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1983-03-24 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十四日(木曜日)     午前九時四十六分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    臼井日出男君       小里 貞利君    岸田 文武君       北川 石松君    北村 義和君       佐藤  隆君    志賀  節君       田名部匡省君    高橋 辰夫君       近岡理一郎君    羽田  孜君       平沼 赳夫君    保利 耕輔君       松野 幸泰君    三池  信君      三ツ林弥太郎君    串原 義直君       佐藤  誼君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    竹内  猛君       前川  旦君    松沢 俊昭君       安井 吉典君    吉浦 忠治君       神田  厚君    寺前  巖君       藤田 スミ君    菅  直人君       田島  衞君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産政務次         官       楢橋  進君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房総務審議官  関谷 俊作君         農林水産大臣官         房審議官    古谷  裕君         農林水産大臣官         房審議官    船曳 哲郎君         農林水産省経済         局長      佐野 宏哉君         農林水産省構造         改善局長    森実 孝郎君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         林野庁長官   秋山 智英君         林野庁次長   島崎 一男君  委員外出席者         大蔵省関税局企         画課長     佐藤  浩君         農林水産大臣官         房参事官    中川聡七郎君         自治省財政局調         整室長     前川 尚美君         参  考  人         (畜産振興事業         団理事長)   森  整治君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   石田 博英君     北川 石松君   上草 義輝君     平沼 赳夫君   川田 正則君     臼井日出男君   三池  信君     近岡理一郎君   前川  旦君     佐藤  誼君   阿部 昭吾君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     川田 正則君   北川 石松君     石田 博英君   近岡理一郎君     三池  信君   平沼 赳夫君     上草 義輝君   佐藤  誼君     前川  旦君   菅  直人君     田島  衞君 同日  辞任         補欠選任   田島  衞君     阿部 昭吾君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)(参議院送付)  森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二七号)  農林水産業振興に関する件(畜産蚕糸問題等)  畜産物価格等に関する件  蚕糸業振興に関する件      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  農林水産業振興に関する件について、本日、畜産振興事業団理事長森整治君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 山崎平八郎

    山崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安井吉典君。
  5. 安井吉典

    安井委員 いよいよ新しい畜産物価格決定段階が迫ってまいりました。きょうは、そういう意味で、まず加工原料乳保証価格の問題から、あるいはまた食肉の問題等に進んでお尋ねをいたしたいと思います。  畜産振興事業団森理事長もおいででございますので、在庫の問題からまず伺ってまいりたいと思います。  乳製品在庫状況は、近来にない少ない状況になっているように思います。そこで、これは畜産局事業団との両方からお答えいただければいいと思うのですけれども、現在における民間及び事業団在庫状況はどうなっているのかということを、民間については見込みということにもなろうと思うのですけれども、それをひとつ伺ってみたいと思います。特に、民間については悉皆調査で明らかにしたいというような御答弁もありましたので、それがどんなようなことになっているのか、また、事業団の方は昨年度放出をどんどん進めておられるわけで、現在の状況について、またその在庫は適正であるというお考えなのかどうか、そういったような点について両方からひとつ伺いたいと思います。
  6. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま御質問のございました在庫でございますが、悉皆調査を進めておりますので、まだ確実な数字として申し上げるには若干早うございますけれども、まずバターでございますが、多分二月末現在の数字で約二カ月分、一万二千トン弱、一万一千数百トンという数字になろうかと思います。これは、昨年の民間在庫水準約一・五カ月分、八千三百トン余よりもふえております。これは、御承知のように事業団在庫が比較的軽減されておりますので、民間は比較的多く持っているという姿だろうと思います。  それから脱脂粉乳につきましても、多分二万四千トン弱、約二カ月分の在庫民間で持っていることになろうかと思います。これも昨年の民間在庫約一・六カ月分、一万八千トンを上回っているわけでございます。  それに対して、事業団在庫につきましては、御承知のように昨年から在庫放出をいたしておりまして、バターにつきましては約三千トン、脱脂粉乳につきましては二万二千トン弱、二万一千八百五十トンでございますが、約一・九カ月分の保有をいたしておるわけでございます。
  7. 森整治

    森参考人 事業団の方の在庫でございますが、御承知のように昨年の十一月までにバターを一万一千九百七十トン売却いたしました。脱脂粉乳につきましては、八月までに二万一千トン売りました。それ以来ただいままで売却をいたしておりません。したがいまして、持っております数量は、バターで三千十五トンでございます。それから、脱脂粉乳は二万一千八百五十トンをただいま保有しておるわけでございます。  あわせて、適正在庫といいますか、かねがね先生からいろいろ御指摘がございましてお答えをしておるわけでございますが、ちょっと申し上げますと、適正在庫という言葉がいいのかどうかわかりませんけれども先生もその点は十分御承知のことと思いますが、要するに、いざというときに事業団が持っていた方がいいというのはどの程度数量であろうかということで私どもお答えしたつもりでございます。それにつきましては、従来から考えは変わっておりませんで、約一カ月分、需要量のそれはバターで大体五千トン、脱脂粉乳で一万トン、その程度をめどにということで申し上げたつもりでございます。  いまの考えはどうだということでございましょうが、その考え方は変わっておりませんが、需給操作のために事業団が持っておるわけでございますから、需給事情が現在どうなっておるかということ、非常にタイトであるとか逆に過剰の方向に動きつつあるとか、そういう状況によって現実の保有量というのをいろいろ考えていくべきであろうと私は思っております。そういう意味からいいますと、いま持っておるのは、バターにつきましてはこの程度でもいたし方ないかなと思っておりますし、脱脂粉乳につきましては、かねがね一万トンというわけでございますから、それが二万一千トンをオーバーしているわけですから、よけいに持ち過ぎているかなという感じでございます。
  8. 安井吉典

    安井委員 バター在庫が足りないのじゃないかという感じですね。一月分より足りないことは間違いありませんけれども、余り足りないと昨年のようにまた緊急輸入などというような操作に走られては困るわけであります。その点、どうお考えですか。
  9. 石川弘

    石川(弘)政府委員 バター輸入の件につきましては、先生もよく御承知のとおり、昨年の春先に北海道生産が大変停滞いたしまして計画以下になってしまった。ちょうどそのとき好天が重なりまして、アイスクリームその他の二次製品が爆発的な売れ行きを示しまして、バター売れ行きが非常に伸びてきたわけでございます。したがいまして、私どもとすれば、まずこういう状態のもとでは国内における生産を順調に回復させる必要があるということで、当時考えておりました全乳哺育とか御承知の駄牛淘汰というような手法をやめて、むしろこれを生産に振り向けるような手法に転換をしていただいたわけでございますが、その後、今度はどちらかと申しますと天候状況その他から大変な生産増強の姿になってまいりまして、御承知のように主力生産地帯でございます北海道の昨年四月からことし一月までの生乳生産量は対前年比六・五%増という形で、大変増加してきたわけでございます。したがいまして、昨年事業団保有量放出いたしました後、価格水準につきましては、高位というお話もありますが、上げどまりから下げに転じておりまして、特に最近は生乳需給調整生産者団体みずからがつくっておりますバター等放出を中酪がやっておりますが、あの放出価格は若干下がり目に出ております。  私ども、従来の例として大変恐れておりますのは、御承知のように五十一年ごろに不足状態がありまして、輸入をしてある程度放出しましたことをきっかけに今度は価格が大変低迷いたしまして、国内製品在庫までふえてきたというようなこともございますので、五十八年度において順調に国内生産が行え、したがってそれをある程度認めるような限度数量の設定をいたしますれば、私どもとすればこれ以上逼迫する基調に出ることはないのではないか、そういうつもりでございます。したがいまして、五十八年度の需給計画をきちっと立てまして、その中でそれに見合った国内生産を確保していただくことが必要ではないか、また、政府とすればそれに必要な措置をとるべきであろうと思っております。
  10. 森整治

    森参考人 若干補足的になりますけれども事業団輸入したバター放出しないでいま持って需給の動きを見ているわけでございますが、大きな変化といたしましては、中央酪農会議助成金を出しまして、約五億でございますが、五万トンの生乳出荷調整乳として乳製品にかえて、中酪が畜産局の指示によりましてそれを処分するという体制をとっておるわけであります。そこから出てまいりますバターがすでに二千三百トン三月中に放出されておりますし、なお、五万トン、生乳換算でございますが、それを約九万二千トンまでふやして、それを乳製品にして中酪に持たせて放出するという体制をただいまとっておるわけです。でございますから、事業団の外にもう一つそういうクッションがあるわけで、それでとりあえず十分しのげるのではなかろうかという判断をいたしておるわけであります。
  11. 安井吉典

    安井委員 バターについては、事業団では国内産のものはもうゼロになっているわけですね。そして、去年輸入した三千トンだけが事業団に残っている、そういうかっこうなわけです。したがいまして、何か輸入とそれとがかかわってきて、在庫が減ったらまた輸入すればいい、そういう安易な考え方になられたら困るものですから、そういう意味合いでも私は特にその点を強く申し上げた次第であります。  そこで、次に伺いたいのは牛乳需給見通しであります。  牛乳乳製品需給状況については五十六年度の速報があるだけでありますが、五十七年度も消費は引き続き上昇しているように思います。その傾向はどうなっているのか、それから五十八年度においてその見通しはどうなるのか、そういう点を伺いたいわけであります。傾向としては年間約三十五万トンぐらいのペースでだんだんふえているような感じなんですね。それらの見通しはどうなっているのか。それは輸入も含めての総消費量ですね。飲用乳製品それぞれについての五十七年度、さらに五十八年度の見通しをひとつ伺いたいと思います。
  12. 石川弘

    石川(弘)政府委員 速報で出ておりますのは五十六年度まででございまして、五十七年度の数字はまだ公にする数字として出ておりません。月別で五十七年四月から五十八年一月までの数字だけがございますので、それで申し上げますと、生乳生産量は全国で五百七十五万五千トン。これは一月まででございますから当然これだけの数字で、対前年比で申しますと三%の増でございます。それから都道府県別に分けますと、北海道で百九十四万四千トン、六・五%増。都府県で三百八十一万一千トン、一・三%増でございます。それから、飲用等仕向け処理量は三百五十八万七千トンで二・五%増。それから、乳製品向け処理量は二百四万八千トンで六%増でございます。それから輸入数量につきましては、この時点ではちょっと集計いたしておりませんので、後ほど数字を確かめた上で御報告をいたします。  それから五十八年度の見込みはどうかという御指摘でございますが、飲用牛乳伸びというのは、大体二%から三%の間で来ているうちは比較的価格面でも崩れない形で来ているのではないかな。これを超えますような、三%というのはちょっと多いのかもしれませんけれども、二%台ぐらいのところならばいまの通常の消費拡大努力の中で順調に行く。ところが、乳製品の方はなかなかわかりづろうございまして、これは価格にも大変敏感でございます。価格が低迷していますときの伸び率は高うございますが、価格が上がってまいりますと伸び率が抑えられるという傾向でございますので、この一、二年の傾向からいえば、飲用乳伸び率より若干高いところへは行くのではないかと私どもは思いますけれども、余りこれを的確に——特に申し上げたいのは、御承知のように、飲用以外の場合に、いわば政府が関与しておりますような限度数量の中の話とその他乳というものがございまして、なかなか分析しにくうございます。私の感じだけを申し上げまして恐縮ですが、飲用牛乳よりは若干高い伸び率は行くのではないかと考えております。
  13. 安井吉典

    安井委員 私がいま申し上げたのは、大体いままでの傾向をずっと追ってきますと、飲用乳にして年間十五万トンぐらい、乳製品にして二十万トンぐらいは伸びていくような気がするわけであります。  そこで、この伸びを一体何でカバーするかということになるわけですけれども、もう事業団在庫放出という手はありません。先ほど来の御説明で、むしろバターなどは足りないくらいであります。もっとも中酪の方もありますけれども、そういうような状況にあるし、さらにまた輸入をふやすというようなそんな無責任なやり方の選択をわれわれはすべきではありません。したがって、ふえる分はストレートに国産の牛乳に依存していくというほかにないのではないかと私たちは思います。したがって、そういうことから考え限度数量の問題に結局行き着くわけですが、この間のこの委員会でも、畜産局長は百九十三万トンの現在までの限度数量にはこだわらないという言い方でお考えを述べておられるわけでありますが、その意味は、いままでの議論の中で明らかなように、これよりもふやすつもりだということにほかならないと思うのですけれども、これは中酪の方の二百二十一万トンという生産指標がありますね、この程度までをお考えなんですか。それとも、そうでないのですか。その辺伺います。
  14. 石川弘

    石川(弘)政府委員 限度数量につきましては、先生承知のように国内で極力生産してそれを乳製品に向けるということが必要でございますし、私どもも弾力的に考えているわけでございますが、限度数量というものは、生産者にとってもそれを生産して自分たち所得を上げるという必要があると同時に、それが適切な値段で順調に市場に流れていかなければいけない量でございます。先ほど、私、加工向けの方が若干高い伸び率でいけるのではないかと申し上げましたけれども、ここ三年ばかりの傾向を見ますと、その前に年率一〇%なんという大台で伸びてきたものが、対前年比三角が三年続いたわけであります。五十七年度がその転機でございまして、先ほど申しましたように若干ふえる方へ転じてきたわけでございますが、過去の経緯を見ますと、必要以上と申しますか、需要以上のものがつくられますと、結果的に価格を低迷させて、それはメーカーにとっても大変であると同時に、国家財政の面でもいろいろな負担がありますどころか、生産者にとっては手取りをふやせなかったという苦い経験があるわけでございます。  したがって、私どもは今度の限度数量考えますときに、需給という観点から考えまして適切な値段市場に十分放出されて、それが価格の面でも数量の面でも行き渡るようなそういう数量考える必要がある。先ほど先生指摘のように、昨年は事業団在庫の過重が価格マイナス要因考え事業団在庫放出考え需給を立てましたけれども、今回の場合に特段事業団在庫放出を念頭に置いてするような条件でないということにつきましては、先生のおっしゃるとおりだと思います。そういうところの数字がどの水準か、中酪の計画というのは御承知のように生産者の組織としての一つ考え方でございますが、限度数量を決めます場合には、やはり経済の諸事情酪農合理化の問題、財政負担の問題、いろいろなことを勘案して決めるという制度になっておりますので、私どもそういうことを頭に置きまして、ここ数日の間に詰めていきまして、審議会の御意見を聞きたいと考えております。
  15. 安井吉典

    安井委員 いまのお答えでありますけれども、いずれにしても審議会諮問事項でありますから、話を聞いてからということになろうと思うのです。  一つ伺いたいのは、限度数量がふえていけば加工原料乳保証価格が、これはまさか下がるということは考えられませんよね。後で申し上げますように、当然上げ要素がかなりあると思います。私は上げなければいかぬという主張をしたいと思うのですけれども、そういうことになれば、数量がふえただけ補給金の予算が増額されなければならぬわけですね。その辺はどうお考えですか。これは当然のことで、補正措置が必要になるというようなことになろうと思いますけれどもね。
  16. 石川弘

    石川(弘)政府委員 補給金単価が同額でございますれば、限度数量を上げれば当然補給金総額はふえるわけでございます。私どもが今度の価格を決めます際には、保証価格基準価格安定指標価格、こういう三つ価格組み合わせを決めるわけでございますので、そういう三つ価格組み合わせの中で適切な財源を求めながら私どもとすれば限度数量拡大に対処すべきものと考えております。
  17. 安井吉典

    安井委員 この問題は、後もっと進んだ段階でいたさなければならないと思いますのでこれ以上詰めませんけれども加工原料乳保証価格の問題について若干伺いたいのですが、もう実質上五十二年以来の据え置きになってきているわけです。一方、生産調整経営費も上がっていく、そういうようなことで、ふえるのは借金ばかりというのが酪農家の現状であります。五十二年から今日まで、昨年わずか〇・六%のアップだけなんですが、生産費の方は一一%も上がっている。したがって、農業所得は三〇%以上減収になり、借入金は二倍以上にふくれている。北海道の五十六年度における調査でも、一戸当たり二千四百万円というような数字が出ているわけであります。したがって、再生産を確保することを旨として引き上げ措置を講ずるというのが、だれが考えても筋だと思うわけです。農民要求は九十九円六十八銭というようなことで、これは農林水産省要求を受けていると思うのですけれども、このことについてどうお考えになりますか。
  18. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、昨年五十銭の引き上げを行ったわけでございまして、私どもとすれば、与えられたデータによりまして再生産が確保できる水準はどこかということで慎重に検討すべきものと考えております。酪農の場合、御承知のような多頭化とかあるいは牛の資質が上がってきたとか、そういう生産性向上効果というのは大変多うございまして、御承知のように労働時間等も大変短縮されてきている。これは大変結構なことなわけでございますが、私どもの手元の数字を見ます限り、一日当たり労働報酬等も稲作を上回っている水準でございます。  私ども、やはりいろいろな数字を見てまいりますと、五十五年、五十六年は先生も御指摘のように大変周辺の諸事情が悪うございまして、いわば乳価えさの関係一つ見ましてもだんだん悪くなったわけでございますが、幸いなことに、五十七年からこの関係が若干好転をいたしております。若干需給自身がタイトになってきたというような、特に乳製品についてなってきた事情だとか、そういうことで、乳価水準実質手取り水準が若干上がってくる。それに対してえさ代等がむしろ下がってきまして、安定をしてきた。いろいろなそういう条件、特に北海道の場合は好天による草が非常によかったということも大変プラスに働いておりまして、私どもが現在与えられております数字を見ますと、状況を大きく変えるようなものはないんではなかろうかなという気持ちでございます。しかし、これはあくまでもきちっと数字算定すべきものでございますので、統計情報部等数字をとらえまして極力正確に事を処したいと思っております。  それから、もう一点お尋ね生産者団体要求九十九円何がしかのものでございますが、私どもととりますデータが若干違いましたり、算定の方法が違いますけれども、実は要求自体は昨年とほぼ同じような水準要求なさっているようでございまして、要求仕方そのものとすれば、きちっと計算をなさったものではないかと私ども考えております。
  19. 安井吉典

    安井委員 この問題が実は最大の焦点なんですけれども、時間が限られていますので中身については触れませんが、いずれにいたしましても、この算定要素等についてもう常に問題があるわけですね。したがって、具体的な一つ一つデータとり方等について、農民に不利にならないようなそういう仕組みを要求しておきたいと思います。  そこで、次に実勢乳価の問題なのですが、昨年度の保証価格はいまもお話しのようにわずか五十銭のアップですが、ホクレンとメーカーとの取引条件交渉では、乳製品製造メリット還付金、これが会社によっていろいろまちまちなんですけれども、平均六十九銭というようなことになっていますね。これは、政府保証乳価算定した基礎データ以上に歩どまりが乳質の向上等でよくなっていること、また、工場の合理化等でコストがダウンしていること等によるものだと思います。  そういうようなことからいって、いまの三者の問題で全体的な処理がなされるという畜産局長の御答弁もありましたけれども、それならもう一つつけ加えて言えば、実勢乳価交渉においても、乳製品市況メリット還付金というのは、これも会社によってまちまちなんですけれども、平均三十五銭ぐらいになっていますね。これも製品相場の好転というような影響ではないかと思います。したがって、これらの状況を今度の乳価決定に当たってどういうふうにお考えになるか、それを伺います。
  20. 石川弘

    石川(弘)政府委員 各メーカーと指定団体との間でいろいろとそういう取り決めが行われている実情はございます。特にいままで大変過剰下において、どちらかというと生産者の立場としては主張しにくかったものが、需給均衡したということのメリットとして、そういういろんな形でのお話し合いが進められることにつきましては、私ども生産者団体メーカー間のお話し合いの問題と考えているわけでございます。私どもは、若干しゃくし定規かもしれませんが、決まりました算定方式によって算定をして、それを基準として御取引願う。いろんな会社によりまして生産性のメリットみたいなものを生産者の間とお話し合いになるということは過去においてもあることでございますし、私どもはそういうお話し合いは当事者間のお話し合いと考えているわけでございます。
  21. 安井吉典

    安井委員 特に申し上げたいのは、基準取引価格算定における単位当たり製造必要乳量の問題ですね。その推移を見ると、バターはキログラム当たり十三・三五キロ、これは毎年ずっと変わってないわけですよ。脱粉等は四十八年度に改定されていますけれども、それ以来これもずっと同じ数字が続いています。しかし、一方、乳成分の方は少しずつ変化をしているわけですね。北海道酪農検査所の資料によっても、脂肪率は五十五、五十六年度では三・六七%までになっています。これも、三・二%という建て値とはかなりの差があるわけです。これは反映の方法もあるわけですが、しかし、生乳取引の際の支払いが、脂肪の問題でも十分にきちっと処理されているとは思えないような状況もあります。特に無脂固形分率あるいは全固形分率も少しずつよくなってきているわけです。これによる歩どまりの向上、つまり乳量が少なくて済むことを全く無視されたような形でいままで取引価格等が決められているという点にやはり矛盾を感ずるわけですね。農民との間の話し合いだ、こう言われるけれども算定基準そのものを考える場合のいま申し上げたような点の考慮というのが必要じゃないかと思いますが、どうですか。
  22. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一つの問題点であると思います。ただ、これは長い間の生乳取引の一つの慣行でございまして、これにはそれなりの合理性も持ってきた歴史がございます。無脂固形分の方は、逆にどちらかというと実数よりも低い時代に高い数字を使っていたという経緯がございますが、乳脂肪の方は御承知のように最近はかなり上回ってきているということがあるわけでございますが、そのようなことを勘案要素にして生産者団体メーカーとの間でお話し合いが行われているということでございますので、私ども、これを一挙に何かの形で変えるということにつきましては、いろいろほかの面での障害があろうかと思います。これはやはり一つ価格の決め方でございますので、そういう問題意識は持っておりますが、それはむしろ対農民間の問題という形で御処理願ってくるのが現段階では至当ではなかろうかなと思っております。
  23. 安井吉典

    安井委員 いまのような問題は、農林水産省としても認めていることは認めているが、それは両者の交渉の問題だ、こういうことで、いずれにしても交渉についての一つの基礎的な考え方を農水省はいま明らかにされたのだ、私はそう思います。そういう受けとめもできますけれども、しかし、今度の乳価の全体的な決定の際に、やはり基礎データそのものを検討される必要があるわけですから、そのデータ検討の一部にぜひこういったような問題も加えていただきたいということだけ一つ申し上げておきます。  そして、いまもお話にもありましたけれどもメーカーの製造経費の状況の把握がどうも十分に行われていないんじゃないかという気もしてなりません。乳製品生産費を査定される場合に、工場の具体的な資料に基づいてやられるわけだと思いますけれども、いまのやり方では、主要加工原料乳地ということでは北海道を限定してお考えになりながら、工場の方の計算基礎には全国、特に能率の悪い工場も入れてことさらに処理をされて、どうも乳製品生産費の査定についてメーカーの方に甘いんじゃないかというような、そういう批判があるわけです。この点、どうお考えですか。
  24. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども、甘いというよりも、むしろこれは内地において、現に限度数量の約二割以上は都府県において生産をされているわけでございますから、そこで全く成り立たないような形でやらせるということになりますと——都府県における加工原料乳処理、これはやはりどうしてもある程度は必要でございます。北海道があくまで主力ではございますが、ある程度必要なものが流されなくなるおそれがあるわけでございまして、それはメーカーという立場だけじゃなくて、酪農民の立場からもある程度処理ができるような体制をする必要があろうかと思います。  ただ、基本的には、こういう製造過程における合理化は必要でございますので、工場の大型化、合理化によるコストダウンもございます。ただ、大変残念なことに、大型化をいたしましてもそれがフル操業できるようにうまく配乳がされませんと、せっかくの施設が効率が下がるという問題もございますので、私ども、工場の近代化と同時に配乳を適正にするということも双方やりまして、御指摘乳製品歩どまりとか、そういうコストの部分につきましては極力合理化の方向をたどっていきたいと思っております。これはもう当然のことでございますが、この法律ができました四十一年から五十七年まで眺めてみますと、保証価格は二四一%に上がるのですが、製造販売経費の方は、物によって違いますが、一二四から二一五の間、はるかに低い。これは工業的な部分と農業的な部分ですから、格差があって当然だと私は思いますけれども、やはりその合理化は着実にやっていただいている。また、そういうことが私どもとしてもメーカーとしても必要なことではなかろうかと思っております。
  25. 安井吉典

    安井委員 安定指標価格の問題にこれからの乳製品市況が影響してくると思いますね。どういうふうな見通しを持っていられるのか。昨年は、安定指標価格に対して実勢は一〇八%ぐらいであったと思いますけれども、その辺の見通しをどうお考えなのか。そしてまた、この安定指標価格引き上げるという問題は、先ほどもお話のありました保証乳へのはね返りが当然あることでもあるし、しかし一方、消費者の問題だとかあるいは輸入とのかかわりだとか、そういうこともあろうと思うわけですけれども、しかし、政府の方は一銭もよけい金を出さないで、全部仲間内で処理せよというやり方もどうもおかしいように私は思うんですがね。この辺、どうお考えですか。
  26. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども安定指標価格水準につきましてはやはり慎重に考えなければいけないと思っておりまして、先生もいま御指摘のように、これは他のいろいろな競合商品との関係もございます。量を安定的に拡大していきます場合には、価格が比較的安定的に推移してほしい。ただ、いまの安定価格水準といいますのはほぼ五、六年前の水準でございまして、そういう面では他の諸物価に比して上がるどころか、むしろ下がってきたという経緯のものを若干取り戻してきたということではございますので、その辺は今後の需要見通し、余り上げますと需要がついてこなくなるというようなこと、それは結果的には消費負担でございますので、そういうことだとか、あるいはそのことがもたらす生産への影響とか、いろいろ考えながら適正な水準考えたいと思っております。  いま御指摘の、そういうところで財源を生んでというのは、仲間内だけで事を処理するということではないかという御指摘でございますが、一方では、御承知のように相当多額の、四百六十億を超えます財政負担をしながら、片一方の市乳の世界で大乱売が行われておりまして、そういうところで金を入れておきながら、農民所得という観点からしても、メーカーの経営という面からいっても、あるいは国家財政という面からいってもおかしいのではないかというような御指摘も多分にあるわけでございます。私ども、この補給金を相当額出しておりますのは、単に加工原料乳の生産をなさっている方の所得確保ということだけではなくて、このことによって日本の全酪農民の所得を安定させるという趣旨でございますので、やはりこの問題の処理に関しましては、財源の有効利用、結果的に財源を生かしまして、全農民所得が上がるようにという意味で、昨年からも、単に加工乳の価格の問題ではなくて、生乳全体の価格の問題であるということで、関係者といろいろと協議を重ねておりますけれども、今回の価格の決定の際にもそういう要素も含めまして、酪農生産者全体として利益が享受できるようにという形で事柄を進めていきたいと思っております。
  27. 安井吉典

    安井委員 飲料乳市場の混乱の問題が一つありますね。これは、きょう時間がありませんので触れませんけれども、これも一つは保証乳の価格が低いものだから、幾らかでも所得をふやしたいということが一つの混乱の原因にもなっているということもあるわけですからね。本来の飲料乳市場の問題もありますけれども、そういう側面から問題を考えていく必要もあろうと思いますね。  したがいまして、政務次官もおいでですから後で総体的な御意見も伺わせていただきたいと思いますけれども、いまの加工原料乳の問題については、限度数量からさらにまた保証価格、基準取引価格あるいは安定指標価格と、全体にわたりまして今日の厳しい状態を解決するような決定をぜひ願っておきたいと思います。  最後に、負債整理の問題とそれから畜肉に対する金融措置等についてお考えを聞いておきたいと思います。  現在でも酪農負債整理資金やあるいは肉畜経営改善資金というような形で処理がされているわけでありますが、これがかなりの役立ちをしていることを私は否定するものではありませんけれども、もっともっとこれを拡大していかなければ実際の要求に沿い得ないのではないかという気がしています。これをぜひお考えを願っておきたいと思います。継続と同時に、むしろ拡大ですね、これが非常に大切な問題ではないかと思います。牛肉については別な立法措置が行われることになるわけでありますけれども、それが牛肉の輸入枠の拡大の言いわけになるというようなことになっては困るとか、そういうような心配もあるわけですよ。そしてまた肉の問題については、その輸入自由化というような外的な要因を理由にして、もう農民のコストが幾らになってどうなろうとこれ以上上げることはできないのだとか、そういうようなかたくなな態度で臨まれては、これも困る問題ではないかと思います。  それらの問題を、最後にまとめてひとつお考えをこの際伺っておきたいと思います。そして、最後は政務次官が締めくくってください。
  28. 石川弘

    石川(弘)政府委員 負債の問題でございますが、酪農につきましては、御承知のような三百億の措置が五十六、五十七年度に行われまして、その後どのような形で経営が改善されつつあるかということを精査をいたしております。先ほど申し上げましたように、五十七年度を契機に若干状況はよくなってきておると思いますけれども、やはり多額の負債を抱えた方の中には、あのままの措置で完了するというわけにいかない方もあろうかと思います。こういう方々のためにつきましては、いま北海道庁その他の都府県なり関係団体から事情を聴取をいたしておりますので、必要があればあの資金の枠の拡大を行いたいと考えております。  肉畜経営につきましては、御承知のように昨年六百五十二億円の貸し付けがすでに行われておりまして、たまたま大変条件が悪かったところに融資をしたわけでございますが、その後の畜産物価格なりえさ状況は好転をいたしておりますので、私どもこれをさらに続ける必要は現在はないと考えております。むしろ肉畜のところにつきましては、今度の法律等におきまして前向きの資金の貸し付けにつきまして幾つかの優遇措置、たとえば増頭いたします場合に近代化資金を根っこから貸すとか、あるいは今度の法律で肉畜の経営のための借入金の据え置き期間、償還期限をおのおの五年ずつ延ばすとか、そういう措置を中心に考えております。  それからもう一点の、自由化等を含めてのお話でございますが、私ども今回あの法制化を考えておりますのは、そういう自由化というような中で、実は国内で牛肉をつくっていくことに対しまして、いろいろと違った御意見の方が大変多いという気持ちがいたします。私どもは、国内生産できるものは極力生産していく。しかし、それが余りコストの高いもので消費者に多額の負担をかけるということになりますといろいろ問題がある。むしろいまの生産者の努力を積み重ねていきますならば、比較的土地条件が似通っておりますEC程度にはいずれかの機会に到達できる。それまでは私どもとしてはやはりいままでの努力をさらに続けていくというための目標を設定し、それを確保するための諸措置でございます。したがいまして、自由化ということは全く考えておりません。
  29. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 先生指摘のように、生乳あるいは乳製品あるいは食肉といった畜産振興につきましては、局長から話したとおりでございまして、振興を図っていきたい、かような考えでおります。  また、自由化につきましては、大臣からも御答弁申し上げましたように、自由化を行うということは考えておりません。  以上でございます。
  30. 山崎平八郎

    山崎委員長 串原義直君。
  31. 串原義直

    ○串原委員 まず最初に、蚕糸業の問題について伺いたいと思います。  これは基本的な問題でありますから、次官に御答弁を願いたいわけでございますけれども、この蚕糸業政策は幾つかございますが、その政策の中で政府が最も重視して考えているという根幹は何であるか、お答えを願います。
  32. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 わが国の蚕糸業の基本である価格安定制度というものは、今後とも堅持すべきであるというふうに考えております。しかしながら、需要の減退その他によりまして非常に不均衡が続いておりまして、現在事業団が非常に大量の在庫を抱えている等の問題があるわけでありますが、農水省としましては、需要増進対策を初めとしまして、生産価格輸入等各般の対策を講じているところでございます。
  33. 串原義直

    ○串原委員 つまり、こういうことですね。蚕糸政策は幾つかあるけれども、最もその中心となる根幹は蚕糸価格中間安定制度である、政府はそう考えているということですね。
  34. 古谷裕

    ○古谷政府委員 御案内のように蚕糸業は昔からの伝統的な農業の一部門でございまして、この養蚕経営というのが継続的に安定的に発展していくことが行政の中心課題だというふうに考えております。したがいまして、いま政務次官からお答えしました価格安定制度につきましても、蚕糸という特殊な商品の特性にかんがみまして、この価格安定制度が養蚕経営の安定に寄与しているという面は、私どもとしても重視してまいりたいというふうに考えております。
  35. 串原義直

    ○串原委員 大事なところだから、次官にもう一度伺います。  つまり、蚕糸の政策はいろいろあります。いろいろやっています。しかし、その一番大事な柱、根幹はいま行われている蚕糸価格中間安定制度である、これがぐらついたら大変なんですというふうに農水省、政府考えている、こういうことで理解していいですか。次官から答弁してください。
  36. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 先生が御指摘のとおり、価格安定制度、中間安定制度を堅持していくという政府の方針でございます。それには変わりございません。
  37. 串原義直

    ○串原委員 つまり、中間安定価格制度は根幹であって、これは堅持してまいりたいと思います、いまそういう答弁をいただいたわけでございますが、これは若干あちらこちらの機関からの指摘もあるように実は伺っている。けれども政府、農林省としてはこの考え方は将来ともきちっと守っていく、こういうことで私はこの際改めて確認をしておきたいと思うのです。そういう意味で、あえて改めて確認の意味で二度も三度も質問をしている。その姿勢について間違いはない、そういうことでいいわけですね。
  38. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 ただいま申し上げましたように、堅持していくという政府の基本的な考えがあるわけでありますけれども、他方におきまして、臨時行政調査会から、抜本的な制度の検討を行う、需給事情に即して行政価格を見直す等の指摘もございまして、そういった、さきに述べたような制度の上の問題点の生ずることもあわせて幅広く検討をしていかなければならない。その際に、関係各方面の御意見も聞きながら政府としては対処していきたい、さように考えております。
  39. 串原義直

    ○串原委員 大切なところだから、もう一度伺いましょう。  臨調等の指摘もありました。しかし、非常に重要な政策の中の根幹、柱であるので、今後ともこの制度、政策については政府、農林省は守っていく、検討はするけれども守っていくという姿勢は崩さない、こういうことであるべきだと思う。いかがですか。
  40. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 政府といたしましては、守っていきたいというふうに考えておるわけでありますけれども、さきに述べたように、制度の上に問題点が生じていることもあわせまして、今後の安定価格制度について幅広く検討をしていきたい、かように考えております。
  41. 串原義直

    ○串原委員 お話しのように、非常に重要な政策の柱ですから、今後ともこの制度は大事にして守っていくように英知を集めてもらいたい。希望申し上げて、次の質問に移ります。  そこで、私の手元にある資料によりますと、繭の生産は昭和四十五年ころには十一万二、三千トンであった。大体間違いないと思う。ところが、去年、五十七年度は六万二千八百トンに落ちてしまった。つまり、繭の生産が半分になったということですよ。これは蚕糸業政策の重大な後退につながっていくというふうに私は理解する。大変なことだと思って考えている。つまり、これは好ましい方向ではない。したがって、将来繭生産というのは、国内生産はどの程度が望ましいといまのところ農林省はお考えになっているか、御答弁願いたい。
  42. 古谷裕

    ○古谷政府委員 国内生産国内需要を満たすということが望ましい方向であることはいまおっしゃったとおりでございますけれども、やはり私ども全体の需要あるいは需要と供給の関係ということを基本に考えざるを得ないというふうに思うわけでございます。  いまお話しのように、たとえば国内生産で一〇〇%賄うというふうな方向が出れば一番よろしいかとも思いますけれども、ただ、これは全体の経済成長あるいは農業全体の生産の中で繭生産の占める地位というのがおのずから変わってくるわけでございます。そういうことで、御案内のように、かつては輸出までしたという産業が現在大体六〇%程度の自給率になっている、こういう事情でございます。今後の課題としましては、やはり国内蚕糸業生産性の向上を図っていくということで伝統産業の維持に努めていきたいというふうに思っているわけでございます。
  43. 串原義直

    ○串原委員 いま御答弁では、できるならば一〇〇%自給できることが望ましいと思うけれども、現状は六〇%程度国内生産が落ちてしまった。この方向は、私はまことに好ましくない、うれしいことではない、こう思っているのです。いま御答弁のように、できるだけ自給率を高めていきたい。つまり、国内生産を高めていきたい、そうあるべきだと思う。  したがいまして、改めてここで私伺いますけれども、何となしにその年々の推移に任せていたならば、現状のように生産は後退すると思う。したがって、なかなか厳しい条件はあるであろうけれども、少なくとも国内需要が仮に一〇〇であるといたしますならば、一〇〇の国内需要に対して八〇くらいはぜひとも国内生産で確保したいというような目標なり計画を立てて、その計画、目標の上に関係機関、省庁とも連絡をとりつつ国内生産を増強していくということでなければ、そういうめどがなければ歯どめがなくなっちゃうんじゃないか。年々後退の道をたどるのではないか。つまり、八〇%ぐらいを国内で確保したいというめどを立て、計画を立てることによって力の少ない山村の農業を守る、さらには、いまお話のあったように、日本の伝統産業である蚕糸業を守る道だと私は考える。いま私が申し上げたことに対して、いかがですか。
  44. 古谷裕

    ○古谷政府委員 お話しのように、繭の国内生産の目標というものを掲げていくということも一つのお考えかと思いますが、やはり先生御案内のように現在の蚕糸業をめぐる問題、この基本的な問題というのは需要の問題でございまして、需要がいま非常に落ち込んでいるということが諸般の問題点を生んでいる最大の事情でございます。したがいまして、全体にその需要拡大が確実に見込まれるものにつきましては大いに生産を伸ばすことも必要でございますが、やはり全体需要に対する適正な供給ということを考えますれば、一つの目標を立てて生産拡大を行うというふうな状況にはないんではないかという感じを持っているわけでございます。  特に繭及び生糸につきましてはそれぞれ昭和三十七年にはすでに自由化された品目でございますし、その後内需の増大に対応しまして相当の輸入の増大の要請もしたというふうな状況もございます。また、これは養蚕業自体というものが独立的に存在するものではございませんで、御案内のようにやはり製糸、さらには絹業を通じてその末端需要というものを喚起していくというふうな特殊な商品でございますので、絹業におきましては、自由化されておる品目について、たとえば中国等から安いものを輸入したいという気持ちがあるのは当然でございます。私どもは、養蚕、製糸、絹業というもの、三者が一体となって存立できるような措置、そういうものを関係者協議のもとに考究していくということが現在のわれわれの重要な課題だというふうに考えております。
  45. 串原義直

    ○串原委員 三者が一体になって日本の蚕糸業を守っていくという方向はわかりますよ。否定はいたしません。しかし、一番最初の原料生産のもとが崩壊したならば三者もなくなっちゃうじゃありませんか。まず三者が協力をして伝統産業を育てるという方向を守っていくということ、これは結構でありますから、そうするならば、まず原料が必要なんです。最初の繭生産がなければ日本の蚕糸業というものの発展というものはあり得ない。そうでしょう。原料のないところに産業なんかありませんよ。したがって、原料を確保するということは常に大事にされなきゃいかぬ。そういう意味で私は言っているわけです。需要が必ずしも伸びているとは私は思わない。遺憾ながら思わない。しかし、私の言うのは、総需要に対する、私の申し上げる八〇%がぴしゃっと適当かどうか、それは議論があるところでしょう。しかし、総需要に対する八割くらいのものは国内生産をしていきましょうという姿勢がなければだめではないか、こういうことを言っているのですよ。数年たって気がつきましたならば、国内生産が総需要の半分になっちゃった、半分以下になっちゃった、三分の一になっちゃったのでは、蚕糸政策いずこにありや、こういうことになるよ、こういうことを言っているのですよ。いかがですか。
  46. 古谷裕

    ○古谷政府委員 おっしゃることはまことにごもっともでございまして、私どもも伝統産業である養蚕業というものの体質を強化しながら、何とか国内原料というものを確保していきたいというふうに考えておるわけでございます。  ただ、御案内のように、現在、生糸につきましては中国その他からの非常な海外供給圧力があるということも事実でございます。絹業におきましては、やはり海外の安い生糸というものを使わないと、現在の経済事情のもとでは非常に経営が苦しいというふうな状況もございます。そんな中で、私ども国内生産については生産性の向上に努めるとともに、輸入についても関係国の理解を得て削減に努めてきたというふうな状況がありますので、この点は御理解いただきたいと思っております。
  47. 串原義直

    ○串原委員 せっかく大事な一番もとの原料を確保するという政策については、今後一層農林省の努力を期待したいと思っているところです。  そこで、次に移りますが、蚕糸砂糖事業団と言うわけでありますが、私は直訳して蚕糸事業団とこの際は言わせてもらいますが、蚕糸事業団適正在庫というのはどの程度考えていらっしゃるのですか。
  48. 古谷裕

    ○古谷政府委員 昨年、繭糸価格安定法の一部改正を行いましたときに、現在大体十五万俵程度在庫がある、それを過去の実勢からいいますと大体五万俵程度ぐらいまで、これが一応適正在庫と言えるのではないかということを申し上げたわけでございますが、その事情は現在も変わっておりません。
  49. 串原義直

    ○串原委員 そういたしますと、好ましい在庫は五万俵程度である。現在おおよそ十五万ぐらい事業団在庫がある。そうしますと、十万俵程度が実は多いんだ、こういうことですね。  そこで伺いたいと思うわけでありますけれども、できるだけ近い時期でよろしいわけでありますが、絹の総需要の総量ですね、これは大体いまどのくらいなのか。五十七年度は、私の理解では国内生産は二十万俵程度であろう、こう理解をしているところでございますが、総需要は幾らか。去年の繭生産の総量はおよそ国内では二十万俵。そうすると、不足というのはいまどのくらいになっているというふうに農林省は考えているのか。教えてください。
  50. 古谷裕

    ○古谷政府委員 五十七年、暦年でございますが、国内生産量が二十一万七千俵という実績でございます。全体の需要、これはいわゆる製品需要を全部生糸換算したものでございますが、これを大体三十六万七千というふうに見ますと、大体五九%が国内生産で賄われておる。そのギャップが十五万俵程度ございますが、これが輸入と輸出というふうなもので相殺される部分でございます。
  51. 串原義直

    ○串原委員 つまり、こういうことですね。三十六万七千俵くらい総需要があります。そこで、国内生産は去年は二十一万七千俵であった。つまり、国内生産不足分は十五万俵程度でございました。この不足分は、直訳するならば輸入しております、輸入で賄っております、こういうことでしょう。
  52. 古谷裕

    ○古谷政府委員 もう少し正確に申し上げますと、私もちょっと言い方が悪かったのでおわび申し上げますが、国内生産が二十一万七千俵、輸入が十二万八千俵という実績でございまして、これが供給総量というふうに考えますと、三十四万五千俵でございます。これに輸出分というのが二万二千俵加わりまして、内需プラス輸出が三十六万七千というふうに御理解いただきたいと思います。
  53. 串原義直

    ○串原委員 わかりました。つまり、正確には、輸入したものは十二万八千俵である、こういうことですね。そういたしますと、私の先ほど申し上げたことが、もう一度政策として力を入れなければならぬという議論になってくるわけだと思うのですよ。つまり、去年国内生産は約六〇%であった。細かいことは別にして考えると、おおよそ四〇%輸入しております、こういうことです。順次国内生産の割合が下がっていくという傾向になることは好ましくない。したがって、一〇〇の需要があるならば、できるだけ八〇くらいをめどにして今後考えていくべきだ、こういうことを私は強調させていただいたわけでございますが、その努力は今後農林省に期待するといたしまして、当面、先ほどあなたの答弁されたように、外国からの要請もあるし圧力もあって、なかなかこれは大変なんだという話がありました。理解できないことはない。  しかし、私の申し上げたいのは、蚕糸事業団の過剰在庫という表現はどうかと思うけれども、十万俵程度は余剰の在庫がいまあるということであるならば、これはちょっと極端な言い方で恐縮だけれども、一年間全然輸入ストップしたということになるならば、在庫は大体相殺されるという理屈になっていく。そうはすぐうまくいきません。いかないことは私はわかっているけれども数字の上ではそういうことになってくる。したがいまして、蚕糸事業団適正在庫が五万俵であるとするならば、そこに至るまでの間は何としても日本の蚕糸業を守っていただきたい、守りたい。そのためにぜひAの国の皆さん、Bの国の皆さん、御理解を願いたい。あるいは時によれば、Aの産業界の皆さん御協力を願いたい、こういう話はできるはずだと思う。また、しなければならぬと思うのですよ。適正在庫になるまで、日本の伝統産業、蚕糸業を守るためにひとつ御理解を願いたい。その立場に立って輸入抑制、ストップ、これはやるべきだと思う。これは腹を据えなければだめですよ。いかがです。
  54. 古谷裕

    ○古谷政府委員 先ほど申し上げました輸入の中には、輸入の形と申しますか、これは生糸で入ってくるもの、それから絹織物で入ってくるものその他ございまして、これに対しましてそれぞれ通産大臣の輸入事前承認であるとか、そういうことでいろいろな規制措置を行っているところでございます。先ほど申し上げましたように、生糸の輸入につきましては三十七年に自由化しておるわけでございますが、その後いま御提起がございましたような輸入問題がございまして、いま事業団での生糸の一元輸入ということになっておるわけでございます。  そこで、生糸の輸入につきましては、現在主要輸出国である中国、韓国との二国間協定で進めておるわけでございまして、毎年政府間協定を結んでおるわけでございますが、この協定自体、五十五年度協定の場合には前年の約五割、五十六年度にはさらにその五割の数量から二・五割というような大幅な削減をするよう関係国の理解を求めてきたところでございますし、五十五年度協定分につきましては非常に基準糸価が低迷しているという状況もございまして、協定はつくったものの、その後発注もしなかったという状況もあったわけでございます。これは、輸出国側の立場からしますと非常に迷惑な話でございましたが、その点は日本の窮状も御理解いただいたわけでございます。  全体として、いま申し上げましたようなことで、国内生産の減少と輸入の削減というものを比べますと、輸入の削減の方がはるかに進んでいるというふうに私ども思っております。生糸について見ますと、大体四年前の約三割というふうな数量にいまなっておりまして、実は正直申しまして、輸出国の立場からするととても耐えられない数量だというぐらいの水準になっているところでございます。
  55. 串原義直

    ○串原委員 三、四年前と比べて輸入が減っているという努力は評価いたしましょう。しかし、そのことは評価しつつも、現実はこういうことですよということで強調させていただいているんです。二国間協定によって話し合いをするということで輸入問題は今日まで推移しておるわけでありますから、なおさら私はこの際強調させてもらいたいと思うのは、先ほど申し上げるように、日本の蚕糸業輸入によって崩壊するということになっては大変なんです。だから、御理解を願いたいということを中国にもあるいは韓国にも、中国、韓国というのはたとえばの国の名前でありますが、二国間協定のときに話し合いをしていくべきではないか、こういうことを言っているわけです。数字の上だけでは先ほど申し上げるように単純に割り切れないけれども、一年間輸入をぱたっととめることはできる、二、三年ということになれば事業団在庫はさらにすっと減っていくという理屈につながっていくわけでありますから、特にそのことを強調しておきたいと思っています。  時間がありませんから、私、あなた方農林省からいただいた資料に基づいて数字を挙げようと思ったが、やめますが、問題は外国からの輸入糸で、在庫がふえたのは昭和五十四年からですよ。これは私的なことで恐縮でありますけれども、私はかつて中国に参りましたときに中国の政府高官にこう言った。日本の蚕糸業を後退、崩壊させるようなかっこうでのあなたの国の糸を日本へ売るということはひとつ御検討願えませんかという話を率直にした。ところが、政府高官はよくわかりました、日本の国の蚕糸業を後退させてまで私どもは糸をあなたの国に売ろうとは思いません、明確にお答えになりました。  したがいまして、お互いの国は都合もあるし苦労もある、そのことを率直に披瀝をいたしますならば、日本の事業団在庫が適正になるまでは外国生糸の輸入を遠慮させてもらいたいという話はもっともっと理解をいただけるものだと思う。いま、あなた方は努力していないということを私は言っているのじゃない、腹を据えてその話をもう一度し直すべきときに来ていますよ、こういう意味で強調させていただいているところです。もう一度通産省等も含めまして輸入抑制の問題についてはきちっとさせていただきたいと思う、こういう立場でここで答弁できませんか。
  56. 古谷裕

    ○古谷政府委員 日本の蚕糸業事情につきましては、二国間協定を行う際毎回私どもの立場を申し上げまして、いままでその削減の数量についての交渉を行ってきたという状況でございまして、こういう非常に厳しい状況でございますので、関係国の一層の理解を求めなければならぬ立場にあるというふうには私ども考えております。ただ、いま例としてお話ございましたように、一年間全部ストップするようなことは、相手国の生産事情等を考えますと、やはり継続的、安定的な関係を保持する必要があることも当然でございます。  もちろん事業団在庫を減らすことが私ども至上命令であるというふうに考えておりますので、前回先生方にお願いしまして、繭糸価格安定法の一部改正で新規用途の道を開くとか、そういうことをやらせていただいたわけでございますが、輸入関係で相手国に対して十分事情を話すこととあわせまして、基本的には現在の需要拡大していく、パイを大きくしていくことがどうしても必要だと考えておりますので、その辺の必要性についても御認識いただきたいと思います。
  57. 串原義直

    ○串原委員 輸入問題についても、せっかくの努力を期待をしておきます。  そこで、いま答弁にもありましたが、需要拡大することが大事な施策の一つだ、私もそう思う。もう時間がありませんから端的にで結構ですけれども需要拡大のために昭和五十八年度はこんなところへ力を入れてまいりますという方針があったらお示し願いたい。
  58. 古谷裕

    ○古谷政府委員 先ほど申し上げました法律の一部改正で新規用途販売というふうな道が開かれてございますが、その後二回ほど申し込みを受け付けまして、現在千七百俵の新規用途向けの契約ができておる。これはまだささやかな成果でございますけれども、今後ともこういう方向で新しい分野での絹消費拡大に努めてまいりたいと思っております。  それから、事業団の助成事業等によって、蚕糸絹業関係者が一体となりまして本年の四月に絹の常設展示場というものをつくることになっております。これはジャパンシルクセンターと名づけておりますが、これが絹の宣伝キャンペーンの拠点となるというふうに考えておりまして、これについては事業団も必要な援助をすることにしております。
  59. 串原義直

    ○串原委員 そこで、いよいよ月末には政策価格を決めなければならぬ、決める時期が来た、その立場で質問をいたします。  五十七年度の生産費調査だったと思いますが、生産費は、農林省統計によりますと三千三百四円。ところが、実際農家に入るお金は二千二百円程度。つまり、ある統計によりますと、いま養蚕農家はキロ当たり千百円前後の赤字である、こういう数字が明確に出ているわけです。これはお認めになると思いまするけれども、五十八年度になればこの赤字幅は拡大するとも小さくはならないと私は見ている。したがって、ことしの政策価格は、農業団体が要求しているように、おととし一万四千七百円を一万四千円に下げましたが、もとの一万四千七百円に戻す、それ以上にぜひ決めてもらいたいという切実な要求があることは御承知のとおり。したがって、私もその立場を支持したいと思う。また、当然のことだろうと思う。したがって、いま申し上げましたような具体的な赤字になっているであろう養蚕農家の立場を理解する中で一万四千七百円以上に価格を戻してやるべきではないか、そういう立場で審議会に諮問すべきである、こう思う。いかがです。
  60. 古谷裕

    ○古谷政府委員 昨年の基準繭価と申しますか、それが大体農家手取り二千五十円くらいだったと思うのでございますが、実績はいまお話がございましたように二千二百円以上。したがいまして、農家の具体的な手取り額、これは米その他の農産物と違いまして、いわゆる生産費を直接補償するというふうな性格ではございませんで、手取り価格というのは実勢糸価から出てくるわけでございます。その実勢糸価というのは、もちろん御案内のように現在の需給事情から決まってくる生糸の価格、そのうちの生産者手取り額ということになるわけでございますので、先ほどから申し上げますように需給改善によりまして実勢糸価をどう維持できるかということが決め手になるというふうに考えるわけでございます。  それから赤字の問題がございましたが、先ほどお話しの一千百円というふうなお話も、片や農家の手取りとそれから生産費調査と比べられておるわけでございますので、手取りが多くなれば当然赤字幅は縮小する、そういうわけでございますが、いろいろな仮定のもとに養蚕農家の実質支出額から見ました経営状況について試算してみますと、平均的規模の農家では、一日当たり手取り収入、これは大体四、五千円になるかというふうに思うわけでございまして、農村雇用労賃等の状況から見まして、特に養蚕農家が非常に困っているというふうな状況ではないというふうに思っております。
  61. 串原義直

    ○串原委員 いま実勢糸価という話がありましたけれども、実勢糸価というのは実は市場における相場なのですよ。相場というときには売った買ったによりまして決まるわけでありますから、いつ下がるかわからない。上がるときもあるでしょうが、いつ下がるかわからないという、言うならば幻の価格と言っては言い過ぎかもしらぬけれども、それに類するわけだ。実勢価格が高いことは期待するけれども、実際はどこにも保証がない。幻の価格である。したがって、きちっとした養蚕農家の期待にこたえる補償をしてやるというものは、今度月末に決められる政策価格だということになる。だから、政策価格決定に当たっては養蚕農家の生産費をきちっと償うという立場で補償するものを諮問、決定してあげるべきである。これは月末になるわけでありますから、きょうは詰めても無理だと思うから、強く要請をしておきたいと思っているところであります。  さて、時間が参りましたものですから、蚕糸対策の問題は以上で終わらしていただくことにいたしまして、畜産問題で急いでちょっと触れておきます。  次官に伺いましょう。これは基本的な問題でありますからあなたに伺いたいわけでありますが、畜産物価格に対して農業団体から、ことしはこれだけにしてもらいたい、もう時間がありませんから一々金額は触れませんが、乳、肉それぞれ要請が出ている。この要求価格に対してあなた方はどう評価していらっしゃるか。とてもとても無理な値段だ、こういうふうにおっしゃるのか、考え方を聞いておきたいと思うし、いま一つ生産費所得補償方式を基礎にして月末の政策価格を決定していくべきだと思う。いかがです。
  62. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 五十八年度の指定牛肉の安定価格につきましては、これは生産条件とか需給事情経済事情を考慮いたしまして、畜産振興審議会意見を聞いた上で三月末に決定していきたい、かように考えております。
  63. 串原義直

    ○串原委員 きょうはそういうところでございましょう。しかし、五年も価格を据え置いて、ことしもそのままというようなことになることは、とても農家の皆さんは承知ができるはずがない。私も承知できない。ほかの物価はこの五年間に三十数%も上がっている。そうでしょう。他の物価と比べて農畜産物価格だけは据え置きという話は何とも理解できないというふうに思いますので、先ほど私が強調した立場でせっかくお取り組みを願うように強く要請をしておきます。  最後に一言触れますけれども、私の手元にあるのは私の地元の信濃毎日新聞という新聞でございますが、この新聞と同じように、他にも二、三報道があったようでございますが、LL牛乳常温流通でオーケー、つまり冷蔵低温流通をLL牛乳に限り免除するということに規制撤廃の方針を農林省は決めた、厚生省も決めた、こういうように報道がされているわけです。これはどうなんですか。これは決めましたか。
  64. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども全く関知をいたしておりませんし、厚生省にも確かめましたけれども、そのような事実はございません。
  65. 串原義直

    ○串原委員 そうすると、農林省も厚生省もそんなことは全然考えていないということであるならば、前と同じように、冷蔵低温流通については従来と同じような考え方で今後も対処してまいります、きょうのところはそういうことですね。
  66. 石川弘

    石川(弘)政府委員 LL牛乳につきましては、厚生省は厚生省の立場で、現在、食品安全という面で研究をいたしておりまして、その結果を本年度中に出したいということをかねがね申しております。  それから、私どもと厚生省との話し合いにおきまして、このLL牛乳問題は食品衛生法上の取り扱い問題だけではなく、いわば牛乳生産、流通、消費に係る大きな問題でございますから、これをどうするかということにつきましては両省でおいおい話し合いをしながら解決に向かっていかなければならないということを話し合っておりまして、そういう線上で進んでいるわけでございます。過日出ました新聞は、何か両省で決めたというようなことを書いてございましたが、そのような事実は全くございません。
  67. 串原義直

    ○串原委員 時間が参りましたから終わります。
  68. 山崎平八郎

    山崎委員長 吉浦忠治君。
  69. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 私は、鶏卵の方に少ししぼりまして質問をさせていただきたいと思います。  鶏卵の年間輸入量、液卵の方でございますけれども生産調整をいたしておるのにこの輸入をいたしているという、実に不思議でございまして、約二万五千トン、国内消費量の一・二%ですから微量ではございますが、鶏卵の需要というのは固定的であります。わずかな供給量の変化によって大幅な価格の変動を招きやすいわけでありますが、現在、供給増によりまして市場価格が低迷をしているわけであります。したがって、生産者生産調整を余儀なくされている。いわゆる減羽運動というものに取り組まざるを得ない状態にあるわけですが、国内生産と卵価の安定を図るという点から液卵等の輸入については十分な対処をしていただきたい、こういうふうに考えるわけですけれども、まず、この点どういうふうにお考えになっているか。
  70. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘の液卵は、どちらかと申しますと加工原料として輸入されるわけでございますけれども、これは国内卵価の動向に応じまして輸入されてきたわけでございますが、昭和五十二年に約三万五千トンが輸入されましたのをピークといたしまして、その後国内における価格動向等もございまして、むしろずっと減少してきております。特に昨年は、卵価の低迷ということもございまして、輸入量が約一万八千トンと対前年比二二%減でございます。それから五十八年に入りましてから、御承知のような正月以来の卵価の低迷がございましたので、当然のことといたしまして、一月、二月に入ってきております液卵は大変激減をいたしております。  私ども、液卵につきましては、御承知のように自由化されておりますので、輸入自身を強制的にチェックするという手法はないわけでございますけれども、液卵輸入を行っております関係者、実需者等の協力を求めまして、国内需要動向に応じた行動を行うように——現在、そういう意味国内価格が低迷ぎみのときに輸入が減ってきているということは、そのような協調の一つのあらわれかと思っております。今後もこういう体制は維持していくつもりでございます。
  71. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 次に、ブロイラーの点でお尋ねをいたしますが、需要の堅調な伸びとともに輸入が毎年大幅に増加をしているわけであります。五十六年度においては前年比の三〇%も増加をしているし、その主な輸入国はアメリカでありましたけれども、最近急速にタイ等からの輸入がふえているのでありますが、これをどのようにお考えなのか。特にアメリカから輸入されております鶏肉、いわゆる骨つきのももですけれども、これは七面鳥とかアヒル等の肉にありますが、対日輸出の面に非常な関心の品目となっているわけであります。逆に、私は、ブロイラーの場合は国内生産をして海外に送り出すというふうなことをお考えの方がいいんじゃないかなというふうなことを考えているものでございますが、胸の肉はアメリカとかあるいはももの肉は日本というふうに分けて考えると、輸入あるいは輸出の方法もスムーズにいくんじゃないかなというふうな考えを持っているわけです。  五十六年の十二月決定の関税一括二年分の前倒しでは、ブロイラーの関税が一六・三%から一三・八%に引き下げられているわけです。また、五十七年五月には七面鳥肉とかアヒルの肉も関税引き下げが行われておりますが、ここでお尋ねを大蔵省等に行いたいのですが、対日輸入圧力が強まるおそれがある中で、東南アジア等からも同じブロイラー関税等の引き下げ要求が出され始めているようでございますが、これに対してどのようにお考えなのか、まずお考えお尋ねしたい。
  72. 佐藤浩

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  確かに御指摘のとおり、私も、個人的ではございますが、去年、自民党の江崎調査団に随行いたしましてタイ、ASEAN等を回りました際に、確かにそういう要望がタイ等から出ていたことを記憶いたしております。御案内のとおり、タイからのいわば骨なしチキンの方は、東京ラウンドで譲許いたしておりません。ただいま五十八年度の関税改正を国会で御審議いただいている最中でございまして、これに入っておりませんものの検討を大蔵省としては現在全くやっておりません。いずれにいたしましても、二千数百に上ります関税の品目、これの改廃というようなことになりますと、当然その物資を所管しておられます、本件の場合農水省でございますけれども、その御要求を踏まえまして、もちろん国内生産者保護あるいは消費者の利益あるいは対外関係等総合勘案して、両省密接に連絡をとりながら検討してまいるという手続をすべての物品についてとっておりますので、本件につきましても、今後問題になることがあれば同様の手続をとって検討してまいりたいと思いますが、現在のところ具体的検討は全く行っておりません。  なお、もちろんすべての物品に関することでございますので、役所間の検討だけではなくて、最終的には関税率審議会等にも諮りました上で具体的な改廃は決めることになっております。
  73. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 農水省はどういう考え方を持っていらっしゃいますか。
  74. 石川弘

    石川(弘)政府委員 骨つきと骨なしの関税に格差があるというふうなことにつきまして、かねがねいろいろなお話があることは私も聞いておりますが、片一方の骨つきの場合は、どちらかといいますとホテルとかレストラン用といった業務需要がございまして、国内生産だけで若干賄いにくいという実情もございまして、東京ラウンドにおける必要な引き下げオファーをやったわけでございます。  それに対しまして、骨なしの場合は、国内生産されます鳥の肉そのものに直接競合する分野でございますので、私どもいまの関税の状況のもとでもかなりのものが輸入されてきているというような現状、そういうようなことを踏まえまして、これには慎重に対応すべきものと考えております。
  75. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 結構でございます。ひとつぜひいまの答弁のようにがんばっていただいて、関税の引き下げ等についての対処は、十分な配慮をしていただきたいと強く要望いたしておきます。  次は、政府が昭和五十六年九月に出しました「鶏卵の計画生産の推進について」という通達でございますが、これは生産者の自主的な計画生産を進めることになる通達でございますが、いま全国の飼育羽数が一億一千七百六十万羽としての生産者への配分が行われたわけであります。生産者はこの台帳に記載された羽数を超えて飼育してはならないというふうにされているわけですけれども、これまでのいわゆる無断増羽者の扱いについて、四十九年五月からその確認羽数は行われてきておりますが、この減羽を行いました、いわゆる二五%の減を行ったその状況というものが私は知りたいわけでございまして、これはどのように進められて、現在どういうような状況になっているか、お答えをいただきたい。
  76. 石川弘

    石川(弘)政府委員 先生指摘がございましたように、鶏卵の場合、極力自主的なこういう生産調整をやることによって価格も安定させ、これが生産者消費者のためになるということで始めたわけでございます。その際、いま御指摘のありましたように、当時の時点、五十六年の九月に通達を出した際にすでに無断増羽をしておりました者、これを増羽しているから一切だめということではなくて、協力をさせるという前提で、二五%を減羽すれば計画生産の枠内に取り込んでやろうということをやったわけでございますが、五十五年の五月当時に百一戸、超過をいたしました羽数としまして三百四十六万羽が超過をしていたわけでございます。  その後、県等が強力に指導していただきました。団体も協力していただきまして、その当時の無断増羽者の大部分は是正指導に応じまして、五十七年、昨年十一月段階では百一戸のうち九十戸の方々が指導に応じてくださっているわけでございます。なお十一戸、超過羽数としまして四十一万羽が残っているわけでございますが、これにつきましても県、生産者団体の協力を得まして、極力早く約束どおりの羽数にしていただくという指導を続けてまいる所存でございます。
  77. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 この対策を進めるために、全国的な組織として、全国ブロックの中に、都道府県あるいは市町村単位にもありますが、私が調べたのには、都道府県の鶏卵需給安定委員会というものが設置されておりますが、この二年間の当局のこれに対する取り組み、非常に努力をされたその結果はよくあらわれていると私は高く評価をしているわけでございますが、民間ベースなり、あるいは農水省でお調べになったのはかなりデータが違う。どこを信用していいかわからないくらいかなり違うのですね。うわさのデータもあるようでございますし、民間ベースのデータと農水省のデータが違う、こういうことでございますが、その取り組みに対する機能発揮という点で、無断増羽者に対する対策なりというものはどういうふうな掌握をなさっていらっしゃるのか、お答えをいただきたい。
  78. 石川弘

    石川(弘)政府委員 一応この計画を実行させます際は県を使っておりまして、都道府県が生産者の組織等を使いながらその数字等をチェックして私どもに上げてくるわけでございます。たまたまことしの正月以降、大変値下がりをしてきました段階では、自分の県はいいんだけれどもあの県がどうかというような、他県をいろいろと調べてというお話がよくあったわけでございますが、私どもは、各県を通じて上がってきました数字を見ますと、どちらかと申しますと、おしなべて若干ずつオーバーがあったというようなこともございますので、今後もさらにそういう羽数等のチェックの仕方は厳しくやっていきたいと思っております。
  79. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 その対策の実効を上げる措置として、いわゆる配合飼料価格安定基金等の契約あるいは金融面からの規制指導などが講ぜられておりますが、これらの計画生産が全国を通じて的確に実施されるために、何としても都道府県に任せるんじゃなくて、農水省の強力な指導というものが必要ではないかというふうに考えるわけですが、こういう点でどうお考えでございますか。
  80. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私どもももちろん農政局という出先を持っておりますが、そういうものを通じまして各県の掌握をしっかりやっていきたいと思っておりますし、私ども本省では直接鶏卵関係団体と接触する機会が多うございますので、これはよく申し上げるわけでございますが、たとえばことしの正月のように二百円に下がってしまえば二百万トンつくっても四千億の売り上げでございますが、通常の三百円のベースで売れば六千億でございますので、この計画生産でコントロールする以外にないと思っております。  それから、これは単に養鶏業者だけではなくて、ひなを供給なさる業者、それから飼料メーカー、飼料の販売業者というそのあたりにまで間口を広げてまいりませんとなかなか効果が出ませんので、いま先生指摘の卵価の基金だとかあるいは飼料の安定基金へのチェックの仕方、あるいは制度融資とか制度的な助成とかいうようなものをフルに活用しまして、極力この計画生産が軌道に乗るようにやっていきたいと思っております。
  81. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 低卵価の原因になっております大型やみ増羽者を徹底的に追及し、また羽数是正措置等をとることということで、私は毎回この質問をいたしておりましたが、この増羽者を背後で操っていると言っては言葉が言い過ぎかもしれませんが、商社なり飼料メーカーに対する規制なりが大変むずかしいんじゃないかなというふうに思っているわけです。この指導をどのように行われ、また、この徹底を図られようとなさっているのか、お尋ねをいたしたい。
  82. 石川弘

    石川(弘)政府委員 私ども養鶏の行政という立場だけではございませんで、飼料産業という立場についても管理監督の権限を持っているわけでございます。  今春の低落の際にも飼料関係者に話したわけでございますが、こういうような低卵価を実現ができた場合には、結果的にはえさメーカーといいますものは売りましたえさ代金が回収できなくなるということで、みずからの首を絞めるような結果になる。飼料の場合は御承知のように若干販売競争が激し過ぎるという体質を持っておりますので、なかなか指導しにくいという面はございますけれども、今回二百円卵価から三百円卵価に急速に回復をいたしましたのも、結果的には養鶏の方々だけではなくて、そういう方々も含めて経営採算に乗るような仕事をしていかなければいかぬということが一応浸透したのではなかろうか。そうはいいましても、まだまだこの業界は、ちょっと価格が高騰しますと増羽しやすいという体質を持っておりますので、あらゆる機会をとらえまして、そういう養鶏の団体あるいはえさを供給します団体あるいはひなを供給します団体にこの計画生産の趣旨を徹底してまいりますし、個別にたとえばどうしても増羽等を行います場合には、先ほど申しました各種の優遇的措置から外すということまでいたしまして協力をさせようと思っております。
  83. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 それでは、具体的な問題でちょっとお尋ねをいたします。  三月二十一日の農業新聞にすでに出ておりますからごらんになっておられると思いますけれども、千葉県の佐原市と香取郡の下総町において大企業の企業経営の実態が出ておるわけでございます。ごらんにならなければ、新聞を持ってきておりますから、見ていただいてお答えをいただきたいのです。  びっくりするほどの投資金額百億円。事業計画の概要は、原料生産ウインドレス農場なり鶏卵のパック工場、それからスープ製造工場、加工食品工場。必要な土地が五十町歩。これをことしの五月から六十年の十二月までの期間でやる。これの計画によりますと、五十万羽くらいのやみ増羽を図るだろう。これは一つの地域でですよ。まじめな農家に大変な打撃を与えるような大きな問題が起こっているわけです。  また、もう一方の方の申請がもうすでに出ておりますけれども、これを見てまいりますと、大体十町歩の面積を占めておりますから、これも十万羽の増羽になるだろうと思います。この担当者などは、ここにございますけれども、不動産業者です。こういう人が次々とやみ増羽を始めてきている。こういう現状をどういうふうにとらえられるのか。  農業新聞の例を見ましても、すでに町には土地買収のあっせん指導なりあるいは開発転用、建築などに関する諸手続の指導及び援助、あるいは公害防止事業団体の融資及びその他制度資金の借り入れに対する指導援助、その他事業開発に伴う諸事業への指導などを要望していることが明らかになっておりますけれども、これは下総町の場合における、その企業の名前は書いてございますから私は挙げませんけれども、書いてあるとおりの会社が進出を図ってきている。こういう現状をどのように指導なさるのか、いまのような形態で指導徹底ができるものかどうか、お答えをいただきたい。
  84. 石川弘

    石川(弘)政府委員 いま先生が御指摘になりました事案につきましては、若干移転等も含めてそういう話があるということを聞いておりますが、そういう事柄の詳細につきまして、県を通じまして現在事情調査中でございます。  私どもとすれば、こういう計画生産に協力していただくということでなければ、いわゆる無断増羽という形でそういう大規模なものが新設されることは好ましくないことでございますので、いま申しました計画生産の趣旨に沿って実行していただけるようなことかどうかということを含めて調査をいたす所存でございます。
  85. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 申請の出ている点については何ら違法な点がないわけですね。ですから、チェックポイントがないわけです。だんだん需給調整協議会なりに付託をして各県に責任を持たせると言って、農水省はそういう手続をとってこられたけれども、こういう不心得者に対して何ら手だてをとることができない。いわゆる飼料なり金融面における問題だけでありまして、それもまた二五%カットくらいで済むということならば、やった方が勝ちだということになってしまう。良心的な者はいつまでたっても経営が成り立たない。そういう大企業、大商社なり大飼料メーカーの系列のものはどんどん伸ばしていくことができる。こういう矛盾点がある。何か私は質問しながらもどうも空虚感があって納得できないものがある。局長、どういうふうにお考えになりますか。
  86. 石川弘

    石川(弘)政府委員 施設型の畜産の場合は、どちらかといいますと土地利用型と違いますところは、農地法上の生産者と申しますか、農民的な人が主になってやっていくのに対して、企業型のものでもできるというところに一つの違いがございます。企業型のものがやってはいけないということではなくて、やはり養鶏なら養鶏という産業全体の調和のとれた中でやるのならばいいわけでございますけれども、調和を著しく逸脱して、その結果が一生懸命計画的な生産をしている人の利益というものを著しく阻害するということではまずいだろうと思います。関係の人々、これは養鶏は御承知のようにかなり大規模な養鶏の方々もいるわけでございますが、そういう方も含めてこういうやり方でやっていくことが全体の利益につながるんだということで計画生産の方式が生まれているわけでございますから、これに従っていただくように極力事案を誘導していきたいと思っております。
  87. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 誘導でなくて、厳重なチェックはできないものかどうか。うわさではございますけれども、どうやら茨城県で進出を図ろうとしたけれども、断られたのかうまくいかなかったのか調整ができなかったのかはわかりませんが、千葉県に進出をしている。会長の芹田さんは私はよく知っておりますけれども、非常にまじめな方でございまして、人物的にも大変りっぱな方でございますが、こういうところで県外からの大資本による進出をされたのでは大混乱に陥ってしまう。何らかの厳しい規制なりチェックなりというものを考えないと、この不心得者に対する手だてというものは野放しであるということで、私は憤りを感じておるものですから、そういういまの答弁ではどうも納得できない。ですから、何らかの手だてを、きちっと阻止できるものは阻止できるような形で、生産調整を守らない者について初めからわかっているものはもう卵を買わないとか、でき上がった生産については絶対にルートに乗せないとかいう、乗せないと今度はやみルートに乗っていくようなおそれがあるので、また弱みが出てくる、局長の方も何かそういうことだろうと思うのですが、何らかの手だてを考えなければならない。くどいようですけれども……。
  88. 石川弘

    石川(弘)政府委員 実は例の計画生産の通達を出します際にもわれわれいろいろと勉強し、あるいは反省をしたわけでございますが、私はあの通達の計画生産考え方なり、それをチェックするためいろいろな有利な条件を排除するということは、普通の行政努力としては、ある意味じゃ、若干見方によっては限界が過ぎるほどの強さを持ってやっているつもりでございます。自由にやれば一向悪くないという考え方もあるところにあれくらいのチェックをかけまして、しかも卵価安定基金だとか飼料の安定基金にも入れさせないというのはかなりのやり方でございまして、先生が何か隔靴掻痒みたいな感じだとおっしゃるお気持ちもわかるわけでございますが、あれ以上強い措置を、少なくとも形式的には自由にやれるものを抑えるということになりますと、これは法律制度としてもなかなか組みにくいような仕組みでございます。私ども現在持っております手法なり、あるいは国とか県とかという行政の誘導ということを極力やることによりまして、地域での混乱を避けるということでやっていきたいと思っております。
  89. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間がございませんので次に進みますが、五十八年度の鶏卵価格差補てん基準価格が何日か前に決まったようでございますが、一キロ二百四十六円ということで、前年比十九円安でございますね。これは需給実勢方式をおとりになってお決めになったんだろう、算定基準はそうだろうと思うのです。新年度の生産費なり供給量なり需給量というものを見通してはじき出されたものだとは思いますが、これは大変厳しい生産抑制を前面に打ち出した価格ではないのかな、こう思っている。五十四年に次ぐ低いものじゃないかと思いますけれども、この点についてどういうふうにお考えになりますか。簡潔で結構でございます。
  90. 石川弘

    石川(弘)政府委員 生産条件の中でえさが比較的安定して下がってきていますということがプラス要因に働きますと同時に、余り高い水準にしておきますと生産意欲が上がり過ぎてまた暴落の危険があるという両方をにらみまして、関係両団体と十分協議をいたしまして納得の上であの線を決めたわけでございます。
  91. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 最後に、ニューカッスル病についてお尋ねをいたします。  福岡県の甘木市で、一月十八日だと思いますが、私も田舎の方から資料を送ってもらいましたらば、三万羽の飼育農家でニューカッスル病が発生をいたしているわけでございます。八千八百三十九羽という私の数字でございますけれども、どういうふうな状態で、また、それに対する手だてというものはどういうふうな対策を打たれているのか。簡潔で結構でございます。
  92. 石川弘

    石川(弘)政府委員 ことしの一月に御指摘のように甘木市でニューカッスルが発生いたしまして、ブロイラーが八千八百三十九羽死亡、命令殺となったわけであります。今回の例の発端は、家畜保健衛生所の伝染病予防事業の立入検査をしたところ、発生が発見されたわけでありまして、立入検査で本病診断が確定いたしました後、直ちに発生農家に対しまして命令殺、埋却、消毒、それから移動禁止といったような蔓延の防止措置を実施しますとともに、周辺の農家につきましては緊急のワクチン接種の指導を含めまして衛生管理の徹底を啓蒙いたしました。  発生原因は、種々の情報を発生農家等から収集いたしまして分析中でございます。  なお、発生後約二カ月たったわけでございますけれども、周辺農家から本病の発病は起こっておりませんので、一応終えんをしたものと考えております。
  93. 吉浦忠治

    ○吉浦委員 時間になりましたので、終わります。  ありがとうございました。
  94. 山崎平八郎

    山崎委員長 神田厚君。
  95. 神田厚

    ○神田委員 五十八年度畜産物の政策価格の決定に関しまして御質問を申し上げます。  もうかなり長い期間にわたりまして畜産物価格につきましては低迷を続けているわけでありますが、そのことによりまして、酪農畜産の農家にとりましてはきわめて経営の圧迫といいますか、大変な厳しい情勢になっているわけであります。昨年は価格の据え置きということで大変残念な結果になったわけでありますが、五十八年度の酪農畜産物の政策価格の決定に当たりまして、まず最初に政府の基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕
  96. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 乳価畜産物価格の決定に当たりましては、五十八年度につきまして畜産振興審議会意見を聞きまして三月末までに適正に決定してまいりたいと思います。
  97. 神田厚

    ○神田委員 適正に決定するということでありますが、各農業団体等におきましては、今年度の価格問題につきまして、畜産酪農を取り巻く環境が非常にむずかしい状況になっている。後で御質問申し上げますが、輸入自由化の問題等も含めましてその見通しにかなり厳しいものを持っているわけでありますが、ひとつその辺のところにつきまして、実務担当の方で結構でございますが、現在どういうふうな方向で審議が進められ、どういうふうな決定をなさる御予定なのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  98. 船曳哲郎

    船曳政府委員 お答え申し上げます。  三月十六日に畜産振興審議会の総会に諮問いたしまして、そして引き続き三月二十三日に飼料部会が開催され、来週二十八日に食肉部会、二十九日に酪農部会、こういう段取りで審議会で御審議を煩わし、私どもといたしますれば三月中に所定の手続を踏んで決めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  99. 神田厚

    ○神田委員 現在、畜産物につきましては、酪農畜産でありますが、一つには生産調整を余儀なくされている状況がある。さらにもう一つには、価格が低迷している上にいわゆる諸資材等の物価が大変上昇して収益を圧迫をしている、こういうふうな情勢であります。そして、そういうことによりまして畜産酪農の経営者におきましては、負債の増大が依然として続いております。こういうことをこのまま放置しますれば生産農家の生産意欲というものを減退をさせて、一つの柱として確立をしようとした日本の酪農畜産の健全な発展というものを根底から覆す、はなはだゆゆしき問題になるというふうに考えておりますが、その辺についての状況の御認識はどのようにお持ちでありましょうか。
  100. 船曳哲郎

    船曳政府委員 私ども調査によりますれば、五十六年度の酪農の単一経営におきましては、一戸当たりの負債額を見ますと、北海道では二千六百六十万円と増加しているものの、都府県では六百四十五万円と前年並みでございます。また、負債が増加しております北海道におきましては、資産額も五千百二十万円と増加しておるわけでございます。そして、いま先生指摘のように、計画生産といったこともございまして、従来借入金により急速な規模拡大を行ってまいりました酪農経営の一部には、生産性向上のおくれなどから負担軽減のための資金対策が必要になってまいりまして、五十六年度から必要な資金措置を講じてきておるところでございます。  酪農以外の食肉の経営につきましても、同様の調査を行いまして、五十七年度からこれまた必要な融資措置を講じてきておる、こういったようなことでございまして、価格決定は法律の定めるところに従い行っておりますけれども、関連いたしまして必要な農家に対する経営上のてこ入れ対策も講じてきておるところでございます。
  101. 神田厚

    ○神田委員 負債の実態とそれに対する資金の手当ての問題については、またこの後ちょっと御質問申し上げますが、全体的な畜産酪農の置かれている状況についての認識がちょっとわれわれと違うようであります。現場に行ってよく生産農家の皆さん方の声を聞いていただくとわかりますけれども、きわめて厳しい状況の中で非常にこれから先の経営について不安を持っているというのが実態でありますから、したがって、この五十八年度の政策価格の決定に当たりましては、ひとつ生産団体等の要求を十二分にこれを検討して受け入れてほしいということを特にお願いを申し上げておきたいと思うわけであります。  続いて、関連しまして自由化問題について二、三御質問を申し上げますが、日米の農産物の交渉というのがあったわけであります。一月に日米首脳会談におきまして確認されましたことは、相互に納得のいく解決策を専門家レベルで話し合っていく、こういうことであります。相互に納得のいく解決策ということであります。今後の交渉の時期の見通し、また交渉に臨む基本姿勢はどういうふうな態度でこれに臨むのか。  さらに、われわれは自由化、枠拡大は絶対に阻止をすべきであるというふうなことで運動もしているわけでありますけれども、ただ単に自由化もだめ、枠拡大もだめ、一切だめですよという話ではなかなかアメリカの方の納得を得ることもあるいはできないかもしれない。そのためには、日本としてこれらの自由化、枠拡大の方向に何らかの一つの方策を、言ってみれば解決する一つのカードを持たなければならないと思うのでありますが、日米農産物の交渉にどういうふうな具体的な対案なりそういうものを持って臨もうとしておられるのか、まずその点をお聞きをしたいと思うのであります。
  102. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  まず第一に、今後の日米交渉に臨む基本的な考え方でございますが、その点につきましては、当委員会の御決議をちょうだいしておりますので、IQの撤廃問題につきましても、枠の問題につきましても、いずれも当委員会の御決議を体して対処をするということに尽きると思っております。  それから今後の段取りでございますが、段取りにつきましては、外交ルートを通じて相談をするということにしておるわけでございますが、この点につきましては、いまのところどちらからもしかけられないという状態で、段取りの話については見通しを立て得る状態にはございません。  それから、枠の拡大もだめということでやっていく場合に、何かこれにかわるべきアイデアがないかというお話でございますが、これは、たとえば日本の食糧援助のプログラムの中で、従来もやっておりますけれども、アメリカ産の農産物をもっと大幅に取り入れて、それでアメリカの農業関係者の要求をそちらの方向で充足させてやることができないかというようなアイデアは従来から話題になっております。ただ、アメリカの方はどうも必ずしも食いつきはよくないので、そう申してもおりませんが、日本の国内ではそういうアイデアもございまして、私ども、従来から、たとえば食糧援助規約による食糧援助の中でアメリカ産の小麦を使うというようなことは、そういう考慮もございまして拡大をしてきております。本年度、いまのところ七万五千トンのアメリカ産の小麦を食糧援助規約に基づいて利用するということを考えておりますが、予定どおり七万五千トンということになりますと、昨年度に対比いたしますと倍以上になります。  それから、本年度、別途世界食糧計画にも、WFPと略されておりますが、アメリカの小麦を一万トン使うということにいたしております。ただ、穀物の場合に商品が大変大型の商品でございますので、多少のことではアメリカの気を引くことがちょっとむずかしいという難点もございますが、引き続きそういう方法は前向きに検討してまいりたいと思っております。
  103. 神田厚

    ○神田委員 食糧の備蓄の機構は、アメリカはもう長年そういうふうなことをずっと言い続けておりまして、国際的な備蓄機構、これは向こうの方で備蓄機構というよりもバンクという銀行みたいな発想で、ひとつこういうふうなものをつくって、安定的に余剰農産物がはけるような形でのものを欲しいということを言っておるようでありました。そういうふうなことで、一つはやはりアメリカが求めているものについての柔軟な受け入れの体制はしていかなければならないだろう。ただ、日本の農産物に関して競合するものについては、これはわれわれは断固として枠拡大もあるいは輸入自由化も反対をせざるを得ないけれども、しかしながら、アメリカのそういう大きな要望についてはできるところでそれもまた認めていくことによって、この自由化の問題についての一つの対応としていったらいいのではないか。ただいま局長答弁も、だんだんそういうふうな方向でそれも検討の一つだというふうに御答弁をいただいたようでありますから、そういうふうな形でひとつ御検討もいただきたいと思っております。  昨日のニュースでありますが、アメリカが大幅な減反政策に踏み切ったということであります。そうしますと、アメリカが大変大規模な減反政策に踏み切ったということになりますと、特に日本に対しましてはこれはどういう影響をもたらすのか、日本の農林省としてはこれにどういうふうな対応をしていくのか、あるいは国際的な需給関係にはどういうふうな影響を持つのか、その辺についてひとつ御見解をお述べいただきたいと思います。
  104. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  二十二日に、アメリカ農務省は、三月十一日に締め切りました八三年産穀物の減反計画への農業者の参加の状況を発表いたしました。それによりますと、減反申込面積が八千二百三十万エーカーということで、作付基準面積二億三千万エーカーに対しまして約三六%に達しております。作物別に見ますと、トウモロコシ、グレーンソルガムが三九%、米が四三%というようなことでございます。これは、率直に申しまして当初の見込みを大幅に上回っておるようでございます。こういうことになりましたのは、やはり何と申しましても、今度計画に参加した場合には現物支給の減反奨励金、ペイメント・イン・カインドと言っておりますが、あれが今回からやられることになりまして、それが威力を発揮したものであろうというふうに思います。  これはいま申し込みの段階でございますから、これがどの程度本当に生産量の減少に結びつくかということにつきましては、今後の農家段階での実施状況あるいはお天気のこともございますので、いまどれだけと的確には申し上げにくいのでございますが、何しろ三六%ということでございますから、相当の生産の減少を招くということは考えられると思っております。アメリカは世界の穀物生産に占める比重が高いわけでございますから、これまでの過剰基調で推移してきた世界の穀物需給に対しまして、程度はともかくといたしまして、これが引き締めの効果を持つことは予想されるところでございます。  これが実際の市況に及ぼす効果ということになりますと、実施段階での問題のほかに、世界的な景気回復に伴って需要の動向がどうなるか、あるいは米国以外の穀物生産国のこれに対する反応がどうかというふうなこともございますので、いまの段階で具体的にどうというふうに申し上げられません。一方、米国自体は、ペイメント・イン・カインドということで現物支給の補助金を実施していくことが端的にあらわしておりますように、量的には十分在庫を持っておるわけでございますから、わが国の穀物輸入の量的確保に関する問題を生ずるような事態ではないというふうに認識をいたしております。
  105. 神田厚

    ○神田委員 報道によりますれば、価格の安定をねらった、高値安定といいますか、そういうことでもあるようでありますから、この輸入問題では、わが国にとりましてはきわめて大きな影響を持ってくるものだと思っております。いまの御答弁では、かなり在庫もあるというような状況でありますので、ひとつその辺のところについての対応は、農林省として十二分に検討を加えて対処していただきたいということを要望しておきたいと思います。  続きまして、牛肉問題でありますが、この牛肉問題では政府はEC水準価格を目指すのだ、こういうふうなことで言っておりますけれども、この具体的なビジョンといいますか、どういう手段によりまして、あるいはどういうふうな財政措置によりまして、あるいはいつごろまでにこういうふうな形でEC水準を目指す牛肉の生産ができるのか、この辺についてのビジョンをお示しいただきたいと思います。
  106. 船曳哲郎

    船曳政府委員 先生御案内のとおり、牛肉の内外価格を正確に比較するというのはなかなかむずかしい点があるわけでございますけれども、ごく大まかに申し上げれば、土地条件が比較的わが国と似通っておりますEC諸国とは、数年前の二倍程度の格差が現在は三割高程度の格差に縮小してきておりまして、私どもとすれば、将来EC並み水準を展望できるところに来ておる、こう考えておるわけでございます。したがって、わが国といたしましては、今後とも生産から流通にわたる合理化を図りつつ牛肉価格の安定に努めることによりまして、近い将来、国内産牛肉の大宗を占める乳用種につきましてEC諸国並みの価格を実現することを目標といたしまして施策を推進いたしたいと考えております。  この場合の具体的施策でございますが、まず酪農経営におきましては、保育、育成などを取り込みますところの乳肉複合経営の推進など効率的な経営構造を実現いたしまして、子牛の事故率の低下などコストダウンを図りたいと考えております。また、肥育期間の短縮とか飼料自給率の向上とか技術的な改善を図りまして、経済的な肥育を推進してまいりたいと考えております。  このため、肉用牛の生産振興合理化に関します制度の整備強化を図ることといたしまして、酪農と肉用牛生産とが密接に関連いたしております状況等にかんがみまして、この通常国会に酪農振興法の改正法案を提出させていただきまして御審議をお願いしたいと考えておるところでございます。すでに法律案を提出させていただいております。この法案の中で、国、県、市町村を通じる計画制度を創設いたしまして、六十五年度を目標として以上申し上げましたような事柄を内容とする基本方針を明らかにいたしまして、この基本方針に即しまして、飼養基盤の整備とか経営技術の指導等々各般の施策を総合的に講じてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  107. 神田厚

    ○神田委員 次に、酪農経営の負債整理資金の関係について御質問申し上げます。  昭和五十六年以来、酪農経営負債整理資金が経営改善に果たしてきました役割りは大変大きいわけでありますが、融資枠の三百億円は五十七年度をもってほぼ消化される状況である、こういうふうに言われております。今後、五十八年から六十年度にかけての負債整理資金は当初の融資枠の倍以上見込まれているというふうに言われておりますし、生産者団体調査においてもそういう結果が出ておりますが、政府としましては農家負債の実態をどういうふうに把握しているのかということと、先ほどちょっと御報告がありましたけれども、その資金需要の実態を踏まえて新たに三百億円以上の融資枠の確保をしていただかなければならないと思うのでありますが、その点についてどういうふうなお考えでありますか。
  108. 船曳哲郎

    船曳政府委員 酪農経営の負債の実態につきましては、先ほどごく簡単に述べさせていただきましたので省略させていただきまして、今後どう考えていくかということについて述べさせていただきたいと思います。  私どもといたしましては、この資金につきましては単にお金を貸すということだけではなくて、酪農家の作成する経営改善安定計画といったものを毎年次見直して、そしてその計画の実現に向かっていろいろな関係者の方々、農家の御当人はもちろんでございますけれども、それに対していろいろ御関係を持っている方々等一体となって計画の達成に努力していくということが必要であり、そのために必要と考えられる限度において貸し付けも行っていくべきではないか、こう考えておるわけでございます。  今後の取り扱いにつきましては、資金需要が一体どの程度あるのか精査いたしまして、そして御関係の方々の御意見も拝聴いたしまして適切に対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 生産者団体等では、少なくとも三百億円以上の資金枠は必要ではないかというふうなことも言われておるわけでありますが、その辺の見通しといいますか、いまいろいろな状況がありますから、なおこの融資枠の確保についてどういうふうな決意でこれに当たっていただけるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  110. 船曳哲郎

    船曳政府委員 先ほど申し上げましたことと一部重複して恐縮でございますが、私どもとすれば、必要な額を十分精査いたしまして本当に必要なものはやはり確保してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  111. 神田厚

    ○神田委員 最後に、蚕糸関係の問題について御質問申し上げます。  基準糸価も最近抑制傾向という状況でございまして、蚕糸生産者の経営はきわめて厳しい現状にあるわけであります。その基準糸価の決定が目前にあるわけでありますが、一つには、再生産ができる適正な価格というものを生産者団体要求しておりまして、これは当然であるわけでありますから、これらについての政府の対処方針はどういうふうになっているのか。さらに、蚕糸業の健全な育成振興を今後進めていくために、政府としてはどういうふうな積極的な施策を考えているのか、それら蚕糸問題についての政府の方の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  112. 古谷裕

    ○古谷政府委員 基準糸価につきましては、繭糸価格安定法に生糸の生産条件需給事情その他の経済事情から見て適正と認められる水準に決定しろという法文がございますので、これに基づきまして決定させていただきたいと考えております。具体的に五十八年度にどうするかということでございますが、現在、養蚕の生産費あるいは生糸の製造加工経費の集計を行っている段階でございまして、三月末に開催されます蚕糸業審議会意見を聞きまして、適正に決定させていただきたいというふうに考えております。  それから養蚕の今後の振興方策というお尋ねがございましたが、御案内のように養蚕業はまさに農山村あるいは山村の畑作地域の経営の重要な一部門であるということで、これからも、地域社会に大きく寄与するような方向で振興してまいりたいと考えておるわけでございます。御案内のように、現在蚕糸業は生糸の需給状況が悪化しているというきわめてむずかしい状況にございまして、そんな関係から、第九十六国会におきましても繭糸価格安定法の一部改正をお願いしまして、いわゆる需要拡大のための新規用途向けの売り渡し等の措置を講じていただいたわけでございます。今後、そういう価格問題あるいは需給問題の改善とあわせまして養蚕の生産面での発展を図るためには、第一には優良繭を安定的に供給していく体制をつくらなければなりませんし、生産性の一層の向上も引き続きやっていかなければならないと思うわけでございまして、今後とも養蚕関係団体と綿密な連携を保ちながら、施策としては高能率養蚕地域というものを現在つくっておりますが、そういうものを中心に足腰の強い養蚕経営を確立する方向で進んでまいりたいと思っております。
  113. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  114. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 藤田スミ君。
  115. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 政府畜産物の政策価格の決定に当たっては抑制の方向だということはすでにいろいろなところで伝えられておりますし、きょうの御答弁を聞いておりましても、非常に抽象的で、農家の皆さんが期待している方向であるとは決して思えないなと受けとめざるを得ないわけです。農家の経営実態からすれば、そうはならないだろう。いま五年続きで乳価実質据え置かれ、しかも四年続きで生産調整が行われてきたという中で酪農民の経営実態を見たときに、酪農全体が成長力を失って経営がかつてなく厳しい状況に立たされている中で、今度の価格の問題についてはその実態に立つべきじゃないか、こういうふうに私は考えるわけです。  農水省の生産費調査によりましても、酪農家の一日当たり労働報酬は、五十四年に九千八百十三円、五十五年八千九百六十一円、五十六年は七千十二円となって、収益性はこの二年間で二九%も減少しているわけです。だから、日本農業新聞でも、北海道の標茶町というところですか、そこの農協の組合長さんなんかは、この価格の問題について尋ねられると、いまのこの状態は働けど働けどわが暮し楽にならずの一言だということでその引き上げを訴えているわけです。私の地域は大阪なのですが、そこにも酪農家はたくさんおります。ここでも加工用の乳価が、保証乳価が据え置かれているために、その影響が飲用乳の方にも価格を抑えられるという形で出てきている、しかも乱売要因も実はここからつくり出されているのだということを訴えておられるわけです。  そこで、私はまず最初にお聞きしたいのですが、こうした深刻な実態をどういうふうにとらえておられるのか。
  116. 船曳哲郎

    船曳政府委員 酪農経営の中には、計画生産の実施によりまして経営規模の拡大をしたけれども生産量をさほどふやすことができないといったようなことで、経営的には苦しい方々も一部にはあると存じます。そのような方々に対しましては酪農経営負債整理資金等の措置を講じてまいっておりますことは先ほど来御説明をしてきておるところでございますが、全体として見ますと、現在の価格水準のもとで生乳生産北海道を中心にいたしまして順調に伸びておるわけでございます。     〔玉沢委員長代理退席、委員長着席〕 五十七年四月から五十八年一月までの間の北海道生乳生産量は対前年同期比で六・五%ふえておるということがございます。また、最近では乳製品需給が、計画生産にお取り組みいただいたこともこれあり好転してまいっておりますし、配合飼料価格も安定してきておるといったようなことから、全体として見れば酪農経営は改善の方向に向かっておるものと考えておるところでございます。
  117. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 全体としては経営が改善の方向に向かっていると言われても、五年も価格が据え置かれていて、その間生産調整があり、生産費や人件費も上がり、いまの状態では文字どおり再生産を確保することが非常に困難な状態になっていると言わざるを得ないじゃありませんか。だから、今度のこの乳価の決定に対しては、そういうのんきな評価じゃなしに、いまこそ積極的に農民要求にこたえていく姿勢に立つべきだと考えますが、いかがですか。
  118. 船曳哲郎

    船曳政府委員 私どもは、一般的にはいま申し上げたような理解をしておるわけでございますが、五十八年度の乳価の決定に当たりましては、生産条件需給事情その他の経済事情を考慮いたしまして、審議会の御意見を聞いて適正に決めてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  119. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう一度お伺いいたしますが、適正に決めるということは、政府の姿勢としては再生産を確保する、そういう立場で適正に決めていくということでございますか。
  120. 船曳哲郎

    船曳政府委員 不足払い法にも再生産の確保ということがうたわれておりますので、私どもも当然念頭に置いて作業しなければならない、このように考えております。
  121. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 適正という言葉は非常に便利な言葉だと思いますが、この問題は後でもう一度お伺いいたします。  もう一つは、限度数量の問題なのです。乳製品需給状況は昨年とは大きく変わったと言われております。まさにそのとおりだと思うのです。乳製品の過剰を理由にして価格生産両面から抑制をしてきました。しかし、今日この需給は好転した。その最も象徴的なものは、昨年の暮れに政府畜産振興事業団を通じてバターを三千トン緊急輸入をしたということでよくあらわれていると思うのですね。あのとき、事業団が抱えていたバターを全量放出されましたね。それから脱粉も約半分放出された。にもかかわらず、乳製品価格は昨年末は安定指標価格を八%上回る高原相場と言われておりますが、そういう状態をずっと続けている。そういう中で、乳製品輸入は過去最高の五十三年度の水準に逆戻りしていったわけです。したがって、今日もはや過剰とは言えないような状況になっていると思います。  そこでお伺いしたいのですが、生産者は今日のこの状況の中でこういうふうに言っているわけですね。需給事情はさま変わりした、いまこそ再生産確保の保証乳価の実現と限度数量拡大が必要だ、仮にそれを据え置くというような事態になれば農民感情は許さず、政治不信はつのるばかりだ、そういうふうに言っております。この農民の声にどういうふうにお答えになりますか。
  122. 船曳哲郎

    船曳政府委員 限度数量につきましても、私ども審議会の御意見を聞いて、三月末までに適正に決定してまいりたいと考えておりますが、その算定当たりましては、乳製品需給事情なり生乳生産事情なり、それから酪農経営の合理化の促進の必要性なり等を考慮して作業をしてまいりたい、このように考えておるところでございます。
  123. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう一度価格の問題に戻りますが、今日、乳製品、特に牛乳の乱売の問題が言われております。その乱れの一因に、飲用乳価と保証価格の開きがあり過ぎる。確かに、昨年は五年ぶりに据え置きを破って五十銭だけ引き上げられたけれども、それはキロ当たりの話でありまして、酪農民にしてみるとまさに微調整と言わざるを得ない。保証価格が上がらなければ、牛乳は高い飲用の方に流れて乱売が直らない。需給均衡下でも安売りがされていることを考えると、価格限度数量抑制だけではなく、もっと根本的な対策が必要だ、こういうことでこの乱売の問題からも価格の問題が言われているわけなんですね。そういう問題についてはどういうふうに検討されておられるわけですか。
  124. 船曳哲郎

    船曳政府委員 御案内のとおり、生乳の約三分の二は飲用牛乳として消費されておるわけでございまして、酪農家の経営の発展を考えます際に、加工原料乳とあわせて、あるいはそれ以上にこの飲用牛乳問題が重要な問題だ、このように考えるものでございます。  したがいまして、私どもは昨年来いろいろと検討を重ねてきておるわけでございますが、現段階におきましては、飲用牛乳の流通秩序の混乱の原因としては、先ほどお話のございました両価格の開きを適正なものにするということももちろんございますけれども、それとあわせまして、混乱の原因としては飲用向け生乳需給の緩和といったようなこととか、産地間の市乳化競争といったこととか、それから市乳プラントの過剰と乳業者の相互不信による乳業者間の過当競争とか、さらにはスーパーなどの量販店との取引関係等が考えられるわけでございます。このため、農林水産省といたしましては、昨年来、まず生乳の用途別の計画生産なり、生産者団体への秩序ある生乳取引の指導なりを行っておりますし、また飲用牛乳工場の新増設の抑制と統廃合、それから乳業者の組織化なり合併、それから乳業経営のあり方についての乳業者の共通の認識の形成によりますところの乳業者間の過度の販売競争の是正の指導、それから乳業者と量販店等との取引関係の正常化のための関係者の協調の指導等を行っておるところでございます。今後とも各方面の方々の御意見を拝聴しながら、この飲用牛乳の乱売問題については取り組んでまいりたいと考えておるわけでございます。  なお、それはそれでございますが、保証価格の決定は、やはり法律の定めるところに従って所定の手続を踏んで決めてまいるべきことである、このように考えておるところでございます。
  125. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 この問題については、後日またもう少し深めて取り上げていきたいと思いますが、畜産物の政策価格について、農民要求にこたえて引き上げるとは一貫して言われなかったですね。非常に抽象的であるけれども、どうもことしは抑制の方向に流れてしまいそうだというふうに受けとめざるを得ないような御答弁、朝からの御答弁もそういうふうに受けとめざるを得ないような内容のものであったと思うのです。このことについて畜産局の方が、牛肉が米国や臨調から名指しで言われているときに価格をいじるのはむずかしい、こういうふうに発言をしておられます。これは日本農業新聞の中にありましたが、結局、今日この価格の抑制の問題は臨調の答申の具体化なんでしょうか。
  126. 船曳哲郎

    船曳政府委員 臨調の答申は、これは政府として尊重してまいらなければならないと考えますが、私ども具体的にこの価格を決定するに当たりましては、先ほど来申し上げておりますとおり、法律の定めるところに従いまして、生産条件なり需給事情なりその他の経済事情を考慮して、審議会の御意見を拝聴して適正に決めてまいるつもりでございます。
  127. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そういうふうな立場に立つならば引き上げざるを得ないと私は考えるから先ほどから聞いているのに、政府そのものの姿勢が決していま引き上げるという方向に見えない。だから、その臨調答申を尊重すると大臣は言われているわけです。そうでしょう。きょうは、大臣のかわりに次官がお見えですから、答えてください。臨調では、牛肉の行政価格について速やかに欧州共同体並みの水準を達成し、内外価格差を縮小することを目標に毎年度の水準を見直す、こういうふうに答申しているわけです。大臣は、その臨調答申を尊重するというふうにその後の新聞でも発言しておられるわけです。そういう立場に立っているから、五年も据え置いているのに価格の抑制、相変わらずそういう姿勢にならざるを得ないんじゃないか、私はそういうふうに思うわけです。農民の皆さんは言っているのですよ。先ほども牛肉の自由化の問題がここで取り上げられていますけれども、そういうアメリカからの自由化あるいは枠の拡大、これは前門のトラだ、後門のオオカミが臨調だ、農民はそう言っているわけです。どうでしょうか。
  128. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 臨調答申におきましては、農業、農政のあり方につきまして基本的な考え方が示されておるわけであります。農林水産省といたしましては、その趣旨を踏まえまして、効率的かつ具体的に農政の推進を図っていきたい、かように考えております。(「関係ない」と呼ぶ者あり)
  129. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 関係ないですかね。具体的に実行する、具体的にこたえていくというたらこういうことにならざるを得ないじゃないか。農民が心配していたら、案の定ことしの乳価の決定に当たっては政府は非常に消極的だ。これは抑制ということにならざるを得ないんだな。だから、もうそういう報道もされているし、きょうの答弁もそういう方向としか受けざるを得ない。だったら、これは臨調答申の具体化だな、こういうことになるわけです。違うのですか。それでは、その臨調の答申についてはどうなんですか、政務次官。——政務次官でいいです。事務的なことを聞いているんじゃないですから。時間がもうないですから。
  130. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 具体的には、先般の農政審議会の報告に即しつつ総合的な食糧の自給力の維持を図るという基本線でまいりたいと思います。(「禅問答じゃないぞ」と呼ぶ者あり)
  131. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 日本の畜産業というのは、これは政府も相当力を入れてきて、そして日本の米に次ぐ大事な柱になっているわけでしょう、わが国の農業の。そういう点では、いま農民の持っているこの危機感を払拭していかなければならないと私は思うのです。だから、私はあえてこの問題についてしつっこく聞いているわけです。禅問答という声がありましたけれども、そんな何と解釈したらいいかわからないような、そういう答弁の繰り返しというのは本当に困るわけですよ。ちゃんとわかるように答弁してくださいよ。
  132. 楢橋進

    ○楢橋政府委員 先ほど申し上げましたように、臨調答申におきましては基本的な考え方が示されておるわけでありまして、農水省としましては、その趣旨を踏まえまして効率的かつ適切なる農政を推進していきたい、かように考えております。
  133. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もういいです。またこれからどんどん具体的な問題が出てまいりますし、これも一つの具体的なあらわれと言わざるを得ないと思うのです。  最後にお伺いいたしますが、先ほどからも酪農経営負債整理資金の問題が言われておりました。確かに深刻な状態にあるということは、実情をよく知っていらっしゃるというふうに、私も先ほどの答弁を聞いていて理解をいたしました。私からも、この負債整理資金の貸し付けが非常に希望が多い現状の中で、そういう実態を踏まえて、この制度を引き続き継承し、そして拡充をしていくべきであるということをぜひ要望しておきたいわけですが、最後に御答弁をいただきたいと思います。
  134. 船曳哲郎

    船曳政府委員 一部に酪農経営の負債整理の必要があるということで五十六年にこの酪農経営負債整理資金制度を創設したところでございますが、五十八年度以降の取り扱いにつきましては、先ほど来お答え申し上げておりますとおり、資金需要の実態を十分調べまして、御関係の方々の御意見も拝聴いたしまして適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  135. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので、これで終わります。      ────◇─────
  136. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、玉沢徳一郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を求めます。日野市朗君。
  137. 日野市朗

    ○日野委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、畜産物価格等に関する件についての決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     畜産物価格等に関する件(案)   最近、我が国畜産業を取り巻く情勢は、牛乳等の畜産物価格の低迷に加え、諸外国から牛肉等に対する市場開放の強い要請があり、内外ともに極めて厳しい事態に直面している。   よって政府は、当面する昭和五十八年度加工原料乳保証価格及び豚肉、牛肉の安定基準価格の決定等に当たっては、左記の事項の実現に努め、酪農畜産経営の安定と発展に万遺憾なきを期すべきである。       記  一 加工原料乳保証価格については、実質上昭和五十二年以来据え置かれている実情、また生産者の四カ年にわたる生産調整の経緯及び経営費の動向等を考慮し、生乳の再生産を確保することを旨とし適正な水準で決定すること。    また、昭和五十八年度の加工原料乳限度数量は、最近における乳製品需給価格動向を勘案し、適正に決定すること。  二 豚肉、牛肉の安定基準価格等については、再生産を確保することを旨として適正な水準で決定すること。    また、最近の子牛価格の低迷等を考慮し、子牛価格の安定制度の強化に努めること。  三 牛肉をはじめ畜産物の自由化及び輸入拡大要請に対しては、国会における農林水産委員会での決議の趣旨に従い、畜産農家が犠牲になることがないよう対処すること。    なお、調製食用脂等輸入乳製品については、これが国内生産に悪影響を及ぼすことがないよう秩序ある輸入を指導すること。  四 酪農負債整理資金については、実情調査の上、必要に応じて継続貸付けを行うとともに畜産関係諸資金制度の充実を図ること。  五 飲用乳については、秩序ある取引と、適正な価格形成が図られる体制の整備とあわせ、積極的な消費拡大を図ること。  六 飼料の安定的供給を図るため、配合飼料安定基金制度及び備蓄制度の充実を図ること。   右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の経過等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いいたします。(拍手)
  138. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  玉沢徳一郎君外五名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  139. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本動議のごとく決しました。  この際、ただいまの決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  140. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従い、最近のわが国畜産業の厳しい情勢を踏まえつつ、十分検討いたしてまいる所存であります。      ────◇─────
  141. 山崎平八郎

    山崎委員長 次に、玉沢徳一郎君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による蚕糸業振興に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。串原義直君。
  142. 串原義直

    ○串原委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、蚕糸業振興に関する件についての決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     蚕糸業振興に関する件(案)   最近の我が国蚕糸業を取り巻く情勢は、絹需要の大幅減退、海外からの生糸、絹製品輸入等を背景として、蚕糸砂糖類価格安定事業団在庫が膨大化する等極めて厳しい事態に直面している。   よって政府は、繭糸価格安定制度の趣旨を体して、昭和五十八年度の基準糸価等の決定に当たっては、左記事項の実現に努め、伝統的民族産業である蚕糸業の維持、発展に万遺憾なきを期すべきである。       記  一 養蚕農家等の経営状況を踏まえ、再生産可能な繭糸価格の実現に努めること。  二 絹需要の一層の拡大を図るため、第九十六回国会における法律改正で途を開いた新規用途売渡し等の方途に事業団在庫糸をより一層活用する方向で諸対策を講じ、併せて絹製品に至るまでの流通の合理化を促進すること。    また、製糸業の置かれている現状にかんがみ、需要に即応した供給が図られるようその構造改善と雇用の安定に努めること。  三 生糸、絹織物等の輸入については、事業団による生糸の一元輸入措置をはじめ、絹織物等に係る輸入調整措置を継続実施するとともに、需要に見合った適正な輸入数量となるよう努めること。  四 六十五年長期見通しに沿った生産性の高い養蚕経営を確立するため、蚕業改良普及制度を堅持しつつ、生産団地の育成、土地基盤の整備等実効ある生産対策を総合的に実施すること。   右決議する。  以上でありますが、決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の十分御承知のところでありますので、その説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  143. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  玉沢徳一郎君外五名提出の動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  144. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本動議のごとく決しました。  この際、ただいまの決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  145. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従い、最近のわが国蚕糸業をめぐる厳しい情勢を踏まえつつ、十分検討いたしてまいる所存でございます。     ─────────────
  146. 山崎平八郎

    山崎委員長 ただいまの両決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり)
  147. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後、直ちに再開いたします。     午後零時五十五分休憩      ────◇─────     午後二時九分開議
  148. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出参議院送付北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  149. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ただいま参議院送付になりました通称マル寒、マル南法案の一部改正に関する問題で、若干の質問を申し上げておきたいと思います。とりわけ南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法、マル南の関係について、関係者でもございますし、このたび法案の延長を図っていただきましたことについて大変敬意を表しながら質問申し上げます。  このマル南審議の際に、政府に対して、昭和五十三年、「農産物の総合的自給力の強化のための畑作農業の重要性にかんがみ、農業生産の地域指標の試案等を勘案し、本制度の在り方をも含めて、畑作農業の振興のための総合的な基本施策を確立」をしてほしい、こういう強力な推進を図るように附帯決議を付した経緯がこれまでございます。今度の畑作のこうした問題、とりわけ水田利用再編成などに関連をした地域農業の再編成、食糧の総合自給力の向上、こうした面から見ましても、農政の最重要課題となっている畑作農業の位置づけといった問題について、この際総合的な政策を確立をしていく必要があるんじゃないか、その観点から私どもとしても畑作振興法などをつくってやってみたらどうだろうかと考えるのでありますが、考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  150. 森実孝郎

    森実政府委員 畑作振興の総合施策の方針樹立についての検討の経過なり考え方についてお話し申し上げます。  御存じのように、畑作につきましては、地帯が全国、北海道、表東北、関東、南九州等非常に広域にわたって分布しておりまして、立地条件も違いますし、作物の種類や栽培方式の違いというものが多様でございまして、単一の法制で全体をカバーする、あるいは一つの方針で奨励施策を考えていくというわけにはなかなかまいりかねる点もあるわけでございます。そこで、四十四年に御案内の農振法が制定されまして、従来ございました畑地農業改良促進法もこれに吸収されたわけでございますが、農振法におきましては市町村が立てます農業振興計画において畑作振興のために必要な施策、措置等についても規定して、それを国や県が尊重して行政の運営に当たっていくという体系ができてきたわけでございます。そういう意味におきまして、国におきましても土地改良事業の実施等に当たりましては、あるいはその長期計画の樹立等に当たりましては、そういった畑作につての土地改良事業の要望というものを、末端から上がってきたものを受けとめてやるという体制を整備しておるところでございますし、さらに新地域農業生産総合振興対策事業におきましては、まさにこういった市町村の農業生産総合振興計画を樹立させて農振計画に盛り込まれた畑作振興に関する考え方に織り込んだ助成を実施していくことにしているわけでございます。そういう意味で、統一法制というのには、先ほど申し上げたような事情でなかなかむずかしい点もございますが、できるだけ末端の計画なり考え方を取り入れた助成施策の活用ということを講じているところでございます。
  151. 新盛辰雄

    ○新盛委員 南九州におきましては肉用牛を中心とした営農方式がとられているわけでありますが、これの飼養規模拡大という形になりますと、当然飼料基盤の整備も必要になってまいります。現状は、肉用牛生産農家の経営の健全化を図るための、とりわけ先ほど決議をしました畜産価格の問題とも関連はしますが、肉用子牛の価格安定事業の交付準備金に不足を生じている。特に資金の融通措置ができるように特段の財政措置を図られたいと私の方は希望するのであります。五十六年、五十七年、五十八年、低落傾向にこの価格は推移しておりますが、いま保証価格として全国平均で二十九万二千円、現実は卸売価格は二十五万前後、その差四万から五万補てんしなければなりませんが、大変難儀をいたしております。宮崎県にしても鹿児島県にしてもしかりであります。肉用の子牛価格安定制度の仕組みが非常に複雑な状況もございますけれども、これらについて畜産局長の御見解を、ひとつ前向きに、財政措置、補てんも含めてお答えいただきたいと思います。
  152. 石川弘

    石川(弘)政府委員 御指摘のように、昨年来子牛価格は若干低落をいたしております。しかしながら、おかげさまでこの基金を発動することによって現在は農家手取りは下がらないような仕組みになっておりますが、いまお話がございましたように、基金から放出いたしております補給金の金の量が、上期が四十八億ばかり、下期もこれ程度のものが出ますと、百億程度のものが出るわけでございます。基本的には子牛の価格が安定しまして極力生産農家が意欲をつけていただかなければいかぬということでございますので、私ども、今国会にお願いしております酪農振興法の一部を改正する法律案の中で、この子牛価格の安定制度を法律に基づく恒久的な措置に組みかえることをまず第一義的に考えております。  その場合に、もちろん県段階での補てんのための基金を充実すること、このために一般会計からもお金を出すことにいたしておりますけれども、それだけではなくて、全国協会がございまして、全国協会が現在削減補てん準備というようなこともやっておりますが、それ以外に全国協会の融資資金がございまして、県協会の資金がショートした場合に融資するわけでございます。これにつきましても、現状等にかんがみ、また今回これを法制化することを頭に置きまして、かなり内容を充実してまいりたいと思います。それだけでは不十分かと思いますので、子牛の場合は飼う方が力がつかぬといかぬわけでございます。育成農家が相当力がつかぬといかぬということもございますので、五十八年度の家畜導入に関する制度を早期に動かすこととか、それから今度の法律にもございます前向きの資金の融通措置を合わせまして、子牛価格安定、繁殖農家の経営安定に努めるつもりで努力をいたしたいと思います。
  153. 新盛辰雄

    ○新盛委員 その点、畜産価格決定を含めて、後の酪農振興法との関係でまた議論をしてまいりたいと思います。  時間がございませんので急ぎますが、営農改善資金の限度額の引き上げについてですが、融資条件については四十三年度以降、また貸付限度額については五十三年度以降改正されないまま今日推移しているわけでございます。この貸付限度額については、その後の物財費の高騰、農業経営の実態の面から見ますときわめて厳しい状況になっているわけで、この引き上げ要請も出ているわけでございますが、どのように対処される方針か。また、融資条件の改善についてもぜひ前向きに取り組んでいただきたい。  今回の法改正、マル寒の方は過去五回延長、そしてマル南の方は過去二回延長、こういう中で五十八年度の貸付計画額はマル寒、マル南とも合わせまして六十億、こういう状況でございます。資金的には五十七年度完全に消化したとは思えませんけれども、しかし、この辺、枠の問題もありますが、貸付条件の面でも年利率あるいは償還期限、貸付限度額の各種の条件を、今度南の方は約一万戸、年に二千戸、こういうことでございますので、この辺のことも加味されまして、限度額についてはこれからどういうふうな改善をして対処していくかということについてお聞かせいただきたいと思うのです。
  154. 森実孝郎

    森実政府委員 法定事項でございます貸付対象とか貸付利率の問題でございますが、貸付対象は累年追加をしてきておりまして、ほぼ充実したのではないかと思っております。貸付利率等は、私が申すまでもなく、制度金融の中でも最も優遇しておりますグループの中で、なかなか今日の状況の中でこれ以上の改善は期しがたいと思っております。  貸付限度額でございますが、実は今回は据え置きということを決めております。ただ、これは法定事項ではございません。それで、最近までの実績を見ますと、限度額いっぱい借りている農家というのは非常に少ないわけでございまして、大体七割ぐらいが限度額の六割ぐらいまでの線でカバーされているという実態がございます。それから、御案内のように物価も非常に安定した状況にございます。そういう意味においては、いまの状況では限度額の引き上げということは考えておりませんけれども、やはり法廷長後のただいま先生指摘のあった貸付動向とか経済状況というものは十分見きわめて、毎年毎年の予算において必要な対応は考えなければならないと思っております。
  155. 新盛辰雄

    ○新盛委員 以上をもって質問を終わりますが、マル寒にしてもマル南にいたしましても、地元では非常に希望している問題でもございますし、延長したという経緯にかんがみまして、ぜひとも営農畑作振興という問題もとらえて、今後とも政府としての一段の御助力なりあるいはまた指導の面においても適切にお願いを申し上げたい。後ほど附帯決議でその私どもの要旨は申し上げておくつもりでございますから、政府の方でも十分にそれを配慮して取り扱いいただきますことをお願いして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  156. 山崎平八郎

  157. 安井吉典

    安井委員 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法、それから南九州の同趣旨の法律でございますが、私は主としてマル寒の方について、わずかな時間ですが、お尋ねをしたいと思います。  寒地農業、北海道の農業の特殊性、わけても畑作というのは、貿易自由化だとか枠の拡大というような中で生産が外から制約を受けている、あるいは価格の停滞も著しいものがあり、その上、水田転作の影響が非常に大きいわけです。とりわけ北海道の場合は半分に近い水田が畑に転換されたということで、本来の畑作専業の農家が転作水田の生産によって大きく影響を受けています。転作した農家の方は転作奨励金をもらってそれで畑作生産ができるわけですけれども、専業農家は本来の畑作だけで、奨励金も何もないわけですから、それだけに厳しい状況の上にあるわけであります。畑作農業全体に対する振興対策というのがまず何といったって先行すべきであるし、地域指標の確立だとか輪作体系の確立あるいは基盤整備、特に複合経営を推進するという方向も非常に重要ではないかと思います。昔は有畜農業という言葉があったのですが、もう一度思い直す必要があるのではないかとも思います。  そういうような北海道における寒地農業の方向について、農林水産省の中では特に対策室を設けていろいろ検討していただいているはずでありますが、それの現在までの作業内容やあるいは今後の見通し等についてまず伺いたいと思います。
  158. 中川聡七郎

    ○中川説明員 お答えします。  御案内のとおり、北海道農業、日本農業も含めて非常に厳しい情勢の中にございますが、昨年の十一月、本省において、地域の自主的な活動に依拠した農政展開という意味で、地域農政という形での農政の展開を進めておりますが、北海道地域におきましてもこれを進めるという観点から、本省及び出先機関を通じて、あるいは道庁とも一体となって地域農政を推進するという観点から対策室が設けられたというふうなことでございます。  現在、私どもといたしましては、具体的な仕事といたしまして、北海道農業の実態をまずつかむということで、一つは各市町村別に農政の推進のための基礎的な指針となるべきデータ把握、それから基本的な課題といったものについての掌握に努める作業を進めております。それから、こういう作業を踏まえながら、五十八年度からは北海道地域において、周辺市町村にも影響を及ぼし得るような、いわば拠点的な地域農業指導という形の行政にひとつ取り組んではどうかということで、いわば拠点地域農業指導という姿での取り組みを始めようではないかということが一つ。さらに第三点目は、昨年の八月に農政審議会で将来に向けての農業の展望と農政の方向が打ち出されたわけでありますが、それに即したものを地方農政局においてつくるべく作業が進められておるわけでございますが、北海道地域におきましても、この作業の一環として、今後の北海道農業の展望につきまして官房企画室と一緒になって検討を進めておる、そういう作業状況になっております。
  159. 安井吉典

    安井委員 まだ緒についたばかりで資料収集の段階のようでありますけれども、これの成果には大変大きく農民の期待も集まっていますので、しっかりした成果を期待しておきたいと思います。  短い時間ですから多くをお尋ねできませんが、農業金融の全体的なあり方であります。  いわゆる新農政という中で、補助金行政からの脱皮だとかそういうような問題も出てくるのではないかと思います。ですから、小さな補助金をごちゃごちゃ出すというよりも、思い切った長期の、そして低利の資金を提供していく。そして、いわゆる地域農政のために創意工夫をこらして全力を傾けてやってもらう、そういう仕組みをこそ期待すべきではないかと思います。今後の農業金融の基本的な考え方について、少し問題は大きいかもしれませんけれども、ひとつ伺います。
  160. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  私どもといたしましても、先生指摘のように、農業に対する助成の手段として、補助金と金融という二つの手段を比較考量いたしました場合に、どうしても金融の方が、何と申しますか、農家の自主自立の精神に即したてこ入れの仕方としてすぐれた点が多いという認識は私どももそう思っておりまして、できるだけ金融的手法で対処し得るものは金融で対処していくことにしたい。そうすることによって補助金が整理し得るというようなことであれば、そのために相当思い切った融資要件の改善を図ってもいいというふうに考えるべき筋合いのものだというふうに思っております。  ただ、現実の問題として、ただいま先生の御批判のございました補助金につきましても、それぞれ愛着をお持ちの向きが多いわけでございまして、現実論としてどの程度補助金から金融へというふうに移行していけるかということについてはややコンサーバティブな評価にならざるを得ないところもございますが、大筋の考え方といたしましては私も同様に考えております。
  161. 安井吉典

    安井委員 きょうは本当の大筋論しかできませんが、やはり思い切った転換も必要なんで、私が言うのは、いわゆる金融的な政策手段を超越した超長期超低利資金、そういうものなら補助金行政にかわり得るものではないか、そういうような側面をさらに御検討おきをいただきたいと思います。  もう一つ、畑作農家の場合の固定化負債の問題です。  酪農家の問題については午前中も議論いたしましたけれども、いろいろな仕組みがあるわけです。しかし、単に酪農民だけじゃなしに水田農家にとっても畑作農家にとっても、固定化した負債がかなり増大している、それが経営圧迫をしているという実情があるわけですから、もう少し実態を把握してこれへの対応が必要なのではないか。現在は自創資金の措置があることも知っておりますけれども、社会党の私たちは、もう少し抜本的な負債整理対策特別立法が必要なのではないかという考え方まで持っているわけでありますが、この問題についての政府としてのお考え方や対策を伺います。
  162. 森実孝郎

    森実政府委員 最近の農業を取り巻く諸状況の中で、農家の負債額が全般的に増加しているということは否みがたい事実だろうと思います。また同時に、過去三年間も続きました冷害等の凶作によりまして、地帯によっては、年度によっては、やはり償還が困難なつらい事情があることも事実でございます。  問題は、やはり酪農に代表されますように、たとえば設備投資等が急速に行われ、急速な規模拡大が行われた。と同時に、その投資が完了した時点において生産調整が行われる、あるいは価格が低迷している、なかなか償還が困難だ、こういう構造的問題を持っている業種につきましては特別の手当てが要るということは私どもも事実だと思いますし、まさに当委員会を中心にして一昨年以来この議論が活発に行われ、厳しい御指摘がありまして、政府としても、それを受けまして、五十六年には酪農経営負債整理資金という抜本的な制度を制度化したわけでございますし、五十七年には肉畜の経営改善資金を制度化したわけでございます。したがって、われわれといたしましては、やはりそういう構造上の問題があるものについては、そのときそのとき随時適切に対応する必要があるだろうと思っております。  ただ、一般論で申し上げますと、やはり業態によって、地域によって、また毎年毎年の気象条件によって非常に差があるわけでございますから、基本的には自創資金の特に経営再建整備資金による対応ということが最も現実的ではないかと思っているわけでございます。その意味で、いろいろ御不満もありますが、この自創資金の経営再建整備資金については年々増額を図ると同時に、不足する場合においては流用等の措置を講じて、当初の予算額より実施額をふやすというような個別、具体的な行政配慮も払ってきているところでございます。  御指摘の問題は、お気持ちとしてはわからないわけでもございませんけれども、この種の負債整理資金というのは超長期超低利というふうな特別の優遇した制度でございまして、一般論と申しますよりも、そういった構造的問題をその都度受けとめながら対応する形が適切ではないかと思います。私どもとしましても、農家負債の動向はやはり重要な問題でございますので、今後とも十分注視して随時適切な対応を考えてまいりたいと思っております。
  163. 安井吉典

    安井委員 いま御答弁がありましたけれども、もう少し実態調査をきちっとやっていただいて、さらに対応を進めていただくということが必要ではないかと思いますので、そのことだけ申し上げておきます。  このマル寒及びマル南の両法案については、私どもも単純延長ですから賛成でありますが、ただ、小刻みに五年ごとに刻んでやっていくという仕組みでいいのかどうか。もう少し安定した形で、もし要らなくなればそのときまた法律でやめればいいわけですから、そうでない限りはずっと継続ができるというような仕組みでやることの方がいいのではないか、そう思います。そしてまた、さっき新盛さんからも御指摘がありましたような限度額や金利の問題等についてもさらに適切な対応というのがその段階で必要になってくるのではないかと思いますが、どうですか。
  164. 森実孝郎

    森実政府委員 マル寒資金、マル南資金につきましては制度金融としても最も優遇されたグループでございまして、従来何回かの延長を繰り返してきたわけでございます。ざっくばらんに申し上げますと、今回の延長ということもなかなか難航した経緯がございます。しかし、認定実績が低いという事実からも示されておりますように、災害とかそういった農業を取り巻く諸情勢の中で農家が積極的な経営改善を行うための投資にまでなかなか踏み切れないという事情があったわけで、何とかもう一回延長したいということで延長をお願いしたわけでございます。  もちろん、この種の限時法の取り扱いというものはやはりそのときそのときの情勢で考えなければなりませんが、北海道についてはすでに六回、また南九州についても三回目の延長ということでございまして、他の地域とのバランスとか制度金融の中における位置づけ等なかなかむずかしい問題もありますので、一概に恒久立法ということも、御意見としてあるいはお気持ちとしては理解できないわけではございませんが、なかなかむずかしい事情にある点は御賢察のほどを賜りたいと思います。
  165. 安井吉典

    安井委員 時間ですから終わります。
  166. 山崎平八郎

    山崎委員長 藤田スミ君。
  167. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が八分しかありませんので、二、三の点にしぼってお伺いをいたします。  マル寒、マル南資金を借りられる農民の要件につきまして、法律を見ますと、寒冷地畑作振興地域または南九州畑作振興地域の区域内の畑作及び畜産の事業を行う者で、営農計画を立てて知事の認定を受けた者、こういうことになっております。政府からいただきました資料を見ますと、これは構造改善局の資料なんですが、家族労働が主体であること、それから平年の農業所得が現在の中庸程度の畑作経営農業者の水準以下であること、それから三つ目は経営規模が中庸以下であること、こういうふうな要件も貸付条件などというところで書かれておりますが、この要件の方は法律に基づくものなんでしょうか。
  168. 森実孝郎

    森実政府委員 法律の趣旨に基づいて定めたものでございます。
  169. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると、私はここに通達を持っています。先ほどお願いをしていただいた分ですが、ここでは、農業所得以外の所得が農家所得の過半を占めている者はだめだとか、それから第二種兼業農家は貸し付けの対象にしないとかということになっておりますね。これは、法の趣旨からしてというさっきの要件とは合致するのですか。
  170. 森実孝郎

    森実政府委員 具体的な通達の基準といたしましては、「農業以外の所得が農家総所得の過半を占めている者。」は対象にしないということになっております。しかし、ただし書きがついておりまして、「将来営農改善計画を樹立して営農の改善を図ろうとする者は、この限りではない。」ということで、いわば農業所得が過半以下であっても、営農改善計画をつくり、それによって農業所得を上げていって、いわば主として農業に依存するような経営を実現できる、そういう農家は対象にすることにしております。それはいわば法律に言います「営農改善計画をたてこれに基きその営農の改善を図ろうとするもの」という思想に合致するものと理解しております。
  171. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると、はっきりしていただきたいのですが、どうも通達があいまいにしていると思うのです。この制度は、中規模以下の農家に貸し付けるという点で、いわゆる選別的な融資でないということが農家に大変喜ばれているわけですね。そういう点では、私は非常に評価をまた同時にするわけで、これは先ほど言われたように、もうこういうふうな区切りをつけないで、できれば本当に末長く、このままずっと続けていくべき制度じゃないかというふうには思うわけです。しかし、そういうみんなに喜ばれているというものにわざわざ通達でよけいな言葉をつけ加えて、そうして要件を加えていくというのは、これは私はやはり問題だなというふうに思わざるを得ません。この文章を見ましても、「ただし、」という後のところでは、「いわゆる第二種兼業農家は、本法の適用対象者とはならない」ものとする、こういうことまで書いてありますと、やはり実際の適用の段階ではかなりこういうものが制約されていくのではなかろうか。いまのような不況のときですから、まさに第二種兼業農家であっても雇用不安が伴っているいまの世の中では、これからは農業で生きていこうという人たちがどんどん出てきているわけなんですよね。そういう実態から見ても、こういうふうにわざわざ通達で書き加えるというようなことはやめるべきじゃないか。ただし書きを書いた、そこで終わっておくべきなのに、さらによけいに加えているというところは、私は改めていくべきじゃないかというふうに考えるわけです。
  172. 森実孝郎

    森実政府委員 多少先生のお考えと私どもの法案作成過程あるいはその後実施をしておりますところで考え方に差があることは否めないかとも思います。問題は、農業総生産の維持発展という視点と同時に、やはり今後農業経営に精進することによって生産性の高い、所得の高い農業を実現できるということが主要畑作地帯の畑作経営の育成という視点から重視されてきたというふうに御理解いただく必要があると思います。そういう意味においては、いわば中庸程度以下であるけれども精進することによって農業として発展する見込みのある者を拾っていくということに特に優遇した、金融制度としてはせざるを得なかったという事情があると思います。  しかし、個別判断としては、私先ほど申し上げましたように例外を設けておりまして、改善計画をつくって、それによって営農の飛躍的向上が確実に見込める者は対象にしようということで、行政運営には十分弾力化を図ってきたつもりでおります。そういった考え方がいいか悪いかという問題についてはいろいろ御議論もあるだろうと思いますが、いわばそういう考え方を前提にしてこの法制が仕組まれ、延長されてきたという経過については御理解を賜りたいと思います。
  173. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、あと二点、私は、急激な営農改善で上から押しつけるようなやり方はやめるべきであるということと同時に、午前中の議論にもありましたけれども、今日の酪農家の現状から見ても、とてもこの中庸の営農所得の確保ということが五年という短期間で達成できるものではない。そこはもっと柔軟性を持って、十年以上というような形でその実態に合わせて指導を進めていくべきだという点を御要望申し上げて、時間が参りましたので終わります。
  174. 山崎平八郎

    山崎委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  175. 山崎平八郎

    山崎委員長 討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  176. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  177. 山崎平八郎

    山崎委員長 この際、本案に対し、北口博君外五名から、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。新盛辰雄君。
  178. 新盛辰雄

    ○新盛委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、日本共産党及び新自由クラブ・民主連合を代表して、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨の御説明を申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法及び南九州畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、畑作農業が地域農業の再編成と食料の総合自給力向上に果たす役割の重要性にかんがみ、その振興のための基本施策を総合的に実施するとともに、本法の運用等に当たっては、左記事項の実現に努めること。       記  一 畑地の基盤整備事業が立遅れている現状に対処し、第三次土地改良長期計画の実施に当たつては、畑地に対する土地改良、農地保全及び土壌改良等の各種事業について一層推進すること。  二 両法に基づく営農改善計画の認定が計画どおり実施されるよう、資金の貸付条件について今後とも改善に努力するとともに、営農指導体制を強化すること。  三 営農方式例の作成等に当たつては、農産物の需要の動向と地域農業の実情に沿つた合理的な経営指標を示すとともに、機械化・輪作体系の確立と地力の増強等についても十分留意するよう指導すること。  四 北海道、南九州等の遠隔地における農産物の合理的な流通体系等の確立を図ること。  五 牛肉、オレンジ、果汁等に対する海外からの市場開放要請については、農林水産委員会における決議の趣旨に従って対処すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じてすでに各位の十分御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。(拍手)
  179. 山崎平八郎

    山崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  北口博君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 山崎平八郎

    山崎委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして金子農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。金子農林水産大臣
  181. 金子岩三

    ○金子国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、今後とも北海道及び南九州の畑作振興に努力いたしたいと存じます。     ─────────────
  182. 山崎平八郎

    山崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 山崎平八郎

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  184. 山崎平八郎

    山崎委員長 内閣提出森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中恒利君。
  185. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 森林法改正をめぐる今日の山林、林業問題について、幾つかの問題点につきまして質問を申し上げたいと思います。  私ども、絶えず地域を回っておるわけですが、やはり山村というものがいま非常に厳しい、そういうことをひとしお感ずるわけであります。お互いに、農山漁村の関係地域の中でどうも山村に活力が失われ、人がいなく、そして山が荒れ果てようとしておるさまをいつも心に厳しく刻み込まれておるわけでありますが、本法はわが国の森林の六割を占める民有林の今後の管理維持につきまして相当重要な改正内容を持っておるわけでありますが、まず農林水産大臣に、今日の林業、山村の現状をどう認識せられ、これにどのような基本的な考え方で臨まれようとしておるのか、この点を最初にお伺いしておきたいと思います。
  186. 金子岩三

    ○金子国務大臣 森林産業は、御承知のとおりもろもろの悪条件が重なりまして大変危機を迎えておる、このように認識いたしております。外材の輸入あるいは木材の需要の停滞、何を一つとらえましても大変条件が悪いのであります。したがって、今後どう対処して森林を守るか、いわゆる日本の国土を保全するか、また、いわゆる林業でどうして一応一般の農業と同じような所得水準までのものを森林従事者に与えることができるかといったようなことを考えますと、これから取り組む問題は大変難問題でございます。これは省を挙げて、林野庁を挙げてひとつ最善を尽くして、一日も早く林業の安定を期したい、このように考えております。
  187. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 もうすでに十数年にわたりまして、山林、林業をめぐる問題点は林業白書などで指摘をされ続けておるわけでありますが、なかなか改善できない。できないどころではなくて、現実には、たとえば全国の農山漁村の所得を比べてみましても、山村の農家なり林家なりの所得は全国平均から見てもずっと低いし、その格差は急速に広がってきておる。山に働く人々の数は減少をいたし、特に後継者の若者の姿はほとんど山村には見られない。このままいけば林業労働力というものは五十年代の半分に達するだろう、こういうことを林業白書が指摘をしなければいけないという状態になっておることは御承知のとおりであります。  いろいろ施策を積み重ねてまいったけれども、なかなか実効が上がっていない。その原因の一つに、いま農産物の自由化が大きな問題になっておりますが、外村の輸入国内需要の六五%を占めておる、これがやはり大きな圧力になっておる。しかも、国際的にわが国が木材を買っておる割合は、油に次いで単品目では二番目、全体の輸入総額の五%を占めておる。丸太材などについては世界貿易量の約五〇%をわが国が買っておる、こういう実情ですね。やはりここのところに何らかの規制をすべきではないか、こういう意見がございます。国内材はすでに御承知のように木材取引税というものがあって、税金がかかっておる。外材は、一部税金がかかっておりますが、ほとんどかかっていない。こういう状態をこのまま放置しておるところにやはり大きな壁があると私は思います。そういう意味で、この外材輸入につきまして、東南アジア、アメリカ、ソビエトなどが中心でありますが、何らかの政府間の話し合い、あるいは政府自体がこの問題について調整に乗り出すようなお考えはないのか。これは非常に大きな問題でありますので、大臣の方から御意見をお聞きしておきたいと思っておるわけであります。
  188. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えいたします。  現在の木材需要量の約三分の二が外材でございます。したがいまして、当分の間やはりそういう形で外材に依存せざるを得ない状態がございますが、やはり需要に見合った輸入ということがきわめて重要でございます。そこで、政府間ベースにおきましても産地国の政府と対話を通じましてお互いに理解を深め、丸太を含むところの木材の円滑な貿易関係を維持する環境を醸成していくことがきわめて重要であるわけでございます。これまでも、日本とアメリカにつきましては日米の林産物委員会、それから日本とカナダにつきましては日加の経済協力合同委員会の定期会合を通じまして、木材貿易の円滑な維持、さらにはこれを発展させる努力をしているところでございます。また、南方材につきましても、特に非常に多い輸入をしておりますところのインドネシアの関係でございますが、インドネシア政府に対しまして政府間ベースでの対話を提案いたしまして、現在、相手方の出方を見守っておるというのが現状でございます。いずれにいたしましても、円滑な、しかも需要に見合った輸入をしていくためには、政府間ベースでの話し合いに今後さらに積極的に取り組んでいかなければならない、かように考えております。
  189. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 政府間の話し合いはされておるようでありますが、たとえば輸入組合などをつくってここでもう少し国内材との調整をとらしていくとか、最近は御承知のように丸太の輸入から製材、製品輸入に変わってきておる。そうすると、わが国の木材に関連する産業に大きな打撃をいま与えつつある、そういう心配が非常に高まってきておりますね。  こういうことなども含めて、自由化体制という一つの国際的な貿易上の問題はあるわけですけれども、しかしこれは考え方によっては、こんなにたくさん外国から材木をどんどん入れてしまったのでは、国内で幾ら努力をしてもどうにもならぬ大きな圧力だと私は思うのですね。したがって、この点についてはもう少し強腰の取り組みを求めたいと思うわけであります。いままでの程度の話し合いで事が済めば結構ですけれども、そういうことではないのじゃないでしょうかね。
  190. 秋山智英

    ○秋山政府委員 需要に見合った輸入ということはきわめて重要でございまして、これまでもそういうことをめどにいたしまして、先ほど触れましたように産地国との情報の交換、話し合い、さらには相手国の資源造成へ協力するというような形で円滑な輸入需要に見合った輸入を続けてまいっております。さらには、四半期ごとに需要者側と生産者側、さらに関係の学識経験者の皆さんを入れまして短期の見通しを立て、それに見合った形で入れるべく努力をしていますが、さらにそれがシビアな形になるように今後とも続けてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  191. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それで、最近はやはり国内材の価格が非常に安く安定しておるというか、下降の状況からさっぱり上乗せしない、これがまた大きな問題になっておるわけですね。何とか価格、流通の問題で対応はできないのか。今回の法改正では保育と間伐ということでありますが、せっかく森林法を改正して間伐を促進するということになりますと、間伐材についても何らかの価格対策というものを行政的に枠組みができるような政策というか、処置は進められないのか、そういう期待も多いわけでありますが、この点についてはどうでしょう。
  192. 秋山智英

    ○秋山政府委員 間伐を適正に行うということになりますと、いまお話がございましたように間伐材の需要拡大、流通を円滑化するということが必要でございまして、われわれ数年前から特にこの間伐材の加工技術、利用技術あるいは新しい製品を開発するというようなものに取り組んでまいると同時に、昨年からは間伐材の流通をより円滑化するために情報銀行というものをつくりまして、需要に見合った形で流通ができるような体制をとるとか、さらには集成材その他の加工施設をつくるとか、また、間伐材をスムーズに生産するために国産材の産業振興資金制度の中にその促進資金を設けるとかいうようなことで、その対策を練ってまいっております。さらに、五十八年度におきましては、この間伐材の促進資金の枠を拡大するというようなことで需要拡大をさらに進め、また円滑化するというようなことでやっております。  ただ、価格支持となりますと、やはり木材は代替性の物資が大分ございますので、むしろやはり生産地におけるコストダウンに重点を置いた形でやることが現在はきわめて重要であるというふうな認識に立っております。
  193. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私は法案について少し審議を進めたいと思いますが、その前に、この森林法の改正は市町村が森林整備計画を立てるというところが一つの重要な柱でありますが、さらに、分収育林制度というものを新しく契約として設ける、こういうことでありますが、これについては、臨調等の答申もこれありというわけではありませんが、示されておるように、あるいは国有林を初め農林水産省、林野庁のいわゆる予算というか、財政状況の厳しさ、こういうものも加わって政府が林業投資について民間の資本を導入をしてお手伝いをしていただく、こういう視点があるのではないか。つまり、政府が本来やるべき施策を後退せなければいけないという客観情勢の中で、この森林法を改正をして、市町村に責任を持たすというわけではありませんが、市町村に一つの権限を与えて整備計画などをつくらしていく、あるいは民間の資金を活用する、そういうことでこの危機を乗り切るという姿があるのではないか、こういう批判がございます。  私どもは、この際、政府が今日の林業、山村の危機を正確に把握をして、林政の後退がいやしくもあるものでない、そういう性格のものじゃない、こういうことをまずこの法案の審議に当たってはっきりとひとつお約束をしていただきたい、こういうふうに考えておるわけであります。大臣がおればこういう問題は大臣が適当だと思いますが、おられませんので、長官の方から、そういう意見に対して林政の責任者として今後そういうものではない、腰を入れた取り組みの一環としてこの法案を出してきた、こういうことなのか、この点を少しはっきり示していただきたいと思います。
  194. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林、林業をめぐる情勢はきわめて厳しいわけでございまして、私ども、これまでも、この森林の整備、林業振興を図るために、生産基盤の整備を初めといたしまして各般にわたりますところの諸施策を積極的に取り組んできたわけでございます。  今回、市町村長に森林整備計画をつくらせる、あるいは分収育林制度を導入するということでありますけれども、いま国民的にも緑資源の問題についてはきわめて重要認識をされておるわけでございますが、やはりこれからの森林の持っておりますところの公益的機能の充実強化の問題あるいは緑資源の確保の問題に対しましては、国民の理解をいただきながら、国民参加の上に立ちましてこれを進めていくということがきわめて重要でございます。したがいまして、私ども自身は国の森林、林業の政策はさらに拡充強化して積極的に取り組んでいくわけでございますが、これと相まちまして、国民の御理解と協力を得ながらやってまいりたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  195. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いわゆる山の問題を単に農林水産省の枠から国民全体の中に持ち込んで、国民の共感を得ながら、理解を得ながら全体的に日本の森林を守っていく、そういう立場でこの森林法の改正が提案をされておるということ、そのことは同時に林野庁、農林水産省自体が今日の林業問題について重大な責任をひとしお背負って取り組んでいく、こういう意味に理解をしてよろしゅうございますね。
  196. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林、林業の重要性をさらに強く確認して、その施策について積極的に取り組んでいきたい、かように考えております。
  197. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 改正点の諸事項について質問をいたしますが、先ほども申し上げましたように、本法改正の一つの柱は、市町村が森林整備計画を樹立をする、こういうことであります。今日まで森林基本計画については、森林法に基づいて国が立てる森林計画、それから県が立てる地域森林計画、この二つがあって、これに基づいて施業者の施業計画というものがある。そこへ市町村の整備計画というものが今度位置づけられるわけでありますが、この市町村の整備計画は、これまでの国なり県なりの森林基本計画とどういう関連に位置づけられていくのか、市町村整備計画をつくらざるを得ない理由は一体どういうことなのか、この点を最初にお尋ねをしておきます。
  198. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最初に、地域森林計画あるいは森林施業計画と市町村計画との関係を申し上げたいと存じます。  まず、地域森林計画と森林整備計画の関係でございますが、先生いま御指摘のとおり、地域森林計画は、これは森林計画ごとに、その区域内の民有林につきまして伐採、造林というようなものを計画的に進めるための十カ年の計画でございます。それから森林整備計画は、地域の森林計画の対象になっている民有林の中で、間伐あるいは保育を一体的、計画的に進める必要のある森林というのがある程度規模的にまとまりまして集団的に存在します市町村を対象といたしまして、十年を一期とする計画でございます。その内容は、間伐あるいは保育というものを主体とした計画でございますが、当然のことながら、この森林整備計画はやはり地域の森林計画に適合しなければならないこととしております。この森林整備計画が達成されることによりまして、森林の整備がなされ、地域の森林計画の達成に資するということでございますので、いわばこの森林整備計画は地域森林計画を補完するというふうに位置づけていただいてよろしいかと存じます。  また、森林施業計画と森林整備計画の関係でございますが、先生のお話にございましたが、この森林施業計画というのは、森林所有者が自発的にその持っておるところの森林に対しまして伐採あるいは造林というふうな、そういう属地的な側面を持った五カ年間計画でございますので、ここで計画されます間伐とかあるいは保育に関する計画につきましては、当然この森林整備計画に定められました基準に合致するものでなければならぬわけでございます。したがいまして、森林施業計画を認定するに当たりましては、この森林整備計画が立てられておる場合におきましては、その内容に照らしまして十分整合性を確保されていなければならぬというふうに理解してよろしいかと存じます。  それでは、市町村計画を立てる考え方、それは何かということでございますが、先ほどもちょっと触れましたが、戦後営々として植えられました人工林面積が全体で一千万ヘクタールにもなっておるわけであります。そのうちの約半数が十六年生ないし三十五年生の間伐期に到達しておりまして、当面の最大の問題はやはり保育あるいは間伐というふうな管理を適正にしていかなければならぬ、これが急務になっているわけでございますが、最近これがなかなか計画どおり実行し得ないような厳しい状況にございまして、森林所有者個々の自発的な意思だけでは森林整備がなかなか不十分でございます。そこで、そういうことが重なりますと、国土保全その他の森林の持っておりますところの公益的機能を損なうおそれもあるわけでございますので、私どもといたしましては、この地域の現場に一番密接した行政機関としての町村が主体となりましてこの計画をつくっていただきまして、この森林の整備と林業生産活動の活発化のためにこれを進めていきたいというのがこの計画考えた理由でございます。これまでも予算的には市町村を中心といたしまして各種の措置が講じられておりますが、今回は、そういう措置に加えまして、森林計画制度の中にこの市町村の法的位置を明確にいたしまして、さらには、計画制度だけでなく、市町村長に勧告というふうな権限を与えまして、森林の整備を計画的に進めてまいりたいというのが今回の制度改正の考え方の基本でございます。
  199. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 長官ともう少し意見を交わしてみたいと思いますのは、私どもは、この市町村が森林整備計画をつくるということについては、実は非常にいいことだ、こういうように思っております。その基本的な考え方は、今日の森林法の森林計画の大綱というものは、よく言われますが、国がつくり、それに準じて県がつくっていく、こういう形であります。われわれは従来から、やはり下から、市町村から積み上げた計画というものが最も理想的である、またそうあらねばならない、こういう立場をとってきたわけであります。したがって、今回、市町村整備計画というものの中にそういう芽があるのではないか、実はこういう期待を持っておるわけであります。  特に、今日の林業、林政をめぐる非常に厳しい、ある意味では行き詰まったこういう問題を打開するのは、かかって森林所有者なり、最も現場の指導者、労働者あるいは団体、特に中心であります市町村がこの森林の問題に全住民的に目を向けていく、ここにこの法案の森林整備計画の非常に大きな意味があるのじゃないか、こういうように私どもは理解をしておるわけであります。単にこれまでの基本計画の補完である、こういうことになりますと、今日の林政というものは、いろいろ言っても、これは林野庁を中心に予算が組まれ、補助金が組まれ、融資が組まれ、これで金縛りと言ってはいけませんが、一つの骨組みができておる。しかし、それだけでは済まないという森林づくり、山づくり、村づくり、こういうものを目指しておると理解しておるわけでありますが、この点については長官どういうふうにお考えになりますか。
  200. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在の森林法の法体系は、森林資源の維持培養、生産力の増強ということを視点に置きまして、伐採、造林等、あるいは保安林その他の規制ということをしております。そういう体系化の中におきまして私ども従来の政策を進めるに当たりましては、やはり市町村段階で特に現在問題になっておりますところの森林の適正管理というところに焦点を合わせてこの法的措置をとりまして、全体的に全国森林計画、地域森林計画それから市町村の整備計画、さらには森林所有者の森林施業計画という体系化の中で森林の資源を維持培養し、生産力を進めていくという体系化でございますので、私どもはそういう中での位置づけをしているわけでございます。  なお、これを進めるに当たりましては、ただいまもいろいろと振興対策があるわけでございますが、そういうものと十分関連づけながら地域の振興を図っていくという考え方でございます。
  201. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 私が言った、そういう意味の要素というものについてどうお考えになるか。自主的、自発的に下からつくり上げていくという要素については、林野庁としてはどうお考えになっておるのか。この問題をたしかあなたに答申をした民有林法制度問題検討会ですか、この検討結果を見ると、これを見る限りにおいては、私がいま申し上げましたようなものが内容として流されておる、こういうように理解をしてこの法案の審議に臨みたいと思っておるわけでありますが、余りあなたの方からそういう意見はないのだけれども、ただ、国がつくった体系の中で、整備計画で保育管理が非常に大切になったからそれをやっていくんだというような程度のことなのか。もう少し地域全体の皆さんの意見やあるいはその問題点というものを市町村が中心になって明らかにさせていく、そういう要素があってしかるべきじゃないかと言っているんだけれども、余りそういう面での回答はないんだ。
  202. 秋山智英

    ○秋山政府委員 いま制度的な面を重点に申し上げましたが、主な計画事項は確かに間伐あるいは保育でございますが、これは単に保育、間伐に限らず、やはり制度の趣旨に合致する限りにおきましては、森林の整備に関する基本的事項とか、あるいは作業路網その他森林の整備のために必要な施設の整備に関する事項とか、あるいはさらには森林整備に対しまして必要な事項というものは、計画事項の中にこれは十分盛り込み得るわけであります。  また、この制度の運用に当たりましては、地域の林業整備育成対策事業というふうなものに基づくところの林業振興地域の整備計画というものをつくりまして、これに基づきまして、従来からやってまいっておりますところの間伐促進の総合対策とか、あるいは森林総合整備事業とか林業構造改善事業とかいうふうな各種の補助事業あるいは融資制度も活用していくわけでございます。  また、それを進めるに当たりましては、地域の皆さんの意見を聞きながらつくっていくことによって初めて地域の林業振興につながるわけでありますし、森林整備計画も達成できるわけでございますので、そういう考え方で進めてまいりたいと思っております。
  203. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 長官、あなたは、あなたのところから質問をとりに来たから話はしておったけれども、まだ私が言わぬことまでお答えになったんだ、伐採とかいろいろな事業とか。そんなことを言っているんじゃないので、この市町村の森林整備計画というものの法律体系はわかりました。国の森林計画、県の地域計画ですね、その枠組みの法体系はその中の位置づけになりますということはわかりましたが、しかし、あえてそういうものをやるのは、単に技術的に保育や間伐というだけじゃなくて、いわゆる市町村に林政というものの権限をある程度任せていく、そしてその市町村の関係者の意見をよく聞いて、そういう意見に基づいて山づくりというか、森林振興の施策に活力を与える、こういう目標もあるのではないですか、こう尋ねておるわけなんだ。それをただ自主的に皆さんの意見をお聞きしますという一言で処理されていくんだけれども、私は、しかしその程度のものですか、こう念を押しておるのですよ。
  204. 島崎一男

    ○島崎政府委員 いま先生指摘になりました際に、民有林法制度問題検討会の点にも触れられましたので、その際、報告書には直接載っておりませんけれども、論点になりました事項がいま先生御質問の事項に関連すると思いますので、その視点から御説明申し上げます。  今回の計画、制度の位置づけを考えます場合に、現在の全国計画あるいは都道府県の地域森林計画、それをストレートに受けた市町村計画というような議論も実はあったわけでございます。そうしますと、先生がおっしゃいましたように上からの計画というのがはっきり出てまいります。そういう計画にした場合に、上からの計画か下からの計画かという以前に、内容的にまず問題がある。  一つは、御承知のとおり、現在の全国計画なりあるいは地域計画と申しますのは、造林なり伐採等を主体にしましたいわば一つの行為規範、あるいは資源確保という観点から一つの行為規範を与えている。やはり森林法にもその八条で遵守義務が規定されておりますように、行為規範になっておるわけであります。そうしますと、それを市町村におろしてまいりますと、上からの行為規範がずっと市町村までおりますと、どうも市町村の自主性といいますか、それが非常に出しにくい法体系になります。  それからもう一つは、市町村が当面しております実態が、行為規範的なものを求めるというよりも、やはり保育、間伐を適正にするという、そういう実態的な必要性の次元が違うものですから、実態的な必要性と、それから市町村計画の性格論ということで、やはり下からの自主的な性格を持たしたものが適当ではないか、こういう議論がございまして、即してという表現ではなしに、適合するといういわばわきの方からの適合性、こういう位置づけにしたわけでありまして、したがって、市町村計画も上からの機関委任事務ではなしに、団体委任事務、こういう位置づけをいたしたわけでございます。
  205. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 長官、私どもこの法案の審議に当たって、市町村の整備計画を樹立する際にできるだけ地域の関係者の意見を聞く。どういう形でつくっていくのかというその手順、あり方について、場合によればやはり協議会というか、森林組合とか林業グループとか、施業者とか技術者もおるし、森林に働く人々もおる、こういう皆さんなどでそういう協議会のようなものをつくればなおいいんじゃないか、こういう考えを実は持っておるわけであります。  これについては、いま次長が答弁せられたように、森林整備計画は、国の機関委任事務じゃなくて団体委任事務である。団体委任事務というのは、つまりできるだけ市町村の自主性というものを中心に組み立てる、そういう法体系になっているからなじまない、こういう意見を実はこれまでお聞きをしてまいったわけなんですよ。だから、あなたが言うように、国がおろしていくものの中の補完的な位置づけのものであれば、きちんとして、国がつくる森林計画、県がつくる森林計画審議会があるわけですから、そういう審議会をこれはつくったっていいわけですが、どうですか。
  206. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この計画は、先ほどちょっと触れましたが、これはやはり市町村の自主的な、自主性を持たせた形でつくらせるということに意味があるわけでございますので、この制度の運用に当たりましてはやはり実効性を確保することが一番大事でございます。したがいまして、これを樹立するに当たりましては、森林所有者、林業関係者の意見を聞くということは非常に重要でございますので、やはり市町村長の自主的な判断によりまして、地域の事情に即しましてそういう会議を開催するというようなことで意見聴取をするようなことも指導してまいりたい、かように考えております。
  207. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いま長官が御答弁になったようなことで、ぜひ関係市町村の管内の林業のさまざまな関係者の皆さんの意見を十分聞いて整備計画をつくらないと、計画の内容そのものもさることながら、この計画に基づいて進められる諸問題がなかなかスムーズに進め得ない、そういう厚い壁が今日の山村全体にあると思うのですね。ですから、そういう意味でもひとつ衆知を結集するような協議会というか、会議を持って、ぜひこの森林整備計画の中で市町村の生々しい意欲的な山づくりというものが進められる、こういうことをこの機会に強く要望しておきたいと思うわけであります。  そこで、この計画は、先ほどちょっと長官もお答えになっておりますが、保育と間伐というところに焦点を置いておるわけですが、やはり本来の山づくり、地域林業計画というものは、当然造林であるとか、あるいは林道であるとか作業路であるとか、伐採であるとか、労働力をどうするとか、こういうさまざまな全体の総合的なものでないと完全にこの目的を達することはできないと思うのですね。そういう意味では、保育と間伐に問題をしぼっておるが、いまもおっしゃられたように、さまざまな林業諸政策というものがあるわけでありまして、こういう政策と整備計画とがどういうふうに結びついていくのか、整備計画というものが優先をしてそういう補助金なり融資というものと結び合わされていくのか、こういう点についてはどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
  208. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今度のこの森林整備計画につきましては、主たる計画事項は間伐、保育でございますけれども、これに必ずしも限定せずに、必要な事項については、その趣旨に合致する限り、この「森林の整備に関する基本的事項」とか、先生指摘の作業路も「その他森林の整備のために必要な施設」というふうな事項に盛り込むとか、そういうふうなことで全体的にこの森林整備がなし得るようなことは盛り込んでいくという考え方でございます。  また、この制度を運用するに当たりましては、当然のことながら各種の施策をうまくこれに活用しなければならぬわけでございまして、まずこの森林整備市町村におきましては、できるだけ地域林業整備育成対策事業、これはことしから新たにつくったものでございますが、これを活用しまして、この森林整備計画の対象市町村においてはこの事業に基づいて林業振興の地域整備計画をつくらせまして、これをもとにしまして間伐あるいは林構その他の各種の施策をうまくかみ合わせながら生かしていくという形をとりたいと思っております。
  209. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 この整備計画を進めていく中心は、やはり一つは市町村だと私は思います。この市町村の林政担当の機能というものが十分であるとは言えない。したがって、こういう整備計画の樹立などを通して林政というものについて市町村が責任を持つ、こういうことになるのも結構なことだと思いますが、これについてはやはり何か手助けになるものが要るわけでありますので、たとえば計画樹立についての予算などがあるのか、市町村に林政の機能を強化をさせていくために林野庁はどういう考えでこれに臨んでいくのか。  それから二番目は、やはり山村では森林組合というものがこの問題について大きな役割りを果たしておると思うのですが、この森林組合も山村の状況の中で必ずしも十分な機能を発揮しておるとは言えないところもあります。こういう森林組合を強化をしていくために具体的にどういう考えで臨まれるのか。  この二つをまずお尋ねをしておきたいと思うのです。
  210. 秋山智英

    ○秋山政府委員 市町村の計画樹立に当たりまして助成がどうなっておるかということでございますが、私どもこの計画の樹立に当たりましては、先ほどもちょっと触れましたけれども、地域林業の育成のために市町村が主体となりまして行う地域林業整備育成対策事業をうまく活用しまして、これをつくっていきたいということでございます。  それから、この計画が実効ある成果を上げるためには、先生指摘のとおり森林組合が大きな役割りを果たすわけでございます。地域の林業の担い手と申しますと、これはやはり中核的存在は森林組合でございますので、それの育成強化ということは私どもの政策上きわめて重要でございまして、これまでも林業構造改善事業とかあるいは森林組合の育成のための助成事業、さらにはこの作業班の育成とか税制措置とか、いろいろ講じまして、やはり担い手であるところの森林組合を強くし、それによってこの森林整備計画がより実効あらしめるように進めてまいりたい、かように考えております。
  211. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いままでいろいろたくさんやっていらっしゃるわけですね。造林についても林道についても、いま言われた林業振興育成対策事業、森林総合整備事業あるいは新林業構造改善事業、いろいろなものがたくさんあるわけです。そのほかにもまだ小さなものはたくさんあります。そういうさまざまな補助制度なり融資制度というものが、この森林法の改正に伴う市町村の森林整備計画樹立の中でどういうふうに生かされていくのか、その裏打ちがないと、私はこの実効性というものが心配になるわけですね。  そういう点については、単に林業振興育成の助成事業だけで処理するということでは不十分だと思うのですが、そういう全体の補助金、融資というものの流れが市町村の整備計画といったようなものと結合をして優先的に進められていく、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  212. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生指摘のとおり、この計画と各種の助成施策がうまくかみ合うことによりまして、初めてこの実効性が確保できるわけでございます。したがいまして、先ほど触れましたような形で計画をつくり、関連する諸施策をかみ合わせながら総合的に優先採択をしながら進めてまいるということで実効を上げたい、かように考えております。
  213. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 地域の林業に活力というか活性を与えるというものは、やはりとどのつまり人間の問題になると思うので、市町村に林業、林政といったようなものについて意欲を持ち、しかも経験を持ち、わが町の山をどうするか、こういうことについて一定の見識と実践的な経験を持つ人をたくさんつくっていくということなどが、私は当面やはり大切になってくると思うのです。森林組合などにおいてもそうでありますし、同時に、いま森林についての林業者の意欲が非常に喪失をしておるというところに林業の大きな危機があると思うわけであります。そういう意味で、結局、林業に携わる人々の問題も大きな問題だと思うのです。  私どももいろいろな調査をやっておりますが、林業白書を見ても、昭和五十年代から昭和六十五年には林業の雇用労働力はちょうど半分の八万人程度になるのじゃなかろうか。五十年代が多分十五、六万人の雇用労働力があったと思うのですが、これがこのままの形でいくと八万人程度になるのじゃなかろうか、こういうふうに記述をされております。しかも、五十歳以上の人々が大半になっていくという状況が今日の山村のいわゆる林業に託す人々の姿であります。こういう労働力の問題について、今回の整備計画の中で、地域の労働力をどういうふうに山に配置をしていくかという計画もあってしかるべきだと思いますが、その辺はこの整備計画の中ではどういうふうに取り扱われていくのでしょうか。
  214. 秋山智英

    ○秋山政府委員 地域の林業の担い手の計画をどうするかという問題になりますと、これは森林整備計画自身は主として間伐、保育というふうなことが中心になっております。やはり伐採、造林という側面が非常に大きな労働力を必要とする分野でございますので、むしろこれはさっき申しましたところの林業地域の振興整備育成対策事業の一環としてまず考えなければならぬ側面もあると思います。しかしながら、その地域によりましては間伐が中心というところがありますと、それはこの整備計画の中でその他必要な事項というところがございますので、そこで地域の実情によりましては盛り込んでいくことも十分可能であろうと考えております。
  215. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 その他のところで盛り込んでいくのも可能だということでありますが、現実に市町村に、森林の整備計画について自主的に計画を立てましょうということで皆さんがお寄りになっていろいろ話しますと、恐らくその問題が相当大きな問題になってくると思うんですよ。林政などに非常に意欲的な町村長さんなんかと話してみましても、自分の町にこれだけの労働力があるんだ、それが出稼ぎで家族を置いて出ていかなければいけないのだ、これを山に何とか使えないかということは、問題としてはまず最初に来るんですよ。  ですから、この法律で林野庁の指導の中で示されておるのは保育、間伐が中心で、その他のいろいろな施策がこれに組み合わされていくということでありますけれども、しかし、下からの盛り上がっていく計画の中には、いま申し上げました、そこに住む人をどうしていくか、そこで食べられる雇用をどうつくっていくか、これは市町村長の最大の課題になっていくと思います。関係者も、そういう問題は大きいわけでありますので、余りその他のその他ぐらいでこの問題を考えるのではなくて、いずれ相当大きなウエートを持たせてこの整備計画の中でも取り扱わせていくように指導をしていただきたい、こういうふうに考えるわけでありますが、重ねて長官の御意見をお聞きしておきたいと思うのです。
  216. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業全体といたしまして年間雇用を安定的にするということはきわめて重要でございます。したがいまして、各町村で現在もつくられておりますこの林業地域振興対策事業の中ではそれも入っております。特に、伐採と造林に相当ウエートがかかってまいりませんと雇用計画ができませんし、また、特用林産の生産との絡みもございますので、この整備計画の中ですべてを賄い得るというところは非常に少ないのではなかろうかと思いますが、先生の御指摘もございますので、その他の事項等で、今度は具体的な事項を検討する場合においては検討してまいりたいと思っております。
  217. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 それから、民間の林業に働く人々の問題であります。  これは先般来も関係者が関係担当部署にそれぞれ御要請をせられて、私も立会をいたしまして、腕組みをして黙って聞いておったわけですが、しかし、私には非常に重く印象づけられました。孫請というか、またその孫請というか、小さな請負企業体の中で働いて、賃金も十分ではない。特に山林に働く人々は、雨が降り雪が降れば働けなくなるわけでありますし、ほとんどが請負企業の中で働いておるわけでありますから、稼働日数は全国平均でも六〇%程度しか働けない、こういうことのようであります。  労働災害なども労働省の統計を見ても全産業の中で圧倒的に、この山林労働者の労働災害というのは飛び抜けて多い。全産業平均の六倍以上に達しておる。つまり、保安というか、安全という問題が非常に抜けておる。これは抜けざるを得ないような企業なり、あるいはそこに働く労働者の環境がそういう状態にさせておるということだと思うんですね。  白ろう病の問題がこの数年来やかましく言われております。私は、いまここに山形県庄内の白ろう病の追跡調査、これは出先の県の機関がやっておるわけですが、その調査表を持っておりますが、この調査を見ても、出てきておるのはほんの氷山の一角である。ほとんど三分の二程度は、みずからが白ろう病であると知りながらやはり働いて、チェーンソーを持っておる、持たざるを得ない、こういう状況にあるわけですね。こういう民有林に働く労働者の賃金なり労働条件なり、あるいは法律で決められたいろいろな社会保険制度、こういうものの加入も、これは数字は一々申し上げませんが、大変低い。これをこのまま放置しておったのでは労働力が決定的に不足をして、いやおうなしに山に手入れができなくなる、こう私は思うわけでありますが、この労働力の確保と労働条件の近代化のためにどういう指導をしていらっしゃるか、今後どういう対応をしようとしていらっしゃるのか、この機会にお尋ねをしておきたいと思うのです。
  218. 秋山智英

    ○秋山政府委員 これからの林業経営をしていく上に当たりまして、従事される方々の就労条件を改善するということはきわめて重要でございまして、私どもはこれまでの造林事業、林道事業、林業構造改善事業というふうな各種の振興施策を通じまして、就労の場としましての林業の振興を図るということがきわめて重要であるということで対処してきたわけでございますが、さらに林業労務改善促進事業によりまして、いま先生の御指摘の雇用関係の近代化、就労の安定化、長期化の問題、さらには社会保険制度への加入、退職金の共済制度への加入というようなことを努力してまいったわけであります。  それから、労働災害の未然防止の問題はきわめて重要でございまして、これまでもこの労働災害防止計画の策定に対するところの助成をするとか、さらには作業現場への安全点検パトロールをするための助成をするとか、さらに現在特に大きな課題になっておりますところの振動障害に対しましては特殊健康診断の受診の促進、それからチェーンソーにつきましても振動の少ない低振動の機械の開発、あるいはチェーンソーの操作時間の規制の徹底というふうなことをやってまいっております。  さらに五十八年度からは、振動障害で軽快になられた方が自主的に就業基盤の開発をするための、意欲的にそういうものに取り組むような振動障害対策強化推進事業というものを予定しておりますが、今後とも林業労働力の対策につきましてはきわめて重要な問題でございますので、一層積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  219. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 いろいろやられておることはよくわかるのですけれども、どうも通り一遍の対応にとどまっておるのではなかろうか。白ろう病など七千幾らかの認定者がおられますが、あれを府県別にずっと見てみると、ほとんど北海道、埼玉、京都、大阪、奈良、和歌山、高知、この辺でもう全体の七〇%ぐらいを占めておるのですね。山林従事労働者の数から見ますと、府県別のアンバランスが物すごく高いわけですね。これはやはりそれぞれの地域で自主的に白ろう病なりチェーンソーの問題について関心を持った人々の告発というか、動きの中でこういう問題が表へ出てきておるので、じっとそのまま放置しておるところが圧倒的に多いわけですね。ですから、いろいろなことをせられているけれども、どうも効果が十分出てきていない。余りにも民間、国有林も含めてでありますけれども、特に民有林に働く人々の諸条件というのは厳しい。私どもは、この際何らかの特別な対応策を考えなければいけないということで、党としてもこれらについては立法化の準備をいま進めておるところでありますが、この民有林の整備について大きく目を向けていく、こういう機会に一層これらの問題について指導を強化していただきたい、こういうふうに考えております。  時間がだんだんなくなって、予定をしておった質問事項が十分にこなせませんが、幾つかなおお尋ねをいたします。  市町村がこの計画に基づいて進める場合に、なかなか市町村の考えどおりにいかないものに対して勧告をする、あるいは知事が調停をする、こういう制度が新しく出てきておりますが、これは勧告、知事調停ということで実際効果があるのか。もう少し強い何か規制が必要ではないか、こういう意見もありますので、この点についてお考えをお聞かせいただきたい。あるいは県の森林計画ですね、この森林計画に基づく知事の施業勧告というものもあります。この知事の施業勧告と市町村整備計画に基づく市町村長の勧告というものは重なるのじゃないか、こういう心配もあるわけでありますが、これらをどういうように調整をしていくのか、この点をお尋ねをしておきたいと思うのです。
  220. 秋山智英

    ○秋山政府委員 市町村長の勧告そのものは強制力はございませんが、やはり地域におきまして中立公正の立場の指導者としましての市町村長がいま先生の御指摘ございました一連の措置を適時適切に講ずることによりまして、勧告が有効に機能するということを期待しているわけでございまして、また特に、これは助成措置とも十分かみ合わせながらやるということでその有効性が確保できるのではないかと思っています。  それから二点目の、知事の勧告との競合の問題でございますが、先生指摘森林法第十条の五の知事によりますところの施業勧告というのは、御承知のとおり、地域森林計画を立てまして、その達成を図るために主伐とかあるいは植栽というものを中心に行われるわけでございます。そこで、今回の森林整備計画におきましては、市町村長は間伐あるいは保育に対しまして勧告を行うということでございますので、基本的には競合はしないと考えております。  ただ、森林整備市町村が勧告を行う場合には、その後に都道府県知事の調停という問題が可能性があるわけでございますので、その勧告に当たりましては、知事と十分連携をとりながら進めてまいるということが必要かと考えております。
  221. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 分収育林契約について数点お伺いをいたします。  考え方は、これは都会などから森林の管理に必要なお金を出資していただく、それに基づく持ち分が決められていく、こういうことのようですが、森林でありますから、大変長い期間にわたってその成果が実るわけでありますので、こういうこの契約に参加する人々の権利をどういうふうに守っていくかということがやはり大きな問題だろうと思うのです。したがって、分収育林契約の持ち分と分収割合について、立木の評価であるとかあるいは育林費用の算定であるとか、あるいは伐採をした収益の配分をめぐってあらかじめ一定の基準が設定をせられて、これらの人々の納得を得なければいけないと思うのですが、こういう問題についてはどういうふうに取り進めていこうとせられておるのか、お示しをいただきたいと思うのです。
  222. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず第一点の、分収育林制度におきますところの参加者の権利の保護の問題でございますが、この分収育林契約は、樹木の共有を基礎としておるところの契約でございます。したがいまして、費用を負担した方々の権利は所有権といたしまして強く保護されているわけでございますし、また、共有いたしました樹木につきましては、民法二百五十六条の分割請求権の規定の適用排除をされておりますので、そういう面におきまして期間中の樹木の所有権の分割というのは、当事者同士で同意がなければできないわけでございます。  それから、この分収林契約ですが、今回は募集するわけでございますので、多くの方々が、一般の方々がその対象となるわけでございますので、募集に際しましては、一定の事項を都道府県知事に届け出をさせまして十分行政指導をし、また、変更する場合には変更させるというような、そういう勧告もするというようなことで進めてまいると同時に、勧告に従わない場合には公表の措置をとっていくということで、この参加者の権利の保護については十分配慮をしてまいりたいと考えております。  それから収益の分収の基準の問題でございますが、これは本来的にはと申しますか、基本的には当事者間で決めるべきものでございますが、私どもといたしましては、算定につきましての基本的な考え方については十分指導していくこととしております。  その考え方につきまして申し上げますと、まず一般的には植栽から契約時までの費用の問題、それから契約時から主伐時に至るまでの費用、こういうもので通算いたしまして、この土地所有者が地代の見積もり額を負担し、管理にかかる経費は育林者が負担し、それから植えつけあるいは保育に要する経費というのは、これは費用負担者が負担するというようなことで、それぞれの契約当事者が負担すべき額を、比率を出しまして、現地の実態に十分配慮しながら決めていくというような方法をとらせまして万全を期したい、かように考えております。
  223. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 恐らくこれは、分収育林の費用は契約の際に一括支払われるわけでありますから、それを相当長い、十年なり十五年なりかかって使っていくわけでありますから、そういう使い方についてもあらかじめ公的に一定の基準というか指導がないと、入ったものが全部何かほかのところにということも考えられないこともないわけで、そういう面についての方針をきちんと立てていただかねばならないと思います。同時に、これは山のことでありますから、たとえば火事が起きたり、自然災害というのはしばしば起きるわけでありますが、こういう災害の被害についてはどういうふうにこの権利者は考えたらいいのか。契約の中にこういう問題についての理解がなされるのか。  それから、この収益に対して分配がなされるわけでありますが、この場合に税金ですね、課税であります。山林は五分五乗方式で課税されているわけでありますが、この分収育林の収益についての課税については、関係者がそのことでまた大変な税金を取られるということではこれはなかなか始まらないと思うのですが、そういう点はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  224. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず第一点の、育林費用を一括払いするわけでございますけれども、その場合に、適切な育林の費用が現地において投下されるかどうかという問題でございますが、これは非常に大事なことでございまして、私ども、募集をするに当たりましては、まず契約に基づく育林の内容等については一定の事項を知事に届け出をさせる、また、契約の当事者でございますところの育林を行う者に対しましては、届け出事項に従って育林を行う義務を課しておるわけでございまして、もしこれが遵守されない場合におきましては、知事が勧告を行うというようなことで適正な育林を実行させるように考えております。  それから被害等の関係でございますが、契約条項が幾つかございますが、その中に災害、山火事あるいは風水害等の対応がございます。これについては当然保険等に加入をさせるように、契約条項に盛り込んで考えておるわけでございます。  それから山林所得に対する五分五乗の適用の問題でございますが、この分収育林にかかりますところの収益につきましても同様の取り扱いがなされるものと考えておりますけれども、この取り扱いにつきましては、今後税務当局と協議をしていくつもりでございます。  なお、この育林分収を進めるに当たりまして、五十一年から特定の分収計画というものの収益につきましてはやはり山林所得として取り扱われることになっておりますので、これらの前例を踏まえまして、今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。
  225. 田中恒利

    ○田中(恒)委員 時間が参りましたので、一つだけ質問をし、御意見をお聞きし、私の要望を最後に締めくくっておきたいと思います。  御質問は、市町村の森林整備計画に基づく今後の山づくりの中で、分収育林の契約制度ができて民間資本が山に入っていくということは結構なことでありますが、同時に、市町村に地域林業振興についての基金制度のようなものをつくって、これは国なり県なり、あるいは関係団体を含め、あるいは森林の川下、川上という関係地域を含んで、こういう全体的な基金制度の中で地域の林業を振興させるために必要な施策のお手伝いをしていく、こういうものも今日の情勢の中では必要ではないかと私は考えておるわけでありますが、これについての御意見をあわせてお聞かせいただきたい。  同時に、これで終わるわけでありますが、私は少し時間をとって市町村の森林整備計画の性格について長官と意見の交換をいたしましたが、これはやはりできるだけ市町村の関係者の意見を聞く、こういう姿勢が基本になって組み立てられてもらいたい。そのために必要な諸会議を開いていただいて、わが村の、わが町の山をどうするかということについての議論をさせ、そこから引き出される問題点で整備計画がつくられていく、こういう方向の山づくりの出発点にこの森林法の改正を仕上げていただきたい、このことを特に強く申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  226. 秋山智英

    ○秋山政府委員 一般的に申しまして、地域の森林基金制度というのはやはり大事だと私は思っています。先生のおっしゃっています地域の森林基金制度というのと私ども考えているのとあるいは中身が一致しないかもしれませんが、今後の森林づくりというのは国民挙げて実施することが必要でございますし、今回の法案の森林整備法人におきましても、分収造林方式におきましても国民参加のもとで森林を整備するという考え方でございますので、私は大事な考え方だと思います。  そこで、私どもも五十八年度から予算措置といたしまして、都市住民の理解と協力のもとに緑の資源の確保のために実施する事業等を総合的に行えるような、そういう意味での森林基金の設置を今後とも検討して進めてまいろうというようなことで、現在、その内容について検討しておるところでございます。
  227. 山崎平八郎

    山崎委員長 竹内猛君。
  228. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案に関連して、いまの田中委員に引き続いて質問をしていきますが、その前に、この法案とは直接関係がありませんが、きょうのあるいはゆうべのテレビ等を見ると、アメリカが大幅な減反をしたということですね。小麦にしてもあるいはコウリャンにしてもトウモロコシにしても、大幅に減反をしたということです。こうなると、この影響というのが大量の輸入をしている日本の農業に及んでくることは必然であります。こういうような問題をどのように受けとめておるかということについてまずお答えをいただいてから、法案の質問に入ります。
  229. 佐野宏哉

    ○佐野(宏)政府委員 お答えいたします。  三月二十二日に米国農務省が発表いたしました一九八三クロップイヤーについての減反計画の参加状況によりますと、減反の申し込み面積が八千二百三十万エーカー。基準面積が二億三千万エーカーでございますから、それに対する比率としては約三六%ということになります。これを作物別に見ますと、トウモロコシ、ソルガムが三九%、米の場合はかなり高くて四三%ということになっております。これはいずれもアメリカの政府自体が予測しておりました参加の面積をかなり上回っていると言われております。  それで、これに伴いましてもちろん穀物の市況には引き締め的な影響があるものと考えられますが、これは今後の農家の減反計画の実施状況なり作況あるいは他の穀物輸出国の反応などもございますので、どの程度のものであるかということは、いまにわかに確たることを申し上げにくいのでございます。一方、現にアメリカでは大変な過剰在庫を持っておるわけでありまして、したがいまして、こういう大幅な減反計画にもかかわらず、これによってわが国の飼料穀物の輸入に量的な意味で支障が生ずることは万々あるまいと考えております。  ちなみに、このような大幅な減反面積が確保できました最大の要因としては、何と申しましても現物支給の減反奨励金、ペイメント・イン・カインドと言っておりますが、それが効き目があったものと思われます。これによりますると、減反に伴う作付減少に相当する分だけがまさに現物支給の補助金として市場にアベイラブルになるわけでございまして、そういう意味でもわが国の輸入に量的な意味で支障を生ずることはないというふうには申し上げられると思っております。
  230. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 支障がなければそれで結構なわけですけれども、日本がアメリカに飼料を依存しているということがこれから非常に危険になってくるのではないかということをまず最初に質問をしておきまして、きょうはその議論が中心じゃありませんから、本論に入っていきます。  先ほど田中委員からも質問がありましたが、戦後三十八年たちまして、この段階で山林面積の約七割を占めている民有林に関して今度の新たな法案が出てくるという今日的な課題、これは本来的に何をねらってこういう法案をいま出してきたのか、こういうことについて説明をしてもらいたいと思います。
  231. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在、森林、林業をめぐる情勢は非常に厳しいわけでございまして、戦後ございました人工林の間伐をしなければならぬ、整備をしなければならぬ面積がきわめて多いわけでございますが、非常に停滞ぎみでございます。そこで、私どもといたしましては、林業生産活動を活発化しまして林業振興を図っていくためには、まず地域が一緒になりまして森林の整備をしていくということが現在喫緊事になっておるわけでございます。そこで、私ども森林の整備を進めるに当たりましては、行政の一番先端にございます市町村の役割りというものを明確化いたしまして、これまでにも予算的には市町村を中心として各種の林業施策がございますが、このたびは制度的に、法律的に市町村の役割りを明確化いたしまして、その指導のもとに地域の実情に即した森林整備を進めていくということが一つのねらいでございます。  もう一つは、緑資源の確保の問題が国民的課題となり、要請も非常に高まっておりますが、やはり国民の理解だけでなく協力と参加のもとに森林整備を進めるということがこれからの政策を進める上におきましてきわめて重要でございますので、そういう観点から分収育林制度というものを制度化しまして、地域の林業振興にこれも寄与してまいりたい、かような考え方に立ちまして制度を打ち出した次第でございます。
  232. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、この法案の内容を見て、これは必ずしも当たっておるかどうかわかりませんが、いまの情勢からすると、昭和の初めごろ、昭和七、八年ごろの農村経済更生運動のときにやはり同じような発想をしているのですね。五年ごとに区切って、そして、あの当時は一万二千ほど市町村がありましたが、一カ年間に一千町村に関して計画を立てさせて、これに助成をして村づくりをする、こういうことをやって、その負担はかなり農民負担をして、結果は余り農村がよくならなかったという経過がある。  したがって、今度は市町村を単位にすることは結構だけれども、そのことによって市町村にどういうメリットがもたらされるのか。農村経済更生運動のような政治運動に堕してしまって、そして地域は、言葉は悪いけれども、親分とそれに関連をする建設業者なり何なりがいいあんばいになる、こういうことのないようにしていかなければいけないということで、この運動にどういうようなメリットをねらっているかということについて、これはどうですか。
  233. 秋山智英

    ○秋山政府委員 計画をつくりました以上は、それを的確に実行いたしまして、地域林業の振興にこれが寄与しなければならぬわけでございます。先ほど申し上げましたような厳しい条件下でございますので、私ども、市町村の指導のもとに地域ぐるみで森林整備を行い得る体制をつくり、それによりまして林業振興、山村の活性化を図ってまいろう、こういう考え方でございます。  したがいまして、この制度を運用するに当たりましては、各種の林業施策をこの計画と関連づけまして、予算措置は優先採択しながら、両々相まちまして林業の振興、山村の活性化に寄与してまいりたい。決して計画倒れに終わらぬことがきわめて重要でございますので、実施の運用面につきましてはそういう配慮をしてまいりたいと考えております。
  234. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 さきに林業基本法というのがありますけれども、その林業基本法と今度の法律の関係、これはどういうふうな関係の位置づけをされているか。その林業基本法というのも非常に抽象的でして、いつ見ても言うところがさっぱりわからないような状態になっているが、それでも一定の目標は与えられているわけですけれども、それとこの関係はどういうふうに結びつけられているのか。その点について。
  235. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業基本法につきましては、いま先生指摘のとおり宣言的な法律でございまして、しかしながら、方向といたしましては、林業の発展と林業従事者の地位の向上を図りまして、あわせて森林資源の確保と国土保全のために林業に関する政策目標を明確にする。また、各種の事業も進めまして基本的施策の方向づけをするというようなことでございます。  今度私ども考えておりますこの法の改正でございますが、先ほど触れましたように、大変厳しい環境の中で森林が適正な状態になされてないという面が大きゅうございますので、それを是正し、適正に間伐、保育ができるように持っていくというために、市町村の役割りとかあるいは分収造林によるところの造林、育林の促進を図ろうというようなことでございまして、私どももこの基本的方向におきましては、林業基本法の示されている林業の発展、森林資源の確保という面と同じであるというふうに理解しております。
  236. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど林業政策の基本について答弁があったのですが、今度初めて国有林も含めた官公民の、二千五百万ヘクタールぐらいの大きなものが対象になった日本の林業政策が立てられるわけでありますから、これについて国の方針、それから先ほど来いろいろ議論がありましたように需給関係、そして現地労働力の問題、こういうものを含めて林業に対する基本的な考え方といいますか、これをもう一度明らかにしてもらいたいと思います。
  237. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもの林業政策の基本につきましては、林業を振興し、森林の持っている各種機能を最高度に発揮し、それによりまして木材生産機能を初めといたしまして国土保全、水資源涵養その他の各種公益的機能を調和的に発揮すると同時に、それを担う林業従事者あるいは山村の振興を図るというところに私どもの基本的な視点がございます。その中で特に今回検討いたしました森林整備計画等の問題は、現在の林業政策を進める上におきまして一番重点になると同時に、早急に実施していかなければならぬという側面でございますので、特にそこに焦点をしぼった形で制度改正をしたわけでございます。
  238. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、先ほどの質疑にもありましたように、手順としてはどういうような順序でどういう団体に地域、市町村へ参加を求めて、どのような体制計画をつくるのかという、計画づくりの関係はどうなりますか。  私ども考えるのは、まず林業の諸団体、それから山林の所有者あるいは自然保護団体、学者あるいは技術者、こういうような人々が参加をして、それで地域の林業振興に対する意見を聞きながら案を立てていくというような方針で、その地域の自主性あるいは主体性、創意性というものが十分に盛り込められなければ意味がない、こういうふうに思っているのですけれども、この点はどの程度考えられているか。
  239. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この整備計画を策定するに当たりましては、先生も御指摘ございましたが、市町村の自主性を十分生かすような形で進めてまいるわけでございます。したがいまして、この策定に当たりましては、実効性を確保するための措置といたしまして、森林所有者、林業関係者等の意見を聞くというのは望ましいわけでございます。これは、町村長が配慮することになると思いますが、地域の実情に応じましての会議の開催等も行いながら関係者の意見を聞き、その前提でこの計画をつくっていただくように指導してまいりたい、このように考えております。
  240. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その市町村が中心になるときは、指導の主体はどこが担当されるのか。市町村長がやるのか、それとも市町村長が選んだところの協議会なり審議会なりというものをつくって、それが中心になっていろいろな諮問答申をするのか、その辺のつくり方については内容はどうされるか。
  241. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林整備計画の樹立に当たりましては、市町村が主体となりましてこれはつくるわけでございます。したがいまして、策定するに当たりましては、先ほど触れましたように林業者あるいは森林組合、農業協同組合あるいは農林業関係の団体の代表者とか林業改良指導員という方々で構成するところの会議と申しますか、協議会をつくらせまして意見を聞くようなことをこれから指導していったらどうかということで、目下研究中でございます。
  242. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 三千以上もある市町村で、広範な地域を持っているわけでありますから、そういうところで計画を立てる場合に、自主性を尊重してそれぞれが自分の地域の特徴を出しながら、それを今度は県なり国なりが一つの方向でまとめるとするならば、この法律ではないけれども、法律の中にそういう協議会をつくるなり何なりということが明確にされた方がいいんじゃないですか。
  243. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林整備計画そのものは、本来的には間伐、保育というふうな森林整備について森林所有者が本来やるべきものを行政的に指導し、促進を図っていこうということでございますので、法律に基づきまして意見を聞くということは私は妥当ではないという考え方を持っております。  仮にこの会議を開催するに当たりまして関係者の意見を聞くということを義務づける場合におきましては、その対象を特定する必要があるわけでございますが、その意見を聞くべき者の範囲等はやはり地域によって大分違うわけでございますので、これを法律で一律に規定することは困難でございます。また、仮に意見を聞く対象者を森林所有者等に限定するにいたしましても、複雑な相続関係とかあるいは権利関係を追跡して森林所有者を確定するというのは事実上困難でございますし、不在村の人たちを含む所有者の意見を聞くというのは、実際的には市町村に過大な負担を強いることに相なるわけでございますので、私どもとしてはむしろ運用面で、先ほど触れましたような協議会でやることが望ましいと考えております。  なお、意見を聞くということでございますれば、これは森林法第七条を準用しまして計画を樹立後に意見を申し立てることができるわけでございますので、そういう方法をとらせたい、かように考えているところでございます。この整備計画そのものは、御承知のとおり団体委任事務でございますので、それも含めまして、運用面でむしろ市町村の自主的な考え方を生かすというところで進める方がよりよいという判断でこの制度をつくっております。
  244. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうすると、通達か何かで指導するという形になりますね。
  245. 秋山智英

    ○秋山政府委員 通達で指導してまいりたいと考えております。
  246. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 法律を直すということになると大変手続がむずかしいわけですけれども、通達で指導するとすれば、通達で指導すべき見込みというものはどういうものとどういうような問題がそこで盛り込まれると予測されるか。大体わかるでしょう。
  247. 秋山智英

    ○秋山政府委員 通達の内容については目下検討中でございますが、この森林整備計画の中身と申しますと、森林整備計画に対する基本的な事項もございますし、それから具体的に間伐、保育を実施する基準対象地域もございます。また、路網の問題もございますし、森林整備を進めるに当たりましての施設、さらにはその他この目的達成のために必要な事項等が多々ございますので、そういうものを含めまして意見を聞き得るような体制をつくってまいりたいと考えております。
  248. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 長官に要望しますけれども、次の審議のころまでには見込みみたいなものをひとつ委員会に出してもらって、こういうことをやっていくのだというくらいの親切さがあってよろしいと思いますね。ぜひ出してください。いいですか。
  249. 秋山智英

    ○秋山政府委員 通達案ができましたら御説明いたします。
  250. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その次に、この法律独自が持っている財政的な予算はどれくらいなものであり、なお、これが成立した場合に今度は関連をする横の方からもいろいろな意味の援助、補助等々があると思いますけれども、これによってどれくらいの予算が動くのかということについて、見通しはどうですか。
  251. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この計画を策定いたしましてその実効性を確保するに当たりましては、やはりこれにかみ合わせた形で諸施策が有効、適切にアレンジされなければならぬわけでございます。  そこで、まず森林整備計画をつくるに当たりましては、対象の市町村に対しまして地域林業整備育成対策事業というものをうまく活用いたしまして、その中でこの整備計画等も十分検討し、つくらせることをするわけでございます。同時に、この林業振興地域の整備計画について、森林の整備はもちろんでありますけれども、そのほかに具体的に間伐促進の総合対策あるいは森林総合整備事業、林業構造改善事業というような各種の助成措置をうまくかみ合わせながら進めてまいるわけでございますので、これによりましてどのくらいの資金が動員できるかというのは、いまここでにわかにお答えできませんが、現在ございますような、いま申しました諸施策をできるだけ優先的にこの計画の実施に活用してまいりたい、かように考えております。
  252. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 計算をすればわからないはずはないと思うから、次の段階までにはわかるようにしておいてもらいたい。  次いで、目的の中に間伐と保育のことは詳しく書いてある、それが中心だと言われているけれども、間伐と保育というものだけではどうしても全体の山には手がつかないわけなんです。林業に関しては、まず苗床から、それを植林をして、それから間伐をして、大きくなったら切って、搬出をして市場へ出していくという順序ですね。その間にはいろいろなことがありますけれどもね。  そこで問題は、運搬ですね。持ち出し、搬路、道路の問題等については余り強く触れてない。この林業基本法の中には二十七万四千キロというものがあって、十九万一千キロの林道をまだつくらなければならないと書いてありますね。あるのですよ。そのように林道は大変大事なものであるわけですが、この中では余り中心になっていない。なぜ林道の問題については触れないのか。
  253. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林整備計画につきましては、地域の森林計画の対象とする森林の中で当面早急に計画的に一体的に間伐、保育をしなければならない市町村を対象としてつくるわけでございます。したがいまして、この計画の中に盛られております事項は作業路網その他の森林の整備のために必要な施設の整備に関するものでございまして、これはあくまでも対象地域に毛細管のように作業路網をつくり、それによって適切な間伐、保育ができるようなたてまえになっておるわけでございます。  なお、いま先生指摘の林道につきましては、地域の森林計画におきまして決めるわけでございますので、森林整備計画の方はそのまた毛細管的な作業路網ということで調整をとっているわけでございます。
  254. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私のところの茨城県は、御承知のとおり数年前から松くい虫に大変やられたのです。その松くい虫にやられたところでも、松くい虫は伐倒処理はできる。それに対しては補助金も出ているから木を切ることはできますが、搬出をする道と搬出に対する措置がないために、依然としてそのまま残っている状態です。だから、間伐をする場合にも、間伐をしたら運び出す道路は絶対に必要だ。これがなかったら間伐がうまくできませんね。だから、運搬道路については不可欠の問題として何としても考えてもらわなければどうにもならない。長官、これはどうですか。
  255. 秋山智英

    ○秋山政府委員 松くい虫の防除につきましてはいろいろな防除方式を取り入れているわけでございまして、昨年御審議いただきまして成立を見ました特別措置法によりまして新たに導入されました特別伐倒駆除につきましては、伐倒、破砕、焼却というふうなことをするわけでございますので、被害木の運搬に必要な経費もこの中に含めましてやっておるわけでございますが、一般の、ただ被害木を伐倒しそこで薬剤散布をするとか皮はぎもするというようなものにつきましては、防除の上では運搬の必要がございませんので、実は補助の対象にはしておらぬわけでございます。ただ、被害木の利用ということが重要でございますし、その材をチップ化するためにも運搬するための施設が必要でございますが、これにつきましては林業改善資金の中に無利子の融資制度がございまして、これによりまして被害木の搬出等に使うような措置をとっているわけでございます。  いずれにいたしましても、林道問題につきましては、森林を整備し、伐採、搬出するために重要でございますので、林道網の開設に当たりましても、これからは十分配慮しながらしていかなければならぬと思っております。
  256. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その問題はどうしても配慮してもらわなければならないと思います。  続いて、平地林との関連で乱開発の問題について。  これはぜひ希望しておきたいことですが、これも茨城県の問題で恐縮ですけれども、平地林というものは最近は非常に開発されております。あるいはかつてゴルフ場がたくさんできたときがあります。そのために、集中豪雨が降ると土砂が流出する、家屋も水田も流れてしまう、毎年そういう事故が起こっていますね。去年も筑波の山に集中豪雨があったときに、逆川という川がはんらんして二十数町歩が流れてしまった。こういうように、本来の山林が持っている機能に対して乱開発をしているために災害が起こるという実情があります。これを防止するためには山林の持つ一定の防災的機能が生きるようにしていかなければならないということが第一点。  第二点の問題は、これは現在調査をしてもらっているわけですが、やはり筑波町で、前に鏡泊学園というものが来て入り会いの山を借りようとした、そして一定の約束をしたような形になっていますが、今度はこれに対して町と山を管理している特定の人々が組合の意思を無視して何かの取引をしようとしている傾向がある。こういうように、中央でどれだけ努力をしても末端の方においては乱開発が行われたり、森林組合なり入り会いの組合が特定のものに活用されたりしたのでは住民はたまったものではない。その管理をどのように指導するのかという点は、最終的には林野庁の責任だと思う。  後の方はいま調査中ですからいいですが、前の方、乱開発をどう防止するか、この点についてはどうですか。
  257. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林の持っております公益的な機能を確保するという側面から、御承知のとおり森林法の中に、保安林制度ともう一つ普通林地におきましても林地開発許可制度というのがあるわけでございます。保安林の場合には、保安林内の開発行為につきましては、公益上の理由がありやむを得ない場合以外は解除をしないわけですし、また、その場合におきましても防災施設を設置するというふうな一定条件、基準を備えて初めてこれを認めるというような措置をとっているわけでございます。それから、保安林以外の森林におきましても、林地の開発許可制度というのがございまして、これに基づきまして現在一ヘクタールを超える土石または樹根の採掘、開墾等開発行為を行う場合には都道府県知事の許可を必要とすることになっておりまして、その場合におきましても、現に森林の持っております災害防止、水源涵養、環境保全機能という側面から見て支障を及ぼすおそれのない場合に限ってするというふうなことで規制をしておるわけでございます。特に茨城県の場合には平地林が多うございますので、この開発の問題については私ども今後もさらに厳正な運用をいたしまして災害の防止を図っていかなければならぬと思っております。  なお、さっきお話のございました入り会い山の乱開発の問題につきましては、現在調査中でございますので、その結果を待ちたいと思います。
  258. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 山を育てるには労働力、人手がなくてはならないということは、たとえば最近の日本経済新聞が論説でかなり主張しているし、それから国民会議の方からもそういう声が出ている。ただ木が立っているだけではなかなか山というものは育たない。やはり人手が必要だ。財政状態からいけば大変金がかかってくるだろう、こう思いますけれども、その人手をどうして確保するのかという問題は、先ほどの田中委員の質問の中にもあったけれども、林野庁は、山林労働者というものについてどれくらいいま現在確保しているのか、どれくらいあると思っているのか、どのような形で山林労働者を見ているのか。その辺はどうですか。
  259. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在林業に従事する数につきましては、四十年代後半から二十万人程度で横ばいで推移してきておりまして、五十六年現在でも約十九万人というふうに理解しています。  ただ、林業労働の場合には、経営規模の零細性、分散性あるいは非常に季節性という問題がございますし、また、農業と兼業でしている方やあるいはいわゆる一人親方というふうな人たちもおるわけでございまして、これらの人たちが全国の広大な山林地域に分散しているというような特徴を持っておるわけでございますが、私どもとしましては、やはりその定住条件を整備して魅力ある林業にしていくことが大事であろうということで、いろいろな施策を進めておるところであります。
  260. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 十九万ないし二十万と言われる林業労働者が常時この労働を行使しているのか、それとも臨時的なものであるのか。その性格はどうですか。
  261. 秋山智英

    ○秋山政府委員 この十九万人につきましては、比較的専業に近い方が多うございますが、この内容を見てまいりますと、自主営業が一六、家族従事が五、雇用者が七五というふうな比率になっております。
  262. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、山を大事にするということは山で働こうとする人間が大事にされなければいけないと思っている。そういう立場からすると、やはり山林で働く労働者の皆さんを大切にしていく。先ほど田中委員が言ったように、病気あるいは災害、こういう問題についても、病院には遠い、金はかかる、交通は不便だ、こういうような隘路を克服をしていくための努力というものが山村振興としては必要ではないか。ただもうけるだけの一点張りでやっていくと山はつぶれてしまうだろうと思う。そういう点で、山に対する福祉施設なり、そういう愛情のある山づくりというものは考えられていないのかどうか。これはどうですか。
  263. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず第一に、魅力ある林業と申しますか、やはり雇用が安定し、生産基盤が整備されるということが大事でございますし、定住条件が整備されなければならぬわけでございますので、そういう面から見てまいりますと、まず林業生産基盤の整備を初めとしますところの各種林業施策をさらに積極的に進めながら、安定した形で仕事に従事できるという体制をつくることがきわめて重要であると考えています。
  264. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはぜひ山に働く人々が安心して働けるようにしてもらいたいと思いますが、私はここでもう一点だけ主張しておきたいことは、農業と林業と畜産業ですか、こういう一貫した経営体制というものができないかどうかという問題は大事なことだろうと思うのですね。国有林、公有林、民有林等々に関して、所有権というものはもちろんそれぞれが持っていたとしても、利用権というものを活用して、そして山村におけるところの農業がやはり近代的になっていく、そのために国も努力をする、こういうことがますますこれから必要になってくるんじゃないかと思うのですが、これについては大臣の方からひとつお答えをいただきたいと思うのですがね。
  265. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生承知のとおり、農山村におきますところの就業の安定を図るということでいきますと、林業、農業、畜産業の有機的連携を図っていくことがきわめて重要であると思います。  そこで、私ども、現在、林産集落振興対策事業とか、あるいは林業構造改善事業によりまして林業と農業を組み合わせましたところの就労安定対策を推進しておるわけでございますが、各地におきまして、若干例を申しますと、林産集落振興対策におきましては、農業とキリの林の造成とをかみ合わせるとか、あるいはナメコ生産施設をかみ合わせるとか、さらには、お茶その他とかみ合わせるとかというようなこともございますし、また、新林構におきましては、淡水養魚施設と連携をとるとか、あるいは昆虫、小動物等のそういう繁殖施設ともうまくかみ合わせながら就労安定のためのいろいろの施策が全国各地でやられていますが、こういうことによりまして定住条件を整備することが林業の振興にもつながるわけでございますので、さらに一層農林複合経営の方に力を注いでまいりたいと思っております。
  266. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 所有権とそれから利用権の問題に関しての取り扱いについて先ほどいろいろお話がありましたが、現在、在村地主あるいは不在村地主、また外国へ行っている人もいますが、こういう形態があるわけです。今度の分収の方法によると、勧告をする、あるいはいろいろな形での指導をしていくわけですけれども、かなり私有財産のところに食い込んでいるような感じがしますが、どうしても応じなかったような場合に最終的にはどういう形でこれを分収していくのか、利用し活用していくのか。その点は最終的な処置としてはどうされるか、一番最後の段階では。
  267. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず、森林整備計画に基づきまして、間伐あるいは保育のおくれている特定の林分につきましては、その実施につきまして勧告をし、さらに、それができない場合におきましては、造林公社あるいは森林組合等に委託をするような方法でできないかというようなこともあっせんし、さらにまた、それができない場合には立木あるいは土地の所有権の移転を含めた形でのあっせんというようなことも進めてまいることも考えているわけでございます。しかし、私ども、やはり本来は森林所有者みずからやることが望ましいわけでございますので、現在の各種の助成制度をうまく活用しながら進めてまいるわけでございますが、でき得べくんば計画に基づいた実施ができるような、そういう体制をまずとることに最重点を置き、森林の適正管理をしているわけでございます。不在村地主等におきまして森林施業計画をつくっている方々は大体それに基づいてやられるわけでございますが、つくられていない方がやはりこの対象になるわけでございますが、いま申しましたような制度を適切に運用しながら進めてまいりたいと思っております。
  268. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 先ほど田中委員の質問の中で、分収の問題についての基準をつくるという話がありましたが、これはやはり次の審議の日までには基準ぐらいなものは出してもらえないかどうか。出せますか。
  269. 秋山智英

    ○秋山政府委員 いま検討中でございますので、できるだけ早く案をつくってと思っております。
  270. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは、審議がしやすいようにするためにはできるだけ出してもらった方がいいですね。運用の中身と分収の基準ですね。相対だというようなことでは、これは余りにも抽象的でよろしくない。こういう場合はこうだこうだというぐらいのことは出したって別に差し支えないだろうと思いますから、これは委員長の方からもひとつよろしく。  次に、この森林組合には労務班というのがあって、それぞれ雇用契約を結んで働いておりますけれども、森林公社とか林業公社とかというのがありますね。あれは一体今後育成をしていくつもりなのか、それとも好ましくないからあの辺でよろしいと思っているのか。これはどうですか。
  271. 秋山智英

    ○秋山政府委員 御指摘の林業公社あるいは造林公社でございますが、これは現在三十二県にあるわけでございます。これは、みずから造林ができない方あるいは委託によって造林の行いがたい地域、これは主として拡大造林でございますが、この拡大造林を分収方式によりまして計画的に、集団的に推進するということで設立されて現在に至っておるわけでございますが、現在の民有林の拡大造林面積が減少する中にありまして、年間平均的に一万七千ないし一万八千ヘクタールの造林を安定的にしているわけでございまして、わが国の造林に果たしている役割りというのは非常に大きいというふうに私は理解しております。  この造林公社の造林の計画的な実施によりまして、雇用機会の少ない農山村地域の安定的な雇用の場という面でも大きな役割りを果たしているわけでございまして、私どもは今後この分収林業を進めていくに当たりましても、森林整備法人といたしまして分収造林に加えまして分収育林をする担い手としましてこれを評価していきたい、かように考えておるところであります。
  272. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 長官は評価をすると言っているけれども、世の中には評価をしない人もいるのです。つまり、労務班のようにみずから汗を流して林業の仕事をしないでいるということでは、本当の森林を育成する気持ちになれないだろう。やはり公社の人々も労働者と一緒になって汗を流してやってくれるような、そういう公社でなければ魂が入らないということを注意をする人がおりますから、これについては十分に耳を傾けてもらいたいと思うのです。それは県や町や村が経済事業をやることはできませんから、特殊法人としてやられることについて文句を言うものではないけれども、そのあり方については十分にひとつ注意をしてほしいということだけは申し上げておきたいと思います。  次いで、林業の改良普及員の問題については、いろいろ問題がありますから、これは松沢委員の方から主としてこの問題を中心に質疑をしますので、私は自治省に対して一言だけ質問をしておきます。  定率制から定額制に変わったというときに、大変心配なのは、今後物価が変動したりあるいはいろいろな事情があった場合に、定額であればその定額の範囲内でしか処理できない。定率であればそれにスライドできるわけですから、臨時行政調査会からのいろいろな意見もあったりしてそれを反映してのことかもしれませんが、ともかくこれは不安でたまらないということでありますね。だから、どういう経過でこの問題がここに出てきたのか、これは林野庁との間の話し合いもあるでしょうから、その点について自治省から一点だけ聞いておきたいということ。  それから、国から出ていった金が他に流用されては非常に困るわけであって、やはり林業の改善あるいは指導等以外に使われないようにするためにどういう措置がとられているのか。  この二点についてだけお伺いします。あとは松沢さんの方から質問がありますから。
  273. 前川尚美

    前川説明員 林業改良普及員にかかわる交付金化の御質問でございますけれども、いま御質問の中にもございましたように、国庫補助金の整理合理化、特に地方団体の自主性の強化あるいは行財政の簡素効率化という見地から、臨調の答申にも述べられておることでございますが、今回林業改良普及員につきまして交付金化がとられましたのも、いわゆる人件費補助に対する改善措置ということでございまして、改良普及職員にかかわる人件費補助と改良普及事業にかかわる事業費補助を包括的にとらえまして、これを交付金とするということでございます。私どもといたしましては、この措置によりまして地方団体がよりその団体の実情に適した事業を今後自主的な判断のもとに取り組んでいける一つの基盤ができたということで、そういう意味一つの前進であろうかと考えておるわけでございます。  この交付金の他事業への流用等につきましては、適化法の関連もございますし、その歯どめ措置につきましては、私どもよりはむしろ所管省であります林野庁の方にお尋ねいただくのがより適当ではないかと存じます。
  274. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 その点については林野庁の方から伺うことにして、私はいいですよ。それは後で松沢委員の方からそこだけ中心に質疑がありますから、私はこれを飛び越して次の問題に移ります。  最近、緑の効用と花という問題で総理大臣がばかに宣伝をしていますね。それで休日をつくろうなんという話になっているのだけれども、そんなことをするよりも、山の中で苦労をしている山村で働く労働者あるいは農村の方々にもっと温かい手を伸べる方が先なんですよ。そして、山に木を植えて、労働力を与えて賃金を保障して、おやじさんが出稼ぎをしなくても済むようなことをしないとだめだ。だから、緑をつくるということを口先で言うのじゃなくて、本当に緑をつくるためにやってもらいたいと思う。これはぜひ大臣から、緑の問題についてはそのように総理大臣に伝えてもらいたいということが第一点。  それから第二点の問題は、私はこの前の森林の法律のときにも農業協同組合法を議論するときにも議論したのですけれども、文部省の教育の中に自然というものがだんだん消されてきた。山や農村や海、こういう大自然がだんだん消されてきて小さく取り扱うようになってきた。小学校の本からも中学の教科書からもだんだんそのスペースが減ってきているということが特に最近あらわになってきております。こういうことでは、自然から人間を離してしまうということであれば、やはりすさんでくるのですよ。暴力だって起こる。憲法が悪いんじゃないんだ。人間を自然から離してしまう。山からも海からもどこからも離してしまって、そしてその殺伐とした中で競争させれば当然人間はおかしくなってしまう。こういうことのないようにするためには、もっと教育の過程から、山とか海とか農業とかというものが、人間が汗を流して働くことによって物が生産できるんだ、この喜びを常に与えていく。自然の空気が非常にいい。山に登ったときには非常に気持ちがいい。それから春秋のあの緑、もみじ、これもなかなかよろしい。こういうことを教育の中に入れるようにしていかなければ、いい教育とは言えないのじゃないかと思うのです。この点についてどうですか、長官、最近そういう感じがしませんか。
  275. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近は、緑の問題につきましては国民的要請になっておるわけでございます。したがいまして、やはり実際に自分で緑を植え、育て、森にするということを通じて自然、緑に対するありがたさをわからせるということはきわめて重要なことでございます。  私どもも、小学校の学習指導要領が改定されまして、林業がなくなったことはそういう面で非常に残念でございまして、機会あるごとに文部省に対しまして学習指導要領における林業関係の記述の復活につきましての申し入れを行うと同時に、私ども自身ではまた、小学校に対しまして「森と木の質問箱」というふうな補助教材を配付して御理解いただくようなことをしております。文部省におきましても、林野庁の申し入れを受けまして、学習指導要領を補説しましたところの小学校指導書社会編の手直しなどをされております。私どもは、今後の緑問題はきわめて重要でございますので、さらにこの問題につきましては御理解いただくように、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  276. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最後に、この全体の質疑の中から最終的に金子大臣の御決意をひとつ伺いたい。
  277. 金子岩三

    ○金子国務大臣 大変貴重な御指摘をいろいろいただきました。最後の、森林を守ること、緑を守ることがいわゆる青少年教育にどれほど大きな影響を持っておるかということもよく肝に銘じております。今後、実効が上がるような施策をひとつ一段と強めていきたいと思います。
  278. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 じゃ、これで終わります。
  279. 山崎平八郎

    山崎委員長 松沢俊昭君。
  280. 松沢俊昭

    ○松沢委員 時間がありませんので、簡単に御質問申し上げたいと思います。  私の知っているところの有名な小説家が隣の中国へ参りまして、そして帰ってきて私に感想を漏らしておりましたけれども、中国の山というのは坊主山である。考えてみると、中国の山は昔から坊主山であったのではないだろう。やはりあそこには緑があったはずだ。それが鉄の文化、鉄をつくるという文化が発達すると、木炭が必要だということで、一かたまりの鉄をつくるのに一山の木を切って、そして木炭にして鉄の生産をやった。だから文化は非常に栄えたけれども、日本と貿易をやるころになったらついにその鉄さえつくることのできないような状態に入った。それで、いま中華人民共和国というのはその先人の過ちというのを改め、そして後始末をやっているような、そういう国なのではないかという感想を漏らしておりました。いまの日本の科学技術、工業はうんと盛んになりましたが、それに反比例いたしまして山村というのは大分さびれてきておるわけなんでありまして、やはりいま私がその小説家から聞きましたところの中国の感想と同じような結果に日本もなる可能性があるのではないか、こんなぐあいに実は心配しているわけなんであります。  ところが、第二次臨時行政調査会が発足いたしまして、いろいろな注文をつけております。しかし、考えてみますと、臨時行政調査会なんというのは何も国権の最高機関ではないわけなんでありまして、最高機関というのは、この国会が最高機関ということになるわけであります。そうして、要するにその最高機関から選ばれて金子農林大臣は大臣をやっておられるわけなんでありますが、臨時行政調査会だって山の問題とか緑の問題は素人の人がたくさんおられるんじゃないですか。その人たちが行政改革だ、財政再建だと言って大事な山の手入れをするための金を削るというようなことがあった場合においては、担当の大臣としては開き直って物を言わなければならぬと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  281. 金子岩三

    ○金子国務大臣 臨調の答申については、農政に矛盾する点もいろいろあります。大体最後の答申が出るまでに農水省は全力を挙げて臨調に説明をして、そして最後のあの答申になっておるようであります。  これから、この答申を尊重しながら、農政を推進していく上については実態に合わない臨調の御意見もありますので、ひとついま松沢先生が申されておる矛盾のはなはだしいような点は、私どもの方で合理的に農政の展開のためにこれを当てはめていきたい、このように考えております。
  282. 松沢俊昭

    ○松沢委員 ぜひそういうふうにしてやってもらいたいと思います。  そこで、私は林業普及指導事業ですか、これを中心にして御質問を申し上げたいと思います。  まず第一番目に、林業の普及指導事業の助成制度ですね。いままでは定率であったのが今度定額の補助に変わるわけなんでありますが、その変わるところの理由は何でしょうか。
  283. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業をめぐる情勢きわめて厳しい中におきまして、林業の普及指導活動というのが重要になってきているわけでございます。その中で私どももいろいろの情勢に対応するために、普及指導事業につきましては制度的に安定を図るということと都道府県の自主性の発揮を促進する、さらには林業をめぐる諸情勢の変化に応じまして事業を効率的、弾力的に運営するという考え方から、従来の人件費、物件費、事業費等につきまして個別経費の積み上げによるところの定率補助方式を改めまして、林業普及指導職員の設置あるいは普及指導の運営の基礎的経費につきましては定額の交付金方式に変えたところでございます。
  284. 松沢俊昭

    ○松沢委員 何か林野庁の長官のお話を聞きますと、地方の自主性といいますか、そういうものを尊重して弾力的に仕事ができるようにするんだ、大変理想的なようなことを言っておられますけれども、これは本心ですかね。そうでなしに、私冒頭に申し上げましたように臨調の方でいろんなことを言っているわけで、仕方なしにこういうふうにしておやりになるのじゃないですか。どうですか。
  285. 秋山智英

    ○秋山政府委員 臨調の基本答申におきまして、人件費補助は原則として一般財源措置に移行する旨の答申が出たことは事実でございます。私どももいろいろ諸般の情勢を勘案して、今後安定的にするためにはこの交付金方式のほうがよりよいという観点に立ちましてここのところを変えた次第でございます。
  286. 松沢俊昭

    ○松沢委員 この交付金は、いままでは人件費に対しましては二分の一の補助ということになっておりましたね。そうすると、あとの二分の一というのは県の方で負担をする。言ってみまするならば、農業改良普及事業ですね、これもやはり定率でありまして、そしてその補助の裏づけとして県の方で金を出す。だから、あれは協同事業という名前になっておりますね。これもやはり同じような仕組みになっておったんじゃないですか。
  287. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業関係の普及指導につきましては森林法体系下の中にありまして、森林の資源の維持培養、森林生産力の増強に係る諸施策を進めるに当たりましての技術指導その他の指導を行うために設けられておるわけでございます。性格的にはやはり共同的に実施するという側面がございますが、制度的には、いま申し上げましたような形で森林法の中で規定づけされておるわけでございます。
  288. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それで、いままでは地方財政法の第十条で処理されておったのが、今度は第十六条に変わるということになりますね。そうなりますと、第十条の場合においては、これは県の方で裏づけをやらなければならぬことになっておるわけですが、今度第十六条になりますと、そういう義務的なものというのはなくなるんじゃないでしょうか。どうですか。
  289. 秋山智英

    ○秋山政府委員 交付金方式になりますと、都道府県の負担割合が定められているという意味では、これは義務づけがなくなります。しかしながら、私ども、この実施主体が都道府県であることは従前と変わりはございませんし、事業実施の経費の相当部分は本来事業実施主体が負うべきものでありますし、この普及指導職員の設置義務は従来どおりでございますし、また、この事業量を決めるに当たりましては、この交付金を交付する場合におきまして十分相談の上決めていく、こういう考え方で対処したいと思っておりますので、都道府県におきましても、従来どおり相当の経費の負担がなされるものと考えておるわけでございます。
  290. 松沢俊昭

    ○松沢委員 自治省からおいでになっておられると思いますが、ちょっと聞きますけれども、いままで第十条の規定によってこの仕事が行われてまいったのですが、今度は十六条になるということになりますと、いま長官が言われましたように、十条が十六条に変わったとしても、これは県の仕事であるのだからその点は心配がないんじゃないか、こういうお答えのようであります。  いままでそれじゃ県の持ち出すところの財源というのは一体何であったのかということをちょっと聞きましたところが、地方交付税の要素の中にこの部分というのも入っておったんだということを聞いておりますが、そうであるとするならば、今後の地方交付税の要素の中にいままでどおりにこの普及事業の要素というのも加えて、そして交付される、こういうことになるのかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  291. 前川尚美

    前川説明員 交付税との関係のお尋ねでございますけれども、今回林業改良普及員等に係ります補助を交付金化するに当たりまして、交付税等でそれをどう対応するかという点につきまして、林野庁の方ともいろいろ相談をさせていただきまして、おっしゃいますとおり、十条の負担金から十六条の補助金という性格に衣がえするわけでございますから、テクニカルな修正はともかくといたしまして、実態的には従来と同様、各府県においてその事業が実施できるように対応をしていきたいというふうに考えております。
  292. 松沢俊昭

    ○松沢委員 そうすると、私がいま質問申し上げました交付税の中に含まれるというふうに理解して差し支えないですね。
  293. 前川尚美

    前川説明員 交付金相当分のほかに、各府県が負担といいますか、この改良普及事業に充てるべきものとされる分が含まれるということでございます。
  294. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それで、この普及事業というのが、歴史的な経過をずっと調べさせてもらいましたけれども、非常に長いところのいきさつがございまして、この間この事業の果たしてまいりましたところの役割りは非常に大きかったと思います。また、成果も相当大きく上げているということが言えると思うわけなんであります。  しかし、いま自治省の方からも従前と同じような方式で交付税というものを考えていく、こういうお話でございますけれども、ただ、定率が定額になるということになりますと、これから人件費の値上がりだとかあるいはまた物価の値上がりだとか、そういう問題が起きてまいりましたときに、定額の場合におきましては引き上げるというのが非常にむずかしいという問題も起きてくるんじゃないかと思うのです。そういう場合、出してやっても、要するにそれに裏づけするところの金がないというような場合におきましては、そのほかいろんな仕事があるわけですね。たとえば普及指導だとかあるいはまた森の整備事業だとか林業の後継者育成事業だとか、いろんなものをやっていかれるわけなんでありますから、いままではそういうものを積み重ねて、そして予算というものを要求されて確保してこられたと思いますけれども、今度は、要するに簡単に申し上げますと、わしづかみにしてくれるという形をとりますから、この部分が幾らでこの部分が幾らだということははっきりはしていないということになります。したがって、県の方で持ち出しをしたくないということになりますと、人件費部分というものにその他の事業というのが食い込んでくるということになりますと、この普及指導職員の数の問題が減ってくる可能性というのが出てくるのじゃないか、こういう心配があるわけなんでありまするが、そういうことは絶対ないんだという確約というのができるのでしょうか。     〔委員長退席、亀井(善)委員長代理着席〕  それからもう一つ、いま、自治省と林野庁の方でもいままでの間においていろいろ詰めてこられたということでありますが、そういう人的な確保をしていくための話し合いも当然行われたと思いますけれども、そういうのはやはり文書なり何かでちゃんと残っているのかどうか、その点をお伺いしたいと思うのです。
  295. 秋山智英

    ○秋山政府委員 このたびの林業普及指導事業の交付金につきましては定額化したものでございまして、安定的に取り扱われるという制度でもございまして、物価変動に応じて当然的に改善するべきものではございませんが、私ども、この物価あるいは給与等の変動によりまして林業普及指導事業が円滑に実施されるように、損なわれないように、予算折衝で適切に対処してまいりたい、かように考えておるところでございます。  そこで、これからの普及指導事業を進めるに当たりましては、先生も御指摘ございましたが、やはりすぐれた普及指導職員の確保並びにそれが適正に配置されるということが大前提でございまして、そういうことがこれからの事業ではきわめて重要でございます。そこで、設置そのものにはあらかじめ特定されないことになりますけれども、この職員の配置の指針などを示しまして、この確保と適正に配置されるというふうなことをこれからは十分配慮してまいりたいと考えております。したがいまして、そういう中におきまして運営方針等を決めながら配置のあり方などを決めてまいりたいと思っております。  それから、最後にお話のございました自治省との関係でございますが、この林業普及指導事業に係る従来の都道府県の負担分に相当する財源を基準財政需要額に算定することにつきましては、自治省と口頭了解をいたしております。
  296. 松沢俊昭

    ○松沢委員 口頭了解というのは、この前、おととしでしたか、行革の特別委員会が臨時国会でございまして、そのときいろいろと年金の問題なんか等におきましても将来にわたっての支障があってはならぬということで、関係省庁間におきまして文書などの取り交わしをやりながら保証していくという約束事をやって、それを国会でちゃんと御答弁を願うというようなことで、将来にわたって心配のない担保をとりながら進んでまいりました。  今回は、私冒頭に申し上げましたように、やはり山の問題ということになりますと、林野庁長官以下一生懸命やっておられることはわかりますけれども、なかなか打った手がすぐあらわれるような効果のある仕事でもありませんので、目盛りも一年、二年の目盛りでありませんで五十年、百年の目盛りではかっていかなければならないという仕事でありますから、すぐ効果があらわれてこないものでありますから、軽く考えられる節があると私は思うのです。特にこういう財政再建をやらなければならないという時期におきましては、つぎ込むだけであってメリットはないじゃないか、こういうことになりますと、その辺は抑えていった方がいいのじゃないか、こういうことからして、冒頭申し上げましたように定率が定額になってきているのじゃないか。だから、これは長官の本心ではないのであって、上の方からわあわあ言われるのでやむを得ずこういうふうにして存続せざるを得なかった、こういうやむを得ないところの面というものがむしろ強いのじゃないかと思うのです。  それだけに、口頭なんということで約束しておったところで、その口頭が人がかわれば終わってしまいますから、やはり何かきちんとした書類の取り交わし等をやってもらって、今後人がかわってもその点については心配がないのだという担保の取りつけというのが必要なのじゃないか、こう思っておりますが、どうでしょうか。
  297. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生からの御質問をいただきまして議事録にもはっきり明記されたようでありますし、役所間で合意を取りつけておるわけでございますので、私ども自治省と打ち合わせをしながらこれが維持されるように努力してまいりたいと思っております。
  298. 松沢俊昭

    ○松沢委員 それから、定額になったとしても、物価、賃金が上がっていくということになれば、やはりそれに見合うところの修正といいますか、補正といいますか、そういうことは考えていかなければならぬと思いますが、どういうような時期にそういうような修正だとか補正だとかいうのをなされようとしておりますか。その点、ひとつお伺いしたいと思うのです。
  299. 秋山智英

    ○秋山政府委員 普及指導事業が円滑に実施できないような情勢が来た場合には、それを確保すべく予算措置で対処してまいりたいと思っております。
  300. 松沢俊昭

    ○松沢委員 円滑な事業ができないなんということになったら、これは大変なことになりますけれども、やはり一つ水準と申しますか、何かそういう一定の基準というのがなかったら、いや、まだ円滑にいっています、まだ円滑にいっていますというのでは、いつになっても切りのない話なんであります。たとえば五年刻みだとか三年刻みごとに検討してみて、そしてそこで大分物価、賃金の面が変動しているというような場合においては補正をやっていくとか修正をやっていくとか、何か一つの基準がないと、ただ円滑を欠く場合においてはと言っても、円滑に事業が行われないということになったら大変なことですから、その辺、何かあるのじゃないですか。どうですか。
  301. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業の普及指導の問題につきましては、間伐等を適正に実施する問題だとか、あるいは松くい虫の防除の問題であるとか、複層林をつくっていくための指導だとか、たくさん課題がございます。したがいまして、私ども、これが円滑に実施できませんと山村地域の振興、林業振興に大きな影響を及ぼしますので、物価、賃金等が大幅に変動するというようなときにつきましては、予算的に対処すべく努力してまいりたいと思っております。
  302. 松沢俊昭

    ○松沢委員 もう時間が参りましたので終わりますが、とにかくいままで果たしてまいりましたところの役割りも大きかったし、また、大きな成果も実は上げてきておりますので、この普及事業、指導事業、これが先細りにならぬように、林野庁の方から十分配慮して進んでもらいたい。また、大臣の方でも、冒頭大臣の方からもお話がございましたように、臨調が言っていることが決して天の声であり神の声ではないわけなんでありまして、一番農林行政に責任を持つのは農林水産大臣なんでありますから、その点、開き直るところは開き直って、山の手入れに支障のないようにがんばってもらいたいということを要望申し上げまして、質問を終わります。
  303. 亀井善之

    ○亀井(善)委員長代理 次に、武田一夫君。
  304. 武田一夫

    ○武田委員 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御質問いたします。  農林業、これはわれわれの生活にとりましては非常に大事な分野でございまして、食糧生産という部門に携わる農業と、そしてもう一つ、最近とみに緑ということの関心度合いが高まってきておりますが、水資源の涵養とかあるいはまた保健休養とかあるいは大気浄化など、特に山の持つ役割りが非常に大きい。自然環境の保全推進という機能を今後重要視しながら、そこに成長していく森林の活用というものをわれわれの生活の中に十分に取り入れていかなければならないと思っております。そういう意味で、今回の改正はいわゆる開かれた森林づくりだということでマスコミ等も注目をしておりますし、国民も関心を持って見ている問題でございます。  昔の人は非常にいいことを言ったと思うのです。一年の計は麦を植えるにあり、十年の計は木を植えるにあり、百年の計は人を植えるにありと言った人がいる。いろいろ苦労があって麦をつくり、あるいは木を植え育て、人をつくる、これはやはり国を繁栄させる一つの基本だと私は思うのであります。  そういう意味で、この際、まず大臣に、日本の森林資源、山を守るという非常に重大な問題に対してどのように取り組んでいくかという決意と御所見を聞かせていただきたいなと私は思っているわけでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  305. 金子岩三

    ○金子国務大臣 森林産業、林業は大変困難な時代に遭遇いたしております。ここで、国土保全、水資源の涵養、いろいろな面から考えまして、緑を守ることも、ただ損得だけの経済の問題とは違って、私どもの国土を守ることでございますので、目先の欲に走らぬで恒久的な対策を立てまして、日本の森林産業がより以上にひとつ活力を持って今後発展するように、いろいろな新しい政策も取り入れて積極的に推進をいたしたい、このように考えております。
  306. 武田一夫

    ○武田委員 昔から海の幸、山の幸という言葉もございますし、われわれの生活の中における幸せといいますか、その一つの大きな要素を備えているものではなかろうかと思うだけに、この際、やはり農業以上の重要な問題として林野庁も積極的に取り組んでいってほしい、こういうふうにお願いをする次第であります。  そこで、この法案が出てきた背景をいろいろと考えてみますと、林業生産活動が停滞しまして間伐、保育が適切に行われない森林が増加してきたのだということを言っておるわけでありますが、その原因はどこにあったのか、その点について。
  307. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先生指摘のとおり、戦後営々として植えました人工造林地が全体で一千万ヘクタールにも及び、非常に基盤そのものが、素地はできたわけでございますが、ようやく保育、間伐に至る時期にこれが適切に行われないというのは、二十一世紀に向けましての森林資源の造成にきわめて憂慮しておるところでございます。  いま先生お話で触れましたが、最近、木材需要の停滞の問題、それに伴いまして山村地域での林業生産が経費の増高等もありましてなかなか思うように進まぬということでございます。さらに、この全般的な情勢がそうでございますけれども、具体的にどういう問題があるかということを若干見てまいりますと、まず、林道等の基盤整備が不十分であるということでございます。第二点は、間伐と申しますものは抜き木でございますために、経費が割り高になるというようなこと。それから、切られる木が小径木でございますので需要分野が限定されている。鋭意その需要拡大に努力していますが、限定されているということ。それから、間伐材の流通加工体制の整備がやはりおくれているというようなこと。それから、戦後初めて造林したというような方々がわりあい多うございますので、間伐等に対する知識が乏しいというようなことがやはりおくれている原因だというふうに分析いたしております。
  308. 武田一夫

    ○武田委員 いまいろいろと理由を述べられましたが、それじゃ、この改正によってこうした問題が解決していって、将来、この目的とするような方向へ行くものかどうか、その見通しはどういうふうにお考えですか。
  309. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今度の制度で特に私どもがねらっておりますのは、近年、町村を中心としました林業施策はいろいろと展開されてまいってきまして、それなりの成果が上がっておるわけでございますが、制度的に町村を明確に定めまして推進するという体制がなかったわけでございます。今回、地域における森林の整備目標が明確になりまして、市町村を中心としまして地域ぐるみで林業生産活動、森林整備の活動ができる体制ができますと、この関連予算を有効に活用しまして生産活動をより一層活発化したいと私ども考えておるわけでございます。  それからもう一点、緑の資源の問題につきましては、一般には重要性は理解されておりますが、森林をつくるという側面での理解が不十分でございますので、森林、林業に対しますところの、国民の御理解はもちろんでありますが、その協力体制をとっていただきまして、分収造林方式、分収育林方式で造林または育林をするということを進めてまいりますと、より一層森林の整備に対しての国民的な体制づくりができるのではないかということで期待をしているところであります。
  310. 武田一夫

    ○武田委員 いまいろいろと話があったのですが、間伐の問題は後でいろいろと議論したいと思うので、次に、今回の改正で、保育、間伐を適正に推進するために市町村長の権限、役割りを明確にしまして、市町村の自主的森林整備計画作成によって森林整備の一体的かつ計画的推進を行う、こういうことだということであります。  そこで、その権限の問題ですが、どういう効力というか、それは単なる権力であって、強制的といいますか、そういう効力があるものかどうか、その点を一つ。それから、いろいろ話し合いの中でうまくいかないと知事の勧告というものがありますが、それに乗ってこないという状態が来た場合にこれはどういうふうになるのか。その点、関連してひとつ説明していただきたいのです。
  311. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回の改正のねらいは、先ほど触れましたが、間伐、保育を適正に行い得るために必要な法的措置といたしまして、まずは市町村に整備計画を樹立してもらう、その樹立した計画どおりに間伐、保育が実施されるような勧告権限を市町村長に与えるわけでございまして、これは、全国森林計画、地域森林計画、市町村の整備計画、それから森林所有者の森林施業計画という体系化の中でこれが適切に実施されると、森林の整備につきましては効果が出てまいるというふうに理解しているわけでございます。  そこで、つくっても守られない場合はどうするかということでございますが、先ほどもちょっと触れましたが、法十条の十第一項でまずは実施についての勧告をする。それからその次に所有権移転等に対する協議の勧告、さらには調停案の受諾の勧告というふうな一連の手続を必要に応じて打っていこうと考えているわけでございます。もちろんこの一連の措置は強制力は持っておらぬわけでございますが、法律上の手続に合わせまして分収育林というふうなそういう締結のあっせんをするとか、あるいは在村の林業経営の意欲のある方々に権利を移転するというようなことを進めてまいることによりまして、私は機能は有効に働くのではないかというふうに考えますが、さらにこれをより一層機能し得るように努力をしてまいらなければならないと思っております。  なお、間伐、保育を進めるに当たりましては、各種の施策を連携させながら優先採択をするような方法をとらせながら進めてまいりたいと考えております。
  312. 武田一夫

    ○武田委員 それはいろいろとまた後でちょっと質問しますが、それじゃ、たとえば計画の実行に当たっていく指定された市町村ですが、仕事は当然その職員にある程度負担がかかってくるんじゃないかと思うわけです。ところが、いろいろと聞いてみますと、どうも町村によっては専門的に山だったら山の仕事だけやるというよりも、その人間が商工の仕事をやってみたり、いろいろ人員の関係でほかの仕事をやりながらこういう仕事もやっているというケースが多い。こうなりますと、この計画そしてその実行という段階の中においてその負担が職員にかかってこないかという心配、そういう場合にやはり何らかのバックアップをしてやらぬと現実にいい計画等もできないのじゃないかという心配をしているわけです。この点はどうお考えですか。
  313. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近林業政策として目玉に挙げていますもろもろの施策と申しますのは、町村の機能を活用した展開をしているわけでございます。たとえば林業振興地域育成対策の事業だとかあるいは林業構造改善事業あるいは森林総合整備事業というのはそういう考え方に立ちまして展開しておりまして、その過程で、比較的森林の多い町村等におきましてはこれら事業を通じまして林業行政に対する計画樹立とか、あるいは実施面での行政機能というのは逐次高まってきておると私は思います。そこで、私どもも今後ともそういう措置もあわせて遂行させながら、市町村が森林、林業にかかわる行政面でより積極的に取り組まれるように対処していかなければならぬ、かように考えているところであります。
  314. 武田一夫

    ○武田委員 やはり計画は非常に大事であるわけですから、その計画がきちっと実行に移され、また、それがうまく進行していくような心配りをしてやらなければいかぬ、こういうふうに思うわけです。そこで、この計画作成そして実施に移るそのスケジュールというのはどういうふうに考えているわけですか。
  315. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもが対象に考えています町村は大体二千二百前後くらいございます。将来的には、対象となっておりますところの市町村は可能な限り森林整備市町村といたしまして計画をつくっていただこうと思っておるわけでございますが、やはり体制的に整ったところから漸次実施してまいる、そういうふうな考え方でこれから対処していこうと思っています。たまたまこの地域林業整備育成対策事業というのを進めておりまして、それとの関連を十分考えながらこれを活用して今後とも進めてまいるという方針でいこうと思っています。     〔亀井(善)委員長代理退席、委員長着席〕
  316. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、いまいろいろ話が出てきたと思うのですが、地域林業整備育成対策事業ですか、現行ありますね、これを推進する市町村の計画策定と今回の森林整備計画とがどういうつながりを持っていくのか。要するに、何も特に今回つくらなくても、この中で間伐、保育の点に分収育林等の対応をしながら取り組んでいく方が複雑でなくて単純でいいんじゃないか、私はこう思うわけです。何も特にこういうものを取り出してきてやらなくても、これは複雑なような気がしてならないのですが、この点どうですか。
  317. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、今回のこの制度の基本になっておりますのは間伐のおくれているところ、保育のおくれているところにつきましてはこれを勧告するとか、制度的にいろいろな措置をとりながら適正にしていくためには法的にそこを明定しておかなければならぬということがございます。そういう考え方から申し上げますと、やはり森林資源の維持培養、生産力増強ということを基本にいたしまして体系づくられている森林法の中で位置づけることがこれは必要であるということで、今回の法体系の中で計画考えているわけでございます。
  318. 武田一夫

    ○武田委員 山というのは造林、伐採、あるいは林道開設、それからいま言った保育、間伐、いろいろと総合的に推進していく中での作業がたくさんあるわけですから、私はその中で、それじゃいま間伐、保育が非常におくれているから、その地域についてはそういう中での対応も、十分に予算措置やらこういう分収育林のような方式をあわせながらいまやってもいいんじゃないか、何も複雑に計画をあるいは事業をつくるということは必要ないのじゃないかなというふうに思うわけでありまして、この点、もう少し私ども勉強させてもらいたいと思うのですが、何かいろいろの計画を見ていますと、何々対策事業、何対策、ものすごくたくさんございますね。林道一つとりましても、そういういろいろな細かい複雑なことが全部市町村や県の方、特に市町村等に重荷になってくるのじゃないかということを考えたときに、そういうことを回避するようなことが賢明ではないかと思うわけでこの点は質問しているわけですが、そういう心配はないでしょうか。
  319. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほど触れましたが、全国森林計画の下部計画といたしまして地域の森林計画がございますが、これには伐採、造林を中心としました制度並びに規制の措置などが載っているわけでございます。そういう措置の中で特に今回一番問題になっておりますところの間伐とか保育ということをより機能あらしめるためには、制度的に市町村でつくる整備計画を明定いたしまして、特に間伐を自主的にやらぬところにつきましてはこれを指定し、勧告し、実施させる、あっせんまで持っていくわけですが、そういう措置をすることによって初めて森林が整備され、また、各種の林業振興施策がこれと連携をとりながら進め得るわけでございますので、そういう意味で森林整備計画というのは非常に大きな意味を持っているというふうに私どもは理解をしているわけでございます。
  320. 武田一夫

    ○武田委員 それはその辺で。  ところで、森林整備市町村を指定する基準、これはどういうことになるのか。それからまた、指定されない市町村に対する森林整備というのはどのようにしていくかという問題があるわけですが、この点、あわせてお答えいただきたいと思います。
  321. 秋山智英

    ○秋山政府委員 まず森林整備市町村の指定でございますが、森林法十条の七の第一項の一号、これで考えておりますのは、森林整備計画は市町村が主体となって一定のまとまりを持った人工林につきまして一体的かつ計画的に間伐または保育を推進するという目的でございます。  そこで、当該市町村の森林面積等が一定規模以上あるということが必要と考えられまして、これの面積につきましては一応区域内の民有林の面積がおおむね二千ヘクタールあることを要件とすることで、現在検討しているところであります。  それから、この面積基準で一律に適用した場合には、林業の意欲が非常に高い市町村でありましても、当該面積、民有林面積が二千ヘクタールを下回るということで対象外になることがございますが、そういうようなところでも、人工林の率が一定の基準以上満たす町村につきましてはやはり対象にすることが今後の森林資源を整備する上において重要でございますので、これは地方別の民有林の平均的な人工林率を基準にして決めていきたい、かように考えておるところでございます。  なお、こういう対象としております市町村の人工林面積と申しますと、大体全体の九八%前後になります。残りは非常に少ない面積に相なるわけでございます。これにつきましては、従来の助成制度で進めてまいりたい、かように考えています。
  322. 武田一夫

    ○武田委員 いまの二千ヘクタールの面積以下でも、そういう意欲的なところの地域については人工林率の問題で考える。大体いまどの程度を想定しているわけですか、人工林率の一定以上というのは。
  323. 秋山智英

    ○秋山政府委員 大体各都道府県の平均の人工林率を基準にしたい、かように考えております。
  324. 武田一夫

    ○武田委員 それから次に、普及指導事業について。  私は、今後こういう事業を行っていく上において、普及指導の仕事というのは非常に大きなウエートを占めてくるのではなかろうか、こういうふうに思っております。私は、現状ベースは最低確保する、あるいはそれ以上の水準の普及事業を維持しなければならないのではないか。しかしながら、先ほども話がありましたように、補助金二分の一助成が交付金制度に変わるというふうになりますと、要するに山に取り組む県の自主性という問題、対応の仕方いかんによって、この普及事業が弱くもなり、強くもなるのじゃないかという心配、また、そういう不安を感じている方もいるわけでありますけれども、そういうような状況を出現させないような対応というのは、やはり国がきちっと指導しなくてはならない、こう思うわけでありますが、それはどういうふうになさるおつもりか。この県の交付金の使用、使途に対する指導とかあるいは指導職員の確保などについては、強制的でない指導であっては、私は、まことに申しわけないけれども、迫力が欠けたそういう対応になってしまうと思うのです。ですから、この点どのように取り組んでいくのか、その点についてのお考えをひとつ聞かしていただきたい、こう思います。
  325. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今度交付金方式を導入いたしましても、やはり林業普及の問題につきましては、いま申しました間伐の適正化の問題やらあるいは森林病害虫防除やら森林の複層林造成とかあるいは複合経営とか、あらゆる問題がまだございますので、やはりこれは積極的に取り組んでいかなければならぬわけでございます。  そこで、この新しい方式になりましても、従来の都道府県の負担分に相当する財源は引き続き地方交付税に算入されることになっておりますし、そこで必要な経費は今後とも確保されるわけでございます。それで、やはり国が各都道府県の自主性を尊重しながら、その執行体制をより能率的にやってもらうということで指導するわけですが、さらに今度は、その職員の配置等につきましても、予算配賦の段階あるいは具体的な指針等でこれを示しながら普及指導に遺憾のないように体制づくりを指導してまいりたい、かように考えております。
  326. 武田一夫

    ○武田委員 なぜそういうことを質問するかというと、たとえば林道の整備について、国、県、市町村で分担してやりますね。そうすると、たとえば県などが市町村に余り負担をかけないように自分たちの方でかさ上げといいますか、金を出しているわけですが、聞いてみると、大体二〇%から二五%ぐらいのかさ上げをしながら林道の整備事業を進めているのだけれども、ある県によると、それが一〇%ぐらいというふうに平均からかなり低いところで、ぎりぎりのところでやっているというところもあるのですよ、一つの例ですがね。  こういうように各県の対応によっていろいろとそういうふうなアンバランスができて、それで非常に理解あるところはいいんですが、もし理解の足らないような、そういうところが出てくるとこわいな。現実には林道であるわけです。私の聞いたところでは、平均が二〇から二五%かさ上げしているのだけれども、わが地域はわずか九%か一〇%だ、もっとやってもらえないかという、そういう市町村の声なども聞くと、普及事業というものもあながちこういうふうな傾向にならないという保証は何もないという心配があるものですから、確認をしておきたいわけです。
  327. 秋山智英

    ○秋山政府委員 具体的な実施に当たりましては、先ほど触れましたが、職員の配置等についても指針を示す、また予算交付する段階におきましても、十分それの話し合いをしながら、普及事業が後退することのないように努力してまいりたいと思っています。  先ほど林道の御指摘がございましたが、確かにこれは県によりまして、県の負担率が多い県と少ない県があるのは事実でございますが、この林業普及の問題につきましては、これは直接人が現地へ赴きまして林業技術者を指導するという面できわめて重要でございますので、そういう点については十分配慮してやってまいりたいと考えています。
  328. 武田一夫

    ○武田委員 どうぞ十分な対応をしていただきたいと思います。  次の問題に移ります。  森林は、先ほども申し上げましたように、国土を守るという大きな役割り、われわれ人間に欠かせない大事な部門でございます。われわれ人間というか、国民にとっては重要な財産でもある、こういうふうに私は思っております。  そこで、そういう意味で、今回林野庁が都市でアンケートをとったあのアンケートによりますと、木材を生産する場所としてとらえているよりも、水資源の涵養とか洪水防止とかあるいは山崩れ等を防ぐ役割りとしての評価をしている、これが一番多いようであります。それから空気の浄化、生活に潤いを与えてくれるというような評価の方が多い。その次に木材を生産する場所であるというようなことで、森林というものに対する国民のイメージとはこういうものではないかという一つのものがこの間のアンケートで出ておりました。今回、分収造林ということによって国民の方々にそういう山づくりに御協力をいただく、参加していただいて、それでりっぱな山をつくり、木をつくっていこうということで、このアンケートを見ましても、いずれやりたいという人あるいはすぐやりたいという人を含めて、半分ぐらいはアンケートで答えを出しているわけです。  そこで、私はまず分収育林事業について、そういう都市住民が今後安心して分収契約ができる、さらに収益時までの安定体制づくりというものをしっかりとしないといけないのじゃないか。国が金がないからさせているのだなんという、半分余り協力的でない方々に陰口を言われないようにするためには、そういう協力的な都市住民に対する保護策といいますか、それはしっかりしなければいけない、こういうふうに思うのでありますが、その中身といいますか、そういうことについてどのようなことを具体的にお考えであるか、ひとつ聞かせていただきたい、このように思います。
  329. 秋山智英

    ○秋山政府委員 今回考えておりますところの分収育林の考え方でございますが、緑資源の重要性については皆さんに御理解いただいておるわけでございますけれども、つくり上げると申しますか、造成するまでの過程の長さ、苦労というものがなかなか山村だけではでき得ない状況になっておりますので、国民の皆様の理解と協力を得ながらこれをつくってまいろうということにこのねらいがあるわけでございます。  そこで、この育林分収を進めるに当たりましては、やはり安心して費用負担者の一員となれるようなシステムをつくらなければいかぬわけでございまして、法律で定めておりますように、届け出制度と申しますのは遠隔地の皆さんが安心してそれに応募できるためにも必要でございますし、また、途中でトラブルの起こることのないような内容になっていなければなりませんし、しかも、長期にわたる契約であるということを踏まえますと、やはりこの契約につきましても模範例をつくりまして、それで的確に指導をしていくということが必要であろうと思います。特にその中で考えておりますのは、契約当事者が変更した場合どうするかとか、あるいは当事者が亡くなった場合どうするとか、損害の補てんの措置をどうするとか、いろいろとそういう問題がございますが、これらの問題についてはこの模範契約例をベースにしまして、トラブルの起こらないようにしていくことが大事だと思っております。
  330. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、そういうようなものはこれから中身をじっくり検討しながら、それができて提示をしながらこの計画が進んでいく、こういうことになるわけですね。
  331. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そうでございます。
  332. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、契約金あるいは収益についての配分、その割合ですが、一応どういうような内容で配分割合をいま考えているか。案があれば、また、考えていることがあれば聞かせてもらいたいと思うのです。
  333. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収育林の場合の持ち分の取得の対価でございますが、これは分収育林契約におきまして各契約当事者が支払うべき保育あるいは管理に要する費用、さらには樹木の持ち分、これは分収割合になりますが、この取得の対価というのは本来的には当事者間で決めるわけでございますけれども、やはりこれに対して一つ考え方を明示しなければならぬわけでございますので、私ども考えておりますことを申し上げますと、保育と管理に要する費用の支払い額は、契約をした時点以降主伐、全部伐採するまでの間に予定されますところの保育と管理に要する経費、これを契約時点に戻しまして、前価合計と呼んでいますが、それに戻しまして評価した額といたします。それで、保育に要する費用というのは育林費用負担者が負担し、管理に要する費用は育林者が負担する、こういう考え方であります。それから樹木の持ち分、分収割合でございますが、この持ち分の取得の対価といたしまして樹木所有者に支払うべきところの額と申しますのは、やはり契約時点におきまして樹木を評価するわけでございますが、その樹木評価額のうち植栽と保育に要した費用に見合う額を育林費の負担者が負担し、管理費に見合う額を育林者が負担する、こういう形で持ち分取得の対価等は決めていこうと思っています。  それから分収割合にっきましても、これは基本的には当事者間で決めるわけでございまして、分収造林の場合とほぼ同じでございますが、基本的な考え方といたしましては、植栽の時期から主伐の時期に至るまでの費用等でございますが、これは土地提供あるいは管理費などがその等の中に入りますが、そういう費用等を通算いたしまして、まず地代に相当する部分は土地所有者が負担する、それから管理費に相当する部分は育林者が負担し、植栽、保育に要する費用、投下見積もり額になりますが、これは育林費負担者が負担するというような基本的考え方でそれぞれ当事者間で比率を決定して決めておく、こういう形でいくように指導をしていこうと考えております。
  334. 武田一夫

    ○武田委員 時間がなくなりましたので残った分はまたこの次にやりますが、最後に。  「分収造林契約形態別分収割合」という表を見ますと、森林開発公団の三者契約、二者契約の中で土地所有者が五とか六とか割合がいろいろありますね。それで、この森林開発公団の二者契約の場合、土地所有者、造林者のところの市町村が六、公団が四というふうになっていますね。それから三者契約の場合は土地所有者が四、造林者が一、公団が五、こうなっていますね。こういうふうな割合からいうと、どれが分収育林の場合の数字として考えられるものか。
  335. 秋山智英

    ○秋山政府委員 分収造林につきましては長い間の歴史的経過もございますが、それらで見てまいりますと、一般的な分収割合、これは三者契約と申しますか、土地所有者と造林者と費用負担者と三者でやっている場合には、土地所有者四、造林者一、費用負担者五、こういうふうなのが一般的でございます。それから二者契約の場合には土地所有者四、それから造林者が結局費用負担者も兼ねますので、この場合には造林者六というのが大体既応におけるところの一般的な形態でございます。
  336. 武田一夫

    ○武田委員 これはなぜ聞くかというと、この六、四というのは、造林者の方は六ではかなりきついのだそうです。これでは造林する意欲がなくなるという言葉を聞くのです。それが今後の割合の中で四、一、五になるのかどうなるのかわかりませんが、要するに、山を持っているいわゆる土地所有者が造林等々の問題で非常に負担になることがないような心配りが必要だと私は思っているのです。これは前は五、五くらいから六、四くらいに持ってきたのでしょう。それで結局その六、四の六でも現実は非常に負担が大変だ、そこに造林意欲が非常に低下している理由があるんだと現場の方々は言っているわけですので、この配分、費用負担、もう一つは収益時の分担についてはやはり十分に検討して対応していかなければならぬのではないか、そういうふうに思うわけでございます。  質問時間が来ましたので最後にちょっとそのことを私は要望しまして、あとはまた来週残っている時間でいろいろ質問したいと思うので、きょうはこれで終わらせていただきます。
  337. 山崎平八郎

    山崎委員長 神田厚君。
  338. 神田厚

    ○神田委員 森林法及び分収造林特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御質問を申し上げたいと思うのでありますが、まず最初に、いまちょっと問題になっております国有林野労働者の年度末手当の問題について御質問を申し上げたいと思うのであります。  国有林野事業におきます年度末手当に関する労使間交渉が例年の支給日十五日を過ぎた現在でも難航しておりまして、解決を見ておりません。その背景には、本日の一部新聞で報道されましたように、林野と国鉄はすべてカットする、こういう行政指導が行われているためではないかというようなことで、当該労働者は大変心配をしているわけであります。政府・自民党は花と緑の祝日を検討している、こういうことでありますが、林業の振興あるいは第二臨調答申に基づく国有林野の経営改善を促進するためには職員の労働意欲の高揚が不可欠の問題であるというように考えておりますので、他公社、他企業体並みに支給すべきものはきちっと支給をするように、大変むずかしい財政事情の中でそれぞれ大臣におかれましてはお骨折りをいただいているようでありますが、ひとつその点についての御見解をお聞かせいただきたいと思うのであります。
  339. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘の年度末手当の件については、十分事態を認識いたしまして目下検討中でございます。
  340. 神田厚

    ○神田委員 この問題につきましては、ひとつ大臣の方で、それぞれ労働者が大変に困っている、官民格差の問題が言われておりますが、宮官格差の問題もやはり大変大きな問題になってきているようでありますから、その点についてよく御認識をいただきまして、よろしくお願いをいたしたいと思っております。  さて、時間の関係もありますので、法案の関係につきまして若干質問をさせていただきたいと思います。  まず第一に、保育と間伐などの森林施業の促進を目的にこの法律の改正が図られようとしております。現行制度を拡充すればその促進ができるというふうな考え方があるんだと思うのでありますが、何ゆえに新たに市町村による森林整備計画制度を導入したのか、この点につきましてお答えをいただきたいと思います。
  341. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現行の森林法におきますところの森林計画制度におきましては、国が全国の森林計画を樹立する、これに即しまして各都道府県知事が地域の森林計画を樹立する、そのもとにおきまして伐採、造林等の規制を初めとします各種の施策が講ぜられるわけでございますが、下部の計画といたしましては森林所有者によりますところの森林施業計画が自発的につくられまして、これによって地域森林計画の達成に資するという形で現在進められておるわけでございます。ところが、戦後営々として植えられました一千万ヘクタールに及ぶところの人工林の約半分が十六ないし三十五年生の間伐時期に到達しているわけでございますが、これが思うようになかなか実施されてない。特に最近は材価の低迷あるいは間伐コストの割り高というようなこともございまして、森林計画制度で期待するところの森林整備が図られていない、こういう状況にあるわけでございます。  そこで、森林整備を進めるに当たりましては、やはり地域に密着した市町村に森林整備あるいは林業生産活動を活発化するための細かな施策を進めていくことがこれらの要請にこたえる道であるということで、これまでも予算措置によりまして市町村が主体となりました各種の施策を進めてまいってきておるわけでありますが、森林計画制度の中に市町村の法的な位置づけが欠けている関係もございまして、特に森林を整備するという面から、間伐のおくれているそういう特定の森林につきまして措置ができない面があるわけでございますので、私どもはここで市町村の計画樹立ということを法制化いたしまして、森林整備ができるようないろいろの措置考えているわけでございます。
  342. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、今回の保育、間伐を主体としました市町村の森林整備計画によりまして地域林業が振興できるというふうにお考えでありますか。
  343. 秋山智英

    ○秋山政府委員 やはり地域ぐるみで林業振興に取り組むという面におきまして、まず一番の課題が、ただいま申し上げましたような間伐、保育の適正な実施でございます。そこで、市町村の指導のもとに一体的、計画的に保育あるいは間伐を進めて、林業活動の活発化、林業振興の基盤であるところの資源を整備していこう、こういうことでありますが、この森林整備計画計画事項は間伐あるいは保育が中心となっているわけでございますけれども、しかしながら、その制度の趣旨に合致する限り、森林整備に関する基本的な事項、あるいは作業路網その他の森林整備に必要な施設の整備の事項、あるいはその他整備に必要な事項ということを計画事項で定めているわけでございます。  こういう計画を実施すると同時に、これを具体的に運用するに当たりましては、この計画の作成から実施に当たりまして各種の予算措置をうまく関連づけまして、振興措置もこの計画制度とリンクさせながら、林業振興の一層促進が図られるように考えてまいりたい、かように考えているところであります。
  344. 神田厚

    ○神田委員 市町村にいろんなことをやってもらうということになりますと、いろいろと問題があると思いますね。その問題は、一つは執行体制の問題だと思うのでありますが、森林整備に関する計画の樹立、具体的実施に当たっての勧告、調査、これらにかかわる事務について、現行の市町村の執行体制で果たして十分に対応できるのかどうか。この辺のところは、体制強化の問題も含めてどういうふうにお考えでありますか。
  345. 秋山智英

    ○秋山政府委員 現在、地域の森林計画の対象となっておりますところの森林を持っております市町村というのは約三千市町村ほどございます。林野行政を執行する体制を見てまいりますと、もっぱら林野行政を行うための課であるとか係を設置している市町村というのは約九百市町村でございまして、職員数も約二千七百名ぐらいでございます。また、他の職務とあわせまして林務行政を行う、たとえば農林係とか林業水産係というふうな係を設置している市町村が約六百でございます。  先ほどちょっと触れましたが、最近、私ども、この林業政策を進めるに当たりまして、やはり市町村を中心としましてこの機能を活用するという形で政策展開を進めてまいっております。たとえば林業振興地域の育成対策事業とか林業構造改善事業、森林総合整備事業等ございますが、これらはそういう市町村の機能を活用して現在その実施をお願いしておるわけでございまして、だんだんと林務行政に対するところの計画樹立の機能とかあるいは事業実施面での行政機能というのは高まりつつありますし、また充実しつつありますので、私どもは今後はさらにこの事業、制度を通じましてこれらの機能の充実を期してまいりたい、かように考えているところでございます。
  346. 神田厚

    ○神田委員 これはちょっと答弁が不十分だといいますか、具体的に市町村における執行体制の問題が、それだけのことに対応できるのかどうかということが私の質問なんですが、その辺のところはどうでありますか。
  347. 秋山智英

    ○秋山政府委員 私どもは一遍に全部の市町村にこの計画をつくっていただくという考え方ではございませんで、やはりその体制のできているところから順次持っていきたい、特に地域の林業振興対策事業というふうな仕事と絡みながら体制整備されたところから逐次持っていくことによりまして、全体的な、私ども構想しています約二千二百くらいの市町村に将来持ってまいりたい、かように考えているところであります。
  348. 神田厚

    ○神田委員 やはりそういう重点市町村については行政的な指導もしていく、こういうことでありますね。
  349. 秋山智英

    ○秋山政府委員 そうでございます。
  350. 神田厚

    ○神田委員 次に、この法案を進めていきます場合に、一つは森林の持つ公益性あるいは林業生産活動の拡大、こういうことと関連しまして、この森林整備計画に基づく私有権との調整が当然起こってくると思うのでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになりますか。
  351. 秋山智英

    ○秋山政府委員 間伐あるいは保育というふうな育林行為は、本来森林所有者の私的な経済活動の一環で行われるものでございます。これらの行為を法律上義務づけるかどうかというふうな問題、あるいはどの程度の強い担保措置で実施されるかというふうな問題は、やはり間伐なり保育を行わせる公益上の必要性と、それからもう一つは、森林所有者の経済的な負担とのバランスを勘案しながら判断されるべき問題だと思いますので、私ども、今回の地域整備計画は地域の自主性に基づきまして一体的かつ計画的にやっていこう、こういう考え方でございますので、その辺については十分配慮していかなければならないと思っています。
  352. 神田厚

    ○神田委員 また、森林計画がスムーズに行われるためには、一つは、やはり現在の間伐材の需要拡大の問題及び価格の面におきます安定性の問題が大変重要であると考えております。それらはやはり同時に対策として並行してやっていかなければならないと思っておりますが、その辺についてはどういうお考えでありますか。
  353. 秋山智英

    ○秋山政府委員 森林を適正に管理するためには、御指摘のとおり、やはり間伐材の需要拡大あるいは流通を円滑化するということが大きな課題でございます。それで、従来もこの間伐材のより需要拡大するために利用技術、たとえば集成材をつくるとかあるいは新しい製品を開発するとかいうふうなことで、セブンバイセブンというふうな工法の家もその一環でやっているわけであります。しかし、間伐材が売れないというのは、一定量が計画的に流通し得ないという面がございますので、そういう側面で情報銀行というようなものをつくりまして、需要生産をうまくリンクさせるというような方法、さらにはこの加工施設につきましても総合的な加工施設ということで設置するとか、また、間伐を進めるに当たりましての促進のための資金につきましても、国産材産業振興資金制度を設けてやってきているわけでございますが、これらのいろいろの施策をさらに充実強化しながらこの需要拡大と流通の円滑化を図ってまいりたい、かように考えています。
  354. 神田厚

    ○神田委員 これはあるいは大臣に御質問を申し上げた方がいいと思うのでありますが、結局、森林、林業の重要さが叫ばれておりますけれども、保育、間伐等の森林施策が手おくれになっておりますのは、何といいましても林業全体の不振がその底流にあり、大きな原因だと思うのであります。したがって、地域振興に対する国有林の役割り分担、あるいは官民あわせたいわゆる総合林政の推進、こういうことによりまして林業の振興を図っていかなければならないと思っておりますが、その点につきましていかがお考えでありますか。
  355. 金子岩三

    ○金子国務大臣 御指摘のとおりでございます。民有林も含めて、総合的な森林、林業の今後の発展をひとつ期したいと思います。
  356. 神田厚

    ○神田委員 次に、交付金方式の問題でありますが、国の助成によります補助金制度から交付金方式への変更がありますが、このことは都道府県におきます普及活動の水準を低下させるおそれがある、こういうふうな意見があります。また、都道府県におきます財政的裏づけはいかにしてこれを担保するのか、その辺のところも大変心配な面がありますが、この二点につきましてどういうふうにお考えでありますか。
  357. 秋山智英

    ○秋山政府委員 林業普及指導事業につきまして今後交付金方式を導入いたしましても、従来の都道府県の負担部分に相当する財源につきましては引き続き地方交付税に算入されることになっております。事業に必要な経費につきましても今後はそれで確保されるわけでございます。また、普及指導の職員もやはり必置義務は従来どおりでございまして、必ず置かれるわけでございますし、私ども国といたしましては、都道府県の自主性を尊重しながら、適切な執行体制をとれるように、職員の配置についても今後強く指導してまいりたい、かように考えております。そういう意味におきまして、今後指導体制は確保されると思いますので、普及活動の低下ということはないと考えております。
  358. 神田厚

    ○神田委員 心配なのは、都道府県の財政力とかあるいは森林、林業の重要さの度合いとか、そういうものによって地域間の格差が生じるおそれはないだろうかということが心配でありますが、その点はどうでありますか。
  359. 秋山智英

    ○秋山政府委員 普及指導事業というのはこれからも林業関係につきましては大変重要なシェアがあるわけでございまして、これを進めるに当たりましてはいま申しましたようなことがあってはならぬわけでございますので、職員の配置につきましてはむしろ指針というようなものをつくりながら指導すると同時に、予算を交付するに当たりましても各県と十分話し合いをいたしまして、そういうことのないようにしてまいりたいと考えております。
  360. 神田厚

    ○神田委員 交付金の問題でもう一点でありますが、交付金方式への変更によりまして国の交付金が固定化される心配はないのかどうか。また、経済情勢の変化に伴ってそれらはそういう場合には増額をされていく方向になるのかどうか。その点はどうでありますか。
  361. 秋山智英

    ○秋山政府委員 交付金になりますと確かに定額化したものでございまして、安定的に取り扱われるという制度でございます。したがいまして、物価、給与が変動すればそれに従って当然に改定されるという性格ではございませんが、御指摘の点等もございまして、私ども、これからの林業普及指導事業を円滑に実施するということでありますと、物価、給与等の大幅な変動によりまして事業の実施に支障があるというようなことがあってはなりませんので、そういう段階におきましては予算折衝を通じまして適切に対処してまいりたいと考えております。
  362. 神田厚

    ○神田委員 今後の普及指導事業の問題で御質問申し上げますが、森林、林業あるいは山村を取り巻く環境が大変著しく変化をしているわけであります。そういう中で、今後普及指導事業の課題をどういうふうに認識をして、どのような指導をしようとなさっておるのか、その点につきましてお答えいただきたいと思います。
  363. 秋山智英

    ○秋山政府委員 先ほども触れましたが、戦後一斉造林、大面積造林をいたしまして、一千万ヘクタールに及ぶところの人工林ができたわけでございますが、その大半がやはり間伐、保育等をしなければならぬ。戦後初めて植えられた方というのもおりますので、そういう方々に対する諸技術の投入というのはきわめて重要でございます。  そこで、私ども、そういうことを中心といたしまして、これから林業普及事業をどういうところに特に重点を置いてやるべきかということで考えておりますことを若干申し上げますと、まず第一は、いま触れました間伐、保育というふうな、そういう森林整備の技術の指導であります。それから、昨年御審議いただきまして現在松くい虫の被害対策の防除に鋭意努力しているわけでございますが、これの防除の問題。それから、国産材が外材に対して非常に弱いと言われておりますのは、ある意味におきましては流通問題、利用問題での円滑化の問題がございます。そういうふうなところでもやはり指導員の活躍を期待するわけでございますが、もう一つ、水資源問題との絡みで申し上げますと、奥地の水源林の水源涵養機能を高めるためには複層林型に山を持っていかなければいかぬというようなこともございますが、そういう複層林への指導、誘導の技術あるいは特用林産、機械化それから複合経営の推進というふうな問題がございますが、これらの問題については、これからもさらに一層進めてまいらなければいかぬと思っております。  なお、いま申し上げましたような技術等につきましては、当然のことながら普及指導職員の内容、資質を高めなければいかぬわけでございますので、そういう意味での研修等も積極的にやってまいりたいと考えております。
  364. 神田厚

    ○神田委員 これは余談でありますが、特に水源問題なんというのは、都会の子供たちは、水は水道をひねれば出てくると思っているようなところもあります。私ども、後でこの水源問題では御提言も申し上げようと思っておるのですが、そういう意味では、ひとつPRの方法としては、教育の中にももう少しこれを取り入れてもらう、教科書の中にもきちんと記載をしてやってもらうというようなことも必要じゃないかというようなことも思っておりますが、そういうふうなこともちょっと考えていただければと思っています。  あと、また三十日に質問の時間が残っておりますので、本日は、この分収造林関係等の質問通告もしておりましたが、これは三十日に延ばしていただきまして、本日の質問を終わりたいと思います。
  365. 山崎平八郎

    山崎委員長 次回は、来る三十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十三分散会