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1983-04-12 第98回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)     午後一時四分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 愛野興一郎君 理事 佐藤 信二君    理事 田名部匡省君 理事 堀之内久男君    理事 矢山 有作君 理事 渡部 行雄君    理事 市川 雄一君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    池田 行彦君       亀井 善之君    始関 伊平君       吹田  愰君    堀内 光雄君       上原 康助君    角屋堅次郎君       竹内  猛君    山花 貞夫君       鈴切 康雄君    木下敬之助君       榊  利夫君    中路 雅弘君  出席国務大臣         農林水産大臣  金子 岩三君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産大臣官         房審議官    大坪 敏男君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         農林水産省畜産         局長      石川  弘君         農林水産省食品         流通局長    渡邉 文雄君         農林水産技術会         議事務局長   岸  國平君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         防衛庁防衛局防         衛課長     藤井 一夫君         防衛庁経理局会         計課長     源氏田重義君         防衛施設庁施設         部施設管理課長 折田 成男君         沖縄開発庁総務         局企画課長   藤田 康夫君         国土庁大都市圏         整備局筑波研究         学園都市建設推         進室長     久保 敏行君         国土庁地方振興         局特別地域振興         課長      相馬  実君         外務省経済協力         局技術協力第一         課長      佐々木高久君         大蔵省主計局主         計官      千野 忠男君         農林水産省経済         局国際部長   塚田  実君         農林水産技術会         議事務局研究総         務官      中野 賢一君         海上保安庁警備         救難部長    森  孝顕君         郵政省電気通信        政策局業務課長 五十嵐三津雄君         郵政省電波監理         局有線放送課長 金子 俊明君         郵政省電波監理         局放送部技術課         長       佐藤 允克君         建設大臣官房官         庁営繕部営繕計         画課長     小川 三郎君         内閣委員会調査         室長      緒方 良光君     ───────────── 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     井上 普方君   中路 雅弘君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   井上 普方君     山花 貞夫君   三浦  久君     中路 雅弘君 四月十二日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     竹内  猛君 同日  辞任         補欠選任   竹内  猛君     角屋堅次郎君     ───────────── 三月二十九日  人事院勧告恩給凍結撤回に関する請願榊利夫紹介)(第一八一四号)  人事院勧告完全実施に関する請願中島武敏紹介)(第一八一五号)  同(浦井洋紹介)(第一九一八号)  同(久保等紹介)(第一九五六号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願浜野剛紹介)(第一八一六号)  同(佐藤孝行紹介)(第一八六二号)  同(関晴正紹介)(第一八六三号)  同(箕輪登紹介)(第一八六四号)  同(川田正則紹介)(第一八九二号)  同外二件(牧野隆守紹介)(第一八九三号)  同(地崎宇三郎紹介)(第一九一九号)  同外二件(平泉渉紹介)(第一九二〇号)  厚木基地における訓練飛行即時中止等に関する請願岩佐恵美紹介)(第一九二一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一九二二号)  同(中路雅弘紹介)(第一九二三号)  国家公務員労働基本権確立及びスト権回復に関する請願金子みつ君紹介)(第一九五七号) 四月六日  旧軍人恩給改定に関する請願中路雅弘紹介)(第二〇〇二号)  同(堀之内久男紹介)(第二〇三三号)  同(石井一紹介)(第二〇八八号)  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願川崎二郎紹介)(第二〇八四号)  同(染谷誠紹介)(第二〇八五号)  同(塚原俊平紹介)(第二〇八六号)  同(牧野隆守紹介)(第二〇八七号)  同(今井勇紹介)(第二〇九三号)  同(中尾栄一紹介)(第二〇九四号)  人事院勧告完全実施に関する請願田中恒利紹介)(第二〇九二号)  厚木基地における訓練飛行即時中止等に関する請願加藤万吉紹介)(第二〇九五号) 同月十二日  元日赤救護看護婦に対する慰労給付金に関する請願池端清一紹介)(第二一七二号)  同(川本敏美紹介)(第二一七三号)  分(船田元紹介)(第二一七四号)  同(山下徳夫紹介)(第二一七五号)  同(枝村要作紹介)(第二一九六号)  同(友納武人紹介)(第二一九七号)  同(中路雅弘紹介)(第二一九八号)  同(丹羽雄哉紹介)(第二一九九号)  同(浜田卓二郎紹介)(第二二〇〇号)  同(金子岩三紹介)(第二二三二号)  同(木野晴夫紹介)(第二二三三号)  同(古賀誠紹介)(第二二三四号)  同(竹内黎一君紹介)(第二二三五号)  同(谷垣専一紹介)(第二二三六号)  同(稻村佐近四郎君紹介)(第二二六五号)  同(戸沢政方紹介)(第二二六六号)  同(中尾栄一紹介)(第二二六七号)  同(湯川宏紹介)(第二三一八号)  旧樺太住民に対する補償に関する請願箕輪登紹介)(第二一七六号)  戦後処理問題として在外預送金に関する請願木下敬之助紹介)(第二三〇一号)  同(渡部行雄紹介)(第二三〇二号)  同(山花貞夫紹介)(第二三一九号)  元日赤救護看護婦に対する恩給法適用等に関する請願戸井田三郎紹介)(第二三〇三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  旧軍人軍属恩給欠格者に対する恩給法等改善に関する陳情書外三件(第九八号)  人事院勧告完全実施に関する陳情書外百六件(第九九号)  青少年対策に関する基本法制定に関する陳情書(第一〇一号)  佐世保市倉島地区海上自衛隊施設の移設に関する陳情書(第一〇二号)  大阪防衛施設局の存続に関する陳情書(第一〇三号)  国の出先機関の統廃合に関する陳情書(第一〇四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第四号)      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林水産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 どうもきのうの余震もあってまだ熱が入らぬですが、委員会が開かれるようですから、質問をさせていただきたいと思います。  最初に、法案について少しくお尋ねをさせていただきたいのですが、せんだって筑波学園都市にあります農業関係試験研究機関現場についても法案との関連で視察をさせていただきましたが、今度の法律の一部改正というのは、専門的過ぎてわれわれ素人にはなかなかのみ込みにくい点もあります。バイオテクノロジーの問題についてはいろいろ御専門のお立場お尋ねもあろうと思いますので、私は私なりに若干お尋ねをしておきたいと思います。  そこで、今回の法律改正案では、御承知のように農業生物資源研究所農業環境技術研究所設置をすることとしているようでありますが、この二つ設置をする理由と、法案提案の趣旨にもございますけれども、またその研究内容については一体どういうものをお考えになっておられるのか。そこいらの点からひとつお答えをいただきたいと存じます。
  4. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  このたびの法案につきましては、最近の農業情勢進展あるいはバイオテクノロジー等科学技術発展の状況、そういったようなことを踏まえまして、今後農業関係研究進展を図るためには、この法案の中でお願いをいたしております農業生物資源研究所あるいは農業環境技術研究所、この新しい二つ研究所を新設をいたしまして、その方面の研究進展を図りたい、そういうことでお願いをしているわけでございます。  農業生物資源研究所につきましては、最近大変進展の著しいバイオテクノロジー、こういったものを農業分野において導入をいたしましてその活用を図って、いままでの交雑育種法におきましてはなかなか不可能でありましたような、新しい画期的な新形質を持った新作物をつくるといったようなことを主な目的といたしまして、研究内容といたしましては、まず一つは、それの一番基礎になります遺伝資源世界各国から広く収集をいたしまして、それを保存するということを一つの大きな柱にいたしております。それから二番目は、遺伝子組みかえあるいは細胞融合、そういった新しい技法を用いまして育種をいたします。それから三番目は、放射線によります突然変異を利用いたしまして、これもまた育種活用していくという研究でございます。それからもう一つの大きな柱といたしまして、作物の持っております光合成の機能、そういったものを有効に活用するような、そういう研究をやりたいということを考えております。  それからもう一つ農業環境技術研究所の方でございますが、自然の生態系と調和したような、そういう農業技術開発を図る、農業生産力の基盤の培養を行う、それによって国土自然環境保全にも資する、そういった基本的な考え方を持っておりまして、研究の柱といたしましては、一つは、農業気象あるいは土壌、水質、植物、微生物、そういった農業環境を構成する諸要因の特性の解明をするということを一つの大きな柱といたしました。それからもう一つの柱としましては、複雑な自然の仕組みを巧みに活用した形の技術、たとえば地力の維持向上とか病害虫防除でございますとか、そういった技術開発をする。それからもう一つは、リモートセンシング等最新技術活用等による農作物生育環境の総合的なことを行う、そういったことを考えております。
  5. 上原康助

    上原委員 確かにいま事務局長御答弁ありましたように、この両新研究機関の概要、あるいはその一つである農業生物資源研究所設置をした場合の主な研究内容というのは第一点から五点まで、さらには農業環境技術研究所につきましては主な研究内容として七つばかりお挙げになっております。  そこで、いろいろ必要性があってこういう研究機関の再編をしながら新しい機関設置をやっていくのだと思うんですが、確かにバイオテクノロジー進歩というのは日進月歩である、また技術面革新というものもどんどん進んでいくということからこの構想が出てきたんじゃないかという感じはするわけですが、これは後ほど若干関連してお尋ねいたしますが、熱帯農業研究センターの問題のときにもいろいろこの委員会で議論をした経過がございます。そういう意味で、研究機関というものは単なる専門家なりあるいは学問的な立場での研究の域に閉じこもってはいけないし、これを置くことによって地域わが国農業全般に、技術革新なりあるいは生産性の向上なりそういうものをどうもたらすかということも含めて、活用していけるものでないといかぬと思うのですね。そういう意味で、この種の研究機関に対する農林水産省の基本的な考え方というものあるいは今後の方針というものはどういう御計画なのか。この点はむしろ大臣のお立場お答えいただいた方がいいかと思うのですが、いかがでしょう。
  6. 岸國平

    岸政府委員 大変基本的な問題でございますので、大臣からこのように研究を進めろというふうにかねがね御指導をいただいております問題についてお答え申し上げます。  農林水産業をめぐる大変厳しい情勢の中で、将来にわたって食糧の安定的な供給あるいは農林水産業の健全な発展、これを図っていくためには、農林水産技術開発あるいはこれの普及といったことが非常に重要であることは先生の御指摘のとおりであるというふうに私ども農林水産省といたしましても考えております。このために、農林水産業の動向あるいは農林水産行政展開方向、そういったものに即しまして、それからまた相手研究でございますので、科学技術進歩といったものも十分に踏まえなければいけません。それらを踏まえまして、三つの大きな柱を考えております。  一つは、食糧安定供給のための新生物資源開発その他の革新的な技術開発ということでございます。この点につきましては、今回の二つ研究所におきまして主としてそういったことを行ってまいりたいと考えております。  もう一つは、わが国農業にとりまして大変重要であります土地利用型農業における生産性向上のための技術ということを二番目の柱といたしまして、いろいろな試験場研究所研究を行っております。  それから、国土資源環境保全のための技術開発ということを三番目の大きな柱として考えておりまして、これにつきましては、今回の農業環境技術研究所においては主としてこの点に視点を置いて研究を進めることを考えておるわけでございます。  以上のようなところに重点を置いて研究を進めていくというのが方針でございます。
  7. 上原康助

    上原委員 今後の方針についてはいまある程度お答えいただきましたが、これまでもバイオテクノロジーに関する研究はなされてきていると思うのです。せんだっても現地で米の品種なり野菜あるいは生態学、動植物のことについても説明が若干ありましたが、しからばこれまで研究成果は上がっておるのか、あるいは、いま少しお触れになっておりましたが、その研究成果がどう農民や地域に還元されてきているのか、具体的な事例があればお答えをいただきたいと思います。
  8. 岸國平

    岸政府委員 これまでにどのような成果が上げられているかということでございますが、何分相手農業でございまして、大変仕事の範囲が広いわけでございますので、ここで若干実例を挙げて部分的にお答え申し上げたいと思います。  まず一つは、品種改良の問題でございます。私ども農業関係研究におきましては、品種の問題は非常に大きな基本的な問題であると認識いたしておりまして、それぞれの研究所試験場においてこの問題には非常に大きな力を注いでおります。たとえて申しますと、稲作におきましてはいままで非常にたくさんの稲の品種改良を行ってきておりまして、品種改良と同時に、その品種を使って栽培をする栽培技術改良というものを行ってまいりました。この品種改良あるいは栽培法改良によりまして過去二十五年ぐらいの間に稲の単収は約一・四倍になっておりますし、労働時間から申しますと約六〇%の省力化が達成されております。それからまた、品種実例といたしましては、コシヒカリとかササニシキとか、最近のものでございますとアキヒカリとか、そういった食味のいい、いろいろな地域にそれぞれ適合するような品種を育成いたしまして農業現場におろしております。  それから畜産の面で見ますと、人工受精技術は大変大きな開発成果でございまして、これもすでに牛においては非常に広範に用いられておるわけでございます。それからそのほか、豚用人工乳開発でございますとかあるいは急性伝染病の撲滅でございますとか、そういったことでわが国の今日の高能率な畜産経営確立に大変寄与してきておると考えております。  それからもう一つ野菜を取り上げてみますと、野菜におきましては各作期に適応した品種の育成ということが非常に大きな問題になっております。これがすでに相当程度達成されておりますし、それからプラスチックフィルム利用による栽培管理技術改良あるいは病害虫防除技術改良というようなことが行われております。  果樹の面では、リンゴのふじに代表されますような品質のよい、一般の農家でつくりやすい新品種改良開発というものが大きな研究成果になっております。  以上申し上げましたような成果はいずれもすでにそれぞれの農業現場に適用されておりまして、単に研究成果ということだけではなしに農業現場に役立っていると考えているわけでございます。
  9. 上原康助

    上原委員 確かに部分的にはいろいろ役立っている面もあるでしょう。特にわが国の主食である米の品種問題等については相当研究され、改良がなされてきていることはわかるような気がいたします。さらに、いまも野菜との関連でもありましたが、この間も、カンランキャベツをハクランに品種がえしたということで味見もさせられたのです。余りぴんときませんでしたが、そういうこともなされておる。その他畜産面についてもいろいろ改良がなされているという説明を受けました。  そこで、われわれとしてはまだまだ各研究機関との有機性というか連携性というものが十分なされていないのではないかという感を抱くのですが、たしか昨年九月に農林水産省生物資源開発研究会報告書というのが出ていると思うのですね。その中でも「バイオテクノロジーによる生物資源開発利用推進方策」という事項がありまして、この中で、各専門試験研究機関相互連携を密にして、効果的な研究開発体制を整備する必要性指摘をしておると思うのです。したがって、新設される二つ研究所と、いま局長ちょっと触れておられましたが、野菜試験場などの専門試験研究機関との連携はどのように考えておるのかということです。  例として野菜を挙げましたが、農水省の管轄下管理下にある農業関係試験研究機関というのは相当多岐にわたっていますね。五十七年度末の資料を見ましても、農業研究センターから始まって九州農業試験場まで約二十の機関を持っている。これが単なる縦割りじゃなく、それぞれの有機性連携を持って地域農業なり農業政策全般に生かされるということと十分なタイアップがないといかぬと思うのですね、この新設される研究機関にしましても。ここいらの点はどういうふうに結合というか有機性を持たせようとしておられるのか、改めてお答えをいただきたいと思います。
  10. 岸國平

    岸政府委員 ただいま先生の御指摘にございましたように、私ども二十の農業関係試験研究機関を持っておりまして、それぞれが有機的に連携をしてまいりませんと研究も有効に達成されないという事情にございますことは十分認識をいたしております。  二十の研究機関でございますが、一つは、北海道から九州までそれぞれの地域ごと地域農業試験場を置いておりまして、この地域農業試験場都道府県試験場と非常に密接に連携をいたしまして、それぞれの地域での農業展開に役立つような技術開発ということで研究を実施いたしております。  それからもう一つの大きな分類になります試験研究機関は、畜産でありますとか、草地でありますとか園芸における果樹野菜、それからお茶、蚕糸といったそれぞれの作目専門研究機関を持っておりまして、野菜試験場におきましては、野菜品種改良を中心にいたしましてその品種栽培改善技術といったことを研究しているわけでございます。この専門試験場のほかに、農業土木でありますとか、あるいは家畜の病気を研究いたします家畜衛生試験場でありますとか、そういったような基盤的な技術を対象にする研究所も置いてございます。  それからもう一つ、今回お願いをいたしております農業生物資源研究所、それから農業環境技術研究所については、基盤的な研究技術開発をする研究所でも、特にこの二つ研究所は基礎的な研究を行う研究所というふうに位置づけまして研究を進めてまいりたいと考えているわけでございます。  これらの研究所関連につきましては、いま申し上げましたような基礎的な研究機関あるいは基盤的な技術開発機関で行われました研究成果は、農業研究センターでありますとか地域農業試験場とかに受け渡されまして、そこでそれぞれの地域に適合する技術にまた加工、開発される、それが都道府県につながるということで、十分有機的な連携を持って研究推進いたしております。御指摘のように有機的な連携を持って推進することは非常に大事だと思いますので、今後ともそういうことには十分留意をいたしまして研究を進めてまいりたいと考えております。
  11. 上原康助

    上原委員 ぜひそのように一層の御努力をいただきたいと思います。  そこで、先ほど引用いたしました「バイオテクノロジーによる生物資源開発利用推進について」という報告書によりますと、「官・産・学の連携の強化」ということも指摘をいたしておりますね。組織化必要性、これについてはどういうお考えなのか。  さらに、官産学というと、官は政府系研究機関、産は経済界だと思うのです。学は、官も一緒かもしれませんが、いわゆる専門家の方々、その連携だと思うのです。この民間などへの支援要請については、バイオテクノロジーによる生物資源開発利用を進めていく上において今後どのようにお考えなのか、この点もひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 岸國平

    岸政府委員 今回の新しい研究機関、特に農業生物資源研究所のように時代の先端を行くような技術開発を目標といたしております研究所につきましては、御指摘のようにひとり国研究機関だけということではなかなか十分な開発が、研究推進ができないというふうに考えておりまして、この点につきましては官産学連携ということも非常に重要だというふうに認識いたしております。  まだこの研究所はこれからの問題でございますので、具体的に官産学連携についてこの研究所関連をしたところについては出てないわけでございますが、考え方といたしましては、いま申し上げましたように十分に連携をとっていきたいということを考えております。そのためには、単に予算の面で民間に資金を出すとか、そういうことは直接的には余り考えておりませんで、むしろ民間との間でも十分に情報交流をし、あるいは人と人との交流を深めるというふうなことに特に重点を注いでいきたいというふうに考えております。つい最近も、筑波におきましてバイオサイエンスセミナーといったようなことを催しまして、私ども国試験研究機関の者だけではなしに、大学あるいは民間にも非常に幅広く呼びかけまして、人を集めて情報の交換をいたしたところでございます。今後、これらの新しい研究機関につきましては、そういったことをさらに積極的に進めまして、官産学連携を深めながら研究推進していきたいというふうに考えております。
  13. 上原康助

    上原委員 そのことは必要があると思うのですね。といいますのは、これは国際的協力関係というのも大変必要だと思うのですね。特に遺伝資源といいますかの確保というのは、主要作物にしましてもその他の面にしても、大変な困難の伴う事業だというふうな説明がございました。このパンフを見ても、わが国貯蔵点数というのは非常に少ないですね。米国、ソ連、日本を比較したものが出ていますが、稲、麦、トウモロコシ、豆類、芋類等々を見てみましても、今後こういう面の国際協力というか、あるいはもっとこの種の貯蔵点数を確保していく上ではどのような御方針をお持ちですか。
  14. 岸國平

    岸政府委員 農作物の新しい品種をつくってまいりますためには、それのもとになります遺伝資源というものが非常に重要でございまして、私どももその重要性を認識して、いままでにもそれの収集、保存ということに努力をしてまいりましたけれども、いま先生からの御指摘にありますように、アメリカでありますとかソ連でありますとか、そういうところに比べますと、まだ量からいたしましても数からいたしましても十分とは言えない状況でございます。そういうことを認識しておりますので、今後この新しい農業生物資源研究所ができましたならば、その研究所研究あるいは事業の大きな柱といたしましてこのことを取り上げていきたいというふうに考えております。  現在、すでに農業技術研究所の中に種子の貯蔵施設がございまして、そこで三万点余りの遺伝子を保存いたしておりますが、今後はこの数をさらにふやすということをまず第一義に考えておりますし、ふやすだけでなくて、それの利用が十分にできますようにその利用のシステムをつくり上げたいということで、そういった予算のことも考えており、それの実行も考えておるところでございます。  なお、現在進めておりますこの事業の中でも、昨年からでございますが、中国雲南省で、ここは遺伝資源の宝庫と言われているところでございますが、中国側と熱帯農業研究センターとで共同研究をいたしまして、その共同研究の過程で、当方の物も提供いたしますけれども、中国側からも必要な、特に稲の遺伝資源をいただくというふうなことも実際に実行をしつつございますので、そういったことも含めまして、この大事な問題をさらに伸ばしていきたいというふうに考えております。
  15. 上原康助

    上原委員 そこで、そういうこともぜひ推進をしていただきたいわけですが、今回のこの二つ研究所設置との関連で、蚕糸試験場の組織が大幅に縮小される。したがって、定員も減員になるということになるわけですね。これはいろいろ御検討いただいて、関係者の皆さんとの御相談の上だと説明をいただきましたが、その点ではわかるような気というか理解できないわけでもないわけですが、問題は、この蚕糸試験場の規模の縮小、定員の縮小等によって、わが国農業の中で蚕糸業というものをどういう位置づけをなされようとしているかということが問われるのじゃないかという感じがするわけですね。  確かに、いろんな技術面というかその他の事情で、国内の蚕糸業というものが年々縮小というか後退してきていることは、これは否定できない事実になっていると思うのですね。果たしてこれだけ大幅に縮小して今後の蚕糸業の振興に影響はないのかどうか、この点については、過疎県であるとかあるいは離島を抱えてなお蚕糸業に相当力を入れようとするこの関係業者に少なからぬ影響を与えることはないのかどうか、この点の対策はどうなっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  16. 岸國平

    岸政府委員 蚕糸試験場につきましては、ただいまお話ございましたように、今回の組織再編整備に絡みまして、いままでの組織をかなり大幅に縮小することを考えております。ただ、これは現在の農業事情、特に蚕糸の置かれております事情を勘案いたしまして、適正な規模にということを念頭に置きましてそういうことをいたしておりますが、なお、今回の蚕糸試験場の新しくなりますといいますか、規模を縮小いたしました蚕糸試験場といたしましても、二百六十一名という規模で蚕糸試験場としてはしっかりと残すつもりでやっております。  その蚕糸試験場の中身でございますが、現在まで八研究部でやってきたところを四部にするということで縮小をいたしますが、その四部の中身をごらんいただきますと、桑の問題でございますが栽桑部、それから蚕の育種をする部、それから養蚕部、蚕を飼うための技術開発をする部、それから絹の加工利用研究をする部というふうに四つの部を置いておりまして、これはいままで蚕糸試験場がやってまいりました研究の全部をカバーする研究でございまして、規模は縮小いたしますけれども研究内容的には十分いままでのものを継続していけるようなことを配慮いたしております。そういうことで今後特に支障は生じないようにしてまいりたいと考えております。  それからまた、いままで支場を四つ置いておりましたけれども、その支場の中の東北、関西、九州、この三支場につきましては、いずれもそれぞれの地域にあります地域農業試験場に統合をいたしまして、その地域におきます蚕、桑の問題もさらに研究もしていくという措置をとっております。  それから、沖縄におきましてやはり養蚕の問題がかなり重要であるということも認識をいたしておりまして、今回、熱帯農業研究センターの沖縄支所に第六研究室というものを新設をいたすことにいたしております。この第六研究室におきましては、養蚕に関連いたしまして特に桑の栽培が中心になろうかと思いますが、研究ができるようにという措置も考えておりまして、今後におきましてもわが国の養蚕業は特に山村部等においては大変重要な経営の種目であるというふうに認識しておりますので、それらの振興のために十分に役立つような研究を今後とも続けていきたい、そういうふうに考えております。
  17. 上原康助

    上原委員 先ほども申し上げましたように、この養蚕業というか蚕糸業の経緯については私もある程度理解をしているつもりですが、ただ懸念されますことは、臨調の第五次答申、最終答申ですか、その五十ページでも、この試験研究機関の統廃合というか合理化についていろいろ指摘をされております。文部省、農林水産省。この中で「特に、研究作目農業全体に占める地位・役割の変化等から、蚕糸試験場については、当面、内部組織を大幅に合理化し、定員の半減を上回る措置を講ずることとし、今後は、養蚕業・製糸業の我が国農政における位置付けの推移等を踏まえ、一層の合理化を図るとともに、茶業試験場については、今後の茶業を巡る情勢の推移を踏まえ、他の試験場との統合について検討する。なお、農林水産技術会議について研究の計画、管理、調整機能等を強化するため、同会議農林水産省附属の試験研究機関との関係について見直す。」こういう指摘がなされているわけなんですね。どうもこれを先取りしたんじゃなかろうかという感を受けないでもないのですよ。もちろんこれは、いろいろその役割りを果たしてしまったものあるいは余り必要性のないものについての統廃合というもの、いろいろ事情によってやらなければいけないと思うのですが、ただ余りにも一方的にこのことだけを進められるとしますと、せっかくの蚕糸業とか農業というものがどうなるのか。そういう面からも、むしろ先取りをした形で大幅な縮小をすることによって、せっかく地域によっては芽生えつつある養蚕業というものが摘み取られていくということにならないように、研究機関の充実化というものもやるべきところはやっていただきたい、そういう立場からいま申し上げたわけでありまして、ここいらとの関連については一体どうなのか。この点は政治的な問題でもありますので、ひとつ農水大臣の方からもお答えをいただきたいと思うのです。
  18. 金子岩三

    金子国務大臣 いろいろ既存のものを統廃合して、そして最も新しい考え方に立って、合理的に能率的に研究開発をやろうという考え方でございます。  いろいろ人員の問題もありますが、現在携わっておる方々がほとんど新しい研究所に配置されることになります。したがって、実質的に新しく組織をするからそれには相応の財源がふくらむのじゃないかということであれば、これはまたいまの財政が窮迫しておる時代に適当でないかもしれませんけれども、余り財源を新しく求めなくて、そしてより以上のわが国農業開発振興ができるという、最もこれからの時代の要請にこたえるような研究開発をしようとしてこのような研究所設置する案となったのでございますので、この点は今日の技術進歩考えるとまことに時宜を得た方法である、私はこのように考えております。
  19. 岸國平

    岸政府委員 大臣に御答弁いただきましたが、補足的に申し上げます。  先ほど先生指摘の、今回臨調からこういう指摘が出されておるけれどもどうするかというお話でございますが、私ども、先ほどもお答えを申し上げましたように、またいま大臣からもお答えを申し上げましたように、技術開発というのはわが国農林水産業にとって今後とも非常に重要であるというふうに考えておりますので、臨調からあのような御指摘はいただいておりますが、今後ともその重要性を十分に御説明を申し上げ、その技術開発の力が落ちないような、そういうことで努力をしてまいりたい、そういうふうに考えておるわけでございます。  大変申しわけございませんが、先ほど私、熱帯農業研究センターの沖縄支所の研究室で、あるいは第四研究室と申し上げたかもしれませんが、第六研究室が正しいものでございますので、訂正をさしていただきたいと思います。
  20. 上原康助

    上原委員 いや、第六とおっしゃっておりました。  そういう程度のあれでしたらそう理解をしておきましょう。  そこで、この法案との関係では最後のお尋ねになろうかと思うのですが、いまの熱帯農業研究センターをそもそも筑波学園都市に置いていることの方が問題だと私は言っているのです。正直言って、こんなものは沖縄へ持っていけばいい。あのときも、五十六年の設置改正のときもずいぶん議論をいたしましたが、この農業研究センター設置された後、研究成果というのはどうなっておるのか、一体どういう成果が上がったのか、状況について聞かしていただきたいと思うのです。  私は何も沖縄出身だからそういうことを言っているのではなくして、本当に熱帯農業研究をやるというなら、その地域の特性を生かした立場でないといかぬと思うのです。二十もあるのです。あっちこっちにいろんな地域にマッチした研究機関を置いてある。そういう面でも熱帯研究のセンターの八重山支所というものをもっと充実をすべきであるということを今日まで指摘をして主張してきたわけだが、なかなかそうはしていただかない。それと、農業研究センター設置のときに附帯決議が付されておったと思うのです。地域農業者への還元など農業者の要請にこたえるようにもっと試験研究のメリットを地域に還元せよ、これは具体的にはどのような対応をなさってきたのか、こういうことと、やはりいまもありましたが、このバイオテクノロジー推進をしていく、あるいはさっき中国との交流問題等にもお触れになっておりましたが、そういうものをより効果的に進めていく上においても、農業研究センターの位置というか場所というのは再検討していいのじゃないのか、このことについてひとつあわせてお答えをいただきたいと思います。
  21. 岸國平

    岸政府委員 先生の御指摘の中に、熱帯農業研究センター農業研究センターと両方含まれているように存じます。大変紛らわしい名前で恐縮でございますが、五十六年の十二月に出発をいたしましたのは農業研究センター、これはやはり設置改正お願いいたしましてつくり上げていただきました。この農業研究センターにおきましては、現在出発後二年になろうとするところでございますので、その組織を挙げて設立の趣旨に沿うような研究を実施いたしておりまして、特にこの研究所では、技術の総合化ということを大きなねらいとして研究を進めております。  それからもう一つ熱帯農業研究センターでございますが、こちらの方は先生の御指摘にもございますように沖縄に支所を設けております。ただし、本所は筑波にございまして、いまこれを沖縄に移してはどうかというようなお話があったわけでございますが、実はこの熱帯農業研究センターの主な研究の目的と申しますのは、国際的な視野に立ちまして特に熱帯、亜熱帯地域の各国に多くの技術協力あるいは技術援助が行われているわけでございますが、それらに必要となるような技術開発をするということを熱帯農業研究センター研究の中心に置いておりますので、現在筑波にあります本所におきましては、むしろ研究員のかなり多くの部分、毎年三十人を超える人数が海外に出ておりまして、先ほど申し上げました雲南省に参っておりますのもその一つでございますが、そういったようにタイ国でありますとかあるいはフィリピンでありますとかマレーシアでありますとか、そういうところに研究員を派遣いたしまして、一年あるいは二年、短期のものは六カ月というふうに現地に参りまして現地で現地の研究者との間で共同研究をするということを大きな仕事にいたしておりますので、熱帯農業研究センターの本所はやはり筑波に、その中心であるところに置きまして推進をしていくのがいいのじゃないかというふうに考えております。  ただ、沖縄に置いております支所につきましては、そういった地域からのいろいろな作物わが国に導入して馴化するというような任務を持っておりますけれども、それと同時に、その支所の置かれております沖縄での地域的な問題にも十分目を向けて研究をしていかなければいけないというふうに考えておりますので、現在もそれぞれそういった意味野菜研究も行っておりますし、サトウキビに関する研究も行っておりますが、そういう面につきましては今後も、第六研究室の新設等も含めまして地域の問題にも十分な研究の対応をしていくように努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  22. 上原康助

    上原委員 成果がどう上がっているか余り触れておりませんが、せんだっての法案改正は確かに農業研究センターですね。そのときにこの熱帯農業研究センターの問題を触れたということを指摘していますので、それはいろいろ事情があるかと思いますが、しかし農業研究センター熱帯農業研究センターも、熱帯一つ取れば、あとは同じなんだよ。これこそまた臨調の対象になっちゃうよ。それで、熱帯地域だから熱帯農業研究の必要があるというなら、論理性がありますよ。紛らわしいものをお隣に置いたって、これはかえっておかしくなりますよ。これはいずれ私が指摘した方が正論になると思いますので、検討してみたらいかがですか。その点を重ねて強く、要望等を含めて指摘をしておきたいと思うのです。
  23. 岸國平

    岸政府委員 農業研究センターという名前につきましては、確かに両所が同じ名前を使っているというのはございますが、先ほど申し上げましたように、熱帯農業研究センターにおきます研究内容は、熱帯、亜熱帯地域を対象にして研究を進めるということでございますし、農業研究センターは、主として国内におきます農業に関する研究の総合化をねらった、他の試験研究機関全般に大きな関連を持つ研究機関ということでその名称を使っているところでございますので、先生の御指摘はお聞かせいただいておきたいと思います。
  24. 上原康助

    上原委員 総合性という言葉は表現の問題であって、それはできないことではないのだよ。熱帯地域、亜熱帯地域に置くから必要性がより増してくるということは、私は専門じゃないですが、否定できないと思います。  そこで次に進みますが、今度のバイオテクノロジーの問題とも関連すると思うのですが、もう一つバイオマス、これは未使用というのか未利用生物資源開発というような意味のようですが、要するにバイオマスと一応言われている。これも世界的な関心を持たれて、いろいろ新しい分野として資源問題として注目を集めているようであります。  御承知のように去る四月二日から三日間、東南アジアにおけるバイオマス利用に関する国際シンポジウムが沖縄で開催をされております。さらに五十六年度の農業白書にも、「未利用・未開発生物資源を食料、エネルギー等に多面的に利用するため、」ということで、「新たに「生物資源の効率的利用技術開発に関する総合研究」」要するにバイオマス変換計画を実施をしていきたいという方針というか計画がなされておるようであります。この国際シンポジウムは、国際協力事業団、これは外務省でしょうかね、さっきちょっと聞いたんですが、南方資源利用技術研究所、沖縄県庁、農業機械学会等が主催というか後援をして持たれたようでありますが、農水省としてはこのバイオマス変換計画の研究内容についてはどのようにお考えになっておるかということ、また同研究の発足後すでに二年が経過しているようですが、具体的な成果まではなかなかまだ出ていないかもしれませんが、ここいらのことはどうなっているのか、お答えをいただきたいと思います。
  25. 岸國平

    岸政府委員 バイオマスの利用に関する研究というのは、私ども、今後の問題として非常に重要な問題であるというふうに認識いたしておりまして、先生指摘のように、バイオマス変換計画といったような名前ですでに五十六年から研究を開始いたしております。  このバイオマス変換計画におきましては、いろいろな研究内容を持っておりますけれども、その中でも特に重要と考えておりますのは、現在農作物として利用されているものの研究につきましてはそれぞれの研究所でやっておりますので、現在は利用をされておりませんが生物資源として非常に有用になりそうだというようなものについて、これの有効な生産の技術でありますとか、それからまた、それの熱源として使う場合あるいは飼料として使う場合、そういったときに必要となるような技術開発ということを大きな目標にして研究を進めているわけでございます。  すでにいままでにも研究を進めておりますので、その結果といたしまして、まだ余り研究成果は上がっていないのではないかというお話でございましたが、むしろこの研究につきましては比較的開発的な内容を含んでおりますので、比較的短期間でもおもしろい成果が出つつございます。  たとえて申しますと、里山に現在は余り使われていないような広葉樹というものが非常にたくさんございますが、そういったものをある特殊な手段を講ずることによりまして、その手段といいますのは、高熱で圧力をかけた蒸煮というような手段あるいは爆砕というような手段で比較的簡単な手段でございますが、それを加えることによりまして、家畜の特に牛でありますとかヤギでありますとか、そういったものが非常に消化しやすい状態になるというような技術もつくり上げております。それからまたでん粉を、これは対象はいろいろなものにでん粉はあるわけでございますが、それらのでん粉を有効に活用するためには、余りエネルギーを使わないでアルコールに変換させるということを考えませんとせっかくバイオマスがありましても十分に使えないというふうなことがございますので、できるだけエネルギーを使わずに熱源に変えられるような、アルコールに変えられるような研究ということも実施をいたしまして、その中からはパプア・ニューギニアのサゴヤシの若干腐ったようなものから入手をいたしました菌を使いまして、普通ですとでん粉に熱をかけてろ過いたしませんとなかなかアルコール発酵をいたさないのでありますが、この菌の持つ酵素を使いますと生でん粉を直接アルコールに変える力が非常に強いというようなことも発見をいたしております。そういうことにあらわれますような成果がすでに出つつあるわけでございます。  今後も、このバイオマスの変換計画につきましては一層そういったいろいろな方面での研究進展させていくように努力をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  26. 上原康助

    上原委員 そこで、外務省おいでいただいたと思うのですが、せんだっての国際シンポジウムの成果といいますか、そこでいろいろ問題提起されていますね。そういうものについての評価、どういうふうにこのシンポジウムの討議事項をお考えになっておるのか、経済協力、経済開発という面でどのようにお考えなのか、少しく御見解を聞いておきたいと思います。
  27. 佐々木高久

    ○佐々木説明員 外務省、国際協力事業団といたしましても、バイオマス分野の開発途上国との技術協力というものにつきましては、十分必要性を認識しております。四月の初めに開かれました国際シンポジウムにつきましては詳しい報告はまだ受けておりませんけれども、その中でただ一つ、バイオマスランドをつくったらどうかという具体的な提案があったやに聞いております。  この構想につきましては、はっきりしたことはまだ聞いておりませんけれども、かなりの巨額な資金を必要とするということでございます。先生御承知のとおり、国際協力事業団が現在沖縄国際センターというものを建設すべく作業中でございますので、このバイオマスランド構想についても国際協力事業団ベースで何かできないかということでございますと、最近の財政状況が厳しい折がら、いま直ちにそちらの方まで国際協力事業団でやれる状況にはないと申し上げざるを得ないと思います。
  28. 上原康助

    上原委員 すぐそこに物事を発展させないで、もう少し国際的に物事を考えていただかないと困る。  いま、シンポジウムの評価をどういうふうにごらんになっておるかという立場お尋ねしたのですが、具体的な提案、バイオマスランド構想というものが確かに提起をされているわけですが、問題は、バイオマス生産あるいはバイオマスの有効利用、そういう研究推進していくにはどういう立地条件がいいのかということが一つのポイントだと思うのですね。その点はどうお考えなのですか。
  29. 岸國平

    岸政府委員 先ほども申し上げましたように、このバイオマスは一般に、米をつくりあるいは麦をつくりというところでつくられるものを対象といたしますと、アルコールに変換いたしましたりあるいは燃料にしたりえさにしたりということでございますので、なかなか十分にはペイしてこないという事情が片方にございます。そういうことがございますので、私ども、そのバイオマスの研究の対象といたしましては、できるだけ現在の水田でありますとか畑でありますとか、そういった農作物をつくるところでそれと競合するようなことはすぐには余り考えない。現在そういうものに余り活用されていないようなところでできるもの、そういったことを一つの大きな場面として考えております。  それからまた、そういう対象でございますので、できるだけ成育が早いといいますか、バイオマスを一定面積から一定時間にたくさんのものをつくれるということを対象に考えております。そうなりますと、余り寒いところでありますとかあるいは乾燥地でありますとか、そういうところでは十分なバイオマスの生産はなかなか図れないのではないかと考えますので、やはり温度も高く降水量も十分にあるというようなこと、これも一つのバイオマスの生産の場としては対象になるのではないか、そんなふうに考えております。
  30. 上原康助

    上原委員 そこで、さっき外務省の見解もちょっとあったわけですが、いま局長おっしゃいますように、平たく言えば、それは温暖の地域、熱帯地域は適しているということでしょう。そういう面から、この間の国際シンポジウムで指摘されたのは、沖縄など亜熱帯地域はバイオマス生産に非常に適している、あるいはバイオマスの有効利用の上でも適地であるということを、八カ国から五十人くらいのその筋の専門の皆さん、あるいは琉大、沖国際大、沖大あたりのこのことに詳しい皆さん、先生方、教授の方々集まっていろいろやりとりをなさっているわけですね。生物資源を有効利用していくあるいは多角的に研究をしていく上から、さっき触れておられたバイオマスランド構想というものも将来考えていいんじゃないのか、また、このことについては国際的な協力も必要だということを専門家指摘しているわけですね。私は、いまの行革絡み、いろいろな財政状況の中で、むしろ機構等は縮小していこうという時期ですから、新しいこの種の機関設置というものは大変むずかしいというのはわかるのです。そこまでむちゃなことを言おうとは思いません。しかし、よく亜熱帯農業とか沖縄の特殊性とかそういうものを指摘をしながら、国際的に見てもこういう面での活用というものはもっとあるんじゃないかという指摘がなされても、国全体の施策としてそれがなかなか吸収されないところにわれわれ不満があるわけですね。さっき言った熱帯農業研究センターにしたってそうなんです。原原種農場をつくったと言っても、これは当然のことであって、むしろサトウキビ試験場というのは沖縄にあってあたりまえの話なんです、常識から言っても。鹿児島の方に怒られるかもしらぬが、種子島にいつまでも置いておく必要はない。  そういう面から、このいわゆるバイオマスの研究センターについては、農林省だけでなくして開発庁、それともう一つは通産省も関連いたしますね、八〇年代沖縄地域産業ビジョンというその中でもいろいろ触れられております。そういう面から考えまして、こういったバイオテクノロジーであるとかあるいはバイオマス構想であるとかいろいろなことを総合的に連携性を持たした意味でやっていくということでは、政府関係機関として、せっかく国際シンポジウムの中でいろいろ指摘をされていることですから、よく御相談をしてみてはいかがかと思うのですが、その点については、特に二次振計もスタートをした段階において開発庁はどういう御見解を持っておられるのか、一応聞いておきたいと思います。
  31. 藤田康夫

    ○藤田説明員 沖縄は豊富な太陽エネルギーと海洋資源に恵まれた、わが国で亜熱帯地域に位置する唯一の県であることは先生御案内のとおりでございます。二次振計におきましても、このような地理的な自然的条件を活用いたしました太陽エネルギーとか、先生お話ございましたバイオマスエネルギー、こういったものの開発利用推進するため、ローカルエネルギーに関する各種調査研究を実施すること等が提唱されておるところでございます。これは先生御案内のとおりでございます。  開発庁といたしましても、そのような観点から沖縄の振興開発を進める必要があろうかと考えておりますので、その趣旨に従いまして、関係省庁とも十分連絡をとりながらその推進方について要請してまいりたい、かように考えているところでございます。
  32. 上原康助

    上原委員 そこで、このことについて農林大臣ちょっとお聞き取りいただきたいのですが、さっきのバイオテクノロジーの問題といまのバイオマス構想、確かに国際交流センターというものも目下建設中であるというようなことからしていろいろ問題含みであることはわかりますけれども、さっきの熱帯農業研究センター等々の問題との関連考えまして、このバイオマス問題については、政治段階としてもっと高度な立場で沖縄の亜熱帯性、熱帯性というものをどう生かしていくのか。いろいろシンポジウムで具体的に指摘をされているわけでしょう。この活用、サトウキビのバガスよりパルプを製造するとか、あるいはさっき局長の答弁もありましたようにサトウキビからアルコールをとるとかいうような、そういう具体的な研究機関というものをこの際ぱちっとつくってみたらどうですか、農業関係において農林省が主導になっていただいて、開発庁もタイアップして。このことについては、最高責任者である農水大臣で事務当局にも御検討させて、研究課題とはしていただけますね。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  33. 岸國平

    岸政府委員 大臣から答えてまいれということでございますのでお答え申し上げますが、バイオマスの研究につきましては大変重要な問題であるというふうに考えておりまして、これにつきましてはすでに現在、バイオマス変換計画ということで、かなり高額な予算と多くの研究者を動員いたしまして研究推進中でございます。  先生の御指摘にございますように、沖縄におきましては高温で、しかもかなり豊富な雨もあるということで、バイオマスの生産という意味から言えば一般的には有利な条件を持っているというふうに私ども考えておりまして、研究の対象といたしましてもやはりそういうことを頭に置いていかなければいけないというふうに考えております。そのために、ギンネムでありますとかあるいはホテイアオイでありますとか甘蔗でありますとか、そういったものもバイオマスの材料として研究に現在も取り上げておりますし、今後も取り上げてまいりたいというふうに考えております。  それからまた、この変換計画によりましてかなり技術的にもでき上がったものができてまいりましたときには、これはやはりそれぞれその技術によりまして適地がございますので、そのでき上がった技術を十分検討いたしまして今後沖縄におきましても活用できるようなところがあるかどうか、これも検討いたしたいと思いますし、そういう面でいま御指摘のありましたような点についても研究が進められるように考えてまいりたい、そういうふうに考えております。
  34. 金子岩三

    金子国務大臣 沖縄振興開発計画がございますその中の農政について、いろいろ先生の御指摘も私は正しい点が多いと思います。そこで、やはり沖縄開発は沖縄島民の所得水準を本土並みにしよう、特に農家の収入をいかにして引き上げるかということで開発計画が立てられておるのでございますから、その中の農政について、いま当面問題になっております、議論されております点でございますが、いま政府委員がいろいろ詳細に具体的な説明をしておりましたが、やはり沖縄開発計画の目的に沿うように、いかにして本土並みの所得水準に沖縄県民を引き上げていくかという最終目標に向かってあらゆる努力を続けていかなければならないと思いますので、御指摘の点は十分ひとつ参考にして検討していきたいと思います。
  35. 上原康助

    上原委員 沖縄開発という点だけでしぼっているわけじゃなくして、各都道府県の立地とか、そういう条件をどう国が先導的に活用していくかという、要するにこれは国土総合利用ですよ、その特性を生かすということは。そのことは言葉だけの問題じゃなくして、行政的にも政策的にも政治的判断においても生かされなければいかないということを私は指摘をしているわけで、そこは十分御理解をいただいて、さっき外務省もお答えありましたが、私は、そういうシンポジウムの中でバイオマスランド構想が出たからすぐそれをやれと、そう単純に言っているわけじゃないのですよ。それだけ国際的に指摘をされているならば、やはり専門家の皆さんがそういう指摘があるならば、それをどう政治の場で活用していくかという検討は具体的にやっていただきたい、このことを申し上げておりますので、その点は御異論はないと思いますので、いいですね、その点は。お答えしますか。
  36. 佐々木高久

    ○佐々木説明員 センター、バイオマスランド自体についてはいろいろむずかしい点がございまして、先生御理解いただけておると思いますけれども、現在、沖縄国際センターは昭和六十年四月開館に向けまして作業中でございますが、それと並行いたしまして、その沖縄センターでどういう研修コースを設けるかということでいま具体的に検討しておりますので、そのコースの中の一つとしまして、こういうバイオマスコースを取り上げられるか否かにつきまして検討してみたいと思います。
  37. 上原康助

    上原委員 そのセンターの中に位置づけていくのか、あるいは独自の構想を立てるかは、これからの研究課題として、要するに、バイオマスと言ってもバイオテクノロジーと言っても、物を腐らして、あなたあれは発酵させるのでしょう、それでいろいろ微生物研究をやっていくんだから。沖縄はカビの多いところなんだ、雨も多いから。実際そういう面を学者の皆さんも指摘をしているわけだ。そういったことは、単なる言葉のあやでおっしゃるのでなくして、血の通う農業政策なり振興計画というものをやっていただきたいということを重ねて御要望申し上げておきたいと思います。  次に進みますが、次は松くい虫対策について。  これは御承知のように、法改正したのは昨年三月でしたか、松くい虫防除特措法を改正をして、松くい虫被害対策特別措置法に改めて六十二年の三月末まで延長されておるようですね。一体全国的な松くい虫被害状況はどうなっているのか、あるいはまた被害地域はどのくらいの都道府県に及んでおるのか、最近の状況について少しく御説明をいただきたいと思います。
  38. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  最近におきますところの松くい虫被害でございますが、先生御承知のとおり、五十三年の夏季に高温小雨というふうな異常気象がございまして、急増したわけでございます。したがいまして、五十三年度が二百七万立米、それから五十四年が二百四十三万立米というふうに急増したわけでございますが、その後若干減りまして、五十五年には二百十五万、五十六年度には二百七万というふうに被害が若干落ちていますが、五十七年度の状況を現在見てまいりますと、先生いまお話にございましたとおり、五十七年に法改正いたしまして、新しい制度のもとでこの防除を行っていると同時に、昨年の夏が低温多雨というふうな気象条件がございまして、現段階で各都道府県から報告をいただいておりますが、十二月末で前年同期の約七割というふうな被害程度に現在なっております。     〔愛野委員長代理退席、佐藤(信)委員長代理着席〕  それから、この被害区域の拡大問題でございますが、五十六年度には北海道、青森、秋田を除く四十四の都府県に及んでおったわけでございますが、昨年山形県に隣接した秋田県の一部にわずかではございますが被害木が発見されまして、現在は無被害の県と申しますと北海道と青森の二県、道と県となっております。
  39. 上原康助

    上原委員 四十四都府県、北海道、青森、秋田を除くのですか。  そこで、この法律改正をされて以後の防除対策というか駆除対策の効果は具体的にはどうなっておるかということと、これは以前から、防除する場合に防除剤というか薬剤を空中散布をするのかどうかということで、相当農水委員会でも賛否両論があったやに聞いております。いま局長おっしゃるように、必ずしも高温多雨であるから松くい虫が蔓延したとか、そういうことだけじゃないと思うのですね。やはりもっと大きな原因がどこかにあるんじゃないですか。駆除対策のなまぬるさであるのか、あるいはこの松くい虫の繁殖状況というか、そういった侵食状況の不徹底さであるとか、そういう何か致命的なことがあるからなかなかうまくいっていないんじゃないのかという感じがしてならないのですが、この法律改正によって一体どういう効果が上がったのか。たとえばよく言われるマツノザイセンチュウとかマツノマダラカミキリ、こういう松くい虫そのものの生態なり実験というものが十分になされていない。単なる気象原因でそれだけ広範囲に広がっていくというわけはないと思うのですよ。ここいらの点はどうなんですか。
  40. 秋山智英

    ○秋山政府委員 昭和五十二年から御承知のとおり特別措置法によりまして特別防除、特に空中散布による防除を中心として、あわせて伐倒駆除等も実施しながらやってまいったわけでございますが、先ほど申しましたように、やはり五十三年当時の異常気象等も原因にございまして被害が急増したわけでございます。私ども過去五年間の実施状況を見、また防除体系を見ながら、さらには具体的な防除方法につきましても検討を加えまして、御承知のとおり五十七年の三月に松くい虫被害対策特別措置法に今度衣がえしまして、これから五年間この防除をしていくことに相なったわけでございますが、私ども考え方は、やはり地域の被害の態様とかあるいは松林の機能がどうなっているかというふうな、そういうものと対策を十分かみ合わせながら進めてまいるということで、まずは農林大臣がこの全体の被害対策につきまして基本方針をつくるわけでございますが、さらには各都道府県におきましてそれぞれの被害の態様、松林の状況に合った形で実施計画をつくる、さらにまた市町村におきましてはそれの具体的な地区の実施計画をつくりながら進めてまいるという体制をとっておるわけでございます。特に内容といたしましては、従来の特別防除に加えまして、さらに特別伐倒駆除と申しまして、伐倒しましたのをチップ化するとかあるいは焼却するというふうな方法をとるとか、さらにはこの被害が非常に激甚な地域はむしろすべて伐倒して別の樹種に転換するとか、いろいろそういう方法を加味しながら進めてまいっておるわけでございまして、私ども新しい法律に基づく各種の施策を体系づけて進めることによりましてこれが収束に向けてまいりたい、かように考えておるところでございます。  なお、現在の材線虫による被害の問題につきましては、十年来、林業試験場等を中心といたしまして各種の方法を組み合わせながら消去方式でその原因を追求してまいったことでありますが、その中におきましても、やはり激甚の被害を受ける松林の問題については材線虫による被害であるということが究極の結論でございまして、そういうことを私ども重点にいたしましてこれからの松くい虫被害の防除を積極的に進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  41. 上原康助

    上原委員 さっき局長と申し上げたけれども、大変失礼しました。林野庁長官ですね。  そこで、いまいろいろ長官から御答弁がありましたが、たとえば薬剤の空中散布による薬害の問題ですね。いま実施計画を立てていろいろやっているというのだが、この薬剤散布については地元関係者の意向はどういうふうに反映されているかという問題。画一化できないと思うのです。あるいは特別伐倒駆除の実施に関しての施設の問題があるでしょう。これはどこでも焼くわけにいかぬよな、施設整備の問題あるいはその安全対策。相当大木もやられている。安全対策の確保の問題、有効な駆除方法の研究、さっきやっていると言うのだが。それと予算の関係、人材の確保、こういうものは十分なされているのですか。そういうことが一つ。これはどうなっているか。これはこの法律改正の場合に相当議論されているのです、私も何名かの方々の会議録をざっと目を通してみたのですが。  もう一点は、法律改正されて一年たったわけですが、一体本当にこの六十二年の三月末日までに日本から松くい虫を完全除去できるのかどうか、防除できるのかどうか。かなり自信を持った答弁がなされているのですが、どうもいまのような状況ではその可能性というものは、指摘するのはまだ早いかもしらぬが、気象条件だけのせいではないのじゃないですか、これはやり方に大きな問題があるのじゃないかという感がしてなりませんが、いま私が申し上げたようなことについては具体的にどういう対処策を持って、その見通しはどうなのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  42. 秋山智英

    ○秋山政府委員 防除を進めるに当たりましては、予防と、それから被害が出た場合にそれを駆除するという二つの側面があると存じます。したがいまして私ども、被害のおそれのある先端地域あるいはどうしても防除しなければならぬ地域につきましては、まずはマダラカミキリが飛び出す四月、五月の時期に空中散布によりまして予防を徹底する。しかしながら、一方におきまして予防のできない地域もございます。そういうところにつきましては、特別伐倒駆除というような方式をとるとか普通の伐倒駆除方式を取り入れるというような方法をとっています。なお、特別防除をする前におきましては地域の皆さんに十分御理解をいただき、かつ農業、漁業あるいは自然環境保全等の面にも十分配慮した実施をしておりまして、五十七年度の実施段階におきましてはトラブルもほとんどなく実施したというふうな実績を持っておるわけでございます。  なお、この原因等、いまの方法では収束できないのではないかという御指摘でございますが、私どもは過去五年間の実績を踏まえまして、さっき触れましたように予防を行うと同時に、また保安林とか先端地域というようなところ、重要なところは徹底的にこの特別伐倒駆除等によりまして駆除すると同時に、また被害が非常に大きく発生しておるところはむしろ生立木もあわせまして伐倒し、跡地を別の樹種に更改するというふうな方法を取り入れるとか、さらには治山事業もこれと併用しながら進めてまいるという方法もかみ合わせながら、私ども鋭意この五年間に収束し得るように現在努力をしておる段階でございますので、五年間で絶滅できるかどうかということについてはこれからの努力にまちたいと思っておるわけでございます。
  43. 上原康助

    上原委員 ちょっと何か危なげな御答弁のような気がしてなりません。  そこで、時間の都合もありますから、じゃ沖縄における松くい虫の原因はどう見ているのか、まず聞いてみましょう。
  44. 秋山智英

    ○秋山政府委員 沖縄におきますところの松くい虫の原因につきましては、四十八年に初めてこの被害が出たという経緯があるようでございます。したがいまして、これは後での追跡調査でございますので若干推定という側面はございますが、被害丸太が入ってきたのではないかということを研究者の方々は報告をしておるところでございます。
  45. 上原康助

    上原委員 ですから、そのマダラカミキリとかあるいはマツノザイセンチュウというのは同一なんですか。
  46. 秋山智英

    ○秋山政府委員 お答えします。  これは、マダラカミキリという松くい虫の一種類でございますが、それが春飛び出すときに材線虫を数千匹ないしは一万匹くらいを腹の中に入れまして、それが飛び出しまして松の若芽を後食するわけでございます。松の若芽を食べたときに、その傷口から材線虫が松の体内に入りまして、それが導管をとめまして枯死に至らしめるというのが、概略の枯死に至る生態の要点でございます。
  47. 上原康助

    上原委員 ですから、それはどんどん侵食されていく場合はそういう経路をたどっていくわけですね。いみじくもいまおっしゃっていましたように、その被害原因は丸太、丸太というか、どうも私は沖縄のいまの松くい虫のいわゆる発生原因というのは米軍の輸送と十分関係があったのじゃないかという気がしてならないわけです。ベトナム戦あるいはその他の関係においてどんどんふりでいろいろな材木なりトラックなりが出てきた。そこがそもそもの発生源じゃないのか、いま言う被害は。  そのことはともかくとしても、皆さんもう本当にひどいですよ。特に私が住んでいる嘉手納地方周辺とか基地周辺というのは、五十四年度はたしか五百立方メートルの被害ですね。五十五年度は千五百立方、五十六年度は五千八百立方、五十七年度は九月現在で九千二百立方という異常な伸びを示しているんです。一体何の駆除をしてきたのか。これはもちろん国の関係だけじゃなく、県の対応もあるでしょうが、五十七年度の被害に至っては、対前年度同期で二六三%の増加です。一体、農水省はこれらの被害発生状況についてはどう分析しておるのか。この異常発生原因というのはどう見ておるのか。そこをやはり科学的というか、十分に手を打って追跡をして原因を突き詰めた上で駆除をやり、今後の防除をやっていかないとこれはとまらないですね。いまのような手ぬるいことをしておったのじゃ琉球松は全滅しますよ。四、五月の繁殖時期と言うが、もう四月の中旬以降に入りつつあるのじゃないですか。どうですか、この対策は。これについては農水省、それに施設庁、基地内対策はどうなっているのか。
  48. 秋山智英

    ○秋山政府委員 最近の被害状況は先生指摘のとおりでございまして、数字もそのとおりと私ども把握しております。  そこで現在、五十八年度の防除体制を整え、どういう方式でやるかということで、研究者、実施者を現地に派遣しておる次第でございます。特に現在被害の出ておりますところは、例の、御承知の琉球松の被害でございますが、本島の中部地域を中心としまして被害が出ておるわけでございますので、私どもその地域から北部にもういかせないような方法、具体的には分離帯のようなものをつくりまして、そこについて徹底的に空中防除をしながら、さらには、出てきましたならばそこを徹底して伐倒をやってこれを進めていくというようなことも考えなければいかぬと思っております。  それから、行うに当たりましては関係者が一体となりましてこれを進めなければならぬと思っておりますので、関係者における協議会を通じまして連携をとりながら進めてまいりたい、かような考え方で現在検討をしているところでございます。
  49. 折田成男

    ○折田説明員 ただいま林野庁の方から、沖縄本島における松くい虫の大量被害発生ということについては御説明ございましたが、米軍の施設、区域内においても他の地区同様に大量に発生しております。五十七年度におきましては、沖縄県の調査によれば、前年度よりかなりふえまして、本数にいたしまして十四万本になっております。  米軍施設、区域内の松くい虫の防除につきましては、原則的には米軍により実施いたしまして、米軍の措置できない部分につきましては防衛施設庁において実施し、当該地区の松くい虫の防除について万全を期しているところでございます。五十七年度も同様、沖縄県の指導を得ながら、米軍並びに施設局において完全防除をすべく実施してきているところでございます。
  50. 上原康助

    上原委員 ここであなた方の答弁を聞いていると、何かいまにもみんななくなりそうな感を受けるのだが、そうなっていないのだ、あなた。さっき立米で言いましたが、本数で言った方がなおわかりよい。大臣も聞いておってくださいよ。  五十四年度たしか千本、五十五年度五千本、五十六年に至っては五万本、五十七年、いまおっしゃるように十四万本。驚異的で、沖縄の嘉手納基地周辺を含めて石川、もう恩納村近くまでいっていますね。コザ、沖縄市周辺、どんどんやられていますよ。最近になってようやく各県も、あるいは総合事務局あるいは農水部あたりいろいろ対策に立ち上がっているようですが、これは本当にゆるがせにできない問題ですよ。植樹とかいろいろやっている。一方では米軍演習でどんどん山は焼かれている。水源涵養林の保護をどうしますか、本当に。  森林保護というものについては、本当に総合対策を持ってやらないといけないということと、指摘をしておきたいことは、森林病害虫防除法というのがありますね。確かに第三条は、森林病害虫等の付着したものあるいはそのおそれのある樹木の所有者または管理者に対して農林水産大臣は駆除命令を出すことができるのだよ。第十三条以降には懲罰——懲役を含む罰則規定もある。しかし何もそれをすぐやれというわけではないのだが、米軍は、米軍管理施設については五十四年度以降五十五年度までは全く手をつけなかった。手をつけないものだから、どんどんこのように、いま挙げたような数字で、五十七年に至っては十四、五万本の松が立ち枯れになって放置をされている。これで一体何の森林行政ですか。もう少し本腰になってこの問題は解決をしていただかないと、いまに沖縄琉球松というものは全部枯れてしまう。これは北上されたら、水源涵養林含めてもう全滅しますよ。いまこの防除航路帯を設けて——シーレーンじゃないですよ、松くい虫を食いとめるための。このことについてはここでお約束をいただきたいのですが、農水省、林野庁、それに施設庁、開発庁、いかなることがあってもこれ以上ふやさないということを大前提にして予算、人的確保、いろいろな米軍との調整、こういうことで徹底的に作業を進めますね、お約束をいただけますか。
  51. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十八年におきましては、新しい法制度のもとにおきまして、関係者連携をとりながら進めてまいるつもりでございます。  なお、その場合におきまして、やはり新しい法制度におきましては特に市町村並びに森林所有者も十分その中に入っていただいてやるということが新しい制度の特徴になっておりますので、私どもは、役所はもちろんでございますが、地域の皆さんも一緒になりまして、予算等も十分措置をして対処してまいりたい、かように考えております。
  52. 折田成男

    ○折田説明員 米軍施設、区域内の防除につきましては、いままででも県、米軍、施設局の三者協議等を通じ連携を持ってきたところでございますけれども、いま林野庁からの回答のように、当局といたしましても防除を完全に実施すべく引き続き林野庁、県の指導を得、米軍と調整しながら実施していきたいと思います。
  53. 上原康助

    上原委員 これはそうなまやさしいものでないかもしれませんよ。外務省は帰っているのですが、外務省は安保課かどこかでしょうが、やっていただかないと。  そこで林野庁長官、それは確かに市町村やこの地域、森林所有者の問題もあるでしょう。さっきの法律もある。だが、何かと言えばすぐ、いや地域の問題だ、あるいは協力がどうだとおっしゃいますけれども、あなた、もうこれはそういう問題じゃない。すでに今年の二月二十七日には「琉球松を守る市民の会」というものを組織して、日曜日なんかには五十名余りの県民、その会の皆さんが琉球松をこれ以上枯らしてはいかぬ、森林保護をしなければいかぬということで、手弁当で実際松くい虫伐倒駆除の作業をやっているんですよ。ここまで来ている、ここまで深刻になっている。自発的に地域住民も動いて、市町村も協力態勢をとっておる。問題は予算と米軍との関係ですよ。改めて、こういうことまでやっておるのだから、五十八年度にそういう法律を生かしてやるということであるならば、十全、万全の対策をとるということをここでお約束いただかないとこれはだめですよ。
  54. 秋山智英

    ○秋山政府委員 五十八年度の被害に対します予算については、私ども現在の制度下で措置をいたしておるところでございます。  なお、米軍基地の防除と民有林の防除は、当然これは連携をとり調和して実施しなければならないものでございます。先ほども防衛施設庁から話がございましたが、三者の連絡協議会の場を通じまして特に五十七年度以降は相当緊密に連携をとってまいっておりますが、さらに五十八年度は一層この連携を密にいたしながら、関係省庁の連絡協議会も通じましてこの被害防除に鋭意努力をしてまいりたい、かように考えております。
  55. 上原康助

    上原委員 大臣、いま私が申し上げましたように、琉球松がこれだけもうどんどんやられている。これは基地内にあろうがどこにあろうが、県民には大変な財産ですよ。このことについては、いまどれだけ五十四年度以降ふえてきたかということはお聞きになったと思うから、大臣の決意のほどもひとつ聞かせてください。
  56. 金子岩三

    金子国務大臣 この問題は、私が農林委員長の時代に初めて予算措置が講じられたものです。その当時もずいぶん議論がありました。自来、長年にわたって予算をふやし、そして執行を続けておりますけれども成果が思うように上がっていないということは私も認めております。いろいろ地元の協力も必要でありますけれども、やはりもっと根本的にこれをおさめていく科学技術の検討が必要である、私はこのように考えております。今後一層その方面で研究を続けさせて、ひとつ早く成果を上げさせるように努力をいたしたいと思います。
  57. 上原康助

    上原委員 これはもう研究するまで待てない状態ですから、大臣、そこの御認識はひとつよく持っていただきたいと思います。  そこで、薬剤の空中散布の問題ですが、これは時間がありませんから多く触れませんが、これも四月の四日でしたか、行管調査報告の中で松くい虫防除に関する点が指摘されておりますね。今月四日、ついせんだって松くい虫防除法の施行状況に関する調査報告書というものがたしか農水省に提出されているわけなのです。この中でいろいろ指摘をされている点がございます。空中散布をする場合もその条件が付されている。そういうことは徹底して参考というか尊重した上でこのことは当然なさると思うのですが、どうですか。
  58. 秋山智英

    ○秋山政府委員 行管の指摘は、旧法の昭和五十二年から五十六年に至る間の実施に対しての調査でございまして、私どもも昨年御審議いただきました松くい虫被害対策特別措置法案の審議のときには、過去五年間の特別防除の結果を十分分析しまして、新しい法律によるところの防除については細心の注意を払って、それらの問題については被害の起こらないような措置をしてまいるということで現在進めておるところでございますが、さらにこの実施に当たりましての生活環境保全問題、農業、漁業への影響問題についてはさらに一層細心の注意を払ってしてまいりたいと思います。  なお、たとえば九州の佐賀県の例で申しますと、虹の松原等が過去の空中防除によりまして森林が非常によく管理されておりますことも、重ねて御説明申し上げます。
  59. 上原康助

    上原委員 あなたは何かといえばすぐ問題をすりかえようとするが、ここに指摘されている、生活環境とかそういう公共機関に与える影響は十分尊重せいというのは、新法だろうが旧法だろうが、住民の受ける被害は同じですよ、あなた。そういうことではだめですよ。一応、尊重なさるというから、そのやり方を見ておきたいと思います。  何か沖縄でも空中散布の話が出ておるようですが、そう簡単なものではないと思いますよ。特に嘉手納地域は瑞慶山ダムというダムもありますから、水源地もありますから、この松くい虫の問題はいま申し上げましたようにきわめて深刻な状況でありますので、特段の御努力を強く求めておきたいと思います。  もっとたくさん予定してあったのですが、時間が来ましたから、あと一点、パイン問題をちょっと触れておきたいと思うのです。  実は、パイン問題は沖特あたりで時折お尋ねをさせてもらったり、あるいは内閣委員会で農水省との関係の法案があれば私はその都度取り上げてきているわけですが、最近の状況を見てみますと、どうもだんだん地域の特産物的にとらえられて、沖縄農業における位置づけというものが非常に過小に評価され、後退に後退を余儀なくされてきているような感がしてならないわけですね。  そこで、最近の状況あるいは市場関係はどうなっているのか。今後の国の、このグローバルなりあるいは沖縄ものとの関係における割り当てというか方針というか、そういうものはどのようにお考えなのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  60. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 簡潔にお答え申し上げますが、パイ缶の需給は一時の危機的な状態を脱しまして、最近では、在庫状況などから眺めてみましても比較的需給安定の状況にあると申し上げてよろしいと思います。もっとも、国内の消費経済が御存じのような事情でございますから、全体の消費が伸びておるというふうなことは決してございませんが、先年来の冷凍パインによる缶詰製造の抑制ということも効果を上げてまいりまして、沖縄のパイナップル缶詰も順調にさばけておるというふうに見ております。  五十八年度の輸入割り当てにつきましてはまだ決定をいたしておりませんが、かような状況を踏まえまして、この上期の輸入割り当て数量を決定いたしたいと思っておりますが、特別大きく変更を加えなければならないような情勢にはないのではないか、ただいまさように考えております。
  61. 上原康助

    上原委員 そこで問題は、そう変動はないというか、激動の状況にはないようなお答えですが、たしか昨年の五月でしたか、経済対策閣僚会議で市場開放の第二弾策の一環として、パイン缶詰の輸入枠については五十七年度から三年間、年間八十万ケースを上回る輸入枠を設定すると決めたのじゃなかったのですか。これは当初も、大変問題というか、沖縄のパイン生産者にとって、もちろん消費者の立場も全く無視するわけにはいきませんが、非常に困るということで、農業団体なり関係者から政府関係に強い要望がなされておると思うのですよ。いまの御答弁からすると、五十八年度の上期の割り当てについてはまだ確定をしていないやに聞いたのですが、八十万ケースを上回る割り当てとは一体どういうことを想定をしておるのか。これが百万ケース、百二十万ケースにもなるとすると、また大変な危機状況に陥る可能性があると思うのですね。  加えて懸念されることは、今月末から五月上旬にかけて総理のASEAN訪問がある。調子のいい方ですから、何を言い出すかまたわからぬ。そうなると、ASEAN諸国の方からはもっとパインを買ってくれという強い圧力もあるやに聞いているわけですね。  そういう関連で、私は野菜問題もちょっと取り上げたかったのですが、せっかく国内でいろいろ工夫すればできる——もちろん市場価格の問題もありますよ。それはありますが、たとえばカボチャなんかもニュージーランドあたりからも入れている。なぜ宮崎や沖縄で工夫すればもっと生産ができるのに、そういう技術面の指導とか、あるいは低コストでやるにはどうしていけばいいのか、生産者に対しての指導助言というものがなくして、比較的に開放経済という理屈でもってどんどん農産物の輸入を拡大していくという方針は少なくとも農林水産省はとるべきでないと言うのです。国全体の政策の問題はありますよ。ありますけれども、農林省までもがそういう問題について旗を振る必要はない。この件については一体どうお考えなのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  62. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 昨年のいわゆる市場開放第二弾の中に含まれておりますパイナップル缶詰の取り扱い、五十七年度から三年間最低八十万ケース、つまり八十万ケースを上回る割り当てをするということにいたしておるわけでございますが、八十万ケースと申しますのは過去五年間における割り当て数量の最も低い水準でございます。したがいまして、このことが沖縄のパイン産業に実質的な意味で影響を与えるものとは私ども考えておりません。また実際の輸入数量決定に当たりましては、この八十万ケースというのを下限といたしましてそのときの需給状況をにらみながら慎重に決定するつもりでございまして、昨年度の場合で申しますと、実際に割り当ていたしましたのは九十万ケースでございました。五十八年度におきましても同様の配慮をしながら割り当て量を決定いたしたい、かように考えております。  また、総理ASEAN訪問に関連いたしまして、旅行先の国々からパイナップルの関税問題が出ておるという話は私ども耳にいたしておりますが、御承知のようにパイナップルは沖縄におけるいわば他にかわり得ない作物一つでございますし、また気象上の制約から缶詰に振り向けるより有効な使い道がないという事情もございます。そういう事情を踏まえまして、ただいま沖縄について扱っております関税その他の保護制度というものを特に変更しなければならないという事態にはないと考えております。また、御承知のように先年東京ラウンドの一環といたしまして、一九八〇年から八七年にかけまして関税譲許を実施中という事情もあるわけでございますから、その意味において新たな措置というものをパイナップル缶詰についてはとるべきでない、かように考えております。
  63. 上原康助

    上原委員 ぜひ、そのお立場というか姿勢を堅持をしていただいて、できるだけ八十万ケースというのは下限にせず、それを目安としての割り当て分量にするように御配慮いただきたいと思います。  そこで結びとなりますが、これはサトウキビにしてもそうなのですが、農業全般に言えることですが、今後も、パインの振興措置にしても農業振興にしましても土地基盤の整備、土づくりの促進あるいは優良種苗——原原種農場もできて、あれは昭和五十八年度からか、農家配給も開始するような措置のようですが、そういう優良種苗の供給問題生産流通の合理化を図るための省力化といいますか、そういった施設の機械化導入等々、やはり総合的にこれらのものも推進をしていただきたいということ。そういう意味できょう研究センターの問題とかあるいは今後のバイオマスの問題等について触れましたが、今後ともそういった地域特性も生かして、その地域でしか生産できない野菜にしてもパインにしてもキビにしても、それは国の政策としても十分に勘案をしていただくということで最後に農水大臣として沖縄農業の振興に対するまとめの御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  64. 金子岩三

    金子国務大臣 いろいろ御指摘をいただきました。農林水産行政がこれから非常にむずかしい問題を抱えておるということを考えますと、やはり生産性は、金をかけていく割りに農業の方は余り伸びていないような気がいたします。それは、いろいろアメリカと競争する、ECと太刀打ちができるか、いろいろなことを考えてみましても、やはり日本の置かれた立地条件が、投資した割りに効果があらわれていないような気が私はするわけでございます。漁業問題にしましても、いろいろ二百海里が実施されまして以来、関係相手国から大変な圧力がかかってまいっております。魚価低迷を続ける、燃油は高い水準をずっと続けておって、漁業生産コストの大変高い比重を燃油の値上がりによって占められております。したがって、漁船漁業なんか大変不安定な経営を続けておるのでございます。  農業の振興については、特に沖縄みたいなああいう特殊な立場に置かれた地域を、うまくその気候、風土を利用いたしまして、やはり何といっても適地適作をやり、そしてその地方の所得水準をどうして上げていくかということに思いをはせて、今後一層ひとつ努力をしてまいりたいと思います。
  65. 上原康助

    上原委員 終わります。
  66. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 鈴切康雄君。
  67. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 農林水産省設置法の一部を改正する法律案についての概要は、附属機関農業技術研究所と植物ウイルス研究所を廃止して、農業生物資源研究所農業環境技術研究所設置するものでありますけれども、なぜ前の研究所まで廃止をして今回新たにこれを設けようとしておられるのか、その趣旨についてまずお伺いします。
  68. 岸國平

    岸政府委員 今回の法改正につきましては、最近の農業をめぐる厳しい情勢に対処いたしまして、また、近年大変進展の著しいバイオテクノロジーあるいは各種の新しい分析手法、そういった革新的な技術、手法を活用いたしまして、今後農業技術開発を積極的に進めるために必要となります基礎的調査研究体制の整備を図るということをねらいといたしております。このために、農林水産省の附属機関といたしまして、農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所設置するということが今回の法改正の趣旨であり、主な内容でございます。
  69. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 新設される農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所ですね、研究は続けられるわけでありますけれども、実際に研究成果がどういう形でいつごろ出てくるものであるか、どういうことを期待されているか、またその成果をどのように、どのような形で農業者に還元をしていかれるのか、その点についてはどうお考えでしょうか。
  70. 岸國平

    岸政府委員 二つの新しい研究所は、基礎的な研究に眼目を置いております。そういう関係もございまして、研究成果が本当に農業現場にすぐに役立つような形で出てくるのはかなり先になるのではないかという面がございます。しかしながら、現在もこの二つ研究所にかなり関連の深いような研究分野で研究を進めておりますし、また、その進めております研究を核にいたしまして新しい生物資源研究所、また環境技術研究所をつくるということでございますので、研究の継続性からいたしましても、本当にその研究所ができてからの新しい技術ということになりますとかなり先になりますけれども、そういういままでのものからの継続のことから言えば、研究所ができ上がりますと次々と新しい成果が出ていくというふうに期待をいたしております。  それで、その二つ研究所で出てまいります研究成果につきましては、大変基礎的なものを想定いたしておりますけれども、その基礎的な研究成果というものはそれだけにとどまりませず、次のステップでは、野菜とか果樹あるいは蚕や桑とかお茶といった、それぞれの農業の対象としております作目の分野に直接つながってくるような研究成果が得られてくるというふうに考えておりますので、そういうものにつきましては、それぞれの作目ごとに置いております研究機関でしっかりと受けとめまして、たとえば細胞融合技術のようなものでございますと、野菜試験場におきましては、その技術がある程度発展いたしますと、それを直ちに応用いたしまして野菜育種に生かしていくということが考えられるわけでございます。いずれも、果樹や桑、茶におきましても同様なことが考えられてまいりますので、そういった意味で、新しい研究所成果は、次のステップでは国の研究機関であります専門研究機関、あるいは稲や麦、大豆といったようなものでございますと農業研究センターを初め地域農業試験場、そういったところで受け取りまして直ちに農業に役に立つような技術に組み立てていく、またそのものがそれぞれ都道府県研究機関にもつながってまいりまして、実際に都道府県研究機関では普及にすぐに役に立つような研究を目指しておりますので、そのステップでは、二つ研究機関で得られた成果は、都道府県試験研究機関でも、専門研究機関あるいは地域農業試験場等を通じまして農業現場に役に立つような形で受け継がれていくようにいたしたいと考えております。その結果、いろいろな段階で出てまいります研究成果が、あるものは直ちに農家の段階に渡りましょうし、あるものは県の試験場の普及を通じましてしっかりと農業現場に受け渡される、そういうふうにいたしてまいる所存でございます。
  71. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年十二月、日ソ、ソ日の漁業協定が結ばれたわけでありますけれども、言うならば一九八三年度分の協定になっておりますが、その際、日本側として前年並みの漁獲割り当て量を確保する条件の一つとして、太平洋の十七小海区の一部においてマグロ漁業を試験的に認めることとした内容についてお伺いをしたいと思います。  まず、十七小海区の一部、すなわち小笠原諸島近海においてマグロ漁業を試験的に認めることになった経緯と理由について御説明を願います。
  72. 松浦昭

    ○松浦政府委員 昨年末の日ソ、ソ日の漁業交渉におきまして、ソ側は、先方の漁獲割り当ての消化率が非常に低いという事情につきまして、これを日本側の規制が非常に厳しいからであるということを主張いたしたわけでございます。実際、六十五万トンの漁獲量をわが方はソ連漁船に対してわが方二百海里内で与えているわけではございますが、三〇%を切るというような漁獲の実績であったわけでございます。そこで、このような理由のもとに、先方といたしましては十項目にわたりまするところの大幅な規制の緩和を要求してまいりました。  その要求の内容は、細こうございますが、一口に申しますと、日本海のわが国の水域のほぼ全域をソ連船に対して開放せよ、それからまた太平洋水域におきますところの規制をほぼ全面的に撤廃するという要求をわが方にしてきたわけでございます。このためにわが方といたしましては、わが国の水域における規制はこれまで日ソ間の長い年月の話し合いによりまして形成してきたものでございまして、これ以上の規制の緩和は全く困難だということを申しましたし、またソ連漁船の漁獲実績が低調であるということはソ連漁船の漁獲努力の不足にあるという点も指摘をいたしまして、ソ連側の要求は受け入れられないということで、非常に厳しい交渉の状況を呈したわけでございます。  しかしながら、ソ連側の態度は非常にかたく、このために、もしもこれを受け入れない場合には、日本側のクォータ、七十五万トンにつきましても大幅な削減をするということで非常に強く迫ってまいったという状況でございました。わが方も最後までこれに対しまして規制緩和の困難性を言ったわけでございますが、最後の段階で向こうも折れてまいりまして、ごくわずかの緩和ということで今回の交渉を妥結するということを言い出してまいったわけでございます。  その際の一つの解決のポイントが、太平洋の八海区の一部について着底トロールの漁業の七—八月の操業を認めるということと、それからマグロの漁業を太平洋の十七小海区の一部において試験的に認めるということでありました。これにつきまして慎重に検討し、また先方に条件をつけました結果、このような形で交渉を妥結するに至ったというのが経緯でございます。
  73. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 一九八一年度、日本とソ連の漁獲割り当て量と実績はどうなっているのでしょうか。先ほどのソ連の実績が非常に上がっていないという理由はどこにあるのか、その点についてちょっと御答弁いただきたいと思います。
  74. 松浦昭

    ○松浦政府委員 一九七九年以降、日ソ間の漁獲の割り当て量は、日本側の漁船がソ連水域で入漁をいたしまして漁獲をいたします場合の割り当てが七十五万トン、これに対しましてソ側の船がわが方の水域で漁獲する割り当て量が六十五万トンでございます。一九八二年におきますところのわが国の漁獲実績は四十七万トンでございまして、七十五万トンに対しまして六三%の割り当ての消化率になっておるわけでございますが、これに対しまして同年のソ連の漁業実績は十九万トンでございまして、二九%の消化率だったということでございます。  この理由でございますが、私も先方のクドリャフツェフ第一次官と交渉をいたしていたわけでございますけれども、先方の言い分は、このようにわが国におけるソ連漁船の漁獲割り当ての消化率が一九七九年をピークにいたしまして低下した事情は、日本の規則が厳し過ぎるからである、したがって漁獲ができないのだということを申しまして、先ほど御答弁申し上げましたような非常に大幅な規制の緩和をわが方に要求するという状況になったわけでございます。  しかし、私ども考えといたしましては、ソ連漁船に対する規制はわが国の漁船に対する規制とほぼ同じでございまして、ソ連漁船の主要な関心魚種でございますところのイワシの資源につきましてこれを見ましても、日ソ双方の資源の専門家の見解によりましても相当高い水準のイワシの資源量が日本の近海にあるわけでございまして、また現実に、一九八二年におきますところの北部太平洋水域におけるわが方のまき網船によるマイワシの漁獲実績は二百三十一万トンに上っているわけでございます。  さようなことから、私どもとしましては、ソ連側は太平洋側のマイワシが小型でありまして経済的な価値がないというようなことも主張していることから、こうした漁獲の実績が上がりません理由はみずからの漁獲努力の低下によりまして漁獲割り当て量の消化率が低調になっているものというふうに考えまして、その面でわが方の主張をいたしたという経緯でございます。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の漁業交渉でソ連側は、日本の漁獲割り当て量の要求に対し、十項目に及ぶソ連漁船に対する規制の大幅な緩和を要求してきたというふうに聞いております。その中に、北緯三十六度以南の水域でマグロ漁を約五千トンから八千トン許可をせよとの項目が入っているということは、結果的には小笠原諸島近海二十海里を除く三十二度以南、東経百四十二度以東という範囲で決定したものの、その海域で相当量の漁獲量が上がるものとしてソ連側は考えていることはもう間違いないと私どもは思うわけでありますけれども、水産庁の考えはどうか。また、どのくらいの漁獲量が見込まれているのか、その点についてはどうなんでしょうか。
  76. 松浦昭

    ○松浦政府委員 今回の交渉におきまして、ただいま先生おっしゃられますように、北緯三十二度以南、東経百四十二度以東の海域、ただし、これは小笠原諸島の距岸二十海里の水域は特に小笠原漁船の保護をいたしますために除いておるわけでございますけれども、この水域につきましてソ連漁船のまき網船による試験操業を認めたわけでございます。しかし、これにつきましては漁具の規制等もいたしておりまして、私どもとしましては、この水域におきまして過去においてソ連側の漁獲実績がないということもございますし、また今回ソ連に認めた操業条件等を勘案いたしますと、ソ連側がわが国関係漁業に大きな影響を与える程度の漁獲を上げることはとうてい考えられないというふうに考えておる次第であります。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  77. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ここでやはり日本政府としては、少なくとも小笠原近海のマグロ漁業の試験操業で、大体ソビエトの漁獲方法に基づいてやるとするならばどれくらい漁獲高が上がるんだろうかということについては当然積算をされていると思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  78. 松浦昭

    ○松浦政府委員 実はこの水域につきましては、ソ連漁船はマイワシとサバ、サンマをとるまき網船を持ってまいりまして、これでマグロもとろう、こう考えておるわけでございます。先ほど申しましたように、わが方はこの水域につきまして、特にわが国の漁船と競合が少ないと申しますか、わが国の漁船が余り行かないところにつきまして操業を認めるという形をとりました。しかも、使用漁具の規模につきましては、日本漁船の百十六トン型の使用している漁具を目安にしまして、小規模の、あば綱の長さ千五百メートル、網丈二百メートル程度以内のもので漁具を認め、かつ操業隻数を二隻に限るということでやってまいりましたので、先ほどから申しておりますようにこれはソ連との関係もございますので、どれだけとれるかというようなことを申し上げるのははなはだ私もちゅうちょするわけでございますが、向こうの方は非常にとることが困難な状態ではないかというふうに考えている次第でございます。
  79. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、いま水産庁がはからずも漁獲量の予測がつかないということでありますけれども、簡単に小笠原近海のソ連船によるマグロの試験操業を許可するということは、小笠原漁民にとっては大変に不安を増大させるものではないか、そう思うわけです。北洋漁業の肩がわりとして被害だけを国から押しつけられている結果となって、漁民は承服できないという声が上がるのはあながちわからないことではないと私は思います。しかも、小笠原近海のマグロ漁業の試験操業は実際には突如としてソ日の操業条件の中に組み入れられ、小笠原漁民に知らされないうちに一方的に決めてしまった、いわばもう出し抜け的行為によってやられたということである以上、今回こういうことを決めてしまった以上は、少なくとも国策としてやったことであるから、当然国として小笠原漁民が納得するだけの問題解決の配慮というものが必要ではないかと私は思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  80. 松浦昭

    ○松浦政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この水域においてソ連のまき網船の操業許可をいたしたわけでございますが、この場合には私どもも相当慎重に海域につきましても検討いたしましたし、また特に小笠原の漁船は十トンぐらいまでの小型の漁船が非常に多いということもございますので、特に距岸二十海里、これにつきましては適用を除外するということで、非常に慎重な態度でこれを決定したということは事実でございます。また、所要の手続もある程度までとりましてこれを決定したわけでございますが、確かに先生おっしゃられますように、小笠原の漁民の方々が御心配をなさるということは無理からぬことでございます。私どもも小笠原の漁民の方々からの要望書も拝見いたしまして伺っておりますので、国といたしましては今後のこの水域におけるソ連漁船の操業につきましては十分注意をいたしまして、ソ側とも協議しながら処置しなければいかぬというふうに考えている次第でございます。
  81. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御承知のとおり小笠原は日本に返還されてから日が浅いわけでありまして、そういう意味においては小笠原振興法という形で特別な処置をしているわけであります。ですから、いま現在確かにあなたがおっしゃるように十トン級の小型船で操業しているにしても、これから小笠原がますます発展するためにはやはり大型化ということは当然考えられる問題だと私は思うのです。となると、確かにあなたがおっしゃるように直接二十海里を外してということではありましょうけれども、回遊魚ですから、マグロの操業というものをそこでやられるということは、マグロだけでなくしてほかのものまでそれなりに捕獲することにもなってしまうわけですから、そういうことを考えると心配ということは当然予想されることであります。  そこで、マグロ漁船の試験操業の内容と操業条件はどのようになっているのか、その点はどうなんでしょうか。
  82. 松浦昭

    ○松浦政府委員 先ほど一部御答弁を申し上げたわけでございますが、このまき網の漁業をソ連側に認めるに当たりましてつけた条件といたしましては、一つは操業水域の条件でございまして、これは北緯三十二度以南、東経百四十二度以東の海域、その中でもさらに小笠原諸島距岸二十海里の中には入域をしてはならないということで条件をつけてございます。  いま一つは、使用の漁具の規模でございまして、わが国マグロまき網船の大体百十六トン型に使用しております漁具を目安にしまして、これよりも小規模の漁具ということで、あば綱の長さ千五百メートル、網丈二百メートル程度以内ということで漁具の制限をしてございます。  それから、操業隻数は二隻ということで条件を課している次第でございます。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 運搬船とか母船とか、そういうものに関係してはどういうふうな条件になっていましょうか。
  84. 松浦昭

    ○松浦政府委員 特にその条件はございませんが、ソ連の通常の操業の形態あるいは他水域におけるソ連のまき網船の操業状況から考えて、運搬船は持ってこないものというふうに考えております。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の措置は、マグロの回遊経路やソ連船の規模、両方等から見て、これから発展していくところの小笠原漁業の基盤というものを大変突き崩す一方的な措置じゃないか。なかんずくここ数年来、台湾のサンゴの密漁船で大変に魚礁を荒らされて、漁獲高も落ち込んでいる状態であります。そうなってくると、漁業者にとっては大変な二重の痛手となるわけでありますが、そこで小笠原の漁業者の生活擁護、資源保護の面からも、水産庁としてはこのような事態をどう考えているのか。また、このサンゴの密漁について、海上保安庁等と連絡をとりながら取り締まりをやっているわけでありますが、ソ連漁船というものが今後許可されるということになれば、その問題とあわせてますます海上保安庁との連携というものはより必要になってくるのじゃないかというふうに私は思うのですが、その点はどうお考えでしょうか。
  86. 松浦昭

    ○松浦政府委員 今回のソ連のマグロのまき網漁船に対する小笠原周辺水域の操業を認めるに当たりましては、ただいま申し上げましたような小笠原の漁業との競合をできるだけ避けようというたてまえから、かなりの条件を課してこれを認めるということにしたわけでございますが、もちろん今後の不安というものが小笠原の漁民の方々に生じないようにできるだけ水産庁としても努力をいたしてまいりたいというふうに考えているわけでございまして、ソ連漁船に対しましては、トラブルの防止ということで私どももソ側と十分に話し合ってまいりたいというふうに考える次第でございます。  また同時に、台湾の漁船等も、特にサンゴの密漁の問題等も含めまして、この水域におきまして海上保安庁と連絡をとってきちんとした取り締まりをするということが非常に重要であることは委員指摘のとおりでございまして、この点につきましては海上保安庁とも十分に連絡をとりつつございますので、今後ともそのような方針で当たりたいというふうに考えております。
  87. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 サンゴの密漁については、海上保安庁に確かにそれなりに通知をするにしても、結局そういう取り締まりのないときにどんどんとまた来るという形になっているわけでして、やはりこれは将来少なくとも海上保安庁をあそこに駐屯させるというぐらいでないとなかなかこの問題は解決しないだろう、私はこう思っているわけでありますが、それはそれとして、現在、ソ日と日ソの協定の中で、ソ連船の操業許可申請がどれぐらい出され、許可した数はどれぐらいになっているのか、またその中にはソ連船の小笠原海域での操業許可申請は果たしていま出されているのか、それについてはどうなんでしょうか。
  88. 松浦昭

    ○松浦政府委員 現在ソ連漁船に対する許可の状況でございますが、本年四月十一日現在でございますが、総許可隻数の枠が五百三十一隻ございます。これは日ソ、ソ日の協定によって決められたものでございます。このうちでソ側の申請によりまして四百三十一隻に許可を出しております。昨年をちなみに申し上げますと、総許可隻数は、五百三十一隻に対しまして五百二十三隻を許可しております。  なお、小笠原水域で操業するソ連のまき網漁船につきましては、三月十五日に二隻を許可申請が出てまいりましたので許可をいたしておりますけれども、現在までのところ操業は行われていないという模様であります。
  89. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原の生活基盤整備と小笠原振興法に基づくところの人口三千人定住構想がいま推進されているわけでありますけれども、小笠原は何といっても第一次産業たる農業と漁業の発展なくしてはその目的は達成できないわけであります。振興という以上は、より充実させるということであって、島民の不安や実益が損なわれることがあってはならないというふうに私どもは思っております。なかんずく硫黄島の自衛隊による日米上陸作戦とかあるいは台湾船によるサンゴの密漁問題等不安要素が実際には多いばかりか、今回の措置も小笠原島民に納得させる話し合いも持っていないままに決められてしまったという状況の中にあって、島民の国に対するところの不信感というものは解消されるどころか、うっせきされて、実は何ら解決されていません。今回国がとった措置に対して、小笠原島民が早速この問題に対して何らかの善処を国に求めているように聞いておりますが、その内容というものについては御存じでしょうか。
  90. 松浦昭

    ○松浦政府委員 よく存じ上げております。私のところに本年の一月六日付で要望書が出てまいっておりまして、私も拝見させていただきました。東京都の小笠原島漁業協同組合及び小笠原母島漁業協同組合からの要望書でございます。  その中身は、小笠原沿岸漁業に明白な悪影響を与えた場合には、直ちにソ連まき網漁船を排除するように努めてほしいということ。それから、小笠原の漁業に影響を与えると予測されるような事項については今後事前に意見調整を行ってほしいということ。それから、ソビエト漁船の監視を十分行うとともに、台湾漁船の取り締まりを強化して密漁防止に努めてほしい。それから、ソビエト漁船との操業上のトラブルが生じた場合には、誠意をもってその処理に必要な指導を行ってほしい。小笠原沿岸漁業の振興にかかわる金融対策については特段の配慮をしてほしい。それから、小型漁船の安全操業を確保するために避難基地を整備する方向で検討をいただくとともに、水産振興事業について今後とも支援をしてほしいという六項目がその基幹だったというふうに承知しておる次第であります。
  91. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この六項目について水産庁は陳情を受けられたわけですけれども、先ほど申し上げましたように国策として、日ソ、ソ日の関係から協定が結ばれ、小笠原の近海におけるマグロの試験操業という形をとられたわけでありますけれども、やはり振興法が推進されている小笠原にとってマイナスになるようなそういう面を排除しなくちゃならぬと思うのですけれども、この六項目に対してどのように理解され、どのように評価されていましょうか。
  92. 松浦昭

    ○松浦政府委員 日ソの非常に厳しい現実のもとに行われました交渉の結果につきまして、御不安を抱きながらも一応これはのんでくださいまして、そのかわりこのようなことをぜひ要望して善処を求めたいという小笠原島民の方々のお気持ちに対しまして、私ども十分これを受けとめなければならないというふうに考えておる次第でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、今回これを認めるに当たりましては、小笠原沿岸漁業には悪影響がないように極力配慮をいたし、またソ連漁船との間で操業上のトラブルが生じないように海域の選定なりあるいは操業条件等を設定したつもりではございますが、今回のソ連側のいわゆる試験的操業ということになっておりますので、この試験的な操業によりまして小笠原沿岸漁業が不測の悪影響をこうむることがないように、また万が一問題が生じました場合には、その実情を十分調査いたしまして、必要に応じましてソ連側と十分協議をしていくという態度で臨みたいというふうに考えます。また同時に、今度のソ連側のマグロ操業の実施につきましては、日本側が定めました操業条件に即しまして適正にこれを行うように十分監視し、また御懸念のようないろいろな漁具の被害等が生じないようにできる限り対応していきたいというふうに考えております。
  93. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは当然のことでして、マグロ操業をやることについてのいろいろのトラブルとか、それから安全操業とか、これはやるのは当然なんですけれども、しかし、生活が脅かされるとか、こういうふうにして突如として国策として決められた問題については、やはり私は小笠原に対して恩恵的な措置は施さなければならぬだろう、こう思うのです。  そこで、六項目先ほど水産庁長官が言われました。非常に抽象的になっております。たとえば避難港の設置について、水産庁に要求された内容を水産庁としてはもちろんお聞きになっているでしょうし、それは直接水産庁というよりも、こういう要望が上がってきているということを国土庁にお話しになっていると思いますけれども、その避難港の設置についてはどうなんでしょうか。
  94. 松浦昭

    ○松浦政府委員 これは基本的には小笠原諸島の振興計画に基づくものでございまして、国土庁の方でお取り計らいになるわけでございますが、この小笠原諸島の振興特別措置法に基づきまして昭和五十四年六月の内閣総理大臣が御決定をなさったこの計画に基づいて、漁港については特に避難港としての二見漁港が大切であると私ども承知しておるわけでございます。  この振興計画に基づきます事業につきましては国土庁の所管ということで、現行の漁港整備計画の中ではその枠外ということになって水産庁所管から離れておるわけでございます。また、特別措置法の期限が五十九年三月三十一日までになっておりますので、今次漁港整備計画においても従来同様その計画の枠外ということで取り扱っておるわけでございますが、特別措置法の期限が満了する際にその期限の延長のほか事業の実施方法等につきまして再検討が行われることが予想されますので、その結果漁港整備計画の枠内で実施する必要が生じた場合には、水産庁として責任を持って十分検討の上、事業を実施してまいりたいと考えている次第でございます。
  95. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 水産庁長官、あなたは六項目のお話をお聞きになったと言いますけれども、大事なことが抜けていますね。二見港の避難港、これはもうわかっていることであって、改めて漁業組合が六項目について言ったことはそれとは違うわけでしょう。たとえて言うならば、母島の東港とかあるいは聟島列島に避難港をという内容については水産庁としては全然お聞きになっていない、こういうことですか。これでは六項目に対する内容を十分に把握されたことにならぬじゃないですか。もうすでに振興法で決まっていることならやるのはあたりまえであるけれども、先ほどからずっと私が論議してきた、国策に基づいてそれだけの不安と被害を与える以上は、小笠原の父島並びに母島の漁業組合が要望しているところの避難港を新たに設けてくれということについては、何らお話を聞いていませんか。
  96. 松浦昭

    ○松浦政府委員 この件につきましては直接には私どもが所管いたしておりませんので、わが方としては直接に聞いてないわけでございます。しかし、国土庁の方にこの話はいっていると承知いたしているという状況でございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国土庁、いま水産庁ではそういうお話なんですが、私の理解するところでは、少なくとも六項目の中に、避難港として母島の東港とそれから聟島列島に避難港をという要望が出されているわけですが、この問題についてはどう受けとめておられますか。
  98. 相馬実

    ○相馬説明員 先ほど水産庁長官の方からお答え申し上げましたように、小笠原におきましては従来から避難港としての意味も含めまして二見漁港の整備を進めてきたところでございますけれども、その他の避難基地の整備という件につきましては、私どもとしてはいままでのところ地元の方から御要望を伺っていないということでございます。私どもといたしましては、地元から具体的にそういう御要望が出された場合には、その必要性について水産庁あるいは東京都など関係方面と御相談申し上げながら検討してまいりたい、このように考えているわけでございます。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 水産庁も国土庁も、二見港という既成の避難港だけということでこの問題が出されるはずが実はないわけですよ。いま私が申し上げましたように、地元としては当然避難港として母島の東港、それから聟島列島に避難港というこの二つが具体的に名前が挙がっているわけですから、もしいまここであなたがそのことについて全く聞いたことがないとおっしゃるならそれはそれでいいのですが、私がいまこういうことを申し上げた以上、これを前向きに検討していただけますか。
  100. 松浦昭

    ○松浦政府委員 二見港以外の港につきましては寡聞にして私伺っておらないわけでございます。そこで二見港の御答弁を申し上げたわけでございますが、私、これが終わりましたならば、早速都の方にも問い合わせをいたしまして、どのような御陳情があるか、どのような御要望であるかということを十分に伺ってみたいと思っております。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは要望しておきます。  先ほど申し上げましたサンゴ密漁取り締まり及びソ連船とのトラブル等を勘案したときに、どうしても海上保安庁の基地を小笠原につくるべきだと考えるわけですけれども、この点はどうなんでしょうかね。
  102. 森孝顕

    ○森説明員 小笠原周辺海域につきましては、台湾のサンゴ漁船の密漁の取り締まりのために常時巡視船を配備いたしますとともに、航空機を随時哨戒させるなどによりましてこれら台湾漁船の監視、取り締まりに対応しているところでございます。さらに本年一月のように大挙して台湾漁船等が操業するあるいはまた違反操業を繰り返す、このような事態に対応しましては、特に巡視船を増強し、また航空機による哨戒監視も強化いたしまして、集中的な監視、取り締まりを実施してまいったところでございます。  先生指摘のような小笠原諸島に海上保安署などの出先機関、こういったものを設置することにつきましては、出先機関の組織の合理化を求めるという行政改革が強く求められているやさきでございますので、きわめてむずかしい情勢にございます。また加えて、本土からかなり隔たっておりますこのようなところに出先機関設置するということは、所属船艇の整備、補給、その他の支援体制の確保の面でいろいろ問題がございますので、当面は関連情報の早期入手に努めますとともに、機動力を備えました巡視船艇、航空機、こういったものを必要に応じて随時現場に派遣するといったことの方が効果的ではないかというふうに考えます。  また一方、最近の台湾漁船の違法操業の悪質化といった事態にかんがみまして、水産庁とも協議の上、今年二月より厳しい検挙基準を設けまして、この基準に基づきまして一層強力な取り締まりを行いたいと思っておりますが、これらの措置をもちましてこの海域における治安維持についても十分対応できると考えております。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原の農業についてお伺いいたします。  小笠原の農業については、国を初めとして行政機関の手厚い援助を受けてはいるものの、戦後二十有余年の空白期を経てすでに老齢期に達した旧島民にとって、復帰後の小笠原農業は非常に苦難の連続であります。それは現在の農業の就業人口も全島合わせて百人に満たない状況であり、公表されている一人当たりの生産額も年間百万円にも満たないということから状況がうかがい知れるわけであります。そこで、小笠原農業確立し、本来持っている小笠原農業の可能性を十分に発揮させるためには、現在の零細農業から脱却する必要があり、そのためには農業生産拡大のための新島民を小笠原に投入しなければならないというふうに考えておりますけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。  また、小笠原農業の生産を向上させるための基本的な問題として、やはり水不足の問題があり、水がなくては農業はとうてい成り立つものではありません。新しい農業ダムの建設、ダムの機能不備、パイプラインの老朽化、各戸の用水タンクの容量不足、雨水の集水利用等の対策は全く急を要する現状であります。こういう状況を政府は果たして御存じなのかどうか、もし知っておるというならば、この問題についてどういう対策を講じられるおつもりなのか、その点をお伺いいたします。
  104. 相馬実

    ○相馬説明員 まず第一点でございますが、小笠原における農業を振興するためには新島民の導入が必要だという御趣旨と考えますが、この点につきましては、御指摘のように小笠原における農業振興を図る上には新島民導入が重要な課題であるというふうに私どもも認識をしておりまして、現在の振興計画の中にもそのように記載しているところでございます。なお、今後とも私どもといたしましては、東京都を初め関係各方面の御意見も伺いながらこの新島民の導入の促進を図ってまいりたい、このように考えておるわけでございます。  それから第二点でございますが、小笠原における農業用水の確保の重要性、それをどのように認識しているかという御質問と考えるわけでございますが、この点につきましても、私ども小笠原における農業用水の確保はきわめて重要な問題であるというふうに承知いたしております。そういう認識の上に立ちまして、父島におきましては従来からダムを建設してまいりましたし、現在も吹上ダムの整備を実施している段階でございますし、また母島におきましては大沢ダム等をすでに完成しておりますし、現在、玉川ダムのかさ上げにつきまして鋭意事業を進めている段階でございます。  そのほかにいま御指摘のような問題があるようでございますが、これにつきましても、地元から早急に実情を聴取いたしまして適切な対策を講じたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 農業用水の確保というものは、それは重要だということはもうおっしゃるまでもないわけでありまして、むしろ農業用水の不足が深刻であるという状況は、いまあなたがおっしゃるようないろいろのダムをつくっても、私が先ほどいろいろと質疑をしました内容の水不足というものは解消されていないわけですからね。これについてもう少し深刻に受けとめていただかないと、農業の方の抜本的な振興にはならぬというふうに思うわけであります。その点についてもう少しこれを前向きに検討し、前向きに取り上げていただかなければいけないのじゃないかというふうに思います。  なかんずく、もう一つ大きな問題としては、農地の拡大の問題があります。農耕地が極端に狭いために機械の導入が図れないとか、あるいは不在地主が多くて自己の農地の取得がむずかしい、そのために耕地意欲にも欠けてしまうとか、一方、通勤農業という弊害も実はあります。これらの問題を解決する方途として、農地の拡大についてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  106. 相馬実

    ○相馬説明員 農地の拡大についてのお尋ねでございますが、現在、小笠原につきましては農地法の適用がなされていないというふうな問題があるためになかなか農地が拡大されないという面もございますので、できるだけそういう問題を解決いたしまして、農地を拡大できるような方向に持っていきたいと鋭意努力している段階でございます。
  107. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それではちょっと答弁になっていないのですよね。  ミカンコミバエ、これを絶滅するためのいろいろな努力がなされているわけでありますけれども、ミカンコミバエの絶滅宣言ができる時期はいつごろだというふうに判断されていますか。また、現在内地に移動することを禁止されている規制された野菜とか果物は、いつごろ解決するんでしょうか。その点はどうお考えでしょうか。
  108. 相馬実

    ○相馬説明員 まず第一点のミカンコミバエの絶滅宣言の時期でございますが、現時点では確定したことは申し上げかねますが、私どもといたしましては、五十八年度末、つまり来年の三月を目途といたしております。それから果物等の移入の制限解除でございますが、これは農水省によりまして絶滅が確認されてからということになろうと思います。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、ミカンコミバエの絶滅宣言というのは五十八年度、いわゆる来年の三月にはできる。それに基づいて移動禁止等についても解除されるということに間違いありませんね。
  110. 相馬実

    ○相馬説明員 先ほどお答え申し上げましたように、来年の三月を目途といたしておりますので、その時期に必ずできるということではございませんが、私どもとしてはその時期にできることを期待しておるということでございます。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、目途ということは、それ以前にやろうという努力をしなくちゃそれはなかなか思うようにできるわけじゃないので、もう少しその点については力を入れていただかなくちゃいけないのじゃないでしょうかね。  それからアフリカマイマイですが、これは小笠原全土が大変に汚染をされている問題です。相も変わらずアフリカマイマイの汚染というものは非常にとめどもない状況だ。なかんずく小笠原においては国有地がほとんどで、その国有地を汚染したアフリカマイマイがどんどんと民有地に出てきて汚染をするわけですけれども、非常に予算的にもまた手の打ち方もぬるいわけですが、その点について、アフリカマイマイの撲滅についてはどういうふうに取り組もうとされているのですか。
  112. 相馬実

    ○相馬説明員 アフリカマイマイの防除対策でございますが、アフリカマイマイの場合はミカンコミバエの場合と違いまして、その防除対策はいまだ確立していないというのが実情でございます。しかしながら、これも非常にその対策が重要でございますので、幸い来年度は恐らく従来のようなミカンコミバエ対策を必要としないと思われますので、従来ミカンコミバエ対策に要しておりました予算をこのアフリカマイマイに極力振り向けるということで、このアフリカマイマイ対策に本腰を入れてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原全体の問題でちょっとお伺いをいたします。  小笠原諸島の人々の生活基盤は、先ほど申し上げました第一次産業である農業とか漁業とか、それに観光の三本柱だ、そのように私は思っておりますし、このことが小笠原の発展に深いかかわり合いを持つ基本的な問題として、やはり何といっても集落の問題があろうかと私は思います。  いままでは、生活基盤が脆弱であったため、乱開発を防ぐ手だてとして一島一集落に規制して集落の形成を図ってきたことは、それなりに功を奏してきたわけでありますけれども、いまやその規制が島の発展を阻害する大きな要因となっております。なかんずく、その振興法で目標とした定住人口三千人計画すら、その期限内にはむずかしい状況になっております。今後の小笠原発展考えたとき、一島二集落の形成ももう積極的に行っていく時期に来たのではないかというふうに思いますけれども、その点についてはどうお考えになっていましょうか。
  114. 相馬実

    ○相馬説明員 お答えいたします。  お尋ねの小笠原父島の集落整備につきましては、御指摘の点も含めまして、現在東京都が自立計画調査の中で調査を実施しているところでございますので、その調査結果を待ちまして、関係各省庁とも御相談申し上げながら検討してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原諸島振興特別措置法は五十八年度末で期限が切れるわけでありますけれども、その中で、空港整備の問題と硫黄島の帰島及び開発の可能性の検討が課題として残されておりますが、私は、どうしても振興法のさらなる延長は当然必要だ、このように思っております。政府は、現在の小笠原の振興の状況から、この問題についてはどのようにお考えでしょうか。
  116. 相馬実

    ○相馬説明員 小笠原諸島振興特別措置法の期限延長につきましては、先ほども申し上げました現在東京都が実施しております小笠原諸島振興自立計画調査の中で検討資料を得るための調査を進めているところでございますが、私どもといたしましては、小笠原の公共施設等は今後とも整備を進める必要があるというふうに認識しております。したがいまして、私どもといたしましては、東京都の調査結果を受けまして、小笠原諸島振興審議会その他関係方面の御意見も伺いながら積極的に対応してまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、振興法の延長問題は必要であるというふうに御答弁なされましたけれども、今回振興法が延長されるということになれば、一番大きな問題はやはり空港整備の問題だろう。これは小笠原においては一つの大きな課題になっているわけでありますが、空港整備についても当然政府の方にもそれなりの要望等が出ていると思いますけれども、政府としては空港整備に対して、これから小笠原にぜひ空港整備が必要だというふうにお考えになっておられるか。  また、硫黄島の帰島及び開発の可能性の問題も、あともうわずかしかございませんけれども、その問題についての方向性も出ているのじゃないかというふうに思いますけれども、その点については中間報告はできましょうか。
  118. 相馬実

    ○相馬説明員 お答えいたします。  第一点でございますが、小笠原における空港の整備につきましては、これも現在、東京都におきまして小笠原諸島航空路開発調査という調査を実施いたしておりますので、私どもといたしましては、この調査結果を待ちまして検討したい、このように考えておるところでございます。  それから第二点の、硫黄島の問題についてでございますが、硫黄島の帰島及び開発の可能性を検討するために、五十五年度から三年を目途に総合調査を実施してきたところでございますが、国土庁としては、これらの結果を踏まえまして、小笠原諸島振興審議会を初め東京都、地元関係方面の御意見を十分お聞きした上で帰島等の取り扱い方針を定めてまいりたいと考えておりますので、現時点では中間報告という段階には至っていないということをお答え申し上げたいと思います。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、いつごろ報告ができる予定でしょうか。
  120. 相馬実

    ○相馬説明員 お答えいたします。  この点につきましては、小笠原諸島振興審議会あるいはその中に設けられております硫黄島問題小委員会等の審議を経まして徐々に結論が得られるという仕組みになっておりますので、その進行状況等を見ないと、現時点でははっきりした時期等について申し上げるのは困難でございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまいろいろ御答弁願っているのですけれども、小笠原の振興を促進するお立場で、小笠原の方には何回ぐらいおいでになったですか、失礼ですが。
  122. 相馬実

    ○相馬説明員 小笠原には一回でございます。それから硫黄島には一回でございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原は、御存じのとおり東京から千キロも離れておって大変に遠いところにありますので、やはり小笠原諸島を隅から隅までよく熟知し、そして小笠原振興を図るためには、やはり一回ぐらい小笠原に行かれたのではなかなか土地勘もわからないことでもありましょうから、ぜひ小笠原には、振興を担当されているポストである以上は、これからもやはり小笠原には何回も行っていただきたいということを要望しておきます。  さて、次は小笠原の電話とテレビについてちょっとお伺いいたします。  去る二月四日五時三十七分に打ち上げられました通信衛星さくら2号aによって小笠原諸島との通信もダイヤル直通になるなど、大変に朗報が伝えられております。  そこでお伺いをいたしますが、小笠原諸島への電話の運用開始時期をいつごろとお考えになっているのか。また、何回線を予定されていましょうか。
  124. 五十嵐三津雄

    ○五十嵐説明員 現在、小笠原島内の通話でございますが、これはダイヤル即時化になってございますけれども、小笠原と本土を結びますいわゆる市外通話と言われる部分につきましては、先生いま御指摘のようにこれは電話の交換手を介して通話をいたします待時通話になってございます。今回衛星が打ち上げられましたので、この通信衛星を使いまして市外通話につきましてもこれをダイヤル化するということで改善計画を進めているところでございます。具体的な時期につきましては本年の六月を目途といたしまして、現在電電公社におきまして準備を進めているところでございます。  また、その回線数でございますが、現在約百回線を予定しております。したがいまして、現在短波回線十三回線に比べますと大幅な改善がなされるというふうに考えているところでございます。私どもといたしましても、積極的にこの施策を推進するよう電電公社を指導してまいりたいと考えております。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 六月を目途ということでありますけれども、幸いにして返還の記念日も御存じのとおり六月だというふうに聞いているわけです。その目途というのは大体何日ごろ、もうすぐ開通をしなければならない状態ですけれども、そういう点から考えていつの日にこれを開通するつもりなのか、もう少し明確に言っていただきたいことが一つ。  それから、現状の待時交換方式からいまおっしゃったように自動即時交換ということで大変便利になるわけでありますけれども、しかし問題は、その電話料金の問題がかかってくるわけでありますが、電話料金はどういうふうになるのでしょうか。
  126. 五十嵐三津雄

    ○五十嵐説明員 具体的なダイヤル化の時期についてでございますが、私ども、いま六月を目途になるたけ早くというふうに考えまして準備を促進させておるところでございますが、具体的な日にち、六月のいつというふうに申し上げられるまでには機が熟しておらないというのが実態でございます。なるたけ利便が早く利用者に行き渡るように、一日も早くというふうに考えて進めてまいりたいと考えております。  料金についてでございますが、先ほど申し上げましたように現在、小笠原と本土の間は交換手を介します待時通話でございますので、三分間で三百三十円ということになっております。これが通信衛星を使いましてダイヤル化するに伴いまして、現行の料金体系からいきますと、三分間に換算いたしますとこれが六百円になります。したがいまして、現行の料金体系をそのまま移行させてまいりますと、三分に換算した場合、三百三十円が六百円になるということで一・八倍に引き上げられることになりますので、利用者にとりましては急激な負担増を招くということに相なります。  ところで一方、通話料金につきましては、目下遠距離の通話料金の引き下げを内容といたします公衆電気通信法の改正法案を今国会に提出をし、御審議をお願いしているところでございます。したがいまして、これが実施されますと、小笠原と本土間のダイヤル通話料金というのは、三分間に換算いたしますと四百円に相なります。この実施時期につきましては、法律案の成立の時期とも関連するところでありますが、この夏を私どもとしては予定をいたしているところでございます。  したがいまして、このような事情を踏まえまして、それまでの間、小笠原発信のダイヤル通話料につきましては、この公衆電気通信法の改正が実施されることを前提とした料金額を念頭に置きまして、利用者の急激な負担増になることを避けるため、その緩和策につきましての特別な措置について電電公社に検討方をいま指示いたしているところでございます。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまお話ありましたように、電話料金が約二倍になるということで、従来の安い料金の方式と新しいダイヤル直通方式ではずいぶん違うわけですけれども、その選択をすることができるのでしょうか。どちらかを選択することができるのでしょうか。
  128. 五十嵐三津雄

    ○五十嵐説明員 衛星を利用しましてのダイヤル即時化が開かれますと、これはその利用だけということに相なるところでございます。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ですから、そういうふうな大変に高い料金だということですから、いち早くそういう問題の解消をぜひ進めていただきたいということを要望しておきます。  電話は通信衛星で解決の方向に進んでおりますけれども、問題はテレビ放映の同時化であります。放送衛星はいつ打ち上げる予定になっておるのか、また、現在その計画は順調に進んでおるのか、その点はどうでしょうか。
  130. 佐藤允克

    佐藤説明員 実用の放送衛星の打ち上げにつきましては、明年の二月に、BS2aと称しておりますが、打ち上げる予定でございます。また、予備衛星につきましては昭和六十年の八月に打ち上げるということで、現在、宇宙開発事業団において順調に開発が進められております。  運用の開始の時期でございますけれども、衛星が打ち上げられてから機能のチェック等を行いますので、打ち上げ後およそ三カ月以降というように考えております。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 小笠原諸島におけるテレビ放映の現状は、いま現在任意団体のCATV協会が父島、母島でNHK並びに在京民放五社のビデオ放映を有償で行っておりますが、実はこれについては、契約料とか月額の受信料とか、そういうことで負担がかなりかかっております。それで、放送衛星が打ち上げられて運用された場合、受信用のパラボラアンテナが必要になるわけでありますが、協会でアンテナを立てるか、各個人でアンテナを購入するかという問題があります。この件についてはどうお考えでしょうか。
  132. 佐藤允克

    佐藤説明員 小笠原におきましては、衛星放送を受信するためには直径三メートル以上の大型のパラボラアンテナが必要となりますので、住民が個別に設置することは困難と考えております。このため、放送事業者日本放送協会がパラボラアンテナを設置しまして、衛星の電波を再送信する中継局を設けまして放送を行うという計画でございます。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 NHKで中継局を建てて島に流す。そうしますと、個人は普通アンテナで、NHKのみであり民放は映らない、契約料はないという、そういう状況にはなるわけでありますけれども、そこで私はお聞きしたいことは、いま現在NHKとしてビデオを送っておるところのCATV協会は、いままでニュースとか娯楽番組を報道する情報源として島民にも大変貢献してきた実績は私は大きいだろうと思う。本来ならば当然NHKがそういうところまで電波を通さなければならないにもかかわらず、そういうことができなかったことを補う上において非常に大きな役目を果たしてきた、そのように私は思っております。来年放送衛星を打ち上げることによってその役割りが大きく変革され、実はその存立すら危ぶまれる状況になるのではないかと思いますが、それを含めて、CATV協会との話し合いによって私は何らかの救済措置を考えていく必要があろうかと思いますけれども、その点についてはどうお考えになっておりましょうか。
  134. 金子俊明

    金子説明員 NHKの中継局が設置されまして、NHKの放送につきましては直接受信ができるということになりますと、CATVの役割りが薄れるのではないかという御指摘でございますが、確かにそういう面もございますが、NHKの放送につきましては引き続きCATVによる共同受信も可能でございます。  それから、現在CATVでは一週間に約三十九時間ぐらい放送しておりますが、NHKの放送番組はそのうち約二時間半ぐらいでございまして、残りの大部分が民放の番組、特に娯楽番組を放送しているわけでございます。したがいまして、これらの番組に対する住民のニーズというのは引き続きあるのではないかというふうに考えられますので、NHKの番組をCATVで引き続き共同受信すれば、CATVの役割りは引き続き今後もあるのではないかというふうに考えております。  なお、その助成につきましては、現在まで本土におきましても同様の問題がございましたが、特に郵政省の方で助成措置を講ずるというようなことはしてきておりません。  以上でございます。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 受信用施設の今後の計画はどういうふうになっておりましょうか。
  136. 金子俊明

    金子説明員 共同受信のCATVの方でございましょうか。——これにつきましては、今後も引き続き現状のとおり続けていかれるということになろうかと思います。特段の変更はないということでございます。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間が参りましたので、以上をもって終了いたします。
  138. 橋口隆

    橋口委員長 竹内猛君。
  139. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、農林水産省設置法の一部を改正する法律案関連して、若干の質問をしたいと思います。  まず最初に、今度の設置法の一部改正は、臨時行政調査会の要請によってやられたものであるのか、それとも農林水産省が時代の要請に対応する立場から自発的に改正をやったものであるのか、まずそこからお伺いします。
  140. 岸國平

    岸政府委員 ただいま先生のお言葉の中にありました後者の方でございまして、私ども、今回の組織改正は時代の要請に応ずる研究体制をつくり上げたいということで考えたものでございます。ただ、臨調の方からも、昨年七月に出されました基本答申の中では先端技術開発等に重点を置くようにという提言をいただいておりますので、その臨調での線にも沿っているものであるというふうに考えています。
  141. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時代の要請に沿い、かつ、臨調も指摘をして、それと合流した、こういうように了承してよろしいですか。
  142. 岸國平

    岸政府委員 そういうことでございます。
  143. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうであるとしたならば、改正のポイントについて、その基礎になるものはどういう点であるのか、お伺いします。
  144. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  今回の設置法の改正のポイントは、最近の大変厳しい農業情勢に対処し、また最近進展の著しいバイオテクノロジーあるいはその他の新しい分析手法の発達、そういったような情勢に対処いたしまして、それらの革新的な新手法を十分に活用して、いままでの研究手法ではなかなか達成できなかったような新しい生物資源開発する、あるいは自然のシステムに適合し得るようなそういう農業の状態をつくり出す、そのような観点から農業環境に関する技術開発する、そういうことを目標にいたしまして、一つ農業生物資源研究所、もう一つ農業環境技術研究所設置したい。また、それに伴いまして農業技術研究所並びに植物ウイルス研究所は廃止をする、そういう趣旨でございます。
  145. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は前々から農林水産委員会の中では主張してきたわけですが、農業というのは安全保障としての国民の食糧を生産する、その役割りと、同時に一方において、治山治水あるいは環境保全、観光等々、さらに水資源の開発、そういう社会的な役割りを果たしており、国民の生活にとって不可欠の重要な産業であるという観点から物事を考えてきた。このことについて農林大臣からぜひ一言明らかにしてもらいたいわけですが、こういう考え方をいまでも持っているかどうかということについて、大臣、どうですか。
  146. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、農業は、国民の生活に必要な食糧を安定的に供給するという本来の職務のほかに、農用地の適正管理というものを通じまして、水資源の涵養機能であるとか、あるいは土砂の流失を防止するとか土壌による浄化、あるいは保健、休養、あるいは酸素供給というようないろいろな公益的な機能を多分に発揮しているというような産業であると考えておりまして、先生の御指摘のとおりでございます。
  147. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま官房長がまず答えたけれども、やはり大臣に答えてもらわなければならないのです。しかし、せっかく官房長が答えたからついでに官房長に要求するけれども農業の粗生産と、いま言うような酸素、水等々を計算した場合に、どのくらいの額になるのか、それも明らかにした後で、農林大臣から一言農業というものの果たしている経済的な、社会的な役割りというものをこの際明らかにしてもらいたい。
  148. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  農業の粗生産額は大体年間十兆円と思っております。  また、先ほど私から御説明申し上げました公益的な機能、つまり水資源の涵養であるとか、土砂流失防止、土壌浄化あるいは酸素供給、大気浄化等、この問題につきましての計数というものは非常に困難でございますが、一定の仮定を置きまして試算をいたしますと、農業につきましては五十五年度で年間大体十二兆円程度の公益的な機能を発揮しているというように、一つの試算でございますが、見ております。
  149. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農林大臣の方からひとつ農業の持っている社会的、経済的な役割りというものについて一言。
  150. 金子岩三

    金子国務大臣 数字を申し上げますと、いま官房長お答えしたようでございますが、農業が持つわが国の経済の中のいわゆる使命でございます。これはやはりいずれの国も同じと思いますが、国の初めは農業から興っておるのでありまして、いつの時代になりましても農業という産業の持つ——その国の経済開発あるいは地域の経済を安定させて環境保全するとかいう、生活をいわゆる津々浦々に至るまで維持していくのはやはり農業あるいは水産という原始産業が持っている、私はこのように考えております。したがって、農業振興でいろいろ投資をして基盤の整備をしたりたくさんな政策をやっておりますけれども、やはり今日においては世界の科学技術進歩、特にわが国においてもいろいろな技術開発が行われております。農業においてもそれぞれの分野においてそれ相応の技術開発が現在行われておりますが、より以上に効率的に、もっと効果的にひとつ研究開発をして、狭い国土の中でいかにして生産性を高め価値ある農産物を生産するかというような観点から、このたびのいわゆる研究部門の機構改革を行おうとしておるのでございます。     〔委員長退席、愛野委員長代理着席〕
  151. 竹内猛

    竹内(猛)委員 基本的な問題について答弁があったから、次に進んでいきます。  前に農林水産省が八〇年代における新しい農業の方向というものを出された。これと関連をするわけではないけれども、国会においては五十五年に食糧自給力を高めるという決議を行いました。なお引き続いて、外国食糧の輸入自由化に反対をする、こういう決議も二回も行っておりますが、このことは同時に国内におけるところの食糧の自給体制をつくっていくということに通ずるわけでありまして、これと今度新しく筑波研究学園につくるところの二つ研究所は深い関係を持っていると思うけれども、これに関連をして試験研究はどういうかかわり合いを持っているのか、この点を説明をされたい。
  152. 岸國平

    岸政府委員 農業に関する試験研究ということになりますと、将来を見通しまして長期展望のもとに推進をする必要があることは御指摘のとおりでございまして、今回の法改正は、先生の御指摘の中にもありましたように、農政審議会の答申、あるいは国会における食糧自給力の向上に関する御決議、そういったものを踏まえまして、食糧の自給力の強化あるいは農業生産の再編成を推進するために、最近の進展が大変著しいバイオテクノロジー等革新技術を用い得るような試験研究の体制の整備をしようというのが趣旨でございまして、御指摘の農政審の方向あるいは国会での御決議の方向等に沿ったものであるというふうに私ども考えているわけでございます。
  153. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、最近アメリカで食糧の減反政策をとり、現物支給の方式をとってきた。アメリカとソ連との間では穀物に関しては一定の約束、協定を結んでいると思いますが、わが国とアメリカとの間では食糧の輸入問題についての協定なり約束はないと思っています。かつてはあったけれども、いまはない。そうすると、アメリカからの輸入が穀物の上では非常に多い。そのときに、価格の面で、数量の面でアメリカが思惑を働かした場合、たとえばまた港でストライキがあったようなとき、わが国食糧の備蓄も含めてかなり困難な状態になるのではないかと思われるけれども、これに関しての心配はどうなのか。あるのか、ないのか、こういう点についてお答えを願いたい。
  154. 塚田実

    ○塚田説明員 お答えいたします。  竹内委員指摘のように、わが国食糧の安全保障を図るためには、今後とも海外からの供給に相当量依存せざるを得ない穀物、大豆につきましては、長期的な観点に立って輸入の安定化を図ることが基本的に重要であります。そのための一つの有効な手段は、御指摘のように二国間の輸入取り決めを行うことであります。そこで、現に一九七五年には日米間で小麦、穀物、大豆につきまして取引目標を設ける安倍・バッツ合意が結ばれておりましたわけでございますけれども、三年間の合意期間を過ぎまして、七八年に御指摘のように失効になっているところでございます。  そこで、その後どうするかという話が当時ございまして、安倍・バッツ合意にかわる措置を考える必要があるということで、私ども農林水産省といたしましていろいろ努力した結果、七九年の大平・カーターの共同声明の中に、米国としては日本の穀物等の輸入需要を満たすべく緊密に協力するという文章を入れるとともに、このために毎年主要農産物の需給事情等について日米間で定期的に会合を行うこととしているわけでございます。  そうした共同声明に基づきまして、その後も毎年定期的に協議を行ってきております。わが国と友好関係にあります米国との間においては、当面この枠組みを基本として対処し、御指摘のような事態に十分備えていきたい、そのように考えております。
  155. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私はこれは大変危険なことだと思うのですね。やはり一種の公的な取り決めをし、それを破った場合には損害賠償もできるぐらいのやりとりをしておかなければ、大きな問題が起こるのではないかということが一つ。もう一つは、国内において国会決議に基づいて国内の食糧の自給度を高めていくということで、土地と水と労働力、これを確保することが何よりも大事である。この二つがなければ食糧の安全保障はできないと思う。  しかしながら最近までの臨時行政調査会の動きを見ていると、農業は過保護論である。補助金も切ってしまえ、あるいは末端においてのいろいろな施設もあるいは出先も淘汰しろ。こういうように、物でさえあればどこでつくってもいいではないか、こういう考え方になっていると思います。大変危険だと思うけれども、この点について関係者から答弁をしてもらいたい。
  156. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  臨時行政調査会におきまして、一次から五次の最終答申までの間、農業につきましては特に国の重要施策の一つであるという観点から議論がいろいろ行われたことは御承知のとおりでございまして、その過程におきまして一部の委員から、日本の農業生産性が低いという観点から国際分業的なものがいいのではないかというような御意見も確かにあったように承知をいたしておりますけれども、最終的には、食糧につきましてもエネルギーと同じように日本の国を支えるために重要な資源である、また食糧確保は重要であるという基本的な認識におきましては、大体私どもの姿勢を御理解をいただいたというように考えております。また、具体的な施策の上におきましては、確かに現在の財政事情等から、あるいは現在の行政機構から見ましてできるだけ合理化、簡素化を図るという観点から種々の提言が行われておりますけれども、これは私どもの基本としております国民食糧の安定的供給という線を否定したというものとは理解はいたしておりません。
  157. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、食糧というものを国内で確保していくことは日本の重要な安全保障だと考えている。あるいはまた、工業用のエネルギーを確保することも同じです。原料もそうですね。それから加工してこれを輸出する、これもそうです。  いまわが国には、軍事力を強化する、防衛力を強化することだけが何か安全保障だと考えている者が非常に多い。そのことばかり宣伝する者が多い。そこで中曽根総理は、最近問題になっているように、四海峡を封鎖するとかあるいは不沈の航空母艦などということを言い、運命共同体というようなことを言って、これは危険で仕方がないですね。こういう状態というのは、まさに一種の戦争状態なんだね。そういうときには、いま言ったような食糧、エネルギー、それから加工してこれを輸出する場合に、これはできないじゃないですか。そのときに、防衛庁は一億二千万の国民に一体どれぐらいの食糧、カロリーが供給されるか計算したことがありますか。防衛庁、答えてください。
  158. 藤井一夫

    ○藤井説明員 有事にどれぐらいの食糧が要るかという御質問でございますけれども、私ども防衛庁、自衛隊が担当いたしますのは、いわゆる侵略を排除するというような狭義の防衛政策の面でございまして、ただいまのような問題につきましては、それぞれ所管の官庁におきましてお考えいただき、政府全体で総合的に御判断をいただくべきことだと考えております。  ただ、過去におきまして、防衛庁としての研究ではございませんが、私どもの一部局であります海幕におきまして、私ども専門ではないのでございますが、私どもの知り得る限りの資料に基づきまして、有事に国民の食生活を確保するためにどれぐらいの輸入量が要るんだろうかということを試算したことがございます。これは昭和五十年、五十一年当時の古いものでございますが、それをちょっと申し上げますと、昭和五十年当時の日本人の栄養水準、これは厚生省の方の資料でございますが、熱量二千百カロリー、たん白質七十グラム、脂肪四十七ないし七十グラム、この程度のものが栄養水準であろうという資料がございましたので、これを仮に昭和六十年という時点を考えますと、その時の人口が一億二千万ぐらいだろうと思いますが、この人口の国民がその程度の栄養水準を仮に確保できるためにどれぐらいの輸入量が要るだろうかということを推定した計算がございます。それによりますと、年間二千三百万トンないし二千八百万トンの食糧を輸入しなければならない、こういう試算をしたことがございます。
  159. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうすると問題は、輸入の量の問題ですね、これが輸入がとまったというときですね。とまったという場合に、何カロリーが供給できるかということになるのですね。その場合はどうです。
  160. 藤井一夫

    ○藤井説明員 これも当時の試算でございまして、私ども専門家でないものがはじいたということを御了解いただきたいのでございますが、仮に食糧の輸入が一〇〇%とまったというふうな状況を考えますと、カロリーは千五百五十カロリー、それからたん白質は四十五グラム、脂肪は三十三グラム、この程度に低下するというような試算がございます。
  161. 竹内猛

    竹内(猛)委員 病人がベッドに寝ていても千四百五十カロリーぐらいのものがなければ生きられない。千五百五十カロリーでは、これは労働にはたえられない状況ですね。  そこで、農林省は一体、こういう総合安全保障という立場に立って、食糧問題が輸入がなかった場合にはこのような状態になっている、これをどういうように解決をする、処理をしていこうという考え方を持たれたか。これは農林省自体としては責任の省として当然計算があるはずですけれども、どうですか。
  162. 角道謙一

    角道政府委員 お答えを申し上げます。  いま御指摘の有事の場合と申しますか、食糧供給に不安定が生じた場合、一般的にどうなるか。いま御指摘のように、私ども飼料穀物を初め相当量を海外に依存している現状から見まして、食糧供給に不安が生じた場合どうするかということにしぼりまして、実は二年ほど前からでございますが、農政審議会に専門委員会をつくりまして、そこでいろいろ検討をいたしたわけでございます。  これは、いま先生指摘の有事の場合というのも一つのケースとして、むしろ短期的に食糧の不足が生じた場合どうなるか、長期的に不足を生じた場合はどうなるか、そのような場合にはどういうケースがあるかということをいろいろ検討したわけでございますが、結論といたしまして、当面私どもとしては、現状から見ましてもまた全般的な世界情勢等見ましても、やはり短期的変動、たとえば不足が生ずるとか不作が外国において生ずるとか、あるいは大消費国におきまして不作のため、海外から相当量輸入するために貿易上世界的な変化を受けるとか、あるいは港湾ストであるとか、そういうような事態でございますが、この場合の期間、そういう不足の事態が生じますのは期間的にはそう長期はない、また現実にあり得べき不足の事態というのはそういう状態であるというところから、私ども短期的な事態を想定いたしまして今後の食糧政策を考えるべきである。ただ、先ほど御指摘のような長期の事態に備えまして将来これはどういうような生産転換が必要であるか、そういうことも万一あり得るということでこれから研究を始める必要がある、こういうことで、私ども一応長期にたとえば輸入がゼロになった場合にはどうなるかというような、栄養状況なり生産につきましてもいろんな試算等はいたしておりますけれども、現実的な問題としてはこれから具体的な問題として検討する必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  163. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題を議論すると長くなるからこの辺でやめるけれども、これは農林水産省にも要求しますが、万一の場合がないということはない。中曽根総理がああいうことを言っている以上、ソ連だってこのごろは大分厳しくなってきた。ただでさえいろいろな問題があるのに、あえて挑発するようなことを言うことは非常に危険だ。これはいまや厳しい状況でありますから、農林水産省としても、いまの問題について、備蓄を含めてこの際検討して、その資料についてはできるだけ早く届けてもらいたいと思いますから、これは委員長の方でぜひよろしく取り計らいを願いたいと思います。  それから、防衛庁の方にまた尋ねますが、二十五年に警察予備隊ができて以来今日まで、防衛庁の使った費用というものはどれぐらいあるかということをちょっとお聞きしたい。  同じように農林水産省も、二十五年以来今日までの農林水産省の予算というものはどれぐらい使ったのかということをちょっと知らせてもらいたい。
  164. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 昭和二十五年に警察予備隊が発足いたしまして、それから保安庁となって、二十九年から防衛庁となったわけでございますが、それから五十八年度予算まで含めまして全防衛関係費の金額を申し上げますと、二十六兆九千七百五十二億円でございます。
  165. 角道謙一

    角道政府委員 昭和二十五年度以降昭和五十七年度までの農林水産関係予算の総額は、三十六兆三千二百億円でございます。
  166. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ここで予算を見る限り、農林水産省の方が約十兆円多いということになりますが、だんだんこれが接近をし、やがては防衛予算の方がのしていくんじゃないかという傾向がいまある。私が国会に出てきた昭和四十八年、このときにはたしか一二・四%、全予算の中に農林水産省予算があったはずです。現在は六・八%ぐらいしかない。ところが防衛庁の方はますますふえていく、こういう感じになっているんですね。そして、国民総生産の一%というから、恐らく国民総生産が二百七十一兆か二百七十五兆ぐらいになっているでしょう。現在の防衛庁の予算がことし二兆七千五百億円になっておると思いますから、まさにこれは国民総生産の一%。あるいは予算の中の何%になりますか。やがて努力をして生産が上がればまた防衛庁の方は上がってくるということになれば、安全保障としての農林予算はどんどん削られて毎年落とされていくのに、その一方はどんどんふえていくという、これが全く矛盾するような感じがしてしようがない。こういう予算の組み方というもの——きょうは大蔵省の方見えておりますか。これに対する大蔵省としての物の考え方について、農業と防衛について、これは非常にむずかしいことだけれども、ひとつ感じを述べてもらいたいと思います。
  167. 千野忠男

    ○千野説明員 お答えいたします。  まず最初に、農林予算、なかんずく食糧の確保のための予算ということにつきまして財政当局がどういう考え方でおるかというところを一言申し上げて、話を始めたいと思います。  食糧は国民生活にとりまして最も基礎的な物資でございます。したがいまして、食糧安定供給ということは国家、民族の存立と安全にとってまさに文字どおり不可欠であります。そういうことで、財政当局といたしましても食糧自給力の強化に関する国会の決議の御趣旨などを十分認識いたしております。ただ、方法論につきましてはいろいろ問題はあるわけでありまして、一口に食糧の自給力の維持強化を図るといいましても、コストを無視したりあるいは財政負担を度外視するといったことでは国民の支持が得られない。したがいまして、やはり需要に即しました農業の再編成とか生産性の向上を進めるといったようなことに重点を置きまして、農業を産業として自立し得るようなものにしていく、こういうことを目指しながら体質の強化を図っていく、農業の足腰を強くしていく、これが一番大事なことであろう、こういう考え方でやっております。  ただ、御承知のようにただいま大変厳しい財政事情でございます。したがって、経費の徹底した節減合理化はやらなければいかぬ。限られた財源の中で効率的に予算を使っていきたい、これが財政当局の農業予算に関する基本的な考え方であります。  次に、御質問でございますが、防衛の予算がどんどん伸びておる、農林予算は減額だ、これはどうだというような趣旨のお話でございました。  御参考までに、たとえば予算の中の国防費なり防衛費なりのシェアでございますが、アメリカを見ますと、これは八三年一月の予算教書でございますが、国防費の比率が二八・九%であります。それからイギリスにつきましては一五・八%、これは一九八二年度の予算でございます。それからドイツは一九・五%、フランスは一六・一%、こういう状況で、農業関係の予算を何倍も上回る予算になっているわけであります。ところがわが国の場合は、御承知のとおり防衛関係費は、ただいま五十八年度の予算のシェアで言いますと五・五%である、農林水産関係予算は七・二%である、こういう状況にございます。伸び率が多少変わったりなんかしますのは、その年々のいろいろな事情によるわけでございますけれども、全体のマクロの姿としてこういうことになっておりまして、わが国では農業関係の予算に大変な力を入れておるということが言えると思います。  なお、先ほどの、最近シェアが落ちているじゃないかという点でございますが、五十八年度の予算におきまして農林水産関係予算のシェアは七・二%でございます。前年度が七・四%でございますから確かに若干低下しているということは言える。しかし、このようなことになっております大きな事情の一うは、国債費が非常にふえている、それから五十六年度の決算補てん戻しという二兆二千億余の特別な単年度限りの経費がございますが、こういったものが入っているためにシェアが落ちているという要素がございます。仮に五十六年度の決算補てん戻しを除いてみますと、農林水産関係予算のシェアは七・五%ということで、前年度よりも上回っているということになるわけでございます。  なお、この予算全体の中に占めるシェアの問題でございますが、単純にこれを論ずることは適当でない。といいますのは、シェアというのは言ってみれば積み上げてつくりました各省の予算のいわば結果としてそういうことになるということでございます。そういうことで、予算の中が一体どうなっているかというところがやはり大事なんだろうと思います。限られた財源の中でどのような内容が織り込まれ、農業の役割りを果たす上で最低限の必要なものが入っているかどうかというところがポイントでございますので、そういう意味で、シェアの若干の動きということにそうとらわれる必要はないのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  168. 竹内猛

    竹内(猛)委員 千野主計官、いろいろ御親切なお話ですが、アメリカやイギリスやその他の国は日本とは憲法が違いまして、日本の憲法のもとでそういうお話をしておるわけで、私どもこれ以上この議論は余りしたくはないのですが、確かに昭和四十八年という私が初めて来たときから見ると、農林水産省の予算は毎年毎年残念ながらふえたことはない。下がることはあっても、ふえたことはない。しかし、まさにいま農家は後継者がないということで大変悩み抜いておりますね。きょうも実は午前中、農業改良普及制度の問題で質疑をしたわけですけれども筑波大学の川俣教授の話を聞くと、後継者はどうしたら残るのかという話をしたら、私にはわかりませんというお答えなんですね。本当にわからなくなった、模索をしてもわからないというお答えなんです。残るべき数が残らない。それほど末端は混迷しているし、農業というものに対して魅力を失ってしまっている。こういうときに安全保障としての食糧農業、こういうものに対してもっと行く先を明らかにし、本当に若い者が農村に残るようにしていくためには予算の裏づけもしっかりしてもらわなければ困るし、必要な補助金を抑えるようなことがあっては困る、こういうふうに考えるわけですね。そこで、時間が来ますから、防衛庁の予算の問題もこれ以上の議論を私はしませんが、いま試みに食糧と防衛の問題を対照的に出したわけでありまして、この議論はまた別のところでやらなくてはならない議論でありますからこの辺で終わりたいと思います。  それで、水田利用再編対策の問題ですが、この問題は研究と大いに関係があります。いま一番農村の末端で悩み抜いているのは、せっかく土地改良をやり品種改良をして米がとれるようになった段階で十年間の第二次水田利用再編対策をやっておる、それが五年間も過ぎてきたわけでありますから、あとの後期においては前と同じようなことを繰り返すのではなくて、もっと知恵を働かして、水田をどのように活用するかということを考えるべきじゃないか。  私は最近、自分の地元の農協をすでに二十くらい歩いて、農協の管理者から倉庫の中の米はどうなっているかということを聞いて歩きました。茨城県の場合には、農協の倉庫には政府米の古い米は、五十一年、五十二年の米はまだ若干残っておるけれども、これは食い物にはなりません。そして、自主流通米はほとんど出てしまった、空っぽであります。だから、農協の倉庫代は農協の会計には入ってこない。こういうことで、いま経理上も非常に悩んでおりますね。そして、農民は専業農家ほど減反というものに対していま拒否反応が強い。コシヒカリやササニシキをつくればどんどん売れるんだ、こういうふうにして、土地改良の費用、共済組合の掛金などを払うと残りはなくなってしまうから、この際一時的にでもやめてもらいたい、補助金がなくてもいいから減反の方をやめてくれ、こういう声が強いんですね。だから、農林水産省もこの辺でもう減反の問題について再検討し、そして食糧の備蓄も含めた生産、あるいは多目的の米の活用、水田の活用、こういうことに向かっていかなければ、これは物をつくらないでそこに補助金を出したり転作奨励金を出したり、管理転作のようなことをするということが能ではないのじゃないか、こういうふうに思われるけれども、これについてこの前も大臣の答弁もあったが、もう少しこれは議論してみたいところだと思います。特に、研究所として新しく二つができるんですから、そのどちらかでこれを受け持ってやってもらいたい。どうですか。
  169. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 ただいまの米の潜在的な生産力から申しますと、毎年の需要を賄うてなお三百万トン余の過剰が生ずるわけでございます。したがいまして、ただいまの水田利用再編対策がなかりせば二、三年を出ずしてまた過剰の山を築く、こういう事態が出てくることは火を見るよりも明らかでございます。そういう事態を踏まえまして、単年度の米の需給均衡を図りますとともに、国全体にとりましてもっと生産を伸ばす必要のある作物についてこれを振り向けていくというのがただいま講じておる対策でございまして、基本的な性格としてはこの事業を継続する必要があるものと考えておるわけでございます。  ただ、お話しございましたように、短期的な米の需給をどういうふうに見ていくのか、あるいは備蓄などの問題をどう取り込んでいくのかということは、この水田利用再編対策の一期、二期経過いたしました段階でこれまでやってまいりました対策の内容をよく分析検討いたしまして、また今後の需給の動向あるいは転作の定着化の動きといったものを評価いたしまして明年度以降の三期対策に向けて取り組まなければいかぬ、かように考えておりまして、今後の対策については省内で鋭意詰めておる、こういう状況でございます。
  170. 竹内猛

    竹内(猛)委員 研究所が新しくつくられるについて幾つかの注文をしておきたいわけですけれども、資源研究というのは何といっても政策の先端を走るものでなければならないと思うし、その研究の結果がまた現実の農業の経営にたえ得るものでなければならない、こういうふうに考えるのです。  そのときに、研究者に対する基本的な態度は、研究の長期の目標を明らかにする、不動の目標を明らかにしてもらわなくちゃならぬ。そして、それに対する研究体制の確立研究環境の保障、研究者に対して不安がないような体制をつくってあげることと同時に、これを財政が支えなければいけないと思うのです。途中で費用がなくなってしまったということではどうにもならない。これだけのことを必要とすると私は思いますが、これはどうですか。
  171. 岸國平

    岸政府委員 御指摘のように、研究を進めていく場合にまず第一に必要なものは、どういう方向に向かって進めるのかという研究の目標が非常に重要でございます。私ども農林水産技術会議におきまして研究の基本的な目標の策定を行っております。それに従って、その次のステップでのプロジェクト研究のテーマであるとか、あるいはそれぞれの作目別の試験研究機関におきます研究目標でありますとか、そういうものを定めまして、それぞれに従って研究を進めるということをいたしておるわけでございます。  それからまた、研究の予算についても、毎年基本的には人当研究費というものがございまして、その人当研究費をベースにいたしまして、さらに研究を進めるためには一つの目標を設定し重要な問題の研究についてプロジェクトを組んで研究を進めるということもいたしておりまして、そのプロジェクト研究の予算も用いまして研究推進しているわけでございます。今後ともそういった目標をしっかりと設定し、それに従って予算の有効な活用を図るということで、研究の積極的な推進を図っていきたいと考えております。
  172. 竹内猛

    竹内(猛)委員 人当研究費の場合に、研究費を大幅増額してほしいという現地からの要求があります。これにはランクがあるでしょう。このランクは、いまの場合にはどういうふうになっておりますか。
  173. 岸國平

    岸政府委員 お答えいたします。  人当研究費につきましては分類がございまして、実験系の一と二、それから非実験系というふうに分かれておりますが、私どもの二十の研究機関におきましては、実験系の一に属するものが農業土木試験場でございます。実験系の二に属するものがそのほかの多くの研究機関でございまして、非実験系の一に属するのが農業総合研究所ということになっております。  実験系一の研究機関での人当研究費は一人当たり百四十四万円が基礎になって算出されております。それからまた、実験系二につきましては百二十六万円、非実験系一につきましては九十一万円がそれぞれ基礎になって予算が計上されております。
  174. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、私は前々から常に心配をしているのですけれども、あの研究学園に移ってこられて大体十年になりました。この間にすでに一部の建物が壊れているところもある。道路も大分傷んできたし、樹木はますます大きくなるばかりですね。六十年までは関係町村に五億円のお金が出ておりますから、その中の一部で手入れをしている部分が樹木にはあります。ところが、内部の機械は別にして、それぞれの建物そのものは相当金がかかるものだと思います。そういう場合に研究費やあるいは旅費といったものに食い込まないようにするためには各関係省庁の予算の中でこれを処理をするのか、それとも別に、あそこには建設省の営繕事務所がありますが、この建設省の営繕事務所がこれをやるのか、それとも国土庁の推進事務所がこれを一括していろいろ取り上げてやるのか。これはどこがそういう手当てをするのか、その点についてひとつ答えてもらいたいと思うわけです。
  175. 岸國平

    岸政府委員 まず農林水産省関係としてお答えを申し上げますが、筑波におきます研究費、施設の整備費、それから場の運営管理の費用といったものはそれぞれ予算としてついておりますので、そのそれぞれの費用を用いまして筑波研究機関それぞれ、あるいは共通の経費として用いているところもございますが、そういったもので運営をいたしております。
  176. 竹内猛

    竹内(猛)委員 共通としてやるとすると、自分の建物はいいけれども、道路とかその他の公園とかという問題については将来どういうふうになるのですか。これは国土庁はどうですか。
  177. 久保敏行

    久保説明員 先生お話がございましたように、筑波研究学園都市に整備されました道路、公園、こういった公共施設の維持管理の問題につきましては、現在では筑波研究学園都市に、非常に高水準の学術研究にふさわしい環境の都市をつくるということから地元の町村の財政力をはるかにオーバーするような高水準の施設ができております関係上、期限を切った措置といたしまして、町村に対する特別の財政措置を講じておる、こういう状況でございます。具体的には、地元の町村が管理することとなっております道路、公園、都市下水路、こういったものの維持管理費につきまして、年間額を限りましてその範囲内で特別の交付金を出しておる。現在では、お話にございましたように、周辺のいろいろな整備費も含めまして年間五億円が限度になっておるわけでございます。現状はそれで行っておるわけでございまして、この措置は昭和六十年度まで行うこととされておるわけでございます。もちろん予算の事情もございますけれども、一応そういうたてまえになっておるわけでございます。六十年度までの期間におきまして財政的にさらに地元の町村の負担になるような特別の事態が起こった場合には、関係者で検討しなければならないという状況になっておるわけでございます。
  178. 竹内猛

    竹内(猛)委員 建設省の筑波営繕事務所というのは何をするのですか。
  179. 小川三郎

    ○小川説明員 お答えいたします。  建設省の現地の機関といたしましては筑波研究学園都市施設管理センターというのがございまして、ここにおきまして研究学園都市の国家機関の建築物の営繕工事の建設等を実施しております。国の機関の建築物の修繕につきましては、小規模の修繕を除きまして建設省で一括計上いたしまして修繕を行っておるところでございますが、今後とも研究学園都市の施設の修繕につきましては適切に対処していきたいと考えております。
  180. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、大蔵省の方へ提案をして研究してもらいたいのですが、あれだけの場所にあんなにたくさんの建物が出てきて、これが大体同じように傷んでくるし、同じように問題を生ずるおそれがないとは言えない。最近は特に暖房や冷房の問題があって、これはエネルギーの節約のためですが、去年、このエレベーターに荷物は載せてもいいが人間は乗らないでくれというようなことが書いてあるのですね。外国から見学に来る人たちもかなり多い場所ですから、こういうことはどうもぐあいが悪いと思うのです。エレベーターがあるのだからやはりみんな乗せたらいいじゃないか。これは節減のためにやっていることでしょうね。それから多くの樹木が繁茂する。これは大変手間がかかるし、金がかかると思うのですね。そういうことから言えば、その都度その都度各省庁の予算の中で——あるいは建設省が建てたものは修理をするといま言った。それも一つの方法だが、研究学園都市に進出しているところの機関の連絡会議をつくって、そこで何か特別会計のようなものにして、一括的にこの問題を処理していくことができないかどうか。これは検討です。いまここですぐというわけにはいかないが、そうでもしなかったら、あのようなたくさんの大きな建物ができて、これが壊れ出したら相当な金額のものがそこに出てくるのじゃないかと思われるのですね。そのことによって研究の費用やあるいは出張の旅費が侵されては困る。それは法律によってそういうことをしてはならぬことになっているけれども、といってもしばしばそれをやるからね。人事院勧告にしても、法律によってあれだけ厳しくやっているにもかかわらず平気で五十七年は抑え込んでしまうし、五十八年も怪しい。こういうことをやるような状況ですから、何をやっても文章だけでは危ない。そういう機関をつくってしっかりやってもらいたいと思うのですけれども、これはあの地域の特殊な事情におけるところの一つの提案です。そうでもしなければ問題はうまく解決をしないだろうと私は思う。これはいかがですか。
  181. 千野忠男

    ○千野説明員 国の財政制度の基本的な考え方といたしまして、財政資金の最も効率的な配分ということを考えますと、できることならば実はすべて一元的に歳入を組み、歳出を組むといったことでやる方がよろしいのだろうと思うのです。これはやはりいろいろ事情があってやむを得ず特別会計をつくるということはございますけれども、できることならばむしろ特別会計は必要性の薄まったものは整理をしていく、できるだけ統一的コントロールに持っていくということが財政の効率化ということの面からいっていいのだろうと思うのです。  御指摘の問題につきましては、いろいろ見方によってあると思いますけれども、われわれとしてはいままでかなり適切に必要なものは措置をしてきたと思っておりますし、非常に重要な研究開発の仕事でございますから、今後とも必要なものはいままでどおりの方法で措置していくことが可能であろうと一応考えております。
  182. 竹内猛

    竹内(猛)委員 時間が来たからこれで私は終わりますが、学園に新しく二つ研究機関ができる、そして蚕糸試験場とウイルスその他のものが一応参加をした形でできるということと、これは今後の日本農業の新しい発展の方向に向かってそれぞれ前向きな努力をしていくということは大事なことだと思います。  そこで、農業の持つ産業としての重要な使命というものがあるわけですから、それに向かって研究者が心配なしに研究ができるように研究体制、研究条件それから財政等においても十分に裏づけをしてほしい。なお、あわせていま主計官からお話があったけれども、私は一つの提案をしたわけですが、もちろんそういうことがなくても問題が解決をされる、処理される、そして研究が十分できて研究費や旅費に食い込まないという保証があれば結構ですけれども、そういうことがあるとすればこれはゆゆしい問題であるということを念を押して、私の質問を終わりたいと思います。
  183. 愛野興一郎

    ○愛野委員長代理 木下敬之助君。
  184. 木下敬之助

    ○木下委員 早速御質問をいたします。  最近のわが国農業をめぐる情勢を見ますと、米を初めとした農産物需給の不均衡、土地利用型農業の構造改善の立ちおくれ、省資源・省エネルギー型への転換の要請などきわめて困難な問題に直面しており、国の試験研究機関はこのような課題を解決するために必要な技術開発推進するべきと考えますが、今回の農業生物資源研究所及び農業環境技術研究所設置はこのような考え方に立つものかどうか、そのねらいをお伺いいたしたいと思います。
  185. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から御指摘をいただきましたように、最近の農業をめぐる情勢は大変厳しいものがございます。私どももそのように認識をいたしまして、それに対処するためには、やはり農業という物をつくる産業におきましては、その物をつくることの基礎になる技術開発というものが非常に大事であるというふうに考えておりまして、今回の法律改正お願いをいたしております二つ研究所の新設というのは、御指摘のとおりそういった考えのもとにそのことを達成したいということで考えているところでございます。
  186. 木下敬之助

    ○木下委員 バイオテクノロジー等技術革新が目覚ましい今日、農業分野の試験研究においてこれに対応した組織体制を整備するということは評価できるわけですが、他方、国の組織として簡素効率化を図るということも重要な課題であると考えます。臨時行政調査会の答申等がすでに出されていますが、今回の組織改正はこのような行政改革の方向に沿ったものかどうか、また、組織再編に当たり、行政の簡素効率化ということからどのような措置を講じているのか、お答え願いたいと思います。
  187. 岸國平

    岸政府委員 お答えいたします。  昨年の七月に出されました臨調の基本答申におきましては、農業に関する試験研究重点を先端技術開発等に置くということを提言されております。私どもの今回の組織改正は、この方向にも沿ったものであるというふうに考えております。それで臨調の審議の過程におきましてもその内容を御説明いたしまして、評価をいただいているということもございます。  また、今回の試験研究機関の再編におきましては蚕糸試験場を大幅に縮小するということにいたしておりますけれども、この点につきましても、臨調の最終答申の指摘の中で指摘をされておりますこととも一致をしているものでございます。
  188. 木下敬之助

    ○木下委員 いまも出ました蚕糸試験場のことについてもお伺いしたいのですが、農業に占める蚕糸業のウエートは低下傾向にあって、このような状況に対応して蚕糸試験場の組織、定員を縮小することとしているものと考えますが、その合理化の考え方はどういったものであるのか、また、蚕糸業の将来をどう受けとめているのかもあわせてお伺いいたしたいと思います。
  189. 岸國平

    岸政府委員 今回の蚕糸試験場の縮小につきましては、基本的には、現在まで持っておりました研究の規模と現在置かれております蚕糸業の状況というものを勘案いたしまして、研究の需要の動向に沿うということを基本に置いて縮小を図っているものでございます。ただ、縮小を図りますけれども、蚕糸の研究というものは今後とも重要であるというふうに認識をいたしております。  その理由は、蚕糸業につきましては、農山村を中心とする地域におきまして農業の経営上非常に重要な作物として扱われておる、実際にもそういう意味で非常に役立っておるというふうに認識をいたしておりまして、今後ともそういった地域におきまして農業経営の振興を図っていくためには蚕糸業というものが非常に重要である、その重要な蚕糸業を今後とも維持し発展させていくためにはどうしても試験研究のバックアップが必要である、その技術的な基盤をつくることが必要であるというふうに考えておりまして、今回の措置もそれに沿って行ったものでございます。
  190. 木下敬之助

    ○木下委員 確認させていただきますが、蚕糸業は続けていける状況にできるように努力していきたいということでございますね。
  191. 岸國平

    岸政府委員 そのとおりでございます。
  192. 木下敬之助

    ○木下委員 今後とも試験研究の効率化ということには十分配慮する必要があると考えますが、そのためには、組織体制のあり方とともに、その研究成果をいかに生かしていくかということが重要であると考えます。農業関係の試験研究の場合、農業現場で生かされることが究極の目的となると思いますが、現場の要請をどのような方法で吸収しているのか、また成果をどのような方法で手渡すのか、お伺いいたしたいと思います。
  193. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  私ども農業関係で二十の試験場研究所を持って研究を進めているわけでございますが、それらの試験研究機関研究を行ってまいります場合には、これは産業庁の研究所でございますので、研究と申しましても単に真理を明らかにすればいいということではございませんで、やはり農業に役立つということを第一に考え研究推進いたしております。そういうことでございますので、その研究のテーマを決める場合あるいは研究の方向を策定する場合には、農業にいかに役立たせるかということを基本的な考え方として立てまして、それに沿ってテーマを選び、方向を定めていくということでございます。  ただいま先生の御質問の中には、その研究をやっていく場合にどういうふうに農業現場での要請をとらえているのか、それを生かしているのかということでございますが、私どもはその点が研究推進上大変重要なことであるというふうに考えておりまして、地域農業試験場におきましてはそれぞれの地域において、またいわゆる専門研究所におきましてはそれぞれの専門分野ごとに、研究の場面に提起される農業現場からの研究の要請というものをできるだけ幅広く取り上げるということに努力をいたしております。その方法といたしましては、いろいろな会議を通じまして、都道府県試験研究機関から、あるいは普及関係の部局から、あるいは行政の部局からそういった農業現場での要請を吸い上げるということに努力をいたしておりまして、それを研究の中に生かすということでやっております。  それからまた、もう一つの御質問の趣旨でございます、でき上がった研究成果をどういうふうに現場につなぐのかということでございますが、それについても、でき上がった研究成果につきましては農業現場で生かされなければ役に立たないわけでございまして、そのことも十分頭に置いております。ただ、私ども研究機関はいずれも国の研究機関ということでございまして、単に個別の農家の要請を直接的に吸い上げ、そこに直接的に流すということだけでは十分でないと考えておりますので、要請の吸い上げももちろんでございますが、研究成果の伝達にいたしましても、直接的にそれぞれの農家に渡すということではございませんで、いろいろな会議等の機会を通じましてまず都道府県におろし、都道府県研究機関ではそれをもとにしてさらにそれぞれの都道府県において必要な技術に組み立てるというふうな経路を通りまして、現場におろされるというのが主流でございます。ただ、たとえば品種のような、そのものがすぐに農業現場でつくられるというものにつきましては、品種の頒布につきましては一定の手順がございますけれども、手順を経て比較的速やかに、余り途中での経過を経ずに農業の場に役立てられる、そういったようなことでやっております。
  194. 木下敬之助

    ○木下委員 実は私は先日、この農業関係の試験研究について、農家の方々はどのように受けとめ、どんな考えを持っておられるのかをお聞きして回り、いろいろな声を集めてきておりますので、その中から幾つかを紹介し、質問をしてみたいと思います。  その一つですが、こういう声があります。昔は農業試験場でやっていることはレベルが高く、講習所で身につけた技術で即農業経営ができたが、いまの技術レベルでは通用しないような感じだ、そういうふうに言っておられました。試験場技術が最先端であったのは昭和四十年ごろまでで、その後は中核農家に習いに行った方がよくなって、いまでは日本じゅうの最先端を行っている農家を探してそこに教えてもらうほかなく、そういったところはなかなか教えてもらえない、こういう声がございました。このように試験場がレベルダウンしたと言われているような状態をどうお考えになられますか。
  195. 岸國平

    岸政府委員 私ども常に国の研究機関あるいは都道府県研究機関と接しておりますし、私もこの研究の道に入りましてからすでに三十年近い歳月を経ておりまして、いま先生が方々でお聞きになられました感想というものが部分的にはわかるような感じもいたします。しかし、昔に比べましていまの研究機関があるいは研究者の実力がレベルが落ちているというふうには私はとらえておりません。むしろ先端的な部分では非常にレベルが上がっておるということも非常に多いのではないか。その点につきましては、筑波あたりに参ります外国の研究者、特に中国でありますとかあるいは東南アジアでありますとか、そういった地域から勉強に来られるような人たちの話を聞きますと、日本の農業関係研究機関において研究されている中身は非常に高度であり役に立つという評価を多数の人から受けておりますので、そういう点から見ましても、レベルは落ちてないというふうに申し上げたいと思います。  ただ、農家の方が先ほど先生の御紹介にありましたような感じをもし抱かれているとすれば、これは私ども研究機関にとっても大変参考になるといいますか、反省すべき頂門の一針かと思いますので、今後そういう先進的な農家の期待にも十分こたえられるような、そういう研究機関であるべく大いに努力をさせていただきたいというふうに考えます。
  196. 木下敬之助

    ○木下委員 お答えになるとおりだと思います。農家の方はやはり即役に立つようなものを求めておりますから、その中で幾ら高い研究をされていても、そのことをレベルが高いとはとらえずに、自分たちの必要としているもののノーハウをどっちが持っているか、そういったことで比較しているのじゃないかと私も考えてはおります。  研究所もそういうことでございますが、その研究所から直接にいろいろなことに接している改良普及員の方々おられますね。この改良普及員の方々について、もう全体的に意欲が低下しているというふうなとらえ方をしているようでございます。そういう意見の方が多くおりました。ある農家の方の言っていることですけれども、自分たちの方がレベルが高いのじゃないか、たとえば稲の虫よけ、病気よけに硫黄の粉末を使うとうまくいくのだけれども、その硫黄の使い方、これの分量だとかやり方とかをしつこく聞かれる、けれども自分たちは教えないのだ、こんなことを言いながら、実際にもう使っている技術は自分たちの方が上だ、こういう感じを持っておる方々もおりました。またある人、これは相当のレベルの高い農家の方ですけれども、自分のところに試験に通った後実習に来られた普及員の方と、また別の機会に来られた中国からの研修生の方と両方ともに接してみて、中国から来られた方の大変な意欲に感激をしておられました。そして、この分でいくとすぐに中国に追いつかれてしまうのではないかと思った、こういう率直な感想を言っておられました。また、農協や町の指導員の方が農家からの突き上げが大きくて勉強しているんじゃないか、こういう声もございました。普及員の方々が農家の方にこういうふうに受けとめられていることに対して、どういうふうに考えられますか。また、今後どのように指導していくのかをお伺いいたしたいと思います。
  197. 小島和義

    ○小島(和)政府委員 農業改良普及事業は昭和二十年代の初期に発足をいたしまして、その際に採用いたしました方々が大分高年齢に達しておりまして、一部は退職年齢に達しておるわけでございますが、全体を眺めてみますと、五十歳台という方々が県によりましては四割あるいは五割という水準に達しているところがございます。こういう普及員の方々は、長年この仕事に従事してまいりまして、非常に老練の士ではございますが、残念ながら最近の新しい技術に対する対応力と申しますか、こういう点では若干劣る点があろうかと思います。また、当然のことながら、ある程度長期間にわたってそういう仕事をやってまいりまして、若いころの情熱というものがだんだん衰えてきている、こういう傾向もあろうかと思います。また、反面におきまして、最近採用いたしております若い方々、これは大体四年制大学を出たような、いわば学問の領域におきましては相当すぐれている方々でございますが、実際の農業という段になりますと、ただいまの大学教育の内容等から見まして、すぐ実際に役に立つという技術力を持っているとは必ずしも言いがたいわけでございます。     〔愛野委員長代理退席、田名部委員長代理着席〕  そういう現在の普及員の態勢を踏まえまして、これらの内容を、最近の農家が要求しておりますように非常に高度に専門的な技術レベルを要求する、こういう農家の層がふえてきておりますから、そういう方々に対応するためには、一つには個々の普及員の研修による能力アップということだろうと思います。現在でも普及員の研修につきましては、集団の研修のほかに職場の領域内における研修、それに自主研修を絡み合わせまして、できるだけ技術レベルをアップするように努めておりますが、一人の普及員がマスターできる事柄というのはおのずから限界があるわけでございまして、それらを補うものといたしまして、専門家のチームによる集団的な指導、さらには普及員ないしは普及所段階ではとうてい把握しかねるような新しい技術を即座に入手できるような普及情報システムの確立、こういったものの支援がなければ、とうてい一人の普及員で何もかにも賄うということはとてもできないというように考えているわけでございます。そういう研修の活用あるいは普及の体制の整備、これらをあわせまして、農家の御要望にこたえてまいりたい、かように考えております。
  198. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことでよろしくお願いいたします。  農家の方々が試験場改良普及員に期待しているものは、営農に実際に役立つ技術であります。幾ら学問的にすばらしい研究をしても、農家にとってレベルが高いとは言えないわけです。そういったことを考えまして、農学栄えて農業滅ぶというようなことのないよう、わが国農業発展のためには、試験研究は農家経営に役立つということを目的としてなされなければならないと思いますが、どうお考えになられますか。
  199. 岸國平

    岸政府委員 先生の御指摘のとおりだというふうに考えます。私どもは、先ほども若干触れましたけれども、二十の研究機関におきまして、常に農業のために役立つということを念頭に置いておりますし、また営農のために役に立つということも頭に置いて常々研究推進しております。その営農のために役に立つ研究というのは、これは大変幅の広い意味があろうかと思いますが、先生が直接農家の方からいろいろ意見を聞かれたという先ほどの御意見は、私ども大変参考になるわけでございます。  研究を進めてまいります場合に、これはたとえて申しますと、一つ品種をつくる場合にも、品種をつくるためには、稲のように比較的短期間にできるものでございましても、交配を始めましてから本当に実際に農家がつくれるような品種ということになるためには十年の歳月を要するわけでございます。今回の生物資源研究所におきましては、そういった品種になるまでの期間を短くするような研究というものも考えてまいりたいと思いますけれども、それにしましてもやはり期間がかかる。その期間のかかる研究をやってまいりますと、実際にあしたこういうものが欲しいという農家にとっては、なかなかすぐにこたえていないではないかというようなこともあろうかと思います。そういうこともおもんぱかりまして、私どもは、研究機関ごとにあるいは国と県との関係ごとにそれぞれ分担をいたしまして、農家に直接役に立つような、普及にすぐに移せるような研究はできるだけ都道府県試験研究機関でこれを分担し、都道府県試験研究機関でそういった研究を進める場合に、どうしてもこの部分がないと普及に役に立つような研究に取りかかれないというようなそれのまた基礎になる部分、そういったもの、あるいはかなり広範囲のところに適用されるような技術、あるいは非常に長期間を要するもの、あるいは非常に多数の人力あるいは機械を必要とするようなもの、そういうものについては国の試験研究機関でこれを分担するということで研究を進めておりまして、それを総合いたしまして、やはり農業研究全体としては御指摘のように営農にしっかりと役に立つような研究を進めるということを考えておるわけでございまして、今後ともその方向で努力をいたしたいと思います。
  200. 木下敬之助

    ○木下委員 農家の方の気持ちとしましては、これをやれば経営できる、農業として、農家としてやっていけるんだというものをできるだけ研究して出していただきたいという気持ちがあるわけです。どうぞ経営ということを念頭に置いて研究していただきたいと思います。  いま農家経営ということが出ましたので、この際強く要望したいことがございます。それは、多額の負債を抱えて行き詰まっている畜産農家のために、その負債とその金利がふくれてどうにもならなくなっている状態を何とかしてあげられないものかということであります。  もともと、この畜産農家の多額の負債の問題は、水田再編のしわ寄せとして飼料をつくるように勧めたのが出発点であると考えます。責任の一端は政府にもあると思います。また、そういった畜産の設備にしましても、融資や補助金を受けるための基準が必要以上に高過ぎて、たとえば間伐材でつくれば済むようなものまでりっぱな構造物となったり、機械類も三十馬力で済むようなところが外国産の六十馬力のものでなければならなかったりといった、いわば先ほどから問題にしてきました農家経営ということが念頭にない指導をしてきた結果、過剰投資となったと言えるのではないかと思うのであります。政府としてもそういう指導をしてきたことに責任を感じて、この際、この解決のために肩がわりするなり棚上げにするなり、せめて長期の超低利融資ができるようにするべきではないかと考えるのですが、お答えいただきたいと思います。
  201. 石川弘

    ○石川(弘)政府委員 御指摘のありました畜産農家の負債問題でございますが、御承知のように、特に負債問題が顕著にあらわれましたのは酪農でございました。酪農につきましては需要の伸びよりも生産が上回りました結果、若干生産を調整しました時期におきまして負債の発生、償還困難という事態がございました。私どもといたしましても、五十六年と五十七年に総額三百億の負債整理資金を用意いたしましてかなりの農家の方の借りかえを行ったわけでございますが、なお酪農につきましては若干の積み残しと申しますか、償還が困難な農家もございましたので、本年度の価格決定の際に、さらに総額百五十億円の積み増しをいたしまして負債の借りかえをいたしているわけでございます。ただ、この場合に営農の改善、特に今回は、酪農の場合につきましては限度数量を上げるとか価格を若干上げておりますので、その結果、かなりの経営改善が見込まれるものと期待をいたしております。  それからもう一点、肉畜経営でございますが、これにつきましても、五十六年度あたりに資材費の高騰等の中で畜産物価格が必ずしも十分でなかったという事態がございまして、一般論としての負債の増高がかなり見込まれていたものでございますから、昨年度の五十七年度の畜産物価格決定の際に、総枠一千億の負債整理資金を設定いたしまして、総額六百五十億円の貸し付けを行ったところでございます。幸いにいたしまして、その後、資材あるいは製品価格が好転をしてまいっておりますので、いまの環境は比較的いい環境に移りつつあるとは思いますが、さらに個別の事情は審査をいたしまして、このような一般的な借りかえをする必要はすでにないとは思いますが、個別の具体的に必要なものにつきましては、御承知の自作農資金の再建整備資金等を充当するつもりでございます。
  202. 木下敬之助

    ○木下委員 それぞれ農家で形も状況もいろいろ違うと思いますから、どうか個別に、農家の身になってのいろいろな御指導、御援助をお願いいたしたいと思います。  農家の経営ということを考えた試験研究ということで、農家の方々からの要望に、一次産業としての農作物研究だけでなく加工品の研究も進めてもらいたい、こういう声もございました。また、地熱利用研究にも力を入れてもらいたいという強い要望もございました。特にこの地熱に関しましては、脱砒素装置もすでに完成している、そうも聞いておりますので、早く実用化できるように細かい点を詰めてもらいたいと思います。そういう要望もございました。そういった要望を踏まえて、試験研究のレベルアップに取り組まれますことを強く訴えたいと思います。  試験研究推進に当たっては、行政は基礎的、応用的研究を担当しているわけでございますが、民間でも、機械メーカー、農薬メーカーとも技術レベルは高いと聞いておりますし、中核農家にも高いレベルの技術を持った方々もおられますので、技術の実用化段階の研究などは官民が連携をとって、民間の活力を生かしつつ実施していくことが重要であると思います。民間の試験研究の結果の利用を積極的に行うべきではないか、また、官民の研究交流の促進に努めるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  203. 岸國平

    岸政府委員 農産加工等の研究についても大いに進めるべきであるという御意見でございますが、その点につきましては、私ども研究機関といたしましては食品総合研究所が中心となりまして、そのほか畜産試験場果樹試験場あるいは野菜試験場といったようなところでそれぞれのところに必要な流通加工に関する研究を進めておりまして、先ほど先生の御指摘にありましたような農家の御要望にもこたえられるような研究成果が出てまいるというふうに考えております。  それから、地熱の利用についてもすでに研究に取り上げておりまして、推進をいたしております。  それから、最後に御指摘のございました民間の活力の利用ということでございますが、御案内のように、農業におきましては個々の農家では技術開発がなかなかできないというようなこともございますし、日本の国が北から南まで非常に広い、それぞれの地域に適合した技術がなければいけないといったような事情もございまして、いままでのところ、国あるいは都道府県という国公立の試験研究機関品種育成その他いろいろな技術開発を主として行ってまいりました。しかし、民間における技術開発というのも、これは先ほどの御指摘にもありましたように、農家レベルでも非常にいいものも出てまいりました。私どもはそういうものを参考に取り入れながら、それをさらに発展させるような研究もいたしておりますし、そういう意味におきましても、また民間の企業等におきましても最近ではかなり農業に目を向けた技術開発も行われておりますので、そういうことも頭に置きまして、今後は官民の連携ということを試験研究の面でも十分図っていかなければいけないと考えておりますので、その方向で進めたいと考えております。
  204. 木下敬之助

    ○木下委員 次の質問に移ります。  臨時行政調査会が三月十四日に答申した最終答申に対し、政府は十八日、臨調の最終答申を最大限に尊重し、行政の簡素化、効率化を推進するとの対処方針と政府声明を閣議決定しました。わが党はその実施状況を見守っていますが、農林省関係はきわめて厳しい内容であり、特に農業者の受益者負担増につながる答申事項については政府の慎重な対処を求める。農水大臣の最終答申に対する全般的な所見をお伺いいたしたいと思います。
  205. 金子岩三

    金子国務大臣 御承知のとおり、最終答申は大変厳しいものがあります。ただ、今後の農業をいかにして振興するかというその新しい方針を打ち立てるためには、臨調の答申は大変重要な御指摘であろうかと私は承知いたしております。したがって、この答申を踏まえて、今後のわが国農業生産性をいかにして高め、そして実効ある農政を強力に推進するかということで、今後いろいろな施策の検討を続けてまいりたいと思います。いま御提案申し上げておりますこの設置法も、その一環であるというようにお考えいただきたいと思うのでございます。
  206. 木下敬之助

    ○木下委員 答申の内容について一つ一つお伺いいたしたいと思っておったのですが、少し時間の関係もありますので、またの機会か後ほどということにしまして、まず補助金の整理についてお聞きいたしたいと思います。  私は、答申の受益者負担増に直結するような項目には賛成できないわけですが、たとえば良質米、流通促進奨励金の早期廃止、また水田利用再編奨励金の単価引き下げ等に対する政府の対処方針をお伺いいたしたいと思います。
  207. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  御指摘の点は自主流通米の奨励金の関係かと思います。早期廃止という御指摘がありましたのは流通促進奨励金でございますが、これは御存じのとおり、政府米と自主流通米との売買逆ざやとの関係からこれまで行われてまいりまして、売買逆ざやの改善とともに、その扱いにつきましては、過去千二百円ございましたのが、現在二百円まで下がっております。今後の具体的な方向といたしましては、政府米の売買逆ざやの動向を見ながら検討いたしたいと思っております。  もう一つの、良質米の奨励金の単価引き下げについての御指摘もございますが、この点は良質米の作付拡大を通じまして米の需給均衡化を図っているという趣旨もございます。具体的なあり方につきましては、生産者米価との関連もございますので、今後、良質米の供給や価格の動向を見ながら、生産者米価の決定の際にあわせて検討してまいりたい、このように考えております。
  208. 木下敬之助

    ○木下委員 私たち民社党は臨調に賛成し、行政改革を進めるという立場でやっておりますけれども、それは行政の機構を改革して財政の負担を少なくしようとしているものでありまして、民間に押しつけて軽くしていくというようなことは本当の国民の期待に沿った行革ではないと考えておりますので、そのことをはっきり申し上げておきたいと思います。  次に、農産物市場開放問題についてお伺いいたしたいと思います。  懸案の日米牛肉、オレンジ交渉について、米国側は交渉の早期再開を希望していると聞きますが、本格的交渉再開の見通し並びに自由化枠拡大反対の姿勢を貫くかどうかについてお伺いいたしたいと思います。
  209. 金子岩三

    金子国務大臣 経済局長がアメリカに行っておりまして、あした帰ってまいります。帰ってきた上で、どのようにアメリカの感触を受けとめてまいりますか、その後いろいろと今後の対応を協議したいと思います。  ただ、昨年四月に委員会の決議をいただいております。十二月にも強い申し入れをいただいております。わが国農業のいわゆる農家の方々に被害を与えないように、損失を与えないように、そういう観点に立ってこの問題に取り組んでまいりたいと思います。
  210. 塚田実

    ○塚田説明員 お答えいたします。  佐野経済局長は、あすの午後、帰国の予定でございます。確かに米国側は、中曽根総理が一月の訪米の際に専門家会議を開催しようと提案したにもかかわらず今日まで日本側から何の対応もないということで不満の意を示し、早期開催方を私どもに言ってきておることは御指摘のとおりでございます。ただいま大臣が御答弁申し上げましたように、佐野経済局長あす帰りますので、よく相談して今後のことを決めてまいりたい、このように考えております。
  211. 木下敬之助

    ○木下委員 さきに政策構想フォーラムが「日本の安全と繁栄を世界とともに」と題する提言の中で、米麦を除く全農産物を五年以内に自由化し、国内農業への影響は輸入課徴金で対処するよう提言しています。自由化による国内生産者への影響ははかり知れないものであり、わが党はフォーラムの提言に反対するものでありますが、外務省が委託した唯是教授の論文など、自由化を是認する研究論文が相次いで発表されるのに対し、農水省が自由化による影響を数字で明確に示していないのは問題ではないかと考えるわけですが、対米交渉に臨むに際し、自由化できない根拠を明示し国論の統一を図るよう農水省としても努力すべきではないかと考えますが、いかがお考えでしょうか。
  212. 塚田実

    ○塚田説明員 お答えいたします。  確かにここ一年ぐらい前から日米経済摩擦の一環として牛肉、柑橘問題等の農産物貿易問題が大きく取り上げられましてから、先生指摘のように、政策フォーラムなりあるいは学者の意見なり各般の意見が国内においていろいろ提言されているわけでございます。私ども、このような国内の意見がまた米側にも反映いたしまして、日米交渉の際に米国側の強い自由化要求となってあらわれている面も否定できないものと考えておるわけでございます。  そこで、私どもはそのような事情も十分頭に置きながら日米協議も何回もやっておりますけれども、品目ごとになぜ日本政府として自由化ができないのか、その国内事情を経営の面から、経済の面から、あるいは社会の面からつぶさに説明してきているところでございます。これからも、日米交渉はこれで終わったわけではないので、これからまさに本格化するところでございますから、私どもとしては自由化できない事情を御指摘のように今後とも十分米国側に説明し、そして理解を得ながら慎重に対処してまいりたいと考えておるわけでございます。また、国内に対しても、私どもは従来からいろいろそれなりに反論も加えてまいりましたけれども、あるいは政府広報等も三月の初めに出しまして、政府広報の形で国民各層に対してわが国農業なり農産物等の実情等を説明しまして、その理解を得る努力をしてきているところでございます。今後とも日米の協議の面あるいは国内の面でこのような努力を続けてまいりたいと考えている次第でございます。
  213. 木下敬之助

    ○木下委員 わが国農業の実情をはっきりと伝えることのできる説得力のある資料をつくられることを望みます。  この日米交渉に当たり、わが国は牛肉、オレンジ等の自由化阻止を貫かなければなりませんが、米国側の自由化に対する要求はきわめて強硬であると想定されますので、米国側を譲歩させる交渉のカードも必要であると考えます。大臣は、来たる日米農産物交渉において何か有力なカードを持っておられるのでしょうか。  私が提案いたしたいのは、米国農業が直面している最大の悩みが過剰問題であることにかんがみ、米国産余剰農産物をわが国が途上国援助や国際的な備蓄機構に充てる方策がよいのではないかと考えます。特に途上国援助については、従来過剰米処理対策としては援助米を輸出していたわけですが、五十八年度でこの過剰米が底をつき、途上国からの要請にこたえることが困難になりつつあります。この際、米国産農産物を使った途上国援助の拡充に踏み切ってはいかがでしょうか。
  214. 塚田実

    ○塚田説明員 お答えいたします。  私ども日米交渉を何回かやってまいりまして、米国側の意図というのは私どもかなり承知しているつもりでございますけれども、米国は牛肉、柑橘について先生指摘のように即時完全自由化とか非常に強い要求をしておりますけれども、ただ米国の農業、その農産物輸出を見ますと、大宗は御指摘のように穀物でございます。穀物が米国農業をある意味では支えているのでありまして、そういう意味で相当な関心を持っていることは、私ども交渉の過程でも承知しておりますが、ただ米国は、穀物は穀物、それから牛肉は牛肉、こういうような姿勢を一面ではとっております。しかし、その底にはやはり心理的な効果もあるいはその他の効果もあるわけでございまして、私ども開発途上国の援助に当たって、これは開発途上国援助は食糧援助でございますから、人道上も非常に重要なものでございます。そういうことを増強するということにつきましては、農林水産省としても従来からやってきているところでございますが、確かに日米交渉の面で、ある意味では効果を持つということは承知しているつもりでございます。そこで米国産穀物の食糧援助の活用につきまして、従来からやっておりますけれども、今後ともこの面については外務省等とも十分協議して、その活用方について取り組んでいきたいと考えております。  また、御指摘の国際的な備蓄の問題でございます。これも、こういうような国際備蓄の構想が、もちろん過去十年間いろいろな構想が国連の場あるいはガットの場で出されておりまして、十年くらい前にはアメリカの元国務長官キッシンジャーが六千万トンの国際備蓄構想を打ち出しましたけれども、そうした国際備蓄については国際的な場で検討がなされてきているわけですが、国際的な協議の場での議論を聞いていますと、その具体化については備蓄の全体的な数量をどうするのか、それから備蓄の拠出分担、国別にどの程度分担するのかとか、その他の運用上の問題について各国の間で合意を見るに至っていないというのが現状でございます。しかしながら、本構想の実現については、このような困難があるにせよやはり国際的な一つの大きな流れでございますので、農産物摩擦あるいは貿易摩擦の緩和にすぐ役に立つというようなことではないかもしれませんけれども、私どもとしては国際的な協議には積極的に参加してまいりたいと考えている次第でございます。
  215. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、主食の米について、今後の米の需給に対する考え方についてお伺いいたしたいと思います。  政府は今年度の米の需給について、十月末の在庫はわずか十万トンになると見込みながら、早場米が三百から三百五十万トン集荷されるので問題はないだろう、こういう考えのようでございますが、これまで工業用の二十から二十五万トンの米は過剰米処理の中で手当てされてきたわけですが、今年度で過剰米処理が済んだ後どのように確保する考えか、お伺いいたしたいと思います。
  216. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 御指摘のとおり、これまで加工用需要につきましては過剰米六百五十万トンの処理の中でしてまいりまして、過剰米処理としましては五十八年度をもって終了いたしますが、五十八年度の計画におきましては、五十九年度の工業用需要の原料分までは手当てするということで措置しておるところでございます。問題は、それ以降の問題ということになろうかと思います。過剰米処理後の工業用原料をどうするかということは、現在、御承知のように第三期対策というのが来年度、五十九年度から進めることになっております。水田利用再編第三期対策に向けまして、第三期におきます転作対策のあり方、多用途利用問題等を総合的に検討いたしておりまして、その中で御指摘の工業用原料米の供給のあり方もその一環といたしまして現在検討を進めている段階でございます。
  217. 木下敬之助

    ○木下委員 政府は、総合食糧政策の一環として昭和五十年より二百万トン備蓄構想を公言してきましたが、過剰米在庫のため、これまで避けてきたように思います。過剰米処理が終了した段階では、在庫は五十八年十月で十万トン、五十九年十月では五十から六十万トンにすぎません。二百万トン備蓄構想を政府は放棄したのか、生きているならば五十九年度以降の水田第三期対策の中で適正な備蓄数量を盛り込むべきではないかと考えますが、いかがでしょう。
  218. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 御指摘の二百万トン備蓄という問題でございますが、この点は、昭和五十年の総合食糧政策の展開におきまして考え方を打ち出したことは事実でございますが、その後、過剰が続く中で実際にはこれを上回るということで、第二次の過剰米処理に入ったわけでございます。しかし一面では、この五十五年以降の不作の連続によりまして前年産米の手持ちの在庫が著しく低下していることも事実でございます。  この二百万トン備蓄ということ自体につきましても、先般、五十五年におきます農政審議会の答申におきましても問題となりまして、見直しも求められております。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕 と申しますのは、二百万トンの備蓄につきまして、これを毎年回転していく備蓄として考えますと、消費者の新米志向等の問題から実態にそぐわないという問題もあるわけでございます。やはりもっと新しい考え方を持つべきではないかという問題提起もされておるわけでございます。農林水産省といたしましても、今後の備蓄水準のあり方につきましては、第三期対策とも絡めまして適正な備蓄水準を維持できるように配慮していかなくてはならない、このように考えております。
  219. 木下敬之助

    ○木下委員 何かわかったようなわからぬような、二百万トン備蓄構想というのをいまもはっきり持っているのか、それをどれだけ強い意思で備蓄していこうという気持ちがあるのか、余りはっきりは聞かしていただけなかったようですが、備蓄方法について、従来の回転備蓄に加え一部棚上げ備蓄も取り組む姿勢を示されてきたように思いますが、棚上げ備蓄に取り組むということは考えておられるわけですか。
  220. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 お答えいたします。  備蓄問題につきまして、いま結論の方から言いますと全体に検討の段階でございます。御指摘の棚上げ備蓄というのも一つの方法であろうかと思います。いわば年々回転していきます備蓄在庫水準といたしまして七十万ないし百万トンぐらいのものが回転することは必要でございますが、それをオーバーいたします分につきまして、いわゆる従来から言われております棚上げ備蓄というのは、一定期間持ち越しましてこれを工業用等へ処理するというような方式を組み合わせる考え方と存じますが、この場合におきましてはその備蓄の規模がどの程度かという規模の問題もございます。と同時に、これに伴います膨大なコストもかかるわけでございます。こうしたコスト負担についてどういうふうに負担関係を考えていくかという問題、まだ詰まってない問題がございます。こうした面も含めまして備蓄問題を検討している段階でございます。
  221. 木下敬之助

    ○木下委員 備蓄のネックになっているのはそういった財政問題であろうと思いますが、仮に百万トンの備蓄を行う場合のコストは二百数十億円と思います。これは、相当量の減反緩和によって転作奨励金が削減されれば、備蓄コストは決して重い財政負担とは言えないのじゃないかと考えるのですが、この備蓄をした場合に転作奨励金が削減される、だから備蓄コストはそれほど多くはないという考え方に対してどういうふうに思われますか。
  222. 渡邊五郎

    ○渡邊(五)政府委員 備蓄自体につきましては安全を期するという点から多いにこしたことはないことは事実でございますけれども、その分だけ生産量をふやせば当然転作奨励金がその分だけ減るということも事実でございます。ただ、百万トン仮にした場合に、これまでの経験から私ども、単に金利、倉敷の保管料だけではなくて、この備蓄したものが最終的に処理されなければならないという経験を持っておるわけでございます。最終的処理になりますと、これらが相当の年月を経ますと品質的な劣化も伴います。これまでの過剰米の経験からいたしますと、仮に百万トンの処理をいたしました際の財政負担は、おおよそ三千三百億円、コスト全体でかかるわけでございます。百万トンの現在減反と申しますか水田利用再編の奨励金相当は千二百億円ということもあるわけでございます。備蓄自体はそれが役立つという面もありますけれども、最終的にそれらの相当年数を経たお米を処理するということまで考えますと、そこにかなりの問題があろうかと思います。
  223. 木下敬之助

    ○木下委員 この備蓄の問題は、世界的な食糧事情等も考え、相当重要な問題でございますので真剣に取り組んでいただきたいと思います。また、近年の米の不作の原因も、米離れによる意欲の減退というものも影響していないか、また、出稼ぎに行くので手が足らず、手入れが少しおろそかになるために不作になっているのではないか、こういう声も聞かれておりますので、われわれ米が何よりも好きな日本人が米に困るようなことが決してないように、また、米がなくて海外からの輸入の前例をつくらなければならなくなるようなことのないようによろしく考えていただきたいと思います。  時間が参りましたので、私の質問を終わります。
  224. 橋口隆

  225. 榊利夫

    ○榊委員 限られた時間でございますが、一連の問題で質問をさせていただきます。  日本農業の危機が言われて久しくなります。かつては減反減反ということでまいったわけですが、最近は米不足ということも言われるようになってまいりました。今回の農水省附属研究機関の再編は、わが国農業情勢に対して農水省としてどう対応しようとするのか、どういう立場でこの再編に臨んでおられるのか、まずお伺いいたします。
  226. 岸國平

    岸政府委員 お答え申し上げます。  現在の農業情勢あるいは将来を見通した場合の農業情勢というものを十分に考えまして、将来長い期間にわたって日本の農業を安定的に発展させてまいるためには、どうしてもその基盤になります生産のための技術開発というものが非常に重要であるというふうに認識をいたしております。また、その技術開発の場合に、世界の情勢ども勘案いたしますと、最近非常に先端的な学問の分野での進展が著しいものがございます。私どもは、農業技術開発ということを考えました場合に、そういった先端的な技術開発というものも十分に頭に置いて、いままでの技術に基礎を置いただけでない、さらに一歩前進のできる研究をしていかなければいけないというふうに考えておりまして、今回法律改正お願いをいたしております農業生物資源研究所農業環境技術研究所二つ研究所におきましては、そういったような観点から、前者の農業生物資源研究所におきましてはバイオテクノロジーを中心といたします最近の新しい技術を十分に活用できるようなことを考えていきたい、それからまた農業環境技術研究所におきましては、やはり最近、リモートセンシングでありますとかあるいは非常に精密な分析の手法でありますとか、そういった新しい技術開発も進んでおりますので、そういったものを十分に駆使いたしまして、自然生態系にマッチできるような農業技術をつくり上げていきたい、そういうことで研究所の設立を考えているわけでございまして、将来の農業発展のためにこの二つ研究所も十分に機能させていきたい、そういうことで考えているわけでございます。
  227. 榊利夫

    ○榊委員 先端技術開発という問題を強調されましたけれども、もちろん私どもはそれを否定するつもりはございません。要は、当日本農業発展を保障していく、しかも総合的にそれを保障していく、それにはどうするかということが最も肝要ではないかと思うのであります。もちろん、日本農業発展というのは技術問題だけではないので、もっと根本的な問題があるというふうに思いますけれども、いまのお話を伺っておりますと、少し角度が違うのではないかなという気もするのです。  たとえば農政審の「八〇年代の農政の基本方向」を見てみますと、「我が国農業が直面している諸問題」として諸問題を幾つも挙げております。その諸問題の一つとして、「山村の過疎化、農林業労働力の高齢化、農地への有機物の投入の減少等により、必ずしも良好な管理が行われない事態が生じ、」そういうふうに述べております。また、今回の法改正のための説明のパンフにも、地力の低下、それから土壌病害の多発などむずかしい問題が次々と生じておるということを認めておられます。つまり農業労働力の面からも、それから農地そのものの面からも深刻な問題を抱えているということであります。農水省はこれらの諸問題の解決策、言いかえれば農業再生策とでも申しますか、それについてはどういうふうなお考えでございましょうか。
  228. 角道謙一

    角道政府委員 お答え申し上げます。  いま技術会議事務局長から御説明をしましたのはもっぱら試験研究機関の再編という観点から狭くお答え申したわけでございますが、いま先生指摘のように、農業自体非常に多くの大きな問題を抱えております。むろん、この中には農用地面積の減少であるとか多くの農産物が供給過剰傾向にあるとか、あるいは特に外国に比べて生産性のおくれております土地利用型農業部門におきまして経営規模の拡大がなかなか進まないというようなことに加えまして、農村社会の活力の低下という問題がございます。特に先生指摘の肥料、農薬その他の土地多投による地力の低下等農業環境の悪化の問題というのは、今後の農業生産を支えていくための基礎条件の整備という関係におきましては非常に重要なことだと考えております。ただこれらの自然の生態系の乱れと、その原因なり、これをどのように改善していくかという問題につきましては、必ずしも具体的な立証というのは非常にむずかしい、また技術的にも解明されてない部分も相当ございます。  そういう意味で、今回つくられることを私ども提案いたしております環境技術研究所というのは、こういう農業をめぐります環境問題というものについて主として基礎的な観点から研究を進めていくという意味でございまして、私ども今後農政を進める上におきましても、この環境統御といいますか環境の管理の方法ということにつきましての研究推進ということは非常に重要だと考えております。
  229. 榊利夫

    ○榊委員 私は、最初の質問で申し上げたかったことは、農業の自主的かつ安定的な発展のためには農業技術についての総合的な発展がなくてはいかぬということでありますし、それからいま第二番目の質問で問題を引きましたけれども、中でも地力の低下だとか土壌病害の多発等々、つまり解決しなければならない難問というのはいまのところたくさんある。それを真っ正面から取り組んで解決していくような学問分野、科学技術分野というのは現にあるわけで、そういうのを見捨てていわゆる先端技術だけに目が行くというのは、これは必ずしも正しくないという問題意識から質問をしたわけでございます。  その私の問題意識から言えば、いまの答弁というのは少しすれ違った感じがするのですが、そういう私の問題意識を考慮に入れていただいた上でもう一つお尋ねいたしますけれども、農政審でも述べておりましたような「八〇年代の農政の基本方向」それからまた今回の法改正のための説明パンフも認めておりますそういう問題について、それらの問題の解決のためにはむしろ総合的にどういうふうな考え方を農水省としてはお持ちになっておられるのかということをもう一度質問したいと思います。
  230. 岸國平

    岸政府委員 先生指摘のように、現在農業現場におきまして、土壌病害の発生でありますとかあるいは土壌の有機物の不足でありますとか、そういったような現実的な問題が多数生じておるということにつきましては、私ども十分認識をいたしております。そういうものについての問題につきましての研究は、これはもちろん御案内のように二十の研究機関を現在持っておりまして、そのそれぞれの分野におきまして研究推進いたしております。  そういう状況ではございますが、そういった問題の解決のためには、単に農業現場にすぐに役立つような研究ということだけを考えてまいりましても十分ではございませんで、それの基礎になる研究をしておかなければいけない。また、その基礎になる研究の中でもかなり長期間を見通して、長期の見通しに立って研究を進めるようなことも考えていかなければいけない。国の研究機関におきましては特にそういうことに意を用いていかなければいけないのではないかというふうに考えているわけでございまして、先ほど二つ研究機関のことについてお答えを申し上げましたように、その二つ研究機関におきましてはそういった長期を見通した研究を進めていきたいというふうに考えているわけでございます。  その長期を見通したような基礎的研究に、さらにそれぞれの産業別のあるいは作目別の専門研究機関、そういうところでそれを受けて研究をし、さらにそれをそれぞれの地域農業に適合するような技術につくり上げる、そういった地域農業試験場、それをさらにチームを組んで共同して、本当に都道府県のそれぞれの現場にも適用し得るようなものに仕上げていく都道府県試験研究機関、そういう大きなチームワークを持って研究をし、技術開発を図っていかなければいけない、そういうふうに考えているわけでございまして、今回の法律改正の主体になっております二つの新しい研究所というのも、そういう大きな枠組みの中の一番基礎になるところ、しかもかなり長い期間をかけて先を見通した研究をするようなものをつくっていきたい、基本的にはそんなふうに考えておるわけでございます。
  231. 榊利夫

    ○榊委員 私は、新しい分野に取り組むという場合も別のものを切り捨ててということであっては間違いじゃないか、こう思うのです。それから、ある研究を他に従属させるということも、やはりまずい。現在、農業基本法を見ますとこれに一つ大きな問題があると私ども考えているのですが、農業は重化学工業中心の高度成長政策の言うならば補完物として位置づけてきている。臨調の国立研究機関の再編構想も大体そういうタイプだと見られます。農業を工業に従属させてみたんでは農業の真の発展はあり得ないし、こういう工業要求に農業を従属させたりあるいは特定の政策に試験研究を従属させたりというようなことはやはり筋を誤っていくんじゃないか。農業実態に合った研究ということが必要になってくるわけで、今回の再編に当たりましても、その意味で私たちは、先ほど来しきりに触れられておりますバイオテクノロジーの問題にいたしましてもあるいは農業による環境整備技術研究を進めることにつきましても、それ自体を問題にするわけじゃありません、それらの基礎研究は独自に進めたらいいということであります。問題は、この新たな基礎研究体制の確立を理由にいたしまして、そして実際には十年間の実績を持っている、それから必要なものとして昭和五十四年度に概成した筑波研究体制、これを実際に解体再編する、そういう方向をとっておるんじゃないか。だとすれば大変な問題だということでありまして、この点でお尋ねいたしますけれども、農水省として、現在の先ほど触れられました農業技術研究所及びこの植物ウイルス研究所、これについてはもはや無用だというお考えなんでしょうか、どうなんでしょうか。そのあたりをお聞かせ願います。
  232. 岸國平

    岸政府委員 農業技術研究所につきましては、農業技術に関する基礎的な調査研究を実施してまいりましたし、それからまた植物ウイルス研究所につきましては、植物ウイルス及び植物ウイルス病に関する基礎的な調査研究を行ってきたわけでございますが、この両研究所とも農業のいろいろな場面に使われる技術開発の基礎になるようなところをやってまいりましたので、その両所の研究が要らなくなったというふうには全く考えておりません。
  233. 榊利夫

    ○榊委員 それではお尋ねしますが、植物ウイルス病の現状はどういうものでしょう。
  234. 岸國平

    岸政府委員 植物ウイルス病につきましては、現在わが国だけでなく世界的に非常に広く発生をし、被害を与えているものでございまして、わが国におきますウイルス病の被害につきましては、昭和五十七年の都道府県からの報告を集計をいたしたものによりますと、しま葉枯れ病という一つのウイルス病を取り上げてみますと、これが稲につきましては約三十三万ヘクタールに発生をしておる、また野菜類につきましては二万三千ヘクタールに発生をしておるというふうな数字が出ております。これらはいずれもかなりウイルス病として調査の網に乗ったものを集計いたしておりますので、必ずしもそれがすべてをあらわしている正確な数字というわけにはまいりませんけれども、いま申し上げましたような数字にあらわれますように、非常に発生も多く被害も多い状況でございます。
  235. 榊利夫

    ○榊委員 おっしゃるとおりだと思うのです。ずいぶん国際的にも植物ウイルス病は多いし、わが国でも多い。ところが、環境研究所の三研究室、これをウイルス研究に充てると対外的には説明しておられますけれども、この三室の定員というのは十名なんですね。ですから、ウイルス研究者も、これでいくと大体三名程度になるのじゃないか。ところがこの防除部門は農研センターに移す。しかしこれじゃ全国対応に追われて、ウイルス病と診断したら焼却して終わりという状況にもなりかねない、そういうふうになるのじゃないか。現在判明しているこの百七十種以外については診断すらつかない、こういう状況にもなりかねないのじゃないかというふうに恐れるのでありますけれども、これはどういうふうにお考えでございますか。
  236. 岸國平

    岸政府委員 今回の農業生物資源研究所並びに農業環境技術研究所二つ研究所を新設をするに当たりまして、農業技術研究所並びに植物ウイルス研究所を廃止するということが一方にあるわけでございまして、その植物ウイルス研究所を廃止してしまってウイルス病に関する研究は大丈夫かという御指摘であろうかと思います。私どもその点につきましては、このように考えております。  先ほどお答えを申し上げましたように、ウイルス病の被害は現在も非常にたくさんのものが発生いたしておりまして、これに対する対応の研究も非常に必要であり、重要であるというふうに考えております。また、将来もその点については重要であるというふうに考えております。植物ウイルス研究所におきましては、先ほども申し上げましたが、植物ウイルス及びウイルス病に関する基礎研究を実施してまいりましたけれども、この植物ウイルス研究所における基礎研究と申しますのは、植物ウイルス病を防ぐための基礎研究でございまして、それをいかに有効に防ぐかということのための基礎になる研究をやってまいりました。今後もウイルス病を防ぐための研究はいままで以上にしっかりとやっていかなければいけないというふうに考えておりまして、その点につきましては、植物ウイルス研究所を廃止をし新しい研究体制にしていくという場合にも十分に考えておりまして、その考えの基礎は、一つは植物ウイルス病を防ぐための、防除のための研究は、植物ウイルス研究所ができましてからすでに十数年を経まして、わが国におきます農業関係試験研究機関におきましてウイルス病の研究の実力が非常についてまいりました。その点については、果樹でありますとか野菜でありますとか、あるいは稲、麦、そういったものにつきまして、かつては植物ウイルス研究所でなければなかなかできないというような状況もあったわけでございますが、現在では、果樹試験場におきましていろんな果樹のウイルスの無毒化の研究も実施しておりますし、また野菜試験場におきましてはいろんな野菜につくウイルスの防除研究はもちろんでございますし、そのウイルスに対する抵抗性の品種の育成も盛んに進めているというような状況でございます。そういうようなこともございますので、一方におきます植物ウイルス病の防除のための研究ということにつきましては、それらの専門研究機関あるいは地域農業試験場、そういうところでしっかりとやってまいりたい。それにさらにつけ加えまして、植物ウイルス研究所の中で現在植物ウイルス病に関する研究を行っている部分を三研究室、農業研究センターの方に振りかえまして、その面の研究を強化していくということを考えております。  それからもう一方、植物ウイルス研究所で担ってまいりましたウイルス及びウイルス病に関する基礎的研究につきましては、農業環境技術研究所において今後続けてまいるということを考えているわけでございまして、それらをあわせまして特に筑波におきますいろいろな研究機関の集中したこの力を結集をいたしますと、植物ウイルス病に関する研究につきましても、十分いままでの研究に劣らない、あるいはそれをさらに発展させる研究ができるというふうに考えておるところでございます。
  237. 榊利夫

    ○榊委員 私、いまの話を聞いていますと、ちょっと矛盾するように思うのです。十分に植物ウイルスの研究をやりたい、やる。ところが、実際には環境研の三研究室をウイルス研究に充てる。しかし、これは私さっき説明しましたように、三つの部屋だったら、定員はせいぜい十名内外。そうしますと、ウイルス研究者というのは、少なくともこの分野に関しては三名程度のものにならざるを得ない。そして一方では、いまの説明では、ほかのところでできるからほかのところでやりたい。そうしますと、結果的には今度のこの改編案では、この筑波のこの分野については結果的には切り捨てるというか狭めるといいますか、そういうことをねらっているのですか。どうもそういうふうに聞こえるのですが、どうなんでしょう。
  238. 岸國平

    岸政府委員 ただいまお答えを申し上げた内容と、またもう少し進めてお答え申し上げたいと思いますが、植物ウイルス研究所におきましては、先ほど申し上げましたように、ウイルス病の防除に役立つような抗血清の作成のための研究でありますとかあるいはウイルスの分類の研究でありますとかあるいは弱毒ウイルスの研究でありますとか、そういったもので非常に大きな成果を上げてまいりました。それから一方でウイルスそのものの基礎研究ということもやってまいりまして、その面におきましては、たとえば植物の裸の細胞をつくるプロトプラストを大量に、安定に生産する研究でありますとか、そういったものも生まれておるわけであります。  そういったことを背景といたしまして、私ども今回考えております農業生物資源研究所の中では、今後いままでの育種技術では到達できないようなそういった新しい研究もやっていかなければいけないという要請があるわけでございまして、その要請にこたえる場合に、いままでの植物ウイルス研究所におきましてウイルスの基礎研究をやってまいりました研究研究者群、研究者はそういったものにも十分に役に立つような研究ができるということにあるわけでございまして、今回植物ウイルス研究所のそういった力は、一方で農業生物資源研究所におきまして新しい研究のところで展開をしてまいりたい、そういうふうに考えているわけでございます。  なお、その農業生物資源研究所においてその方面の研究を行う研究者といたしましても、これは当然いままでのウイルスの研究に発揮してきた力あるいはウイルスの研究によって培われたキャリア、そういったものが有効に活用されるわけでございまして、その研究の過程では、いままで行われてまいりましたウイルスに関する研究と変わらないような、あるいはそれ以上のウイルスに関する基礎的な研究も当然行われるわけでございまして、その面でも植物ウイルスに関する基礎的な研究が弱体化するということはないと考えているわけでございます。
  239. 榊利夫

    ○榊委員 防除のことをさっき触れられましたけれども、植物ウイルス病がわが国へいろいろ侵入してまいります。それをストップする、その際の植物防疫の枠組みというのが先ほどの説明ではどうもはっきりいたしませんでしたけれども、現状ではこれは大体焼却するということで済ませているのじゃないですか。どうなんですか。
  240. 岸國平

    岸政府委員 生物に寄生いたしますウイルスは、現在、薬によって直接それを殺すとか防ぐということは非常に困難でございます。特に植物の場合には、ウイルス病にかかりますと、これを農薬を散布することによって治すということは、現在の私どもの持っております技術では不可能でございます。それからまた、これをほかのカビやバクテリアの病気と同じように農薬を表面にまくことによってその感染を防除するということも大変困難でございまして、非常にひどくなってしまった植物というのは、ほかへの感染を防ぐために焼却するかあるいは土の中に埋めてしまうというようなことも行われているわけでございます。しかし、それだけではございませんで、先ほども若干触れましたけれども果樹の場合のように永年性の作物でございますとなかなかそういうわけにまいりませんので、いろいろな手段を講じましてできるだけウイルスの被害を軽微にとどめながら、長く収穫も続けられるようにというような技術開発もおいおい進められておるというのが現状でございます。
  241. 榊利夫

    ○榊委員 私はこの分野は素人ですけれども、お話を聞きながらでも、ウイルスというものはなかなかの難物だということを痛感するわけであります。確かにそのとおりで、植物ウイルス病については診断そのものが大変な仕事だろうと思うのです。したがいまして、ウイルス研究には特別の機構も必要だし、また年期をかけたスペシャリストも必要だ。  ところが、先ほどちょっと触れましたが、環境研の三研究室の予定定員というのは総数で十名前後、ほかのところでおやりになる、こういうわけですけれども、いま問題になっているのはまさにここでの研究が問題になっているわけで、その十名程度で植物ウイルス研究に当たっても、これは満足か。足りないということになるのが当然だろうと思うのです。これでは長い間かかってこれまでに集めたウイルスの保全すらできないのではないかということも心配されるわけであります。  しかも、電子顕微鏡などの器材だとか温室などの施設は一体どうするのだろうか、あるいは研究運営費はどうなるのだろうか、ともかくこういうふうに次々に疑問がわくわけでございますけれども、このあたりはどうですか。
  242. 岸國平

    岸政府委員 植物ウイルスのウイルス及びウイルス病の基礎研究につきましては、農業環境技術研究所の方で今後分担していくということも申し上げましたが、これは、農業環境技術研究所でもウイルスの研究が行われるということでございまして、先ほどもお答えいたしましたように、ウイルスの研究の場合には、単に基礎的研究という言葉であらわされるだけが有用な研究ではございませんで、農業研究センターでありますとか、あるいは果樹試験場野菜試験場、そういったところで今後推進していく研究も非常に重要なものになるというふうに考えております。農業研究センターに、今後農業研究センターでのウイルス病に関する研究推進させるために二つのウイルス病に関する研究室と一つのマイコプラズマ病に関する研究室を振りかえで新設することにいたしておりますが、現在の植物ウイルス研究所で用いられております温室でありますとかあるいは電子顕微鏡でありますとか、そういった施設は、農業研究センターのその三研究室はすぐ近くで研究推進することになりますので、十分に活用をしながら研究を進めるということを考えているところでございます。
  243. 榊利夫

    ○榊委員 先ほど質問しました電子顕微鏡などの器材の問題だとか研究運営費とか、いまお答えがなかったのですが、その点はどうですか。
  244. 岸國平

    岸政府委員 失礼いたしました。  電子顕微鏡につきましても、これは大変高額な器械でございますので、現在あるものは十分に活用することが大事だというふうに考えておりますので、現在の植物ウイルス研究所にあります電子顕微鏡は当然農業生物資源研究所で用いるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、農業研究センターの方に振りかえで新設される三研究室においてもこれを共用してまいりまして、有効活用を図るということを考えております。  それから、研究の予算でございますが、いままでは、植物ウイルス研究所ということで規模は小さいわけでございますが、一つ研究所のまとまったところで予算を用いておりましたが、今後は、さらにその組織が発展的に大きくなります農業生物資源研究所の予算、また農業研究センターの方に振りかえで新設されます三研究室につきましては農業研究センターにおける予算によって研究推進されることになります。そういうことでございますので、いままでの研究予算に比べて弱体化するというようなことはないと考えております。
  245. 榊利夫

    ○榊委員 いずれにいたしましても、植物ウイルスの基礎研究は非常に大切な分野でございますし、そういう基礎研究を縮小したりつぶしていったりということは絶対に避けてもらいたいと思うのです。  ところで、関連してお尋ねいたしますけれども、現在の案によりますと、熱帯農研を蚕糸試験場へ移す、そのために温室から二キロメートルも離されることになる、こういうふうに聞いておりますが、これはそのまま進められるのでしょうか、それとも温室は新築されるのでしょうか。
  246. 岸國平

    岸政府委員 ただいま御指摘のありました熱帯農業研究センターを蚕糸試験場の現在のところに移すかどうかにつきましては現在検討中のことでございまして、今度の新しい二つ研究機関をつくり、その二つ研究機関も含めまして、筑波農業関係研究機関全体として最も有効に施設を活用研究が活発に推進できるようにということを基本に今後施設の活用を十分に考えたいと思っております。  熱帯農業研究センターを蚕糸試験場に移した場合に温室はどうなるのかということでございますが、仮にいま一つの案として考えております蚕糸試験場の中に熱帯農業研究センターを移すという場合には、熱帯農業研究センターでの研究に当然温室も必要になってまいりますので、今後その点については配慮していかなければいけないと考えております。また、現在の熱帯農業研究センターで持っております温室につきましては、これを今後とも有効に活用していかなければいけないと考えております。
  247. 榊利夫

    ○榊委員 環境研の研究室の配置案が出されておるようでありますが、それによると、農業技術研究所の建物を農研センターと環境研で使用することになっております。そうなりますと、それぞれ研究室、実験室の改造が必要になるのではないか。それは筑波のほとんどに波及する大改造にならざるを得ない。なぜこういうことをやられるのか。もし移動だけだとするならば、フィールドワークはさておいて、実際上実験室での研究はできなくなるのではないかという心配があるわけでありますけれども、この点いかがでございましょうか。
  248. 岸國平

    岸政府委員 新しい研究体制を組んで新しい研究の目標に向かって研究をしようという場合に、現在ある研究組織を活用して行ってまいるつもりでございますので、当然二つのことが考えられるわけでございます。一つは、研究組織は新しくなっても研究者はいままでのところで、全く変わらないところで看板だけをかえて研究を進めるという方法と、もう一つは、新しい研究組織にふさわしいような組み直しをして研究を進めるということと、二つのことが考えられるわけでございますが、私どもは今回二つの新しい研究組織をつくる場合に、大変高額の国家の予算を投じてつくっていただきました施設でございますので、これを有効活用するということを基本にいたさなければいけないとまず考えております。ただ、一方におきまして、単に研究者はいままでのところにそのままいる、そして看板だけをかけかえるというようなことでは本当に新しい研究に向かえる体制にはならないのではないかと考えておりまして、先ほど申しました施設の有効活用ということを基本にいたしまして、なお新しい研究体制にふさわしい、できるだけ有効活用の基本が生かされる形で必要最小限の集中化あるいは組み直し、そういうことを考えていかなければいけない、そういうふうに考えているわけでございます。  先ほど先生の御指摘にありました農業環境技術研究所における研究室の配置と現在の農業技術研究所における研究室の配置、それらをあわせ考えると、筑波全体に非常に大きく波及するのではないかという御指摘でございましたが、そういう問題につきましては、現在まだ十分に具体的な案ができているわけではございません。先ほど申し上げましたような基本に従いまして、最もいい配置、しかも最も予算のかからない有効活用のできる案はどうかということを現在鋭意検討し、研究しているところでございます。
  249. 榊利夫

    ○榊委員 今回の再編、いろいろ勉強させてもらう中でいろいろ問題があるように思うのです。いま答弁にございませんでしたけれども、もし移動するだけだったら実験室での研究は実際上できなくなるのではないか、こういう心配についてはどういうふうにお考えでございますか。さっき質問した最後の問題です。
  250. 岸國平

    岸政府委員 ちょっと質問の意味を取り違えるかもわかりませんが、移動するだけでは十分な研究ができないのではないかということでございましょうか。
  251. 榊利夫

    ○榊委員 つまり、どっちかどっちですね。そういうことも頭に入れて恐らく案を練られているんだろうと思うのですけれどもね。
  252. 岸國平

    岸政府委員 私どもの現在の研究機関におきましては、研究の最小単位は研究室というものにいたしております。その研究室はそれぞれ一つの単位でございますので、居室とそれにペアになっております実験室、それをさらに幾つかの研究室が共用して使いますようなかなり大がかりな特殊な実験室、あるいはそれをさらに大きく広げました別棟にあります大きな施設というもので研究所は構成されているわけでございますが、今回二つ研究所をつくるに当たりましていろいろな再構成をいたすに当たりましても、その別棟でありますとかあるいは特殊な実験室でありますとか、そういうところは基本的にいじらないでそのままの形で使うのが最もいいわけでございまして、そういうことをまず基本に考えてまいりたいと考えております。  それからまた、実験室の関係も、ここにはかなり配管等がしてありますし、またいろいろな器具等も入っておりますので、そういう部分もできるだけ大きな変更を加えずに活用できるようなことを基本的には頭に置いていかなければいけないなと考えております。  ただ、研究者が実際にその場で多少の実験をし、あるいは研究用の文献を読むといった仕事をする場所であります研究室につきましては、居室関係のものにつきましては、これはやはり組織を一つの新しいものにしてまいりますときにはその組織に見合うような集中化も必要だと考えておりますので、そういう部分についてはできるだけ集中化によって研究が円滑に推進できるような措置を講じていきたい、そんなふうに考えているわけでございます。
  253. 榊利夫

    ○榊委員 今回の再編はいろいろ疑問が多いのですね。特に、基礎的な研究成果に立って技術開発を図るというのではなくて、政策的な要求でその研究を引っ張っていく、そういうふうな考え方があるように思うのですが、私はそれはやはり問題だと思う。むしろ政策当局が研究の現状から酌むべきものを酌み取っていくということが必要なのではなかろうか。現在農業に対する風当たりというものは、財界の方からあるいは一部労働組合等からも強いわけでありますが、だといって、それに迎合する方向で再編を強行していけば混乱を生ずることになる。研究体制の再編という問題は、研究対象が植物であるとか自然なのですから、それが前提になっているわけで、それだけに慎重な対処をしないと将来に向けて大きな禍根を残すことにもなるということを心配するわけです。  それで、いま農水省が進めておられる再編への動き、これは現場でも大きな問題になっているというふうに聞いておりますが、やはりごり押しはすべきではないというふうに私ども考えるのであります。この点についてはどうでございましょうか。
  254. 岸國平

    岸政府委員 私ども産業庁の研究所といたしましては、やはりその研究は、その研究所の属する産業庁の所管する事項に関しまして十分役に立つようなものを果たしていかなければいけないということをまず基本に考えております。そして農林水産省の場合は、もちろんわが国農業発展のために役に立つことをまず考えていかなければいけない。ただ、研究所におきましては、基礎的な研究推進してまいります場合に、研究の中に入り込んでしまいますと、えてして一人一人の研究者はその自分の入り込みました研究の場面にとらわれ過ぎてなかなか全体が見通せないというようなことが起こりますので、それぞれの研究機関におきましても、また私ども農林水産技術会議におきましても、その点を常に戒めながら研究推進しているところでございます。  それから、今回の研究体制の再編整備が、これはごり押しをしたのではないかというような御指摘もございましたけれども、私ども決してそういうようなことは考えておりませんで、長期的に考えました場合にどうしてもこういう二つ研究所が必要である、こういうことをいま実行していかないと世界の潮流からも乗りおくれることになるのではないか。そういうことを果たすためには、現在の研究推進しております一人一人の研究者がすべていまの研究から転換しないで新しいものをつくるということではできませんので、多少の転換あるいは研究所としては全く大幅な転換ということも当然起こるわけでございますが、これは産業庁の研究機関として当然のことであるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、そうは申しましても、研究を進めてまいりますときには、研究はすべて一人一人の研究者がやるものでございまして、その研究者の研究が集まってすなわち技術になるわけでございますから、その研究の担当者である研究者がやる気を持って研究に向かえるようでなければいい研究ができないのは御指摘のとおりでございますので、その点については、私ども今後とも十分配慮して研究推進を図っていくことにいたしたいと考えております。
  255. 榊利夫

    ○榊委員 慎重な態度を要望いたします。  それで、あと四、五分ございますから、大臣もいられることなので一つ二つ簡単なことをお尋ねいたします。  農協のことでございますが、農協は農業協同組合法に基づく公共的な性格を持ち、その個々の事業は政府の助成も受けておるわけでありますが、政治的には中立的な団体である、こういうふうに解しております。その農協の福岡県の中央会がさきの知事選で特定候補を支持して、機関紙でその候補者を宣伝したり、あるいはオルグを市町村農協に派遣して票をまとめさせたり、あるいはポスターを単位農協内に張り出したりビラを配らせたりということがあったわけであります。農協の主務大臣は農相でございますが、農水省として、農協がそういうことをする、そういうあり方については好ましいとお考えなのかどうなのか、そのことだけ伺っておきます。
  256. 大坪敏男

    ○大坪政府委員 ただいまの御質問でございますが、先般の福岡知事選におきまする特定知事候補と農協とのかかわり合いの問題でございます。  この点につきまして事実関係を調べてみたわけでございますが、突然の質問でございますので県に対しまして電話で照会したということでございまして、草々の間でございましたので十分ではないと存じますが、その限りで申し上げますと、御指摘の特定の知事候補を支援した団体は県農協中央会その他の農協組織ではございませんで、政治団体として登録を受けた福岡県農政連であるというふうに報告を受けております。  なお、この福岡県農政連につきましては、これは農協組織とは別の任意団体でございまして、この構成は規約によりますと、広く「県内居住の農業者、同志的農業団体関係者、学識経験者であってこの農政連の綱領に賛同する者」というふうに規定されていると承知している次第でございます。  なお、農協一般といたしまして政治活動との関係をどう考えるかという点についての御質問でございますが、農協につきましては、先生御案内のように農協法第一条にも明らかなように、農業生産力の増進と農民の経済的社会的地位の向上を図ることを目的とする農民の自主的な協同組織でございまして、販売、購買、信用等の各般の事業を実施しているものでございます。この農協がその目的を達成するためには、今日のように高度化いたしましてかつまた複雑な社会の中におきましては政治活動を必要とする面もあるわけでございまして、現に政治活動、いわゆる農政活動を行っているわけでございます。農協が農政活動を行うにつきましては、農協法上特段の規定はございませんけれども、私どもの理解といたしましては、農協法第一条の目的を達成する範囲内におきましては許容されるというふうに考えている次第でございます。  この農協が政治活動を行う場合についての問題でございますが、やはり理念的には政治的に中立であることが望ましいと考えておるわけでございます。特に、選挙に際しまして、特定の候補のために選挙に関して各種の活動を行うことにつきましては、農協は先生御案内のように組織的には主義主張の異なる多くの農民によって構成されているということでもございますので、やはり問題を起こしかねませんし、慎重に対処すべきものと考えておるわけでございます。ただ、先生も御案内のように農協はあくまでも農民の自主的な協同組織でございますので、やはりこの問題の最終的な判断は農協の自主的な判断にゆだねられてしかるべきものと考えている次第でございます。
  257. 榊利夫

    ○榊委員 もう時間が参りましたので質問はいたしませんけれども、農政連ではなくて農協がやったのじゃないか。資料を持ってきておりますけれども、農協の出版物でそうなっているわけで、だからこそ私は問題だと言っているわけです。したがいまして、いまの理念的に中立であるべきであるということに照らしましても、はなはだふさわしくない遺憾な事態が行われてきたということになるだろうと思います。農林大臣もおられますけれども、そういう事実もありますので、主務官庁としてやはりそういうところはきちっと見ていって、しかるべき適正な指導が望ましい、こういうことを述べまして、質問を終わります。
  258. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十二分散会