厚

    ○神田委員 前回に引き続きまして、森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げます。  前回特に森林法関係につきまして御質問を申し上げました関係から、今回は分収造林特別措置法関係につきまして、分収育林等の問題につきまして御質問申し上げますが、その前に、大臣にちょっとお聞きをいただきたいのであります。  この前もお話を申し上げ、また先ほど島田委員の方からも話がありましたが、林野関係職員の年度末手当の問題でございます。  あすの期限切れを目前にしておりまして、まだ詰まっておらないということであります。前回、大臣も、大変厳しい状況でありますけれども、できるだけの努力をしたい、こういうふうな御答弁をいただいておりますが、なお、本日に至りましてどういうふうな状況にありますか、ひとつお考え方とその決意をお聞かせをいただきたいと思います。
  259. 金子岩三

    ○金子国務大臣 時間も切迫してまいりますし、最大限の努力をいたしております。
  260. 神田厚

    ○神田委員 いろいろむずかしい状況であることは十二分にわかっておりますけれども、ひとつ大臣の十二分な努力をお願いをいたしたいと思っております。  続きまして、分収関係につきまして御質問申し上げますが、この分収育林契約などの制度を設ける理由は、端的に言いましてどういうところにあるのでしょうか。
  261. 秋山智英

    ○秋山政府委員 一千万ヘクタールの人工造林ができ上がったわけでございますが、なかなか最近の林業生産活動が停滞しておりまして、将来、二十一世紀に向けましていい森林をつくるということはきわめて重要でございます。そのためには、まずもちましてこの間伐、保育を適正に行いまして、森林の持っておりますところの機能を高めていくということに置かれているわけでございますが、現在の森林所有者の方々の中には自分の力ではなかなか間伐、保育を実施することが困難だ、したがいましてそれを何らかの方法で適正にやることを考えなければならぬということがございます。それから、拡大造林が大分進んでまいりましたが、森林所有者の方々には造林に投下しました資金を早期に回収いたしまして、それをまた林業経営の別の面に回していこうという意欲的な側面も踏まえて、将来林業生産活動の活性化を図っていく、こういうことが必要だというふうに認識しておるわけでございます。  そこで、その一環としまして今回分収育林制度を創設したわけでございますが、この場合におきましても一般国民の方々に広く費用の負担をお願いしまして、森林整備の事業に参画をしていただくというふうな道を開いたわけでございます。
  262. 神田厚

    ○神田委員 この育林契約の募集制度を円滑に実施するためには、多数の費用負担者の存在といいますか、応募者がいなければならないわけでありますが、都市住民等の意向をどういうふうに把握をなさっているのか。新聞等で一部取り上げられまして、一つ制度としてその評価といいますか、考え方について理解はいただいているようでありますが、なお、そういう意味におきまして、都市住民等の意向をどのように把握をしておりますか。その点、お聞かせいただけますか。
  263. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この分収育林の契約につきましては、これまでいろいろと私どもも実験的に仕事をしてまいりました。  まず、五十一年から五十五年にわたりまして、公有林を対象といたしまして、林野庁の指導のもとに特定分収契約設定促進特別事業、大変長い言葉でございますが、この事業によりましてその締結の推進をしてまいりました。また、五十六年からは国土緑化推進委員会によりますところの指導、助言をいたしまして、これも同じく公有林でございますが、特定森林造成活動推進事業ということでやってまいったわけでございます。この実施例でいろいろと調査いたしますと、募集した口数よりも応募した口数が相当上回っておりまして、費用負担者としての一般の方々のこれに対する関心度が非常に高いということがわかったわけでございます。  また、五十七年の十月に、全国の十一の都市におきましてこの分収育林契約に関する意向調査をしたわけでございますが、多くの都市におきまして、やはり費用負担者といたしましてこの契約に参加したいという希望者が調査対象者の過半を占めておるわけでございます。  これらの実施例とかあるいはこの意向調査から判断しますと、契約期間の問題あるいは応募の一口当たりの金額の問題、実施者の信用度の問題、費用負担者を募集する場合の情報の提供というふうなものがいろいろ勘案されまして整備されるならば、国土緑化への参加とかあるいは自然のふところに飛び込む、あるいはふるさとの森、こういう森に対する参加意欲はこれからも相当高まってくるというふうに理解をしておるところであります。
  264. 神田厚

    ○神田委員 最近におきます材価の低迷、これは植林から収穫に至る利回りを考えてみますと、預貯金利息の約半分の三%前後ということでありまして、この費用負担と産業としての林業振興という形を見ていきますと、一体これはどういうふうな形なのか。この辺、こういうふうなものでいいのだろうかどうかということで、どういうふうにお考えでありますか。
  265. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近の木材需要の停滞あるいは林業経費の増高ということもございまして、なかなか林業活動が厳しいわけでございます。したがいまして、林業収益性の問題というのは従前に増しまして下がってきておる実態でございます。  しかしながら、一方におきましては、緑資源に対する要請が高まっておるわけでございまして、森林造成への一般国民の方々の参加希望というのは、年とともに非常に強くなっておるわけでございます。その一つのあらわれが分収育林への参加志向であると考えております。そこで、私どもこれからこういうふうな状況下におきまして森林整備を促進するということについては、一方には厳しい情勢がありますが、また、片やこれに希望する方々も多いわけでございますので、林業振興を通じまして林業経営の収益性の向上にさらに一段と努力しながら、全体的に分収育林制度のよさというものを一人でも多くの方に理解していただきながら、森林経営への参加の希望をより一層高めていきたい、かように考えております。
  266. 神田厚

    ○神田委員 分収育林契約制度制度化しますが、これは地域林業の振興にはどういうふうに役立つとお考えでありますか。
  267. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これからの私どもの林業政策の基本的な方向といたしましては、地域地域におけるところの特性を生かした地域林業を振興していくということがやはり大事な課題であると考えております。そこで、この分収育林の契約の問題を制度化したというゆえんのものも、これまでやってまいりました各種の政策だけでは、必ずしも十分現在の厳しい林業を取り巻く情勢に対処できない、こういう考え方に立っておるわけでございます。やはり地域の林業を振興するに当たりましては、一方におきましてはその地域に住む方々が川上から川下まで一緒になりまして林業生産活動をし、そこに緑資源としての効果を、地域の方々に十分恩恵に浴していただくというような方法をとってもらいたいわけであります。  そこで、先ほど言いましたとおり、今度は都市部の方々におきましては、森林の経営に参加する希望も強まっておりますし、また、自分の出身県のふるさとの森に自分も費用負担者として参加したいという希望も実はあるわけでございますので、そういう道も開くことによりまして、今度は奥地の山村地域の皆さんが従来投下してまいりました造林投資の資本の回収が早く回転するわけでございまして、それがまた地域の林業の活性化につながるわけでございます。  そのようなことを考えてまいりますと、やはり地域林業の形成、発展におきまして、間伐促進がなされ、また、育林が積極的に進められることによりまして森林が整備されるということは、林業生産活動の活性化にもつながるわけでございます。それから、その活性化はまたとりもなおさずその地域の林業関係の雇用の場の確保にも資するわけでございますし、また、山村と都市との連携ということによる山村社会の活性化ということも出てまいりますので、こういうふうな側面から見てまいりますと、やはり分収育林の制度というのは地域林業の発展に非常に大きな意味を持っているというふうに理解しております。
  268. 神田厚

    ○神田委員 次に、分収林契約の募集者は届け出制となっておりますね。このことから、募集にかかわる分収林契約の費用負担者の正当な利益の保護やあるいは造林、育林の適正な実施が確保されるのかどうか、心配をする向きがあります。この点は届け出制、許可制をあわせていろいろな問題があると思うのですが、どういうふうにお考えですか。
  269. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この分収林契約の問題につきましては、御承知のとおり私的な契約ではございますが、したがいましで本来的にはやはり契約の各当事者がそれぞれの責任で行うわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、今回の考え方の基本には、広く国民の皆さんの御理解をいただき、また都市部の方々の協力をいただきながら、森林の適正管理をしていくというふうな、そういう側面が強く出ておるわけであります。  したがいまして、この分収林契約を進めるに当たりましては、応募者の方々と申しますのは森林地域から遠く離れたところに住んでおられる都市の方々でございます。したがいまして、その森林の価格がどのくらいであるかというような、そういう評価というのはなかなかできがたいという面がございますし、また、募集によりましてこの分収林契約をするということになりますと、応募者の方々と申しますのは、契約条項の変更について交渉することが事実上は非常に離れていますので不可能なことであります。  それから、この分収林契約と申しますのはいずれも長期にわたる契約でございますので、契約当時においてはしっかりしなければならぬという面もございますし、また、契約いたしますと、林業経営は共同でやる、共有という関係を持つわけでございますので、脱退ということがなかなか困難であるという面もございます。  さらには、費用負担者が金を払う形態でございますが、これが前払い金という形で支払う形態が一般的になると思います。そうしますと、前払い金なりそれに相当する金額そのものが森林の施業に適正に使われているかどうかということが大事でございまして、伐期になりましてからトラブルがあってはならぬわけでございます。  こういうことをいろいろあわせて考えてまいりますと、やはり契約に当たりましては適正にこれを行う、適正な契約の締結という問題が大事でございますし、また、その履行につきましては間違いなく実施するということが確保されなければならぬわけでございます。そういう側面から考えてまいりますと、一定の行政指導のルートに乗せていくという必要があるわけでございます。したがいまして、今回の法案におきましては、都道府県知事に契約事項等の事前届け出の受理の問題とか、さらには届け出事項の内容がよいか悪いかというその判定、さらには変更勧告の問題、また勧告に従わない場合の公表の問題、それから届け出事項の遵守をする勧告、それから報告の徴収というふうないろいろな問題がございますので、そういう問題につきまして都道府県知事に権限を付与いたしまして、一番最初に触れました適正な造林あるいは育林が確保されるということ、それから費用負担者の正当な利益が保護される、そういう観点からこれらの権限を適正に行使することを通じまして適正な契約の締結を確保いたしまして、分収方式によるところの造林または育林を促進していく、そういうところに役立てようと考えておるわけでございます。
  270. 神田厚

    ○神田委員 いろんな問題が起こってくると思うのでありますが、特に一つは権利移転の問題であります。  募集をするということになりますと、一般国民の不特定多数の人たちがその権利を持つわけでありますけれども、投資期間が長期にわたるというようなことから、権利の移転の問題あるいは譲渡等の問題が起こってくるわけであります。この点につきましては、他の契約当事者の権利義務に影響が及ぶおそれはないのかどうか。この辺のところはどういうようにお考えでございますか。
  271. 秋山智英

    ○秋山政府委員 模範の約款等をつくりまして、そういう間違いのないようにしてもらいたいと考えております。
  272. 神田厚

    ○神田委員 さらに、この育林の期間が長くて、あるいは自然条件その他そういうものによりまして左右される場合が多いために、所期の目的どおりに成林するという保証が必ずしもない。この場合には、やはり国営保険や森林組合の共済事業等の活用を求めるわけでありますけれども、こういうことについてはどういうふうな御説明をなさるわけでございますか。
  273. 秋山智英

    ○秋山政府委員 模範約款におきまして、いまのような災害あるいは火災等に対します保険等も十分やるようなことを指導してまいりたいと考えております。
  274. 神田厚

    ○神田委員 次に、森林整備法人としては具体的にどのような組織体を予定をし、また、今後どういうふうに育成をしていくおつもりでありますか。
  275. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず、森林整備法人の考え方でございますが、これは、造林とかあるいは育林というふうな事業を実施するとか、あるいは分収方式による造林または育林の促進を行うことを目的とする、民法第三十四条の規定によりまして設立されました法人でございまして、地方公共団体が、社団法人にありましては総社員の表決権の過半数を保有する、また、財団法人にありましては基本財産の過半数を拠出しているものというふうに考えております。  具体的に申し上げますと、現在三十二の都道府県で三十六の造林公社がつくられております。    〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕 これは非常に性格的には類似した業務を現在しておりますが、これらを所定の改組をして森林整備法人として活用していくようにこれから指導してまいりたいと考えております。
  276. 神田厚

    ○神田委員 制度を実効あらしめるためには、そこに働く勤労者の処遇の問題も考えていかなければならないわけでありますが、特に労働集約度の高い林業におきましては、社会保障の問題を含めまして、処遇を他産業並みに改善する必要があるというふうに考えるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  277. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘のとおり、林業関係に従事する方々の就労条件整備しまして、働く場を安定的に確保することがきわめて重要でございます。  この問題については、まず第一には、やはり林業振興の基盤となりますところの造林、林道というふうな生産基盤の整備とか林業構造改善事業というのが非常に重要でございます。これらをいままでやってまいっておりますが、さらに、山村の定住条件整備をするための施策をいままでたとえば林業地域総合整備事業というようなものでやっておりますが、いずれにしましても、やはり山村地域の定住条件整備するということがきわめて重要でございますし、また、働く方々の就業条件の改善のための施策だとか、また、若い方々が魅力ある山村に残れるような対策を考えるとか、さらには、最近私どもの方で林業退職金の共済制度を新しくつくりましたが、将来林業に従事される方々の福祉向上のための諸施策を進めてまいるということがきわめて重要でございますので、さらにこれからこういう問題については積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  278. 神田厚

    ○神田委員 最後に、緑資源の確保に関しまして、私ども森林資源の醸成によります水資源の確保、国土の保全など、森林の公益的機能の発揮、拡大並びに林産物の安定供給、これを常に求めてまいりました。そういうところでありますが、緑資源の確保に対します社会的条件づくりのために国としてはどのような施策推進をしていくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  279. 秋山智英

    ○秋山政府委員 緑資源の確保の問題につきましては、国民的要請として非常に高まってまいっておりますが、一方におきまして、先ほど来申し上げてまいりましたように、大変林業をめぐる情勢は厳しゅうございます。  そこで、私どもこれからの緑資源を守るに当たりましては、やはりその地域におきまして森林を適正に管理することが大前提でございます。また、そこに働く方々の定住条件整備するということがきわめて重要でございますから、そういうところに視点を置きまして、これまでもいろいろと緑化キャンペーンあるいは森林の重要性に対するキャンペーンをやってまいりました。さらにこれからは、それらはもちろんやるわけでございますが、森林の持っておる機能によるところの国民的要請の重要性という問題について、特に森林の適正管理という側面から、この問題については一層声を大にしていかなければならぬと思いますので、従来の各種の施策に加えまして、ことしからは森林の適正管理に関するグリーンキャンペーンその他の政策も進めることといたしております。  森林の問題は、今後もさらに世界的にもきわめて重要な問題になりますので、私ども、まず自分の国の緑資源というものに対して適正に管理するということから、十分一般の方に御理解をいただくように対処してまいりたいと思っております。
  280. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  281. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、寺前巖君。
  282. 寺前巖

    ○寺前委員 お疲れですが、ひとつ審議をよろしくお願いします。  まず第一に、外材と国産材の問題です。  山持ちさんのところへ行きますと、国産材を中心とする林政がやれないものだろうかということが必ずと言っていいほど出ます。確かに外材と言えばいろいろな木の大きさの条件もあるし、日本のように人工林でない、自然林であるという問題もあります。したがって、木材価格においての差が生まれてくるという問題を生むことは当然です。そこからも、外材の規制をやってもらいたいという声が出てくるのはしかるべき声だろうと思います。しかも、日本の将来を考えていくときに、日本の林政を中心にして材木というのを考えていくということもまた重要な課題だと思います。  こういうことを総合的に勘案するときに、国産材の比重を高めよという声に対して、農水省としてはどういうふうに現状を考えておられるのか。これからどうしようとしておられるのか。その対策を具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  283. 秋山智英

    ○秋山政府委員 わが国の現在の森林、林業の資源上の問題で見てまいりますと、ここ当面はやはり相当量の外材を入れなければならぬというふうな状況にございます。しかしながら、将来を展望してまいりますと、木材資源そのものは世界的にも不足物資になるであろうというような見方もされておるわけでございます。そこで、やはり現在一千万ヘクタールに達しました人工林の育成を適正にしながら、内容を健全にしながら、地域林業としてそれを足腰の強い形で体制が強化するように持っていくことが私どもの林業政策の基本であるというふうに考えております。
  284. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、当面は外材に頼らなければならないということは、いまの調整機能で十分にうまく運営している、こういうふうに言えるわけですか。
  285. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在の国際環境から申しますと、強権的な方法によりますところの輸入規制というのは困難でございます。そこで、私どもも、需要に見合った供給体制をつくるということに視点を置きまして、適切な輸入がなされますように、産地国とも対話をし、理解を深めると同時に、四半期別に需要供給の見通しを作成し、公表し、努力をしてきておるわけでございます。やはり需要に見合った供給ということについては、それぞれの分野の方々、広く見識のある方々に集まっていただきまして、さらにこの問題について需要に見合った形で入れるような体制に指導してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  286. 寺前巖

    ○寺前委員 山持ちさんの意見をよく聞いていただきたいというふうに思います。  次に、山持ちさんが、材木の値段は上がらない、相続しようにも相続することができぬじゃないかという問題が、これもまた必ずと言っていいほど出てくるのです。つい最近も、私のところにこういう話が出てきました。現金だったら、一千万円あって相続に五百万円払ったとしますと、五百万円という現金は残る。しかし、山の場合であったら、評価が一千万円とされるだけであって、相続税が五百万円。木を切ってそしてそれを払うということになってくるとそれがまた所得となって、したがって払うために千二百万円なり、木をまた大きく切らなければならぬようになってくる。これは現金と山との大きな違いだ。しかも、相続をするといっても、世帯の側から言えば三十年くらい世帯を持つか知らないけれども、山の木は自分が子供のときに親と一緒になって木を植えて、植えた木が物になってくるのに六十年、七十年かかるとすれば、そこにも現金と違う差が生まれてくるのだ。いずれにしたって、三代続いたら山はゼロになってしまうということまで広く言われるようにこのごろはなってきています。  とすると、これから日本の山を、緑を守っていこうじゃないか、あるいは水源地を守っていこうじゃないか、あるいはこれからの、将来の日本材というものを考えたときにというような一連のことを考えるにつけても、山の問題というのは、税の問題を検討することがやはり一つの課題であろうというふうに思うわけです。一定の条件のもとにおいては何らかの免除措置が検討されてもしかるべきではないかというように思うのですが、いかがなものでしょうか。
  287. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業の長期生産性あるいは低収益性という問題がある反面におきまして、いま先生指摘のように、森林の持っている機能をより一層高めてほしいという要請があるわけでございます。そういう点を踏まえまして、私ども、やはりこの助成措置ももちろんでありますが、税制というものも大事な施策でございますので、林業税制につきましては、これまでも鋭意その優遇措置に努力してきたところでございます。
  288. 寺前巖

    ○寺前委員 それで、私、具体的に相続の問題についてはどうなんだろうか。三代やればゼロになるでは、ちょっと意欲をわかすわけにはいかない性格になってくるのじゃないか。しかるべき検討があっていいのじゃないだろうかと思うのですが、いかがなものですか。
  289. 後藤康夫

    ○後藤説明員 相続税につきましては、現在種々の特例がすでに設けられております。  一つは、いま御指摘のございましたように、現金と違って相続税を払う場合に森林を売らなければいけない、そういたしますとそこにまた所得税がかかってくる、こういうふうな問題がかねてから議論をされていたわけでございます。そういった議論を踏まえまして、まず、立木の評価額につきましては、相続税の財産評価額の八五%にするということで、一五%カットする評価の方法がとられております。  それから、計画的な森林の施業をやってまいります場合に、相続税を支払うために計画的な施業が乱される、切って売らなければいけないというようなことになるといけませんので、立木価額が相続財産価額の十分の四以上である場合には、その立木価額に対応する部分の税額につきまして、十五年以内の期間内におきまして、その計画に基づく立木の伐採時期を基礎としまして不均等納付ができる。この場合の延納利子税は、相続税の世界の中では六・六%と五・四%と四・八%という三段階の利率がございますが、年四・八%という一番低いものを適用するというふうに現在取り扱われております。  それから、御案内のとおり相続税の基礎控除につきましては二千万円とあとは法定相続人一人について四百万円ずつ、たとえば法定相続人が三人おりますと三千二百万が基礎控除になるというようなことがございますので、ある一定規模以上の森林所有者になりませんと課税の対象にはなってまいりません。ただ、林業家らしい林業家の方々で、やはり現在の相続税、特に延納の仕方につきましてもう少し期間の延長なり条件緩和ができないかというような声があることも私ども承知をいたしております。  課税の実態なり相続税制全般との関係等考慮しまして、今後ともさらに実態の把握に努めながら慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。
  290. 寺前巖

    ○寺前委員 林業経営という角度から見ると、従来の林業経営の規模とはかなり事情が変わってきているだけに、新しい対応というのはぜひ検討されるべきだと私は思います。  次に、法改正との関係についてお聞きをしたいと思うのです。  森林整備計画制度を市町村に導入をしてきている。これは一定の意味を持っていると思いますが、同時に、施業の促進を図るという問題が非常に大きな意味を持っておるわけです。  現状がどうなっているかというと、先ほどからもお話がありますように、今日、間伐をやらなければならない地域というのはかなりある。ここに出されていますように、一千万ヘクタールの人工林で百九十万へクタールがいまやその対象になっているというふうな指摘があるわけですが、本当に間伐問題というのは非常に重要な位置を占めてきているというふうに思うのです。  口ではそういうふうに言いますが、それじゃ実際上、この森林計画をだれか立ててやるのか。先ほど聞いていましたら、町村で係など含めて置いてあるのが九百で、あと農林課ですか何かという形で存在しておるのが六百くらいある。ですから、現実に歩いてみると、実態は、ほとんどこういう計画を立てるような体制に市町村はないじゃないか。  そこへもっていって、今度は、いま人件費助成を二分の一という形ですか、やっている指導員なり普及員なりを交付金の制度に切りかえて、府県の自主性だ、こういうふうになってきた場合に、片一方では計画をしっかりやりなさい、計画を立てなさい、指定をします。しかし、実際には進んでいかない、こういう関係が生まれてくるのではないですか。そこの保証は果たして一体確立することができるのだろうか。私は、現行は少なくとも国の方でちゃんと人を配置することについて法律上規定づけられている、補助金をきちっと出してやっていく、これは一つの保証だと思う。交付金という形になってしまうと自主性になってしまって、事実上の保証がなくなる。まして市町村については何もないのだから、私は、今日、森林整備計画を市町村にやらすということには非常に重要な意味を持ちながら、その保証体制がない、これがこの法案上の一つの大きな弱点だろうと思うのですが、いかがなものですか。
  291. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近におきますところの私どもの林業政策の方向づけとしましては、やはり実効あらしめるために市町村を中心とした政策展開を図るということで、林業振興地域育成対策事業でありますとかあるいは林業構造改善事業でありますとか、各種の対策は、そういう町村を中心といたしまして計画をつくってもらい、それに基づいて事業実施をするという形で現在いろいろの政策を進めてまいってきておりまして、逐次この山村地域と申しますか、森林の多い地域の市町村におきましては体制が整備されてまいってきておるわけであります。  そこで、今回の森林整備計画を樹立するに当たりましては、この林業振興地域の育成対策事業というふうなものをうまく活用しながら、まず計画を立て、しかも今度は各種の振興施策をうまくかみ合わせながら進めてまいりたい、かように考えておるところであります。
  292. 寺前巖

    ○寺前委員 進んでいるというふうに見ている方がちょっとどうかしているのじゃないかと私は思うのですよ。実際には体制が伴わないから、どうするのだろうかということの心配の方が多いというのが実態だと思うのです。そこへもってきて、交付金で果たしてそれだけの体制が、これはいまのは市町村ですけれども、府県段階自身が交付金の制度で果たして積極的な役割りを担う活動が行われるようになるのだろうか。要らぬものは切ってしまえということになるのではないか。 これは臨調の姿勢そのものがそうなっていることに代表されていますから、ここは一つの問題点だと私は思うのです。  それと同時に、今度は森林の整備計画を立てて、そして山の対策にいよいよ入るということになっても、予算的には一体どういうことになるのだろうか。たとえば現に行われているところの森林総合整備事業というのがあります。五十六年度から一千カ所、五カ年計画でもって仕事を進めている。ところが、現実に国の予算を見ても、去年、ことしと見るときに、五十六億円が四十九億円と減ってきています。国の側でこの間伐対策を重視しておきながら、実際には予算的にも下がっているということ、これが現実ではないかと思うのです。しかも、そういうふうに進めてきた間伐事業が、それではやっただけの値打ちはあるかもしらないけれども、実際にしなければならない面から見ると、もっともっといま以上に間伐対象の面積はふえていくのじゃないか。  たとえば、私の京都のある一定地域で見てみますと、京北町というところとお隣の美山町という二つの山林地域をちょっと拾ってみますと、必要面積が七千三百ヘクタールで五十六年に立てた計画で千百ヘクタールを確立していました。ところが、これが五年間で、計画実施が延び延びになっていくのじゃないかと思いますが、目標どおりにやったとしても五年後にはどういう面積になるかというと、新たに二千五百六十三ヘクタールという面積になって、いまよりもさらに千四百六十三ヘクタールもふえていくという。間伐の面積というのは、私の一地域をとってみただけでもこういうふうになっていくものです。  そうすると、この森林総合整備事業そのものの予算のあり方というものは、他の予算と比べると減り方が少ないと言うかもしらないけれども、そんな程度じゃなくして、もっと積極的に予算的な裏づけを片一方でやっていくということをやらなかったら、市町村が整備計画を立てるとかなんとか言ったって、現実的には進まないというのは予算の面からも出てくるのじゃないだろうか。人の面からも出てくるし、予算の面からも出てくる。これではせっかくの意味を失ってくることになるのじゃないか。そういう点で、言うならば積極的にこの森林総合整備事業の予算をふやすということが裏づけとして明確でなかったならば、私は発展しないように思うのですが、いかがなものですか。
  293. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在、わが国の財政事情が非常に厳しい中でございますので、全体的な伸びが低いことは、これを進める上におきましてやはり将来に向けましてはふやしていかなければならぬという必要性があるというふうには理解しております。私ども、今回の森林整備計画を実施するに当たりましては、ただいま触れましたように、各種の助成施策を有効的、総合的に投入しながら、体制のできたところから進めていくという形をとらざるを得ないと思います。それには、やはり時間につきまして若干の延びが出てくることもあるかと思いますけれども、従来の方法に比べまして、今度は市町村がその計画を立て、特におくれている地域について指定をし、それを伐採するような手だてをし、さらにできない場合には勧告するというふうな一つの流れの中でこれを適正に進めていくと同時に、さらには自分でできない場合には委託の方法をとり、さらにできない場合には分収育林という方法をとりながら総合的に適正に持っていくというようなことで、各種の政策を進めてまいることによりまして、これができるだけ早く目的の森林に達成するようにしてまいりたいと考えているわけであります。
  294. 寺前巖

    ○寺前委員 いまでも間伐対策がきちんとできない、山が荒れているということになっているから、市町村に計画を立てさせてやっていく。ところが予算の裏づけはない、こういうことになってきたならば、結局どこへ流れていくのだろうか。山は荒れほうだいになっていく、森林整備計画だけは何とか立てなければならないということになってくると、結局寝かしておいてもいいじゃないかという人に頼まざるを得なくなってくる。山に使うところの金というのは長期にわたって寝かさなければならぬことになりますから。そうすると、結局大手の山林地主なり企業なりに、お世話になりますなと言ってそこにこの権利を持っていかなければならないという流れが生まれてくるのじゃないだろうか。私は、むしろそういうことをこの法律によって促進をさしていくという結果になるのじゃないかということを心配をするものです。  そういうことを考えてみると、私は、国の積極的な裏づけを明確にさせる、予算的な裏づけが明確にされるということが何にも増して重要な課題だと思うのです。大臣、いかがなものでしょう、その点について。いまでも進まないものを計画を立てて、そして移転をさせることができるようになったら、そういう方向に流れていくのじゃないですか。だから、私は、そういう点で言うと、市町村の体制とそして予算の裏づけ、これをもっと拡大すること、これがなかったならばこの法律の持っていくところの方向、流れていく方向というのは、大手の企業の側に流れてしまうのじゃないかという心配をするのですが、その点、どういうふうにお考えになるでしょうか。
  295. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この法律におきましても、森林整備法人というのをこの担い手として強く打ち出しておるわけでございます。具体的には、現在三十二の府県に三十六の造林公社あるいは林業公社がございますが、これが従来から自営でできない地域の分収造林方式による造林について非常に大きな役割りを果たしておりまして、現在でも毎年一万七千ないし一万八千ヘクタールの造林をしているわけでございます。今後この事業を進めるに当たりましては、こういう公益法人を中心にいたしました分収造林というのが積極的に展開されるわけであります。この造林公社等につきましては農林漁業金融公庫の低利融資も考えておりますので、造林補助金によるところの森林総合整備事業はもちろんでありますが、あらゆる資金を使いながら進めてまいりたいと考えております。
  296. 寺前巖

    ○寺前委員 ところで、これの権限を持つのが市町村長とくるのですから、だれがこの計画推進者になるかということによって、運用によってどちらの方向にでも発展をする性格を持ってくると思うのです。私は、ここに大手の企業が独占的に林地を支配するという流れ、これに歯どめをかけるという要素はこの法律から見ることはできないと思うのです。おたくがおっしゃったように、公社その他のことでいろいろと言ったってだれがやるのか。結局市町村のあれによって行われていくのですから、私は非常に危険な要素を持っているということを指摘せざるを得ないと思うのです。  次に、森林適正管理事業というのがございますが、これについて若干聞いてみたいと思うのです。  というのは、これも共通して出てくる話なんですが、現在の林道のつくり方は非常に単価が安い。単価が安い結果が生まれてくるのは、オープンカット方式になるから。したがって、土砂の三割ほどが下に落ちてしまう。林道をつくって山を破壊しているという問題の指摘がかなりあるわけです。きちんとして横にコンクリートで路側をつくって、そしてそういうふうに山が破壊されないような路側方式でつくっていくということになるならば、現在の単価の倍以上のお金は要るだろう、こういうふうに言われています。私は、せっかく適正な管理事業をやるとおっしゃるのだったらそういうふうに改善をすべきだというふうに思うのです。  また、作業道についても非常に安い単価でおやりになっているようです。ですから、この分野についてもちょっとしたことで崩れやすくなる。せっかくお金を注いでつくったものであっても、事実上はそれは仮設ではなくして林道としての性格を持っています。ところが、災害に遭うと災害復旧の対象にならない。そうすると、何ぼ安いお金であっても重ねてもう一度やり直しをしなければならないことになるのだから、柔軟に災害復旧の対象にするようにしてもらえないだろうか、こういうのが山を管理する、あるいはいろいろ世話をしている森林組合の幹部の皆さんあたりからちょいちょい聞く話です。  適正管理事業のあり方について改善を願いたいと思うのですが、いかがなものでしょう。
  297. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず第一点の森林適正管理推進対策事業の中で開設する林道でございますが、これは、いわゆる林道事業で行います林道あるいは林業構造改善事業で開設される林道と同様に、林道規程あるいは民有林の林道事業の設計書の作成要領に準拠して実施する予定でございまして、オープンカット方式だけを認めて路側方式を否定するというふうなものではございません。  それで、林道を開設するに当たりましての単価でございますが、これは、先生承知のとおり、その地域の地形、地質、それから開設しようとする林道の規格、構造あるいは施工条件というもので決まってまいるわけでございまして、単価につきましては上限がございませんが、現在私どもがやっておりますところの林道、公共林道あるいは林構林道におきましても、五十七年の実績でいきますと、普通林道でございますが、大体五万円ないし五万四千円程度の単価でございますので、私どもはいま申しましたような考え方で対処しているわけでございますから、この森林適正管理推進事業でやる林道が山荒らしになるということはないように進めてまいりたいと考えておるところでございます。  それから、作業道の災害復旧の問題がございますが、一時的に作設される作業道につきましては、いわゆる農林水産業の施設災害復旧に関する法律の対象にはならぬわけでございまして、作業道が比較的長期に利用されるということになりますとむしろ林道にこれを繰り入れまして、林道としての規格内容を持たせてそれなりの措置をしていくということがベターであるというふうに考えております。
  298. 寺前巖

    ○寺前委員 せっかくの機会ですから、私のところに送ってきた手紙の一節をちょっと紹介しておきたいと思うのです。これは森林組合の参事さんをやっている方です。   我が国の林業は昨年から引続いての木材価格の長期低落と下落から、極めて深刻な状況になっております。   原因は、無制限に入って来る外材に対する野放しと、国産材時代が来ると言いながら国産材時代を築くための具体的な施策が遅れているためであります。   現在日本の林業は、戦後に植栽された人工林が一千万ヘクタールとなり、その中で間伐を必要とする林分が七百万ヘクタールにも達していると言われております。その七百万ヘクタールの間伐林分を適正に間伐し、間伐材を有効に利用すればそれが住宅建築材にもなり、また間伐後の林分は将来国産材時代を実現することの出来る優良な林分に育っていくことは明確であります。   林業は長期な産業でありますが、長期であればあるほど慎重にめん密にその計画を立て、その実行をしなければなりません。   林野庁では、昭和五十八年度予算で、他の省庁でマイナス予算と言われている中で一〇二%という予算を組み、農林予算全体の中で一〇%を超す予算を組んで積極的に取組んでいるところは高く評価をするものですが、特にその中で、今年度新規に計画している森林適正管理事業について、この事業を適正に施行すれば民有林の振興に大きく役立つことが出来るものと期待をしながら、内容について質問と改善を要求したいと思います。   現在計画されているこの事業は、標準事業費八千万円で、特に林道、作業道を中心にした森林の適正な管理をするということですが、その中で計画されている作業道はこれからの民有林の振興に最も重要な施設であります。この作業道を適正に設置することにより、林業振興対策の一番大きな問題であります若年労働者の確保を有利にし、多発している林業災害を防止することに役立ち、併せて間伐事業の促進と間伐材の有効利用をする重要な施設になるものであります。   この作業道が現在計画されている単価をみると、一メートル当りわずか三千円程度の標準事業費であります。一メートル当り三千円では、山腹を切りっぱなしで何の保護も出来ない道にしかなりません。しかも林道台帳にのらない林道ということですから、災害が生じた時には災害復旧の対象にならないために、災害復旧は受益者の責任で復旧することになります。   また、単価の安い道をつけることは山村の崩壊の元をつくることにもなり、せっかくの良い計画が、安易な施行により良くなることが悪の根源になるということでありますから、今回計画されている森林適正管理事業の作業道は、本当に森林の適正な管理をすることの出来る、林業労働者の、そして民有林の振興を図るための作業道であるような作業道にするために、少なくとも一メートル当り最低一万円程度の単価を組む必要があると思います。   林野庁当局のお考えを聞かせて頂きたい。 こういう手紙なんです。  切々たるものが本当に山で仕事をしている人からこうやって出てくるものですから、ぜひよくお考えをいただきたいと思います。  その次に、ここでも出てくる林業労働者の問題ですが、林業労働者の確保のために、先ほど労働者法の問題についての御指摘もありました。  時間の都合もありますから、その問題はさておきまして、また、こういう内容の訴えが来ているわけです。  それは何かというと、新林業構造改善事業で計画を立てました。せっかく計画を立てたのに、実は移動式の住宅でなければ、固定式の山林労働者のための住宅ではこの計画にのせるわけにはいかない、こういう指摘を受けて泣く泣くやめざるを得なくなったのだという訴えが私のところに二カ所から来ているのです。これについて、新林業構造改善事業としてせっかくおやりになる事業に対して、こういうようなことで果たして林業労働者の確保に役立つのだろうかと私も思いますので、いかがな見解をお持ちなのか、お聞きしたいと思います。
  299. 秋山智英

    ○秋山政府委員 新林業構造改善事業は、林業振興と活力ある山村地域社会の形成に資するために、いま先生お話にありましたような林業経営近代化施設の整備とかあるいは林道等の基盤整備その他を地域の実態に即しましてメニュー方式で実施するわけでございます。  いまお話のございましたのは、この林業経営近代化施設の整備事業の中の一つだろうと思います。  この事業におきましては、素材生産とかあるいは造林事業というふうな各種事業に直接必要な簡易な、いわば移動式の休憩施設を確かに補助の対象にしているわけでございます。そのほかに、地域の林業活動を活発化するということも大事な仕事でございます。そのために、研修のための集会だとかあるいは技術訓練を行うための活動拠点の施設というものを補助の対象としておりまして、この施設などは、その利用目的をいろいろ考えますと、やはり研究のために林業関係の方々が泊まるわけでございますので、そういう施設はその目的を妨げない範囲で利用するのは差し支えないわけでございます。  ただ、いま御指摘の林業者の方々が日常生活に使用する、いわゆる固定式の本来の住宅まで補助の対象ということになりますと、これは林業に関する国の助成施策としてはむずかしいというふうに私どもは理解しております。
  300. 寺前巖

    ○寺前委員 何でむずかしいのか、私はわからぬですけれども……。  林業の労働者が、たとえば私の方の美山町というところでしたら、ずいぶんたくさん高知県からやってきますよ。高知県からやってこられた方に対して、長期にわたってお住まいになりますから、そしてまた一定の期間お帰りになって、また出てこられる、こういう方を確保してやる上において、新しい時代にふさわしい、新しい意欲を持ってやってもらおうと思ったら、そういう性格のものでなかったらできないではないかということを強く言っておられました。ですから、私は、この点については再検討をしていただきたいものだというふうに思うわけです。いかがですか。
  301. 秋山智英

    ○秋山政府委員 日常生活の固定式の宿舎までこれでつくるというのは、住宅政策にもかかわる問題がございまして、林業振興という立場からはなかなかそこまで実施し得ないわけでございます。
  302. 寺前巖

    ○寺前委員 林業振興のためからいうならば、むしろそういうふうにやりたいといって、わざわざ問題を提起しているわけでしょう。林野庁の方でお削りになるというのだから、積極的に下からの意見でそうやりたいというものを、意欲を抑えるような役割りにしかならぬじゃないですか。  私は、そういう点から、改めて大臣に御検討いただきますようにお願いをしたいと思うのですが、大臣、ひとつ検討していただけますか。
  303. 金子岩三

    ○金子国務大臣 いろいろ大変参考になる御意見、御提言を承りました。十分検討いたしたいと思います。
  304. 寺前巖

    ○寺前委員 林業振興の問題でもう一つ出てくるのは、林業振興地域育成対策事業であります。昭和五十五年ですか、これが導入されて、毎年一ないし二町ずつ計画樹立がずっと行われております。  昭和五十七年度、私の方の京北町というところで計画樹立が行われましたが、実は、そのお隣の町の八木町というところで話題が生まれたわけです。  どういう話題が生まれたかといいますと、八木町の中に、神吉地区、旧神吉村というのがあるのです。これは京北町の山全体と同一の林業圏に属するわけですが、町村合併で八木町の中に一緒に入ってしまったわけです。そうすると、これは水田地域でございますので、森林面積が率としては非常に減ってしまう、林野率というのが非常に減ってしまうという事態になる。しかし、山の関係で言えば、行政区分がどうあろうと同一の林業圏に属している。  京北町の方は、振興地域育成対策事業の対象になって、そして、それに基づくところの助成措置が行われている。同一林業地域であっても、違うところの平場の地域と町村合併したために、今度は、その町でそれを施行しようとしても取り扱いが変わってきてしまう。こういう事態というのは、私は、ここの町に限らず、各地で生まれてくる問題だろうと思う。  そういう場合に、一定の中心の町村が存在すれば、他の町の一定部分であっても、同一の林業圏として、同一の考慮圏内に入れるという柔軟な対応策というものはとれないものだろうか。たとえば旧村として見て取り扱いをしてやるとか、何らかの措置をもって、同一林業圏における取り扱いというものを考えてやる。  これは、これからの林業振興政策の非常に重要な位置づけをする指定になってきますから、これに対するところの関心というのは非常に高うございます。ですから、そういうふうに何らかの措置がとられるように御検討いただきたい。 いかがなものでしょう。
  305. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業振興地域の指定につきましては、市町村長の申請に基づきまして、林業振興を図るということで市町村みずからがこの計画を策定し、実施主体となりまして進めていくという形をとっているわけでございます。したがいまして、旧村単位でやるということは非常にむずかしいわけでございまして、あくまでも、市町村の行政機能を生かして市町村長がみずから計画つくり、実施主体となり、この林業関係振興をしてまいる、こういうことであるわけでございます。  いまお話しの町村につきましては、隣接の町村と一体的になりまして整備をし、複合市町村を単位としてやれる道がございますので、そういうふうな方向がとれれば非常によろしいかと思いますが、旧市町村だけでやるというのはなかなか現在の制度ではできませんし、また、現在、旧市町村、これは神吉村でございますか、一千ヘクタールぐらいの面積しかございませんので、どこか隣と一緒になってやるという手だてを町村で検討していただくのがよろしいのではないかというふうに考えております。
  306. 寺前巖

    ○寺前委員 私は一例で申し上げたわけでございますが、こういう課題というのはいろいろ出てくるだろうと思います。何も法律で規制をしているわけじゃございませんので、現実的に柔軟によく研究をしていただきたい。今後の課題としてでも、私は提起しておきたいと思います。  そこで、国有林の問題について聞きたいと思うのです。  国有林の占めている事態というのは、東北、北海道方面あるいは中部方面と西日本の方面と、それぞれ全部置かれている事態は違うと思うのです。私の方の国の管理している国有林について見ると、間伐や枝打ち、雪起こしというのはほとんどおやりになっていない。山の関係者に聞いたら、京都の北山杉の存在している貴船のところでおやりになっているところの国有林は確かに間伐をやっておられます。また、あそこは入札をやったら五千万円の目標に対して一億円という数字が出てくるほど模範的なやり方をおやりになっているようだ。だけれども、京都府下京都営林署に例をとってみると、全体として見ると間伐や枝打ちや雪起こしをおやりにならないやり方で、こういうことをやっておられたならば山はつくられても木はつくられませんよということを手厳しくこの北山杉をやっておられる方々はおっしゃるわけなんです。事実、山に入っている労働者に聞いてみても、またそういうことを言っています。  こういう事態で臨調の方針に従ってもしも直営でやっている人がなくなってくるということになってきたら、これは果たしてどういうことになってくるだろうか。下請に回すということになると、ちょっと聞いてみたら、下請の単価が一ヘクタール当たり三万五千円から四万五千円くらいの範囲だ。三〇%の管理費というのが別につくけれども、それにしたって、労働者は、三万五千円から四万五千円では、この地域では十万円が常識ですから、それは下刈りはやるけれども、間伐、枝打ち、雪起こしが行われるような予算ではない。山の管理というのは、木の管理というのはこんなことでできるものではないということを異口同音に私に聞かしてくれました。  これは全体としてそういうことになっているのでしょうか。私は、そういうことを考えるならば、国有林が赤字だということだけではいかない。木をつくるのだという立場から見るならば、適切な間伐、枝打ち、雪起こしというのはおやりになる必要があるのじゃないか。そのための予算というのは積極的にお組みになる必要があるのじゃないだろうか。木の値打ちを落とすようなことをしてはならないと思うのですが、いかがですか。
  307. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林におきますところの森林造成に当たりましては、地域の施業計画というものを立てまして、それに基づきまして林業生産の目標を決めまして、それに応じた施業方法を定めて計画的、能率的にやってきておるわけでございまして、植えつけを終わりましてから下刈り、坪刈り、除伐、間伐というものは具体的な計画に基づいてやってまいっておるわけでございます。  ただいま御指摘の林分はどこか存じませんが、私どもといたしましては、やはり施業方法を適切に実施いたしまして健全な森林をつくることが国有林の役割りでございますので、そういうところはいまないと存じますけれども、もしあるとすれば、今後適切に対処していかなければならぬ、かように考えております。  それから、先ほど請負単価のお話がございましたが、現在私ども計画しております造林予算単価でありますが、下刈りにつきましては四万一千円・ヘクタール、それから除伐は十万三千円程度計画予算を立ててございますので、そう低い単価じゃないというふうに理解していますが、これは国全体の国有林の単価でございます。念のために申し上げておきます。
  308. 寺前巖

    ○寺前委員 ぜひよく御調査をいただいて、国有林が山はつくれるかしらぬけれども木はつくれぬぞという批判を受けないように、木を大事に育てることを検討していただきたいと思うのです。同じく貴船のお隣になるのですが、黒田というところが京北町の一角に存在するわけです。昭和十一年にこの地に民間が持っている共有林です。いまの京北町の共有林ということになるわけですが、国と契約を結んで、そして国の木として育てているわけです。昭和十一年といいますといまからもうすでに四十年ははるかに超えているわけです。ところが、その間に一度も間伐を見たことがない。木を育てるのにこんな取り扱いでいいのか。その周辺には民有林がたくさんあります。北山杉として有名な木がいっぱい育っています。明らかに国が管理する木と地域の人たちが管理している山の木とには差が生まれています。これが模範的な国のあり方なんだろうか。私はここからも批判が出てくる内容があると思う。村の人は間伐を直ちに実施せよということを強く、この間も私寄りましたら、言っていました。こういう問題について一体どういうふうにやるつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  309. 田中恒寿

    田中説明員 お話のございました黒田財産区の官行造林地でございますけれどもお話にございましたように、昭和十一年、戦争直前の植栽でございますので、その後いろいろ人手不足等が重なりまして十分な保育、手入れができないということがございましたので、昭和二十四年、戦後になりましてから計画的な改植を継続をいたしております。  したがいまして、林齢から申しまして直ちに間伐を必要とするところがさほど多かった林分状況ではございませんけれども、ちょうどこの現地が直接にここまで林道が到達をしておらない、非常に山の中腹以上になっておりまして、もし間伐を実行いたしますとすると、隣接の財産区の間伐と同時にすることが非常に効率的であるというふうなこともございました。したがいまして、現在ここは五十六年に施業計画というものを入れまして計画を立てておりますけれども、その計画の中で間伐を相当量指定をいたしまして、隣接の財産区有林並びに私有林の所有者等と協調いたしましてこれを同時に間伐を実行することが最もよろしいということで、現在計画をしているところでございます。
  310. 寺前巖

    ○寺前委員 そうすると、これはいつやるというのですか。
  311. 田中恒寿

    田中説明員 五十六年から五カ年間の計画でございますので、この五カ年間の計画期間内におきまして民有林の林道計画がどれほど延長になりますか、極力延長になればよろしいのでありますけれども、また、ならないとすればそれなりに財産区の森林と一体的な伐採、搬出計画を立てるというふうなことを考えますので、いわゆる計画期間内にこれを行うわけでございます。
  312. 寺前巖

    ○寺前委員 国有林というのは模範的なものとして注目を受けていますから、積極的に乗り出してその事業をやってください。要望しておきたいと思います。  それからその次に、これは私が直接見に行ったわけじゃないのですが、私の方の関係者が、長野県の上松署という林野庁の出先があるのですが、そこへ行ってきたときの話なんです。  どういう話が出るかというと、間伐や風倒木など被害木あるいは林道の開設に当たって特定のところにしか随意契約をやらないという問題が出されているわけです。特定のところとはどこなんだ。そうすると、当該の森林組合であり、そして木曽協和産業だ、こう言うのです。  地元の関係するところの諸君たちに聞いてみると、この木曽協和産業というのは林野庁のOBの人たちが役員になっているところの産業、あるいは林野庁の天下りの企業、それがうまい汁を吸うんだ、こういう非難というのか、批判というのか、声が出るわけなんですね。いろいろ言い分はあるようなんですけれども、結局のところおまえらでは力がないんだということにされてしまう。だが、実際の仕事は下請で関係する業者の諸君たちもやっている。こういうことを考えると、もっと広く、随意契約であろうと何であろうと、地元の振興のために林野庁が一役担うという役割りをしなければいけないんじゃないだろうか。特定の企業にだけ仕事を提供するというやり方は暗いものを感じさせるではないか、こういう報告を聞きましたので、せっかくの機会ですから、どういうことになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  313. 田中恒寿

    田中説明員 国有林のいまお話しの間伐、それから択伐とか支障木の伐採でありますとか、その伐採に当たりまして残すべき木を傷めない周到な工夫が要るとか、あるいは更新のために地表の植物を傷めない、そういういろいろ技術を要するものにつきましては、そういう技術を有する者に対しまして随意契約で直接に販売する方法を開いておるわけでございます。  お話のございました協和産業につきましても、そういう技術者を抱えておりますので、地元の重要な林業事業体としてそれへの直接販売をしているわけでございますが、この協和産業につきまして多少申し上げますと、これは沿革が多少古うございまして、木曽谷に森林鉄道がまだ走っておりましたときに、あれはその地方の住民の方々の唯一の足であったわけでございます。生活物資からあるいは人員の輸送に至るまで、王滝村などは全面的にこれに依存をしなければならないということから、これの台車を借り上げたりあるいはその輸送運賃等を徴収したりという便宜を計らうために地元の市町村が出資をいたしましてつくった会社がそもそもの始めでございます。その後この会社が伊勢湾台風、三十四年でございますが、その際の風倒木の搬出を手がけるようになりましてからだんだんと木材の伐採等の事業を行ったわけでありますが、森林鉄道が廃止をされました、これは五十年でございますけれども、その後におきましても地元に根差した産業といたしまして間伐材等の伐採も行うようになって地元振興に寄与しておるというふうな状態でございます。  間伐材等につきましてもっと広くというふうなお話でございますけれども、国有林のこの資源事情から来る制約あるいは環境保全、自然保護等の要請にこたえるということもございまして、全体の事業量が縮減傾向にございます。それに伴いまして造林事業等が大幅にこれまた縮減してくるということになりますと、これまでそれらの事業に頼っておりました地元の民間林業事業体、これの経営の安定あるいは作業員、従業員の雇用の安定ということは国有林としても十分意を尽くさなければならないところでございますけれども、そういう事業が全体縮減傾向でございますので、既存のそういう事業体等の全体的な調整に国有林としても非常に苦慮をしているところでございまして、根本的な、あるいは新規のそういう事業量を見直していくということにつきましては非常にむずかしい事情にあるわけでございます。
  314. 寺前巖

    ○寺前委員 私は、従来との関連があるからむずかしい問題があろう、しかし、縮減の方向になればなるほど地元との関係においてはいろいろ取りざたをされるという性格を持ってくると思うのです。  たとえば、いまおっしゃいました木曽協和産業の謄本を見ますと、ここに役員になって登録されている人をずっとこう見ていると、「林野関係退職者名簿」に出てくる人が次々と出てくるわけなんです。これは五十八年二月二十八日に出された謄本ですが、私がいまこれを見ただけでも、塚本という人、赤木という人、こういうふうにずっと順次かわってくるのか。この「林野関係退職者名簿」というのは、これは「営林署長級以上の退職者を収録している。」こう書いてありますね。ですから、それぞれの地方におけるところのりっぱな林野庁のお方です。そういうお方が次々と交代して天下っていって、現に取締役として田沢兵司というのですか、この方が現在取締役としておられるようです。  ところが、これと同じような話がまた松本でも聞かれてきたわけですね。そこで、松本の場合を見ると、信濃山林株式会社というのがある。この信濃山林株式会社を見ると、これはことしの三月八日の謄本ですが、その謄本を見ると、いま出たと同じ人の名前が、赤木とか塚本とか野口とか田沢とか、こうやってまた出てくるわけです。次々と出てきて、いま監査役に樋口という人が出てくる。そういうことになってきているわけですね。  そうすると、その地域におけるところの従来のつながりが、それぞれの会社との間に随意契約をやっておられるかもしらぬけれども、そこがまた林野庁の天下り先になっているということになって、うまい汁はあそことの間にだけはできていくんだなあということを実績的につくられていくことになっているではないだろうか。私は、地域の不信あるいはいろいろな意見が出てくるというのは、歴史的にあるだけに一層強く出てくるであろうと思うのです。調査をされて改善の方向を明らかにしていただきたいということを要望したいのですが、長官、どうですか。
  315. 秋山智英

    ○秋山政府委員 実態を調査いたします。
  316. 寺前巖

    ○寺前委員 せっかく国有林の問題をさせていただいたのですから、それでは国有林の赤字という問題について。  民有林の場合だったら、普通杯で農林金融公庫から三・五%という融資がございます。国家が利子補給をやってまでやるというようないろいろな制度がありますけれども、あります。国有林の赤字を云々するんだったら、財投の七%前後ですか、その利子を考えるときに、国有林に対してもそういう取り扱いの利子補給があってしかるべきではないんだろうか。赤字、黒字というのは計算の仕方によって変わってきますから、もっと緑をと云々し、日本の国土の治山治水は政治の基本だと昔から言われているわけですが、そういう山を大切にする、木を大切にするという角度から見るならば、積極的に国の施策があってしかるべきではないだろうかというふうに、このたった一つの金融の問題を見ても感ずるわけです。これが一つ。  それと、年度末手当を国鉄とこの林野の皆さんには御遠慮いただきたいという問題が最近起こっています。ほかの公労協の皆さんと違う扱いを受ける。労働者の責任なのだろうか、山の管理が、運営が。私はそういう取り扱いはすべきでないと思うのですが、大臣、この二点についてどういう御見解なのか。
  317. 秋山智英

    ○秋山政府委員 国有林野事業におきましての最近の財務事情でございますが、これが悪化してまいりまして、経営改善期間におきまして、造林とか林道というふうな投資に対しましては運用部資金から長期の借入金を借り入れると同時に、一般会計の資金の繰り入れを行っておるところであります。  この資金運用部資金からの長期借入金の金利でございますが、これは、この運用部資金の性格から申しまして、他の財投の対象事業と同一の金利によらざるを得ないわけでございまして、国有林野事業だけの金利を緩和するということは実は困難でございます。  一方、民有林の関係につきましては、先生指摘のとおり、農林漁業金融公庫からの融資につきましては確かに低利でございますが、これは森林資源整備、林業生産性の向上を推進するという観点から、別途一般会計からの補給金を受けまして政策目的等に応じた融資条件とされているものでございまして、どうも国有林の場合の収支が均衡するまでのつなぎの融資的性格を持つものと趣旨が異なるわけでございます。  そこで、この国有林の長期借入金の金利につきまして、実質的に低利にするためには利子補給措置を講ずる必要が実はあるわけでございますが、このような措置を講ずることは、先ほど申し上げましたような国有林と民有林の趣旨の相違と、それからもう一点、現在の国家財政をめぐる厳しい情勢の中から現時点では大変むずかしい、困難な問題であるように考えているわけでございます。  それから、次の年度末手当の問題でございますが、私ども、現在、諸般の情勢を踏まえながらこのぎりぎりの時期に来ているということは十分頭の中に入っておるわけでございまして、できるだけの努力をここで差し向けたい、そういうことで現在対処しておるところであります。
  318. 寺前巖

    ○寺前委員 時間の都合がありますので最後にしますが、分収育林の契約上の問題です。  期待を持たせて、結果はうまくいかなかったということになったら、これは木を育てるのには、何度も話題になったことですが、時間がかかることでございますので、その責任は法律上でつくられていく制度であるだけに、非常に意味は大きいと思うのです。  ちょっと違う話ですが、私、ここに北日本物産株式会社というところの「財産づくりの近道 有利な桐栽培」というのを持っています。要するに財形植林ということですが、投資をしてもらおうということになったら、もちろん山を守りましょう、緑を守りましょうという宣伝もあるでしょう。だけれども、お金を出しなさいと言う以上は、単なるボランティアという性格だけではいかない要素が伴ってくる。そこには投資という要素というのが大きくなってくることは事実だと思うのです。  さて、その投資が長期にわたるときに、ふたをあげてみたらえらいことになった、途中でやめようにもやめるわけにはいかない、責任は非常に大きなものになると思うのです。そこの取り扱い方の問題についてこれからどうされるつもりなのか、細かいところまで御研究になっているだろうから、ひとつお教えいただきたい。
  319. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収育林を進めるに当たりましては、費用負担者が支払いました育林費用がやはり適正に育林に使用される、それで森林の整備計画どおりなされる、同時に育林負担者の利益が適切に保護されるということがきわめて重要であるのは御指摘のとおりであります。  そこで、私ども、この分収育林契約の募集に当たりましては、まず都道府県知事への届け出制を採用いたしまして、その行政指導のもとで契約の締結、履行を行わせていくということにしておりますし、また、変更勧告あるいは勧告に従わない場合の公表のこと、あるいは届け出事項の遵守の勧告、それから報告徴収等の権限を知事に適切に行使してもらいまして、この適正な契約の締結を確保いたしまして、この分収方式によるところの育林の適正な実施を図りたいと考えておるわけであります。  なお、この制度を具体的に運用するに当たりましてトラブルが起きないようにするためには、当然のことながら模範契約例を作成いたしまして、契約当事者を変更する場合の措置であるとか、あるいは当事者が死亡しまして相続があった場合にどうするかという措置、それから損害補てんをする場合の措置、契約の解除の場合の措置、契約の継続が困難となった場合の措置、あるいは契約当事者間の協議の方法等についてきめ細かい契約の模範例をつくりまして、この実施に当たりまして遺憾のないようにしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  320. 寺前巖

    ○寺前委員 終わります。
  321. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  322. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出、農業改良助長法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  323. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出頭日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  324. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、来る四月十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十八分散会