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1983-02-22 第98回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十二日(火曜日)     午後二時五十四分開議  出席委員    委員長 森  美秀君    理事 大原 一三君 理事 粕谷  茂君    理事 中村正三郎君 理事 伊藤  茂君    理事 野口 幸一君 理事 鳥居 一雄君    理事 米沢  隆君       今枝 敬雄君    木村武千代君       熊川 次男君    小泉純一郎君       椎名 素夫君    白川 勝彦君       平沼 赳夫君    森  喜朗君       森田  一君    柳沢 伯夫君       山崎武三郎君    与謝野 馨君       阿部 助哉君    上田 卓三君       塚田 庄平君    戸田 菊雄君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君       柴田  弘君    正木 良明君       玉置 一弥君    正森 成二君       蓑輪 幸代君    小杉  隆君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 竹下  登君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    横溝 雅夫君         大蔵政務次官  塚原 俊平君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      水野  勝君         大蔵省主計局次         長       窪田  弘君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁次長   酒井 健三君         国税庁税部長 角 晨一郎君  委員外出席者         大蔵省造幣局長 石川  周君         大蔵委員会調査         室長      大内  宏君     ───────────── 二月九日  所得税物価調整制度に関する法律案(第九十六回国会衆法第三号)の提出者堀昌雄君外八名」は「堀昌雄君外七名」に訂正された。 二月十八日  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  製造たばこ定価法及び日本専売公社法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号) 同月二十二日  災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号) 同月九日  申告納税制度改悪反対等に関する請願堀昌雄紹介)(第三九五号)  一兆円所得減税に関する請願中路雅弘紹介)(第三九六号)  みなし法人課税制度期限延長に関する請願外八件(永田亮一紹介)(第三九七号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願愛野興一郎紹介)(第三九八号)  同(木野晴夫紹介)(第四七五号)  医業税制の確立に関する請願堀昌雄紹介)(第四二七号)  同(沢田広紹介)(第四九九号)  不公平税制の是正、国民生活擁護財政再建に関する請願外一件(吉原米治紹介)(第四二八号)  納税者記帳義務法制化反対等に関する請願吉原米治紹介)(第四二九号)  同(米田東吾紹介)(第四三〇号)  中小企業事業承継税制実現に関する請願小沢貞孝紹介)(第四五五号) 同月十六日  中小企業承継税制創設促進に関する請願小沢一郎紹介)(第五五三号)  南方軍国鉄派遣第四・第五特設鉄道隊軍属処遇改善に関する請願村山喜一紹介)(第五五四号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地払い下げ等に関する請願上田哲紹介)(第五九六号)  同(高沢寅男紹介)(第五九七号)  同(長谷川正三紹介)(第五九八号)  同(山花貞夫紹介)(第五九九号)  同(山本政弘紹介)(第六〇〇号) 同月十八日  税制改革に関する請願岡田正勝紹介)(第八二四号)  同(近藤豊紹介)(第八二五号)  同(永末英一紹介)(第八二六号)  同(西田八郎紹介)(第八二七号)  みなし法人課税制度期限延長に関する請願野呂恭一紹介)(第八二八号) 同月二十一日  申告納税制度改悪反対等に関する請願蓑輪幸代紹介)(第八五八号)  大幅減税申告納税制度改悪反対等に関する請願安藤巖紹介)(第八五九号)  同(金子満広紹介)(第八六〇号)  同(林百郎君紹介)(第八六一号)  同(不破哲三紹介)(第八六二号)  同(藤田スミ紹介)(第八六三号)  同(正森成二君紹介)(第八六四号)  同(松本善明紹介)(第八六五号)  税制改革に関する請願草川昭三紹介)(第八六六号)  同(小沢貞孝紹介)(第九三四号)  同(岡田正勝紹介)(第九三五号)  同(木下敬之助紹介)(第九三六号)  同(永末英一紹介)(第九三七号)  同(和田一仁紹介)(第九三八号)  同(大内啓伍紹介)(第九八六号)  同(小渕正義紹介)(第九八七号)  同(和田一仁紹介)(第九八八号)  一兆円所得減税に関する請願伊藤茂紹介)(第九六三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 二月十七日  自動車重量税等増税反対に関する陳情書外三件(第二二号)  納税者記帳義務法制化に関する陳情書(第二三号)  出資法改正案及び貸金業規制等に関する法律案反対に関する陳情書(第二四号)  所得税大幅減税に関する陳情書外一件(第二五号)  たばこ塩専売制度存続に関する陳情書外二件(第二六号)  塩専売制度存続に関する陳情書外二件(第二七号)  中小企業事業承継税制創設に関する陳情書外三件(第二八号)  たばこ専売制度存続に関する陳情書外六件(第二九号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ────◇─────
  2. 森美秀

    森委員長 これより会議を開きます。  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府より提案理由説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  造幣局特別会計法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいま議題となりました造幣局特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  造幣局特別会計補助貨幣回収準備資金制度は、補助貨幣引きかえまたは回収に充てるための準備資金を保有するために設けられたものであり、昭和四十四年度以降は、補助貨幣発行現在額に見合う回収準備資金を保有して、現在に至っております。  しかしながら、現在の厳しい財政事情のもとで、改めてこの制度のあり方について見直しますと、これまでの制度運営経験等にかんがみ、現実には、補助貨幣発行現在額と同額回収準備資金を保有する必要はないものと考えられます。  したがいまして、今後は、回収準備資金の額が補助貨幣引きかえまたは回収その他造幣局事業等に必要な一定の金額を超えるときは、その超える額を取り崩して毎年度一般会計財源として使用することとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  毎会計年度末における回収準備資金の額が、補助貨幣引きかえまたは回収その他造幣局事業状況を勘案して政令で定める額を超えるときは、その超える額に相当する金額を同資金から一般会計歳入に繰り入れることといたしております。  また、この措置に伴いまして、回収準備資金に属する現金に不足があるときは、一時借入金をすることができることとするほか、回収準備資金不足によって支障が生ずることとなった場合における一般会計からの同資金への繰り入れについて、規定の整備を図ることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 森美秀

    森委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     ─────────────
  5. 森美秀

    森委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  6. 上田卓三

    上田(卓)委員 本法案改正趣旨は、造幣特会の中の補助貨幣回収準備金一般会計に繰り入れるということが趣旨のようでございます。そういう意味で、それに関連いたしまして、まず、いま国民的な要望であり、また同時に政治的問題にもなっております所得税減税につきまして冒頭に御質問を申し上げたい、このように思うわけでございます。  御存じのように、非常な物価高が依然として引き続いておるわけでございまして、特に勤労国民、とりわけ低所得者層には非常に深刻な生活苦となっておることは御存じだと思うわけでありますが、それに加えて、いわゆる名目賃金が上がり、物価が上がる、こういう状況のもとで六年間課税最低限が据え置かれてきたという状況の中から、いわゆる自然増収という名の実質増税がなされておる、こういうことではなかろうか、このように思うわけであります。  先般の本会議でも、私は、中曽根総理並びに竹下大蔵大臣にもるる申し上げたわけでございますが、この六年間で何と四兆六千億円の巨額の金が自然増収という形で実質増税が図られておるということでございまして、サラリーマン所得に対する源泉課税は、一九七七年の三兆二千八百四十億円に対して一九八三年度予算では実に七兆八千九百億円、一人当たり十三万四千円から二十三万四千円に増額いたしておるわけでございまして、納税人員は二千七百九十八万人から何と八百六十五万人もふえておりまして、三千六百六十三万人に実は達しておるわけでございます。このことから見ましても、この六年間に、本来ならば所得税を納めなくてもいい人たちから、物価上昇によって八百六十五万人も余分に納税者がふえているということをあらわしておる、このように思うわけでございます。こういう大幅な実質増税を考えますと、まさしく憲法理念としての租税法律主義といいますか、議会のコントロールを全く欠いておるという状況で、憲法理念に反するのではなかろうか、このようにも考えておるわけでございます。  また、先ほど申し上げましたように、物価上昇によるところの実質増税は、低所得者層にこそ大きな負担のかかる逆進的な性格を持っておるわけでございまして、そういう意味応能負担の原則に反するゆゆしき問題でありまして、財源理由にして減税を渋る性格のものではない、このように考えておりますので、大蔵大臣の明確な減税に対する考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  7. 竹下登

    竹下国務大臣 これは五十三年度以来、御指摘のとおり所得税課税最低限据え置き等によりまして所得税負担が上昇しておるとして、減税を望む声がきわめて強い、このことは十分承知いたしております。  しかしながら、わが国の財政は大変深刻な状況にありまして、一般歳出を前年度同額以下とする等の歳出削減に努める一方で、税制面でも租税特別措置整理合理化等を図るなどして、税負担公平化適正化を一層推進することといたしておるわけでございますが、それでもなお税収による歳出カバー率は六四・一%、異常に低い水準であります。そしてまた、所得税負担の割合が上昇してきておるといたしましても、昭和五十六年度で見ますと四・九%、国際的に見ればまだ低い水準にございます。  そこで、税制調査会におきましても、基本論から申し上げますと「五十八年度において所得税見直しを行うことは財政状況等から見て見合わせざるを得ないとの意見が大勢を占めた。」という答申をいただいておりますので、減税を見送ることとしたわけでございます。この問題につきまして税制調査会は、さらに昭和五十九年度以降できるだけ早期に、税制全体の見直しを行う中で、所得税の御指摘課税最低限やまた税率構造について抜本的な検討を行う必要がある、こう言われておるわけでございます。  したがって、また委員御承知のように、昨年の三月六日、各党間の協議によりまして議長見解が出され、それに基づいて本委員会の小委員会でも種々専門的な角度から御議論をいただいた、その経緯等も踏まえながら、そして単なる数字上の問題だけでなく、大きな政治問題となっておるという見地から各党間でいま協議をしよう、こういうことになっておることは私どもも承知しております。したがって今日、強いて申しますならば、その協議の推移を見守っておるということが現段階で正直なところ申し上げられる限界ではなかろうか、こういうように考えております。
  8. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにいたしましても、この六年間に四兆六千億円という税金が余分に取られておるということでありますし、特に八百六十五万人もの方が本来ならば税金を納めなくてもいいのに納めなければならぬというようなことで、本当に私は反人道的な問題ではなかろうかと考えておるわけでございまして、この自然増収という実質増税は、そういう意味では本当に憲法違反だと言わざるを得ない、私はこういうように思っておるわけでございます。  これは、減税という言葉自身が非常に語弊があるわけでございまして、余分に取った税金をもとに戻すということでありまして、何も税金をまける、減税という性格のものじゃなしに、物価調整という形で恒久的な税制として、単年度の問題じゃなしに、こういう物価上昇が起きたときには自動的に是正するという性格のものではないか、私はこういうように考えております。そういう点で、大蔵大臣のこの問題に対する認識が非常に不十分であると私は考えざるを得ない、このように思うわけであります。  特に、昨年の衆議院議長のいわゆる見解、あるいはさらに減税小委員会でも減税必要性については各党合意をしておるわけでございますし、また減税方式も、いわゆる単年度の戻し方式ではなく、きちんとした恒久税制、こういうことでも合意しておるのではないか、このように考えておるわけでございます。しかも、当時の竹下幹事長代理は腹をたたいて五十八年度は実施すると語った、こういうように今朝の予算委員会でわが党の藤田議員が述べておられるわけでございまして、また減税問題は、塩崎経企庁長官が、これも今朝予算委員会で、課税最低限が五年間据え置かれたもやもやを取り除く政治問題である、こういうように述べておるようでございます。  そういう意味で、こういう非常に大きな政治問題となっておる問題でありますだけに、各党合意を待って云々というようなことじゃなしに、また今朝においても、各党合意最大限尊重、こういうことでございますが、やはりこれは憲法問題にもかかわる大きな問題であろう、このように考えておるわけでございまして、財源問題に矮小化してとらえる問題じゃなしに、この時点で中曽根内閣として、竹下大蔵大臣として決断をするときに来たのではないか、このように考えておりますので、そういう官僚的な答弁じゃなしに、はっきりと国民お答えをいただきたい、このように思います。
  9. 竹下登

    竹下国務大臣 率直に申しまして、昨年の三月六日、私が自由民主党を代表して各党協議の場に出かけさせていただいたわけであります。結果は、政調、政審レベル責任者の方に工夫をしていただきまして、それが議長見解となったわけであります。  したがって、当時、私自身記憶を呼び戻してみましても、いわば歳入欠陥がある意味において予測されるではないかというところから戻し税は期待できない、そうすれば第二のケースとして大きな政策転換が行われた場合、そして第三番目のケースとしてオーソドックスに五十八年度予算編成に当たって税制調査会等もろもろの手続を経て行うというような三つの場合を想定して、種々議論をしたわけであります。  基本的に申し上げますのは、そのとき私どもが不覚であったと言えば、いわば結果的に六兆一千億の歳入欠陥をもたらすというような見通しというものができなかった、これはやはり責められるべきは私もその一人であろうというふうに思っております。  そういう環境の中に今日を迎えたわけでございますし、いま御意見がございましたように、山中小委員長中間報告を見ましても、いわゆる必要性については各党意見の一致を見た、さらにその手段は恒久税制改正によるべし、こういうことでございます。そして議論の過程においては、戻し税はやめようとかあるいは一過性のものはやめよう、また赤字国債によらないことにしよう、そういうような御意見がそれぞれ出された結果として、財源対策については今後も検討を続けよう、こういうことで中間報告となった。  したがって、私どももそういう経緯を踏まえながら、そこでぎりぎりの決断としていわゆる所得減税を見送ったということでございますので、いま国会で御審議いただいております予算案等からすれば、これは現状において最善のものとして内閣一体責任で御審議をいただいておる。そういうことになれば、また、その五十兆のいわゆる歳入歳出規模の中で財源を見出すとすれば、予算修正とかそういうことも当然関連をしてくるという状態でありますだけに、総理も申し上げておりますように、いまその方途を模索しておるというお答えを申し上げておるわけでございますが、私どもとしては、この国権の最高機関たる国会を構成する各党間の話し合いというものを見守っていくべき立場にあるではないか、こういうふうな位置づけをいたしておるところであります。
  10. 上田卓三

    上田(卓)委員 各党合意、こういうことでありますが、そういう受け身といいますか議会責任を転嫁するんじゃなしに、やはり政府としてこの問題に対してはっきりとした決断をするということでなければ国民納得できない、こういうように思っておるわけでございまして、くどいようでありますが、財源の問題ではない、これは本当に憲法上ゆゆしき問題である、税の公平という意味からは本当にサラリーマン勤労者は差別的な扱いを受けている、違憲の問題である、こういうように私は強く要望して、早急にこの問題についての善処方を要求したい、このように思うわけであります。  さて、本法案改正趣旨は、先ほど申し上げましたように、いわゆる日本のコインの保有者が一斉に札にかえることに備えるためということで、補助貨幣回収準備資金というものがあるわけでございますが、この資金というのは、いわゆる金本位制時代からの遺物と言ってもいいでしょうし、また、世界じゅうでも日本以外にはベルギーぐらいだけではないかというようにも聞いておるわけでありまして、そういう意味で去年には、減税のいわゆる財源という意味からも、これを取り崩してはどうかということが予算委員会等野党から強く要望があったわけでございます。  去年の二月九日の予算委員会では、たとえばこの資金を二〇%減らすだけで二千六百億円の減税財源ができるではないか、こういうような意見も出ておるわけでございまして、これらに対して前大蔵大臣は、補助貨幣信認維持を図るという趣旨で、いわゆる減税財源に充てることは考えていない、こういうような形で言っておられるわけでありますが、一体いかなる事情のもとで、去年まではその資金一般財源に繰り入れることはできなかったが、ことしからはそれをやるんだということがどうも納得ができない。そういう意味では、われわれの主張には全く耳をかさずに、一方的に手のひらを返して自分たちの失政のしりぬぐいという意味でこういうようなことに踏み切っているということに、われわれは非常に不満と、そして理解に苦しむわけでありますので、その点についてまずお答えをいただきたい、このように思います。
  11. 竹下登

    竹下国務大臣 おっしゃいますように、減税議論の際に、この補助貨幣回収準備資金でございますとかあるいは外為の運用益でございますとか、そういうものの御提示があったことはもちろん記憶をいたしております。その際お答えいたしましたのは、本資金の取り崩しは、言ってみれば一過性のものである、一回限りの一時的なものでしかないという考え方を根底には持っておったわけであります。そうして貨幣信認維持という、もともとそういう目的で存在しておるわけでございますから、同時にそういうお答えもいたしております。  そこで、結局五十六年、五十七年におきます巨額歳入欠陥ということからひもといてみますと、昨年の六月の衆議院予算委員会提出資料等において、補助貨幣回収準備資金を取り崩すかどうかということについて検討させていただきますという、その検討項目に初めて挙げたわけでございます。そういたしました後、今年度予算編成に当 たりまして、厳しい財源事情、そして五十六年度決算不足補てんの繰り戻しという臨時的な支出に対応しよう、それだけはやはり返さなければいかぬという認識のもとに、臨時的な支出に対処する必要があって、そして、言ってみれば至上命題として、予算編成の際に念頭に置いておりましたそれだけのものが公債発行額の縮減につながるという意味で、あくまでも一時的な支出に充てるという趣旨で取り崩しを行った。  だから経過的に見れば、昨年の六月でございますか、そのときに検討課題として御提示申し上げたときから検討が進められ、今日御審議をいただく段階に至っておる、こういう経過ではなかろうかというふうに考えます。
  12. 上田卓三

    上田(卓)委員 この資金の取り崩しは一過性とか一回限りとかいうのではなしに、今回の法の改正趣旨は、五十八年度以降毎年一般会計に繰り入れるという趣旨ではないか、こういうように考えておりますので、その点どうも納得ができないということと、それから、去年まではわれわれの要求にもかかわらずこれは取り崩せないんだと言いながら、その後野党の追及によって、ことしからはできるんだと言うのはどうも御都合主義ではないか、こういうように私は考えざるを得ないわけでありますので、その点明確に、ひとつ納得のいくようにお答えをいただきたい、このように思います。
  13. 窪田弘

    窪田政府委員 前段の御意見に対してお答えを申し上げますが、今回御提案しております法律によりますと、従来、流通しておりました補助貨の額に見合う資金を持っていたわけであります。この限度を今回は政令にゆだねていただくようにお願いをしておりますが、私ども政令で、大体流通額の一〇%程度を限度として、それを超えるものを一般会計に繰り入れるというふうに変えさせていただきたいと思っております。  いま大臣からお答え申し上げましたのは、そういたしますと、今回は一兆円を超えるような巨額なものを取り崩すことができるわけでございますが、将来は、流通増から製造経費あるいは回収に要する経費を引かなければなりませんので、ほとんど財源として期待できるほどの多額なものは取り崩すことができない、巨額なものを取り崩すことができるのは今回に限る、そういう意味一過性という話を申し上げたわけでございます。
  14. 上田卓三

    上田(卓)委員 それじゃ五十八年度以降毎年の繰入額について、ひとつわかる範囲でお答えをいただきたいと思います。
  15. 窪田弘

    窪田政府委員 これは補助貨幣が今後どういうふうに、これは市場の需要によって出していくわけでございますが、どういうふうに出すかとか、あるいはその回収がどういうテンポで行われるか、あるいは造幣経費、これは新しく五百円を出すなんということがあると多額のものが要るわけでございますし、そういった経費というふうな変動要因が非常にございますので、いま明確にどれくらいということをお答えいたしかねるわけでございます。
  16. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、ことしは一兆一千六十四億円ですね。だから、来年度以降はいろいろの事情でそういうような多額資金を繰り入れるということはむずかしいかもわからぬ。それじゃ来年度以降の計画はどうだと言ったら、まだよく説明できないということですから、何を言っておるのか私は全然わからぬわけです。  いずれにしても、この一〇%を超える部分、いわゆる回収準備資金の現金に不足があるときは一年以内の一時借り入れをすることができる、こういうことになっておるわけですから、要するに資金の一割、一〇%だけを置いておこう、あとは繰り入れてしまおうじゃないかということですね。 だから、私が言いたいことは、この一〇%というのはどういう基準で、一〇%だったら何とかいけるのではないか、足らざるは借り入れてということだったら、私は、こういう考え方から言うと、以前においてもこういうことを早く取り入れておれば、減税だけじゃなしに、もっといろいろな形でこの運用ができたのではないかと考えておりますので、この一〇%の根拠というものも含めて明確に答えていただきたい、このように思います。
  17. 窪田弘

    窪田政府委員 この資金は何に使うかと申しますと、結局補助貨幣製造経費が大きなものです。もう一つは、日銀に帰ってまいりましたときに造幣局でその分を買い取ると申しますか回収に充てる、これが二つの大きな用途でございます。  そこで、いまのような形の資金制度ができましたのは昭和二十五年の法改正によるわけでございまして、二十六年度以降三十年間の過去のトレンドをずっと見てまいりました。そういたしますと、大体補助貨幣回収引きかえに充てるお金は五%程度でいいのではないか、製造経費も大体その程度でいいのではないかということで、過去のトレンドなどを検討いたしまして、これは政令で決めるわけでございますが、一〇%という率を決めようかと思っております。ただ、こういう貨幣に関する制度でございますから、余りぎりぎりの裸でもぐあいが悪いのではないか、ラウンドの数字ということで、一応一〇%ということで決めさせていただこうと思っております。  ただ、過去の三十年間の経緯を見ますと、この一〇%をオーバーした年がございます。過去三十年の間に九回ほど一〇%を超えている年もございますが、最近の傾向を見ますれば、大体この辺が多からず少なからず適当なところではなかろうか、こう思っているわけでございます。  確かに、昨年そういう御指摘国会でございまして、私どもは従来の経緯から否定的なお答えを申し上げたことはおっしゃるとおりでございますが、それに対して、そんな頭ではいかぬ、発想の転換をせよというお話もございました。  そこで私ども財政制度審議会に諮りまして慎重に検討をさせていただきました。そのときも、やはりこれは、こういう制度そのものは残しておく必要があるけれども、しかし補助貨幣発行現在額と同額資金をそこまで保有する必要はないのではなかろうか、こういう御意見がございまして、今回改正して取り崩すことに踏み切らせていただきたいと思っております。
  18. 上田卓三

    上田(卓)委員 ということは、補助貨幣引きかえとか回収とか、あるいは製造といいますか、造幣局事業の運営というものの費用が大体一〇%程度であればいける、こういうことですね。  そういうことになれば、九〇%はいままでむだなことをしておったというんですか、本来ならばもっと減税財源とかいろいろな形で使えるにもかかわらず、宝の持ちぐされというのですか、野党の追及にもかかわらず云々ということで、かたくなな態度をとっておった。ところが、一たんそういう歳入欠陥というような形で政府の失政が出てくると、取りつくろいで急に態度を変えるということになったとしかわれわれは理解できないのですが、そのことをお認めになりますか。
  19. 窪田弘

    窪田政府委員 むだにしたという御指摘はあれでございますが、その資金は、結局資金運用部に預託いたしまして財投の原資として活用をさせていただいたのでございまして、やはりそれなりに活用していたわけでございます。
  20. 上田卓三

    上田(卓)委員 確かに財投で活用しておったということは事実だろうと思いますけれども、やはり取り崩しができないのだというあなた方の主張があったわけですから、その前提が急に、われわれの追及があったとはいうものの、それがすぐ態度豹変ということになったがゆえに、私はそのことを問題にしておるわけでありますから、その点を十分にひとつ含んでもらいたい、こういうように思うわけであります。  いずれにいたしましても、政府の今回の態度豹変というものは非常に納得ができない、こういうことを特に言っておきたいと思いますし、また、われわれは減税財源という立場からもやはりこの問題を今後追及してまいりたい、このように思います。  時間の関係もございますので、さらに問題を進めたい、このように思いますが、いままで大蔵省は、紙幣の原価というのですか、そういうものについては発表しておったようでございますが、コインの原価、これについてはなかなか口をかたくして発表されてなかったようでございます。特に、造幣特会予算書から見て、地金ベースで見た材料コストは計算されておりますが、製造原価は発表されていないわけでございますので、この機会にできればひとつ御発表いただきたい、このように思います。
  21. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 五十八年度予算書をごらんいただきますと、全部の枚数が二十七億五千万枚ございます。それで製造経費が二百五億円を予定させていただいておりますが、これを割りますと一四%になります。マクロ的には一四%くらいの製造コストになっております。
  22. 上田卓三

    上田(卓)委員 もっと具体的に説明してください。一円玉が幾らで、五円が幾らで。
  23. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 これは、従来大蔵委員会で私の前任者数人が非常に企業秘密だということで言っておりまして、私になって急に変わるのもいかがかと思うわけでございますが、そこで、いま国会にお出ししております予算書で申し上げたわけでございます。ちなみに、一番新しい五百円の補助貨で申しますと、五%くらいでございます。
  24. 上田卓三

    上田(卓)委員 五百円玉については五%、二十五円くらい、こういうことで、詳しいことはデータをお隠しにならぬと、前任者がどうだからということじゃなしに、この際はっきりと発表をすればいいのではないか。聞くところによれば、一円玉については何か三円くらいかかっているのではないかというようなことも聞いておるわけですが、いずれにしても明らかにしてもらいたい。  いま五百円玉の話がでましたので、関連してお聞きしますが、五百円玉が出てもう大分なるわけですが、なかなか一向に流通されているような気配がない。どこにそのお金があるんだろうかというように考えざるを得ないわけでありますが、聞くところによれば、一億五千万枚つくったというように聞いておるのですが、どうにも貨幣らしく流通しているというような実態がないのでありますが、それはどういうことが原因なのか、わかればお聞かせいただきたいと思います。
  25. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 率直に申しまして、私もそういう感じを持つわけでございますが、数字で見ますと決してそうではないので、現在製造計画で三億枚つくったわけでございます。五十六年に約一億、五十七年度にすでに二億枚つくっております。現在、本年の一月末で二億二百万枚流通しているわけでございます。ところが、確かにさっぱり目にとまらないわけでございます。  いろいろ考えてみますと、五百円券と一緒に並行になっているわけです。そもそも五百円という補助貨紙幣は需要そのものが小さいのですね、一万円札とか千円札に比べますと。まずそれが第一点あるわけです。第二点は、やはり珍しいので退蔵されている部分があるだろうと思います。しかしながら、われわれの方は必要があればつくるわけでございますから、なれてくればだんだんと出回ってくる。ただ、最初に申しましたように、五百円という単位は需要が少ないという点がありますので、なかなか百円なんかに比べると目にとまる度合いが少ないであろう、そういうことのようでございます。
  26. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしても、少なくないということであっても、現実に出回ってないということは少ないわけですから、珍しいから退蔵しているんじゃないかということですが、そういう点で、それが逆に言うと人気があるということにもなるわけですから、そういうものがどんどん出回るようにひとつ検討してもらわぬと、何のためにつくったのか、記念コインじゃないのですから、その点ひとつ要望しておきたい、こういうように思います。  そこで、ある単位のコインがつくられると、三年ないし四年たつと、その百倍の新規の紙幣が発行されてきたのではないか、私たちはそういうように思っておるわけであります。たとえば、十円コインがつくられると数年後には千円札が出回る、あるいは百円コインがつくられるとまた一万円札がつくられる、こういうことになっておるようでございますが、そういうことが考えられると、これは一体どういうことになるのだろうか。五百円コインができたわけですから、今度は五万円札でもできるのではなかろうかというようなことにもなってくるわけでございます。  また、特にそれに関連して、既存のいわゆる高額紙幣の流通割合が八五%を超すと新しい高額紙幣が発行される、こういうことになっていると思うのです。ちなみに、一九五七年にデビューした五千円札の場合は、千円札の割合が八七%であったわけですね。そのときに五千円札が出た。また五八年末に一万円札が発行されたときは、千円札と五千円札の割合が八七・五%であった。こういうことだから、そろそろ、そういう五百円という新規のコインが出たんだから、もう数年たつんだから新しい高額の紙幣が出てくるんじゃないかというように予測されるわけでありますが、そういう計画はあるのかないのか、お聞かせいただきたいと思います。
  27. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 最初の方のお話はおっしゃるとおりでございまして、昭和三十二年に五千円札を出しましたときに、千円札と比較しますと、千円札が全体の日銀券の中で八七%というような割合になったわけです。それから三十三年に一万円札を出しましたときに、千円と五千円を足した割合がやはり八七%になっていた。過去の実績はおっしゃるとおりになっております。ただ、どういう券面の日銀券を出すかという問題でございますが、基本的には、国民の現金の単位に対する需要の動向とか高額券を発行いたしましたときのいろいろな社会的な反響とか、そういうものを総合的に考えて判断するということが基本でございます。  そこで、現在一万円札がどうなっておるかということでございますが、ことしの一月末でございますが、日銀券が全部で十八兆三千出ておりますが、一万円札が十五兆二千、比率が八三%でございます。これであるから高額紙幣が要るとか要らないとか、一つのめどにはなっておりまして、従来の経験から言いますと、まだ大丈夫であるというふうに考えられるわけです。もちろん先ほど申しましたように、こういう要素のほかに、いろいろな国民の需要とかあるいは新しい高額のものを出した場合の心理的な影響とか、そういうものを総合判断するわけでございますが、そういう見地から検討いたしまして、現在のところ、一万円札以上の高額紙幣を出す考えはございません。
  28. 上田卓三

    上田(卓)委員 いずれにしましても、新規紙幣とか新規のコインの発行については、そういう条件というものを十分に明らかにする。何か感じで、もうそろそろというようなことであってはならぬのではないか。過去の例から類推して、私は先ほど、そろそろ五万円札あるいは時には十万円札というものが出ても、あるいはコインについては千円コインが出てもいいようなことになるのではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでありますが、そういうことでないということでありますけれども、今後の問題がありますので、その点十分に留意をしていただきたい、このように思います。  そこで、コインの生産能力も、聞くところによりますと、造幣局の千七百人余りの職員で、六種類三十億枚近いと言われているわけでございまして、最近の不況あるいは低成長によるコイン需要の伸び悩みといいますか、あるいは五百円玉の影響によるところの百円玉の需要の伸び悩み、そういうものがありましょうし、また自動販売機で使えないところの五百円玉の需要はこの先どの程度かということも、先ほどの質問との関連で考えざるを得ないわけでございます。  いずれにいたしましても、ここ一、二年のコインの生産実績は二十七億枚から二十八億枚、約一割減産、こう言われておるわけでありまして、造幣局の現場といいますか職場においては、この先どうなるのか、特に配置転換とかあるいは雇用不安がつのっておるようでございますので、そういう意味で、長期的な作業計画を立案して職場の不安を取り除くということが非常に大事だと思うのですが、そういう点についてお答えいただきたい、このように思います。
  29. 石川周

    ○石川説明員 貨幣の製造計画につきましては、造幣局といたしましては、本省の方からの御指示をいただきながら、それに基づいて貨幣の製造を行ってまいるわけでございます。  その本省からの御指示がございます製造計画は、最近の補助貨幣の流通状況とか今後の見通しとかを勘案しながら毎年度策定されてございます。これを前もって二、三年分長期的な視野でという御指摘だろうと存じますけれども、実際には貨幣の需要がかなり変動する場合もございますし、いろいろな諸要因がかなり変動的でございます。長期的な計画の策定ということにはややなじまない面があるのではないか、こんなふうに思っております。ただ現実問題といたしましては、御指摘のような三十億枚程度で、弱含みではございますけれども、ほぼ横ばい程度で安定してございますし、そのときそのときに円滑な貨幣の供給が可能になるように、緊密な連絡をとりながら製造いたしておるところでございます。
  30. 上田卓三

    上田(卓)委員 それに関連してでありますが、日本造幣技術というものが世界一であるのかどうかよくわかりませんが、それに近い高度な技術を擁しておるというようにも聞いておるわけでございます。  そこで、各種の記念コインがいままで製造また発売されておったわけでありますが、たとえば東京オリンピックあるいは万博、それから沖縄海洋博、札幌オリンピックあるいは天皇在位五十年等のそういう種類も、その他あるわけでございますが、いかなる基準でこのような記念コインの発行を決定してきたのかということをお聞かせいただきたい、このように思います。  また、それぞれ過去何枚発行してきたのかということについてもお聞かせいただきたいと思いますが、それに関連いたしまして、ポーランドにせよどこにせよ、いわゆる文化の高い国ほどすばらしい記念コインシリーズをつくって発行しておるようでございますが、日本の高度な造幣技術を発揮して、長期の作業計画を安定させるという意味で、たとえば日本が平和国家である、こういうキャッチフレーズで、やはりそれにふさわしい記念コインシリーズなどを発行するということも非常に大事ではないか、このように考えておりますので、そういうことについてお答えいただきたい、このように思います。
  31. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 まず、コインの発行の根拠でございますが、臨時通貨法の四条に、素材とか品位とか形式、こういうようなものは政令で決めることになっております。要するに、内閣の意思として決定されるわけでございます。  この法律の規定がございまして、いまの記念コインの場合どうするかということでございますが、二つの基準がございまして、一つは国民的に記念すべき事柄かどうかという点、もう一つは造幣局の製造能力でございます。これは大蔵大臣が判断をいたしまして、内閣に諮って出すかどうかということを決めるような手続になっております。  いままで、御指摘のように戦後六種類出ております。枚数ということでございますが、東京オリンピックが百円が八千万枚、千円が千五百万枚、四十五年の万博が百円が四千万枚、四十七年の札幌オリンピックが百円で三千万枚、五十年の沖縄海洋博が百円で一億二千万枚、五十一年に天皇御在位五十年で百円が七千万枚出ております。  それで、造幣局が高度の技術を持っていることは御指摘のとおりでございますが、現在流通しておりますコインのセットがございます。あれが大体年間六十万セット売れておるわけですが、これはこの大蔵委員会でも経緯がございまして、御指摘のような積極論と消極論があるわけです。  消極論の方は、造幣局が百円なら百円のものを高く売るというのはけしからぬというお話があるわけです。それで、そういう問題がある。それからもう一つは、積極論者の方は、このごろだんだんと所得水準が上がってコインの収集が一般化してきた。それから、たとえば大蔵大臣などが外国に行かれたりあるいは外国の大蔵大臣が来たときに、おみやげとして非常にいいわけです。そういうようないろいろな利点があるわけでございますが、積極論と消極論とある。  それから、私どもの立場で言いますと、プルーフコインをつくりますと通常のコストの大体十倍ぐらいになる。その十倍になったものを券面額で売るというようなことは実質論としてできない。それから造幣特会法律では売るということが認められてないわけです。私はどっちかというと積極論で、前からこういうことをやったらいいと思っているのですが、いまビニールに入っているあの小さいものをつくるときの経緯がございまして、どうもヘジテートしておるのが実情でございます。  積極論、消極論、どっちもそれぞれ理由があるわけでございますので、いろいろ検討しておりますけれども造幣局で百円のものを千円で売れるようになるということはいいのか悪いのかという、きっと大蔵委員会でまた議論が分かれるかもわからぬわけですが、そういうような勉強はいたしております。そういうことでございます。
  32. 上田卓三

    上田(卓)委員 いやいや、そういう実績があるわけで、功罪いろいろあるようですけれども、私は、いままでのコインについてけちをつける気は毛頭ないわけですけれども、もっと平和国家日本というイメージにふさわしいそういうものを、アイデアというのですか、そういうものを積極的に考えたらどうだろうか、こういうことですから、一言で結構ですから、意欲みたいなものをひとつ聞かしてください。
  33. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 券面より高く売るためには、それから売るという行為が造幣特会法律の規定がございませんので、法律改正を要するわけでございます。  私どもとしては研究はいたしておりますが、たとえば本年のこの改正に一緒に合わせてということも私考えたわけでございますが、なかなかこの法律を通していただくだけでも大変ではないかというようなこともございまして、あきらめたわけでございますが、将来の問題として絶えず問題意識は持っております。
  34. 上田卓三

    上田(卓)委員 その程度にしておきます。  次に、またまたいわゆるデノミ論が何か活発になってきたようでございまして、中曽根内閣が誕生して、そして訪米の際に向こうでマスコミにちらっと、どの程度話したのかよくわかりませんが、そういうことが週刊誌等でも報道されるようになってきておるわけでございまして、私は、高額紙幣の発行に比較して、やはりデノミの方がはるかに慎重で周到な準備と国民の理解が要るものはない、このように考えておるわけでございます。  福田元総理はデノミ三原則を唱えられたわけでありますが、竹下大蔵大臣はデノミについて、どういう条件があればできる、この功罪等についてどのように考えておるのかお聞かせいただきたい、このように思います。
  35. 竹下登

    竹下国務大臣 これはまさにデノミというのは、経済的な環境が適当なことのほかに、国民に十分理解され、そしてその実施に伴う種々の不安感が払拭されているかどうかというような社会的心理的なそういう状況を考慮する必要がありますし、現在のところ、全くデノミを実施する考えはございませんし、また総理から指示を受けたこともございません。  この問題はまさに一般論として申し上げるだけでございますので、よく言われる話の中には、それはどうも大正、明治生まれの者は、国威発揚というか国威のことを考えるとやりたがって、昭和二けた以後は、何でめんどうなことをするんだ、こういう心理状態もあるとか、いろいろな問題がございますので、いまの場合全く念頭にはございませんが、福田元総理のおっしゃった原則というようなものは、一般論としては私もそれは適当な原則であろうと思っております。
  36. 上田卓三

    上田(卓)委員 デノミということになりますと、やはり利便さという問題についてもいろいろ意見はあろうと思いますが、いまさらまた何銭何厘というものが復活することが若い子どもたちになじむだろうか。そういう意味では、非常に便利が悪いということにもなろうと思いますし、また、経済的効果という意味においても、いま大きな問題があるんじゃなかろうか、私はこういうように思っておるわけであります。  特に、いま不況のあらしが吹きすさんでおるわけで、それに輪をかけたような形で行革、こういうことで行革デフレという言葉すらも出ておるような始末でございますので、さらにデノミということになりますと、たとえば千分の一ぐらいに単位が縮まる、月二十万円の給料が二百円ということになると、何かこう、それでなくても経済不況で萎縮しているのに、ますますデノミ不況で世知辛くなるというのですか、購買力が落ちるというようなこともありましょうし、また逆に切り上げというようなことで、インフレにもつながりかねないので、庶民には大変迷惑至極である、こういうように思っておりますので、そういう点については、われわれはいまの時点でそういう国民を惑わせるような言動は厳に慎んでいただきたいということを特に申し上げておきたい、このように思います。  時間も来ておりますので、最後に、いま確定申告の時期でございます。特に、私は前渡辺大蔵大臣にも質問申し上げたわけでありますが、国税の職員の方々は、申告期間は本当に戦争のような非常に過酷な労働を強いられておる、こういうことがございますし、また五万二千人の定数というような状況の中から、なかなか職員がふえない。にもかかわらず、非常に税務が繁雑になっておるとか、そういう意味で非常に問題が起こってきて、納税者にもいろいろ迷惑をかける、そういうトラブルも起こっておるように聞いておるわけでありますが、いずれにいたしましても、一点申し上げたいのは、税務行政に携わられる方々の健康状態を一体どのように見ておられるのか、そのことについてお聞かせいただきたい、このように思います。
  37. 酒井健三

    ○酒井政府委員 職員の健康管理につきましては、私ども、常日ごろ十分配慮するように極力努めているところでございます。  ことに、先生御指摘のように税務の繁忙期でございます確定申告期におきましては、特別に健康診断を実施するなど十分配慮しております。お尋ねの職員の健康状況につきましては、満足すべき状況にあるとは申せないと思いますが、そうかといって、特に危惧すべき状況が生じているとは考えておりません。
  38. 上田卓三

    上田(卓)委員 いまそのようなお言葉ですが、大阪の国税大阪職員労働組合というのがあるわけでございますが、ことしの要求では、まず第一に、朝九時から五時ですね、在勤時の執務体制の確立と超勤をなくしてほしい。それから第二に、これ以上病人を出さないことを求めておるわけでございまして、労働組合がこれ以上病人を出さないでほしいという、これはもう異常なことではないか。そういう意味で、いまの次長のお言葉とは全く内容が違うわけでありまして、本当に私は唖然としておるわけでございます。  特に、この組合のアンケート調査では、健康に自信のある人は三分の一強という結果が出ております。それから、多少疲れぎみが平均で五九%、特に調査官は疲れているというのが六五%に達しておるようでございますし、病気は上席で九%、それから調査官で四・五%、平均で四・五%はあるわけでありまして、しかも病気の原因は過労とストレスが半数であるというようなデータが出ております。また、休んでも仕事が気になって完全療養ができないという方々が四四%おるようでございますし、特に現職の死亡も毎年この確定申告時期に多いというようなデータが出ておるわけで、そういう点について把握されていないのじゃないかということで、非常に残念であるわけでございます。あるいは過労でへばりぎみのそういう原因が、いずれにしてもしんどくて、とても消化できない、こういうのが一九・三%なども出ておるようでございまして、こういうものに対してやはり人員増というのですか、こういうことが一番大事な問題じゃないか。  特に、先ほども申し上げましたように、職員はふえない。にもかかわらず納税人口が増加している。二番目に企業取引の大型化あるいは多様化、あるいは三番目に政策税制の増加、あるいは四番目には複雑難解な法の体系あるいは社会環境の変化等によって何倍にも仕事量がふえている、こういう現状であるわけでありますし、特に戦後大量に採用された経験年数三十年といった五十歳前後のベテラン職員が著しく多いという特性から見て、今後どうなるのかという意味で、職場では非常に不安を訴える方々がたくさんおられるわけでございますし、また、特にベテランの方々の処遇といいますか、たとえば署長並みのそういう地位と待遇を与えて仕事に意欲を持たせるとか、いずれにしましても抜本的な人事政策というものが必要ではないかと思います。  時間がないので、走った形で幾つかの問題を提起いたしましたが、誠意ある答えをいただきたい、このように思います。
  39. 酒井健三

    ○酒井政府委員 先生の御指摘のように、私どもの仕事が年々ふえておりまして、ちょっと数字で申し上げさせていただきますと、この十年間に申告納税者の数が一・四倍になっておりますし、法人の数が一・五倍になっている。また、還付申告者が三倍になっているというような数量的増加のほかに、先ほどお述べになられましたように、経済取引が複雑化、広域化、さらには国際化しているとか、私どもの環境が非常に厳しくなっております。  これに対しまして、私どもも、事務の合理化、効率化、コンピューター化等によりまして、そしてまたアルバイトの活用、そういうようなことでできるだけ努力をしておりますし、それからまた、職員の健康管理という問題につきましても、人事院規則で定められております基準以上に健診を行うとともに、私どもの職員の構成というのか、先生御指摘のように五十歳以上の者が約三割を占めるというようなことで、特に成人病の対策をやっていかなければいけないということで力を入れております。  そしてまた、いま申し上げましたような対策のほかに、定員の増加につきまして、これも、私どももかねがね関係当局に理解を得るように努めてきておりまして、今後とも国税職員の増員につきましては理解が得られるように、私どもとしても精いっぱいの努力をしてまいりたいと思いますし、そしてまた、御指摘の処遇の改善という面につきましても、関係方面に力強く働きかけていく所存でございます。
  40. 上田卓三

    上田(卓)委員 終わります。
  41. 森美秀

  42. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣すぐ戻るそうですから、始めておきます。  いまの上田委員の御質問にもございましたが、私はこの法案を見て、一言言わなければ、これは審議に入らぬという気持ちを深くしているわけであります。先ほど大臣お答えになりましたから、私は関係の局長さんにぜひ一言申し上げてから質問事項に入らせていただきたいと思います。  去年の当委員会の記録にあるわけでありますが、塚田委員の質問に対して当時理財局長、吉本さんですね。補助貨幣回収準備資金はどういう意味があるのかということについて、「この制度は、補助貨幣発行額面総額に見合う準備資金を保有することによりまして、貨幣信認維持するということでございまして、一つの制度として確立しておるものでございますし、私どもとしては、現在の制度が適切なものであるというふうに考えております。」という答弁をいたしております。さすがにその後渡辺大蔵大臣はいろいろと考え方の問題がありますから、勉強していきたい、まあ政治家ですね、そういう答弁をしているわけであります。  これだけではなくて、私は幾つか思うところがあるわけでありまして、昨年も、もうすでに本省にはいらっしゃいませんけれども、前主税局長に、私どもは膨大な財政収入赤字が起きるのではないかということを昨年の予算委員会法案審議の前の冒頭からいろいろと提起をしたという経過がございます。そのときの答弁も、ぜひ必ず——必ずとは言わなかったかもしれませんが、予算どおりになることを確信しているというようなお話でございましたが、しばらくたちますと神に祈るような気持ちでというお話でありまして、さらにしばらくたちますと、どうにもなりませんというお話になっているわけでありまして、やはり責任を持つ大蔵省の局長の皆さん方とそれから私ども大蔵委員の関係でありますから、うそを言ったのでは困るので、うそと言っては恐縮かもしれませんけれども、昨年この議論のときにも、そのうちこういうものは隠し金だから崩すことになるだろう、しかし減税じゃなくて、大蔵省としてはもっと別の方に使いたい、まあ腹の中ではそう思っていたと思うのですね。  そこで、きれいごとの答弁を聞いてもしようがないので、私は、これだけではないのです。とにかく税収欠陥の問題その他いろいろあるわけでありまして、昨年の吉本さんの答弁、今度はナポレオンにかわりましたから正直にいくのだろうと思いますけれども、きれいごとの話を伺っているよりも、何か皆さん正直でなければいけませんなんという話をしたら、小学校の子供さんにお話をするような恐縮な話になりますから、そこでやめておきますけれども、この点については今後きちんとした対応をして、そして駆け引きや腹に思ったことと別のことを言うのではなくて、フェアな議論をしていく、ぜひお願いをいたしておきたいと思います。答弁は大体想定されますから答弁は要りません。気持ちだけまず申し上げておきます。  昨年もこの関連の議論予算委員会や当委員会でございましたときに、私は、特別会計のさまざまな状態、一体どういう現実になっているのかということを非常に関心も持ち、疑問に思ったわけであります。いろいろと私どもの方でも勉強をしてみました。各特別会計、政府関係機関の運用状況、利益の一覧表、あるいはそれがどう使われているのか、あるいはそれを取り崩す場合には一体それぞれについてどういう問題があるのかというようなことも調べてみたわけであります。私は、それを見ますと、そのあり方、会計内容にもっとメスを入れる必要があるのではないだろうかという気がしてならないわけであります。  その後、ことしに入りまして臨調の第二部会の報告が出まして、この中に「特別会計制度の合理化」ということが幾つかの柱について述べられております。私は、臨調報告全体についてはいろいろと意見があるのですが、この部分については、まあごもっともな内容じゃないかというふうに実は思ったわけであります。  いずれにいたしましても、三十八の特別会計があって、勘定別の数でいきますと約七十、それぞれの特別会計法で設置をされている。そうして、私どもの調査では、その経営内容を見ますと、五十七年度の当期利益見積もりが合計約八千億円、積立金が合計九兆円ということに実はなっているわけであります。また、その当期利益金についても電電公社とか中央競馬会のように一部を国庫納付しているあるいはさせられている、電電なんかで言えばそういう感じでありますが、そういうところもありますが、多くのところはいろいろな扱いになって、ある部面では貸倒準備金などといいますか、そういうふうな中に含められているというふうにも思うわけであります。  臨調の第二部会報告を見てみますと、全体の予算規模が五十七年度歳出予算で総計百七兆円、一般会計予算五十兆円の二倍強、そして特別会計と一般会計などの重複を除いた予算純計は約九十兆円、一般会計から特別会計への繰り入れは約二十七兆円、一般会計の半分以上が特別会計に繰り入れられている。しかし国会でも一般会計中心に議論が行われて、特別会計について国会審議が少ないので云々というような言葉まで書いてあります。  私どもも、この特別会計全体あるいはこれからの関係法の議論になりますが、財投とかあるいは運用部資金のさまざまな運用状況とか、もっと勉強しなければいけないのじゃないだろうかと実は思うわけであります。臨調も指摘をしておりますように、こういう複雑な仕組みではなくて、わかりやすいことにしなくてはいけないのじゃないだろうか。この部会報告でも「予算全体の仕組みを複雑にし、財政の一覧性が阻害されやすいという面がある。」ということを指摘をしているわけであります。  そういう立場から、四点ほど伺いたいわけでありますが、第一は、資金保有状況あるいは資金の保有をどう理解をできるのかという問題であります。  私もいろいろ調べてみて思いましたが、この臨調部会報告にも指摘をされておりますけれども、たとえば保有額の妥当性に疑問のあるもの、たとえば補助貨幣回収準備資金、ただいま議論になっているわけでありますが。それから、多額資金を保有しているにもかかわらず、その基準が必ずしも明確でないもの、たとえば外為資金特別会計積立金。それから長期的に多額の剰余金が繰越処理されているもの、これも今国会で話題となるわけでありますが、自動車損害賠償責任再保険特別会計、これなんかはお金が余っているのですから、その掛金を安くするか利用者還元するのがあたりまえのお金であって、たくさんたまったから赤字の穴埋めに吸い上げようというのはおかしいと思いますが、いずれにしても、何かはっきりしない経過で蓄積をされて、それが便利に使われるというふうなことではないだろうか。  臨調部会報告もその点を指摘をしているというふうに思わざるを得ないわけでありますが、現在のこの補助貨幣準備積立金、それから自賠責の方はまた法案議論をされますが、たとえば外為会計積立金、これも一千億崩そうとか二千億崩そうとか、いろいろ出ているわけですね。それらが一体どういう基準で、あるいはここで指摘をされているように、どういう基準が一体明確なあるいはフェアルールとしてあるべきお金なのか、その辺について考え方をまず伺いたい。
  43. 窪田弘

    窪田政府委員 確かに、今回の臨調の部会報告で御指摘いただいたことは、私どもも、一々ごもっともだと承っております。  ただ、特別会計と申しましても、実はいろいろな性格のものがございまして、千差万別でございます。この臨調部会報告の冒頭には、「国が事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合、その他特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合」、こういう場合に限って特別会計の設置を認めている財政法の規定が引用してございますが、実はそれを性格別に分類をいたしますと、企業の会計であるものが五つございます。保険事業をやっているものが十二ございます。公共事業の特別会計が五、それから食管でございますとか郵便貯金のような行政的事業が七つ、資金を持っております外為、運用部と資金が二つ、その他国債整理基金でございますとか地方交付税の特会とか、こういう分類できないものが七つございます。  実はこの性格がまちまちでございまして、一概にどうするということがなかなか申しにくいのでございますが、ただ、この全貌がわかりにくいという御指摘はそのとおりだろうと思います。私どもといたしましても、たとえば国会にお出ししております財政法の二十八条書類に通覧できるような表をつけましたり、あるいは純計の表を出しましたり、予算説明には各特別会計ごとに歳入歳出内容説明しているわけでございますが、これでいいのかどうか、さらに一層わかりよい説明というものを今後検討してまいりたいと思っているわけでございます。  それから、第二に御指摘になりました資金を保有しているものの剰余金あるいは積立金等の基準という問題でございますが、積立金九兆とおっしゃいましたが、そういうものの中にも実はいろいろな性格のものがございまして、保険の準備金になっているもの、あるいは他の資産化しているようなもの、いろいろなものがございまして、なかなか一概には申しかねるわけで、やはりその特別会計個々に検討して、問題あるものはそれを是正していく、こういうことではなかろうかと思っております。  そういう意味で、ことし、この五十八年度予算におきましては、部会報告で例示に挙げられておりますものにつきましては、すべてに何らかの措置をとっているところでございます。  補助貨幣回収準備資金はいまここで法律改正をお願いしておりますし、外為につきましては、これはそれで外貨を保有しておりますものですから、この積立金をすぐ活用するあるいはどうこうするという性質のものではございませんが、臨時に多額の利益が出た、その臨時的な性格のものにつきましては、一般会計の非常に困窮している事情から活用させていただくということにしております。自動車賠償責任保険の剰余金、これは御指摘のように保険加入者の利益に還元するものではございましょうけれども、いまどう還元するかという方策がまだ決まっておりません。たまたまそこに剰余としてあるものを一般会計で使わせていただく、ただし、これは将来還元する、返すということにいたしております。  そういうふうに、問題として指摘されましたものにつきましては、個々に検討いたしまして対策をとらせていただいたわけでございます。
  44. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いまの説明の中の、たとえば外為特別会計積立金約三兆円、確かに変動相場制ですし、円高、円安でさまざまな状況がありますから、お金も生まれるし、一定限度を持っていなければ困る。ただ、こういうものは今日の自由主義経済の産物あるいは対応ですから、たくさんあればいいと言えばいいかもしらぬし、ゼロじゃ困ると言えばそのとおりだし、ただあなた方がときどき崩すように、状況を見ながら、これはまた考えていくということがあると思うので、たとえば、なかなか見にくいけれども、対応の仕方として思いがけない緊急事態が起こったときには、さまざまの法的その他の措置を講じなければならないというのも当然のことでありますが、三兆円規模ということについてはどういうふうに考えますか。
  45. 窪田弘

    窪田政府委員 これは積み立てていると申しましても外貨でございまして、あるいはその利益と積立金の合計額が繰越損失を上回った、繰越欠損がなくなったというのはほんの去年ぐらいからのことでございまして、ずっと過去は損の方が上回っていた事態でございます。  そこで私どもは、やはり外為会計の資産というものは充実していた方が、こういう国際金融情勢が厳しい折でございますので望ましいと思いますが、ただ五十七年度、五十八年度におきましては、アメリカの高金利というふうな異常な事態で思わざる利益が発生いたしました。一般会計が非常に困っておりますので、その分は使わせていただきたい、緊急非常な措置としてやらせていただきたい、こういうわけでございます。
  46. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いずれにしても、さまざまの特別会計、そして総額が百七兆円、こういうのは明朗会計でないと非常にまずいということが指摘をされているわけでありますが、この部会報告の中でも、財務諸表の作成が各特別会計法令によって義務づけられている。しかしながら、三十八の特別会計のうち二十六の特別会計について損益計算書が作成されているが、その他は作成していないものがあるというのが書いてあります。これらを入れますと、大体どんぶり勘定で、いろいろなお金の動きがあって、しかもそのお金の動きの中には、国民税金である一般会計から多額のものがつぎ込まれている。そして、あなた方一部の人だけが知っている。昨年もそうでしたが、われわれ一生懸命勉強していたら一つ見つかったというような経過になるわけですね。  これでは、やはり国民に対してうまくないということになるわけなので、ここでも指摘をされている特別会計の会計経理、それから財政状況、営業成績の表示を明確にするということについては、大蔵省の立場から、きちっとされるつもりですか。
  47. 窪田弘

    窪田政府委員 企業と申しましても公企業でございまして、民間の企業会計と同じ原則が適用できるものかどうか、いろいろ問題があるものもございます。  しかし、臨調で御指摘をいただきましたような問題点、これはなるほど問題点としてはそのとおりであろう、私どもも、いまの制度がそのままでいいと現状に安住しているのはやはり問題であるということで、実は昨年秋に財政制度審議会の中に小委員会を設けていただきまして、公企業などの会計のあり方について抜本的に検討をしていただこう、こういう小委員会をつくっていただきまして、昨年二度会合を開いて現状の勉強を始めたところでございます。まだしばらく時間はかかろうと思いますが、こういった御指摘を受けまして、今後私ども検討してまいりたいと考えております。
  48. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それから、私も問題として思っていたところでありますが、この部会報告の中でも、今後改革の方向をどうするのかということで「特別会計の設置の抑制と見直しの推進」「特別会計の運営の改善」、それから見直しの中では、新設はやめる。それから、非常に複雑に存在をしているさまざまの既存のものについても、幾つかのポイントを挙げまして必要性見直しを行い、廃止または一般会計への統合を図るべきではないかという問題提起が出されている。特殊法人の扱いなんかと同じ発想だと思いますし、私も、特別会計についても特殊法人の場合などについても同じような論旨があるべきじゃないだろうかというふうに実は思うわけでありますが、また部会報告を出されている皆さん方も、いろいろ意見を聞かれたり関係したのだろうと思いますし、こういう報告が出されているというからには、一定の考え方もあるのじゃないだろうか。  この辺の改革方策の問題について、最終的には臨調最終答申になるわけですから、間もなく三月半ばに出てくるわけでありますが、これらの方向はそう変わらぬのじゃないかというふうに思います。これらのことについて具体的に改革の手だてをどうとるのか、その辺のお考えをお聞かせください。
  49. 窪田弘

    窪田政府委員 臨調の改革方策の中のまず第一は、特別会計の新設を抑制せよという御指摘でございますが、これはピーク時は四十五ございましたが、現在三十八まで減らしてきております。しかし、今回の部会報告で廃止のための五つの基準が示されました。そこで私どもとしても、区分経理があえてここまで、特別会計を設けてまで必要がないというふうなものもあろうかと思いますので、これはそういうものがあるかどうか総点検をいたしまして検討をしてまいりたいと思っております。  それから、借入金の「経常収支の赤字補填的な借入は極力抑制する。」ということもそのとおりでございますので、そういう方向で検討してまいりたいと思います。しかし、そのためにはもっと仕組みにも切り込みました収支改善策が必要でございます。たとえば、ここに例示にあります保険会計のようなものはそうでございますので、そういった根本にもさかのぼりまして今後検討してまいりたいと思いますし、また資金保有につきましても、個別に一々その妥当性を検討いたしまして検討してまいりたい。  これが出されましたのが一月八日でございました。何しろ非常に複雑多岐な特別会計の全体でございますので、若干時間はかかろうかと思いますが、今後この方向に沿って極力努力をしてまいりたいと思っております。
  50. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 こういう財政の今日の情勢でございますから、これらのいろいろな問題の打開も、財政再建財政改革の一環としてなされるべきポイントであろうというふうに思うわけであります。  いろいろと、こういうふうにやっていきたい、また、こういうふうに前向きに改革をしていくようにしたいという気持ちは伺いましたが、一定のスケジュールかプランか、めどぐらいは持ってかかる。この一、二年後にはとか、この二、三年後にはとか、あるいは当面これから一年のうちに勉強して、これらについての一つの改革の指標あるいはプランというものをつくってみたいとかあると思うのですが、その辺いかがですか。
  51. 窪田弘

    窪田政府委員 財政審にたまたま私ども去年の秋お諮りをしておりますが、それはなるべく早くやるべきではありましょうが、何しろこれは複雑で他の分野ともいろいろ絡みますので、これは時期を決めずにじっくりやろうじゃないかという小委員会のそのときの御意見がございまして、いま私どもから、時期をどういうふうにしていただきたいということまではっきり申し上げかねるわけでございます。おっしゃるように、なるべく早く検討いたしまして、実現すべきものはできるだけ早く実現をしてまいりたい、こう思っております。
  52. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それから、この部会報告でも一番最後に指摘をしておりますが、要するに勘定別で言えば七十もある。それから四十近い特別会計がある。一般会計の二倍以上の全体の総計した規模になる。一般会計とさまざまに入り組んだ関係になっている。事業内容はわかるのもあれば、わからないのもあるというふうなことになるわけでありまして、予算書として提出をされているものには、その勘定項目、数字の大綱は私どもも見ているように当然あるわけでありますけれども、やはり国民に向けて一体どう説明しやすいようなことにするのか。部会報告の一番最後に、「一般会計と特別会計の総合的把握」のためにということが述べられております。何か具体的な方途を考えていますか。
  53. 窪田弘

    窪田政府委員 先ほど申しましたように、二十八条書類とかあるいは予算説明等で、できるだけその関係を御説明をさしていただいておりますが、今後も、一体どういう資料でどういうふうに説明したら一番わかりいいものか、研究をしてまいりたいと思っております。  ただ、部会報告にもありますが、一般会計の半分は特別会計繰り入れでございまして、一般会計説明で特別会計に関連して説明がそこに及んでいるものも非常に多いわけでございます。一般会計一般会計、特別会計は特別会計と別々の説明ではかえってわかりにくいわけでございまして、全体をどうやったら一番御理解をいただけるか、今後私ども、あらゆる機会に努力をしてまいりたいと思っております。
  54. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 特別会計の細々したことをお伺いいたしましたが、大臣がお見えになるまでに、この補助貨幣特別会計の問題について、昨年もいろいろ議論があって、さっきも同僚議員が答弁をいただきましたが、臨調の部会報告も出まして、改めて昨年度で総額百七兆円に及ぶこのシステムを明朗会計になるように、しかも変なことがないように、あるいはまた、大蔵省のごく一部の人だけが知っていて国民にはわからぬということがないように、さまざまな御指摘をいたしていたところでありますが、最初に申し上げていたのですけれども、やはりこの法律になりますと減税のことをどうしても頭に浮かべてということになるわけであります。先ほど来、同僚議員からその角度から指摘ございましたから、二つだけ私は大臣にお伺いしたいわけであります。  その一つは、当面この国会で御相談されつつある経過と大蔵省との関係であります。  新聞を読みましたら「大蔵省首脳」と書いてあります。普通ですと大臣のすぐ下の人を首脳と言うのだろうと思いますけれども、その人はここにおりません、かわりはおりますけれども国会でさまざまの減税問題についての協議かやりとりか、現在進行しつつある。まあ正確には本格的な詰めにもまだなっていないという段階でありますが、そういう中で大蔵省首脳は、五十七年度予算衆議院通過の際に設立をされた減税特別小委員会減税実施三条件、つまり、赤字国債発行によらない、戻し税方式でなく課税最低限引き上げを行う、既存税目の増税によらない、これらについても同首脳は、大蔵省首脳は見直さざるを得ないだろうと指摘をした。  その見直さざるを得ない問題の中は何かといいますと、第二項目の戻しではなく恒久税制改正という問題だということが出されておりますし、これに関連をして大蔵省主税局は云々とか、そんなみたいなことが各新聞に一斉に報道されております。実は、頭に来ると言っては大げさでありますけれども、非常にこれはけしからぬと思うわけであります。  さっきも同僚議員が言いましたが、大蔵省が、このような税制のひずみをなくするために年々日常不断に努力をして国民の理解をいただき信頼のある税制を確立する、これは本来的なあなた方の任務であり使命であります。そういう意味から言うと、財源がないからできないということ自体、税制のプリンシプルからいって非常におかしい話だというふうに私は思うわけでありますが、そういうことはしないでおいて、さまざま国会でやられることの足を引っ張る。現実にはそうではないか。表向きは、見守るあるいは慎重に見守ってということを言われているわけでありますけれども、見守るのじゃなくて、実際には妨害の役割りを果たしているというのが現実ではないだろうか。  五十六年度の剰余金減税の場合でも、私どもは、あれで妥協する以外に政治としてはなかったけれども、少しでも不公平税制の是正に役立つような額になるようにということを主張もいたしましたし、こいねがっていたわけでありますが、さまざまの理屈があって、国債発行の減額の方にも回す、いろいろあって、結局は五百円に終わりました。昨年もあのような経過であります。  大蔵省が本来やるべきところをやらないから、国会で論争になる。国会で何か一致点を見つけようではないかということで、さまざまの精力的な話し合いがある。そういう中で、先般までやっていた当委員会減税特別小委員会、そこでもこれからの減税問題についてはこうなるべきではないだろうかということで、戻しではない、一時的ではないという合意各党とも見たという経過があるわけでありまして、私は、それは消えていないと思います。そういうものをどう発展をさせ、あるいはその延長で物を考えるのかということに協力をするのが、私は筋であろうというふうに思うわけでありまして、私は、固有名詞でだれが大蔵省首脳か知りませんが、各新聞にも一斉に出されておりますが、これらのことについて、一体どういう真意で考えておられるのでございましょうか。
  55. 竹下登

    竹下国務大臣 どうも、私もいまの御質問の真意がいささかわからないわけでございますが、いまお触れになりましたいわゆる小委員会、これは私自身が幹事長代理として自由民主党を代表して各党協議の場に出かけまして、政調、政審会長会議において合意を見たものを議長さんの見解として各党が了承し、本委員会に小委員会ができた。その中の討議の内容というのは、現実問題として心情的にとでも申せば、私どもはそれを大変尊重しております。ある意味においては縛られて——縛られておるという表現は適切でございませんが、たとえそれが議論の経過であったとしても大変尊重すべきもの、そういうふうな認識を持っております。  したがって、いま国会で話し合いが行われて各党間の協議が行われるという際には、やはり従来の小委員会等の経緯が私どもの頭の中には継続して存在しております。したがって、私どもとしましては、いずれ各党の専門家の方のお集まりでいろいろ議論が行われるであろう、それに対してのコメントは、私もいま行政府におりますだけに差し控えるべきだ、こういうスタンスをとっております。だから、これは議論してもらっちゃいかぬとか、これは議論の範囲内だとか、そういうようなお話は申し上げないという立場が一番とるべき姿じゃないか。  ただ、伊藤委員の御指摘の、基本的に行政府自体で各般の状況を勘案して考えなければいかぬ問題じゃないかという、そのプリンシプルはわかります。しかし、そのプリンシプルに基づいて現状において最善として内閣一体責任でお出ししたものが、国会の中の話し合いの場で別途協議されるということになった場合、経過的にもその推移は重大な関心を持って見守るというのが基本的スタンスではないかな、こういうふうに考えます。
  56. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、むずかしいことじゃないですよ。要するに、大蔵小委員会で三項目の合意があった。それが五十七年に実現しなかったので、五十八年の話をいまやっている。ところが、五十七年度で当大蔵委員会の権威ある小委員会合意をしてきたこと、これはやめてもらうか変えてもらうかしなければならぬということを大蔵首脳が言ったといって、一斉に出ているわけですよ。大臣はそう思っていらっしゃるのか、いらっしゃらないのかというだけの話なんです。
  57. 竹下登

    竹下国務大臣 思っていらっしゃらないです。
  58. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ、今度は大蔵首脳から政府首脳の方のお話をしたいんですが、きょうの新聞を見ましたら、同じく減税問題で政府首脳は語ったという記事が幾つか載っております。 政府首脳は通常官房長官とか言われておりますが、そうであれば大臣はツーカーの仲でありますから、当委員会でもお考えは伺えるのじゃないかというふうに思いますけれども、その政府首脳がゆうべお話しになったところでは、各党間の話し合いで五十八年度実施に向けて結論が出ればこれを尊重する、これはだれでも言っていることですね。残念ながら、皆さんこういう言い方をされているわけですが、五十八年度は別として、五十九年度は臨時行政調査会などの意見もあり、やらざるをえないと述べた。したがって、政府は、五十九年度以降できるだけ早期にと繰り返してきたけれども、五十九年度はもう制度をきちんとせざるを得ない時期ではないだろうかというふうに、これは政府首脳の判断として伝えられているわけでありますが、もし政府首脳でございましたら失礼ですが、これらについてどうお考えになりますか。
  59. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる政府首脳というような表現は、正式な記者会見でなく俗に言う懇談の場合の発言をとらえてこれを記事にするとき等に使われる言葉でございます。  したがって、恐らく五十九年度以降の問題については、確かに臨調あるいは税制調査会でも御指摘をいただいておる課題でありますので、そのときのいわゆる取材側がそういうふうなより強い印象を受けたということで、そういう記事になったのであろう。いま、たとえ仮にそれを私なりが決断をいたしたいと思ったといたしましても、やはりこれにはいま国会各党でお話し合いがあり、一方、政府政府なりの従来の税調とかそういう経過がある場合に、少しく予断をするということは時期としてもやはり慎重であるべきじゃないかな。私も、元来が財政金融の方で余り育っておりませんで、国会運営とかそういうところばかりにおりましたので、ハウスに対する対応の仕方というものは、大変慎重に心得るべきものであると思っております。
  60. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣、その辺は、この次税法の議論のときにみっちりやらしていただくことにいたしまして、お戻りになる時間が遅いものですから、ちょっと飛び飛びになって恐縮ですが、あと二つだけ伺いたいと思うのです。  この法案が提出されたときの第一印象としては、要するに、ことしの予算それから昨年度、五十七年、五十八年続いてもう極端なつけ合わせといいますか、先取りあるいは貸し借り勘定がさまざまなやりくり算段精いっぱいというのが五十七年、五十八年の予算の特徴であろう。よくもまあ、これだけいろいろとかき集めたり無理したりしたものだというふうなことであろうと思いますし、多くの方々からもそういう評価をいただいているわけであります。  私は、さっきその特別会計の明朗化のことも伺いましたけれども、いずれにしても、こういう状態はもうこれ以上続けられない、五十九年度さらに拍車をかけてやりくり算段精いっぱいのものをもう一遍やるということはいかぬというのが、これは共通の認識ではないだろうかと思うわけでありまして、そういうことを考えますと、この前も大臣に質問さしていただきましたが、やはりこれからどうするのかということを綿密に考えていく、その問題提起を一日も早くやるということが大事なときではないのだろうか。要するに、国政レベルの選挙が終わったらやらしていただきましょうじゃ困るのでね。  そういうことを考えますと、大臣、お考えといいますか姿勢といいますか、伺いたいのでありますが、私はこの前、余り長い時間でもないので、財政再建期間は何年ですか、いろいろとユニークな表現の御答弁がございまして、大体六年、五年、六年、七年ぐらいかなというような話でありますが、それから新聞を見ましたら、本会議でうちの上田議員の質問に対して総理大臣は、五ないし十年。五ないし十年といっても五年開きがあるのですから、これまた何といいますか、大ざっぱというのか、どうにもならぬ話ではないだろうか。こういうお考えを大臣、どう思いますか。  私は、私見でございますけれども、まだうちの党の中でも十分議論したことはございませんけれども、七年か八年か十年かという大ざっぱな話をするのじゃなくて、たとえば二年刻み、二年、二年、二年と積み上げます。最初の二年間には、われわれの要求からすれば消費、減税その他を含めて、人勧完全実施あるいは減税ども含めて、とにかく国際的にも日本は消費でもっと景気のてこ入れをしなさいと言われているわけですから、経済政策の面でそのてこ入れをする。それから、当然ですが、税の不公平是正に向けての新しい一歩をもう一つ踏み出す。財政構造の面でももう一歩踏み出すとか、これが第一段階。  その次の二年間には、もうちょっと一歩進めて、収支構造の改善に一歩、二歩ぐらい進めていく。あるいはまた、これから勉強を始めて、その期間に、大蔵大臣が当委員会の所信表明で言われたように、収支のつじつま合わせではない将来社会像に対応できる一つの財政構造は何かということのマスタープランぐらいは出していくとかする。  そうして、次の二年があるとすれば、たとえばですが、その段階では収支構造をそこで安定的なところに軟着陸をさせる。財政構造の面でも、ほぼこれからの社会の構造に合ったように考えていく。税制についても、そういう意味で考えていく。  私は、五十九年度赤字公債ゼロが御破算になって、あと次の目標は五年ですか六年ですか十年ですかという話をしている、大ざっぱでしょうがないと思うのですね。やはり緻密な組み立てをしなければいけないんじゃないか。と同時に、それをやるためには、主計局もいらっしゃいますけれども、大蔵省主計局の何とか課の何人かが勉強しております、担当の方々は秀才でしょうけれども、それだけではしょうがないので、ドイツの場合の、ドイツの構造改善再建法がいいか悪いか、それはまた別の論議になりますけれども、やはりあのブラント、シュミット、要するに、総理が中心になって最大課題として強力なチームをつくってやっていく。そうでないと、経企庁の数字はいつ出ますか、わが方はそれを見なくてはなりませんとかなんとかいうことは、全くまだるっこい話ですよ。そういうことをひとつ提起をしてやっていく。そういう発想か何かは当然持ってしかるべきではないだろうかというふうに私は思うわけでありますが、大蔵大臣、そこまでは当然考えていると思いますけれども、姿勢を伺っておきたい。  時間がありませんから、もう一つ追加をして一緒に言って終わりたいと思いますが、もう一つは、そういう中で私は非常に心配になるのは、わが党の立場から申し上げましても、実は防衛費、軍事費の問題になるわけであります。これは昨日の毎日新聞ですか、えらく大きく出まして、若い防衛庁長官の写真が出て、それでGNP一%を一%程度に改める。新たな歯どめを設定する作業。防衛庁としては五六中業達成が最優先である。兵隊さんの立場ではそうでしょうけれどもね。それで、枠突破に備えて新しい検討が始まっている。さらにはまた、これは朝日の方ですか、前からも何遍も私ども指摘をしている問題ですが、五十九年度で後年度負担は九千九百億。いまの調子でいって一%突破はほぼ確実というわけでありますが、時間がありませんから申し上げませんが、私は、本来的にやはり財政経済の立場の人は平和主義であり、軍縮論者であるべきなんだろう。何も「男子の本懐」まで言いませんが、そういうふうな立場の根性を持ってやられることが、今日の難局に当たって非常に大事なことではないだろうかというように私は思うわけであります。  端的に伺いますが、こういうものが防衛庁から大きく出ておりますから、恐らく出るのだと思いますね。防衛庁からすれば、五六中業を最優先、一%を一%程度にする。来年たとえば一・一とか一・〇九とかなっても仕方がない、そういう線が当然予想される。大蔵大臣としては、軍縮の方向かあるいは財政は守る方を重点にされますか。ことしと同じようにとか、ことし以上に突出をして、それを許す、それを防衛庁の方に追随をしていくということで臨まれますか。二つ重なって恐縮ですが、まとめて伺います。
  61. 竹下登

    竹下国務大臣 なかなかむずかしい問題でございますが、前段の問題につきましては、基本的な、いまおっしゃいましたまず消費拡大、そうして収支構造の改善、その上にマスタープランをつくりつつ、いわゆる財政の対応力回復への軟着陸というような構想でございますが、計画経済とか自由主義経済とか、その問題はしばらくおくといたしまして、方向としては、われわれもそういうものは模索すべきだと思っております、きちんきちんと二年、二年に出るか出ないかの問題は別といたしまして。  ただ日本の場合、今日の日本経済というものを分析してみますと、私もこの間十カ国蔵相会議に参りまして、いわばある国には日本機関車論的な考えが皆無ではない。ところが、およそ人口五千万ぐらいな国になりますと、まずみずからの自立体制が先ではないかというような意見もまた非常に強い。したがって、サミット等においてどのような議論が展開されていくのか。総じては、日本が最高に諸般の指標そのものはいいわけですが、他の国で見ればむしろ自立体制をつくるのがいまや先決だ、こういう感じが率直にしたわけでございます。  したがって、当面のとり方を消費の拡大だけに重点を置くということについては、全体の中で必ずしもそのことが適当であるかどうかについては消極的でございます。しかし、一つの構想としての考え方は、私は否定するものではございません。ただ、シュミットさんもだめになり、だめになったわけではないですが、おかわりになりまして、私も、たとえば五十五年のベネチア・サミットへ参りました中で残っておる人はだれだろうかと思って見ますと、イギリスのサッチャーさんとカナダのトルドーさん。あとの人はみんなおかわりになった。そうすると、やっぱり事ほどさように国際経済の展望が大変に不透明だった結果、政変があったのかな、率直に言って、こういう認識をしております。  私は、大蔵大臣としてはまさに出戻りでございましたが、続いて残っておるのはイギリスひとりでございます。そこで、初体面が多いだけに、それぞれ意見交換をしてみますと、いまそれぞれの国が、同時不況の中でどういうふうにして財政赤字を少なくしていくかということが先決というような空気に傾斜しておるのじゃないか、私はこういう認識を持ったものですから、あえて申し上げてみたわけであります。  それから防衛費の問題でありますが、実際昭和五十一年、私当時建設大臣でありました。直接の所管ではなかったわけでございますが、その前が二度にわたった官房長官でありまして、第四次防を国防会議に付議しなかったということで責任をずいぶん追及された経緯にかんがみて、そのとき考えましたのは、かつて大変GNPが低いときには、これは一%超しておったこともございますし、そうしてまた、そのときも議論しましたのは、さればNATO方式のように、たとえば海上保安庁の経費とかあるいは軍人恩給、御遺族様の問題等を含めれば、当時一・七ぐらいになるのじゃないか、こういうような議論もいたしました。しかし、いま財政当局を預かってみて考えるのは、率直に言って、大きな歯どめとしての役割りは果たしてきたんじゃないかなと思っております。  ただ、この問題につきましては、やはり財政当局の担当者としては、単年度主義の予算の中で、他の施策とのバランスをとりながらこれが編成作業に当たっていくという問題でございますので、GNP自身もかつてのように大きくなっていかないという状態の中で、どのようなものが考えられるかということについては、にわかにお答えするだけの自信はありません。率直に申しまして、そういうお答えをせざるを得ない。
  62. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。
  63. 森美秀

    森委員長 鳥居一雄君。
  64. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 補助貨回収準備資金の取り崩し、これに係る造幣特会の一部改正でありますが、取り崩しのそもそもは、やっぱり減税財源に充てるべきだということであったわけですね。それが政府・与党の財政運営の失敗、その穴埋めに実は回ることになった。私たちは、減税財源に充てるべきだと言いまして、それで取り崩しができるという意味でこれを主張をしたわけでありますが、もちろん国民信認維持にかかわる重大な問題がここにあるわけですけれども、よって来るところは減税財源ということの要求でありました。この点につきましては、大臣に後ほどまた伺いたいと思いますが、経済企画庁においでいただいておりますので、まず五十八年度政府の経済見通し、それから経済運営の基本的態度、この点につきまして御質問をしてまいりたいと思います。  五十八年度の経済成長率は名目で五・六%、実質で三・四。五十八年度が三・四ということになりますと、三年続きまして三%前半という非常に低い成長が続くわけであります。五十六年度三・三、五十七年度三・一ということであります。で、五十八年度の経済にどんな役割りまたは期待を持ってこの成長率が確定したものか、また五十八年度経済の姿、上期、下期どのようになると見ているのか、まず伺いたいと思います。
  65. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 五十八年度のわが国経済の役割りいかんということが最初の御質問でございますが、とにかく五十八年度のわが国経済を取り巻く国際環境等厳しい状況でございますし、かつ、他方では財政状況が厳しいという国内的な状況もございますが、そうした中で、物価の安定を基礎としながら国内民間需要を中心とした景気の着実な回復を図り、持続的な安定成長を達成し、雇用の安定を確保するというようなことが五十八年度経済に課せられた課題かと存じます。  それで、御存じのとおり、五十七年度経済と申しますのは、第二次オイルショックの影響でその直接的なデフレ効果が五十五年、五十六年とあったわけでございますけれども、それはかなり薄れてきて、五十七年度は消費などはある程度のプラスになる、物価も安定するという状況になったわけでありますけれども、他方では世界経済の方が、第二次石油危機の後、アメリカ、イギリス、西ドイツ等を中心にしまして非常に厳しいインフレ抑制策をとったということもありまして、非常に停滞いたしました。それが輸出の減少あるいはアメリカの高金利を発端といたします世界的なかなり高い金利の状況というような中で、日本の輸出の減退あるいは日本国内においても金利が高いというようなことで、かつそうした中で在庫が再び多過ぎるということで、在庫の二段調整というようなことで三・一%程度の成長にとどまったわけでございます。  来年度につきましては、一方ではこの在庫調整がかなり済む、今年度あるいは来年度当初に多少かかるかもしれませんけれども、その後は在庫調整は済んで、在庫はプラスの局面に移るだろうということが一つございます。  それから、物価の安定が引き続くと思われますので、これは個人消費の着実な拡大に資すると思われます。  それから、アメリカを中心とする高金利というのはかなりの程度下がってきておりまして、いまもなおかなりの水準でございますけれども、金利の低下というのも国内経済にプラスの影響を及ぼすと思われますし、かつ、かなり進みました円安というものの是正の動きも生じておることは御存じのとおりで、これが物価の安定なり交易条件の改善、企業収益の改善等、日本経済にプラスの影響を及ぼすと思われます。  それから、昨年につきましてはOECD諸国の経済成長率、OECD事務局の見通しによりますと、全体がマイナス〇・五%とマイナス成長でございましたが、ことしはプラス一・五%程度と見込まれておりまして、マイナスからプラスに世界経済の拡大のテンポは変わるということもプラスの環境になろうかと思います。  そういう、いろんな昨年度厳しい状況であった対外条件、国内の一部の条件も改善されていくと思われますので、三・四%程度の成長が来年度は見込まれるということでございます。  上下別の姿がどうかという御質問でございますが、これも私ども上下別とか四半期別とかに分けて推計はいたしておりませんけれども、世界経済の方がやはりことしの上期にアメリカを筆頭といたしまして回復を開始し、回復を開始するだけでございますが、下期にかけてだんだんとスピードを上げていくというふうに国際的に見られておりますので、来年度上期よりも下期の方が明るさが増してくるものと考えております。
  66. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 五十八年度予算国民が現在期待しているものというのは、この深刻な失業の増大あるいは中小企業の危機、財政赤字の拡大、こういった問題をいかにして解決するかということに尽きるだろうと思うのです。対外的には、不況に苦しんでいる世界経済の再活性化、これにどのように貢献していくかということだと思うのですが、実質三・四%という低い成長率でこういう問題の解決が一体できるんだろうか、どう見ていらっしゃるのですか。
  67. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 失業の状況でございますが、五十七年度は二・四%程度、百四十万人程度を見込んでおりまして、五十八年度は百三十五万人程度、二・三%程度、若干の改善を期待できるのではないかと見込んでおります。  三・四%成長でございますが、五十七年度の経済の姿が、これは上半期の実績が出ておりますので、上下別の姿がある程度うかがえるわけですけれども、五十七年度の上期は前期比二・五%経済が拡大いたしました。これは財政の前倒しということもありますし、そのほか、住宅に政策的な手段を講じたということがありますし、消費が比較的高かったということもありまして、上期が二・五%、年率にしますと五%程度のかなりなハイスピードで拡大いたしました。したがって、三・一という年度の成長を前提にいたしますと、下期は一%前後とちょっと減速しているかっこうになろうかと思います。そういう下期減速した姿から年度平均三・四%になると申しますのは、これをカーブで見ますとかなりハイスピードで、前期比ベースで見ると、ハイスピードの拡大になるのではないかと思われます。  ちなみに、日本経済研究センターというところが四半期ごとに経済予測をしておりますが、昨年の十二月に日経センターが行いました経済見通しでは、来年度の経済成長率二・七でございます。二・七というのは政府の三・四より低いわけでございますが、年度全体が二・七でも、五十八年度第四・四半期のGNPの前年同期比は四・六%でありまして、平均二・七でも、最後の四半期は前年に比べて四・六という姿が日経センターの予測では描かれておるわけでありまして、そこから類推いたしましても、三・四%成長というのはかなり下期に明るくなっていくと思われます。そうしますと、他方では雇用調整給付金とか個別雇用対策もいろいろ充実を図ろうといたしておりますので、三・四%成長のもとでも失業の悪化は避けられるのではないかと見ております。  世界経済再活性化への寄与についての御質問でございますが、三・四%程度の成長ですと、輸入の実質の伸びも恐らく三%程度ということになろうかと思いますけれども、再活性化と申しますと、それ以外に、保護主義を防遏するとかあるいは発展産業について国際協力をやるとか、いろんな側面があるわけでございまして、総合的に日本国としては再活性化へ応分の寄与ができるのではないかと考えております。
  68. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 五十七年度が内需中心の回復、こういう基本方針だったと思うのです。当初五十六年度経済の三%程度の成長から五・二%の成長を目指す。三%から五%成長というものですから、それなりに回復という表現はわかるんですけれども、五十八年度の見通しについては三・一%が三・四%という目標で推移するわけでありますから、果たしてこれが内需中心の回復と一体言えるんだろうか。回復というのは五十八年度経済がどんな状態になることを言うのか、いかがですか。
  69. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 先ほど申しましたように、五十七年度経済は、世界経済の同時不況といいますか、その停滞の影響を受けて輸出がマイナスになったという影響を受けました。  それから、在庫の二段調整ということで在庫減らしが進んでいるということでも停滞したわけで、それが五十七年度上下別に分けますと、先ほど申しましたように、五十七年度上期に比べて下期はやや鈍化するかっこうになっているわけでございます。これが来年度は、五十七年度経済の非常におもしになっておりました世界経済の停滞の影響が少なくともプラスに変わる、在庫調整も進んで在庫もプラスに転ずる、そういうことを通じてやはり民間経済分野において明るさがだんだん出てくる。年度の途中の推移、四半期別あるいは上下別はよくわからない、正確にはわれわれ数字はつくっておりませんけれども、そのおよその姿から言いますと、五十七年度上期が高くて下期が鈍化したのに対して、やはりかなりのハイスピードで、五十八年度第四・四半期は日経センターの予測で四・六とありますくらい、あるいはそれ以上のスピードで回復すると見ておるわけでございまして、いわばスピードから言いますと民間需要を中心としてかなりの拡大につながっていくと考えておるわけでございます。
  70. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 成長率の寄与度でありますけれども、これは経済企画庁のお持ちの数字であります。  五十七年度、五十八年度当初見通しが実質で五・二、三・四%でありまして、五十八年度の寄与度を内需、外需見てみますと、内需が二・八、外需が〇・六、内需の個人消費が二・一%。五十七年度は内需が三・〇%、外需が〇・一%、個人消費が二・三%で、この両年度とも内需の寄与度はほぼ同じような状況だと言えると思うのです。ということは、五十八年度の内需も五十七年度程度の回復感のない低迷状態、それが続く、こういうことになってくるんじゃないかと思うのです。  五十八年度に深刻化した失業、中小企業あるいは財政赤字、この解決が一体できるのか。輸出で〇・六%見ているわけですけれども、五十八年度は内需が柱になるという以上、五十八年度も景気の低迷を予想せざるを得ないと思うのですけれども、この点はどういうふうにごらんになりますか。
  71. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 数字は御指摘になりましたような姿、そのとおりでございます。したがって、年度平均で見ますと、五十七年度と五十八年度と経済全体の拡大テンポは、五十八年度の方が若干高まりますが、そう大きな変化がない。  そうすると、景気の停滞感というのは五十八年度も続くのではないかという御指摘でございますが、先ほど来申し上げておりますように、いわば年度平均同士の数字ではなくて、その途中の経過、カーブからいきますと、五十七年度後半やや一服ぎみのところに対して、五十八年度はかなりハイスピードで、ことに年度後半にしり上がりに景気が高まっていくのではないかと考えておりますので、いわば先行きの受け取り方としては、五十七年度はかなり高いスピードから減速していったわけですが、五十八年度はそれからだんだん立ち上がっていくという姿が世界経済全体との関連からもうかがわれるわけでありまして、いわば五十七年度に比べれば先行き明るさが見える姿になろうかと考えております。
  72. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは個人消費を伺いたいと思うのです。  内需二・九%の寄与度のうちの二・一%を占めておりますけれども、伸び率で前年比三・九%、これは非常に高いですね。民間設備投資が二・九%の伸び率、住宅が二・六%、これを大きく上回っているわけですけれども、個人消費の伸びをこういうふうに見込める、その根拠というのは一体どういうことなんでしょうか。
  73. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 御指摘のとおり、五十八年度の個人消費の政府見通しは実質三・九%の伸びでございます。これは五十七年度、本年度の四・三と比べますと若干低いですが、四%前後ということでは、ほぼ同じような拡大を見込んでいるということかと思います。  これの根拠いかんという御質問でございますが、一つは雇用者所得、要するに、三・四%程度の経済成長の中で所得が安定的に拡大するだろうというのが一つの要因でございまして、その中身といたしまして、雇用者所得の見込みといたしましては、五十七年度名目でございますが六・三%に対して、五十八年度は六・六%程度雇用者所得が拡大すると見込んでおります。  それから財産所得、これが五十七年度三・二%程度の増加が、五十八年度は七・八%程度の増加を見込んでおりまして、この財産所得も、個人の財産がふえるということは個人消費に関連していこうかと思います。こういう所得面の増加の見込みが一つございます。  それからもう一つは、この所得の伸びに対して消費性向、所得の中でどれぐらい消費に回すかという消費性向の動きを最近見ますと、安定的に推移しておりまして、やや少しずつ上がっているという状況でありますので、来年度も平均個人消費性向が少し上がるのではないかと思っております。そういうことで、名目消費がふえるというのが一つでございます。  他方では、物価引き続き三%前後で安定基調を維持するであろう。そうしますと、実質消費が、やや低目ですけれども年度とそう大きく変わらない拡大を見込んでいいのではないかと考えております。
  74. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それで、消費関連指標を見てみますと、ここへ来まして百貨店の売上高、この低迷、伸び悩み、これが必ずしも暖冬のためばかりとは言えないのじゃないかと思うのです。残業あるいはボーナスの点で伸び悩みというのがあり、それを如実に物語っている数字であると私は思うのです。  それで、消費の低迷で指摘しなければならないのが、減税の見送りによる租税負担の増大、これが一つ挙げられるだろうと思うのです。非消費支出、これの実収入に対する比率を見てみますと、ここのところぐんとシェアがふえてきております。五十三年一一・四%、五十四年一二・一%、五十五年一二・八、五十六年一三・八、五十七年九月までの数字でありますが一四・四、これは国民生活白書によります。総理府統計局の家計調査によるものです。減税しないで本当に内需の拡大が図れるのだろうか、こう思うのですが、経企庁はどういうふうに考えますか。
  75. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 ちょっといまの数字、私手元にございませんが、恐らく先生御指摘のような非消費支出の割合がふえているというのは事実でございます。  他方、所得からそういう非消費支出を除いたものが可処分所得でございますけれども、この可処分所得が消費に回るわけでございます。ですから、そういう非消費支出のウエートがふえておりましても、それを除いた残りの可処分所得がどうかということが実際の消費につながっていくわけでございますが、家計費調査によりますと、勤労者の可処分所得は、たとえば五十七年四—六月が実質三・〇%、七—九月期が五・〇%というふうにふえておりまして、十—十二月は、ちょっとまだ十二月が出ておりませんけれども、このように、確かにおっしゃるように非消費支出の割合はふえておる。勤労者に対する税とか社会保険料負担はふえてはおるのですが、それを除いた残りの可処分所得も実質で前年に比べてある程度ふえておるということで、その減税をしていない影響というのは当然あろうかと思いますけれども、結果的に見れば、それなりの消費の原資はふえているという見方もできようかと思います。
  76. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 そうすると、生活実感から幾つかの数字を挙げてみたいと思うのです。  これは、大蔵省が昨年の十二月十四日政府税調に対して提出した資料でありますけれども、標準家庭、夫婦子供二人、年収三百万円、この世帯では五十二年から五十七年までの間に所得税と住民税の合計が二・五三倍になった。税引き後の手取りは一・三二倍、つまり約半分にとどまっているという一つの数字があります。  この数字は私鉄総連の調査の結果ですけれども、大阪のある電車の車掌さん、Aさん三十五歳、過去三年間の基準賃金が月額二万七千百六十円ふえた。これに対しまして税、社会保障負担が月額一万四千三百五十七円、賃上げの五四%が自動的に引かれるという結果になって、残りも物価上昇で実質目減りとなっている。  それから、年収六百万円の標準家庭、夫婦子供二人、このサラリーマンが五十八年に六%のベースアップがあったと仮定すると、所得税と住民税合わせた税金は一三・五%増加、金額で言うと、六%のベアで三十六万円ふえても、税金で八万三千円、社会保険料が三万円ふえる、こういう結果になる。実際の手取りは二十四万七千円。六%のベアでも実際の手取りというのは四%増加で二十四万七千円。六%のベアであっても手取りは四%。これでは、物価の上昇を考えますともうゼ口というのが実態ですね。ましてや、人勧凍結あるいは年金スライド凍結を理由にして賃上げ論が広がつている中で、消費の環境というのは冷え込む一方だと言わざるを得ないと思うのです。  こういう状況を放置しておいて、消費が回復する、上向くということは一体言えるのですか。
  77. 横溝雅夫

    ○横溝政府委員 いま御指摘になりました幾つかの所得税、住民税等の負担状況の数字につきましては、私にわかに数学的な検討は何ともちょっと申しかねるのでございますが、要するに、そういうのを踏まえた上で先生の御指摘は、そういう中で消費の回復というのが考えられるかという御質問でございますが、消費がいままでの拡大スピードに比べてさらに大きな拡大テンポでどんどんふえていくということをわれわれ見込んでおるわけではございませんで、要するに、五十七年度にあったような消費の拡大のテンポよりやや低目のテンポは維持できるだろうと見ておるだけでございまして、ですから、消費が先行きどんどん回復してふえて、いままでよりも目立って、たとえばいままで四%ふえていたのが五%、六%と、こう拡大テンポがふえていくというところまでは、とても想定はしていないわけでございます。
  78. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 大蔵大臣に伺いますが、けさの新聞によりますと、「農家の″税金天国″許さず 国税当局 収入ほぼ完全掌握 申告、実際の四分の一」、こういう報道がございます。ごらんになっていらっしゃると思います。また、二月十六日、各紙の伝えるところによりますと、「所得一千万円未満で億ションが買えるの」こういう見出しで大変な状況が報道されております。  これは、いろいろな意味を持っているだろうと私は思うのですが、この報道をごらんになりまして、率直な意見をまず伺いたいと思います。
  79. 竹下登

    竹下国務大臣 巷間言われておりますような税負担の不公平があるとは私は必ずしも考えておりません。それはお互い政治家として自分の出身の選挙区等が絶えず念頭にあるわけでございますので、私は開発途上——開発途上は適当でないですが、俗称後進県でございますので、そういうような感じは余りありません。  しかしながら、税務調査実績からして過少申告を行う不誠実な納税者がおるということは、私もそれはわかります。私も予算を編成するに際しいつも考えますのは、いわゆる農家の人が約百三十億円、これは五十六年ベースでございますけれども、申告所得がある。そうすると、まあ大体源泉等はその倍ぐらいの三百二、三十億円くらいかな。一方、支出されておるものは、五十六年度の農業関係予算で三兆二百億ですか、そういうところにいろいろな、私もある種の感懐を覚えながら予算に臨むわけでございます。したがって、ごくレアリーケースとしてそういうことはあり得るということ、否定する考えは全くございませんが、そういうことをなくす努力というものがなお一層払われていかなければならぬ問題だな、こういう感じが素朴にしたということを申し上げたいと思います。
  80. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 私は、この報道を見まして、まず国税庁の職員の皆さんよくやっているな、これはどなたも認めると思いますが、一〇〇%捕捉されているサラリーマンにとりましては、大変にふんまんやる方ない事実だと思うのです。捕捉率から言いましてクロヨン、トーゴーサンと言われる実態が、その氷山の一角かもしれませんが、こういう形で立証されてくる。ですから、六年連続して所得減税がない、一方において税の不公平がこうやってまかり通る、こういうふんまんやる方ない事態、それが税に対する不満をつのらせているだろうと思うのです。  きょうは同僚議員も、いろいろな角度から減税の要求、減税をやらなければならない時期、これについて大臣のお考えを伺ったわけでありますが、財源問題は確かに財源問題、しかし、もうぎりぎり減税をやらなければならないところに来ていると、政治家として、私は大臣も恐らくそう御判断されているだろうと思うのですが、その点についていかがでしょう。
  81. 竹下登

    竹下国務大臣 そういう国民的要請とでも申しますか、それが強いという認識は私にも十分ございます。  さればとて、率直に言って、それは各国の会議に行ってまいりましても、日本税制を見ながらこれが高過ぎるという指摘はむしろ少ないわけであります。そうすると、お互いの体質が高度経済成長になれ過ぎてきておるというある種の反省もしなければならぬというようなことを総合的に勘案した場合、現状における判断として減税の要求に対してこたえ得なかった。だから、これが単なる数字上の問題だけでなく、いま御指摘のある種の政治的意義というものを持った世論というものを肌で感ずるという状態には私自身もあると思うのであります。  したがって、これはまさに国会でいろいろ話し合いも行われておる。それに対して、もとよりその推移を見守るということになりますが、その話し合いの中でいろんな資料の要求とかいろんな問題が提起された場合、それには積極的に協力するのは当然の務めだな、こういう感じであります。
  82. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 それでは、補助貨法案の具体的な問題について伺いたいと思います。  国民信認維持するための制度、これが昭和二十五年からずっと維持されてきているわけですね。それで、この回収準備資金制度、大方の取り崩し、一兆一千六十四億円という大部分の取り崩しをする。これは従来の国民信認維持ということの信認の解釈に変更があるのですか。百八十度変わったということなんですか。信認というのは一体何ですか。
  83. 窪田弘

    窪田政府委員 この仕組みそのものをやめようというわけではございませんで、財政審で御検討いただきましたときにも、流通額に見合うだけのものを置いておく必要はないのではないか、そういう御意見をいただきましたので、私どもは、その限度政令で定めさせていただきたい、その定める額は、いまのところ流通額の一〇%程度でまずまずいいのではなかろうか、こういう考え方でございまして、制度そのものはあくまでも維持してまいりたいと思っておるわけでございます。
  84. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 この信認維持ということですね、これは貨幣法で明記されている本位貨幣に対する信認維持ということじゃないんでしょうか。つまり、貨幣法のいわゆる本位貨幣というのは、信認が金で裏づけされているわけですね。それに対して補助貨の方については、本位貨幣に対して信認維持を図るための制度としてつくらなければならなかった、こういう意味信認じやありませんか。
  85. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 造幣局の特別会計法の十八条の三項でございますが、回収準備資金の目的が書いてございまして、補助貨引きかえまたは回収に充てるほかとございます。  引きかえ、回収は何であるかということになりますが、経緯的に考えまして、ただいま御指摘のような貨幣法の本位貨幣から発しまして、この資金の類似のものは、御承知のように明治三十五年にできたわけでございますが、その段階では、ただいまお話しのような本位貨幣的な要素が多かったと思います。その場合には、明治三十年から昭和二十五年ぐらいまで戦争中を通じまして、平均いたしますと流通額の大体一五%ぐらいが資金にございました。  したがって、経緯的に見ますと、そういう本位貨幣的な要素が背後にあったと思いますが、戦後二十五年にこの回収準備資金ができました際に、引きかえ、回収ということで二十五年から二十八年まで、これは一〇〇%準備を充てるような法構成になっておったわけでございます。したがって私どもとしては、明治以来の観念が、一五%ぐらいできたものが戦後一〇〇%ということで置きかえられたということで、本位貨幣的な信認というものと、その補助貨になった場合にこの引きかえ、回収がいつでも円滑に行われるということが信認ということにつながってくるのではないかというふうな解釈をしておるわけでございます。現在のところは引きかえ、回収という、実定法はそうなっておりますが、経緯的にそんなようなつながりがあろうと思います。
  86. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 次に、政令で定める額ですけれども、これは流通高の一〇%という意味なんだそうでありますが、提出していただきました資料を、実績を見てみますと、五十三、五十四、五十五、五十六と四年がありますけれども引きかえ、回収率を見てみますと、大体〇・六八、一・〇一、〇・五八、〇・五二、大体一%前後というのがいわゆる回収率ですね。それから造幣局経費、これを一〇%の中で見ようということのようでありますが、造幣局経費というのも、大体において百八十億からたかだか二百億に届かない。  そういう状況の中で、本当に必要な回収額と造幣局事業費、本当に必要なものというのは少なくとも、ここのところ十年くらいのいろいろ変動がありますけれども、三%程度見ておけば事足れる、これをどうして一〇%見なければならないんだろうか、こう思うのです。それで、事業費として五%見て、回収資金として五%見ているんだということでありますが、高く見なければならない理由というのは何でしょうか。     〔委員長退席、大原(一)委員長代理着席〕
  87. 窪田弘

    窪田政府委員 御指摘のように、最近の数字は二、三%あるいはもうちょっと途中高い場合もございますが、いまおっしゃいましたように、この資金の使い道は、回収のためと鋳造経費と申しますか造幣局経費に充てる、これが二つの大きな使い道でございます。  回収率は、最近は低うございますが、たとえば昭和四十二年でございますと、四・七%でございますとか、あるいは制度発足時の二十六年、二十七年度は六%台というふうな非常に高かった時期もあるわけでございます。鋳造経費につきましては、四十九年度四・七%あるいは三十年代に入りますと一〇%台のこともしばしばございました。これは、新しく通貨を鋳造していま流通しているものに取りかえるとか、あるいは記念貨幣を出すというようなことがあると高くなるわけでございます。  そういった特別の場合をならしまして通観をいたしますと、大体回収率で五%、これはこのぐらい置いておけば過去の一番高いときにも対応できますし、あるいは鋳造経費はもっと高いときはございましたが、最近の傾向は落ちついておりますので、合わせて丸く一〇%、こういう制度でございますから余り細かい刻みをつけるのは適当でございませんで、丸く一〇%というのが適当な率ではなかろうか。その一〇%にいたしましても、鋳造経費回収率を合わせた率で申しますと、四十年代初めまででございますが、一〇%を超えたという事例が九回あるわけでございまして、手放しで安心というわけにはまいらないのではなかろうか。     〔大原(一)委員長代理退席、委員長着席〕 そのために、いざという場合の資金繰りの用心として、一時借入金の制度あるいは造幣局経費に対応するための一般会計の繰り入れ対象の拡大というようなこともあわせてとらせていただきまして、万全の措置をとらせていただいているわけでございます。
  88. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 率直に言って、十何年か前にぽつんとあった不測の事態といいますか、それはちょっと違うのじゃないかなという感じがしてならないのです。これは、安全弁として一借りがあるし、一般会計からの繰り入れができるという安全弁が二重三重にあるわけですから、ここら辺は平均値あるいはこの十年ぐらいの推移の中で全く困らないというあたりに線を引く、そんなような配慮があってよかったのじゃないかなと思えてならないのです。  最後に、大臣がいらっしゃらないので副大臣に伺いますが、私たち野党がこぞって減税財源としてこれを取り崩せという要求をいたしましたね。それで、今回は穴埋めのために使われる。非常に釈然としないわけでありますが、今後のこの信認維持、これをどんなふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
  89. 塚原俊平

    ○塚原政府委員 これまでの補助貨幣回収準備資金制度の運営の経験等にかんがみまして、取り崩し後も補助貨幣引きかえ、回収等のために必要な一定額の資金の保有をすること等としております。したがって、今回の取り崩し後も補助貨幣引きかえ、回収に支障を生ずるおそれはなく、ひいては、補助貨幣信認維持について影響を与えることがないというふうに考えております。
  90. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。
  91. 森美秀

    森委員長 次回は、明二十三日水曜日午後零時四十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十四分散会