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1983-04-12 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       粕谷  茂君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩川正十郎君    白川 勝彦君       藤井 勝志君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       戸田 菊雄君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    横溝 雅夫君         経済企画庁総合         計画局審議官  及川 昭伍君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省証券局長 水野  繁君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         運輸大臣官房審         議官      熊代  健君  委員外出席者         経済企画庁調査         局審議官    海野 恒男君         大蔵省銀行局保         険部長     猪瀬 節雄君         文部省初等中等         教育局教科書管         理課長     佐藤 禎一君         厚生省公衆衛生         局地域保健課長 古市 圭治君         厚生省公衆衛生         局老人保健部計         画課長     森  仁美君         厚生省公衆衛生         局老人保健部老         人保健課長   谷  修一君         厚生省児童家庭         局児童手当課長 太田 義武君         農林水産省畜産         局競馬監督課長 安橋 隆雄君         自治省税務局固         定資産税課長  鶴岡 啓一君         日本電信電話公         社総裁     真藤  恒君         日本電信電話公         社経理局長   岩下  健君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      澄田  智君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 三月二十九日  所得減税、年金の凍結撤回等に関する請願渡辺貢紹介)(第一八二四号)  一兆円所得減税に関する請願金子満広紹介)(第一八二五号)  同(浦井洋紹介)(第一九二八号)  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請願小沢貞孝紹介)(第一八二六号)  同(加藤万吉紹介)(第一八二七号)  同外二件(勝間田清一紹介)(第一八二八号)  同(川俣健二郎紹介)(第一八二九号)  同(佐々木良作紹介)(第一八三〇号)  同(塩田晋紹介)(第一八三一号)  同(竹本孫一紹介)(第一八三二号)  同(辻第一君紹介)(第一八三三号)  同(野坂浩賢紹介)(第一八三四号)  同(部谷孝之紹介)(第一八三五号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一八三六号)  同(横手文雄紹介)(第一八三七号)  同(吉田之久君紹介)(第一八三八号)  同(和田一仁紹介)(第一八三九号)  同(和田耕作紹介)(第一八四〇号)  同(渡辺朗紹介)(第一八四一号)  同(藤田高敏紹介)(第一八九九号)  同(村山喜一紹介)(第一九〇〇号)  同(楯兼次郎君紹介)(第一九二九号)  所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願中路雅弘紹介)(第一八四二号)  同(川本敏美紹介)(第一八七三号)  同(島田琢郎紹介)(第一八七四号)  同(木島喜兵衞紹介)(第一九〇四号)  同外一件(塚田庄平紹介)(第一九〇五号)  同外一件(高沢寅男紹介)(第一九三三号)  同(河上民雄紹介)(第一九六五号)  税制改革に関する請願外二件(戸田菊雄紹介)(第一八七〇号)  同(土井たか子紹介)(第一九〇一号)  同(山本幸一紹介)(第一九三〇号)  同(高沢寅男紹介)(第一九六一号)  一兆円の減税等に関する請願佐藤敬治紹介)(第一八七一号)  同外一件(戸田菊雄紹介)(第一八七二号)  同外三件(久保等紹介)(第一九〇三号)  同(大原亨紹介)(第一九三一号)  同外五件(山本幸一紹介)(第一九三二号)  同(金子みつ紹介)(第一九六二号)  同(小林恒人紹介)(第一九六三号)  同(高沢寅男紹介)(第一九六四号)  一兆円減税等に関する請願久保等紹介)(第一九〇二号) 四月六日  物価調整減税実施に関する請願小沢一郎紹介)(第一九八二号)  所得税課税最低限度額引き上げ等に関する請願金子みつ紹介)(第一九八三号)  同外三件(稲葉誠一紹介)(第二〇〇六号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二〇〇七号)  一兆円減税等に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第二〇〇八号)  一兆円の減税等に関する請願塚田庄平紹介)(第二〇〇九号)  同(木間章紹介)(第二〇四一号)  増税反対所得税減税等に関する請願榊利夫紹介)(第二〇四二号)  同(正森成二君紹介)(第二〇四三号)  同(四ッ谷光子紹介)(第二〇四四号)  所得税減税及び大型間接税導入反対に関する請願木間章紹介)(第二〇四五号)  同(鈴木強紹介)(第二〇六四号)  同(竹内猛紹介)(第二〇六五号)  同(戸田菊雄紹介)(第二〇八九号)  税制改革に関する請願中西績介紹介)(第二〇六三号)  同(田中恒利紹介)(第二一一一号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願井上一成紹介)(第二一〇二号)  同(勝間田清一紹介)(第二一〇三号)  同(川本敏美紹介)(第二一〇四号)  同(串原義直紹介)(第二一〇五号)  同(沢田広紹介)(第二一〇六号)  同(嶋崎譲紹介)(第二一〇七号)  同(戸田菊雄紹介)(第二一〇八号)  同(水田稔紹介)(第二一〇九号)  同(八木昇紹介)(第二一一〇号)  身体障害者使用自動車に対する地方道路税揮発油税免除等に関する請願部谷孝之紹介)(第二一一二号)  同(野坂浩賢紹介)(第二一一三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 三月三十日  中小企業事業承継税制の創設に関する陳情書(第一一二号)  物価調整減税実施に関する陳情書(第一一三号)  不公平税制の是正に関する陳情書(第一一四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第一号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国財政事情は一段と厳しさを加えております。  このため、政府は、昭和五十八年度予算において、歳出歳入両面で徹底した見直しを行ったところであります。  まず、歳出については、徹底した削減を行い、その結果、同年度一般歳出の規模は、昭和三十年度以降初めて前年度を下回りました。  他方、歳入についても、その確保に格段の努力を払い、特別会計特殊法人からの一般会計納付等税外収入の増収を図りました。  しかしながら、これらの措置をもってしても、なお財源が不足するため、昭和五十八年度において、特例公債発行を行うこととするほか、国債費定率繰り入れ等を停止せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し述べましたうち、特例公債発行等昭和五十八年度財源確保するため必要な特別措置について定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、特例公債発行についてであります。  昭和五十八年度一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で特例公債発行できることとし、同公債については、償還のための起債は行わないことなどを定めております。  第二に、国債費定率繰り入れ等の停止についてであります。  昭和五十八年度における国債の元金の償還に充てるべき資金の一般会計から国債整理基金特別会計への繰り入れについて、国債総額の百分の一・六に相当する金額繰り入れ及び割引国債に係る発行価格差減額年割り額に相当する金額繰り入れは、行わないこととしております。  第三に、特別会計特殊法人からの一般会計への納付についてであります。  まず、特別会計につきましては、昭和五十八年度において、自動車損害賠償責任保険特別会計保険勘定及び保障勘定から二千五百六十億円、あへん特別会計から十三億円、造幣局特別会計から四億円を限り、それぞれ一般会計繰り入れることができることとしております。  なお、自動車損害賠償責任保険特別会計からの繰入金に相当する金額については、後日、予算の定めるところにより、一般会計からそれぞれの勘定に繰り戻すこととしております。  次に、特殊法人につきましては、日本電信電話公社から昭和五十八事業年度において、昭和五十六年のいわゆる財源確保法に定められた臨時国庫納付金昭和五十八事業年度分納付のほか、昭和五十九事業年度分について、その繰り上げ納付を受けることとしております。  また、日本中央競馬会から、昭和五十八事業年度について、既定の国庫納付金のほか、特別国庫納付金納付を受けることとし、その金額は、剰余金を基準とする国庫納付金と合わせて五百億円となるように定めることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 森美秀

    森委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  5. 森美秀

    森委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案について、本日、参考人として日本銀行総裁澄田智君の出席を求め、その意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  7. 森美秀

    森委員長 ただいま澄田参考人出席されておりますので、この際、一言申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございました。本案について、そのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただくようお願いいたします。  なお、御意見は、委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 法案の審議に入る前に、先般行われました地方統一選挙前半戦の結果につきまして、若干、政治家大蔵大臣竹下さんに御質問を申し上げるものであります。  十日の投票の結果、特に北海道それから福岡において自民党敗北をする、こういう結果になったわけでございますが、この両知事選挙の結果並びに全般の選挙結果について、一体どのようにお考えなのか、その感想をひとつ述べていただきたい、このように思います。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 四年に一度行われますいわゆる統一地方選挙前半、いま御指摘のとおり、自由民主党がかかわっております福岡北海道知事選挙敗北をいたしました。その結果は、まさに謙虚に、われわれの政治に対する取り組み方等に大きな警鐘を乱打したものだと素直に受けとめるべきであると思っております。  その他、いわゆる四十四の府県議会議員あるいは政令都市選挙結果についてはつまびらかな分析をいたしておりませんが、いずれにしても四年に一度行われるビックエベントでございますので、その結果については謙虚にこれを受けとめて、行政の中にも反省すべきは反省して映し出さなければならない多くの教訓があると受けとめるべきであると思っております。
  10. 上田卓三

    上田(卓)委員 特に北海道の横路氏の勝利背景には、まず第一に、道内の石炭とかあるいは紙、パルプなどの素材産業などの低迷、また二百海里規制によるところの漁業の落ち込みとか、あるいは生産調整を強いられた稲作、牛乳の不振といった全般的な経済不況とそのもとでの生活苦といいますか、そういうものがあったのではないか、このように思うわけでございます。また第二には、海峡封鎖発言などに見られるところのいわゆる防衛問題での中曽根総理のタカ派的な発言がやはり道民の不安感を駆り立てたのではなかろうか、このように考えるわけでございます。  また、福岡の奥田氏の勝利背景にも、鉄鋼を中心とした地場産業の不振、それから豪華な知事公舎建設に絡むいわゆる政治倫理に対する批判があったのではないか、このように思うわけでございます。  要するに、不況といわゆる生活苦、また軍拡と、俗に言われますところの田中派主導のそういう中曽根政治に対する国民の厳しい批判が今回の保守敗北原因である、私たちはそのように思っておるわけでございますが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘になりましたいわゆる経済不況、それに伴うところの生活の問題、また防衛論争政治倫理一つ一つ指摘を受けたとわれわれが理解すべきものは、謙虚に反省の素材とすべきものであるというふうに私も理解をしております。
  12. 上田卓三

    上田(卓)委員 そこで、三月十四日の読売新聞の調査によりますと、一年前に比べて生活が苦しくなったというのが五〇・四%あるわけであります。厚生省生活実態調査でも、四割を超える世帯生活が苦しいと言っておるわけであります。八二年十二月の電機労連の生活実態調査でも、最近は家計の収支についても貯金を引き出してやりくりしているとする世帯が三三%に達しておるわけであります。  政治の最大の目標は、国民生活を充実向上させ豊かにすることにある、このように思うわけでございます。五割を超える国民生活が苦しいと訴える現実こそ、今回の保守敗北、革新の勝利背景であっただろう、このように考えるわけでございまして、政権政党たる自民党はこうした現実を深刻に受けとめなければならない、このように考えておるわけでありますが、この点について、さらに大臣のお考えを聞かせていただきたい、このように思います。
  13. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに御指摘のとおり、戦後一時期の問題は別といたしまして、政権をわが党が中心となって担当し続けてきておることは事実であります。  その政権というものが長期間継続するということは、それなりの政策継続性というものから評価を受ける面もありましょう。しかしながら、その都度都度の現象からいたしますと、長期政権に対する厳しい御叱正、御批判もいわゆる投票の結果となってあらわれることでございますので、それらいま御指摘なすった問題は、政治に携わる者としては全く謙虚に受けとめていかなければならない課題であるというふうに理解をいたしております。
  14. 上田卓三

    上田(卓)委員 臨調答申とか大蔵省の議論の中に、いまはやりの低成長論があるのではないか、こういうように考えるわけでありまして、たとえば第一に、わが国はすでに先進国としてその豊かさの水準も十分なところまで達している、つまり、冷蔵庫もたんすの中も物でいっぱいで、需要はきわめて乏しいというものであります。また二番目には、諸外国経済成長率はせいぜい一、二%かマイナスである、こうしたときでは日本外国と同程度でいいのではないか、高望みは禁物だ。したがって三番目に、日本経済は三%で新しい安定成長軌道にすでに軟着陸している、こういうような考え方が底流にあるようでございますが、竹下大蔵大臣は、いわゆる三%成長といったもので生活水準社会資本、住宅の水準で満足いくものである、このようにお考えでありましょうか、どうでしょうか。
  15. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、総合的な判断といたしまして、なるほどそれぞれの指標をとってみましても、確かに先進国の中では、客観的な見方をすればすべての面で他の国に比べれば向上してきておることは事実でございます。  しかしながら、私どもも、一九六〇年代から七〇年の前半に至るいわば高度経済成長の中に体質もなれてきておりますので、安定成長の中へ自分の体を合わせていくというようなことに、ある種の苦痛を感ずる習性はついておると思います。しかし、総合的に見ますと、私は、安定成長基調の中へわれわれの暮らしそのものも適応させていかなければならない心構えは必要であると思っております。しかし、しょせん人間、無限欲求を追求する動物でございますし、政治はまた無限の理想への挑戦とも申されますので、たゆまざる努力、不断の努力を続けていくべき課題ではあるという認識の上に立っていなければならないと私ども考えております。
  16. 上田卓三

    上田(卓)委員 一月の完全失業者は百六十二万人、失業率で二・七二%、労働力調査史上最悪の数字であったわけでありますが、先進工業国の二十四カ国で失業者が約三千万人を超えておるわけでありまして、ここ一、二年、日本以外のほとんどの国がマイナス成長であったことも事実であろうと思うわけであります。  この原因は、やはり軍拡競争といいますか、あるいは第二次の石油危機による世界不況行革デフレといいますか、そういうものが相乗効果をもたらした結果ではないか、このように考えておるわけでございまして、数十年に何回といったようなこういう異常事態を普通の状態であるかのようにとらえて、こうした低水準日本経済一つの均衡を回復したかのように主張することは大きな根本的な間違いではなかろうか、私はこのように考えておるわけでございます。  いま政治に求められているのは、根本的な課題としては、不況からの脱却すなわち景気回復ではなかろうか、このように思うわけでございまして、こうした基盤の上に立って中長期的に財政の再建を図ることが正しいのではないか、私はこのように考えておるわけでありますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、いま世界先進国はいわば同時不況という状態にあります。  そのゆえんのものは、いま御指摘なすった点もすべてその相乗効果一つ要因であるというふうな理解には決して異論をはさむものではありませんが、主たる問題は、いわゆる一九七三年暮れからの第一次石油ショック、そして第二次石油ショック、これが一番大きな要因ではなかろうかと考えております。したがって、こういう状態の中にあって中長期的にどういう展望を立てていくかということが一つのポイントでありましょうし、当面の問題としては、いわゆる不況脱却あるいは景気回復、こういうことでございましょう。  ただ、その不況とか景気とかいう問題につきまして、とにかく日本民族の勤勉さとその能力からして、言ってみれば五十七年度三・一%の成長は確実になった、そうすれば、これからの短期的な課題としては、今国会において御審議いただいた予算等々を基盤といたします経済成長率三・四%、これをより確実なものにするというのが当面の施策ではなかろうか、かつての高度経済成長時における指標目標にするということは、世界全体の中で日本だけが例外ではあり得ないということにもなるのではなかろうかというふうに考えております。
  18. 上田卓三

    上田(卓)委員 いまの大臣答弁にも明らかに出ておるように、いわゆる政府景気に対する基本的な認識は、日本経済物価の安定を背景に緩やかに拡大しつつある、アメリカ景気回復とかあるいは原油価格の値下がりの好影響が日本経済に及ぶだろうから、この際無理することもない、こういうものではなかろうか、このように思うわけでございます。つまり大蔵省は、二%程度失業完全雇用状態であって景気は心配には及ばないといった程度の、危機意識を欠いたものではないか。  そういう意味で、いま大臣もおっしゃったように、成長率は三・四%程度、こういうことでいいのではないかという、やはりそこに大きな認識のずれがあるのではないか、このように考えますので、特に現在の景気について一体どのように考えておるのか、これでいいと思っているのか、これではだめだ、いまはやはり景気が悪いのだから、てこ入れして回復を図らなければならぬと思っておるのか、根本の問題ですから、ひとつ明確に答えていただきたい、このように思います。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 景気というものに対するわれわれの認識の問題でございます。実質成長率三・一%の達成が確実と考えられる今日、私は、世界全体の中で日本だけが例外ではあり得ないということになれば、三・四%をより確実にするための諸施策を堅実に行っていくということが行政を担当する者としての基本的なスタンスではなかろうか、こういう考え方でございます。  ただ、御存じのように、経済学心理学でもございます。したがって、われわれが無限欲求を追求する限りにおいて、そういう、企業企業のマインドがあり、個人個人にもそれぞれの心理状態があります。それがかつてのごとくいたずらに幻想とまでは申しませんが、かつてのような成長の中にみずからの暮らしとか自分自身を位置づけていくということは、私は、おのずから限界というものに達しておるのではなかろうかという認識を持っております。  したがって、景気の現状をどう見るか。いま御指摘になりましたとおり、いわば世界一安定しております物価あるいは米国の若干の景気回復底離れあるいは原油価格下落等が悪影響をもたらす問題ではないというふうに思っておりますものの、大きな期待をそこに寄せるということは、現実政策の中では必ずしもそれを取り入れるべきものではなく、いわば三・四%をより確実ならしめるためのもろもろの施策を、すなわち景気というものに対する認識の基本的なスタンスとして持っておるべきではなかろうかというふうに理解をいたしております。
  20. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣答弁を聞いておりますと、世界各国が非常に不況にある、そういう意味では、わが国はまだ比較的安定している、こういうことから、国民の多くの皆さん方が、先ほど私が述べましたように、生活が苦しくなっている、景気が非常に低迷している、こういう認識であるにもかかわらず、大蔵省は、それでいいのだ、各国から見たらまだいいのだから、それでいいのじゃなかろうかというような考え方のようでありますが、しかし、政府の中にもいろいろの意見があるようでございまして、経企庁の考え方あるいは通産省あたりにおいては、やはり三%台じゃなしに五%台を維持しないと失業者がもっとふえてくるのじゃないか、こういうような考え方もあるようでございまして、必ずしも、いま大蔵大臣が述べられた、大蔵省考え方ということでいいだろうと思うのですが、それが正しいということにはならないだろう、こういうように私思うのです。  そういうことから、各新聞にも報道されておりますように、景気回復の十二項目の中身を見ましても目ぼしいものがない。特に、何か選挙対策ではないか、こういうように言われておる向きもあるわけでありまして、大蔵省は、今日の日本不況というものに対して、本当に深刻に考えて、これをどう回復しようかということじゃなしに、これでいいのだ、しかし、国民が何か不況感を味わって国民生活苦を訴えておるので、このままでは選挙に勝てっこない、だから選挙対策で、何か景気回復するのですよという期待感だけを国民に植えつけて票だけいただく、そして選挙に勝てば景気対策は実際何もしない、こういうようになるのではないか、こういうように私思っておるわけでありまして、もしかそれが事実であるならば、国民をペテンにかけるのもほどほどにしなければならぬだろう、国民はそんなばかじゃないのでありますから、その点は、景気回復の問題は、ただ単に選挙対策ということじゃなしに、現状を正しく認識してどのようにこれに活を入れていくかというところに大きな問題があるのではないか、こういうように思うわけでございます。  そこで、たとえば十二項目でございますが、この中身を見ましたら、いわゆる財政資金の投入をもたらすようなものは何一つないわけでありまして、お金のかからぬそういう対策になっているのじゃなかろうか、今年度予算が公共事業の実質マイナス及び実質増税という有効需要縮小策をとったのと同じように、いわゆる財源がないからということを理由財政景気維持にも出動すべきではないとの判断を貫いておるのではないか、こういうように思うわけでございます。  ここ数年のそういう経験からしても、公共事業の前倒しの執行も後半には必ず息切れをすることになるわけでありますし、また、公定歩合の引き下げについても、いつどの程度かは全く不明確である、こう言わざるを得ないわけでありまして、対策中きわめて重要な意味を持つはずの所得税減税も、今後取り組むべき課題として先送りのような印象を与えておるわけでございまして、速やかに効果をもたらす対策ということにはならないのではないか、このように思うわけでございますが、その点について大臣はどのように考えておるのか明確に答えていただきたい、このように思います。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる先般五日に決定いたしました経済対策であります。  これは、御指摘にありましたように、いま財政の出動というのがそれだけの対応力そのものを残念ながら持ち合わせておりません。したがって、いわば財政あるいは極端に言いますならば、法律の改正とかいうようなものを伴わないでなし得る限りの施策を勉強して、そこでまとめたわけであります。したがって、それぞれの効果につきましては、それなりの実効は上がっていくべきものである。  仮に、これを選挙対策として位置づけをして、選挙が済んだら何もしないとかいうような形のものであったといたしますならば、いずれわれわれも政権の座を追われていく、これは当然のことであります。議会制民主主義でございますから、政権の移動は当然あるべきものであって、日本の場合、長年にわたって政権の移動がないということがまさに世界にまれなケースである。したがって、長期政権でありますだけに、絶えず身を引き締めてこれに対応していかなければならないという、ある種の宿命をも背負っておるわけであります。  そこで、財政の出動ということがなかなかむずかしいということはいま御指摘のとおりであります。ただ、いま最初から御指摘になりました物価あるいは米国の景気の底入れ、あるいは原油価格の低下というような材料に加えて、今回の措置によりまして、内需を中心とした自律的回復基調をより確かなるものにしようというのが基本的な問題でございますので、いまさらに金融市場を圧迫する可能性を持つ、たとえば公債の増発等による財政の出動ということは、景気対策そのものに必ずしも沿った施策ではないではないかと私は考えておるわけでございます。したがって、私どもは、今日発表した施策を忠実に実行することによって、その期待にこたえていかなければならない。  それから、今後の検討すべき課題の中に挙がったいわゆる所得税減税問題であります。これにつきましては、再三お答えいたしておりますとおり、本院で予算審議中に各党代表者会議の申し合わせがございます。それは正確に読んでみますと、まさに財源問題にもお触れになっております。したがって、まずこれの時期、規模等につきましては、やはり七月、五十七年度の決算が確定します時期というのが、いわば検討を開始する一つのけじめになるときではなかろうかというふうに理解をしておるわけであります。  したがって、この問題につきましては、国会で議論された問題等を目下一生懸命に整理しております。まだまだこれからも議論が続くわけであります。また、かつて大蔵委員会の小委員会で議論された経緯等についても詳細にこれをフォローいたしまして、これらをまとめ、税制調査会に御報告を申し上げ御議論をいただくと同時に、私どもといたしましては、従来小委員会等でかかわっていただいた各党の代表者の皆様方の意見もこれからなおフォローして、その意見を吸い上げて、そして対応すべき課題であるというふうな基本的なスタンスに減税問題については立っておるわけでございます。
  22. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣のおっしゃることがよくわからないという表現の方がいいのじゃないかと思うのです。やはり間違っているのじゃないか、このように思うのですね。財源がないから財政は出動すべきではない、こういう考え方が貫かれておるのではないか。そういう状況の中から、にもかかわらず、景気対策だけが言葉が走ってしまう。それはやはり選挙目当て、こう言われても仕方がないのではないか。  こういうように言いますと、何かまた開き直って、それは国民が判断することであって云々、こういうことで、保守政権が長期続いているということの中から、国民は決して社会党とかそういう野党に政権を渡さないだろう、そういう安心感から述べられておるのではなかろうかと思うのですが、私は、そういうことじゃなしに、現在の国民生活景気の動向を見て的確に手当てをしなければならないのではないか、こういう立場で質問しておるわけでありまして、財政再建、こういう言葉で、赤字国債をどう減らしていくのか、五十九年度中にそういう赤字国債発行をやめる努力をする、こういう中でも、それが現実に取り崩しされて、ほごにされていってしまっている現状があるわけであります。  私が考えるのには、財政再建は、いま政府がやろうとしている行革あるいは増税路線というのですか、あるいは軍拡路線で決して解決のつくものではなかろう。それよりも、いま景気にてこ入れして景気回復をすれば増収が見込めるわけでありまして、国民企業もそのことを望んでいるわけでありますが、ここに根本的なメスを加えることによって財政再建を図るべきであって、いま落ち込んだこの景気で、世界の状況から見たらまだ比較的いいんだというような考え方であれば、やはり赤字財政の埋め合わせは、政権党が自民党であるという体質から見ても、大企業から税金を取り立てるということよりも、中小零細企業やあるいは農民や勤労国民から、また間接税などの導入によって増税を図る、あるいは弱い者いじめの行革というのですか、強い者に対しては指一本触れずに、そういう弱い者いじめの行革が進行することになりはしないか。そのことは結局は国民が正しいかどうか判断することだというふうに、また大臣はおっしゃるかもわかりませんが、私は、そういうような態度ではだめではないかと思っておるわけでありまして、大臣も将来のある方なんですから、そういう意味で、真剣に大蔵大臣として、今日の日本の現状に対して抜本的な対策をぜひとも打つことが大事ではなかろうかと考えておるわけであります。  その点について一言述べていただいて、あと経企庁に質問したいと思います。
  23. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、私ども国際会議に出かけましたり、また毎日のように外国のお客さんとお会いいたしますと、戦に負けた日本がどうしてこんな経済指標世界でずば抜けたものを持っているのかというような質問があります。そういうときには、われわれも心しなければならないのは、だからもう日本はいいんだ、こういうことになったら、ここでいいという考えを持ったときにはすでに成長はストップをいたしますので、これは避けて通らなければならぬことだと思っております。そして国会へ出ますと、やはりいま上田委員のような御鞭撻、御叱正を聞くわけでございすから、そこでまた心を新たにして、これに対応をしていかなければならぬ。ですから本当に、朝外国のお客さんに会いまして国会へ出ますと、自分の頭を切りかえるのに約五分間ぐらい時間がかかるような気がいたします。それが、やはりわれわれとしての対応の仕方であってしかるべきだというふうに思っております。  したがって、問題は基本的に、いわば高度経済成長というような体質を持続することにインセンティブを与えるか、いわば安定成長の中へ国民の体をならしていくかという一つ政策選択のポイントもあろうかと思います。そこのところでスタンスがそう大きな違いはありませんが、いまの見方については、上田委員と私とに若干の隔たりがあることも問答を通じながら私も理解して、その上田さんのスタンスにまたとるべきものはとっていかなければならぬというふうに思っております。  それともう一つは、基本的には私は、この議会制民主主義というものは政権の交代というものは当然あるべきものでございまして、私どもは、かつて初めて国会に出た当時、当時は百八十八議席と百六十議席、そして総体の議席数はいまの五百十一じゃございませんから四百六十一のときでございますが、いずれ十年以内に政権の交代はあり得るだろう、そのときに一体われわれがそれを回復力を持っておるだろうかという大きなテーマで議論をしたことも思い出すわけでございますので、前途あるというお言葉をちょうだいいたしましたが、年齢的にもすべて私よりも上田委員そのものがはるかに前途があるというふうに私は理解をしております。
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 そういう後段のくだりについては私は余り申し上げません。それが目的じゃないわけですから。  ただ、大臣考え方はこういう考え方だ、上田委員考え方上田委員考え方だ、私の考え方は正しいんだ、こういうことをおっしゃっているのですけれども、私は私の考え方を申し上げているのですけれども、私のような考え方政府の中にあるんですね。ずばりと申し上げて、通産省とか経企庁あたりの物の考え方は、私の考え方などにも比較的近いと思っているわけでありまして、そういう意味で、何も上田個人の全く個人的な考え方というよりも、政府内部にもある普遍的な考え方だ、また国民の中にも多くある考え方だというふうにひとつ理解をしてもらわぬと、一対一で話をしているから、それはあなただけの考え方でしょうというのはどうだろうか、私はそういうふうに思っておるわけです。  やはり景気というのは流動的でありますから、目標をそこに置いていても、なかなかそれに達成しないという場合があるわけですから、比較的高目の目標を設定してそこそこという場合もそれはあるかもしれませんが、いずれにしても私が見る限り、やはりある程度政府が、いま竹下大蔵大臣が言っている実質成長が三・一、まあ三・四を目標に云々ということですけれども、これは余りにも低過ぎるのではないか、このままでいけば失業者がどんどんふえていく傾向にありはしないだろうか、少なくとも五%台に乗せないとなかなか大変だろう、こういうふうに私は思っておるわけでありまして、そういう点で、隣の家が貧しいから自分のところも貧しくて、そこそこでいいんだ、こういうような考え方では意欲というのは成り立たないと私は思うのですね。  世界の各国が困って、こういうような停滞状況であるから、わが国もいまこれでいいんだというようなことでは、われわれは日本に住んでいるんですからね。外国に住んでいるのじゃないんだから、やはり日本のそういう五年前だったら五年前の生活、十年前、二十年前の生活のそういう過程の中で来ているわけで、中国とかインドとかその他まあ欧米でもいいのですけれど、そこでわれわれ暮らしているわけじゃないのだから、よそと比較されたって、実際まあ確かに、ある日本の旅行者が外国へ行ったときに、日本は豊かだなというふうな実感を持つと思うのですけれども日本の貧しい人たちは外国にも行けないのですからね。  だから、そういう意味で、本当に日本が豊かだというふうに実感を持っている日本人というのは、まだ比較的豊かな人たちがそういう実感を持っているだけのことであって、全く庶民の人間からいうならば、われわれは東京へしょっちゅう来ますが、東京へもめったに、まだ一回も来たことないという人たちがあるわけでありますから、北海道の道民であったって、広島の方であったって、沖縄の人であったって、まだ一回も飛行機に乗ったことないという人たちも現実にあるわけですからね。だから、そういういろいろな指標を見て、日本は豊かなんだからおまえらしんぼうせいという考え方は、私は、政治家としては落第じゃないか、こういうふうに考えざるを得ないと思う。  それは竹下さんだって、自分選挙区へ行けば、自分たちの支持者がどういう生活をしているか、あなた方は世界から見たらまだいいんですよ、しんぼうしなさい、そんなことになれば恐らくもう落選間違いないだろうと私は思うのですね。地元へ帰ったら、いま現状が悪いからもっと生活を豊かにしてあげましょうという、やはり期待感を持って票を集めているんじゃないかと私は思うのですが、そういう点についての国民認識とのずれがあるんじゃないか。確かに、外国の方々が大臣とお会いされたら、日本はいいですね、日本はもっと援助してください、そういう形になって、いい気になっているんじゃなかろうかと私は考えるのですが、その点どうですか。
  25. 竹下登

    竹下国務大臣 いい気になりましたら、それで進歩が終わりますので、いい気にならないように、謙虚に、そして外人のお方との話が済んだら国会で御叱正、御鞭撻をいただく、これがやはり政権を担当しておる者としてのある意味における謙虚さではないかなと思っております。無限の理想への挑戦が政治の究極的な目的であるといたしますならば、それは心していなければならないことであると思っております。  まあお互い、確かに私どもがやはり感謝をしなければならぬと思うのは、私は五十九歳でございますが、少なくとも私は、最終的に戦争に行きましたものの、まあ行ってすぐ帰ったようなものであります。そしてまた復学もしておりますので、いわば世間様のお世話になって今日ありますが、むしろ私よりも少し上の方々が今日の日本を築いていただいたのではないか。だから、現状の生活に対する不満、これはもちろんあってしかるべきだと思います。それをいまの六十五歳以上のお方、そういうお方の体験しておられた暮らしというものの中に比較して、その人たちに感謝してまた後世にこの無限の理想をつないでいくというのが、生きとし生けるもののまた務めの一つではないかな、こういう考え選挙民の方にも接触するようにいたしておりますが、幸いにしてまだ落選をしたことはございません。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かに大臣も、まあ私もそう若くないわけですけれど、やはり戦中、戦前の生活を体験した者あるいは戦後のそういう混乱期に生きた人間から言うと、いまは本当にそういう意味では天国というのですか、地獄と天国みたいな、それは比較はできぬことないと思いますよ。私だって終戦当時は小学校一年生であったのですから、それだけの苦しみもよく知っています。しかし、戦後生まれの子供などはもう三十八歳なんですから、そういう人口もどんどんふえてくるわけですから、何ぼ昔はこうだああだと、そのこと自身私はむだとは言いませんが、そのことだけでがまんせよ、昔はこうだったんだ、世界の国々はこうだからおまえたちはこうなんだということで果たしてまかり通るんだろうかというように考えるわけです。  そのことばかり言っておってもあれでございますから、まず、先ほど申し上げましたように、今日の景気動向について、特に経企庁の方がどうとらまえておるのか、個人消費あるいは雇用情勢あるいは設備投資を中心にひとつお聞かせいただきたい、このように思います。
  27. 海野恒男

    ○海野説明員 景気の現況についての御質問でございますが、私ども考えは以下のとおりでございます。  まず、輸出が海外経済の同時不況という影響を受けまして一進一退を続けておりますし、国内需要は全般的に見まして盛り上がりが欠けるというような情勢だと思います。  個別的に需要項目別に見てみますと、まず個人消費でございますが、家計調査を見る限りでは三%前後の伸び率をいたしておりまして、一月に入りましてやや回復ぎみになってきておるということで、中身を見てみますと、耐久消費財あるいはサービス部門というところが活発になってきておりますが、衣料類がやや盛り上がりに欠けておる、マイナスでございます。  それから、主な需要項目の一つであります設備投資でございますが、設備投資はこのところやや伸び悩みになってきております。大企業におきましては、これまでかなり高い水準の伸びを示してきましたけれども水準の高さはそのままでございますが、伸び率がやや鈍化してきておる。中小企業は、御存じのように設備投資意欲が非常に衰えてきておるというのが現状かと思います。  それから輸出につきましては、先ほど申しましたように、海外の同時不況ということで、数量ベースで見ますとやや底はついたと思いますけれども、依然として一進一退を続けておるという状況でございまして、総じて言えば、景気回復ということにおいては盛り上がりが欠けておるということでございます。  このような需要動向を反映いたしまして、生産も横ばいでございます。鉱工業生産も前年に比べてほとんど横ばい水準でございまして、そういう状況を反映いたしまして、労働力需給も、御指摘のように二・七%という失業率の高さを示したわけでございますが、これはサンプル調査のサンプルがえといったような統計上の問題等もございまして、やや断層がございますので、この内容については、現在、労働省、経済企画庁、総理府の間で検討を進めておるところでございますが、やはりサンプルを大きくかえますとこういう断層が生ずるということではございます。しかし、全般的に見て、雇用情勢が決して甘い状況ではないという認識はいたしております。  ただし、御存じのように、最近アメリカ経済が非常に回復をし始めておる、先ほどの御意見の中にございましたように、原油価格の値下がりといったようなこともございまして、次第に明るさを取り戻しつつあるという判断をいたしております。現に三月の後半以降、たとえば百貨店等の売り上げにかなりの変化が見え始めたということで、四月の現時点では消費もかなり回復に転じているというような報告がございますので、その上、先般の景気対策の効果も相まちまして、次第に明るさが増してくる、私どもはこういう認識を持っております。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 何も大蔵省に気がねする必要はないのだから、あなた方の考え方はどんどん述べなければいかぬ、私はこういうように思うのです。  そういう、回復力に盛り上がりが欠けるというのはわからぬこともないのだけれども、何かこうわかりにくい発言をされておるようですし、盛り上がりに欠けるというだけではなしに、停滞状況にある、あるいはさらに落ち込む危険性すらあるのじゃなかろうか、私はこういうように思うのです。また同時に、財政面とかあるいは金融面からのてこ入れをせずに、何かアメリカの景気回復原油の値下げだけに期待をする、そうして民間活力を当てにするだけで雇用情勢は果たして好転するんだろうか、こうわれわれは考えざるを得ないわけであります。  そういう点で、この百六十万人の完全失業者に加えて、現に日本の製造業は約六十万人の過剰雇用を抱えておる、こういうように伝えられておるわけです。昨年中ごろから日本企業全体がじわじわと、関連会社に出向させたりあるいは職業訓練をしたり新規採用を極力抑えようとしたり、そういう形で雇用調整を進めておるのが昨今の状況ではないか、このように思うわけでありますが、そういう点で経企庁に聞きたいのだけれども、現状で雇用情勢が好転すると期待できるのですか。
  29. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 現在の雇用情勢、御指摘のとおり厳しいものがあると存じます。その背景に、ただいまも議論がありましたように、現在の日本景気の情勢が盛り上がりが欠けるといいますか、足踏み状態といいますか、そういうことが背景にあることは御存じのとおりであります。  今後雇用情勢がどうなるかということでございますが、五十八年度の経済見通し、三・四%の成長を見込んでおりますけれども、いままでの景気の情勢、盛り上がりが欠けました一つ要因であります在庫調整の進展というのが、五十八年度に入りますとほぼ終了の段階になって、今度在庫積み増し局面になるだろうと思います。これがプラスの要因一つでございます。  それから、世界景気同時不況ということで去年悪かった、それが輸出の鈍化あるいは最近一進一退ということでございますが、そういうことになってきたわけですが、これも、ことしはOECDの見通し等を見ましても、先進国景気がプラス成長に変わると見込まれております。こういうことは、いままで下がってきた輸出が下げどまる、あるいは多くないにしてもプラスに変わり得るというプラス要因があろうかと思います。  それから、金利の低下とか円高是正とか原油価格の低下とか、幾つかのプラス要因が昨年に比べてつけ加わってまいりますし、個人消費の方は、物価の落ちつきが続いておりますので引き続きある程度の伸びを示すだろう、こういうように総合的に考えまして三・四%程度成長が達成できるだろうと考えているわけでございます。  これは、五十七年度の後半が成長率がやや鈍化しておりますので、五十八年度全体が三・四%、平均して三・四%と申しますのは、いわば年間の回復スピードからいいますとかなり速いテンポで回復して三・四ということになるわけです。こういう回復基調に経済が乗っていく。他方では、雇用調整助成金その他個別の雇用対策もいろいろやるということで、雇用情勢は五十七年度よりは悪くならない、五十八年度は若干の改善が見込めるのではないかと考えております。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 設備投資もことしは昨年以上深刻な形で進行するのではないか、このように思うわけであります。従来の設備投資の大きな支えになっていた鉄鋼それから電機、自動車といった輸出御三家のいわゆる大型投資が、ことしは相当圧縮されることは明白ではないか、このように思うのです。  最近まで産業界の中期的予想成長率は五%前後であったわけであります。五%程度成長を前提に設備投資とかあるいは人員の採用を行ってきておったわけでありますが、この予想成長率が半分近くにまで低下すると、現在の設備あるいは人員は過剰となることは当然であろうと思うのですが、第二次の減量経営時代が本格化する、こういうことになるのではないかと思うのです。日本経済は三%程度成長率が常態になる、そういう不安感が広まる中で、民間設備投資は拡大するのか、こういうことになるわけでありますが、その点について、経企庁はどのようにお考えでしょう。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  31. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 設備投資の動向の見方につきまして、先生おっしゃいますように、第一次減量経営が第一次石油危機の後あったわけでございますが、それがまた、第二次オイルショックの後第二次減量経営があるのではないか、それに対応して滞在成長率が落ちて、それに対応して設備投資を抑えることになるのではないか、こういう発想、お考えというのは一つ意味のある考え方だと思いますが、果たしてどうかという点につきましては、まだ確たる研究等が行われてないと思います。それだけの材料がそろってないと思います。  現実の設備投資の推移を見ますと、五十五年、五十六年は、国民経済全体の実質設備投資はわずかでありますがプラスを続けておりまして、その中身は、中小企業は弱かったのですが大企業の設備投資が強かった。それは、先生御指摘のような鉄鋼とか加工組み立て産業とかいうところの設備投資が伸びたわけでございます。この背景には、やはり石油危機後の厳しい内外の経済情勢に対して生き残りのために、鉄であればシームレスパイプの設備を導入するとか、あるいは電機関係ではコンピューター、オフィスオートメーションとかファクトリーオートメーションとか、そういう合理化投資が中心であったのではないかと思います。これは、成長率が高かろうと低かろうと、景気の動向いかんにかかわらず生き残りのためにやるという動きがその背景にあったのではないかと思われます。  これが、おっしゃるように一巡的な感じに最近なってきておるようでございますが、他方では、中小企業の設備投資がここ一、二年マイナスを続けておりましたけれども、これがことしあたりはだんだんマイナスからプラスに転じてくるのではないかというふうに見ております。これは、金利が下がってきたとかあるいは輸出がふえる可能性があるとか、いままで中小企業が設備投資を抑えておりましたのでかなり設備調整が済んできたとかいうような背景で、いわば大企業はやや鈍化いたしますが、中小企業がいままでの低下からやや下げどまり、多少は上向くかなというようなことで、全体を総合して、引き続きある程度の増加基調をたどるのではないかと当面は見ております。さらに長期的基本的な動向を見るには、先生おっしゃったような視点も加えてさらに研究いたしたいと存じております。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 経企庁の試算によると、石油価格が一五%下落した場合、日本の実質GNPを一年目で〇・三五%、それから二年目で〇・九三%押し上げると言われておるのですが、今回の原油の値下げで、初年度そして次年度日本の実質GNPを何%ぐらい押し上げるとお思いでしょうか。三・四%の政府見通しをつくったときは原油の値下げを織り込んでいなかったわけでありますから、当然この数字を見直すことが妥当だと思うのですが、その点はどうでしょうか。  それから、あるいは最低限ここで実効のある、中身のある景気対策によって、景気回復にはずみをつける好機ではないか、これは一つの好機になるのではないか、こういうように思うのですが、経企庁としてどのように考えておられますか。
  33. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 石油価格の変動が一国の経済に与える影響につきましては、石油価格が値上がりの場合は、一方では石油支払いがふえるわけですから、国際収支が赤字になりますし、物価が上がりますし、それから交易条件の悪化、所得の移転効果ということで、いわばデフレ効果がございました。したがいまして、今度は石油価格が下がる場合には、国際収支はプラス、物価は落ちつき、さらに経済全体には、交易条件の改善ということで物価の落ちつきにより個人消費がさらに上がるとか、あるいは企業収益の増加により設備投資とか住宅投資とかがふえるということが論理的には考えられるわけでございます。  では、数量的にどうかということで御質問でございますが、企画庁で開発いたしました世界経済モデルというものではじいてみますと、原油価格が五ドル、一五%程度下がった場合には、一年目に、先生おっしゃいますように〇・三五%、二年目は〇・九三%実質GNPが、それがなかった場合に比べて上がるという計算結果が出ております。ただ、これはモデルでございまして、モデルというのはある標準的な状態のもとにおける計算でございますので、現実に、現時点においてどうなるのかということに明確に答えるものではない、一つの判断の参考材料でございます。それから、この世界モデルは一九七八年までのデータが入っているものでございまして、その後のデータが入っておりませんので、最近の動きを忠実に標準的な形においてもフォローできるかどうかという問題もございますので、一つの参考ということかと思います。  現実にはどうなるかということでございますが、石油価格の動きそのものがこれでとまったのか、さらに動くのかどうか、あるいは為替レートがどうなるのか、石油輸出国における輸出がどうなるのか、いろいろ不確定な要因がございますので、数量的に何%五十八年度のGNPが変わるかということは、現時点においては把握しがたい状況にございます。  他方、三・四%の政府見通しは、確かにおっしゃいますように石油の今回の値下がりの前に決めたわけでございますが、ただ、石油価格は安定的に推移するであろうということは、一つの想定、非常に大ざっぱな想定の中に入れておりましたし、現時点において三・四%を修正するつもりはございません。ただ、おっしゃいますように、そういう日本経済にとって全体的にプラスの要素、石油価格の低下がプラスの要素になろうとしておりますので、この機会が一つの好機であるという先生の御認識はそのとおりであろうかと存じます。
  34. 上田卓三

    上田(卓)委員 石油の値下げが一つ景気てこ入れの大きな契機になる、こういうことだから、それを織り込んでいなかった成長率三・四をさらに目標を上げるということは当然のことだと思うのですね。ところが、何かまた安定成長にこだわって、景気がいいときにしなければならぬやつを、何が何でも三・四以内にしておかなければならぬというように感じてならないので、そこに認識のずれがあるのじゃないかと思うのですね。私は、それは非常に矛盾だと思っております。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕  それはまた後でするにしても、日銀の方、来られていると思うのですが、今回の景気対策の目玉というのですか、それはやはり公定歩合の引き下げではないか、こういうように思っておるわけでありますが、日銀側としては、金融政策の機動的運営を図るという政府案を受けてどのように決定するのか、また、その決定の前提になるところの景気判断とそれから政策的判断を聞かせていただきたい、このように思います。
  35. 澄田智

    澄田参考人 ただいま御質問の、今回の経済対策の中に含まれております金融政策の機動的運営ということに対するわれわれの理解でございますが、金融政策の運営につきましては、元来、内外の経済情勢全般の総合的な判断の上に立って、そしていわば金融の特質とも言うべき機動性というものを常に持っているべきである、こういうふうなのが基本的立場でございます。  ただ、今回の経済対策の中に改めてそのことがうたわれているということは、現在の景気情勢の中でどうかということがあるわけでございますが、最近の景気が停滞状況を依然として続けているということは紛れもない事実でございます。その情勢判断についてもお尋ねでございますが、その点は後で申し上げることにいたしまして、そういう状態物価は一層安定の度を強めているという状況のもとでは、可能な限り景気に配慮した金融政策の運営を図っていくということが望ましいことである、これは私どもの基本的立場でもありますし、そうして今回の経済対策の中にもそのことがうたわれている、こういうふうに理解をいたしております。ただ、金融政策の運営に当たりましては種々考慮すべき要件がございまして、そういう要件について十分慎重に情勢判断をしていく、そうして政策運営の影響についても十分考えてやっていかなければならない、こういうふうに考えているわけであります。  そこで、これはお尋ねのことになるわけでございますが、その条件あるいは要素という点は、しばしば申し上げておりますように円相場の動向でございます。最近の円相場につきましては、一つの不透明な要素でありました原油価格は一体どうなっていくのかということにつきましては、とりあえず情勢が一応決まって落ちついてきつつある。それからまた、ヨーロッパの通貨が非常に動揺したもとになりましたEMSの中におきます通貨調整ということがございました。これもやはり国際通貨動揺の原因でございましたが、これも先般セットをいたしました。  ところが、そういった問題につきましては一応情勢が落ちついたものではございますが、米国金利の先行き見通し難というのが再び強まってきているというような状態でございます。米国金利につきましては、いろいろ世界じゅうが注目しているわけでございますが、金利そのものは一進一退、むしろ若干反騰する場面も多いというようなことでございまして、こういう中で円相場の安定を図ってまいりますことはぜひ必要である、われわれとしてはこういうふうに考えるわけであります。  円相場の安定ということは、円滑な企業活動を維持する上に、また、今後とも物価の安定を確保していく上に必須の条件でございますし、今回の原油価格の引き下げの効果を国内経済に及ぼしていくための不可欠な条件であります。為替相場の方が円安になってしまえば、石油価格の引き下げの効果は完全に相殺されてしまうわけでございます。また、対外的に見ましても、日本経済世界の中に置かれております重要性から見ても、あるいは貿易摩擦にあらわれますようなわが国の経済と海外の経済が低滞を続けていればいるほど、その点の関係は複雑微妙なものになっておりますので、こういう状態においては、やはり円高の方向での安定に努めるということが重要な要件で、こういう条件を考慮しつつ内外の経済情勢、金利情勢、こういったものを考えて円相場を考えていく、それが公定歩合の引き下げの前提である、こういうふうに考えて注視しているわけでございます。  もう一つの前提でございます景気情勢の判断につきましては、先ほど来いろいろお話がございましたが、私どもは、全般的には依然として停滞色を続けている、こういうふうに考えております。輸出が現地在庫調整が進展をしている、あるいは一部の海外需要が持ち直している、こういうようなところで、低水準ではございますが、下げ渋ってきたと申しますか下げどまってきた、こういうような変化もございますが、国内需要の方は総じて伸び悩み、一進一退、こういう状況でございます。ただ、私ども調査、短期経済観測といって各企業に広く調査をいたしております調査によりましても、低成長への適応が企業サイドにおいては進んでいる、したがって企業収益とか企業の業績、業況感、こういうものは過去の景気後退期ほどの落ち込みというようなことは幸いにして見られておりません。  そういう意味で、景気回復基盤というものは今後の条件次第であるのではないかというふうに思いますし、先ほど来お話しのように、原油価格の低落でございますとか輸出の下げどまりでございますとか、こういうようなところから、今後、海外情勢とあわせて景気動向については決して楽観はできない、そういう点については十分慎重に見守っていく、その中で公定歩合引き下げというような金融政策考えていく、こういうようなことではないかというふうに思っております。
  36. 上田卓三

    上田(卓)委員 いろいろ述べられたわけですけれども、結局、公定歩合を引き下げると日米の金利差が拡大する、そして円安の懸念が強まってくる、そしてその結果原油の値下げのいわゆるメリットが帳消しにされてしまう、こういうことを恐らく懸念されているのじゃなかろうか。また、アメリカの円安誘導批判といいますか、そういうものを結局強めることになりはしないだろうか、こういうことのようですけれども、いずれにしても、いま景気が低迷し、そういう意味では本当に回復しなければならない、そういう現状を考えた場合、引き下げはもうせざるを得ないということははっきりしているのじゃなかろうか。これは何も選挙対策とかどうとかということじゃなしに、現実に産業界あるいは国民が望んでいるものだろう、私はこのように思っておるわけでございまして、そういうことをすることによって、中小企業などの設備投資とか住宅需要の拡大あるいは企業収益に好影響を及ぼすということは間違いなかろう、こういうように思っておるわけであります。  要するに、アメリカの金利に振り回されて内需拡大もできないということでは困ると私は思うのですね。そういう意味では、アメリカの高金利政策というものは、そもそもは軍拡というのですか、あるいはその結果財政赤字が出ておる、こういうことでありますから、やはり緊張緩和というか軍縮というような政策をしていくこと、アメリカ自身のそういう、レーガンの世界戦略というものもあるのでしょうけれども、そのことが日本とかEC諸国に大変な迷惑になっているわけですから、アメリカ自身がそういうむだな軍拡競争をやめて、内政の安定といいますか経済の安定という意味でもっと努力すべきだろう、私はこういうように思うのです。  だから日本は、アメリカに振り回されるのじゃなしに、もっとアメリカに働きかけて、いずれにしてもアメリカの動向で日本が金利の引き下げができないということはもってのほかではないか、私はこういうふうに思うのです。たとえば西ドイツでは、先日単独で公定歩合を一%引き下げているのですね。そういうことをやはりしておるわけですから、日本ももっと独自の判断で、いまこそ早期に公定歩合を引き下げるべきだ、このように思うのですが、その点についてはどうですか。
  37. 澄田智

    澄田参考人 アメリカの金融政策に振り回されると申しますか、そういうようなことでなしに判断をしていくべきだというふうな点につきましては、私どもも、アメリカの金利動向というのはこちらの政策決定の場合の判断の一つの要素にすぎない、かように考えております。その点については、十分私どももそういう見地に立っておるわけでございますが、ただ、為替取引が原則自由というもとにおいて、内外の資金の移動が非常に大きいというようなときに、これは一つの要素ではございますが、内外金利差というものが拡大をするということについては、やはり慎重にそのときの情勢によって判断をしていかなければならない、こういうふうに考えております。  先ほど、西独の公定歩合の引き下げのお話がございましたが、西独の場合は、先ほども私もちょっと触れましたヨーロッパの通貨調整という中の一環として金利及びEMSの基準のレートをともに考えていった、そういう中の一環のような形で行われておりまして、そういう要素もあって、ヨーロッパの通貨お互いの間においては一種の固定的なレートで結ばれているというような特殊な面もそこにはあったわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもとしては、円相場の安定、しかもこれを円安の方向に持っていかないで安定するというような、そういった条件を探りながら今後の金融政策考えていかなければならない。そして、先ほども申しましたように、こういった安定した物価のもとにおいては、可能な限り景気に配慮して金融政策を運営していくということが当然のことであろうというふうに思っておりますが、そのときには、繰り返しになりますが、内外の情勢について十分各面について検討をして判断をしていく、こういうふうに考えておる次第でございます。
  38. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、アメリカに振り回されることなく、日本の経済の現状に照らして公定歩合の引き下げによって景気回復を図る、こういうことで努力をしてもらいたい、このように思います。  それから、景気回復のもう一つの目玉というのですか、それは公共事業の追加ということになるのじゃないかと思うのですけれども、しかし、何か公共事業の追加に消極的なままでいわゆる公共事業の前倒しを執行しても、効果は限られてくるのじゃなかろうかと、こういうように私は思っておるのです。だから、この二年間でも、結局前倒ししたために年度の後半には息切れをしてしまって成長率が鈍化したということにもなっておるわけであります。  五十八年度の公共事業は一般会計で六兆六千億円、このうち四兆六千億円以上が上期に契約されるわけであります。下期は二兆円を下回る。もし財源がないという理由で補正予算による公共事業への追加措置が見送られるということになれば、下期の景気回復などできない、回復が鈍化する、こういうことになると思うのですが、その点について、公共事業の追加措置というものを考えておられるのかどうか、大蔵大臣考え方を聞きたいと思います。
  39. 竹下登

    竹下国務大臣 きょうの閣議で、五十八年度公共事業等施行対策連絡会議、これを決定をいたしました。大蔵大臣が議長を努めるわけであります。  いまのところ、私どもといたしましては七〇%以上の契約をしていこうと、こういうことであります。一つの期待感を持っておりますのは、昨年暮れに議了していただきました補正予算、いわば二兆七百億円の公共事業投資の追加があるわけであります。これは大体三月中に契約が行われた。そういたしますと、私は、一般的によく言われます五十八年度の四、五月のいわば下支えという役目は果たすではないかというふうに思っております。  したがって、今度の公共事業の執行に当たりましても、各事業ごとに念査をいたしまして月末までにおよそ七十何%という正確な数字を固めなければならぬわけでありますが、私は、上期のなだらかな執行というものは、ある意味において、議了いただいた五十七年度の補正予算のこの契約がそれの下支えの役目を果たすであろう。そうして上期の前倒し契約によりまして、工期の問題等いろいろ工夫の点もございましょうから、まずはなだらかな執行状態でもって、いわば官需がある意味において民需を刺激して、下期前半の経済情勢の変化の中により民需が確実な対応力を示すような方向で進めていこう、こういうことでございます。したがって、今日いわゆる補正予算等によりますところの下期の公共投資の追加は考えておりません。
  40. 上田卓三

    上田(卓)委員 本当にそういう意味では景気回復のために政府は真剣に考えてない、選挙対策だ、こう言われても仕方がないのではないか、私はこのように思っておるのですね。  そういう意味では、過般の選挙結果等についても十分反省されてない、こういうことになるのじゃなかろうか、こういうように思うのですが、そのことは公共事業の追加だけじゃなしに、われわれが主張しております、あるいは労働四団体も熱心にそのことを主張されておるわけでございますが、やはり所得税減税についても、景気対策というには何か二の次、三の次というのでしょうか、そういう意味で本当にそういう感じがせざるを得ないわけであります。  私自身も大臣にも質問申し上げましたし、また本会議でも総理にも申し上げたわけでございますが、所得税の課税最低限が据え置かれたために、結局この六年間に約四兆円近い自然増収という実質増税が図られた、こういうことで、あるいはこれは憲法上の問題にもかかわる問題であって、当然勤労者に減税という形で還元されるべきだ、また同時に、そのことが景気回復のためにこの四兆円が非常に効果的に波及をして、結局それが十兆円ともはね上がってくることは言うまでもなかろう、私たちはそういうように考えておるわけでございます。  しかし、この所得税減税についても、今後検討される課題として先送りみたいな形になりつつある。それでこの減税の規模とかあるいは方法は七月以降の議論とされて、結局は選挙まではまだまだ宣伝効果だけ、こういうことになるのじゃなかろうか。恐らくその選挙も六月のダブル選挙などを想定されて、選挙さえ終わってしまったら減税みたいなのはどうでもいいのだ、まあそれが果たして思いどおりにダブル選挙になるのかどうかという問題もこれありでございますが、いずれにしても、減税をちらつかせながら、実際は控除額の引き上げ程度でお茶を濁して後は大増税、恐らくこういうことを考えておられるのではないか、こういうようにわれわれは懸念をしておるわけでございます。景気を支える最大の要素がGNPの六〇%を占める個人消費である以上、この景気の低迷の足かせを外して景気回復を図るには、何兆円という規模での減税というものが急務である、このように考えておるわけであります。  減税の方法、規模は、五十七年度税収の確定を見きわめるというスケジュールのようでございます。七月から秋口でなければ決定できないということでありますが、この場合実施は来年一月、こうしたテンポを大幅に繰り上げるということが一番大事なことではないか、こういうように私は考えておるわけでございまして、この点についての大臣のお考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的にこの減税問題につきましては各党の合意事項でございますので、スケジュールの上で申し上げますならば、いま委員が御指摘のようなことになろうかと思うわけであります。この問題は、各党合意といういわば最高の政治判断の合意に縛られるとでも申しましょうか、そういう性格のものでございますので、私は、選挙が済んだらとかその前とかというような便宜的な対応をすべき課題ではないというふうに認識をいたしておるところであります。  したがって、この実施時期、規模、中身についての御意見を交えたいまの御論及もございましたが、それらがすべて言ってみれば今国会等で議論されまたかつて小委員会等で御議論いただきました問題を精査して、正確に政府税調に御報告申し上げて、あらゆる予見を持たないで議論をしていただける課題、こういう対応の仕方を貫いておりますので、時期、規模、いま御指摘の中身等について言及をすることはできないわけでございます。  いずれにいたしましても、単なる規模だけで、さればその財源の調達方法というようなことがまた景気そのものに関連を持つ問題でございますだけに、それこそ税調等で今国会で議論された問題をもとにして予見を置かないで御議論をいただいて、その結論を得るような方向でスケジュールを着実に進めていきたい、このように考えております。
  42. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、今回の景気対策というものは、要するに財政支出はびた一文も出さない、そういうことを予定してないわけでありまして、公定歩合の引き下げの時期とかあるいは幅も不明であるわけであります。また、この所得税減税についても先ほど申し上げたように少し先送りというような形で、またごまかすのじゃないかというような国民の懸念というものはあるわけで、われわれは絶対にこの点については追及していきたいというふうに思っておるわけであります。  いずれにしましても、中身のない、実際的効果のない景気対策ではないか、このように考えます。それだけじゃなしに、民間活力の利用の効果に錯覚されているのじゃないか。そういう錯覚をしている以上はこれ以外ではなかろう、また逆にそういうようにも考えられるわけでありまして、そういう意味で、歳出の削減とかあるいは公共事業のマイナスあるいは所得税減税を見送ってそうして実質増税といったような有効需要縮小策、いわゆる増税政策の強行は、必ず不況を深化させ、そして輸出圧力を強めて対外経済摩擦を激化させることにはならないだろうか、こういうように思うわけであります。われわれは、今日本当に求められておるのはやはり大幅な所得税減税とそうして公共事業を中心としたところの景気回復ではなかろうか、こういうように考えておるわけであります。これによるところの対外均衡の回復であるわけであります。  そういう点で、財政を出動させず景気回復を図る方向、そういうようなやり方じゃなしに、大臣が本当に真剣に現状に目を開いて、まさしく時宜に適した、いま打たなければ本当にそういう意味ではおくれてしまうことになるわけでありますから、そういう点で去年でもおととしごろからでも、景気が非常に先行き不安じゃないか、こういうことで、われわれは国会でしばしば景気回復のためのてこ入れをすべきだと言いながら、去年でも夏ごろになれば何とかなるのではないかとか、あるいは秋あるいは年末あるいは年が明けたらどうだろうかとか、あるいはいまになると秋ごろ、そういう点でアメリカも景気がある程度高金利政策が功を奏してよくなるから云々、あるいは原油の値下げも期待されて云々、こういうようなことでありますが、やはり政府の中にでもあるいは識者の中にでも、そうじゃなしに、秋口には逆に景気がよくなるのではなしに悪くなるのではないかというような心配をされている方々もあるわけでありますから、余り選挙対策とかそういうようなことではなしに、真剣に日本の現状を考えて手当てをすべきじゃないか。  何か自民党の安定政権というものを背景にして、もしそれが失敗すれば国民が判断するだろうというような、これは失敗は許されないわけですから、普通の遊びじゃないのだから、生き物を扱っているわけですから、失敗したら政権交代もそれは国民が判断するのだろうというような、そんな投げやり的な形ではいけないわけでありまして、そういうおくれのないように早目早目の手当てをするということが特に経済については非常に大事なことではないか、私はこのように思っておりますので、最後に、その点について大臣考え方を聞いて、あと具体的な問題に質問を移りたい、このように思います。
  43. 竹下登

    竹下国務大臣 いまお述べになりました経済の現状認識からする、いわば景気対策の機動的弾力的展開についての御持論、これは私は理解できます。  当面私ども考えておりますのは、いわゆる経済対策といたしまして、当面の課題そして今後取り組むべき課題、これを着実に実行に移すことによって、いわば三・四%という成長をより確実なものにしていくという行政行為を正確に実行していくことがいまの命題である、こういうことを考えております。決して多数の上にあぐらをかくわけでもございませんし、とはいえ、またわれわれは永久政権が至上命題だなどというほどおこがましくもございませんので、こういう席を通じて絶えず建設的な鞭撻を賜ることが、また、その都度行政の責任ある立場に立つ者として、幸いこれに過ぐるものはない、このように理解をしております。
  44. 上田卓三

    上田(卓)委員 電電公社の総裁がお見えのようでございますので、御質問申し上げます。  電電公社の納付金は、本来法的にも財政的にも無理なもので、実際上は国から借金をして国に納付するという矛盾したものであるわけであります。その矛盾したものを五十八年度予算において、五十九年度分を前倒しして、倍額の二千四百億円を納付するという今回の措置のようでございますが、これは矛盾の拡大ではないか、このように思っておるわけでございまして、総裁は、こういった不合理な矛盾の拡大に対してどういう印象を持っておられるのか、お考えを聞かせていただきたい、このように思います。
  45. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えいたします。  もともと、いまお話がございましたように、これは財政特例法という特別な期限づきの、金額も総額が決まった非常に異常なものであることは確かでございますが、国の財政の援助ということで国会で御決定になりましたので、その実行が続いておるわけでございます。  今回の五十九年度の繰り上げにつきましては、総額四千八百億という中の繰り上げということでございますので、幸い私ども、いろいろ総合的に財務の状況を勘案いたしまして、無理ではございますけれども、加入者の皆様方に重大な影響を及ぼすほどの影響はないというふうに判断いたしましたので、私どもとしては、財政当局のおっしゃることについて極端な反対の意見は申し上げずにこういう決着になっておるのが現実の姿でございます。
  46. 上田卓三

    上田(卓)委員 特に今年度から拡充法が廃止され資金繰りが苦しくなるはずでありますから、一体この資金の裏づけはどうなっているのか、どうするのか、こういうことをわれわれは懸念せざるを得ないわけであります。また、この結果、働く労働者にしわ寄せがされたり、あるいは料金の値上げによって国民を犠牲にするようなことにはならないだろうか、こういうように思うわけであります。  総裁は、経営の責任者として、そういうことにはならない、こういうように自信を持って断言できるのでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  47. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えいたします。  いまの私どもの財務の状況でございますが、こういう公共事業でございますので、収入の伸び率と支出の伸び率というものがどう動いておるか、相互関係がどうなっておるかということが一番大事なポイントだと考えております。  従来、この伸びが三%から四%ぐらいマイナスギャップを示しておったのでございますが、最近いろいろな方法を始めまして、また、職員全員にそれに心から協力してもらい始めましたので、収支のマイナスギャップが、五十五年、六年、七年、それから五十八年の予算というふうにだんだん確実に縮んでまいりまして、現状では、マイナスギャップが出ても何とか一%以内のギャップで持っていけるのじゃないかという数字が出てまいっております。  したがいまして、この問題は、一時金の問題につきましても、いま申し上げたように、こういうことをいたしましても、現在、将来にわたってそう大きな御迷惑を加入者におかけするようなことはなかろうということと、それからまた、そういうふうに収支のギャップが著しく改善の傾向を見せましたので、いま法案を提出して御審議を願っておりますが、五十八年度予算で公衆法を改正していただいて遠距離料金を思い切って値下げするということで、そういうことをやりましても、当分の間料金値上げをせずともやっていけるという自信をいまのところ私どもは持っておるわけでございまして、したがいまして、といって、今後もまた特別措置特別措置というふうに追いかけられますと、これはちょっと困りますけれども、そういうことがなければ何とかやっていけるという自信は持っております。
  48. 上田卓三

    上田(卓)委員 総裁は、かつて借金政策を非常に問題にされて、公社資産の六割も負債があるという状態は民間なら倒産だ、こういうように国会でも御答弁をされてきたようでありますが、借金がふえる状態は総裁のお考え方と矛盾している、このように思うわけでありまして、こうした矛盾したところの納付金は来年度以降絶対にないということをやはりここで明らかにしてもらいたい。これは、総裁だけじゃなしに大蔵大臣もそういう考え方であるのか、その点についてひとつ明確に言明をお願い申し上げたい、このように思います。
  49. 真藤恒

    ○真藤説明員 お答えいたします。  この借入金の増額は、五十六年度、七年度、いま増額させずに運転しております。さっき申しましたように、収支のバランスが何とか保てておる限りにおいて、将来必要とする設備投資というものを考えましても、ここ四、五年ぐらいまでは自己資金で何とか年度ごとには運転できますので、過去に借りております借入金の期限決済のための借りかえというのは依然として相当大きな金額が続いていくわけでございますけれども、四、五千億の借りかえが毎年必要でございますが、何とか借り増ししましても、あるいは少し返しましても、大局に影響のない程度の出し入れでしばらくは回転できると思います。  世の中がだんだん変わってまいりまして、また、私どもの準備的な設備投資もある程度進みまして、いわゆる高度情報通信網というものに対する世の中の御要求が本格的に出てくるのがあと四、五年かかると思いますが、その時期になりまして本格的にそういう御要求が出てくれば、どれだけの収入増があるかということも具体的に事業計画の上で見込みがつきますので、それに応じた借り入れの増大、要するに返すめどのある借り入れの増大ということはあるいはやらなくてはならぬ時期が来るかと思いますが、まだここ三、四年、四、五年の間はそこまで世の中も高度情報通信網に対しての強力な御要求は出てこぬのじゃないか、出てきたら出てきたときでやれると思いますけれども、これは返せるめどのある借り入れ、借り増しでございますので、何とかやっていけるんだと思います。
  50. 竹下登

    竹下国務大臣 このたびお願いをいたしておるわけであります。今後の問題がどうなるかという問題につきましては、私は、いまの体系そのままの中で、いま委員の御指摘なすっておる論理の展開の線上においてイージーにそういうことをたびたびすべきものではないという考え方を持っております。  ただ、電電公社問題というのは、いわゆる臨調答申そして行革大綱に基づきますところの経営形態の変更問題といういわば不確定な要素、それの帰趨というものが今後の課題であろうかと思いますので、その際は、いまのような形のものそのものがどういうふうに新しい形態の中で存在するのかというようなことを考えますと、ここでにわかに確たる御返答を申し上げるという実情にはないと理解をしております。
  51. 上田卓三

    上田(卓)委員 何かちょっと歯切れが悪いのですね。イージーにしばしばするべき問題ではないと言いながら、また何かやりそうな雰囲気なんですけれども、もう今回こういう措置をとること自身が間違っておるわけですから、やはり来年度以降は絶対にないとはっきりと答えてください。これは総裁もひとつお願いします。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 申し上げましたとおり、経営形態の変更問題という帰趨がどういうふうな状態になるのかという問題がやはり前提にあらざるを得ないということになりますと、今後の経営形態全体に関する問題でありますので、ここで確たるお答えをするという性格のものではないではないかというふうに考えております。
  53. 真藤恒

    ○真藤説明員 いま私が御説明申し上げましたのは、経営形態問題は抜きにしてのお話をいたしております。  したがいまして、いま大臣がおっしゃいましたように、経営形態問題という大きな問題がございますので、その問題がいままだ政府及び国会でこの方向で行けというふうに御指示をいただく段階までなっておりませんので、そういうふうに現状のままとして申し上げたわけでございますが、経営形態問題が出てまいりますと、これはまた非常に変わった形にならざるを得ません。しかしながら、経営形態を変えるということが、悪くするためにお変えになるはずはございませんので、よくなる方向になるのだろう、また、そうでなければいかぬのだというふうに考えております。私どもも、経営形態問題はそういうふうな意味で受け取っておる次第でございます。決まりましたら、またいろいろ知恵を出すつもりではございます。
  54. 上田卓三

    上田(卓)委員 何もいまここで経営形態の問題が議論になっているわけではないので、その話を出すこと自身私はおかしいと思うのですね。  だから、この納付金を前倒しをして二千四百億を納付させる、そういう異常な状況を今後はしないということで言明できるか、こう言っているのですから、それを言明していただいたらいいわけですから、経営形態云々でそのときはそのときで考えるというのは、大臣、おかしいのじゃないですか。私の質問に正しく答えてください。
  55. 真藤恒

    ○真藤説明員 私どもは、納付金につきましては現在五十九年度までで、それを五十八年度で繰り上げて納付いたしますので、そこでこの問題は打ち切りというふうに解釈いたしております。
  56. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりこの種の問題は臨時特例の措置でございますから、軽々に対応すべき課題ではない。だから、経営形態の問題は議論が少し先走り過ぎたかもしれません。これは、その問題はその問題として別に考えて、このような措置は軽々にとるべき問題ではない、こういうふうに考えます。
  57. 上田卓三

    上田(卓)委員 いやいや、そうじゃない。いま総裁は、今回限りで打ち切りと、こう言っているのですから、軽々もヘチマもないのですよ。そのとおりだと言ってもらったら結構ですよ。そうじゃないですか。電電公社総裁意見が違うのですか、大臣は。電電公社総裁はもうこれで打ち切りだと言っているのですが、あなたは、まだ来年以降も取ろうとしているのですか。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 いわば五十六年の法律に基づくものはまさにこれで打ち切りであるということでありまして、そこでやはり経営形態の問題はつい将来の変化というものが出てまいりますので、私も答弁に窮しておるわけでございます。だから、五十六年度の法律に基づくものはまさにこれにて打ち切り、こういうことです。
  59. 上田卓三

    上田(卓)委員 五十六年度はそれは当然のことでしょう。経営形態がもし変わるということになれば、それこそ取れないということになるわけですから、そんなことはここで議論すること自身間違っておるわけです。やはり総裁がおっしゃったように今回限りで打ち切り、こういう考え方を電電公社の方はされておるわけですから、大蔵省においても、これは取る側の立場はわからぬこともないですけれども、出す側は今回限りと言っているのだから、恐らくそういう話がついているのじゃないかと思うのですけれども、そういう点で大臣もここではっきりと、これは今回限りの措置である、こういうことを明言されたらどうですか。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 五十九年にちょうだいするものを前倒ししていただくわけでありますから、これはこれでまさに打ち切りであると思っております。
  61. 上田卓三

    上田(卓)委員 絶対今回限りということで、そのように言明したと私は受けとめておきましょう。  それで、総裁は、月次決算方式など相当な無理を職場に押しつけて、そしていわゆる企業努力によって黒字を出している。その結果が納付金の前倒しになっている、こういうことになるのじゃなかろうか、このように思うのですね。  反面、昨年のたとえば仲裁裁定すら値切られて完全実施されておりませんね。また手当も年々抑えられる状態で、職場の労働者は働く意欲を全く欠いている、こういうことで、本当にそういう意味では大きな問題ではなかろうか、こういうふうに思っております。  国に対して前倒し納付金が納付できるのでありますから、ことしの春闘では、労働者が納得できるような有額回答は当然できる、私はそういうふうに解釈しておるので、そういう意味で余裕があるのですから、値切らずに完全に有額回答するということが大事ではないか。特に、いろいろなユニークなことを言える総裁であるようでございますから、政府が何を言おうと、そのぐらいのことは言っていただけるのじゃないか、私はこのように期待しておるのですが、総裁いかがでしょうか。
  62. 真藤恒

    ○真藤説明員 私がいま一番心配いたしておりますのはいまお話のありました点でございまして、いまの制度の中でいまの運営のあり方というものが長く続きますと、いずれこれは何かの問題にぶち当たる危険性は多分にはらんでおると思います。経営形態の問題といいますか、臨調に政府国会がどう対応していただくかということについて、こういうことを長く続けておっては問題になるのだが、そこで解決していただけるものだという期待を込めながら、現状で全力投球したいというふうに私どもはいま考えておる次第でございます。
  63. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、総裁はそういう企業努力をなさっておるわけでありまして、それに対する労働者の反発もある。しかし、いずれにしても、仲裁裁定の値切りといいますか完全実施されない、こういう状況で労働意欲を失っているわけですから、本当に労働者が意欲を持って働けるような職場をつくっていくのが総裁の責任じゃないか、こういうふうに思っておりますから、その点について、今春闘においてはどのような圧力があろうともひとつ十分にがんばっていただきたい、このように思います。  次は、総裁は方々で、INS、高度情報通信システムの建設は公社の社会的使命だと言われ、また国民にも宣伝をしておられるようですが、財政のゆがみによって建設投資に支障を来し、INS計画が破綻するようなことにはならないだろうか、こういうように思うわけであります。ことに、公社の建設投資は近年年々圧縮の方向をたどっておるようでございまして、そのために職場の労働者や下請部門に大きな不安を与えているわけであります。国庫納付によって投資が一層圧縮あるいは削減されるようなことになりはしないか、五十九年度以降の投資の展望も含めて述べていただきたい、このように思います。
  64. 岩下健

    ○岩下説明員 私の方から事務的に若干お答えをさせていただきます。  先生ただいま御指摘の、資金調達の問題と関連しまして今後の設備投資特にINSを志向した設備投資について大丈夫か、こういうお尋ねでございますが、端的に申し上げまして、利用者の皆様の御期待に沿えるだけのものはできるというふうに考えておりますし、また、そうしなければいかぬと思っております。  具体的に申しまして、たとえば設備投資がこの一両年毎年減少しておるという御指摘がございましたけれども、五十八年度の場合、数字を申し上げますと一兆六千百億円の予算でございます。前年度に比べまして一千億円余り減少しておりますが、これは、投資規模を圧縮したということよりも、むしろ投資構造が変化をしてきているというふうに御理解いただきたいと思っておるのであります。具体的には、たとえば加入電話が完全充足になりましたので、これの設置数が、前年度に比べて百二十万が百十万と十万加入減少する。あるいはまた、年来努力をしてまいりました過疎対策投資が五十七年でほぼ一段落をする、こういった点からの減少はございます。  反面、INSの基盤形成に向けてのたとえば光ファイバーケーブルの設置あるいはディジタル交換機の設置、こういった高度情報通信システムを志向した設備投資の額は前年度よりも絶対額においても数百億増加し、また、投資の中に占める比率につきましても相当のパーセント向上しておるという実態がございます。したがいまして、投資の規模全体は減少したものの、中身の方はむしろ濃くなってきておる。こういうことで、今後利用者の皆様の御期待にこたえるようなINSの形成にわれわれは努力をしてまいりたい、こう思っております。
  65. 上田卓三

    上田(卓)委員 電電公社の特に総裁には、ある問題で大変迷惑をかけていることがあって、非常にゆゆしき問題であるので、国会でその問題を取り上げようと思っておったわけですけれども、時間の関係もありますし、ここで取り上げるのもどうだろうかということで、具体的に当事者を入れてお話し合いをしたいと思いますので、誠意を持ってその問題については解決をしていただくということで、その程度にしておきたい、このように思います。  最後になりますが、自賠責の特別勘定についてでありますが、この特別勘定は四千万台以上の車の強制保険の掛金が原資でありまして、運用益があれば、当然のことながら保険給付の改善や保険料を下げるために使うのが根本であります。  ところが、今回この財政赤字を理由に、税外収入源として無利子で取り込もうとするものでありまして、返済計画も、この法律案では後日予算の定めとのみ記述しておるわけでありまして、三年据え置きの七年分割返済は、竹下大蔵大臣とそして運輸大臣の覚書で、これは法的効力はないわけでありますが、その覚書で定めるという奇怪なものでありまして、ドライバーの一員として私も免許証を持っているわけですが、将来国は本当に返還するのか疑わしい限りであります。五千億円の累積運用益について、この保険契約者の利益に還元する方策を私は考えるべきではなかろうか、このように思うわけであります。  死亡の補償限度額も、五十年の千五百万から五十三年に二千万円に引き上げられたまま、この五年間据え置かれておるわけでありまして、この期間この分野には一体インフレ等存在しなかったのか、こういう問題があるわけでございます。仮に、年間死亡事故一万件として、限度額を五百万アップしても五百億で十分ではないか。保険本体の収支が先行き不明ということを理由にこういった方向に踏み切ることはとうてい納得できない、こういうように思うわけであります。そういう意味で、できるだけ速やかにこの限度額の引き上げを求めるものでありますが、その点についてひとつ明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  66. 熊代健

    熊代政府委員 お答え申し上げます。  先生がおっしゃいました自賠責保険の保険金限度額につきましては、これは保険契約者への運用益の還元方策の大きな柱でございまして、御指摘のとおりでございます。この点につきましては、われわれ、その還元方策の一環といたしまして、交通事故の最近におきます推移、それに伴います保険収支の動向、また、それら関連いたします保険料率への影響、こういったもの、さらには、さっき御指摘のありました一般の賠償水準あるいは物価、賃金等の動向あるいは他の損害賠償制度との関連といったようなものを十分勘案いたしまして、それと、いまこの自賠特会は再保険で六割部分を担保している部分でございまして、四割部分は一般の保険会社が担保しております。その四割部分におきます運用益の状況、これとのバランス問題も考慮しなければいかぬ。そういった点を十分勘案しながら、大蔵省保険部ともよく協議をしながら十分検討してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  67. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間が来ましたから終わりますが、いずれにしても、たばこの値上げについてもそうだし、また自賠責のこの問題についてもしかりだし、また電電公社納付金、その他いろいろな形で財源確保のためにいろいろ無理を大蔵省はされておるようですけれども、やはり一にも二にも景気回復、雇用を安定させて、そういう意味での所得税減税あるいは公共投資の追加等、本当にそういう意味での実効ある施策をいま国民は求めておるわけでありますから、そのことを特にひとつ大蔵大臣は力を入れていただく、こういうことを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  68. 森美秀

    森委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十六分休憩      ────◇─────     午後一時十二分開議
  69. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鳥居一雄君。
  70. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 午前中に引き続きまして質疑をさせていただきます。  最初に、財政改革計画について伺ってまいりたいと思います。  国債整理基金特別会計の資金でありますけれども、これまでの政府答弁によりますと、六十一年度以降残高がゼロになる特会の資金にかわりまして、理論的には、第一に歳出のカット、第二に借換債、第三に負担増、これは増税並びに社会保険料の引き上げ、この三つのいずれかあるいはその組み合わせによるものである、こう答弁されておるわけであります。  歳出カットでありますけれども財政審議会あるいは税調、臨調などの答申では、いずれも歳出の伸びは名目成長率以下にすることを言っております。これは、逆に考えると、名目成長率程度は伸ばしてもそれを認めていこう。事実今回の試算でも、名目成長率六%の伸びに対しまして、歳出は合計で五十九年度が六・四%から七・五、六十年度が六・三%から七・三%、六十一年度が四・六から五・五という伸びとしているわけです。国債費や地方交付税を除いた一般歳出でも、五十九年度で五・二から六・七、六十年度で五・二から六・八%、六十一年度で三・一%から四・六%という伸びとしております。  この歳出の伸びは、行政改革の推進という上からいきますといささか高いと言わざるを得ないわけでありますけれども、それはさておきまして、仮にこの中期試算によると、国債整理基金の残高が底をついた六十一年から六十二年度一般歳出の伸びを名目GNPの六%とすると、増加額が二兆二千から二兆三千ということになってくるわけです。その上に、六十二年度特例公債の要償還額、これが四兆六千億あるわけでありますから、合わせて約七兆円。七兆円という歳出増の要因として考えられる。この七兆円を六十一年度から削減するとすれば、単純に見ても二〇%からの歳出カットをしなければならない、そういう大変なマイナス予算ということに数字の上からなってまいります。  増税なき、こう言う一方でこういう計算が出ているわけですけれども、これはもう事実上歳出カットというのは無理じゃないか、こう思うのですけれども、何か妙案が一体あるのか、歳出カットが無理であるとすれば借換債あるいは負担増、これしかないということになると思うのですが、六十二年のこの姿はいかがですか。
  71. 窪田弘

    ○窪田政府委員 六十二年の姿は、細かいことを申し上げますと、特例債の償還額がそのまま予算繰り入れの数字になるわけではございませんで、私どもの出した表では三兆八千ということになっておりますが、しかし、大体おっしゃるような数字になるわけでございます。相当の歳出カットが必要であるということは御指摘のとおりでございますが、今後いろいろな仕組みの変更まで含めまして、この問題に真剣に取り組んでいきたいと考えている次第でございます。
  72. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 歳出カットで、そういう規模の二〇%からのカットが一体できるのですか。これは借換債あるいは大増税、これを前提とした計算になっているのじゃないのですか。
  73. 窪田弘

    ○窪田政府委員 非常にむずかしいことは御指摘のとおりでございまして、いまの仕組みのままでございますときわめて困難と申し上げざるを得ませんが、財政改革を来年度から進めますにつきましては、いままでの仕組みそのものにもメスを入れて大いに努力してまいろうということでございますので、いまの段階でこれが無理だということを申し上げるわけにはまいらない状況でございます。
  74. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 国債整理基金への一・六の定率繰り入れ、これですけれども、五十九年度以降は実施する前提でこの中期試算があるわけですね。赤字国債を大量に発行しても、なお五兆五千億からの財政赤字を抱えなければならない。そして、その五兆五千億からの財政赤字を抱えながら、一兆五千億を超える繰り入れが一体本当にできるのかどうなのか。この繰り入れができたらやる、できなかったらやらない、そういう場当たり的な考え方で臨むべき、経済運営に当たるべきものでは本来ないものだと思うのです。また、一方繰入額が二兆円からの規模ですから、そういう巨額の繰り入れ、これがあるのだかないのだかということ自体、国債の市中消化あるいは市中金利に与える影響というのは非常に大きい。つまり、はっきりした立場をとるべきだと私は思うのですが、考え方の基本に非常に安易さがあるのじゃないか。いかがでしょう。
  75. 窪田弘

    ○窪田政府委員 定率繰り入れそのものは法律で定められた仕組みでございまして、これは今後行っていくべきものと考えているわけでございます。  ただ、五十八年度につきましては、五十六年度歳入欠陥の穴埋めとかいろいろ特別困難な事情がございまして、この定率繰り入れを規定どおり行いますと、それだけ特例公債発行の増加ということになってしまうわけでございますので、特例公債を少しでも減らすという立場から、臨時的にこれを一時停止させていただくということをこの法律でお願い申し上げている次第でございまして、定率繰り入れの仕組みそのものは国債償還制度の基本でございますので、今後とも維持してまいりたいと考えております。
  76. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ともかくこの減債制度の意義からいって、五十七年度、五十八年度で定率繰り入れの停止をやった、これは、制度を維持しても、実態の上からいってなし崩しに五十九年度以降の対応というのがあってはならないだろうと思うのですね。また、国民の目から見て粉飾した姿、これはあるべきじゃないだろうと思うのです。減債制度そのものの意義からいって、五十九年度以降確実に定率繰り入れの停止などはやるべきじゃない、こう私は思うのですが、その辺はどうなんですか。単なる試算ですか。
  77. 窪田弘

    ○窪田政府委員 この法律で五十八年末の定率繰り入れの停止をお願い申し上げておりますのは、やむを得ざる措置として、臨時的な問題としてお願いをしているわけでございまして、この仕組みそのものはあくまでも維持してまいりたいと考えております。  ただ、御指摘のように、六十一年度未には国債整理基金の残高はゼロになるという非常に厳しい状況でございますから、問題は容易ではないわけでございますが、しかし、この国債償還制度のあくまでも基本でございますので、これは維持してまいりたいと考えているわけでございます。
  78. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 特例公債償還でありますけれども、この償還の問題は、六十一年度に赤字国債から脱却する試算A、これを除いて、六十三年度、六十五年度脱却年度とするB、C、これは試算では、五十九年度以降定率繰り入れを行いまして、その運用益を加えても、この基金の資金で赤字国債償還が可能だというのは六十一年度までである。六十二年度からは資金が不足して、改革試案のBケースである六十三年度ではもうゼロである。また、五十九年度からの定率繰り入れが不可能な場合、試算Aの六十一年度から償還資金が不足してくる。つまり、借換債を発行して国の財政がサラ金財政になるということは必至だと見えるわけですね。  こういう重大な問題で財政改革を論議するに当たって、いつをめどにして特例公債発行をゼロにするんだ、こういう目標が明示されないで改革論議を幾らやってもしようがないのですけれども、この点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  79. 竹下登

    竹下国務大臣 いま鳥居委員指摘のとおり、五十九年度特例公債脱却をいわばギブアップした、されば何年か、それを本当のところ予算審議をお願いする以前に一応お示し申し上げるというのが努力すべき課題であると私も存じておりました。しかし、今日の不透明な国際経済情勢の中におけるわが国財政の位置づけから考えて、本当に言いにくい表現でございましたが、数年というような表現を使わざるを得なかった。したがいまして、私どもといたしましても、何とかこれのめどを、さて数年とはという、そのものを確定するだけの努力をこれからしていかなければならぬというふうに思っております。  これについては、結局この五十八年度予算はとにかくつくりました、そこで、いわば財政改革の第一歩を踏み出したと仮にいたしましても、五十九年度予算というものを考えましたときに、大変これは困難な状態にありますだけに、それの作業等を通じながら、また一方、経済審議会でわが国の経済の中期展望についての御相談もいただける、それらと相まってそれを設定をしていかなければならぬ課題だ。確かにおっしゃるように、五十九年はギブアップした、さればあとは数年ということでは、われわれが法律なり予算なりを審議するに当たっての確たる手がかりとしていささか漠然とし過ぎておるではないかという指摘は、私は、そのままちょうだいしてもやむを得ない問題だ、これからの課題だとして御寛容をいただきたいというふうに思います。
  80. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 要するに、あるのは「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」それと附属資料の財政の中期試算、ケースA、ケースB、ケースCという、計算をざっとしてみたらこういう形になる、そんな程度のものしかないわけですね。  それでは、一歩譲りまして試算の中を見てみたいと思うのですけれども、試算で言う要調整額を一体どのように処理するのか。たとえば増税でどれだけ、あるいは特別会計繰り入れ停止とか、あるいは揮発油税を一般財源に充てるとか、そういう具体的な制度改革でどのくらいを見ているのか、そういう今後の方針を明らかにして財源不足対策を明示しない限りにおいては全く意味のない、それこそ絵にかいたものだと思うのですね。要調整額は一体どういうふうにしていくお考えですか。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 精いっぱいの努力をいたしましたのが、かつて財政の収支試算、それから中期展望、それから今度の中期試算、こういう経緯をたどって、予算審議等の手がかりにしていただくために御提示申し上げておるわけでありますが、そこに出てくる要調整額そのものも、いま御指摘にありますように一定の仮定を置いて、そして等率、等差で現行の施策を、言ってみればすべておおむね継続するという前提の上に立っての試算でございます。したがって、その要調整額というものをどういうふうにしてこれに対処していくかという具体的なものが示されていないという御指摘もそのとおりであります。  まず、やはり財政改革の基本的な考え方に沿って、まずは臨調答申等でもございますように、いわば増税なきという言葉は糧道を断った上で歳出の削減に臨め、こういう御趣旨であると理解をして、まずそれでもってこれからは制度、施策の根源にまでさかのぼってメスを入れていかなければならぬ、そういうものを進めた中で、初めて国民のお方にもあるいは負担増も理解をいただける問題でありますだけに、いまそれに対処するためにはこのような財源がありますということを明示できる段階ではなくして、まずはこの歳出削減から取りかかっていきます、その経緯を通じながら、国会での御意見等を承りながら、将来にわたって明らかな方向に議論そのものも展開していかなければならないというふうに考えております。
  82. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 A、B、Cの三つのどれか、これを明らかにしないような、そういう提示の仕方で、こういう収支試算の複数提示ということは、やはりそこに戻したということ自体、財政改革熱意が疑われてしかるべきじゃないかと思うのです、非常に残念なことでありますが。  さらに、五十八年度公債発行額七兆円としてスタート台を考えているわけですね。これまでしばしば政府が言明しているとおりに、この中には、五十六年度決算の調整資金を通じる国債整理基金戻しの二兆二千五百二十五億円か含まれている。したがって、これを引いた分、五十八年度分の特例国債が四兆七千二百億円ということであるはずなのですけれども、どうして七兆円がスタート台になっているのでしょう。  またもう一つは、逆に歳出の方で見てみると、五十八年度の実質規模、これが四十八兆一千億で、計算の五十九年度規模五十三兆六千億、これは五兆五千億、一一・四%の伸びで非常に非現実的であるということの裏書きになる。伸びを五十八年度並みに抑えるとすると、五兆五千億の要調整額が不要になる、こういう論理だと思うのですね。いかがでしょう。
  83. 窪田弘

    ○窪田政府委員 確かに、この表をごらんになりまして五十六年度の決算不足補てん繰り戻しが来年度以降ないわけでございますから、その関係がどうなっているのかという問題にお気づきになるかと思うのですが、実は、この税外収入の中に二兆一千四百九十四億という特別の財源対策を講じました。これは、この五十六年度の決算不足二兆二千五百二十五億を埋めるという特別の歳出要因がございましたので、それだけ税外収入努力をいたしまして、ほぼそれに見合う税外収入を計上しているわけでございます。したがって、歳入歳出両方でこれはほぼ見合っております。したがいまして、そのギャップそのものといたしましては、特例公債六兆九千八百億というものをもとにして考えても差し支えないものだと考えております。  また、歳出の方の展望でございますが、これは御承知のように、歳出を細かく分割をいたしまして、そのそれぞれにつきまして将来の推計をいたしておりますので、この合計の五十兆三千億というのを伸び率で伸ばしているという手法ではございませんで、積み上げてつくっておりますので、この二兆二千五百二十五億の影響は五十九年度以降はないわけでございます。したがいまして、このつくり方でいいものだと考えております。
  84. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 つまり、六兆九千八百億の特例公債税外収入で補てんの繰り戻しをやった。つまり五十九年度においてはそういうかき集めはないものとする、こういう意味ですね、なるほど。  さらに四条公債なんですけれども、五十八年度の六兆四千億の発行ですね。それを六十一年度までそのままで据え置く、こういう形でありますけれども、果たしてこれは妥当なのだろうか。実際問題として数字で示すということは困難だと思うのですけれども景気の動向を考慮しますと、予備額という形で一兆なり、そういう確保する考え方、これはどうなんでしょうか。
  85. 窪田弘

    ○窪田政府委員 確かに御指摘のような性格がございます。そこで、末尾に要調整額の説明がつけてあります。  非情に細かい説明でございますので恐縮でございますが、この要調整額をどう処理するかということを書いてございますが、経常部門につきましては、「歳出の削減又は特例公債金収入を除く歳入の増収措置によって調整されるべきものである。」経常部門につきましては、特例公債の増発発行というのは要調整額を埋めるための手段とは考えない、こういうふうに書いておりますが、投資部門の説明のところでは「投資部門要調整額は、歳出の削減又は歳入の増収措置によって調整されるべきものである。」ここでは建設国債発行も場合によってはあり得るという前提のもとに、建設国債を排除してないわけでございます。  しかし、こういった等差、等率で伸ばす表をつくりますときに、投資部門をどうつくるかというのは非常にむずかしいわけでございますので、その要因は度外視いたしまして、一応横ばいで置いているわけでございますが、現実の年々の予算編成の場合には、景気その他の点を考えまして、建設国債が増減することはあり得るわけでございます。そういう要素をこういう単純な計算では入れることができなかったということでございます。
  86. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 なるほど、ただ単純に数字を引っ張ってきているということですね。五十九年度以降の一般歳出が平均五・二%の伸び率で計算しているわけですけれども、これは、一般歳出を削減することで財政再建を達成するんだ、こういうふうに言ってまいりました内閣の答弁が一体どういうふうに盛り込まれているのであろうか。五十八年度に対前年度横ばいとした予算編成から見ると、どうしてそんなに高い伸び率を見込めるのだろうか。また逆に言うと、五十八年度が全く臨時特例の予算編成だったこと、削減も財政再建に役立つほどじゃなかった、こういう意味でしょうか。
  87. 窪田弘

    ○窪田政府委員 これもこの表のつくり方から来る問題でございまして、こういう財政の展望をどうつくるかという問題は長年国会でも御議論をいただいておりますが、私ども、それを受けまして財政制度審議会に検討をしていただきました。  その結果、西ドイツ型の後年度負担型というのが検討の出発点としては一番適当ではなかろうかという御意見をいただきまして、いまの歳出の仕組みをそのままにしておけば、物価、賃金あるいはその他計画のあるものは計画増等の要因で将来こう伸びるであろうという推計をしたものが、この中期試算でございます。したがって、何ら政策的な意思を入れずに将来の展望をしているわけでございます。  実際問題といたしましては、実際にできた予算というものは、過去の中期展望で想定していたものよりも非常に低くなっているわけでございまして、中期展望という形で最初に出しました五十六年度の中期展望における五十八年度予算一般歳出三十八兆七千三百億と計算をされておりましたが、実際、五十八年度予算では三十二兆六千百九十五億でございまして、六兆一千億抑制をしているわけでございます。この中期試算は単純な計算でございまして、実際の予算は、さらにいろいろ検討いたしましてこれから抑制をしていこう、こういうことでございます。
  88. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 政策が加味されない単なる数字である。臨調はこう言っていますよ。「財政の中期展望及び政府の経済運営の基本方針を踏まえ、財政当局はできるだけ具体的な財政再建の手順、特例公債発行額の縮減や歳出歳入両面の改革等の方策についての考え方を明らかにして国民理解や合意を得るように努力すべきである。」つまり具体的な手順と方策、これは緊急を要すると思うのですね。ただ出してきた数字で政策も加味されていない、これじゃ議論にたえないと思うのです。  これは経済企画庁の「昭和五十七年経済の回顧と課題」という文書でありますけれども、これでも明示されてないことの弊害が言われております。読んでみます。「財政再建を今後いかに進めていくかについての方向性が明確でないこともあって、将来に対する不透明感が払拭されていないことである。このことが民間の経済活動に対し、一つの足かせとなっていることは否めない。」こう言っております。いつをめどに作成するのでしょうか。ともかく、この場の国会の中でそれが提出されて、そして議論をしていくということにならない限りは、この財政再建論議はできないと思うのですよ。  大臣の先ほどの御答弁は、早急にというお話でございましたけれども、どのあたりを指していらっしゃるのか、お考えを伺いたいと思います。
  89. 竹下登

    竹下国務大臣 そこのところがむずかしいところでございまして、私どもいまお示ししたのは、御指摘のとおり、財政改革に対する基本的な考え方、そしてこの現行の制度、施策をそのままにして仮定計算をしたもの、そして等率、等差である種の仮定の前提の上に立ったもの、そういうことで中期試算をお示ししておるわけであります。  したがって、これをより計画的なものにして、少なくとも特例債からの脱却年次を明示すべきである、こういうことにつきましては、やはり私は、これから始まりますのがいわば五十九年度予算編成のシーリソグの議論等から始まっていくと思うわけであります。  そこで、制度、施策の根源にまでさかのぼる、これは各省の御協力をいただかなきゃいかぬ、そういう中でいわゆる歳出カットというものの大筋のものが立っていくならば、それが五十九年度予算編成につながっていく。そういうところで、できるだけ幅の縮まったものをお示ししなきゃならぬと思っております。  しかし、この問題につきましては、何さまこの世界経済の不透明感、流動性からして、現実五十九年度というものをギブアップせざるを得なかったという体験からして、やはり国民にある種の政治不信を抱かしてもならないだけに、より明確なものにするためにはそれなりの時間が必要だ、そういう、いわば私どももある種の自己矛盾を感じながら対応しているところでございます。  一方、企画庁で経済審議会の御議論がお願いできる状態になっておる。それらとの整合性と申しましょうか、横にらみと申しましょうか、そういうものも当然考えの中に入れていかなきやならぬ。  だから、本当にお答えとして申し上げますことは、いつも歯切れの悪いことになりますが、可及的速やかに、こういう表現以上になかなか確定した数値を申し上げる状態にないというのが偽らざる実態であります。
  90. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これまでやはり財政展望をうまく利用して、所得税減税の見送りによる実質増税であるとか、あるいは福祉、文教予算の削減、ひいては人勧の凍結ということをやってきたわけですね。これから同じ手が使えないからと言って、もしはかばかしく進まないとすれば、これは問題だと思いますし、一刻も早く取りまとめをしていただいて何年度特例公債ゼロ、これを明示していただかなければならないだろうと思うのです。  後ほどやりますが、電電公社の納付金にいたしましても、五十六年度から四年間、こういう四年間とした根底の基盤というのは、五十九年度特例公債発行ゼロだからという前提があったわけです。これが五年から十年とか、セベラルと大臣はおっしゃいましたけれども、そんなにつき合いをさせていいのかという問題が残っているわけですね。  詳しく伺いますが、そこで、その五十九年度予算、新聞報道等によりますと、五十八年度予算が成立した翌日主計官会議が開かれた。五九年度については大変な切り込みをやっていこう、意気込みがうかがえるわけです。五十九年度予算編成の基本的な方針についてはまだ固まってないだろうと思うのですが、主計官会議での輪郭、シーリングの方法、それはどういうふうになっておりますか。
  91. 窪田弘

    ○窪田政府委員 昔は、私ども主計局の職員は季節労働者でございまして、予算が成立すると、やれやれといって出張に行ったり何かしたものでございますが、近ごろは年じゅう仕事に追いまくられているというふうに変わりましたが、それでも、やはり予算を成立させていただきますと後ほっとしてたるみがちでございます。  そこで、たまたまその予算を成立させていただいた翌日の四月五日の閣議で、大臣から、五十八年度予算は非常に厳しい予算編成であったけれども、まだこれは財政改革へ向けての一歩にすぎない、さらに歳出の削減に、合理化に向かって格段の努力を払っていかなければならないという御発言をなさっておられますので、これを受けまして、主計局長ら、例年のような気分ではいかぬ、主計官はもうきょうから早速いろいろな仕組みあるいは歳出の合理化の方策を検討せよという指示をした会議でございます。  実は、中身につきましては今後各省とも御相談していくべき点も多うございますし、あるいはシーリングにつきましては今後なおいろいろ検討すべき点が多いわけでございまして、まだお話しのように方針が決まっているというわけではございませんで、五十八年度予算を成立させていただいて、これでほっとしてはいかぬ、さらに一層努力せよという決意を新たにした会議でございました。
  92. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 各省との折衝を、まあ勉強を始めるところだ、こういうお話ですが、マイナス五%切り込みだとか、こういう割合についてはどうなんですか、どういうふうにお考えですか。  制度、政策、従来の制度の見直しをして改廃をしていく、そして結果において出くるというものですか。それとも、従来たとえば文教予算、小中学校の学校の教科書無償制度がありますね。まず制度をやめて、そしてその上で枠に満たない点についてはさらに切り込みをやっていく、こういう意味ですか、五九年度については。
  93. 窪田弘

    ○窪田政府委員 まだ実はそこまではっきり申し上げる段階ではないのでございますが、おっしゃるような方向の要素もございます。いろいろ仕組みを考えていきまして、その結果厳しく抑制することになるという要素と、ここ数年やってまいりましたように、天井、シーリングをだんだん下げてまいりまして、総量規制と申しますか総枠を抑えていく中で合理化を図っていただくという要素もございまして、まあ両方の要素があると思いまして、現在のところ、どういうことだということをこういう国会の席ではっきり申し上げる段階ではございませんが、それにいたしましても、五十八年度予算マイナス五%シーリングがそう楽になるという要素はないのじゃないかなというふうには考えております。
  94. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 大臣、五十八年度予算をこうやって見てみまして、福祉、文教はがんがん切り削り、防衛予算だけは六・五%なんという伸び方をしているわけですね。それで、いまある制度については、たとえば児童手当制度にしろ、学校教科書無償の制度にしろ、今日までの二十年からの歴史、こういうものを振り返ってみると、単に財政の事情で制度の改廃に切り込んでいくということがあって果たしていいのだろうか。  これは、たとえば学校の教科書無償制度を一つ取り上げてみます。  この教科書の無償制度は、これは制度発足の当時の論議の中にもありますが、福祉という観点じゃなくて、これは明らかに教育の効果に期待をする、そういう一環として制度ができているんですね。これは大変細心の注意を要する検討じゃないかと思うのです、制度の改廃。率直にどういうふうにお考えでしょうか。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 もろもろの現存する施策、制度というものは、やはり私は国民の選択の集積として今日存在しておると思いますので、その国民の選択と集積の結果というのは、それなりの意義があっておると私は思うわけであります。  なかんずく教科書無償制度の問題というのは、かつて議論されました際、憲法の義務教育無償の問題から論を解きほぐしていく一つ考え方、あるいはいまおっしゃいましたように、多くは否定的でありましたが社会保障制度的な考え方を持つ方、いろいろな議論が存在しておったわけであります。最終的には、教科書無償制度というものは教育行政そのものの問題ではないかということに帰結するではなかろうかと私は個人的には考えております。そうなった場合に、これがいわば財政制度審議会等々で指摘されておる問題は、これそのものが教育行政という立場からこの無償制度そのものが是であろうか、今日の財政状態の中で、むしろ有償というものが家族一体感の中に教育そのものを進めていくためにより役に立つではなかろうかというような、根源にさかのぼっての議論が最近かまびすしく行われておる。したがって、今年度予算編成をいたしました際、この議論を、要するに教育そのものの問題として来年度予算編成までに一つの結論を出そうじゃないかというような申し合わせをして今日に至っておるということであります。
  96. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 文部省に来ていただいていますから伺いたいと思うのですが、無償制度の今日的意義ですね。これは予算にしてざっと、全体予算が五十兆三千七百九十六億ですから予算の〇・一%に満たない。文教予算の一%ということでありまして、それを削り込んでいく。その前に、無償制度の持つ大きな役割り、意義というものが私はあると思うのです。文部省はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  97. 佐藤禎一

    佐藤説明員 ただいま御指摘のありました義務教育の教科書の無償給与の制度は、御案内のとおり、三十七年の無償法、三十八年の無償措置法といった二つの法律の制定を通じまして確立された制度であるわけでございますが、設立当初から議論をされておりますように、この制度は、憲法二十六条に定めております義務教育無償の理念をより広く実現をするということを基本的な要素として実施されているわけでございます。もちろん、このことによりまして、父兄負担の軽減でありますとかあるいは安定した発行供給を確保できるとか、そういったその他の個々具体的な利益もございますが、基本的には、ただいま申しましたような義務教育無償といった理念をより広く実現をするという観点から実施をされております基本的な教育施策一つであるというふうな理解が私ども考え方であるわけでございます。
  98. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、中教審において教科書制度についていま論議されていますね。審議会において、この無償制度存続についての議論というのはどんなような運びになっておりますか。
  99. 佐藤禎一

    佐藤説明員 この教科書無償の基本的な考え方は先ほど私申し上げたとおりでございますが、五十六年の七月に臨時行政調査会の第一次答申がございまして、その中でこの問題につきまして「廃止等を含め検討する。」ということが述べられているわけでございます。  したがいまして、それを受けまして同年の十一月に第十三期の中央教育審議会の発足をお願い申し上げまして、その中で、この無償の問題を含めまして、教科書の基本的なあり方についての御審議をお願い申し上げているわけでございます。大変恐縮でございますが、これまで教科書問題の小委員会をつくりまして、十七回の議論を重ねてきておりまして、その中で参考人意見その他を聴取いたしますなど精力的な審議を続けておりますけれども、間もなく取りまとめに入られるという段階でございますので、まことに勝手でございますけれども、この審議の中身につきましては、まだ私責任を持ってきょう申し上げることはできないのでございます。
  100. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 財源理由に、この制度の存続に対して大蔵省から、発足当初からさまざまな圧力がかかっているんですね。  どんなことがいままであったのか見てみますと、昭和三十八年からずっとこう参りまして、毎年毎年この費用の地方負担要求をずっとされてきているんです。その後、貸与制度の検討を五十三年になりましてから、教科書を貸す形、皆さんに無償で渡すのではなくて貸す形にすれば経費が安く済むんじゃないか、こういうことです。これは非常に弊害が数々あるので無理だと大蔵省も判断されたんでしょう。その後はどういうのかといいますと、一部有償化ですね。つまり国庫としては経費を十分の一ぐらいで済ませられるようにしよう。どうしても教科書代が支払えない低所得者に限って無償にしていこうということで、ここのところ五十五年からずっと来ているわけですね。一部有償化についてはどうなんでしょうか、文部省としてはどういうお考えですか。
  101. 佐藤禎一

    佐藤説明員 御案内のとおり、現行の無償給与制度ができます前には、実は就学援助という形で一部の方々に限って教科書の給与をする、そういったシステムが動いておったわけでございますが、その時点での学校現場からの意見といたしましては、そういった教科書は必ず学校で使わなければならないものでございますから、どのように工夫をいたしましても、どうしても、ただでもらっている人とそうでない人との区別というものがついてしまう。そのことによって本人に劣等感を抱かせるとかあるいは差別感をもたらすとか、そういった弊害が現場にあった。そういったことが無償制度確立の時期にやはり論議をされておるわけでございまして、そのようなことが再びあるというのは好ましいことではないというふうに考えているわけでございます。
  102. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これはもう切り込もうと思えば、内容がどういう内容であろうが、やはり切り込まなければならないというお立場だろうと思うのですね、大臣。  しかし、この制度は、先ほども申し上げましたが、一般会計のたった〇・一%、文教予算の一%に相当するもので、制度としては、いわゆる低所得者に限って無償ということになりますと、かつての制度に逆戻りという形になるわけでありますから、これはよほど慎重な対応をしていただかなければならない。少なくとも中教審の答申を見て御判断される、こういうようなお考えに立っていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  103. 窪田弘

    ○窪田政府委員 教科書無償をめぐる論議の沿革についてお話しになりましたが、教科書も基本的には教材でございますから、私どもが半額地方負担というふうな提案をいたしました背景には、一般の教材費と同じように地方も負担をしてしかるべきではないかという考え方もございました。それから貸与制度の背景には、近ごろの物を大切にしない風潮から申しまして、兄から弟へとか、あるいはずっと学校の備品にして大事に引き継いでいく中に物を大事にする教育ということもあり得るじゃないか、こういうこともございまして、私どもも、その四百五十億といういまの予算そのものを問題にしているということでも必ずしもございません。しかし、私ども予算説明等でいろいろな方にお話ししますと、まず引き合いに出るのがこれと児童手当でございまして、こういうものもやめられないのに歳出カットは不十分であるという批判を受けることが非常に多いわけでございます。そういう意味で、歳出抑制不十分のシンボルになっているということもまた事実でございます。  そういうことで、私どもはいつも文部省に、金そのものはもしこれをやめれば他の文教施策に向けてもいいということまで言っているわけでございまして、むしろそういった教育的見地も含めた予算のつけ方、文教予算のあり方を問題にしているつもりでございます。先ほど大臣からお話がありましたように、今回、来年度予算の要求時までに広い見地から、文教施策の見地、財政的な見地、それから臨調の答申、中教審の答申という全体を含めまして、これをどうするかということを御議論いただくことになっておりますので、それを受けまして私どもも検討してみたいと思っております。
  104. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 大臣のお考えも同じですね、よろしいですね。  それでは、せっかく厚生省に来ていただいているので、児童手当の方なんですが、児童手当制度が発足いたしまして今日までの経過がございます。それで、この経過の中で、出発時点において、制度の充実がなければこの制度の本来的な意義はないのだ、そういう条件つきの出発だったわけです。この財確法関連で、児童手当の給付につきまして特例給付三年間という条件が六十年五月までございます。見直しということは、六十年五月を待たずに見直すという意味なんでしょうか。主計局、どうでしょうか。
  105. 窪田弘

    ○窪田政府委員 これは、五十六年でございますか行革の国会でも大分議論になりました。そのときの鈴木総理の御答弁で、存続を前提にして掘り下げた検討をしてみたい、こういう御答弁がございました。それを受けまして、さらに財政の状況は悪くなっておりますけれども、今後厚生省とも十分相談をして掘り下げた検討をしてみたいと思っております。
  106. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ちょっとわからないのですが、わからない点は、六十年五月までは固定するという前提でこの三年間の制度ができたわけですね。これは六十年五月を待たずに改廃するという意味ですか、それとも六十年五月以降の検討事項という考え方でしょうか。
  107. 窪田弘

    ○窪田政府委員 六十年五月以降の問題として検討をする予定でございます。
  108. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 高齢化社会への重要な対応が迫られている段階で、高齢化社会に対する対応として児童手当制度の重要性がますます増してくるだろうと思うのです。ILO一〇二号条約の批准も、わが国においてはまだまだその水準に達していないために、批准はしましたけれどもその条件の中に児童手当に関しては入ってない、こういう状況なわけですから、これは厚生省の今後の重要な課題だろうと思うので、最低保障ですね、この線に沿ってさらにこの児童手当制度の充実を目指すお考えがあるのかないのか、伺っておきたいと思うのです。
  109. 太田義武

    ○太田説明員 お答え申し上げます。  児童手当制度につきましては、行革関連法によりまして昭和六十年度を目途に必要な措置をつくるというふうにされておりますが、今後非常な勢いで高齢化社会が来る、かてて加えて児童の出生数が減ってくる、こういう中で、やはりできるだけ優秀なといいますか、児童を健全に育てるということは、私どもきわめて重要な課題ではないかと思います。児童手当もその一助になるものはないかということで、現在児童福祉審議会で議論しておりますが、何とか長期的な観点から将来を見越した結論を得たいものだ、このように考えております。
  110. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 電電公社の納付金について伺っておきたいと思います。  電電公社の納付金は財政再建期間四年間、こういうことで当時財確法で納付金の審議をいたしましたし、国会の意思としてその辺の確認はできているわけです。それで、今回前倒しをして、毎年千二百億ずつ合わせて四千八百億、金利等を合わせると八千二百億、公社の負担ということで無理やり納付していただく形になったわけです。  前倒しをすると、五十九年度ゼロということになるのですね。そうすると、五十九年度から新しい負担をお願いするのだという考え方大蔵省にあるんじゃないですか。いかがですか。
  111. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十六年度に決めていただきました四千八百億はこれで終わりでございます。  先ほど、午前中に御論議のありましたときに大臣からもお話がございましたが、こういった特例納付というのは軽々に、イージーに行うべきものではないとは思っておりますが、現在の段階でやるとかやらないとかということをはっきり申し上げることはちょっとむずかしいので、五十九年度予算の編成の段階でよく御相談をしてまいりたいと思っております。
  112. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 御相談をしていきたいということは、前倒しして二千四百ことしがんばった、つまりことしの要求が、たしか三千億ぐらいは出せるだろうというのが折衝の過程にあったのですよ。まあ千二百を二千四百にする、プラスアルファで三千億くらいを何とかできないだろうかというようにうわさで聞こえてきているのです。ということは、たたけばまだ幾らでも出るのではないかという期待があるのではないかと私は思うのです。  確かに電電公社は、積滞解消というのは終わったのです。しかし次の建設投資が、考えてみますと何かもう大変な様子が見えるのです。あれは独立採算制の原則と受益者負担の原則と二つにがんじがらめに縛られておる。電話料金を高く取り過ぎたらばお客さんにもうかった分返さなければいけないという原則を破ってしまえば、これは別です。それから、余ったら道楽おやじの方へ貢がなければいけないのだという古い家庭の中で、サラ金地獄に落っこっちゃったおやじを助けるために、嫁に出した娘からおまえちょっと持ってこいと言って持ってこれるような形であれば別ですよ。国の会計制度から言って、これは特別会計で独立採算制、さらにこれは外へ出した嫁ですから、公企体としてお客さんに、自分の子供を育てるためにいまお金をどんどん使わなければならない状況の中にあるわけですね。そういう中で、ちょっとこれは無理じゃないかと私は見ているのです。  電電公社に来ていただいていると思うのですが、これからの建設投資ですね。一つは、受益者負担の原則から公社としては遠近格差を是正しなければならない。これは、いま一対七十二というひどい状況の中から、利用者に還元をしていこうという形で、減収になることをあえて承知の上でやらなければならない。国会決議その他があったからやっているのだろうと思うのです。一対七十二が一対六十、一対四十、さらに一対三十という形の還元の仕方は、どういうふうに還元されているのでしょうか。  それからもう一つは、先ほども質疑がございましたが、INSへの投資、ことしの建設投資が一兆六千億ですけれども、将来展望の上で、ディジタル化への、光ファイバー通信への切りかえ、あるいは古くなった交換機を新しくするのだとか、いろいろな投資があるだろうと思います。積滞解消で公社のほとんどの建設投資が終わったという考え方、これはやはり間違いだと思うのですが、どんなふうにお考えでしょうか。
  113. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  ただいま先生御指摘の、公社の事業運営の基本としての独立採算制あるいは受益者負担の原則、これからいたしました場合に利用者の方々への還元はどうなのかという点につきましては、端的に申し上げまして、まず電話料金の問題がございます。  これにつきましては、五十五年十一月から実施いたしました夜間料金の割引制度の拡大、それから、翌五十六年夏に実施いたしました遠距離通話料金の値下げ並びに日曜祝日割引制度の実施、さらに今国会に御審議をお願いしております公衆法改正によります本年夏を目途としておる長距離料金の値下げ、これは本年夏からのものは、現在、三百二十キロを超える地域につきまして、三分の通話料に換算いたしますと、四百五十円あるいは五百二十円、六百円と、こういう三段階がございますが、これを一律四百円に値下げをする、これが骨子でございます。こうした形で利用者還元をやっていることが一つでございます。  もう一つは、既設の利用者の皆様、新設の皆様含めまして、サービスの充実と改善でございます。これにつきまして端的なものが、先ほど先生の御指摘ございましたような将来の高度情報通信システムの形成、私どもこれをINSと呼んでおりますが、これの形成という形によりまして、より安い料金でよりよいサービスが御利用できるようにする、これが私ども現在取り組んでおります大きな課題でございます。  料金の問題につきましても、今回の夏の値下げをもって完全に終わるというものでもございませんで、いわゆる市内通話料、それから近距離の料金と遠距離の料金の格差是正については、さらに引き続き経営の課題だというふうに受けとめておるわけでございます。
  114. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうすると、これは政治的に非常に答弁しにくいあるいはできないとおっしゃるのかもしれませんけれども、五十六年の財源確保法審議のときの特例納付金ですね、これは四年間ということでやったわけですよ。四年はこれで決着がつくわけですね。  四年が決着つくと、その後のことについてはいま白紙だとおっしゃるのですが、ある可能性というのはあるのですか。競馬の場合に、特別納付金一年限りだ、これから先競馬をやっていけなくなってしまうという農林水産大臣答弁なんかがあって、一年で確かにやめたのですが、一年置いたらすぐ出てきているのですね、馬の場合には。これは一年置かないで、これこそ一年前に今度出てくるのではないかなと見ているのですが、いかがでしょうか。
  115. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十六年の特別措置あるいは五十八年の今度の繰り上げというのは、国の財政状況それから公社の財務状況あるいは資産の状況から見て、格段の御協力をいただいた特別のものでございます。  私どもも、そういう意味で大変感謝を申し上げている次第でございますが、これから先どうなるか。国の財政もなかなか容易ではございませんし、他方、ただいまお話がありましたような公社の投資需要あるいは利用者に還元する必要性、そういったものも私ども十分理解をしているつもりでございます。そういったいろいろな要素を考えまして、予算編成の時点で十分検討してまいりたいという以外、現在のところ、はっきりしたことは申し上げられないというのが正直なところだと思います。
  116. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、時間がちょっとないものですから、自賠責保険について二点伺いたいのです。  運輸大臣と大蔵大臣との間の覚書で、三年据え置き、七年で返す、この点なんです。もともと自賠責保険は強制保険なんですね。これは強制的に入らない限り自動車を動かしてはいけないことになっているわけですから、自動車を持ちますと、強制的に入らされる。運用益が出てきたから、それを一方において、値上げをしよう、料率の引き上げをやろうというのを一方に抱えながら、運用益を一般会計に持ってきてしまう。これはどう考えたって理解できない話なんですね。自賠責再保険の六割部分については運輸省が所管をし、そして料率を決める審議会の方は大蔵省の保険部の方がおやりになって、今日までやってきていますね。この運用益は、料率の改定をして二〇%もの引き上げをやらないで済むような方向で使うべきなんですよ。それを、料率改定はちょっとおいておいて、累積の黒字分を半分ちょっと持ってきてしまう、運用益を。それが今回の措置ですね。もう無理と言ったら、こんな無理な話はない。しかも、返すとは言っているけれども、いつ返すのかということについては、返さないで済むような、幾らでも引き延ばしができるようなかっこうになっているわけですよ。こんなことがあっていいのでしょうか、お答えいただきたい。
  117. 窪田弘

    ○窪田政府委員 無理とおっしゃいましたが、本当に私どもは無理と思っておりまして、その無理なところを御協力をいただいたことで、私どもは大変感謝をいたしておるわけであります。  自動車損害賠償責任保険審議会の御答申でも、「滞留資金の運用益の今後の使途については、保険収支の動向をも勘案し、将来の収支改善のための財源として留保しておくことを考慮するほか、救急医療体制の整備及び交通事故防止対策等への活用については効率的に行う」こういう答申をいただいておりまして、運輸省で、この使い道と申しますか使途を御検討いただいているところでございますが、現在のところ、それをどういうふうに使うかということがまだ決まっておりません。そういう段階でございますから、とりあえず二分の一を一般会計繰り入れていただきたい。これは必ずお返ししますというお約束を申し上げ、その証拠には、法律に、後日返すということをはっきりと書かしていただいているわけでございます。  ただ、どういう年次割りでどう返すか、そこまで書くべきではないかという御意見かと存じますが、しかし、これは利用の仕方がどう決まってくるかとか、あるいは国の財政状況も含めまして、まだ未確定な点が多うございますので、これは必ず返すというお約束だけにとどめさしていただく、あるいは両大臣間のお約束では、六十一年度から六十七年度までに分割してというところまで書かしていただくということで御了解をいただいておるわけでございまして、無理なことを御協力をいただいたという点はおっしゃっているとおりでございます。
  118. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうすると、法律にない部分の三年据え置き、七年で返す、これは本気に守るつもりなのですか。借りたいというけれども、本当はもらってきちゃったみたいなものじゃないのですか。どこかで借金するときに、返すと言わないと貸してくれないから借りてきて、実はもらったと同じだ、こういう意味じゃないのですか。
  119. 窪田弘

    ○窪田政府委員 人間、貧乏するとだんだん信用がなくなりまして、大蔵省も余りいばれないわけでありますが、ただ、こういうお約束をしたからには必ず守るという決意でございます。
  120. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 運輸省に伺いますが、一方で、その運用益を一般会計に回す、そういう回せる余力を持ちながら、単年度で赤字になっているからといって保険料の引き上げというのはできるのですか。
  121. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 料率に関する件でございますから大蔵省からお答えさせていただきます。  現在の運用益が相当額たまっておることは事実でございますが、現在の自賠責保険の仕組みから申しますと、いまの仕組みを前提といたします限りは、収支の赤字の全部を運用益をもって直ちに埋めるということはできない仕組みになっておるのでございます。したがいまして、収支と運用益とは、これは若干切り離した形の運用にならざるを得ないと思っております。  ただ、先ほどから御議論のありますように、運用益というものは本来保険契約者に還元すべきものである、あるいは保険契約者のために活用すべきものであるという性格は、私どもも全く同感でございます。したがいまして、運輸省におきましても、運用益の活用、どういった形で保険契約者に還元するかということを検討中と聞いております。また、民間の分につきましても運用益がございまして、これにつきましても同じような問題がございますので、私ども、運輸省ともよく相談しながら、できるだけ公平な形で契約者に還元されていくということを検討していきたいと思っておるところでございます。
  122. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、料率改定するための審議会に資料を提出しますね、単年度で赤字ですよという、大蔵省が出した資料。私、ちょっと資料を調べてみたのですけれども、累積が黒字になっているのを隠して、単年度でここのところちょっと、去年、おととしと赤字である、ことしも赤字だ、こういう資料の提出の仕方はちょっとおかしいのじゃないですか。それともう一つは、自賠責共済が料率計算するときに加味されない、これもちょっとおかしいと思うのですね。要するに、自賠責保険と自賠責共済があわせて勘案されて料率というのは決められていくべきだ、こう思うのですよ。いかがですか。これを聞いて最後にします。
  123. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 一月の二十六日に自賠責審議会を開催いたしまして、そのときに資料を提出いたしたのでございますが、そのときには、私ども、保険収支につきましては単年度の収支がこのような状況にありますということをお示し申し上げますとともに、同時に同じ資料で、収支の累計もこのような状況にございます、五十六年度におきましてはまだ若干の黒字がございますということをお示しいたしてございます。  それから自賠責につきましては、先生御指摘のようにいわゆる保険と共済と二つあるわけでございます。大体ウエートを申し上げますと、損保会社を通じます保険が九割、農協が一割ということになっておるのでございますが、料率等の引き上げを行いますような重要な場合には、いずれも保険審議会に諮問いたしまして、そこで審議をちょうだいいたしております。その場合には、もちろん運輸省、大蔵省、農林省、そういった関係省の担当職員も参加いたしまして、事前にも資料の交換をいたしまして十分な意見の交換並びに検討をいたしておりますから、そこは先生、統一的に私どもは料率の引き上げについてはやっていると思っております。  ただ、常時共済の状況を把握しているかということになりますと、これはやはり農林省が主管しておられることでございますから、私どもが勝手に報告を求めたりというようなことにはなりませんので、現在料率の検討をしている段階ではございませんので、共済につきましては十分な承知はいたしておらないということでございます。
  124. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 三事務次官の覚書が発足当時交わされているのですから、お互いにそういう資料の交換なんかがあるでしょうし、全く関知していないという立場はとれないのじゃないかと思うのですね。  これで終わります。
  125. 森美秀

    森委員長 玉置一弥君。
  126. 玉置一弥

    ○玉置委員 今回の財確法、たくさんの法律がまとめて出ておりまして、個々にいろいろお話し申し上げたいとは思ったわけでございますけれども、何分順序が急激に変わりましたので、ある程度問題点をしぼってお伺いをしていきたいと思います。しかし、これだけ重要な法案が一度にまとめて出されるということに関しましては、民社党としてもそれなりに受けとめまして、審議の面で十分なお時間をいただいて対応していきたい、かように考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  先ほどの鳥居先生の問題に引き続きまして、自賠責から入っていきたいと思います。その前に、政府大蔵省の基本姿勢をちょっと確認を申し上げたいと思います。  と申しますのは、臨調答申が発表されましてから政府の姿勢というものが一応明確に打ち出されておりまして、これにいままでの動き、それらを比較照らし合わせていきますと、本来、政府声明として発表されました内容からちょっと方向が違うのではないかというような感じがいたしますので、その再確認という意味で、臨調答申に対しての政府考え方、これの確認を申し上げたいと思います。  三月十四日に答申があったわけでございますけれども、これを受けて、政府は最大限にこれを尊重して、随時いろんな改革の方策を実施に移していくというような決意をされておりますけれども、この方向についてはいまでも変わりがないかどうか、その辺についてまずお答えをいただきたいと思います。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 数次にわたる臨調答申それから最終答申を含めて最大限に尊重する、この趣旨には変わりございません。
  128. 玉置一弥

    ○玉置委員 その答申の中でございますが、財政再建の目標でございますけれども、これは「基本的に財政の体質を改善し、財政の機動性、弾力性を回復すること」であるということをうたっておりまして、「より具体的には、一時的なやり繰りのための措置を無くした状態で、実質的な意味特例公債依存から脱却し、」というふうに明言をされているわけでございますけれども、こういう内容から考えていきますと、五十八年度予算の編成を見ましても、単に数字合わせのやりくりが非常に苦労してなされているような感じがするわけです。  それから見ていきますと、そもそも臨調方針の第一歩からすでに五十八年度が逸脱しているのではないか、予算編成という意味から見て、臨調方針が逆に後に回ったわけでありますけれども、これらの話は、いままでの審議の過程の中でいろいろと臨調の中で言われてきた内容でございまして、それからいきますと、まさにやりくりの五十八年度というような感じがするわけです。これが体質的に五十九年度以降どのように財政再建につながってくるのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。
  129. 竹下登

    竹下国務大臣 玉置議員御指摘のとおり、この第五次答申は、すでに御審議いただいて議論していただきました五十八年度予算そのものに対しての厳しい御指摘一つであるというふうに理解をすべきであると思っております。  いまお読みになったとおり、「一時的なやり繰りのための措置を無くした状態で、実質的な意味特例公債依存から脱却し、」云々と書かれてございますので、私ども今後財政改革を進めていくに際しては、基本的にその考えを踏まえてやらなければならぬ。だから、税外収入というものもこれは工夫すべき大きな財源一つだと思います。しかし、そこには大きな限界もございますし、なかんずく自賠責からお借りしたというようなものは、私も今年度予算編成に当たりまして、自賠責をお願いするのは、いかに大蔵大臣と運輸大臣という間柄にあるとはいえ、私的に長谷川運輸大臣が早稲田大学の会長さんでございまして私が幹事長をしておりますので親しい間柄であるとはいえ、やはりこれはお借りするということになれば、少なくとも最初は総理からお声をおかけしていただいたらいいじゃないか、そういうお声をおかけしていただきました。その結果、この税外収入一つとしてお借りすることになったわけですが、このような措置というものは、考えようによれば、これはそれなりに利子のつかない金を一生懸命で探してきたという努力は多とするにいたしましても、いわば臨調の指摘されておる一時的やりくりのための措置というものの範疇に入ると言われても、私は大きくこれを否定するわけにもまいらぬ。だから、税外収入を各方面に求めていくというこの態度は持ち続けつつも、それがいわば一時的やりくりというふうな評価をいただかないように、基本的な問題として臨調の答申を踏まえて五十九年度以降の予算編成に当たらなければならぬというふうに考えております。
  130. 玉置一弥

    ○玉置委員 たとえば、五十七年度になりますけれども、約八千億の後年度負担、いわゆるやりくりをしたしりぬぐいといいますか、そういう数字があるわけです。  主なものを申し上げますと、交付税特会の借入金利息の負担、これを一部地方肩がわりということで一千億ちょっと。そして臨時特例交付金の減額ということで二千億。それから厚生年金の国庫負担の減、これはことしもやっていますけれども千九百億。個々いろいろ入れていきますと約八千億円あるということになります。  五十八年度予算を見ますと、これは非常に問題のやつですけれども国債の定率繰り入れの停止というものが約一兆四千億円。それから自賠責特会の一般繰り入れ、これが二千五百六十億円。それから、これから出てまいります福祉年金のいわゆる国庫負担の平準化というものが三千億ちょっと。こういういろいろな項目があるわけです。これを大体合計しますと二兆三千億円ありまして、いずれ返していかなければいけない、こういうことになるわけです。  その返し方も、先ほど鳥居先生の質問の中にありましたけれども、明確に打ち出されているものとまた非常にあいまいなものがあるということで、どうも政府が、確かにいま苦しい財政の中での取り組みでございますけれども、それが何となく自分の任期期間中だけつじつまが合えばいい、後についてはもう知らないよ、極端に言うとこういう姿勢が感じられるわけです。こういうことは、財政技術といいますか操作というか、それによるものであろうと思いますけれども、しかし、いずれにしても後年度負担ということで残るわけです。  先ほども防衛費の話が出ておりましたけれども、防衛費も突出だとかなんとかといろいろ騒がれておりますが、あるレベルまで当然早く確保しなければいけないということはあるかと思いますけれども、いまの財政から見て後年度負担も含めた中でもやはり考えていかなければいけない。そういうことも十分加味されて予算が組まれているのかどうか。まず、後の処理についての責任、これをだれがやるのか、その辺について明確にしていただきたいと思います。
  131. 窪田弘

    ○窪田政府委員 ツケ回しという御批判をいただきましたけれども、しかし私ども、必ずしも後に送って後はどうなっても知らぬという考え方でやっているわけではございませんで、将来の負担の推計をしてみますと、いまの年度にちょうどこぶのように出てくるものがあるわけでございます。そういうものは、やや中長期的に見て平準を図ろうという見地で行っているわけでございます。  いま御指摘の中で、たとえば国民年金の国庫負担の平準化、これは別途法律で御審議をお願い申し上げておりますが、いま福祉年金受給者がだんだん減りつつございまして、本当の年金受給者が出てくるまでの間ちょっと谷のようになる期間がございます。財政困難な折からでございますので、これを平準化してならしていこうという趣旨でお願いを申し上げているものでございます。  金利が非常に高かった時期のものを先に損失として繰り延べるという住宅公庫のものもそういったものでございますし、私ども、ただ後ろへ送ってそれでよしとしているわけではございませんで、やはり財政負担の平準化ということを基準に考えているということを申し上げさせていただきたいと思います。
  132. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間の関係で、ちょっと具体的に自賠責の方に入りますけれども、その前に、今回のいわゆるやりくりのいろいろな費用、これが後年度負担として残るわけでございますけれども、これが金額的には二兆四千億という大変大きな数字でありながら、確かにいま余って、もうあと要らないというのもあるかと思います。しかし、後で返していかなければいけない、後年度負担として残るというものであれば、実際赤字国債と一緒ではないかというふうに思うわけです。ですから、赤字国債でなぜ発行できないのかということをお答えいただきたいと思います。
  133. 窪田弘

    ○窪田政府委員 出る方はお構いなく出しておいて、あと赤字国債でというやり方ももちろんございましょうが、国債の市場の消化の状況から見てもいま壁に突き当たっておりますし、それから何しろ、何はきておき財政再建のために特例公債は一刻も早く減らしていきたいということでございますので、歳出面でできるだけ切り詰められるものは切り詰めよう、負担の平準化を図れるものは図ろうということで歳出面で努力しているわけでございまして、それをほっておいて特例公債を出せばいいという考え方はとっていないわけでございます。
  134. 玉置一弥

    ○玉置委員 ついでと言ってはなんですけれども国債の話にちょっと入らせていただきます。いま消化の問題が出てまいりましたが、たとえば一番多く国債発行されましたのが十四兆七千億ですか、実質的には十四兆一千億ぐらいだと思いますけれども、それからいきますと、いまはむしろ若干少なくなってきているというようなことで、経済規模からいっても、消化の能力としては十分あるではないかというふうに思います。  それから、ことしの一月十九日水野証券局長が三人委員会説明をされたというお話でございます。これは中期国債のお話をもとにお話をされているということでございますけれども、逆にこのときは中期国債を窓販に移すのは時期尚早である、結論から言えばこういう話をされておるわけです。その理由としては、新たに銀行に任せるのは証券会社より取り扱いがむずかしいとか、借りかえが非常に多くなって消化に大きな支障がないのではないかというようなお話をされているということでございます。  こういうことから、赤字国債は幾らでも出していいという話ではなくて、ある計画に基づいて行われるならばどうしても必要であればある程度やむを得ない、そして財政再建の中にきちっとしたものを織り込んでいくべきだというふうに私は思いました。そういう意味で、何で無理してまで取って、言ってみれば人のお金ですね、自賠責は契約者が自分たちに何かあったときに万一のことを考えて積み立てているお金ですから、そういうものを逆に国の財政に引っ張り込むというようなことではなく、やはり赤字国債発行するということで責任を明確にしてやるべきではないかというふうに思うわけです。消化の面からいってもいけるという話もいますでにされておるわけです。それが一月二十日ですから、予算編成のいろいろな論議のときの状況も踏まえてお話をされておるというふうに思います。  その辺から見て、本当に赤字国債が消化できないからできないということではなくて、いま財政再建の途上にあるわけですから少しでも減らしてかっこうをつけようという、そこに一つポイントがあるのじゃないかというような感じがするのです。実質的にはまだ消化できるというふうに私は思いますけれども、その辺についてはいかがですか。
  135. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 数字を最初に申し上げてみますが、ただいまお話がございましたように、いままでで一番大きかったのが五十五年で、新規財源債が十四兆一千億、借換債が二千億で十四兆四千六百億というのが五十五年でございます。それで、このベースでございますと五十八年度は十七兆八千億になるわけでございます。  それで、いまの消化できるかどうかという問題は、市中に幾ら出ていくかということになるわけでございますが、過去最高は五十四年で十兆八千億でございます。五十七年が十一兆八千億、五十八年度が十二兆。これを理財局の方で消化いたすわけでございますが、可能かどうかという問題でございますけれども一つは、国民貯蓄に対してパブリックセクター全部がどういう姿になっているだろうか。中央政府だけではなかなかまずいわけでございます。現在、大体四百兆くらい個人貯蓄があって、一割くらい伸びますから三十七兆から四十兆ふえる。五十八年概算で、確たる数字を申し上げることはためらうわけでございますけれども国債政府保証債、地方債、政府保証借入金等々縁故債、こういうものを合わせますと六割以上になっている。数字的にそういう実情にあるわけでございます。それからもう一つは、率直に申してある程度時間の余裕があるのかどうか。もう一つは、自由に国債の金利が動けるのかどうか、そういうようないろいろな制約条件がございます。  そこいらで考えまして、五十八年度は、私どもとしては、いろいろなことを考えてこのあたりがそこそこのところではないだろうか。主計局の方は主計局の方で、私から答弁するのはおかしいわけでございますが、補正後新規財源債で一兆減らす、こういうような財政規律の方の考え方があるわけでございます。  そういう、発行側と消化側との行ったり来たりの感触論に私の方はなりますが、率直に申して幾らでも赤字公債を出して消化ができるというものではない。国債の金利だけを自由に上げられるのかどうか、現在国債の金利と五年ものの金融債がつながっておりますし、それと長プラがつながっておる等のいろいろ現実的なかたくなっている制度もあるわけでございます。そういう中で消化するとすれば、このあたりがもう限界ではないかというふうな感じを持っております。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  136. 玉置一弥

    ○玉置委員 たとえば五十六年度の個人の資産の増加状況というのを見ますと、一年間で大体三十九兆円資産が増加をしておる。その中身は、国債に引き当てられた分が一兆九千二百億円という金額でございました。約二兆円。個人の預金に引き上げられましたのが二兆一千億円というふうになっておるわけです。約二兆円ですね。だから、預金にいった部分と国債にいった部分がほぼとんとんである。一割くらいしか違わないというような形です。これから見ていきますと、預金額を横ばいというふうに見れば、まだ二兆円くらいの個人消化ができるということにもなるわけですし、預金にいったということであれば銀行にいっている、あるいは郵政の方に入っていると考えられます。それから見ましても、経済の伸びから見てまだ消化の余裕があったのではないかというふうに思うわけです。  証券局長の方でお話があったような内容から推測をいたしますと、大蔵省証券局としては、余裕がある、だから中期窓販はまだ早いという話をされていますけれども、それと絡めて国債消化あるいは逆に売れないから負担になるという話をされているのだと思いますけれども、どっちがどっちか、ちょっとよくわからないような状況になりまして、この記事は一月二十日の日経だと思いますけれども、ここに載っております内容をもう一回説明しますと、中期国債窓販は尚早ということでお話をされております。その理由について一、二、三と三つほど述べられておりまして、結局いまの国債発行が、いわゆる借換債がだんだんとふえてきて消化としてはそう大きな支障がないのではないかという話をされているわけですけれども、いま理財局長の方からお話がございましたのは、大体この辺がいいところだろうと、若干ニュアンスに相違があるように受け取れるのですけれども、その辺についてはいかがですか。
  137. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 一月二十日の新聞報道でございますけれども、私もこの会議には出ておったわけでございますけれども、おっしゃるような幾らでも中期債の消化ができるというふうに彼が言っているとも思わないわけでございます。現にここに書いてございますように、補正後で中期債か三兆七千八百億、それを今度五兆三千億にいたすわけです。  これは、こういう問題があるわけです。中期債をどんどん出しますと銀行の預金が食われるわけです。ですから、パイが一つでございますので、行ったり来たりで新しいものが乗っかって預金がふえるわけではないという問題が一つございます。現に五兆三千億の中期債を公募でやっておるわけでございますが、市中銀行の方はかなり気にしておるわけでございます、預金と非常に競合する商品でございますから。私どもとしては、五十八年度の消化上、シ団の方は去年の当初に比べてそこそこの六兆六千というような数字でございますが、補正後よりもはるかに小さい。ところが、中期債の方は相当大きいわけでございます。十二カ月で割っても月に四千億以上やらなければならないわけです、現在月に二回やっておりますが。これは余りやりますと銀行預金が減る、銀行預金が減ると十年債のシ団の方がなかなかつらくなる。結局は行ったり来たりになってしまいますから、全体でどういうふうに考えるかという問題があるわけでございます。
  138. 玉置一弥

    ○玉置委員 確かに預金とうらはらの関係にあると思いますけれども、先ほど申し上げたように、預金が二兆一千億ふえている。そして国債の方が一兆九千億、まだ若干国債の方が下回っているわけです。そういうことからいきますと、今度窓販でやれば、ある程度預金との関連がつながってくるのではないかというような気もしますし、もうちょっと消化しても銀行に影響が出るということはあり得ないのだというような感じを持っているわけです。そういう面でやはりやっていかなければいけないのではないか。  それから、個人相手ですから長期的な見通しというのが非常につけにくいというのもありまして、むしろ短期も併用してやっていくようなことも考えていかなければいけないと思うのですけれども、そういう面から見て、もっといろいろな組み合わせを考えていければ、いまよりも消化能力としては数字上では十分あるのではないかというように思っておりますけれども、いかがですか。
  139. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 御指摘の点が当然あるわけでございます。  それで、いまの国民貯蓄の状況を見ますと、国債は一兆九千でございますが、いまお示しの二十一兆という数字の内訳で七兆六千という郵貯がございますが、このうち四兆八千が国債に回っているわけです。そういうことで全体の国債残高が、昨年九月の数字しかございませんけれども、全体で約九十兆ございまして、個人が約四割持っております。ただ、セクター別に見ますと、まだ個人に国債を持っていただく可能性がかなりあると思います。  そこで、五十七年もいろいろなことを考えたわけでございますが、一つは種類の多様化というようなことでございます。たとえば信託銀行が長期金利の関係でかなりお金が集まっているわけです。したがって、十五年の変動債を出すとかあるいは農中や信金にかなり持ってもらうとか、そういうような種類の多様化とか消化の多様化とか、そういうような努力を今後もいろいろな面で考えていかなければいけない。そして個人消化の強化を図るべきである。この基本線は全く同感でございます。  ただ、そういうことによって五十八年度に赤字公債がかなり増発できるのではないかという点にかかりますと、先ほど申しましたように、全体の設備投資の資金需給がどうなるのか、あるいは全体の公共借り入れが一体どうなるのか、金利をどういうふうに考えるのか、そういう総合的な判断をせざるを得ない。そうすると、幾らでもふやせるあるいはもう少しふやせるかどうかというようなところは、最終的には感触論になりますけれども、なかなかむずかしいのではないか、そういうことでございます。
  140. 玉置一弥

    ○玉置委員 素人と専門家がやりとりしているので、わかりにくいところもありますけれども、要は、実質的な赤字国債であるということで、これを明確にしなければいけない。そういう意味で赤字国債に、たとえ売るのが苦しくても持っていった方がいいのではないかというのが私の意見なんです。それをやっていかないと、逆にやりくりでやって後年度負担では残りますけれども、一個一個返してくれ、当事者はわかりますけれども、全体の絵として国民に映らない。だから、本当に苦しいのだということが国民によくわからないということにつながってくるので、それをやはり明確にしてもらいたいということなので、その辺を十分お考えいただきたいと思います。  また自賠責に戻りますけれども、今回契約者の積立金を運用して、単年度では五十三年から赤字に転落している、その積立金がかなり減ってまいりまして、今年度五十七年で見ますと、積立金の累計が百億ぐらいしか残ってないと思うのです。確かに保険勘定保障勘定とありまして、すべてがすべて使えるかという話ではないと思いますけれども、事故の増加率が特に五十三年から大変極端にいわゆる損害率という形でふえてきております。一番少ないときに六二・二八%しかなかった損害率が、五十七年度で見ますと、これは予測ですけれども一一五・二五というふうにはね上がってきている。  これは、交通事故の状況から見て、交通事故が一番多かったのが昭和四十四年でございまして、七十二万件発生をいたしております。死亡者が一番多かったのが四十五年、負傷者が一番多かったのが四十五年、それをピークにしまして、そのときからいきますと、発生件数から見るといまは約七〇%、五十万件ということになります。死者の数からいきますと、四十五年に対しまして現在は大体九千人ということで、五四%というふうに減っていることは減っているわけです。だから、こういうのでいきますと、いま事故率が非常にふえてきておりますけれども、これからの見通しとしてやはりある時期送ればまた低下をしていくのではないかというようなことが考えられるわけです。  ところが、自賠責の特会の運用益といいますか、自賠責特会の会計処理が五十三年から赤字に転落をして、いままでの穴埋めを運用益でやってきたということでもありますし、それで何とかもってきている。これは本当にいつまでもつのかなという心配がありまして、これからの事故の状況がどうなっていくのかというのが一つ。それから、自賠責特会のいま苦しいこの状況の中で現状のままの事故の比率が続けば将来どうなっていくのかということ、その辺についてまずお答えをいただきたいと思います。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 自賠責の収支が、昭和五十三年度からいわゆるポリシー・イヤー・べーシスで単年度で見ますと赤字になっておる点は先生御指摘のとおりでございますが、これの原因といたしまして、私、二つ考えられると思うのでございます。  一つは、料率が四十四年に改定されましてから現在まで十三年余りそのままに据え置かれておるのでございまして、その間におきまして、支払い限度額が当時五百万だったものが一千万に、それから千五百万、さらに現在の二千万にと引き上げられておるわけでございます。なお、この間大体二年に一遍の割合でいわゆる査定単価とも言うべき支払い基準も引き上げられているということで、支払いの保険金の要因がその間に大きく増加したというのが一つあると思うのでございます。  それからもう一つは、御指摘のように昭和四十四年をピークといたしまして自動車の事故がその後ずっと減ってきている。ただ、それが五十二年度をボトムといたしまして再び上昇の傾向にある。これが言ってみれば収支を悪化した二つの要因であろうと思うのでございます。  ただ、自動車事故が今後一体どういう形で推移するかという点は、私ども保険行政の観点からなかなかお答えしづらい問題でございまして、私どもとしては、現在のようなやや上昇の推移をたどっていくという見込みのもとに推計をせざるを得ないと思っておるのでございます。また、現在いわゆる単年度ベースでは赤字だと申し上げたわけでございますが、現在のような事故率の推移をたどっていくといたしますと、これは前提でございますが、五十七年度、八年度さらに赤字幅が拡大するであろうということは容易に予測されるのでございますが、ただ、いわゆる単年度でない累計の収支で見ますと若干黒字がなお見込まれておりますところから、いますぐ料率の引き上げということは必要ないと思っておりますし、また事実検討もいたしていないところでございます。
  142. 熊代健

    熊代政府委員 お答えいたします。  ただいま猪瀬部長から御答弁いたしましたように、自賠特会だけで見ましても、単年度で純保険収支といいますか純保険のあれでは赤が出ておるのですけれども、運用益を含めました全体では、五十八年度予定を見ましてもまだ三十数億程度の黒が予定されておる。今後の推移につきましては、ただいまお話がありましたような事故の推移、車は多少増加しておりますけれども事故が従前のような減少傾向をたどっていないものですから、支払いの保険金の方がふえていく、それに対して収入の方が思うほど上がらない、こういう状況があるわけです。  いまの大蔵省と同じように、今後事故防止等にわれわれ運輸省全体としても取り組んでいかなければいかぬわけですけれども、十万台当たりというような単位でとりますと減少傾向は続いておるのですけれども、それが非常に落ち込み方が少なくなっているというのが総体としての件数を増加させておる、こういう状況でございますので、われわれとしては、今後防止対策を一生懸命やると同時に、保険にとってどういうふうに動いていくかということは今後慎重に検討していきたいと思っております。
  143. 玉置一弥

    ○玉置委員 四十四年からいままで料率改定なくやってきたということで、見方によったら、大体四十四年に一〇六・五%の値上げをやっていますね、大変な上げ過ぎで本当は申しわけないと言って返すのがあたりまえだと思うのですけれども、それを返さないでやってきた。これから見ても、単年度というよりも通期で見て、ずっと経常的にそう悪化しなければ、ある程度の値上げというのはもうやらなくてもいけるのじゃないか。いけるのじゃないかというのは、穴埋めを何らかの形で考えていく。  いままで、自賠責から考えていくと、政府に貸しがあるといいますか、運用益を政府がやらなければいけない交通安全対策に回しているわけですから、そういう面で考えると政府の肩がわりをしていたということになるわけでございまして、当初は大変な、一番多いときは四千二百億くらいの残高があったわけですね。そういうことからいきますと、まさにゆったりしたときに下げないで、突然赤字が目に見えてくると今度は上げようという話になってくるということが一つは腑に落ちないということでございます。  いま出ております法律案に基づいてお話を進めていきますとすれば、まず、先ほどもお話が出ておりましたけれども、今回の法律案は、一応一般会計繰り入れをしますということが書かれておりまして「後日、それぞれその繰入金に相当する金額に達するまでの金額を、予算の定めるところにより、一般会計から同特別会計保険勘定又は保障勘定繰り入れなければならない。」要するに返しますよということが一応明記されております。これは大体契約者のお金ですから、もしいまの自賠責特会のままに置かれておりますと当然運用益というものがついてくる。その積み上げた運用益の二分の一を切り崩してやるわけですから、その分が運用益として今度は減ってくるということになるわけで、その補てんをしなければいけない。ところが、この中には借りた金額だけは返しますよということしか明言をされてないということでございまして、これはなぜなのか、それについてお聞きをしたい。
  144. 窪田弘

    ○窪田政府委員 形式的な理由と実質的な理由がございます。  これは特別会計でございまして、一般会計特別会計という国の会計相互間の繰り入れ、繰り戻しでございます。この場合は原則として利子を付さないことになっております。ただ、厚生年金でございますとか長期の年金のような場合は例外として利子をつけることがございますが、原則としては会計間の繰り入れ、繰り戻しにつきましては利子を付さないということでございます。  また、今回御協力をいただきました趣旨は、五十六年度歳入欠陥が生じました穴埋めをいたしますために税外収入を広く集めてこれに充てるという趣旨でございまして、無利子のお金というものがぜひ必要であるということで、利子のつかないお金というものを御協力をいただいたという実質的な理由もございます。
  145. 玉置一弥

    ○玉置委員 無利子のお金をかき集めたということであれば、この前の造幣特会のやつはわかりますけれども、今回のやつは、利子はついてないけれども、集まった基金で運用しているということで、その運用益がかなり有効に使われているわけですね。それが今度なくなってくるということになりますと、運用益のいろいろな活用を、要するに政府がやらなければいけない、代弁してやってきた交通安全に対して政府が手を抜くことになる、そういうことになりますけれども、それは政府として方向転換をするのかどうか。
  146. 窪田弘

    ○窪田政府委員 この自動車損害賠償保険は短期の保険でございまして、積立金の運用益というものは予定をされていないわけでございますから、その分だけ結果的にはこの会計の損になることは御指摘のとおりでございますけれども、今後これをどういうふうに保険者のために活用していくか、その方策がまだ決まっていない段階でこの会計に格段の御協力をいただいたことと理解しております。
  147. 玉置一弥

    ○玉置委員 運用益というか、利息のかわりですね、言ってみたら。利息ですね、財投のかわりにいろいろやったりして。そういうことで本来であれば利息がつく。これを取り上げるということですね。それを国民の間に、全部契約者にイエスかノーかずっと回文して認めてもらうならいいですけれども、これは独断でやっているわけですね。それだけの権限があるかどうかという問題もあるわけです。
  148. 窪田弘

    ○窪田政府委員 決して独断でやっているわけではございませんで、かように法律改正をお願いして、お認めをいただきたいということをお願いしているわけでございます。
  149. 玉置一弥

    ○玉置委員 出す前に当事者でやはりいろいろ論議をしていかないと、単にお金があるから、これを預かっているから使ってやろうと、これは背任横領じゃないですか。そういうことになるでしょう。違いますか。
  150. 熊代健

    熊代政府委員 運輸省の立場からお答えいたしたいと思うのですが、ただいま先生は、交通事故防止は一般会計で本来やるべきだという趣旨の御発言もございましたけれども、われわれは必ずしもそれだけではないだろうと。現に、今回繰り入れます自賠責保険の運用益の残、これが五千億になった原因も、やはり交通安全施設の整備でありますとかあるいは厚生省の医療体制の整備といったようなこと、あるいは広い意味で言いますと交通警察、こういったところの交通事故防止対策が非常に効果を上げてきていることも否定できない。それら間接的なものだけでなくて、一般会計だけからも年々三百数十億といったような対策費用が計上されてきております。そういった観点に立ちまして、われわれとして、運用益について、それをさらに運用していくと利息は計上できるわけですけれども、二分の一の部分について三年間は据え置いて後は年々返ってきますから、またそれの運用益ということもあるわけですけれども、この程度はやむを得ないのじゃないかというような観点から、財務当局と協議の上、今回の案にさせていただいた次第でございます。
  151. 玉置一弥

    ○玉置委員 四千五百億ぐらいの運用益というか保障勘定があるわけですね。本来保障勘定に使われておりますのが救急医療施設とか交通事故相談とか交通遺児育英資金その他とありまして、これが交通安全対策費としてもしこの勘定で使われるということがなかったら、本来交通安全対策費として国が、一般会計から出るかどこから出るか知りませんけれども、やはりやっていかなければいけない部分ではないか。今度運用益が半分に削られるということでありますから、そこに回す金がだんだんなくなってくるということで、その分を、逆に同じレベルで交通安全対策を進めていこうということであれば補てんをしなければいけないのではないかということを私は言いたいわけです。いかがですか。
  152. 熊代健

    熊代政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、自賠特会には保険勘定保障勘定がございまして、保険勘定の方は自動車事故対策センターを通じまして被害者救済等をやっております。指摘保障勘定につきましては、おっしゃるような事故防止対策あるいは被害者救済の保険でカバーできないものもやっております。これにつきましては、五十八年度、本年度予算につきましても、たとえば日本交通遺児育英会等に対する補助を二〇%強アップするとか、そういった形で、今後ともその保障勘定の中で十分対応していけるというふうにわれわれ考えておる次第でございます。
  153. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまでも、各省庁たとえば建設省、運輸省それから警察庁それから総理府それぞれが交通安全対策費として持っておるわけですけれども、その金額とこの数字とをいろいろ見ますと、これはかなりウエートが高いわけですね。そういう面で、これが削られるということは大変なことだと僕は思うので、そういう面での話が出てこなかったというのは、むしろ交通安全対策に対して各省庁が本当に重要に思っていないのじゃないかというふうに感じるわけです。  いまのお話を聞きますと、減ってもいけるということなんですけれども、減ってもいけるような対策だから事故がふえてきているのかということになるわけですね。これから本当に減らしていける対策がとれるのかどうか、その辺をちょっと確認したいと思います。
  154. 熊代健

    熊代政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生の言われた自賠特会の中でやります交通事故防止対策だけで全部事故が本当に減っていくのか、こう言われますと、われわれとしては、それでやっていけますというふうに申し上げることは不可能だと思います。しかし、先ほど申し上げましたように、保障勘定の方は二千五百六十億のうちの六十億、運用益残が百二十億強でそれの半分ぐらい、こういうことになっておりますので、保障勘定の方としましては、事故防止の問題というのはいろいろな要素がありまして今後なかなかむずかしい点が多いと思いますけれども、さらに効率的効果的な対策をできるだけ講じていくように努力いたしたいというふうに考えておる次第でございます。
  155. 玉置一弥

    ○玉置委員 ちょっとお話を変えますけれども、全体からいくと、比率の問題もありますが、やはり影響することは影響するというふうに私は思うわけです。  先ほどちょっとお話がございました厚生年金の方ですけれども、これには「厚生年金保険事業に係る国庫負担金の繰入れの特例」ということで、その一番最後の方に「一般会計から厚生保険特別会計年金勘定への繰入れその他の適切な措置を講ずるもの」というような明記がしてございました。これは一応長期であるから金利も見たという先ほどの話です。長期であるから金利を見た。こちちは運用益なり金利なり、そういうものを自分たちの中で、自分たちの中でというか、要するに契約者が預けている金ですから、それを運用してきている。こっちは取られる分ですね。こっちは自動的につく。自動的というと変ですけれども、どっちにしても金利というものがそれぞれにある。要するに国の中、国庫内でのやりくりについては利息を原則として見ないというお話でございますけれども、国庫内のやりくりであるけれども、国の中で、預かり分いわゆる倉庫料、そういうものをうまく活用して利益を出している。そういうことになりますから、厚生年金の基金にしても同じようなことが言えまして、それを認めて利息をつけたということなのです。  それに対して、自賠責がなぜつかないのか。これは短期じゃないと思うのですね。三年据え置きの七年、合計十年です。百万円を十年借りますと大体二百万近くなる。これはあたりまえの話です。サラ金にするともっと高くなりますけれども、実際大変な金額になるわけです。だから、十年たっても二千五百六十億しか返しませんよということであります。同じ国庫のお金で両方とも運用益を出している。何で、片方があって片方が利息がないのか、それについてお伺いしたい。
  156. 窪田弘

    ○窪田政府委員 年金の場合は、御承知のように、年金計算は給付を受けるまでの間に長期間積み立てをいたしまして、その積立金を運用して運用益をさらにその給付に充てる。つまり、保険設計と申しますか、保険の設計上その積立金の運用益というものが予定されているわけです。勘定に入っているわけです。  ところが、損事保険のような短期の保険の場合は、収入支出の間にたまたま積立金が累積することがございますが、その運用益は保険設計上入っていないわけでございます。一年一年の損害保険は、その年の損害をその年の保険料で埋めるというのが基本的な原則でございまして、たまたま収支のずれとか損害率の関係で積み立てたものの運用益というものは保険設計に入っていない、そういう差があるわけでございます。そういうことで、この短期の保険には利子をつけないということでございます。
  157. 玉置一弥

    ○玉置委員 昭和四十五年の損害率が一六二%というように低下をしているわけですね。その前が一五〇ぐらいになっていたと思うのですけれども、一番高いときが四十二年で一六〇・二八%、そして四十三年が一三〇・四五%、その次に一〇六・五%料率を値上げしたときに七七・一六%に低下をしている。それ以来昭和五十二年まで九三・六八%、単年度で黒字になっている。単年度、単年度で処理していくならば、料率は毎年改定されるべきではないか。それを四十四年からいままで料率を変えないできたということで、累積でかなりの金額があり余ってきているということにつながってきたわけですけれども、それは、要するに国の財源として確保できる、活用できるというときには国民に何も言わないで、減ってきたから下さいと言うのはとんでもない話です。だから、これは単年度で処理しているのではないのが実態としてきているわけですけれども、それについてはいかがですか。
  158. 窪田弘

    ○窪田政府委員 自動車の損害というものはなかなか予測しがたい面もございまして、事故率が変動する要素がございます。  したがいまして、短期に微調整をなかなかしにくいものでございますし、また保険料率のほかに保険金の額をどう決めるかというような問題もございまして、そういうことで、ある程度長期間その料率を据え置いたりあるいは保険金額をずっとそのままにしておいた摩擦的といいますかずれの関係で積立金が生じたというふうな性格のものだと思います。
  159. 玉置一弥

    ○玉置委員 余り同じ問題ばかりやっていると時間が過ぎてしまいますので一応確認をいたしますけれども、自賠責は長期で見るということでよろしいわけですか。要するに事故率、その年度その年度では対応できないということですね。
  160. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 自賠責の保険料率を検討いたしますに当たりましては、単年度の収支もきわめて重要でございますが、収支の累計というものもこれまた重要であろうかと思っております。  料率を引き上げる場合に、一般的に二つの考え方があろうかと思うのでございますが、一つは、単年度収支が悪くなったときに直ちに引き上げを検討する、もう一つは、収支の累計が全く赤字になってから検討するということでございます。これは単年度の収支が赤字になったときに引き上げれば大変小幅で済むわけでございますが、収支の累計が全く底をつきましてから上げるとなりますと相当大幅な引き上げになってくるということで、この考え方二つともそれぞれ理由があろうかと思っております。  ただ、自賠責を今年度のことで考えますと、本年度は御承知のように道路運送車両法が改正になりまして、新車の車検が二年から三年に延長になっております。これに伴いまして一括して三年分の保険料を取られるわけでございますから、それなりの保険料負担がふえてまいっております。なお、いわゆる自動車重量税等自動車にかかる負担が一般的にふえる年でございますから、ことしはできるだけ収支累計というものを重視いたしまして、いますぐ引き上げるというようなことにはならないようにいたしたいと思っておるところでございます。
  161. 玉置一弥

    ○玉置委員 いまの自賠責の料率の問題も、先ほど申しましたように、運用益の分が減ってくるということでその分はたとえ食い込んでも上げない、そういう約束が欲しいのですけれども、いかがですか。
  162. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 自賠責の保険につきまして運用益がありますことは先生御承知のとおりでございますが、ただ、現在の自賠責保険の仕組み、これは自動車損害賠償法によって定められておるわけでございますが、保険収支の赤字が発生いたしました場合に、特別会計の運用益をもって全額その赤字を補てんするという仕組みにはなっていないわけでございますので、現在の制度を前提といたします限りは、特会に運用益の黒字があったといたしましても、収支は別途考えなければならないというのが現状の仕組みでございます。
  163. 玉置一弥

    ○玉置委員 特別会計が赤字になった場合には、一般会計からの繰り戻しというか繰り入れはあるのですか。
  164. 窪田弘

    ○窪田政府委員 その特別会計の性質その他によりまして、その必要があれば法律を設けまして、繰り入れの規定をつくって繰り入れます。(玉置委員「自賠責」と呼ぶ)自賠責は、現状ではそういう規定はございません。
  165. 玉置一弥

    ○玉置委員 余っているから持っていく、足りなければ上げない。こんな勝手な話はないわけで、持っていくなら返すときあるいは足りないときの約束をしてほしいと思うのです。いかがですか。
  166. 窪田弘

    ○窪田政府委員 ですから、この法律にも、後年度繰り入れます、つまりお返ししますという規定を設けて、お返しする約束を別途大臣間でしているわけです。  それから、非常にいろいろな御批判をいただきましたけれども、この自動車損害賠償保険は六割は国が引き受けまして四割は民間の保険会社がやっているわけです。民間の保険会社にもその運用益というものが出るわけでございますが、民間の場合は、その利益は半分、約半分は法人税で取られるわけでありますから半分になってしまいますが、国の場合はまるまる残っていくという仕組み、そういう違いもあるわけでございます。だから半分と言っているわけではございませんけれども、しかし、そういういろいろなことを考えまして今回特別の御協力をいただいたということでございます。
  167. 玉置一弥

    ○玉置委員 自賠責の料金それから任意保険もそうでございますけれども、これは租税特別措置の控除の対象にならないですね。なってないですね。すでに税金を払って所得として得たものを供出している。それを運用して、本来であればマル優分は少なくとも税額の対象から外される。いま三五%が外されますね。だから、もし半分ということであれば、三五%外した六五%の半分しか取れないはずなんですね、理論的にいきますと。それだけ、もうすでに税金を払ったお金を供出してまで自分たちの身を守ろうということでやっているのをまだ取っていくのかということを言いたいわけです、一言で言って。  だから、少なくともそれを自分たちで活用すれば運用益というものも出てきて多少なりとも楽になる。その運用益さえ持っていこうということですから、やはりそれなりに見返りとして利息を十分につけるべきではないか。国債を出すと利息がつくということで困る、で、これを十年やるということですね。大体二千五百六十億の金を十年も借りるような日本財政が悪いのか。確かに悪いのですけれども、全体の比率からいって二千五百六十億、本当に細々と自分たちの身を守るために積み上げてきたお金を、全体の中で、百兆円もある中で二千五百六十億を十年も借りる。何でそんなに十年も借りるのだ、三年も据え置いて。その辺がわからないのですよ。たとえば二年くらいとか一年で返すとか、こういうこと。三年間は確かに苦しいですね。三年あるいは五年苦しいか七年苦しいか知りませんけれども、全体からいくとたかだか二千五百億、それを十年も借りるというのはちょっとおかしいのじゃないか。大体覚書程度でそういう約束をする、それだったらちゃんと法律に出して何年で返しますということを何でできないのか、それについてお聞きします。
  168. 窪田弘

    ○窪田政府委員 国の財政が非常に苦しいという事情は御理解をいただけると思いますが、そういった国の財政の状況とか、あるいはこれは保険者のお金でございますからいずれはお返しをし、またその活用方法については運輸省でただいま御検討中でございます。  そういったいろいろな事情を考えまして、半分程度はこの際御協力をいただきたいということで御相談をして御了解をいただいた、また今回この法律をお出ししてお認めをいただきたいというお願いをしているわけでございまして、今回お出ししている法律の中にはこの二千五百億、たかが二千五百億とおっしゃいますが、そのほかに、たとえば造幣特会から四億円でございますとか、あへんから十三億とか、こういう金額についてまで法律改正をお願いして集めざるを得ないという国の財政事情でございますので、何とぞその辺の事情を御理解をいただきたいと思います。
  169. 玉置一弥

    ○玉置委員 三億、五億とかそんな小さい数字まで法律改正をしなければいけない、二千五百六十億返すのに何で法律に書かないで覚書にしておくのか、六十一年から六十七年ですか。そんな重要なことが何でできないのですか。政府間の約束で、相手が外国であれば別ですけれども
  170. 窪田弘

    ○窪田政府委員 これは、還元方法がどういうことになるかとか、あるいは収支状況によっては早くお返しをする必要が生ずることもあるかもしれませんし、また国の財政事情もどうなるか、いまはっきりとしためども立ちがたい状況でございますので、これをはっきり法律で書くということはかえって適当ではないのではなかろうか。返すということははっきり法律にしているわけでございまして、六十一年から六十七年ということも大臣の覚書で書かしていただいているわけでございます。事情の変更がいろいろあり得るわけでございますから、またそのとき法律改正を煩わせるよりも、そのときの状況に対応できるようにしておいた方が適当ではなかろうか、こういうふうに考えた次第でございます。
  171. 玉置一弥

    ○玉置委員 先行きの話で、十年先というのは本当はわからないのですね。そのときにお金があるかどうかという保証もないわけですけれども、われわれが心配するのは、たとえば、大蔵大臣がというよりも政府当局全般ですけれども、昨年まで財政再建という言葉を中心に使われてきた。五十九年赤字脱却だ、僕らはそんなもの無理だという話をしていても、いや、これは意地でもやるというふうなことでやってこられた。ところが、ことしから財政改革という名前に変わってきた。これは単に赤字脱却だけじゃなくて、増税絡みの話とかいまの税制で全体の見直しとか、そもそも予算のつけ方の問題とか、いろいろなことが含まれてきているかと思いますけれども、大体言葉が変わったということが非常に大きな意味があるのではないか。たとえばいまの自賠責の返却にしても、先になったらちょっとわからない。返すことは返すけれども、負担になるかどうかわからないという感じで、たとえば増税をどんとやって一気に返してしまうということもあり得るかもわからない。こういうことで法律にしないのではないかというような推測もできるわけですね。  そういうことを考えていきますと、まさにいま返し方を明文化しない、一応返すという約束だけはしておく。覚書なんというのは大臣間ではまた変えようと言えば変えられるのですから、こんなのは、国民に対してこういうふうにやりますというふうに明確に打ち出したことにはならないわけです。当事者間でどちらか一方が変えてくれと言えば変えるというのが通常の規約ですからね。覚書でもそうです。  そういう面から考えていきますと、裏に増税なり財政の組みかえというものがあるのではないかというような気がするわけです。それがなかったら明文化できるはずです。われわれとしては、何で十年もかかるのか、それを短縮できないのか、これがまず一つ。それから、利息を苦労してためてきているお金、このために自賠責の料率を上げないでもってきているわけですから、これを取り上げるということは料率改定につながる。少なくとも返却期間については値上げをしないという約束をしてほしい。大臣いかがですか、返却期間十年ですけれども
  172. 猪瀬節雄

    ○猪瀬説明員 先ほども説明申し上げましたが、自賠責の収支の場合に、運用益に黒字がございましても、現在の仕組みを前提といたします限りは直ちにこれをもって赤字に充当できない仕組みでございますから、現在運輸省の方から、特会から一般会計に一時お借りいたしておりますのは、そういった意味ですぐに使う必要のない部分でございます。したがいまして、この部分の返却をいたします間は、収支がいかに悪化しようと料率を引き上げないということは実際問題として困難でございまして、収支は収支として料率上検討せざるを得ないのでございます。
  173. 玉置一弥

    ○玉置委員 大蔵省というのは最近信用できないというか、ああ言えばこう言う、こう言えばああ言うということで、二面か三面か四面か知らないけれども、いろいろな方向へ固まってないで動き出しているような感じがするわけですけれども、昔から大蔵官僚というのは世間で非常に信頼が厚かったと思うのですけれども、その辺は十分持ち続けていただきたい。先ほどの話じゃないけれども、貧乏するとだんだん担保能力もなくなりますし信用もなくなってくるということにつながってくるかもわかりませんが、苦労されてやっておられるのはわかりますけれども、姿勢を貫き通すならば最後まで同じ姿勢でいっていただきたい。それであれば、われわれとしても十分納得して対応できるわけですけれども、前のときと今度と違うじゃないかとか、たとえば厚生年金と同じような重要な自賠責と何で違うんだろうという気持ちをみんなが持っておるわけです。  その辺をぜひやっていただかないと、特に財政に対する信頼度というのはますますなくなってくると思うのです。だから、値上げというのは本当に御都合主義で、借りるときには借りますよ、足りなくなったら本当は一部でも返しましょうかというのがあたりまえの話で、向こうがつぶれるまでがまんして待っている。そうすると自分のものになってしまう。何となくそういう気になるのですね。サラ金だとまた重ねて貸しますよ。ところが、いまの話では相手がつぶれかけても全然知らない、こういうことになっているわけです。  その辺から見ると、もっと国民の皆さんから信頼していただけるような、まさに日本の国の柱ですから、財政がぐらつくようなことがあっては大変なことになりますけれども、それだけ信頼できるように、また説得できるように方向を変えないでやっていただきたい、それだけお願い申し上げまして質問を終わります。
  174. 森美秀

  175. 簑輪幸代

    蓑輪委員 財源確保法案の問題に関連して幾つか御質問をするわけですが、最初に法案のつくり方についてです。  今回、この一本の法律で、赤字国債発行から国債費定率繰り入れ等の停止、さらには特別会計特殊法人から一般会計への繰り入れということで自賠責特会、あへん特会、造幣局特会からの繰り入れのほか電電や競馬会からの国庫納付、こういうものを行うということで法案が出されております。しかし、これらは、それぞれの措置は国の財源確保という一点では縛れるかもしれませんけれども、それぞれが全く内容の異なるものでありますし、担当する省庁も違う、委員会も違うという異なった性質の内容を持っているわけです。前回、五十六年度財源確保法のときにも、こういうことをやってはいかぬのじゃないかということが指摘されたわけですが、またこういうことをやらかす。一遍こういうことをやればまた次も許されるというような形で安易になっているのかと思いますが、国民から見ても非常にわかりにくいし、国会審議権ということから見ても非常に問題があろうかと思います。  前回のときには渡辺大蔵大臣が、ともかく臨時特例のものである、それからいろいろな意見は私はあると思いますが、今回はこれをぜひ一本でお願いしたい、スピードを上げてやらなければならぬ、こういうような点もございまして便宜的にまとめさせていただいたわけでございますというふうに答弁しておられる。つまり、非常に便宜的なもので、合理的なものじゃないわけですね。そして納得できるものではない。前にも、行革関連法案のときにもこういうやり方がされて、国会審議のあり方がどうというような問題よりも行政側の都合が優先されている。それに国会が合わせてやっていく、振り回されるというようなやり方は非常に問題じゃないかというふうに私は思うわけです。  だから、こうしたやり方については、絶対にやってはならないということをきちんと確認をしていただかなければなりません。何としてもそういうことをやらないように努力をするという気配すら見えなくて、今回はこれでまとめてやろう、こういうやり方はとても問題だというふうに私は思います。その点で、渡辺大蔵大臣はとにかく今回だけお願いしたいと言われたのですけれども竹下大蔵大臣はどうおっしゃるでしょうか。
  176. 竹下登

    竹下国務大臣 一つは、財確法はいずれも財源確保するための措置でございます。したがって、立法の動機と趣旨が一緒であるということ、それから二番目は、いずれも五十八年度特別措置であるということ、それからもう一つは、税外収入確保によって特例公債の縮減が図られる、各措置は相互に関連がある、こういうようなことが一括した理由として述べることができるかなと私も思っております。  そこで、元来国会審議の問題に対しては、大蔵大臣が踏み込むというのは余りいいことじゃないと思っておりますが、国会議員の立場に立って、また立法府のあり方から見た場合に、さてどっちがいいかということになりますと、やはり両論あると思うのであります。行政改革で、その立法の動機、趣旨の一体化、法律の性格が同一とかいう場合に一緒にしたこともございます。だから私は、これから臨調答申に基づいて行革関連がなされる場合、あるいは立法の趣旨として、たとえば通商摩擦等を解消するためのもろもろの行政措置に対する改廃を一本化して行う法律とかいうような問題がやはりこれから出てくるのではないかな、それがある意味において、議論の仕方になりますと、連合審査でございますとかいろいろな方法はこれは国会のことでございますので、私もいま行政府にありますから、それに口出しをすることは差し控えなければならぬと思いますが、こういういわゆる提出の仕方というのも、受けとめていただく側の判断に対して一応の合理性はあるのではないか、こういう感じでございます。
  177. 簑輪幸代

    蓑輪委員 合理性があるという言い方でおっしゃられますと、今後もやるぞと言わんばかりの感じがするわけですけれども、こういうことはきわめて異常なやり方であって、前にも専売や産業投資特会とか繰り入れというのはありましたし、いろいろなことで、財源確保をするためという名目でもって何回もこういうやり方というのがされたということもあるわけです。  だけれども、基本的に考えてみますと、憲法八十四条の租税法律主義、つまり国会の議決ということの中に一体どういうものを考えるかという問題もあります。さらにまた具体化する国会法の場合でも、総予算及び重要な歳入法案については公聴会を開かなければならないというような位置づけもされておりますし、歳入法案の重要性というものは、全部ひっくるめて重要だから一つにしたらそれでいいというようなものではないと思うのですね。  一つ一つが重要であり、それぞれ問題点が別々であるということを考えてみますと、何でも歳入だから大蔵委員会へ持ってくればいいというやり方はいかがかというふうに思うのです。国民から見ても議員から見ても、それぞれの法案の問題についてよくわかるというふうにすることが大事だろうし、そういう点からいうと、こうやってひっくるめてやるというのはわかりにくいということだと思います。  今後そういうことがあり得るというふうな、むしろ開き直った答弁のようにいま私は受けとめましたけれども、前の大蔵大臣のときは、今回一回限りですから何とかよろしくという話で、それが今度は、こう続くとそれは言えなくなったので、これからもありますよというような話ですと、ちょっとこれは問題だろうと思うのです。やはりこういう姿勢ではなくて、今回はこうやって出してしまったわけですから、こうやったけれども、できるだけ今後についてはそういう方法を避けたいという方向性、姿勢を示していただかないことには、これは納得できないと思うのですが、いかがでしょうか。
  178. 竹下登

    竹下国務大臣 結局、法律案を提出するに当たりましては、その法律の内容、改廃も含む、国民に最も理解ができやすい方法が好ましい、これは私も同感です。だから、開き直る考えは全くございませんが、ある意味において、立法の動機、趣旨の同一であることと、法律の性格が同一である場合は、一括する方がわかりやすいという議論もまた存在するのじゃないかな。その辺は見解の分かれるところであるかもしれませんが、蓑輪さんのおっしゃる、わかりやすくしろという大義名分はよくわかります。
  179. 簑輪幸代

    蓑輪委員 開き直るつもりがないと言って開き直っておられるので、ちょっと納得できませんが、丸めてやりますと、やはり質疑の時間等もおのずと縮小されるとかいろいろな意味で、主管委員会でじっくりと取り組む場合と比べて不十分になりがちであるということは避けがたいと思うのです。そのことを十分考えていただいて、私は、今後二度とこのようなことのないように強く申し上げておきたいと思います。  続いて、今後の財政運営の問題について入りたいと思います。  大蔵省としては、五十八年度予算が成立したということで、次に五十九年度予算の方に目を向けられ、すでに概算要求枠をマイナスシーリングで各省に示したという報道が行われております。五十九年度マイナスシーリングだというふうにもうはっきりしているのか、そしてまた、その際に一〇%のマイナスシーリングという報道ですけれども、そういうことで指示されたのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  180. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘のように、五十八年度予算が成立いたしました後、私が閣議で発言をいたしましてお願いをいたしたことがございます。それは、五十八年度予算を成立させていただきました翌日の発言でございます。  これについては、五十九年度概算要求限度額はきわめて厳しいものにせざるを得ないと考えております、また、要求の内容等についても、行財政の守備範囲の見直しという見地から思い切った制度の改廃を織り込むよう、事務当局に前広に御検討方を御指導を願いたい、具体的にはいましばらく勉強させていただきますが、いずれこうした方向で御相談させていただくことになることと思われますので、あらかじめよろしくお願いをいたしますという発言を申し上げたわけでございます。  したがって、いま発言に読み上げましたとおり、具体的な率等についてはなおしばらく時間をちょうだいいたしまして、これからの経済情勢等の推移を見ながら政府部内において検討させていただきたいというふうに考えておりますので、一〇とかいう数字を決めたわけではございません。
  181. 簑輪幸代

    蓑輪委員 具体的数字はまだ決めてないということですけれども、すでにそんな報道がされているというのは、大蔵省の基本的姿勢がそんなところにちらちらときっとうかがえるようなことがあったのだろうと思うのですね。仮に一〇%ということになれば、これは大変な額で、歳出の切り込みということも容易ならざるものがあると思いますけれども、それでも、一般歳出の一〇%で三兆円というようなことになる、だとすると、中期展望で示されている五十九年度の要調整額というのは四兆六千八百億円ということですので、それには及ばないということから見ますと、歳出削減そのものでこの要調整額を満たしていくということがきわめて困難であろうというふうに想像されるわけですね。  そういたしますと、歳出削減でできるだけの努力をしてというお話だとしても、じゃ大体どのくらいの歳出削減を考えるのかというふうなことが当然私ども知りたいところでございますので、歳出削減の目標というようなものについて、パーセントでもしあれでなければ、金額的にでも大まかに大臣の頭の中にでもあればお聞かせいただきたいと思います。
  182. 竹下登

    竹下国務大臣 頭の中にまだ入っておりませんで、これから経済情勢の推移を見ながら勉強さしていただいて、そうして五十八年度いま三・四%という成長率を一応めどに立てておりますが、それを土台として弾性値どれぐらいなものでどれだけの税収があるのかというようなことももちろん検討しなきゃなりませんが、一方、削減の方も、まさに糧道を断ってこれに取り組むということになりますと、各省庁に施策、制度の根源にさかのぼっての御協議をいただかなきゃならぬようになる、きわめて抽象的な発言でございますが、そのような概念としての厳しさをいたく感じておるということであります。
  183. 簑輪幸代

    蓑輪委員 きわめてあいまいでさっぱりわからないわけですけれどもマイナスシーリングとかというやり方については引き続きなさるおつもりということに伺っていいですか。
  184. 竹下登

    竹下国務大臣 シーリングの設定に当たってはきわめて厳しいものになるということでございます。
  185. 簑輪幸代

    蓑輪委員 前年のシーリングよりもはるかに厳しいシーリング、マイナスシーリングであると伺っていいわけですか。
  186. 竹下登

    竹下国務大臣 率直に申しまして、そこのところまでまだ詰めておりません。
  187. 簑輪幸代

    蓑輪委員 何ともお答えにならないわけですけれども、シーリング方式そのものというのがずっとここのところとられているわけですけれども、非常に公平に見えて実はこれほど不公平なことはない、重要な問題を含んでいるというふうに私は指摘せざるを得ないと思うのですね。  大蔵省が一月に出した「今後の財政改革に当たっての基本的考え方」というところで「五十八年度予算においては、一般歳出についていわゆる聖域を設けることなく、徹底した見直し・合理化を進め、」云々と述べられているわけですけれども、実際上数字を見てみますと、社会保障関係費が〇・六%、そして文教関係費はマイナス一・一%、地方財政関係ではマイナス二〇・四%というふうに違いが出てき、そして一方で、いわゆる防衛関係費は六・五%それから経済協力費が七・〇%、エネルギー対策費が六・一%というプラスになって、優遇される部分と非常に冷遇される部分というのが露骨な差となってあらわれてきているわけです。  そして、それを見てみますと、聖域を設けたことはないとか設けることはないというふうには再三御答弁があるわけですけれども、だれが見たって軍事費等の聖域扱いというのは否定できないものだというふうに私は思うのです。  前回、この問題について竹下大蔵大臣にお尋ねをしましたところ、聖域とはひじりの域であるという答弁をいただきまして、これではとてもじゃないけれどもまともな答弁とは言えないと私は思うのです。特別扱いしないとかということで言うならば、これは特別扱い以外の何物でもない。だとするなら、もう一回、一体聖域化するということはどういうことなのか具体的に、聖域化するということがどういうことだということがわかれば聖域化しないということも意味がわかりますので、聖域化するということの具体的な内容をお聞かせいただきたいと思うのです。
  188. 竹下登

    竹下国務大臣 聖域化するという考えはございません。聖域を設けないという考え方はありますが、聖域を設けるという考えはありません。しかし、聖域とはまさに読んで字のごとくひじりの域でございまして、いわば踏み込んではいけないところ、言葉の意味はそういうことになるのかなと思っております。  ただ、ちょうど私もこの間永年勤続の二十五年の表彰をいただきまして、それで二十五年前と比べてみますと、たとえば私ども最初出たときは一兆ヨイクニでございますから一兆四千百九十二億円でごさいます。そして、いまや五十兆三千七百九十六億でございますから、予算が約四十倍、社会保障は約七十倍、防衛費は十八倍、こういうことになっておりますので、それなりにやはりそのときどきの国民のニーズに適応して変化したものだなという感想をひとしお深くしております。  だから、そのときの一つのものをとらえて、それに対する比較増減だけで議論するのも一つの議論だが、やはり三十年ぐらいさかのぼって議論してみるのも一つの見方だな、こういう感じを深くしております。
  189. 簑輪幸代

    蓑輪委員 聖域についての政府として明確な御答弁がいただけないわけで、聖域というこの言葉の意味に込められた中身についてお述べにならないということは、聖域化していないということについても何の意味も持たないということになるわけですね。ですから、聖域を設けることなくと言われているわけですが、これはもうしようがない、あとは国民がこの予算を見て、そして政府が聖域化していると見るか見ないかの問題になると思うのです。  それと同時に、いま二十五年勤続の話の中で社会保障費がうんと伸びた話をされましたけれども、物は考えようでございまして、社会保障が前はいかにひどかったかということなんですね。それで人並みに社会保障を進めてくるその中でふえてきただけの話であって、それは、その前の段階がいかに低い水準であったかということを意味するものだと私は受けとめます。  そしてさらに、現在の段階でも社会保障の国家予算に占める割合は日本はそれほど自慢できるようなものではないということは、竹下大蔵大臣も御存じだと思うのです。先進諸国の間における社会保障の実態の中から見て、特に予算の面から見ても十分であると私は言えないというふうに思います。そして、そこへ持ってきて、さらに一層社会福祉を充実する姿勢ならば、これはまだまだたとえわずかながらも評価できるわけですが、実際上、福祉関係ではどうやって削るか、文教関係でもそうですね、削ることばかり考えていて充実させるというようなことの姿勢は少しも見られない。これではとても国民が不安を感じるのはあたりまえのことだと思うのです。  児童手当だとか児童扶養手当を廃止しよう、あるいは国民健康保険の国庫補助を引き下げよう、それから教科書を有償化しよう、私学助成の切り下げもしようなどというようなことを考えているようでは、とても私どもは納得できないわけです。福祉予算とか文教予算とか、そういうものをもっとふやしてほしいというのは国民の世論であることは再三この委員会で申し上げたとおりです。そして、その際削るべきものは軍事費であるということも国民の世論であり、そういう点では政府とか自民党とかの考え力はどうであるとかいうことも言われますけれども、基本的には世論にこたえたそういう対策をとっていただかないことには、これから大変なことになるだろうというふうに私は申し上げておきたいと思います。  国の役割りということについて臨調などがいろいろ言っておりますけれども、真に国民生活を充実させて定安した暮らしを保障していくということがやはり重要だと思うのです。その中で、憲法二十五条では生存権ということではっきりうたわれておりますし、特に軍事費を抑えるという世論にこたえて、今後その努力をしていただかなければなりませんが、前にもちょっとお尋ねしましたように、軍事費をGNPで一%の範囲内にとどめるという閣議決定があるにもかかわらず、来年についてはその枠を超えてしまうという危険があるので、この枠自体を考え直そうではないかという動きがあったわけですけれども、いまの段階になってこの一%の歯どめを取り払うということについて、竹下大蔵大臣としてどのようなお考えか、もう一度お伺いしておきたいと思います。
  190. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほどのことでちょっと付言しておきますが、私なりに言葉を整理してみますと、いわゆるいまおっしゃった歳出の徹底した見直しとか聖域のない査定とかという場合に使われておるひじりの域とは予算削減の対象として踏み込んではならない領域、これを聖域という、こういうことではないかと思っております。  それからその次の、いろいろ御議論なすっておりますが、予算というものはある意味において富の再配分でございます。したがって、絶えず、負担する人も国民であり受益者もまた国民であるという考え方において、いわば政策選択の順位とかという問題にそれぞれの考え方の相違がときにあろうかとも思っております。  それから、防衛費のいわゆる一%の問題でございますが、私は個人的に、一%というものが昭和五十一年でございましたか以来やはり一つの歯どめとでも申しますか、としての意義はあったというふうに思っております。今後の問題でございますが、いま一%を変えるというような考えは、私個人で申し上げるべき筋の問題ではございませんが、内閣としていま考えておりません。
  191. 簑輪幸代

    蓑輪委員 軍事費という問題について世界でも、それぞれの国の事情に合わせてできるだけ軍縮の世論にこたえて削減をしていこうという努力もされていると思いますが、アメリカにおいてもレーガン政権軍拡予算が否決をされるという状況も生まれているわけですね。軍縮がいまや国際世論という中で、中曽根総理も軍縮という言葉を口にされますけれども、口で軍縮と言いながら予算軍拡という中で、国民はますます信頼できなくなるということになりかねません。  そういう点では、五十九年度予算において、特に軍拡ではなく軍縮そして福祉重視という姿勢を打ち出していただかないことには、これからの国民の選択にも重大な影響が出てくるだろうというふうに思うのですね。五十九年度予算の編成に当たって、軍縮を求める世論に見合った軍事費削減という方向に努力していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  192. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的には、私は軍拡予算であるという考える方はございません。「防衛計画の大綱」に従って防衛力を整備しておる、こういうことであろうと思っております。  それから、福祉関係について予算を充実しろ、その充実の仕方にも私は政策選択の問題があろうかと思いますが、基本的に充実すべき問題であるという点については認識を同じくしておるとお考えいただいても結構だと思います。
  193. 簑輪幸代

    蓑輪委員 充実すべきであるとおっしゃりながら予算がどう出るかということが問題だと思いますので、その点、五十九年度予算の中で竹下大蔵大臣の手腕を見守りたいというふうに思います。そして、そういう抽象論ではなくて、やはり私は、具体的な一つ一つの項目に照らし合わせてみて今後厳しく点検をしてまいりたいというふうに思っております。  いま私どもを取り巻く状況の中では、特に消費不況ということで、景気回復してほしいということがかなり国民の強い要望になっているわけです。その中で、消費不況を克服するというためにはぜひ政府も積極的に、とりあえず所得税の減税とかあるいは人事院勧告の完全実施とか、こういうものを強く望んでいるわけですね。国民がその一日も早い実現を望んでいるわけですけれども、いまのところ、これまでの論議をお聞きしておりましても、減税の問題については、その規模についても時期についても方法についても財源についてもきわめて不明確なままというか、全く明らかになっていないという状況だと思うのです。ただ単に減税をするであろうというようなにおいだけかがしてもらって、あげくの果ては減税どころか大増税が待ち構えているという不安が少しも消えない状況だというふうに私は思います。  ぜひこの機会に、大蔵大臣が経済対策の面でも重要な役割りを持っておられるわけですし、去年のように、やられるだろうと期待をするうちにとにかく一銭も減税なしに終わってしまったというようなことがあってはなりませんので、それには減税を本当に実現する気ならそれに至るための対策、プログラムというものが重要だと思うのですね。大蔵大臣が、この所得税減税、少なくとも一兆円以上の減税実現のためにどのような決意をお持ちで、どのような具体的な段階になっているのかということを重ねてお尋ねしたいと思います。
  194. 竹下登

    竹下国務大臣 所得税の減税問題につきましては、何といったって与野党の合意がございます。したがってこれを尊重しなければならぬ、これが一番の大義名分であります。  さて、それではその時期、規模等々の問題になりますと、まず、やはり五十七年度決算の確定、そうしてその後の経済展望、それに基づいて五十八年度の税収動向というようなものがある程度明らかにならなければならぬ、それが七月というようなことを、一つの時期、期を画する時期としてそういうことを申し上げてきております。  それには、やはりこの国会で行われました論議、これをまず整理をしなければなりません。いまもなお行われておるにいたしましても、いま予算も一応成立をいたしました後、部内において、国会でもろもろの御論議をいただいた問題についての念査をいたしております。そうして、いま一つには減税小委員会、本委員会で御苦労いただきましたが、これらはやはり貴重な専門家の意見として最も掘り下げて今後ともフォローして勉強していかなければならぬ課題だと思います。それらを念査いたしまして、そして、税調の方であらゆる予見を持たないで御論議をいただくという筋を通していこうかな、それにはまず税調の会長さんに専門的に審議するためのいわば部会を設けていただく方がいいのか悪いのか、それらも含めて相談する時期もあるのではないかなということで、まだ部内で相談をしておる最中でございます。
  195. 簑輪幸代

    蓑輪委員 所得税の減税ということは財源がないとできない、これは当然のことなわけですが、その財源が五十八年度予算の中には盛り込まれていない、このこともはっきりしているわけですね。そこへ持ってきて、七月になって五十七年の決算を見るとどれだけ出てくるかという話ですが、それが現在の状況のもとで一兆円以上余分な金が浮いてくるというような決算になりそうもないということも衆目の一致するところなわけですね。とらぬタヌキの皮算用という言葉がこざいますけれども、そういうようなことでは財政経済運営ということは困るし、国民も本気であると信用することができないと思います。  そこで、七月になってみないとというようなことで、それまで待てということでは私はとても納得できませんが、特に減税の実施に当たってどういう財源でやるかということ、一兆円以上という莫大な財源をどうやって確保するかということについて、余分なお金が出てくる見通しがない時期ですから、それならもう赤字国債発行してやってしまったらどうかというような意見もあるやに聞いているわけですね。  ところが、大蔵大臣は、そういうやり方はやってはならないという御見解のように伺っておりますが、赤字国債発行して減税を行うという考え方についてはいかがでしょうか。
  196. 竹下登

    竹下国務大臣 国債政策の一番の欠点というのは、いわゆる市中の金融市場に対して大きな負担を負わせて、それが結局金利の上昇をもたらして、民間投資の需要に対してこたえ切れないような状態になっては、景気浮揚どころか景気の足を引っ張る結果になる。したがって、赤字国債というものを直ちに念頭に置いて減税財源として考えるということは、最も慎まなければならぬ考え方一つではないかと申し上げておるところでございます。
  197. 簑輪幸代

    蓑輪委員 減税のために赤字国債発行しないということになりますと、財源をまたどうするかということになりますが、それだったら、まあ減税のためには大型間接税の導入というのしかないじゃないかという考え方もあるわけですが、この大型間接税の導入によって減税財源確保するという考え方についてはどうですか。
  198. 竹下登

    竹下国務大臣 与野党の合意は財源確保も含めてなされておるわけでございますので、いま申しましたように、特例公債をすぐ念頭に置くべきでないということは事実でございますが、いまその財源をどうするかということには、直ちにあらゆる念査をいたした上で、予見を持たないで税調の御論議をいただこうと考えておるわけであります。  そこで大型間接税、こういうことになりますと、これはむずかしい議論でございまして、大型とは、中型とは、小型とは、こういうような意見も出ます。しかし、そういう問題はともかくとして、今日はもろもろの議論を集約したものを予見なしに御報告申し上げて税調の御議論をいただくというのが最も素直な対応の仕方ではないかと考えております。
  199. 簑輪幸代

    蓑輪委員 大蔵大臣は前に、安易な赤字国債発行や増税を念頭に置くべきでないというふうな考え方を述べておられますので、こういうふうな安易なという言葉にまた微妙なニュアンスがあるのだろうと思うのですけれども、しかし、それは基本的に赤字国債にしても大型間接税にしても国民が望んでいない方法であるということを踏まえての御答弁だと私は伺ったわけです。  そこで、この審議の中で、先日小倉税調会長がここの委員会参考人としていろいろ述べていただきましたけれども、この小倉税調会長とかあるいは土光前臨調会長とか、それから自民党の税調会長の村山さんとか、いろいろな方が所得税減税財源のために大型間接税の導入ということも考えるような趣旨の発言がいろいろ報道されているわけですね。  大蔵省としても、直間比率の見直しとかあるいは租税負担率が上がらなければ、その中でのやりくりならよろしいのではないかというような理解のもとに新しい税を考えてみたりというような、そういうニュアンスも感じられますけれども、仮に直間比率の見直しとか租税負担率の上昇でなければよいという理屈でもって大型間接税が導入されるということがあっては大変なんですが、そんなことはないと伺ってよろしいのでしょうか。
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 税調へ御審議いただくためにはそういうあらゆる予見は挟まない、こういう考え方でございます。
  201. 簑輪幸代

    蓑輪委員 前の質疑のときでも、一般消費税(仮称)問題について論議を申し上げまして、大蔵大臣は、一般消費税(仮称)というようなものは、それは国会で否定されているけれども、それ以外のものであれば論議の対象とすべきであるという御答弁をいただいた記憶があるのですが、小倉税調会長にこの間にお伺いしましたときには、増税なき財政再建というものも非常に迷惑だというようなお話を含めまして、最近小倉税調会長が、あの国会での決議というのは一般消費税(仮称)それのみではなくて、それ類似の税はいかぬという解釈だって当然ある、付加価値税を考える時期だとしても、それだって付加価値税というのは一般消費税の範疇だというふうなインタビューでのお答えもあるわけですね。  私は、国会決議の趣旨というのは、大臣は前回も一般消費税(仮称)ということが否定されただけだとおっしゃいますけれども国民の受けとめ方あるいは真意ということは、一般消費税という言葉に含められる消費に着目した広い税、大型の税、そういうものが否定されたという理解をしている、そういうふうに思います。そしてまた、それが国民の意思にかなったものだというふうに思うのです。  そこで、一般消費税(仮称)という税が拒否されたというだけではなくて、そういう類似の税、それはやはり国民世論を踏まえた国会の意思として否定されているというふうでないと納得できないわけですけれども大臣は前回御答弁されたあの考え方以外にはあり得ないでしょうか。
  202. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいつでも申し上げるのですが、昭和五十四年の決議におきまして、国民理解を得るに至らなかったいわゆる一般消費税(仮称)は財政再建の手法としてこれをとらない、こういう決議、この決議をおつくりいただきましたときに、私もいろいろ参画と申しますか、御意見を拝聴しておりましたが、私どもがそのときに一番念頭にありましたのは、その議論を進めていった場合に、消費一般にかかる税制そのものを否定してしまうということになりますと、税体系のあるべき学問的姿をも否定してしまうことになりはしないか。今日も消費一般にかかる税制はございますね。それを、全体を否定してはならないから正確な言葉がないものかなというので、いわゆる一般消費税(仮称)というこの言葉をお考えいただいたわけです。だから、幅広く消費に着目した間接税全部否定してしまうということは、税制の理論として私はこれはいつまでも適当でないことだと思います。だから、先般のいわゆる一般消費税(仮称)の手法というものは、国会決議がございますが、国会決議で税制の理論全体を否定するということは避けられた、さすが国会の良識だというふうに理解しております。
  203. 簑輪幸代

    蓑輪委員 学問的にとおっしゃいますけれども、前回の学者、参考人意見では、一般消費税というのは広く支出一般を課税対象にしていこうという、そういうものを一般消費税だと言う。課税物品を特定して個別に課税していくものが個別消費税ということであって、学問的には一般消費税というのはそういうものなのだというふうなことでお話をいただいているわけです。そしてまた、この一般消費税というものがいかにも税痛がない。税というものは税痛がなくちゃいけないのに、そして応能負担の原則というものに合致しなければいけないのに、一般消費税というものは税痛もなく、応能負担原則にも外れているという問題があって、これをやるべきでないというのを非情に強い口調で言っておられるわけですね。そういう言い方は、つまり一般消費税(仮称)にとどまらず、いわゆるすべてのそういう消費に着目した税制全般を否定すべきであるという見解も学問的に述べられたわけです。  税調会長は、減税をやるために何としても増税というのを考えなければしようがないのだ、そのときに相当知恵を出さないと、国会決議があって税調が容易に動けない、うまいこと何とかあれをすり抜けなければならないという姿勢を示しておられるわけで、そういうのは抜け道を考えるというこそくなやり方なのですけれども、私は、やはり国民を欺くものだと言わなくちゃならないと思います。  一般消費税あるいは付加価値税、そういうような言葉の問題にかかわらず、その手の税について、大型間接税については、ぜひやらなくて済むような財政運営財政改革、そういうものを進めるのが大蔵大臣の仕事じゃないかというふうに私は強く要望申し上げ、お願いをしておきたいというふうに思います。  国債の問題について少しお伺いします。  大量の国債発行が続いておりまして、非常に財政を圧迫しているわけです。このままでどんどんと国債発行し続けられると一体どういうことになるのか、背筋の寒くなる思いがするわけですけれども、一定の国債発行の歯どめというものを考えなければゆゆしい事態に立ち至ると思うのですね。臨調でも、こうした問題について、政府公債発行額や公債依存度等についての簡明な指標により公債発行に歯どめをかけることというのを求めているわけですし、額とか依存度、そういうものを前年度に比べて目立って減らしていくようにしなければならないと思いますし、そのための国債発行の歯どめというものを確立すべきではないかというふうに思いますが、その点いかがでしょうか。
  204. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに公債発行上の制限として、実際問題としてある種の歯どめが有効であると考えます。  そこで、その歯どめというのは、一つは建設公債という原則と、いま一つは市中消化の原則と、こうあるでありましょう。それを踏み出して特例公債発行に今日至っておる。そうなると、いまおっしゃいます歯どめという問題について、予算総額に占める比率とかあるいは一般歳出に占める比率とか、場合によっては対GNP比と言う方もいらっしゃる。あるいは租税収入、税収との対応で比率を考えると言う人もいらっしゃいます。そして私ども五十五年予算を組むときには、初めに一兆円の減額ありきと、率よりも前年度対比ということを申しました。今年度も結果的には、比率は下がっておりますが、対補正予算比一兆円減額、こういう一つのめどを立てたわけです。  したがって、総合的にそうしたものがあることは私も好ましいことだと思っておりますので、直ちに具体的な考え方を示すことはなかなかむずかしいのですが、一生懸命勉強もしておるところです。どういうのが一番国民皆さん方にもわかりやすいし、われわれが予算編成に当たっても最も念頭に置きやすいかと勉強させてもらいます。
  205. 簑輪幸代

    蓑輪委員 軍事費についてはGNP比一%の枠にとどめるというような歯どめが一応ありますが、国債発行についての歯どめというのは現在明確なものがない段階です。それの必要性について大臣はお認めになったと思いますが、いつごろまでにそういうものがまとめられるとか、真剣に検討していらっしゃって、何か一定の時期に結論が出されるというふうな期待ができるのでしょうか。
  206. 竹下登

    竹下国務大臣 先ほども申し上げましたが、いろいろのそういう数値というものが考えられると思います。  これにつきましては、いまおっしゃる明確な指標昭和四十年代の前半においてすら一時は一六%にまで達した公債依存度を五%にまで引き下げる努力が行われた、今後、それ以上にはるかにむずかしい状況にあることを銘記すべきである、という指摘がございますが、そのことにつきまして、非常に簡明な指標というようなものについては、いつまでとおっしゃると、国債依存度というのはすでにありますが、私も欲しいものだと思って勉強しております。
  207. 簑輪幸代

    蓑輪委員 それをできるだけ早くつくらないと大変だと思います。前の渡辺大蔵大臣は、国債発行がどんどん進んできたのは、そのときそのときの大蔵大臣が、ことしは必要だからということで出していく、大臣を十年もやっている人はいないものだから、後のことは、手形を発行して落とすという責任を同一人がとることがないものだから、そういうことがあったということで、ざんげをしておりますというような話をされました。  竹下さんが十年も大蔵大臣をやっていただけるか、総理大臣でも結構ですが、要するに、責任を持って将来に向かっても国民に対して責任をとる体制という点で、こういう歯どめがかかっているんだなというのが見えないと、ぐあいが悪いと思うのですね。鋭意勉強中ということでございますが、いろいろなことをいつも勉強中でなかなか早く結論が出されないと、心配な状況が一層広がるばかりです。めどが出せないとおっしゃるのでやむを得ませんが、とにかく私はそこのところをきつく指摘をしておきたいと思います。  それから、国債についてどんどんと発行される中で、資金運用部資金でこれを引き受けするという問題が、それがだんだん巨額になるという問題があります。やはり本来は、先ほども大臣もおっしゃいましたように、市中消化というのが基本であるということだと思うのですね。市中消化ができないという事態は、およそこれ以上国債発行をするなということを国民が警告しているということだと私は思うのですね。市中消化ができないのなら、そこで国債発行をストップするというのが自動調節機能にもなるし、そういう方向でやるべきであって、国債は資金運用部資金で引き受ける、そしてまたその後日銀に売るというようなことで解決していく、操作をしていくというやり方は絶対にやってはならないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  208. 竹下登

    竹下国務大臣 それは、日銀引き受けなどは絶対にやるべきでないことだと思っております。
  209. 簑輪幸代

    蓑輪委員 毎年毎年同じことを質問しなくちゃならないということは大変問題だと思いますけれども、特に財源確保ということについては厳しくなってきている中で、今後国債償還というのが減債基金が枯渇するという事態を迎えている中で将来どうなるだろうかという不安は国民の中にもかなり広がっている。  そういう事態ですから、本当にちゃんと償還がされるのか、赤字国債の借りかえをやるとかあるいは償還のための赤字国債発行されるとか、そういうようなことになるんじゃないかという心配もありますが、そういうことはないと伺ってよろしいのでしょうか。
  210. 竹下登

    竹下国務大臣 ちょっと趣旨がわからなかったのですが、えらい済みませんが、もう一遍聞かせてください。
  211. 簑輪幸代

    蓑輪委員 償還のために赤字国債の借りかえとかそれから償還のために赤字国債発行とか、そんなようなことは絶対にないということでしょうか。
  212. 竹下登

    竹下国務大臣 要するに、特例債は借りかえをいま法律上も国会答弁でもしない、こういうことを言ってきたではないか、その方針を貫きなさいということの御鞭撻だと受けとめまして、やはりこれも安易にそういうことを考えてはいかぬなと思っております。  いつでも申し上げますように、歳出をカットするのか、あるいは負担増を求めるのか、あるいは借りかえまたは新しい赤字公債発行でもってこれに充当するのか、こういうようなことになるわけですから、それは心して対応しなければならない課題だというふうに考えております。
  213. 簑輪幸代

    蓑輪委員 それで私は、残りの時間で福祉の問題について、特に老人保健の問題についてお尋ねしたいと思っております。  行革と言われる中で福祉の見直し、そして自立自助というふうな形で福祉が削られるということに大変憂慮しておりますが、ここで憲法を取り出すまでもなく、国はすべての生活部面において社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない、生存権とあわせて国のこういう社会保障増進義務というものがうたわれているわけです。  そんな中で、厚生省として、老人保健法というのがつくられた後、いまそれが実施されて大変問題になっていることは御存じだと思います。そして、その老人保健法の中で、特に地方自治体が独自に地域住民の要望にこたえて老人医療無料制度というものを推進しているところがあるわけですけれども、そういう自治体が努力をしていることに対して、国の水準を超えるやり方についてはやめるべきであるという干渉が行われているようですけれども、私は、こういうことは絶対にしてはならない、まして臨時財政調整交付金の交付はそういう自治体にはしないというようなおどしはもってのほかであるというふうに思います。こういう福祉を充実させる地域の努力というものを妨害するやり方は絶対に許せないと思うのですが、国として財政上応援できないという形で精神的にでも応援するということなのか、あるいはまた、やはり何とかしてでもやめさせなければならないと思っているのか、その辺のところが私は非常に重要な問題だというふうに思っております。  地域における特殊性あるいは創造性というものを尊重していくための地方自治、そういう地方自治の尊重という立場から見ても、国がこういう上乗せ福祉と俗に言われているのに対して干渉がましいことをやるのは絶対にやめるべきだということで強く要求をしたいと思いますが、この点についての、厚生省とそれから大蔵大臣ももし御感想があればお聞かせいただきたいと思います。
  214. 森仁美

    ○森説明員 お答えいたします。  老人保健制度におきます単独事業につきましては、いろいろな御意見が出されていることは私どもも承知いたしております。ただ、私ども常々申し上げておりますのは、この件につきまして公共団体のそれぞれのお考え方、それもありましょうけれども、私どもは私どもなりに、国会でもいろいろ御議論をいただいた結果を踏まえて、いろいろ公共団体にお願いをしてまいっているということでございます。  その趣旨は、公共団体の御都合なども考慮の上で、私ども実施をいたしております老人保健制度との整合性を保っていただく、こういう施策でやっていただきたいということをお願いをいたしているという状況でございます。
  215. 簑輪幸代

    蓑輪委員 整合性という言い方で干渉をしているというのが現実で、それをやめろというのが私の意見なんですけれども現実に前進した福祉、そういうものによって、住民の健康を守り同時に医療費も減らしているという自治体があるわけで、そういうころにまで干渉がましいことを言うのはまことに許せない、私は強く申し上げておきます。  きょう、もう一つこれに関してお伺いしたいのは、老人保健の中でヘルス事業と言われる問題です。  高齢化社会に入っていくにつれて、お年寄りの問題は非常に重要なんですけれども、特に有病率が高いとか一人で幾つもの病気を抱えているとか、病気が治りにくいとか、治っても後で機能障害が残るとか、寝たきりになったりとか、そういうお年寄りの特殊性などがあるわけです。そうした中で、とりわけ在宅の寝たきり老人対策ということが重要視されるわけですけれども、その中で、この寝たきり老人対策について、現実にこれを進めていくのは、そういう役割りを担って保健婦が重要な役割りを果たさなければならないというふうにされていますが、この保健婦の確保の問題はきわめて厳しい状況にあるというふうに聞いております。  在宅、寝たきり老人の訪問指導というのについて、大阪の藤井寺保健所の所長さんが、管内の老人百八十三名の家庭を訪問して実態調査をした主な点というのが述べられていますけれども、   傷病は脳卒中・高血圧が最も多く、次いで老衰、リウマチ・神経痛・眼疾患、骨折などの順に多い。定期的に受診している者は三分の一足らずで、受診できない理由としては「運搬手段がない」「人手がない」が多い。   大部分の老人は日常相当の看護・介護を必要とし、家族の看護者にとって大きな負担となっている。これが看護者の健康にもかなりの影響を及ぼし、老人夫婦のみの世帯では夫婦共倒れの危機に瀕している。   日中には家族が誰もいない世帯が多く、ホームヘルパーが訪問しているケースでも、週一〜二回に限られているので、他の日は放置されている。したがって、食事(栄養)も入浴(身体の清潔)も極めて不十分なケースがかなりある。   福祉の諸制度は周知徹底されておらず、知っていても様々の制約があるため余り利用されていない。孤独なので話相手を求めているが、半数近い老人には家族以外の話相手がない。 というようなことが報告されているわけです。  こういう実態については、総理府の「老後の生活と介護に関する世論調査」ということでもいろいろあらわれていますけれども、その寝たきり老人を抱えた家族の大変さというものは並み並みならぬものがあると思います。それだけに、そういう家庭に対するきめ細かい、責任ある体制をとることが必要だと思いますが、保健婦の果たす役割りがその場合に非常に重要だ。そして   保健婦による訪問看護の内容は、臨床的看護をはじめとして、介護、病床環境の整備、簡単な機能訓練、食生活・療養生活の指導、家族の人間関係の調整、家族に対する指導教育と様々な助言、老人の話相手になること、関係機関団体や関係者との連絡など非常に多面的であります。もちろん、必ず主治医の指示にもとづいて看護・機能訓練に当っており、必要に応じて医師・ケースワーカー・機能訓練士・ホームヘルパーあるいは民生委員との同伴訪問も行なっております。   この訪問活動を通して、寝たきり老人とその家族にとっては、保健所が身近な頼りになる存在になりました。 というふうに報告されております。  今度の法律では、実施主体が市町村ということになっているわけですけれども、寝たきり老人の訪問指導という点では、同じように行き届いた指導をしていかなければならない。その保健婦の確保ということが問題になりますが、政府の計画では、五年計画で保健婦八千名を確保する。現員が二千名、新規採用三千名、あと退職保健婦の雇い上げ三千名という計画のようで、それで三十五万人の寝たきり老人、要注意者に対処しようということのようです。この場合問題になるのは、退職保健婦が三千人ということなんですけれども、この身分関係は、法的にあるいは実際上この身分というものはどういうふうになるのか、お尋ねしたいと思います。
  216. 谷修一

    ○谷説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生お話しございましたように、この老人保健法に基づきます保健事業の中で寝たきり老人に対する訪問指導を行っていくということで、実際上は、市町村における保健婦あるいはまた保健所にいる保健婦、そういう方たちが中心になってやっていくということになろうかと思います。  いまお尋ねのございました雇い上げ、一回退職をした保健婦さんをさらに雇い上げてやるという場合につきましては、実際の雇用の形態としては、いろいろな形がそれぞれの地域においてあろうかと思います。したがいまして、一概にどういう形になるかということは言えないわけでございますが、いろいろな形態があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、先ほど来お話しございました寝たきり老人の訪問事業というものが円滑に進むように、それぞれの市町村において関係の方面といろいろ話し合いなり調整をしてやっていただきたい、このように思っております。
  217. 簑輪幸代

    蓑輪委員 いわゆるパート保健婦みたいな形になるように聞いていますけれども、それですと非常に不安定な雇用形態になりますので、きちっとした行政上の責任がとれるような形態を指導していただくように強くお願いをしておきたいというふうに思います。  岐阜県の場合、この市町村保健婦の確保設置という点では、従来低水準にありましただけに一層努力をしてまいりまして、県の衛生専門学校というのを二十から三十に定員をふやすというようなことをやったり、五十七年度に四十人、五十八年度に四十二人を設置して全体で百八十七名になって、これを六十一年度までに二百五十名というのを目指しているわけです。ところが国の方では、空白を埋める、未設置のところに設置するということならば応援をすることができるけれども、新たに増員をしていく、より充実した福祉にしていくということでは、それはとても応援が厳しいということで、県当局も困っているように聞いております。  そこで、ぜひそういうことのないように、この保健婦充実のために積極的に取り組む県や市町村の努力を評価していただいて、国としてもきちっとした対応をしていただくようにお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  218. 古市圭治

    ○古市説明員 御指摘の保健婦の件につきましては、一応限られた数でこの事業を行うということから優先的に充実を図っている。その際に、現在まだ保健婦が一人も置かれていない未設置市町村が残っておりますので、それを最重点としておりますが、全国市町村の中で一人保健婦というところが約三割ございます。そういうところの増員の必要性は十分わかっておりますので、それも含めて五カ年計画の中で増員を図っていきたい。なお、これだけでも足りないというところもございますので、その際は県の保健所保健婦が有機的な連携をとって仕事を援助するように指導しているところでございます。
  219. 簑輪幸代

    蓑輪委員 未設置のところはもちろんのこと、一人のところも二人にするという点については積極的に対応していくというお話でしたので、ぜひその点でよろしくお願いしたいと思います。  それから特に臨調では、人員の削減とか補助金の整理とかという問題がありますので、この保健婦の充実問題でも心配をしておりますが、具体的に、各自治体では一生懸命努力をしようと思っても、保健婦を確保できる見通しというのは七つの県しかないという調査結果もあるわけですね。保健婦確保ということに一層努力をしていただくよう強く求めたいと思います。  最後に、自賠責特会からの繰り入れの問題について一つだけお願いしたいんですが、こういうお金というのは契約者の利益として還元するということが基本ですけれども、そうした中で、交通事故の被害者のいろいろな面での救護救援ということにもお金を使わなければならないと思いますが、特に交通遺児家庭ですね、ここにもっと温かい愛の手が差し伸べられなければならないのではないか。  特に先日、交通遺児母の会というところで、病気になった母親のための緊急貸付金制度というものをつくっているんだけれども、これが資金が乏しくて期待にこたえられない。緊急貸付金制度の資金づくりのために街頭に出て募金を訴えて、雨の中、傘も差さずに訴えてがんばったんだけれども、なかなか希望するような募金が集まらないというようなことを伺いました。そして、この交通遺児母の会というところでは、母親、子供たちが生活に大変追われて、無理を重ねて過労で亡くなったりあるいは病に倒れるという人がふえている。こういう緊急事態に対して緊急貸付金制度というものを独自に設けたのだけれども、昨年は七十二件、千三百三十万円が貸し付けられた、希望者はその二倍あって、慢性的資金不足に悩まされているというふうな訴えがあります。  母子家庭に対するいろいろな施策もありますけれども、それに十分こたえられていない。私はやはり、緊急事態に対応する貸付金制度というものがあと千数百万円あれば何とか当面の期待にこたえられるということを思えば、ここの中の一部が、当然のことながらこういう対策のためにお金が支出されてもよいのではないかというふうに思うわけです。その点で、交通遺児母の会緊急貸付金制度の資金のための援助を国がぜひ行ってほしいと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。
  220. 熊代健

    熊代政府委員 ただいまの交通遺児母の会の件につきまして、先ほどもちょっと触れましたけれども、自賠特会におきましては、交通遺児の関係としまして、自賠責保険による補てんを補完するものとしまして、御承知かと思いますけれども幾つかありまして、事故対策センターを通じて義務教育期間の間は母子家庭等につきまして無利子の貸し付けをやっている、あるいは交通遺児育成基金事業への助成、それから都道府県の行う高等学校授業料減免事業への助成、あるいは高校生、大学生を対象とする交通遺児育英会の修学援助事業に対する助成、こういったようなことを行ってまいっております。五十八年度予算におきましても、これら特に交通遺児の事故対策センターを通じての貸し付けについても、月額の増額とかあるいは交通遺児育英会に対する助成強化といったようなことを行っております。  保障勘定におけるこれら交通遺児に対する助成につきましては、行っております事業の目的とその団体の性格、あるいは管理的な、これも国の税金に準ずるような考え方ですので、その効果を十分上げられるような団体であるかどうかといったようなものを勘案しまして、真に必要なものに対しては助成をするということにしております。  本件につきましては、特にいままでその希望を聞いておりませんけれども、助成についての希望がありました場合には、いま申し上げたような点を含めましてよく検討してまいりたいと思っております。
  221. 簑輪幸代

    蓑輪委員 遺児の教育、修学問題についてのいろいろな施策も十分承知しておりますけれども、それだけでは賄い切れない。母親が突然倒れてしまう、そして医療の問題でどうにもならないという事態に対応するような緊急貸付金制度ということでございますので、いまお答えいただきました趣旨に従いまして具体的にまたお願いをしたいと思いますので、よろしくお願いします。  終わります。
  222. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  223. 小杉隆

    ○小杉委員 大分時間も経過しておりますし、各党からそれぞれ質問がありましたから、なるべく重複する部分は省きまして、時間はなるべく短縮して質問をしたいと思います。  今回の財確法というものを見ますと、とにかく特殊法人とかあるいは特別会計から、取れるところからできるだけ取ろうということで、非常にたくさんの税外収入を見込んでいるわけです。この前別の法案で、五十八年度税外収入は、専売公社の納付金とかその他全部トータルしますと約四兆七千億くらいになりまして、前年度よりも二兆一千四百二十三億増収になっているわけです。これは、五十六年度国債整理基金への繰り戻しの二兆二千五百億に大体見合う金額です。今回のこの税外収入を、どこからどのぐらいお金を持ってくるかということを考えるに当たって、こういう国債整理基金への繰り戻しの二兆二千五百億円というものが念頭にあって、これに見合った税外収入を出したのかどうか、まずその辺から聞いてみたいと思うのです。
  224. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十六年度歳入欠陥穴埋めを念頭に置きまして、できるだけの努力をいたしました。ただ、その額にはわずか達しておりませんけれども、しかし、かねがね税外収入については、こういう時代でありますのでもっと努力をせよという国会での御叱正もございまして、そういうことも両方含めまして最大限の努力をした次第でございます。
  225. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、国債についての質問に移りたいと思うのです。  国債整理基金に対する定率繰り入れというのを五十七年度と五十八年度は停止をしたわけですが、五十九年度については繰り入れをもとのようにやるのかどうか。それから、昭和六十年度から相当償還がふえるわけですが、昭和六十年度以降、大幅に赤字国債を出しながらしかも国債の定率繰り入れを行っていくというのは、何かちょっと矛盾しているような気がするわけですけれども、やはり六十年度以降も従来どおりやっていくのかどうか、まずその辺から伺いたいと思います。
  226. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十七年度、五十八年度での定率繰り入れの停止は、あくまでも、それぞれ単年度ずつの臨時の措置として各年度の法律でお願いをいたしておりますので、五十九年度からはまたもとのあれに復するという考え方でございます。  確かに、財政制度審議会等でこの御議論をいただきましたときに、片方で特例公債発行が継続する状況におきましては、利子を払いながら公債を出して将来の償還のための積立金を積むというのは、いわば民間の金融機関で言う歩積み両建てに似たようなことになって不合理ではないかという御意見もございました。しかし他方、今日の国債の累積の状況あるいは国債償還に節度を持つという必要性、あるいは国債市場に対して国債管理政策を行う場合においてある程度の手金が必要であるという要請、その他いろいろな要請を考えますと、やはり今日この制度は維持すべきであるという御意見でございました。今後、そういったそのときどきの財政状況や国債整理基金の状況を見て検討をしてまいるということになろうかと存じます。
  227. 小杉隆

    ○小杉委員 定率繰り入れをやっていくということになりますと、それでは果たしていまの金額が妥当であるかどうかという繰り入れ金額についての是非というものをやはり聞かなければいけないと思うのです。  そこで、いま、国債残高が五十八年度以降どんな推移をたどるか、あるいはその中で特例公債の残高というのが大体どの程度になるかというのを調べてみますと、ここに予算委員会に提出した「国債償還額、国債残高、利払費についての仮定計算」というのが出ていますね。これによりますと、国債残高というのは、もう五十八年度からざっと百兆円を超えていくわけです。その中で、特に特例公債はそのうちの半分近い五十兆円前後ということになるわけでございまして、いままでの繰り入れの算定基準は国債残高の百分の一・六ということでございますが、これは果たして妥当なのかどうか。  といいますのは、この百分の一・六というのは、いわゆる四条公債、建設国債というのが償還期限六十年と見込んで六十分の一というふうに決めたと聞いておりますけれども、いまみたいに国債残高のうち半分近くが赤字公債ということになりますと、赤字公債というのは大体十年で償還することを前提としているのに百分の一・六で果たしていいのかどうか。単純に考えますと、半分が四条公債、建設国債で、半分が赤字国債であるならば、一方は百分の一・六でいいかもしれないけれども、片一方は百分の十でなければいかぬわけですから、平均すると百分の五・八ぐらいになるのですか、その程度繰り入れなければ、いまおっしゃったような本来の定率繰り入れの目的を果たせないのではないか。償還財源確保とか財政負担の平準化とか市況の安定とか、そういった大変りっぱな目標があるわけですけれども、いま程度考え方繰り入れていって、本当にそうした趣旨に沿うのかどうか、その辺どうですか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  228. 窪田弘

    ○窪田政府委員 特例公債発行をやむなくいたします場合に、従来の減債制度にこれをどう位置づけるかということは私ども大変問題に思いましたし、また国会でも、十分の一繰り入れをすべきではないかという御指摘もたびたびいただきました。  そこで、財政審でも御検討をいただいたわけでございますが、特例公債は借りかえをしないという前提で私どもお願いを申し上げておりますし、それから何よりも、十分の一ずつ繰り入れるということになりますと、それだけ償還財源が、つまり国債費がよけいに要りまして、結果においては特例公債がふえてしまうという矛盾が起きるわけでございます。そこで、財政審の御議論もいろいろございましたけれども、結局、いまの減債制度というものは個別の公債を管理する制度ではなくて、公債を全体として管理する総合減債制度である、こういうふうな意義づけをなされまして、特例公債についても百分の一・六の繰り入れを行ってきております。  確かにそういう御議論がございますが、特例公債発行をできるだけ縮減していくということなどからいたしまして、総合減債制度の中で特例公債も対象にしていく、こういうことでございます。
  229. 小杉隆

    ○小杉委員 いま特例公債については借換債を原則としてやらないのだというお話でしたけれども予算委員会に提出した仮定計算によりますと、もう昭和六十年度国債整理基金は底をついてしまって、六十一年度からは一般会計から予算繰り入れをしなければならなくなるということでございますので、そういうことを考えますと、特例公債についての借りかえという問題は、特に昭和六十年代というのは一番過酷な償還になるわけですけれども、そういう点は、かたくなにいままでの姿勢を守っていかれるおつもりなのか、あるいはこの際借換債を考えるべきではないかという意見もあるのですが、その点いかがですか。
  230. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、国会答弁あるいは法律の規定において借りかえをしないという方針をとっておることは御指摘のとおりでございます。今回の財政再建に対する基本的考え方、これにおきましても、この考えを前提としておりますので、特例公債の借りかえを念頭に置いておるということではございません。それだからこそ、五十八年度発行特例公債についても、同じような法律上の規定を置いて御審議をいただいておる、こういうことになるわけです。  さらに、御指摘がございましたように、だんだん六十一、二年から大量償還、こういうことになります。国債償還というのは、一番大事なことは、これを所有する方に対しては現金償還を確実に行っていく、こういうことです。これは大切な大前提であるということでありますが、そういう財源について、特例公債あるいは借りかえでやっていくというようなことはやらないというのが筋でございますので、私どもといたしましては、この問題は、いつでも申し上げておりますように、最終的には歳出カットか負担増かあるいは公債発行、その一形態としての借りかえということでございます。まあ三つになる。したがって、まだ多少時間がございますけれども、それこそ、まさにその時点における経済情勢なりまた財政状況を見て、各方面の意見を聞きながら慎重に検討しなければならぬ時期が来るな、こういう認識はもちろん持っております。  ただ、もう一つ大事なことは、借りかえというようなものをイージーに念頭に置きますと、またぞろ発行そのものに対するイージーな姿勢になりがちでありますので、いままさに念頭に置いておるということはないというふうに御理解をいただきたいと思っております。
  231. 小杉隆

    ○小杉委員 それでは、次の問題に移りたいと思うのです。  電電公社の総裁にも来ていただいておりますが、先ほども質問がありましたけれども、電電公社の方と競馬会あるいは自賠責の関係の方に、今度のこうした財確法について、率直な見解をそれぞれ聞かしていただきたいと思うのです。
  232. 岩下健

    ○岩下説明員 お答えいたします。  現行のいわゆる財確法は二年前に成立したわけでございますけれども、これは、当時五十六年度予算の編成の過程におきまして、政府で、まあ具体的には大蔵、郵政両省の合意に基づきまして、五十六年度から五十九年度まで四年間、各年度千二百億円、合計四千八百億円を国に納付することが義務づけられたわけでございます。  今回のいわゆる繰り上げといいますか前倒しの措置、これにつきましても、五十八年度予算案の政府における編成過程での調整の結果、国の財源確保策の一環という意味合いで、五十九年度分につきまして千二百億円を、既定の五十八年度分と合わせて合計二千四百億円を納付する、こういう御決定があったわけでございます。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕  この繰り上げ措置につきましては、私ども電電公社としましては、午前中の委員会でもお答えしましたように、高度情報通信システムの推進あるいは通話料の遠近格差の是正といった、事業としての重要な課題に取り組んでおります公社の経営に影響がないわけではございません。ですから、もとより望むところではございませんけれども、現在の総額四千八百億円という枠内の措置でございますし、また、国の財政の危機的な状況を考えますと、政府関係機関としては、これもやむを得ない措置であろう、このように受けとめておるわけでございます。
  233. 小杉隆

    ○小杉委員 最近の報道によりますと、電電公社は大変経理状況がよろしいということですが、収支の状況は大体どんな状況ですか。
  234. 岩下健

    ○岩下説明員 五十七年度の状況でございますけれども予算における収支の差額が一千億円強でございます。これに対しまして、決算はこれからでございますから何ともいまの時点で申し上げにくいのでありますが、収入につきましては、予算をかなりの程度上回る見通しを得ております。支出につきましては、第四・四半期に入りまして特に二月、三月の支出動向がいまだ不分明な点がございますので、いまのところ何とも申し上げられませんが、予算では約一千百億円でございますが、これを上回る収支差額の確保は可能であろうというふうに考えております。五十八年度につきましては、この収支の差額が一千三百億円ということで予算化しておるわけでございます。  公社におきます収支差額は、先生御案内のとおり、すべて設備投資つまり利用者の方々のサービスの拡充あるいは改善に振り向けるための設備投資の財源等に充てられておりまして、そういう意味では、いわば社外リースといいますか、そういうことは一切ございませんで、すべてそういった形で利用者の方々に還元されておる、こういう状況になっておるわけでございます。
  235. 小杉隆

    ○小杉委員 何か聞くところによると、三千億以上の黒字が出そうだなんという話も聞くのですが、今回の措置は五十六年度で郵政と大蔵と合意した金額ですから、それの繰り上げですから別に異存はないとしても、恐らく、経理状況がいいということで、また五十九年度以降もこういう措置というものが行われる可能性というのはなきにしもあらずだと思うのですよ。そういうことで、こういうことがどんどん続いていくということについてどう考えられるのか。  それから、さっきお答えがなかったのですが、競馬会あるいは自賠責の関係者の皆さんの意見も聞きたいと思うのです。
  236. 安橋隆雄

    安橋説明員 今回、第二国庫納付金と合わせまして五百億円の特別納付をするということでございますけれども、この額の範囲内でございまして五十八年度限りということでございますと、日本中央競馬会の事業の運営に差しさわりがないのではないかというふうに判断いたしまして、国の厳しい財政状況のもとではやむを得ないのではないかということで競馬会に協力をお願いしたような次第でございます。
  237. 熊代健

    熊代政府委員 お答えいたします。  今回の自賠特会からの一般会計への繰り入れですけれども一般会計の非常に厳しい情勢それから特別会計の状況、これらを総合いたしまして、五十八年度限りの臨時異例の措置ということで、後日返還をしてもらうことを条件に、やむを得ない措置であるというふうに判断した次第でございます。
  238. 岩下健

    ○岩下説明員 お尋ねの、五十九年度以降の問題点をどう考えるかという点でございますが、午前中総裁がお答えいたしましたように、本来臨時国庫納付金は、立法過程においても明らかにされましたように臨時かつ特例なものでございます。これの総額四千八百億円を五十八年度をもっていわば完納するわけでございますから、五十九年度以降、この種類似のものを含めましてあり得ないというふうに私ども考えております。
  239. 小杉隆

    ○小杉委員 それぞれ、いまの財政状況からやむを得ないということですけれども、やはり会計の独立性ということから考えましても、それから電電公社などは真藤総裁のもとで非常に内部の努力をされまして、かなり財政の収支もよくなってきたというふうに聞いておりますが、せっかくそうやって自立的に経営をしっかりやろうとしているときに、こうして国の財政という理由のもとにそれぞれの会計の独立性を損なう措置を、たとえ臨時的な緊急避難措置としてやるとしても、今後に非常に大きな禍根を残すと私は思うのです。  こういうことを繰り返していったら、やはりそれぞれの団体の一つの内部努力に対する取り組みとかあるいは職員の士気にも大きな影響を与えると思いますし、そして特に電電公社にしても自賠責にしても、やはり利用者とかユーザーに対する還元というものを第一義的に考えるべきと思うのです。たとえば電電公社なども、いま遠近格差の是正ということに取り組んでおるわけですし、それから、いま経営がよくなった分はやはりストックしておいて、できるだけ次の値上げ時期をおくらすとか、そういう国民に対する還元が優先されるべきであって、こういう財政の逼迫ということで持っていかれちゃうと、これはある意味では増税みたいなものだというふうに言わざるを得ないわけでございます。  そこで、ひとつ観点を変えまして、こうやって国の方は財政が逼迫してくると特別の立法をしてお金を取り立てることができるわけですけれども、地方自治体の方はそういうことができないわけですよ。たとえば昭和五十六年度の、さっき申された四千八百億円の納付金の問題が起こったときも、全国の知事会等では、地方自治体にもひとつ還元をしてくれ、こういう要望があったと思うのですが、きょうは自治省来ていますね、自治省の方で、地方団体のこうした電電公社に対する要望というのは大体どんなものか、お聞かせいただきたいと思います。
  240. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 三公社の納付金の関係につきまして、いま御指摘がありましたように、五十六年度予算編成の過程におきまして、電電公社につきまして国庫納付の制度が新たに、臨時の措置ということではございますができたということもありまして、市長会、町村会初め地方団体の関係からは、いま納付金につきまして二分の一特例措置が講ぜられておりますが、これをぜひ廃止していただきたいという強い要望が、毎年度、それ以後税制改正のたびに私どもの方に寄せられております。
  241. 小杉隆

    ○小杉委員 それで自治省としては、これに対してどういう考えでおられるわけですか。それと、電電公社の方も、この特例措置の廃止についてどういう見解かお聞かせいただきたい。
  242. 鶴岡啓一

    ○鶴岡説明員 私どもとしましては、そういう地方団体の要望を受けまして、この納付金の制度が三十一年に創設以来、いわば二分の一特例という制度が継続してきておりますので、やはり見直すべき時期に来ているのではないかということで、特に五十八年度の税制改正に当たりましては、地方財政も再び約三兆円近い財源不足額が出るという状況でございましたので、これを廃止する方向でいろいろ関係方面と協議に入ったわけでございますが、いろいろな問題点等も出まして、なかなか最終的には結論が得られないという状態でございます。今後とも、私どもとしましては、地方税源充実の一環としてその見直しを検討していきたいというふうに考えております。
  243. 岩下健

    ○岩下説明員 現在の市町村納付金制度は、先生御案内のとおり、昭和三十一年に、それまで非課税でございました三公社の事業用の固定資産につきましても課税対象とされたわけでございますが、その際に、電信電話事業の持つ強い公共性等を勘案いたしまして、算定標準としては年度を限らずに、つまり各年度ともに算定標準額の二分の一ということになったわけでございまして、つまり、そこに私どもの事業の特性に配意した恒久的な制度というものでこれがつくられたものと理解しておるわけでございます。  私どもは、発足以来現在に至るまで、過疎地におけるたとえば加入区域の拡大あるいは各地域の通信途絶を防止します防災対策あるいは地集電話の一般電話への切りかえ、こういったいわば採算のとれない施策、これだけで約一兆円に累計なっておりますけれども、こういったものを含めまして電気通信サービスの拡充改善を通じて、非常におこがましい言い方でございますけれども、市町村住民の方々の日常生活あるいは経済活動等に多数の利便を提供して、私どもなりに地域社会の発展に寄与してきたつもりでございます。この点は昭和三十一年の法の制定当時と現在といささかも変わっておらないというふうに考えております。  仮に、現在の二分の一の算定標準を撤廃するということになりますと、五十八年度でいいますとこれは五百八十一億円になっておりますので、六百億近いコストが一挙にはね上がるということになりまして、これがひいては地域住民の方々の利便に役立つ投資の縮小をもたらすおそれもあるんじゃないか。また、これが国庫納付金と違いまして直接料金コストの増加にもつながるということが危惧されるわけでございます。したがいまして、公社としては、現行の措置がそのまま存続されることを強く希望しておるわけでございます。  なお、これは言葉の問題でございますが、特例措置といいます場合に、特例として減免をされておるということよりも、むしろ私どもとしては非課税、これは地方税法でも非課税団体になっておるわけでございますが、非課税であったものが特別立法によって課税されておる、その課税が二分の一だ、このように理解しておるつもりでございます。
  244. 小杉隆

    ○小杉委員 これは電電公社だけじゃなくて、ほかの専売公社、国鉄なども同じだと思うのですが、大蔵大臣、国の方は財政が苦しいからといって四年間で四千八百億、年間千二百億円、ぽんと臨時立法で取り上げることができるわけですね。  ところが地方だって、これはいま大変な不況の中で収入減に悩んでいるわけですし、また地方交付税だって算定の三税が減収になれば当然減っていくわけですから、これは、たとえばいま電電公社は住民へのサービスということ、あるいはこれは料金コストにはね返ってくるぞというようなことで当然の意見だと思いますけれども、仮にいまこうした地方団体に対する特例が普通に扱われるならば、約六百億円地方団体にとっては増収になるわけですね。  だから、私は、国政を考えると同時に地方の団体のことも考えてあげるのが本当の政治じゃないかと思うのですが、大蔵大臣は、国の財政だけ助かれば地方はどうでもいいというような考え方じゃいかぬと思うのですけれども、その点についての大蔵大臣の見解も聞いておきたいと思います。
  245. 竹下登

    竹下国務大臣 たしか昭和五十六年度予算編成のときでございました。市長会、町村長会等々から、いま御指摘になったような、当時は五百何十億だったと思います、五百八十億にまで達していなかったと思いますが、その種のお話がございました。  私は当時は党におりまして、言ってみれば、それの問題の最後の調整役みたいなものをやっておりまして、ところが市町村側から見ましても、それを大変住民の利便になるとする必要から、ある意味において猛烈な誘致運動をやって存在しておる。それを内容がよくなったからといって、固定資産税見合いのようなものでございますが、それをお願いするのはいかがか、こういうような議論もありました。  一方、そういうことを電電公社に仮にもしお願いするとしたら、他の問題についてやはり見合いのものを電電公社に差し上げなければいかぬじゃないか、こういう議論もありました。その一つとしては、たとえば日銭が入りますのの運用期間を長くして運用益を出すとか、いろいろな議論がございまして、ペンディングのまま今日来ておるわけでございますので、私は、将来の問題としてはこの議論がまだ残るところであるという認識はございます。国庫大臣として、国だけイージーに千二百億ずつもらっていささかじくじたるものがあるということだけは素直に申し上げます。
  246. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、電電公社は確かに過疎地対策とか防災対策でいろいろいわゆる経営のらち外にある、採算性にそぐわない面もあると思うわけですけれども、そういうものはそういうもので別途考えるべきことであって、これを地方団体の犠牲においてずっと任せるという考え方はいかがなものかと思うわけです。  そういうことも含めて、今度の財確法につきましても、こういうことがたびたび行われますと、それぞれの会計の一つの独立性というものを失わせますし、それぞれの会計はやはり純化してそれぞれの努力というものを尊重していかなければいけないということで、いまの財政状況からやむを得ないにしても、今後これは相当いろいろな問題をはらんでいるということを申し上げて、時間はまだ早いのですけれども終わります。  ありがとうございました。
  247. 森美秀

    森委員長 伊藤茂君。
  248. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 予定では私がきょうで七番目の質問でありますが、大臣も朝から御苦労さまでございます。要領よく質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  第一は、五十八年度予算が成立いたしまして、その運用について一、二お伺いをしたいと思います。  先ほど大臣答弁の中で、公共事業に関連をして、補正は考えておりません、前半前倒し、後半自然体のようなお話がございましたが、公共事業に関連をして言えばそういうお考えもあると思いますが、減税問題とか人勧とか考えますと、そうはいかぬだろうと思うわけでありまして、まずお伺いしたいのは、この間地方選挙期間中に大蔵大臣のインタビューで、ある新聞で見ておりましたら、一つ年度内の追加増税は求めにくい、減税財源に関連してですね。それから、五十九年税制改正で財源を生み出さざるを得ないであろう。その中身としては、利子配当課税とか物品税とか酒税とか、中、小型の間接税の導入などを含めとか、こういうことが書いてございましたが、三つ目には、一般消費税など大型間接税の五十九年度導入はむずかしい、消極的な見解ということで報道されておりましたが、そんなことでしょうか。
  249. 竹下登

    竹下国務大臣 記者会見、慎重に言葉を選んでいつもしておりますが、記事についてはそのときの受けとめる方の主観でいろいろ書かれますが、基本的なスタンスとしては、減税問題というのは各党合意に基づくものであるから、国会における議論等を正確に整理して、税調で予見を持たないで御議論をいただくということに尽きるわけであります。  その際、報告の中に小委員会における議論等を踏まえて申すといたしますならば、やはり一過性の財源は避けようとか赤字国債の増発は避けようとか恒久税制で財源を見つけようとか、そういう議論があったというような問題についての記者会見のやりとりの中で、そういうような税目が質問の形で出て、肯定も否定もしないままでおりましたが、いわゆる一般消費税(仮称)というようなものをとり得る環境にはないということだけは明確に申し上げておきました。
  250. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣、いままで言われておりました中では、権威ある政府税制調査会に検討していただくというように伺っております。また、税法の審議どもほぼ終わっておるわけでありますから、そろそろ議論をしていただくということになると思います。また、税調会長のお話を伺ってもそのつもりでおられるようでございますが、国会の経過その他を含めてどういう形で諮問をされるか、またいつまでに答申をお求めなさいますか。まさか年末ということはないと思いますが、早い機会に一つの結論を出していただけませんかということになると思います。それから、それと見合った形で、従来答弁のございました七月ごろからさまざまの具体的な見通しを立てたい、それらを考えますと、七月、八月といいますか、いずれにしても長い時期ではなくて、二カ月なら二カ月くらいに集中してそういう検討を大臣の言われる権威ある政府税制調査会に議論をしていただきたいということになるのじゃないかと思いますが、その辺どうお考えか。  それから後の取り扱いなんですが、いずれにしても五十八年中に国会所得税法、地方税法の改正案を提出するということを官房長官も予算委員会で述べられているわけでありますから、ことしの問題になるわけでありますが、普通ですと八月、夏過ぎて秋というわけであります。まあ、いろいろ議論された経過からしてまいりますと、年度前半をカバーするような法改正が一番望ましい形であろうというふうに思うわけであります。  その二点、いかがでしょうか。
  251. 竹下登

    竹下国務大臣 期を画するという言葉を使いましたが、七月から御審議を本格的にいただくことになろうかと思います。これは、五十七年度の決算等の確定もあるからでございます。それまでの間は、いま国会で議論された問題についていろいろ念査をしておりますが、正確に御報告申し上げなければいかぬ。それには、本委員会の税制小委員会等の御議論についてもフォローアップして御報告申し上げなければならぬというふうに私は思っております。  そうして、その運び方につきましては、まさに権威ある税調さんでございますので、部会をおつくりになるのかどうなのか、その辺は話し合いをしてみなければならぬ問題だな。運び方まで一々指図をするわけにもまいりませんが、心得ていらっしゃるだろうと思っております。  それから、いつごろまでに結論が出るか、一つ考え方として任期がございますので、任期ということは私は幾らか気になっております。  それから、年度を通じた減税の問題というようなものが好ましいという御趣旨の発言でございましたが、それをも含めて予見を持たないで御協議をいただこうかというふうに思っております。
  252. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大臣は権威ある政府税制調査会と常に言われておりますが、私どもの方はちょっと見解を異にするわけでありまして、所得税法の改正その他にしても、単に課税最低限の問題だけではなくて税率構造、刻みの数その他いろいろなことが当然あるわけでありますから、それらの技術的なあるいは税法上のことは専門家に専門的な議論を大いにしていただきまして、なるべくいい法律をつくっていただいたらいいことだろうと思います。  ただ、今度の減税問題は政治の話で出た決断の問題でありまして、いまちょっと申し上げました、たとえば年間をカバーするものになるのか、半年になるのか、わずかに三カ月になるのかとか、多少の無理はあってもどうするとか、これは政府税制調査会の一つの検討というよりも政治判断、政治決断というものがあるべきであろう。それはやはり内閣の責任に帰すべきものであって、税制調査会から出た結論を何でもそのまま受け取ればいいというものではないのじゃないだろうか、その結果の経過を考えればそう思うわけでございますが、いかがでしょう。
  253. 竹下登

    竹下国務大臣 今度の問題が高度な政治的決断に基づいて行われた合意である、こういう認識は私もひとしくしております。だからといって、税調素通りというわけにももちろんまいりません。そこで、最終的には内閣の責任でやらなければならぬ。  いま私ども議論をしておりますのは、いささか私見を交えるならば、大蔵委員会における小委員会というのは、その過程をフォローアップしてみますと一番権威がある議論がなされたのじゃないか、こういう感じがいたします。したがって、よしんばそういう機関をつくっていただくことができないまでも、こちらが追っかけてでも相談していくべき筋のものではないか。これは、決して共同責任で逃げようとかという考え方ではなく、最終的な責任の所在は政府にあるという認識の上に立っておれば、やはり国会を構成する、なかんずく専門家の有力な皆さん方意見は惜しみなく吸収すべきではないかなと思っております。
  254. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つ人事院勧告の問題があります。五十七年度の勧告をちゃらにしたということはまことにけしからぬ話だと思います。国会での約束それから与党からの意思表示、五十八年度は勧告を尊重します、そのあかしに一%分は予算に組んでございますというわけでありますが、人事院総裁の方は、ちゃらにした五十七年度分も含め五十八年度の民間の賃上げに準拠する分を重ねて勧告をいたしますという意思表示になっているわけであります。いずれにいたしましても、一%の六百七十億円だけで済むというわけには五十七年一年間の経過からしても現実問題まいらぬだろうというふうに私は思うわけであります。  いまの減税の問題それから人勧に対する対応、国会で話し合われた結果として詰まってきた五十八年度は勧告を尊重する、人事院総裁は二年分勧告をします、大臣もその経過はよく御承知のことだと思いますが、そうなってまいりますと、何らかの形での補正措置がなければこの二つは実現不可能である。いまの予算の中で、たとえば自然増収を期待するだけとかやりくりをするだけでは、減税の方も人勧の方もいままでの約束を守らないということにしかならない。国債を増発する場合でも、当然ながら補正は必要になってくるというわけであります。  ですから、公共事業については上半期前倒し、下半期自然体で景気浮揚をさまざまな形で期待しながら、あるいはできる対応をとっていくということであると思いますが、後の二つについては、いまの予算の執行だけではカバーできないだろうと思いますが、いかがでしょう。
  255. 竹下登

    竹下国務大臣 非常に時宜を得て御質問なすっておりますので、率直に申しまして、両院を予算が通過するまでは、最善最良のものとして提出した予算案に、すでに補正を伴うとかあるいは実質修正を伴うとかいうようなものを御議論いただいておる間は、やはり院と政府の節度からして、補正とか修正とかという問題は言の葉に上せるべきでない、こういう姿勢を貫いて大方の御理解をいただいてはおったわけでありますが、今日の時点でそういう仮定を前提に置かれた場合に、その問題について全く必要がないというお答えをするほど私も愚かではないと思います。  ただ、やはり人事院勧告というのは、二年分とおっしゃいましても、要は民間賃金との比較の上に勧告がなされるのでございましょうし、そして、われわれも、この勧告制度の持つ重要性とか、そしてまた財政状況をも勘案しながら、少なくとも二年続いて凍結などはいたしませんということをお答えをしております限りにおいては、その勧告が出された時点で諸般の状況を考慮して、その実現をするための一つの手法として補正ということも可能性としてはあり得る。しかし、給与改善費また予備費あるいは移流用の問題等、工夫は精いっぱいしなければならぬ問題でございますが、仮定の上においても補正という言葉を使ってはならない時期とはいささか違ってきておるという認識は持っております。しかし、やはりその時点において諸般の事情を勘案しながら、どういう手法でそれに対応していくかということを考えるべき問題である。  減税にいたしましても、また仮定の問題として自然増収を期待するということも皆無ではないにいたしましても、いまの時点でそういう見通しが立っておるわけでもございませんので、もろもろの御意見を拝聴しながら、税調等の御審議の経過を見ながら、そういう問題も含めてこれに対応していくべき課題であるというふうに考えております。
  256. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 ぜひ適切な全体的な状況判断のもとに進めていただきたいと思います。  五十九年度予算への取り組みについてひとつ伺いますが、先ほど来も議論がございましたけれども、私は、従来手法とは違った取り組みが行われなければならないということではないかと思います。主計官会議が開かれて、一層の歳出見直しの基本方針の確認をしたとか、また先ほどの大臣の御答弁にもございましたように、きわめて厳しい査定あるいはまた一般的な聖域は認められないたてまえであるとか言われましたが、私は、従来の経過からいっても、当然の動きとして今日これが始まってくるということだと思います。  ただ、やはり従来とは違った方法をとらなければならないという意味で私は二つ申し上げたいのですが、一つは、五十七年、五十八年にあったさまざまの財源を無理に無理してかき集めてつじつま合わせというか予算を組むという方法。先ほども本法案の七本を一本にした性格のあり方について問答がございましたが、七本を一緒で七草がゆならめでたいのだけれども、これはごった煮の中身になるわけでありまして、私は、法案の形式も、政策と手順と予算編成の中身がそうなっているのでこういう形式になってしまうのだと思うのですね。いろいろ特別会計その他私ども考えてみましても、ことしと同じような膨大な税外収入とか、さまざまなところから引っ張ってくるとか、無理して先に金を払えとかいうようなことはもう無理ではないだろうか。そうなってまいりますと、財政再建の大道の第一歩を踏み出すというか、そういう考え方が必要であろうということを思うわけであります。ですから、とにかく必死になって財源を探してきて予算をつくるという形ではない取り組みの方法を、ひとつ大胆にこの際検討する姿勢が必要ではないだろうかということが一つ。大変厳しいしむずかしいことは私も事実だと思います。  それからもう一つは、先ほども議論がございましたが、財政再建か改革か、言葉は別にいたしまして、新しい財政再建のプログラムの問題であります。確かに、世界経済、日本経済の見通し、その他流動的な要素も多い。また、アメリカの高金利のお話も日銀副総裁からございましたが、予見できないさまざまの状況があることは事実だと思います。しかし、それらのことがなかなかできないからといって、財政の見通しの方もなかなかできないということはもう許されない段階に来たんじゃないか。したがいまして、五十九年度予算が出た後、また来年二月予算委員会の段階になって試算表が何種類か出てくるというパターンではない、ことしの五十九年の予算編成の前提として、できるならばこの秋口ぐらいには可能な範囲でのものを提起をして、その見通しのもとに五十九年度予算考えていく、その二つがどうしても必要な段階じゃないだろうかと思っているわけでありまして、そういう意味で言うならば、例年どおり予算が通った後翌年度に向けて主計官会議を開いて、厳しくやろうとかさまざまな努力をしましょうとかあるわけでありますが、もう一つ、そういう新しい努力をしなければならない時期ではないだろうかと思うわけでございますが、大臣、いかがですか。
  257. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいみじくも御指摘になりましたとおり、私も、去る五日、すなわち予算が成立をした翌日でございますが、年度途中に予想される追加財政需要については厳に慎重な態度で臨むとともに、既定経費についても行政経費の節約を初めとし極力節減を図り、不測の事態に備える必要があると考えておる、したがって、これらについては各省庁と十分協議しながら具体的な措置を講じてまいりたいということと、そしていま一つは、五十九年度の概算要求限度額はきわめて厳しいものにせざるを得ない、そして要求の内容についても、行財政の守備範囲の見直しという見地から思い切った制度の改廃を織り込むよう、事務当局に前広に検討方のお願いを申し上げたわけであります。  いま御指摘のように、税外収入、それは確かに五十六年度の繰り戻しという問題もございましたが、御審議いただいておりましても、よくもという表現は適切でないかもしれませんが、一生懸命で探してきたな、こういう感じは私自身も持っております。したがって、税外収入というものにこれからももちろん着目しなければなりませんが、いま一般的な感覚としてだれしもお持ちになるであろうことは、ことしのような期待は持てないのじゃないか、もっと期待薄ではないか、こういうような御議論もよく承るところであります。  したがって、窪田次長からいみじくも、主計局は元来季節労務者であったが年間労務者になるという表現をしておりましたが、これから各省とのいろいろなお願いをして、制度、施策の根源にさかのぼっていくという問題点の勉強をしつつ、そして今度はシーリングの具体的な詰めに入っていく段階があろうかと思います。いみじくもおっしゃいました、夏とか秋方にかけて概算要求というものが当然出てまいりますから、そのときに可能な限り御要求にこたえて、さまざまな資料、それは精度の確実でないものもときにはあろうかと思いますが、お目にかけながら、各方面の意見を吸収しながら予算編成に取り組んでいかなければならぬ時期であるというふうな認識は持っております。
  258. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それについても思うのですが、昨年も一昨年も、四月、五月か一定の時期に、主計官会議でどうなったとか、シーリングの動きがどうなるだろうとかいうような動きが実は始まってくるわけでありますが、私は、今日の事態を考えますと、財政再建、あるいは見通しを持った中での五十九年度予算編成の作業、そういうことを考えますと、状況は、かつてない国難をどう乗り切るのかという事態にあるだろうと思います。  そういたしますと、仕組みかシステムが一体従来の延長線でいいのだろうかという、たとえば諸外国の例の研究なども含めて財政再建について考える、さまざまな関係するところもあるわけでありますが、たとえば主計の中の一定のセクションの数人の人がコンスタントに研究しているとか、仕組みとしては当然大蔵省の各局長、首脳の議論があるでありましょう。この二、三年の間は無理して予算を組んで与党の力で通しているけれども、先の見通しはどうなるのかということが一貫して問われてきた。それはなかなかむずかしい。しかし、もうぎりぎりのところに来たのがいまの時点ではないだろうか。そう考えますと、そういう取り組み方についても従来手法とは違った一つ努力竹下大蔵大臣中心になってなされていく、確かにそれは財制審もございますし、いろいろなものもございますけれども、何か従来手法とは違った努力があるべきであろう。  私は、本来的にはこれは、総理責任といいますか、内閣の責任として強力に取り組まれるべきものと、調査研究、見通し、さまざまな英知を結集してやられるべきものであろうというふうに思うわけでありますが、いずれにしても、重大な困難をどう乗り越えるかというのにふさわしい取り組み方を新たに研究しなければならない。システムの面でもそうじゃないかと思いますが、お考えございますか。
  259. 竹下登

    竹下国務大臣 早々と主計官会議というものをやりました。  それで、やはり制度、施策の根源にさかのぼるとなれば、これは各省庁における勉強に大きく期待をかけていかなければならぬ。それをいつ、どういう形でというようなことを、いまいろいろな角度から部内でも議論をしておるさなかでございます。そうして、もちろんただ大蔵省というだけでなく内閣一体となった責任でもって、この財政難、まさに国難という言葉をお使いになりましたが、それに対処していかなければならぬというふうに思っております。  それで、制度上から言いますと、財政制度審議会、これも私は、毎年御苦労をかけておりますが、りっぱな報告もいただいておる。これらと絶えず密接な連絡もとっていかなければならぬ。いま特別なシステムをどうするかという問題は直ちに念頭にございませんが、いわばまさに休みなくとでも申しましょうか、間断なく検討を続けていかなければならぬ課題である。  ただ、従来は、先進諸国と称するところを視察調査したりしますと非常に参考になる点が多かった。いまの場合は、向こうから参考のためにお越しになることが多くて、多少隔世の感があるなという感じは常日ごろ持っておりますが、いい仕組みのあるところについては、やはり大いに勉強させていただくにはやぶさかでないというふうに思っております。
  260. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 駆け足で参りまして、これもざっくばらんな話なんですが、先ほど、国債の消化それから赤字国債の借りかえなどの議論もございました。  私も、大蔵省から出されました「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」、A、B、Cと試算に関係をしてございますが、私は、この数字を見て本当に慄然たる思いをいたします。大蔵大臣は、先ほども赤字国債の借りかえその他についても一般的な姿勢をお述べになっておられますけれども、現時点における一般的な姿勢なり気持ちの表現としては、私はそれでいいと思います。ところが、もう、やはり国民に対する責任からいって、三年後、五年後、七年後どうなるのですかということを実は考えないわけにはいかない。これは深刻に考えないわけにいかないというのが今日の状況であろうと思います。  一番負担の少ない方のケースAの態様を見てみましても、総額で六十年度十兆六千二百億、六十二年度十五兆八千九百億、ピークの六十七年には二十兆三千四百億。これからの予算の伸びがどうなるか、そう大きなことにはならぬわけでありまして、考えたら本当にこれは背筋の寒くなる思いがするわけであります。特にその中の特例公債といいましても、六十年二兆二千八百、六十二年四兆六千、また六十七年七兆三千二百というようなことになるわけであります。  私は、一般的な気持ちとしてのお話は、大臣さっき言われたようなことだろうと思います。安易にそんなことはあってはならぬということを言われるわけでありますが、私どもは専門の大蔵委員会でございますから、それで済ますわけにはいかない。一体どうしたらいいのか。やはり、さまざまな研究なりあるいは局面を打開するための方法なりを考えなければならない。また、賛否いろいろあっても、忌憚なくその議論はしなければならないという状況に来ているのじゃないだろうか。いずれにしましても、こういう膨大な数がある。  それから、当然の見通しとして、財政規模はせいぜいGNP伸び率のちょっと下ぐらいか、とせざるを得ないだろう。少なくとも、三%台のGNPの伸び率が実質あったとしても、それ以下に抑えざるを得ないだろう。それから、やはりこれから数年の間は、実際問題として新発債も十兆程度は避けられない。借換債も膨大にふえていくというふうなことになるわけでありますが、そういう面から言いますと、これらの対策というものをいまから研究するのは当然だし、さまざまのそれに対応するシミュレーションとか対応策をいろいろ描いてみてその是非を議論する、政治的にはちょっと言いにくいことかもしれませんけれども、専門の場のところではいろいろな議論なり意見交換もなされていくということでないと、将来に対して無責任になってしまうのではないだろうかという気がするわけでありまして、率直なところを伺いたい。
  261. 竹下登

    竹下国務大臣 お説のとおりであります。  確かに、公債償還問題を見ましても、六十二年には国債整理基金も空っぽになるわけです。そうすると、理論的にと申しておりますが、歳出カットか負担増かあるいは借りかえということも含めた公債発行という三つのことが考えられます。したがって、結局私は、こういう場合、もちろん政府・与党としての責任、これは十分果たさなければなりませんが、国会の場を通じての対話、その中で国民の合意というものが形成されていくべきものではないかという考え方を持っておりますので、そういうものを土台にしながら財政改革の基本的な考え方に立って対応していかなければならぬ課題だ。これは決して、責任を国民総責任というようなところへ、与野党というものの存在する国会の場で野党の皆さん方をも含めた総合責任でなどということを申しておるつもりはございませんが、そういう形の問答の中に国民の選択肢というものを選んでいかなければならぬな。それはきれいごとだけでは済まない課題だろうというふうな認識の上に私自身立っております。実際、将来のことを考えれば考えるほど大変だな、本当に大蔵大臣も希望者がないから私がなったようなものだというような気持ちすらいたしておるわけであります。
  262. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 理財局長に若干具体的なことをざっくばらんに二つ三つ伺います。  一つは、国債の日銀引き受け、財政法第五条、最近一部で言われているところでは、いままででも財政法の禁止する特例公債も恒常化をした、さまざまそういうことがいまや積み重なっているということで、いま一つ残っているのが日銀引き受けの問題である、そうしてまた、それがそうなった場合に、インフレとストレートに直結するのかしないのか、方法によってはそうではないのじゃないかとか、さまざまな議論なども雑誌にも出ておりますし、何か、聞きますと内部でも自由な議論があるようであります。  私は、不可能を可能にするナポレオンというわけじゃありませんけれども、いまの財政あるいは公債政策、非常にバックボーンを持った人だと思っておりますけれども、もうさっき言ったような事情から言うと、国会で新たな法律をつくってそれを変えてしまうというようなことが、いまではありませんよ、さっき申し上げましたように、六十年代を考えますと、何かそんなことも出てくるのじゃないかという気も非常にせざるを得ないわけでありますし、それについてどうかということ。  それからもう一つは、運用部国債の日銀引き受け、これも話を聞いたり雑誌を読みますと、大蔵省内外でもさまざまな自由な議論があるようにも実は伺うわけであります。一つは、運用部の現在の保有量あるいは運用部自体の資金繰りがむずかしくなっている状態。それから先般の二兆二千億借りたときの扱いで、日銀引き受け四千億の問題などに関連して、事実上の日銀引き受けという方向にさらに走るのではないだろうか。そういうことを現在の財政法上どう解釈できるのかということと同時に現実問題があるではないかという議論がございますが、その辺どういう心構えで対応されますか。  それから、時間短縮で重ねて恐縮ですが、もう一つはTBの問題でありまして、日銀の方でももういいかげんにしてくれという話が出ているような報道も聞きますし、それから日銀の方でも市中に売却をする、お客様は飛びついて買うなどのニュースでも見ているわけでありますが、実質的に本来つなぎ資金のTBが歳入の手段に使われ始めているのではないだろうかというふうな新聞評論もございます。それをさらに延長して一年末満の短期国債をつくる。それなれば年度内消化の必要性はなくなるわけですから、どうかという動きが出るのじゃないかというふうなことも一、二報道されたり、経済評論の中に出ておりますが、その三点、理財局長どう思いますか。
  263. 加藤隆司

    加藤(隆)政府委員 大変広範な御質問でございますが、まず、運用部の国債を日銀に売るかどうかという点が最初だろうと思います。  昨年五回ぐらいやっておりますが、これは、まず最初に日銀の持っているやつを買うわけでございます。いわゆる現先というような取引で日銀の持っているものを買って、そしてある約束の期日に売る、そういうことでございまして、最初に売るという行為じゃなくて、最初に買うという行為でやっております。これは、運用部が資金余剰がありました際に有利運用という観点でやるわけでございまして、そういう意味で、過去、最初運用部の持っているものを日銀に売ったという例はございませんし、今後もそういうことが行われるのかどうか。少なくとも最近時のように国民貯蓄の伸びがございまして、全体のパブリックセクターの借り入れの度合い等々から見まして、恐らくそういうようなことはないのではないかと思います。  それから、次は財政法の五条の日銀引き受けの問題でございますが、前段の、運用部がそういうように最初に買うということでやっておるような段階でございますから、もちろん日銀引き受けというような事態はあり得ないと思います。もちろん、法律上あれは国会の議決をいただければ可能なわけでございますが、そういう制度的な歯どめは一つある。  三番日はTBの問題でございますが、これは第二次オイルショックの後で三兆、六兆と税収不足がデフレ効果のために出てまいりまして、特殊五十六年、五十七年現象でございまして、数字的に見ますと、蔵券の残高は五十六年度末、五十七年三月に三兆何がしございましたが、たとえば本年の三月末はそこから一兆円ぐらい減ってきております。だんだんと正常化しつつあると思うわけでございます。したがって、蔵券で歳入を補てんしているというようなことはまず、法律にございますように年度歳入で返すわけでございますし、それから経過的に三月と四月との間でどうなっておるかという点も特殊五十六年度現象でございまして、徐々に正常化しつつあるというようなことで、そう心配は要らないのではないかと思います。  全体を含めまして、今後六十年に向かっていろいろな国債の増発の問題もございますが、私どもといたしましては、市中消化の金額目標にいたしまして種類の多様化とか消化の多様化とか、そういうような工夫をこらしていけば、現在主計局が国会にお出ししたような見通しであれば、GNPなり国民貯蓄も伸びも期待できるわけでございますので、そうひどいことにならないで何とか、もちろんつらいわけですが、やりくりでいけるのではないかとひそかに思っております。
  264. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 最後に、ひとつ大蔵大臣に注文を含めまして質問なのですが、財政再建計画というのか財政改革計画になるのか知りませんが、いずれにしても、これは大臣もこの秋ごろのような意味合いで、さまざまな努力をしなくちゃならぬというふうに言われているわけであります。私は、その中で二つ注文といいますか要望したいのですが、どうお考えか。  一つは、きれいごとのターゲットでない現実を踏まえたターゲットを国民の前にやはり明示するということが必要ではないだろうか。私は、いままで考えて、五十九年の赤字国債ゼロという方程式が実は財政再建のシンボルになったわけでありますが、これは何か初めからおかしいと思います。要するに、赤字公債をゼロにするということは確かに大事な一つ目標でありますが、しかし、なぜこのような財政危機になったのか、あるいはそうならない仕組みをどうつくるのか。これからの時代にふさわしい安定した財政現実と仕組みをどうつくるのかというのが、本来財政再建か財政改革か財政の将来像について当然の考え方でありまして、五十九年にゼロにする、できるかできないか、政治生命をかけるかかけないかという余りにも単純なシンボルといいますか議論をされていてというふうな気が私はしてならないわけであります。  ですから、たとえば財政再建といってもターゲットをどう考えるか。確かに特例公債ゼロということもございますでしょう。しかし、国債の負担それからさっき申し上げました借りかえその他考えますと、四条債と特例債の区別というものが取り扱い上なくなってくるという状況ではないだろうか。じゃ、そのノーマルな、異常ではない形での国債というものは予算比、GNP比一体どの程度考えられるのかとか、この将来像を考える場合に現実問題だろうと私は思うのです。  ですから、大蔵省が出された財政改革の基本的な考え方のところにもいろいろ物の考え方は述べてありますが、現実には、これからの経済の伸び、税収の伸びあるいは税制をどう変えるか、国債を徐々にどう縮小していけるのかなどなど、さまざまな中でその姿を描かなければならぬということになるわけでありまして、その意味では、何か単純なきれいごとのターゲットではないこれからの姿を、たとえば六年でも七年でも八年でもいいと私は思いますけれども、どう描くのかという視点が必要であろう。そうでないと、国民は信用しないし経済界も信用しないということになるのじゃないだろうか。その辺のことが、これから作業をされるわけですからどうお考えか、それが一つであります。  それからもう一つは、これは特に竹下大蔵大臣に希望なのでありますけれども財政再建から財政改革へと言葉が違ってきた、その意味合いは私は賛成であります。要するに必要なことは、これからの時代に必要な財政、その基礎になる税収は国民の勤労の結晶でありますから、それをどのようにこれからの社会にふさわしいものにしていくのかということになるわけでありまして、再建というつじつま合わせではなくて改革だというふうに言うとすれば、そこにはやはりしかるべきこれからの社会の一つ目標、これからの社会への一つの重点なり目標なりあるいは構想力というものがなければ、これもまた国民の大方の賛同を得るものにはならないのじゃないだろうかという気がするわけであります。  そういうことは竹下さんとしてはなかなか言わないのだなということをちょっと大蔵省の方に言いましたら、いや、なかなか含蓄のあることをときどき言うのですよという話を言われておりましたけれども、何かやはりこの改革、再建ではない改革、それはこれからの財政の基本目標にしろあるいは構造の柱にしろ、何か将来、社会目標と言うと大げさでございますけれども、そういう中での経済、財政目標とすべき社会と申しますか、私どもは平和、福祉、分権、軍縮の方向と思っておるわけでございます。皆さん方とは多少違うかもしれませんが、そういう発想を示されるということもあって、初めてこれからの税制、財政国民の協力を求められるということではないだろうか。  ちょっとむずかしい注文かもしれませんけれども財政再建か財政改革計画をつくるに当たって、特に前の方に言いました余り単純なきれいごとでないターゲットを設けて一つの見通しを考える。これは現実ですから、また現実の方が国民が信頼するということだと思いますから、そういうものを出されて、われわれも大いに文句をつけたりあるいは議論をするにふさわしいと思いますが、いかがでしょう。
  265. 竹下登

    竹下国務大臣 基本的な認識は私も一致しております。  従来いろいろな問題がございましたが、経済社会七カ年計画というものは、これはいろいろその後の経済情勢が余りにも急変したということと、それから指標のとり方等についての反省もあるかと思いますが、何か一つのターゲットを国民に示したような感じで私は当時受けとめておりました。したがって、いま社会計画というような表現でございましたが、そういうものが好ましい姿であるべきだと思っております。それを、今度はその中で財政の面を取り出して考えた場合に、財政改革には哲学と手法とそしてターゲットと三つがないといかぬな。それが一つ考え方として、このお出しした財政改革の基本的な考え方でお示ししたわけでございますが、それに手法といわば数値、ある意味におけるターゲット、目標、そういうものをどう組み合わしていくべきであるかなということを考えております。  共通認識一つとしては、四条公債特例公債もひっきょうは公債でございますので、最終的にはこれの依存度、それもある種の歯どめ、わかりやすい数値を求めてということは、これは臨調でも指摘されておりますように、私も同感であります。そういうもろもろのことを考えながら、結局、そうはいってもまずは五十九年度赤字国債脱却という一つのターゲットがあった、それがギブアップせざるを得なかった、そうすると、国民になじんだ一つの問題としてはそれを示さなければならないではないかな、こういう感じを持っておるわけであります。  そうすると、特例公債依存体質からの脱却目標を十年先とするという六十年代を通じての努力が必要である、こういうふうに臨調の部会報告で述べられておりますが、といっても、その脱却年度を十年先にするということになると、やはりもう少し中期のものが欲しいな、こういう考え方で、これからの経済の将来展望の検討、これが経済審議会でも行われるようでございますので、それと整合性を持ちながら、経済社会情勢をも踏まえて進めていきたい。その際も、結局私の手法は、国民の合意を得ながら検討を進めるというのは、やはり国会における問答というものが、そういうものを形づくる一番影響力のある議論であると同時に、一番重要視して進めなければならぬ問題点ではなかろうかというふうに考えております。  したがって、社会計画という言葉がいいか悪いか、それは別といたしまして、そういうものは描きたい。そうして、それが余りにも国民現実認織との乖離を生じたら政治不信も招きますので、なおそういうものが現実性を帯びたものであってほしい。それにはやはり国会の問答等が一番基本的なわれわれが考え方を整理していくための根底に存在すべきだというような認識で臨んでいきたいと思っております。
  266. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう日没になりましたから終わります。
  267. 森美秀

    森委員長 次回は、明十三日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十九分散会