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1983-03-22 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十二日(火曜日)     午前九時二十分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 越智 伊平君 理事 大原 一三君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 鳥居 一雄君    理事 米沢  隆君       麻生 太郎君    今枝 敬雄君       狩野 明男君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       志賀  節君    椎名 素夫君       白川 勝彦君    津島 雄二君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       池端 清一君    上田 卓三君       大原  亨君    戸田 菊雄君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       武藤 山治君    村山 喜一君       大橋 敏雄君    柴田  弘君       正木 良明君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵省主計局次         長       平澤 貞昭君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省証券局長 水野  繁君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁長官   福田 幸弘君         国税庁税部長 角 晨一郎君         郵政省貯金局長 鴨 光一郎君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       長岡  實君         日本専売公社総         務理事     岡島 和男君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   粕谷  茂君     狩野 明男君   笹山 登生君     津島 雄二君   塩川正十郎君     志賀  節君   阿部 助哉君     村山 喜一君   塚田 庄平君     大原  亨君   武藤 山治君     池端 清一君   正木 良明君     大橋 敏雄君 同日  辞任         補欠選任   狩野 明男君     粕谷  茂君   志賀  節君     塩川正十郎君   津島 雄二君     笹山 登生君   池端 清一君     武藤 山治君   大原  亨君     塚田 庄平君   村山 喜一君     阿部 助哉君   大橋 敏雄君     正木 良明君     ───────────── 三月二十二日  国民年金特別会計への国庫負担金の繰入れの平準化を図るための一般会計からする繰入れの特例に関する法律案内閣提出第三七号)  電源開発促進税法の一部を改正する法律案内閣提出第三八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号)  災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田弘君。
  3. 柴田弘

    柴田委員 大臣、おはようございます。早朝からどうも御苦労様でございます。時間が十分ですので、要領よくお聞きします。  一つは、景気対策の問題につきまして、御案内のように、五十八年度の政府目標は三・四%、ところが最近の景気指標を見てまいりますと、不況感が漂いまして、どうもこのままでは三・四の達成もおぼつかない、そして税収不足も憂慮されるわけであります。そこで、過日の予算委員会におきましても、景気対策の三本柱として、一つ所得税減税、これは与野党合意を受けまして政府見解という形で一応の決着は見ております。二つ目は、やはり公定歩合引き下げという問題、これは御案内のように西独が一%引き下げまして、やや内外金利差の縮小という方向が、アメリカの問題もありますが、機は熟しつつあると私は思います。この公定歩合引き下げは、今日の財源難あるいはまた即効性ということから考えますと、やはりこれは早急にやるべきことではないか、こういうふうに思いますが、この点どうかということ。それから公共投資前倒しでありますが、昨年五十七年度も七七・三%前倒ししました。この点についての大蔵省としての考え、この二点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下国務大臣 第一番目は、西独金利引き下げ等から来るわが国金融政策とでも申しましょうか、確かに、公定歩合の操作は日銀の専権事項でございますので私から触れるわけにはまいりませんが、一般論として申し上げまして、西独金利が下がったというのは、ある意味においてそれだけ選択の幅が広がったとでも申しますか、そういう認識を私ども持つわけでございますけれども、その後、例のEMSでフランス、西ドイツ間で切り上げ切り下げの問題で意見がなかなかまとまりませんで心配しておりましたが、一応決着がついた。これはやはり主要国ですから、通貨の安定が世界全体のためにいいことだと私どもも評価をすべきだと思っております。  ただ、その影響でございましょうか、あるいはアメリカ金利がなかなか下がりそうにないということでございましょうか、全面的にドル高になりまして、日本はきのう休みでございますが、よその国は休みではないものでございますから市場は開かれております。そうすると、二百四十一円強という値がついたという表現はおかしいですが、そういうことのようでございます。これは、いわゆる全面ドル高影響だと思いますものの、通貨当局としては大変気にかかる問題じゃないだろうかな、こういう感じがいたしております。これもまた一般論でございますが、円高メリット公定歩合引き下げメリット等について比較対照される議論も世間によくありますだけに、やはり非常に注意される一つのポイントではないかなというふうに一般論として推察をいたしております。  それから、次の公共事業前倒し問題でございますが、参議院で総括が終わりまして一般質問に一日だけ入ったばかりで、まだ予算審議がそこまで来ておるという段階でございますので、私どもの方として、予算が通った場合を想定して前倒しをどれぐらいやるかということについては、具体的な検討に入るのはちょっと手控えをしておるという状態でございます。
  5. 柴田弘

    柴田委員 次は、専売公社改革法案提出という問題でありますが、御案内のように、昨年の七月三十日に臨調が第三次答申をいたしました。それを受けて八月の十日に「臨時行政調査会の第三次答申に関する対処方針」と題しまして閣議決定がなされて、「逐次所要の結論を得てその実現を図る」こういうことであります。そして九月の二十四日に「今後における行政改革具体化方策について」いわゆる行革大綱について閣議決定がなされておりますね。  ここで言っていることは、これは電電公社もそうでありますが、専売公社改革法律案本国会提出するように準備をする、このようになされております。本来ならば本国会において提出をされ、審議をしなければならないわけであります。ところが、どうもこれが、過日の日商総会における中曽根総理のあいさつの中でも、この法案提出が無理じゃないかということを示唆しているように見えるわけであります。また、聞くところによりますと、自民党内でも民営化の問題についていろいろ異論がある、意見が分かれているというようなことで、どうも改革法案については今国会提出は無理である、このように私は判断いたしておりますが、その辺はどうか。それでは、無理であるならばそれは一体どういう理由によるものか、これをひとつ明確にお聞かせいただきたい。  それからもう一つ、これに関連して民営化の問題ですが、臨調答申は、経営形態は基本的には民営化すべきである、こういうふうに言っておるわけであります。ところが、この民営化の問題は、私も先日この委員会におきまして総裁あるいは政務次官等にお聞きしましたが、今日の世界たばこ市場国際競争の激化ということで、民営化すれば独占禁止法との関係によりまして、これはどうしても分割民営にならざるを得ない。国際競争にたえ得るかどうかということ、それから、たばこという商品の特性といいますか、そういった問題等々で、私見であるとは断りながら、総裁は、民営化には非常に慎重を要する、いわば反対であるというような御意見であったわけでありますが、この民営化につきまして、ひとつ大臣からも明確な御答弁を賜りたいと思います。  もう時間がありませんので、この二点よろしくお願いいたします。
  6. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますとおり、いわゆる臨調答申趣旨に沿って「所要法律案次期通常国会提出すべく準備を進める。このため、政府自由民主党行政改革推本部常任幹事会において関係者出席を求めつつ調整を進めるとともに、政府部内においても、検討、立案のための体制を整えて所要調整を進めるものとする。」これは九月二十四日の閣議でございますが、きちんと書かれておるわけでございます。  そこで、大蔵省におきましても専売公社においても事務的に検討中でありますが、十万四千と言われる葉たばこ耕作者取り扱い、それから小売人取り扱い、これはやはり大きな影響を与えるところでございますので、勢い慎重な配慮が必要でございます。それから税制のあり方等、事務的にも技術的にも複雑な問題が多うございます。  さらにいま一つ独禁法との関係というようなことで、一生懸命やっておりますが、立法技術的な問題も多くございますので、取りまとめにはまださらに時間を要するではないか、しかし、やはりきちんと決めたわけでございますから、行革大綱の線に沿って引き続き努力はしなければならぬ問題だ。どういうふうに持っていくか、私も、予算委員会大蔵委員会の合間を縫いながら、関係方面意見もいろいろ聞いて歩いておりますが、確かに、複雑な問題が存在するということは御指摘のとおり否定できないことだと思っております。  それから、民営化の問題でございますが、これこそわが国たばこ事業の健全な発展に資するために企業性の発揮が可能なものでなければならないということは基本的には考えておりますけれども、これまた、葉たばこ耕作者への影響等、配慮することが必要でございますので、関係方面十分調整を図りながら慎重に検討していかなければならぬ問題だ、これもまた、独禁法関係とか新たなる問題とでも申しましょうか、これは次から次へどんどん問題が出ておりますので、部内でも大変忙しいと申しますか、一つ一つが大変多方面にわたる問題でありますけれども、一生懸命調整するように、意見を聞いたり、こちらの意見を述べたりして歩いておる段階でございます。
  7. 柴田弘

    柴田委員 時間が来ましたからやめますが、大臣、そうしますと専売公社改革法案は、もうあとの今国会の日数からいって提出は無理、こういうふうに私どもは判断してよろしゅうございますね。これだけはっきり答弁いただきまして、終わります。
  8. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり国会の方へ提出予定法案として示しておる限りにおいて、内閣責任において、まだギブアップという状態をここで申し上げるわけにはいかぬ、まだまだ努力してみようや、こういうところであります。
  9. 柴田弘

    柴田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  10. 森美秀

  11. 広瀬秀吉

    広瀬委員 私は、たばこ定価法及び専売公社法の一部改正にしぼって御質問をいたしたいと思います。  現在の専売公社経営状況、数字的に大づかみでいいですから、こういうものはどういう状態になっているか、まず、それをお聞かせいただきたいと思います。
  12. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  専売公社経営状況でございますが、昭和五十七年度で申しますと、たばこ販売数量が約三千百億本、これは目標でございますけれども、ほぼ達成の見込みでございます。これによりまして、昭和五十七年度にはたばこの売り上げが二兆四千五百八十億円、そういたしまして、純利益といたしましては、予算上は約六百五十億円を予定いたしておりますが、いまの私ども予定では、これを上回ることは確実でございます。したがいまして、大変簡単でございますけれども、現在までのところは、私どもの仕事は決して楽ではございませんが、順調に推移いたしまして利益も上げることができる、また、それによりまして専売納付金並びに地方たばこ消費税も、両者合わせまして一兆五千億円を超える財源協力をいたしておるところでございます。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬委員 昭和五十年以降五十一年に定価改定をいたしましたね。それから五十五年には、それぞれ納付金率法定化、それから、あのときもまた値上げをしたはずですね。二回やっておられる。五十一年から五十五年という、間が四年あったわけですが、今度は五十五年で五十七年にまた、五十八年度からですけれども、間隔が詰まってきているわけですね。この値上げ理由は一体何ですか。
  14. 長岡實

    長岡説明員 前々国びに前回値上げは、公社経営上の必要と申しますか、公社赤字を生ずるような状態になりましたために値上げをお願い申し上げたわけでございます。  今回御審議をいただいております法律によります値上げは、公社経営は先ほど申し上げましたように赤字にはなっておりません。したがいまして、五十五年の法改正によって認められた範囲内で公社値上げをし得るという理由ではございませんで、今回は、国の異常な財政逼迫状況から、財源を確保する必要があるという観点値上げが行われるものでございます。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬委員 納付金率前回改正法定化した。紙巻きたばこ、大宗を占めるものでありますが、一級品が千分の五百六十五、二級品が千分の五百五十五、三級品が千分の四百四十五、こういうように納付金率法定したわけですね。こういうことで専売公社にも、しかるべきそういうものを法定することによって企業努力というようなもので、明確にそういうものを出しさえすれば、あと内部留保として企業努力の成果は内部でそれぞれ有効に専売事業発展のために使える、こういうことで、企業責任というような問題が当時指摘されておったわけでありまして、そういう問題も明確になるということなんですけれども、国の財政が逼迫しているという理由で、そういう制度改正した趣旨をわずか二、三年のところで、国の財政が逼迫したからというだけの理由で、専売公社に対して今度さらに一本当たり〇・三四円国に納めよ、こういうようなことでは、公共企業体としてもどうやっていいか迷うわけだと思うのです。  大臣幾ら国財政が逼迫しているとはいえども、そう勝手やたらに国の都合だけで、まさに国の恣意的な——恣意的なと言えばそれは反論があるかもしれませんけれども、国の都合だけでそういうことを次々に改正して公社負担を強いる、しかも今日のたばこをめぐる諸情勢というのはきわめて厳しい。臨調答申なんかでも指摘されているように、今日、外国からの自由化の要請というような外圧の問題もございますし、さらに、たばこ全体が喫煙と健康の問題なども含めまして売れ行き不振という状況にある。  そういう中で、専売公社がせっかく納付金率法定をされて専売としても企業努力、そういうようなものに向かって一生懸命がんばってきておる、それで六百億の黒が出そうだ、あるいはそれを上回るかもわからぬ、こういうような状況まで企業としては努力をしてきた。それを、よくなったんだから、おまえのところから今度は値上げまでして金を出せというのは、いかにも場当たり主義で、政府というのは一体そう身勝手であっていいのかどうかということを、これは公共企業体といえども専売公社としては一体これからどうなるんだ、そういう疑問だってあるだろうと思うのですが、財政当局として、それらの点についてどのようにお考えでしょうか。
  16. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、いま広瀬委員指摘のように、五十五年の納付金率法定のとき、これも私が大蔵大臣のときにお願いした法律でございます。  それによって、さらに経営努力が促進される環境の一つが整ったという意味におきまして、今回の定価改定はまさに公社経営上の理由ではないわけでございますので、財政事情を背景とした財政上の理由によって、それ以後の物価の変動等を勘案して負担適正化を図るという観点から行うものでございますが、たばこ専売物資としての性格から見て、言ってみれば、法改正のときの基本的趣旨そのものに必ずしも反するというものではないというふうに思います。が、いずれにしても、特例措置公社理解協力、こちらがお願いしてそしてとった措置である。だから、御指摘を受けるということは、やはり十分私どもも、これそのものを提案するに当たりましても心の底にあった問題でございます。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大臣公共企業体というものは、国の財政が逼迫して厳しいようなときにはそれなりの、応分のといいますか、そういうもので国の財政にも貢献をし、さらに納付金率法定ということは制度上そういうようにきちんとしたけれども、そういう場合には国の財政にもさらに貢献するということは、事の本質上とでも言うのですか、そういうものとしてそういう宿命を与えられているんじゃないかと言わんばかりのお答えなんですが、いずれにしても、納付金率を急遽引き上げたと同じ結果になるわけですね。このことは、やはり国民立場から見れば、値上げという形を通じて結局は国民にこの負担は帰属するわけでありますから、したがって、一種の増税的な性格を持つということは言えるだろうと思うのですね。そういう御認識で間違いありませんか。
  18. 竹下登

    竹下国務大臣 いずれにしても、やはり国民負担増をお願いするわけでございますから、いまの御指摘については、これはやはり私ども立場からしても理論的に肯定すべきものであろう。増税という言葉は別といたしまして、国民負担増をお願いする、それそのものはそのとおりでございます。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬委員 当然そういう答弁があってしかるべきだろうと私も考えておるわけでありますし、大臣も、そういう意味では増税と同じような効果を持つ措置であるということをお認めになったわけでありますが、これは臨調答申をこれから政府がどうやっていくのか、この辺のところも問題でありますけれども、五十五年に納付金率をわざわざ法定したそういう趣旨は、これは国の都合で毎年毎年どうにでもなるのだ、こういうようにお考えですか。それとも、臨調答申による特殊会社への移行とか、そういう根本的な経営形態の問題などもございますけれども、一応それと別にして、こういう措置納付金率法定がきちんとされておるにもかかわらず、毎年毎年そういうようなことを繰り返して、五十九年度の特例公債からの脱却ということを言っておりますけれども、これももう全く不可能になってきたという苦しい状態が、ここのところまだまだ何年か続くだろうと思うのです。そういう中では、来年も次もというようにやられるお気持ちなんですか、これは一回だけの特別措置特例措置として公社にお願いをすることなのか、その辺のところをちょっと明らかにしてください。
  20. 高倉建

    高倉政府委員 先ほど来先生御指摘のございましたとおり、今回の措置がもっぱら財政上の事由によるというのはそのとおりでございます。と同時に、わが国たばこ産業をめぐる諸情勢が大変厳しいということにつきましても、私どもとしては重々認識をしているつもりでございます。したがいまして、今回はまことに厳しい財政事情に対処いたしますために定価改定をお願いしているわけでございますが、こういう措置は確かに異例措置でございまして、軽々にとるべきものではないというふうには考えております。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに二年間の特例措置としての国への納付をお願いするということと、それから六十年度以降ということになりますと、この特例措置を継続する場合には公社経営上の理由により再び値上げをせざるを得なくなるような事態も考えられますので、六十年度以降は本則に従って一本当たり〇・三四円は公社に帰属するということになるわけでございますが、基本的に、いまおっしゃったようにこういう措置軽々にやるべきものではないではないかということは、私もそのように考えるべきものだと思っております。
  22. 広瀬秀吉

    広瀬委員 わかりました。軽々にやるべきものではないと私も存じます。  それで、今度の定改法によりますと、これはもうあらゆる銘柄一級品から三級品までみんな一律に一本一円上げるということなんですけれども一級品を吸う人が所得の高い人、三級品を吸う人が所得の低い人、こういう嗜好品でもございますから、必ずしも明確にそういうものだと断定するのもどうかとは思いますが、低所得の人は高級銘柄は生活の面でなかなか喫煙しにくいことだろうと思うのです。  そういう点では、一級品、二級品、三級品というような銘柄で長いことなじんだ嗜好品であるだけに、そういう性格ではあるけれども、一律に全部一円ということにした理由、そしてそのうちの〇・三四円というものを国に上げていくということは、その一円の配分の中身はどうなっているのか、その二つの点について、これは総裁で結構ですが、監理官でもいいです。
  23. 長岡實

    長岡説明員 今回一律一円の値上げをお願いいたしております理由は、大きく分けて二つあると存じます。  一つは、一級品、二級品、三級品で価格の差があるわけでございますけれども、私どもといたしましては、すでにその価格差は十分な開きを持っておる、これ以上その価格差が広がりますと、そうでなくても三級品の中には公社経営赤字銘柄が相当ございまして、財政商品という財政収入を確保すべきたばこという商品性格からいたしますと、経常赤字を生ずるのはいかがかという観点から、一律に値上げをお願いしておりますのが第一点でございます。  それから第二点は、広瀬委員御承知のように、いま日米間でたばこの問題が大変ナーバスな問題になっておりまして、国会関税率改正法案をお認めいただけますと、アメリカ輸入たばこの値段が下がりまして、日本国内において内外製品価格差が縮小するわけでございますが、その時点でたまたま、若干の時期的なずれはございますが、たばこ値上げが行われる、その場合にどうもアメリカは、私ども直接聞いておりませんけれども、いろいろと間接的に入ってまいりますのは、日本はせっかく関税率を下げてアメリカたばこを安くすると言いながら、一方においてまた法律改正して値上げを行うようだというようなことを言っておる向きもあるようでございます。  その点に対しまして、私どもとしては、これは、先ほど来申し上げておりますように、財政収入を確保するための異例措置である、これは内外製品差別なく一律に一円上げるんだという説明が一番理解を求めやすいわけでございまして、そのうちの一部について、国内品に一円の値上げよりももっと幅の少ないものがあったりいたしますと、またこういうものを特に国内でこの際よく売れるようにして、アメリカからの輸入品をまた少し抑えるような画策をしているというふうにとられがちでございますので、一律一円ということでお願いをしたわけでございます。  それから第三点の、一円値上げのうちの三十四銭分でございますが、これは、いわゆる納付金率法定考え方からいたしますと、三十四銭以外の分が国に参りまして、そして三十四銭は公社の収入になるわけでございますが、今回は、先ほど申し上げておりますような異例措置と申しますか、異常な財政の逼迫状態にかんがみまして、財政収入を上げるという趣旨から、値上げ分すべてを財政寄与する、公社の取り分はないという立場から、普通の法定率分プラス三十四銭、合わせまして一円分の値上げということになるわけでございます。
  24. 高倉建

    高倉政府委員 お答え申し上げます。  先ほど総裁から御答弁申し上げましたように、一本一円の値上げをした理由は、総裁の申し上げたとおりでございます。確かに先生御指摘のような御意見もあるわけでございまして、この点どう考えるかということは、いろいろ私どもも、もちろん公社等ともども考えたわけでございますが、先ほど申し上げましたとおり、大変厳しい経営環境の中での公社の損益ということにも配慮が必要だと思いますし、かたがた、対外関係が大変神経質になっているという点も配慮をしなければならないのではないか、かように考えているわけでございます。  それから、三十四銭の理由でございますが、御承知のとおり、紙巻きたばこ納付金率というのは一級、二級、三級それぞれに違っております。一級でございますと五六・五、二級でございますと五五・五、三級でございますと四四・五ということでございます。したがいまして、財政の取り分あるいは公社に帰属する分、級別にはそれぞれに違うわけでございます。ただ、全体を平均いたしますと、ここのところいわゆる国、地方の財政の収入になる分は大体五六%ということで安定をしております。それから、当然のことでございますが、小売人のマージンは一〇%と決まっております。  そういたしますと、総体としては、一〇〇から五六と一〇を引きました残り三四というのが公社に帰属する分になるわけでございます。級別にきちんと分けてやるという方法もございますが、今回の専売納付金特例措置は、二年間の特例措置ということでもございますので、制度を余りに複雑にするのもいかがか。一方、総体としての財政の取り分五六、公社に帰属する分三四という数字はほとんどこのところ安定しておりますので、全体として制度を簡便にするという意味で、一本当たり三十四銭の分を特例納付していただく、こういう制度をお願いしているわけでございます。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬委員 先ほど総裁答弁しましたように、いままでの体系から言えば、まさに公社の取り分が三四%ということになるわけですが、これが今度の値上げについては逆に政府の取り分が三四%ですな、三十四銭ですから。そういうことになった状況はわかったのですが、これを五十五年に決めた法定納付金率、これが少なくともこの定改法が通った後においてどういう数字の変化になりますか、一級品、二級品、三級品全部一円を上げていくということになった場合に。一円のうち三四%は今度は納付金になるわけですね。その点を考慮すると、どういう数字的な変化になりますか。たとえば、一年限りであるというように私は理解しているのですけれども、この一年間はどういう変化になりますか。
  26. 高倉建

    高倉政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、現在の法定されました納付金率を各種平均いたしますと、五六%ということになっているわけでございます。  今回値上げをお願いします一本一円のうち三十四銭分を特例納付をしていただく分を仮に納付金率に換算いたしますとどういうことになりますかと言いますと、これは試算でございますけれども、五八・八ぐらいな感じになろうかと思います。ただ、この分は、先ほど申し上げましたとおり、あくまで二年間の特例納付でお願いするわけでございまして、納付金率本体はそのままでございます。ですから、六十年度以降は現在法定されております納付金率がそのまま適用されるということでございまして、ただいまお答え申し上げました数字は、あくまで今回の一本三十四銭の特例納付分を納付金率として換算して足してみると……。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬委員 銘柄別では出ておりませんか。
  28. 高倉建

    高倉政府委員 銘柄別にはちょっと計算しておりませんので、申しわけございません。全体としては、そういう数字になるということでございます。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大臣にお伺いしたいのですが、二年間こういう特例を設けるということでありますが、そうしますと、六十年度あたりには、さっき総裁答弁の中にもちょっと定価改定という、それから大蔵大臣答弁の中にも定価改定という問題が出てきたのですけれども、六十年度にもまた定価改定をやって、さらに再値上げをするというような気持ちが現在おありですか。  その辺のところ、しっかり確かめておきたいと思うのですが、私は、やはりそうちょくちょく、今日、専売法、専売公社法そして納付金率法定制度、こういうようなものができ上がっている中で、国民の嗜好にこたえて供給を安定的にやっていくというような立場からして、これは国の責任でもあろうと思うのですが、六十年度にも定価改定予定しているのだというようなことではないでしょうね。その辺をはっきりさしてください。
  30. 高倉建

    高倉政府委員 お答え申し上げます。  今回の専売納付金特例措置は、現時点で公社が推計いたしました将来の損益見込みから、五十八年度及び五十九年度はこういう特例措置をとっても公社の損益がなお黒であるということでお願いをしたわけでございますが、この措置をさらに六十年度まで続けるということになりますと、現在の損益見込みでは公社の損益がもたないという事態でございます。  そこで、なお特例措置を続けるということになりますと、先生御指摘のとおり六十年度に再値上げということになるわけでございまして、これは私どもとしてもいかがなものかということで、六十年度になりますと公社の取り分である分は本来の公社に帰属するように戻します、こういうことに法律でもしているわけでございます。  そうしますと、六十年度はなお公社の損益は黒字になる見込みでございますので、六十年度に再値上げという事態は避けられる。それから先のことは、何分いろいろな条件があろうかと思いますけれども公社が現在立てております損益の見込みによりますと、なお若干の期間は公社の損益上の事由による値上げを避けることができるであろう、こういうふうに見られておるわけでございまして、六十年度に再度値上げをするような事態にはならない、こういうふうに判断しております。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬委員 総裁大臣から、いまの点について決意を述べていただきたいと思います。六十年度に値上げをやるつもりなのかどうか。
  32. 長岡實

    長岡説明員 ただいま監理官からお答え申し上げましたように、六十年度には値上げをしないで済む、これははっきり申し上げられると思います。その後につきましては、私ども、できる限り企業努力によって値上げの時期をおくらせるように努力いたしたいと思います。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに六十年度以降は本則に従って〇・三四円を公社に帰属するということになりますので、六十年度に定価改定をする必要はないというふうに考えております。
  34. 広瀬秀吉

    広瀬委員 しつこく私が念を押しましたのは、たばこ定価改定がある、そういう問題が特に専売の製造部門に携わっている労働者への影響、あるいはまた葉たばこ耕作農民への影響、そういうようなものをシビアに考えなければならない。これは単に定価が上がるという問題だけではなしに、先ほど指摘いたしましたように、今日国際たばこ独占といいますか、ビッグスリーというか、そういうようなところからかなり外圧が強まっている。  そしてまた、今度の関税定率法、まだ審議は始まっておりませんけれども、これから審議されるわけですけれども、EC並みの九〇%から三五%に一、二年前に下げて、さらにそれを一五%下げて二〇%にしていくというようなことになりますと、これは、それだけでも輸入たばこと国産たばことの間の価格差というものが縮小せざるを得ないというようなことに当然なってくるだろうと思いますが、その辺のところも含めて、そういう製造関係に携わっている労働者、それから葉たばこ耕作農民、この人たちが、そういう点で一体日本の葉たばこ産業は将来どうなるのだろうかということで非常に危惧の念を抱いていることに間違いはないわけであります。私が国会へ出てまいりました昭和三十五年当時は、葉たばこ耕作者は全国でたしか三十一万人と記憶しております。ずいぶん議論をしたわけですから、大体間違いないと思うのですが、それがいまではもう三分の一以下に減少して十万戸を割り込んでしまって、恐らく九万八、九千ぐらいになっているというように理解をしているわけですけれども、そういう状況になっておるわけであります。  そういう点で、いま、こういうたばこをめぐる国際環境といいますか、さらにまたこういう定価改定ということでたばこ値上げが行われる、外国葉たばこの比率も、マイルドな銘柄というようなことで、喫味をよくするというようなことで年々輸入葉たばこのシェアが増大をしてきております。かつて前の総裁とも大分論争をしたことがあるのですけれども、三三%か三二%くらいで、外国葉たばこの輸入ということはもうその辺で抑えたいというようなことを私に答弁されたのを覚えているわけなんですが、いまや三四%まで行っていると思います。  それから、製造たばこの方もだんだん格差が縮小してくる、国内たばこ値上げが行われる、そういうようなことで、かつて一%以下であったものが最近では恐らく二%を超えているのじゃありませんか。少なくとも一・九%か二%ぐらいまでは消費が伸びてきている。しかも、今度また小売店舗を二万から四万に伸ばし、さらにこれを七万ぐらいに伸ばす。希望のあるところは、やがてはここ数年のうちに、どこにでも外国産の輸入たばこを売れるような状況にしよう、こういうようなことになりますと、これは、かなりそちらが伸びてくる可能性もあるのじゃないか。  そういう中で、耕作農民が一番そういう点で大きい影響も受けるのではないか。そしてまた、そういうような状況になって輸入たばこのシェアが増大をするというようなことになりますと、最近のたばこの絶対的な消費の伸びというものが非常に低率になってきている。かつての年率七、八%伸びているというような時代から、一%か二%程度しか伸びない。これは、値上げをした年には買い占めがあって大きく伸びるなんということはありますが、その翌年になるとがたんと大変な落差を示すというようなことなどもありまして、こういう点で私は非常に心配をしておるわけであります。  そういう点で、今度の定価改定それから納付金の特例、こういうものによってそういう人たちにどういう悪影響が及ぶか、この点をまず公社当局として、大蔵として、専売関係に働く労働者の人たち、それから葉たばこ耕作農民、こういう人たちへ及ぼすことが予想される悪影響というものがどういうように出るか、こういうことをお示しをいただきたいと思います。
  35. 長岡實

    長岡説明員 今回の値上げによりまして、たばこの消費は御指摘のとおり若干落ち込むと存じます。ただ、私どもはあらゆる努力を払いまして、その落ち込みが私ども経営に大変悪影響を及ぼすようなことがないように努力をいたしたい。販売面その他も含めまして、公社、職員一丸となってその落ち込みを最低限に防ぐような努力はいたしたいと存じます。  そこで、各方面に与える影響でございますが、私どもの職員の面をとりますと、むしろ営業面等はかえって忙しくなると思います。それから製造の面では、若干製造数量の調整を必要とするようなことも考えられますけれども、その点につきましては、広瀬委員御承知のように、最近新鋭工場ができますと新鋭機械の導入等もやっておりますので、その機械になれてもらうための訓練その他も当然やらなければならないことでございまして、現在、そのことのためだけで直ちに人減らしをしなければならないとかいうようなことはございません。もちろん全体としては、自然減と申しますか、やめていく職員の後を補充する分について調整は行いますけれども、直ちに首切りにつながるというようなことは十分に避けられると考えております。  それから、葉たばこの面でございますが、葉たばこの面につきましては、先ほど御指摘がございました外葉率、一時三四%台になりましたが、最近はまた三三%に戻しまして、できるだけこの率を今後とも維持してまいりたいと考えております。  輸入たばこはふえる、あるいは国産のたばこにつきましては値上げ影響もあって若干消費が頭打ちになるといったようなこと、これは国産の葉たばこの生産に全く影響がないかと申しますと、やはりそれだけ需要が落ちるわけでございますから、多少の影響はございますけれども、私ども、それだけのことで直ちにまた減反を耕作者にお願いするといったようなことはできるだけ避けまして、やや長期的に需給の均衡を図ってまいりたい、その長期的な需給均衡を図る具体的な方法といたしましては、一つは、国産葉をたくさん使用した銘柄で、しかも消費者に喜んで吸っていただけるような商品の開発に全力を傾けたい。それから、これは大変息の長い話ではございますが、たばこの輸出にも努力をいたしたい。ただ、これらの努力は、やはり何と申しましても、国内でつくっていただく葉たばこの品質がよくて、そしてコストの方もできるだけ抑えていただくということが必要でございまして、その点につきましては、耕作者団体等といま真剣に話し合って詰めておる段階でございます。
  36. 広瀬秀吉

    広瀬委員 耕作農民への影響の問題で、強制的な出血減反といいますか、そういうようなものはやらないようにしたい、これは当然そうあるべきだろうと思うのですが、耕作者の場合、何といいましても、やはり将来の問題を見通しながら、こういう、たばこが値上がりをするあるいは外国たばこの輸入がどんどん増大をしてくるということで、非常に不安を抱いておるわけでありまして、特にこれは臨調からの指摘をまつまでもなく、われわれ自身も、大体十二カ月分の過剰在庫を抱えているというこの問題が非常に耕作農民にとっても、大きな鉄のおもりを足にくっつけられたような感じでおるわけなんですが、この十二カ月分に及ぶ過剰在庫をどううまく解消していくのか、これは、かなり思い切った施策をやらなければいけないんじゃないかと思うわけであります。  これは、専売公社制度であり専売法だから、こういう過剰在庫を抱えちゃったのだ、需給事情に応じて常にその耕作を自由に企業的に処理できるようにせよというのが臨調答申なんかでも非常に強調されている。だから、この過剰在庫圧迫という問題を専売公社ができる限り早く解決をつけていくということが、公社制度を維持し、また専売法を維持して、堂々と世界に胸を張ってやっていける一番大きいポイントになるんじゃないかと思うのです。  この過剰在庫解消の方法というものについて、もっと公社は真剣に考えていかなければならないだろうと思うのです。それについて有効な施策を、本当に思い切った措置を講じていかなければならぬだろう。これは、そのものずばりで農民に犠牲を転嫁するというようなことでなしに、もう使えないであろうというような、在庫の中にはそういうものなんかもあるんじゃないか、そういうものについては、大胆に廃棄処分にするというようなことも当然考えられてしかるべき問題だろうと思うのです。これは、私のちょっとした思いつきかもしれぬけれども、いろいろ在庫の中身を調べてみますと、非常に粗悪なものなんかでもう使用にたえないと思われるようなものもあるのじゃないかというようにも思われるのですが、その辺のところも含めて、この過剰在庫圧迫というものを専売公社企業努力によってできるだけ早い機会に解消する、それについての的確な施策をひとつ聞いておきたいと思います。
  37. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  過剰在庫の解消策につきましては、率直に申しまして、非常に近い将来これを解消するという名案がなかなかございません。広瀬委員のおっしゃいました、非常に悪い葉っぱを廃棄処分にしてはどうかという点も、実は私も素人としてそれを考えたことがございますけれども、聞いてみますと、たばこの場合には、古々米のような、米とはちょっと違いまして、保存がよろしきを得れば使えなくなるような状態の在庫ということにはならないようでございます。ただ、御承知のように、品質の非常に悪い葉っぱが生まれた年もございまして、それをどうするかという問題もございますが、これはこれなりに、また品質低下葉をうまく処理して使えるような技術が開発されまして、これは徐々にそれを使っております。したがいまして、なかなか過剰在庫を一挙に解決する方法というのがむずかしいわけでございます。  それからもう一つたばこの消費が順調に伸びております場合には、比較的この問題は処理しやすいのでございますが、御承知のように、いま消費は停滞気味でございますので、これもなかなかはかばかしくいかない。したがいまして、やや息の長い話ではございますが、先ほどお答え申し上げましたように、できるだけ国産葉をたくさん使って、なおかつ消費者、国民の方に喜ばれるような商品の開発、それから、大変これも息の長い話と申し上げましたが、海外への輸出にじみちな努力を積み重ねていく、こういったようなことを合わせまして、過剰在庫の解消に努めてまいりたいと考えております。
  38. 広瀬秀吉

    広瀬委員 総裁答弁としては、やはりいまおっしゃったようなことで結構だろうと思うのですが、過剰在庫をできる限り早い時期に企業努力、それからいまおっしゃった、粗悪品ができたものも、全量買い上げの専売制度の中ではこれはもう当然国の責任として買い上げざるを得ないわけでありますから、そういうものに対して近代的な加工技術、味つけの技術といいますか、そういう高度の技術を駆使してやっていただきたいということ。  それから、外国への輸出も考えたいということなんですが、外国へ輸出もしたいということはずいぶん前々から言われておるのですけれども、さっぱり実績が上がらない。これはやはり国際競争力の面で、それほど原価の面で私は諸外国のものに劣っているとも思えないのですがね。コストの面においても喫味の面においてもそれほど劣っているような面はない。大体、フィルターを通してたばこを吸うということになりますと、かなりもとの、フィルターをつけない、両切りの時代から見ると、香喫味というものはフィルターを通すことによってかなりぼかされてきているといいますか、端的にたばこのうまさという、かつてわれわれが両切り時代に持ったうまさとまた違った形になっている。それがフィルターのいいところでもあるし、健康上の理由が主たる理由ではあったけれども、そういう面でもあるわけですから、輸出努力が具体的に実を結べば、これも地域によってかなり伸びる可能性もあると思うので、そういう面でやはりその努力がなかなか実を結ばない、この大きな原因は一体どこにありますか。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕
  39. 長岡實

    長岡説明員 何と申しましても、公共企業体である私どもが海外に出て活動いたします場合にはやはり一つの制約がございます。  たとえば、ほんの一例にすぎませんが、香港の市場において私どもたばこを売ろうという場合に、非常に目立つところに大きな看板を掲げたいというようなときにも、香港では大体五カ年計画ぐらいで契約をするのが普通のしきたりだそうでございますが、私ども予算は単年度予算でございまして、そういう多年度にわたる契約なども非常にしづらかったというような面もございまして、今回五十八年度予算が成立いたしますと、出資がお認めいただきまして新しい会社をつくれば、これは株式会社組織でございますから、そういうところは民間会社と同じような活動ができるというようなことがございます。  ただ、それはほんの一部でございまして、現在までの努力がなかなか実らなかったという点、それは根本的には、アメリカの巨大企業等に比べて私どもが若干立ちおくれておる、出足がおくれておるということが最大の理由であろうかと思います。したがいまして、私は、会社ができましても目に見えて海外への輸出が伸びるという状態にはなかなかならないと思いますが、だからといって、これは手をこまねいておるわけにはいかないので、やや長期的に息長く努力を続けることによってマーケットを開発していきたいというふうに考えております。
  40. 広瀬秀吉

    広瀬委員 大蔵大臣、いまの問題で、これは所管の大臣として、わが国専売制度をとり、独占企業である公社が一手にやっているというようなことが、特に国際たばこ資本の抵抗にあって恐らく輸出がなかなかできないという面が非常に多いだろうと思うのです。  特に、貿易摩擦の問題などをめぐっては日米間で非常に激しいものがあるわけですが、そういう面で、これから専売公社としては外国への輸出ということにも心がけていきたい、そういうものを主管庁である大蔵省としてどういうように受けとめて、どういうような積極的な政策が講じられて輸出が伸びるような方向にいけるか、大臣の所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  41. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、日米経済摩擦あるいは通商摩擦等々を見ますと、日本人の勤勉さあるいは能力、そういうことで能力的におおむねのものは対抗できる、こういう認識を持つわけでありますが、その中で、やはり極端に言うと天候あるいは気候、基本的には国土面積、そういうものから来る問題については競争力が弱いものも現実存在しておる。  しかしながら、たばこの問題ということになりますと、アメリカの巨大企業の物の考え方からいたしますと、まさにシンボリックな商品としてこれが絶えず指摘される。それもわからぬでもない。しかし、少なくとも先ほど来のお話にもございましたように、広瀬委員のお言葉をかりれば味つけとかいろいろな問題からすれば、競争能力というもの、いわば技術とか頭の問題では競争力がないわけじゃない、率直にそう思います。そうなると、いわば競争力をつけていくための問題としては、やはり大きな問題として、従来それを生業としてこられた耕作者の方の問題が残ってくる。しかし、それについても、これから真剣に対応していくことによって、私は競争力を持ち得ると思う。少なくとも頭脳と技術はあるだけに、そういう角度から指導と申しますか、そういうことはやっていかなければならぬ。しかし、それにいわゆる国の財政が、余り大量にそれが奨励策として寄与した場合は、逆の意味においてまたガットその他大変な抵抗を受ける。だから、ひたすら能力と技術に頼りながら、環境整備には私どももあらゆる角度から努力をしていかなければならぬ問題だと考えております。
  42. 広瀬秀吉

    広瀬委員 輸出という問題についても、専売制度をとっているというようなことで、かなり国が関与をして国がメリットを与えながらというような国際的な非難にさらされやすいということを非常に慎重に大蔵大臣答弁されているわけですが、専売公社制度をとっており、専売制度をとっておる独占事業であるだけに、また反面、その裏返しの立場からのいろいろな制約が非常に大きい。業務分野を拡大するというようなことがもっと弾力的にできればいいじゃないかということも含めて、この問題は議論されてきておるわけなんですが、これはまた、前回たばこ改法のときあるいは納付金率法定制ができたとき、そういうようなときにも附帯決議等が付されて、事業分野を専売公社としても拡大をしていくべきである、輸出等についてもさらに力を入れていくべきであるというようなことが言われておるわけなんです。  事業分野を拡大するという点で、具体的に専売公社としてどのようなものを——これから専売法を前提にし、専売公社制度というようなものを前提にする。しかし、もちろんこれは、ここをちょっと直せばそういうことができるんだというようなことを前提にしての議論だと思うのですよ。いまの公社制度なり専売制度なりでは、なかなかそこまで踏み切れない。しかし、ちょっと手直しをすれば、専売公社制度を維持しながら、なおかつ業務範囲を拡大していくという点で、若干の法の手直しをすればそういう面ではいけますということは前提に置きながら、どういう問題に事業分野を拡大し得る分野があるのかというような点で、研究の成果があったらひとつ示してもらいたいと思います。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 岡島和男

    ○岡島説明員 お答えいたします。  なかなかむずかしい問題でございまして、一つは法制面の問題と、一つは実態面と、二つ問題があろうかと思いますが、法制面では、業務範囲が非常に限定的に書いてございます。したがいまして、そういう面からいたしましても、いろいろなことがもちろん自由にできるわけではございませんが、ぎりぎりのところ、どこまで法制上読めるかというようなことを考えますと、たとえば私どもの持っておりますいろいろな機械がございます。どんどん高速機を入れてまいりますと、前の機械が余ってくるというようなことがございますが、そういう機械を輸出に振り向けるというようなことをきっかけといたしまして、さらに私どもの方で機械製作所で機械をつくっておりますけれども、そういう機械を輸出することができるかどうかというあたりがぎりぎりのところではないか。一つそういう分野がございます。  それからもう一つは、私どもの方の研究所がございます。研究所におきまして、いろいろな葉たばこに関する研究を進めているわけでございますが、その葉たばこの研究を進めている際に、副産物としていろいろな、私も専門家ではないので詳しいことはわかりませんけれども、たとえば薬の問題のような点につきまして、何か新しい知見を得ると申しますか成果を得るということがあるわけでございます。現行法でございますと、私ども専売公社に与えられた仕事というのはたばこ事業そのものでございますから、そういう副産物として出てきた薬みたいなものをどんどんやるというわけにはまいらないわけでございますが、そういう点につきましては、ちょっとこれは法律的な問題がございますけれども、私どもとしては、そういうせっかく見つけた新しい知見みたいなものは大事に考えていかなければならないというふうに考えておる、こんな実態でございます。
  44. 広瀬秀吉

    広瀬委員 専売公社が高速巻き上げ機をさらに独自で開発するというようなことで、それを外国にも売りたいというようなことなどにも道を開きたいということを一つ考えた。それから、たばこ中央研究所で、ニコチンの有毒性というものをうまく利用して、たとえば防虫剤であるとかというようなことなどにやはりある程度の成果も得て、これは特に家庭用のゴキブリ退治などにもかなり著効があるというようなことなどもあるようでありますが、そういうような点もひとつ考えられるというお話でありましたが、そういうような点など、やはりこれはいまの制度ではなかなかという話のようでありますが、やはり臨調自身もそういうような点がいけないのだ。しかし、中央研究所でいろいろ研究をされておるその成果として、副産物でこういうものが得られるというような場合に、それをこういうように展開したならば国民生活全体にかなり有益性を持つような薬剤の開発もできるというようなことだったならば、それは専売公社のまさに関連の事業としてそういうようなことなども当然考えていいだろう。現行の制度ではちょっとやりにくいというならば、その程度のことは直していったらいいのではないかと思うわけですね。  そういう点で、大蔵大臣、この業務範囲を拡大せよ、国鉄などの場合にも業務範囲を拡大せよ、たとえば線路を一つ引いても、開発利益は全部民間に行ってしまうというようなことで何も公社自体にメリットがないというようなことで、非効率だ、非効率だという非難だけを浴びせるというようなことはまさにけしからぬ話だと思うので、そういうような問題などについて、若干専売法なり公社法なりを手直しすればそういう方向にも道が開けるというようなことがあるなら、これはやはり当然考えてしかるべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  45. 高倉建

    高倉政府委員 お答え申し上げます。  先ほど総裁からも御答弁がありましたとおり、現在の専売公社は、明治以来国の専売権の実施主体という位置づけをしたせいもあろうかと思いますが、業務範囲等につきまして、他の二公社に比べても非常に限定的になっているということは御指摘のとおりでございます。全体としてのたばこ需要が停滞をしているという中で、今後専売公社が生きていきますためには、専売公社の持つノーハウ全体をいかに生かしていくかということも必要なことであろうと思っておるわけでございます。  私ども、先ほどもお答え申し上げたと思いますが、現在、専売公社の改革問題につきまして公社ともどもにいろいろ勉強いたしておりますが、その中で、まず一つのテーマといたしまして、公社の業務範囲なりあるいは投資範囲なりというものを見直していく必要があるのではないか、こういう認識を持っております。  これも総裁から御答弁がありました輸出会社に対する出資というものも、現行制度のもとではありますけれども、極力そういう分野への対応をできる方策を考えていきたいということで、公社からもいろいろ御構想がありましたので、私どもといたしましても、そういう方向に力を入れるべく、輸出会社への出資ということを踏み切っているわけでございまして、ただいま御質問になりました制度的な問題につきましても、今後専売公社と十分打ち合わせながら検討を進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  46. 広瀬秀吉

    広瀬委員 いまお答えになった点は、ぜひひとつ前向きに積極的に進めていただくように十分考えてください。  この点、大臣に一言だけ、そういう方向でお考えになっていただけるかどうか、そのことを確認していただきたいと思います。
  47. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる知見、ノーハウとでも申しますか、これは私は、かなりすぐれたものが率直に言ってあると思っております。そういうことは、やはりいまの御趣旨に沿って努力すべきことであると思っております。
  48. 広瀬秀吉

    広瀬委員 定価改定をやりますと、いつも翌年は大体たばこの売れ行きが非常に落ちるわけでありますが、今度の定価改定によってどのくらいのパーセントで消費が減るだろうか、その点をひとつ明らかにしていただきたいことが一つ。  もう一つは関税定率法、これはまだ論議に入っておりませんので余り深くは立ち入りませんけれども、もう法律案もこの委員会にも付託されておるわけであります。そうしますと、三五%の関税が二〇%に、一五%引き下げられてくる。さらにまた、今日の為替相場はわりあい円高の方向に移りつつある。そういうようなことなどを通じて、外国の輸入たばこ、こういうようなものの動向、それと今度は国産たばこを上げる、外国たばこの方は関税が下がって、これをどういうように価格を設定するのか。これは特別な方式をもってやっているようでありますが、それがどのくらいになるのか。大体その価格差がいままでのような状況になるのか。うんと詰まるのか。その辺のところの見通しはどうなるのか。  そうなった場合に、これはいずれにしても価格差が百円ないし百十円というような日本の主要銘柄との比較でありますが、総体の比較でなくて、主要銘柄で特にマイルドセブンというような、そういうものとの価格差はどういう状況に推移するだろうか。これは、先ほど申し上げたような外国からの事情を反映しての外国たばこ価格決定というようなもので、状況にどういう変化が出るであろうか。そして、そういうことによって外国たばこがさらに、最近年率二〇%以上、二一・八%とかそういうような形で伸びてきておるわけだけれども、そしてまた小売店舗もどんどんふえるというようなことで、専売公社としては、国内たばこの売れ行きについて非常に大きな困難に直面をするのではないか、こういうように思うのですが、その辺の見通しを聞かしていただきたい。
  49. 長岡實

    長岡説明員 今回の定価改定によりまして、どの程度たばこの需要が落ち込むであろうかという点でございますが、私ども過去、最近二回の定改後の推移等も参考にいたしまして、定改なかりせば、昭和五十八年度に国内品が約三千百億本くらい売れるだろうというところを四十億本減の三千六十億本、率にいたしましてマイナスの一・三%でございますが、そのくらいの落ち込みを想定をいたしております。  それから、輸入品の方でございますが、輸入品につきましては、現在までのところは伸びは国産品に比べますと大変よろしゅうございます。たとえば昭和五十六年度、ちょうど関税率が九〇%から三五%に下がった年でございますが、全体のたばこの消費の伸びが一・四%、そのうち輸入品が二一・六%、国内品が一・二%と、輸入品は二割以上伸びております。本年度は、まだ二月末現在でございますけれども、需要全体の伸びが停滞いたしておりまして、前年に比べまして〇・六%の伸びでございますが、そのうち国内品は〇・五%、輸入品が五・六%と、これもやはり輸入品の方が大きく伸びております。  そこで、関税率が二〇%相当に下がった場合に、五十八年度に輸入品がどのくらい伸びるか、一方、輸入品を取り扱います小売店の数も相当大幅にふえるわけでございまして、どの程度になるかという点でございますが、まだいまのところ不確定要素が大変多うございます。  たとえば価格にいたしましても、御質問の中にございました輸入品と国産品の主要銘柄で申しますと、国産品のうち一番売れておりますマイルドセブンが百八十円でございます。それに対しまして、輸入品で一番売れておりますラークが二百九十円で、現在百十円の格差がございますが、これが関税の引き下げによって当然下がります。ただ、どのくらい下がるかというのは、アメリカ日本にどういう値段でたばこを輸出するかというところが計算のスタートになるわけでございますが、この辺がまだ交渉が開始されたばかりでございまして、いまのところ、百十円の価格差が何十円に縮まるということを具体的に申し上げる段階ではございません。  しかし、いずれにいたしましても、内外品の価格差を下げるために関税率引き下げを強くアメリカも要請しておったわけでございますから、当然のことながら価格差は縮まる。したがって、輸入品の需要の伸びは国内品をさらに上回るであろうと思います。  シェアが何%になるかという点も、なかなかお答えがしにくいわけでございますが、私ども、五十八年度の予算を編成し御審議をお願いする段階で一応想定いたしましたのは、前回関税率引き下げ時の状況等も勘案いたしまして、来年度中に三割もしくはそれをちょっと上回るくらい輸入品の伸びがふえるのではないかというふうに考えております。
  50. 広瀬秀吉

    広瀬委員 ある程度の価格差というものは、現在主要銘柄である国内のマイルドセブンに対して、ケントであるとかラークであるとか、そういうようなものの間に大体百十円くらいの格差がある。これで、なおかつ年率二〇%以上の伸びを輸入品が占めている。この年率二〇%というのは非常に大きい数字ですね。国内産品の方がもう一・二%とかその程度の伸びになってきている段階において、これは非常に加速度的に輸入品が伸びる状況になる、こういうような状況であります。  そういう状況の中でも、昭和五十六年度で専売納付金及びたばこ消費税で一兆五千億を超えております。五十七年度では一兆五千三百二十六億、五十八年度は、今度の定改法もあり一兆七千百四十六億、こういうように国家財政に大きく寄与しているわけです。そして今度の場合にはさらに定価を上げて、しかも一律に一円値上げをする、こういうようなことで、これはかなり大きな問題をはらんでおるんじゃないか、そういうように思うわけであります。  したがって、専売公社としても、納付金が法定されて、企業努力をやって、内部留保をできるだけふやしていこう、健全な次への投資も含めながら内部留保をふやそうとしてせっかく努力してきたところへ、また一兆五千億台から一兆七千億台に納付金を上げていこう、こういうことでありますから、専売公社としても、部内の企業努力が一層また厳しくなってくる。そのことは、労働者に対する大きな労働の強化なり、あるいはまた全従業員が、全労働者が企業改善のためにあるいはコストダウンのために意欲を燃やして大変な協力を、製造の面でも販売の面でも営業の面でもしなければならない、そういうようなところに来ていると私は思うのです。  しかもまた、農民はそういうような今日のたばこ産業をめぐる諸情勢に非常に大きな不安を抱いておる、そういうような状況でありますし、国の財政にあるいはまた地方の財政にそれだけ大きな貢献をしておるわけでありますから、そういうことで、この特例を設けてまで、せっかく納付金率法定したにもかかわらず、それに上積みをする特例措置を今回講じた、そのことで専売公社に働く人たちが、先ほども申し上げたような、かなりの企業努力を要求されるという中で、それだけ生産性も極度に上げなければならないというところに追い込まれておるわけです。そういった場合に、国だけが、苦しいからというので専売公社に言うならば過大な企業努力を要請をするわけでありますから、そういう形で、そのしわ寄せが労働者にも強く及んでくるというような場合に、企業努力それから労働者のそういう意欲というようなものに対しては、何らかのインセンティブを与えてあげるのは当然だろう、こういうように思うわけであります。  そういう点で、これからの専売事業を支える専売関係の約四万の労働者に対して、何らかの見返りのようなものは当然考慮されてしかるべきだ、こういうように思うのですが、総裁大臣から、その点についてのお気持ちを伺いたいと思います。まず総裁から。
  51. 長岡實

    長岡説明員 お答え申し上げます。  私どもは、財政専売事業を国からゆだねられております公共企業体でございますから、定価改定あるいは日米関係改善のための関税率引き下げといったようなことが行われたから何かしなければならないという立場にはないと思います。  ただ、御指摘のように、需要停滞ぎみの中で定価改定が行われれば、一層消費は減少いたしますし、関税率引き下げによって輸入品との競争関係も大変激しくなることは事実でございます。したがいまして、そういう大変厳しい環境の中で、これからも国と地方公共団体に財政収入を安定的に確保していくということを実施してまいるためには、従来以上に事業運営の合理化が必要になることは申すまでもございません。職員全体にも大変努力をしてもらわなければ、なかなか事業の運営も困難であろうと存じます。  そういったようなことで、従来にも増した事業運営の合理化を促進してまいりますためには、全職員が一体となった意欲的な参加を求めるような何らかの措置を講ずる必要があるのではないかというふうに考えております。
  52. 竹下登

    竹下国務大臣 いま専売公社総裁からお答えがございましたとおり、まさに専売公社自体の問題でございますので、公式に申し述べますならば、その推移を見守っていく、こういうことになるでありましょう。しかしながら、総裁のお答えの中にも、いわばそれだけに、従来にも増して職員の皆さん方に対して経営の合理化なり能率の向上なり、そういうものを求めていかなければならない環境にあるということは、私どもも十分承知しております。
  53. 広瀬秀吉

    広瀬委員 そういう点では、すでに電電公社等におきましても、やはり企業努力そしてまた労働者の協力というようなものなんかについては、適正なメリットもつけてあげているというようなこともあるわけでありますから、こういう大きな、しかも異例とも言うべき特例を設けてまで納付金を上げていくわけでありますから、それに見合うものを、これは大蔵大臣としても、温かい気持ちといいますか、そういうようなものを持ってひとつ親心をきちんと示していただくように特別に要請をいたしまして、ちょうど時間が一分ちょっと過ぎましたから、これで私の質問を終わります。
  54. 森美秀

    森委員長 堀昌雄君。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 本日は、これから約一時間半にわたって、租税特別措置法の中で特にグリーンカード制の三年延長の問題についてお伺いをいたします。  委員長にお願いをしたいのでありますけれども、この問題はきわめて政治的な問題の処理でございますので、私が事務当局の答弁を求めましたときは事務当局の答弁で結構でございますが、その他についてはすべて大臣との間で論議をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  そこで、ちょっと事務当局にお伺いをいたしますけれども法律が施行をされて、その後にその法律の実施が延期をされた例があるのかどうか、ちょっと具体的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  56. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 戦後の例といたしまして唯一の例は、これは地方税でございますが、付加価値税が法律として成立いたしまして、結局施行に至らなかったという例を聞いております。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 この問題は、昭和二十五年七月三十一日に、地方税法、昭和二十五年法律第二百二十六号で第八国会で決まっておりましたものが、期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律という昭和二十八年法律第二十四号で、第十五回国会閉会後の参議院の緊急集会で処理がされたというのがどうも一件あるようであります。  長い戦後の期間中に、これが二度目の案件となるということなのでありますが、この付加価値税の問題、当時地方税でありましたけれども、いまや大蔵省では、この付加価値税に類似したものを実施したいというような検討が過去に進められてきておるというのが歴史上の事実としてあるわけであります。  この間、武藤さんが小倉税制調査会長との間で論議をされたのでありますけれども、税制調査会で答申をして、そしてその税制調査会の答申に基づいて自由民主党の手続を経て政府案として決定をされた法律が、正当な理由があって延期をされるということであるならば、これはまた別の問題でありますけれども、私が承知をしておる限りでは、どうも正当な理由がなくしてこの延期法案が出されておるというのが実は私の認識であります。きょうは、正当な理由であるのか、それは不当な対応であるのかという問題を当委員会で詳しく論議をいたしまして、そして、この問題がやがて必ずグリーンカードの実施を行わざるを得ないという段階に立ち至るという予測のもとに、私は、これからの質問を進めさせていただきたいと思うのであります。  そこで、まず最初に、なぜこの所得税法が改正されておったものを三年間延期することになったのか、それはどういう認識によって行われたのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。
  58. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさに御指摘のとおりでございまして、実際問題、私も、これについてはいろいろな経過もある程度は存じております。  しかし結局、言葉で言えば法的安定性を欠くとでも申しましょうか、率直なところ、その後、私どもとしては、必ずしもこの法律ができたからという因果関係ではないではないかと認められるような問題がいろいろ現実の問題として出てまいりました。そこへさらに、いままでは多数党の提案と申しておりましたが、与党の提案とでも申しますか、そういう法案そのものが出てきたということになると、とりあえずは、その法律案が通るか通らぬか、そういうある種の期待権の中に身を持していなければならないと思いつつも、それは廃案ということになりました。そうすると、やはり政府自体でその結論を下さなければならぬということになったわけであります。したがって、因果関係がそこにあるとは必ずしも思えないまでも種々な議論が出てまいりまして、そして、そういう与党提案というようなものの経過を踏まえ、この際はやはり出直して凍結法案をお願いしなければならないという結論に到達したということであります。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの御答弁を聞いておりますと、必ずしも因果関係があるとは思わないけれども、与党の法案が出て、それが廃案になって法的安定性を欠く、要するに、制度の実行上についていろいろと不安定なものがあるということでありましょうが、そういうことでひとつ出直して凍結法案を出した。だから、この法案そのものの可否の問題については、いまは直接お触れにはなっていないわけですね。そこのところはどうでしょうか。
  60. 竹下登

    竹下国務大臣 やはりそうなりますと、この法律案が通ったならば、これは、あらゆる予見を持たずして、いま一度税制調査会等で御議論をいただかなければならぬ、こういうことになるわけであります。いわゆる総合課税への移行という大義とでも申しましょうか、そういうものは、私自身、今日失われておるというふうには思えません。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと事務当局にお尋ねをします。  この問題が五十四年の税制調査会の答申として出た経緯の中で、私が新聞等で承知をしておるところでは、小倉さんは、反対もなく通ったんだ、こういうふうに新聞の記事で拝見をしておるのでありますけれども、そこのところは、どなたがどうという必要はありません、反対が何人かあったのか、おおむね反対なく通ったというふうに税制調査会長は新聞にお話しになっておりますので、その点をちょっと明確にしていただきたいと思います。
  62. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制調査会が答申をおまとめになる場合に、いわゆる採決をとるとかいう手法は通常とっておられません。したがいまして、あの答申がまとまりましたのは通常の答申と同じでございまして、総会でいろいろ御議論になりました。ただ、この制度の場合は、その前に約一年ぐらいをかけまして特別部会で御議論を願っておりますので、それをたたき台にして総会で御議論があったということで、非常に明確な形での反対論あるいは時期尚早論等も含めて、私、当時担当しておりまして税制調査会に出ておりましたのであれでございますが、非常に明確な反対が委員の中であったという記憶といいますか印象は持っておりません。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 この間、武藤委員質問の中で、要するに一事不再議といいますか、同じ案件が、情勢が少しも変わっていないのに、確かに前回の同時選挙の結果は自民党安定多数でありますけれども、政治の力だけで、数の力だけで、本来正当であるものがねじ曲げられる結果がいま出ておる。そういう経過の中で、またこれを税制調査会に諮問をして、もし別の意見がその税制調査会に——これは五十四年のときのメンバーとおおむね同じだ、こう私は見ておるのでありますが、そのようなことが起こるような税制調査会の権威というものを私どもも認めるわけにはいきませんが、恐らく国民も認めないだろう、こういう感じがするのでありますが、大臣は、その点についてはどういう御認識を持ってこの問題を再度調査会に答申を求められるのか、これは政治的な問題でありますから、大臣から答弁していただきたい。
  64. 竹下登

    竹下国務大臣 まさに御指摘のように政治的な問題でございますので、本法律案が通った後ではございますが、この法案審議の過程において出たもろもろの議論等を正確に報告を申し上げながら、私どもとしては、あらゆる予見は挟まないでこれにお願いをしていくという考え方でございます。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、この制度、いま大臣も総合課税の大義は失われていないと思うというお答えであります。  いまの日本財政状態を見ますと、この間から増税なき財政再建論というものがいろいろな角度から論議をされております。しかし、私ども財政や税金をやっております者の立場からして、財政再建であっても、中曽根さん流に財政改革であっても何でもいいのでありますけれども、私は、この問題は一日もゆるがせにすることができない重要な段階に来ておる、こう思うのであります。少なくとも国債が百十兆に近づこうというような段階で、これはもう安易に国債をどんどん増発すればそれで済むということではないところに来ておる。もっと政府も私どもも、この国債残高というものと今後の国債の流れといいますか、それを危機感を持って見詰めながら対処をしなければならないところに来ておる、こう私は実は認識をしておるわけであります。  その際に、この問題をここで三年間延期をするということは、とりもなおさず、今後の新しい財政への段階を三年間延期をしたと同じ結果を生むと私は思っているわけであります。ということは、この間小倉税制調査会長もお話しになっておりますけれども、少なくとも総合課税という問題は特にもう一つ、いまのグリーンカードによって、後で申し上げますけれども、要するに、脱税をした原資が、またもやマル優を不当に乱用してまた脱税をするというようなこが残されていて、そうして新しい負担国民に求めるわけにはいかないと私は考えておりますし、そのような事態に対しては、わが党は全力を挙げて阻止をいたします。わが党だけではないと思います。同じような野党の皆さんと同一歩調をとって、そのような増税に私どもが反対をして、増税法案国会で処理ができるとは、私は、民主主義のこの日本の国では不可能だ、こう思っているのでありまして、この問題の処理というのは、まさに今後の日本財政を左右するきわめて重要な問題であって、要するに、これから申し上げるような理由軽々に引き延ばして済むようなことではないという非常に重大な関心を持っているのでありますが、この制度を延期をするということの重大性についての竹下大蔵大臣の御見解を承りたいと思うわけであります。
  66. 竹下登

    竹下国務大臣 増税なき財政再建、これをてことして、表現をかりるならば糧道を断ちながら歳出の構造改革にメスを入れろと言われておるわけです。  そして、そのことがぎりぎり議論をされた後、現行の施策、制度をそのままで維持していくためには限度があって、新たなる負担、いわゆる負担増を求めなければならぬ、こういうようなことがあった場合、その負担増というものを求める姿勢の根底に、いわば総合課税の大義のもとに、本委員会を初め国会で通してもらったものを一時凍結するというような姿勢がある限りにおいては、われわれとしても厳しい受けとめ方で臨まなければならぬ、こういう御意見は、私もあり得る意見だと思っております。事ほどさように、厳しい態度でもって私どもも受けとめて、早い機会に、この法律案を通していただいた後、あらゆる予見を持たないで、あらゆる御報告を申し上げて、適当な結論が得られることを期待していく、こういう姿勢でございます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 さっきの御答弁の中で、自民党のお考えでありますね、グリーンカード対策議員懇談会でありますか、そこが中心になっていろいろと反対をなさった結果、自民党案として法案提出をされ、廃案になったという経緯でありますが、この法案国会に出されたときは、大臣は自由民主党の幹事長代行でおられたわけでありますから、なぜ自由民主党のこの懇談会の皆さんがグリーンカードに反対をされたのか、ポイントだけをひとつお答えいただきたいと思います。
  68. 竹下登

    竹下国務大臣 自由民主党の党内におきまして、この法律が通った後、これを執行していくに当たって非常に反対論が強くなったというゆえんのものは、やはり法的安定性の問題であったと思います。  ただ、法的安定性と申しましても、政府の側で見れば、また引き続き延期される法案提出されるとかという問題についての法的安定性を欠くという立場もありますが、自由民主党としては、これが施行された場合に、かつて予測しなかったもろもろの問題が生じてくる懸念が増幅されるという理由が一番大きな問題であったと思います。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 もう少し具体的に言っていただけませんか。これは、抽象論ではこの話は前に進まないのです。  要するに、かつて予測しなかった問題が生ずるおそれがある、と。かつて予測をしなかった問題がなぜ生じるのか、具体的にはどういうことがあるから反対か。これじゃ国民はわからないんですね。かつて予測をしなかった問題が生ずるおそれがあるから延期をするなんて、人をばかにした話と同じでありますから、具体的に詳細にひとつお答えをいただきたい。
  70. 竹下登

    竹下国務大臣 私がいまから申し上げることについては、それは事前にすでに予測された法律案提出して御審議をお願いして、そして国会で成立する以前にすでに予測された問題ではなかったかと言われれば、私も、そのとおりでございますとお答えをしなければなりません。  その一つは、これはさまざまな議論がございますけれども、利子配当課税の基本に関する議論が率直にございました。それから、いわゆる預金者のプライバシーに関する議論がございました。それから、資金シフト等によります金融秩序とか日本経済に与える影響を主張する議論というものもございました。そういうものは、最初に申しましたように、いわば事前にも当然あり得た議論ではないかと言われれば、確かにそのとおりでございます。しかし、それがいよいよ執行されるという段階になり、なおのこと増幅されて、そういう議論がかまびすしく行われるようになったわけでございます。  私どもといたしましても、それについて一つ一つの問題を議論いたしますと、まるきり、総合課税というものを考え、グリーンカード法案提出した以前に行われた議論でもあるわけでありますけれども、それがさらに、蒸し返しという言葉は表現が必ずしも適切でなかろうかと思いますが、蒸し返しをも含めて増幅されてかまびすしい議論になった、こういうことであります。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話では、事前に予測をされたことが増幅をして出てきたというようなことでありますが、少し話を具体的にしませんと物が前へ進みませんので、ひとつ大蔵大臣に、別にあなたに口頭試問をする気はございませんけれども、要するに、あなたの事実関係認識をここに記録にとどめておきたい、こう思うわけであります。  なぜかと言えば、この法案は、少なくともあなたが大蔵大臣として提案をされた法案でありますから、この執行については、あなたは政治的責任があるわけであります。それが、いまのお話を聞いておると、事前にも予測をされたものが増幅をして法的安定性を欠くようになる、それは、今度この選挙の後にまた伯仲になれば様子が変わるのかもわかりませんけれども、しかし、少なくともあなたが提案者であって、あなたがそれを延期するという以上、この問題についてのあなたの認識をひとつ伺っておく必要があると思うのであります。  そこで、ちょっと伺いますが、一体、このグリーンカードは何のために必要なんだ、この点をひとつお答えいただきたい。
  72. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 利子配当の総合課税というのが税制調査会の従来からの基本的なターゲットと申しますか考え方でございまして、問題は、それに行き着くまでの技術的な手法、もっと具体的に申しますと、本人確認と名寄せの手法をめぐっていろいろ議論があったわけでございます。税制調査会の特別部会では、たとえば納税者番号制度とか緑の手帳の制度あるいは高率源泉徴収で還付する方式、いろいろの議論が行われたわけでございますけれども、結局のところ、現実的な手法としてグリーンカードが提案されたわけでございますが、そのねらいは二つあったと思います。  一つは、少額非課税貯蓄制度の的確な本人確認と厳正な管理で乱用を防ぐという点でございます。同時に、そういう制度があるとすれば、それをなるべく総合課税の本人確認の手段としても活用する。ただし、総合課税の場合は、このグリーンカード制度はいわばワン・オブ・ゼムでございまして、そのほか公的な証明書類等も想定しておるわけでございますが、基本的にはマル優制度の厳正な管理、同時に総合課税の手段としてもこれを活用するということでございます。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣、いま局長が答弁をしたことをあなたの認識として私が考えてよろしゅうございますか、御答弁願いたいと思います。
  74. 竹下登

    竹下国務大臣 結構でございます。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 次に、このグリーンカードで一番心配になっておった制度というのは、このグリーンカードによって、いろいろな貯蓄の調査が税務署の中へわかるのじゃないかという心配があるんですね。  そこで、このグリーンカードには何が書かれておるのかという点を明らかにし、あわせて、御答弁は恐らく、限度額を書くだけだということは、要するに、個人の貯蓄そのものには、この制度はともに、限度管理の面でも名寄せの面でも、あるいは総合課税になる場合でも、預金の量的内容にタッチするものではないというふうに私は認識しておるが、その点を明らかにしてください。
  76. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いわゆるカード制度に記載される事項として定められておりますのは、現在の非課税貯蓄制度は、いわゆる多種類、多店舗でございますので、店舗ごとの貯蓄の種類それから限度額でございます。したがいまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、その設定された限度額での個々人の預金の残高等の記録は、カードとは無縁でございます。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、たとえばへそくりであるとか、個人でいろいろな形の預金があるだろうと思います。後で触れますけれども、口座数が二億を超えるというような状態になっておるわけでありますから、口数がいろいろあるのだろう、こう思うのでありますけれども、そういう問題にいまのグリーンカードが直接タッチをすることではない、要するに、それはあくまでそういう少額貯蓄を利用する人たちの限度額を管理をすることによって、そのことによって乱用を防ごうということが主体であって、その他の問題について国民が心配するような不安はないのだということをひとつ確認をしてもらいたいと思います。
  78. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 少額貯蓄を利用する限りにおきまして、カードの記載事項はただいま申し上げたとおりでございます。  世上いろいろ議論があったわけでございますが、このカード制度があることによって、税務当局に具体的な貯金の額、へそくりという言葉もあったわけでございますが、そういうものが具体的に税務当局に把握されるというものではございません。ただ、プライバシーの議論をめぐっては、対税務署との関係のほかに、そういうものがありますと、たとえば家族の中でわかってしまうというふうな議論は副次的には行われましたけれども、税務当局との関係ではそういうことはございません。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの家族内におけるプライバシーというのは、私ども、一般的にそれはプライバシーだとは思っていないんですね、家族の間の問題については。これは公的なものが私的なプライバシーに介入するかどうかという点に問題があるのでありまして、その点は、私は余りそういうふうに感じていないのであります。  それから、こういうものがあると手続が複雑になるのではないかということが大変心配されておるわけですね。私は、一々カードを持つ必要はないではないかということについては、いまや金融関係というのはカードの時代に入ってきていると思います。このごろ財布を買いますと、私は、大体カードというものを持っていないんです、古い人間ですから、もっぱら現金で物を買う主義でありますけれども、カードを入れる部分が財布にいっぱいくっついているんですね。これは私には使い物にならない財布だけれども、そういうもののない財布というのはこのごろ余り見当たらないというほどカードが出ているわけですから、いまの国民がその中に、グリーンカードというのは恐らく他のカードと大きさはそんなに変わらないのでしょうから、そこに入るようなものなので、携帯に不自由なわけでもなければ、お金の問題については、最近は皆さんキャッシュディスペンサーその他を含めてカードでいろいろやっておられるわけでありますから、この預貯金業務についてカードを提示することがそう問題ではないと私は思っておったのであります。  しかし一般的には、どうも税務署というものの持っている概念が非常にこわい存在であるというふうな一般認識があるんじゃないかと思うのであります。そこは、私はそう思っていませんが、一般国民はどうもそんな感じがあるのではないか。そうすると、そういうグリーンカードの手続という問題を含めて、煩瑣になるのではないのかという不安があるようでありますが、その点はどうですか。
  80. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 グリーンカード制度は、非課税貯蓄を利用したいと思う人が、現在でございますと、枠を設定いたしますときに非課税貯蓄申告書それから貯蓄申込書という手続を金融機関の窓口でしておられるわけでございますが、カード制度に移行いたしますと、一たんカードが交付されますと、一々その申告書を作成しているというよりも、その都度カードを提示していただければそれでよいということで、現行の手続と比べてそう煩瑣にはならないという考え方を、私ども提案申し上げたときからとっておるわけでございます。  ただ、その後の議論といたしましては、カードの交付申請をいたしますときに、住民票をおとり願って国税庁長官に申請をしていただくわけでございますけれども、これは感情論と言えば感情論と言えるかと思いますが、非常に零細な貯蓄をするのに、一々住民票をとって税務署からカードをもらうというめんどうな手続がなぜ必要なのかという非常に感情的な、部分的な反発があったことは事実でございますが、客観的な事実としては、私どもは、そんなめんどうな手続にはならないと考えておるわけでございます。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの住民票の問題は、最初に一遍だけやればそれで終わることですね。そこのところがもっと明確になっておれば、この問題の誤解は、感情的なものであろうと問題はなかったのではないだろうか。  それは、要するに、善意の人にいろいろな手間をかけるという点は、私は国民に対して大変申しわけないという気はするのでありますけれども、善意の問題というのは、だれかが得をしてそのことが結果的に善意の多数の人にマイナスをもたらしておるというのが現状ではないか。後で申し上げますけれども、私はいまそういうふうに思っておるのです。どうしてもやはり善意の人たちの協力を得ることによって、この制度を乱用する者を締め出すことが、それだけ税収も増加をして国に寄与することなのでありまして、私は、そういう意味では、納税義務の一つのあり方として、国民の皆さんにその程度の協力を要請することはそう大きな御負担国民にかけることにはならないと確信をしておるのでありますが、この点はいかがでしょうか。
  82. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 税制上の恩典を与えるといいますか受けられる場合に、納税者としてどの程度の負担を受忍していただけるかという問題であろうと思いますが、現在の非課税貯蓄申告書の作成の手間等から考えまして、非課税貯蓄制度に関する限り、グリーンカード制度は、非課税貯蓄の恩典を受ける以上納税者としては受忍していただける限度内にあるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで問題は、すでに貯蓄されている資金が税務当局に把握をされる、あるいは元本についての追及を受けるのではないか、それで贈与税をかけられるようになるのではないかというような不安があるというふうに言われておるわけであります。  私は、一般の国民としてはそういうことを心配される理由はわかるわけでありますが、税務当局としては、この問題についてはどういう態度なのかを明らかにしていただきたい。
  84. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 このカード制度ができまして、その後時日を経まして、これが税務当局による元本追及の手がかりになるという不安感といいますか、そういう形での各種の議論が行われたことは事実でございますが、ここで問題を、私どももいまの段階になって整理してみますと、一つは、制度を移行する過度期の経過措置の問題でございます。  これは時効等の関係もございますし、それから、いわゆる適正な申告を自発的にやっていただくというたてまえに立つ限り、移行期に当たりまして、たとえば元本等の過去に発生いたしました所得とかあるいは贈与等の関係につきまして、余り納税者の方に不安を与えないような執行上の、法令で許す限りでの配慮は国税庁当局としても準備するという態勢にございました。ただ、具体的にどうするかということに至らずに今日の事態になりましたので、執行当局として、具体的にどう対応するかというところまで細かく詰めた議論はございませんでしたけれども、できるだけの対応はするということでございます。  問題は、今後の問題といたしまして、このグリーンカード制度を手がかりにして税務当局が元本追及の手段として使うのではないか。先ほど申しましたように、カード制度自体の情報は、各個人の預金の残高とか財産の動きなんかは全然ないわけでございますけれども、それを手がかりとしていろんなことが行われるのではないかという不安はあったわけでございます。  これは、少し話が長くなりますので簡単に申し上げたいと思うわけでございますけれども、実は、ここにこの制度をめぐってのいろんな議論の起こってきました根源があるのではないかというふうに、私どもはいま率直に感じておるわけでございます。  つまり、わが国の利子課税の制度は、明治三十二年の所得税の改正のときに課税対象になりましたが、世界で先駆けてあの当時から源泉徴収を日本は採用しておるわけでございますね。それから幾多の変遷を経まして、実は昭和十五年の大改正のときに、これは分類所得税と総合課税の二本立ての所得税の大改正でございましたが、いまこういう議論が問題になりまして、私ども内部でいろいろ記録をひもといておりますと、当時税制調査会で、やはり利子に対して総合課税をやるべきであるという議論と、それは源泉徴収制度もあるので総合課税というのは行き過ぎであるという大変な激論が行われまして、結局、当時の青木大蔵大臣の裁断で源泉分離選択というのが導入されて、それがずっと今日まで、分離課税の時代もあったわけでございますけれども、経緯を引いておるわけでございます。  その根拠といいますのは、計量的にあるいは制度の理屈として的確に申し上げられない部分も非常にあるわけでございますけれども、漠然としたそういう不安感と申しますか、そういうものが結局いろんなこの制度をめぐって、四分の三世紀ぶりの大変な大変革でございますので、なかなか制度に対する理解あるいは安心感というものが得られなかった基本的な理由がそこにあるのではないかというふうに感じておるわけでございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 源泉分離の話が出ましたから、最後に、利子に対する源泉課税というのは、フランスを除いては先進国にはないと私は思っておるのであります。フランスの源泉課税、四五%と大変高い源泉課税をとっておるという実情であって、少なくともアメリカ、イギリス、西ドイツその他の先進国にはそういう制度がない。だから、そういう意味では、かつてから私は、大臣もちょっとお触れになりましたけれども、利子に対する課税の問題というのは確かに理論的にいろいろ立場があるということは私も承知をしております。  しかし、いまの実態は、要するに、総合課税を受ける人たちというのが一体本当にどれだけあるのか、これは、この前から当委員会でもその他でもかなり議論がされてきておるところでありますけれども、実はここに非常に問題があるのです。これは資料も配付させていただいているので、後でちょっと詳しく申し上げますけれども、そういうことではないか。  だから、源泉課税というのはフランス以外にはないということだけをちょっと確認をしてください、局長。
  86. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 預貯金の利子に対する源泉徴収につきましては、ただいま委員が御指摘になりましたように、現在では、先進国の中ではフランスに選択の制度があるだけでございます。ただ、御案内のとおり、一九八三年の七月からアメリカで一〇%の源泉徴収を始めるというプランがございますが、これもまだ具体的にどういう手続きで行われるのかという確たる情報をいま私ども持っておりません。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 いま私と主税局長との間の議論で、主税局長もそうだと思うのですけれども大臣も、このグリーンカードの制度のことでいろいろと心配されておることについては、政府としてはそんなに心配ないのだということではないかというふうに、私は主税局長の答弁を聞いておったのでありますが、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  88. 竹下登

    竹下国務大臣 率直に申し上げまして、私も、ああいう問題が党内で起こりましたときに、グリーンカードの現物を取り寄せました。グリーンじゃございませんでした、ホワイトカードでございましたけれども、現物を取り寄せて、そこへ竹下登という名前を書いて、実体を余り知らないで議論してもらっちゃ困る、こういうものだということで説明して歩きました。そこで、何が免責されたかといったら、まあ発起人になるのはこらえてやろう。しかし、おまえの言うことは信じがたいというのが率直な空気でございました。最初に持っていけば、それはグリーンカードではない、白いカードではないか。いや、大体大きさもこれだし、このように書くようになっていると、るる説明をして歩きました。  事ほどさように、いわば、いまいろいろ御指摘がございましたが、それに付随する不安感というものの方が大きかった。だから私は、カードそのものを見ていただければ不安感はある程度除去できるというような考え方で回ったことも事実でございます。(「周囲の暴力に屈したんだ」と呼ぶ者あり)
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 まあそういうことだな。  そこで、具体的に一体非課税貯蓄はどういうことになっているのかということを皆さんに御認識いただきたいと思って、資料がお配りしてありますね。ここに、総理府統計局の五十六年貯蓄動向調査報告の中から五十四ページの「年間収入階級別貯蓄及び負債の一世帯当たり現在高」という資料をお配りしてございます。ちょっと線を引いておきました。「貯蓄」は一番上に線を引いたところでありますけれども、大体の貯蓄額が六百万円、マル優の国債を入れれば九百万円まであるわけでありますが、そういうところを超えるのは所得階層として一体どこかというのを見ますと、貯蓄の総額が一千万円に達するのは、七百万円から七百五十万円の収入階層のところで一千十五万三千円、ここで初めて九百万円を超えるということになるわけであります。  それをもう少し細かく調べてみますと、その次に「定期性預貯金」というところで線が引いてあります。定期性預貯金の一番最初が郵便局、二番目が銀行、銀行というのは地方銀行も含めての銀行、その他というのは、相互銀行、信用金庫、農協、信用組合、労働金庫、こういうことでありますけれども、定期性預金で郵便局を含めてともかくも六百万円を超えるというところは九百万円から一千万円の所得層のところからでありまして、内訳はその下にずっとあるとおりであります。  でありますから、これを見てみますと、要するに、いまの三百万円、三百万円の郵便貯金といわゆる少額非課税貯蓄を両方フルに使って六百万円でありますから、六百万円を超えるのは、いま具体的には細かい数字があってごらんいただければわかるのでありまして、単独に銀行預金だけが三百万円を超えるところは一千万円から千二五十万円超のところしかないということであります。今度は郵便貯金については、最高の千五百万円以上であっても二百九十万九千円で、これも超えていない。これは家計調査からの資料でありましょうから、違法な処理がされてないということは多少配慮が必要かと思うのでありますけれども、しかし、少なくとも六千人からのサンプル調査でありますから、それなりに評価していいのではないか。こう考えて見ますと、実は、いまのいろいろな問題点が起こるという対象階層はきわめて限られた階層になっておると思うわけであります。  そこで、五十六年の給与所得者の中での一千万円超というものが三十四万、申告所得者が四十一万で、これの合計七十五万が一千万円超でありますから、一千万円超というところの所得階層というのは、昨年の三月十七日の参議院の予算委員会で当時の福田主税局長もお答えになっておりますけれども、まあまあ二百万から百五十万程度、相続税で見ても百五十万ぐらいじゃないか、それから、いまのこういう動向調査で見ても二百万人を超えることはないのじゃないかということで、実はごく限られた人間だけが不安感を持つのであって、いまの国民全部がそう不安感を持つとは私は考えていないわけであります。  そこで、次に「利子非課税制度の最近五カ年の利用状況」という資料もお配りしましたが、これをごらんいただくと、何と、銀行その他の金融機関扱いというのは、五十七年には二億件に達しておるのであります。郵便局の方は、いま郵政大臣お入りになりましたのであれですが、これは余り枚数はふえてないのですね。昭和五十四年が三億枚で、その次が三億一千万枚、その次五十六年は二億八千万枚に減って、五十七年がまた三億一千万枚ということで、郵便貯金の方は余りふえていないのでありますけれども、マル優の方は依然としてずっとふえてきているわけでありますね。  どういうふえ方をしているかというと、件数で見ますと、五十三年から五十四年に千二百四十九万件ふえて、五十四年は一億六千四百三十四万作になっておる、その次も一千百五十九万件、その次、五十六年には千二百六十四万件、五十七年にかけては千三百五万件と、銀行関係は毎年一千二、三百万件ずつ増加しておるわけでございます。いまやその非課税貯蓄額は百十四兆に達しておるというのが事実でありますが、平均をすると、これは五十六万九千円ということでありますから、一口の単位そのものは少ないわけでありますね。ですから問題は、私はさっき申し上げたように、多少家族名義になったり、へそくりになったりしておるものがあって、それは確かに件数をふやしてはいるだろうと思うのですけれども、一番問題なのは、どうもそういうところにはないというふうに私は見ておるわけであります。  それでは、どこに問題があるかという点でありますけれども国税庁に資料請求をいたしまして、ここに「昭和五十六年度査察事件(告発分)別口預金の状況表」というものをお配りをしてあります。これは国税庁の案件でありますから、直税部長の方でちょっと御説明をしてください。
  90. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 五十六年度に査察調査を行いまして告発処理をいたしました百六十七件につきまして実際どうなっているかというのが問題で、私が命じて調査させたのがこれであります。  公表帳簿に載っていないいわゆる別口、裏預金というのが百四十六億でございますが、このうち、中身をごらんになりますと無記名が二十二億あるというのがございます。さらに百一億が仮名預金ということであります。したがって、仮名預金は別口の七〇%ということになっております。さらに、その仮名預金の内訳を下の方に書いておりますが、仮名預金で脱税をして仮名を使っておきながら、さらに免税という優遇措置を利用しておるこの分が非課税分として三十六億あるということを示してあるわけであります。別口預金の二五%、仮名の約三六%ということに当たるわけでございます。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお聞きになったように、要するに、このグリーンカードの問題の一番反対の急先鋒にあるのは、現在クロヨン、トーゴーサンと言われておる税を逃れておる資金、この税を逃れておる資金がこれの乱用を行っておるということは、いまの国税庁長官説明で明らかだと思うのであります。  そこで、もう一つここに新聞の切り抜きを皆さんにお渡ししてあります。これは、梅澤主税局長が大阪国税局長のときにおやりになった問題の新聞の切り抜きでありますけれども、「架空名義の隠し預貯金 銀行など承知で勧誘」、これをちょっと記録にとどめるために読みますと、   都市銀行をはじめ、地方銀行、相互銀行、信用金庫などの金融機関と郵便局が架空名義と知りながら多額の預貯金を受け入れていることが、大阪国税局の十九日までの税務調査で明らかになった。脱税で摘発した中小企業や自営業者、医師らのごまかし所得の流れを追及して突きとめたもので、中小法人では昨年後半の半年間に摘発した約七百社の隠し預貯金が七十五億円にのぼり、口座の半数以上が架空名義。金融機関側がマル優制度(少額貯蓄非課税制度)を悪用するなどの不正行為を手助けしている事実もわかった。架空名義の預貯金の実態についてこれほど大規模にメスが入れられ、金融機関の″協力″ぶりが明らかになったのは全国でもはじめて。   大阪国税局は、昨年七月から十二月までの半年間に脱税で摘発した中小法人約七百社のごまかし所得の流れを徹底的に洗い直した。その結果、七百社のごまかし所得総額約二百七十億円のうち、帳簿に記載せず税務署にも申告していない隠し預貯金が七十五億円余り見つかった。この金額は前年同期間の調査分の二倍近くにのぼり、「グリーンカードの実施を前に預貯金が流出している」という一部の声とは反対に、多額の″裏金″が金融機関に流れ込んでいることを裏付ける結果となっている。   過去の税務調査でも隠し預貯金額はつかんでいたが、今回は、その流れをさらに追跡した結果、七百社の隠し預貯金の預け入れ先は延べ約千にのぼり、金融機関別の割合は、都銀三〇%、地銀、相銀各一五%、信用金庫二〇%など。七百社の預貯金の総合口座数は約六千口座で、この半分以上が架空名義だった。一社当たりの口座数は平均八つ余りで、前年より一口座以上も増えている。このほか五十五年分の個人のごまかし所得総額約九百六十億円の流れを調べたところ、約四百六十億円が預貯金として隠され、大半が架空名義だった。   摘発されたなかの法人では、売り上げを少なく見せかけて五年間に二億八千万円をごまかしていた電話工事業者が、ごまかし所得の全額を都銀、地銀、相銀の架空、無記名の計三十六口座に分散していた。銀行は最初架空の事実を否定したが、支店次長が持っていた客の管理簿に架空口座名と実名が記入されていてわかった。個人では、第二薬局をつくって多額の脱税をしていた病院経営者が信用金庫職員とぐるになり、三百七十四口、六億八千万円の架空名義の定期預金をつくって数支店に分散して隠していたケースもある。   一方、一人三百万円までは利子に課税しないというマル優制度を悪用、架空名義や家族名義で巨額の預金を三百万円以下の小口に分散、利子課税を逃れている例も見つかった。大阪市内のある都銀支店を調べたところ、非課税枠を超えた不正マル優口座が二百九十九口も出てきた。追及したところ、銀行マンが″サービス″でマル優を悪用して客の預金を分散していたことがわかり、利子に対する税金一千万円余りを追徴した。   架空名義預金について、大蔵省は各金融機関に受け入れないよう指導し、全国銀行協会連合会でも自粛を申し合わせている。しかし、預金獲得競争の激化などで架空とわかっていても受け入れるのが実情、という。ある銀行員は「ノルマ達成のためにはきれいごとはいっておれない。この程度の不正はどこでもやっていることではないか」といい、別の相互銀行の役員も「よくないことだが、激しい金融競争を生き抜くためにはやむを得ない」と弁解、今回の調査結果で明らかになった実態を認めている。梅澤主税局長、これは、あなたが国税局長のときの発表でありますから間違いありませんね。
  92. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 庁の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  大阪国税局では数次にわたって発表いたしておりますので、いまの新聞発表はそれなりに正しいと思うのですが、申し上げますと、過去に大阪局で一定の期間に大口の脱漏所得が把握された事例をサンプルとして、簿外預金のケースを取りまとめたことがございます。さっきは査察と申し上げましたが、一般の法人税調査で脱漏所得が出ました場合に、それがどういうふうに隠れておるかという実態を見たわけでございます。  大阪局の場合、五十六年七月から十二月までの半年間でございますが、その間の法人税調査の中から、一定金額、大口の脱漏があるものをつかみまして、それについて簿外預金の留保状況を見たわけでございます。サンプル法人数は二千五百社のうち、脱漏所得を預貯金の形で隠匿しておるものが約七百社でございます。その預貯金の総額は約七十五億円ということで脱漏所得の約二八%に当たるわけですが、その簿外預金の内容を口座数で見ますと、総口座数五千七百のうち、仮名と無記名のものが二千九百、約半分、五一%ということになっております。  それから、先ほど個別例についてはいろいろと公表してないものがございますので、非違のパターンを申し上げますと、仮名のマル優というもの、それから親戚知人の借名マル優、名前を借りるもの、それから家族名義で分散しているマル優、それからその店で限度をオーバーしておるマル優というものが、マル優違反のパターンでございます。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 どうもありがとうございました。  大臣、お聞きのように、いまやこのグリーンカード問題というのは、脱税者が利用しておる問題をきちんとしなければ、私は、善意の預金者の問題というのは大したことはないというふうに思っておるわけであります。  郵政大臣がお入りをいただいておりますので、御用もあるようでありますから、ちょっとここで郵政大臣に対するこの関係の問題についての御質問だけを先にさせていただきますけれども、実は五十五年の三月二十一日に当委員会で、私は当時の大西郵政大臣にいろいろと質疑をさせていただきまして、当時オンラインが五十八年度末には大体完成をするので、その際は限度管理や名寄せを正確に行い得る、現在は手作業であるので十分でないというお話がありましたが、現在このオンラインはどこまで完成しておりますか、ちょっと簡単にお答えをいただきたい。
  94. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 郵便貯金のオンライン化の状況でございますが、五十八年二月末現在で約一万六千局となっておりまして、これは、予定をいたしております全国の約八五%でございます。  なお、五十八年度中ということで当時大西大臣がお答えを申し上げていると思いますけれども、現在の進捗状況からいたしますと、五十八年度末までには全国網が完成する予定でございます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 さらに貯金局長、この前には、手作業では大変だったけれどもオンライン化ができれば限度と名寄せは実行できます、こういうお約束であったのですが、その点をちょっともう一遍答えてください。
  96. 鴨光一郎

    ○鴨政府委員 御案内のように、私どものいわゆる名寄せは、現在手作業と、それから一部オンライン化が進捗いたしましたところにつきましてはコンピューターによる名寄せということで、混合してやっている状態でございます。私ども考え方といたしましては、このオンライン化が完成をしていく過程に合わせまして、逐次名寄せをコンピューターによる名寄せに乗せていく、こういうことを考えておりまして、これによりまして、手作業によります場合以上に正確かつ迅速に名寄せができると考えているわけでございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 郵政大臣、実はこの間新聞を拝見しておりましたら、第二臨調で定額貯金というようなものはもうやめたらいいというような方向の、やめろという話がストレートであるわけじゃないのでしょうが、そういう方向で第二臨調答申が出ておるのに対しては、郵政大臣は、反対だ、こうお答えのようであります。  私は、一昨年の銀行法の改正問題のときに、この郵貯の問題を実は詳しく当委員会で論議をして、定額貯金というものは必要であるという立場でやっておるわけであります。かつて三木総理のときに予算委員会で私は、全国生中継の中で定額貯金というものの特性を国民に訴えました。大体一般の預金は、金利が高ければ長いこと出せない、金利が安いものは出し入れ自由だが、これは金利が安いのだ。要するに、流動性と金利というものは相反しておる。ところが定額貯金は、最初の六カ月だけは拘束をされるけれども、それから後は、部分的に引き出すこともできるし、その他はそのまま延長できるという、庶民にとっては最も望ましい貯蓄手段で、これは昭和十六年に開発をされたようでありますが、私は、金融問題を長年やっておる立場から、庶民の資金の運用のためには大変いい商品だということを全国中継のテレビで取り上げたことがあるわけなのであります。  私は、そういう意味では、いわゆる郵貯懇の報告とか、いろいろなものが出ておりますけれども、私どもは、一貫して郵貯の定額貯金を実は高く評価をし、それが国民のためになるという立場で問題を処理しておるのであります。  しかし、非課税であることに名をかりて郵便貯金の乱用が行われることは、これは国の経営しておる金融施設でありますから、率先してきちんとした限度管理をやってもらわなければ、私どもも、いまの態度を変更せざるを得ないようなことになり得るわけであります。その点郵政大臣は、いま貯金局長が答弁をいたしましたように、五十八年度末にはオンライン化が完全になる、どうやらこれは、二十二の貯金局でオンラインになったものを処理していけば限度管理と名寄せは確実に行われる、私はこう思うのでありますが、大臣、いかがでございましょうか。
  98. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 定額貯金につきまして、定額貯金の持っておる意義についての堀議員のお話、私も同様に承っておるつもりでございます。  臨調の御答申は、定額貯金について見直しを行うべきであるという御答申でございまして、四次、五次の答申につきまして、私も、大筋としては最大限尊重すべきものであると思っておりますが、国民的な立場から見た定額貯金のあり方をどうすべきかという問題は慎重に検討すべきであると思っておりますので、今後、各方面の御意見を拝聴しながら対処していきたいと思っておるわけでございます。  なお、仰せのとおり、郵便貯金は少額零細貯蓄の奨励という意味で限度も法定をされておるわけでございますから、これを厳重に遵守してもらうことは郵便貯金の存立の条件であると私も思っておるわけであります。そういうことで、従来から名寄せ等あるいは本人の確認のためのあいさつ状を出すとかいうようなことにも努めてまいっておりますし、また、現にかなりの数字の限度オーバーを発見いたしまして処理もいたしておるわけでございますが、ただいま局長が言いましたように、五十八年度中にはオンライン化も完成をする予定でございますので、いまの手作業がコンピューター利用による限度管理に変わってまいりますので、一層厳重にこの問題に対応できると思っておるわけでございます。私どもも、この点については、御指摘のように国民協力をいただきながら厳重に実施をしていきたい、徹底をしていきたいと思っておるわけでございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 ぜひこの点はきちんとやっていただきたいと思うのであります。あいさつ状が七千枚とかなんとかという話なんで、三億枚ある口座ですから、七千や八千の話ではどうしようもないと思っておるわけでありますが、大臣、それは結構です。しかし、そういうことで今度オンラインになれば非常に合理的な処理ができるわけでありますから、ぜひいまの御答弁のとおりにやっていただきたいと思うのであります。  もう一つ、実は大蔵大臣には後でお伺いをするのでありますが、マル優廃止論というものがいまいろいろなものに出てきておるわけであります。大蔵省のかつての事務次官でありました谷村さんにも、そういう御意見の文書をちょうだいしておるのでありますけれども、私は、いまの郵便貯金を課税対象の郵便貯金にしない限り、いまのマル優制度を廃止することはできない。郵便貯金は非課税です、銀行だけは課税ですということにはならないと見ておるわけであります。  そこで、郵政大臣に伺いたいのでありますけれども、郵政省として、いまの郵便貯金を課税対象にするお考えがあるかないか、その点を明確にお答えいただきたいと思います。
  100. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 これは、私から申し上げるまでもないわけでございますが、貯蓄が世界経済の発展、産業の振興のために重要な原資になるわけでございます。そのために貯蓄奨励という意味、ことに少額貯蓄の奨励という意味でマル優制度が実施されておると思うわけでございます。  郵便貯金の方は、御案内のように、国が国民から預かった金であるということで、制度創設以来いまだかつて課税という事例はなかったわけでございます。マル優廃止論について私も新聞の報道では承知をいたしておりますが、政府内部では一言も聞いたことがございません。そういう情勢でございますので、ただいま私としては、郵便貯金に対する課税ということに制度を変更する考えは持っておりません。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、郵便貯金は制度の始まりから非課税だと思っておるわけでありますが、いま郵政大臣が、私は持っておりません、こうおっしゃったのですが、これは、桧垣郵政大臣個人の御発言ではなくて、郵政大臣がかわっても、郵政省としての基本的な態度というふうに確認をしていいでしょうか。そこのところを、あなたはいま郵政大臣でおられますが、永久に郵政大臣でおられるわけではございませんで、しかし、制度は長久の生命のあるものでありますから、郵政大臣個人がかわっても、郵政省の立場としては変わらないこととして認識をしてよろしゅうございましょうか。もう一回、重ねて御答弁いただきたいと思います。
  102. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 大変むずかしいといいますかお答えしにくい御質問でございますが、現在私は郵政大臣であるわけでございます。私の発言がもとより郵政省の見解であると御理解いただきたいと思います。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから問題は、郵便貯金の中にも、いまの架空名義による脱税と同じような架空名義の郵便貯金があると私は思っているのです。それを速やかに処理していただきたい。  というのは、私は、きょうこれから国税庁に対して、延期をされていても、グリーンカードの存在にかかわらず、少額貯蓄非課税制度の乱用によって脱税をしておる者は厳しく調査してもらいたいということを要望いたしますが、それは、国税庁を通じて一般金融機関に対して厳しく対応してもらうと同時に、さっき申し上げたように、郵政省も同じように厳しく対処していただかなければ、これはまた国民の批判を招くおそれがあると思いますので、その点だけをお答えいただいて、郵政大臣への質問を終わりたいと思います。
  104. 桧垣徳太郎

    ○桧垣国務大臣 堀委員の御指摘はまことにそのとおりでございまして、私どもも、誠心誠意組織を挙げて限度額超過の問題の防止に努力をいたしてまいりたいと思います。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、いま郵政省の方もきちっとしてもらおうということでお願いしたわけでありますけれども、これから三年延期をするということになるようであります。いま自民党多数でありますから、この法案は本日当委員会を通過することはやむを得ません。私がいまいかように言っても、これは民主主義の原則でありますからやむを得ません。  そこで大蔵大臣、通ったからそのままでいいという話ではないと私は思うのです。いま郵政大臣との論議の中で後段に申しましたけれども、現行法の中でも少額貯蓄非課税制度を不当に乱用していいということにはなっていないと思うのであります。私は、かつて当委員会で、架空名義預金の問題について数年にわたって論議を続けてきたことがあります。今日依然としてこういう状態なのですね。  そこで、大臣にお願いいたしたいのは、税務調査によって架空名義預金がわかった場合に、さっき私がちょっと読み上げたのですが、銀行が、預金競争である程度やむを得ないといって架空名義預金に手をかしておるような事犯がわかったら、銀行名、何々銀行何々支店においてはこのような事犯が出たということを、この際どうしても公表してもらわなければ困ると私は思っているのです。そのくらいの心構えで、違法は違法としての処理をしない限り、いまの脱税の問題はけりはつかない、こう思うのですが、大蔵大臣の御決意を承りたいと思います。
  106. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 御指摘の点でございますが、まず、源泉の調査をやる際、金融機関に対してでございますけれども、さっきパターンを申し上げましたが、マル優の不正利用を把握しました際、源泉徴収義務者という金融機関の立場に対しまして不納付加算税、また悪質な場合、普通架空の場合はそういうことですから、それは不納付加算税にかえまして源泉所得税の重加算税を課すということをやっております。それから、先ほどのように、査察とか法人所得の調査の際、それがどこに隠れておるかということを見まして、マル優に入っておるということになれば、当然のことながらいまのような加算税を適用する。これは加算税の問題です。  さらに、御指摘のように、金融機関の源泉調査をやっていまして、仮名のマル優がそこで把握される。金融機関の問題から今度は所得者の問題、預金者の問題になってくるわけでございますが、これは本来総合課税の対象になるものなのです。マル優の範疇ではないわけですから総合課税の対象になるということで、そういう際、源泉所得税、その分の所得が発生する、こう見ますから、仮装隠蔽の預金から発生する利子ですから、それは重課として総合課税の中で扱う。それから、利息の問題もさることながら、貯蓄者の真実の住所氏名の解明に努めるということで、所得者本人の申告の適否を調査して、適正申告ではない場合にはその是正を図るということで従来やっておりますが、これは、こういう状況の中ではさらに推進する必要がある、こう考えます。  人員がこの関係千八百人しかいない。いまのは金融機関ですが、約三万八千ございますが、それから給与所得、利子配当全部加えますと三百万という源泉徴収義務者がいるわけですね。これを千八百人でやっておるというのは異常な事態であろうと思うのです。金融機関の一〇%しか調べられない。そういうことですが、限られた数の中でいろいろな工夫をしまして、そのマル優限度の管理、これはサンプルによってやるしかないと思うのですが、さらに不正所得の追及ということには適確に対処したい、こう思っています。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 国税庁の方で真剣にこれに取り組んでいただく誠意を示していただいて大変結構だと思っておるわけでありますが、過誤その他によるものまでもやろうとは思いません。ともかく悪質なものに明らかに手をかしてこういうことをやっておる金融機関名というのはこの際公表すべきである、公表するということを大臣がここで答弁されれば、それだけで手をかすものはうんと減る、こう思うのであります。  だから、そういうアナウンスメントエフェクトを含めて、この際大臣に、このような脱税による原資を架空名義その他で、おまけに非課税貯蓄の中に紛れ込ませようなどということに手をかしておる事実が税務調査で明らかになった場合には、その銀行名、支店名を公表するということをお約束いただきたいと思うのです。
  108. 福田幸弘

    ○福田(幸)政府委員 現在の扱いでございますが、これは査察の問題に絡みますけれども、把握しました仮名預金の状況につきまして、これは内部の話でございますが、銀行局に連絡して指導監督をやってもらっておるということでございまして、先ほど私が申し上げたような厳しい対応をしていくということと同時に、銀行に対する指導というか忠告をやるということをやっていけば御趣旨に沿うか、こう考えております。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、私も福田長官のお話を聞きながら、個々の扱いは理解するという程度、具体的な知識は持ち合わせておりませんが、いわゆる調査、指導をいたしまして、不正利用に対しては適確な対処をしなければならぬという基本的な考え方は私も一緒であります。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 ともかくそういうことでこの問題の処理を進めていただきたいのでありますが、時間が限られてきましたから、終わりに、いま歯どめを一つかけたわけでありますけれども、これは、税制調査会でいろいろ議論をされましても、さっき主税局長の答弁にもありましたように、専門部会を設けてやっていろいろなものを検討した結果ここへ来ておるというのが実情でありますので、そう名案があるわけではない。いまの郵政省の答弁で、マル優廃止というのはこれで大体できない、こう考えているわけであります。  マル優の制度廃止というのなら話はまた新しい段階になりますが、これはない。さっき、総合課税の大義は十分認識しておるというお考えになると、この問題は、税制調査会の他の答申の方法はないのではないか。税制調査会のいまの皆さんの任期はこの十一月まででありますから、それまでの間にこの問題についての答申を出していただかないと、今後の対応がまた問題になる、私はこう思っておるのでありまして、大臣としては、これらの対処は、一応税制調査会に答申を求めるというお考えは、それは政府の方針としておありになることでありましょうが、少なくとも答申の期限は、やはりこの税制調査会で御研究をいただいた皆さんによって答申が行われるような対応をお願いしておきたい、こう思うのでありますけれども、そこはいかがでございましょうか。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 私どもといたしましては、あらゆる予見を持つことなくこの税制調査会にお諮りするということが筋でございますが、それについては、このような委員会等で議論された詳細を御報告してやるべき問題である。なお私も、いまおっしゃった任期というもの等を念頭に置きますと、そういう期待感くらいまでは持ってもいいものかな、こういう感じがしております。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、実はこのグリーンカード制についての国民の不安の中で、私は、かつて金丸さんと私が文章を書いて朝日新聞に出したことがあるわけでありますけれども、そのときに意識的に書きましたのは、家族名義の預金の問題で、実在の人間の少額貯蓄は、それは当面それでいいのではないかということをそこに書いたわけであります。これだけの、六千万枚というカードが出るというような大きな作業でありますから、実際はこの六千万人が対象ではなくて、ごく少数の、脱税者を含めても数百万人の範囲のものを対象にしておるのでありますけれども、しかし網は全部にかかる。そうすると、家族名義で多少分散しておったものが贈与税でどうこうということは大変だろう、こう思ったので、入り口ではともかくもいまのままでいいのではないか。名寄せをするといったって、国税庁はいまお話しのような体制でありますから、コンピューターを使うにしろ何にしろ、そんなに何もかにもが完璧にできるわけではありませんから、この制度が移行する過程においては、最初は、架空名義はいけませんよ、限度超過はいけませんよ、しかし少なくとも実在の人間が限度の範囲で貯金しておるものは、移行過程ではそのまま配慮をしたらどうか、こういう考えで、そのことは五十五年のときに伊豫田国税庁次長も、わかりましたらば、それは名前をもとへ戻していただければ、贈与税その他を取る気はございませんという答弁になっているわけなんですね。  そこで、ここで一つ最後の提案なんでありますけれども、現在贈与税の限度額が年間六十万円ということになっております。これは四十万円から六十万円になったわけでありますけれども、六十万円になってからかなり時間もたっておりますし、所得税の問題あるいは相続税の問題、いろいろ関連をする問題であることは私も承知をしておりますが、私は、すでにいまから二年前の予算委員会で、ともかくも日本の税制構造を変えたらどうか、いわゆる自然増収という名の名目所得の増加による増税という問題は、最高税率七五%、ブラッケットが十九段階などという仕組みの中からもたらされるのであるから、最高税率は五五%程度でいいのではないか、ブラッケットの数を減らしたらどうか、こういう問題提起をしておるのでありまして、渡辺大蔵大臣は、何かグリーンカード対策に利用しようというようなお気持ちもあったようでありますが、私はそうではないわけでありまして、いまの税制の仕組みの望ましくない部分を合理的に変えるという意味で、いまのブラッケットを減らし最高税率を減らすというような考えを、問題を提起しているわけでありますが、そういうような問題やその他を含めて、この際、増与税の年間限度を六十万円から百万円に引き上げるということを検討していただいたらどうだろうか。  そうしますと、いまの家族名義の問題の処理は、三年たてば申告をして、贈与税をどういうふうに皆さんやっていらっしゃるかわかりませんけれども、贈与税で、贈与しましたと言っても証拠がなければ税務署はこれを認めないでありましょうから、いま六十一万円の贈与で一万円分について一〇%だけの税務署からあれを取っておるわけですね。これを取っておれば、間違いなくそのときに贈与したということの挙証ができるわけでありますので、ですから、そういう処置をとっておるわけでありますが、少なくともこの贈与税の問題というのは、今後の利子配当総合課税における重要な課題の一つになってくると思いますので、この点ひとつ大臣が全体の状況をにらみながら、できればひとつ六十万円から百万円程度に贈与税の限度を引き上げたらどうか、こう思うのでありますが、大臣の御答弁をいただきたい。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、前回御議論いただきましたときにも、六十万円で五年、そうしてとにかくもとへ返したものはそれでいいとかというような御議論がございました。私も覚えております。六十万円で五年でございますから、百万円とすれば三年、こういうことになります。  これは、いま堀さんも御指摘なさいましたとおり、利子配当課税だけの問題ではなく、所得税、相続税、贈与税を通じて、その負担水準、課税のあり方との関連で対処すべき問題でございますので、いまいろいろ御指摘いただいております税体系の基本的な検討という中で、その一環としてこれは取り上げていくべきものであると考えております。しかし、その前にも御指摘なさいました十九段階問題でございますとか、あるいは最高税率の問題でございますとか、そういう問題をも含めまして、いずれも貴重な御提案でございます。したがって、正確に税制調査会に御報告を申し上げて、そして御検討をいただくべき課題であると私は理解をしております。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 一時間半にわたっての議論がようやく時間が参りましたので、終わりたいと思うのでありますけれども、要するに、きょう私が論議をさせていただいたのは、どうも自由民主党の皆さんのいろいろな対応は、実態を十分把握しておられない、裏預金によってそれが表に顕在化することを恐れておる、正当でない納税を行っておる中小企業者その他庶業の皆さんが、自分たちのそういう不当な行為が表に出るのを恐れての運動が一つあったと私は思うのであります。  もう一つは、金融機関がそういうことによって預金が減りはしないかという問題があったのではないかと思いますが、さっき私がちょっと読み上げましたように、マル優制度の経過を見ておりますと、この問題の議論が起きておったときでも、確実に非課税貯蓄は一千万件ぐらいふえて、そして十兆内外の預金はふえつつあったわけでありまして、私は、そういう意味では、金融機関がこれについて税制調査会では賛成をしておきながら反対をしたということはまことに遺憾な経過であった、こう見ておるわけであります。  どうかそういう意味で、私は、さっき最初に地方税の付加価値税の問題に触れて、やがてその付加価値税は日本の税制の中で日の目を見る時期が来るようになるのではないか、ただしそれは、少なくともいまの総合課税の大義が貫徹をした後であるということを申し上げたのでありますが、いまのグリーンカードの問題も、紆余曲折はあっても、そのことが処理をされない限り大義は通らないわけでありますので、そういう認識のもとに、政府はこの問題について対処をしていただくことを要望し、あわせて、国税庁は少なくともそういう不当な預貯金制度を乱用して脱税資金が温存されるようなことができるだけなくなるような努力を、大変人員の少ない中で御苦労ではありますけれども、ひとつ進めていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  116. 森美秀

    森委員長 以上で三案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  117. 森美秀

    森委員長 これより討論に入るのでありますが、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案については討論の申し出がありませんので、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案の両案について討論を行います。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。中村正三郎君。
  118. 中村正三郎

    ○中村(正三郎)委員 私は、自由民主党を代表し、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につき、賛成の意見を表明するものであります。  第一に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について見ますと、まず企業関係租税特別措置について、価格変動準備制度の廃止年度の繰り上げなど、その整理合理化が図られております。企業関係租税特別措置については、連年にわたる厳しい見直しによりその整理合理化の余地はかなり限られていると思われますが、そのような状況のもとで、税負担の公平確保の観点から一層の見直しが行われたものであり、こうした税制に対する国民理解を得るための政府努力は高く評価されるところであります。  また、住宅建設の促進に資するための住宅取得控除制度改正がなされるほか、中小企業の設備投資の促進に資するための措置、基礎素材産業の構造改善に資するための措置等が講ぜられることになっておりますが、これらはまことに時宜にかなった適切な措置であると考えます。  さらに、中小企業の相続税については、現下の厳しい財政状況の中で、中小企業の円滑な事業承継に資する観点から格段の配慮が加えられ、中小企業者の要望にこたえることとされたところであります。  なお、少額貯蓄等利用者カード制度について、これを三年間凍結することとしていることは、諸般の情勢にかんがみ、やむを得ないものと考えます。  第二に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について見ますと、この法律案は、製造たばこの小売定価改定を行うため必要な最高価格の引き上げ及び昭和五十八年度及び昭和五十九年度につき、専売納付金納付特例措置を講じようとするものであります。  これらの措置は、現下の厳しい財政事情前回の小売定価改定からの物価の上昇、たばこ財政専売物資としての性格等にかんがみれば、適切な措置であると認められるところであります。  以上申し上げました理由により、本二法案に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)
  119. 森美秀

    森委員長 上田卓三君。
  120. 上田卓三

    ○上田(卓)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案の両案に対し、反対の立場から討論を行います。  わが国財政は、巨額の公債に依存し、三年連続の税収不足に陥り、非常事態であります。かかる異常な財政危機を突破するためには、大企業、大資産家を優遇する不公平税制を根本的に改め、税に対する国民の信頼を確立することが不可欠であります。  今回の改正案では、たとえば準備制度でもごくささやかな縮減を行っただけであり、廃止されたのはたったの四項目であります。  政府の税制調査会は、昨年末の答申で、税負担の公平を確保する見地からの租税特別措置の整理合理化はおおむね一段落したと述べ、租税特別措置法を抜本的に改革する意思のないことは明らかであります。  たとえば、かねがね批判を受けている退職給与引当金の積み立て残高は、資本金百億円以上の大企業では三兆円を超え、資本金十億円以上の大企業の使用実績が一%にも満たないものもあります。  このような大企業の優遇税制を温存した上での財政再建は、必ず中小零細企業、勤労者に対する徴税攻勢を強めることになります。  第二に、少額貯蓄非課税制度により非課税の預貯金総額は二百二兆円であり、口座総数は五億四千四百万と発表されています。そのかなりの部分が架空名義による大資産家の悪質な脱税預金であることは周知の事実であります。  まさに、グリーンカード制は、このような脱税行為を正すべく導入されたものです。にもかかわらず、大資産家と自民党の横暴に屈服し、それを実質的に廃止しようとする暴挙は断じて許すことはできません。  第三に、政府は、額に汗し真っ黒になって働く中小零細企業の求める税制上の要求にこたえていません。今回の投資減税による減税額はわずか三百億円にすぎず、中小零細企業者の期待するものとはほど遠いものであります。事業承継税制に関しては、事業を継続するという観点からすればまだまだ不十分です。相続財産の評価は時価ではなく、収益性を基礎にして行えという中小零細業者とりわけ個人事業者の要求は、いまだに実現されていません。  さて、減税問題でありますが、八三年度中に相当規模の所得税減税を実現するよう最大限の努力をするとの政府見解を速やかに実施されるよう、また財源理由に減税規模を縮小したり、実施の見送りのないよう強く要求いたします。  減税財源に関しては、先日の本委員会における北野参考人の意見にありましたように、資本金十億円以上の大企業を対象に法人税に軽度の累進税率を導入し、土地を中心にした大法人の財産に対して税率一%程度の財産税を導入するだけで、約三兆円から四兆円の税収をひねり出すことができるのであります。にもかかわらず、小倉税調会長は、ごく最近、減税と大型間接税との抱き合わせは避けがたいとの意向を示していることは、国民世論への公然たる挑戦であります。  最後に、いわゆるたばこ値上げ法案でありますが、これは政府が緊急財源対策としてたばこの大幅値上げを図り、二千億円の増収を図り、これをそのまま国庫に納付させるものであって、これは今日の財政危機を招いた政府の政治責任を棚上げし、そのしわ寄せを一方的に国民に押しつける増税であって、許せるものではありません。  なお、たばこ一本一円の値上げは、百八十円のマイルドセブンは二百円で一一%、五十円のゴールデンバットは七十円で四〇%の値上げ率となり、ゴールデンバット等の愛好者に特に負担の重いものであることは許せません。  以上、主な反対理由を申し述べましたが、大企業、大資産家本位の不公平税制を抜本的に改革することを強く希望して、私の討論を終わります。(拍手)
  121. 森美秀

  122. 柴田弘

    柴田委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行うものであります。  反対理由の第一は、政府が五十八年度の税制改正において所得税減税を見送っていることであります。  所得税減税は、実質増税の緩和、負担の公平確保、個人消費の喚起など切迫した国民的要求であります。政府は、所得税減税の必要性を熟知しながら、課税最低限を六年間も据え置き、実質増税を強いているのであります。  特に、サラリーマンに対し、一方的に実質増税を強いていることは、政府公約である増税なき財政再建にも反するものであり、とうてい納得できません。  なお、所得税、住民税減税については、共産党を除く五野党と自民党との折衝の結果、議長及び政府見解によって五十八年度中の実施が約束されました。改めて、政府に対し、早急に減税を実現すべきことを強く要求するものであります。  反対の第二の理由は、グリーンカード制度の導入を延期するなど不公平税制の是正にきわめて消極的なことであります。  グリーンカード制度は、政府が利子配当所得に対する課税を総合課税に移行し、税の公平化を図るために提案したものであります。それを制度が実施される前に一方的に延期することは、税の不公平を温存するものと言う以外にありません。  また、政府税調や臨調が再三にわたって指摘する所得捕捉の格差是正についても全く手をつけようとしておりません。  この税制改正に示された政府の姿勢は、国民の税に対する不公平感や不信感を倍増させるとともに、急務の課題である財政再建に逆行するものであり、見逃すわけにはいきません。  反対の第三の理由は、中小企業に対する投資減税の拡充をびほう策で事足れりとしていることであります。  中小企業に対する設備投資減税の拡充は、設備投資の喚起による景気浮揚、中小企業経営基盤の強化などから、中小企業者はもとより、経済企画庁、通産省なども推進していたものです。しかし、政府としては、通産省の減税要求額の十分の一にも満たない額でとどめております。  政府は、五十八年度の景気回復を内需拡大によって達成するとしながら、所得税減税とともに、中小企業に対する投資減税も、実質的には見送りに等しいものであり、内需拡大策の欠如と言わざるを得ません。  次に、たばこ値上げは、専売公社経営は黒字であることや、値上げ分約二千億円がすべて国庫納付金となることなどから、一方的な政府財源あさりで、しかも、公共料金の値上げによる国民への負担転嫁であります。こうした、財政運営は容認できないのであります。  以上をもちまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  123. 森美秀

    森委員長 米沢隆君。
  124. 米沢隆

    ○米沢委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  最近におけるわが国経済の実質成長率は、五十五年度四・五%、五十六年度三・三%、五十七年度実績見込みで三・一%と年々低下傾向を示しております。  政府は、来年度のわが国経済について三・四%の実質成長達成が可能であると強弁しているのでありますが、しかし、今日における個人消費の伸び悩み、設備投資の停滞、輸出の落ち込みなどの現状から見ますと、二%台に落ち込むおそれすらなしとしないのでありまして、いま新たな景気対策が求められております。  このような最近のわが国経済の景気低迷は、言うまでもなく、政府が第二次石油危機のもたらすデフレ効果を過小評価し、適切な景気対策を講じなかったばかりか、景気回復に逆行する大幅増税を強行したり、当初から無理のあった五十九年度赤字国債脱却の方針に固執して、財政が本来持つべき景気調整機能、自動安定化作用を全く無視した財政運営をとり続けたりの政府の失政による政策不況であると言っても過言ではありません。  不況のときに財源がないからといって増税を行い、公共投資を抑制し続けていて、不況の克服や財政再建の達成ができるはずはありません。現実を見ても明らかなように、結果的には、不況の存続が税収を減らし、かえって財政赤字を拡大させているのであります。  私どもは、かかる財政赤字の拡大を促進しかねない今日の政府の経済、財政運営のあり方に政府の猛省を促すものであります。  わが党は、わが国が持っているすぐれた技術革新力、着実な向上が可能な労働生産性、高水準の貯蓄率など経済活性化のための基礎的条件を考慮するとき、わが国経済は、中長期的には四%から五%の成長を持続する力を有しており、また、内需の拡大によって世界経済の再活性化に大きく貢献すべきであると考えるのであります。したがって、わが国経済の潜在成長力を顕在化させ、中長期にわたる安定経済成長の維持とそれによる大幅な自然増収の確保による財政再建達成のためには、短期的には、財政支出の拡大を伴うとしても、積極的財政政策を講ずべきであり、財政再建策は中期的視点から見直すべきであろうと考えます。  このような見地から、わが党は、来年度において、所得税、住民税減税、中小企業の投資減税など約二兆円程度の減税を断行するとともに、良質な住宅建設、生活環境の整備等を中心とする計画的かつ着実な公共投資の拡充を図るべきだと強く政府に求めてきたのでありますが、政府予算は大きく期待を裏切るものでありました。  また、今回の税制改正におきまして、政府は、中小企業承継税制確立の強い要求に対し、本租税特別措置法の中に個人事業者の土地の評価減額の規定を盛り込むとともに、相続税基本通達の改正により、同族法人企業の株式の評価方法の改善を図ることとされましたが、これは、かねてよりの中小企業の事業承継税制の確立を主張してきたわが党の立場からも評価するにやぶさかではありません。しかし、今回の改正では、個人事業者の土地の評価減額率が二〇%引き上げられたにすぎず、また、株式の評価についても継続企業の理念からする抜本的な改正が行われたものとはとうてい言えません。今後、速やかに、さらに進んだ税制改正に着手するとともに、かねてよりわが党が主張してきた事業用財産の生前一括贈与制度及び相続税の納税猶予制度の導入を図るべく最大限の努力を行うよう政府に強く求めるものであります。  また、最近、中小企業、とりわけ零細な事業者の設備投資が落ち込み、個人消費の不振と相まって景気回復の足を引っ張っていることは周知の事実であります。政府は、本租税特別措置法において中小企業の設備投資に対する減税措置を打ち出されましたが、その内容は余りに貧弱なものと言わざるを得ません。  昨年来、政府部内において本施策の内容について調整が行われてきましたが、その週程において、当初通産省の試案にありました税額控除の制度が否定され、また、特別償却の制度も過去五年間の平均投資額を上回る部分についてのみを対象とすることとなり、かつ償却率も四〇%から三〇%に切り下げられることとなったのであります。これでは、そもそも年間投資額の少ない中小企業の設備投資を誘発する効果はきわめて乏しいと言わざるを得ません。中小企業の近代化、高度化を促進し、同時に景気の抜本的な浮揚策とするため、本法の中小企業投資促進税制を強化すべく、早急なる見直しを行うよう強く政府に求めるものであります。  さらに、本改正案におきまして、特定基礎素材産業対策促進税制の実施が図られておりますが、わが国の素材産業が景気の停滞、国際競争力低下による輸出の減少等により深刻な構造不況に陥っている現状にかんがみ、化学工業原料の安定確保のための原料非課税原則の実施などの諸対策をさらに講ずることによって素材産業の安定と発展を図り、もって勤労者の不安を解消すべきであります。今後、政府がこの点について十分なる配慮をされるよう求めるものであります。  次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案についてであります。  今回の法改正は、政府の失政ツケ回しの、財源確保のための安易で一方的な値上げ法案にしかすぎません。関税率引き下げあるいは国内産葉たばこ過剰在庫問題など、たばこを取り巻く環境の激変しつつある中で、安易なツケ回し的値上げ策の強行は、将来の専売公社経営にも大きな影響を与えるものであり、新たな次のたばこ値上げをも誘発することにもなりかねない危険な選択だと考えます。  同時に、今回の値上げのように国民負担を強いる前に、政府専売公社の合理化、効率化に一体どれだけ努力されたのでありましょうか。一昨年の臨調第一次答申は、工場の統廃合等による要員の縮減など緊急の改革案を提示し、さらに昨年七月の臨調基本答申は、専売公社特殊会社化、民営化という抜本的な合理化方策を提示したことは周知のとおりであります。しかるに政府は、国民には臨調答申の最大限尊重を約束しておきながら、政府行革大綱専売公社の具体的改革手順を盛り込まなかったことはきわめて遺憾であります。  行革に不退転の決意で取り組むという中曽根総理のリーダーシップがいま問われているのであります。今後、政府臨調答申を十分尊重しつつ、現実に即した公社改革を実行するよう強く求め、私の討論を終わります。(拍手)
  125. 森美秀

    森委員長 正森成二君。
  126. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部改正案並びに製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部改正案の両案につき、反対の討論を行います。  租税特別措置法改正案に反対する第一の理由は、不公平税制の是正が不徹底であるばかりか、改悪さえしていることであります。  今改正案では、現行税制の見直しとして、金融機関の貸倒引当金や価格変動準備金などわずかばかりの縮減が見られるだけで、ほとんどの大企業優遇措置が延長されております。重大なのは、その上に、不況対策と称して基礎素材産業への救済税制を創設、電力会社向けの核燃料再処理準備制度の創設、さらには財界戦略に沿った構造を後押しするテクノポリス税制の創設、製品保証等引当金の拡充等々、大企業への新たな恩典措置がメジロ押しになされていることであります。  反対の第二の理由は、グリーンカード制凍結に伴う総合課税延期の問題であります。  本政府提案は、わが党が以前より主張してきた、当面可能でかつ有効な総合課税への接近策を何ら講ずることなくグリーンカード制の実施を延期し、総合課税そのものまで放棄したものであり、これでは不公平税制の温存ひいては悪徳資産家への脱税容認となるものであり、とうてい賛成できないものであります。  反対の第三の理由は、国民の多数が要求する所得税減税政府案に盛り込まれず、六年連続の減税見送りとされている問題であります。  また、三月初め、自民党と一部野党が了解した議長見解及び政府見解による五十八年度減税は、規模、内容、財源など何一つ明確ではありません。兆円単位の規模で本当に減税をやる気なら、予算修正するのが当然なのであります。  わが党がこのような議長見解、政府見解を了承しなかったのは当然であると言わなければなりません。日本共産党は、不公平税制の是正などを財源とする予算修正による一兆四千億円の所得減税実施と、大型間接税導入反対のため今後とも国民とともに闘うものであります。  わが党は、かかる立場から本法案に反対いたしますが、住宅取得控除の拡充や中小業者への承継税制の創設など、国民利益を守る上で一定の措置については反対するものではないことをこの際付言するものであります。  次に、製造たばこ定価法改正案についてであります。  第一に、本法案は、財政危機の元凶である軍拡、大企業本位の政治を温存したまま、そのツケを国民に転嫁する路線の一環であり、断じて容認できません。  第二に、この値上げは間接税増税であり、また、他の公共料金値上げと相まって、国民生活をさらに圧迫するものであります。  第三に、値上げによる消費減退等により、葉たばこ耕作者に一層の打撃を与え、関連産業を含めた専売労働者へのいわゆる合理化の押しつけにもつながりかねません。  以上の理由により、両法案に反対するものであります。これをもって私の討論を終わります。(拍手)
  127. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  128. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案及び製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について、新自由クラブ・民主連合を代表して、反対の立場から討論をいたします。  まず、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  租税負担は、国民及び法人に等しく公平かつ適正なものでなければなりません。しかし、国民生活への影響考え、政策的な意図のもとに特別の措置を講じる場合のあることもやむを得ないところであります。ただし、これは必要最小限度にとどめるべきものであります。  今回、特別措置の縮減合理化策として二十五項目、廃止四項目が提案されており、課税の公平に一歩寄与する点が認められます。また、住宅取得控除制度の見直しや中小企業の設備投資の促進措置、深刻化する特定不況業種に対する措置、大規模地震対策に見合う税制上の措置などについても、それぞれの政策推進の上から評価するにやぶさかではありません。  しかし、本法案の最大の問題は、税の不公平についての国民的不満を助長する提案がなされているということであります。昭和五十五年に政府みずからが提案し、大多数の支持を得て成立したいわゆるグリーンカード制度を延期する措置が盛り込まれていることであります。  この数年間に、制度の実施準備政府や民間の金融機関は相当の資金と労力をつぎ込んでまいっておりますし、現実にグリーンカード制度のための施設は完成寸前にあります。この直接、間接に投じられた国民負担について政府はどのように責任をとるのか、当委員会審議を通じては明らかにされておりません。したがって、本法案は税の公平化からは一歩も二歩も後退するものと受けとめざるを得ないのであります。  次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案に対する反対理由の第一点は、たばこ事業を国が行う積極的な理由がすでになくなっている点であります。  戦前の戦費調達、戦後の復興という目的のために専売事業の収益が寄与してきた経緯は十分に理解できるところであります。しかし、今日、たばこ事業専売行政改革観点からも必然性を失っております。専売であるがゆえの経営の非効率、事業としての活力の減退を引き起こしつつある事実を見逃すわけにはまいりません。われわれが臨調に先駆けて主張してきたように、外国たばことの適正な競争を図り、経済摩擦の火種の一つとしないためにも、また、民間の活力の導入による行政の簡素合理化を図るためにも、たばこ事業の速やかな民営化を進めるべきであります。  第二の理由は、たばこ事業そのものは黒字であるのに、財政上の理由だけで値上げをすることは、市場経済や国民を無視するものであります。国庫収入の増加を図るならば、まず徹底した内部努力を行うことが先であり、その努力を怠ってツケを国民に回すことで収入増を図るのは余りに安易な方法であります。  専売納付金の額が一般歳入の二%を占め、ほぼ同額が地方自治体の収入源となっている現状は、専売の有用性を証明するものではありません。むしろ、たばこ事業を民間が行っている英国や西独などでは、たばこによる課税収入が歳入の四%内外を占める巨額なものとなっており、専売制度によらず自由競争のもとでの経営の合理化が多くの税収を生む実例となっております。  第三に、値上げの方式が、先日の委員会審議で私が明らかにしたとおり、庶民の愛好するたばこについては値上げ幅が大きく、よく売れている高級なものについては率を低く設定するなど、逆累進法をとっていることです。こうした姿勢では、庶民のたばこ離れがますます助長され、かえって赤字がふえるという悪循環を引き起こす結果となります。国民の側に立った配慮が欠けていると言わざるを得ません。  以上、両法案についての見解を述べ、私の討論を終わります。(拍手)
  129. 森美秀

    森委員長 これにて両案に対する討論は終局いたしました。     ─────────────
  130. 森美秀

    森委員長 これより採決に入ります。  まず、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  131. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  132. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大原一三君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。伊藤茂君。
  133. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その提案の趣旨を御説明申し上げます。  本附帯決議案は、政府に対し、所得税減税の実施、各種租税特別措置の整理合理化、税務執行上の公平の確保、国税職員の処遇の改善、定員の増加等につき特段の努力を要請するとともに、利子配当所得等の課税について税負担の公平確保の見地からの検討及び各種引当金の繰入率等の検討を要請するものであります。  個々の事項の趣旨につきましては、法案審査の過程において明らかにされておりますので、その説明は案文の朗読によりかえさせていただきます。     租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記の事項について十分配慮すべきである。  一 国民世論の動向にこたえ、景気浮揚に役立つ相当規模の所得税の減税を、財源を確保のうえ、できるだけ早期に実施するよう最大限の努力をすること。  一 利子・配当所得等の課税については、総合課税への確実な移行を基本理念とした少額貯蓄等利用者カード制度制定の趣旨を踏まえ、税負担の公平確保の見地から速やかな検討に努めること。  一 退職給与引当金、貸倒引当金等については、繰入率等につき引き続き検討を行うこと。  一 準備金、特別償却等各種の租税特別措置については、その政策目的、政策効果、利用状況等を勘案し、その整理合理化にさらに努めること。  一 所得課税面での不公平感に関する世論の動向に顧み、税務執行の公平を確保するようなお一層の努力をすること。  一 申告納税の基本に立つて申告水準の向上等のため、制度面、執行面を通じた納税環境の整備のための具体的方策について早急に検討すること。  一 変動する納税環境、財政再建の緊急性にかんがみ、複雑困難で、かつ、高度の専門的知識を要する職務に従事している国税職員について、職員の年齢構成の特殊性等従来の経緯及び今後の財源確保の緊急かつ重要性並びに税務執行面における負担の公平確保の見地から、今後とも処遇の改善、長期的見通しに基づく定員の増加等につき一層努力すること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださるようお願い申し上げます。
  134. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  135. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じております。  ありがとうございました。     ─────────────
  137. 森美秀

    森委員長 次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  138. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  139. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大原一三君外四名より、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動機が提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。鳥居一雄君。
  140. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 ただいま議題となりました製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨とその内容を簡単に御説明申し上げます。  御承知のとおり、たばこの消費の低迷、経営形態、貿易摩擦など、わが国たばこ事業をめぐる経営環境は一段と厳しいものとなっており、たばこ事業関係者には、その将来に大きな不安を与えております。  このような現状にかんがみ、この附帯決議案は、政府並びに日本専売公社に対し、今後の事業運営等に関し、次の諸点について、努力検討を求めるものであります。  なお、これらの諸点につきましては、いずれも法案審議の際、質疑応答の中で詳細に触れられたものであり、また、案文でその趣旨も尽きておりますので、個々の説明は省略し、案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。     製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一 定価改定の実施等による葉たばこ耕作者その他たばこ事業関係者への影響に配意し、適切な措置を講ずるよう努めること。  一 日本専売公社の改革問題の検討に当たつては、我が国のたばこ事業の健全な発展に資するため、経営の自主性の確保、業務範囲の拡大等企業性発揮に必要な措置を講ずるよう配慮するとともに、葉たばこ耕作者たばこ小売人たばこ事業関係者への影響にも十分配意すること。  一 日本専売公社の事業合理化の推進に当たつては、たばこ事業関係者理解を得るよう努めること。また、その事業の適切な運営を図るため、日本専売公社職員の職務への意欲的参加を促す適切な措置を講ずること。  一 輸入製造たばことの競争の進展に即応し、日本専売公社経営体制強化のための適切な措置を講ずるとともに、葉たばこ耕作者等に極力影響が及ばないよう配慮すること。  一 昨今の国民の喫煙と健康に関する関心の高まりにかんがみ、喫煙と健康問題に関する科学的研究をより一層充実させ、消費者が安心して吸えるたばこの供給に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  141. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  142. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  143. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。  ありがとうございました。     ─────────────
  144. 森美秀

    森委員長 次に、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  145. 森美秀

    森委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  146. 森美秀

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  148. 森美秀

    森委員長 次回は、明二十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時五十四分散会