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1983-05-20 第98回国会 衆議院 商工委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月二十日(金曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 森   清君 理事 渡部 恒三君    理事 水田  稔君 理事 長田 武士君       天野 公義君    浦野 烋興君       越智 通雄君    奥田 幹生君       木部 佳昭君    島村 宜伸君       田原  隆君    中川 秀直君       野中 英二君    鳩山 邦夫君       宮下 創平君    粟山  明君       森田  一君    城地 豊司君       岡本 富夫君    北側 義一君       横手 文雄君    小林 政子君       渡辺  貢君    石原健太郎君       菅  直人君  出席国務大臣         通商産業大臣  山中 貞則君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁物価         局長      赤羽 隆夫君         通商産業大臣官         房審議官    野々内 隆君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業大臣官         房会計課長   鎌田 吉郎君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         工業技術院長  川田 裕郎君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石炭部長   弓削田英一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 小川 邦夫君         特許庁長官   若杉 和夫君         特許庁総務部長 鈴木玄八郎君         中小企業庁長官 神谷 和男君         中小企業庁計画         部長      本郷 英一君         中小企業庁小規         模企業部長   赤川 邦雄君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第一課長   滝島 義光君         大蔵省主税局税         制第三課長   真鍋 光広君         大蔵省銀行局中         小金融課長   日吉  章君         国税庁直税部資         産評価企画官  内藤  彰君         厚生省社会局保         護課長     土井  豊君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ───────────── 委員の異動 五月二十日  辞任         補欠選任   植竹 繁雄君     森田  一君   石原健太郎君     菅  直人君 同日  辞任         補欠選任   森田  一君     植竹 繁雄君   菅  直人君     石原健太郎君     ───────────── 五月十九日  中古自動車輸出業務に伴う輸出検査制度の改正に関する請願今枝敬雄君紹介)(第四三八八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長田武士君。
  3. 長田武士

    長田委員 まず最初に、通産大臣お尋ねをいたします。  先月末から今月の十三日までプレサミットと呼ばれております一連国際会議出席をされまして、大変御苦労さまでございました。四極貿易相会議から始まりまして、IEA閣僚理事会OECD閣僚理事会と続いたわけであります。  確かに、ことしのOECD閣僚理事会は、昨年と違いまして、アメリカイギリスなどインフレもおさまりまして、平穏なうちに終わったという印象を私は強く受けております。しかし、主要テーマの中で、保護貿易の抑制と自由貿易の堅持という点では合意を見たわけでありますけれども、通貨の問題、それからソビエトの経済制裁を目指す東西通商の問題、この点についてはアメリカが一応譲歩したという形で決着を見ておりまして、恐らくこの問題については、五月の末から開催されますところのサミットに向けて先送りした感が非常に強く印象として残っております。これらの問題は、考えようによりましては、わが国とも重要なかかわり合いを持つ問題でもあるわけであります。加えて、現在わが国景気回復がおくれていることや、本年度には膨大な貿易黒字が予想されております。こういう点を考えてまいりますと、サミットは平穏では終わらないなという感じを私は強く持っております。  そこで、一連国際会議出席されまして帰ってこられた通産大臣に、ひとつ率直な御意見お尋ねしたいと思っております。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 余りにも連続して国際会議が行われるものでありますから、それにそのころは、通産提案法律法案のうち三法案が参議院の委員会でまだ残っておりましたので、私も苦慮いたしましたけれども、結局、与野党皆様方が、それらの国際会議日本が一国のみ欠席をした場合の悪影響ということを配慮せられて、審議を進めていただきまして、出発の日に本会議を通していただいたような次第でございました。  私も、それだけに責任というものを重大に受けとめて列席をしたわけでございますが、結果として、日本が行っていてよかったな、もし、この四つの国際会議の一つでも日本大臣がいないという会合であったならば、あるいはサミットへの風向きも変わったものになったかもしれない、そういう危惧をする点が多々ございました。その点は、後ほどまた御質問にお答えをしてまいりますが、とにかく行ってよかった。そして、発言し、行動し、がんばり、主張してきて、日本の存在をむしろ強く印象づけて、たとえば産消対話とかあるいは通貨協調介入とか、そういう問題については、どうも渋りがちな国々が多いところを押し切って、日本がコミュニケに入れさせた等の経緯等から踏まえて、やはり結果的には、行って行っただけの成果は上げられたということが、一言にして言えばその感想だと思います。
  5. 長田武士

    長田委員 今回のOECD理事会共同声明を見てまいりますと、加盟二十四カ国を三つグループに分けまして、それぞれ政策割り当てをしておるのが特徴のようであります。  その第一グループは、わが国を初め、アメリカイギリス西ドイツなど、インフレが鎮静しておる、そして景気回復に向かった国、こういう国が第一グループのようであります。また第二グループは、フランス、カナダなど、いまインフレがわずかながら鎮静してきた、そして景気についても少しずつでありますけれどもよくなってきておる国。そして第三グループは、ギリシャとかスペイン、イタリアなど、高失業あるいは高インフレの国。この三つに分けてあります。そして、この第一グループに対しては、金利の引き下げ財政赤字の解消を要請してきているわけでありますが、実は、財政支出を抑えて景気回復を阻害しないようにとの注文もついております。  言うまでもなく、今回のOECD閣僚理事会の目的は、世界経済持続的成長の基盤を整備するということにあったわけでありますが、かつてのように、景気回復のための機関車論というものは今日では成功しないので、三つグループがそれぞれ整合性ある政策をとって景気回復をさせようということがねらいであるようであります。しかしながら、総論では賛成できましても、各論になりますと各国利害が出てまいりまして、なかなか実行に移せないという難問題を抱えておるわけであります。この点について、ニューヨークの連邦銀行総裁のソロモン氏は、西ドイツ日本減税が必要だということは、当事国を除いて広範囲の国で合意があるという皮肉った発言もいたしております。  わが国は、景気回復をさせる政策手段といたしましては、内需の拡大こそ急務であろう、もはや他力本願的なものは許されない、このように私は考えておるわけであります。ところが、景気刺激に対しまして否定的な発言が、がまんの哲学者の間から聞かれるようなことがございますけれども、この点について、通産大臣はどうお考えでしょうか。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 国際会議で、日本財政運営について減税をやるべきだという意見は出ておりません。それは、各国経済運営は、先ほど分けられました、まあA、B、Cに分けてもいいのですが、三つの範疇の国々それぞれにおいて、たとえば財政赤字の問題をアメリカも言われておりましたし、日本財政赤字の問題は言われておりません。しかし、それらのAのカテゴリーの国々は、おっしゃるように機関車論にかわって、そういう市場開放をしながら自分たちの国の経済運営健全化に努めていくということが当然の義務と申しますか、そのような意味では合意があったと思いますが、それぞれ国名を挙げて、どこの国はどうだということはちょっとなかったように私は記憶しております。
  7. 長田武士

    長田委員 ところで、先送りとなりました通貨問題、外国為替問題、すなわち市場への協調介入の問題ですが、これにいたしましても、先ごろ七カ国蔵相会議が開かれましたが、アメリカは、協調介入については限定的な効果は認めるという程度の同意は示したわけでありますが、それ以上の進展はなかったようであります。  また、対ソ制裁をねらう東西問題にいたしましても、アメリカは、ココムで先端技術対ソ流出の防止を主張しております。IEAでは、天然ガス対ソ依存度を低めよと、このように求めておる。OECDでは輸出信用供与の問題を繰り返し持ち出しておりますが、加盟各国利害があり、どうも一致していないというのが現状のようですね。したがいまして、アメリカのいら立ちはこの辺にあるのじゃないかという感じを私は持つわけであります。外交交渉各国利害が当然関係してまいりますので、総論では合意できましても各論では足並みがなかなかそろわない、これはなかなか容易なことではないという感じがいたしております。  こうした中にありまして、わが国は、世界経済の問題に関しましては、大幅黒字国であるということで非常に注目される立場にあるわけであります。欧米各国が二けたに上る失業者を抱えておるときに、他国の景気回復に期待いたしまして、待てば海路の日和ありと、外需を頼みとする経済運営を今後とも続けていくようなことになれば、日本は必ず孤立しかねない、こういう危惧が持たれるのではないかと私は思っております。こうしたことから、五月末のサミットで、日本が再び攻撃目標になるようなことはないのか、この点について通産大臣、どうでしょうか。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 いま経過でいろいろ述べられましたことは、大体が当たっております。しかしながら、結果として日本サミット非難対象になるというようなことはあり得ないと私は見ております。  ということは、いままでの会合では、ややもすると、暗黙のうちに日本を指さしたような、たとえば為替政府の意図によって異常に安く維持されることによって輸出を拡大しようとしている国があるというような、そういうふうな感じ等があったらしいのですが、今回はそういうことはありませんで、私どもは国内で、そのような結果にならないように内需振興だ、こういうことをやっているわけでありますけれども、国際的にはそのような批判はありませんでした。したがって、サミットに向けても、日本ターゲットにされるような問題にはなっていない。  しかし、通貨協調介入については、日本が一番強く要請をいたしました。それについては、七カ国蔵相会議経過を踏まえた後でありましたけれども、アメリカがどうしても、表向き極端な、異常な場合には効果があるだろうという程度合意しか見せませんで、私が提唱しました、アメリカ日本ドイツ並びに場合によってはスイスフラン、こういうもので協調介入をして為替を安定させたらどうか、アメリカのドルが強ければそれでいいというものではないということを言ったのですが、なかなか西ドイツあたりも、ふだんならばそうだと言うはずのところが、その直前に行われたEC内の共通フロート調整に当たって、経済状態の悪いフランスのために開いた会合で、フランスが開き直って、ドイツフランス経済を悪くしたのだと言って、ドイツのマルクを切り上げさせられたという苦い教訓を得たばかりでして、どうも今回の世界基軸通貨協調ということについては、いつもの元気がドイツになくて、ちょっとアメリカ日本との中間ぐらいのような気持ちでございました。スイスは、それに対しては積極的な賛成をしたのですけれども、その物の言い方が、ちょうどカーター政権時代にやったらうまくいったじゃないかということにとられる発言をしたものですから、わがレーガン政権として異なことを承るというような空気が生まれたりしまして、そこらをまとめるのに大変苦労をしたわけでありますが、しかし、通貨調整の要ありということについての合意を得ることができたのは、日本が強引に推したからであります。  というのは、つい最近まで、日本政府為替を恣意的に低く抑えておいて、それで輸出ドライブをかけて各国を困らせておるという非難がありました。ところが、石油の五ドル値下げを受けて、各国経済指標に与える影響の中で、日本に与える影響が一番いいだろう、ファンダメンタルズへの貢献は日本が一番だろうというのはアメリカも認めるわけで、ならば、日本の円はそこで当然ながら高目に戻っていくはずでありますが、どうも最近二、三日、一週間ぐらいは別として、その会議の前後には思ったような回復基調にない、これも異常なことである。したがって、日本政府が恣意にやっている、上げ下げをしているのでもない。今度は、日本政府が上がらないようにやっているのだいうことは言わせない。介入をしないというならば、それはそこに投機的な資金の攪乱要因あるいはオイルダラーが一部入り込んでいると言われているための不安定、見通しの困難、そういうものに対して日本は対応できないので、この際、各国に向かって宣言をする。今後、日本の円のレートについて、政府が中に入って貿易政策のために操作をしているということは言わせない。それを日本はしていないし、やらない。それをまた、各国に文句を言わせないということを宣告するという厳しい調子で切って出たものですから、最終的には、異常な乱高下なり、そういうときには協議して、了解を得たならば介入してもいいではないかという、ほんわかとした合意ですかね、そこらに落ちついたと思いますので、サミットでそのことが再び蒸し返されることはないだろう。  ただ途中で、ミッテランが、IEA会議とかそんなものには出席もしないフランスですけれども、しかしOECDには出ますから、その出た閣僚たちをエリゼ宮に全部集めまして、大変長ったらしいお説教をいただきました、ブレトンウッズ体制に戻れとかなんとかという。ですけれども、そのことは会議においては何ら問題とされなかったわけでありますが、しかし、首脳会議にはミッテランそのものが出ますから、また、フランスがどのような出方をするのかわかりませんので、フランス出方いかんによっては、また別な意味の波乱の要素があるのかもしれないなという観測を持っております。
  9. 長田武士

    長田委員 ことしは原油の値下がりもありまして、恐らく経常収支黒字が二百億ドルに達するだろうというのが有識者の見方であります。逆に、アメリカは二百億ドルの赤字になるだろうというふうな予想が立てられておるわけであります。私は、もはや論議する段階ではなくて、一時的に国債の発行をいたしましても、財政面からの需要創出をぜひ図らなくちゃいけないんじゃないかという感じを強く持っております。  先ごろ、世界国際金融専門家の集まりでありますところの三十人委員会が東京で総会を開いたわけであります。この委員長は前IMFの専務理事でありましたウィッテフェーン氏でありますけれども、三十人委員会宣言でも、黒字財政赤字をおそれずに景気刺激をとれ、こう言っておるわけですね。私は、いますぐに大幅な所得減税公定歩合引き下げ、これは日本経済にとっては全く至上命令的な大きな課題であろう、このように考えておるわけであります。  この問題については経企庁長官にお聞きをしたかったわけでありますが、きょう遅くなるそうでありますから、OECDからお帰りになった通産大臣に、世界経済との関連におきましてわが国経済政策のあり方の問題、これに関しまして所感をひとつお尋ねをしたいと思っております。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 成績の優秀なAAクラスと申しますか、そういう国々はそういう施策をとって内需を振興しろ、というのは、日本減税をやれというような指摘はないのですけれども、そのような財政をとるべきであるという意見が、これはどちらかというと、アメリカ財政赤字が非常に大きいものですから、それの方に向けた発言のように聞こえた発言が多かったのですけれども、しかし日本とても例外ではない。要するに、ほっとけば、レートの問題が片づかなければ、公定歩合も去年の末以来われわれが念願することが実現できない環境のままでいくわけですから、そうすると日本の場合においては、結果においてむしろ国際収支黒字というものがふえる傾向が見えるわけでありますね。そうすると、またその結果をとらえて、二国間で論ずべき問題でないにしても、対日本との貿易収支というものを、アメリカを先頭にどこの国でも物を言っておりますから、いまおっしゃったような紛争の火種に結びつくおそれがある。しからば日本はどうすべきかというのは、私の結論で発言すべき問題じゃありませんが、日本も何らかの国内景気振興策をとらなければ、内需振興の方針を持っていますと言っても、この間決めたような景気刺激策程度では、とても、その後の経済の足取りが示しますように、うまくそれが表にあらわれてこない。やはりどうしても基本は国民の最終消費支出というところが大きなウエートを占めますし、そこから消費購買力へも転化していくわけでありますから、すべての糸口はそこにあるわけでありますが、何せ、国の財政事情というものの中でそれが可能であるか。増税はしてはいけないという前提で増税なき行財政の改革、再建ということを言っているとすれば、その道はほとんど絶望的な道ではないか。しかし、与野党合意等もございますから、そこに何らかの道が発見できれば、結果的には景気回復させ、そして日本産業を再び活気づかせる糸口になるものとして、それができるならば通産省としては非常に歓迎するところでございます。
  11. 長田武士

    長田委員 ところで、ことし三月に入ってからだと思いますけれども、わが国産業政策に対するアメリカ批判が非常に強くなってまいりましたね。戦後におけるわが国アメリカ貿易摩擦は、繊維から始まりまして鉄鋼、造船、家電自動車、オートバイ、工作機械と続きまして、いまは半導体というふうに変わっております。  昨年末、アメリカ工作機械メーカーでありますところのフーダイル社が、日本産業政策によって対米輸出が急増し、損害を受けておる、ぜひ救済してほしいという訴え通商代表部、USTRに提出いたしております。また大統領に対しましても、日本製工作機械投資減税控除対象から除外してほしい、こういう請願を出していたようであります。また通産大臣は、この件に関しましてもブロック通商代表に書簡を送りまして、憂慮の念を表明されたそうであります。この件は一応通商代表部が対日規制訴えを却下いたしまして、実は事なきを得ております。  こうした動きの中で先月、通産大臣の談話も発表されたわけであります。わが国産業政策についての考え方を述べたわけでありますけれども、アメリカの反応はますます批判が強まるばかりである、そういう感を強くいたしております。このフーダイル社の件が発火点となりまして、半導体メーカーモトローラ社が何か産業政策批判のキャンペーンを十数回展開したそうであります。いまやワシントンは産業政策という言葉、英語ではターゲットインダストリー・ポリシー、特定産業育成策といいますか、これを略してターゲティングと言うそうでありますけれども、この言葉が大流行しておるということのようであります。わが国産業政策に対するアメリカの認識、理解というものが通産省考えているほど、どうも進んでいないのじゃないか、世界的に認知された言葉になっていないのじゃないか、私はそのような感じを強く持つわけであります。  私は先日、産業政策というものが経済政策として学者の間には認知されていないということを当委員会で申しましたけれども、アメリカにおいては、なじみのない、理解しにくい言葉であり、政策論であるのではないかという感じがいたしております。フーダイル社大統領に出した請願書は、新聞によりますと、百六十三ページ、しかも五百ページに上る参考資料が添付されておるということですね。いろいろ調べてみますと、その内容は、過去二十五年間における日本産業政策の説明と、それへの非難であるということのようであります。わが国幼稚産業保護段階において輸入制限をしましたり、技術導入に際して政府が関与したり、税制上の優遇をしたり、政府系金融機関政策金融をしたり、輸出促進策をとったり、あるいは官公需国内品優先買い付け措置をしたり、こういうことがすべて疑いの目で見られておるということのようですね。日本にとってはまことに心外でありますが、このようなことが報道されました。アメリカとしては、こうした日本産業政策をこのまま放置しておきますと、従来の家電自動車工作機械などと同じように、半導体などのいわゆるハイテクノロジーの分野で同じ憂き目を見るのではないかと危惧をしているのじゃないか、このような感じを私は非常に強く受けるわけであります。そして、いまのうちに日本をがっちりたたこうという作戦ではないかなという感じを私は強く持っておるわけであります。  こうしたアメリカ批判は誤解に基づくものも非常に多いと私は思うわけでありますが、この点につきまして通産大臣、どのようにお考えでしょうか。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 ここにあるニューヨーク・タイムズの「日本産業政策通産省」という役所の分析ですね、これがいま二回目ですが、一回目の分には私のお粗末な写真が出まして、ニューヨーク・タイムズの一面に連載をしております。     〔委員長退席、森(清)委員長代理着席〕 まだ出てきておりませんが、最終には私と記者との一問一答も載せる約束で私のインタビューを認めた経緯がございますから、あしたあたり、きょうのニューヨーク・タイムズですか、出ていると思うのです、まだ入手しておりませんけれども。この中にも克明に、いろいろな業種の問題について、日本はすでに過去一九三〇年代にさかのぼっていろいろなことをやったのだということ等が書いてあり、一方においては、いまおっしゃったように各業界が手をかえ品をかえしてやっておりますし、きょうの午後は、委員会のお許しを得られる時間にボルドリッジ長官と私と会見をすることになっております。その前にはオルマー次官と日本の小松審議官を中心にして協議を二日やってきておりますが、思ったほど激しい言葉のやりとりにはなっておりません。しかし、その言っているところは相当な、この問題、この問題は理解に苦しむのだというようなことを一々具体的に、先般ここで議論して通していただきました基礎素材産業にしても、これは限界産業を官、民、政治もともに協調して日本株式会社のやった象徴的なものであるというようなことまで言っているような状態であります。  要するに、ここで必要なことは、かっかしないでといったって、私はすぐかっかするのですけれども、アメリカの方も自分たちをよく見てもらいたい。私はきょう話をしようと思っているのですが、アメリカという国は建国以来資本主義社会を構成しながら、世界一の高い富の国民、それを二億二千万も持っていて、それが市場になるわけですが、そのマーケットに対して、チタンとか最近石油を一部入れているといっても、自給自足の可能な資源国であります。したがって、自国の資源でもって大量供給、大量消費というローテーションを一国だけで組める世界でただ一つの国である。そのことはアメリカは意外と気がついていないですね。ですからアメリカの人たちの間には、業界においても政府においても役所においても、アメリカの品物を外国に売って、そして外貨を稼ごうという考え方はもともとなかった。しかし最近は、自分たちのその楽園に日本というインベーダーが侵入して、自分たちの平和な市場を攪乱しておる、失業輸出だとまで極論する、そういう状態になっておるということは、アメリカ自身のいままでの輸出貿易というものに対する観念が全くなかったということが、反省が欠落していると私は思います。それは率直にアメリカに言うつもりです。  日本の場合は、徹底的に第二次大戦でたたかれて、日本列島は灰じんに帰したわけでありますから、石油産業一つをとってみたってそのいい例でありますが、その瓦れきの中から私どもがここまで立ち上がってくるのには、政府も国民も業界も政治も一体となって、日本国民の幸せを願って、無資源国日本が平和的な手段、すなわち武力による紛争の解決や恫喝やあるいは出ていって資源を確保するというような態度を一切とれない国として、平和裏に原材料を売っていただいて日本に持ってきて、われわれは働きバチと言われようと何と言われようと一生懸命働いて、そして今日の日本ができたんだと思っています。確かに世界的に優秀な製品をつくり、そして世界市場に提供していきました。しかしながら、私たちの来た道は、それは自転車で一本道を進む、日本に残されたただ一つの道であって、その道を私たちは歩いてきたにすぎない。個々の品目を含めてアメリカにおいて失業者が千二百万であるという痛みは、日本にそれを持ってくれば六百万人の失業者に相当するわけでありますから、政治上もあるいは社会的にも大問題であるということの理解は、私たちも持たなければいけないけれども、日本のやっている行為はすべて他国に迷惑を与えるものだということに私どもが屈服をしたら、私たちはもはや今日の生活の維持はできなくなります。  国民経済も国民生活も後戻りをしていくしかない。そのようなことを政治の力において許すわけにはいかないということで、相当な激論をしても、私は基本的な認識の違い、そういうものから、政府産業にいまでも輸出補助金を出して外貨を稼がせているような印象の誤りを正していく必要があると考えて、これまでもそうしてきて大体は成功してきておりますが、アメリカにおいて一方、議会というものの圧力が、やはり各業界ごとにそれぞれのロビイスト等の要請を受けて議員連盟がつくられておったり、あるいは選挙区の利害をことさらに声高に、アメリカ国内においてさえも相反することであっても、自分の選挙区のことのみを主張する議員がふえてきたというような現象を考えますと、議会対策も非常に重要である。与野党にもまた御加勢を願いたいのでありますが、さしあたり責任を持つ私どもは、私もサミットには参りますけれども、そのサミット本来の首脳会談に私どもが、あるいは私が入っていくことよりも、その機会を利用して多くのアメリカの指導者、議会の人たちと会って、そして率直に、日本の生きていくただ一つの道に対するアメリカの理解を求め、アメリカ自身もまたそれを許容する、日本のやり方について認めるところは認める雅量を持たないと、お互いがこれ以上まずい関係になっていいはずがないというようなことで努力をしてきてみたいと考えておる次第であります。
  13. 長田武士

    長田委員 次に、大臣はブリュッセルの四極貿易相会議出席された際、アメリカブロック通商代表と会談をされました。そのとき、日米産業政策合同委員会、正式名称は産業関連政策と貿易に与える影響に関する日米合同委員会、この設置を約束されました。早速、この五月十四日から東京で第一回の会合が開かれたわけでありますが、産業政策政府間のベースで話し合われるというのは初めてのケースのようですね。また、十八日からは日米通商円滑化委員会も開催されたわけであります。これらの会のためボルドリッジ商務長官にも会われたわけですね。
  14. 山中貞則

    山中国務大臣 きょうです。
  15. 長田武士

    長田委員 オルマー次官には会われましたか。
  16. 山中貞則

    山中国務大臣 今度はまだ会っていません。
  17. 長田武士

    長田委員 まだお会いしていませんか。
  18. 山中貞則

    山中国務大臣 パリで会いました。
  19. 長田武士

    長田委員 そのときの話し合いでも結構でございますが、感触ですね、印象と申しますか、どんな印象を持っていらっしゃるか。私は、産業政策の論議というのは簡単に片づく問題ではないとは思いますけれども、その会った印象をひとつ。向こうの、アメリカの真意というのはどこら辺にあるのかということをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 これは根本的には、いま申し上げましたようなところにあると思うのです。しかし、具体的な事例の議論になりますと、どうも日本の言うことをアメリカはよくわからない、日本アメリカの言うことの方がわからないという感じがいたします。オルマー商務次官あたりが議会では一番激しく日本を攻撃しておりますが、私の前に出ますと大変おとなしい、口数の少ない男のように私は思っております。もっとも、そのときに一緒に商務長官が立ち会っていたりなどいたしますから、私と長官との話の方に重点がありますから、そばからくちばしは入れないのでしょうが、しかしボルドリッジ長官に、君と僕との間では大局的な話をしよう、細かな問題、一本一本の毛をむしるような話は、おれとオルマーでやるからと言っていますけれども、オルマー次官はただにやにや笑っているだけという感じで、まあ私と話し合えばうまくいくのじゃないかと思っています。しかし、表はおとなしくしていて、帰ったら国内向けにほえまくるという、そういうことを許してもいけませんので、そこらのところもきちっと、詰まったらもう物を言わぬなということまではしておきたいと思うのです。
  21. 長田武士

    長田委員 先月私は、特安法の審議に際しまして、PAPの精神に沿うものであるかどうか、この点を質問いたしました。そのとき、外国の批判に対しても十分たえられるという答弁があったわけですね。案の定、日米通商円滑化委員会においては、この新特安法がやり玉に上がっているようであります。通産大臣はいままで、こうした批判に対して十分自信を持っておられるかどうか、また、今回アメリカとの会議アメリカは納得したかどうか、あわせてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 私は批判を受けておりません。そして、事務レベルでやりました会合でも、日本のこの構造不況業種に対する策というのは一体どういうことなのか。彼らは先入観を持っているわけです。国が限界産業を巧みに救済をして、そして本来アメリカのマーケットに全部してしまっていいものを残そうとするという既成概念でいるわけですから、そこらのところがよくわからないので仕組みを教えてほしい。そうすると業界の自発的なものであって、大臣の勧告権もなくて、国がそう強くそれを要請し関与するものでもない、独禁法とこれが相反するものでもないということ等がわかってきて、そんなはずではなかったがという感じをいま持っておるように思いますが、きょう午後の会合でどのように出てまいりますか。私は、全くこれは一言にして言えば内政干渉である。アメリカもやりたかったらおやりなさい。現に、日本通産省批判をしていて、アメリカにも通産省をつくろうかなという相談をしているでしょう。ということは、とてもかなわないからアメリカ通産省をつくって太刀打ちしようかということでしょう。これは結構なことだと思うのです。いまごろ気がついたのが遅いというくらい私は思っておりますので、通産省をつくるならば、そちらの方も指導でもしてやろうか、そういう気持ちでおります。
  23. 長田武士

    長田委員 通産大臣の力強い施政演説を聞きまして、心強く思っております。ただ、アメリカ産業の育成のために相当金を使っているのですよね。そういうこともどうかひとつ、きめ細かに主張していただきたいと思っております。  アメリカは、もともと日本に対しまして安保ただ乗り論、こういう論理があるのですね。今回の産業政策論にいたしましても、私は、アメリカはそういう根底の不満というものがどうもあるんじゃないかという感じがいたしております。そして、日本はいろいろの面でうまくやっていて、ずるいやつだとか、市場開放にしても、少しずつ小出しにしかしていないんじゃないかというような不満があるような感じを私は持っております。輸入品に対する基準・認証制度の取り扱いにいたしましても、もっと早くやれたんではないかなという疑問がある、率直に私はそういう気持ちでおります。あの改正案が成立したからといいましても、輸入が大幅にふえまして日本が困るということは直接は余りないんじゃないかという気が私はいたしております。それから、牛肉やオレンジの問題は貿易摩擦の象徴的な問題となりまして、金融や通信の面もいまだに完全に開放されていないという状況であります。まだまだ貿易摩擦の種が日本にはたくさんあるなという感じが私はいたしております。  わが国は、すでに対米輸出品目中三〇%ものウエートを占めております自動車につきましては、前年同様百六十八万台に自主規制をしておりますし、オートバイにつきましても四月以降四五%の関税上乗せがアメリカで実施をされておるわけであります。工作機械においても最低輸出価格規制を行っておりますが、批判の的となっているというようなことから、輸出品目中相当部分が何らかの形で規制を受けておりますね。その上、アメリカではさらに相殺関税の強化の動きが出てきておると実は報道されております。  レーガン大統領は、減税と投資拡大、そして軍事予算の拡大と財政再建を旗印といたしまして華々しく登場してまいりましたけれども、現実はその逆の方向に行ってしまっているなという感じが私はいたしております。八二年には財政赤字が一千百六億ドル、今年度も二千百二億ドル、膨大な財政赤字が見込まれておるわけであります。連邦債務残高は八二年度末で一兆一千四百七十億ドル、邦貨に直しますと二百六十三兆円にも達しておりますし、これがなおふえ続けていくということになりますれば、アメリカのいらいらというのは当分おさまらないだろうという予想がされるわけであります。  しかし、資源を持たないわが国は、今後とも平和憲法のもとで繁栄を持続するためには貿易が非常に重要であります。いま日米間で問題となっておりますところの先端技術の問題にいたしましても、過去二十五年間の産業政策を云々するのではなくて、これからは、昨年のベルサイユサミット各国合意いたしましたように、ハイテクノロジー分野については国際協力を推進するという方向で解決を図らなければいけないのじゃないか、こういう感を私は強くいたしております。そのためには、今後日米相互の工場の進出など、もっとジョイントベンチャーの道を模索してはどうか、私はこのように考えております。どうかひとつ大臣の御所見をいただきたいと思います。やはり私は、日本アメリカのいらいらを抑えるために軍備拡大をしてはならない、そういう強い信念を持っておりますので、ひとつ御答弁をいただきたいと思っております。
  24. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、そこらは逆手にとっているのです。余り手の内を国会で言うのはよくないのですが、日本は戦後壊滅に帰して、そして島国でありながら安全保障の問題を、アメリカとの間に安保条約を結んだがゆえに、余り大きく懸念することなく今日までやってこれた。したがって、日本アメリカを恩人だと思っておる。したがって、日本の今日の発展にも大変自分たちアメリカを多としているが、しかし、かといって日本のつくり出す品物は決してそれがアンフェアな手段によって行われているものでもないし、あるいはまた日本市場をいまも閉めておるというものでもない。たとえば基準・認証制度の話がいまありましたが、これはいまのところ非常に大歓迎だ、中曽根首相訪米後の最も大きな成果であるというようなことをUSTR等は公に言っているようでありますが、余りこういうことを、さっきも遅過ぎたんじゃないかという話がありましたが、私たちまでやったやったというような面をしますと、じゃやはり日本は法律で十六本通さなければならないのは、そういうことをやっていた証拠だということに言われるおそれがありますから、そこらのところは、うまく論理がかみ合えば余り成り立っていない論理でも、論理的に物を言うようにしたいと思っております。  しかし、一方で私たちは、日本人の力ずくで、あるいは法律は及ばないのだから日本自動車に乗らなければ承知せぬと言われた人が一人でもアメリカ人におったら連れてきてくれ、そうしたら私も承服しよう。あるいはそれがないというならば、アメリカ政府が法律をつくればいいじゃないか。アメリカの国民は日本の車に乗ることを禁ず、もし乗ったならば罰金に処すということをおやりなさいよ。そうすると、国民のニーズとかけ離れた交渉をしておることがあなたたちにもおわかりになるでしょうということをはっきり言っております。そうすると、そんな法律はちょっとと言いますから、そうすると、いまはちょっと状況は変わってきましたが、石油が非常に高くなったときに燃料効率のいい日本車というものに乗りたいというその願望は国民のニーズだったのに、それで売れたものに対して、台数をけしからぬと言って目くじら立てる。そのことはもうオートバイなどが余りにも雄弁に物語っております。いかなる伝統のあるハーレー・ダビッドソン社か知りませんが、しかし、たった一つのオートバイ会社の救済のために、しかも台数制限等で見れば、日本のみをねらい撃ちにして、そうして四・五%の関税を一挙に四九・五%にしようという。正気のさたかと思うのです。これがアメリカ保護貿易主義の最たるものであるということを私は堂々と言っております。アメリカの方も、そういう角度から言われると、われわれもちょっと困るという言い方をしております。  ヨーロッパ、アメリカを含めたその他の会合でも、ことに先進国の会合等では、こういうことを私は言ってみました。あなたたちの言葉を聞いていると、プラネタリウムに輝く星を論じておるようにきれいな言葉だ。自由貿易主義を堅持しよう、保護貿易主義をやめよう、やめさせよう。しかしわが日本は、ここにおられる国際機関以外の国々から全部、自主規制という名の保護主義をのまされておる。それは、あなたたちの国の保護主義に日本が自主規制という名で協力をさせられておる。自動車、ビデオテープあるいはオートバイ、いずれもしかりだ。それなのに、自分たち日本に対して保護貿易をとりながら、外国に対しては国際会議ではきれいごとで、プラネタリウムのきれいな星は手でつかめないことを知っていながらそういう議論をすることに、日本はがまんできぬということで開き直ったところ、やはりそれらの点は、われわれもそう言われると思い当たるといいますか、人のことばかり言っておれぬという気はしますと率直な反省の声も出てきましたし、ビデオテープの規制合意台数等についても、ドイツとかイギリス大臣が私に会って、ECとの合意のシャシーキットのあれは困ると言いますから、そんなことはECに言いたまえ、君たちがつくっているECと交渉したので、各国の利益を代表していないというなら、各国がECに対して言うべきことを言ったらいいじゃないか、各国の言い分は聞かぬと言って突っぱねておきました。  そういうことを思い切って言っておりますが、まあまあ日本がこれ以上世界じゅうから目のかたきにされるというようなことがあってはならないし、あるいは日本こそ発展途上国の頼りだというような姿勢を一方に示しながら、先進国の一員として憶することなく堂々と歩いていきたい、そのように決心しております。
  25. 長田武士

    長田委員 大臣の話はよく理解できるわけでありますが、私たちも商工委員会でせんだってアメリカに参りまして、USTR代表に会いました。私、その席上で申し上げましたのは、アメリカ市場調査という点では非常におくれているのではないか。アメリカのようなでかい冷蔵庫を持ってきたら、私たちの家は狭いものですから寝るところがない。あるいは日本の道路については非常に狭いので、あの大型車を持ってきてもとてもじゃないけれども走れない。優秀な小さい車をつくりなさい、そうすれば日本人は、価格も安く優秀な車だったら、日本の車を買わないでアメリカの車を全部買いますよと言いましたところが、五十年おくれて追いつかないというようなことを述懐しておりまして、そこで何回かやりとりがありました。大臣、どうかひとつ日本の立場というものを鮮明に、言うべきことは言っていただきたいということを要望しておきます。  それから次に、日米貿易収支の不均衡がどうも恒常的になりつつあるように私は思います。ちなみにアメリカから見た対日貿易の状況を見てまいりますと、昭和四十八年がマイナス十四億ドル、四十九年十七、五十年十七、五十一年五十四、五十二年八十、五十三年百十六、五十四年八十七、五十五年が九十九、五十六年が百八十一、五十七年が百九十、これは全部マイナスでありますが、こういうふうに非常に不均衡が目立つわけであります。一方、わが国の対米貿易黒字は、昭和五十一年ころからふえ始めまして、五十三年には百十億ドルに達して、特にこの前年の五十二年と五十三年のわが国貿易収支黒字は二百億ドルを突破いたしまして、経常収支も両年とも百億ドルを突破いたしております。そのために貿易摩擦が激化したという背景が、実はこの年にあります。  ところが、昨年度と一昨年度におけるわが国貿易収支、それから経常収支が五十二年と五十三年、このころと非常によく似てきているのではないか。相似する点がいっぱいあります。と申しますのは、五十八年度は原油の五ドル値下げの影響が出てきておりますから、オイルダラーが流れませんから、国際収支黒字が一段とふえることが当然予想されます。ですから、五十八年度の日米双方の国際収支のパターンは、五十二年から五十三年ごろのパターンにそっくり、そのような形になるだろうと予想されるわけであります。  そこで、一つの提案でありますけれども、日米貿易の不均衡是正のために、わが国はアラスカ原油をアメリカから売ってもらう、これはアメリカはなかなかガードがきついようでありますけれども、そういう提案をアメリカに積極的にする。日本の場合は、アメリカ輸出して、そのドルで原油を買うということで、どうしても対アメリカの問題については不均衡になる。貿易というのは、アメリカ人が考えているのは、百円買ったら百円買ってくれる、これが貿易じゃないかというような主張のようでありますから、そういう不均衡を是正するためにはアメリカの品物を買う。品物を買うというのは、アメリカは産出国でありますけれども輸入国でもありますから、この点むずかしさはあると思いますけれども、そういうアラスカ原油なんかも日本に輸入できないものか、交渉する余地はないものかどうか。そうすれば貿易の不均衡というのはある程度緩和されてくるだろう、こういう提案なんですが、どうでしょうか。
  26. 山中貞則

    山中国務大臣 これは実は弱っていまして、サミットでこの問題がレーガン大統領との個別会談で出やしないだろうか、出たらどうしようかと困っているのです。というのは、確かに去年あたりまでは日本側の方がアメリカの方に、アラスカの原油を日本に渡してくれ、そうすると貿易収支も六十億ドルぐらい自動的に改善されるではないかという話をしていたのです。しかし、アメリカ側は輸出管理法があって、アメリカの石油は外国に売ってはならぬ。そしてアラスカ石油パイプライン法というのがさらに重なって、これも外国に売ってはならないというようなふうになっておりますから、そうするとアメリカは、九月に切れるその法律を、日本輸出できるように変えようというような空気がございます。しかし、つい最近では議会の方から、安全保障上の観点と、それから国内の海運業者あるいはその他の、いわゆる太平洋を南に下ってパナマを通って大西洋に上がっていく間に、運輸関係の人たちとか、そんな人たちを含めて反対の勢いの方が強くなって、どうもアメリカはうんと言わないだろう、すなわち輸出貿易管理法を廃止しないんじゃないかという一部の強い観測がございます。目下のところ、そうあってくれると助かるんだがという気持ちが半分心の中にあるのですが、それをこっちから言うわけにもいかない。あれだけ欲しいと言っていたのは日本じゃないか。しかも、メキシコ産油の日本買い付けをアメリカに回すとか、いろいろな具体的な構想まで言っていたのですが、しかし、これは政府間取引の場合でもなお問題でありますけれども、取引するのは民間でありまして、価格あるいはまたアメリカのバイアメリカンみたいなことを言われて、いままで自分たちが南に向かってパナマに運んでいた船あるいは乗組員を、そのまま日本まで運ぶ船に使え、日本船は使うなというようなこと等、あるいはアメリカが必要と思うときには、たとえば安全保障上必要があれば、いつでもそれはストップできるという条項などを議会からつけられますと、いつ打ち切られるかわからない原油ということになって、どこも非常にリスクは多いのですけれども、初めから条件をつけていつ切るかわからぬよという物の引き取りには、国家としても民間としても大変引き取りにくい条件になるだろうと思います。  しかし、それらはやってみなければわからぬこと、あるいは向こうから切り出されなければわからないことでありますし、日本の民間の業界も、いまのところそれに対して積極的に日本政府が引き取るように対応してほしいという声は一つもないという非常にさま変わりで、去年まで頼んできて、ことし売ってやると言ったら要らぬと言うのかと言われるのが一番ぐあいが悪い、弱ったなといま考えているところで、いまサミットへの打ち合わせの中でも、そのことをどうしようかというのも一つのテーマであります。
  27. 長田武士

    長田委員 次に、電力問題についてお尋ねをいたします。  電力の需要は、第一次石油危機後の産業構造の変化によりまして大幅にダウンをいたしております。これは電力の多消費産業であります鉄鋼とか化学、紙パルプといった素材産業が衰退をしまして、電力を余り消費しない組み立て加工業が進展したというのが一つの原因であります。  そこで、五十年度と五十五年度を対比して大口電力の需要構造を産業別に見てまいりますと、素材産業のウエートが五十年度五五%であったのに対しまして、五十五年度は四六%と下がってきております。これに対しまして加工組み立て産業のウエートは、五十年度は一一%あったものが五十五年度には一六%、増加の傾向を示しております。  このように変化が見られる一方におきまして、省エネが各産業や家庭でも進んできたわけであります。ちなみに昭和四十年から四十八年の電力需要を見てまいりますと、毎年一一・一%と大幅に伸びておりましたが、第一次石油ショック後の四十九年以降は激減をいたしております。すなわち、四十九年から五十六年までの平均は四・三%となっておりまして、中でも特に五十五年度は前年比マイナス一・一%となっております。さらに五十六年度においても二・三%の微増という状況であります。そして五十七年度もわずか一・三%の微増にとどまったということのようであります。いずれにいたしましても、不況ということもありまして、このところ電力需要はかつてのころと比べまして激減をしているというのが実情です。  反面、電力会社におけるところの設備投資は毎年膨大な額が投資されておりまして、これを年度別に見てまいりますと、五十年度が一兆四千二百二十七億円、五十一年度が一兆八千六百十九億円、五十二年度が二兆九百二十一億円、五十三年度が二兆七千七百六十六億円、五十四年度が二兆六千四百五十一億円、五十五年度が三兆一千七百八十七億円、五十六年度が三兆二千二百九十三億円、五十七年度の見込みでは三兆二千六百億円、そして五十八年度の計画では三兆三千九十六億円となっておりまして、国全体の民間設備投資の大体一割ぐらいを占めているのですね、大臣。電力の設備投資というのは非常に膨大であります。もちろん設備投資をすれば減価償却費がかかりますし、借入金も当然ふえますから利払いもふえる、こういうことになります。したがいまして、電気代に大きなコストプッシュ要因となるということもまた事実なんですね。  こうしたことから、設備投資の結果、需給のバランスがどうなったかといいますと、電力会社はもともと需給予備率というものを大体八%から一〇%見ておるわけでありまして、設備投資を進めておりますが、この八%から一〇%ぐらいの予備率、これに見合う設備投資をしておる。この予備率、つまり余剰設備が、五十五年度には二五・五%、五十六年度は一八・九%、五十七年度は一八・二%と、五十五年度には全設備の実に四分の一が需要不足で遊んでおるという状況であります。現在でも適正予備率の約二倍に当たりますところの約二割近いものが遊んでいるという状況であります。したがいまして、これらはよけいなコストを支払っているということにもなるわけですね。  景気対策の一つとして、電力会社の投資計画、いつもこれで論議されるわけでありますが、こうしたことは企業としてはちょっと異常だなという感を私は強く持ちます。これでは、電気事業法の第十九条にございます能率的な経営とは言えないのじゃないかと私は思いますが、通産大臣の率直な御意見をひとつ。
  28. 山中貞則

    山中国務大臣 ことしの景気対策の第一弾で、電力業界の設備投資のうち五千億を上期に前倒しするということを一項目決めました。もっともそのときの数字は、いま持っていらっしゃる文章の中で、公共事業の七〇%前倒しと電気事業の設備投資予定経費のうちの五千億の前倒しと、二つしか出てこないのですね。そのときに私は、この五千億というのはちょうど石油五ドル値下がり分に相当する金額なので、誤解を受けるといけないから、くれぐれも説明には、これは既定計画の中の繰り上げ投資分であるぞということを明確にしろよ、石油輸入において外に支払わないで済む金額として浮く五千億円と同じ数字として錯覚されないようにしろということを言ったのですが、どうもそこらのところがうまく浸透しておりませんで、設備投資の方に回しちゃったのだとか回しちゃうのだとかいうような話になりがちでありますが、全く既往の、ただいまおっしゃっていらっしゃいましたような膨大な設備投資の前倒しを、計画よりも五千億上乗せしてほしいということを電力業界が了承したということにすぎないのでありますから、これは石油の値下がりとは関係のない数字である、そういうふうに思っております。  したがって、いま言われました電力会社の経営状態をどう見ているかということでありますが、これは、公益事業という立場からも、経営は国民から見て、消費者から見てきわめて妥当なものでなければならないし、したがって、いま九電力会社の経理内容を全部洗い直しをして、私が目を通して、それに対して判断をしていく準備を進めておるところでございます。
  29. 長田武士

    長田委員 通産大臣、私が言っていますのは、景気浮揚のために電力設備投資をやらせようとか、そういうことが常に論議されます。景気浮揚策としては、確かに公共事業も含めて民間の設備投資、これは必要です。しかし、公共料金、原価主義という、そういうたてまえでのいわゆる独占企業でございますから、設備投資をやりますと、どうしても支払い利息も膨大になりまして、ちょっと参考に申し上げますと、電力九社の合計ですが、五十年度は四千二百六十九億円の支払い利息があったのです。ところが五十六年度では一兆三百六十七億円という支払い利息をやっているのです。そして、五十年度の減価償却費は三千三百三十五億円だったのが、いま一兆一千二百五十九億円と、ともに一兆台を突破しております。結局、企業経営の中での償却であるとか支払い利息、これは原価主義といいましても全部電気料金にはね返ってきますから、設備投資を安易に進めるということは結局電気料金にはね返ってくるということを私は申し上げたいのです。このことについてはどうですか。
  30. 山中貞則

    山中国務大臣 企業は絶えず設備の陳腐化を防ぐための設備投資等、あるいは場合によっては背景があれば設備の拡張その他、需要に応ずるそういうものがありましょう。しかし、先ほど御説明がありましたように、電力需要が先細りというような感じで減ってきておるときでありますから、それに対応するためにやむを得ず設備投資を拡大するというものは余りないと思うのです。そうすると、あとは木の電柱をセメントの電柱にしたりあるいは都市部等においては地下埋蔵にしたり、そういうようなふだんならばやっておきたい設備投資であって、去年までの経理状態では、どうも電気料金値上げの方向に進みそうな状態であった、そういうことでなおざりにされていた部分を、この際少しきれいにやりたいというような希望はあるようであります。ここらはいいとしても、いまおっしゃったように、それが不必要なところにまで設備投資の名において行われて、それが結局は償却あるいはそれの金利とかいろいろなことで電気料金に無用なものがあるとすれば、その分乗ってしまっているのじゃないか、受益者が負担を負っているのではないかという、そういう御意見に対しては、そういう見方もあると私も、見方はいろいろありますが、今度九電力を洗い直すという場合にはそこらをよく見てみたいと思うのです。  というのは、沖縄電力というのが、これは行政機構簡素化の一つとして、閣議決定でこれをどうするかについての方針を決めるべしというのが延び延びになっているのですね。沖縄の人たちも、自分たちが施政権下でようやく汗水流して県民が電力会社らしいものをつくった。そして復帰した。幸いにして国が九九・九%の出資をしてくれて、役員人事も沖縄の人たちでやっている。かといって沖縄の電力は本土電力より高くてもいいかということになると、沖縄の経済の再建に、電力が安い条件にしてあげることこそ必要であって、電力会社を独立しているために高い電力料金でしんぼうせよということは、これは二律背反だということで非常に苦しんでおられたようですが、石油が五ドル下がったといったら、沖縄電力はほとんど石油ですから、計算をしてみたらもうやっていける計算が出てきた、そこでいまのままやらしてくださいという話に早速変わってまいりました。そうすると、沖縄電力の存廃をかけた問題が五ドルで解決をするという見通しが立った、九電力については石油の五ドル値下げは全く影響はないということは、それは聞こえませんということになりはしないでしょうか。
  31. 長田武士

    長田委員 昭和四十八年度におきます電力、電灯料金は平均で一キロワット当たり六円七十六銭であったわけです。それが五十六年度には二十三円十四銭にまではね上がっております。これは実に三・四二倍となっております。この間における消費者物価は総合では一・九一倍ですから、電気代の上がり方がはるかに高いということがわかります。もちろん油代も上がりましたが、先ほど申し上げましたとおり資本費は年々膨大な額になっておりまして、資本費の電力コスト構成比は急速に上がってきておるというのが現状ですね。四十八年度は燃料費が三二%、資本費が二六%となっておりました。これは原油が安かった時代でしたから資本費は相対的に高かったわけでありますけれども、それが石油ショックで原油が高騰したため、五十五年度の計画値では燃料費が四八%とコストの約半分を占めるようになっております。資本費は二〇%と相対的に低くなりましたけれども、五十六年には燃料費は三九%と五十五年度の計画値に比べまして九ポイントも低くなっておりました。かわりに資本費は二二%と二ポイント上昇いたしております。この数字は近年における電力投資の急増を示す一つの数字です。  私は、今後、原油の五ドル値下げの影響と引き続く電力投資の増大によって資本費の比率はますます上昇する傾向が強いのではないかという感じもいたしております。したがいまして、今後の電気料金は、この資本費の動向が重大な影響を与えるということは間違いなかろうと考えております。そこで、電力投資の問題でありますけれども、従来から景気の動向等によりまして、政策的にこれをふやしてきたわけでありますが、去る四月五日に政府が発表いたしました経済対策の中でも、先ほど大臣が申されておりました五千億円の前倒し発注、それから設備の効率化、供給信頼度の向上等のために追加投資を指導することを決定して実施されております。しかし、先ほども触れましたように、電力設備は現在二割近くも余剰があるということ、そして今回の政府決定による電力の追加投資は、電力の供給力と無関係とはいえ、言うならば特に急がなくてもいいのじゃないかという感じを私は持っております。むしろ、これによって料金コストが上昇するのじゃないかということを私は心配をいたしております。原油値下げによる五千億円の利益がそういった形で使用されてしまうということは、消費者としてはどうも納得できないなという感じがするのですね。  こうしたことから、今後の電気料金への影響を心配するわけでありますが、この点について通産大臣、それから経企庁長官も見えましたけれども、御両人の忌憚のない御意見を、簡単で結構ですからひとつお聞かせをいただきたい。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 石油の五ドル値下げというのは国民生活全体までおろしていかなければならないし、また国民の経済の活力を高めていかなければならない。それを一カ所だけは、ここはもう活用しなくてもいいんだ、その分だけはもうけなさいというようなところがあってはいけないと私は思うのです。したがって、電力料金もその対象外として議論することはできないということであります。
  33. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私も長田委員御指摘のように、不必要な設備投資は、公益会社でありますところの電力会社はやるべきではないと思います。  いま御指摘の資本費の増勢の傾向は、言うまでもなく、まず第一に、これまでの省エネ、代替エネルギー開発のための投資が大きな原因でもあったということもあります。それからまた第二には、予想外の不況によって電力の供給力にゆとりが出てきた。このような状況で、新しく設備投資の問題は当然考え直さなければいけませんし、電力会社もそのような投資は差し控えていると私は考えるわけでございます。したがいまして、電力料金につきましては、原油の値下げのこの際、設備投資の必要性、さらにまた電力料金の引き下げの消費者に及ぼす影響、これらを考えて総合的に考えるべきである、こういうふうに考えております。
  34. 長田武士

    長田委員 通産大臣大臣は先日来衆参両院の商工委員会あるいは記者会見の席上で、電気料金について事務当局にそのコストの再点検を命じているとか、原油は今後三年間値上がりしないという確信を持ったとか、いろいろ発言をされておるわけであります。しかし、こうした通産大臣発言は、国民の目から見てまいりますと、あたかも大臣が電気料金の値下げを決断したかのように実は映るわけですね。見出しなんか「電気料金下げる」となるわけです。特に、五月十九日の日経新聞は十七日の午後の参議院商工委員会における大臣発言といたしまして「中東訪問の結果、今後最低三年間は原油値上げがないとの確信を得た。電気料金を据え置くのは不可能だ。首相と私の見解が違っているなら、首相に従ってもらうようにする」ということを述べたということが報道されておるわけであります。確かに総理は、去る十六日の物価安定政策会議の席上で、発電コストの低下分は、電力会社の設備投資や補修に回した方が景気回復に対する効果も大きいという趣旨の発言をされたと報道されております。通産大臣一連発言とは、その見解がどうも違っているのじゃないかと私は思いますけれども、本当に総理の見解を直してもらう決意なのかどうか、この点。  それから設備投資の追加については、すでに四月五日の経済対策閣僚会議で業界に対しても指導が終わっているわけですから、そこらの兼ね合いですね。  それからさらに、原油価格は今後三年間は上がらないという確信を持ったということでありますけれども、中東で今後三年間絶対に事が起こらないということは、何も保証がないような感じが私はするのですよ。また、世界経済がいつまでもいまのように低迷するとは思えませんし、ある程度成長してくる、よくなってくるということになりますと、どうしても原油が逼迫してくる。こういうことを考えてまいりますと、需給がタイトになることは全く考えられなくはないというふうに私は考えております。この点についてはどうでしょうか。
  35. 山中貞則

    山中国務大臣 総理に私の意見に従ってもらうなんて、そんな不遜な表現は幾ら私でもさすがにしませんよ。しかし、すり合わせをして意見を合わせていただこうと思っているということは言いました。総理はたしか、五千億は油の値下がり分を設備投資に回したような錯覚を持っておられるのかもしれませんので、もっとよく話し合いをしてみたいと思いますが、それは、先ほど来繰り返しておりますように設備投資の繰り上げであって、既存の設備投資の内訳のものでありますから、石油の値下がり分の五千億とは全く違うものである。また明らかにしておきたいと思います。  私は、先ほど来述べているように、それはすべてあらゆる面を通じて国民生活に還元されていくべきである。現にガソリン等も、国民生活に身近なものですが下がっておりますし、石油各社にいろいろ助言、調査等もしてみますと、やはりそれを反映して、電力ばかりじゃありませんが、漁業用A重油とかC重油とかそういうもの等も値下がりをして売っております。ですから、それは逐次、あらゆる油に関係のあるところを通じてその料金なりあるいは製品なりに反映していくのが自然の姿であって、それをどこかで人為的に無理に、しかもそれが浸透していくはずのものであるのをとめるということそのことがおかしなことである。自然にほうっておいても下がるべきである。なお下がらなければ、電気事業法によって通産大臣の料金引き下げ命令を出すこともできるわけでありますから、それをやるとは言っていませんが、そこらのところは考えていただいて言動をしてもらった方がいいのじゃないかと、関係者にはまたあらかじめここで警告を発しておく次第でございます。  それと、三年間大丈夫だと思ったというのは、これはサウジそれからアラブ首長国連邦、クウェート、それぞれから得た感触の中の最も短いといいますか、手がたい期間、少なくとも三年間は石油をこれ以下に下がらないようにしようというのが産油国の気持ちである、大体それが共通しているな。中には五年とか七年とかという見通しを、あるいはそうなるかもしれぬと言う人もおりましたが、私たちは値上がりということを考えていますが、そうじゃなくて、これ以下に下がらないように少なくとも三年間はがんばろう。その後、いまおっしゃったように需要その他がまた喚起されてきたら、その間の物価スライド等をさせていただく環境がくれば、われわれにとっては大変ありがたいことであるという産油国側の立場というものは、私たちとまた全然違うのですね。上がったらどうしようじゃなくて、これ以上は下がらないように三年間はがんばり抜かなければならぬ、そういうことですから、そうすると三年間は上がらないなという結論を出したのはちっともおかしくはないと私は思うのです。ただ、その途中でイラン・イラク戦争がまた広がってどうなるのか、あるいはホメイニさんが亡くなったらどうなるのか、中東和平が湾岸に広がったらどうなるのかとか、そういうことを言えば、それはだれも見通しはつかないことでございますから、いまの均衡の中で産油国が言っていらっしゃるのは、三年間はこれ以上下がらないように努力したい、努めたいというお気持ちであるとすれば、三年間上がらないことを前提の経済計画を、純消費国である私たちが計画するのはあたりまえだ、そうしなければいけない、そういう観測を私としては持ったわけであります。
  36. 長田武士

    長田委員 ここで私は一つ提案をしたいのでありますけれども、電気料金は電気事業法第十九条によって、「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加え」て決定される総括原価主義をとっております。これによって電力会社の供給規程を通産大臣が認可しておるわけですね。しかし、同時に「電気の料金その他の供給条件が社会的経済的事情の変動により著しく不適当となり、公共の利益の増進に支障があると認めるときは、」通産大臣は「変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。」いま大臣がおっしゃったとおりです。できるのです。これは電気事業法第二十三条であります。ですから原油の五ドル値下げと、いま円高ですね、二百三十二円か三円。あれは二百四十二円で計算しておりますから、この差益を考慮いたしまして、新しいファクターに基づいて一体何年間電気料金を据え置きができるのか、これについては再検査して国民の前に明らかにし、通産大臣はこれを堂々とやるべきじゃないかと私は思いますが、どうでしょうか。  原油価格や為替レートなどの一定の条件を置けば計算できないわけはないだろうという感じが私はいたしております。大臣、よくおっしゃいましたね。この前、還元しておいてまたすぐ翌年は五〇%近い値上げをした、これはやはり考えなくちゃいけないということでございますから、そういう点を考えてまいりますと、この需要の関係を見てまいりますと、こういう一時的に値下げをする。そうして、また変動があると値上げをするということですと、どうも公共料金としての安定度に欠けるという点に私は強く疑念を持っておりますが、そこら考え方はどうでしょうか。
  37. 山中貞則

    山中国務大臣 いまから各社の経理を洗ってみて——いろいろな制度もあります。たとえば、人為的に手を加えないで一定の経費できちっと運営されていくことを前提としてスライド制というようなものもあるのでしょう。コストに重大な要因を加える、たとえば石油が幾ら上がったときは、だれも手を加えないで自動的にそれだけの分は、電気料金のコストについて、それだけ上げてもいい。あるいは今度は下がったときには、だれも何とも言わなくとも逆にそれで下がってもいいというような、いろいろな構想等があるのでしょう。ここらまできますと、電気料金はいかにあるべきかは、安ければ安いにこしたことはないわけですし、しかもそれは変動が大きいものであってはならず、やはり電気を使う立場の身にもなれば、長期に安定した価格というものがあるべき料金だと私は思うのです。そこらを御意見も参考にしながら検討していきたいと考えます。
  38. 長田武士

    長田委員 私はもう一つ提案があるのです。先ほど申し上げましたけれども、いま急いで設備投資の追加が必要かどうかということは、率直に言って私は疑問を持っております。むしろ、これは何らかの形で国民に還元すべきであるというふうに考えるわけであります。  そこで私は、第二の提案としまして、原油価格及び為替変動準備金、先日もちょっと大臣に申し上げましたけれども、そういう制度を無税の形で設けたらどうか。これは税金をかけますと大体半分、法人税で持っていかれますね。そうすると電力料金あるいは電灯料金を使っている消費者は間接的に税の負担に甘んじるということになりますね、電力会社が利益の半分を税金で持っていかれるわけですから。こういうことになると、消費者還元という点ではちょっと逆じゃないかという感じがするのですが、そういう意味でこういう提案をするわけであります。  この五千億円が仮に設備投資という形で使われたとしても、やはり利益ですから半分は税金です。ですから、これを国民にわかりやすい形で積み立てておく、そしてOPECの値上げやあるいは為替の大幅な変動、これに十分対応できるように留保したらどうかということを私は考えておるわけであります。これは当然、特別立法でもしまして法改正が必要でありますけれども、そういうことも必要じゃないかという感じがいたしております。それは、電気というものは国民にあまねく使用されて、その利益は平等に国民に享受されるということの観点に立てば、私は許されるだろうという感をいたしております。こういう点について大臣の率直な意見をひとつお聞かせ願いたい。
  39. 山中貞則

    山中国務大臣 まだ、あなたまで誤解していらっしゃる。僕は冒頭言ったでしょう。あの五千億はたまたま油の値下がり分に相当する金額だから、誤解されやすいから、これは電力会社の年間の既存の設備投資の計画の前倒し、繰り上げて景気刺激をする分であって、石油料金とは関係がないんだということを言ったのですが、そっちを設備投資に回すとおっしゃっているところを見ると、まだ関係があるように……。そこのところは大変誤解されやすい数字になってしまって、みんな誤解しているのかもしれませんが、これは何も年間の設備投資の量にプラス石油価格値下がり分の得られると見られる五千億を乗せたわけじゃないんですね。ここのところをどうしてもわかってほしいこと。  それから、いま御提案の為替変動準備金ですか、そういうもの等は、これは税制の問題で政策的に判断をすれば、そのこと自体は不可能ではないと思いますが、その手段をとるべきかどうかについては、もう少し私自身にも検討の時間を下さい。
  40. 長田武士

    長田委員 それでは最後に。  石油ショック後におきますところの電力会社の設備投資は石油火力以外、原子力とか石炭火力それにLNG火力といったものが主力であったわけであります。これらの発電所の建設は、石油火力に比べまして非常に建設コストが高いというのが難点であります。発電能力一キロワット当たりの建設単価でいいますと、石油火力が十三万円、原子力が二十七万円、石炭火力が二十万円、LNG火力が十七万円というふうに言われております。石油からの転換を考えなければならない現在におきましては、こうした建設コストの高い発電所の建設が今後も続くわけであります。したがいまして、今後の電力、電気料金の問題につきましては、こうした資本費の増高をどのように抑制的に進めていくかということが大きなかぎだろうというふうに私は考えております。  そこで、私はこの点について一つの提案があるわけでありますが、発電設備は夏の需要最盛期に合わせて建設が進められていくわけでありますが、夏の需要は、今後のルームクーラー等の普及によりましてますます伸びていくだろうということが予想されております。この一時的な夏の需要に合わせまして多額な設備投資を進めていくことは、電力会社にとりましてもあるいは需要家にとりましても、容易なことではないと考えます。この夏の一時的な需要に対応するためには揚水発電所がきわめて有効であります。揚水発電所の建設単価というのは非常に高いわけですね。戦後、電力不足を解消するために電源開発株式会社が設立をされました。当時の電力会社では開発不能と言われました大型水力発電所を建設されたわけであります。佐久間ダムはその象徴的なものでありますが、電力の安定供給というものは本来、国の責任と言っても決して過言ではないですね。国費をつぎ込んだ電発が設立されて、みごとに戦後の電力不足を解消したわけでありますが、今日でもりっぱにその使命を果たしているわけでありますから、したがいまして、この電発に今後の夏場の電力対策の使命を与えて、コストの高い揚水発電所の建設を促進させたらどうかというふうに考えますが、通産大臣、この点はどうでしょうか。
  41. 豊島格

    ○豊島政府委員 先生いま御指摘の設備投資で、石油火力に比べて原子力とか石炭火力みんな高くなっていく、したがって資本費の増高を抑える必要があるということでございましたが、単純に建設単価を比較しても、たとえば原子力でございますと設備投資費は非常に多いわけでございますが、逆に燃料費が安いということでございます。石炭も、燃料費だけ比べれば当然石炭が安い。ただ、貯炭場とか灰捨て場とか、そういうのがあるから高いわけでございまして、建設費だけを比較して石油火力より高く、資本費が増高するということには一概にならないと私は思います。ただ、御指摘のように資本費が大きいということは問題でございますから、たとえば原子力発電のようなものにつきまして、今後どうやって建設単価を余り高くならないように抑えるかということは、電力コストを引き下げるのに必要だと思います。  それで、最後におっしゃいました揚水でございますが、確かに、ピークに合わせて全部その設備を設けるということでありますと大変だということはよくわかりますし、また、そういうピークに応じて調整が非常に短期間で、かつ安いものとなりますと、揚水発電というのは、御承知のように建設単価も落差を大きくとってやるものですから安い。したがって、これを進めていくということは非常に大事だと思います。ただ、現在のように需要が伸びずに設備だけがどちらかというと余力のあるときは、新しく揚水をつくるということよりも、既存の余っている設備で、火力でもピークをとるということの方が安い場合もあるということでございまして、そういう意味で、いま揚水の建設がちょっと足踏みをしておるということでございますが、需給がタイトになりますれば当然のことながらまた揚水を見直していく、こういうことにもなろうかと思います。  したがいまして、最後におっしゃいました電発に何かやらしたらどうかということでございますが、これは中長期的に需給バランスを考えて当然進めていく。ただ、いますぐということになりますと、先ほど申しましたような供給力の余力のある場合においては若干おくれざるを得ない、こういうふうに考えております。
  42. 山中貞則

    山中国務大臣 これで月給をもらっているわけですから、専門家といえば専門家でしょうが、政策の決定は私がいたします。専門家には作業をさせます。以上です。
  43. 長田武士

    長田委員 では、終わります。
  44. 森清

    ○森(清)委員長代理 岡本富夫君。
  45. 岡本富夫

    ○岡本委員 通産大臣、北炭夕張の再建について、十八日の当委員会で、一両日中に再建案を明示いたします、こういう御答弁がありまして、ちょうど、きょうは二十日でありますからタイムリミットに入っております。どういう再建案を示されるのか、御答弁をいただきたい。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 本日夕刻、記者会見を予定いたしておりますが、答弁は、その内容についてはいたしません。
  47. 岡本富夫

    ○岡本委員 少なくとも当委員会は国権の最高機関の委員会であります。そこで答弁はしない、通産省の記者会見でするんだというようなことでは、当委員会を非常に侮辱したのではないか、こういうようにも考えられます。したがって、そういう考えであれば、これから法案審議はちょっとむずかしくなるということになるわけですが、きょうは言いません。山中通産大臣は十八日の委員会におきまして、一両日中に示す、当委員会では示せませんとはその当時お約束はなかった。したがって、骨子は若干ここでお話しする、答弁する責任がある、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 答弁はいたしませんというのはやめます、答弁しているわけですから。内容については、あと六時間ぐらいお待ちを願いたいということでありまして、もし当委員会に先に私の案をお諮りすれば、それは恐らく実現は不可能になろうと思います。したがって、私がトライするわけですから、私は石炭協会の報告は本日は聞きません。私自身の新しい提案をするつもりでございます。これも聞こえるとぐあいが悪いのですが、ここらぐらいのところでひとつ……。  委員会軽視とか国会軽視とか、私も国会議員で三十数年やっているわけですから、自分を軽視する気はありません。国会の意思は十分に尊重し、御質問にも最大限お答えいたしますが、事の成ることを希望してくださるならば、その質問は、では具体的な中身を言うのは勘弁してやるという態度もまた国権の最高機関の有識ではないか、そう思うのですが、いかがですか。
  49. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体、当委員会大臣の方からこちらに質問するようになっていませんので、お答えするのがあなたの立場であります。  そこで、新聞報道によりますと、十九日午前、北炭夕張炭鉱の再開発を行うかどうかについて、日本石炭協会は三井石炭鉱業など大手五社の社長会を開いて、再開発は無理だという結論を最終的に確認しておる。報告書は、純粋に経済の面から新会社設立の可能性を検討したもので、内容を変えるつもりは全くない。あなたがこれからどういう提案をなさるか知りませんけれども、経済界の問題でありますから、経済を政治家が行うことはなかなかむずかしいと思うのです。したがって、経済界がここまで反対をしておることについて、どういうような立場からあなたがそういうことを提案なさるのか、少しお漏らしを願いたい。
  50. 山中貞則

    山中国務大臣 漏らすわけにはまいりません。しかしながら、石炭協会はそういう御意見をまとめられたらしいということは、すでに関係労働組合の方にも内容を事前に伝えておられるようでありますから、ほぼ、おぼろげながらわかっております。したがって、私がいまからとろうとする行為は、資源エネルギー庁長官以下石炭部長、幹部数人しか知りませんが、そんな乱暴なということを言って、新聞等にもそこらで、突出大臣を通産官僚はもてあましておるというふうに書いてあります。  しかし、政治というものはどういうものであるべきかということを私は考えるのですが、協会の方が検討して、できませんという報告が来たら、そうですか、じゃ後は離職二法の方に回しましょうと言うのなら、大臣は要りません。協会の意思が来た、そして、そうですか、じゃ後はもう離職問題ですね……。そこに政治が要るのじゃないでしょうか。そこに政治家たる大臣が座っているのです。だから私は、きょうはその報告は聞かないと言うのです。大臣としての立場において、政治の名において、逆に私の考え抜いた案を提示します。それが前進したら新しい道が開ける、私はそう思ってやろうとしておるわけであります。
  51. 岡本富夫

    ○岡本委員 そんな決意、それだけの重大なことを考えて、要するに、官僚もだれもしない、それから財界もできない、そういうことに対してあなたは、今度、進退をかけて試みるべき一筋の道を発見した、こういうことですけれども、そこまで勇断を持ってお考えになっておるのであれば、何も六時間後にしなくて——六時間の間に地震が起こるとかあるいはまた大問題が起こるとか、それはそういうものなんですか。何か判じ物みたいに感ずるのですけれども、いかがですか。
  52. 山中貞則

    山中国務大臣 この問題については、激震に近いものでしょうね。したがって、あらかじめ言ったらよくないと思うのです。
  53. 岡本富夫

    ○岡本委員 もう言わぬと決めておるらしいからあれですけれども、もしも六時間後に発表するものをこの委員会で発表するとそれが壊れるというような、どういうところにそんな壊れる原因があるのかだけお聞きしておきたいのです。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 このことは、きょうの午後、私が行動を起こすわけでして、それを起こしたら隠すわけにはいかぬでしょう。委員会軽視ではありません。できたら委員会をそれまで休憩しておいていただいて、私のとった行為を委員会に報告することにやぶさかではございません。
  55. 岡本富夫

    ○岡本委員 さっぱりわからぬ。もう時間が来ましたから、これはしようがないな。  それでは、最後に一つだけ聞いておきますけれども、大臣、そのあなたが提案したものができなかった場合は、あなたが進退を決するわけですか。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 進退をかけてでもやるという私の決意でありますが、これができなかった場合はやめるかといったら、じゃ北炭夕張はそれで再建できるのでしょうか。何も別段希望してなった地位でもなし、また、いつまでもやりたいという気持ちもありません。なるべく後進に道を譲り、新しい人たちがどんどん育ってほしいというのが、私ども政界粗大ごみの願いであります。でありますから、進退ということは決意のほどでございまして、一〇〇%できるかどうかはわからないが、一%の可能性があるならば、それに対して挑まないというのはむしろ政治家として怠慢だ、道を、もう少し光が残っているならば、その光をつかもうとする努力は政治家としてすべきである、私はそのように確信いたしております。
  57. 岡本富夫

    ○岡本委員 結局聞いていると、これは前の通産大臣のときから、北炭夕張を何とか再建しようという熱意はわかるのですけれども、そういう提案をひとつやってみよう、一縷の望みはあるのだからしよう、考えてみるとそういうことだけなんですね。大したことはないです。これはしっかりやってください。  そこで、中小企業の問題でずいぶん残っておったのですけれども、もう時間がありませんから本当に簡単なことですけれども……。  中小企業団体中央会が十七日に発表した報告の中で、中小企業にとって女子パートというのは非常な戦力になっておる、しかもふえつつある。この女子パートタイマーの課税最低限が現在七十九万、これは月に直すと六万五千何がしなんですが、そうしますと、これ以上ふえますと、どうしても主人の方の扶養手当というものがなくなってくるというので、なるべくこれ以内におさめようということで、会社の方は働いてくれ、いや、もうそれ以上働くと私は税金を損するんだというようなことで、この細かい数字があるのです。  したがって、簡単に申しますと、この五十八年じゅうに、すなわち十二月までに、所得税あるいは地方税の課税最低限の引き上げ、これを含めて減税について与党の方から報告が来ているわけですが、そのときに、この女子パートの最低限を、百二十万と言いたいけれども、少なくとも百万ぐらいに上げていくというような努力を通産大臣はしていただけるかどうか。中小企業を育成し、あるいはまたこの人たちの生活を見る面からですね。これをひとつ。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 減税をやります際は、税制のいろいろな分野のバランスをとりながらやりますから、具体的にどこまでの合意ができていくものかは、私にはいまの立場ではわかりませんが、その問題は実際に、女子のパートその他を含む女子の従事者に対する税のあり方の問題という方面から考えてみたいと思うのです。  隣のうちにパートに行っても、七十九万といえどもそれは控除されます。しかし、自分のうちで隣のうちに行ったと同じような、家業ではあっても、従事者として女性がいなければならない、そのことによって成り立っている零細規模の企業については、その自分のうちでやっているのだからそれは収入として認めないというような点は、非常に大きな問題点があるのではないか。  そこらのところの割り切り方は、いわゆる個人事業主の事業主控除等の問題等も関連してきますし、大変むずかしいのですが、女性が働いて得る報酬について、とにかく自分のうちを出なければそれはパートとみなさないという前提がそれでいいのかどうか。そしてその次に、配偶者控除を受けられなくなる金額はいまのままでいいかどうかは、これは配偶者控除の引き上げその他とのバランスで当然考慮されることになるだろうと私は思っていますが、いま税関係の立場を離れていますから、そういう感想を申し上げておきます。
  59. 岡本富夫

    ○岡本委員 大蔵省、それから厚生省、もう帰ってください。  これで終わります。
  60. 森清

    ○森(清)委員長代理 横手文雄君。
  61. 横手文雄

    ○横手委員 私は、幾つかの質問を用意してまいりましたけれども、まず、日本の特許庁のあり方について御質問を申し上げます。  日ごろ大臣は、わが国は外国から資源を輸入し、これを加工し、優秀なものにして外国に買ってもらう、そのことによってこの島で一億一千数百万人の人たちが生活をし、さらに未来を切り開いていく、まさにわが国は技術立国である、このように言っておられるのであります。私もそのとおりであろうと思います。  そこで、技術の開発ということに相なりますと、当然特許問題、こういった問題が出てくるわけであります。特許法の第一条にもそのことが明記をされております。きわめて重要な問題であり、この技術開発を促進をし、そして特許権を与え、これを保護し、そしてまた次の新しい発明に取り組んでいく意欲を培養していく、このことは大変重要なことだと思いますが、まず大臣の御所見をお伺いいたします。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 日本の特許行政は世界に冠たるものであり、そのレベルもまたアメリカの特許商標庁長官が視察に来るほどの実質の内容を備えております。お粗末なのは建物だけであります。非常に優秀でありますが、わが国は特許完全公開という立場を貫いていることも私たちは誇っていいことだと思うのです。  要するに、特許庁の古ぼけた建物の中には、日本の未来を開いていく、民族の未来を開拓していく宝がいっぱい詰まっているのだと思うのです。ならばその宝は、条件審査を終えたならば速やかに特許の許可をしてやるべきであるし、国際特許の手続等も速やかにとるべきである。しかし、現状ではやはり審査官等の定員がなかなかふえない。一方において特許申請件数はふえるばかりである。この日本人の旺盛な探求力、そして未来への創造力、それをみずからがつくり出そうとする努力、それが特許庁に集中してくるのだと思うのです。したがって、私はこの宝の山を持ちぐされにしている期間をなるべく短くしたい。そのためにはいろいろな条件整備等がございますが、われわれ国民全部が、特許庁のその存在について高い評価を国民的に与えられるべき役所であると考えております。
  63. 横手文雄

    ○横手委員 私もそのように思います。ただ、御指摘のありましたように、現実には早くて四、五年たたなければその登録が終わらない。日進月歩の今日、技術の開発はどんどん進んでいる。四年前にはなるほど画期的なものであったかもしれないけれども、五年もたってみるとまた新しいものができ上がってしまっておる、その間、その五年前あるいは六年前につくられたその方の努力というものはまさに水泡に帰してしまう、こういった実態があるわけでございます。  したがいまして、申請者にしても、あるいはこれを代行しておられる弁理士の皆さん方にしても、なぜ日本のこの特許の申請は審査期間がこれほど長いのであろうか、おっしゃるように、宝の持ちぐされをみずからがやっておるではないかという意見があるわけでございます。これをいかにして早くしていくか。いま大臣もおっしゃいましたように、早くしなければならないというのが至上命令であるということを大臣言われながら、これは特許庁の怠慢なのであろうかどうか。なぜこれだけかかりますか。
  64. 山中貞則

    山中国務大臣 それは国家の怠慢であり、政府の怠慢であります。たとえば、早くするためには資料をマイクロフィルム化し、コンピューターを動かすことによって相当な加速がされると思うのでありますが、なかなか予算がついてこない。したがって、予算がついてこない、また予算がつかないということは政府全体の責任であり、政府の怠慢、そこまで言っておきましょう。政治と言うと、あなた方一生懸命なのだから、政府の怠慢に尽きると思うのです。  ただしかし、具体的に、来年度予算から一挙に特許庁の予算を数倍にするとかなんとかということはなかなかむずかしゅうございますが、しかし、かつて私は特許申請料の引き上げをいたしましたときに大蔵省に条件をつけたことがあるのです。今回の引き上げについてはやむを得ないものと思うが、引き上げて得られた金額は全部もとの金額も含めて特許行政に還元するという条件をつけました。二、三年は守っていたようでありますが、どうもそこのところはあいまいになってきて、その年の予算の折衝次第によるというようなふうに変わってきているような気がしますので、まだ相談を部内でもしておりませんが、そして大蔵省とも事前に打ち合わせの後にそれはやらなければならないことと思いますが、特別会計的なものというようなものをこの際、特許庁は百年になるかと思いますが、そういうことで特別会計として、何も特許庁がそれをむだ遣いするわけじゃありませんから、そうするといまよりも相当前進するのではないかという一つの考えを持っております。これはまだお尋ねに答えているだけの話で、新しい特別会計を一つつくるかどうかについては大蔵省に相当な事前の相談をしてからでないと、予算の要求も相談なしではできないほどの問題にいま予算の環境がなっておりますから、それも一つのアイデアとして持っております。
  65. 横手文雄

    ○横手委員 特許庁の長官として、これだけおくれてしまっておる、早くやらなければならないという至上命令はある、しかし現実の問題としてこれだけおくれておる、こういった実態をどう認識しておられますか。
  66. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 先ほど先生が申されました四年、五年というのは若干、見方によりますけれども、いま審査請求してからは二年二、三カ月という状況でございます。  ただ、特許庁は息の長い行政をしておりまして、先行性といいますか、先行きが大体もうわかっているわけでございまして、今後十年を展望いたしますと、急速に長期化することは必至という見方をいたしております。したがいまして、われわれとしては、たとえば審査官の養成一つとっても、コンピューター化をするにしても、それが実って本当の戦力になるには数年あるいは長く考えれば十年はかかります。したがって先手先手と手を打っていかなければならないというふうに考えておって、非常にいま重要な時期に差しかかっておる、いまがぎりぎりの一つのタイミングではないか、これを一年、二年、三年と、こうおくらせていくと先行き大変な事態になる、こういう認識をいたしております。非常に重要な時期であるという認識をいたしております。
  67. 横手文雄

    ○横手委員 先ほど申し上げましたように、この審査期間が非常に長いということ、特に諸外国に比べても長いという事実を、弁理士の皆さん方あるいは出された皆さん方から指摘を受けておるわけでございまして、これを早く何とか短縮してもらいたいという切なる願いに対して、その御努力はいただいておることだと思うのでございますけれども、その実効が上がってこない。いまがぎりぎりである、いま考えていかなければならないということでございますが、大臣は、答弁のためにいま申し上げておるのだ、こんな話が先ほどあったわけでございますけれども、いま長官の方は、こうしなければならない、ねばならないというようなことではなくて、もうぎりぎりのところへ来ておりますということを言っておられるのです。  これは、大臣、答弁としてこういうことを申し上げるということじゃなくて、現実に職場の中で、その業務の中でもういまがぎりぎりでございますということを言っておられるのです。さて、これは手を打たなければならぬと思いますが、大臣、どうされますか。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 私も特許庁をずっと視察してみました。それぞれ、まず第一に所狭しと書類が並んでいる、人間が書類棚の中であっちこっちで仕事をしている、極端に言うとそういう状態であります。しかも、その審査に当たる人たちは、それに集中専念して、極端に言うと飽くことなく努力をしております。それは当然静ひつなる環境あるいはまた快適なる環境というものが与えられてこそ初めて同じような——事柄は一つ一つ違っても、毎日毎日、毎年同じ範疇の仕事をしている人たちにとってみれば、決して快適な職場の環境とは言えない。あるいは便利な環境のもとで仕事をさせられていると思えない。むしろ建物の中にどのように書類と雑居するか、その中でどのように自分の職務を遅滞なく執行するかに腐心をしておる、心を砕いておるという姿を見て、このままではいかぬ、私もそう思いました。  したがって、幹部を集めて、いましばらくのしんぼうだ、日本の民族の未来は諸君たちの努力の中からこそ、きらりと光るものがこぼれ落ちて生まれてくるのだから、使命感を持って努力しろという訓示もしておきましたけれども、ただ訓示だけで元気を出せと言っても限界がありましょうから、これから克明に、いまの建物の古びた姿も含めて、どのように特許庁の仕事というものが国家、民族のためにあるべき貢献、あるべきスピードを回復し得るか、それに私も力をかしてやりたいと考えております。
  69. 横手文雄

    ○横手委員 おっしゃいますように、訓示だけではどうにもならない。おくれているという事実、何とかしなければならないという事実。しかし、現場を見ると書類の中に人間がいる。こういうことの中で一生懸命やっておられるけれども、これでは限度がある。現場でももうすでにぎりぎりでございます、こういうことをおっしゃる。大臣としては、諸君らのその努力の中に日本のきらりと光る新しいものが生まれてくる、そこに日本の命の源泉がある、このようにおっしゃるわけでありますけれども、そういうことであるとするならば、現実にこのような形になっておる、御指摘のとおり建物もあれだけのものになってしまった、どうしようもないから本庁の方にもある、事務所もまた分かれてしまっておる、こういう事実なのですね。しかし、いま建てなければ皆さんの期待にこたえてこれを短縮することはできないということもまた事実であります。ですから、これをどうされますか、いかなるプログラムをお持ちでございますかという質問でございますが、どうですか。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 そこらの具体的なプログラムについて御答弁申し上げるほどの確定したものは持っておりません。しかし、これから八月末の予算要求、これもマイナス一〇%シーリングぐらいの大変厳しいものになるのではないかと思いますが、その中でどのように理想あるいはあるべき姿に向かって挑戦するかというのも、これも政治でございますし、長官が申しました、もういまそのときに来ておるという言葉は、現場の悲痛な声だと私も受けとめております。それにこたえる精いっぱいの努力をしてみたいと思うのです。
  71. 横手文雄

    ○横手委員 ぜひ御努力をお願い申し上げたい。日本の未来のためにぜひ早急に取り組んで、関係者の皆さん方の期待にこたえていただきたい。このことを重ねて御要望を申し上げておきます。  次に、多少事務的なことに相なりますけれども、たとえば特許庁の書類の発送事務等につきましていろいろ苦情があるとお聞きをいたしております。代理人の方あるいは弁理士の方が特許の申請をする、そしてそれが審査官のところへ届くまでに三、四カ月かかる、審査官の方が審査した結果の日付の判こを見ると、弁理士、代理人あるいは本人のところに届くまでにまた三、四カ月かかっておる、これは一体どういうことだ、こういうことでございますが、どうなっておりますか。
  72. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 お答え申し上げます。  いま手元に資料がございませんけれども、一般的に届くのに二、三カ月かかるということはないと思います。ただ、即日というわけにもちろんいきません。  この主な理由は、出願の問題について、内容は別としまして、だれが出願したとか、だれがどういう内容のものだとか、大ざっぱな表題ですね。具体的に言えば、表書き程度のことはみんなコンピューターにいま入れてございます。いまどこに書類があるかとか、どういう審査の段階にあるかというのは、ボタンのワンタッチで出てくるようになっております。したがって、普通いろいろな書類をわれわれの方で受け付けますと、それを形式審査に回します。これはそんなに時間はかかりません。その結果をコンピューターに入れるわけなんです。これが率直に言って人の関係、人数の関係もありまして、実はその入力の大部分は下請に出しているわけでございます。そういう関係もありまして、物によっては一月とかかかるものもあります。それからもう一つは、いろいろな公告決定をいたしますと公報に掲載します。これは当然、釈迦に説法でございますけれども、印刷その他のプロセスがありますから、公告決定を審査官がいたしまして実際に公報に載るのに二カ月ぐらいかかるということは現実でございます。さようなわけで、一つは、機械化をしたことによってある程度そのインプットの時間がかかるということは出ているようでございます。
  73. 横手文雄

    ○横手委員 私は、直接窓口で仕事をしたことがございませんのでわかりませんが、関係者の皆さん方の話を聞きますと、先ほど申し上げましたように、書類を出してからその審査官の手元へ届くまでに三、四カ月かかっておる。あるいは、おりてから本人あるいは代理人のところへ届くまでに事実三、四カ月かかっておるとおっしゃるのであります。そうしますと、その事実はないということを長官はおっしゃって、せいぜい一カ月だということでございますが、そのとおり認識してよろしゅうございますか。
  74. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 二つありまして、一つは、率直に言いまして、特許庁の中は恐らく百五十万以上の書類が常時動いているわけでございます。そういうことで大変ふくそうしていることは事実でございます。それから、いろいろな申請の場合の内容が、特許出願というのは一本でございますけれども、具体的に追加した補正とかあるいは住所変更とか、あらゆる種類、タイプの追加資料とか、それのまた応答文とかいうことが動いているわけでございます。したがいまして、私、率直に言いまして、一律に二、三カ月かかっているとは思っておりませんが、ケースによってそういうケースもあり得ると思います。ただ、実際に業務で遅くなるようなことはできるだけ避けているつもりでございます。率直に言いまして、たとえばウエーティングしているケースもございますので、そういうものについてはある程度長くなっているケースもないとは言えないと思います。
  75. 横手文雄

    ○横手委員 私の後で新自由クラブ・民主連合の菅先生が同じようなことを質問される予定だそうであります。先生は専門家でございますから、日々受け取っておられますから、私は、そうだ、いやそうじゃないというやりとりをしてもせんないことだと思いますので、また後ほど現実にやっておられる方がその辺についてはさらに確認をしていただけるものだというぐあいに期待をしておるのであります。  これは昨年の十二月九日の新聞ですが「特許庁料金政策を全面見直し 機械化財源確保へ アップ率二倍超える」という報道がなされておりますけれども、このことについていかがですか。
  76. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 今後十年先を見越した特許行政はどうあるべきかということを、われわれなりに検討いたしております。その過程でいろいろな施策、特に金額的に言いますならば、コンピューター化というものにかなりの経費がかかることも事実でございます。したがいまして、そういうものの財源調達の可能性という問題を検討いたしておりますことも事実でございます。したがって、その一環といたしまして料金はどうなんだろうか、国際的に見てどういうレベルにあるのか、どのぐらい上げる可能性があり得るだろうか、そのまた影響はどうなるだろうかという検討はいたしております。ただ、どれだけの倍率とか、そういうことを決めたことはありません。内部的にしろ、具体的にそういうふうに決めるとか確定するという状況にはまだ至っておりません。
  77. 横手文雄

    ○横手委員 これは五十六年だと思いますけれども、特許庁の歳出入の関係を見ますと、バランス約三十億円ぐらいの黒字になっておるわけでございますね。こういうことにもかかわらず、これからスピードアップしていかなければならない、そのためには受益者負担みたいな考え方に立って二倍ぐらい料金を上げていかなければならない、そういうことが底流の中にあるということですか。
  78. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 現在の収入と支出のバランスでございますけれども、確かに三十億弱ぐらいの黒字の表現は正しいと思うのですが、実は年金とかいろいろな意味で本省の中に計上している部分も別途ありまして、そういうものを総合すると、ほぼバランスしているというのが現状でございます。  それでは、受益者負担という考え方があるのかということですが、ちょっと長くなりますが、まず一般論としてございます。これは日本だけではございませんで、国際的に見てもおおむねそういう流れでございます。特に欧州、アメリカ、これが特許庁といいますか、特許の主流でございますけれども。それから日本自身も長い歴史がございますけれども、何もそういう精神が確立しているわけじゃありませんが、結果といたしまして、ある程度バランシングというものを考えた運営が過去百年の歴史にあるというのも事実でございます。
  79. 横手文雄

    ○横手委員 大臣にお伺いいたしますけれども、特許庁というのはそういうことで受益者負担ということが底流にあるということは、一つの国家機関の中の現業部門というような形に理解していいのですか。
  80. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう見方もありましょうし、特許申請者は、何らかの実用化なりあるいはそれが他部門への結合なりによって得られる成果というものを期待して自費を投じてせっせとやっているわけですから、それらの人たちが手数料を払ってなお審査を受けたいというのは、それが特許を得られたからもうそれでお蔵にしまい込むのではなくて、その特許が世に出て、そして効果的に利用されることを期待しているんだと思います。したがって、そのような関係から、それらの人々が応分の負担をしていくということにいま余り文句がないということがその現実を示しているのではなかろうかと思っております。
  81. 横手文雄

    ○横手委員 それでは長官にお尋ねいたしますが、そうすると、いま大臣の答弁の中に、受益者負担によって——先ほどの答弁の中で私もあれっと思ったのは、この支出の内訳の中にもございますけれども、職員の皆さん方の年金等については本庁で持ってもらっておりますから、この三十億円の黒字というのはとんとんでございます、こういう説明でございましたので、ならば特許庁というところは、いわゆる現業部門というような考え方に立って、人件費から退職金から年金から一切合財賄いなさい、そこで赤字が出たら特許料を上げなさい、こういうシステムになっておればまさに現業そのものだという印象を受けるわけでございますが、その点いかがですか。
  82. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 原則とか理念とか法則とかいう感覚としてはありません。したがって、無理に合わせなければならぬという絶対性はないわけでございます。  ただ、先ほど来るる申し上げましたのは、外国の例ではもっと明白にバランシングをするという思想、規定、そういうものが出ておるということは事実でございますし、日本のケースでも、現実として、結果として、この百年の歴史をずっと収入と支出のバランスをわれわれも見ておりますけれども、大体バランシングしているというのも事実でございます。しかし、赤字になっては困る——短期的には赤字になることもありますし、料金値上げとのタイミングももちろんありますし、そういうような必ず収入で年金を見なければいかぬとか共済組合の負担金を見なければいかぬということはございません。結果としてほぼそうなっているということを申し上げたわけでございます。
  83. 横手文雄

    ○横手委員 私は、先ほど来申し上げておりますように、この特許制度というものは輸出立国日本にとって、技術立国日本にとって大変大事なことだ。そして長官は、いまぎりぎりのところへ来ております、いまこそ機械化なりそういったものに踏み出していかなければならない、建物についても考えていかなければならない、きょういまここでそのプログラムを言うわけにはいかぬけれども。大臣の方からは、訓示をしておるし、がんばれということを言い続けておる。しかし、訓示だけでは腹がふくれぬということをよく承知しておるということを言っておられるわけでありますね。  私は、間もなくそのことが具体的に始動を始めるというぐあいに期待をしておるわけであります。また、そうならなければならないというぐあいに考えております。そのときに収入とのバランスの関係で、料金等のことでいさかいがあってこれがおくれるというようなことがあっては断じてならない、このことを申し上げているわけであります。いま、いろいろな料金は抑えていこうということが世間一般の中にある。政府の中にもそのことがある。ところが、そのことが足かせになって、一定の収支バランスの中でやっているからこれができないというような議論に発展してしまうことを恐れるのであります。そういうことは断じてございませんね。
  84. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 観念的に考えますれば、われわれが不必要な——極端なケースでございますけれども、膨大な経費が要ると称して大幅な値上げをするということは、観念的にはあります。しかし、われわれも現実に実務をやっていますし、その料金値上げの影響というものを十分勘案しなければいけませんから、その辺のことは十分に勘案し、値上げの幅なりを考えるのは当然のことでございます。またまた、ロングランにある程度物を考えるということも当然のことだろうと私は思います。したがいまして、そういう問題でわれわれの実務がおくれないように、改善の対応がおくれないように最善の努力を尽くす所存でございます。
  85. 横手文雄

    ○横手委員 ひとつせっかくの御努力をお願い申し上げておきたいと思います。  次に、弁理士法の改正の問題について御質問を申し上げます。  これは私も専門家でございませんからよくわからないのでございますが、ここに昭和三十四年二月の三十一回国会からの議事録がございます。この中で、特に特許法の一部改正等が出されたのでございましょう、その議論を通じて毎回ごとに弁理士法の改正問題が取り上げられております。時の長官あるいは大臣の答弁の中で、今回は弁理士法の根本的な改正は間に合いませんでしたけれども、鋭意これを検討中でございます、こういう答弁がずっとなされてきております。そのたびに、ほとんどすべてのときに、この際弁理士法の根本改正についても速やかに検討に入るべしといったような附帯決議がなされているわけでございますが、いまだにそれがなされていない。その弁理士法の改正がなされていないということは一体どういうことなんでございましょうか。
  86. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 やや抽象的な表現でございますけれども、理念的なものと現実に法制化して処理する場合のアプライとの困難性がややあろうかと思います。そういう意味で、特にサボっておるわけではございませんが、なかなか関係者も多うございまして、コンセンサスがなかなかとりにくいという面はございます。非常に抽象的でございますが、そういう問題が基本的にはあろうかと思います。
  87. 横手文雄

    ○横手委員 この議事録を見る限り、その都度そのようなことが言われて、しかし今日もなお、踏み出そうとしてはおるけれども関係者が多過ぎて、それぞれのところで煮詰まっていないから具体的にアクションを起こすということがなかなかむずかしいのだという、大変抽象的な答弁でわかりにくいのでございますけれども、ただ、全面的に改正をしなければならないということについての認識は、この二十数年来の議事録の中では述べられておるわけでございますが、仮にこれに取り組んでいくということになりますれば、特に弁理士法のどの部分等について手を加えていきたいということなんでございましょうか。
  88. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 これは問題提起をする人たちのグループによりましてもいろいろな意見がありますが、やや客観的というか中立的というか、あえて申しますれば、われわれの立場に立つと、まず一つは、かたかなの法律になっております。私は、これを直すならばひらがなにきちっと直したいと当然思います。これは古い法律でございますから、古い法律に伴いまして表現も最近の法律から見ると必ずしも適当でない。たとえて申しますと、弁理士会を通産大臣は監督する。御承知だと思いますが、ほかの税理士法だとか公認会計士法とか、実態は同じような運営をしているのでちっともおかしくはないとはいいながら、表現がえらい違う点もあります。  それから、全員のコンセンサスを得たわけではないのですが、弁理士の職務、たとえば弁理士でない方が業として代理行為とかあるいは出願書類の作成とか、こういうことをしてはならないという規定がもちろんございますが、その辺をもう少しはっきりしてほしいという御意見もございます。  それからもう一つは、これもなかなかむずかしい問題なんですが、弁理士という名前、これはいいのでしょうけれども、弁理士の関係だけではないのですが、特許管理士とかそういう町の養成講座みたいなものがよくありまして、そういうものが一般大衆に紛らわしいじゃないかというような議論もあります。これは弁理士法以外にもいろいろ問題がありまして、なかなかむずかしい問題をはらんでいますが、一口に言いまして、本当の議論の核心のところは実はむずかしい問題があるというのも事実でございます。  おおむね私の承知しているのはその辺のくだりでございます。
  89. 横手文雄

    ○横手委員 私もこの弁理士法を読ませていただきまして、御指摘があったような点について疑問を持ったのでありますが、十三条の「弁理士会ハ通商産業大臣之ヲ監督ス」というような文言、他にいわゆる「士」のつく職業はたくさんあるわけでございますし、しかも専任しておられる方がほとんどでございますけれども、こういった表現は今日適当なのであろうか。それから、御指摘がございました二十二条ノ二に「弁理士ニ非サル者ハ報酬ヲ得ル目的ヲ以テ」云々、そして最後に「業トスルコトヲ得ス」、こういうことになっておるわけでございます。御指摘のとおり特許管理士会というような民間の団体があって、これが弁理士の皆さん方の職域を侵しておる。したがって、昭和五十年でございましょうか、そういった事実があって、そして弁理士会が告発をして、裁判所はこれをクロと認定をした、こういったような話も聞いておるわけであります。  なるほど、出願件数等を見ましても、弁理士の人が圧倒的にたくさん扱っておられるわけでございますけれども、代理人つき出願その他というのが千数百ある。これが弁理士の皆さん方にしてみれば、本来ならばわれわれの領分の職域が侵されておるという気がするのであろうと思うのであります。  弁理士制度というものは、出願をするときに素人ではなかなか書類手続もできないから、一定の資格を与えて、そして特許出願者の皆さん方の利益を守っていく、あるいはその業務がスムーズにいくように一定の国家試験をして合格者のみにその仕事を与える、こういうことで出願者を保護し、あるいは特許行政を円滑にするために与えられた地位であろう。それですから、ことしあたりも数千人の方が受験をされて数十人しか合格者がないというような大変な関門だと聞いておりますけれども、そういった関門を通ってきた人たちを一方では保護するということもまた大事なことではなかろうか。  たとえば、話は多少卑近な例になるかもわかりませんけれども、年間四十数万件という出願件数がある。弁理士の皆さん方にしてみれば、それは全部私のところの蛇口を通るべきものである。ところが、その他という蛇口があそこにある。ここから年間数百件の申請がどんどん出ておる。あれはもぐりじゃないか。本来なら私のところを通ってもらわなければならない蛇口があそこについておる。しかも、その蛇口を年間数百件のものが、あるいは二千件に近いものが通過しておる。こういうことからして、この二十二条ノ二あるいは三についてはまさにざる法ではないか。そして、われわれが一生懸命になって事実をつかまえて告発をせぬ限りこれが防げないということになってくると、われわれの身分、地位というものは一体全体どうなっていくのであろうか、こういう心配も出てくるということを私は容易に想像ができるわけであります。  したがいまして、言われましたように、この改正の中にはそういったことも含まれている、より弁理士の皆さん方を守っていくというようなことも考えている、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  90. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 いま先生御指摘の、弁理士の資格のない者が他人の求めに応じて、あるいは特許管理士というような名前で業として報酬を得てやっている、これはもう現行法自身に違反でございます。これは取り締まっていくといいますか、弁理士会でも告発していますし、われわれも、そういうことがないようにというのは現行法でもできるわけでございます。  それで、いま二千件と申しましたのは、なかなかむずかしい問題でございますが、実はいまの二十二条の規定でも当然でございますけれども、本人とか、まあこの場合本人という意味は、個人の場合もありますし、法人という場合もありますが、これは自分で出してもいい、こういうことになっているわけです。個人の場合は個人の名前になりますが、法人の場合に、法人といっても法人格ですから、実際に大きな会社のケースですと特許部とか特許課とかがありまして、そこがいろいろな特許活動をやっておる。その辺になってきますと、実はなかなかむずかしい問題をはらんでおるわけでございます。  いずれにいたしましても、私どもはあらゆる意見を聞いて、あらゆる問題について検討をいたしておる、そういうことでございます。
  91. 横手文雄

    ○横手委員 これは一般論として大臣にお伺いをしたいのですけれども、私も国会議員になってまだ日が浅うございますから、ちょっと教えてもらえませんかというようなことでございますが、法律に附帯決議がつくわけですね。そのときに大臣は、その附帯決議の内容にのっとり鋭意その線に沿って努力をいたします、という発言を必ずしておられるのですけれども、その重みというのは一体全体どんなものなんですか、これは一般論として。
  92. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、政府の方は非常に重みを感ずることの方があります。  たとえば行政機構改革をするときに、「人員の出血を伴わないこと」という附帯決議が一項目入った。それだけで行政機構改革は大きなたがをはめられてしまったわけです。機構は整理しても人は減らしてはならないということですから、これは大変な拘束力をいまでも持っています。ほかにもたとえば、たしか土地収用法というものが改正されたときに、これは附帯決議か建設大臣の答弁かで、「この法律は自衛隊の土地取得には適用しない」と言ったばかりに、その後自衛隊は、用地が必要な場合でもその手段は用いないで取得しなければならぬという、大変な脂汗を流して苦しむということになっています。ですから、そういう附帯決議があれば、やはりそれは尊重せざるを得ないし、それに反する行為は少なくともできない。  ただ、今後はこういうふうに配慮しろと言われた場合に、それを一年とかあるいは来年までにとかという条件で受け取っている場合もありましょうが、その御注意はよく承りましたという意味で承った場合、私はこの弁理士の問題は全然報告を受けていませんからわかりませんが、やはり相当拘束をしてはおります。その実現について日限を切った拘束、附帯決議も余りないでしょうけれども、その実行については、やや附帯決議を軽視しているところなどもある。「ただいまの御決議の趣旨を体し慎重に検討いたします」という言葉そのものははなはだ不明確な話でしてね。  ですから、与野党の皆さんが、理事の方が一致して、ここはこうぼかそうとか、ここだけは譲らぬぞとか言ってでき上がったのが附帯決議、大体普通そうですね。そうすると、附帯決議がついたからほっておくわけにもいかぬというものもあれば、附帯決議の趣旨を生かそうと努力するものもあり、さまざまでしょうが、附帯決議は政府として黙殺できない、非常に重みがある、このことだけは事実だと、これは一般論としてお答えしておきます。
  93. 横手文雄

    ○横手委員 大臣は四十分にはお出かけだと聞いておりますからあれですが、最後に長官に申し上げておきたいのですけれども、いま答弁を聞いておりましても、その附帯決議の種類によっていろいろあるような感じがいたしますけれども、これは昭和三十四年なんです。私らがまだ子供のころです。もう二十四年間も附帯決議がついたまま、しかも後々ずっとついてきておるということでございます。関係者の中でそれだけまたいろいろむずかしい問題だということも理解をいたします。しかし、こういった流れの中でございますし、特に特許関係については、先ほど大臣からも大変積極的な御答弁をいただいたわけでございますから、この際、二十年前から生き続けておる、恐らくそのときには、自動車にたとえれば、キーを差し込んでもうエンジンは回っておるに違いないのです、どっちへ行くか、どのようにハンドルを切るかがわからぬものだから、まだギアも入れていないということなんでしょうが、余り空ぶかししておきますとエンジンが焼けてしまうこともございますから、ぜひ御検討をいただきたいと思います。  次に、このところアメリカの商務省の幹部の方もお見えになりまして、大臣も大変御多用の毎日でございます。そういった中で、新聞等を見ますと、新聞によっていろいろ違いますけれども、日米貿易摩擦を通じて大変エキサイトしておる、いよいよ正念場だというような書き方をしておるところもあるし、必ずしもそうでないような書き方をしておられるところもあるわけですが、ただ、アメリカの今回の言い分というのは、いままでは、あの品物はダンピングだというようなことであったり、いろいろな具体的なことであったのですけれども、今回は、日本のいわゆる通産政策がすなわち保護政策であるというような、具体的にどれをどうすればいいというようなことではなくて、国の政策そのものにがばっとかぶせてきて、これ全部だというような言い分を持ってこられたやに聞いておるわけでございますけれども、この二、三日来の首脳あるいは幹部の皆さん方とのやりとりの内容についてお聞かせいただきたいと思います。
  94. 山中貞則

    山中国務大臣 一時ございました日本株式会社論というのが、いまは産業政策論議というものに姿を変えたと思われても間違いではないと思うのですが、要するに、繊維から始まっていろいろと品目ごとに二国間交渉をやっては、結局日米妥協で何かがそこに、新しい規制なり何なりが、あるいは鉄鋼のトリガー価格とかいろいろなものが生まれて今日に来た。そうすると、もう新しい時代のものが次から次へと出てくる。そうすると、もう一つ一つをやってみても日本に対する憎しみをかき立てるところまでいくような空気がある。さすがにアメリカの方も日本という国を、われわれの敵であるというふうになっていってはいけないと。そのためには、日本側も言い分があると言うし、われわれもまたそれを一方的にきめつけないで、言い分も聞き、そして相談をしてどうするかを決めようじゃないかという、いわゆる激突をして何か解決案が生まれるという形からもう一歩手前のところで、自分たちが誤解だったとアメリカが悟ったら、誤解は誤解なりに解いてもらう。アメリカとしてはどうしても承知できないと言うなら、それは日本人の背はなぜ低いのか、あるいは面の色はなぜ黄色いのか文句をつけてくるのと同じ、それは難くせというものでありまして、結論から言えば、そこまで来たら、内政干渉は独立国として受けないと言うつもりでおりますが、言葉は、やりとりは、うちの事務当局と向こうの事務当局とでやっています間はそう大したことはないと思います。  ということは、向こうの方はある程度、ずいぶん失敬なことを言うなというのは、要するに、一番やかましいことを議会で言う商務次官は、モトローラ社から商務次官になったのですね。ですから、自分の会社のことを一生懸命やっておるわけですよ。アメリカはそういう仕組みなんですね、回転ドア人生と言うんだそうですから。大統領府あるいは大使館あたりで、適当に政治献金の鼻薬で大使などになってみたり、あるいは政府に抜てきをされて、そしてある社のために忠実に、日本なら日本をやっつけてくれたというと、政権交代に至らざるとも、回転ドアを出ていって、そして副社長から一躍社長になるとかいうのですね。そうなると、日本の方はたまったものじゃないですね。日本の役人たちはそうじゃなくて、エリートの道を目指して一生懸命、そして自分たちの人生もさることながら、国家のために行政に一生懸命尽くすことを終生の任務と心得てやっておりますから、そもそも国に尽くす尽くし方の姿勢が違うのですね。  ですから、事務当局同士でやっているうちはいいのですが、たとえば私みたいな者がたまたま厄介なときに通産大臣をしておりますので、私の段階に上がってくると、相手の顔を庭ぼうきで逆さまになで上げるようなことは平気で申しますので、相当荒っぽいやりとりになるであろう。しかしそれは、それでぶち壊すとかなんとかということではなくて、勝った負けたではなくて、相手にそれぐらい言ってやらぬとよくわからぬという点で、相当荒っぽい応酬があるだろう。もう直ちにきょう午後から始めるわけですが、国際経済社会の外交に、ある日突然野蛮人が一人加わったということにはなるべくならないように、日本の名誉のために一定限度のマナーは守りたいと思っております。
  95. 横手文雄

    ○横手委員 私は、もうすでにぼつぼつ時間でございますからあれですが、この間の新特安法の審議のときに私も御質問させてもらいまして、三つの問題がありますよ、と。一つは、カルテルがそのまま変なぐあいに生き延びてしまうようなことになってはいけませんし、あるいはその他の問題もある。もう一つ大事なことは、このことによって外国の皆さん方に、それ見たことか、日本はまたあんな法律をつくった、こういうことを言われる心配はありませんかということを申し上げた。大臣は、そんなことはありませんということを、きょうもこの議事録を持ってまいりましたけれども、実に明快におっしゃっているのであります。  おっしゃられるように、アメリカから見て、日本の国はうまくいき過ぎる。会社の方針が出るとそれに従業員が一生懸命になって働いていく。そしてりっぱな物ができ上がっていく。これにやきもちをやいていちゃもんをつけられるのなら、これはもうどうしようもないことじゃないか。だから、そういった点について、回転ドア方式ですか、というのは日本にはない。日本は単一民族であり、長い歴史を持っておる。万世一系かどうか知りませんが、長い歴史を持っておる。そして、文化もあるし国民性もある。しかも、この四つの島の中で一億千数百万人が生きていかなければならないという事実。こういった問題について十分に説明をしていただくということは大変大事なことじゃないか。アメリカだってそれをやっているわけですから……。  前にも申し上げましたように、自分のところで織っていない長繊維の薄物、その値段をそろばんをはじいてみたら、自分が始めようと思ったら三倍かかる、日本は三分の一でわが国に殴り込みをかけてきておる、あと二〇〇%関税取るぞというようなことを言っておられるわけですが、あれこそむちゃくちゃな制度でございまして、理にもそろばんにも合ったものじゃない。こういうこともあるわけでございますから、そういうことについて、日本の国民性、民族性、歴史といったものを十分に説明して御理解をいただくということは大変大事なことだ。  それともう一つは、私は、いまの世界経済の活性化のためには日米が争っていていいのであろうかという気がしてならないのであります。先ほどの他の議員への答弁の中にも、ヨーロッパにおいても大変複雑な様相でございますということを、大臣は目で見て御答弁をなさいました。幸いにして日本世界の一割を占めるようなところまで来た。そして、何といってもアメリカ世界のリーダーであるということは自他ともに認めておるわけでございますから、景気浮揚対策をどうするかということ、あるいは途上国におけるあの債務の焦げつきなんかをこれからどうしていくかということ。これを放置していけば日米関係どころじゃない。お互いに自分のところから足元が崩れてしまう、こういうおそれがあるわけでございますから、もうちょっとそのような問題についても議題の上にのせて、そして世界経済の活性化のためにお互いにいかなることをすべきか、ここまで議題を上げてもらうべきじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 全くおっしゃるとおりでございます。  日本はいかなる国であるからということも相手に理解してもらえれば、ずいぶん多くの問題が解決できると思いますし、また第二点でおっしゃいましたような、そのような姿勢というものが少なくとも太平洋圏と申しましょうか、そういうところに日米が緊密な経済協力をしていることが大きな貢献を、南太平洋のミクロネシアあるいは大きい国でありますけれどもオセアニア、そういうところに貢献をしていくであろう。しかし、日米の経済がぎすぎすして、それがかえって各国の周辺に迷惑を与えていくということであれば、それは太平洋圏のみならず、南米のブラジルとかあるいはアルゼンチンとか日本になじみの深い国々アメリカにとって債務累積国でどうにもしようがないと言っている国であるが、日本としてはしようがない国だと思っていない国、そういう国々とも意見を合わせていかないと、犠牲を受けるのは世界経済であり、自由主義経済陣営の崩壊につながる、そういう意味の御指摘には全く同感でございます。
  97. 横手文雄

    ○横手委員 大臣、お迎えが来ておるようでございますが、一言だけお許しいただきたいと思うのです。  先日来の国会の討論の中で、油の値下げに伴って電気料金の問題がいろいろ議論をなされているのであります。私は、電気料金のことをいまここで論じようとするのではございません。ただ、ちょっと気になりますのは、大臣発言の中で、いろいろなことをいろいろな人が聞きに来るだろうけれども、電気事業の各会社の社長、余りおまえ言うな、通産大臣通産省に任しておけ、こういうような発言がなされておるわけでございまして、全体的に見ると必ずしもそうではない、料金に限ってということなんでございましょうが、ただ、この部分だけぴゅっと出てまいりますと、通産大臣、いまの中曽根内閣は民間の活性化に期待をするということが大前提であるというこの内閣、しかも民間の活性化のまさに総元締を握っておられる通産大臣が、いろいろ文句を言うな、通産省の言うとおりしておればいいんだというようなことで、高飛車に民間企業に対して指導、圧力をかけておられるようなぐあいに聞こえてならないのでございますが、その真意はいかがでございますか。
  98. 山中貞則

    山中国務大臣 だれも何にも言わないときに私がそういうことを言うわけはないのです。石油が五ドル下がった。それに対して世論は、電気料金値下げに直結して議論が起こると見て、九電力の社長が全部写真入りで、石油が五ドル下がっても電気料金は下げませんということを一斉に言ったですね。それは僣越じゃないでしょうか、公益事業を営んでおる者の姿勢としては。だから私は、都合のいいときだけは値上げ申請をしに通産省にやってきて、そして、値下げをさせられるおそれがあったら全部一斉に記者会見をして、認めぬと言う。そういう資格があるならこれから値上げも持ってきなさんな。しかし、やはりそうでないというなら通産大臣にお任せ願います。それは、受け取った方は恫喝と思うかもしれません。しかし、全く関係のない人が、何にも言わぬのに振りかざして物を言ったわけじゃないので、したがって、そういうことをその後皆さん、言われなくなりました。それでいいと思うのです。  私どもは国民に向かって、値上げのときにも値下げのときにも責任をとらなければならないわけです。そのためには電力会社の社長方に、通産大臣に任してください、ということは通産大臣を信用してほしいということでありますから、おどかしと受け取った人がおるとすれば、それは私に名誉棄損か何かで訴えかなんか起こしてもらえれば、喜んで応じます。
  99. 横手文雄

    ○横手委員 いや、私が申し上げておるのは、そういうことを申し上げておるのじゃない。この言葉じりだけを見ると、民間の活性化ということを期待しながら、そういった電力事業に対して通産省の方がこれからもぐっと乗り出していく、一々指図をするということに変わったのだろうかという印象を受けますが、その真意はございましたかということでございますので、その点あと一言、もう迎えが来ておるようでありますから。
  100. 山中貞則

    山中国務大臣 通産省は変わっておりませんし、私が普通の大臣と変わっておるということでございましょう。  民間の活性化ということは、公益事業等の料金の認可を国に申請する人々が民間の自由だと言って、活性化か劣性化か知りませんが、政府の意思も聞かないで勝手なことをほざくというようなことを許していいということじゃないと思うのです。言いたければいまからでも言っていいんですよ。しかし、私はめんどう見ない、どうぞ御自由にと言うだけの話であります。
  101. 横手文雄

    ○横手委員 お迎えが来ておるようでございますから、また次の機会にぜひ。私の質問とはちょっと違うようなんでございます。また次の機会に譲りますからどうぞ、お待ちでございますから。  私は、大店法の問題について二、三お伺いを申し上げたいと思うわけでございますが、いま巷間、大変問題になっておりますこの問題につきまして、かつて大店がどんどん進出をしていった、消費者に喜ばれた、それに調子に乗ったということでもありますまいに、雨後のタケノコのごとくにふえてきた、そしてそれは消費者からもひんしゅくを買うようになった、まして地元の商店街に対して大変な打撃を与えた、こういうことで世論が沸いてこれを規制したいというような動きが出て、出店の抑制策が現在とられているわけでございますが、この効果についてはいかがでございますか。
  102. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 昨年の二月から抑制措置を暫定措置として実施しているわけでございますが、年度、つまり五十七年の四月から今年三月までの届け出の件数という面でとらえてみますと、ピークでございました五十四年度の大体五分の一くらい、あるいは五十五年度に比べまして三分の一くらいということで、届け出件数は大幅に減っているわけでございます。  効果について件数だけで判断するというのは必ずしも適切でないわけでございまして、それ以外に特色として見てまいりますと、従来と比べまして中小小売業との共存型がふえている。言うならば、従来中小小売業との摩擦が多かったのに対して、まあいまでもあるわけでございますが、そういった中で中小小売業との共存というかっこうで出ているものがふえてきた。これは従来の摩擦型に比べて非常に好ましい傾向じゃないかというふうに考えます。  それからまた、御存じのように、出店につきまして商調協、商業活動調整協議会でいろいろ審議をいたしておるわけでございますけれども、これも以前はもめるケースが多かったわけでございますが、最近は非常に円滑化しているケースがふえてきております。抑制措置をとる前にもうすでに届け出を受理しているようなものについて、若干まだ対立関係が激しいようなところも残ってはおりますけれども、大勢として見ますと、かなり円滑化してきているというふうに考えております。これは御存じのように、通産局あるいは県、市そしてそこの会議所と四者でもっていろいろ商調協の運営について協議をしながら、慎重かつ適確な調整を進めるという体制をとっているからでございまして、そういう意味では、昨年の暫定措置がいまのところ当初の目的をほぼ達しつつあるというふうに考えております。ただ、まだ一年ちょっとしか経過してないわけでございますから、もう少し十分効果を見定める必要はあろうかと思っております。
  103. 横手文雄

    ○横手委員 大型店の出店によって地域の商店街に混乱が起こるということも、報道されてよく知っております。しかし一方では、地域によってはむしろ核店舗として大型店を誘致したいという動きがあることもまた私もよく承知をいたしております。  私が知っておるところでいまもめておるところがございますが、それはどういう形かというと、地元の商店街の皆さん方が、自分の町の発展のためには大型の小売店がなければならない、こういうようなことで誘致をするということで始められた、そこで協同組合ができた、ところがもう一つのところで、今度は、あれがやるんならわしがやるというようなことでもう一つ協同組合ができて、二つの大型店の引っ張り合い競争が始まって、むしろ引っ張り合いの競争で大変もめておるというような地域も知っているわけであります。だから、それらの問題については、通産省なり通産局の指導、あるいは市当局あるいは会議所などが介入をして十分にその行司役をしていただくということも大変大事なことだろうと思います。  そういった現象を見ますと、一律的な抑制を行うということには問題があるなという感じを持つ場面がしばしばでございますが、この点についてはいかがでございますか。
  104. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のとおりでございまして、地域の実情に応じましていろいろな態様が確かにございます。特に新興住宅地等への出店問題というのは、地元での要請というのは特に強い場合がございますし、それからまた、再開発事業をやる場合に核店舗として誘致したいというようなのもかなりの地域に出ております。こういったことも考慮に入れまして、昨年二月の暫定措置では、特に小規模市町村などでは大型店の出店について慎重な取り扱いをするということにはいたしておりますけれども、特に理由がある場合を除きということで、一応例外を設けることにいたしております。  そういう意味で、現在の措置は一律に扱わないように配慮はしておるつもりではございますけれども、ただ御指摘のように、大型店の出店問題の議論がなされますと、どうしても画一的、一律の議論がなされまして、すべてのところに大型店が出てくるのが悪いんだということを前提とした話が行われるような場合もないわけではございません。御指摘のような地域の実情に配慮した措置というものを今後とも十分心がけてまいりたいと思っております。
  105. 横手文雄

    ○横手委員 私は、いろいろ議論がなされておりますように、大型店が出てくると地域の商店街が壊滅的な打撃を受ける、したがって体を張ってでも反対をするというような動きがあることも承知をいたしております。ですから、そういうことは断じて許されない。たとえは悪いかもわかりませんけれども、金魚鉢の中で金魚が遊んでいるところへナマズが入ってきて大暴れをする、これでは金魚はたまったものではないのでございます。これに一定の規制を加えるということは当然のことでございましょう。  しかし、場合によっては、私のところに来てください、刺激のためにもよろしいし、そしてお互いに伸びていくためにもよろしい、あるいは、消費者をわが町から離さないためにもいいことだ、だからこの際この金魚鉢を広げましょうというような話が出ておるというようなことにつきましても、そういった点では、地域との摩擦だけではなくして、地元商店街の皆さん方と共存共栄ができる道がある、このように考えるわけでございますけれども、これに対する通産省の見解はいかがでございますか。
  106. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のとおりでございまして、地元との共存共栄ということが現在の調整のときの一番大きな眼目になるわけでございます。  ただ、全般的な情勢を申し上げますれば、共存共栄がなかなかできないところがかなりあるためにトラブルがあるわけでございまして、そういう意味で、昨年二月以来の措置というのは全般的には抑制の方向にあるわけでございます。御指摘のような地元との共存共栄ができるような面にも十分配慮してまいりたいと思っております。
  107. 横手文雄

    ○横手委員 最後に一問申し上げます。  来年の二月で抑制期間は一応切れるわけでございますが、その後どうするかということについて、現時点における通産省としての方向はいかがでございますか。
  108. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 昨年の二月に措置を実施いたしましたときに、特に期限が決まっているわけではございませんけれども、やはり政策効果を見定めるためには大体二年ぐらいはかけて見なければいかぬのじゃないかという了解が一般にあったように聞いております。私どももそういう意味で、大体来年の二月にはこの措置の効果を判断して、その段階でどういうふうに措置しなければいかぬか、考えなければいかぬなと思っております。  その場合に、御存じのように昨年の暫定措置は、一昨年の秋から相当詰めた期間に関係者の方にいろいろ努力をしていただいて急いで決めた措置でございますので、当時から、もう少し中長期的な見通しに立った政策が要るのではないかという御指摘もいただいておりまして、中長期的な「流通ビジョン」を現在、産業構造審議会と中小企業政策審議会の部会の合同のかっこうで審議をいたしておりまして、大体夏から秋にかけては結論が出ると思います。したがいまして、そういった中長期的な見通しと現在行われております暫定措置の成果、両方を勘案いたしまして、来年の二月ぐらいから後の取り組み方というのを決めていく必要があろうと考えております。
  109. 横手文雄

    ○横手委員 終わります。ありがとうございました。
  110. 森清

    ○森(清)委員長代理 午後一時四十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時一分休憩      ────◇─────     午後一時四十三分開議
  111. 野田毅

    ○野田委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林政子君。
  112. 小林政子

    ○小林(政)委員 まず、通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕  大臣は、衆参両院の商工委員会で、電気料金の値下げ指導を検討したいという旨の発言をされておられます。私は大変結構なことだというふうに喜んでおります。  ところで、本日午前、閣議後の記者会見で山中通産大臣はテレビを通じて、料金引き下げについては総理と話し合っていないので総理が誤解をしているようだ、会って話し合いたい、公益的性格を持つ電気料金については原油が下がった以上、料金を下げないとおかしい、今後スライド制にしたらどうかという旨の発言をおやりになっておりました。私は、このスライド制という意味がはっきりいたしませんけれども、現行電気事業法を変えることになれば問題は非常に大きい、安易な料金値上げ制度は考えるべきではない、いま問題となっているのは、原油の値下がり分を国民に直接還元するという全く当然の措置をおとりになることではないか、このように思っております。  一応通産省は、五十五年四月の電気料金値上げの認可に当たっては、原価主義で決まるものだからと言って平均五〇・二%の値上げをその当時行いました。そのときの条件は、原油価格が一バレル三十二ドルで円相場が二百四十円、ところが現在原油価格が一バレル二十九ドルで円相場が二百三十円から二百三十五円程度となっております。三年前の値上げのときも原価主義で値上げをしたわけでございますから、私は、現在の原油価格と円相場の条件のもとにおいて、当然原価主義に基づいて料金を下げるべきではないかと考えます。原油の値下がりによる電力コストの軽減は約五千億円と通産省も発表をしています。これは原価主義に基づいて国民に還元をされるということが当然の措置ではなかろうか、このように思いますけれども、大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  113. 山中貞則

    山中国務大臣 まず事実関係ですが、スライド制ということを言ったのはついさっき言ったわけで、けさは言っておりません。  そこで、総理がきのう、その前には消費者懇談会か何かでお話しになって、私はそばにおらなかったのですが、きのうは私がそばにおるところで、決算の総括で、その分は景気刺激のために設備投資に回したからという話でありましたから、その場で総理と私のやりとりをするようなぶざまなことはできませんので、また話し合いたいということを記者会見で言ったのです。  ということは、初め景気対策の中に数字が入るのは、午前中も申しましたように公共事業前倒しの七〇%とこの電気事業の設備投資の五千億繰り上げという二つの数字しか入ってないのです。そこで、その数字を出しますときに、五千億はたまたま五ドル値下がり分の電気事業の経営に貢献する金額と同じである、誤解されるおそれがきわめて強い、したがって、これは既存の毎年電力会社が持っている設備投資計画の繰り上げということであって、石油の値下がりの問題と関係のない数字であるということを繰り返し言っていたのですけれども、私自身も総理にそこまでかみ砕いて話をしていなかった責任がございますが、総理はそれは景気刺激のためにその分だけ投入されたものだというふうに受け取っていらっしゃる節がございますので、ちょっとお話し合いをしてみなければいけない、そういうことを言ったわけであります。  したがって、私の考え方としては、五ドル値下がりというのは、産油国を訪ねてみましても、自分たちはこれ以下に下がらないように最低三年は二十九ドル体制を維持し続けたいという、われわれの考えとは逆な考えを向こうは持っていらっしゃいました。そうすると、二十九ドルは三年持続されるなというふうに受け取らざるを得ません。したがって、これが三年間二十九ドルで持続されるとするならば、三十四ドル体制の経済下にある私どもとしては、あらゆる分野に、最終的に国民生活に還元できるような効果のある、しかも世界で一番五ドル値下げをうまく経済に活用したという国になりたいものだ、私はそう念じて、いま検討いたしておりますが、そうすると、その中で電力料金は入れませんということは不可能であります。電力料金も含めて各種の施策考えるという、あたりまえのことを申しているのでありまして、電力料金だけをやればそれでいいというものじゃなくて、まず初めに、石油会社が電力向けに供給する油は一体どれだけ現実に反映させているのかも調べてみました。まだ全額とは言えませんが、やはり高い油と調整しながら出すわけでしょうから、しかし、それでも下がっている事実はございます。ほかに漁業用A重油というようなものも下げてほしいという気持ちもありましたが、やはり何も言わなくとも実勢を反映して、自然の経済原則で下がっています。そうすると、下がっている油が供給されているコスト四〇%未満の電力料金については、その分についてはすでに恩典が出始めているわけであります。したがって、政策問題として、それを設備投資にさらに上積みをせよというのも一つの政策でしょう。しかし、私どもは電気料金のあり方は、なるべく安定して、そしてなるべく長くその価格を続けるべきが理想であろう、とするならば、これはやはり全体の点検の中で電気料金というものも検討の対象に入れない方がおかしいので、入れて当然ながら——もちろん下げる方向に決まっています、そういう検討を進めていこうということを申し上げているわけでございます。
  114. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間の関係もございますので、私は次に訪問販売法、割賦販売法の見直しの必要性ということについて大臣に伺いたいと思います。  実は、東京都消費者センターの担当者の説明を伺ったところ、最近の販売方法の多様化により、訪問や信用販売、こういったものが大変ふえて、それにつれて消費者の被害、トラブルも急増している、こういうお話でございます。東京都消費者センターの調べでは、五十七年四月から五十八年三月までの一年間にセンターに寄せられた相談事例は一万六千五百八十五件、そのうち契約に関するものが六千百三十三件を占め、三七%となっています。この契約に関するものは、前年、五十六年度が五千五十九件でしたから、前年比一二一%ということになり、東京都のセンターが集計をしてまいりました過去八年間に、契約に関する苦情、相談件数は五・一倍と大きくこれは激増をしているということを物語っています。これらの消費者被害、トラブルの中で社会的に重視する必要があるのは、お年寄りや主婦や若者といった階層に被害が広がっているということでございます。  訪問販売法や割賦販売法について、こうした現状に立って法律の改正やあるいはまた行政指導の改善が求められているのではないかと私には考えられますけれども、通産大臣、通産当局としての基本的な見解についてお伺いをいたしたいと思います。
  115. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの時代の進展というのは国民生活に非常にいろいろな形で、新しい取引形態とか販売形態とか、契約というものが思いも寄らぬ形で出てまいります。アメリカでは現金を持って歩かない。それでキャッシュカードをみんな持っている。アメリカはそれをプラスチックマネーと呼んでいるそうでありますが、そういうところまで日本が行くかどうかは別にして、どうも時代の流れというものは想像もつかない方向に行くんだな、そうすると、私たち日本において、そういう問題は昔からある頼母子等からだんだんいろいろな形態のものが生まれてきて、ネズミ講事件とかいろいろなものが起こりましたですね。  そうすると、このような時代にすべて法律で私生活を規制するということは、これは私は余りやらない方がいい方向だと思いますけれども、しかしほうっておいたら、そのことのゆえに一家心中だの自殺だの、あるいはそれのいろいろなことの、まあサラ金なんかの場合はその資金欲しさのいろいろな犯罪が起こるというような、これは社会的に放置できない状態が出てきます。そうすると法律の対応というのは大変むずかしくなってきておりまして、どのようなケースが出たらこうするというふうに新しいケースを予測することが非常に困難な時代になっている。そうするとそこに、いまおっしゃった割賦販売でも、品物は販売者から購買者の手に確かに渡ったけれども、代金は途中の決済機関みたいなものに払った、それで済んだはずなんだけれども、欠陥商品あたり等を要らない、返すというような場合に、いや、私の方はもう関係ありませんからというような、そういうあり得ないことが起こる。これは、いつぞやお話を承りました冠婚葬祭互助会等も、そんなはずではなかったがという例が幾らも出てくる。  そういう時代になりましたので、国民生活とそのような売り方、買い方の形式あるいは取引の実態、こういうような問題をやはり全面的に見直してみる必要があるなということを私は考えておりますが、いまここで具体的に問題を仮に御質問なさいました場合に、私自身の考えがまだ固まっていないということがありますが、事実については事務当局より答弁をいたさせますので、その旨御要求いただくようにお願いします。
  116. 小林政子

    ○小林(政)委員 具体的にお伺いをしたいと思いますけれども、まず訪問販売による被害例を見てみますと、セールスマンの巧みな売り込みといいますか、こういったものに説得をされて買わされてしまった、後でゆっくり考えてみてこれはもう解約したいと思った、しかしクーリングオフの四日間の期限がその間に切れてしまった、こういう例が大変ふえてきております。たとえば木曜日にセールスマンが来て契約をさせられてしまい、土曜日の午後になって解約をしたいと考えても、郵便局にも行けなかったり相手の会社が休みだったために、これはせっかくのクーリングオフという無条件で解約ができる権利を放棄せざるを得ないというような、あきらめてしまうケースというものが最近大変ふえてきています。  私は、売買契約にサインをしてしまってからでも、外国などでもやられているように、四日間ではなく最低一週間程度のクーリングオフの期間を見たらどうだろうか。私たちの生活が週単位で営まれているということから考えても、四日間というのでは、やはり専門的なセールスマンは、この曜日の日に行けば、これはクーリングオフに間に合わないというようなことをやはりきちっと見定めた上で訪問しているわけですから、やはりクーリングオフを延長することを検討される必要があるのではないか。まず、このことをお伺いいたしたいと思います。
  117. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと昔話みたいになりますが、一時は保険業界の勧誘員のモラルという問題がありまして、それで一年たったら、とにかく勧誘して初めの年に入れさえしたら、今度は逆に後もう行き来もない、催促もない、そうすると自然に解約になって保険会社はその分だけもうかるという、そのことが一時問題になって、保険勧誘、保険の外勤職員ですか、外務員の資格とかあり方とかというものを議論して、いまはずいぶんその点の行儀はよくなっているようであります。したがって、一つには訪問販売をする方の側、あるいはしつこいとか、とにかく何とかしなければいつまででも座り込んでいるとか、いろんなこと等も契約の前にあったりするでしょうし、そこらのところの問題ももう一つ社会的にあります。  それから、いまおっしゃった四日間というのは、一週間単位の、しかも週休二日が大企業等で定着しつつあるときに、確かにおっしゃる点問題があるだろうと思いますが、事務当局の方から、そこらのところをどう踏まえているか、あとは私が政治判断をしますけれども、一応現状等についての答弁をいたさせます。
  118. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 クーリングオフの期間の問題でございますけれども、クーリングオフは世界のほかの国々と比べまして、わが国は比較的早く採用しておりまして、昭和四十七年に割賦販売法改正の際に、クーリングオフ期間四日間ということをお認めいただいたわけでございます。この当時は、海外では余りやっておりませんでしたけれども、たとえばアメリカは現在もそうでございますけれども、クーリングオフの期間は三日でございます。その後、クーリングオフを定めた国、特にヨーロッパでは御指摘のように一週間くらいの国がかなり多くなっているということで、わが国は比較的早い時期に、アメリカはすでに三日というのを定めておりましたけれども、そういう前例を見ながら定めたということが一つ経緯としてあるわけでございます。  私どもとしまして、四日間を延ばした方が消費者救済に効果があるのかどうかということについては、たとえば五十六年度に調査をいたしまして、これは要するに消費者がクーリングオフの期間が短いがために十分救済を受けられなかったかどうかという感じ調査をいたしましたところ、そもそも消費者でクーリングオフ制度の内容を知らないというものが大変多い。その当時の調査では、要するに内容を知っておる者が一割にも満たないという状況なんでございます。ですから、まず、いろいろクーリングオフの期間が過ぎていたということの苦情についても、期間を仮に若干、たとえばヨーロッパ並みに一週間に延ばしましても、それで果たしてうまく救済ができるかという問題が出てこようかと思っております。ですから、いまのところは、まずさしあたり消費者が現在の制度を十分活用できるようにクーリングオフ制度についての啓発が必要じゃないかと思っております。期間につきましても、私ども四日間に固執するわけではございませんで、実際に消費者を救う面で、もう少し延ばした方が本当に効果があるという確信が得られれば、もちろん改善するにやぶさかではございません。
  119. 小林政子

    ○小林(政)委員 通産省は、知らない人が多いから法改正よりもまず啓発をすることが必要だ、このようにおっしゃっていますけれども、行政管理庁がまとめました五十五年四月—六月期における調査でも、契約解除を求める苦情は、クーリングオフ期間の四日を過ぎたものが六一%を占めているのですね。ですから、この法律を知っている人たちだけが法律の恩典を受けるというようなことの考え方はおかしいというふうに言わなければならないと思いますし、消費者の啓発をすること自体は大変よいことだと思いますけれども、その上で、なお現在の訪問販売の被害者が特に老人に多く多発している、こうした社会の実態に見合った法制度、消費者保護の制度が必要であることを示しているというふうに言わなければならないだろうと思います。周知徹底を強めると同時に、期間を延長することは矛盾はないんじゃないだろうか。取引の安定を損なうという見解は、すぐれた商品が適正なセールスによって消費者に届けられるならば、取引はより発展するのが自然である、このように考えております。  時間の関係がございますので、私、次の質問、割賦販売の問題に入りたいというふうに思います。  クレジットによる販売が広がり、クレジットが生み出す消費者被害もこれまた激増しているのです。私は、信販会社のショッピングクレジット、立てかえ払いを利用した学習教材や化粧品の訪問販売を初め、トラブルの解決策についてはっきりとした見解を伺っておきたいというふうに考えます。  これは、信販会社が消費者にかわって販売会社に商品の代金を立てかえ払いをし、消費者は信販会社に対して月賦などの形で返済するという形をとっています。ここでは契約関係が複雑で、消費者は販売会社と売買契約を、信販会社との間で立てかえ払い契約を結ぶ関係になっています。問題が生ずるのは、売買契約が破棄されても立てかえ払い契約はそのまま残ることです。こうした二つの契約の間に一つの商品を購入するという行為は、二つの側面なのだから、本来一本のもので一体のものであるべきだ、割賦販売法できちんと規制し、被害をなくすべきだと私は思いますけれども、この点について見解を伺っておきたいと思います。
  120. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘の問題は、俗に個品割賦購入あっせんと呼ばれている案件でありますけれども、個品割賦購入あっせんにつきましてはいろいろとトラブルが発生しており、かつ、それについての法律的な救済が現行では必ずしも十分でないというふうに私どもも認めるところでございまして、これをどういうかっこうで救済するか、信販業者とそれから商品の販売業者と両方の責任にしたらいいというのが一般的に認められている考え方になりつつあるわけでございますけれども、その辺の分担、調整の方策をどうするかとか、まだいろいろ議論がございますので、昨年の六月来、消費者信用産業懇談会という学識経験者の会を設けまして、いま検討をしてもらっておりまして、来月六月中には恐らく報告が出るというふうに期待をしております。したがいまして、この報告をもとにいたしまして必要な法的の整備をいたしたいと考えております。
  121. 小林政子

    ○小林(政)委員 御答弁はできるだけ丁寧にいただきたいというふうに思っておりますけれども、何分にも時間が定められておりますので、できるだけ簡潔にお答えをいただきたいと思います。  通産省は五十五年七月十四日付で「個品割賦購入あっせん契約標準約款改訂について」の文書を出していますね。それによると、商品の瑕疵または引き渡しの遅延が購入目的を達することができない程度に重大である場合は消費者は信販会社に支払いを拒むことができる規定が、これには盛り込まれております。しかし、このことだけでは、商品とそれがサービスもセットになっている場合、教材とか学習塾などの扱いは一体どうなるのだろうか、あるいはまた販売会社が倒産してしまったような場合はどうなるのか、これらの点が触れられておりませんので、消費者被害がこの点で非常に多くなってきています。  消費者被害を防ぐためにも、こうした点を含めた割賦販売法の改正が早急に求められていると私どもは考えておりますけれども、これらの問題、検討されているということでございますので、一日も早く結論を出してもらいたい、このように思っております。  次に、抗弁権について伺いたいと思います。  高松高裁が八二年九月十三日付で行った立てかえ払い契約に関する判決の中で、販売会社と信販会社は経済的に密接な連携関係にあり、手形のような場合とは異なっているという立場に立って、取引上の安全を理由に債務者の抗弁権の切断を認める必要はない、こうした立てかえ払い契約は、売買契約と法律上は別個であっても、取引上密接不可分の関係にあるという立場を、地裁では何回かありましたけれども、初めて高等裁判所でこういった判決が出されています。  私はこの件に関して、商品に重大な瑕疵があったケースということになっておりますけれども、しかし程度は別にして、立てかえ払い契約における販売会社と信販会社の密接不可分の関係として消費者側に非常に有利な裁判の決定が出たということ、これについて通産省の見解を伺っておきたいと思います。
  122. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘のように法律の改正の前にやれることということで、通産省は行政指導で、そういった個品割賦に絡まる苦情について信販会社にいろいろ指示をいたしまして改善措置を図ってきたところでございます。それだけでは十分でないという意味で、先ほどちょっと申し上げました消費者信用産業懇談会で、法律的な手当てをどうしようかということで現在検討しているわけでございまして、もちろん高松の高裁の判決などはこの際に十分考慮に入れて、そして割賦販売法その他必要な法律の上で手当てがなされるように考えているところでございます。
  123. 小林政子

    ○小林(政)委員 次に私、お伺いをしたいと思いますのは、先ほど大臣もちょっと触れられましたけれども、今日社会問題となっている冠婚葬祭互助会の問題についてであります。  通産省が割賦販売法、これは正式には前払式特定取引業として許可制とされている問題ですけれども、冠婚葬祭互助会は全国で会員数七百万世帯、契約口数千三百万口、会員の掛金は四千億円を上回るという大きな金額にもなってきております。ところが、消費者からの苦情によれば、葬式が掛金の範囲でできるのは約一割だと言われておりますし、大体三、四倍の超過費用がこれには請求されるというようなことも言われておりますし、解約ができるのは生活保護を受けたときや転居したときだけとされていたり、相当問題があると私は思っております。  通産省、この互助会問題について、約款を改定する必要があると国民生活審議会の答申が出されたのを受けて割賦販売審議会で現在審議中と言われておりますけれども、この審議会の約款問題分科会の構成はどうなっているのでしょうか。また、直接関係があるところの葬儀屋さんの代表が入っていないのはどういうことなのでしょうか。これらの点について通産当局の見解をお伺いいたしたいと思います。
  124. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 御指摘の割賦販売審議会消費者保護部会の約款問題分科会でございますけれども、ことしの二月から検討を進めてきておりまして、現在は解約の場合の経費の実態がどうであるかということの調査を行っておりますので、その調査の結果をもとにしてさらに審議を重ねていただき、七月には取りまとめができるという見通しに立っております。  その場合の約款問題分科会の委員構成でございますけれども、学者が二人、それから消費者団体の代表が三人、それから互助会の団体側が三人ということで構成をいたしております。これについていろいろ関連の業界があるのは御指摘のとおりでございますけれども、そういったところの意見につきましては、この審議の過程で必要の都度、そういったところから意見を徴するというかっこうで処理をしていくことにいたしております。すでに葬儀屋さんの団体の方からは、いろいろ実態についての説明がなされているというふうに承知しております。
  125. 小林政子

    ○小林(政)委員 葬儀屋さんの御意見なども聞きながらということでございますけれども、この約款には多くの問題点がございまして、消費者の被害が数多く訴えられている中で、この現行約款で果たしてどこまで広い立場で意見が聞けるのだろうかなというようなことも実は疑問に思っておりました。こうした中で通産省は、現行約款のどこをどう改めさせようといま考えているのか、この点についてお答えいただきたいと思います。
  126. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 先ほどお触れになりました国民生活審議会の答申の中で、幾つかの項目の指定がございます。たとえば役務表示の問題であるとかあるいは外務員の資質の向上であるとか、それらにつきましては特に法律あるいはその他特別の措置を必要といたしませんので、業界に対する通達でございますとか外務員登録制度であるとか、そういうかっこうで手当てをしてきておりまして、一番大きな問題というのが解約の自由の問題でございます。そういう意味で、この解約の自由化の問題が先ほどの割賦販売審議会の分科会の中心課題になっているわけでございまして、先ほど申し上げましたように、実態調査のためにちょっと時間がかかっておりますけれども、結論はおっつけ出るというふうに考えております。
  127. 小林政子

    ○小林(政)委員 昨年の秋に通産省がまとめ、一たん十月十二日付で通達とした出したところの標準約款の改正案についてですが、この案はその後十二月二十日付で一応撤回されたわけですね。私はこのとき通産大臣にお目にかかって、約款問題は軽々に取り扱うべきではないというようなことをお話し申し上げた記憶がございます。こうした問題点の中で特にひどいと私が思った点は「契約の解除及び月掛金払い戻し」のところで、これを見ますと、改正というよりはむしろ改悪ではないかなとすら思ったわけでございます。  つまり、解約については「やむを得ぬ事情によるとき」という条件をつけて制約しておいて、「買い取り行為」や「悪質な中傷誹謗によるもの」や「第三者を通じての不当な解約の申し出によるもの」などは「やむを得ぬ事情による」ものとは認められないと当時の約款にはなっておりました。さらにまたお金を払い戻す額についても、新A表、新B表と二つの規定が設けられていますが、二千円で六十回掛ける人の場合は、旧表、現行のもので見ますと、募集手数料が六千九百円控除されるわけですが、新A表というのを見ると一万二百円、新B表では四万八百円控除をされる、つまり互助会の方にこれを持っていかれてしまうということになっています。事実上解約ができないようにされる、改悪されるということではありませんか。  私は通産省に伺いますが、こうした点についてこれからの改正案はどういう内容を考えているのか、通産省考えをお聞きしたい。撤回された案よりもはっきり改善された面が前面に出るような改正約款にしていくべきではないだろうか、このように考えておりますけれども、お答えをいただきたいと思います。
  128. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 標準約款といいますものは業界で作成をするわけでございまして、昨年の暮れに一つの案が業界でつくられた、それについていろいろ御指摘があったものと考えますけれども、この標準約款につきましては、もちろん通産省で所管しております割賦販売法の原則に合ってなければいけないわけでございまして、割賦販売法の施行規則では、購入者等からの契約の解除ができない旨の特約を記載してはならない、あるいは契約解除においては、これは特に法文ではございませんけれども、一般的に申しましても、解約の申し出は自由に行うことができるというのが通常の原則でございますから、そういう考え方に照らして標準約款をいま業界がつくっておりますものを正させるのが目的で、先ほどの分科会で審議をしているわけでございます。  ですから、ここで業界の実態を調べまして、解約した場合の必要な手数料と申しますか、経費というのがどのくらいであるかということをよく調べました上で、標準約款にそれに合った規定が置かれるように指導していきたいと考えているわけでございます。
  129. 小林政子

    ○小林(政)委員 また、「互助会」と言うと、これは大変紛らわしい、誤解を招くおそれがあるというふうに言われております。私は、この「互助会」という名前をこの際、約款の改正の中で削っていくべきではないかとすら考えております。  また、会員が掛金を払い込んで満期になった後、その掛金に利子をつけるなど、会員の利便を図り、要望が実現できるよう検討すべきではないか、このように思っておりますが、この問題について簡潔に御回答をいただきたいと思います。
  130. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 互助会を割賦販売法の規制対象に置きましたのがもう十年前、四十七年でございますから、それ以来「互助会」という名前は一般的にも定着をしておりますので、いまここで「互助会」という名前を変えるのが適当であると私ども考えておりません。互助会の業務内容がこの法律に十分従って、一般消費者と申しますか国民のニーズにこたえる活動をするように行政指導をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  131. 小林政子

    ○小林(政)委員 この問題の最後に、これはぜひ大臣にお伺いをいたしたいと思いますけれども、国民生活審議会が五十六年の十一月十三日付で答申をしているように、解約自由の原則で、クーリングオフ制度や契約文書の交付義務などを互助会にも法律上の義務としていく必要があるというふうに思いますけれども、互助会は、大手四十社については大企業であって、まさに株式会社なのです。その社会的責任は大変大きいと言うことができると思います。  大臣、実は私のところでもアンケート調査というのをやってみました。このアンケート調査によれば、大手互助会によって、会員が解約をできないとか、町の葬儀屋さんがいじめられているだとか、大手互助会はもうけ過ぎだとかといった意見が寄せられています。消費者保護の立場から、こうした互助会の問題点を法改正も含め改めるよう検討していくべきではないかとすら私は考えておりますけれども、大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  132. 山中貞則

    山中国務大臣 最近、この「互助会」という名前をつけた、まあ互助組織には違いないのでしょうけれども、こんな豪華なビルを建ててやっていけるのだろうかというようなのがあちこちにチェーン組織あたりで見かけるものですから、いろいろ聞いてもみるのですが、大体最近は田舎の方までそういうものが入ってきて、嫁の家へ行ってもらって向こうの家で一晩騒ぐというのはやめて、近いところの町に出ていってそこを利用するんだ、ふだんはどうしているんだ、掛金をかけているということで、そこらでまた後の支払いのときにトラブルを起こしているらしい。だから、よく契約を知って入らなければいかぬ。といっても、それらの人たちは、新しい便利な方法だというのでみんな手軽に入っているようです。しかし、そういうことが実際上は、最終的には互助会ではなくて、一定額まではそれはあるでしょうけれども、あとはどうも本人にとってみれば、そんなはずではなかった、ペテンにかけられたというような気持ちになるようなケースがふえてきた。これはやはり互助会そのものが非常に広がり方のスピードが増して、それで全国的にそういう傾向が、いろいろな組織が始めた。名前を聞いても、よく理解できないような名前がついている。そういうようなことですから、これを互助会と呼ぶにふさわしいのかどうか、そこらのところも、互助会なら互助会らしい取り決めがもう少しあって初めて許される呼称ではないかという疑問は私も持っております。ただ、いますぐこれをどうするかについての具体的な問題まで考えているわけではございません。
  133. 小林政子

    ○小林(政)委員 少なくとも互助会の会員がいつでも解約できるようお願いしたいとか、こういうアンケートが私のところにもたくさん来ておりますので、こうした問題については善処をしていただきたい、このことをお願いをいたしておきたいと思います。  次に、あともう時間が五分ということでございますので、これは大蔵省、見えていますか。
  134. 登坂重次郎

    登坂委員長 見えています。中小金融課長がおります。
  135. 小林政子

    ○小林(政)委員 大蔵省にお伺いしますが、中小企業や勤労者の相互扶助を目的としてつくられている信用組合が、現在全国で四百六十八カ所ございます。この信用組合が本来の目的を外れてサラ金業者に融資しているということは、これは重大な社会問題ではないか、私はこのように考えております。  私の調べでは、大手サラ金の武富士は昨年十一月時点で、振興信用組合、東京厚生信用組合、大阪商業信用組合など七組合から、長期、短期合わせて六十億円もの融資を受けており、物すごく高い利子と暴力的な取り立てで、夜逃げなど一連の事件を引き起こし、毎日のように悲惨な出来事が繰り返されている。こういう反社会的なことをやっているサラ金に、中小業者の相互扶助を目的とする信用組合が融資するということは、第一やめるべきだと思いますが、大蔵省の見解を伺います。  もう一つは、武富士の有価証券報告書によりますと、事もあろうにスーパー、マルエツが十億円の融資をしているということが書かれております。マルエツは年間売り上げ千二百億円を超え、全国に百十二店舗も店を持って、さらにもうけ本位であちらこちらに出店しようとしていま各地で問題を起こしてもおります。こうした大スーパーが、社会的批判を受ける行為を助長するおそれのある融資を行うことは問題ではないか、私は、これもやはりきっぱりとやめさせるべきではないかと思いますが、これは通産大臣の見解も伺いたいと思います。
  136. 日吉章

    ○日吉説明員 お答え申し上げます。  中小金融機関に限りませんで、金融機関一般につきまして、金融機関が貸金業者に対しまして融資をするのに当たりましては、かねてから、五十年代に入りましていわゆるサラ金問題が社会問題化いたしましたものですから、五十三年でございますが、私どもの方から、金融機関の公共的な性格にかんがみまして、社会的な信頼を損なうことがないよう慎重に配慮するよう指導してきたところでございます。信用組合につきましても、これを直接監督いたしておりますのは都道府県でございますが、都道府県を通じまして同様の指導を行ってきております。  今般、貸金業の規制法律が成立いたしましたので、私たちとしましては改めてこの趣旨を徹底させたい、かように考えております。  ただ、消費者には消費者金融の需要もございますから、この需要に適正に対応していくのにはどういう形で対応していくのがいいのかという点は、別途いろいろと私どもの方でも検討していきたいと思います。その一つの方法としては、健全な貸金業者を育成していくということも一つの方法ではないかというふうに考えております。  それから、スーパー等の量販店が最近いわゆるキャッシング、貸金業に進出しているという事実を私たちも理解いたしております。今回の貸金業法はいわゆる貸金業という行為をとらえる形になってございますので、これらスーパー業者につきましても、その行為そのものにつきましてはあるいは貸金業法の対象としてとらえまして、同じように規制の対象にすることが考えられますので、この点は関係省庁とも今後十分相談いたしまして、どういう形で規制を加えていくのがいいのか、この点は今後の検討課題にさせていただきたいと思っております。
  137. 斎藤成雄

    ○斎藤(成)政府委員 マルエツの件でございますけれども、昭和五十七年、昨年の十月からことしの二月にかけてはマルエツは十億円を武富士に融資と申しますか貸し付けたことがあるそうでございますが、ことしの二月にすでに返済をされておりまして、両者の関係はいまは全くないということでございます。  それからまた、今後の問題につきましても、同社は武富士に対する融資を行う意思はないということを言っておりますから、本件についてはさしあたりどうこうするという問題はなかろうかと思います。  私どもは、短期資金の運用の際にも、できるだけ社会的な指弾を受けないような融資をされるように指導をしてまいりたいとは思っております。
  138. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間が本当になくなってきてしまいましたけれども、お許しをいただいて最後に……。  いま大きな問題となっておりますトヨタ東京カローラの社員による詐欺事件というのが、新聞でも大きく報道されておりましたのでごらんになったと思いますけれども、一昨日、トヨタカローラの元社員が新車の販売の詐欺の疑いで逮捕されました。私のところにも被害者が訴えてまいりまして、これは三人の方でしたけれども、相当な額が詐欺に遭っているという実態が明らかになりました。  この背景というのを私なりにいろいろと分析をしてみますと、わが国自動車メーカーが貿易摩擦輸出が不振になっている中で、国内での激烈な販売競争が行われたという事情があると思います。この社員もノルマ、ノルマで追われて、無理に値引きをしてつじつま合わせに詐欺に走ったと警察で述べていたと言われておりますけれども、激しい売り込みでトヨタは、はしょりますけれども、年間の経常利益が四千億円と報道されております。こうした詐欺にかかった被害者たちが大変な苦労をして、現在家も売ったりなんかしながら返済をしているという実態を見たときに、被害の事実がはっきりした以上、早期に会社が、天下の大企業と言われるトヨタが、この業者の人たちに損害を補償するよう通産省として強力な指導をお願いしたい、私はこのように思っております。トヨタの名前でトヨタ関係の社員がやったということであり、また苦情発生後は名古屋のトヨタ本社からも人が行っており、全トヨタぐるみ被害に責任をとるというのはあたりまえのことではないだろうか、私はこのように感じております。これは最後に通産大臣にお答えをいただきたいと思います。
  139. 志賀学

    ○志賀政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたように、トヨタ東京カローラのセールスマンが自動車の仲介業者、これは自動車の販売業者とか整備業者でございますけれども、そういった自動車の仲介業者に対しまして、新車を五割引きで売るという持ちかけをして代金を受け取りながら、一部の業者には確かに車は引き渡したけれども、大部分の業者には車を引き渡さなかった、こういうことで詐欺の疑いで昨日逮捕されたというふうに承知しております。  本件について行政指導をしてほしいという御要望でございますけれども、私どもの考え方といたしまして、本件についてこれで警察の手が入りまして、これから捜査が行われる、それに伴って事実関係が順次明確になってくるというふうに思います。現段階においては事実関係についても、両当事者の関係で必ずしも一致してないということでございまして、捜査当局の捜査によって今後逐次事実関係が明らかになってくると思いますけれども、いずれにいたしましても、これは買った方も自動車の仲介業者でございまして、言ってみますとこれは商売のプロでございます。かつ、これは両方とも弁護士を立てていろいろやっているわけでございますから、私どもといたしましては、この逐次明らかになってくる事実関係をベースにしながら、双方の弁護士が、これは民法なり商法なり社会的なルールがございますので、そういったルールに従って話し合いによって解決をしていく、その過程でトヨタ東京カローラが責任を負うべきであるというようなことに、これは法律の関係でそういうことになったとすれば、当然負うべきだろうというふうに思いますし、いずれにいたしましても、両方の当事者の冷静な話し合いによって解決すべき問題ではなかろうか。したがいまして、私どもとしては、本来、本件については行政指導になじまない、そういう分野の問題というふうに思っております。
  140. 小林政子

    ○小林(政)委員 終わります。
  141. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、渡辺貢君。
  142. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 一番最初に、大企業向けの技術開発補助金の収益納付の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  一昨年のいわゆる行革国会以来、私たち日本共産党は、臨調行革の中で、予算編成においても聖域と言われたのは防衛費、軍事費である、さらに一昨年来から同時に大企業に対する補助金が第二の聖域であるという立場から、いろいろの角度から追及をしてまいりました。私自身も、これまで本委員会や予算委員会等においてこの問題についての追及をしてきたわけであります。本来、収益納付という問題は、担当は大蔵省でありますけれども、補助金等適正化法の第七条第二項に定められている、つまり原資というのは国民の税金であるからこれを有効に適切に使わなければならない、こういう立場だと思うわけであります。  そこで、具体的にお尋ねをしたいと思うのですけれども、昨年二月の予算委員会で私がコンピューター関係の補助金に対する収益納付の問題で質問をいたしました際に、担当の大蔵大臣から、現在までの経過を踏まえて、補助を続けた方がいいのか、あるいは五年間という納付期間を見直しをした方がいいのか、いずれにしてもいろいろの角度から検討をしてみたい、こういうふうな答弁があったわけであります。  そういう点で、当時は安倍通産大臣だったと思うわけでありますけれども、通産当局でもその後御検討をされたと思いますが、この問題についてどんなふうな検討がなされたのか、まず御答弁をいただきたいと思います。
  143. 野々内隆

    ○野々内政府委員 補助金の収益の納付期間につきましては、五十八年度の予算編成の際に見直しをいたしまして、その結果、臨調の答申の線にも沿いまして、民間輸送機開発費補助金それから技術研究開発費補助金の新規分につきましては、現在、原則五年となっておりますが、この納付期間を七年に延長するというふうな見直しを行っております。
  144. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 そういうふうに見直しをされたということでありますけれども、そうなると、たとえば民間航空機の開発補助金が五年間で百五十数億円、昨年度で終了しているわけなんですが、このYXの開発について、現在、たとえば収益納付というか国庫納付というか、どんなふうにされているのか。また、これからの見通し。またもう一つは、冒頭に触れましたように、電算機の開発の補助金、これはもう一九八一年度で収益納付の最終的な期限が来ているわけですけれども、当然この問題についても検討されて確定している段階だと思うのですが、まず、この二点について現在どういうふうになっているか、御説明をいただきたいと思います。
  145. 志賀学

    ○志賀政府委員 最初に、YXの関係からお答え申し上げます。  YXの補助金につきましては、昭和五十三年度から五十七年度までの間に百四十七億円の補助金が交付されたわけでございます。  そこで、このYXの補助金の収益納付の問題でございますけれども、これは大きく申しまして二種類の収益納付の制度がございます。一つは、補助対象事業によりまして取得した財産の処分によって生まれてまいります収益の関係の国庫納付の問題、それから量産事業によって生じます収益から納付される問題、こちらの方が通常収益納付と言われているものでございます。性格的に申しますと、その二種類のものがございます。  そこで前者の、取得した財産処分に伴うものといたしまして、実は昨年五十七年度中に約三十九億円の国庫納付が行われております。これは試作機の売却等によって得られた収益からの納付でございます。  次に、本来の量産事業によって生じます収益からの納付があるわけでございますけれども、これは五十八年度からの収益について行われるものでございまして、これにつきましては今後の問題でございます。  それで、見通しでございますけれども、いずれにいたしましても、財産処分の今後の見通しがどうかとか、あるいはこのYXの販売の見通しがどうかとか、これは不確定要因が非常に多いわけでございまして、どのくらいということをいまこの時点で申し上げることはむずかしいというふうに存じます。  それから次に、電算機補助金の関係でございますけれども、コンピューター関係の補助金につきましては、これはコンピューターが技術的なサイクルが非常に短い、特に最近になりますとIBMの攻勢が非常に厳しいわけでございまして、そういったような技術的なサイクルが短い、陳腐化が急速に進むというようなことを考慮いたしまして、収益納付の期間を五年間というふうに定めているわけでございます。私どもいろいろ検討いたしましたけれども、むしろ陳腐化の期間というものが短くなる可能性が強いということこそあれ、長くなるということは考えられないのではないかということで、私どもとしては、この五年間ということが適当な期間ではないかというふうに判断をいたしております。  なお、新機種補助金につきまして、これは昭和四十七年度から五十一年度までに交付が行われたわけでございますが、これについて収益納付の期間を延ばすべきではないかというお尋ねでございますけれども、一つは、すでに交付された補助金について収益納付の期間を事後的に変更するということは、補助金等の適正化法との関係からいってむずかしい、できないという判断でございます。また、実態的に申しましても、先ほど申し上げたように、陳腐化のサイクルといったようなことから申しまして五年間ということが一応適当であろうというふうに私どもとしては存じております。
  146. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 もうちょっと詰めてお話をお聞きしたいと思うのですけれども、たとえばYXですね。あのB767の場合に、すでにコントラクトした分とかあるいはオプション契約した分など、四百機近いと言われています。ほぼ採算点、収益が十分に可能だと言われる五百機というのは、これは業界の見解でありますけれども、十分可能であろうか。新聞の報道でも、総額納付できるのではないか、こういうふうな報道もございますから、ぜひその辺は、三菱重工などわが国最大の大手の企業でやっている日米伊三国の共同事業でありますけれども、今後通産省としても十分指導を強めていただきたいと思います。  それから電算機の問題、実際上八一年度で納付期間の期限になります。最終的な確定がされたというふうに聞いているわけですが、その金額は幾らになっていますか。
  147. 志賀学

    ○志賀政府委員 YXの関係でございますけれども、YXの受注状況、確かに比較的順調でございます。ただ、先生のおっしゃいました数字は若干大き過ぎるのではないかと思いますが、私どもが承知しておりますのは、確定しておりますのが百七十三機、それからオプションが九十機、合計いたしまして二百六十三機というのが現在の状況でございます。これだけの受注ではまだ十分でないというふうに存じます。ただ、これからもちろん受注がふえていくだろうと思います。ということで、私どもの見通しをあえて申し上げれば、かなりのところまで国庫納付が、収益納付が行われるのではないかという期待は持っているわけでございます。  それから次の、コンピューターの新機種等補助金でございますけれども、これは昭和五十六年度企業化分までの収益について国庫納付義務が課されております。五十五年度企業化分までとして現在までに入っておりますのが八億六千万円でございまして、ただ、ごく最近、五十六年度企業化分についての収益納付金額が大体確定をいたしました。約三十五億円ということでございまして、合計いたしますと約四十四億円ぐらいになる、こういう状況でございます。
  148. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 それで最終の確定になるだろうと思うのですけれども、一方、厚生省の薬業合理化補助金ですね。これは一件あたり二百万から五百万円ぐらい、小さな額ですけれども、現在まで総額二千九百万円、ほぼ中小企業が受け取っているのですが、最近のお話ですと全額納付されているというふうに聞いております。  また、通産省関係の中でも工技院で担当されていらっしゃる重要技術研究開発費補助金ですね。これは一九七七年から八一年までの五年間で約百六十二億五千七百万円というふうに聞いているわけですが、この納付はどういうふうになっているのでしょうか。
  149. 川田裕郎

    ○川田政府委員 ただいま御質問の点についてお答えいたします。  昭和五十二年度から五十六年度までの間の収納額の合計は七十四億円になっております。
  150. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 補助金の総額に対して約四五・五%になるわけなんですが、今日まで通産省からいただいた資料をいろいろ検討してみますと、たとえば三菱重工や日立、東芝、川崎重工、石川島播磨など五社の関係する補助金は、一九七八年度から今年度、八三年度まで約六年間で総額三千二百四十億円に達しているわけなんです。それぞれ対象企業で割り算を集計してみますと、これは五社が関係した補助金の総額ですけれども、五社だけを純粋に取り上げてみると約千二十億円なんですね。ですから、補助金の額も非常に巨額になっております。  そういう点から見て、たとえば日立の場合にこの五社の中にも入っている。しかも、もちろん先端技術の開発に全力を挙げているわけですけれども、補助金の額が大きいということが一つは特徴だと思うのです。しかし一方、いま申し上げましたように、中小企業に対する補助金などの場合には収益納付がほぼ一〇〇%、あるいは同じ通産省所管である工技院の関係については四五・五%。  こう見てくると、電算機の場合約四十四億円、分母が六百八十六億円という補助金の総額でありますから、四十四億円の納付としても六・四%、基準金利が七・三%ぐらいですから、年間通してもそのくらいのものであるということで、やはり大企業にこうした政策上の偏重があるのではないか、余りにも不公正ではないかということを指摘することができると思うのです。そういう意味で、一定の見直しをされた、五年間を六年ないし七年間とか若干の見直しをされ、また事務当局でもこの電算機の問題でいろいろ御苦労があったようですけれども、さらに抜本的な改善策が必要ではないか、こういうふうに考えるわけなんです。  そこで通産大臣に、そうした点について今後どう対応されるか、御見解を承りたいと思います。
  151. 野々内隆

    ○野々内政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおり、五十八年度の予算編成につきまして収益納付期間の延長を行ったわけでございますが、私どもといたしましては、今後とも補助金の目的あるいは開発の実情というものを十分勘案いたしまして、適切な収益納付の確保ということに努めてまいりたい、かように考えております。
  152. 山中貞則

    山中国務大臣 アメリカの方はいま日本産業助成のあり方を洗っておりまして、私ははっきり、つえを貸してやることはある、立ち上がれない産業が立ち上がるべきであると考える場合にはつえを貸すことはあるが、そのつえは歩き出したら返してもらうんだということを言っております。  いまはその収益納付、還元の期間の問題だと思いますが、原則でありますから、収益期に入ったら国は還元してもらう。しかし、既存の、臨調答申に基づいた新しい方針以前になされたものを変更してまでは、企業の計画もあることでしょうから、ちょっと無理ではなかろうか。しかし今後は、国の方の援助というものは一定の期間であって、その期間はそれにふさわしい必要な期間であって、そして収益を生み出し、あるいはまた試作品処理等が始まったら、国民の税金ですから、私企業というものは国に対して直ちに返済をする義務があるのでありますから、それはきちっと納めさせるという立場は貫いていきたいと思います。
  153. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 私どもは、この問題を一昨年来から取り上げてきていたわけなんですけれども、いまの大臣の見解、一歩前進されていらっしゃるというふうに考えるわけです。  これは行革国会のときにも、いろいろの反論などもございました。それは当然だ、わが国は技術立国を目指しているし、資源の少ない国なんだから、先端技術を開発しなければならない。ある意味では、その論理は私たちも十分に首肯することができるわけでありまして、日本共産党の場合には、大規模産業そのものを否定するわけではございません。つまり、日本産業構造を見た場合に、技術革新の上においても、あるいは国際的な経済競争の上においても、また日本全体の民度を上げていく上でも、大規模産業の持つ力というのは無視することができないわけでありますから、また、新しい技術の革新や新製品が中小企業にもさまざまなプラスの影響を与えていくというのも現実だと思うのです。そういう意味で、アメリカ側からいまいろいろ産業政策の問題で批判をされておりますし、大臣も先日以来いろいろ御苦労をされておるようなんですね。きょうもアメリカのボルドリッジ商務長官にお会いをされていらっしゃると思います。  ただ、私たちは、こうした中で中小企業と大企業の間に余り不公正があってはならない。そして、大企業が輸出していく場合でも、中小企業の中に力がなければそうしたものを十分に支え切ることができないと思うのです。日本の中小企業は後進性があるというふうによく言われるのですが、そんなことはないと思うのです。日本の中小企業も一定の技術革新をやったり、これは、通産省の中小企業に対するさまざまな助成、いろいろお話を聞いてみると、金額は少ないけれども、かなり有効適切な施策が最近はとられつつある。ですから、全体として上げていく必要があろうというふうに私どもは考えております。  大臣にこの問題でもう一度お尋ねしてみたいと思うのですけれども、昨年就任以来、いろいろの機会に大臣発言がございますが、この中で私も大変注目をしたといいましょうか、関心を持った発言がございました。というのは、こういうことを大臣、言っていらっしゃるのですね。  歴史上、世界各国の中でリーダーシップをとった国というのは軍事大国であった。わが国はもちろん軍事大国にはならない。こうした中で改めて新しい角度から、日本世界のある意味でのリーダーシップに挑戦する時期ではないか。それは先端技術の開発であり、そして産業に活性化をもたらして、しかもそれだけではなくて、わが国だけではなくて、国際的にもそうした産業技術の新しい交流によって世界のリーダーシップをとる必要がある。  こういうようなことを言っていらっしゃるわけなんでして、そういう意味では、軍事大国にならないということ、軍拡ではなく軍縮によって、政治全体としてはそういう条件をつくっていく。また、いま人為的に、東西間の貿易の問題でもあるいは技術交流でも、アメリカ側からさまざまな干渉がある。東西間だけじゃなくてわが国に対しても干渉があるわけでありまして、私どもは、そういう干渉はアメリカ日本に対するディペンディングアライ、従属的な同盟と日本を見ているからそういうふうに一々干渉してくるんだというふうに考えているわけでして、そういうアメリカ側の干渉にはわれわれとしては絶対にくみするものではございませんけれども、せっかく大企業などでこれだけ補助金を与えて開発された技術をもっと中小企業にも波及させていく。全体として効果があるように、まさに大臣が言われているように、技術立国の中で人類の繁栄のために貢献するんだ、こういう視点が大変大事だろうと思うのですね。そういう立場からアメリカ側との交渉にも臨むことが必要だ、こう考えるわけでありますが、その点について大臣の御見解をひとつ伺いたいと思います。
  154. 山中貞則

    山中国務大臣 私はずっと前から、無資源国家、敗戦国家日本世界のリーダーになり得るかどうかということに対して考えてきた一人でありますが、その一端をそういう表現でやったわけであります。  要するに、世界の歴史で、武力を背景にした国家でない国が世界の指導国になった歴史はかつてない、あるいは安保理事会の常任理事国でも全部核保有国ばかりである。そういうようなことを念頭に置きながら、しからばわが国世界の指導者たり得る、指導国の一員たり得る道は全くないのかと言えば、それは日本人が英知あるいは努力、勤勉、あらゆる要素を結集し、ここに単一民族の強さも背景にありますけれども、そういうものが生み出していく新しい未来への展開が、世界国々から日本に対して尊敬のまなざしが集まる道の一つである、そう思ったのですが、現象は、私たちの方でそこまで進んでいきますと、今度は、アメリカもそうですがヨーロッパあたりも、日本に対して、ある意味の追い抜かれたあるいは日本に追いつけないというようなことから、日本製品に特別の関税をかけたりいろいろなことを排除しようとしたりするわけでありますが、しかし、これはある意味においては、その道程において当然起こり得る必然性のあるものだと私は見ております。  したがって、その点はその点で突き破る努力をしながら、大事なことは、われわれはアメリカやECから指導者、指導国という目で見られる必要もなければ——それは軍事力を持たない限りはその目を持ってくれないだろうと思うのですね。中東、イスラエル問題に日本がどのように情熱を傾けても、何の武力の行使もできない国は相手にされませんし、サミットをやっても、後NATO関係の国だけがまた別に会合をやることを日本は何にも非難もできない。ということは、その力の枠組みの中に日本は及び得ないからであります。私は、それはそれでいいと思うのです。  たとえば、最近感じたことですが、ブラジルで豊富な、無尽と言っていい天然のシュガーケーンとかあるいはマンジョカイモというものからアルコールをつくって、それを自動車の一〇〇%燃料に使っているわけなんです。また、ベンツその他一〇〇%アルコールで走る車を提供しているようです。日本のホンダもそういうふうにやっているようです。ところが、残念なことにガソリンよりか二割コストが高いらしいのですね。それで、ブラジルの大臣が来ましたので、そのコストをむしろガソリンよりか二割安くしたら、ブラジルの国内の燃料ばかりでなくて、日本もその一つになるであろうが、それを今度は輸出できる産業にできるかもしれませんね、それについてわが通産省には最近までアルコール専売というものがありましたので、そこに長年の技術の蓄積があります、これを私どもは提供して、アルコール燃料の方がガソリンよりも安いとなったら、ブラジルは一転して大変なエネルギー輸出大国になるのじゃないでしょうかということを申しましたら、それは自分たちの方もその余地があるかどうか、もし日本の指導というものがそういう夢を果たしてくれるならばそれはまことにうれしいという話があって、通産省の中で、どうだ、そういうことは可能性があるのかと言ったら、アルコール製造工程でコストを二割下げるというのはそう複雑なむずかしい問題じゃありませんからどうでしょうかと言っておりましたけれども、しかし、せめて技術指導員を派遣をして、現地ではどういう状態でやっておるか、やはり日本のアルコール製造技術の方がすぐれていると私は思いますから、そういうことなどでやっていくこと。  あるいは、つい行ったばかりのことで、みやげ話みたいに受け取らないでいただきたいのですが、アラブ諸国の人たちは羊の腹にぱさぱさした長形の米を一緒に煮て、手で——いまはホテルなどではナイフでやるようですが、とてもおいしい料理ですけれども、羊は全然いないのですね。それで私は最初、やはり塩水から飲める水にし、あるいはまた緑も育てていますから牧草までいったらどうですかと言ったら、とてもそんな広い砂漠を緑に変えることは不可能だ、どうしているのですかと聞いたら、豪州、ニュージーランドから船で送ってもらっているのです、クウェートの例では年間十八万頭食べますという話でした。そうすると、じゃその間、船からおろしてどこでどうして養っていらっしゃるのですか、いや、船からおろしません、ずっと船の中に置きまして、穀物のある国ですから持ってきた国が食わしておるのでしょう。そして、必要なだけおろしてはその日に殺して料理に使うのだそうです。それで、一船が食い終わるころに次の船がまた積んできてくれますから不便はないという話でした。そこで、それは金がある国の発想であって、どうですか、それをなめし革などというのはどうしていらっしゃいますかと言ったら、それは売っています、どこにですかと言ったら、なめしじゃなくて生皮を買う国があるのでその都度売っているという話で、じゃ日本の方でそれをなめす技術、それからそれを加工する技術などを提供したらやってごらんになりますか——われわれは革は自由化で責められているわけですから、せめて技術でそういう国に御加勢をできないかと思ったのですが、何しろ金なら不自由はしてないという国だものですから、そういうこともあるのかなという程度の顔しかされませんでしたが、そういうことを含めて、私たちの技術立国による世界の指導者たらんとする意欲というものは、発展途上国あるいは周辺の東南アジア、あるいは地域で言えば南米、アフリカ、そういうところにも日本はどんどん、買い付けだけではなくて日本の知恵や技術を向こうにも与えて向こうも発展していただくと言えば、そういうことが可能になれば、それらの人々は日本という国をまた違った目で見るようになるのじゃないでしょうか。  それは夢みたいなことを言っているようでありますが、私どもは、やはり次の世代の日本は、そして民族はどういう姿にしてあげたらいいのか、それを残さなければならない責任を私たちのゼネレーションは持っているわけでありますから、ついついそういう話をしたわけであります。
  155. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 大臣はなかなか該博な知識を持っていらっしゃるからいろいろお話が広がって、まさに夢あるいはユートピア的なということになるかと思います。しかし、これはユートピアじゃなくて現実に地球に人類が生存しているわけですし、また、もっと生臭く産業政策の問題ではいろいろ批判がある。やはり国際的に主張していく上でもそういうつまらぬ批判を受けないように、国内において十分な体制を整えながら対応することが大事だと思うのです。また、そういう大きな夢、展望を夢で終わらせないということも大事だと思いますし、そういう意味では、軍拡ということで競い合うのじゃなくて、わが国は本当に平和国家として国際社会の中でも発言がもっと十分にできるように、ある意味からは、技術の問題から普遍的な人類の発展に貢献するということも必要でしょうし、ぜひそういう立場を貫いていただきたいと思うのです。  時間がなくて大変あれなんですが、技術の問題と関係して、きょうも、また一昨日も論議になりました、技術をこれだけ日本が開発をする、一年間に全世界の特許あるいは実用新案など含めると約百万件と言われているのですが、このうちの六〇%ぐらいは日本だというのですね。六十万件というのは大変な創造意欲の反映だと思います。これをさらに普遍化していく、あるいは技術を発展させていく上で大事な仕事として特許行政があろうかと思うのですが、一年間に六十万件、しかも少ない人員で事務もなかなか十分に合理化されていない。これでは数年たつと、事務が渋滞するだけではなくて、変化に対応できなくなってしまうといういろいろ御批判や御心配を聞いているわけなんですが、そういう意味で二つだけ、一つは、どんなふうにしてこれからさらに膨大になる特許業務を充実させていくのか。同時に、人員の配置等、アメリカの話ですと、日本の約十倍ぐらいの人員を毎年採用しているということなんですが、やはりすぐれた技術者、力のある人が配置されませんと、こうした業務を十分に遂行することができないと思いますので、その二点について、長官なり大臣、一言ずつお願いします。
  156. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 いまのお話の中で、六十万件というのは四十万件でございます。世界の特許が約百万件で、日本の特許、実用新案が四十万件、大体そういうことでございます。そして、依然としてふえ続けておりますし、現在、従来から非常に審査の迅速化、適確化には努力をいたしてきておりますが、しかし、今後十年先を見るときには、相当な決意で対応しなければ審査期間の長期化は免れないという問題に逢着しております。したがいまして、われわれとしては、あらゆる方面から目下その対策を検討しております。  その骨子は、何といっても電子化といいますか、機械化といいますか、それを徹底的に進めるというのを一つの方向として検討いたしておるところでございます。同時に、最後は、審査を幾ら機械化いたしましても判断するのは人間でございますし、優秀な十分な審査官を、スタッフをそろえなければならないということは当然でございます。従来からも人員の確保あるいは研修、優秀な人材の獲得、こういうものに努力してまいりましたけれども、今後とも従来にも増して、行き当たりばったりではなくて、長期的な展望のもとに対策を進めてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  157. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 もう時間がありませんので、最後に中小企業庁長官に。  もう少し具体的な問題を質問しながらと思ったのですが、その点は割愛させていただきたいと思うのですけれども、昨年行管庁が官公需の発注の問題について監査されて、そして、ことしそれぞれの監査に基づく各省庁に対する勧告、そして回答を求めていらっしゃるわけなんですが、三七%余りの宮公需をいまの不況の中で引き上げていくというのはなかなか容易な仕事ではないと思うのです。私どもの方の不破委員長もことしの予算委員会で御質問したわけです。そういう勧告、そしてその監査の中でもまだ不十分な現状がございますが、せっかく景気回復のための措置もとられているわけでありますから、これがすぐに景気回復に加重をされるというふうには言われないと思うのですけれども、目標の設定の時期、それから三七%余りをどのくらいに引き上げていくかという点について、時期が早ければいいのではないかというふうに私ども思いますし、努力目標として積極的な目標を設定して、ぜひ取り組みを進めていただきたいということを、長官あるいは大臣からも答弁いただきたいと思うのです。  それから、これは要望でございますけれども、地場産業として長い伝統を持っている鋳物産業などに対して、これはなかなかユーザーの方からコストは上げない、むしろコストダウンが要求されている。しかし、銑鉄鋳物やコークスなどは逆に値上がりの傾向でして、昨日聞いた話ですと、トン当たり二千五百円ぐらい値上がりが示唆されている。現在、トン六万円前後ですから、四%ないし五%ぐらいですね。こうなると、ただでさえ大変な鋳物産業には相当大きな打撃があろうかと思うのですが、そういう実態についてもぜひ把握していただいて、適切な指導を要望したいと思うのです。  これは要望事項になりますが、その前の宮公需の問題について最後に御答弁いただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  158. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように、昨年の行管の勧告を受けまして、私どもといたしましては十二月にそれらについての、通産省中小企業庁として、これは取りまとめ官庁としての対処策あるいは改善策というものの案を策定いたしまして各省庁にお示して、各省庁もこれを参考にしてひとつ積極的に取り組んでほしいということをお願いし、各省庁もすでに行管の方にお出ししていると思いますけれども、中小企業庁でも改善策を提出をいたしまして、それを踏まえて現在、また各省庁も踏まえていただいた上で五十八年の目標額設定の作業を行っております。ことしは、主観的には私としてはかなり力を入れているつもりでございますし、事務量も非常に担当課に多くのものを課していることになりますけれども、特殊法人に至るまで直接会話をし、ヒヤリングをするというようなことを行って、御指摘のように非常に厳しい環境でございますから、できるだけの努力はしながら、目標額を最大限引き上げたいと思っております。  時期はいつごろまとまるか、こういうことでございますが、昨年はいろいろ考えまして、できるだけ早くということで作業したわけでございますが、ことしは、いま御説明したような状況でございますので、むしろ若干、例年どおりの時期になっても、各省庁との折衝というものにもう少し力を入れたい、こう思っておりますので、時期はいまのところ七月早々、上旬ということを、目標にしておるわけではございませんが、その辺に落ちるのではないか、こういうふうに考えております。  率はどうなるか、これはしばしば大臣も御答弁申し上げておりますように、三七・二という昨年度の率そのものを維持することも自然体でまいりますと非常に厳しいわけでございますから、われわれとしては最大限の努力をいたしておりますが、後退はしたくない、前進をしたい、こういう気持ちで行っております。  まだ各省庁のが出そろっておりませんので、姿を申し上げる段階ではございませんが、気持ちはそういうことで作業いたしております。
  159. 渡辺貢

    ○渡辺(貢)委員 終わります。
  160. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、菅直人君。
  161. 菅直人

    ○菅委員 きょう朝以来、民社党の横手委員や先ほどの渡辺委員からも特許行政についての質問が幾つかなされておりましたけれども、私も、短い時間を新自連の石原議員と私と二人で分け合って質問をする関係で、答弁はなるべく簡潔にお願いをあらかじめしておきたいと思います。  まずお伺いしたいのは、いま日本の特許行政もいろいろな意味で曲がり角に来ているというところですけれども、その中で最近、アメリカの特許商標庁長官日本の長官、お会いになっていろいろなことを話し合われ、またいろいろな面での協力を約束されたというふうに聞いておりますけれども、どのような約束をされ、どういう分野で協力をしていかれようとしているのか、お話しをいただきたいと思います。
  162. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 主体は、アメリカは御承知のように、一九九〇年を目指しまして全電子化といいますか、自動化計画をいま推進をいたしております。この目的、われわれもいま検討をいたしておりまして、これは時期にかかわらず一種の必然の道のように認識をいたしております。さような意味で、この情報のコンピューター化を進めるにつきましては、日米共通の問題点、共通の利益についてはお互いに助け合おうじゃないかというのが主とした精神でございます。そのための必要な情報の交換あるいは交流、人的交流を盛んにしようじゃありませんか、そういう原則論的なことについて了解し、確認し合ったわけでございます。
  163. 菅直人

    ○菅委員 いま長官が言われたように、これからの特許行政の中での全電子化といいますか、機械化の進展というのは確かに避けられない問題だというふうに私も認識しております。  そういう中で、現在特許行政では、いわゆる特許庁、審査をする特許庁と、一種の出願をする出願人、そしてそれの代理を営む弁理士という制度があるわけですけれども、こういう審査の迅速化のためのいわゆる機械化、電子化というそういう方向の流れの中で、これからの弁理士制度のあり方について特許庁としてはどのような考え方を持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  164. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 電子化なりが進みましても基本的な枠組み、しょせん電子化いたしましても画像あるいは書面といいますか、コピーという形で随時出てくるわけでございますから、基本的な構造、特許庁、審査、弁理士、出願人というような基本的構造が変わるとは思っておりません。  ただ、環境がある程度変わるだろうと思います。たとえば、具体的に申しますれば設備。従来以上にワードプロセッサーとかあるいは端末機というようなものの設備というものが必要になってくるんじゃなかろうか。そういう場合に、大きな弁理士事務所は対応できると思いますけれども、小さな弁理士事務所はどうなるんだろうかという不安もございます。さような意味で、基本的な構造は変わりませんけれども、そういう環境とか設備とかファシリティーというものがやはりある程度対応していかないとうまくいかない。また、情報がますます豊かになるわけですが、それを迅速に取り出すということも弁理士さんにとって必要だろうと思います。さような意味で問題意識を持っております。  ただ、コンピューター化、自動化といいますかあるいはさらに電子化というのがこれから、いま検討しておりまして、われわれ、大ざっぱな到達点は十年先と思っております。したがいまして、いまのような問題も一足飛びに来るわけではございませんので、問題意識として持っておりまして、全体の長期的な特許行政のビジョンの中に当然、弁理士さんたちの業務、仕事のやり方というものも含めまして検討いたしていきたい、かように考えております。
  165. 菅直人

    ○菅委員 ぜひ長官に御理解をいただきたいと思うのは、きょう朝以来の答弁の中でも、確かにその機械化が弁理士という制度のいわゆる環境とか設備とかという面においても影響を与えることは確かなんですけれども、私は、実はもっと本質的な問題があるんじゃないかというように思っているのです。  というのは、長官がアメリカの長官と話された中にもありますけれども、アメリカは単に審査官をふやしただけではなくて、その弁理士というものも、迅速な審査という中では、たとえば数の問題にしろあるいはそれのあり方にしろ、あわせてアメリカでは検討しているというふうに、私の読んだ長官同士の対談では出ていたように思うのですけれども、そういう意味で、もっと弁理士制度を、これからの工業所有権の一つの機械化なりシステム化の中で積極的な役割りを担うような位置づけをしていく必要があるのではないか。  たとえば、最近はゼロシーリングで審査官の定数増も大変むずかしい状況にあるわけですけれども、そういう意味では、審査官が使える先行技術の一つのタンクのようなものが、いまでも特許庁にはもちろんあるわけでしょうけれども、そういうものを、それと同質な先行技術情報をたとえば弁理士という資格を持った人たちにも提供していけば、一種の審査の中でもかなり適切なレベルまで対応ができるんじゃないか。あるいは適切な権利確定という意味で言えば、審査官と弁理士というのは、立場は若干違いますけれども、共通の目的を持った中での役割り分担というふうに考えていく、こういうふうなもっと積極的な形での位置づけということをぜひ検討いただきたいと思うのですけれども、一言それについての御見解をお伺いしたいと思います。
  166. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 御趣旨のほどはよくわかります。審査の適正化あるいは出願の適正化のためには、出願人、まあ具体的に言えば代理人たる弁理士、この方々の何といいますか、総合力が上がりまして、そしていろんなスクリーニングをその段階でしていただけるということは非常にいいことでございまして、われわれ積極面を軽視しているわけではございません。そういう見地から、積極面も取り入れまして今後とも検討してまいりたいと思います。
  167. 菅直人

    ○菅委員 多少、長官の御理解、審査の適正化というニュアンスとは若干違う意味で申し上げたんですけれども、とにかく積極的な中でこの制度のあり方について特許庁としてもぜひ取り組んでいただきたいということを申し上げて、関連をいたしましてもう一、二点お聞きしたいと思います。  きょう朝の横手委員の御質問にもありましたけれども、現在特許庁に特許、実用新案で約四十万件の毎年の出願がある中で、大部分が代理人のついた出願になっているわけですけれども、この代理人の中で弁理士以外の代理というものがある。これについてはどのようにお考えになっておりますか。
  168. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 一般的に申しまして、弁理士制度があり弁理士法がありまして、二十二条という規定も御承知のようにございます。したがいまして、代理人は一般的に必要な場合には弁理士さんが代理されるのが望ましいとわれわれは考えております。したがいまして、具体的に弁理士以外の方が業として報酬の取得を目的としてやる場合は禁止されているわけでございます。したがって、そういう見地から、具体的に違反するような事例がありますれば対処してまいりたい、かように考えております。  それから、弁理士制度のあり方については、先ほど申しましたような積極的な面から検討してまいりたい、かように考えております。
  169. 菅直人

    ○菅委員 この点も長官にはぜひ御理解をいただきたいんですが、弁護士法の七十二条というのを御存じかと思いますけれども、いま言われた弁理士法の二十二条ノ二とほとんど同様な表現になっているわけです。いわゆる弁護士法七十二条では、弁護士でない者は、報酬を得る目的でいろんな訴訟代理などのことを、訴訟などを業とすることができない。業務内容を除いてはほとんど同じ文面になっている。そして、弁護士法に基づくこの規定は相当厳格に運用がされてきているわけです。そういう点で、いま長官の方から、いろいろなケースについては対応していきたいという答弁でしたので、基本的にはそれでいいと思うのです。  ただ、弁理士法と弁護士法というのは法律体系を含めてかなりよく似ておりますし、またその内容も、御承知のように弁護士は弁理士の仕事もできるという形もあって、かなり類似性の高い分野でもありますし、そういう点では特許庁として、単に審査や手続上の問題としてこの問題をとらえるだけではなくて、資格法としての弁理士法を主管されている官庁として、この弁理士法の趣旨をぜひ尊重していただきたいと思いますけれども、もう一度そういった点についての見解を長官から伺いたいと思います。
  170. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 弁理士は弁護士というものと相当類似な業務、考え方の基本において同様なものであることは私も承知しております。現象形態として多少の差はもちろんあるわけでございます。もちろん私どもも、単なる審査協力機関というだけで考えているわけではございませんで、そういう資格というもの、厳正な特許庁の試験も実施しておりますし、そういう資格に基づいた一つの業務という点にも十分配慮してこれからの検討をいたしたい、かように思います。
  171. 菅直人

    ○菅委員 先ほど長官は、十年間というふうに言われましたけれども、これから十年間の特許庁行政のあり方の変化がいまから始まるとすれば、その時点において、こうした関連した制度についても同時並行的に積極的に検討いただきたいということを重ねて申し上げまして、私の質問は終わらせていただきたいと思います。
  172. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、石原健太郎君。
  173. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 私は、二月の当委員会におきまして、現在の石油情勢から見、また困難な財政状況、またこういった不景気な時代に、あえて備蓄の積み増しを急ぐ必要はないのではないかと申し上げました。これに対しまして大臣も、まさに通産省自体はどうするのだという問題の典型的なものだ、検討を重ねていかなければならないと言われたのでございます。また、その二月に私が質問した際に、外国からの攻撃というものに対する面から備蓄基地の見直しの必要性をお伺いいたしましたが、最近は、民間備蓄施設の余裕分の活用を図れば、一兆円に上る膨大な国費の投入を必要とするようないまの計画は見直してしかるべきではないかというような議論も起こっておるようであります。  一昨日の委員会大臣は、来年度予算編成に際してはいまのままでいけば五兆円の財源不足が見込まれる、こういうこともおっしゃっておりますし、また、今度の御旅行を通じて、ここ三年間は石油価格は安定するだろう、こういう見通しもお持ちのようであります。  ところで、これは参議院の四月の商工委員会大臣は、政策の変更というものはできる限りするべきではないというようなことを申されて、いまのところ備蓄目標を変える意思はないのだということもおっしゃっておりますけれども、青函トンネルのような例もあることですので、今後この備蓄の速度とか備蓄基地の整備の問題についてはどのようなお考えで臨んでいかれようとしているのか、お伺いいたします。
  174. 山中貞則

    山中国務大臣 細かい数字等はエネルギー庁長官から説明させますが、国の基本方針としては、いままで決めております民間備蓄、国家備蓄というようなものは、今回の五ドルの値下げがあっても、やはりきちっと国民に不安のない体制は持っておるべきではないのかと思っています。  現に、私は耳を疑ったのですが、産油国の指導者の口から、これ以上に値下げをすると、せっかくいま省エネとか代替エネとか新エネとか努力を傾けているその努力に水を差すことになる、しかしそれは長い目で見て人類のためにならないという、私たちが言うようなことを産油国の指導者から言われて、私は、やはり指導者というのは英邁なものだなと思いました。  そこで考えたことは、やはり私たちの方も一応の、大騒ぎをしなければならないような、取り崩してみたりあるいはまたじゃぶじゃぶためてみたりというようなことをしないで、平均的な状態、いまの目標の中で国民に、大体いつも国が責任を持てる限度というようなものだけはいかなる変化が突如あっても大丈夫ですからという体制は、これは産油国側のあの卓越した、自分たち利害はすでに超えた、簡単に言うとブーメラン効果に気がついたという言い方もありましょうけれども、しかし、産油国側でさえそういう気持ちを持っているときに、日本側はそれで気を緩めたりなどしてはいけない、そういう気持ちでいるところです。
  175. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それでは次に、話がちょっと飛ぶのでありますけれども、鳥獣の輸入の問題等についてお伺いしたいのです。  いま世界では絶滅する動物が後を絶たず、また、絶滅寸前の動物が多数あると言われております。日本ではコウノトリが絶滅し、佐渡のトキも新聞報道等では絶滅寸前の状況になっている。幸い鹿児島県では、大臣を初めとして気持ちのやさしい方が多いせいか、出水には釧路のタンチョウと並んで世界的にも有名なナベヅルの渡来地があります。大ぜいの人が野生動物が絶滅するのを防止しようと努力しているわけですが、一方ではサイとか象とかワニ、猛禽類等密猟者による密猟が後を絶たず、絶滅寸前の状況にあるものが多数あることは最初に申し上げたとおりですけれども、たとえばケニアの場合、一九七〇年には二万五千頭いたクロサイが、一九八〇年には角をとるため乱獲され千二百頭に減ってしまっているそうです。  そこで、野生動物の絶滅を何とか防止しようということで、世界の八十一カ国が参加してワシントン条約というものができ上がって、わが国でも九十一国会で批准が承認されたわけであります。その結果、野生動物の取引も制限を受けるようになり、条約の管理は通産省が担当するようになったようでありますけれども、大臣はそういった鳥獣類の輸入の所管庁の長として、野生動物の絶滅防止とか保護ということに対してはどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、それが一つの点であります。  また、象牙を例にとれば、世界貿易の四〇%ぐらいですか、約半分は日本向けであり、残りの四〇%ぐらいが香港向けで、それも加工後大部分が日本に向けられているそうであります。  また、こういうカタログが出ているのであります。「世界の珍鳥獣の剥製材料が何でも間に合います」なんということで、国際的に条約に該当するような鳥獣もたくさんこれに載っておるのであります。こういう業者もあるのですけれども、日本が多数の絶滅寸前の動物をこうして輸入することで、世界の密猟を促進助長するかっこうになっていることについてはどのようにお考えになるのか。  この二点をお伺いいたします。
  176. 山中貞則

    山中国務大臣 この絶滅野生鳥獣保護条約に日本加盟いたしますときに、日本としては幾つかの留保をつけていたものがありますが、その中には沖縄の人たちにとって、男も女も超えて、家庭単位の必需品になっている三線と呼ばれる蛇の皮でつくったいわゆる沖縄三味線がございます。これはインド亜大陸のボアの皮をずっと使っておりますので、それを沖縄県の県民生活に欠かせないものとしてその点は留保してもらって、奄美大島が地続きでありますので、そこが何とかしろという話でありましたけれども、それは果てしなく広がるので、沖縄県だけの枠として、沖縄県から分けてもらうことにしなさいということで、タッチしたこともございます。  一方、いまの象牙の四〇%は、正確にそのとおりでありまして、まさにアフリカの象の密猟の中に日本自身がもう入り込んでしまっておる。しかも引き取り手の四〇%、製品のさらにまた八〇%のうちの大部分を日本に持ってくる。そういうことが結果的には、きばを切られて象が生きていて、きばだけが奈良のシカのように手に渡っているかと言えば、やはりそうではなくて、だれも見ていないところでズドンとやって、象はそのままハゲタカに食われて骨になるのでしょうから、そこらの行為は——私は、ジンバブエ、昔サウスローデシアと言っておりましたところの独立式典に日本政府特派大使として行きましたときも、そこらのことが、目に見えない、アフリカの人たちのきれいな心を日本の手が汚しているのではなかろうかという、何か心が傷ついたような気持ちで帰ってきた記憶もあります。  したがって、私どもが自分たちの身辺細貨あるいは家具調度、自己満足、虚栄心、そういうもののために、かけがえのない地球上の動物等に加害者の立場になっているのではないかということに、まず国民が気がつかなければいけない。  ましてや、税関通過等の際の検査は、いまは厳しくされていると思いますが、徹底してそういう目からの、物だけの検査でなくて、その条約には、生きているものも剥製も、出した方も入れた方も当然両方処罰、没収されることになっておりますから、要するに行為が行われないようにというのが目標なんです。  ですから、私どもが貢献し得る道は、トキとかツルの保護もそうでありますけれども、しかし、世界に向かって、自分たちがその行為を助長していやしないかという気持ちも持っていなければならないことであるなということを、私自身は感じているわけでございます。
  177. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 大臣は税関長も指導できるとか指揮できるというような決まりもあるようですから、なお一層そういうところはよろしくお願いしたいと思います。  それから、いま大臣が留保の件についてちょっとおっしゃいましたけれども、留保状況を見ますと、八十一カ国の締約国のうち、十二カ国だけが留保物件を持っておりまして、大半は三種類以下ぐらいなんですけれども、日本が一番多くて十一種類、次いでスイス、フランスの七種等となっていますが、カナダは一九八二年にそれまで留保していた二十二種すべての留保を取り消し、ことしに入って、スイス、リヒテンシュタイン等はほとんどすべての留保を取り消したようであります。日本のみ十一種もの留保を持続し、そのうち七種は、先ほど大臣がおっしゃった爬虫類である。七種は爬虫類ですね。これを今後とも持続しようとすることは、こういった動物の絶滅防止のためにもうまくないですし、あるいは国際感情からいっても好ましくないと考えるのでありますけれども、通産省とか業界の方が留保に熱心な七種類の動物に関しまして、今後どういう方向でやっていこうとされるのか、御説明いただきたいと思います。
  178. 福川伸次

    ○福川政府委員 ただいま石原委員御指摘のように、わが国は十一留保をいたしておるわけでございまして、そのうち爬虫類関係が七つということでございます。昭和五十五年に日本が批准するに当たりまして、それぞれわが国の伝統的な諸事情を考慮いたしまして、留保を付したわけでございます。その際、留保を付しました理由は、むしろこれらの種をもっぱら原料として輸入し、または加工販売する、こういうことがわが国国内業界に存在しておるわけでございまして、そのためにその輸入がとだえるということにつきまして、それらの業界の存立にもかかわる、社会的な非常な影響がある、こういう事情があったためであろうと思うわけでございます。  この問題をどのようにしていくかということでございますけれども、これはもちろん附属書のIに入っているわけでございまして、いろいろと研究用、商業用、あるいはまたその他の諸事情でいま入ってきていることにつきましての留保をここで付したわけでございますが、いまのような国内の諸事情があったわけでございまして、そういった社会的な問題が生ずるということでございます。  したがって、現状では、この留保を早急に撤回するあるいは取りやめるということにつきましては、いろいろ社会的な困難な事情があるというふうに思っているわけでございます。いま御指摘のような諸環境等を考えながら、私どもとしては引き続き検討しなければならないと思っておりますけれども、現在の段階で、いますぐ早急な撤回という点はかなり困難な事情があるのではないか、かように考えております。
  179. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 お伺いいたしますけれども、この留保を取り消そうとするときには、最終的にはどういう手続、だれが決定をして、どういう手続で行われるのかということ。それから、業界の存続のために留保しているのだとおっしゃいますけれども、これは非常に絶滅の危機に瀕している動物なわけでありますから、日本がどんどん加工したり利用したりすれば、早晩絶滅してしまうかもしれない。そうなれば結局、そういう業界は材料がなくなってしまうわけですから、成り立っていかない。それで、そういう業界がそういう材料を利用しなくてもやっていけるように指導助言するのも一つの仕事じゃないかと思うのですけれども、そういうことはなさっていらっしゃるのか、その点お伺いいたします。
  180. 福川伸次

    ○福川政府委員 まず第一点の手続の点は、このワシントン条約の事務局に通告するということが留保撤回の手続になっているわけでございます。  それからまた、いま御指摘のように、留保しておりますものをどんどんとってしまう、こういうことになってしまえば、結局絶滅するのではないかということでございますが、いま留保自身の撤回というにはなかなか困難な問題がございますけれども、これを輸入するに当たりましては、それぞれの事情を考慮しながら、いまこれは割り当て制度で実施いたしておるわけでありますが、そういったとってまいります量につきましては、諸事情を考慮しながら十分指導してまいりたい、かように考えております。  また、業界自身をどういうふうにしていくかという点につきましても、この中にはいろいろと困難な事情がございますけれども、いま申しましたような輸入の数量のあり方等を踏まえながら、その業界の今後の問題点については検討いたしていかなければならぬと思いますが、現状では、いま申しましたように、それぞれの実情に応じながら、その輸入をいたします量という点につきましては、それなりの指導、配慮をしてまいっているところでございます。
  181. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それから次に、日本で捕獲が厳重に禁じられておりながら附属書のIIに挙げられている鳥獣が多数ありまして、これは相手国政府輸出許可書または証明書があれば無制限、自由に輸入されているわけであります。  しかし、自分の国では絶滅のおそれがあるからとか保護をする必要があるからということで捕獲を禁じておきながら、外国でとったり殺したものは何の制限もなく輸入させているというのでは、わが国のエゴ、自国の利益のみを考えていると非難されてもやむを得ない面もあるのじゃないかと考えます。  わが国もまた自然動物の絶滅を防止するのだという強い意思を海外に示すためにも、この際、わが国内で捕獲を禁止している野生動物の輸入については学術研究用に限るというようなことも大切ではないかと考えますが、この辺はいかがでありましょうか。
  182. 福川伸次

    ○福川政府委員 附属書のIIに記載されております種のものにつきましては、いま先生御指摘のように相手国の輸出の証明書、これを厳重に確認をする、こういうことで処理をいたすのが条約のたてまえになっているわけでございます。また一方、わが国では鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律などによりまして、捕獲を禁止するといった規制が厳重に行われているわけでございます。  いま御指摘のように、附属書IIに入っているもので絶滅のおそれがあるというような場合には、日本はさらに輸入の不許可あるいは禁止といったような方向で対処すべきではないか、こういう御指摘でございます。その点に関しましては、いま附属書のIIに書いてございますのは、相手国のそれぞれの事情に応じまして輸出許可書が発給される、こういうことになっておるわけでございまして、もちろん絶滅そのものを保護していこう、こういうことになりますと、むしろわが国といたしましては、この附属書IIにあるものをあるいはIIのままでいいのか、あるいはIに上げるというようなことを考えたらいいかといったような、世界全体の立場でのあり方を探求するという方向の方が好ましいのではないだろうかというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、そういったいま御指摘のような観点が国際的なコンセンサスということになっていくのかどうかというところが一つの大きなポイントであろうというふうに思うわけでございまして、私どもとしても、むしろそういった条約全体のあり方というようなことから、いま御指摘のような絶滅のおそれがある野生動物、こういうものについての対応ということを全体の立場で考えていかなければならない。また、そういう点については日本も、いま御指摘のような観点を十分配慮していかなければならないのではないか、かように考えております。
  183. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 国際コンセンサスを得るような方向、こう言われておりますけれども、結局世界八十一カ国が参加して、この地図を見ますと地球全面積の七、八割ぐらいの面積を占める国々が参加している条約なわけですね。日本がそういう鳥獣類の輸入はできる限り制限するんだというコンセンサスは、もうすでにこの条約が結ばれていることによって得られているわけですよ。だから、こういう附属書のIIに挙げられているような動植物等の輸入については、輸入割り当て品目にできないのかというようなことを申し上げているわけであります。  それで、いま局長のお答えを聞いておりますと、大臣が外国にいらっしゃったとき心を痛めた、こうおっしゃいましたけれども、それでは日本人の心の痛みというものはなかなか消えていかないのではないか、こういうふうにも考えるわけでありますけれども、いかがなものでしょうか。
  184. 福川伸次

    ○福川政府委員 いま石原委員が御指摘になられましたいろいろな事例は、十分私どもとしても承知をいたしておるところでございます。  全体としてこの絶滅する野生動物をどのようにして保護すべきかという点につきましては、いま御指摘のような国際的な動向になっているわけでございまして、私どもとしても、大きな方向としてそれに沿った形で、冒頭大臣が御答弁申し上げましたような気持ちで対応しなければならないというふうに思うわけでございます。ただ、従来それなりに日本経緯等もいろいろございますし、またその後、動植物のいろいろな動向ということも変化をいたしてきているわけでございまして、そういったことも私どもとしては十分考慮しながら、いま御指摘のような管理という点については十分努力をし、考慮していかなければならない、かように考えているところでございます。
  185. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 これは「鳥獣輸入証明書」というものなのですけれども、通産省の方では承知しておられますか。
  186. 福川伸次

    ○福川政府委員 承知をいたしております。
  187. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 この輸入証明書というものが現在ではひとり歩きをしておりまして、一枚二千円ぐらい出しますと、こういうものが白紙で手に入れることができると言われております。また、クマタカなんかのものについては六万円くらいで取引をされている。それは白紙のものが利用されたり、輸入した鳥獣に一たんつけられたものが、死んだらそれをまた次に利用するという形で利用されて、とにかく国内で密猟した鳥獣にこういうものを添付しておるわけです。いまではこれが全国各地に行き渡りまして、これがあるために密猟の取り締まりが全くできない状況になっている。それから、各県の鳥獣行政というものはもう混乱の極に達していると言われております。  輸入証明をするということがこんなに簡単に行われていていいものかどうか、それが一点と、これがそういう混乱を引き起こしているとすれば、今後それに対してはどのように対処していかれるおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
  188. 福川伸次

    ○福川政府委員 いま御指摘の証明書、これは第I類に関しまして出されているわけでございますが、いまその証明書が国内の密猟の上で取引される証明書に使われている、そのような事情は私どもとしては承知をいたしておりませんでした。  いま、これの輸入の証明書といいますのは第I類の場合でございますから、それぞれの目的というものを十分把握いたしまして、あるいは学術研究用であるとか、そのほか定められた様式に基づいてそれを交付いたしているわけでございまして、私どもとしてはそれは厳正に処理をし、発給をされているものというふうに理解いたしております。もし御指摘のような事実があるといたしますれば、私どもとしては十分それを調査してみたいと存じます。もちろんこれは輸入のために付されるものでございますから、国内の密猟の取引にそれが使われるということになれば、当然、鳥獣保護法に反した行為が行われているということになるわけでございますので、もしそういう事実がございますとすれば、私どもとしても厳正かつ適切な処理をしなければならないと思っております。
  189. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 もしそういう事態があれば、こうおっしゃっていますけれども、昭和五十三年五月十二日の公害対策並びに環境保全特別委員会会議録で岩垂さんがすでに指摘されて、環境庁あたりでもちゃんとそういう事態が行われているということは認めているのですよ。もうすでに五十三年の時点で出原という政府委員の人が、「現在の取り扱いについていろいろ問題があるということは私どもも承知をしておりまして、対策を検討いたしております。」こう答えております。また「御指摘のような」、いま私が言ったような指摘を岩垂さんがしたのですけれども、政府委員は、「御指摘のような問題があることは環境庁としても承知をしておりますので、できるだけ早期にその改善を図る必要があると考えております。」そういうことをもう言われておりながら、いまだにこれが通用している。  これは五十八年一月十九日付「メジロ」と書いてありますから、附属書の第I類じゃなくて第II類の動物についているものなのです。こういう輸入証明書、輸入というものを直接担当管理するのは通産省だと思うのですけれども、輸入証明書というものがこのように簡単に、手軽に取り扱われているということに対して、私はどうもやはりうまくない、こう考えますけれども、今後これをどうされていくのか、具体的にお答えいただきたいと思います。
  190. 福川伸次

    ○福川政府委員 いま先生のお示しになられました証明書、これがもし第II類に属するものということでございますれば、私どもとしてはそういう証明書は発給いたしておりませんで、私どもの方が出しておりますのは第I類に属するものだけでございます。したがいまして、もし第II類に属する種類の動物あるいは植物の証明書であるといたしますれば、私どもとしてはちょっとそういうものを出したことはない。私どもとして出しておりますのは第I類だけを対象にしておりますので、その点は、もしそういうことがございますれば、それは何らかの別の事情によって出された証明書ではなかろうかというふうに思うわけであります。  それから、五十三年の御指摘でございましたけれども、日本がこの条約を批准いたしましたのは五十五年でございますから、その条約の批准前の時点であったと思います。したがいまして、大変恐縮でございますが、私ども、ちょっとそのときの論議を十分検討いたしておりません。恐らく鳥獣保護の違反と申しましょうか、密猟のいろいろな事例についてのことではないだろうかというふうに思います。したがいまして、その時点で輸入との関連で何らかの手続が行われたということではないのだと思います。  いまの、その第II類を対象にしたという証明書がいかなるものであるのか、いかなる形で発行され、流通いたしたのか、もしお差し支えございませんでしたら、私ども見せていただいて、検討させていただきたいと思います。
  191. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 いま私、鳥獣証明書とお示しして、知っておられますかと言ったら、知っておられるとお答えになったので、質問を続けたわけなんですけれども、そういう御事情ならわかりました。  それで、くどいようですけれども、輸入証明書がこういうかっこうで出回っている。最後に大臣にお伺いしたいのですけれども、輸入証明書というものがこういう形で出回って、こういうふうに利用されているということについて、やはり輸入の当局として何らかの方向を打ち出していただきたいと私は思うのですけれども、この辺、いかがでありましょうか。
  192. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうものが売買されているということは、不敏にして私、いま初めて知りました。したがって、局長が申しておりますとおり、その実態を調査して、そのような世界の恥になるようなことがないようにさせたいと思います。
  193. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  194. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、来る二十五日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会