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1983-03-04 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月四日(金曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 中西 啓介君 理事 中村正三郎君    理事 伊藤  茂君 理事 野口 幸一君    理事 鳥居 一雄君 理事 米沢  隆君       青木 正久君    麻生 太郎君       今枝 敬雄君    熊川 次男君       笹山 登生君    椎名 素夫君       塩川正十郎君    白川 勝彦君       津島 雄二君    羽田  孜君       平泉  渉君    平沼 赳夫君       藤井 勝志君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       堀  昌雄君    武藤 山治君       柴田  弘君    竹内 勝彦君       小沢 貞孝君    玉置 一弥君       正森 成二君    蓑輪 幸代君       渡辺  貢君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房日         本専売公社管理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      岩崎  隆君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁直税部長 角 晨一郎君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   丸茂 明則君         中小企業庁計画         部振興課長   桑原 茂樹君         日本専売公社総         裁       長岡  實君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   木村武千代君     羽田  孜君   小泉純一郎君     青木 正久君   毛利 松平君     津島 雄二君   阿部 助哉君     上田  哲君   広瀬 秀吉君     佐藤 観樹君   柴田  弘君     竹内 勝彦君   玉置 一弥君     小沢 貞孝君   正森 成二君     渡辺  貢君 同日  辞任         補欠選任   青木 正久君     小泉純一郎君   津島 雄二君     毛利 松平君   羽田  孜君     木村武千代君   上田  哲君     阿部 助哉君   佐藤 観樹君     広瀬 秀吉君   竹内 勝彦君     柴田  弘君   小沢 貞孝君     玉置 一弥君   渡辺  貢君     正森 成二君     ───────────── 三月三日  昭和五十八年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置に関する法律案内閣提出第一号)  一兆円所得減税に関する請願伊藤茂紹介)(第一一八一号)  同(伊藤茂紹介)(第一二七一号)  税制改革に関する請願有島重武君紹介)(第一一八二号)  同(坂井弘一紹介)(第一一八三号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第一二三二号)  同外一件(勝間田清一紹介)(第一二三三号)  同(木間章紹介)(第一二三四号)  同外一件(小林進紹介)(第一二三五号)  同(西中清紹介)(第一二三六号)  同(青山丘紹介)(第一二五九号)  同(塩田晋紹介)(第一二六〇号)  同(高田富之紹介)(第一二六一号)  同外三件(竹内猛紹介)(第一二六二号)  同(西田八郎紹介)(第一二六三号)  同(長谷川正三紹介)(第一二六四号)  同(藤田高敏紹介)(第一二六五号)  同(部谷孝之紹介)(第一二六六号)  同(堀昌雄紹介)(第一二六七号)  同(村山喜一紹介)(第一二六八号)  同(横手文雄紹介)(第一二六九号)  同(米沢隆紹介)(第一二七〇号)  大企業優遇税制是正等に関する請願井岡大治紹介)(第一一八四号)  同(沢田広紹介)(第一一八五号)  同(安井吉典紹介)(第一一八六号)  同(川俣健二郎紹介)(第一二三七号)  同(中村茂紹介)(第一二三八号)  同(大出俊紹介)(第一二七二号)  同(岡田利春紹介)(第一二七三号)  一兆円減税の実現に関する請願外三件(浅井美幸紹介)(第一二〇六号)  同外三件(有島重武君紹介)(第一二〇七号)  同外一件(石田幸四郎紹介)(第一二〇八号)  同(大野潔紹介)(第一二〇九号)  同外三件(大橋敏雄紹介)(第一二一〇号)  同外三件(沖本泰幸紹介)(第一二一一号)  同(鍛冶清紹介)(第一二一二号)  同外三件(北側義一紹介)(第一二一三号)  同外四件(草川昭三紹介)(第一二一四号)  同外三件(草野威紹介)(第一二一五号)  同外三件(坂井弘一紹介)(第一二一六号)  同外一件(柴田弘紹介)(第一二一七号)  同(鈴切康雄紹介)(第一二一八号)  同外三件(斎藤実紹介)(第一二一九号)  同外三件(田中昭二紹介)(第一二二〇号)  同(竹入義勝君紹介)(第一二二一号)  同外三件(竹内勝彦紹介)(第一二二二号)  同外三件(玉城栄一紹介)(第一二二三号)  同(西中清紹介)(第一二二四号)  同外四件(平石磨作太郎紹介)(第一二二五号)  同外二件(伏木和雄紹介)(第一二二六号)  同(正木良明紹介)(第一二二七号)  同(矢野絢也君紹介)(第一二二八号)  同(山田太郎紹介)(第一二二九号)  同外一件(渡部一郎紹介)(第一二三〇号)  同外三件(薮仲義彦紹介)(第一二三一号)  同(市川雄一紹介)(第一二七四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号)  災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  租税特別措置法の一部を改正する法律案  製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案  災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における社会経済情勢現下の厳しい財政事情に顧み、租税特別措置整理合理化を行う一方、住宅建設中小企業設備投資促進等に資するため所要措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一は、既存の租税特別措置整理合理化であります。  まず、企業関係租税特別措置につきましては、昭和五十一年度以来連年厳しい見直しを行ってきており、その整理合理化をさらに進める余地はかなり限られている状況にありますが、昭和五十八年度におきましても、価格変動準備金廃止年度の繰り上げを行うなど、特別償却制度及び準備金制度等整理合理化を行うことといたしております。また、登録免許税税率軽減措置につきましても所要整理合理化を行うことといたしております。  第二は、住宅取得控除制度改正であります。  住宅取得控除制度につきましては、住宅融資償還金等に係る控除率を七%から一八%に、その控除限度額を五万円から十五万円に引き上げる等その改善を図ることといたしております。なお、定額控除廃止することといたしております。  第三は、中小企業設備投資促進に資するための措置であります。  中小企業者等機械特別償却制度につきまして、二年限りの措置として、その対象となる機械及び装置の取得価額合計額のうち、過去五年間の平均投資額を超える部分については、百分の十四の償却割合にかえて百分の三十の償却割合適用する特例措置を講ずることといたしております。  第四は、特定基礎素材産業構造改善に資するための措置であります。  すなわち、原料の節減等構造改善に資する特定設備については初年度百分の十八の、建物等については百分の八の特別償却制度事業提携に伴う現物出資により取得した株式についての圧縮記帳特例過剰設備の廃棄により生ずる除却損に係る欠損金繰越期間を十年とする特例及び事業集約化のための合併、現物出資営業譲渡等に係る登記に対する登録免許税税率を軽減する特例を設けることといたしております。  第五は、自動車関係諸税に関する改正であります。  すなわち、揮発油税及び地方道路税について税率特例措置適用期限を二年延長するほか、自動車重量税について、税率特例措置適用期限を二年延長するとともに、自動車検査証有効期間が三年とされる自動車に対する税率を設けることといたしております。  第六は、少額貯蓄等利用者カード制度適用延期等であります。  少額貯蓄等利用者カード制度につきましては、これを三年間適用しない措置を講ずることとし、また、利子配当所得源泉分離選択課税等特例措置について、その適用期限を三年延長することといたしております。  その他、地震防災応急対策用資産特別償却制度創設等を行うとともに、揮発油税及び地方道路税特定用途免税制度等適用期限の到来する租税特別措置について、実情に応じその適用期限を延長する等所要措置を講ずることといたしております。  次に、製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  わが国の財政はきわめて厳しい状況にあり、その立て直しは最も緊要な課題一つとなっております。昭和五十八年度予算編成に当たっては、このような状況にかんがみ、歳出面において経費の徹底した節減合理化に努めるとともに、歳入面においても税外収入等につき極力見直しを行ったところであります。  その一環として、製造たばこ小売定価適正化を図り、あわせて財政収入確保に資するため、製造たばこ小売定価最高価格の引き上げを行うとともに、現下財政事情等にかんがみ、昭和五十八年度及び昭和五十九年度における専売納付金納付特例措置を講じることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  第一に、製造たばこ小売定価を改定するため、製造たばこ定価法において定められている種類ごと等級別最高価格を、紙巻きたばこについては十本当たり十円、パイプたばこについては十グラム当たり十円、葉巻きたばこについては一本当たり十円、それぞれ引き上げることといたしております。  第二に、専売納付金納付特例措置を講じることとし、日本専売公社は、昭和五十八事業年度及び昭和五十九事業年度については、日本専売公社法の本則の規定により納付する専売納付金のほか、政令で定める日以降売り渡した製造たばこの本数に〇・三四円を乗じて得た額に相当する金額を、専売納付金として、それぞれの事業年度の翌年度五月三十一日までに国庫に納付しなければならないことといたしております。  次に、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、災害被害者の負担を軽減するため、一定の要件に該当する被災自動車について自動車重量税を還付する措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして、御説明申し上げます。  自動車販売業者等自動車使用者のために自動車検査証交付等または車両番号の指定を受ける目的で保管している自動車のうち、当該保管をしている間に自動車重量税納付されたもので災害による被害を受けたことにより走行の用に供されることなく使用廃止がされたものにつきまして、当該納付された自動車重量税の額に相当する金額納税義務者に還付することといたしております。  以上が、租税特別措置法の一部を改正する法律案製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案及び災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 森美秀

    森委員長 これにて各案の提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  5. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塚田庄平君。
  6. 塚田庄平

    塚田委員 大臣にちょっと質問いたしますが、きのう、おとといですか、堀委員から税収見積もり達成状況等について質問がありました。  一般会計で大体三十兆四千何がしということで、前年度五・三%増を見込んでおるわけでございますが、十二月の段階で大体六・三%の増ということでございます。残念ながら八月の段階では八%、九月の段階では七・八、十月の段階では七・二、十一月は六・七、そして六・三、こういくんです。だんだん下がってきておりますけれども景気動向も後で申し上げますが、いろんな先行きにつきましては、必ずしも悲観ばかりしておられない材料も徐々に出てきておるということでございますので、十二月の六・三、これはこれから毎月大体三・八%ずつ伸びていくということになれば目標達成ということになります。三・八%は当然達成できるし、場合によっては五%内外の毎月増が出てくるんじゃないか、そう考えますと、見込みの六・三をあるいは上回る数字が出てくるんじゃないか、こう私は思いますが、税収見積もり等につきまして御答弁を願いたいと思います。これは主税局長でいいです。
  7. 梅澤節男

    梅澤政府委員 現在までに判明いたしております十二月末までの税収につきましては、ただいま委員が御指摘になりましたとおりでございます。累計で前年対比六・三%の伸びということでございます。十二月末までの税収でございますと進捗割合が五八・四%、つまり、年度に入ってまいります税収のまだ六割弱という水準でございまして、今後申告所得税、この三月十五日に全国の税務署に申告されます分でございますが、その分と三月決算期法人税収、これは昨年度で申しまして約二兆数千億の大きなかたまりの税収でございます。  先般、堀委員の御質問に対しまして、補正後の税収見積もりが非常にかた目に見積もってあるとすれば、決算で結果的に税収増が出るのではないかとただされた点につきまして私が申し上げましたのは、一つは、いま申しました法人の三月決算が、最近の個別の聞き取り調査によりますと、業種によってばらつきがございますけれども、昨年秋よりも全体として必ずしもよくなっていないという点が懸念されるということと、もう一つ申告所得税は、これはあくまで申告の結果を集計しないとわからないわけでございますけれども、過去の経験から申しまして、実体経済の動きにかなり敏感に反応すると申しますか、そういう傾向もございますので、全体の経済基調が必ずしも上向きになっていないという段階であるとすれば、申告所得税についても若干の懸念があるということで、ただ感触としてそういう懸念を持っておるということでございまして、いまの時点で、計数的に決算見込みがどうなるかということを申し上げられる段階ではないということでございます。
  8. 塚田庄平

    塚田委員 これはあくまでも推定で、お互いに推定議論し合ってもしようがないので、おっしゃるとおり、これからの税の見積もりについてのキーポイントといいますか、これは、確定申告分が一体どのぐらいになるかということと、三月期決算法人税がどのぐらいの率で上がってくるか、この二つが大体大きな要素になってくるんじゃないかと思います。  それで、私どもでは、確定申告分は大体六%台を下ることはないんじゃないか、それから三月の法人決算ですけれども、これも十二月のこれを見ますと、法人税は前年比、累計で七・七%になっております。そういったこと等の推移をずっと見ていきますと、少なくとも九〇や九五という一〇〇を下る線ではないんじゃないか、これも全く推計で、感じなので、じゃ根拠は何かと言われるとなかなか出ないのですけれども、そういう見通しが立てられるんじゃないかと考えますが、これまた簡単に答えてください。
  9. 梅澤節男

    梅澤政府委員 十二月末までの累計法人税収が対前年同期比七・七%といういま御指摘のとおりでございますが、これは、各月別に各決算期別法人税収をもう少し分解してみますと、特に九月決算期以降、年税額ベースで実は前年同期を下回っておるわけでございます。それが税収ベースでなぜ前年同期を上回っているかっこうになっているかと申しますと、いつか御説明申し上げたかと存じますけれども、昨年の三月決算法人税収期限内に納付されない部分、つまり新年度税収になる部分予想外に大きかった、それが下積みにあるものでございますから、実勢よりも累計比で現段階では高く出ておるという状況もございます。
  10. 塚田庄平

    塚田委員 大変悲観的なあれなんですけれども、これは大臣、今度答弁してください。  御承知のとおり、議長の裁定で減税問題についてめどをつけなければならぬ責任がいま政府に負わされておるわけでございますが、いまの答弁から言いますと、なかなか税収動向だけでは景気浮揚のための一兆円を超す減税財源にはならないんじゃないか、こういうふうにも聞き取れたわけでございますが、そういうふうになりますと、私どもは、そういう税収伸び、私は大体行くと思いますけれども、それとあわせて景気浮揚のためになる減税をやるためには、別にまた減税財源をさらにプラスして求めなければならぬということになってくるんじゃないかと思います。  そういう場合に、一つの例でございますが、四十九年に創設された会社臨時特別税、なぜ私がこれを挙げるかといいますと、原油の値下げによって異常利益が発生する可能性もある、こういうことに着目して四十九年に創設したこの特別税を四十九年、五十年と二年やったはずですね。これを復活する用意はないのかどうか。これだけで当時の金にして大体一千八百億、五十年は一千三百七十億の収入があったはずでございます。現在になりますと、さらにこれがずっと大きくなるのではないかと思います。  あるいは、これは後でいろいろと質問いたしますが、いろいろな引当金圧縮をこの際考えなければならぬじゃないか。これは、なぜ私はここで言うかというと、引当金そのもの特別措置とはしておらないわけですね。いまのところ法人税の中に規定されておりますが、引当金、これは貸し倒れあるいは退職含めて圧縮していくという考えはないかどうか。  これは、後でまた詳しく質問したいと思いますが、一応概括的に以上の点について御答弁願いたいと思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 今回の与野党合意に基づきますところのいわゆる減税問題について、歳入委員会の本委員会におきまして財源の御議論をいただくということは、私どもにとっては、大変ありがたいことであるというふうに考えております。まさにその意味におきまして、私は、国民世論動向にこたえ景気に役立つ相当規模減税をするための財源確保して、所得税住民税減税法案を五十八年中に提出するということがうたわれておりますだけに、財源議論というのは大変注目すべき議論であると思うわけでございます。  そこで、この問題につきましては、それこそいま五十七年度決算見込みあるいは税収見込みについての、結論から言えば決算ということになるでありましょうが、御質疑がされておりますが、それらが大体明確になるのは七月と思えるわけであります。したがって、それらが一つの検討を始めますための大きなきっかけになるではないかとかねて考えておりました。したがって、五十七年度税収につきましては、いま委員見通し、それから主税局長が現状についてのお答えというよりも御説明を申し上げました。それには、まだ不確定要素がたくさんあることでございますので、まさにそのことを踏まえて、今後の推移を見つめていかなければならない課題であると認識をいたしております。  そこで、例示的に、石油値下げによる異常利益の発生に着目した議員立法でお出しになりました四十九年創設会社臨時特別税等についての御言及もございました。この問題につきましては、これはまさに異常利益が果たして発生するかどうか、その点はもちろんはっきりしておりません。あの税金は、一般的な物価高騰等異常事態に設けられたものでありますので、物価というものをいま考えてみますと、全くそういう状況ではない。したがって、それそのものを復活するというのは適当ではないと言わざるを得ないわけでございます。  そうして、例示的になお引当金退職給与等々の御議論もございましたが、後ほど御議論をなさるという前提における御議論でございますが、それらは、こうしたまさに国会の問答を通じ、それらを踏まえて税制調査会等の意見を聞きながら、これから真剣に検討すべき課題でございますので、あらかじめの予見を持って税制調査会等政府としてお示しする課題ではない。税調そのものが、まさに御存じのとおり幅広い答申をいただく諮問形式になっておりますので、国会で行われた議論等参考にして、それこそ真剣な御議論をいただける場であると認識しておりますので、あらかじめ予見を持って申し上げるべきものではなかろうかと思いますが、塚田委員が五十七年度税収を踏まえ今後の展望の中に私見を申された事柄につきましては、そのまま私どもも承って、今後参考に供する課題となるであろうと理解をいたしております。
  12. 塚田庄平

    塚田委員 大臣税調に逃げ込んだかっこうになっておりますけれども税調では、貸倒引当金あるいは退職引当金等については絶えず見直しを行えというのが税調の基本的な答申なんです。これは、いつまでもこの通り残しておいてはいけない。特に実績との乖離があった場合には直すべきだというのが税調答申なんですよ、大臣。  それで、たとえば貸倒引当金について一体どういう乖離があるかという一例を、あなたの方から出した資料によって言いますと、まず金融保険業、これは貸し倒れ実績率は大体三分の一になっております。つまり、三倍の積み立てをやっているわけですね。それから、これは金融保険業だけじゃございませんが、製造業については大体三分の一強、あるいは割賦小売業については四分の一、あるいは卸・小売業については三分の一弱、いずれも法定繰入率は三倍近い、あるいはそれ以上の実績を示しておるわけです。したがって、これを見直すということは当然政府のやるべきことだと思うのですけれども、この点一体どうでしょうか。
  13. 梅澤節男

    梅澤政府委員 貸倒引当金につきましては、ただいま委員も御指摘になりましたように、税制調査会におきましても、法定繰入率を常に実態に合うように見直すべきであるという基本方針を従来からとられておるわけでございます。  それを受けまして、最近で申し上げますと、金融機関の金融保険業の貸倒引当金につきましては五十六年度、その他の業種につきましては五十七年度、それぞれ引き下げを図っておりまして、それが、いま委員が御指摘になりました実績との大体三倍ぐらいの水準でございます。  この問題につきましては、今後とも私ども、税制調査会の御見解どおり実態に即して見直していかなければならないと考えておりまして、今年度におきましても、金融保険業につきましては五十六年度に設定されました千分の三という繰入率、これは実は積み増し停止の措置を講じておったのでございますけれども、通常の金融機関につきましては、今後二年間をかけましてこの水準に実際に下げていくという措置をとらせていただきたいと考えておるわけでございます。ただ、貸倒引当金はそもそも、これは釈迦に説法かもわかりませんけれども、企業の所得計算をする場合でのいわゆる評価性の引当金ということで、それ自身税制上の優遇措置であるというふうには私ども考えてないわけでございます。  それから、各国の税制を見ましても、実績率を採用している国におきましても、たとえば金融保険業につきましては、ちょうどわが国の千分の三に該当するような法定繰入率を設定しているところが多うございます。私どもは、そういったことも考慮に入れながら、しかし、実態に即するように常に見直す努力は今後とも続けていかなければならないと考えております。
  14. 塚田庄平

    塚田委員 梅澤さん、この貸倒引当金は、退職引当金も同じなんですけれども、いわゆる費用収益対応の考え方で、法人税の中に規定されておるということで、大蔵省は、これを手直しするということについては、少なくとも私十年ほとんど大蔵をやっておりますが、抵抗してきたのですよ。しかし、世間からはこれは結局事実上の優遇税だという声、それと財源難ということ、この両方の間に入って、大蔵省は五十六年からようやくこれに手をつけ始めたというのが歴史なんです。だから、もうすでに費用収益対応という考え方はここで払拭しなければならぬ時代に来ておる。したがって問題は、繰入率と実績との間にどれだけの乖離があるか、ここに改定すべき根拠を求めていかなければならぬ、このようにわれわれは考えております。そうなりますと、いま言ったとおり実績率は三分の一というような情勢の中で、これをもっと圧縮するという方向で検討を進める、特に財源が非常に窮屈な情勢の中で、これは当然見直さなければならぬ。  それから退職金については、これは言いっ放しにしますが、これも三十三年に、ずいぶん古い話ですが、平均在職予定年数というのは大体九年と計算しております。そして退職金の現在価値というのは約五〇%。五十三年になって十二年、そして四〇%ということに改まってきておりますが、五十六年あるいは五十七年、ごく最近はだんだんと退職年齢が上がってきていますね。五十五歳から六十歳あるいは六十五歳というふうに定年は上がってきておる。こういうことになると、これも累積限度というものを見直さなければならぬ時期に来ておるのではないか、四〇%をさらに三五%あるいは三〇%と下げることが実態に即するという事態になるのではないか。  大体、これは一遍に全員やめるということを予定してつくっておる引当金なので、これはどうも実態に沿わないというふうに考えていいのじゃないか。それで、いまある累積は恐らく七兆円を超しておるのではないかと思うのですが、これを見直していくということによって財源を浮かせる、財源といいますか、少なくとも毎年転がっていく財源政府のふところに入っていくということになるのじゃないかと思うのですが、この点はどう考えていますか。
  15. 梅澤節男

    梅澤政府委員 退職給与引当金につきましても、基本的には、委員の考え方と私どもの考え方とそう大きなずれはないわけでございます。累積限度額につきましては昭和三十一年に二分の一という累積限度が設定されて以来、二十数年ぶりに昭和五十五年度の税制改正改正をお願いいたしまして、ただいま仰せのように十分の四という累積限度額に改定したわけであります。  その考え方は、高度成長時代と五十年代の安定成長期とを比べてみますと、企業の雇用の動態が非常に違ってきておる。同時に、ただいまもお触れになりましたように、定年制を導入してくる企業が多くなってくるということで、従業員の平均在職期間が非常に長くなってきておる。いま退職給与引当金の累積限度額は、一種の年金数理の方式で現価方式で考えておるものでございますから、従業員の在職年数が長くなれば当然それだけ引き当て額は少なくて済むという考え方に立っておるわけでございます。  ただ、最近のそういう雇用動態を反映いたしまして、実は昭和五十五年度に改定したばかりでございますが、この問題につきましても、五十八年度の税制改正当たりまして税制調査会でも御議論をいただきました。そこで出てまいりました問題は、その平均在職期間が五十五年度の時点で全企業についての平均値で出したのが十分の四という水準でございますが、企業の規模によって非常にばらつきが出てきておるわけでございます。したがいまして、これを今後どういうふうに考えるのか、つまり、全企業一律の累積限度で考えるのか、あるいは、そういう雇用の実態に即しましてもう少しこれを細分化して物を考えるのか、この辺が税制調査会の中でも引き続き検討すべきであるということで結論が出ませんで、答申にもそういうふうに書いていただいておるわけでございます。この点につきましても、引き続き将来の問題として検討させていただきたいと思います。
  16. 塚田庄平

    塚田委員 さて竹下大臣、あなたの時代に、たしか昭和五十五年だと思いましたが、少額貯蓄に対するグリーンカード、この利用者カードの実施でございますが、今度の法案で、これは三年間延長ということになっております。  私は、あなたの大臣の時代に創設したのだから、提案理由の中で何かそれに触れた話でもあるかと思ったら、さらっと触れたというだけなんです。あなたの時代に創設し、そして、三年間かかって準備も相当やってまいりました。金もかけました。御存じのとおり、例のセンターをつくるのには六十億からの金をつぎ込んで完成したのですよ。それから、カードの利用について一問一答という大蔵省のこういう啓蒙雑誌も出ました。それで足りなくて、さらに「グリーンカード」という税制一課の啓蒙書も出ております。ありとあらゆることをやって準備を重ねてきたのに、まだ準備が不足だということで延期する、その本当の理由は一体何ですか。
  17. 竹下登

    竹下国務大臣 いま御指摘のとおり、実際これが議論せられ、そして政府が準備をするまでの間時間をかけた議論がありました。そして、それに対して準備もやりました。金もかけました。これは御指摘のとおりであります。  したがって、提案理由等でも申し上げておるわけでございますけれども、実際問題、私は、その当時提案者であっただけに、この問題については私なりに非常に苦しみもし、いかに対応すべきかを議論もいたしてみました。あるいは、それは議員提案というものがなされた経緯にかんがみ、その議員提案というものが継続して審議され、議論されることがむしろ妥当ではないか、こういう議論も承りました。しかし、これを提案した当時の責任者たる私が、要するに、さまざまな議論が行われて、そして、郵貯でありますとかあるいは金でありますとかゼロクーポンでございますとか、そういうもののシフト問題、そうして中には金庫が売れ出したとか、いろいろなお話がございました。そして、その責めは必ずしもグリーンカード制度に帰するものではないと認められるものもたくさんあったと思います。しかし、グリーンカード制度との関連において議論されるそういう事象というものを私は予測をしていなかったという意味においては、確かに見通しというものがそこにまで及ばなかったという責任は、私なりに感じなければならないと思います。その結果が、いわば五年間の延期法案として議員立法が出た。  そういうことになりますと、まさにほとんどすべての国民に関係する制度でございますので、やはりいかなる政策といえども国民の理解と協力がなければ実効を上げることができないという立場に立ちますならば、なお一層、いわゆる法的安定性ということを考えますと、政府提案という形において、しかも、そのとき提出者であった私が大蔵大臣であって、なおそれをみずからの責任として一定期間凍結という法律案をお願いすることが、一つの政治責任としてのあり方であるという私なりに認識を固めまして、そうしてお願いをしておるということでございます。提案理由においてはさらりと申し述べておりますが、その間の、提案理由の裏にありますもろもろの心情というものについては、私なりに真剣に考えた上御提案申し上げたという実情を素直に申し述べます。
  18. 塚田庄平

    塚田委員 私の質問に答えてないのですよ、長々とおしゃべりしていますけれども。  延期する理由は何なのだ、これがポイントなんですよ。三年間も準備してきて、しかも延期する、これにはいろいろな抵抗があったことは私承知しておりますよ。その抵抗に応じて、いろいろな手直しがやられております。たとえば本人確認の方法についても、いろいろな便宜的な方法をとっているということもしかりです。  そういう中で、あなたは、三年前には議員のいろいろな質問の中で、私もよく勉強させられました、本当によくわかりました、絶対に税の公平を期すためにこれを実施しなければならぬと、この議事録を読みますと書いてあるのですよ。それが三年間たってやめるという、その理由は何かというのです。場合によっては、あなたの責任を問わなければならぬ。
  19. 竹下登

    竹下国務大臣 国会のことについて行政府の責任者として申し上げるべき言葉は慎みつつも、責任を問われてしかるべき問題だというくらいに私自身認識はいたしております。結局、くどくど申し上げましたが、要するに、法的安定性というものから考えた場合に、国民の信頼と理解がそこまで到達していないと客観上認識せざるを得ないということが提案の理由であります。
  20. 塚田庄平

    塚田委員 先ほどから私が質問しておるとおり、私は、いま二つのこれを出しましたけれども、これ以上にたくさん出しておるのですよ。そして、グリーンカードについての著書というのは本当に山のようになっております。グリーンカードとはこういうものだ、もう国民は知らない者はいないのですよ。そして、五十八年の末にはカードを交付するということを決めて、政令を改正して五十九年になった、こういう情勢等を踏まえますと、そういう事情を小刻みにしながら、なおかつ三年間延長していくということは一体何なのか。三年たったらまたやるのかとあえて聞きますよ。  あなたは責任を感じておると言いますが、どういう責任をとるのですか。かつて渡辺大蔵大臣は、六兆円の歳入欠陥で責任をとりますと言って、まあそれでやめたわけじゃないだろうと思いますけれども、大みえを切ったのです。それだけの気持ちがあなたの気持ちの中にあるかどうか、答えてください。
  21. 竹下登

    竹下国務大臣 責任をとりますと、責任を感じておりますと、まさに責任を感じておりますので、古い言葉で言えば、罪万死に値するとでも、ちょっとこれは、近代社会において死というものを前提における表現は必ずしも適切でないかもしれませんが、事ほどさように、それは私どもが法的安定性という観点から国民の理解を十分に得ることができなかった、そしてもろもろの事象が起こることを予測できなかったということは、やはり大きな責任であると思っております。したがって、責任を感ずれば感ずるこそ、みずからの手でその責任を持って法案を提出して、御批判、御叱正を受けながらも、御理解をいただいていく努力をしなければならないというのも責任のとり方であるというふうに私は考えております。  したがって、この問題につきましては、まさに今後の問題というのが重要なポイントでございますし、それにつきましては国会の御議論等を踏まえながら、税制調査会におきまして、まさにこの法律が成立した後これを御議論していただかなければならぬと思っております。  ただ、私もいまお示しなすっております中のグリーンカードの見本を絶えずポケットに入れて持って歩いておりまして、こういうものだということをそれなりに説明をしてみたりして、自分にも言い聞かせてきたわけであります。そしてまた、五十八年の一月一日からカードを交付するということが、法律案が提案されておりましたものの、廃案を仮にもし前提とした場合どのような措置があるかということについても、超法規的なことをするわけにももちろんまいりませんし、政令に基づいて一応法律のたてまえは貫いた政令改正ではございましたものの、それを行う措置についても私なりに、短い間ではございましたけれども、十一月の暮れに大蔵大臣になりましたから、いろいろ模索し、協議してとった措置でございます。  だから、責任は大変感じておりますし、何といいましょうか、歳入欠陥が出たら責任をとる、責任というものは、やはりこうしてずっと大蔵大臣におることが大変いいことだと思っておるわけでももちろんございませんし、やめるということだけが責任じゃないから、やめるときにはちゃんと人がやめさせてくれますので、やはり自分の手できちんとしていくというのも責任のとり方だ。お互いそこのところが、いまおっしゃったように、大事なところだなと思っております。
  22. 塚田庄平

    塚田委員 ちょっと聞こえないのですけれども、そういう話は。私は、責任をとるということは、やはり大蔵大臣としてはやめるということが一番責任をとるきれいなやり方だと思うのですよ。そればかりが責任をとることではないんだ、いろいろあるだろうと思います。  しかし、あなたの時代にできた法律、あなたがこういうことまで言っているのです。これは、この法案が提案になりましたときに、まず第一に、いろいろなあれがありますけれども利子配当所得等については昭和五十九年から総合課税へ移行することとし、そのための措置として、どうしてもこのカード移行が必要だということを強調しておるわけです。あるいは、その当時局長だった高橋さん、いま公取に行っているのですね。高橋さんは、利子配当所得の総合課税への移行のためには絶対にこの制度が必要である、したがって、五十九年一月一日から制度を全面的に切りかえ、そして、その一年前にカードを渡して諸準備を万端怠りなくやるのだ、全部そろって大蔵省はそういう考え方なんですよ。  政治というのは継続性があるのです。人がかわったからだめなんだ、別なことをやるのだというものじゃないと思うのですよ。ましてや竹下さん、あなたかつくった法律なんですよ。そこで僕は責任問題を言っているのです。いま言った高橋さんの発言と絡んで、これはひとつ局長からも答弁をもらいたい。
  23. 梅澤節男

    梅澤政府委員 従来の経緯につきましては、先ほど来大臣がるるお述べになったとおりでございますが、税制当局といたしまして、税制調査会の一年余にわたります審議、御検討の結果、グリーンカード制度が総合課税を行うための現実的な手段であるということで、五十五年の所得税改正を御提案申し上げたことは、これは事実でございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この制度をぜひ実現したいということで、その後執行当局もいろいろ準備を重ねてきたわけでございますけれども、その後の経緯等は先ほど大臣がお述べになったとおりでございますが、非常に異例なことでございましたけれども、ことしの一月になりまして、税制調査会の年度答申が終わりました後、法的安定性という観点から、税制調査会に従来の経緯をずっと報告いたしまして、結局、非常に遺憾ではあるけれども、当面の措置として一定期間凍結することはやむを得ないという御議論をいただいたわけでございます。  ただ、今回租税特別措置法で三年間凍結をお願いしておるわけでございますけれども、この法案を閣議で御決定いただくときに大蔵大臣から、今回この法案を提出するけれども、利子配当課税の適正、公平な課税ということについての政府の方針は一歩も後退するものではない。今後具体的にどういう対応をするかは改めて税制調査会にお諮りして御結論をいただく。その意味で、所得税本法に決められております五十五年度改正は一切手をつけずに、租税特別措置法で一定期間凍結するという措置をとっておるわけでございます。  従来、当委員会でこの法案を御審議いただきましたときに、いろいろな角度からの御質疑を経て、野党の委員の皆様方にも大変な御理解をいただいて成立させていただいた法案でございますので、私も、当時担当の審議官としてこの問題に携わらせていただいたわけでございまして、その間のことを考えますと、非常に申しわけない気持ちもするわけでございますが、いずれにいたしましても、今後この利子配当の適正な課税という点については、従来以上にそういう強い決意といいますか方向で今後とも今後のあり方について検討してまいりたいということでございます。何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  24. 塚田庄平

    塚田委員 いまの局長の話ですと、法的安定性といいますか、こういった問題についてまだ十分検討がなされていない、そういう言葉じゃありませんが、そういう意味のことを言っております。法的安定性が確保されないのに、いまこの財政難の折から六十億もかけてセンターをつくる。これは、やはり安定性を確保するためにセンターをつくったのですよ。そうでしょう。あそこまでやって、まだいま法的安定性を云々言うのは、これは不見識もはなはだしいと思う。  時間もありませんので、いまの答弁と次の答弁をしてください。この議事録によると、利子配当の総合課税移行のためには、グリーンカード制度はぜひ必要だ、絶対に必要だ、こう言っておるのですよ。それでは、いまこの段階で総合課税へ移行するということについては変わりはない、こう解釈していいですか。
  25. 梅澤節男

    梅澤政府委員 若干舌足らずの点がございましたので、補足をいたします。  法的安定性と申しますのは、御案内のとおり、わが国におきまして特に利子所得の場合、国民の大多数の人が預金を持っておる、利子を受け取っておるということでございますので、そういう非常に多くの方々に適用される税制が、果たしてこのまま施行されるのかあるいは施行されないのかという、制度に対する信頼感のないままに施行されますときに起こりますいろいろな混乱を避けるために、つまり法的安定性という観点から、当面の措置として凍結するという考え方に立っておるわけでございます。  なぜ、そういう混乱が起こったかということにつきましては、これも私は先ほどやや舌足らずでございましたけれども、そのきっかけになりましたのは、与党である自民党の方から議員提案が出たということが、やはり一つの制度に対する信頼感、安定感というものを揺るがすと申しますか、契機になったということも事実でございます。  それからもう一つ、総合課税の問題でございますけれども、総合課税についてはいろいろな手段があるわけでございます。税制調査会の議論でも、これは公開して御報告申し上げているわけでございますけれども、一番完全な方法は、いわゆる納税者番号という制度でございました。しかし、これがわが国の風土にはなかなかなじまないということで、現状における次善の策ではあるけれども、一番適切な方法としては、いわゆるグリーンカードであろうというのが税制調査会の御結論であったわけでございますが、私どもは今後、もちろん税制調査会の御議論の中で、このグリーンカード制度をもとどおり実施するのか、あるいは部分的に実施するという御意見があるのか、あるいは別の方途が考えられるのか、それは現段階では予断の限りではございません。挙げて、適正な利子配当課税に対するあり方についての今後の税制調査会の御議論を注目してまいりたいというのが現在の立場でございます。
  26. 塚田庄平

    塚田委員 何だかごてごてと答弁しておりますけれども、簡単なんですよ。総合課税へ移行する方針には変わりはないのか、つまり、分離課税を廃止するのかということを聞いているのです。それ以外のことをまだ聞いていないのですよ。端的に答えてください。
  27. 梅澤節男

    梅澤政府委員 利子配当課税の適正なあり方について、従来税制調査会が、一番理想的な姿は総合課税であるという経緯で一貫して議論されてこられた経緯はそのとおりでございまして、恐らく税制調査会で今後御議論になる場合にも、従来のそういう経緯に沿った御結論をいただけるのではないかというふうに考えておりますが、具体的にどういうことかということになりますれば、今後の検討を注目していくということになろうかと思います。
  28. 塚田庄平

    塚田委員 では、総合課税に移行することについては変わりはない、税制調査会でもそういう方針を持っておる。さすれば、所得を把握する方法として、グリーンカード以外にもっと適当な方法があるのかないのか、そういうことは考えられるのかどうか、これも端的に言ってください。
  29. 梅澤節男

    梅澤政府委員 税制調査会で議論されましたときは、先ほど申し上げました納税者番号制度、それからいま話題になっておりますグリーンカード制度、それからもう一つの方向といたしましては、高率の税率で源泉徴収をいたしまして申告段階で精算するというやり方が検討されたわけでございますが、この最後の方法は執行のコストが非常にかかるという問題がございます。  したがいまして、グリーンカードが一番適当であるという議論の経過になったわけでございますが、いずれにいたしましても、総合課税につきましてグリーンカード制度が大変いい方法の一つであることは確かでありますけれども、理論的に考えますと、いろいろなやり方は考えられないわけではないということは言えるかと思います。
  30. 塚田庄平

    塚田委員 これは後で同僚議員から、またさらに別な観点から御質問があると思います。  それでは局長、マル優を一体どうするのかということ、これは残しておくのでしょうね。端的に聞きます。
  31. 梅澤節男

    梅澤政府委員 これは大変大きな問題でございますので、あるいは大臣からお答えになるような問題であると考えております。ただ、税制事務当局といたしまして、現在マル優をやめるというふうなことは頭にはございません。
  32. 塚田庄平

    塚田委員 大臣、ちょっと。
  33. 竹下登

    竹下国務大臣 税制調査会は総理の諮問機関でございまして、幅広く税制のあり方について調査、審議をするということになされておりますので、御指摘の問題につきましても、自由な立場であらゆる角度から幅広い議論をしていただくべきものであるというふうに考えております。  実際問題、私どもが、マル優をいままでどおりにするかとか、手直しをするかとか、やめるかとかという問題について、目下具体的な考え方を持っておるわけでもなければ、それを政府部内で検討しておるという事実はございません。やはり広範な自由な立場で御議論していただく課題ではないかというふうに考えております。
  34. 塚田庄平

    塚田委員 あなたは、予算委員会等でしばしばマル優を廃止するがごとき印象を受ける発言をしております。  ここで私の意見をちょっと言いますと、マル優を廃止してもし分離課税を残した場合には、これは金持ち優遇として恐らく不公平がさらに拡大していく、こういう世論がほうはいとして起こってくる、このことだけは私から注意をしておきます。いいですか、マル優を廃止して、そして分離課税を残すということになれば、いままで以上に不公平税制になってくるということだけは断言しておきたいと思います。  時間もありませんので、次に移りたいと思います。  これとの関連でというわけじゃございません、これは財源の問題ですが、どうですか大臣、利子所得とそれから配当所得、これについての課税の特例廃止するという考え方はないですか。
  35. 梅澤節男

    梅澤政府委員 利子所得、配当所得の課税の特例と申しますのは、恐らく租税特別措置法の現在の源泉分離選択制度のことをあるいは御指摘になっていると思いますが、この問題につきましては、先ほど申し上げましたように、今回のグリーンカードの凍結を契機といたしまして、利子配当に対する今後の課税のあり方を税制調査会で検討していただくことになっておりますので、その機会に、基本的な観点からの御議論をしていただきたいと思っております。  それから、もう一言補足させていただきますが、先ほどのマル優の問題でございますが、現在の少額貯蓄非課税制度を全部やめてしまうというようなこととか、あるいは具体的にどうするかということを現在検討しているという事実はございませんが、将来の利子配当所得課税のあり方の中で、少額貯蓄非課税制度をどのように位置づけていくかという問題については、改めて検討はしていかなければならない課題ではないかという点については、ひとつ御理解を願いたいと思います。
  36. 塚田庄平

    塚田委員 これはまだまだ言い足りないのですが、時間ももうないので……。きょう、せっかく長岡さんが来ておられます。恐らく初めて総裁としてここへ出られたんだろうと思いますので、たばこの方へちょっと移りたいと思います。まだまだ質問がありますけれども、これは後の機会に譲りたいと思います。  長岡さんに質問するその前に、これは大蔵省にまず質問をしたいと思います。  今回のたばこの定価改定の理由は、一体どこにあるのかということなんです。時間もありませんからずっと言いますと、たばこの値上げというのは、一種の大衆課税、税金を上げたということと私は変わりないと思います。いま臨調あたりで増税なき財政再建ということが常に言われておるさなかに、こういう一種の大衆課税を上げていくということは、この臨調の精神に反するのじゃないか、こう思います。特に、このたばこの場合は低所得者ほどどうしても高率になってくる、負担が大きい。つまり逆進性が大きいということが当然考えられますので、この点ちょっと大蔵省の考え方を聞きたいと思います。
  37. 高倉建

    ○高倉政府委員 お答え申し上げます。  先ほど提案理由説明でも申しましたとおり、五十八年度予算は大変厳しい状況の中で編成をしたわけでございます。一方におきましては、歳出の全面的な見直しということをやりましたが、同時に、他方歳入面でも各種の税外収入見直しということを行ってきたわけでございます。  その一環といたしまして、たばこにつきまして前回の定価改正、五十五年の四月でございましたが、それからの物価の変動あるいはたばこが財政専売物資として位置づけられている性格、こういうことを勘案いたしまして、ある程度の負担の適正化をお願いするという見地から、税制調査会にもお諮りをいたしまして、その答申に基づきまして、関係の改正法案の御審議をお願いしているところでございまして、ただいま申し上げましたような見地から行います今回の措置は、いわゆる増税なき財政再建の趣旨にもとるものではない、かように考えているわけでございます。
  38. 塚田庄平

    塚田委員 うそおっしゃいよ。これは二千億という国庫納付金を何とかしぼり出すためにやったんでしょう。専売公社の経営上の理由からじゃないことははっきりしているんですよ。だから、これは国の財政再建のために大衆に負担をかけたんだとはっきり言いなさいよ。
  39. 高倉建

    ○高倉政府委員 御指摘のとおり、今回のたばこの定価改定は、財政の大変厳しい状況に基づいてお願いをしているわけでございますが、先ほど申しましたとおり、もともとたばこは財政専売物資という位置づけを持っているわけでございまして、物価変動等勘案した上である程度の負担の適正化をお願いするということでございまして、そのこと自身が増税なき財政再建の趣旨に反するものではない、かように判断をしているわけでございます。
  40. 塚田庄平

    塚田委員 いまのは答弁にならぬが、もう時間もなくてできないので、これはひとつ後で、うちの方から再度質問をしてもらいたいと思います。  さて、長岡さん、二つの質問をします。時間がないので一遍に二つ言いますから、これについての答弁をお願いしたいと思います。  間もなく関税の法案が来ると思いますが、これで実は関税の引き下げが行われるわけです。外国たばこは恐らくだんだんと取扱店が拡大されていく、そして輸入たばこの競争力がだんだん強まってくると思うのです。外国たばこにつきましては、五十五年まではずいぶん高率の関税がかけられていたのです。たしか九〇%ですね。それから一挙に三五%に下げる。今度の関税ではさらに三五%から二〇%ということになります。たばこは上げる、外国たばこの関税は下げる。こういう情勢の中では、国内たばこ事業者、これは耕作農民も含めまして百万人いる、こう俗に言われておりまして、こういう人たちの生活に与える影響というものは非常に大きいのですが、一体この点どう対処していくつもりかということが第一点です。  第二点は、またこういう環境下で臨調答申の民営化、こういうところに移行したり何かしていきますと、たばこ事業というのは大変な混乱を来すのじゃないかというふうに私考えております。そういう意味において、一体こういった事態を総裁は黙って見過ごしておくのか。ひとつ決意を込めて答弁していただきたいと思います。
  41. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  第一点は、今回御審議をお願いいたします法律によって関税率がまた下がる、一方、外国たばこの取扱店も拡大するといったようなことで、国内において輸入たばこの消費が相当伸びるであろう、しかも値段が下がって伸びるであろう。一方、今回、この財政的な措置として値上げをする、国内品の値上げがあって一体これは日本のたばこ事業にどんな影響を与えるか、ことに葉たばこの耕作農民あるいは小売店等に対する影響はどうかという点だと存じますが、問題は二つございまして、一つは、今回の日米貿易摩擦の問題の一環として行われることになりました関税率の引き下げとかあるいは小売店の拡大等によって、わが国の市場において輸入品の需要が伸びることはほぼ間違いないと思います。ただ、どの程度の伸びかということが計測的になかなか把握できないわけでございますけれども、過去の経験に照らしましても、相当伸びると存じます。  ただ、今回のたばこの値上げは、内外製品に平等に行われることになりますので、今回の措置が直接この問題に関係があるとは存じませんが、先ほどの貿易摩擦解消の一環としてとられた措置は、明らかにある程度の影響があろうと存じます。私どもとしては、しかし、最近の情勢から見て、そういうものはそれなりに受け入れながら、なおかつ何とか国内の製品の需要を維持していきたい。できるならば少しずつ伸ばしていきたいということで、最大限の努力をいたさなければならないと存じております。  具体的に申しますれば、アメリカのたばこを中心とした輸入品がどんどん入ってまいりましても、それに負けないような商品をつくる。ニコチンやタールの量が少なくて、なおかつ、たばこを吸ったときに満足感が味わっていただけるような新製品を開発していくということも一つでございますし、それから、五十八年度の公社の予算でお願いをいたしております輸出会社に対する出資というのも、これはなかなかそう簡単に国内製品のたばこの輸出が伸びるとも考えられませんけれども、長期的な観点から輸出にも力を入れて、国内のたばこ産業がしりすぼみにならないように努力をいたしたいと考えております。  それから第二点の、臨調答申で民営化等の方向が示唆されておる、こういったようなことが一体日本のたばこ事業にどんな影響があるかという問題でございますけれども、臨調の答申を受けていかなる経営形態を選ぶかという問題は今後の問題でございます。まだ結論が出ておりません。  ただ私どもは、臨調の答申は、最近の厳しい環境の中で日本のたばこ産業がいかにすれば生き残れるか、また、そのために私どもがいまやっております公社の仕事をどういう形に変えれば、国際競争力その他の面からいっても勝ち抜いていけるかという観点から、制度改正が行われるべきであろうというふうに考えております。
  42. 塚田庄平

    塚田委員 もう時間がありませんので、これでやめたいと思います。  長岡さん、いま私の言ったのは、これで二千億の御用金が吸い上げられるわけですね。こういうようなやり方、そういう環境下で臨調の言う民営化ということですね、あるいはまた政府に対してそういう御用金を上げるというようなことで、果たして外国たばことの競争というか、そういう力が削減されていくのじゃないか、私はこう思うので、その点についての質問をいまやったのです。しかし時間がありませんので、これは、いずれまた機会を求めてあれしたいと思います。  それから、きょうはこれからカントリーリスクをやりたいのですが、これも時間がないので、またの機会にします。  最後に大蔵大臣、あなたのグリーンカードについての責任の追及は、これから三年間絶えずやっていきたいと思います。恐らくあなたは、そのときには大蔵大臣じゃなくてあるいは総理大臣になっているかもしれない。そのときにはもっと大きな声で責任追及をやっていきたい、こう考えております。  以上です。
  43. 森美秀

    森委員長 午後一時に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ────◇─────     午後一時十四分開議
  44. 森美秀

    森委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田卓三君。
  45. 上田卓三

    上田(卓)委員 租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、本会議での趣旨説明につきまして、私も党を代表して御質問をした経緯もあるわけでございます。  そこで、私は大阪の出身であるということもございますし、大阪が中小零細企業の町であり商売人の町である、こういう立場で若干、時間の許す範囲内におきまして、中小企業問題につきまして御質問を申し上げたい、このように思うわけであります。  さて、中小企業、零細企業の方々は額に汗をして真っ黒になって働いておられるわけでございまして、その経営者、零細な個人事業者と、そしてそのもとに働く労働者に本当に御苦労いただいておるわけであります。戦後の日本の復興とその発展の原動力は、中小零細企業とそのもとに働く労働者によってなされたと言っても過言ではなかろう、こういうように私は考えておるわけでございます。わが国の事業総数の九九・四%、それから全国の就業者の七五%が中小零細企業で働いておられるわけでございまして、私も、過去十年間、この中小零細企業の組織化といいますか、中企連という組織をつくりまして業者の営業とそして利益を守るという立場で活動をしてまいったわけでございます。特にその中で感じられることは、中小零細企業に政治の光が当てられていないというのですか、政策のらち外に置かれているということを痛感いたしておるわけでございます。特に中小零細企業者が一貫して、中小企業庁を中小企業振興省に格上げをしてもらいたい、こういうような強い要望があるにもかかわらず、いまだに実現されてない、こういうことになっておるわけで、非常に遺憾である、このように考えておるわけでございます。  そういう意味で、中小零細企業の発展は国策中の国策、こう言ってもいいんじゃなかろうか、このように考えておるわけでございまして、まず竹下大蔵大臣から、中小零細企業に対してどのように基本的に考えておられるのか、その所感を聞かしていただきたい、このように思います。
  46. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、就業者数から見ても、生産額から見ても、大変大きなウエートを占めておりますし、まさに日本経済というものが今日に至ったということは、御指摘のとおり、中小企業の活力に負うことが偉大であった。大阪を中心とする中小企業には、私の島根県から多数の者が雇用の場を求めております。ありがとうございます。
  47. 上田卓三

    上田(卓)委員 特に、戦後の困難な時代に苦労したそういう中小零細企業の創業者と言われる方方が大変な年齢に達している、高齢化を迎えておる、こう言っても過言ではなかろう、このように思うわけでございます。そういう中で世代交代期を迎えている、こういうことになるわけでございますが、そこで、これに伴うところの事業承継が、いわゆるたび重なるそういう過酷な相続税の負担によってなかなかスムーズに事が運ばない、こういうケースが出てきて、これが大きな社会問題になっておることは御存じのことだろう、このように思うわけでございます。  私の知り合いの方の一つの事例でございますが、大阪の繁華街でお酒屋さんを営んでおられるわけでございます。そこでお父さんが八十歳で長男が五十五歳、こういうことで、この長男が専従者で長男自身が一生懸命に戦後ずっと商売をなさってきた。こういうことで、所得税上の事業の所得については名義人であるお父さんになっておるわけですが、しかし実際働いているのは長男である、こういうことでございます。長男は幾ら働いても結局所得は給与だけ、こういう形式になっておるわけでございます。次男は大学を出てサラリーマン、そして長女も大学を出てお嫁に行く、こういうようなことでございますが、お父さんが先般お亡くなりになられたわけでございます。そこで、お葬式が終わりますと遺産相続、どこでもいろいろもめごとの一つにもなるわけでございますが、大阪のミナミで酒屋をやっている、土地だけでもかれこれ二億あるいは建物だけでも五千万はあるだろう。こういうことで、やはり次男とかあるいは嫁に行った長女が、いわゆる応援団に送られて四千万でも五千万でも相続が得られるのじゃなかろうか、こういうようなことでございますが、建物も土地も売るというわけにもまいらず、しかし、当然の遺産相続という権利もあるわけでございまして、結局は、土地も建物も売って商売をやめて、遺族の人間が兄弟が仲よくという形で、結局お酒屋さんを破産をしなければならない、倒産をさせなければ税金が渡せない、こういうことになっておるわけでございまして、こういう悲惨な状況というのは、このケースだけじゃなしに全国至るところであるのじゃないか、このように私は考えておるわけでございます。  こういうケースについて、大蔵大臣は一体どのように受けとめておられるのか、これは大きな社会問題ではないか、私はこのように思うわけでございまして、まず、この点について明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  48. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる中小企業者の相続税における承継税制という御議論でございますが、相続税というものは、理論的根拠についてはいろいろな議論がございます。相続による財産の偶発的取得に担税力を見出して、負担を求めて富の再分配を図る、昔から言えば、子孫のために美田を買わずとかあるいは子孫のために美田を買う思想の方が正しいとか、そういう淵源にまでさかのぼる議論でございますけれども、今日中小企業者の方がお感じになっておる実感としては、それを特に私は農業の承継者との比較においてなおそういう認識が、私の方は農村地帯でございますだけに、よけいそういう認識が強いのじゃないかという感じはかねて私も持っております。  それは、農業の場合は農業基本法等から申しまして基本的な相違はございますけれども、私は、素朴な感じとしてそういう問題が実在しておるという認識の上に政治家として立つのは当然だと思う。そこに調和を求めつつ考えられたのが、今度のいわゆる承継税制というものではないか。受けとめる側から見れば、これがパーフェクトなものであると受けとめておるとは私も思いません。しかし、そういうわが国の伝統的な中小企業というものの立場からしての承継税制というものに手がついたということは、いまはそういう具体的なケースを前提に置いて御議論なさいましたが、そういう御議論がある種の促進力となって承継税制というものに手がついたというふうに私は認識をしております。  この具体的な中身につきましては、主税局長からお求めに応じてお答えを申し上げた方がより正確であろうかと思います。
  49. 上田卓三

    上田(卓)委員 時間の関係もありますから、後から局長からもお答えいただいたらありがたい、このように思います。  いま大臣のお答えは、そういうケースもあるので、いわゆる中小企業の承継税制が緒についた、こういうお話でございますが、私は、今回の法改正、承継税制の導入によって、決して私が先ほど申し上げたような事例は救われない、本当に微々たる成果しか上がらないのではないか、このように考えておるわけでございます。中小零細企業の三分の一あるいは四分の一ぐらいが、いわゆる子供の事業継承といいますか、継続といいますか、親の仕事を子供が受け継ぐというのが、大体その割合ではないか、このように思っておるわけでございまして、五十六年十二月の中小企業庁の調査によりますと、同族中小法人が自社株式を承継する際に、後継者に生ずると予想される事態として、まず第一に「相続税の納付のため個人資産の売却」、こういうのが二三%あるようでございます。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 第二番目には、「相続税の納付のため多額の借入」をしなければならない、こういう方が九・六%、三番目に、「相続が困難であり株式が分散」ということが一・八%、このように三〇%以上の方々のそういう同族中小法人事業の継続に当たって大きな障害が起こり、スムーズにいっていない、こういう現状があるわけでございまして、そういう意味で中小零細企業、個人企業者の円満な、スムーズな事業の継続を保障することは、政治のあるいは政治家の責任である、こう言ってもいいのではないか、このように思っておるわけでございます。  そういうことが一体どこにあるのか、そして先ほど冒頭に言いましたように、承継税制が導入されることによって、どれだけこの困難が解消されるのか、そのことをひとつ具体的に説明をしていただきたい、このように思います。
  50. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいま委員が御指摘になりました問題、いろいろ議論があるわけでございますが、後ほど国税庁の方から、五十六年分の相続税の課税の実態につきまして御説明を申し上げることと存じますけれども、課税の実態から見る限りは、いろいろ見方はあると存じますけれども、現行の相続税制のもとで、相続税の負担の問題から事業承継に非常に障害が出ているとかという事態は必ずしも言えないのではないかというふうに、私どもは基本的には考えているわけでございますが、ただ同族法人の特に小会社の株式の評価、これは現行では純資産価額方式でやっておるわけでございますけれども、特に都市部等におきまして土地が非常に値上がりしているところがございますので、純資産価額方式になりますと、企業によりましては非常な格差が出てくるという問題もございます。  同時に、土地につきましては、法人だけではございませんで、個人事業者の場合も同じような問題があるわけでございますので、まず個人事業者につきましては、ただいま五十八年度租税特別措置法でお願いしておりますように、従来国税庁が取り扱い上やってまいりました一定の小規模の宅地の評価につきまして、事業を営んでおられる方につきましては、事業の土地部分につきましては時価の四割、宅地部分については二割、一般のサラリーマン等につきましては三割ということで、いわば課税価額の減額の特例を認めるという内容でお願いしているわけでございます。  同時に、法人の場合の小会社の株式の評価の問題につきましては、国税庁の取り扱いにおきまして、収益性といいますか、ゴーイングコンサーンと申しますか、そういう継続企業を前提にした場合の評価の観点から評価額に反映されるようにということで、類似業種の株式、時価相場の立っております株式の評価を純資産価額方式と併用するというふうなことを内容といたしまして、取り扱い上改めることにいたしておるわけでございまして、その意味では、現行制度に比べまして、評価あるいは課税価額の計算上負担の軽減が図られることになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  51. 上田卓三

    上田(卓)委員 現在の相続税のいわゆる課税理念と申しますか、そこに大きな問題があるのじゃなかろうか、私は、このように思っておるわけでございます。いわゆる自然人の生存中に形成された私的財産を死亡時に清算して、そして社会に還元し、富の再配分、社会的公正を実現しようとする、こういうことであるように思うのです。  私は、自然人の場合はこういう理念が導入されて当然だろうと思うわけでございますが、しかし、この概念では事業の継続というものに対しては全く配慮されていない、こういうことになるのではないかと思うわけであります。継続性を持った個人企業及び中小零細の法人に対する理念としてはやはり著しく不合理ではないか、合理性を欠いておる、このように考えざるを得ない。特に、事業主の高齢化あるいは世代交代ということで、後継者への円満な事業継承をスムーズに行おうということになるならば、やはり現行の相続税の課税理念というものを根本的に考え直す必要があるのではないか、見直すべきではないかと思うのですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  52. 梅澤節男

    梅澤政府委員 相続税の課税の根拠といいますか、課税理念と申しますか、この点につきましては、ただいま委員もお触れになりましたけれども、基本的には、先ほどの大蔵大臣答弁にもございましたように、相続という偶発的な財産の収得でございますので、富の再配分という観点に課税根拠を求めるということでございます。  ただ、相続税の法制といたしましてはいろいろなタイプがあるわけでございますけれども、わが国の場合は、遺産課税ではなくて遺産取得課税という方式をとっております。ただしその場合も、税額を計算する場合には、法定相続人の数によって、それから法定相続分を前提にして相続税全体の総額を出す、あとは具体的にどういう相続が行われるかによって、それぞれ各人の税額が案分される。その考え方の基礎には、たとえば現金等のように非常に分割のやりやすい財産もございますし、事業用資産のように非常に分割がむずかしいものもある。それは、当事者の間でよくお話し合いになってお決めになればいいわけでございまして、全体としての相続税負担のバランスをとるという観点から、現行制度にもそういう工夫があるわけでございます。  それから、先ほど来委員が御指摘になっておりますように、相続税の負担があるがゆえに事業承継に支障が生じておるという点につきましては、むしろ納付の問題に帰するわけでございまして、たとえば、相続税が納められないために事業用資産を処分して仕事が続けられなくなるというふうな事態になろうかと思うわけでございますが、実態は、現在の制度上でも、相続税につきましてはかなり広範な延納の制度が認められております。それから、先ほど私ちょっと触れましたように、五十六年の実際の相続税の課税の実態を見ましても、相続税の納付のために事業が続けられなくなったという事態はほとんど出ていないということに、私どもは注目しなければならないのではないかと考えておるわけでございます。
  53. 上田卓三

    上田(卓)委員 先ほど局長もお述べになったように、遺産相続という場合に、多くの場合は、大都市周辺では土地の価格が急騰しているということから大部分が土地価格ということにもなるのではないか、このように思うわけでありますが、いずれにいたしましても、現在の国の相続税に対する課税基準というのでしょうか物の考え方というものは、その建物あるいは土地を時価で評価して、それで売れば幾らの額になるかという純資産価額方式といいますか、こういう方式をとっておられるわけでございます。しかし、幾ら土地がたくさんあっても、事業をしてそこから利益が上がらない会社もたくさんあるわけでございまして、たとえば小さな土地しか持たない、あるいは土地は借りている、建物だけが自分の所有であるという場合もある。しかし、その方が利益をたくさん上げるという場合もあるわけですから、そういう継承する財産の事業の中身を評価するとき、土地建物を売れば時価で何ぼだ、だから、それに対してどれだけ税金をかけるのだというよりも、土地も含めてその事業がどれだけ年収を上げているか、収益を上げているか、そのことによって逆算してその企業の資産を評価することが正しいのではないか、私このように考えておるわけでございます。  そういう点で、現在の国の資産評価は間違っているのじゃないか、考え直すべきだ、このように考えておりますが、それについてどのようにお考えでしょうか。     〔中西(啓)委員長代理退席、委員長着席〕
  54. 角晨一郎

    ○角政府委員 相続税の評価の上で収益性を加味してはどうかという御指摘でございます。  先生すでに御承知のことでございますけれども、今回、上場されておりません同族会社の株式の評価につきまして、収益性の観点から若干改正を行おうとしておるわけでございますが、その場合の収益性を導入するポイントは、いままで純資産方式と申しますか純資産価額で評価をしておりました同族会社の中でも、小規模なものにつきまして類似業種と比準する形で収益性を加味するということをやっておるわけでございます。この場合、両方式をどのくらいのウエートで見るかということにつきましては、同じウエート、それぞれ両方式五〇%ずつ導入する、こういうかっこうで収益性を反映することになるわけでございます。  しかしながら、これが個人企業の場合にどうかということになりますと、個人の財産は、事業用であれ居住用であれ、あくまで個々の土地建物など、財産の集合でございます。会社財産のように、株価を通じてその会社の価値というものが一体的に表現されるような状況にないわけでございますので、株式の場合の類似業種比準方式というようなかっこうで収益性を個人資産にまで及ぼしてくるというのは、やはり現在の相続税法の考え方にはなじまないのではないか、こう考えておるわけでございます。ただ、その辺の配慮を踏まえまして、先ほど主税局長が申し上げましたような措置法の御提案になっている、こういうふうに私どもは理解しておるわけでございます。
  55. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回の法の改正がそういう同族小会社の株式評価に収益性を加味する、こういうことになって、いわゆる抱き合わせといいますか、そういう法になっておるということはよくわかっているわけでございますが、しかし、それはいままでの二〇%が四〇%に拡大されたということにすぎないのではないか、このように考えておるわけでございます。特に大企業は非常に優遇されて、小さな企業になればなるほど非常に不利益をこうむるという差別的な税制に結果的になっておる、こういうように言わざるを得ない、このように思うわけであります。特に同族会社中の大会社と言われるものは、上場企業の株価とか収益とか資産と比較する方式をとられておるわけでございまして、もちろん、こういう上場の大企業と比較するということ自身大きな無理があるのじゃなかろうかというように私は思いますが、いずれにしても、そういうような措置がとられておるわけでございます。  しかし、同族の小規模会社については、そういう二〇%から四〇%というような形で拡大されたとはいっても、冒頭に申し上げましたある酒屋さんの例を決して救うものではなしに、少し緩和されたにすぎないということにならざるを得ない、このように思っておるわけであります。相続される資産の中で七〇%以上は土地価格である、こう言われておるわけでありまして、その土地自身が売れない、その土地がなければその事業が成り立たないという現状を考えた場合、やはりあくまでも収益というものに主体を置いたものでなければいけない、このように思いますので、再度その点について、大蔵大臣から大蔵省の基本的な考え方というものについてひとつ述べていただきたい、このように思います。
  56. 梅澤節男

    梅澤政府委員 先ほど来委員のおっしゃっていること、いろいろな方面でそういう議論もあるわけでございます。そういう点も踏まえまして、五十八年度の税制改正なり国税庁の取り扱いを通じまして負担の軽減を図るというふうな処置を講ずることにいたしておるわけでございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますが、五十六年の相続税課税につきまして、国税庁で実態調査したものがあるわけでございますが、一つの判断資料になるものでございます。全国の全職業の相続課税件数で、一時に相続税が払えないということで延納を利用されている割合が二四%でございます。ところが、その中で個人事業者の延納の割合は一二・八%ということでございまして、この数字から、すぐにいわゆる中小企業の方々の税負担がそんなに重くないんだということを申し上げるつもりはございませんけれども、実態はそういうことでございます。  私どもは、そういうことも踏まえながら、しかも事業承継がなるべく円滑に行われるようにという観点も踏まえまして、五十八年度の税制改正なり国税庁の取り扱いの改定ということを考えておりますので、何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  57. 上田卓三

    上田(卓)委員 延納の状況から見て云々ということはいただけない、私はこのように思います。いずれにしても、事業承継に大きな支障を来している。そして、遺産相続という段階で先祖伝来の長年の事業をやめなければ税金も渡すことができない、こういう状況が随所に起こっておることは事実なんでありますから、私が言っておりますように、それを収益に応じた形で評価するということは一番大事なことではないか。  そういう意味で、今回の法改正も一部そのことを取り入れているということでありますが、それでは十分ではない。やはり根本的に見直していく必要があるのではないか、こういう考え方であるので、今回はこうだけれども、この部分をもっとふやしていって、それを中心にするんだという考え方であるのかどうか、大臣ひとつ明確に答えていただきたい、このように思います。
  58. 梅澤節男

    梅澤政府委員 大臣がお答えになります前に、今回、同族法人の株式の評価をどうしたらいいのかというのは、実は税制調査会の中に小委員会を設けていただきまして御議論願ったわけでございます。その際に、収益性という観点を取り入れるということは、先ほど来委員が御指摘のとおり、私どもも、そういう方向でどういう方法がいいのかということを議論していただいたわけでございます。  一つの考え方といたしまして、たとえば配当還元というような考え方もあるわけでございますけれども中小企業庁で組織されました例の研究会なんかの御意見も、むしろそういうふうな御意向が非常に強かったわけでございます。小委員会の中での議論を通じまして、同族法人の場合に配当といいあるいは利益といっても、利益調整とか配当調整が相続税の課税の評価ということを念頭に置いていろいろ操作できるという問題も、率直に言いましてあるわけでございます。したがいまして、客観的に何か仕組みを考えるとすれば、同じ業種の時価相場の立っている株式の時価を持ってまいりまして、それと純資産価額方式とを併用するという方法が当面の措置として一番妥当ではないかという結論が出たわけでございます。  いずれにいたしましても、これは先ほど大臣も申されたところでございますけれども、この評価をめぐる問題につきましては、今後とも実態に即した勉強を私どももしていかなければならないと存じますし、さらに適切な方法を今後とも引き続き検討していかなければならない問題であると考えております。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 この議論を詰めていきますと、まさに相続による財産の偶発的取得に担税力を見出して負担を求め、富の再配分を図るということから申しますと、個々の例にそれを当てはめたときに、いろいろな問題が生じてまいります。  したがって、今回の改正につきましても、いまそれぞれ事務当局と質疑応答の過程において論ぜられたような問題が議せられた後、税制調査会等の御答申もいただいて今日改正を御審議いただく、こういう経過に至ったわけであります。しかし、いま上田さんの御議論になっておった点は、やはり主税局長からもお答えいたしましたように、税制を扱うものとして絶えず、そういう意見がしかも国会の場においてなされた、そういう事実は正確に税制調査会の方へも報告して、御検討の対象にしていただくべきものであるというふうに私は考えております。
  60. 上田卓三

    上田(卓)委員 税制調査会に報告をして云々と言って責任を転嫁するのじゃなしに、先ほどから私が申し上げておりますように、株式会社の場合は、いわゆる取引相場のない株式あるいは個人事業者の事業用の財産というものは、農業を継続しようとした場合の農地と同じ、そういう意味では生存権的財産と言えるのではないか、このように私は思うのですね。農地の場合は生前贈与制度がありますね。御存じだと思うのです。それでは、こういうような物の考え方でこの場合についてもそういうものを取り入れる、そういう農地並みの生前の贈与制度というものも加味してこの問題を解決するということは非常に正しいのじゃなかろうかと私は思うのですが、この点について、大臣どのようにお考えでしょうか。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 この問題が、率直なところ、いつでも最終的に議論されるポイントになるわけでございます。農地は所有と経営の不可分といういわゆる農地法上の制約というものが基本的に存在しておる。またそのことは、農業の自立経営を目指す者が均等相続制にとらわれることなく農地を引き継ぐことができるようにという、まさに農業基本法の趣旨に対応しておる。だから私は、この農業基本法から、そして農地法上の制約から見て、それはいわゆる富の再配分という問題から見れば異例の措置としてこのことが存在しておるというふうに考えるわけでございます。  だから、中小企業とこの農業というものを並列した形の中においてそれを論ずるということは、一方、農業基本法、農地法のたてまえからの異例の措置に見合う措置というものは非常に考えにくい問題ではないかな、こういうふうに考えております。そうして、今度それを進めていきますと、終局的には、いわゆる給与所得者だけが通常の納税をする、こういうことになってくるところに、税制としては今度はゆがんだ措置ではないかという議論もまた出てくる。したがって、そういう意見に対応して種々議論し集約した結果が今日御審議いただくものに相なったというふうに、現状御理解をいただかざるを得ないのかなという感じがしております。
  62. 上田卓三

    上田(卓)委員 大臣のいまの理屈は成り立たないと私は思うのです。  私も本会議でも質問申し上げたように、いまの税制が、クロヨンとかトーゴーサンピンと言われるように、給与所得者、サラリーマンの方には非常に過酷な税制になっておるということはもう明らかでありますし、また、六年間課税最低限度が抑えられたために、物価上昇に見合う名目賃金の上昇によって何と約四兆円の自然増収という実質増税が図られておる、これはけしからぬ、そういう意味で大幅な減税をすべきだ、サラリーマン、給与所得者に対する減税をすべきだ、そのためには課税最低限を大幅に引き上げるべきだ、こういう主張で本委員会でも私は大臣質問申し上げたと思うのです。だから、そういう点で、その問題にひっかけて、勤労者から見ると中小零細企業の税はまだ軽い、だからそこらとの兼ね合いという形で議論することは間違っておるというように私は思うのです。  私がいま申し上げておるのは、農業と中小零細企業とはどこに差があるのか、事業の継承性という意味では全く同じではないか、農業において当てはめられておる生前の贈与制度というものがありとするならば、中小零細企業においてもそのことが当てはめられて当然ではないか、こういうようにわれわれは考えるわけです。そこに差があるとするならば、農協を中心とした農業団体が大きな圧力団体であって、中小零細企業の方々がやはりまだ政治的にそこまで大きな団体になっていないということになるのかどうか、そういうことまで言及せざるを得ない状況にあるのじゃないか。  そういう意味で、私は、中小零細企業の方々が納得のできる説明をしていただかないと、税の不公平というような形で言うならば、まさしく中小零細企業の、とりわけ遺産相続の問題については、日本の経済の中心である九〇%以上を占める中小零細企業が事業の継承において倒産せざるを得ないという現実を見たときに、やはりここで死活の問題としてこの問題を考え直すべきだ、このように思っておるわけですから、その点、もう一度大臣から納得のできるように説明してもらいたい、このように思います。
  63. 竹下登

    竹下国務大臣 私が給与所得者という言葉を使いましたのは、いわば事業用財産等についての納税猶予制度ができたとすれば、その制度についての限りにおいて給与所得者だけがそれを受けることができないという意味において申し上げたのでございまして、一般の税負担全体として給与所得者との比較を申し上げたという意味ではございません。  観念的には私どもよくわかる話でございますが、よく言われる一等地にりっぱな先祖伝来の事業が継承せられておる場合の例でございます。それについては、それぞれある意味においてはそれなりに評価して、法人として存在させておく措置というようなものについての議論も行われてきたわけでございますけれども、やはり農業というものは、まさにそれこそ農地と一体的なものの中にあって、それが細分化されるということは、農業の持つ基本に関する、法律で言えば農業基本法ということになるでございましょう、そういう意味において、それと画一して見ることは困難であるという意味で申し上げたわけでございます。  だから、概念的にそれをとらえるという感じそのものは、私にもよくわかる。私も中小企業の家庭に育ち、いまこそその事業を承継しておりませんけれども、弟が承継しておりますが、そういう意味において、農地と同じにそれを位置づけするということには、やはり問題があると言わざるを得ないのではないかなというふうに考えております。
  64. 上田卓三

    上田(卓)委員 先ほどから、るる同じことばかりを追及さしていただいておるわけですが、まず私たちが考えなければならぬのは、事業の承継という場合、自然人が生まれて大きくなって働いて、資産をつくって、そして亡くなるときには社会に還元する、こういうことになるわけですが、事業の場合はそうはいかない。やはり継承という意味があるわけですから、継承されなければならないわけですから、そういう意味で農業も同じだ、私はこう言わざるを得ないわけでありまして、大企業の場合は、そういう意味では継承がスムーズに行われるにもかかわらず、小企業、同族会社の場合はそうはいかない、そこに障害があるからそれを取り除け、こういうことを申し上げておるわけです。  一番いいのは、先ほど申し上げましたように、資産の評価をする場合に収益性に中心を置いて、それから継承する事業財産がどれだけになるのだということを明らかにすべきだ、ここに私の質問のねらいがあるわけでございますから、ひとつ大臣、この分については、それを売却すれば時価で何ぼなんだ、だからこれに対してどれだけの税金を納めるというのじゃなしに、その資産によって生み出される事業収益といいますか、そういうものを中心にしたものに置くこと、そしてさらに、農地で生前の贈与制度があるように、そういうことも参考にして、中小零細企業の継承を考えるべきだ、そういう基本的な問題で前向きに取り組んでいくんだ、税調に先生の発言を言うて税調で検討してもらうというようなことだけじゃなしに、私がいま問題提起している点について、大蔵省としてひとつ前向きに善処してもらう、こういうことでお答えをいただきたい、このように思います。
  65. 竹下登

    竹下国務大臣 だから、そういう上田委員のような御指摘が、いわばこの収益性が五〇%加味されたという結果になったわけですね、率直に言って。  で、今日御審議をこれからいただこうとするときに、それをさらに拡大をいたしますと言えるわけでもございませんが、御指摘の方向というものは、私は理解しないわけじゃございませんので、そうなれば、大蔵省はもとよりですが、やはり貴重な意見は税制調査会の方へお伝えするというのが、それに対応するにはむしろ一番権威のあるお答えになるんじゃないかな、だから、お気持ちをくみ取っておるつもりは私に十分ございますことを御理解いただきたいと思います。
  66. 上田卓三

    上田(卓)委員 こればかりに時間を費やすわけにまいりませんので、次の質問に移りたい、このように思います。  私も、先日の本会議で申し上げたわけでございますが、わが国のいろいろな政治課題があるわけですが、不況の克服も非常に大きな政治課題一つ、こう言っても間違いではなかろう、こういうように思っておるわけでございます。そのためにも、やはり内需の拡大を柱にして世界経済の活性化に寄与する道に転換すべきではないか、このように考えておるわけでございまして、今回のように不況期に公定歩合が固定されたまま、実質増税あるいは人勧の凍結あるいは公共投資の減少といった引き締め政策がとられたのは初めてではないか、このように思っておるわけでございます。不況期に引き続き引き締め政策をするということの中から財政の不均衡が是正できるという考え方は大きな誤りではないか、私はこのように考えておるわけでございまして、不況が深刻化し、そして税収が減って赤字が拡大する、こういうような間違った循環になっておるわけでございます。八二年度の予算では、当初公共投資の増加率をゼロとし、国債発行額を約二兆円減額したわけでありますが、結果はどうなったか、こういうことでございまして、結果的には税収が減り、そして補正予算で三兆九千億もの国債を追加発行した、こういう結果になっておるわけでございます。  このように税収の落ち込んだ原因の一つは、やはり中小企業不況、こう言ってもいいのではなかろうか、このように思うわけであります。なぜならば、八一年九月ごろまで税収実績は前年同期に対して二〇%以上伸びていたわけであります。ところが、八一年秋から税収が急激に悪化しまして、そして円高あるいは輸出の減少、そして内需の不振等、原因はいろいろあるわけでございますが、中小企業不況が広がり出したというのがちょうどその時期であっただけに、中小企業設備投資あるいは製造業の設備投資は八一年後半に大幅にダウンをしている。こういうことで、まさしくこの中小企業不況が歳入欠陥をつくった、こう言ってもいいのではないか、私は、このように考えておるわけでございます。  冒頭にも申し上げましたように、全国の就業者の七五%が中小零細企業に働いておるわけでございまして、民間設備投資の六割は中小零細業者である、こういうことを考えた場合に、特にアメリカの景気動向もありましょう、また原油価格の低下、こういうこともにらみ合わせて、わが国の景気回復ということになりますと、やはり内需の拡大を柱にしたところの景気対策がまず大事だ、このように思うわけでありますが、その点についての大蔵大臣の考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  67. 竹下登

    竹下国務大臣 認識は一緒でございます。確かに、よく言われますように、景気に波があるとすれば、まず大企業が波をかぶって、それから出かけたところに中小企業がそれについてくる。そういう感じを私も実感として持っております。非常に厳しい環境にあるわけであります。  したがって、昨年十月の総合経済対策におきましても、中小企業対策を講じますと同時に、五十八年度予算において中小企業設備投資促進のための税制上の措置という施策を推進することにしたわけです。が、基本論として申し上げますならば、これは内需の拡大をしないと、世界全体が、若干金利の乖離は縮まってきましたとか、あるいは物価の上昇率も数カ月前から比べれば接近してまいりましたものの、大きく外需に期待する環境にはございませんので、内需振興というものがやはり大きな中小企業の不況感の克服とでも申しましょうか、それのポイントになることであるという認識は一致しております。
  68. 上田卓三

    上田(卓)委員 端的な言葉で言えば、政府が唱える行革が不況をさらに深刻化させたと言ってもいいのじゃないかというようにわれわれは思わざるを得ないわけであります。いずれにいたしましても、今回のこの投資減税でどれだけの減税効果といいますか、あるいは設備投資促進が進められるのかということを私は非常に疑問視しておるわけでございますが、その点についてお答えいただきたい、このように思います。
  69. 桑原茂樹

    ○桑原説明員 お答えいたします。  今回の中小企業設備投資促進のための税制によりまして、どれだけの中小企業設備投資がふえるかという点については、非常にむずかしいわけでございまして、われわれとしては、この制度を利用してなるべく多くの中小企業の方々が設備投資をこの際行おうという気持ちになっていただきたいと思っております。そうした観点から、あらゆる機会をとらえまして、この新しい措置について宣伝をさせていただいておるわけでございます。  ただ、数字についていろいろな機会に聞かれておりますものですから、非常な仮定を置きましていろいろ試算をいたしてはおりまして、そういう試算としては、われわれとしては、五十八年度に約千億円余りの新しい設備投資中小企業によってこの制度を利用してなされることになるのではないかというふうに、これは推定でございますけれども、いたしておるわけでございます。
  70. 上田卓三

    上田(卓)委員 たったの一千億ですか。本当にこんなので投資減税をしたということに果たしてなるのかどうか、政府のやり方かいかにみみっちいかということで、本当に内需の拡大、景気の拡大をどのように考えているのか、真剣に考えているのかと言わざるを得ない、私はこのように思います。やはりわれわれが言っておりますように、景気の回復ということになりますと、いろいろな要因があるのですけれども、第一には人勧の凍結を直ちに解除するとか、あるいは春闘相場にもまたなければならぬとはいうものの、そういう適当な賃金の引き上げ、あるいは大型減税、最低、所得税減税は一兆円、地方税は四千億、こういうことをわれわれは政府に要求をいたしておるわけでございまして、いま議題になっております投資減税についてもやはり最低五千億ぐらいの額になるようなことにならぬと、一千億程度では焼け石に水と言ってもいいのではないか、私はこういうように思うのですが、大臣どうでしょうか。
  71. 竹下登

    竹下国務大臣 やはり私も、中小企業設備投資、いわゆる投資減税、これは投資減税という言葉から受ける心理的影響とでも申しましょうか、それは非常に大きな期待感を持つ言葉である、ところが、具体的にこれを税制の中で消化するということになりますと、一体、設備投資が行われても、その税制がなければ行われなかったものなのか、あるいは自然にでも計画的に行われていったものなのか、なかなかそこのところの判別もつかないということで、現在の事情の中でぎりぎりやった措置がこのたびの措置であるというふうな御理解をいただきたいものだ。後藤新平さんじゃございませんが、大きなことはいいことだということは私にもわかる理論でございますが、諸般の情勢、そしてぎりぎりの措置として、それでも内需拡大の一つのてことしての役割りは果たすのではなかろうか、こういう考え方であります。
  72. 上田卓三

    上田(卓)委員 わが党が十二月三日に研究機関であります平和経済計画会議の研究の成果、こういうことで、投資減税はやはり最低五千億は必要ではないかということを試算いたしておるわけでございますが、政府においても、たとえば通産省の試算でも大体五千億ぐらいなものが必要ではないかというような試算もあったやに聞いておるわけでありますが、その点についてはどのようにお考えですか。
  73. 梅澤節男

    梅澤政府委員 この中小企業の投資減税の問題は、昨年の秋、総合経済対策と申しますか、景気対策の策定過程でいろいろ議論が出てまいりまして、当時財政当局としてもいろいろ御意見を申し上げたわけでございますが、投資減税として最初出てまいりました構想は、税額控除の方法で投資を促進するという構想でございます。この点につきましては、先ほど大臣の御答弁にもありましたように、減税というインセンティブによって本当に誘発された投資であるかどうかということは、税制上は非常に仕組みがむずかしいということになりますと、トータルの投資額に対して税額控除を行うということになりますれば、膨大な財源が要るということが一つ問題でございます。  それからもう一つは、過去、投資につきまして限定されたものについて税額控除あるいは特別償却等の制度を三、四年来講じてまいっておるわけでございますが、その実績を見ますと、中小企業の方はむしろ特別償却を選択しているという事例が非常に多うこざいます。もちろん、財源的な観点からいいますれば、税額控除よりも特別償却の手法をとりました方が、財源的に小さいもので大きな効果がねらえるという観点もございます。  そういったことで、五十八年度の税制改正の策定過程におきまして、私どもは、税額控除は少なくとも五十八年度の時点の財政状況ではとうてい採択し得ないということで、通産省当局とぎりぎり調整をいたしまして、今日御提案申し上げているような、最小限の財源でもって何らかの効果を期待できるような措置ということで、中小企業機械に限定いたしまして特別の償却制度を二年間の時限措置として講じるという結論に到達したわけでございます。
  74. 上田卓三

    上田(卓)委員 今回の投資減税が、選挙向けで総理官邸筋から大蔵省何か考えてみたらどうだというようなこともあったやにも聞いておるわけで、それで出てきたものがこんな微々たるもので、非常にわれわれとしても残念であるわけでありますが、いずれにしましても、今回の投資減税ではその対象がいわゆる機械と装置に限っておるということのようでございますが、これでは余りにも間口が狭過ぎると言わざるを得ないと思うのです。今回の消費不況といいますか、それはやはり商業とか建設といった分野に大きな打撃を与えておるだけに、この分野に手を差し伸べないのは大きな間違いではないか、私は、こういうふうに考えざるを得ないわけであります。聞くところによれば、通産者の当初の案では、建物及び増改築も対象設備に入れておったやに聞いておったのですが、一体これがどうなったのか、大蔵当局の考え方をお聞かせ願いたいわけであります。  同時に、中小零細企業の設備投資のかなりの部分がリースによっておる場合が多いわけであります。そういう意味で、今回の対象にリースのものも含むということがなされて当然だ、このように考えておるわけでございまして、明確にひとつその点についてお答えいただいて私の質問を終わりたい、このように思います。
  75. 梅澤節男

    梅澤政府委員 ただいまの御指摘のように、二つ問題がございました。  一つは、先ほど申しましたように、今回の措置機械に限定しておるわけでございます。これは、何と申しましても限られた財源の中で一番効果のあるやり方はどうかという観点からしぼってまいりますと、現在ございます通常の中小企業機械の特別償却に上乗せをするという手段が一番効果的であろうという観点から、むしろ機械の投資に誘発されまして各種の投資が行われるであろうというねらいを持っておるものでございます。  もう一つは、リースを対象から除外したという問題でございますが、実はわが国の税制におきまして、こういう投資のいろいろな政策税制を講じます場合にリースを一体どう考えるかというのは、ここ二、三年来いろいろ問題になってきております。アメリカの投資減税なんかを見ますと、かなりリースを大胆に取り入れておるやに聞いておるわけでございます。わが国の場合、このリースを今後どういうふうに考えるかというのは、一つの検討課題であるとは思いますけれども、今回の特別措置の中でリースを除外いたしましたのは、もちろん財源の問題もあるわけでございますが、いま一つは、結局、リースに税制上の特別の措置を講じまして、それがリース料と申しますか、現実に中小企業がそれを活用する場合に、そこに減税部分と申しますか、特別措置部分が反映していかないと意味がないわけでございます。その点をどう考えるのかということと、中小企業向けのリースというものに当初から限定いたしまして特別償却というものが税の執行上区分けができるのかどうかという技術的な問題もございます。そういったこともありまして、今回の特別措置からはリースは除外いたしたわけでございます。
  76. 上田卓三

    上田(卓)委員 非常に不満ですが、時間が来ましたので終わります。
  77. 森美秀

  78. 柴田弘

    柴田委員 私は、最初にたばこ値上げ法案、これに関連をして専売公社にいろいろとお聞きしていきたいと思います。  今回の措置は、いわゆる国がつくった赤字を補てんするために、値上げをしなくてもいいのに消費者に、たばこをのむ皆さん方でありますが、それを転嫁していく方向ではないかというふうに思います。現実に、現在値上げをしなければならない経営状態であるのかどうか。公社、どうですか。
  79. 長岡實

    ○長岡説明員 現在におきまして公社の経営の内容は、値上げを必要とするような赤字が出たり、あるいは赤字になるおそれがあるという状態にはなっておりません。
  80. 柴田弘

    柴田委員 それで、今回の五十八年度予算の編成というものを見てまいりますと、特別会計の剰余金あるいは納付金、こういったところから財政赤字を補てんするために取れるものは何でも取っていこう、そして税外収入というものの大幅増額に踏み切った、この一環としての専売公社特別納付金の増額、それが消費者、一般大衆に対する転嫁、いわゆるたばこの値上げとなってきたわけであります。これは国民を無視した安易な財政対策、私はこんなふうに感ずるわけであります。これは、本来ならば大蔵大臣答弁を求めるところでありますが、公社の見解をひとつまず伺っておきたいと思います。
  81. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、公社の経営上の必要からの値上げではないということでございますが、私どもの実施しております仕事は財政専売を実施しているわけでございまして、公社経営上の必要性だけで申しますと、赤字になっておりませんから直ちにたばこの値上げという問題にはならないかもしれませんけれども、国の財政が異常な逼迫状態にあるということ、それから、私どもの取り扱っております商品がたばこという財政商品であって財政専売を実施しておるという観点から申しまして、今回のたばこの値上げはやむを得ないものと考えております。
  82. 柴田弘

    柴田委員 この問題は、あと一連の問題と関連がありますから、大蔵大臣に聞きたいと思っております。  そこで、私も、公社問題についてはしばしば質問をしてまいったわけでありますが、過剰在庫の問題について、総裁にこの際御見解を伺っていきたいと思います。  それで、昭和五十四年の十二月たばこ値上げ法案を審議いたしましたときに、私もいろいろと御質問をいたしたわけでありますが、そのときに前総裁である泉総裁は、私の指摘に対しまして、もっと早くからこの過剰在庫の問題については真剣に検討をして対応していけばよかった、五十二年から減反をするようになったのでありますから、とにかく深く反省をして今後対応していきたい、過剰在庫をできるだけ少なく持っていきたい、このように考えております、いまから三年半くらい前になりますが、こういうふうに御答弁をいただいているわけであります。  そこで、ここ数年来の過剰在庫の状態というのは、この泉さんがおっしゃったような減少傾向を果たしてたどってきたのかどうか、ひとつその辺について数字をもって御説明をいただきたい、このように思います。
  83. 長岡實

    ○長岡説明員 昭和五十四年の値上法案御審議の当時の在庫の状況は、たとえば昭和五十四年度の期首で申しまして、過剰在庫数量と思われますもの、これは適正在庫大体二年分というふうに考えておりますので、それを超えるものを過剰在庫といたしますと、十二万一千トンで過剰在庫月数十一カ月でございます。昭和五十七年度の期首におきましては十二万八千トン、十二カ月分と一カ月分ふえております。  五十四年当時に泉前総裁かお答え申し上げましたように、私どもといたしましては、この過剰在庫の問題につきまして非常に深刻に受けとめておりまして、五十六年の夏のたばこ耕作審議会の審議を経まして、五十七年産の葉たばこの耕作面積を相当大幅に、約一割ぐらい減反をいたしております。この考え方は、その年度だけでは考えませんで、数カ年の将来にわたっての需給状態を考えまして、これ以上在庫がふえないようにという、いわば需給均衡面積というものを求めて、その面積に至るまで、農民の理解も得まして減反を行ったわけでございます。  したがいまして、現在のところは、これ以上在庫がふえるという状態でないところまで持ってきたつもりでございますけれども、それでは具体的にどの程度今後この過剰在庫を減らしていけるかという点につきましては、率直に申し上げまして、いろいろとむずかしい問題があって苦慮しておる段階でございます。
  84. 柴田弘

    柴田委員 いろいろとむずかしい問題があって苦慮してみえる、御苦労なことだと思いますが、先ほどお話がありましたように、この過剰在庫の問題については、要するに、五十六年八月のたばこ耕作審議会の答申を得て、そして五十七年作において耕作面積五千へクタールの減反を図った、つまり、たばこ耕作者の農民の皆様方の犠牲の上においてなされたわけであります。それで、なおかつ過剰在庫が減っていない。この辺はまことに憂慮すべきことではないか、こんなふうに私は考えておるわけであります。  先ほど、具体策はただ苦慮しておるだけで何もない、こんなふうに私は見受けられるわけであります。一体どうするのか、本当にどうするのかという問題がありますよ。五十四年の私が質問いたしたときにも、泉総裁は、生産調整の問題もおっしゃいました。あるいは品質の向上あるいは技術の向上、そしていろいろ工夫をしていいたばこをつくっていく、それには国内の葉たばこの使い道を広げていく、そしてとにかく過剰在庫をできるだけ少なく持っていく、こういうふうに努力をしていくのだ。恐らく公社の現在の考え方も、これ以上のものはないと私は思うわけですね。あったら教えていただきたいのです。ですから、これは公社もそうですが、やはり大蔵大臣においても、国が、大蔵省も本当に真剣にこういった問題について考えていくべきではないかというふうに私は思っておるわけであります。  その前に、どうですか、何かいい方法があるわけですか。
  85. 長岡實

    ○長岡説明員 過剰在庫の解消策につきましては、何と申しましても一番基本的な大事な問題は、国内の需要を何とか維持していく、それによって国産の葉たばこが使われていくような状態を維持していく。それから、新しいたばこを開発いたしますときに、国産葉をできるだけたくさん使用した、そして、なおかつ消費者の皆さんに好まれるような銘柄の開発を心がけていくこと。この点につきましては、最近では、近々全国で販売されるようになりますキャスターというたばこがございますが、これなどは国産葉を相当たくさん使用した銘柄でございます。  それから、もう一つ前に、農民につくっていただきますたばこの品質の改良等についても、前総裁がお答え申し上げましたとおり、今後とも努力をいたしてまいる所存でございますが、しいて、最近どんなことをやったか、あるいは考えておるかという点をつけ加えさせていただきますと、先ほど塚田委員にお答えいたしましたように、来年度の予算でたばこの輸出会社をつくりたいと考えております。国際社会におけるたばこの競争はなかなか激烈でございますから、会社ができたからといって、直ちに日本のたばこの輸出が大幅に伸びるとは考えておりませんけれども、しかし、これも一つの長期目標としてその努力を続けることによって、国産葉を消費していくことにも役に立つのではないかと考えております。
  86. 柴田弘

    柴田委員 では、それによって解消を考えているとおっしゃっているのですが、本当に確信ありますか。また同じ二の舞になってはいけないということで、いま私はいろいろ質問をしているわけなんです。いろいろと努力なさっているということは、私は評価をいたしますよ。本当にそれが解決策になるかどうか、申しわけない言い方をして失礼ですが、それはそんなに私も思ってないわけなんです。これは、やはり抜本的な考えをしていかなければいけないのではないか、こんなふうに思っているわけであります。  そこで大蔵大臣、こういった事態について、大臣としてはどうお考えになっていらっしゃるのでしょうか、ひとつ率直な御見解を伺いたい。また、公社の運営についてあるいは経営について、このようにしていったらいいだろう、過剰在庫の問題を含めて、大臣の御所見をお伺いをしておきたいと思います。
  87. 竹下登

    竹下国務大臣 いま長岡さんからそれぞれお答えがあっておりましたが、日本専売公社の問題、これは御案内のように、いま臨調答申に基づきまして経営形態自体の問題が一つ議論をされておるところであります。そうして、さらにその前段として、いわゆる国家公務員共済と公社の共済組合との合併と申しましょうか、そういう問題もまた存在しております。さらに、いま一つホットな問題としては、外国たばことの問題、これがございます。そして公社そのものを考えてみますと、二十六万ですか、その小売指定店の方の問題と十万四千の葉たばこ耕作者の方々の問題、こういうような問題が、素人の私でも御質問を受ければすぐ念頭にある問題であります。  なかんずく、その葉たばこ耕作者というものとの関連性において考えた場合に、いわゆる葉たばこ在庫問題、こういう問題があるわけでございます。これは、いまもお答えがございましたが、耕作農家への影響等に配慮をしながら減反を実施してきたというふうに、私も承知いたしておるところであります。  それで今後は、いまも具体例を挙げてお話がございましたように、公社においても品質改善等の努力をお続けになるとともに、たばこ耕作審議会等の場を通じて耕作者の方々等の理解と協力を得ながら過剰在庫問題に適切に対処するよう、私どもとしても、指導監督の立場にあるとすれば十分それを続けていかなければならない。大変多くの問題を抱えておるいわば大変な時期における日本専売公社というもののあり方であろうと思いますので、まさに各方面の意見を聞きながら、これに対応をしていかなければならぬ課題であると思っております。  それからいま一つは、財政再建の展望のないままに、五十八年度予算編成のため各方面から財源を調達した中の大きなウエートを占めるこのたびの措置でございます。五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出に際して、できるだけ公債を減らしていこうという考え方からお願いをしたものでございまして、私は、言ってみれば一つには取りやすいところから目をつけて取ったのじゃないかというような御指摘については、それはそれなりに私どもも痛みとして受けとめなければならないことであるわけであります。この価格改定自体は、総裁からもお答えがございましたように、いわゆる専売物資であるということ、そして五十五年以来の物価の上昇率等々から考えてお願いしたわけでありますが、御指摘についての痛みと申しましょうか、それは私も十分感じておる、問題点として認識をしておるというふうにお答えするのが正直であると思います。
  88. 柴田弘

    柴田委員 最後に、総裁にお聞きしておきますが、昨年私、この問題も取り上げて前総裁にお聞きいたしましたときに、いわゆる公社のあり方、経営形態の問題ですね、私の記憶に間違いがなければ、あくまで専売制度、公社制度というものを残したい、こんなふうに聞いておったわけでありますが、国民のサイドから見て、消費者の立場に立って、公社のあり方としてはこれが一番最善の方法である、こういったものがあなたたちの方にあると私は思いますが、ひとつ率直に御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  89. 長岡實

    ○長岡説明員 お答え申し上げます。  公社のあるべき姿として具体的にこういう形が最善である、最も望ましいという答えを私どもまだ完全には持っておりません。しかし、どういう方向でこの問題と取り組んでいるかということをお答え申し上げることによりまして、われわれが一体どんなことを考えているかということが、ある程度おわかりいただけると思うのでございますが、いま、率直に申しまして、私どもの置かれている立場は大変むずかしい立場にございます。アメリカとの競争はますます激化してまいります。私どもの経営がおかしなことになりますと、先ほど大臣もおっしゃいました十万四千戸の葉たばこ耕作農家も二十六万店の小売店もおかしくなってしまうわけでございまして、日本のたばこ産業は二兆六、七千億の売り上げ、そして関係する人員が百万を超えるであろうと言われている相当な産業集団でございますので、その中核に位置しております私どもが、厳しい環境の中で、どうしたら生き抜いていけるかということを中心に将来のあり方を求めていきたいと考えております。  私どもの経営の合理化等も、従来相当な努力はしてきたつもりでおりますけれども、もっともっと進めなければならないと存じますし、それから、仕事の性質上何でもできるというわけにはまいりませんが、事情の許す範囲内では、もう少し多角的な経営等も考えていきたいと考えておりますが、要は、将来生き抜いていけるような企業体質に持っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  90. 柴田弘

    柴田委員 これはくどい質問になるかもしれませんが、生き抜いていく体質ということでありますが、それを具体的にいまここでお述べになれるようなことがありますか。それ以上のものはありませんか。どうですか。
  91. 長岡實

    ○長岡説明員 率直に申しまして、まだ現在、具体的にこういう経営形態というところまではいっておりません。  ただ、臨調の答申は、過渡的な姿として特殊会社に移行する、そして将来は完全民営ということが一応答申として私どもに示されております。ですから、それを念頭に置きまして、ただ、非常に急激な変化等が行われた場合に、先ほど申し上げましたような巨大な産業集団である私どものたばこ産業の各方面に摩擦あるいは悪影響等も出ないとも限りません。  そういうことも考えますと、現実的な方向としては、そういう点も十分に考慮して、はっきり申しまして、どこかの部門に非常にしわが寄ったりして、その犠牲のもとに一つの新しい方向へ向かっていくというようなことは、やはり許されないのではないか。理想の姿はいろいろございましょうけれども、現実的な解決策としては、そういった各方面に与える影響も考えながら、将来の方向を求めていかなければならないのではないかというふうに考えております。
  92. 柴田弘

    柴田委員 どうもありがとうございました。これで結構でございます。  大蔵大臣、いまあなたも痛み入るとおっしゃったわけでありますが、今回のこの措置、これは専売納付金の問題だけじゃありませんが、要するに、五十八年度予算編成のあり方というものを見てまいりますと、政府としては、一般会計の規模を前年度から実質マイナス三・一%に切り込んだ。だから行政改革を行ったのだ、あるいは国債発行額を五十七年度補正後予算より一兆円減額したことで財政再建に取り組んだ、こういうふうに宣伝をいたしております。  しかし、この予算の実態というものを見てまいりますと、後年度への負担のツケ回しと、いわゆる財政再建、行政改革、こういった問題は先送りをしているわけであります。たとえば国債発行額、これは五十七年度当初予算から二兆九千億円もふえております。また、赤字国債の発行は六兆九千八百億円、五十七年度の当初から三兆五百億円もふえております。また赤字国債は、政府財政再建の指標であった中期財政展望の五十八年度発行予定額一兆九千六百億円から比べますと三・五六倍にもなり、これは財政再建を大きく後退させております。  特に、見せかけの歳出削減と後年度へのツケ回しはひどい。その内訳は、一つは、いろいろ御議論になりました国債整理基金への定率繰り入れ停止による国債費の減額は一兆三千九百七十三億円、これは予算規模の縮少、そして将来の赤字国債の借りかえに追い込むのではないかと憂慮されるわけであります。二つ目には、老齢福祉年金の不足分を国民年金特別会計から借り入れて補てんをいたしております。これは、一般会計へまた返済をするために、実質的には赤字国債の増発である。これは三千百八十億円ですね。あるいは防衛費の新たにふえた後年度負担分、これがツケ回しになりますが、九千五十九億円。でありますから、見せかけの歳出削減とツケ回しの合計は二兆六千二百十二億円にもなるわけであります。  さらに、御都合主義の財源対策による歳入の水増しと先取り分は、財源あさりとしか言えないわけであります。その内訳の一つが、先ほど来議論をいたしておりますたばこの値上げによる増収分の納付二千二十八億円、電電公社の臨時納付金の五十九年度分の先取り千二百億円、中央競馬会積立金の一部取り崩し五百億円、補助貨幣回収準備資金の取り崩し一兆一千六十三億円、外為特別会計からの繰り入れ四千六百億円、自賠責再保険特別会計からの繰り入れが二千五百六十億円、あへん特別会計からの繰り入れが十三億円、これら歳入の水増しと先取り分の合計は二兆一千九百六十四億円となります。また、このうち自賠責特会とあへん特会は返済が必要なために、二千五百七十三億円は実質赤字国債の発行と同じことになる。これは借金である。このように考えるわけであります。  以上のように、五十八年度予算というものを見てまいりますと、財政体質というものを政府が本当に努力をして変えたというものではありません。とうてい行政改革や財政再建というものを推進したものとは言えないわけでありまして、ツケ回しと問題の先送りによって、泥縄式に予算をスピード編成したものにすぎない。まさに羅針盤のない、あるいはかじのない船が航海に出たのと同じようなことである、こういうふうに考えるわけであります。本当に財政再建の根本を踏まえ、あるいは行政改革の展望というものを踏まえて予算編成をなされたものではないというふうに私は考えるわけでありますが、痛み入るという言葉もあったわけでありますが、どうなんでしょうか。
  93. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの予算がいわゆる対前年度比のマイナス、そして補正後における一兆円減額、そういう点から説き起こし、定率繰り入れをやめた、また年金会計からの調達、電電、たばこ、競馬会、補助貨幣回収準備金等々、御意見を交えての御指摘でありました。  確かに、私は、二年ぶりに帰ってまいりまして、さま変わりだな、こう感じておりますのは、要するに、五十四年度の経済運営を決算面から見た場合に、結局、大量の公債発行というものが日本経済に対する財政一つの対応力としての効果を示したおおむね終期ということが結果的には言えるんじゃないか。したがって、そのときに一兆八千億円でありましたか出すべき国債を出さなくて済んだ。決算面でいけば減額とでも申されるでありましょう。そして、そのことがむしろ五十五年度の経済運営、その中に占める財政というものからして、いろいろ御批判を賜りながら四百八十四億といういわば剰余金が出た。そこのところまでを、私は、言ってみれば、ある種の公債政策というものが示した財政の対応力の集積というもののあらわれであったかな、こういうふうに思います。  そうして、今度帰ってまいりますと、確かにその後税収不足、歳入欠陥、これはやはり政府が当初意図しておった財政再建というものが根本的に考え直さなければならない状態に立ち至ったのは、これは世界経済のある意味における同時不況、不透明感、こういうものであったと思うのであります。  したがって、言うなれば、五十五年度予算編成の際に初めに一兆円の減額ありきと言ってみたものの、決算面でいけば、事実前年度から見れば、まだ八千億よけいの発行をしておるわけです。したがって、財政再建元年という評価をするわけにはいかぬと、みずから自己採点をしてみました。それが結局、外的要因の中で計画どおり、目安どおりに進まなかった。そうなれば、この際一つの出直しのスタート台と認識をしなければならないと思って、種々知恵をしぼったのが、御批判はあろうとも、いま御指摘を受けたような、それぞれの措置であると思うわけであります。  ただ私として、されば今後どういうふうな目安で進んでいくかということになれば、いろいろの御意見の中につくってまいりました、結局、かつて財政収支試算というものが財政の中期展望となり、そして今度の財政の中期試算、そして財政改革に対する基本的考え方、まあこの線をこれから各方面の意見を聞き理解を得ながら進めていくという基本認識にまず立って、スタートしていかなければならない問題ではないか、心を新たにしてこれに当たっていかなければならないということをつくづくと感じておるということを申し上げます。
  94. 柴田弘

    柴田委員 いま大臣が御答弁されたことにつきましては、私も一応の理解をいたします。  それで、そういうことであれば、やはり私は財政再建、いま中曽根さんは財政改革というお言葉を使っていらっしゃるわけでありますが、この財政再建への一つの展望というものをきちっと政府が国民の前に示すときではないかと思いますね。そういったことで、私は、いつも大臣にはいろいろな観点から質問をしてきたわけでありますが、どういった一つの手順と方策をもって財政再建というものを今後進めていくのか、こういうことを国民の前にあからさまにしなければ、財政再建への国民の協力は得られないと私は思います。  だから、これは、いまここで明確な答弁を求めるのは無理かもしれませんが、やはりそういった一つの考え方というものが財政当局の主務大臣である大蔵大臣の頭の中にきちっとあるのかないのか、この辺が私は問題だと思います。いま具体的にこういうものがどうだ、こういうふうにどうだということは申しませんが、そういったことが一つの基本的な考え方としてあなたの頭の中にあるかどうか、その辺はどうでしょう。
  95. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、昨年の臨時国会におきまして種々議論の上、補正予算を御審議いただくに際して、少なくとも将来の指針となるべきものを出せ、こういうことであります。その議論はずっと五十五年当時からあった議論でございまして、いわば当時問答の中で承ったものを根拠に置いてつくったものが財政収支試算であった。そして、なおそれに対する御注文にこたえて、ぎりぎりの作業をして出したものが中期展望であったと私は思うのであります。そこにまた一つの反省もわれわれは行ってみたわけであります。やはりそれには五十八年度予算編成の過程において、その編成作業を通じながら基本的考え方をまとめてまいりましょう、こういうお約束をした、そのお約束に基づいて基本的な考え方をお出ししたわけでございますが、まず、その五十八年度予算を踏まえて今後歳入歳出の合理化、適正化に努めることを基本にしながら、新しい時代に適合した財政とするような改革を図って、そして特例公債の依存体質から脱却し、さらには公債依存度の引き下げに努めるという考え方を基本的に持ったわけです。  そうして、その進め方ということになりますと、まず第一には、歳出面におきまして、いわば従来の既存の政策、制度の中においてかなりぜい肉を切るというような努力は続けてこられたと私は認識をしておりますので、それを一歩進めて、今日の情勢のもとで、これは一体財政が関与すべき分野であるかどうかというので、行財政の守備範囲を見直すと同時に、しょせん負担する者も国民、受益者もまた国民という考え方の上に立って、両面にわたる見直しを一層厳しくやっていこうということで、財政改革の実現をこれから努めていこうということにしたわけです。そうして、そのような努力を背景として初めて、歳入面におきましていわゆる公共サービスの確保は国民の負担によって裏づけられるものであるという基本的な考え方に立って、公平、適正な税制のあり方について今後とも検討を行おうという形でもって進め、そうして五十九年には、努力目標として定めましたが、できませんでしたということを明瞭にして、今後その審議の手がかりともなればということで、いわゆる七五三の財政の中期試算というものをお出しして今日に及んでおる。  だから、初めから、このようなものが今後財政改革を進めていく上の、いまおっしゃいました海図でございますとかいうものが確たるものをお出しできる環境にないだけに、そういう考え方の中に、これから国会での御意見なりそして各方面、財政審議会等々の意見なりを聞きながら、財政改革というものを本格的に進めていく、その考え方の出発点が五十八年度予算編成であり、そしてそれを御審議いただくこの国会であるというふうな位置づけにしていくべきではないか。  こういうふうに長々と述べましたが、実りなき答えと感じられるではなかろうかとも思いながら、誠心誠意お答えをいたしたわけであります。
  96. 柴田弘

    柴田委員 余りよくわかりませんが、奥歯に物がはまったような言い方でございまして、いずれにしても、今後財確法の法案審議もありますので、それについては一遍じっくりとやります。  次へ進みますが、減税問題ですが、これは、実はきのうの予算委員会でと思っておりましたが、時間の都合でできませんでした。  御案内のように、与野党合意を受けまして政府見解が出され、大臣も、本会議あるいは予算委員会、当委員会等でいろいろお述べになっておられる。減税の考え方、先ほどもお話がありましたが、六年間減税がなされなかったということで実質増税である。国民の税に対するいわゆる不信感、不公平感というのはますます広がっている。それで、本来ならもうすでに五十八年度の当初予算でこの問題が予算措置をされておってしかるべき問題である、こういうふうに私どもは考えているわけでありますが、とにかく政府の姿勢というものは、いままでは、予算が余ったら、剰余金が出たら何とか考えましょうというような考え方でなかったかと思います。だから、私は、いずれにいたしましても政府見解が示されたわけでありますので、この問題についてはそれ以上のことを申しませんが、ただ一つ言えることは、要するに、この所得税あるいは住民税減税の実施というのは、やはりあの政府見解を受けて、今後とも、今日以降政府が最優先する政策課題一つである、こういうふうに私は受けとめたいわけでありますが、その辺どうでしょう、大臣
  97. 竹下登

    竹下国務大臣 衆議院議長見解、そして、それに基づきますところの各党合意、いや、言い方によりましては、各党合意、それに基づきます議長見解と申した方が適切でございましょう。これはやはり政策の優先課題一つだ、これは当然そう受けとめるべきであると思っております。それは素直に肯定をいたします。
  98. 柴田弘

    柴田委員 それで、あと一つ、この問題に関連をしまして御質問をしていきたいと思いますが、これは、昨年末の本委員会においても私は取り上げさせていただきました婦人パートの非課税限度額の引き上げの問題であります。  私どもの方で積算をいたしたわけでありますが、奥さんのパート収入は、御案内のように、いま七十九万までが非課税限度でありますが、これを超えた場合に、どのような負担増になってくるのか、これは標準世帯で御主人の収入が四百万円であると一つの仮定を置いて計算をしたわけであります。その場合、まず非課税限度ぎりぎり、奥さんの収入七十九万円の場合は、税負担が住民税を含めまして二十八万七千円になります。ところが、これが八十万円になった。これはもう課税限度額を超過するわけであります。その場合には、配偶者控除が受けられなくなり、奥さんの税負担を含めた税負担の増が三万五千円、それから御主人の被保険者のあれから外れるわけであります。だから、奥さんが国民健康保険料を払わなければならない。これが一万三千円。それから当然家族手当が受けられなくなりますから、これが大体標準の月一万二千円といたしますと、年間十四万四千円、合計十九万三千円。つまり、七十九万円のベースの税負担二十八万七千円プラス十九万三千円になります。それから、これが九十万の場合、同じく税負担の増が四万五千円、それから健康保険料の支払いが一万九千円、それから扶養手当のカット分十四万四千円。それから、これが百万円になりますと、税負担の増が五万九千円、健康保険料が二万四千円、家族手当カット分が十四万四千円、合計二十二万七千円。百二十万円の計算をいたしますと、税負担の増が八万六千円、奥さんの健康保険料の支払いが二万六千円、扶養手当のカット分が十四万四千円、合計二十六万六千円、こういう計算になります。  そこで、手取り収入を計算してまいりますと、ちょうど七十九万円を超え、つまり八十万円を超えて百万円までは手取り収入が減ってくるわけです。七十九万円まで働いておった方かいいということになります。八十万を超えると手取り収入が減る、これが百万までであります。そして、百万を超えたところで百二十万のところへくれば手取り収入がふえてくるわけであります。こういった一つの、一定の前提を置いてでありますが、私は試算をいたしたわけであります。  そこで、現実に現在の産業あるいは社会とか、いろいろなそういった構造を見てまいりますと、やはりパート収入月十万円、年間百二十万、それが、無理なら、せいぜい百万までくらいは非課税に持っていくべきじゃないか。こういった一つの試算をしてみて、私は、そこに一つの大きな根拠を見出したわけでありますが、今度たまたま所得税の非課税限度額が引き上げられる、それを税調に審議をお願いする、こういったことになると思いますが、あわせてこういった矛盾点というものを解決するために、大蔵大臣としても何らかの対応をしていただきたい、こんなふうに私は考えているわけでございますが、ひとつ率直な御意見というものをお伺いをしておきたいと思います。
  99. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、前回の国会でも御質問があったものに、さらに新たなるデータを整理しての御意見を交えた御質問でございます。  御案内のように、五十六年度所得税法の改正で二十万から二十九万に上げさしていただきまして、そして給与収入ベースで直しますと七十九万円という限度になっております。現在の所得税の控除体系の中では、バランスを考えればまさにぎりぎりの引き上げ幅であったわけでありまして、長期的な問題としてはともかく、現行の所得税の人的控除の諸体系の中ではぎりぎりだというのが前回お答えしておった限度でございます。  そこで、新たなる政策課題というものを背負い込んだわれわれといたしまして考えますならば、税制調査会において幅広い観点から検討をしていただいて、減税実施のために真剣に取り組むわけでございますが、いま御指摘の問題につきましても、この審議の中で、税制調査会ですから、私どもがこれを審議してくださいと言うべき性格のものではないにしましても、恐らく検討されるものではないかというふうに考えておるところでございます。
  100. 柴田弘

    柴田委員 検討されるべきものではないかというのではなくて、当然それは税調がやられることでありますから、大臣はそういうお言葉かもしれませんか、やはり所得税の課税限度額の引き上げというものが当然審議の対象になれば、所得税減税ということでございますから、パート減税についても同じような観点で議論をされてしかるべきである。そして、大蔵省としても、それについてきちっとした対応というものを図っていかなければいけない、こういうことを私は申しているわけでございます。その辺どうでしょうか、大臣大臣答弁を聞いて、これで終わりたいと思います。
  101. 竹下登

    竹下国務大臣 私は、税制調査会に対して恐らく検討されるべき課題ではないかというふうにお答えいたしたのでございますが、税制調査会においては当然のこととして、与野党の合意に基づいて国会でもろもろの議論をされたことは念頭に置かれるはずのものでございますので、いま御指摘のような問題につきましては、検討の対象に十分なり得ると思われるというふうに理解をしております。
  102. 柴田弘

    柴田委員 じゃ、これで終わります。
  103. 森美秀

  104. 米沢隆

    米沢委員 いまわが国の財政の現状を見ましたときに、税制の基本的な見直しというものは、好むと好まざるとにかかわらず避けて通れない緊急の課題となっております。確かに、五十一年度以降租税特別措置の精力的な整理合理化が図られますとともに、各種の税目についても課税対象、課税標準、税率等の見直しが行われて今日に来ております。特に五十六年度におきましては、現行税制の枠内での徹底した見直しという観点から、相当規模の増収措置が講じられたところであります。しかしながら五十八年度の税制改正につきましては、税負担及び税体系のあり方を抜本的に検討する環境が十分整っていない等の理由によりまして、税制についての基本的な見直しは見送らざるを得ないとして、大変小規模なものにとどまっております。  御案内のとおり、歴年の税制改正の規模を見てみますと、平年度金額でありますが、五十四年度が六千二百七十億、五十五年が三千九百二十億、五十六年が一兆五千四百四十億、五十七年が三千四百八十億、五十八年度は大体例年の十分の一から、五十六年に比べたら約五十分の一ぐらいの規模の税制改正しか行われておりません。  私も、何も増税を望むものではありませんけれども、税制調査会におきましても、この点について種々議論があったと言われますし、税制調査会長の小倉さんも、昨年暮れの税制改正中小企業の交際費課税強化措置の徹底を行おうとしたがだめだったと言われるように、小規模にとどまるということに関して、税調の中でも異論があったやに聞いておるわけであります。  そこで、まず大蔵大臣に聞きたいのでありますが、このような小規模におさまらざるを得なかった背景と事情について御見解を承りたい。
  105. 梅澤節男

    梅澤政府委員 大臣がお答えになります前に、ただいま委員が御指摘になりましたように、昭和五十年代に入りまして、特に五十一年度以降、財源的規模それから税制の事項別に見ましても、逐年相当規模の税制改正をお願いしてまいりました。五十二年度は、課税最低限の引き上げも行われておりますのであれでございますけれども、連年ほとんどの年につきまして、相当額の増収措置をお願いしてまいりました。  ところで、五十八年の税制改正、ただいま御審議をお願いしております内容を見ますと、少なくとも税収の規模といいますか財源的規模では、五十年代に入りまして非常に小さな規模のものでございます。この点につきましては、五十八年度の税制改正を御審議願います税制調査会での御議論の中でも、いろいろ御議論がございました。ただ、結果的に、答申にも指摘されておりますように、昭和五十年代以降ほとんど毎年にわたって既存税制の見直しを行ってまいりまして、五十六年度特に総洗い的な税制の見直しを行ったという背景がまずございます。それから、何よりも、五十八年度予算編成当たりましては歳出の徹底的な削減に努力する、その意味で、税財源を調達するというかっこうでの予算編成というものではなくて、むしろ税制のサイドから言いますと、既存税制の中での適正あるいは公平なという観点からの見直しに重点を置くということで、五十八年度の税制改正内容が策定されたという経緯がございます。  もう一つ、税制調査会の答申にもございますように、既存税制の見直し、ほとんど現在では限度に来ておるわけでございますが、さればといって、五十八年度予算編成のたてまえからして、現在の税体系を五十八年度の時点で抜本的に見直すということは、税制調査会としてもとらないということが答申にも述べられておりまして、そういう経緯を踏まえまして、五十八年度の税制改正は、どちらかと言えば、内容的にはあるいは財源の規模から申しますと、五十年代に入りまして非常に小さな内容のものになっておるということでございます。
  106. 竹下登

    竹下国務大臣 税制調査会の答申にも使われております文言でございますが、「政府において歳出削減を中心とした予算編成を行うとの方針がとられている」すなわち、まずは切ろうということからいたしまして、いわばマイナスシーリングの状態から予算編成に入っていったということが背景にまず一つはございます。それから、五十六年度の税制改正当たりまして徹底した見直しを行って日なお浅いということが、二つ目にはあろうかと思うのであります。それが規模そのものから見ると小さくしておるというふうに言えることであります。  したがって、基本的な見直しは見送って今後の課題とされて、そうして厳しい財政事情のもとでアクセントがついておる。あえて申し上げますならば、中小企業の基盤強化と住宅建設促進等に資するための措置がとられたというのが、規模とは別の一つのアクセントではないかな、こういうふうに御理解いただければと思います。
  107. 米沢隆

    米沢委員 確かに、臨調の増税なき財政再建というスローガンもおりておりませんし、あるいはまた、歳出カットに力を入れるという形での予算編成であったという事情はよくわかりますが、実際本音のところ、ことしは参議院選挙もありますね、衆議院選挙もひょっとしたらあるかもしれない、こういう情勢の中で、あれだけ税外収入についてはかき集めておきながら、税制の基本的な見直しを行っていないということは、これは選挙後にすべて先送りしたんじゃないか、あらしの前の静けさではないかと言う人もおるのでありますが、真意はそういうところにあるんじゃないですか。
  108. 竹下登

    竹下国務大臣 だれしも、増税という言葉からくるイメージというものを好む者はおりません。しかし、それは、そのときの選挙に有利不利という状態でもって税制調査会のような各界を代表していらっしゃる方は必ずしもお考えにならぬではなかろうか。私もバッジをつけておりますし、委員もまたバッジをつけていらっしゃいますと、考え方がとかくそういう方向に行きがちであるということを否定するものではございません。
  109. 米沢隆

    米沢委員 税制調査会は選挙があるとかないとかでそう判断は出さないと思いますけれども、しかし、自民税調もありますし、大蔵大臣もおられることでありますから、何となく言いづらい面も出てくる、それは実情としていま大臣が認めていただいたようなわけであります。  そこで、「エコノミスト」の二月八日号の記事の中で、たとえば「大型間接税導入のムードが高まってきているが、政府税調としてどう対処していくのか。」という御質問に対して、会長の小倉さんが「大型間接税導入、直間比率の見直しといって世間は何やら騒いでいるようだが、そう簡単にできることではない。」「前回の大平内閣当時の一般消費税導入のさいより、よりいっそう厳しいものになってきているのではないか。五九年度、大型間接税の導入は困難というのが、私の現時点での印象だ。」こう述べられております。  それからまた、自民党の税制調査会長の村山先生も、五十九年度導入というのはむずかしいだろうというような見解を述べられておりますが、再再聞いて本当に恐縮でありますけれども、大蔵大臣の予算委員会並びに大蔵委員会等での御答弁を聞いておる限り、五十九年度に大型間接税導入はないかとの問いに対して、はっきりそんなことはないというようにとれない節々が見受けられるのでありまして、ひょっとしたら五十九年大型増税があるかもしれないという懸念が払拭できないのでありますが、この小倉さんの御見解あるいは村山さんの御見解等に関連して、大蔵大臣の御見解をちょっと聞いておきたいと思うのです。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 私の言葉が拙劣であるのか、あるいは論評するマスコミの方々の取り方がいかがなのか、その議論は別といたしまして、いわゆる客観的な事態の推移で申し上げますと、五十四年当時というのは、確かに、直間比率の見直しとかいう言葉を使えば、もういわゆる一般消費税をやるのではないか、こういうふうにとられました。ただ、その後の税制調査会の中期答申では、課税ベースの広い間接税は今後の検討課題とされて、そして五十六年度、五十七年度、五十八年度の税制改正に関する答申においても、税体系の見直しが今後の検討課題だとなされて、そして臨調でも五十七年七月の第三次答申で、これはまた言葉として直間比率の見直しを検討すべきである、こうなされておる。いわば権威ある諸機関で広く議論の俎上に上ったという意味においては、かつてと比べれば、確かにこの幅広く勉強する上での環境は整ったな、こういう感じを率直に持っております。  しかし、私ども、現在いわゆる大型間接税というものを念頭に置いて検討を命じたり指示したり、こういう状態にはございません。そして、確かにこの税制の理論から申しまして、付加価値税は経済に中立的なものであるとかいう議論も存在をしますものの、いま既存の税制というのは、これは、それぞれの国によって長い間の国民の選択の集積が現行税制として出ておるものでございますから、大きな変化というものについては理解をいただくためのかなりの時間がかかるのも、これは当然のことでございます。  したがって、私は、あえて感想を述べてみろとおっしゃいますならば、お二方の「エコノミスト」に対する論文というのは、それぞれの考え方を代表して申されておる認識として受けとめるべきではないか。だから、大型間接税をやりますなんて言えるような環境ではないと私は理解しております。
  111. 米沢隆

    米沢委員 御案内のとおり、いま所得減税が大きな問題になっておりますが、村山税調会長なんかの議論の中には、大型増税をやるならば所得税減税も同時に行われねばならぬだろう、こういう御見解ですね。  後で、所得税減税について財源論を御質問いたしたいと思うのですが、大蔵大臣は、所得税減税と大型間接税との絡みみたいなものを最終的には重視する立場なのか、それとも、無関係に所得税減税財源を考えたいという立場なのか、はっきり御見解を示してもらいたいと思います。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 これは非常に適切な表現をいただいておりまして、「相当規模減税を実施するための財源確保し、所得税及び住民税減税についての法律案を、五十八年中に国会に提出する」こういうことが合意されておる。そうなれば、まさに財源確保ということは重大なポイントになるわけでございます。既存の法律等に基づく施策というものを全部が全部なかなか否定してかかれるものではないということになると、その財源というのをネグって一方的に減税のみを論ずることはできない。ただ、所得減税をするために、ある種の精神的目的財源としての大型間接税を意識しておるかとおっしゃいますと、それはそれ、これはこれとしてやはりまじめに対応しなければならぬというふうに思っております。
  113. 米沢隆

    米沢委員 さきの質問でも申しましたように、所得税減税に関してちょっと具体的にお尋ねしたいのでありますが、御案内のとおり、議長見解も出され、官房長官の見解も出された。現在のところ、政府所得税減税について責任を負った形になっておるわけです。  そこで問題になりますのは、何といいましても財源の問題でございます。昨年与野党で小委員会等もつくっていただいて、必死になって財源を探していただいたにもかかわらず、結果的には財源がないということでありますから、急に所得税減税をやろうという与野党合意ができたとしても、そう簡単に財源が出てくるわけのものでもありませんし、また、すっと出てきたらおかしいたちのものだという感じもするわけです。そこで、今後誠意を持って所得税減税財源を探してもらうのは、まさに今度は政府の番でございますけれども、今後財源探しの段取りは一体どういうことになっていくのか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  114. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、私ども国会等で議論されたこと等々を税制調査会で広範な角度から議論をしていただくというのが基本的考え方であります。  そこで、そういう今後の税収見通しというものがある程度立たなければならないということになると、五十七年度決算が確定するのは七月というのが一つのめどになって、五十八年への展望というような作業が行われていくのではないかな。ただ、いま米沢委員いみじくもおっしゃいましたが、もうおれたち知らぬから政府だよ、そうはいきませんので、やはりいままで専門家の方でいろいろ議論をされたことの経過は念頭に置かなければならぬし、置くべきものであるし、そして私どもとしても、お一人お一人様を追っかけてでも、それは私的な相談と言っていただいて結構でございますが、そういうところでいろいろな知恵をちょうだいしなければならぬではなかろうかというふうに考えております。
  115. 米沢隆

    米沢委員 昨年の経過からして、こんなのにかかわり合うとろくなことはないというのが野党の本音だと思うのですね。特に、減税というものが期の途中に出てきた場合には、新しい財源をどうするかという議論でむずかしくなるのは必至ですけれども、最初から予算を組むときにわれわれに預けてくれたら、一兆円ぐらいの減税なんかちゃんと入れてあげたのだと私は思うのですね。しかし、予算編成のときには無視されて、またこういう形で期の途中で財源をどうするかという議論になりますと、これはもう頭のいい大蔵省とか政府の皆さんが考えてくれないと、われわれはかかわり合うとろくなことはないということでございますから、大臣、ぜひそちらの責任で財源を探してもらいたい、そう思うのでございます。  そこで、八三年度中に減税ということになりますと、早ければ早いほど景気にはいいのでありますが、最終的には十二月の年末調整ということになると思います。しかし、先ほどから言っておりますように、ことしは選挙の年ですね。ですから、七月に税収見通しが立ってからの議論となりますと、どうもすべて選挙が終わってからということになりまして、またぞろ財源がないということで逃げを打たれる可能性があるのではないか、そういう心配をわれわれはしておるのですが、そういうことはありませんね、大臣
  116. 竹下登

    竹下国務大臣 そんなことをいたしますと、二度と再び政権の座につくということはあり得なくなります。私は、いまの御意見の中で、いささか友情を含めてお願いするとすれば、頭のいい大蔵省や与党考えろと言われても、やはり頭のいい人には相談するという姿勢をとるべきである、こう思っておりますので、逃げられては困るというような表現は適切でございませんが、今後ともいろいろな御教導をいただきたいと思います。  それで、選挙、選挙とおっしゃいますと、確かに参議院選挙はこの六月の二十六日でございますか十九日でございますか十二日でございますか、私が決めることではございませんが、まあそういうのが一応はありますが、私どもの任期はまだ来年でございますので、それこそ大変なことになってはいけませんので、知恵をかしていただきたいと思っております。
  117. 米沢隆

    米沢委員 そこで財源の問題ですけれども、方法としては、自然増収あるいは歳出カットで捻出するとか赤字国債を増発するとかあるいは増税、既存の税目を見直すあるいはまた新税を導入する、この四つぐらいしか方法はないと思うのですね。予備費二千億を崩す、崩さないという是非は別にいたしまして、四つの財源しか実際は見つからないわけです。それもここ一、二年で金額として確実に調達されるという財源でなければ減税はできません。また、その規模にもよるのですけれども、二階堂幹事長がおっしゃいますように、景気浮揚に役立つ、相当規模となれば常識的には一兆円以上の規模、こういうふうに理解をするわけでありますけれども、そういう意味では、一兆円の規模の減税を先ほど言いましたような自然増収、歳出カット、赤字国債の増発、増税、この四つの組み合わせ等で調達しなければならぬ、こういうことになると思うわけでございます。  そこで、この財源調達の中身の問題でありますが、まず自然増収は本当に期待できるのであろうか、こういう問題でございます。今回の予算におきましては、五十六年度、五十七年度実績にこりまして、かなり厳しく税収見通しを立てられました。そして税収伸び率を補正後で五・九%増、弾性値を一・〇五、そして三十二兆三千百五十億というものを税収として見積もられたわけであります。いま盛んに言われておりますのは、原油価格が下がるからかなりいいだろうとか、あるいは円高基調がこれから定着していくであろうから円高差益が出てくるだろう、新聞の記事ではありませんが、こういう神風に頼って自然増収を待ち望むという姿が現実にあるのですが、大蔵省として、原油価格の値下がり、円高基調の定着等がどういうかっこうで企業の収益に結びついて、景気の波及効果も手伝って法人税収が上がることをどう期待されておるのか、大臣に見解を賜りたいと思うのです。
  118. 竹下登

    竹下国務大臣 この減税財源については、確かに特例公債を軽々しく念頭に置いてはならないものだ。この問題につきましては、まさに特例公債そのものの増発というのが金融市場に及ぼす影響、それは、むしろある意味において景気の足を引っ張る結果にもなるということもございます。したがって、これからそれこそ衆知を集めて御議論をいただくところでございますが、いま米沢さん、かなり具体的に原油価格、円高基調等々のお話がございましたので、正確を期しますために主税局長からお答えをさすことにいたします。
  119. 梅澤節男

    梅澤政府委員 五十八年度税収見積もりにつきましては、ただいま国会で予算審議をいただいておるとおりでございまして、五十八年度税収が今後どういう展開になるのかという問題につきまして、昨今の原油の引き下げとの関係でどう考えておるかという御指摘でございます。  この問題につきましては、当然のことながら、税収というのは実体経済を反映するものでございますので、一体、実体経済がどういう展開になるのかということでございますが、私ども、まだ経済企画庁等と詰めた議論をしておるわけではございませんけれども、最近各方面で言われておりますように、たとえば原油が一〇%下がった場合にどうなるとか、何ドル下がったからどうなるという、そういう一義的な前提だけでは、実体経済がどういうふうになるのかということは、なかなか判断しにくい問題があるわけでございます。  それは、たとえば円相場の問題は当然でございますけれども、国内経済的に見ましても、製品価格なりサービスの価格展開が一体どうなるのか、その前提の置き方によりまして、時期的にも、それから波及してくる効果のあらわれ方も非常に違ってくるわけでございまして、少なくとも現時点で申します限り、実体経済にどういう効果が出てくるのかということを計量的に一義的に示されていることはないわけでございます。  特に御理解願いたいのは、さらにそれが税収、これは法人税収に特に典型的に言えるかと思うのでございますが、それにどういうあらわれ方をするかという問題になりますと、年度内の税収というのは、法人税は各法人によりまして決算期がまちまちでございます。したがって、実体経済のあらわれ方と税収にあらわれてまいりますタイムラグというのはかなりのずれがございまして、たとえば第一次オイルショックの場合を例にとりますと、原油の値上がりが起こりまして、わが国の法人税収に顕著な傾向があらわれましたのが大体十四、五カ月後でございます。第二次オイルショックの場合は、さらにそれが数カ月ずれておるわけでございます。今度は逆オイルショックと言われるわけでございまして、逆になるのかどうかということは問題でございますけれども、いずれにしても、その税収面に顕著にあらわれてくるということが仮にあるといたしましても、それはかなり時間的なずれを見込んでおく方が安全ではないか。  そういたしますと、なおさらのこと、現在の時点で法人税収にどういう影響が出るかということを計量的に責任を持って明確に申し上げられる段階にはないということでございますので、何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  120. 米沢隆

    米沢委員 確かに、原油の価格が今後どういうような推移をたどるのか、あるいはまた為替相場が、昨年の例を見ましてもかなりでこぼこがありました。そういうことがありますから、計量的にはつかまえにくい問題かもしれませんが、参考までに、経済企画庁の方来ておられると思いますが、たとえばドルが二百三十円前後で維持されて原油が四ドル下がったとすれば、どの程度経済に影響を与えるか。いろいろな前提があると思いますが、その前提も踏まえて、一応参考までに聞かしてもらいたい。
  121. 丸茂明則

    ○丸茂説明員 ただいま大蔵省からお答えがございましたように、原油が下がりました場合に日本経済にどういう影響があるかという点につきまして、計量的に把握することは非常にむずかしい問題でございます。もちろん、原油が下がりますと交易条件が改善するというようなことがございますし、またより直接的に、国内の物価がそうでなかった場合よりは下がる方向に働く。また企業にとっても収益がふえるというようなことで、全体としてみますと、日本の経済にとって、また経済成長にとってプラスであるということは言えるわけでございます。  ただ一方で、それがいま御指摘のたとえば四ドル下がった場合にどうかという仮定を設けての御質問でございますが、その場合におきましても、原油価格の低下によりまして、産油国の所得が当然でございますが減る。それがどの程度先進国、特に日本の産油国向け輸出にはね返ってくるかというようなこと等がございますので、一義的に、四ドルの低下あるいは御指摘のような円レートで推移した場合にどうなるということは、数字的に申し上げることは大変困難でございます。
  122. 米沢隆

    米沢委員 原油が下がる、円高基調が定着する、何とはなしに自然増収になるけれども計量的には把握はむずかしい、こういうことになりますと、それもかなりずれた段階でないとわからないということになりますと、財源という意味からは、自然増収はある程度の期待はできたとしても、これぐらいの期待ができるということになりませんね。  残された財源というのは、歳出カットかあるいは増税かあるいは赤字国債の増発かということになるのですが、歳出カットも、ことしの予算はかなり圧縮した形で組まれたわけですから、その上もう一回歳出カットをやれと簡単に言っても、金額的にはそう出てこないだろう。増税も、先ほど来の議論の中でそう簡単にできない。こうなりますと、今度は所得税減税の規模に関係するのですね。  そこで、予備費を約二千億、あるいはまた歳出カットを一千億から二千億、そして自然増収に期待をかけて何ぼか、足していきますと規模全体が、もし財源が見つかったとしても一兆円をかなり下回る規模にならざるを得ないわけですね。しかし、二階堂幹事長がおっしゃった景気浮揚に役立つ相当規模となると、やはり一兆円前後でしょうから、その差額を赤字公債で埋めるか埋めないかという選択は、規模に大変関連してくる問題だと思うのです。     〔委員長退席、中西(啓)委員長代理着席〕 大蔵大臣は、安易に赤字国債増発に頼るのは問題だと言う。確かにわれわれもそう考えますけれども、規模をある程度達成しようとすると、先ほど来の自然増収もそう簡単にいかない、歳出カットもそういかない、増税も簡単にいかない、やはりある程度赤字国債をプラスして一兆円規模ぐらいを確保するということにならないと。だから、赤字国債を絶対に発行しないというかたくなな態度ではなくて、場合によっては規模との関係である程度増発せざるを得ないであろう、そうでないと、所得税減税一兆円ぐらいの規模は調達できないわけですから、そこらは大蔵大臣、赤字国債をすべてだめではなくて、ある程度は考えられることもあり得るというふうに言ってもらいたいのですが、いかがですか。
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 この景気浮揚に役立つという言葉でございます。ここがやはり政党の責任者の方の言葉としてりっぱだなと思いますのは、いわゆる計量的にそれを言わないで、概念的にこれをとらえていらっしゃるところがりっぱだなと思うのであります。私どもも、ああいうりっぱになりたいと思います。  したがって、事ほどさように、偉い人の会合でも計量的な表現でなく、そういう概念的な表現になっておるところが、ある意味において政党政治というものかな、したがって、やはりこれを受けてわれわれが対応していくということになりますと、本当に各方面の意見を聞きながら、これに対処していかなきゃならぬ。  ただ、赤字国債の問題についての御議論でございますが、実際残念でございますけれども、二月債は休債をせざるを得なかった。公債発行というものの受け入れる側からいえば、許容限度額というものとの見合いで決まるものでありますだけに、それが金融市場に金利上げとかそういう影響をもたらして、まさに民間に対する金融の立場からするてこ入れを防げるような状態になるということは、結果として、景気浮揚に役立つという逆現象というものも考えなきゃならぬという意味において、確かにここで言明するような性格のものではないではないか。いまも貴重な意見をお聞かせいただいておりますが、まさにこれからも意見を聞きに参りますので、それなりの御教示を賜って、その偉い人の合意というものにこたえていく努力を詰めていかなきゃならぬと思っております。
  124. 米沢隆

    米沢委員 ということは、偉い人の規模に達成するためにはいろんな方々の意見を聞かねばならぬけれども、最終的には、ある程度の赤字国債の発行を増発せざるを得ないという決断もあり得るというふうに考えてよろしいか、それが第一問。  第二問は、一つ問題なのは、減税のために赤字国債を発行するとかなり金融事情に影響する。五十七年度の皆さんの財政の失敗で、最終的には補正で三兆九千億前後の増発をするときには余りそんな理屈も言わない。そのあたりがどうも僕は感心できないのですね。  この二問だけ答えてください。
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 赤字国債をもって減税財源に充てるというようなことは、可能性の中にも示唆したらやはり緩みが生ずる、念頭に置くべきではない問題ではないかと思います。  それから、二番目の問題でございますが、御指摘どおりであると思いますのは、この増発をすることを補正予算で御決議をいただいた。ところが、その言ってみれば二月債でございますから、補正予算が十二月終わりに通っておるとしますと、十二月を入れても三カ月目にして、いわばシ団とのネゴが詰まらなかったということは、まさに国債の増発の金融市場に与える影響というものが、いま大影響であるかどうかは別といたしまして、やはり来たなと、こういう感じを私は率直に持っておるわけであります。  私も、そのことをしみじみと感じましたのは、昭和五十四年予算のときにいわば戦後最高の公債依存度になる。そして、戦前をずっと見てみますと、四二%に達しているのが昭和二十年、まさに戦争に負けた年であります。ああ、その近くまでいっておったのか、だから貸してくれる人がなくなる、言いかえれば国債が売れなくなる、そこに一つの壁にぶち当たった。しかし、神様仏様民間様のおかげで自然増収に救われたというのが五十四年であったと思いますので、それだけに、公債発行の金融市場に及ぼす影響というものは、やはり絶えず気にしていなければならぬ。私どもが国際会議に出ますと、日本は貯蓄性向が高いから、もっとやってもいいじゃないか、こういうような議論がわりに平易に出るわけでございますが、その衝に当たってみると、どっこいそういうものではない、こういう感じがつくづくといたしております。
  126. 米沢隆

    米沢委員 確かにわれわれも、いまもう百兆の赤字公債がある、その中での赤字国債の増なんということは、非常に大きな影響があるであろうということはわからぬわけではありません。ことしだって、新発債が十三兆三千四百五十億、借りかえ債が四兆五千百億、トータルで十七兆八千五百五十億ですから、五十七年度補正よりも逆に一千四百億円ふえる。市中消化分も十二兆二百十九億だそうですから、五十七年度よりも千六百億上回る。  これがかなり金融情勢にインパクトを与えるということはわからぬわけではありませんが、ちょうど五十七年の赤字国債の増発が云々されたときに長期債のレートが上昇したということがありますが、そのときも、資本市場からの調達コストは上昇したとはいえ、企業にとっての資金調達は全体として必ずしも困難化したとは言えないというようなことが経企庁なんかの論文に書いてありますと、百十兆ある中でプラス一兆が果たしてそんなにびっくりするほどの影響を金融情勢に与えるのであろうかという、素人わかりした説明が僕は欲しいのですね。  それから、今度大蔵省も、個人消費というものをふやしていくために、いろいろと措置を考えられておりますが、ちょっと古いのですが、確かに、昭和五十六年の金融取引量を見ますと、個人の資産が十九兆二千百八十億ふえた。その中で国債でふやした分はわずか四・九%ですね。したがって、やりようによっては市中消化等はそうむずかしい——大変な努力は要るかもしれませんが、これを伸ばすことはそうむずかしい相談ではないのではないか、こう考えるのですが、その点についての御見解を承りたい。  と同時に、いま赤字国債が最終的には今年度末で百十兆近くなる。それにプラス一兆円したときに、一体どのような顕著な影響が金融市場に出てくるのか、あるいは景気回復という問題に出てくるのか、詳しく説明してもらいたいと思うのです。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 前段のところでございますが、百兆の中の一兆という観念、これも、私も政治家でございますからよくわかります。がまた、今度はこの予算編成に対してぎりぎり詰めて、前年度補正後とはいえ一兆減らした。そういう非常に厳しい歳出削減に対する姿勢と、一方、あえてイージーとは申しませんが、百の中の一ではないか、そこのところが心の持ち方としてはやはり相当な問題になるなという感じを、私みたいな、どっちかと言えば惰性に流れやすい性格の者でも、その衝に当たってみれば、そういう気持ちがするわけであります。  そうして金融情勢は、これは一概に百対一だけで計量的になかなか計算のできるものではございませんけれども、やはり今年度の補正における増発というものが、いま二月債休債という状態の中でわれわれが受けとめる受けとめ方というのは、これはやはり大きい影響をもたらすものではないかな、こういう感じがします。     〔中西(啓)主査代理退席、主査着席〕  それから、民間に持たせたらいいではないか、こういう議論でございますが、その国債の個人消化ということを私は否定いたしませんが、ただ、そこのところの立場の相違もございましょう。言ってみれば、消化を前提にして考えるのと、できるだけ縮めていかなければならぬという考えの調和点をどこに求めるかというのが、なかなかこれはむずかしいものでございますので、まあ答弁となったようなならぬようなお話をいたしましたが、詳細事務当局に、仮にその面の金融市場に与える影響等についての担当がおりましたら、この際お答えさすことにいたします。
  128. 窪田弘

    ○窪田政府委員 残高百十兆の一兆とおっしゃいますが、それは残高でございまして、出す額は先ほど先生おっしゃった十二兆二百億でございます。その十二兆のところへ一兆のものが加わるわけでございますから、そうでなくても、いま大臣からお話がありましたような消化に苦しんでおる状況でございますので、これは非常に大変なことでございます。
  129. 米沢隆

    米沢委員 五十七年度の補正予算であんな赤字国債を堂々と知らぬ顔をして、そんなことはお構いなしに出しておって、いまさら赤字国債一兆円を出すことが厳しいような話をされるのは言語道断だな、そんなことを言うのは。そのときそのときで都合のいいようなことばかり言って、都合のいいようにみんな理解して、そして、われわれが一兆円ぐらいの減税ぐらいどうだと言ったら死にそうなことを言う。おかしいじゃありませんか。そんなの答弁やり直しだ。
  130. 窪田弘

    ○窪田政府委員 五十七年度で三兆九千億増発せざるを得ませんでしたのは、一つは、過去最高の災害がございまして建設国債を五千億出しました。そのほか、歳入の思わざる欠陥を埋めるために、年度の途中でそういう事態になりましたので、やむを得ず緊急避難的にやらしていただいたわけでございまして、私ども、決して国債発行をそんなに安易に考えているわけではございません。
  131. 米沢隆

    米沢委員 金利に与える影響はどうですか。
  132. 窪田弘

    ○窪田政府委員 ことしの三月の分の消化ですが、新聞等にも報じられておりますように、シ団の方は条件、金利を引き上げるように強く言っておりまして、場合によっては事業債と国債とが条件が逆転してしまいかねない情勢になって、いま非常にせっぱ詰まった交渉をしているところでございます。この上さらにつけ加わりますと、私どもの立場がますます弱くなりまして、金利をもっと上げざるを得ない情勢になるだろうというふうに考えております。
  133. 米沢隆

    米沢委員 二月二十二日の日経によりますと、「企業の資金需要が一段と冷え込んできた。」「このため都市銀行の中下位行や地方銀行、相互銀行では低い伸びに抑えた一−三月期の貸し出し増加枠でさえ大幅に余る可能性が出てきた。また長期信用銀行、信託銀行も長期資金融資の不振が長引き、資金調達利回りより低い利回りの短期貸しがふえたまま、長期貸しへの切り替えがほとんどできないでいる。借り入れ需要の停滞は当分続くとの見方が多く、」とある。結局金が余っているわけですね。借り手がいないわけですね。  そういう意味では、赤字国債の増発が金利を上げるというのは、実態的には非常にインパクトは弱いのじゃありませんか。
  134. 竹下登

    竹下国務大臣 一つの考え方としまして、金利の問題につきましては、国債の価格が長期プライムに連動するという意味において、それなりに資金需要を圧迫することはあり得る。ただ、いまの時点で言えば、金融は、緩んでおるという表現は差し控えるといたしましても、環境はいいと私は思っております。  ただ、そこのところにございます一番の問題点は、小委員会におきましての議論等を拝見いたしましても、赤字国債増発等一過性のものを避けて、減税財源としては本格税制で考えようという経過もございますだけに、私どもは、そこにもポイントを置けば、なおのこと、赤字国債の増発というものを即座に念頭に置いてはならないのではなかろうかと考えております。
  135. 米沢隆

    米沢委員 われわれも、何も最初から赤字国債をやれとは言っておりません。規模との関係で赤字国債の発行もせざるを得ない可能性もあるかもしれない、そういうときには頼みますと言うておるのでございまして、赤字国債を最初からという議論をしておるつもりはありません。  そこで、もう一つ大蔵当局に御理解いただいておきたいことは、最終的に増税との絡みで所得減税がなされるということがもしあるとすれば、これは景気等についても決していい影響ではないということをぜひ御理解いただいておきたいと思うのでございます。  ちょうど昨年の十月十八日、政府が総合経済対策を打ち出されましたが、その前に民社党として、どういう手を打ったら景気回復になるのかといういろいろな勉強をしました。そのときに、日経NEEDSを使いましてマクロ経済モデルによる景気波及効果の試算をやったわけです。そのときに組み立てたのが、何も対策を打たない場合に一体どうなるのか。あるいは公共投資を五十七年度下期で二兆円追加して、五十八年度は五十七年度当初比一兆円増額した場合一体どうなるのか。それからもう一つは、先ほどの公共投資プラス所得減税を間接税の増税とセットでやる、所得税減税を二兆円、そのかわり間接税の増税を二兆円同時に行った場合にどうなるのかというケース。それから公共投資プラス所得税減税だけをやる。これは赤字国債を予定して、五十八年度に約二兆円やる。こういうケースをつくりましてシミュレーションをやりますと、おもしろいデータが出てきておるのです。ここで申し上げるのは時期も違いますし、前提もいろいろあるとは思いますが、出てきた数字の比較を聞いてもらったらいいと思うのです。  たとえば、何もしないときには、実質国民総生産は八三年度、五十八年度には二・五%伸びるだろう。公共投資だけを追加した場合には二・八%伸びるだろう。公共投資プラス所得減税を間接税増税とかみ合わせて同時並行的にやった場合には一・九%しか伸びない。公共投資プラス五十八年度に二兆円の所得減税を赤字国債でやったらどうなるかというと、三・一%も伸びるわけですね。したがって、公共投資と増税と所得減税をセットしてやる場合が一・九%の伸びで、公共投資と二兆円の減税を赤字国債でやった場合には三・一%も伸びるということでございまして、少なくとも所得減税の原資を増税に求めたならば、景気に対する波及効果は全然ないということになるわけですね。  消費者物価に対する影響も、公共投資プラス所得税減税と間接税増税をセットしたケースでは、六・九%消費者物価伸びる、そのかわり公共投資プラス二兆円の所得減税だけという場合には三・八%しか伸びない、こういう数字が出ております。  それからコールレート、短期金利がどうなるか。公共投資プラス減税と増税のセットの場合には八三年がマイナス〇・八%、赤字国債で減税だけやった場合にはマイナス一・二%、これはそう変わりませんね。少々数字の差異はあるかもしれませんが、ほとんど変わらない。  こういう数字が出ておりまして、数字そのものに意義があるとは申しませんが、少なくとも赤字国債を発行して減税したのに比べると、その減税の原資を増税に求めると景気への波及効果は断然落ちるという、そのことだけは傾向的に御理解いただけるのじゃないか、こう思うのです。そういう意味で、所得税減税の原資というものをやはり増税に求めるべきではないと思うのですが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  136. 竹下登

    竹下国務大臣 いまのシミュレーション、五十八年度予算編成の際に、各党の党首、書記長、政策担当者とわが党、また大蔵大臣の私も出かけまして、このお話し合いをしましたときにも、その種のデータが配られました。いわばその前提となる指標というものが、いろいろ問題があろうかと思います。  もちろん、私は専門家でもございませんから、それに対する前提の数値等についての議論をしようとは思いませんけれども、しかし、減税財源というのはまず税収動向を見きわめて、いまのような国会における議論も踏まえ、一方、税制調査会の御検討を願うという形で精力的に努力してまいるということであって、財源についてのいまの米沢委員のシミュレーションに基づく御意見は、国会の論議を踏まえてと申します私どもの念頭に置かすことにしていただいて、それに対して私がそれなりの意見を述べますということは、これからの税制調査会等の幅広い御意見の中に対しての予見性を与えるような感じもいたしまして、非常に消極的なお答えをするわけでございますが、国会においての御議論があったということは十分踏まえさしていただきたい。そして、そのシミュレーションについては、私どももちょうだいをして検討をしたことはございますということにとどめさせていただきたいと思います。
  137. 米沢隆

    米沢委員 最後に、二問だけお尋ねしたいのですが、今度の所得税減税は、先ほどの答弁で誠意を持ってやるというふうに受け取りました。今度の所得税減税というのは、昨年の小委員会での議論から継続しておる問題でありますように、戻し税という方式をとらない。所得税そのものを制度を変えるということであって、戻し税という方式はとらないということでなければならぬと私は思うのですが、その問題についてどうお考えか。ひょっとしたら、規模との関係で、下手すると戻し税でどうだという議論になるのじゃないかという心配をしますので、今度の所得税減税は戻し税方式ではないという御確認をいただきたい。  第二問は、これも大臣委員会等で御答弁なさっておられますように、所得税減税がある程度の規模であるならば、累進税率も同時に是正するという含みの話をしていただいておりますが、その場合、累進税率を下げて課税最低限を上げるということになりますと、かなり大幅な金が要るわけですが、累進税率を下げる分の原資について、一兆円だとすれば、一兆円の中で調達するのか、それ以外で調達するのかですね。どういうかっこうで累進税率を是正する場合の原資を考えていかれるのか、その点をちょっと聞かしていただきたい。
  138. 竹下登

    竹下国務大臣 過去の減税を見てみましても、ある意味において、ぎりぎりのところで与野党が話し合いをして戻し税方式をとったことも皆無ではございません。  それはそれといたしまして、いわゆる少額戻し税というようなものについて、偉い人の相談の中でもそれを肯定するような空気は全くなかったというふうに聞いておりますので、そのことは念頭に置いていかなければならない問題でございますものの、基本的には、税収動向についての見きわめや、国会の御議論、税制調査会の検討が必要でございますので、やはり総合的に方法について明示するということは差し控えるべきかな、否定的な考え方はよく理解しつつも、そう言うべきではないかと思っております。  そして、いま御指摘のありました累進税率の問題でございますが、確かに五十八年度の税制改正答申を見ましても、「五十九年度以降」とは書いてございますが、「税制全体の見直しを行う中で、所得税及び住民税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要があると考える。」こういうふうに税制調査会からも御答申をいただいておりますので、そういうような問題も恐らく御検討の対象になさる課題であろうと思います。ただ、その財源をどうするかということになりますと、また具体的方法論になりますので、お答えは差し控えさしていただかなければならぬ課題ではなかろうかな、このように思っております。
  139. 米沢隆

    米沢委員 終わります。
  140. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  141. 小杉隆

    ○小杉委員 まず、災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、主として自動車重量税の問題にしぼってお伺いをしたいと思うのです。  この改正案は、災害に遭って使用ができなくなった自動車自動車重量税を還付するということになっているわけです。重量税は現在、権利が発生した時点で納税することになっておりまして、有効期限内に廃車をしても、いままで二年なら二年先取りをされてしまう。そして、先取りをされた重量税は一切還付をしないということで、これは一般のオーナードライバーにとっても非常に不満の種であったわけです。そのほかの自動車の関連税は、廃車をすればその時点で税金が還付されたわけですけれども、今度のこの自動車重量税に関しては一切還付をしなかったということでございます。  この重量税の先取りについて、私は、昭和五十六年の十一月二十七日の大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会におきまして、有効期限内に廃車となった自動車の重量税の納付済みの税額を、廃車後の期間の分については還付をすべきじゃないかということを発言したわけですが、今回、災害の分だけ還付をするということにした理由は一体何かという点をひとつ伺いたいと思うのです。
  142. 梅澤節男

    梅澤政府委員 自動車重量税につきましては、小杉委員、以前からそういう問題の御指摘をなさっていることを承知いたしております。  ただ、私どもの考え方は、自動車重量税は、権利創設税と申しますか、走行可能な法的状態を獲得するための税金であるというふうに観念をいたしておりますので、事故あるいは自己都合等で途中で廃車が行われました場合でも、一たん車検を取得されまして納付されました自動車重量税は、還付されるべき性格のものではないというふうに考えております。  今回も、その考え方は変えておらないわけでございますが、ただ、昨年あるいは一昨年、現実に大きな災害が起こりましたときにそういう事例が出てまいりまして、新車の登録が行われて自動車重量税納付され、まだユーザーの手元に渡らない、いわばディーラーの手元にある段階で、災害で車両が滅失するなり走行不可能な状態になったという場合に、ユーザーによって一回も走行されていない車の自動車重量税でございますから、いわば、これは政策的な観点から還付申し上げるのが適当ではないかというふうに考えられるわけでございます。  と申しますのは、現在も他の間接税、物品税でも酒税でもそうでございますが、この種の税はほとんどが庫出し税、メーカーから出る段階で課税が行われておるわけでございますが、その課税物品がたまたま流通業者の段階で滅失したような場合、つまり、消費者の手元に渡らない前に災害で滅失した場合には、その間接税は同じく災害減免法で還付されておるわけでございまして、そのひそみにならいまして、今回も災害の一定の段階、条件に限定をいたしまして、自動車重量税を還付させていただくという方針をとったわけでございます。
  143. 小杉隆

    ○小杉委員 いままで絶対に還付しないとがんばっておられた大蔵当局が、昨年のそういった災害の経験に照らして、本当にはからずも、特殊な事例に限っての措置とはいえ、今回こういう特例を設けられたという大蔵当局の御努力に対しては、私は高く評価したいと思うのです。  しかし、ユーザーの立場としては、大蔵省が権利創設税などという理屈をつけてやっておりますが、やはり一日しか使わなくてもあるいは二年間使っても同じ重量税を取られるということには釈然としない、そういう気持ちはどうしても残るわけでございまして、今後、こういった一つ特例を設けられたことを機会に、こうした措置をもう少し拡大をして、四千三百万人のドライバーの期待にこたえる努力をぜひお願いしておきたいと思います。この点はこれからの措置に期待をするということで、この点の質問は終止符を打っておきます。  次に、今度の租税特別措置法の一部を改正する法律案の中に、グリーンカードの三年間延長が盛り込まれておるわけでありますが、この点については、私も本会議でその経過についての不審点をただしたわけでございますが、問題は、グリーンカードが延長されたことによって、いま現実に税金逃れというものがあるわけでございますから、この税金逃れを防止するための名寄せが当面できないことになるわけでございます。  大蔵当局は、税の不公平の是正ということでグリーンカードを提唱したわけですけれども、このグリーンカードができないということになれば、税金逃れを防止するための代替策といいますか、いままでと同じことではいけないと思うのですが、そういうことについて、どういう対策を考えておられるのか。最近、マル優を全廃しようなどという、庶民にとっては大変ショッキングな報道が行われたわけですが、これは税金逃れを防止するための苦肉の策だというふうに思われても仕方がないわけです。こういった点について、グリーンカードがやめになった後の対応というものについて、どうお考えか。
  144. 梅澤節男

    梅澤政府委員 今回、租税特別措置法をもちまして三年間、五十五年の所得税改正でお認めいただきましたいわゆるグリーンカード制度をその期間適用しない、いわば凍結するという措置をお願いしておるわけでございます。これは、かねがね御説明申し上げておりますように、法的安定性という観点からのやむを得ない措置であるというふうに御理解を願わなければならないと考えております。  ただ、今回この措置をとらせていただくわけでございますけれども政府といたしまして、利子配当につきましての公平かつ適正な課税という従来の方針をいささかも後退はさせないという観点で臨んでおるわけでございまして、そのために、国会でこの法律を御承認いただきますれば、できるだけ早い機会に、税制調査会に改めて利子配当の適正な課税のあり方について御検討をいただきたいと考えておるわけでございます。  もちろんその際に、適正な課税としてほかにどういう考え得る手段があるのか、それからまた、ただいまお触れになりましたマル優、現在の少額貯蓄非課税制度、これを現段階で全廃するとか、私どもは毛頭考えていないわけでありますけれども、世の中でいろいろ議論が今回また行われておることも事実でございますので、少額貯蓄非課税制度の今後のあり方あるいは今後における利子配当課税の中での位置づけ等も、税制調査会の御検討の場で取り上げていただきたいと考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、今後の具体的な課税のあり方については、この税制調査会での御検討でなるたけ早く結論をいただきまして、また国会にお諮りしたいと考えておるわけでございます。
  145. 小杉隆

    ○小杉委員 いまの御答弁は大変抽象的というか、すべて税制調査会にゆだねたような答弁ですが、大蔵大臣、このグリーンカードが三年延期されることによって、やはり課税の公平さというものが損なわれてはならない、いまの局長答弁のとおりです。庶民が、こういったことでマル優が廃止されるということに非常に不安を抱いておりますし、また、いまの税金逃れを防止するために、大蔵当局も、このグリーンカード制度を延期するに伴って、従来とは違った取り組みを行って、一般国民の不信感を取り除く必要があるのじゃないかと思うのですが、それらの点に関しての大蔵大臣の見解を承りたいと思います。
  146. 竹下登

    竹下国務大臣 このグリーンカード制度が凍結されている間に、利子配当課税のあり方について、国会でのきょうのような議論を踏まえながら改めて税制調査会で検討していただきたい、これが基本的な考え方でございます。  マル優の問題につきましては、私がいつか申し上げまして、若干の新聞記事でセンセーショナルに取り上げられておった問題でございますけれども、税制調査会は、御案内のように、総理大臣の諮問を受けて、それこそ国に対する幅広い税制のあり方の御審議をお願いします、こういうことに相なっておりますので、自由な立場において、あらゆる角度から幅広く議論をしていただくという意味におきまして、マル優は審議してもらっては困りますというふうに規定すべきものではない。ですから、具体的にいま考え方を持ち合わせてはおりませんし、そのことを検討しておるという事態はありませんが、基本的にいま、その間といえども、いわば税の不公平というような感じがまた少なくとも三年間続くんだなどという安易な雰囲気をつくり出すような心構えであってはならぬということは、私も同感であります。
  147. 小杉隆

    ○小杉委員 そこで主税局長に、税制調査会でいろいろ検討していただいて結論が出るまでの間に、いままでの実態について、具体的にこういう点はもう少し改善していきたいんだというような一つの案みたいなのがあるのでしょうか。もしありましたら、お答えいただきたいと思います。
  148. 梅澤節男

    梅澤政府委員 五十八年度の税制改正では、グリーンカードの凍結と並行いたしまして、利子配当の源泉分離選択課税を含みます現行制度を、そのまま三年間単純に延ばしていただくということをお願いしておるわけでございます。  ただいま大臣が申されましたように、早急に結論を得て、三年間と言わずに、なるべく早く結論を得てきちんとした制度を、結論が得られればお諮りしなければならないわけでございますが、その間におきまして、たとえば現行の制度を基本的に変えるということは、かえって不公平を招く問題が起こるのではないか。たとえば、現在分離選択の制度があるわけでございますが、これが不公平であるということで、仮にこれだけを単純に廃止してしまいますと、総合課税の実態の技術的なシステムがないのに、現在の三五%の税率を選んでいる人が結果的には二〇%で終わってしまうというような結果にもなりかねないわけでございます。したがいまして、とりあえず現行の制度をそのまま延ばす、いまの体系のまま延ばすことにいたしまして、とにかくいち早く今後のあり方についての結論を得るというのが、私どもの早期の課題ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  149. 小杉隆

    ○小杉委員 具体的な答弁が出ないのですけれども、聞くところによると、マル優の口座が日本の人口の二倍ぐらいあるというふうに聞いているのですね。そういった点、もう少しきちっと調べて、マル優の特典を乱用することのないような、そういう監視体制といいますか、そういうような具体的な手だてはできると私は思うのですが、そういう点はひとつこれは意見として申し上げておきます。  これに関連して、すでに七十五兆円を超えている郵便貯金の中に隠されている相当額の課税すべき隠し財産が、そのまま放置されているということを考えますと、税収不足に悩むいまのこの財政へのカンフル注射の役目を果たしたかもしれないグリーンカード制度が延期されたことは、非常に残念だと思うのです。  そこで、郵便貯金の現状について、いろいろ過去にもマスコミ報道で架空の名義でたくさん財産を預金していたというような話もありますし、また、三百万の限度額が守られていないんではないかという疑問もあるわけですけれども、こうした郵便貯金の現状について、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  150. 岩崎隆

    ○岩崎政府委員 郵便貯金の状況につきましては、御案内のとおり、郵貯懇の報告もございましたし、一方においては郵政審の答申もあったわけでございます。  現在、臨時行政調査会において御審議が進んでいる段階でございますけれども、具体的な内容はともかくといたしまして、郵貯のあり方につきましては、金融政策の有効性を確保するとか、あるいは財政資金の総合的効率的な運営というような見地、あるいは民業に対する官業のあり方というような見地から見まして、いろいろな見方、御議論がございますけれども、やはり郵貯懇的な考え方を踏まえてやっていくべきものではないか、そのように考えている次第でございます。
  151. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる郵便貯金の問題でございますが、基本的には、郵貯のあり方につきましては、まさに現在臨時行政調査会において審議中でありまして、部会報告の段階で大蔵大臣が見解を述べるということは差し控えるべきだということに、私なりの意識をそこに統一をいたしておるわけでございます。  郵貯懇とか郵政審の答申につきましては、金融政策の有効性の確保とか財政資金の統合、効率的運用とか、官業は民業の補完に徹すべきだというような考え方から見てまいりますと、予測するわけにはまいりませんけれども、本問題は、そういう基本的な考えを踏まえた上での御議論が行われておるのではないかというふうに考えております。  ただ私は、この問題がいわばわが国の官僚機構の中で、大蔵省と郵政省のけんかだとか、そういうような考え方になってはいけませんと思いまして、自民党内におりますときから、そういうことをあっせんいたしまして、両方のそれぞれの関係者の方々等で、ニコニコ会という会をつくっていただいて、そこで、にこにこ話し合いしながらそれらのいい結論が出るようにということを推進してまいりましたので、私が臨調答申の結論が出る前に予見を挟むわけにはまいりませんが、にこにこした感じの結論が出てくれるんじゃないかなと期待しております。
  152. 小杉隆

    ○小杉委員 にこにこは結構ですけれども、郵貯懇の答申と郵政審の答申とは非常に食い違っている点があるわけですね。いま御答弁にありましたように、郵貯懇の方は、官業が民業を圧迫すべきでないとかいろいろやっておりますが、一方の郵政審の方は、限度額の三百万円を五百万円に引き上げるとか、個人金融分野への進出とか、資金の自主運用などが提案されておりまして、全く逆の一つ答申が出されているわけです。  こうした郵貯懇の提言と郵政審の意見というものが、同じ政府の諮問機関でありながら全く正反対の結論を出すという奇妙な結果になっているわけですが、いま、その問題については臨調でやっていただいているということですが、これらの二つの答申に対して、その後大蔵省なり郵政省なりはどういう対応をしてきたのか、その点をちょっとお答えいただきたいと思うのです。
  153. 竹下登

    竹下国務大臣 これは御指摘のとおり、ある意味において異質な答申がそれぞれ存在しておるということは事実でございます。したがって、客観的に見る人は、まるっきり百年戦争をやっているのじゃないか、こういうふうにも言われるわけであります。そこで、私も、一つのセクト、セクトで議論をすることを避けて、同じテーブルに着いて議論をした方がいいじゃないかということから、俗称ニコニコ会ということで今日議論をさせてきたわけです。  したがって、今年度予算編成に際しましても、もとより五百万円に上げるべきであるという意見、そして、さらにシルバー貯金でございましたか、高齢者は一千万にしろとか、そういう意見もございました。そして最終的には、この自主運用の問題と今度はわが大蔵省側には財政投融資の原資の確保という問題の二つが残りまして、そこで、私ども与党の金丸代議士のあっせんによって両大臣が話し合いをいたしまして、過去五年間の平均値すなわち七二%を財投原資として拠出し、その残余のものについて、銀行預金と外債と金銭信託の三つに運用の枠を拡大するということで合意に達したわけです。そういう合意が得られたというのも、一つは、両省がそれぞれの垣根を越えて話し合うような環境ができたからではないかなと思っておりますので、基本的には委員指摘のように、臨調の御答申というようなものを、いまその結論を見守っておるということでございます。
  154. 小杉隆

    ○小杉委員 ちょっと確認しておきたいのですけれども、預貯金金利の一元化の決定については、昭和五十七年の一月に郵政、大蔵、内閣官房長官の三大臣が合意をして閣議報告がされております。すなわち「民間金融機関の預金金利が決定、変更される場合には、郵便貯金金利について、郵政、大蔵両省は十分な意思疎通を図り、整合性を重んじて機動的に対処するものとする。」これはあたりまえの合意でありますが、これは現在も生きていると了解してよろしいかどうか。  それから、ことしは公定歩合の引き下げが予想されるわけですが、この場合大蔵省は、金利調整審議会の審議を経て民間金融機関の預金金利の変更を指導されるわけですが、郵貯についても当然横並びの変更がなされる、そのように理解してよろしいのかどうか、この二点伺いたいと思います。
  155. 宮本保孝

    ○宮本政府委員 私どもといたしましては、金利の決定に当たりまして制度的に一元化されることを期待いたしておるわけでございますけれども、しかし当面、さしあたりその点につきましては五十六年九月の、いま先生御指摘の三大臣合意に基づきまして、民間金融機関の預金が変更を決定される場合には、それに追随して郵貯の金利も、これは整合的に機動的にという言葉になっておりますけれども、私どもとしましては、民間に追随して郵貯の金利も決まるということを期待された三大臣合意があるわけでございまして、それに基づきまして、先ほど大臣からお話がございましたが、ニコニコ会というようなものもつくりまして、金利の引き下げ等がありました場合にはそれが円滑に施行されるように、平素から意思の疎通に努めているところでございます。したがって、その三大臣合意に基づきまして現在両省が円滑な話し合いをしているわけでございますので、当然三大臣合意は生きているわけでございます。  それから同時に、次回に預貯金金利の変更がございます場合には、私どもといたしましては、そういうことで平素やっておりますので、当然のことながら、民間預金金利が変更されますれば、円滑に郵貯の金利もそれに追随して変更されるということを期待し、またそうなることをお答えできると思います。
  156. 小杉隆

    ○小杉委員 金利の自由化については、これは非常に奥深い問題でありますから、後日また質問の機会を持ちたいと思いますが、今回は余り触れませんが、現在のような統制的な色彩の強い金利政策のあり方を見直して、やはり金融市場における資金需要に応じて自由に変動する本来の形へ移行を図るべきだと私どもは考えておりまして、そのための条件整備に真剣に取り組んでいかれることを要望しておきたいと思います。  それで、次に質問をいたしますのは国際金融の問題でございます。今週発売の「フォーカス」という雑誌にも最初に「今度は「産油国」が泣く番?」「仁義なき”値下げ競争”で大揺れのOPEC」ということで、一つの原油の価格の引き下げをめぐっての問題を取り上げているわけですが、こうした問題について、これからちょっと質問をしてみたいと思うのです。  今度の租税特別措置法にしても、たばこの定価法にしても、これは一つ税収不足を解消するための対策でありますが、昭和五十六年度と五十七年度の両年度におきまして、それぞれ三兆円とか七兆円とか大幅な歳入欠陥、税収不足があったわけですが、この不足の原因につきましては、それぞれ野党の方から、政府・与党の財政運営の失敗であるとか、いろいろ指摘があったわけです。そのとき総理大臣とか大蔵大臣は、口をそろえて、世界経済が思わぬ不況であったというような答弁をされたわけでございます。  そこで、いまの日本の経済を考える場合に、やはり日本を取り巻く国際経済とか国際金融というものの状況について十分把握をしていかないと、日本の国内のことだけで日本の経済の解決はなかなかできないということでございまして、この点について、まず最初に大臣の御認識、御見解を承っておきたいと思うのです。
  157. 竹下登

    竹下国務大臣 確かに、この一九七〇年代、七一年の要するにドルの兌換制停止というときから、そうして七三年の第一次石油ショック、それに続く第二次石油ショックとでも申しますか、それは、私は予見できなかったと思うのであります。  しかし、予見はできなかったが避けて通れない問題であって、そうして、それに対しては、いわゆる公債政策というのがそれへの対応力を発揮したのじゃないかと思います。そうして、なかんずく、それが限度に来た今日、これからの問題については、予見できませんでしたというような弁解では済まないような状態でございますので、いかに不透明とはいえ、長い耳をそばだてて、それの情報収集等には絶えず気を使っていかなければならぬ、だから、国際会議等にはやはり積極的に参加して、それも一つの情報源として認識して対応していかなければならぬということはつくづくと感じております。その限りにおいて同感です。
  158. 小杉隆

    ○小杉委員 そこで、いまアメリカの週刊誌「タイム」の一月十日号では、デフォルト、債務不履行ですか、そういうことを大きく取り上げて特集を組んでおりますが、その「タイム」の報道によりますと、世界各国の金融機関が開発途上国や東欧諸国に貸している債務は約七千六十億ドル、これは日本の予算の三倍以上に当たって、地球全人口一人当たり百五十四ドルに上るということで、この巨大な借金は、借り手と貸し手の双方を身動きのできない状態に追い込んでいる。そして、この債務の多くは今後全く返済されないかもしれず、どこかで大規模な債務不履行、債権の焦げつきということが起これば、これは全世界で政治的経済的な一つの影響を起こすおそれがあるということを報じまして、具体的には一九八一年の三月に、ポーランドでは、二百七十億ドルの債務のうち同年中に満期となる二十五億ドルを返済できないと発表したわけです。それから八二年の八月には、メキシコが八百億ドルの債務の利子を払えないと発表し、さらに、その直後にはブラジルが八百七十億ドルの債務について返済できないと宣言をしたわけです。IMFの調査によりますと、八一年には債務返済の滞っている国は三十二カ国に上っている、こういう報道がされたわけでございまして、アメリカの銀行は、非常にこの問題でジレンマに陥っている。特に、アメリカの大手銀行の九行を合わせたメキシコ、ブラジル、アルゼンチン向けの融資は、実に自己資本の一三〇%に上っている。しかも、アメリカの銀行の貸し倒れ準備金は三国向け融資の一二%にしかならないというような報道がされております。  そこで、いまこうした世界の債務の実態といいましょうか、特に中南米諸国とか東欧諸国の対外債務というものが、最新の情報ではどのぐらいになっているのか、これはまあ国際外交上いろいろな問題があるかもしれませんが、差し支えない範囲でひとつお答えをいただければありがたいのですが。
  159. 大場智満

    ○大場政府委員 御指摘の債務残高でございますが、OECDの統計によりますと、昨年末、一九八二年末でございますが、開発途上国の債務残高を六千二百六十億ドルと指摘しております。先ほど委員がお触れになりました七千億ドルとほぼ近い数字でございます。  それから、地域別の数字でございますが、こちらは私どもとしては、BIS、これはバーゼルにあります国際決済銀行でございますが、ここの数字をとるほかないわけでございますが、この数字は加盟十五カ国の銀行の報告を集計したものでございますけれども、これによりますと、加盟十五カ国の銀行の貸し付けは、中南米に対しまして約千九百億ドル、それから東欧諸国、これはソ連も含まれますが、東欧諸国に対する貸付残高は約六百億ドルというふうになっております。
  160. 小杉隆

    ○小杉委員 最近の報道によりますと、ペルーもこの週明けの七日には相当額の対外債務の繰り延べ要請をすることが確実視されるということですが、いまいろいろお話を聞いてみますと、特に多額の対外債務を抱えているのは中南米の国々が目立つわけですが、その原因は一体何なんでしょうか。
  161. 大場智満

    ○大場政府委員 中南米諸国に債務残高が大きくなったということは、一つには、拡大的な財政金融政策を長らくとってきたということがあると思います。  それからもう一つは、石油の産出国があるわけでございまして、メキシコ、ベネズエラ等でございます。これらの国は、石油の収入を当てにしましてかなり活発な国内開発計画を進めてきた。ところが、石油の状況がかなり変化してきたものでございますから、そういった収入と支出のバランスが崩れた、そういう面もあるかと思います。
  162. 小杉隆

    ○小杉委員 日本の銀行が中南米あるいは東欧諸国に貸し付けている債権というのは一体どのぐらいあるのか、これは短期の資金あるいは中長期も含めましてどの程度あるのか、教えていただきたいと思うのです。
  163. 大場智満

    ○大場政府委員 国別の数字につきましては、外交上の配慮ということもございまして御容赦いただきたいのでございますけれども、主な国、まあかなりこれは相手国からも出ておりますのでお許しいただけるかとは思いますが、メキシコにつきましては長短合わせまして約百億ドル、ブラジルにつきましては約七十億ドルということでございます。それから東欧諸国につきましては、日本の銀行の関与の度合いがかなり低うございます。いずれも一国に対して多くて数億ドルということでございまして、中南米に比べますと貸し付けはきわめて少ない、こういう状況にございます。
  164. 小杉隆

    ○小杉委員 そうしますと、総額で中南米、開発途上国等で大体どのぐらいになりますか。
  165. 大場智満

    ○大場政府委員 いまわが国銀行の一年超、中長期の貸付残高は約五百五十億ドルぐらいに達しております。これは、円建てそれからドル建ての貸し付けを含めたものでございます。で、このうちの半ばを超えるものが開発途上国向けでございます。
  166. 小杉隆

    ○小杉委員 アメリカがメキシコの問題のときにリーガン財務長官が、ボルカー連銀議長あるいは日本、英国の中央銀行の総裁を招いていろいろ協力をされたと聞いておりますが、大蔵大臣は、十カ国の蔵相会議などでリーガン・アメリカ財務長官とも親しく意見交換をされていると伺っております。こうしたメキシコとかブラジルとかアルゼンチンの問題に対して、アメリカがどのように対処しているのか、大臣はお聞きになっているかどうか。  それから、聞くところによると、アメリカもこうしたところに対する債権が余りふえてきちゃって、これはいざというときに大変だということで、日本に対して巨額の融資の肩がわりを求めてきている。あるいは、現在でも日本からの融資の増額を求めていると聞いておりますが、その辺はどういう状況であるか、お答えいただきたいと思うのです。
  167. 竹下登

    竹下国務大臣 これは、十カ国蔵相会議にまいりますと、いわば債務国に対する認識と申しましょうか、あるいはそれに対する西側先進国の協調融資の対象国とでも申しましょうか、それが、私が前回おりました当時と確かに変わってきておりまして、いまいろいろ御指摘があったとおりでございます。  ただ、個別にもリーガン財務長官とも懇談をいたしましたが、現在国際機関への出資とかという問題になりますと、日本に期待する向きは大変多い、これは確かでございます。ただ、いま直ちにもってそういう債務国に対するいわゆる肩がわりを日本に要請するというような傾向にはまだない、こういうふうに私は思っております。  一つには、日本の銀行というのは非常に信用度が高い。アメリカの銀行は信用度が低いという表現で申し上げたわけではございませんが、数にいたしましても、それは一万五千もあって、そうして中には、個々に債務国に対する融資を脱落していくような傾向がないとは言えないと思うのですが、しかし、それなりに協調しながら、あるいはまた中央銀行も政府も適切な指導をしながら対応しておりますので、いま大きな肩がわりを要請されるという環境にはないというふうに理解していただいて結構じゃないかと思います。     〔委員長退席、中村(正三郎)委員長代理着席〕
  168. 小杉隆

    ○小杉委員 先ほどの答弁ですと、日本がこういう開発途上国、中南米、東欧諸国等に貸し付けているお金が約五百五十億ドルというのですから、十三兆七千五百億円という巨額に上るわけでございまして、いま大蔵大臣答弁ですけれども、日本の経済がいま世界の中でも一番いい状況にあるだけに、恐らく増額を要求されたり肩がわりを要求されることは非常に多くなってくると思うのです。  そこで、いまここに昨年の九月十三日の新聞のコピーがございます。これによりますと、「大蔵省はこのほど、国際金融不安の高まりを受けて邦銀各行の対外融資に対する「指導」と「監視」を強化する方針を決めた。」とあります。これは具体的には、中長期の融資だけに限られていた一国当たりの融資限度額規制自己資本の二〇%以下を短期の融資にも適用するというような内容でございます。これは、対外融資そのものを抑制するものではないにしても、国際金融不安の国内へのはね返りを未然に防ぐという、いわば邦銀に対する保護政策のような方針であったわけです。  ところが、本年の二月十日の新聞報道によりますと、大蔵当局は、対外融資体制の強化ということで、二〇%の上限というガイドラインを見直して、必要に応じて二〇%を超えることも認めるというふうに姿勢を変えてきているわけでございます。今度新しいガイドラインとして七項目の基準を示していますけれども、わずか半年の間でこのように、従来は規制をしていたのを今度はむしろ枠を外すというような変化を示しているわけです。これはどう解釈したらいいのでしょうか。
  169. 大場智満

    ○大場政府委員 委員指摘の問題でございますが、九月の新聞報道は正確ではないと思います。  メキシコ等の問題が起きましたときに、私どもが銀行に対して申しておりますのは、ヨーロッパやアメリカの銀行と一緒に貸し続けなければいけない場面があるということを指導しているわけでございます。しかし、それと同時に、私どもは、かねてからカントリーリスクを考えまして、二つのガイドラインといいますか、指導方針を持っていたわけでございます。一つが、いま委員指摘の、一国に対する貸し付けの限度は自己資本プラス準備金の二〇%にとどめてほしいという要請でございます。もう一つは、一年超の長い貸し付けをする場合には、できるだけ一年超の長い借り入れで賄っていただきたい。運用調達につきまして、私どもはアベイラビリティーリスクと言っているのでございますが、短期の金を借りて長期に貸す場合のリスクが大きいから、長い貸し付けをする場合にはできるだけ長い借り入れで賄ってくれ。この二つの方針をとってきているわけでございます。  ところが、御指摘のように、メキシコにつきましてはきのう五十億ドルの新規の貸し付けが調印されたと思いますが、すでに二〇%まで貸している銀行にとってみますと、この五十億ドルの新規ローンに参加するということは、二〇%のガイドラインを超えるということにつながるわけでございます。したがいまして、国際協調と各銀行の経営の健全性、この両者を調和させる手段として、私どもは、二〇%を超えて貸す場合にはその全額について長い借り入れをしてくれ、三年超の長い借り入れをしてくれ。当然その場合には金利が高くなりますが、そういったコストをかけても安定性を保持してくれということを言ったわけでございます。  したがいまして、私どもは、貸し続けろという要請と、貸し続けた場合にその銀行に不安がないように、これは借り入れの長期化ということで対応している、そのように御理解いただきたいと思います。
  170. 小杉隆

    ○小杉委員 しかし、いまここにある昨年九月十九日の新聞の報道によりますと、邦銀のメキシコ向けの融資残高を見ますと、大体十億ドルを超えている銀行が三つぐらいあります。日本のお金にして大体二千五百億円以上で、しかも貸付残高は、それぞれの銀行の自己資本に対する比率を見ますと、多いもので八〇%を超えておりますし、少ないものでも三八%から四〇%というふうになっているわけです。ですから、大蔵省がガイドラインとして示している二〇%を大幅に超えているわけですけれども、いまメキシコに対する邦銀の融資残高の自己資本に対する比率というのは、大体どんな傾向になっているのでしょうか。
  171. 大場智満

    ○大場政府委員 ただいま御説明しました指導方針でございますが、これは、一年超の中長期の貸し付けにつきまして、自己資本プラス準備金の二〇%を一国に対する貸し付けの限度にしてくださいという指導をしているわけでございます。九月時点で見ますと、各銀行とも二割の範囲内にとどまっております。外国為替専門銀行はより大きな比率を認めておりますけれども、各銀行につきましては二〇%ということでやっておりまして、いずれもその範囲内にとどまっているわけでございます。  ところが、短期の貸付——ですから逆に言えば、長期の貸し付けが二〇%に近づいたために短期の貸し付けを用いたということがあるかもしれません。現在は、短期の貸し付けに対しまして相手国からこれを長期に切りかえてくれという要請とか、あるいはヨーロッパやアメリカの銀行と一緒に新たな貸し付けをしなければ金利が支払えないという状況になってきておりますので、そういう場合には、新たにニュークレジットということで貸し付けをやるわけでございます。そうしますと、幾つかの銀行につきましては、すでに自己資本プラス準備金の二〇%に来ておりますので、それを超過していくという事態が出てくるわけでございます。この銀行につきまして、私どもは、その超えた部分については全額を三年超の長い借り入れで賄ってくれ、そうすれば、たとえば六カ月の資金でもって回すよりはその銀行の経営の安定性が確保できるのではないかという考え方で対応しているわけでございます。
  172. 小杉隆

    ○小杉委員 これはなかなか専門的で、私もまだ十分理解ができないわけですけれども、今度の新しいガイドラインでは、必要に応じて二〇%を超えてもいいということになっておりますが、これは全くの青天井で限度がないと考えていいのか、それとも、何らかの限度基準というものを考えておられるのか。それから、外貨資産については自己資本の十五倍程度に抑制をしろというようなことでありますが、これらの点はどういうふうに考えたらいいのか、お答えいただきたいのです。
  173. 大場智満

    ○大場政府委員 まず、第一点の二〇%の問題でございますが、二〇%を超えないようにしてほしいという要請は変えておりません。ただ、各国との協調上どうしても貸し付けざるを得ない場合があるわけでございまして、そういった特別の場合だけに限って二〇%を超える貸し付けをやっていただく、その場合には借り入れの方で十分配慮してください、このような指導をしていくわけでございまして、できるだけ二〇%を大きく超えないように考えておるわけでございます。  それから、一般的に二〇%を超えていいという指導はしておりません。これは新聞があるいは正確に伝えてないのかと思いますけれども、私どもの指導は五項目でございます。七項目ではございません。  いま御指摘の問題も、その一点でございますけれども一つはカントリーリスクに対する把握体制を強化してくれ、二つ目が先ほど御指摘がありました運用調達比率の問題でございます。三番目が中長期の調達手段の多様化を図るということ。四番目にはいま御指摘になりました外貨資産と負債のバランス上の問題でございます。最後には債務繰り延べされた外国政府等に対する引当金について検討する、これが五項目なんでございます。  いま、十五倍という御指摘がございましたが、これは四番目の外貨資産と負債のバランス上の流動性向上策という点に関してのものかと思いますが、私は、この点につきましては、日本の銀行にできるだけ手元を豊かにしておいてくれ、というのは、たとえばアメリカの財務省証券、TBを買うというようなことも考えてくれという指導をしております。TBですといつでも売れますし、いつでもキャッシュに変わるわけでございますから、そういった手元の流動性を安全でしかも流動性といいますからすぐ売りさばけるような資産で持っていただきたいという指導はしております。しかし、いま御指摘の十五倍とか十二倍とかという指導はまだしておりません。
  174. 小杉隆

    ○小杉委員 これ以上専門的なやりとりをやっているにはちょっと時間が少ないので、私は、これからの日本に対してアメリカなりヨーロッパ各国から、もっと日本が経済力にふさわしい資本市場の面でも貢献すべきだ、開発途上国、中南米あるいは東欧諸国に対してもっと市場を開放しろ、保護主義はいかぬ、国際協調ということでそういう要請がどんどん来ると思うのですね。     〔中村(正三郎)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、一方において、やはり日本の銀行を保護していかなければいけないということで、これは、いわば日本の銀行の経営を安定させるというのと、諸外国との協調あるいは日本の国際社会の中での役割りという点とは、ある意味では矛盾する面があると思うのですね。いまの市場開放と貿易摩擦解消ということが相矛盾すると同じようなことが、資本市場においても起こり得ると思うのですが、恐らくアメリカあたりからあるいはヨーロッパあたりから日本に対して、こういう資本市場に対する役割り分担というものをもっともっとふやせという要請が強まってくると思うのですが、こういう点に関してひとつ大蔵大臣、どのような姿勢で臨まれるのか、お答えいただきたいと思うのです。
  175. 竹下登

    竹下国務大臣 国際社会の中で日本の果たすべき役割りといたしまして、たとえばODAそのものも倍増というようなことを言っておりますだけに、そういう要請は強まってくるという認識の上に立っております。そして、それはより安全な形においてそのニーズに対応しなければならぬ問題であろう。  一方、いま一つのサービス部門の摩擦の問題におきましては、言ってみれば、他の先進国から日本に対しての金融活動の自由化とでも申しましょうか、そういう要請であります。それについては、それぞれいわば預金者保護というような感じ、あるいは証券で言えば投資家保護というような感じが徹底しておるのが日本の金融証券界ではないかという意味においては、相手国からの要請の中には、最終的には銀行法をみんな世界共通のものにしなければ間に合わぬような要請も中にはございますけれども、それらはやはり御説明申し上げて、余り大きな摩擦というようなものは今日なくて、むしろ円滑に行われておるという、両面にわたって国際金融局なり銀行局なりが絶えず注意をしながら対応していけば、相反するような二つの問題でございますが、対応できるだけの力はあるというふうに私は認識をいたしております。
  176. 小杉隆

    ○小杉委員 日本がこれから世界の財政金融の中で大きな位置を占めるわけでございますが、資本市場で開放政策をとっていくと同時に、日本の銀行の保護という点で非常に兼ね合いがむずかしいと思うのですが、そういう点は、やはり日本の預金者である国民の資産の保全ということも真剣に考えてやっていただきたいということをお願いをしておきます。  最後に、最近の原油価格の下落が国際金融に与える影響について一言伺っておきたいと思いますが、これは先ほど来お話が出ておりますように、原油の値下がりによってOPEC諸国の国内財政事情に悪影響が生ずることは容易に想像できるわけです。原油販売の収入だけでは財政を運営できないような状況になった場合、これらの国々は多額の海外資産の取り崩しをするのではないかと外務省あたりは分析しているようでありますが、こうしたおそれが全く杞憂であると言い切れるかどうか、この点についてまず伺いたいと思うのです。
  177. 大場智満

    ○大場政府委員 OPEC諸国の対外資産でございますけれども、現在、これはバンク・オブ・イングランドの資料をもとにして推計いたしますと、三千八百億ドル近くに達するのではないかというふうに見ております。これは運用資産として見る場合です。借り入れは考えておりません。その場合に、大部分がローアブソーバーといいまして湾岸諸国を中心とする国々の資産でございます。たとえば人口が多く石油収入に比して輸入額が多い国、これはハイアブソーバー諸国と言っておりますが、具体的にはアルジェリア、ナイジェリア等々でございます。こういった国々の資産というのは、それほど多くないわけでございます。  私は、前者、湾岸諸国等につきましては、今後とも資産が減少することはないと思っております。それは、経常収支の黒字が減ったといいましても、なおかつ黒字は計上できる国々でございますし、いままでの資産収入も大きいわけでございます。その金利収入も大きいわけでございますし、こういった国々は、資産を減らす、つまり引き揚げるということにはならないというふうに見ております。  それから、もう片方の国々、ハイアブソーバー諸国でございますが、こちらは、すでにいままでに資産というものはなくなってしまっております。預金とかいろいろな形で世界各国に預けていたかと思いますが、もうほとんどなくなっておりまして、むしろ、これからの問題は借り入れがふえていくということだと思います。しかし、伝えられている原油価格の下落、引き下げが四ドルぐらいでございますと、その借り入れの増加額はそれほど大きくないというふうに見ておるわけでございます。
  178. 小杉隆

    ○小杉委員 時間が参りましたので、これで終わります。     ─────────────
  179. 森美秀

    森委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  租税特別措置法の一部を改正する法律案について、参考人の出席を求め意見を聴取することとし、その日時及び人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ────◇─────
  181. 森美秀

    森委員長 造幣局特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案につきましては、去る二日、質疑を終了いたしております。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。中西啓介君。
  182. 中西啓介

    ○中西(啓)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意見を述べるものであります。  御承知のとおり、昭和五十八年度においては、最近における税収伸びの急激な鈍化等もあり、五十七年度以上に厳しい財政事情となっております。  このため、五十七年度に引き続き、歳出の節減合理化によって財政再建を推進するという方針のもとに、いわゆる原則マイナス五%シーリングの設定によって、徹底した歳出のカットが行われ、特に一般歳出については、前年度同額以下にまで抑制したところであります。しかし、このような努力にかかわらず、なお特例公債を含む多額の公債を発行せざるを得ない状況にあります。  加うるに、五十六年度決算不足の補てんに伴う決算調整資金から国債整理基金への繰り戻しという課題が存在するのであります。  国債整理基金への繰り戻しについては、財政運営の節度の維持等の見地から、できる限り速やかに始末をつけるべきものであるところから、法律の規定どおり五十八年度までに繰り戻しを実施することが適当であると考える次第であります。  しかも、この国債整理基金への繰り戻しは、過去に生じた一般会計決算上の不足の補てんに要した資金の返済という性格のものであることから、その繰り戻しの実施に当たって新たな借金である特例公債の増発を招くことは極力避けるべきであると考えられます。  このような見地から、政府においては、歳出の徹底した節減合理化を行うとともに、税外収入全般にわたる厳しい見直しを通じて増収を見込んでいるところであり、本法律案における補助貨幣回収準備資金の取り崩しを初め、特別会計、特殊法人からの納付について、できる限りの協力を求めていることは、時宜に適した適切な措置として評価するものであります。  もとより補助貨幣回収準備資金制度は、補助貨幣の引きかえまたは回収に充てるための資金を保有し、補助貨幣の信認の維持を図るという趣旨で設けられたものでありますが、現在の厳しい財政事情のもとで、改めてこの制度のあり方について見直せば、これまでの制度運営の経験や欧米諸国の実例等にかんがみ、現実には、補助貨幣の発行現在額と同額の資金を保有する必要はないものと考える次第であります。  したがって、本法律案におきまして、今後、補助貨幣回収準備資金が保有する現金の額を、補助貨幣の引きかえ、回収及び造幣局事業の運営に必要な一定の額を予定し、それを超える額は、これを取り崩し、一般会計財源として使用することとしていることは妥当な措置として賛意を表するものであります。  以上、私は、補助貨幣回収準備資金の取り崩しが現在の厳しい財政事情のもとでは必要かつやむを得ざるものであると考えますとともに、今後の造幣局の事業の円滑な運営のために、政府が今後一層努力されるよう切に希望いたしまして、本法律案に対する賛成討論を終わります。(拍手)
  183. 森美秀

  184. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表いたしまして、ただいま議題となっております造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に反対の討論を申し述べたいと思います。  反対をする第一の理由でありますが、この法案は、国民的な要求となっている所得税減税と深いかかわり合いを持っているのであります。この点からして、どうしても納得できません。昨年、五十七年度減税に関連をいたしまして、私ども野党から、この特別会計の一部を減税財源に回すように強く要求をいたしたのでありますが、昨年の国会における政府答弁は、この制度が制度として必要であるという答弁でありました。しかるに本年、この五十八年度予算に関連をしてその答弁を一変して、財政赤字を補てんするための税外収入財源としているのであります。  このような態度を見ますと、一つには、国民の切実な要求である五十七年度減税を妨害をしたこと、また二つ目には、国会において政府が場当たり答弁を行ってきたということでありまして、許しがたいものであります。しかも、所得減税について、政府が本来的な責任を持って所得税物価調整を行うべきところ、それを行わずに、昨年、本年とこのような措置をとっていることは容認できないところであります。  二つ目の反対の理由は、この法案に象徴されるきわめて不健全なやりくり予算の編成についてであります。  本年、五十八年度予算につきまして約四兆七千億の税外収入、昨年度比八三・二%増、これが予算編成歳入の大きな部分を占めているわけでありますが、その姿を見ますと、先送り、前倒し、しかも膨大な額、きわめて不健全な状況になっているわけであります。予算は政府の顔と言われるわけでありますが、そう言うとするならば、このような法案の措置をとって行っている政府の顔は大きく、あるいは相当ゆがんだものになっているというふうに言わなければならないと思います。財政再建が破綻に破綻を重ねている状態をこの法案が象徴しているということではないかと思います。  第三の理由は、この特別会計を含めまして、特別会計全体の扱いについていいかげんさを示しているということであります。  現在、特別会計の総額が、臨調部会でも指摘されておりますように百七兆円、一般会計の約二倍、しかも一般会計の約五〇%が特別会計に繰り入れられている。そのような現実があるにもかかわらず、総体的な改革が非常におくれてまいりました。そうして、その見直し、運営の改善が強く指摘をされているところであります。言うならば、そのような状態において、不明確に置いた中から赤字の埋め合わせに引っ張り出してくる、そういう便宜的なやり方を了承することはできないというふうに考えるわけであります。  以上、三点の立場から、本法案に反対の態度を表明するものであります。(拍手)
  185. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  186. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に対し、反対の態度を表明し、討論を行うものであります。  本法案は、わが国財政が巨額な歳入不足を抱えながらも、赤字国債の発行をできるだけ抑制することを主な目的とするものであります。われわれも、赤字国債の発行を抑制するために、特別会計の特殊性などに配慮しながら、特別会計を全面的に洗い直し、余裕金及び剰余金等について一般会計へ繰り入れることを否定するものではありません。したがって、本法案の趣旨については評価する点もないわけではありません。  しかし、振り返りまするに、昨年われわれは、本法案と同様に、補助貨幣回収準備資金の一部を取り崩し、所得税減税や人事院勧告の実施財源として活用することを要求いたしました。われわれの要求に対し政府・与党は、補助貨幣の信認維持などを理由に明確な拒否回答をしたのであります。にもかかわらず政府は、みずからの失政が招いた財政赤字の穴埋めのために、五十八年度ではわれわれの要求額をはるかに上回る補助貨幣回収準備資金の取り崩しを実行しようとしているのであります。こうした政府の姿勢は、明らかに国民生活を軽視するものであります。また、御都合主義的な財政運営もはなはだしいものでもあります。したがって、本法案には賛成できないのであります。  以上の理由で反対を表明いたしまして、討論を終わります。(拍手)
  187. 森美秀

  188. 米沢隆

    米沢委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  本改正法案において一兆一千六十四億円の取り崩しが予定されております補助貨幣回収準備資金は、御案内のとおり、もとをただせば明治三十年に金本位制がしかれた際にできた制度であり、その後、管理通貨制度に移ってからも、昭和二十五年にできた造幣局特別会計法により継続されることになったものであります。  この補助貨幣回収準備資金は、補助貨幣硬貨の所有者から硬貨と紙幣の交換要求があった場合、これに応じることができなければ補助貨幣の信認が得られないという考え方のもとに、現在発行しております補助貨幣の発行残高に見合う資金を政府資金として積み立てておく制度であります。  この準備資金制度が想定しておる、国民が一斉に硬貨を紙幣にかえるよう求めるような事態はとうてい予想されるものではなく、全く非現実的なものであったことも事実であります。まさにこの制度は、お金と金(きん)とを交換することを義務づけていた金本位制時代の時代おくれの遺物と言うべきしろものであり、本制度が廃止されることになったこと自体、わが党は異を唱えるものではありません。  わが党は、昨年の五十七年度予算審議の過程で、この制度の廃止と準備資金の取り崩しを主張し、その財源をもって国民の切実な要求である所得税減税を行うよう、他野党とともに政府に強く求めたのであります。  これに対して財政当局は、硬貨と引きかえる資金の準備が十分でないと、場合によっては日銀がお札を増発して引きかえに応じざるを得なくなり、インフレ助長につながるとか、準備資金は実際に金が余っているわけではない、財投計画などで使い道が決まっている、財投計画に穴をあけることはできないと反論し、また与党の政策責任者は、貨幣に対する裏づけがないと、日銀が輪転機を回して貨幣を発行することによってインフレになる、制度の廃止を安易に行うべきではないと公の場で主張してきたのであります。  しかるに、今回制度を廃止するに際し、政府・与党は、前述のようなこれまでの主張を全くなかったかのごとくに取り下げ、それらの主張の中で示した幾つかの懸念について、国民に対し何らの説明も弁明も行わなかったことはきわめて遺憾であります。野党が求める減税のために使うには問題があるが、みずからが行う予算の財源確保のためなら何ら問題がないとする財政当局の安易で恣意的な姿勢は、かねてより各方面において指摘されております大蔵省の独善そのものであると言わざるを得ません。  この点につき、大蔵省の強い反省を求めつつ、反対の討論を終わります。(拍手)
  189. 森美秀

    森委員長 蓑輪幸代君。
  190. 簑輪幸代

    ○蓑輪委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっております造幣局特別会計法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。  反対の理由の第一は、この法案による貨幣回収準備資金積立金の一兆円を取り崩すという今回の措置が、軍拡と大企業優遇の五十八年度予算の財源確保するためのものだということです。  今日のような財政危機のもとでは、国民のためにならない不要不急の経費を徹底的に削り、大企業、大資産家優遇の不公平税制を是正するのが先決、当然のことです。ところが逆に、軍事費等安保関連予算を大幅にふやし、そのツケを所得税減税の見送りやこの貨幣回収準備資金の取り崩しなどに回す措置をとっています。これでは、予算と税制そのもの財政危機を激しくすることに加え、今回の措置による当面の糊塗策で財政再建のための抜本的な対策を先送りするものとなっていると言わざるを得ません。  第二は、国民の財産を食いつぶして、積立金の将来における国民のための活用の道を閉ざしていることです。  五十八年度末で一兆四千三百億円に及ぶと見られた補助貨幣回収準備資金の積立金残高は、補助貨幣発行の見合い資産として事業収入の中から積み増し、積み残してきた、まさに国民の財産です。この取り崩しは、本来、国民の求める目的のために行い、国民に還元されるべきものです。ところが今回の措置は、いわば政府・自民党の過去の失政のツケである財源不足を賄うために、国民の財産を取崩そうとするものにほかなりません。  以上に加え、最後に申し上げたいのは、昨年までは、国民向け施策のためにとして取り崩しを求められた際には、あれこれの口実でそれを退けながら、今回はみずからの都合となると事もなく実施したということです。財政は国民のものです。政府の手前勝手な方針転換はとうてい認めがたいものです。政府は、国民の声、国会の審議に誠意を持って真剣に対処すべきであることを強調し、反対討論を終わります。(拍手)
  191. 森美秀

    森委員長 小杉隆君。
  192. 小杉隆

    ○小杉委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、今回議題となっております造幣局特別会計法の一部を改正する法律案について反対の立場から討論いたします。  この法案に盛り込まれた補助貨幣回収準備資金はさきの国会中から、所得税減税財源一つとしてわれわれが提案してきたものであり、政府当局は減税財源としてふさわしくないとの見解を示し続けてきたものであります。国民の大多数の願いであり、景気対策上も緊急に実施が必要とされている所得税減税財源にすらできないものを、政府財政運営の失敗の穴埋めに使うことが許されるはずはありません。  また、長期間蓄積してきたものを臨時の穴埋めのために取り崩すのは、その場しのぎとしか言いようがなく、この点でも問題があります。  そもそも、こうした臨時の措置は、三Kを初めとする行政のむだ、非効率を解消した後になお、やむを得ない場合にのみ認められるべきものであって、今日のように行政改革が遅々として進まない状況をそのままにして単なる帳じり合わせに走る政府のやり方に、国民は決して納得しないと思うのであります。  去る昭和五十六年度にわれわれの反対を押し切って取り崩した国債整理基金への繰り戻し期限が、本年度到来したため、とらの子とも言うべき財源を取り崩そうとしています。これは強いて言うならば右のふところから左のふところへ財布を移しただけであって、何ら抜本的な解決にならないものであります。しかも、税収不足を補うために国債整理基金から繰り入れ、この資金の取り崩し分をまた他の財源から行うといったいわばサラ金財政のようなやり方は、将来の国家財政に大きな汚点を残すことは避けがたいところであります。  こうした安易な財政運営に歯どめをかけ、真に国民本位の財政再建を進めるためにわれわれ新自由クラブ・民主連合は本法案について、反対を表明し、改めて、政府の猛省を促し、反対討論といたします。(拍手)
  193. 森美秀

    森委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     ─────────────
  194. 森美秀

    森委員長 これより採決に入ります。  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  195. 森美秀

    森委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ─────────────
  196. 森美秀

    森委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、大原一三君外四名より、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新自由クラブ・民主連合五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。野口幸一君。
  197. 野口幸一

    ○野口委員 ただいま議題となりました造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案について、提出者を代表して、提案の趣旨の御説明を申し上げます。  昭和五十八年度予算の重要な裏づけとなる本法律案は、現下の厳しい財政事情のもとで、一兆一千億円に上る金額を税外収入として確保一般会計に繰り入れようとするものであります。  本案の審査過程におきましては、取り崩す金額の使途、補助貨幣回収準備資金に属する現金の積立金額の適否、その他について幅広い質疑が交わされたところであります。  そのうち、特に特別会計制度のあり方については、一般会計予算規模を大幅に上回る状況から、その管理運営について種々改善すべき点が指摘されましたし、また、今回のように多額の税外収入に依存するようなことは行わないようにし、健全な財政の運営を図るべきである等の指摘がなされました。  本附帯決議案は、このような種々の論議を踏まえ、政府になお一層の配慮を強く要請するものでありまして、趣旨は案文で明らかでありますので、案文の朗読によって内容説明にかえさせていただきます。     造幣局特別会計法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について十分配慮すべきである。  一 特別会計の設置については、極力これを抑制するとともに、借入金の運用及び特別の資金保有の見直し、会計経理の明確化等その運営の改善に努めること。  二 今後の財政運営にあたり、税外の臨時的な財源に依存することのないように留意しつつ、財政の健全化に向け格段の努力を行うこと。  三 造幣局事業について、今後、国民の需要に即し、記念貨幣の発行、貨幣セットの製造等が弾力的に行えるよう検討すること。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  198. 森美秀

    森委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  199. 森美秀

    森委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  200. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  201. 森美秀

    森委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 森美秀

    森委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  203. 森美秀

    森委員長 次回の委員会は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会