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1983-04-12 第98回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 田村 良平君    理事 工藤  巖君 理事 中山 利生君    理事 宮下 創平君 理事 佐藤 敬治君    理事 青山  丘君       池田  淳君    臼井日出男君       小澤  潔君    片岡 清一君       北川 石松君    塩谷 一夫君       竹中 修一君    谷  洋一君       中村 弘海君    小川 省吾君       加藤 万吉君    細谷 治嘉君       草野  威君    部谷 孝之君       岩佐 恵美君    三谷 秀治君       田島  衞君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君  出席政府委員         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         農林水産大臣官         房予算課長   京谷 昭夫君         農林水産大臣官         房経理課長   谷垣 孝次君         建設大臣官房会         計課長     牧野  徹君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治大臣官房審         議官      津田  正君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  八木 俊道君         防衛施設庁施設         部施設取得第二         課長      久保 邑男君         防衛施設庁施設         部施設対策第二         課長      杉本 康治君         経済企画庁調整         局財政金融課長 宮島 壮太君         大蔵省主税局税         制第三課長   真鍋 光広君         厚生省保険局国         民健康保険課長 阿部 正俊君         厚生省保険局医         療課長     寺松  尚君         農林水産省農蚕         園芸局普及部普         及教育課長   田口 俊郎君         郵政省貯金局経         理課長     山口 憲美君         建設省道路局道         路総務課長   三木 克彦君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ───────────── 委員の異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     赤城 宗徳君   部谷 孝之君     近藤  豊君 同日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     臼井日出男君   近藤  豊君     部谷 孝之君     ───────────── 三月二十九日  留置施設法案の廃案に関する請願中島武敏紹介)(第一八一七号)  同(村上弘紹介)(第一八一八号)  同(渡辺貢紹介)(第一八一九号)  地方公務員共済年金等スライド制法制化等に関する請願大内啓伍紹介)(第一八六五号)  同(小渕正義紹介)(第一八六六号)  同(西村章三紹介)(第一八六七号)  同(和田一仁紹介)(第一八六八号) 四月六日  岩手県警察本部ヘリコプター配備に関する請願小沢一郎紹介)(第一九八〇号)  防火基準適合表示対象施設範囲拡大に関する請願小沢一郎紹介)(第一九八一号)  地方自治体財源確保等に関する請願安藤巖紹介)(第二〇三四号)  同(岩佐恵美紹介)(第二〇三五号)  同(小林政子紹介)(第二〇三六号)  同(中島武敏紹介)(第二〇三七号)  重度障害者に対する地方行政改善に関する請願部谷孝之紹介)(第二〇九六号)  同(野坂浩賢紹介)(第二〇九七号)  身体障害者自動車運転免許証に付される重量制限廃止等に関する請願部谷孝之紹介)(第二〇九八号)  同(野坂浩賢紹介)(第二〇九九号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  個人事業税におけるみなし法人課税制度の導入に関する陳情書(第一〇五号)  留置施設法案等反対に関する陳情書(第一〇六号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二三号)      ────◇─────
  2. 田村良平

    田村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方交付税法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)委員 ただいま議題になりました交付税法案について幾つかお尋ねをしながら政府側の真意を確かめてまいりたい、こう思います。  まず、今年度、五十八年度地方財政計画ですが、三兆円を超える財源不足額、これは戦後三度目、三番目でございますね。五十三年が三兆五百億、五十四年が四兆一千億、そして今回が三兆円を超える。私は、今度の地方財政計画財源不足額は、従来の不足額と違いまして、いわば国の財政にならって、ないしは地方財政の今日的状況を踏まえて、しぼりにしぼった緊縮財政だというふうに見ているわけです。その結果として出た三兆円を超える財源不足額、これは五十三年度ないしは五十四年度財源不足額とは全く性格を異にしているわけです。  申し上げるまでもありませんけれども、五十三年度の三兆五百億のときの財源不足額は、投資的経費を二六%伸ばした中で歳出全体が伸びて、その結果として三兆五百億の財源不足が出た。五十四年度も同じですね。今度の場合は、その不足額がいま言ったように徹底した節減合理化の結果として出ているわけですから、そしてその結果として交付税自身も落ち込み、その原因等があり、結果として三兆円を超える。  これは、五十八年度からはいわばそういう財政構造全体に大きな変化が起きたのではないか。従来の投資的経費をふやしながら、いわば地方団体が必要な投資的なものを吸収しながら財源不足額が出たというのではなくして、しぼった結果として出た、そういう財政構造というものが五十八年度から急激に変わった、大きな変化を生じた、こう私は見ているのですが、この見解について財政局長から御答弁をいただきましょう。
  4. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま御指摘のとおり、五十八年度地方財政において予想されました財源不足額は、歳出面では一般歳出を〇・九%の伸びに抑えている。投資的経費については公共事業費地方単独事業費もそれぞれ伸び率をゼロに抑えて、そういう前提のもとでなおかつ生じた財源不足である。その主たる原因は、地方交付税の約二割の落ち込み、あるいは地方税そのものも前年度当初以下に落ち込む、こういった地方一般財源の大幅な減を中心とする歳入の減少が主たる原因である。こういったことは最近にはないことであります。  ただいま引用されました五十三年度、五十四年度、いずれも三兆円、四兆円という財源不足でありましたが、これらの年度におきましては、一般歳出あるいは投資的経費ともに相当大幅な伸びを見込んで、地方一般財源もかなり伸びたのでありますが、それ以上に地方歳出を大幅に見込む前提のもとで財源不足が見込まれた。そういった意味で、その財源不足の金額は似たようなものでありますけれども、その意味するもの、地方財政運営に与える影響というものは大きく違ったものであろう、このように認識いたしております。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)委員 結果として五十八年度はそれで、今後の五十九年度償還期が入ってまいりますし、六十年以降ですと、後で質問いたしますが、五千億を超える償還財源を持たなければなりませんし、さらに交付税が五十九年度以降もそう大幅に上昇するということが考えられないわけですね。そうなってまいりますと、交付税の額が、いまおっしゃいましたようにそれだけに相当削減をされていくわけですから、地方単独事業がその面で大変抑え込まれてくるのではないか。したがって、財源の裕福なと言ってはおかしいですが、多少でも財源余裕のある地方団体と、交付税がその団体税収入財源の大きなウエートを占めるという団体によっては、事業計画あるいは地方が行う事業に非常にアンバランスが起きる可能性があると私は思うのです。  したがって、そういう意味では今後もこの状況がしばらく続くのではないかという見通しと、いま言ったそれによって起きる各地方単独事業、いわゆる地方団体の独自の政策といいましょうか、それを遂行するための財源に対して大変アンバランス、と同時にそこには財政体質の良否によって予算規模が変わってくるのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  6. 山本幸雄

    山本国務大臣 先ほど来のお話の五十八年度につきましては、やはり歳入歳出を見てみますと、歳入は、一つ地方税というのは国税と連動しておる、もう一つはやはり景気に左右されて安定していないという税収の性格がある。したがって、そういうものを踏まえて、歳入についてはいろいろ考えてみなければならぬ問題がある。それから、歳出につきましては、五十八年度については、お話のようにいわゆる投資的経費というのは余り伸びない。地方単独事業もことしは伸び率ゼロ、こういうことにしました。一方、公債費はふえる。人件費も、そういう義務的な経費はふえていく、そういう歳出構造でもあります。  そういう中で、お話のように一体これからの日本の経済はどういうふうな歩みをするのであろうか。しかし、恐らく安定成長という路線はそう変わらないのではないか、そういうことを考えてまいりますと、歳入というものについてもいろいろ考えてみなければならぬ点があるのではないか。ことしは特に五十六年度の八千五百億というものを戻さなければならぬという特殊事情もございました。ございましたが、そういう特殊事情は別といたしまして、一般的に歳入あるいは歳出について考えてみなければならぬ。特に歳入構造については、国税の方も、国の財政の方もどう考えていくかによりますけれども、やはり考え直してみなければならぬ点があるのではないか、こういう認識は持っておるんですけれども、それならどうしたらよいかということになってまいりますと、なかなか具体的案が直ちにいま浮かんでこない、こういうのが現実だろう、私はこう思っております。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣の最後のところは非常に大事だと私は思うのですね。どうしたらいいかわからぬじゃ困るんですよ、これは。  私は、少し質問を飛ばしたような感じになりますけれども地方団体交付税減額をされる、単独事業伸びゼ口ということになりますと、いまちょうど選挙も行われているわけですが、それぞれの首長さんが新たな事業計画、それは前任者のものとは別なもの、前任者財源の中で別なものということもありますけれども、新たなものをやるとすれば、どうしたって財源不足をどう補うといいますか、どこかから得るか、そういうことは当然起きてくるんですね。もしその財源交付税のように減額されておりますと、通常必要な経費だけで事実上もうおしまいになっちゃいますね。それから後は、従来続いている単独事業なりあるいは行政上の費用、したがって余裕財源のあるところと余裕財源のないところでは大変アンバランスが起きるんですね。  私は、かつて交付税は、平衡交付金と言われたような財政平衡化という面からいうと、国全体の中での財政調整役割りを失する可能性が出てくるんではなかろうか、こう実は思っているのです。したがって、交付税の今年度のような大きな減額措置というものは、地方団体の全体の行政に及ぼす財政均衡という面でどういう結果が生まれてくるんだろう、大変実は心配をしているのです。  それと同時に、いま一つは、大臣、五十六年度八千五百億精算分があったり何かするからとおっしゃいますけれども、後で聞きますけれども、五十七年度も多少そういう面は出てくるのではないかという心配も実は持っているのです。  いずれにしても、地方団体がいま抱え込んでいる財政の借金といいましょうか、五十七兆二千億ですよ。これを一体どういうような形で解消するのか。長期的な財政計画自治省なり国が持ってあげませんと、いま言ったように交付税がこれ以上年々歳々うんと拡大するということはあり得ないとすれば、いわば歳出交付税借入金とかあるいは元利償還負担額、いわゆる地方債残高等をどういう形で軽い体にしてやるのかということが、この際大変必要ではないかと私は思うのです。  したがって、この国全体の財源配分の問題あるいはいま大臣がおっしゃった地方税の新たな財源、それから国税全体の財政構造、たとえば委任事務やその他を含めての財政構造、そういうものを長期的なローン的な面をとらえながらの抜本的な見直しということが必要じゃないか、私はこう思うのですが、どうでしょうか。どうやったらいいかわからないじゃ困るので、見直しのための作業に着手をする、いまの時期でもう着手をする時期ではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  8. 石原信雄

    石原政府委員 地方財政中長期的な展望について、ただいま先生指摘公債地方債償還費あるいは交付税特別会計借入金の返還、こういった要素を踏まえて今後の地方財政中長期的にどういう形になるのか、どういう問題を含んでくるのか、こういった点について検討することはきわめて重要であろうと思います。先般国の方では三カ年程度の収支試算を発表されております。こういったものも参考にしながら、地方財政についてもいろいろな角度から検討する必要があろうということで、現在私どもそれなり勉強をいたしております。  ただ、御案内のように、この中長期的な経済見通しというものが数字的にまだはっきりいたしておりません。政府自身でいま検討されておるわけでありまして、前提となる経済見通しがもう一つはっきりしていない。それから、何よりも国の財政試算の方が、いろいろな仮定を置いてでありますけれども、いわゆる財政計画と呼ぶにはふさわしくない、収支試算の域を出ていない。こういう段階で地方財政について正確な収支計画計画の名に値するような収支見通しを立てるのは、正直言って非常にむずかしい状況であります。公にして、こうなるという自信を持って示すようなものがなかなかできないのが現状でございます。しかし、私どもは、中長期的な地方財政の姿について常に把握していかなければいけないという必要性は痛感しております。  そこで、今後国の経済見通し経済計画あるいは国の財政中長期的な計画、こういったものができますれば、これに対応して地方財政の姿を明らかにするような計画、これをぜひつくってみたいということで現在研究を重ねているところでございます。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いま一つ財政局長、ぼくは重要な要素臨調答申だと思うのです。臨調答申では増税なき財政再建、こう言っているわけですね、これは地方、国、両方通して。ですから、おっしゃられるように、国の三カ年の収支試算財政計画ではないとおっしゃったんですが、経済見通しやかつて大蔵省自治省が出されたような単なる財政見通しだけでは私は済まないと思うのですよ、臨調増税なき財政再建という形のものを出しているわけですから。一体増税なき財政再建というものができるのかどうか、あるいは地方団体が、先ほど言ったように交付税がだんだん減額されて単独事業地方の独自の政策が展開できないということになれば、一体委任事務をどうするのかあるいはそれに伴う財政のお互いの配分をどうするのか、あるいは地方税でも質問いたしましたように、たとえば企業に対するみなし課税なんというものも一体どういうようにとらえていくのかという財政構造あるいは税のシステムそのものにも踏み込んだ調査研究といいましょうか、それが必要になってくるんじゃなかろうか、こう思うのです。  ですから、財政局長もときどき方々で述べておられますように、単に国の経済見通しとかそこに依拠をして、したがって地方財政に対する答えが出ないのだというのじゃなくして、いまの臨調が言っている増税なき財政再建と、地方財政五十七兆二千億のものをどう解決するんだということもひとつ頭に置きながら計画を立てる必要があるんではなかろうか、こう思うのです。  先般自治省が、三月十日に交付税特会借入金償還費地方負担分をまとめて、五十九年度以降借入金は一切なしという前提で、五十八年度交付税特会十一兆五千二百億を現行ルールで返済した場合の計画を出しました。これは長くなりますから言いませんけれども年度償還が、六十年度は五千四百八十億、六十一年度で六千五百九十億です。これがずっと続いていくわけですから、これ一つとってみても大変な地方財政の圧迫になることは、もう間違いないですね。そうすると、六十五年度が特にピークになるわけですが、さらに後で出てくる利子の元金への算入などということになれば、一体いつまでいったらこの交付税特別会計借入額がゼロになるのか、見通しはつかないですよ。  ということになってまいりますと、地方団体としては、地方団体そのものが持つ財政計画ですね、首長さんがおれは任期の間にこういう仕事をして、こういう財政計画を持ってやるとしても、いま言った国がどういう形で財政計画を立てるのだということがなければ、指標が出てきませんよ。その意味でも、時間的には余裕がないくらい今後の地方財政再建問題に対する計画とか、まあ調査から始まるのでしょうけれども、国との打ち合わせだとかを立てられる必要があると私は思うのです。いまおっしゃいましたように、国は財政収支試算しか出しておりませんからというだけで見過ごしをされるのではなくして、むしろ積極的に自治省の側から問題を提起すべきではないか、僕はこう思っているのですが、いかがでしょうか。
  10. 石原信雄

    石原政府委員 いまおっしゃるとおり、交付税特会借入金だけにつきましても、五十八年度末の現在高は十一兆五千億を超します。これがピークに達する昭和六十五年度には、償還額が一兆二千億を上回るということでありまして、これからの地方財政運営にとってこれが大変な負担になることは間違いありません。また、地方債償還につきましても年々ふえてまいります。こういった要素を織り込んで、各地方自治体計画的な財政運営を行うためのよりどころとしての地方財政全体としての中長期計画といいましょうか、見通しを明らかにするということは大変必要だと思うのであります。私どももその必要性を痛感しております。  ただ、先ほども申し上げておりますように、今日の地方財政収支の姿を明らかにする上におきましては、どうしてもその前提といたしまして、先ほど大臣も御答弁申し上げましたが、国税収入が今後どうなっていくのか、まずこれがはっきりしませんと、交付税のもとの方が決まりません。それから、地方税収入見込みにいたしましても、その前提要件としては国税と非常に共通する面があります。したがって、こちらの方も国税の方のデータがはっきりしないと計算できない。それから、歳出面について申しますと、地方歳出のうちの相当分国庫補助負担金を伴う経費によって占められております。これらの国庫補助負担金を伴う国の方の支出計画がどうなるのか。先ほど先生が御指摘になりましたように、臨調答申を受けて今後歳出合理化計画がどう行われていくのか、これによって地方財政の姿は大きく規定されてまいります。そういった意味で、国の方の前提というものなしに地方のサイドだけで計画を明らかにするというのは大変むずかしいのであります。  自治省としての考え方で計算してみればいいじゃないかという御意見もあるのだろうと思うのですが、それにしては余りにも問題が大き過ぎるということで、内々の勉強はいろいろしているのでありますけれども地方団体の皆さんにこういう形になりますよという指導基準としての中長期計画をつくるには、現時点では余りにもデータ不足前提要件が不確定過ぎるという点で悩んでいるところであります。  ただ、承るところによりますと、国の方でも、ことしの夏ごろまでに経済見通しについてはある程度議論がされるようでありますし、これに関連いたしまして、国の財政について臨調答申とも関連して何らかの方向が打ち出されますと、私どもそれなり一つのガイドラインといいましょうか、目標ができるのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、先生の御指摘のような必要性というものは十分認識しておりますので、よく研究してみたいと思っております。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)委員 その面はわかりました。ただ、国の方の財政計画なり経済見通しが大きな条件であることはおっしゃるとおりですが、大蔵省が立てるそういう見通しの上に立って、自治省側の主張というものが相当前に出なければいかぬと私は思っているのです。  そこで、今度の財源不足額について、政府予算委員会へ出した「予算及び財政投融資計画の説明」という予算の概要がありますけれども、この文書と自治省が出された五十八年度地方財政計画を見比べてみますと、政府側財政再建政府には自治省も入るわけですから政府側というのはおかしいですが、大蔵省が求めている財政再建方向自治省が考えている財政再建方向というものが、いまの時期において少し食い違っているような気がするのです。  大蔵省が国会に提出をされたその部分で、地方財政計画に対する財源不足額はこう書いてあるのですね。五十八年度地方財政において生ずると見込まれる財源不足額は三兆三千三百四十六億円で、括弧して、うち交付税特会における地方負担額は三千四百四十六億円ということを書いてあるのです。ところが、自治省の側の書き方は、そうはなっていないですね。五十八年度地方財政計画では、五十八年度地方財源不足額は二兆九千九百億円で、このほか、交付税特会借入金利子負担額三千四百四十六億円を加えると三兆三千三百四十六億円、こうなっているのですね。これは、財源不足額としては三兆三千三百四十六億円であることは間違いないのです。  ただ問題は、これを文章どおり読めば、自治省の側では、利子負担額三千四百四十六億円は、本来あるべき財源不足額として出たものではなくして、大蔵省側と折衝した結果これは上乗せさせられたのですよというとらえ方ですよね。大蔵省の場合は、いや、そうじゃない、本来それは地方負担をかけたのだから、二分の一負担させるのだから財源不足額は三兆三千三百四十六億円です、こう言っているのです。これは大変な意味合いを持っていると私は思うのです。  これは、後で大臣の本会議における答弁まで含めてまいりますとそうなっているのですが、大蔵省地方財政再建ないしは国の財政再建というのは、地方団体のそういう利子の二分の一負担まで絡めての財政再建を基本的な構想に持っている、財政構造の改革の基本的な構想に持っている。ところが、うがって見れば、自治省側財政再建は、それは本来国が負担すべきものであって、たまたま今年度はという形で、いわゆる本来の財源不足額は二兆九千九百億円だというとらえ方なんですね。「このほか」というのと、財源不足額は三兆三千三百四十六億円であるというその意味の違いは非常に大きいと私は思うのですが、これはひとつ大臣答弁してもらいましょう。
  12. 山本幸雄

    山本国務大臣 この利子負担の問題は、事務的にも相当折衝いたしましたし、大臣折衝でもやったことでございますが、これはいろいろ国家財政の現状も考えて、お互いにひとつ忍ぶべきところは忍んでいこうという考え方で、五十八年度についてはそういうふうにしよう、こういう決着をつけたわけでございます。これはたびたび私もお尋ねをいただいたのですが、それじゃこれから後はどうするんだということにつきましては、五十八年度はそうしましたけれども、これから後については、国の財政事情あるいは地方財政の事情あるいはさらに経済の動きはどうなるかということも勘案しながら話し合いでひとつやっていきましょう、こういうことで協議の決着がついておるわけでございます。  私どもの認識としては、これはあくまでも五十八年度について決めたことである、そういう認識でいま仰せのような数字にわれわれの方としてはなっておるということでございまして、大蔵側も、そういうことについては、大蔵大臣予算委員会等の答弁で、私の申し上げていることと食い違っていない、これは五十八年度でやった措置であります、後のことはまた御相談、話し合いです、こういうことになっておりまして、そういう話し合いでやっておることでございますから、そういう認識については私は変わりはない、こう思っております。したがって、いま仰せのように、自治省側としてはそういう考え方でおりますので、いまの計算上のいろいろ数字のことはあります、数字自体は間違っていないわけでございますから、そのとり方の問題である、基本的な認識については私は変わっていない、こう思っておるのでございます。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣答弁を正確に申し上げておいた方がよろしいと思うのです。本会議での大臣答弁では、五十九年度以降の利子負担のあり方について、政府はその方針を固めるには至っておりません。いまおっしゃったとおりです。ところが、大蔵大臣は、国、地方財政状況の総合判断で決めていく、こう言っているのです。五十九年度以降は全く固まっておりませんということと総合判断で決めていきますというのは、これは大分違いますよ。言葉のニュアンスの問題ではなくして、決めていきますというのですから。取り込むこともあるでしょうし、取り込まないこともあるでしょうけれども、いずれにしても、決めていきますということと方針は固まっていませんということとは違いますよ。  それに関連して、関連してというのはおかしいが、そういう答弁に出てくるほどほどに大蔵省財政再建計画、いわば国、地方含めての財政再建方向というものと、それから自治省側の考えている地方財政を中心とした財政再建方向とは、相当違ってくるんではないか、先ほどから何回も言っておりますけれども、また違わなければいかぬのじゃないか、こう私は思っているのです。というのは、この利子負担にも見られますように、もし国、地方一体財政再建ということで常にその犠牲が地方団体に押し寄せてくるということになれば、五十八年度精算分も入って云々ということもありますけれども先ほど財政局長がおっしゃった償還計画などを見てまいりましても、地方団体自身が独自の政策単独事業をより住民のニーズに合った形で積極的に進めようというものが、全部実は押さえ込まれてくる。国の方の関係で出てくる課題に引きずられて、実際の地方自治という問題が前に進まない。財政上、事実上できないのですからそういう条件になるじゃありませんか。  したがって、財政計画というものをいま自治省が考える場合には、確かに経済の動向とかそれによって起きる法人税とかリンクする法人事業税とかいろいろありましょう。ありましょうが、財源配分その他も含めて、税制全体も含めて、むしろ積極的に前に出ませんと、いま言ったこの利子の問題も含めてそういう形になってくるじゃありませんかという指摘を僕は強くしているわけですよ。いま一遍、大臣、私の言っている意味がしっかり酌み取れていると私は思うのですが、御見解をお聞きしたいと思うのです。
  14. 山本幸雄

    山本国務大臣 いまの地方財政、特に歳入につきましては、やはり先ほど来申し上げましたように国との連動性というものが非常に強くあると思うのですね。したがって、国の方の制度あるいは税収の状況に、地方税収も、交付税を初めとして地方財政歳入の方は大きく影響されるということであります。  そこで、よく言われますように、いまの制度を、いわゆる国の税金、国税地方税との比率、それを、たとえばよく御質問あるのは五〇、五〇にしたらどうだ、こういうお話もあります。その場合、現行制度のままで五〇、五〇にやれば、結局税源のたくさんある大都会中心の県にたくさん税収が行って、税源のないところはいよいよ貧乏する、こういうことになるので、五〇、五〇についても、なかなか現行制度を前提とすればやりにくいことであります。  そこで、結局交付税という調整機能を持つもので調整をしなければならない。そうすれば、国税の方から、つまり自由に使えるというそういう財源をできるだけ地方財政の方に持ってくる。補助金の整理にいたしましても、いま臨調お話が出ましたが、国の方の補助金を整理していく段階で、財源は確保しながら地方が選択して計画を実施していけるような経費というものをふやしていくというのが地方自治の線に沿うことであろう、そういう基本線を考えながら地方財政歳入面を何とか考えていくというのが本筋であろうと思うのです。  そこで、国の方と余り連動している、積極的にこちらの考えを出せというお話でございますが、いま御存じのように減税問題がございますから、政府の税制調査会はもう審議を始める。そこで、おっしゃるように増税なき財政再建という金看板がありますから、この旗印のもとで、租税負担率は一体どういうふうに考えていくのかということなどを恐らく政府税調でお考えになる。そのときに私は、当面五十九年度はどうするという問題もありますが、しかし、もう少し長い目で見た税制改正というものも、やはり審議の対象になるであろう。そうすれば、まあどういうことになるのか存じませんけれども、たとえば直間比率だとかそういうことがあるいは検討課題になるかもしれない。  もしそれ、そういうものが検討課題になってくれば、今度はたちまち地方交付税に響いてくるわけですから、私どもの方もひとつ、まあ少なくも地方財政の中期的な見通しというものを、見通しというと少し言い過ぎかもしれませんが、一体どうなっていくのかあるいはどうしたらいいのかということを、とにかく、あるいは結論は出ないかもしれない、しかしその勉強している過程で問題はいろいろわかってくるのじゃないだろうか、あるいはそこで一つの考え方は出てくるのではなかろうか、私はそう思っておりまして、自治省としてもそういう方向で今後勉強していきたい、こう思っておるところでございます。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)委員 先ほど地方財政計画とそれから国の予算大蔵省の出した文書のとらえ方の違いといいましょうか、結局三兆三千三百四十六億円という財政不足額は、先ほど言いましたように、借入金利子を取り込んだ不足額として既定の事実化しようとしているわけですよね。それに対して、大臣もそうですが、今年度、五十八年度に限ったことです。いわばそれまでの財政不足額自治省が言っているように二兆九千九百億円です。この面からこれからは税制問題が出てくるでしょう。国と地方との配分の問題とか、直間比率とか減税問題その他いろいろこれから論議をされると私は思うのですね、大蔵省あるいは政府全体としても。  そのときに、私が指摘しましたように、利子負担額は実は財政不足額ですという前提に立ってたとえば直間比率の問題や国、地方配分を決めるということと、いやそれは枠外のことなんです、たまたま五十八年度のことなんですということで国、地方財源配分を決めるということとは大分違ってきますよ、現実に検討される段階では。税調でも違ってくると私は思います。あるいはこれからどういうことになりますか。直間比率の関係からいけば、大衆消費税という問題が出てきます。われわれは前の委員会でも大変審議しましたけれども、大衆消費税をどうするかという問題もやった。いま言った地方財源不足額というのはそういう利子まで取り込んだものかどうかという前提で考えるかどうかということは将来的にきわめて重要なことですから、財政局長大臣もこれは心して対応していただきたい、こう思うのです。  そこで、いまの話の延長ですが、今度の借入金利子ですね。これの性格をどうとらえるべきか。もう私が言うまでもございませんけれども昭和三十九年の四十七国会で交付税の特別会計法の一部改正で、借入金利子の支払いについては一般会計から支払いに充てるというような法律上の改正があったわけですね。必要な金額を予算の定めるところによって一般会計からこの会計に繰り入れるものとする。借入金利子については、当時百五十億円、借入金利は二百四十三万円ですか。  その借入金そのものについても、二分の一負担がその後五十三年に起きているわけですが、本来国の責任でその部分は充当していく借入金を、今度は二分の一にして、地方団体でひとつ二分の一を負担してくださいという形に五十三年に直した。その段階でもわれわれは、この時期で交付税というものは本来三二%の交付税法の改正をやるべきじゃないか、附則条項で地方団体借入金の二分の一負担方式をとるのは間違いではないかという指摘をしたわけです。しかし、当委員会ないしは国会ではそれを可決したわけです。今度は利子まで二分の一地方への負担転嫁なんですね。  先ほどもちょっと触れましたけれども交付税というものは地方財政の平衡的な財政調整を行うという機能も含め、本来財源不足が出たときは交付税によって、すべてと言いませんけれども、大方賄っていくという方向が正しいのではないか。私は今日でもそう思っているのですよ。それに対して国の責任が果たせない、したがって借り入れをする、借入金利については当然一般会計で負担をする、その後特会で負担をするようになったわけですが、その原則が今度の場合崩れていくわけですね。  たまたま五十八年度に関する限り合意をしたのですというのではなくして、そういう国の本来あるべき責任体制というものが、この借入金利子を取り入れることによって、その基本的な方向性、国の責任のあり方というものが変わってくる、こう私は思うのですが、どうでしょうか。
  16. 石原信雄

    石原政府委員 交付税特会借入金に係る利子負担のあり方についてどう考えるかということにつきまして、ただいま先生が引用されましたように、この特会借り入れが初めて行われましたのは昭和三十九年度でありますが、それ以降借入金利子については国会の場でもしばしば取り上げられ、これまで今回の改正以前の段階では、特別会計という国の会計における借入金であるということでその利子は国が負担するということが行われ、またそういう考え方が政府側からも述べられてきたわけであります。  私どもも、この問題についての従来の理解の仕方といたしましては、交付税制度というものが地方行政計画的な運営を保障するための制度である、その制度を国が運用しているわけでありますから、言うなれば国の地方行政に対する財源保障の責務といいましょうか、それを果たす上で特別会計借り入れを必要とするという事態のもとで、その利子について国が負担することがいわば国の責務を完全に果たすゆえんである、そうあるべきものである、こういう考え方で来たわけであります。  しかし、五十八年度におきましては、御案内のように国の財政状況が大変な危機的な状況に陥りまして、この従来の考え方が踏襲できなくなった。それで予算編成の過程におきましては、そういう状況をも背景にいたしまして、本来交付税会計の借り入れは地方財政運営のために行われるわけでありますから、その利子についても全額を地方負担で、具体的には交付税特会負担で賄うべきではないかという考え方も国庫当局から示されたわけであります。この点について種々論議があったわけでありますけれども、最終的に二分の一を特別会計で負担する、実質的に地方負担するということに落ちついたわけであります。したがって、この点についても、私どもも従来の経緯からいたしますと大変残念だったのでありますけれども、五十八年度の国の予算を編成しなければならない、こういう状況のもとでこのような二分の一負担ということに同意をいたしたわけであります。  ただしかし、五十八年度地方財政運営にその部分が直接支障を及ぼすことがあってはならない、その分だけ地方への財源が実質的に減少するようなことがあってはならないということで、先ほど来いろいろ引用されておりますように、この分は、この利子負担額、具体的には三千四百四十六億円を地方財源不足額に加算する、それだけ地方の必要財源のトータルに加えまして、それについて必要な財源手当てを行うということで、五十八年度財政運営に支障なきを期するということでこの問題の決着を見た次第であります。  そういった意味で、従来の考え方からすれば半歩後退という御指摘もあるかもしれませんけれども、五十八年度の国、地方を通ずる財政状況の中でぎりぎりの選択としてこういった結論に落ちついたという点を御理解賜りたいと思うわけであります。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)委員 理解できませんね。地方のために借り入れたのであるからその金利は負担せい、こうなっているのでしょう。それに対して、いろいろ五十八年度の国の財政状況等を見てやむを得ずここで妥協しましたということは、本来交付税というものは何であるかという原則が否認されているのですよ。  というのは、地方財源不足が起きたときは国の交付税で処置をするという原則から見れば、地方のための借り入れであるからその金利を負担せよということに一歩妥協しましたというのは大変なことですよ。いま大臣がおっしゃったように五十八年度限りのことですということにならぬでしょう、そうしたら。地方のために借り入れをする、そのために金利は負担せよということにわれわれは妥協したといったら、五十八年度限りのことにならぬじゃないですか。いま一遍答弁してください。
  18. 石原信雄

    石原政府委員 地方の借り入れのための利子地方負担すべきだという主張を予算編成の過程におきまして大蔵省当局がされたわけでありますけれども、そもそもこの利子負担を基本にさかのぼってどうあるべきかという議論については、私どもは、国の財源保障という責務を果たす趣旨からするならば、従来どおり国が負担すべきであるという考え方を主張し、持っておったわけであります。他方、ただいま申し上げましたように国庫当局の考え方もあって、議論の末、五十八年度について二分の一を負担するということにいたしたわけであります。したがって、この点は地方の借り入れだから当然に地方負担してしかるべきだという考え方を是認する前提に立って、将来ともそうするんだという前提で妥協したというものではございませんで、五十八年度財政状況のもとでやむを得ざる措置としてこれをのんだ次第でございます。  したがいまして、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、五十九年度以降どうするかについては全く決めていないわけでありまして、これはまた五十九年度以降の財政状況の中で、地方財政状況、国の財政状況を総合判断して議論していくべきもの、このように考えております。その点については、五十八年度の段階で何らかの決定をしているということは全くございません。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これは議論しても平行線だと思いますけれども、たとえば地方団体が行っている中央の委任事務あるいは超過負担地方団体への負担等々を考えていきますれば、財源不足額というのは、いわば地方団体がやっているという問題じゃないでしょう。したがって、財政局長は政治決着ですということでしょう、要するにあなたが言いたいのは。五十八年度お金がこれだけ足りないから、この分は地方負担してくれないかということで政治的に決着をしましたということだろうと思うのです。でなければまたおかしいですね。地方が使っているお金がある。それが借り入れだからその金利を負担するのはあたりまえだという議論になってしまうわけです。私は、それにしてもここまで譲歩されるというか、国の財政地方財政まで取り込んでしまったということは、これから地方財政計画そのものに大変大きな影響があるということだけ指摘しておきたいと思うのです。  次に、今度自治省から財政課長の内簡が出ましたね。この内簡の中で幾つかの問題が出ています。私は、非常に重要な制度改正がこの中に含まれているということを指摘をしたいわけであります。  まず第一に、交付税算定に伴う財源対策債の処理の仕方について内簡が出ています。従来この元利償還費に対する交付税措置の見直しが行われているわけですが、財源不足額交付税で穴埋めをして、元利償還費は各地方団体の財対債発行額を基準財政需要額に算入をして、そして財源対策債の処理をしておったわけですが、今度の内簡によれば、それは算入率の引き下げを行い、同時に、事業実施の有無、大小に関係なく算定される標準事業費方式を併用する、こういう内容になっているわけですが、この制度の改正は、従来の方法ではどこに問題があり、どこに新しい制度として実施をする理由があるのか、お聞きしたいと思います。
  20. 石原信雄

    石原政府委員 御案内のように、いわゆる財源対策債は、ノーマルな状態であるならば基準財政需要額において算定されておりました投資的経費の一部を財源対策上の理由から地方債に振りかえる、そしてその地方債の元利償還金を償還時において基準財政需要額に算入していく、そして実質的には地方団体に対する投資的経費財源保障に遺憾なきを期する、こういう考え方でこれまで行われてきたわけであります。  ところで、その投資的経費の算定方法でありますが、河川費でありますとか港湾費でありますとかの一部の経費につきましては、河川の延長あるいは港湾の係留施設、外郭施設の延長などの客観的な方法による投資的経費の算定が必ずしも的確にいかないという事情から、一部公共事業費地方負担額を直接基準財政需要額の上に反映させる方式をとっているもの、あるいは義務教育施設費、清掃費などにつきましては、一種の理論的な方法によって事業費を加算する方式でいわゆる事業費補正が適用されているもの、それから農業行政費や林野行政費などのように農家戸数あるいは耕地面積、林野面積等の客観的な指標によりまして土地改良事業費とかあるいは林道の整備の経費とかいったものを計算しているものと、大きく言いますと二つの系統があるわけであります。  そして、いわゆる事業費補正によって投資的経費を算定しているものは、各年度の具体の事業費が全部または一部基準財政需要額に反映する、そういうストレートで反映するような算定方式をとっております。こういった系統の投資的経費につきましては、これを起債に振りかえるに当たりまして、振りかえられた起債の元利償還費を直接基準財政需要額に算入する。言うなれば、従来の方式と結果として各団体ごとの計算が変わりがないようにするという意味で、事業費補正によって算定されたものを振りかえたものについては、そのままストレートで元利償還金を基準財政需要額に算入するという方法をとっているわけであります。その点については今回も変わりはございません。  問題は、農業行政費や林野行政費などのように、言うなれば客観的な指標によりまして画一的に投資的経費の算定を行っております費目について、一部財源対策債への振りかえが行われる部分についてどう扱うかということでございますが、従来は、こういったものについても元利償還金を直接基準財政需要額に算入しておったわけでありますが、しかし、この方式をとりますと、たとえば五十七年度のように財対債がない年もありますから、年度によって財対債が発行される年とそうでない年とありますと、たまたま財対債が発行される年に非常に多くの事業を実施した団体と、その年はたまたま実施しなかった団体がありますと、その元利償還費をストレートで基準財政需要額に算入するということは、非常な不公平な結果を招くわけであります。  むしろこれらについては、事業実施のときには地方債の発行は認めるけれども、その償還費は、言うなれば単位費用方式と申しましょうか、全国ベースでの償還費相当額を農業行政費や林野行政費に、いわば標準団体の必要経費として一律に計算する方が公平ではないか、客観的な算定方式によって償還財源を措置することの方が公平ではないかという考え方から、五十八年度におきましては、いわゆる事業費補正系統の財対債と標準経費算定方式による部分の財対債とについては償還費の算入を異にする、変えるという方向で今回審議をお願いしているわけであります。  その理由は、いま申しましたように、これは年度によって不公平が起こらないようにする、団体に対する財源措置において不公平が起こらないようにするというのが主たるねらいでございます。
  21. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大変丁寧な御説明をいただきました。時間の関係がありますから、なるべく要領よくひとつ答弁してください。  私が聞きたいのは、大体そういう方向であろうという理由はよくわかっているのです。いまの変更を余儀なくするような条件というものは、各投資的な費用について不公平をなくするという前提もあるでしょうが、先ほどからずっと述べておりますように、特別にいま地方団体財源の使い方についてそういう制度を改正した方が財政再建上もよろしいという根底があるのか、そういう政治判断があるのかどうかを実は最終的にはお聞きしたかったわけです。それが一つ。  それからいま一つ交付税の算定でこれまた内簡に出ていることですが、法人税関係の減収の精算の取り扱いについて出ていますが、どうなんでしょうか。大蔵省の方、見えておりますが、五十七年度の法人税関係の今日的な見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
  22. 真鍋光広

    ○真鍋説明員 五十七年度の法人税収につきましては、現段階で判明していますのは二月末までの税収でございます。これまでの累計伸び率は前年度に対しまして五・四%、一方、補正後の予算伸び率で、年度間としまして税収見積もりしております伸び率が二・六でございますから、現段階では数字としては二・六より高い五・四%ということになっておるわけでございます。  また、歳入予算に対します歳入の進捗割合は、二月末現在で六二・九%ということでございまして、前年同月を一・六ポイント上回っておるという状況でございます。しかしながら、この伸び率の中には、五十七年度で税制改正でとりました延納の縮減といったものがやや攪乱といいますか、特殊な要因として入っておりまして、やや高目に出ておるという面はございます。したがいまして、各月の動きを見てみますと、五十七年十二月では前年に対して八七・七%、それからこの一月では八七・六%、二月は若干上がりまして一〇四・一%ということでございますが、基調的には、経済生産活動の水準といいますか、状況を反映しまして、必ずしも強いものでないということでございます。  いずれにしましても、五十七年度全体の法人税収につきましては、法人税収の中で三割強のウエートを占めます三月期決算が残されておりますので、現段階では確たることを申し上げるということはむずかしい状況でございます。
  23. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そうしますと、十二月現在ないしは二月の推移は、大体下方修正した以後における大蔵省見通しのラインに沿って税収が行われておる、こういうふうに見てよろしいのでしょうか。もちろん、三割以上が三月ですからそれはそれとしましても、十二月—二月の段階ではそういうふうな推移で進んでいるというふうに見ていいでしょうか。
  24. 真鍋光広

    ○真鍋説明員 大体そういった線にあると思います。
  25. 加藤万吉

    加藤(万)委員 そこで、五十七年度の法人関係税の減収分の精算の取り扱いについての内簡ですが、どうなんですか、これは。減収補てん債で長期に交付税で見るか、積立金の取り崩しによるか、翌年度、翌々年度交付税で精算をするか、各地方団体はひとつ判断をしていずれかの方法をとりなさい、そういう制度として内簡を出されたわけですが、その真意はどこにあるのでしょうか。簡単に説明してください。
  26. 石原信雄

    石原政府委員 端的に申しまして、五十七年度の法人関係税の減収が非常に大きくなったものですから、それについては減収補てん債の発行を各団体の要請どおり認めようということで、いまのところ大体六千五百億程度を予定しております。しかし、団体によりましてはやはり現金精算を希望しているところもあります。それにこたえるためには、金額がかなり大きくなっておりますので、従来のように二年精算ではちょっと応じ切れない。五十八年度交付税総額との関連もありまして、できればこれを三年分割の精算にしたい。それから過大算定を受ける団体の方にとりましても、二年で精算されるより三年の方が影響が少ないわけですから、そういうメリットもありますので、この機会に精算の年限を従来の二年から三年に延長を願いたいということでございます。
  27. 加藤万吉

    加藤(万)委員 五十九年度から始まる借入金の返済額との関係から見ても、いま言ったようないわゆる地方団体財政的な負担の増加といいましょうか、それを緩和しようという、その背景は、いま言った五十九年度から始まる償還額との関係もありますか。
  28. 石原信雄

    石原政府委員 それは直接ございません。もっぱら五十七年度の減収が非常に大きかったものですから、それの影響を緩和したいということで、今回年限を二年から三年にしていただきたいということでございます。五十九年度の分には関係ございません。
  29. 加藤万吉

    加藤(万)委員 府県段階と市町村段階とで、この内簡の適用について、どちらかと言えば市町村ではこういう方法をしてほしい、あるいは府県段階ではこうしてほしいという内示的なものがありますか。
  30. 石原信雄

    石原政府委員 精算につきましては、県と市町村で私どもの扱いとして特に差は設けてございません。ただ、一般的に市町村の方が法人関係税のウエートが小さいものですから、現金精算を選択する団体が多くなっております。
  31. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いずれにしても、地方団体は大変な財政状況になると思うのです。特に交付税減額される五十九年度からは、償還額が大きくなる等々を含めて大変な状況に陥ると思いますので、いまの法人関係税の減収分が一兆二千億円を超えるわけでしょう。ですから、地方団体には相当の負担がかかって財政上の余裕が出てきませんので、十分な指導と配慮をお願いしておきたいと思うのです。  ひとつ個別問題を二、三聞きたいと思うのです。  防衛施設庁関係にちょっとお聞きしますが、今度の地方財政計画の中で、基地周辺整備に関する地方団体への交付金が載っているわけですが、防衛施設庁が施設運営等の関連諸費として二千四百九十億三千四百万円、基地周辺整備の生活環境整備に必要なお金をここへ計上しているわけです。住宅防音事業はそのうちで七百二十二億二千五百万円、前年度から比べると若干伸びているわけであります。それを含めて基地周辺事業費が五十八年度千四百五十三億円になっているのですが、特にこのうちの基地防音事業を重点的に、いま言いました施設運営等関連諸費として二千四百九十億円を計上したと予算委員会提出された予算の説明に載っているのですが、この住宅防音事業を重点的にと言うその重点的にというのは、どういう計画でどこに重点的に配置をされているのでしょうか。
  32. 杉本康治

    ○杉本説明員 住宅防音の費用は、五十七年度が四百五十六億一千四百万円でございましたのが、五十八年度四百七十二億六百万円、増の額といたしましては十五億九千一百万円、三・五%の伸び率でございます。  それで、本年度、五十八年度配分計画につきましては、今後大蔵当局と御相談の上決めることになっておりますが、重点施行といたしましては、厚木、小松等に重点施行する予定でございます。
  33. 加藤万吉

    加藤(万)委員 厚木基地周辺については、どういう計画でしょうか。
  34. 杉本康治

    ○杉本説明員 厚木基地につきましては、五十七年度に比較しまして、世帯数にしまして倍増の計画でございます。
  35. 加藤万吉

    加藤(万)委員 厚木基地周辺からは、これは大臣の耳にも入っていると思いますが、例のミッドウェーの帰港による発着艦訓練、騒音問題が大変問題になっています。裁判で争って二審にいまいっているわけですが、この騒音防止のためにいまの予算、いわゆる住宅防音工事のための予算が去年よりも多くなって、厚木基地は倍にするということになったといま聞いたのです。  これに伴いまして、実は厚木基地の存在が、そもそもあの都市の真ん中で、もうそういう機能というものを果たさないのではないか。特にタッチ・アンド・ゴーというああいう発着艦訓練というのは、まさにあの基地としては周辺の状況から見て好ましくないということで、いま防衛施設庁が中心に、この騒音問題の解消のために、たとえば三沢の基地等でその発着艦訓練をやるとか、あるいは下総もひとつ検討の対象にしてみようとか、あるいは相模湾沖かあるいは太平洋になるかわかりませんけれども、浮体、いわゆる浮いた航空基地ですね、浮体航空基地、これをつくろうという計画があるというのです。これはかつて緑区でジェット機が墜落して、例の悲惨な事故等もあったことも考えて、人口密集地帯における新しい問題として大変重要な課題として出ているのですが、防衛施設庁にいま一遍聞きますが、これは調査費を今年度つけたというのですが、調査費は幾らをつけて、どういう形でその調査をされようとしているのか、お聞きをしたいと思います。
  36. 久保邑男

    ○久保説明員 お尋ねの調査費の件でございますけれども、御案内のように、厚木飛行場におきましては米軍艦載機の着陸訓練を行っておりまして、その騒音の緩和を図るために、ほかにも訓練の実施ができる施設を見出すなり、あるいは他の方策を調査検討するというものでございます。  内容につきましては、関東地区あるいはその周辺における飛行場等につきまして、それらの周辺地域の集落の状況だとか今後の都市計画状況等を調べたり、あるいは飛行場につきましては現在の施設の内容、たとえば滑走路だとかその他駐機場等が含まれますが、そういうものを調査するとともに、先ほどお話のありました地元から提案のありましたいわゆる海に浮かぶ滑走路と申しますか、浮体飛行場についても検討するための資料を集めたいという計画を持っております。  なお、このために、五十八年度において、これに伴う調査費が約九百万、予算を成立させていただいております。
  37. 加藤万吉

    加藤(万)委員 時間の関係で、問題二つ一緒に質問しますが、先ほどの住宅防音装置と同時に、滑走路周辺の家を、騒音がひどいですから、撤去をするという費用も、先ほどおっしゃいました四百七十二億ですか、その中に含まれていますか。それとも全然別なものでしょうか。  それから、いま浮体滑走路、海の上へ浮かんだ発着艦訓練場、これをも含めて調査、こういうことですが、せんだって、ある新聞には、防衛施設庁は本格的にこれを考えて、相当それ自身が、いわゆる浮体飛行場自身が単なる検討の対象というのではなくして、実施をするためにはどういう状況で、どういうものが必要かというような、相当事実関係として進行しているというような記事が出ていました。私ども会議員がその記事よりも内容を知らないというのでは、これは地元のさまをなさないわけなので、いまおっしゃった一つの対象としてやっているというのか、それとも、相当そういう中身を突っ込んで、いわゆる新聞記事に見られるような状況まで防衛施設庁が検討されておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
  38. 杉本康治

    ○杉本説明員 住宅の移転の方を先に答えさせていただきます。後に久保課長からそちらの方を……。  厚木基地の石油タンクの近接しております住宅につきましては十戸ございまして、これの移設経費を五十八年度予算に計上していただいております。
  39. 久保邑男

    ○久保説明員 浮体飛行場の件でございますけれども先ほども申し上げましたが、五十八年度予算が成立したばかりでございまして、現在私ども内部においていろいろ調査の内容を具体的に詰めているわけでございます。  その中で、浮体飛行場につきましては、何と申しますか、日本においては例のない事例でございますし、カナダ等においては比較的検討なり開発が進んでいるやに聞いておりますが、これにつきましても、実際問題としまして技術的な問題、つくる問題とか、それからそれを置く場合に潮流とか海流だとかいわゆる海洋学的な問題、そういうものもあろうかと思います。また、こういう例のないものをつくる場合には、いろいろ経済効果と申しますか、費用の問題もあるかと思います。これはっくる費用とまた維持運営する費用もありますし、それからさらに、関東地区あるいはその周辺の海域にこういうものを浮かべるとした場合に、一般船舶の航路の問題並びに関係漁業者との問題、そういういわゆる社会的な問題もあろうかと思います。こういうこともあわせて検討しなければならないわけでございますが、何分まだ本年度入ったばかりでございまして、どのように調査を進めていくか、部内で検討している段階でございまして、先日の新聞に出ておりましたような有力な案である、そういうところまではまだ申し上げる段階に至っておりません。
  40. 加藤万吉

    加藤(万)委員 いまの御答弁を聞いておりますと、相当有力な案として検討される構えはあるわけですね。  いずれにしても、厚木基地の周辺問題、これはもう騒音問題を含め、いわゆる裁判で争うという事態まで立ち至っているわけですから、施設庁の側、そしてこれを受けて交付金で地方団体におりるわけですが、これは厚木に限りません。小松もそうでしょうし、三沢もそうでしょうから、十分住民環境の整備のために最大の配慮をしていただきたい、こう自治省側にもお願いをしておきたいと思うのです。  次に、農業普及事業負担金の組みかえについて御質問をします。  私も本会議で若干質問をしました。補助負担金から定額交付金にどうして変わったのか。額は当初予算から見ると大変減額になっているが、どうなのか。最終的に私がお聞きをしたかったことが実は大臣答弁に出ておりませんので、改めて聞き直すわけですが、この補助負担金から定額交付金にした一番の理由はまず何でしょうか。  それから、定額交付金にした場合、補助負担金の場合にはそれぞれたとえば人員とか事業計画とかあるいは管理費用とか、そういうものをずっと積み上げて補助負担金額になっているわけですが、交付金の場合は定額制ですから、定額ということになりますと、その基礎になるべき金額がどういう形で積み上げられてくるのか不明確です。大臣の本会議における答弁でも、運営の基礎経費を見込みながら従来の経過を踏まえていって定額負担金にしたのです、こういう答弁なんです。そうなりますと、定額交付金ですから、いつまでたっても定額であって、いわゆる基礎になるべき積み上げ額の上昇というものはあり得ない状況になってくるわけですが、その二つの点についてお聞きしたいと思う。  それから特に、定額交付金の場合に、御案内のように、協同農業普及事業の場合に、その中の必要経費として人件費が大変大きな額を占めております。その人件費が、今年は人事院勧告、いま交渉中でありますけれども、凍結という状況にあります。したがって、いわゆる定額交付金になった場合には、そういう人件費の上昇、たとえば人勧に基づいて人件費が上がった、それが組み込まれて新たなる基礎になる積み上げ額に算入されてくるのかどうか、この辺も含めて一括してひとつ答弁してください。
  41. 田口俊郎

    ○田口説明員 先生からお尋ねの件でございますが、まず第一は理由でございます。  今回、協同農業普及事業の所要経費につきまして、従来の負担金から交付金に改めたわけでございますが、都道府県の自主性を発揮させる、つまり自主性の発揮を促進するということが理由の一つでございます。  従来は個別の経費の積み上げでございますので、国全体の総枠の中で一つ一つのものが決まっております。そういたしますと、県でたとえばことしは機動力が欲しい、つまり車が欲しいという場合、その車の国全体の総枠というのがあります。そこで制約を受けます。しかし、今回交付金にいたしますと、県が、その協同農業普及事業の交付金の枠内で自由度がございますから、たとえば普及所の機材費よりは車の重要度があるといえば、そういうところに弾力的に使っていく、そういう意味で費目間の弾力化が図られる、つまりそういうことを通じて県の自主性が発揮できる、これが一つの理由でございます。  それからもう一つは、その経費の問題とうらはらでございますが、事業を効果的にやれる、つまり経費がそういうことで非常に弾力的に使えますので、それに合わせて事業の内容面につきましても弾力性が持てる、あるいは効率的な効果を上げやすい、そういう活動の運営が図られる、こういうことになろうかと思います。  そういう意味で、これまでの人件費とか物件費とか事業費といった個別経費を積み上げていたことをやめまして、その総額について、予算編成の過程を通じまして過去の実績などをベースにして定額の交付金として計上されておるわけでございます。その限りでは、先生指摘のように、確かにその意味での積算はないということになるわけでございまして、そういう意味から先生が御心配になっておりますようないろいろな経費の上昇あるいは増、それに対してどうするかということがいろいろ出てくるわけでございます。  今回、交付金に改めましたので、交付金の性格としては定額化したということから安定的に取り扱われる、そういう制度の趣旨というのがあるわけです。その意味では、総額について当然に改定されるというような、そういう性格はないのでございますけれども、御指摘のような点、これに対応するという考え方として、私どもは、一つは所要経費の確保、そういう面につきまして物価なり賃金なりそういうものが変動した場合に、普及事業の円滑な実施が損なわれないように、農林水産省としては予算折衝を通じて適切な対処をしたいということが一つございます。  それからもう一つは、運営上の問題でございます。  運営上の問題につきましては、今回法改正をお願いしておるところでございますが、その中で国が運営の指針を定めまして、都道府県がそれを基礎にして、たとえば普及職員の配置に対する考え方といったようなものを盛り込んだそういう実施の方針を都道府県で国と協議しながらつくっていただくということにいたしておりまして、そういう方針協議を通じていま先生が御心配になっているような活動の内容面につきましても、これによって事業の円滑な実施ができるように努めたいというふうに私どもは考えております。したがいまして、そういった点を通じまして、全体として普及事業がこれからも、従来より特に問題を起こすようなあるいは支障を生ずるようなことのないように、私どもとしてはやっていきたいというふうに考えております。
  42. 加藤万吉

    加藤(万)委員 今度そういう制度改正になった部面は、農業協同、蚕糸技術改良、それから林業指導補助、水産業改良普及ですね。いわば農水省関係が非常に多いわけです。したがって、いまの諸点、物価の上昇、あるいは人件費もそうですが、そういうものを組み込んで将来支障がないように、この辺は特に私からもお願いをしておきたいと思うのです。  自治省側でもこの辺はよく目を光らせておいていただきたいと思うのです。定額制になりますと、補助金その他について再検討を加えるべきであることはもう論をまちませんけれども、ただ、従来の負担金が定額交付金になっていく場合に、しばしば起きる悪化の条件というものがそういうところだけにしわ寄せされてくる可能性があると思うのです。十分ひとつ御留意しておいていただきたい、こう思うのです。  時間がありませんから、最後に公共事業の前倒しに対する資金ですが、今年度の公共事業ですね、従前よりも景気が大変悪いですから、せんだっても閣議でいろいろ問題になりましたけれども、二月の完全失業率なども大変悪いですから、どうしても公共事業を早急にやって、景気の立て直し、同時にまた失業率の低下、いわゆる雇用労働力を拡大するということが必要だろうと思うのです。  そこで、公共事業の前倒し計画に対して、従来それぞれ地方団体に要請をするわけですが、五十二年、五十三年、五十四年は、この前倒し計画に対して、着手時の概算払いについて国は地方自治体の資金繰りを考慮して事業費の四〇%以内、ただし補助金の九〇%を限度としているのですが、その補助金を支出するもの、そういう処置を講じていたわけです。仮にたとえば事業費が一〇〇、補助率六〇の公共事業ですと、四〇%の前金払いがなされたときに、本来は二〇ですけれども、この制度の取り入れによって四〇%の補助金を地方団体が受ける、こういうことになるわけですね。どうなんですか、五十八年度はこういう制度をとろうという計画はないのでしょうか。  それから、これは大蔵省に実は先に通告してありませんから、御答弁ができるかどうかわかりませんけれども、本来これは大蔵省のいわゆる公共事業費に伴う補助金の地方団体への交付ですから、大蔵省の方、答弁できますか。
  43. 田中暁

    ○田中(暁)政府委員 御質問の概算払いの特例措置でございますが、五十二年当時、公共事業の施行促進を図るために時限的な措置として行われたものでございますが、地方公共団体におきましては引き続きそのような要望があるものということは承知しているところでございます。  ただ、この問題は、結局のところ国と地方の資金繰りの問題に帰着するわけでございまして、先生御承知のとおり、現在国庫の資金収支事情は五十二年当時等と比べますと大変厳しいものがございます。また、昨年度、五十七年度は七五%という非常に高い前倒しを決めたわけでございますが、五十七年度におきましても五十二年度のような特例措置はとられなかったという経緯もございます。したがいまして、その実現にはなかなか困難な面もあろうかと思われますけれども、公共事業の施行に伴う諸問題につきましては、公共事業等施行対策連絡会議を設けまして、ここでいろいろと検討されるということになっておりますので、この会議におきます検討課題の一つになろうかと考えておる次第でございます。
  44. 加藤万吉

    加藤(万)委員 五十八年度公共事業の前倒し計画は、せんだっての閣議の中でも議論があり、これを実施して内需の拡大によって景気の落ち込みを抑えよう、こうなっておるわけですから、したがって、私はいま初めて聞いたのですが、公共事業の連絡会議でその問題が提起されるならば、ぜひ提起をしてほしいと思うのです。きょうは、大蔵省の方からは答えが得られないと思いますけれども自治省側からはぜひ提起をしてもらいたいと思うのです。そして、地方団体がこれにより、たとえば前倒しによってその分だけの支払うべき金の金利を余分に負担するというようなことのないようにひとつ配慮してほしい、ぜひ政府間で協議をしてほしいと思うのです。  それから、いま一つ聞きますが、そういう形で前倒しに対する補助金を受ける事務手続が大変複雑で、特に町村段階ではこの制度の利用がなかなかできない。したがって、事務の簡素化についてもう少し考慮すべきではないか、配慮してほしい、こういう提言がしばしばなされているのですが、この辺についての何とか手直しといいましょうか、簡素化の方向について事務的にも進められているのでしょうか。
  45. 石原信雄

    石原政府委員 補助金の交付の促進、概算払い制度の活用などにつきまして、確かに従来から、添付書類が非常に多いとか省庁によって様式が違うとか、いろいろな問題が指摘されております。これは行政管理庁も指摘しておりますし、地方団体からもそういった指摘がなされております。私どもも、機会あるごとにその改善方をお願いしております。今回の公共事業の執行促進に当たりましても、そういった点を含めて補助金の事務の簡素合理化を強く関係省庁にお願いしているところでございます。
  46. 加藤万吉

    加藤(万)委員 大臣、最後に、私は、地方財政再建方向中長期財政の将来展望、それに伴う自治省側ないし国全体の側でなるべく早く指標といいましょうか、あるいはそういう方向性を明示してほしい。でなければ、重なり合ってまいります地方借入額あるいは起債を含めて、指標が出ませんと、首長さんはどっちへ向いてどういう方向地方自治を守っていこうかという方向性を見失うのではないかと思うのです。  さらに、いまずっと個別問題二、三申し上げましたけれども、大変シビアになっておりますね。いわゆる通常世間で言う一銭のお金もむだにしない、そのかわりに本来国が負担すべきものについてはきちっと負担してもらう、そういう面も細かな分野にまでわたって要請が出ている。私は、それだけ地方財政も大変シビアな状況に置かれている、こう思うのです。  したがって、いま自治省として、そういう地方団体の意を受けた条件というものを自治省が盾になってカバーをしませんと、中央の直結的な、あるいは管理社会を生み出すような地方の時代になってしまうと思うのです。財政政策を実施する一番基本ですから、そういう意味ではぜひそういう方向になるように大臣の決意をもう一度お聞きをして、私は質問を終わりたいと思います。
  47. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方財政は非常に厳しいということはもう御存じのとおり、るるとして先ほどお話も出ました。そこで、自治省としましては、地方公共団体の行財政運営が目的どおり実施されますように、全面的な協力をしていきたいわけでございます。  臨調答申も出まして行政改革も実施しなければならない。そこで私は、もう一つ申し上げておきたいと思いますことは、地方公共団体側も現在の厳しい状態というものを認識をしていただいて、それはそれなりにまたお考えを願う。中央と地方とが相呼応して地方財政の今後の明るい展望を図っていきたい、こう思っておるところでございます。
  48. 加藤万吉

    加藤(万)委員 終わります。
  49. 田村良平

    田村委員長 午後零時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ────◇─────     午後零時五十分開議
  50. 田村良平

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。部谷孝之君。
  51. 部谷孝之

    部谷委員 地方交付税法の一部改正法案の審議に入るに先立ちまして、たまたま四月の五日に経済対策閣僚会議が開かれました。そこで「今後の経済対策」を決定されたわけであります。そこで、この点について少し触れてみたいと思います。  この経済対策の中身を見ますと、その柱の一つに公共事業の前倒しの執行を掲げておるわけであります。五十八年度の公共事業等につきましては、上半期における契約済み額の割合の目標を七〇%以上とする、こういうふうに言っております。これら公共事業は、その多くが地方公共団体が補助事業を通して執行されるわけでありますが、上期七〇%以上という契約が可能なのかどうか、まず御答弁を願いたいと思います。
  52. 山本幸雄

    山本国務大臣 昨年も七十数%という前倒しをやったわけでございますが、ことしは一応七〇%で、昨年よりはちょっと控え目になっている。実はけさも閣議でこの実施について大蔵大臣からお話があり、さらに建設大臣並びに私からもこれに協力をするという発言をいたしまして、さらに各省庁の連絡会議を昨年と同じように設けることになっており、この連絡会議で実際のこれが促進、推進について協議をして詰めていく、こういうことになっております。したがいまして、地方公共団体といたしましても七〇%以上の公共事業前倒しに協力をしていただくように、私ども地方公共団体に要請をしてまいりたい。  これはいまお話しのように、補助事業についてできるだけ早く国の方で出していただく、そしてこれが実施上のいろいろな手続などもできるだけ簡素合理化をしていただいて、地方がやりやすいようにひとつ中央の各省庁でもお考えをいただきたい、こういうことも私から発言をいたしまして、そういう方向で各省庁にも協力をしていただき、私は、この七〇%以上という、どの程度までいけるか、これからの詰めでございますけれども、昨年に引き続きことしもそれは実施可能である、こう確信をしております。
  53. 部谷孝之

    部谷委員 大蔵大臣は、公共事業費配分につきまして地域間格差を生じさせないような配慮をしたい、こういうふうな意向を表明しておられるわけでありますが、自治大臣事業のそうした配分につきましてどのように考えておられるか、あるいはどのような注文をつけていかれるのか、御方針を伺いたいと思います。
  54. 山本幸雄

    山本国務大臣 公共事業は相当各省庁にまたがっておりますし、またその公共事業の中身もいろいろ多様であります。けさの閣議で大蔵大臣は、一般会計における各省庁の公共事業、それから災害あるいは積寒地帯における公共事業あるいは財政投融資による公共事業、これらそれぞれにひとつ工夫をして前倒しをしてほしいという御発言がありました。これは、各省庁がそれぞれに持っておられる補助あるいは直轄事業を地域間にいろいろ配慮をしながら実施をしていくというのは、なかなか私はそういう調整はむずかしい点がたくさんあると思います。むずかしい点は確かに私はたくさんあると思いますが、全体の景気対策としてやるわけでございますから、地域間の問題も考えながらやはりやっていただくのがいいのではないかとは思います。しかし、実際問題として、そこまで細かく各省庁が配慮し、あるいは連絡会議等その他でそれだけの調整がどこまでできるかということについては、今後の大蔵省初め各省庁の御努力に待たなければならぬのではなかろうかと思っております。
  55. 部谷孝之

    部谷委員 五十七年度も上半期の契約率は七七・三%、こういうふうに公共事業の前倒しをやったわけですが、その執行成績というものはどうであったのか、また景気への効果はどうであったのか、これはひとつ大蔵省経済企画庁、自治省それぞれから御答弁を願いたいと思います。
  56. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 五十七年度の公共事業の上期の目標は、先ほど委員お話しのように七七・三%でございます。それに対しまして最終的に上期の契約率は七七・二%ということで、ほぼ目標を達成することができたということでございます。
  57. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答えを申し上げます。  先ほど平澤次長から答弁がございましたように、上期の契約率は七七・二ということでございます。五十八年二月末の契約率は九〇・六ということになっておりまして、昨年二月の数字の八九・六に比較しまして、それを上回った数字になっております。  景気に与えた効果という点でございますが、この公共事業の前倒しのもたらす影響が、私どもでとらえております公共工事請負金額の数字で見ますと、上半期、四月から九月期で、前年同期に比べまして四・七%増と着実に増加しておりまして、この点からも前倒しの効果があらわれたものと考えております。  なお、経済全体をとらえます統計で国民所得統計というのがございますが、昭和五十七年度の第一・四半期、つまり四—六月期、これが前期比実質で一・九と非常に高い伸びをいたしました。七—九月期も引き続きまして〇・九という高い伸びになっております。先般十—十二月期の統計が出まして、これが〇・四%ということになっております。  こういった数字がどの程度のものであるかということをちょっと申し上げますと、五十七年度のGNPの実質の実績見込み、私どもは三・一%ということを閣議決定したわけでございますが、仮に五十八年の一—三月期が成長がない、ゼロ%だとしてもこの三・一%は達成できる、こういう数字でございますので、私どもとしては五十八年一—三月期もGNPベースで見る限り順調に伸びていると考えますので、この三・一%を上回る経済成長を遂げるもの、このように考えております。
  58. 田中暁

    ○田中(暁)政府委員 地方公共団体におきましても、昭和五十七年度上半期の公共事業等の執行目標につきましては、国と同様七五%以上になるように適切な指導をやってまいったわけでございますが、各団体の御努力によりまして当初の目的を達成いたしまして、五十七年九月末の都道府県における公共事業等の契約状況は、予算現額七兆四千五百三十億円に対しまして、契約済み額は五兆六千百九十億円でございまして、契約率は七五・四%と相なっております。
  59. 部谷孝之

    部谷委員 今回のこの前倒しの措置は、一体去年とどのように違うのか、これは企画庁にお尋ねします。  それから、地方単独事業が前年と同額とされておるわけですが、地域経済にもそういうことで経済の景気の回復には影響があるだろう、そしてまた失業率も低下の兆しがない、つまり明るい見通しはない、こういうふうに思うわけです。したがって、景気の一層の浮揚を図るためには、むしろ前倒しの率は昨年度以上の率にしていくべきではないか、そういう積極策をとるべきではないか、こういうふうに思うのですが、去年七七%を示し、ことし七〇%にそれを落とした理由というのはどうなのか。むしろ積極策をとるべきではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  60. 宮島壯太

    ○宮島説明員 お答えを申し上げます。  先生指摘のように、昨年度の契約率、閣議決定では七五%でございますが、実績が七七・二ということでございますので、それから比べますと、七〇%以上というのは、五十八年度の方が低い数字になってございます。  昨年のいまごろは、日本経済はどういう状況であったかという点を振り返ってみますと、これは、失業率等については先般総理府から労働力調査の数字が出まして、二・七二という非常に高い数字が出ておりまして、それをどういうように理解するかという問題も一方であろうかと思いますが、確かに雇用情勢は数字から見る限り非常によくないという点は御指摘のとおりでございます。ただ、GNP統計全体で見てまいりますと、実は五十六年の十—十二月期がマイナスの〇・九だったと思うのですが、マイナスの成長ということで、日本経済がマイナス成長になったということで大変な問題になったわけでございます。その後、徐々にではありますが、順調に回復してはきておりますが、実は、昨年のいまごろはそういったGNP統計で非常にマイナスが四半期ベースで出た、マイナスの成長になった、そういった点が非常に高い公共事業の前倒しをしようという一つのインセンティブになったのではないかというように考えられます。  それでは、五十八年度経済はどういう状態かということを考えますと、先生指摘の失業率の問題、それから生産がまだなかなか伸びないという問題、もう一つ、設備投資が最近、アンケート調査でもよくないという問題が、五十八年度にとってマイナスと申しますか、懸念材料でございます。  一方、五十七年度と比べまして、五十八年度を取り巻く環境を見ますと、物価は引き続きさらに安定しておりますし、原油価格の引き下げの影響が徐々に浸透していくであろう。米国の景気も底を打ち、回復過程にいくのではないか。それから金利全般の金利水準も低下していくのではないか。ただ、これも円レートの状況によりますけれども、円レートも、恐らくこれから長期的なトレンドと見れば、円安修正の方向に行くであろう。  こういうように考えますと、確かに懸念材料はございますが、一方、有利な環境もたくさんございますので、その有利な環境、条件というものをどうやってわが国の経済成長に結びつけていくかということが非常に大事になってくると思います。  そういった意味で、先般も経済対策を決めまして、その中の一つの柱として公共事業の前倒しを決めたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、景気の盛り上がりを欠くという懸念材料と、それから内外環境の有利な面という両方勘案した上で、公共事業の契約の目標を七〇%以上というように決め、きょうの閣議でもそれが決定されたというように考えております。
  61. 部谷孝之

    部谷委員 自治大臣、地域経済状況から見まして、大臣はいまの前倒しの率の問題についてどのようにお考えでしょうか。
  62. 山本幸雄

    山本国務大臣 今日の日本の経済の現状から見て、景気対策をやらなければならないという必要性はあるという認識に立ったわけでありますが、しかし、財政が出動するという余裕はない。したがって、やはり民間活力を大いにふるい起こして、それをてこにひとつ景気対策をやりたいという考え方であります。いろいろな規制なんかも緩めて、民間がやりやすいようにひとつ条件整備、環境整備をしよう、それから設備投資、特に中小企業の設備投資は非常に冷え切っているけれども、電力は諸般の事情から見てもう少し設備投資をやってほしいということで五千億程度できないかというようなことなど、民間のそうした活力を出していく、こういう態勢にあり、それに相呼応していまの公共投資の前倒しをやろうということであります。  先ほど先生はもっとやれということでございますが、これは建設省なんかも心配をし、きょうも建設大臣はそういう発言をしたわけでありますが、上半期にやるのはいいけれども、じゃ下半期はどうなるのだということをこれからの景気対策の中で考えながら考慮をしなければならぬのではないかということもありまして、そういう中でこの前倒しをやるわけでございます。財政が出動するという面だけでは景気対策はやれないのでありまして、いろいろな規制を緩め、やはり民間活力を、住宅なんかその一番先頭に立ってもらわなければならぬわけでありますが、そういう全体の中でいまおっしゃるような地域経済の振興ということを考えていきたい、こういう立場であります。
  63. 部谷孝之

    部谷委員 今回政府が決定いたしました「今後の経済対策」におきましては、第一番目に、「五十八年度の公共事業等については、上半期における契約済額の割合の目標を七〇%以上として可能な限り執行を促進するとともに、今後とも内外の経済動向を注視しつつ適時適切な対策を講ずるものとする。」これは国の諸機関に対する一般的な提言というか、方針だと思うのですが、二番目に、「公共団体においても、(1)の措置に準じて、事業の円滑な執行を図るため必要な措置を講ずるよう要請する。なお、補助金の交付及び地方債の許可について事務処理の促進を図る。」地方公共団体に対するそうしたことを特に記載しておるわけです。  補助金の事務の改善につきましては、臨調の基本答申の中でも強くこれを指摘しておるところでありまして、今回の経済対策を実効あるものにしていくためには、公共事業関係補助金の補助決定、交付手続の簡素合理化、こうしたものが不可欠であることは申すまでもないところです。  ところで、実は去年の七月に地方自治確立対策協議会から出された「国庫補助負担金の改善合理化方策」、こういう要望書といいますか、これが出されておりまして、この中でもこうした「統合・メニュー化、総合化、事務手続の簡素合理化について」の提言を行っております。  そこで、地方自治確立対策協議会が出したこの提言の内容を見ますと、この中で、「公共事業関係補助金については、設例として道路改良事業、漁港修築事業および県営農道整備事業をとりあげ調査を行った。」そしてそういう中で、「補助金が、工事の箇所ごとに、その積算内訳の細部(本工事費、附帯工事費、用地費、事務費等)にまで立ち入って詳細に査定のうえ決定するものとされている」、二番目に、「かくして決定された補助金の変更については、積算内訳の軽微な変更を除き、所管省庁と協議し、その承認を受けなければならないとされていることによって、これに伴う協議や提出書類に国も地方も相当な労力と経費の支出を余儀なくされている」というふうな問題点を実は指摘をしております。  そして、そうした現状からいたしまして、「少なくとも次のような改善方策を講ずることとして補助金の決定、交付手続における無駄を排除すべきである。」すなわち一番目は、「各段階における提出書類をできるだけ簡略化する。」二番目に、「事業施行途中における変更については、交付単位ごとに決定された補助金の額に変更が生じない限りにおいて、所管省庁との協議を省略し、地方公共団体の責任において実施することができるようにすべきである。」三番目に、「協議に当り本省と地方農政局、港湾建設局等の出先機関とに二重の手続が必要な事例が見受けられるが、出先機関との協議は廃止すべきである。」こういうふうな提案をしておるわけです。  いろいろ聞いてみますと、これらについてかなり改善が進められておるというふうにも聞いておるわけでありますが、これは建設、農林両省の方から御答弁をいただきたいのです。これらの提案を受けて現在までどのような改善がされたのか、その点についてまず御答弁を願いたいと思います。
  64. 三木克彦

    ○三木説明員 補助金等は、法令及び予算で定められるところに従って公正かつ効率的に使用されなければならないこととされておるところでございます。道路事業につきましても、この趣旨にのっとりまして適正に行われるよう事務の執行の手続を定めてございます。  また、補助金事務手続がいたずらに繁雑になり非効率化することを避けるために、従来から簡素化、合理化についてはできる限り努力してきたところでございます。五十七年度におきましては、内容の軽微な変更の範囲につきまして、一千万円以下から二千万円以下に引き上げるという措置を講じております。また、提出書類の簡素化でございますが、一般国道改修費補助の舗装新設事業などの標準断面図の提出を不要とする、あるいは全事業の単価算出表を必要に応じて持参することで足りるというふうな措置を講じておるところでございます。さらに今後とも補助事務の簡素化につきましては、必要に応じましてできる限り努力をしてまいりたいと考えております。
  65. 谷垣孝次

    ○谷垣政府委員 御指摘ございました補助金事務の手続の簡素化につきましては、農林水産省といたしまして、補助金交付申請書等の提出物部数につきまして削減をいたしますとともに、経費や工事の内容の変更に当たって国と協議を要しないいわゆる軽微な変更の範囲を拡大するということをいたしたところでございます。  御指摘ございました本省と出先機関との関係の問題につきましては、農林水産省におきましては、地方農政局に事務委任している補助金につきましては交付事務のすべてを委任しておりまして、二重の協議を要しないということにいたしております。
  66. 部谷孝之

    部谷委員 それぞれ所要の改善を行っておるということであります。これは御存じのようにせっかくこういうのが出ておりまして、別表の中に詳しくこういうふうな改善をしてもらいたいという要望がありますので、この点、これに準拠してどういうふうに改善したという結果を、きょうでなくても結構ですから、資料として私のところに後でお示しをいただきたい、こういうふうに思います。  そこで、特に「今後の経済対策」におきましてさきに述べましたように補助金交付の促進が指摘されておるわけですが、これはいまほかの省庁にもかかわりがあるわけでありますが、たまたまこの中に三つの設問があったので両省にお尋ねをしてみたわけでありますが、そうした補助金手続の改善は進めてきたと言うけれども、なお十分でないからせっかく前倒しをしても効果が失われるということを懸念いたしまして、それでこのたびの「今後の経済対策」において特に指摘をしたのではないか、こういうふうに思うのですが、今回のこの経済対策閣僚会議における「今後の経済対策」、これに示された改善措置についてどのようにこれを行っていかれるか、重ねて建設、農水両省から御答弁を願いたいと思います。
  67. 牧野徹

    ○牧野政府委員 先ほどからお話ございますように、建設省といたしましても補助金の事務手続の簡素化については鋭意意を用いております。たとえば、いままではヒヤリング回数を具体的に減らすとか、あるいはお話ある提出書類を減らすとか、あるいは同じ書類でも書き方を簡素化するとかいろいろあったわけでございます。昨年も、先ほどからいろいろ御議論ありますように史上最高の前倒しをしたということを踏まえまして、実はかなりの改善を行いました。  ただ、今回また経済対策閣僚会議の中で御指摘のように決められておるわけでございますから、これを踏まえまして、具体的に言えば、先ほどお話がありましたが、大臣の承認を得ない軽微な変更の範囲を拡大することを検討するとか、あるいはヒヤリングの仕方でももう少し合理的なことはできないかということを検討してまいりたいと思っております。
  68. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 農林水産省所管の公共事業に係る補助金の交付事務の促進につきましては、先ほど答弁申し上げましたとおり種々の改善を加えてきておりますが、本日決まりました閣議決定の中でも、さらに今後事務処理の促進を図るようにうたわれております。この趣旨を踏まえまして、ただいま建設省の方からお答え申し上げましたように、ヒヤリング事務の一層の効率化あるいはその他の事務処理の効率化についてさらに努力をしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  69. 部谷孝之

    部谷委員 大臣、いま両省からいろいろお話があったわけですが、大臣の御見解をひとつ伺いたいと思うのです。
  70. 山本幸雄

    山本国務大臣 各省庁はそれなりに御努力を願っておる、こう思っております。いまお話しのとおり、いまの景気対策の中にもそれがありますし、また今朝の閣議でも、私は重ねて各省庁にその趣旨の御要望も申し上げております。今後とも各省庁と連絡をとりながら、この事業の執行が円滑にいきますように努力をしていきたいと思っております。
  71. 部谷孝之

    部谷委員 続いて、地方財政の抜本的な改革につきましていささかお尋ねをしてまいりたいと思います。  地方財政は、昭和五十年度以来九年連続いたしまして巨額の財源不足を生じております。五十八年度におきましても二兆九千九百億円の財源不足が生ずるに至ったわけでありまして、そして毎年度交付税特別会計の借り入れと地方債の増発を主体といたしましてこれが補てんされてまいりました。そのために、地方債の現在高が三十八兆九百十三億円、交付税特会借入金が十一兆五千二百十九億円、公営企業債の普通会計分が七兆五千億円、合わせて五十七兆二千億円に上る巨額の借入残高を抱えまして、しかもこれらは毎年度増加する傾向にあります。その結果、これらの借入金償還地方財政の将来にとりまして大きな負担になることは、これは申すまでもないところであります。  本来、このような巨額の財源不足につきましては、地方交付税法第六条の三第二項の規定によりまして、地方交付税率の引き上げを行って対処しなければならないものであります。もちろん、これまでにもそのように何度か税率の引き上げが図られてきたわけであります。にもかかわらず、政府地方財政対策におきましては、地方交付税の原資の借り入れによって交付税を確保するといういわば臨時応急的な措置を講じておるばかりでなく、昭和五十二年度、また同五十三年度からは、この借り入れの償還について地方団体が二分の一の負担をすることといたしまして、五十六年度からは臨時地方特例交付金を借り入れに切りかえること、さらに五十七年度には地方交付税の原資を国に貸し付けて、これは一千百三十五億ですが、さらに五十八年度には地方交付税の原資にするために借り入れておるわけです。そして資金の利子にまで地方負担が導入される、こういう状態に至っておるわけであります。  このような事態がこのまま推移すれば、地方団体の自主的かつ安定的な地方行政財政運営は確保できなくなるのではないか、地方財政制度の抜本的な改革を行うべきではないか、このように思うわけでありますが、自治大臣の御見解を承りたいと思います。
  72. 山本幸雄

    山本国務大臣 確かに地方財政は五十七兆円にわたる多額の公債を抱え、また単年度地方財政運営についても非常に厳しい事態を迎えているわけでありまして、これらについては、やはり歳入構造をどう見直していくのか、根本的な改善を考えなければならない段階に来ておるように思います。同時にまた、国の財政も百十兆円に上る公債を抱えておるということについては同じような事情にあるのでありまして、国と地方との両方にまたがるこれからの財政のあり方というものについては、臨調答申もございますが、また税制調査会その他各種の政府関係の機関の御意見も伺いながら、今後のやや中期的といいますか、やや長い目で見た改革に取り組まなければならない、私はそういう問題意識は強く持っておるつもりでございます。
  73. 部谷孝之

    部谷委員 現在、税源の配分は国が大体二で地方が一、こういうふうになっておるわけでありますが、国と地方との最終的な支出で見ますると、逆に国が一、地方が二、こういうふうになっておるわけであります。地方財政基盤をより強固にするためには、地方財政制度の抜本的な改革の第一歩といたしまして、まず国に偏っておる税制構造を抜本的に見直すべきではないか、これがやはり第一に手をつけるべき問題ではないか、こういうふうに思うのでありますが、御見解はいかがでしょうか。
  74. 山本幸雄

    山本国務大臣 国民の負担する租税、それを国税地方税とにどう振り分けるか、これは全体としましては、経済の成長と同時に国民の租税負担率をどう考えるかということも慎重に考えなければならない問題であります。そこで、いまお話しのように、現在の国税地方税との割り振り、それをもう少しく地方税に比重を移せという御意見と承ります。  そこで、それをやりますのも確かに一つの見識であり方法であると思いますが、試算によれば、そういうことをやりますと、何せ地方は三千三百に上るきわめて複雑といいますか、多様な地方公共団体を抱えている、それらの地方公共団体一つ一つ歳入にどういうふうに影響していくかということをやってみますと、やはり大きな団体あるいは都市的な団体には税源が多いために、せっかくそういう地方税に比重を移しても、なかなか地方の貧弱な財源しか持たないあるいは税源しかないという町村にうまく財政配分ができない、こういううらみもありまして、いろいろと研究をしなければならない問題をまだ抱えている、こう思っているのであります。  なお、詳しい数字等につきましては、政府委員からもお答えをいたします。
  75. 関根則之

    ○関根政府委員 地方税のウエートが、国に比べましてきわめて低い水準になっているわけです。特に歳入中に占めます地方税収入の割合というのは、昭和三十年度に、戦後の地方税制度ができましたとき大体安定した時期でございますけれども、そのときに三三・九%であったものが、最近の決算におきましてもせいぜい三四%とか三五%という数字しか出ていない、こういう事態は、地方税の立場から申し上げますと、まことに貧弱な財源しか確保できていないという状況であろうと思います。地方自治の拡充強化を進めていく観点からいたしますと、さらに地方税源の拡充強化を図っていかなければいけない、そのための努力を私どもとしてはいたしていかなければいけないだろうと考えております。  ただ、大臣から申し上げましたように、国の財政そのものが大変な時期でございますので、実際問題としては非常にむずかしい問題があろうかと思いますが、今後とも税制調査会等におきましても地方財源の拡充の必要があるというような中期答申をいただいておりますし、今後当然のことながら国税地方税を通じます税制の基本的な見直しは避けて通れない緊急の課題である、こういった意見もいただいておるところでございますので、税制調査会の審議あるいは地方の問題に取り組んでおります地方制度調査会等の御審議を煩わしながら、拡充強化のための努力を続けていきたいと考えております。
  76. 部谷孝之

    部谷委員 そうした問題について、やはり避けて通れない問題だというふうな御認識はいただいておるようでございますが、実は民社党は、たとえば個人所得課税につきまして、現状は国が七二・九%、地方が二七%というふうになっておりますが、これをひとつ国六〇%、地方四〇%、こういうふうに引き上げるべきではないか、あるいは法人所得課税につきましても、現状は国が六七・六%、地方が三二・四%、こういうふうになっておりますが、これも六〇、四〇、こういうふうな形に変えていくべきである、そしてたばこ専売納付金の国からの地方への移譲等々、先ほどからお話しをしております税源配分の問題に実は前から提言をしておるわけなんですが、私どものこうした主張に対する御見解はいかがですか。
  77. 関根則之

    ○関根政府委員 いまお話ございました民社党の税源配分の御提案につきましては、前々から伺っているところでございますが、お話のような形にいたしますと、全体で昭和五十八年度の国の予算及び地方財政計画をもとにいたしまして数字をはじいてみますと、三兆八千六百五十一億円の税を国税から地方に移さなければいかぬ、こういう問題になるわけでございまして、四兆円近い財源を現状の国の財政の中で地方に移すということは、実際問題として非常にむずかしい問題ではなかろうかというふうに考えております。  簡単に一挙にできるような問題ではないと思いますけれども、しかし、私どもは、先ほども申し上げましたように、地方税の将来に向かっての拡充強化のための努力は惜しむべきではない、そういう方向に向かって努力を続けるべき筋合いのものというふうに考えておるわけでございまして、今後とも引き続き、一挙に御提案のようなところまで持っていけるかどうかにつきましては非常にむずかしい問題があろうかと思いますけれども、拡充のための努力を続けていきたいと考える次第でございます。
  78. 部谷孝之

    部谷委員 そうすれば、補助金制度そのものの制度改正も当然伴わなければそうした問題は解決しないわけでありますから、そうした制度改正を含めての提言でありますので、数字だけで御判断なさらぬように、ひとつ慎重な御検討を願いたいと思います。  そこで、交付税特会借入金は、国の財政事情によりまして交付税率の引き上げが困難であるためにやむを得ずとられた措置である、また、地方財政に対しまして国が財源保障の責任を持っておることにかんがみまして、借入金償還金の二分の一を負担することを五十三年度から法定されたものであります。これはあくまでも暫定的な措置でありまして、先ほども申しました地方交付税法の第六条の三第二項の地方行政または財政制度の改正に該当するとは、実は私は理解ができないのです。地方財政制度の改正ということは、あくまでも恒久的な制度の改正を意味するものでありまして、暫定的な二分の一負担のルール化は、法の要請を満たしていないのではないかと思うのですが、このことについてはいろいろ議論が繰り返されておりますけれども、重ねてひとつ御答弁を願いたいと思います。
  79. 石原信雄

    石原政府委員 ただいまの点につきましては、特別会計借入金の元金償還の二分の一を国が負担するというこのルール化が行われた昭和五十三年度の改正の際に、本委員会でも大いに論議されたところでございます。  交付税法第六条の三第二項におきましては、引き続き著しく普通交付税の総額が所要額に対して不足するような場合においては、地方行政または地方財政制度の改正もしくは交付税率の変更を行う、このような規定がなされているわけですが、その場合に、もちろん望ましい姿としては、その制度改正というものは長期にわたってたえられるようなものであることが適当だと思うのでありますけれども、ただ、五十三年度以降、今日もそうでありますけれども経済見通しももう一つはっきりしない、それから国、地方財政がいま大変厳しい状況になっている、こうした中で交付税率の問題だけを取り出して恒久的な改正を行うということはとうていできなかったわけであります。  そこで、このようないろいろな条件が不確定な状況のもとにおいて、交付税制度がその機能を発揮し得るような措置として、特別会計が必要な借り入れを行い、その償還費の二分の一を国が負担するという制度の政正も、この六条の三第二項に言う「制度の改正」に当たるのである、こういうことについては、当時法制局の見解もちょうだいしておりまして、私どもは、今日の状況のもとではこういった改正もやむを得ないし、また、これは交付税法第六条の三第二項の要件にも合致しているもの、このように考えているところでございます。
  80. 部谷孝之

    部谷委員 自治省は、昭和二十九年五月の参議院の地方行政委員会におきまして、交付税法の第六条の三第二項に関する解釈についての見解の表明がありましたね。それによりますと、「引き続き」とは、引き続き二年間赤字であり、三年目もまた赤字が見込まれること、そして「著しく」ということは、交付税所要額の一割以上が不足する場合というふうに答弁されておるわけでありますが、その基本的な考えには変わりはないのでしょうか。
  81. 石原信雄

    石原政府委員 ただいま先生がお述べになりました解釈、これは現在の交付税法が国会において審議された当時、塚田国務大臣が御答弁申し上げた見解でございます。私どもは、その後国会における幾たびかの論議におきましても、基本的に、交付税法第六条の三第二項の規定の解釈としては、ただいま先生が御指摘になったような考え方を変えておりません。
  82. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、昭和五十七年度当初におきましては収支が均衡するということでありましたけれども年度途中における税収の減少によりまして再び大幅な財源不足に陥りました。交付税の特会で一兆五千四百三十三億円の借り入れを行う事態になったわけであります。したがって、五十七年度当初でゼロになったこと、そのことは、先ほど言った引き続き二年間赤字であり、三年目もまた赤字が見込まれるというこの条件が中断されたというふうにお考えでしょうか。
  83. 石原信雄

    石原政府委員 五十七年度の当初の段階では一応収支が均衡したという姿になったわけでありますけれども、結果的には、先生指摘のように、補正予算の段階で五十七年度全体としては地方税地方交付税を含めますと三兆円近い財源不足の状態になったわけでありますから、六条の三第二項の状態、五十年度補正以降続いておりますこの状態は結局中断されなかった、今日まで引き続いている、このように認識しております。
  84. 部谷孝之

    部谷委員 大蔵省、どうですか。
  85. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 委員指摘の点につきましては、いま財政局長から答弁がございましたように、地方交付税法第六条の三第二項に言う引き続き著しい財源不足状況から地方財政は脱し切れていないという答弁と同じようにわれわれも考えております。
  86. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、今日の事態が交付税法の第六条の三第二項の規定に該当する事態であるという認識に立つのであれば、巨額の財源不足については地方交付税の引き上げを図るという基本的な方法によって措置するのが第一義である、そういう状態が変わっておらぬわけでありますが、自治省はこの税率の引き上げを大蔵省に要求してこられたのかどうか、その点、いかがですか。
  87. 石原信雄

    石原政府委員 最近までの経過を申し上げますと、五十年度の補正の段階で大幅な財源不足に立ち入りまして、その後五十一年度、五十二年度も同じように不足状態が続いたということで、五十二年度から五十六年度までは毎年度地方財政対策の予算折衝の段階で交付税率の引き上げ要求を行ってきております。そして五十七年度は、当初の段階では収支が均衡する見通しであったために、交付税率引き上げは要求いたしませんでした。五十八年度でありますが、五十八年度につきましては、具体的な数字で幾らということではありませんでしたけれども地方財政対策の折衝に入った段階で、今日の事態は先ほど来申し上げておりますように五十年の補正以降ずっと財源不足の状態が続いているわけであり、その規模もきわめて大きなものでありますから、交付税法第六条の三第二項の要件に合致するという意味交付税率の引き上げを必要とする事態になっているのではないか、こういう議論をいたしております。数字として要求しておりませんけれども、そういう必要性があるんじゃないかという議論はいたしております。
  88. 部谷孝之

    部谷委員 要求してなお実現しなかった理由というのは、どういうことなんでしょうか。
  89. 石原信雄

    石原政府委員 交付税率の引き上げということは国税三税の国と地方配分割合の変更でありますから、引き上げた分だけ国の取り分が減ってしまう、こういうことになるわけでありますが、五十八年度予算折衝の段階におきまして、御案内のように国の財政収支もまことに厳しい状況にありまして、この段階で交付税率の変更を行い得るような状況にない。地方も非常に困るから私ども必要性を主張したわけでありますけれども、これを受ける側の国の方も、とうていこの段階で国税三税の配分割合の変更に応じられるような状態でないということで、交付税率引き上げの問題は実現しなかったわけであります。
  90. 部谷孝之

    部谷委員 先ほどお話があったように、五十二年から五十六年まで引き続き税率の引き上げの要求をしていった。五十七年は、当初ゼロであったからしなかったが、途中財源不足を生じてきた。けれども、これは制度の大きな改正なんで、補正予算で取り扱うにはあるいはそういう段階で要求するには少し問題が大き過ぎるということで、五十七年度は見送った。これは去年の暮れの補正予算のとき、青山議員の質疑に対してそのように答弁しておられますね。五十八年は、要求したが、まただめだった、こういうことに相なるわけでありまして、自治省のそうしたこの問題に取り組む姿勢については、われわれとしてはひとつ応援してあげたい気持ちがいっぱいでありますので、引き続きがんばっていただきたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、交付税率の改正あるいは引き上げが無理ということになるとしますると、少なくとも借入金償還額の二分の一の地方負担、これは何ともどうも理屈に合わないわけでありまして、したがって、この二分の一の地方負担というものはゼロとするように見直すべきではないかと思うわけです。ゼロというものが最初から無理であるとするならば、激変緩和と申しましょうか、二分の一を三分の一なり四分の一なり、そういうふうにする方法もあるのではないか、こういうふうに思うのですが、その点に関する御見解をお尋ねします。
  91. 石原信雄

    石原政府委員 五十三年度に、現在のような交付税会計の借入額償還元金の二分の一を国庫が負担するという制度化を行ったわけでありますけれども、その際に二分の一にした理由についてはいろいろ議論があったのですけれども、当初は、当時も地方の立場からしますと、当面交付税財源に不足を来すために交付税特会で借り入れをするのであるから、その償還についてはでき得べくんば国庫が全部持ってもらいたいという希望を持っておったのですけれども、いろいろ議論がありまして、結局当時の議論としては、今日の国と地方の税源配分は御案内のようにほぼ二対一でありますけれども交付税と譲与税を加えていわゆる一般財源ベースで国と地方財源配分割合を見ますと、おおむねフィフティー・フィフティーであるという状況になっております。そういった事態も念頭に置きまして、償還費の二分の一を国庫が負担するというルール化が図られたわけであります。その後今日に至っているわけであります。  先生指摘のように、一部負担がやむを得ないとしても、それは二分の一よりも国の負担をもっと多くすべきじゃないか、地方負担を少なくする、地方負担を三分の一あるいは四分の一とすべきじゃないかという御指摘地方のサイドからしますと、私どもは低い方が望ましいという気持ちは持っておるわけですが、何分にもこの問題は国と地方相互の財政状況を踏まえて決められた制度でありますし、その後地方も苦しいわけですが、国の財政状況も一向に改善されていない、こういう状況のもとで二分の一の元金負担のルール、これは今日においてもこれを継続するということでやむを得ないのじゃないかというふうに考えておるところでございます。
  92. 部谷孝之

    部谷委員 それでは続きまして、交付税特会借入金及び一時借入金利子地方負担の導入、これが新しい問題として出てきておるわけでありますが、この点についてお尋ねしたいと思います。  五十八年度地方財政対策におきまして、従来全額国が負担しておりました交付税特会借入金及び一時借入金利子につきまして、その二分の一を地方負担することが提案されておるわけでございます。昭和五十八年度におきましてこうしたやり方を導入することにされた理由というものは、一体何でございましょうか。
  93. 石原信雄

    石原政府委員 交付税特会借入金の元金償還については、先ほど来説明申し上げておりますように、五十三年度以降二分の一を国が負担するということで今日に来ております。そして、その当時からずっと今日まで、借入金利子につきましては国の一般会計が負担するということで来たわけであります。  私どもは、交付税制度というものが国の責任において運用されているものである、それから交付税特会借入金についても、国、地方が合意の上で策定した地方財政計画ベースでの財源不足を補てんするために必要であるということで行われておるものでありますから、その借入金利子については従来同様国に負担してほしいという気持ちでおったわけでありますけれども、この利子負担額が、最近交付税特会借入金が累増してきているということと、それから年度途中の一時借入金の額も、従前に比べまして国の財政状況が悪くなるにつれて飛躍的に大きくなってきているわけでありまして、五十年度当時たしか二百億程度でありましたこの利子負担が、五十八年度になりますと七千億を超すという状況にまでなってまいりまして、その金額、きわめて大きなものになってきた、そういう状況もあり、かつまた国の財政状況がまさに危機的という言葉に値するような状況になってまいりまして、この利子について五十八年度から地方負担してもらえないかというような話が出てきたわけであります。  私どもは、従来の制度の大前提が変わるわけですからとうていこれは受け入れられないということで大いに議論したわけでありまして、予算編成の最終段階までこの点について論議が紛糾したわけでありますが、最終的に、五十八年度予算編成を達成する上でどうしても利子の一部を持ってほしい、またこれを持たなければ予算編成が非常にむずかしくなるという状況に立ち至りまして、自治大臣、大蔵大臣の最終折衝の段階で利子の二分の一を負担することに合意したわけであります。しかし、そのことが地方財政の当面の運営に影響を及ぼしてはならないということで、利子負担相当額を含めて地方財源不足額を計算し、これに対して必要な財源措置を講ずることにいたした次第であります。
  94. 部谷孝之

    部谷委員 私が先ほどからるる申し上げておりますように、交付税特会の借り入れが生じたゆえんというのは、本来国がなすべき地方交付税率の引き上げ、これを行わなかったから派生的に起こってきた、そういうことでありますから、その利子を国が負担するのは、私は当然ではないかと思うわけであります。これを地方負担させるということは、国の財政事情を理由とした一方的な地方への負担の転嫁であると考えるわけであります。同じ御答弁になりましょうから、この点については御答弁は求めませんけれども交付税特別会計借入金及び一時借入金利子について地方負担を導入することにした今回の措置は今年限りなのかどうか、自治省大蔵省両省から答弁を願います。
  95. 石原信雄

    石原政府委員 今回御審議をお願いしております地方交付税法の一部を改正する法律案の中で、五十八年度地方交付税の総額の特例を定める規定の中において、五十八年度についてその利子負担額のうちの三千四百四十六億円を交付税総額から控除するという規定を置いております。この規定からわかりますように、今回の利子負担は五十八年度について定めているわけでございまして、五十九年度以降については、今回の改正で何ら触れていないところでございます。
  96. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 この問題の今後毎年度の取り扱いにつきましては、今後の国の財政状況あるいは地方財政状況等いろいろの点を総合勘案いたしまして、そのときどきの予算編成の過程において相談していきたい、そういうふうに考えております。
  97. 部谷孝之

    部谷委員 これは両省において微妙な違いがあるわけですね。微妙な違いを私たちは感ずるのですが、どうですか。自治省は、五十九年度以降このような措置をとらずに、全額国において負担するという約束を私たちにすることができますか、どうですか。
  98. 石原信雄

    石原政府委員 交付税制度の本旨あるいは交付税特会の借り入れが行われている理由といったものを考えますと、先ほど来御答弁申し上げておりますように、私ども利子については国が負担することを望ましいと考えておるわけでありますけれども、五十八年度については国、地方を通ずる財政状況の中で二分の一の負担をせざるを得ない、こういう結論に到達して法案の御審議をお願いしているわけであります。  五十九年度以降についてはどうするかということでありますが、これは決まってないわけでありますけれども、結論的には、大蔵省の方から御答弁がありましたように、五十九年度以降の予算編成の段階で、そのときどきの地方財政状況、国の財政状況、これを総合勘案しながら、また交付税制度の趣旨も踏えてこれを決めていかなければならない。したがいまして、この段階で五十九年度以降は負担しないんだということを明言することはできませんけれども、私どもはこの交付税制度の本旨に即して努力していきたい、このように考えております。
  99. 部谷孝之

    部谷委員 自治制度の本旨にのっとって、ひとつ毅然たる態度で来年度予算にも取り組んでもらいたいと思います。  それから、この問題につきましては、地方制度調査会におきましても、元金については実質二分の一、利子については全額を国で負担するという現行の負担ルールに即しつつ国が負担すべきである、こういうふうに答申しているのですが、この答申をどういうふうに受けとめておられますか。
  100. 石原信雄

    石原政府委員 昨年十二月の地方制度調査会の答申におきましては、この利子負担の問題につきまして、「この借入金が国の財政事情により地方交付税率の引上げ等が困難であるためやむを得ずとられた措置であり、また、地方財政に対して国が財源保障の責任をもっていることにかんがみ、現行の負担ルール」、すなわち元金が二分の一、利子が全額、この「ルールに即して国が負担すべきである。」こういう答申をいただいたわけでありますが、この答申は、私どもは考え方としては地方財政の実態を踏まえた適切な提言である、このように考えております。
  101. 部谷孝之

    部谷委員 大蔵省、どうですか。
  102. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 いま財政局長の御答弁の御趣旨でいいと私も思います。
  103. 部谷孝之

    部谷委員 そうすると、さっきの五十九年度に対する取り組みの御答弁とこれまた微妙に違ってくるのですが、どうですか。
  104. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 先ほどお話答申をわれわれとしてもできるだけ念頭に置いて、今後ともその他いろいろの角度からこの問題に取り組んでいきたい、こういうように思います。
  105. 部谷孝之

    部谷委員 いまの答弁をはっきりと今後推進していっていただきたいと思います。  それから次は、交付税制度そのものについて二、三お尋ねいたします。  現在、市町村の標準団体の規模は、人口十万人と規定しております。市と申しましても、政令都市あり、また二十万程度の中都市あり、五万程度の小都市あり、実態はまちまちだと思います。それぞれ財政規模、行政内容を異にしております。これらを一緒くたにして十万人単位を基礎として算定するということは、補正係数等で調整するとしてもかなり大きな誤差が出てくるのは明らかだと思います。このために、地方交付税算定上の市町村の標準団体の規模を、ひとつ大都市が政令都市程度、それから中都市として人口二十万程度、それから小都市として五万人程度、こういうふうな三段階に改めるべきではないか、こういうふうに思うのですが、いかがでございましょうか。
  106. 石原信雄

    石原政府委員 地方交付税の標準団体をどう定めるかにつきましては、平衡交付金制度ができた当初から議論がありまして、市町村について言いますと、政令指定都市、それから現在の標準団体である人口十万程度の都市、それから小都市と申しましょうかあるいは町村、こういった少なくとも三段階くらいの標準団体をつくって、単位費用を三つくらいつくったらどうだあるいはもっと多くしたらどうだ、こういう御意見があります。  私ども交付税の算定をより的確にするために、そういった御意見についてもずっと検討しているわけでありますが、ただ、仮に標準団体を三つにふやしても、結局その間はやはり補正係数を適用しないと、それだけで補正なしというわけにいかない。そうすると、補正係数の適用関係というのは、いまよりもはるかに複雑になってまいります。それから、さらに申しますと、毎年度予算編成が終わりまして地方財政計画を策定し、これを踏まえて単位費用の積算を行っているわけでありますが、正直申しまして、現在でも相当な事務量であります。これが市町村について言いますと、三倍の積算作業を行うということになりますと、いまの体制ではなかなかこれがむずかしい、こういういろいろな制約がありますので、私どもとしては、現在の標準団体は、市町村について言いますと十万、一団体でありますけれども、補正係数の精度を高めることで対応していくことしかないのじゃないか。また、補正係数の方も相当長くこれが適用されておりますので、それなりに制度的に安定してきておりますから、標準団体を数多くつくる場合と比べてそう遜色のない算定結果が得られているのではないか、このように考えております。  しかし、この問題は制度発足以来初めからの懸案でありますから、今後とも研究は重ねてまいりたいと思っております。
  107. 部谷孝之

    部谷委員 それから、事業費の補正でありますが、事業費の補正は、普通交付税の基準財政需要額の算定に用いる補正の一種でありますが、その指標といたしまして、当該年度におけるその団体の公共事業等の地方負担額を用いております。このために、現行の事業費補正は交付税の第二国庫補助金化しておるというふうに指摘をされております。すなわち事業費補正は、交付税本来の標準的な経費を算定するという性格を逸脱するものでありまして、五十八年度は起債への振りかえによってこれが中止あるいは圧縮されておるようでありますが、将来これを廃止の方向で検討すべきだと思うのでありますが、御見解はいかがですか。
  108. 石原信雄

    石原政府委員 事業費補正につきまして先生指摘のような批判が出ますのは、主として公共事業地方負担額をストレートで基準財政需要額に反映させているものについてであろうかと思います。  ただ、五十八年度は停止したわけですけれども、五十七年度において適用しておりました事業費補正のうちで公共事業地方負担額をストレートで反映させているものというのは、河川費とか港湾費など公共事業配分についても長期的に見てそう不公平にならないような費目に限定しておるということ、それから算入率もかなり抑えておるということでありまして、かつまた、河川費や港湾費については、河川の延長あるいは港湾施設の延長などによる客観的な算定方式がどうしてもうまくいかない、年度による変動が非常に大きいためにうまくいかないということで、やむを得ず採用しているものでございます。  これについていま直ちにこれにかわる方法というのは思いつかないのでありますが、交付税制度の基本理念からすると決して望ましい姿でないのでありまして、他にかわる方法については今後とも研究していきたいと思います。  なお、いわゆる事業費補正と言われる中では、それ以外のたとえば義務教育関係の施設費でありますとか清掃関係の施設費などについては、理論不足面積あるいは理論必要処理能力、こういったものを基礎に交付税で一応の単価を定めて事業費補正を行っておりますから、これについてはいわゆる交付税の補助金化という批判は当たらないと思っております。  いずれにいたしましても、交付税制度の配分の合理化、適正化の一環として今後とも研究を重ねてまいりたいと思っております。
  109. 部谷孝之

    部谷委員 地方債制度についてお尋ねしたいと考えておったのですが、時間が大分切迫してまいりましたのでこれは飛ばしまして、交通安全対策特別交付金に関して二、三お尋ねしてみたいと思います。  交通安全対策特別交付金制度につきましては、今回、一番目に同交付金を地方交付税の基準財政収入額に算入し、二番目に同交付金の交付に関する経理を交付税特別会計において行い、三番目に同交付金の使途を拡大する等の措置をとることを改正の主な内容としております。  今回なぜこのような改正をすることとしたのか、この点について御答弁を願います。時間がないから簡明にお願いします。
  110. 津田正

    ○津田政府委員 先生お説のとおりの改正をやったわけでございますが、この交通安全交付金につきましては、反則金収入という道路交通法の違反事件というものを基礎にしておりますが、その使い方としましては、事業個所あるいはどういうような事業をやるかというのは、交通安全対策という枠でございますが、地方団体の自主性でやれる、こういう性格を持っておりまして、その面から申しますと、譲与税にきわめて近い性格を持っておったわけでございます。しかし、発足当時におきましてはこの交付金の帰属をめぐって基本的な議論がございましたが、そういうようなことでまた当分の間というような制度化をされておったわけでございます。  しかし、相当の年月もたちましたし、その規模も大きくなったというような事態におきまして、今回の改正をやりましたことは、まずその使用範囲というものを広げまして、地方団体の自主性をより増すというようなねらいを持っております。それからもう一つは、交付税制度の中に結びつけることによりまして財源調整機能というものも盛り込めますし、また基準財政需要額の中で包み込みますので、安定的な事業執行が可能なような財源措置もできるわけでございます。さらに、特別会計で経理することによりまして、反則金収入、それとまたそれに関連するいろいろな費用というようなものを含めて一体的な経理ができる。そして全般的にいわゆる地方財源化というような方向に進めることができる。このような意図で改正をした次第でございます。
  111. 部谷孝之

    部谷委員 いま、今回の改正が財源調整を強化するという意味を持っておるというふうな御答弁をされたわけでありますが、その調整というのは具体的には一体どのような形でなされるのか、どのような地方団体交付税が増加しあるいは減少するということになるのか、何かそんな試算などしておられるのでしょうか。
  112. 津田正

    ○津田政府委員 交付税の基準財政需要額の算定におきましては、道路橋梁費の中の投資的な経費で行うわけでございますが、御承知のとおり、道路橋梁費につきましては道路の延長でやっております。一方、交通安全交付金は人口集中地区、それから交通事故件数ということでやっておりますので、その絡みから申しますと、道路延長が長いけれども人口集中地区が少ないとかあるいは事故件数が少ないというような団体には、交付金に上乗せのある交付税部分が多くなるというような効果がございます。反面、道路延長が短い団体におきましては逆になる。こういうようなことで財源調整が図られるかと思います。  ただ、実際問題といたしましては、余りの激変緩和を避けるというような意味で徐々にやっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  113. 部谷孝之

    部谷委員 附則の第十七条は交通安全対策特別交付金の交付の基準を決めておりますが、交特金政令第二条に規定するその具体的な交付基準は変更しない、こういうふうになっておるということであります。交特金政令第二条によれば、都道府県分と市町村分の配分割合は基本的には二対一というふうになっておりまして、個々の市町村に交付金の額がごく少額となっております。このように個々の市町村への交付額が少額であると、たとえば同交付金の対象となっておる救急自動車に対してなかなか使用されない、こういう結果になろうかと思うわけであります。  そこで私は、市町村への配分割合をもう少し高める、たとえば先ほど言われた二対一を一対一にするというふうな措置が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  114. 津田正

    ○津田政府委員 交付金の配分につきましては、現在、都道府県二、市町村一ということでございます。この交付金の性格と申しますか、まずその収入でございます反則金自体は、都道府県の警察官がまず取るというようなこともございますし、また、都道府県には市町村でやっておらない警察関係の交通安全事業というものもあるわけでございます。そういうようなことで二対一になっておるわけでございまして、現状、私どもも実績を追っておりますと、実際の事業費の支出も大体そのような傾向がございます。そういうような意味で、現在この制度改正、配分割合の変更というものは考えておりませんが、今後におきましても事業費の実際の状況というものをフォローしてまいりたい、かように考えております。
  115. 部谷孝之

    部谷委員 それから、今回の改正におきまして通知書の送付費及び郵政取扱手数料の扱いが整備されておるわけでありますが、郵政取扱手数料につきましては、現在日本銀行の代理店である銀行に反則者が反則金を持っていった場合には手数料は取られないのに、郵便局に持ってまいりますとこの郵政取扱手数料を都道府県から取っておりまして、しかもその額が一件当たり五百九十円とかなり高額なものとなっております。今回の改正で、郵政取扱手数料は交付税特別会計の交通安全対策特別交付金勘定から郵政事業特別会計に直接繰り入れることにしておるわけでありますが、この手数料を取ることと、それがかなり高額であるということは従来と変わらないわけであります。  そこでまず、銀行が無料であるのに郵便局が手数料を取っておる理由は何なのか、二番目に、郵政取扱手数料は一件五百九十円ときわめて高い金額を取っておりますけれども、この理由は那辺にあるのか、この二点について郵政の方からひとつ御答弁を願いたいと思います。
  116. 山口憲美

    ○山口説明員 御説明を申し上げます。  私ども、ただいま御指摘の問題につきまして、郵政省設置法によりまして取り扱いを郵便局でさせていただいておるわけでございます。この事務の取り扱いに要する経費につきましては、郵政事業特別会計法の四十一条というのがございまして、その中で、年金及び恩給の支給その他国庫金の受け払いに関する事務の取り扱いに要する経費に充てるため、当該事務の取り扱いを委託した会計は、予算の定めるところにより、その経費を繰り入れていただくというふうになっているわけでございまして、これに基づいていただいているわけでございます。  先生御存じのように、郵政会計は手数料等を主な収入にいたしまして独立採算でやっている会計でございまして、私どもといたしましては、その当該事務については、その取り扱いに要する経費はそれぞれのところからいただくという形で業務の運営を行っているというふうなことでございます。  ただいま五百九十円は高いという御指摘でございますけれども、受け入れ予算額の算定に当たりましても、当該年度の取り扱い件数につきましては警察庁から計数をいただいてそれを使用しておりますし、また単価につきましては、前年度人件費、物件費等の単価の上昇率を加算いたしまして定めているところでございまして、いずれにいたしましても予算編成の手続を経て決めていただいているということでございます。  なお、銀行は無料だというふうないまお話がございましたけれども、私ども実は銀行を直接所管しているということでもございませんので詳細はよく存じませんけれども、ただいずれにいたしましても、銀行におかれましてもコストがかかるということは間違いないことだろうと思うわけでございまして、恐らくそういったかかるコストについては何かはかの部分に転嫁しているとか、そういうふうな判断でやっておられるのではないかというふうに考えておりますけれども、郵政省といたしましては、先ほども御説明いたしましたけれども、交通反則金の取り扱いに係る費用につきましては、その当該事務を委託した会計から入れていただくということでないと、その経費を他の何らかのところに負担をお願いしなければならないというふうなことにもなりますので、そういったことはなかなか困難な状況にあるということでございます。  いずれにいたしましても、いま先生から御指摘のありました高いというふうな問題につきましては、私どももそういった指摘があるということについては十分承知をしておりますが、少し大げさに申しますと郵政会計のあり方の根幹にもかかわるような事項でございまして、なかなか一気に解決するということはむずかしゅうございますけれども、御指摘の点は十分念頭に置いて今後業務運営に当たってまいりたい、かように考えておる次第でございます。よろしくお願いいたします。
  117. 部谷孝之

    部谷委員 これはまだまだいろいろとお尋ねしたいことがあるのですが、あと五分になってしまいました。そこで、せっかく砂子田長官がお見えでありますので、消防問題を一点だけひとつお尋ねしたいと思います。  三月二十三日、東京都の火災予防審議会が、特定防火対象物の防災性能の評価方法という答申をいたしました。その中で、防災性能をS、A、B、C、Dの五段階に区分いたしまして評価する、こういう方法を提言しております。  まず第一の質問は、消防庁はこの答申というものに対してどのような見解を持っておられるか、これが一つ。  それから二番目に、実は昨年の二月十六日のホテル・ニュージャパンの火災に関する地方行政委員会の審議におきまして、私自身が「適」マークの安全性のグレードをつけるべきである、こういう提案を兼ねた質問をいたしたことがあります。当時の石見長官は、法律を守るのにA、B、Cがあるのはぐあいが悪い、オール・オア・ナッシングだ、こういうふうな御答弁が実はなされたわけでありますが、この「適」マークというのは、昨年のこの石見長官の御答弁のように、法律に適合しておるかいないか、こういうものを判断するものであって、そこにグレードをつけるのは不適切であるという考え方を変えてはおられないのかどうか、お尋ねをいたします。
  118. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 ただいまお話がございました東京都の火災予防審議会の答申でございますが、これは御案内のとおり、耐火構造物につきまして現に火災に遭った建物を参考にしながら、現存しておる防火対象物の安全性あるいは危険性というものを数量的に把握をしていこうという一つの手法を開発したものだと思っております。特に最近のように建物がいろいろなものができ上がりますし、災害につきましても非常に複雑多様化しておる、そういうことを考えますと、防火対象物に対しまして効率の高い科学的な予防行政というものが要請されておるわけでございますから、こういう一つの開発の方法を考えたということはきわめて有意義なことであるし、先駆的な試みであるというふうに理解をいたしております。  お話がございましたように、この提案をされました評価方法につきましては、対策項目の選定なりそのグレード化あるいは配点の方法あるいは技術的な問題につきましていろいろまだ問題点がないわけではないと思いますが、これを進めていくことによりましてその精度を高めていくことは、非常に必要なことだろうと思っております。しかも、このことが消防機関でありますとかあるいは防火対象物の関係者の自己診断というものに手法として活用されるということは、やはり予防行政上有益であると考えております。  消防庁といたしましても、実は、予防行政に関しまして計量的な手法を導入しなければいかぬのじゃないかということを考えておりまして、複合用途の防火対象物に関しまして現在、専門家から成る委員会を設置いたしておりまして、危険度の評価方法についていま検討いたしているところであります。この際にも、この東京都におきます一つのやり方というものも大いに参考にしていきたいと考えております。  それから第二点の、ホテル・ニュージャパンに関連をいたしました前長官の答弁でございますが、「適」マークの制度というのは、いまさら申し上げるまでもございませんが、要するに消防法上義務づけられている設備が備えられているのかどうか、人命を安全に保障するとして最低基準として定めたものでございますから、そういう施設についてさらに日ごろの維持管理というものがどういうふうになっているのか、あるいは避難訓練という面がどうなっているのか、そういうハードあるいはソフトの両面からその適合性を判定しているわけでございますから、これにつきましてランクづけをすることが性格上余り適当ではないのではないかということを前の長官がお話し申し上げたのだと思っております。  この「適」マークの制度は、やはり防火対象物に関します情報というものをわかりやすい形で住民にお知らせをするということが一つの目的でございまして、二十四項目の基準のすべてに適合しているかどうかということを判定しているわけでありますから、判定してだめなものは不適であるし、適合しているものは適ということになるわけでありますから、マル適のいまの議論をしていけばそのいずれかしかないわけであります。  ただ、いまお話がございましたように、この「適」マークの制度を運用していく過程の中で、いま東京都が開発しましたような一つの方法は、私は並行して考えられることではないだろうかと思っております。そういう点で、先ほど申し上げましたように、私たちの方でも現在複合用途対象物に関します危険度評価の基準の検討を行っておりますので、そういう手法を考えながら、防火対象物に対する改善指導の際にそういう計量的な方法を導入しながらそういう評価をしていく方が望ましいのではないかというふうに考えております。
  119. 部谷孝之

    部谷委員 このたびの蔵王観光ホテルの火災の一つの反省として、要するにソフト面に対する考え方をさらに深めていかなければ「適」マークそのものの意味がなくなるのではないかという、そういう発想の中で今度の東京都の場合も出てきたのではないかと考えられるわけでありまして、蔵王観光ホテルの火災に対する反省の中から、そういうソフト面に対する問題のさらに掘り下げた検討というものは私は必要だろうと思うわけでありますから、さらにひとつ真剣な検討を進めていただきたい。これは要望をいたしておきたいと思います。  以上で終わります。
  120. 田村良平

    田村委員長 佐藤敬治君。
  121. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 臨調答申の中にあります地方事務官の問題について御質問いたします。  地方事務官の問題については、三十年戦争と言われたように、地方と中央官庁との間にずいぶんいろいろなトラブルがありました。私も本会議で二回も三回も、また委員会で数回にわたって質問しましたが、そのたびに、やるやると言ってやらなかった。しかも、そのやる一つ方向というものは、地方事務官はこれを地方に吸収する、こういうような形でもってやることが、第一臨調その他でもって一つの暗黙の公約みたいになっておった。ところが、厚生、運輸、労働、こういう各省庁の自分の権限のものはつめのあかでも渡さないというような非常な権限欲、こういうものによってどこまでもずるずると引き延ばされて、とうとういままで決まらなかったのです。三十年もかかってまだ決まらなかった。  その間この地方事務官というのは、給料と身分は国に属しながら、実際の仕事は県知事の監督下にある、こういうことでもってサンドイッチになって、非常に大きな苦悩をなめてきた。しかも、国家公務員でありながら官庁間の異動が何もない、全く孤独なままで地方の中に捨ておかれて、私この前にも質問したけれども、いわば人道的なと思われるような苦悩を地方事務官になめさせた。  今度は、第二臨調でもってこれを答申をしてきました。ところが、その内容を見ますと、第一臨調答申あるいは地方事務官自体の願望、知事会初め地方団体の願望にもかかわらず、出てきたものは地方事務官を、運輸の関係は運輸事務官、厚生の関係は厚生事務官、労働の関係は労働事務官として全部国に吸い上げる、こういう形で出てきております。  自治大臣地方の問題を管掌される自治大臣として、こういう答申についてどういう見解を持っておりますか。
  122. 山本幸雄

    山本国務大臣 この問題は、いまのお話のように、終戦直後の地方自治法のできたときの暫定措置としてそういうものをやったということであったわけですが、以来三十数年暫定措置のままで来たということで、その間に、速やかにそういう変則的姿は改正すべきであるという議論は、繰り返し行われたと聞いておるわけであります。  いよいよ臨調がこの制度について最終的な答申を出されるに当たりまして、私どももまた地方公共団体も、口をそろえて、これの是正措置については地方公共団体に任せるべきである、こういう主張をしてきたわけでございますが、臨調のお考えによってただいまのような答申と相なった。ついては、臨調はどういう現状認識のもとにそういう御見解をおとりになったのかということを私どもはしかと承って、今後のこの問題の処理に当たっていきたい、こう思っているところでございます。
  123. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 大臣、大変悠長なことを言っておられて、こういうふうにした意図もわからない、こういうふうな見解ですけれども、本当にそうだとすれば大変怠慢だし、そうでないとすれば、さわりたくないのでむやむやとしているにすぎないと思う。こんなことを、なぜこういうふうになったのか臨調の考え方がわからないなんて、そんなわからないはずはないのです。  地方の方はみんなぼやいているけれども、この厚生、運輸、労働、こういう省庁が、さっきも言いましたように、つめのあかでも自分のものは放さない、こういう官庁のエゴから、こういうようなみんなが地方事務官が地方に委譲されることを願っておりながら、それと全く反対のことが出てくる。原因はそこにあるのです。  行政改革というものは、そういう各省庁間の縄張り意識、エゴ、こういうものをぶち破るのが行政改革であるはずなのに、すべての人の願いを自分の中央官庁のエゴによって断ち切って、そして全く反対の答申を出してよこす、それに対してどういう意図かわからない、こういうような大臣答弁というのは、まことに大臣として無責任きわまる答弁だと思いますが、いかがですか。
  124. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調の基本答申の中には、従来からは、国と地方との役割り分担という点については、地方分権を拡充していきたいというたてまえ論、原則論はあったわけであります。同時に、国、地方を通ずる仕事の配分について考えたい、こういうことであります。そういう基本的な考え方に沿っていけば、いまのような答申は、まさにそういうたてまえ、原則とは違うということでありまして、どうしてそういうことにお考えになったか、現状認識は一体どういう認識であったのかということについては、従来のそういうたてまえあるいは原則論で御主張になったことと違ったことをおやりになるというお考えですから、私どもはその点についてどういうお考えかをぜひ聞きたい、こう思っておるところであります。
  125. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 行政管理庁は来ておりますか。いまの考えについて、行政管理庁はどういうふうに考えているのか。
  126. 八木俊道

    ○八木説明員 ただいま先生指摘の経緯、私どもは十分承知いたしておるわけでございますが、臨調自体の三月十四日に出てまいりました答申は、従来の経緯を引用しつつも、個別の事務の内容について審議された結果を踏まえた一つの処理案という形で提起されていると承知しておりまして、個別の事務を見てまいりますと、これはやはり国が直接に処理するべきであるという判断に立たれた部分が多いようでございます。  しかしながら、この扱いにつきましては、政府全体としてこれをどうするか、これにつきましてはこれから関係省庁間でよく協議をいたしまして、慎重に検討をいたしてまいりまして取り扱いを決めてまいる、そういう段階でございまして、政府全体としての明確なこれについての判断というものは、まだ具体的に申し上げる段階にないという状況でございます。  ただ、答申全体の趣旨につきましては、三月十八日に、閣議におきまして「答申を最大限に尊重しつつ、行政の簡素化、効率化を推進する」という基本方針を決めまして、「引き続き、」答申に関連いたしまして「所要の改革方策の調整、立案を進め、逐次これを実施に移す」、こういう基本線だけは決めているわけでございますが、具体的にどういう手順で、どういう取り運びで結論を見出すかということにつきましては、今後の課題ということでございます。
  127. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 どうも聞いていると、よくわからない矛盾したところがあるのですが、全体として国に全部移管する——移管するじゃない。もともとそうかもしれませんが、国の方に引き取れ、こういうような国側の言うことを認めたような形になって、具体的にはこれから決めるというのは、そうでない方向に決まるということがあるという意味ですか。
  128. 八木俊道

    ○八木説明員 答申自体の内容といたしましては、事務は直接国にという考え方でほぼ貫かれているようでございますが、これのこうした内容を含めまして、五次答申自体が何分二百ページにわたる膨大なものでございます。これにつきまして全体をどう取り扱っていくかということにつきましては、まだ政府側の全体としての態度は、去る三月十八日のいわば概括方針、答申の全体を尊重するという態度のみを決めているわけでございまして、細目についてはまさに関係省庁間でこれから詰めてまいるということでございます。
  129. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 原則的に全部国がやる、こういうことを決めて、細目的にはこれから決めるというのは、国でやることの一つの範疇の中で細目を決めるという意味ですか。それとも、そうでない場合もあるという意味なのか。
  130. 八木俊道

    ○八木説明員 たびたび抽象的なことを申し上げて恐縮でございますが、答申の個別の指摘についての取り扱いは、まさにこれから関係省庁間で協議をし、調整を進めていくということでございます。ただ、答申全体を受ける政府の構えといたしましては最大限に尊重する、こういうことでございまして、どうも御質問に対する明確な答弁になっていないのは恐縮でございますけれども、実は細目の検討に十分至っていないというのが、率直なところ、現状でございます。
  131. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 あなたの言うのは反対なように思うのだ。「改革方針」というのが書いてあって、その次に「具体的措置」として「社会保険関係」とあって、最後のところに「当該事務に従事する職員は、厚生事務官とする。」その次は「陸運関係」で、「当該事務に従事する職員は、運輸事務官とする。」その次は「労働事務官とする。」こういうふうに書いてあるのです。具体的にこうすると書いてあるのです。抽象的な概括的な意味ではなくて、概括的な意味の下に具体的に書いてあるので、全部国がやる、こういうふうに書いてあるのですよ。  だから、それをこれから詰めるというのは、すべて国がやるという形でもって詰めるという意味なのか。もう一つ考えると、何か答申はこう出てきたけれども、そうでなくて、地方が主張しているようなことも考えてみようというようにも聞こえるのだけれども、どうなんでしょうか。
  132. 八木俊道

    ○八木説明員 実は、この問題は政府部内で若干ニュアンスの違う意見があるわけでございますから、したがいまして、その取り扱いはきわめて慎重を期さなければいかぬ。自治大臣からも御発言のあったとおり、自治省のお考えも当然あるわけでございます。ただ、私が申し上げましたのは、政府全体のこの臨調第五次答申に関する一般的なスタンスだけを申し上げたわけでございまして、あえて、じゃ地方事務官について行政管理庁はどうか、こういうことのお尋ねであるとすれば、答申の趣旨、この線に沿って御検討をいただけないかということをこれから自治省と御相談を申し上げますという段階でございます。
  133. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 ひとつ自治大臣にお願いしますが、この問題は、できたのは国と地方一つの妥協の産物としてこのへんてこなのができたのですけれども、実際にもう三十年も継続されて地方の事務としてやられてきて、地方の事務として非常になじんでおる。それを、三十年もなじんできているものをいまさら国に引き上げなければいけないというどういう理由があるのか、その点を自治大臣と行管庁にお尋ねします。
  134. 大林勝臣

    ○大林政府委員 御指摘のように、地方事務官問題というのは、戦後三十年間、いろんな論議を経て今日に至ったわけでありまして、実際問題として、私どもは、地方事務官のやっております仕事は、この三十年間、すでに地方の仕事として定着をしておるというふうに考えております。したがって、今回の答申が、その大部分について国の事務とするという答申を出されましたことについての真意については、先ほど大臣からお答えがありましたように、私どもとても理解に苦しんでおるところでございます。  したがいまして、今後これをどういうふうに扱うかにつきましては、行政管理庁からもお答えがありましたように、問題としては大きく三つあろうかと思います。  一つは、事務配分の問題。事務配分の問題におきましても、答申は具体的な例示はいたしておりますが、なおかつ一つの例示にとどまっております。これを詰めてまいればどういう問題が将来残ってまいるか。  それからもう一つは、国と地方との関係で、大部分が地方に定着しておる仕事を国の方に引き上げてしまうといった場合に、定着しておった地方の総合行政の一環として位置づけられておった仕事がなくなってしまうというようなことで、地方の総合行政というものが今後一体どういう影響を受けるかという問題。  第三番目は、職員の身分の取り扱いの問題。臨調答申におきましても、ほとんど国家公務員とするというふうになっておりますけれども、同時にその前提としまして、身分の取り扱いについては個々の職員の希望を十分しんしゃくして行うというようなこともはっきりとうたっておるわけであります。  こういった三つの問題を処理するのは、きわめてむずかしい問題ばかりであろうとは思いますけれども、この臨調答申の問題を頭に置きまして、今後この問題をそれぞれの関係省庁、あるいは地方自身の問題でもありますから地方関係者あるいは地方制度調査会の御意見、こういったものを伺いながら検討してまいるというのが今後のスケジュールになろうかと思います。
  135. 八木俊道

    ○八木説明員 ただいま自治省から御答弁のございましたとおり、この問題で私ども今後詰めることを要すると思われますのは、やはり何といっても事務の内容、性格、この問題につきましては、臨調は国が直接実施という案でございますので、一応私どもとしては、自治省その他関係省との関係では、この線で御相談を申し上げてまいるということでございますが、さらに問題といたしましては、仮に国が直接この事務を実施するということになりますと、これを担うべき機構の問題、それから当然また国家公務員の、普通の国家公務員、私ども総定員法の第一条の定員と申しておりますが、この中にこの要員を入れていくというふうな問題もございます。機構、定員といった具体的な問題、事務の性格の問題等を含めまして具体的な点で、仮に臨調の線で関係省の御理解が得られるといたしましても、相当綿密な詰めを要するのではないかと思っております。  なお、基本的な問題といたしまして、先ほど自治省御当局の御答弁のございましたような政府部内における若干のニュアンスの違った考え方もあるようでございますので、この辺につきましては今後精力的に関係省間で協議を進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  136. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 行管庁に申し上げたいのですが、先ほども申し上げましたけれども、これが地方団体その他地方事務官自身も地方に身分を移管してくれ、こういうような強い希望を持っているのにもかかわらず、その反対の方向答申が出てきた。一にかかってこれは中央官庁のエゴなんですよ。自分の権限は絶対放さない。何遍これで私どもも苦汁をなめてきたかわからない。全くそれが原因なんだ。  ところが、行政改革というのは、私どもは国と地方の間の改革をするのが一番大切な改革だと思っているのですが、その中のこういう問題を解決するのが、それこそ行政改革だと思うのです。それが、何にも改革しないで、逆の答申が中央省庁の横車によって出てくる。しかも、それを改革すべき第二臨調、これがこんな行政改革に反するような答申を出してくる。こんなばかばかしい話はないんですよ。あなた方、これを主宰する行管庁として、これに対してひとつ十分なそういう意味の配慮をやってもらいたい。そうでなければ、第二臨調なんというのはかえって行政改革するには邪魔になる。やるべきことと反対のことを出してきて行政改革なんというのは、これはとんでもない話なんだ。  もう一つ申し上げたいのは、臨調行政改革の趣旨の中に、身近なことは身近でやらせる、こういうことを書いてある。まさにこの地方事務官の問題はそれに当たるのだ。住民に身近な仕事は住民の身近なところでやればいい、まさにそれに当たっているにもかかわらず、こういうことになるというのは、臨調が決めた方針自体に臨調が出してきた答申というのが矛盾しているのじゃないか。この点に対してはどう考えますか。
  137. 八木俊道

    ○八木説明員 繰り返して恐縮でございますが、臨調答申は全体としてこれを尊重するというのがやはり基本的な一つの立場でございまして、そういう趣旨からいたしまして、五次答申の線で関係省と御相談を進めさせていただきたいと考えている次第ではございますけれども、何分この問題のさまざまな経緯があったその種の事情とか問題の複雑さ、困難さ等も十分踏まえまして、各方面の御意見にも十分留意しながら関係省とも相談を進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  138. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 自治大臣に申し上げますけれども、私、いま言ったことをもう一遍自治大臣に聞きたいのですけれども、こんな国の意図もみんな無視して、改革すべき行政改革の衝に当たるのが、行政改革しなければいけないことと反対の答申を出してくる。こんなことは本当に許せないと私は思うのですよ。私は自治大臣にお願いしたいのですけれども、これはもう地方団体はほとんど全部の、一つの願いとして、私のところに膨大な陳情書が来たりしているのだ。この点についてひとつ、いまも行管庁からお話がありましたけれども、これからいろいろ調整したり議論したりする余地が十分あるようでありますので、十分な主張をして、でき得べくんば一次臨調答申したような形でもって決着をつけるようにがんばっていただきたい。このことを決意をひとつ披瀝していただきたい。
  139. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調の総論的な答申は、やはり地方分権を旨とし、国、地方を通ずる行政改革をやるという基本精神があったわけなのです。そういう基本精神に沿った各論的な答申は当然出てくるはずであったわけだと思うのです。この問題は三十年来の長い問題であり、また、地方としてはそれだけの実績を持っておるわけなんです。ですから、地方にお任せあれば地方は十二分にりっぱにこなしていけるだけの自信もあるわけであります。  そこで、こういう答申が出ましたが、いま行管庁からお答えがありましたように、政府はこれは最大限に尊重する、やはり臨調答申というのは政府は責任を持って実現を図る、これは当然の政府の責任であります。ただ、いまもお話しのように、これの実施については、各省庁間でいろいろお話もしながら答申として出たものを尊重をするという立場はとりながらも、また私ども地方制度調査会という審議機関を持っております、地方制度については政府に重大なる答申をするという審議機関でもありますから、この地方制度調査会の御意見も私は聞いていきたいと思っておるのです。たとえば税制については税制調査会というものが意見をおっしゃるということでございましょう。したがって、私どもとしては調査会の意見も聞きながらこの問題の今後の処理に当たっていきたいと思っております。  また、これは三十年来にわたる問題でございますから、答申をいただいたからすぐにどうこうというわけには、そう簡単にはいかないと私は思っております。今後ともそういう考え方でこの問題とは真剣に取り組んでいきたいと思っております。(「どっちを尊重するんだ」と呼ぶ者あり)
  140. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま不規則発言が出ておったように、本当にどっちを向いておるかわからないじゃないですか。自治大臣としてどっちを向いているか。尊重するものは尊重するかもしれないけれども、間違っているものは直さなければいかぬのですよ。あなたの話を聞いていると、後ろを向いたり前を向いたりして、どっちを向いているのかさっぱりわからないのですよ。  できるかできないかわかりませんよ、しかしおれたちはこう思うのだという自分の主張をきちっとしないで、そんなあいまいな態度でどうしてあの強い臨調答申、行管庁なんか崩せるのですか。ほかの厚生でも労働でも運輸でも崩せるのですか。地方を代表する責任ある立場としてもっと明確な判断をきちっとやってください。いろいろな問題があるでしょうから、できるかできないかは別ですよ。しかし、あなたは自治大臣としての態度をきちっと打ち出しておかなければ、こんなこと破る理由にも何にもならないじゃないですか、たちまち負けて帰ってくるだけだもの。そこらはどうですか。
  141. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調答申は、政府としてはいただいたという考え方で最大限に尊重するということを決めておるわけであります。しかし、その内容についてはこれから具体的に詰めてやらなければならない。私どもは、自治省としての最大の問題はこの問題だと思っています。したがって、この問題については、臨調答申はいただきましたが、われわれは地方制度調査会の意見も伺いながら今後この問題と取り組んでいきたいと思っておるのです。
  142. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 何ぼやっても尽きないようだから一応これでやめますけれども、ひとつ重大な決意でもってやっていただきたい。大変矛盾した出し方だと思う。自分が決めておいてそれを自分でぶち破っている。こんなばかな答申ってないですよ。臨調答申を尊重する政府としては当然でしょうけれども、そんな間違った答申の中にはらんだ矛盾を直してやるくらいの気概を持ってやっていただきたい。ひとつがんばっていただきたい。  地方事務官問題はそれで終わりますが、もう少しいてください。  同様の臨調の問題ですが、地方の側に立つ地方自治体として、今度の行革に非常に大きな希望を託しておったものがある。私ども社会党としては、いまやっている行革には反対だけれども、行革はやらなければいけないと思っている。しかもその行革の中心は、国と地方の間の問題を整理していくことだ、私どもはそれが行革の一番中心の課題だと思っております。しかし、それに対して臨調から出ているものはほとんどない。その中心課題になっているいわゆる機関委任事務の問題について質問したいと思いますけれども臨調から出ているのは二年間で一割整理しろというもので、何とも言えないなまぬるい、いまの中央官庁の縄張り意識を発揮すればできっこないとさえ思われるようなことなんですね。これに対して自治大臣としてはどういう見解を持っておりますか。
  143. 山本幸雄

    山本国務大臣 相当たくさん機関委任の事務はございますが、その中で逐次整理をしていただく。これは長年地方自治体のやってきた仕事の中でもうすっかり地方自治体の仕事になり切っているものもあると私は思うのです。したがって、できるだけ機関委任事務を整理していただく。臨調答申の中にもそれについての審議機関をつくってやるという方針も打ち出されておりますから、そういう機関にかけて、ひとつ速やかにそういう具体的な案を出してほしい。臨調答申全体を通じまして、私どもの立場から言えば、具体性が少し欠けているのじゃないだろうか、だから、この答申の中でもう少し詰めていかなければならぬ具体的な問題がたくさんにあると思っておるのです。それには、答申が出たからすぐにというわけにもなかなかまいらないだろう。少し時間をいただいて、この問題と将来の地方自治のあり方ということを考えながらぜひやっていきたいと思っておるところであります。
  144. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 将来の地方自治のあり方、いろいろな問題があるでしょうけれども、この機関委任事務については、これまでもずいぶんたくさん議論されてきております。むしろ自治省側の方でこれを改革したいという強い意向を持っておるように私どもは感じておるのです。一体どのくらい機関委任事務が県や市町村にあるかと私も質問したことがあるのですが、少なくとも半分以上あると自治省の局長が答えて、これを整理することによって大変助かると言っているのです。しかも、これは行政改革の中心課題にならなければいけない。金があろうがなかろうが、常にこれはやっていかなければならない。これも長い、強い要望にもかかわらず、わずかに一割を二年かかってゆっくりやりなさいという答申が出ている。私は、逆に自治省の側からこれを整理しろと言って各省庁に攻勢をかけて、整理する必要があると思いますけれども、いかがですか。
  145. 大林勝臣

    ○大林政府委員 機関委任事務に関する自治省としての立場は、先ほど指摘のとおりでありました。今後ともそういった考え方で制度改正に臨みたいと考えておりますし、臨調答申にありますような当面の一割整理の問題、それから今後の審議会における基本的、根本的な検討の段階、この二段階に分かれてまいるわけでありますが、当面は、各省庁にお願いをし、一割整理すべきものを整理していただくこと、と同時に、今後機関委任事務をむやみとふやさないという歯どめが必要なわけでありまして、いろんな今後の各省における施策におきまして機関委任事務がどう位置づけられてくるかということを私どもがいろいろ注目しておく、こういうことが必要であろうと思いまして、そういう気持ちですでに対処をしておるところであります。
  146. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 この機関委任事務については、いま新しく出てきた問題じゃない、しかもかなり深刻に地方の方で考えておるので、知事会を中心にしてほとんど議論し尽くされてりっぱな一つの考え方、案が出ておるのです。これはもう皆さん御承知のとおりです。あんなりっぱな案が出ているのに、なぜそれに沿って臨調答申を出して、政府がそれを受けてこれを整理するようにしないのか。  自治省の見解によっても、半分以上は本来国がやるべきことを地方がやらされておる。市町村は五、六割、県になると七割か八割ぐらい機関委任事務だ、こう言われているのです。これを整理することが、地方分権という一つの大きな行政改革の流れの中で一番大切なことなんです。この内容はもう議論され尽くされているのです。あるものは完全に地方に移管せよ、移管されないものは国で持っていけ、それでもだめなのは完全に金を出して委託するとか、そういう一つのほとんど完璧と言われるような機関委任事務の改革案ができてしまっている。  それが全然、何の一顧もされないで、新しく一割を二年間かかってやりなさい。後はゆっくり審議会をつくってやりなさい。改革でも何でもない。私どもは、行政改革というものはもっと年じゅうゆっくりやるものだと思っているけれども政府は金を生み出すために行政改革を使っているでしょう。それならば、もっと早く政府の立場としてはやらなければ、必要な金が出てこないじゃないですか。  さっきも言いましたけれども、こんな中心命題を除外視して、そして行政改革だという答申を出してよこす。こんな矛盾した、ひっくり返った臨調というのは一体ありますか、行政改革というのは。これだって、最大の根本に横たわるものは、各省庁自分のものはつめのあかほども出さないぞ、こういう縄張り意識、省庁のエゴによって、これがどこまでいってもできないのです。これをぶち破るのが臨調じゃないですか。何にもやらないでおいて、いい加減な答申を出してよこす臨調なんというのは、臨調はない方がいい。  私は、臨調は批判するけれども行政改革はやるべきだ、機関委任事務はやるべきだと思っている。やれと言っているのですよ、やるなと言っているんじゃなくて。なぜもっと徹底してやらないかと言っている。社会党はいつも行革反対だ反対だと言うけれども、反対じゃないのですよ。やるべきところを何にもやらないで、やらなくていいところをやっているでしょう。  国鉄改革してローカル地方線を全部なくしたって、七百億じゃないか。これ一つやってごらんなさい。何兆円出てきますよ。国鉄を外せば、地方はそのよりどころを失ってしまう。過疎はますます過疎になる。国鉄がなくなれば、なくなる町村だってあるのですよ、部落だって。そんなものを犠牲にして、国鉄をたった七百億円のためにローカル線を外す。なぜこんな改革の中心になるようなものに手をつけないで、漫然と構えているのですか。行政改革はやるべきですよ。こういう必要なものはどんどんやるべきだ。  行管庁、どうですか。
  147. 八木俊道

    ○八木説明員 おしかりをいただきまして恐縮でございますが、臨調から提起されました国と地方の関係の改革構想は、確かに比較的抽象的な部分が多いわけでございます。そこで、私どもといたしましては、行政管理庁といたしましては、答申の中で具体性のある手がかりを持っている問題といたしまして、機関委任事務の二年間一割整理という課題をピックアップをいたしまして、各省にいまその具体案つくりをお願いをしているところでございます。おいおい各省から出てまいると存じますので、関係の自治省大蔵省その他とも十分相談をいたしまして、とにかく機関委任事務の二年一割の整理、これをどの程度内容あるものにしていけるか、この辺がまず第一の手がかりではないかというふうに考えておる次第でございます。  もとより御指摘のとおり、住民に身近な行政はなるべく住民に身近なところで処理されるべきが、行政改革の基本精神の一つであろうと思います。その意味で、その第一歩といたしまして機関委任事務の二年間一割整理、これにまず取り組んでまいりたいというのが、目下のところの実務的なスタンスでございます。
  148. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま行管の方からお答えがありましたけれども臨調にはやはりそれだけ委員の方もおられ、それから専門員とかスタッフの方もおられて、それらの方が御相談になったので、いま答弁に立っているのは、これは事務当局でおやりになったわけですから、私どもは、総論的なところでは確かにいいことをおっしゃったが、各論になってくるとよくわからないところがたくさんある。  いま機関委任事務についてお話がありましたが、そのほか地方自治をめぐる中央地方の問題は、ほかにもいろいろあるのです。申し上げれば、私は切りがないというくらいあると思うのですよ。少なくも五つ、六つの問題点があります。しかし、その臨調答申の中身は、それについて具体的にどういうふうに詰めていくかということについては、もう少し具体性が欲しかったと私は思っておるのです。  ですから、そういう基本線に沿ってこれからの具体的に詰めていくという作業はどうしてもやらなければならないし、また、いまおっしゃるように、各省庁との間には、いろいろそれぞれのお考えがありますから、やはり相当時間をかけてやらなければならない。政府も、臨調は一応三月十五日で解散いたしましたけれども、その後これを推進し促進していくという、そういう機関もつくる、そしてあくまでも行政改革の遂行を見守りあるいは推進をしていく、こういう考え方でおるわけでございますので、これから私どももそういう線に沿って真剣に取り組もう、こういうつもりでおることは、先ほど来申し上げているとおりであります。
  149. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 臨調答申自体に、臨調のやり方自体に私どもは大いに不満であり、全般として反対をしておるのですが、地方の関係するものとして、こういうような機関委任事務であるとかあるいは許認可の事務であるとかあるいはまた零細補助金の問題であるとか、この三つを整理しただけで、私は大変整理になると思っておるのですけれども、こういうような本当に必要なものについては、私どもは何というか、非常にがっかりした。特に亀井第三部会の答申というものは、何の役にも立たないような答申だと、こう思っています。  重要な行政改革、地方にとって重要な内容を含んでおる、特に自主財源を獲得して地方分権、文字どおり自治体として自主的に運営していくためには、こういうような中央の束縛というものをぶち切るということが、私は非常に大事だと思うのですよ。それが何の前進も見ないような行政改革の答申内容になっておるということに非常に不満を覚え、がっかり落胆をしておるところであります。  どうかひとつそういう意味で、自治体の一つの最高責任者の自治大臣として、そういう点をひとつ腹にしっかりと据えてこれから取り組んでいただきたい。このことを強く申し上げて、大臣の御意見を求めます。
  150. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調答申を待つまでもなく、政府側でやれることはやったらよかった。しかし、行政改革というのは非常にむずかしい課題であるだけに、結局臨調の手を煩わしてこういう答申を得、最大限尊重するということで答申をいただいて、これからやろうというわけでございます。したがいまして、非常に困難なこの行政改革に政府は手を染めて、ひとつこれからの国民の期待にこたえ、そしてまたこれからの日本の行政というもののあり方をひとつしっかり軌道を敷いておこう、レールを敷いておこう、こういうことでございますから、私どももそういう心組みで、いまいろいろ御意見もいただきましたが、そういうつもりでひとつ今後ともやっていきたいと思います。
  151. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 国保の問題でちょっとお尋ねいたします。  この間どなたかの質問に答えておったようですが、老人医療が発足して、国保財政はどういうふうになる見通しですか。
  152. 阿部正俊

    ○阿部説明員 お答え申し上げます。  概括的に申し上げますと、国保の現在の財政状況といいますのは、赤字、黒字ということで言いますと、三千数百の保険者のうちで百五十市町村が赤字というかっこうになっております。ただ、三千数百のうちの百五十ですので財政状況は楽じゃないか、こういう見方も一つあろうかと思うのですが、実はそうではございませんで、いわばかなりの苦労をしながらようやく収支を合わせているというのが大多数の市町村でございます。医療費は毎年数%ずつ上がっておりますので、保険料の基礎になります賃金あるいは給与その他が必ずしも伸びておりませんので、市町村ともかなり苦しい状況にあるというふうに言ってよかろうというふうに思っております。  ただ、先生指摘のように、老人保健法が二月一日から施行されます関係上、これが施行されますと、国保にとりまして、財政的な意味で従来よりは若干好転するという要素は含んでおることは確かでございます。大体どれくらいの影響があるかということでございますが、これは老人の割合とかということで各市町村で違いますけれども、全体の平均で言いますと、約一割ぐらいの部分が負担面で軽くなるのではないかというふうな予測で私ら見ております。金額的にはなかなか出ないのですけれども、約千数百億、老人保健法なかりせば保険料、保険税で賄わなければならなかった分が、千数百億負担増にならないで済むというふうな状況ではないかというふうに見ております。
  153. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 税務局長にちょっとお伺いします。  毎年国保税の上限が上がってきました。二万、三万、ずっと上がってきたのですが、ことしは一万しか上がらない。その理由は老人保健が発足して国保が助かるから、こういうのですか。
  154. 関根則之

    ○関根政府委員 限度額を一万円引き上げまして二十八万円にお願いをしたわけでございますが、この引上額が一万円だけにとどまったということは、老人保健法の施行の問題とは直接関係はないというふうに私どもは考えております。  従来からの基本的な考え方に基づきまして、やはり国民健康保険税というのは応益的な性格を非常に強く持つ税であるということが基本にございますので、応益原則を用いた部分についても、所得が非常に高いからといってそれに応じてストレートに比例して税負担を求めるというのは問題があるという考え方に基づいて限度額を設けておるということでございますし、また、ほかの政管健保でありますとか各種共済でありますとか、そういったところの最高限度額等をも参考にいたしまして、二十八万円の線を設定したわけでございます。
  155. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 この前の委員会のときに私、指摘したのですが、いま税務局長から、保険税というのは非常に応益的な意味がある、だから、所得が多いからといってよけい負担させるのはだめだ、こう言っておるのですが、国民健康保険は、加入者というものはそんなに所得の多い人はほとんどいないのですよ。むしろ所得層からいくと低所得者だけなんです。だから、あなたの言うように応益的で、金持ちだからといってたくさん金を出させるわけにいかないから上限をつくるといったって、この制度が上がれば一番割りを食うのは所得の低い人なんですよ。  この前も私は申し上げたけれども、一応所得割が中心になって保険税が発足した。ところが、毎年どんどん上がっていく。そのために、所得のない人は保険税が間に合うだけ取れないものだから、今度は所得割じゃなくて資産割的な、財産税的な税金にどんどんなってきているのですよ。この前詳しく数字を挙げて私は説明しました。それで私は思うのですが、一番大きな問題は、幾らこれをやったって毎年上げていかなければいかぬですよ。  ちょっとお聞きしますが、来年はどうするつもりですか。また何ぼか上げるつもりですか。
  156. 関根則之

    ○関根政府委員 この限度額につきましては、その年度に予想されます保険税として負担をしなければならない経費総額との関連で私どもとしては考えていきたいというふうに考えておりますので、いまの時点で五十九年度どうするかということを明確に申し上げることはできませんが、来年度予算編成なり五十九年度の税制改正が行われる時期におきます医療関係の情勢、国民健康保険財政状況、そういったものをいろいろと勘案して決定していきたいと考えております。
  157. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 感じとしては、また上げなければいけないような感じでしょうか。
  158. 関根則之

    ○関根政府委員 従来からの趨勢から申し上げますと、大体そういう方向になるのではないかと推定をいたしております。
  159. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 もう一つ、これは国保課長の方にお伺いしますが、これはもうどこまでも上げていくつもりなんですか。これは毎年毎年どんどん上がっていきますよね。僕ら見たら、もう三万円か五万円のころからこうなっているのですよ。またことし一万円、来年一万円、二万円とどこまでもこれは上がっていくのですが、これはどこかにとめどがあるのですか。
  160. 関根則之

    ○関根政府委員 この限度額につきましては、国民健康保険に加入をいたしております世帯の収入、所得の状況でありますとか、一方において医療費がどういうふうになってくるのか、上がるのか下がるのか、下がることは余りないと思いますけれども歳入歳出との兼ね合いの問題等によって決まってくる問題でありましょうし、また、医療費そのものはいろいろと資材等の価格との連動もあると思います。物価水準なり所得の水準なり、そういったものとも関連してくる問題であろうかと思うわけでございますが、そういったものの推移によって今後どうなるのか。ただ、所得なり物価なりというものは、長い目で見れば漸増傾向にあるというふうに考えられますから、この限度額を一定の水準で抑えてしまう、そういうことは私どもとしてはむずかしいと思います。しかし、そういった全般的な医療の情勢なり経済の情勢なりというものを全く無視した形で、どんどんと物すごいスピードでこれが上がっていくというふうには、私どもは考えておりません。
  161. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 物すごいスピードで上がっていくとは考えないというのは、どういう根拠かわかりませんが、もうGNPの上がり方よりもこちらの方の上がり方が、どんどんふえていって高いですよ。それこそあなたの言うように物すごいスピードで医療費が上がる。総医療費がGNPのあれよりもどんどん上がっているのです。だから、それを支払うべき保険税というものはどんどん上がっていっていると思いますよ。私がいま心配しているのは、いまに払えなくなるんじゃないかと心配しているのです。そんな心配は杞憂だと言うかもしれませんけれども、どんどん資産税化していっていますよ。病気になれば病院にかからなければいかぬからあたりまえだと言うかもしれませんけれども、それでは保険をつくった意味は何もないですね。  結局、私がいま申し上げたいのは、国民総医療費というものを抑える、下げなければ、どこからでも皆こういう議論をしているから耳にたこができているかもしれませんけれども、これを抑える方法をしないと、これは無限に高くなっていくと思いますよ。そのうちにパンクしてしまう。これを抑える方法を何とか——これは臨調に関係があると思うのですが、三K赤字ですね。国鉄と米と健康保険。ところが、これを見てみたけれども、健康保険の問題、何も手をついていない、臨調答申の中にも。何かこれだって、国鉄経営分割して民営にするというのと同じように、何とかかんとか国民総医療費を抑えるようなことを考えないと、これは大変なことになる。三Kの一つなんですからね。なぜこれが出てこないのか、私もわからないけれども、医者が恐ろしいから多分出てこないんだろうと思うけれども、これは何も出てきていない。  国保課長、厚生省を代表して答弁してもらいたいのだが、こういう国民総医療費を抑えるというようなことについて、何か施策をやってますか。
  162. 阿部正俊

    ○阿部説明員 先生の御指摘、最初は限度額の問題かと思っていたのでございますが、総医療費全体の伸びと保険料の負担とのバランスをどうこれから考えていくかというふうな御質問と理解いたしますけれども、確かに先生指摘のように、これまでの国民皆保険以来二十数年たつわけでございますけれども、どちらかといいますと、保険というのは、医療費というものを前提にいたしまして、それに必要なものをいかに調達するかということで、保険というのを考えてきたというふうに見られます。そういうことで、現実問題としても、保険料の負担額というものも、全体の所得の伸び以上に伸びてきたというふうな結果になっておることは、御指摘のとおりでございます。  ただ、これから先のことを考えますと、そうでなくても高齢化社会の到来ということで、全体の負担というのは伸びるわけでございますので、医療に回し得る一つの国民の負担というのは、相当程度限られてくるというふうに見ざるを得ないというふうに思っております。そういう意味から、これから先の医療費の医療費保障に回す負担というものを、むしろ負担というものをある程度前提にいたしまして、そういう中でどういう給付をすればいいか、むしろ従来の物の見方と反対と言った方がいいのかもしれませんけれども、ということで洗い直しをしていかなければならぬというふうに考えております。  医療といいますのは、いわば一つの命の問題とかいうことで限りないものでございますけれども、それでも実際にこれを動かしていくとなれば、有限な保険制度の中でどうカバーしていくかということの調整がどうしても必要になってまいりますので、具体的な施策は、厚生省の中でいま医療費適正化対策本部というふうなものをつくりまして個別的な対策の詰めを行っておりますけれども、物の考え方といたしましては、先生の御指摘のように、無限大に伸ばしていくというふうなことにはならぬように、ひとつむしろ負担というものをある程度前提にいたしまして、その中でどういったふうなことを賄っていけるかというふうな立場で、医療費の全体の伸びをいかに効率的にしていくかということを考えてみたいと思っております。
  163. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 五十七年度の医療費の伸び、最低だと言うけれども、七・五%伸びて、国民総医療費の総額が十三兆八千八百億円、もう十四兆に達しようとしているのです。大変な額ですよ。一方でこれほど大きな医療費、そしてこれを国民は何重にも負担している。国民健康保険の例をとると、国保税で負担している、そのほかに一般会計からこれを繰り入れている、そのほかに国から補助金として出している、何重にもこれを負担している。大変な額なんですよ。年々どんどん伸びていっている。私はいつも言っているように、これを抑えなければどうにもならなくなる。人を助ける医療が人殺しになってしまうのではないかという感じを持っているのです。  一方において、何ぼたっても医者の医療費の不正請求がなくならない。ところが、その医者がどういうあれをやっているかというと、医師優遇税を真っ先に受けておるのですね。去年は医師優遇税だけで千二百億あるといって、こうして出てきている。そのほかに節税というか脱税というか、そういうので約一千億ぐらいあるのじゃないかという推計が出ておる。合わして二千二百億ぐらい。  そういうような優遇をされているのに、今度は脱税脱税でいつでも新聞に出てくるのは、これはたくさん持っておりますが、脱税するのは医者だというような感じを持っている。ワーストテン、医者だといって新聞に出ているのです。日本じゅうの普通の人は、三割控除されて七割に税金がかかっている。医者は逆で、七割控除されて三割に税金がかかっている。そうして脱税ワーストテンだと書かれている。国民はこれを何と思いますかね。  そのほかにどういうことなのかというと、不正請求が後を絶たないのですね。不正請求、不正請求。これは適当なときに抑えればそのうちに不正請求がなくなるかと思うと、石川五右衛門ではないけれども、浜の真砂と泥棒の種は尽きないといって、何ぼやったって毎年の新聞に医者の不正請求の出ない月はないぐらい、もう次から次といっぱい出ているのです。中には大分県の歯科医師会みたいに、ニッケル使ったやつを何だか高い金使ったことにして、集団でやっているところがある。集団でやっているのですよ。こういうようなことが何ぼやってもなくならない。これは大変な金額になると思いますよ。出ているのは、摘発されているのは氷山の一角だ。これを何とか抑える方法をしなければ、幾ら保険税高いの安いのとここで審議したって、これはむだだと私は思うのですね。  足りなければ上げなければいかぬのですよ。これを何とか少なくとも喜んで、喜ばなくても、これは仕方がないやと言って税金なり保険料なりを納めるようにするためには、こういうような医者側の不正というものをぴしゃっと抑えて、なるほどこれはごまかしのない本当の正直な数字だという、これを国民に納得させなければ、とてもだんだんむずかしくなってくれば納める気はなくなってきますよ。このことについては厚生省なり税務局長なりはどういうふうに考えているのですか。
  164. 関根則之

    ○関根政府委員 不正請求そのものにつきましては厚生省からお答えをいただきたいと思いますけれども、私ども国民健康保険税を預っている立場といたしましては、まさに先生指摘のとおり、大変国民健康保険税の負担感が重くなってきております。国保世帯における一世帯当たりの住民税額と国保税額とを比較いたしますと、国保税額が住民税額の倍になっているというような実態も数字的にあらわれてきているわけでございまして、税が重い重いと言うので田舎へ行って話をよく聞いてみますと、市町村民税ではなくて国保税の話だったというよくある状況を踏まえているわけです。  御指摘のように、いかにしてこの税負担の軽減を図っていくかということは、私どもの仕事であるわけでございまして、その前提といたしまして、医療費をできるだけ少なくしていく、国民健康保険会計の負担額を少なくしていく、これができないと税の額を減らすことができないわけでございますので、そういったことについていろいろな施策の面から関係各省庁にも私どものサイドからも要請をしてまいりたいと考えております。
  165. 寺松尚

    寺松説明員 お答えいたします。  いま先生指摘いただきましたように、診療報酬の不正請求というものにつきましては、人の道から外れました許すべきでない行為であろうと思います。しかも、御承知のように医療費は公金によって賄われております。したがって、厚生省といたしましては、その不正請求に対しましては厳しい姿勢で臨んでおるわけでございます。  具体的に申しまして、私どもやっておりますことは、一つは、その保険医療機関の指定を取り消す、あるいは保険医の登録を取り消す、それから返還金を命ずるとか、あるいは最近二月からでございますが、加算制度、一〇%の加算金をつけましてやるというふうなこともやっておりますし、さらに、悪質なものにつきましては、医師法によりまして医業停止ということをやっておるわけでございます。いずれにいたしましても、私どもいままでいろいろな形で厳しく対応してまいったわけでございますが、今後もまた引き続き厳しい態度で臨みたいと思っております。
  166. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 税務局長にお伺いしますが、これは去年の八月二十五日の毎日新聞ですが、国税庁は八月二十四日、「社会保険診療報酬の不正請求についての初の特別調査の結果を明らかにした。」と書いてあるのですね。これで約二十六億円見つかった。ところが、これに対して国税庁は、守秘義務というのを理由にして、こういう摘発した医師、歯科医師の住所や名前は一切自治体等に伝えない、このために自治体が再度調査するのは困難だ、こういうふうに書いてあるのです。  これは、国税庁だけが国税としてこれに税金をかけて取り上げればいいかもしれないが、所得があれば地方税もかかるのですよ。ところが、国税庁は一切名前も住所も教えない。そうすると取れない。これはどういうふうに処理するつもりですか。
  167. 関根則之

    ○関根政府委員 その記事が手元にございませんので正確な内容がわかりませんが、多分国税庁が把握をいたしました資料を公表するといいますか、そういうことはできないということではなかろうかと思います。  税務当局は、特に市町村民税、これは県税を含めてでございますが、住民税を課税いたします課税資料は、国税庁で捕捉いたしました所得の資料をそのまま使うことになっておりますので、国税の方で脱税の発見が行われ、所得の捕捉が行われまして課税対象となった所得については、市町村はそれを知り得る立場にある、資料はいただける、それに基づいて課税ができるという制度になっておりますし、そのとおり運用ができるものと考えております。
  168. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これは去年の八月の二十四日ですから一年まではいかないけれども、かなりな時間がたっておる。いまあなたのお話を聞くと、これは国税庁からちゃんと聞いて課税しますと言うが、本当に課税しているのですか、するのですか。
  169. 関根則之

    ○関根政府委員 住民税の課税の基礎資料は、これは先生御承知のとおりでございますけれども、所得税における課税資料を使って課税をいたします。所得の捕捉はその資料によってやるわけでございますから、当然市町村のサイドから国税に対して資料請求をやり、国税はそれを提供することになっておりますので、まあ事務手続の関係で時効等の関係がどういうふうになっているのか、これは個別のケースではいろいろあろうと思いますが、原則的な考え方としては、国税で捕捉できたものは、当然住民税の課税対象として捕捉できるというふうに考えております。
  170. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 不正請求にもいろいろあるのですね。要らない薬まで飲ませたとか、実際に飲ませた薬を請求しているのだがそれが水増しの請求だ、その辺までは実際に飲ませているからまあまあというような感じもするのですが、実際に薬も飲ませてない、治療もしてない、注射もしてない、検査もしてない、こういう何にもやってないものを書類を偽造して、そして審査の目を逃れて金を受け取っている。厚生省から聞くと、何か行政処分をしておるようですけれども、非常に素朴な質問ですが、にせの文書をつくって金を詐取して、ばれたら返せば行政処分だけで済むということは、普通の人間としてはちょっと考えられないのですがね。何かこうなると、泥棒して金を盗んできて、ばれたら返してしまえばそれで済むというのと同じような感じがするのですが、警察庁からどなたか来ておられると思うのですけれども、ここのところはどんなものですか。
  171. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えいたします。  いろいろな態様があると思いますので、一概になかなかむずかしいかと思いますが、全然実態がないのにそれを水増しして請求する、こういったようなケースを想定いたしますと、これは一般的にでございますが、まず詐欺罪の適用を考えるのが通例であろうかと思います。
  172. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これは全く一般的にぴしゃりと当てはまるのですが、飲ませもしない薬、検査もしない検査、治療もしない治療、全く悪質きわまるのですね。それを出して審査を受けに持ってくる、金を取る、ばれれば金を返す、これで一月か二月ぐらいの行政処分を食らうようなんですが、そんなことはもうけた金に比べればへでもないから、またやる。いろいろな資料を調べてみると、こういうようなことを繰り返しているようなんですね。  しかも、先ほどから言っているとおり、摘発されるのはほんの一部なんです。氷山の一角だとすれば、九割は水の下に沈んで通っているのです。交通違反みたいなもので、見つかったのは運が悪いんだ。スピード違反して警察につかまったのは運が悪いんだとみんな言っているのですよ。あとの大部分は運がいいのです。それと全く同じで、摘発されたのは運が悪い。あと大部分の九割は運がいいものだから、物すごく金をもうけているのです。そして見つかっても、せいぜい一月か二月行政処分を食らうだけで、身分には何の関係もない。  だから、これは当然ですよ。やらない方がばかばかしい。みんなで水増し請求、架空請求、やれあの請求とやって、今度は二つも三つも合作してやっているわけです。水増し請求と架空請求みんな一緒にして合わせてやっている。こういうのがどんどん出てきているのですよ。医者としてはこんなうまいことはないのですよ。どんどん薬を出す。摘発されるのはやったやつの十分の一か二十分の一しかなくて、それは運が悪いとあきらめていればいいのですよ。そのほかのやつは運がいいから、どんどんもうかっている。だから、不正請求はやらない方がおかしい。  みんなやっているから、それがときどき新聞に出てきている。大変な数が出てきている。毎月これの出ない新聞は恐らくないぐらい、頻繁に医師の不正請求が出てきている。しかも、これはなくならないのですね。私は、医療費の増大は薬づけ診療にある、一点単価請負制にあると思っておりますけれども、それを一生懸命医師会が守るというのは、これをやっていればこんなうまいことがあるから、あの制度を守っていると思うのですよ。  しかも、さっき言ったように、要らない薬でもいいから飲ませた薬に対して請求するならば、まだいいのだ。飲ませない薬を飲ませたと言って、うそをついて請求して金を取っている。普通ならば、これはあなたが言ったように全く詐欺罪ですよ。それが医者に限り詐欺罪にならないというのは、厚生省にお伺いしますが、私は保険法を見たけれども、そういうやつは一切ない。医師法か何かに、医者は泥棒しても金を返せば一向に構いませんという法律があるのですか。
  173. 寺松尚

    寺松説明員 いま先生指摘のとおり、そのようなことは健康保険法等にもないわけでございますけれども先ほども申し上げましたように、健康保険におきましては、そういう不正請求を行った者等につきましては、いわゆる保険医療機関の取り消しあるいは保険医の登録の取り消しというようなこと等をやっておるわけであります。それで、いま先生がおっしゃっておりますようなことにつきまして、そういうふうな行政処分によりまして社会的には一応制裁を受けておる、こういうふうに私どもは考えております。  しかしながら、非常に悪質なものにつきましては、先ほども申し上げました医業停止、医師法によりまして二年とか三年とかいうふうなことで停止をするということになっておるわけでございます。それからまた、すべての事案につきまして告発をすることもいかがかと思うわけでございますが、私ども、必要なものにつきましてはいままでも一応告発をしてまいっておりますし、今後ともそういうものについては告発をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  174. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 告発なんというのは、本当に屋根の上から目薬をつけるような状態で、ほとんどない。告発なんというのはほとんどないのです。一月か二月あれすれば重い方で、それもめったにない。しかも、不正請求が次から次へと発生している。  そこで、警察庁にお伺いするのですが、たとえば架空請求がいっぱい出たとはっきりと新聞に書いてあるのです。架空の請求、うそをついて金を取っている。警察庁としては、こんな記事が麗々しく出ているのに、何も対処する方法、気持ちはないのですか。
  175. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 不正請求事件につきましての警察のこれまでの検挙の状況を御説明いたしますが、去年は一年間で五十四件検挙いたしております。一番新しいところでは、埼玉県の三郷病院、新聞に大分出ましたので御記憶もあろうかと思いますが、この三郷病院は五十六年三月から八月までの間におきまして、入院患者にテレメーターを使用して検査をしたということで偽りまして不正請求をしまして、総額二百六十八万円の不正受給ということで、詐欺事件として検察庁の方に事件を送致しております。これは起訴となっております。そういったようなことで、数の多い少いは御議論があろうかと思いますが、警察としては悪質なものにつきましては捜査をして検挙する、こういうことでやっております。
  176. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 悪質なものについてといっても、これは悪質に決まっているのですよ。良質な不正請求なんてあるはずがないのですよ。大変悪質なのです。しかも、医者なんてインテリの最前線にあるような連中がこんな不正をしているのですよ。それを黙っておくというのは、社会正義上許されない。それを取り締まるのが警察でしょう。こんななまぬるいことだから医療費がどんどん上がっていくのです。先進国の薬だとかあれと比べると、日本のやつは倍もよけい薬づけになっているという資料さえある。こういうのから出てきていると私は思うのですよ。取り締まれば不正請求しなくなりますよ。それで初めて医療というものが正規の軌道に乗ると思う。うんと取り締まるべきだと思うのですが、どうですか。
  177. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 いまお話のありましたような点を踏まえまして、私どもの方も今後できるだけ取り締まりを強化していきたいと思います。  ただ、一言申し上げますと、この不正請求事件の捜査につきましては、非常に特殊な分野でもありますし、また専門的な知識を必要とするということで、捜査としては非常にむずかしい分野の捜査に属するということも、御承知おきいただきたいと存じます。
  178. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 もう一遍あれだけれども、毎日、新聞に医者が悪いことをしている、医者が悪いことをしている、やりもしない薬をやったといって金を取っている。子供の教育に大変悪いと思う。そうでしょう。それで、金を返せばいいのだと言う。お父さん、泥棒しても金を返せばいいのと言われたら、何と答えますか。新聞に毎日出てきているのだ、医者が悪い、医者が悪いと。これはきちっとこういうことをすべきだと思うのですよ。警察庁出身の山本自治大臣はどう思いますか。国家公安委員長
  179. 山本幸雄

    山本国務大臣 お医者さんというのは国民の命と健康を守っておるはずでございますから、そんなにたくさんもないことであろう、しかし、医術という観点から言えば、そういうものはまことに糾弾さるべきことだろうと思うのです。いま警察の方から答えがありましたが、非常に専門的でむずかしいと思うのですよ。これは診療報酬の請求の方にも来るのでしょうし、厚生省は専門的におやりになっているのでしょうから、その方でもそういうことについての厳しい態度でやっていただき、それと連絡をとりながら警察も、警察へ事案が来れば警察としてはそれぞれの機関の調査を待って積極的にやっていく、私はこう思っております。
  180. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 まじめにやっている医者はたくさんいると思うのですよ。ところが、新聞に毎日出るから、医者というのはみんな悪いと思っている。まじめな医者のためにも、この悪い医者は退治すべきだと私は思いますよ。  最後に、交付税の問題についてお伺いします。  先ほどから私の方の加藤万吉委員、それから部谷委員から質問がありまして、その答弁も聞いておりましたが、私としては大変不満足であります。  昭和五十年から、大きな赤字が出てそれを埋めるためにいわゆる二分の一方式というものを政府が出してきた。私どもはあの当時、これは六条の三の二項の違反だ、交付税率を上げろと言って強く反対して迫ってきた。与党の中にも、これはおかしいじゃないかという声が非常に強かったぐらいだ。ところが、とうとう押し切られてしまって、ああいういわゆる二分の一方式というのができた。実際は四分の一方式なのですね。全体の足りないやつを半分は地方の借金、残りのは交付税特会で借りて、それの半分は地方でやり、半分は国がやり、利息は全部国がやる、そういう一つのルールとして、私ども反対したけれども、通ってしまった。  ところが、これは交付税法六条の三の二項にあるところの、制度の改正かあるいはまた交付税率を上げるあの条項の中で、こんなにその年その年によって変わるようなものは制度の改正じゃない、制度の改正じゃなければ、もう一つの方法として交付税率を上げろ、こう言って強く迫ったけれども政府はどうしてもこれは制度の改正だと言って、強弁、詭弁でとうとう通してしまった。五十一年、二年もこの同じ論争が続いて、当時の小川自治大臣から何から非常に困って、そして五十三年には、これを一つの制度の改革として認めさせるために、法律でもって出してきた。そこで、交付税率を上げなくても、これは制度の改革であるから法律に反しないと言っていままでやってきたのです。  しかし、何代もの大臣が覚書を交換している。その覚書の中に、「特別会計の借入金の返還について、協議の上必要があると認めるときは、その負担の緩和につき配慮を行う。」ということを、何遍もこのときの交付税の覚書の中に載せておいて、そして予算委員会その他ここの地行委員会の中でも、この覚書の緩和する措置というものはこれから十分生かして考えていくという答弁を何遍もしている、大蔵大臣もしているのですよ。  ところが、いよいよこれを返還する段になって、利息だけで七千億という大きな金になった。国は赤字だというので、これを半分ぶった切る。初めは、半分じゃなくて七千億全部を地方の借金だから利息ぐらい負担しろという形で負担させようとした。それを自治省が抵抗したから半分にして、自治省はもうかったもうかったと言うけれども、もうかったのじゃなくて、半分損しているのですよ。  これはまさに五十年から約十年近く、ことしは八年ですね、ずっと続けてきた。私どもは制度の改革じゃないと思うけれども政府が、制度の改革である、ぴしっと守っていきます、将来これをもっと緩和していきますと言って一生懸命処置をしてきたこと、それがここで破れている。破れているということは、六条の三の二項の前段の制度の改革ということが破れたということ、あと残りは、行き着くところは交付税率を上げることしかないのです、足りないことに対して。  恐らく、ことしは半額で済んだ、来年も国の財政が好転する兆しは何もない、半額持ったのだから、来年も残りの半額持ちなさいと必ず言ってくる。その保証は、さっきから聞いておりますけれども、何もない。来年は来年の風が吹くと言っている。何もないのです。来年これがなくなってごらんなさいよ。その次には何がくるか。再来年になれば、交付税特会借入金を、地方の借り入れなんだからおまえが持てと言ってくるに決まっているのですよ。それをまた半分にまけましょうと恩着せを言って、その次になればみんな持ちなさいと言う。制度の改革なんというのは、いまの段階でもう破れてしまっている。あとは交付税を上げるしかないのです。こんなことをなぜ大蔵省から諾々として受けてくるのですか。  時間がないからもっと話しますが、いいですか、いまこの交付税を審議しても、ことし決めたことを来年ひっくり返してしまったら、いま審議するのは無意味じゃないですか。何にもならぬですよ、すぐひっくり返るようなものを。大蔵省なんか、信用ならないですよ。何年も前のことを遡及していまひっくり返す。五年も七年も前のことをいまひっくり返すなんて、そんなばかな話がありますか、一体。苦しいことは地方も中央もみんな苦しいんですよ。約束したことは歯を食いしばって守らなければ、地方と中央の信頼感というものは何もなくなってしまうじゃないですか。いまここで審議するのは無意味ですよ。最小限度、大蔵省に行って、来年は必ずこれを回復しますと、このくらいの証文を取ってこなければ、こんなことは審議に入れませんよ、私は。  委員会が通らないからもう一遍もとに戻してくれと言って、大蔵大臣と自治大臣と交渉しなさいよ。こんなこと審議したって、無意味ですよ。ことし審議したって、来年またひっくり返されたら、どうしますか。何にもならぬ。その信頼があればこそ初めて、嫌々ながらもわれわれは審議する。信頼感がなければ、何もこんなもの審議したって無意味ですよ。ことしやったって、何にもならぬ。来年パアになるでしょう。さっきから、来年は絶対大丈夫だと大蔵省もあなた方も答弁するかと思ったら、来年は来年、あしたはあしたの風が吹く、じゃないですか。こんなものを真っ正直になって、まじめになって審議されますか。何を審議したって、何の意味もないでしょう。どうですか。
  181. 山本幸雄

    山本国務大臣 この問題は、ことしの予算折衝のもう最大の焦点になったという問題でございます。いま過去の経緯についてもいろいろお話がございました。私は全くおっしゃるとおりだと思うのです。  そこで、全体としまして国家財政地方財政もお互いに非常な危機を迎えておる。地方財政の立場から言えば、私どもはこんな多額の五十七兆円という公債を抱え、そして交付税特会で金を借り入れて、とにかくことしの運営は何とかいけるようにした、こういうことであります。地方財政としては来年一体どうなるのだということになったら、これは本当に厳しいものになっていく。では国家財政の方はどうだといったら、来年度予算大蔵省はどうして組むのだろうか。これはよほど歳出を切っていかなければできない。地方財政も、私はやはりある程度、ある程度というか相当歳出を精査して考えてみなければならぬ点も出てくると思うのです。  そういう段階を迎えておって、ではこのままでいいかと言えば、私は、このままじゃ、とてものことにいきそうにもない。国の財政の方もあるいは地方財政の方も、何とか根本的に考えてみなければならぬだろう。それは思い切ってドラスチックなことをやれば一番簡単にいくでしょうが、いまの日本の現状で、そう思い切ったドラスチックなことはできない。そしてまた、いろいろな要件が絡んでいると言えば絡んでいるので、そういう条件の中でやらなければならないということでありますだけに、私どもも、地方財政のこれからのあり方を一体どうしていったらいいのか、仕事も、先ほど来のお話もいろいろございますが、見直していかなければならない、こう思っておる。そういう中で、これからの問題点としていまお話しの点は私どもも非常に重要に考えて対処していきたいと思っております。  全体の中でとらえるのか、あるいはこれだけは何としてもというがんばり方をするのかと言えば、やはり今日は、全体のことも考えながらやっていかなければならない段階ではなかろうか。それほど地方財政も厳しい、また国の財政も大変な段階を迎えておる、こう私ども思っておるのでありまして、そういう私どもの考え方にのっとって、今後自治省としては当然に地方財政を守っていかなければならないという立場を堅持して、今後ひとつやっていきたいと思っております。
  182. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま大臣は、全体の中で考えなければいかぬというふうなことを盛んに強調されておりますけれども自治省で編さんした自治六法というあれを開いて、交付税のところの六条の三の二項のところを開いてごらんなさい。交付税の総額を確保するということが一番大事で、これが確保できなくなれば交付税法から地方財政は破滅すると書いてあるのですよ。全体の中どころか、これが一番の中心なんです。問題の核ですよ。総額が確保されないことで、交付税法の意味財政計画意味も何もないのです。これを確保することが大事だと自治省の人自体が書いてある。総体の中身と考えるか一部と考えるか、これは一部じゃないですよ。これを確保できるかできないかということが核心なんです。  だから、わざわざ六条の三の二項を設けて、必ず総額を確保するためには制度を改革するか交付税率を上げるか、どっちかにしろってはっきり明言してある。まことに具体的に明言してある。それを、地方財政を守らなければならない最高責任者である自治大臣が、わけのわからないことを言っていては困るじゃないですか、あなた。冗談じゃないですよ。毅然とした態度でもって大蔵大臣と刺し違えるぐらいでやらないで、どうしてこんなことができますか。行けば負けてくるじゃないですか。われわれはこんなの審議できないですよ。  でなかったら、これが制度の改革だとか、六条の三の二項を改革して持ってきなさい。審議に出しなさいよ。六条の三の二項を変えて、法律を変えて持ってきなさい。あの法律をそのままにしておいてこれを審議しろと言ったって、審議なんかできませんよ。でなければあの法律を変えなさい、六条の三の二項を。足りなくなったら足りなくなってもよろしいという——多分通らないだろうけれどもね。  そうでなければ、片一方にあれだけ厳とした、明瞭な、びんとした法律がありながら、片一方でそれを破るようなことを、守らなければいけない自治大臣がそんな全体の中で仕方がないなんてあいまいな答弁をしてどうするのですか、一体。いま決めたのが来年ぶち破られるようなことを、どうしてわれわれは審議できますか。人をばかにするなと言いたいですよ。苦しいのは地方も国も同じですよ。苦しさの中で決めたことをきちっと歯を食いしばって守っていく、その信頼感がなくて、どうしてここで審議できますか、あなた。冗談じゃないですよ。審議なんかしませんよ。ばかばかしい、こんな審議。大蔵省へ行って大蔵大臣ともう一遍協議して、ことしのやつをもとへ戻せ、最小限度来年は絶対にやりますといって証文をもらってこなければ、審議に入れませんよ。審議したって何にもならぬ。これを審議したって何にもなりません。
  183. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま私が御答弁したことを繰り返すようなことでございますが、いまの問題は、地方財政としてはことしの予算の中ではとにかく最大の問題であったわけなんで、私どももこの問題については大蔵省と折衝を事務的にもやりましたし、大臣折衝もやったわけでございます。  ことしはそういう国の財政状況もあるから、ひとつ半分だけ地方財政でも負担をしてもらう。しかしまたこれは、私はもう一つ言えば、今度は交付税特会の中にまたそれが入っていきますから、まずそれを今度は半分だけ国が見る、こういう仕組みにもなっていると思うのです。  交付税というのは、何といいましても、一つは調整的な機能を持っており、同時に地方公共団体の考え方で自由にいろいろな事業が行えるという経費でありますから、地方自治の精神にも非常に沿っておるというものであります。この辺は補助金とは、あるいは負担金とは違うわけでありますから、この枠を広げていくというのは私どもの願いでもあるわけなんです。したがいまして、今後ともそういういまのお話の線に沿って私どもも最大の努力をしていこう、こう考えておるわけであります。
  184. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 いま大臣が、私が触れようと思ったことにちょっと触れましたがね。今度の半分負担した三千四百億、その分はもう一遍交付税借入金の中に含めて借り入れる。そして、それがまた半分地方負担しろというんだ。それなら半分負担じゃなくて四分の一負担になってしまうじゃないか。大体、切ったやつでもう一遍借り入れて、それをまた返していくなんというのは、何というのか、無軌道、まさに無軌道ですよ。  ただ切るだけじゃなくて、今度はそれを、総額が減れば困るからまた借入金の中に三千四百億入れて、そしてそれを引っくるめたものの四分の一返していくなんという、こんなでたらめな無軌道な方法ってありますか。無軌道というものですよ。そのときの行き当たりばったりなんです。何の計画性もない。金がないのはわかりますよ。なかったらないなりに計画をきちっと立てて、みんなが納得するような方法でやらなくて、どうして国家財政地方財政再建できるんですか。ばかばかしいにもほどがある。  どうしてこんなばかばかしいものをまじめになって審議できますか。審議の対象になりませんよ、こんな交付税法なんというのは。何を考えて一体大蔵省と折衝しているんですか。冗談じゃないですよ。とにかく大蔵省へ行って大蔵大臣と折衝して、これをもとへ戻すように、最小限度来年は絶対にこういうあれはやりません、もとへ返しますという証文をとってきなさい。そうすれば審議しますから。
  185. 山本幸雄

    山本国務大臣 その問題は、先ほどから申し上げるように、ことしの予算の折衝の最大の眼目であったわけなんです。そこで、大蔵大臣と私の間で覚書も交換して、五十八年度ということでやっているわけなんです。しかし、この問題はことしはそういうことにしてくれ、こういう話なので、国家財政の非常に厳しいときでもあるし、地方財政もそれは苦しい、厳しい、しかし、その中で車の両輪という考え方で、そういうことでひとつことしは切り抜けていきましょう、こういう話にしたわけでありまして、来年度についてはどういう国家財政状況になるかあるいは地方財政状況になるか、あるいは経済はどういう状況になるかということも踏まえてまたひとつ話し合いをやりましょう、しかし、私どもはことしはそういうことにした。  私どもの立場としては、ことしはそういうことにしたけれども、来年は地方財政ということを守っていくという立場で、もちろん主張は強くしたい、するというつもりでやっておるわけなんです。
  186. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 そんな約束なんか、前に何遍もしていますよ。私、ここに議事録を持っている。何遍もしている。大蔵大臣と自治大臣と何遍も、いまあなたが言ったような約束をやっているんですよ。これはよくないです、来年は何とかしますって、みんなその都度全部破っておる。あなたがそんな人のいいことで、余り人がよく見えない大蔵大臣と折衝して説得できるはずがないじゃないですか。あなたが言ったようなことをこの中に何遍も書いてあるんです。覚書があるから今度はよくします、今度はよくします、大蔵大臣もみんな言っているんですよ。大蔵省なんか信用なるものですか。その都度だまかされて、その都度悪くなってきている。  こんな悠長なことを言えば、さっき言ったとおり、ことしは利息の半分だけれども、来年は七千億みんな持ちなさい、来年はことしのやつも入れば八千億くらいになるだろう、また持たされますよ。そして今度は元金を持てと、地方の借金だから持てと言うのは理論上当然ですよ、それを認めれば。そういう理論が二つあるんだから、現に地方の借金は地方が持つべきじゃないかと。それをいまも、堤防にアリの一穴ができちゃった。アリの一穴で堤防はみんな崩れますよ、さっきから言っているとおりこれを認めるなら。  六条の三の二項改定、法の改正も税率のアップもしなくてもいい、そういうふうな法律を変えて持ってきなさいよ。そして審議して、それを可決してからにしましょう。片っ方に厳としておいて、それをぶち破るような行動をするというのは、法治国家として許されないでしょう。何ぼ全体の中で地方財政を考えるとかなんとかいったって、法律が厳としてあるんです。法律を破ってもいいんですか。しかも、来年になればもっと悪くなる。目に見えているんですよ。少なくとも来年は絶対にもとに戻しますと、それぐらいの証文がなければ信用ならないですよ、あなたの言うことは。やってきてください。
  187. 山本幸雄

    山本国務大臣 少なくとも自治省を代表して、それぞれの大臣で覚書を交換してやったことでございますから、これはひとつ政府を信用していただきたい。私どもも、先ほど来申し上げますように、自治省の立場、地方財政を守る立場、あるいは地方公共団体財政運営がうまくいくようにという、そういう立場は堅持をして、ひとつ強く主張をする、こういうことを重ねて申し上げる、こういうことであります。
  188. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 これは信頼感の問題になりますが、信用できないのですよ。いままで余りにだまされ続けて悪くなってきているから、信用できないのです。だから、本当に来年もとに戻すつもりなら、来年はもとに戻しますという証文を一札とってきなさいよ。そうでなければ、審議したって、ことしやったのをまた来年ひっくり返されるでしょう。何にもならないですよ。そういうふうにでたらめなことを積み重ねていけば、そういうふうに信頼感がなくなってしまう。信頼があって初めて、じゃやろうかということになる。信頼がなければ証文を持ってくるしか仕方がないですよ。あなたは責任を持って——まあ来年になれば自治大臣をやめるかもしれないから責任ないかもしれないけれども、責任を持って来年はもとに返すと言えますか。  さっきから答弁を聞いていると、来年はまた協議してやりますと、あしたはあしたの風が吹くと言っているのですよ。そんな答弁しているのに、そういうふうにやりますからと言ったって、それは信用できないですよ。やはり地方財政にとっては、これが破れたら致命的な問題になりますよ。これはそんななまぬるいものじゃないのですよ。ここのところは地方財政の最も根本だ。それに穴があくのですよ。これを認めれば一遍に堤防は崩壊してしまう。このままの形でもって絶対に私は認めることはできない、幾らあなたが言っても。どうかもう一遍がんばってください。
  189. 山本幸雄

    山本国務大臣 少なくも自治省自治省として一省をなしており、私はその代表として大蔵大臣と折衝をし、またそれだけの大蔵省もお互いの役所を尊重しながらやるわけでございますから、その辺はひとつ御信頼をいただきたいということであります。
  190. 佐藤敬治

    ○佐藤(敬)委員 信頼はできないけれども、時間が来たからやめます。
  191. 田村良平

    田村委員長 次回は、明十三日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会