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1983-04-27 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十七日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       粕谷  茂君    木村武千代君       北口  博君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩川正十郎君    津島 雄二君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    毛利 松平君       森  喜朗君    森田  一君       柳沢 伯夫君    山崎武三郎君       与謝野 馨君    阿部 助哉君       上田 卓三君    塚田 庄平君       戸田 菊雄君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    玉置 一弥君       小沢 和秋君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房審議官   内田 勇夫君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      塚越 則男君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主計局次         長       宍倉 宗夫君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         資源エネルギー         庁次長     川崎  弘君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君  委員外出席者         議     員 大原 一三君         衆議院法制局第         二部長     松下 正美君         防衛庁防衛局計         画官      宝珠山 昇君         防衛庁経理局会         計課長     源氏田重義君         厚生省年金局年         金課長     山口 剛彦君         厚生省年金局資         金課長     熊代 昭彦君         社会保険庁年金         保険部国民年金         課長      平松 孝雄君         自治省財政局財         務調査官    渡辺  明君         会計検査院事務         総局第一局上席         調査官     倉田 建司君         参  考  人         (動力炉核燃料         開発事業団理         事)      熱田 禧房君         参  考  人         (日本弁護士連         合会事務総長) 樋口 俊二君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   熊川 次男君     北口  博君   白川 勝彦君     津島 雄二君   蓑輪 幸代君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   北口  博君     熊川 次男君   津島 雄二君     毛利 松平君   小沢 和秋君     蓑輪 幸代君 同日  辞任         補欠選任   毛利 松平君     白川 勝彦君     ───────────── 四月二十七日  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願永井孝信紹介)(第二八二〇号)  同(森井忠良紹介)(第二八二一号)  同(岡田利春紹介)(第二九三〇号)  同(佐藤観樹紹介)(第二九三一号)  同(土井たか子紹介)(第二九三二号)  同(細谷治嘉紹介)(第二九三三号)  税制改革に関する請願岡田利春紹介)(第二八二二号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願梶山静六紹介)(第二八二三号)  同(草野威紹介)(第二八二四号)  同(佐藤誼紹介)(第二八二五号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願亀井静香紹介)(第二九二九号)  自動車関係諸税の減免に関する請願井上一成紹介)(第二九三四号)  同(伊賀定盛紹介)(第二九三五号)  同(伊藤茂紹介)(第二九三六号)  同(川本敏美紹介)(第二九三七号)  同(武部文紹介)(第二九三八号)  同(塚田庄平紹介)(第二九三九号)  同(松沢俊昭紹介)(第二九四〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案内閣提出第三七号)  電源開発促進税法の一部を改正する法律案内閣提出第三八号)  貸金業規制等に関する法律案(第九十六回国会本院提出、第九十六回国会衆法第三一号)(参議院送付)  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案(第九十六回国会本院提出、第九十六回国会衆法第三二号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。戸田菊雄君。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席
  3. 戸田菊雄

    戸田委員 国民年金特別会計特例法について質問をいたしてまいりますが、まず最初に厚生省に、五十八年度厚生省所管国民年金特別会計歳入歳出予定計算書、これをちょっと見たのですが、若干疑問の点があるものですから、前もって事務的に確かめておきたいと思うのです。  今回の特例法改正でこの附則の別表第二条、第三条関係、五十八年度から三千百八十億円、以下ずっと六十四年度でちょうどゼロになるような、いわば繰り入れ減少ですね。さらに六十四年度から五百十億円、以下ずっと七十二年度まで九百二十億円。十五年間で操作をしていくわけですね。この操作によって、さしあたって五十八年度三千百八十億円の減収になるわけですから、そうしますと、いまの国民年金勘定保険収入が五十八年度は二兆四千百七億八千三百十二万一千円、こういうことになるわけですね。そのほか各種収入がありまして、歳出予定計算書というのがつくられておるわけでありますが、この分が国庫負担金減収になるわけでありまするから、そういうことになりますると、年金会計総体相当影響を及ぼすのではないかという気がいたします。毎年度ずっと減収体制をとっていくわけですから。そういうもので年金会計影響を与えませんか、どうですか。
  4. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘ありました国民年金勘定収支でございますが、先生御案内のように、歳入保険料収入それから国庫負担金運用収入という内容でございます。それに見合いまして、歳出としましては年金給付費が大部分でございます。したがいまして、今回の平準化措置によりましても収支の間におきましては何ら支障がないという状況になっております。
  5. 戸田菊雄

    戸田委員 国民年金勘定での収入は一応特別会計法の第四条でそれぞれ決まっていますね。保険料収入あり運用収入あり雑収入あり等々、これらをもって大体原資にしておるわけでありまするけれども、ただ、三千百八十億円減収になるわけですから、その分は運用益その他においても減っていくわけでしょう。そういう面をあれしますと、実質は三千百八十億円をさらに上回ることになりましょう。総額でどのくらいになりますか。
  6. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  ただいまの三千百八十億五十八年度平準化で控除されるわけでございますが、長期的に見ますと、その間の控除額、それから引き続きまして七十二年まで加算額ということで、控除額加算額が一致するような形になっております。さらに、その間の運用収入減少分につきましては法律で明確にされておりますので、財政的には何ら支障がないというように考えております。
  7. 戸田菊雄

    戸田委員 課長、僕の聞いているのは、三千百八十億減収によって運用益減も出てくるでしょう。これは切るわけですからね。その分減るわけですから、そういうものの減った分で全体の減収はどのくらいになるのか、その額を聞いているのです。
  8. 平松孝雄

    平松説明員 御指摘利子相当減少分でございますが、御承知のように、内容は、先ほど申しましたように保険料収入運用収入国庫負担ということで構成されておりまして、保険料収入等がございますので、その間は収支がバランスされているわけでございますし、御指摘のありましたその減少分につきましては将来にわたって補てんされるということでございます。おっしゃるように、当該年度では運用収入そのものは入ってこないわけでございますけれども、それは将来にわたって補てんされるということでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席委員長着席
  9. 戸田菊雄

    戸田委員 課長、僕の質問を聞いてください。十五年間でいずれにしても操作するのですよ。だから、それは十五年が過ぎた現在ではそういうことになりましょう、調整がとれるのですから。しかし、当初五十八年度で三千百八十億円、この減った分だけのそういった運用益その他を含めて額にしてどのくらいになるのか、これを聞いているのです。
  10. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 いま戸田委員おっしゃっておりますのは、三千百八十億円を引いたことによります五十八年度運用利子影響分はどのくらいか、こういうことでございますが、運用利子利子率をどのくらいに見るのかという問題がございますが、仮に六%ということで計算をいたしますと九十五億円ぐらいになります。したがいまして、両方合わせますと三千二百七十五億円、こういうことに相なっております。
  11. 戸田菊雄

    戸田委員 これは大蔵省に一応確かめたのですが、運用益は大体運用部資金でしょう。そうしますと、七・三%という利子なんですね。いまの計算で七・三%ですね、それで九十五億、こういうことになるのですね。
  12. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 私いま申し上げましたのは六%の計算でございます。七・三%で計算いたしますと百十六億ということになりますから、両方合わせますと三千二百九十六ということになるかと思います。ただ、現実の問題として運用利回りをどういうふうに見るのか、いま先生おっしゃいました七・三%というのは確かに運用部新規預託の分でございますが、これを平均的な利回りにいたしますと、そこのところが新規運用分と若干違ってくるという面もございます。
  13. 戸田菊雄

    戸田委員 厚生省あと四点ほど確かめておきたいのですが、その一つは、業務勘定通信専用料というのがあるのでありますが、これは五十七年度はゼロでありますが、五十八年度予定額でもって一億五千七百八十二万三千円、これはどういう内容のものでしょう。それが一点。  それから第二は、同じく三百一ページでありまするが、郵政事業特別会計への繰り入れ、五十八年度で十五億六千九百十三万二千円、こういうものがあるのですけれども、この内容。  それから、いまそれぞれ郵便貯金市中銀行等支払いになっていると思いまするから、その市中銀行郵便貯金の方での支払いの割り合い。件数がどのくらいあって、額にしてどのくらいかということをひとつ教えていただきたいと思うのです。
  14. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  ただいま御指摘のございました通信専用料でございますが、これは、社会保険庁でただいま都道府県社会保険事務所とのオンライン計画を実施しております。したがいまして、そのオンライン経費支払い分でございます。  それからさらに、郵政特別会計への繰り入れでございますが、ちょっと件数はただいま手元にございませんが、割合にいたしまして大体五五%程度だと思います。
  15. 戸田菊雄

    戸田委員 通信専用料はわかりましたが、郵政事業特別会計繰り入れは結局支払い手数料ですね。ところが、市中銀行の方も六〇%あるのだけれども、これには一切手数料は払っていないわけですね。こういう不平等な取り扱いがあるというのはどういうことなんですか。
  16. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  御指摘のように、郵政特別会計の方には予算手数料を払ってございますが、銀行分につきましてはサービス分野でお願いしているというのが実情でございます。
  17. 戸田菊雄

    戸田委員 確かに内容はわかるのですよ。受給者の要請に応じて、私は銀行取引をやっているからこの銀行へおろしてください、いや私は郵便局に近いからそこへおろしてください、いろいろ多様な意見があるでしょう。だから、それに応じて全体として支払いをやっていくわけですが、その場合に、国の機関の関係については一定手数料を払っておいて、一定額特別会計繰り入れて、市中銀行の場合は何か年金額を、どういう取り扱いになっているかわかりませんよ、その受給者によって、おれはそのまま積んでおくよという人もいるでしょうし、すぐおろす人もいるでしょう。だから、さまざまな取り扱いはありましょうけれども、まず何らかの形で私は、こういった手数料を片一方にやっているのですから、市中銀行関係についてもそういうものをやるならやるということにしてはどうかと思うのですが、その辺の見解はどうですか。同じ取り扱いにしろというのですよ。
  18. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃるように、受給者の方々の選択によりまして郵便局の利便な方あるいは銀行を選ぶ方さまざまでございます。それで私どもとしましては、郵政の方については先ほど来御答弁申し上げておるように予算計上させていただいておりますが、銀行の分につきましては銀行サイドサービス、また私どもの方もお願いいたしまして現在そういう取り扱いをさせていただいているというのが実情でございますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  19. 戸田菊雄

    戸田委員 この国民年金特会法については管理は厚生大臣ですから、大蔵省の権限ということで聞くわけにいかないのですね。だから、もし、いまの郵政特別会計一定手数料繰り入れをやっているならば、同じ扱いなんですから、市中銀行に対してもそういうことをやった方がいいのじゃないか。それを運用益でもって、たとえば預金をしているからそれを利ざや稼ぎでもって運用しなさい、その分でもうけてひとつ頼みますよという扱いはどうも私は納得しかねるのですね。これは所管外ですが、政務次官、どう考えますか。
  20. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 国と銀行との関係でございますけれども、国は、日銀国庫金を取り扱ってもらっておりますが、この関係では、日銀手数料は払わないで、日銀はそれが業務だということでやっていただいているわけであります。日銀代理店というのが各銀行ございますが、この代理店取り扱い手数料については、日銀お金を払いまして日銀からお金を払うという形になっているわけでございます。もうちょっと調べてみたいとは思いますけれども、全体の国庫金扱いということで払っておりますので、いまの先生指摘のような分も、まとめた形でございますが、広い意味で払っていると言えるかどうか、もっと調べてから確定的にお答えいたしたいと思いますが、そんな形になっております。
  21. 戸田菊雄

    戸田委員 どうも次長収入状況を見ればわかりますように、総体収入の最高を占めているのは保険料でしょう。だから、拠出者によって結局国民年金が賄われている。そういう状況の中で、国庫金だから日銀から通ずるものについては無手数料でいいのだということは、私ちょっと理解しにくいのですが、これは後でひとつ検討していただけませんか、この問題だけで時間を食うわけにいきませんから。それはどうでしょうか。
  22. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 仕組み等につきましてはよく勉強させていただきたいと思います。  ただ、全体といたしまして、物の考え方といたしましては、国民年金もすべてその財源は保険料と税金、国民の御負担によるものでございますので、できるだけ、事務費といいますか業務費につきましては安く、国民の御負担が低くなるような形で運営をしてまいりたい、こういう基本に立ちまして、いま先生指摘の問題につきましてはよく検討させていただきたいと存じます。
  23. 戸田菊雄

    戸田委員 最後に、厚生省、五十八年度国民年金加盟者をちょっと教えてくれますか。自営業者関係で何名、サラリーマン任意加入で何名、これを教えておいていただけませんか。それからもう一つ、いまの問題は後で見解を明確に私に出してください。
  24. 平松孝雄

    平松説明員 お答えいたします。  被保険者数でございますが、全体で千九百二十六万七千人、これは強制適用でございます。そのほかに、任意加入適用者が八百二十二万一千人でございます。あと自営業その他の仕分けは、恐縮でございますが、ちょっとございません。  以上でございます。
  25. 戸田菊雄

    戸田委員 これは課長自営業関係二千五十万人、サラリーマン七百五十万、総体二千八百万でしょう。これはわかるのではないですか。どうですか、間違っていますか。
  26. 平松孝雄

    平松説明員 ただいま申し上げました一千九百万人が自営業でございます。
  27. 戸田菊雄

    戸田委員 それで、法案中身に入りたいと思うのですが、今回のこの特会法特例法ですね。私は、財特法のときにも十九日に指摘をしたのですが、同じような法案提出内容になっていると思うのですね。国民年金一般会計から繰り入れる、いわゆる負担金平準化する、こういう法案なのですが、国民年金の方から説明はしているのですが、本当は、一般会計大幅赤字で苦しいから、いわば繰り入れ負担金を待ってほしい、こういうことだと思うのですが、この点はどうですか。
  28. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 この法案を御提出申し上げた趣旨は、いま先生がおっしゃいましたように、国民年金負担のあり方がやや不規則な形になっておりますので、合理的な調整措置を講じようということでございますけれども、しかし、その端緒といたしまして、一般的な財政状況が非常に悪い、厳しい財政状況のもとで予算をどういうふうに組んでいくかということが端緒になったということは、私どももそのようなことかと存じます。
  29. 戸田菊雄

    戸田委員 ついでにお伺いをしているのですが、これは「ファイナンス」三月号です。社会保障関係で七ページ以降に大蔵省主計担当官の小村さんが非常にりっぱな論文を掲載している。一読させていただきましたが、その中で、十一ページですけれども国民年金国庫負担金繰り入れ平準化について一定論文を書いている。大体大蔵省考えはこういうことなんでしょうが、これは次長、誤りありませんか。
  30. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 私、いま手元に持っておりませんので、確認いたすことができないわけでございますが、私も確かに一読いたしました。一読いたした限りにおいて誤りがないと思います。
  31. 戸田菊雄

    戸田委員 逐一質問をしてまいりますけれども政府の本法案提出の姿勢及び説明、こういうものを伺っていますと、きのうも大臣から説明があったわけでありますが、いわば財政運用の都合で金繰り上こういう法案をつくったというようなことではないかというふうに考えるのです。ですから、その法案中身は、一貫して会計処理に係るそういったものの技術的扱いだけになっておるのですが、こういう法案扱い方というのは、どうも私はひとつ疑問視しているのですが、その辺の見解はどうでしょう。
  32. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 確かにこの法案は、国民年金法という実体に入りませんで、国民年金特別会計法特例というような形で会計技術処理だけに焦点を合わせた形で構成されているわけでございます。しかし、そのことが合理的なことであることは、私先ほど申し上げたとおりなんでございます。  と申しますのは、国民年金の中に福祉年金拠出制年金とあることは御承知のとおりでございますが、福祉年金はこれからだんだん下がっていく、それから拠出制年金高齢化社会を迎えましてだんだんふえていくという形で、いまの総額合わせました国民年金国庫負担金というものがやや異常な姿になっておるわけでございますので、これを国民経済全体の動き及び今後の拠出制年金の増加の要素等考えまして、大体三%程度ということで平準的な国席負担金繰り入れができるようにというのが本法案趣旨でございます。確かに、先ほど申し上げましたように、この法案を御提出申し上げるに至った端緒といたしまして、五十八年度予算がきわめて厳しい財政状況であったということ、そのことを踏まえまして、予算要求段階からいたしますと、厚生省の方から御要求があったということが一つの契機になっていることは、そのとおりかと存じます。
  33. 戸田菊雄

    戸田委員 私は、この法案中身を検討しまして、どうしても国民年金法改正、これでいった方が妥当性を持っているのではないかという気がするわけです。  それは、国庫からの繰り入れ負担を決めている国民年金法の第六章「費用」の八十五条「国庫負担」、こういうことになって、国庫負担分については詳細に国民年金法で決められているわけですね。ですから、それを今度の法律の二条以下で変更しておるわけでしょう。それから最後の第五条、これは国民年金特会法の十六条、こういうことで読みかえ規定を設けているわけでしょう。だから、どうしても私はそういう意味合いから言って、中身を検討いたしますと年金法改正でいった方がむしろすっきりするのじゃないかという気がするのですが、この辺の見解はどうでしょう。
  34. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 今回の法律国民年金特別会計分野での調整になっているわけでございまして、いま先生おっしゃっておりますように実体法の方には触れていないわけでございます。これをむしろ実体法に触れた方がよろしいのじゃないかというお考えもあるかと存じます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕  しかし、現在、給付の三分の一を国庫負担するというのが拠出制年金における大原則でございますが、実体規定に踏み込みましてこれを変更するということになりますれば、国民年金の現在の設計そのものに立ち至ったことになりまして、国民年金の将来の受給関係影響してくるわけでございます。そのことは、いま国民年金に加入なさっていらっしゃいます国民皆様方の不安というものももう一つ出てくるわけでございます。私どもは、そこまですることはいまの段階では適当でないと判断をいたしておるわけでございます。そういうことでございますから、実体関係はあくまでもそのまま、つまり大原則でございます三分の一の負担を続けるわけでございます。ですから、国民年金に加入していらっしゃる国民皆様方も、安心して国民年金に継続して加入していただけるということでございます。  そこで、実体関係はそのままなのでございますけれども、国と国民年金特別会計との間の国の中のやりとりにつきましては国民年金特別会計法規定しているところでございますので、いま先生おっしゃいましたように、第二条で国民年金特別会計への繰り入れ特例を書いているわけでございます。負担関係につきましては、国民年金法八十五条の規定はさわってないわけでございます。  それから、先ほど先生指摘ございました、この法律の五条で国民年金特別会計法規定の読みかえもいたしてございますが、これも国民年金特別会計法規定の読みかえでございまして、実体関係にはさわっておらない。実体関係になぜさわらないかと申しますのは、先ほど八十五条のところで申しましたように、この法律全体といたしまして実体には触れずにおく。触れずにおくということは、国民年金制度全体の問題にかかわってくることでございますからして、そういうふうにいたしておらないということでございます。
  35. 戸田菊雄

    戸田委員 それから、もう一つ確かめておきたいと思うのですが、小村さんも言っておるのですけれども、「国民年金特別会計において運用収入が減少することになるが、それに相当する額は、七十二年度以降補てんすることとしている。」これはそのとおり。  まず、この十五年間という長い状況の中で、きのうもいろいろ論議があったようで、同僚議員から質問されて総理大臣や大蔵大臣も答弁しておったのですが、さしあたって八年ぐらいの中期経済展望というものをつくりましょう、こう言っているのですね。しかし、論議の過程を聞いても、一年すら見定めるのがなかなかむずかしい状況だというときに、十五年間もの長い状況の中でそういうものを八年目で初めて補てんしていくわけですから、そうすると、それまでに経済動向が大分変わってくるだろうと私は思うのですね。金利関係も変わる、あるいは物価上昇がどのくらいになるか、経済指標その他全体がなかなか見きわめがたいような状況、こういう経済の上に乗って前途十五年間を見定めて本問題の補てん策をやっていくといっても、これはずばり正当なものでやっていけましょうかね。その辺はどうでしょう。
  36. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 十五年間が長過ぎはしないかというお尋ねかと存じますが、おっしゃるように長いと申せば長いのだと思います。  ただ、年金と申しますものはきわめて長期な年数をもとにして設計をし、物を考えていくわけでございます。今後でございますれば、二十歳から働きまして六十歳で年金をもらうというようなことで物を考えてみれば四十年間でございまして、年金の一世代というのはそのくらい、三十年とか四十年とかいう長期をもとにしているわけでございます。そういう世界での話でございますから、十五年というのは、確かに長うございますけれども年金という世界におきましてはそれほど極端に長いものではないのではないかと思っております。  ちなみに、先ほどもちょっと申し上げましたけれども厚生省の方の予算要求端緒になりまして、私どもも御一緒に厚生省と相談をして話を詰めてまいったことでございますが、この厚生省の御要求でありますと十五年ではございませんで、さらに大きくて二十八年ぐらいのタームで物を考えようということだったのでございます。もう少しスムージングの物の考え方を徹底いたしまして十五年ということにいたしたわけでございますから、極端に長いというふうには考えてございません。  ただ、今後十五年間の財政運営を考えた場合に、財政の面からするとどうかという御指摘もあろうかと存じます。確かに、財政の面においては非常にむずかしい局面でございますからして、来年のことですらなかなか容易な情勢でございません。そういったときに、十五年間のお金のやりとりをどうやってやっていくのかということでございますけれども、私どもは、この法律案を国会で御承認いただきますれば、国民年金特別会計法特例になるわけでございますけれども、この法律案を与件といたしまして、その上に乗った形で財政運営をしっかりやってまいりたいと考えております。
  37. 戸田菊雄

    戸田委員 次長、ずばり言って十五年間という根拠は何ですか。これは、厚生省にも見解があったらひとつお聞かせ願いたい。
  38. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 今後の国民年金国庫負担考えます場合に、その国庫負担金を円滑に繰り入れていけるようなことを考えなければならないわけでございます。  そこで、先ほども申し上げましたが、この法案による措置考える前の段階国民年金国庫負担金がどうなるかということを考えてまいりますと、今後六十四年まではずっと下がってまいりますが、六十四年以降は素直な形で年率でございますと大体二%程度ふえていくわけでございます。  それからもう一つ、全体の国民経済がどうなるかということについて、なかなかむずかしいわけでございますけれども、ことしの一月に出されました経済審議会の御報告では、今後三ないし四%の経済成長というものがあり得るのではないか、こういう御見解があるわけでございます。  その辺のところを考えまして、五十八年度以降毎年三%程度の伸びで設計をしてみたらどうか。三%程度の伸びで設計いたしますと、六十四年までは減額することになりまして、六十五年度以降増額になるわけでございますが、その線を機械的に計算をしてみますと十五年でスムーズに着地をすることになったわけでございます。十五年が先にあるということでございませんで、三%程度の伸びを今後していくということで、もとの曲線と今度の線とスムーズにくっつくところが事後的に言いますと十五年になった、こういうことでございます。
  39. 平松孝雄

    平松説明員 ただいまの十五年間の考え方につきましては、ただいま大蔵省からお答えいたした内容と全く同じでございます。
  40. 戸田菊雄

    戸田委員 次長、非常に慎重に対処されていることは私もわかるのです。しかし窪田さんも、結局五十八年度繰り入れ減額三千百八十億円であり、五十九年度以降物価スライド等による年金額の改定措置が講ぜられた場合には所要の調整措置を講じます、こう言っているのですね。だから、十五年間やって平準化になだらかに三%増でいきますが、同時に二段構え方式でこういうことも考えておかなくちゃいかぬだろうというのは、経済動向その他が変動ありと見ているからと思うのです。  だから、そういうことになりますと、十五年間の長期にわたるものですから適切に的を射た措置はなかなかむずかしいと思うのですが、こういった慎重な態度で対処していくということは私も必要だと思います。これが今回五十八年度では臨調その他の答申もあって、物価スライド制、物価上昇が大体二・七%ということからカットされましたね。本来なら、この法律上五%以上になっていますけれども、しかし、今後の物価、経済動向その他を考えますと、やはりそういうことはあり得ると思うのです。そういう場合には適切に調整していくわけですね。これはやりますね。
  41. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 年金額の改定についてお尋ねでございますが、先生おっしゃいますように、法律では五%を超えたときに物価の変動率に応じて年金額を改定するようにということでございました。そういう法律がございますので、その法律に即して今後は対処してまいりたいと存じます。  ことし、五十八年度の場合には、御承知のように五%に満たず、かつ五%に満たないときにも年金額の改定をしたことはございますけれども、本年の場合には人事院勧告もこれを見送ったという経緯もございまして、したがいまして、恩給につきましても年額の改定はしてないというバランスもございますものですから、年金につきましては年額改定を見送った次第でございます。
  42. 戸田菊雄

    戸田委員 それから、五十六年十月に行革特別措置法をつくって厚生年金国庫負担等が削られたわけです。これは財政再建期間中ということになっておりましたが、五十九年度までの赤字国債脱却は御破算になったわけですから、結局約束は全然なされないままにこういう状況になったわけですが、本来なら、本問題等については社会保障制度審議会等に諮問をいたしまして答申を得て、それで改定に踏み切るというのが順序じゃないかと思いますが、その辺の手続はどうですか。
  43. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 この種のと申しますか、こういった実体関係でございません会計処理的な法案につきまして社会保障制度審議会にかけるかかけないか、御審議をいただくかどうかという問題につきましては、実は前から問題がございまして、昭和四十三年の四月に当大蔵委員会で御議論があった経緯がございます。  そのときに、当時の木村国務大臣から御答弁がございまして、実体関係法案につきましては社会保障に関する立法に該当するので社会保障制度審議会にお諮り申し上げるけれども会計手続に関するものにつきましては社会保障に関する立法ではございませんので意見を求めた前例がないのでございます、こういう御答弁がございまして、ただ、そうは申しましても、事前に事実上御相談するというようなことは配慮した方がいいという御答弁がございました。  したがいまして、この当委員会での木村国務大臣の御答弁を踏まえまして、私どもも、今回、社会保障制度審議会には御趣旨を御説明し、一月二十五日には厚生省から、二月一日には私ども、まる一日伺いまして十分御説明を申し上げ、また御質問も多々承りまして御答弁も申し上げた次第でございます。それで社会保障制度審議会は御了承いただいていると考えております。
  44. 戸田菊雄

    戸田委員 大臣が三十分後に入る、こういうことですが、約束はどうですか。
  45. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 できるだけ速やかに来てもらうようにいたします。     〔中西(啓)委員長代理退席委員長着席
  46. 森美秀

    森委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  47. 森美秀

    森委員長 速記を始めてください。  戸田君。
  48. 戸田菊雄

    戸田委員 先ほど次長の答弁もあったわけですが、しかし国民年金は、自営業者あるいは家庭の主婦というような者が加入をして、いわゆる国民年金の拠出、これが中心でやっておられるわけですね。そういう中で、国民年金法の八十五条に基づいて、政府一定国庫負担をやりますよ、こういう約束をしているわけですから、こういうことをあらかじめ十分認識の上で加入しておるわけですから、こういった国民の意向というものを無視した形で今回のような特例措置をとられるということは、国民の側から見てもどうも納得いきかねるのじゃないかなというふうに私は考えるのですが、これはどうですか。
  49. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 先生指摘のような御心配もあるかと存じまして、先ほども申し上げましたが、国民年金法実体関係負担関係にはさわらずに三分の一の国庫負担は引き続いていたします、ただ、国庫負担はいたしますが、その繰り入れの方法につきましては特例を設けるという形で会計技術的な処理をいたしているわけでございます。
  50. 戸田菊雄

    戸田委員 大臣が来られましたが、今回のこの特別法設置による手続上の問題ですね。社会保障制度審議会にも諮問も何もしていない。それから、いま言われましたように、国民年金法の八十五条の国庫負担等についてはこういうふうにやりますという約束があった。しかし、今回はそういうものを全然無視をして、それで平準化という名のもとに今回の特例法設置をしたということは、これは大臣どういう見解を持っていますか。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題につきまして、基本的にはいわゆる国庫負担平準化ということの工夫をしたわけであります。  したがって、その意味においては、いわゆる経理処理というものに関する事項ということになるわけでありますが、基本的な考え方として、いま御指摘のように、国民には国民年金法という基礎法に基づいて絶えず期待感、期待権というものもあろうかと思いますので、そういう御議論というものは私どももいただける議論だと思っておりますが、私どものいまの立場から申しますならば、平準化のためのいわば会計経理に関する事項というふうな考え方からお願いをしておるということであります。
  52. 戸田菊雄

    戸田委員 いままでの論議でも、一般会計は六十年代に向かってもっと苦しくなってくるだろうという気がするわけです。これは大蔵省財務当局が一番知っていると私は思うのです。そういうことでありますが、たとえば国債の利払いという問題一つとらえてみても、これは大変な状況なんですね。それから自衛隊の正面装備費、このツケ払いが六十年代に重くのしかかってくると思うのですね。  そこで、防衛庁が来ていると思うのですが、五十八年度の後年度負担、それから五六中期業務による後年度負担はどのくらいですか、ちょっと説明してください。
  53. 源氏田重義

    ○源氏田説明員 お答えいたします。  五十八年度予算で計上いたしました自衛隊の正面装備の後年度負担額は一兆四千六百四十六億円でございます。それからそれ以外の後方の後年度負担もございますので、総額でいきますと一兆九千七百五十億円ということになります。
  54. 宝珠山昇

    ○宝珠山説明員 御説明いたします。  五六中業の後年度負担についての御質問でございますが、五六中業そのものは防衛庁の概算要求の資料というのが中心でございまして、これが各年度予算概算要求のシーリングとかあるいは予算を拘束するという性格のものではございません。しかし、私どものところで後年度負担を含めて算定しております概略のところで申し上げますと、五カ年間の五十七年度価格での契約総額は約五兆三千億と見積もっておりますが、このうち、六十三年度以降の四カ年間にわたると算定されますものは、大体二兆一千億から二兆三千億円と試算いたしているところでございます。
  55. 戸田菊雄

    戸田委員 いま防衛庁から説明があったように、防衛庁正面装備費、こういう理由で五十八年度における後年度負担は、航空機購入で七千六百六十億円、艦船建造四千二百五十九億円、弾薬購入千二百五十八億円、その他千四百六十八億円、合計一兆四千六百四十六億円、これは五十八年度だけで。  それから五六中業の経費の概要、これによっていま説明を受けましたけれども、五十七年度以前のものだけで六十一年度、六十二年度までにこれで約四兆四千億ないし四兆六千億、これは歳出ベースです。さらに、五六中業新規事業として六十二年度までに三兆円ないし三兆二千億、六十三年度以降二兆三千億ないし二兆一千億、合わせて五兆三千億、このくらいの負担が出てくるのですね。  それに加えて、国債の利払いだけ見ましても、五十八年度以降七十一年度までの大蔵省の資料によって、大体六十年度以降七十一年度までの間は十兆円ないし十一兆円、こういう財政状況ですね。このくらいこれから多額の財源調達をやっていかなければ、単にこの国債の利払いと正面装備のツケ払い、これだけ考えても膨大な数になるのではないでしょうか。この辺の解決策は、大臣、一体どうお考えでしょうか。
  56. 竹下登

    ○竹下国務大臣 御指摘の懸念は確かにございます。したがって、私どもとしては、いまおっしゃいますところのいわゆる財政の中期試算でお示しいたしましたものは、一定の仮定のもとに将来の姿を投影したというものではございますものの、現実、いま御指摘になりましたとおり、いわゆる歳出歳入ギャップが要調整額として計上されておるわけです。その上にも、いま御指摘にありました防衛費の問題についてのいわば義務的後年度負担ということに対する御指摘であります。それで、やはり基本的にはこの財政改革の考え方、これに基づきまして、そして歳出歳入構造自体を新たな時代に即応した物の考え方で見直していくということが、これに対応していく基本的な姿勢であるというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  57. 戸田菊雄

    戸田委員 結局、こういった負担のしわ寄せ、これは福祉とか文教、こういうところに大体しわ寄せされているようですね。ですから、大蔵省説明によりましても、大体今年度社会保障関係、これは五十八年度要求前の段階厚生省所管で約八千億円当然増を見込まれておりましたが、概算要求段階で当然増を含めて総額約一千五百億円の増加に圧縮したわけでしょう。なおかつ、この決定ベースの段階になって、四百四十六億円にまた増加圧縮した、こういう状況ですね。ですから、そういう中でこの平準化という問題も出てきているわけですね。だから、結局そういうところに多くのしわ寄せがいっている。文教費関係を見てもそうなんですね。だから結局、このままいけば、歳出削減という名目のもとに、臨調という大義名分の上に立って、予算のしわ寄せは全部そういうところへいかざるを得ない。これは単に五十八年度だけではなくて、五十九年度もそういう状況になっていくだろうと思うのです。こういうことでは大臣、どうでしょう、今後国民の反感を買うということになりはしないでしょうか。
  58. 竹下登

    ○竹下国務大臣 戸田委員の立場から立ったその御議論というのは、私は、それなりに傾聴すべき御議論だと思っております。結局は政策選択の問題、こういうことになろうかと思うのであります。  それで、これは、だからいいというわけのものでもございませんが、たまたま二十五年前の予算から今日の予算を見れば、全体の予算規模は四十倍、社会保障は七十七倍ですか、防衛費は十八・八倍というようなこと等を考えてみると、現段階における伸び率だけでもって総体の国政のあり方なり国民生活そのものを律するのみが当を得た指摘であるというふうには必ずしも考えられない。政策選択の問題でございますものの、やはりいま御指摘のように、特定の経費が突出することによって、いわば福祉とか文教とか、そういうものが後退するという印象そのものを与えないように、具体的な施策として、一つ一つについてはこれからも念入りに検討をして、予算編成の過程において調整していかなければならない課題であるというふうに理解をいたしております。
  59. 戸田菊雄

    戸田委員 そこで、きのうも本委員会で論議があったのですが、政府が今回提示をしました財政中期試算ですね、きのう総理の答弁によりますと、大体八年ぐらいの中期展望をやりましょう、いま指示をして検討中だ、こういうことを言われましたが、やはりその土台案になるのは、かつて国会に提出をされました財政中期試算、こういうものになるのじゃないかと思うのですが、このA、B、Cの三つの中で、どれが一番実行可能と大臣としては考えておられるか、その辺の見解を聞かしていただきたいと思う。
  60. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きのう以来、本委員会において総理からお答え申し上げておりますのは、経済審議会で今後の経済の展望なり見通しなりという問題については八年というものを一つの基準として御審議をお願いした、こういうことを申し上げておることはそのとおりであります。  したがって、これに伴う財政ということになりますと、これまた、これと整合性を持ってやらなければならない課題であります。したがって、これから鋭意検討するわけですが、お示しいたしました七、五、三のうちの七が、いわばこの八年計画と脱却年度七年というのがたまたましりが一緒になるわけでございます。  したがって、その意味においてはそれなりの一つの数値であるというふうに考えておるわけでございますけれども、やはりこの中期試算そのものも、御議論の中で、言ってみれば一つの仮定計算に基づいてやっておるから、もっともっと精査したものでわれわれに審議の手がかりとして示すべきではないか、こういう御議論もございますので、さらに後年度負担推計という形においてできるだけ御要望に沿うようなものを、今後も精査して一つの手がかりとしてお示しをするとともに、やはりこれを念頭に置いて私どもも、これからになりますと五十九年度予算編成、まあ五十八年度予算というのは、率直に申しまして補正後に比して一兆円の減額をした。それでも従来の伸び率から見れば財政改革への一歩を踏み出したというような考え方の上に立っておりますものの、今後の課題として財政再建ということを念頭に置きながら、国会等のいろいろな議論を参考にして政策遂行に努めていかなければならないというふうに基本認識を持っております。
  61. 戸田菊雄

    戸田委員 結局、仮定計算というものを前提にしましても、五十九年度−六十一年度で四兆円ないし十一兆円財源不足、要調整額、こういうものが出てくるわけですが、こういう解消策は、大臣はどういう方向で考えておりますか。
  62. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この問題につきましては、仮に仮定計算とはいえ、中期試算というものがもちろん念頭にあるわけでございますから、これのギャップであるこの要調整額をどういうふうに対応していくかという基本的な問題になりますと、まずは私は、歳出構造そのものにメスを入れて、時代の要請に沿って、このことは国庫負担の範疇に入るものであるかどうか、個人あるいは家庭の努力に帰すべきものではないかとか、あるいはまた、企業の自助努力によって対応すべきものではないか、また国と地方の分野の中において調整できるものがあるかないか、こういうようなことを、その制度、政策の根源にまでさかのぼって、まずは歳出カットということで考えていかなければならぬ問題であるというふうに考えておるところでございます。  そこで、こういう国会の問答等を通じながら、やはり現行の制度、施策というものをどうしても維持するためには負担増を求めなければならぬということになった場合には、負担する方も国民、受益者もまた国民でございますので、すべての制度、施策は国民の選択の集積であるという認識の上に立って、国会の議論等を通じながら政策選択の優先度の中にそれを位置づけていかなければならない課題である。したがって、単純に負担増、それに伴う増税あるいはまた赤字国債の増発というものを念頭に置きながら対応していくべきものではないと考えております。
  63. 戸田菊雄

    戸田委員 いまの大臣の答弁を伺いますと、増税か歳出削減か国債増発かというところに目標を置いてやるべきじゃないということになりますると、結局それらの組み合わせということになりますか、どうですか。
  64. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、国民の選択の集積がそこに存在するならば、組み合わせというのも一つの物の考え方だろうと思っております。しかし、組み合わせというものも、負担増あるいは公債発行というものがある限りにおいては、健全な姿ですんなり国民皆様方に受け入れられるものではない。だから、まずは国民皆様方には、その施策、制度の根源にまでさかのぼって歳出の削減を徹底した上で、国民皆様方との問答の中でその選択の方向を見出すべきものではないか。だから、初めから組み合わせという考え方も、ある意味においては安易な手法として念頭には置いておかなければならない課題であると考えております。
  65. 戸田菊雄

    戸田委員 もう二点ほどで終わりますが、厚生省、防衛庁、結構です。  今回の国民年金負担金の先送り、私は、これは決して本当の意味での財政再建にはなっていないと思うのです。単に先送りをしただけであって、そして十五年間の中で調整をするだけであって役に立たないんじゃないか、こういうふうに考えておりまするから、こういったやり方を続けていく限りにおいては、決して財政再建の名に値するようなものにはなっていかぬだろう。何か抜本的な改善策をとる必要があるのじゃないだろうか。  そういうことになれば、私たちの考えからいけば、どうしてもやはり防衛費あるいは大企業向けの補助金など、そういう状況のものを一回見直しをしていく必要があるのじゃないだろうか。それから、税制の面でも歳入部面、これについてももう少し税の公平という立場に立って、根本的に税制改善を求めて歳入増を図るというようなことをやらないと、本当の意味での財政再建に値するものにはなってこないのじゃないかという気がいたしますが、この辺はどうですか。
  66. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回のこの措置というものは、基本的に全体としての財政事情あるいは財政再建と直接トタで結びつく措置というよりは、やはり私は、国民年金特会への国庫負担金繰り入れの当面の負担は大きいが、六十四年度までは減少してその後は増加していくという、言ってみれば不規則な姿を中長期的に平準化するというような考え方でございますので、繰り戻しも無理のない姿となっておるわけでございます。  しかしながら、それはそれといたしまして、今後のこの年金財政そのものを中長期的に見てみましても、にわかに定量的な見直しを策定するということは困難でございますけれども、これはいろいろな角度から検討すべき課題がたくさん残されております。したがいまして、これらの問題についても、国会の議論等を通じながら、国民の選択の意思はどこにあるかということを見きわめながら対応していくべき課題である。したがって、この措置そのものは、戸田委員おっしゃいますように、財政再建という目から見た場合の措置としては決して適切なものでないという御意見は、私どもも素直にちょうだいしてもいい御議論ではなかろうかと考えております。
  67. 戸田菊雄

    戸田委員 終わります。ありがとうございました。
  68. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  69. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、引き続き伺ってまいりたいと思います。  公的年金は八つございますけれども、いま国民年金の制度ができまして国民の一人一人がいずれかの年金に加入するということになっているわけですが、この皆年金の制度それから公的年金という性格から、長い期間加入をし保険料を積み上げてくるわけでありますから、年金に対する既得権、期待権というのは非常に大きなものがあると思いますし、これは断じて揺らぐようなことがあってはならないと思います。特に、時代の推移とともに給付の水準がどんどん下げられる、そういう事態は避けなければならないと思いますし、また、負担の面においても期待権というのは厳然と私はあるだろうと思うのです。  この年金の既得権、期待権についてどういうふうにお考えでしょうか。厚生省が来ていれば、厚生省から聞きましょうか。
  70. 山口剛彦

    ○山口説明員 ただいま先生お話がございましたように、公的年金国民の皆さんの老後の生活設計を立てていく上できわめて重要な比重を占めておりますし、また、現実の老後の生活の中でも大きな役割りを果たしてきているものであります。したがいまして、私どもも、年金制度の改革に当たりましては、御指摘のございました年金に対する既得権、期待権というものをできるだけ尊重して改革に取り組んでまいらなければならないと考えております。  ただ一方で、年金制度は経済、社会の状況に応じた適切な対応もしてまいらなければなりませんので、そういった社会、経済情勢に応じた制度改革の中で期待権といったものをどのように尊重して具体的な施策に反映させていくかということについては、また今後の年金改革の議論の中で十分国民の皆様の御意見等もお伺いをしながら具体的な施策を講じていく必要があると考えております。
  71. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 年金は社会保険の大事な柱でありますし、老後生活の安定のために重大な期待がかけられておるという状況だと思うのです。政府も、国民のこの期待には断じてこたえていかなければならないと思うのです。  そこで、最近の国の財政事情を背景にして、年金財政の巨大な圧力といいますか、年金加入者に対して非常に不安を抱かせるような傾向がずっとこのところあるわけですね。五十六年の改正によりまして、五十七年から五十九年までの三年間、各種公的年金の四分の一カットというのをやりました。厚生年金は、国庫補助が給付時二〇%、これを四分の一カット。また、共済年金の方にしましても、国共済が拠出時一五・八五に対して四分の一カット。地方公務員の共済も同じ。私学共済も、また農林漁業に関しても同じ。公企体三公社の分についても同様。船員保険についても、四分の一カットを目途としてということで四分の〇・五というのが現実であります。  こう見てみますと、五十七年度で千八百三十億円カット、五十八年度が二千二百億、五十九年度が二千九百億、こういうカットをしているわけですね。国年に関してはこの段階で漏れている。そんなことからか、いずれにしても国庫補助をカットという発想から、国年、給付時三分の一、こう決まっているものに対しまして、平準化という名のもとに六年間にわたって一兆二千億ですから、単純計算で一年に二千億、このカットがいまなされようとしているのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  72. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 今回御提案申し上げております国民年金平準化に関する法律でございますが、これは、その法文を見てもおわかりいただけますように、五十八年度から六十三年度までは減額いたしますけれども、その減額した部分は六十五年以降七十二年度までに過不足なく戻していくわけでございますし、かつ、その間におきます運用収入の減少につきましても、七十二年度以降平準化趣旨にのっとりましてこれも満額出していくわけでございますから、計算上は全く操作をいたしませんのと同じような実質的な状況になるわけでございます。でございますので、実質的には国民年金特別会計への国庫負担に何ら支障がない、影響がない、こういう形で設計をしてございますので、その辺の御心配はないのではなかろうか、こういうふうに思っております。
  73. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 確かに、法案説明のとおり、特会の中での操作になっているわけですね。五十八年から六十三年までの六年間、これは国庫補助を打ち切る形でありますね。その分については六十五年から七十二年までの八年かけて返すという形になっているわけです。確かに返すと明記されているわけです。  しかし、国庫補助の水準をここで六年にわたってカットしているという事実は、やはり事実だと思うのですね。そこからくるものというのは、給付水準は下がりこそすれ絶対上がらないということでありますし、その意味では年金に対する信頼感というのがやはり揺らいでくることになりかねないわけでありますし、これは本来あるべきものではない。また、財政再建という立場からいって、平準化しない方がずっと財政再建には役立つ、これはもう後年度にツケを送ってしまうのですから、そう言えると思うのですけれども大臣、いかがですか。
  74. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 カットという言葉でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、実体関係はカットしてないわけでございます。全然前と同じなわけでございます。その中の会計技術処理の問題といたしまして、一般会計特別会計との間のお金のやりとりについての特例を設ける、こういうことでございますので、先ほど申し上げましたように、国民国民年金に対する信頼感というものを損わないように配慮をいたしているつもりでございます。  それから、この制度をしない方がかえっていいのではないか、こういうようなお話でございますが、この制度をしないということになりますれば、五十八年度、あるいは五十九年度もそうなるのかもしれませんが、お金そのものがなかなかない、計算上全体の財政が厳しいわけでございますから、かえって国民の信頼感を失わせることになりはしないか。この法律で各年度におきます減額分それからプラス分、きちんとしておるわけでございますから、きちんとしたものを国会の御承認を得まして国民にお示しした方が、会計処理の観点だけの話でございますから国民の御信頼を損うこともない、こういうふうに判断をいたしているわけでございます。
  75. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 だから、宍倉さんの言われる説明は、赤字国債で本来出すところを、会計処理において出さないんで済んでいるんだ、こういうふうに受け取れるのですよ。  要するに、この六年間、平準化という名のもとにこの減額した分が後ろへ回っていくわけですよ、八年。しかも、この七十二年に至る過程というのは、国債の要償還額たるや大変な金額に上っている時期で、どういう形でこの八年の手当てをしていくのか。これは、八年の手当ては明記されているけれども、現実の問題としてそんなことができるのか、納得できる説明が欲しいですね。もし国民の信頼を損ねないんだというのであれば、いずれにしても、七十二年までの八年間というのは大変ですよ。これはどういう説明をなさいますか。
  76. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 おっしゃいますように、七十二年まで大変でございます。七十二年を過ぎてからもあるいは大変かもしれません。  でございますから、先ほど大臣からもお話がございましたように、私どもといたしましては、五十八年度も一生懸命やったわけでございますが、五十九年度以降も財政としてどういった支出をすることが国民の御承認を得られるのか。それは、国と家庭との間の関係、国と企業との間の関係あるいは国と地方との間の関係におきまして、財政の出ていく分野、守備範囲と申しますか、そういったものをもう一遍根底から見直して財政構造をまず直していきたい、こういうふうに考えて努力をしてまいるわけでございます。  それで七十二年まで、それでは具体的にどうかというようなお話もあろうかと思いますが、これは、なかなか具体的に定量的に申し上げることは困難であるということにつきましては御理解いただけるかと存じます。私どもの今後の努力に対しまして、何とぞ御支援、御鞭撻のほどをお願い申し上げたいと存じます。
  77. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 だから私は、平準化という名のもとに赤字国債、隠れてこんなところにあった、一兆二千億、六年間にわたって平均年二千億円ですね。もっと正々堂々と表に出すべきものであって、その意味で国年を弱めていくような傾向というのはあるべき姿ではないと私は思うのです。  いずれにしても、国民年金も厚生年金年金財政計算をやりますと先が見えているわけですね。五十五年の年金保険財政再計算の際に収支試算をA、B、Cと三つ出されていますけれども、それによりますと、国年が昭和七十五年、厚年が九十年に、年度末積立金は黒字であっても単年度においては収支が赤字に転落する、こんな計算が実はあるわけです。  そこで、公的年金の根本的な見直しに取り組まなければならないということになっておると思うのです。少なくとも時代の移り変わりによって受給者が木の葉に乗ったような翻弄のされ方をする、こんなことはあってはならないと思いますし、今回のようにツケの先送りは私はやるべきじゃないと思うのですね。厚生大臣年金担当大臣として給付水準の確保のためにがんばろうという姿勢が見えるのですけれども、大蔵大臣の立場というものはどうなのでしょうか。給付あるいは負担の期待権、既得権をどのように守ろうとされているのでしょうか、この際お考えを伺いたいと思うのです。
  78. 竹下登

    ○竹下国務大臣 あらゆる施策、制度、なかんずく法律に基づく特に年金制度ということになりますと、既得権あるいは期待権は十分尊重していかなければならぬ問題であるという基本認識は持っております。  そこで、年金問題についてとりあえず私どもが責任ある立場で対応しなければならぬのがいわゆる公社と国家公務員共済との統合の問題であります。これは、言ってみれば各種年金間の公平、負担給付、いろいろな問題から、それの調整の第一段の措置として行った。やはり将来的には年金担当大臣を中心としまして一つの長期のビジョンが打ち出されることによって、国民皆様方の不安とかそういうものが解消されていく大きな政策手段ではないかということを考えてみますと、いま鋭意年金担当大臣を中心として将来のビジョンについて検討がなされておるところであります。  財政当局として考えますときに、確かに二十五年前と比較いたしましても、お互いの平均寿命は男性でたしか八・何歳、女性で十歳でございますか延びております。また昭和二十五年を見ると、たしか男性でまだ五十九・六歳くらいでございますから私が平均寿命くらいでございますが、その意味においてはいま大変高くなっております。そして老齢人口自身も五百十万からいまたしか千百万くらいでございますか、そういうふえ方をしておりますので、それが後年度納税者に大きな負担をもたらす結果になりますから、そういう負担と既得権あるいは期待権との調整をどのところでとっていくかということが総合的に勘案される大きな基本問題となるではないかというふうに認識をいたしております。
  79. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 負担給付のあり方については、臨調答申でも見直し、長期展望に立った安定的な基盤をつくらなければいけないということですね。  それで現在、共済の方の積立金の自主運用という形で、国共済の一部を除いて自主運用がなされています。厚生年金国民年金の場合の積立金、これは保険者が国だということで、これまで資金運用部資金の中に繰り入れられてきた。財政上、国年の先が見えている以上は、これはもっと強いものに改めなければならない、基盤をしっかりしたものにする、負担も見直しをしようというそのやさきに、有利運用ができないというのは一体どういうことなのか。有利運用、もっと言えば自主運用への道を切り開いて負担のあり方について検討する、その前提がここにあるのじゃないかと私は思うのですが、大蔵省として、その道は断じて開かせないぞという根拠みたいなものがあるのだったら、ひとつ聞かしてもらいたいのです。
  80. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる財政投融資という問題、財投の原資となります郵貯や年金資金については、それぞれに有利運用の要請があるが、運用面では資源の適正な配分等公共性の要請が優先するものと考えられておって、現在、これを原資から運用を通じた一つのシステムとして調和を図っているのが資金運用部である。したがって、原資所管省庁等から有利運用の要請が強く出されてはいるものの、公共的な性格を有する資金をできるだけ有効かつ整合的に配分するためには、統合運用の現状は維持されるべきである。これは、たまたま行政改革に関する第五次答申の「財政投融資」のところの抜粋を申し上げたわけでございます。  要は、この問題というのは、いわば国の責任において集めた金とでも申しましょうか、そういう各種の資金は、資金運用部資金法によって統合一元的に管理運用されるのが理想であると考えております。それはまた、政策選択の中で重要性に応じてバランスのとれた資金配分になっていくわけです。そうしてそのことは、総体的に見たら財政金融政策の整合性というものも確保されるわけでございます。しかし、少なくともその特別会計なりあるいは集める努力をしたりする方の側から言えば、集めた努力をしたものがより有利な運用を自分でやっていくという要請が出てくるというのも、一つの必然性があるというふうに私は思っておるわけであります。  そこで、自主運用問題というのといわゆる統合一元化運用というものは、よく百年戦争だと言われるような問題を間々惹起するわけでございますが、結局、年金資金の運用というものは、年金制度が巨額の国庫負担を伴う国営の制度であるというようなことから考えましたならば、現在の統合運用の枠組みの中で、運用利回りの観点だけでなく、福祉政策とかそういう年金制度全体の問題としてこれに対応していくべきではないか。  もう一つは、必ずしも理屈になりませんが、統合運用、一元化運用というものは、公共性を踏まえながらも、かつ安全有利という点については一つの熟練の度合いも評価していただかなければならぬ問題ではないかなと考えております。
  81. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 わかるのです。大臣おっしゃるお話、よくわかるのですが、五十七年度で厚生年金が三十六兆三千億、国民年金が二兆九千億、合わせて四十兆ですね。資金運用部運用利回りを見てみますと、現在七・三。これをもし〇・五%有利運用ができたとすればかなりいいのですね。ですから十年長期国債、いま七・七六六ですから、もし国債を買い支えるという形の有利運用ができるとすれば、ここにまた差があるわけですね。〇・一%上がっただけで四百億から違う。そうすると、これはもう二千億からの違いが出てくるわけですから、有利運用の道というのは検討を要する、一考を要するものだと思うのです。たとえば国債を買い支えるという意味での有利運用という道がないものかどうか、これを最後に伺って終わりたいと思います。
  82. 竹下登

    ○竹下国務大臣 この有利運用の場合に、極端な例から言えば、土地を取得しておけばいいではないかとかあるいは金を取得したらいいではないかとか、いろいろな議論が間々ございますが、いまの鳥居委員の御議論は国債を例に出しておっしゃって、これは堅実性のある運用の一つであると私も思っております。  しかしながら、国債というものが、そのときの金融市場において、条件というものが現在は完全なフリーとは言えません、ネゴによって決まるわけでございますけれども、変動性もございますし、国債自体が市中消化という原則のもとに立って、しかも市中金融にあるいは金利が上がっていくような状態をもたらすような状態になってはならないという国債管理政策の面から見れば、これに対応するのが資金運用部一つの使命としてそれに対応して、言ってみれば調整弁の役割りを果たしておる。だから、間接的には国債というものに対してもそれなりの関連性があるわけでございますが、有利運用そのものから考えて、現在の国債の条件から考えての鳥居委員の議論というものは一応成り立つ議論でありますから、それは部内にあって整合性のある統一運用の中で有利運用というものを専門家が考えていくのが必要ではないか、有利運用そのものは努力すべき目標であるということは、私は意見が一致いたしております。
  83. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ありがとうございました。
  84. 森美秀

  85. 小沢和秋

    小沢(和)委員 まず最初に、大臣に端的にお尋ねしますけれども、この法案は、現在の財政の破局的な状態の中で一般会計をやりくりするために国民年金特別会計への国庫負担繰り入れを当面一部削る、そういうことでやりくりをしようという法案だというふうに理解をしておりますけれども、それでいいでしょうか。
  86. 竹下登

    ○竹下国務大臣 一つの角度から見ればやりくり法案、しかし私どもの場合は、いわば平準化措置、だから原則的に言えば、いわば会計処理上の問題というふうな認識の上に立っているわけでございます。
  87. 小沢和秋

    小沢(和)委員 確かに、平準化という角度から見ればそういうことは言えないことはないと思うのですが、財政的に余裕があるときだったら、そういう大きな国家財政の中で局部的にでこぼこがかなり激しく起こってもこれを吸収していくことはできるわけですね。それができないからこういうふうなやりくりをするということで、これはやはり基本的には、いま財政が非常に破局的な状態にある中でもうにっちもさっちもいかなくなって、こういうやりくりでもしなければならないようになったということじゃないのですか。
  88. 竹下登

    ○竹下国務大臣 われわれの側から見ますと、あるいはこういう平準化措置というのは、財政運営を担当する者としてはもっと前から対応して考えるべきものであったかもしらぬという考えもございます。
  89. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それで心配になるのは、これだけ四苦八苦して先送りするわけですね。そうすると、昭和六十年から赤字国債の本格的な償還が始まる、先ほどもそのことが議論になったと思いますが、その段階になってくると、財政の苦しさは一層深刻になっているんじゃないだろうか。そういうときに、この先送りをしたことによって元本だけじゃなしにさらに利子も返していかなければいかぬというようなことになると、それが果たして保証されるのかということですね。その保証が十分でないということになれば、国民年金そのものに対する信頼まで揺らぐというのは私もそう思うわけですけれども、その辺の見通しについてどういうふうにお考えでしょうか。
  90. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 財政が厳しいということは確かでございますし、それから国債の償還期に当たるから厳しくなるだろうということも予想されるわけでございますが、しかし、いつまでも厳しいというわけにはいかないわけでございます。国の財政はできるだけ早く対応力を回復していかなければならないわけでございますから、六十四年、五年、まだ相当先でございます、先ほども申し上げましたように財政構造にメスを入れたその改革をいまもやり、また今後も精力的にやっていこうとするわけでございますから、六十四、五年が苦しいことは事実かと存じますけれども、いまよりも苦しくなっているようでは、なかなか特例公債脱却というわけにもまいらないわけでございますから、その間私どもとしては一歩一歩努力をしてまいりたい、こういうふうに御答弁申し上げているわけでございます。  それで、この平準化措置によりまして六十三年まで減額した分を六十五年以降加算していくわけでございますけれども、この加算額、減算額につきましては、それぞれ御提出申し上げております法律案の中で確定的な金額としてお出し申し上げており、そして、そのことにつきまして国会の御承認をこうしていただこうとしているわけでございますから、そこら辺のところは、きちんと加算すべきものは加算した形で繰り入れていくということは間違いないわけでございます。
  91. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私がもう一つ不安を感ずるのは、借金をした場合は利子支払いから行っていくのが大体普通じゃないかと思うのですね。赤字国債などにしても、十年間まず利子を払って、それから元本の返済に入るわけでしょう。  ところが、今度の場合はまず元本の支払いだ、それから利子になる。意地の悪い見方をすれば、元本だけは何とかやりくりしてでも払うけれども利子のことについてまでは先のことだし、後は野となれ山となれというふうには言われないでしょうけれども、どうもそういう不安も感ずるわけです。今度の場合、まず元本から払うというのはちょっと普通のやり方ではないのじゃないかと思うのですが、これはなぜこういうことになっているわけでしょうか。
  92. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 平たい言葉で貸した借りた、こういうふうに御表明いただいているんだと思いますが、一般会計特別会計の間のお金のやりとりというのは、いわゆる貸し借りとは違った意味でございます。  なぜ利子の方は後になっているのか、こういうことでございますが、この法律の基本的な考え方は、国庫つまり一般会計から特別会計お金繰り入れる金額につきましてなだらかな姿にしていこうということなんでございます。それが基本なんでございます。その場合に、運用収入の額がどれだけになるかということは二つの理由で確定しない部分がございます。  と申しますのは、はっきりした金額、それぞれ加算額、減算額はそこの法律に書いてあるとおりでございますけれども、今後年金の年額改定がございましたときに、比例的にその部分を多少変えるということもついてございます。その部分がどのくらいになるかということは明らかでございません。それから、毎年の運用収入でございますけれども運用利回りを基準とすることになろうかと存じますけれども、その部分が毎年毎年、利子といいますか運用といいますか、そういったものが変動いたしますものですから、これも幾らになるかわかりません。したがいまして、結果的に全部元本を整理してしまいませんと、その残った部分というのがどれくらいになるかわからない面がございます。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕 七十二年度運用収入として残った金額というものがそこへ来ればほぼ確定をするわけでございますけれども、その金額につきまして、当初申し上げましたように、この法律趣旨がなだらかな形で国民年金特別会計一般会計から繰り入れていくのが趣旨でございますから、そこで、なだらかな形にしていくということになりますと利子の分は後にならざるを得ない、こういうことになるわけでございます。
  93. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そのなだらかな形にすると利子のことは後にならざるを得ないというのは、私には余りよくわからないんです。なだらかな形でまず利子から払っていったっておかしくはないと思うんですよ。  それで、利子は現在見込み得るところで結構ですけれども、そうすると、利率がどれぐらいで金額としてはどれくらいの将来の負担になるというふうにお考えなのかもお尋ねしておきます。
  94. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 運用利回りいかんによりますが、運用利回り六%程度といたしまして一兆九百億円ぐらい、それから七・三%ぐらいといたしますと一兆四千七百億円ぐらいという計算になります。
  95. 小沢和秋

    小沢(和)委員 先ほどからのやりとりでは、現実には七・三ぐらいで新規のものの利回りがなっておるというお話ですから、一兆四千七百億に近いぐらいの利子負担になると思うんです。  それで、この利子負担も、この法案の第四条ですか「当該措置に係る平準化趣旨にのつとり、」というふうに利子支払い方についても書いてあるというところから見れば、大方三%ぐらいというふうに先ほどから言われているようなふえ方の中で払っていこうという腹だというふうに読めるわけですが、そうなのかどうか。もし、そういうお考えであるというと、将来の年金支払い額がどういうふうになっていくかということも考えなければなりませんけれども、私どもが財政再計算によってこれを見てみると、七十年から七十五年の間には年平均で見ると四・四%ぐらいの給付費の増になるんですよ。それから七十五年から八十年の間でも三・五%ぐらいの増になるんですよ。そうすると、あなた方が三%ぐらいでなだらかにふえていくような範囲で利子を払うというふうにいったら、これでは利子をその段階で払うということはできなくなってしまうのじゃないですか。
  96. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 お答えいたします。  いま委員おっしゃいました伸び率でございますけれども、伸び率が、七十五年から八十年ぐらいになりました時点で物を考えますと、大体二・四%とか二・二%とかその程度かと積算されます。(小沢(和)委員給付費がですか」と呼ぶ)さようでございます。でございますから、いま私ども考えております線で御心配のように年金が払えなくなるんじゃないかというようなことはないかと思います。利子は、総体負担額、総体国民年金特別会計への一般会計からの繰り入れ金額が三%増になる程度利子繰り入れていくわけです。ですから、利子金額そのものが三%で入れていくということではないわけであります。
  97. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いまあなたが言われた二・二%ぐらいでというのは、国民年金受給者数でそれぐらいの伸びということじゃないですか。給付費の方は、加入期間などが長くなったりするから当然それより上のテンポで伸びていくんですよ。そうすると、先ほどから言われているとおり、三%程度のなだらかな増加というので見たら、利子を払う余地は出てこないのじゃないかと言っているのですよ。そうじゃないですか。
  98. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 私、先ほど二・四%程度ないしは二・二%程度ふえていきますよ、こう申し上げたのは、大づかみに言いますと、この計算国庫負担ベースで計算しております。先ほど私、給付費と申し上げたかもしれませんが、給付費も国庫負担ベースもそうは違わないと思いますが、国庫負担ベースで計算しております。したがいまして、二・二%ないし二・四%といたしましても、三%といたしますと〇・六ないし〇・八ぐらいの差がございます。その部分が利子で埋まっていく、こういうことになるわけでございます。
  99. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、あなた方がおよそ検討してみて、利子支払いというのはでは何年ぐらいかかるというふうにお考えなのか。いまの幅からいくとわずかなものでしょうから、そうすると相当期間かかるだろう。そうすれば、当然また利子利子がかかるという事態になってくるでしょう。結局それはどれくらいというふうにあなた方お考えですか。
  100. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 おっしゃるように、利子利子が積み重なってくるということはあると思います。それも入れまして五、六年程度で解消するんじゃなかろうかと思っております。
  101. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、先ほど私申し上げたように、七十二年の時点で一兆四千七百億円くらいが利子として支払わなければならないという状態になり、それをまたずっと払っていく中で、これにまた利子がつきということになってくると、結局のところ最初に一兆二千二百九十億円何とか浮かせようというふうに考えてやったことが、その元金よりもまたずっと大きな利子負担ということで後年度かかってくる、これではもういよいよ財政再建どころではなくなってしまうのではないだろうかということを感ぜざるを得ないし、これに国民年金が絡んでくるということになれば、年金制度の基本に対する信頼というのも揺らいでくるんじゃなかろうかというふうに考えるわけですがね。こういうようなことはどうしても避けなければいけない事態じゃないですか。
  102. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 年金制度の本体の方は本体の方で、これはまた検討すべき問題が多々あるかと存じますが、しかし、いまここでお願い申し上げている法案は、年金制度の本体には影響せずに会計技術処理の問題としてお願いをしておるわけでございます。  そして、将来いまおっしゃいましたように減額をしまた加算をいたしますと、年々加算の段階におきましては、この措置をしなかったよりはそれぞれの金額において財政上の負担がふえることは事実でございますが、そういうことだからといって、その金額が繰り入れられなくなるというふうには思っていないし、また、どなたもそういうことがあってはならないことだとお考えだと存じます。  でございますから、先ほど来申し上げておりますように、この問題は、いま御指摘の、将来払えなくなるのではなかろうか、財政が厳しいのではなかろうかということは、国民年金繰り入れいかんによることではございませんで、この法案いかんによらず他の問題として、財政が厳しく、かつこれがいつまでもこういった状況が続いてはどうしてもぐあいが悪いことでございますので、これを財政構造の改革を通じて健全化していかなければならないという命題は別途あるわけでございます。それは私どもとして精力的に進めたい、こういうことを申し上げているわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席委員長着席
  103. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ただでも国債をどんどん発行してサラ金地獄みたいな状態になっているじゃないかと言われているときに、実際上こういう形でまた別の借金もこしらえていくということになれば、私は、もういよいよにっちもさっちもいかなくなるのではないか。それは、大型間接税みたいなものに期待するかもしれないけれども、これでは決して財政再建などというのはあり得ないし、私たちが主張するような軍事費や大企業奉仕の予算やらを思い切って削るというようなかじのとり方をこの辺で根本的に考えるということをしないと、この面から見てもどうにもならなくなっているのではないかということをこの機会に私は一言申し上げておきたいと思うのです。  もう一言お尋ねをしたいのは、この措置をとるに当たって、いま検討中の年金制度の抜本改正との整合性あるいは展望というような点を考えた上でこの措置をとったのかどうかということです。
  104. 宍倉宗夫

    宍倉政府委員 確かに、年金制度全体を今後どういうふうに改革していかなければならないかということは大きな問題でございます。  しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、今回の措置実体には触れない、こういう原則で物を考えてございますので、それは今後の年金制度の改革とは無関係に、といいますのは、現行の制度を前提といたしまして物を考えてございます。であれば、今後年金制度が改革された場合にどういうふうになるんだということがあろうかと思いますが、それは現在どのように改革をしていくかということが定かでございません。したがいまして、いま何とも申し上げようがないわけでございますが、将来の問題といたしまして、何らかの手直しをこの調整措置においてしなければならないといった事態が絶対に起こらないとは私申し上げられないと思います。そういう場合におきましては、その実体に応じまして、実体の改革に応じました形で調整が必要になってくることもあり得るかもしれないと考えております。
  105. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私がちょっと考えてもすぐ思い出すのは、国民年金保険料収入の中で任意加入、サラリーマンの奥さんの保険料というのは非常にウエートが高い、三〇%くらいになっておりますよ。ところが、このサラリーマンの奥さんの任意加入をどうするかというのがいま抜本検討の中の非常に重要なテーマの一つになっておる。だから、仮にこれを厚生年金の方にでも移そうということになったら、国民年金からお金をこういうふうに操作するということは、それだけ収入がとんと減るから途端にできないというような問題が起こってくるのではないかないうことを念頭に置いて申し上げたわけです。そのことについては、まだ全く今後どうなるかがわからないからいまのところ検討していないというお話であれば、これ以上議論しても仕方がないと思うので、そういう問題があるということは申し上げておきたいと思います。  それで、時間もぼつぼつ気になるような状況ですから、ここで無年金者の問題について、せっかく厚生省の方に来ていただいておりますから、一言お尋ねをしたいと思います。  現在、無年金者という方がどれくらいおられるか、そういう中で障害者で無年金者——そのことはちょっとおいて、障害者のことで、ちょっとこの無年金者に関連をしてお尋ねをしたいと思うのですけれども、現在の制度の中では早く、二十前に障害者になった方については障害福祉年金という制度があるだけで、いわゆる障害年金というのは二十になってから以後はもらうことができないわけですね。  この点について、非常に多くの人たち、たとえば障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会などの人たちから、何らかの方法でこういう人たちも年金制度に加入できるような道を開いてもらいたい、たとえば、父兄が元気なうちは障害を持っている子供さんの分も掛金を払うという形ででも障害年金を受けるような道を開いてもらいたいという切実な要求があることも私たちは聞いているわけです。こういうような点について何らかの対策を今後考えておられるかどうかということをひとつお尋ねしたいのです。  それから、昨年の三月に身体障害者福祉審議会から答申が出て、障害の範囲や等級を見直して法の適用対象を広げることなどが指摘されているわけですが、この中でも内部障害者の障害年金や障害福祉年金の問題が出てくるわけです。答申では人工臓器についても法の対象とすべきだ、たとえば人工肛門とか人工膀胱などは障害年金の対象になっていないと私たちは考えているわけですけれども、これは年金の対象として将来広げていくべきではないか、こういうような問題についてもう一問お尋ねをしたいと思います。
  106. 平松孝雄

    平松説明員 国民年金における無年金者ということでございますが、先生承知のように、厚生年金などの被用者以外の方々が対象になっておりまして、実際市町村で扱っているわけでございますが、他の公的年金の被保険者あるいは受給者という方々の把握が非常に困難でございますし、また国民年金と他の公的年金との通算の関係もございまして、どの時点で無年金者と言うか非常にむずかしい問題がございますので、正確な数の把握は非常に困難な状況でございます。つきましては、五十五年に無年金者救済対策としまして特例納付を実施しております。このときにおきまして対象となるべき人の推計が約八十万人くらいと見込んでございまして、そのうち救済措置によりまして受給権を取得した方々が約四十万ということでございます。したがいまして、四十万程度は無年金として残っているのではないかと私ども推定しているところでございます。
  107. 山口剛彦

    ○山口説明員 障害年金関係につきましてお答えを申し上げます。  御指摘ございましたように、身体障害者福祉審議会等で、身体障害者の範囲の問題、内部障害を中心に再検討せよという御指摘をいただいております。この点についてはいま関係部局で詰めておりますけれども年金に関して申し上げますと、国民年金の場合も、内部障害も含めまして一応全部年金の対象にするという制度にすでに現在なっております。ただ、具体的な障害の程度につきましては、内部障害も含めまして一定の基準に達したものについてのみ障害年金を支給するということでございますので、軽い障害の方については年金が支給されないというケースは現実にはあろうかと思います。  それから、障害者の年金全体の問題につきましても、福祉年金の問題、無年金の問題、額の問題等御指摘ございましたけれども、障害者の所得保障を今後どうするかということにつきましては、現在、厚生省内におきましても専門家会議等で検討していただいておりますので、年金制度の中でも今後どうしていくかという点につきましては、御指摘の点も踏まえまして、今後の課題として十分検討させていただきたいと思っております。
  108. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  109. 森美秀

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  110. 森美秀

    森委員長 次に、内閣提出電源開発促進税法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案について、本日、正森成二君の質疑の際、参考人として動力炉核燃料開発事業団理事熱田禧房君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  112. 森美秀

    森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阿部助哉君。
  113. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、電源開発促進税の増税を行う改正案の質疑を行うに当たりまして、まず、この税がエネルギー対策の財源として聖域化され、財政規律を乱し、税金を浪費し、さらに住民の人心を破壊して民主主義を買収によって死滅させておる事実を指摘したいのであります。電源開発促進税とこれに関係する法律、制度は速やかに廃止をして、一般会計のエネルギー対策費に吸収すべきであると思うのですが、政府の御見解をお伺いしたいのであります。
  114. 窪田弘

    ○窪田政府委員 この特別会計についての御批判でございますが、財政法十三条では「国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。」こうございまして、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に特別会計を設置するものとする、こうございます。  この特別会計は、特別の税をもちまして電源立地対策それから電源の多様化対策を行っておりますので意味があり、かつ重要なものと考えております。
  115. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この前質問をしたときも、私は財政法のコンメンタールを出して皆さんに言ったのですが、それは何をやるにも、泥棒にも三分の理屈があるのですよ。何がしかの理由があることはわかる。しかし、一般論としてはできるだけ目的税をつくらない、そして会計は全部一般会計でやる方向が望ましいということだけは間違いがないでしょう。何でも特別会計をつくりたいということなのですか、それとも、それはなるたけなくしていって一般会計にしたいということなのですか。主計局、どうなのですか。
  116. 窪田弘

    ○窪田政府委員 御指摘のように、特別会計を余りつくることは好ましいことではないわけで、必要最小限度のものにとどめたい。今度の臨調の答申でもその旨指摘されております。
  117. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 初めからそうおっしゃればいいのですよ。一般的にいって目的税の創設はできる限り避けるというのが財政の常識だと私は思うのです。その理由は幾つかありますが、目的税をつくり特別会計を設ける、そして税金のむだ遣いが生じる、また機構を新設するなどということで、結局は財政硬直化の原因をつくるからなのであります。私は、電源開発促進税はそのよい見本だと思う。  まずお伺いしたいのでありますが、決算額で見てまいりますと、五十四年度で二百二十八億九千二百万円、五十五年度で三百六十一億八千八百万円、五十六年度で二百七十四億百万円、こんなに大きな歳出不用額を出した原因はどこにあるのか、お答え願いたい。
  118. 窪田弘

    ○窪田政府委員 この特別会計の中には、御承知のとおり立地勘定と多様化勘定とがあるわけでございます。立地勘定におきましては、五十三年度四百二億円、五十四年度四百五十三億円、五十五年度四百三十三億円、五十六年度三百五億円という剰余金が出ております。なお、五十七年度の見込みとしては百二十億円程度になろうかと思いますが、まだこれは確定をいたしておりません。  これは、発電所の立地、土地買収が難航した、立地がなかなか決定に至らなかった、それから公共用施設をつくる場合にその土地買収が難航したというふうなことで、地元調整の難航によるおくれから、初期においては繰り越し、剰余金が発生をしておりましたけれども、五十六、七年度あたりからだんだん円滑に事業が進むようになりまして、五十七年度の見込みでは、いま申しましたように、従来三、四百億円の剰余金が百億円、百二十億円程度になる見込みでございます。五十八年度におきましても、さらに着実に事業が進むものと思っております。  多様化勘定の方におきましては、これは五十五年度から設けられましたが、五十五年度六十億円、五十六年度百十億円、五十七年度は七十億円弱になろうかと思いますが、この剰余金が発生しております。これは五十五年度につくられましたが、その事業が軌道に乗るまでに若干時間を要しました。特に「もんじゅ」の建設で地元調整に時間を要しましたために、過渡的に繰り越し、剰余が生じておりますが、五十七年度は減少の見込みでございますし、今後このような多額の剰余金の発生を見ることはないものと考えております。
  119. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 締めてみなければわからぬけれども、毎年毎年こうやってきたのですよ。たまたま去年一年間不用額がこう出ましたというならわかりますよ。五十四年、五十五年、五十六年、毎年こんなずさんな予算というのは一体あるのですか。  予算は、できるだけ厳格にやるべきものだ。たまたま何かの事情でそういうことがあるということは、これはあり得ると思います。だけれども、毎年毎年やってきたんですよ、これは。あなたの説明は不十分ですよ。納得できない。五十六年度二百七十億という金額は、電源開発促進対策特別会計の五十六年度予算一千七百十八億七千三百万円の一五%を超える額であります。私は、予算見積もりは厳格にやらなければならないという原則に欠けると思うのですが、私は、この見積もりが余りにもずさん過ぎる、毎年毎年ずさん過ぎるんだ、こう思うのですが、その辺の反省は皆さんはしておられないのですか。
  120. 窪田弘

    ○窪田政府委員 大変多額の不用を生じておりますことは、私ども予算の積算見通しについても不十分な点があったことは反省をしております。  ただ、事柄が電源開発というふうな問題でございますので、なかなか予定どおりにはいかない。しかし、予定どおりにいきそうもないからといって予算を用意しておかないわけにもいかない性質の事業でございますので、大変申しわけない結果になったことは十分反省をいたしておりますけれども、そういう事情であるということは御理解をいただきたいと思っております。
  121. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それは、交付金の方は確かに土地問題等いろいろな問題があることは私も承知しておるのです。だけれども、それにしても、どちらにもこんな多くの不用額が出るというのは、しかも毎年出てきておるというところに私は少し問題があるのじゃないか、こう思うのであります。  特に、電源立地の促進対策交付金でありますけれども、その問題に入る前にちょっとお伺いしたいのですが、五十八年度予算の前提となる長期電力需給の見通し、これは何%なのか、そしてまた、それの恐らくもとになるだろう経済成長率は一体どの程度見込んでおるのか、ちょっとお答え願いたい。
  122. 小川邦夫

    ○小川政府委員 お答えいたします。  まず、足元の五十七年度につきましては、前年度に対する伸びを一・五%と見込みまして、五十八年度は五十七年度に対しまして伸び率三・六%という見込みでございます。そしてもちろん、増税の場合に単年度五十八年だけの展望では不十分であろうかということで、中長期的展望ということで、五十九年度以降につきましても電力需要の伸びを想定いたしましたが、その五十九年度以降につきましては、年率三・三%程度の伸びということで織り込んでおります。
  123. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは電力の需給見通しですな。
  124. 小川邦夫

    ○小川政府委員 失礼しました。これは電力の需要見通しでございまして、第二の御質問の点のその前提となる経済成長の伸びをどう見ておるかという点でございますが、去年の四月時点での電気事業審議会におきます見込みというのは、経済成長の伸びの前提を年率五%という織り込みでございましたけれども、今度の予算の積算をする電力需要の見通し、ただいま申し上げました中長期の伸びを出すに当たりましては、この伸びでは、やはり経済成長の伸びとして見込みが高過ぎるという観点から、かつ最近の経済審議会の検討の中間結果などを踏まえまして、下方修正をいたしまして、GNPの年率につきましては、年率四%という伸びを前提として織り込んでおります。
  125. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま御答弁ありましたように、成長率も下方修正しておる。電力の需給見通しも、したがってこれはいま下方修正するという段階なんですね。  そうしていくと、皆さんがおっしゃるように、そんなに税金を上げなければいかぬということにはならぬと私は思うんですがね。これが、年率五%で行きます、需給見通しも当初のように上がっていきますという成長率が見込めるならば、まだそこで私も考えるけれども、いま両方ともが下方修正をしなければいかぬという段階で、なぜこんなに組まなければいかぬのかというのが、まず一つ私にはわからない。  電源立地の促進対策交付金と同特別交付金は、過大な電力需給の見通しに基づいている。そうして、これまでもそうやってやってきたし、私は、五十八年度は当然低目に見るべきだと思う。ところが、これの両方の交付金の合計を見てまいりますと、大変に大きいんだな。五十四年に三百八十九億一千九百万円、五十五年に四百十四億一千四百万円、五十六年に四百五十億九百万円、五十七年に五百十三億六千八百万円、それで五十八年にちょっと下がって五百七億六百万円、こうなっておる。ほんのちょっと、何億か下がったけれども、それでもずっとこの伸び率が上がってきておるというのは、どうしても私にはちょっと理解ができないのです。五十八年度歳出を厳しく見直したと言ってみても、過大な電力の需給見通しでつくられた五十六年度と比べて五十億も増加しておる。一体どこをどう節約しておるのか、私にはわからない。これはどうなのです。
  126. 窪田弘

    ○窪田政府委員 交付金の伸びが非常に大きいことは確かでございますが、五十八年度につきましては、立地勘定の歳出総額を二%削減をしております。いろいろ細かく点検をいたしまして、極力切り詰めていただいたわけでございます。  それにいたしましても、先ほど一番初めに御指摘のあったような剰余金がことしは減少する見込みであるというふうなことから、どうしても十月一日からこの税を上げていただかざるを得ないということでございます。また、やや中長期的に見ましても、これはあるいは通産省から御説明した方がよろしいかとも思いますが、個所別に全部積み上げて将来を推計してみますと、やはり今後かなり多額の経費が要ることになりまして、とうていいまの税収で賄うわけにはまいりませんので、やはりこれも負担のアップを申しわけないことながらお願いせざるを得ない、こういう状況でございます。
  127. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これから金が要る、金が要るとおっしゃるけれども、だからその根拠を出してくださいよ。  私は、ちゃんといままでの経過のあれを出して御質問を申し上げておるのであって、そういうところから言えば、しかも経済見通しも下方修正する、電力需給の見通しも下方修正する。もう細かくは新聞や何か例は挙げませんけれども、東京電力か何かは設備投資がマイナスになっておるというような状況の中でなぜ足らないのか。しかも、いままで、五十七年度の決算はまだ出ておりませんわね、だけれども五十六年度の決算を見れば、はるかに大きな不用額を出しておる。しかも金は余っておるわけです。にもかかわらず、いま何で税金をさらに上げなければいかぬのか。そういう段階がはっきりわかった段階でまた検討するならいいけれども、いま金は余って残っております、いままでも残ってきました、だけれども先の方が心配だから税金を上げてくれじゃ、私は、これは税の取り方としてはちょっとおかしいのではないだろうか。  しかも、それは結局一般の国民には電気料金を値上げしたという感じになってくる。本当は、石油は下がってきたのだから、もっと電気料金を下げればいいのですよ。それをまたそこへ上積みするなんというのは、どう見たって私には理解ができないな。いままでも、過大な需給見通しのもとでさえ電源立地促進対策交付金と特別交付金で五十四年で百九十八億、五十五年で百五十七億、五十六年で百三十六億の不用額、全く使い残しを出しておるのですよ。五十七年度決算がおおむね見当がつくなら、それを出してごらんなさい。いままでの皆さんの数字からいけば、何もいま税金を上げることはないのではないですか。どうもその辺が理解ができない。  だから、皆さんの、通産省の立場からいけば、何でも金を特別会計、しかも後で申し上げるようなわけのわからないところへ行く金を幾らでも抱いておる方がそれはいいに決まっておる。だけれども、まだ必要かどうかははっきりしないじゃないですか。そういう中で、なぜこんなものを上げなければいかぬのです。私は、もっと歳出額の全面検討を行うべきであって、少なくともいま、ことし税金を値上げするなんという必要はとうてい認められない、そう思うのですが、どうです。
  128. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十八年度予算の問題とその後の中長期的な問題とに分けて申し上げさせていただきます。  五十八年度の問題でございますが、確かに御指摘のように過去にはそういった不用がございました。それは翌年度予算に前年度剰余金受け入れとなってくるわけでございますが、この前年度剰余金受け入れが、ことしは百二十三億、去年の見込み三百一億から約百七十七億減少いたします。他方、歳出の方でございますが、電源立地促進対策交付金は、先ほど申しましたように地点別に細かく検討いたしまして、十五億円、二%ほど抑えております。こういうものを含めまして電源立地勘定の歳出合計は七百五億でございます。そのうち電源立地促進対策交付金は三百六十三億でございます。残りは特別交付金でございますとか原子力の安全対策委託費等々でございます。歳入の方は、前年度剰余金受け入れが百二十三億と、昨年に比べまして百七十七億減少いたしますので、雑収入四億を加えましてもやはりこの際電源開発促進税の引き上げをお願いせざるを得ない、こういう状況でございます。  やや中長期的に考えまして、現在すでに電調審を通じて準備段階に達しているもの等を全部個別に検討いたしました。御指摘のように、最近電力需要が減少いたしておりますので、開発計画の後ろ倒しが見込まれます。それを織り込みまして今後個所別に検討いたしますと、これはいまのところ、通産省の数字でございますけれども、毎年約四百億円近くの歳入不足が起き、五十八年度から六十二年度までの五年間で千七百億円歳入が不足する。これは通産省のいまの時点の見通しでございますので、今後私どもとしてはさらに点検をさしていただきたいと思っておりますが、ともかくこの五年ぐらいを展望いたしますと、どうしてもここでこの税金の引き上げをお願いせざるを得ない、こういう状況でございます。
  129. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、全くわからないですな。いま残っておるのですよ。不用額はあるのですよ。しかも、電力の需給は下方修正するというのですよ。  そういう中で、何ぼこれから交付金を出していくのか知らぬけれども、後で申し上げるけれども、住民を札束でひっぱたくようなことで反対運動を押しつぶしていく。それはよけいあった方が皆さんに都合がいいかもわからぬけれども、何でいま余っているのに税金を取らなければいかぬのですか。先になればインフレで価値がなくなるからこうだというのは、まだそれはわからぬではない。どうもわからないですな。何でそんなに要るのか。それが要るならば、それだけの資料をちゃんと出してくるならわかるけれども、議員にも何も出さずに、いままでも余ってきた、いまも余っている、だけれども将来わけがわからぬ、足らなくなります。それなら足らなくなるという資料をちゃんと出してこなければいかぬ。何もわからない。そんなら幾らあなたとここでやったって、これは水かけ論ですよ。こんなずさんなやり方で皆さんは税金をお取りになるつもりなんですか。これは主税局の方の問題かもわからぬけれども、私はこれはわからぬ。まあ、いい。そんなもの、幾ら言ったって私は納得はできない。  次に、私は、後でまたやりますけれども、多様化勘定についてちょっとお伺いしたいのであります。昭和五十五年度改正で設けられたこの制度について、この委員会において当時の政府委員は こう言っているのですね。当面、石油が間もなく天井をつくであろう、だんだん石油はもうなくなるであろう、こういうことなんだな。「ここ十年ぐらいの間に電力供給を安定的に行い得るために必要な代替エネルギーをどうやって調達するか、」ここが問題だ。「受益者負担によって賄う」と説明しておるんだな。私は、これはちょっと問題があると思うんだ。受益者負担と言うからね。石油が天井をつくというこの前提もいまや崩れてきた。当時の立法趣旨はいまや崩れておる。それは、百年千年たったらどうなるか、石油がなくなるかどうか、私は知りませんよ。しかし、いまOPECにしたってどこにしたって、むしろ減産をしているような状態なんです。天井をつくという前提自体が崩れてきた、私はこう思う。  その上に、受益者負担というのは一体どういうことなんですか。こんなことでやられたら、これは電気事業だけではないですよ。こんなあいまいな対応関係で受益者負担関係を求めるとすれば、基礎素材のすべてについて受益者の関係が成り立ってくると思うのですよ。鉄だって何だって、やはり国民生活には必要なんです。そうすれば、これは全部受益者負担という形でやるとすれば大変なことになってしまう。みんなそのために目的税をつくり、特別な機構をつくっていくということになっちゃうのじゃないですか。だから、できるだけ目的税をつくらないように努力しても、世の中が多様化していけば、これはつくらざるを得ない面は多々出てくるのです。しかし、こんな結びつきで受益者負担を云々すれば、素材産業すべてが、これは国民生活に関係があるわけです、みんなつくらなければいかぬということになってくる。それは一体どういうことなんだ。これは税体系もへったくれもない。これは、大蔵省の主計局自体が大変困ってくると私は思うんだな。筋が通らなさ過ぎると思う。  私は、ここが一番問題があると思うのですよ。これはどういうことなんですかね。このような受益者関係を認めれば本当に際限がなくなりますよ。できるだけ速やかに特別会計を廃止して一般会計に戻して、そして補助せねばいかぬというなら、明快な形の中で補助をするならする、できないことはない、私はその方が明快だと思うのです。そういう点でもう一遍、私はこれは大臣にお伺いしたいんで、皆さんにお伺いしたって本当は不満なのだけれども、目的税をつくる、特別会計をつくる、それを使う機構を新設する、そして行政機構が膨張し予算統制が十分でないために税金のむだ遣いが増加するという仕組みを改めるのが本当を言えば行政改革の目的だ、こう私は考えるのですけれども政府見解はどうなのです。これは本当言うと次官へ聞くのだな。
  130. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 先生の大変貴重な御意見でございまして、前々から委員会先生の御意見を私ども拝聴させていただいて勉強させていただいているわけでございますけれども、さらに勉強させていただきたいと思います。また、具体的な政府側の意見につきましては政府委員の方から御答弁させていただきます。
  131. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは原則的に一般論なのです。私は、エネルギー関係の特別税だけを言っておるのじゃないのです。こういう形でいって税金がわけがわからなくなってくるし、全体の予算の規律が乱れてくる、できるだけやめるべきだという原則に賛成かどうか、こう聞いておるだけであって、そんなむずかしい答弁をいただく必要はないのですが、いかがです。一般論を聞いておるのだ。
  132. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 これは大臣等も答弁させていただいておりますけれども、目的税は好ましからざるものでございますという見解は私ども持っております。
  133. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま私が指摘をし政府がお認めになった行政改革の対象に、何よりも新エネルギー総合開発機構、これを入れるべきだ、こう私は思うのであります。  臨時行政調査会の会長をおやりになった土光敏夫さんが運営委員長をなさっておるこの機構を廃止して、本当言うとまず土光さんは行政改革のお手本を示すべきだ、私はこう思っておるわけであります。この機構というのは一体どういうのだろう。新エネルギー総合開発機構すなわちNEDOというのですか、これは出資金が千四百三十四億九千三百万円、この出資金のうちで九九・七%は政府出資であります。ほとんど政府出資なのですね。九九・七%は政府出資なのだから、これは政府機関と同じようなものだと私は考えざるを得ない。  ところが、このNEDOを運営する最高議決機関である運営委員会は、運営委員長の土光さんを初めとして委員七人のうち五人までが電力、石油、銀行の業界代表で構成されておる。そこへ五十六年度一ヵ年だけで四百九十二億四千四百万円もの補助金や交付金を支出している。その交付金や補助金がだれに対してどのように使われたのか、決算書を見ても全く不明であります。関係者以外内容が全くわからないように決算書をつくっておるとしか私には思えない。この機関は全くトンネル機関である。そして国会の審議権を形骸化していると私は考えざるを得ない。この点は少し政府も直すべきだと私は思うのですが、いかがです。これは大臣の方ですな。
  134. 窪田弘

    ○窪田政府委員 新エネルギー機構は五十五年に発足したばかりでございまして、まだ十分必ずしも当初の意図をフルに実現しているとは申せないかもしれませんが、現在、石炭資源の開発でございますとか、地熱、太陽エネルギーその他もろもろの非常に多種多様のエネルギー開発事業をやっておりまして、これを民間の活力を誘導するようにいまは補助金をかなり出しておりますが、将来は、民間の活力を引き出してそっちへだんだん重点を置いていこうというねらいもあるわけでございまして、これだけの補助事業と申しますかエネルギー開発事業を、いまの通産省の機構、人員でとてもできるものではございません。こういった民間の方にも多数参加していただいて、こういった新しい部門のエネルギー開発をやっていくということは大変意味のあることではないかと思っております。現在、石炭事業それからアルコール専売事業、アルコール製造部門なども引き受けておりまして非常に多様になっておりますので、非常にわかりにくくなっていることは確かでございますが、この事業の内容を明確にしていくという点については今後なお努力をしたいと思いますが、この機構自体の意義については非常に今日大きいものと考えております。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんはそうなんだろうけれども、われわれから見ると納得ができませんよ。委員長が土光敏夫さん、委員長代理が芦原義重さん、関西電力ですな。それで、東京電力それから日石ですかの社長さん、そこへ興業銀行の頭取さん。何のことはない、銀行、大企業の人たちばかり。そこへずばっと金が行って、そこからどう行ったのかさっぱりわけがわからない。  予算書を見れば予算書で、片方で使い残しの金がいっぱい残っておる。ところが、予算の方を見ると、さっぱりわからない。あの決算や予算書を見てわかる議員があったら、私はお目にかかりたい。わからないですよ。いよいよ聞くと、その差額は債務負担行為で、行き先が決まっておる、だから載せないのだ。それならその説明をちゃんとしなければいかぬですよ。数字に明らかに残った金と次の年に繰り越す金が違うなんという、違ったら違ったぐらいのことを説明をつけないで、国会議員はどうせ勉強しないからわからないだろうということでおつくりになっておるとしか思えない。  ただ、私にわかったのは、この金がみんな大企業の方へだけ行っておる、これだけはわかった。これはひどいですよ。しかも財界の代表ばかり集まって、行く先はみんな大金持ちの方へばかり、大企業の方へばかり行って、その決算のあれがさっぱりわけがわからないなんという、こんな不明朗なやり方は、私は許すわけにはいかぬと思うのです。もう少しその辺を明快に、特に民間のこういう人たちが差配をふって金をふりまくという場合になれば、なおさら経理、会計は明快にすべきです。それは、皆さんの中には単年度主義というものの枠もあります。それも承知です。それならそれなりの説明をしなければいかぬ。会社の経理は、大企業の経理だってなかなかわかりにくいです。だけれども、有価証券報告書だとかその附属書を見れば、素人の私だってある程度はわかる。借入金がある。どこから何ぼで借りたのかわけがわからない。補助金を出した。それだってさっぱりわけがわからない、どこへどういう金が出ているのか。これはつかみ金を出しておると言っても過言ではないと私は思う。しかも補助金は御承知のように課税対象にならないのですよ。こんなにありがたい金は財界が何ぼでももらって、こんなにうまいことはない。  私は、こんな機構が足しになるというならば、諮問委員会みたいな形で意見を聞くくらいのことでやって、通産省なら通産省、大蔵省なら大蔵省が、役所がきちんとしてやるべきであって、こんなトンネル機構をつくっちゃいかぬですよ。これこそ、まさに土光さんは行政改革の一番最初にこれをなくしてお手本を示すべきだ、こう私は思うのです。それで、いま次長何とおっしゃった、民間の活力、結構です。しかし土光さんは、社会福祉を切り捨てて自助努力だ、こういうふうにおっしゃった。貧乏人の方には自助努力でおまえたち何とかやれ、こう言う。大企業の方には大いに援助して活力をあげます、こう言う。土光さんという方は偉い人か知らぬけれども、余りに矛盾しておるんじゃないか。増税なき財政再建というが、大衆に電力料金みんな取る、大衆課税の方はやってください、資本家から取る金の方は増税なき、これは所得税にも当てはまる。これは余りに矛盾してやせぬですか。大臣、これはちょっとひどいと思いませんか。
  136. 川崎弘

    ○川崎政府委員 いろいろ貴重な御意見を伺いましたが、その中で幾つか問題を私の方から申し上げますと、確かに、結果として大企業にたくさん出ているということはございます。これは、新エネルギーというものの開発というのが非常にリスクも大きい、先端の技術でもあるということもございまして、結果的に技術能力の大きい大企業というのが交付先、委託先の対象になるということが一つございます。  それから、先ほどございましたトンネル機関ではないかというお話ではございますが、実はこの新エネルギーの開発、先ほど申しましたように大変むずかしい問題ではございまして、欧米のような場合には、たとえば石油系のメジャーであるとか石炭の大企業であるとか、こういった中核的な企業がございます。これが中心になりましてこういった新エネルギーの開発というのを推進するわけでございますが、日本の場合にはそういった中核企業というのがない。したがって、技術と資金を結集し、全体としての研究開発プロジェクトをマネージする、そういう組織としてこのNEDOができているわけでございます。したがって、その点もぜひ御理解いただきたいと思います。
  137. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私は、ある程度金を出すというのがけしからぬというわけじゃないのですよ。こんな機関をつくらなくたって、意見は皆さんが聴取するのはいいけれども、主体は九九・七%も国が資本を持っておるのです。こんな機構をつくらないで皆さんが明快にやって、明快に国会で報告される方が筋だ、私はこう言っておるのです。お知恵をかりるのは構わぬです。トンネル機関をやって財界の連中ばかり集まって、それで勝手に割り振る、こんな不明朗なことはない。しかも、この決算書たるや、われわれにはさっぱりわけのわからないものを出してくる。私は口は悪いからちょっと失礼になるけれども、これは伏魔殿と言っても過言じゃないんじゃないか。私は、そういうものをつくっちゃいかぬというのです。だから、皆さんで大臣の監督下、そして出すなら出していい、明快に、それで国会に報告して審議をするということが望ましいのであって、この機関は全く必要はないし、まさに疑惑を持たざるを得ないということになってくる。  しかも、あの経理を見たって、どこから金を借りたのですか全然わからない。私も何がしか、いままでこういう帳面を見たり予算を見たりすることは少しは勉強したんだ。皆さんほど詳しくはないけれども、少しは勉強したつもりなんだ。だけれども全然わからない。こんなわからない予算書、決算書なんというつながらないものを国会に出してはいかぬですよ。わかりやすくしなさい。どうせ国会議員なんてわからないから、こんなものでも投げておけばいいということなのかどうか、私はどうもその点が納得いかぬのです。だから、ある意味で、補助するなら補助する、しかしそれは明快にする、特にこういう補助金、こういうものは一般の予算の中の使うのとはなおさら違って明快にする、これが必要なんだ、こう私は言っておるのであって、その点であなたは異論があるのですか。
  138. 川崎弘

    ○川崎政府委員 NEDOの事業、先ほど主計局の次長からもお話がありましたように、幾つかの事業を並行してやっております。  したがいまして、この機構の事業を、その事業の目的別に成果が明らかになりますような財務表をつくれということで、新エネルギー勘定と石炭合理化勘定というのがございます。それがさらにまた細かく分かれております。そういうことで、つまり複数の目的税収に基づいて予算措置が講じられているということもございまして、御指摘のように、決算書類が大変複雑となっているのは事実でございますが、これは、予算の執行の状況とそれからNEDOの事業との関係がわかるようにということでつくったものでございます。しかし、御指摘の点もございますので、私どもといたしましても、できるだけわかりやすくするように今後とも努力はしてまいりたい、そういうふうに思っております。
  139. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 今後はわかりやすくしていただきますが、それは結構ですが、どだいNEDOというのはトンネル機関で、しかもさっき申し上げたように、こういう人たちばかりにこの大きな国民の血税を任せるということに私は大きな問題があると思うのです。大臣、そうじゃありませんか。これは大臣見解を聞いておかないと……。
  140. 竹下登

    ○竹下国務大臣 昭和五十五年、いわば大平行革のときに、五十五年度予算編成に当たりまして、公社、公団、事業団のたぐいはスクラップ・アンド・ビルドで、しかも、たしか二つつぶせば一つを認めよう、こういうようなときであったと思います。時の通産大臣佐々木義武、それから行政管理庁長官宇野宗佑、こういうときでした。  大変な議論がございまして、そしてその背景は第二次石油ショックで、代替エネルギーの開発ということで民間活力を導入して、日本の技術水準のまさにトップレベルを総合調整し、なおこれが実効を上げるための機構をつくろう、こういうことであったと思います。最終的に、すべてのものを認めないがこれだけは認めてしかるべきだという結論に到達いたして、エネルギー開発機構というものが五十五年十月一日発足をした。その後アルコール専売が入ってきたというのは、私もそこのところの経緯は定かに記憶しておりませんが、そうしてとにかく原子力を除く石油代替エネルギーの問題のメッカとしての機能を果たしていこうということであったと思います。それで出発して、そしてそれの成果は上げておるというふうに私も承り、認識もしております。  ただ、御指摘のように、会計の仕組みというものは一覧表を出していただいてもなかなかわからぬぐらい、エネルギー関係特別会計予算制度の仕組みというものはなかなかむずかしい仕組みになっております。それがいささかわかりにくいという点は私にも理解できないわけではございません。ただ、大企業への結果的に補助金あるいは開発銀行からの融資をトンネルしてまた融資をするというようなこともございますが、この機構なり制度なりがなかった場合には、実用化するには単一の企業でやるためには利潤追求の中においてはリスクが余りにも大き過ぎるというようなものを総合勘案して執行されておる問題でございますので、私は、大平行革のときにたった一つ認めた機構としてはいいものを認めたな、それで日本社会党様におかれましても、国会では賛成していただけるかなと思っておったら、残念ながら反対でございました。しかし、大変に前向きの検討が行われていいものができた。後から五現業のうちのアル専が入ってきたときには、私は多少違和感と申しますか異質なものが入り込むような感じがせぬでもございませんでしたけれども、それはそれなりの合理性がまたあったではなかろうか。ここのところは余り詳しくございません。  だから、会計の仕組みそのものは確かにむずかしい仕組みになっておりますので、阿部先輩は頭がよろしゅうございますからわかりますが、私も余りよくわかりませんけれども総体的には、あのとき認めた唯一の機構として大変にその成果を発揮し、代替エネルギー開発で世界に冠たる地位をまさに築きつつあるというように理解をしております。  何ぼかほめ過ぎであったかもしれませんけれども、以上、感想とお答えといたします。
  141. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、それはこれだけの金をつぎ込めば何がしかの成果を上げるだろう。政治にしろ経済にしろ、片方動けばマイナスもあればプラスも出てくる。風吹けばおけ屋がもうかるような話もある。それはわかります。だからといって、こんな機構をつくらなければやっていけないということではないじゃないですか。しかも非常に不明朗になりがちな機構だと私は思う。それで、金の行った先がさっぱりわけがわからない。この予算書や何かを見ましても、何とか関係で幾ら、何とか関係で幾らという補助金が出ておるけれども、どういう会社に行ったのか、それはさっぱりわけがわからない。  国民の税金をこういう形で使うことに、より大きな問題があると私は思うのです。金をつぎ込めばつぎ込んだだけ、研究や何かに便利になるだろうということもわかります。アメリカのメジャーのような大きな企業でないと研究費が組みにくいという点もあるでしょう。いろいろな点はある。だから、補助金として出すなら出しなさい。それはまたその時点で検討するけれども、絶対に出すなと私は言っておるのじゃない。出すなら出すでいいけれども、大衆の税金を使ってこんなわけのわからぬトンネル会社、トンネル機構。しかも、このメンバーを見たところで、私たちにはどうにも納得のできない財界人だけで、その金がまた財界の方に流れるとすればお手盛りになるのはあたりまえなんです。こういう不明朗な税金の使い方は許されない。だから私はやめなさいと言うのです。  大臣や皆さんは、つくったらつくっただけの何がしかの成果があったとおっしゃるけれども、それはあったと思うでしょう。なければおかしい。これだけ大きな金を使って何も成果がなかったと言ったら、それこそ血税のむだ遣いなんです。そんなことはない。だけれども、もう少し明快なやり方をするならば、こういう機構をつくるべきではない。こういう人たちは参考意見として意見をお伺いするのは結構だけれども、この人たちが主体になって金の配分をするなんというのは猫にかつおぶしを預けたようなものだ。こういうのはやめた方がいい。  そういう点で、剰余金がある、使い残しがある、しかも、これからどうなるかという明快な計画も何もわけがわからぬという中で、いま直ちに増税に踏み切るということは、私は何としても合点がいかないわけであります。自民党は多数でこれを押し切るのでしょうけれども、私は納得がいかない。  そこで、時間も迫ったようでありますので、最後に、もう一遍電源立地勘定についてお尋ねをしたいのであります。  最近の新聞、これは日経でありますけれども、最近の例で言うと、いま中国電力の原発誘致をめぐって争われている山口県の上関町の場合、町の財政は大体二十三億円。原発二基がつくられると、この会計から総額七十億の交付金が支給されると言われておる。こんな巨額な交付金の支出は、原発建設の決まったすべての自治体に大体共通であります。どうしてこれだけ巨額の交付金を払わなければならないのか、私は改めてお伺いしたいのであります。そして、その効果はどのようなものがあったか、あわせて御答弁を願いたいのであります。
  142. 小川邦夫

    ○小川政府委員 最初に、御指摘のありました上関のケース、これは計算上は、もし建設に入りまして着工いたしますとこの制度が発動されるということでございまして、発動されますと、確かに原発の所在市町村につきましては二基分の発電所建設ということになりますと七十億という御指摘の数字になるということでございます。ただ、現時点でまだその着工が決まっておりませんから、観念的な計算でございます。  御質問のその交付金、果たして効果が出ておるかというところでございますが、立地交付金の趣旨が、先生十分御案内のところでございますように、もともと公共施設所在市町村及び隣接市町村の公共施設の整備を図ることによって当該地域の住民の福祉を高める、そのことが地元住民の理解と協力を得る趣旨のものとして創設されたところでございまして、具体的な効果と申しますと、いろいろな態様で、道路だとか上水道だとか社会福祉施設とかいろいろなものがつくられて、これらがつくられるのは、整備計画という形のもとに県知事のもとで市町村の意見が入れられて、最も地元ニーズとして欲するものを選んで、それにこの交付金を充てるという形で行われてきておりまして、そのことが地元のニーズをそれなりの金額だけ充足してきたことによって原発の立地が円滑に進んできておるものという意味で効果が上がってきておると私ども考えております。
  143. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 公民館ができたり道路がよくなったり、皆さんは、交付金の目的は原子力発電の開発を進めるんだ、そして住民が通勤ができるような企業の誘致をするためにいろいろな整備をするんだ、こううたってありますけれども、大体において、絶無とは言わないけれども、原発のできる地域の近くに余り工場は来ないのですよ。雇用関係はさっぱり伸びない。これは現実なんだ。だからこれだけ、年間二十三億の予算のところに、一年間ではないけれども七十億もつぎ込むということは、将来この町の財政やいろいろな面でマイナスというものがまた大きく出てくる危険性を持っておるわけです。そういう点も配慮して、なぜこんなに大きな金額が行かなければいかぬのか、私はその辺にも問題があると思うのです。  一言で言って、この交付金は、たとえば原発反対の住民の買収費だ。原発の持つ危険性を金の力で覆い隠して、札束で住民のほっぺたをひっぱたく、そうして原発を建設する。これじゃ私は、本当の民主主義というものにはならぬと思うのですよ。もっともっと安全性や何かの話をよくして納得してもらうということ以外にないと思うけれども、札束でひっぱたくなんというのは、私は余りいいことじゃないと思う。この結果、住民に対立抗争が持ち込まれる、平和な地域社会が対立の場と化しておる、これは現実であります。  そして第二には、子孫のことは考えない。さしあたっての金が大切なんだと公言する町長さんさえあらわれるようになっている。人心の荒廃とたかりの思想を生んでいる。こうした例は本当に枚挙にいとまがない。このような状態を大臣、少し考えざるを得ないのじゃないですか。私は、新聞や何かのいろいろなのを持っておりますけれども一つ一つを挙げません。大臣、もう少しこの辺を、交付金もいいけれども、こんなに多額のものをやって進めるというところに私は大きな問題をはらんでおると思うのですが、いかがですか。
  144. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大変むずかしい政治論でございますが、確かに、原発の周辺に地域整備公団等による工業団地ができておるが、全く企業誘致がなされていないところもあるではないか、事実であります。例は確かにございます。が、要するに、わが国の国民性のよって立つ唯一の被爆国民たるという感情から原子力発電そのものに対するアレルギー、そういうものに対して安全性のより深い理解、そういうことを求めながらもろもろの努力をなされる中に、原子力発電の持つ国家全体に裨益する点のその地域に住む住民の一つの郷土意識の定着というようなことから交付金制度というものができて、まあ確かに交付金があるからいいじゃないかと言う。しかし、あの市長さんは当選されましたけれども、そういうようなことが出ておったことも私も承知しておりますが、総合的に考えた場合に、安全性の普及と同時に、やはりよって立つ立地市町村が、国家的使命を理解しつつも、ふるさと意識を確立していくためのもろもろの環境整備が行われることは好ましいではないか。ただ、それがいわば巨額な投資の中にイギリス病的性格を将来帯びるようなことがあってはならないというのは、私どもも意を用いておかなければならない点ではあるというふうな認識を持っております。
  145. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 どうもさっぱりわかりません。  そうして、建設の確定から工事完了までの交付金、その後の固定資産税の収入、自治体の収入は飛躍的に増加をいたします。しかし、固定資産税というのは、原発の場合なんというのは非常に加速的に償却をいたしておりますから、年ごとに固定資産税の収入は激減をしていきます。自治体は以前の貧乏町村に戻る。施設をつくりあるいは財政の浪費、もうこれはならわしとなってしまう。それは、一遍ぜいたくをするとなかなかもとへ戻らぬのと同じであります。  そういうことで、結局さらにまた国に補助金を求め、その結果電源開発促進税の増税による電気料金の値上げにつながっていくのじゃないだろうか。電源立地特別交付制度はその顕著なあらわれだと私は思う。また、乱造された施設の維持費は住民負担となってきます。地域社会の破壊、住民自治の侵害、たかりによる人心の荒廃、加えて、この会計制度を無制限に膨張させる仕組み、どれをとってみても電源開発促進対策特別会計は速やかに廃止すべきだと思う。特に、電力需要が緩み、設備投資の見直しが必要になっている今日、増税ではなしに基本的な見直しをする絶好な機会だと私は考えます。私は、政府にもう一遍再検討をされることを望んで質問を終わります。
  146. 森美秀

    森委員長 柴田弘君。
  147. 柴田弘

    ○柴田委員 電源開発促進税の税率の引き上げの問題について御質問いたしますが、やはり政府の基本姿勢といたしまして、増税よりもまず歳出削減、これが基本姿勢であらなければならないわけであります。今回の税率引き上げは最終的には消費者にはね返ってくるわけでございます。安易に行うべきではない、このように考えます。  今回の税率引き上げを見てまいりますと、いわゆる下期からの引き上げ、こういうことであります。ですから、私は、少なくとも何とか歳出を抑制をして、増税を行わずに対処すべきではなかったかというような気がしてならないわけでございますが、まず、歳出抑制にどのような努力をされてきたのか、お伺いしたいわけであります。  今回の電源開発促進対策特別会計予算を見てまいりましても、電源立地勘定では確かに対前年度比マイナス十四億円歳出を抑え込んだ形になっておりますけれども、多様化勘定は百二十二億円も増加しているわけであります。歳出を削減する余地があったのではないか、こんなふうに思うわけでございますが、この歳出削減、抑制の努力、これについてまずお伺いをしてみたいと思います。
  148. 窪田弘

    ○窪田政府委員 特別会計歳出のうち立地勘定につきましては、予算の総額をいま御指摘のように二%削減をしております。内容につきましても細かく点検をいたしまして抑制を図っております。たとえば委託費について申しますと、二十二項目ございますが、そのうちの十三項目は前年度比マイナスになっている、こういう状況でございます。  多様化勘定について御指摘がございました。確かに百二十億ふえておりますが、これは、沖縄におきます石川火力発電所の石炭火力についての補助とか、そういう需要がございまして増加をせざるを得ないわけでございますが、これも内容を点検いたしまして、たとえば技術のうち地熱探査技術等の確証は計画を二年繰り延べる、原子力の対策のうち遠心分離機とか化学法ウラン濃縮等々については計画を二年繰り延べております。その他、たくさんの項目について計画の一年ないし二年の繰り延べを図りまして、極力抑制を図っているところでございます。  そうやって抑制を図りましても、たとえば立地勘定におきましては、剰余金の減少等がございますので、いまの税率のままでまいりますと約百七十七億財源が不足をいたします。そこで、十月一日からの引き上げをお願いをしているわけでございます。多様化勘定につきましても、同じように歳出を抑制した結果でも、なおいまの税率のままですと百六十五億ほど不足が生じますので、これにつきまして税率の引き上げをお願いしている次第でございます。
  149. 柴田弘

    ○柴田委員 いろいろ御答弁をいただいたわけでございますが、国民の目から見てまいりますと、今回原油値下げがありました。電力の需要も伸び悩んでいる。そこへ税率の引き上げが実施される。すなわち、原油値下げは電力会社に対して輸入代金の減少など経費の軽減をもたらしたわけであります。そして電力料金の値上げ要因であるこの税率引き上げが今回行われている、こういうことでありまして、国民の目から見て、やはり石油が値下がれば当然それは消費者に利益還元という形でしなければならないわけでありますが、その前提条件として、今回のこの引き上げに対して電力料金というものはいかに推移をしていくのか、これはどうしていくのかという、ある程度国民の理解を得るような説明というものがなされなければならない。  この税率引き上げは、先ほど申しましたように、最終的には消費者に負担転嫁をされるものでありますから、そういった電力料金の問題についても国民にしっかりとした説明をしていかなきゃいけない、それでなくしては今回の税率引き上げというのは国民の理解というのは得られない、私は、こんなふうに考えているわけでございます。  そこで、お伺いいたしますが、まず政府として、これは大蔵大臣にはちょっと無理かもしれませんが、通産省で結構ですが、原油値下げについて最終的に国民に利益還元をしていくという考え方を持っていらっしゃるか。そしてもう一つは、今回の一バレル当たり五ドルの引き下げというのは、どの程度電力会社に利益をもたらすのか。その辺からひとつ御説明を賜ります。
  150. 川崎弘

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  原油引き下げの利益、これは当然私ども国民経済に還元されるべきものというふうに考えております。そして、まず油の方そのものの値下げにつきましては、私どもといたしましては、これは市場メカニズムを通じて国民に還元されていく、そういうふうに考えて、そういう方向で努力をいたしております。  それから電気の方は、御承知のように、確かに認可制の料金でございます。大体一ドル原油が下がりますと千億燃料費の減少が起こる。したがいまして、今回のように五ドル下がりまして、それが一年間続くというふうに仮定いたしますと、五千億ということに相なります。ただ、これは為替レートであるとかその他の要因をすべて現在のままということで判断したものでございます。
  151. 柴田弘

    ○柴田委員 もう少し具体的に、五千億円ですか、これを基本的に国民利益を還元をしていくというならば、そこら辺のプログラムといいますか、スケジュールといいますか、どういう考え方で還元をされるのか、そこら辺、今後の問題としてひとつわかりやすく国民の皆さんの前に御説明をいただきたいと思います。
  152. 川崎弘

    ○川崎政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、燃料費は確かに原油価格の下落によりまして減少はいたします。しかしながら、電力会社の方の収支ということで考えますと、一面におきまして、人件費であるとか修繕費であるとか資本費、こういった確実なコスト上昇要因もございます。それから、さらに重要なことは、この五ドルの引き下げの状況が一体いつまで続くのか、どの程度の期間これが続くのかというのは、まだ現段階では不透明なところが非常に多うございます。さらに、為替レート、あるいは電力には特有の問題といたしまして雨の降り方、つまり出水率の動向というようなものが非常に電力の収支影響を与えてまいります。  したがって、こういう不確定要因もございますので、原油価格の引き下げ、つまり燃料費の減少が直ちに電力会社の収支の好転に結びつくかどうか、この点につきましては、いましばらくその要因を見守っていく必要があろうかと思います。したがって、電気料金の取り扱いは、こうした諸要因の動向を見きわめて慎重に判断していく必要があるとわれわれは理解しております。
  153. 柴田弘

    ○柴田委員 確かに資本費、人件費あるいはまた将来の動向というのが不透明だということはわかります。だが、いまの御説明では国民の皆さんはわからないと思います。将来どうしていくのかという、そういったものがない限りはやはり御納得はいただけないと私は思います。そういった意味において、今回のこの税率の引き上げというものについても私どもは賛同するわけにいかないわけでございます。  そこで、次に進みますが、今回のこの引き上げ、するからには、確かに石油資源の有効性を考えていきました場合、エルギー対策の円滑な実施をするためにも、私は、財源確保をするということは、これは必要だと認めます。しかし、現在のような厳しい財政事情のもとにありまして、エネルギー対策といいましても、この施策の有効性を十分に吟味した上で、支出の重点的な効率化といいますか配分というものを行なっていくべきである。こういった、いわゆる支出面での十分な検討というものがなくして安易に増税に走るということは反対であるわけであります。これは大きな問題があると思いますが、これは十分に御検討なさったのかどうか、この辺の考えはどうでしょうか。これは大蔵省として十分な御検討をなさったのかどうか。
  154. 窪田弘

    ○窪田政府委員 今回の税率引き上げをお認めいただきました税調の答申にも、厳しい歳出の抑制を前提としてという文言がございますように、歳出についても、こういう時代でございますので厳しく抑制をしたつもりでございます。
  155. 柴田弘

    ○柴田委員 原油値下げのメリットがあるといいましても、それを単純に代替エネルギー開発投資に向けるとか電源開発促進税を頻繁に引き上げるというような安易な考え方では困るわけでありまして、先ほど申しましたように、最終的に一般消費者が得るべきメリットを先取りしてしまうということにもやはり問題があると思います。     〔委員長退席中西(啓)委員長代理着席〕 だから今回、の引き上げによって、今後相当の期間再増税のないように、しっかりと努力を図っていかなければならない、こう私は思いますが、この辺の決意について、これは大臣からひとつ御表明をいただければと思います。
  156. 竹下登

    ○竹下国務大臣 安易に目的税たるとの性格を持つからといって増税志向をすべきものではない、これは、私は意見は別に相違はないと思っております。  今度の問題というのは、税調の答申にもございますように、厳しい歳出削減の上で、なお将来を展望した場合の代替エネルギー対策に要する経費の不足に充当するためのまさに目的税としての引き上げでございますので、仮に、もしこれをその他の赤字公債とかいうような考え方でやった場合、後世に負担を残すものであるだけに、現在、値段の問題は別として、許された石油事情の環境にあるものが将来を展望した場合に、代替エネルギーの問題について、後世の納税者にツケを回すことなく自分たちの責任で将来に資産を残していくという筋からいって、御理解をいただける問題ではなかろうかというふうに考えております。
  157. 柴田弘

    ○柴田委員 今後どうですか、大臣。これを今度上げますね。
  158. 竹下登

    ○竹下国務大臣 最初に申しましたように、安易に税率引き上げ等に頼ることは厳に慎むべきだと思っております。
  159. 柴田弘

    ○柴田委員 通産省にお聞きをしてまいりますが、エネルギー政策の問題ですね。  OPECの原油引き下げがありました。こういった情勢の中で、あなたの方の諮問機関である総合エネルギー調査会の場で、長期エネルギー需給の見通し、それからエネルギー政策の総点検ということをなされる。これは御検討を始められた。  質問の骨子は、いろいろと総点検をしていただきますが、私も見ているわけでございますけれども、基本的な問題は四点あるわけですね。今後のエネルギー需要をどう見るか。二つ目には、エネルギーコストについていかにその低減を図るか。三つ目には、どのようなテンポで石油依存度の低減を図るべきか。四つ目には、情勢の変化に耐え得る強靭なエネルギー産業をいかに確立するか。こういった基本的な問題がありまして、見通し、政策の総点検の考え方、そして検討の進め方、いろいろあります。  ずっと見てまいりまして、原油価格の下落が内外の経済あるいはエネルギー情勢に抜本的な影響を及ぼすものと見られる、そういったことに対応いたしまして、わが国のエネルギー政策のあり方を根本的に問い直される、私は注目すべきことではないかというふうに考えているわけでありますが、答申によっては、政府のエネルギー政策というものを基本的に変更されるお考えで進められるのかどうか、もしそうでないならば、これは一体何のために行われるのか、そこら辺もあわせて、ひとつわかりやすく御説明を賜りたいと思います。
  160. 川崎弘

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  確かに、原油価格の五ドル低下、そういったことを含めまして、エネルギーを取り巻く国際的あるいは国内的な環境は最近大きく変化しておる、そういう情勢を踏まえまして、私どもといたしましては、この四月の六日から総合エネルギー調査会、通産大臣の諮問機関でございますが、ここに、長期需給見通しの改定とそれからエネルギー政策の点検をお願いして、いま審議が始まっているところでございます。  私どもは、このエネルギー政策の総点検の中で、一つの大きなポイントといたしましては、エネルギーコストの上昇、これが日本の産業に非常に大きな影響を与えておる。したがって、エネルギーというのは、その一面におきましては、エネルギーセキュリティーの確保、これは大変重要なことで、いささかもその重要さは減っていないと思いますけれども、もう一面においては経済性、こういうものをもっと考える必要がある。したがって、その辺を総合的に評価した、バランスのとれたエネルギー需給構造をつくるにはどうしたらいいか、そういう意味での政策面の点検ということをお願いしているわけでございます。  実は、基本的なエネルギー政策が変わるかどうかという点でございますけれども、私どもが昨年つくりました長期需給見通しでは、昭和六十五年度にエネルギーの中の石油の依存度を五割に落とすという見通しを立てておりました。つまり、脱石油を進めて脆弱な供給構造を変えていくのだという考えでおりましたけれども、現在、まだ日本の石油依存度は六割でございまして、そのうちの七割が中東に依存をいたしております。これを国際的に比較しますと、まだまだ日本のエネルギー構造というのは脆弱である、そういうことで脱石油、したがって代替エネルギー政策をもっと推進していく、こういう従来の代替エネルギーの開発導入を柱とするエネルギー政策、これには基本的な変更は加わらないものというふうに考えております。
  161. 柴田弘

    ○柴田委員 いまもおっしゃいましたように、去年の四月、調査会が発表いたしました長期エネルギー需給見通しですね。これは昭和四十二年以後七回目の改定をされている。やはり現実との間にずいぶんずれがあった。もちろん、経済は生き物ですから、需要供給のバランスが崩れることもあるわけです。しかし、今回の見通しもまたこの秋には改定されるということですね。やはり需要の分析があいまいといいますか不十分である、私はこんなふうに思っておるわけであります。これは指摘だけにとどめておきます。答弁は結構です。だから、今回やられるについても、その辺のところもしっかりとやって、確かな見通しを立てていくことが必要ではないか、こんなふうに私は考えております。これは御指摘だけしておきます。  あと時間がなくなってきましたので、ちょっとほかの問題で、きのう時間がなくなりましたので、郵便貯金の問題で、率直な大臣の御見解を伺っておきたいわけであります。  私は、かねがね思っておりますが、今日の個人預金に占める三〇%、七十六兆円、これはわが国民間経済の発展、活性化という問題からいって、これは異常な事態である、こういうふうに考えておりまして、臨調答申にもあります、これも誠実に最大限実行するということであるわけでありますが、今後の郵便貯金事業、郵貯問題を考える場合には、民間金融機関の預貯金サービスの努力がまず前提になることは確かでありますけれども、やはり従来のような、いわゆる郵貯拡大路線ではなく、民間との共存共栄、国民経済全体の利益を重視した運営に切りかえていかなければいけない、こんなふうに基本的に考えておるわけでありますが、この辺はいかがでしょうか。
  162. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま柴田委員がおっしゃったことに、原則的に私も同意をいたします。  率直に申しまして、民間金融の補完的立場ということであろうと思うのです。しかし、いまも御指摘になりましたとおり、わが国の金融行政の中で市中金融機関が過保護の中にあって、極端に言えば国民のニーズに対応する努力がいささか不足しておった。それが、銀行さんよさようなら、郵便局さんよこんにちはというような感じを生んだ反省の原点に立って行わなければならぬじゃないか。  したがいまして、この問題につきましては、率直に申しまして、確かにいままでの歴史的経過の中でむずかしい問題があろうかと思います。郵政事業の原点にさかのぼってみますと、安いが国が倒れなければこれは倒れないということから、金利はある程度他の民間金融に比較して低いがより安全であったと書いてあるごとく、細民の預金を集める、こういう感じで出発したわけでございますけれども、一方、そのときにあったもろもろの市中金融機関というのは統廃合を何回か重ねていって近代化をしたものの、ニーズに対応する努力はいささか欠けておったかもしらぬ。一方、有利な定額貯金とかいうものができてきた。  そういう歴史的経過の中で解決されなければなりませんから、一概にこれはばっさりということはなかなかむずかしいかなというふうに思いますが、臨調答申できちんと指摘していただいておりますので、これらを実行に移すための対処方針を、これからまた第二次行革大綱と名づけられるのでございましょうか、そういう中できちんと対応していかなければならぬ問題だ、原則論は大体一緒だと思っております。
  163. 柴田弘

    ○柴田委員 きのうも総理がおっしゃっておりましたが、やはりこれは郵政、大蔵の間で調整されていかなければならぬ。金利決定の一元化の制度化の問題あるいは定額貯金の商品性の見直し、これは郵便貯金法の改正まで伴っていかなければならぬ問題ではないか、私はこういうふうに考えております。ですから、これは非常に大きな問題であると思います。そこら辺の調整について、大蔵省サイドの大臣としてはどのような具体的な考え方を持って進まれるか、これだけお聞きして質問を終わります。
  164. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる郵貯懇それから三大臣合意というものがございまして、方向としてはそれなりに志向されておる点はあるなと私は思っております。  ただ、よく、私どもこの問題についての答弁書を銀行局と郵政省と両方から取り寄せますと、全く違った答弁書ができるぐらい、やはりそこに歴史的な経過がある。だから、私はいま大蔵大臣でございますから、民間金融を所管事項の中に抱えるものとして志向された方向に沿ってこれからも努力していかなければならぬというふうに思っております。
  165. 柴田弘

    ○柴田委員 終わります。
  166. 中西啓介

    中西(啓)委員長代理 米沢隆君。
  167. 米沢隆

    ○米沢委員 本法に関連いたしまして、若干の質問をいたしたいと思います。  電源開発促進税の税率の引き上げの背景、またその必要性につきましては、現在の仕組みを前提とする限り、電源三法の制定趣旨からいたしましても私どもは十分に理解をしなければなりませんが、現在の電源開発促進税とその特別会計の仕組みを考えました場合、総論的に言えますことは、初めに電源開発促進対策の需要ありき、しかる後にその費用充当のための電発税が決まるという関係を見ますときに、相対的依存関係からいたしまして、いずれもある種の制約があるように思われます。すなわち、需要が大きくなり過ぎると電発税の大幅な引き上げとなり、電力コストの増大となってはね返る、電発税の引き上げに神経質になりますと今日においてなされねばならない対策がなされなくなるという相対的な制約が生じることになると考えます。  現行の仕組みは需要と電発税の額に国民の納得できる整合性が保たれておれば問題はないにせよ、時と場合によっては電源立地や多様化に支障を来すことにならないかという心配が出てくるわけであります。つまり、電発対策が電発税のみに依存する脆弱性とでもいいましょうか、あるいは国民の期待にこたえられない事態も起こり得るのではないかという危惧も出てくる可能性があると考えるわけでありまして、この特別会計の仕組みは一体問題はないと言えるものか。でき得れば、財政多端の折からいますぐにではないにせよ、単に電発税に依存するだけではなくて、一般会計あるいは石油税収等からのこの特会への繰り入れ等のできる仕組みに再編成されるべきであると思うわけでありますが、当局はどのように判断されるのか。言い方を変えれば、目的税と受益者負担の見地からだけでは将来問題が生じることにならないか、所信を伺いたいと思います。
  168. 窪田弘

    ○窪田政府委員 御趣旨は理解できますけれども一般会計がいま非常に窮迫しておりますし、今後当分の間大変な窮状が続くと思います。したがって、これを一般会計依存の形に切りかえればもっと歳出は苦しくなるのではなかろうかと思いますので、まだ現在のところは、いまの制度が最も適当ではないかと考えております。     〔中西(啓)委員長代理退席委員長着席
  169. 米沢隆

    ○米沢委員 通産省の見解はどうですか。
  170. 川崎弘

    ○川崎政府委員 ただいまの御質問に対する当省の見解でございますが、基本的には大蔵省の御答弁に賛成でございます。  ただ、私どもの方といたしましては、もう一つ、今回お願いしております税率の引き上げにつきましては、今後の電源立地それから多様化対策の歳出需要それから電力の方の需要の見通し、この辺を十分勘案いたしまして税率の引き上げ幅を決定したところでございます。したがって、現在見通し得る限りにおきましては、中長期的観点から見まして必要十分な財源措置をこれで講じられるものと考えております。
  171. 米沢隆

    ○米沢委員 私が申しますのは、現在のこの制度を単に一般会計に依存しようという議論じゃありません。現に一般会計が大変厳しい折から、一般会計に依存しては逆に安定的な財源を確保できないということはよくわかりますが、設立当初にも問題になりましたように、将来において単に電力だけにひっかけることはいかがなものだろうか、やはり幅広く、特に石油代替エネルギーの開発等については石油税あたりが充当されても筋としては何もおかしくない。時と場合によっては一般会計からも充当するという姿勢みたいなものがないと、結局需要がふくらめばまた税率の引き上げにつながっていって、何かしら歯どめがないというところに問題があるような感じがする。そういう意味で、この仕組みそのものも将来的には検討されるべきものではないか、そういう議論をしているのでありまして、大臣見解はいかがですか。
  172. 竹下登

    ○竹下国務大臣 そもそも国家財政なかんずく富の再配分とも言うべき歳出がそれぞれの政策選択の順位によって行われる場合、その財源たるものはいわば無色の財源、すなわち、一般の色のつかない税で賄える、それであってこそ初めて政策選択の弾力性もある。したがって、目的税というものは必ずしもその本質から言えば好ましいものではないが、それが局限された受益者という場合においてはまたそれなりの意義は存在するでありましょう。したがって、いわゆる石油代替エネルギーの開発などということになれば、局限的な受益者ではなく国民全体あるいはむしろわれわれの子孫まで影響を受けるものであるだけに、目的税としてこれをやるよりも、むしろ窮迫した中においても一般財源等で充当すべきだというようなもろもろの議論を確かに重ねてきたわけですね。私は、それは一理あると思っております。  しかし、いまの非常に窮迫した時点の中において、いま受益者がすぐ還元を受けるという立場でなくして、将来の子孫がむしろ利益するためにも一つの目的税として拠出するということはそれなりの、とかく赤字公債でやれば将来にツケを回す、いわばいまの負担によって将来に利益を持つという、あの時点においてはある種の、いま生存する生きとし生ける者としては一つの非常にいい税制のあり方だというような議論の末こうなったわけでございまして、私は、米沢委員のおっしゃる意味は非常によく理解できますが、いまの場合、この目的税がそれに対応するものとして適当であろう。そして、将来の課題としての提言というものは、われわれも踏まえていなければならぬ課題ではあるというふうに認識をしております。きょうどうという問題ではございませんが、一つ考え方の流れとして私どもも十分理解できます。
  173. 米沢隆

    ○米沢委員 今回の税率の引き上げの提案は、昭和五十五年の五月に一千キロワットアワー当たり八十五円から三百円に引き上げたところから、わずか三年目にしての引き上げ提案でありますね。その制度が発足するときには、電力需要が伸びて税率はほぼ同じでもやっていけるなんということが言われ、同時にまた、十年の需要計画等が出されて、いかにも税率はそう安易に伸びていきませんよというような説明があったにもかかわらず、わずか三年目にしてこういう提案がなされる。  そういう意味で、私どもも、もしこの法案が成立することになりますれば、これは今後の対策費用のいかんにかかるわけでありますが、本当に今後何年間も、これから先税率の引き上げはしなくてもいいのか。この法案が通れば今後数年間にわたって引き上げはしなくてもいいのかという、そのことの約束がないとどうも歯どめ論にならない。何かノーズロでずるずる税率引き上げ、需要が拡大する、また引き上げというイタチごっこになる可能性がある。そういう点で、歯どめについてどういうふうな考えを持っておられるのか。
  174. 川崎弘

    ○川崎政府委員 先ほど御指摘の五十五年の三十銭への値上げのときは実は多様化勘定というものを創設いたしまして、一キロワットアワー当たり二十一銭五厘の増税をお認めいただいたわけでございます。  そのときに私ども歳出の長期的な需要見通しというのを立ててございますが、実は今回三年後で税率引き上げということに相なりました中身をちょっと御紹介いたしますと、歳出需要の方、これは当時立てました創設時の見通し、その中の五年先、つまり五十五年から六十二年という当面五年先の見通しでやってみましても、当時から比べますと六十億円ぐらいふえているだけでございまして、歳出の方はほとんど差がございません。これは、一つには、われわれとして厳しく歳出の見直し、重点化を図ったところからきたものでございます。  ただ、一方、景気の停滞でございますとか電力に対する省エネルギーの進展、こういったものがございまして、電力需要が非常に伸び悩んでおります。したがって、当時私どものつくりました歳入見通しと比較いたしますと、当面五年先までの間で約千六百億ほど歳入需要が落ちるということでございまして、これが、実は今回お願いしております一キロワットアワー当たり七銭の増税が必要となった理由でございます。私どもといたしましては、この増税をお認めいただきますと、大体当面五年先程度のものはこれで現在の中期的な歳出需要を賄えるもの、そういうふうに見通しております。
  175. 米沢隆

    ○米沢委員 いま、将来の電源対策、特に立地、多様化と分けて、どれぐらいの需要の推移を見ておるのか、ちょっと数字的に教えてもらいたい。  それから、この値上げ法案が成立いたしますと、その需要計画からして大体何年間ぐらい税率の引き上げをやらなくて済むのか、その点をはっきりしてもらいたいと思うのです。
  176. 川崎弘

    ○川崎政府委員 ただいまの点でございますが、まず電源立地勘定の方から申し上げますと、電源立地勘定の方の歳入は電源開発促進税収で約三千八百億円強、このうち税率の引き上げ分が千七百億ということでございます。剰余金を百億ぐらい見込んでおきますと、約四千億弱というのが立地勘定の歳入ということに相なろうかと思います。  それに見合います歳出の方でございますが、立地促進対策交付金、これが二千億円強、立地特別交付金、これが六百億円強、それから水力発電施設周辺地域交付金、これが二百億円程度、原子力発電安全等対策費、これが千百億円、これで大体四千億弱の歳出となります。  それから多様化勘定の方でございます。同じ五十八年度から六十二年度までの累計の収支見通しでございますが、歳入の方は促進税収が七千億円強でございます。この中に今回の税率引き上げ分が千六百億円程度、五十億程度の剰余金等を考えまして歳入が七千百億円弱、歳出の方はこれらの項目、われわれの整理によりますと供給確保、水力であるとか地熱とかそういう代替エネルギーの導入促進に当たるものでございますが、これが七百五十億円程度、それから石炭火力の導入促進あるいは石炭転換等を進めますので七百億円程度、それから新エネルギー等の技術開発で九百五十億円程度、原子力で四千七百億円程度、合わせまして歳出が七千百億円という程度になります。  これは五十八−六十二年度の見通しでございまして、私どもとしては、先ほども申し上げました税率の引き上げをお認めいただきますと、大体五年程度は必要最小限の歳出需要を賄えるものというふうに考えております。
  177. 米沢隆

    ○米沢委員 今回の場合、この税率の引き上げが電力会社のコストになって将来的には消費者にはね返ってくる、こういう仕組みになっておりますが、今回の税率引き上げは消費電力の値上げにダイレクトに結びつかないと思っていいですか。
  178. 川崎弘

    ○川崎政府委員 電促税は、直接の受益者は電力会社ということでございまして、電力会社が支払うことになっております。ただ、将来料金改定があるというような場合には、その料金改定のコスト計算の上で、もちろんこれを十分考慮するという必要はあろうかと思いますけれども、直ちにこれが電力料金の引き上げに結びつくということはなかろうと思います。  と申しますのは、まず五十八年度につきますと、これは半年つまり十月からの引き上げでございますので、私どもがざっと計算いたしますと、電力料金に占める比率が大体〇・三%程度でございます。平年度化いたしますと、それが大体倍になりますけれども、電気料金というのはもっといろいろな原価要素がございますので、そういったものの動向いかんで料金の問題が出てくるということでございます。いずれにしましても、比率としてはそんなに大きなものではないというふうに私ども考えております。
  179. 米沢隆

    ○米沢委員 さて、この立地勘定についてでありますが、電源三法の成立以来、経緯を見ますと、たとえば整備法の施行令の改正が何回となく行われております。昭和五十二年の施行令の改正では、商工業に係る共同利用施設を追加する。五十三年の五月十九日には、法適用施設の範囲拡大ということで水力が一万キロワット以上が五千キロワット以上になり、五十五年の六月には、やはり同じく法適用施設の範囲拡大ということで、水力が五千キロワットになったものが今度は一千キロワット以上になる。五十六年には電力移出県等交付金及び水力発電施設周辺地域交付金の追加、五十六年の八月には原子力発電施設等周辺地域交付金の追加、五十六年の十一月には法適用施設の追加として高速増殖炉用燃料加工施設が追加される。五十七年の八月にはまた産業の振興に寄与する施設として工業団地、工業用水道が追加される。次から次に交付金を出す対象施設がふえておる。  これは、それなりの理由はあったのだ、そう思いますけれども、今年度も、御案内のとおり、要求段階では交付金の対象施設として交通施設の追加が予定されていたというふうに聞いておりますが、結局これは見送られました。それでも当局としては、産業施設の解釈拡大によって、農業、水産、工業各試験場の追加や幼稚園、レジャー施設の追加など、通達で行える範囲内で弾力的運用を図ることによって実質的な拡充を図っていく方針である、こういうふうに聞いておるわけであります。  こういう流れを見ておりますと、それなりの理由はあったにせよ、一体どこまでこの追加は続いていくのかということが大変危惧されるわけです。追加すればするほど、それは周辺地域の皆さんの理解は進むかもしれませんけれども、しかし、それはそれなりの合理的判断があってしかるべきものだ、私たちはそう考えるわけであります。  そういう意味で、いろいろと今回も見直し等を行ったというように言われておりますけれども、今後こういう追加需要というのが一体どこまで範囲が広がっていくのか、現在の段階で予定されておるものは何があるのか。それ以外もう追加はしないというぐらいのことを言うてもらわないと、いまおっしゃったように、あと五年間ぐらいは需給が大体バランスするということを信じるわけにいかない。その点、いかがですか。
  180. 川崎弘

    ○川崎政府委員 電源開発は、電源設備が設置されます地元には、経済的社会的な非常に大きなインパクトを与えるわけでございますが、一方において雇用促進の効果等に乏しいということで、なかなか地域住民の方々の理解と協力が得られない、そういうことで、私どもとしては、こういう電源三法に基づく制度を導入いたしまして、電源立地の推進、促進を図ってきているわけでございます。したがって、たとえば公共施設等の整備を通じまして住民の福祉向上を図る、それによって電源地域の地域振興を図っていくというのが、この制度の基本的な目的になっております。  先ほど、この制度を拡充してどこまでやるのか、歯どめがないじゃないかというお話でございましたけれども、たとえば公共施設で、五十七年度から産業導入のための施設を入れました。これは、産業をその地域に振興するために、たとえば工業関係や農水産業関係の研究所をつくるとか、そういったものにこの資金が利用されるような道を開いたわけでございます。  一面において、この電源立地対策交付金といったものは、やはり地域のニーズに応じた使い方、最も住民が望まれるような形での使い方ということが必要だろうと思いまして、現在もそのメニュー方式の形をとっております。ただし、金額の方は抑えております。抑えた金額の中で、その地域地域の実情に応じた最も望ましい公共施設等を整備していただく、そういうふうな考え方で制度がつくられておりますので、御理解いただきたいと思います。  それから、水力の適用対象を非常に小さくしたということでございますが、これは先生も御承知かと思いますが、水力発電施設は、日本国内では大規模な水力地点というのがだんだんなくなって、非常に小さな、小水力の開発ということが重要になってまいりまして、そういう意味で法の適用対象を小さくしていったということがございます。  いずれにいたしましても、五十六年度には特別交付金が新たに創設されたりいたしましたが、目的税という性格がございますので、これに安易に依存することのないよう、つまり、目的税の性格にぴったり合った真に必要なものだけに制度として限っていきたいということで、今後ともそういう方向で慎重に行ってまいりたいと考えております。
  181. 米沢隆

    ○米沢委員 金額を抑えて、交付金の使い方はその地域の実情によって多様化しておるという話でありますが、私が申し上げるのは、そういう追加需要というよりも、新たに交付金をつくって、それによるのだったら差し上げますなんということにはならないのでしょうね、こういうことです。  特に、こういうお金を出すこと自体が、それは確かに必要性もよくわかりますけれども、逆に、これを出すことによって非常にたかりみたいなものが、実際、地域のエゴの中にそういう感覚が増長されていることは事実ですね。水力発電で水がうるさいから金を出せなんという、そんな冗談みたいな話まで金よこせの議論になっておるなんという実態を見ましたときに、少なくともこういう使い方というのは、本当に慎重の上に慎重を期してもらわねばならないし、新しく追加される場合でも、本当に厳格な、それなりの大方の皆さんが納得できるような中身でないと理解してくれないのではないかという感じがしてなりません。  そういう意味で、私がいま申し上げているのは、今後、五年の需要計画をいま大体説明をいただきましたけれども、実際これから先税率の引き上げにつながらないかどうかという議論の際には、必ず新需要みたいなものが、大変なんだからもう出してしまおうじゃないかという形で、言葉では一生懸命厳格にやるとおっしゃっても、実際の場合にはかなり安易に出されてくる可能性があるということを大変心配しておるのです。再度そのあたりの確認をいただきたいと思うのです。
  182. 川崎弘

    ○川崎政府委員 先ほど御説明いたしました数字の中には、新規の政策というのは、特に立地勘定については何も織り込んでおりません。  私どもといたしましては、ただいま先生指摘のとおり、安易に制度を拡充するということは慎んでまいりたい、本当に必要最小限度のものに限って実施してまいりたいという覚悟で今後ともやってまいりたいと思います。
  183. 米沢隆

    ○米沢委員 最後になりますが、多様化勘定に関連して、特に技術開発と原子力に関して質問しておきたいと思うのです。  総括的な質問で大変御迷惑をかけますが、技術開発や原子力の水準、日本の技術の水準は世界の中で一体どういうところに位置しているのか。その中でも、日本として強いところと弱いところがあるわけですね。そのあたりの説明をしてほしい。  それからもう一つは、今後多様化勘定についても重点化を志向しろという声が大変大きくなっているはずであります。ばらばらやっても、いろいろ投資効果みたいなものに関しては問題がある。それで多様化勘定等についてはかなり重点志向をせいというのが世論だと私は思うのでありますが、多様化勘定の中でどういう点に重点を置いて今後技術開発等に臨まれるのか、その点の今後の方針を聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  184. 川崎弘

    ○川崎政府委員 新エネルギーあるいは技術開発という分野において、国際的に見てどういったレベルにあるかという点でございますけれども、いわゆる新エネルギーという分野におきましては、日本は国際的に見て非常に高い水準にあると私どもは理解しております。ただ、中には、欧米諸国特にアメリカに比べて開発段階がおくれている分野も一部にはございます。原子力関連の技術という点につきますと、発電関係、つまり現在の軽水炉に関しましては、豊富な運転研究を踏まえまして開発も十分進んでおりますけれども核燃料サイクルにつきましては、なおまだ自主的な確立を図るべく技術開発を相当推進していく必要があるだろうと考えているところでございます。  先ほど総花的というお話がございましたけれども、私どもといたしましては、たとえば新エネルギーという分野におきましては非帯に企業化が近い、可能性が高いという問題といたしましては、たとえば太陽電池であるとか燃料電池、この辺の分野はそういった意味での実用化がわりあい近いところに出てくるんじゃないかと思っておりまして、この辺に重点を置いて進めてまいりたいと考えております。
  185. 米沢隆

    ○米沢委員 終わります。
  186. 森美秀

    森委員長 正森成二君。
  187. 正森成二

    ○正森委員 まず最初にエネルギー庁に伺いたいと思いますが、たしか電力施設計画というのがあって、中央電力協議会というのが提出するようになっておるようですが、二年ぐらい前には電力量の伸びを年平均で何%ぐらい見ていたか、それがたしかことしの四月十五日には改定が行われたはずですが、それではどのぐらいになっているか、お答えを願います。
  188. 小川邦夫

    ○小川政府委員 お答えいたします。  電気事業用電力量ということでございますが、御指摘の、以前の見通しが年率で四・三%の伸びであるものが、電気事業用電力量で今度の四月に提出されました施設計画によりますと、年率三・二%ということに下方修正されております。
  189. 正森成二

    ○正森委員 そこで、実際の伸びはどうなっておりますか。私の方で調べてみましたら、石油ショック後の七三年から八一年は二・七%の伸び、そして八〇年は四・二%の予定だったのがマイナス一・一%、八一年はプラス二・三%というぐらいになっているようでありますが、そのとおりですか。  それからもう一つ、特に大口電力の伸びを見ますと、一九七五年から八一年までは年率プラス一・三%、八〇年から八一年の二年間はマイナス三%ということのようですが、いかがですか。
  190. 小川邦夫

    ○小川政府委員 私ども手元に持っております資料のくくり方がちょっと違うわけでございますが、先生指摘と傾向的には一致するようなことになろうかと思いますので、その数字を申し上げたいと思います。  総需要電力量といたしましては、オイルショック前、四十八年までの七、八年間を平均しますと二けた、一二%の年率の伸びであったものが、オイルショック直後の四十九年、五十年という二年間が〇・八%の微増という伸びに落ちた。その後、第一次ショックからの回復過程と一応見てのくくりで、五十年をベースに五十四年までの四年間の平均伸び率が五・四%と回復しましたが、第二次ショックの五十五、五十六年の二年間になりますとほとんど横ばい、微減のマイナス〇・五というふうに総需要が落ちた。そして、御指摘のように大口需要の方はその落ちがより激しく落ちておりまして、第一次ショック後の、先ほど申し上げました同じくくりでマイナス二・三%の落ち、五十年をベースに五十四年まででも、回復したときでも三・七%の伸びと低うございますが、それでも回復した。ところが、第二次ショックの直後であります五十六、五十七年という期間をとりますと、マイナス三・二%という落ち込みをしておる。その後の見込みはどうかというのは、いわば第一次ショックの後の立ち直り期間と同じような立ち直りが第二次ショックのこの激減の後に来るかどうかという点が一つの今後の見方のポイントになろうかと考えます。
  191. 正森成二

    ○正森委員 もう一つ伺いますが、電力の適正予備率というのは大体一〇%前後とされていると承知しておりますが、七四年は、オイルショックの後でこれが一挙に一七・一%になり、一九八〇年で見ますと実に二五・五%になっているという資料がございますが、大体そういう数字でよろしいか。
  192. 小川邦夫

    ○小川政府委員 御指摘のとおり、四十九年には一七・一%、五十五年には二五・五%という予備率になりました。ただ、その後五十六年には一八・九%、五十七年度には一八・二%と落ちております。ただ、先生指摘のとおり、適正予備率といわれておるレベルは一〇%程度であろうということは確かで、その意味では高い水準にございます。
  193. 正森成二

    ○正森委員 電力九社の設備投資を見ますと、時間がございませんので、こちらから大略申しますが、一九八二年は三兆五千八百九十八億円ということで、それに対する資本費つまり減価償却費と支払い利息、これは二兆一千六百二十六億、これが十五年前を見ますと、それぞれ三千九百五十五億と三千四百六億、あるいは十年前をとりますと一兆一千百十九億と五千六百十六億ということのようでございますが、いかがですか。
  194. 小川邦夫

    ○小川政府委員 端数のところまで確認しそびれましたが、全体の概数としてそのとおりだと理解をいたします。
  195. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いたいのですが、現在電力は、オイルショックの後、大蔵大臣にも一応聞いていただきたいのですが、いま通産省エネルギー庁から答弁がございましたように、伸びが非帯に鈍化しておる。大口消費はそれが特に顕著であるという状況にあります。そして、適正予備率をはるかに上回る予備率を現在も確保しておる。ところが、電力会社の設備投資の推移を見ますと、依然として非常に高い推移で増大をしている。これについては、たとえば日経の八二年十月六日付を見ますと、これは、電力需要量が必要で、国民生活上必要であるからこういう投資をしているんじゃなしに、電力会社の設備投資というのが民間の約八%、一〇%近く占めているので、この設備投資が抑えられると国の景気が悪くなるから、むしろ景気対策に対する配慮から行われているという趣旨の発言があるのですね。  そういう点を見てみますと、こういう状況であるにもかかわらず、電源開発促進税を増額して立地勘定——多様化勘定についてはまた申し上げますが、特に立地勘定などを増大させる必要があるのかどうかという疑問がわくわけです。ただ、レクチュアを聞きますと、本年度は約二十億足らずの減額に立地勘定はなっておるということですが、依然としてそれは非常に高い額であります。目的税を法律で明定しているのはこの法律だけで、揮発油税も法律そのものには規定していないということになっておりまして、しかもその目的が、最初は原子力に関する部分だけというのが、たしか原子力以外、電力関係は全部だというふうに延びる。交付先も、初めは地元の市町村だけということであるのが、いやそれじゃいかぬというので、隣接地や県というようにふやされる。そうしておりますうちに、多様化勘定で地熱から石炭から太陽熱から風力まで、ありとあらゆるものが、財源があるならばこの機会にひとつお世話になろうかということになっておるというのは、いまの電力需要の推移から見てはなはだ適切を欠くのではないかという気がいたしますが、いかがですか。
  196. 窪田弘

    ○窪田政府委員 目的税、私どもはそういう運営がとかく安易になりがちなものですから、目的税というものはなるべく避けたい、こう思っているわけでございます。ただ、この勘定の交付金についてはそれぞれ沿革があって、現在必要性はそれぞれあるものと考えておりますが、ただ、臨時行政調査会の答申におきましても「電源立地促進対策交付金については、」「安易な増加に至らぬよう効率的に運用」すべしという御答申をいただいておりますので、今後その趣旨に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  197. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま正森委員指摘のように、言ってみればだぶついているときにどんどん広げていってと、こういう御議論。私ども、その議論をしたことがございますが、たとえばの話ですが原油の値下げがあった、そうした場合に、やはり私ども一番注意しなければならぬことは、それによって電力供給側の環境がよくなって、したがって代替エネルギーの開発意欲がそれによって阻害されては一番いかぬと思います。率直に言って、あの第二次石油ショックのときに苦労しただけに。そうすると、いまの場合、この現状の時点を見ただけでその議論というものについては、議論としては私はあり得ると思うのですが、いささかやはり短絡的過ぎるんじゃないかという感じも持ちながら対応をしておるところであります。
  198. 正森成二

    ○正森委員 通産の所管になるのでしょうか、電源開発調整審議会というのがございまして、そこで承認されないと設置許可の申請が原子力でできない。ところが、その電源開発調整審議会にかけるには、電力事業者は立地点住民の合意を得て土地を確保しもしくはその確保する見込みがなければならぬというようになっているやに聞いているわけですが、そういうことですか。
  199. 小川邦夫

    ○小川政府委員 正確に申し上げますと、事務局としては企画庁所管でございますが、私ども承知しておるところで、電源開発調整審議会に付議するには土地の取得がその審議会のルール上要件になっておるわけではございません。しかしながら御指摘のとおり、私ども通産省としての整理方針といたしまして、確かに土地の取得について、取得済みということではございません、ただ取得についておおむねの見通しが得られておる段階で事務的に企画庁にお願いして上程をするといういう処理をしていることは事実でございますが、その考え方というのは、やはり土地の取得という最も基本的なところ、また一番問題が大きく解決の困難な部分、その部分について見通しがある程度つかないままで付議するということではいかがかということから、その土地の取得についてのめどがついた段階で上程をするという処理をしている次第でございます。
  200. 正森成二

    ○正森委員 大筋としては私が申したとおりですが、そこで実際は電力事業者はどうしているかというと、土地の取得の見込みがあるあるいは住民の同意がある、得る見込みがあるということで、一番重視するのはその立地点の知事の同意のことを考えているんですね。知事は、自分が同意するには立地点の市町村長の同意がなければならない。市町村長は、それぞれの議会の大部分の同意がなければぐあいが悪いということになるんですね。  ところで、その知事あるいは市町村長、議会の大部分がいけそうだということで電源開発調整審議会で承認されるという段階では、これが安全であるかどうかという審査は必ずしも十分に行われない。当然のことながら、知事にいたしましても市町村長にしましても、そういう安全かどうかということについて科学的に審査し、これを自分で確信するそれだけの能力がないわけです。それは実際は、安全かどうかというのは後で安全審査を国が行うわけですけれども、そのときにはすでに電源開発調整審議会で承認されているということになりますと、すべておぜん立てが整ってしまってから安全審査が行われる。順序が逆であって、安全審査が先行したものの中からどれだけ土地が取得できるかということでなければならないのに、それが逆になるというおそれはないか、こういうように思うのですけれども、私は科技特の委員ではありませんからいわば素人の考えですが、それなりの疑問を持っていますので、お答え願いたいと思います。
  201. 小川邦夫

    ○小川政府委員 御指摘のように、電調審付議段階で安全のチェック審査を終えているという段階でないわけではございますが、いまの仕組みでは、その後、安全につきまして通産省の安全チェック、これは企業において環境調査、安全調査を行いまして、それに対して今度は審査をする。その段階では、地元におきます公開ヒヤリングという形で、十分地元における安全問題の討議というものは行われるような形にする。ただ、それだけでは安全チェックが不十分ということから、原子力安全委員会の方のチェック、ダブルチェックと称しております、その安全委員会での安全に関する審査が行われまして、その段階におきましても、やはり地元における公開ヒヤリングという形で地元の十分の理解及び意見の反映ということが行われまして、そのようなダブルチェックによる安全の審査、審議、地元との調整というものを終えたところで、原子炉規制法あるいは電気事業法における施設の設置に関する許可が行われるということで、決して安全に関する審査をおろそかにしているということではないと考えておるわけでございます。ただ、電調審でそれをするかしないかという点につきまして、総理府、さらに具体的には経済企画庁の所管審議会ということで、通産省として申し上げかねることではございますが、少なくとも安全審査につきまして、ただいま申し上げましたような仕組みにおいて、十分設置許可までの過程で行われておるということを御理解賜りたいと存じます。
  202. 正森成二

    ○正森委員 それは、見かけはそうなっているでしょうが、いろいろ学者の書いたものなどを見ますと、結局、安全審査を国が行うにしましても、その前提として電調審の承認がなければならない。承認のときには、事実上土地が取得される見込みが立っておるということですね。土地の取得される見込みが立っておれば、結局ここでいこうということで、そういう土地の取得の見込みが立って電調審で承認されたものがひっくり返った例はいままで一度もないというように聞いておりますし、電調審の許可をとろうと思えば土地取得の見込みがなければならぬ、住民の同意がなければならぬ。そこで出場するのが立地勘定の金だということで、先ほど阿部助哉委員が、結局安全を金で買うものではないか、そこからいろいろな問題が起こっているのだという御指摘には、時間の関係で繰り返しませんが、私は、最もそういうおそれが強いのではないか、そういうことのために、この立地勘定のお金やいろいろのお金が使われているというように思わざるを得ないのですね。  さらに申し上げますと、そのほかに、電力会社は漁業に迷惑をかけるような場合に補償金を出すとか、あるいは地権者に土地の売却代金を払うというのは当然でございますが、そのほかに、協力金やらやみ協力金やら寄附行為ですね、これが非常に多いということで、それがきわめて不明朗な形をとっておるというように言われているのですね。  それで、一つ伺います。高浜町というところがあるのですが、その高浜町では、五十一年から五十二年にかけて九億円もの金が三回に分けて高浜町長の浜田さんの個人名義の預金口座に振り込まれた。この九億円のうち三億三千万円は、昭和五十三年四月に町内の五つの漁協に分配した。あとの残りは、昭和五十二年九月、補正予算から三回に分けて町予算に入れた。こういうことがわれわれの調査ではわかっているのですね。こういう協力金が地方自治体に直接入らないで町長個人名義の預金口座に振り込まれるというようなこと。  あるいは、その前に、高浜一、二号機に関する協力金が二億五千万円、関電から昭和四十四年から四十九年にかけて町に支払われて、それは学校整備費等に充てたということのようですが、それは五十三年、実に十年もたってから後の決算で初めて報告されたというようなことがわれわれの調査ではわかっております。これは議会での町長の答弁等を調べたのですが、自治省、来ておりますか。こういうことは地方自治法のたてまえからいってもあり得ベからざることですが、そういうものが協力金として出され、地方自治体はそういう処理をしているというようなことになれば、これは実にゆゆしい問題であるというように思うのですが、調べていますか。
  203. 渡辺明

    ○渡辺説明員 ただいま問題になりました高浜町におきます三、四号機建設に際しまして、町の地域振興のための資金と地元協力のための資金の両者を包含した性格の協力金を地域社会の代表者としての町長個人に対しまして、五十一年十月一億円、また同年十二月に一億五千万、五十二年六月に六億五千万の、総額九億円を託しまして、地元で、町と漁業協同組合との話し合いの結果、漁協が三億七千五百万円、町が五億四千五百万円で配分がなされ、町は、五十二年度に二億三千万円、それから五十三年度に三億一千五百万円をそれぞれ歳入されておりまして、この点に関しては、特に問題になることはないというように県を通じて聞いておるところでございます。  それから一、二号機を建設するに際しましては、地元の振興に協力したいということで、関西電力が昭和四十四年度に七千万円、四十五年度に二千万円、四十九年度に一億六千万円の、計二億五千万円の協力金を地元に寄附したところでありまして、町は、その歳入歳出関係につきまして五十三年度で処理しておりまして、この点に関しましては、当時県から強く指導がなされまして、町も深く反省したところであると県から聞いておるところでございます。  このような財政運営につきましては、本来、当該自治体の議会また監査委員等による自律的な措置がなされるべきであると考えておりますけれども、当省といたしましても適切な指導に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  204. 正森成二

    ○正森委員 いまの三、四号機について適切な処理だと言いましたけれども、それは町長個人に払われておるのですね。町長個人に払って、個人が預金をしておるなんというようなことを、自治省が適正であるとか妥当であるとか言うのはおかしいのじゃないですか。  特に一、二号については、こういうことを申してはなんですが、昭和五十二年だったと思いますが、わが党の議員が初当選をして、そして議会で追及をして初めて明らかになったので、それをやらなければ約十年間ほおかぶりして、決算でも何も明らかにしないというつもりだったのですね。一体何に使われておるのかわからぬ、町長個人が使っておったかもわからぬ、こういう不明朗な金であります。こういうものを、これは妥当であるとかいうような考えを持っておるとすれば、これはゆゆしい問題であるということを指摘しておきたいと思うのです。  時間がございませんので……。先ほど、阿部議員も敦賀市長の発言がございましたが、これは二月二十二日に、予算委員会の一般質問で藤田委員質問をされ、その後山原委員も別の場所で質問をされております。この敦賀市長の発言というのは、皆様お聞きになっておられると思いますけれども、一年に一回ぐらいは補償で得をした一昨年のあんな事故があればいいけどなというのが敦賀の現状だとか、百年たってかたわが生まれてくるやら、五十年後に生んだ子供が全部かたわになるやらそれはわかりませんが、いまの段階では原発誘致をおやりになった方がいいのじゃなかろうか、いつまでも心配する時代ではないとか、こういうことを公然と言って、そしてそのほかに、敦賀市の金ケ崎宮も、日本原電、動燃から六千万円出資させて修復した云々、こう言うておるのですね。その後いろいろな調査によって、これは修復ではないということで、観光協会ですか何かを通じて公園の整備事業に使ったというように言われているのですね。  そこで、会計検査院に伺いますが、会計検査院が藤田委員質問に対して「敦賀事業所の検査は四月以降になるわけでございますが、早急に事業団それから科学技術庁とも話し合いをしまして、いろいろ説明を聞きたいと思っております。」と言うていますが、それはやりましたか。
  205. 倉田建司

    ○倉田会計検査院説明員 動燃事業団敦賀地区の二つの事務所に対します会計実地検査は、実は五月の連休明けの週に実施することを予定しております。この間、先生ただいまおっしゃられました事項につきましては、動燃事業団本社を通じましていろいろ事情を聴取しておるところでございます。
  206. 正森成二

    ○正森委員 会計検査院にお願いしたいのは、当初の計画では五月連休明けになっておりましても、二月二十二日に予算委員会でそういう質問が出た。それで、四月以降は調べますと言っておるのであれば、計画を変更して新年度になれば早速調べるというような、そういう姿勢であってほしいということを私から要望しておきたいと思うのです。  動燃事業団、恐れ入ります。参考人に来ていただいていると思いますが、これについての釈明はいろいろあろうかと思いますが、もう時間になっておりますので、あれば伺いますが、こういう協力金なり寄附を動燃事業団は一体過去三年分にどれくらいやっておるのか、お答え願いたいと思います。
  207. 熱田禧房

    ○熱田参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  動燃事業団としましては、五十五年度から五十七年度三年間に敦賀地区に対しましては一億二千五百万になっております。(正森委員「全体では」と呼ぶ)事業団全体では、動燃事業団は事業所が六カ所ございますが、全部で三カ年で八億二千万ほどになります。
  208. 正森成二

    ○正森委員 私が会計検査院から聞いているのでは、約十九億円と聞いておりまして金額が違いますけれども、それは後でまた調べますからよろしいです。  そこで、私は申し上げたいのですけれども、こういう電源開発促進税で目的税として立地勘定やら多様化勘定で地元に交付金を出して、十分に原子力発電等々についていろいろ影響があるというのを受忍していただくということをやっておるのに、なおかつ電力会社などが協力金といって議会にも報告されないような金をどんどん出す。そうすると、今度は動燃事業団が、電力会社がやるからといってそれに負けないように出す。こういうものを出しますと、電力事業の方は全部原価主義で、これは電力料金にはね返ってくる。動燃事業団の場合は、ここに資料もありますけれども、特殊法人で大部分が国の出資でしょう。ところが一方、税金から目的税で出して交付金で出しておるのに、そんな観光協力なんとかというようなところに金を出す。動燃事業団の目的からいっても全然反することじゃないですか。それが円滑にいくためには国が別に税金を取って目的税で出しておるのに、国の特殊法人がそういうのにまたまた何億という金を出すなんというのは、会計検査の上からいっても、主計局の予算査定からいっても、これは放置できない問題であるというように私としては思わざるを得ないのです。  予算委員会等で問題になったのは、これが金ケ崎宮だから国の金を宗教目的に出資するのがどうかこうかということで問題になったのですが、そういうことであれば論外ですが、そうでなくたって、こういうのを安易に認めるというようなことは非常に問題がある。そういうことをやるならこの電源開発促進税は要らない、立地勘定は要らぬ、こういうことになるのです。だから、その点について大蔵省の主計局なりあるいは大蔵大臣の御見解を承って、私の質問を終わります。
  209. 窪田弘

    ○窪田政府委員 動燃事業団の認可予算には、地元協力費のようなものは積算上ございません。ございませんが、こういう大事業をする上で合理的かつ社会的に妥当である範囲内におきましては流用してそういうものを払うということは、予算総則上許されていることでございます。したがって、問題は、その支出したものが地元の御理解、御協力を得るために社会的に妥当かつ合理的かどうかという点であろうかと思います。検査院のお調べなども見て検討したいと思います。
  210. 正森成二

    ○正森委員 その主計局の姿勢は、ごくわずかな私学関係の補助とか給食費の補助を削っているそういう国の姿勢としては、エネルギー関係だからといって余りにも甘いということで、国民はだれも納得しないですよ。一方で、目的税で税金を取って地元交付金を渡し、それで地元の電力は特別に安くし、そして移出する場合にはまたいろいろ行い、維持費まで出し、至れり尽くせりやっているじゃないですか。それだのに、なおかつ電力会社は、やみ協力金か何か知らないけれども、議会の表に出せないような金を出す、すると電力会社が出しているからというので動燃事業団がまたそんなものを出す、それじゃ、こんな法律をつくっておる意味がないじゃないですか。私はとうてい納得できないということを申し上げて、質問を終わります。
  211. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  212. 小杉隆

    ○小杉委員 今回の電源開発促進税の値上げ率が四八%と、最近の低成長下におきましてはかなり大幅な値上げになっているわけです。しかも、前回の値上げが五十五年ですから三年後、当初五十五年のときには五年間その料金でもつという想定であったのに、三年に繰り上がって値上げになった。しかも、四八%もの税率になったというのは非常に不可解なんですが、まずその理由と、それから、今度の値上げによって大体何年間ぐらい値上げしないで済むのか。先ほど五年間という答弁が一応ありましたけれども、いままでの経過から考えて、果たして五年間これでもつのかどうか、確約できるのかどうか、まず、その二点からお答えいただきたいと思います。
  213. 川崎弘

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、エネルギー需要の方でございますけれども、これは電気の伸びでございますが、前回の見通しのときには約四・三%ほど見込んでおりまして、しかし今回は、先ほども答弁申しましたように約三%ぐらいの需要見込みになる、こういう電力の需要の落ち込みというのが電促税収に響いておるということが一つ言えると思います。  それから、先ほど各勘定ごとに数字を申し上げましたので、もう一度繰り返すことを避けさせていただきますが、たとえば立地勘定で申しますと、これは仮に電力の需要が長期的に落ちましても、現在継続中の工事あるいは着工準備中の工事というのは現在程度のテンポで進めてまいりませんと、将来三%ぐらい電力需要が伸びる場合にはそれを賄うだけの供給力ができないということもございます。そういう意味で、立地勘定の各種交付金というのは積み上げで計算いたしまして出した数字でございます。御理解をいただきたいというふうに考えております。  多様化勘定の方は、これは電力需要と直接に関係のない部分もたくさんございます。原子力関連であるとか新エネルギーとか、この辺は直接電力の需要の伸びと関係ございませんが、こういった代替エネルギーの開発導入の促進、これはやはり中長期的な観点から進めてまいりたい、そういうふうに考えております。あと水力とか地熱、この辺は計画の後倒しというのをある程度見込んだ歳出需要というのを組んだのが先ほどの数字でございまして、私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、今回の増税をお認めいただきますと、大体五年程度は賄えるのじゃないかというふうに考えております。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席
  214. 小杉隆

    ○小杉委員 今度の電源開発促進税の特別会計の仕組みによりますと、電源立地勘定と電源多様化勘定の二つになって、その比率は大体三対七ですね。三対七ということは多様化勘定が非常に大きいわけです。  いまの御説明にもありましたように、今度の値上げの仕方というのは千キロワット時当たり幾ら幾らという計算ですから、多様化勘定の中には、代替エネルギーの開発とか研究というようなことで必ずしも電力の需要と結びつかない部分が相当あるわけです。その勘定が七割を占めているということになりますと、こういったものをすべてこうした目的税の中で見るのはどうかと先ほどの質問にもありまして、大蔵大臣から御答弁がありましたけれども、やはりこれは、将来の日本のエネルギー政策とも関連をする相当長期的な視点に立って国民全般に関係する研究費、開発費というのが大分含まれているわけですから、国策としてこういう税金の中に含めるのではなくて一般会計から支出すべきじゃないかと思うわけです。その点について、先ほど一応の答弁をいただきましたけれども、もう少し突っ込んだ答弁をいただきたいと思います。     〔中村(正三郎)委員長代理退席委員長着席
  215. 川崎弘

    ○川崎政府委員 この電源多様化勘定で財政措置を講じております項目といいますのは、実は代替エネルギーを使いまして電気を起こし、その電気を利用するというふうな形のものをこの多様化勘定で取り上げております。  したがいまして、われわれが供給確保とか導入促進と言っております小水力の開発でありますとか地熱の開発、原子力発電のためのいろいろな改良標準化、こういった電気の固有の対策に限定をいたしておりまして、そういう意味で、私どもは、この歳出については電促税を財源として充当するにふさわしいような項目、つまり受益と負担との関係が明確なものに限定をしております。多様化勘定でいろいろな技術開発をする、これも結局は代替エネルギーを使った電気の利用ということで、最終的には一般の電気事業者に利益としてはね返ってくるものでございます。  ただ、技術開発について一言つけ加えさせていただきますと、こういうふうな見地からいたしますと余りにも将来遠い先のプロジェクト、つまり実用化のめどが余りつかない、そういうものにつきましては、つまり基礎的汎用的な研究開発、こういうものはむしろ一般会計で、それに対してある程度めどがつくというふうなものについては本特別会計措置していく、そういうふうに区分けをしておるところでございます。
  216. 小杉隆

    ○小杉委員 今度の値上げの根拠になったのは、やはり電気需要が減退をして見込んだ収入が得られなかったということですから、こういう税収が少ないときに、そういう長期的な基礎的な研究費にこういった税金を充てるというのはどんなものでしょうか。  先ほどの説明ですと、収入の方は減ったけれども支出の方は減ってないということで、五年もたないで三年で値上げになったわけですけれども、こういう時期であればあるほど、支出の方で、特に長期的ないま直ちに実用化できない地熱エネルギーとか太陽エネルギーとかそういったものにつきましては、やはりこの税金から支出をする、しかもこの税の中でも相当規模の支出をしているわけですから、こういうのはもう少しこの時期は差し控えて、一般会計の方に回すというような考え方をすべきじゃないかと思うのですけれども、これは大蔵省の方も一応見解を聞いておきたいと思います。
  217. 窪田弘

    ○窪田政府委員 両会計での分担の考え方は、先ほど通産省から御説明のあったとおりでございます。  受益と負担関係が成り立ち得るものについてはこの会計負担する。一般会計でとおっしゃいましても、一般会計状況は御承知のとおりのことでございますから、なかなか容易ではございませんが、そういった金の苦しさとかそういう問題を別にしまして、やはり負担、受益の関係があるかどうかということを基準にして私どもは検討をいたしております。
  218. 小杉隆

    ○小杉委員 一般会計が苦しいから何でもかんでもこっちの電源開発促進税の方から支出させるという安易な発想は困ると思うのです。  それで、いままでの説明を聞いていますと、もっぱら財政上の理由から値上げが行われているわけですけれども、これは電力会社に対する税金であるわけですが、究極的には、これは一般の家庭の電気料金にはね返っていくわけですね。いま、この電気料金の収入というのは電力会社の合計でどのぐらいになるのか、そして、この電源開発税の金額はどのぐらいになるのか。
  219. 川崎弘

    ○川崎政府委員 お答え申し上げます。  電力会社の売上高、これは約十兆円という数字でございます。それに対しまして、この電源特会の金額は合計千九百億ということでございます。
  220. 小杉隆

    ○小杉委員 そうしますと、この税金が電力会社の売り上げに占める割合というのは一九%ぐらいになるわけですね。
  221. 川崎弘

    ○川崎政府委員 むしろ一・九%ということでございます。
  222. 小杉隆

    ○小杉委員 一・九%ということですけれども、これはいまは電力会社は比較的景気がいいようですが、また将来いきなり五〇%値上げだなんということも起こり得ると思うわけで、そういうときに、やはりこうした電源開発促進税の値上げなんというのが電気料金の値上げの根拠に使われないとも限らないわけで、私としては、こういうものは企業相手だからといって四八%高率に、いまの低成長下で五割近い値上げというのは相当大幅でございますから、できるだけ抑えるべきだということを申し上げて、なお、やはり臨調の答申にもありますように、この支出の削減についてはまだまだ甘いのじゃないかということだけ申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  223. 森美秀

    森委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。      ────◇─────
  224. 森美秀

    森委員長 この際、内閣提出国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案については、すでに質疑を終了いたしております。  本案に対し、自由民主党を代表し、中西啓介君外三名より修正案が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。中西啓介君。     ─────────────  国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  225. 中西啓介

    中西(啓)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、原案において、この法律の施行期日は、「昭和五十八年四月一日」と定められてありますが、すでにその期日を経過いたしておりますので、本修正案は、この施行期日を「公布の日」に改めることにいたしたものであります。  案文は、お手元に配付してございますので、朗読は省略させていただきます。  何とぞ、御賛成くださるようお願い申し上げます。
  226. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  227. 森美秀

    森委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、中西啓介君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  228. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は修正議決いたしました。     ─────────────
  230. 森美秀

    森委員長 次に、内閣提出電源開発促進税法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本案については、先刻質疑を終了いたしております。  これより本案を討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  231. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました前法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  233. 森美秀

    森委員長 この際、衆議院提出、参議院送付貸金業規制等に関する法律案及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  お諮りいたします。  この両案は、第九十六回国会におきまして、本院において可決し、参議院に送付いたしましたが、参議院において継続審査に付され、本国会におきまして、昭和五十八年度施行のための所要の修正を行って本院に送付されてまいりました。  したがいまして、両案の提案理由の説明は省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────  貸金業規制等に関する法律案  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  235. 森美秀

    森委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案について、本日、参考人として、日本弁護士連合会事務総長樋口俊二君の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  237. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤茂君。
  238. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 若干の質問をさせていただきたいと思いますが、その前に、一言述べさせていただきたいと思います。  私が申し上げるまでもなく、今日、サラ金問題は異常な様相ともいうべき状態を呈しているわけでありまして、連日の新聞でも、サラ金問題の深刻な不安やあるいは悲惨な事件が載らない日はないというふうな状態になっているわけであります。私どもは、長年にわたってこの法案についての話し合いをいたしてまいりまして、昨年八月の時点で、現実的な処理として一歩でも前進を図ればという気持ちで今日の案を取りまとめたわけでございますけれども、あれから去年の八月以来今日までの状況を見ますと、非常に急激に様相が変化をしている、もう一歩どうしても改善をしなければというふうな気持ちでいるわけであります。そういう気持ちから、短い時間でありますが、幾つかポイントのところを質問をさせていただきたいと思います。  まず、提案者を代表されている大原さんにお伺いをしたいのですが、いま申し上げましたように、昨年の八月取りまとめて以来、そう長い期間ではございませんけれども、非常に急激にさまざまな大きな問題が起きている。その内容は改めて私どもの方から申し上げる必要もないと思いますが、業者の大手の方は、都銀、地銀などから融資を受けて店舗の数も年間倍増という状態であります。中小零細業者、体質の脆弱な、問題を起こしやすいところも駆け込みで雨後のタケノコのごとくふえている、社会問題も激増というよりも激発をしている、あるいはまた金利動向にいたしましても、昨年と比べてみても、実勢から見ても、この上限金利の原案の内容は高過ぎるのではないかとか、さまざまな問題が出ておりますが、私は、いろんな意味で状況は変わったというか新しい状況が生まれているというふうに思うわけであります。  大原さん、提案者といたしまして、昨年以降の今日の時点での状況の認識、それからもう一つは、この原案を提案をされているわけでありますが、いろんな角度からこれについての世論の要請並びに批判が生まれているわけでありまして、そういう面から言うならば、提案者の大原さんでも、恐らくはここに規定されているとおりにしゃくし定規にやればいいということではないのじゃないかというふうに思うわけでありますが、いまどういうお考えを持っておられますか。
  239. 大原一三

    大原(一)議員 お答えいたします。  この法案、長い経緯がありまして、ようやく参議院で二十日に決着を見たわけでありますが、おっしゃるとおり、大変厳しい状況がたくさんあるわけでありますけれども、何しろ無から有を生じようという法案でありまして、現在は何も規制のない野放し状態であります。そこへ何らかの秩序をつけよう、何らかの規制をしていこうという法案でありますから、その点については伊藤委員十分御承知のところと思います。  ただ、問題は金利の問題でございますけれども、金利水準につきまして的確な判断ができないという状況にあります。私は自己調査能力がないので大蔵省に聞くのでありますが、七三%以上の高い水準のものがなお六割を超えるという状況、さらにまた五四%以上のものが七、八割あるという報告を受けておりますし、金利につきましてもやはり現在はっきりした低下傾向というものがつかめない状況にありますので、われわれとしては、何とかこの法律を一刻も早く実行に移して無から有を生ずる、つまり戦国時代とも言うべきサラ金業界に規制のメスを入れたいというのが私の偽らざる実感でございます。
  240. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大原さんの気持ちを伺いましたが、私の方は、この約五年間にわたる経過を振り返りながら、また今日の時点に対する新たな責任感というのを感ずるわけでありますが、言われました具体的なことはまた大蔵省の方に後ほどお伺いしたいと思います。  そこで、銀行局長に伺う前に、樋口参考人、お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございました。二つ、いろいろとサラ金被害の救済に御活動なさっているという立場に対して御意見を伺いたいと思いますが、一つは、いまも申し上げましたように、長年の経過があったわけであります。実効のある効果的な立法措置が一日も早くできるようにという要望も長年にわたってきたわけであります。ただ、そういう経過を振り返ってみまして、どうもこのところの状態というのは、まことに異常な雰囲気か異常な状態になっているのではないだろうかということを実は痛感をするわけでありますし、悲惨なさまざまの出来事を新聞で読んでも、実は私どもも責任を感じながら大変暗い思いがするわけでありますが、樋口参考人、そういうお仕事をやってこられた立場から、そういう最近の状況というものを御活動の中でどう特徴づけておられるかということが一つと、それからもう一つは、原案の四十三条によって、皆さん方がやってこられたような活動が一体どういう影響を受けるであろうか。  御承知のとおりに、これは無条件ではありませんで、ただし書きというものもあるわけでありますし、昨年も、ただし書きの内容などについてさまざまの交渉を私どもしてきた経過がございますけれども、現在時点でどういう影響が起こるとお考えになるでしょうか。恐縮ですが、簡潔にひとつ。
  241. 樋口俊二

    ○樋口参考人 日弁連の事務総長の樋口でございます。  最近のサラ金被害の実情を申し上げますと、弁護士会の窓口を通して見ました場合に、何よりも相談者が急増に増加した。たとえば、東京弁護士会でサラ金の相談をしておりますけれども、昨年度は五百件ぐらいでございましたが、今年度に入りまして一ヵ月に二百件ぐらい。もし相談体制が整っておれば、もっとたくさんの方がお見えになるという状況でございます。  それから、被害金額が増大しております。たとえば五十五年度の負債額は、百三十一件の相談の中から見まして、百万円未満が二十七、百万円から三百万円が六十八、三百万から五百万が十九、五百万から一千万が十、一千万以上が七。ところが昨年度は、百万未満はゼロ、百万から三百万が二百七十、三百万から五百万が九十五、五百万から一千万が百五、一千万以上が十というように被害の金額が増大しておりまして、サラ金だけでなく、クレジットやローンなどとの複合的な負債に苦しんでおる方が多くなったということが特徴でございます。結局、依然として無差別でかつ過剰な融資がますます行われつつあるのではないかということが言えると思います。  次に、貸金業法案四十三条の問題でございますが、このような被害者が弁護士会においでになりました際に、利息制限法によって計算をいたしまして、そしてすでに払ったものを元本に充当し、そのことによってなおかつ負債があればこれを支払って解決する、そのような手段をとっておりました。現在まで、弁護士が関与をいたしましてこのような方法をとりますと、サラ金業者も渋々ながら納得をしていた。ところがこの四十三条ができまして、除外規定とか条件とかございますけれども、無条件にいままでのような任意整理がなかなかできにくくなった。むしろ裁判に訴えるというケースになります。ところがサラ金の被害者は、裁判の費用を負担し長期間の裁判に耐えるということはできませんので、事実上救済が非常に困難になるということが申し上げられると思います。
  242. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 ありがとうございました。  最近の状態についての特徴をいま伺ったわけでありますが、こういうことがないようにまた救済措置をとらなければならないということと、当委員会としては、そういうことが発生しないような業界規制をどうするのかということを重点の一つとして長年議論をしてまいったわけであります。  そこで、銀行局長に幾つか伺いたいのでありますけれども、いま大原さんが言われたような気持ち、そして樋口参考人が言われたような厳しい現実があるわけでありますが、当委員会におきましても、さまざまの経過を経まして、ここに詰めの段階といいますか採決をするという段階を実は迎えているわけであります。  私も、この間にもっと日時その他あれば、あるいはまた条件が整えば原案自体をさらに改善をするようないとまがあればと思いましたが、このような段階に現実問題として至りました。そういう段階の中での行政の直接の責任という意味で、銀行局長に幾つか伺いたいのであります。  一つは、いまも問題となりました金利の問題、上限金利の扱いの問題であります。原案によりますれば七三%、三年、それから第二段階に移行するというふうなことになってまいるわけでありますが、いまのままでは実勢以上の高金利を追認するおそれがあるのではないかという評論もいろいろ出されているわけであります。  大蔵省が一昨年アンケート調査をなさったのを伺いました。その中では七三%以上が三分の一強という話は伺っておりますが、この一年ぐらいの間に非常に急激に変わったのではないか。先般、NHKなどの解説を聞いておりましても、大手の方では現実に営業金利が四五・七ぐらい、中小が平均六六・七ぐらいなどという分析がございましたが、競争も激しく実勢金利も下がってきている、そういうふうに思うわけであります。  そういたしますと、そもそも規制を強化するあるいはまた市民を保護するための法律でありますから、長期に実勢以上の高金利が固定化すると言われたら、原案を出されている方も大変心外な話だろうと思いますね。じゃ、実勢金利をどう扱うのか。あるいは実勢金利をなるべく早く下げて、七三%、三年というのではなくて、もっとテンポを早めるあるいは本則に至る期間ももっと短縮をする、そういう努力が非常に大事になってくるのではないかと思いますが、それに対する具体的な手配あるいは対応、いまどういう気持ちを持っておられますか。
  243. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 御指摘のとおり、一昨年調査いたしました段階では七三%以上がかなりあったわけでございます。  ただ、実はその後の調査はまだやっておらないわけでございますが、私どもといたしましては、この法律が成立いたしますれば、直ちにまた実態の調査というようなものもやらなければいけないとも思っておりますし、それから、それを踏まえまして政省令、通達なども準備いたすわけでございます。ただ、現実問題として、金融がかなり緩んでおりますし、あるいは一昨年よりはかなり金利は下がっているのではないかというような予想はできるわけでございます。  ただ、上限が七三とか五四とかというような法律上の規制ができましたら、そこに張りついちゃうというような話ではないわけでございまして、資金の需給によって金利が決まる部分が多いわけでございますので、サラ金業界がだんだん適正化されるとか、あるいは優良な業者がふえてまいることをわれわれは期待いたしているわけでございますから、そういうふうな競争関係を通じて漸次金利は下がっていくと思っております。法律上の上限が決められたから、そこに張りついちゃうというふうなものではないのではないかと思っております。
  244. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 銀行局長、そこに張りつくものではないという解釈論、それはそれで結構ですが、大蔵省としてあるいはまた担当の銀行局長として、これだけ大きな社会問題ですから、何とかしなければならないわけですよ。そういう方向への積極的な対応というもの、使命感を持ってどうするのかという気持ちがあるだろうと思って聞いたのですが、それの方を言ってください。  それから、ついでですからもう一つ、この問題の中で大きな問題は、金融機関のサラ金業者に対する融資の問題、大きな社会問題としていろいろな意見が出されている。御承知のとおりでありますが、いままで事務的な御説明を聞きましたら、健全な業者を育成するために融資の卸ですか、卸融資ですか、というような考え方も聞いたわけでありますが、現実には大手の方にしろ——まさか中小、零細には都銀や、ましてや政府関係金融機関の商工中金は貸していないわけですが、大手のところでも借りることによって改善をされるというわけじゃなくて、とにかくいかにして大規模に、いかにしてもっともうけてシェアを拡大するのかという動きですね。これは現実の状況だと思いますね。そういたしますと、事務的に事前にお話を伺っている状況とは違う現実ではないだろうか。  もう一つは、金貸しが金貸しに金を貸すという話でありまして、世間常識として、やはりアメリカ並みにか西欧流並みにもっと個人ローンかさまざまの少額の融資などについても都銀、地銀などを含めて努力をすべきである。これも、サラ金問題の審議の中でわが党の委員から何遍も実は強調してまいったことであります。  ですから、一つは、使命感を持ってどういうふうに、法律法律だがどうしていくのか、具体的対応ですね、当然だと思いますし、もう一つは、いまの金融機関の融資の問題、現実は私はそうだと思うので、どうなさいますか。
  245. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 この問題につきましては大変社会問題化しておりまして、私どもといたしましても、非常に重大な責任を実は感じているわけでございます。したがいまして、金利につきましてもできるだけ早く下がっていくことを期待するわけでございます。  最初の三年間といいますのは施行日から三年間のようでございますので、できるだけその施行を早くやれるように、政省令、通達等初めての経験でございまして、これをつくるのも非常にむずかしかろうと思いますけれども、できるだけ早く準備いたしまして、早く施行にこぎつけまして、できるだけ早く三年間がたつようにしていきたいし、また五四%になりました後四〇になる過程におきましても、できるだけ私どもといたしましてもそれが早く実現されるように努力してまいりたい、こう思っております。  それから、金融機関の融資につきましては、確かに最近のサラ金業者の膨張ぶりを見ておりますと、やはり金融の緩和という状態を反映いたしまして、かなり運用先に困っておるような金融機関ないしは保険会社等から金が流れている面も多々あるやに見受けられるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては銀行行政自体、従来の銀行行政の範疇に入る話でございますので、サラ金法が通るとかあるいは施行になるとかというような問題とは別に、早速その実態調査をいま開始いたしまして、それを見きわめた上で必要であれば、いま口頭通達で指導いたしておりますけれども、場合によりましては、早い時期に書面によります通達を出して自粛を促すというようなことも考えていきたい、こう思っております。
  246. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 銀行局長のお話を伺いましたが、いろいろ各般の意見を聞いてみますと、大原さんが、とにかく早く法的な成立を図っていただきたい、銀行局もそういう気持ちだろうと思いますが、いまの法律、このサラ金二法以外の現存の法律でもあるいはまた大蔵省銀行局としてできる行政指導でもまだまだできることがあるんじゃないか、そういうことが非常にやられないできたんじゃないだろうか。これはまた大蔵省だけでなくて警察庁その他、各方面についても何かそういうことを指摘されました。私も、お話を伺いますと実はそういう気がしてならないわけでありまして、じっくりとこれだけ議論する時間ございませんけれども、何か金融機関がサラ金の助っ人になるというふうな評論が出る事態というのは絶対ないように精力的な努力をお願いしたいと思います。  それと関連をして、もう一つ。これは大きな問題なんですが、原案の四十三条、みなし弁済、グレーゾーンの問題になるわけでありますが、先ほど樋口参考人から伺いましたところでも、最近ちょっとかえってむずかしい状態が起きている、あるいはまた業者の方がここを十分研究をして、いままでの救済手段という意味からいくとかえって困るような状態になるんじゃないかという懸念が、またそういう具体的な動きのことがお話ございました。しかも私も、実勢からして七三%は高いのではないか、高いというふうに思うわけですね。三年間というものがある。こう考えますと、どうしても私は、この四十三条の問題については再考慮をするのが今日立法府としての現実対応ではないだろうかと思うわけでありますが、現実問題として、銀行局としてはこれはどういう判断でおられますか。
  247. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 この四十三条の規定は、必ずしも全く裁判に持っていけなくなってしまう話ではございません。  同時に、いろんな登録の取り消しとかあるいは営業の免許の停止とか、かなり強い権限をわれわれに与えられるわけでございますが、この法律によりまして罰則つきのいろんな業務規制も書かれておるわけでございます。そういう業務規制に忠実に従っている業者がおりますと、まあおるわけでございますが、その場合それに対して、金利も法律どおりに下げ、業務規制も十分遵守しているというような業者について、その借入者の方から裁判を起こされるというふうなことになりますと、法律自体の有効性といいますか、そういうものが保たれないということでございますので、まあ過渡的な状態といたしましては、この問題はやむを得ないのではないかというような気がいたすわけです。  それにつけましても、行政に課せられました役割りが大変大きくなるわけでございますので、そこは私ども金融行政だけからこの問題を取り上げて万全を期するわけにはいかない。警察や司法当局あるいは通産省、経企庁、自治省、もろもろの各省庁とも十分連絡をとりながら政府を挙げて、行政的に少しでも改善の方向に向かうように努力してまいりたい、こう思っております。
  248. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 銀行局長はそう言われましたが、私は、どういう現実がもう目の前か間もなく発生するのかという事実が証明するだろうと思いますし、それから使命感を持って一生懸命努力をしたいと言われましたが、その面をますます強く持ってひとつ対応していただきたいと思います。  もう一点だけお伺いしたいんですが、入り口規制の問題といいますか、登録に当たっての審査の問題ですね。これは協会、連合会の加盟の問題などなど、いろいろなことが兼ね合うわけでありますが、入り口の段階での審査を厳しくという世論が強いわけでありますね。申し込みは十万あるか二十万あるか知らぬけれども、いま駆け込みで申し込んだやつも、いまやっておけば何か看板も出しているんだから審査も早いであろうと。入り口のところで、確かに実務的には大変だと思います。しかし、書類さえ整っていればあとはスタンプを押していく。それから後半年か一年か様子を見ながらまたやっていく。これはまた相当大変なことでありましょう。  こう考えますと、何らかの方法でやはりこの入り口規制ですね、そこのところの努力というものの知恵を出されるべきではないだろうか。もっと考えてみなければいけないのではないだろうか。入り口規制では実務的にできないという形でほうり出すということではないことが、私は今日の状況からすればまことに必要だというふうに実は思うわけであります。その辺に対する考え方はいかがですか。
  249. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 登録というものの持つ法的な性格から言いまして、なかなかその実質的な審査はむずかしいという面が一つあろうかと思います。  もう一つは、実際問題として御指摘の二十万件の業者がいまいるわけでございまして、財務局、都道府県が登録を受け付けるわけでございますが、実際問題としてなかなか実質的な審査を行うことを、ここでそういうことができますということをお約束するような状況にはないということでございます。  ただ、できるだけその登録の実が上がるように努力はいたしてみますけれども、われわれといたしましては、そういうことでございますので、どうしても登録を受け付けた後の行為規制とかあるいは監視とか、そういうものを通じまして登録の取り消しであるとかあるいはそういう行政的な与えられた権限を有効に働かせまして対応していかざるを得ないのではないか、こういうように考えております。
  250. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 今日のサラ金問題に関するさまざまな問題を議論しようと思えば何日あっても尽きないぐらいの、まさに今日の時代だろうと私は思います。  ただ、こういう段階になりました。後ほど公明党さんと一緒に修正案を提出させていただきますが、法案の決着がどうということは別にして、今日のこういう状態に対する政治的な責任をどう果たしていくのかということは、さまざまの機会をとらえて努力をしなければならない問題、特に私ども大蔵委員会での大きな課題ではないだろうかと思っておりますので、いろいろのそういう努力をたゆまず続けていただきたいし、私どもも論議をしていきたいということを申し上げまして、時間ですから終わらせていただきます。
  251. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  252. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 きょうは日弁連から参考人で御出席いただきまして、ありがとうございます。  いま、サラ金をめぐって日弁連へ相談あるいは紛争が持ち込まれているその実態を伺いましたが、一カ月二百件という大変な数ですね。年間五百件が月二百件、この推移というのはかなり事件の多発ということになっているだろうと思うのです。サラ金をめぐって一家離散あるいは自殺というさまざまな事件が続出しているわけですけれども、このほとんどが返済に窮したために起こっている事件で、最初からサラ金を利用してその返済に窮しているというケースより、むしろ私は、住宅ローンあるいはクレジット、割賦販売の支払いが滞って、安直に融資を受けられる、貸してもらえる、そういうことでサラ金を利用して、そこから始まる悲劇、そういう実態がかなりあるのじゃないかと見ているのです。したがいまして、サラ金をめぐる悲惨な状況というのは、クレジット全体あるいはローン時代が問われている問題じゃないかという受けとめ方を実はしているのですけれども、サラ金で行き詰まった人の中にクレジット等で支払いに困っている、そういうものがどのぐらいあるのでしょうか。
  253. 樋口俊二

    ○樋口参考人 正確な調査はございませんけれども、弁護士会の窓口においでになる相談者から得た感触では、ほかの債務を支払えないでサラ金に手を出すというケースは、恐らく三〇%から五〇%ぐらいあるのではないかというふうに考えております。  それから、最近のサラ金の被害の実態でございますけれども、先ほど申し上げました以外に、いわゆる過酷な取り立てというものは、昭和五十三年ごろの第一次サラ金禍の時代から現在まで相も変わらず続いているということ、それから、義務のない者に対する請求、たとえば国元の両親に対する請求、そういうのが非常に巧妙に、陰湿に行われている、さらに、保証人被害がふえてきた、保証債務を支払うためにまたサラ金に手を出す、そういうようなことがふえてきたことが報告されております。
  254. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 いい悪いは別にいたしまして、今日の現代社会といいますかクレジット社会に入りまして、クレジットによってサービスの先取りをする、そういう時代だと思うのです。サラ金のこういう悲惨な事件というのをなくしていく、これは借りなければいいじゃないかということにもなる。慎重な借り方をすべきだ、一方においては確かにそういう確固とした姿勢が大事だろうと思うのです。  そうは言っても、つなぎの急ぎの資金需要というのも生活上必要なわけでありまして、これもまた間々あるわけでありますから、公的な生活資金の融資制度を充実していく、あるいは都銀、地銀等によって生活資金のいわゆる消費者ローンの拡大を図っていく、こういう大蔵省の対応というのは非常に要求されるところだろうと思うのですが、今後どういう対応をされていきますか。
  255. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 先生指摘のとおり、消費者金融につきましてやはり金融機関が十分対応していく必要がある、それによって少しでも消費者金融が健全になるあるいはサラ金禍が減っていくというふうなことは、私どもとしても、そういう方向で指導なり誘導をしていく必要があると思うわけでございます。  確かに、高度成長期、資金の不足していた時代には、どうしても産業金融の方へ偏りがちだったのでございますけれども、いまや住宅ローンを中心に、個人が資金の需要者としてこの十年間ぐらい登場してまいりまして、急に特に消費者金融問題が大きくふくれ上がってきているわけでございます。私どもといたしましては、金融機関が消費者金融に十分力を入れるように指導はいたしておりますけれども、こういうような非常に大きな社会問題にもなってきているわけでございますので、一層その充実を図るように努力してまいりたい、こう思っております。
  256. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 サラ金大手四社の五十七年度の決算が報道されておりますね。  それによりますと、期末融資残高が二千億円台にのり三千億円台に達する勢いということです。その伸び率が一倍から二倍、大変な伸びを示しているのがこの実態です。貸付人数も大々的に増加しておりますし、貸し倒れ償却も〇・五倍から三倍に増加している。こういうサラ金の大々的な増加に一体どういう背景があるのか、こうしたサラ金の急激な膨張に対する大蔵省としての考え方、見解はいかがですか。
  257. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 私どもも、こんなに膨張するのが実はよくわからないのでございますけれども、顧客のニーズがあったからふえたということは一つ言えるかと思います。なぜそのニーズがあったかというのは、われわれ銀行局あるいは大蔵省としてはなかなかつかみにくい点でございます。  それからもう一つは、サラ金業界の方も競争を通じまして、先ほど伊藤先生からも御指摘ございましたが、実際問題として金利が下がりつつあるのではないか、あるいは、昔のような質屋的なイメージではなくて、わりと近代的なイメージでもって商売をするとか、あるいは資金調達ルートを強化するとか多様化するとか、それなりにサラ金業界の方も努力したのではないかという気がいたします。ただ、御指摘のように原資がなければそんなに膨張しないわけで、したがいまして、余裕資金を持っている金融機関なりあるいは融資機関がかなり資金を融通したという点も急成長の一つの原因だとは思います。
  258. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、貸出残高の急増ですね、あるいは貸付人数が非常に伸びている様子、この背景にはやはり大手都銀あるいは生保、そういうところの豊富な資金融資があったればこそだと実は思うのです。生保あるいは銀行のサラ金への融資状況はどんな状況になっておりますか。
  259. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 最近調査の結果でございますが、五十七年九月末現在で判明した数字といたしまして、銀行が千八百四十二億、信用金庫が百十八億、保険会社、これは主として生命保険会社でございますが八十二億、合計二千四十二億という数字を把握いたしております。
  260. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 こういう豊富な金融機関からの融資がまず一つ背景にある。その資金を運用するために強力な過大な宣伝活動を行う、貸付先の開拓もノルマみたいな形で責められる、一人当たり融資額も増加させる、サラ金への資金需要を拡大した背景はそういうところに実はあるだろうと思うのです。  こういうところから出発しまして、無担保、即決融資が行われまして、貸付先の開拓、拡大に正比例するような形で返済に窮した人がどんどんふえてくる。こういう姿は、当然起こるべくして起こっているサラ金地獄だと思うのですね。金融機関の融資拡大がサラ金地獄を一層深刻なものにしている。こういう図柄を大蔵省としてはどういうふうに見ていらっしゃるのか。サラ金への融資の自粛通達が全く効果がない実態じゃないのか、こう思うのですけれども、どうでしょう。
  261. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 最近の実態を見ておりますと、確かに私どもの口頭通達が厳正に守られていないような気もいたすわけでございます。ただ、金融機関といいましても、業態によってかなり違っておりまして、都市銀行や地方銀行がそれほどやっているとは思えないわけでございます。一部相互銀行とかあるいは保険会社、外国銀行等からかなり流れているようでございます。しかし、いずれにいたしましても、いま御指摘のような点は多々あるわけでございます。  そこで、この問題は、貸金業法の成立いかんにかかわらず、先ほどもちょっとお答え申し上げましたが、銀行行政の一環として直ちにできる範囲のことでございますので、いま実態把握に乗り出しておりまして、それの実態を見きわめた上で、場合によりましては口頭通達を書面による通達にでも改めまして、自粛の徹底みたいなものを図っていきたい、こう思っております。
  262. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 最近、商工中金がサラ金融資にかかわっている、こういう報道がありましたけれども、この実態は一体どうなっているのか、また、今後の対策としてどういう対策を講じるのか、御説明いただきたいと思います。
  263. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 商工中金自体のお金がサラ金業界に流れているということは聞いてはいないわけでございます。  ただ、御指摘のように、商工中金なり政府関係機関の実質的小会社がサラ金の方へ金を流していたというのは事実のようでございます。ファクタリング会社とかそういう金融の一部を担います関係会社が健全な消費者金融専門会社に資金を流していくという点については、これはとめるべき話ではないのかもしれませんが、どうも現在報道されておりますようなサラ金専業者の実態からいいますと、たとえ大手でありましても非常に社会的な批判を浴びているわけでございますので、こういう点につきましては、特に政府関係機関の関係会社が、そういう社会的な批判を浴びるような業者に資金を流すことについては厳にやめるべきである、こういうふうに考えておりまして、そういう意味におきまして、商工ファクターでございますか、あの会社のサラ金への融資は回収するというふうなことも聞いておりますし、より強い指導をしてまいりたい、こう思っております。
  264. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 このまま金融機関を後ろ盾にしてサラ金の貸し付け競争が激化していくならば、サラ金被害も大変増大していくだろうというふうに思われるわけです。そういう状況の中で、今回の利息制限法の金利を上回る、つまりグレーゾーンの金利の返還請求の道をふさごう、こういう考え方では、仮に原案が成立したとしても、一家離散というような悲惨な事件は一掃できないのじゃないかと思われるのですが、提案者の御意見を伺いたいと思うのです。  それと合わせまして、不当利息の返還請求権については、サラ金業のみ禁止することになるわけですね。銀行あるいは質屋等については、返還請求の道がそのまま残されている。なぜサラ金業のみ返還請求の道をふさがなければならないのか、この辺理解に苦しむのですが、提案者の御説明をいただきたいのです。
  265. 大原一三

    大原(一)議員 四十三条の問題でありますけれども、これは、いろいろの法的規制をいままでの規制のない状態から入れていく手前、やはりその身がわりとして、金利水準を漸次下げていくということ、その身がわりとして四十三条の規定を入れたわけでございます。  先ほど伊藤先生からもお話がございましたが、実際、金利はもう少し下がっていると思うのです。ですから、大蔵省に金利を下げる努力をいろいろしろということもありますけれども、やはり議員立法でございますから、われわれ大蔵委員会としても、金利情勢を見きわめ、できるだけ早い機会に四〇%ラインを確保するというのが、当委員会の努力目標として今後この問題に取り組んでいかなければならない問題の一つであろうと私は思います。  サラ金禍がこの法律によってなくならないだろうという御議論、確かにお説のとおりです。私は、この法律が一〇〇%りっぱな法律だとは思っておりません。いきなりりっぱな絵をかきましても、何しろ何もないところへ規制をつくるのでありますから、六十点から七十点ぐらいの法律だろうと私は思います。そういう状況の中で、規制関係も二十項目入っていますし、営業停止項目も十七項目、罰金項目も二十項目ぐらい入っていますし、ひとつ積極果敢に大蔵当局を中心にこの法律を実施していただいて、その後の状況を見ながら、また新しい法改正もしていかなければならぬのじゃないかというふうに率直に感じております。  それから、質屋が入っていないのは、質屋営業法で質屋をやっているわけですが、あそこはちゃんと担保をとっていらっしゃいますので、このサラ金問題におけるようなトラブルが起きていないということで、質屋関係を除外したわけでございます。  以上でございます。
  266. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 いま、金利について率直なところをお述べになりましたけれども、確かに実勢の金利水準というのは下がっていると思うのですね。四十数%という金利のところもありますし、これからますます競争が激化してまいりますから、競争の中から淘汰されるであろうことも目に見えているわけであります。しかし、今回の原案に関しては、そういう意味で経過措置がかなり高い金利のところに固定をしてしまう心配が実は厳としてあるだろうと思います。その改定を急がなければならないのじゃないかと思います。  それから、悪質な取り立て行為の点なんですけれども、取り立て行為の規制につきましては、原案では抽象的な規定になっているために、多くの人が具体的に何をしていけないのかちょっと理解に苦しむという意味での規制の難点があるだろうと思うのです。もっと明確にした方がよりはっきり規制の対象になるだろうと思うのですが、この点についていかがでしょうか。
  267. 大原一三

    大原(一)議員 提案の段階でいろいろ議論をした問題点の一つであったわけでございますが、人を威迫して生活の平穏を害するとも書いてあるわけですから、軽犯罪法でも、へいにその人を威迫しないポスターを張っても違反になっているわけでありますが、サラ金に関して、人を威迫して生活の平穏を害するというようなことになりますと、非常に広範な規定でございます。  したがって、具体的にわれわれの希望としては、大蔵省が通達の中に、いろいろ議論がありましたので、それを取り入れて明示をしていくということが必要ではないかというように考えております。ただ、たとえば、どこかの案にありましたが、夜の十時から朝の六時までの取り立て電話をかけてはいけないといいますと、十時の以前と六時の以後であったら幾ら電話してもいいのかという議論になりますし、具体的に非常にむずかしい問題がありましたので、抽象的な規定にしたわけでありますけれども、参議院、衆議院の議論を踏まえて、具体的な通達、省令、政令の段階規定をしていただきたい、かように考えております。
  268. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  269. 森美秀

    森委員長 正森成二君。
  270. 正森成二

    ○正森委員 提案者にまず伺いたいと思います。  非常に失礼な言い分ですが、先ほど、この法案でサラ金禍はなくならないであろう、しかし六十点、七十点はあると思うという御答弁でございました。日ごろから大原先生の人柄は存じ上げておりますが、その御評価を伺って、これはどうも試験の成績のできの悪い受験生の言い分じゃないか。成績のできの悪いのに限って、自分で六十点、七十点あるじゃないか、ふたをあけてみればみごと落第で合格していないということがありますが、この法案はまさにそういう法案ではなかろうかという印象を持つのですね。サラ金関係の犯罪は三日に一件、死者は三日に四人というような非常事態だというように新聞では連日報道されているのですね。  それで、一番の問題は、諸先生も言われたように、金利の問題と四十三条の最高裁の判例否定ということだろうと思いますが、金利については、先ほど先生の御説明では、これでも大分現状よりはいいんだ、現状ではこれよりまだ悪いのがたくさんあるんだというように言われましたが、その高い金利では、なかなかサラ金禍をなくすことはできない。  それで、参議院で上田教授をお呼びして、先生も御承知と思いますが、その上田教授は、御自分で計算された適正金利として、二十五万円以下の部分についても年三〇・九%ぐらいで妥当ではないか。これは五年前に自分は三六%程度、こう言っておったが、その後五%ぐらい下がっておるということを言われまして、御自分の計算に対してサラ金業界からただの一言も反論がなかったということを言うておられます。さらに、外国の例をお引きになりまして、西ドイツでは、借り受けの上限金利が、金額によりまして一四%から二五%の範囲内、フランスは一五・八%から一九・五%の範囲内で、これを超えるといずれも刑を科せられる、科罰金利であるということを言うておられるのから見ますと、この法案での金利規制というのは余りにも高過ぎるのではないかというように思われますが、いかがですか。
  271. 大原一三

    大原(一)議員 上田先生の御議論を参議院でいろいろお聞きしたのでありますが、具体的にどういう基準で、あるいはサンプル調査でおとりになったのか、私ちょっとよくわからなかったのでありますが、銀行局長がいろいろ答弁しておりましたけれども、金利水準の問題については水かけ論だったような感じがいたします。  それと、外国の例でございますけれども委員おっしゃるとおりに、サラ金というのは特殊日本的な金融構造だと私は思うのです。と申しますことは、先ほど銀行局長も触れましたが、日本の金融は高度成長とともに産業金融偏重であった、家計金融、消費金融というのが非常に取り残された分野であったわけでありますが、そういった構造のずれ込みがいわゆる消費ブームにマッチしないで、そっちの方面からの資金需要が事実現在にあったわけでありまして、それに対する資金需要がいびつな形で非常に繁盛したというのが日本のサラ金の実態だと思うのです。そういう意味で、外国におきましては、アメリカにもいわゆる貯蓄銀行というのがございますが、半分以上、住宅金融を入れますと七、八割は家庭金融ですね、消費金融。そういった金融機関が日本になかったということでありますね。  そういう意味で、都市銀行等、一般銀行でありますが調べてみますと、消費金融というのはまだ依然として一〇%ぐらいにしかなっていない。その中の九割九分は住宅ローンでありますね。あと、最近、クレジットとかその他の分野へ多少ウエートはかかっておりますが、一般金融機関の消費者金融ウエートが非常に低いというところに、基本的な特殊的な金融構造があるのではないか。今後、そういった方向で、いわゆる一般金融機関がもっと消費者金融に目を向けて適確な融資をしていけるような体制が欲しい。アメリカとお比べになりましたので、思いつくままを申し上げましたが、そういう感じを持っております。
  272. 正森成二

    ○正森委員 金利の問題については、上田教授は従業員三人ぐらいの零細業者ということでお調べになったようであります。  しかし、時間がございませんので次に移らしていただきますが、本法案は、閣法ではございませんで議員立法だということになっております。  私から伺いたいと思うのですが、議員立法の場合に、これはまだ衆議院では採決が行われておりませんので、参議院を例に出しますが、参議院で、私の聞いておりますところでは、社会党、公明党、共産党が反対し、そのほか参議院独特の会派がさらに一つ、二つ反対に回られたというように伺っております。そうしますと、議員立法を三つ以上の党派が反対をしているのになおかつ採択されたという例がこれまでございましょうか、承りたいと思います。
  273. 大原一三

    大原(一)議員 三つ以上の会派が反対して自民党単独で議員立法したケースが幾つかあるようでございます。私、具体的には忘れましたけれども、できたら法制局が来ておりますので答えさせたいと思います。
  274. 松下正美

    ○松下法制局参事 お答え申し上げます。  三つ以上の会派が反対いたしまして成立した議員立法の例といたしましては、第七十二国会で会社臨時特別税法案というのがございます。これは自民党の提案でございまして、社会、公明、民社、共産の各派が反対をいたしております。それが一つでございます。それから、第七十五回国会でございますが、これも自民党が提案で私立学校振興助成法というのがございますが、これも社会、公明、民社、共産の反対で成立をいたしております。それからさらに、第八十五回国会の国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案、これも自民党提案の法律案でございますが、社会、公明、共産の反対で成立いたしております。  立法例としては以上でございます。
  275. 正森成二

    ○正森委員 それは、本来閣法のものを特殊な事情で自民党の法案にしたんじゃないですか。  法制局はそういうことを言うておりますが、私が委員部とかそんなので調べさせたのでは、そういう例はない。昭和五十七年二月十二日に提出された九十六国会衆議院法第五号の私立学校振興助成法、これは自民党提出で反対は社会党だけがされましたが、その他の党の賛成で成立した。同じく九十六国会、昭和五十七年五月十四日提出衆議院法二十八号、北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律案、これも自民党提出で沖縄北方委員会で、社会党が反対をされましたが、それ以外の党が賛成という二例があるだけで、それ以外に共産党だけが反対したというのが若干あるようですが、それ以外にはないというように私は委員部から報告を受けております。  いまの法案は、閣法を特殊な事情で自民党提出ということにしたのではありませんか。まず、私のいま言うたことに答えてください。
  276. 松下正美

    ○松下法制局参事 先刻第一番目に申し上げました会社臨時特別税法案につきましては、これは必ずしも政府提案にすべきものを特殊な状況によってということではございませんで、これは各政党から、石油ショックによる値上がりによる不当利得を吸収するということで法案が出ておりまして、これはその中の一つということでございます。でございますので、必ずしも政府提案となるべきものを特殊の事情によって議員立法として出されたもののみであるということではないわけでございます。
  277. 正森成二

    ○正森委員 会社臨時特別税というのは当然取らなければならないということでやったのですが、その取る幅がいろいろ意見が違うということで、取ることには全部賛成だが幅が違うということで、とりあえず自民党の賛成だけということにした法案だったと私は承知しているのですね。こういうサラ金法案のように本質にかかわる問題について三党以上が反対しているというようなことはない。  私がいま質問をした、一党だけで賛成したのがこういう二つのことがあるという問題については何ら答弁がないと思うのですけれども、その点はいかがですか。いまわざわざ三つほど持ってきたけれども、私が言うたことには答えていないですね。その点は調べましたか。自分に都合のいいものだけを持ってくるんじゃなしに、こういう点は調べましたか、こういう事実があるかどうか。そのほかにはないでしょう。私がわざわざ資料を渡して、調べてきなさいと言っているのに、その資料については調べないで、自分でいろいろ調べたことだけ言って、そのことを質問者にも事前に言わないなんていうのは信義の原則にだって反するじゃないか。私の方は、こういうぐあいに全部調べて、これが政府だったらそこまで親切にしないけれども、相手が大原理事だから渡しているのじゃないですか。それに対して、これには答えないで、自分でいろいろ調べてきた特殊な事情のあるものについて答弁をして、しかも、それは質問者にあらかじめ何も言わない。そんなのじゃ、これからはわれわれは親切にこんなもの出しませんよ。いきなり聞いたっていいのですよ。それじゃ、あなた方、答弁の用意がないでしょうが。
  278. 大原一三

    大原(一)議員 法律の専門家の正森さんに指摘されて法制局に調べさせたわけでありますけれども、その点については私の勉強不足でありまして、ただいますぐ法制局に調べさせます。
  279. 正森成二

    ○正森委員 非常に不公正なやり方だと思うのですね。私が事前に提出したことについては調べない。それで、何か知らないけれども調べたら自分に有利げなものがある。それについても会社臨時特別税というのは、私の記憶ではそういう経緯だというものはやる。しかも、それを資料を出した議員には答えないで、それで勝手に答えるというようなことでは、あらかじめ議員立法だからと思ってわざわざ提供していることに対して全く信義に反することですね。だから、いま質問時間がもうありませんのでここでやめておきますが、後日何らかの委員会の席かあるいは私のところに御報告願いたいと思います。  それで、参考人においでいただいておりますので、ありがとうございます。伺いたいと思いますが、すでにもう他の二党からお聞きになっておりますので、私の方からほんの一、二点だけ伺わせていただきたいと思います。  この法案については、取り立ての規制という点が非常に不十分だという意見が参議院でも出ておりましたが、その点について御意見がございましたら、もう時間がございませんので簡単にお述べください。
  280. 樋口俊二

    ○樋口参考人 取り立ての規制につきましては、二十一条を一ヵ条だけ置いてございますが、規定が非常に抽象的でございまして、これでは有効に処罰できるかどうかが疑問であります。たとえば長時間の電話、深夜の電報、支払い義務のない者への請求、私事の公開、そういったサラ金の手口が明らかになっておりますので、こういうものを有効に規制することが必要だと思います。
  281. 正森成二

    ○正森委員 なお、サラ金の問題についてはいろいろな担保を取るということがございますが、そういう点について、参考人といいますか日本弁護士会ではどういうぐあいに考えておりますか。
  282. 樋口俊二

    ○樋口参考人 不動産金融のように非常に金目のものを取るというのではなくて、たとえば免許証とか健康保険証とか、そういう事実上の担保を取っておると思います。このことによって泣く泣く高金利を払わせられる、こういう事態がございますので、私どもは、今回の法案がもし通過すれば、そういう問題もひとつ取り上げまして、任意の支払いと言えるかどうか、そういうことを検討していきたいと思っております。
  283. 正森成二

    ○正森委員 いま任意の支払いという問題が出ましたが、今度の法案は、たしか条文では、利息として任意に支払われたというような表現であったと思います。そうしますと、利息としてというのは、当然のことながら相手方が決めるのじゃなしに支払い側が指定すべきものだというように思いますが、その点と任意性との関係についてはどうお考えになりますか。
  284. 樋口俊二

    ○樋口参考人 おっしゃるとおり弁済充当指定権というのは債務者が持っておりまして、したがって、何も言わないで支払ったものを法定充当ということで損害金利息というふうに充当するのはこの四十三条の適用外になる、こういうふうに解釈する余地は十分あると思います。
  285. 正森成二

    ○正森委員 担保の問題で、金目のある不動産担保以外の免許証等の問題について参考人がいまお触れになりましたが、私の理解するところでは、今回の法案は単にサラ金業だけではなくて、一般の貸金業にも適用されるようになっていると承知するわけですね。そうしますと、利息制限法以上の非常に高い金利を取り、かつ不動産を担保に取る。そして、不動産の抵当権を実行するとか代物弁済というような事態が起こってくるんじゃないか。そうしますと、代物弁済などの場合には判例がございまして、ずっと前には代物弁済で相当高い物を取ってしまうということがございましたが、清算をしてなお余剰があれば返すというような判例が定着してきていると思うのです。そうすると、日本弁護士連合会としては、今回の法案が通りましても、非常な高金利であるというような場合には、先ほど言われた任意性の問題はもちろんでありますが、そのことが利息制限法に違反するということで、不動産を取られてしまうということに対して裁判上異議を言うというケースが出てくるかと思うのですが、それについて参考人はどうお考えですか。
  286. 樋口俊二

    ○樋口参考人 従来、不動産金融につきましても利息制限法に関する最高裁判所の判例が一般的な抑止力としてございまして、彼らが自粛をしていたわけでございます。これに真っ向から挑戦するような四十三条ができましたので、非常にやりにくくなるとは思いますけれども、最高裁判所は従来から消費者の保護、高金利の抑圧という社会政策的な判例を積み重ねておりますので、今後もそういう人権擁護の観点から法律の解釈に大いに工夫すべきだ、このように考えております。
  287. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、いまの参考人の御意見は日本弁護士連合会所属の弁護士としては、そういう抗弁といいますか主張といいますか、それを当然裁判上行うであろうし、それについて最高裁が、昭和三十九年と四十三年の判例に基づいて、今回仮に成立する法案に対してもなおかつ司法の立場からの判断をなす場合はあり得るというようにお考えでございましょうか。
  288. 樋口俊二

    ○樋口参考人 これはまだ具体的なケースはございませんが、予測としては、私どもは、与えられた条件のもとに十分に努力をして新しい道を切り開いていきたい、そして可能性もある、このように考えております。
  289. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣にお見えいただいておりますので伺いたいと思います。  すでに鳥居委員もお聞きになりましたけれども、商工中金系の商工ファクターというのがサラ金業者に融資をしておりました。それにつきまして私が非常に注目しておりますのは、大蔵省が暗黙の了解を与えていた。つまり、事前に大蔵省から金利を下げさせる念書を融資先のサラ金から取るよう指導を受けた。何か記事を見ますと、何年か先に二〇%にするというようなことで大蔵省は黙認していたんだという記事がある。これは非常に重大なことではなかろうか。商工中金というのは政府の出資金もございますし、財投の金も出ているということで問題ではなかろうかというように考えるわけであります。  この問題については二十六日に参議院で質問がございまして、商工中金は大蔵省と通産省の共管ですね、そこで山中通産相が、なぜそんなことまでするのか疑問だ、厳正な運用をするよう中小企業庁長官から厳しく申し入れたと答えておられ、また中小企業庁長官も、武富士など三社には返済するよう要請した、早急に回収するというように御答弁があったようであります。  そこで、商工中金は通産と大蔵の共管というふうに聞いておりますので、大蔵大臣としてもこういう点についていかがお考えか。すでにもう一部の新聞には中小企業庁長官を通じて返済させるというように出ていますが、大蔵省としてどうお考えか、承りたいと思います。
  290. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 商工ファクターの業務につきまして、どのような運用をするかについて商工中金から当方に感触の打診があったことは確かでございます。  貸し金業者に対する融資につきましては、銀行局のスタンスは、御承知のとおり口頭指導をやっておりまして、社会に批判を招くような悪質な業者に対する融資の自粛を求めておるわけでございますので、そういう融資をする際にもそういう通達の趣旨に従ってやるべきだということ、それからもう一つは、商工ファクターは商工中金からの直接の出資はございませんけれども、密接な関連を有する会社でございますので、商工中金から融資を受けた資金で貸し金業者に金を流すということは好ましくないという感触は実は伝えたところでございます。そのような私どもの感触を踏まえまして、商工中金としては、商中の資金は使わない、それから相手方から融資に当たって金利引き下げの念書を取るとか、いま御指摘のようなことでございますが、それから融資先は優良健全なところに限るというふうな注をつけまして商工ファクターの方に商工中金としての意向を伝えて、そういうふうな意向に基づいて商工ファクターが自主的判断で融資をしたというふうに聞いておるわけでございます。  ただ、現在のサラ金の実態を見ますと、こういう政府系機関の関係会社がいまのような実態の融資をしていることについては、これは自粛すべきでございまして、いま御指摘のとおり、新規にはもう絶対に行わないということと、既往分につきましては順次返済期限が来るに従いまして回収に努めるということに決めたようでございます。
  291. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣、何かございますか。
  292. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま銀行局長から御説明を申し上げましたが、私も参議院でいろいろ議論を承っておりお答えもしたわけでございますけれども、基本的にわが国の銀行法というのは世界に冠たる銀行法だと思います。それは預金者保護という立場に立っての話でございますけれども。そういうことからサウンドバンキングというものがある意味において、消費者金融というようなものはコストもかかりますしめんどうでもございますし、そういうことを避ける方向に進んできたという傾向はある。一方また、わが国の産業復興に対して産業金融というものが非常に主体的な役割りを担ったという傾向もあると思うのです。  だから、基本的には金融機関自体が消費者金融にもっと努力をする必要があろうかと思います。したがって、一部卸売的な融資と申しましょうか、そういうことも健全な業界を育てる場合にはこれを一概に悪であるということは言えないかと思う。そういう立論過程において商工中金、商工ファクターの問題が出た。商工ファクターそのものをよく調べてみますと御指摘のようないろいろな問題がございますが、商工中金、いわゆる政府系金融機関がサラ金業者に融資しているという直接の問題ではない。しかし重大な関係がある。したがって、少なくとも社会的誤解を招いたということは遺憾であります。商工ファクターさんが商工中金にも相談して新規融資は行わないとか既往貸し付けは早急に返済を得るように努めることになったという報告を受けておりますので、その筋の対応の仕方としては一つの適正なあり方かなと思います。  もう一つ、商工中金自体の問題になりますと、御案内のように、商工中金の法律は昭和六十一年までの時限立法となっておりますので、その後の問題として商工中金法の改正ということがいろいろ議論になろうかと思います。これはもちろん通産省と共管でございますので、にわかに予見を持ってどういうふうになるであろうというようなことを言うわけではございませんが、それなりの位置づけはその時点で議論されていけば、なおのこと指導することによっていやしくも誤解を生むようなことのないような配慮はできるのではなかろうかというふうに考えております。
  293. 正森成二

    ○正森委員 これで終わりますが、きょうのある新聞を見ますと、農林中金の関連会社、株式会社協同リースもサラ金のプロミス、アコム、レイクあるいは武富士に八十六億円も融資しておる。農水省の経済局の金融課長などは、当然慎むべきである、こういう談話を発表しておりますが、大蔵省はやはり農水省と共管のようでございますが、同じような態度でございますか。それを承って、質問を終わります。
  294. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 同様の態度でございます。
  295. 森美秀

    森委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  296. 森美秀

    森委員長 この際、両案に対し、伊藤茂君外一名より、日本社会党、公明党・国民会議二派共同提案に係る修正案及び蓑輪幸代君外一名より、日本共産党提出に係る修正案がそれぞれ提出されております。  提出者より順次趣旨説明を求めます。伊藤茂君。     ─────────────  貸金業規制等に関する法律案に対する修正案  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  297. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、日本社会党と公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました貸金業規制等に関する法律案並びに出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  サラ金問題は今日まで長い年月にわたって重大な社会問題となってまいりましたが、特に最近は業者の急激な増大、悲惨な社会問題の激増などを初め、きわめて深刻な状況となっております。このような新たな現実に対して、実効ある立法措置をとることは、まさに緊急の課題となっております。  長年にわたって各界から指摘されてきたことでありますが、借り主の蒸発・自殺・離職・家庭の崩壊などのサラ金被害が深刻化した原因には、業者の経営基盤の脆弱さ、過当競争、行政当局の対応の不十分さ、利用者の安易な態度とそれに便乗した悪質な業者の存在等があります。そこで、このようなサラ金被害から利用者を守り、貸金業界の健全化を図るために有効、適切な規制法の制定が望まれてきたのであります。  社会党、公明党初め各党とも独自規制法案を国会に提出する一方で、各党間で調整を図り、議員立法を制定するため積極的努力を重ねてまいりましたが、その都度不成功に終わり、早期制定を望む国民の期待にこたえることができなかったのであります。しかし、昨年の第九十六国会の最終段階に至って、サラ金禍をこれ以上放置すべきでないとの認識で一致し、現在当委員会で審議している二法案がまとめられたのであります。私たちはこの二法案について、不満足なものであるにせよ、数年間にわたる論議の上に当時の時点で現実に可能な具体的対応策として考えたのでありますが、法案成立を見込んでの最近の急激な支店の開設、貸し付けノルマの付加の一方で、貸し付け金利の低下さらにサラ金悲劇の頻発など原案が当委員会を通過した時点と比べますと、きわめて大きな事態の変化が生じているのであります。  特に最近の新たな状況として、体質の脆弱な中小零細業者の異常な増加、都銀から政府系金融機関までの融資を受けた大手業者の急激な拡大などサラ金業者が急増し、自殺、行方不明、一家離散など深刻な社会問題が激発しております。これに加えて、原案の上限金利七三%は実勢金利から見ても高過ぎるものであり、しかも、これの改善に三年の長期間を要し、さらに四十三条の規定により法施行の当初から最高裁判例による救済措置が停止されることに対して、今日の状況に対応した一層の改善が強く求められているのであります。  したがいまして、本問題に取り組むに当たっては、第一に、不当な高金利による貸し付けを禁止すること、第二に、利用者の資力・返済能力を無視した貸し付けを防止すること、第三には、利用者等に対する暴力的な取り立て行為を厳禁し、業務上及び私生活上に不当な影響の防止に努めること、第四には、行政当局が厳格に対応し、指導監督に努めることの四点を基本的な考え方とすべきであると思うのであります。  次に、修正案の内容を御説明申し上げます。まず、貸金業規制等に関する法律案に対する修正であります。  第一に、貸金業の開業に当たって、現行の届け出制から登録制に改善された点は評価いたしますが、いわゆるサラ金問題を解決するために開業規制をいま一歩厳しいものにすることが必要であります。そこで、登録の申請前三年以内に貸金業に関し不正または著しく不当な行為をした者の登録を拒否するなど拒否事由を追加するとともに、登録の申請を貸金業協会並びに同連合会を経由することとし、協会等は意見を付して大蔵大臣並びに都道府県知事に申請することといたしております。かかる手段を通して業者の連合会並びに協会への加入の促進を図り、あわせて健全な貸金業の運営を図る必要があると考えるものであります。  第二に、誇大広告の禁止などについて原案はきわめて抽象的であり不十分と言わざるを得ません。誇大かつ不当広告の散乱を防ぎ、利用者を誘発するがごとき広告は厳禁すべきであり、そのために広告の倫理を定め、禁止すべき広告の表現について具体的に列記させることといたしております。また、本人の知らないうちに保証人にしての巧妙な貸し付けを防止するために貸金業者に債務者または保証人となる者の契約の締結の意思を確認する義務を課すことにいたしております。  第三に、取り立て行為の規制についてであります。業者の強制的暴力的取り立て行為に対する規定が、原案では抽象的であり、実効性に疑問が残りますので、深夜早朝の取り立ての禁止、電報電話による反復取り立ての禁止、威迫を交えた言動、さらに債務についての流布など禁止すべき行為を具体的に列記することといたしております。  第四に、任意弁済の取り扱いについてであります。原案は、任意に支払った金利は有効な債務の弁済とみなすことにしておりますが、みなし弁済の定めは、高金利を固定化させる一方で、サラ金被害の法的救済を困難にし、消費者保護をむずかしくするものと考えます。したがって、現行の利息制限法の本旨と超過利息の元本充当、過払い金の返還を求めた最高裁判例を維持することが最良の策と考え、みなし弁済の規定は削除することといたしております。  次に、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する修正内容を申し上げます。  金利規制について、原案では、上限金利を法律施行後三年間は年率七三%、次いで年五四・七五%に引き下げ、法律施行五年経過後に検討した上で、最終的に四〇・〇〇四%に移行すると定めております。この規定は、実勢の金利を反映していないばかりか、かえって金利の高騰と固定化の口実になり、消費者保護に逆行する結果をもたらします。サラ金の高金利による悲劇を解消するため、法律施行時から三年間は経過措置として、年率五四・七五%を上限利率とし、三年経過後は四〇・〇〇四%に移行するものとしております。  以上がいわゆるサラ金規制二法案に対する修正案の内容であります。委員各位の御賛同をいただきますようお願い申し上げて、提案理由説明を終わります。
  298. 森美秀

    森委員長 蓑輪幸代君。     ─────────────  貸金業規制等に関する法律案に対する修正案  出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  299. 簑輪幸代

    蓑輪委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題の参議院からの送付案件であります自由民主党、新自由クラブ・民主連合共同提案の貸金業規制等に関する法律案並びに出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案の理由とその概要を御説明申し上げます。  小口消費者金融、いわゆるサラ金に対する有効な規制措置は、今日、緊急の課題となっています。  最近、サラ金にかかわる事件が爆発的にふえ、犯罪は三日に一件、死者は三日に四人という非常事態となっています。このようなサラ金悲劇の原因は、異常な高金利が放任されていること、悪質業者が野放しになっており、業務規制が全くないことにあります。この原因に対応した業界規制法こそが、サラ金被害者、弁護士、学者、労働組合、消費者団体など多くの国民から、強く求められているものです。  また、昭和三十九年十一月と四十三年十一月の最高裁判例が、利息制限法を超える金利を無効として債務者救済に道を開くとともに、法律上の不備を指摘し、厳しい警告を発してきたことも、法制上の新たな対応を求めたものとして見過ごせないところです。  ところが二会派提出の二法案は、昨年来の衆参の審議等で、わが党が一貫して指摘したように、被害者や国民の立場に立つのでなく、むしろサラ金業者の利益を擁護するものとなっております。  その問題点の第一は、高金利を公認していることです。出資法の改正案で当面年利七三%、三年後にようやく五四・七五%とするにとどまり、本則の四〇・〇〇四%への移行時期は決められていません。これは現状の暴利を公認し、返済難の多発を容認するものにほかなりません。  第二は、貸金業法案で、利息制限法についての最高裁判例の適用除外を図っていることです。これは、業界の宿願に十二分に報いる一方、被害者や弁護士などからは業者と戦うための武器を奪い、救済の道を封じて、債務者を自殺か夜逃げか破産の道に追い込むものです。さらに、この措置によって、立法府が一方的に最高裁判例の精神を踏みにじることもきわめて重大と言わざるを得ません。  第三は、貸金業法の業務規制の実効性が疑わしいことです。サラ金を含む貸金業者二十万件に対し、登録制をとることでどれだけ規制の実を上げられるかは疑問です。業務規制も、貸し付けの額や期間の規制がなく、早朝深夜の取り立てや親族へのいやがらせなどの禁止規定もありません。これでは、業界野放しの現状を大きく変えるに及ばないばかりか、逆に業者に市民権を与え、銀行融資導入など利便の拡大を助けることにしかなりかねません。  わが党は、このような二法案に反対し、真に有効な規制法を実現させるため、改めてその全部修正を提案いたします。  以下修正案の概要を説明いたします。  まず、貸金業規制等に関する法律案を全部修正し、小口消費者金融業法案とすることにしております。サラ金、すなわち小口消費者金融業を他の貸金業とは別にして免許制を導入し、厳正な審査が行えるようにしています。貸付業務に対しては百万円、二年の限度を設けるほか、未成年者や学生など返済能力のない者への貸し付けや白紙委任状の徴取、物品との抱き合わせ融資等を禁ずる等の措置を講じています。取り立て業務についても、早朝、深夜の訪問や縁故者に対する支払いの強要、債務者等を威迫し平穏を害する言動、第三者からの貸し入れによる返済の強要などを禁じています。監督では、大蔵大臣・知事が、法違反業者に対して立入調査はもちろん、必要な指示ができ、さらに悪質な場合は業務停止や免許取り消しができることとしています。なお、業者の不正、不当、不誠実な業務行為についてはだれでもが行政当局に申告し、改善措置要求できる等の規定も設けております。  最後に、罰則については、不正手段による免許取得や無免許営業、名義貸し、業務停止命令違反に対し、併科を含め、三年以下の懲役もしくは三百万円以下の罰金に処するなど所要の規定を定めております。  次に、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案についても全部を修正いたします。  刑事罰対象とならない金利の上限を現行の年利一〇九・五%から四〇・一五%に引き下げて、異常な暴利をなくすとともに、利息制限法第四条が遅延金利など賠償予定額の最高限を利息制限法金利二〇%の二倍、つまり四〇%までとしていることに対応させています。これによって四〇%を超える高金利は処罰対象となり、経済実態に見合った金利が実現することになります。さらに、罰金額は最高三百万円まで引き上げることとしています。  なお、この二つの修正案は、公布の日から起算して六月を超えない範囲の政令で定める日から施行することとしています。  以上が本修正案の内容でございます。  何とぞ慎重審議の上、賛同いただきますようお願い申し上げます。
  300. 森美秀

    森委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  301. 森美秀

    森委員長 これより原案及び各修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  初めに、貸金業規制等に関する法律案について採決いたします。  まず、蓑輪幸代君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  302. 森美秀

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、伊藤茂君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  303. 森美秀

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  304. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、蓑輪幸代君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  305. 森美秀

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、伊藤茂君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  306. 森美秀

    森委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  次に、原案について採決いたします。  原案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  307. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  308. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました両案に対し、中村正三郎君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。中村正三郎君。
  309. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、この貸金業規制関係の二法律案につきましては、昨年の第九十六回国会に提出され、本院で可決の後、参議院で継続審査に付されておりましたが、今国会に至り、同院で両案の附則の規定中に引用されている法律番号等の、年の表示を改める修正が行われた上、本院に送付され、ただいま当委員会で可決となりました。  この間、業者の駆け込み開業、営業所の急激な展開が見られるなど、貸金業をめぐる状況は変化を見せております。また、不当な取り立て行為も、依然として報じられております。  本附帯決議案は、このような状況にかんがみ、資金需要者の利益の保護と、業界の健全化のため、特に配慮すべき諸点を取りまとめたものでありまして、案文の朗読により、内容説明にかえさせていただきます。     「貸金業規制等に関する法律案」及び「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案」に対する附帯決議(案)   サラ金問題が長い年月にわたつて、重大な社会問題となつてきた経過にかんがみ、消費者保護と貸金業界の健全化のため最大限の努力を傾けるとともに、特に次の諸点について十分配慮すること。  一 貸金業の適正な運営及び不正金融の防止に資するため、貸金業協会及び同連合会への加入の促進を図り、あわせて同協会及び同連合会の健全な発展について指導を行い、また、非加入者が生ずる場合には、その非加入者に対する指導・監督について万全を期すること。  二 資金需要者の利益の保護及び貸金業の健全な発展を図るため、貸付条件についての誇大広告の禁止及び貸付債権の取立て行為の規制に関する規定の運用に当たつては、個別、具体的に例示する等の方法により、当該規定趣旨が活かされるよう指導・監督すること。  三 資金需要者の利益の保護を図る見地から、金利等取締改正法における刑事罰対象利率の上限貸出金利の引下げに更に努力するとともに、できるだけ早く本則に移行できるよう努力すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  310. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  311. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、両案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  312. 竹下登

    ○竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。     ─────────────
  313. 森美秀

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  314. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  315. 森美秀

    森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会