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1983-03-03 第98回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 山崎平八郎君    理事 加藤 紘一君 理事 亀井 善之君    理事 北口  博君 理事 玉沢徳一郎君    理事 小川 国彦君 理事 日野 市朗君    理事 武田 一夫君       上草 義輝君    小里 貞利君       太田 誠一君    岸田 文武君       北村 義和君    近藤 元次君       佐藤  隆君    志賀  節君       高橋 辰夫君    羽田  孜君       保利 耕輔君    松野 幸泰君      三池  信君    三ツ林弥太郎君       串原 義直君    新盛 辰雄君       田中 恒利君    竹内  猛君       前川  旦君    安井 吉典君       吉浦 忠治君    神田  厚君       寺前  巖君    藤田 スミ君       阿部 昭吾君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         水産庁漁政部長 佐竹 五六君         農林水産委員会         調査室長    小沼  勇君     ───────────── 委員の異動 三月三日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     澁谷 直藏君   小里 貞利君     正示啓次郎君   太田 誠一君     田中 龍夫君   川田 正則君     渡海元三郎君   岸田 文武君     根本龍太郎君   北村 義和君     藤尾 正行君   近藤 元次君     藤田 義光君   田名部匡省君     村山 達雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  漁船損害等補償法の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)  原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二九号)  水産業協同組合法の一部を改正する法律案内閣提出第三三号)      ────◇─────
  2. 山崎平八郎

    山崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出漁船損害等補償法の一部を改正する法律案原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案の各案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  3. 日野市朗

    日野委員 いま、私、この原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等という法案を見て、非常に強くこの法律がつくられた当時のことについての感慨があるわけでございます。そのころは二百海里問題であるとかオイルショックによる燃油高騰による漁業危機とか、そういういろいろな問題が次から次へと水産業界に襲いかかってきた、関連業界に襲いかかってきたという状態で、非常に危機的な様相が多々見られて、われわれもその対策に苦慮をしたというところでございますが、それからいままでの時間をずっと振り返ってみて、いろいろな感慨もございます。私も、あの危機をある程度は切り抜けてきている、そして前向きに業界も役所の側もわれわれの方も一応の展望などを持ちながらやっていける状態にまで何とかなってきているのかなというような感じもいたします。  その点について、農水省側としてはどんなふうにいまお考えになっておられますか。その感想等をまずお聞きしておきたいと思います。
  4. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま日野先生おっしゃいますように、この法律がつくられましたころはまさに二百海里が幕を切って落とされた時期でございまして、また同時に、四十九年のオイルショック、さらには五十四年のオイルショックと、続けて襲ってまいりました漁業危機というものが日本水産業を非常に深刻に覆った時期でございました。この時期におきまして、諸般対策を講じながら、特にこの法律におきましても、国際規制強化に伴って原材料が非常に不足するという事態を乗り越えるために加工資金というものを手当てしなければならぬということからこの法律も生まれたわけでございますが、その後の経過をたどってみますると、二百海里の規制につきましても、当初はほとんどゼロになるんじゃないかというふうに思われた各水域につきまして、何とか、たとえばアメリカ水域においては百四十万トン程度漁獲割り当て量も確保をいたしておりますし、ソ連の水域におきましても、七十五万トンの漁獲量を二百海里の水域内で得ております。そのほか燃油問題等につきましても、業界の非常な御努力によりまして省エネ等を進めながらこの危機を乗り切りつつあるというふうに考えるわけでございます。  しかしながら、現時点におきまして、その後遺症と申しますか、当時の痛手というものは決して消えていないわけでございまして、たとえば燃油高騰、二百海里の規制強化ということによりました漁業経営の深刻な状況というものは現在もなおそのまま続いておるわけでございまして、このためにさらに生産構造の改変なりあるいは技術開発によるコストの低下といったようなことをさらに進めてまいらなければならない事態にあるというふうに考えております。  また、二百海里の問題にいたしましても、一応の安定を見せているやに見えますけれどもアメリカにおける諸般規制強化といったような問題あるいは対ソの交渉関係等を見てみましても、決して二百海里問題が安定化したと言えない事態でございまして、さらに外交の努力等強化してまいらなければならぬという事態であろうと思います。また同時に、日本の二百海里内の資源というものを培養してこれを育てていくといったこともやっていかなければならぬ、そういう事態にあるというふうに考える次第でございます。
  5. 日野市朗

    日野委員 まさに現在の状態は本当に差し迫った危機を何とか乗り切ったという状態でありまして、これからも厳しさは非常に長い間続いていくだろうというふうにも思います。それで、漁業そのものが決して二百海里以前、それからオイルショック以前というような春の陽光を浴びてのうのうとしていられるような状態ではなくて、もっと厳しさというものはいろいろ考えられるのだろうというふうに思います。  それで、漁業なんかの方も、とる方ですね、漁獲をする方も魚種を広げたりいろいろな努力をしておりますし、それに加工する側なんかもいろいろな工夫をしているんだろうというふうに思います。特に日本人の貴重なたん白資源である水産物たん白資源として見た場合、これをいかに上手に食えるようにしていくかということはこれから非常に大事なことであろうというふうに思います。そういう観点から見て、水産加工業に対する国の施策というものがやや後手後手に回ったのではないかという感じが実は私にはしているわけであります。つまり、魚をとる方はどんどんいろいろな施策を打ち出されて、強く業界をも指導されたいきさつがございますね。しかし、それに比べてどうも水産加工の方は若干後手後手に回りがちだったというような感じがするのでございますが、いかがでございましょうか。
  6. 松浦昭

    松浦政府委員 加工業につきましては、やはり漁業そのもの密接不可分のものでございまして、いわば車の両輪といったようなものであろうと私ども思っております。特に漁業者生産をいたしまして、漁獲をいたしまして、魚をとりましても、それが利用されるという形におきましてはどうしても加工の過程というものを経るのが相当の分に上っております。また、消費者ニーズに合わせながらこのとりました魚を消費者の手元に送っていく、そして付加価値を高めていくというためにも、加工業というものはどうしても必要な作業であるというふうに考えておりまして、私どもは軽重はつけておらないつもりでございます。しかしながら、何と申しましても水産行政のいまの体質から申しまして、先生のおっしゃられるような問題がなきにしもあらずという感じがいたします。  特に、水産加工分野におきましては、いわゆる中小企業対策であるということもございまして、他の官庁におきましてこれらを統括して所管しているという問題もございまして、金融その他横断面での行政を持っている官庁もございますものですから、そことのいろいろな調整等もございまして、どちらかというと水産加工の面において生産のような精細なる政策がなかなか打ち出せなかったという理由があろうかというふうに考えている次第でございます。
  7. 日野市朗

    日野委員 確かに水産加工業という業種そのものが内在している問題がいろいろございます。非常に激しい競争を水産加工業業界の内部で行っているという事情や、それから経営的に非常に零細な企業体が多いということなどが指摘されるであろうというふうに思いますが、こういった加工業者経営そのものにまで深く踏み込んだ施策というものが必要とされているのではなかろうかというふうに私感じているのでございますが、いかがでございましょう。
  8. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに水産加工業者経営状態は非常に零細でございまして、従業員規模九人以下のものが六九%、個人経営及び資本金百万円以下のものが七三%という、非常に零細な経営でございます。  そのような零細な経営というものだけではなくて、特に経費に占める原料魚代割合も非常に高い比率でございまして、経費に占める原料魚購入費割合が五〇%以上の経営体が実に七二%にもなっているといった、非常に特別な企業経営形態を持っているというふうに考えられます。そのようなことから、経営環境変化への対応力が弱いという体質にあるということも言えるかと思う次第でございます。  かような水産加工業経営につきましては、やはり相当経営の中に入った諸般対策というものを講じていく必要があるわけでございますが、特にどのようにしてこの水産加工業というものを方向づけし、どのような形で水産加工業者の将来を考えていくか、特に原料供給状況、その変化と合わせました形で将来の経営が成り立っていくようにできるかといった、そういうことが非常に重要であろうというふうに考えるわけでございます。
  9. 日野市朗

    日野委員 この経営改善強化という問題も非常に重大な問題なんでありまして、これをもっと共同化を進めていくという方向が強くとられていいのではないかというふうに思います。いま流通加工センター形成事業であるとか水産物流通加工総合整備事業であるとか、そういう事業が行われているようなわけでありますが、これの現在の実績といいますか、こういう事業をいま水産庁の方でお進めになっておられますけれども、これの現状をちょっとだけ教えていただけますか。
  10. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま先生指摘のこのような零細な経営を前提といたしまして、この企業経営近代化合理化を進めていきますために、私ども二つほど事業をやっているわけでございます。  一つは、協同組合事業活動を活発化するということを通じまして企業経営共同化あるいは協業化を促進するという事業でございまして、この事業につきましても助成を行いながら進めているわけでございますが、特に水産加工協同組合といった組織を通じましてこの共同化協業化を進めていくということが必要だろうというふうに思っておるわけでございます。  それからいま一つ、補助をつけながらやっております非常に重要な仕事一つに、水産加工業者経営技術に関する手引き、いわゆるマニュアルでございますが、これを作成いたしまして、中小加工業者に対しまして研修会を開催するという仕事をやっておるわけでございます。かなり細かなマニュアルでございまして、経営のやり方あるいは加工技術の面におけるマニュアル、あるいは税制の問題その他非常に広範な、中小加工業者がその経営を健全化するために必要な事項を盛りました、このようにしたらいいという手引書をつくりまして、これを配付し研修会等もやっているという状況でございます。
  11. 日野市朗

    日野委員 水産庁の御努力もよくわかりますが、先ほど長官もおっしゃったとおり、漁業水産業というのはまさに車の両輪のような関係でもありますし、魚、水産物、こうしたものを国民が食べるという習慣をいかに定着させていくかということは、食糧政策の中の一環としてやはり非常に重大な問題としてとらえるべきであろうと思います。いままでのように業界の自発的な努力にまつとか伝統的なものをつくっているということだけではとうてい時代の要求についていけないところがあるのだろうと思いますので、この加工業についても強力な政策を推し進めていく必要性があろうかと思います。その必要性について、いま具体的な点でどうこうということはなかなか申し上げかねますが、その辺の覚悟のほどを、これは長官からもお願いしたいと思いますし、大臣からもひとつその覚悟の表明をお願いをしたいと思っていますが。
  12. 松浦昭

    松浦政府委員 先生おっしゃいますように、水産加工業漁業と並んでまさに車の両輪のようなものでございまして、私どももこの加工業に対してぜひ政策強化したいという考え方を持っておりまして、今回お願いいたしております法律もその一環でございますが、各国の漁業規制強化に対応いたしまして水産加工業原料転換あるいは今後非常に重要になります多獲性大衆魚と申しますか、イワシサバといったような魚の食用利用高度化といった面で水産加工施設資金というものを供給していく、これが一つの大きな柱でございます。  それからいま一つは、やはり主要産地におきますところの、たとえばイワシが多くなってきたというところに水揚げの魚の構成の変化も見られるわけでございますから、この変化に即応したような形で加工体制整備を図るということから、水産物流通加工拠点総合整備事業というのをやっております。これも非常に評判のいい事業でございますが、冷蔵冷凍設備等を、あるいは市場等を開設するといったようなことをやっておるわけでございます。  さらに、いま一つ非常に重要な点は、原料魚価格の安定であると思います。加工業者にとりまして、いわば原魚価格というものがコスト中に占める割合が非常に高うございますから、そこを安定するということが非常に重要でございまして、そのためには水産物調整保管事業というものを実施しておりますと同時に、共同購入といったようなことも促進をしたいというふうに考えております。  いま一つは、やはり消費者ニーズに合った食品開発普及ということでございまして、大量に採捕されました食用利用率の低い多獲性大衆魚、端的に申すとイワシ、アジ、サバといったようなものでございますが、これについての技術開発といった点にも目を向けたい。また、五十八年度からは、新たに水産加工業者における多獲性魚の新製品開発あるいは食用向け有効利用を促進するために特別の資金の融通をいたしたいということで、各都道府県に特別会計をつくってもらいまして、そこに国から金を出す、それをもとにいたしまして特別会計から各金融機関利子補給をするといったような運転資金供給もやっていきたいというふうに考えております。  また、開発された新製品展示即売会といったようなこともやりたいと考えておりまして、従来までもいろいろとやっており、また、現在もいろいろ努力をいたしておるわけでございますが、なお今後とも水産加工業体質強化については政策的にもぜひ日を当てていきたいと考える次第でございます。
  13. 金子岩三

    金子国務大臣 いま日野さんからいろいろ御意見があったようですが、水産庁は、漁業生産だけに今日までずっと力を入れてまいっておりまして、御意見のとおり加工は大変立ちおくれでございます。加工ばかりでなくして、流通にも非常に隘路がある。したがって、産地価格消費地価格が、魚種によっては五倍、六倍、そういう極端な倍率になっておるわけでございます。  たとえば、長年八倍の量のイワシを与えてハマチ生産しておるというようないろいろな問題がございます。ハマチを育てて食べるのではなくて、イワシを高度な加工をして保存がきくようにしますと、カロリー、たん白、あらゆる面からいってハマチよりもずいぶん高いいわゆる食品価値があるのでございますから、こういうものをもっと高度な加工をやって、えさに回しておる、あるいは飼料に回しておるイワシサバのごとき多獲性大衆魚と称せられるものを政府が指導して国民ニーズにこたえるような製品をつくっていくならば、水産物がもっと高度に利用されていく。したがって、生産性価格もそれだけ高くなりますから、漁業経営にも大きくプラスになる、こういう考え方で、折に触れて水産庁にはずっと以前から督励をしておるわけでございますが、皆様方の御期待に沿うようなところまでなかなかいっていないようでございます。今後も、こういった面にもっと力を注いでいきたい、このように考えております。
  14. 日野市朗

    日野委員 いま、原料魚価格の安定の問題とか流通の問題とか、いろいろ出ましたが、ここで小さな点といいますか、一つ問題点を伺っておきたいのです。  多獲性大衆魚水揚げ地がずっと何カ所かにかたまってしまうということで、流通の面でも非常な問題があろうかと思うのですが、水揚げ地を分散するというような考え方とか、そういう点にも強力な指導ができないものかどうか。そこらについて、お答えになれれば答えていただきたいと思います。
  15. 松浦昭

    松浦政府委員 確かにいわゆる豊漁貧乏ということがございまして、特にイワシなどの場合には昨年の水揚げが三百三十万トンにまでなっている状況でございます。特定の港に一度にどっとこれが揚がりますと、どうしても価格が下落するというようなことがございます。さような点で、実は業界の中でいろいろ調整をしながら水揚げ地を分散するといったようなこともやっておるわけでございますが、私どものやっております一つの大きな仕事情報の提供でございまして、特に情報センターという組織もございますので、各地の水揚げ状況あるいは価格といったようなものをできるだけ的確に漁船に通報することによって、どこの港に揚げれば一番有利かといったような仕事もいたしておるわけでございまして、さような点でただいま先生指摘の問題に対応していきたいと考えている次第でございます。
  16. 日野市朗

    日野委員 長い法律ですからこれから原材料法と略称させていただきますが、この原材料法を実施して、現在までの政策目標は達成されたのか。いまその途中にあって、さらにこの法律を生かして、この法律による資金を十分に使わせていくというようなことが必要なのだということがこの法改正根本の点だと思います。この法律のいままで果たしてきた機能、それからこれからの将来の問題について概括的にどのようにお考えになっておられるか。これは言うまでもなく、この法案を提出しているのは、これからももっとやっていきたいということなのだろうということはわかりますが、それをもう少しわかりやすく説明していただきたいと思うのです。
  17. 松浦昭

    松浦政府委員 今回延長をお願いいたしております法律につきましては、この施設資金加工業者供給しようという法律であることは御案内のとおりでございますが、当初五年間で約三百億程度資金需要を見込んだわけでございます。四年間の実績で見ますと、年によって変動はございますけれども、大体計画どおり融資はなされてきているものと考えておるわけでございます。五十五年度以降の計画に対して若干融資の実行が少なくなっておりますけれども、この問題は、この資金導入時、つまり五十三、五十四年度におきまして計画を上回る融資が行われたということ、いま一つサバ等原料価格高騰等から資金繰りの面で施設導入が延期されたことによるものであると考えておるわけでございます。  この融資二つ大きなポイントがございまして、一つは、国際規制が非常に強化されまして、そのために原材料であるたとえば北洋のすり身が手に入らないといったような事態に対応して、北の方であればホッケを使うとかイワシを使う、そういったいわゆる原料転換という意味での資金融資したいということ、いま一つの目的は、そういう原料転換とは直接にかかわりがなくても、日本国全体の目で見て、イワシサバといったような多獲性大衆魚をできるだけ高度利用していくということのための施設への融資、この二つの面からこの施設資金が組み込まれてきたわけでございます。  ところが、どちらかと申しますとこの原料転換のための融資実績というのは最近やや減少ぎみでございまして、外国で二百海里の設定以降、かなり、一時は原料転換を非常に大きく行わなければならぬと考えられたわけでございますが、そう申しますと口幅ったい感じもいたしますけれども対外交渉相当がんばりましてある程度までのスケソウ原料等も確保したという実績もございます。  さようなことと、もう一つは、すり身需要が一時大分落ちました。と申しますのは、御案内のように魚肉ソーセージ需要が、最近また復活してきておりますけれども、一時はハムあるいはソーセージといったようなものに押されまして減りましたこと、それからまたすり身価格がある程度まで上がりましたために、かまぼこあるいはちくわといったようなものの価格が若干高くなりまして、このために需要が落ちたということから練り製品需要が一時過剰ぎみになって落ちたという経過がございます。かような点でこの原料転換ということのための問題が若干生じたように見えるわけでございますが、五十六年からは練り製品需要は回復しておりますし、五十八年も恐らく引き続いて需要は強いものと考えておるわけでございます。また、将来の二百海里の問題は決して安定していないということを考えましても、この原料転換ということは今後とも進めていかなければならぬと考えるわけでございます。  一方、第二点の多獲性大衆魚食用加工利用についてでございますが、昭和五十一年の状態は百八万トンでございました。ところが、五十六年は百二十八万トンということで二十万トン増になっております。もちろん漁獲量そのものが、たとえばイワシが三百三十万トンという非常に大きな数字になっておりますために、比率としては食用向けは落ちておりますけれども、実数字で見ますると着実に上がっているというふうに考えられます。  また、缶詰、煮干し、塩干といった在来のこのような多獲性大衆魚の商品のほかに、最近は、このような多獲性の大衆魚を使いました練り製品、あるいは冷凍食品、さらには最近はやりのレトルト食品といったようなところにも消費者ニーズが拡大してまいっておりますので、このような漁獲高の四割を占める多獲性大衆魚有効利用というのは非常に重要であるというふうに考えられます。したがって、国民に良質のたん白供給するということからも、この第二の分野というものは今後ともさらに一層大きくなっていくものというふうに考えておりまして、さような意味で、今後の施策をこの加工施設資金については進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  18. 日野市朗

    日野委員 いま概括的な御説明がございましたが、いままでの実績を貸し付け件数でちょっとお示しをいただきたいと思います。これは数字で全般的に御説明をいただくのもあれですから、私の方で若干数字指摘をいたしたいというふうに思いますが、貸付総件数が四百八十八であるという点は、これはそのとおりでしょうか。よろしゅうございますね。
  19. 松浦昭

    松浦政府委員 そのとおりであります。
  20. 日野市朗

    日野委員 それで、導入した施設の内容を見ますと、かなりいろいろなところに使われているようでありますが、冷凍冷蔵施設については約二百五十件ですね。これは、かなりの件数がここに集中をいたします。冷凍冷蔵施設というとかなり金のかかるものでございますので、これだけの件数がここに集中しているということは、かなりの金がここに資金として投下されたというふうに思うわけでございます。しかも、その内訳を見てみますと、塩干の業者の方がそのうち百二十六件借り入れておりまして、こういう数字を見てみますと、実は私ちょっと疑問を感ずる点があります。これは私も何人かに相談してみたら、みんな同じような感想を漏らしたのでありますが、どうもここに少し資金が集中し過ぎた嫌いはないかということですが、いかがなものでしょうか。
  21. 松浦昭

    松浦政府委員 確かにただいま先生指摘のように、従来までの貸し付け実績を見ますると、ただいまおっしゃられましたように、四百八十八件のうちで冷凍冷蔵施設が二百五十件ということに相なっておりまして、そのほか加工の上屋等についても二百二十六件ということで、どちらかというと大きな施設に集中的に貸されたのじゃないかというふうにお考えになられるのではないかと思います。もちろん、この統計のとり方にも若干問題がございまして、導入施設別の貸付実績は実は延べ実績でございまして、冷凍冷蔵施設とか上屋だけを取得しているわけではなくて、そこの中のいろいろな施設も実は入っておりますけれども件数として上がってくるときには、一番大物を冷蔵施設と書いてくるものでございますから、そこにどうも集中しているように見えるということが一つございます。  しかし、御指摘の点は確かに実態面においても私はあろうかというふうに考えるわけでございます。と申しますのは、何と申しましても水産加工品の品質は原料魚の鮮度に左右されるということが非常に大きゅうございます。特に、御案内のようにイワシはいわゆる足の早い魚、こう言われておりまして、そのような意味で鮮度落ちが激しいということもございますために、特に鮮度の保持ということが非常に重要でございます。また、製品の品質というものもこの原材料の鮮度に非常に大きくかかわっているということから、また、季節的にもこの多獲性大衆魚というのは非常に漁獲が変動いたしますので、どうしても原料の安定的確保ということのためにはまず冷凍冷蔵設備からということから始まったのじゃないかというふうに考えるわけでございます。したがいまして、そのような意味では、いわばこれがベースになりまして、その上で高度加工の利用の施設が入っていくというふうにお考えをいただきたいわけでございます。  また同時に、いろいろな施設を設置するにいたしましても、何と申しましても冷蔵施設等は大きなものでございますから、機械施設等よりも高価で、かつ、非常に大きな資本が要ります。そこで、どうしてもここにまず金を借りなさるということが多かったのじゃないかというふうに考えるわけでございます。しかし、私どもといたしましては、このような冷凍冷蔵施設に非常に金が集中するということは、必ずしも今後続いてよいものではないというふうに考えているわけでございまして、やはり指導に当たりまして、特に都道府県等が計画を十分に審査いたしまして、多獲性大衆魚の高度利用に資するような形でこの資金が利用されるように、今後の指導に当たってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  22. 日野市朗

    日野委員 確かに、この数字を見せますと、みんなやはり、冷凍庫とか冷蔵庫とか、これは何も多獲性魚に限らずに何にでも使えるのだということから、この法律の本来の目的を離れた用途に充てようとしているのではないかというような疑問点を感ずる人も、これはないわけではございませんので、そこらのチェック状況、これも大事なことではなかろうかと思います。現在は、この融資の申し込みのときに申込書において審査するときにチェックをしているというのが現状であろうかと思いますが、ここいらは疑問の余地のないように、あらぬ疑いを抱かれないような一つのチェック方法を確立すべきであろうと思うのですが、いかがなものでしょう。
  23. 松浦昭

    松浦政府委員 多分、先生のお尋ねは、このような多獲性大衆魚の高度利用といったような非常にりっぱな目的を掲げて冷凍冷蔵設備をつくっておりながら、実は一時問題になりましたような魚転がしといったようなことのために利用されないようにするにはどうしたらいいか、そういうようなお尋ねであろうと思います。  私どもといたしましては、先般の非常に苦い経験があったわけでございまして、そのために魚離れといったようなことも起こったという事実がございますために、何と申しましても、まず第一に、これらの施設導入する際におきましてその計画を厳密にチェックして、原材料との関係あるいは加工企業との関係というものを十分当たりまして、都道府県が計画内容をチェックした上で貸すということがまず一つでございます。それからまた、できました施設につきましても、特に冷凍施設につきましては、その後の在庫の状況その他につきましては常に把握するように努めておりまして、いまのところは、かつてのような問題を起こしたような事態はないものというふうに考えておるわけであります。
  24. 日野市朗

    日野委員 いまのお答えですと、魚転がしというようなものに非常に強い関心を払われたお答えだったわけですが、そうではなくて、そのほかに冷凍冷蔵設備を持ってそれだけをその業とする、つまり多獲性大衆魚とか原料魚種の転換とか、そういうことではなくて、行ってみたらマグロが入っていたとかカツオが入っていたとか、そういうことが現実に起こらないようにすべきではないかと考えるわけですが、そういう点で問題の起こる余地がないのかどうか。
  25. 松浦昭

    松浦政府委員 ちょっと思い過ごしをいたしたわけでございますが、確かに冷凍冷蔵庫は汎用性のものでございますので、それが必ずしも多獲性大衆魚の保蔵、冷蔵といったようなものとつながらない可能性があるということは御指摘のとおりであろうと思いますが、私ども、実はこのような施設に貸します際に、きわめて厳しい計画のチェックをいたしております。つまり、その地域においてどの程度まで多獲性大衆魚水揚げがあるか、あるいはそこで加工施設がどの程度あって、どのような利用が実際可能かということをチェックいたしました上でこれを認めるという形をとっておりますので、さようなチェックを通しまして、実際にこの施設というものができる限り高度に多獲性大衆魚を利用するような、そういうものとして使われるように指導いたしているというのが現状でございます。
  26. 日野市朗

    日野委員 もう一つ導入施設を見てみますと、この加工場の上屋というのが件数でも多くて目につくわけです。もちろんこれは延べ件数でありますし、加工場というものも施設として見ればこれは総合的なものだということはよくわかるのですが、この上屋というもの、これはやはりいろいろな使い道があるわけでございまして、これは具体的に大体どんなふうに使われているのか。特に、この法律が目的としているところと照らし合わせて問題があるのかないのか、御説明をいただきたいと思います。
  27. 松浦昭

    松浦政府委員 実は上屋ということで一応統計には載っておりますけれども、これは機械等の施設の附帯施設という形で上屋が一緒に載ってくるということから、そのような御疑問が出るんじゃないかと思うわけでございます。機械の施設は当然原料転換あるいは多獲性大衆魚の高度利用化のための機械施設を入れておるわけでございまして、その上屋という形でもって附帯施設で入れておりますので、本来の目的に沿ったものというふうに考えておる次第でございます。
  28. 日野市朗

    日野委員 それから、資金の種類別のいままでの実績を見てみますと、いわゆる一号資金についてはだんだん実績が下降線をたどっているような感じがいたします。昭和五十六年なんかは、一号資金は一億円というようなことになっております。これは、五十三年では十七億、五十四年で二十二億、五十五年で七億、そして五十六年一億、こういうふうな下降線をたどってきているわけですね。ただ、私いろいろ考えてみまして、自分の地元の加工屋さんなんかの実情を見て、これはかなり原材料の転換にも意を用いてやっているわけなんですが、この資金需要から見るとずっと下降線をたどっているという、何か私の実感にはそぐわないデータが示されているように実は思います。これはどういうことなのか、水産庁の方で解明しておられるものがあったならば御説明をいただきたいと思います。
  29. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども考えますに、このように一号資金と申しますか、いわゆる原料転換資金がややその貸し出しが鈍っているという点につきましては、やはり当初、相当この需要はあると思っておったわけでございます。と申しますのは、原材料相当程度深刻に減るであろう、たとえば対ソ交渉あるいは対米交渉の結果、相当減るであろうというふうに考えられたわけでございます。しかしながら、まずまず海外漁場である程度までの加工原材料のための漁獲量というものを確保したということが一つあろうと思います。それからまた、いろいろな周辺水域での開発も進みまして、そのためにある程度まで原料が入手できるといったような状況も出てまいったんじゃないかという感じがいたすわけでございます。しかし、何と申しましても、加工原料としての北洋魚種の中心でございますスケトウは、先ほどある程度まで確保できたと申しましても、昭和五十一年二百四十五万トンございましたが、五十六年が百六十万トンということで、やはり大幅に減少しているということは事実でございます。  ある程度まで北洋産品の輸入は増加しているという状況はありましても、また、周辺水域開発ということがございましても、なおやはり原料転換を必要とするという事態は続いている。いま、一時やや安定的な状態があるというふうに思われるわけでございますが、まだまだ二百海里の将来も確定的ではない時期でございますから、この一号資金はそのような意味でやはり重要性を持っているというふうに考えるわけでございます。  また同時に、イワシ等の高度利用というものも進めてまいりますると、逆にまたこの原料転換というようなものも余り必要じゃなくなるということも考えられます。つまり、国内のイワシによって原料が賄われていくということも考えられますので、そういった点も含めまして、この一号資金、二号資金、双方併用いたしまして将来ともこの加工施設資金需要に充てていくことが必要であろうというふうに考えているわけでございます。
  30. 日野市朗

    日野委員 確かにいま長官が御指摘になったとおりだと思うのですね。いまのところは、スケトウなどは量的には非常に御努力をいただいてある程度確保しているわけですが、これがまた国際関係など厳しくなってまいりますと原材料供給が非常に落ち込むということは、これは考えられることなんで、それに、やはり時代としては北洋のものにいつまでも執着していてもいけない。もっと新しいものをどんどん開発していかなくちゃいけない、こういう時代になってきているのだと思います。  私、ちょっと心配しますのは、特に一号資金ですが、このような経過をたどりますと、この枠を締められてしまうようなことがひょっとしたら出てくるのではないかというようなことを非常に心配をするのでございますが、そのような心配はございませんですね。
  31. 松浦昭

    松浦政府委員 私ども考えといたしましては、まだまだ北洋の関係は安定した状態にないわけでございますから、一号資金といえども将来の資金需要が、そういう状態を想定いたしたくないわけでございますが、起こり得る可能性は十分あると思いますので、さような枠を締めるといったようなことはいたさないつもりでございます。
  32. 日野市朗

    日野委員 ちょっとしつこいようですが、そういう非常に厳しい事態が来て初めて、じゃその枠をふやしますよということではなくて、いまの段階から、もう早目早目にそういった手当てはしておくという意味から、ずっと締めるというようなことを考えていないというふうな御答弁でよろしゅうございますか。
  33. 松浦昭

    松浦政府委員 そのとおりでございます。
  34. 日野市朗

    日野委員 多獲性魚の新しい製品開発ということについても、みんなそれぞれ努力をしているようでございますが、一般的に国民が持っている印象は、どうもいま一つなあというところがあるような感じがいたしますね。これは、いろいろ業者も本当に努力しております。努力をしておりますけれども、これは国の方の研究開発というようなことも積極的にやはり進めるべき分野であろうというふうに思うわけでございます。  国の方でどんなことをやっているか、それからいままでの製品、大体百点ぐらいが新しい製品として出ているようなふうにも聞いておりますけれども、これはというようなものがあったら、ひとつ長官の方から御紹介いただければ……。
  35. 松浦昭

    松浦政府委員 多獲性大衆魚イワシ、アジ、サバといったような魚の高度利用という点につきましては、確かに先生おっしゃられるようにいま一つというところがございます。何と申しましても、消費者のお口に合うか合わないかということが最大の問題でございますので、その辺に焦点を合わせまして、しかも、新しい、若い消費者層というものにも目を向けまして、今後の製品開発していかなければならぬというふうに思うわけでございますが、ちょっと概括的に申しますと、大体この多獲性大衆魚の利用という点では、三つの大きな分野があると思っております。     〔委員長退席、玉沢委員長代理着席〕  まず第一は、新しい素材を開発するということでございまして、従来まではスケソウダラが中心でございましたすり身につきまして、イワシすり身をつくってみるといったようなこと、あるいはフィッシュブロックというような形、これはイワシではなかなかポロポロしましてブロックにはならないわけでございますけれども、たとえば工夫をいたしましてスケソウのすり身を接着剤と申しますか、そういうものに使いまして、それでブロック化してみる。これはかなり開発が進んでおります。それからもう一つ、新しい素材ということでいわゆるマリンビーフがあるわけでございますが、これはアルコールでたん白を抽出しまして脂肪分をある程度まで落としまして、いわゆる畜肉様の組織に変えていく、こういったような方法がございます。これが新しい素材の分野でございます。  第二に、新しい素材を用いた加工品でございますが、一つ練り製品でございまして、いわゆるくろぼこと言われているもの、あるいは恐らく宮城県でも大分つくっておられるのではないかと思いますが、魚めんといったような形のもの、これは、私、なかなか将来性があるのではないかというふうに思うわけでございます。それから冷凍食品としましては、イワシのコロッケ、フライ類、それから落とし身でハンバーグをつくる、あるいはくんせいといったような、新しい素材を用いた加工品が開発されております。その他の加工品としましては、たとえば冷凍レトルトフライといったようなものがございまして、これは学校給食でかなり使われているようでありますけれども、たとえばカレー味にしてレトルト食品にしてイワシを食べていただくといったようなことも開発されておりますし、あるいはサバのなまりぶしあるいはサバを使った粉ぶしといったようなものも開発されているわけでございます。これは県によっていろいろ特色がございまして、たとえば先生の宮城県でございますと魚めんが非常に将来伸びる商品じゃないかというふうに思いますし、それから茨城県ではイワシサバのレトルトフライをつくっておりますし、それから千葉県では落とし身の冷凍をつくりましてハンバーグをつくっているというようなところもございます。それから、埼玉ではイワシのそうめんをつくっておりますし、東京都ではイワシサバ練り製品、特にくろぼこをつくっております。それから長崎が、大臣のところでございますが、非常に進んでおりまして、イワシサバ冷凍すり身、これはくろぼこの原料でございます。それからイワシサバのフィッシュブロック、こういったものがかなりつくられてきておりまして、まだ一般的な商品というところまでいっておりませんけれども、かなり着実に進んでおるのではないかというふうに考えるわけでございます。  これに対する基礎研究でございますが、一つは、国が多獲性赤身魚高度利用技術研究開発事業ということでやっております仕事は、大きく言って四つぐらいございまして、一つは基礎研究でございますが、これはイワシサバたん白の特性、鮮度と肉質、血合い肉の利用、それからイワシ肉のアルコール処理といったようなことで、冷凍すり身化あるいはフィッシュブロック化それからマリンビーフの製造といったような、基礎的な研究をやっております。  それからいま一つは、第二は冷凍すり身化でございまして、特に赤身を、これは油も多いわけでございますから、水でさらしたり、あるいは遠心分離装置を使いまして脂肪分を抜くといったようなことで冷凍すり身化し、イワシすり身を食べやすくする、あるいは酸性の中和をやっていくといったような技術を開発しておりまして、長崎あるいは八戸の水産加工業協同組合におきましてはかなりこれを現実の実用品に開発いたしまして、もうすでに使っているという研究の開発分野がございます。  それからいま一つは、三番目といたしまして冷凍フィッシュのブロック化ということでございまして、これは落とし身のブロック化あるいはフィレブロックの製造でございまして、特にイワシはパサパサした性格を持っておりますから、それを粘着性を求めるといったようなことで食塩の添加その他を考えまして、このようなブロック化の技術を開発しているということで、これは技術的には完成をいたしております。  それからいま一つ分野は処理機械の開発でございまして、これは、一つは高速自動フィレマシンの開発、それからいま一つは熱水式剥離装置の開発ということでございます。  後者から申し上げますと、イワシサバ等を短時間で熱湯の中に入れまして皮を溶かしてしまう、それで油分も取るというようなことをやりまして、特にこれは皮がくっついたままの缶詰が多かったわけでございますが、そこを皮を取った形にして食べやすい缶詰製品の素材をつくるといったようなことを考えております。  それから高速自動フィレマシンの開発でございますが、これは、自動選別機でイワシならイワシの大きさを調整しまして、それから一定規格をつくりまして頭を一斉に取る、それから機械装置あるいは水の噴射の力によりまして腹を割く、あるいはこれをフィレの形に切り取る。これは骨も取れます。そういった装置を自動化していくということでございまして、これはまだちょっと値段が高くてコスト上の問題がございますけれども、技術的にはかなり進んだ開発状態になってきておる次第でございます。  そのような点でかなり実用化した面もあり、これからの面もございますが、このようなことで国の研究はかなり進んでいる状況でございます。
  36. 日野市朗

    日野委員 いまずっとお話がありまして、新しい製品への期待というものが高まっている折から、これからも懸命の努力業界も役所側もやっていかなければならないというふうに思います。  いま宮城の魚めんの話が出ましたけれどもイワシうどんなんというものを私の友人がつくりまして、これは食べてみても非常にいけるということでいまやっているわけですが、そういうものの広報なども、やはり水産業者、加工業者というのは余り大規模なところはないので非常に苦労するところで、これは役所なんかでも手をかしていただきたいと思う分野でございますので、その辺、よろしくお願いしたいと思います。  それから、漁協の問題につきまして簡単に伺っておきたいと思いますが、水協法の改正案がいま出ているわけであります。漁協の問題というのはいろんな問題がありますが、中でもきょう私が一点指摘をしておきたいのは、漁協の職員の待遇の問題であろうというふうに思います。  人間というのは、やはり給与であるとか労働条件であるとか、自分たちが認めてもらったくらいしか働かないというようなことが確かにあるものでございますね。私は、従来から、漁協の職員の待遇の問題という点についてはこの委員会でも何回か問題にしてまいりましたけれども、これについて、最近水産庁の方で調査をなさったわけであります。その調査の結果を見てみますと、非常に数字を多くずっと並べたというきらいがございまして、これを水産庁あたりは一体どのように読み取ったのかということは、やはり非常に大きな問題であろうというふうに思います。いかがでございましょうか。
  37. 松浦昭

    松浦政府委員 昭和五十六年度に水産業協同組合職員の労働条件等に関する調査というものを実施いたしまして、いろいろな事項につきまして労働条件、賃金水準その他を調査いたしたわけでございます。  その結果でございますが、漁協職員の労働条件につきましては、漁業という特殊な産業分野を相手とするということから、魚市場の現業労働にも従事するといった非常に厳しい条件にあるということがよくわかった次第でございます。また、賃金水準につきましても、五十六年のベースでございますが、農協職員と比較いたしますと、総合農協が月額十七万六千円といった水準でございまして、しかもこれは年齢が三十五歳でございますが、漁協の方は三十八歳で十六万八千円という水準でございまして、賃金水準も農協職員に対して劣るといった状況でございます。それからまた、そのほか定年制の状態あるいは労働時間、有給休暇、こういった点もいろいろと調査いたしましたが、細かくは申し上げませんけれども、やはり漁協の方が厳しい条件のもとで働いているということがわかった次第でございます。
  38. 日野市朗

    日野委員 水協法を改正いたしますと、共済事業それから信用事業においても内国為替についての制限の撤廃というように、新しい事業分野が広がってまいりますね。やはり漁協の職員の方々が誇りを持ってそういう事業に対応できるようにするためには、この職員の労働条件を改善していくということが急務ではないかというふうに実は私は考えているわけなのでございます。いかがでございましょう。
  39. 松浦昭

    松浦政府委員 漁協の場合には漁業との関連があるということで、他の協同組合の職員に比しまして非常に厳しい条件にあるということがあるわけでございますが、基本的に申しましてこれは労使間の問題であるとは思いますが、しかしながら、やはり今後事業量がふえていくということに従って労働条件が厳しくなるということにつきましては、十分われわれも指導していかなければならぬというふうに考えているわけでございます。特に今回、元受け責任を協同組合に持たせるわけでございますし、また、信用事業につきましても内国為替業務といったようなことを、将来の目標でございますが、オンライン化まで進めたいという気持ちも持っておりますので、さような事態につきましては現在のところ直ちに業務量が非常に多くなるといったようなことは考えられないわけでございますけれども、業務量の増大に即応いたしまして労働条件が過酷なものにならないように、十分指導していかなければいかぬというふうに考えております。  ただ、何と申しましてもそのためには漁協自体の強化ということが必要でございまして、その経営が基盤として確立していくということが何よりも重要であり、その点について特に水産庁としては意を用いていきたいというふうに考える次第でございます。
  40. 日野市朗

    日野委員 私、あと次回の委員会でまた水協法の関係については質問いたしますので、きょうは時間もございませんから、この点についてはこの程度にとどめますが、またこの点についていろいろ伺いたいということだけお話をしまして、私のきょうの質問は終わります。
  41. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 新盛辰雄君。
  42. 新盛辰雄

    ○新盛委員 漁船損害等補償法の一部を改正する法律案並びに水産業協同組合法の改正と共済事業問題について、これから質問をしてまいりたいと思います。  積み荷保険制度の諸問題について、まず項目を申し上げておきますと、一元化問題、さらにはわかりやすい簡便な制度、加入促進、安定的な運営、赤字部分の補てん対策、これが積み荷保険関係で、若干水協法とも関連があります。水協法の関係では、体質強化漁業協同組合の合併状況、いまお話がございました職員の労働条件の問題、そして最後に漁業経営負債整理の問題、この問題等に焦点をしぼってこれから質問をしたいと思います。  まず、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案については、すでに五十六年三月二十四日、私が各党の協力を得て附帯決議を出しました。その際に、漁業関係の保険、共済制度の統合一元化及び漁業災害補償制度の改正問題についてこれからどういうふうにするのか。前向きに検討をしなさいということを申し上げているわけでありますが、これについてどう対処されたか。大臣、お聞きになっていると思いますが、どういうふうな対処の仕方をされたか、まず聞かしていただきたい。
  43. 金子岩三

    金子国務大臣 三制度の一元化につきましては長年議論をされ、検討を続けてまいっておるのでございます。それぞれの歴史を持ち、いろいろな環境がありまして、短兵急に、早急にこれをまとめてしまうということはやはり慎重に取り組まなければならないという考え方で、いまもって検討を続けておるのが実情でございます。
  44. 松浦昭

    松浦政府委員 基本的方針につきましては、ただいま大臣から御答弁になったとおりでございます。  先生も御案内のように、この問題につきましては国会の附帯決議もございまして、特に昭和五十年から漁業に関する災害補償制度検討会を開催しまして検討いたしたわけでございますが、なかなか意見の一致を見なかったところでございます。五十一年の中間答申を受けまして、五十二年度から事業運営面の共同化等に関する試験も行いました。保険共済団体による保険共済事務共同化事業試験実施事業も行われたところでございます。しかしながら、この段階でも、やはり現段階で事務の共同化を検討するのは時期尚早、それからまたそれぞれの事業における事務の合理化を優先すべきだ、また、それぞれの事業問題点、たとえば加入促進等に努める方が急務である、統合一元化についてはさらに制度面も含めて中央段階で慎重に検討すべきであるということが結論であったわけでございます。  そこで、先般の国会のこの議論、新盛先生がお取り上げになりまして十分に御議論なすったわけでございますが、私どもとしましては、何と申しましてもこの三制度のおのおのにつきましてまず充実を図るということが先ではないかというふうに考えまして、今回水協法の改正をして系統組織の中による共済制度というものを確立するということも考えましたし、また、漁船保険につきましては、積み荷保険の本格実施というところに踏み込んだわけでございます。かようなことで各制度とも一応その骨格がそろいましたので、この制度を充実させまして、その上で先ほどのお話になりました問題についてさらに検討を進めてまいるということにいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  45. 新盛辰雄

    ○新盛委員 漁船損害等補償制度あるいは漁業災害補償の中で、今回任意共済制度の元受けということになっているのですが、こうした三つの諸制度をいまお話がございましたように鋭意努力してやらなければならないが、それぞれの内容について十分に充実させていかなければならぬ、これは同感であります。  ただ、その制度の内容についてこれまで議論してまいりましたが、どうもわかりにくい、あるいはもっと簡便な方法はないものか、こうした問題も提起されているわけです。だから、これらについて、確かにむずかしい面はありますが、五十六年にP1、いわゆる漁船船主責任保険制度が本格実施になりました。五十七年七月には漁業災害補償制度が改正をされました。ここにまた漁船積荷保険制度の本格実施、また、それに伴う任意共済制度を漁協等の元受けとするというのがこの提案の趣旨ですね。したがって、この三制度の一元化というのはなかなかむずかしい面はあるのですが、この任意共済制度の組織化を図ろうとする場合に、一つの系統組織、これを確立をしていくということであれば、その内容についても明確にわかりやすいようにしてもらわなければいけない。これまでいろいろなパンフレットも出ていますね。そして、各共済制度のあり方についても内容についても、事業内容そのものも大体出ているのですけれども、どうもやはり全体を通して一元化という問題になってまいりますと、なかなか言うはやすく行うはかたしの方で、水産庁、もっと精力的にお取り組みいただきたいと思うのですが、どうですか。
  46. 松浦昭

    松浦政府委員 各三制度、つまり任意共済の制度、漁船保険の制度、それから漁災の制度、この三つがおのおの現在分立した形で存在しておりまして、しかしながらその末端が同じ漁協であるというところに、上の方も統合してはどうかという御意見があるということは私どもも十分に承知をいたしておるところでございます。  私ども、ただいま大臣からも申し上げましたように、この統合ということになりますると、これはなかなか容易ならざる問題もございますし、過去の経験から申しましても、一挙にこれを持っていくということはむずかしい点もございますので、まず各制度の充実ということで、今回その三つの制度のうちの二つの制度について充実を図ったということでございますが、この充実を図りながら、一方におきましてこの全体をまた組織としてどうするかということも検討してまいりたいと思っておるわけでございます。特に、ただいま先生指摘のございました、各制度をもうちょっとわかりやすく整然としたものにしたらどうかということでございますけれども、この点につきましては、私どももいままでずいぶん制度の改正のたびにその整理に努めてまいったわけでございますが、今回も任意共済につきましては当然共済規程の認可という手続がございます。その手続の中でまた十分に検討させていただきたい、また、業務の指導という面でもこの点につきましてよく考えさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。
  47. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それと、この積み荷保険制度の安定的な運営、これは、われわれがこれまで本格実施前にやってきた状況から見まして、将来ともこの保険制度は不安はないだろうかという面で少し危惧を持つのでありますが、この点についてはどういうようにお考えか。  もう一つ、この漁船保険組合の中での漁船積荷保険の実施状況、これは赤字が出ているわけなんですが、たとえば巷間伝えられておりますように四組合の支払い準備金が不足している。漁船保険中央会の中では、これまでこれは努力をされてきた結果ですが、九億円。これは五十六年度ですから、五十七年、五十八年で十二億くらい出るのじゃないかと言われておりますが、これは支払い準備金の蓄積がありますよということですから、赤字部分にこれらを補てんするとか、こうしたことについてはやはり公に明確にしていく面もあるのじゃないかと思うので、その辺をひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  48. 松浦昭

    松浦政府委員 二点についてお尋ねがございましたので、分けて御説明を申し上げます。  まず、漁船積荷保険の加入状況から見て事業の安定的運営に不安はないかというお尋ねでございますけれども、この点につきまして、積み荷保険の過去十年間、昭和四十八年から昭和五十六年までの実績でございますけれども、加入計画に対しまして、隻数で一二〇%、保険金額で一三二%、純保険料で一一五%ということになっておりまして、損害率が六三・五%ということでございます。数字から見ますると順調に推移しているということが言えるわけでございます。  ただ、先生も御案内のように、加入隻数が比較的少ない、つまり加入率が二〇・七%でございますので、このようなことから考えますると、いわゆる危険分散が十分であるとは言い切れないというふうに思います。特に事業規模に比較いたしまして一件当たりの保険金額が大きいわけでありますから、一発大事故が起こりますと途端にその組合には非常に収支の不安が起こってくるという状況であることは事実でございます。このようなことで、今回もこの点は十分に考えまして、実はこの法律案にございますように、再保険の責任を従来の試験期間中は漁船保険中央会にやってもらっておったわけでございますが、今回は本格実施に当たりまして国が再保険者になるということをやりました。これで非常に安定化するというふうに思うわけでございます。  それからまた、加入拡大をすることが非常に必要でございますので、試験実施期間中にございませんでしたいわゆる国庫負担ということにつきましても、かなり財政的に問題がございましたが、実現をいたして、目下五十八年度の予算の中で要求を申し上げているところでございます。  それから最後に、元受け組合につきましては依然として一〇%の責任があるわけでございますけれども、この点につきましても一組合だけで果たして危険分散が、たとえそのような小部分についても図れるかどうかわからないという問題がございますので、この点につきましては漁船保険中央会に補完再保険をお願いするということで、法律にも規定されているとおりの内容となっているわけでございます。  このような三つの制度によりまして安定化を図ってまいるというふうに考えておるわけでございます。  次に、試験期間中に元受け組合の赤字が発生したじゃないかということでございますが、これもそのとおりでございまして、実は欠損金が、保険勘定で見ますと、昭和五十七年三月末現在で七組合四千万円、それから業務勘定を含めた欠損金になりますと四組合合計一千二百万円、これが欠損金の状態になっております。一方、先生指摘のように、五十六年度末で漁船保険中央会に生じた繰越剰余金は九億一千八百万円ございます。五十七年度になりますとこれがもうちょっと上がると思いますけれども、いまはちょっと確定した数字を申し上げられる段階になっていませんが、もちろんこの剰余金はまだ本年の九月末まで試験実施の引き受けをいたしまして一年間の責任がありますから、五十九年の九月末まではまだ責任期間が試験実施として残っております。したがいまして、この試験実施契約の準備金に充てなければならぬということは当然でございます。  しかし、そういうことをいたしました場合に、さらに剰余が残る場合が恐らくあろうというふうに私どもも想定いたします。そこで、そのような剰余金が出ました場合には、漁船保険中央会を初めとする業界の中で十分に話をしていただきまして、そのときにそこでその使途を決定いたしたいというふうに考えておりますが、その中の一つ考え方といたしまして、いまの赤字の補てんの問題、さらにはこの積み荷保険の振興のために活用するといったようなことも考えていただけたらなというふうに考えておる次第でございます。
  49. 新盛辰雄

    ○新盛委員 安定的な運営をどうやっていくかというその根源は、何としても保険事業の円滑な運営の基礎になります加入状況がこれから先増加していくという形がとられない限り、非常に問題になってくるのじゃないかと思うのです。  いまお話がございましたが、積み荷保険の方の対象漁船というのは約八千九百隻、そのうち本制度に加入しているのは一千八百四十隻、加入率は二〇・七%、かなり低いわけですね。いろいろな理由があります。ただ、この加入率の拡大をどうするかということで、百トン未満の漁船、これは義務加入のものに限るということで前回いろいろ議論もして進めてきましたね。そして、今回はこうして積み荷保険の保険料の一部を国庫負担にするということになったわけです。だから、こういう状況から見て、確かに危険率、いわゆる一発事故が起これば大変なことになるということもありますので、そういう場合の財源確保というのは当然必要になってくるわけですね。今回、国庫負担ということなんですから、なおのこと、そういう面では大事をとらなければなりません。いつも加入促進、加入促進と言うが、何か百トン未満の船の隻数は多いんだけれども、加入は非常に少ない。五トン未満で十八万九千八百三隻、そのうち五十五隻しか入っていないし、五トンから四十九トンで二万四千二百一隻あって三百六十三隻。五十トンから九十九トンで三千二百十一隻あって、そのうちの四百六十九隻。百トン以上は二千五百二十四隻あって、これは九百五十三隻。普通保険の場合二十一万九千七百三十九隻、積み荷保険の場合一千八百四十隻、こういう現実なんですね。だから、どうしたらこれを加入促進できるか。  この点、国庫負担になったから少しは内容が変わるだろうし、また、危険分散率もそう心配ないだろうというので加入者も多くなるだろう。ただ、その理解だけじゃいけないのではないか。事業活動ですから、もっと積極的に何か手を打つ方法はないのかどうか、それが一つ
  50. 松浦昭

    松浦政府委員 現在の積み荷保険の加入の実績は千八百四十隻でございまして、先ほど申しましたように二〇・七%の加入率でございます。これを一〇〇%にするということは非常にむずかしい話でございまして、それはおのずから限定があると思います。と申しますのは、加入対象となっている漁業種類の中には、漁場が近くて操業日数が短いというものがあろうと思います。先ほど先生指摘の非常にトン数階層の低いところというのはこれに当たるところが多いのだろうと思いますが、やはり漁場が遠くて帰って来る間に積み荷が損傷を起こすといったようなところが入ってくる可能性が多いというふうに思います。したがいまして、たとえば近海カツオのように二、三日で帰ってくるもの、あるいはまき網のように日帰り操業、あるいは沖底のように一日といったような操業日数あるいは漁場が近い船は将来とも余り入ってこないのではないかというふうに思います。もちろん、そのほかに経営不振で加入のしにくいイカ釣りとかカツオ・マグロもありますし、また、事故が余りないというものもございます。北洋かごとかあるいはサケ・マスはえ縄、サンマ棒受け等は事故が少ないので余り入ってこないというようなことがございまして、加入率が一〇〇%を期待するということはむずかしいと思います。  しかし、現在の二〇・七%の加入率では低いではないかということはそのとおりでございまして、私どもといたしましては、とにかく先ほど申しましたように、五十八年からは本格実施に当たりまして国庫負担をつけるということでいま予算をお願いしているわけでございまして、これによりまして百トン未満の階層がかなり入ってくるのではないかというふうに考えられますし、また同時に、何と申しましても普及宣伝をやっていくことが非常に重要だと思います。この点で、普及宣伝費の補助金を中央会に交付していくということで、三百三十九万円でございますけれども、このような補助金も考えておりまして、中央会を中心にいたしまして、ぜひこの制度改正を機に加入の増進を図っていただきたい、その一大運動を展開していただきたいというふうに考えているわけでございます。  ちなみに、五十八年度はわれわれとしては加入見込みを二千二百十七隻ぐらいまで引き上げたいというふうに考えている次第でございます。
  51. 新盛辰雄

    ○新盛委員 ひとつ努力をお願いします。  そこで、先ほどもちょっと議論しましたが、保険組合の中には本事業の損害率がほぼ毎年一〇〇%を超える、恒常的に赤字が生じている保険組合が先ほど具体的にございましたね。この補完再保険事業があったとしても、赤字の発生は続くおそれがあるのではないか。その対応策についてどうするか。具体的には、補完再保険事業をどうするのかということなんです。それで、当分の間というふうに言われておりますが、これは当分の間でいいのかどうか。恒常的に赤字がどんどん出る。これは、補完的に再保険の事業をやっていく場合の具体的措置の話をしているのです。そういう面ではどういうふうに考えておるのか。
  52. 松浦昭

    松浦政府委員 漁船積荷保険におきましては、加入件数が少なく、組合内部で危険分散が必ずしも十分にできないということから、組合段階では、損害率の変動が大きい、それからまた支払い変動に備えるための準備金が試験実施中に十分蓄積されていないという状況にあると思います。したがいまして、ただいま先生がおっしゃられますように、もちろん補完再保をやってこれによってそのような組合が安定的に事業ができるようにしていくということでございますが、これにつきまして、この漁船保険中央会の補完責任を当分の間ということにしているということで御指摘があったのだろうと思います。その点につきましては、私どもは組合内部での危険分散が十分できるようになるまでの当分の間というふうに考えておるわけでございまして、さような要件が満たし得るような時期まではこの補完再保険というものは必要であるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、そのようなことからそう簡単にこの補完再保険を切るというようなことはむずかしいのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。  それから、補完再保険をどのような仕組みにするかにつきましては、これから漁船保険中央会が中心になりまして団体内部で決めていただくことになっておりますけれども、団体側では五十六年から実施しております漁船船主責任保険と同様、組合の一年間の支払いが一定の限度を超えた場合に再保険金が支払われる、いわゆる包括超過損害方式という形でやっていくというふうに聞いておりますので、さような点からも、この補完再保が安定的な形で仕組まれるように私どもとしては指導してまいりたいというふうに考えております。
  53. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほども確認しておきましたが、この燃油高騰に伴って経営が非常に圧迫されまして、特に中小漁業者に対する積み荷保険料の実質的な負担軽減、そういうことも考えなければいけないですね。だから、漁船保険中央会の支払い準備金の九億の使途のあり方について——私いまちょっと推算して、十二億くらいあるのじゃないかと思うのです。だから、管理運用、そうしたことについては特段の配慮と政府の指導方針を明確にして指導してほしい。これは要望申し上げておきます。  それから水協法関係に入りますが、まず、水協法改正の焦点は、内容的に見れば先ほどから議論しております元受けの問願とかあるいは為替の問題、やがてのオンライン化へのつなぎをおくればせながらということの改正でして、私どもとしてもこれまでもっと早くやるべきではないかという気がしておりましたから、賛成です。この体質強化、これは何としてもこれからの漁協あるいはこの水協法に基づく運営の面では力をつけなければいけない。どうも農協系列から見れば見劣りするじゃないかとか、その寄って立つ組織機構、その他農畜産物と魚の違いというのはおのずからあるわけです。もっと積極的に日本の七つの海、そしてまた動物性たん白質源の、米と魚と言われているくらいですから、二百海里云々の議論はいままでずっとやってきましたから申し上げませんが、ぜひこうした面での体質強化を図る必要がある、こう申し上げればわかると思いますが、これについてどういうふうにお考えになっておられるのか。まず、そこからひとつお聞かせをいただきたい。
  54. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに漁協の系統組織の内容を見ますと、他の協同組合組織に比べまして信用事業、販売事業、購買事業、あらゆる点をとってみまして、まだまだその域に達していないということは事実でございます。そのようなことから、また先ほどの職員の待遇の問題についても同じような問題が出たというふうに考えている次第でございます。  そこで、何と申しましても、このような漁協の体質強化というものを図っていかなければならないということから、一つは、漁協の合併といったようなことによってより大きな規模の漁協にしていって、その指導を図っていく。それからまた同時に、この漁協の経営の内容を適正なものにし、残念なことに最近不祥事件も幾つかあったわけでございますが、かようなことが起こらないように監査、指導に努めていく。そしてまた、それがさらに漁協の経営の改善、向上につながるような形での指導につながっていくようにしていくというようなことが非常に重要なことではないかというふうに考えるわけでございます。  それには、何と申しましても、一つ漁業者そのものの体質強化、そしてまたその漁協のよって立つところの経営の基盤となりますところの漁業強化ということがございますので、御案内のように、後でお触れになると思いますが、今回の負債整理資金につきましても、漁協についての協力資金といったようなことも考えまして、単協漁協の組合員の強化ということも図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  このようないろいろな漁協に対する指導面の強化ということの一環といたしまして、今回、水協法につきましても、共済事業の元受け責任を持てるということによりまして漁協の系統というのは新しい一つ事業ができることになりますので、その面では一つの信用事業にも匹敵すべき事業が開始できるということから、強化の策になると思いますし、また、適正な漁協の運用という面からは監査士の法制化ということもやったわけでございます。さような観点から、今回の法改正もこの漁協の強化というものにつながっていくというふうにお考えになっていただければありがたいというふうに思う次第でございます。
  55. 新盛辰雄

    ○新盛委員 なぜそういうことを聞いたかと申しますと、これまで北海道とか千葉とか、大臣のおられる長崎とか、漁協の事故が出ているわけですよ。それで、合併とかという問題も、仕組みが単協、漁協系統、系列の問題というのはなかなか複雑ですからむずかしい面はありますけれども、事故を起こし得るような要素がどこかにあるのか、そのところへメスを入れてやらないと、これからもどんなことが起こるかわかりません。その危惧を持っているから申し上げたのです。内容について一々は申し上げません、内容についてはもう御存じのとおりですから。  今後、こうしたいわゆる体質強化という面で、こういう事故が二度と発生しないようにお約束できますか。水産庁がこれを指導しなければいけないのですから、大臣もひとつこの点の決意を聞かせておいてください。
  56. 松浦昭

    松浦政府委員 多分そのお尋ねであろうと思っておったわけでございますが、内容につきましては申し上げなくてもよろしいかと思うわけでございますけれども、残念なことに、北海道に続きまして千葉、長崎と大きな事件が起こっております。いずれも漁協の活動が事業の拡大、魚価の高騰等によりまして非常に拡大している中で、人事管理体制その他の組織整備されず、また、体制が整ってないというところに共通の欠陥点があるというふうに考えるわけでございます。  水産庁としましては、この事件を契機にいたしまして、漁協系統事業活動の総点検を行いましたほか、漁連に対する検査の強化を図りまして、さらに漁協系統事業に対する一般的指導通達を出すといった措置を講じたわけでございます。このような不祥事件の発生が有力漁連に相次いで発生しているというところを見ますと、どうもやはりある程度まで、趨勢的な魚価の上昇を背景にいたしまして、そのような事業の拡大に管理体制の整備が追いつかなかった、水ぶくれになったということが否めない事実ではないかというふうに考えるわけでございます。率直に申しまして、そのようなことは幾つかの漁協、漁連等にも必ずしも見られないわけではないというふうに私ども思うわけでございます。  そこで、私どもとしましては、まずこの体質の改善ということを図っていくべきであるというように考えまして、行政による検査はもとよりのこと、今回の法律整備によりまして自主監査という面も強化いたすことになりましたので、このようなことを通じましてぜひ体質の改善を図り、このような事態がないようにしていきたいというふうに考えておる次第でございます。  また同時に、最近のこのような一連の事件を振り返ってみますると、水産流通業界に全般的に見られたいわゆる投機的な取引というものも非常に影響していると思います。最近は幸いなことに、いわゆる横取引というよりも、卸、仲卸、仲買、小売といったような縦取引の方が流通の主体となるという正常化が行われておりますので、このような事件が発生をする契機というものは減ってきているというふうには思いますけれども、しかしながら、同時に、このような投機取引というものを抑制して、そのようなものが発生する地盤をなくしていくということが非常に肝心であるというように考えまして、行政庁としてはそのような点にも今後も努力を払ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  57. 新盛辰雄

    ○新盛委員 先ほど、同僚の日野委員の方から職員の労働条件の問題で質問がありました。漁協系統に働いている職員の諸条件は非常に劣悪であるというのがいま御発表になった五十六年度の調査で実態的に明らかになったというのですが、農協とか漁協とか対比するのもちょっとおかしいのですね。農協では賃金の平均が三十五歳で十七万五千円、そして漁協では三十八歳で十六万八千円。定年制の問題とか労働時間の問題だとか、五十六年度調査で実態はいろいろ明らかになったというのですが、これから事業量がどんどんふえる、オンライン化をする、合理化する、そういう中で、装置産業の企業なら、合理化する場合、賃金を上げるでしょう。ところが、現実的にはこんな低い賃金でこれからどうするのか。労働条件を改善される意欲を持って対処されるのか。  昨年の国会で私取り上げましたが、監視船に乗っている水産庁の皆さんが何らの保障もなく、乗船するための出張手当くらいもらってやっているような状況で、改善されたかどうかわかりませんが、そういう面では、全体的に言うところの漁協や水産加工協同組合等に働いている職員の給与とか諸条件が非常に悪いという調査の結果も出ているのですから、大臣、ここはひとつ善処していく前向きの姿勢を示していただかなければ、事故が起こらないようにするんだといまおっしゃっていますが、体質改善即労働条件の改善にもつながる、そのことをこれから明確にどうするかです。いままでの実態調査はよくわかりましたから、どうするか、お答えいただきたい。
  58. 金子岩三

    金子国務大臣 やはり事故のもとは人材によって起こっておるわけであります。待遇、処遇をいろいろ検討した場合、農水省の所管の農林漁業を比較してみても、農業団体の職員よりも水産団体は大変落ち込んでおるわけでございます。それだけ人材も優秀な人をそろえていないというように端的に考えてもいいんではないかと私は思います。  やはり処遇をよくして人材を優秀な人を求めていくということが何よりも事業経営根本の問題でございますから、新盛先生が言わんとするところは十分私も承知いたしております。したがって、水産庁は、そういう職員、そこで働いておる一般の方々、こういう人の処遇についても、一般の鉱工業と均衡のとれたような処遇が十分できるように方向づけをする、こういうような方向で進んでいきたいと思います。
  59. 新盛辰雄

    ○新盛委員 大臣の力強い決意も聞きましたが、あなたが大臣におられる間、水産業については長年携わった方でもございますから、ぜひこの際、金子大臣はよくやってくれたとみんなに言われるように、さらに一層の努力をお願いいたします。  あと二十分ほどございますので、きょうはここで詰めて議論をしておきたいと思います。  所信表明に対する質問の際に、漁業経営負債整理資金の問題で、少し上辺をとっただけで内容に、入りませんでしたが、この扱いは、せっかく五十八年度予算編成に当たって水産庁も御苦労されて、大蔵省との接触もいろいろあったんだろうと思いますが、どうもその効果は出るのか出ないのかという面では、漁特法に基づいて自主減船二〇%という、業界が自助努力によってやっておられることに対して、共補償を含めるそうした処置を、金で、ある意味では融資政策としておやりになるというのが基本になっています。  これまでの経緯を見ますと、この漁特の関係でそうした自主減船等をやっておるカツオ・マグロなどの状況を踏まえて、あるいは最近の燃油高騰、そしてまた魚価の不安定、あるいは入漁料などなど二百海里の国際間の諸問題が出てきておつくりになったわけです。漁業経営維持資金というのは五十六年度で四百七十億、五十七年度で四百二十億、なぜか五十億これは少ないのでありますが、それはほかへ回っているのです。いわゆる燃油融資として、これは枠組みでありますが、五十六年度は急激に油が上がったのを背景に一千億。ところが、五十七年度になりますと七百億になっているのです。そして負債整理が、いわゆる漁獲量よりも借金の方が多い。固定負債ですね。年間漁獲量がいま二兆一千億ぐらいですか。ところが、逆に負債整理の方が最近では二兆三千億ぐらいになっているんじゃないか。これは推算ですよ。こんな経営はどこもないですよ。だから、こういう借金経営でありましたので、この際、負債整理資金として、五十六年度はなかったのですが、五十七年度に三百五十億の枠をつくったんですね。非常に画期的です。  ところが、五十六年から五十七年のつなぎの中で、油の方を減らして、あるいは漁業経営維持資金の方を五十億減らした。結局、合計三百五十億減らした。そして、今年度の五十八年度の予算では、この漁業経営維持資金は四百二十億、そして油の融資は三百五十億。七百億が一挙に三百五十億になっている。今度は負債整理資金の方にその部分を、三百五十億であったものを六百五十億。非常に計算がうまくできているのです。この中だけの操作です。だから、大蔵省がこのマイナスシーリングの中でめんどう見てくれるというんじゃなくて、いわゆる枠組みとしては変わらない。内部操作であります。  だから、どっちだっていいじゃないかということになるんでしょうけれども、気になりますのは、この負債整理資金は、経営者がそういう固定負債を非常に抱えているにもかかわらず、今日までの状況を見ますと、五十七年度の三百五十億の金も実は使っていないらしい。十億ぐらいは使ったかもしれないな。これは私が聞いている範囲ですし、業界の方も、こんなあれがあるものかという不満がどんどん出ていますよ。「かつおまぐろ通信」の何月号でしたか、載っています。これは載っているのです、現実に。だから、これはどうなんですかね。現実の仕組みでどうなっているか。あるいは資料も要求しなければなりませんが、この政策融資の各年別の償還状況ですね、これは後で触れますけれども、そうしたものとか、あるいは各地域の自己資本不足に対する手だてをどうしたとか、具体的な例というのはあります。しかし、総体的に言えば、制度があっても魂が入っていないなあ。せっかくつくっていただいたのはいいけれども、十九項目ぐらいあって大変むずかしい。だから、この辺はひとつしっかりとした、きょうは、これは恐らく初めて具体的に公表される部分があるだろうと思いますが、ぜひお聞かせをいただきたい。すでに通達も出しておられるというのですが、それらも含めて、経過、これからの方針、そして内容について示していただきたい。  以上です。
  60. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに今回の負債整理資金は、従来の資金と異なりまして、自主的な減船計画というものを前提にいたしまして、漁業者の方々が生産構造の再編成をするという意欲をお持ちになって、そこで構造改善の指定ということを前提にした事業を行っていただくということの反面、その事業を推進するために必要な共補償を行う際にどうしても従来の負債が非常に重荷になって、そのために処理しなければならない負債を流動化しようということからこの負債整理資金をお貸ししようということになっておるわけでございます。  かようなたてまえから申しまして、幾つかのことが申せるわけでございますが、何と申しましても、自主的な減船計画を立てていただくということはやはりその業界にとってはなかなか大変なことでございます。当該業界のコンセンサスを得ながら減船までこぎつけるという過程は、カツオ・マグロ業界も本当に業界挙げて涙ぐましい努力をなさってようやく二割減船というところまでこぎつけたわけでございますが、このような進んだカツオ・マグロ業界のところまで至らないで、いまだにまだ業界の中でいろいろと御議論なさっておる段階のところがございます。さような意味で、カツオ・マグロ業界以外の業界が減船計画を立ててこの負債整理資金をお借りになられるところまでなかなか至らなかったという問題が一つございました。  それからいま一つ、この負債整理資金につきましていまだに十分な資金が出ていないという状況は、確かにこのような負債整理資金というものは、共補償をなさっていかれる方々の足かせになる、つまり、共補償をやりたいと思っても負債が非常にかさんでどうしようもないといったような方々の負債の流動化、あるいは減船をなさってそれで去って行ってしまわれる方々の持っている巨大な負債を漁協が肩がわりしていくといったような、そういう多面にわたる負債をどうやって一体処理していくかという、従来の燃油資金なりあるいは経安資金とは違った側面のむずかしさというものを持っていたわけでございます。さような意味から、施行につきましての通達も、まだ未経験でもございましたし、かなりおくれまして、その資金供給がまだおくれているという事態がございます。  それから第三点といたしまして、実は前長官の時代に行われました、いわゆる二年間の償還延期という事態がございました。これによりまして、特に制度資金の面につきましてはあの償還延期がまだ非常にきいているものでございますから、特に緊急融資の分につきましてはまだ弁済期が到来していないというものがかなりございます。したがいまして、まだ弁済期が到来いたしておらないものにつきましてはお貸しする必要がございませんので、そのような意味資金供給が、三百五十億の枠がございましてもまだ十分に行われてなかったという点がございます。  しかし、特に最近、業界の方々がおっしゃっておられまして、この問題について、資金量が十分供給できないのじゃないかという、一つの非常に大きな問題がございました。これは何かと申しますと、緊急融資資金につきましては、償還期限到来後三カ月以上未返済の債務の場合には、これをある意味では自動的に負債整理資金に切りかえてあげますということを申しておるわけでございます。これは要綱どおりでございまして、別に貸付要件が厳しいというわけではないわけでございますが、問題は緊急融資資金以外の資金、いわゆる民間のプロパー資金でございます。  緊急融資の場合には、これは制度融資でございますから、お貸しする際にも各団体あるいは県、国が十分にチェックをいたしまして適切な貸し付けを行っておりますので問題はないわけでございますが、この民間のプロパー資金というのは、場合によっては何のために借りているかということが非常に問題になってしまう資金でございます。そのために、あるいは駆け込みで金をお借りになるというような心配もございまして、財政当局はこの点につきまして非常に厳しいことを言ってまいっておりまして、特にこの資金が広範な使途にわたるという点から、その要件が非常に厳しかったわけでございます。これは、御案内のように基準年次を五十六年三月末ということを言っておりまして、その時点において六カ月間未済になっている債務に特定して、これについて見ますということを言ったわけでございます。そこで、このような債務を特定することができるかどうかという非常にむずかしい問題が起こりまして、このために、先ほどちょっと先生がお触れになりました、十億ぐらいしか貸さないのではないかといったような問題が実は起こってまいったわけでございます。  そこで、団体の方も非常に心配でございましたし、私どもも、三百五十億の枠があるのにこのような問題のために実際に資金供給できないということではこれは大変なことになりますので、このような時間的なギャップによってチェックできないということから所定の条件になかなか該当できないということによって貸し付けができないという問題を回避いたしますために、実は二月二十五日に通達を出しました。この通達によりますと、プロパー資金の分、民間の供給する資金の分につきましては、五十六年三月末における自己資本不足額から現在の緊急融資資金借入残高を控除した額の範囲内の債務は実施要領で定める要件に該当する債務とみなすという扱いを実はいたしたわけでございます。これは自動的に自己資本不足額が決まってまいりますし、それから緊急融資額も自動的に決まってまいりますので、これによりまして非常に簡便な方法で固定債務額を確定できるという方法をとりまして、実は先日通達したばかりでございます。さようなことによりまして、かなりの資金量は今回出ていけるものと考えているわけでございます。  それから、いま一つ基本的な問題といたしまして、先ほど私ちょっと触れましたように、業界によりましては減船という措置もなかなかむずかしいという業界もございます。たとえばイカ釣り業界などはなかなかこれに乗りがたいという問題もございますので、さような業界につきましては、実は対象業種といたしまして生産性を上げるためにいろいろな合理化施設をする。そういったものもあわせまして、減船と合理化をあわせまして二〇%程度経営の効率化が達成できるものについては、それも負債整理資金の対象にいたしましょうということも実は要綱の中に入れたわけでございます。さようなことから、イカ釣りの業界もいま一生懸命検討しておられますが、これはちょっと今年度には間に合わないかもしれませんけれども、このような業種につきましてもこれに乗れるというような状況が出てまいると考えておるわけでございます。  それから、明年度以降につきましては、当然、先ほど第三点として触れましたいわゆる二カ年間の償還期限の延長がきかなくなってまいって、緊急資金につきましても弁済期が来るという債務が相当出てまいると思います。したがいまして、私どもとしましては、現時点では確かに先生御心配のようになかなか出ない、資金の枠が消化できないという問題があるわけでございますが、ただいま申しましたような緊急の手当てと、それから将来の展望を持っておりますので、これにつきましては有効な活用が徐々に出てまいるというふうに考えている次第でございます。
  61. 新盛辰雄

    ○新盛委員 経過と措置について、これからの方向もややわかってきました。これは、結論から言えば、漁業再建整備特別措置法の範疇で、ある意味では、漁業生産構造の再編整備という形の中で特定的にカツオ・マグロの減船という問題が主力になっていたわけですよ。いまイカ釣りの話が出ましたが、本資金融資は、沿岸漁業者との関係はどうなるだろうか。これは、そういう措置に与える融資であるから、漁特法上の減船になじまない。本資金融通の指定業種というのは実施減船種を言っておるわけですから、これは非常に困難だ。だから、この辺のところを、イカ釣りもですが、沿岸の関係も含めたこういう融資対策を何とか踏み越えることができないものかどうか。そういうふうにすることによってもっと有効適切に活用ができるのじゃないかと思うのです。  もっとも、今回の負債整理資金は六百五十億、前回は三百五十億で、一千億ですからね。この金を、基本通達関係で六、事務処理通達関係二つ、ことし限りの経過措置通達関係二つ、対象業種別通達関係で三つ、関連通達関係二つ関係資金通達関係で四つなど、これは十九ぐらいあるのですね。大臣、これは大変ですよ。複雑な事務能力の必要も出てきましょうし、そうした面でなかなかうまく行き当たらないのじゃないか。もちろん、いま長官おっしゃいましたけれども、負債整理なんですから緊急活用しなければだめなんですよ。しかも、今村長官のときに二カ年間の償還期間延長をやったのですよ。それがいまになって来るということなんですが、それも踏まえて、いまも長官御答弁ありましたけれども、ぜひ幅のある活用、そうしたことに主力を置いていただく必要があるのじゃないか。そんなことはとんでもないことだ、大蔵省は来ておりませんが、そんなものは大蔵省が目をむくんじゃないか、こういうことなんですが、そこが政治なんですから、ひとつそういう判断をしていただいてぜひ前向きに解決をしていただきたい。  それから、この政策融資のこれまでの年度別償還状況、そしてこれからの展望、こうしたことについて資料を持っておられるならひとつ出していただきたい。いま申し上げた資料、政策融資の年度別償還状況がありますかどうか。その資料を出してください。委員長からひとつ言うてください。
  62. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 いいですか。
  63. 松浦昭

    松浦政府委員 政策融資の各年別の償還状況は持っておりますので、また御提出もできますので、そのように取り計らいたいと思います。
  64. 新盛辰雄

    ○新盛委員 資料もあるとおっしゃいましたから、どうせこれは後で配っていただくことになるのですから、その概略でいいですから、ちょっと状況を教えてください。
  65. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  減船の主体になっております日鰹連傘下のカツオ・マグロ漁業者状況でございますが、五十七年一月一日現在で各種制度資金、つまり経営維持資金燃油資金等でございますが、この借入残高が八百十六億ございます。これの各年次別の償還状況でございますが、五十七年が七十二億、五十八年が二百六十九億、五十九年が二百八十四億、六十年が百三十億、六十一年が四十七億、六十二年が十一億、六十三年が二億、かような状況になっております。
  66. 新盛辰雄

    ○新盛委員 それで、これから活用していただく負債整理資金ですが、わが党としても前から漁業経営者の経営を圧迫している固定負債を何としても解消してもらうための要求を出しておりました。だから、随時これが改善の方向に向いていることも事実ですね。それを有効かつ適切に、早急にこの経営の立て直しができるようにぜひ全力を挙げて、せっかくつくったものですから、莫大な予算ですから、ぜひこの点はこれからは心して水産庁としても行政の面で御指導をいただきたいし、また、さらに活力のある政策を出していただきたいと思います。要望しておきます。  それで、時間がありませんが、燃油の問題も最近はこうしてOPECの状況が変わってきましたから、少なくとも漁業者にちょっとした安堵感もあると思いますが、系統買いにおいてもいまこの油の値段というのは少し横ばい状態だと思いますね。いわゆるこれまで八万を超えたことがありますね。それがいま七万幾らぐらいになっていると思いますが、そうした面での燃油が変わってきた。  これは非常にいいことでありますが、しかし、この次に問題になるのは二百海里の入漁料の問題ですね。ニュージーランドなどはもう拒否していますね。ソロモンとか一部には非常に友好的なところもあります。南太平洋フォーラム諸国を含めて、そうした入漁料の軽減のために、大臣、ひとつ海外協力という面でも、この間ソ連の漁業大臣も来られましたし、アメリカの方も来られましたし、いろいろ話し合いはされておりますが、ぜひとも日本漁業外交という面で力を砕いてもらわないと遠洋漁業はつぶれますよ。だから、こうしたことについて大臣の決意をお聞かせいただいて、これからもまた論議しましょう。栽培漁業の問題とか沿岸漁業の振興とか、いろいろありますが、いまは遠洋漁業についての、カツオ・マグロなど一本釣りがどんどんなくなってしまって、だめになってしまったら、漁獲量の大半を占めているのですから、マグロなどはその値段においても大変なもので、そういうのが国民の生活のコストにかかわることのないように、そういう政策をひとつやっていただく決意をお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  67. 金子岩三

    金子国務大臣 大変適切な御意見でございます。私は、燃油が第二次に高騰した折から、日本漁船漁業の将来を非常に憂慮いたしまして、いろいろそれなりに努力を続けてまいりましたけれども、なかなか御期待に沿うような成果が上げ得ませんでした。そこで、いま不振漁業と称されておりますカツオ・マグロ、イカ、こういう特殊な漁船漁業についてのいろいろな救済策をやっておりますが、いま償還の状況もちょっと佐竹部長が読んでおりましたが、あれもことしから来年あたりにかけて集中して償還をしてしまわなければならないようになっておるが、これは不可能に近いと私は思うわけですね。したがって、こういう条件変更などは新しく予算を求めるわけではないのでございますから、私は、事務的に努力をしていただけば、条件変更は、償還期限のいわゆる延長などはできるのではないか、このように考えておりますから、早速ひとつ取り組ましたいと思います。  それから、いろいろ漁業外交のお話が出ましたが、当然の御指摘でございます。これは、沿岸国もやはり魚族たん白資源を有効に使おうという考え方と、もう一つは、日本は海賊みたいにとりまくっていくというような印象を、いずれの国も、いわゆる先進国のアメリカのような国でさえ代償を求めて、特に最近厳しくなっておりますので、これがこれ以上に強くなると、海外漁業も不振漁業になるおそれがあると思います。したがって、漁業外交は、これは私のかねての持論でございますが、外交部門はほとんど外務省任せみたいなことで、実際水産庁にそういう人材も機構も用意してない。したがって、これから、これだけ世界の至るところと絶えず交渉、接触、折衝を続けていかなければならないような今日のわが国の海外漁業の実態を見ると、水産庁の中にそれにふさわしい専門的な人材を求めてみずからが漁業外交を水産庁で展開すべきであるというのが私の持論でございまして、暮れにですか、どれほどの人材か私はわかりませんけれども松浦長官は有能な人と認めて二名ほど専門家を入れてそれに取り組む姿勢を示しておりますから、これからも一層ひとつその方の体制を水産庁の中に整備させたい、このように考えています。  いずれ人口はどんどんふえていきますし、やはり動物たん白の半分以上は魚族たん白でもっておるとすれば、食糧政策一環として、よく農業は食糧政策で皆さん一生懸命やるけれども漁業は余りおっしゃいませんね。きょうのように新盛先生などが一生懸命やってもらうと非常に意を強くするわけでございまして、きょうは水産庁もずいぶんしりをたたかれて活力を与えていただいて感謝する次第でございます。私は、日本漁業を守るために今後ともひとつ大いに力を注ぎたい、このように考えております。
  68. 新盛辰雄

    ○新盛委員 終わります。
  69. 玉沢徳一郎

    ○玉沢委員長代理 この際、暫時休憩いたします。  本会議散会後、直ちに再開いたします。     午後零時七分休憩      ────◇─────     午後一時四十八分開議
  70. 山崎平八郎

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武田一夫君。
  71. 武田一夫

    ○武田委員 原材料供給事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案及び水産業協同組合法の一部を改正する法律案、この二法律案につきまして、数点、御質問いたします。  まず最初に、前者の法案につきましてお尋ねをいたします。  金子大臣にお尋ねいたしますが、水産加工業の果たす役割り、そしてまたその振興対策についていかが取り組んでいこうとするか、この点についてまず大臣のお考えをお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  72. 金子岩三

    金子国務大臣 私は、午前中の質問にもお答え申し上げましたが、日本漁業は、漁獲物をどのように高度に利用するかということが漁業経営の安定の根本の方策であります。したがって、漁獲した魚を高度に利用するということは、いわゆる加工から流通に至るまでを含めてまず整備することが先決である、このように考えております。したがって、水産物加工はやはりその時代時代の国民の好みに応じたものを加工いたしまして、流通合理化された流通機関で末端の消費者供給する。流通改革は、やはり複雑な流通機構では生産価格消費者価格にずいぶん大きな差ができるものですから、できるだけ安く提供するためには流通機構の改善を図りたいということを考えておるのでございます。特にこれからのわが国の食糧をいろいろ考えますと、少なくともたん白資源だけを考えてみれば、やはり現在でも五〇%以上の魚によるたん白の食糧の供給をやっておる部門でございますから、これにはひとつ農水省も一段と力を入れて、ただいま申し上げたような基本的な考え方で取り組んでいきたい、このように考えています。
  73. 武田一夫

    ○武田委員 それで、水産加工業というのは第二次産業の一つとしまして、私の選挙区の塩釜などはその一つの代表的な地域でございますが、企業というのは大体中小零細が多いというのがその特色でございます。そういう意味で、こういう方々には特に国が心してきめ細かな対応をしてあげなければならぬということを私は痛切に感じている一人でございます。ところが、こうした方々への予算の配分を見ますと、対策費が減少しているということが一つは気になります。さらにまた、水産関係の一般会計に占める割合も低下している。五十四年が八千六十二億円で二・七%、それから五十八年が四千八百六十六億円、一・五%、これはいろいろと理由もあるのでしょうけれども、こういう点は一つの気になる点でありまして、この点についてどうしてこういうふうなことになったのか、これで十分な対応ができるものかということにひとつまずお答えいただきたいと思うのであります。  それで、多獲性魚有効利用は今後ますます重要な課題ですね。それから冷凍水産物の適正な流通の確保、こういう必要性を特に要請されているわけでありますから、こういうところに十分これで対応できるものかどうか。この点、本当にいま大臣水産加工業を大事にして、その振興に努力していくのだということのバックアップになるような内容の予算であるかということを私は知りたいわけでありまして、一般のそういう加工業の皆さん方もその点を十分知りたいのではないかと思うわけで、この点についての水産庁の御見解をひとつお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
  74. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま大臣からも御答弁がございましたように、わが国の水産業の振興を図り、良質なたん白食品国民供給するということのためには、生産対策だけではなくて、水産物流通加工体制整備、消費の拡大、価格の安定といったようなことがどうしても重要でございまして、流通加工関係がその非常に重要な部分を占めるということはおっしゃられるとおりでございます。水産庁といたしましても、厳しい財政事情ではございますが、必要な予算については極力その確保に努めてきているところでございます。  五十八年度におきましても、国際規制強化に対応した水産加工経営の安定あるいは多獲性魚の新規製品開発食用向け有効利用の促進ということを目的とした水産加工経営改善強化資金の融通というものを新しく創設いたしまして、実は百四十億の資金枠をもってこれに当たるといったようなことも考えておるわけでございます。また、高鮮度の食用向け多獲性魚等を確保するための施設等の設置助成、あるいは水産物調整保管事業の対象品目の拡大、あるいは水産物消費者の関心の強い鮮度表示といったようなことを行っておるわけでありまして、また、今回、ただいま御提案申し上げております施設資金の延長のための法律、そのまた裏づけになる予算も提案をいたしているわけでございます。  このほか、予算的にはその額は大きくありませんが、水産物流通に関する迅速な情報の収集あるいは分析、さらにこれを提供するといったような仕事も、細かな仕事でございますが、非常に大切でございますし、あるいは水産加工経営近代化合理化等に関する指導等の充実を図るためにマニュアルをつくるといったような、いろいろな対策考えておるわけでございます。  なお、ただいま先生指摘のように、流通加工関係の予算が全般的に減少しているではないかということでございますが、確かに金額の面ではさような面もあると思います。しかしながら、これは、どちらかと申しますと従来加工流通施設整備というところに非常に力点がありまして、その中でも特に冷蔵庫とか、そういう大型の整備を要する資金が出ていったというような傾向がございますけれども、このような点の整備もさることながら、むしろ、先ほども申しましたように、きめ細かな多様な対策を用意いたしまして水産加工産業の振興に努めるという観点から予算を計上して、ただいま五十八年度予算として御提案申し上げている、そういった状況でございます。
  75. 武田一夫

    ○武田委員 そうすると、非常にきめ細かな対応をするための予算としては納得のできるものである、こういうふうに御理解をしていいわけですね。——そうですか。それは信じておきたいと思います。  ところで、そういう水産加工業者経営体質強化というものはなかなか思うように進まない。大変苦労して、私も、ここ二、三年いろいろな方にお会いしている間に姿を消していった経営者も何人かいるということで、非常にさびしい、悲しい思いをしているわけでございます。この体質強化の対応は、これまでも水産庁としてはいろいろと努力をなさっておる、こういうふうに思うわけでありますが、どんなものですか。その成果が十分に出ているものかどうか。その点について、経営状況等を踏まえて、実態など、ここ数年どういう動きをしているのか、わかればちょっと説明していただきたいな、こう思うのです。
  76. 松浦昭

    松浦政府委員 先生案内のように、水産加工業はその経営規模が一般的に非常に零細でございます。数字で申し上げますと、従業員規模九人以下が実に六九%を占めている状況でございます。また、個人経営あるいは資本金百万円以下のものが七三%という状況でございまして、非常に零細な経営でございます。  しかも、その経営の内容を見てまいりますと、特に特色がございますのは、経費に占める原料魚の代金が非常に高うございまして、経費に占める原料魚購入費割合が五〇%以上の経営体が七二%を占めているという状況でございます。このようなことは、原料魚価が変動いたしますと、どうしても経営に与える影響がきわめて深刻なものになる。形を変えて申しますと、いわば経営環境変化への対応力が弱い体質を持っていると言わざるを得ないと思います。  また、昨今の経過を申しますと、資金繰り状況から申しまして昭和五十三年七月から昭和五十四年六月の一年間と昭和五十一年とを比較いたしまして経営が苦しくなったかどうかということを、実は調査をとったわけでございます。苦しくなったと答えた者が楽になったと答えた者の二・九倍あるということでございまして、経営が非常に苦しくなっている状況がわかるわけでございます。また、年間操業日数が五十一年の水準に回復していないと答えた者が七八%あるということでございまして、この水産加工業経営状況は決して楽なものではないという調査が出ているわけでございます。特に、本格的な二百海里時代を迎えました昭和五十二年以降、北洋魚種と関連の深いスケソウダラの魚体前処理業者あるいは飼肥料、魚油業者、冷凍すり身業者、水産練り製品業者等を中心といたしまして、特に資金繰りが苦しくなっているという状況でございます。  したがいまして、その中には倒産された方もあったのではないかというふうに考えるわけでございますが、私どもこういう実態を踏まえまして、水産加工業者をより強固な経営基盤のもとに置いていただくために、今回御提案申し上げております法律案の内容もそのようなことになっているわけでありまして、一つは、北洋漁業等が非常に深刻な状態に立ち至りまして、特に原料の転換をしなければならないような漁業者、あるいは今後の大きな方針でございますが、原料をできるだけイワシサバといったような日本の近海でとれますところの多獲性大衆魚を中心にいたしまして加工を営んでいただく、そういった形で経営の大きな方向をその中に見出していただくそのための資金、特に施設資金を中心といたしまして今回の延長の法案をお願いいたしまして、これによって施設資金供給していきたい。  それからいま一つは、先ほどちょっと申し上げましたが、運転資金の面でも非常に苦しんでおられる経営者が多いと思われますので、ただいま申しましたような国際規制の影響を受けて原料の転換を行う、あるいは多獲性大衆魚の高度利用のために運転資金が必要だという方々のために各都道府県に特別会計を設けまして、そこに国の金を入れまして、その特別会計から利子補給をしていただくということによりまして運転資金を賄っていただく、このような制度をも今度新たに創設するということを考えている次第でございます。
  77. 武田一夫

    ○武田委員 非常に脆弱な体質ですから、先ほど言ったように強固な基盤つくりをするということは非常に重要なことで、これはもうどんなにてこ入れしてもそれで十分だということがないような業種の一つだと私は見ているわけであります。  そこで、こういう制度資金云々ということも大事な問題ですけれども、規模拡大とか共同化あるいは協業化がどうも思うように進まない。なぜそうなのか、何かこれを十分に進展させるような対応というものはないものかということを考えるときがあるのですけれども、今後水産庁としましては、そういう金の面以上にこの面の対応をしっかりやっていかなくてはいかぬのではないかな、こういうふうに思うわけでございます。この点についてどういうふうに取り組んでいくつもりか、まずお尋ねしたいと思います。  それからもう一つは、五十五年度の水産加工業協同組合事業実施状況を見ますと、信用事業というのは加工協の九十一に対して加工連はゼロですね。ということは、信用事業もできない、そのためになかなか金も借りられないという厳しい状況にあるということでありますから、こういうふうな点の解消のための対策考えていく必要もあるのではないか、こういうふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  78. 松浦昭

    松浦政府委員 まず協業化組織化を進めてはどうかというお尋ねでございますが、確かに、先ほども申しましたように水産加工業はきわめて経営基盤が脆弱な中小企業が大部分を占めておりますので、これを組織化するということがきわめて重要であることは先生指摘のとおりでございます。  そこで、水産庁といたしましては、まず第一に、水産物流通加工拠点総合整備事業というのがございます。これはなかなか評判のよい事業で、大変申し込みが多い事業でございますが、この事業を活用いたしまして製造加工施設、保管施設、公害防止施設等の共同利用施設を設置いたしまして、そこに水産加工業者を誘導して企業を持ってきていただくということによりまして、共同利用施設を活用した形での共同事業協業化というものを助長していきたいというふうに考えておるわけでございます。  いま一つは、水産加工業協同組合等の健全な育成を通じまして、原料魚共同購入あるいは製品の共同販売といったようなことを促進いたしまして、経営基盤の強化を図っていくということが重要であろうと思います。現在、水産加工業者の団体加入状況を見ますると、四十七年は加入率が六六%でございましたが、五十四年は七八%と上昇しておりまして、かなりの組織化が進んでいるということが言えると思います。  もう一つは、水産業加工協同組合の信用事業でございますが、この水産業加工協同組合はその基盤が脆弱でございまして、信用事業が営めるような状況まで立ち至っておりません。したがいまして、ただいま御指摘のようにその信用事業がゼロになっているということでございます。そのようなことであればこそ、実は今回御提案申し上げているような施設資金、あるいは先ほど申しましたような運転資金を制度面の融資をもちまして供給していくということが必要であるわけでございまして、さような観点からも今回の法案を御提案申し上げ、お願いをいたしているという次第でございます。
  79. 武田一夫

    ○武田委員 そこで、水産加工業経営状況を統計的にいろいろと知ろうとするときに、聞きましたら七年置きに調査するのだということですが、水産加工施設資金融資昭和五十三年から始まっているわけですね。すでにもう五年もたつわけです。そうすると、七年云々なんというようなことはさておいて、振興の上に重要な一つのかぎは、経営状況がどうなり、経営体がどのような動向を示すか等々の詳しい中身というものを本当は逐次把握しながら、それでいいものはどんどん伸ばすし、不備なところは補っていくというようなきめ細かい対応をしていくことが、こうした制度資金等を出したときの大事なフォローだと思うのですね。  この間ちょっと聞いたら、二百五十八億融資をして四百八十八件借りた方々がいるということです。宮城県なんかでは四十二件で二十一億円の融資を受けているわけですが、どういうところにどういうふうに行って、その結果はその五年間にどういうふうな経営体の動きになっているとか、その地域の状況はどうなっているのかというのは余りわからないような気がしたわけです。ですから、これもずいぶん金のかかる仕事だとは思うのですけれども、こういう制度資金等々が動いてある程度軌道に乗ったような場合は、やはりその時点で一つの手を打って実態を把握するために取り組むということが、こういう加工業の皆さん方に対して、振興のために一生懸命努力しているのだという当局の姿勢をあらわす一つのめどになるのではないかと思うのですね。そういう点で、これは御答弁は要りませんが、そういう状況がつぶさにわかる、そしていま申し上げましたような適切な対応をその都度行っていくということが必要ではないか。手おくれになってからではこの加工業というのはだめなので、事前にそういう状況をつかみながら対応していくということで今後ひとつ配慮をしていただきたい。これは、お願いしておきたいと思うわけです。  そこで、いま長官からお話がありました水産加工施設資金制度の中身についてちょっとお尋ねしますが、二号資金の対象県は二十三道府県に限っているわけであります。しかし、ここずっといろいろと環境の変化状況変化によって多獲性魚水揚げ状況変化もあろうかと思います。また、食用加工の実態などを踏まえたときに、これを二十三だけに限定していいのかという問題も出ているようでありますが、指定地域の見直しといいますか、弾力的な対応というものも必要じゃないかというふうに私は考えているわけでありますけれども、この点、水産庁としてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  80. 松浦昭

    松浦政府委員 加工施設資金の中の二号資金は、御案内のように多獲性大衆魚をより高度に利用いたしますために必要な施設融資するという制度でございますが、この対象県は現在のところ二十三県でございます。この二十三県を設定するに当たりましても、かなり私どもとしましては弾力的に対応いたしたつもりでございますが、なおその指定の時期から年月もたっておりまして、いろいろな加工の実態が変わってきていると思います。さような実態もよく踏まえまして、実情を踏まえた上で、どのような県をさらに指定したらよいか、よく検討してみたいというように考えておる次第でございます。
  81. 武田一夫

    ○武田委員 地域の皆さん方の声をよく聞きながら、十分な調査をして、これ以外の地域にも弾力的に対応できるような方法で検討してほしい、こういうふうに思います。  同時に、五十八年度から新たに水産加工経営改善強化資金制度ですか、融資枠が百四十億ということでありますが、これが発足するわけでありますが、これはどういう方針でどういう地域を対象にして貸していくのか、この点についての御説明をひとついただきたいと思うのです。
  82. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいま先生のお話しになりました加工施設強化資金は、先ほどもちょっと御説明いたしましたけれども、いわばハード資金と申しますか、施設の設置をするために融資をいたしますところのこの御提案申し上げておる法律による資金、このほかに当然運転資金が必要でございます。その運転資金供給するための制度でございます。  繰り返しになりますが、この資金は、各都道府県に特別会計を設けていただきまして、その特別会計に国から一定の補助を行いまして、その補助によりまして特別会計から基準金利と実勢の金利、この差を利子補給してもらうという制度でございまして、末端金利を五ないし六・五という形でもって供給しようというものでございます。ただ、これもハード資金との関連がございますので、原料を転換するために必要な運転資金であるとか、あるいは多獲性魚を高度利用いたしますための運転資金ということに使ってみたいというふうに考えておるわけでございまして、百四十億の資金枠でございますから、かなり活用できると思います。  また、これをどういう県にどのように使っていただくかということでございますが、これは予算が通りましてからの問題でございます。私どもとしましては、各都道府県で特別会計をつくっていただけるところはひとつできるだけこの資金を活用していただくというように考えておる次第でございます。
  83. 武田一夫

    ○武田委員 いずれにしましても、この設備資金運転資金というのは両輪のごとく動かなくてはならないわけでありますから、それは十分に運用ができるように、そういう対応は地域の実情をよく確認しながらひとつやってほしい。私はいろいろ歩いてみますと、ある一部の方に偏る傾向がときどきあります。これはどうしても大きな方に偏りまして、中堅クラスがかなり苦労する。先ほども経営の中で大変苦労しているのは中堅クラスの企業が多いわけですから、そういう方々が不満や不平を出すようなことのないよう、ひとつしっかりと指導監督をしながら対応してほしい、こういうふうに思います。  それから次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案について、三点お尋ねを申し上げます。  午前中にも問題になりましたが、漁船損害補償制度、漁業災害補償制度及び任意共済、三制度の一元化の問題についてでございますが、午前中の大臣の答弁でも、慎重に検討はしていく、また長官も、時期尚早のことであり、三制度の充実をしていくことがいまのところ大事なことである、こういうことであります。  五十六年でしたか、この委員会における提案の中でも、三制度の統合というのは制度充実の暁に検討する、こういうことを決めているように思うわけでありますが、考えてみますと、五十六年に漁船船主責任保険制度が本格実施されまして、それから五十七年の七月でしたか、漁業災害補償制度の改正、それから今国会が漁船積荷保険制度の本格実施に移行させるためのこの法案及び任意共済制度を漁協等を元受けとするための法案提出というように、一つの環境づくりがずっと今日まで続いているわけでございます。こういう一つの環境が、業界の皆さん方のいろいろな御協力でようやくここまで来た。  ですから、いよいよこれから本格的に内容の充実というものに入っていくわけだと思うのですが、ここでやはり政府としても、この一元化の問題というのは、制度おのおのの充実は必要であっても、並行しながら早くこれが皆さん方の要望にこたえるような対応をしていく努力を急いでやっていくのだ、しかも、制度の充実の暁というその暁は近いのだ、こういう一つの対応が必要でないか。暁はいまだに遠くてかすんだような暁では困るわけでありまして、これはずいぶん期待の大きい問題でございますからね。まあ、暗やみが濃ければ暁は早いというのですが、暁が出てきた、その暁を現実に太陽がしっかりと上ってくる、そういうめどをやはり提示するのが必要なときに来ているのではないか、私はこういうふうに思うのですが、長官、この辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  84. 松浦昭

    松浦政府委員 このいわゆる三制度の一元化問題につきましては、当委員会での附帯決議にもなっているわけでございますし、また、そのもとは、この三制度のいわば基盤になりますところの末端組織というものは、これはどこも漁協でございまして、それが上に行って分かれているということから、上も一体化し一元化するのが最も適当な姿ではないか、そういうお考えがあることは当然のことであるというふうに思うわけでございます。しかしながら、午前中も大臣から御答弁ございましたように、おのおのの組織はおのおのの歴史もございますし、また、長い経過を経ているわけでございまして、なかなかこの団体を一体化するということにつきましてはいろいろな問題が出てくるわけでございます。また、現実に、かつて昭和五十年、五十一年、五十二年を通じましていろいろな検討会が開かれ、その結果共同の組織というものも一応つくってみたわけでございますけれども、その結果としては、まず各制度の充実強化を図るべきであるという御見解でございましたので、そのような御見解に沿いまして、私どもとしては、何よりもまず各制度の充実を図るということを考えまして、今回も水協法の改正、これによる系統組織による任意共済事業の制度の完備ということを考えてまいりましたし、また同時に、先般のPI保険に続きまして、今回積み荷保険の制度を完備するというところに力点を置いて制度を仕組んでまいってきておるわけでございます。  また、漁災制度につきましても、前国会で御審議をいただきまして、その内容を充実いたしますと同時に、非常に多額の負債がございましたので、これが解消策もまた御審議をお願いして御通過をさせていただいたということでございます。このような赤字を抱えている団体というものをどこの団体も統合しようという気持ちは起こらないわけでございますから、そのための基盤整備ということもいろいろとわれわれ考えて進んでいるわけでございます。  ただ、このような各制度の整備というものは、いまようやく緒についたばかりでございまして、その骨格ができましても、これから内容を充実していくという段階でございます。ただいま先生、暁が近いんじゃないかというふうにおっしゃいましたけれども、それがどのくらいの時間がたてば暁になるかということは、ここで私明確に御答弁申し上げるだけの予想ができませんので、とにかくできるだけこの制度の内容の充実に努めまして、骨格ができたわけでございますから、その内容の充実に努めてこの一元化問題に取り組む素地をつくっていきたいというふうに考えている次第でございます。
  85. 武田一夫

    ○武田委員 ひとつ十分なる対応をしていただきたいということで、この問題を終わります。  最後に、特定不振漁協等再建整備事業の指定ですか、これは漁協等の認定状況をずっと見てみますと、昭和五十五年度から五十八年度までの四年間で、計画百三十組合、しかし実績は十一組合と、きわめて少ないというデータが出ております。しかも、北海道に偏っているということであります。  このことで非常に緊急にいま特に必要なものは、油の高騰や不漁などによりまして経営の不振に陥っている漁協がたくさんございますが、そういうところを救済することが大変重要なことではないかということでありまして、私は、この対応を考えたときに、この問題は特に別にまた考えていただきたいということでこれはお願いするのですが、何かそのための改善策といいますか、対応策というのをお持ちでございましょうか、ひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  86. 松浦昭

    松浦政府委員 実はこの制度がそもそも発足いたしましたもとは、国際規制が非常に強化されまして、そのために漁協に多額の負債がたまる、そのために非常に不振な経営状態に陥った漁協を救済するということのために発足した制度でございます。  したがいまして、当初の制度の仕組みは非常にかたいものでございまして、ただいま先生案内のように、非常に対象が限られていたということでございます。なぜかと申しますと、その負債の五割までが国際規制によってそのような状態に陥ったということになっておりまして、このために対象の漁協になるものも少なく、また、国際規制という観点から、当然これは北海道といったような北洋に関係のある漁協に限られてきたということは事実でございます。  しかしながら、今般負債整理資金の制度を設けまして、特に生産構造の再編対策というものを進めてまいりますると、その過程におきまして、どうしても不振漁協というものにてこ入れをいたしておきませんと、たとえば減船でやめてしまう方々、この方々が大きな負債を抱えてまいります際に、その負債の肩がわりは結局漁協がやらなければならぬということになるわけでございます。したがって、そのようなことのためには、どうしてもこの特定不振漁協の対策の適用対象を緩和しておくということが必要であるというふうに考えるわけでございまして、さような点から、実は今般その規制を緩和しようということで考えておる次第でございます。  つまり、その内容といたしましては、当該不振漁協が負債整理の資金の対象になっておるということが一つの要件でございます。それから第二の要件が、先ほど五割と申しましたけれども、今度は三分の一の負債が燃油高騰と関連があるということ、燃油高騰によってそのような負債が生じてきているということ、または三分の一が国際規制にかかっているという、そういう要件の緩和をいたしまして、この特定不振漁協の対象を緩和していくということを実は考えているわけでございまして、この措置によりましてこの制度は相当活用できるということになると思います。
  87. 武田一夫

    ○武田委員 漁業経営負債整理資金融資助成事業ですか、昭和五十七年の融資枠三百五十億、そして五十八年度予算六百五十億とありますね。業界の方々なんかにちょっと会いますと、これはもっと使いやすい制度にできないものか、要するに融資条件の緩和にもう少し十分の配慮ができないものかということを聞かれるわけです。カツオ・マグロしかこれは使えないんだ。ところが、いま沿岸漁業が苦しい、特にイカ釣り漁業の方なんかも大変だというような方向にこの融資助成がいかないものかということも聞かれるわけですので、こういう問題はどうでしょうか。このままいくと、融資枠は全然消化されないで残っていくわけですね。それよりも、そういう方々に回してやる、言葉は悪いですが、十分活用してそういう方々の救済の一端に役立つような方途はないものかということを私も考えるのですが、この点どうでございますか。
  88. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほど、私、御答弁で、不振特定漁協の対策につきまして実施を検討中と申しましたが、五十七年度から実施中でございますから、その点訂正させていただきます。  ただいまのお尋ねは、いわゆる負債整理資金をもう少し消化できるように対応策をとれないかという御質問だと思います。実際、せっかく五十七年度におきまして三百五十億の資金枠を確保いたしましてこれが消化に努めているところでございますが、まだその消化が進んでいないというのが実情でございまして、さような意味でお尋ねがあったというふうに思うわけでございます。  実は、この消化がなかなか進んでいないということの理由に三点ほどあろうかというふうに思います。  と申しますのは、この融資の制度というのは、そもそもが自主的な減船の計画というものを前提にいたしまして、やはり漁民の中からみずからの手で減船までして、そして経営を安定化させよう、いわゆる生産構造の再編対策を実施しようという意欲があるところに共補償をいたしてまいります場合の負担というものを軽減していく、このために負債整理資金をお貸ししよう、こういう条件がついているわけでございます。したがいまして、当然、当該業界におきましてそのような自主的な減船計画がお立ちになるということのためには、相当な踏み切りが必要でございます。これは、業界内の相当な御議論の末にコンセンサスを得てそのような計画をお立てになるということでございまして、さような意味では、非常に進んだカツオ・マグロ業界というものが現在対象になっているという状況であろうと思います。これが一つございます。  それから第二は、何と申しましても、そういうような共補償を実施していく場合に障害となる負債整理ということが眼目でございますから、やはり相当共補償をやっていただく、そういう度合いに応じて、つまり自主努力の度合いに応じて負債整理資金をお貸しする、これが一つの原則になっております。したがいまして、その要件というのもある程度までいろいろな形で規制をしておくということが必要でございまして、ただ単にどんどんとお貸しできるという性格ではないということが二点目でございます。  それから第三点といたしまして問題がございますのは、実は現在の時点では、この前の今村長官のときに実施をいたしました緊急融資につきましては二年間の償還猶予をやっております。したがいまして、緊急融資につきましては、その償還期限が来ましたら、期限後三カ月たちましても払えないという場合には、ほとんど自動的と言っていいようにこの負債整理資金をお貸しするつもりでございますけれども、まだ償還期限が来てないという事情がございまして、したがって資金需要が特に一番大きい緊急融資の分について出ていかない。  この三つの理由があろうかというように考えるわけでございます。  しかしながら、第一点の問題につきましては、たとえばイカ釣りのような場合につきましては、この減船計画ということのほかにも、実は施設合理化、たとえばキャッチライトをつけて生産施設合理化していく、そしてこの減船とそれから生産施設合理化とあわせて非常に経営が効率的になって、大体二〇%ぐらいの経営の効率化ができるというような場合には、減船の計画だけでなくてもこの資金をお貸しできるという新たな道を開いておりまして、これは財政当局ともそういう話をつけております。したがいまして、まだイカ釣りからは話が出てきておりませんけれども、このような方向で目下検討していただいておりますので、そのほかの業種につきましても将来これが適用になる道が開かれているということでございます。  それから第三の点は、これは当然時間がたてば問題は解決してまいりますので、当然また資金需要がふえてくると思いますが、一つ問題がございましたのは、実はごく最近これは直しましたので非常にホットニュースになるわけでございますけれども、このようなだれでもお貸しできるという性格のものではないために、いろいろな規制があったわけでございます。特にその規制の中で問題がございましたのは、緊急融資の分につきましては、これは当該債務が償還期限が来ますと、その償還期限が来て三カ月たったというものにつきましては、緊急融資の分は当然負債整理資金の対象として借りかえていくわけでございますけれども、問題はプロパー資金と言われている民間資金の分がございまして、その民間資金の分につきましては、これはやはり一定の時点を限って、そのときにおける負債というもので特定をいたしませんと、この制度があるからということで民間資金でどんどんお借りになってしまう、つまり、言葉は非常に悪うございますが、悪乗りをされるというケースがあり得たわけでございます。したがいまして、このようなプロパー資金は五十六年の三月末現在という時点でもって切ってしまっているという状態であったわけでございますが、このトレースができないために非常に資金需要が小さくなってしまうというような問題が起こっておりまして、そこで、今回この点につきましては、先日通達をしたばかりでございますけれども、実は非常に簡便な方法を用いまして資金供給の額を算定できるようにいたしましたので、この措置によりまして相当多額の金が出得るという状態にしております。
  89. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたが、最後に大臣にお伺いしたいのですが、小さい方々はいつもいろいろと御苦労も多いから、ついわれわれにいろんな日ごろ思っていることを言うのですが、漁業でも大きなところはずいぶん恩恵を受けているけれども、中以下というのはさびしい思いをしているんだということを聞くのです。  いま長官のお話を聞きますと、いろいろと努力をしている跡もわかるのですが、今後そういう声が自然と消えていくような取り組みを、大臣は魚のことについてはかなり詳しい権威ある大臣でございますから、ひとつ在任期間にそうしたことがちまたになくなるようなきめ細かい対応を強力にしていただきたい、こう思うのですが、決意のほどをひとつお聞かせいただきたい、こう思います。
  90. 金子岩三

    金子国務大臣 武田さんの御意見の内容はよく私は理解いたしておりますので、水産庁を一層督励して、きめ細かい政策中小の弱い加工業者がよりよく安定するように、ひとつ努力をいたしたいと思います。
  91. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃ、終わります。
  92. 山崎平八郎

    山崎委員長 神田厚君。
  93. 神田厚

    ○神田委員 水産関係の三本の法律について御質問を申し上げますが、関連しまして、昨日も質問があったわけでありますが、韓国漁船問題について先に水産庁の見解をお聞きしたいと思うのであります。  現在、北海道沖におきます韓国漁船による違反操業が大変多くなっております。また、漁具の被害等がことし一月に入って大変多くなっていると聞いておりますけれども、その実情と原因は一体どういうところにあるのでありましょうか。
  94. 松浦昭

    松浦政府委員 北海道沖における韓国の漁船の操業につきましては、昭和五十五年の十一月に結ばれました政府間の合意によりまして、一定の水域につきまして韓国漁船の自主規制が行われているわけでございます。しかしながら、昨年の末から本年の一月にかけまして、韓国漁船は、まず第一に、襟裳岬以西の海域の禁止区域内で違反操業を行ったわけでございます。それからまた、わが国の取り締まり船に対しまして毎日正午の位置を通報するという約束になっておりましたところが、昨年十二月二十六日から本年一月十八日までこれを行わないといったような状況に相なりました。また、両国の民間団体間の取り決めに基づきまして、わが国からの沿岸漁業の漁具敷設通報を韓国漁船は受け取るということになっておりましたところが、昨年十二月二十六日から本年一月十三日までこれを受信しようとしないといったような事態が起こったわけでございます。そのほか、きのう安井委員も御指摘になっておられましたが、これは協定上の問題ではございませんけれども、苫小牧沖の海域におきましてかなり多くのスケソウの腹が切られて中のスケソウの子だけが取り出された、そういうスケソウダラの死骸と申しますか、腐敗したスケソウダラが八十八トンも網にかかってきたというような状況でございまして、これが韓国漁船によってやられたのではないかという疑いがあるというような問題がございまして、北海道の漁民の方々が大変心配しておられるところでございます。  私どもといたしましては、外交ルートを通じまして繰り返して韓国水産庁に対しまして規制の徹底遵守を指導するように申し入れました。韓国水産庁もこれを受けまして関係業界を指導いたしているところでございますが、このようなことから、やや下火になってきている、平穏な状況になりつつあるというふうに考えられますけれども、なおこの海域につきましてはこのような問題が起こる可能性がございますので、われわれの監視船も三杯そのまま張りついておりますし、巡視船あるいは北海道の監視船も合わせまして約八隻程度日本側の監視船がこの水域でトラブルの防止に当たっているという状況であります。  特にお尋ねのスケソウダラの刺し網の漁具の被害でございますが、総額がこの一月から起こりました状況では千四百五十万八千円に上っておりまして、その原因は、襟裳以西の海域が主でございますが、このスケソウダラの漁場形成が例年になく狭く、かつ、規制ライン周辺に形成されたために、両国の漁船が稠密な漁場利用を行った、そこに関係漁船が操業をやった、これがその原因であるというように考えております。
  95. 神田厚

    ○神田委員 現在のスケソウの網の被害の問題もありますが、従来の漁具被害に対しまして民間において協議が進められているわけでありますが、五十四年七月以降のまだ未解決の被害処理の促進についてはどういうふうに対処するのか。それから、いま答弁がありましたスケソウの網の一千四百五十万八千円の被害の問題についてはどういうふうに対応をするのか。
  96. 松浦昭

    松浦政府委員 韓国漁船による漁具被害の処理につきましては、両国の民間団体間の取り決めに基づきまして、韓国の遠洋漁業協会と北海道指導連の間で協議されておりまして、この民間の間でこれを処理していただきたいというふうに考えておるわけでございますが、その処理状況から申しますと、五十四年までの問題は解決されておりますけれども、五十四年以降、今回の分もあわせましてもちろん協議中でございまして、まだこの解決が図られていないわけでございます。  そこで、もちろん両団体間での協議を進めていただくということが非常に必要であるわけでございますが、やはり行政庁側としましても、韓国の水産庁に対しましてこの処理解決の促進ということが必要だろうというふうに考えておりまして、昨日大臣から御答弁がございましたが、私がこの十日から韓国に参りまして、北海道沖の違反操業の問題、それから西日本においてやはり同じ問題が起こっておりますが、現行協定の遵守方を先方に十分に申し入れてまいりたいと思っております。また、今後この北海道沖の協定が十月に切れますが、その協定の切れた状態以降の問題をどうするか、この問題についてもできるだけ早く協議を開始したいということで先方に申し入れてまいりたいと思いますので、その際に、この損害の賠償の問題につきましても先方に申し入れてまいりたいというふうに思っている次第であります。
  97. 神田厚

    ○神田委員 ただいま答弁もありましたが、北海道沖だけではなくて、西日本におきましても韓国漁船の違反操業がある、こう聞いておりますが、その実態とこれに対する対応をお聞かせをいただきたい。と同時に、当面の韓国漁船の操業秩序維持のためにどういうふうにするのか。さらには、ことしの十月の末で政府間の書簡の期限が切れることになっておりますけれども、この問題についてはどういうふうな対応をするのか。
  98. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、西日本における韓国漁船の違反操業の実態でございますが、韓国漁船は長崎県及び福岡県の北部におきまして、日韓漁業条約に基づきますところの双方の合意書に盛られております沖合い底びき網漁業禁止区域内の侵犯操業をかなり何回も繰り返し行っている次第でございます。水産庁としましては、海上保安庁とも協力いたしまして取り締まり船を重点配備いたしますと同時に、韓国政府に対しましても繰り返し外交ルートを通じまして厳重に違反防止のための指導を行ってもらっておりまして、特に韓国の監視船にこの違反操業水域に来てもらいまして、それで韓国漁船に対して監督指導をやってもらうというのが最も効き目がございます。これによりまして、実は韓国政府はわが方の要請を受けまして、最近の時点で申し上げますと、一月十四日から十七日、一月二十六日からは断続的に関係水域に指導船を派遣するということで、実は二月二十八日にも韓国の指導船が釜山を出港いたしまして三月六日まで関係水域の監視行動を行うということをやってもらっているわけでございます。水産庁としましては、今後とも違反操業の防止のために厳重に注意を払っていく所存でございます。  その次のお尋ねの、今後の北海道沖の操業違反問題、それから今後の、十月に期限切れになる問題にどう対処するかということでございますが、ただいま御答弁申し上げましたように、北海道沖の操業違反の問題、それから西日本の問題、これも含めまして、現行協定を十分に守ってもらうように、また、今後この十月末をもって期限が切れますところの北海道沖の合意の問題につきましても、早期に協議を開始するということを申し入れて、その合意を取りつけるよう、大臣の御命令を受けまして、私、十日に韓国に行ってまいります。
  99. 神田厚

    ○神田委員 この問題は日本漁業関係者が大変注目をしているところでありますから、どうぞひとつ長官におかれましてはしっかりと交渉をしてきていただきたい、こういうふうに御要望申し上げます。  この問題につきましては、基本的な考え方として大臣にちょっとお伺いしたいのであります。  この韓国漁船の違反操業問題の基本には、やはり韓国に対しまして二百海里水域を適用するという、こういう問題が必要になってきているというふうに考えておりますが、この問題はいろいろなむずかしい問題も含んでおりますが、大臣としては現時点におきましてどういうふうなお考えでございましょうか。
  100. 金子岩三

    金子国務大臣 長年、二百海里水域をわが国も実施したらどうかという、懸案事項になっております。しかし、これは、世界の中においてもわが国ほど各国沿岸に出向いて操業をしておる国は他にないのではないかと思います。したがって、自国の周辺を厳しい規制をしておきながら相手国に御迷惑をかけるということは、道義的に考えても良心に恥じるのではないかな。これはいわゆる私どもの常識でございます。沖合いと言わず、遠洋と言わず、海外と言わず、大変諸外国の沿岸に御厄介になっておる。したがって、この際日本漁業国益を守るためには、沿岸漁業にはひとつ厳しい取り締まりと規制をして保護するような努力をいたしまして、二百海里をわが国にしくということはやはり慎重でなければならないのではないか、このように考えております。
  101. 神田厚

    ○神田委員 それでは、法案の方の質問に移ります。  最初に、水産加工業の問題で、この施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部改正の問題につきまして御質問申し上げます。  さきの武田委員の質問もございましたが、水産加工業、特にこの加工業漁業が車の両輪であるという中で、その一体としての振興を図っていかなければならないということでありますが、さきの質問にもありましたが、どうも予算の面を見ましても非常に予算が年々減少をして、さらに水産関係の一般会計予算に占める割合も低下を続けている。こういうことで、もう少し全体の総額としての予算の問題についてこれを確保することができないのかどうか、この辺のところはどうでありますか。
  102. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもも、水産加工業の重要性というものにつきましては、大臣も先ほどから御答弁なすっておられるように、非常に重要であるというように考えておるわけでありまして、厳しい財政事情のもとではございますが、その予算については極力確保に努めておるつもりでございます。  特に今回この法律案の御審議をお願いいたしまして、水産加工施設につきましての資金供給できるような体制を引き続き行っていきたいというふうに考えておりますほか、国際規制強化に対応した水産加工経営の安定あるいは多獲性魚の新製品開発、こういったことを目的にしたいわゆる水産加工経営改善強化資金、これは運転資金でございますが、この資金の融通百四十億というものも新しく行おうということでございます。また、このほか高鮮度の食用向け多獲性魚等を確保するための施設等の設置助成、あるいは水産物調整保管事業の対象品目対象数量の拡大、あるいは水産物消費者の関心の強い鮮度表示といったような諸事業の拡充も図ることにいたしております。このほか、予算的にはそれほど多くありませんけれども水産物流通に関する迅速な情報の収集、分析、提供、あるいは水産加工経営近代化合理化に対する指導の充実といったような、いわばきめ細かな予算の編成をしていっているわけでございます。  確かに先生おっしゃいますように、水産加工全般につきましての予算額というものがこの厳しい財政事情のもとに若干ずつ前年よりも落ちているということがあるわけでございますが、実はこれは、どちらかと申しますと非常に大型の金を必要といたしますところの冷凍冷蔵といったような設備資金につきまして、これがやや一巡化しているということもございまして、むしろこれからは、金目はやや少のうございますが、いろいろな多目的の資金を用意いたしまして、水産加工流通対策にきめ細かに応じようという予算の姿勢になっているからでございます。
  103. 神田厚

    ○神田委員 また、この水産加工業者経営コストに占める原料魚購入費割合が五割を超える経営体が七二%を占めている。つまり、加工業経営の安定のためには魚価の安定が一番重要であるということでありますが、現在、この安定制度としては水産物調整保管事業がありますが、しかし、この事業が、予算的な制約から対象魚種のうち限られた数量しか調整保管し得ないこと、事業実施により損失が出た場合には関係漁業者の負担の限度もあり、事業主体が一定の損失予想限度までしか調整保管事業を行い得ないことなどで、つまり長期にわたる魚価の変動には対応しにくい、こういうことで非常に使いづらい制度だというふうな声があるわけでございます。この点につきましては、これを改善し、また、使いやすくなるような方向での検討ができないものでありましょうか。
  104. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、水産加工経営というのは、一般経費に占める原料の購入割合が非常に高いので、原料の魚価の安定が非常に重要だということはおっしゃられるとおりでございます。このために、やはり原料魚供給の安定、それからまた価格が安定することが非常に重要でございまして、その意味では、何と申しましても海外漁場を確保していく、あるいは近海漁場を有効に利用するといったようなことで原料魚を安定的に供給することが必要でありますし、また、経営コスト面におきましても、省エネ等を推進いたしましてできるだけ安い価格で、しかも漁業経営も成り立つという状況加工業者原料供給する体制が必要であることは当然のことだろうと思います。また、主産地における冷蔵施設等の整備を行いまして、安定的な供給を行っていくということも非常に重要だと思います。  特に、ただいま先生の御指摘になりました多獲性大衆魚の産地、消費地における価格安定のために魚価安定事業というものがございますが、これが効果を発揮することが重要でございまして、実は漁業に非常に御関係の深い大臣もいつもこのことをおっしゃって、御指示を仰いでいるところでございます。この対象につきましては、実は今回もすり身についてその対象トン数を一千トンから六千トンにふやす、あるいは漁業用の餌料につきましては二万二千トンの調整保管ができるという新しい対象の拡大もいたしてきておりますし、また、実は従来までこの資金は完全に使われてきておりませんので、すでに積み立てられている分もございますから、この活用も図って、次年度は五十七年度よりもさらにこの調整保管事業に使い得る金も事実上増していることになっているわけでございます。  しかし、何と申しましても、この調整保管事業をうまく使いこなせるような団体の体制になっていることが非常に重要でございまして、特にこの調整保管を実施する場合には、これをやる団体がその市場に対して相当に影響力を持っている、価格の維持に影響を与え得るということが非常に重要でございます。まき網等につきましては、この調整保管事業を使いまして非常に効果的な価格支持をやっておるわけでございますが、場合によりましては、いままでの経験から申しましてなかなかこの調整保管事業をうまく使いこなせなくて、価格が依然として暴落したまま品物を売らざるを得ないといったような事業を行ったこともございまして、やはり団体の強化といったこともあわせましてこの調整保管事業をうまく活用していくことを今後考えていかなければいかぬと考えている次第でございます。
  105. 神田厚

    ○神田委員 水産加工業者の中には、水産加工業施策を充実させて水産加工業の振興を図って水産食品の安定供給の役割りを果たすために、水産加工業の振興に必要な基本法を制定すべきである、こういう声が大変多いと聞いておりますが、基本法制定等の問題についてはどの程度のお考えをお持ちでありましょうか。
  106. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほどから申し上げておりますように、水産加工業が非常に重要な役割りを果たしており、これが国民食糧の供給の面でもあるいは漁業経営の安定の面でも非常に重要である、その振興を図ることが必要であることは否定すべくもないことでございます。そのようなことから、水産庁といたしましては、この法律に基づきます加工施設資金供給をするとか、あるいは加工処理体制の整備であるとか、あるいは水産加工経営安定のための措置、あるいは消費者ニーズに応じた加工食品開発普及等各般の施策を行っているわけでございますけれども、ただいま御指摘水産加工振興法の制定でございますが、法律をつくるよりもむしろいろいろな政策の内容の充実が重要でございます。もちろん法律の制定につきましては、各国の漁業規制の動向であるとか、あるいはわが国の近海における多獲性魚生産状況、食料品のニーズ変化といったようなことを眺めていくことがその前提でございますけれども、その内容はむしろ各制度の充実を図っていく、それによって実態的にこの振興を図っていくということがわれわれの先決の課題ではないかと考えている次第であります。
  107. 神田厚

    ○神田委員 この関係法律では、最後に、自由化の問題でちょっと御質問を申し上げます。  現在、八品目の水産物を非自由化品目としておりますけれども、沿岸あるいは中小漁業という経営基盤の脆弱な階層に関係する品目でございますから、漁業者は当然にその輸入枠の拡大と自由化には強く反対をしているわけであります。この点につきまして、水産物輸入についての政府の基本的な考え方についてお尋ねを申し上げておきます。
  108. 松浦昭

    松浦政府委員 水産物の安定的な供給を確保するためには、何と申しましても沿岸、沖合い漁業を一層振興しまして、わが国の周辺水域漁獲される水産物有効利用することが先決であると思うわけでございます。  ただ、消費者需要が強くて、国内生産では賄い切れないような中高級魚介類につきましては、たとえばエビとかあるいはかずのことかあるいは魚卵といったようなものにつきましては、ある程度まで輸入せざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、当然無秩序な輸入がわが国漁業者に悪影響を及ぼさないように、特にわが国の沿岸、沖合い漁業者の主要漁獲対象魚種でありますサバイワシ、サンマ、イカ等につきましては現在輸入割り当て制度をしいているわけでございまして、この点は、私どもは、先般の対米交渉もございましたけれども、これを自由化する気持ちは全くない、そのようなことで対応をいたしている次第でございます。  なお、輸入品目の割り当てでございますが、何分にも漁業はその年々の漁獲の変動が非常に多うございます。したがいまして、その需給関係のバランスを図るためにある程度までの輸入をある年には行わなければならぬということもございますが、何分にも国内関係が最も重要でございますので、国内関係漁業等に対する影響に十分配慮しながら、この割り当てに対しては適正に対処していくことが私どもの基本方針でございます。
  109. 神田厚

    ○神田委員 それでは、漁船損害等補償法の一部を改正する法律案関係について、二、三御質問を申し上げます。  まず第一は、この保険組合の漁船積荷保険事業の実施状況でありますが、いろいろな組合、大変小さい組合もありますし、引受隻数が非常に小さいところもありまして、いろいろ問題もあるようであります。したがいまして、この保険組合の合併の問題についてはどういうふうに考えているのか、その辺のところをちょっとお尋ねしたいと思います。
  110. 松浦昭

    松浦政府委員 漁船積荷保険は加入件数も少のうございますし、組合内部での危険分散が必ずしも十分でございませんので、組合段階では損害率の変動が大きい、あるいは支払い変動に備えるための準備金が試験実施中に十分蓄積されたということは言えないと思います。このために、組合によりましてはその経営が非常に不安定になっているということがございますので、今回御提案申し上げました漁船積荷保険の内容につきましても、とにかく組合内部での危険分散が十分できるようになるまでの当分の間は漁船保険中央会が組合の保有責任分についても補完再保険を行うことができるようにしているわけでございます。  お尋ねの組合合併につきましては、付加保険料率はどのくらいが適正かとか、あるいは準備金はどのくらい持ったらよいのかといったような組合経営のあり方を十分に検討いたしまして、今後の検討課題にいたしたいというふうに考えている次第でございます。
  111. 神田厚

    ○神田委員 漁船積荷保険の試験実施の結果、再保険者である漁船保険中央会に昭和五十六年度末で九億余りの支払い準備金が積み立てられています。これらのことを考えまして、積み荷保険の料率をもっと引き下げるべきである、こういうような意見も出ているようでありますが、この点についてはどういうふうにお考えであるのか。さらに、この使途につきましてはどういうふうな形でこれを使うのか、具体的な使途とその運用方法を含めまして、政府の指導方針をお聞きしたいと思っています。
  112. 松浦昭

    松浦政府委員 ただいまお尋ねのように、試験実施期間中に漁船保険中央会に生じました繰越剰余金は五十六年度末で九億一千八百万円になっております。この使途をまず御説明申し上げますが、これは、何と申しましても、第一次的には、この試験実施は今年九月末まで引き受けを続けていくわけでございます。したがいまして、責任期間が一年ございますので、五十九年九月末までの責任期間に残りました積み荷保険の試験実施契約の準備金にまず充てなければならぬ、これは当然のことでございます。しかし、恐らくその事態におきましてもさらに残余が残る場合があり得る、また残るのではないかと思います。その場合には、先ほどもお尋ねがございました試験実施によって不足金が生じた組合の対策ということも考えていかなければならぬというふうに考えておりますし、また同時に、積み荷保険の振興のためにこれを活用するということでその使途を考えるということも考えられると思います。したがいまして、このような方針のもとに、これは本来漁船保険中央会が考えることでございますので、私どもそのような方向でこの中央会を指導してまいりたいというふうに考えている次第でございます。  それから、本格実施となる本年十月以降の料率についてでございますけれども、この料率については目下最新データを取り入れまして算定をしているところでございますので、まだしばらくちょっと上がるとか下がるとかは申し上げかねる状態でございますが、私ども危険率に応じた適正な料率ということでこの算定に当たってまいりたいというふうに考えている次第であります。
  113. 神田厚

    ○神田委員 次に、水産業協同組合法の一部を改正する法律案について、二、三御質問を申し上げます。  最初に、漁業協同組合等に対する共済事業能力の付与についてでありますが、この問題は、事業を拡大するということによって、つまり他種共済、農協共済とかそういうものとの競合関係が生ずることが考えられますけれども、これらについてはどういうふうな指導をしていくのか、その点をまずお聞きしたいと思っております。
  114. 松浦昭

    松浦政府委員 他種共済との競合の問題でございますが、まず第一に、漁協の員内利用者の共済の利用ということを考えてみますると、これはほとんど問題は生じないと思います。と申しますのは、たとえば漁家のうちに農家に該当する方がおられますけれども、これは三割程度ございますが、実際農家戸数全体から見ますれば、このような漁家と申しますか、農家と申しますのはわずか数%でございますので、これは農協共済との間でトラブルが生ずるといったようなことはほとんど考えられないというふうに思います。  したがいまして、問題が生ずるとすれば員外利用の対象者ということで共済事業が行われた場合にトラブルが起こるのじゃないかということでございます。法律上員外利用を認めている趣旨は、員内利用を補足しその円滑化を図るためということになっておりまして、もしも員外利用が余りにも過度にわたります場合には、たとえば既契約の解除等無理な推進活動をやる、あるいは事故が発生した場合の共済金の支払い分担をめぐる紛争が生ずるといったようなことがございます。このようなことから、実は他種共済、つまり農協の共済であるとか農業共済の共済事業であるとか、そういったもろもろの共済事業との間の問題が発生しないように私ども指導していきたいというふうに考えておりまして、共済事業が当然組合員の相互扶助というものを基盤とすることでございますので、員外利用の扱いについては、とにかくこのような他種共済との間でトラブルが発生しないように、これを慎重に取り扱うように指導する。また、万一トラブルが発生いたしましても、当事者間で協議の場を設けることによって誠意を持って解決できるように十分指導してまいりたいというように考える次第でございます。
  115. 神田厚

    ○神田委員 次に、連合会制度の創設でありますが、法律上では都道府県段階の連合会を設立することができる、こういうふうになっております。しかしながら、農協共済は一兆七千六百九十六億、昭和五十六年度共済掛金でありますが、大変大規模であります。こちらの共済は二百二億円というようなことでありますから、こういう形で現在の事業規模のままで都道府県連合会を設立して、三段階制をとっていった場合には、これに伴うコストの増大等が付加掛金の引き上げにつながるおそれがあるというような指摘もあります。つまり、都道府県共済連合会の設立認可についての政府の基本的な考え方はどういうふうになっておりますか。
  116. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の法改正によりまして、水産業協同組合系統による共済事業におきましては、都道府県段階に共済水産業協同組合連合会というものを設立しまして、一応三段階制をとることができる法体系で御提案を申し上げているということは事実でございます。しかしながら、都道府県段階において連合会を置くかどうかということにつきましては、基本的にはこれは団体の判断にゆだねたいというふうに考えておりますけれども、ただ、共済事業が従来全水共という全国一本の組織で行われてまいりましたので、実は団体の間におきましても当面は二段階の方式で発足したいということを申しております。現実に、昨年の十二月二十三日に全国の漁連、信連、指導連会長、それから漁業共済組合長の合同会議がございましたが、その際にも事業組織については当面単協元受け、全国連再共済の二段階で発足するということで確認をされている次第でございます。行政庁としましても、そのような意味で現段階におきましては二段階制で発足するということが適当であるというふうに考えているわけでございます。  しからば将来はどうかということでございますが、やはり都道府県別の事業量の格差が著しいということでございますので、三段階制をとった場合には都道府県によっては当然御指摘のようなコストの増高ということが起こるわけでございます。そのような場合には、そうした事態が生ずる可能性がなくなるまではやはり二段階制でいくということが適当ではないかということで、今後の指導に当たってまいりたいというふうに考えている次第であります。
  117. 神田厚

    ○神田委員 最後に、漁業経営負債整理資金融通助成事業の問題につきまして御質問申し上げます。  これは、昭和五十七年度から融資枠三百五十億円、昭和五十八年度予算六百五十億円をもって発足したわけでありますが、先ほどの質問にも触れられておりましたけれども、この資金の融通が、この制度がうまく機能できるのかどうかという心配ですね。  一つは、やはり漁業者の自助努力ということを大変大きな前提にしておりますので、こういうことから自助努力が困難な状況、つまり必要規模の減船等ができないというような場合におきましては、せっかくの本資金を生かして再建整備を図れないおそれがあるけれども、この点はどうかという問題。  さらには、この制度が沿岸漁業には制度として大変いろいろな事情からなじまない、沿岸漁業への本資金の融通が果たしてスムーズに行われるかどうか、こういう問題について、この辺はどういうふうになっているのか。  さらには、この資金が表面化した一定条件の固定化債務を整理対象債務としておるために、抜本的な経営改善はできないではないか、こういう指摘もあります。  そして、この資金の借入資格、整理対象債務等の貸付条件に多くの制約があり過ぎまして、資金需要者に対しまして必要な資金が円滑に融通されるのかどうか。本資金を十分に活用できないおそれがあるのではないか。  つまり、漁業の実態に合わせてもう少しこれらの問題について考えを詰めていく必要はないか、こういういろいろな危惧が表明されておりますけれども、その点につきましてはどういうふうにお考えでありますか。
  118. 松浦昭

    松浦政府委員 まず、この漁業経営負債整理資金の融通に当たりましての基本的な考え方でございますが、やはりこれは漁業者の自助努力ということを前提にいたしまして減船計画というものを立てていただき、その立てていただいた方々によりまして共補償をやっていただきまして、減船、廃業者という方も出てくる。それによりまして全体の当該業種の経営合理化され、そしてまた健全化していく、こういうことを期待いたしまして、そのために支障となりますところの負債を流動化していく、これが負債整理資金の基本でございまして、その前提の条件というものは、あくまでも漁業者の自主努力ということが前提になっていくわけでございます。したがいまして、減船計画がなかなか立ち得ない業種というものがあり得ますために、今日までこの資金がなかなか供給できなかったという問題があるわけでございます。  そこで、カツオ・マグロ業界のように二割の減船を早々と打ち出して大変な努力をしていただきましたところは今年度の供給に間に合ったわけでございますが、それ以外の業種はなかなかこれに乗りがたいという問題がございます。そこで、私どもとしましては、確かにこのような減船を決定するということはなかなか容易なことではございませんけれども、これはぜひやっていただきたい。しかしながら、なかなかそれになじまない業種というものもあろうかと思います。  そこで、実は私ども本制度資金の融通に当たりまして、いわゆる減船対象業種と施設合理化業種の二重指定制度というものを持っておるわけでございます。これはすでに水産庁の通達にも書いてあるわけでございますが、たとえばイカ釣り漁業のような場合には、減船もやっていただくけれども、一方におきまして、たとえばキャッチライトといったようなものをつけまして、それで施設合理化をやる。この二つを合わせますと、われわれ合わせわざと呼んでおりますが、双方で二割程度の効率的な経営が期待できるということになりますと、これも本資金の対象にするといったようなことも考えておるわけでありまして、このような制度の活用と、それから漁業者の方々の自主的な御努力にまちまして、さらにこの対象業種が拡大していくということを実は期待しておるという状況でございます。  それから、この制度がなかなか沿岸の漁業にはなじまないじゃないかということでございまして、確かにこの制度の骨格、内容等を考えてみますと、沿岸漁業の場合にはこれに乗り得るということはなかなかむずかしいという感じが私もいたします。今後いろいろ工夫を加えていかなければならぬという要素はあるというふうに私も考えておるわけでございますが、ただいま申し上げましたようないわゆる施設合理化といったようなことで、沿岸の漁業についてもこれに乗り得る場合もあると思いますし、さらに、この事業に乗り得ないそういった沿岸漁業につきましても、従来から漁業経営維持安定資金とかあるいは農林漁業金融公庫の沿岸漁業経営安定資金、いわゆる再建整備資金というものがございます。これは年々拡充をしてきておるわけでございますから、こういった制度の活用によりまして負債整理の円滑化が行われ、そして経営安定が図られるように今後指導してまいりたいというふうに考えている次第でございます。  それから先ほどお尋ねの第三番目のことといたしまして、この資金が表面化いたしました一定条件の固定債務を一括整理対象にしてしまうということによりまして、抜本的な経営の改善に資することはできないのではないかということでございますが、この整理対象債務は、返済期到来後未返済になっている債務のほかは、返済期末到来の債務のうち期限延長、借りかえ等により実質的に延滞ないし固定化している債務、それからこれに準ずる債務ということで、たとえば賃金の未払いの分とか、いろいろな準ずる債務につきましてもこれを対象にするということで、かなり広い債務を含めてこの整理対象債務ということで貸付対象にしていくということを考えているわけでございます。  ただ、先ほど御指摘がありました点は、恐らく形式的あるいは実質的に固定化している債務に限定しないで、漁業者の持っているすべての債務を一括して対象にしたらどうかという御議論であろうかと思いますが、固定化していない一般債務を対象とするということになりますと、たとえば期限が未到来で現実に運転資金として経営内部でうまく活用しているものもございます。こういったものまでこの対象にするということは、何分にも十年以上の長きにわたっての利子補給が義務づけられるといったような、これは非常に低利長期の融資でございますから、そのような非常な特典にあずかるということのためには、そこまでやるということは余りにもその範囲を拡大し過ぎるのではないかということで、先ほど申しましたような債務に限った、しかしこれはかなり広いものだというふうに御理解をいただきたいと思うわけでございます。  それから最後に、この整理対象債務の内容を制約しないで、もうちょっと資金が円滑にできるような手段方法はないのだろうかというお尋ねでございますが、確かに今回の貸し付けに当たりまして、これが減船あるいは施設合理化といったような再編整備の円滑化の手段ということで、これに参加する漁業者の負債整理ということから、ある程度までの限定、規制を付さざるを得なかったということがあったわけでございます。しかしながら、最近時点で一番大きな問題になりましたことは、先ほども御答弁申し上げましたように、いわゆる緊急貸し付け資金、たとえば経安資金であるとかあるいは燃油資金であるとかあるいは国際規制資金であるといったような国の制度に基づく資金につきましては、期限が到来いたしまして三カ月以内にこれが払えないということになりますと、これはもうほとんど自動的と言っていいぐらいの状態でこの負債整理資金に乗りかえるかっこうになっております。  ところが問題は、繰り返して申しておりますが、いわゆる民間プロパー資金と言われているものでございまして、これは民間がどのようにでも貸すことができますので、それを余りにも自由に貸すということは、先ほども申しました、言葉は悪うございますが、悪乗りといったことが起こるというようなことから、財政当局もこの点非常にシビアに言ってきたわけでございます。このために、実は本制度の企画をいたした時点、つまり五十六年の三月末現在ということでこのプロパー資金の方は対象債務を限ってしまったということでございましたが、これをやりましたところが、そんな二年前の対象債務につきましてそれが確定できるかということから、実は先ほどの新盛先生の御指摘のように十億円ぐらいしか貸せないのじゃないかというような危惧の念が出てまいったわけでございます。さようなことから、至急に財政当局とも相談いたしまして、非常に簡易な方法でこれを特定するということを実は先日決定いたしたところでございまして、この方法によりまして、固定化しております債務の額というものを比較的容易に、しかも流動的に決めるということができるようにいたしましたので、この問題が解決いたしまして、相当程度資金が近日中に出ていくということが期待できると思っております。
  119. 神田厚

    ○神田委員 最後に、大臣にお尋ねをいたします。  大臣水産業界に対しまして非常に御理解もいただいておりますし、御見識も非常に高いものがあるというように聞いておりますが、現在の非常に厳しい漁業環境の中で、お互いのこの三つの法律案等につきましても、細かいところに手当てをしていこう、こういう姿勢があるわけでありますが、ひとつこれから先のこの水産事業を預かる大臣といたしまして、これからどういうふうな形で水産政策を展開をしていくのか、その基本的なお考え方をお聞かせをいただきまして、質問を終わりたいと思います。
  120. 金子岩三

    金子国務大臣 わが国の水産の今後の置かれた責任というものは、私は非常に重大に感じております。したがって、何回も繰り返しておりますとおり、同じ食糧生産をやっておる部門である農業と漁業と、こう分けて考えた場合、どうも水産は、仮に予算面で言っても非常に貧弱でございます。これはもう長年の歴史がこのようなことになっておるのでございまして、かつて鈴木農相の時代に、水産省をつくるということで長年業界の要望であったものを、農林省の下に入れまして農林水産省という名前をつけました。そのときの機構を、やはり水産庁という機構を残すと、依然として水産庁でこの後もいくではないかということで、一応庁は取り除くべきだ、農林省の全体の中に水産行政も予算も入れてしまうべきだということをずいぶん私はその当時主張いたしましたけれども、どうしても折り合いがつかないで、従来の水産庁がそのまま残りました。  自来四、五年予算を編成してみますと、やはり昔の水産庁の殻が一つ抜け切らないということで、やはり絶えず予算面では農林省の中でずいぶん冷遇されておる、このように私は考えております。同じ農業、漁業を食糧生産の重大な使命を帯びた産業であるとするならば、ひとつもう少し均衡のとれた金の振り分けをすべきだ、こういう考え方でおりますので、今後とも私のいわゆる能力のある限りそういう方向でひとつ取り組んでいきたい、このように考えております。
  121. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  122. 山崎平八郎

    山崎委員長 次回は、来る八日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十四分散会