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1983-03-03 第98回国会 衆議院 地方行政委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月三日(木曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 田村 良平君    理事 工藤  巖君 理事 中山 利生君    理事 宮下 創平君 理事 安田 貴六君    理事 五十嵐広三君 理事 佐藤 敬治君    理事 石田幸四郎君 理事 青山  丘君       池田  淳君    臼井日出男君       片岡 清一君    北川 石松君       塩谷 一夫君    染谷  誠君       竹中 修一君    谷  洋一君       地崎宇三郎君    小川 省吾君       細谷 治嘉君    山口 鶴男君       草野  威君    部谷 孝之君       岩佐 恵美君    三谷 秀治君       田島  衛君  出席国務大臣         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君  出席政府委員         警察庁長官官房         長       太田 壽郎君         警察庁刑事局審         議官      高田 朗雄君         警察庁刑事局保         安部長     大堀太千男君         自治大臣官房審         議官      田中  暁君         自治大臣官房審         議官      土田 栄作君         自治省行政局長 大林 勝臣君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君         自治省税務局長 関根 則之君         消防庁長官   砂子田 隆君  委員外出席者         人事院事務総局         職員局審議官  網谷 重男君         臨時行政調査会         事務局主任調査         員       陶山  晧君         青少年対策本部         参事官     阿南 一成君         宮内庁書陵部長 福留  守君         文部省初等中等         教育局高等学校         教育課長    中島 章夫君         農林水産省農蚕         園芸局普及部普         及教育課長   田口 俊郎君         地方行政委員会         調査室長    島村 幸雄君     ───────────── 委員異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     金子 一平君   北川 石松君     村山 達雄君   竹中 修一君     根本龍太郎君 同日  辞任         補欠選任   金子 一平君     臼井日出男君   根本龍太郎君     竹中 修一君   村山 達雄君     北川 石松君 三月二日  辞任         補欠選任   臼井日出男君     原 健三郎君   北川 石松君     毛利 松平君 同日  辞任         補欠選任   原 健三郎君     臼井日出男君   毛利 松平君     北川 石松君     ───────────── 二月二十二日  地方税法等の一部を改正する法律案内閣提出第一八号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出第二三号) 同月十六日  高校増設のため地方税財政制度改善に関する請願上田哲紹介)(第五九一号)  同(長谷川正三紹介)(第五九二号)  同(山花貞夫紹介)(第五九三号)  同(金子みつ紹介)(第六四九号)  同(高沢寅男紹介)(第六五〇号)  同(山本政弘紹介)(第六五一号)  地方自治体財政確立に関する請願五十嵐広三紹介)(第六五二号) 同月十八日  個人事業税に係るみなし法人課税制度適用に関する請願井出一太郎紹介)(第七〇九号)  同(小川平二紹介)(第七一〇号)  同(小沢貞孝紹介)(第七一一号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七一二号)  同(串原義直紹介)(第七一三号)  同(倉石忠雄紹介)(第七一四号)  同(小坂善太郎紹介)(第七一五号)  同(清水勇紹介)(第七一六号)  同(下平正一紹介)(第七一七号)  同(中村茂紹介)(第七一八号)  同(羽田孜紹介)(第七一九号)  同(宮下創平紹介)(第七二〇号)  個人事業税にみなし法人課税制度適用に関する請願大村襄治紹介)(第八二二号) 同月二十八日  個人事業税にみなし法人課税制度適用に関する請願河野洋平紹介)(第一〇四二号)  地方自治体財政確立に関する請願細谷治嘉紹介)(第一一〇七号)  留置施設法案の廃案に関する請願岩佐恵美紹介)(第一一五六号)  同(三谷秀治紹介)(第一一五七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 二月十七日  町村財政確立強化に関する陳情書(第一二号)  地方事務官制度の廃止に関する陳情書(第一三号)  個人事業税にみなし法人課税制度適用に関する陳情書外三件(第一四号)  地方財政確立に関する陳情書外四件(第一五号)  モーテル類似施設の規制に関する陳情書(第一六号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ────◇─────
  2. 田村良平

    田村委員長 これより会議を開きます。  地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小川省吾君。
  3. 小川省吾

    小川(省)委員 所信表明に関連をして、若干の点についてお伺いをいたしたいと思います。  まず、大臣お尋ねをいたしますが、地方財政現状についてどのような認識をお持ちでございますか。
  4. 山本幸雄

    山本国務大臣 これは申すまでもなく、まことに厳しい情勢にあるわけでございます。地方財政現状は、国家財政も厳しいけれども、それに劣らず厳しい情勢にあるわけでございます。ようやく公債、地方債総額は、地方債あるいは交付税特会あるいは公営企業を含めまして五十八兆円という巨額に達しております。これらの償還をめぐっての大きな問題もございます。全体といたしましては、地方財政の将来というものに私ども非常な明るさというものが感じられる情勢ではないということで、厳しくひとつ対処をしていかなければならない、こういうように考えております。
  5. 小川省吾

    小川(省)委員 あるべき地方財政の将来像、未来像というか、いつになったら昭和三十年代や四十年代のような状況に戻ることができるのかという点でございますけれども、あと何年ぐらいたったら三二%でやっていけるような状態になれるのか。三二%の交付税そのものがいわゆる現状に合っていないのではないかというふうにも考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
  6. 山本幸雄

    山本国務大臣 何年になったら明るさが取り戻せるかというようなこと、これは御存じのように、わが国の経済情勢も余り明るい将来への発展といった見通しというものもなかなか立ちにくい情勢にあります。つまり、高度成長時代を経過して、いわば安定した経済情勢になってきております。また、世界の経済情勢もまことに不透明な状態が続いておりまして、それらの情勢の中で、国民行政に対する御要望もだんだんと多様化もしてまいりますし、地方情勢は、社会的、経済的にも変化をする中で、地方自治というものがどういうあり方でなければならないかということなど、将来を模索していかなければならぬわけでございますが、なかなか先への見通しを明確に立てるというのにはむずかしい情勢にあると考えるのであります。  私どもも、できるだけ将来への展望というものを模索しながら、地方行財政の将来というものに何らかの見通しをつけていきたい、こうは思っておりまするものの、なかなか困難な問題である、こう思っております。
  7. 小川省吾

    小川(省)委員 そのような地方財政の実態で、一方で地方債がますます増加をしてまいるわけでございますけれども、このような状態地方財政がどうなっていくのか、おっしゃるように全くわからない状態だというふうに思っています。  そこで伺いたいわけですが、地方債消化がうまくいくのかどうか、また、この償還でございますけれども償還が順調に行われると思えないというふうにも思うわけですが、順調にいくとお考えでございますか。
  8. 石原信雄

    石原政府委員 五十八年度の地方財政対策におきましては、一般財源不足を補う意味で、建設地方債を一兆三千二百四十六億円増額発行いたしております。そしてまた、地方債計画全体におきましても、政府資金不足から民間資金への依存度が従来に比して高まっているわけであります。ただ、現在の地方債消化状況あるいは引き受け側資金状況、こういったものを検討いたしますと、消化が困難になる、不可能になる、こういう事態ではない、このように考えております。もちろん、これからの金融情勢によってはいろいろ心配がないわけではありませんけれども、この点については大蔵省当局とも十分連携をとりながら、地方債計画上予定された地方債については完全に消化できるように努力してまいりたい、このように考えております。
  9. 小川省吾

    小川(省)委員 とにかく五十八年度の地方財政対策がやられたわけでございますけれども、現在のこの時点で五十八年度の地方財政対策についてどのように反省をしておられるのか、総括をしておられるのか、反省すべき点があったらお伺いをいたしたいと思います。
  10. 石原信雄

    石原政府委員 御案内のように、五十八年度の地方財政につきましては、現行のたてまえ、現行の仕組みで推定いたしますと、二兆九千九百億円の財源不足が見込まれたわけであります。この財源不足につきましては、理想論からいうならば、地方税源の充実あるいは地方交付税増額など、地方一般財源の増強によって補てんされることが望ましい姿である、このように思います。また、できるだけそういう形になるように地方財政対策折衝に当たりましては努力をいたしたわけでありますが、御案内のように、国の財政も危機的な状況を深めておりまして、私どもの希望するような形での結論が得られなかったわけであります。そして、その結果といたしまして、財源不足額のうち一兆六千六百億円余りのものは地方交付税特例増額で賄う、そして残余は建設地方債増額発行で賄う、こういう形に落ちついた次第であります。  なお、この地方交付税特例増額に関連いたしまして、その大部分は交付税特別会計借り入れによって賄わざるを得ない事態になったわけであります。  さらに、この交付税会計借入金につきまして、従来からその償還元金の二分の一は国庫が負担していた、さらにこの借入金利子につきましては、従来すべて国の一般会計負担しておったわけでありますけれども、五十八年度の地財折衝におきまして、この元金償還については従来どおりの方式を維持できたわけでありますが、利子につきまして、いろいろ議論があったわけでありますけれども、最終的にその二分の一を交付税会計、実質的に地方負担するということにならざるを得なくなった、この点は私どもも大変残念なことである、やむを得なかったこととはいえ、大変残念だったと考えております。  しかし、その背景には、国の財政が文字どおり危機的な状況に陥っている、こういう事情もありましてそのような結論に落ちついたわけであります。この点については、私どもも率直に申しまして残念であった、このように認識いたしております。
  11. 小川省吾

    小川(省)委員 次にお伺いをするようなことを御答弁いただいたわけですが、借入金利子の二分の一折半の問題なんですけれども大蔵省の方では前々から全額地方負担だというふうなことを主張した、あるいは言っていたようでありますが、二分の一折半分については国の負担ということで昭和五十七年度までは来たわけでございますが、今度は地方への負担を押しつけられたわけであります。大蔵省に押し切られた原因についてお伺いをしたかったわけでありますが、いま財政局長の方から御答弁がございましたけれども、この辺の経緯を特にお伺いをしたかったわけであります。  そこで、二分の一の地方負担を押しつけられて、反対給付というか、何かこれを押しつけられたことのかわりに地方財政として具体的に受け取るようなものがあったのかどうか、伺いたいと思います。
  12. 石原信雄

    石原政府委員 私どもは、この交付税会計借入金利子負担あり方につきましては、以前からこの交付税が現在の地方財政状況に対して不足する、こういう事態から交付税会計借り入れという事態が起こっているわけでありますから、このことは地方行財政の計画的な運営を保障する国の責務、これを果たすために交付税会計借り入れが行われているというふうに認識しております。したがいまして、その見地に立つならば、利子負担は当然国の方が行ってしかるべきだという考え方を持っているわけであります。五十八年度の地方財政対策折衝に当たりましても、そういった考え方議論に臨んだわけであります。  一方、大蔵省当局といたしましては、国の財政が非常に厳しい状況になってきている。五十八年度予算にもあらわれておりますように、大変な状況になっております。こういった事情もありまして、そもそも交付税会計借り入れというのは地方財源を賄うために行うわけですから、本来の姿からするならばその元金利子地方負担すべきではないか、こういう考え方がありまして、五十八年度の折衝においてもその点を強く主張しておられました。  この点については私どもと全く意見を異にしたわけでありますが、現実の国の財源難のもとで、先ほど申しましたように、借入金元本に対する国と地方負担割合に即応して利子についても国、地方それぞれ持つというようにこれを変えたわけでありますが、その際、そのような犠牲をのむ過程で何か見返りをとったのか、こういうお尋ねであります。  その利子負担について、五十八年度は三千四百四十六億円になるわけでありますが、この点について、地方がネット負担する、具体的には財源対策を講じた中からこの分を負担していくのか、その三千四百四十六億円も含めて地方財政対策を講ずる、地方に対する総量としての地方財源の確保の対象にするのかどうか、この点、実は折衝最終段階で大いにもめたわけであります。  この点につきましては、最終的に二兆九千九百億円の財源不足額に三千四百四十六億円の利子負担分を加えて三兆三千三百四十六億円の財源不足とする、そしてこの財源不足を前提にして全体としての地方財政対策を組み立てていく。そして、その償還費については、その償還額の二分の一を将来国が負担していく。言うなれば、この利子負担額も含めて地方財政対策を講じ、現実地方財政運営支障ながらしめるようにする、こういうような形で最終的に決着を見たわけであります。  したがいまして、この利子負担するという、その譲歩といいましょうか、こういった結論が直ちに地方財政運営支障がないように、この地財対策のいわば対象額にこれを加える、こういう形で決着いたした次第でございます。その点が利子負担に対する私どもの一つの対応策、このように御理解をいただければありがたいと思います。
  13. 小川省吾

    小川(省)委員 ここのところで農林水産省関係をする問題を伺いたいと思ったわけでありますが、まだお見えになっていないので、後回しにいたしたいと思います。  そこで、自治大臣要望要請だけしておきたいというふうに思っています。この点は御答弁は要りません。  各都道府県、市町村が、年度末を迎えて、五十七年度の賃金の改定について大変焦りを感じておるようであります。いまさら四月遡及の完全実施などというふうなことはないというふうに思っていますが、議会などでも、五百団体余にわたる意見書等も議決をいたしておるようでありますから、出てくるのは一月実施とか三月実施というふうなことなんじゃないかというふうに思っております。  本来、地方自治は主体性のある自治によって進められておるものでありますから、全く強制にわたる指導や是正をするというふうな指導地方の自主的な措置について妨害をするような停止命令を出すような、そういう指導はぜひ慎んでいただきたい、こういう点を強く要請をいたしておきたいと思います。お答えは要りません。  続いて、警察庁伺いたいと思いますが、細かい点については、集中審議を設けていただけるようでありますから、その際に伺うとして、概略について伺いたいというふうに思っています。  大阪賭博ゲーム機汚職兵庫県警にも飛び火をしたようでございます。どうも風俗営業取り締まりを長いこと同一人がやっておることは、警察官も人の子でありますから、問題があるようでございます。  一般論としてお尋ねをいたしますが、警察官配置といいますか、いわゆる警察関係職員人事異動基本方針はどのようになっておるのでございますか。また、こういうような事例はもう二度と再び出てくることはないというふうに明言できますか、どうですか。
  14. 太田壽郎

    太田政府委員 警察官配置につきましては、適材適所ということを基本にいたしまして配置いたしております。ただ、いまお話しのように、風俗営業等非常にいろいろ問題を醸し出しやすいようなそういう部署につきましては、仕事が非常にベテランであるという面よりも、むしろそういう問題が起きた場合の悪影響ということを考えまして、そう長期間同一のポストに置かないということを基本的な方針として人事配置というものを行っておるところでございます。  それから、今回の不祥事案を受けまして、警察庁といたしましてもこれを全国警察の問題として厳しく受けとめ、去る一月二十四日に警察庁次長名をもって各種の対策というものを指示しているところでございますが、その一環といたしまして、人事管理の徹底ということを特に基本にいたしているところでございます。それから、いまお話がございましたような防犯、保安部門等配置等につきましても十分考えて行う。原則として長期間継続して当該係に勤務するようなことのないように各警察本部長人事配置を行うよう指示もいたしているところでございます。したがいまして、今後はこういう問題が起こらないように、各本部ともそういう面についても十分に配慮していくというふうに考えておるところでございます。
  15. 小川省吾

    小川(省)委員 大阪に起こりました一連の賭博ゲーム機事件で、私の尊敬していた杉原さんまで死に追い込んだわけでございます。杉原さんの冥福を祈りながら、若干以下お尋ねをいたしたいと思うのです。  私がこの質問をするに当たって、政府委員室を通じて、大阪を初め幾つかの県の警察官の再就職状況調査を依頼をいたしました。残念ながら回答は得られませんでしたが、私は、各都道府県警務部では再就職状況などは把握しているのだというふうに思っています。  私がそのことを知りたかったのは、大阪土地柄といいますか、大阪特殊性があるのではないかというふうに判断をしたわけでありますが、恐らく警察が主として取り締まり対象にしている風俗営業関係等への再就職が特に多いのではないかというふうに考えたわけでございます。たしか六百余名に及ぶ処分で一段落をしたようでありますが、このような土壌が続いている限りは、根絶することは困難なのではないかというふうに思っています。退職後の再就職について当然管理をするわけにはいかないと思いますけれども警察官風俗営業関係業界への再就職状況がどうなっておるのか。また、大阪地区がその点顕著だということはないのですか、どうですか、その点を伺いたいと思います。
  16. 太田壽郎

    太田政府委員 退職警察官の再就職の問題につきましては、ただいまお話しのように、当人の退職後におきます生活上の問題にとどまらずに、在職中安んじて警察職務に精励することにもつながるという非常に重要な問題でございますので、各都道府県警察におきましては、退職職員のうち再就職を希望する者につきましては、警務課とか厚生課あるいは各所属が窓口になりましてできるだけ指導助言を行ってきているところでございます。したがいまして、再就職あっせんをそういう官側窓口がした場合はもちろんでございますが、本人がみずから開拓してきた場合でも、本人からの申し出のありましたものにつきましては、その就職先等につきまして把握ができるところでございますけれども、それ以外の場合につきましてはなかなか詳細な把握というものはむずかしいのが実情でございます。特に第二、第三の就職といいますか、そういう形になりますと、詳細については把握しにくいというのが実情でございます。  今回、先生の方からお話もございまして、大阪地区等につきまして改めて調査大阪府警察本部を通じて行ったところでございますが、御質問大阪府におきます元警察官の再就職状況については、過去二年間の退職者のうち風俗営業へ直接就職をいたしました者は、遊技業に一名いるという報告を受けているところでございます。  そのほか、先生からお話がございました広島あるいは熊本等についてもそれぞれ調査いたしましたところ、広島では過去五年間、風俗営業あっせん就職した者はない。それから熊本につきましても、あっせん就職風俗営業就職している者はないという報告を受けているところでございます。
  17. 小川省吾

    小川(省)委員 あっせん就職ということですからそれはそれとして、風俗営業関係に昔の同僚や上司がいるという場合に、こういう場合に取り締まりの情報なども伝わらざるを得ないということになるんだろうというふうに思っていますが、こういう関係についての指導はどうなされておりますか。
  18. 太田壽郎

    太田政府委員 いま申し上げましたように、再就職をいたしました職員取り締まり関係業者仕事を進めていく上について警察取り締まりの公正さを疑われるようなそういうことのないようにということで、常日ごろから十分現役としても、先輩にそういうものがあった場合には注意をしているところでございます。
  19. 小川省吾

    小川(省)委員 警友会という組織がありますね。これは一〇〇%組織をされておるのかどうかということと、警友会等を通じてやんわりとした指導等はできないのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  20. 太田壽郎

    太田政府委員 警友会等につきましては、いまお話しのように純粋に退職をされました警察職員の方々がつくっている親睦団体でございまして、いまお話しのような問題についていろいろ御援助いただくというのには、なかなかなじまないのではないかというふうに考えております。
  21. 小川省吾

    小川(省)委員 私、ちょっと疑問に思っているんですが、警察官のいわゆる上下といいますか階級上下階級関係というのは、人間性基本にして上下関係というのができているのかどうか、大変疑わしいわけでありますが、警察官階級関係というものは人間性基本にしているものだというふうに思いますが、そういう理解でよろしいですか。
  22. 太田壽郎

    太田政府委員 警察組織階級によって上下一体のものということになっておりますけれども階級だけですべて割り切るということでは、真に効率的な国民の期待に沿い得るような警察運営というのは行われない。やはりそこの基本には、いまお話しのような人間性、豊かな人間性というものがお互いにあって、風通しのいい職場というものが基本にあって、その上で初めて階級制度も生きてくるということであろうと思います。
  23. 小川省吾

    小川(省)委員 いま概略についてお伺いをいたしたわけでありますが、細かい問題については集中審議に譲りたいと思います。  さて、農林水産省がおいでになったようですから、農林水産省関係についてお伺いをしたいと思うのですが、まず最初に自治省伺いたいと思うのですが、今回の補助金カット人件費補助一般財源化をされたものがあるようでありますが、これはどういうことでございますか。
  24. 石原信雄

    石原政府委員 私どもはかねてから、補助金制度のあり方といたしましてできるだけ地方一般財源にこれを振りかえていくことが望ましい、こういう考え方を持っております。特にいわゆる人件費補助は、地方公務員の設置に要する経費の全部または一部を国が補助するという制度でありまして、こういった制度はどうしても地方における人事管理の一元化という見地から望ましくない現象が起こりやすい、こういうことで、人件費補助につきましてはなるべくこれを一般財源化すべきであるという考え方を持っております。  五十八年度の予算編成に当たりまして、補助金の整理合理化の一環として、一部の人件費補助につきましてこれを一般財源化いたしております。このような措置は地方財政の自主性強化という見地から望ましい方向ではないか、こういうふうに私どもも認識しております。
  25. 小川省吾

    小川(省)委員 お答えのように、人件費や運営費あるいは事業費補助等を、補助率と対象人員との積算によらず、一本化をして定額の交付金にするという改正が、農業改良普及員等改良普及職員及び中小企業診断指導員等に係る補助金について行われたわけですね。  そこで、農林水産省伺いたいと思うのですが、一般財源化といっても、それによって交付税総額がふえたわけではないし、税が地方へ移譲されたわけではありませんから、事業内容の切り下げが行われる危険性が今後出てくるのではないかというふうに心配をいたしておるわけでありますが、そういう心配がございませんか。
  26. 田口俊郎

    ○田口説明員 先生からお話のございましたように、今回の定額交付金方式移行によりまして、都道府県の姿勢によっては普及事業の後退につながるのではないかというふうな心配をする向きもございますが、農林水産省としては、先生が御指摘のようなそういった問題が生じないように、この普及事業の交付金の額の確保に努めてまいりたいというふうに考えております。  また、普及事業を運営する場合に、国が事業の運営の指針をつくりまして、それを基本にしまして、都道府県は国と協議をしながら地域の実情をいろいろ加味して事業の実施方針をつくるということになっておりまして、それによりまして全国的な普及指導の水準を確保していくということにいたしておるわけでございます。  そういった措置を通じまして、普及事業の後退につながるようなことがないように、私どもとしては十分に指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  27. 小川省吾

    小川(省)委員 いま若干答えがあったわけでありますが、人件費補助の廃止によって、自治体の姿勢によっては住民サービスの後退のおそれがなきにしもあらずというふうに考えるわけでありますが、そういう意味で、いまもお答えがありましたように、将来に向けて農林省としては交付金の切り下げ等はしないようにする、また十分に都道府県と協議をして改良普及事業の指導について万全を期していくというふうに明言をしていただけますか。
  28. 田口俊郎

    ○田口説明員 先生からお話のありましたような点を踏まえまして、普及事業の今日的な重要性を私どもとしては十分認識しておりますので、御趣旨の点を踏まえてこれから万全を期するように努めてまいりたいというふうに思います。
  29. 小川省吾

    小川(省)委員 普及事業の後退がないように的確な指導をぜひお願いいたしておきたいというふうに思います。ありがとうございました。  次に、消防について若干お尋ねをいたしたいと思うわけであります。  この間、蔵王なりあるいは万座のホテル火災が発生をいたしました。万座の方はけが人だけで済んだようでありますが、蔵王の火災では死者が出たようでございます。この概要について御説明を受けたいと思うのです。
  30. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 過日、二月二十一日に山形県の蔵王温泉が火災に遭いまして、従来のいきさつから考えまして大変残念なことでございますし、遺憾なことだと思っております。死者の方々には心から御冥福をお祈りしたいと存じます。  この火災におきます概要は、おおむね次のとおりであります。  出火に関します覚知の日時でありますが、これは二月二十一日の午前三時五十二分であります。鎮火の日時は、同日の午前六時四十分でございます。出火の場所は、山形市蔵王温泉二番地にあります蔵王観光ホテルであります。出火原因は、現在調査中でございます。  人的損害は、死者十一名、内訳は男四名、女七名でございます。負傷者は二名でございまして、男女それぞれ一名でございます。  物的損害は、出火のホテル、いわゆる蔵王観光ホテルの本館、木造モルタル四階建て千五百九十六平米全焼であります。別館、同じく木造モルタル三階建て六百六十八平米全焼であります。合計二千二百六十四平米が全焼したわけであります。  出火の当時の在館者は、定員が百九十五人と言われておりますが、お客さんは九十九人でございます。  類焼のホテルがございまして、柏屋旅館、これは本館、木造一部鉄骨づくりですが、地下一階、地上二階三百七十五平米全焼であります。第一別館、木造二階でございますが、四百四十平米、これも全焼でございます。第二別館、木造一部鉄骨づくりでありますが、これは地下一階、地上二階四百三十平米、これも全焼でございます。別棟に食堂がございまして、木造二階で百四十七平米でございますが、これも全焼でございます。合計で千四百二平米全焼ということでございます。出火当時の在館者は八十三名でございます。  もう一つ類焼がございまして、これは海老屋旅館でございますが、木造モルタル三階建て九百十六平米のうち、壁体の二十平米が焼損をいたしております。  消防活動の状況は、出動車両三十四台、出動人員は二百五十一名でございまして、消防職員が七十七人、消防団員が百七十四名でございます。  「適」マークの交付状況は、蔵王観光ホテルが昭和五十七年十二月一日に交付をいたしております。海老屋旅館は昭和五十七年十二月二十四日に交付をいたしてございます。柏屋旅館は対象外でございます。  それから、万座ホテルの火災の概要を申し上げます。  これの消防が覚知いたしました日時は、昭和五十八年二月二十二日一時八分でございます。鎮火の日時は、昭和五十八年二月二十二日五時五十分でございます。出火場所は、群馬県吾妻郡嬬恋村大字干俣二四〇一にあります万座温泉ホテルでございます。出火原因につきましては、これも現在調査中でございます。  損害につきましては、人的損害は、死者はございませんが、負傷者三名、男でございます。  物的損害は、この建物にはA館、B館等がございますが、そのうちのB館の木造モルタル二階建て二千八百二十七平米のうち、千三百平米が焼失をいたしております。  出火当時の在館者は、全館には四百五十四名でございましたが、この焼けましたB館には百三十三名おりました。  消防活動につきましては、出動車両十五台、出動人員は百七十三名でございまして、消防職員が二十三名、消防団員が百五十名でございます。  この建物につきましては、現在、「適」マークは、交付対象物でございますが、交付をいたしてございません。  以上でございます。
  31. 小川省吾

    小川(省)委員 ありがとうございました。  そこで、「適」マークの交付状況がどうなっているかという問題なんでありますが、交付率を上げるために安易に交付されているというような状況はないのですか。
  32. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 「適」マークの交付をいたしておりますが、これは御案内のとおり、収容人員が三十名以上、三階建て以上の旅館、ホテルということになっておりまして、昭和五十七年の十二月末現在で表示の対象になっております旅館、ホテルが一万六千八百七十一でございますが、このうち立入検査を終了したのは一万六千八百四十三でございます。このうち「適」マークを交付されておりますのが一万二千二十五で、交付率は七一・三%ということになっております。  御案内のとおり、この防火基準適合表示制度というのは、過去の火災から考えまして、人命安全という観点から、どうやってチェックポイントをつくるかということに考え方が出ておるわけであります。そういう点からいたしまして、最低限度の項目を選んで実は調査をいたしてあるわけでございますが、全国の消防機関が、こういう人命安全という観点から考えますと、これをいたずらに、安易に調査をしているわけではないと私は思っておりますし、厳正なる審査の中で行われているものだというふうに私たちは理解いたしております。
  33. 小川省吾

    小川(省)委員 蔵王の観光ホテルの例なんですが、誤って鳴ることが多いので、夜間はスイッチを切っておいたというふうなことが新聞に出ております。最近の火災報知機の能力の向上もあるのだというふうに思うわけですが、簡単に光に反応するなんというようなことがあるのではないかと思うのですが、検定協会のチェックが甘くなっているというふうなことはありませんか。
  34. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 消防検定協会の検定の問題につきましては、御案内のとおり臨時行政調査会からも簡素合理化をするようにという御指摘がございました。しかし、現実に検定協会が行っておりますのは、現行消防法に基づきますところの厳正な規格の中で行われているわけでありまして、検定協会が非常に公正な検討を行っているものだと私は理解いたしておりますし、いまの日本におきます消防機器の内容を見てみましても、先進諸国に劣るものではないと私は思っております。そういう点から考えますと、この検定協会が行っておる検定は、御指摘のようなことではなくて、正しい評価をされているものだと私は思っております。
  35. 小川省吾

    小川(省)委員 検定協会の検定が正しく行われているということで安心をいたすわけであります。過っても、機器メーカーに消防職員が再就職をしていて、検定協会等のチェックが甘くなるというふうなことのないように、ぜひひとつ留意をしていただきたいと思います。  また、第一線の消防が機器の設置等を確認をして、「適」マークの交付でわが事終われりというようなことになっている点があるのではないか。「適」マークを交付してしまえば、第一線の消防が、われわれの任務が終わったのだというふうな点があるのではないかと心配をしておりますが、そういうようなことはありませんか。
  36. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 検定協会のお話でございますが、いまお話がございましたように、そういうことのないように、検定協会の方にも厳正に行うよう十分注意をいたしておきたいと存じます。  消防設備の問題につきましては、御案内のとおり、建築物の防火、安全という立場から考えまして、消防用の設備等の防災設備というものと、これらを維持管理する、あるいは出火の防止をする、あるいは情報連絡をとる、さらには避難誘導するというような防火管理の面というものが合わさりまして、初めて建物の防火の安全というのは期されるものだと私は思っております。  そういう点から考えますと、今後の表示基準におきましても、この点が各消防機関でも特に重視されていることだと思いますが、現在はそういう火災にかんがみまして一斉点検を行っている段階でもございますけれども、特に防火戸の閉鎖障害でありますとか、あるいは階段、廊下、出入り口の避難障害でありますとか、あるいは消防設備などのいまお話がございましたように電源の遮断などということが繰り返されることがないように、この点は特別に十分に点検をするように注意を促しているところでもあります。と同時に、これらについて特別によく点検をするようにという点検項目も現在つくっているわけでもございます。  いずれにいたしましても、この防火の管理の面がおろそかになりますと、設備が十分でありましても、人命の安全はなかなか期しがたいという面があると私は思っております。それは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、消防機関では、防火の管理者の講習会に加えまして、経営者につきましても講習会の開催などいたしまして、経営者に対する防災教育ということについても実は力を入れてまいったわけであります。  しかし、今回、このようなことがございましたので、先ほどお話しいたしましたように、緊急に防火管理面を中心といたしました一斉点検を行わしているところでありまして、やはりこの際、旅館、ホテルの関係者に対する教育もあわせて行うようにということで、現に指導調査中でございます。
  37. 小川省吾

    小川(省)委員 いま御説明がありましたので、安心をしたわけでありますが、私もむしろ経営者に対する防災教育の実施が大変に大切であるというふうに思っておるわけでございます。防災教育や避難訓練を実施したかどうかというような確認を第一線の消防機関にとらせて、ぜひひとつ防災教育を徹底をして、二度と再びこのような災害が起こらないように配慮していただきたいと思っております。  消防に対する質問を終わります。  そこで、きょうは特に宮内庁の書陵部長さんにおいでをいただいております。皇室の御陵の問題についてちょっとお伺いをいたしたいと思っております。  現在、陵墓、御陵と言ったら正確なんでございましょうけれども、御陵の数というのは幾つぐらいございますか。
  38. 福留守

    ○福留説明員 現在、宮内庁で管理しております陵墓でございますが、四百五十四カ所ございます。ただし、一カ所に幾つかの陵墓がかたまって存在している場合がございますので、陵墓数といたしましては、参考地も含めまして八百九十二という数字でございます。
  39. 小川省吾

    小川(省)委員 そこで、宮内庁ができて、書陵部等ができたわけでありますが、御陵ということで認定をした以降の陵墓が盗掘に遭ったというような事例はございませんか。
  40. 福留守

    ○福留説明員 戦前の大正五年でございますけれども、垂仁天皇皇后の日葉酢媛命の御陵が盗掘に遭ってございます。それから、戦後におきましては、昭和五十年に宮崎県にございます女狭穂塚陵墓参考地が盗掘に遭っております。
  41. 小川省吾

    小川(省)委員 本当にごくわずかな例なんですね。そうすると、仁徳陵を初めとして、大部分の御陵が盗掘に遭っていないということなんですね。  そこで、古代史の欠けた部門といいますか、欠けた部面、古代史をさらにはっきりさせるためにも、これら御陵の代表的な幾つかを発掘をして、古代史の欠けた部門を埋めるということで検討をしてみたらいかがかと思うのですが、そういう検討をしてみたことがございますか。
  42. 福留守

    ○福留説明員 陵墓は天皇及び皇族を葬るところでありまして、その静安を保ち、追慕、尊崇の対象として祭祀が行われておるところでございますので、学術研究のための発掘調査対象とすべきものではないと考えております。しかしながら、たとえば堤防の護岸工事でございますとか外構棚を設置するというような陵墓の営繕工事に際しましては、遺構、遺物の保存のため、必要によりトレンチを入れるなど、事前に発掘調査を行っている場合がございます。その際には学者、研究者に公開、見学を認めまして、すでに過去四回にわたって実施しております。  なお、その調査結果の概要につきましては、書陵部紀要に掲載しておりまして、また書陵部所蔵の出土品につきましては、展示会を開催するほか、地方博物館等から出品の要望にも応じております。
  43. 小川省吾

    小川(省)委員 私は、古代史の欠けた部面を埋めるためにも、発掘をして明らかにした方がよいのではないかというふうに思うものでございます。宮内庁が陵墓を皇室の祖先のお墓だからといってとらえるのではなくして、日本民族のすぐれた文化財としてとらえてもいいのではないかというふうに思っています。正倉院の御物よりもあるいは高松塚よりもすばらしいものが出てくるかもしれません。あるいは、日本と日本人の起源を明らかにするためにも大いにプラスになるのではないかというふうに思っております。  中学校の旅行で仁徳陵を拝見した。出土品のまが玉の奥深い神秘な色に魅せられたとか、仁徳陵の出土品を拝見して、その幽玄さに打たれて私は考古学をやろうと志したのですなどというふうな話が出てくれば、大変ロマンに満ちた話ではないかと思うわけでございます。むしろ、そのことによって皇室と国民の親しみが増してくるのではないかというふうに思っておりますが、宮内庁、いかがでございますか。
  44. 福留守

    ○福留説明員 ただいまいろいろお話がございましたけれども、特に発掘調査ということは古墳の破壊でございますので、先ほどもお答えいたしましたように、現在宮内庁といたしましては、陵墓の営繕工事に伴いまして必要な場合にあわせて発掘等の調査をするということでございまして、調査のための調査ということは、陵墓の性格上考えておらないわけでございます。
  45. 小川省吾

    小川(省)委員 そういうふうなお考えでございますから、特に要望をしておきたいと思います。  私は、古代史のベールを脱ぐためにも、ぜひひとつ幾つかの代表的な御陵の発掘を研究、検討をしてみていただきたいというふうに思うわけでございます。皇室の尊厳を傷つけるのではなくして、むしろ古代史の未解の部面を明らかにする、あるいは日本及び日本人の起源を明らかにする、むしろ皇室と国民との親しみを増すというふうに考えるからでございます。そういう意味では、宮内庁は大胆に発想の転換を図っていただきたいというふうに思っております。  私は、戦前中国にいたものですから、いまでもよく中国に参ります。観光ルートに入っているものですから、明の十三陵などにもよく参りまして、近代のものですが、大変すばらしいお墓であり、すぐれた出土品もたくさん出ております。そして、見学者に教えていることがいいんですね。四人組の時代ですと、このように昔の皇室というのは人民を搾取をしておったなどということがありましたが、最近ではそうではなくて、これらのすぐれた出土品はすべて当時の勤労人民がみずからの力で創造をし、つくったものだというふうな説明が書かれておるわけでございまして、そういう意味では、やはり親しみを感じさせるようになっておるわけでございます。  ぜひひとつ、これらの点も参考にしていただいて、宮内庁でも発想、考え方を変えていただくようにしていただいて、幾つかの代表的な御陵墓についての発掘を研究、検討をしていただくように特に要望をいたしておきたいというふうに思っています。  以上で、私の質問を終わりたいと思います。
  46. 田村良平

  47. 細谷治嘉

    細谷委員 質問に入る前に、委員長に対する要望も含めて申し上げて、お願いしたいことがあります。  自治大臣兼国家公安委員長所信表明の中で、かつて警察出身である自治大臣が、警察行政のことについては、最近新聞をにぎわしておるいろいろな問題、こういう問題についてはほとんど触れないで、最後にどう言っているかというと、「綱紀の粛正並びに士気の高揚」、こういうことで片づけられて、大阪においても兵庫においても福岡においても何にも起こっておらぬ、こういうような書き方をしております。まことに遺憾な警察行政に対する国家公安委員長の姿勢だ、こう思うのです。しかし、きょうは時間がありませんから、いずれまたこの委員会ではこの問題について集中審議をする、こういうことで御検討いただいておるようでありますから、その点、国家公安委員長に苦言だけ申し上げ、かつ善処をお願いして、予定の質問に入りたいと思います。  最初に質問したい点は、大臣所信表明の中に「地方自治の基盤の一層の充実を図ることが必要」、こう言っております。そして、現在いろいろな政策課題があるのだがということでありますけれども、どうも新しい時代、それに即応するような地方自治確立しよう、どうも従来とは違った新しい時代に即応するということでねらいがあるのではないか、こういうふうに読み取れます。  憲法で書いてある地方自治の本旨ということについては、大臣、いささかも変わりはないのですか、あるいはねらいは違ったところを持っておるということではないのですか。この点、伺っておきたいと思います。
  48. 山本幸雄

    山本国務大臣 新憲法で地方自治というものが取り上げられて、旧憲法時代と違って、地方自治あり方というものが日本の民主政治の将来に大きな基盤をなすこととなった。それ以来三十年ばかりたっております。その間に地方自治の進展というものは、旧憲法時代とは違って、いろいろの意味でやはり進展を見た。しかも、この三十年間には社会的なあるいは経済的なあるいは文化的な情勢というものは大きく地方において展開をしてきた。それに即応するだけの地方行政あり方がなければならない。同時に、最も重要なことは、そういう新しい行政需要を賄うだけの地方財政確立というものがなければならない、私はこういうふうに思うわけでございます。特に地方自治あり方を考えていく場合に、国との整合性をどう考えていくかという、そういう接点の問題が常に地方自治の課題としてあり、それがまた私は自治省仕事の中心でなければならない、こう思っておるのでございます。  最近のように、地方の時代という合い言葉が一つありますが、そういう新しい時代に即応していくような地方行財政の展開に私どもも心がけたいということは、私ども基本的な考え方にあるわけで、その点はひとつ御理解を賜りたいと思っております。
  49. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣おっしゃるように、国政という問題、それから地方政治というものの接点が非常に重要な課題であり、その課題を全うするためにこそ自治省が存在する。かつては庁でありましたけれども、これが独立して省になった、こういうことだと私は思うのですよ。  この問題については、余り議論しておっても果てしがありませんから、端的にお聞きします。財政という言葉もちょっと出ましたけれども、あなたの認識としては、今日の国と地方との接点においてどうするかという問題でありますが、その接点というものを見ていった場合に、地方自治は前進していった、後退していっているとお思いですか、どちらですか。はっきり言ってください。
  50. 山本幸雄

    山本国務大臣 どちらであるかということについてお答えするよりは、私どもは、この三十年、新憲法下の地方自治の姿を見てくれば、やはり前進はしてきた。地方自治というものはそれなりに地方に定着をし、また地方住民にも理解が進んできた。そして、地方の複雑化してくる行政に対するニーズにもこたえてきた。また、その間に価値観がどんどん変わってきておりますから、そういう価値観の変化に対応もしてきた。また、その価値観の変わり方は、地方自治にとってはやりやすいような価値観の変わり方になってきたのではなかったか、こう考えておりまして、私は、地方自治はだんだんと国民の間に定着をしてきた、こういう考えでおります。
  51. 細谷治嘉

    細谷委員 草の根民主主義と言われて、おっしゃるように地方自治が住民の中に定着したということは、私は大臣と同じ見方である。しかし、自治大臣の役割りというものは、そればかりじゃないのですよ。  そこで、いま中央集権化が進んでおる、地方自治は形骸化したという言葉もあるくらいでありますから、その接点を求めて憲法の言う地方自治の本旨を達成する役割りが自治大臣にあるとするならば、私の質問に対して、前進しました、後退しました、どちらかはっきり言って、そして責任を持って努力する、精進をする、これが自治大臣の役目じゃないでしょうか。それを答えられないということはおかしいですよ。時間がありませんから簡単にひとつ……。
  52. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま申し上げたように、地方自治というものが、日本の政治といいますか行政といいますか、そういう中で重要な役割りを発揮する、そういう場面がだんだん増してきた。地方の住民の意識が非常に向上もしてきた。政治意識も向上したし、地方の住民の自治に対する考え方も前進をしてきた。もちろん地方行財政もいわゆる地方自治もそれに伴ってやはりそれなりに対応をしてきた。その舞台づくりを自治省としては極力努力をしてきた。そういう努力を積み重ねてきた、もって今日を迎えておる、こう私は思っております。
  53. 細谷治嘉

    細谷委員 イエスなのかノーか、私はわからぬ。しかし、進みます。  先ほど財政問題について小川委員から質問がありました。私もこの問題について触れておきたいと思うのです。いずれ税法なり交付税法の審議の際に、この問題については大蔵大臣なり大蔵当局とも詰めてみたいと思っておりますけれども、きょうは主として所信表明に対する質問でございますから、自治大臣に集中的に御質問してみたい、こう思っております。  まず第一番にお尋ねしたいことは、あなたの所信表明の二ページに、「五十八年度地方財政対策について申し上げます。明年度の地方財政の収支見通しについては、二兆九千九百億円の財源不足が見込まれるに至りました。」こう書いております。ところが、先ほど小川委員質問に対して、石原財政局長もちょっと局長らしくなく歯切れが悪かったように私は承りました。なるほどそうでしょう。大蔵省から出ておる予算の説明というのがあるのです。白表紙で国会に配られておる。その三十一ページに何と書いてあるかといいますと、「五十八年度の地方財政において生ずると見込まれる財源不足額三兆三千三百四十六億円」、こう書いてあります、括弧して「うち」と書いてありますけれども。  財源不足額は、あなたの言う二兆九千九百億円じゃなくて、大蔵省財源不足額は三兆三千三百四十六億円で、数字が違っております。同じ政府から出た資料の数字が違っているのはどういうことですか、お尋ねします。
  54. 山本幸雄

    山本国務大臣 これは財政局長から答えた方がいいのかもしれませんが、おっしゃるように、財政対策で計算をいたしますと二兆九千九百億円という財源不足額が出るわけでございますが、それにさらに加えまして、ことしの地方財政対策の中で一番の問題点、眼目といいますか問題点でありました交付税特別会計借入金利子のうち、交付税特会負担することとしたという額がございまして、それが合計されまして、二兆九千九百億にさらにその借入金利子負担というものをプラスした数字がいまの三兆三千三百四十六億となった、こういうわけであります。
  55. 細谷治嘉

    細谷委員 解釈によって財源不足額がこうだ、一方の方はこうだということでは、これはちょっと戸惑ってしまうのですよ、大臣。もうちょっと申し上げてみましょう。  「地方財政」という雑誌があるのです。その一月号に責任者である石原局長がどう言っているかというと、「その結果、昭和五十八年度の地方財政は約二兆九千九百億円の財源不足が見込まれる。」ちゃんと書いてあります。財政責任者でしょう、局長。ところが、また奇妙なことには、いいですか、これは「地方税」という税務局が主管している雑誌ですよ。その巻頭言で関根税務局長、そこにいらっしゃる関根税務局長はどう言っているかというと、「地方財政においても昭和五十八年度の収支見通しにおいて、三兆三千三百億円余の財源不足が見込まれ、」大蔵省と同じことを言っている。財政局長大臣と同じことを言っているわけですよ、数字が。どちらが本当なんですか。これは私は迷うのですよ。どうなんでしょうか。大臣、お答えいただきたい。あなたははっきり言っているのだから。
  56. 山本幸雄

    山本国務大臣 それはただいま申し上げたとおり、収支の不足額は二兆九千九百億、それにただいま申し上げたような交付税特会利子の二分の一を交付税特会負担をする、こういうことになったためにその分も加算をした額がつまり交付税特会不足額、こうなるわけでございまして、それでそういう数字が二通りあるわけなんです。しかし、決してそれはそごするものでも何でもない、片一方をプラスすればそういう数字になる、こういうことでございます。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 担当者にひとつ聞いてみましょう。二人に。
  58. 石原信雄

    石原政府委員 先生案内のように、私どもは、毎年度の予算編成前になりますと、翌年度の地方財政収支がどのようになるかということにつきまして、いろいろなデータを集めて試算をいたします。その際に、歳入歳出につきましては、一応翌年度の見通しを立てる時点における制度を前提にいたしております。ただ、税制改正につきましては、政府税調等から答申が出て政府の方針が決まりますと、その分は税収見積もりに織り込みますけれども、原則的には現行制度といいましょうか、その時点において見通される翌年度の制度を前提にして歳入を見積もり、歳出を積算するわけであります。  ところで、五十八年度について申しますと、昨年末の段階で歳入歳出をそれぞれ積算いたしました結果、その時点での制度を前提にいたしますと二兆九千九百億円の財源不足になる、このように見込まれた次第であります。  ところで、その財源不足をどのようにして補てんするか、こういう論議の過程において、私どもは当然その時点における制度を前提にして、具体的に申しますと交付税会計において借り入れを行わざるを得ないという事態になりますれば、その交付税会計借入金利子負担については、それまでずっと国が全額持っておったわけでありますから、その利子負担は収支の計算には入れないで、この二兆九千九百億というものを計算したわけであります。  ところが、この二兆九千九百億円を具体的にどのように補てんしていくかという論義の過程におきまして、その一部は、先ほども答弁申し上げましたように建設地方債増額発行によって対応せざるを得ない、そうして残余は交付税特例増額によらざるを得ないわけでありますが、その交付税特例増額の大部分は交付税会計借り入れによって賄うしかない、こういう状況になりました。  それで、その時点で大蔵省当局から、この際、従来は交付税特会借入金利子については毎年度予算措置をもって全額国が負担してきたけれども、五十八年度以降は国の財政収支の状況からとうていそれは不可能だ、また、本来交付税会計借り入れ地方財源調達のための借り入れなんだから、その利子地方が持ってしかるべきではないか、こういう議論が出てまいりまして、私どもとすれば、予定してなかった話が途中から飛び込んできたわけであります。先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、その点が五十八年度地財折衝の最大の争点になったわけでありますが、その論議の過程、最終的に、五十八年度の国の財政状況が大変深刻であるというようなこともあり、われわれとしても、不本意ながら、この利子につきまして、元本の負担割合に応じて利子についても負担せざるを得ないという結論になったわけであります。  そこで、その利子負担額、具体的には三千四百四十六億円でありますが、この利子負担額をどうするかということが問題になったわけです。大蔵省当局は、当時、その利子負担額地方に持ってもらうんだから、その部分について国の財政措置はできない、こういう主張をしておったのです。しかし、私どもは、当然その分食い込んだのでは地方財政運営支障が生じますから、どうしても持たなければいかぬということは国の財政事情からやむを得ぬ、しかし、そうであるならば、それをも含めて地方財政措置の対象にすべきだ、このように主張いたしまして、最終的にはそれを地方財政措置の対象に加えるということで合意したわけです。  そこで、その時点で、言うなれば地方財政措置を講ずるというその時点では三千四百四十六億円を加えるということになったものですから、国の予算として、予算措置の前提となる地方財源不足はこの三千四百四十六億円を加えた三兆三千三百四十六億円ということになったわけであります。したがって、私どもが従来のペースと申しましょうか、従来の基準で計算したところの五十八年度の地方財政の姿、実態というものは、二兆九千九百億円の財源不足でありますということを述べているわけです。そして、地方財政措置との関連においては、三兆三千三百四十六億円というものを前提に措置が講じられたわけでありますから、それが前提になる。したがって、国の予算書においてはこれを加えたものが財源不足の額として掲示されたわけであります。  したがいまして、大臣が御答弁申し上げましたように、実態は同じでございますが、そのとらえる時点によりまして、いわば国の財政措置の具体的内容まで至る前の時点でとらえますと二兆九千九百億円でありますし、具体的な国の予算措置、財政措置の前提としてとらえる時点ではこの三千四百四十六億円を加えた金額になる、このようなことでございます。したがいまして、私ども物を言います際に、その時点によりまして違った数字が出てきておりますけれども、実態的には全く同じものでございます。
  59. 関根則之

    ○関根政府委員 地方財政の収支見通しにつきましての有権解釈は、まさに税務局長ではなしに財政局長が行うものでございますから、財政局長のおっしゃるとおりのことが正式見解であると私は理解をいたしております。  御指摘をいただきました「地方税」の執筆の段階におきましては、十二月に書いたものでございますから、税の背景説明として一応財政状況について述べたものでございます。その時点におきましてどちらの数字を自治省として正式な数字として表へ出していくか、必ずしも私、承っていなかったものでございますから、先ほど石原局長が申し上げましたように、時点のとり方によって数字が変わりますので、その大きい方をとって数字としたわけでございます。
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 大きい方なんと言っていますけれども、これはあなたは十二月の末に書いたことは間違いないのですよ。両大臣の覚書、そして地方財政対策がはっきり決まったのは十二月二十五日でしょう。それから大蔵原案が出て、予算編成の最終段階の三十日を迎えたわけです。それまでにはもう地方財政対策は決まっておったのですよ。それで恐らく財政局長のところでまとめ上げただろう五十八年度の地方財政対策なるものには、はっきりと財源不足額は二兆九千九百億であるということは、主文にぴしゃっと書いてあるのです。注のところへ、ただし、利子の半分を持つことになった三千四百四十六億円を加えますと財源不足額はこうなります、こう言っているのですよ。  恐らくそれを見てあなたは書いたのだろうけれども、あなたも書き方がずるいですよ。申し上げましょう。さっき言ったように、「三兆三千三百億円余」と書いておるのです。「余」と。そして、その次の方は、補てんするための交付税特別会計借り入れる額は幾らかといいますと「一兆八千九百五十八億円」と、「八億円」まで書いている。「五十億円余」などと書いてないのですよ。ぴしゃっと書いてあるのですよ。ここのところだけ少し丸めて書いてあるのですよ。この辺はあなた、意識的に書いておるようにしかこの場合にはとれない。ですから、十二月に書いたから間違っておりました、ミスリードしたというわけにはいかぬと私は思うのですよ。しかし、それ以上は言いません。  そこで石原局長、あなたの言葉は、両大臣折衝結論が出るまでは二兆九千九百億だった、両省の折衝の結果、利子を半分持つことになりました、そして三千四百四十六億円が加わりました、これが注に書いてある、したがって、その結果である三兆三千幾らというものが財源不足額であって、この財源対策をした、結果は同じでございます、こう言っていますけれども、あなたが、二兆九千九百億円出したものが、その経過が問題じゃないですよ。結果は同じだという、その結果が問題なんです。  言ってみますと、五十八年度地方財政対策の最大の問題点、極端に言いますと、唯一の問題点は、この利子を持つことに決めた、そして、財源不足額でちょっと省内も両省の間にも違った表現をせざるを得ぬような、どぎまぎした事態が起こっていると私は思うのです。どぎまぎしたと言うと恐縮でありますけれども、そこできちんと——大臣財政の実態からいって、昭和四十年以降今日まで交付税の総額が不足になって、そして、六条の三の二項に基づいて総額が加えられてきました。ある場合には借りて、ある場合には一般会計から繰り入れて補てんしてきました。ところが、石油ショックでそれができなくなって、六条の三の二という本則を離れて、今日、附則の八条の三でいっているでしょう。それが今日まできたのですよ。六条の三に基づいて、著しく、引き続いてということになったけれども財政が間に合わないので、八条の三で当分の間、これが今日です。ところが、五十八年度になったら、それをまた破っておるのですよ。そうではないですか。  自治大臣、これをオーケーした、その論理的根拠はどういうことなんですか。ただ大蔵省が困ったから協力しました、こういうことだけですか。いかがですか。
  61. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方財政をしっかり守っていく上において、やはり国の財政地方財政との関連というものは非常にあると私は思うのです。これは税収の面でもそうだと思うのです。国の税というものと地方税というものは密接に連動しておると思います。そういう点を断ち切って地方財政が独立をしていくという方向を考えなければならないのかもしれません。けれども、いまの日本の税、国民の納めていただく税の全体の構成から申せば、御存じのように、いまは国税は地方税の大体倍である、二対一になっている。それはしかし、国税の方からさらに交付税あるいはいろいろな負担金という形で地方に戻ってくる。結論においては国と地方は逆転をして一対二の姿になり、そして地方関係地方団体の間で調整が行われるというのが今日の仕組みになっていると私は思うのですよ。そういう根本に触れてくれば、これはまたいろいろ議論があると思うのです。  しかし、今日の状態では、世に言われるように、地方財政と国の財政とは車の両輪のごとく、お互いにひとつうまくいくようにやっていかなければならないということ、地方財政もとても苦しい、厳しい情勢にあることは申すまでもありませんが、同時に、国の財政もまさに危機的状態にある、それらをいろいろ勘案をいたしまして、ただいまお話しのような結果になったということでございまして、この問題は五十八年度の対策として一応考える、こういうことになったわけでございます。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣に私は冒頭申し上げましたように、国の財政地方財政はおのおの独立したものだ、ですから、片方がどうあれ、片方だけよければいいという議論を私は言っているわけではないですよ。その接触点をどうするかということが自治大臣の重要な職責なんだよということを、私は認めているわけです。ところが、大臣、あなたのやったことは、地方交付税法の本則六条の三の二項、これに基づけない国の財政事情になったので、制度を変えましょうということで、五十二年度ですか、単年度に設けて、それではちょっと、一年こっきりのものは制度としてはふさわしくないということで、五十三年に八条の三というのができてきたはずですよ。言ってみますと、これは当分の間でありますから、本則は依然として生きておって、国の財政が悪いし、地方財政も悪いので、借りてひとつ緊急避難をしようというのが八条の三の規定です。  八条の三の規定はどういうことかというと、利子は全額国が持ちましょうと、これは四十年のときに、当時の主計局におりましたいまの参議院議員の鳩山威一郎さんが、交付税譲与税特別会計というのは国の責任であります、したがって、その利子については国の責任で持つのはあたりまえですという言葉でずっと持ってきている。大臣も提案理由の際には、利子は国が持ちます、こう言ってきたのですよ。そして、五十七年までは附則の八条の三で元金の半分は地方が持つようになったけれども、これは当分の間ですよ。  ところが、今度は足らなくて、四千三百三十六億円という利子を持てと。先ほど来利子を持つのは大蔵はあたりまえだと、こう言ったとか言わぬとか。現に大蔵大臣の諮問機関である財政制度審議会はどう言っているかというと、これはやっぱり利子全額地方が持つべきだ、こう言っているのですよ。ところが、あなたのところにおる地方財政審議会はどう言っているかというと、国が地方公共団体に対する財源保障機能を全うすべきことは当然なことである、したがって、利子も持ちなさい、こう言っているのですよ。私の言うのがむちゃで、国の財政のことを考えないと——あなたのところの諮問機関である財制審議会、有能な人が五人おりましょう。その人が言っているのですよ。  そこで、ずばりお聞きしますが、その八条の三でなくて、さらに利子も持つという法律改正をやらなければならぬような国の財政事態だ、もう地方はがまんしてくれと、これに尽きるのですか、大臣、どうですか。
  63. 山本幸雄

    山本国務大臣 これはいろいろ議論のあるところだと思います。しかし、国の方の財政も非常にやりくり財政になっている、いろいろ手を尽くして財政を立てている、地方財政の方もお互いに苦しい、こういうことでございます。  そこで、お互いに苦しい間でありますから、今日の状態はそういう危機的なお互いの状態にあるのでありますから、将来の展望に向けて、お互いにこのトンネルを何とか抜け出していかなければならないわけでございます。そういう意味では、お互いにひとつがまんし合うところはがまんし合ってやっていこうではないか、地方財政がよくて、国の財政はどうでもいいというわけではもちろんありませんし、国の財政がよくて、地方財政は知らないよというわけでは絶対にないわけでありますから、その辺の関係を、ひとっここのところは地方財政も苦しいであろうけれども、がまんをしてもらえないか、それが五十八年度の予算編成である、こういうことだということでございます。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、立ち入ってお聞きしますけれども、国の財政が悪ければ、交付税法の本則を附則でいま当分の間やっている、それに今度輪をかけて、利子も半分持ちましょう。来年国の財政がもっと悪くなって、これは利子を全額持ってくれぬか、あるいは元金を半分ずつということになっているけれども、これもひとつ三分の二、全部持ってくれぬかということになったら、またやりますか。どうですか。来年はやらぬということなのか。どうなんですか。ことしは不満だけれども、しようがなくて、言葉は適切じゃありませんけれども、強姦されたんだ、こういうことで、来年はそんなことがあっても受け付けない、こういう決意なのかどうか、お尋ねします。
  65. 山本幸雄

    山本国務大臣 おっしゃるとおり、昭和五十八年度についてという措置にしたわけでありまして、来年はまたどういう形の財政になるか、私どもはできるだけ明るい財政にしていきたい、こう思うわけでございますが、来年のことはまた来年で協議をする、こういう立場でおります。
  66. 細谷治嘉

    細谷委員 来年のことは来年だ、来年のことを言うと鬼が笑う、こんなことではだめですよ。  そうしますと、地方交付税法六条の三の二項という本則は、長い間国会で議論し、確認されてきた。そうして、歴代の自治大臣が確認してきた、「引き続き」というのはこういう有権解釈ですよ、「著しく」というのはこういう有権解釈ですよ、こういうふうに定説になっている。石原局長が書いた本の中にも、ちゃんとそのことが書いてありますよ。大臣の認識によりますと、もはやその本則は死んで、そうして附則の八条の三は元金で、利子の方を新しく法律に盛り込んでさらに後退をする、それがすべてだということで、もはや本則はないということですね。六条の三はもうないということですね。どうですか。交付税法の本則の六条の三はもう死んだとあなたは認識しているんですか。はっきりしてください。
  67. 山本幸雄

    山本国務大臣 いや、決してそうではありません。六条の三はやはり制度の改正あるいは交付税率の問題として地方財政の将来を考えていく上においては大事な条項である、そういう認識はよく持っておるつもりでございます。
  68. 細谷治嘉

    細谷委員 石原さん、最後に、これはいろいろあるのですけれども、この際きちんとやりたいんですが、やるとかなり時間がかかりますから。  そこで、利子を持つことになりましたが、利子を持つ法律的根拠は何ですか。はっきりお答えいただきたい。まだ交付税法が出ておりませんけれども、法律根拠はどうなりますか。
  69. 石原信雄

    石原政府委員 交付税会計借入金利子につきましては、現行交付税特会法の附則四項、五項に規定がございまして、借入金あるいは一時借入金利子の支払いについて必要な額を一般会計からこの会計に繰り入れるという規定によって、利子の支払いが国庫において実質的に行われてきたわけでございます。その規定は現在もそのままでございます。そこで必要な額を繰り入れるという根拠規定がありますが、その必要な額というのは何かということですが、実体法規であります交付税法の方で借り入れた額と実質借入純増加額と交付税の総額とが完全に一致している場合には、利子を支払う余地がない、一般会計から繰り入れる額あるいは交付税会計借り入れる額の総額と支出すべき交付税総額が一致している場合には、利子を支払う余地がないわけであります。そこで、その利子負担額を特会法の附則四項、五項の規定によりまして、これまで予算に定めるところによって毎年度繰り入れてきたわけであります。  五十八年度につきましては、その実体法規であります今回御審議をお願いしております交付税法の改正法案の中で、借入総額から三千四百四十六億円を減額した額をもって交付税の総額とする、このようにいたしております。したがって、利子の支払い財源が実体法規によって出てくるわけでございます。そこで特会法附則四項あるいは五項の規定で必要な額を繰り入れる。その必要な額としては三千四百四十六億円だけ少ない額を一般会計から繰り入れる。このような法律構成になるものと理解しております。
  70. 細谷治嘉

    細谷委員 言ってみますと、特会法は手をつけないで、交付税法の附則の段階で三千四百四十六億円は始末する。これは始末するのですよ。そういうことで、この辺が一番問題で、そして大臣なり石原局長なり大蔵省の苦心の存するところでありますけれども、国の一般会計から入れるところは、ふところは、引き出しは特会法でしょう。特会法は何て書いてあるかというと、「前項の規定による借入金利子の支払に充てるため、必要な金額は、予算で定めるところにより、一般会計から」交付税及び譲与税配付金勘定「に繰り入れるものとする。」これは現行法。そして五十八年度もこれでいこう、こういう考えのようです。  ところで、一点だけ。これはちゃんと逃げ道はつくっているようでありますけれども、これがまた政治的な問題でありますから言っておきますが、去年、利子を持つか持たぬかは、渡辺大蔵大臣と当時の世耕自治大臣の間で物すごい激論があって、最終的には世耕自治大臣が、勝ったとか負けたということは申しませんけれども、世耕自治大臣の主張が通ってどうなったかといいますと、覚書の中にこう書いてあります。「前項の交付税特別会計における借入金償還に要する経費については、地方交付税法附則第八条の三第一項並びに交付税及び譲与税配付金特別会計法附則第四項」、第四項というのは利子ですよ。「及び第五項」、一時借入金の問題。「に定めるところによる」。いろいろもめた結果、利子はいままでどおり国が持ちましょうと言ったとき、四項と書いてあるのですよ。  そうしますと、五十七年度の特別会計の運用と五十八年度の運用は、予算の定めるところによるということを適当に運用して、前の年には一文も持たぬで国が全部持った、今度は地方と国が半分、こんな法律の運用でいいのか。ちゃんとそれは交付税法附則の方で書いてありますから結構です、こういうことでございますけれども、これはぎくしゃくしているじゃないでしょうか。恐らく両省の主張が真っ向からぶつかって、そして半殺しの形でこの法律は書かれている、こう申し上げる以外にないと思うのですが、大臣、いかがですか。これはまたゆっくりやります。
  71. 石原信雄

    石原政府委員 まず初めに、五十七年度の補正に関連する大臣覚書のことでございますが、五十七年度の補正予算、私、担当でございましたので若干説明申し上げますと、その時点でも補正による借り入れ利子について負担してもらえないかという意向が大蔵省から示されたわけですが、私ども基本的に利子は全額国が持つべきだという主張を持っておりましたし、いわんや年度の途中でその制度の基本にかかわるような改正を行うのはいかなる理由でもこれは受け入れられないという主張をいたしました。そこで、私ども考え方をより明確にする趣旨で、覚書の中に交付税法附則の八条の三あるいは特会法附則の四項、五項を引用したわけであります。それは、五十七年度においてはあくまで従来の方式を堅持するということを確認を求めるために、私ども強くそれを主張して覚書に入れ、決着を見たという経緯でございます。  それから、五十八年度の措置に関連いたしまして、特会法附則四項、五項の規定を全く変えないで、交付税法本体の方の改正だけで利子の扱いを変えることがどうなんだ、こういう御指摘でありますが、この点については、特別会計法というのはあくまで整理会計であります。本法である交付税法の定めに従って経理を整理するという会計でありますから、利子負担するとかしないとかいう、あるいは利子をどの程度負担するかという実体的な規定は自治省が所管する交付税法の方で定めるべきだ、両省共管の特会法は、むしろ交付税法の方で決めたとおりの整理をするだけの規定でいいのじゃないか、私どもはこういう考え方のもとに御提案申し上げているような条文にいたしている次第でございます。
  72. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がありませんから私の基本的な考え方、先ほど大臣が言ったように交付税法の六条の三の二項という本則が生きておる。生きておるとするならば、利子負担は国の責任で処理すべきである。ですから、地方が半分持つということはおかしい。そうだとするならば、半殺しのような形の法律体裁はおかしいのであって、もっときちんとしておくべきではないか、こう私は思います。しかし、基本的立場だけを申し上げて、きょうは大蔵省質問する時間がありませんから問題点だけを提起して、次の質問に移っていきたいと思います。  二つばかり問題があるのですが、あと時間がありませんから、あるいは途中でおいでいただいておる人に迷惑をかけるかもしれません。  自治大臣は、税の負担の問題について公平化を図った、こうおしゃっておりますが、どこをどう公平化を図ったのですか。
  73. 山本幸雄

    山本国務大臣 ことしの地方税の改正は、余り大きな改正はできなかった。その中で、できるだけ目標としては、いまおしゃるような公平化、適正化を図る、こういう趣旨で一部負担を増していただくという面もできたわけでございまして、そういう具体的なお話は税務局長から申し上げますが、そういう考え方でことしの地方税改正はやったということでございます。
  74. 関根則之

    ○関根政府委員 五十八年度税制改正に当たりまして、税の負担の公平の観点から、まず第一は、非課税等特別措置の整理合理化の推進をいたしております。件数にいたしまして、二十二件につきまして、縮減合理化を図ったところでございます。  それからもう一つの点は、定額課税につきましてのその後の物価なり所得の上昇等に応じまして、定額で定められておりますものをそのまま据え置きますと、率で定められている税を負担する人との間に税負担の不均衡が生ずるという問題がございますので、それの税率の調整等を行っているところでございます。  主な点は、以上のとおりでございます。
  75. 細谷治嘉

    細谷委員 税の問題につきましては、いずれ税法の審議の際に十分議論することにいたしまして、関根さん、あなたのこの「地方税」一月号の巻頭言、なかなかいいことが書いてあるのです。そしてこの二月号に、あなたの先輩の荻田さんという人がまた書いているのですよ。これはこれからの地方税のあるべき姿というのをちょっと書いておるのです。  大変結構なことでありますけれども大臣、税制の中には、国税の不公平性ばかりじゃなくて、地方税にもずいぶんあるのですよ。住民税の過酷さというのは一体どうしてくれるんだい、ごまかしで非課税限度額を上げているだけであって、課税最低限には触れておりませんから、やはりいろいろな問題があるのですよ。しかも、関根局長が言うように、ドイツのワーグナーの言葉で、税収というのが十分なければ政治はうまく動きませんよという言葉まで引用して、高通な議論を展開しているのですよ。ですから、地方税にも大変ありますよ。事業税の問題にいたしましてもあるいは特定の社会保険診療報酬の問題にいたしましても、いろいろ直さなければいかぬ問題があるのですが、ひとつ真剣に取り組んでいただきたい、こう思うのです。これは要望です。  そこで、真剣に取り組んでいただきたいことに関連して、最近問題になっているのが、宅地開発規制に関係する業者と自治体との真っ向からの対立が起こっておるのです。それに対して自治省と建設省は一片の通達を出しただけ。そうして二月二十八日の新聞によりますと、そういう開発要綱なんというのによらないで、自治省が制定した宅地開発税を活用したらどうかということを自治省が言ったと書いてある。そういう姿勢だと言っておるのですよ。宅地開発税というのは、私の記憶ではっくってからもう十五年ぐらいになると思うのですが、現状はいかがでしょうか。
  76. 関根則之

    ○関根政府委員 宅地開発税というのが市町村の目的税として設定をされておりますので、私どもといたしましては、これを実施する条件がうまく合う市町村につきましては、できるだけこれを活用していくようにという指導をしてまいっているわけでございますけれども現状におきましては、残念ながら実施をした市町村はないわけでございます。
  77. 細谷治嘉

    細谷委員 法律をつくって宅地開発税という新しい税を設けて、そして宅地開発、土地の高度利用、計画的な活用、こういうことを図ろうとして新しい税をこの委員会でも審議してつくって、十五年以上しても何にも生まれてこないで、そうしてこれを使ったらどうだとかなんとかということでは、余りにも無責任じゃないでしょうか。産んだ子供は育てなければいかぬと思うのですよ。そうして、要綱行政はけしからぬとは言っておりませんけれども、チェックをする、自治体は余り取り過ぎるぞ、業者が困っているぞ、こういう意味の通達を出すことはよろしくないのじゃないか、こう思いますが、大臣、どうですか。
  78. 山本幸雄

    山本国務大臣 せっかくこういう目的税がありながら一つも活用されないというところには、やはりいろいろ事情があることであろうと思うのです。一概にこちらが指導をして活用されてはいかがですかと申し上げても、なかなか地方自治体の方ではその気になっていただけないところに、やはりいろいろな事情があるだろう。結局、先生のおっしゃられるのは、指導開発要綱の話に触れてくるだろうと思うのでございますが、その辺の兼ね合いというものについて一体地方自治体がどう考えておるのかも、私どもとしてはよく考えてみなければならないのじゃないか。この問題は、最近宅地開発という問題と絡んでいろいろな問題を提起しておりますから、私どもの方もこれからよく検討していきたいと思っております。
  79. 細谷治嘉

    細谷委員 いろいろ問題があることは間違いない。できたときから、大体において平米当たり五百円ぐらいもらおうとか、こういうことです。そんなものじゃ、これは地方団体はたまったものじゃないということで、その宅地開発税ということについて自治省の取り組みが悪いものですから、つくって後はもう野放し、こういうことですから、自治体としては要綱に頼らざるを得なかった。  調べてみますと、東京圏では七五%が要綱を設けておるのです。大阪圏では六五%が要綱を設けてやっている。名古屋圏では五七%、大都市過密地帯ほど宅地問題は深刻でありますから、そういう開発問題が起こる。ミニ開発を防ごうじゃないか、環境を崩さないようにしようじゃないかと、いろいろなことでやっておるのです。それが要綱行政なんです。その要綱行政についてチェックをするのならば、チェックをしたいのならば、何らかの指導をすべきだろうと思うのです。  私は、同じような趣旨を五、六年前この委員会で取り上げたことがある。一向にらちが明かぬ。動こうともしていない。動こうともしておらぬのならば、やる気がないのならば、発想を改めるために、その宅地開発税というのを廃止したらいかがですか、どうですか。
  80. 関根則之

    ○関根政府委員 確かに私ども、産みっ放しでそのままにしておるというつもりはないわけでございまして、すべての地方団体といいますか、開発が行われる可能性のある地域につきまして、すべてこの宅開税がうまく機能するであろうというふうには思っておりませんが、条件の合うようなところは利用の可能性が十分あるというふうに考えて、できるだけ活用するように指導をしているわけでございます。  しかし、実が上からないということは先ほど申し上げたとおりでございますが、現状がそうであるからといいまして、いまの時点でこれをあきらめてしまうというのもちょっと早計かという感じがいたしますので、さらに引き続きこれの活用につきましての指導を図って、実際の実を上げていけないものかというふうに考えておるところでございます。
  81. 細谷治嘉

    細谷委員 大変重要な問題でありますから、大臣、関根局長はやや意欲的なんですよ。やや意欲的で十五年し、私が取り上げてからも、もうすでに五年も六年もたつ。この問題は、与党の人も取り上げているのですよ。  ですから今度は、委員会の審議の際に答えておけばいいというその場逃れではなくて、どういうことでどういう方向で取り組んでいく、こういうことについて基本構想でも、自治省の考えをまとめてこの委員会に示していただきたい。いかがですか。
  82. 山本幸雄

    山本国務大臣 私は、最近の情勢は、地方自治体としましては余りこういう宅地開発を歓迎しないという空気があるのではないだろうか、やはり従来は積極的にやったところが多かったと思うのですけれども、最近はやや様子が変わってきた、そこに根本がある。地方自治体としては、いま余りこういう宅地開発を積極的にやろうという気持ちがないというところに問題がある。  そこで、要綱でやればわりあいに自由がきく、わりあいにフリーにやれる余地がある。しかし今度は、税でやりますと、税の方にはいろいろと制約がある。たとえば、これは都市計画区域でやることでございますから、まず市街化区域でなければやれないという制約もあるようでありまして、そういう宅地開発税でやる場合のいろいろな制約といいますか、あるいは問題点といいますか、そういうものが地方公共団体に受け入れられない空気になっているのではないだろうか。  ただ、行政あり方として、要綱でやった方がいいのか、あるいは税としておやりいただいた方がいいのかという問題は、確かにあると思うのです。その辺は、私は、地方自治体のお考えも伺い、また関係各省とも御相談をして、ひとつ問題を検討していきたい、こう思います。
  83. 細谷治嘉

    細谷委員 この委員会で終われば後は知らない、こういうような無責任な姿勢じゃなしに、やはり大臣の認識のように、地方団体がそういう宅地開発を好んでおらぬ、実態はこういうことばかりではないということですよ。ですから、やむにやまれず、さっき言ったように、三千四、五百ある自治体のうち千を超す自治体がそういう要綱を設けて、条例でもいかぬ、法律はない、そのすき間をどうやってやるかということで、条例でない要綱でやっているところに今日の問題点があるわけですから、要綱行政について批判をするのならば、批判にたえ得る何らかの対応をしないであぐらをかいておったってだめだ、こう私は思います。  そこで、時間があと五分足らずでありますけれども、先ほども小川委員から消防行政のことについてありましたが、「適」マークの問題がずいぶん問題になって、今日では消防庁の努力で、対象建物の七割ぐらいは「適」マークをもらっておると思う。その「適」マークというのが、旅館、ホテル等に泊まる人については唯一の心のよりどころであった、安全感であった。ところが、いまやその「適」マークが危なくなったのですよ。それは私が新聞を見て危なくなったと思っているのではなくて、行政管理庁長官が危ないということを指摘して勧告しているでしょう。  それを見ますと、二十四項目が対象になっておりますけれども、二十四項目のうち二十一項目は消防庁の所管、そして三項目が建設省の所管。ところが、三項目でありますけれども、建設省の建築構造、防火区画あるいは階段、これが安全性の重要な比率になっていることは、発表された調査の数字でもはっきりしているのです。  そこで、「適」マークが「適」マークらしく人命、財産の安定感を得るように、過去の今日までのものを見直しながら最大限の努力をしなければいかぬと思うのでありますが、行管庁の勧告をどう受けとめ、そして、構造の方を担当しておる建設省と自治省との間に行政上の割れ目はないのか、一体となってその行政の割れ目を防ぎながらこの問題について推進していく決意であるかどうか、その辺の長官の心境を承りたいと思います。
  84. 砂子田隆

    ○砂子田政府委員 「適」マークにつきましていろいろ御心痛を煩わしておりますこと、大変恐縮に存じます。  御案内のとおり、行管からの勧告の問題は、行管との間では、この「適」マーク二十四項目についてどうのこうのということではないようにわれわれは承っておりますし、行管との間でもそれは確認はいたしてございます。  ただ、この「適」マークを出す際に、建築基準の関係で安全上問題がある、消防法の二十一項目あるいは二十四項目を含めてそれなりの対応はしているが、それ以外の安全対策もやはり同時にやるべきだ、こういう議論があったときに「適」マークを交付しないということを実はやってきておるわけですが、その間に消防機関と建築行政庁との間で意思が一致しないことがある、それで「適」マークを出してしまったということが問題だという指摘でございます。  行管の方の問題につきましてはそういうことで、二十四項目がどうのこうのというのではなくて、お互いにもっとよく連携をとって「適」マークに配慮すべきだ、こういう勧告でございます。  これは私はごもっともだと思っております。ですから、それなりに消防機関の方にも、よく建築行政庁と打ち合わせをして、その間に意思のそごがないように行動をとってくれという話を申し上げてございます。  そういうことで、建築基準法の三項目につきましてもお話がございましたが、従来の火災というものを考えてみまして、最低限どれだけのチェックポイントをつくるかというときに、建築基準法の中で、いまお話がございました階段でありますとか防火区画でありますとか、そういうものを含めてやったわけでございまして、この二十四項目につけ加えて新たにという考え方はいまのところございません。  ともかく、いまこの二十四項目を守るということが大変大事ですし、それに対して、先ほど申し上げましたように十分な管理体制をとってそれを守っていく、毎日々これを努めていくということが大変大事なことだと思っております。そういう点から、私は、防火管理者なり経営者なりに、少なくとも不特定多数の人を預かっているわけですから、人命のそごがないように十分に配慮した経営を行うべきだということを今後とも指導していきたいと思っております。
  85. 細谷治嘉

    細谷委員 終わります。
  86. 田村良平

    田村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ────◇─────     午後一時四十八分開議
  87. 田村良平

    田村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。草野威君。
  88. 草野威

    ○草野委員 私は、過日行われました自治大臣所信表明につきまして、基本的な認識につきまして、まず二、三点お伺いをしたいと思います。  大臣は、所信の中で「民主政治は健全な地方自治の基盤の上に成立するものと確信しております。」と、このように冒頭に述べておられますけれども大臣現行地方制度につきましてどのようなお考え方を持っておりますか、また、大臣の考えていらっしゃる地方自治とはどういうものでございますか、明らかにしていただきたいと思います。
  89. 山本幸雄

    山本国務大臣 戦後三十年、地方自治は民主政治の根本として成長をしてきたと思っております。何といいましても、民主主義政治がりっぱに花を咲かすのは、地方自治というものがうまく運営をされているということでなければ成立はしない。したがいまして、私ども地方自治の健全なる発達ということが民主政治がりっぱになる、りっぱにいく基盤である、こう思っておるわけでございます。今後とも私どもは、そういう考え方に立ちまして地方自治の充実発展のために努力をしていきたいと考えております。
  90. 草野威

    ○草野委員 地方自治は民主政治の基盤である、このようなお話でございますが、さらにもう一点、臨調の答申につきまして御認識を伺いたいと思います。  地方自治制度のあり方といたしまして、これまで地方制度調査会などからいろいろ提言がございました。昨年の七月には臨調から、国、地方の機能分担のあり方について基本答申が行われたわけでございます。この地方自治の改革は、今後も本格的に行っていかなければならないと考えるものでございますけれども、この臨調答申につきまして大臣の御見解を承りたいと存じます。
  91. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調の御答申の基本的な考え方は、国、地方を通ずる行財政の改革ということ、もう一つは、やはり地方分権の推進という二つの大きなテーマにしぼられることだろうと私は思います。臨調のお考えの基本は、確かにこの方向でいろいろお考えを願っておる、私はこう認識はいたしておるわけでございます。臨調がそういう基本的な考え方に立っていろいろ具体的な問題と取り組んでいただくということでございますが、やはり具体的な問題になってまいりました際に、臨調はこの考え方をひとつ強く貫いていただきたい。第三次答申、またさらに近く最後の答申が出ると聞いておりますが、そういう具体的な問題についていまの一つの理想を具現、実現していくような方向でありたい、私はこう思っておるところであります。
  92. 草野威

    ○草野委員 続きまして、選択と負担の前提としまして、標準行政の設定ということが言われておりますけれども、この標準行政というものにつきましてどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。また、これはナショナルミニマムを意味するものなのか、またあるいは財源を配るための単なる手段と受け取っていいのか。いずれにいたしましても、三千三百の地方団体、こういうものを一律に標準行政を設定するということは非常にむずかしいことではなかろうかと思いますけれども、この点についての御見解を承りたいと存じます。
  93. 山本幸雄

    山本国務大臣 確かに、地方は三千三百の自治体に分かれ、そこにそれぞれの住民が住んでおられるわけでございますが、しかし、これらの方々は同時に日本の国民であるわけでございまして、そういう立場からいたしますれば、やはりいまおっしゃられましたようなナショナルミニマムとかあるいは標準的な基準にまではやはり行政のサイドにおいて考えられるだけの措置はしていくべきものではないか、それがそれぞれの三千三百の自治体の特色を発揮しながらそういうものの実現に向かってひとつやっていただきたい、それが地方自治あり方であろう、こう思っておるのでございます。
  94. 草野威

    ○草野委員 先ほど大臣は分権の問題につきましてもお触れになっておりますが、国、地方間の改革につきまして、機関委任事務また、補助金行政あるいは許認可権、こういうものにつきまして、権限を持っておる他省庁との調整というものが非常に大きな問題だろうと思いますが、昨年の九月二十四日の閣議決定、これによりますと、機関委任事務につきましては、「五十七年度末を目途として総点検を行い、所要の調整を経て政府全体としての整理合理化計画を定める。」このようになっているわけですね。  この点につきまして、自治省としては現在までどのように取り組んでこられたか、その進捗状況等についてお伺いいたします。
  95. 山本幸雄

    山本国務大臣 機関委任事務の中には、市町村のあるいは府県の固有事務にしてもいいものもあると私は思うのです。その辺の整理を含めまして、機関委任事務につきましては、臨調の方といたしましては、二年間に一割を整理する、こういう方針が出ており、それについて政府部内に審議機関をつくる、こういうことに相なっておりまして、いまその方向に向かって進んでおると思います。  ただ、じゃ具体的にどういう事務についてやろうとしておるのか、また審議機関は一体どうするのかという点につきまして、まだ実は余り進んでいないように私は思っておりますので、それらの促進方を今後やりたいと思っております。
  96. 草野威

    ○草野委員 ぜひともその促進方については御努力をいただきたいと思います。  次に、交付税特別会計借入金利子の問題につきまして、若干伺いたいと思います。  過日の本会議場におきます私の質問に対しまして、自治大臣からこの問題について御答弁をいただいたわけでございますが、そのとき大臣がおっしゃられたことは、「明五十八年度におきましては、国の財政全般の厳しい状況にかんがみまして」云々と、要するに国の財政が非常に厳しいから、このことを強調されていたわけでございます。  確かに、五十八年度の地方財政は、二兆九千九百億円の財源不足となっているわけでございまして、利子負担分を加えると三兆三千三百四十六億円としておりますが、今回、従来の交付税会計借入金償還の国、地方折半ということに加えまして、利子の二分の一負担という制度を取り入れようとしているわけでございますけれども、このような地方負担の強化につながる制度改正、先ほどからいろいろ論議があったわけでございますが、結論として言えることは、結局は大蔵省に押し切られてしまったのではないか、このように思われるわけでございますけれども大臣、いかがですか。
  97. 山本幸雄

    山本国務大臣 国家財政地方財政あり方というのは車の両輪のごとし、こう言われるわけであり、国の方も、地方財政がいかに窮乏しようとそれに対して関心を持たないというわけではもちろんない。税の国民負担をしていただいている割合からいっても、やはり国税にウエートがかかっており、その国税にウエートのかかっておる中で、やはり当然に地方に還元しなければならないものがあるわけでありますから、これは私は、国の財政の上から見ても、地方財政にそういう繰り入れをするというのは当然のことであると思うのです。  そういう意味で、両方の状態が今日大変危機的な状態にある中で、今回の地方財政対策の中でこれが一つの大きな問題点である、一つの大きな眼目になったわけでございますが、そういう地方財政も苦しいけれども国の財政の方も大変苦しいという中でそういうような措置に五十八年度なった、こういうことで御理解をいただきたいと思います。
  98. 草野威

    ○草野委員 いずれにいたしましても、国の財政が非常に厳しい、国と地方との関係は車の両輪である、こういうようなことをずっと繰り返しおっしゃられたわけでございますけれども、この三千四百四十六億円という非常に巨額な利子の発生、地方負担ということになるわけでございますが、考えてみますと、本来これは国が地方交付税の規定上の地方交付税の税率の引き上げをしなかったからこのようになったのである、このようにわれわれは受け取っておるわけです。したがって、国がその利子負担をするのは当然である、地方団体が負担をするということは、その根拠は非常に乏しいのではないか、まずわれわれはこのように考えておるわけでございますが、この点についてはいかがですか。
  99. 石原信雄

    石原政府委員 今日、地方交付税の所要額を確保するために交付税特別会計において借り入れを行っている、こういう事態は、交付税制度本来の望ましい姿から見れば、いわば緊急避難的といいましょうか、暫定的な措置である、このように理解できると思います。そして、このような措置を講ずるということは、結局地方行財政の計画的な運営を保障するという国の責任を果たすという意味で行われていると思うのであります。そういう意味では、私どもは、かねてからこの交付税会計借り入れについては国の責任としてその利子負担を国がしていただく、必要な財源交付税会計に繰り入れていただく、こういうことが必要である、こう考えておったわけであります。  しかし、五十八年度におきましては、御案内のように大変厳しい国の財政状況のもとで、この利子について、いわば借入元本の国、地方負担割合に見合って、対応して利子についてもそれぞれ国と地方が持ち合う、結果的にはほぼ二分の一を地方負担するという方策をとらざるを得なかったわけであります。結局こういった措置は、五十八年度の国、地方を通ずる財政状況のもとでやむを得ざる措置としてとられたものと私ども理解しております。  根拠といいますと、結局現行制度に一部改正を加えてこのような措置をお願いしているところでありまして、これは今日の国、地方を通ずる厳しい財政状況のもとでこうせざるを得なかったという点を御理解いただきたいわけであります。
  100. 草野威

    ○草野委員 厳しい財政のもとやむを得ない、こういうお話でございますけれども昭和三十九年の四十七国会における参議院の大蔵委員会の見解、また同年行われました衆議院の地行委員会の見解、また昭和五十年十月の衆議院の予算委員会における見解、いろいろこう出ておりますけれども、これらの中で示されていることは、やはり交付税特会借り入れは国の借り入れを意味するものだから、その利子は国が負担するのだ、こういうことが過去のこれらの国会を通じて明らかにされているわけですね。しかし、こういうことから考えてくれば、やはり何といっても、制度のたてまえからいっても地方団体が負担するということは非常におかしい、なかなか理解できないわけでございます。特に昭和四十三年、大蔵大臣自治大臣との間に覚書も交わされておりますけれども、こういうものについてどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  101. 石原信雄

    石原政府委員 ただいまお示しのように、この交付税会計において初めて借り入れを行った昭和三十九年度の補正の段階で関係規定の改正が行われたわけでありますが、その際の政府側の答弁でも、この借り入れは国の会計の借り入れであるから利子は国が負担する、そういう考え方を申し上げてきたわけです。その基本には、先ほど来申し上げておりますように、交付税という地方財源保障制度、これを国の責任で運営していく以上はその借入金利子も国が負担するという考え方がこれまで維持されてきたと思うのです。また、私どもはそれが正しいやり方である、このように考えてきたわけでありますが、この考え方は、その後の関係規定の改正あるいは国会における論議を通じてずっと今日まで維持されてきたわけでありますが、五十八年度においては残念ながらそのこれまでの考え方を一部改めざるを得ない、こういう情勢に立ち至ったわけであります。  結局、こういった事態は、私ども地方財政の立場からいたしますと大変残念なことだと思います。しかしまた、そうしなければやっていけないという今日の国の財政状況、これもわれわれとしては無視できなかった、この厳しい環境のもとでこういった方向をとらざるを得なかった、こういう点について御理解を賜りたいわけであります。
  102. 草野威

    ○草野委員 いまの御答弁を伺っていても感じるのですけれども、やはりこの制度というものは、昭和三十九年ですか、非常に長い間、事実上長期間にわたりまして国、地方間の一つの制度として定着していたものですね。こういうものを突然変更するということについては、やはりそれ相当の理由というものがきちっとしていなければならないのじゃないかと思うのです。  先ほどから国の財政事情、繰り返しそういう御答弁があるわけでございますけれども、この制度というのは五十八年度限りになるかもしれないわけですね。そういうことであるならば、国の負担の先送り、こういうことで解決できるのではないかと思います。しかし、今後新しい制度として継続するのであれば、従来の制度の根拠がどのような根拠のもとに変更されたのか、まずこの点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  103. 石原信雄

    石原政府委員 今回の改正措置は、基本的には、地方交付税法第六条の三第二項の規定に言うところの引き続き著しく財源不足した場合の必要な措置として地方行政または地方財政の制度の改正あるいは交付税率の変更を行うというこの交付税法の規定を受けて、昭和五十三年度に交付税会計借り入れ及びその借入元本の二分の一を国が負担する、そしてその前提として借入金利子は国の一般会計負担する、そういう仕組みがそれ以前にあったわけでありますが、その仕組みの上に乗っかって借入元本の二分の一を負担するという方式で当分の間やっていく、こういう地方財政制度の改正を行うということで当面の地方財政に対処しよう、こういう改正が行われてきたわけであります。  今回は、五十八年度につきまして、いわばこれまでのベースになっておりました特会借り入れ利子について、その一部を地方負担するという改正を行ったわけでありますが、この改正を含めて、やはり全体の制度としては六条の三第二項の規定による地方財政制度の改正として今後とも維持されていくべきもの、しかし、利子負担については五十八年度限りの措置として今回法律の改正を御提案申し上げているわけであります。
  104. 草野威

    ○草野委員 大臣伺いますが、五十九年度以降もこの新制度は続けられる予定ですか、どうですか。
  105. 山本幸雄

    山本国務大臣 これは一応五十八年度ということになっておりまして、五十九年度以降のことは触れておりません。
  106. 草野威

    ○草野委員 そうしますと、五十九年度以降についてはそのときの財政事情による、こういうことになるわけですね。いまの大臣の御答弁ですと、地方財政の自主性、また国、地方の間の財源の安定性、こういうことに非常に混乱を来してくるのではないか、また地方自治の趣旨に照らしてもこれは反するのではないか、こういうような感じがするわけですが、いかがですか。
  107. 山本幸雄

    山本国務大臣 先ほど来の交付税法六条の三というのは、今日もりっぱに生きている、われわれはどこまでもこれの主張をしていかなければならないと思っております。したがいまして、今日の財政の危機的な状況ということでそういうことになったわけでございますけれども、将来にわたりましては、やはり同じ六条の三というものを一つわれわれのよりどころとして地方財政の充実を図っていくという方向で努力をしたいと思っております。
  108. 草野威

    ○草野委員 この問題につきましてはまた法案の審議の際にやらせていただきたいと思いますが、先ほどから繰り返しの御答弁ですが、国の財政事情ということで仮に地方負担がやむを得ないとしても、常識的に見てその利子の一部負担というのは五十八年度の新規借入金に係る部分だけに限るべきであって、五十七年度以前の借入金まで及ぶということはおかしいのではないか、このように思いますけれども、どうでしょうか。
  109. 石原信雄

    石原政府委員 交付税会計借入金につきましては、元本については、将来にわたる元本全体について二分の一を国が負担するということを、交付税法の各年度の改正の中でそれぞれ明らかにしているわけでありますが、利子につきましては、現行の特会法の附則第四項におきまして毎年度の予算措置としてこれを行ってきたわけであります。したがいまして、いまのやり方というのは、御案内のように、特会の借り入れは長期の借り入れではなくて毎年度の借り入れになっております。借り入れた額、総額を返して、また新しい年度で総額を借り入れる、それについて毎年度の予算措置で利子一般会計から繰り入れている、こういうやり方をしております。したがいまして、五十八年度において新たに借り入れる総額の利子の一部を負担するということに今回いたしたわけでありまして、これは元本の扱いとはおのずから違う、毎年度の処理として行われているものである、このように私ども理解いたしております。
  110. 草野威

    ○草野委員 どうもわれわれはそういう御答弁を聞いても納得できないのですが、この問題はまた今度の法案の審議に譲りたいと思います。  次に、財政見通しの問題でございますが、国の財政再建の方向につきまして、大蔵省から財政の中期試算というものを発表しております。過日、総理大臣からいわゆる地方版の中期試算、こういうものにつきまして、地方財政については技術的に非常にむずかしい点もあるが、自治省に研究をさせたい、このように言っておられるようでございます。この策定についての現状はどのようになっているのか伺いたいわけでございますが、この問題につきましては大臣も非常に御熱心とか伺っているわけでございますが、いかがでしょうか。
  111. 山本幸雄

    山本国務大臣 国の方は中期見通しが一応出たわけでございますが、これは、主としてその問題の中心は特例公債をどういうプロセスで減少ないしなくするかということが中心でございます。そこに出てまいりますたとえば地方交付税は、経済の成長率、それから税の弾性値を従来のようなはじき方をされた数字であると思っておりますが、そういうはじき方であればわれわれの方もそれを受けて勉強してみたい。ただ、大蔵省でその中期見通しをおつくりになるときも、いかにも不確定要素が多いことではないだろうか。特にわれわれの方は三千三百にもわたるたくさんの地方自治体の単位の集計でございますだけに、国との整合性も考えながら、なかなかむずかしい問題はあると私は思っております。  しかしながら、地方財政の将来を考えたらいろいろな可能性、いろいろなケースが考えられるわけでありまして、それらを勉強しておるうちに、こういう問題もあるな、しかしこういう点も考えなければならないな、あるいは国の方がこうなってくる可能性もあるから、その場合はわれわれの方はこう対応しなければならないなとか、いろいろなケース、いろいろな状況を考えながら、不確定要素の多い中でもそういうものは何とかできないかな、どうしてもいいものができない、考えられるのはいかにも不確定要素が多くてできそうにもない、あるいは私はそうかもしれないと思うんだけれども、そこまでのプロセスでいろいろな勉強ができて地方財政に対するいろいろなケースが考えられてくるのではなかろうか、こういう一つの願いを込めて、いまおっしゃられたようなことを私は事務当局にも申しておるようなわけでございます。
  112. 草野威

    ○草野委員 技術的に非常にむずかしい面があると思いますけれども地方団体としても非常に期待している点でございますので、御努力をお願いしたいと思います。  次に、住民税の減税の問題について伺いたいと思います。  昨日の予算委員会におきまして、官房長官の方から、三月一日の議長見解につきまして実施努力を表明するとともに、政府の誠意を酌み取ってほしい、こういうような答弁がございました。また大蔵大臣も、減税の時期、また規模等は明確にはしなかったものの、前向きの姿勢を示しているわけでございます。  そこで、この住民税の減税という問題につきまして大臣はどのような御見解をいまお持ちなのか、まず先に伺わしていただきたいと思います。
  113. 山本幸雄

    山本国務大臣 仰せのように議長見解が示されまして、減税については最大限の努力をするということであり、また官房長官が政府の意向を表明いたしまして、この減税問題を尊重していくということであります。もとより国税の所得税の減税もあり、また地方税ということもあそこには書いてあるわけでございますから、地方税としても減税を考えていきたい、こういうつもりでおります。  ただ、仰せのように国税についてもまだ具体的に申し上げられる段階にないわけであり、また同時に、地方税につきましてもまだ具体的に申し上げる段階ではない、こう思っております。
  114. 草野威

    ○草野委員 具体的にその内容は言えない、こういうことでございますけれども、五十八年度じゅうに住民税の減税を実施できるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  115. 山本幸雄

    山本国務大臣 この問題は、一つはやはり財源問題をどう踏まえていくかという大きな問題がございます。これはひとり地方税ばかりではない、国税の方ももちろん財源問題でございますが、地方財政につきましても財源問題というものを踏まえなければならないということがございます。  もう一つは、国税と地方税との違いというものもあるわけであります。これは御存じのように、その一番大きなものは、地方税の住民税は前年度の所得をベースにしているということであり、年度途中ということになりますと、それらがやや国税と違った状態になるのではなかろうかな、こう思っておるわけでございます。その辺はもう少しわれわれの方に検討の余地を与えていただきたい、こう思っております。
  116. 草野威

    ○草野委員 そこのところは、われわれも非常に心配している点の一つなんですね。規模、内容、時期等についてはいろいろな面でまだ明確にはなっておりませんけれども、いまの大臣の御答弁によりますと、財源の方がどうのこうのというお話でございますが、これは別に置いておいて、国税との違いということを非常に強調されておりました。もしそういうことであれば、五十八年は住民税の減税は見送りということもあり得るわけですか。
  117. 山本幸雄

    山本国務大臣 あり得るとかあり得ないとか、そういうことまでこの場で私が申し上げる段階にまだ至っていない。ただ、いま私が申し上げたのは、地方税はそういう税の仕組みになっておるということ、これはもう先生方皆さん御存じのとおりでありますので、そういう点がございますということを申し上げたようなわけでありまして、いま仰せのようなことについてこの場で私が御返事をするのはまだ少し早い、こう思っております。
  118. 草野威

    ○草野委員 ぜひひとつ全力でお取り組みをお願いしたいと思います。  時間の関係もありますので、次に移らしていただきます。  警察の問題でございますが、まず初めに、最近非行少年、また校内暴力事件が非常に社会的な大きな話題になっておるわけでございますが、横浜の浮浪者襲撃事件、それから町田市の忠生中学の事件、この事件につきまして、なぜこのような事件が発生したのか、この事件の背景等につきまして、警察庁、それから文部省、両方からひとつ御見解を承りたいと存じます。
  119. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答えいたします。  先生御指摘の事件は、いずれもまだ捜査中でございますが、現在まで判明したところから申し上げますと、横浜の事件の特徴としては、十四歳から十六歳という比較的年少の少年による凶悪な犯行であるということ、被疑少年の中には、登校状況がきわめて悪く、成績も不振であるなどいわゆる落ちこぼれに属する者が多いこと、無抵抗の労務者に対して多人数で暴行を加えるなど弱い者いじめの犯行であること、それから、犯行の動機などを調べてみますと、おもしろ半分とか、日ごろのうっぷんを晴らすとか、あるいは友人に誘われたからというように、みずからが犯した行為の重大性ということに対する認識に欠けておる、そういった特徴が見られるわけでございます。  また、町田の事件は、教師が果物ナイフで教え子を刺して負傷させるという、余り例のない事件でありますけれども、この事件の背景といたしましては、生徒が校内において番長グループを結成し、他の生徒や教師に対して日ごろから暴力をふるっておった。今回の事件に関係する生徒もこの番長グループのメンバーであったということ、また、この教師は日ごろから生徒の暴力におびえておったというような供述もしておりまして、このような状況に対して必ずしも学校側の対応が十分なされていなかったように見られることなどが特徴でございます。
  120. 中島章夫

    ○中島説明員 ただいま御指摘の問題点につきましては、実は私どもの方で有識者を集めましての懇談会等も開きまして、私ども一体となりまして原因、背景、それへの対応ということを鋭意検討しているところでございますが、いまお話がございましたように、学校、家庭、社会、それから子供自身のしつけの問題といったような各般にわたっているものと考えております。  学校におきましては、忠生中学校事件の場合のように、教師間の一致協力体制がまだ不十分であるというようなところが特に問題でございます。それから落ちこぼれということも、いま新しい学習指導要領を実施いたしまして、きめ細かな学習指導あるいは生徒指導の充実ということを特に強調しているところでございますが、そういう点が問題であろうかと思います。  家庭につきましては、乳幼児期からのしつけが十分でない。従来は欠損家庭あるいは貧困家庭という問題が中心でございましたが、最近では葛藤家庭というようなことも大きな問題になっているということでございます。  それから社会的にも、都市化ということもございまして、日本は全体的に、世界的に見ますとまだ犯罪の率というのは低い方ではございますけれども、この面にも問題がある。  それから、がまんする力がない、あるいはけんかの仕方を知らない、不満を持ちやすい、こういう傾向もございまして、家庭、学校、社会一体となってこの問題に対処する必要がある、こういうふうに考えているところでございます。
  121. 草野威

    ○草野委員 警察庁伺いますが、最近の校内暴力事件の状況、補導状況だとか、また教師に対する暴力事件の状況について伺いたいと思います。
  122. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 昭和五十七年に警察把握をいたしました校内暴力事件は千九百六十一件で、前年に比べまして百二十四件、五・九%減少をしております。しかし、相変わらず凶悪粗暴な事件が多く、また校内暴力事件の中でも特に問題の多い教師に対する暴力事件は、昨年は八百四十三件発生をいたしておりまして、これは前年に比べまして七十一件、九・二%と大幅な増加を示しておるところでございます。
  123. 草野威

    ○草野委員 教師に対する暴力事件の増加というのが最近目立っておるようでございますけれども、われわれが伺うところによりますと、このような暴力事件は、実際には表面化しているものは十分の一くらいしかないのじゃないか、こういうことであります。  そこで、文部省にお尋ねいたしますけれども、いまのこういう問題と、きのう、きょうも女性教師に対するいろいろな暴行問題が取り上げられておりましたが、最近女性教師の退職者が増加しているのではないか、こういうようなことも聞くわけでございますけれども、この二つの問題につきまして文部省の見解を伺いたいと思います。
  124. 中島章夫

    ○中島説明員 いま御指摘がございましたように、対教師に対します暴力というのは、非常にこのところ急速にふえてきております。私どもといたしましては、これに対しまして、生徒指導という面の充実と教育課程の充実を車の両輪にして充実させるということを特に強調しているところでございます。小中高それぞれの段階にわたりまして、これは昨年度でございますが、毎年実施をしておりますが、指導資料というものを刊行いたしまして、小学校につきましては児童の理解指導、あるいは中学校については校内暴力問題を中心にしました生徒の健全育成をめぐる諸問題、高等学校については教育課程と生徒指導というふうに指導資料を作成して、各教育委員会、学校等に配付をし、これを各研修会等を通じましてその趣旨の徹底に努めているというところでございます。なお不十分なところがございますので、いま先ほども申しました懇談会、あるいは文部省の内部にプロジェクトチームをつくりまして、鋭意その対策をさらに充実させるというところで実施をしているところでございます。  なお、いまお尋ねがございました女子の退職の数字ということにつきましては、いまちょっと数字を持ち合わしておりません。
  125. 草野威

    ○草野委員 総理府に伺いますが、やはり関連した問題でございますけれども警察庁の方の資料によりますと、刑法犯少年の事件が年々ふえているようでございます。たとえば十四歳の少年の場合は、昭和五十七年で五万四千八百八十一人と、前の年に比べまして七千四百五十七人もふえている。また十五歳、中学三年生に当たると思いますが、これも四万八千八百七十五人ということで、前年比二千百三十人もふえている。このように非常に激増しているわけでございます。  そういう中で、総理府が中心になりまして、昨年の六月二十五日の閣議決定に基づいて非行防止対策推進連絡協議会というところでいろいろと申し合わせをやっているようでございます。この中身も読ましていただきましたけれども、これによりますと、国民運動を展開する、こういうことも言われているわけでございますけれども、この運動が現在までどのように進められてきたか、その成果、また今後どのように進められようとしているか、その対策等につきまして具体的にお尋ねをいたします。
  126. 阿南一成

    ○阿南説明員 お答えいたします。  ただいま先生お尋ね国民運動の関係でございますが、これは原則といたしまして国民運動自体は民間の皆さんの力をかりてやるということでございますが、総理府といたしましては、さらに七月と十一月に特別な月間を設けまして、七月の方は少年を非行から守る強調月間、十一月は青少年健全育成の強調月間という、この両月間を設けまして、政府のいろいろな広報予算その他を使いまして、集中的にこの期間にいろいろな催しをやらせていただいております。  たとえば七月につきましては、四十七都道府県におきまして、それぞれの地方公共団体で、総理府の委託事業になっておりますが、非行防止総決起大会であるとか、あるいはパネル展による非行防止の啓蒙活動というようなことをいたしております。またさらに、総務長官自身にも東京都の非行防止大会に御出席をいただきまして、そこでいろいろなお願い事やごあいさつをいたすというようなことをやらせていただいております。
  127. 草野威

    ○草野委員 いまのこの非行防止対策の推進のところに、こういうことが書いてありますね。「学校警察連絡協議会及び職場警察連絡協議会の活動を強化する」、こういうような事項もあるようでございますけれども、初めに文部省にお尋ねしますが、この学校警察連絡協議会、これは実際にどの程度行われておりますか。
  128. 中島章夫

    ○中島説明員 私どもで学警連と呼んでおります学校と警察との連携というのは、実はモデル的には私どもの方で生徒指導推進地域というものを指定をいたしておりまして、そこで青少年の非行防止、それから青少年の健全育成ということを主眼といたしまして、小中高等の学校相互の間、あるいは学校と地域の間、特に警察等との間でどういうふうに連携を強めていったらよろしいかということをモデル的に実施をしていただいているという事業がございます。これは全国で二十地域ございます。  その他学警連の重要性ということにつきましては、先ほどちょっと御紹介をいたしました指導資料、あるいは毎年実施をいたします生徒指導担当の指導主事それから生徒指導関係指導者等を集めましての研修会等でその趣旨の徹底を十分に図っているところでございますが、いまおっしゃいましたどれくらいの数字であるかということについては、いま正確な数字を持ち合わせていないところでございます。
  129. 草野威

    ○草野委員 警察伺いますが、いまの学校警察連絡協議会、警察の立場として、これの運営の方法だとか、運営の実態だとか、こういう協議会に対する成果だとか、こういうものについてはどのような御認識を持っておりますか。
  130. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 校内暴力の多発ということに関連をいたしまして、私ども、やはり学校と十分連絡をとりながらこれに対処をしていかなければならないということから、たとえば各都道府県警察におきましては、都道府県警察本部のレベルで教育委員会等との連携、あるいは各警察署レベルにおきましては、各警察署と管内にあります学校との間で学校と警察との連絡協議会という形のものを持ちまして、相互に情報連絡を行っておるところであります。  確かに校内の問題、暴力問題につきましては、まず第一義的には教育的な配慮に基づきまして、学校自体で解決をされるべきことであろうかと思いますが、私どもが取り扱ういろいろな事件を通じて見ますと、やはりその対応におくれたがために、かえって問題を大きくしてしまったというようなケースもございました。私どもは、できるだけそういった学校の先生といろいろな形で御相談を申し上げて、早期に発見をし、少年を非行から守り、補導していきたい、かように考えておるところでございます。
  131. 草野威

    ○草野委員 もう少しはっきり伺いたかったところでございますが、別の角度からちょっと伺います。  この所信の中にも出ておりますけれども地方公務員の厳正な服務規律の確立、こういう点が出ておりますけれども警察伺いますが、この地方公務員、地方公務員といいましても特に教員の関係について伺いたいと思いますが、教員による汚職犯罪の検挙状況、最近ので結構でございます。また、同じく教員による暴行、傷害、窃盗その他刑事事件、こういうものについて、数字をおわかりでしたらお示しを願いたいと思います。
  132. 高田朗雄

    ○高田政府委員 昭和五十七年の統計が現在集計中でございますので、昭和五十一年から六年までの状況についてお答えをいたしたいと思います。  最初に、地方公務員たる教員のうち賄賂罪で検挙された者の数字でございますが、昭和五十一年には三人、五十二年が同じく三人、五十三年が二人、五十四年が二十一人、五十五年はございませんで、五十六年が一名、こういう数字に相なっております。  それから、教員の暴行、傷害あるいは窃盗その他ただいま申し上げました賄賂罪を含みまして教員の検挙された者の総数を申し上げますと、昭和五十一年が三百五十三名、五十二年が三百七十名、五十三年が三百六十八名、五十四年が二百十六名、五十五年が二百二十九名、五十六年が二百十五名と相なっております。六年間を平均して年間単位に割ってみますと、一年に二百九十二人の検挙を見ておる、こういう状況でございます。
  133. 草野威

    ○草野委員 最後に、この問題につきまして大臣お尋ねしたいと思います。  いま警察の方からお話がございましたように、いわゆる教員の知能犯的なものは、毎年一とか三とか、多いときで二十一という例外的な数字がございましたけれども、暴行事件だとか傷害事件だとかまた窃盗ですね、その他が入ると思いますが、こういうような事件につきましては、この六年間を平均すると二百九十二件、こういうような状況で、私も伺いまして非常に驚いておるような状況でございます。確かに非行を起こす少年の方にも大きな問題もありますし、またこういう数字からうかがいますと、教師の資質という問題についてもやはり考えさせられる問題も出てくるわけでございます。  この問題につきましては、大きな教育上の問題でございますが、先日総理大臣から、二月二十五日ですか、青少年の非行問題につきまして内閣全体の課題として取り組んでいきたい、このような決意発表がございました。各省が協力して早急にその緊急対策をまとめるように、こういうような指示があったようでございますけれども大臣として、また国家公安委員長として、この問題につきましてどのように受けとめていらっしゃいますか、またどのような対策大臣としては考えておられますか。
  134. 山本幸雄

    山本国務大臣 最近、われわれの常識を超えるような少年非行の事件が次から次へ起こったわけであります。しかしながら、この問題は根は非常に深い問題であり、関係する方面は私は非常に広いことであろうと思うのです。  私どもの方は、警察の窓から見た少年非行問題と処理、そういう考え方に立てば、最近非常に低年層に移ってきた、十四歳くらいが一番悪いという状況、それから学校暴力は中学校、特に公立中学校に多いということ、なぜ公立中学校に多いのだろうか。それから、校内暴力の数全体は私は少し減ったように聞いておりますが、しかし、教師に対する暴力事犯というものがふえてきた。それから横浜の事犯で見られますように、弱い者いじめをしていく、強い者にはなかなかぶち当たらないで弱い者にぶち当たっていくということ。私は、これらはかわいそうな子供で、親はもちろんのこと、だれとも精神的な交流がない、頼るのはただ仲間のグループだけだ、そしてグループで行動するというようなことであり、基礎的な人間としてのしつけといいますか、あるいは考え方といいますか、そういうものに欠けておるという感じがいたします。  そういう特徴を考えてみますと、家庭教育も非常に大事であります。また学校教育もしっかりやっていただかなければならない。また地域の少年を取り巻く環境の浄化ということも考えていただかなければならぬ。これらを総合して、全体として真剣な運動をひとつやっていただきたいと私は思っております。  その中にありまして、では警察はどういう任務を分担するかということを私どもは考えていかなければならぬと思っております。それについては、事は教育に関する、人間をつくっていくということでございますから、警察が余り出しゃばってもいけない、さりとて、暴力が行われておるのに余り引っ込み思案でももちろんいけないというところで、その辺をひとつよく考えながら、私どもは、全体の少年非行防止運動の中で、警察の役割りというものはひとつ積極的にその任務を果たしていきたい、こう考えております。
  135. 草野威

    ○草野委員 時間が参りましたので、これで終わりにさせていただきたいと思いますが、いまの大臣の御答弁を伺っておりまして、非行少年の問題は非常に重要な問題を幾つもはらんでいると思います。いまおっしゃられた中で、非常に年齢が年々若くなってきておる、特に十四歳の少年の事件が増加しておる、こういうお話でございますが、まさにそのとおりでございまして、いわゆる十三歳以下の触法少年、これについて見てみましても、十二歳以下の場合には毎年毎年事件が減っているようでございます。しかし十三歳に限っては、五十七年、五十六年を比べてみますと、六百八十八名もふえている、何と三万八千人もの少年が何らかの事件を起こしておる、こういう実態もございます。そういう意味では確かに年々若くなっている、こういうところも含めまして対処していかなければならない。  これは一文部省だけの管轄の問題ではないと思います。警察警察としての非常にむずかしい立場はあろうと思いますけれども、内閣全体、また国民全体で取り組んでいかなければならない重要な問題だろうと思いますので、今後もこの問題につきましては、われわれも大いに関心を持って取り組んでまいりたい、そのことを申し上げまして、質問を終わりにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  136. 田村良平

    田村委員長 青山丘君。
  137. 青山丘

    ○青山委員 大臣が途中で出られますので、質問が進みかけて、また継ぎはぎのような形で後段をさせてもらいますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  まず最初に、先般所信表明がありました。その中で大臣は、地方財政をめぐる環境を厳しいものとし、これに適切に対応し、地域住民の福祉の向上と地域社会の健全な発展を図るためには、長期的な展望のもとに行財政改革を推進し、地方自治の基盤の一層の充実を図ることが必要である、こう述べておられます。しかし、どうも抽象的で、具体的にはどのようなことを大臣は考えておられるのか、まず伺っておきたいと思います。
  138. 山本幸雄

    山本国務大臣 やはり地方財政は、大変いま厳しい現状にございます。しかし、その中にありましても、地方の社会的、経済的な状況の変わっていく中で、地方自治体というものは、住民の福祉ということと地域全体の繁栄ということを目途として進んでいかなければならぬものだと思います。そういう目標に向かって、いまは厳しい地方財政ではあるけれども、やや長期的な展望に立って行財政改革をやらなければならぬ。  行財政改革については、一つは歳入をどう確保していくかということと、今度は反面、いかにコンパクトな行政運営をやっていくのであるかという、その両面から考えなければならないと思うのです。こういう厳しい状況でございますから、地方自治体も、私はいろいろそういういま申し上げたような方向で御努力をいただいておると思います。それに対応いたしまして、先ほどもお尋ねがございましたように、臨調の答申の中にもございますように、国と地方との仕事の分担を見直して、地方がより多くの仕事を持って、いわゆる地方分権を推進をしていくということでなければならないわけでございます。そのためには、地方公共団体がいろいろお考えをいま願っておる、たとえば歳出をより合理化あるいは簡素化していただくという方向の御努力をやはり願わなければならないでしょうし、また国の方といたしましても、機関委任事務の問題、補助金の問題、許認可事項の問題、あるいはどの程度できるかわかりませんが、出先機関の整理ということなども考え合わせまして、国と地方が相呼応して地方自治の基盤が充実をしていけるようにひとつ今後とも努力をしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  139. 青山丘

    ○青山委員 歳出をできるだけコンパクトに行政改革を進めていく、また入るを図る、歳入の面でも安定的な財源の確保を図っていく。私は、入るを図るということでこれからちょっと質問させていただこうと思っておったが、大臣、もう一問よろしいですか。——それでは、後で続きをやりますから。  今日の地方財政状況については、すでに各委員の質疑の中で述べられております。私から改めて申すまでもないところと思いますけれども、五十年度以降巨額の財源不足が生じ、その都度交付税の原資の借り入れ地方債の増発によって補てんされてまいりました。その結果、五十八年度末で地方債の現債高三十八兆円、三十八兆九百十三億円、これに五十八年度末の交付税特別会計借入金残高の見込み額十一兆五千二百十九億円、十一兆円の借入金、及び普通会計でその償還負担することとなっている公営企業債残高の見込み額七兆五千七百九十四億円、七兆円の公営企業債、これらを加えてまいりますと、地方財政の借金の総計は五十七兆一千九百二十五億円、こういうふうに見込まれております。その償還地方財政の将来にとって大きな負担となってまいります。非常に厳しい状況にあることは自治大臣もお認めになると思いますが、地方財政現状をどうとらえておられるのか、伺っておきたいと思います。
  140. 山本幸雄

    山本国務大臣 確かにおっしゃるように、いま地方債はお読み上げのように、合計五十七兆円という大変な巨額に達してきたわけであります。ただ、国の方の公債残高と違いますことは、いま御指摘のように、地方債交付税特会、そして企業債の残高と、こう三通りに分かれており、また単位も三千三百というたくさんの単位に分かれておる借入金であるということでございます。しかし、いま厳しい地方財政の中でこれらの償還をしていただくということは、私は容易なわざではなかろう、まことに容易ならざることと相なっていると思っております。  まず、地方債につきましては、これは地方債償還計画をそれぞれの地方自治体でお立てになっておりますから、私は地方債償還をぜひひとつ地方公共団体は努力をしていただきたいと思っております。これはなかなか容易なことではないと思いまますが、そういう努力を望みたいわけであり、私どもできるだけのお手伝いもしなければなるまいと思っております。  交付税特会につきましては、このうち国との関連もございますから、それらをひとつ考えながら、できるだけ借入金の残高、それぞれ一通り償還計画はできておるわけでございますので、何とかあんまり先送り先送りしないように交付税特会借入金もひとつやっていきたい。  それから企業債につきましては、これはやはり企業努力というものもぜひがんばっていただきたい、こう思っておりまして、大変むずかしい問題であり、厳しい情勢でございますが、これらの借入金について、地方公共団体の今後の御努力、そして私どももそれに対してできるだけの努力を重ねていくということで、今後切り抜けていきたいと思っております。
  141. 青山丘

    ○青山委員 大臣、もうお出かけでしょう。地方財政対策の途中で少年非行問題もないかもしれませんが、大臣の都合で出ておられますので、私は少年非行と警察行政について少し質問したいと思います。  先ほど来の質疑の中にもありましたが、最近大変ショッキングな事件が相次いで発生しております。一つは横浜市内で中学生、高校生ら十人のグループが、多くの浮浪者を襲撃して死傷させた事件であります。もう一つは、東京町田の中学校で、教師が、暴力常習の生徒二人から暴行を受けた際、持っていた果物ナイフで一人の生徒の胸を刺した事件であります。  浮浪者という社会的弱者や、原爆症で体の弱い教師に対する暴力行為は残忍そのものであり、その残酷さには慄然とするものであります。弱い者いじめ、弱い者への攻撃、そういう風潮というものが正義感の欠如に社会的な風潮としてなってきておるのではないか、つまり社会正義の荒廃になってくるのではないか、そういう意味で、次代の担い手となってくる子供たちのこうした風潮について、私は大変心配をするものであります。  そこで、最近の少年非行の特徴としては、一つは少年非行の低年齢化、それから暴走族の増加、そして校内暴力の増加などが挙げられておりますが、実はこれらの問題については、顕在化してすでに久しいわけであります。このような状況に対して、政府はいままで有効な対策を用意してこなかったように思われてなりません。少年非行に対しては、家庭や学校における教育がやはり第一義的に重要であります。それゆえにまた、政府としても有効な対策をとりにくかった事情もわからないわけではありません。しかし、それにしても最近の少年非行の状況は目に余るものがあります。政府としても、少年の非行防止と非行少年の非行からの立ち直りについて、何らかの有効な手だてをとる必要があるのではないかと思います。  少年非行対策は、社会、政府、自治体、学校、家庭などでそれぞれのなすべき分野があります。またその協力関係も重要でありますが、本日は、少年非行問題について警察の果たすべき役割り、またそのあり方を中心に少し質問したいと思います。  まず、警察は少年非行問題についていままでどのような対策をとってこられたのか、伺っておきたいと思います。
  142. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 警察といたしましては、従来から街頭補導活動の強化によりまして、非行少年を早期に発見する、あるいは少年の福祉を害する犯罪の取り締まり、こういったような諸活動を積極的に推進してまいったわけでありますけれども先生御指摘のように、昨今の少年非行情勢にかんがみまして、昨年の五月二十七日に、長期的な展望に立ちました総合的な少年非行対策を進めていく上での警察がやる活動の指針として少年非行総合対策要綱というものを策定いたしました。  現在、この要綱に基づきまして第一線で一生懸命やっておるわけでございますが、特に最近重点を置きたいと思っておりますのは、第一は暴力非行対策の推進でございます。これは、校内暴力事件を初め、今日の少年非行の質的な悪化を示しております大きな要因は、一人ではない、つまり非行集団という集団グループによって非行が行われておるという点がございます。したがって、こういった非行集団の実態を十分把握して、もちろん家庭とか学校と十分連携をとりながら、この非行集団の解体補導ということをやっておるわけでございます。  二番目は、有害環境の浄化対策とでも申しましょうか、少年は肉体的あるいは精神的にも未熟なものでございますから、取り巻く社会環境に支配をされやすい。しかも少年を取り巻く社会環境はますます悪化をしておるというようなことから、各種法令による取り締まりの強化は当然でありますけれども関係業界と各種懇談会を通じて業者の自主規制を促したり、あるいはこれと並行して有害環境の浄化の住民運動を連動させて推進をしております。  三番目は、初発型非行対策と申しておりますが、これは万引きあるいは自転車盗、オートバイ盗といったような、犯行の手段が比較的容易で、しかも動機が単純なもの、そういった特徴の非行でございます。これは数の上では非常に多うございますので、この初発型非行対策ということで、全体で約六割ほど占めておりますが、昨年若干この伸び率は鈍化をいたしましたものの、全体の中で占める割合は非常に高いわけでございますので、関係業界と定規的に会議などを開催いたしまして、たとえばスーパーなどが非常にふえてきた、従来は、私服で単につかまえるためだけにガードマンがいたような形態も見られたわけでございますが、それはいけない、やはり制服を着て、犯罪を犯させないようにしようではないか、あるいは鏡を設けてそういったことを防ごうではないかということで保安施設の整備なども要請いたしております。もちろん、こういった問題は、家庭、学校、地域社会にも働きかけ、一体となって非行の発生自体を抑止していくための環境や条件づくりに努めていきたいと思っております。  四番目に、これは大きな問題でありますけれども警察だけの活動によりましてはこういった少年非行というものはなかなか効果を上げにくい問題でございます。これはやはり国民運動といった形での動きが必要でございます。そういった意味で、少年問題に関係のある機関、団体はもとより、広く国民一般が非行問題について共通の認識に立って、相互に連携をしながら非行防止のための国民運動に参画をしていくということが必要であろうか、このように考えまして、たとえば知事部局等に働きかけまして、少年を非行から守る日を設定するというようなことなど非行防止のための国民運動が促進されるように努めておるところでございます。
  143. 青山丘

    ○青山委員 最近特に校内暴力の発生件数が増大し、しかも中学生によるものが中心となってきております。警察としては、校内暴力の原因、校内暴力の背景、これについてはどのようなものがあって、どのような対応を考えておられるのか。恐らく警察の立場では、家庭だ、そら教育だと考えておられると思うのです。そういう点でも気づかれる点があったら、ひとつこの機会に思い切って言っておいてください。同時に、警察としてはどのような対策ができるのか、またしなければならないのか、その辺の御見解を伺いたいと思います。
  144. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答え申し上げます。  校内暴力の原因とか背景あるいはその対応策ということで御質問でございますが、五十七年中に警察把握をいたしました校内暴力事件は千九百六十一件でございまして、校内暴力事件全体で見ますと、前年に比べまして五・九%ほど減少をしておりますが、校内暴力事件のうち特に問題の多い教師に対する暴力事件が八百四十三件発生をいたしておりまして、これは前年に比べて七十一件、九・二%と大幅な増加を示しておるわけでございます。  この原因とか背景、傾向を見てみますと、先ほども大臣が御答弁いたしましたが、校内暴力の大半が中学校、しかも公立中学校で起こっておるということが言えます。それから、校内暴力事件を引き起こした生従の大半がいわゆる落ちこぼれ層であるということが言えますし、また校内暴力事件を引き起こした生徒の多くが、いわゆる放任家庭に育っておるということが言えます。これは何も経済的な貧困とかいう問題ではございません。放任家庭に育っておる。それから、先ほども申し上げましたようにグループ、いわゆる番長グループによる事件が多くて、また、時によりますと、背後に校外の粗暴集団が存在をしておりまして、これがまた校内での暴力事犯というものを一層悪質化さしておるというようなことがございました。確かにこの背景と申しますのは一概に申せませんが、家庭、学校、あるいは地域社会の抱えるいろいろな問題が複雑に絡みあっておるというふうに考えておるわけでございます。  基本的に、警察といたしましては、この種事件は、本来、学校当局の適切な生徒指導によって未然防止が図られることが最も望ましいというふうに期待をしておるわけでございますが、しかしながら、最近の事件を見てみますと、凶暴性の強い事件であるとか、あるいは学校当局のどうしても手に余るような事件が目立っておるわけでございます。したがいまして、警察といたしましては、やはり早期に学校当局が毅然たる態度をもって暴力というものに対処をしていくということが一番肝要ではないかと思っております。先ほど大臣も御答弁ありましたように、私ども指示を受けておりますのは、警察が出しゃばってもいかぬし、しかし決して暴力というものに対しては引っ込んでもいかぬ、こういったことで、学校あるいは教育委員会あるいは地域社会とも十分連携をしながら対応しておるところでございます。
  145. 青山丘

    ○青山委員 保安部長の御見解、いまおっしゃったように、昔と大分変わってきておりますね。昔の暴力集団というのは、よその学校でやはり暴力集団があって、うちの学校の生徒が痛めつけられておると、弱い者をかばって、そしてそこには同じ暴力でも蛮カラ的な正義感がありましたよ。まだかわいかった。ところが最近は、まことに残念ながら、弱い者を痛めつける。これは正義感がまことに荒廃してきておる。  そして、これは生徒だけじゃないですね。恐らくきっと家庭にもこの問題があるんじゃないかと思うが、特に学校の先生、きょうは警察に対しての質問ですから文部省呼ばなかったんですが、学校の先生もどうも落ちこぼれ先生の集団じゃないかと思うような印象を、あの町田市立忠生中学校の先生では感じましたよ。先生たちも同僚の教師をかばわない。かばってもらえない先生もまあ落ちこぼれだけれども、かばわない先生も落ちこぼれじゃないかしらと私は思いました。  つまり、こういう社会的な風潮に対して警察は非常に柔軟な対応が求められてくると私は思うのです。後で少し触れたいと思いますが、いままでの取り締まり中心の対策ではいけなくなってきておるのではないか、そういう新しい状況になりつつあるという認識がおありかどうか、いま一点、ちょっと聞いておきたいと思います。
  146. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたとおり、私ども、校内暴力の問題につきましては、一つは、やはり学校当局の適切な教育的な配慮といいますか、指導ということで解決されることが一番望ましいわけでございますけれども先生御指摘のように、正義感の欠如というようなことも申されましたが、昨年の総理府の諮問機関でございます青少年問題審議会の答申の中にも指摘されておりますように、少年の規範意識が薄れてきておるということが指摘をされております。先般の横浜の事件等の少年の動機などを見てみましても、おもしろ半分にやったとか、あるいは弱い者いじめ、相手から何もされないからというようなことでやっておる。自分が犯した結果の重大性ということについての認識が薄いということがやはり一番心配な点でございました。  校内暴力の点につきましては、たとえば被害届を出すこと自体が悪いことであるというような風潮ができてくることは一番恐ろしいわけでございます。私ども決して取り締まり本位だけで事柄が解決するとは思っておりませんけれども、やはりそういった少年の規範意識をより高めるためのいろいろな施策というものが総合的になされるべきだと思います。警察はその中で警察の使命を全うしていきたい、かように考えております。
  147. 青山丘

    ○青山委員 先ほどその背景について触れておられますが、その原因究明に関してですけれども、少年の精神的、肉体的未熟さなどの特性を理解した上での総合的な把握になっているのかどうか、あるいは警察対策を前提とした原因究明になっていないかどうか、私は疑問を持っております。したがって、その原因と対策関係は本当に正しいのかどうか。警察としては正しい、しかし関係機関や関係団体との間の十分な連携がとられ、協議がなされているものかどうか、その点はどうでしょうか。
  148. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 私どもも、少年非行、中でも校内暴力の問題につきましては、各県警察で取り扱いました事件につきましていろいろ報告を受理をし、特に教師に対する暴力事件の実態につきましては原因究明に努めておるわけでございますけれども、やはり全体的な傾向としては、先ほども申し上げておりますように、校内暴力事件を引き起こしました生徒の大半はいわゆる落ちこぼれ層であるということ、それから、校内暴力事件を引き起こした生徒の多くがいわゆる放任家庭に育っておるということ、それから単独ではなくしてグループ化しておるというようなことも見られまして、複雑に絡み合っておることは先ほどお答えしたとおりでございます。  したがいまして、まず家庭であるとか学校等の対応が重要であると考えますけれども警察として、いまこの問題と取り組む一つのポイントは、学校なり教育委員会なりと緊密な連絡をとるということであります。このために、各警察署段階、あるいは各警察本部段階でも、教育委員会あるいは学校との学校警察連絡協議会という場を設けております。これを積極的に開催をして緊密な連絡をとるということが第一であります。それからまた、校外、学校の外でのこういった補導活動ということを推進をして、また、地域社会の非行防止意識というものをみんなで育てていこうというようなことについてじみちに努力をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  149. 青山丘

    ○青山委員 私は、警察取り締まり本位に対応してきたということがあるのではないか、そういうところから学校側に警察に対する拒絶反応があったと思われるのです。  警視庁の防犯課が、町田市立忠生中学校に、あの事件のある数日前にも接触をしております。にもかかわらず、学校側は、別に問題がないという拒絶反応を示しておる。これは私は学校側の責任は重大だと思います。これは許されない。しかし、だからといって警察はすべての責任がないかと言えば、世の中はそういうものじゃないと思うのです。相手は間違っていますよ。学校側が間違っている。しかし、学校側だけにすべての責任があったかというと、そこにはやはり警察当局の方も幾分の責任があったのではないか。昔からけんか両成敗、これはけんかの問題とは違うのですけれども警察側に対する拒絶反応みたいなものが学校側にあった。その責任は学校側にあるけれども、幾らかの責任は警察側にもなかったかどうか。  少年の非行防止を図り、その健全な育成に資することを目的とする警察活動を少年警察というとすれば、少年警察は、成人犯罪についての真相究明を使命とする刑事警察とはおのずとその性格を異にするものでなくてはなりません。しかし、そのような性格の相違というものは、警察の側でもあいまいで、まして一般国民の認識あるいは学校の教師からは、少年警察は少年を対象とする刑事警察であって、警察はすぐ犯人扱いをすると考えられて反発を買っているのではないかと思います。  そこでまず、少年警察と刑事警察の性格の相違をこの際明確にして、たとえば組織や人事も区分していく。日常活動もこのような相違が十分に理解してもらえるように行っていかないと、学校と警察との連携や協力というのは今後も進んでいかないのではないか。少年非行や校内暴力に適切な対応がとれないのではないかと私は思います。  国家公安委員長、来られたばかりで十分御理解いただいているかどうかわかりませんけれども、この問題は、あるいは保安部長でも結構ですけれども、部長さん、少年警察をどのようなものと考えておられるのか、また今後どのように運営していくおつもりなのか、学校側の拒絶反応についてはどのように考えておられるのか、伺いたいと思います。
  150. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 まず、刑事警察との性格の相違ということについてお答えを申し上げようと思いますが、警察では、少年の非行防止、その健全育成を図るという観点から、たとえ犯罪の捜査でありましても、少年を被疑者とするものにつきましてはできるだけ強制捜査を避けるなどして、少年の心情を傷つけないような慎重な配慮を行う。また、単に犯罪事実のみならず、少年の性格あるいは家庭環境などについても詳細な調査を行いまして、家庭裁判所における審査に資することにいたしておるわけでございます。  また、この少年警察活動と言われるものの中には、こういった少年事件捜査だけではございませんで、有害環境の浄化をするための対策、あるいは少年問題についていろいろ悩みの多い、悩んでおられる保護者の方や生徒自身からの相談を受ける少年相談活動、あるいは家出少年の発見、保護活動とか、少年の規範意識を高めるための社会参加活動、あるいは警察の道場を開放して少年の柔剣道活動をやるといったような、刑事警察にはない幅広い活動を含むものがございます。  したがいまして、警察では、警察庁においてはもちろんでございますけれども、各都道府県警察本部におきましても、少年警察活動を担当をいたします部門と刑事警察活動を担当する部門を区分をしております。また、こういった少年の特性というようなことからも、特に少年警察活動に従事をする職員には各種の研修を行いまして、少年取り扱いについての専門的な教養を身につけるように努力をいたしております。また、一部ではございますけれども、全体的な数から言えばそう多くはございませんけれども、社会学とか心理学等の教育を受けた人を採用いたしまして、専門的な職員として少年活動に従事をさせるように努力をしているわけでございます。  したがいまして、学校から拒絶反応があるとすれば、これはまことに残念なことでありますけれども、私どもそういった趣旨を十分御理解いただくために、いろいろな場を通じて学校等との連携も十分とってまいりたい、かように考えております。
  151. 青山丘

    ○青山委員 私は、少年非行対策や暴力問題についての取り組みは、学校だ、警察だ、こういった縦割り行政ではもはや不十分だと思っております。その意味で、国も地方団体も少年非行に関する総合的な対策を樹立して、なおかつ、その対策実施していく場合には、関係各省や関係各機関の相互の意思疎通を十分に図るべきだと思っているのです。やはり相互の連絡が必要である。そのためにも、たとえば関係省庁や関係機関における人事交流も活発にしていく必要があるのではないか。少年非行対策に関する行政の円滑な運営を図っていくことにそれがなっていくと考えております。  この点は、国家公安委員長、どうでしょう。縦割り行政ではなかなかむずかしい、各関係機関の相互の連絡をとっていく必要がある、そういうためにはまた人事交流も必要ではないかと思いますが、公安委員長の御見解はいかがでしょうか。
  152. 大堀太千男

    ○大堀政府委員 お答え申し上げます。  確かにこの少年非行問題あるいは健全育成の問題は、いろいろな関係機関、団体等がございます。それが効果をあらしめるためには、一体的なあるいは長期的かつ総合的な対策が必要なことは当然でございます。  人事交流というような御指摘でございますが、現在、国レベルでは、総理府の青少年対策本部警察庁職員を出向させております。それから県の段階でも、知事部局の県の少年部局へ警察職員を出向させるなどいたしまして、警察といたしましてはそのいろいろな関係機関との連携を保ち、縦割り行政の弊害をなくすために一生懸命努力をしておるところでございまして、今後とも、私ども関係機関と十分協力をしながら施策を進めてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  153. 青山丘

    ○青山委員 時間がありませんので、まだこの問題は少しお聞きしたいと思ったのですが、先ほどの続きの方へ戻りたいと思います。  自治大臣地方財政が非常に厳しい。この地方財政を何とか健全な形へ持っていくための決意みたいなものをぜひ聞かしていただきたい。  本来ならば、この財源不足については、交付税法の規定によって、交付税率の引き上げで対処しなければならないと私も思います。午前中からの質疑で繰り返しその問題は取り上げられてきました。交付税財源交付税の原資を借り入れをする。そればかりではなくて、五十三年度から借り入れ償還については地方団体が二分の一負担をする。五十六年度から臨時地方特例交付金を借り入れに切りかえてきた。五十七年度には交付税の原資を国に貸し付けた。これらの措置が講ぜられてきたわけでありますが、これは地方財源の圧縮であります。これではだんだんと地方財政も硬直化をしていかざるを得ない。さらに今回は、交付税の原資にするために借り入れた資金の利子にまで地方負担をするに至っております。このまま推移すれば、地方の自主的かつ安定的な財政運営支障を来すような事態さえ十分予想されます。  今後の地方財政についてどのような決意で大臣は臨まれるのか、伺いたいと思います。
  154. 山本幸雄

    山本国務大臣 地方財政国家財政との関連ということであります。これは、地方税法の上でも非常に国税と連動している面が多いと私は思うのです。また、国税三税の三二%という交付税、これは本来地方の税であるべきと思っておるわけでございますが、そういう国との関連が非常に強くあります。それらの国と関連している面について、今後地方税法、地方税制の上において、また交付税というものの中身、内容についても検討を要するものではないだろうかと私は思っております。  簡単な話が、まだそんなことはどうなるかわからぬということでございますが、もし直間比率が動くといったときに、直税が減ってくるということになれば、たちまち交付税に響いてくるということが起こるわけであります。また、今回減税を所得税でされますと、それも交付税に響いてくるということなどありまして、そういう国税との関連するところが多いだけに、地方税を確立していくというのは、そういう面を十二分に考慮をしてもらわなければならないということになる。  戦後、シャウプ勧告というのがありました。そういうシャウプ勧告のときのような考え方も一つあったわけでありますが、今日は今日のような地方財政の立て方になっております。そういうものも、私は、先ほど申し上げたこの中期的な展望といいますか、見通しの中でも、いろんなケースを考えて勉強していかなければならぬものだ、こう思っておるわけでございまして、今後いろいろな観点で考えながら地方財政の充実ということに努力をしていこう、こう思っております。
  155. 青山丘

    ○青山委員 大臣も相当苦しい御答弁ですけれども、結局、国の財政、泥沼の中へ地方財政も引きずり込まないでいけないものかと実は私どもは考えておるものです。今回のこの交付税の原資にするために借り入れた資金の利子負担については、地方制度調査会は、国が全額負担すべきである、こう述べております。したがいまして、今回の措置は、自治省方針としては五十八年度限りなのか、五十九年度は利子地方負担は導入されないのかどうか、御見解はいかがでしょうか。
  156. 山本幸雄

    山本国務大臣 これは、五十八年度ということでこういう措置をしたわけでございますから、五十九年度以降については決まっていない。しかし、私どもは、この措置は五十八年度限りにするように折衝もし、努力もしたいと思っております。
  157. 青山丘

    ○青山委員 私は、昨年の四月、当時の土屋財政局長に、地方財政の長期展望を策定して、それに基づく地方財政運営を展開していくことの必要性を主張してまいりました。この問題を取り上げましたが、その際には政府より前向きな御答弁をいただいております。山本自治大臣は、就任早々、中長期的な地方財政の展望を明らかにするためその作業に着手すると報道をされておりましたが、現在どのような状況になっておりますか、伺いたいと思います。
  158. 石原信雄

    石原政府委員 地方財政の中長期的な展望についてでございますが、先般大蔵省から国の財政につきましての中期的な試算というものが発表されております。こういったものに対応して、地方財政についても何らかの展望といいましょうか、試算が必要である、こういう考え方のもとに検討を加えております。  ただ、先般大蔵省が発表した中期試算につきましては、歳入の面では経済成長率あるいは租税弾性値などについて一定の想定を置いて税収見積もりなどを行っておりますから、そちらは同じような前提に立てば計算が同じようにできるわけでありますが、問題は歳出であります。  歳出につきましては、各省ごとに後年度推計というものを全部とりまして、各省の事業計画で後年度どういう支出が予定されるかというものを積み上げて、これが積算されております。地方財政について同様のことを行うといたしますと、まず、国庫補助負担金を伴う事業につきましては、各省庁別に事業の内訳をいただかないと、地方財政負担額あるいは地方の事業規模というものはわからないわけでございます。そのデータが全部いただけない。各省にもお願いしているのですが、なかなかとり切れない。  それから、何よりも問題なのは、地方の単独支出であります。地方の独自の施策につきまして、三千三百団体について後年度負担、後年度支出計画というものを全部把握するということは、これはほとんど不可能に近い状況であります。と申しますのは、団体によって後年度のいわゆる財政計画として支出予定額を明らかにしているところもありますけれども、むしろこれは非常に少ないのでありまして、ほとんどの団体が、この長期計画のあるものは抽象的な計画でありまして、歳出額まで確定しているものはきわめて少ない。こういうようなことから、後年度負担を国と同じような形で積み上げるということは、地方財政の場合には技術的にほとんど不可能に近い、このような問題に突き当たっております。  それから、そこのところを一定の想定を置いて試算する、要するに、積み上げではなくてマクロ推計で行うということは、これは一つの方針を立てれば不可能ではありませんが、その結果などについていろいろまた問題がある、その及ぼす影響等も考えなければいけない。実は昨年度、先生の御指摘に基づいて当時財政局でもいろいろ検討いたしました。ところが、あの当時の国の経済成長率の見込みあるいは租税負担の見込みで計算しますと、地方財源は相当大きく伸びてくるという計算になるわけです。そうすると、地方財政収支はかなりの黒字になるという事態も出てくる。そういうものをオープンにした場合に、地方団体がそれを指針としてそれぞれの財政計画を立てた場合には、また大変な問題が起こってくるというようなこともありまして、実は昨年度も検討いたしましたが、オープンにできなかった、オープンにする自信がなかったわけであります。  今回も、先般の国の収支試算に即して、どういう姿なのか検討いたしておりますが、これを公にできるかどうか、この点についてはさらにその及ぼす影響あるいは内容等を比較考量しながら、もうしばらく研究してみたい、このように考えております。
  159. 青山丘

    ○青山委員 中長期的な展望を出しますと、その見通しを誤ったとかとかくの論議を増幅させていく、そういう心配があるかもしれません。しかし、自治省が将来地方財政を展望していく上に、その試算となるものがやはり必要ではないか、自治省自身が持っていかなければいけないのではないか。他からの批判を恐れる余り将来展望を持たないということも、これはまたかえって本末転倒でございます。そういう意味で私は、批判があってもいいと思う。鈴木内閣のときに、五十九年度までに赤字財政の脱却を図るめどを立てるんだ、五十九年度までには赤字公債をゼロにすると公約されたが、これについても、かえってあんなこと言ってしまったからその後いろいろな批判を受けたという見解もあるでしょうけれども、それは社会情勢がこういうことになってきているのですから、一概にそればかりを批判しても意味がない。むしろ地方財政の長期展望を持つことで、こういう厳しい地方財政事情の中で将来を展望していく道筋を自治省が示すべきではないか、そういう考え方で申し上げておりますので、途中で挫折するようなことがなく、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。  それから、まだかなりの質問を残しておりますが、先ほどのサラリーマン減税について、中曽根総理大臣が非常に前向きな答弁を衆議院の本会議場でなされました。議長見解も出ております。そういう中で少し自治大臣の御見解を伺っておきたいと思います。  近年、わが国は低い経済成長が続きまして、経済不況から多くの問題が出てきております。その意味で、景気対策、内需拡大のために減税が必要だと繰り返し訴えてきたところでありますが、所得税減税と同時に、住民税減税もまた重要な課題だと言うべきであります。  そこで自治大臣、近年の税負担の推移をどのように受けとめておられますか。国民の所得水準が上昇する中で、住民税は若干の修正が加えられたとはいえ累進的に増加を続け、税負担国民生活を圧迫してきております。標準世帯の給与所得者の場合に、所得税を含めて税の負担の比較をしてみますと、昭和五十二年の年収三百万円の方は昭和五十八年四百十七万円、この六年間に年収は三九%増加してきております。ところが税額では、十一万三千百九十円から二十九万九千九百三十円、一六五%アップしております。つまり昭和五十二年度の税額を一〇〇としますと昭和五十八年度は二六五、年収の伸びは三九%、ずいぶん税負担が増加しております。年収五百万円の方は、三九%の伸びですと六年間に六百九十五万円になっている。税額で見ますと、四十六万二千八百六十円が九十七万二千五十円、これも一一〇%の伸び、税引き後の手取り額の増加率が三一・八%、つまり三九%に及ばない。  このように、名目賃金が上がると必然的に高い税率がかかって税負担は増している、生活が圧迫されている、こういうことを示しているのでありますが、住民税も含めまして近年の税負担の推移、自治大臣はどう受けとめておられますか。
  160. 山本幸雄

    山本国務大臣 おっしゃるように、名目賃金が上がっていきますと、やはり税負担がふえてくるということでありまして、これは主としていまの所得課税制度の中で超過累進税率のカーブ等の状況、そういう構造にやはり由来するものではないだろうか。国、地方等を通じまして大変厳しい財政状況ではございますので、現状では、ある程度税の負担の上昇はごしんぼういただかなければならないのではなかろうかと思います。  ただ、この問題は、税制調査会の答申におきましても、住民税について、五十九年度以降できるだけ早期に、税制全体の見直しを行う中で、課税最低限や税率構造について検討を加える必要がある、こういう意味の答申がございますこともありまして、いま御指摘のような問題については今後十分に検討する必要がある、かように考えております。
  161. 青山丘

    ○青山委員 住民税を含んでおりますが、所得税を納めている人の割合、納税者比率という数字であらわされておるのですが、つまり税の不公平をなくすためにも所得減税が必要だと私は思いますが、二月二十三日の大蔵省の資料では、納税者比率を見てみますと、給与所得者が八八・一%、サラリーマンは十人に九人は納税者であります。自営業者は三七・八%、これは昭和五十六年の資料のようです。五人に二人。農業所得者では一二・一%、これも五十六年の資料ですが、農業所得者の場合には八人に一人が納税者である。この数字にはいろいろの事情がありますけれども、給与所得者に重い税負担となっている現行税制の不公平を是正するためにも、私は給与所得者に十分に配慮した減税が必要だと思います。  そこで自治大臣、この納税者比率をどう思われますか。サラリーマン減税を、いまの段階で明確な御答弁はむずかしいかもしれませんが、自治大臣としての御見解はいかがでしょうか。
  162. 山本幸雄

    山本国務大臣 いまのは所得税のことでございますから私の守備範囲から離れておる、こう思っておるのでありますが、クロヨンとかトーゴーサンとかいう言葉がありまして、サラリーマンには重い所得税になっているということは、私どもも従来から聞いておるわけでございます。お話のは所得税減税でありますが、今回の場合においても、どういう形で所得税減税をおやりになろうとしておるのか、それもまだこれからの問題でございますだけに、私の方の住民税の問題につきましても、まだここで申し上げるのには少し早過ぎる、仰せのとおりまだ私としてははっきり申し上げられない、こういうことでございます。
  163. 青山丘

    ○青山委員 大臣からもう一つ御見解を伺っておきたいのですけれども、住民税の課税限度額が生活保護基準より低いということは、税制の矛盾であると思います。そのために非課税措置がとられているではないかと、もし胸を張っておられては、これは失望であります。非課税措置は異例な措置、正常な姿でないことは御存じのことだと思います。一生懸命働いて得る所得、それに対する課税限度額が生活保護基準よりも低い。まことに公正妥当な姿にあるとは言いがたい状況であります。その辺の御見解はいかがでございましょうか。
  164. 関根則之

    ○関根政府委員 確かにお話のございましたように、住民税につきましては、五十六年から生活保護基準と逆転現象を起こしておるという状況になっております。これは先生御承知のとおりでございますけれども、生活保護基準というのは、現に生活保護を受けている人に対しては、地方税につきましては一切課税をいたしていないわけでございますし、また生活保護を受けるかどうかということは、いわゆる単なる年収だけではなくて、どんな資産を持っているかという、ストックの問題にまで踏み込んでやっているというような問題がございますから、金額だけで比較をいたしまして、絶対にそれが逆転してはいけないということは、理論的には必ずしも言えないわけでございますけれども、やはり何といいましても、生活保護基準程度の収入しかない人に住民税がかかっていくというのは、税法上いかがなものかというふうに考えておる次第でございます。  そのために、現在、非課税措置をとらしていただいたわけでございますけれども、これを改善といいますか、生活保護基準を上回るように課税最低限を引き上げるべきではないかという議論については、私ども十分耳を傾けてまいりたいと思いますし、いま問題となっております減税問題の処理に当たりましては、各党の合意に基づきまして、われわれとしてもできるだけ検討を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。
  165. 青山丘

    ○青山委員 実は、まだたくさん質問をしたいと思っておりましたが、時間が来ておりますので、最後に、大臣所信表明の中で、地域経済の振興策について述べておられます。「地域社会の均衡ある発展に不可欠な地域経済の振興策を引き続き推進する」と述べておられますが、これは具体的にはどのような施策を推進してまいられるおつもりでありましょうか。  石油危機を契機として発生した構造不況並びに五十二年秋以降の円高不況により深刻な影響を受けた地域、すなわち企業城下町などや伝統的地場産業地等に対しては、関係地方団体が中心となって地域の経済振興対策を推進しておりましたが、指定地域やその振興対策事業及び財政措置についての現状をお伺いいたしたい。実際にその効果がどの程度上がっているのでしょうか。また、自治体の評価はいかがでしょうか。  それから、私の地元の瀬戸市においても、昭和五十六年度から三カ年計画で、陶磁器くず等最終処理場建設事業や、陶器による町づくりの事業を進めております。しかしながら、現在の制度を見てまいりますと、対象地域が市町村の地域を単位とすることになっております。市町村単位で企業興しについては限界があるのではないかと私は疑問を持っております。したがって、見直しが必要ではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。たとえば対象地域を広域市町村圏にまで広げるとか、市町村と地域内の企業が共同して企業興しなどの研究開発を図る必要があるように思われますが、いかがでございましょうか。  時間がありませんので、以上お尋ねをいたしたいと思います。
  166. 田中暁

    ○田中(暁)政府委員 自治省におきましては、先生よく御承知のとおり、五十三年度から特定不況地域の振興総合対策をやってまいりましたが、五十六年度から姿を新たにいたしまして地域経済振興対策ということをいま推進しておるわけでございます。  五十八年度におきましても、地域経済の長期的な停滞化傾向の見られる地域、これは前の特定不況のときから引き続いた地域も相当ございますが、これを中心といたしまして、地域経済の構造改善のための単独事業に重点を置きまして、諸施策を積極的に進めておるわけでございます。具体的な財政措置といたしましては、地方債の弾力的な運用、これは五十七年度百五十億という枠を設定いたしておりますが、それと特別交付税による措置を行っておる次第でございます。  地域の現状でございますが、地域の数は、いま四十七都道府県全部に及びまして百七十九地域、二百二十九市町村を対象といたしております。  御指摘のございました評価につきましては、これは事の性質上、やはり少し長い目で結果を見てまいらなければならないと思いますけれども現実に担当しておられます市町村におかれましては、たとえば地場産業会館等を建てたようなところでは、これによりまして地元業界の事業意欲が非常に刺激されて活発になったとか、あるいは観光に力を注いでおられるところでは、広域観光ルートの整備で大分観光客がふえてきたとかいうような、前向きの評価をいただいております。  今後の進め方でございますが、一応現在やっております対策は三年間で計画を立てていただいておりますので、一応そこで一区切りがつくわけでございます。その後も引き続いてこの地域経済の底上げということはやっていかなければならぬわけでございますが、やり方といたしましては、いま御指摘のございましたように、現在、市町村単位を原則としておるものですから、若干限界が出るというようなケースもございますので、ひとつ五十九年度以降におきましては、広域的な圏域、たとえば広域市町村圏というような圏域を対象として取り組んでまいりたいと思って検討を重ねておりますし、また民間部門との連携による企業興しというようなことは非常に有効適切な施策であると思いまして、そういった方策をお勧めしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  167. 青山丘

    ○青山委員 ありがとうございます。  質問を終わります。
  168. 田村良平

  169. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、まず初めに、行政改革に取り組まれる自治大臣基本的な姿勢についてお伺いをしたいと思います。  自治大臣は、閣僚の一員として、臨調答申の最大限尊重と、その具体化の責任を持つ立場にあると思います。自治大臣は、所信表明では「臨時行政調査会の答申のうち地方行政にかかわる重要事項については、必要に応じ、地方制度調査会や地方公共団体の御意見伺いながら地方自治発展のために最善の方策を検討」されると述べておられます。地方制度調査会や地方公共団体の意見を聞くということと答申の最大限尊重、このことは両立し得ないというふうに思われるわけですが、大臣は一体どちらの立場に立たれるのか、所信の限りでははっきりしないわけであります。再度この点についての大臣のお考えを伺いたいと思います。
  170. 山本幸雄

    山本国務大臣 臨調というのは、国の行政全般にわたりあるいは地方との絡みにおいていろいろな問題提起をされるわけでありますが、一般的な考え方を述べていただいておって、具体的な結論というのはやはり政府の検討にゆだねるという形になるものと思います。そういう意味では、そういう具体的な臨調の答申内容の検討をするという場合には、必要に応じて地方制度調査会やあるいは地方の公共団体の御意見伺いながら適切な結論を得ていくという形になるものと思うのでありまして、それらは整合性を保ちながら事をひとつ進めていきたい、こう思っております。
  171. 岩佐恵美

    岩佐委員 そこで、臨調答申の内容に関連してきょうは少しお伺いをしたいというふうに思っているわけです。  臨調の基本答申は、行政サービスを地方公共団体が自主性と自律性を持って行う前提として、留保財源率の引き下げ、そしてその均てん化、これをうたっているわけです。  そこで、自治省お尋ねをしたいのですが、留保財源とは一体何を言うのでしょうか。
  172. 石原信雄

    石原政府委員 御案内のように、現在地方交付税の算定におきましては、税収入についてはその全額を計算対象にしないで、その一定割合を計算対象にする。具体的には、道府県分につきましては、標準的な税収見込み額の百分の八十を基準財政収入額として計算いたしておりますし、市町村分につきましては、標準的な税収見込み額の百分の七十五を基準財政収入額として計算いたしております。この基準財政収入額に算入されない部分、すなわち道府県の場合で申しますと百分の二十相当、市町村分で申しますと百分の二十五相当、これを留保財源、このように臨調では考えていると理解しております。
  173. 岩佐恵美

    岩佐委員 重ねて伺いますけれども、この留保財源を残された理由というのは、一体どういうことだったのでしょうか。
  174. 石原信雄

    石原政府委員 この制度は、御承知のように平衡交付金時代にさかのぼるわけであります。昭和二十五年にシャウプ勧告を受けまして、地方一般財源を保障する制度として地方財政平衡交付金制度が誕生したわけですが、その際に、それまでの配付税と違いまして、各地方団体ごとに標準的な財政需要というものを計算する一方、各団体の財政力を測定するために標準的な税収見込み額をこれから差し引く、そしてその差額を国が補てんする、こういう方式で平衡交付金制度が誕生したわけです。その際に、税収入につきましては、その全額を引かずに、初めは百分の七十だけを引く、すなわち百分の三十だけは差し引き対象から除外する、こういう制度がとられたわけです。  この考え方は、そもそも国の立場で各地方団体の標準的な財政需要を計算するといいましても、技術的な限界もあります。すべての財政需要を完全に把握するということはなかなかむずかしい。それからさらに、税収入を一〇〇%減額するということになりますと、言うなれば、地方団体とすれば全く平衡交付金の計算によって財源がしぼられてしまう。計算に入らない、計算外の、すなわち基準財政需要額に算入されたもの以外の行政は理論的にはできなくなる、こういう問題も出てまいります。さらに、この一〇〇%を減額いたしますと、いろいろ苦労して税源を涵養いたしましても、それによってふえた税収入は一〇〇%平衡交付金と差し引きになってしまう、こういういろいろな意味で、各地方の自主的な財政運営、自主的な地域経営というものを阻害するおそれがある、こういう判断から一〇〇%算入はとられずに、三〇%が留保財源として残されたようであります。  この平衡交付金制度を引き継いだ現在の地方交付税制度におきまして、この基準財政需要額、収入額の計算方式は、原則として平衡交付金制度の当時のものを引き継いだわけでありますが、その後制度の改正あるいは算定技術の向上というようなこともありまして、その算入率は、現在は府県の場合には百分の八十、市町村の場合には百分の七十五まで引き上げられておりますが、その一部を残している。留保財源を残している考え方は平衡交付金制度発足当時と変わっていない。先ほど私が申し上げましたような理由でこれが残されている、このように理解いたしております。
  175. 岩佐恵美

    岩佐委員 五十八年度の地方財政計画で見た場合、留保財源の額は一体どれくらいの額に達するのでしょうか、都道府県並びに市町村の総額についてお示しをいただきたいと思います。
  176. 石原信雄

    石原政府委員 仮に五十八年度の地方財政計画上の税収見込み額をベースにして計算してみますと、留保財源は、道府県分にありましては一兆六千百二十四億円、市町村分にありましては二兆五千九百七十一億円、合計いたしますと四兆二千九十五億円、このように見込まれます。
  177. 岩佐恵美

    岩佐委員 それでは、個々の自治体について伺いたいと思いますが、埼玉県と岩手県、町田市と夕張市、この自治体の住民一人当たりの留保財源は、五十七年度の計算によれば幾らになるでしょうか。
  178. 石原信雄

    石原政府委員 五十七年度の地方交付税の算定の基礎となりました基準財政収入額から留保財源の額を計算いたしますと、岩手県の場合には百二十四億九千九百万円になります。埼玉県の場合には六百四十九億六千三百万円になります。それから夕張市の場合は四億九千八百万円、町田市の場合には六十八億七千四百万円、このようになります。
  179. 岩佐恵美

    岩佐委員 この留保財源は、各自治体のどういう施策に充てられているのでしょうか。
  180. 石原信雄

    石原政府委員 留保財源が切り離してどこにどう使われているかということではなくて、地方税や地方交付税は、御案内のように原則として各地方団体の判断で自由に使われるというたてまえになっております。ただ、理屈を言えば、留保財源分というのは、基準財政需要額に算定されていない部分のもろもろの歳出、具体的には各地方団体の、各地域の実情に応ずる独自の施策などにこれが使われている、このように理解しております。
  181. 岩佐恵美

    岩佐委員 五十八年度の地方財政計画上、単独事業費、いまの独自の事業のあれですが、単独事業費は一体幾らになるでしょうか。
  182. 石原信雄

    石原政府委員 単独事業費の意味でありますが、通常、単独事業という場合には投資的事業を指す場合が多いのでありますが、おっしゃる意味は、一般行政費も含めてではないかと思います。  五十八年度の地方財政計画上の一般行政費で国庫補助負担金を伴わないもの、これが五兆三千三百三十九億円、それから投資的経費で地方単独のものが八兆五千五百三十六億円、このようになります。両方合わせますと、十三兆八千八百七十五億円になります。
  183. 岩佐恵美

    岩佐委員 臨調答申では、留保財源について地方公共団体間で格差が著しいというふうに述べられているわけですが、どのような格差があるのか、具体例を述べていただきたいと思います。
  184. 石原信雄

    石原政府委員 臨調答申で指摘しておりますこの留保財源の団体間の格差というのは、恐らく、比較的税収入の多い団体と比較的収入の少ない団体との間の違いを指摘しているのではないかと思います。  具体的に申しますと、先ほどの例でありますが、たとえば岩手県、比較的財政力の低い団体でありますけれども、この場合、留保財源を人口一人当たりで割ってみますと八千七百九十円になります。それから、先ほどの例示いたしました埼玉県の場合で申しますと、人口当たり一万一千九百八十円になります。また、市町村の場合になるとこれがもっと大きくなりまして、たとえば夕張市の場合で申しますと、人口一人当たりでは一万一千九百四十円、それから町田市の場合には二万三千二百七十円、このようになります。こういった事実を指摘しているのではないか、このように理解しております。
  185. 岩佐恵美

    岩佐委員 臨調は、留保財源率の引き下げ等により財源の一層の均てん化を図るというふうにしているわけですが、均てん化とは具体的にどのようにするのか、臨調から御説明をいただきたいと思います。
  186. 陶山晧

    ○陶山説明員 留保財源の問題につきまして、先ほど自治省当局から御説明のあったようなことでございますが、臨時行政調査会において、部会、調査会の場でいろいろ議論がございました。先生御指摘のとおり、「地方公共団体間の財源調整の強化方策」ということで、「留保財源等の既存財源の一層の均てん化を図る方向で検討する必要がある。」ということで、具体的には、「留保財源については、例えば、」ということで「当該率の引下げ等の方法による財源の一層の均てん化を検討する。」  留保財源の問題というのは、確かに臨調の議論としても、先ほどの自治省当局の御説明のとおり、交付税算定上の税収の算定に当たって、財政需要の大きさに関係なく、標準税収の一定率となっておりますので、標準税収の多い団体、すなわち財政力のある団体ほど大きくなっている。これについて、具体的な均てん化の手法は必ずしも明確には示しておりませんが、その方法の一つとして、「例えば、」ということで「当該率の引下げ等の方法」ということで、その方向での検討をお願いする、こういう提言を出したわけでございます。  それから、超過財源の問題についても種々議論がございました。交付税算定上の基準財政収入額が基準財政需要額を上回る額を超過財源というふうに呼んでおるわけでございますが、現在の超過財源を有する交付税不交付団体の数は、現在必ずしも多くはございません。そうした団体の数の推移とかあるいは超過財源状況等にも留意しつつということで、考え方としては、均てん化の方向で検討すべしということでございまして、これについても、必ずしも具体的な手法、やり方を示しているというわけではございません。  なお、例に挙がっております公営競技収益の問題につきましても、現在その公営競技収益の一部は公営企業金融公庫に納付されておりまして、全国の公営企業の金利負担軽減等に使用されておりますけれども、当該公営競技実施団体には依然としてかなりの財源が残るということで、これらの収益についてさらに一層の均てん化を進める方向が望ましい、こういう議論から、考え方として、進める方向で検討すべし、こういう提言をしたということでございます。
  187. 岩佐恵美

    岩佐委員 私たちは、幾つかの自治体について、留保財源の金額や留保財源を使って行われている独自施策の内容について具体的な調査を行ったわけです。神奈川県を例にとりますと、同県の単独事業は、昭和五十七年度で、起債を含めて総額二千六百五十六億円が予算計上されています。これは一般会計予算の二八%に相当します。そのうちの主な事業を挙げると、県立高校建設四百六十七億七千万円、市町村助成費百七十億円、病院会計援助百二十三億七千万円、障害者対策二十九億二千万円、民間福祉対策二十八億六千万円、老人医療費など二十億五千万円となっているわけです。福祉や教育施策を中心にして、国の施策だけでは不十分なところを、県民の要望にこたえて単独事業として実施をしている。先ほど言われた一般行政経費として使っているわけですが、これについての自治省の見解をお伺いしたいと思います。
  188. 石原信雄

    石原政府委員 各地方団体、それぞれ立地条件も違います。また、重点の置き方も違います。そこで、各自治体が、国の施策に従うものとは別に、それぞれの地域の判断でそれぞれの施策を展開する、これは地方自治の本旨であり、まさにそれなくては地方自治の存立意義はないわけであります。そういった意味で、各自治体がそれぞれに努力し工夫をこらして単独の施策を展開しておられるものと思います。ただいま神奈川県の例が示されましたが、神奈川県も非常に積極的に単独の施策を行っておられる。そうして、その財政的な裏打ちとなるものが最終的には地方税であり、地方交付税である。そうして、先ほど来申し上げておりますように、中でも、この地方交付税の計算上基準財政収入額の一定割合が計算外に置かれている、こういうことが各団体の独自施策の財政的な支えになっている、このように理解しております。
  189. 岩佐恵美

    岩佐委員 神奈川県の留保財源について、昭和五十七年度の場合、約一千百億円と推定をされるわけですが、仮に留保財源率が現行の二〇%から一〇%に半減をするというふうなことになれば、留保財源も半額の五百五十億円という形になってしまいます。そうなれば、新規事業どころか、現在行われている県の単独事業のほとんどが継続不能の状態に陥るということが予想されるわけですけれども、こうしたことが起こるというそういう事態について、自治省はどうお考えになるのか。
  190. 石原信雄

    石原政府委員 臨調答申の中で、「例えば、」ということで、留保財源の均てん化措置の一環として留保財源率を引き下げる。別の言い方をすれば、交付税計算上の基準税率を引き上げる、こういう提言がなされておりますが、私は、その均てん化の一つの手段として留保財源率を引き下げるということは、現在の基準財政需要額をそのままにしておいて税収の計算の方だけを算入率を引き上げるということではないんじゃないか。そうすれば、そういうことを行いますと当然総量としての地方財源が減ってしまいますから、そういうことを言っているんじゃないんじゃないか。  従来、これまでも基準税率の引き上げを道府県、市町村それぞれについて行ってまいりましたが、その場合は、いずれも基準税率の引き上げに伴ってカウントされる税収額はふえるわけですから、そのふえる額に相当するだけ基準財政需要額の算入内容を引き上げる。  たとえば、市町村の場合基準税率を百分の七十から百分の七十五に引き上げたときは、その引き上げた額に見合うだけ、主として都市的な財政需要、清掃経費でありますとか下水道経費でありますとか、こういった都市的財政需要を引き上げるということの見合いでこれを行ったわけでありまして、それは地方に配分される財源の総量の減少を意味していないのであります。ただ、計算の内容がそれだけ標準化するというか画一化するという問題ではないか、このように理解しております。  したがいまして、臨調の答申の趣旨がもう一つはっきりしないのでありますけれども、留保財源率を引き下げるということが基準財政需要額の充実と見合って引き下げるのか、率の引き下げだけを行うのか、その辺がはっきりしないのですけれども、私どもは、一つの技術的な問題として、基準税率の引き上げ、すなわち留保財源率の引き下げを行うのであるならば、それは当然基準財政需要額の算定内容の充実がこれに対応すべきだ。総量としての地方財源の減少を意味してはならない、このように考えております。
  191. 岩佐恵美

    岩佐委員 自治体が教育や福祉などにこのように独自の財源を使わざるを得ないということは、交付税の基準財政需要額の算定に問題があるから、それでこういうふうになっているのではないでしょうか。
  192. 石原信雄

    石原政府委員 私どもは、交付税の基準財政需要額の内容につきましては、時代の推移とともに 地方行政の質の向上、内容の充実というものを反映させるように努力してきております。しかし、そこで基準財政需要額、具体的には単位費用等において想定される行政水準というものは、結局はそのときどきの地方財源総量によって制約されますから、その範囲で可能な限りこれを反映させていく。これを大幅に引き上げようとすれば、地方財源の総量をふやさない限りはこれはできないわけであります。  そういうトータルとしての問題はありますけれども、そのトータルとしての財源の中で、私どもは、基準財政需要額の算定に当たりましては、ただいま申しましたように、そのときどきの行政の実態というものを十分検討して、できるだけ具体的かつ妥当な水準でこれが算定されるように努力してきております。ただ、個々具体の団体の例と対比しますと、物によっては十分でないという事情があることも承知しております。また、理論的には、基準税率が一〇〇%でない、税収の一定割合の額が計算外に置かれているということとの関連においては、基準財政需要額において一〇〇%地方財政需要を算入することは不可能なわけであります。そういう意味での食い違い、これも出てくると思います。
  193. 岩佐恵美

    岩佐委員 留保財源がどのような行政項目に充当されているのかということを、ちょっと資料をお示しをして説明をしたいというふうに思いますけれども、資料は、五十五年度の決算をもとに、大阪府の基準財政需要額と一般財源関係行政項目ごとに比較したものです。  大阪府の基準財政需要額は五千三百億円ですが、これは一般財源六千三百七十億円の八三%となっています。残りの差額約一千億円が標準行政以外の独自行政に使われる留保財源となっているわけです。問題は、行政項目ごとに格差の幅が大きくなっていることです。特に福祉、医療など厚生労働費の一般財源に対し、基準財政需要額がその四〇%にしか達していません。大阪府の場合、留保財源の約半分が厚生労働費に充当され、教育費を含めると七割の留保財源が使われているということになるわけです。これは基準財政需要額、つまり標準行政において教育、福祉が低水準に置かれていて、自治体がその穴埋めを留保財源で行わざるを得ないということを示していると思うのですが、この点、いかがでしょうか。
  194. 石原信雄

    石原政府委員 この資料は、各行政費目ごとに大くくりにしたものでありますから、これだけでは基準財政需要額の算定内容との対比で的確な判断がしにくいわけでありますが、一般的に申しますと、法令の規定によってその実施が義務づけられているような経費については、基準財政需要額の算定はかなり高くなっております。そうして、各地方団体の独自の施策にゆだねられるべき経費、これらについては、その一部はまさに留保財源によって賄われるということを想定しておりますし、また一部は、いわゆる包括算入という形で、その他の経費の中で内容を示さずに地方が独自に使用できるような経費の積算を行うという方法をとっております。  たとえば教育とか厚生労働費、特に厚生労働費の算入率が非常に低くなっておりますけれども、私は、この厚生労働費の中でも、たとえば生活保護費でありますとかあるいは児童措置費でありますとか、法令の規定によって支出の基準がはっきりしているものについては、この基準財政需要額算入率はかなり高くなっているのではないか、そうしてここの中には府独自で実施しておられる経費がかなり計上されているのではないか、このように思います。したがいまして、この比較表から直ちに現在の基準財政需要額の算定が厚生労働あるいは教育について薄くなっているというふうに判断するのは若干問題があるのではないか、このように思います。
  195. 岩佐恵美

    岩佐委員 私が住んでいるのも、東京の非常に超人口急増地域というところであるわけですね。学校建設が大変おくれている。高校あるいは中学が足りない。先ほどいろいろ出ている非行の問題で、忠生中の場合も大変マンモス校である、あるいはプレハブであるというようなことがあるわけですね。それは地域的に基準内では賄い切れない。大変超過負担自治体がしなければならない。そういう実態があることは、これはもういままでも議論しているところですから、明らかなところです。  それから、福祉についても、別にいま国がやっていることがいいということではないために、地方自治体独自にいろいろやっているわけで、その点、この表でも、数字でも傾向的に出てきているということははっきりしているわけで、その点、一般的にそういうことは言えるんだということ、この点はいまのお答えでも認めておられるというふうに思います。  そこで、全国的に留保財源は一体どういうところに使われているのか、都道府県の場合、市町村の場合、あるいは都市部の自治体の場合、あるいは過疎地域の自治体、そういうところではどういう使われ方をしているのか、この点について伺いたいと思います。
  196. 石原信雄

    石原政府委員 具体的な数字でもってお示しするデータは持っておりませんが、私の経験から申し上げますと、留保財源の使途といたしましては、都道府県の場合にはやはり教育とか厚生労働、産業経済、こういったものが比較的ウエートが高いのではないか。それから、市町村の場合には教育、厚生労働、それから土木、こういったものがウエートとして高いのではないか。土木といいますのは、都市の環境整備、都市計画とか公園とか、こういった系統を含めまして土木関係が単独施策、留保財源の使途としてはウエートが高いのではないかと思います。それから、過疎地域に参りますと、どうしても産業経済あるいは教育、土木、こういったもののウエートが高くなっている、このように認識しております。
  197. 岩佐恵美

    岩佐委員 自治省として、いま留保財源の引き下げの動きがあるわけですから、どのような分野に使われているかということをもっときちんと調べていく必要があるというふうに思うわけです。この点もどう考えられるか、お答えいただきたいと思います。  それと合わせて、臨調が留保財源率を引き下げて財源の均てん化を図った後、自治体が独自行政を進めるために必要な財源は超過課税や法定外普通税等で確保するというふうに言っているわけですが、この提案は現実性を持っているかどうか、この点についても伺いたいと思います。
  198. 石原信雄

    石原政府委員 初めのお尋ねでありますが、地方団体の類型別に留保財源がどう使われているのかという点について実態把握をもっと的確にすべきではないかという御指摘でありますが、私どもも、基準財政需要額の算定の内容の適正化を高めるという意味で、基準財政需要額と各団体の費目ごとの一般財源支出実績との対比は常に行ってきております。ただいま、現在のデータはありませんけれども、私どもとしては、過疎団体あるいは人口急増団体、大規模団体、小規模団体、いろいろな類型ごとに基準財政需要額が各費目ごとにどういう実態になっているかという点は、常にその把握に努めております。これからも当然この努力は続けてまいりたいと思っております。
  199. 関根則之

    ○関根政府委員 後段の超過課税及び法定外普通税の活用の問題でございますが、超過課税につきましては、昭和五十七年度の決算見込みにおきまして、市町村分で二千百七十一億、それから都道府県分で二千三百六十二億程度、両方合わせましても四千五百三十三億程度を見込んでいるような状態でございます。市町村におきましては固定資産税の超過課税等を行っているわけでございますが、小さな市町村で、財源のないところで相当無理をしておりましても、租税総額約十九兆と言われる中で四千五百億程度の超過課税しかないということでございますから、これをさらに積極的に相当ウエートのある金額まで伸ばしていくということは実際問題としてなかなかむずかしい、おのずからそこには限界があるものというふうに考えております。  それから、法定外普通税の方でございますけれども、これは同じく五十七年度の収入見込みにおきまして、県市町村全体で百四十億弱程度しか見込めないわけでございます。県の段階ではそのうち大部分が核燃料税というようなものによって占められております。市町村におきましてもいろいろ工夫はいたしておりますが、商品切手発行税でありますとか文化観光施設税といったようなものを集めまして、先ほど申し上げました金額程度にやっとなっておるということでございます。  われわれとしては、現在の法定外普通税の制度そのものは相当弾力的な規定がなされておりまして、一定の要件を満たした申請がありますと自治大臣は許可をしなければならないというような規定にもなっているわけでございます。地方団体の課税自主権というものはできるだけ尊重はしていくつもりでございますが、いざどんな法定外普通税をつくるかとということになりますと、実際には税源がほとんどないというのが現状であろうかと思います。
  200. 岩佐恵美

    岩佐委員 つまり、これらの超過課税や法定外普通税等で埋めるということは、現実性を持っていないと言えると思います。  それで臨調は、留保財源率の引き下げと財源の均てん化について、標準行政以外の地域の独自性に基づく行政サービスを地方公共団体が自主性、自律性をもって行うための前提というふうに位置づけているわけです。しかし、神奈川県の例でも明らかなように、留保財源率の引き下げは逆に地方自治体の独自行政に打撃を与え、その自主性、自律性を奪うものになると思うわけです。地方制度調査会もこの点に関して、地方公共団体の財政運営の自主性、自律性を損なうおそれが少なくないというふうな意見を述べ、全国知事会も、地方財政の自主性を狭める等地方自治の充実を図る上において問題のあるところであり、行わないことと決議をしているわけです。また、全国市長会も、全地方公共団体の行政水準を基準財政需要額の水準にできるだけとどめて全国にわたって画一化、類型化を強化する、そういうものであると厳しく批判をしているわけです。  こうした留保財源率の引き下げについて、地方自治の観点から大変問題があると思うわけですが、自治大臣としてこの点について今後どういうふうに考えていかれるのか、お考えを伺っておきたいと思います。
  201. 山本幸雄

    山本国務大臣 留保財源率の引き下げ、基準税率の引き上げということでございます。この率は、自治省としてはずいぶん研究をした結果こういうものがいま行われておるわけでありまして、この率についてもいま中でもいろいろ議論をしておりますが、いまのところこれをどうこうしようという考え方は余りないといっていいと思います。  そこで、おっしゃいますように、一方において地方公共団体間の財源を均てん化させるという効果はあるけれども、一方において地方団体の財源の弾力性の幅を小さくしてしまうということにもなり、その結果住民のニーズにもこたえられないというようなことになるので、この辺は一体地方団体の自主性発揮のためにどの程度ゆとりを持たしていけばいいかというなかなかむずかしい問題になっておるわけであります。したがいまして、この基準税率の引き上げあるいは留保財源率の引き下げという問題は慎重に私ども考えていかなければならない、こう思っております。
  202. 岩佐恵美

    岩佐委員 次に、地方自治体幹部の天下り問題について伺いたいと思います。  昨年の予算委員会で、三井建設の内部文書をもとに、国の高級官僚が工事発注を手みやげに関連会社に天下り、天下った後は在職時の役職を利用して国からの工事を請け負う、そういう国の高級官僚と大手土木建設会社との癒着の問題高級官僚の天下りの実態、こういうことをわが党は国会の中で明らかにしてきたわけですけれども、この問題について、実は国だけではなく、地方自治体もあるということについて、きょうは少し問題を明らかにしていきたいと思います。  ここに建設工業調査会が発行しました「ベース設計資料」というのがあります。この資料の中から、土木建設会社上位百社のうち五十四社に九十四人の自治体の元幹部職員が会社の役員として天下っている、そういうのを表にいたしましたので、ちょっとお示しをしたいと思います。  たとえば、役員の中で官界出身の役員が多い会社を見ますと、熊谷道路株式会社、これは本社が東京にあって、全国に支店、営業所などが九カ所あるのですが、全役員数が六人で、そのうち官界出身役員が四人で、うち自治体の幹部職員だった人が二人いるわけです。それから、新日本土木というところでは、本社が東京にあり、全国に九支店あります。役員数は二十三人、官界出身者が八人で、うち自治体の幹部職員だった人は四人。大都工業というところ、東京に本社があり、全国に九つの支店、営業所、出張所がありますが、役員数十五人、官界出身者が五人で、うち自治体の幹部職員だった人が三人。本間組、本社新潟、全国に支店、営業所、出張所が七カ所、役員数は十四人、官界出身者が七人、うち自治体の幹部職員だった人が四人ということで、これは役員になった人の数だけですから、幹部職員で土木建設会社へ再就職した人の数はもっとふえるわけであります。  国家公務員については、民間企業に就職をする場合、国家公務員法上の規制があるわけです。人事院に伺いたいと思いますが、その趣旨と、俸給表では何等級以上の職員対象にしているのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  203. 網谷重男

    ○網谷説明員 御承知のように、国家公務員法におきましては、職員は離職前五年間に在職いたしました官職と密接な関係にある営利企業の地位についてはならないという規定をしてございます。  この制度の趣旨は、職員がその在職中の地位や職権を使いまして、特定の営利企業と特殊な関係を結んで、これを利用してその企業に就職するというような弊害を防止するためでございまして、在職中の職員の服務を厳正ならしめようとすることにあるわけでございます。  それから、国家公務員の何等級以上かというお話でございましたが、一応これは国家公務員全部、非常勤職員を除く国家公務員全部ということが対象になっております。
  204. 岩佐恵美

    岩佐委員 地方公務員法ではこうした天下りの規制がないわけですけれども、これは何か理由があるのでしょうか。
  205. 坂弘二

    ○坂政府委員 国家公務員法につきましては、制定されました二十二年から再就職の規定がございまして、これは二十三年に離職前五年というふうに強まったわけでございます。その二年後の昭和二十五年、地方公務員法ができたわけでございますが、地方公務員法につきまして、国家公務員法第百三条第二項、ただいまのいわゆる再就職の制限の規定がございますが、その規定が地方公務員法において設けられませんでしたのは、地方公務員は国家公務員に比べて、一般的に言って権力的な性格が薄く、したがって、地方公務員と営利企業との間に縁故、情実関係が生じることが比較的少ないと認められる。むしろ、職員が在職中に営利企業に不当に接近することのないようにするためには、住民全体の奉仕者としての他の服務の規定により服務規律の保持を図ることが適当である、そう考えられたので、地方公務員法にはこのような規定が設けられてないと承知しております。
  206. 岩佐恵美

    岩佐委員 私は、幾つかの事例を調査をしたわけです。たとえば東京、大阪、兵庫、北海道、そういう実態を調べてみましたけれども、幹部職員就職した会社には、明確にいわば手みやげのような形での工事の発注がなされている。これは国と全く同じ状態です。  東京都では、五十四年五月に建設局長が常務として飛島建設に天下ると、その年の十月には白鬚東第三地区市街地再開発事業の建築工事を五十六億八千万円で飛島建設と契約をする。あるいは下水道局流域下水道本部技術部長が五十五年三月に取締役として銭高組に天下ると、その年の五月には砂町の東陽系水処理施設工事三十四億二千八百万円、十一月にポンプ室建設工事四億七千八百万円が契約をされているわけです。こうしたことがわが党の都議団の調査では、三年半の間に局長、部長級幹部十一人が大成建設、鹿島建設など十一社に天下っていて、それと前後してこれらの会社は十九件、総額二百四十七億円もの都の公共事業を契約をしている。  大阪でも同様なわけです。お手元の資料は部長級以上を挙げておりますけれども、府の元幹部職員は、大林組に四人、浅沼組、清水建設、銭高組、鉄建建設、東洋建設にそれぞれ三人と、全体では六十三社八十一名に上っています。そして、天下り先の会社が大阪府から請け負った工事金額は、土木関係で五千万円以上の契約を見ると、その総額は五十五年度で二百八十一億円、五十六年度で、これは五十七年一月までの数字ですが二百九億円、そしてこれらは全体の請負総額の六割近くを占めている。  具体的に手みやげ例を五十六年度で見てみますと、水道部の浄水課長が浅沼組に天下ると、五十六年三月の時点ですが、四億六百五十万円の工事を請け負う。それから、道路課の参事が東洋建設に天下ると六億八千八百十万円、下水道課の参事が三井建設に天下ると四億九千百十万円、企業局業務課長が大成建設で五億一千五百五十万円、土木監理参事、この人は五十五年三月三十一日ですが、不動建設に天下り、五億百万円。  北海道の例もあります。不況の影響で公共事業が減って、どの会社も受注量の減を余儀なくされる中で、渡島支庁長を迎えた東急建設が工事額で二倍に発注をふやすというようなことで、天下りを迎えた会社は、ほかの例を見ても横並びか、あるいは受注量が増となっているというような、まさに手みやげ的な傾向がはっきりしている。  これは、福岡でも兵庫でも同じような形になっているわけです。  先ほど地方自治体の公務員の権限の問題が言われていましたけれども、国家公務員と地方公務員とでは、行政上の権限の有無について相違があるといっても、地方自治体には機関委任事務として多くの国の仕事がおろされています。たとえば地方自治法別表三で知事に委託されている事例が列挙されていますけれども、その数は三百二十三項目に及び、その中には土地改良法だとか砂利採取法だとか建設業法、都市計画法、土地区画整理法、建築基準法、宅地造成等規制法、下水道法、こうした許認可あるいは行政指導、こうした権限も含まれているわけですが、かなり大きな地方自治体では国にひけをとらないぐらいの権限もあるし、また額も大きいということが言えるわけであります。  それで、こうした地方公務員の天下りだけが野放しにされている、このことが多くの弊害を生んでいるということが、地方議会でも非常に問題になっているわけです。こうした実態から、自治省として何らかの対応をしていく必要があるというふうに思うわけですけれども自治大臣のお考えを伺いたいと思います。
  207. 山本幸雄

    山本国務大臣 大変詳しい資料をいただいたわけでございますが、先ほど国家公務員の場合と地方公務員との職責の内容については、やはり何らかの格差があるわけであるという説明をいたしました。これはある程度御納得がいただけるのではないかと私は思うのです。また、この再就職の問題は、これは現在の日本のお役所勤めの人がやめるのは比較的早いものですから、どうしても再就職をしなければならないということでもあります。また一方、いまお挙げになりましたいろいろな企業の方から申せば、やはりなかなか得がたい、特に技術者が払底しておりますので、そういう得がたい技術者であるという企業側からの御要望もあるのであろうと私は思うのです。それらがいろいろ合致をいたしましてこういう状態になっておるものであろうと思います。  これによって企業の仕事の上においていろいろ便宜を与えておるというような御指摘でございましたが、それは一つ一ついろいろ事情もあることであろうと思うのでございまして、一概にそういうふうなことでそういう需給状態になっておるとも——いろいろあるだろうと私は思います。私どもの立場から言えば、要は在職中に少なくもそういう情実関係が生じないようにということ、これは住民の監視も国家公務員の場合よりは地方公務員の方が、やはり目の前におるわけでございますから、厳しゅうございますということもあるだろうと思います。ただいまのところさような状態であると考えまするので、いまお話しのような点についての何らかの措置をするということについては、いま直ちに私はこの場で、じゃ、そういたしますとは申し上げかねる、こういうことでございます。
  208. 岩佐恵美

    岩佐委員 一月十七日に自治省が発表した五十六年度の地方自治体等における汚職事件に関する調査、これでは収賄が前年度より大幅にふえています。しかもそのふえた理由は、土木、建築部門の汚職であるわけです。自治省も課長通達を出して、住民の不信を招くから汚職の防止対策を講じなさいというふうに言っているわけですが、住民から疑惑を受けるような幹部職員の天下りを認めて、そして一方で地方公務員の一般的な綱紀の粛正というようなことを言っても、ちっとも効果が上からないと思うのですね。  いま申し上げた事例というのはそれぞれ個々に事情がありましょうというふうに言われますけれども、たとえば大手の建設会社上位百社のうちの半分に、自治体の幹部が九十何人も天下っている。つまり一社に二人も天下っている。これは趨勢としてはっきり言えるわけで、しかも、細かく見ていけば、いまのようにだれかが天下ればそれについて工事が優先的に、非常に密接した期間でもって優遇されて発注されているという事態というのは、だれが見てもこれは一目瞭然であるわけですね。いまの大臣のお答えではちょっと住民が納得できないというのが率直なところだと思います。いかがでしょうか。
  209. 山本幸雄

    山本国務大臣 いま、在職中にいろいろな情実、因縁を生ずる、あるいは在職中に犯罪を犯すというに至っては全く論外であって、私は、私どもの立場では、これらについては厳しく、そういうことの起こらないように、そういうことにならないように努力をする必要があると思っております。  ただ、再就職につきましては、これは職業選択の自由とかいろいろのこともありまして、それじゃそこのところまで厳しくしなければならないかという問題については、地方公務員という立場を考えてみれば、御指摘のようなふうには、直ちに私ども措置をしたいなというところまではいかない、こういうことでございます。
  210. 岩佐恵美

    岩佐委員 先ほど私が人事院に伺いました公務員の場合、この公務員の制度のねらいというのは、職員が在職中その職権を悪用して営利企業と情実関係を結び、やがてそのコネを使って当該企業に就職するという弊害を防ぐことにある、公務員在職中の企業との癒着の防止その他職務遂行の公正を確保するためには、上司の不断の監督が第一であり、また、制裁としては懲戒の道もあるけれども、さらにこのようなからめ手からの第二の壁を設けて、退職関係私企業に就職することを規制し、コネをつけてもむだだということにしているわけだ、これが人事院の制度のねらいというところではっきり示されているわけですね。  これは国家公務員の場合だけでなく、地方公務員も、いま申し上げたように在職中の汚職はもちろんのこと、天下りということが大変目についているわけで、それに対していまの大臣のような答弁だと、そういうことを野放しにしてもいいんだぞと、これはもっともっとはでにやろうじゃないかというような、そういう傾向さえ誘発しかねないというふうに思うのです。ですから、この場できちんと大臣の厳正なる態度を示していただきたいというふうに再度申し上げたいと思うのです。
  211. 山本幸雄

    山本国務大臣 国家公務員の場合、就職制限というのは、私も詳しいことは存じませんけれども、ある一定の期間は最後に在職した官職、ポストと関連のある企業に就職することはできないのであると、こういうことにたしかなっておると思うのです。その期間を過ぎればそれなりに就職をしてよろしい、こういうことになっていると思うのです。  問題は、いま仰せられたように、やはり在職中のことについては、私はこれは厳に戒めなければならない、さようなことがあってはならない、こう思うのでございますが、退職後は、これらの人は、いま拝見しましてもなかなか得がたい技術者の人もあり、これらの人をそういう面で活用するというのも、私は、ある意味ではやはり一つの行き方であろう、こう思うのでございまして、一概にそれがけしからぬということになるのかどうか、これは私どもも、せっかく資料もいただきましたし、十分調査もしてみたいと思ってはおりますけれども、いま直ちにここで、いまお考えのようなふうに私がやるということにはまいらないこう思っております。
  212. 岩佐恵美

    岩佐委員 もうちょっと言わせていただきますと、国家公務員法の場合に、私企業への就職について絶対禁止ということではないのです。それはケース・バイ・ケースでちゃんと審査をして、そのまま就職するということもできるわけです。しかし、そういう天下りが横行するような弊害をつくらないという、そういうたてまえを貫いているわけでありまして、何も得がたい人材で全くそういうやましい関係がないという人の再就職まで閉じるということにはなってないわけです。  ですから、大臣、ちょっとお考え違いをそこら辺されておられるのではないかというふうにも思いますし、どうなんでしょうか、そこのところで、きょうの委員会のやりとりでは、何か大臣がそういう答弁をされた限りにおいては、非常にこれから地方における天下りを誘発をする、先ほど繰り返しましたけれども、そういうことをやってもいいのだぞという傾向が全国的に出てしまうのじゃないかということを心配いたしますので、その点きちっとした御意見をもう一度、しつこいようですけれども、求めておきたいと思います。
  213. 山本幸雄

    山本国務大臣 私も、これが非常に好ましいことである、非常にいいことだということを言っているわけではもちろんありません。ただ、一概に再就職をさせない——こういう技術者でございますから、技術者はやはり就職するところは限定をされてくることだと思うのですよ。ある程度限定をされておる再就職先しかないわけですね。事務屋の場合と私は非常に違うと思うのです。そういう意味では、そういう技術者の持っておる有用な技術を活用するというのは、やはり人物経済上からいったって決してかれこれ言う筋合いのものではないのではないか、私はこういう考えでおるわけでございます。その辺は、そういう技術者がどうしても欲しいという企業側の要望と、それから片一方再就職者の再就職をしたいという要望の合致点でこういうものができていることだと思うのでございまして、それ以外に私は、余り何といいますか、他の何かの意図があるとは思わないわけであります。  その辺のところは、地方公務員と国家公務員というのはやはり少し違うのではなかろうか、こう思うから、先ほど来繰り返し同じようなことを申し上げておるようなわけでございます。決して私がこう申したから、じゃどんどんやりなさいと言って誘発したり奨励するということではもちろんありませんので、その点は誤解のないようにお願いいたします。
  214. 岩佐恵美

    岩佐委員 技術者といっても、先ほど百社の中のどういう人たちが天下っているかというのも見ていただいたらおわかりいただけると思いますけれども、たとえば愛知県の警察本部長だとかあるいは総務の部長だとか、そういう方々ももちろん含まれていて、これは国家公務員で言ういわゆる高級官僚という形に該当するというふうに思うのですね。誘発をしないということであるならば、私は、やはり何らか大臣が責任を持って、法的に規制ができないまでも、実際の調査をしてきちっと行政的に対応されるというような前向きの姿勢がなければ、やはりいまの状態というのは改善することができないということを強く要望をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  215. 田村良平

    田村委員長 田島衞君
  216. 田島衞

    ○田島委員 大分皆さんも熱心な御審議でお疲れのようでありますから、時間はできるだけ短くしたいと思いますけれども、だからといって、せっかく大臣に対する質問の機会、新自連だけやらないというわけにもいきませんので、そこらのところを両方踏まえて、少し御質問させていただきたいと思います。  大体質問は、大臣所信表明を中心にして二、三点伺います。  まず、昭和五十八年度の地方財政の収支の見通しは、御承知のように約三兆円の財源不足が考えられる。その手当てとしては、地方交付税増額措置、それからまた建設地方債の増発等でこれをカバーしよう、こういうことなのですが、このやり方は、多少幅の違いやら何やらあるけれども、毎年毎年同じようなやり方をしておるわけですよね。こういうように毎年同じようなやり方をすることが望ましいか望ましくないかということは、聞く方も少しおかしいし、答える方だって答えにくいだろうと思うのです。  そこで大臣、今度自治大臣になられて、どのくらいの任期の期間になるかわかりませんけれども、おれの任期中にはひとつ少しは変わったことを骨折ってみようというねらいがあるかどうか、あったら聞かせていただきたい。
  217. 山本幸雄

    山本国務大臣 何かしでかしてやれ、そういう大それた考えはありません。ありませんが、おっしゃるように、今日の地方財政というのは、いろいろな問題点が出てきたのではないだろうか。これはもう日本の国は高度成長から安定成長に行っておりますから、当分そういう日本の経済状況に余り大きな変化は起こらないだろう、ある程度横にこのままの形で進むのではないだろうか、こういう感じが第一するわけです。今度は国際経済の方は、変転が激しくてなかなかこれを他力本願に当てにするというわけにもいかない。そこで、わが国の二十一世紀に向けての将来ということを大きく考えてみれば、やはりいまの仕組みそのままではだんだんいけなくなってきたのではないか。これは私は、日本の各方面でも同じことが、やはりいろいろ検討を要する、考え直してみたいというところがあると思いますね。  それと同じことで、地方財政につきましても、私が先ほど来、中期展望といいますか、中期見通しというものをひとつ事務当局に模索してほしいということを言っておりますのも、その模索をしている中からやはり何らか問題点、これはどうかな、これは何とかしなければならないのじゃないかな、そういう問題点が出てくる、私はこう思っておるようなことでございまして、決して現状に満足をしておるというわけではありませんということでございます。
  218. 田島衞

    ○田島委員 当然、地方交付税法の抜本的な見直しとかいろいろなことが考えられると思いますけれども、どうせこれから先、地方交付税法についても地方税法についてもそれなりの審議の機会があるわけですから、きょうはそのことはおくとして、当然このままじゃだめだ。  いまの大臣お話のとおり、国内経済見通し等は、確かに悪くなることがあってもそう急速によくなるなどということは考えられない。とすれば、ただ黙って手をこまねいておったら改善はされない。やはり何か手を打たなければならぬ。その打つ手の一つとして考えられるのがやはり行政改革だろうと思います。  その行政改革について大臣所信表明、もちろん全部大臣の所信じゃなくて、だれかが書いたものも相当部分あるかもしれませんけれども、いずれにしても、形の上では大臣所信表明の中に、「長期的な展望のもとに行財政改革を推進し、」こうある。そういう字句というか所信を明らかにする以上は、その所信のもとになる具体的な構想ぐらいはあるのだろうと思うのです。  そこで、一体その「長期的な展望」とは何年計画ぐらいで、「行財政改革を推進」するというのはどんな手法でどんな具体的な改革をしようと考えておるのか、大臣からもお聞きしたいし、それから、これは自治省の役人たちの意見も聞いておれはそう言ったのだというのなら、その聞いた相手の役人さんからその考え方を聞かせてもらいたいと思います。
  219. 山本幸雄

    山本国務大臣 行政改革は、いま臨調の答申を一つの大きなよりどころにして進もう、こういうことになっております。臨調の中身につきましては、その理念として国と地方を通ずる見直しをやろう、それからもう一つは地方分権の推進をやっていこうという、二つの大きな柱のもとでいろいろなことが理念としても言われ、また一つ具体的な措置としても臨調の答申の中に出てきたと私は思います。ただ、理念は大変結構なことが書いてありますし、まさにこれからの一つの大きな私どもも最も賛成のできるよりどころでございますが、さて具体的な問題を何とかしていきたいという私どもの気持ちからいいますと、果たしてこの臨調の答申でうまくこれからやっていけるだろうか、私はそういう感じがしないでもありません。  そこで、そういう具体的な問題、これは臨調で取り上げられて、われわれも地方分権という立場あるいは国、地方を通ずる行政改革という観点からいろいろな問題が出ておるわけでございますが、これからの問題でありまして、これが二年や三年でできるものではありません。たとえば機関委任事務なんというものは、とてもたくさん、たしか五、六百件あるわけですが、それを二年間にまず一割やろうというのが臨調の言っていることでございますから、とてもまだまだこれは前途非常に険しい道を相当長期間にわたって歩まなければならない。おっしゃるように、じゃどれくらいの期間でやるんだと仰せられても、そう簡単にいくものではない、やはり長期的な展望でやらなければならぬのだな、こう私は思っておるわけでございます。
  220. 田島衞

    ○田島委員 大臣大臣なりの立場でのお答えというものがあるのでしょうけれども、私が聞いているのは、臨調の考え方をどう解釈するか、どう評価するかということを聞いていないので、大臣みずからが所信の中にそう語っておられることは、具体的にはどういうことなのかということを聞いておるわけです。  臨調のことはよく出ますけれども、私は別に臨調の考え方を聞いていない。臨調の特色というのは、役人でない者の行政改革案というところに一番大きな特徴があるはずだと思うのです。本当からいったら、何も素人さんから物を言われなくたって、役人さんがその覚悟を持ったら、ちゃんとみずから行政改革できるはずだ。ところが、やる度胸がない、勇気がないから、だからああいう形が出てくるわけです。  そこらのところを考えていただいて、せっかく時間を短くしようと思っても横っちょへそれちゃうといけませんけれども、たとえばさっきの質問の、私の前質問者の中へ出てきた役人さんの天下りの問題にしたって、あの質問に対する答弁を臨調のどなたさんかにさせたら、すぱっと出てきますよ。ところが、やはり役人さんじゃなかなかそう簡単には出せない、そこの違いがあるわけですよ。  だから、私は別に臨調をどうこうじゃなくて、大臣が所信の中で「長期的な展望のもとに行財政改革を推進」するのだ、こう言っておられることについては何かあるのかなと思ったから聞いておるので、想像して聞いているのじゃなくて、大臣所信表明の中から聞いているわけですから、いや、だからといってそんなに具体的なものはないんですよならそれでもいいのですよ。別に私はそのことで責めているわけじゃないから、ただ、あるなら聞かしてもらいたいということだけを、ひとつもう一回率直に聞かしてください。
  221. 山本幸雄

    山本国務大臣 いや、私もそういう奇知、妙知があるわけじゃもちろんありません。一つは、臨調のことを申し上げたのは、臨調も確かに将来へのレールを引いていく上の一つの指標であろうと思うのです。これは私は、いま中曽根内閣は臨調の答申を実現して行政改革をやろうとしておるのでございますから、内閣の一員として臨調の答申というのは確かに一つの私どもの目標とすべきところである、こう思っております。それの目標は、確かにいま申し上げたように、理念としては将来間違いのない理念を持っておって示しておってくれるわけでございますから、問題は、具体的にどうやっていくのかということにあるわけでございます。  これは何といいましても、私は、経済的にはもう安定成長である、しかし、そういう中でやはり国民のニーズというものはだんだんと多様化していく、それから価値観も変わっていく中で、地方自治地方行財政というものの進むべき道というものは一体どうしたらいいのかということは、従来よりは状況が変わってくることであろうと思うのです。その中でいまおっしゃられる新しい構想に基づく行財政改革ということでございますが、いずれにせよ、そういう安定成長のもとで住民の福祉あるいは地域の繁栄というものを目指さなければならぬだけに、私は、どうしてもコンパクトな地方自治体のあり方というものを考えていって、それがきわめて効率的、能率的に作動をしていく、動いていく、そういう自治体になっていただきたい。これは国の場合と違って、何せ三千三百もあるわけでございますから、一つ一つの自治体の首長さんあるいはその議員さんの皆さん方にもお考えを願い、住民もともどもに考えてひとつやっていただきたいと思っておるわけでございます。私どもはそういうレールを引いていくという役割りを持っておると思うのです。  じゃ、具体的にそういうコンパクトあるいはスリムなきわめて能率的、機動的に動いていただける地方自治体にするのには一体どうしたらいいかということになってまいりますと、これはいろいろ考えはあることであろうと思います。その辺になってきますと、これはいろいろ具体的な問題も考えていかなければならぬことでございますので、このぐらいのお答えにさしていただきます。
  222. 田島衞

    ○田島委員 そのお答えでは私の満足するところではありませんけれども、時間の関係で次にもう一つだけ、似たようなものですけれども、やはり所信の中の財政に関する件で、「歳出全般について徹底した節減合理化を行いつつ、」こうある。本当にこの文句のとおり「歳出全般について徹底した節減合理化」を行っていただければ、これは確かに相当の財政建て直しには役に立つ。それから行政改革も実が上がるのですけれども、ただ文句だけなのか。これも何か具体的に多少は中身があるのか、ただ文句だけここへ載せたものなのか、率直に聞かせてください。
  223. 山本幸雄

    山本国務大臣 歳出の削減というのはなかなかむずかしいことなんです。これは、それぞれの歳出にはそれぞれの理由があってできておるものでございますから非常にむずかしいことでございますが、一つは、地方自治体自体が真剣に考えていただきたい問題と、もう一つは、国が縦割り行政地方自治体との関係においていろいろな仕事をやっていく、その面で国の方で考えてもらわなければならない問題と、二つあると私は思っておるのです。その両面について地方自治体もひとつ真剣になっていただく。何とかことしの地方財政対策も立ちましたけれども、立ったゆえんのものはある程度借金がふえたということだけに、地方公共団体もひとつ考えていただきたい。国の方も、地方との関係において、たとえば人をこういうふうに置いてくださいというような必置規制というものについてもやはり考えていただく、これは一つの例でございますが、そういうことも国の方でも考えてもらうように、自治省としては各省庁にも要望をしていきたい、こう思っております。
  224. 田島衞

    ○田島委員 大臣がかわるたびに当然所信表明というのはあるわけですけれども、その所信表明の中身を見ると、相当期待をされる。だけど、実際にはなかなか先へ進まないし、行政効果は上からない。その理由は何だといったら、結局はそう書かざるを得ないのでしょうけれども、ただそういう文句が載るだけなんですね。これではやはりおもしろみがない。せめて山本さん、おれが大臣の任期中には少しは変わって、やっぱり実があったなと思うことをやってやろうかなと思ってがんばっていただきたいと思うのです。もちろん釈迦に説法だろうと思うのですが。確かに自治体自体が一生懸命がんばらなければいけない、自粛しなければいけないと思いますけれども、その自治体に対するある意味での指導監督権が自治省にある。みずから範を示すところもある。そういう意味では大臣考え方というものは相当影響が大きいと思うのです。  さっきも臨調の話が出ましたけれども、臨調の特色を、私は私なりに、役人でない者の見方というところに大変大きな特色を見る、こう言ったのですけれども、一軒のうちの中で家計が大変苦しいといえば、まさに直ちにその手は打たれるわけです。しかもまことに合理的に打たれる。ところが役所になると、それがなかなかそうはいかない。これが違いなんですよ。  だから、確かに地方自治の本旨というものの中には、住民の意思も尊重されなければいけない、同時に住民の福祉が図られなければいけない。その意思が尊重され、福祉が増進されるために手放しで待っていてはいけない。住民はそれ相応の負担をしなければいけない。これが税金であり、使用料、手数料あるいは公共料金である。そういうものを取るんだから、役所の方は、今度は最小の経費で最大の効果を上げることに骨を折らなければいけない。あたりまえの話なんだけれども、それがなかなかあたりまえの話にいかない。  いかないのはどこだといったら、自分で腹を切ってないところなんですよ。腹を痛めてない。そこが問題なんです。だから、役人さんがむだをしたら、そのむだ全部おれがかぶるんだ、こういう覚悟でやれば、歳出の削減も思い切ってできるかもしれないし、合理化もできるかもしれない。それから行政改革もできるかもしれぬと思うのですけれども、人の痛み、人のかゆみだと思っていたら、なかなかできませんね。  特に、先ほど来多少の期待を持って聞いたのですけれども行政改革についても、歳出全般の徹底した節減合理化という言葉についても、それほど、ああこれはうれしいことを聞いたななんという答えはないわけなんで、だからこそ毎年同じことを繰り返し繰り返しやらざるを得ない。これでは一体行政とは何なのだ、どこに行政の価値があるんだということになりかねないと思うので、せっかく御勉強の上、次の機会までに考えを固めていただきたいとお願いをして、質問をやめます。
  225. 田村良平

    田村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十六分散会