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1983-05-18 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十八日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 鳥居 一雄君    理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    粕谷  茂君       小泉純一郎君    笹山 登生君       椎名 素夫君    塩川正十郎君       白川 勝彦君    平泉  渉君       藤井 勝志君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       塚田 庄平君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    玉置 一弥君       蓑輪 幸代君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      岩崎  隆君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省証券局長 水野  繁君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁長官   福田 幸弘君         国税庁次長   酒井 健三君         国税庁税部長 角 晨一郎君         国税庁調査査察         部長      大山 綱明君         厚生大臣官房審         議官      古賀 章介君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  副島 映一君         国税庁国税不服         審判所次長   西内  彬君         厚生省環境衛生         局食品化学課長 藤井 正美君         厚生省保険局保         険課長     伊藤 卓雄君         郵政省電気通信         政策局監理課長 吉高 廣邦君         労働省婦人少年         局婦人労働課長 佐藤ギン子君         自治省行政局振         興課長     濱田 一成君         日本国有鉄道共         済事務局長   岩崎 雄一君         日本電信電話公         社厚生局長   中原 道朗君         参  考  人         (TKC国会         会長)     飯塚  毅君         参  考  人         (税制調査会会         長)      小倉 武一君         参  考  人         (金融制度調査         会会長)    佐々木 直君         参  考  人         (証券取引審議         会会長)    河野 通一君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 五月十七日  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願有馬元治紹介)(第三九五九号)  同(三原朝雄紹介)(第三九八一号)  共済年金制度改悪反対等に関する請願安藤巖紹介)(第四〇一四号)  同(岩佐恵美紹介)(第四〇一五号)  同(浦井洋紹介)(第四〇一六号)  同(小沢和秋紹介)(第四〇一七号)  同(金子満広紹介)(第四〇一八号)  同(栗田翠紹介)(第四〇一九号)  同(小林政子紹介)(第四〇二〇号)  同(榊利夫紹介)(第四〇二一号)  同(瀬崎博義紹介)(第四〇二二号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第四〇二三号)  同(辻第一君紹介)(第四〇二四号)  同(寺前巖紹介)(第四〇二五号)  同(中路雅弘紹介)(第四〇二六号)  同(中島武敏紹介)(第四〇二七号)  同(野間友一紹介)(第四〇二八号)  同(林百郎君紹介)(第四〇二九号)  同(東中光雄紹介)(第四〇三〇号)  同(不破哲三紹介)(第四〇三一号)  同(藤田スミ紹介)(第四〇三二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四〇三三号)  同(正森成二君紹介)(第四〇三四号)  同(松本善明紹介)(第四〇三五号)  同(三浦久紹介)(第四〇三六号)  同(三谷秀治紹介)(第四〇三七号)  同(蓑輪幸代紹介)(第四〇三八号)  同(村上弘紹介)(第四〇三九号)  同(山原健二郎紹介)(第四〇四〇号)  同(四ッ谷光子紹介)(第四〇四一号)  同(渡辺貢紹介)(第四〇四二号) 同月十八日  医業税制の確立に関する請願横山利秋紹介)(第四〇六四号)  申告納税制度改悪反対等に関する請願横山利秋紹介)(第四〇六五号)  同(安藤巖紹介)(第四二四七号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願大出俊紹介)(第四〇六六号)  同(鈴木強紹介)(第四二四九号)  共済年金制度改悪反対等に関する請願井上普方紹介)(第四〇六七号)  同外二件(中西績介紹介)(第四二五〇号)  同外一件(中村重光紹介)(第四二五一号)  同(正森成二君紹介)(第四二五二号)  同(松沢俊昭紹介)(第四二五三号)  同(蓑輪幸代紹介)(第四二五四号)  同(山口鶴男紹介)(第四二五五号)  同(渡辺三郎紹介)(第四二五六号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願愛知和男紹介)(第四一〇五号)  同(田邊誠紹介)(第四一〇六号)  同(寺前巖紹介)(第四一〇七号)  同(中路雅弘紹介)(第四一〇八号)  同(中西績介紹介)(第四一〇九号)  同(中野寛成紹介)(第四一一〇号)  同(橋本龍太郎紹介)(第四一一一号)  大幅減税申告納税制度改悪反対等に関する請願安藤巖紹介)(第四二四八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月十七日  物価調整減税の実施に関する陳情書(第二四五号)  たばこ販売店指定制度定価制度の存続に関する陳情書(第二四六号)  大型間接税新設反対に関する陳情書(第二四七号)  所得税大幅減税に関する陳情書外九件(第二四八号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案内閣提出第五三号)  国の会計税制及び金融に関する件      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に開する件について調査を進めます。  お諮りいたします。  本件について、本日、参考人としてTKC国会会長飯塚毅君、税制調査会会長小倉武一君、金融制度調査会会長佐々木直君及び証券取引審議会会長河野通一君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 森美秀

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 けさは、TKC国会会長公認会計士でしかも五千数百人の税理士を傘下に持つ全国でも大変大きい組織を運営されている飯塚先生においでをいただきましたのは、特に先生論文あるいは文芸春秋の昨年七月号の税に関する提言、こういうのをずっと読んでみて、国家国民のために本気でいい意見を提言しているな、こう私は感じて、いま日本国家財政地方財政とも大変な窮乏状態で、すでに国の借金が累積九十七兆円、五十八年度末は百十兆円、地方財政も五十兆円ぐらいの累積債務であります。したがって、これは党派の問題、主義主張の問題にかかわらず、国民的一大難問題を抱えたと言っていいと思うのであります。この課題を解決するためには朝野に及ぶあらゆる英知を吸い上げない限り、この問題は解決至難であろう、これから二十年三十年と苦しまねばならない、そういう事態にいま落ち込んでしまったと私は思うのであります。  そういう角度から、在野の税専門家立場から、しかも、先生ドイツ語や英語がべラベラで原書で勉強されているとあれらの書物を読んでみると痛感をするわけであります。日本では国際税法比較学をやる先生というのはほんのわずかしかいないものですから、先進国との比較ども交えてひとつ御意見をいただければ大変ありがたいと思います。  そこで、最初に、先生日ごろ租税正義実現あるいは犠牲の平等という言葉をお使いになっておられるのでありますが、租税正義実現という場合にどんなことを意味しているのか、そんな点をちょっと冒頭に御見解をお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。
  6. 飯塚毅

    飯塚参考人 租税正義という概念ドイツ税法学会で初めて言い出した言葉であって、イギリスにはない言葉ですね。その租税正義というのは一口に言ったら何だということになりますと、国民に漏れなく公平に、能力に応じて、かつ租税法規に従って正しい税金を納めさせる、そこにある。実は租税正義という問題は、たとえばドイツの最高の税法学者であるクラウス・ティプケという先生がおりますが、この人には「シュトイエル・ゲレヒティッヒカイト」、「租税正義」という書物があります。それほど実は租税正義というのは国際的な税法学会では有名な課題でございます。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 限られた時間でありますから、先生と論争する気持ちは全くないので、きょうは拝聴するという立場から御指摘をしていただいて、順次進めたいと思います。  第二問目は、御案内のように臨調は、増税なき財政再建、そういう路線を策定をし、総理も自民党政府もそういう考えで進めると言っているわけでありますが、私の感じでは、増税なきで一体いまの財政状態から脱却できるかというと、まさに不可能事に近いと考えているわけであります。  そこで、仮に一歩譲って、税調の考えるような増税なき財政再建という場合はほかに何か方法があるか、その角度から、こんなことをやれば新しい税法をつくらなくてもできるぞと先生の思われる点をひとつお示しをいただきたい、こう思います。
  8. 飯塚毅

    飯塚参考人 増税なき財政再建というのは、第二臨調が主張したのみではなく、今日では国民的課題になっておると思います。したがって、この点は政府としても与党としても、それからずれてはなるまいぞというふうに私どもは考えております。  さてそこで、しかし御承知のように財政学には財政需要膨張原則というのがあります。つまり、どんなことがあったって財政というのは必ず膨張してしまうのだという原則がございます。そういう立場から見たときに、やはりやがては直接税依存ではなく間接税依存のことも話題に上り、検討しなければならぬだろうと思っております。  その場合に非常に必要なことは、従来の失敗から学ぶということだと思うのです。従来いろいろ売上税等が実施されたことがありますけれども、失敗いたしております。なぜかというと、記帳義務の強制というのが先行していない、ここに問題がある。やはり記帳義務をがっちりと国民に植えつけて根づかせておかないとだめだという問題があります。  たとえば売上税の問題でありますが、これは一九一九年ワイマール憲法ができた当時、あの当時からすでにドイツでは売上税法がつくられております。そして現在、ドイツ売上税法、あるいは付加価値税法とも言っておりますけれども、これの条文数は、税法施行規則、細則、通達合わせて約七百三十ページあります。そういう膨大な法律を用意した上で国民の納得を得ながらやっていくという形が必要かと思います。そういう点で、私は西ドイツの例を学ぶべきだと思っております。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 飯塚さんの発表された文芸春秋の去年の七月号の「税金 これでいいのか 憲法を破壊するような税制は絶対に許せない」、読んでみるとなかなかおもしろいのでありますが、この中で「国家脱税を勧めている」、大変ショッキングな見出しで書いてあるわけであります。国家脱税を勧めているというのは納税者が読むと大変興味を感じるわけであります。これではなるほど脱税が後を絶たない、こう国民に感じさせた大変な論文だと思うのであります。  そこで、この見地から、どうしたら一体そういうことが解消できるのか、その具体策を少しお示しいただければありがたいと思います。
  10. 飯塚毅

    飯塚参考人 お答え申し上げます。  すでに去年の五月、第二臨調の第一部会勧告書を出しておりますけれども、現在の所得税法の百二十条では、自分の主観的な価値判断申告書を出すか出さないかが決まってしまうという形になっておりますから、どうしてもだめなのです。そこで、所得基準から総収入基準、いま先進各国はみな総収入基準を採用いたしておりますけれども、この総収入基準を採用せよということが第一部会勧告から出ているわけであります。同時に、記帳義務を強化せよということが出ているわけです。私は民間人として不思議でならないのは、第二次臨調の第一部会がかくのごとき勧告を出しておきながら、いまなおそれに対して国会あるいは政府は手をつけている様子がない、これははなはだおかしい、そういうふうに私は感じております。そこで、総収入基準の採用ということは当然のことであります。  次に、記帳義務でありますけれども記帳義務については、これは記帳義務であると同時に記帳権利なのです。というのは、これは特に与党先生方には御理解をいただきたいことでございますが、日本所得税法の百五十五条、法人税法の百三十条、これは会計帳簿というものに証拠価値を認めておる。これは世界ではドイツだけです。ドイツ国税通則法の百五十八条で帳簿証拠性を認めております。つまり、帳簿には証拠価値があるということなんです。正しい申告をやっている者には、つまりいまの段階では青色申告を出している者ですけれども、その者には帳簿に間違いがない以上更正決定できないということになっているのです。それを帳簿証拠価値と申します。その証拠価値を認めているのは日本ドイツしかない。だから、記帳義務を強化するということは、同時に実は権利ももらうことなんです。だから、その点、別にわが国商工業者を困らせることにはならぬということ。  それから、もう一つ重要なことは、すべての国で実は記帳義務を免除されている人々のグループがございます。たとえばドイツで言うならば、西ドイツの商法の四条、これは小商人の規定でありますが、小商人には記帳義務を課さないと書いてあります。さらに国税通則法の百四十一条というのがございます。それによると五つ基準があります。つまり取引高売上高が一年間に三十六万ドイツマルク以上であるかどうか。つまり、日本で言えば三千六百万以上の売り上げがあるかどうか。第二は、事業家の総資産が十万ドイツマルク以上であるかどうか。第三は、農業者林業者農林業者財産評価法に基づく評価額が四万ドイツマルク以上であるかどうか。さらに第四番目に、一般事業者経常利益が三万六千ドイツマルク以上であるかどうか。さらに農林業者が年間の経常利益が三万六千ドイツマルク以上であるかどうか。この五つ条件があって、そこへ線が引かれてあります。それ以下の者は帳簿を記載しないでよろしいということになっています。だから、零細業者はちゃんと守られている。  同時に、先生方はすぐおわかりだと思いますけれども売上高幾らになるか、経常利益高幾らになるか、これは年度が過ぎないとわかりません。したがって、記帳義務者はそれとは別にさらに行政庁による記帳義務の通達を郵便物で行っておるというのが現状であります。ところが、日本にはそれがない。したがって、野放しの脱税状態が続いておるということでございます。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 神でない人間はどうしても税から逃れようとするいろいろな工作を考える。法を整備し、記帳をきちっと義務づけても、果たしていまのような脱税が防止できるのだろうか。一体脱税というのはなぜ行われるのだろうか。人間が神でないから当然起こるのか、法が不備だから脱税が横行するのか、この辺は実際の執行面を担当している国税庁長官として、いままで主税局長、法をつくる方の立場から執行立場に回った福田国税庁長官、率直な意見をひとつお聞かせいただきたいと思うのであります。
  12. 福田幸弘

    福田(幸)政府委員 なかなかむずかしいご質問でございまして、犯罪がなぜ発生するかということに等しいような多様な原因があろうと思うのです。  人の性が善か悪かという問題にも絡むし、財産というものを愛するという本質がございます。みずからを守ろうとするわけです。この間中国の劉志城という税務総局長が来たときの向こうの話に、君子は財を愛すると言うのですね。君子というのはだれでも一般の人のようですが、財を愛する、これを取るに道ありと彼は私に言ってくれたのですが、財を愛するという本質はどの国にもあるということが基本にあります。  それから、その国を自分たちでつくっておる、その社会自分たち社会であるという一体感がないと、税の問題は、あえて財産を出すわけですからやはり脱税が起きやすい。  ほかの国のことを言って悪いのですが、イタリアが複数の二十ぐらいの国からでき上がって、その後まだ一体感が定着しないということかどうか知りませんが、その辺の社会一体感がないとどうしても納税意欲が落ちる、アングラ経済がどうしてもはびこりやすいということがあります。  そういうことで、一般的に言いますが、また教育というものを小さいときからやっていませんと、本来、性格としては財を出したくないのですから、国家社会意味を十分に教育しておかないと、これが守られないということがございます。  いずれにしましても、コンプライアンスというのがアメリカの考え方、要するに法律を守る、税法を守る、納税道義というのが国民気持ちにないところには特に申告納税は育たないわけで、そういう意味で、社会国家一体感とそれを基盤にした教育というものが大事だろうと思うのです。  あとは所得税とか、また所得税税負担が重過ぎると脱税しやすいという問題を誘発するわけですし、また制度が整っていませんと脱税しやすいことになる。記帳義務の問題はそういうことでございまして、シャウプが言ったときに、勧告当時彼は条件を三つ言ったわけです。申告する所得を一番知っているのは本人である。本人所得計算をするわけだから、それで記帳というものは当然前提になるというのが一つ。それから、調査が適切に行われるということを言っておるのです。だから、当時は実調率は相当高かったわけです。これはまた後で御質問があると思うのですが、実調率は相当高い水準で、その前提で考えておった。調べに来られることを前提にして申告するわけですから、人は性格善であっても、その場合、調査があるということがそれを担保する。もう一つは、情報税務当局に適切に入ってくるということ。これは国及び金融機関等を含めて情報が適切に入ること。この三つの条件を言ったわけですから、この条件が満たされる環境が必要であるというふうに考えます。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 いま長官の話だと、第一の、本人所得は一番よく知っている、自分所得幾らあったかというのをわかっているという前提なんですね。ところが飯塚先生の御意見は、所得幾らあるかを確実に認識できるのは、本職の税理士とか専門家でないと所得というものの概念すらよくわかってない。必要経費範囲、どこまでが必要経費なのかもわからない素人がいっぱいいる。そういう人は任意で、仮に一億円収入があってもみんな使ってしまって、私、貯金がないから所得がなかったと思えば申告しなくてもいいわけですね、いまの日本法律は。  すると主税局長、これは日本法制度そのものに欠落があると私は感じるのですが、法をつくる方の主税局としては一体どういう認識をしているのか。  それから、臨調からそういう意見まで出されているのに、なぜ総収入基準に切りかえができないのか、その障害はどこにあるのか、与党自民党承知をしないためにできないのか、主税局事務が繁雑になるからやろうとしないのか、どの辺にできない原因があるのか、この辺の主税局長見解を述べてみてください。
  14. 梅澤節男

    梅澤政府委員 大変広範な範囲の御質問でございますけれども政府税制調査会がいままでたびたび中期答申を出されておるわけでございますが、最近の五十五年の中期答申に、いま委員が御指摘になりました所得課税の、特に事業所得者の場合と給与所得者の場合の所得の捕捉の不公平に由来するところの税の不公平感の問題が取り上げられまして、わが国の三十数年定着してまいりました申告納税制度をこの時点で、もう一度見直す必要があるということを指摘されております。  その御指摘を受けまして、これも当委員会でたびたび御説明申し上げているところでございますけれども政府税制調査会の中に、昨年六月でございますか、申告納税制度特別部会を設置していただきまして、現在東京大学の金子教授をキャップにいたしましていろいろ御検討いただいておるわけでございます。  その際の検討の項目といいますのは、何と申しましても申告所得税納税者記録なり帳簿に基づく申告というのが原点でございますので、記帳なり記録に関するわが国の現在の税制制度が一体どうなっているか、今後どうあるべきかという問題。それから、申告納税制度でございますけれども、きちんとした申告が行われない場合、先ほど来議論になっておりますけれども、当然、課税正義なり公平という観点から税務官庁推計課税の問題が起こってまいります。現在のわが国推計課税制度が諸外国と比べて一体どうなっているのか。それから、当然、法治国家でございますから、課税庁納税者の間に訴訟の問題が起こってまいりますが、その場合の訴訟立証責任を一体どのように考えるのかという問題。  それから、ただいま委員が御指摘になりました総収入申告制、これは臨調答申にも指摘されておるわけでございますが、先ほど飯塚参考人がおっしゃいましたのでちょっと私ども認識と違いますところは、諸外国が全部総収入申告制になっているというのは、私どもそういうふうに考えておりませんで、あえて総収入申告制というなれば、アメリカはいまグロスインカムを基準にいたしまして申告義務を課しておる。ヨーロッパはむしろ賦課所得税制度でございまして申告納税制度ではないわけでございますけれども一定の場合に資料を提出する義務がございますが、それはむしろ所得基準というふうに考えた方がいいのではないか。ただ、フランスのように、外形の基準一定の場合に課税庁所得資料を提出しなければならないという義務を課しているところもございます。  各国それぞれ、たどってまいりました税制の歴史なり社会事情によりまして、いろいろな行き方があるわけでございますが、私どもは、そういうものも参考にいたしながら、現在の申告義務制度が果たしていいのか悪いのかといった観点からの御議論もいまやっていただいておるわけでございまして、でき得ればこの秋にでも御結論をいただきたいと考えているわけでございます。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長は大変重要な発言をして、申告制度はいいか悪いかまで足を踏み込んで検討する、いま最後にそう言ったでしょう。いま最後はそう言ってますよ。メモしてある。
  16. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ちょっと言葉が言い足りなかったわけでございますけれども、現在の所得税法の百二十条に決めております申告義務、この制度がいいのかどうか。したがいまして、そうではなくて、先ほど来議論になっております総収入基準申告義務を課するのがいいのかどうかということでございまして、申告納税制度がいいかどうかということではございませんので、ちょっと舌足らずでございましたので補足をさせていただきます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 飯塚さん、いまお聞きになっていて、やろうと思う意思と、余りやりたくないという意思で発言をしている場合とは、聞いていて大変違いますね。  そこで、飯塚さんにちょっと伺いたいのは、世界各国の例をいろいろ比較検討してとこう主税局長は言っているのですが、世界は百六、七十カ国もあるのですから、どこの国と比較してどこの国を見習おうというのか、主税局長は言わなかったのでありますが、税の専門家として、いろいろ先進国の最も合理的でこういう制度が一番租税正義実現にかなっておる、そう思われる国の例をやはりわれわれは学ばなければならぬと思うのです。  そういう見地から見ると、西ドイツ税制アメリカ税制、イギリスの税制、これらが大体先進国としては最も進んだ、整理された税法になっているのじゃないかなと思うのですが、残念ながらドイツ語を知らない私たちはドイツ書物を読むことができない。先生は、そういう意味で、イギリス、ドイツアメリカ、この三カ国くらいを見渡したときに、日本に欠落している税制の根本的な欠陥、その辺はどう理解をされており、どの国のこういう制度を導入することが一番ベターだと考えるのか、その辺を比較法学上ちょっと御見解を教えていただければありがたいと思います。
  18. 飯塚毅

    飯塚参考人 ただいま主税局長さんは、申告制度について各国に若干の相違があるということをおっしゃいましたけれども、まさにそのとおりなんで、若干のニュアンスの相違はある。しかし、たとえばドイツ国税通則法を見ますと、やはり税の申告となっている。それは原文ではシュトイエルエルクレールンクという言葉を使っている。税の申告となっている。だから、それを賦課課税制だというふうに理解するのはちょっと条文の読み違いではなかろうか、私はそのように思っております。  なお、ただいまの御質問で、アメリカドイツ、イギリス等の先進国と比べて日本を見た場合に改善しなければならない点はどこか、こういう御質問でありますが、何といっても顕著な相違は、記帳義務というものが刑罰で担保されているかどうか、この一点がまず第一の問題であります。それでなかったら本当に公平な漏れない納税はできない。  それからもう一つ、非常に重要なことは、国民記帳義務を課す以上は行政当局も襟を正さねばならないということであります。そうでないと、いわゆる権力徴収になっちゃう。これは、この前社会党の大蔵の先生がおっしゃったけれども、まさに権力徴収、権力徴税になっちゃう。そこで、記帳義務をがっちりとかぶせるかわりに行政当局にも襟を正していただく。たとえばアメリカの場合、内国歳入法の七千二百十四条という規定があります。この規定は、税務官吏が税務調査に便乗して納税者に精神的な圧力を加えた場合、一種の脅迫行為をやった場合、あるいは税務調査に便乗して法が許す以上の税金を取っちゃった場合、あるいは税務調査に便乗して金銭物品を受領した場合、その他六、七種類に分けて、こういうことをやった場合は税務官吏は懲戒免職のほか五年以下の懲役または一万ドル以下の罰金に処すという規定がある。これはアメリカだけではありません。各国にあります。たとえば発展途上国であるシンガポールの所得税法の九十四条、九十七条等にも同じことが書いてあります。そういうわけでして、やはり記帳義務を強化する以上は、同時に、それが権力徴税にならないような、行政当局が襟を正すという点がなければなるまいと思っております。  第三点は、世界の先進国では脱税の未遂犯は処罰するという規定を持っております。アメリカの場合は内国歳入法の七千二百一条にあります。脱税の未遂犯はこれを罰するぞという規定があります。そして不真実記載はいわゆる脱税の準備行為であるというのが税法学会の通説でございます。ところが未遂犯に関しては日本には何らの規定もない。これはいたずらに納税者を甘やかし、国家脱税者をふやしている結果になっておる。未遂犯はこれを罰するということは、たとえばドイツの場合は国税通則法の三百七十条第二項にございますけれども、そのように皆各国にそれがある。日本だけない。これはやはり困ります。サミット参加国なんですから、われわれ職業会計人仲間で会合をやっても余りひけ目を感じないような法制にしていただきたいと願ってやみません。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの所得が出たら申告をしろという法律ですね、これを一定以上の収入のあった者は皆申告をしろということになりますと、どの程度申告納税者がふえるか。収入基準の引き方によってもかなり違うわけでありますが、これは国税庁長官の方がいいですか、主税局長がいいですか。現在、個人事業者申告しているのは二百万ぐらい、個人事業者は七百万ぐらいあると聞いているのでありますが、その辺の数字はどういうことになっていますか。申告していない数がどのぐらいあるか。
  20. 梅澤節男

    梅澤政府委員 五十六年の実績の数字でございますけれども、農業以外の事業者数が六百九十八万人、そのうち所得税を納税している人が二百六十四万人でございます。農業所得者の場合は、事業をやっている人が百四十一万人、納税をしている人が十七万人という数字でございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 いまの政府側の数字を見ても、事業者申告していない者がたくさんおるわけですね。半分以上は申告していないわけですね。サラリーマンは、高校を卒業してその年にはもう税金を取られているんですね。これは、所得が完全に捕捉されておるから高校卒で取られますよ、賞与がかなり税金がかかってしまう。  そういう点を比較したときに、やはりいまの所得税法のあり方を変えなければならぬという点だけは完全に合意していいのだと思うのでありますが、その点は大蔵大臣はどう思いますか。途中から来たのでよく経過がわからないと思うのでありますが、いまの所得税法というのは、所得が出たら申告しなさい、所得が出ないと自分で思えば申告しなくもいいという、脱税を当然認めているわけですね。こういう制度がこのままいったのでは、先進国比較しても日本所得税法の規定が大変おくれておる。そういう点について、大蔵当局としては改善せねばならぬなということで大体合意しているのかどうか。それはどうなんでしょう。大蔵大臣としてはどんな感じですか。
  22. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは先ほどお答えいたしましたように、そういう問題意識もありまして、現在税制調査会の中に申告納税制度特別部会を設けていただきまして、鋭意御検討いただいているところでございます。  それから、先ほど事業所得者の場合、事業をやっている人と納税者の数を申し上げたわけでございます。現在の事業所得者所得の捕捉が、給与所得者に比べて捕捉に差があるという議論が世上いろいろあることは事実でございまして、そういう問題意識も含めまして、現在特別部会で御議論いただいておるわけでございます。  ただ、若干の補足の説明をお許し願いたいと思うわけでございますけれども、事業をやっている人のおよそ四割が納税をしておる。したがって、六割は本来納税すべき人であるにもかかわらず納税をしていないのだということが端的に言えるかどうかということは、私どもは問題があるということでございます。  と申しますのは、一般の個人事業者の場合でございましても、わが国の場合、現在青色申告制度が非常に普及し定着いたしております。そういたしますと、家族従業員に対する給与、これは実は給与所得者として納税をしているわけでございまして、したがいまして、その意味では四十年代、五十年代を通じまして給与所得者化が非常に進行しておるということもございます。したがいまして、事業をやっておる人の数に比べて納税しておる人の割合が低いから、その分所得の捕捉が漏れているのだというふうに一概に言うのは、いささか問題があるのではないかということだけは補足して御説明申し上げたいと思います。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 主税局長、私は、すべての人がみんな税を納めるだけの所得がある、ないなんという議論は一つもしていないのですよ。あなたのそういう強弁が、総収入基準を採用したくないという意思に受けとめられるのですよ。  サラリーマンから見たら、いずれにしても、六百九十八万件個人事業者がいて、税務署に申告している人が二百六十四万だということになると、税がかかる、かからないは別として、申告するのがあたりまえだ、何町何番地にこういう商売やっている人がいるというのが把握されるのが、サラリーマンならあたりまえだと思いますよ。申告しなければそれすらも把握されないわけですよ、わからぬわけですよ。たとえば銀座や新宿でバーをやったりスナックをやっていたって、所得が出ないと思って申告しないでおけば、どんな商売をやっていたって税務署はわからないですよ。そこの欠陥をまずどうふさぐかだってあるのですよ。  そういう点から見て、主税局長飯塚さんに反論したいために故意に言っておるのかどうか知らぬけれども、いまの所得課税基準より総収入基準の方が合理的であり、先進国の見習うべき国ではそうなっておる、飯塚さんはこう言っているのだから。ところが、そういう受けとめ方に何か歯に衣を着せて答弁しているというのは、主税局長自身がやりたくないという感じかな、私はこう受けとめる。しかし、あなたと論争しても仕方がない。  そこで、アメリカドイツも、先進国は皆そういう形になってきている。こういう傾向を大蔵大臣としては、日本税法にもまだいろいろ足りないところがあるのだな、もっときちっと合理的にしないと公平、公正な税制とは言えないな、そう感じるのは当然過ぎるぐらい当然だと思うのでありますが、竹下大蔵大臣はどう認識されますか。
  24. 竹下登

    ○竹下国務大臣 税の専門家の中へ入って非専門家がお答えいたしますのは、感想を述べる域を出ないと思います。それをあらかじめ御容赦をお願いいたします。  サラリーマンの方の所得の捕捉は確かに一〇〇%。したがって、クロヨンとかトーゴーサンとかいろいろな言葉ができるということ。しかし、私はいま、いわゆる徴税業務を行う国税庁を監督する立場にある大蔵大臣として、現実にそういう実態がある、ないというお答えはできないにいたしましても、そうした感覚が一般的に世上あるという認識は持っております。  しかしながら、青色申告等に至る歴史的経過を見てみますと、そこにいろいろな苦心が行われて、いま国民の納税に対する知識、あるいは、そもそもは性善説が前提に立たなきゃならぬわけでございますが、そういうことから今日まで進んできて、御指摘になるような問題があるから、税制の基本の問題について高い立場から御議論いただく税制調査会特別部会を設けて御審議をいただいておる。その議論の経緯を踏まえながら、改善すべきところは改善していかなければならないが、現行税制が、世上そうしたいろいろな言葉を生むような余地があるから生むのでございましょうが、現実、非常に不備なものであるという認識には必ずしも立っておりません。したがって、これも専門家の集まりでありますその特別部会等における審議を見守って対応すべきことではないかな、感想の域を出ませんが、私のお答えといたします。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 飯塚先生、いまの役所側の見解を聞いて、なるほど私とずいぶんずれているなと感じますか。それとも、まあ役所じゃそのくらい配慮している、これじゃなるほど法の整備というのは百年河清を待つようなことだな。先生の著書の中で、いろいろ読んでみると、先進国税制の手直しを頻繁に行って合理的に改善をしている。商法などもドイツ日本比較すると、日本の三倍以上の回数の改正をやっている、そういうことが文春にも書かれているのであります。いまの大臣のスローな感じの答弁や主税局長見解を聞いて、どんな感じですか。
  26. 飯塚毅

    飯塚参考人 まあ大蔵大臣としては、なかなか正面切って欠陥があるということは言いづらいだろうと思います。しかし、たとえば一例を申し上げます。  所得税法の二百四十一条というのがございます。これによると、自営業者は確定申告書を出さなかった場合には一年以下の懲役または二十万以下の罰金、しかし、何らかの理由があったときはその刑罰を科さないというふうになっている。ところが、サラリーマンだけは、源泉徴収しなかったまたは徴収したものを納入しなかったという場合は、二百三十九条と二百四十条によって、おのおのの場合において三年以下の懲役なんです。サラリーマンに関しては三年以下の懲役という強烈な担保がついている。しかるに、自営業者については一年以下であり、事情によっては罰を科さないというふうになっている。なぜこういうふうに差別するのですか。私は、これはいかぬと思う。  それからもう一つ、私は聞いていてつくづく思うのは、ただいまの主税局長さんの御答弁の中で、申告者は六百六十九万とか八万とかというお話がございました。しかしこれは、しからば算定の基礎いかん、こういうふうに言われたときに、恐らく主税局長さんは困っちゃうのじゃないかと思う。というのは、日本では納税義務者を確定すべき税法条文がない。これは大問題ですよ。だから恐らく主税局長さんとしては、六百六十九万と言ったのは、日本全国の五百九の税務署に国税局が出している申告相談実施要領という通達がありますが、この通達に基づいて、前年はこれだけの申告書を取ったんだから今年もこれぐらい取れるだろうということを集計した結果にすぎないだろうと思っております。福田長官の先ごろ発表された論文によりますと、アメリカでは、個人の申告書を出しているのが一億通弱ございます。とすると、日本は人口はアメリカの半分でありますから、少なくとも五千万通ぐらいは出たっていいのじゃないかと思うのでありますけれども、それが六百六十九万とか八万ぐらいしか出てないということは、膨大な脱税者群がいるということなんであって、これは、国家国民の運命形成を担っている与野党の国会議員の先生方としては大きな問題だろうと思っております。  それからもう一つ、相済みませんけれども、非常に欠けていると思う点がございますので申し上げます。きょうは、たまたま主税局長さんも御臨席でございますので、申し上げておきたいと思います。  つまり、たとえばドイツの場合、脱税から逃げられないように三重構造がつくってあります。まず第一は商法の二十九条であります。すべての事業を営む者は、事業を営むことについて所轄の登記所に登録しなければならないという規定があります。そのほかにドイツでは、国税通則法の百三十七条から百三十九条まで、法人、個人あるいは消費税を納入する者というふうに三つに分けまして、そのいずれも、開業のときから一ヵ月以内にその開業の届け出を税務署と市町村役場に出さねばならぬことになっている。これが第二の関門です。第三の関門、それは、ドイツには営業法という法律がございます。ゲベルベオルドヌンクと申しますけれども、この営業法の百四十三条を見ますと、開業の届け出、事業の届け出をやっていない者、しかも届け出内容が真実でない、届け出内容が完全網羅的でない、あるいは届け出がおくれた、こういう場合には二千ドイツマルクから最高一万ドイツマルクまでの罰金に処すという規定があります。  こういうように、逃げ回る者をちゃんとつかまえて許さないというふうになれば、国税の欠陥なんというものは簡単に吹っ飛んじゃうと私は考えております。そういう点が私の批判点であります。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 われわれの知らない具体的な他の国の法令を引用して御説明いただいて、なかなか説得力は抜群だと思うのであります。日本税法も商法も、先進国比較して欠陥があったら、やはりちゅうちょしないでどんどん改善をすべきだ、そういう立場に私は立ちたいのであります。  そこで、いまのような脱税が横行しており、調査をするたびに脱税が摘発をされているのが連日のように新聞に出るわけですね。結局、法の整備をしないで税をきちっと捕捉しようというためには、実調率をもっともっと高めなければだめですね。だから、税務職員をうんとふやして、その法の不備を補う方が合理的なのか、それとも、網をきちっとかけて、できるだけ脱税ができないように法整備をすることを優先すべきなのか。これは、職員増に力を入れていくのか、法の整備を優先するのか、この点については、主税当局としてはどちらにウエートを置こうと考えているのですか。
  28. 梅澤節男

    梅澤政府委員 先ほど来御議論がございますように、わが国所得課税制度並びに課税の実態について、私どもは常日ごろ謙虚に反省しながらこれに対処しているわけでございます。  制度の問題につきましては、先ほど来たびたび申し上げてございますように、税制調査会特別部会でただいま御議論をいただいております。先ほども御議論がございました、現在のわが国所得税法におきます確定申告書を提出する義務につきましては、諸外国に例がございます総収入申告制がいいのかどうかという点も含めて、いま御議論を願っておるわけでございまして、私ども税制当局といたしまして、具体的にこうありたいという議論もあるわけでございますが、現在、税制調査会で御議論の最中でございますので、それに予見を与えるような議論を差し控えるという意味で先ほど来お答え申し上げておるわけでございまして、この問題について私どもが消極的であるということではございませんので、これだけは誤解のないようにひとつ御理解を賜りたいと思います。  それから、御指摘のとおり、制度の問題のほかにやはり執行をきちんとするために、私どもも経験があるわけでございますが、国税庁の定員、機構その他についてさらに一段の充実をしていただくということが、課税正義実現するために、よりしっかりとした課税が行われるために、ぜひ必要な要件であろうと考えておるわけでございます。  それからもう一つ、せっかくの機会でございますから、先ほど飯塚参考人が、現在の所得税法の罰則の規定で、サラリーマンと事業者の場合に罰則の重さに不公平があるという御指摘があったのですが、これは若干の誤解があると思われるわけでございます。つまり二百四十一条は、事業所得者が単純に申告しなかった場合の罰則の規定でございまして、これは先ほどお話がございましたように、一年以下の懲役もしくは二十万以下の罰金ということでございますが、お引きになりました二百四十条の罰則は、サラリーマンの罰則の規定ではございませんで、源泉徴収義務者が源泉徴収をしていながら税金を納めなかったという場合でございまして、これは罰則が三年と重くなるのは当然でございまして、サラリーマンにいたずらに罰則が重くなっておるということではございませんので、念のために御説明申し上げます。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 ここで飯塚さんと主税局長の論争に入りますと時間がありませんので、飯塚先生も何か言いたいとは思うのでりますが、ちょっと先へ進めさせていただきたいと思います。  通告した質問順序をちょっと変えますけれども、七問と六問を一本にした形でお尋ねをしたいと思います。  飯塚会長も御承知のように、だんだん総合課税化に踏み切っていかなければ税の不公平感というのは解消しない。したがって、いまの分離課税制度をどうしても改めよう、そのために竹下大蔵大臣が前任の大蔵大臣のときに、ひとつマル優制度を見直そうという形から、グリーンカード制を実施したい、こう一歩踏み込んだのでありますが、これは三年間延期になってしまって、三年後どうなるか、これも大変不安な状況であります。  そこで、いまのマル優及び非課税貯金が二百兆円を超えるという状況、これはマル優や非課税制度をかなり悪用している状況であります。こういうことでは、正しく税を納めている人たちからの不満が消えないのはあたりまえであります。この利子配当の収入所得に対して、このまま放置しておいたら税に対する不満は一層蔓延すると思います。  そういう点について、飯塚さんは、利子配当の分離課税制度あるいはグリーンカード廃止後の新たな総合課税化への手だて、そういうような問題については、実務家の立場からどんな見解をお持ちでございましょうか。
  30. 飯塚毅

    飯塚参考人 御回答申し上げる前に、主税局長さんが飯塚に誤解ありという御指摘があったのでございますが、実は私も税法の商売人でございますので、所得税法の二百三十九条、二百四十条というのは源泉徴収義務者に対する罰則規定であるくらいのことはわかっております。しかし、それは要するに間接強制なんですよ。有無を言わさず取られちゃうのです。言うなら、サラリーマンはまるきり取られちゃうのです。ところが、事業所得者はそうじゃないというところに問題がある。誤解なさらないようにお願い申し上げます。  なお、マル優の問題、二百兆円を超えておって口数にして五億余口ある、この現状を放置しておいていいのかという問題でありますが、これは断じて放置してはならぬと思っております。  同時に、しからばどうするかというような問題がございますけれども、非課税預金つまりマル優を全廃しちゃえという意見を出す人もあります。私は、それではちょっとかわいそうだという感じがいたします。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕 そうじゃなくて、私は非課税の取り扱いをいただきたい預金はこの銀行とこの郵便局、これだけでございますということを税務署に申告させる、税務署に届け出させる。残ってあとは届け出られなかったものは、これは全部課税の対象にしちゃう、こういうふうにやると一番被害意識が少ないのじゃないかと私は思っております。  なお、グリーンカードの問題でございますけれども、先ごろ自民党のイニシアチブによって三年ぐらい延期されるようなことを聞いておりますけれども、私ははなはだけしからぬと思っております。というのは、大蔵当局が立案するに当たって若干の手落ちがあったということは認めざるを得ません。その場合に国会議員諸公は大蔵の官僚諸公を督励して、ここは少しまずいからこう直せと言うべきであって、それを廃止とか延期というのは、国民における租税正義実現という問題を余り真剣には考えていないのか、むしろ一握りの脱税者のために国会議員になっているのかというふうな疑問さえわれわれは抱かされる次第でございます。そういう点でちょっと問題だと思っております。  なお、先ほどちょっと武藤先生実調率の問題に触れましたけれども、私は元国税庁長官である磯辺律男先生から直接承ったのでありますけれども、現在日本の個人事業者実調率四%、法人は九%、したがって、個人は二十五年間に一回しか調査を受けない、法人は十一年に一回しか調査を受けない。それじゃ財政の再建はできませんよ。どうしても時効期間の満了する前に一回ぐらいは調査ができるという状態になっていないとだめだと思います。  そこで、昨年西ドイツ政府が発表いたしました西ドイツの税務官僚の数、具体的な数字を御報告を申し上げます。西ドイツ政府が去年の夏発表したところによりますと、国税庁及び国税局所属の税務官吏は十七万三千九百十三名でございます。日本の税務官吏は五万三千名前後だと聞いておりますので、実数において日本の三・三倍。ところが、西ドイツは人口は日本の半分でありますから、人口比から来ると逆に西ドイツは税務官吏の数が六・六倍ございます。したがって、私は、何も西ドイツと同じような数だけの税務官吏をそろえろとは申しません。先生方財政再建で苦しんでおられるのですから、そうは思いませんけれども、これは余りにも残酷だ。少なくとも、これでは国家を憂えている税務官吏はじだんだを踏んでいるはずだ。そこで、少なくとも行政改革というのは、単に人減らしではなくて、本当に国家財政の健全化を願われるならば、西ドイツと同じくらいは何とか税務官吏の数をふやすように持っていく。そういうふうに持っていった場合でも、西ドイツの半分以下ですから、あと五万人やそこらふやしたからといったって、税務官吏をふやすということは逆に税収をふやすことですから、それをやらなかったら、日本はていのいい亡国状態に陥っていくというふうに私は考えております。  なお、武藤先生が利子配当の分離課税の問題は批判が非常に強いということをちょっとお話しになったのですけれども、この利子配当の分離課税というのは、現在のままの税制のときにはこのまま存続しなければいかぬ。というのは、税率が世界一高いのですから。皆様は、所得税法上実は七五%が最高税率であるけれども地方税で案分して結局八〇%までしか税金を取らない、こういうふうに言っていますけれども、それはからくりがあるのですよ。たとえばアメリカ日本と違うのは、アメリカの場合は、支払った利息たとえばマイホームを買うために金を借りたその支払い利息も全部経費になります。ところが日本の場合は、その所得を得るために必要であった経費以外は経費と見ない。したがって、実質上は税率が八二、三%いっちゃうのですよ。これはもう脱税を何とか工夫しなさいよと言っているのと同じなのですよ。せめてアメリカまたはイギリス並みくらいに税率を落として、その上で総合課税を考えるというのならば私は納得いたします。こういうことでございます。もしそうでなくて、いまのままでそのまま総合課税に持っていった場合、逆増税ですよ。逆不公平ということになります。これは許されないと私は思っております。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 あと八分しかありませんので、通告どおりの項目に進んでいかないのでありますが、これは、飯塚さんには直接関係ないと思うのでございますが、いまサラリーマンの税金が重過ぎる、課税最低限を五、六年据え置きにした、そういう点からどうしても所得税減税をすべし、こういうことで与野党が一致して合意を見たわけなんであります。景気を浮揚させるために役に立つ程度の規模、まあ一兆円から一兆五千億円くらいが予想されるわけでありますが、サラリーマンに対しては財政がこんなに窮乏していても減税すべしと考えるか、この際はがまんの哲学で、減税はがまんしてもらえというのが優先すべきなのか。さらにその場合、与党自民党は、特に大蔵大臣ここにいらっしゃいますが、減税したいが財源がないからできないのだ、財源を何とかせい、みんなで考えろ、こういうことでいま足踏み状態にあるわけなんであります。減税すべし、財源はこれだ、こうすればあるではないか、しかもこの五十八年度中に間に合う財源、それは飯塚さんのいままでの構想の中から何か名案が引き出せるかどうか、その辺のことについてちょっと意見を聞かせてください。
  32. 飯塚毅

    飯塚参考人 技術諭的にかなりむずかしい問題であろうと存じますけれども、いまの日本のサラリーマン階層は、自分たちが余りにも不当な取り扱いを受けておるということで被害意識を濃厚に持っていると私は思っております。私自身はサラリーマンではございませんで経営者でございますけれども、私はそういうふうに感じております。  そこで、日本国民の八割以上の世帯がサラリーマン世帯であると言われているのでありますから、この方々に、本当にわれわれは国家から愛護されているのだなという実感を与えるような減税措置というものをやらない限り、自民党はいつまでも絶対多数を誇っているわけにはいかぬ、このように私は考えておるわけでございます。  なお、先ほど申し上げた税法上のいろいろな隘路、つまり、いろいろな逃げ道を全部ふさいでしまう、そして実調率を高める、少なくとも時効期間の中で一回は必ず調査を受けられるという体制をつくっちゃうと驚くほど税金がふえてしまう。  もう一つ重大な点がございますので、この点も先生方にお訴え申し上げたいと思います。  御承知のように、わが民法上金銭債権は十年で消滅時効であります。そこで、わが国の郵便局あるいは銀行その他の預貯金の中で、十年以上たってしまって全然動いていないので、これはもはや消滅時効だということになった場合、恐らく膨大な資金が陰に隠れておる。国家財政収入として予算面に上がってこない。これは国家的な不正義の存在を意味する、このように私は考えております。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間が参りまして残念ですが、少しここの点は議論をしたいところでしょうが、時間がございません。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕  最後に、特に飯塚さんは五十人以上の税理士を傘下におさめるTKCを経営しているわけでありますから、いろいろ職業会計人として、いまの制度、法制あるいは行政指導、そういう面から見て、職業会計人から見たいまの法規を、こういう点まずい点があるぞ、ここは速やかに手直しをすべきなんだ、そうお感じになっている点を、あと三分持ち時間がありますので、三分でひとつその点の御見解をお聞かせいただきたい。
  34. 飯塚毅

    飯塚参考人 私の考えております日本職業会計人関係法規の最大の欠陥、それは、大蔵当局が余りにも職業会計人たちに対して過保護体制をとり過ぎておるという点にあると思っております。したがって、証拠を残さずに脱税できるやつが一番腕のいい税理士だというふうな理解が一般化いたしております。これはもってのほかなんです。  たとえばアメリカの場合は、公認会計士の有資格者が二十五万人おります。二十五万人おりますが、そのうち会計事務所に従事していられるのは八万人弱であります。三分の二は会計事務所をやっていられないんだ。しようがなくて、会社の帳面つけとか経理課長とかやっているだけなんだ。そういう方が三分の二いるんだ。そういう状況をつくったればこそ、アメリカ日本とでは、実は比較にならぬほどの会計事務所の業務水準の開きができてしまった。これが大きく見ての第一の欠陥。  それから、第二の欠陥でありますが、税理士法。これが税理士に法人化を認めないというのは二十年前のスウェーデンと日本だけであります。世界の文明国で法人化を認めていない国はありません。それをなぜ認めないのか。だから、本当の正しいノーハウの蓄積ができない。  御承知と思いますが、アメリカやイギリスの第一級の会計事務所は大概パートナーシップをつくっております。そして、その監査のノーハウについて三世代くらいかけています。したがって、五百ページから七百ページくらいの監査マニュアルを持っております。われわれはどうか。監査マニュアルと称すべきものさえほとんど持っていない。なぜか。つまり、一代限りだからやっているひまはないんだ。そういうことは重要なことです。  それから次に、事務所の複数を認めない。これは日本だけなんだ。これも欠陥だと思います。  さらに、税理士法で言うと、第二の欠陥は税理士に関しては除斥期間がない。これは公認会計士もありませんけれども、除斥期間がない。したがって、税理士は一生涯その責任を追及されるようになっている。これはむちゃですよ。何となれば、法律専門家である弁護士、あの弁護士法の六十四条には弁護士さんの除斥期間は三年だと書いてある。なぜ公認会計士税理士に対して除斥期間を置かないのか。ドイツはちゃんと五カ年の除斥期間を持っております。  さらに、第三の税理士法の欠陥、それは税理士法第四十五条に、税理士は常に真正の事実に基づいて業務を執行しなければならないという、論理学で言う一種の定言的命題といいますか、そういう、こうしなければならないという規定がないんだ。だから、堕落ほうだいに堕落しちゃうという傾向が出てくる。  なお、公認会計士法で言いますならば、公認会計士法第一条第三項は条約違反であります。日米友好通商航海条約第八条違反であります。それだけ申し上げておきます。  さらに、公認会計士法の三十条に関しますけれども、そこには重要性の原則というのがあります。その重要性の原則を細かく決めたのが大蔵省の財務諸表規則であります。ところが、日本の財務諸表規則だけは、いわゆる会計記録の重要性というものを金額の重要性という意味でとらえておる。十九条から五十五条以下たくさんございますから見てごらんなさい。みんな売上総額の一〇%以下とか、そうなっておる。それは重要性がないということになっておる。したがって、この前の三越の事件で三越の社長は三億五千七百万も損害賠償請求を受けた。しかし、公認会計士は適正の申告書をちゃんと出して、監査報告を出して、そうして、しかもそれをだれも疑う者がいない。これは大失態ですよ。要するに、重要性の原則というのは金額だけではない。記帳漏れあるいは不実記帳というものも重要性の原則に入るというのが今日の世界の通説でありまして、アメリカのFASBという財務会計基準委員会の公式解釈もそうなっております。しかるに、日本だけは三十年前のアメリカを追っかけておる。そういうのははなはだ怠慢である、このように私は考えております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 大変忙しいときお出ましいただいて御高説を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  私の質疑を終わります。
  36. 森美秀

    森委員長 御苦労さま。  堀昌雄君。
  37. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、大蔵省の所管業務の中で非常に重要な税制金融行政、証券行政に係る審議会の会長さんに御出席をいただきまして、八十五分でありますか、少し質問をさせていただきます。  私は、きょうは細かいことを伺うつもりはないのでありますけれども、先般当委員会に前川日銀総裁においでをいただきまして、政府が出しております金利政策の弾力化という問題について論議をさせていただきました。また、きょう御出席になっております金融制度調査会は四月の下旬に金利自由化に関する中間報告をお出しになっております。証券取引審議会は、私がかつて商工委員会に行っておりましたときに、投資育成会社の法案に関連をして株式の店頭売買問題というのを、もうずいぶん古い時代でありますが、取り扱ったことがあります。当時、広瀬さんという方が証券局長でありましたが、それ以来今度久しぶりに証券取引審議会で店頭取引の問題が現在課題になっておるようであります。  私は、税の問題は最初に処理をさせていただいて、あと、いまの金融制度調査会の問題、証券取引審議会の問題を御質問したいと思います。  新聞がけさ伝えておるところによりますと、大変長い間銀行法改正の中で問題となっておりました銀行の証券業務の問題等に関する三人委員会というのが設けられて、森永さんとそれから佐々木さん、河野さん、いずれも三人委員会のメンバーとしていろいろお骨折りをいただいた結果がどうやらまとまる段階に来たように報道いたしております。ちょうどいい機会でありますので、これらの全体の問題を含めて少しお伺いをしたいと思うのでありますが、最初に大蔵大臣にお伺いをいたします。  いま日本経済というのは世界経済の中では大変パフォーマンスがいい方だ、こういうふうに評価をされているのであります。しかし、どうも最近アメリカ日本の産業政策という問題を取り上げて、日本とのいろいろな交渉というのですか、何か問題を提起してきておるということが、これは通産省の案件ですけれども、あります。  私は、この産業政策というものをアメリカが持ち出してきておる背景というものを私なりに考えてみますと、どうも日本という国は明治以来、官尊民卑といいますか、そういう発想の流れが実は依然として今日も続いておるのではないか。それを感じますのは、たとえば、いまの金融制度調査会の中間報告などを見ておりましても、どうも何かそういう政策の主体というものが非常に重視をされて、要するに、政府の役割りというものが依然として非常に大きな部分を占めておるというような感じがしてならないわけであります。  この大蔵行政に、私、昭和三十五年以来参加をして長年これの論議をしておるのでありますが、いまのアメリカからの要求などを見ておりますと、過去はそれでよかったと思うのですが、だんだんとやはり国の介入——恐らく外国の人が一番奇妙に思っていると思うのは、日本の官庁の行政指導という何とも得体の知れないコントロールの手段、これが法律その他、表に出るものは、やはり国際化の時代でありますから、できるだけ政府も配慮をするのでありましょう。もちろん、今度の通産が考えております法案の中には、恐らくアメリカ側としては問題を指摘するものもあろうかと思っておりますが、いまの国際化の時代、そして日本が資本主義経済でさらに全体がだんだん自由化の方向に持っていこうという流れの中で、一体政府の役割りというものはいかにあるべきだろうか。ひとつ大蔵大臣、これはあなたの政治家としての御判断を最初に伺いたいと思います。
  38. 竹下登

    ○竹下国務大臣 わが国の経済運営あるいは産業政策、そういうものの中における政府の役割り、こういうことでございます。  私は、無資源国でございまして、なお戦争という不幸な歴史の後、いわばGHQの間接統治下というような時代にありましては、自主的に日本国民が競争原理の上に立って産業活動を行う等の点についてはかなり大きな制約があったと思います。結局、昭和二十六年に独立を回復いたしました後、いわば経済活動においてもかなりの、そういう占領政策からくる手かせ足かせというものがなくなってきて、そして無資源国でありますだけにひたすら競争原理の中で経済復興を遂げてきた。しかし、そこにはだんだん国際化するにつれて、国際競争力の大変弱い面があったと思います。したがって、この国際競争力をつけるという意味におきましては、私は、行政があるいは立法がそれなりの役割りを果たしたと思います。  しかし、それが結局、昭和四十五年、それ以前から言えば日米繊維摩擦とでも申しましょうか、そのころから顕著に、国際社会の中で競争原理に立つべきものが、国内の諸法制等の中で保護され過ぎてきているのではないかという国際批判の中にさらされてきた。そうなると、やはりここまで来れば、そのようないわば保護政策あるいはそういう一つの影響を与えるような環境整備というようなものが、立法なり行政の中にいつまでもあってはならぬという傾向に政府国民もみんな気がついて、改めて別の角度における自由競争原理の中で自分の道を日本経済全体として模索をしてきたのではないか。そのやさきにできたものが、法制上の問題以上に国際語になりました行政指導というものが、先進国に非常に強く、悪い意味における印象づけをしてきたのではないか。  したがって、そういうものが一つ一つすべて排除されて、そしてまさに国際的な競争原理の上に立った経済活動に進んでいくべきものであって、あくまでも民間活力を主体として経済運営なり産業政策がなされていって、それに伴うある種の弊害があった場合に、行政なり立法なりがそこに出かけていくべきものではないかというふうに、私は基本的には認識をいたしております。
  39. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、いま竹下大蔵大臣お話しのように、キャッチアップする過程の中では、いろいろなハンディキャップがありましたから、それをカバーするために行政なり立法上対応が必要であったというふうに考えておるのですけれども、今日私どもはどうやら一番前に出てきましたから、要するに世界の国の中で、私はそう過大に評価をしておるわけじゃありませんけれども、いまの日本の経済力というのは、欧米先進国に比べて今後ともかなり力を発揮できる条件にあるということになりますと、これからはこれまでとは逆に、意識をして公的なそういうコントロールあるいは指導、そういう式のものを減らしていくという認識を持ってこれからの行政の対応が必要なところに来ているのではないだろうか、こういうふうに私は基本的認識を持っておるわけであります。  私は、まずここでそういう基本的認識を申し上げて、後から具体的問題の中で私なりの考え方を申し上げるのでありますが、この前小倉参考人に御出席をいただいて、減税の問題についていろいろとお尋ねをさせていただきました。きょうは、あのとき時間が十分にございませんでしたので、質問を予定しておりましたけれども残っておりますところの、政府がいま税制調査会にお願いをしておる二つ目の問題、さっきちょっと武藤さんの質問にも出ましたが、グリーンカード制といいますか、所得税改正部分の三年延長に伴うものについて諮問が行われておるように承っておるのであります。  そこで、昭和五十四年十二月の税制調査会の五十五年度税制改正答申というのを読んでみますと、「利子・配当所得に対する源泉分離選択課税制度を中心とする課税の特例は、昭和五十五年末に適用期限が到来するが、利子・配当所得については、税負担の公平を図る見地から総合課税に移行すべきことは、当調査会において、これまでも強く指摘してきたところである。利子・配当所得の総合課税移行の実をあげるためには、利子・配当の真正な受取人の確認と膨大な支払調書の効率的な名寄せを的確に行うことが不可欠の課題である。また、郵便貯金を含めた非課税貯蓄についても、架空名義預金の排除及び限度額の適正な管理を行うことにより、総合課税の対象となるべき貯蓄が非課税貯蓄に逃避することのないよう、適切な措置を講ずることが必要となる。」こういうふうに答申で述べられておるわけであります。以下、グリーンカードに対するいろいろな具体的な問題が触れられまして、終わりのところで「現行の非課税貯蓄制度については、少額貯蓄非課税制度(三百万円)、郵便貯金(三百万円)、少額公債非課税制度(三百万円)、財形貯蓄非課税制度(五百万円)があり、これらを合わせると一人千四百万円までの貯蓄が非課税となるので、これが果して少額貯蓄の保護優遇という趣旨からみて妥当かどうか疑問であるとする指摘もあるが、国民生活の実態等を考慮し、非課税限度額は現状どおり維持してよいものと考える。」こういうふうに実は答申がされているわけであります。  五十四年の十二月でありますから、現在まで約三年余りたっておるのでありますけれども小倉税制調査会長としては、ここで述べられておることについて、現在はどういうふうな御感想でございましょうか。
  40. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお示し願いました利子配当の総合課税と少額貯蓄の限度管理につきましては、その後、その趣旨にのっとって政府で改正案を提出され、国会でも議決されたわけでありますが、その後いろいろな事情で三年延期の法案がまた成立する、その後を受けて、できるだけ早い機会に、三年の間にいかに利子配当についても所得課税の公正なあり方を求めていくかというのが今日税制調査会に課せられておる役割りでございまするし、政府、大蔵省の方も税制調査会にそれを至急検討してもらいたいということになっております。  その後税制調査会では、そういう経緯の報告があり、その経緯を踏まえて若干の議論がございましたけれども、今後どうすべきかについてはまだ実は審議いたしておりません。たしか四月二十五日の総会でその検討のための小委員会を設置するということは決めたのでございますが、できるだけ早い機会に、今月末なり来月初めごろにはその小委員会をひとつ発足をさせたいというように考えております。したがって、税制調査会としましては、今後の方向については何ともまだ申し上げる時期には達しておりません。ただし、私個人としては、従来の経緯もあることでございますので、できるだけ従来の経緯を踏まえた上での措置というものを考えるのが適当ではないだろうか、これは私見でございます。
  41. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、前回減税の問題について、五十七年の年末に税制調査会としては五十八年度は減税はできないというふうな方針をお決めになって、さらに今度はその政府がまた五十八年度の減税について検討してくれ、こういう要請をしておることは、政府として税制調査会の権威を低からしめるものである、こういうことを実は申し上げました。  ですから、その立場に立つと、同じ構成員である調査会の皆さんが、まだわずか六カ月ほど前の正規の機関において決定をされた方針に対して、情勢がほとんど変わっていないにもかかわらず、単なる政治的理由によってのみこういう政府調査会にこのような検討をお願いするということはまさに政府の見識を欠く行為である、私はこう考えておるわけでありまして、そのことについて小倉参考人に、皆さんの方では、そういう検討の依頼があったけれども、五十八年度の減税については税制調査会としては前回と同様の見解であるというふうなお答えもあり得るのですかというお尋ねをしたことがあるのでありますが、これも、私はどうも同じような気がしてならないわけでございます。  大蔵省が五十四年に税制調査会にこの問題についての検討をお願いをして、そしてそういう答申ができて、これはちょっと減税の話とは違ってもっと実は入り組んでおるわけでありますね。要するに、そういう皆さんの答申を受けて政府は当委員会法律案を提出をして、その法律案は国権の最高機関である国会によって衆参両院において決定して法律になっておるわけでございまして、法律になっておるものを行政の処理として三年延長ということ自身が、いまの三権分立という立場から見ますと大変適切を欠く政府側の処置である、私はこう見ておるわけであります。  そういう意味では、一体政府というものは、税制調査会というのは自分たちの都合によって自分たちに都合のいいような答申を求めるための機関であるという認識をしておるのではないかというふうに私には感じられてなりません。税制調査会長はそれをどういうふうに受けとめておられるかをお答えいただきたいと思います。
  42. 小倉武一

    小倉参考人 ただいまお尋ねのような御感想をお持ちになるのはやむを得ないと思いますけれども、とにかく政府調査会でございまするから、政府とそう離れたことを論ずるとか、全く政府の考えていないことを進言するということは、私自身としてはどうかというような気がいたします。  したがって、ある程度は、程度問題でございますけれども政府、その政府の背後には国会があるということでありますので、そういうことはある程度踏まえて考えていかなくちゃならない。ただし、政府与党と申しますが、現在のところ特定の党派に関係の政府でもありますから、したがって、国会で言えば野党的といいますか、あるいは民間からいえば政府関係以外の学究なりあるいは評論家、その他の方も参加していただくわけですから、そこでは政府与党あるいは政府与党税制調査会では反映しにくい意見政府税制調査会では反映する、そこでおのずからニュアンスが違うとかあるいは見解が若干違うというようなものが政府税制調査会では反映できるというところに、一つのメリットといいますか効用があると存じております。何でもかんでも政府と不即不離で政府の考え方どおりというわけには、仮に私がそう思っても、委員の中にはさまざまな方がおりますのでそういうふうにはまいらないという性質のものでございまするから、余り御心配いただくこともない、こう思います。
  43. 堀昌雄

    ○堀委員 後でまだずっとこの問題を続けるのでありますが、同じような政府の関係の調査会であります金融制度調査会の佐々木会長に御出席をいただいておるのでありますけれども、やはりいま小倉参考人がおっしゃったように、政府調査会というのは政府の意思を体して処理をしなければならぬ、こういうふうに佐々木参考人はいまの金融制度調査会での取り扱いについてお考えでしょうか。  ちょっと引き続きまた河野参考人にもお伺いしますが、私は、政府がこういう審議会とか調査会をお願いをしておるのは、政府として諮問をすることは自由だと思うのであります。しかし、政府が考えておる方向に結論が出るためにだけあるのなら、私は、そんな審議会や調査会はやめた方がいいと思うのですね。要するに、いま小倉参考人がお述べになりましたように、いまの政府というのは一つの政党が代表する政党内閣でありますから、政党内閣の物の考え方はそれなりにあってちっとも不思議はないと私は思うのであります。しかし、その政党内閣が税制調査会金融制度調査会、証券取引審議会を設けておりますのは、それ以外の、国民全体の立場に立ってそこで審議をしてもらって、政府もそれを尊重するという意味でこういう調査会や審議会が設けられておるのだというふうに私は認識をしておるものですから、完全な政府の従属物であるならば、そんなものを一々つくることは政府の隠れみのに利用されているだけで余り意味がない、私はこう考えておるのです。  そういう意味で、今度の税制調査会のこの二つの問題というのは、日本調査会あるいは審議会といいますか、こういうもののレーゾンデートルがかかっておる非常に重要な問題だと私は認識しておるわけでありまして、その限りで、この税制調査会が十一月に向けていろいろと御審議になる問題は、単に税制調査会の問題ではなくて、政府関連の審議会が国民にどういう姿勢で審議会としての権威を保っていかれるかというきわめて重要な課題が含まれておる、こう私は認識しておるわけであります。  そういう前提に立って佐々木参考人河野参考人から、おのおの調査会、審議会の会長としてのお立場でどういう御認識を持っておられるかをお答えいただきたいと思います。
  44. 佐々木直

    佐々木参考人 金融制度調査会の具体的ないままでの審査の経過を振り返ってみますと、とにかくいま先生がお話しになりましたように、大蔵大臣の諮問を受けてそれに対して検討をし、答申を出すという形でございますので、その答申を出しますプロセスで最初の諮問から影響を受けるということは間違いがないことでございます。  ただ、先般やりました銀行法の改正についての原案のいろいろ検討の段階におきまして、政府の意向に従ってのみ検討したというようなことは全然ございませんで、昭和二年に制定されました前の銀行法をいかに現実の姿に合わせていくかという前向きの気持ちで私どもは検討したと思いますし、それによって新しい法律ができた、プラスはあったと思います。  それから、最近検討いたしております金融の自由化のことにつきましても、政府の行政に対してその行政を受ける民間側の率直な希望は何か、どういう方向に物を考えていくかということを具体的にできるだけ広く出すというような検討の仕方をしておりますので、いまの先生のお話もわかりますけれども、現実に私どもとしては、そういうような具体的な地についた検討をしている面があることを申し上げたいと思います。
  45. 堀昌雄

    ○堀委員 では、引き続き河野参考人にお願いいたします。
  46. 河野通一

    河野参考人 審議会の使命というか立場というのはどういうものかという御質問であります。  私は、基本的にはいま堀委員が言われたような立場で処理すべき問題だと考えております。ただし、同じ審議会とか調査会とかいいましても、程度問題かもしれませんけれども、おのずから性質が違う点もございます。と申しますのは、たとえば先ほどお話がありました税制調査会というのは、同じ審議会であっても多分に政治というかそういった問題と関連があると思います。その意味では、いま佐々木さんの言われた金融制度調査会とか私がいま担当いたしております証券取引審議会というのは、もちろんそういう関係はないとは言いませんけれども、わりあい希薄である。したがって、俗な言葉で言って、政治からのいろいろな制肘といったことは、私ども立場から言いますと余りございません。したがいまして、いま私が基本的にと申し上げました堀委員のおっしゃるような点はそのとおりだと私は思っております。これは何も小倉さんを弁護するつもりはございませんけれども小倉さんも腹の中では同じことを考えておられると私は想像いたしておりますので、念のために申し上げておきます。
  47. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いま参考人がお述べになったように、金融制度調査会、証券取引審議会は税制調査会とはちょっと角度が違う。税制調益会というのは、毎年国の税の問題の処理をするという点ではやや行政に近い位置にあることは私も認識するのでありますけれども日本税制調査会が始まって以来、こんなことが行われたことは過去にないと私は思うのです。一遍調査会に諮問をして結論が出たものを、そう条件が違わないときに別の結論を求めるというようなことは過去になかったと思うのですが、主税局長、ちょっと答弁してください。そういう例が過去にありましたか。
  48. 梅澤節男

    梅澤政府委員 戦前からの記録をずっと詳細にたどっておりませんので正確を期するためにはあれでございますが、私の知る範囲におきまして、そういうことはなかったように思います。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、昭和三十五年から大蔵委員会におりますから、少なくともこの二十三年間にはそういう例は一例もなかったと思うのでありまして、これは大蔵大臣、大変な問題だというふうにあなたが受けとめていただかなければならないと思うのです。  特に減税の問題は、すでに昨年、この前の委員会で申し上げましたから繰り返しませんけれども、当時の幹事長代行でありました竹下さんの発意に基づいて小委員会が設けられて、そして各党の専門家がいろいろ努力をして、十一月十九日には議長に中間報告までしましたけれども、御案内のようにここでは何もできなかった。できなかったということと同時に、政府の税調と自民党の税調がいずれも五十八年には減税をやらないと決めているのに、自由民主党の二階堂幹事長が景気浮揚に足る減税をやるということを言われておるということは、ここが一つは発端ですからね。  もう一つは、自民党内部でグリーンカード反対論が何かたくさんの署名を得られて、それに押されて、あなたが提案した法律案をあなたが自分の手で三年延長するなどという、これまた日本の議会歴史の中でかつてなかったようなことが起きておる。これはいずれもあなたに関係をした問題なんです。ですから、私は、そういう意味で政党政治はそれなりの自己責任を持つという考えが貫徹していなかったら、そのときそのときの成り行きに任せて適当な処理をして、重要な国政を適当な処理で混乱させる。  いまこの減税問題は、この国会の最重要課題として、きょうですか、あしたですか、また各党間の協議が行われる、こういうことになっているようであります。私が不思議でしようがないのは、この前二階堂幹事長は、秋口には何か減税についての様子をはっきりさせると言われた。政府の答弁の中では、七月に五十七年度の決算の見通しが立ったら、そこで考える。私は、五十七年度の決算なんというものはもう大体わかっているのですよ。ともかく税を専門にやっておる者は、五十七年度の決算で大変な自然増収が出るなどと考えておる者は一人もないと思いますよ。  大蔵大臣にはお尋ねしません。お気の毒ですからお尋ねしないのですけれども、要するに、そういうときに七月の決算を見てから考えるということは、これは一体どういうことを意味しておるのだろうか、私は全然わからないのですね。おまけに、秋口になったらはっきりさせる、これがまた私には全然わからない。秋口というのは大体九月ごろでしょうね。九月ごろに五十八年度経済が大体どういう姿になって、五十八年度に自然増収がどのくらい出るなんということがこの時期にはまだわかるはずがない。だから、いま政府が言ったり与党が言っておられることは、ともかくその場その場をごまかして処理をしようというまことに無責任な対応が特に国民が非常に希望を強く持っておる減税という課題について行われておるということは全く私は納得ができない、こういう感じがいたすわけであります。  ですから、これはもういまここまで来てもとへ戻せないでしょうが、ひとつこれは会議録に残ることでありますから、自民党政府においては今後このような審議会に対する対応は少なくとも二度と行わないくらいのことは、竹下大蔵大臣、税の問題はあなたの所管事項ですから、発言をしておいていただかないと、いまのこの無責任な一部の人の発言によって非常に国政は混乱をしておる、国民も、一体どうなっているのだろうか、こういうことが今日の日本で起こっていいとは私はどうにも考えられないのです。起きたことはもう仕方がありませんから、今後についての大蔵大臣の見解を承ります。
  50. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに、この減税問題それからグリーンカードの問題、この二つにつきまして政府税制調査会に対しては御迷惑をかけたという認識を私は持っております。  まず、減税問題そのものを申し上げてみますと、政府税調ではおよその御答申をいただいて、それに基づいて五十八年度の税制を決めたわけでございます。したがって、その答申から言えば、もう一遍自分たちは審議をして結論を出したことだから、それを持ってこられてもわれわれとしては受け付けがたい、仮にそういうことをおっしゃったといたしましても、私はそれなりの理屈のあることだというふうに思います。  したがって、いささか表現に適切を欠くかもしれませんが、恐る恐るお願いをしたような心境でございます。が、それにつきましては、いずれにしても五十九年度以降この抜本的な検討をしようということも答申の中に出しておるので、それが早まったという認識のもとに、その背景には国会の与野党合意というものがあるから、審議をしてやろうということで部会をつくって説明をという段取りをつくっていただいたことに対しては、御迷惑をかけたという気持ちと同時にありがたかったなというふうに考えておるところでございます。七月ということは、これは、いわば決算ができて、そして五十八年度税制の土台が確立するという意味において一つの時期を画する時期かなと思っております。  それから、幹事長が秋口とか秋とか言っていらっしゃいますのは、若干、これは現存する税調に対して御遠慮申し上げながらも、恐らく任期もあるし、そのころにはという一つの期待感というものから使われた言葉ではなかろうかというふうに拝察をしております。  それから、二番目のグリーンカードの問題でございますが、これもあのようにきちんとした結論を出していただいて、それに伴って政府も立法作業をし、そして両院を通過成立さしていただいた。私ども、必ずしもグリーンカード制度との因果関係でもって起きた混乱とも思わない問題もございますが、いわば法的安定性を欠くといいますか、私どもがそうした混乱が議論されるような状態を予測できなかったという意味における責任から延期法案を御審議いただいたわけです。これもまた、税調に対して、結局三年の間国税、地方税のあり方全体について御意見を承る機関でございますので、その国会の推移をつまびらかに御説明申し上げて、そして、では聞き取って小委員会等において議論をしてやろう、こういう御結論をいただきましたので、私どもは、これについても迷惑をかけたという気持ちと、そしてありがとうございましたという気持ちとが率直にございます。  したがって、やはりそれは、堀委員おっしゃるように、こういうことを本当は、私はたまたま前回グリーンカードの法律の提案者であって、そして今度はまた延期する方の提案者でありますから、ある意味においては同じ人間だからよけい厚かましく、そしてまたいんぎんに頼める立場でもあるのかなという感じもいたしますし、きわめてみずからの不徳だなという感じと両方持っておるわけであります。したがって、いつも申します権威ある政府税調に対して、御答申をいただきましたそれに基づいて進んでまいりました、しかし方針がちょっと変わりましたのでもう一遍やり直してくださいというような問題をたびたびといいますか、やはり持っていく性質のものじゃない、竹下登のとき限りにしたいものだなと率直に思っております。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、時間も進みますので、このグリーンカード、総合課税の問題で大蔵省の先輩である谷村さんが一つの案をお出しになっておるのでありますが、これは税の問題という問題だけでないと私は思うのであります。これは金融制度全般の問題でありますので、かつて日本銀行の総裁もしておられた佐々木さん、日本銀行の副総裁として、また大蔵省の次官までなすった河野さんに、現在の日本の経済がこれだけ大量の国債を発行していながら実は財政インフレが起きてないというのはまさに高い国民の貯蓄に支えられておる、こういうふうに私は実は認識をしておるわけであります。  そこで、税だけの面からいくと、こんなものは必要がないだろうという考え方もあり得るかもしれません。税だけという狭い範囲から見れば。しかし、税というのは国の経済の中のごく一部でありまして、そういう一部分から物を見たのではなくて、経済全体から見て政策の選択が行われなければこれは重要なことが起こるだろう、こういう感じがいたします。私は、現在、税制調査会答申にありましたように、三百万円、三百万円、三百万円、財形五百万円というこの制度は引き続き維持していくべきだ、大量国債の発行が峠を越えて常識的な発行のめどがついたときには再検討することはやぶさかでありませんけれども、この大量国債発行の状態が続く限り、この制度をやめるのは日本経済の安定性のためにも望ましくないというのが私の考えでございますが、佐々木参考人河野参考人はこれをどうお考えになるかをお答えをいただきたいと思います。
  52. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの御質問のいわゆるマル優制度の問題、ただいま御指摘のとおりに、これが日本の貯蓄増強に非常に大きな役割りを果たしてきたことは間違いのない事実です。ことに、この制度は戦争中からずっと続いておりまして、その後戦後の状況に合わせていろいろ手直しが行われました。したがって、この制度の存在の意味、これは私どもも非常に大きく感じておるわけでございます。  ただ、今日までまいりますと、実施の面で問題がいろいろ取り上げられております。そういう点について、そろそろ検討した方がいい時期ではないかという感想は私は持っております。そういう意味で、今回税制調査会でこの問題をいろいろ取り上げられることになりましたことは、時期としては非常に適当ではないか、こう考えております。
  53. 河野通一

    河野参考人 私は実は税は余り詳しくないので、お答え申し上げることはきわめて大ざっぱな常識的なことしか申し上げられません。  貯蓄が非常に大切であるということ、その貯蓄の上に日本経済がここまで来たということは、私は堀さんと全く同意見でございます。それから、いまのマル優ですか、これが貯蓄の増強に対してプラスになっているという点も私は認めます。しかしながら、他方で、税というものは国民経済の中の一部でありますけれども、やはりプラス面とマイナス面というものが私はあると思うのです。  私は、先ほど申し上げましたように、まだ余り詳しくは検討いたしておりませんけれども、利子所得、配当所得に対する課税の現行の制度は問題が非常に多いと考えております私。個人の考え方から言えば、いろいろ問題はありましょうけれども、やはり基本はこれらについて総合課税をすべき問題だと思います。しかし、これは素人の私が申すのですから、技術的にあるいは徴税コストの面等でいろいろ問題があるでしょうから、そういう点で少なくとももう少しそれに近い制度、グリーンカードがいいか悪いかの問題は私は申しませんけれども、近い制度を考えるべきじゃないか。  私は、お話しがありました谷村さんの意見については読みましたが、いろいろ理屈はあろうと思いますが、私個人としてはマル優の制度をやめるということは賛成であります。  その問題意識は、一番大きな点は、郵便貯金も含めて非常に大きな逋脱が行われておる、この事実に対して、やはりこの制度が根本的に考えなければならない制度ではないか。そのかわり、少額貯蓄の人々を保護するというか考えるために、技術的な点、私は知りませんけれども、何らかの方法で基礎的な控除は与えていく。それとともに、高額の所得者に対しては、仮にマル優制度はやめるとすれば、源泉課税であるいは定率の課税ということに恐らくなるのじゃないかと私は思うのですが、そうした場合に高額の所得者に対しても定率の源泉課税だけで済ませるということは適当でない。したがって、これはどういう方法がいいのか、私は素人でわかりませんが、そこに何らか総合課税的な方法を加味して、つまりこの問題を公正な課税という制度に直すべきじゃないかというのが私の素人考えでございます。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 大体このグリーンカードというのは、グリーンカードが主体ではないのでございますね。  さっき私が調査会の答申を読み上げましたように、問題は「昭和五十五年末に適用期限が到来するが、利子・配当所得については、税負担の公平を図る見地から総合課税に移行すべきことは、当調査会において、これまでも強く指摘してきたところである。」私ども社会党も、税の不公正を是正するという一番大きな問題として、こういう分離課税が高額所得者に大変有利に働いておる、ですから、これを総合課税にすることが税の公正の非常に重要な柱である、ただ、ここにも書いてありますように、そのときに非課税貯蓄に流れ込むことを限度管理できちんとしなければ、片一方で総合課税をやってもしり抜けになりますよ、その補完措置としてグリーンカードというのが出てきているわけで、本体はあくまで総合課税だと思うのであります。  いま河野参考人は、その点でいまの総合課税は必要だというご意見。私もその点は税の立場から見て、一部の者だけが総合課税を回避されて分離課税であるというようなことでは、今後政府が仮に増税をやろうとしても、国民に非常に広く増税をしようなどというときに、一部に不公正な部分を残しておいて増税などは絶対にできない、また私どもは徹底してそれはやらせない、これが私どもが長年にわたって当委員会で主張してきたことなんであります。  私はそういう意味でいまのこの問題を受けとめておるわけでありますから、グリーンカードというのは単に非課税貯蓄の限度をどうするかという技術論の問題でありまして、基本はあくまで利子配当の総合課税だというふうに確認をいたしておるわけでありますが、小倉参考人、その角度で御検討をいただく、こういうことに認識をしてよろしゅうございますね。
  55. 小倉武一

    小倉参考人 まだ検討を始めておりませんので、何ともお答えしようがないと思いますが、グリーンカードと少額貯蓄の優遇制度限度管理、この二つを一緒にしまして総合課税と限度管理、それの上にグリーンカードという考え方が出たわけです。  グリーンカードというのは、本来余り徹底したいい考え方じゃないと思うのです。でき得れば何らかの、納税者番号であるとか、その他いろいろ外国には例があるようでありますけれども、そういうことで処理するということでなければうまくないということだったわけです。税制調査会でもそういう意見が大勢だったわけですが、どうも巷間、国民総背番号というような妙なふうに言葉が流行したものですから、納税者番号はなじみにくいということで一歩下がりまして、あるいは二歩下がりまして、グリーンカードということになったわけです。ところが、このグリーンカードについていろいろ御批判があり、延期法などが成立したという実態を踏まえなきゃならぬ。  もう一つは限度管理でございますが、先ほど谷村さんの御意見など御披露ございましたけれども、限度管理ができるかできないかというのが優遇制度を残すか残さぬかの分かれ目になると思うのです。幾ら少額貯蓄優遇という制度の目的がよくても、その目的を達成するための手段の一部としての限度管理がうまくいかないということであれば、本体そのものを考え直さなければいかぬということから、マル優廃止というふうな御議論が出てくるのだろうと思うのです。  ちょっと話が横道にそれて恐縮ですが、実は私も、限度管理ができないならばやめる以外に仕方がないのではないかということで、税制調査会でもそういう発言をしたこともございますけれども、大方の意見は、限度管理云々ということは別問題にして、マル優その他の優遇制度を廃止することについて反対だったわけです。恐らく、今後審議しても税制調査会ではマル優廃止というようなことにはなるまいと思います。それだけに、限度管理をどうするかということはやはり真剣に考えるべきことである。少額貯蓄優遇の名のもとに零細預金者でない方が悪用されるということをそのままにして、お話しのように一般的な増税をお願いするというようなことはむずかしいし、あるいはまた、利子配当所得の総合課税をほおかぶりしまして増税をお願いするというようなことも、これまたむずかしい。といって、グリーンカードもいけない、背番号と言っては悪いのですが、納税者番号もいけないという上で、一体どういう方法があるのだろうというようなことをこれから探求しなければならない。後でまたグリーンカードに戻るかもしれませんけれども、延期法は、それは絶対いかぬという趣旨では必ずしもないと思うのです。これからまたそういう趣旨でいろいろ勉強したい、こう思っております。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 以上で税制の問題を終わりまして、あと三十分しか時間がございませんので、金融制度調査会で金利自由化問題について中間報告をお出しになっておるのでありますが、これに関連して、実は私、先般当委員会に前川日銀総裁に御出席をいただきまして、少し議論をいたしました。  その議論をいたしました基本的な考え方は、政府がこの四月に経済対策という項目をお出しになって、そこで「金融政策の機動的運営」ということが非常に重要な柱になっておるわけであります。しかし現実に、この金融政策の機動的運営ということは、どうやら公定歩合を機動的にやれということだというふうにしか私受け取れなかったものですから、金融政策というのは単に公定歩合だけではないのではないでしょうかという議論を実はここでやらせていただいたわけです。  それは、いまの中間報告の中でもお触れになっておる部分でありまして、簡単ですから要約の方で申し上げるのでありますけれども、「貸出金利」という大きい項目の中で、短期プライムレートと長期プライムレートについて中間報告がされておるわけであります。  私も前川総裁にお尋ねをしたのは、たとえばアメリカで見ますと、短期プライムレートも長期プライムレートも、何か基準があってその基準にリンクして決まったりしてないわけでありまして、これはもちろん金利が完全に自由化されておるという面もあるかもわかりませんけれども、いまや日本でやっておりますことは、制度と現実の間の乖離が大きくなり過ぎているのじゃないだろうか、私はこういう感じがしてならないわけでございます。  ですから、前川総裁にこのことをお尋ねして、要するに、いまの四畳半金利、長期プライムレートの決め方、特に、私はこの委員会でずっと終始一貫して市場経済論でございますので、市場における価格というのは需給で決まるのだ、もちろんコストを無視することはできませんけれども、しかし今日はコストよりも需給で決まるというのが市場経済の基本だと私は思っておりますので、その限りでは、特に長期金利の場合に、これだけ大量の国債を発行していて、その国債の金利にリンクしてその他のものが決まったりするというようなことでは問題にならない、こう思っています、経済実態から見まして。  そして今度は短期の方でも、お二人とも日本銀行にいらしたわけでありますから、日本銀行でコールと手形金利はコントロールがなされるでありましょうが、いまできておりますCDなり現先市場というのは、ともかく日本銀行の手の出ない短期市場でございますね。ですから私は、そういう意味では、今日のこの日本の経済情勢になりましたら、公定歩合の操作というよりも、より大きく働く金融政策の手段としてはオープン・マーケット・オペレーションをやるべきだ、こういう考えでありまして、オープン・マーケット・オペレーションをやるためには、私は、やはりイギリスやアメリカのように政府の短期証券を中心にして短期市場をつくって、それによってもしオープン・マーケット・オペレーションができるとするならば、いまの公定歩合操作のみにひっかかる必要はないのではないか。  公定歩合操作というのは、いまや為替の問題で大変むずかしいところへ来ておりまして、この前は大体三十五円から四十円ぐらいのボックスの中にあった。ちょっとここで、どうやら三十円から三十五円のボックスの中へシフトしてきて、まあよさそうでありますが、そうはいっても、これはなかなか簡単ではない。というのは、私の判断でありますけれどもアメリカの景気は底入れをして少し上向きに転じつつあるようでございますね。これは後で大蔵省からちょっと答えていただきたい。  しかし、同時に、この八三年度の十月—三月の財政赤字は、最近の発表では千二百二十九億ドルに達しておる。これは、年間でいえば実は二千六百億ドルに近い財政赤字が八三年度で出ることを予測をしているわけでありまして、現在レーガン政権が大変苦労しておる八四年度予算は千九百十億ドルだ、こう言っておるのでありますけれども、それがいかに説得力がないかということが、すでにこの十—三月で明らかになっておるようであります。このアメリカでも大量の財政赤字があって、金利がそう簡単に下がるのだろうか。これから先は、もし起こるとすれば、クラウディングアウトが起こる可能性の方が高いのではないか、こういう見方をいたしますと、公定歩合の問題というのはまだそう簡単に処理ができにくいのではないだろうか。  そうすると、それは横へ置いておいてでもやれる手段があるのなら、それを新たにつくり出してやるべきではないか。そのためには、いまの長期プライムのあり方とか、いまのオープン・マーケット・オペレーションをどうやってつくっていくかということをもっと真剣に考える方が日本経済のために役に立つのではないかというのが、この前川総裁に来ていただいたときの私の議論の焦点でございます。  この中で、いろいろとお触れになっている中で、私はここでひとつ基本的な考え方を承りたいのでありますけれども、証券を含めての広義の金融というものは、主体はだれかという問題の認識を確立しておく必要があるのじゃないだろうかということであります。広義の金融というものの主体は国民と企業である、私はこう考えているのでありまして、要するに、この国民と企業のニーズにこたえて問題が処理をされていくということでなければならぬ、これが私の基本認識一つでございます。  もう一つは、要するに今日の資本主義経済というのは、私は自己責任の原則だと思うのです。自己責任が確立をしていなければこの制度は成り立たないと思うのであります。そうすると、自己責任というのは何かといえば、それは銀行関係でいえば、要するに預金者、銀行、金を借りる企業、おのおのが自己責任で問題を処理すべきことであって、国がこうしているから安心だからこうしようなんという話をいつまでも続けるべきではないのではないか。前段で私が申しました、要するに公的なコントロール、介入というものを逆向けにこれから減らす方向で、そういう預金者、銀行、金融機関及び企業が自己責任で金を預けたり金を借りたりするようにすべきだろう。そのことは、私は証券でも同じだと思うのであります。  要するに、投資家の自己責任、証券会社の自己責任、公募やその他で増資する企業側の自己責任、この自己責任を貫徹させるという方向でこれからの金融政策をやっていくのでなければ、いま世界からこうじっと見ていて、日本というのは依然として行政指導にたぐいしたようなことで意図的にコントロールをして、海外からの参入に対して非関税障壁を設けているという非難に対抗できないのではないか、これがいまのこういう金融問題に対する私の基本的な認識なんでございます。  ちょっと、この点について佐々木参考人及び河野参考人からお考えを承りたいと思います。
  57. 佐々木直

    佐々木参考人 非常に基本的な問題でございまして、とっさに御返事がなかなかしにくいのでございますが、自由主義経済のもとにおいては、ただいまおっしゃいました自己責任の原則が根本であるということ、これはもう私も全く異議はありません。そういう意味で、それぞれの自分の判断で行動しているものが、そのしりをよそへ持っていくというような考え方は自由主義経済の破壊につながることだと思います。  ただ、一つ金融の問題について申し上げたいのは、確かにそういうように企業、銀行、個人、こういうものがそれぞれ独立の判断で行動すべきでありますが、借り手としての国がこのごろあらわれてきておる。その行動がこの三者にも影響し、いろいろな問題を起こしますから、この国も、いま先生のおっしゃったようなちゃんとした独立の考え方で行動してほしいということを感じます。  政府に頼ることは日本のいままでの長い歴史の中ででき上がった体質でありまして、確かにこれはだんだん離れていかなければならないのでありますけれども、ことに外国の人といろいろこの問題を議論していると、日本の特殊性を非常に感じます。ここがこのごろのターゲット論なんかが出てくる基本的な土壌であろうと思いますので、この問題につきましてはよほど腰を据えて、世界の流れによく自分の地位を入れて考えていくということが日本の将来の、特に国際性の上の問題に非常に大事なポイントだというふうに考えます。
  58. 河野通一

    河野参考人 問題は二つ御指摘になっていると思います。  一つは、金融政策として今後マーケットオペレーションを重視していかなければならない。この点につきましては私は同感です。それから、その場合の材料としては、やはり短期国債といいますか政府証券というものが一番適当であろう、これは世界どこを見てもそういうことでございます。この問題につきましては、私はよく知りませんけれども、恐らく大蔵省でも寄り寄り検討されておるものだと確信をいたしております。この点はその程度にいたしておきます。  第二点は、今後の経済の運営の中で大切なことは、投資家といいますかそういった側のあるいは企業という側の自己責任ということが非常に大切な問題だと思います。この点も全く同感でございます。ただ、この自己責任というのは、私は、観念的には非常に大切なことであるし、そのようにだんだんみんなが育っていくようにしていかなければならぬ。現に、国民教育水準その他が上がってくることによって、これがだんだん育ってきていると思いますが、一方で、新聞紙上等でうかがうようなサラ金の問題なんかを見ておりますと、さあこれでいいのかなという点もあります。  私がいま証券の問題でいろいろ考えておりますのは、やはり問題は、自己責任原則ということと投資家保護ということがどういうふうにうまくどこで接し、どこで調和されるかということが基本だと思っております。投資家保護ということを非常に強く主張するならば、今度は逆に言っていわゆる過保護行政になって、ますます自己責任というものが育たない。しかし、自己責任というものが十分育たないところに投資家保護というかんぬきを外してしまうと大変な混乱が起こるという問題で、この点は、自己責任というものが国民の間でだんだん育ってくることに応じて、投資家保護というものをやめるわけではありませんけれども、投資家保護というものに対する重点がだんだん変わっていくということであるべきではないか、かように考えております。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 いま前段で佐々木参考人のお話しの国も考えろとおっしゃること、全く同感でございまして、いまや私が前段で申しました個人、それから企業、金融機関にも増して自己責任をはっきり感じてもらわなければならぬのは実は国でございますので、金融のいまの本当のもとは佐々木参考人のおっしゃるとおりだと思うのです。  そこで、この中間報告の中に「預金保険制度の拡充について、制度の仕組みをも含めた総合的見地から検討することが必要である。」こういうふうにございますね。実はいまの預金保険制度というのは、澄田日銀副総裁が銀行局長のときの金融制度調査会での問題でございまして、私は、その当時から競争原理論でありますから、澄田さんが合併転換法とかいろいろお出しになったことには全部賛成です、協力してやりましょう、こう言ったわけです。最後にこれを持っていらしたのですよ。堀さん、競争しますと落後者が出るおそれがありますので、預金保険機構というのをつくりたいと思います。私は、それは澄田局長、虫がよ過ぎますよ、大蔵省がこれだけ強大な検査権、監督権を持って免許制度にしておいてやっておきながら、競争した結果落後者ができる、だから下へ網をかけていく。私は澄田さんに、論理が通りませんからどっちかにしてください、あなたが金融機関の検査その他の権限をやめますというお約束があるのなら、しっかりした預金保険機構をつくることに私は賛成でございます、検査権をそのまま残してくれというなら預金保険機構反対です、一切これは認められませんと大分すったもんだいたしました。  最終的には、お立場もあったので私も目をつぶることにしたのでありますが、私はそのときに澄田銀行局長に、十年、十五年監督権限があって預金保険機構を使うようなことは一回も起きませんよ、そういうむだなことをあなたが銀行局長として提案したということは歴史に残りますよ、こういうふうにちゃんと澄田さんにかんぬきはかけてあるのですが、今日に至っても預金保険機構に参加してお金を払っている人は、私は詳しく知りませんが、恐らくここに大蔵省のOBの人が行って余生を楽に過ごしていらっしゃるのじゃないかなという気がして仕方がないのです。絶対に仕事がないですよ。いまの監督権限があって仕事が出たら、今度は私の方が大蔵省に、この検査権、監督権を持っていて何でこんなことが起きるのだと言ったら大蔵省の立場がありませんから、しっかり監督権限をやって、つぶすべき金融機関すらつぶさないでやっているというのが今日の金融行政ですね。  いま河野参考人がおっしゃったように、そこの自己責任と保護の問題が私は一番重要だと思っているのです。自己責任を金融なり証券なりに感じさせるためには、まず資本主義の原則として、私はつぶせと言っているのじゃないですよ、ここは誤解がないようにしていただきたい。つぶれるような事態が起きたときには、それはそのまま過保護で、もう引き上げてもがんじがらめにこうやって維持するのではなくて、金融機関でも証券会社でも、この競争の社会ですからつぶれるものがありますよという実物教育をしないで自己責任が育ちますか。絶対につぶれない銀行、絶対につぶれない証券会社というものを相手にしていて、国民に自己責任を持てなんて言って、これは持てと言う方がどうかしているのじゃないかと私は思うのです。  ですから、もう少し私は、そういう意味では金融制度調査会においても、ここに流れておる考えは依然としてそういう感じなんです。証取審でいま店頭取引をおやりになっている問題についても、私は、どちらかというと自己責任でいってほしいと思っているけれども、投資家保護だというのがどうしても頭をもたげる。  竹下さん、私は、そういう意味でまさにいまの自民党政府というのは保守党のやり方だと思っているのですよ、保守的なやり方。要するに、時代はもう世界を含めてそういう時代ではなくなっている。競争をやらなければいかぬということをみんな書いてある。金融制度調査会でも証取審でも恐らくそうでしょう。いまも自己責任をちゃんとしなければいかぬのだとおっしゃっている。原則ははっきりしているけれども、これは昭和二年の銀行法改正以来の考え方、ともかくつぶさないということにすべてがいって、この制度はうまく働くと思いますか、大蔵大臣。私が最初に申し上げた、要するに行政指導なり法律でも何でもありますけれども、少しそうやって投資家保護、預金者保護というのを逆向けにコントロールを外すというくらいの、それは例の逆噴射を少しやらぬとここからテークオフできないというのが私の認識なんですよ。  きょうは、大蔵省の各局長に御出席をいただいて、時間がないものですからお尋ねをしていませんが、私の金融行政に対する物の考え方を基本的に少し大蔵省の各局長認識をしていただいて、これからの金融、証券行政に取り組んでいただきたい、こういうふうに思っておりますので出席をいただいておるわけなんでありますが、どうでしょう、私がいま申し上げたように、何もつぶせというのじゃないですが、いろいろなまずいことがあってつぶれたときは、私はそのときに、監督権をやっているのにおまえたちけしからぬじゃないかなんて言う気は毛頭ないのです。  それはなぜかというと、前回の銀行法改正のときに、当初の政府案に対して二つの修正が行われました。その一つは、ディスクロージャーを大蔵省が決めたルールでやれというやつを取っ払ったわけですね。私は、それは賛成だと言っているわけです。そんなことは企業の自己責任でやるべきことであって、国がそんなおせっかいをする必要はない。そんなことはやめた方がいい。  監督行政について細かいものがありました。銀行がこれをやめてくれませんかという話。結構です、監督はできるだけ少ない方がいいんです。自已責任を確立するために、前と同じような発想で監督をやっているのはまずいから結構です、どうぞひとつ監督行政を狭めましょう。それは、基本的ないまの世界と日本との関係から見て当然のことなんですけれども、大蔵省の皆さんの頭には、どうしても投資家保護それから預金者保護、これがこびりついてどうにもならないのですね。まさに過保護ママなんです。過保護ママでやっているから、いまいろいろ問題が発展しないのです。  ひとつそういう点で、大蔵大臣の認識と、そうして佐々木参考人河野参考人の御意見を承りたい。これはあなたもひとつお答えをいただきたい問題ですから。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私が前回大蔵大臣でありました当時、また休んでおりました当時、いわゆるサービス部門における市場開放問題が日米、日欧からそれぞれかまびすしく議論をされた時代であると思っております。  そのときに感じましたのは、日本ほどおっしゃいますいわゆる預金者保護、投資家保護、それから被保険者保護、これは私は、ある意味においてそういう伝統というものが国民の貯蓄性志向というものを助勢してきた大きな背景ではないかな。したがって、外国の人と議論しておりますと、自己責任というものが少し野方図になり過ぎて、したがって外国の方が要求されるサービス部門における市場開放というのは、わが国の伝統的な投資家保護、預金者保護、被保険者保護とは基本的になじまないではないか。だから、その議論をするときに、ある意味において日本ほどその限りにおいてはよくできておるところはないという感じがしました。  そういう議論を重ねておるうちに、確かにアメリカが一番そういう傾向が強いのですが、銀行が一万五千もあって、言葉は適当でないかもしれませんが、確かに自己責任過剰みたいな感じが私にもいたします。がしかし、原則的にはいまおっしゃったとおりで、この自己責任に基づいた適正な競争原理のもとで経営の効率化が図られ、しかも社会的な要請にこたえていくというべきものであろうと思うのです。だから、少なくとも自己責任における預金者保護、投資家保護、被保険者保護という問題が国民全体に自己責任というある種の心理的教育効果とでも申しますか、そういうものとの調和点をどこのところへ求めるかということではないかなという感じが市場開放問題で議論するたびにいつでもいたしております。  したがって、基本的に在在するその三つのいわば日本の伝統みたいなのをあながち否定できないが、しかし元来、国際競争社会の中にあって自己責任をもっと主張し、そして国民もそれを受けとめていく環境づくりというものをしつつ調和をどこに求めるかということじゃないかなという素朴な感じを持っておることを申し上げて、お答えにはなりませんが、私の意見といたします。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 いま大蔵大臣の答弁を聞いておりますと、まさにいまの作文のベースが、大蔵大臣も作文を見て読んでいるのかもしれないからですが、皆そうなっておるのですよ。要するに調和ですね。何か大変うまくいくようになっているのです。これは、もう金融制度調査会の報告を見ても証取審の審議経過などを聞いてみても、みんな大体そういうふうに文章の上できれいに調和と調整となっておるのですね。  私は、そんなことを言っている時代じゃないということを申し上げたいのですよ。もっと、たとえばきょうはもうこういうあれですからあれですが、今度は一遍財政制度審議会長にも来ていただいて、日本財政のあり方というものを一遍根本的に論議をさせていただきたい、こう思っておるのですが、いま大蔵省がやっておる、これは河野さん御専門でありますけれども、予算の作業というのは、まるでかみそりであっちを削ったりこっちを削ったりしてやっているようなものですね。私は、なたで枝を切り落とさなければどうにもならぬところに来ているのだと思っておるのですよ。それを、こっちのあれをちょっとかみそりで、こっちをちょっとかみそりでこうやって、そうしてこの間新聞で見たら、剪定方式というので剪定したらかえって伸びてくるのだなんて書いてありまして、ははあうまいことを言うものだなと思っておるのですけれども、もうある程度なたで枝のむだなところを切り落とす、そうしてそのかわり、こっちで切り落とすけれども幹だけはしっかり伸びるようにしよう、そういう哲学でこれからやらなければ、財政再建で国債出したらいけないからというので、何か知らぬぎゅうぎゅう締めてこうやっていたら、それで日本財政が将来あるかなんて、全く袋小路の中にいまどんどん急激に失速状態で墜落しつつあるのが日本財政だと私は見ているのです。  要するに、日本経済というのはあらゆる面でこれまでの発想というものを切りかえて、そうして新しい、要するに欧米社会とある程度同じ哲学に立たない限り、やがて日本は孤立しますよ。あいつらを相手にするなということに必ずなると私は思う。だから、そういうきわめて重大な時期に日本はいま立っているという認識が必要だと思うのでありますが、ちょっといまの問題について佐々木参考人河野参考人から伺って、特にお二人にお願いしておきたいのでありますけれども、大変長いこと三人委員会で御苦労さんでございましたが、大蔵省が、証券局は証券の立場に立ち、銀行局は銀行の立場に立つなどというようなことはやっていないと思いますけれども、仮に外からそういうふうに受けとめられるようなことがあると、これは大変マイナスなのであって、やはり大蔵省という役所は、さっき申し上げた国民立場に立つかあるいは企業の立場に立って、ユーザーの側に立って、その人たちのニーズを満たすということを最優先に、今後もひとつ金融制度調査会や証券取引審議会でやっていただきたい、こう思うのであります。  そういう問題を含めて、皆さんの御苦労に感謝をいたしますとともに、最後にちょっといまの問題について、佐々木参考人河野参考人からもう一言ずつ承って質問を終わりたいと思います。
  62. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいま三人委員会等についてお話がありました。御趣旨は非常によくわかりますので、今後ともそういう方向で動きたいと思います。  ただ、一つ金融制度調査会として申し上げたいのは、金融制度調査会が先ほどお話がございましたように中間報告を出しましたが、その後、今度は具体的な問題を部門別に進めてまいる予定でおりまして、その中にまず国際化の問題を取り上げることにしておりますが、国際化の問題に入りますと、ただいま御指摘がありましたように、各国からの日本へのいろいろ仕事のかかわり合いというものがふえるのをどういうふうに扱うかという、これからわれわれが一番考えなければならぬ問題に触れてまいります。そういった意味で、これからの日本の国際的な地位を頭に置いて勉強をしてまいりたい、こう考えております。
  63. 河野通一

    河野参考人 先ほどお答えしたことの繰り返しみたいなことになるかと思います。  いま、堀さんからおしかりを受けることになったのですが、やはり自己責任という問題と投資者なり預金者の保護という問題とは、一方が百で一方がゼロということは私はないと思うのです。ですから、これはやはりどこかで調和しなければならない。調和するということは、いまお話しのように言葉だけではいけないので、それを現実にどこでやるかという問題、これは結局程度問題だと思うのです。全体の流れとしては、国民教育水準が進み生活程度が上がってくるに従って、自己責任の分野がだんだん広がる、そして、その保護だとかなんとかという方がだんだん少なくなってくる。しかし、いまの段階でそれでは何%、何%かということは私にも申し上げられません。具体的にそのときそのときの事情によってこれを考えていく、方向はまさに自由化とか自己責任だとか、そういう問題の方向にウエートが移っていくべきじゃないか。  私は、余談になりますけれども、数年前に何かの雑誌へ書いたのですが、私は嫌いな言葉が二つある。一つは行政指導という言葉、もう一つは優先債という言葉がある。私はこの言葉が嫌いだという名のもとに、そこで私の考えを間接に書いたことがございますが、その考え方は、基本はいま堀さんがおっしゃったとおりでございます。
  64. 堀昌雄

    ○堀委員 いま河野参考人がお話しになったのですが、私は、自己責任を百にして保護をゼロでいいと言っているのじゃないのですけれども、私から見ますと、いまや保護が百で自己責任はゼロじゃないかというのが私の認識なんですよ。それは、銀行がつぶれない、証券会社がつぶれないということがそれを象徴的にあらわしている。だから、急激にフィフティー・フィフティーにしろなんという気持ちはないですけれども、まずそこへ最切に一歩を踏み出すのを踏み出さない限り、ゼ口と百はいつまでたっても続くのだ、このことを自己責任と保護という問題の基本的な問題として私は受けとめておりますので、きょうはそれを含めて、ひとつ今後の皆さんの御検討に生かしていただければ日本経済の将来にプラスではないか、私はこう判断をいたしたわけであります。終わります。どうもありがとうございました。
  65. 森美秀

    森委員長 参考人の皆様に申し上げます。  本日は、お忙しいところ御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただき、厚く御礼申し上げます。  午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  66. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。米沢隆君。
  67. 米沢隆

    ○米沢委員 本法案に関連いたしまして、若干の質問をいたしたいと思います。それぞれ質疑が進行いたしておりますので、重複する点があるかもしれませんが、御容赦いただきたいと思います。  まず最切に、わが国の公的年金制度は、それぞれの歴史を持ちながら、特に昭和三十年代以降はそれぞれわが道を歩いてきたと言っても過言ではないと思います。そこで、現行のままで推移した場合、いろいろと財政的に問題があるということが言われておりますが、各種年金制度の将来はどのような財政事情になっていくのか、その将来展望について、簡単に各制度ごとに御説明をいただきたいと思います。
  68. 古賀章介

    ○古賀政府委員 まず、国民年金についてでございますけれども、昭和五十五年度価格で見まして毎年三百五十円ずつ保険料を引き上げていくことによりまして収支残がマイナスにならないように見込まれておりますけれども、この場合、保険料額は昭和九十年ごろには月額一万五千七百円という高い水準に達するということでございます。  次に、厚生年金についてでございますけれども、今後保険料率を五年ごとに一・八%ずつ引き上げていった場合に、昭和七十三年には収支残がマイナスになりまして、昭和八十一年には積立金がほぼなくなるという状況でございます。そこで賦課方式に移行することになるわけであります。またこの場合、昭和九十年ごろには保険料率は三五%程度という非常に高いものになるということが見込まれております。  次に、船員保険でございますけれども、今後保険料率を三年ごとに三・五%ずつ引き上げていったといたしましても、昭和七十一年には収支残がマイナスとなりまして、昭和八十五年ごろには四四%程度という非常に高い保険料率にならざるを得ないという状況でございます。  とりあえず三つの制度について御答弁を申し上げた次第でございます。
  69. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 国家公務員共済組合でございますが、国家公務員共済組合につきましても、財源率を徐々に上げていくという前提で、また、ベア、年金改定ともに五%という計算の前提で見てまいりますと、昭和六十八年度には単年度の収支が赤になりまして、昭和八十二年度には積立金がなくなる、こういうことになります。それから、昭和八十年代に入りますと財源率で千分の四百に近くなりまして、昭和九十年ごろになりますと千分の四百を超えるというようなことが予想されております。  それから公企体の場合でございますが、国鉄共済は、昭和六十年度に単年度の収支が赤字になりまして、六十一年度には累積積立金もなくなるという形で、支払いが不能の事態になるかと思っております。  それから電電共済につきましては、七十八年度に収支残が赤字になりまして、八十七年度になりますと積立金がなくなるものと予想されております。これも賦課保険料は千分の四百をかなり超える、長期的にはそういうふうになるという見込みでございます。  専売共済は、昭和五十九年度に単年度収支が赤字になりまして、積立金がなくなりますのは昭和八十四年ごろということになります。  あと、私学共済と農林共済でございますが、こちらは、私学共済の場合でございますと、保険料率を現行のまま据え置きましても、昭和七十五年度過ぎまで単年度収支は黒字のまま推移するというかなりいい形ではないか。それから農林年金の場合にも、保険料を現状のまま据え置きましたときには七十一年度ごろに単年度収支が赤字になると考えられますが、財源率も引き上げていきますとかなりの程度もつのじゃないか、こういう見通しでございます。
  70. 米沢隆

    ○米沢委員 分立する年金制度の中で、いま御説明いただきましたように、国鉄共済が一番最初に財政破綻を来す、そういうところから今回の法案におきまして、国家公務員公共企業体職員共済組合制度の統合を行うと同時に、国鉄共済組合に対する財政上の対策を図るという提案がなされるようになったわけでありますが、この法案の最大の問題点はどこにあるか。多くの委員指摘をしておりますように、今回国共済あるいは公企体共済を統合して給付水準等については統一化の方向を明示しているわけでありますが、単に財政調整によって国鉄共済の危機を救済するにすぎないではないかという、そういう声が多分に強いということであります。そうした中で、私は三つ問題があると思います。  一つは、法案作成の過程において、形式的には形をつくられてうまく運ばれたようなものにはなっておりますけれども、関係者の意見聴取が閉ざされて合意が形成されていない、審議も余りにも不十分であるという点が第一の問題であります。御承知のとおり、国家公務員共済組合審議会での労働側委員の審議拒否や経過を列記しただけの結論なしという状態はまさに異常な答申なのでございまして、それほど混乱があったということを示しておるように考えます。また、その後の社会保障制度審議会での審議等を見ましても、余りにも形式的で不十分に過ぎる。この点について一体どういうような見解を持たれるのかというのが第一点です。  第二点は、公的年金が統合されるという方向については、もう大多数の方がやむを得ないという気持ちを持っておられると思いますが、今回統合されて負担増を強いられる国共済を初めとする加入者にとりまして、なぜわれわれだけが先駆けて国鉄共済年金破綻を救済させられる立場に立つのか、単に将来的には同じ運命をたどるのだからとか、あるいは沿革が大変似ておるとか、あるいは仲間内ということだけをもって救済義務を課すのは不当ではないかという声がある。その背景の一番大きな不満は、公的年金制度が将来像を踏まえてどういうかっこうで統一されていくのかという具体的なスケジュールというものが示されないままに、何しろ最初あなた方が統合するのだという結論になってしまった。これが第二の問題ではないか。  第三の問題は、財政調整をして国鉄共済を救済していくわけでありますから、国鉄の方は当面は延命策をとられたということになりましょうが、他の共済にとっては逆に寿命を縮めるという結果になるわけでありまして、そういう気持ちが大変強い。その上、御承知のとおり、大蔵省は六十四年までの試算は明らかにしておりますけれども、それ以降は一体どうなっていくのか、つまり、六十五年以降財政調整はもう終わってしまって他の方策が確立されているのか、それともずるずる財調が延長して負担がますます大きくなっていくのではないか、そのあたりが明らかでない。結果的には、六十四年ぐらいまでこの財調を続けてみて、あとはその時点で判断をしようというような感じがしてならないのでありますが、それでは余りにも無責任ではないか。  この三つの問題が、この法案に関連して入り口論で議論になっておる最大の問題点ではないかと思います。したがいまして、この三点についてそれぞれの立場から当局の御見解をお示しいただきたい。
  71. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 第一点でございます、法案作成の段階で関係者の意見聴取や審議会の審議が十分だったのかということでございます。  この法案をつくりますまでの過程というのはかなり長い過程がございまして、さかのぼってみますと、昭和五十三年ごろからいろいろな議論がされてきておるわけでございますけれども、本格的な検討は昭和五十五年の六月に共済制度の基本問題研究会が発足をいたしましてから議論がされてまいりまして、関係各省、関係共済組合とも協議を続けてまいりましたし、それから同時に、その研究会の意見が昨年の七月にまとまりました後も、精力的に関係各省、関係共済組合と協議を続け、そして昨年の十二月の末から国共審で懇談会という形で審議を願いまして、国共審だけでも昨年の十二月以来十一回、足かけで言いますと二ヵ月ないし三カ月の間に十一回開いていただいたというのは、いままでの例から言いましても非常に回数も多く、その意味では慎重な御審議をいただいたかと思います。  その審議会の中におきましても、先日も御議論がございましたように、国共審でございますと公企体の方の方々がお見えにならないわけでございますから、それではぐあいが悪かろうということで、特に二月の下旬からの審議会ではそうした方方もおいでいただきまして御議論をいただいたというようなことでございます。結果的に、確かに答申作成の段階におきまして、先日来申し上げてございますように、委員の方々の間の意見の整理が一致した部分だけにしようということになりましたものですから、答申そのものの内容は簡素なものになってございますけれども、審議は十分尽くされていることと私どもは考えてございます。  それから二番目のお話は、国共済とそれから二公社の方々が、なぜ自分たちだけなのか、将来の展望というものはどういうふうになるのか明らかにしてもらわなければ困る、こういう御議論は審議会にもございましたし、審議会が始まる前に関係の公企体あるいは関係の各省と御協議を申し上げましたときにもこのような御議論がございまして、同時並行的に私どもとしては年金の将来展望というものを明示したい、こういうことで努力をしてまいったわけでございます。  昨年の九月に行革大綱の閣議決定で、五十八年度末までに具体的な手順と内容は決める、こういうことになっておりますので、それまでの間におきましてもおよその考え方、手順等を決めたいということで、本年の四月一日に「公的年金制度改革の進め方について」という閣僚協議会での決定を見たところでございます。これによりまして、今後の進め方、それからどういうふうになっていくのかということについての御理解は相当程度得られたのではなかろうか、このように思っている次第でございます。  それから三番目に、六十年度から六十四年度までの五年間の大まかなごく粗い試算でございますが大蔵省として計算をいたしまして、この問題につきまして審議会で御議論いただきますときの土台として使ってきたわけでございますが、それでは、その六十五年度以降どうなるのか。皆さんおっしゃいますのには、国鉄の共済組合の状況が非常に悪うございますからして、これを応援するのはいいけれども、エンドレスに応援する、これは困る、一体いつまでなのか、そこははっきりしてもらいたいということは、これも審議会での御議論、また審議会以前のところからそういう御議論がございまして、どうするかということでございますが、片一方、先ほど来申し上げておりますように、公的年金制度全体の再編統合というものの中でこの問題をとらえ、また解決していかなければならないわけでございますが、昭和五十九年度から六十一年にかけまして、国民年金、厚生年金、船員保険の関係整理を図り、同時に共済年金につきましても、これらの関係整理の趣旨に沿いまして共済年金制度を変えていくわけでございます。  そうした大きな改革を背景にいたしまして、六十五年度以降でございますから、その六十五年度以降の問題につきましては、そういった改革というものを踏まえて考え得るわけでございます。でございますので、先ほど申し上げました「公的年金制度改革の進め方」におきましても、六十一年までの第二段の公的年金の整理改革、それを踏まえまして、給付面の統一がそこでできますからして、負担面の制度間調整を進める、こういうことが書いてあるわけでございまして、そこで、どの範囲でどういうふうにしていくかということは具体的にはいま申し上げられません。申し上げられませんと申しますのは、第二段階での給付面の再編をどういうふうにするかということをいま具体的に申し上げられませんことによりまして申し上げられないわけでございますが、そういったものを踏まえまして、負担の面につきましても制度間の調整を進めていきたい。決してエンドレスということでなくてこの問題に対処してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  72. 米沢隆

    ○米沢委員 いま法案の作成経過の中で審議は尽くされたという御見解のようでありますが、御案内のとおり、この社会保障制度審議会の答申等を読んでみましても、「公的年金制度の改革を進めるに当たって、国は、年金制度の技術的、制度的調整を図り、関係者の十分な理解と基本的合意を前提として案をまとめるべきである。そのような観点から今回の諮問の経過を見るとき、これらの努力が著しく不足していたことを指摘せざるを得ない。」十分に審議をしたとおっしゃっておりますけれども、なぜこういう答申が出るのでしょう。どう受けとめておられますか。
  73. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 確かに、いま委員おっしゃいましたような御指摘があるわけでございます。  国家公務員共済組合審議会におきましても、でき得ることでございますれば全員一致した個所というのがもっと広範な形でできればよかったということはあると思います。それから、現実の問題として国共審の審議の経過がかなり通常のペースと比べまして混乱したことも事実でございます。その辺のところを制度審としては御指摘になったものかと思っております。ただ、私ども国共審の御議論もよく承ったわけでございますけれども、結果として出てきました答申の背後にはいろいろそれぞれの御苦心というものがおありになりますことは十分拝聴いたしておりますので、議論としてはかなり突っ込んだところの御議論がなされているかと思います。
  74. 米沢隆

    ○米沢委員 公的年金制度に関する関係閣僚懇談会が、先ほど話が出ておりましたように、四月一日に「公的年金制度改革の進め方について」という決定をなさいました。  その中身を拝見いたしますと、五十八年度において講ずる措置、今回の法案だとか地方公務員共済年金制度内の財政単位の一元化を図るという問題、第二段階として、五十九年から六十一年にかけて講ずる措置、そして三番目には、このような措置を踏まえて昭和七十年をめどに公的年金制度全体の一元化を完了させる、三つの段階で改革を進めていこうという決定をなさっておられます。  こういうのを読んでみますと、今後の検討の方向性については概略理解をできるわけでありますが、もっと具体的に、年金制度一元化に至るまでのスケジュールについて年次的な計画の説明が欲しいのです。たとえば、どの制度とどの制度がどの時点で関係調整をしていくのか、制度間の格差はどこで解消できるスケジュールになるのか等々について、もっと具体的に当局の見解を承りたいと思います。  先ほど、共済年金等については六十四年までの財調、六十五年以降の一元化に向けての方向性等についてはある程度御説明いただきましたが、公的年金制度全体の今後の七十年代に向けての一元化に至るまでの詳しい年次計画みたいなものを当局から見解を聞かしていただきたい。  あわせて、今回の法案は一元化に至る一環だというふうに位置づけられておりますけれども、どうもそのあたりが、単に財政調整が表に出るだけで、後でまた問題にしますけれども、基本調査会あたりでの答申から余りにも外れておる部分があるのではないか、こう考えますので、年金担当相の事務局の方から全体像を示してもらいたい。
  75. 古賀章介

    ○古賀政府委員 先ほど大蔵省の方から御答弁ありましたように、その繰り返しになりかねないと思いますけれども、昨年の九月二十四日の行革大綱におきましては、これからの公的年金の改革の具体的内容、手順等については五十八年度末までにその成案を得る、こういうことになっておるわけでございます。  しかしながら、その改革のおおよその方向、それから段取りの手順と申しますか、そういったものを定めておきまして、五十八年度末までに成案を得るということでございますので、いま先生の御指摘になりました公的年金制度の具体的な将来構想、その手順等につきましては、五十八年度末までに成案を得るその中身になろうかと思いますので、もう少し時間をかしていただきたいということでございます。
  76. 米沢隆

    ○米沢委員 自民党の公的年金等調査会の統合試案というものが発表されておりますが、政府としてもこれとほぼ同じだということでいいのですか。
  77. 古賀章介

    ○古賀政府委員 昨年十一月の自民党の公的年金等調査会におきまして、今後の公的年金制度の統合のスケジュールというものをおつくりになったわけであります。  それで、それは貴重な御意見といたしまして、四月一日の閣僚懇の今後の方向を定めます際に十分取り入れられておるわけでありまして、さらに今後五十八年度末までにつくります改革の具体的内容、方向等の成案というものにおきましても、やはり自民党の調査会の試案というものが貴重な参考意見になるであろうということは言えようかと思います。
  78. 米沢隆

    ○米沢委員 それで、昭和七十年の年金制度の一元化に向けて、いまからいろいろな御努力がなされるわけでありますが、その際はっきりしてもらっておきたいことは、果たして年金制度の一元化というのはどういう意味なのか。いろいろな解釈がなされる可能性もありまして、これから先五十八年度までに今後のスケジュール等が具体化されて、その後の作業がなされていく過程においてわかる問題であるかもしれませんけれども、少なくとも昭和七十年をめどに一元化させようとするその中身については、そのときになってから、おれの解釈はこうでなかったとか、そんな解釈はわかっておりませんなんという議論になりますと、これは大変大きな問題になりますので、一元化の内容について具体的にどこらまでを考えていらっしゃるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  79. 古賀章介

    ○古賀政府委員 公的年金制度の一元化という用語につきましては、昨年九月の行革大綱並びにことしの四月一日の関係閣僚懇の決定、その中にも使われておるわけであります。  それで、この意味するものでございますけれども、これは制度全体を統合一本化して保険者も一つにしてしまうという完全統合の姿から、それから制度は分立したままで財政調整を行うものに至るまですべてを含むといいますか、そういう幅広い概念として考えられておるわけでございます。したがって、その中にはいわゆる基本年金構想と言われるものも含まれるわけでありまして、そういう概念として現時点においてはとらえられておるということでございます。  しからば、今後どういう形でそれが具体化していくかということでございますけれども、それはそれぞれの段階、それぞれの制度の改正、改革の過程におきまして、その一本化というものが次第に具体化されていくというふうに理解をいたしております。
  80. 米沢隆

    ○米沢委員 一元化に向けての努力あるいは制度、体系の抜本改正に当たっては、やはり公的な年金制度でありますから、公正化と安定化に資するようなものにしていかねばなりません。  そこで、われわれが長年主張しておりますように、一元化の段階においては、いまの答弁では基礎年金等も一つの考えられるケースだというような言い方がなされましたけれども、昭和七十年において一元化されたその将来像の中には、少なくとも基礎年金というものが創設されて、初めて一元化が成り立つという立場に立つべきであると私は考えるものでございます。  昭和五十二年の社会保障制度審議会、年金制度基本構想懇談会の中間意見におきましてもその創設を提言しておりまして、基礎年会の創設という問題はすでに国民合意が形成されているものではないか。したがって、一元化の前提として基礎年金制度の創設があるというように御答弁はいただけないものでしょうか。
  81. 古賀章介

    ○古賀政府委員 あくまでも、現時点におきますところの政府が考えております公的年金制度の一元化という概念は、先ほど申し上げましたような幅広い概念としてとらえておるわけでございます。  その中に基礎年金構想というようなものも含まれておるということでございまして、現時点では、いま先生指摘の、そのものだけを目指すということではないわけでありまして、あくまでも、七十年を目途に一元化をするというその一元化は、現時点では広義の意味であるというふうにとらえざるを得ないと考えております。しかしながら、基礎的な年金を創設いたしまして、その上に各制度を上積みするという考え方は、十分参考としながら今後検討を進めていくことになろうと考えております。
  82. 米沢隆

    ○米沢委員 さて、次は国鉄共済年金をこのような破産状況に陥れた政治責任という問題について、見解を聞いておきたいと思います。  先ほども申しましたように、今回の共済統合法案というものは、年金一元化の一環として位置づけられると言われておりますが、先ほど来の御答弁でおわかりのように、いまから今後の一元化の方向性が明示されるということでありますから、今回の法案が年金一元化の一環としてという解釈は、どうも現時点ではまだ不明瞭に過ぎるという感覚で私は見ております。また、そういう意味では、今度の法案は実態的には国鉄救済法案ではないかという意見があることも、先ほど来申し上げたとおりであります。われわれも、国鉄共済がいま破産状態にあって、その健全化のための緊急対策はしなければならない、この法案はそういう意味では一面必要性のあるものだというふうに十分承知をいたしておりますけれども、このような破産状態に追いやった責任がどうも回避されておるという感じがしてなりません。  御承知のとおり、この基本問題調査会の意見書の中にも「国鉄共済年金の場合は、主として毎年の年金改定と輸送構造の変化による職員数の減少や職員の年齢構成の歪みによる成熟度の高度化など他の共済組合にみられない事情もあり、年金財政が一段と早く危機的状況に陥るであろうことが以前から予見されていたのに、国及び国鉄においては、財源率の引上げ等の対策にとどまり、現在のような焦眉の急の段階に至るまで有効な抜本的対策が講じられなかったことは、甚だ理解に苦しむとともに深く遺憾とするものである。」  要するに、共済年金が収入に見合わない給付水準の年金を支出し続けてきたことに問題があったというような指摘もなされておりますし、あるいはまた、社会保障制度審議会のこの法案に対する答申においても「国鉄共済組合の危機的状況については、かなり以前から予測されていたところであり、本審議会もその解決策を講ずべきことを繰り返し指摘してきた。それにもかかわらず、今日まで国の責任にも触れた具体案が提示されていないことは遺憾であり、さらに国としての格段の配慮が望まれる。」というような意見答申が出されるほどに、もう前々からこのような情勢がわかっていたにもかかわらず放置されてきたという、この政治責任というものを、大蔵大臣、どういうふうにいま受けとめておられるのか。  同時に、先ほど基本問題研究会の指摘の中にありましたように、共済年金が収入に見合わない給付水準の年金を支出し続けてきたという国鉄そのものの責任を一体われわれはどう理解したらいいのか。たとえば、国鉄共済組合は独自の判断でどんどん年金の給付水準を上げてきた。その結果赤字になったのだから、他の三共済が助けるというのでは虫がよ過ぎるという声が出てくるのも、やはりこのような責任が回避されたところに問題の発端があるのではないかとわれわれは考えるのでありますが、その点についての御見解をお示しいただきたい。
  83. 棚橋泰

    ○棚橋政府委員 国鉄共済組合の年金がこのような危機的状態になりました原因というものはいろいろ考えられるかと思います。  端的には、オイルショックに端を発します大幅な年金の改定というようなものに、さらに国鉄独自の要素といたしまして、この委員会でもたびたび御指摘のございますような年齢構成のゆがみというようなものがこの時期において大きく出てきた。さらには、それに加えまして、国鉄本体そのものが非常に経営内容が著しく悪化をいたしまして、そのために合理化を思い切って促進しなきゃいかぬというようなことでございまして、それらの要素が競合いたしまして一気に出てきた。その結果、こういう形になったものと考えております。  そのうち、御承知のように年金の大幅改定につきましては他の組合も同様でございますし、また年齢構成のゆがみというようなものも、先生指摘のようにかなり前から予想され指摘されておったところでございます。ただ、私ども予測を大きく外れました原因といたしましては、国鉄本体の悪化がここまで急速に進むということを予想し得なかった。そのために合理化をこれほど急速に進め、単に退職を促進したばかりでなく、新規採用の抑制等によって、支払う側である組合員となるべき新規採用というものが大幅に抑制をされ、その結果、予想以上に急速に成熟度が進むということになったということでございます。そこらの見通しが甘かった点につきましては御指摘のとおりではないかと思いますが、余りにも急速な国鉄の経営の変化というものに若干対応し切れなかった面があったということでございます。  このようなことは、先ほどの御指摘にもございましたように、かなり前から予測はされておりましたので、国鉄及び国といたしましては、過去におきまして何度か掛金率も他の組合よりも大幅に引き上げるというような措置を講じましたし、また追加費用等の支払い方式の変更とか過去の繰り入れ不足分の集中的繰り入れというような対策も講じたわけでございます。  ただ、それだけでは抜本的な解決にならないというような観点から、五十三年には国鉄の中に国鉄共済組合年金財政安定化のための研究会という総裁の諮問機関をつくりまして、抜本策について御検討いただきましたし、また運輸省の中に国鉄共済年金問題懇談会というようなものを大臣の私的諮問機関として設けまして、ここにおきまして、それぞれ抜本的な御検討をいただいたわけでございます。  また、それらの結論を受けまして、政府全体として、大蔵省に設けられました共済年金制度基本問題研究会というところにおきまして御検討いただきまして、先ほど来申し上げましたような、国鉄共済年金というのが悪化したということをもろに国鉄がかぶりました要因といたしまして、国鉄という一職種の一企業が一つの共済組合を形成している。したがいまして、その国鉄という一つの企業体がこうむる社会的経済的な変動というものを共済組合がまともにかぶってしまうというような形になったという原因から、やはりこういう共済組合をもっと大きな単位の中で年金として受けとめていただくということが適当であるというような御結論をいただいたわけでございます。  同時に、臨時行政調査会の方からも同様な御指摘で、国鉄共済組合と類似共済制度の統合を図るという御指摘がなされ、それらを受けまして、行革大綱を経まして、今日の法案をお願いをするということになったわけでございます。  以上申し上げましたように、国といたしましても、これの対応につきましてはできる限りの努力はしてきたというつもりでございますが、見通しが若干甘かった点はあるかと思いますが、それなりの努力をしたということについて御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。
  84. 米沢隆

    ○米沢委員 国鉄共済がこのような危機的な状況に陥った理由の中に、やはり同情すべきものがあることもわれわれは理解をしなければならぬと思っております。  それは、よく言われますように、例の戦後の引き揚げ者や旧軍人等が政府の要請によって国鉄に採用してもらったという経緯、そこらの大量の人々がいま定年退職を迎えて成熟度を高めておるわけでありまして、そこらは少なくとも国鉄がいままでずっと長年にわたって国が負担すべきような部分を代行して負担してきたのではないか、少なくともその戦後処理政策部分というものをお互いに理解し合ったならば、やはり国の責任もある程度あるのではないか。その意味では、今度のこの統合法案等においても、その少なくとも国の責任だと言ってもいい点についてはやはりある程度の出費というものは当然あってしかるべきではないか、そう考えるのですが、大蔵大臣の意見を聞かしてもらいたい。
  85. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま国鉄共済がこういう危機的状態になったということにつきましては、詳しく運輸省からございました。私は、今度初めて、いわば国家公務員共済等ということで所管ということになるわけでありますが、しかし、それは、いままで運輸省の所管であったという意味で申すわけではございません。政府全体の責任としてこれは受けとめるべき問題であると思っております。  そこで、いま米沢委員の御議論ですが、本当のところ、ちょうど私の年輩がみんな帰ってきまして、偉大なる雇用の場として雇用の場を与えてもらった。そうしてしかも、その当時の国鉄というものは、いまに比べてみればいわば非常に健全な経営として、またその役割りを果たしてきた。したがって、その点において別の角度から見て、私は、表現がいささか不十分ですが、同情すべきというか、そういう点はあるというような考えを従来からも持っておりました。ちょうど私どもと同年輩がそうでありましただけに。しかしながら、そこで一般歳出によってその面だけを仮にカバーしても、いわば国鉄共済制度全体に対する影響はほとんどないに等しい、それの面だけを取り上げて議論をいたしましても。  そういう議論も行ってきました末に、先ほどお答えがありましたように、共済年金基本問題研究会、ここで議論をして、それでいわゆる給付水準の抜本的見直しを急速に行うという指摘とともに、この国鉄共済に対する当面の緊急対策というものが、合併を図るように方向づけが行われて今日に至ったわけでございますので、その点だけを取り上げて、別の角度からの国家的要請というものによって受けた負担とでも申しますか、そういうものをいわば一般会計の支出によって賄うというような措置を取り得たとしても、それは全く基本的な問題の解決にはならない。しかし、おっしゃるその当時の果たした役割りは、私どもがたまたま同年輩でありますだけに、私も自覚は十分いたしております。
  86. 米沢隆

    ○米沢委員 先ほど国鉄の方の御答弁の中で、財政危機になることを予測しながら保険料を上げるなどしていろいろ対処してきたという御答弁がありました。これは、私も理解するにやぶさかではありません。  しかしながら、この国鉄共済の中には、現行の場合、国共済や他の公企体共済よりも有利な支給条件等がある。その点をどういうふうに理解をされてきたのか。それから、この法案において、国鉄共済を健全化するための国鉄労使の自助努力の内容について、みんなにわかるように説明をしてもらいたい。と同時に、こういう法案ができ上がった段階でも、いまだに国鉄労使の中にはこの法案そのものについていろいろな意見があるというような不協和音も聞こえてくるわけでありますが、一体それは何なのか、お答えいただきたい。
  87. 岩崎雄一

    岩崎説明員 給付の有利な点についてというお尋ねでございますが、国家公務員と公企体共済、これは国鉄、電電、専売、皆一緒でございますが、最終俸給のとり方が違っておりまして、それが算定基礎給与の違いになって給付額に若干の差を生じておるという点が一番大きな差ではないかと思います。  それから、三公社の中では、給付はすべて法定をされておりますので、給付水準は全く同じであるというように考えておりますが、運用面において何かないのかという御質問ではないかと思います。退職時の昇給というような点が若干あろうかと思いますが、これは、最近の公労委のあっせん案に基づく協約に基づいて実施をしておるということと、もう一つは、国鉄の経営改善の必要上五十五歳退職が必要であり、五十五歳の退職条件をよくしておる、こういうことの結果かというように考えておりますが、その点、そのように御理解をいただきたいと思います。  それから、国鉄はいままでどういう自助努力をやってきたのか。先ほど運輸省の国鉄部長からもお話がございましたが、石油ショック後の年金改定と、ちょうどその五十一年あたりから退職者が増加してまいりましたことが、年金収支に与えた非常に大きな影響でございますが、その結果五十一年からずっと赤字を計上し、たとえば措置を講じた五十三年に若干黒字が出たということがございますが、赤字基調を脱し切れずに今日まで推移をしております。  これに対する対策として、いままで、数回にわたる保険料の引き上げ、それから追加費用の繰り入れ方法の変更というようなことによりまして財源確保を図ってまいったわけでありますが、その中身を少し具体的に申し上げますと、五十一年の四月から始まりました五カ年計画で、最初に保険料率を千分の十引き上げております。それから五十三年に、この状況の変化により急遽五カ年計画を途中で変更いたしまして、五十三年から五十五年までの三カ年計画に切りかえたわけでございますが、この際に、保険料を千分の二十引き上げております。同時に、それまで追加費用は、一定の千分比によりまして国鉄から国鉄共済に繰り入れられておりましたが、五十二年では千分の百二十六ということになっておりますけれども、五十三年度からは、前年度に発生した実額を全額一年おくれで国鉄から共済組合に繰り入れる、こういう方法に変更いたしております。  その後、五十六年の四月に、現在の緊急四カ年計画に着手するに当たりまして、保険料をさらに千分の二十五引き上げております。そして激変緩和の意味で一部、五十七年四月に千分の五さらにそれに上積みをしたということで、現在千分の百七十七、掛金で言いますと、そのうち千分の七十四ということになっております。つまり俸給に対しまして、パーセントで言いますと七・四%の掛金を現在支払っております。  同時に、五十六年四月の緊急四カ年計画着手の際の追加費用に関する措置としては、未払い金つまり五十三年以前、三十一年七月に新法が施行されましてから五十三年度に至るまでの追加費用の未払い金をこの期間に集中償還をいたしまして、財政の改善に資するように措置をした。  現在までこういうような措置を講じてきておりますが、何分、先ほど来お話が出ておりますような状況で、五十九年度までは何とか支払いが確保できるという見通しを立てておるわけでございますが、六十年度以降は、単独では年金財政の運営はきわめて困難であるという状況に立ち至っているわけでございます。  それから、もう一つ質問がございました労働組合が賛成しているのかという件でございます。  現在まで、この法案に至ります前の段階から法案ができました段階を通じまして、共済組合運営審議会という各組合が参加する場がございますし、それから各労働組合との個別の懇談会等も持っておりますが、そういう場所において、この年金の現状について十分に説明をしてきております。もちろん組合自身も勉強しておるわけでございます。そういう意味で、年金財政の危機についての認識は深まっておるというように考えております。したがいまして、この法案の趣旨に沿って国鉄共済年金問題の解決を図っていただきたい、そういう気持ちにおいては労使とも変わるものではないというふうに考えております。
  88. 米沢隆

    ○米沢委員 この共済年金の統合に関しまして、やはり問題になるのは、電電公社等の経営形態との関連で一体どうなっていくのかという問題だと思います。  昨年七月に、臨時行政調査会が第三次答申におきまして、電電公社などの公社の抜本的改革方策を提示しまして、政府答申の最大限尊重を天下に公約したわけであります。そして、政府答申を受けて電電、専売公社の改革法案を今国会に提出する方針を閣議決定したのでありますが、その後ほとんど音さたがありません。一体、この点はどうなっておるのでしょうか、簡単に御説明いただきたい。
  89. 吉高廣邦

    ○吉高説明員 電電公社の改革問題につきまして、先生指摘のように、昨年秋の閣議決定のいわゆる行革大綱によりまして、調整をしながら進めることとされておるわけでありますが、郵政省といたしましても、この行革大綱に沿いまして対処することとしております。しかし、現在まだ調整が整っていない状況でございます。  臨調答申の中には各般にわたる要素が盛り込まれておりまして、国民生活はもとより、社会経済に与える影響も大きいと想定されまして、いずれも電気通信政策上重要な問題であると考えております。したがいまして、今後、電電公社の改革問題につきまして、国民生活に不可欠となっております電話を中心とした公衆電気通信サービスをあまねくかつ公平に提供するとともに、低廉な料金で安定的に提供すること、さらに今後の情報社会の進展の中で電気通信の果たす役割りはきわめて大きいことを十分認識いたしまして、需要に応じて高度かつ多彩なサービスの提供が可能となるよう、電気通信の健全な発展を図ること等を基本といたしまして、引き続き検討、対処していきたいと考えておるところでございます。
  90. 米沢隆

    ○米沢委員 私が御質問いたしておりますのは、電電公社あるいは専売公社等の改革の中身について申し上げておるのではなくて、いわゆる経営形態が民間になるかもしれないという議論がなされておる段階において、たとえばこの四つの共済の財調が少なくとも六十四年まで続くという中で、その以前にもし改革が進んでいって経営形態が変わったときに、電電公社あるいは専売公社としては、できれば厚生年金に移りたいという議論があるかもしれないし、民営になったとしても共済年金的なものをそのまま持っていかざるを得ないという場合が起こるかもしれないし、そういう判断のために、少なくとも六十四年以前にこのような改革が一体なされるのかどうか、間に合うのかどうか、間に合うというのはおかしいですね、六十四年までに経営形態が変更されることがあるのかどうか、そこらが問題だと思って聞いておるのでございます。その点いかがですか。
  91. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 経営形態の問題とその適用年金制度の問題とあるわけでございますが、現在のルールといいますか原則的な物の考え方といたしましては、民営または民間の会社では厚生年金が適用される、共済制度というのは特別な歴史、沿革に基づくものが共済制度になっておる、こういうことでございますからして、いま委員質問のように、電電公社なり専売公社なりあるいは国有鉄道が民営になりました場合に、どういう年金制度を適用するかということは、原則的な物の考え方からすれば厚生年金ということになるのじゃないか、こういう前提でのお尋ねかと思います。  ただ、私いま申し上げましたように、原則的な物の考え方はまさにそのとおりなのでございますけれども、現在の制度も例外が全くないというわけではございませんで、かなりの例外があるわけでございます。  たとえば、私学の共済でございますとか農林の共済は、これは明らかに民間でありますのに共済制度になっておる。それから、公社は共済でございますけれども、公庫、公団、これはどちらかと申しますれば、公社、公団、公庫と一緒に物を考えた方が自然かと思いますのに、公庫でございますとか公団の場合には民間の扱いということで厚生年金になっておるわけでございます。  したがいまして、いま年金制度全体といたしまして、再編統合をし長期的に安定した年金制度を確立することが、高齢化社会を控えまして国民の皆さんが望んでいるという、それも一刻も早くいたしませんと、冒頭御説明申し上げましたように、各年金制度そのものの財政内容がどうもゆがんでいる、こういうときでございますからして、適用いたします年金制度と、公社等の経営形態の問題とは別個の問題として物を考えた方が処理しやすいということを基本にいま考えているわけでございます。  したがいまして、共済年金制度のまま現在の公社も処理をしてまいりまして、いずれ、公的年金制度全体としては広い意味、いろいろな意味があると思いますけれども、一元化ないしは統合していくわけでございますからして、落ちつく姿は同じことでございます。いつの段階に、どういうふうな経路をたどっていくかということはあると思いますけれども、落ちつく姿は同じでございますので、経営形態の問題とは別個切り離して共済年金制度として処理をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  92. 米沢隆

    ○米沢委員 この経営形態の変更と年金制度の問題については、この基本問題研究会の意見書においても、「公共部門の事業が民営形態をとった場合、年金制度については原則的に厚生年金の適用が考えられるわけであるが、現状においては、厚生年金への移管は技術的に解決困難な問題点が多い。」「したがって、公社等の経営形態の変更にかかわりなく、当面共済年金制度の適用を続け、かつ、合併を行っていくのが現実的な方策ではないかと考える。」こういうような意見になっておるわけですね。  しかしながら、昭和六十四年までにもし経営形態が変わるとすれば、電電公社、専売公社にとっては、特に年金プラス企業年金的なものが付加されて維持されておりますから、できれば電電公社あたりは厚生年金に移管して企業年金等を充実したいという気持ちを持つのは、私は自然の成り行きのような気がするのですけれども、そういう意味で、最終的には合併されるのだから、そのまま共済制度を維持してもおかしくないという議論は、電電公社、専売公社に言わせたら、やはりちょっと問題があるのじゃありませんか。電電公社あるいは専売公社の方の御意見を聞かしてもらいたい。共済制度で結構でございますと言うのか、厚生年金に移行して、少なくとも、六十四年まであったとしても、七十年の統一までは五年間あるわけで、その間の問題もありますし、あるいは企業年金的なものを、電電公社としてはもうかっておるわけですから、何とかやりたいというのはあたりまえの筋道じゃないかと思うのだけれども、電電公社等の意見を聞かしてもらいたい、早くここから逃げたいと思うのじゃないかな。
  93. 中原道朗

    ○中原説明員 私どもといたしましては、経営形態と年金制度の関係につきましては、現行法制上不離一体のものであるという認識で、本来的には、経営形態の方向が定められてから、適用さるべき年金というものが決められていくのが筋ではないかというふうには考えていたところでございますけれども、しかし、考え方によりましては、これは法律プロパーの問題といいますか立法政策上の問題である、こうなければならないというものは必ずしもあるわけではありませんので、その間種々意見があってしかるべきであるというふうに考えております。  現在までも、実は、経営形態問題が生じました時点で、経営形態変更後の年金制度の適用につきましては、厚生年金制度への移行も含めまして、新しい事業体制に最も適合した制度というものが考えられ、所要の立法上の措置が講ぜられていくのが筋だというふうには考えておりました。  しかし、今回の法律前提にして物事を考えるということが現実的な問題でございますので、共済組合制度のまま将来の公的年金の大統合に向かうということにつきましては、大統合につきまして異論があるものではございませんので、これについてとかく申し上げるところではございませんけれども、経営形態変更ということが起こった場合につきましては、財政調整事業とそれから国鉄共済年金支援の具体的な方法、そういうことにつきましても、いろいろ他の共済との調和も考えるという問題が種々出てくることだと思いますので、当然見直してしかるべき非常に大きな条件がその時点であらわれてくるだろうというふうに考えております。  多くの問題が立法政策上の問題でございますので、余り立ち入って申し上げられない点というものがあるかとは思います。そのような状態ではございますが、私ども、公的年金の大統合ということについて賛成をしておりますが、この法案審議の内外におきまして、それに向けて解決なり問題としていろいろ定めていただきたい点がたくさんある、そういうことについてまたお力をおかしいただきたいということをこいねがっておるところでございます。
  94. 米沢隆

    ○米沢委員 何か苦しい答弁のような気がしますが、後で労使問題でもめるようなことがないようにしていただきたいと思います。  最後になりましたけれども、今回のこの法案の中身は、四共済年金の給付を統一するということと国鉄共済への財調というのが二本の柱です。  御案内のとおり、先ほどからたびたび引用しております基本問題研究会の意見の中には、改正案をつくるならば単にそういうものだけにとどまらず、少なくとも「恩給制度との間に若干の距離をおき、また再就職者への支給制限、併給制限など、現在批判のある部分に特に配慮すること。」ということが書いてあるのですが、今回はこれが完全にネグレクトしてありますね。特に、年金改革をしていく場合の最大のポイントは、官民格差みたいなものをなくさない限り合意ができない、私はこう思うのです。  そういう意味で、官民格差を早くなくすことは逆に不利になるという部分もありますから、いろいろとうるさく言われる中で問題の種をまたふやしたくないというものがあったかもしれませんけれども、少なくともこの意見書の中で、前段階にある現在批判のあるものについても早急に対処しろというものがネグレクトされたということは、私は問題があるというふうに考えざるを得ないのでございます。  その点、今回この法案に間に合わなかったという点について、われわれはどういう理解をしたらいいのか。特に官民格差の是正という問題は、将来的には七十年の間にどこかの時点でせざるを得ない部分でありましょうが、トータルとして一元化に向けての国民の合意形成という意味では、早ければ早い方がいいという立場から意見を申し上げたいと思うのです。  もう一つ、先ほどの話にもありましたように、共済年金というのは、いわゆる恩給部分とか旧法を引き継いだとかいって、いろいろ複雑でむずかしいところがございます。そういう意味では、官民格差との関係もありますが、いわゆる基本的な厚生年金部分のような役割りと、企業年金的なあるいは事業主の福利施設の代行的な役割りみたいな、恩給、旧法それから新法をもっとはっきり分けろという議論はいままでもあったわけです。われわれも社会労働委員会におりまして年金の話、共済年金の話になりますと、資料も出してくださらないほどに複雑だとおっしゃっておりまして、そういう意味では、もう少し早くそこらをすっきりすべきであるという点が今後の大きな問題だと思うのです。同時に、共済年金の場合には、いわゆる厚生年金的な式を受ける方法、通年方式というのですか、あるいは共済年金方式と二つに分かれておりまして、そこらについてももういいかげんに一本化する時期ではないか、こう思いますね。その点も踏まえてお答えいただきたい。  それからもう一つ、保険料の上限にいて、当初の原案は修正率が〇・九となっておりましたが、いろいろな諮問の結果等を参酌されたのだと思いますが、それが消されておりますね。消されておるということは、〇・八の現行をそのまま維持するというふうに理解していいのかどうか、その点を確認しておきたい。それともそうではなくて、〇・八から〇・九に至るまで年次的にも上げようなんという腹構えも実際あるのかどうか。これは整理に任せられるといいましても、この段階で確認できるものならはっきりしておいていただきたい、そう思います。
  95. 宍倉宗夫

    ○宍倉政府委員 まず第一に官民格差の問題でございますが、官民格差と言われているものの中に、制度的な違いがそのまま反映しているというものもございまして、直ちにいわゆる官民格差が本当の格差かどうかということについては、細かく議論をしてまいりますといろいろ問題のあるところかと思います。  しかし、現実の問題といたしまして、世の中にいわゆる官民格差というものがあることが常識的な姿になっているわけでございまして、そういった考えがあるにもかかわりませず、年金、少なくとも公的年金を統合していこうということは、なかなかお互いの関係がうまくいかないということになろうかと思います。でございますからして、いわゆる官民格差というものは、この公的年金制度を統合していく過程におきまして、できるだけ早い機会に解消していかなければなるまいと思っております。  その時期でございますけれども、例の公的年金制度改革の進め方につきまして、その第二段階でございます六十一年までの措置といたしまして、共済年金が厚年などの改革の趣旨に沿いまして関係整理を図る、この段階におきまして、かなりといいますか、できればほとんどすべて解消してしまいたいという意気込みでございます。でございますから、先ほどおっしゃいました通年方式と一般方式の問題も、この辺のところでは整理もしなければなるまい。それから、基本的にこれもなかなかむずかしい話ではございますけれども、共済は大体本俸方式、あちらは標準報酬方式、この辺のところも考えなければならないかもしれないということまで含めまして、この法案をお認めいただきました後、早急に検討に入ってまいりたいと思っております。  それから共済年金が、公的年金部分と職域年金部分、それからもう一つ労働面での配慮というものの三つが混在していてよくわからないという御議論があるわけでございますが、いまの六十一年の改革に向けまして、その場合には、公的年金部分について他の厚年等と合わせていく際におきまして、職域年金部分というのは別途独立に何らかの設計をしてまいらなければなるまいかと思っております。これも今後の重要な課題であろうと考えております。  それから最後に、平準保険料に掛けます、○・八いままで掛けているわけでございますが、これが一番最初に案をつくりまして審議会にお諮りをした時点におきましては、十分の九を下らない範囲で政令で定める率を乗じたもの、こういうことにしてあったわけでございますが、これが、いまの御提案申し上げているところの案ではそうなっておりません。いままでどおりになっておるわけでございます。  それは、先日も申し上げましたが、国共審の審議会で御議論がございまして、現実の問題として、再計算による負担増とそれから国鉄共済への拠出分とが重なるので、〇・九ということにいたしますと、この分までもう一つ重なってしまう、三重に重なってしまうということで、保険料率の上がり方がかなり大きくなるので、筋を曲げない範囲で最大の配慮が望ましいという御意見もございました。その辺のところも踏まえまして、いま御提案申し上げている案では削除して、もとのままにしてあるわけであります。  ただ、物の考え方といたしましては、今後年金財政の安定を図り世代間の負担の公平というものも考えてまいりますときには、本当は必要な財源率は全部一〇〇%賦課していかなければならないものであり、いずれ賦課方式になればそういう姿になってくるわけでございますから、八〇%のままでよろしいということにはならないと思うのでございます。いずれ引き上げていき、最終的に賦課方式の段階になれば、これはどうしても一〇〇%にならざるを得ないということでございますので、その辺のところは無理のない姿で、現在の八〇%というものを徐々に一〇〇%まで上げていくという努力は必要であろうと思っております。
  96. 米沢隆

    ○米沢委員 賦課方式みたいなものにならないためにいま手を入れようというのでありますから、一〇〇%に徐々に最終的には持っていくというのは大変問題がある、意見だけ申し上げておきたいと思います。  少々質問を残しましたけれども、これで終わります。      ────◇─────
  97. 森美秀

    森委員長 引き続き、国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  質疑を続行いたします。塚田庄平君。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  98. 塚田庄平

    ○塚田委員 まず大臣に御質問をいたします。  いま国会は、特に国対あるいは議運の関係で田中角榮元総理の辞職勧告決議案の取り扱いについて議論がかみ合わないまま今日に至っております。私どもは、田中角榮は当然政治的道義的な責任を全うしなければならない、そういう意味において辞職勧告決議案をやっておるわけでありますが、たまたま、これはロッキード五億円問題に絡んだ事件を中心にしての責任追及でありますが、田中角榮なる者の商行為、経済行為ですね、あるいはまた税金に対する考え方等、ずっと一連の問題、事件をいろいろ追ってまいりますと、道義的な責任も当然ではありますが、さらに、かつて大蔵大臣としてむしろこういったことがないようにということで政治を行ってきた本人が、あるいは本人に最も近い者あるいは本人の後援会副会長等が、きわめて悪質なそういう経済行為あるいは脱税行為あるいはそれに類似する行為をやっておる、こういうことになりますと、道義的な責任だけではなくて、さらにそれに加えて、もっと人間としての基本的な品性、人格の問題として再度考えなければならぬ問題だ、こう私は思うのです。  私、いま何を言おうとしておるかということにつきましては、これからの質問でいろいろと大臣にもわかってもらいたいと思うのです。しかし、そういう事件がここ数年いわゆる田中金脈として世上問題になってきたということは、これはもう大臣も十分御承知のことと思います。その点について、昨今の野党一致した要求とあわせて、一体どういう感想を持っておられるか、この機会に総体的な考え方をひとつお伺いしたいと思います。
  99. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる辞職勧告決議案でございますか、この問題はいま議院運営委員会で取り扱われておる問題でございますので、憲法五十五条、身分争訟の規定ですか等々、私も知らぬわけじゃございませんけれども、ハウスの議運で議論されておるということでございますから、この問題につきましてはやはり論評すべきでないのじゃないかと思っております。  それから刑事責任の問題、これは当然、裁判所の問題でございますからなおのこと、この決議案とはまた別の問題で、三権のたてまえ、特に予見を持った感想等を申し述ぶべき事柄ではない。  そうすると、今度は、もろもろのマスコミ等々で批判されておる問題についてどう思うか、こういうことになろうかと思うのです。それらの問題については、私どもは、事実関係というものを正確に知らない者が一般論としての感想を述べるというのは、本委員会が必ずしも適切なその場ではないという感じがいたします。  結局、憲法五十五条の議員の身分争訟の問題、刑事責任の問題、そしてマスコミ等の議論の問題、それらすべてについて感想を述べる立場と場所にいまないという感じがいたします。
  100. 塚田庄平

    ○塚田委員 それでは後で、いろいろ質問した最後に、またよく聞いていただいて、それについてのお考えを改めて聞きたいと思います。  私は、ここで九十六回の国会で、特に参議院の決算委員会で問題になりました、しかもこれは五回ほど問題になっております。一月から始まって七月までずいぶん長い間問題になった逆さ合併、具体的に言いますと東京ニューハウスという、これは俗にペーパーカンパニーといいますか、かつては目白の田中邸の中に居を構えていた。しかも、その社長は田中角榮の秘書をしていた人、名前はちょっと避けたいと思います。こういう会社と、新潟遊園という、これは不動産あるいは遊園地の造成あるいはその他建物、アパート等いろいろつくっておるそういう会社との逆さ合併問題について質問をしたいと思います。  大臣、逆さ合併というのはどういうことですか。——ちょっと待ってください、テストをしてみるのです。
  101. 酒井健三

    ○酒井政府委員 お答え申し上げます。  通常の合併というのは、黒字会社あるいは赤字会社、こういろいろの形態がありますが、狭い意味では、黒字会社同士が合併をする、それから黒字会社が赤字会社を吸収合併するというのが例だと思います。  そこで、その逆という意味での逆さという意味であると思いますが、逆さ合併と世間で言われておるのは、私どもの理解では、赤字の累積している会社が黒字の会社を吸収合併するというようなケースのことを指すのだろうと存じます。
  102. 塚田庄平

    ○塚田委員 赤字の会社が黒字の会社を合併する、いわば常識的に言うとそれは合併の正常の姿ではなくて、文字どおりひっくり返った逆さの合併という意味で俗に逆さ合併、こう言われていると思います。  この逆さ合併問題というのは、実は白木屋、日本橋のあの古いしにせですけれども、白木屋と東急が合併したときに非常に問題になった合併形式なんです。どういうことかというと、白木屋、この背後には悪名高いと言った方がいいんでしょうか、横井英樹がおります。東急、これは御存じのとおり五島慶太が親玉です。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕 この二人のいろいろな工作の中で、白木屋という赤字会社にまさに隆々発展していた東急が合併した。これは逆さ合併ですね。しかし、合併するや否や商号が白木屋から東急にかわるわけです。だから、名前だけを見ると、白木屋という名前は消えちゃうのですから、あたかも東急が白木屋を合併した、こういう印象を世間に与える。  この合併が典型的な逆さ合併の例だった、こう思いますが、こういう事例があってから、東京税理士会で課税予測可能性という問題等をいろいろと議論している中で、常にこの逆さ合併の問題が議論の対象になりあるいはレクチュアの対象になりあるいは会員相談の主たる課題になる。昨年などは、税務会計学会ですかあたりでは、これについての集中的な議論がなされて、もちろんある人の発表を中心にしてなされてきております。しかし、残念ながら、これに対する結論というのはなかなか出てこないというのが現況でありますが、私は、いま恐らく個別問題ですからお答えをしかねるという答弁があるんではないかという心配がありますので、私からこの具体的な事例についてまず話を進めていきたいと思います。  その前に、次長は、東京ニューハウスと新潟遊園の合併については、合併の態様は知っていますね。
  103. 酒井健三

    ○酒井政府委員 その件につきましては、先生先ほど御指摘のように、さきの国会でたびたび御論議もございましたし、そしてまた、世上新聞雑誌等にも何度も書かれておることでございますので、その中身のことにつきましては現在調査をさせておりますが、そういうような事柄があるということは存じております。
  104. 塚田庄平

    ○塚田委員 現在調査をさせておるというのは、それは合併の態様を調査しておるのですか。その合併のよしあしといいますか合法性といいますか、そういうものを調査しておるのですか、どっちですか。私は、態様はどうかと聞いておる。
  105. 酒井健三

    ○酒井政府委員 私ども税務調査に当たりましては、税に関連する事柄につきましてできるだけ正確に実態を把握するということが要求されておりますので、もちろんいろいろ言われていることを私ども自身の調査によって確認をする、その合併の形態がどういうものであるか、そういうことにつきましても事実関係の把握に努めているところでございます。
  106. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは、少し態様について私から言わなければ議論は進んでいかないのです。  東京ニューハウス、これはまさに赤字会社でペーパーカンパニーで、住所は昭和四十三年から四十八年までは田中邸の中にありました。目白。そして田中邸の約一千坪といいますと、あそこの全部の大体四〇%です。この一千坪を帳簿上所有していたわけですね。さらに、このニューハウスは軽井沢に膨大な土地を持っておりました。六千坪に及ぶ別荘を持っておりました。別荘というのは、家そのものは六千坪じゃないですけれども、その周囲はずっと森林に囲まれて全くいいところなんですね。これが田中自身のものですけれども、これを管理しておりました。そして、これはよけいなことかもしれませんけれども、例の五年、五億の追徴という判決を受けたときに、この別荘が実はその五億円の担保に出されたわけです。いいですか、五億円の担保に出された。この社長も、実はさっき名前を言うのを避けたのですけれども、第二秘書がこの社長をやっておるということなんですね。それ以降この東京ニューハウスは住所を変えております。どこに変えておるかというと市谷本村町ですか、そこに変えております。これがニューハウスの概要です。しかし、いま言いましたとおり実際あの別荘は田中のものであり、そして田中邸の中にある一千坪というのは、これも名前はニューハウスのものになっておりますけれども、いまそこから出ているのですが、実際上は田中。出たときにそれを田中に贈与したということになると、じゃ贈与税はどうなったかということになる。  恐らくこれは、実際上は田中ということで贈与税の問題はなかったと思うのですね。出ていって何も持っていなければニューハウスから田中へ贈与したということになりますから、その辺はどうなんですか。
  107. 酒井健三

    ○酒井政府委員 大変恐縮でございますが、個別の事案の内容につきまして御説明するのは差し控えさせていただきたいと存じます。
  108. 塚田庄平

    ○塚田委員 そういう答弁だろうと思います。  そこで、奇怪なことが起こるのですね。東京ニューハウスは五十六年四月十三日新潟遊園と合併をいたします。新潟遊園は五十四年に実は新潟市に対して土地を売っております。これは二万坪なんですけれども、そのうち新潟遊園の分は七千七百坪となっております。全部が新潟遊園じゃないのですね。これは、実は国の補助金をもらって新潟市が遊園地を造成するということでぱぱっと決まってしまったのですね。恐らく背後には相当の政治力を持った人がいたんでしょう。決まって、その売却代金は約九億。  さて、新潟市はこの九億を払うために五十五年の予算で議会に諮りました。買ったから金を払う。議会は当然これを議決いたしました。議決したのですから、普通の会社であれば一日も早く金をもらいたいのですよ。ところが、五十五年に払おうとしたら新潟遊園の方から、ちょっと払うのを待ってくれ、来年払ってくれと言うのですよ。これは利子も何もつかないのですよ。ちょっと常識じゃ考えられないのですね、いま払うというのを来年払ってくれと言うのですから。だから、新潟市は大変めんどうなやり方をやったのですよ。議決をしてしまったのですから明許繰り越しをやったわけです。それを来年払うように繰越金にしたわけです。そして五十六年に払うまでの間に、いま言いましたとおり、五十六年の四月十三日に合併行為が行われた。その合併行為は驚くなかれ新潟遊園、これは仕事をしている会社で、しかも新潟市から九億くらいの取り分のある会社なんですね、いまの売った代金を取れるわけですから。これが全くペーパーカンパニー、しかも赤字会社である東京ニューハウスにいわゆる逆さ合併されたわけです。ここまでは間違いないですね。どうですか。
  109. 酒井健三

    ○酒井政府委員 第九十六国会におきまして、委員会でそういうような御指摘もございました。また、新聞雑誌等でもそのような報道がございまして、私ども、現在それがどうなのかという事実関係の把握に努めているところでございます。
  110. 塚田庄平

    ○塚田委員 酒井さん、あなたそれはただ逃れているだけですよ。  あなたは、いま九十六国会と言いましたね。そのときにも同じようなことを言っているのですよ。そのときの逃げ口上は何かというと、これは一番直近の決算委員会、つまり九十六国会七月五日、酒井健三君が答弁しているのです。いろいろ答弁している人がおりますけれども、いま残っているのはあなた一人なんですよ。だから、あなたは生き証人なんです。あなたはどう言っているかというと「お尋ねの法人は新潟遊園のことかと思います」、ここまでわざわざ自分で相手が言わないうちに言っているのですよ。しかし、個別のものであるから言えないというそういうことではなくて、実は「この法人の決算は三月が決算でございまして、五十七年三月期の法人税の確定申告書は、つい先日の六月の末に所轄の税務署」つまりこの場合四谷税務署ですね、提出されたばかりであるから、私は、恐らく六月にあなたは次長になったのじゃないかと思うのですよ、だから、よく調べなければわからないという答弁は無理もないのです。自来いままで約一年間、十一ヵ月くらいになりますか、もうわかってもいいでしょう。こういう答弁をしているのですよ。それなのに、いまのようにまだこれから調べなければわかりませんじゃ、ちょっと聞こえませんね。
  111. 酒井健三

    ○酒井政府委員 昨年七月私がそういう答弁を国会でいたしましたことは事実でございます。  私ども国会でのたびたびの御論議あるいは新聞雑誌等で報ぜられたことにつきまして、課税上の問題がないかどうか現在調査をいたしております。調査に当たりましては、もちろん個々の取引あるいは経理処理等が税務上適正に処理されているかどうか、取引に関係した法人等につきましても調査するなど多角的に十分な検討を行っておりますが、現在まだ調査の最終的な完結というところまで至っていないという状況でございます。
  112. 塚田庄平

    ○塚田委員 この東京ニューハウスと、新しいと言ったらいいか旧と言ったらいいのか、結果はどっちでも同じなんですけれども、新潟遊園は同族会社じゃないですか。そう断定していいですね。
  113. 大山綱明

    ○大山政府委員 両社ともに同族会社でございます。
  114. 塚田庄平

    ○塚田委員 そうすると、同族会社ということになりますと——不服審判所、来ておりますか。同族会社のいろいろな経理処分については、あるいは会社経理についてはずいぶん注意をしなければならぬということで、税法にもいろいろと規定があります。  まず、法人税法の百三十二条。どういうことかといいますと、税金の負担を軽減させる結果となるようなそういう行為については、特に著しくそういう場合は認めないという規定がまず一つあります。それから、昭和四十七年の二月二十一日と思いましたが、たしかA証券会社とB鉄鋼業者との間の逆さ合併があります。この両方の、審判所が行った裁定と、それからいま同族会社とこう言いましたから百三十二条の規定、この両方の規定から攻めていった場合に、一体いま言った新潟遊園と東京ニューハウスとの合併は妥当なものと思われるかどうか、これを国税庁からまず聞きます。
  115. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来、次長の酒井がお答え申し上げておりますとおり、現在ここの法人につきましては調査をいたしておるところでございます。調査の中身に関する事柄でございますものですから、いまここでこれが妥当かどうかという判断を申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。事実、私ども、まだ結論を出しておらない状態でございます。
  116. 塚田庄平

    ○塚田委員 結論が出れば、この委員会で私が再度質問した場合に、ある程度その結論についての説明はしてくれますか。
  117. 大山綱明

    ○大山政府委員 再々の答弁で恐縮でございますが、私ども納税者の協力を前提とする税務行政ということで、納税者調査の内容についての御答弁は個々には差し控えさせていただいているところでございます。したがいまして、本事案につきましても、それでは結論が出たら報告をするかと仰せられましても、なかなかそういうわけにはまいらないということを御理解いただきたいと存じます。
  118. 塚田庄平

    ○塚田委員 それでは、この事件の前に軽井沢商事事件というのがあります。似たような事件なんですよ。似たような事件というか、土地の売買利益を秘匿して転がしてうまく逃げた事件なんですけれども、これは国税は処置を終わりましたか。
  119. 大山綱明

    ○大山政府委員 軽井沢商事の土地の譲渡関係ということでございますが、関係者を調査いたしまして、問題点がありました点については是正をさせる措置をとっております。この点につきましては、一部新聞等にも報道されたりいたしております。
  120. 塚田庄平

    ○塚田委員 じゃ、事実関係は一部新聞等に報道されたとおりであって、しかし、その必要な課税処理についてはいまは言えない、こういうことですね。
  121. 大山綱明

    ○大山政府委員 仰せのとおりでございまして、ただ、おおむね新聞で報道されているようなことについて、私ども、それは大いに違うというようなことを申すほどのものではない、こういうことでございます。
  122. 塚田庄平

    ○塚田委員 大体わかりました。  そうすると、軽井沢商事の場合は、これはおおむね私がこれから言うような処理はしたものと思います。軽井沢商事については、これは土地の売買であるにもかかわらず株式売買を擬装して二億円の利益を隠したという事件なんですよ。だから、処理をしたということは、恐らくこの二億円を所得とみなして課税措置をしたということだと私は思います。これが第一点。  それから第二点は、軽井沢商事の土地の売買については、ダッカスという、これは油脂会社ですけれども、これまた赤字の会社なんですが、これが中に入って、そして吉原組という組、これは組長は越山会の副会長で、ここに本当は利益が入っていったのですけれども、利益がなかったようにダッカスが中に入って利益をぽっと消した、こういうことが指摘されているのですよ。これについても十分調査をし、もしそういうことがあった場合には税の追徴あるいは延滞重加算税、こういったことを一切やっておるというふうに解釈していいですか。
  123. 大山綱明

    ○大山政府委員 十分に調査をいたしまして、適切な課税処理をしたつもりでございます。
  124. 塚田庄平

    ○塚田委員 苦しいからああいう答弁ですけれども、私がいま言ったところは大体そのとおりやったというふうに思います。したがって、この事件にしてしかりですから、新潟遊園の場合も当然こういった前歴がある会社ですから。田中金脈ファミリー会社というのはそうなんですよ。したがって、いろいろな観点からこれはやっていかなければならぬ問題だ、こう私は思います。そういう経験を踏まえて、いつごろこれは結論が出る予定になりますか。
  125. 酒井健三

    ○酒井政府委員 先ほど申し上げましたように、私ども、個々の取引とか経理処理、さらには取引に関係した法人等につきましても調査するなど、多角的に十分な検討を進めておりまして、現在まだ完結はいたしておりませんが、できる限り早い時期に処理を行うよう努めてまいりたいというふうに考えております。
  126. 塚田庄平

    ○塚田委員 逆さ合併につきましては、不合理な不自然な行為であって、租税回避を目的とするようなことになりますと、これは否認する、認めないという裁決例があることは事実ですか。これは審判所。
  127. 西内彬

    ○西内説明員 お答え申し上げます。  個々の事案につきまして逐一検討をいたしまして、さような結論が出ましたときに、繰越欠損金を有する会社を存続会社とする合併は不自然、不合理なものとして裁決をした事例は一件のみございます。
  128. 塚田庄平

    ○塚田委員 それは、先ほど私が言った昭和四十七年二月二十一日の例だと思いますね、違いますか。
  129. 西内彬

    ○西内説明員 そうです。
  130. 塚田庄平

    ○塚田委員 そうですね。そのときに不合理、不自然という言葉を使っておりますけれども、不合理、不自然というのはどういう意味ですか。
  131. 西内彬

    ○西内説明員 抽象的に申し上げますと、取引当事者が経済的動機に基づきまして自然合理的に行動した場合には普通とったはずの行為形態であるかどうかという観点で検討いたしましたときに、こういう取引行為は考えられないという場合でございまして、合併につきましても、そういう問題というのは多々あろうかと思います。  そういうことで、いまここで、経済的合理性がない、不自然な合併かどうかということにつきましては、請求人の主張や原処分庁が根拠として提出いたしました事実関係等を十分に基礎として個々のケースごとに判断することになりますので、一義的には申し上げられないというふうに存じます。
  132. 塚田庄平

    ○塚田委員 それは、不服審判所に上がってきたときには確かにそういう考え方で処理をしていくということになりますけれども、第一線の税務署はそれなりにみんな判断をして処理をしなければならぬのですよ。不合理、不自然ということについて一定基準がなければ、統一した処理の仕方というのは少なくとも第一線ではできないのじゃないですか。この点についてどう思いますか。
  133. 大山綱明

    ○大山政府委員 ただいま審判所次長から申し上げましたような裁決の事例を第一線税務署に至りますまで、こういったものが不合理、不自然なものであるということを審判の実例に即しまして私ども流しております。  具体的には、その両会社、合併した会社が実体のある会社であるかどうかでございますとか、合併に合理的な理由があるかどうかですとか、同族的な色彩の強い会社であるかどうか、こういったことが審判事例におきましては判断の基準として述べられておるところでございますが、そういったことを第一線まで周知をいたしておりますし、それからまた、会議などでも私ども説明をいたしましたり、また必要に応じまして第一線から私どものところに照会というような形で上げさせたりいたしております。  そういった努力を私どもとしてもいたしておりまして、確かに仰せのように、何も基準がなければ第一線は動きようがないじゃないかというのはそのとおりでございますが、いまは私が申しましたようなことをやっておりますので、必ずしもそのような状態ではないのではないか。また、必要に応じまして私ども周知の努力はいたしたいと存じますが、さような状況でございます。
  134. 塚田庄平

    ○塚田委員 国税庁の「租税総覧 行政判例編」というのがあります。分厚いものですね。  その中で、特に今回の場合のような合併自体が私に言わせますと非常に不自然、大体おかしいですよ、活動している新潟遊園をペーパーカンパニーである東京ニューハウスが合併する。合併するや否や同じ新潟遊園という名前に変える。これは自然とは言えないですね。どうですか、言えないでしょう。合理的か不合理かということはまたこれから議論しますけれども、自然とは言えないですよ。新潟遊園と東京ニューハウス、ペーパーカンパニーが合併して、そして直ちにまた新潟遊園になる、これは自然と言えますかな。私は不自然と思うのだけれども、どうですか。
  135. 大山綱明

    ○大山政府委員 合併はいろいろな理由があっていたすものでございまして、合併の事由など、私どももいろいろ整理をしておりますが、たとえば管理費用の節減でありますとか事業の補充でありますとか合理化でありますとか、いろいろございます。  確かに、名前を変えるというのは若干不自然さは残るかとも思いますが、ただその名前の点だけを取り上げるのではなく、その合併全体の実態というものでその合併の自然、不自然さというのは判断をいたさなければならないのではないか。  そういう意味におきまして、いま名前だけの点を取り上げまして不自然か自然かと言われましても、合併全体の自然さ、不自然さというふうにとられますとちょっと当惑をいたしますので、その点についてお答えするのはいかがかと思いますが、赤字会社が黒字会社を吸収いたしますというようなことは、赤字会社の方が資産の規模が大きいとかあるいは含み資産の状況が大きいとか、あるいは事業そのものが、たまたまいま赤字であるけれども事業の規模は黒字会社よりも大きいとかいろいろな状況がございますので、そう例のないことではないように思います。
  136. 塚田庄平

    ○塚田委員 だから、私はさっき言ったのですね。  これは審判所に聞くのがいいのですけれども、こういう場合は認められておるのじゃないかと思うのです。たとえば、江戸時代からずっと古いのれんがある、ところが、のれんが古いだけにやはり経営は余りよくない、赤字だ、しかし、こっちの会社はこののれんが欲しいという場合にこっちへ合併してしまうのですね。こういう場合にはある程度経済的な合理性は認める。それから、いま株は一株五百円ですね。五百円株ですね。しかし、古い会社は五十円株を持っているのですね。五十円株だと非常に流通がしやすい。そこでその会社に合併をして、五百円株を発行しなくても五十円株でやっていくというような場合、あるいは会社を上場するという場合になかなかめんどうな手続が必要なのです、だから、赤字であってもすでに上場された会社に合併していく、これも僕は、不自然ではあるけれどもそれなりの経済的合理性があると思うのですよ。  今度の東京ニューハウスと新潟遊園の場合は、そのいずれにも入らないのです。全く課税回避ということしか考えられない。事実またそうなのです。わかるでしょう。さっき私が説明したとおりです。新潟市が金を払うというのに待ってくれ、こう言って、その待ってくれと言う間にいまの合併操作をやって、そして五十六年になると、はい、いただきます、四億と五億、二回に分けてもらっていますね。何のためにわざわざ部長が行って待ってくれと言ったのか。これは、いま言った租税回避行為が簡単にできる方法を前からやっているのです。たとえばいまの軽井沢商事の例がいい例なんですよ。税金のかからないあるいはふところにたんまり入る、そういう方法をその間考えたのですよ。だれが指示したか。一説によると田中何がしがいろいろと指示したという話もあります。これは雑誌ですよ。しかし、そういうことは別にしましても、僕は、この合併というのはまことに不自然な合併だ、租税回避合併だ、こう断定せざるを得ないのですが、国税はどうですか。
  137. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  私どもといたしましては、先ほど来申し上げておりますように、審判所の裁決例などにも照らし合わせまして、いろいろな角度からこの問題を調査いたしているところでございます。  もう少し具体的に申しますと、会社の同族性でございますとか事業活動の状況あるいは資産の保有の状況、従業員の勤務の状況あるいは合併することについての合理的な理由があるかどうかといったような観点から調査をいたしているところでございます。合併するに至る合理的な理由があるかどうかといったようなことも、合併の目的はどうかというような形で関係者に問いただしているところでございます。  その中身について申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じますけれども、本件につきましても、そういった観点からなお調査をいたしまして、課税処理を要するかどうか、今後鋭意検討いたしまして結論を出したい、かように思っているところでございますので、いまここでおかしいかどうかということまで申し上げる段階に至っておらないのでございます。
  138. 塚田庄平

    ○塚田委員 これは、先ほど触れたように、九十六回の議会からずっと、しかも九十六回のときには一月から七月、約半年にわたって議論が重ねられた。そのときあなた方が逃げたのは、三月決算ということと、それは六月にならなければわからない。七月五日というのが一番最後なんですけれども、そのときの質問に対して、私は来たばかりですからよくわかりませんと言わんばかりの返事をしているのです。それはわかります。だけれども、それから一年間たってなおかついまのような答弁では承知できないのですよ。一体何をやっておるのですか。
  139. 大山綱明

    ○大山政府委員 新潟遊園等の調査につきましては、いわゆる逆さ合併の問題だけを調査するということではございません。そのほかに、経費の支出が正常かどうか、それから通常でございますと売り上げを落としていないかどうか、そういったような通常の法人税調査の場合に調査をいたします項目を一わたりは調査をいたすということになります。したがいまして、逆さ合併の問題だけでございましたら、なぜこんなに時間がかかるのかという御疑問もごもっともかとも存じますけれども、通常の法人税の調査でございますので、時間がかかるということは御理解いただきたいと思うのでございます。  通常の場合ですと、申告書が出ましてすぐに調査を始めるということはむしろございませんで、たとえば先ほど来先生指摘の不服審判所の裁決の事例は逆さ合併を否認した事例でございますけれども、あれはたしか四十二年の暮れごろに申告書が出てきて、それを二年後ぐらいに課税処理、否認をしたという事例でございますけれども、そういったような例もございますように、若干時間を要するということは、法人税全体の調査をいたしておりますことから御理解をいただきたいと存ずるのでございます。
  140. 塚田庄平

    ○塚田委員 大山君、それは少し逃げ口上ですよ。審判所の場合は二年と言いますけれども、あれは審判所で争ったんですよ。そして国に勝訴をするまでには、審判所も、逆さ合併の場合にはどうするかという規定が商法には全然ないので、それだけに苦しんだあるいは時間がかかったということはわかるのです。しかし、本件については似たような事例が、すでに軽井沢の事件だってそうだし、これは審判所と違うと思うのです。だから、僕は一年間怠慢だと思うのです。恐らくこれも田中判決との絡み合いがあると私は感ぜざるを得ないのです。いや、首を幾ら振ったって、一年間もぶん投げているのですから。どうなんですか。
  141. 大山綱明

    ○大山政府委員 先ほど逆さ合併を否認した事例を申し上げたのでございますが、正確さのためにちょっと日時を申しますと、四十二年の十一月末に申告書が提出されております。それから私どもが更正処理をいたしましたのは四十四年の十二月でございます。審判所におきます手続は、それから異議申し立てとかいうものが出てまいりまして、その後でございますので、四十四年十二月よりも後の話ということになります。  私が申し上げましたのは、四十二年と四十四年、二年間と申しますのは、私ども課税処理に要した期間ということでございます。もっともこれを申し上げる必要もございません。先ほど申しましたような事情だけを申し上げることでよかったのでございますが、ちょっと記憶にありましたものですからこれまで申し上げましたが、私どもは、裁判とかそういったことは全く念頭に置いておりませんで、ただ、私どもが念頭に置きますのは除斥期間でございます。通常、不正がなければ申告書が提出されましてから三年以内ならばさかのぼって課税ができるという、それを念頭に置いておりますので、それまでにはやる、それまではまだ時間があるという言い方も変でございますけれども、それを念頭に置いてやっておるのでございます。
  142. 塚田庄平

    ○塚田委員 どんなに質問しても守秘義務とか具体的な事例についてはということで逃げておるのですが、ここで審判所ですけれども、さっき言ったとおり合理的な理由についてはなかなかわからぬ。  そこで税理士会、先ほど飯塚さんが来ておりましたけれども、ここではどうしても統一した見解を示してもらいたい。さっき学会の例を出しました。ここで出た議論はそうなんです。不合理、不自然だけではどうにもならないということと、本件の場合は、そのほかに同族会社というおまけがついているのです。同族会社については「法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められるとき」これは否認するということになっているのです。審判所、おたくはもっぱら課税回避のみを目的とする、文言はこうなっていますね。ところが、同族会社のときにはむしろ法人税の負担を不当に軽減する、のみではなくて不当に軽減する。そしてこの判例では、不合理、不自然なものと認められるか否かの基準をつくらなければならぬ、一般にかかる判定基準法律上はなかなかむずかしいけれども、これを具体的に、しかも個別的に一義的に規定しておくということは理想的だ、こう書いてあるのです。これは同族会社の場合ですけれども、同じようなことが言えるんじゃないかと思うのですけれども、率直に言ってどうですか。
  143. 西内彬

    ○西内説明員 お答えします。  不合理、不自然な場合どういう場合かということを統一的に決めておかなければならないのじゃないかというお話でございますけれども、審判所の方としましては、あくまでも個別の事件につきましてそれぞれ各原処分庁から主張を聴取しますし、また各審査請求人からも主張を聞きまして、あくまでも厳密に調査、審理いたしまして結論を出すということを役割りとしておりますので、あらかじめ事件の判断に関する事項について意思統一をしておきまして、それによって個々の事件を判断をするということはいたしがたいというふうに存じます。そういう意味で、大変恐縮でございますが、逆さ合併の裁決例はまだ一件しかございませんので、今後より裁判例その他において積み上げていく性質のものではないだろうか、かように存じます。
  144. 塚田庄平

    ○塚田委員 最後に、大臣、逆さ合併というのはいま言ったような事例が出てきたわけです。  こういうことで、おおむね、田中金脈と言われる会社は、租税回避あるいは利益隠し、こういったことをお互いにやり合う、そしてそこにはペーパーカンパニーというのが公然と浮かび上がってきているという事態がいまの事例なんですけれども、こういった事例が、新潟の人には悪いけれども、私も新潟なんですけれども、特に田中角榮の関係した会社に多いということは、これは国民に大変な不信感を与える。総理であったことはもちろん、大蔵大臣でもあった。それが筆頭株主あるいは半数以上の株を持っておる。あるいは、その後援会の会長であったという人たちが少なくともこういう問題で査察を受ける、あるいは軽井沢のごときは、あれは処置をしたのですね、そういう処置を受けるということについて一体大臣はどういう感想をお持ちですか、最後に聞かしてください。
  145. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、いま御指摘なさった問題は、実態としては個々の納税者の問題でそれが調査されておる段階であるということになれば、やはり私いま大蔵大臣で税務当局を監督する立場にある者が軽々に論評はすべきでないじゃないかというふうに思います。
  146. 塚田庄平

    ○塚田委員 終わろうと思ったのですけれども、論評は要らないです。こういったことが起きておることについての感想、どうもこういうことはまずいな、いろいろと査察を受けたりあるいは処分を受けたりするということは、軽井沢なんか処分を受けたのですから、まずいなという感じを持つか持たないかということなんですよ。論評しろと言っているのではないのです。
  147. 竹下登

    ○竹下国務大臣 やはりまずいなと言うことも論評の中の一つだと思います。
  148. 塚田庄平

    ○塚田委員 それじゃ、いま後ろの方で発言がありましたけれども、竹下大蔵大臣も、こういった事態はまああり得ることだし、まずくないというふうにあるいはお考えかもしれないというふうに世間ではとりますよ。私もそうとります。  これで終わります。
  149. 森美秀

    森委員長 柴田弘君。
  150. 柴田弘

    ○柴田委員 恐らくきょうの質問が私にとりまして今国会最後の質問になる、こういうように思いますので、いま当面するいろいろな課題、かつて本委員会におきましてもいろいろ議論をしてきた問題等を含めまして、大臣にいろいろとお伺いをしていきたいと思うわけであります。  一つは、来年度五十九年度の予算編成の問題について、大臣の基本姿勢という形でお伺いをしていきたい。  この問題につきましても、本委員会においていろいろ言ってきたわけでありますが、とにかく今年度の予算、五十八年度予算というのは、財政再建のめどのないままに、福祉を切り捨て防衛予算の増大のみが前面に押し出される、減税も景気対策も抜け落ちた最悪の予算であった。これは、大臣は、最高の予算である、こういうふうにおっしゃっておられるわけでありますが、私どもはそういうふうに感じております。一般会計だけでも国民総生産の二〇%を占めることを考えれば、この予算の運営の是非によりまして国民生活も経済も多大な影響を受けるわけであります。今日の長期不況もこうした見通しのない消極的な財政運営が影響をしている、こういうふうに考えているわけでございます。  それで、五十九年度の予算編成がスタートするわけでありますが、臨調も言っておりますように、やはり財政再建財政改革の手順と方策というものをきちっと明確にしていく。つまり財政の見通しというのを明確にしていく。そのために、一つは、いま企画庁で策定をいたしております新経済計画、これを急がせるということも大事でありましょう。また、それを下敷きにした財政計画というものを中期試算というものにかわるものとして五十九年度予算審議までにはどうしても提出をしていただきたい。そして財政再建の方途というものをやはり明確にしていかなければいけない。これが私の持論であるわけであります。これは確認の意味でありますが、大臣、ひとつこの辺について御答弁をいただきたい。お願いいたします。
  151. 竹下登

    ○竹下国務大臣 たびたび本委員会においても柴田委員から御議論いただいております。私も柴田委員の持論だと思います。  ただし、私どもはぎりぎり詰めた議論をしたわけではございませんけれども、柴田委員のおっしゃるいわゆる財政再建計画といいますか、これは私は策定することは実際問題として非常にむずかしいと思っております。したがって、私どもとしては、中期財政試算あるいは中期展望、中期試算というような変化があって今日審議の手がかりにしてもらおうということで、いつでもそれをお示ししておるわけでございますが、これからの問答の中でどれだけのものができていくかということになると、柴田委員の持論でおっしゃる財政計画的なものにまで近づいていくということはかなりむずかしい問題じゃないかというふうに私は考えます。  しかしながら、いずれにしても経済審議会で御議論をいただくということになって、これもいわゆる経済の中長期展望というような形のようでございますが、そういうものとの検討とあわせながら、また国会の論議を含む各方面の意見を聞いてこれから具体的に考えていかなければならぬ課題だ。だから、絶えず御叱正いただく、それにわれわれがどれだけ近づけるかという努力もしていくということは、私どもの作業の上にも非常に役に立つと私思いますが、長い間議論しておって、柴田さんのおっしゃっているようなものあるいは念頭に描いていらっしゃるようなもの、そこまでリジッドなものが出せるという自信はない、こういうことであります。
  152. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣、そうむずかしいことを言っているわけではないのですよ。  要するに、たとえばことし予算審議に出していらっしゃつたA、B、Cといいますか、七、五、三といいますか、赤字国債脱却の三とおりのケースがある。これはあくまで試算的なものだったのですね。私は、財政計画ということで非常に厳しい言葉にしたかもしれませんが、完璧なものを出しなさいと言ったって、それは無理です。だから、少なくとも現行施策を一つ基準にして、後年度負担推計というものを、試算的なものでなくそれは展望という形でも結構でしょう、予算審議の一つ資料として、あるいはまた国民にわかりやすく財政再建の方策というのを明示する意味においても、やはり何か取っかかりになるものを出していただきたい、こういうことを申しているわけであって、それは完璧なものを出せと言ったって無理です。  たまたま税調だって中期答申もあるでしょうし、臨調答申もありましたし、そういう点から言えば、いま環境の整備というものは非常になされつつある。しかも、先ほど申しましたように、新しい経済計画も、展望という名前になりますけれども、出る。これは一つのムードといいますか環境というものが出てきた、こういうふうに判断をしておるわけでして、そういった点から言っておるわけでありますから、そんなに突き詰めた、きちっとしたびた一文変わらない将来計画、財政計画を出しなさい、こう言っておるわけではないのですから、その辺はひとつお間違いのないようにお願いいたします。  その辺を含めて、私はあくまで私見、個人的な意見で申し上げるわけでございますが、たまたま新しい経済展望、これは経済審議会で計画期間が八年間というふうに決定をされましたね。だから、これはあくまで私見ですが、そういった財政計画、財政展望というものもそれを下敷きにするというならば、やはり八年ぐらいを考えてみたらどうだ。  それから、赤字国債の脱却年次というものも将来あるわけでありますが、五年だとか七年だとか十年というふうにおっしゃっておりますが、やはり経済展望と整合性を合わせて、赤字国債の脱却の年次というものも八年にせよというわけじゃありませんが、そういう中で考えられてしかるべきじゃないかというふうに、あくまでも個人的な考え方として私は持っておるわけでございます。  大臣の頭の中にはそういう点はどうでありましょうか。前のきちっとしたものでなくという点を含めて、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  153. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きちっとしたものという表現も必ずしも適切でございませんが、本院におけるこの種の議論、公明党の矢野書記長と長い問お互いいたした議論でございます。お互いが最初意識したものがかなり離れたものであった。やはり縮めていく努力はしなければならぬと私思っております。  だから、概念的にかなりきちっとしたものという表現が適切かどうかは別として、いささか計画経済的な計画性というものにまで近づけることがむずかしいという意味で申し上げたわけでございますので、委員の御指摘は私も理解をいたしますが、やはり議論した経過からいっても、できるだけ縮める努力はしなければならぬと思っております。  それからいま一つ、経済審議会で一応のめどを八年、これが、出発年度が違いますから、たまたま私どもが出している七、五、三の七、ケースCでございますか、それに一致するようなことになるわけです。それもいまおっしゃった言葉の中で、言ってみれば勉強の環境が整ったのじゃないか。権威ある審議会でそういうことを言われるということは私どもの念頭にも当然入ることでございますので、それらは十分念頭に置きながらやっていかなければならぬ問題だ。ただ、私どもが作業するに当たっていろいろ議論いたしますのは、必ずしも経済展望が先で財政が後だとかいうようなものでもないと思うのであります。その辺の調和を図りながら、お言葉をかりればそういう環境が整った、それらのもろもろの資料、審議経過等もいただきながら、来年の予算審議のときにまた七、五、三で出すというわけにも率直に言っていきませんので、勉強させていただこうと思っております。
  154. 柴田弘

    ○柴田委員 勉強でなくてひとつ前向きの方向で考えてもらいたい。大臣、よくわかっていらっしゃると思いますので、少なくともことしのような七、五、三の中期試算的なものでなくて、何遍も言いますが、計画というのは言葉が強過ぎるわけでありますが、一つ財政展望、整合性を持ったものを提出していただきたい、このように御要望しておきます。  それで、先回も申し上げましたが、あのときはとっさの質問だったものですから大臣もあれだったのですが、きょうは、きちっと五十九年度予算編成の基本方針についていろいろと申したいと思う。これは私どもの要望です。総体的に申し上げます。  一つは、臨調答申を含め、徹底した行政改革を進めていただきたい。そして安易な増税路線には走らない。大型間接税の導入はすべきではない。財源調達のために大企業優遇の租税特別措置の洗い直し、所得の捕捉率の公平化など税制を是正する形で税収増を図る。この根底は、かねがね申しております増税なき財政再建というものを貫いていただきたい。  それから行政改革についても、省庁の統廃合、行政経費の節減、国鉄再建を初めとする特殊法人の洗い直し、あるいは不要の補助金整理を中心にしていただきたい。それから防衛費の突出は抑えるべきである。教科書有償化あるいは児童手当、年金などの福祉の削減はすべきではない、こういうふうに考えておるわけであります。  それから第三点は、景気に対する財政のあり方、これも見直していただきたい、こう思います。公共事業の問題でありますが、これは四年据え置きであります。このような景気抑制型の財政をとり続けていくと、これは申すまでもなく税収不足、財政をさらに窮迫させるのではないか、こう思います。でありますから、財源難ではありますが、景気の流れを的確に把握した財政運営というものが必要である。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 ただただ財源難だということで見通しのない予算措置をすることは問題がある、こういうふうに思います。  でありますから、後から申しますが、一つ所得税減税を最優先課題にすることと公共事業の拡大投資、建設国債を発行することになるかもしれませんが、これを私はお願いしたい。ある程度景気刺激型の予算編成というものをこの際十分に検討していただかなければならぬときに来ているのではないかというふうに考えます。  以上、事細かに申しましたが、全部答えていただかなくてもいいのですが、ひとつ感じとして御答弁をいただければと思います。
  155. 竹下登

    ○竹下国務大臣 臨調答申に基づく行政改革、これが非常に即効性のある財政に対する寄与度というのは必ずしもないにしても、基本論としては、臨調答申を最大限に尊重して行政改革を進めていかなければならぬ。それから、やはり増税なき財政再建という哲学がありますだけに、安易にいわゆる大型間接税などを念頭に置いてはいけないということ。それから、いわゆる租税特別措置の問題でございますが、これはやはり絶えず見直しという姿勢は持ち続けていかなければならぬ。ただ、五十二年以来ですか、それぞれかなりやってきたなという印象はございますが、しかし、これは絶えず見直しの姿勢は持っていかなければならぬ。そしてまた、所得把握の公平化、いろいろな問題を含めて税制調査会にも特別部会をつくって、いろいろ検討してやろうとおっしゃっておるわけでございますので、そういう基本線は、御主張と私どもの考え方とに大きなずれがあるとは思っておりません。  また、歳出ということになりますと、それはそれぞれのときにおける政策の優先度、政策選択の順位、こういうことになりますが、何分まだ五十九年度はどういう財政状態になるかということがつかめませんので、いわば原則的なことになってしまうわけでございますけれども、聖域というものは、防衛といわず、また文教といわず福祉ともいわず、設けてはならぬ。そして、補助金等すべてについて、臨調の趣旨に沿って検討していかなければならぬという基本的な考えは、これからも持ち続けていかなければならぬと思っております。  さらに、強調なさいましたいわゆる景気刺激型の公共事業の拡大、こういう問題でございますが、私は、最近議論する際に自分の頭の中で整理しながら考えておりますのは、下方修正をしましたものの三・一%の成長率は、五十七年度はまあ確実になったと言えるだろう。そうすると、われわれが現時点において最善最良として御審議いただいて議了していただいた予算、これは結局三・四%成長ということになれば、景気とは、三・四%をより確実にすることが景気を維持するということであって、かつての高度経済成長のように、はるかにそれ以上のものを目指していくということが景気刺激型であると言えるかどうか、その辺まだかなり長い議論が行われる問題じゃないかなと最近私は思っております。私ども、当面の経済対策としては、三・四%をより確実にするという考え方を持っておるわけであります。  そこで、今度は公共事業の拡大の問題でございますが、それを仮にもし建設国債の増発によって賄うとした場合に、私は、本日も金融の議論を堀委員からなさっておったときにも感じておりましたが、実際問題として、長期プライムというのがまさに国債の発行条件に連動して、いわゆる貸す方と借りる方との自由な意思の中でこれが決定する状態でない。ということになると、なおのこと、そういう意味においては大量の国債発行というのが民間金利に影響を与えて、むしろ景気の足を引っ張る状態にもなりかねないということになると、やはりこの公債増発という問題は、これまた安易に念頭に置くべき問題ではないという感じがいたしますので、今後の経済情勢の推移、確かにアメリカもどうなりますか、三%ぐらいになりますか、あるいは西ドイツもイギリスも、まだ日本のインフレ率の倍くらいでございますけれども、インフレが一応鎮静しつつあるというようなことを考えたり原油の値下がりということを考えると、条件はそう悪くもないと思いつつ、現状において確たる見通しのもとに、建設国債の増発による公共事業でもって景気を刺激すべきであるというような議論にいきなりくみする状態にはまだない。  しかし基本的に、お述べになりました臨調あるいはまたそれに伴いますところのもろもろの歳入に対する姿勢、歳出に対する姿勢について、私は、これは同感する部分が非常に多いというふうに考えます。
  156. 柴田弘

    ○柴田委員 所得税減税の問題は後でまた聞きますからあれですが、いまの公共事業の問題に関連をして、いま大臣は、今年度三・四%を達成することであるというような意味のお話でございます。私どもは、雇用の問題あるいはまた最近の中小企業の経営悪化の問題、倒産状況、いろいろ見てみましても、あるいはまた、財政特に税収の問題を考えてまいりましても、やはり適正成長というものがわが国にとって一つあるのではないかという気がしておるのです。  前回も申し上げたと思いますが、日本の経済、いろいろな意味において、やはり三%台の成長というのは私はぎりぎりの成長だと思います。一番の下限といいますか、一番ぎりぎりの線が三%台の成長。だから、少なくともこの日本の経済、潜在成長力等々上手に引っ張って、民間経済の活性化を図っていく。しかも、いま大臣がおっしゃいましたように、今後原油の値下げの問題等々もある。諸般の問題を考慮してまいりますと、少なくとも四%台の成長というものを何とかできないだろうかという考え方を私どもも持っているわけです。  いま、そういった意味でのお話をしたわけでございますので、これは答弁要りませんが、その辺をひとつ御理解をいただいて、五十九年度も企画庁が一つの経済見通し、政府見通しを立てると思いますが、政府見通しを立てる場合にも、大蔵大臣としても、やはり財政が経済に与える影響、景気に与える影響というものもよく御考慮いただいて、ひとつ適切な措置をお願いをしたい、こう考えているわけであります。  それから、次は防衛費の問題ですが、いま聖域化しない、これは中曽根総理大臣も国会答弁でおっしゃっているわけでございますが、どうでしょうか大臣、率直に申しまして、五十九年度予算編成に当たって、財政担当大臣としての大蔵大臣として、いま防衛庁ではいろいろなことが言われております。谷川防衛庁長官、いろいろ言っておるわけでありますが、五十一年十一月に閣議決定をされたGNP一%以内というこの「以内」、これは大蔵大臣としては、五十九年度予算編成に当たっても基本的な姿勢として貫いていかれるお考えであるかどうか。どうでしょうか。
  157. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、昭和五十一年十一月の閣議の「防衛計画の大綱」、そして当面各年度の防衛費関係がGNP一%を超えないことをめどとする、これを変える考えは私どもの方ではございません。  したがって、やはり防衛予算というものは、わが国の防衛力整備ということに当たりましては、「防衛計画の大綱」に従いまして質的充実、向上を図ることに配慮しながら、具体的な実施についてはそのときどきの経済財政事情を勘案して、そしてまた他の施策とのバランスということを図りながら必要にして最小限の経費を計上していくということが、私ども、今日の時点において五十九年度に当たる立場としてはそれを堅持していくべき課題である。ただGNPの問題は、GNP自身がどうなるかという問題もございますが、私のいまの立場としては、まさに昭和五十一年の十一月の閣議決定という線を堅持すべきものであるというふうに考えております。
  158. 柴田弘

    ○柴田委員 防衛庁長官は、中業見積もり、これは昭和六十二年度までに五年間十六兆円を投入する、これの目標達成を一つとして五十九年度概算要求の基礎となる業務計画の策定を指示しているわけであります。新聞等を見てまいりますと、その発言の中に一%以内を一%程度に変更する、こういうような発言もあるようであります。これはあいまいでありまして、「防衛計画の大綱」の見直しに発展して、防衛費の大幅な増加につながるのではないかということを、正直に申しまして危惧せざるを得ないわけであります。  財政当局の立場から、私もいろいろ申しますと、来年度の要調整額が四兆一千六百億と言われておる、約五兆円近い。いままでゼロシーリング、マイナスシーリングで対応してきたわけでありますが、私は、五十九年度以降につきましては、防衛費といえども伸び率を大幅に圧縮せざるを得ない状況ではないかというふうに思います。  さらに、後年度負担の歳出化、これも五十九年度九千九百億円ですか、これは五十八年度の八千五百五十億円に比べて千三百五十億円ふえている。防衛関係費を前年度比四・九%増と膨張せしめる要因になるわけであります。それから、五十七年度の凍結をされました人事院勧告分あるいはまた五十八年度上積み勧告が実施をされますと、急増する退職金と合わせまして一%突破が必至の状況になってくるということを非常に心配をしているわけであります。でありますから、私は、五十九年度はもちろんでありますが、こういった後年度負担の歳出分だけをいろいろ考えてまいりましても、いまここで少なくとも財政再建の期間中は一%以内というのが最大の指針でなければいけない。もっと先までというふうに申し上げたいのですが、とりあえずそういうような考え方も持っておるわけでございます。  そこで、お聞きしたいのは、大蔵省としては、いろいろな防衛庁からの予算要求に対して今後どういった具体的な対応で、このままでいくと一%突破は必至でありますので、どういう態度で防衛庁に対処される方針であるのか、防衛費に対応されるのか。これはひとつ毅然とした姿勢をここで御答弁をいただければと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  159. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは正確に申し上げるということになると、他の施策との調和を図りながら必要最小限の経費を計上して今日までも来ておるわけでございますから、引続き徹底した経費の見直しを行っていかなければならぬ問題だというふうに考えております。  したがって、いまの時点でGNPがどうなるか、あるいは防衛費の規模がどうなるかということは今後の問題でございますので、それを予測してのお答えはむずかしいのでございますが、原則論を申し述べれば、やはり聖域とかいう考えなしに、経費の徹底した見直しをまずやりますよという姿勢で臨まなければならぬというふうに考えております。
  160. 柴田弘

    ○柴田委員 これは主計局にお聞きしたいのですが、いまの防衛庁の防衛費への対応の仕方がこれから大事になってくると思います。一%以内という一つの大きなねらいがあるわけであります。  これは、この間ある新聞に載っておったわけでありますが、私もなるほどなと思いました。これは大蔵省の方針だというふうに書かれている。それが事実かどうかは別としまして、こういう考え方もあるのじゃないかというふうに私は思います。  これは、もうすでに御承知だと思いますね。一つは、財政事情に即応した現実的な防衛力整備を進めるために中期業務見積もりのひとり歩きを避ける。二つ目には、正面装備費の節減合理化のために陸海空の新鋭機器の装備は一世代置きに採用する隔世代方式に踏み切る。第三点目は、防衛予算の硬直化を招いている後年度負担分の大幅圧縮を図る。第四点目には、予算総額の約四五%を占める人件費、糧食費を抑制するために予備自衛官制を充実するなど省力合理化策を検討する。  こういったことが一つの基本線になってくるのじゃないかなという感じが私自身しているわけでありますけれども、どうでしょうか。事務当局として、何かこれを含めたいいお考えがあるのかどうか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  161. 窪田弘

    ○窪田政府委員 来年度の防衛予算について、いま御指摘のあったような問題をいままだ具体的に考えているわけではございませんけれども、中期業務見積もりそのものが防衛庁のいわゆる買い物計画でございますので、防衛庁としては要求の基礎にお使いになると思いますが、私どもとしては、必ずしもそれに拘束されずに、バランスのとれた防衛力の整備ということを考えてまいりたいと思っております。GNPの一%という閣議決定が厳然としてある以上、私どもとしては、それに沿って予算編成を進めていくことは当然だと考えております。
  162. 柴田弘

    ○柴田委員 それで五六中業の見直し、これは、防衛庁の問題でありますからなかなか一概には言えないかもしれませんが、やはり私は一遍見直していかなければいけないと思いますし、それから「防衛計画の大綱」の再検討を含めたよう現実的な防衛予算の編成、こういった問題も絶えず大臣の念頭の中になければいけないと私は考えております。これは答弁は要りません、一つの御意見として申し上げているわけであります。  次は、教科書の有償化の問題で、大臣、これはあなたの政治姿勢ということでちょっとお聞きをしておきますが、憲法二十六条の精神、これは昭和三十八年度から発足をしている。いま国民の間に定着をしているわけであります。しかし、この問題について有償化ということで財政的な見地から検討を大蔵省と文部省とそれから自民党の一部、この間で念書を取り交わされた。そして、どうも有償化の方向へ踏み出されるのではないか、こういう懸念があるわけであります。  私は、この問題は教育行政の根幹にかかわることである、無償制度の存続というのは国民一般の切なる願いではないか、こういうふうに考えております。文部大臣も、国会の答弁の中で再三再四、教科書無償化というのは崩すべきではない、あるいはこれは福祉政策ではなくて憲法の精神から発足したものだ、このように明言をなされているようであります。  ですから、大蔵大臣どうでしょうか。これは憲法の精神がそうである。先ほど申しましたように、国民の切なる願いというふうに私どもは判断をしておるところでありますので、この基本姿勢、果たして来年度有償化されるのかどうか。これは大事なところですので、意見が食い違ってもいいと思いますから、どうぞひとつ存分に御答弁をいただきたいと思います。
  163. 竹下登

    ○竹下国務大臣 先ほど御指摘のありました臨時行政調査会、それから大蔵省で言いますならば財政制度審議会、両方から教科書無償給与制度の見なおしの指摘というものはあるわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  私どもは、その指摘を受けまして、財政資金の効率的な使用等を図るという観点から見直しを主張してきたということは事実でございます。他方また、有償化ということになりますと、これを純粋な教育論からすると、これはやはり強い反対もございます。それもよく承知しております。  だから、したがって国民世論と臨調答申そして文教政策との関連で、大局的見地から今後引き続いてこの問題は検討していく必要があるなというふうに思っております。だから、委員が御指摘なすっておりますように、これは現時点でもう有償化は全くないという御意見に対して、同感ですというわけにはまいらぬという立場でございます。
  164. 柴田弘

    ○柴田委員 無償化を継続しますと明確に御答弁をいただきたかったのですが、それはなかなかむずかしいかもしれませんが、いずれにいたしましても、これは私どもの諸先輩が国会におきまして築き上げた一つの大事な資産だ、私はこういうふうに思います。こういう表現が妥当かどうか知りませんが、財政的な見地から言えば、いわゆる文部省総予算四兆五千数百億円の中で四百六十億円、一%ですね。私は、十分この問題については慎重に取り扱っていっていただかなければいけない、このように思います。無償化、有償化反対、これは一つの大きな国民世論であるということも私は大臣によく知っていただきたい、このように御要望を申し上げる次第であります。この問題については、どうのこうの教育論を展開したりしてもこれ以上進まないと思いますのでやめますが、要望にとどめておきたいと思います。  次は、サミットがいよいよ五月末アメリカのウィリアムズバーグで行われるわけであります。大蔵大臣も行かれると思いますね。世界経済の活性化あるいは国際通貨の安定、いろいろな問題、特に経済問題を中心にして今度は話し合われるのじゃないかと思います。大蔵大臣としては、それは一つ政府の方針というものもあろうかと思いますが、どういったお考え方で、具体的に言えば、何をあなたが議題にしてこのサミットにお臨みになるのか、総論的にひとつまずお聞かせをいただきたいと思います。
  165. 竹下登

    ○竹下国務大臣 このサミットは、本来、世界の直面いたします経済上の諸問題を討議しようという場として歴史的な意義づけがあるわけでございますので、防衛費負担の問題が議論にのるというふうには私は考えておりません。いわゆる個別的な会談等の問題を除いて、全体的な会議といたしましてはそういうことだろうと思っております。したがって、私も先般アメリカのリーガン財務長官と二回お会いをいたしまして、今度は議長国がアメリカでございますのでアメリカの大統領のお考え方というのが議事運営に恐らく反映するであろうというふうに思います。  私どもといたしましては、担当する財政経済の分野から言えば、要するに、まず一つは世界経済のいわゆる再活性化でございますが、幸いにして、日本ほどではないにしても、アメリカ西ドイツ、イギリスというふうな順序で消費者物価の上昇率というのも落ちついてきておりますし、言ってみればインフレのない持続的な経済成長をお互いが自主努力して努めていかなければならぬということを基本的に考え、そしてまた、いま一つはやはり通貨の問題があると思います。  これについては、先般の七カ国蔵相会議でおよそ条件つきであるとはいうものの協調介入というような問題と、そして基本的には各国が調和のとれた経済運営をやろう、要するに、先進国の経済運営において失業率にしても物価にしてもいまのように大変な乖離があるということは、それが通貨の乱高下にも影響するわけでございますだけに、やはり調和のとれた経済運営をやっていこうということを基本に置いて、そしてファンダメンタルズはそうでないのに著しく動きが激しいというような場合は協調介入をやっていこうというようなことは、ある意味においてはサミットに、首脳さんに対してわれわれ大蔵大臣会議が報告するというような感じにとどまるのかな、こういう感じがしております。  次は、やはり南北問題であろうと思っております。これにつきましては、日本の方はODAの倍増とかあるいは国際機関への出資、増資等は忠実にこれにこたえておりますが、歴史的に見れば、あるいは地理的に見れば、アジアをある意味において代表しているということになりますと、世界の人口の五七・六%ですか、六〇%弱の者がアジアにおって、GNPそのものを見れば一億一千八百万のGNPがそれを除くオールアジアのGNPよりもまだ大きいわけでございますので、それらの果たさなければならない役割りというものを認識しながら、先進国全体が南北問題に関心を持つような形の議論は展開していかなければならないのかなというようなことを考えておるところであります。
  166. 柴田弘

    ○柴田委員 それで、一つは世界経済の再活性化ということをいまおっしゃいました。  私は思うわけでありますが、確かに四月五日に経済の総合対策、景気対策を打ち出されました。世界経済の再活性化ということになりますと、わが国としては、やはり世界の一員として、先進諸国の一員として、内需の拡大策といいますか内需主導の経済成長政策というものも一つの大きな命題になってくると私は思います。三十人委員会というのがあります。世界の国際金融専門家の集まりであります。これは大蔵大臣もよく御承知だと思います。その宣言の中で、世界経済に関して、経常収支の黒字が大きくインフレ率が低い国は貯蓄を利用した景気刺激策をとるべきである、こういうふうに強調をしているようであります。つまり、この裏は、公共事業の追加あるいはまた所得税減税、こういった諸問題を実行しろ、こう言っていることじゃないかなというふうに私なりに考えております。  しかも、きょうのある新聞を見てまいりますと、アメリカのサミット検討会討議資料の要旨というのがありまして、この中に何が提言をされておるかといいますと、「日本の政策当局者も、必要な財政赤字削減を遅らせ、所得減税による一時的な財政面からの刺激策をとることは可能である。これは、日本の景気回復を促すだけでなく、貿易摩擦を軽減し、過小評価されている円を是正するためきわめて重要である。」こういうふうに書いてあります。これはきょうのある新聞でありますから確かに間違いないと思いますが、サミットにおいて内需主導成長策、世界の経済の再活性化のためにそういった問題が話し合われれば、やはりサミットにおいてわが国所得税減税についての意思表明というものをされてもいいのではないかなという気が私なりにしております。  それまでにちょっと時間がありますから、四月の総合景気対策の中にも減税というのは一つの検討課題であったと思います。ひとつサミットに向けて、減税といえば担当大臣は大蔵大臣でありますから、やはり真剣に検討していくべき問題ではないか、こんなふうに御提言を申し上げるわけでございますけれども、これはいかがでございましょうか。
  167. 竹下登

    ○竹下国務大臣 わが国の経済の現状といえば、やはり個人消費等に支えられた内需中心型で着実な成長を示して、三・一%は確実となった、こういうことでございますので、いわば外需主導型というふうに受けとめられる環境にはないじゃないかというふうに思います。が、えてして景気刺激の場合、従来のパターンを振り返ってみますと、アメリカ的景気刺激はどちらかといえば減税でございますので、一つはいわば貯蓄性志向が日本よりはるかに低いということもありましょう。それから、公共事業が修理修繕はあってもおおむね社会資本はそれなりに充実しておるということもあるでしょう。日本の場合は、どちらかといえば、従来のパターンはいわば公共事業等を拡大することによって景気刺激の柱にしてきたというようなことも言えると思うのでありますが、現在は、財政状態から見ると、公共事業を刺激するというのも当然内需の拡大につながるわけでございますけれども、それに対応するだけの財政力があるかないかということになると確かに問題点があります。  そこで、減税ということになりますと、やはり何分私ども国会の各党合意、そしてそれに基づく議長見解という金科玉条があるわけでございますから、それに対する手法は、いま税制調査会の方へ御議論をお願いしたばかりでございますので、私どもがそういう国内の世論の動向とそういう方向に対する示唆は仮に話し合いの中でできたといたしましても、希望などは言える環境にはまだない。しかし、財政赤字の問題については、これは日本のみならずアメリカも大変な財政赤字で、それがそれこそアメリカの長期金利をなかなか下げない大きな要因になっておるわけでございますので、財政赤字をふやしてまでもということについては、経済政策の調和の中ではそれぞれの国も日本にそれを求めるというような状態ではないではないかというふうに考えております。
  168. 柴田弘

    ○柴田委員 そうしますと、いま申しましたアメリカのサミット検討会討議資料の要旨の中の所得税減税については余り向こうから言われる懸念はない、こういう判断ですか。  大臣、いま世界経済の回復の問題、それから日本の景気回復の問題、外需主導型でないとおっしゃっていますけれども、いまの傾向を見てまいりますと、輸出はやや上向いている、それから輸入がマイナスですか、やはりこれは外需依存じゃないですか。私は、日本の景気回復を考えた場合、外需依存ということになってくると、やはりこれは市場開放その他、あるいはまた貿易摩擦等々で、経常収支も相当黒字でありますからやはり非難が出てくるんじゃないか、こんなふうな危惧をいたしておりまして、それだから、世界経済活性化のための内需主導のいわゆる経済成長というものを図っていかなければならない。その中の一つとして、消費回復のための所得税減税というものも、世界の先進諸国に日本の努力というものを認めていただく一つの問題になるのじゃないか、こういうことで政府部内でそれまでの間に御検討いただけないか、こういうふうに私は思ってきたわけでありますけれども、私の言っているのはそういう趣旨なんです。  その点と、それから税制調査会のお話も出ましたが、われわれ大蔵委員会でずっと議論していく過程において、だんだん時の推移といいますか状況の変化というものも出てきております。四月二十八日の与野党、これは共産党を除く書記長・幹事長会談で、自民党二階堂幹事長から、規模は相当規模である、それから二つ目の時期は秋口、これは九月ということだそうでありますが結論を出す、それから財源は大型増税を考えない、こういう一歩前進した回答があったやに言われておるわけです。あるいは、いつも大臣は、この国会の論議だとか国会で起こったことをいろいろと税調に報告をして審議の対象にしていただく、こういうことをおっしゃっているわけであります。これが一つ。それからもう一つは、総理がASEANから帰られて、与野党合意を踏まえて誠実に減税を実施する、こういうような発言もあったわけであります。  だから、この際、政府税調というのは総理の諮問機関でありましょうけれども、大蔵大臣からこの税調に対して明確に一兆円ぐらいの減税の規模、それから二つ目には財源は大型間接税の導入など大衆増税によらない、それから、時期は五十八年年末調整までに、これはわれわれの希望でありますが、そうはいかぬかもわかりませんが、いずれにいたしましても、いろいろな変化があったということは事実でありますので、こういった点を踏まえて税調に諮問していただくような取り計らいをしてもいいのではないか、このように考えるわけであります。この辺はどうでしょうか。
  169. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに四月二十五日に開催されました税制調査会、きょうも堀委員の御質疑に対してのときにもお答えしたのでありますが、私は幾らか小心者でございますので、五十八年度は所得減税は見送る、そして五十九年度以降一生懸命に抜本的に考えようという答申をいただいておるだけに、この問題は自分らの守備範囲内においては済んだ問題だと言われると実は困るなと思っておりました。しかし五十九年度以降抜本的にやろうというのを、国会という場所で、各党の話し合いでそういうことがあったということを報告を受けて承知しておるから、じゃ部会を設けてひとつ真剣にやろうやというので引き取っていただいた。実はほっとしたわけです。  したがって、税調に対するわれわれの物の考え方というのは、やはり予見を持ってわれわれが言うべきものでないという姿勢を今日まで貫いておりますから、国会でいまのような議論が行われたことを正確に伝えていくということの中で消化していただける問題であるというふうに期待しながら対応していこう。それで一歩踏み込んで、そういう場合のある種の連絡調整のような形もあるから、各党の専門家かどうか、そんなことは別としまして、そういう協議機関というようなものはいかがなものかなということも私的には党の幹事長さんにも意見として申し上げているという段階でございます。
  170. 柴田弘

    ○柴田委員 所得税減税の問題は、これもまた国民的な要求でありますので、絶えず念頭に置いていらっしゃると思いますが、ひとつ五十八年中の実施ということを特に御要望申し上げたいと思います。  あと、時間がほとんどなくなってきたわけでありますが、金融問題でちょっとと思っていましたが、臨調答申を受けた郵政事業の見直しですね。これは、どうも行政改革大綱の中に含まれないというようなことらしいのでありますが、この問題は後で、後でといっても今国会ありませんが、いずれ改めてしっかりやりたいと思っておりますが、銀行局長臨調答申にありました改善策、金利の一元化の問題、これを制度化しなさい、商品性の見直しの問題、どうですか、どのように評価されていらっしゃいますか。
  171. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 郵貯の問題につきましては、わが国金融全体に大変大きな影響を与えておる問題でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、官業は民業の補完に徹すべきである、それから公的な金融が一国全体の金融の秩序を乱すことがあってはいけないのではないかということで、かねがねいろいろ各方面にお願いしてまいったわけでございますが、今度の臨調答申におきましても私ども意見をかなり取り入れていただいておりまして、いま御指摘のように、金利決定の一元化であるとかあるいは定額郵便貯金の見直し等について具体的な御提言をされております。したがいまして、政府におきましても、政府部内でまたいろいろ意見調整があろうかと思いますけれども臨調の趣旨に沿って所要の措置が講ぜられることを私どもとしては期待いたしておるわけでございます。
  172. 柴田弘

    ○柴田委員 行政管理庁にお聞きいたしますけれども、どうですか、いま私が言いましたように、今度の臨調答申、行政改革大綱の成案の中に郵便貯金事業の見直しについてはない、こういうように私は判断しているのです。それはこれからとおっしゃるかもしれませんが、どうですか。
  173. 副島映一

    ○副島説明員 いわゆる行政改革大綱につきましては、来週の閣議決定を目指しまして目下作業中でございます。郵便貯金の問題も含めまして郵政事業につきましても、もちろん目下関係のところと鋭意調整中であるわけでございますが、本件は答申の中でも難問中の難問でございまして、率直なところ、調整に手間取っておるというのが実情でございます。  ただ、もとより、答申の内容につきましては最大限尊重していくというのが政府の方針でございますので、郵貯問題につきましても、もちろんその答申の趣旨に沿って検討していかなければいかぬというふうに考えておるわけでございますが、他方、郵貯の利用者、国民サイドの利益といったものも考慮すべき重要な事項でございますので、私どもとしては、いずれにしましても、その大綱の立案に当たりましては慎重な態度で臨まなければいけないというふうに思っているわけでございます。したがいまして、いずれにしましても、現在調整中ということでございますので、その内容については言及を差し控えさせていただきたいと思います。
  174. 柴田弘

    ○柴田委員 そうおっしゃるけれども、きのう国会で行政管理庁長官は見直しをやらないとはっきり答弁しているわけです。あなたの立場ではそういう答弁しかできないわけであります。その辺はよく理解いたします。  それで大蔵大臣、どうでしょうね。中曽根さんも、当委員会において調整をする、臨調答申を最大限に尊重する。現在個人預貯金の三〇%、七十六兆円を占める郵貯の肥大化というのはいろいろな面において問題が出てきているわけでありまして、やはり日本経済の発展、自由主義経済を維持していくということであるならば、もちろん一般大衆のそういった郵便貯金を預けている人たちの利益の保護ということも考えなければなりません。あるいは民間金融機関の諸問題、姿勢を正す問題も正さなければいけない、こう思いますが、やはり大局観からいって、せっかくの臨調答申もあり、しかも一昨年、総理の私的諮問機関である郵貯懇からもそのような答申を得ているわけでありますから、やはりそういった問題に担当大臣である大蔵大臣としても真剣に取り組んでいっていただかなければならないと思います。どうも今度の行政改革大綱の中には含まれない見通しが強いわけでありますけれども、今後どういうふうに大蔵大臣として取り組まれるのか、その辺の御見解、御決意をお聞きいたしまして、あと三分になりましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  175. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず一つは、いわゆる金利の問題でございますが、いままでも間々経験いたしました。率直に言って、臨時金利調整法に基づく審議会と郵政審議会と二つございまして、それが結論を出すにも若干のタイムラグがあったり、ずいぶん苦労をいたしました。それで「民間金融機関の預金金利が決定、変更される場合には、郵便貯金金利について、郵政、大蔵両省は十分な意思疎通を図り、整合性を重んじて機動的に対処する」というこの文章も私が党におりますときに書いて、この辺かなと思って三大臣合意でございましたか、つくりました。したがって、この問題についてはまだ種々議論があるところでございますので、私は、整合性を持った機動的な処理ができるような方向でまとめる努力をこれからもしなければいかぬなと思っております。  それから、いわゆる郵貯の肥大化の問題でございますが、確かに、これについてはいろいろな議論もございます。そしてまた臨調さんからは、その一つの理由としては、民間金融機関がもっと勉強せぬからじゃないか、努力が不足しているんじゃないかという御指摘を受けたことも事実であります。さはさりながら、定額貯金というようなものは資金コストから考えて民間で取り扱うことが困難な商品であるというふうにわれわれはいまのところ見ておる。そういういろいろな問題がございます。そしてまた、定額貯金というものが硬直すれば、国債発行あるいは財投原資にいたしましてもそれの金利に連動いたしますから、それが財政負担の増大を招くということにもなります。だから、いわゆる官民分野のバランスということにきちんと心がけてやれといって臨調からも御意見をいただいておるわけでございますから、そういう趣旨に沿って根気強い話し合いをやっていかなければならない課題だというふうに私は考えております。
  176. 柴田弘

    ○柴田委員 大臣、私は昭和五十四年の通常国会の本会議で、この問題は例のグリーンカード制のいわゆる所得税改正の問題に関連をして言いましたよ。大臣は御記憶あるかどうか知りませんが、確かに、いま御答弁があったように、粘り強くその見直し等々についてもやっていくというお話があった。それから四年たっている。まだいまの段階でも同じことなんですね。なかなかむずかしい問題だと思います。だけれども、金利の決定の問題についても郵貯金利がプライスリーダーになっているという状態あるいは三〇%を占めているシェア、いわゆる郵貯の寡占、これはわが国の経済の状況から考えれば一つの問題がある。これは重重御承知だと思いますので、ひとつしっかりとお願いしたい。  御要望いたしまして、時間が参りましたので終わります。
  177. 森美秀

  178. 簑輪幸代

    蓑輪委員 きょうは、婦人が重大な関心を持っている二つの問題について集中的にお伺いしたいと思います。  まず最初に、被扶養者の認定に関する男女差別の問題でございますけれども、昨年もこの件で渡辺大蔵大臣にも伺っておりますが、きょうは少し深めて大臣の前進的答弁をお願いしたいと思っております。  これは、実は国家公務員共済組合法の二条で被扶養者というのが決めてあるわけですが、「主として組合員の収入により生計を維持するものをいう。」というふうに定められております。そして施行令で、被扶養者については「大蔵大臣の定めるところによる。」ということになっておりまして、昭和三十四年に大蔵大臣が定めた運用方針というのがございます。ここで「「主として組合員の収入により生計を維持する者」に該当しないもの」というのはどれかということで「組合員が他の者と共同して同一人を扶養する場合において、社会通念上、その組合員が主たる扶養者でない者」という規定があります。こういうようにややこしいわけですが、結局、夫婦共同扶養、共働きの場合に、どちらが子供を扶養するという形に措置するのかという問題です。  そこで、これを受ける形ですか、昭和四十三年三月に各種共済組合法所管省を含めた社会保険各省連絡協議会というところで「夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について」という文書がございます。この通知が各都道府県民生主管部(局)長あてに通知されておりますが、これがあることによりまして、全国の地方公務員あるいは民間企業で働く婦人にさまざまな差別が行われておりまして、今日もなおこれによって婦人が苦しんでいるという実情がございます。これは大蔵省にも重大な責任がある問題でございまして、大臣の御見解を伺いたいと思っておりますけれども、これに関連する問題について、最初に労働省にお伺いしたいと思っております。  まず横浜市役所におきましては、被扶養者の認定、扶養手当についてですが、内規をもって「社会通念上、子供の主たる扶養者は夫であり、妻の場合は夫の収入の二倍以上の収入があり、夫の年収が百四十万円以下であるときは、これを認める」というふうにされていて、非常に驚くような基準がございました。これはいかにもひどい男女差別であるということで従業員組合が闘いまして、一九八〇年の十二月になってやっと一定の結論に到達いたしました。一、夫婦とも市職員の場合は子供をどちらにつけてもよい。二として、総収入が配偶者を上回る場合には、主たる扶養者として承認する。また一〇%の範囲内で下回る場合も認めるというところまで改善されてまいりましたけれども、男性はこれが無条件で認められておりますが、まだ女性は二年に一回収入調査を受けるという差別が残っておるなど問題があるわけです。一九八一年の十二月になりましてやっと手当と健保の扱いが連動するというところまで前進してまいりました。  ところで、労働省にお伺いするのですけれども、ILO百号条約第一条(a)号では「「報酬」とは、通常の、基本の又は最低の賃金又は給料及び使用者が労働者に対してその雇用を理由として現金又は現物により直接又は間接に支払うすべての追加的給与をいう。」というふうになっております。また(b)号では「「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」とは、性別による差別なしに定められる報酬率をいう。」というふうになっておりますが、こういうところから考えてみますと、当然扶養手当、家族手当、住宅手当等がこの「報酬」のところに入ると思います。同一価値による同一報酬とは、これらの手当なども平等に支給されることにならなければならないというふうに思いますが、この横浜の例のように、夫の収入の二倍以上あるいは三割増し以上でなければ手当を認めないというような見解はこのILOの条約に反するのではないかと思います。したがって、労働基準法の第四条「男女同一賃金の原則」にも反することになるのではないかと考えますが、労働省としてはいかがお考えかお尋ねしたいと思います。
  179. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 一般的に申し上げまして、就業規則とか労働協約で労働の対価として支払うことになっておりますものは、すべて賃金だというふうに私どもは解釈いたしておりますので、一般原則といたしましては、扶養手当につきましても賃金の範疇に入るというふうに解釈いたしております。  先生のおっしゃいましたように、ILOの百号条約あるいは労働基準法の第四条では、女子であることのみを理由として男子と違う扱いをしてはいけないということになっておりますので、一般原則としてはそういうことになるかと存じます。
  180. 簑輪幸代

    蓑輪委員 そこで、婦人が世帯主になることによって扶養手当は認めてやろうという場合があるのですけれども、そういう場合でも、夫の年収の三割増し以上の収入がなければ、健保の適用に当たっては子供を被扶養者と認めないという場合が随所に起こっております。男性の場合は無条件で認定されておりますけれども、女性の場合は、こうした扶養手当が仮に認められた場合でも健康保険の被扶養者と認定されないという形での差別、これはやはり差別的取り扱いとみなされるのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  181. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 やはり一般的な原則で申しますと、女子であるということだけを理由といたしまして扶養手当を支給しないというようなことがあれば問題だと存じます。
  182. 簑輪幸代

    蓑輪委員 扶養手当ではなくて、被扶養者認定がされないということ。
  183. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 その前提になります被扶養者認定につきましても、一般原則といたしましては、女子であるということだけを理由として被扶養者の認定をしない、結果的にその賃金である扶養手当を支払わないということになれば問題はあるかと存じます。
  184. 簑輪幸代

    蓑輪委員 被扶養者認定と扶養手当というものが別々にされているケースもあるし、連動しているケースもあるのですけれども、手当の方は払いつつも健保の方の適用はしないというようなケースがあって、これも非常に問題だというふうに思っているわけなんですね。また後ほど伺いたいと思います。  次に、厚生省に伺うわけですが、こうした差別が起こっておる原因は、先ほど申し上げましたような四十三年の「夫婦共同扶養の場合における被一扶養者の認定について」という通達に基づいて起こってきているわけです。  ここの内容を見ますと、第一に、被扶養者の認定に当たっては、家計の実態、社会通念等を総合的に勘案して定めることが必要であるが、具体的には次により処理するものということで、一、被扶養とすべき者の員数にかかわらず、原則としては夫の被扶養者とすることというふうになっています。つまり、夫婦共働きの場合、まず子供は何が何でも夫の方につけなさいということになっております。そして二番目に、妻の所得が夫の所得を著しく上回る場合その他特別の事情がある場合には妻の被扶養者とすることというふうになっております。  これは、従来この問題点を指摘しましたときには、事務処理上の問題でどちらかにつけなければならないので、そのために一定基準を定めただけであって、差別ではないというような答弁をいただいたこともございますけれども、それでは全く理解できないところです。  子供の扶養義務や親権の定めは父母共同であって、これは両方とも責任を負わなければならないものですけれども、生計を維持する場合においても、夫婦ともに生計を維持しているということがあるわけですから、当然、この被扶養者の認定に当たって、このような夫が原則、妻は例外という定めは問題があるというふうに思いますが、厚生省はどのようにお考えでしょうか。
  185. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  健康保険法におきまして被扶養者という規定がございまして、これの認定に関しまして、先生指摘のような各省連絡協議会における申し合わせがあるわけでございますが、私どもは、まず健保法におきましては被扶養者の範囲というものを、「主トシテ其ノ被保険者ニ依リ生計ヲ維持スルモノ」ということを基本にとらえておるわけでございます。「主トシテ其ノ被保険者ニ依リ生計ヲ維持スルモノ」というものの解釈は本来保険者がやるわけでございますけれども、この保険者が異なる場合の問題でございますので、保険者が積極的に自分の方の被扶養者に取り込もうとしないところからいろいろ問題が出てくるわけでございまして、ここは、主として生計維持をするというものをある程度外形的に決めざるを得ない。  実は、四十三年に通達を決める際もいろいろいきさつがあったようでございますけれども、異なる被用者保険の保険者の間におきましてはお互いに排除し合うというような形で、そこの間に、谷間に落ち込む子供がかわいそうではないかというような問題がございまして、とにかく事務を適切かつ迅速にやるということを主体としてこういう扱いにしたわけでございます。  なお、その場合にも、先ほど夫を原則とするという御指摘がございましたけれども、この取り扱いをよくごらんになっていただくとわかりますが、当該被扶養者に関し扶養手当またはこれに相当する手当の支給が行われている場合には、その支給を受けている者の被扶養者とするということで、これは、そういう生活の実態を前提とした認定をするということを原則に通知を出しているわけでございます。
  186. 簑輪幸代

    蓑輪委員 国が出す法律あるいはその他の通達をも含めての文書の中で、夫と妻という形で差別を認めるようなこういう表現の仕方というのは非常に問題だと思うのです。本人そしてその配偶者という形でやるのがあたりまえであって、夫、妻という区別は、どのような弁解をされようとも、これは全く性による差別を持ち込んでいるというふうに言わなければならないと思います。  そして、先ほど答弁の中で、これは第三ですか、扶養手当を受けた場合にはそれに連動して被扶養者認定がされるという取り決めがあるからよいではないかというふうな御答弁のようですけれども、実はこういう問題についてトラブルがすでに起こっておりまして、こういうケースでやってまいりますと、子供が、一人は夫あるいは一人は妻というふうになる場合もあるわけですね。扶養手当の支給状況によって、それに連動させれば、被扶養者認定が一人ずつ別々になる場合もあり得るわけです。  全石油シェル労働組合の中でこの問題が起こりました。つまり、シェルでは従業員が、一人は夫の方につけているけれども、二番目は妻の方につけたいということで申請をしたところ、そういう分離の申請は認められない、これは厚生省の見解も聞きましたところ大体次のとおりであるというふうな文書を会社が出しております。「原則は被扶養者の人数にかかわらず夫の被扶養者とするのが原則であり、分離扶養は認めないとの原則前提としております。」「健保の被扶養者の範囲と企業の扶養手当の支給基準とは、リンクせず実務処理上の問題はあるにしても、この文言によっても分離扶養を認めるものではないとのことであります。」したがって、「シェル健保としては、分離扶養を認めるべきではないとの健保法の趣旨を、被扶養者の認定の原則として運用しているものであります。」という厚生省の見解も聞きまして、大体こんなものだというふうな会社の答弁が労働組合にされているわけですね。  これを見ますと、御答弁になりましたような実情ではありませんで、つまり、まず原則は夫、そして人数にかかわらず全部夫の方につけるべしということが企業の中で行われているわけです。厚生省としては、こういうふうに分離申請は認めるべきでないというような指導をしておられるのでしょうか。
  187. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のシェルの具体的な事例については私存じ上げませんので、ちょっと判断ができませんけれども、先ほど申し上げましたように、私どもの通知というのは、できるだけ被扶養者の認定を早くしようということがねらいで一応原則を決めたわけでございますけれども、その際に、外形的に非常にわかりやすいものとして扶養手当またはこれに相当するものが支給されている場合ということを書いたわけでございます。それによりがたい場合というものは、それぞれのその通知では、先ほど先生おっしゃいましたように、原則として夫の被扶養者とするという形で書いておるわけでございます。
  188. 簑輪幸代

    蓑輪委員 分離の申請について認められないという指導をしているかどうかということについてはどうでしょうか。
  189. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 扶養手当の実態がそういう形でばらばらに出るというのは、ちょっと私としてもなかなか解せないわけでございます。  つまり、私どもの方としては、主として生計を維持するというところで健保の解釈を考えておりまして、そのメルクマールとして扶養手当というものをベースにしているわけですけれども、それがそういうばらばらの形で出れば、それが果たして主として生計を維持しているものとしてのメルクマールとして妥当かどうか、その辺も考えざるを得ないわけですが、私ども、健保法の運用といたしましては、やはり被保険者があり、そのもとで主たる生計が維持されている被扶養者一体となったものを前提としていろいろ手続がなされておりますし、それから事業主に対しましても種々の手続をお願いしているという全体的な立場から言いましても、これは一体として考えるべきだと思っております。
  190. 簑輪幸代

    蓑輪委員 いまの御答弁はちょっと納得できないです。子供が夫だけで扶養されているのじゃなくて共同で扶養しているという実態があるにもかかわらず、子供は全部夫の方へどどっとつけなければならない、子供が五人あろうが十人あろうがそうだというような発想というのは、およそ現実、夫婦共働き、特に夫も妻もほぼ同水準の収入を維持するケースも最近は枚挙にいとまがないわけですのに、こうした処理はただ事務処理がやりやすいようにというだけではとても納得できません。絶対これは改めてもらわなければ、ますます問題は大きくなり運動は大きくなって、厚生省は困ると思いますよ。  続いて労働省に伺います。  昨年五月八日に出された雇用平等のガイドラインでは、社会通念を理由として異なる取り扱いをすることは妥当性があるとは言えないという判断を示しておりまして、全金プリンスが訴えまして、東京都の職場における男女差別苦情処理委員会勧告では、家族手当は男女の性別にかかわらず従業員としてのみ対応し支給されるべきで、貴社の関係規程で世帯主の用語を用いているのは当を得ていない、家族手当支給認定の際は、それを申請する従業員が対象となる家族を扶養する事実を確認することのみが望ましいという判断を示していますが、男女平等の観点から見ましてこの社会通念というのをどのように考えるべきか、労働省の御見解をお伺いしたいと思います。
  191. 佐藤ギン子

    ○佐藤説明員 先生からお話がございました昨年の五月に男女平等問題専門家会議から出ました報告に言っております趣旨は、企業の雇用管理において一般的に女子の就業実態はこうだとか社会通念として女子はこういうものだというようなことを理由として一律に女子であるということのみを理由として違う取り扱いをすることは望ましいことではないという趣旨でございます。
  192. 簑輪幸代

    蓑輪委員 いまの御答弁によれば、一律に夫を最初に認定する、そして第二段階として妻が出てくるというのは、まさにこれは社会通念というような言葉を使いながら男女差別をする、それは妥当性があるとは言えないということになると思います。  先日労働省の佐藤課長さんは訪米をされたそうですけれども日本の労使関係、女子労働の実態について講演された折に、日本の独自性についていろいろ説明されたけれどもアメリカの理解が得られなかったというふうに新聞で報道されているわけです。こういうことが日米通商摩擦、貿易摩擦のことにまで関連して、非常に日本が恥ずかしい実態だということが明らかになってきているわけです。特に、婦人に扶養権を認める、つまり子供を妻の被扶養者とするという場合には、夫が自分収入の七割以下の収入しかないという証明書あるいは理由書、ひどいところでは民生委員による調査書の提出まで求められているというケースもあります。こうなりますと、人権侵害というふうに言わなければなりません。  考えてみてもください。夫婦がともに働いておって、たとえばともに公務員でも結構ですが、同じように義務もあり責任もあって、そして同じように共済組合の掛金も払い、税金も払って、そのあげくに自分の夫が収入が七割以下でございますという証明書を出さなければ子供は自分の方へつけられないという、そういう妻の気持ちというものは、もうふんまんやる方ないというのが実態です。こうしたことは厚生省の方で出されております事務連絡ということの中に書いてあるわけです。妻が夫の所得を著しく上回る場合とはどういう場合かといったら大体三割増しのときだ、こういうふうに書いてあるわけです。つまり、妻は夫よりも三割以上収入が多くないと夫と同じじゃない、一人前じゃないということですから、こんなばかなことはないわけです。この通達をいつまでも放置しておく、そして事務連絡をいつまでも続けていくということは、全く女性を侮辱するものであって、私は承知することができません。ぜひ厚生省は責任を持って、この通達の廃止、そして新しい男女平等の原則に立った新しい事務的処理の基準を考え出してそれを通知、徹底するようにすべきだと思いますが、もう一度厚生省お願いします。
  193. 伊藤卓雄

    伊藤説明員 お答え申し上げます。  先ほど来繰り返して申し上げておりますように、私どもとしましては、この通達で男女不平等を規定しているつもりは毛頭ございませんで、被扶養者の認定をできるだけ早くして医療給付等を得られるようにというつもりでやっておるわけでございます。  なお、主たる生計維持関係があるというところでは、やはり所得をベースに見ざるを得ないわけでございますし、その場合に、原則をどちらに立てても同じ問題が起きるわけですけれども、仮に三割が妥当かどうかという御議論はあろうかと思いますけれども所得がときどきに変わるということになりますと、そのときそのとき被扶養者があっちについたりこっちについたりということで、これまた事務的に大変でございます。  私どもとしては、画一的ではございますけれども、一応保険者間の調整を図るという意味で各省連絡会議を開きまして、先ほど事務連絡とおっしゃいましたけれども、これも各省との意見交換をして、こういう形で一応各保険者が納得する形でやっておるわけでございまして、決して独断でやっておるわけではございません。  なお、先ほど来事務の話を申し上げましたけれども、これはやはり事務量が非常に多うございますので、ある程度保険者の業務、被保険者の利、不利、その辺を十分考えた上で、なおかつ法律で言う主たる生計維持関係という言葉意味を外れない範囲でやるということを考えざるを得ないものかと思います。  なお、御質問に若干関連するかと思いますけれども先生の御議論を延長いたしますと、妻あるいは夫の希望によってどちらでも選んでいいのではないかというような御趣旨にも聞こえるわけですけれども、こういたしますと、保険が一体として運用していくということはなかなかむずかしい。特に被保険者が自分の有利な方を選ぶという形になってくるわけでございますので、この辺のことも十分考慮しなければならないというふうに考えております。
  194. 簑輪幸代

    蓑輪委員 有利な方を選んだって別にいいじゃありませんか。そういう規定があって男女平等に運用されて、結果としてそうなるなら、それはそれで別に何も問題はないことだと思うのですね。事務処理の方を優先して男女平等の方を犠牲にするというのは全く考え方が転倒しておると思うのです。少々事務がかかったとしても男女平等の観点でやることこそ肝心であって、それが国際社会の通念だと私は思います。それで、いまお答えいただいたものでも、これじゃとても働く婦人は納得しないというふうに強く申し上げておきます。  時間がないので、次に、関連して自治省にも伺いますけれども、こういう女性を差別する考え方というのは自治省の方にもありまして、住民基本台帳の問題などで世帯主の認定基準というのは昭和五十四年度まで、まあ驚くべき内容のものがあるわけです。世帯主の認定の基準はどうかというようなことでいろいろありますが、五として「夫が不具廃疾等のため無収入で、妻が主として世帯の生計を維持している場合は、妻が世帯主」、何たることぞと思いますね。こういうふうにして、妻というのは全く人間扱いされていなくて、夫が不具廃疾のため無収入のときだけ妻が世帯主として出てくる。こういうようなことが何回も追及をされて、五十五年からこの設問と答えが自治省の方では削除されております。しかし、この精神は脈々と生き続けておりまして、そして全国各地でひどい被害が起こっております。自治省の方としては、こういうひどい考え方は間違っているということで反省して、住民基本台帳六法実例集というのからこれを外されたんだと思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  195. 濱田一成

    ○濱田説明員 お答えいたします。  住民基本台帳に基づきます世帯主の認定につきましては、昭和四十二年の住民基本台帳事務処理要領に示されておりますように、主として世帯の生計を維持し、かつその世帯を代表する者であるとの観点から行われるものでございまして、その考え方は変わっておらないわけでございます。  ただいま御指摘がありました昭和四十三年の住民基本台帳関係質疑応答において示されました世帯主の認定に関する具体例につきましては、社会実態の変化等もございますし、また、これは具体的な質疑応答ということでございますので、特定のケースを取り上げたものではございますけれども、誤解のおそれがあるということから、現在では住民基本台帳関係の実例から削除いたしておるわけでございます。  いま、夫が不具廃疾等のために無収入である場合に妻が主として世帯の生計を維持している場合は妻が世帯主という例があるということでございますが、この事例そのものは間違っているわけではございませんが、これを逆に、いわば反対解釈をいたしまして、夫が全く無収入の場合以外は妻を世帯主として認定すべきではない、そういうふうに理解されるおそれがある。そういう誤解が生じないようにという趣旨で、私ども、この実例集から削除いたしたわけでございます。
  196. 簑輪幸代

    蓑輪委員 自治省の方は多少反省して四十三年のこれを改めておられるようですけれども、やはりお役所がこういうことを出したということで、民間の方で逆に使われているわけですね。いまおっしゃるように、心配されたような使われ方がされております。  岩手銀行の菅原さんの裁判などの場合は、先ほどの四十三年の夫婦共同扶養の場合において夫が第一じゃないかというのをこの裁判でも出してきておりますし、それから自治省の方の認定の基準でも、妻というのは夫が不具廃疾のときだけだよというような形で裁判所に麗々しく出されてきているわけですね。こういうことはおよそ予想してないかあるいは間違ってるというふうに自治省の方としてはおっしゃるだろうと思いますが、現実にこのものが存在する限りにおいてずっと生き続けてきているというわけで、やはり新しい基準というもの、男女平等の精神にのっとった新しい基準というものを明確に確立をして、それを全国に周知徹底することがどうしても必要だろうというふうに思います。  関連して、尼崎の市の職員の方で村瀬さんという方の場合も、夫の収入が妻の三割以上少ないということではない、つまり妻と夫と比較した場合妻は夫の一・一七倍ということになって、主たる生計者ではない、それで二カ月前にさかのぼってもらったお金を返せというようなことまで言われているわけです。つまり、奥さんの方が御主人よりも収入が多くて現実も主たる生計維持者でありながら、三割増しじゃないから、一七%増しでしかないからこれは返せというようなことが尼崎で起こっております。  まあ情けないというか信じがたいことが、全国各地でこうやってこのお役所の規定を基準にしながら行われているのが実態なのです。菅原さんの場合は、住民台帳の例を使いながら、こうして不具廃疾のため無収入のときに限るというふうに銀行側は答弁していますし、やはり私は、新たな基準、男女平等の基準を確立して徹底させることをどうしても要求をしておきたいというふうに思います。  大蔵大臣にいろいろと長々お聞きいただいておりましたけれども、ぜひ大臣の御見解もお伺いしたいと思いますが、税法では、これは分離申告も認められておりますし、夫の収入の一三〇%でなければ扶養控除を認めないとかというようなことは全くありません。しかし、手当とそれから健保の被扶養者の場合になりますと、男性でさえあればすんなり通ることが女であるというだけでもって、先ほど申し上げました、いかに自分は夫より収入が多いかという証明書、夫がいかに収入が少ないかという証明書を添付させている。それから、ときには民生委員にそれを証明させる。家庭の内部のことまで第三者に立ち入らせた上でこういうことをやっていくということはどうしても認められません。一二〇%では世帯の生計維持者ではないというふうなことも常識に反します。  そして、先ほど来申し上げておりますように、男性と同額の保険料を納めておって、掛金だけはばっちりと平等に取られておりながら、いざ認定の際には妻だということで差別をされる。余りにもひどいと思います。これは、大臣がこういう基準を定めるというようなことに共済組合の場合なっておりますし、大臣は直接これに関係する部署におられるということになります。諸外国から比較してみても、日本を見詰める場合において、労働条件のことまで、男女差別の実態を批判されているということから見ましても、今後差別撤廃条約を批准をしていかなければならないという状況から見ても、これをこのまま放置しておくことは絶対に許されない。そして竹下大蔵大臣がこの問題について関係省庁を督励して、新たな男女平等の原則に従った被扶養者認定というものをぜひ確立していただきたいと思います。  先日、十三日に婦人の労働者の代表の方々とともに私は塚原政務次官にお目にかかりまして、この扶養家族認定の男女差別是正を求める要請書をお渡しし、お願いを申し上げました。大臣にもくれぐれもよろしくということでお話をしておきましたけれども、政務次官に大変御理解ある御答弁をいただきまして、この解決をしたいというような御趣旨もいただきましたけれども、きょうはぜひ大臣から、直接いま申し上げました諸点についての御感想を含めて、取り組んでいただく御決意など伺っておきたいと思います。
  197. 竹下登

    ○竹下国務大臣 蓑輪委員のおっしゃっている意味は私にも理解できますが、歴史的経過から見れば、恐らく社会通念という問題等が総合的に勘案されているのじゃないかな、そうすると、門札も大体男性の門札が多いので、あれも変えた方がいいのかなという感じもしました。その社会通念の問題と、それで原則として、間々そういう方が多いから原則としてということになっておりますから、男女差別と断定することはいかがかなという気もしますが、私、妻になったことございませんので、その点をもう少し勉強さしてくださいますか。
  198. 簑輪幸代

    蓑輪委員 門札の件は名字だけという家もいっぱいございますし、そのことは、社会通念ということとこの法の運用ということと絡ませることが問題であって、私はそのことを指摘しているのですね。日常生活においてどうこうということをいま取り上げているわけじゃございませんで、この問題について、これが男女差別であるということで婦人労働者の怒りが燃え上がっているということを御理解いただいて、勉強じゃなくてぜひ検討していただくようにお約束いただけませんでしょうか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  199. 竹下登

    ○竹下国務大臣 検討も勉強も違ったことじゃないと思っておりますが、ただ蓑輪さんなどの知識水準に僕が至っていないから、まず自分が勉強して、そして公の検討という意味において勉強と申し上げたのでありますが、勉強と検討とセパレートしてお話ししたわけじゃございません。
  200. 簑輪幸代

    蓑輪委員 そういうふうに残念ながら御理解いただけてないという実態が、いま大臣を初め関係省庁の方々がほとんど男性であるということから御理解がなかなかむずかしいかと思いますけれども、その辺ぜひ前向きに勉強して検討して是正をしていただくように、強く強くお願いしておきたいと思います。  時間がないものですから、続いて次の問題に移りたいと思います。  昨日食品衛生調査会が開かれまして、かねてからアメリカから貿易摩擦の解消策として強く要求されておりました食品添加物の規制緩和要求にこたえて、化学合成品の食品添加物十一品目について、いずれも人の健康を損なうおそれはないところから食品添加物として指定することは差し支えないという答申が出されました。そして同時に、酸化防止剤BHAの規制延期を了承したと報道されております。  これを受けて、厚生省では近々この添加物を指定するというふうにも言われておりますが、今回の措置は国民の命、健康、安全というものをないがしろにして、アメリカの圧力に屈したものであるということで、消費者団体、食品の安全に真剣に取り組んできた方々など、大変厳しい批判の声が上がっているところです。  御存じのとおり、昨年ついにがんが死亡原因のトップとなりまして、中曽根総理もがん対策というようなものを打ち出されております。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕 今日、国民の健康に対する関心が非常に強まってまいりまして、発がん物質についてはいかに微量といえども拒否する姿勢が確立してきていると思います。  こうした中で、五十七年三月の国民生活センターの国民生活動向調査によれば、日常、健康について特に注意している事項の第一位は「食生活に気をつける」というのが五五・八%。五十七年二月のNHKの日本人の食生活調査によれば、「添加物の入っているものを避ける」というのが四三・二%。さらに五十六年八月の東京都の調査では、都内在住五百名の女性に対する調査ですけれども、「食料品に不安を持っている」という回答が八七%に達しているというのが実態です。  私どもの暮らしは加工食品、輸入食品に対する依存度がますます高まるばかりで、特に台所を預かる主婦としても安全性について確信が持てない、不安が大きく広がっているというのが実態です。健康食品とか自然食品とかというものに対する志向も強まっているわけです。食品というのは人の命や健康に不可欠ですが、今日、私たち消費者は商品として入手する以外に手だてはなくて、食品の安全性は絶対に確保されなければならない課題だと思っております。  国会では、安全な食品を求める国民の願いを受けて、昭和四十七年の食品衛生法改正の際の附帯決議において、食品添加物の使用は極力制限する方向で措置することと決議をして、政府のとるべき基本姿勢を明らかにしています。  ところが、今回の答申はこの決議を真っ向から踏みにじるものであって、私はとうてい認められないと思います。昭和四十七年以降今日まで食品添加物は五品目追加し、九品目削除し、十年間に結局四品目減少したという実態ですが、これと照らし合わせて考えてみましても、今回一挙に十一品目という大量認可の異常さは明白でありまして、アメリカの圧力に屈して国民の安全を無視するものと言われるのは当然です。  厚生省にお伺いしますけれども、今回出された答申は一人の反対もなく全員一致で決定されたものかどうか。  それから、昨日の答申が出ましても、そのまま指定しなければならない義務はないだろうと思うのですね。大臣の判断でなさればいいと思いますが、国会決議に照らしてみてどうなのか。特に、この調査会は消費者側委員がいないというふうにもお聞きしましたけれども、一体どうなのか。  それから、大臣が指定する前に特に消費者団体、国民の利用者の意見をじっくり聞いた上で指定を取りやめるべきだと私は考えますけれども、これらの点について、厚生省の御見解をお尋ねしたいと思います。
  201. 藤井正美

    藤井説明員 食品衛生調査会の意見をそのまま行政に反映させるという原則はございません。ただ、いままで食品添加物等につきましては、食品衛生調査会の意見を尊重して行政をやってまいったという過去がございます。  次に、食品添加物の数の問題でございますが、食品添加物は、従来から個別審査という形で、国民の健康と安全、そういったものを第一に、かつ必要性と有用性というものを加えて品目ごとに審議を行ってきたわけでございます。結果的に数の問題は、過去十年間と今回の数との関係はございますが、安全性の評価、こういった観点については、思想並びにやり方といったものは従前と全く変わっておりません。  また、国会決議との関係でございますが、昭和四十七年の国会決議は食品添加物の使用を極力制限するという決議でございます。しかし、その後も必要な品目については追加をしてまいっておりまして、国会決議において必要なもの、安全なものを指定してはならないという決議はなされていないわけでございます。  なお、食品添加物に対するこの国会決議の考え方は必ずしもわが国特有のものではなく、国際的に食品添加物は流通するものでございますから、FAO、WHOという国連の一組織において食品添加物の国際的評価を行っておりますが、その場におきましても、添加物が使われるのが正当と認められる場合は、経済的技術的に達成が不可能な場合に限るというような前提を置きまして、特定の食品に特定の条件のもとに、しかも必要量の最低条件において使うんだというような約束を行っておる次第でございます。(蓑輪委員「全会一致かどうか」と呼ぶ)失礼いたしました。  食品衛生調査会におきましては、学術的な審議を行うことを第一といたしております。したがって、いろいろな方の専門学者の意見が、提供されましたデータについて学術的な解析が行われるわけでございます。しかし、そういったディスカッションの後に結論を求めますので、したがって、今回の食品衛生調査会におきましては、結論、答申と申しますか、これは全会一致でございます。  なお、もう一つ、消費者云々ということがございましたが、食品添加物の安全性というような問題は、現時点においてはきわめて学術的な評価という形になっておりますので、食品衛生調査会には特に消費者の方を導入するというような事態には現在なっておらない次第でございます。
  202. 簑輪幸代

    蓑輪委員 今回の答申に当たって、昭和四十年の七月二十九日の厚生省環境衛生局長通知「食品添加物の指定および使用基準の設定、改正について食品衛生調査会において調査審議を行う際の基準」というのがございますが、これに照らして調査審議をされたのかどうか。それからまた、昭和四十九年八月二十日、食品衛生調査会毒性添加物合同部会の「食品添加物などの遺伝的安全評価の基準」に照らして調査審議をされたのかどうか、その点をお伺いします。
  203. 藤井正美

    藤井説明員 昭和四十年に、食品衛生調査会が添加物を審議する場合の要綱を定めておる次第でございます。  この中身につきましては、主としてどのような資料を出すべきか、そしてどのような評価を行うかというようなことが記載されているわけでございます。しかし、十八年たっております。したがいまして、その間におきます学術の進歩あるいは動物実験のやり方、こういった方面が多大の進歩を遂げているわけでございます。したがいまして、昭和四十年当時の考え方というものが、たとえば慢性毒性というような用語そのものは現在でも生きておりますけれども、慢性毒性試験のやり方は、動物の匹数であるとかあるいは飼育年数であるとか、こういった内容は変わっております。したがいまして、文章としては趣旨は全く生きておりますが、内容的にはさらに時代の進歩に合わせて全般的に厳しいというような状況になっております。同様な意味で四十九年の件も、同じような時代の発展に合わせた修正が調査会の中で了解の上で行われているという現状でございます。
  204. 簑輪幸代

    蓑輪委員 趣旨は生きているということでございますけれども、いつの間にか大事な安全の最低基準というのがうやむやになってしまうということが心配されるわけですね。外圧に屈してどんどん食品添加物の指定がしやすいような基準を設けていくのではないか。そうなればまことにゆゆしいことであって、私どもは不安を一層覚えざるを得ないわけです。むしろ、こうした安全のための最低基準の法的拘束力を明確にするために、法的にも明文化すべきであるというような考え方が、日本弁護士連合会の食品衛生法の改正を求める意見書や東京弁護士会の食品安全基本法の提言などに指摘されております。  今回の食品添加物はFAO、WHOで安全とされているA一ランクだから安全だという考え方も言われておりますけれども、そういうことだとすれば、今後A一ランクで残された食品添加物すべてについてずるずると措定されていくのではないかという心配がされます。一定基準を設けておっても、国際水準にさえかなっておれば構わないというようなことは少し違うのではないか。本来、食生活というのは各国固有の文化の一部でもありまして、気候や風土、食習慣の異なる国々で一律にその基準を適用するというのはやはり適切ではない。摂取量の違いなどもあって、いろいろ具体的に審査をしなければならない。  その際に私どもが大きな不安を覚えるのは、食品添加物の相乗毒性の問題なんですね。一つ一つの食品添加物が安全と言われておりましても、複合使用の際の相乗毒性について全部否定して安全性を保証するというふうには至っていないと聞いております。添加物の相乗毒性については現在未解明というふうにも言われておりますし、添加物は少なければ少ないほどよいというのが化学者の一般的な意見でもあります。  たとえば、清涼飲料水やしょうゆの保存料として使用されているパラオキシ安息香酸エステルという食品添加物は、魚肉や食肉製品保存料のソルビン酸と一緒になるとより毒性が強くなるとか、ハム、ソーセージに使われている保存料ソルビン酸と発色剤の亜硝酸塩が一緒になると突然変異性が出るというようなことが知られております。それから、パンの製造、加工、保存等の添加物は百三十二品にも及んでいるというふうなことを聞きますと、相乗毒性の不安は本当に大きなものがあります。  そのほか、いわゆる天然添加物の安全性についてはほとんどチェックされておらず、野放し状態となっておりますし、さらに食品製造工程における化学物質の混入や農薬の使用、環境汚染、包装材料や容器など、気の遠くなるほど複雑な食品汚染にさらされているわけです。また、輸入食料品については、家畜の成長促進剤、防疫剤、残留農薬などに汚染されていても、これが十分チェックできないという態勢でもございます。  こうした化学物質の使用による食品汚染は、私どもだけではなくて次の世代あるいは次の次の世代にまで悪影響を及ぼすということを考えてみますときに、この相乗毒性についての不安は全く除去することができない段階で、必要だから、有用だからという理由を設けて、こうしてどんどんと指定がふやされていくということは、たまらない気持ちになります。厚生省は、この相乗毒性について安全性が確保されているというふうに明言できますか。
  205. 藤井正美

    藤井説明員 御指摘のように相乗毒性、いわゆるA、B、C、いろいろな組み合わせにおきます毒性というのは、この組み合わせが無限大にある以上実験が不可能だと申し上げてもいいかと思います。したがいまして、化学物質の安全性につきましては、毒性を徹底的に動物実験で調べることによって評価として安全率を設け、そして危害のおそれがないという形で、わが国のみならず世界先進国のこの安全性の評価は今日まで来ているわけでございます。この評価の仕方はやはり時代とともに発展いたしておりますが、相乗毒性をも十分に読み取るという形で評価の化学が発展いたしてきております。  なお、相乗毒性につきましては、医薬品の場合と食品添加物の場合と、考え方がさらに異なってまいります。医薬品の場合には、人間に生理作用を起こすという量を投与いたします。しかしながら食品添加物の場合には、何ら人間に生理作用を起こさない量で、その量で食品に対して有用性があるというようなものが添加物に立候補してくるわけでございます。したがいまして、加工食品に使われましても、その食品添加物は何ら生理作用を生体に及ばしておりませんので、この相乗毒性というような関係についての心配というものはほとんどないというように化学的には言えるかと存じます。
  206. 簑輪幸代

    蓑輪委員 非常に微妙に、ほとんどない、そして化学的には言えるかと思いますというふうにおっしゃいましたけれども、やはりこれは明言できない問題だろうというふうに思うのですね。  私は、こういう現代の化学でわかっている範囲ということと同時に、未知の分野というものをも含めまして、やはり私どもは謙虚でなければならないということを常に思うわけです。そうした中で、やはりこうした大量の指定は大問題だということを指摘しておきます。  次に、酸化防止剤BHAについては、昨年動物実験で発がん性が明らかになって、ことし二月一日禁止ということで告示されましたのに、直前の一月三十一日にこれを延期し、去る十五日再延期が決定されました。非常におかしいなと思いますとともに、やはり安全性より経済を優先させるのだという憤りを覚えざるを得ません。  チクロ事件などで判決が出されておりまして、添加物を指定するためには人の健康を害するおそれがないことが積極的に実証または確認されることが必要であるというふうに判示されております。一たん指定された添加物でも、健康を害するおそれが指摘された限りには、直ちに使用禁止の原則に立ち戻って、安全性が証明されて後、新たに指定すべきであると私は考えます。健康を害する添加物という疑いがあるまま使用が許されているという事態はまことに異常だと思います。有害の証明が出てから禁止というのは安全を投げ捨てるものであって、決して許されない態度だと思いますし、基本的に疑わしきは使用せずの態度をとるべきだというふうに考えますが、この原則に照らしてどうか、お考えを聞かせてください。
  207. 藤井正美

    藤井説明員 原則的な考え方は先生のおっしゃるとおりでございます。そうした考え方は、私どもも従来からそういう思想を持っているわけでございます。  しかし、そういう考え方とは別に、化学の発展という形がより一層安全性の評価ができるようになってくる時期というものがあるわけでございます。発がん性物質というような用語があります。これについては、発がん性がわからないときには、一括していろいろのものを発がん性物質と言ったわけでございます。たとえば、プラスチックのビーズあるいは白墨の粉を膀胱の中に入れますとがんを起こす要因となりますが、白墨の粉はWHOの定義では発がん性物質ということになるわけでございますが、実体上との関係がございませんから人々は笑って済ますわけでございます。  BHA問題につきましては、これはわが国の実験で発がん性物質というような言い方をして正しいものでございますが、しかし現事態においては、古典的な発がん性物質であるというような呼び方をされているわけでございます。と申しますのは、発がん性のメカニズムというものがわかってまいりまして、直接的な刺激を与えるものあるいはそれを育成するもの、こういった形で発がん性物質が二つに分かれてまいっております。そして、育成するような補助作用を持っているものについては、非常に無作用量というものがあるのだというような考え方もなされてきたわけでございます。一方におきまして、危険であって有益でないものは一切排除すべきでございますけれども、公衆衛生上必要な有益性を持っている場合には、単に排除するだけが社会益になるのかどうかというような点、いろいろと慎重に考えるべき点があるのではないかと思われます。たまたまBHAが、酸化防止剤いわゆる過酸化脂質、油焼けというものの有害性を防止するという形で非常に有用性が高い、食品の安全性を守るものだというような観点が、この学術的な論争を大きく招いた要因であるということが言えるかと思います。  そこで、行政上の決定の問題でございますが、この化学的な見方、評価というものが純学術的にいろいろな論争を生み、さらに、その論争の終結を見るためにさらなる膨大な実験をしかも短期間にやろうということが国際的な場で決まりましたときに、私どもは行政決定というよりも、この化学的な行方という方面についてもっと詳細に眺めたいという形で延期をやっているわけでございます。  なお、重要なことは、延期することによって国民に危険性があるかどうかという問題でございますが、この点につきましては、BHAの動物実験の発がん性というようなものを計算いたしますと、人間が五万年ほど生きれるならば現在の摂取量でがんになるだろうというような計算もできるわけでございまして、こうした一、二年の延期というような問題については、健康上の影響というものは全くないと確信している次第でございます。
  208. 簑輪幸代

    蓑輪委員 やはり基本的な考え方が、原則と例外というのがひっくり返っているというふうに私は思うのです。少々おくれても構わないという、一つの物質で考えればそういう人間が信じられないほど長生きしたときでなければ被害はないだろうというようなことをのんびり言っておられますけれども、やはり私は、これはまず最初に禁止をして、それから実験をして無害だということが証明されたらやればよろしい、そういう考え方が原則だと考えますので、ぜひそうしていただくように強く要求をしたいと思います。  私たちは、日々の暮らしの中で添加物入りの食品をいやおうなく食べさせられているわけです。無添加だけでいきたいと言っても、そういう自由は全くない。その中で私たちが生活している以上、国は、国民の命や健康を守るためには、もう断固として毅然とした態度をとるべきだと考えます。その責任は、現在の国民に対してだけでなく、将来の国民にまで及ぶ重大なものであることですし、アメリカの圧力に屈せずに、消費者や国民の声に耳を傾けながら、安全衛生、命と健康を守っていただきたいと思っております。  最後に、大蔵大臣はサミットにもお出かけになるようですし、貿易摩擦問題というのが非常に深いかかわり合いを持っておられますが、この貿易摩擦によって、その解消のために食品添加物が犠牲にされるという大きな非難も上がっておるわけです。私は、国民の健康、安全は何物にもかえがたい最優先課題だと考えておりますが、この貿易摩擦問題と国民の命と健康というものに関しての大臣のお考えを伺って、終わりたいと思います。
  209. 竹下登

    ○竹下国務大臣 サミットは、いわば現在の世界を取り巻く経済情勢、こういう問題が総括的に話し合われる場でございます。しかし、国民の暮らしと命、これは人類全体に共通した課題であると私も思いますので、そういう問題がいわゆる市場開放問題とかそういう中へ入っていくようなことは、これは私のみならず、各国の首脳も同じ意見ではないかなというふうに感じております。
  210. 簑輪幸代

    蓑輪委員 いまそういう御答弁をいただきましたけれども、現実には貿易摩擦解消ということでこういう圧力がどんどんと起こってきておりますので、今後、大臣もぜひ国民の命と健康を守るために御奮闘いただきますようお願いしまして、終わりたいと思います。
  211. 森美秀

    森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十八分散会