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石原政府委員 ここのくだりは、
財政制度審議会の答申としていまのような文章が出てきたわけですが、これについては、実は前から地方
財政計画の策定の仕方について、特に地方
財政計画で見込んだ地方税収入と
現実の地方税収入との乖離、決算上乖離が生じてまいりますが、その乖離の扱いをどうするかということとの関連で論議があった問題であります。
まず、
財政制度審議会がここで問題にしているのは、地方
財政計画で見込んだよりも決算上地方税収入が多くなった場合、これは年度によっては数千億円上回ったことがありますが、そうした場合にその増収分をカウントすべきではないか。現在は全く単年度主義ですから、後年度においてこれを考慮することをしないわけですけれ
ども、そういう問題意識が背後にあるのではないかと私
どもは想像しているわけです。
と申しますのは、地方交付税の計算上は、各
基準財政収入額はそれぞれ一定の指標で、極力客観的な指標をもって収入の推定を行うのでありますけれ
ども、法人
関係税については、言えば年度間のばらつきが大きいということで、現在はいわゆる精算方式をとっております。交付税
制度発足以来、本則ではあるべき収入を見込むということから、これは本則には書いてないのでありまして、その金額が非常に大きいということで附則に書いておるわけです。附則では、第一義的には特別交付税で必要な調整をする、そして特別交付税でも調整し切れぬ場合には普通交付税で調整するという書き方をずっとしておるわけですけれ
ども、この交付税の配分に
当たりましては既往年度の法人
関係税の増減収を精算する、ところが、もとになる地方
財政計画では単年度主義で精算していない、その間に食い違いがあるじゃないか、こういう御
指摘であります。
確かに、その部分についてはその
指摘が全く当たってないということではない、
一つの問題ではあろうと思うのです。ただ、その点について交付税で過去の分まで精算しておりますのは、個々の団体ごとの交付税の適正な配分、公平な配分を行おうとする場合に、法人
関係税の増減収のように非常に大きな開きのあるものを無視するということは不公平になる、公平な交付税の配分からいって適当でないということで、精算方式をずっととっているわけでございます。
しからば、地方
財政計画のマクロの
段階でなぜ精算方式をとらないのかということでありますけれ
ども、地方税収入が
計画で見込んだよりもオーバーしたようなときには、税収入のオーバー分は非常に正確に捕捉できるわけですけれ
ども、そういったときには、多くの場合、物価が上昇するとかあるいは
行政需要がふえるとか、歳出の方もふえているケースが多いのであります。ところが、歳出の増加額を既往にさかのぼって
把握するということは非常にむずかしいわけです。税収の増加分だけをカウントすれば、それに対応してふえているであろう
財政需要の方を見なければ、結果として地方財源保障機能というのは低下してしまう、そういう問題がありまして、収入については既往分は差し引かないという取り扱いをいままでしてきたわけです。
それでは、減った場合はどうなんだというと、五十七年度の場合がその典型でございますが、五十年度あるいは五十七年度の場合のように、地財
計画で見込んだよりも地方税収入が大幅に落ち込んだ場合には、その影響が非常に大きいということで、これには地方税の減収補てん債を発行しております。そうして、減収補てん債の元利償還金については、地方
財政計画上公債償還費に見込み、かつ
基準財政需要額にこれを算定するという形で補てんしております。
そこで、一部の
意見は、ふえた場合はネグってしまって、へこんだ場合は完全に補てんするというのは、地方財源が総量として行き過ぎになるのじゃないか、こういう
指摘があるわけです。この点については、私
どもは、先ほど言いましたように、ふえた場合には、それに見合って歳出の方もふえているであろうと考えられるわけです。ただ、うまく捕捉できない、立証できないだけでありまして、そういったものの要素を抜きにして収入の分だけをカウントするというのは、結果として地方財源の保障機能が低下してしまう。減った場合はどうなんだ。これは減った場合は、明らかに税収が減ったからといって歳出の減というのはないわけでありますから、やはりこれは適切に補てんするべきじゃないか、こういうのが私
どもの考え方でございます。
したがいまして、マクロとしての地方財源のトータルを確保するための地方
財政計画のメカニズムと、個々の団体ごとの交付税の配分をより適切にするというミクロの扱いとの間に若干の食い違いがありますけれ
ども、これは長い目で見れば交付税
制度の公平な配分という意味で許容されるのではないか。したがって、
財政制度審議会でその間の乖離、地方
財政計画上の扱いと
基準財政収入額の扱いの違いを非常に神経質に問題にしておられますけれ
ども、私は、地方
財政計画の持つ地方財源保障機能というものを重点に考えるならば、それをそう問題にする必要はないのじゃないか、このように
理解をしております。