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1983-03-24 第98回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十四日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 左藤  恵君    理事 加藤常太郎君 理事 畑 英次郎君    理事 吹田  愰君 理事 水平 豊彦君    理事 阿部未喜男君 理事 鈴木  強君    理事 竹内 勝彦君 理事 西村 章三君       秋田 大助君    臼井日出男君       亀岡 高夫君    鴨田利太郎君       近藤 鉄雄君    佐藤 守良君       丹羽 雄哉君    長谷川四郎君       福永 健司君    水野  清君       村岡 兼造君    山下 徳夫君       武部  文君    森中 守義君       大橋 敏雄君    木下敬之助君       藤原ひろ子君    村上  弘君       依田  実君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君  出席政府委員         郵政政務次官  戸井田三郎君         郵政大臣官房長 澤田 茂生君         郵政省電波監理         局長      田中眞三郎君  委員外出席者         外務省情報文化         局報道課長   寺田 輝介君         郵政省電気通信         政策局次長   富田 徹郎君         郵政省電波監理         局放送部長   石田  彪君         参  考  人         (日本放送協会         会長)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    田中 武志君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      矢橋 幸一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   坂倉 孝一君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   海林澣一郎君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   渡辺 伸一君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     川口 幹夫君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     荒井 治郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     横井  昭君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         経営総務室室         長)      片岡 俊夫君         逓信委員会調査         室長      芦田 茂男君     ───────────── 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   中井  洽君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     中井  洽君 同月七日  辞任         補欠選任   中井  洽君     竹本 孫一君 同日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     中井  洽君 同月八日  辞任         補欠選任   大久保直彦君     大橋 敏雄君 同月二十二日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     佐々木義武君   丹羽 雄哉君     粕谷  茂君   山下 徳夫君     塩川正十郎君   大橋 敏雄君     正木 良明君   中井  洽君     永末 英一君 同日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     丹羽 雄哉君   佐々木義武君     鴨田利太郎君   塩川正十郎君     山下 徳夫君   正木 良明君     大橋 敏雄君   永末 英一君     中井  洽君 同月二十三日  辞任         補欠選任   大橋 敏雄君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     大橋 敏雄君 同月二十四日  辞任         補欠選任   丹羽 雄哉君     臼井日出男君   渡辺 紘三君     村岡 兼造君   中井  洽君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     丹羽 雄哉君   村岡 兼造君     渡辺 紘三君   木下敬之助君     中井  洽君     ───────────── 三月二十三日  日本放送協会昭和五十六年度財産目録貸借対照表及び損益計算書 同月三日  簡易生命保険保険金限度額引き上げ等反対に関する請願外一件(井岡大治紹介)(第一三一〇号) 同月十日  簡易生命保険保険金限度額引き上げ等反対に関する請願井岡大治紹介)(第一三七二号)  同(井岡大治紹介)(第一四一三号)  同(長谷川正三紹介)(第一四一四号) 同月十六日  簡易生命保険保険金限度額引き上げ等反対に関する請願外一件(上田卓三紹介)(第一五五二号)  同外一件(上田卓三紹介)(第一五八一号)  同(上田卓三紹介)(第一六一六号)  同(田口一男紹介)(第一六一七号) 同月二十二日  簡易生命保険保険金限度額引き上げ等反対に関する請願上田卓三紹介)(第一六九八号)  同外一件(横山利秋紹介)(第一六九九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出承認第一号)      ────◇─────
  2. 左藤恵

    左藤委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吹田愰君
  3. 吹田愰

    吹田委員 きょうは、私は二点について御質問するわけでありますが、その第一点は、NHK長期計画について数点に及びまして御質問申し上げてみたい、もう一点は、国際放送につきましてお伺いしよう、こう考えておるわけであります。  その第一点の、長期計画につきましてお尋ねいたします。  放送界現状、この問題につきましては、放送法昭和二十五年に施行されまして以来三十四年間、公共放送民間放送わが国放送基本体制であるわけであります。  そこで、民間放送は、五十七年のことを申し上げますと、テレビの広告料の約一兆円を基礎とされまして、多彩な事業活動を展開されているわけであります。これに対しまして、NHK受信料運営されている、こういう状況であります。その受信料伸び率ということになりますと、きわめてわずかでありまして、一%台というようなことになっておりますから、収入の不均衡ということがNHK民間では出てくるわけであります。こうした基本構造の中にありまして、数年ごとに料金改定に依存せざるを得ないという体質となっていると思います。財政的にはただいま申し上げましたような状況にもかかわらず、一方では、技術はまさに日進月歩という状況であり、放送衛星を初め各種のニューメディアが続々と実用化の域に達しているわけであります。さらに、視聴者放送に対しましての要望もまた、その価値観多元化あるいは意識や思考の多様化等に伴いまして、ますます多岐にわたっているというのが現状であると思うのであります。このような基本的な前提条件に立ちまして、NHK業務執行責任を持っておられますところの会長は、どういう御姿勢でこれに対して対処しようとしておられるか、経営に当たられる覚悟、いま申しましたような収入の不均衡という体質の中で、民間放送NHKという立場から見て、その覚悟のほどと申しますか、姿勢のほどをお伺いしておきたい、こう思うわけでございます。
  4. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、現在の放送事情の中で、民間放送に対します主たる財源である広告料は、不況の中でも年率七%よりむしろ八%に近い形で広告料の支出が出ているわけでございます。私どもの方は一%そこそこの受信料の増しか望めない。しかも、こういう状況の中で、確かに新しいメディアあるいは既存の番組につきましても視聴者の方の非常に多彩な御要望がございます。これはぜひ積極的に取り組んでいかなければいけないと思っております。  ただ、その中で、一体一%の収入の中でどのようにやるか、実は私ども本当に頭を痛めておるところでございますけれども、ただ一%しかないからその中でただ小さく縮こまるということでは、私ども期待されている視聴者の御要望にどうしてもこたえられない。私どもとしましては、あらゆる努力を講じましてこの御期待にこたえなければならない。それにはやはり、いままでの仕事をそのままただやって、新しい仕事をその上に積み重ねるという状況では、恐らく何もできないだろうと思いますので、いままでやっておりますすべての仕事について抜本的に見直しを図りたい。ものによってはあるいは整理できるものもあるかもしれませんし、また、最近放送法改正等によりまして、私ども関連事業、特に協会仕事を委託するような仕事に対しましては出資ということも可能になってまいりました。そのような関連事業体を育てることによりまして、私ども仕事をまた他の方法でカバーしてもらえる方法もあるのではないか、そのようなことも考えてまいりたい。そのほかに、もちろん、前々からこの委員会等でも御指摘いただいております副次収入増加、これも鋭意努力をいたしまして最近ではかなりの比率をもってふえております。ただしかしながら、この副次収入等の額は、私ども収入の根本をなしております受信料に比べると残念ながら比率の上でははなはだ小さいものでございますので、最終的には、やはり受信料の問題につきましてどの時点かで視聴者の方に何がしかのものをお願いせざるを得ないのじゃないか。しかし、それにはもっとわれわれがみずから努力をいたしましてみずからの改革をして、あるいは能率的にできる仕事は徹底的に能率化を図って、それでもなおいろいろ事情の許さないものがありましたら、視聴者にまた御負担をお願いせざるを得ないかもしれない。しかし、それには私どもが常日ごろの仕事の中であるいはまた事業の進め方の中で、視聴者の方に十分にNHK努力が御理解いただけるようなことをいたさなければならないと思って、その方にまず第一の力を注ぎたいといま考えているところでございます。
  5. 吹田愰

    吹田委員 次に御質問するわけでありますが、五十五年度料金改定の際には、NHKさんは、五十五年度から五十七年度までの三カ年についてはこういうふうにやるということで、経営計画というものをわれわれに明らかにされたわけであります。その中におきまして、財務的にどのように努力して五十八年度予算というものを基礎的につくられたのであるかということをまずお伺いするわけでありますが、五十五年度料金改定に際しましては、NHKは要員いわゆる職員合理化に伴いましての計画を明らかにされました。このことについて私どもも非常に大変なことであるというふうに思いましたが、その努力、その目標を了としたわけであります。これが実施されたというふうに思いますけれども、その辺について、この三カ年における職員等純減状況、あるいはまた人件費の減額されました状況等も、具体的に明らかにしていただければ伺っておきたいと思うわけであります。
  6. 横井昭

    横井参考人 お答えいたします。  効率的な経営を行うことと業務を効率的に運営することは、私ども協会にとりまして公共放送使命を達成する基本的な課題である、こういうふうに考えております。それからさらに、文字多重放送とかあるいは衛星放送とか、そういう新しい放送技術の開発に伴ういわゆるニューメディアNHKが今後どう対応していくか。その基盤を整備する上からも、効率化というのは私どもにとりまして必要欠くべからざる課題である、こういう認識に立っております。  そういう意味で、五十五年の料金改定の際に、五十五年から五十九年の五年間で一応千二百人の目標効率化をやる、その中で、五十五年から五十七年の三カ年の経営計画の中では六百人、三・五%の効率化、具体的に申し上げますと、五十五年に百人、五十六年に二百人、五十七年に三百人、合計六百人、三・五%の効率化計画を立てました。協会の中では、全部門、全業務についての見直しを行いまして、効率化施策の二十数項目を掲げましてこれを遂行してまいりまして、五十七年度末には予定どおり三・五%、六百人の効率化が達成できる見通しでございます。  なお、各年度事業計画並びに収支予算につきましては、国会で先生方の御審議を経て承認を受けているわけでございますけれども、それに伴う新しい事業、たとえて申しますと、ローカルを拡充するとか、放送番組充実刷新を図るとか、あるいは新しい放送メディアに対する準備体制を整えるとか、そういう業務量に対応するものがこの三カ年で二百六十名ございます。差し引きしまして純減三百四十名、二%の職員合理化削減をなし遂げることができるというふうに確信いたしております。  なお、これに伴います人件費の節減につきましては、五十五、五十六、五十七年の累積で申し上げますと、約二十五億円という人件費削減ができた、こういうふうに考えております。
  7. 吹田愰

    吹田委員 ただいま御答弁がありましたことで、大変経営合理化について御努力されておるということにつきましては、私は多といたします。五十八年度につきまして申しますと、単年度で百七十億の収支不足を出しているにもかかわらず、これに対しまして受信料の方は据え置くということでありますが、私はこのことにつきましては一応の評価をいたします。これに対しまして、前回委員会におきまして、同僚畑委員から質問がありましたが、この収支問題について、長期の問題についての御質問がありましたことについて、六十一年度末には収支不足が千八百億円であるという御答弁がありましたこの千八百億円にも達するという収支不足額、このことについての内容に触れられていなかったわけでありますが、この内容を具体的に明らかに願いたいと思うわけであります。  まず、事業収入について六十一年度までにどの程度伸びが予測されているのか、なお収入額がどの程度見込むことができるのか、こういったことについてお聞かせいただければ、こう思いますが、いかがでしょうか。
  8. 坂倉孝一

    坂倉参考人 先生指摘のとおり、これからNHK経営見通しというものは、非常に収支の不均衡が拡大せざるを得ない方向にあることは前回も申し上げたとおりでございますけれども、この見通しにつきましては、前回も申し上げましたけれども、いろいろ基礎になります物価でありますとかその他の条件で不透明な部分が大変多いので、先行きについての予測というものは非常に困難な面はあるわけでございますけれども、先般申し上げました千八百億円の収支不足ということにつきましては、六十一年度までの伸びでございますけれども、五十九年度以降受信契約数増加等に最大の努力を傾注いたしましても、平均伸び率が一%台ということで、それから、先ほど会長が申し上げましたように、二次利用というような副次収入についても相当な努力をするといったようなことを考慮に入れまして計算をいたしましても、平均伸び率が一・六%程度という数字でございます。そういうことで、この収入の額としては約九千億円という額をいまの計算で出しているわけでございます。そして、その収支の差が千八百億円に上るというのがこの前申し上げた数字でございます。
  9. 吹田愰

    吹田委員 ただいま御答弁がありまして、千八百億の不足という問題につきましては御苦労が多いわけでありますが、これにつきましてNHKとされまして、この収支不足額を直ちに料金改定ということで補てんするというような安易な考え方は恐らく持たれないだろう。そういう単細胞的な態度をおとりになるとは私も考えてはおりませんが、しかしながら、これは今後のNHK運営の上で大きな問題でありますが、受信料値上げということにつきましては、特に視聴者立場にして考えれば、一様に負担がかかってくるわけであります。この負担増というものを強いることになりますので、NHKとして、この料金値上げをしないでやっていくということになりますと、何としましても内部の経営合理化ということに全力を注ぐ、こういうことしかないと思うのですね。その辺についてひとつ基本的な姿勢をお伺いできればと思うのですが、特に料金にかかわる問題ですから伺っておきます。
  10. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、収入が足りないからそれは即受信料値上げで補いたい、そのようには考えておりません。当然のことながら、先ほど申し上げましたように、従来やってまいりました仕事あるいは現在やっております仕事、それらを全部見直さなければいけない、それから合理化できるものは徹底的に合理化を図らなければいかぬ、まずそれが第一であろうというふうに考えております。  ただ、一言率直に申し上げますけれども、それでは、徹底的に合理化すれば、いまの受信料伸び一%あるいはその他の収入も洗いざらい努力していま可能な限りのものが年に一・五%か一・六%までじゃないかということでございますけれども、では、その範囲でもっていまの視聴者期待に十分こたえ得るか、あるいはいま展開しております新しい衛星放送にいたしましても、文字放送にいたしましても、その他のニューメディアにいたしましても、十分これらの国民的な文化財を活用して視聴者国民の御要望にこたえられるかというと、それは率直に申し上げましてかなりむずかしい問題であろう。その段階ではどうしてもいまの料金の問題を考えざるを得ない、これは率直な感じでございます。ただ、それはその前に私どもがやるべきことを十分に果たした上での話でございまして、また、番組を通じまして視聴者に、なるほどNHK自分たちのためになっている、必要欠くべからざる放送機関であるという御認識をいただいて、その上での話であろうというふうに考えております。
  11. 吹田愰

    吹田委員 非常にりっぱな御答弁でありまして、確かに、いま会長おっしゃるように、このことは大変なことでありまして、NHKとされましても多くの視聴者の理解と協力の得られる中で経営をやっていく、健全化していく、こういうことですから、やるべきことをまずみずからやる、こういう前提に立って、またその時点でということのようでありますから、それはそれとして了解することにいたします。  そこで、五十八年度予算郵政大臣意見というものが出ているわけであります。きょうは大臣がいらっしゃいませんが、この点につきましては戸井田政務次官にお伺いするというのもあれでありますが、大臣意見書の第一項に、「協会は、厳しい経営環境に対処し、長期的展望に立つた事業運営を行うため、事業運営刷新経営健全化について、引き続き、具体的な検討を進め、経営の安定に資する計画を策定すること。」とあるわけです。このことにつきましてひとつ政務次官から、その基本的姿勢と申しましょうか、そういったことについてまずお伺いしておきたい、こう思います。
  12. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 ここに大臣意見書がございますが、私は、公共放送使命として、その経営内容あるいは将来に向かっての経営の方針、常に刷新強化していかなければならないのは当然だろうと思います。もちろん私企業においてもそのとおりでありますけれども、むしろ公共放送事業というものからして視聴者に対する負担のことを考えると、これは特に厳しく姿勢を律せられるべきものである、私はかように思うわけであります。  そしてもう一つ、公共放送使命というものから見ると、やはり技術革新の時代でありますから、国民現状のままで現状負担に耐えるのと、また、現状に非常に大きな革新があるのだ、進歩があるのだというような場合に、必ずしも私は後ろを向くべきものではないと思うのです。そういう意味で、国民期待にこたえる何かの進歩を求めていくという努力も一方に必要ではないか。  そういう意味で、この大臣意見書の第一項を見てまいりますと、一方においては、経営面で安易に視聴者負担を強いるというようなことがないように努力をすること。一方においては、ある意味では長期的な展望に立っていろいろな新しい企画、ニューメディア、こういったものの取り入れのために堅実な健全な運用をしていく。同時に、いま言ったように合理化もしていく。合理化をしていく上においても、単に機械化すればあるいはいろいろな設備をすれば合理化されていける部門と、そうでなく、新たな作品をつくっていく、そしてその作品自身国民にいろいろな影響を与えていくというような場合には、やはり人間が努力してみんなが寄って知恵を出していいものができる場合とはおのずから違って、単に合理化合理化でもって削減ばかりしていくということもできないというように、公共放送の中にもいろいろなものがあると私は思っております。そういう意味で、これからより高い厳しい姿勢でその使命にこたえていくために努力をしていくべきである、そういう観点に立って大臣の一項が書かれているのではないか、私はかように推測するわけであります。
  13. 吹田愰

    吹田委員 ただいま政務次官から、大臣のお出しになりました意見書の趣旨を詳しく御説明いただいたのでありますが、いま会長もこれをお聞きになっていらっしゃいまして、この将来の計画という問題につきまして意見書をいただいて、ひとつ会長としてこの策定について基本的な考え方を一言だけでもお漏らし願いたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  14. 川原正人

    川原参考人 大臣意見書にありますとおり、私どもも当然のこととしてこれから先の経営計画を持っていなければいけないと考えております。あるいは本来この席でそれをお出しすべきであったかという反省もいたしております。ただ、残念ながら私の力不足でこの席にお出しできなかったことは大変申しわけないと思っておりますが、できるだけ早い時期にこの先の見通しを立てまして、その中で、いま御指摘もあり、また私も申し上げましたように、それから政務次官のお話もありましたように、新しいNHK仕事のあり方を、先の展望を固めて能率的な仕事体制もその中に織り込んで、場合によりましてはあるいはその料金問題もその中に入れさせていただくかもしれませんが、そのような経営計画を立てまして、そしてまた先生方の御審議をいただきたいと思っております。
  15. 吹田愰

    吹田委員 長期計画問題につきましては大体了承できますが、ここでひとつ私は会長考え方姿勢を伺っておかなければならぬことは、NHK経営に当たっての不偏不党の問題であります。これは常に各与野党とも言っておるところであります。しかし、その不偏不党ということにつきましては今日各界からもいろいろ御意見があります。今日放送されております問題につきましても、野党野党なりにNHK運営というものはどうも少し与党寄りじゃないかというような批判もあるのではないかと思うわけであります。しかし、いま政権政党でありますわが自由民主党にとりましては、特にそういう面について、責任政党でありますだけに、NHKの今日やっておりますいろいろな問題につきましてもまた批判のあるところであります。こういった点については、やはり中正公平な立場に立つとすれば、どうしても双方からいろいろの意見が出るということはわかるわけであります。しかしながら、NHKという立場というものを考えますと、いまこの社会において何をなすべきか、何を指導すべきかということはきちっとお考えにならなければならぬと思うのです。ただ単なる評論的な立場で事を進めていくということは許されないのじゃないのかという気もいたすわけでありますが、いずれにしましても、常に社会に対して一面の指導性というものを持ちながら公正な一つの論評を述べていく、こういう形で今後のNHKというものの運営をしてもらいたいと思うのでありますが、会長のその辺の姿勢について一言触れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  16. 川原正人

    川原参考人 私どもとして一番大事な点についての御指摘であろうと思います。  NHK経営のありよう、特にその中心をなす番組の問題については、私ども常に鋭意慎重な検討を加えて仕事をしてまいっておるつもりでございますけれども、確かに、視聴者の方、いろいろな立場の方から各種の御批判をちょうだいしております。私どもはいろいろな御意見に対しましてはあくまで謙虚に承ります。そして、是とするものは是、非とするものは非とするという態度でもって対処してまいりたいと思いますけれども、やはり基本のところは、いま御指摘のありましたように、いまの日本の社会にとって、世界にとって、あるいは日本の国民にとって、私どもが何をお伝えするのが一番必要なことであるか、その基本のところは私はいつも踏み外さないようにいたしたい。それには、何と申しましても、放送法にも書いてございますけれども不偏不党立場を堅持して表現の自由を確保してまいるということ、そして国民の福祉に寄与するということがその基本であろうと思っております。  そのためには、やはり私どもは一つの揺るぎない姿勢を持っていなければなりませんりそれは経営につきましてもそうでございますし、みずからの自主性、主体性をまずはっきりとさせることだ、その上で国民にとっていま何が一番必要であるか、何をお伝えすることが必要であるか、私どもはあくまで視聴者の支持をいただいております、その視聴者立場に立って物事を処理、判断してまいりたい、かように考えております。
  17. 吹田愰

    吹田委員 これはいろいろむずかしい問題でありますから、私もそれ以上の質問はここではカットします。  そこで、次に、第二問の国際放送というものにつきまして、これは当局並びに関係方面の皆さんにお答え願いたいのであります。  わが国は今日自由世界第二位という経済大国になっておるわけでありますが、各国の各民族の理解というものと認識度というものに非常に大きな問題があるわけでありまして、わが国の今後の平和と安全を守るということから考えましても、国そのものを誤解されていく、あるいは日本民族というものを誤解されていくということが平和を脅かすことにもなるわけであります。そういった意味におきまして、国を平和に安全に持っていくという姿勢から考えましても、この国際放送の重要性ということはきわめて大きな意義を持っておる、こう思うわけであります。  ところが、今日、わが国は情報関係では、物とか人とかというようなことにつきましては確かに輸出の形になっておるわけでありますけれども、情報という問題になりますと、輸出でなしに、むしろ輸入超過というかっこうになっておると思うのです。しかも、中曽根内閣というものは、世界の日本としての位置づけというものについて、今回の国会開会中における総理の予算委員会での発言等を見ましても明らかでありますが、私は、世界各国及び各民族に進んで日本のすべてというものを誤解のないように努めていく、正しく認識を願うという国際親善の問題、先ほど申し上げたようにそのことが安全と平和を確保する上に大事なんだ、こういうことでありますが、国策としてきわめて大きな役割りである、こう考えるわけであります。  もちろん、わが国を遠く離れまして隔離されているという形から、日本に関する情報をなかなか聞き取ることができない、つかむことができないという多くの働く日本人もいらっしゃるわけでありますが、そういう地域に対しましてもホットなニュースを提供するという役割りもまたそこにあるわけであろうと思うのであります。  政務次官、まずこの辺についての基本的な姿勢というものを、国際放送に対しまして私の認識が間違っておれば改めていかなければなりませんし、御指摘を願いたいと思いますが、いかがなものであろうかと思っておるわけであります。
  18. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 ただいま吹田委員御提案の趣旨は、全く同感であると私は思います。特に、戦後わが国は貿易立国を国是として今日まで大きく発展をしてきたわけであります。先ほど吹田さんがおっしゃいましたように、いろいろな意味での国際的な紛争その他は誤解に基づくものがたくさんあるわけであります。これだけに貿易面で世界のすべての面と接触をしている日本が、ある意味で情報提供が不足するということは、うわさみたいなようなものでもひとり歩きをしていくことになっていく、そうなってくると、それは明らかに出典が不明なものでありますから誤解を招く、そういうようなことがお互いに国際的に紛争を起こすということは、委員指摘のとおり大いにあり得ることだろうと私は思います。そういう意味から考えると、いまの日本の国際放送の対応というものは十分ではないし大変貧弱だ、正直言って私も最近皆様方の御意見を聞きながら痛切に感じておるわけであります。  さらに、いま海外には、この間それこそNHKかどこかで放送しておった、ことし旅行者が四百万人を超す、戦後最大の多数の人が海外旅行等をしている。お互いに海外に出て言葉が不自由で、そういうようなときに国内の放送を聞くということは、出た先でも非常に安らぎを覚えるわけであります。特に、先ほど申しましたように、多くの国との接触面が広いと私は言いましたけれども、そんな中で、接触しているところは全部言葉が違うのです。それだけに、日本のような言語というものが世界に普及という点では非常に低いわけです。日本の技術あるいは経済、そういうものは高いけれども、それでは日本語というものが世界にどのくらい普及しているのかといったら非常に低い。そうなってくると、その国の情報を何で提供するかというと、それらの国々に向いたような言語で放送をやっていかなければならない。いずれにしても、非常に大きな使命がこれからこの国際放送というものにかかってくるだろう。さらに、海外に定住している同胞等もおります。そういうような方々にも誤った情報が行って非常に肩身の狭い思いをされるようなことがあってはならないし、またそういった人たちの活動という面にも非常に大きな影響を及ぼしてくるだろう、かように思うわけであります。その一つが貿易摩擦という形であらわれてきたりしてくる、こういうふうに思うわけであります。まさに日本にとって緊急の課題の一つであると私は認識をいたしております。
  19. 吹田愰

    吹田委員 大変ありがとうございました。私の考え方がまさに政府当局の考え方と全く同じであるということでありますから、この国際放送の重要性ということにつきましては意見が一致したわけであります。  そこで、わが国の国際放送は、ただいまでは茨城県の八俣の送信所から送られている、こういうことであります。この施設は現在KDDの所有しておるものでありまして、これをNHKが専用しておる、こういうことですね。この放送施設は、聞くところによるとずいぶん古いもののようであります。  これは余談になりますが、わが自民党の田中龍夫代議士がかつて企画院に勤めておった時代につくったんだ、こういうのでありますが、恐らく昭和の十数年であろうと思うのでありますけれども、相当古い。(発言する者あり)神武天皇より古いとは言わないでしょうけれども、とにかく古いということだけは間違いない。  そこで、この唯一無二の施設というものがこんな古いものでいいかどうかということになりますと、いまの政務次官のお答えにもありましたように、国際平和ということと、日本が国際的に平和に貢献する、また日本も外国から誤解されないようにしていく、こういう非常に大きな意義を持っておるわけでありますね。そうなりますと、この老朽化した施設が今後これでいいかどうかということになりますと、恐らくノーだ、こう言われることだと思うのです。しかしながら、この施設がいまから何年ぐらい一体使用できるのか、この辺について伺うわけでありますが、私が持っております資料からしますと、この使用上の障害で、すでに五十五年の三月には冷却水回路の水漏れの補修のために一時停波を余儀なくされた、こういう事実をいただいているわけです。また、送信機に使用されておる真空管が製造中止となっておりまして、手持ち在庫を勘案いたしましても昭和六十年以降送信不能ということに追い詰められる可能性がある、こう私の資料ではなっておるのでありますが、この辺は間違いでしょうか、いかがでしょうか、ちょっとお尋ねをいたしておきます。
  20. 石田彪

    ○石田説明員 現在八俣の送信所は十二台の送信機でもって運営しておりますが、最も古い送信機は昭和十七年に製作されたものでございます。そして、先生指摘のような事情もございまして、十二台のうち二台は特に老朽化が激しくて、このままでは六十年ごろには使用が困難になるといった事態も発生するやに聞いております。しかし、その他の送信機につきましては、老朽部品を取りかえる、あるいは半導体化する、こういった特別整備を行っておりますので、六十年以降もある程度は使えていくのではなかろうかと思っております。また、二台が使用不能になりました後につきましても、予備機がございますので、現在の放送時間は確保してまいりたい、このように考えております。
  21. 吹田愰

    吹田委員 それでは、この老朽施設に対しまして、今日までたび重なる改修をなさっておられると思うのでありますけれども年度別にどの程度の経費を投じてこの改修をしてきたか、こういったこと、また、その経費の負担というものは一体どこがしたんだというようなことについて伺いたいのでありますが、いかがでしょうか。
  22. 富田徹郎

    ○富田説明員 お答えいたします。  最近における八俣送信所の施設改修に要した額は、五十四年度三千二百万円、五十五年度七千万円、五十六年度七億九千六百万円となっております。これら施設改修に要する費用は、毎年度NHKがKDDに支払っております国際放送用設備専用料金の要素として勘案されているところであります。  なお、五十六年度の主な施設整備内容は、百キロワットの予備送信機一台、三億八千万円程度、予備空中線四面一億八千万円程度、それから冷却水装置の整備で四千四百万円程度を使用しております。
  23. 吹田愰

    吹田委員 いまお話がありましたように膨大な金がかかりつつあるわけでありますが、これはやはり早く全面改修、やりかえるということに乗り出さなければならぬと私は思うのですね。まあ私は補修することを決して否定するものではありませんけれども、それはよく申しますが、古家の造作のように、表からずっと直していきますと、裏の方を回って一回り回ったころには全部建てかえなければならぬ、こういうことになりまして、手戻りが来るわけであります。ですから、やはりこの八俣の送信所というものは、私は全面的に改修する必要がある、やりかえるべきだ、こう考えるわけであります。  そこで、また、海外の中継所の新規計画というものも伺っておるわけでありますが、こういったことについて政府がひとつ基本的な構想を打ち立てなければならぬですね。この基本的な構想を打ち立てる場合に、これは非常に急ぐのですけれども、一体どこのどの省がきちっと政府として担当するのか、私は残念ながらまだ伺っていないわけであります。いろいろな資料等はいただきます。けれども、どの省が担当するんだ、どこが責任を持ってやるんだということについては、そういった基本的なことについて伺っておりません。そこで、私は少なくとも郵政省であるというふうに考えますが、この辺についてひとつ政務次官いかがでしょうか、お答えいただけませんか。
  24. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 国際放送放送行政の一部であるわけでありますから、当然その充実強化というものはその線に沿ってやるべきものである、私はかように思っているわけであります。しかし、その及ぼしていく面は、いろいろな各省関係にも及ぼしてくるだろうと思います。その放送によって、たとえば貿易摩擦を激化するとか、あるいは緩和をする緩和剤になるか、あるいは外交上にいろいろな、その放送された情報によって得てくるものは各省にまたがってくるだろう、私はこう思います。しかし、いま言ったように放送法に基づいての放送行政の一部でありますから、当然わが省が責任を持って進めていくべきものであると私は理解をいたしております。
  25. 吹田愰

    吹田委員 これは後にもいろいろ申し述べますが、非常に緊急課題でありますね。先ほどの問題からいたしましても、老朽施設の備品その他の問題からいたしまして、もうきわめて緊急を要しているということでありますから、私は、一日も早くひとつ郵政大臣とされてきちっとその辺を、総理と御協議されまして、政府としての考え方を統一してもらいたい。その上で私どもはこの次の段階に入っていかなければならぬ、こう思うわけであります。  私は昨年ヨーロッパにこの国際放送問題で視察をさせていただいたのでありますが、いまシネスから中継しておりますが、本当にその受信をすることが困難であります。いまの国際放送で申しますと、環太平洋地域以外ではほとんどですよ、ほとんどと言ったらちょっと失礼かもわかりませんが、おおむね受信困難であるという状況なんですね。これは多くの方々から指摘されておるわけであります。  それを私なりに分析すると、三つの問題がある。それは、送信所の設備が老朽化しておる、これがまず第一である。それから、送信周波というものがボリュームが弱い、これはまず届かないわけですから。それに国際中継局が少ない。この三つだと思うのですね。  そうしますと、この三点については、何としましても早くその計画というものをつくってもらわなければなりません。いま私どもいろいろと聞いてはおりますけれども、正規なこの委員会におきまして、当局としてどういうふうにするという考え方であるのか、一応の考え方をまずここへお示しを願いたいと思いますね。いままで考えておられる、研究しておられることについて、郵政当局としての御研究の結果をちょっと知らしてもらいたい。
  26. 石田彪

    ○石田説明員 御指摘のとおり、わが国の送信体制はきわめて老朽化が激しくて早急な改善が求められております。したがって、現在政府といたしましてもその改善計画について検討中でございますが、そのポイントといたしましては、いかに短波放送でもって高出力で送信しようとも、五千キロ程度以上離れますと、電波の減衰あるいは混信、こういった問題がございまして、やはりよく聞こえないといった状態ができます。したがいまして、従来のように国内の送信所一カ所から全世界に対して国際放送を行うという体制ではなくて、国内の送信所と海外中継所とこの二つの機能分散によって全世界に対して国際放送を行ってまいりたい、このように考えております。  国内送信所につきましては、当然のことながら、わが国の周辺国は二百五十キロワットあるいは五百キロワットの放送を行っております。したがいまして、それに対抗し得るような高出力を考えたい、考えるべきである、このように考えております。  それからまた、海外中継所が数多くあればそれは望ましいわけでございますが、しかし、まず整備を急がれておりますのは、アジア地域は国内送信所でやるといたしまして、南北アメリカ関係についてはやはり中米地域に一カ所海外中継所、それから南西アジア方面にもやはり一カ所、それからアフリカ方面で一カ所、最低三カ所程度の中継所は設けるべきであろう、このように考えております。
  27. 吹田愰

    吹田委員 いま部長からもお示しになりましたが、中継所の問題はそれなりに理解をいたしますが、私が伺っておるのでは、今日百キロワットの八台を三百キロワットの四台にする。それから五十キロワットの二台を百キロワット四台にと、あるいは二十キロワット二台を合わせて百キロワット四台にするんだというような方針である、あるいはそういう考え方があるというふうに伺っておるわけでありますけれども、短波放送というのは、私も素人ですけれども、力と力のぶつかり合いじゃないかというふうに思うのでありますが、そうなりますと、やはり出力の強いか弱いかということになるわけですね。強いものがどうしても弱いのを打ち消します。こうなりますと混信状態に弱ければなるわけであります。  そこで、その内容がいいとか悪いとかいうことを別にして、混信状態になりますと、私はリスナーというものは離れてしまうのじゃないか、こういうふうに思うわけです。一たん離れましたリスナーというものは再び日本放送を聞こうということになりません。ですから、そういうことになりますと、これは当初に私が申しました、あるいは政務次官もおっしゃいました国際放送の意義というものは結局は失われていく、こういうことになるわけであります。私は、百が三百になるということも結構ですけれども、さらに五百というような大出力の送信機へ転換する必要があるのではないか。特に世界各国が急いでおりますのはこの点になっておりますから、一九八四年、一九八六年までのこの間に世界無線通信主管庁会議、こういうものが開かれまして、そこで中波と同様にチャンネルプランというものを策定して、各国にチャンネルの割り当てを行うという動きがあるわけでありまして、それまでに実績を積んでいこう、既得権をとっておこう、こういうつもりもあるようでありまして、先進国は先進国なりに増波とか増力とかという問題に力を入れておるし、途上国は新規参入というものに力を入れているように目下見えるわけでありますが、この辺につきまして、ひとつ具体的にお示しが願えれば、あるいは考え方がまとまっておればお漏らし願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 石田彪

    ○石田説明員 お答えいたします。  アメリカとかヨーロッパのように、わが国から遠隔の地域につきましては、先生指摘のとおり、電波の混信あるいは減衰によりまして、やはり三百キロワットの出力ではなかなか効果が上がらないというような問題もございます。  それからまた、国際会議が一九八四年と八六年に開催されまして、そしてどういった整理がなされるかまだわかりませんが、しかし、わが国の電波権益ということを考えますと、当然五百キロワット問題についてみても検討しておく必要が大いにあろうかと思います。したがいまして、改善計画を検討する中では、五百キロ問題というのは非常に大きな検討対象、検討内容になっております。一方、これにつきましては非常に経費がかかるとか、あるいは土地の取得の問題、いろいろ問題がございます。したがいまして、私どもは、まずは日本の国際放送は聞いてもらえるということを中心にいたしまして、現実的な改善計画を策定してまいりたい、こう考えております。
  29. 吹田愰

    吹田委員 それでは、もう一つ放送施設につきまして伺っておきたいと思います。  いま八俣一カ所で古いながらもこれを利用して進めておりますが、もちろん新しいものに切りかえるということになれば、八俣の送信所にそれを集中してやるというお考えがあるのじゃないかと思うのですけれども、わが国は憲法に示されておりますような専守防衛なんですね。国を守るということについてはあくまでも専守防衛ということが基本であります。そういうことになりますと、いざとなれば、平和が壊されたということになりますと、わが国はわが国なりに国内で守るという前提になりますと、これは相当な被害を受けるわけであります。したがいまして、平和を守らなければならぬ、平和運動をやらなければならぬということが国民の声なんでありますが、しかし、余りにもわが国は国境というものを目の前に見ることができないだけに、政府も国民も全部平和ぼけしておるのじゃないかと思うのでありますが、これは言い過ぎであれば撤回いたしますけれども、私はそういう点を非常に心配している。そういった点から考えますと、一たん日本という一つの国をつくっておるからには、いつどこでどういうことが起きてもそれについては十分対応できる体制をつくっていくというのは、政治をやる者の最も必要なことではないかと思うのですね。そうしますと、八俣一カ所で送信をするということでなしに、時に、場合によればこれを分散しておく。日本列島というのは相当長いのですから、これを分散して施設を管理していく、こういうことも一面では考えておく必要があるのではないか、これは長期にわたっての問題としまして。その点について考え方があれば、これはとても事務当局から言うことじゃないでしょうから、政務次官、ひとつお答え願いたいと思います。
  30. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 いま委員指摘のような、一つの国際紛争のような事態に遭遇した場合には、いまは世界的に民主化の時代でありますから、世界的な世論というものがいろいろな意味で影響してくることは当然であります。そういう中で、日本の立場が世界に伝わらないというようなことでは非常に困ると思います。そういう意味では、いま委員指摘意味で非常に大切なものである。そういう意味から考えると、われわれが将来とも専守防衛の立場に立って――施設がなければ相手にそういった情報が伝わらないわけですから、選挙をやっても、拡声機の声の小さいのは聞こえない、声の大きいのが聞こえて、来たとか来ないとか、もうそれでも違うわけですから、それだけに大きな影響を持つものを、道具がわが国になくなってしまうというようなことがあっては大変でありますから、御指摘の趣旨として非常に同感である、趣旨として理解いたします。
  31. 吹田愰

    吹田委員 ありがとうございました。いよいよ時間が限られておりますので、もう一点だけひとつ簡単にお伺いしておきたいと思います。  この国際放送問題というのは、いま政務次官からきわめて積極的な御意見を伺っておるのですけれども、これはいままさに平和運動の一つでありまして、与野党挙げて、思想、信条を超えてこの問題は朝野の声なんですね。これはぜひ早くやりなさいという声が私どもの耳に伝わってくるわけです。したがいまして、このことについては今後本委員会でも積極的な姿勢で各委員もお取り組みになると思うのですが、特に政府におかれましては、この問題は一日も早く進めてもらわなければならぬ。そうしますと、五十九年度予算からまず芽を出していく、政府の責任においてこの予算を組んでいくという姿勢がなければならぬと私は思うのでありますが、そうなれば八月までには締め上げていかなければとてもじゃないけれども物になりません。ただ言うて楽しんだというのじゃ、これはどうにもなりませんから、ひとつ八月までに締め上げていくというととについて、私どもも全面的に御協力いたしますが、政府としてその辺についての考え方というものも一言政務次官にお願いしたいのです。
  32. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 御趣旨に沿ってわれわれも一生懸命に努力をしてまいるつもりでありますので、委員各位の御支援のほどを心からお願いを申し上げます。
  33. 吹田愰

    吹田委員 委員長、どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  34. 左藤恵

    左藤委員長 次に、鈴木強君。
  35. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 NHK会長以下役員の皆様、きょうは御苦労さまでございます。きょうは、ちょっと私の質問の順序が狂いまして、大臣が御都合で出られないようですからやりにくいのですけれども、最初にNHK会長に御所信を承っておきたいと思います。  御承知のように、NHKは、大正十四年三月二十二日に放送を開始して以来、五十八年の年月をけみしているのでありますが、この間、戦前、戦中、戦後を通じて公共放送としての使命を達成するために努力を続けていただいておるのでございます。特に戦後の昭和二十五年に放送法が制定されましてからは、わが国の公共、民放の両立ての放送体制の中にあって健全に発達し、豊かですぐれた放送番組をあまねく全国に送り届け、法制定の目的である公共の福祉のために重要な役割りを担ってまいっていただいていることは感謝にたえません。しかし、今日NHKは、創業以来かつてない厳しい情勢の中に立たされているのではないかと私は思います。このようなときに会長の重責を担われた川原会長に対しては、心から御苦労さんと言わざるを得ません。幸いあなたは、前坂本会長に引き続いてNHK部内経験者として登用された二人目の会長でございますので、NHK設立の目的と公共放送の何たるかをだれよりもよく熟知しておられる方だと確信いたします。それだけに国民のあなたに期待するところは非常に大きいと思います。  そこで、川原会長、いまのこの難局をどういうふうにして切り抜けていき、さらに国民に親しまれ、喜ばれ、愛され、信頼されるNHKにしようとなさるのか、基本的な御所信をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 川原正人

    川原参考人 私どもとしては、何よりも視聴者に支持され、信頼される放送機関でなければならないというのが結論でございます。ただ、それは一言で言えばそういうことでございますが、そのためには、放送法規定にもございますけれども、私ども番組をつくるに当たりまして、あるいは経営を進めるに当たりまして、常に不偏不党立場を堅持して表現の自由を守っていく、そういうことによって国民の信頼を得るということであろうと思います。さらに敷衍すれば、外部からの勢力、力によって私どもが絶対に左右されてはいけない、みずからはっきり自主性、主体性を持って事に処していく、そうして、現在視聴者の方々、すなわち国民の方々と申し上げてもそれはイコールであろうと思いますけれども国民の方々が一体何をいま情報機関に求めておられるか、特にNHKに何を求めておられるかということを的確に判断してそれに的確におこたえしていく、その道を間違えないことが私は一番大事だと考えております。
  37. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 ちょっと物足りないな。  私は、今日NHKがまず第一番に考えなければならないのは、財政の確立、健全化ですね。これなくしてNHK経営は成り立っていかないのですよ。第二は、やはり放送法にありますように、難視地域を完全に解消していく。放送衛星のことは後で伺いますけれども、全中の場合はなるほど解消になりますよ。しかし、放送衛星は、一面ローカル放送をふやそうというときに、ローカル放送にはこれは何にも役に立たないのです。地上のマイクロウエーブを使って従来のサテライト局をたくさんつくって、いま見えない家庭に電波を届けることが大事だと思うのですね。難視の解消ですよ。それから、いま会長がおっしゃった不偏不党、憲法に保障された言論、出版、報道、表現の自由を絶対に守る。もう一つは、何といっても協会会長以下全役職員が一丸となって公共放送使命を達成するための心構えを持ってもらうことですよ。そのための組織あるいは人事管理、そういうことが相まって協会というものが、これからさらに高度化する情報化社会に向かって、放送衛星も上がります、それをどう活用していくのか、そういうことも含めましてこれからのビジョンというものを早くつくって、そして国民の前にこれを示し、われわれにも示していただいて、そしてみんなで協力をして――公共放送の重要性というものは絶対的だと私は思うのですね。そういうことを聞きたかったのですが、少し抜けていたね。その点は異議ないと思うのだけれども、どうです。
  38. 川原正人

    川原参考人 説明が足りないというか、言葉が不足だったところがあったと思います。具体的に申し上げれば、御指摘のとおり、現在私どもに課せられている仕事はまず番組の充実でございますけれども、同時にやはり、全国にまだまだテレビ、ラジオの視聴できないところがございます。これを解消することが大事なことはもとよりでございます。そのためには、いますでに来年の二月には放送衛星を打ち上げてこの難視聴の解消に役立てるという具体的な計画を持っておりますし、そのほか文字放送、音声多重放送等々のニューメディアというものもいま新しい幕をあけようとしております。これらに対しても私どもは積極的に取り組んで、これを国民の財産として視聴者の皆様に十分に役立てていただかなければならないという使命を持っております。そのためには、率直に申しまして、御指摘のとおり、いまのNHKの財政状況、その大宗をなしております受信料伸びがほとんど一%ちょっとしかございません。この問題が具体的な経営をなす場合に当たって最大の問題でございます。それに対しましては、私どもこれまでやってまいりましたいろいろな仕事を全部再点検をして、その中から、もし要らないものがあればそれは切り捨て、従来の仕事のやり方を変えて、それによって能率を上げることができれば徹底的に能率を上げていく。そのほかに副次収入増加等もますます力を入れなければならないと思っております。そのような手だてを講じましてなお足らないところは、あるいは料金の問題もこれは受信者の方にお願いしなければならぬかと思っておりますが、それにしましても、その前にみずから改革すべきことを改革する。御指摘のとおり、全職員が一丸となりまして、いままでの仕事を全部見直し、新しい仕事に取り組んでいく、そういう熱意を持たなければ何事も解決しないと思っております。職員の気持ちを一本にまとめましてその新しい仕事に取り組んでいくということが私の仕事であるというふうに信じております。
  39. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで、私は、財政基盤の確立ということがいろいろ考えられますけれども、やはり何といっても受信契約者をふやすということですね。この受信契約者の状況を見ますと、五十七年度末で、これは若干推定もありますが、国勢調査の結果等によってNHKから資料としていただいたのですけれども、たとえば全国の世帯数が三千七百十四万世帯、そのうちテレビを所有している世帯が三千百六十七万世帯、現在受信契約者数が二千八百九十五万世帯、これは確か三千万を超したと思いますが、そういう状態でございますから、全国世帯数に対してテレビ所有者数というのは七七・九%、それからテレビ所有者と受信契約者数から見ると九一・四%というので、やはりまだ八・六%というものがテレビを持っておっても契約をしていないというふうにもとれるわけです。ですから、この受信契約の増加を五十八年度四十五万件を見込んでおりますけれども、これは大変な御苦労があると思いますけれども、やはり苦労があってもこれをふやしていくということが一つ。  それから、未収受信料というものがかなりあると思うのですね。これはNHKの決算上何年かたつと自然消滅していくような形になっておるわけでありますが、これは徹底的に追求していくということをわれわれは主張してきたのですけれども、なかなかそれもいまこの移動の激しいときですから捕捉しがたいという状況がありましてむずかしいようでございますが、しかし、やはり未収料金を回収してもらう。  それから、受信料の免除についても、国会でも論議されて附帯決議がついているはずです。ですから、できるだけ――当初経営がよかったものですから、あっちもこっちもみんなただでテレビを見させてやろうという方針、ラジオもただだ、ちょっと安易な点もあったと思うのですけれども、これはわれわれの責任もあります。しかし、そういうふうなことでやはり受信料免除の縮小ということも考えていかなければならないでしょう。  同時に、副次収入についても、資料を拝見しましたけれども何かもう少しうまい方法はないか。  それから、これはもう基本のことでありますが、事業の能率的、合理的な運営によって経費をできるだけ節約していく、どう考えてみてもこのくらいしかないと思うのです。これに新しく放送衛星を使って新しいメディアを実際に放送できる段階になったら、この付加使用料といいますか、そういったふうなものもやはり考えながら、NHKの財政基盤の確立ということを真剣に取り組んでいかなければいけないと私は思うのです。あと、番組のことも、当然いい番組をつくってもらわなければだめですけれども、まず財政基盤の確立について、そこらが私は問題だと思うのです。  特にここで聞いておきたいのは、放送衛星が来年二月上がります。そういうものを含めて、ニューメディアについてはどういうものを実際やるのか。これから第二弾が上がって二チャンネルが四チャンネルになっていくというような、金もかかりますけれどもぬ。――これは別にしましょうか、別にしましょう。そういうふうな質問は別にした方がよろしい、大臣が来てからの方がいいから。  そこで、そういうふうな点も考えられるのですが、何かほかにうまい知恵があるのですか。  それで、私の聞きたいのは、大臣意見書の中にもあるのですけれども、後からまた大臣に聞きますけれども、三カ年計画をやられて、三カ年間は受信料は上げません。五十八年度までとにかく上げなかったのですから、これはNHKがこの四年間にどれだけ努力したかということは事実として大いに評価していいと思う。ただし、来年はどうなるのか。恐らくこのままでは受信料を上げなければもたぬと私は思うのですよ。もたぬならもたぬで、はっきりと国民経営の実態をぶちまけて、これは受信料でなければ経営は賄えないですから、民間みたいにスポンサーのようなことはできないわけですからね。ですから、そういう点はちゃんとやらなければならない。そのためには、早く視聴者に対してNHKの実態をよく理解してもらう、そして上げてもらわなければ経営はできないんです、これだけ節約いたしましたということをはっきり――何か鉛筆一本までも節約されているようですね。紙一枚も節約されているようだ。そういう血の苦労がとにかく五十八年度受信料値上げしないで済んだわけですから、そういう点をわれわれも大いに評価しておりますが、ここにあるように、「事業運営刷新経営健全化について、引き続き、具体的な検討を進め、経営の安定に資する計画を策定すること。」ということになっているんだが、これは抽象的でさっぱりわからぬ。「事業運営刷新」とは何だ、「経営健全化」とは何だ、郵政省。じゃ、NHKは具体的にこれの検討を進めて、大体いつごろわれわれにそういうものを示してくれるのか。本当ならばこの審議の際に、こういうふうに三年後なりますとか五年後なりますということがあれば、われわれも非常に審議がしやすいのです。それがないことは残念ですけれども、まあいままで苦労しておったから、そこまで知恵が回らなかったか手が回らなかったかわかりませんけれども、それはそれとしておきますが、会長としては、こういうものをつけられて、いつごろ何カ年ぐらいの計画をつくって国会にも示せるという段取りをしているのですか。
  40. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、本来この委員会でそのような先の見通しをつけて御審議をいただくべきであったかと思います。その点、私の力不足でそこまで作業が進まなかったことは大変申しわけないと思っておりますが、いまの時点で申し上げれば、私ども一日も早くこのような経営計画を持たなければいけない。もちろん私就任以来そのような作業は進めておりますし、実はある程度の試算のようなものは何回か繰り返し重ねてまいっておりますけれども、まだその肉づけができないといいますか、単なる数字の試算はあるのでございますけれども、具体的な内容の肉づけがいま一歩私自身満足いかないものがございますものですから、さらに検討の時間をちょうだいしたい。しかし、もちろんこれは一日も早くなければいけないと存じますが、いまの考え方では、やはり一つの手順もございますし、部内的には経営委員会等の議もございますので、私としては夏ごろまでに部内的なものはまとめて、秋口には私どもの方のしかるべき手順を終えて、外部にこのような計画であるということはお示しできるように作業は進めたい、かように考えております。
  41. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 見通しをちゃんと持っておられるから結構だと思いますので、ぜひひとつ大変ですけれども作業を急いで、会長おっしゃるようにわれわれにも示していただきたい、国民にもまた示してもらうようにお願いしておきます。  それから、細切れになって悪いですけれども、来年アメリカのロサンゼルスで八四年国際オリンピックが開かれるわけですね。これについては、前回のモスクワ大会はテレビ朝日が独占して大変問題になりました。この委員会でもわれわれかなり激論した経過があるのですが、幸い今回の場合にはNHKと民放が相協力しまして、その前、モスクワ以前の体制に戻って交渉をされたことについては、私は非常によかったと思って喜んでおる者の一人でございます。非常に難渋をきわめたようでございますし、モスクワでの放送権料の値上げによるその影響が今回もかなりぴんぴんと響いてきたようにも聞いておりますが、時間がありませんので、結論的に、放送権料は幾らになったのか、そしてNHKと民放との出し分の配分は大体どういうふう考えておるのか、もし決まっておったらそこだけひとつ教えてもらいたい。
  42. 田中武志

    田中参考人 私が二年数カ月前からこの問題に取り組んでまいりましたので、お答えしたいと思います。  御存じのように、最初ロサンゼルス・オリンピック委員会の方からは約八十億、四千二百万ドルぐらいの要求がございまして、これに対しまして二年三カ月ほどかかりましていろいろ交渉してまいりまして、結果的には、御存じかと思いますが千八百五十万ドル、この内訳は、千六百五十万ドルが放送権料でございまして、残りの二百万ドルがいろいろこちらの方からの要員が行ったり機械を貸してもらったり等々のサービス提供料ということで、この前私が調印してまいりました。  この千六百五十万ドルの放送権料につきましては、これも御存じかと思いますが、NHKとそれから民放連がジャパンプールというものをつくりまして共同で交渉してまいりまして、これはモントリオール方式と申しまして、モスクワのもう一つ前のオリンピックのときに、NHKと民放連との間で大体八五%、一五%というような割り振りでそれぞれ経費負担をしてまいりました。この方法で一応それぞれ経費負担をするということで原則的に以前から話がまとまっておりました。  それから、二百万ドルにつきましては、御存じのように相当高額になっておりますので、これにつきましては、今後NHKと民放連との間でいろいろ交渉を重ねまして、どのくらいずつ負担すればいいのか、NHKの方もこの負担額につきましては相当大きゅうございますし、また民放連の方も基礎放送権料の方の負担が大きゅうございますので、この辺は今後いろいろ具体的な種目の放送担当、どのようなものを放送していくとかいうようなところで、いろいろこれから後できるだけ早い機会に話を詰めまして、分担比率を決めていきたいということでございます。
  43. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 長期にわたって粘り強い交渉をされた副会長以下関係者に心から敬意を表します。  問題は、前回私は清川IOC委員のところにも行って、ああいうやり方についてはオリンピックの契約自体に問題がある。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕 ですから、だれが代表になっても、代表者がその国の放送事業者に番組を公平に提供してやるというのが筋であって、契約したその人たちが自由にやるというのはおかしいということを言ったことがあるのですが、それがいま規定上はなかなか直っておりません。そういう中でとにかくここまで来られたわけですから、非常に御苦労だったと思いますが、今後は、NHK職員の派遣その他の問題等いろいろ、もう間近いものですから、来年ですから、万全の注意をして配意をしていただいて、ロサンゼルスのオリンピック大会の模様が全国民に、茶の間に間髪を入れずに入っていって喜んでいただけるような万全の体制をつくってやっていただきたい。成功を祈ります。  それから、難視解消の問題で、ちょっとさっき横におきましたけれども、現在NHK放送衛星の打ち上げのために総額幾ら金を使いましたか、五十八年度を除いて。そこに数字がありますか。
  44. 坂倉孝一

    坂倉参考人 この放送衛星に対しましてNHKは五十五年から経費を出してまいったわけでございますけれども、現在までで、五十五年に八億、五十六年に四十九億、五十七年に七十六億、五十七年度予算でございますけれども、投入してきております。  それから、今後につきましては、六十年までで総額三百六十億という金額になっております。
  45. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これだけの金を使って放送衛星を打ち上げるわけですが、特に五十九年度以降はこの負担をいまの六、四から七、三にするというような話もあるのですが、これは政務次官、後からも申しますけれども、そういう比率で持たせることはNHKにちょっと酷ですね。ですから、この点は十分に配慮をしていただきたいと思うのです。寿命はとにかく五年間で、六十三年ごろにはBS3を上げなければならぬということになるわけですから、その辺の負担がかなり大きくなると私は思うのですが、その点はひとつ政務次官、いまあなたがいらっしゃるから、この六、四を七、三にするというそんなべらぼうなことをだれが決めたのですか。
  46. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 先生指摘の趣旨は私どももよくわかって、昨年の予算折衝でも、これは科学技術庁でございましたが、六、四という問題に対して、特にNHKの場合には非常に財政状態も厳しいわけでありますから、そういう意味で私どもも御意見と同じような主張で折衝をことしもしておるわけであります。そういったものに対するNHKの場合についてのいろいろな意味でのこれからの交渉というものも、私どもは御趣旨に沿うようにしていきたい。特に、こういうものは利用者とかそういった受益者の問題もあるけれども、科学技術というものは同時に国の技術の水準を高めることでありますから、そういう姿勢に立って、金だけというような考え方でいくのはどうかと私も思っております。
  47. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 しかし、まだこれは正式に決まったわけではないですね。
  48. 戸井田三郎

    戸井田政府委員 ことしの予算で決まったのは通信衛星でございますから、放送衛星の方についてはそういったものを言質を与えたり何かしているわけではありませんし、これからも予算折衝をいたそうというつもりでおるわけであります。
  49. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 わかりました。最低六、四で、七、三はだめということで、あなたの言うとおり科学技術全体に関係していますから、ひとつ政務次官大臣と一緒になって政治生命をかけてやってください。  そこで、放送衛星は難視解消のために役立つことは事実です。ですから、全中の面については私も認めますけれども、しかし、ローカル番組をこれからふやそうというときにこの放送衛星は役に立たぬ。したがって、これは結局従来の地上マイクロウェーブの拡充によって灘視聴を解消することになりますから、二重投資になるわけですね。一方ではいま言ったような金がどんどんとかかってくる中ですから、私は、これから第一段階、第二段階、第三段階ぐらいに折り目をつくって考えていかなければならぬと思うわけでありまして、難視聴解消だけでなくて、高精細度テレビとかPCM放送とか文字多重放送、こういうようなニューメディアというものが媒体として使用されることは必然だと思うのです。ですから、これは電波監理局の方もいろいろと検討してもらわなければならぬのですけれども放送衛星とそれから地上における放送との役割り分担というのをある程度明確にしておかなければならぬ時期に来ていると思うのです。  第一段階としては、まず放送衛星受信機の普及に努めていく。NHKは地上放送と同番組だけでなく、いろいろな番組をやはりそこにプラスして、そして需要者の皆さんに喜んでもらう。深夜とか再放送とかローカルとか、そういったものも部分的にはやれるわけですから、たとえばいまの関東ネットワークというようなああいうふうなものにして、その地域地域にローカル放送も送ってやるとかいうようなことも考えたらいいと思うのです。  それから、第二段階では、受信機がある程度普及した段階で放送衛星に全中放送を集中して、地上放送は主要な全中とローカル放送を流すようなことも考えたらいいと思うのですね。  それから、第三段階には、放送衛星番組内容を次第に専門化していって、ニューメディアの導入を図ってもらいたいと私は思います。そういうときに、要するに放送衛星を使った番組に対しては、これは視聴者の皆さんに大変問題になると思います。アンテナ料とか付加使用料を取るということになると大変問題になると思うけれども、これは受信者の理解と納得を得ていけば、そういうものに対して付加使用料を払ってもらえるのではないか、そういう意見を私たちに言ってくれる人もいるのですよ。私もなるほどなと考えているのですが、これらはひとつ検討課題ですけれども、そういうものも含めて、財政基盤の確立ですね。せめて放送衛星に対する財源のたとえ一助にでもなればいいことだ。これはやはり受信者の理解と納得が必要ですから、そういう点も含めてどうかなという気がするのですけれども、これに対しては、会長、何か意見ありますか。それから、電波監理局の部長、どうですか。
  50. 川原正人

    川原参考人 ただいま大変重要な幾つかの問題の御指摘がございました。  放送衛星というものは非常に大きな可能性を秘めております。したがいまして、この衛星の持っている新しいメディアとしての可能性は、これは私どもだけでなくて、国民全体の財産だと私は思っておりますので、できるだけ有効に活用してまいりたい、かように考えております。  ただ、いままでのこの放送衛星に対します私ども考え方は、山村僻地あるいは離島等で、どうしても地上の電波のもうこれ以上届きにくいところに対する難視解消の有力な手段でございますので、まず第一には難視解消の手段としてこれは使わせていただきたい。したがいまして、放送衛星から電波が出るようになりましたならば、いまNHKがやっております地上における難視解消の施策は原則としてそれでやめさせていただく、五十八年度をもって現在の地上における難視解消施策はやめます。あとは放送衛星に切りかえたい。ただ、都市における新しい難視とか、宅地がまた非常に新しいところにどんどんできますので、このようなものに対しては何か別の施策は必要かと思っております。  それから、放送衛星がさらに普及をしました段階では、これは御指摘のように、それに対するいろいろな活用の可能性もございます。すでに私ども、高精細度といいますか、すぐれた画質の、走査線もふやしたような新しいビデオの方式の開発ができておりますので、これ等もぜひそういう放送衛星を使って実施したいと思っておりますし、また、放送衛星にはそれなりの経費もかかりますし、新しいサービスも次第にふえていくと思いますので、料金問題についても、御示唆のありましたように、新しい料金もぜひ研究をさせていただきたい。  そしてまた、今日までこの放送衛星を打ち上げるのに現在の受信料の中で現在の受信者に御協力をいただいてきておるわけでございますから、それに対する何らかのやはりサービス面、料金面を含めまして、還元のことはぜひ考えていきたい、かように考えております。
  51. 石田彪

    ○石田説明員 お答えいたします。  放送衛星は、先生指摘のとおり、新しい放送メディアでございます。したがいまして、その新しい放送メディアメディア特性と申しますか、少なくとも全国を一気にカバーできる、あるいは地上放送にない新しい放送ができる、こういったメディア特性を完全に生かすためには、それなりの方策を考える必要があろうかと思います。  BS2につきましては、さしあたりNHKの喫緊の課題でございます難視聴解消ということでもってまず利用していただきますが、先ほど申しましたようなメディア特性を生かすためには、難視解消以外の衛星放送本来の使い方としてのいろいろな研究実験、こういったものを大いにしていただきたいと考えております。  また、衛星放送のBS2の使い方につきましては、NHK衛星放送としての意味合いもございますが、このあり方は、NHK以外の新しい事業体を含めた将来の衛星放送全体の利用の仕方に対していろいろ影響を及ぼすという問題もございます。それからまた、当然のことながら、地上の放送と宇宙の放送とのあり方の問題、役割り分担あるいは放送秩序という問題にも関係してまいろうかと思います。  それから、さらに、財源のあり方につきましても、関係の業界でもいろいろ御意見がございます。そういった問題もございますので、先生の御指摘のとおり、メディア特性を生かすという方向でもって、ステップを踏みながら、しかも関係方面の意見を調整しながら、今後この衛星放送の関係の行政を進めてまいりたい、このように考えております。
  52. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大体私の考えているような方向ですから、その線で御検討いただきたいと思います。  それで、ちょっと時間の関係がありまして、この件だけですからちょっとあとお許しいただきたいのですが、いま会長が言ったのは、要するに難視解消は放送衛星が打ち上がることを契機にして地上はやらぬということですか。そういう意味ですか。
  53. 川原正人

    川原参考人 従来続けておりました辺地に対する難視解消施策、これを続けますとまさに放送衛星と全くの二重投資になってまいりますので、その点は、従来のような難視解消施策は五十八年度までにしたいと私どもは考えております。五十九年度以降におきましては、放送衛星によってその難視解消地域に対するサービスをさせていただきたい、かように考えております。
  54. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これは重大なことで、放送法の違反だ。あまねく見えるようにするのが協会使命でしょう。全中だけ見てローカル放送は見せないというわけですか。そういうことになるでしょう。従来のようなことでなくて、八割方あるいは九割方全中によって見える。これはいいですよ。残されたローカル放送をこれから拡充強化していこうというときに、視聴者は全中も必要だけれども、むしろローカルが必要なんですよ。そうでしょう。そのローカルに対して難視聴解消の施策をやめるということは、これは放送法の違反なんですよ、第一条の目的の。それじゃ困るでしょう。だから、どういう方法か、従来のような形じゃなくても何か、技術進歩しているわけですから、できるだけ全部の視聴者がローカル放送が見えるような形に持っていくというならいいですよ。大体、前田さんが会長のころに、これにはやはり放送衛星だということで、放送衛星NHKでやろうと思って一生懸命やったのだよ。ところが、後でこれを文部省にとられてしまった。だから、これちょっと困っているんだよ。同じものを地上と放送衛星から出してみたってだれが喜びますか。いま地上のマイクロで十分鮮明なテレビが見えてますよ。同じものを放送するならば、何のために放送衛星を上げたかということになるわけですよ。そこはさっき言ったような段階を追っていろいろやると言うからいいのですけれども、少なくとも難視解消については問題がある、いまの会長考え方は。これはそれでは困るのですよ。だから、何かの方法によって、できるだけローカル放送が見えて、完全に難視解消ができる方向に努力するという方針であれば、時間は若干おくれてもこれはいいですよ。これを打ち切ってしまって、あとは切り捨て御免なんて、あなた、そんなばかなことがありますか。それは許せぬよ。そんなことだったらこれはもう審議できない。
  55. 坂倉孝一

    坂倉参考人 いま会長が申し上げたとおり、難視解消は、全然テレビが見えていないところあるいは非常に映りが悪いところ、そういった難視解消を効果的に一挙に解決していくのは放送衛星しかないということで、来年上げます放送衛星によって一挙に難視解消をしていこうというわけでございます。  ただ、ローカルにつきましても、やはりいま会長が申し上げましたとおり、ローカルのこれからの置局というものは、放送衛星をこれだけの経費をかけて全く放送の見えないところの難視を解消するというたてまえから上げるわけでございますので、いままでのローカルの難視解消といったような形での進め方というのはやはり変えていかなければいけないと考えています。ただ、地上放送について、宅地造成があったり、いろいろ状況の変動があるというようなところにつきましては、当然今後とも、原則はいままでとは違いますけれども、例外的にはやっていくというふうに考えるわけでございます。
  56. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 これじゃ僕は質問できない。これでやめる。少なくともそんな、ローカル放送の難視をこの放送衛星によってもう全部やめるのだ、これは完全に放送法の違反ですよ。そんな予算を出して、われわれは審議できない。私はもうこれでやめる。  だから、ちょうどお昼の時間でもあるし、政務次官、そこのところよく考えて、そんな宅地がどうとかこうとかなんということじゃないのだから、原則的に、それは何年かかるかわかりませんよ。しかし、いろいろな技術も開発されているのだから、できるだけどんな山の中にもローカルが見えるようにしてやらなければ、NHK使命はないですよ。私も昭和三十一年から逓信委員会でやっておるのだ。そんなべらぼうなことを私は認めるわけにはいかぬですよ。与党の皆さんだってそんなこと全然知らぬと言っておるのだよ。そんなばかなことはないですよ。
  57. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 午後二時から委員会を再開することとしまして、この際、休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ────◇─────     午後二時九分開議
  58. 左藤恵

    左藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、質疑を続行いたします。  この際、先ほどの鈴木委員の質疑に関連し、日本放送協会川原会長から発言を求められておりますので、これを許します。川原会長
  59. 川原正人

    川原参考人 先ほど鈴木先生より御質問のありました難視解消問題について、補足して答弁させていただきます。  今後、地方の山間部等に点在する難視地域の解消につきましては、従来の方式によりこれを解消する場合は非常に多額の経費が必要となりますので、これを放送衛星により一挙にかつ速やかに解消することにいたしたいと存じております。  この放送衛星によるサービスにおいても、地方向け番組を編成することにしており、また、在来の方式による地方の放送局におけるローカル番組についても引き続き充実に努力いたします。  さらに、将来の科学技術の進展に応じ、多重技術などの活用により放送衛星におけるローカル放送についても充実に努めるよう検討してまいります。
  60. 左藤恵

    左藤委員長 鈴木強君。
  61. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 いま会長から補足説明がございましたが、問題は、私が主張しておりますように、放送衛星によってカバーできない地域のローカル放送というものについては、やはりこれを見えるようにしてやるのが放送法規定されておるあまねく全国にテレビを見てもらうようにするというNHK使命ではないか、そこがどうだということ。もしそれが放置されていくとするならば、私たちとしては放送法違反であるからこの審議はできない、こう私は申し上げたのです。  いま御回答がありましたが、抽象的でよくわからない。しかし、ここにございます、私も言いましたような、将来の科学技術の進展に応じ、多重技術などの活用によりさらに放送衛星におけるローカル放送についても充実に努めるよう検討していきます、こう言っておりますが、この多重技術の活用によって、私が指摘しているようなまだ難視四十何万世帯がございますね、その世帯にもローカル放送が見えるようになる、こういうふうに理解していいですか、そうであれば私はこれで了承します。
  62. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答え申し上げます。  将来はこういった多重技術など新しい技術を活用いたしまして見えるようになるということでございます。
  63. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 わかりました。その研究を早く進めて、そして一日も早く難視解消を完全にしていただくように今後の努力を要請しておきます。  大臣、午前中大臣のおられない中で質疑をいたしましたが、おいでをいただきましたので、最初に、まあ御就任以来三カ月余大変勉強をされておりますが、ここでいまNHK予算の五十八年度審議をいたしておるわけでございますが、五十五年から七年度までのこの三年間のNHK経営計画というものがございまして、そのために協会努力をしてきておると思いますが、大臣はこの三カ年経営計画についてどういうような評価をされておるか、ひとつこの点を伺いたいと思います。
  64. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お答えをいたします。  NHK昭和五十五年度を初年度とする経営三カ年計画に基づきまして事業運営を行ってまいりました結果、期間中百六億円の繰越金を生み出す、これによって五十八年度事業収支の赤字を補てんすることといたしておるわけでございます。この百六億円の収支改善は当初計画を上回るものでございますし、期間中物価水準等の客観的な経済情勢の好転に恵まれたこともございますが、NHK自身の効率化、経費の節約等の経営努力も認められますので、それなりに大臣としては評価をいたしておる次第でございます。
  65. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで、いまお話しのように経営努力をかなりやられました。これはもう率直に認めてよろしいと思いますが、どうにか五十八年度収支ゼロということで受信料値上げは避けられたわけでございまして、本来五十七年度までと言われたものが一年延びたわけですから、これは私も午前中申し上げましたが、高く評価をしていいだろう、こう思います。  そこで、ついでと言っては大変問題があるのですけれども、五十九年度については、会長からもこれからの計画についてできるだけ早く策定をしたいという御所信がございましたが、私ども素人なりに推察いたしましても、五十九年度は大体三百五十億から四百億ぐらいの赤字が出るだろう、こういうふうに考えられるわけでございまして、五十九年度については、五十八年度まあ従来以上に経営努力をなさいましても、受信料改定ということは避けられないだろう、こういうように思うわけでございますけれども大臣がこの意見書の中で述べておりますように、協会は厳しい経営環境に対処して長期的展望に立って事業運営を行うこと、そしてまた、事業運営刷新経営健全化について具体的な検討を加えまして、事業運営刷新経営健全化について努力しなさい、こういう意見書をつけてあるわけですね。これは、大臣が見まして、たとえば事業運営刷新とか経営健全化というようなことについて、これは抽象的でわからないのですけれども大臣としてはどういうふうな点を気遣われておられるわけですか。
  66. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 NHKが直面をいたしております現在の厳しい財政事情、さらにはニューメディア時代と言われる放送環境の変化に適切に対応、対処し、今後とも公共放送機関としての使命を果たしていくためには、業務内容及び組織体制見直し合理化効率化の推進、また経営財源の確保等について真摯な検討が必要であると考えますし、また、いまお話がございますように、五十九年度は一層厳しい環境が予想されるわけでございますので、今後のNHK経営展望に立って経営方針というものを明らかにした上で、そうして、その方針に基づいた経営計画というものをきちんと定めた上で五十九年度以降の予算編成に当たってもらいたいという気持ちを持っておるわけでございます。
  67. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大臣のこの意見書でございますが、NHK経営に介入して大臣がどうとかこうとかということは言えないと思うのですけれども、大筋として、こういう点を十分考えて計画を立て、苦しい五十九年度を乗り越えてさらに前進するように、こういう趣旨でございますね。――そういうように理解をいたします。わかりました。  そこで、午前中保留をしておきましたが、吹田先生からもこれは御質問がございましたし、この委員会では特に各委員からも御質問がございました国際放送の点について、私も締めくくり的に伺っておきたいのですが、三月十五日に、電波監理局長から委託研究を受けておりました国際放送に関する調査研究委員会、ここが約六回にわたり慎重審議をされました結果、報告書が提出をされました。私もその内容を拝見をいたしましたが、非常に残念なことに、受信状況については、ヨーロッパ、北米東部、中南米、中東、アフリカ、南西アジアなどの遠隔地帯では受信が非常に不良である、こういうことが前段に述べられておりまして、国際親善の立場からも速やかに国際放送施設の拡充強化が必要である、そのためには近接地は国内の送信所、それから遠隔地は海外中継局で対処する必要がある、こういうふうに述べております。  それから、国際放送経営主体については、NHKが引き続いてやることが一番適当である、こういうふうにはっきりと述べておりまして、この点は私どもが長年主張しております見解と全く一致しておりまして、敬意を表します。  それから、国内の送信所すなわち現在の八俣の送信所については、「基本的にはNHKが所有・運営する形態が望ましい。」こうなっておるわけですね。「ただし、八俣送信所の整備・増力に当たっては、NHK、KDDの諸事情にも配意し、例えば、送信業務専門の事業体の設立の可能性等についても検討することが望まれる。」こう書いてありますね。いわゆる第三セクター的なものによって送信所は経営運営したらどうかということでございます。  大臣として、この国際放送をどういうことがあってもNHKが今後とも番組編成をしてやっていくということと、この送信所を第三セクター的なものにやらした方がいいということについても検討が望まれると書いてあるのだが、これに対してどういう見解を持っているか、最初にこれを明らかにしてください。
  68. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 最近のわが国の国際社会での地位の向上、またいろいろな国際的な接触の濃密化ということを考えてまいりますと、国際放送の充実強化ということは喫緊の課題であるというふうに思っておるわけであります。従来からこの国際放送NHKの固有の業務ということにされてきたわけでありますが、公共放送機関としてのNHKの性格を考えますと、今後とも放送業務NHKに担当してもらうということが私は最も適切であろうと思っております。  ただ、八俣送信所の施設改善の問題でありますとか、別のところに送信所を設けるということも、これまた検討の対象にはなるわけでございますが、いずれにしましても、送信施設の保守管理に関する第三セクターというものについても検討したらどうかという提言があったわけでございまして、私どもも関係機関の意見も徴しながら検討してまいるつもりでございますが、現実問題としては、ただ保守管理をするだけの機構というものはなかなか考えにくいという印象は私は持っておるわけでございます。ただ、頭からそれはだめだというような断定をいたしているつもりではございませんので、今後検討いたしたいと思っております。
  69. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 それで、外務省が約三百万円の調査費をもって、わが国の国際放送の実態について、一つは受信状況がどうかという、これはNHKも外務省と一緒になってやったようですが、特に外務省は三百万円の調査費をもって、諸外国の国際放送というものがどういう形態でやられているかという御調査をなさったように聞いております。きょうは、外務省からも関係者に来ていただいておりますから、外務省は調査の結果、それぞれの国の国際放送放送体制といいますか、どういうふうになっておるか、ひとつ簡潔に結論だけでいいから説明してください。
  70. 寺田輝介

    ○寺田説明員 お答え申し上げます。  外務省といたしましては、昨年の十一月の下旬から約二週間強にわたりまして、外務省の当時の参事官を団長としまして、そのほかNHKの専門家、さらには郵政省の専門家を加えました四名の使節団を派遣いたしました。この調査団の調査の主目的でございますが、国際放送の分野におきまして長い歴史を持っている、さらには世界的な影響力を持っていると思われます三カ国で実施されていますところの国際放送、具体的に申し上げますと、西独のドイッチェ・ベレ、フランスのラジオ・フランス・アンテルナショナル、さらにはイギリスのBBC、この三カ国の三つの国際放送実施機関及び関係機関につきまして調査を行いました。  そこで、われわれの主たる調査関心事項でございますが、まず第一に、こういった国際放送を実施している機関と政府の関係はどういう関係にあるのかという点、さらには国際放送の財源問題をどのように対処しているか、さらにはいわゆる国際放送を円滑に運営するために必要不可欠な中継基地の問題、こういった点につきまして調査いたしました。  ごく簡単に概要を御説明申し上げますと、まず国際放送の実施機関と当該国政府との関係でございますが、BBCにつきましても、ドイッチェ・ベレにしましても、フランスの放送局にしましても、それぞれ政府から独立した法人になっております。さらにまた、こういった機関の行っております国際放送運営経費はどうなっているかということでございますが、フランスに関しましては、一部受信料の転用といいますか、受信料を使って経費の負担が一部行われておりますが、他の二カ国、すなわちBBC、ドイッチェ・ベレにつきましては、完全に国の負担になっているということが明らかになりました。  そこで、より具体的にこういった放送局と政府がどういう関係にあるかという点になるわけでございますが、まずイギリスにつきましては、国際放送放送時間数、それから国際放送でどのような言語を使用するか、この点につきましてはイギリスの外務省が決定しております。他方、西ドイツにおいての政府のかかわり合いにつきましては、国内の送信施設は西独の郵政省の所有になっております。他方、フランスにつきましては、これは送信公社というのがございまして、この送信公社が送信施設等を持っておる。かなり国によってそれぞれあり方が違うということでございます。ただし、三つの国につきましてきわめて基本的な点での共通点でございますが、あくまでも国際放送番組の編集権、内容につきましては当該放送機関の全面的な自主権が認められている、こういうことでございます。  簡単でございますが……。
  71. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 わかりました。  大臣、いまお聞き取りのような、三カ国ではございますが国際放送の実態でございまして、これは政府が直接調査団を派遣して調べた結果でございますから間違いないところだと思います。私どもも同僚議員ともどもちょっと三カ国を見てまいりました。私たちが見てまいりました結論と大体同じように私は思っております。  そこで、さっきの第三セクター的なものも含めて検討をする必要があるのではないかという点が一つですね。これは現にそういうふうな、送信所は独立をしてやっているという国もあるわけでございます。それから国内送信所の整備、増力につきましては、吹田先生、皆さんからお話がありましたように、少なくとも現在の八俣の送信所の送信機というのは非常に古い型でございまして、昔、電話、電信それから国際放送とやっておりました当時、A一、A二、A三というような波でやったわけです。ところが、いまはそれががらっと変わりまして、宇宙通信それから海底ケーブルに変わっておりますから、八俣の送信所は全くNHK国際放送の送信所オンリーの形になっているわけでありまして、ここにNHKとKDDとの使用料金の問題等についていろいろと困難な問題が出てきているわけでございます。大臣承認を得て使用料というものを動かすこともできるわけでありますが、そう簡単にはできない。  そこで、この古い設備を、この研究報告書の中にも書いてありますように、当面三百キロワット送信機四台、それから百キロワット送信機四台、これが必要だ。そうなりますと、およそ百二十億の金がかかる、新設した後の年間運用費も三十六億かかるというので、金の面が非常に問題になるわけです。そうして、この中に特に「国内送信所の整備・増力及び海外中継局の確保に要する多額な経費をNHKにすべて負担させることは困難である。」したがって、政府は「格別な配慮を加え、五十九年度予算において政府交付金の大幅な増額又は送信体制強化のための特別な予算の確保等思い切った予算措置をとる必要がある。」こうなっていますね。これは緊急のことでありますからそういうふうに書いてあると思います。  したがって、さっき吹田先生からお話がありましたが、少なくとも八月の予算編成時までにこの答申に基づいてどうするかということを政府は決めて、NHK、KDDと相談をして、そしてこの趣旨に沿った交付金の増額、設備設置のための特別措置をやってもらわなければならぬのであって、これは桧垣郵政大臣の肩に大きな荷物がしょわされたと思うのです。しかし、これは考えてみると長い歴史がございます。あなたがたまたま大臣になってこの問題を処理したということになると未来永劫あなたの名前は残っていくわけです。そういう意味からいってもこれは非常にやりがいのある仕事であるし、国家的な立場に立ってもこれはりっぱな仕事でありますから、そういう意味で、ひとつ大臣としては全力を挙げてこの研究会の答申に基づいて早く結論を出して、わが国の国際放送がどこの国へ行ってもよく聞こえる、そして、日本の国がいかなる国であるかということをよりよく理解していただくようにしていただきたい。そのためには三百億や五百億の金を使ったってこれは安いものですよ。国がそういうものを出して、そして編集権はちゃんとNHKの方に任して、それには介入できない、そういうような体制を一日も早くつくってもらいたい。これは私が一億国民にかわってあなたにお願いするわけです。この研究報告が出たわけですから、これは電波監理局長の諮問的な委託研究会かもしれませんけれども、せっかくの貴重な意見であるし、われわれが考えておりました年来の意見がこの中に入っていると私は見ていいと思うのです。それだけに国民はこれを支持している。したがって、ぜひこれを誠心誠意やっていただきたい。これを大臣にお願いし、決意をお聞きしたい。決意だけでなくて、やるということをひとつここではっきりと亘明しておいていただきたい。
  72. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お話のように、国際放送の充実強化の重要性は年来の課題であったわけでございます。それがゆえに、ただいま御披露がございました研究会も設け、答申を求めてきたわけでございます。答申を受けました段階で、このことを念頭に置きながら郵政省としても最大の努力をしなければならぬというふうに思っておりまして、現に与党の方ともこの問題について意見の交換に入っておるわけでございます。  率直に申し上げまして、郵政省一般会計二百四十二億というはなはだ情けない予算規模の中で、一般的な予算ルールではとても話にならないだろうというふうに思っておりますが、事は国の政治、経済、文化、各方面にわたります国益の問題にかかわるわけでございますので、私としましては、関係各省の御協力もいただき、また国会の先生方の御支援もいただきまして、ぜひともこのことはなし遂げていきたいというふうに決意をいたしておる次第でございます。
  73. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 大臣のかたい決意を伺いまして、私も安心まではいかないのですが大変感謝します。一緒になってひとつ実現のために努力しようじゃありませんか。  それから、放送番組、これは一番大事なところですからお伺いしたいわけですが、もう時間が来てしまいました。  それで、いまのはラジオを通じての国際親善ですが、今度はテレビの面でやったらどうかと思っておりましたが、幸いABUを通じて加盟各国がテレビニュースを交換するという試みが三月一日から九日まで行われました。これは国境を越えた相互理解を得るためには非常によいことだと私は思っております。こういうようなことはABUのほかにアラブ諸国の連合あるいはアフリカ放送連合でも行われておるようですが、今回の試みを行いました後、どのような構想でNHKはこの国際的なテレビニュースの交換をやろうとしているのか、ちょっと聞かせてください。
  74. 川口幹夫

    ○川口参考人 短波による国際放送が重要なのはもちろんでございますけれども、映像によるニュースの交換とか情報番組の交換というのもこれまた非常に重要でございます。先生からいま御指摘がありましたABUのニュース交換も、やってみました結果としては非常に成功に終わっております。  私ども、五十八年度の大きな計画の筆頭に国際情報ネットワークの強化ということをうたっております。これは世界を同時に結ぶネットワークを早くつくり上げたい、どこでどのような事件が起こり、どのような情勢が発生しても、直ちに国内でそれを見られるという状況にしたいと思っております。  そういう情報ネットワークの強化、それからニュースの交換、さらには番組の交換も、これは五十七年度の八カ月分のデータでございますが、十七国二十四機関と協力協定を結んで、提供と受け入れの合計で三千六百九十一件というぐらいにたくさんの番組の交換をやっております。五十八年度もさらにこの形を進めてまいりたいと思っております。
  75. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 四月から番組が変わるようでございますが、それらについてもいろいろお伺いをしたかったのですが、できません。  そこで、ローカル放送についてちょっと意見を申し上げておきたいと思うのですが、ローカル放送の時間量は、テレビが一時間三十分、ラジオが二時間、FMが一時間五十分、時間的にはほとんど前の年と変わっておりません。しかし、ローカル番組の目玉である朝の「ニュースワイド」が、ローカルアワーはいまは七時二十五分から四十五分ですが、今度は七時五十五分から八時十分に繰り下げられるというように聞いているわけでございます。この三十分の繰り下げは、勤労者の在宅率を見ると、地方都市では七時台が七〇%なのに対して八時台が四〇%に低下する、したがってローカルの軽視につながるのではないかというような気がするわけです。つまり、七時五十五分からでは仕事に出る人の大半がもう家にいない。したがって見る人は御婦人くらいのものになってしまう。御婦人と言うと失礼ですけれども、一般の人たちの視聴率が下がってくる。こういうことでありますから、これらの問題についてやはり十分配慮をしてやらないと問題があるのではないか、こう思うのです。これについてはちょっと回答いただきたい。  あと、番組の保存体制については、テレビ三十周年にもなっておりまして、昔のなつかしい番組を久々にわれわれもブラウン管を通じて見ることができました。しかし、番組の保存体制というのが必ずしも十分でないというふうに私は考えておりますので、この保存体制については今後とも格別な御配慮をいただきたい、こういうふうに思います。  それから最後に、会長、最初にも申し上げましたように、これからのNHK運営は、何といいましても会長、副会長を中心にして全職員が一丸になってがんばっていただかなければならないわけでございますが、それにはやはり待遇の問題を含め人事管理等についても、なるほどりっぱな人たちがりっぱなところについて、これならいけるという人事管理体制というものをつくっていただいて、そしてNHKが本当に私たちのNHKである、みんなでひとつ協力しようじゃないか、経営上に苦しさがあればみんなでまた受信料も出して、民放に負けないような公共放送をみんなで守っていこうという、多くの国民から心より支持していただけるような体制をつくるのには、何といっても全職員が一丸になってがんばることだと思うのです。  私たちは、アナウンサーとしてブラウン管に乗る人の後ろにあってカメラを回して苦労しておる人たちのことを忘れてはいかぬのです。記者の人たちとかカメラマンの人で、この前もヘリコプターから殉職した人もおりました。私は昨年このこともここで申し上げましたけれども、夜も昼も、盆も正月もない取材活動に全力を尽くしていただいているそれらの人たちが、心の中に人事の不安を持ち、待遇の不満を持っておったのではだめですよ。ですから、そういう点は本当にみんながやる気になるような人事管理体制、待遇等も考えていただいて、今後ぜひNHKがりっぱにこの困難を乗りこえて公共放送としての使命を果たしていくように、私は心から願っておるわけでございます。  これで終わりますが、ローカル放送の面について若干御意見を承っておきたいと思います。
  76. 川口幹夫

    ○川口参考人 五十八年度放送番組編成の重点事項の一つに、ローカル番組の充実ということをうたっております。それで、いま先生の御指摘があったような「ニュースワイド」の中の一部の時間変更はございます。ただ、その中でローカルのニュースの時間帯については、むしろいままでよりも充実をしたというふうに思っております。ただ、番組が五十五分からということになりますので、それにかわりましてローカルの方の随時の番組編成、それから特別番組の編成、それに土曜日などの朝の時間の活用ということで、十分にローカルの強化はできるというぐあいに考えております。
  77. 鈴木強

    ○鈴木(強)委員 終わります。
  78. 左藤恵

    左藤委員長 次に、森中守義君。
  79. 森中守義

    ○森中委員 非常に短い時間でございますから十分な審議はできませんけれども、大事な点と思うところを少しくお尋ね申したいと思います。  五十五年から現行年度まで三年間にわたって、経営合理化節減ということで百六億の繰越金をおつくりになった。なかなか大変な苦労であったと思いまして、敬意を表したいと思いますが、さて、予算内容を拝見した場合に、これは人が言っていることでございますけれども、どうも五十九年度料金改定の事前予告予算じゃないか、こういう話があるのです。つきましては、そういうことと同時に、恐らく三百五十億ないしは四百億ぐらいの赤字を見るのではないか、こういう説がございますが、経営の任に当たられる会長としてはその辺の見通しをどういうように持っておられますか。
  80. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、財政的にはいま非常に苦しい状況にございまして、現行の料金体制のままでかつ現在の仕事を中心に考えますときに、もちろん、現在の仕事と申しましても、私どもここ一両氏かなりの節約と申しますか、能率化と申しますか、節約できるものは徹底的に切ってきたつもりでございますが、それでもなお現行の料金体制で進みますと、どうしても御指摘のように四百億円近いあるいはその前後の赤字が出ざるを得ないという一つの見通しを持っております。ただ、これはまだいまの段階での試算でございまして、これに対しましてはなおもう少し時間をちょうだいしてしさいに検討を詰めてまいりたい、このように考えております。
  81. 森中守義

    ○森中委員 慣例としまして大体六、七月ないし八月には次年度予算の作業に着手されるわけですね。そこで、余り気長な見通しでも困るのですが、率直に申し上げまして、現行予算内容などからいたしまして、こういう点を少しくはっきりさせてもらいたい。つまり、五十七年度の決算が行われていない。けれども、百六億の中には五十七年度の相当の繰越金が入っておる。これがいよいよ決算段階で上積みになるのかどうなのか。もしなるとすればその金額はどのくらいに想定されるのか、これが第一点。  それから、新しく出発をする五十八年度予算の中でも、三カ年計画の延長線上にあります、したがって、合理化効率化、節減を行う、こうおっしゃっておる。したがって、五十八年度でどの程度の繰越金を予測されるのか。この辺は、もし数字として概算でもはじいておられるならばちょっとお示しいただきたい。
  82. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  御質問の第一は、五十七年度に百六億となっておりますけれども、これがどうかというお話でございます。御承知のように、五十八年度は、すでに百六億が五十七年度に生み出されることを前提予算の編成をしておりますので、重要な課題でございますが、この百六億についてはいまこんな状況でございます。  まず、収入から申しますと……(森中委員「余り詳しいことを言うと時間がなくなってしまいますから、聞いたことだけ答えてください」と呼ぶ)百六億につきましては、いま日々の執行状況を毎日のようにチェックしておりますけれども、百六億がやっと確保できたというのがいま私の実感でございまして、これ以上上乗せすることについては、いまここで申し上げるには若干時間が足らないという感じがいたします。  それから、第二の御質問の五十八年度でありますが、五十七年度もかなり節約を強行した上で百六億ということでございまして、その上にさらに五十八年度は実は三十二億の節減を前提にして組んでおります。それから、受信契約者にいたしましても、四十五万というのはいまの推計ではかなり目いっぱいの数字でございまして、その辺のことを考えてみますと、五十八年度予算を執行するということにおいてかなり苦労を伴うことがありまして、いまここで若干残るからというような問題についてはいまの段階ではとても考えられないところであります。
  83. 森中守義

    ○森中委員 ただ、在来の予算、決算の比較をいたしますと、かなり順調に伸びてきていますし、ですから、四十五万、確かにむずかしい問題でしょうけれども、これが五〇%でとまるとか、あるいは三〇%でとまるというふうにはとても考えられない。相当いいところまで行くんじゃないですか。そうでなくてはまた協会財政はもたないわけですから。だから、いま御答弁は御答弁として承っておきますが、来年度予算を編成するに当たって、決算上どういうことになるのか、あるいは五十八年の上積みはどうなのかということは、来年の予算構成にかなり重要なポイントが置かれる、こういうつもりで承ったわけでございますが、それはそれでよろしゅうございましょう。  ところで、この内容の中に、資本支出の中で放送債券積立資産繰り入れ四十八億六千二百万、こういうのがありますね。これはどういうことなんでしょうか。確かに法律上は四十二条の三項に債券条項があります。各事業年度ごとに年度末における債券の総規模に対し一〇%を積め、こう言っているのですが、これは本当に必要なのかどうなのか。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕 法律があるからこの限りにおいては否定できませんけれども、実際問題としてこれが必要かどうかというのはかなり疑問になってきた。私の調査によりますと、五十六年の決算で五百二億の積立金になっています。これは一番新しいもので幾らになっておりましょうか。これが第一点。  それから、これが制度化されたときと現状は同一に見れない。つまり、現状では、これも五十六年の決算の結果のようですが総資本が七百五十億になっています。このくらい非常に基盤が固まってきた。債券条項を制定した時代はなかなかここまで基盤が確定していなかった、そのために債権者を保護しなければならぬというのでこの保護条項ができた。しかも、最近になりますと先取特権という表現を用いておりますね。それから、新しい債券の募集要項の中では、担保条項としてゼネラル・モアゲージというような表現で、要するに常に債権者には優先的に担保を出しますよということなどがあってみれば、さてこの法律制定時代と今日どういうように見ていいのか。端的に言えば、これだけの積立金、五百二億現在あるようですけれども、こういうのはもう少し適切な運用はできないものだろうか。この際は法律を改正いたしましていま少し弾力性のある資金の運用ができないものだろうか。もしこういうことに踏み切っていけば、さしずめ現行年度の四十八億というのは浮いてくるわけです。それがまた来年度予算に乗り移っていくというようなことになると、かなり有効な財政運用に相なりはしないか、こういう見解を持つのですが、どうでしょうか。
  84. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  いま先生指摘放送債券の積み立ての問題につきましては、二十五年に法律ができたときと事情は変わっているのじゃないかという御指摘でございます。確かに、二十五年のNHKの財産でございますと純財産が十億そこそこであったかと思いますが、いまは一千億を超えているわけでございますので、そういう意味ではNHKに対する財産保全の不安要素は一つ事情が大きく変わっているかと思います。  それから、債券の積立制度のもう一つのメリットと申しますか、私どもこれを運用しておりましてのメリットと感じておりますのは、債券の発行のときに条件といたしまして、発行いたしますと三年据え置きあるいは五年据え置き、そしてそれ以降七%ないしは八%の定時償還をしているということでございまして、最後に満期になりました場合には定時償還で返し得なかったものを全額返す、こういうことになっているわけです。いまその条件どおりにまいりますと、各年では大体四二%の金が返せて最後の年に五八%を一挙に返す、こういう状況になるわけでございまして、年度別の平準化からいたしますと、ある特定の年度に多額のものがかぶってくるということになっております。いま法律どおり実施しておりますと、これが多少平準化されまして、その七%というのが平均的には八・五%ぐらいの償還の率になりまして、最後の年には一四%ぐらい金を用意すればいいということになりますので、いま積み立てをやったとやらないとでは、年度平準化という点から申しますと確かにメリットがある制度ではあろうかと思います。ただ、事情が変わっているじゃないかという面に関しましては、確かに事情は大きく変わっているのではないかというふうに思っております。
  85. 森中守義

    ○森中委員 償還の年次別にずいぶん揺れがありますね。この出されているものでいけば、五十七年度、現行年度が七億七千万、五十八年度がたしか十三億七千万、こういうふうに非常に幅があるのはどういうことですか。三年物、十年物というものがあり、それから高額に発行した場合と少額に発行したという発行の状況にもよるのでしょうが、ちょっと幅が大き過ぎる、この辺が私は少し納得できないのですけれども……。
  86. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  まず、五十八年度以降どのぐらいの償還があるかと申し上げますと、五十八年度予定しておりますのが、おっしゃるように十三億七千万でございます。五十九年度が三十億五千万、六十年度が五十四億四千万、六十一年度が四十一億二千万、六十二年度が三十億一千万ということになります。  どうしてこういうふうになるかということでございますが、いま申し上げましたように、発行しました初年度から三年間あるいは五年間は据え置きでございますから返還いたしません。それから七%ないし八%の返還が毎年起きてまいりまして、最終年度にいま申し上げましたかなりまとまった金が出ていくというわけでございます。これは各年発行しておりますので、その年度別の移動が谷年の発行によって違ってくるわけでございますので、それが年度別に合算いたしますと、発行年度による違いがそのまま償還額に出てくるということで、でこぼこが出てくるわけでございます。
  87. 森中守義

    ○森中委員 そうしますと、五十七年度の積立総額は幾らになりますか。それと同時に、大体一定の規模を積立額として維持しておくという方針ですか、それとも支払いが幾らか変動するから、その変動に応じて積立総額も変わる、こういうことになりますか。
  88. 渡辺伸一

    渡辺参考人 いま五十七年度はとおっしゃいますので申し上げますと、五十七年度末の積立金残高は百十億七千四百万になる予定でございます。これは一定の額を保持するつもりかということでございますが、これはむしろ機械的に出てまいると言うとなんですが、債券の未償還額の一〇%を積んでまいりますね。その中から当年度に返還が参りましたものを取り崩して返還していくという、繰り入れと取り崩しの相殺された結果が出てきておるわけでございまして、一定の額を保持しようという意図でやっておるわけではございません。
  89. 森中守義

    ○森中委員 ちょっとこの辺が私はわからないのですね。五十六年度の決算書によれば五百二億になっているのです。それが五十七年度末で百十億ということになると、非常に大きな減少になるわけですよ。こういうふうに出入りが多いと、これは積立金になりますか。かなり不安定になっているのじゃないですか。この数字の扱い、ちょっとよくわからない。五十六年度が五百二億、これは間違いないですか。
  90. 渡辺伸一

    渡辺参考人 先生五十五年度をおっしゃいましたので五十五年度を申し上げますと、五十五年度の積立資産の残高は五十二億三千九百万、それで五十六年度が七十七億四千五百万でございます。
  91. 森中守義

    ○森中委員 それじゃこの辺が、私の数字の扱いの違いかわかりませんが、要するに、一定規模を維持しておくということじゃないわけですね。
  92. 渡辺伸一

    渡辺参考人 そういう意図ではございません。繰り入れと償還の差し引きで出てくる数字でございます。
  93. 森中守義

    ○森中委員 積立金の総額が百億前後ということであると、これは実際の発行総額と符合しますか。数字それ自体にちょっと問題があるようだな。たとえばことしの発行額は九十億だね。こういったように相当高額に出す場合、いろいろ変動しますが、そういう数字から見ていく場合に百十億などという積み立ての総額ということにちょっと合点がいかないな。どうでしょうか。
  94. 渡辺伸一

    渡辺参考人 いま私が残高を申し上げたのはあるいは説明不足だったかもしれません。五十五年度で申しますと、新しくこの年度に積み立てましたのが二十六億五千三百万でございまして、前年度に残高が三十三億五千六百万ございました。それに二十六億五千三百万を積み足すわけでございますが、七億七千万をそのうちから償還をいたしましたので、残高が五十五年では五十二億三千九百万、こういうふうになるわけでございまして、その年度末の残高を五十五年から申し上げたわけでございます。
  95. 森中守義

    ○森中委員 渡辺さん、ちょっと質問答弁がかみ合っていない。私は償還財源としての積立金の総額は幾らですかと聞いているわけで、やはりちょっと金額が合わないですよ。そうじゃないかしら。それは百十億なんということじゃないでしょう。相当出しているのじゃないですか。もう少し数字を整理してみてください。
  96. 渡辺伸一

    渡辺参考人 先生は五十八年度の積み立ては四十八億だなとおっしゃいました。この五十八年度四十八億という例で申しますと、確かに五十八年度新しく放送債券の年度末の一〇%として積立金に新規に積み立てますのが四十八億六千二百万でございます。それで五十八年度にこのうちから返還すべきものがございますが、それが十三億七千万ございまして、残高としては百四十五億六千六百万を持つことになるわけでございます。これは毎年度の決算に表示しておりまして、この金額で間違いないわけでございます。
  97. 森中守義

    ○森中委員 その数字は後でもう少し私も吟味してみたいと思いますが、要するに、厳密に予算として見る場合には、たとえば単年で償還するもの、ことしは十三億七千万、これを積立金から取り崩すわけでしょう。これだけを処理すべきものであって、積立金というのは別にした方がいい。つまり、その必要が現実において存在しないような状態になっているわけだから、しかもその積み立てたものは他に移用、流用するようなことはないのですね、ただ積み立てるばっかり。だから、もう少し効率的な積立金の運用はできないのか、それには法律を変えなければいかぬ、こういうことが財政運用上のいわゆる合理化というのか効率化になりはしないのか、こう思うのです。ですから、これは協会でなくて、むしろ電波も関係のあることで、そういうように積立金の状況が変わってきたわけだから、もう少しこの辺の現行法の見直しなどをやって、積立金のより効率的な運用はできないのか、こういう主張をしておるわけです。
  98. 渡辺伸一

    渡辺参考人 一言説明を補足させていただきます。  五十六年度末で七十七億も積立金を持っているわけでございますけれども、これにつきましてはできるだけこれを有効に運用しようということでございまして、有価証券、主として金融債でございますが、そういうものをもって、五十六年度の場合ですと八%以上に運用して、四億三千万からのものを雑収入として稼いでいるということは実態として申し上げられると思います。
  99. 森中守義

    ○森中委員 渡辺さん、たとえばこれを建設費などに使ったという例はありませんか。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  100. 渡辺伸一

    渡辺参考人 この積立資産につきましては施行規則に決められておりまして、科目は特定資産として特別に保有するようにとなっておりますし、この積立資産の性格そのものが返還のために準備されているものでございますので、これは建設費等に固定化されることについては適当な運用ではないのではないかと思いまして、いまはそういうことをやっておりません。
  101. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 放送債券の償還をどうするかということですけれども、先ほど先生指摘になりましたように、放送法の四十二条第三項によりまして、債権者保護を図るということでこういう規定ができたものと考えております。  それで、二十五年当時といまとでは事情が変わってきたのではないかということで、NHKの方からも御説明いたしましたように、財政規模等につきましては大きく成長してきたわけでございますけれども、いまのところ放送債券というのは政府保証がない債券でありますし、償還額が毎年変動いたしますので、財政への影響を平準化する必要もあるというようなことで、今後の放送債券の発行状況ども見ながら考えてみたい。郵政省としては当面現行でよろしいのではないだろうか、このように考えております。
  102. 森中守義

    ○森中委員 財政がこうなってくるとできるだけ合理性を求めなければいかぬ、そう私は前提に置きながら、さっきちょっと数字が違うと申し上げたのは、ことしの資産繰り入れというのは四十八億六千万と言われたね。その十倍ということでしょうから、積立総額は四百八十億というのが正当じゃないの。そこの数字はどう違うのですか。十分の一を積み立てる、こういうことになれば、この予算書に出されているのは四十八億六千万だから四百八十六億というのが正当な積立総額になるのじゃないですか。
  103. 渡辺伸一

    渡辺参考人 法律の趣旨が未償還残高の十分の一を毎年度繰り入れるようにというふうになっておりますので、トータルとしてこれの十分の一でいいじゃないかということではないようにいま運用しております。毎年度残高の十分の一を新たに繰り入れるという規定の運用になっております。
  104. 川原正人

    川原参考人 森中先生の御質問ですけれども、債券の発行をしました発行残高がいま四百八十六億ということでございます、発行しました全部の債券でまだ償還していないもの。ただし、積み立ては全額を積み立てるというのではなくて、毎年残高の一〇%ずつ積み立てておきなさい、ただしその積み立てたものの中から償還に必要なものは使ってよろしい、こういうことでございますので、発行残高と積み立ての残高は合いません。積み立ての残高はずっと少なくなります。
  105. 森中守義

    ○森中委員 それで、結局積み立てというのは内部資金なので、だから法律としてはきちっとこうしておくのがいいのかどうなのかということになると、これはやはりかなり弾力性を持たせる必要があるわけです。いま局長も、現状においてはこれがいい、こうおっしゃるけれども、さて、状況は変わっているわけだから、もう少し何か検討に値する。そして、ほかに移用、流用できない、ただ金利で稼いでいるという話はあるけれども、これはほうっておいても金利は稼げるわけです。もう少し実際の使い道があるならば検討してもいいんじゃないかというように思うのですがね。決してそのことが債権者には不親切とか不安を与えることにはならぬだろう、こう思うのですが、どうでしょうか。
  106. 川原正人

    川原参考人 確かに、御示唆のような点は私どももまた改めて検討させていただきたいと思っております。  ただ、やはり放送債券、私どもの場合は一般消化といいますか、一般の方がかなり多数お買い求めいただいておりますし、やはりある程度のそれに対する償還の積立金は持っていた方がいいのではないか。いまの一〇%がどうしても必要かどうかという点はまあいろいろ御議論はあろうかと思いますし、また、これは本来、郵政省の方の法律並びに規則、放送法でも決まってくることでございますので、その点はまた私どももよく慎重に検討いたしまして、役所の方とまた研究、御相談をさせていただきたいと思います。
  107. 森中守義

    ○森中委員 とにかくそういう筋で一〇%問題を財政上処理していけば非常にふくらんでくる場合がある、予算上ですね。要するに、戻し入れとかいろいろ出てくるわけですからね。それが一つあるし、それから、実際問題としては、経理上の問題は私もよくわからぬけれども、単年ごとに償還、つまり積立金を取りつぶして支払いをしますね。そのものずばりでやっていった方が実際わかりいいのじゃないですか。一〇%を、これは借入金だ、赤字だという計算をすべきなのかどうなのか、同じ内部資金ですから。その辺でわりあいに財政がわかりにくい状況になっているという気もするのですよ。そういう意味からすると、できるだけこの一〇%などももう少し整理をして、取りつぶした金を出しましたというようなことの方がいいように思うのですかね。そうするともう少し整理ができてくるというように思いますけれども、どうですか。
  108. 川原正人

    川原参考人 確かに、そういう御示唆のような点はあろうかと思います。実は私ども部内ではときどきこの積み立ての意味とか必要性とかの議論はしているのでございます。もちろんこれは私どもだけで勝手に動かせるものではなくて、法律なり規則なりで決まっていることでございますので、それからまたその規則が決まったゆえんのものを考えてみますと、やはり私どもが報道言論機関と申しますか、財政基盤はある程度しっかりしておかなければいけない、かつまた、先ほど申しましたように、放送債券をかなり一般の視聴者の方が、個人消化がもう九〇%以上でございまして、個人個人非常に細かくお持ちでもございますし、まあ私ども経営が万が一というようなことは考える必要はあるいはないかもしれませんが、やはり財政のありよう、財政の健全な体質としましては相当の準備は持っていなければいけないのであろう、そういうことでこういう法律ができているのであろう、そういう理解をいたしていままで運用してまいったわけでございますけれども、なるほど確かに御指摘のように状況の変化というものは当然ございますし、それから今後の私どもの財政運営の問題もあります。ただ、一点だけ、私は、財政が苦しいからその種の健全のために蓄えてある積立金を余り簡単にあっちこっち動かすのは、これまた将来の私どものような国民視聴者の大多数の負託を受けて業務を執行しております報道機関としましては、余りそこはそのときどきの考えで動かしてはいけないのではないかというふうにも考えております。
  109. 森中守義

    ○森中委員 そこで、ちょっと先に進めましょうか。  ことしの予算の場合に、BS2以降の問題として財政上どういうかっこうであらわれているのか、それが第一点と、それといままでいろいろな形で協会は開発のために金を出していますね。大体規模としてどのくらいになりましょうか。ちょっと概算だけ教えてもらいましょうか。たとえば衛星機構への出資ですとか、それから開発費とかいろいろなのが出ておるようですが、総じてこれはいままでどれぐらいに総額がなっているのか。つまり、こういう金が、また六〇%負担というような問題が出てくるとかなり協会負担を圧迫する可能性がある、こういうことになりますから、ちょっと総額だけ教えてください。
  110. 矢橋幸一

    ○矢橋参考人 お答えいたします。  放送衛星BS2につきましてトータルの投資額につきましては、先生御承知のように、衛星の製作並びに打ち上げのトータルが約六百億でございまして、その六〇%をNHK負担します。残りの四〇%は国で負担するわけですから、トータルとして三百六十億要るわけでございます。そのほかにわれわれの番組を衛星に送るいわゆる地上局の設備、これが約二十億ぐらい要るわけでございます。したがいまして、そのトータルのNHK負担分の三百六十億を五十五年度から投資しております。ずっと申し上げますと、五十五年度が八億でございます。それから、五十六年度が四十九億、五十七年度が七十六億、それから、いま御審議していただいております来年度計画におきましては、九十一億衛星の製作並びに打ち上げに投資するわけでございます。残りました百四十四億につきましては、五十九年度、六十年度、二年度にわたって投資するという予定になっております。  そのほかに、いま御指摘がございました通信・放送衛星機構に対します出資でございますけれども、これもトータルは六十七億でございますけれどもNHKはその中の六分の一、約十一億程度の出資をいたすことになっております。  以上です。
  111. 森中守義

    ○森中委員 こういうのが五十八年度以降の非常に大きな財政負担になって、それで恐らくは来年度あたりはもう一回料金改定にならざるを得ないのではなかろうか、こういう懸念がある。したがって、その点はある程度整理されて、新しい予算の概計作業の段階ではもうそろそろ結論を出さなければいかぬのじゃないかというような気がしますけれどもね。  ただ、私がさっきから申し上げるように、経理上いろいろこうやってみよう、そうすることで避けられるものなのか、避けられないものなのか、その辺は会長はどう判断されておりますか。
  112. 川原正人

    川原参考人 経常の経費につきましては、ここ数年来かなり徹底した削減といいますか、節約といいますか、やってまいりましたし、実は先ほど専務理事、経理担当から申し上げましたように、昨年度は実は、こういうことを言ってはなんですけれども、一度決まって、部内的には配賦した予算を私会長になりまして、もうすでに年度の後半でございましたけれども、無理やり二十億切れということで、部内的に節約をさせたわけでございます。これは予算を決めておいて、しかも国会で御承認いただいた予算でございますけれども、決めておいてこれだけやると言っておきながら、それを年度の途中で部内的にしゃにむに切ったわけでございます。それが実は昨年度半ばにして、私は、五十八年度から五十九年度のずっと見通しを部内で議論しまして、このままで推移してはもう五十八年も危ない、百七十億どころじゃない、五十八年にはもっと赤字が出てしまうのではないか、現行料金でやれないんじゃないかということを心配して、多少乱暴ではありましたけれども、無理やり年度の途中で予算をさらに二十億詰めろということをやった。実はそれを入れてやっと五十八年度に百六億円の繰り越しの財源を持ってきたわけです。五十八年度は、もちろんそのベースの上に立って、しかもなお部内検討したらもっと赤字が出そうなのを、もうとにかく繰り越してきた貯金は百六億しかないのだ、その中でやりなさい、貯金はこれしかないのでそれをオーバーしたらこれはもう予算にならないということで、債務償還の方はひとつ借りかえで何とかがまんしていただこう、しかし、通常の経費はとにかくこれしか貯金がないのだからこの中に何でも詰め込みなさいということで、やっと五十八年度予算を現行料金据え置きに編成したわけでございます。そういう経緯を、私が会長になる前からそういう節約をずっと詰めてきたわけでございますけれども、これ以上経常経費のどこを切るかというと、ちょっとやそっとでは切れない。したがって、今度は、いままでやってきたものを全部もう一回検討し直す、掘り直してみて、なおかつ合理化方法はないか、能率化方法はないかをいま部内で検討を始めております。しかし、率直に申し上げまして、どのようにやりましても、いま受信料伸びが一・一%、あと経常経費をどう詰めましても、いま御指摘放送衛星も上がります。そのほかのニューメディアも入ります。また、通常の番組におきましてもいまのまま同じことをやっているわけにはまいりません。これだけ国際的にいろいろな問題も起きますし、国際的な情報ももっと私どもは取り入れたいし、あるいは通常の教育番組、ドラマ番組等においてもまだまだ工夫の余地がある、すぐれた番組を出さなければいけない、そういう状況の中では、恐らく切り詰めただけでは五十九年度の財政は賄い切れないであろう。しかし、そういうことをいま私が言うのもやや不謹慎でございますので、もう一回この後徹底的に議論をいたしまして、ことしの秋までにはその辺の収支ともども新しい計画を立てまして世にお諮りしたいと思っておりますが、率直に言って、現行の料金をそのままで五十九年度やるというのは恐らく無理ではないか。それを無理すれば、協会の財政体質経営体質を非常に危険なものにしてしまうおそれがある。その後でそれを取り戻そうとすると非常に無理が重なる。むしろ、私どものような企業の場合には、率直に現在の事情を国会にも御説明し、御理解いただき、また世にも御説明申し上げて、協会の将来のことをひとつ御理解いただいて、視聴者の方の新しい御支持を得たいと私は考えております。
  113. 森中守義

    ○森中委員 会長、にわかにここで値上げする、しないを返答もらおうという考えはもちろん持っておりませんが、要するに、時期が時期ですから、ひとつ慎重に御検討賜りたい、このようにお願いしておきましょう。  そこで、この宇宙開発の問題ですけれども大臣、御承知のようにボルネオ上空三万六千キロに上げよう、国益を守ろうじゃないかという、ここに出発をして、それならば難視聴を解消するという非常に大きな命題があったわけですね。ここまでくると、なかなかそれ一点張りではいかぬ、むしろプラスアルファの方がより意味合いが大きい、こういう時代になってきたわけですが、BS2による二チャンネルというのは、総合と教育と両方にお使いになるというのは一般的に理解されているのですね。どうなんです、もうそろそろこのあたりで申請の準備をするとか、認可の準備をするとか、そういう態勢に移っていかないと、五十九年の二月いよいよ運用開始ということになると間に合わないのじゃないのか。そういう態勢が恐らくこの予算審議の場に出されてもよかったのじゃないかなという気もする。いろいろ背景は聞いておりますが、要するに、協会としては二チャンネル使用の申請をお出しになる、いつなのか、電波はその受け入れの態勢があるのかどうなのか、この辺どうですか。
  114. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 BS2、来年の二月に打ち上げるわけでございますが、御高承のとおり、NHKの総合、教育の四十数万残っております難視聴の解消を図るということでございますが、私どもの方といたしましては、五十九年二月、つまり五十八年度予算の中に入っておるわけでございまして、それをどういうふうに無線局として管理していくか、制度的にも検討をしておりまして、近く、五十八年度に入れば早々にもNHKからお出しになるだろうというふうなことで、無線局管理の面から、また放送法等の面から制度的な検討を進めておるというのが実情でございます。
  115. 森中守義

    ○森中委員 電波局長がいま言われたのは、五十九年でしたか、協会の提出される時期は。ちょっとその時期がはっきりしないが、いつ申請をお出しになる予定ですか。
  116. 川原正人

    川原参考人 これはまた郵政省の方の認可といいますか、そういう政府としての手はず、手順がいろいろあることと思いますので、私の方が勝手にいつ提出するというのを決めるわけにも現実問題としてはまいりませんけれども、いま局長が説明されたのは、恐らく五十八年の間もなく、あと数カ月のうちにそういう段取りになるであろう、私どもも内々そのように伺っておりますし、その準備は進めていろいろ検討しているところでございます。
  117. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ちょっと不分明でございましたので……。五十九年二月に打ち上げるわけでございますので、打ち上げる前に、空へ上がる前に無線局の検査も必要でございますので、五十八年度に入りましたらすぐにもNHKの方から申請書が出るものということで、もっと具体的に申しますと五十八年の六月ごろにはお出しいただけるだろう、そういう予定で、私どもの方としては制度的に法律的に検討を進めておるというふうに申し上げたつもりでございました。
  118. 森中守義

    ○森中委員 非常にはっきりしました。  では、協会の方でそれで間に合いますか。間に合うという自信のもとにそういう措置をおとりになるのでしょうが。つまり、私は、現在地上二波、これから衛星二波、合わせて四つになるわけですが、いまの経営の規模でこういうものができるのかどうなのか、より完璧な経営展望現状において求められるかどうか。もちろん衛星によってずいぶんいろいろな変動がある。技術的にも変わってきますね。いま一々申し上げませんけれども、そういうようにまさに放送界の画期的な転換期に立っているときに、いま言われるように六、七カ月の間で準備ができるのかどうなのか、その辺確信をお持ちかどうかというのが第一点。  それから、電波局長にお尋ねしておきますが、打ち上げ計画というのは順調に進んでいるのですか。何か部品のアメリカへの発注等をめぐって非常に困難をきわめていて、ひょっとすると若干の延期にならざるを得ないというような話がないでもないのですけれども、この辺の状況をどうごらんになっていますか。
  119. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のように、放送衛星につきましてはチャンネル当たりBS2の場合百ワットという大電力でございます。この辺に技術開発上大変むずかしい点があるわけでございますけれども、現在のところ、私どもといたしましては特段の支障もなしに順調に準備が進んでおるというふうに聞いております。
  120. 森中守義

    ○森中委員 ぜひそう期待したいと思います。  それで、協会にちょっとお尋ねしておきますが、新しい体制を迎えるわけですけれども、いま私、手元に「国民放送論特別委員会討議報告書」というのを持っている。これは国民放送論特別委員会、こういう皆さんによって議論されたものですが、これは恐らく協会の方もお持ちだと思う。この中で非常に貴重な意見の開陳があるのですね。NHKの組織の形態はこれでいいのかどうなのか、つまり地上二波、衛星二波の新体制のもとでどうなのか。いわば一種の提言ですけれども、もう時間がございませんからそこまで触れませんが、こういう一つの前提を置きながら、公共放送としてはNHKでよろしい、しかし、幾つかに分離をして競争原理を採用しようというような意見も出ている。これはぜひ一度検討してもらいたい。  しかも、そういう前提のもとに、ローカル放送をもう少し充実した方がいい、こういう意見をいままでずいぶん聞かされてきたし、われわれも言ってきました。特にその中で、私は九州熊本ですけれども、くにに帰って見てみますと、東京中心の番組がどうも多い。北海道と鹿児島は、正確に制度上の時差というのは設けられておりませんけれども、大体二時間の時差がある、こう見ていいでしょうね。したがって、ローカルでやっているものはいわば中央の骨幹になっている番組の穴埋め、実はこういう感じを非常に濃厚に持つわけです。ですから、東京を中心にしてつくられている番組も幾つかあります。北海道と九州、沖縄の視聴者はそれになれっこになっていると言えばそれまでですけれども、さてそういうような扱いが妥当であるかどうか。やや番組の編成上検討の余地があるであろうし、しかもローカルをもう少し充実していかなければならない。しかも衛星となった場合、これは一体どういう変化を遂げていくか、一通りの想像もできます。つまり、こういう新しい時代における協会運営のあり方というものはよほどきめの細かな体制の確立が必要だ、こう思うのです。ですから、要するに四波になったこういう状態において、経営の規模、経営展望というのはどうなのかということを、少しくお考えがあればひとつ聞かせておいてもらいたいと思います。
  121. 川原正人

    川原参考人 確かに、これは非常に大きな問題であろうと思います。私ども放送事業が始まって以来六十年近くになりますけれども、その中でもテレビ放送開始のときと並ぶ非常に重要な転機、新しい分野の開けてくる時代だろうと思っております。それに対しまして、私は事の重要性はよく認識しておりますけれども、それでは、その四波、少なくとも四つのチャンネルがテレビジョンにおいては私どもはできると思っておりますけれども、それをどのようにして活用し、また今度は放送衛星というものが、単に従来の地上の波と違って、これは無限と言えばややオーバーかもしれませんけれども、非常に多角的な利用の仕方がある、能力を持っている、そういうものをどのようにして本当に国民の財産として視聴者の方々に還元し、サービスを充実していけばいいのか、これは大問題だと思いますが、いまそれを私どもが、いまから三年先、五年先、十年先をきれいな設計図の形で引こうとしても、なかなか問題が多過ぎて、ある一定年限まで先の設計図はちょっと引きかねる。これはある程度技術進歩、実際に今度は衛星放送が始まってその普及の度合い、そういうものを見ながら、またそのときどきの視聴者の御要望等を見ながら考えていくしかないのではないか。しかし、これは非常に重要な転機であります。  それからいま一つ、ローカル放送の問題についても、これは私どもすでに現在の地上の波の中でも幾つかの問題があることはよくわかっております。それで、将来でき得べくんば各放送局ごとに素材を自分でもって自由な編成ができるということが可能であるならば、それが一番理想的であろう。しかし、あらかじめすべての番組を各局に配っておいて自由に編成しなさいというには、いささかまだいまの技術力では不十分でございますし、私ども財政力がまずそれに伴いませんので、いまのような形で基本はある編成表をつくって、その中で各ローカル局はローカル局長の判断において自由に編成できるものは編成してほしい。具体的に申し上げれば、先般仙台においてスパイクタイヤの功罪というものをかなりの長時間、夜も時間をとってやりました。雪の中のスパイクタイヤというのは、これは南の方に出しても余り意味がないことですから、これはもちろん東北、仙台を中心にやりましたし、また西の方では、大阪、広島、松山、福岡、これらの西日本の放送局が瀬戸内海を中心にして特殊な番組を編成いたしまして、これは数年前からかなりの実績を上げております。内輪の話でございますけれども、先般、放送記念日に当たって私は表彰をいたしました。西日本だけで独自のそういう番組を編成しております。これが本当のこれからのローカルのあり方であろうというふうに思っております。ただ、現在非常に技術的な制約、財政的な制約がありますので、一〇〇%御要望にこたえ切れておりませんけれども、将来はそういう方向に向かっていきたい。もちろん、その中にこの衛星の波がどのように活用できるか、これは私ども至急検討しなければならない課題であると思っております。
  122. 森中守義

    ○森中委員 これは会長、ここでその議論をしてもちょっともうどうにもなりませんが、新しい体制を迎えるわけですから、新時代に対応するNHKはこういう放送の展開をやるのだというようなことをまとめたものを、ぜひこの委員会等で議論できるようにお出しいただきたい。  それから、大臣に最後にお願いしておきますが、臨調の最終答申で、郵政の場合には今日の電波監理局も通信政策局も廃止して新しく三局をつくるのだ、こういう答申になっておりますね。それで、どうなんでしょう、これはこの場の議論ではちょっと触れるべきであるかどうかもわかりませんけれども、要するにBSの時代が来る、CSの時代が来る。いわば放送の新しい幕あきを迎える時代において、これまた行政の対応も簡単じゃいかぬ。だからといって、言論報道の自由といいますか、表現の自由を侵犯するようなことは許されない。しかし、できるだけそういうサイドに対してより高度な行政サービスができるようなことが必要だと私は思うのです。ですから、今日の電波に有能な人材がそろっている、この人材をさらにそういう行政サービスの向上に役立てるような体制をとってもらいたい。要望でもございますが、何かそういうお考えをお持ちであれば、一言見解を求めておきたいと思います。
  123. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 今回の臨調最終答申の中で、電気通信行政、電波放送行政について機構の改革をする必要があるだろうという提言を受けておるわけでございまして、この点は、電気通信、電波放送の新しい技術進歩、またそれに相呼応する国民あるいは社会経済のニーズというものを考えました場合に、私もこれは検討に値する意見であるというふうに思っておるわけでございます。いまどうするということを申し上げるほど検討が進んではおりませんので断言はお許しをいただきたいと思いますが、私は検討に値すると思っておるわけでございます。  また、それらの機構は当然に有能な職員の諸君によって動くわけでございますから、御指摘のように、すぐれた人材を求める努力をしなければなりませんし、また、職員の諸君についても研修等自己啓発の機会を与えまして、その能力を存分に発揮できるような体制を整えていくということが大臣の役目であると心得ておるつもりでございます。
  124. 森中守義

    ○森中委員 これで終わりますが、もう一つだけいまのことに関係しまして、何か北陸あるいは信越の電波監理局を廃止せよ、こういう意見等が出ているようですが、これはひとつ桧垣郵政大臣の在任中に間違ってもそういうことがないように、生命をかけて阻止してもらいたい。これをお約束願っておきたいと思います。
  125. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 行革に対する御見解はそれぞれのお立場で異なっておるように思われるわけでございますが、私ども中曽根内閣の一員としては、昨年九月に閣議決定、行革大綱が決まっており、また先般の最終答申の後にも閣議決定が行われておるわけでございます。答申の趣旨を最大限に尊重して、意見の調整を図りながら、逐次実施をするということに同意をしている身でありますから、ただいま申し上げましたようなことで私どもとしては努力をしなければならない。  ただ、大事な問題は、地方電波監理局というのもそれぞれ地域の電波関係者と直接接触する重要な役割りを果たしておるわけでございますから、地方の地域の方々に御迷惑をかけるということのないように最大の工夫と努力をしなければならぬというふうに心得ております。
  126. 森中守義

    ○森中委員 心情は心情としてわかるけれども、臨調は御承知のようにオーソリティーではない。これをどうするかというのは内閣の選択もある、国会にも選択権がある。ですから、これは長年役所勤めをなさってきた大臣としては大体おわかりのはずですから、その在任中にお城の中の一角を取りつぶされたなんということになったら切腹ものですよ。これは子々孫々まで、桧垣さんの時代に北陸、信越の電波監理局がつぶされたということになるとちょっとまずいのじゃないですか。ですから、サービスは、もう今日ほど電波が重要なことはないのですから、それは生命をかけてでも突っ張ってもらわなければ困りますね。  それはお約束いただけたものとして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  127. 左藤恵

    左藤委員長 次に、大橋敏雄君。
  128. 大橋敏雄

    大橋委員 私は、逓信委員会に所属しまして、NHK予算に対する質問はこれで二回目でございます。昨年は、私自身のNHKに対する認識あるいは理解を確認しつつ、若干質問したわけでございますが、後で会議録を読んでいきますうちに、初年兵ながらも、来年度予算、いわゆる五十八年度予算に対しては多少反映できるものがあったのじゃないかなというふうに自分なりに理解をしてきたわけでございますが、今回のNHK予算の財政収支を見てまいりますと、百六億の赤字が単年度で出ている。しかしながら、その赤字はこれまでの繰越金等で相殺されて、まあ五十八年度までは事なくいける。しかしながら、五十九年度になると、もういよいよ完全な赤字経営に入らざるを得ない。先ほどから質問者の方からも出ておりましたように、五十九年度またまた値上げかなという話がされているわけでございますが、私も、単純にそうした収支計算の上から見ていく場合は、五十九年度はいよいよまた値上げだろうな、こう思うわけでございます。しかし、安易な値上げは断じて許されない。おわかりのとおりに、精いっぱい経営改善の努力をし、あるいは改革をし、なおかつやむを得ないということになれば、視聴者の方も理解されるでありましょう。先ほど会長さんの答弁を聞いておりますと、とにかく精いっぱいの努力はしてきた、節約もしてきた、しかしもう一度洗い直してはみましょう、だけれども厳しいですね、こういうお話でございました。  そこで、私も会長さんと同じような気持ちに立ちまして、しぼりにしぼって、なおかつまだ出ないかという立場から、きょうは二、三また質問をしてみたいと考えております。  その一つは、言うまでもなく、収入の確保、支出の節約、むだを省いていく、合理化という基本的な方針の中から出てくる問題ではございますが、受信契約の向上と受信料滞納の解消、これに全力を挙げるべきではないかな、私はこう思っているわけでございます。NHKさんもそれなりに努力なさっていることは理解できます。しかしながら、実績から見ますと、いずれも余り期待できる状況ではない。このままの状態でいくならば、受信契約にしろ、あるいは受信料の滞納解消問題にしろ、何だか限界に来ておるのではないかな、このような感じを持つわけでございます。  五十八年度契約数を見ますと、三千一万八千件で、前年度比四十五万件と見込まれているようでございますが、これも果たして期待できるのだろうかな。私が先ほど限界ではないかなと申し上げておることは、残りの大部分はいわゆる意図的な契約拒否あるいは滞納ということではないだろうか、このように考えるからでございます。受信料あるいは滞納状況から見ましても、一般的な滞納者とそれから意図的な滞納者が明らかに示されているわけでございますが、これもだんだん増加しておる状況にあります。  いずれにしましても、受信契約あるいは滞納解消という問題は、視聴者間の公平を確保する、あるいは経営安定の立場からも不可欠な問題である。そういうことで、私は前回も、これは適切な措置をとるべきじゃないですか、このようにお尋ねしたわけです。たとえば、受信料の滞納については、放送内容を充実せしめ、あるいはよい放送をせしめて視聴者の理解を高めれば、おのずと滞納は解消されていくのだ、そこに努力をしております、こういう答弁であったわけでございますが、実態を見ますと、そういうわけにはいっていないように思うわけでございます。こういう点についてのお考えをまずお尋ねしてみたいと思います。
  129. 林乙也

    ○林参考人 御質問の契約の確保、収入の適切な維持という点につきまして、御指摘のとおり、NHK不偏不党立場から適正な報道をなし、また豊かな番組を提供するためには、何よりもまず経営の自主性が必要になるわけでこざいますし、また、その際に受信者の方々の理解と納得を得て負担の公平を図っていくということが必要でありますことは、ただいま御指摘いただいたとおりでございます。  ところで、受信の契約の状況でこざいますが、昭和四十年の前半ころには、受信契約の増加も年間約八十万から九十万ということを確保し得ておったわけでございますけれども、昨今の状況のもとでは、本年度受信契約の増加目標を五十万、来年度受信契約の増加目標を四十五万というように設定せざるを得ないという状況になっておるわけでございます。それは何よりもまずテレビの受信機の普及が限度に達しておるということと、それからいま一つは世帯の伸びも従来のようには見られない。しかも、その中で独身世帯というような、テレビの所有の面についてもまた受信の契約を図る上におきましてもなかなか困難な世帯というものが、年間約四十五万世帯ぐらい増加するわけでございますけれども、そのうちの約四割近くは独身世帯の方による増加だというようなことで、契約の環境もなかなかむずかしいというような、非常に困難な状況が出てまいっておるというようなことも申し上げざるを得ないわけでございます。しかし、私どもは、あくまでも従来の努力の積み重ねの上に立ちまして、テレビ所有世帯が年間推定大体三十六万世帯程度増加するというように見込まれておりますので、それをいささかでも上回る世帯の契約を図ると同時に、また、事業所等の契約を確保する中で、総数として来年度は四十五万の契約の増加を図ってまいりたいというように考えておる次第でございます。  また、いま一つの、滞納の状況でございますが、確かに昭和四十年の後半から五十年の当初にかけまして年々相当数の滞納契約者がふえてまいったわけで、私どもとしても非常に懸念をいたしたわけでございますけれども昭和五十四年以降そういった増加もほぼそれ以上には増加させないといいますか増加しないところにまで、私どもまた視聴者の方々との緊密な意思疎通を図る中で抑止し得ておるわけでございます。御指摘のように、実数といたしまして五十六年度末に九十八万九千件あるわけでございまして、顕著にそれを減少させ得ているというところにまでは私ども努力不足もございまして至ってはおりませんけれども、少なくともまずそれをふやさないというような努力を重ねながら、今後さらに努力を積み重ねる中で、幾らかでもこれを減少させていきたいというようなことを考えておる次第でございます。
  130. 大橋敏雄

    大橋委員 放送内容の充実強化でそうした滞納者の解消を図っていく。私、逓信委員になりまして特にNHK放送を拝見しておりますが、内容は非常によくなってきたんじゃないかな、すばらしいものだというふうに感じております。そういう思いで番組をよくすれば滞納者が解消するのじゃないかな。たとえば、去年なども中国孤児の問題を放送したところ、非常にそれに感心をして、いままで滞納していた人が全部納めてくれたというようなお話も答弁の中でありましたが、しかし、実際に数字を拾ってみますと、減るどころかふえておるわけですね。五十六年の滞納数は九十八万九千件、五十七年九月で九十九万六千件、約百万件近く滞納があるわけです。そのうちいわゆる意図的な滞納者も、五十六年が十一万二千から五十七年九月は十一万四千とふえているわけですね。一生懸命努力し、そしてよくしていけば、それを理解して払ってくれるだろうと期待されている皆様の気持ちとは逆に、両方ともふえていっているわけです。私は、いままでの契約あるいは滞納を解消していくのはそれなりの努力の成果があったと思うのです。あとの残り、このわずかな残りの部分について、これはやはりもう一歩いままでと違う何か新しい考え方をもって対処しないと解消しない。これは特に会長さんに頭をひねっていただきたいと思うのです。というのは、まじめに受信料を納めている人の立場からいけば、極端な言い方をしますと、ごね得といいますか、そういうことで、支払ってない方、滞納している方、これは許されないと思うのです。だから、私は、適切な何か措置をとるべきだということを前回も申し上げましたし、今回もその気持ちは変わらないわけですが、会長さんのお気持ちを聞かせてください。
  131. 川原正人

    川原参考人 確かに、大部分の視聴者の方は私どもに対して受信料をきちんとお払いをいただいております。そういう方々からごらんになった場合に、払わない人間がいるということは、公平負担という見地からいいますとまことに御不満が残ると思います。そのことは私どもが、契約をしていただけない方、受信料を払っていただけない方に対しては、何としてでも契約をちょうだいし受信料を払っていただくように努力しなければいけないと思っております。御指摘のように、よい番組を出しておればその問題が解決するかというと、ただよい番組が出ていれば自動的に受信料が入ってくるという仕組みではございません。番組番組でごらんになっていても、お金を払う段になると今度はまた別の観点からお払いを渋る方がいるのは事実でございます。この問題は私どもここ数年非常に頭を痛めている問題で、私ども努力でできることはあらゆる努力をいま講じております。ただ、さらばと言って、一時何か法律制度等でより強い方法をとるということも御議論のあったことはよく私ども承知しておりますし、ざっくばらんに言って、私どもの部内でもそのような議論があることはございますけれども、ただ、そのようなことが今度はかえって、非常に善意を持ってあるいは進んで、NHKはわれわれにとって必要な放送局だ、ぜひわれわれ国民が支持していかなければかえって非常に危険なことさえ起こるではないかということで御支持をいただいている方に、また逆の影響を与えることが非常に大きく心配されるわけです。その点で、私どもとしては、まず何よりもいい番組視聴者期待にこたえる番組が出ていなければならない、これは大前提でございますけれども、それに加えまして、いま私ども部内では営業と申しておりますけれども、集金関係の職員を督励していろいろな手だてを講じまして、当然、意図的にお払いにならない方もいますけれども、そうではなくて、残念なことに昼間御不在、つまり独身の方とかお二人共働きの世帯が最近非常にふえております。なかなか昼間会えない、そういう方に対しては、結局私ども夜でもあるいは日曜日でも休日でもこちらがお伺いしなければならぬ。これは部内の職員仕事としてはいろいろ大変な仕事ですし、問題もありますけれども、しかし、これは私どもが当然やるべきことであろうということで、いまその辺のこともさらにもう一段何か工夫の余地はないかということで、お目にかかることができるとある程度の方はお払いいただけるということも現実にございますので、その辺のことをさらにまた工夫してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  132. 大橋敏雄

    大橋委員 ざっと百万件ですから、カラーテレビの料金に換算いたしますと、これを全部解消したとすれば百億入ってくるわけですから、これは決して軽視できない問題だと私は思うわけです。また、事務所などの非世帯契約状況も、契約率は五十七年度八九・六%、それから五十八年度九〇・三%、あと残り一〇%程度、これもいま言うようにある意味では意図的に逃げられているのではないかなと私は思うわけでございますが、これらの解消も従来のあり方では解決できないのではないかなと、いまの会長さんの御説明に期待を寄せて次の問題に移りたいと思います。  今度は郵政大臣にお尋ねをいたします。  受信料の免除制度の見直しについてでございますけれども、いままで免除対象の施設は社会政策あるいは福祉政策、文教政策上いわば国家的な要請に基づいたものがほとんどでございまして、これも私は昨年質問したわけでございますが、免除制度そのもの、方針そのものはまことに結構なことでございますけれども、その免除相当額の負担が大部分いまだに視聴者受信料であがなわれている、これは筋違いじゃないかなということを申し上げました。昨年は政府当局もあるいは大臣も、同感です、積極的に関係各省とも相談してその方向で努力いたします、こういう確答をいただいております。僕はきょう会議録を持ってきているのですけれども、時間がございませんのでそれの確認をとることはやめますが、そこまでの答弁をいただいておりながら、現実はどうなっているかと見てまいりますと、さっぱり改善されておりません。五十四年度、五十五年度、五十六年度とだんだんと受信料の免除の額は上がっていっておりますし、それがそのまま受信料であがなわれている。防衛庁設置法関係は五十七年度から防衛庁の方で負担してくださっておるそうですね。たとえば射爆場付近の受信者の免除については防衛庁が負担をし出した、これが私は筋だと思うのですね。当然、社会福祉や社会保障の立場からあるいは文教の立場から免除しているものは、それなりの省庁で負担すべきではないか。もう一度私は新しい大臣のお気持ちを聞き、さらにこれを具体化してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  133. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 受信料の免除措置は、申し上げるまでもないと思うのですが、放送の普及だとか社会福祉、教育に対する放送利用の普及等の見地から、NHKの自主的な施策として従来実施されてきたわけでありますが、今日の放送の普及状況、さらにNHKの厳しい財政事情というものを考えますと、NHKとしてもその見直しということが必要であると考えて、五十三年度以降見直しを進めてきたと聞いておるわけであります。現在までに職業訓練所とか刑務所等については免除を廃止したということでございます。  現在実施されております免除の各項目につきましては、その趣旨から見て、私は免除そのものには意味があると思うのでございますけれども、それをNHK負担すべきものかどうかということにつきましては、むしろ政策的な免除でございますから、当該政策官庁で負担するのが私は筋だと思うわけでございます。ただ、これの仕組みをどうするかというのは大変むずかしい課題であると思いますので、いままでもNHK、郵政省でもいろいろ検討はしてまいっておるのでございますが、今後ともNHKとの間で連絡をとり、また関係各省の理解を得るような努力を続けていきたいというふうに思っております。
  134. 大橋敏雄

    大橋委員 去年も箕輪郵政大臣が同じような答弁をなさったわけですよ。だけれども、全然変わらないですね。幾ら努力します努力しますと言ったって、結果的に成果が出なければ水の泡ですよ。これでも大ざっぱに八十四億あるわけですよ。各省庁で免除額を補てんしてくれればそれだけNHK予算は楽になるわけですから、いま非常に厳しいときですから、これもしぼり出す一つの内容だと思っているわけですよ。是が非でも新大臣の方からいまの御答弁のとおりに実現をしていただきたい、こう思います。もう一言お願いします。
  135. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 ちょっとデータ的に補足させていただきたいと思いますが、五十三年以来何万件かにつきまして免除を廃止してきたわけでございますけれども、五十八年度の免除廃止予定といたしましてNHKの方から聞いておりますところでは、高等学校あるいは青年の家等の免除措置を廃止いたしまして、その件数は約二万件であるということで郵政省の方に届け出ておりますので、郵政省としましても、その趣旨を了といたしまして、近く免除廃止を認めるという方向で進める予定でございます。
  136. 大橋敏雄

    大橋委員 免除そのものの方針は私は賛成なんですよ。免除している負担額をだれが負担していくのかという問題なんですから、間違わないようにお願いしますよ。免除していくことは私は賛成なんです。その負担NHKに持たせていることは筋違いじゃないですか。たとえば厚生省とか文部省とか防衛庁とか、そういうところで当然見ていく内容ですよと言っているわけですから、それは間違いないようにお願いしたいと思います。  時間がないので次に移りますが、副次収入の確保、増についてももっと積極的に対処していただきたい。これも議論したかったのですけれども、時間がございません。放送法九条三項の営利目的の禁止の原則はあるとしましても、長期ビジョン審議会の答申にも、「弾力的解釈が行われることが望ましいが、さらに、NHKの増収施策の効果的な実施が可能となるよう、法制面の検討を行っておく必要があると考える。」また、経費の節約と国等の費用負担についても、口座振替の促進を図ることも経費節減の上からきわめて重要な問題であることを提起いたしておきます。  時間の都合で次に移ります。  国際放送に対する政府交付金の大幅増額の必要性を私はこの前の質疑のときにも訴えたわけでございます。「国際放送の果たす役割りというものは従来にも増して重大である、」国際放送の充実は喫緊の課題だ、これは昨年の箕輪大臣答弁の一端ですよ。国際放送の充実は喫緊の課題だ、だから、五十七年度は八百万円の調査研究費を計上し、来年度すなわち五十八年度に向かって充実強化をする、こう言明なさったわけですよ。よろしいですね。ところが、五十八年度予算内容からはむしろこれも後退しております。  たとえば、五十六年度NHKは二十七億六千二百万円、政府交付金は九億九千八百万円、交付率は二六・六%です。五十七年度は三十億一千百万円、政府交付金は十億四百万円、二五%と逆に下がりましたね。さらに今度五十八年度を見ますと、三十一億五千八百万円がNHKですね。政府交付金は十億六百万円、前年よりまた下がって二四・二%と、このようになっております。ですから、昨年の大臣のあのすごい決意と、実際に五十八年度予算を見ましたときに何だかちぐはぐな感じを実は受けるのです。  先ほどからの質問の中にも、国際放送については外務省とともに三カ国の重要な施設を調査してきたという報告がなされておりました。フランスを中心に三カ国という話でしたかね。それを見ましても、フランスは一部受信料で賄っているけれども、他の国は全部国のいわゆる政府の交付金で賄っているのだという話がありましたように、わが国はもっともっと国が積極的にこのお金を出すべきだと思うのですね。放送技術あるいは内容は全面的にNHKにお任せして結構だと思います。それだけの力はお持ちです。しかしお金の方は、NHKに任せるということは受信料が行くだけですから、こういう国際的な放送関係は国がもっともっと本気でお金を出すべきだ、こう思うわけでございますが、いかがでございますか。
  137. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 国際放送内容の充実強化を図るべきであるということは、先ほども鈴木委員にお答えをしたとおりでございまして、私もそのように考えておるわけでございます。  ただ、予算の仕組みというのが、交付率で交付をしておるのではなくて、命令放送部分について政府がそれを負担をする、自主放送部分はNHK負担をするというやり方になっておるものですから、いまの財政事情のもとで、私どもはこれの増額について努力を怠ったとは思っておらないのでございますけれども、台所の方が言うことを聞かない、一般ルールに縛られてしまって何ともならぬわけでございますので、先ほど申し上げましたように、単に郵政事業であるというような小さな考え方ではなくて、むしろ政治、経済、文化、日本の国益に関する問題であるという認識を持って、全政府的なあるいはまた与党、国会の諸先生のお力添えを得まして、国の方策として、この際、国際放送についての強化、なかんずく財政資金の増大ということに私は努力をいたしていきたいと思っておりますので、どうぞひとつ有力な大橋委員も御協力、御支援を賜りますようにお願いを申し上げましてお答えにしたいと思います。
  138. 大橋敏雄

    大橋委員 いま大臣がおっしゃるとおりの考えですよ、僕らも。だからこそ国はもっともっとお金を出しなさい。いま言うように、他のイギリスとか西ドイツとか先進国のあり方を見ますと、全く大違いなんですよね。日本の場合は九億九千八百万円だったでしょう。イギリスは百八十四億円、それから西ドイツも百九十四億円、そのほかもう全部これに相当するような大きなお金を出しておりますね。日本は余りにも、ただ財政が厳しいとかなんとか言いますけれども、国際的な国益の立場からという立場に立てば恥ずかしい出資ではないかと私は思うのです。もっともっと大幅にお金を出して、そしてNHKの方のお金はもっとほかの方に使えるようにしていただきたいことを申し上げます。  もう時間が来ましたので、最後にもう一言。郵政省の国際放送に関する調査研究委員会というものがありますね。これは三月の十五日です。すぐこの前ですよ。海外広報体制を強化するため国際放送の充実を求める報告書をまとめたということが報道されておりました。その内容をつまびらかに申し上げる時間がございませんが、簡単に申し上げますと、国内送信所の出力を現行の三倍の三百キロワット体制にするということ、もう一つは中米、アフリカ、南西アジアに中継局を設ける、こういうことが報告書の中にうたわれているわけでございますが、これに対する郵政大臣の所信をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  139. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 お話しの研究会は、実は電波監理局長の私的諮問機関として御研究をいただいたわけでございます。先般答申をいただきまして、私も拝見をいたしております。それで、この答申の内容は私どもも大変貴重な御意見として受けとめておるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、八俣の送信所が大変古くなり、また出力も弱いということでございますから、それの新しい整備の問題、それから、受信状況が大変悪いアフリカ、南西アジア、南米という地区に対する中継基地の設備の問題は、私どももその実現に向かって対処をしなければならぬということで、現在、こういう席でどうかと思いますが、与党の関係部会とも協議を進めておる段階でございます。ぜひとも実現に向かって全力を尽くしたいというふうに思っておるわけであります。
  140. 大橋敏雄

    大橋委員 終わります。
  141. 左藤恵

    左藤委員長 次に、木下敬之助君。
  142. 木下敬之助

    ○木下委員 私は、常々NHK番組は質の高いものが多いと感心しているわけでございますが、特に「NHK特集」は興味のある主題を取り上げ、深く取材していて、感銘深いものが多いと思っております。来年度から「シルクロード」の第二部が始まると聞いて楽しみにいたしております。こういったいい番組はそれなりに高い制作費がかかっているものと思います。その制作費のあり方、使われ方についてお伺いいたしたいと思います。  「創」という雑誌があるのです。この雑誌の本年四月号に、NHKの海外ロケ番組の制作態度を、金に飽かして狂ったようにむだ金をばらまいていると批評した文が載せられております。その筆者はその中で、「NHK特集」のブータン取材番組の制作のときに、NHKがブータン政府に対して払ったという八千ドルに対して幾つかの疑問を指摘して、その文章の終わりの方に、国会の承認を得なければならないNHK予算なのに、こうしたなぞの出費が国会で大した問題にならないのもミステリーである、こう述べています。単なる憶測記事であって、雑誌の記事の一つ一つにそう目くじらを立てる必要もないかもしれませんけれども、われわれ審議に携わっておる議員まで何か意図的にこの問題を避けているのではないかという疑問までこの方はお持ちのようですので、その誤解を解くためにも私が質問いたしますので、はっきりと御答弁をお願いいたしたいと思います。  この文はそんなに長くもないのですけれども、全部読むわけにもいきませんので、私から説明いたしますと、この筆者は、民放のある音楽番組がブータン取材を計画した折に、ブータン政府筋からロケに関して取材経費のほかに高額のロイアルティーを請求された。小さな下請が制作に当たっていたわけで、下請にとっては大変大きな金額だと思うのですよね。そのときに、NHKがブータン取材の際にロケ経費とは別個に八千ドル、約百八十万円を払ったとの話を聞いた。それなのに、先ごろ来日したブータン政府の幹部に番組制作を担当している下請プロが問い合わせたところ、その種の金は払う必要がないと言われた。これで、これは一体どうなっておるのだ、どこに何のために払ったのだろうか、NHKのスタッフは本当に金を払ったのだろうかといった疑問を提示しておるわけでございます。  そこで、私からお伺いいたします。  まず、ブータン取材の際にロケ経費とは別個に八千ドルを払ったというのは事実でしょうか。どういう名目でどこに対し幾ら払ったのか、明らかにしていただきたいと思います。
  143. 川口幹夫

    ○川口参考人 「NHK特集」で「秘境ブータン一という題で二回にわたって放送いたしましたのは皆様御存じのとおりでございます。中身としては、いわゆる鎖国の国ブータンが全くいままでカメラの前にさらしたことのない肌をさらしたというので、大変評判を呼んだと思います。  この取材は、ブータンがそういう鎖国を解くというふうなことがわかりましてから、私どもの方からいわゆる取材願を出しました。それに対しまして、昨年の五月十日付でありますけれども、担当者の方にこれはブータン政府からのマークの入った公式文書でございますが、この中に、取材に際しては、テレビなどの取材については八千ドル、それから個人的な取材に対しては五千ドルをいただくことになっておる、したがって、あなた方の放送局がもしこの取材をなさりたければ八千ドルをいただきますということが公文書で参っております。これに対して私どもの方としては、百八十万という金は全体の取材費の中で相当量的に多いものでございますから、これについての十分な検討をした結果、たとえばほかの放送機関との関連ども調べまして、現実にオーストラリアの放送局から同じような取材希望が出ておりまして、オーストラリアの放送局の方も八千ドルを払って取材をしているというふうなことでございます。したがいまして、私どもの方が取材に際して余分な金を払って取材費をつり上げたということではございませんし、それから、どこへ払ったかわからないというのは全くの誤解でございます。ブータン政府の方に払っております。
  144. 木下敬之助

    ○木下委員 結構でございます。ちょっと重ねてその方の疑問についてお聞きしたいと思うのです。いまのはそのとおりだと思います、まさかそんな変なことはないと思っておりますから。  こういう費用が要るようになったのは、もとはと言えば、NHKが「シルクロード」取材の際に中国に巨額な謝礼を払って以来のことではないか。それ以来、日本のテレビ局は大金持ちであるという定説が外国政府の間で浸透したからだ、こういうふうにも述べておるのですが、この意見に対してどう考えておられますか。この際、「シルクロード」の制作費等というのは一体幾ら全体でかかったのか、中国政府に対して払ったのなら幾ら払ったのかを明らかにしていただきたいと思います。
  145. 川口幹夫

    ○川口参考人 「シルクロード」の取材につきましては、中国の放送局、電視台と共同制作をやったわけです。そして、これの契約のときに、通常のいわゆる制作に要するお金のほかに協力費として中国側に支払うことを了解して、それで調印したわけです。この金額については、実は中国との約束がありますので、お金の額はここで申し上げるのは御勘弁いただきたいと思いますけれども、相当高い金額でございました。これは長期にわたる取材と、それから、たとえば軍隊が機材を、車とか飛行機とかそういうものを提供する、それから遺跡とか文物、そういうものの保護というふうなもののために非常にたくさんの経費を要するという、これも十分理解できるところでございます。したがって、そういうものに対する協力費を一部負担することはやむを得ないだろうという考え方で、私どもあの取材を共同制作したわけでございます。トータルでは、番組一本当たりは通常の「NHK特集」の大体二倍ぐらいかかっている。ただ、「NHK特集」は御存じの方が多いのでございますけれども放送をやって、再放送をやりまして、それから再々放送をやって、それからまた芸術祭そのほかで賞をいただきましたものを再度放送してというぐあいで、一本について大体三回ないし五回は放送しております。したがいまして、いわゆる番組にかかった経費に対する効果というのは非常に高かったというぐあいに判断しております。
  146. 木下敬之助

    ○木下委員 中国に対して幾ら払ったかは言えないというのはいいのですけれども、われわれ知る権利があってこの予算審議をしておるわけですから、少なくともどの項目のどこに入っている、どれだけになっていると、はっきりおっしゃっていただきたいと思います。特に、いま言われたように二倍かかっている。いま一本についてだけ言われましたから、これは一体何本つくって全体として幾らだ、通常が幾らで総額が幾らで、その中に入っているのだ、ここに入っている以外からは出したのじゃないと言うなら言う。その辺、もう少し言える範囲ではっきりしてください。
  147. 川口幹夫

    ○川口参考人 番組経費というのは、たとえば出演者とか美術費だとか、そういった項目別に細かい積算をしたものと、それから、いま申し上げました協力費の形で一括してお払いする分と、取り込んで支払っているということでございます。
  148. 木下敬之助

    ○木下委員 だから、この「シルクロード」全体は幾らでどうなっているのか、教えてください。
  149. 川口幹夫

    ○川口参考人 それは先ほど申し上げましたように中国とのお約束がございますので……。
  150. 木下敬之助

    ○木下委員 だから、言えないことは言わなくてもいいから、予算審議に対してあなたがわれわれに報告しなければならないことを報告してくれ。守秘義務か何か、そんなことは知りませんけれども、われわれが知る権利として明らかにしてもらえるはずのものをしてくれ。明らかにできないものはしなくていいですけれども、制作費が全体で幾らかかったかは当然報告しなければならぬでしょう。その中で「シルクロード」が幾らかかったかが報告できないということはないでしょう。この「シルクロード」全体の中で幾らかかったかは報告しなくてもいいかもしれません、あなたの考えで。だけれども、「シルクロード」に一体幾らかかったのかは教えていただかなければ困ります。
  151. 川口幹夫

    ○川口参考人 大体、二千六百万掛ける十三本ということでございます。
  152. 木下敬之助

    ○木下委員 一応それで総額がわかり、通常の倍かかったと言えばまあ推測もつこうというものでございますが、念のために確認いたします。中国にお払いしたのはこの中ですね。別の名目で出ていませんね。
  153. 川口幹夫

    ○川口参考人 そのとおりでございます。
  154. 木下敬之助

    ○木下委員 今後もいろいろあるでしょうし、いい番組をつくるためには、そういった話さないといった約束を中国と結びながらもつくらなければならない気持ちもわかりますけれども、制作に当たる態度として私は許されないことだと思います。当然はっきりできる範囲内のことで取材し制作すればいいのであって、そこにそれ以上の秘密をつくってまでつくらなければならない番組ではないと思いますので、その点どうお考えかをお聞きいたしたいと思います。
  155. 川原正人

    川原参考人 確かに、最近のテレビ番組というのは、制作技術も非常に複雑になりましたし、また高度の取材の方法がございます。特に、海外等に出た場合に相手国の協力も要りますので、かなり多額のものがかかってまいります。これはいまのテレビの発展段階から見てやむを得ざるものでありますし、特に、外国で取材する場合に、協会としまして、これが受信者に対して十分期待にこたえ得るものであるならば、ある程度のところはやむを得ないと私は思っております。また、これらの取材に要しました経費は、また別の形でこれを海外の別の放送局に販売する、そういう要望もございますし、あるいは出版等を通じましてその代金の回収等もある程度できますので、相当なものはやらしていただきたい、私はかように考えております。
  156. 木下敬之助

    ○木下委員 最初に私申し上げましたように、これをあいまいにさせると、私たち議員まで何か一緒になって隠しているような感じを国民が受けている。そういう状況で、私どもにもかけられたぬれぎぬを晴らすためにはっきりしてほしいと言っているのですから、どこまでも国民の知る権利を追求して明快にしていただきたいと思います。ぜひこの問題をはっきりして、今後、予算の中身についてしゃべれないといったものがあってはならないと思います。言いたいことはいっぱいありますけれども、きょうは時間も三十分に縮められましたことですし、続けてやろうと思います。  こういう制作費の問題というのは大変重要な問題であって、いまも言われましたように、幾らいい番組がつくりたいからといって、無制限にどんどんふくらんでいいものではないと思います。制作費の上限の歯どめというのを一体どういうふうに考えているかをお伺いしたいと思います。
  157. 川口幹夫

    ○川口参考人 番組につきましては、制作費の考え方というのは、もちろんNHK予算の中で使用するわけですから、当然のように上限はなければいけないというふうに思います。ただ、どのような番組をどういう目的でつくるのかというふうなことがありますので、たとえばいまの「シルクロード」の件ですが、「シルクロード」の場合は、そういう条件を加味してそれで了解をするというふうな形をとらざるを得ないと思います。一般的には定時番組の場合は、年度当初に予算を立てまして、その予算がその番組が持っている目的にかなうものであるかどうかをはっきり検討して決める、そのようになっております。
  158. 木下敬之助

    ○木下委員 制作者には制作者の立場としていろいろな考えがあるでしょうし、どうしてもそれを取材したいと思えば、さっき言ったようにしゃべらないということを契約しないと取材できないようなこともあるかもしれませんけれども、それは取材者が取材しようとする姿勢を追求するとそうなるというだけのことで、私は、NHKというものの性格と、その中で制作に当たる者としての哲学を聞いておるわけです。ただ、つくろうと思った人間がどこまでもそれを追求しようとすればいろいろなことが起こるでしょうが、それと別じゃないですか。NHKとしての責任を感じて制作に当たる者はどういう哲学でこの制作費の上限を考えているか。いま言ったような問題で、そんな国会の中でも明らかにできないような取材の仕方をしなければならないというのがNHK使命なのかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  159. 川原正人

    川原参考人 私ども、外部に対して秘密にしなければならないというのは時と場合によってはあるいはあるかもしれませんが、原則としてそのような姿勢では番組はつくりません。  それから、番組の経費の上限というのは、一つの金額をもって示すのは非常にむずかしい。先ほど申しましたように、かつてのテレビの番組は、それほどの複雑な取材方法をとらなくても、また通常の取材でもって番組ができたわけでございますけれども、やはりここまでいろいろな形で、民放等を含めてあるいは外国の放送局を含めて、番組の質が高まり、それに伴って非常に複雑な取材もしなければなりませんので、随時かさんできます。もちろん、これは私ども承認いただいた予算の範囲であくまで守るべきことでもありますし、また、個別のものにつきましては、それぞれのレベルに応じまして、あるいは部長の決裁でやるものもございますし、局長の決裁でやるものもございますし、また、物によりますと、当然私まで含めまして理事会等で十分に議論をして、例は少し外れるかもしれませんが、たとえばオリンピック等の問題であれば、本当にやる必要があるのかどうかということまで理事会で何度も議論いたしましたし、経営委員会までこれは意向をお諮りしております。そのようなものも当然あります。物によりましては、特に最近問題になっておりますスポーツ関係の番組の経費が非常にかさんでまいりましたので、これ等については、私自身、アマチュアスポーツ団体にもそのあり方について実は御相談申し上げつつあります。私どもだけではどうにもならないような問題もございますので、そういういろいろな条件に応じまして部内で慎重に検討してやってまいっておりますし、今後もそうしたいと思っております。
  160. 木下敬之助

    ○木下委員 幾ら高くてもやらなければならないということはない、当然上限があるわけです。特に、プロボクシングの選手権なんていうのはやっていませんでしたね。だから、いずれ何か考えてやっているでしょうけれども、できるだけはっきり国民の納得するような基準のもとで、それから重ねて申し上げますが、普通の取材の個人の人権とかを大事にした秘密というのは当然なければなりませんけれども、そうじゃないこういう経費に関しては、やはりどんなことがあってもあってならないのじゃないですか。私はそう思います。  外国へ出かけてやたらに大盤振る舞いするのも、年度内に予算を使い果たしてしまわないと次年度分の制作費を削られるからだ、こういったこともその中で言われていますが、そんな声のある中で、五十五年度からの三カ年の経営計画期間を終えて百六億円繰越金が残ったということは、物価の鎮静等いろいろあったと思いますが、大変結構なことで、経営に携わる皆さんとNHKに働く皆さんの努力のたまものと評価したいと思いますけれども、まだまだたくさんの解決しなければならない点があると思います。幾つかの点についてお伺いいたしたいと思います。  まず、NHKの五十八年度予算では、営業活動費が総額約四百四十六億円で、前年度より約二十四億円増、五・六%の増となっておるようです。経常事業支出総額の伸び、これは平均的なものでしょうから、これを上回っており、給与の伸びを大きく上回っている伸び方であります。また、五十五年から減少の傾向にあったと思うのですが、それがまた上向きになっておるようですが、この理由をお伺いいたしたいと思います。
  161. 渡辺伸一

    渡辺参考人 お答えいたします。  おっしゃるように、営業費は、五十八年度については四百四十五億七千四百万円を計上しておりまして、前年度に比べて二十三億五千六百万円、率にして五・六%の伸びになっております。  内容を申し上げますと、営業費の中には、まず広報費、受信者との接触を保ちながらNHK事業を理解していただくという面での経費でございますが、これが十五億三千万円、一億五千四百万円ふえております。  それから受信改善経費、これは鉄道障害等の対象物件が減ってまいりましたものですから、昨年よりも一億五千万円ほど減っております。  それからもう一つ、営業費の中には未収受信料欠損償却費というのが入っておりますが、これは御存じのとおり三%という率を抑えておりますので、わずかでありまして九千六百万円ふえております。  さてその次は、契約をし収納する経費でございますが、これが五十八年度総額で三百三十一億三千九百万円、増額としては二十二億五千六百万円で、七・三%になっております。これは契約をしますときの契約の手数料、それから三千万に及びます受信者の集金のための経費、あるいは滞納を抑止する、口座を促進するための対策経費というものが含まれているわけでございますが、そのほかに、五十八年度特に計上いたしましたのが、受信契約者の管理あるいは収納に当たります、領収書でありますとかそういうものの計査事務に当たります事務機器があるわけでございますが、これが全体でNHKは九十の営業所を持っておりますけれども、この計査機器が老朽してまいりまして、複雑な受信契約者に対応するにはいささか旧式になりました。これを新しいものに順次かえようというその初年度でございまして、そのうちの二十式を当五十八年度に新しく借りるということにいたしました。その経費が約五億七千万入ってございます。仮にその五億七千万の特別な経費を全体から除きますと、営業費は十七億八千万ほどの伸びでございまして、伸び率は四%ということでございますので、五十八年度特にその新しい計査機器を導入したというところが、本年度多少率が伸びた理由でございます。
  162. 木下敬之助

    ○木下委員 その点はわかりました。  この営業費の大半というのは契約・収納費ですね、この三百三十一億円。これは、約二千八百四十四億円の受信料収入を上げるために三百三十一億円かかっている、こういう状態と思いますが、NHKはかねてから受信料の口座振替を進めてきていると思います。これは一口で考えますと、いままで集金していたのが自動的に入ってくるようになるのだから、その分だけ集金の経費は浮いてきて、どんどん営業費は要らなくなっていくのじゃないかという感覚でながめておるのですが、この口座振替の利用率、その進捗状況と、その間の契約・収納費の推移はどうなっているのか。また、契約・収納に当たる人間の数というのはどんなふうになっているのか、教えていただきたいと思います。
  163. 林乙也

    ○林参考人 お答えいたします。  御指摘のように、口座振替につきましては、受信料の確実かつ安定した収納を得るためにきわめて有効な措置でございまして、協会といたしましても積極的にこれを進めてまいっておるわけでございますが、五十二年度をちょっと申しますと、口座の利用数が、契約総数二千七百十万六千件のうち一千十三万二千件でございまして、三七・四%の利用率でございました。本年度、五年を経過する中で契約総数が二千九百五十六万八千件、これは有料契約数でございますけれども、それに対しまして一千三百九十三万二千件、利用率は四七・一%というようになっておるわけでございます。五十八年度予算におきましては、口座の利用増加目標を百四十万というように設定いたしておりまして、それの実現の暁には利用率五一・一%、半数を超すというような形になろうかというように考えております。  そのことに伴ういわばコストメリットといいますか、そこらあたりをあるいは御質問のことかというように考えるわけでございます。確かに、口座の促進に伴いまして、直接に集金に当たる部分というのは負担が軽減されるわけでございます。ただ、営業の関係の仕事は、一般的な収納の業務のほかに契約者の維持、増進という事務がございます。それは、約三千万の契約のうち年間約一〇%相当のものが転居等によりまして廃止になるわけでございまして、それを上回る契約を新たにとることによって契約の総数の増加というものが果たされるというような、いわば契約者の確保、それから維持、増加というような業務があるわけでございますけれども、口座の振替によりまして、確かに収納面につきましては非常に軽減されるわけでございますけれども、こういった契約者の確保の面につきまして、むしろ、訪問して集金いたしますよりも、たとえば転居等に当たりましては過払いだとか誤払いがないようにということを特別にチェックさせなければならない等の問題もありまして、その意味では負担が増すというような若干の問題はございます。そういうようなこともございますので、コストメリットを端的に確保し得るというところにまでは至っていないわけでございますが、ただ、一つ申し上げられますことは、五十二年度に全国の集金に当たっております受託者の一人当たりの受け持ち件数が五千八百五十三件であったわけでございますけれども、五年を経過いたしました五十七年度におきましては六千百八十三件ということになっておりまして、その間五・六%ほどいわば一人当たりの受け持ち件数というものをふやすことができておるわけでございまして、そういう意味からしますと、いささかなりとも生産性といいますか、そういった意味での増進は図り得ておるのではなかろうかというふうに考えておる次第であります。
  164. 木下敬之助

    ○木下委員 もう時間もありませんから、詳しく詰めるのはむずかしいと思いますが、いろいろなことを言われておりますけれども、私も前に聞きましたときに、結局、集金に当たっておる人の手数料的なものが振替に変えたからといってそんなに減らないシステムになっておるのだ、そういうふうに私は理解をいたしております。いま受け持ちの数がふえておるのも、結局、自動振替にしたからといって集金人の手を離れるわけじゃなくて、その人の範囲の中に入っておるわけでしょう。だから、そういったことでふえるのはあたりまえで、いままで集金していたのが振り込んでもらうようになって、その人の見ておる範囲がふえて、しかも、自動振り込みにしたけれども自分の見ておる範囲だということで何がしかのお金がそこに入るようになっておれば、これは減るわけはないのです。ただ、私、集金に携わってきたその人たちのことを考えると、ずっと歴史ある仕事をやってきた方ですから、その人たちが急に自動振替になってどんどん収入が減っていく、こういうことを私望んでおるわけじゃありませんし、将来にわたってある程度のことは考えなければならぬと思いますけれども目標を持って、これだけの経費節減の大きな柱となり得るチャンスだと思いますので、長い将来では、その人たちの人数はふえずにいつの日か退職というような形の暁には、もっと機能的に、自動的に振り込む分にはほとんど経費のかからない方向で検討を進めていけばできる、こういうふうに思っておりますので、よろしく御検討をお願いいたしたいと思います。  ほかにもたくさん用意しましたけれども、時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。
  165. 左藤恵

    左藤委員長 次に、依田実君。
  166. 依田実

    ○依田委員 まず最初に、NHKのいわゆる退職者、そういう問題について伺わせていただきたい、こう思うのであります。  われわれ、番組をつくっておったときの状況から、最近は職場環境、いわゆる経営と組合との問題について種々改善が行われる、そういうことで、プロデューサー初め番組制作当局者が集中していい番組をつくるということに専念できる環境になったということがNHK番組を飛躍的によくしておるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。ただ、われわれに一つ心配が残っておるのは、いまNHKで一万六千人の方が働いておるわけでありますが、この方たちが、将来、自分たちが退職時、そういうときの状況にある種の不安を感じられているのじゃないか、こういうふうに思うのであります。特に昭和三十四年、教育テレビが発足いたしましたときに、通常の年次に比べて大学卒を非常にたくさんお採りになっておる。そういう方々の退職年限もそろそろ迫っておるわけでありまして、最近の退職者の数、そしてまたそのピークがいつ来るのか、そういうことについてまずお尋ねをさせていただきたいと思います。
  167. 横井昭

    横井参考人 お答えいたします。  この数年間の退職者の数は年間で大体三百五十から四百五十ぐらいでございます。その年間の三百五十ないし四百五十の中には、依願退職と死亡でおやめになる方が目の子でいきまして年間大体百人ぐらいいます。したがいまして、年間の定年退職は過去数年間では二百五十ないし三百五十、こういう状況でございます。  それから、いま依田先生から御質問ありましたように、確かに三十四、五年に教育テレビの開局のときにかなり多数の採用を行いました。御承知のとおりと思いますけれども、三十四年には大卒で七百、高卒で七百、約千四百、三十五年が大卒四百の高卒五百で九百ぐらい、こういう形で採用しておりますけれども、実はこの三十四年、三十五年は、卒業同時の就職じゃなくて、既卒の中途採用の方を約半数ぐらいは採用しております。したがって、三十四年に千四百、三十五年に九百ぐらい探りましたけれどもかなりばらついております。過去の数年間の傾向の中で退職率というのがございますから、それを推計学的に推計してまいりますと、現在在籍している職員の退職のピークは、いまから十五年後の昭和七十三年に大体八百五十名ぐらいの退職が出る。それまでの六十五年までが大体四百人から五百人、六十六年から七十一年までが五百から六百、七十二年が七百、七十三年が八百五十、その次はもう四百、三百、二百、こう落ちていく、こういう状況でございます。
  168. 依田実

    ○依田委員 確かにばらつきはありますが、いずれにしてもこれから定年退職者が非常にふえていく状況にあるわけでありますが、退職者の退職後の就職あっせんといいますか、そういうものがどういう状況に置かれておるのか。以前はNHK関連会社へ、天下るという言葉は余りよくないのでありますが、再就職をする可能性が非常に多かったのでありますが、いまはその職場がだんだん狭くなってきている。また、そういう会社も下から育ってきておりますから、上から来る方に対して抵抗もあるということで、なかなかNHKが再就職のめんどうを見切れないのじゃないか。われわれが聞いておりますのは、部長クラスでも、NHKの取引銀行の一勧誘員になって、後輩のところへ来て給与の振り込み、ボーナスを自分のところへ貯金をしてくれとかそういうような勧誘に職場を歩いておるとか、あるいはまた、ベテランの編集記者がテロップ、いわゆる字幕でございますね、そういうものの字が合っているか間違っているか、そういうものを校正する仕事についておるとか聞きますと、われわれの同僚としてそういうところへ行くということはちょっと心さびしい気がするわけでありますけれども経営として、こういう定年退職者にこれから退職後のあっせんをする余地があるのかどうか、あるいはまた、いま五十七になるときに定年でございますけれども、定年延長することによって多少生涯給与をふやしていこうという意思があるのかどうか、つまり、そういうような定年退職後に持っております職員の不満、不安というものをどういうようにこれから解消なさるのか、お話をしていただきたいと思います。
  169. 横井昭

    横井参考人 お答えいたします。  まず、定年延長の件でございますけれども、日本の社会の趨勢でかなり定年が六十歳定年延長で、労働省でも指導しているという状況の中で、私どもとしましても、効率化の進捗状況を見ながら、六十年度以降段階的に六十歳定年制を目指して、関連諸制度を含めて検討しているという状況でございます。退職者の老後の生活という点からいうならば、定年を延長することがまず第一に必要ではなかろうか。しかし、それにもかなり障害がございまして、何とかしてそのことをいま検討している最中でございます。  それから、退職者の再就職等につきましては、私どもとしてはできるだけの御援助とお力添えをしたいというつもりで精いっぱいやっておりますけれども、正直申しまして、先生が御指摘のとおり、私ども関連企業につきましてもせいぜい年間に五十から六十ぐらいという再就職しかあっせんできません。それからそのほかに、個人的に工学博士だとか、電子工学のベテランだとか、あるいは言葉の専門的能力を持っているとか、そういう方々については二十人か三十人ぐらいの就職のあっせんはできますけれども、その他は大体自立再就職、自主的な生活設計を私どもがどれだけ御援助申し上げることができるかということに精いっぱい力を出している、こういう現状でございます。
  170. 依田実

    ○依田委員 以前は、まだ民放がいわゆるスタッフの整備ができてないときはNHKから民放へ行くとか、あるいはまた、技術関係者はそれぞれの電気メーカーとかそういうところへいいポストで再就職できたわけでありますけれども、いまはそういうところも生え抜きの者が育っておるわけであります。そういう意味では、いまは横井さんが言われたような定年延長、これ以外にないのじゃないかというふうに考えるわけでありまして、そういう点についてひとつ真剣に御検討をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。  次に、先ほど制作費の話が出ましたが、われわれがやっておったころは、制作費を費用対効果の問題で割り切ってやっておったわけであります。どのくらいの視聴率を上げられるか、そしてまたいかなる教養あるいは娯楽として国民の皆さん方に受け入れられるか、こういうことで費用というものは使っておったわけであります。そういう意味から言うと、中国の「シルクロード」という番組が十三本、そしてあの視聴率を上げ、そしてまた三回ないし五回の放送回数からいって、先ほどの川口さんのお話じゃ三億ちょっとでございますから、果たして高いものかどうかということになれば必ずしも高いとは言えない。いまやつまらぬ映画の制作費が何億というのでありますから、そんなものに比べればNHKの方がずっと安くていい番組をたくさんの人に見ていただいている、その感動を与えた率からいえば安かったのじゃないか、こう思うのであります。  しかし、放送料という問題で非常に気になるのは、先ほど会長がちょっとおっしゃいましたけれども、オリンピックの放送権料というものがあるわけであります。ロサンゼルスが四十四億円と聞いておるわけであります。その次のソウル、これは百億円になるのじゃないか、こういうふうに皆さんにも想定されておるのじゃないか、こう思うのでありますが、いかがでございましょう、オリンピックの放送権料というものについて歯どめがあるのかどうか。これは外国との競争の関係になりますけれども理事会でも御相談になったということでございますが、NHKとしてはオリンピックの放送権料というものをどういうふうにお考えになっておりますか。
  171. 田中武志

    田中参考人 お答えします。  いまおっしゃいましたように、今回のロサンゼルスが約四十三億から四十四億、これにしましても、先ほども申し上げましたけれども、最初約八十億から百億の提示を私どもは受けております。それを二年三カ月かかりまして、その間紆余曲折を経ながら、四十三億ぐらいにとどめたということでございます。  それで、このオリンピックの放送権料というものは、前回もこの席で申し上げましたけれども、世界的に非常に高騰しております。特にその原動力になっているのはアメリカの三大ネットワークの放送権料のつり上げ競争だろうというふうに私は思っております。いま、うわさではありますけれども、次のソウルではアメリカの方では千億近い権料が払われるのではないかというようなことも言われておりまして、これからのオリンピックの適正な放送権料というものがどういうことになるのか、私どもちょっと予想がつかないというのが実情でございます。しかし、こういったことについて手をこまねいて待っているわけにはいきませんので、今回も成功いたしましたように、NHKと民放連との間で今後ともでき得ればジャパンプールをつくりまして、日本国内でお互いに権料のつり上げ競争は抑えていこうという気持ちを私ども持っております。  それからもう一つは、先ほども申し上げましたように、こういった放送権料の値上がりというものを日本だけで抑えることはなかなかむずかしゅうございますけれども、これをひとつ今後世界の放送連合の間の問題に取り上げまして、放送連合間でいろいろ話し合いをした上で、こういったオリンピックの放送権料の高騰の勢いを抑えるというようなことについても、ABU等を通じまして、私どもも今後ひとつ努力をしていきたい。たとえばでありますけれども放送連合合同での交渉団をつくるとかいうようなこともあるいはわれわれとして提案してもいいことではないだろうかということも考えておりますけれども、いまのところこれはという決め手になります権料高騰の歯どめがないというのが実情でございます。
  172. 依田実

    ○依田委員 ロスの四十四億については民放との分担でありますが、NHKが八五%、民放が一五%、こういうふうに聞いておりますが、これはもうそういうことで話し合いがついたのかどうかということが一つ。  それからもう一つは、放送権料というのは一括交渉であって、部分的にこの放送とこの放送をやるからこれだけという分割交渉ができるものなのかどうか。つまり、日本の選手の出るときだけを放送したいからこれだけにしてくれ、そういう分割交渉ができるものかどうか、その二つについて伺っておきます。
  173. 田中武志

    田中参考人 一点目につきましては、今回のロサンゼルスの権料の妥結の額が千八百五十万ドルでございます。そのうちの千六百五十万ドルが放送権料ということでございまして、残りの二百万ドルがいろいろサービスを受けるサービス提供料ということでございまして、このロサンゼルスの放送権の交渉につきましては、先ほども言いましたように、NHK、民放でジャパンプールをつくって交渉に当たりまして、その当初から一応放送権料は前々回のモントリオール方式でいこうと、いま先生がおっしゃった比率でございますけれども、そういったことで一応発足当時から話がついております。それから、残りの二百万ドルにつきましては、これは今後NHKと民放との間でどの程度の分担比率でやろうか、たとえば放送をする内容等につきましても具体的にいろいろ話を詰めましてその権料の分担比率を決めていこう。しかし、余り長い時間は置けませんのでできるだけ早く、すでに交渉を始めておりますけれども、短時間のうちに何とかこれをまとめていきたいというふうに考えているのが現状でございます。  それから二点目の、オリンピックの放送委員会との間でこの権料を契約するときに、向こう側とすればIOCとも共同できますけれども、これはいま先生がおっしゃいましたような各種目別の、たとえば日本の選手の日の丸の上がる率の高いような種目別の契約ということはできないことになっております。これはIOC、国際オリンピック委員会の中にそういう規約がございまして、放送をするとすれば一括放送ということになっております。  なお、つけ加えますけれども放送権料の三分の一は規約によりましてIOCの方へ行くという形になっております。
  174. 依田実

    ○依田委員 次に、三番目の問題で、NHK放送学園のことをお尋ねさせていただきたい、こう思うのであります。  先般ニュースを拝見させていただきましたらば、放送大学の卒業式が放映になっておりまして、多士済々の方が免状をおもらいになっておりましたけれども、しかし、最近は高校進学率が非常に上がっておりまして、九八%に近いという状態の中で、NHK放送学園を利用される方の数字がどういうふうになっておるのか、これが一つ。  それからまた、放送内容につきまして、これからは放送大学との関連でいろいろまた番組内容などについても再検討をしていかなければならぬだろうし、あるいはまた生涯教育的な内容を盛り込んでいくのがいいのかどうか、その辺についての御検討がなされておるのか、この二つについてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  175. 荒井治郎

    ○荒井参考人 お答えします。  NHK学園の場合は現在生徒が大体六千人弱ございます。先ほど御指摘のように、だんだん生徒数が減ってまいりまして、五十五年のときが五千三百人ぐらい、五十六年が五千五百人ぐらい、五十七年が五千九百、六千弱ぐらいで、五十五年が最低になって、それからだんだん上向く傾向に最近はなってきてございます。  先ほど御指摘の、生徒の方々の職業がどういうようなかっこうになっておるかということだろうと思いますけれども、その分布は、全体の中の大体二割が主婦の方々でございます。それから一割が工員の方でございます。それからあと八%ぐらいが看護婦、それから保母さんでございます。それからあと事務の方が八%ぐらい。それから普通のいろいろの店員の方が六%、大体そういうような割合になってございます。  それから、事業内容でございますけれども、これは高校でございますので、五十七年度から例の学習指導要領の改訂というのがございます。したがいまして、NHK学園の中でもその教科課程につきまして、卒業の単位や何かも、全体で八十七単位を取らなければ卒業単位が取得できないのが、例のゆとりある教育云々というようなことも含めまして八十一単位ということで、五十七年度から単位を減らしております。当然NHKの教育放送を利用しているわけでございますけれども、五十七年度から番組の編成もかえております。それに合うような形に持ってきております。その名称も、最近利用するのはそういう通信高校の生徒さんばかりでなくて、全日制の高校生の方も御利用なさる、それから高校程度の知識、学力を身につけたいという一般の視聴者要望も、先ほどの生涯教育、そういうような社会的な要望も強くなってきておるというような方向もございまして、それを利用しやすいように、通信高校講座というような形でもって五十六年度までやってまいりましたが、五十七年度からは高校講座というので一つにまとめまして、そういうようなことで放送を組んでおるわけでございます。  それから、放送大学との関係でございますけれどもNHK学園の場合には高校でございますので、放送大学と直接競合関係はないのじゃないかというぐあいに私は考えておりますけれども、ただ、これが通信制の教育であるということと、それから放送を教育に利用しているというような二つの点で共通の部分があるのじゃないか。そういうことでございますので、ここの高校を卒業する人たちがやはりそのまま放送大学を利用する、そういうような意味での関心を持っているというようなことは、生徒の中にそういうことがあるということは私どもは聞いております。  以上であります。
  176. 依田実

    ○依田委員 時間がございません。最後の一問だけやらせていただきます。  先ほど会長受信料の問題に触れられて、余り赤字が大きくなるまでほうっておくということは将来NHK体質長期的に損なう、やはり素直にある程度赤字が出そうな見込みが立ったときには聴視料を値上げするのが最善ではなかろうか、こういうお話をされたわけであります。そうだろうと思うのでありますが、ところで、NHKでいま五十九年度以降の長期収支見込みについて御検討、試算をされておるやに聞いておるわけであります。それによりますと五十九年度にどの程度の赤字が出るのか、あるいはまた、その長期計画の上からいって五十九年度以降大体どの程度の聴視料の値上げが必要になるのか、その点についてお話しをいただきたいと思います。
  177. 坂倉孝一

    坂倉参考人 いろいろ基礎的な経済状況数字が不分明な点がある中での試算でございますけれども、やはり五十八年度予算の百七十億の収支不足に毎年大体二百億から二百三十億ぐらいの収支不足を来すというふうな計算をいたしております。ですから、五十九年度以降の六十一年度までの三カ年で申しますと、約千八百億程度収支不足を招来するというふうに計算いたしております。
  178. 依田実

    ○依田委員 そういたしますと、それに見合う聴視料の値上げはどの程度になるのですか。それを埋めるための聴視料の値上げというのは幾らぐらいですか。
  179. 坂倉孝一

    坂倉参考人 まだその聴視料の値上げといったような形での細かい計算はいたしていないわけでございますけれども、やはり全体の三カ年間の収入が九千億といった中での千八百億というような収支不足というようなことで、これからさらにこの数字を細かく詰めていきたいというふうに考えているわけでございます。
  180. 依田実

    ○依田委員 そうすると、大体三年間で千円ぐらい、こういうふうに見積もればいいわけですね。
  181. 川原正人

    川原参考人 千円というふうに言えるかどうかわかりませんが、いま申し上げました現時点での試算でまいりますと、九千億の収入に対して千八百億足りないということは二〇%どうしても足りなくなるということに一応算術はなるわけでございます。
  182. 依田実

    ○依田委員 ありがとうございました。
  183. 左藤恵

    左藤委員長 次に、村上弘君。
  184. 村上弘

    ○村上(弘)委員 私が最後ですが、川原NHK会長経営姿勢、とりわけいまも質問がありました値上げ問題に対する基本的な姿勢といいますか、そういうことについてお聞きしたいと思います。  まず、NHK受信契約者が三千万世帯という大台に乗ったわけですね。これは公共放送としてのNHKに対する国民の理解だとか、あるいはNHK側の放送内容をよくする努力、営業に当たる皆さんの努力の一定の反映、今日における到達として大事な意味を持っておる、そう思います。それだけに、公共放送であるNHKを支えているこの三千万世帯の視聴者の意向というもの、これは非常に大事だと思いますし、それに対するあなたの方の姿勢というものも非常に大事だと思うのですね。  この受信料値上げ不可避というような状況が言われておるわけですが、あなたは二月二日の記者会見で、「五十八年度の実質的な赤字は百七十億円であるが、物価上昇率など経済の見通しから見て、現行のまま進めたとして五十九年度は三百五十億から四百億の赤字幅となろう。」こういうことを、これは視聴者本部発行の「AR」という三月の分に出ておりますが、そのときに受信料値上げ問題に関しても、「料額改定については私としてはできるだけ早い時期にと考えている。」こう述べておるようであります。一方、二月七日に東京都の視聴者会議で、これは会長さんも出席されておったわけですが、そこでは、「値上げを繰り返すと国鉄の例にもあるように視聴者の抵抗を受けることになるのではないか。安易に値上げを繰り返すと視聴者の支持を失うことになろう。」こういう意見も出ているわけですね。この視聴者意見会長さんはどう受けとめておられるか。できるだけ早くということと、安易に繰り返してはならぬということとの間には相当の開きがあるんじゃないかと私は思うのですが、そういう安易な姿勢ではないということをはっきり示しておくべきではないかと私は思いますが、どうでしょうか。
  185. 川原正人

    川原参考人 料金改定につきましては、私は安易にそういうことを考えてはいけない、安易に値上げをすべきものではないというふうに考えております。したがいまして、これから先の経営につきましてもなお努力の余地がないのかどうか、私は、まだあるはずだし、それを徹底的にやっていかなければならない、その上で、しかしどうしてもこれ以上の対応策ができないというときに、それを無理して単なる借金でもってNHKのような事業体経営を続けていくことはやはり避けるべきだ。どうしてもこれ以上できないというときには、われわれはここまでやってみた、しかしこれ以上はどうしてもできませんということを率直に視聴者の方にお話しして、そして、NHKをこれ以上存続させるためには、ぜひまたそれなりの御負担をお願いせざるを得ないんだということを数字上訴えて、その上でやはり考えるべきであろう。私はどこの段階で早くと申し上げたか、ちょっといま記憶がはっきりしませんが、私としましては、いたずらに値上げを逆に無理して延ばしますと、かえって経営体質を悪化させてしまう。ですから、努力は徹底的にやるけれども、ここは限度というときになりましたら、そのことを率直にお願いして、やはり協会の維持のためにそれ相当の負担をお願いせぜるを得ないのではないか。その時期がもうこれ以上余り延ばせないのではないかなということは、率直に申し上げまして、これからまだ努力の余地は残っておりますけれども、そういうことを感じているということを申し上げたわけでございます。
  186. 村上弘

    ○村上(弘)委員 安易であってはならぬということを言われたわけですが、この委員会審議でも中期ビジョンを出さないとは何事かというような批判もあるわけですね。つまり、そういうところに安易さがあるのではないのか。その他いろいろの面にもっと詰めてみる必要があるのではないかという点についても、必ずしもまだ詰まっていない面がある。そういう点では、やはり視聴者は言葉とは別に安易な姿勢ということを感ずるわけですね。そういうことが絶対ないように、先ほどの態度を鮮明にして、視聴者意見に耳を傾けて臨んでほしいと思うのです。  あわせてこの機会にお聞きしておきたいのですが、受信料値上げ問題が出てくると、支払いの義務化問題というのですかね、これがよく論議になりますし、先ほども若干それにわたるようなやりとりがあったと思うのですが、現在意図的な未契約者というのが、五十七年九月現在の資料によりますと十一万四千件、こういう数字が出ているわけですね。これは大ざっぱに三千万世帯の受信契約者との比率で見ますと、〇・三%前後になるわけですね。もちろん〇・三%といえどもこれの解消のために全力を尽くすべきでありますけれども、その〇・三%のために九九・数%の受信契約者、みずから自発的に契約をして受信料を納めようという態度をとっている方々に支払い義務化、具体的に言えば法律で受信料の支払を義務づけるというような網をかぶせるということになりますと、いままでの公共放送としてのNHKの性格なり放送内容についての理解を示して契約をした受信契約者に対して、いままでの努力を水の泡にするようなことになりかねないし、NHKの側といたしましてもある意味ではこれは自殺行為だと私は思うわけですが、そして、先ほど会長さんもそういう面についての意見を若干述べられたように思うのですけれども、これはもう明白なことであって、受信料の収納をふやす努力はもっとすべきでありますけれども、支払い義務化などということは全くナンセンスであって自殺行為である。NHKの内部に若干そういう意見があるということを先ほどちょっと言われましたけれども、そんな意見があるのだろうかと私は不思議に思うのですけれども、そういうふうな問題はいまやすでにもう解決済み、決着済み、支払い義務化などというようなことはあり得ないと私は思うのですが、会長さん新しく就任されておるわけですから、会長さんの明快なこの点についての態度をお聞きしておきたいと思います。
  187. 川原正人

    川原参考人 確かに、意図的に契約を拒否され、あるいは契約をされてもなおかつ支払われなかったという方がいることはそのとおりでございますし、私どものデータも示したとおりです。その数は全体の比率の中から言えば決して多い比率ではございません。ただ、こういう方がいらっしゃることは、今度は、善意でもってお支払いいただいている、積極的に契約をしていただいている方から見ると、ときに公平感を欠く。NHKはそれに対してどう対処するのかという、そういう意味でのNHKの態度はなまぬるという御追及も現実にはあります。その間にあって、私どもはどのようにしてこれに対処すべきかということは非常にむずかしい問題でございますが、いまの時点で、私といたしましては、そういう契約を渋られる方あるいは支払いを渋られる方に対しては、私ども努力をもってこれは解決すべきものだ、それが私どもの任務であろうというふうに考えております。
  188. 村上弘

    ○村上(弘)委員 NHKとしてのまた会長としての基本姿勢、それはいまお聞きしたわけですが、この点は、NHK公共放送としての性格、基盤にかかわる問題ですから、一層その態度を厳守していただきたい、そう思います。  次に、放送衛星に関してお聞きしたいのですが、いまの経営状態あるいは受信料値上げ問題などがいろいろ論議されていくという状況とも関連して、この放送衛星を打ち上げる、あるいはそれの運用などにかかっている経費というもの、あるいは今後かかるであろう経費というものは非常に大きいわけですね。大体、本年度予算まで含めますと、放送衛星に対するNHKの投資は三百六十億円、こういうふうに言われておるわけですね。これは五十九年度に予想されている赤字額三百五十億、こう言うているわけですから、ほぼ赤字額とそれから放送衛星に関する投資というものは相匹敵しているわけですね。端的な比較になるかもしれませんけれども、これは年度別に見てもそういうことが言えるわけです。たとえば、五十七年度予算での赤字額が七十六億円、その年の放送衛星への投資額が八十二億円六千二百万円、ほぼ匹敵しているわけですね。五十八年度予算では赤字額が百六十九億七千万円、衛星への投資額は百十六億七千八百万円、こういうふうな状況になっておるわけですね。ですから、いまのNHKの赤字の非常に大きな要因の一つをなしておると端的な数字から見ても言えるのではないか、そう思うわけですね。であるならば、この放送衛星についての国民のコンセンサス、特に受信契約者に対する合意という問題が非常に大事だと思うのです。一体何のために衛星放送は行われるのかということ、その中心目的、これは一体何か。それから、これは機構がやっているわけではありますが、これの利用の主体は一体どこにあるのかというような点について、まず基本的な点をお聞きしておきたいと思います。
  189. 川原正人

    川原参考人 私どもがいままで考えてまいりましたのは、やはり放送衛星の一番の目的は、現在の地上のテレビの施設をもってしてはなかなか解消できない難視聴の解消、これは放送衛星を利用すれば少なくとも全国的な番組においては離島も含めて一挙に難視聴が解消できる、そういう利点がございます。ですから、そういうことを中心に考えてまいりました。と同時に、この放送衛星というのはいままでの地上のテレビ放送にはできなかった新しい能力を幾多秘めております。私どもが開発してまいりました高精細度のテレビジョンというようなものも、いまの地上の周波数の中では恐らくとても実現はむずかしいのじゃないか。しかし、衛尾放送を利用することによりまして、これはいますぐとはまいりませんけれども、近い将来に必ず実現し得るのではないか。あるいは非常に好音質のPCMという放送も可能でありますし、あるいは静止画とかファクシミリというもの、そういうものを含めてこれは非常に多面的な能力を持っている。そういう能力を持っている衛星放送であれば、これは国民の財産としてぜひ積極的に活用していくべきじゃないか。それはやはりNHKに課せられた一つの先駆的な使命でもあろうということで、この衛星をできるだけ多面的に活用してまいりたい。そして、国民の財産として、またこれはある意味視聴者にそのサービスを戻してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  190. 村上弘

    ○村上(弘)委員 莫大な投資をしてその利益を国民に還元するということは非常に大事なことであるわけですけれども、難視聴の解消ということから始まってはおりますけれども、実際には約四十万世帯の難視地域の方々だけであるならば、これは国民全体への還元ということにはならない。いま幾つかのことを言われましたけれども国民はさっぱりそれはよくわかってないわけですよ。そういう点があると思うんですね。  それから、別の面から見ると、この放送衛星の問題は、むしろ、難視解消というのはNHKが一生懸命言うておるけれども、実は電波権益の確保だとか国策的意味が非常に強いのじゃないか。むしろ、そういう面ではNHKが、政府が本来やっていくべきかどうかという問題がありますが、そういうことについて難視解消ということで代行させられているというような面があるのじゃないかと思うわけですが、そういう点についてはNHKの主体というものがはっきりしているのかどうか、その点どうですか。
  191. 川原正人

    川原参考人 もちろん、NHKの主体といいますか、自主的な判断のもとにいままで御提案申し上げ、またこれから実施しようとしているわけでございます。
  192. 村上弘

    ○村上(弘)委員 その点をはっきり確認しておきたいと思うのですね。  それとあわせて、いまの莫大な投資に対してはこれをどうやってペイしていくかという問題がついて回るわけですが、矢橋技師長は、去年の十月五日の記者会見の席上で、またこの委員会でも似たような意見が出ていますが、特に衛星放送などは大きな支出を伴うので収入源が必要であると述べているわけですね。そして、衛星放送実用化に当たって新たな料金を徴収する考えであるかのように思うわけですが、そういう新たな料金、いまの受信料制度以外に新たな料金制度というものをお考えに入れていま進めているかどうか、この点もお聞きしておきたいと思います。
  193. 川原正人

    川原参考人 これは大変むずかしい問題でございますが、基本的には衛星放送というのは新しいメディアでもあり、新しいサービスを含むものでございますので、私は本来的にはそれなりの料金を設定というか、ちょうだいするのがたてまえであろうというふうに思っております。ただ、それをどのような段階でどのようにして考えるかということは、いま少しくこの衛星放送の実際の番組、私どもまだ鋭意検討中でございますけれども、どのようなサービスが実施できるか、どのような普及の道をたどるか、その辺もよく見きわめて慎重に考えたいと思っております。
  194. 村上弘

    ○村上(弘)委員 国民受信料納入によって成り立っているNHKが、衛星放送を開始することによって、それ以外に新たな料金体系といいますか、制度を導入するということになると、これは非常に大きな問題になると思うのですね。そういうことを予想しているのであるならば、これはBS2であれ3であれ、事前に国民に目的なり利用計画なり、そういうことを明らかにして、これを進めていくならば新しい料金を払ってもらうことになりますということの、それこそ合意を得る努力が要るのじゃないか。実際そういうことをしないままに事態ばかりがどんどん進行していっておる、これは大変大きな問題じゃないかと思います。私は、そういう努力をすべきじゃないかというように主張したいと思うのですが、ほとんどやっていないと言ってもいいと思いますね。どうですか。
  195. 川原正人

    川原参考人 この料金の問題につきまして、先ほど申し上げましたように理論的にもそれから現実の施策としても非常にむずかしい問題がございます。それから、これは私ども一存でもちろんできるわけではございませんので、それらの問題についてはなお慎重な検討が必要だと思います。これはすでに長期ビジョン審議会というものを二、三年前に設けまして、その答申の中でも若干の示唆はあるわけでございます。慎重に考えなければならない。したがいまして、これこそまさにこれから私どもが考えます衛星放送を含めての将来の経営計画の中で、この点についてさらに慎重に検討して、一つの私どもの結論が出ました暁には、それを十分に視聴者の方に御説明申し上げて納得をいただかなければならない問題だろうと考えております。
  196. 村上弘

    ○村上(弘)委員 とにかくいまの段階では、極端に言えば密室での検討という感が強いわけですね。もっとオープンに、国民に向かって考えなり計画なり今後の展望なりについて問いかけることをやるべきじゃないかということを主張しておきたいと思うのです。BS2は来年二月、さらにBS3が本年度中に概念設計ということになってきておるわけですが、BS3などについてのチャンネル数はどれくらいになるのか、その割り当てはどうするのか、民放との関係はどう対処していくのか、どんな放送あるいは情報の提供をするのか、こういうことについて、いまの時点で明確になっている点、この点をお聞きしておきたいと思います。
  197. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 BS3のことでございますけれども、チャンネル数、これは電力にもよるわけですけれども、チャンネル当たり百ワット程度であれば四チャンネル、もう少し百五十ワットとなると三チャンネルというようなことが検討されております。それで、利用者としましては、NHKのBS2の後継ということがございますので、二チャンネルは消費されるわけでございます。その他の一チャンネルないし二チャンネルの利用者につきましてはまだ未確定でございますけれども放送大学での利用、あるいは民放を含みますそれ以外の利用者での利用というようなことが話題に上っております。二、三日前、これは新聞情報でございますけれども民間放送連盟としてもそうした民送のチャンネルを考えるというようなことで決議したということも読んでおります。
  198. 村上弘

    ○村上(弘)委員 その民放などに対する態度、対応についてのいまの考えはどうですか。
  199. 田中眞三郎

    田中(眞)政府委員 BS3の利用のあり方についても、そうした学者先生委員会でも提言をいただいているわけで、広く民間の利用者を含めた形を考えるべきであろうというような御提言、あるいはその財源をペイテレビというような方法もあるだろうという御提言もいただいておるわけでございますけれども、具体的にBS3に乗るか乗らないかということにつきましては、短く言いますと、ここ一両年の間に決めていただきませんと設計ができないというようなことにもなりますので、日本民間放送連盟が計画するならば、その具体の考え方なり聞きました上で結論を出すと申しますか、検討を進めたい、このように考えております。
  200. 村上弘

    ○村上(弘)委員 新しい段階に入るわけですから、根本的にはNHK公共放送としての性格を貫くということと、同時に、開かれた放送といいますか、政府主導型でない、こういう方向が大事であろうと私は思うわけです。  ついでに、衛星といいますと軍事目的に利用するという問題が出てくるわけですね。たとえば、アメリカのイラン人質奪回作戦の時期のときには気象衛星が使われたし、また、あの作戦が失敗したときの撤退の決定については通信衛星が重要な役割りを果たしたということは言われているとおりです。西ドイツとフランスが協定を結んで開発している静止通信衛星「シンフォニー」というのがありますが、これは資料によりますと軍事用ではないというふうに言われているけれども、ストックホルムの国際平和研究所の資料などを見ますと、これは一九七七年度版の年鑑ですが、軍事衛星というふうに掲載されているわけですね。こういうふうに見てきますと、通信衛星、放送衛星、この違いというものも紙一重でありますし、こういうものがどんどん開発されていって、活用の仕方によっては軍事用に転用できる機能をこれは十分持っているわけですね。第二十回ユネスコ総会でいわゆるマスメディア宣言というのを出されておりますが、平和と国際理解、人権、戦争の扇動への対抗というようなことを基本原則にして、これからの国際的な対応が大事であるということを出していますけれども、平和目的以外には絶対に利用しない、軍事利用はもう絶対にしないということについて、当然のことだと思いますが、NHK会長及び郵政大臣のそれに対する態度をお聞きしておきたいし、そしてまた、その保証はどうするのかということもあわせてお聞きしておきたいと思います。
  201. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 御案内のとおり、わが国の宇宙衛星開発は平和目的に限り開発するということになっております。また、国会からもその旨の御決議をいただいておるわけでございまして、私どもは、平和目的以外には利用することはできないことになっておるわけでありますから、これ以上の保証は要らぬだろうというふうに思っております。
  202. 川原正人

    川原参考人 NHKは軍事というのは全く考えておりません。
  203. 村上弘

    ○村上(弘)委員 余りにも当然のことでありますが、しかし、非核三原則すら空洞化されてきている時代ですから、こういう問題についてはもっとしっかりした保証が必要であろうということも申し上げておきたいし、いまの大臣の言葉はしかと確認しておきたい、そう思います。  もう時間が参りましたから、最後に一問だけやりたいのですが、さきの経営の問題に関連して、受信料の収納率を上げるとかあるいは未契約者にもっと契約してもらうとか、こういう努力が必要であるわけですが、特に、収納率を引き上げるためには、第一線でがんばっている営業の関係者ですね、こういう皆さんの位置づけといいますか、またそこでの果たす役割りというものは非常に大きいと思うのですね。大体ことしの四月から新しい営業方針に転換をしていままで――前にも私質問しましたけれども、新しい契約者をとるためにあちらからもこちらからも入ってもう競合状態にあるとか、きわめて矛盾に満ちた状況があったということを指摘しましたけれども、そういう点は今後大分改善されていくように思うわけですが、そういうこととあわせて、まだ五割も直接に受信契約者からお金をもらうという状態にあるわけですから、第一線の集金に当たられる方々が、NHKの性格だとか、あるいは放送内容をこういうふうに努力しているんだとか、あるいは納める方のそのときそのときの疑問や質問に答えられるということが非常に大事になってきているのじゃないかと思うのですね。しかし、現状をお聞きしますと、委託集金員に対する位置づけは依然として不明確だし、それから、そういう訪問集金の場合のいろいろな能力を高めるという点についての研修、これは年に二回であって、各一回について三時間程度だというようなことで、きわめて不十分であるし、それから、週一回営業所に出勤するということになっているらしいのですが、これはもう行ったときには、契約件数をふやせふやせというしりたたきだけが待っているという声も聞くわけですね。やはり視聴者から出される意見要望についてそれを組織的に吸収するパイプ役としても、また第一線で説得のできる能力という点からいっても非常に大事なんだから、そういう能力を開発するための教育や研修の制度的保障ですね、同時に、その待遇面での改善という点に努力すべきだと思うのですが、そういう制度が目下ないように思うので、これは改善すべきじゃないかと思いますが、どうですか。
  204. 林乙也

    ○林参考人 営業の第一線に従事いたしております職員及び委託集金員の方々につきましては、ただいまもお話がございましたように、定例的に集合研修というような形で年に一回ないし二回行っております。また、その訓練につきましては、やはり現場に応じた具体的なテーマを取り上げての指導、訓練が必要でございますので、出局した際などに応じましてテーマを取り上げながら教育をしていくというようなことに今後とも努めたいというように考えております。  確かに、常業に従事する者は、ただ単に集金に当たるというだけでなしに、契約者との円滑な意思疎通に当たらなければならぬ重要な職務を担っておるわけでございますので、そういった点についての指導管理を今後とも努めながら、またそれにふさわしい処遇ということにつきましても考えてまいりたいというように考えております。
  205. 村上弘

    ○村上(弘)委員 終わります。
  206. 左藤恵

    左藤委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  207. 左藤恵

    左藤委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  208. 左藤恵

    左藤委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。(拍手)     ─────────────
  209. 左藤恵

    左藤委員長 ただいま議決いたしました本件に対し、畑英次郎君外四名より附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨説明を求めます。畑英次郎君。
  210. 畑英次郎

    ○畑委員 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。  一 放送不偏不党及び表現の自由を確保すること。  一 国際放送について、交付金の増額を図るとともに、受信改善が急がれている現状にかんがみ、送信施設の抜本的な整備拡充計画を早急に樹立し、その実現を図ること。  一 協会は、厳しい経営環境に対処するため、効率化を一層推進し、衛星放送等のニューメディア時代に対応した長期的展望に立った経営の安定に資する計画をすみやかに策定すること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の五党共同提案に係るものでありまして、案文は当委員会における質疑の動向等を参酌して作成されたものでありますから、各項目については説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛成をお願い申し上げる次第でございます。
  211. 左藤恵

    左藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  212. 左藤恵

    左藤委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、桧垣郵政大臣及び川原日本放送協会会長から発言を求められておりますので、これを許します。桧垣郵政大臣
  213. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 日本放送協会昭和五十八年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上、ただいま御承認をいただきましたことを厚く御礼申し上げます。  これまでの御審議に当たりまして、各委員の提起されました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきましては、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。ありがとうございました。
  214. 左藤恵

  215. 川原正人

    川原参考人 日本放送協会昭和五十八年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、ただいま全会一致をもって御承認をいただきましてまことにありがたく、厚く御礼申し上げます。  本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程でいろいろ御開陳いただきました御意見並びに郵政大臣意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。  また、ただいまの附帯決議につきましては、協会経営の根幹をなすものでございますので、十分に遵守いたしまして執行の万全を期したいと考えている次第でございます。まことにありがとうございました。     ─────────────
  216. 左藤恵

    左藤委員長 なお、ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 左藤恵

    左藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  218. 左藤恵

    左藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十一分散会