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1983-05-17 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十七日(火曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       粕谷  茂君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩川正十郎君    平泉  渉君       平沼 赳夫君    藤井 勝志君       毛利 松平君    森  喜朗君       柳沢 伯夫君    与謝野 馨君       上田 卓三君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    堀  昌雄君       武藤 山治君    柴田  弘君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 棚橋  泰君  委員外出席者         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 五月十七日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     毛利 松平君   熊川 次男君     山崎  拓君 同日  辞任         補欠選任   毛利 松平君     今枝 敬雄君     ───────────── 五月十三日  みなし法人課税制度期限延長に関する請願栗原祐幸紹介)(第三四八六号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願下平正一紹介)(第三四八七号)  税制改革に関する請願伊藤茂紹介)(第三四八八号)  同外一件(下平正一紹介)(第三四八九号)  同(城地豊司紹介)(第三四九〇号)  大型消費税阻止不公平税制是正に関する請願伊藤茂紹介)(第三四九一号)  自動車関係諸税の減免に関する請願山花貞夫紹介)(第三四九二号)  同(湯山勇紹介)(第三四九三号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願奥野誠亮紹介)(第三五二七号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願岡田利春紹介)(第三五五一号)  同(北山愛郎紹介)(第三五五二号)  同(倉石忠雄紹介)(第三五五三号)  同(八田貞義紹介)(第三五五四号) 同月十六日  税制改革に関する請願外二件(上田卓三紹介)(第三六八七号)  同(山本政弘紹介)(第三六八八号)  同(上田卓三紹介)(第三七五二号)  同(山本政弘紹介)(第三七五三号)  同(大原亨紹介)(第三八五四号)  同(木間章紹介)(第三八五五号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願宇野宗佑紹介)(第三七五一号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願枝村要作紹介)(第三八五三号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願高橋辰夫紹介)(第三八五六号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案内閣提出第五三号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  国家公務員及び公共企業体職員に係る共済組合制度統合等を図るための国家公務員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回の改正案趣旨は、「臨時行政調査会の「行政改革に関する第三次答申」の趣旨にのっとり、高齢化社会進展に対処するための公的年金制度の再編・統合の一環として、国家公務員公共企業体職員との共済組合制度統合し、長期給付給付要件等の一致を図るとともに、国鉄共済組合に係る年金の円滑な支払いを確保するための財政調整事業実施等措置を講ずることといたしております。」こういうような趣旨になっておるわけでございます。  これに基づいて、特に国鉄共済年金財源が二千六百億円という膨大な不足を来しておる、この穴埋め対策といいますか財源確保のために国鉄等負担分として約二千億を見込んでおる。ということになりますと約六百億が不足する、こういうことになるわけであります。そういうことから、たとえば連合会から約四百六十五億円ですか、あるいは電電公社の方から約百二十億それから専売から約十五億、こういうような形で赤字共済年金財源不足額を他の共済制度から金を引っ張ってくる、こういうような非常に便宜的な法案になっておるわけであります。  私は、本来ならばこの不足額を国が負担するということがあるべき姿ではないか、こういうように思っておりますし、また、よしんば国の方で財源がない、こういうことになれば、こういう統合ということは先へ延ばすというのですか、その間は国の方で何らかの手だてをつくるということは当然のことではないか。あるいは、なぜここまで来るまで放置しておったかという政府の責任をわれわれは問いたださなければならぬ、こういうように思っておるわけでございまして、そういう諸点についてこれから時間の許す限り御質問を申し上げたい、このように思っておるわけでございます。  さて私は、特に日本年金制度そのものについてひとつ歴史的にさかのぼって本来あるべき姿というものを問いただしたい、このように考えておるわけでございます。日本年金制度基本となるものは、やはり先進諸外国のいろいろな仕組み等を研究されて、それをより日本的なものに、こういうことから発足したのではなかろうか、こう思うわけでございます。そして、それが今日に至っておるということであるわけでありますが、私の感じますのは、この年金制度が、歴代の為政者といいますか、そういう者が、要するに金づくりといいますか、それが年金のために年金制度があるとか、あるいは労働者のために年金制度があるというのじゃなしに、何か国の他の目的で、その財源対策、こういうことで年金制度がつくられたような気がしてならないわけであります。その点について、大蔵当局並びに厚生省の方もお見えでございますのでひとつお答えいただきたい、このように思います。
  4. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 日本年金制度生い立ちでございますが、これはいろいろなソースがあるかと思います。  年金の一番原初的な姿というのはいわゆる恩給なんだと思いますけれども、その恩給の形をとる年金というのは明治の末ごろから労働者のためにできておるようでございます。その前に、軍人ですとかそれから官吏公務死亡なんかについて年金ができたというのが原初的な形態のようでございますが、いずれにしろ、大正十二年に恩給法に統一されてからというものは、労働者雇用人の人も官吏の人もそういった形で年金というものが受けられるような姿になってきておる。片方一般労働者対象とする年金制度は、労働者年金保険制度として昭和十七年に発足をいたしまして、その創設の沿革的な理由としては、当時の時局下における生産力増強国民生活安定等要請があったというようなことが言われております。  この辺のところは物の見方はいろいろでございまして、片方では、その年金制度をつくることによって、年金資金戦時財政といいますかそういったものに利用しようという考え方があったのじゃないかという、そういう御意見も確かにあるかと思いますけれども、素直に申し上げれば、そういった戦時下労働生産性増強とそれから国民生活の安定といったことが、年金をつくりましたときの主たる理由というようなことで説明をされているようでございます。
  5. 山口剛彦

    山口説明員 公的年金制度の沿革は、ただいま御説明があったとおりでございますけれども、年金制度は、国民皆さんが老齢あるいは障害、遺族といった、個々の力だけではなかなか事前に十分な備えをしておくことができない、そういう事態になったときに、社会的な仕組みの中でその不安を解消していこうということを目標として、労働者国民皆さん生活の安定を図るという目的公的年金制度が創設されたことは間違いないことだと思います。私どもも、その後の運営に当たりましても、そういう本旨に基づきまして運営をしてきたつもりでございますし、今後とも、そういった制度趣旨にのっとり、また国民皆さん年金制度に対する期待も大きいわけでございますので、そういう期待を裏切らないような年金制度にしていきたいということで、今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  6. 上田卓三

    上田(卓)委員 いまお答えいただいたわけですが、幾ら理屈を並べましても、この公的年金、とりわけその中心でありますところの厚生年金が、戦時下での労働生産性国民生活の安定、こういう理由を並べようとも、実質的にはやはり戦費調達といいますか、そのために労働者からお金を巻き上げる、こういうことは変わりがないのではないか、こういうように思っておるわけであります。特に一九四二年から、軍需工場に働く労働者に対して、何と賃金の一一%近い掛金を徴収するというような事例にもそのことが端的にあらわれておるのではないか、こういうように思っておるわけでございます。  特に、これは大蔵大臣にお答えいただきたいわけでありますが、当時日本平均寿命は約五十歳であったようでございますが、何と、この支給開始年齢が五十歳からである。こういうことで、五十までしか生きられない平均的な寿命の人が、五十になったら亡くなる、それから開始されるということは、もらえない、結局掛け捨てということにならざるを得ないわけでありまして、それは平均寿命でありますから、当然、中には六十も七十までも生きられる方もあろうかと思いますが、もともとこういうような制度発足自体が非常に欺瞞的といいますかあるいは詐欺的といいますか、私は、やはり無理があったのではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。  そういう意味で、先ほど私が申し上げたように、働く労働者のためにつくられたというよりも、国家戦時下において戦費調達のために、金を集めるためにつくられた制度、こういうように私が極言しているのはそういう意味であるわけでございまして、そういう点について、大蔵大臣にしかと答弁をしていただきたい、このように思います。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 いま、確かにおっしゃいましたように、「厚生年金保険二十五年史」でございますか、これに書いてありますのに、「このような社会保険制度の急速な発展は、満州事変に続く日華事変進展に伴い、生産力増強国民生活の安定が高度国防国家体制確立の見地から強く要請されるに至ったことに応ずるものであった。」こういうことが書いてあります。「そうして、一般労働者対象とする労働者年金保険制度も、この時局下要請にこたえるものとしてその後間もなく実現するに至った。」ということでございます。私は、沿革的には上田委員指摘のことは、時代の大変な変化がございますので私も否定するものではございません。  ただ、私ども考えますと、当時昭和二十年からが五十歳、男性の場合五十歳になっておりますから、いま一九四二年とおっしゃいましたから、恐らくその当時は四十八歳くらいじゃないかと思います。が、いま男性で七十四歳、女性で七十九歳ということになりますが、これは平均寿命の問題でございますので、だから、高齢化社会が成熟するに従って、やはり年金というものが質的な変化も遂げてきておるのではないかという感じが率直にいたしております。したがって、この平均寿命自身からずっと世界百六十六カ国の傾向を見ますと、やはり高齢化社会のところほど年金制度は充実しておる、そういう質的変化もあって現存しているのじゃないかという感じがいたしますので、現実人口構造なりそういうものを踏まえて、国民の不安を除去する形での、好ましいことならば青写真が描かれて、そして、それに向かってもろもろの統合作業が行われていく。したがってこのたびは、委員も御指摘のとおり、まさにその第一歩にすぎない、こういう認識でございます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 いま竹下大蔵大臣から、歴史的な経緯から見ても、この公的年金労働者のために直接的な目的でつくられたというよりも、戦時下戦費調達のために設けられたということは認めざるを得ない、こういうお話をいただいたわけでありますから、宍倉主計局次長は、そういういろいろな意見があるとか、あいまいなことを言わずに、そういう歴史的な事実関係についてははっきりとお認めになることが正しいのではないか、私はこういうように思っておりますので、今後の答弁については、その点は十分しかと腹を決めて、自信を持ってお答えいただきたいと思います。  それから、いわゆる労働者のためにつくられた公的年金じゃなしに、政府のためにつくられた、そのことが国民のためになるんだという一つ為政者考え方があろうと思いますが、あの第二次世界大戦自身国民の利益にならずに世界の多くの国民方々に迷惑をかけたという意味では、やはり正義の戦争じゃなしに悪の戦いであったということははっきりしておるのではないか、こういうふうに思うわけであります。先ほど私は、労働者ペテンにかける欺瞞的なものであるというふうに申し上げたわけでありますが、平均寿命が五十歳そこそこでありながら受給開始が五十歳という——次長は首を振っておられるようですが、その点答えてください。どうぞ。
  9. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 委員お話は別に異議があるわけではありませんが、平均寿命は当時は五十歳をちょっと切っていたころで、支給開始年齢は当初五十五歳だったようでございます。いま委員は五十歳とおっしゃいましたので、五歳違うのかなという感じでございます。
  10. 上田卓三

    上田(卓)委員 私自身もしかとその点については存じてないわけでありますが、五十歳平均で五十五歳からもらえる、こういうことであったとしても、この年金受給者に対して配慮したものであるかということになると、やはり私は五十歩百歩の感が否めない。その点については十分理解をされることが正しいのではないか、こういうふうに思っておるわけです。  私がここで言いたいことは、日本公的年金労働者のためにつくられたのではない、本当に欺瞞的な性格を初めから持っておったんだということを強調するために、また、そのことを訴えたかったために申し上げておるということを理解していただきたいと思っておるわけです。そういう欺瞞的なものが、戦後から三十八年を経過しようとしているわけでありますが、その間一貫して、労働者のためというよりも政府のためといいますか、そういう基本姿勢が貫かれておるのではないか、このように私は考えておるわけであります。  特に掛金については、財投で資金として運用される場合が多いわけでありますが、それであれば、労働者掛金であるわけでありますから、老後になってそれを生活の糧にするということでありますから、快適な老後を保障するという意味からも、これらの掛金が、たとえば医療の充実とか住宅の提供など、年金受給者福祉といいますか医療というものに、生活にもろに直結するものでなければならぬと思うのですが、そういう部分が全く少なくて、何か大企業本位労働者不在運用になっておるのではないか、こういうように思わざるを得ないわけであります。  特に、いま物価スライドについても、実際にインフレをカバーするものには決してなってないというようなこととか、そういう観点から、利回りについても非常に低い利回りであるということから、結局は年金自身財源がパンクしてしまう、不足してしまうというような今日の現状はそういうところから来ているんじゃないか、私はこのように考えるわけでありますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  11. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 委員指摘お話は、メーンは厚生年金お話だと思います。  厚生年金生い立ち、一番初めできたときのいきさつというのは、いま委員が御指摘になられたようないろいろな事情があったかと存じます。ただその後、厚生年金を初めといたしまして、国民年金という思想で日本年金制度は、国民年金法もできまして、これから日本が遭遇しなければならない、非常に世界でも例を見ません高齢化社会を迎えまして、今後の所得保障基盤となるようなお金年金として支給していく制度になっているわけでございますから、生い立ちのことと、現在厚生年金国民年金国民皆さん方期待され、また政府としてもこれに取り組んでいる姿勢というのは、相当違ってきているかと思います。  そこで、国民年金なり厚生年金なりの資金でございますが、これを国民生活に密着したような使い方をしたらどうか、こういうことでございますが、御承知のように、三分の一は還元融資ということで、年金福祉事業団など直接本当に関係あるところに還元しているわけでございまして、その他の部分につきましても、住宅でございますとか生活環境整備厚生福祉、文教、中小企業、農林といったような国民生活に密接に関係ある使途に使うということで、その辺のところは、毎年度資金運用部で統一的な資金管理を行う際におきまして、よく気をつけて整理をされているというのが現実でございます。
  12. 上田卓三

    上田(卓)委員 私が申し上げたいのは、今日の時点でも、公的年金とりわけその中心厚生年金発足した当時の物の考え方が依然として戦後も今日に至るまで引き続いている。私は、そういう基本的なものを明らかにしていかなければならぬだろう、こういうように思っておるわけであります。そういう点で、特に共済年金の問題について深めていく中でその問題を明らかにしていきたい、このように思っておるわけであります。  特に共済年金は、財源のわずか一五・八五%ですか、これが国庫負担ということになっておるわけでありまして、それを除くすべての金額が労使の折半によって成り立っているということは御承知のことだろうというように思うわけであります。そういう点で、一つ会社にたとえれば、その会社の半分の株主が労働者と言っても過言ではなかろう、こういうように思うわけであります。  今回の改正案といいますか、改悪案とわれわれは考えざるを得ないわけでありますが、本当に密室のような状況共済年金基本問題研究会意見がまとめられるとか、あるいは公務員共済組合審議会においては、労働者側代表全員反対といいますか意見がある中で、あるいはまた、専門家の中でも、それに対して労働者側意見に耳を傾けるべきではないか、こういうような状況がある中で、やはり一切のこの審議会での経過というものを無視して今回のような形になったということは、非常にわれわれとして、そのやり方自身労働者の立場に立った経緯でない、中身だけじゃなしにその経緯自身にもそういう形であらわれているのではないか、このように私は考えるわけでありますが、それについてどのようにお考えでしょうか。
  13. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 委員指摘のとおり、年金というのは労使それから中立という三者構成で御議論が進められるのが通常でございまして、共済年金制度基本問題研究会では、労働団体からも代表の方にお出ましいただきまして、二年間にわたって議論を尽くしてまいりました。でございますから、労働側の御意見というのも十分そこには反映されておったと思いますし、それから労働側方々も、その当該委員の方を通じて常時研究会の模様につきましては御報告があったように承っております。  それから国共審のことでございますが、国共審では確かに、先日も申し上げましたように、まとめの段階に入りましていろいろ議論のもつれがあったことは事実でございますが、最終的には、労働側委員の方全体を含めまして国共審からの答申をちょうだいいたしているわけでございます。
  14. 上田卓三

    上田(卓)委員 いまお答えいただいたわけでありますが、先般もわが党の理事野口議員からも話があったと思うわけですけれども、本当に一方的なといいますか見切り発車的といいますか、労働者の側の意見がありながらそういうものに耳にふたをして見切り発車的にこういう措置になったということは残念だと思っておるし、絶対認めることはできないとわれわれは考えざるを得ないわけであります。  そういう経過自身も問題があるわけでありますが、それではお聞きいたしますが、現在八本の公的年金制度がありますね。それでは、仕組みとしていわゆる成熟した段階で完全に支給できる制度が実際制度として存在しておるのか、現実にそれがあるのかどうかということを非常に疑わしいと私考えざるを得ないわけでありますが、その点についてはどうですか。
  15. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 完全に成熟した場合におきます負担給付関係におきまして、両方のバランスがとれている制度というものがいま八つある中であるかというお尋ねかと思います。調べても、なかなか全体の先行きを計算いたしますのは大変むずかしゅうございますが、負担水準がどの辺のところに行きましたならばすでに負担の限界になるのかというところが、なかなか実は議論のあるところでございます。  一般的に言いますと、厚年ベース、つまり本俸とその他の手当とを含めました月収ベースに対しまして、二割から二割五分くらいのところあたりへ来るとそろそろむずかしくなってくるのかな、三割くらいのところへ来るとちょっとむずかしいんじゃないんだろうかというのが、これも定かではございませんけれども、一般的に専門家方々が御議論なさる場合にはその基盤になっているわけでございますが、その辺のところを将来超えてしまうことになるんじゃないんだろうかというのは、ほとんど超えてしまうことになるんじゃないかと思います。ただ、一番長もちするかもしれないということが考えられますのは、いまの財政状況からしますと、私学共済が一番長もちをしそうでございますけれども、これとても、ずいぶん先になりますれば、あるいは負担給付関係がアンバランスになってくるということはあり得るかもしれません。
  16. 上田卓三

    上田(卓)委員 私は、私学共済自身がそういう状況であるということを考えて、やはり公的年金制度発足自身に問題があったように、その後一貫してそういう精神が貫かれていると言ってもいいのではないか。そういう意味で、成熟した段階で完全に支給できる状況にもともとない、こう言わざるを得ないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  と申し上げるのは、専門家方々の中からでも、そういう状況というのはいわゆる国家的詐欺だ、こういうような言葉を言われる方もあるわけでございますが、いずれにしても、今日まで置かれてきたところの積立方式の根拠といいますか、そういうものは、どの年金制度もその財源率の見直しのためにそれぞれ五年間ごとに財源率の再計算を行う、こういうことになっておるにもかかわらず、現実問題として、年金制度がだんだん破産状況といいますか回っていかない、こういう状況になってきておるのではないか、私はこういうふうに思うのです。そのことは、やはり何を言いましても、掛金資金を何かの目的のために低利で運用されていくというところにわれわれとして解せないものがあるだけではなしに、戦後の一貫したインフレ政策というのですか、そういう状況の中でスライド制度があるわけですけれども、それまた三年間ストップするというようなこともこれあり、現実問題としてこのインフレにスライドが追いつかない、こういうことの中から破産してきておるのではないか、私はこう言わざるを得ないと思うのです。  そういう意味で、原因を追及していけば、まず一番大事なことは、インフレがないことが望ましいわけでありますが、どれだけインフレになっても実際の年金が減らないという状況を保障するとか、あるいは運用資金利回りでそういうものがカバーできるとか、あるいはどうしてもそのことができないという場合政府の補助金を出すとか、そういう形で補完されない限り破綻していくのは当然のことではないか、私はこういうふうに思わざるを得ないわけでありますが、そういう点について、大蔵大臣はいままでそのことに対してどのようにしてきたのか、五年間五年間でそういうことが見直されているにもかかわらず、いまある八本立てのそういう年金制度がこういうような形でだんだんお先真っ暗になっていくというのはそこに大きな原因があるのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか、大臣、お答えください。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 年金というのは、いま八本とおっしゃいました、その中にもそれぞれ歴史的淵源がございますので、それによって成熟度とかという問題が相違しておることも事実であります。そうして、総体的に申し上げますならば、いまおっしゃいました保険数理学というものの一番単純なことを言いますと、掛けた期間と給付を受ける期間とが同一であって、しかもその運用利回りインフレ率がとんとんであるという場合、単純に事務費とか共通経費とかを別にした場合にそれが成り立っていくという一つの原則があります。  しかしながら、戦後今日まで見ましても、確かに日本の国が、別にインフレ政策をとったということは別として、経済で言えばケインズ理論でございましょうか、当初は、いわゆる一九四五年から五十五年までは、あるいは私は政策インフレとは申しませんが、結果的な政策インフレの中でそういうバランスが大きく崩れてきておることは事実であります。その後の物価上昇率等から見ましても、それはやはり御指摘は私は当たっておると思っております。  そういう経過の中で、言ってみれば年金財政についての根本的見直しというのが、国民各界各層はもとより、また保険数理学上からも必要になったという国会等の御議論を踏まえて年金の一元統合、こういうような一つの方向だけがいま示されて、どういう仕組みにしていくかという具体的な問題は五十八年度中にこれを組み立てていこう、こういうことであります。  したがって、その経過の中においては、それを補完するものとして、いまおっしゃいました、いわば負担する方も国民であり受益者も国民であるといたしましても、財政が補助金等の名前において出動してそれなりに均てん化してきたということもないわけじゃございません。幸い、最近で見ますと、言ってみれば、給与水準がこの二十五年間で学卒初任給をとってみればおおむね十三倍、そして物価の上昇率が四・三倍、こういうような形で徐々には落ちついてきた。そのインフレ率と賃金上昇率等の論理から新たないろいろな議論をすれば、幸いに世界一と言ってもいいインフレ率が低い日本の経済状態でございますので、先行き国民の皆様方に安心して年金制度というものを見守っていただける環境は熟しておるんじゃないか。だから、こういう御議論を通じながら、そこに一つの先明かりのある結論を出していかなければならぬ課題だ。  やはり私は、福祉政策全体を見ますときに、いわば高齢化社会に対応する年金問題というのが充実した国ほど、言ってみれば福祉国家という名称をちょうだいできるものじゃないかという気がしておりますので、御趣旨の御議論等を参考にしながらやっていかなければならぬ。その段階においては財政の出動等も、今日までもありましたが、皆無の問題ではない。しかし、できるだけ各年金の整合性の中でこれからの青写真をつくって進めていかなければならないではなかろうか。それには、御指摘のようなあるいは御鞭撻いただくような意見をわれわれが絶えず体しながら、これが成案を得るための努力を重ねていかなければならない課題だというふうな認識をいたしております。
  18. 上田卓三

    上田(卓)委員 どうもわからぬのですがね。大臣、それじゃ年金財源財源不足ですか、これはなぜ生じたのですか。何が原因ですか。答えてください。
  19. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 年金が、いま委員指摘のように将来その負担給付の間でバランスがとれないことになって、それでみんな財政的におかしい状況になるんじゃないかという基本は、年金の設計をいたしますときに負担給付のバランスがとれない設計になっておる、端的に言えばそういうことだと思います。
  20. 上田卓三

    上田(卓)委員 あれですか、負担給付のバランスといいますか、それだけで労働者は納得しますか。それじや、初めからそれが問題であったということになるし、何のために五年ごとの見直しがなされておるのかということにもなってくるのじゃないですか。それじゃ答弁になっていないですよ。
  21. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 確かに五年ごとに見直しをしているわけでございます。  それで、五年ごとに見直しをいたしまして、五年間のバランスが合うようにし、また同時に、五年先から先の十年先、十五年先というところも展望はいたしているわけでございますが、先ほど私申し上げましたように、どのくらいまでが負担の限界かという議論につきましては、これもはっきりしたものはございませんけれども、将来その負担の限界というものがあるとすれば、先ほど申し上げましたように、大体千分の二百五十ぐらいのところまでが負担としては限界なのかなというようなことで物を考えてみますと、みんな大体昭和八十年ごろにはどうも勘定が合わなくなる、こういうことになるわけでございますが、その負担の限界というものを一応将来的、昭和八十年代に入りましてから以降の話はおきまして、それ以前の段階においてはバランスはするわけでございます。でございますから、二十一世紀に入った先の先々のことまで考えた場合には負担給付の間の設計がうまくいっていない、こういうことを申し上げているわけでございます。
  22. 上田卓三

    上田(卓)委員 負担給付のバランス、結論から言えばそういうことになるのかもわからないわけですけれども、そんなところに一般的に責任を転嫁してはだめだと思うのですよ。先ほどから私が申し上げているように、掛金運用に大きな問題がありはしなかっただろうか、そこに改善の余地はなかっただろうか、あるいは、結果的にという大臣のお言葉ですが、やはり戦後一貫したインフレといいますか、そういうものの犠牲になっているということは事実じゃないですか。そうじゃないですか。  それだけが原因じゃありませんよ。たとえば国鉄共済年金の赤字というものを個別的にとらえるならば、それはもうはっきり申し上げて、それにかてて加えて、たとえば戦時中に無謀な戦争をしたがために新しく満鉄というものが創設されて、そこに大量に職員が採用されるという状況があったことも事実だろうし、また、戦後その満鉄の赤字を全部国鉄が引き受けるというようなことにもなっておるし、戦後のそういう引き揚げ者が大量に国鉄に入ってきたということも当然あるだろうし、また、その後のそういう合理化といいますか、あるいは人減らしといいますか、あるいは新しい労働者が入ってこないということで年齢構成にゆがみが出てくるとか、国鉄は国鉄のそういう特殊な事情というものが私は当然あっただろうと思うわけでありますが、そのことに対して当然政府が国鉄に対してしかるべき手当てをしてこなかったというところに、やはり大きな原因というものも見出さなければならぬだろう。国鉄だけじゃなしに、その他の公的年金についてもそのことはそれなりの個別的な理由があるということは当然でありますが、そういう点について政府の責任といいますか、無責任さということから、やはり見通しを欠いたというのですか、そういうことから今日の年金の破綻というものが出てきているんじゃないですか。答えてください。
  23. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 国鉄の共済制度が何でこんなに悪くなったのか、こういうことでございます。  基本的に申しますと、国鉄の場合でも給付負担関係が長期的に安定したものになっておらなかったということがあると思いますが、もっと直接的には、国鉄の事業そのものに端的にあらわれておりますように、輸送構造が変わってまいりまして、国鉄の事業そのものが交通産業の中では衰退化し、それに伴って職員数が減り、同時に、職員の構成年齢も高いところになってしまうというようなことになってきているのが原因であろうかと思います。こうしたことは、国鉄のように小単位で年金をつくっております場合には間々ありがちなことでございますので、この辺のところにも問題があろうかと思います。ただ、言われておりますように国鉄の共済制度が、たとえば満鉄とのかかわりで大きなロスを生じているのではないかというのは、これはやや誤解ではないかと思っております。  そういうことで、国鉄が現在非常に困難な事態に立ち至り、また立ち至ろうとしているわけでございますが、政府の方といたしましては、国鉄の共済制度につきましては、所管は運輸省でございますが、運輸省といたしましても、昭和四十年代からいろいろ御苦労をなすって、国鉄の共済制度をどうしようかということでずいぶんいろいろ勉強してこられていたようでございますけれども、結局昭和五十五年になりまして、これは共済全体の問題として取り組んでいかないと運輸省だけでもなかなかうまくいかない、こういうことになりまして、共済制度を一般的に所掌しております大蔵省で共済年金基本問題研究会をつくりこの問題を議論し、そして今日こうして法律案の姿で国会で御討議をいただいている、こういうことになっているわけでございまして、その間運輸省も、それから同時に私どもの方も、一生懸命できるだけ早く国鉄の共済制度が長期的に安定するような方向を目指しまして努力をしてきたわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 要するに国鉄の場合は、歴史的に見て成熟度が非常に高いというのですか、そういう年齢構成から出てきているわけですからね。そういうものを今日まで、端的なことを言うたらそういう事情があることをわかりながら放置してきた、そこに政府の怠慢があるということを私は申し上げておるわけですね。当然国鉄全体が非常に膨大な赤字を抱えているということもあります。しかし、その原因も、あながち昨今言われているように労働者の側にあるような、そういう言い方は当たっていない、私はこう言わざるを得ないと思うのです。  先ほど申し上げたような、戦時中あるいは戦後の特殊なそういう事情の中から大量に職員を採用してきたというようなこともあるだろうし、また、ここ最近では、赤字路線覚悟の上越新幹線をつくるなど、私は新幹線自身がいけないとは言わないが、やはりそういうものがこの赤字の原因になっているということは、これまた事実であろう、こういうように思うわけですね。  それから、特に考えなければならぬことは、これは一回大臣に答えてもらわなければいかぬと思うのですが、たとえば日本の場合は、国鉄に対して国の補助といいますか、そういうものは二割ですか、二割程度になっていると思うのですが、たとえばフランスなどでは約六割が国の援助、あるいは西ドイツにおいては約半分というようにわれわれ聞いておるわけですが、そういう点でヨーロッパに比べて、国の国鉄に対しての助成割合といいますか援助割合が非常に低いという現実の問題があるわけですね。そして国はどんどん政策的に、いま言うような形の赤字路線を一方でつくっていく、こういうことになって、それらの一切の責任を、いつの間にか労働者の側にあるがごとき印象を与えるということはもってのほかだと思うのですが、大臣どうでしょうか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、年金問題はちょっと横におきまして、国鉄という問題は労働者側に責任が一方的にあるなどと思ったことはございません。  事実、私は五十九歳でありますが、ちょうど私ぐらいな年齢が一番満鉄、朝鮮鉄道、台湾鉄道から帰りまして、そうしてそれは当時の雇用問題からいえば最大の雇用の場であったと私は思っております。しかも、国鉄は当時赤字でありませんでした。しかしながら、ただ年金制度自身は、その満鉄から帰った人、すなわちわれわれクラスの者だけを仮に外して、それを別途で組み立てても、いまのような危機的な状態を回避するほどそれが大きな理由ではないようになっております。  ただ、その後労働者が、いろいろなことがありまして、私も、みんな正しいとは思いませんが、それのみに責任があるとも思わないし、いわゆるわが国の輸送体系が経済の推移に対応して大変な変化をしてきたという構造的な問題もしっかりあるわけでございます。  したがって、これを一つ年金制度で見た場合には、これは前からわかっていたのじゃないかとおっしゃれば、私はそのとおりだと思うのです。したがって、これが一元化されるような環境、それは国民全体が自分の所属しておる一つ年金エゴイズムだけにならないで、全体の連帯の責任においてやろうという環境が熟すということには、私は、それなりの時間がかかったと思います。そうして、それらの環境というものが過去のいろいろなものの累積の中にいまできてきたのじゃないか。それが、今度第一歩として御審議していただきたいと言っているいまの問題そのものではなかろうかというふうに考えております。その間、労働者だけが悪かったなどということは、私は、ゆめ考えるべきものではないというふうに考えております。大変によくて、経営者ばかりが悪かったとも思いませんが、しかし私は、一方的にその責任を転嫁するというのは、やはり為政者としてあるいは政治家として、それのみを非難して、もってみずからの正当性を合理化するという態度は慎むべきであるというふうに思っております。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、国鉄の共済年金財源不足といいますか赤字といいますか、これはやはり国がしかるべく対処しなかった、その責任の結果こうなっているのですから、全然関係のない国家公務員とかあるいは電電公社にその責任を転嫁するということはどうも納得できないのですが、その点どうですか。これは国が対処すべき問題じゃないのですか。
  27. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 共済年金制度というのは、もう申すまでもなく社会保険制度でございまして、その社会保険というのは、それぞれの保険集団の中で保険料をもってその給付を払う、それでその保険料と給付の間の関係が相矛盾しないようにうまく設計していく、こういうことから成り立っているわけでございます。  その社会保険に対しまして、国が税金という財源から国庫補助をするかどうかというのは、それは社会保険ということの本質とは関係のない問題でございまして、ある国では税金から国庫補助をするというシステムをとっているところもございますれば、別に税金からは国庫補助をしないということで、社会保険料の中だけで賄っていくという制度をとっている国もあるといったぐあいでございます。日本の場合におきましては、厚生年金にいたしましても共済年金にいたしましても、それぞれ国庫補助ないしはいわゆる公経済の負担という形でそういった支出が行われてございますけれども、基本的には社会保険ということで成り立っているわけでございます。  国鉄共済年金が社会保険としての制度がうまくいきませんで財政的に困難を来すといった場合に、国庫からの負担ということで税金からの支出でそのしりを全部ふいていくという形になりますれば、これは、社会保険というものをとっているたてまえから非常におかしな形になってまいります。  と申しますのは、社会保険をとっております各保険集団というのは幾つもあるわけでございますけれども、それぞれの保険集団が給付負担関係をある程度無視した形での設計というものをどんどんお続けになるといった形になりますとどういうことになるかといいますと、それぞれ全部穴があく、穴があいたものは税金で全部それは埋めていくということになってまいりますと、社会保険というものそのものの制度が全部崩壊してしまうという形になってくるわけでございます。  したがいまして、その社会保険制度をとっている限りにおきまして、その中の一つの保険集団というものが、いろいろな事情もございましょうが、財政的に苦しくなったという場合におきましては、まず社会保険をとっております全集団の中で財政的な調整をしていくというのが、これはどこの国でもやっていることでもございますし、まず考えるべきことではないか。この法案では、そうした考え方基盤にいたしまして、国鉄共済組合と最も近しい関係にある、これは沿革的にも制度的にも近しい関係にございます他の二公社の共済と国家公務員の共済とでとりあえず財政調整をしていこう、こういう考え方に立っているわけでございます。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 それが納得できないと言っているのです。  次長、国鉄の共済年金財源不足を、たとえば掛金の引き上げとかあるいはスライドの三年間のストップとか、そういうような形で労働者とかあるいは年金受給者といった方々に犠牲を転嫁するのではなしに、やはり国が責任を持ってこれに手当てすべきだ、私はそういうことを言っているのです。  ところが、あなたのところの方は、他の年金財源がまだいまのところ、将来はパンクするのだけれどもいまのところあるから、ちょっとつまんでこちらへ穴埋めするという、そこに私は何か労働者同士を対立させるような、本当にそういう意味では国の責任を転嫁して、一応それは日本国民という立場では、あるいは労働者という立場では同じ立場かもわからぬが、国というものがありながら、ある一軒の家が生活が困っているから、国が当然生活保護なら生活保護とかいろいろな手当てをしなければならぬのに、隣の家が裕福だからといって、おまえのところお隣さんやないか、援助するのはあたりまえやないかと言ってやっているのと同じじゃないですか。そんなこと許されますか。答えてください。やることもやらぬで何ですか。
  29. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 先ほども申し上げましたように、社会保険という領域での問題なんでございます。それを、いま委員の御指摘でございますのは、国がめんどう見たらいいとおっしゃいますのは、税という国の一般財源の問題になってくるわけでございます。  国といいましても別段お金があるわけではないのはもう御承知のとおりでございまして、国民から税という形で資金をお預かりしこれを配分するという分野と、それから社会保険料という形で社会保険の論理に乗った形でこの資金をお預かりしこれをまた配分するという分野とあるわけでございまして、いまこの共済制度をどうするかということについては、まず社会保険という形で、そういう制度の中でこれができているわけでございますからして、社会保険という場で物を考えていかなければならない、こういうことを申し上げているわけでございます。そこのところが、すべて税の分野で始末をしてしまうということになると、社会保険という分野そのものがなくなってしまう、全部税の分野になってしまう、こういう形になってきて、社会保険制度そのものを否定する姿になりかねないということを申し上げているわけでございます。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 日本の国全体の財政が非常に緊迫している、窮迫している、その原因は一体何かということになりますと、いろいろ意見は違いますよ、はっきり申し上げて。あるいは税というものと、社会保険といいますかそういう保障といいますかその部分についても、僕らから言うならば税金の二重取りと違うのかと言わざるを得ない部分もはっきり申し上げてありますよ。  そこで私聞きますが、大臣もひとつお答えいただきたいのですが、いま国鉄共済の場合は八一年ですでに八一・二%の成熟度といいますか、そういう状況ですね。そうすると、いずれもう少したてば一〇〇%を超えることは必至だろうと私は思うのですね。そうすると、こういうようなやり方、国鉄共済が高齢化を迎えていろいろな形の中でそういう成熟度がどんどん一〇〇%を超えていく、こういうものは他の年金から持ってくるわけですか、これからずっと。  たとえば、またフランスの例を出すようですが、フランスでは一九七六年にもうすでに一五三・六%の成熟度になっている。あるいは同年にドイツの国鉄では一七六・一%に達しているのですね。ところが、それは国々のやり方だと言えばそれまでかもわかりませんが、その不足分は全額国庫負担となっているのですよ。それは間違っておるのですか。それはそこの国のやり方であって、わが国はわが国のやり方でやるのだ、それはそういう考え方もあろうと思いますけれども、何かあなたの言い方であれば、よそのやり方は間違っておるので、いま大蔵省がやろうとしている考え方が全く正しいのだ、こういうことになりやしませんか。大臣と両方答えてください。
  31. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 国鉄の成熟度につきましてはいま委員指摘のとおりの姿でございますから、あと数年たてば、国鉄だけとってみまして一〇%を超えることはあり得ると思います。このことは、国鉄の共済組合だけをとってみますと大変なことでございます。  その原因は何かといいますれば、国鉄の共済組合の歴史が古いということのほかに、先ほど来申し上げておりますように、国鉄が保険者としては集団が小さいということに原因があるわけでございますから、再編統合とか一元化ということで政府がこれからやってまいろうという一つ理由は、財政基盤の小さいものは大きなところで物を考えていかなければならないという一つのことでございまして、そういった形で国鉄の共済組合の問題を解消していこうということも考えているわけでございます。  ただ、大きな集団になりますれば、いまのお話のように成熟度が一〇〇%を超えるということはなくなるわけでございますけれども、それだけで大きな集団の年金財政が解決するかというと、必ずしもそうでもございません。給付負担関係につきましてやはり見直しをしていきませんと、大きな集団そのものの財政状況もよくなくなるということになりますから、二つのことをあわせて今後考えていかなければならないと思っております。  それから外国の話で、フランス、ドイツの話でございますが、フランス、ドイツの話は必ずしも詳しくはわからない面がございます。フランスの場合でございますと、国鉄の年金に対する助成でございますのか、企業としてのフランスの鉄道に対する助成でございますのか、そこのところが必ずしもはっきりしてないようでございまして、読み方によりますと、さてどっちの方で物を考えておられるのかなという気がいたします。日本の場合でも国鉄の企業に対する助成というのは、先ほどもお話がございましたように七千億以上の助成をいましているわけでございますが、企業に対する助成をどういったところに着目してやっていくかということについてはいろいろのやり方があろうかと思います。日本の場合には、目下のところ、国鉄の年金負担に対しましては助成というものはやっておらないということだけでございます。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間も迫ってまいりましたので、後で大臣からまとめて答えてもらいますが、いずれにしても、この国共済はあと十一年ぐらいしかもたないのじゃないかというようなことも聞いておるわけです。いわゆる国鉄共済とそれが一緒になっても九年ぐらいしかもたないというようなことも聞いているのです。  だから、私らから言わすと、どっちもマイナス要因みたいなものですよ。マイナスとマイナスと足したってマイナスにしかならぬわけですから、そこに根本的に大きな救いがたいものがあるのではないか。いま国が財源難だから、国鉄共済の方の穴埋めについてはとりあえずこっちから持ってくるということであったとしても、これはわれわれ絶対反対ですが、そうであったとしても、いずれ共済制度そのものが、現実に破綻しているし、もうパンクしてしまうという、寿命が九年になるか十一年になるかというだけの話ですから、やはりあるべき姿というのは、年金の統一というのですか、法のもとの平等というのですか、同一給付同一負担という原則が当然あるべきだと私は思うのです。  しかし、私はいま余りにも時期が悪過ぎると思うのです。本当にそういう意味では国が財源がある程度豊かな、そのためには当然景気回復してもらって、そういうような行革デフレみたいなけちけちなムードを払拭して、景気回復のために気合いだけかけるのではなしに、実際ある程度借金確保というのか、そういうものも含めて財源を捻出して景気回復のために手当てする、こういう形で税収を伸ばす。国の方である程度そういうものが成って後に、低いところを高いところに合わすのならわかるけれども、何かいまのやり方であれば低いところに合わしていこうというやり方に相当無理があるのじゃないか、やはりそこに大きな不満というのですか、そういうものがあるのじゃないかと私は思うのです。  だから、そういう状況が来るまでは国の方で責任を持つということでなければならぬだろうし、また同時に、公的年金の全体像というのですか、本当に年金というもので快適なる老後生活できるように、年金の額だけじゃないですよ、大臣などは予算の例から見て日本は決して低くないというようなことを言っているけれども、日本の場合は額が少しあったとしても、それを取り巻く老後の対策、私が冒頭に申し上げたように、年金の受給だけじゃなしに住宅がない者には住宅を与えるとか寝たきり老人というようなことのないような医療保障をするとか、掛金運用によっていろいろな全体の保障が老後に与えられるようなものがちゃんと完備しているのですよ、外国の場合は。  日本の場合は、そういうものがなしに何かわずかなお金でもうそれで終わりだというような形になっていると思うのですね。そこらあたりを、全体の年金像というのですか、こういういままでのやり方を払拭して、本当に労働者のためになるような年金制度というものを抜本的に確立するということが大事じゃないかと思うのですが、私が申し上げた諸点について大臣からひとつしかと答えていただきたいと思います。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 まず最初の、いわゆる財政の果たす役割りという意味から言えば、税金を取ってそれをもろもろの施策に支出していくということは、ある意味において御案内の富の再配分、こういうことであろうと思っております。したがって、富の再配分の問題からすれば、おのずからそこに政策選択の順位が生じてまいります。そして一方、この年金という問題は社会保険制度仕組みの中でわが国の場合はやっていこう、こういうことになっております。  よく議論された話でございますが、たとえば健康保険一つをとってみましても、最初は大企業が、これは安田生命かどこかでございますか、自主的にお始めになって、月給の五%ずつを差し引いてそれを積んでおいて、そしてお互い病気になったときには連帯の責任で上田内科とか竹下内科とかを指定しておいて、そこへ行って診てもらえば非常にいい制度だ、それは大変いい制度であったわけです。そこからやはり国民皆保険にしようという思想が出てきた。そうしてなかんずく、いわば日本統一保険にすればいいじゃないか、こういう議論が出てくる。そうすると一方、内容のいい大企業の健保などから見ますならば、それは給与は高いし、したがって掛金は高いし、身体検査して丈夫な人をとりますし、ポンコツになりそうになるときには定年になるしと、こういうことになればその内容はいい。それで、しかし統一するとなれば、われわれは国庫補助なんかは一銭ももらったことはないという既得権に対する一つの抵抗が生じてくる。そういうのをいろいろな歴史的積み重ねの中で徐々に国民連帯の保険にしよう。  私は、年金制度仕組みにしても、その成立した淵源から見れば、それぞれいろいろよって立つ基盤も違っておりますし、大ざっぱに言えば、負担する方が多くて給付を受ける方が少なければその保険財政は健全だということになりますし、逆の場合は不健全さを増すし、そこで国民連帯の責任でひとついまおっしゃいましたような全体像を描いてやっていこうじゃないかという環境がいまやっと熟してきたんじゃないか、それの第一歩であるというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  と同時に、いま御意見を変えての御質疑の中にございました、言ってみればそれはただ金目で議論するだけの問題ではなくして、やはり総体的には年金制度の全体像という以上に暮らしのビジョンとでも申しましょうか、暮らしの全体像あるいは日本国民全体の老後対策に対する全体像、そういうものの中に位置づけされて、初めてほのぼのとした幸せを感じ老後を過ごしていくような社会ができるではないか、これは私も同感であります。  それがさて、いろんな国に比較してどうなっているか。これはまた比較のしようでございますけれども、私は、かつては社会保障あるいは揺りかごから墓場までと言われたイギリス一つ考えてみますと、租税負担プラス社会保険負担、これが大変高くなって、言ってみれば隣のおじさんを自分が養っておるという感じからして、イギリス病すなわち勤労意欲の低下をして、七つの海を支配したイギリスも一人当たり所得ですれば日本の八割五分ぐらいしかない、こういうことになったので、その国々の暮らしの全体像というものの立て方というのは、そういうところを追いつけ、追い越せと今日までやってまいりました。  だから、数字の上における水準は追いついてきたという面がたくさんございますが、内面的な暮らしの全体像ということになりますと、これは、日本日本の地域なりあるいは面積、人口密度、全部を勘案したビジョンは、これはお互いが描いていかなきゃならない政治的な一つのビジョンだということでは私も同感であります。そういう大きなビジョンをお互いが議論の中で国民に理解を受けながら示していこう。言ってみれば、その一つの側面としての年金の全体像、それに進んでいくためのまず一つの第一歩というふうに御理解をいただいたら幸いこれに過ぎるものはない、こういうふうな理解をいたしております。
  34. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたから、いずれにしても、中曽根内閣の臨調行革路線というものは、片方においては軍拡路線であり、片方においては弱い者いじめといいますか労働者いじめということになっておる。  特に、今回の本法案の改正趣旨というものを考えた場合に、やはり年金額の実質の引き下げであり、そして掛け金の大幅値上げ、こういうことに尽きるのではないか、このように思っておるわけでありまして、そういう点で年金制度の改悪の第一歩、こういうように私は断定せざるを得ない、このように思っております。本当にそういう意味では高負担そして低福祉、こういうようにわれわれは考えざるを得ないし、年金の切り捨て、こういうふうに断定せざるを得ない。いずれこの問題については、われわれは断固として反対していくわけでありますが、これは必ず国民の手ひどい審判が私は待ちかまえているというように申し上げて、時間が参りましたので私の質問をこれで終わりたい、このように思います。
  35. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  36. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 法案の提出の過程を見てみますと、どうもおかしい。昨年の七月十四日に今井委員会意見書を取りまとめましたね。この七月に相前後して、厚生大臣の諮問機関であります社会保障長期展望委員会が同じように答申を出す、臨調の基本答申が出る、三つ続いて出まして、九月の二十四日に閣議で、この法案のもとになります国公共済と公企体共済の統合一本化するという、そういう方針の決定をする。これが実は全く逆転していると思うのですね。  従来は、法律改正、制度改正というときには、正式な審議会というのがあるわけでありますから、社会保障制度審議会また一方の公務員共済制度審議会に諮問をいたしまして、答申を得て後に閣議決定をする、こういう手順で進んできていると思うのですね。今回は形式だけで、統合一元化という大筋をもうすでに決定をして、その後に形式を整えるための単なる諮問であった。これは、どういうふうに考えても逆転というか、強引な統合するんだという方針に基づくトンネルの諮問であった、こういうそしりを免れないと思うのですが、率直な御感想を大臣から伺いたい。
  37. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 確かに、昨年の九月二十四日に行革大綱で閣議決定された中に、基本的な方針を決めているわけでございます。その後、具体的内容につきましては関係各省、関係の共済組合と協議をして原案をつくり、そしていまお話しの国共審でございますとか社会保障制度審議会に諮問をいたしまして答申をいただいているわけでございます。このことは逆転しているという仰せでございますけれども、政府の方針が決まりませんことには、国共審にも制度審にも諮問をし御意見を伺うということはしようがないわけでございますからして、政府の方針というのはその前に決めても、それは逆転という形にはならないのではなかろうかと思います。
  38. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 従来の経緯は、国家公務員共済制度の改変にかかわる重大な問題は、まず審議会で十分審議を尽くすというのがたてまえで来ているわけですね。今度のは、統合するんだということをもう結論を出して、その上で審議会にかけているのですから、現状においては異例の逆転ケースということになっているのじゃないですか。ですから、この二つの審議会経過答申、これはまあ大変なひどい厳しい指摘をしていると思うのですね。  まず国公審、これは制度改変の内容に立ち至って答申なんてとてもとても出してませんね。審議会における経過についてわずかに述べまして、「法案提出期限の関係もあり、とりあえず、これまでの審議経過を略記して答申とする。」これは何ですか。これは事実上答申じゃないですね。しかも「本諮問は、本審議会創設以来二十五年間における最大の難問であった。それは、その含む内容のほか、時期的に最悪であり、審議の期間も限られ、」こういう大変な条件の中で審議会が開かれた。しかも「統合を内容とする本諮問を審議すること自体について強い疑問が提起」された。「今後のわが国公的年金の在るべき方策について、政府が早急に具体案を提示すべきである」これは全部入り口の問題です。「経営形態と年金制度が不離一体の関係にある現行制度下において、三公企体の経営形態問題が不明確な現段階で、共済制度だけを切り離して審議すること」は困難だ、こういう内容ですよ。  つまり、この答申を見る限りにおいて、四共済の今回の法案の内容というのは、相当な強引な、合意を得ようなどというそういう努力の影が見られない。国公審の混乱ぶり、総退場、こんなことが伝わってきておりますけれども、この国公審の審議経過についてどういうふうに御認識されていますでしょうか。
  39. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 確かに、国家公務員共済組合審議会は昨年の十二月以来懇談会及び正式な形での審議会ということでずいぶん数多くやっていただきましたが、その間におきまして議論はなかなか尽きないところがあったわけでございます。  もちろん、先日も申し上げましたように、大筋のところでの御意見というのは大体まとまっておったわけでございますけれども、二つの点におきまして意見が違ったという面があるわけでございます。その二つの点につきまして、意見が違ったのを違った形で、それぞれのお立場というのがございますので、二つの意見を併記した形で答申を取りまとめるという手法をとってはいかがかという御意見も中にございまして、そういう形でのまとまり方というのもあったのだと思いますけれども、その二つの相違点につきましては、相違点としてそれぞれ併記をするということはやめた形で、合致する点だけで取りまとめをしようということになりましたものですから、いま委員がお読みになったような形での答申になっているかと思います。  私どもは、これは共済組合審議会が非常に数多くの審議をなさり、かつまた、委員方々には本当に夜、夜中までお手数を煩わしたあげくの果てのきわめて御努力の跡のにじみ出た貴重な答申として承っておる次第でございます。
  40. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで制度審の方を見ますと、こういう指摘です。「これまで、国は、公的年金制度全般の将来展望を明らかにしていないにもかかわらず、今回の諮問を公的年金制度の再編・統合の第一段階として位置づけていることは、甚だ理解に苦しむところである。」これは第一の指摘。こんな指摘はないですよ。いいですか。  次に、「長期にわたり安定した国民年金体制を確立するために、既に再度にわたり公的年金体系に関する新しい全体構想について建議を行ったところであるが、政府は、これら建議の意図するところを踏まえて、早急に公的年金制度の将来の在り方の具体策を改革の手順を含めて明らかにするよう強く要望する。」出ていないのです。  「公的年金制度の改革を進めるに当たって、国は、年金制度の技術的、制度的調整を図り、関係者の十分な理解と基本的合意を前提として案をまとめるべきである。そのような観点から今回の諮問の経過を見るとき、これらの努力が著しく不足していたことを指摘せざるを得ない。」これは怠慢を指摘している部分ですね。拙速じゃありませんか。  将来展望を示さないで改革の第一歩だというわけです。行く先を示さない汽車に加入者を乗っけて、不安はつのる一方です。大蔵委員会は国公共済の所管の委員会でありますから、主として国公共済の水準その他についてこれから伺っていきたいと思うのですが、前段として、どのような合意を得るのですか。もうがむしゃらに突っ走るということですか。
  41. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 社会保障制度審議会答申で、いま鳥居委員がお読みになったような個所が確かにあるわけでございます。  この答申は三月二十九日でございましたが、四月一日に公的年金制度に関する閣僚協議会におきまして、今後の公的年金制度全般を考えますときのおおよその考え方及びその手順につきまして明確にしたところでございます。でございますので、この二のところにつきましては、この制度審で御議論をいただいておりますときには、まだ公のものとしてまとまっておりませんでしたものでございますから、このような御指摘があったかと思いますが、今日では、一応おおよその手順及び考え方についてははっきりしているところでございます。  しかし、はっきりしていると申しましても、ただ物の考え方なり手順なりの概案がはっきりしているわけでございまして、なお五十八年度末までに公的年金制度の将来のあり方の具体的な内容なり手順なりを明らかにすることにしておりますので、ここの三に書いてあるところにつきましては、これからの課題かと存じます。このことにつきましては、審議会でもそれはちゃんとやるようにというようなお話かと存じております。  いずれにいたしましても、そういったことで今後五十八年度を通じまして五十九年度に改正を予定しております厚生年金国民年金等の関係調整を軸にいたしまして、共済年金も含めましたところの公的年金制度全体の再編統合のステップを踏んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  42. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それは全体像ではないのですよ、公的年金制度統合一元化をどういうふうにして進めていくのか、まだスケジュールさえも明確ではないわけですから。これまで共済年金の法律改定あるいは制度の改定というときには、国家公務員共済組合審議会それから社会保障制度審議会、この二つの審議会に諮問をして答申を得てきていますね。  これまでの答申を見ますと、共済年金というのは恩給ではないのだから、したがって社会保障プラスエックスなんだ、恩給がこうなったから共済をこういうふうにするのだというやり方はやめなさい、あるいはまた、厚生年金がこう変わったから共済もこう変えるのだというのはおかしいではないか、共済年金は性格が違うという意味からどうあるべきなんだという共済年金のあるべき姿について調査研究をすべきだ、そういうことで今井委員会ができたと思うのです、昨年の七月十四日に答申していますが。  ところが、出てきた中身を見ますと、今井委員会指摘していること、いろいろ指摘しておりますけれども、水準が厚過ぎるから圧縮しなさいとか、あるいは将来は一元化の方向だろうとか、これが二つの柱になっているわけですけれども、本来の今井委員会の役割りとは全く矛盾する答えが実は出てきているのです。  制度審にしろあるいは共済組合審議会にしろ、本来今井委員会に要求してきた中身ということ、目的、役割り、それは違うわけでありまして、この今井委員会で言っていることを一体どういうふうに受けているのか。国家公務員の、いわゆる公務員制度の根幹にかかわる重大な問題だと私は思うのです。その根幹にかかわる問題を財政調整と同次元で議論をして、しかも統合を急ぐ、こういう形があっていいのか、こう思っておるのですが、大臣いかがですか。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、いま鳥居さん拙速じゃなかったか、私も、率直に申しまして拙速と言われてもやった方がいいのではないかと思いました。  だから、ある意味における拙速のそしりは免れないと思いましただけに、国共審の先生方にも、これは労使中立を問わず、社会保障審議会ですか、社保審の先生方にも個別にお会いいたしまして、何が何でもという表現は使いませんでしたが、とにかくせっかくある種の環境が熟したから、この国会で法律を出したいので御答申を賜りたいという、これは決して圧力ではなく、哀訴嘆願と申しますか、お願いをして歩いたわけです。それをお認めいただいて、確かに手厳しい批判をしながらも御答申をいただくという手順をいただいたわけです。  したがって私は、鳥居さんのおっしゃる、また委員の先生方もおっしゃった、まず全体像を明らかにして、それの第一弾としての位置づけをすべきものを、第一弾の位置づけをした後全体像に取り組むと申しますか、そういう感じがするので、その辺に対しては自分たちも釈然としないものを感じつつも、そこまで哀訴嘆願するならばひとつ精力的にやってやろう。そうなりますと、やはり人対人との関係もありまして、途中においては運営の仕方がいいとか悪いとかいろいろな議論もございましたが、お願いを聞き届けていただいた。そういう環境もまた、第一歩としてこの法律案を提出して国会で御審議をいただくだけの環境が整ったという一つ現実的事実行為じゃないか。きわめて高遠な理想と今度のあり方との問題で、現実と理想のギャップ、これは私も感じないわけじゃございませんけれども、そのような形で御理解がいただけないものかなというふうな心からなる期待感を抱いておるということであります。
  44. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 臨調が三月に最終答申を出しましたね。それまでに何回か答申があって、公務員制度に関しては、中間の基本答申にもありますし、最終答申にもありますけれども、いまの現行の公務員制度の根幹をなす問題、労働基本権の問題、人事院制度の問題、これらに手をつけないということになったのも、公務員制度というのがどんなに難題であるかということだったと思うんですね。去年の秋ごろは公務員にスト権を与えたらどうかという財界の声もありましたし、がやがややっていましたけれども、結局それは結果においてできなかった。臨調といえどもこの公務員制度に手をつけることがなかなかできなかったという背景が実はあるわけです。  その公務員制度をそのまま認めるのであるとするならば、公務員年金の姿というのは、現在の国家公務員法百七条、この百七条がある限りにおいては、社会保障プラスエックスという明確な根拠があるわけですから、あるべき姿を明示しなければいけないと思うんですね。人事院、きょうおいでいただいていると思うのです。  百七条には「本人及びその退職又は死亡の当時直接扶養する者のその後における適当な生活の維持を図ることを目的とするものでなければならない。」こうありますね。これが根拠ですよ、社会保障プラスエックスあるいはプラスアルファでいいと思うのですね。国公共済は単なる社会保障ではないんだ、国家公務員法はこう言っているんでしょう。「適当な生活」というのをどういうふうに受けとめていらっしゃいますか。  それから、さまざまな勤務条件というのがありますね。国家公務員法の諸規定、政治的活動の禁止、労働基本権の制限、守秘義務、私企業からの隔離。これに違反した場合には刑事罰もありますし、年金の支給停止、一部停止、全部停止。厚生年金にはこういうのはありませんね。こういう勤務条件のもとに公務の円滑な遂行、これが共済組合法にはうたわれていますよ。  だから、単なる社会保障という意味ではなくて、社会保障プラスアルファ。その国家公務員共済年金の水準というのはこうあるべきだ、在職している職員の皆さんの給与については民間準拠、それから退職手当。年金、これはどこにもないのですね。根拠としては、いま私が申し上げました国家公務員法百七条、これを受けた国公共済法の一条、これが私はその水準を明確に決めていかなければならないものだと考えておるのですけれども、いかがでしょうか。
  45. 斧誠之助

    ○斧政府委員 国家公務員の退職年金につきましては、ただいま先生御指摘のように、在職中いろんな服務上の制約とかあるいは労働基本権の制約とかございます。  そういうことで、一生を公務にささげた職員が、退職後においてどういう生活をしていくかという点に十分配慮しなくちゃいかぬ、それが国家公務員の職務遂行を公正中立にあるいは能率的にやっていく保障ともなるのだということと理解しております。そういう意味で、共済組合法のもとで、退職年金になっておりますが、そういう公務員の特殊性というものを考慮しましたセキュリティー年金的な部分、そういうものがいまも配慮されておりますし、これからもそういう配慮というものは要るのではないか、私としてはそういうふうに考えております。  ただ、その水準がどこであるか、何が適切であるかということは、これからいろいろ、日本国民全体の年金制度として、どういうふうにそれを運営していくかということが、いま現在非常に重要課題として各方面で議論されておるわけでございまして、そういう中で、人事院としましても、しかるべき時期に御意見を申し上げるような時期が来るのではないかというふうにいま現在は考えております。
  46. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはこれまでの歴史がありまして、新憲法の後国家公務員法の旧法が決まりましたね。後に昭和三十四年に新法ができて、そしてそれが百七条、いま指摘したものです。  それで、三十四年までの国家公務員法の旧法時代のこの項目、見てみましたら百八条、一条後の条項ですけれども、これは「適当な生活の維持を図ることを目的とする」なんて、こんな弱いのではないのですね。「適当な生活を維持するに必要な所得を与えることを目的とする」、非常に強い。それで、昭和三十四年の新法になってどうして弱まったのだろうかということなのです。これはどうでしょうか。
  47. 斧誠之助

    ○斧政府委員 昭和三十四年までは恩給制度でございます。三十四年から退職年金制度制度改正になったわけでございますが、これは思想としまして、恩給というのは国が給付の主体になる、つまり国からの給付であるということでございます。そういうことがいいのかどうかということが議論になりまして、結局は、やはり国家公務員日本国民の一人として社会保障制度の中で給付を受けるべきだということで、労使の拠出に基づきまして保険数理に基づいて給付するという制度に変わったわけでございます。  したがいまして、恩給時代には国の給付でございますので、国の義務という形でのそういう非常に強い規定であったわけでございますが、社会保障制度という中での問題ということになりますと、これは、保険数理上どういう拠出、給付が可能になるのだということを考えていかなくてはいけないということで、いまのような規定になったものと考えております。
  48. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 昭和二十五年にGHQの顧問のマイヤースさんが日本へ来ましたね。それで、調査をいたしまして、公務員のこうした年金制度のあり方がどうあるべきなのか勧告をしました。例のマイヤース勧告。それを受けて、人事院が意見を国会と内閣に対して提出をした。そのときの人事院の勧告は、国庫負担七五%。後にも先にも、この新法百八条の勧告というのは、意見の申し出というのはこれ一回しかないのですけれども、それに対しまして公務員制度調査会がやはり同じように調査研究をして答申を出しておる。  それで、人事院の方は、公務員を非常に広い範囲でとらまえて、今日の基礎になるような考え方に立ったのですけれども、一方における公務員制度調査会は、年金制度をつくって恩給制度はやめる。それは国で管理する年金制度にするのか、あるいは法人をつくって共済組合という形でやらせるのか、別途研究を続けるか、これはどういう形にするかということをこの時点で研究をすることを閣議決定をする。  ともかく年金制度は、公務員制度をどのようにしていくかということにかかわる問題で、公務員制度に触れる重大な問題であっただけに、この時点では結論が出ない。一方においては、人事院の方は一本。それに対して公務員制度調査会の方は二本立てでいく。極端に公務員をしぼる、そして二本立てでいく、こんなような経過があって、当時の総理府恩給局は、それに対しまして給与でいくのだという立場をとっているのですね。非常に長くかかって、実は国家公務員のこの共済制度は公企体の共済制度より三年おくれて発足するという形になった。そういう背景は、やはり公務員制度にかかる根幹をなす問題であったという点だろうと実は思うのです。  それで、新法が三十四年にできました当時、大蔵省の給与課長をしておられた方が、国家公務員年金のあり方について、本でさまざまお述べになっている。岸本晋さん、後に共済の理事長をやられた方ですね。この資料を見ましても、一定の水準というのは確保されなければならないという立場に立っているわけですよ。つまり、厚生年金の「生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的」とするという立法の根拠とは違う。「公務の能率的運営に資することを目的」としている以上、社会保障の基準プラスアルファがなければならないんだという考え方に立っているわけでしょう。その基準というのは一体何なのか。その基準はどういうふうにお考えでしょうか。
  49. 斧誠之助

    ○斧政府委員 給与につきましては、物価、生計費、民間賃金ということが法律にも明定されておりまして、それが基準になって公務員給与を決めていこう。したがって、民間準拠ということで、それを原則としてやるのがよろしかろうということは大方の御理解を得て、いま現在そういうことでやらしていただいておるわけでございます。  年金につきましては、どういう水準が適切であるかということになりますと、老後生活を一体どういう経費でもって賄えば、文化的で幸福な生活ができるかという非常に抽象論的な基準になりまして、具体的な基準というのはなかなかむずかしい。しかし、公務員が一生公務に尽瘁したという点、しかも、それは先ほど先生がおっしゃいました、いろいろな制約を受けつつということですが、その点に対する配慮というものはあってしかるべきではないか。したがいまして、厚生年金との関係をどういうふうに考えていくかというのは、そこら辺の配慮も加えつつ、これからひとつ大いに議論もしていただきたいし、私たちも意見を言う時期が来たら言いたい、こう考えております。  ただ、いま現在、公務員とそれから民間の勤労者、それは一体どういう生涯を通じての、生涯賃金と申しますか給付と申しますか、そういうものの均衡関係はどうあったらいいのかということは非常に議論になっている最中でございます。その議論はこれからも相当熾烈な形で双方で展開されるのではないか、こう思っておりまして、そういう中での公務員の位置づけというものは、これからの重要な研究課題であろう、こういうふうに考えております。
  50. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 この岸本晋さんの「公務員の新退職給与制度」、昭和三十四年のものですけれども、これで当時の給付水準が明示されている資料があるのです。国公共済、二十年在職、それから二十五年、三十年というものを比較して、厚生年金に加入させた場合に当時どうだったのかという比較計算です。そうすると、国公共済は二十年在職で厚生年金の二・二倍ですね。二十五年で国公共済は三・〇一倍、三十年で四・〇六倍、こういう昭和三十四年当時の厚生年金との比較があります。  それで、いま、実はいかに厚生年金が改善されたからといって逆転現象が起こっちゃっているのですよ。福祉元年と言われた昭和四十八年、二万円年金が五万円年金になった。これは、物価スライド制の導入その他さまざまな形の改善がなされたわけですね。厚生年金は、御承知のとおりILO百二号条約、この中でも明らかなとおり、ILO条約のいわゆる社会保障の最低水準を決めていこうとする考え方に基づいて、いま厚生年金はその水準に達していますね。もちろん改善されてきていることを非とするんじゃないんです。改善は結構な話であって、共済年金のあり方というものを、社会保障プラスアルファのアルファをどういうふうに考えているのかという重大な問題なんです。その共済の水準というのが不明確なまま合併問題が起こっちゃってるわけですよ。  いま逆転がどういうふうになされているか、これはひとつ主計局の方の資料で伺いたいと思うのですが……。
  51. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 年金額の想定をいたしますときには、組合員期間と基礎給与の額との関係から算定をするわけでございますが、昇給カーブをある程度想定いたしませんと、それができません。  そこで、いまお尋ねのことでございますけれども、国家公務員の行政職について、高卒初級採用者が平均的に昇給昇格した場合ということで、夫婦二人という試算でございます。組合員期間が二十年の場合に、共済年金が八万四千六百円強、厚生年金が九万五千七百円強、それから二十五年の場合に、共済年金が十一万三千八百円強、厚生年金が十二万一千五百円強、三十年の場合に、共済年金が十四万六千二百円強、厚生年金が十四万九千二百円強、三十五年の場合になりますと、共済年金の方が多くなりまして十八万一千七百円強、厚生年金が十七万八千八百円強、こんなようなことになろうかと思います。
  52. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはもう明らかに逆転現象でありまして、共済年金厚生年金の方式で計算したものをはるかに下回る。特に中級、中クラスよりも下に非常に大きな差が出てきている。  それで、これじゃ大変だということで、共済年金の計算の仕方を四十九年から高い方を選べるような形にした。これは邪道ですね。厚生年金方式で計算すれば高いから、それじゃ、しようがないからそっちの方を選んでいいですよ、これはもともと、本来共済年金のあるべき姿から考えると大分ひどいことになっていると言わざるを得ないと思うのです。三十五年になってやっと共済年金方式で計算して比が上回る、こういう現実昭和三十四年当時は、先ほどお示ししたとおり、二十年在職で二倍、二十五年在職で三倍、三十年在職で四倍です。  国家公務員法百八条によると、調査研究を人事院がやって、国会、内閣に対して意見を申し出ることができると明記してありますね。在職の皆さんの給与についてはおやりになっていますけれども、年金についてはどういうふうになっているのですか。
  53. 斧誠之助

    ○斧政府委員 百八条で、人事院が年金制度に関しまして国会と内閣に意見を申し出ることができるとされております。これは、先ほど来御議論になっております国家公務員の退職年金というものは、公務員制度の中で、退職管理等の中の一措置として、これは人事管理として欠かせない必須項目である、してみると、人事行政を扱っている人事院にそういう権限を与えておくのが適当であるということと理解しております。  ただ、三十四年に共済年金制度に切りかわりまして、その際、運営は共済組合が当たる、総括的管理は大蔵省が所管してこの実施の責めに当たるということになりまして、そのとき、共済の制度運用していく場合に必要なことは共済組合審議会、社会保障制度審議会、そういうところで審議をしていただいて、その答申を得て実施に移すという制度も同時にできたわけでございます。そういう意味では、そういう審議会で有識者が十分な意見を交換し合いまして、適切なる御意見が出てくるであろうということが期待できる状況ができておるわけでございます。  したがいまして、共済組合の運営でありますとかあるいは保険数理上の必要性に基づく技術的な改正でありますとか、そういうことは審議会にお任せした方がむしろいいのではないか。ただ、給付の種類でありますとかあるいは給付の内容でありますとか、そういうまさに生活に関連のあるような内容について重大な変更を要するような場合、これは勧告権の発動をしてもいいのではないかというふうに考えております。いままで、そういう点の改正というのは、たとえば過去三年間の平均給与を基礎としたのを一年間に改正をするとか、あるいは六十歳支給に延ばすとかというようなことはございました。  われわれとしましては、そういう関係にあります制度の中では、実際上の処理としては、やはり勧告というようなことでなくて、具体的に所管庁である大蔵省に意見を述べまして、それを審議会の場で反映していただくということがいいのではないかというふうに考えまして、過去、改正の都度、文書で申し上げたこともありますし口頭で申し上げたこともありますというようなことで経過しておるわけでございます。
  54. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、人事院の重大な役割りだと思うのですね、百八条は。「前条の年金制度に関し調査研究を行い、必要な意見を国会及び内閣に申し出ることができる。」それで、しかも発足当時はこういう水準にあったものが、いま、昭和四十八年以降逆転現象を起こして、まあ、ひどい計算の仕方で辛うじて給付の現状が成り立っている、こういう状況ですね。  一方においては、掛金率を見てみますと、非常に高い水準で来ているのです。これは平準保険料方式で来ていますから、昭和三十四年の十月以来ずっと四十九年の十月まで四・四%ですよ。四四パーミルと言うのですか。厚生年金の方は一・五%ですよ。二十八年当時を見てみますと、この掛金の基礎となる給料、標準報酬、これは最高限度がありまして八千円となっています。八千円の当時、国公共済の方は一等級の一番てっぺんの数字十一万円を取り上げてきているわけでしょう。いま一等級のてっぺんが四十四万ですから四十四万となっています。頭打ちをしないのです。厚生年金は頭打ちして、国公共済の方は頭打ちなし。そうでしょう。諸手当が入っているから、厚生年金の方は。一方の方は本俸に対して掛金率がかかるのだ、こういう大蔵省の説明がありますけれども、これは比率からいっても大変な問題ですよ。しかも四十九年、この修正賦課方式になるまでの間、これは平準方式できているのです。  こういう高い水準の掛金率で来ていながら、いま逆転しているわけでしょう。厚生年金方式の通年方式の計算、そっちをとろうという人が毎年の裁定を受ける人の六割だというのです。しかも、人事院は物を言わない。私は、これは、国公共済を今日まで大蔵省が運用管理してきたから大蔵省にも一半の責任があろうかと思います。しかし、人事院のこの百八条が生きていない、こういう現状なんですね。
  55. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 先ほど申し上げましたように、モデルの計算でございますが、二十年、二十五年、三十年というところは厚生年金の方が年金額が高くなりまして、三十五年でございますと共済が高くなる。三十二年ぐらいがちょうど境目になるわけでございます。  ただ、現実の問題といたしますと、国家公務員は民間の方々の就業の実態に比べますと勤務が長期間にわたるものでございますから、三十五年ぐらいから先、三十五年−四十年という方が実際には多いわけでございます。大体六割ぐらいがそのくらいになりますものですから、全体平均いたしますと厚生年金よりは共済年金の方が多くなるわけでございます。そこで、もらっているお金が、勤続年数というものを考えませんとむしろ共済年金の方が有利じゃないかというような話で、官民格差というような御議論も事実あります。そのことにつきましては、勤続年数を加味しないと単純な比較というのはできないということを、格差論については私どもそういう御説明は申し上げているわけでございます。  他方、掛金のことでございますけれども、掛金は確かに昭和四十九年までは国家公務員の方が四・四%というふうに高い。厚生年金の方は同じ本俸ベースにいたしますと一・八八%から四%ぐらいで、この間低うございまして、五十四年十月以降でございますと、国共済の方が五・一五%に対して、厚生年金は対本俸率に換算いたしまして六・六三ということで、今度は厚生年金の方が高くなっております。過去高かったことは事実でございまして、この高かったことで、積立金の積立比率というのが国共済の方が厚生年金より高くなっているといいますか、健全になっているということでございます。それでございますから、現在、厚生年金よりも現状では掛金率がやや国共済の方が低いのでございますけれども、全体的に言いますと、総平均してしまいますと、若干高い給付を賄っていられるのもこのゆえかと思います。  いずれにいたしましても、今後、厚生年金の五十九年度におきます改正を待ちまして、共済年金につきましても厚生年金制度的に合わせてまいりませんと、ただいま御議論ございます年金の金額についての格差論のほかに、官民格差と称せられるものがいろいろ実はあるわけでございまして、これは、制度的に一本化いたしませんとどうしようもない、どう調整の仕方もないといったものもございますものですから、制度的には合わせてまいりたい。  その場合に、委員が先ほど来問題にしておられます厚生年金と全く同じでよろしいのかどうか、国家公務員法の百七条の年金というものはそれでいいのかという問題が出てこようと思っております。その上積み年金と申しますか、民間で言いますといわゆる企業年金に相当するものだと思いますが、これを国家公務員の場合にどういうふうに設計をしたらよろしいのか、まさに委員が先ほど来御議論をなすっておられますその水準というのはどこへ持っていったらいいのか、これは、国家公務員と民間に働いていらっしゃる方の給与の比較の問題でもあれば、同時に退職金の比較の問題にも関係のある問題かとも思いますが、大変にむずかしい問題と思っております。私どもは、いま御議論いただいております法律案を国会でお認めいただきますれば、直ちにその作業にかからなければなるまい、その際には人事院ともよく御相談申し上げて万遺漏なきを期したい、こういうふうに考えております。
  56. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ですから、問題は、真ん中以下の人たちの場合に厚生年金方式、通年方式で計算した方がいいからそちらをとらなければならない形になっているわけですね。大体課長以上は共済の計算で厚生年金よりいい。  官民格差というのは確かにあると思うのですね。それは、高級官僚が天下りをして高額所得を得る。いま高額所得停止制度というのがありますけれども、その網をかぶる部分というのはほんのわずか、実態においてはもう停止制度は機能してないと言ってもいいようなかっこうですから、これは官民格差の最たるものだと思うのですね。あるいはまた二重に受け取る、これもなくしていかなければならない点だろうと思うのですね。ですから、格差としてあるべきものはあるように位置づけなければならないと思いますし、改善すべきものは改善しなければならないと思うのです。それがごちゃごちゃになったままで今日官民格差が言われているという点は、これはやはり加入者にとっては大変な不安だろうと私は思うのです。その問題があります。  私は、共済年金の将来像を考えましたときに、今井委員会指摘しているように、総じて非常に厳しい方向を向いていると思うのですね。ですから、今回の統合という問題を考えましたときに、四共済の統合問題の根底には、やはり公務員の皆さんが不安を抱かざるを得ない、そういう環境の中で今回の法案審議が進まざるを得ない、はなはだ遺憾だと思うのです。大臣からひとつ御見解を聞いて、この論議を次に移したいと思うのです。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる公務員制度の根幹から今日に至る歴史的経過を大変詳しく分析していらっしゃいますので、率直に言って、その分析の実態について私はついていけるだけの知識がございません。  しかし、基本的に、おっしゃる公務員制度のよって来るゆえんから今日までの経過は私どもも理解できる問題でありますが、いまこの統合によって、言ってみれば従来の既得権とかそういうものを侵すものではないし、将来の問題は今後の問題として検討してもろもろの議論にこたえていかなければならぬわけでございますので、現段階として私がただ衷心からお願いするのは、言ってみれば公的年金の一元化の第一歩としての位置づけである、拙速であろうとそういう位置づけの認識をささやかでもいただけるとしたならば幸いである、こういうふうに考えます。
  58. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、人事院に引き続き伺いたいと思うのですけれども、大蔵委員会がやはり所管であります国税職員の皆さん処遇改善問題ですね。職員の皆さんがどんどん退職していくのに対しまして、有能な人を補充しなければならないということで、今日まで再々この委員会で税法審議の際取り上げられてまいりました。この裏表の問題として、処遇の改善は過去八回にわたって委員会で決議をし、改善を要求してきているわけであります。いま大事な山場でありますから伺っておきたいと思うんです。  過去十年の推移を見ますと、非常に大変な環境にいまあります。取扱件数から取扱額、法人の規模、これは本当に比較にならないほど大変なものがあります。定員は横ばいであるにもかかわらず、たとえば申告所得税納税義務者数、昭和三十二年と比べまして二・七倍、徴収決定済額は二五・六倍、資本金十億円以上の法人数八・一倍、こういう大変な中で、いま五万人の国税職員の皆さんががんばっているわけです。それで一方におきましては、いろいろな調査の中に出てくるのですが、勤務の環境を見てみますと、単身赴任が国税職員の中に非常に多い。赴任期間が五年、生涯で十五年も単身のままという状況にあります。これも大変な点の一つだろうと思うんです。一方において、また窓口サービスの実態調査を行った結果がありますが、利用者の特に多い機関に税務署が挙げられております。そして、郵便局、市町村役場、国鉄、余りいいことじゃないかもしれませんが、こういうのと比較をして、感じがいい、普通、感じが悪いで採点しているんですね。六二・二四、これは他の三つと比べて抜群です。やはり努力の姿だと思うのですね。  それで、先ほどなぜ三十二年と比較したか、三十二年に水準差が一三・三%あったんです。いま一〇%そこそこなんです。去年、おととしから、ここのところ二年の推移は〇・〇二ふえるだけなんです。法律で百分の二十五を限度にその分の調整はしていいことになっているのです。それで〇・〇二〇、これの調整が去年、ことしにかけてついたと思うのです、恐らくいま考慮中だろうと思うのです。大変な条件の中でがんばっていらっしゃる皆さんに、水準差を拡大できるような方向で検討していただきたいと思うのですが、人事院と、直接のお立場ですから大臣のお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  59. 斧誠之助

    ○斧政府委員 税務職員につきましては、私たちが最近公務能率ということでいろいろ批判を浴びます場合に、税務職員を見てください、業務量が格段にふえておるのを少ない人員で能率よくこなしておって、いわゆる生産性をもし公務の部内で議論するとすれば、税務を見ていただくとよくわかりますよというふうに、実は代表例で出させていただいておるようなわけでして、しかも、税を扱うということは非常に困難性も多いですし、いわゆる精神的な負担も非常に高いということで、従来から税務職については相当の配慮をしてきたつもりでございます。  いま先生おっしゃいました水準差の問題につきましては、単に制度上の行政職との見合いの等級でどういう比率になっておるかということでは意味がございませんので、実際に在職している職員が実際に在職している行政職と比べてどうなっているかということの水準差で考えておるわけでございます。そういう意味では、職員が動きますと水準差も動いてくるわけでして、つまり、昇格を一ついたしますと水準差がまた変わってくる、こういうことでございまして、水準差を維持していく、上げていくのは非常にむずかしい面があるわけでございますけれども、〇・〇二ということで非常に御不満かもわかりませんですが、そういう努力はしていることを御理解いただきたいと思いますとともに、今後も税務職員についての給与上の処遇は、俸給表づらと、もう一つは等級別定数の問題がございます。税務署はいまいろいろ忙しい仕事に対応するために、組織上も改変の手を加えてきておりますが、そういう定数と、二つの面から考慮していきたいと考えておるところでございます。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 少なくともいまの人事院のお答えの中で、公務員の勤務というものに生産性という評価基準がありとすればまさに範たるものである、こういう評価をいただいておりますことを、私もいまたまたま責任者の地位にある者として大変うれしい評価をいただいたというふうに思っております。  予算編成がありますと、必ず定員の問題が一緒に、およそ十二月末に決まるわけでありますが、その都度、一方大蔵大臣という立場からすると、定員もあるいは大蔵省そのものに対する予算についても、厳しい対応をすることがまず隗より始めよという趣旨に沿うことにはなる。しかし、その中にあって五万人の税務職員の問題ということになりますと、結果としては振りかえ等行われるにしても、私としても、まずそれの定員のいわば純増ということをいつも念頭に置かなければならない。その純増ということでやってみまして、結果としてそれが一けただ、こういうことになると、ある種の哀愁——哀愁じゃありませんが、非常な厳しさとむなしさと両方感ずるのであります。  しかし、この問題については、税法上審議されますその都度、各党挙げてこれが定員の純増についての応援をしていただける。個々がそれにこたえて能率を上げていくための努力もしなければならぬ。それから人事院の方でも、給与の実態そのもの以外に、いわゆる等級の位置づけ等についても、そういう側面を大いに理解しながら対応していただいておるという環境にあればあるだけに、私も、純増等についてこれからも皆さん方の御支援を背景に一層充実した対応策をとっていかなければならぬというふうに考えておるものであります。
  61. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。ありがとうございました。
  62. 森美秀

    森委員長 次回は、明十八日水曜日午前十時十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時散会