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1983-05-18 第98回国会 衆議院 商工委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十八日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 森   清君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君       天野 公義君    植竹 繁雄君       浦野 烋興君    奥田 幹生君       梶山 静六君    島村 宜伸君       田原  隆君    泰道 三八君       野中 英二君    鳩山 邦夫君       宮下 創平君    粟山  明君       上田  哲君    上坂  昇君       清水  勇君    城地 豊司君       渡辺 三郎君    岡本 富夫君       北側 義一君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  山中 貞則君  出席政府委員         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省立地         公害局長    福原 元一君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石炭部長   弓削田英一君         特許庁長官   若杉 和夫君         中小企業庁長官 神谷 和男君         中小企業庁計画         部長      本郷 英一君         中小企業庁小規         模企業部長   赤川 邦雄君         自治大臣官房会         計課長     大塚 金久君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部経済調査官 清島 傳生君         警察庁警備局警         備課長     国松 孝次君         外務省経済局国         際経済第二課長 近藤 健彦君         大蔵省主税局税         制第一課長   滝島 義光君         大蔵省国際金融         局調査課長   畠山  蕃君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 阪田 彰夫君         農林水産省食品         流通局商業課長 伊藤 礼史君         通商産業大臣官         房審議官    前田 典彦君         自治省行政局行         政課長     中島 忠能君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ───────────── 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     加藤 万吉君   清水  勇君     五十嵐広三君   渡辺 三郎君     小川 省吾君 同日  辞任         補欠選任   五十嵐広三君     清水  勇君   小川 省吾君     渡辺 三郎君   加藤 万吉君     上坂  昇君     ───────────── 五月十二日  特許管理士法制定反対に関する請願(菅直人君紹介)(第三四五三号) は本委員会に付託された。     ───────────── 五月十七日  訪問販売等に係る消費者紛争の防止に関する陳情書(第二六二号)  景気対策に関する陳情書(第二六三号)  中小企業対策拡充強化に関する陳情書外四件(第二六四号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ────◇─────
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。粟山明君
  3. 粟山明

    粟山委員 本日は、山中大臣、ちょっと所用で御出席がおくれるようなお話を伺いましたので、初めに少し細かいことになりますけれども、二、三お伺いしたいと思います。  まず最初に、大型店の問題でございますけれども、きょうはどなたが出ておられますか。――では、大型店について伺います。  昨年の二月に抑制措置通達されまして、大分効果を上げているようでございますけれども、それ以前の状況大型店抑制措置通達以降の状況について何か数字的な、どのくらいの効果が上がったかというような点がありましたら、ちょっと御説明を願いたいと思います。
  4. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 お尋ねの昨年二月より実施いたしました大型店抑制措置の概況でございますが、二日に実施いたしまして、若干その措置の浸透の時間というものがございますので、昨年の四月からことしの三月までちょうど年度でもってその数字がございますから、それで御説明をさせていただきます。  五十七年度大型店届け出件数は百三十二件でございます。これは三条の届け出でございますが、百三十二件。これをその前と比べてみますと、五十六年度御存じのように秋から届け出の受け付けを抑えるような措置もとっておりますけれども、五十六年度全体では百九十四件でございますから、その前半が通常状態と申しますか、かなり大きなテンポで出ておりましたので、その五十六年度と比べまして約三分の二になるわけでございます。そのもう一つ前、五十五年度、これは正常の年度かと思いますけれども、これが年間で三百七十一件ございますから、これと比べますと三分の一。もう一つ前、五十四年度はかなり出店が積極的に行われた年でございますが、これが五百七十六件でございますから、これと比べますと約五分の一ということで、御指摘のように、抑制措置届け出件数の面での効果というのは、かなり大幅な減少という効果は上げているというふうに考えております。
  5. 粟山明

    粟山委員 ただいま御説明いただきましたが、確かに抑制措置は相当効果をあらわしているようでございます。しかし、昨年の通達があった時点でのお話を伺いますと、これは、それには明示はしておりませんが、期間的に約二年間この措置を実施するというふうに伺っております。ところが、まだまだ大変各地争いが多いようでございます。  たとえば一昨日、私の当の地元で――これは地元の問題についてきょうは質問をすることではございませんけれども地元におきまして二本松という市がございます。三万四千人ほどの小さい静かな城下町でございますが、ここで大型店の進出問題がありまして、大変争いが起こっております。一昨日も雨の中、賛成派それから反対派、両者が集まってデモをやっているというような状況。これはそこだけではなくて、各地にも争いが続いているように伺っております。そこでまた、商店街のいろいろな組織から、ひとつ法制化してくれというような、法案の骨格まで書いたものが陳情となって上がってきております。  一方、ただいまの抑制措置に伴って確かに激減はしているようでございますけれども、これはこの通達あるいは抑制措置のみならず、景気の非常な停滞ということも一つ原因ではないかと思います。したがって、予想されるように本年の後半あるいは来年、景気がまた回復の方向に行きますと、そういった大型店スーパー等のいわゆる設備投資の意欲も上がってくるのではないか。そうなりますと再び各地大型店が進出したがる、また紛争が起きるというようなことが予想されるのであります。  そこで、通産省としては、来年の二月、その以降になりましての指導方針、これについてはいまの抑制措置をそのまま延長するのか、あるいはこの通達はここで一段落して一たん解除するのか、あるいはむしろ法制化をした方がいいという方向なのか、その点についての方針をお伺いしたいと思います。
  6. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 ただいまの抑制措置につきまして、必ずしもいつまでということが決まっているわけではございませんけれども、御指摘のように、おおむね二年ぐらいの措置であろうかということで現在取り組んでおるわけでございます。  この措置は、先ほど申し上げましたように届け出件数が大幅に減ったということのほかに、幾つかの好ましい効果を上げてきておりまして、たとえば大型店の中に中小小売業との共存スタイルで摩擦の少ない出店というものが増加をしているとか、あるいは出店についていろいろ検討して当方の諮問にこたえてもらいます地元商調協審議がかなり円滑になっております。地域によりましては以前からのトラブルが続いているところもございますけれども、多くの商調協は次第に審議が円滑化して順調に進みつつございます。ですから、そういう意味で現在の措置をまだもう少し見定めるつもりではおりますけれども方向としてはかなりいい方向に向かっているというふうに考えているわけでございます。  ただ、この措置を恒久化するかどうかということになりますと、御指摘のように、これはあくまでも暫定措置ということで取り組んだものでございますし、法律の運用その他の面でも配慮すべき問題もあろうかと考えております。  現在のところは、昨年の秋から産業構造審議会中小企業政策審議会の両方の下部機構のかっこうで合同部会を設けまして、御存じのように「八〇年代の流通ビジョン」の検討を進めております。この流通ビジョンというのは相当先時点まで見通した流通のあり方の議論をいたしますので、そういった方向に沿って大型店問題をどういうふうに調整したらいいかという問題も当然そこで議論をすべき問題でございますので、私どもといたしましては、この産業構造審議会中小企業政策審議会下部機構合同会議の場で、そういった大型店抑制措置についての方向につきましてもある程度大筋を取りまとめてもらおうか、その上でその方向に基づいた必要な措置考えてまいりたい。時期としましては、御指摘のように一応二年ぐらいをめどにしておりますから、来年の二月ぐらいまでには少なくともはっきりとした方向を打ち出したいと考えているわけでございます。
  7. 粟山明

    粟山委員 わかりました。大型店の問題につきましてはそのぐらいにいたしまして、本題の質問に入りたいと思います。  最近の新聞紙上その他をにぎわしておりますカントリーリスクの問題でありますけれども、言うまでもなく日本資源小国貿易立国というような点からも、海外との国際通商といいますか、貿易あるいは海外進出等が非常に円滑にいかないと日本のこれからの国の運営がうまくいかない、ぜひこれは進めるべきであろうということでございます。また、先般中曽根総理ASEAN各国を回られましても、経済協力を大幅にばらまいてきたと言うと大変語弊がありますけれども各国に供与を約束してこられました。また、一昨日のNHKのテレビでも、今度のサミットへ行かれる心構えとして、北の繁栄は南の繁栄がなければあり得ないというようなことをはっきり言っておられました。その内容としては、低開発国への経済協力がきわめて重要である、ぜひ今後ともやらなければならないというふうに理解できるわけでございます。  そこで、しかしながら民間の広義の経済協力、つまり貿易金融あるいはプラント輸出、さらには海外への投資、こういった点において、最近カントリーリスクということが非常に問題になっております。カントリーリスクをいかにヘッジするか、予防するかという面におきましてはいろいろなことが考えられるわけでありまして、国と国との投資保護協定あるいは金融的な援助その他もございますけれども、当面、海外投資において非常に強く民間から要望が出ておりますのは輸出保険の問題であります。それで、この輸出保険につきまして少し具体的なことをお伺いしたいと思います。  現在、日本輸出保険というやり方は、ほかの国に比べましても制度としては大変きちっとしていると非常に評価されております。しかしながら、一方、運営基盤が弱いのではないかという声が上がっております。ということは、私の承知している内容としましては、五十六年度末におきます保険引受責任残高約十八兆円と聞いております。ところが、それに対する異常危険準備金、つまり支払い準備金がわずか五百七十五億円、きわめて過少ではないかと思われるわけであります。このごろ海外輸出するプラントとか工事、そういったものの一件当たりの金額が非常に膨大になっておりまして、イランの石油化学の例がいい例でございますけれども、そういう大きな事故が一たび発生すると五百億や七百億では一遍で吹っ飛んでしまう。いかにも運営基盤が弱いような感じがするのでありますけれども、これを強化する必要があるのではないか。また、強化を図るとすればどのぐらい強化したらいいか、この点についてひとつお伺いしたいと思います。
  8. 前田典彦

    前田説明員 ただいま御質問がございましたとおり、輸出保険引受残高というのは、表面額でございますが確かに約十八兆円ございます。それから支払い準備金支払いに充てられるべき原預金というのは、これも表面額では千四百億ほどございますけれども、ただいま御指摘のございました異常危険準備金、本当の意味での支払いに充てるべき準備金というのは確かに五百億余りでございまして、五十七年度中の経営悪化によりましてさらに下がる見通しでございます。  お話しのとおり、この運営基盤強化するということは大変重要なことでございまして、昨年十一月、輸出保険審議会意見具申をちょうだいいたしまして、運営基盤の方策といたしまして、まずその保険料率を引き上げる、この四月から私ども輸出保険の大部分を占めます普通輸出保険輸出代金保険輸出手形保険及び海外投資保険というものを対象にいたしまして、大体二〇%から四五%の保険料の引き上げをやったわけでございます。  では、これで運営基盤強化として十分であるかという点でございますが、ただいまお話のございましたように、一件当たりの額あるいはトータルの額が非常に大きゅうございまして、幾ら準備金を積めば大丈夫かというのは、実は国際的にもこれぐらいあればいいというようなめどは全くございませんで、国によりまして制度がございまして、その都度その都度赤字になった分については一般会計から出すというようなところもございますれば、あるいはまとめてやるというようなところもございまして、いろいろ検討といいますか、国際機関、たとえばベルン・ユニオンとかという場で議論をした経緯はございますが、現実にどれぐらいあればよろしいというのは余り確たる数字がないわけでございます。
  9. 粟山明

    粟山委員 どのぐらいふやしたらいいか、ちょっとわからない、見当がつかないということでは運営基盤としては非常に脆弱でありますけれども、従来のほかの民間保険については、引受責任残高というものに対する準備金あるいは原資というようなある程度のめど、比率というものがあると思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  10. 前田典彦

    前田説明員 民間損保等とそれからこの輸出保険というのは基本的に性格が異なっておりまして、たとえば損保でございますと、確かにその会社の資産で引き受け、なおかつそれでリスクが大きい分は再保険をするわけでございます。ところがこの輸出保険というのは、相手の国全体を見たカントリーリスクというものを対象といたしておるわけでございまして、そういう意味で、どこの国でもその期間、その会計で完全にカバーをするというような哲学といいますか、考え方に基づいておるところはないのではないかと思うわけでございます。それで、通常の場合には、まあ国によって違いますが、独立採算ベースでやっておりましても、最悪の場合にはやはり国全体がバックにある、そういう意味におきまして、再保険というようなものも全くないわけでございます。
  11. 粟山明

    粟山委員 そこで、これは通常基盤か弱いというようなことから民間から苦情が出ておりますのは、そのためにと申しますか、そういった問題が一つ原因となって引受制限が非常に強くなっているというようなことでございますが、お聞きしたいのは、この引受制限一つ対象となる特定国と申しますか、こういった国がいま幾つぐらい輸出保険の方としては考えておられるかということが一つでございます。  それからもう一つは、これをもう少し緩和する考えはないか。あるいは運営基盤強化としては、特別会計でございますのでなかなかむずかしい点もあろうかと思いますが、政府出資というようなことが過去に一、二回あったように伺っておりますけれども、そういったことは考えられないのか、続けてお伺いします。
  12. 前田典彦

    前田説明員 ただいま御質問特定国でございますが、最近の特に低開発国を中心といたします債務累積問題というようなのを背景といたしまして、数としては非常にふえております。代金保険で約六十、普通手形保険で約二十カ国ほどございます。  次の出資の問題でございますが、実はこれは非常に重大な問題でございまして、私どもも従来から検討しておるわけでございます。それで、一般会計出資というものは、基本的な点で国際的な面と国内的な面と両方ございます。一つは、恒常的に赤字を補てんするために輸出保険出資をするということは、ガット等におきましてこれは輸出保険と全く同じではないかという非難を招くおそれが強いわけでございます。これは国際的な側面でございます。それから国内でございますが、これも輸出保険法におきまして保険料を収支相償うように定めるということによりまして、独立採算原則運営をするようにというふうになっておりまして、まあ非常時はともかく、平時における出資というのは原則として予定をしていないという問題がございます。  ただ、ただいま御指摘がございましたように、過去にインドネシアが非常に大きな事故になった場合に四十二年度三十億円、三十億円といいますのはそれまでの資本金と同額でございますが、それだけの出資を受けたことがございます。ただ、これは非常な事態でございまして、国内はもとより国際的にも何ら問題がなかったわけでございます。つまり、無理に輸出を伸ばそう、輸出振興というような観点から非常識な保険運営をした、こういうことでありますと国際的にも問題があるわけでございますが、通常保険ベース運営をいたしておりまして、そして発展途上国側事情、まあ一国の事情であるとか、たとえば現在名前を特定するのはちょっとはばかりますが、御案内のとおり中南米のある国々で見られているような大規模支払い困難というようなことが発生いたしまして、そして赤字になるというような状態が仮に生じた場合につきましては、国際的には何ら問題がないと考えております。  これは私ども、いつも国際的な場で言っているわけでございますが、発足以来三十年間、政府出資は六十億円で現実には千数百億というリザーブをつくったわけでございますから全く輸出補助金ではない、そういう姿勢で運用しているということは国際的にも理解されるだろうと思います。  収支悪化に対しまして、予防的な措置として直ちに一般会計出資を仰ぐべきかどうかという点でいろいろ意見もあるわけでございますが、民間が、先ほど申しました輸出保険経営基盤強化というようなためにその料率上げ民間に負担させるのだから政府もその痛みを分かつべきではないかというような声がございまして、これは私どもも十分存じておりますので、諸般の情勢を勘案しつつ、今後の重要課題として引き続いて検討してまいりたいと思います。
  13. 粟山明

    粟山委員 次に、いまの輸出保険の取り扱いにつきまして、経済界経済同友会であるとかあるいは海外経済協力会とかいろいろな団体から、輸出保険については非常にいい制度であり利用している、しかし苦情も同時に出ているわけでありまして、その苦情の主なものは、制度そのものはいいけれども、どうも制度運用が少し物足りないと申しますか困る、まず第一、事務処理が非常におくれる傾向にある、事務処理をもっと合理化あるいは迅速化してほしい、あるいは事故認定基準を明確にしてほしいというような要望が強いのでありますけれども、これについてはどうお考えになりますか。
  14. 前田典彦

    前田説明員 日本制度は三十年余りになるわけでございますが、制度がいろいろ完備をしておるというありがたいお言葉でございますけれども、私どもの定員といいますか、輸出保険をやっておる部隊でございますが、非常に精鋭かどうかは別といたしまして、少数でやっておるわけでございます。  たとえば私ども輸出保険は、ノミナルで見ますと、現在世界で最大の引受量になっておるわけでございますが、仕事の中身が若干ずつ違いますけれども、単純に比較いたしますと、イギリスが十倍以上の千八百人、それからドイツ、フランス、それぞれ五百人、九百人というような人数でやっておるわけでございまして、いろいろ民間方々に御迷惑をおかけしておるという点は確かにあるわけでございます。ただ、長くやっておるものでございますから、大きな問題というものにつきましてはいろいろと話し合いの上、大体解決されておるわけでございまして、現在、数はたくさん出ておりますが、ややテクニカルな問題になるわけでございます。  ただ、そういうものにつきましても鋭意検討いたしまして、たとえば最近実施した点を一、二、ややテクニカルになりますが申し上げますと、海外投資保険につきましては、仮申し込み制度についてその内諾効果を与えるという、これは多年の懸案でございましたが、そのような改善をするとか、あるいは海外投資保険付保対象として、通常の単純な保証のみならず連帯保証を追加するとか、あるいは代金保険につきましては、重大な変更内容として船積み通知簡素化保険料変更を伴わない船積み通知を不要にするというような改善を策しておりまして、民間方々の声をいろいろとお伺いしながら、今後ともできる限りの改善を図ってまいりたいと思います。
  15. 粟山明

    粟山委員 確かに、少ない人数世界でも有数の大規模輸出保険運営しておられて、大変努力をしておられるように伺っております。しかし、まあそういう苦情もある。  あるいはもう一つ申し上げますと、これは保険でございますから保険者と被保険者との双務契約でありますが、その中でどうしても保険がお上の保険であるというようなことから、民間から言わせますと、いろいろ手続において通産省許認可事項みたいな態度がみられるという声もなきにしもあらずでございます。そういった点につきましては、今後ともぜひこれを改めていっていただきたいと思います。  なお、もう一つ質問は、事故認定等につきまして通産省でもって、保険者認定をするのでありますけれども、これは第三者の機関による事故認定というようなことが考えられないものかどうか、その点ひとつお伺いします。
  16. 前田典彦

    前田説明員 輸出保険契約が確かに、先ほど御指摘のございましたように、何としても役所の許認可的な態度になるというのは、私どもも常日ごろからそのようなことがないようにというふうに注意はしておるわけでございますが、そういうふうな場合も時としてなきにあらずかと思いますので、今後とも気をつけてまいりたいと思います。  まさに御指摘のとおり、輸出保険契約というのは、国と私人というのではなしに、本来対等な関係にある私契約でございまして、そういう意味では行政処分ではないわけでございます。したがいまして、その当事者間の紛争ということになりますと、これは基本的には私法的に解決されるものであって、それで、新たにこれを独立した裁定機関をつくるというようなことは法制上問題ではなかろうか、こういう解釈でございます。  現在、不服申し立て制度というのがございまして、それをもう少し利用していただければ問題はないのではないかと思いますが、ただ、日本的な風土というのは現在の不服申し立て制度余りお使いにならない。また逆に言いますと、それを余り使おうという気にならないような問題が私どものサイドにあるのかもしれません。したがいまして、そういう制度が必要でないように、非常に対等な関係でフランクに話が持ち込める、話し合えるというようなことが最も望ましいかと思いますが、もしなお必要があるということであれば、この不服申し立て制度の活用ということもあり得るのではなかろうかと思います。
  17. 粟山明

    粟山委員 時間もだんだん迫ってまいりますので、輸出保険の問題はそのぐらいにいたしまして、外務省に……。  同じくカントリーリスクの問題の中で、その基本的な問題として投資保護協定があると思います。投資保護協定によって一番根本的なカントリーリスクの予防措置ということになろうかと思いますが、現在、投資保護協定を結んでいる国並びにその他各国状況についてお伺いしたいと思います。
  18. 近藤健彦

    ○近藤説明員 御質問投資保護協定についてでございますが、現在、わが国が締結いたしましてすでに発効いたしております投資保護協定の相手国は、エジプト及びスリランカの二カ国でございます。  それから現状は、ASEAN諸国及び中国と締結のための交渉を鋭意進めているところでございます。
  19. 粟山明

    粟山委員 アメリカを初め、英国、西独、こういった国は、海外投資あるいは海外進出等に当たって、投資保護協定によって保護されている面がずいぶん多いと思いますが、そういった先進国の例はどうでしょうか。二、三伺いたいと思います。
  20. 近藤健彦

    ○近藤説明員 ほかの国の例につきましては、私ども調査いたしました結果では、西ドイツはこの種の投資保護協定を四十八カ国と締結いたしております。それからフランスは十九カ国、イギリスは十五カ国、それからスイスは十六カ国、イタリアは七カ国と締結いたしております。ちなみに、この締結数は五十六年の七月に私ども調査した結果によるものでございます。  なお、アメリカにつきましては、御承知のように世界最大の海外投資国でございまして、多数の国と投資保証協定というのを結んでおりますが、これは私ども考えております投資保護協定とは若干性格を異にいたしまして、投資保険の引き受けの前提となる手続的な規定を定めたものでございまして、アメリカはこの種の協定を百カ国以上と締結いたしておりますが、必ずしも私ども投資保護協定の参考にはならないものというふうに理解いたしております。
  21. 粟山明

    粟山委員 アメリカの例を除いたとしましても、西ドイツ四十八、フランス十九、イギリス十五、スイス十六ですか、こういった例があるということです。ところが、そういう国々よりも、現在、あるいはこれから日本海外進出なり海外投資が非常にふえていく傾向があると思うのでありますけれども、その場合、まだ日本はたった二つだというのは、どういうところにネックがあるのか。また、中国、ASEANと交渉中ということでありますけれども、その交渉の見通し等について伺います。
  22. 近藤健彦

    ○近藤説明員 先ほど申し述べましたように、私どもの結んでおる投資保護協定の条約数は、ほかの国に比べて必ずしも数が多くないというのは、まさに御指摘のとおりでございます。  この点につきましては、私どもといたしましては、わが国の海外直接投資が近年に至るまで他の先進国に比べますと相対的に低い水準にあったこととか、それから、わが国の場合には、通商航海条約等で通常財産保護とか事業活動に関する最恵国待遇等の一般的な条項を置いておりまして、それなりの効果を期待し得るというような状況がございました関係上、その投資保護協定の締結に対する必要性が必ずしも一般に認識されてこなかったというような沿革的な事情に多分によるものと考えております。  しかしながら、先生から御指摘がございましたように、わが国の対外直接投資は最近急速に伸びてきておりまして、投資保護協定も、こうした投資の増加に対処する投資環境整備の一環ということで、その重要性が最近強まってきておるものというふうに理解いたしております。  現在、協定交渉中の件につきましてどういうところにネックがあるのかという御質問でございますが、特定の国との具体的な交渉内容に立ち入ることは控えさせていただきたいと存じますが、一般的に申しますと、たとえば幾つかの国につきましては、わが国が提示したドラフトに対する対案を相手国が作成中でございまして、それがまだ出てきていないというような国が幾つかございます。また、他の幾つかの国におきましては、わが国から進出する企業の事業活動について与えられます内国民待遇の付与の問題とか、それからこの投資保護協定の保護の対象となる投資の範囲をどういうふうにするかというような点につきまして必ずしも一致していない状況でございます。
  23. 粟山明

    粟山委員 投資保護協定については大体状況がわかりましたのでこれで終わりますけれども、これは非常に大事な基本的な問題でございますので、さらに粘り強く交渉を進めていただきたい、こう思います。  次に、このカントリーリスクの中で、何と申しますか、国際金融関係のカントリーリスクというのが最近非常にしばしば新聞等に出ておりまして、カントリーリスクというと、いまのような投資保証協定とか輸出保険とかいう問題よりも、金融関係の債権債務の問題が前面に出ているような気がするわけであります。非常に多額のお金が日本民間金融機関からいろいろなところ、中南米あるいは低開発国に融資されていて、取り立て不能になるのではないか、あるいは延期をせざるを得ないのではないか。すでに実際にそういう具体例も始まっております。  そこで、それについてお伺いしたいのでありますけれども、まず、最近の日本民間金融機関、この対外的な中長期の債権の残高は現在どのくらいになっているか、ひとつお伺いします。
  24. 畠山蕃

    ○畠山説明員 御指摘の、わが国の金融機関が対外的に貸しております残高につきましては、私どもの方で調査しました結果では、昨年の十二月末現在で、中長期で約五百五十億ドルということでございまして、短期三百七十億ドルを加えまして九百二十億ドル程度に上るものと考えております。
  25. 粟山明

    粟山委員 五百五十億ドルというと十四兆円、中長期で十四兆円もの膨大な金が貸し付けられているわけでありまして、その中でいわゆる特定国と申しますか、あるいは債務不履行になるのではないか、債務支払い延期のおそれがあるというような国々は、現在大蔵省として捕捉しているのは何カ国ぐらいで、その国々に対するいま言った債権はどのぐらいになっているか、お聞きしたいと思います。
  26. 畠山蕃

    ○畠山説明員 銀行の決算が確定しまして、その報告を分析しませんと正確なことはわかりませんが、私どもの見込みでは約二十数カ国、三百億ドルぐらいに上るのではないかというふうに考えております。
  27. 粟山明

    粟山委員 大変多額な金額でありまして、これにつきましてカントリーリスクという面から見ると、将来大変なことにならないようにやはり予防的な措置を十分とらなければならないと思いますが、それには情報収集ということが大変問題になると思います。  そこで、最近聞きますと、大蔵省のバックアップで、カントリーリスクの対策の情報収集機関として国際金融情報センターというのですか、これが設立されたと聞いておりますが、その内容と大蔵省の指導方針について伺います。
  28. 畠山蕃

    ○畠山説明員 お話しの財団法人国際金融情報センターにつきましては、本年三月に民間金融機関等によって設立されたものでございまして、その業務内容といたしましては、カントリーリスクの情報の収集、分析、それからその評価の確立に関する基礎的な研究、あるいはまた海外の借入人に対する調査研究といったようなことを主たる業務内容とする予定でございます。  大蔵省といたしましても、金融機関等の健全性の維持の観点から、このセンターが有効にカントリーリスクに関する情報の充実ということに寄与することを強く期待しておるところでございます。
  29. 粟山明

    粟山委員 通産大臣もお見えになりましたので、大臣にひとつ大きな問題についてお伺いしたいと思いますが、その前に大蔵省にもう一点だけお伺いしたいのです。  最近、いまのカントリーリスクにつきまして、金融機関に対して特定の海外債権引当金勘定が創設されて、各銀行に通達になった。これは確か一%から五%の間というように伺っておりますが、これは現在は有税扱いである、しかし将来はあるいは無税扱いとすることも検討するというように伺っておりますけれども、その点について大蔵省の方針を伺いたいと思います。
  30. 滝島義光

    ○滝島説明員 お答えいたします。  税制改正の作業は、大体秋ごろから始めまして年末までに翌年度の改正の実質的内容が決められます。ところが、このカントリーリスクの問題につきましては、昨年末までのこの作業が終わった後に提起されましたものですから、私ども十分な検討をする時間的余裕がございませんでした。したがって、今後この特定海外債権引当金勘定と、それからすでに設けられております貸し倒れ引当金との関係とか、この三月期からこの特別勘定に引き当てが始められたわけですが、その引き当ての実態がどうなっているのか、そういった問題を徹底的に、しかもオーバーオールに研究させていただいた後で結論を出したい、こう考えております。
  31. 粟山明

    粟山委員 時間も大分なくなりましたので、カントリーリスクの具体的な問題は終わりまして、ちょうど大臣、ようやくお見えになりましたので、ひとつお伺いしたいと思います。  先ほど、まだ大臣が見えます前に、冒頭にもちょっと申し上げたのですけれども中曽根総理がASEANを回ってこられまして、いろいろと対外経済協力の円借款等の供与を約束されてこられました。おとといのテレビでも、北の繁栄は南の繁栄なくしてはあり得ないというようなことを明言しておられまして、サミットに行きましても南北問題について十分意見を出す、こういうお話が一昨日のテレビあるいはけさほどの総理のASEANの報告についても言われております。  そうしますと、この南の経済繁栄にできるだけ協力するということについては、日本経済協力というのは非常に大きな役割りを果たさなければならないと私は考えるわけでございまして、そしてけさほどの中曽根総理も、今度のサミットには山中通産大臣にもぜひ同行していただくつもりだというように言っております。  そこで、大臣にお伺いしたいのは、この対外経済協力は予算的には外務省の予算に大きくなっておりますけれども、こういった「経済協力の現状と問題点」が通産省から出ております。まさに全般的な方針その他については通産省が大きな役割りを果たしておられると思いますし、ことに通産大臣、これは総理に対しては大きな影響力を持っておられることでもございますし、これからの対外経済協力に関する大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  32. 山中貞則

    山中国務大臣 叙勲伝達のためにおくれたことを、まずおわびいたします。  それから、衆参両院商工委員会、与野党の御協力によりまして、当省提案の法律が私の出発の日に参議院で成立いたしましたために、一連の国際会議四つを日本欠席ということなしに全部終了できましたこと、これは大きな成果があったものと考えて、改めて皆様方に御礼の言葉を申し上げます。  ただいまの発展途上国の問題は、その会議においても、債務累積国あるいは非産油途上国等のいろいろな分類はありますが、やはり各主要国の共通のテーマともなっておりました。したがって、いまお話しのように、サミットにおいても取り上げられることになると私も想像いたしますが、しかし大変むずかしい問題を内蔵いたしておりまして、いわば総論賛成、各論反対と俗に言うような実態が裏面にあります。  というのは、全部、先進各国が口をそろえて、保護貿易主義の排除、自由貿易主義の堅持ということを言って、そして途上国に対しては門戸を開放させる。自由貿易方向に持っていく。このままで行くと保護貿易主義に陥るであろう。したがって、それを回避せしめ、また先進国もみずからの市場をそれらの国々に対して開放体制へ切りかえていくべきであるということでは、いわゆる総論として皆賛成しておるわけです。  私は、余りきれいごとを並べるものですから、少し皮肉ってやりました。わが日本世界じゅうから袋だたきに遭って、いまやこわいものはない。はっきり申し上げるが、皆さん方の言っておるのは、プラネタリウムに輝く星を論じておるようなものであって、自分の手でそれをつかむことができないことを知っておるはずだ。というのは、日本に対して自主規制という名の、結局は諸君の保護主義というものを自発的にやらせる交渉をいままで持って、事実、ビデオテープあるいは自動車、オートバイ、限りないほどの自主規制をわれわれは余儀なくせしめられておる。そういう国々が発する言葉としては余りにきれいごと過ぎるではないかということを私は申したのです。  顧みて、わが日本を見ても、発展途上国の市場開放、それに備えての日本の体制づくりは、口で言うべくして簡単ではありません。それは与野党、御存じのとおりであります。発展途上国の輸出したいものはほとんどが一次産品である。一次産品の輸出に対して、受け入れはどの国においても、農業政策に見られるごとく、国内的に基本的な問題点を大変抱えているわけでありますから、そう容易なことではない。したがって、そのような角度からの途上国に対する配慮というものは、具体的に一つずつ片づけていって積み上げがないと、お経のような美しい言葉ではなかなか済まないはずである、そう私は思っております。  まず、わが日本がこれからの発展途上国に対する態勢は、中曽根総理の東南アジア訪問において示されたごとく、いろいろの形で各国の御要請に応ずる形ですでにこたえてまいってはおりますが、しかし、サミットで論ぜられるのは地球規模議論でございます。したがって、私どもも大きなマクロの立場からの議論に参加をして、積極的に日本の果たし得る役割り、それからまた、日本各国に呼びかけるべき言葉、あるいは行動というものは大変むずかしい選択を要するかと思いますが、基本的には、私どもは無資源国でありながら、そして、武力を背景にした国際紛争とか恫喝とか、あるいは乗り出していって手でつかむとかいった資源獲得の手段を持っていない国として、全くの平和裏の資源獲得の交渉をしながらそれを確保して日本に持ってきて、そして高い付加価値をつけて国際マーケットに豊富にして低廉、そしてまた優秀な製品を出すことによってのみわが国は今日まで存在してきましたし、これからもその道しかないということを考えますと、われわれのとるべき道は世界の先進国とはまた違った道であって当然かもしれませんし、われわれの仕事は、日本という立場において、それだけにまた各国の範とすべきものを持っているのかもしれません。  そこらのところをよく考えながら、私どもは、できもしないようなことを言ってみたり、あるいはまた自分たちのひとりよがりを言ってみたりする立場ではない姿勢で終始すべきだと思いますが、総理とはまだ具体的に中身の打ち合わせを済ましておりません。近くすり合わせをいたしますが、恐らく総理も、自分が歩いてきた東南アジアの実感を胸に秘めてそのようなことを言われたことだと想像いたしますので、国際会議から得た感触とそれから今後日本がサミットに向けて持っていく感触とをすり合わせながら、日本のスタンスというものを決めてまいりたいと思います。
  33. 粟山明

    粟山委員 時間もなくなりましたので、質問を最後にいたします。  ただいまの大臣のお話、御所信、よくわかりました。いま財政困難な状況でございますし、したがって、八一年の一月に約束したODA五年間倍増計画というのも、今後毎年一三%以上をふやしていかなければできない。事実上、この新中期目標はなかなか達成困難ではあろうかと存じますが、何といっても、日本のこれから生きる道の上から申しますと、経済協力というものは、国のやることあるいは民間のやること、両々相まってぜひ必要なことではないかと思います。  そろそろ昭和五十九年度の予算の骨格をいま詰めておられることだと思いますが、こういった骨組みについても、今度は中曽根総理も、マイナス五%シーリングよりもっと厳しくならざるを得ないということを言っておられますけれども、その辺について、防衛予算のある程度の伸びと同時に、別な意味の、ある意味の防衛予算的な経済協力の伸びというようなものをどうお考えになるか。私としては、この面だけはぜひ強力に伸ばしていただきたい、こう考えておりますので、その点を最後にお伺いしたいと思います。
  34. 山中貞則

    山中国務大臣 普通の政治の問題でもそうでありますが、国際会議で弁解ということをしてはならぬ、弁解は敗北の第一歩だ、そう考えている私でございますので、たとえばIMFの第八次の増資については、日本はこれだけのパーセンテージの増資をしたではないかとか、あるいは各国に対する援助等の例を取り上げながら日本の主張を前へ前へと言ったのでありますが、そのときに絶えず私を脅かしていたものは、いまのODAの年次計画に従っての日本政府の予算支出はどうなっているのかということを聞かれたら困るなというのが私の率直な心境でございました。幸いその点はどこの国も触れませんで、弁解に通ずる道は歩まずに済んだわけであります。  しかし、顧みてその点は、それではあと残された期間で完全に達成できるかといま言われたように、最近の予算編成の前提を見ますと、達成できることは絶望に近いのではないかという感じがいたします。日本がこれからひとりで世界経済の中で生きていける国であり続けられるならばこれは別でありますが、しかし、日本はいまや日本自体がひとりで歩くことを許されず、またひとりでは歩いていけない、そういう立場に外国からも見られておりますので、やはり約束したことであり、また、しなければならない性格の問題について、予算上の制約をはねのけてどのように達成できるのか、これは単に外務、通産、大蔵のみならず、国として考えなければならない、政府として外国を見て考えなければならない、私はしみじみそう思っております。諸外国はまた、すべて日本よりもすぐれた進度を示しているとも思えませんが、日本がおくれるということはあってはならない。  しかし、さて、じゃ来年度予算で一三%伸ばせるかということになりますと、目下のところは私どもも、政府全体で相談をした上でないと見通しが言えないという非常な苦境にあるということは御承知のとおりだと思いますが、世界で恥をかくような予算編成はしたくないというのもまた国としても当然のことでありますから、そこらの構えは御忠告に従って十分配慮してまいるつもりでございます。
  35. 粟山明

    粟山委員 大臣、どうもありがとうございました。時間が参りましたので、終わります。
  36. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、奥田幹生君。
  37. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 私は、繊維産業の部門に限ってお尋ねをしてまいりたいと思っております。  この十年来、わが国の経済は非常に低迷を続けておりますし、造船あるいは鉄鋼、どういう部門を取り上げましてもいいことはないわけでございますけれども、中でも繊維産業というのは、業界の皆さんはもう本当に声も出ないほど不況で困り切っておる、こういうように受けとめておるわけでございます。  まず、通産大臣はこの繊維産業の現状をどういうように認識をされておられるのか、この点を伺いたいし、さらに続いて、現在、新しい繊維ビジョンにつきまして、繊維工業審議会それから産業構造審議会、この合同会議審議が進められておりますけれども、それの検討状況はどうなんだということにつきましてもお尋ねをいたします。
  38. 山中貞則

    山中国務大臣 「通産のビジョン」というのを出しておりますが、その中で私が一読して一番気になった言葉が四文字ありました。それは「水平分業」という言葉でありました。この「水平分業」という言葉は、かつて江崎さんが韓国で言われたことがあったと思いますが、これをそのまま当てはめますと、たとえばいまの繊維産業等は水平分業の場合に、日本はそれをあくまでもがんばって生き延びさせる方向にその言葉を解釈できるかというと、非常に悲観的にとられるわけですね。ですから、「水平分業」という言葉の使い方を注意しろということを言っているわけでありますが、現にいまでも綿糸の方で、韓国はダンピング、これは話し合いで何とかなりそうですが、パキスタンは補助金つき輸出ということで、これは正式な調査を開始しておりますけれども、そういうようなことがなくてもダンピング的に見られるように、日本はそのような繊維分野において、いまは綿糸でございましたけれども、各種の繊維の分野において、絹、絹糸その他を含めて、どうも近隣諸国に追い上げられつつある。追い上げられると申しますか、実際はそう質も変わらない、そして低コストというもので押してこられた場合に、このままでは一たまりもないという感じがしてなりません。繊維については、各種の繊維についてこれまでもそれぞれの業種ごとの対策は講じてきておりますが、しかし、その結果を振り返ってみて、これで再生、蘇生、そして安定したという業界があるかというと、それは大変疑問だと私は思います。  したがって、先般御審議いただきました基礎素材産業の業種の中に入っているものもありますが、わが日本がこれからの繊維産業をどのようにしていくべきかは、先ほど一応審議会にかかっている旨お話のありましたとおりの経過をたどっておりますけれども、私はずっと見ておりまして、日本の繊維産業は、やはり川上から川下までと申しましょうか、通常アパレルなんというハイカラな言葉が通っているようでありますが、たとえば日本の既製服の男女服に占める輸入の割合はどれぐらいあるかというと、間違っているかもしれませんが、私の直感では五〇%を超えたものが輸入されているのではないか。そのような現状の中で生産、加工、製品、消費という段階を一貫した体系づけを行っていかないと、産地もばらばらであり加工地区も業界もばらばらであり、ましてやそれが製品化された段階への流れは全く無関係である、そういうようなことなどは産業政策として問題があるのではないかとかねがね考えていたわけであります。したがって、ただいまのお話のような、全く生きていけない状態にまで追い込まれたという地域もあり業種もあると私も思います。  したがって、これらの問題を、日本における繊維産業のあり方はどのような新しい姿勢で望むべきか、そういう基本的な方針を定めて、それに対応する施策を臨機応変にやっていかなくてはならないのではないか。しかし、先ほどの粟山君の質問にもお答えしましたように、わが国はいまや工業先進国として列強、列強というのは昔の言葉でありますが、先進国の仲間入りをしている現状で、繊維だけにはかたくなに門戸を閉じていることはなかなか認めてもらえない環境も一方にあります。その中でいかにしてわれわれが、低賃金でなく、現状のままで新しい未来を開拓できるかというのは非常にむずかしいと思います。しかし、じゃあ繊維産業は日本から壊滅していいかということは、当然ノーに決まっています。生き残らせたい、その念願のもとにこれからの施策を展開してまいりたいと考えます。
  39. 黒田真

    ○黒田政府委員 繊維産業の政策がいかにあるべきかという点につきましては、現在、繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして手当てをしていただいておりますが、この法律自体が来年の六月までという期限が一応ございます。そういうことも頭に置きながら昨年の六月、産業構造審議会、繊維工業審議会に、今後の繊維産業に対する施策はいかにあるべきかということで諮問をいたしておる状況にございます。そして基本的には、いろいろ厳しい状況下にあるわけでございますが、繊維産業は一般的にはあたかも衰退産業のごとく考えられているのが比較的世の中に広まっている考え方でございますが、私ども議論いたしまして、そうではないはずだ、繊維産業にも未来はあり得るはずだぞという考え方のもとに、高付加価値化を進めていくことによって生き残りの道があるのだというふうに考えております。技術的な要素も働く余地が非常に強いという要素がございます。  それから、ただいま大臣も申しましたが、川上から川下まで非常に分業体制というものは進んでおりますが、どうもその相互間の連携というようなものに欠けているといううらみがないわけではございません。しかし、これをうまくシステム化すれば、それぞれの分業の持つ強みは発揮されるだろうというふうに考えておるわけでこざいまして、非常に厳しい国際的な状況にはございますけれども、先進国型の産業として活性化をすることは十分考えられるのだという方向づけ、将来像を打ち出しました。そして、これを進めていただくのは、もちろん事業者みずからの自助努力ということでやっていただくわけでありますが、それに対して政府もしかるべき御支援をさせていただくということで、その具体的な方途につきましては、実は現在幾つかの作業グループのようなものを設けまして、それぞれもっと掘り下げて、従来行ってまいりました政策を点検いたしますとともに、今後の方向というものについて打ち出すべく現在議論を進めておるところでございまして、ことしの秋には御答申をいただくというような段取りで現在、ビションづくりを進めているのが現状でございます。
  40. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 ことしの秋に答申をもらって、それで対応を通産省として考えていく、こういうことでございますが、予算措置を伴うものでございますならば、できるだけ早くこれを進めてもらいたいということを要望しておきます。  それから、いまお話の出ました来年の六月に廃止期限が来るということでございますけれども、その後の政策構想につきまして少し具体的なお尋ねをするわけでございます。  構造改善の進め方あるいは設備の登録制、それから設備の共同廃棄等につきましてはどういうように通産省としてはお考えになっておるのか、お尋ねいたします。
  41. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の構造改善の進め方というものが、今後の繊維政策を考える際の最も重要な点かと思います。  実は昭和四十九年から、現在の法律の延長前の法律をおつくりいただいたときから、異業種間結合、縦型の垂直結合、統合という形の構造改善を進めようということで推進をしてきております。私ども、その方向は基本的には間違っていなかったというふうに考えているわけでございますけれども幾つかの条件が厳し過ぎたために利用されにくかったというような御指摘もありまして、その辺の過去に行ってまいりました政府の構造改善に対する金融措置等がどのくらい役に立っているのか、今後の方向としてはどういうふうな点を改めたらいいかということを、実は具体例に即しつつ御議論をいただいているというのが現状でございます。  そして、登録制あるいは設備廃棄というものも、現在は中小企業一般にある制度ではございますが、実は繊維の分野で非常に用いられているという特徴があるかと思います。登録制というものも、過去の不況克服の措置としていろいろ役に立ってきた点はあるわけでございますが、いかにも長期間にわたって維持されているということから、実は前回、五年前に御議論をいただいて御答申をいただいた際にも、やはりこれはその政策的な意味は失いつつあるのではないだろうか、したがって、これはその延長を停止するような段取りを考えるというような御指摘を前回の答申でいただいたこともございますものですから、そういった前回の答申を踏まえて、現在の段階での議論の中では、産業関係からはその存続という点について強い要望が出されておりますが、産業関係以外の、私ども中立委員と呼んでおるような方々からは、そのままに放置しておいていいのだろうかという厳しい御議論もある現状でございますので、私どもとしてはそこで十分議論を尽くしていただいて、その結果いただきました答申を踏まえながら政策的判断はしていきたい。設備処理についても同じような状況にあるということでございます。
  42. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 登録制の問題につきまして黒田局長のお話が載っておるわけなんです。これは先月の十六日の繊維新聞でございますけれども、「撤廃に向けステップ」という見出しで、「黒田局長は「五十一年答申で登録制は廃止されるべきだとの方向がうたわれており、今回はお茶をにごすわけにはいかない」と発言、」こういうようなことを新聞に報道されているわけでございます。  この登録制の問題は、これまで三十年間、通産省の委託を受けてそれぞれの組合の連合会が事務を行ってまいっておるわけでございますけれども、いまおっしゃったとおり、業界の方では非常に心配をいたしております。タオルの業界の越智さんも、こういうことは非常に困る、混乱を起こすという意味のことを言っておられますし、われわれ地元の京都の西陣におきましても、絹糸をつり上げておきながら一方では織機の制限を撤廃するというのはおかしいのではないか、むしろ逆に保護するべきではないかというような意見が渦巻いておるわけでございますから、ひとつこの点については、中立のお立場の御意見という御発言もありましたけれども、局長として、通産省として非常に慎重を期してもらいたい、再考を求めたい、こういうように私は思うわけでございます。  それから、次に移りますけれども、絹織物業界の現況を通産省としてはどう認識されておるのか、そういう認識の上に立って今後どういう政策を展開しようとなさっておるのかという点についてお尋ねをするわけなんです。つまり、生糸の一元化の輸入は、この十年間どう機能してきたかということについてでございます。この制度によりまして養蚕農家はどういうように保護されてきたのか、また一方では、絹織物業界はそれによってどういう影響を受けてきたのか、通産省としてはこれをどう受けとめておられるのか、お尋ねをいたします。
  43. 黒田真

    ○黒田政府委員 繊維産業全体は、現在特に消費低迷等もございまして、全般的に需要が停滞をするという厳しい状況下にございます。絹織物の場合もその例外ではございませんし、いや、むしろ絹織物の場合にはさらに落ち込みが大きいということで、五十五年度から五十六年度にかけて一割ほど生産が落ち込み、五十七年には、その落ち込んだ状況で横ばいで推移する、ことしに入ってからも、どうもさっぱり回復の兆しが見えないというようなことで、大変厳しい状況にございます。  ただ、これは主として内需が大変に低迷しているということの反映と思われますが、他方輸出の方は、最近業界もいろいろ努力をされまして、実は保税によって国際価格の糸を使うという形が可能でありますものですから、この辺で大変努力をしておられる結果が最近になって逐次あらわれてきておると思います。  輸入の方は全体としては減少しておりますが、一部の品種について問題がないわけではありません。しかし、全体としては内需の低迷を反映し、また輸出国側との話し合いの結果を反映して、全体としてはむしろ減少ぎみだということでございます。  主たる原因は、全体的な景況ということに大きく支配されますが、特に絹織物の場合には、その大宗が和装、着物需要でございますので、着物を着る機会、新しく出生してきたベビーブームが去ってしまったために、結婚式、成人式等の機会が少なくなったというようなことも影響したと思いますが、さらには、生活様式の変化等によって和装需要が大きく後退をしているというような構造変化があると思います。  一元輸入が、しからばどういう役割りを果たしたかということでございますが、養蚕農家への影響はあるいは農林省からお答えいただくといたしまして、私ども絹織物の業界の方から見ておりますと、いま申し上げましたような構造的な縮小停滞傾向に、やはり原料高というものが加速をしたという意見が強いわけでございまして、私どもも、どうもそういう状況にあったことはなかなか否定できないのかなというふうに見ている状況にございます。
  44. 阪田彰夫

    ○阪田説明員 養蚕農家に対する影響いかんというお尋ねでございますのでお答えいたしますが、実質的に生糸の一元輸入を開始いたしました昭和五十年に比べますと、養蚕農家数は昭和五十年に二十四万八千戸ありましたが、現在、昭和五十七年では十三万九千戸ということに相なっております。
  45. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 この繭糸価格安定法、昭和二十六年に発足をしたわけでございまして、目的は、生糸の輸出の増進、それから蚕糸業の農家の経営の安定、この二つが目的にうたわれておるわけでございまして、十年前、四十七年に議員立法で一元化輸入の制度ができております。しかしながら、目的はいささかも変わっておりません。  しかし、この十年間の経過を見てみますと、生糸の輸出は、昭和五十年から国内産は一俵も輸出をされておりません。それから、いまおっしゃったとおり、養蚕農家も、たとえばこの一元化輸入の制度ができました四十九年、一元化輸入が施行されたのが四十九年でございますけれども、このときに養蚕農家が二十八万一千戸ありましたのが、いまおっしゃるとおり十三万九千戸。生産の分野で見ましても、四十九年に三十一万五千六百という数字でございましたが、現在では、私が調べた範囲では二十一万六千、こういうようにがた落ちになってきておるわけでございます。絹糸の輸入状況、これは中国から五十一年に六千五百俵入れておりましたのが、五十六年には四千七百俵、韓国からは二万三千七百俵入っておりましたのが、何と六千四百俵に減っております。絹織物も同じ傾向でございます。こういうように輸入を抑えましても、蚕糸事業団は非常に膨大な在庫を抱えておる。  それから需要と供給の推移、これは私が京都府の商工部でとった資料でございます。いろいろ申し上げませんけれども、非常に嘆かわしい数字になっております。京都は生糸の全国の消費量の半分以上を消費いたしております関係で、商工部でデータを集めておるわけでございますけれども、同じような非常に悲観的な数字になっております。  価格はどうかといいますと、いまキロ当たり一万四千二百円、この数字は、ほかの繊維に比べてみますると、たとえば毛糸を比較しますと、三十五年に二・六倍でありましたのが、五十七年には六・一倍、綿糸との比較におきましては、三十五年に七・七倍でありましたのが、何と二十・三倍になっておるのですね。ポリエステル、当時は二・三倍でありましたのが、いまは二十一・九倍。どういう角度から眺めてみましても、まさに四面楚歌という表現がぴったりくるのではないかと私は思います。絹織物業界、養蚕業界ともに泥沼に足を突っ込んだ形にいまなっております。  よその国の例でございますけれども、イタリアでは四十九年に二万俵輸入しておりましたのが、現在では日本とは逆に三万五千にふえておるのです。隣の韓国におきましてもふえてまいっております。先ほど粟山先生の御質問に対して山中大臣がお答えになりました、安い原料を買って、そうしてそれを製品にして付加価値をつけて高く売る、これが先進工業技術国、貿易立国、こういうたてまえといいますか日本の政策とは、私がいまお尋ねしておる問題につきましては全然立場が逆の状態に置かれておる。  それでは、この部門について技術がないのかといいますと、私の生まれたところは御承知の昔は郡是製糸株式会社、いまはグンゼ株式会社と言っておりますけれども、昔本社がございました丹波の綾部というところで、かつては養蚕が非常に盛んであった。あのグンゼにいたしましてもあるいは片倉製糸にいたしましても、世界のトップレベルの技術を持っておる。そういう高い技術水準を持っておりながらなぜこういうことができないのかということは、一元化輸入の制度に大きな壁があるのじゃなかろうか、こういうように私は受けとめておるわけでございます。  そこで考えられますのは、生糸の一元化輸入制度をこの際どうしても撤廃しなければならぬのじゃないか。これについて農林省はどういうようにお考えになっておるのか。  さらにまた、この一元化輸入の制度は所管が農林省でございまするけれども、一面通産省も関係ないことはございませんので、幸い大臣に御出席をいただいておりまするから、通産大臣としてはどうお考えいただいているのか、伺いたいわけでございます。  さらに、農林省についでに伺いますけれども、もし撤廃をしますると、国産の生糸価格はどういうように変わってくると思われますか。  さらに、撤廃によりまする養蚕業への影響について何らか別途に救済方法はないものかどうか。救済方法をお考えになったことがあるとすれば、その点についてもお答えを願いたい。
  46. 山中貞則

    山中国務大臣 日本が生糸あるいは絹織物の輸入国になるであろうということを、だれも考えたことがなかったのですね。戦前は御承知のように桑からお蚕、糸、布、そして製品、日本は生糸をもって輸出の王座を占めさせていたわけでありますから、しかもすべてが純国産ということですから、まさかその日本に外国からの輸入が始まろうとはだれも考えていなかった、政治家もあるいは官も民も。そして、戦後しばらく経過してくるうちにだんだん輸出も、先ほどおっしゃったように一俵も輸出がなくなっても、まあ農林省というところは生糸輸出検査官というのを何年も養っておくような殊勝なところもある役所でございますが、そういうようなことで、気がついたときには韓国、中国あたりから対前年比倍々々というような輸入の増加が始まって、これは大変だということから与野党の議員立法で一元化せしめる。自由化ということは、初めから自由化品目に入っておるのであって、それに対して議論さえなかったわが国、これは政治的にもわれわれは反省すべき点があったのだと思うのです。  しかしながら、それがそうではない。このままほうっておくと、日本の伝統的な輸出産業の養蚕から絹織物に至る王座は脅かされるということから、各党が一致して議員立法でつくったのがいまの一元化法でありますから、農林省が出してつくった法律ではない。しかし、できてしまえば国の法律に変わりはない。農林省に輸入一元化をどうする気かということを聞くのは私は大変酷だ、かわいそうだと思います。だから与野党同士が考えなければならないのですが、それを受けて国内法でありました繭糸価格安定法、そういうもの等はいまや機能しなくなったのですね。あるいは生糸の商品市況においても玉の動きはない。  そういうことを考えますと、どうしてこういうことになったか。これも御指摘にあったように需要というものがほとんど望めなくなった。あるとき役所の局長諸君に、君たちは紋つき、羽織、はかまを持っているかと言ったら、一人、親のものをもらったのがおるだけで、みんな持っていないのですよ。農林省も同じじゃないかと私は思うのです、一、二聞いたことがありますけれども。局長たちに紋つき、はかま、羽織をつくれと言ったって、これはいま大変な価格でありますからなかなか手に入らぬでしょう。和服愛好家である私の目から見ると、日本の着物に対する民族感情は全く変わってしまった。私が紋つき、羽織、はかまで歩くと、園遊会等ではもっぱらカメラのターゲットにされて、変わり者みたいに見られるわけですね。しかし、日本人は本来、家では和服、外では洋服というような二重生活みたいなことでひやかされていた時代もあったのですが、このごろはもう男も女も買おうとしない。このごろ年配の女性がえらいはでな着物を着るようになったということがありますが、それははでな着物を買って着ているのではなくて、若いころの着物を必要なときに着ているので、年配になったときに合うようなものを新しく買わないということの裏返しじゃないか。しかも、結婚式などもいまは別な意味で貸し衣装が問題になっているというほど、自分のものは、まあ結婚式は一生に一度で、二、三度結婚するわけじゃないから、ときにはあるでしょうけれども、したがって一生に一度なら借り衣装で済ませておこうというところに貸し衣装屋の問題がまた起こるのでしょうが、もう自分でつくって自分で着るんだという買い方をする人がきわめて少なくなった。  そしてまた、はっきり言って絹織物等の値段が高過ぎる、庶民の手に届かない。だから韓国産生糸、韓国産大島つむぎという原産地表示があっても、なおかつそれを承知の上で安い方を買うという時代になってきた。  これらを考えますと、西陣のネクタイ業者が、国の一元輸入によってわれわれのこうむった、高い国内生糸による製品をつくらなければならないための損害は、たしか二億一千万かだったと思いますが、一億八千万か幾らかの国家賠償の訴訟を提起されました。ここに大きな矛盾がある。それらの人々は、ブランドとしては不動のネクタイを織っておられて、その原料が安かったら普通だったら文句は何もないが、国の法律とはいえ、議員立法とはいえ、在庫を放出するというようなときの価格は一元輸入によって左右されてくるということから、高い原材料の糸を使わせられることによって結局非常に高い織物につかざるを得ない、そのために売れ足が鈍る、消費者が手を出しにくくなるということから損害賠償を国に求めて訴えられたのだなと思うのです。  日本の繊維産業政策は基本的に考え直さなければならない時期に来ておる、法律も検討し直すべきときに来ておる、そう思いましたが、果たせるかな、おととしから基準糸価を初めて引き下げたりなどしてみましたけれども、その需給と価格の構成の環境にはいささかも変化がない。これは効果がなかったということであります。現実と遊離しているということだと思うのです。  そこで、生産農家を含めてどのような形で日本がこの絹糸、絹産業の分野で生き残っていけるのか、あるいはまた保税等の話も先ほど黒田局長から言いましたけれども、そういうアイデアだけで切り抜けていけるものであるのかどうか。もっと農水省を中心にして通産省も協議に加わりながら、いろいろな団体もありましょうから、この問題については集中した議論をしていかないと、いまの制度は全部間尺に合わなくなっている、私はそう思います。
  47. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 もう時間が来ておりますからこれでやめますけれども、農水省にも通産大臣のいまのお言葉を十分伝えていただいて、この厳しい状況を十分にお伝えいただいて、この制度が果たして是か非かという根本的な問題を両省で御検討を早くお願い申し上げたいと思います。  最後に、たまたまこの問題について三月十四日、臨調答申の中でも触れられております。蚕糸事業団について抜本的な検討を行え、行政価格を見直すという意味の答申が行われておるわけでございますけれども、これについてはどのような受けとめ方をされておるのか、最後にこれだけ一つお伺いをいたします。
  48. 阪田彰夫

    ○阪田説明員 御説明申し上げます。  三月の臨調答申におきまして、確かに繭糸価格安定制度の抜本的検討ということが指摘をされております。私どもといたしましても、在庫がかなりたまっておるという現状もございますし、今後この制度をどう持っていくかということについてはいろいろ検討しておる次第でございまして、今後全体を受けまして幅広くいろいろな場を設けて検討をしていきたいというふうに考えております。
  49. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員 終わります。
  50. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、上田哲君。
  51. 上田哲

    ○上田(哲)委員 通産大臣という肩書きでお呼びするのが大変奇異な感じがしますが、なつかしいですね。一種の感慨を込めて御議論をさしていただきたいと思うのです。  各国を回られて大変御努力をなさったわけでありますが、そうした成果も踏まえて私がお伺いしたいことは、戦後最悪と言われる世界不況の中で、間近のサミット、来月のUNCTAD、ここで世界不況をどのように改善していくのかというところに、今回の歴訪の成果も含めて日本側の努力があるだろうというふうに思うわけで、その点をひとつぜひきょう、いろいろ伺ってみたいと思います。  伝えられるところでは、今回のサミットは問題点なしという言い方が政府部内にも出始めたようであります。私はそうは思いません。特に東西問題などは大して出ないだろうというような観測も流れておりますけれども日本からすれば、アメリカからの日本の先端技術産業をたたくという重大な東西問題もあるだろうという問題意識を持っておりますし、アメリカにとっての南北問題はメキシコ問題だ、それをしょわせるなんという話だけでいいのかというような課題を追及していけば、切りがないだろうと思います。重要だろうと思うのです。  おととい中曽根総理と論議をいたしました中でも、今回のサミットは非常に重要であるという発言もありましたし、そうした世界不況をどのように改善するかということになれば通産大臣の出番、役目の大きさというのはひとしおだろうと思うのですね。これはひとつ、そういう意味の基本的なところの一言で結構ですから、なるべく時間を大事にしたいと思いますので、その辺の心組みの方向性をまず承っておきたいと思います。
  52. 山中貞則

    山中国務大臣 上田議員の質問を受けるのは久々でありますが、それは防衛庁長官として受けていた昔の話でありまして……(上田(哲)委員「総務長官」と呼ぶ)総務長官時代から防衛庁長官、私自身も感無量でございます。しかし、一貫して流れるものは、政治家の哲学、信念というものをその負託を受けた場所に当てはめていけばおのずから道は開けると私は考えておりますので、その時代と信念は変わっておりません。  そういう個人的なことなど申し上げて恐縮でありますが、ただいまの南北問題がサミットの大きな問題になるであろう、こういうことも間違いのない一つの事実と思いますが、それは論議ができる問題である。そしてさらに、その南北問題の真ん中に挟まって最初に論議されるのが債務累積国の問題であろうと見ています。そうして言葉にならないで、その流れの底流の中に初めから終わりまで一致点が見られないけれども、どうしても底流としてまとわりついて離れないのが東西問題である、そのように見ております。まずそれだけ申し上げたい。
  53. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣は、貿易大臣会合、貿易大臣・大蔵大臣会合、OECD閣僚理事会、IEA閣僚理事会、さらに中近東等々とお歩きになったわけでありますし、そうした成果は当然そこに反映されるわけだろうと思います。したがって、それらを踏まえて最初に、いま問題意識を披露された点のベースとして、世界不況あるいは国内不況の現状認識というのをまず承っておきたいと思うわけです。  いまさら私が申し上げるまでもないわけでありますけれども、保護主義的な働きの標的が日本に向けられているというようなベース、あるいはさっき申されました中進国や開発途上国への累積赤字の問題、こうした問題がたくさんある。特に去年の八月に、メキシコは事実上の倒産だろうと思います。こういう累積六千億ドルというような、ちょうど軍事費の累積と同じだぐらいのいろいろな議論がございますけれども、そうした不況の状況の中で、たとえば、私はこれも後ほど議論できればと思いますけれども、アメリカの高金利というのは高金利政策である、なかんずく対ソ戦略としての高金利政策である、言うならばそれも軍事政策の一端であるという側面があるという認識を持っておるわけでありますけれども、そうした立場がさまざま国際経済の不況のベースの要素となっていると思います。  たまたま原油の問題が出てまいりました。明るさであることは言うまでもないわけでありますが、これらのいま私が申し上げたような要素、常識的な要素でありますけれども、この辺を踏まえて、たとえば原油を引き金にして世界経済はどれほど明るくなったのか、いま挙げた要素をどのように克服できるような要素たり得るかというあたりの認識を伺いたいと思います。
  54. 山中貞則

    山中国務大臣 いまは世界で、景気好転の兆しと言った方が私はいいと思うのですが、それが見えているのがアメリカ、日本、やや弱いけれども西ドイツ、そういう感じで、ほかの国はまだ低迷しておりますし、イタリー等はこれはまだどうも明るさは見えない。いろいろ三分の二ぐらいできると思うのです、先進国の中においても。そのうち、原油の五ドル値下げについての感覚はそれぞれの国によって違います。  たとえば、私は、IEAの場において産消対話を主張し、結果的にはそれが合意事項にも取り入れられましたけれども、それに対してイギリスの代表は、いや、それは違う、産油国が求めているのは産産対話である――イギリスは持っていますからぬ。産産対話であって、石油を持ってない国と対話する意思はないんだということを言うから、冗談じゃない、きのう行ってきたばかりだ、日本は九九・八%の、無資源国に近い石油を外国に依存していて、その大部分が湾岸諸国である、したがって、何にも産油国と関係はないけれども日本が行った場合において、日本との協調、親善、産消対話の必要性ということは、意外なほど産油国の方からも話しかけを受けた。私は、世界全体がいままでのような一方的な通告とかショックとかということにならないように、将来は産消対話ということをぜひやるべきである、したがってコミュニケにも入れろということを強く主張して、日本の私が主張したがために入ったのが、若干抵抗した国もある中を押し切ったのが産消対話の言葉と、それから場合によっては国際通貨の協調介入の必要があることを認めさせた、この二点だと思います。  たとえば相場介入などは、アメリカは実は反対なわけですけれども、強引にそれを押しまくって入れさせましたが、これなどがサミットの場で取り上げられるのか、られないのかわかりません。しかし、その五ドル値下げの分についてもどうも各国評価が違う。  この機会に御報告をいたしておきますと、大変な収穫であったと思いますのは、日本・サウジの定期協議を経て、そして五年程度ということをちらっと私は聞いて、しかしほかの国を聞いてみなくてはと思って、アラブ首長国連邦とクウェートに行って率直に聞きました。五ドル値下げに対する産油国側の苦悩というものもよくわかります、しかし、私たちはせっかく五ドル下げていただいたものを大切にしたいのです、そのために、できればどれぐらいの期間ということをお教え願えませんかと言ったときに、首長国連邦のオタイバ石油相もあるいはまたクウェートの石油相も、三年ということを明確に言いました。しかもその言い方は、三年間はこれ以上下がらないようにしたいという言い方であります。でありますから、私どもはこれから大体三年の国家経済計画を、いまの石油価格でもって新しい活力を付与するための計画を立てなければならぬといま思っておるところでありますが、日本はその意味で明るさが出てきております。  しかしながら、アメリカの景気の明るさというものは、石油の問題と直接に余り関係がない。自動車の大型車が売れ出したあたりが影響があるのでしょうが、逆に小規模なものは倒産してしまったりしたようないろいろな現象の起こる国でありますから、むしろ金利というものに左右される。アメリカの金利が少し下がれば、アメリカは世界最高の国民所得を持つ国でありますから、その瞬発的に立ち上がっていくバネというのは相当大きな力がある。わが日本に当てはめた場合に、どうそれを民衆の力に当てはめたらいいのか、それをくみ上げたらいいのかというのは、これからまさに政策の問題であると考えております。  以上、一応簡単に答弁いたしました。
  55. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと話は飛ぶのですが、いまお話があったので、その三年の問題ですね。三年の問題が、日本の今後の政策、電力料金の問題なども言及されたようでありますが、それらを含めて、電力料金だけじゃないかもしれないのですが、大臣の打ち出される政策的なプログラムとしてどういうふうになるのでしょう。
  56. 山中貞則

    山中国務大臣 おととい総理が消費者会議か何かで電気料金について、それは五ドル程度ならば設備の更新あるいはまた維持、補修、そういうのに充てた方がいいというお話があったそうでありますが、私ちょうど列席いたしかねまして、きのうからその質問を受けておりますが、私は、単年度五ドル値下げに対処するのには、去年値上げしたいと言っていた業界でありますからそれでいいと思うのですが、しかし私は、いま三年という確信を持って帰ってまいりましたので、経済運営は、五ドル値下げの二十九ドルは三年は最低続く、ならばそれをどのように経済に活性を与え、あるいはまた国民生活の向上にそれが資するような経済運営をするか、これはまさにこれからの政策の基本として考えなければならぬと思います。  その際に、電気料金は単年度議論とは超えて、やはり一つの中に入った要素である。それも考えなくては、民衆への直接の還元ということは、いろいろな手があっても、ともすれば間接的になりがちでありますから、そういうようなことなどは、金額の多寡は別にして、一つの手法の中に入りますが、この五ドル値下げを私たちがどのようにうまく使うかについては、概念的に言えば、すべての国民の生活の向上につながるところまでということにしたいのでありますけれども、国家経済運営としては、この運営が結果、輸出余りにもふやすという形の繁栄になってもちょっと、また経済摩擦の問題あるいはまた貿易アンバランスの問題等に火がつく。  したがって、大変むずかしいかじの取りようですが、一言で言えば、内需というものを重点に、これをてこに使っていくということになりましょう。内需振興といっても、さて大変むずかしい問題がありますけれども、しかし五ドル、三年、二十九ドルのままで引き下げられていくということが前提であるならば、そこにおのずから行き詰まった日本の財政、あるいはまた四面楚の歌の聞こえるごとき日本経済の現況というものに活力を付与する道はあるはずであるし、それを引き出すのが政治だ、そのように考えております。
  57. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そのとおりだと思うのです。そうして、そこにしぼりますけれども、電力料金にしぼれば、三年の見通しが立つならば、電力料金改定の問題は直ちに手をつけるということになりますか。
  58. 山中貞則

    山中国務大臣 直ちにはむずかしいんじゃないでしょうか。  ということは、電力会社も、これは別途、円レートの問題も絡んでまいりますけれども、そういうことがあって去年は値上げをしたいと申請をしかかっているとき、直前まで来たわけですけれども、その後だぶつきその他によって一応見送っておるうちに五ドルの値下げ、円も最近は戻してきつつありますが、この基調が非常に遅い。世界経済で、各国で五ドル値下げの影響を一番よけい受けるのは日本だとアメリカでさえも言っている。そのはずであります。じゃ一番いい影響を受けた日本がどのような政策手段をとるかというときに、電力料金はもうさわらないんですという政策の展開は不可能である。  私は、さわるという、さわり方もいろいろあると思います。あると思いますが、その条件の中で電力料金を抜いて議論をするわけにはまいらぬ、政策の中には当然入ってくる、そのように考えます。
  59. 上田哲

    ○上田(哲)委員 くどいのですが、電力料金にさわるということは電力料金を下げるという意味であるとして、それはいつごろになりましょうね。
  60. 山中貞則

    山中国務大臣 目下、部内でありますが、私は各電力会社のコストについて克明に全部調査を命じました。それは、役員の給与も含めて全部調査であります。さらにまた、全体としては石油の燃料のウエートは電力では四〇%を切っておりますので、石油の値下がりした分は全部電力会社の経営コストがそれだけ、一〇〇%改善されたんだとは言えないんですね。それに代替エネの問題等もございますし、そこらを勘案して電力会社九つを全部分析をしてやっていきたい。  たとえば、沖縄電力などというものは九つのうちには入っておりませんが、ほぼ国策会社と言っていい会社ですけれども、当初臨調答申等もこれあり、あるいは行革の方針等もあってどうするか、九電力のどこかに入るか、あるいはなお独立してがんばっていくか、そのかわり高い電気料金でもしんぼうするかという議論をやっておったのですけれども、五ドル下がったらこれでやっていける、だからその論議はしばらく先にしてくれというような変化が、実際にいい方は出ているわけですから、ほかの電力会社は全然関係はないということは言えないはずですね、沖縄電力の一例をとってみても。  したがってそういう意味で、いつごろからと言われても、ちょっといまのところ私、自信がありませんが、いま、いつごろからできるかの検討のための、私自身の判断の資料作成を命じておるということでおわかりになるように、相当な足取りだと受けとめていただいて結構だと思います。
  61. 上田哲

    ○上田(哲)委員 一年以内だと考えていいですか。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 それがあなたの質問の特徴で、一年以内とかなんとか刻まれると困りますから、いま先ほどのお答えどおり、相当速い足取りで検討を開始したということの答弁にとどめさしていただきます。
  63. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうもくどくて申しわけないのだけれども、三年目ということにはなりませんね。
  64. 山中貞則

    山中国務大臣 みんな国民のことを考えているわけですから、電力会社だって公的性格の強い会社なんですから、やはり使用者のことを考えなければいけないわけですから、そこにおのずから良識というものは働くと思います。したがって、いまおっしゃった三年目かということはあり得ないとはっきり申し上げていいと思うのですが、一年以内かということについてはちょっと、いま検討作業を命じているものが手元に戻ってきておりませんので、それで判断をしかねているわけで、なるべく早くやりたいというのが私の気持ちでございます。
  65. 上田哲

    ○上田(哲)委員 年内に恐らく具体的な線が実施に移されるだろうというくらいの感触に私は受けとめましたので、勇断を期待いたしたいと思います。  魅力的なテーマが出てきたものですから話がほかにずれまして申しわけないけれども、つまり原油値下げの問題を含めて、世界景気の足取りに影響があるけれども、手放しに楽観ができることではないというようなところで使われていらっしゃるのだろうというふうに見ておきたいと思います。  ちょっとおさらいをしておくために、国際経済の見通しだけでなくて、日本経済ももう少しく、特に中小企業にしぼって、しぼるといいますか、ウエートを乗せて感じを承っておきたいのでありすけれども輸出が落ち込みを脱して少し回復の傾向にあるとか、あるいは在庫調整の進展が見られるとか、いろいろなことは確かに出てくるわけですけれども、鉱工業生産の数字の問題でありますとか雇用情勢、いささかも好転しているとは言えないわけであります。これはやはり中小企業にしわ寄せされてくるという当然な理由からすると、さきの景況調査を拝見いたしましても、中小企業は依然として大変厳しい状態のままだ。先ほど、全体はともかく日本にはいいだろうということでありましたが、中小企業にウエートを置くと、どういうふうな見方になるでしょうか。
  66. 山中貞則

    山中国務大臣 これは業種によっても異なると思いますが、しかし全体的に、国民生活全体が、減税の問題は別にしても、このために生活環境というものにゆとりが出てくるところまで経済的なものが浸透しておりていきますと、消費経済というものが回復をしてくる、そうすると繊維その他の日用品の売れ行きが進んでまいりますから、その分野の中小企業は明るさが見えてくるであろう。  ただ、一方的にそれを言いましても、中小企業の中で全くエネルギーに関係のない中小企業の人たちは、依然として環境好転に石油値下げは直接にはつながってこないわけでありますから、そこらのところで、やはりこれから石油値下げの恩典を受ける中小企業と恩典に関係がなく依然として苦しい状態の中小企業と概念上あり得ますから、それを具体的に分析をして、どのような指導、手当てをした方がよろしいのか、これからの検討事項だと考えます。
  67. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それじゃ本題の方に入らしていただくのでありますが、まさに精力的にお歩きになった。その中で、プレサミットともいうべき国際会議を経られて、この中で会議の論点は三つになるだろうと思います。一つは、世界経済世界貿易の拡大に向けて先進国が果たすべき役割りは何か。もう一つは、累積債務や経済の落ち込みに悩んでいる中進国あるいは途上国への対策、投資問題というところをどうすべきか。もう一つは、これはアメリカが強く主張しているところでありますが、ソビエト、東欧圏への経済規制のあり方、いわゆる東西問題。この三つに整理されるだろうと思うのです。  大臣がいろいろお歩きになって、これは大臣でないとわからないところがいっぱいあるわけですね。ほかの人にはわからぬわけです。したがって、ぜひひとつ胸襟を開いていただきたいと思うことを幾つか伺いたいのでありますけれども、OECDの閣僚理事会なんかでは、アメリカの高金利政策についてはかなり批判が出たであろうと伝えられているわけでありますけれども、この辺はどれぐらい厳しく、どんなぐあいに出たのでありましょうか。
  68. 山中貞則

    山中国務大臣 日本も含めて今日の世界経済の中で、ことにレートの安定等を論ずる場合に、一番阻害しているのはアメリカの高金利であるという意見は、国名を挙げていきますといろいろ差しさわりもありますが、西ドイツあたりははっきりと言っておりましたし、イタリア等もそういうことを言っておりました。そういうような発言の環境から見ますと、確かにアメリカは高金利の中で一応の成功を納めつつあるように私は思いますが、しかし、アメリカ一人のみよければ、あるいはひとりドル高でさえあればそれでいいというアメリカでも、いまやおれなくなっているということを感じました。したがって、いまおっしゃいましたように、世界各国の全体の空気をとらえれば、アメリカのドル高に対してはほとほともてあましておる、ずいぶん頑固だな、これだけ言ってもわからぬのかという空気がアメリカ側に集中していると私は受けとめました。
  69. 上田哲

    ○上田(哲)委員 各国からアメリカに協調を求めて、ぜひ一緒になってアメリカの高金利を下げようじゃないかという意見がかなり出ただろうと思うのであります。  伺いたいのは、アメリカはこの金利の今後の見通しについてどういう発言をしたのでしょうか。大変不透明になっているわけなんですが……。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 アメリカが発言をしておればまた議論ができたのですが、アメリカは全くそれを変更する意思なしと私は判断しました。したがって、アメリカはそれらの話題には一切返答しない、黙殺という態度であったように思います。
  71. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういう意味では、アメリカの高金利政策に変更の意思なしということになれば、各国の利害はかなり対立せざるを得ないですね。そのあたりはどんなぐあいだったのでしょうか。
  72. 山中貞則

    山中国務大臣 私が言ったのは、本音はそのような状態であったと申し上げているのですが、国際会議というのは妙なもので、最後にはコミュニケかなんかをまとめて、その中に賛成も反対も全部入っておるというようなふんわりしたものになって、まあまあここらにしようじゃないかということになってしまいますから、結論から言うと、中身ははっきりいま申し上げたような言葉もあるいはまた態度もあったのですが、いわゆる対立と言っていいですね、しかし終わるころになると、それがほんわかと、何となく有意義であったというようなことで終わりになっておりまして、これを取り出すと、サミットであっても対立はやはりはっきりして収拾に苦労するだろう、そう思います。
  73. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まさにその辺のところを伺っておかなければ、日本の利害が非常に絡まってくるところだと思うんですね。  おっしゃるように、文字面では、インフレなき持続的成長と高水準の雇用の回復、さらには保護主義の排除と自由貿易の維持、こうなっているわけであります。これはお経でそのとおりでどうするのかということになるのですが、少なくとも共同声明によりますと、日本や西ドイツに対しては、財政赤字の削減に当たっては景気回復に水を差さないようにという注文がついているわけですね。これは文字面だけで、さようでございますと言えばそれでいいのでしょうけれども、具体的には、赤字財政の日本が行革なり何なりでとにかく大きな旗を振っているのを承知の上でその赤字財政の削減に当たって景気回復に水を差すなというのは、どういう内容の注文であったということになるのでしょうか。
  74. 山中貞則

    山中国務大臣 その赤字財政の克服は、日本に対して放たれた言葉ではありません。日本は非常に優秀な経済運営をやっている国として見られていると私は感じました。その言葉も、はっきり言ってアメリカをターゲットにした言葉なのであります。アメリカの巨大なる財政赤字がいわば高金利の裏表の問題でもあるし、財政赤字というものを全然考慮してないアメリカの態度というものは解しかねるというのが各国の空気で、日本の百兆円がどうのこうのという話などは全然話題になりませんでした。したがって、それはアメリカに対して向けられた言葉である、アメリカも十分、自分の国の財政運営について言われたことだなと承知しながら、その文章はのんでいると私は見ています。
  75. 上田哲

    ○上田(哲)委員 さきに東京で開かれた三十人委員会、これなどでも、経常収支の黒字が大きくインフレ率が低い国は景気刺激策をとるべきであるということを言っておりますね。こういう立場では日本に向かってのものだというふうに理解しているのですが、そうではないのですか。アメリカに向かってのいろいろな立場もございましょうが、これは日本に向かってのことだということにはならないのですか。
  76. 山中貞則

    山中国務大臣 私が出た四つの国際会議においては、日本に対する非難、注文あるいはいまみたいな具体的な問題は一つもありませんでした。日本を財政も経済もうまく運営していっている国という、むしろわれわれもそういうふうにしたいという感じのような目で見られておったように感じます。
  77. 上田哲

    ○上田(哲)委員 OECDの加盟二十四カ国が三つのランクに分かれて、日本はアメリカ、ドイツともどもに一番いいランクにあるわけですね。こういう国をまとめて、かつてのエンジンカントリーズという言葉にはならないけれども、先に引っ張っていく、景気を引っ張っていくという役目はひとりアメリカではなくて、いまや日本もドイツもそういう立場の期待はどうなのでしょうか。
  78. 山中貞則

    山中国務大臣 いわゆる機関車論でしょう。しかし、今回は、前に機関車論をやってみたけれども、どうも機関車論では世界経済の発展というものはうまくいかない、また機関車もそれぞればらばらで三両連結になっていないわけです。したがって、機関車論は今回は姿を消している。そうして日本に対しての、特別に日本が先頭に立って世界に寄与すべきであるという具体的なはっきりした注文は受けておりません。
  79. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。  OECDの閣僚理事会で安倍外務大臣が演説をされた。その演説の中では、日本は内需拡大の経済政策をとるという表明をされていると思います。これはいかがでしょうか。
  80. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、いわゆる読み上げる形の発言でありまして、印刷物には入っているものでして、その中にそういう内需中心という言葉を入れたかどうか……(上田(哲)委員「いや、中心とは言わない、拡大ですな」と呼ぶ)そういう意味でたしか隣の席で彼が読んでおりました。
  81. 上田哲

    ○上田(哲)委員 耳に残った記憶をお尋ねするということになっても困るのですが、OECDの閣僚理事会で外務大臣が、内需拡大を大いにやるんだという表明をされているわけです。これは当然、これからの日本国内政策そのものとしてもなければならないし、対外的な立場としてもなければならないだろうと思います。秋以降、貿易摩擦の問題がまた出てくるだろうということは別にしましても、OECDの閣僚理事会で外務大臣がそういうふうに発言された日本の内需拡大政策、努力、これは国際公約であるという位置づけになると思うのですが、いかがでしょうか。
  82. 山中貞則

    山中国務大臣 最後のコミニュケをまとめる前にそれぞれ各国の発言順に従って着席して、そして発言をしていくわけでありますが、みんな出たり入ったりしておりまして、それでそれぞれに発言をしているわけで、公約と言えば公約だし、日本意見と言えば意見日本の主張と言えば主張ですね。たとえば、午前中は安倍大臣と私と並んで座って開会その他のセレモニーをやって、そして、一応外務大臣の発言までは私もおりましたが、私が出て安倍さんが残る。午後の貿易問題になりますと、今度は私が出て安倍外務大臣は出ない、またカウンターパートも変わる、議長は変わりませんがね。また翌日になると、今度は経企庁長官代理に井川次官が出て、私と安倍さんは出ていない。したがって、そこで発言すべきことは国内で積み上げて分担をして発言しておりますから、脈絡を失ってばらばらになって、人も変わって発言も変わってということはありません。それは国として一貫性を表明すべきであります。しかしながら、会議というのは、そこで一国一国がどう言ったから、あるいは一国を名指しで批判するのはやめようというような声はありました、打ち合わせのときに。だからそれはありませんが、どの国が何と言ったということは記録にとどめる、しかしさらに発言があったら議事録に載せるというようなことで処理していきまして、最終的にコミニュケの合意ということをやるわけでありますから、公約と言えば公約、しかし、コミニュケを見れば、日本はかく主張して約束をしたとは書いてないのですね。  そういう意味でありますから、私たちの国家経済運営世界から見て、結果的にそこで表現したことと一致した経済政策をとっていく、また道義的にも、選択の道としてもそれはすでに明らかにしていることでありますから、その責任はやはりある、そう思います。
  83. 上田哲

    ○上田(哲)委員 会議の流れや仕組みもよくわかりました。  それで、そのわだちの強さもそれぞれでありましょうけれども、いまおっしゃったように、従来の基本姿勢にもとるものではないわけで、外務大臣がどう言ったかという話は外しますが、通産大臣として、これは国際公約であるというほどの重みのある政策であるということでよろしいですね。
  84. 山中貞則

    山中国務大臣 ことにことしは石油の五ドル下げというのがありましたから、これを私は天恵とし、日本が一番うまくやった、しかも外国に迷惑をかけることを少なくしていわゆる内需振興、そういうもので切り抜けた、世界に範を示した国というものにぜひしてやろうという、野望じゃなくて、私は一国の政治をやる者の当然の責務だと思いますが、日本が一番りっぱにやったなという国にしたい、そういうことで考えておりますから、表現がそういうことになると思います。
  85. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、これはまさに国際公約、別にほかの国のためにやっているのじゃないのだから国際公約ということの意味はないのじゃないかというとらえ方ではなくて、この後アメリカの景気が回復する、日本の黒字がどんどん高まっていく、これはもうこの秋以降の摩擦というのはかなり激しいものになるだろう、恐らくサミットの議論一つになるだろうというふうに考えますね。そういう意味では、この問題をやはりどうしても重点に置く上で、さらにそのことを対外的にも国際公約という立場で努力をしていくという立場が正しいのじゃないかというふうに思っておるのですね。いかがでしょうか。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 別な表現で言いますと、いま自分の国の国家経済運営に自信を持っておると胸を張っている国は一カ国もないのですよ。そして、日本は胸を張ってはいませんが、わが国はかくするということを言えるという立場で言うならば、日本は居並ぶ世界のOECDなりあるいは、IEAはちょっと性格が違いますけれども、蔵相・貿易会議とかというところでは、日本というものははっきりやっているなということを、日本は石油ショック等については相当うまい切り抜け方をしたなということ等もありましたが、自信を持っている国があるかというと、どうも自信を持っている国がない。  たとえばアメリカは、先ほど金利の問題では集中砲火を浴びたと言いましたけれども、やはり彼らはいわゆる栄光のアメリカ――というのはフランスでしたかね、栄光のフランス。要するに、アメリカはアメリカだぞという気持ちがあるのですが、最近はそれが、ガスの依存度の問題とかなんとか、東欧圏がOECDに入ってきたりして、アメリカはアメリカなんだぞと言ってみても、アメリカが何だいというような空気がやはりあるわけですね。たとえばアメリカのシュルツ国務長官とブロックUSTR代表、それからリーガン財務長官、三人で打ち合わせて各国に大蔵・貿易大臣会議を呼びかけた、そのことは隠していません。ところがそれに対して、なぜアメリカはそんな資格があるのか、なぜそんな会合をしなければならぬのか。たとえば、こんなものは名前を出して言わなければしようがないですが、イタリーの代表に至っては、この会合に参加することについても国内で激論が闘わされて閣内でも議論がおさまらず、したがって本日はわが国の通産大臣は出席を拒否しておる、したがって大蔵大臣一人しか出席できなかった、自今このような会合については大いに反省されたいというようなこと等もありまして、国際会議の場に出ると、小国といえども発言権は一つ、行使する票も一票ですから、アメリカは意外と苦境に立つことが多いんだなというふうに見ました。したがって、国際会議場におけるアメリカは、われわれが見ているアメリカと違って、非常ないら立ちと苦境と、自分の思いどおりにならない一種の焦りというようなものを絶えず体で、言葉であらわしていて、なおかつそれが物にならないという感じのようでございました。したがって逆に言うと、世界各国でいま自信を持って国家経済運営していると思われる国は日本しかなかったのではないかなという気がいたします。
  87. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この後、内需拡大の問題や税制の問題やその他、ぜひずばずばとお答えいただきたいことがあるのですが、大臣の御都合があるというので話を変えまして、北炭の問題をちょっと伺っておきたいのです。  私はこういう話を聞いたのです。大臣が夕張へ行かれたそうですね、それで炭住街をごらんになったという話、これはほうっておけないぞという大変強い意欲を持たれたという話が伝わっているわけです。いいことだと思うのですね。何となしにビューロクラシーの頂点に乗って決裁の判こを押しているならとっくに終わってしまっているわけですけれども、あるいはこれはもうイソップ物語が広がっているのかもしれないけれども、大臣がそこで、それができなければ政治は要らないじゃないかという発言をされたとか、これはいいことです。前大臣は四月までには結論を出す、こういうことになっているわけですね。もう四月は終わった。保険の問題も期限に来ている。いまさら、九十何人が亡くなり千人もの雇用問題であすの生活を待っているなんという話をくどくど繰り返さないのですが、現地まで行かれて胸に響かれるものを持った政治家山中大臣は、これはつぶすのか、つぶしちゃいかぬぞという決意を持たれたというふうに私は理解をするのであります。その辺の心証はいかがですか。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 ちょっと事実関係が一つ違うのですが、僕は現地に行かしてもらう暇がないのですよ。ただ、組合の委員長さんとか事務局の方なんかともたびたびお会いしておりますが、私の話しかけでそういうふうにあるいはとられたかもしれません。あるいは、それは地域ぐるみの夕張市の浮沈に関する問題ともとらえなければならない問題であるということも、市長さんや商工会議所の方々と話し合ったこともありますし、理解したこともあります。あなたはまだ若いが、ひょっとしたら僕の言うことが当たっているかもしれぬが、おじいさんの代から山とともに暮らしてきたのではないかと言ったら、そうです、私は三代目でありますという答えがはね返ってきたりなどしたので、私があたかも現地で問答したように聞こえたかもしれません。そうではございませんで、暇がございませんでした。  それから、四月末というのは私の方で延ばしてもらったわけです。四月末から五日の初めにかけて先ほど申しました会議に出るので、その答申は私が帰ってきてから出してもらいたい。出すについても私自身の判断がある。ただ出してもらって、一部に伝えられているように、もうだめだ、それならばあとは離職二法だ、労働省の方だというのじゃ、そこで政治家は要らぬじゃないか、大臣は政治家だろうと言ったことは事実です。要らぬわけですよ、素通りしていけばいいのですからね。  しかし、私が帰ってきてから考える、帰ってきてから報告してくれと言ったのは、考えることがあったからです。そして、私自身が提案を申し上げる用意がある。それはだれに対してということも現時点ではぼかさせてください。そして私の提案をぜひ実現をさせたい。万々一それができなかったときは、いまの状態でもともとです。試みてみるべきことは断じてトライすべきである、私はそう思っておりますから、いまその準備をさせておりまして、一両日中に明らかになるはずでございます。
  89. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は非常にいいことだと思うのですよ。私はさっき、ささやかな懐旧の情を述べていただきましたし、私も同じ感覚でありますのは、さっき防衛庁長官と言われたけれども、その前の総務長官のときですね、私は当時の山中長官の沖縄返還に尽くされた努力を高く評価しておるのです。これは野党の立場で、いまもあの返還についての内容、努力を評価するにいささかもやぶさかでないのであります。これは為替の問題その他できないことをやったのですよ。私は、沖縄の問題があれだけできた人がこれを見逃すはずはないと思うし、そういうことを思う人々が多いことが、恐らく行かない夕張へ出かけていって涙を流したみたいな話を生んだと思うのです。しかし、私は、政治家ここにありというお言葉の中には、行かずといっても流した涙をむだにしてはいかぬと思うのですね。どうも感情論で言っているようになって残念なんですが、余り理詰めでいって話をしようとは思いませんから、この御努力を期待するわけです。  それで、うまくいかなくてももともとだというのではなくて、やってもらわなければ政治家はやはりいたことにならないわけですから、そうすると、新会社設立ということになっていましたけれども余り具体的に言うのはいけないのでしょうけれども、たとえば大沢管財人が出したのよりも石炭協会の検討の方が厳しいわけですね。大沢構想というのは、五年七カ月かけて二つの切り羽を設けて、年間の出炭量は七十五万トン、人員千人で開発から終了まで二十年間で収支とんとんだ。出炭開始までの必要資金が三百三十億円。ところが、石炭協会の検討というのはこれよりももっと厳しい。私の承知している限りですけれども、出炭開始までの期間が四年八カ月に短縮されるし、雇用人員も二百人ほどふえるけれども、出炭量は年間五万トン減るし、開発資金も数十億円から百億円ふえ、この結果、再開発はむずかしいのじゃないかというふうな意見が強まっているわけです。こういう状況の中で、つまり引き受け手をつくるということですか。
  90. 山中貞則

    山中国務大臣 いまおっしゃいましたようなことは全部承知の上で、それを踏まえて、そしていままで一度もたれも考えたことのなかった構想を私は帰るまでに考えて腹を決めて帰ってきておりますから、その構想を発表するための場所、手段、そういうもの等をいま準備を進めて、二、三日うちにそれができると思っております。したがって、先ほど、だめでもともとと言いましたのは、ほっておけばもうだめなわけですから、皆さん承知していらっしゃる。一縷の道があるならば、しかも全く違った発想でやれる方法があり得るならば、それは通産大臣の責任において、私の進退をかけてもそれに体当たりしてみる価値のある道が一筋発見できたのです。そのことに私は体当たりをしてみよう、必ずそこに光が差すはずであるということで、大沢管財人の構想もあるいは石炭協会の計算のいろいろな、何年掘ってもどうだとか、新鉱開発の融資は一遍受けたとかいう既存のそういう話は全部承知の上でたたき切って、新しい前進の道をいま考えているということで、余り大げさな話になっては困るのですが、私の決意としてはそういうことでぶつかりたい、必ず道が開ける、そう思っています。
  91. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常に重要な問題なんですね。千人の問題だけではなくて政治の問題だと思いますから、壊してしまってはいけないと思いながら伺いますけれども、やっぱりこちらにも意欲がありますよ。ですから、まさに私が挙げた大沢構想であろうと検討委員会の構想であろうと、これではどっちみち同じくだめなんだから、だめにしないためには、たとえば無利子とかそういう問題にメスが入らなければならないわけです。いかがでしょうか。
  92. 山中貞則

    山中国務大臣 それは当然の道筋の一つ考えられることでしょう。しかし、だれも考えていなかったことをこれからやろうというのですから、これ以上はお話はお断りいたします。
  93. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。では具体的には聞きません。具体的には聞きませんから、別な視点からこういうふうに答えていただければありがたいのです。  スケジュールでは、石炭協会には十七日に会うことになっていたはずですね。いつお会いになりますか。
  94. 山中貞則

    山中国務大臣 それも含めていま検討中であります。
  95. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それを含めて、さっきから一両日というお話ですから、一両日中に生きる道を、再建策を発表されるわけですね。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりでございます。せっかく成るはずのものが漏れたためにだめになってしまったということは、あなたも希望しないでしょう。そしたらここらでいかがですか。
  97. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。では内容には触れません。  もう一言だけ、山中さんも思い切ったことを言われたから私も思い切ったことを言わしていただくのですが、通産省の中で、私もずいぶん駆け回って調べてきたのですが、だれも信じてないのです。あれは時間延ばしじゃないかと言っている人たちもいるのです、参議院選挙が近いのだからというようなことも含めて。私はそう思いたくないのです。だから、ここで明らかにすることによってつぶれてしまうというのなら、私も確かにそのことを希望するものではありませんから、ではどっちを信頼するかといえば、言うまでもなく政治家山中大臣を信頼するということで締めておきたいのでありますから、先ほど来言われたことで理解すべきところは理解できますよ。単なる、たとえば公的資金でないぐらいのことは前から出ているわけですから、無利子の金を持ってくるなどということも違うということですから、そうすると、思い切った道をどこかで選ぶというのはウルトラCです。通産省のだれもが考えられないので、これは大臣が芝居を打っているだけじゃないか、時間延ばしじゃないかという声が、満ち満ちていると言ったら失礼だけれども、そういう話になっているものを全部打ち消すだけの具体案を一両日刊にお示しいただける準備をいま急いでおられる。そして、それに含めて一つだけつけ加えると、石炭協会に会うのはその前ですか、その後ですか。
  98. 山中貞則

    山中国務大臣 通産省の諸君も全部否定的であるというのはいまや間違いでありまして、石炭にごく関係のあるエネルギー庁長官を初めとする幹部に私の意見を伝え、そしてそのことを命令し、そのことの手だてをいま進めさせておるわけであります。したがって、これから先の内容については伏せておいていただいた方が私としてはいいんじゃないかと思います。私の意見に、それは時間延ばしだとか選挙対策だと言うのは通産省じゃないでしょう。そんなことは一切ございません。参議院地方区の選挙などにそんなことを使おうなんというちゃちな男だと思われますか。考えてもいません。
  99. 上田哲

    ○上田(哲)委員 思いません。したがって、必ず実現可能な案を一両日中に出すのだ、それで石炭協会に会うのはその前か後か、これだけですよ。
  100. 山中貞則

    山中国務大臣 前か後かも大変微妙な問題でございます。したがって、一両日中にやります。
  101. 上田哲

    ○上田(哲)委員 絶対自信を持ってやれるのだと言ってください。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 私は政治家として自信があります。それはなさなければならないことであるならば、恐らくそれに対して耳は傾けるであろう。傾けなければ傾けさせるという決意を持っておりますから、自信を持って当たっておるのです。
  103. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうも外国からお帰りになる途中で発想されているようですから、ウルトラCはどうも日本列島を越えるのかなと――ではないんですか。それ以上は聞きません。これだけの自信を持って、しかも日にちをほぼ明示してお話しになったのでありますから、この話は恐らく首を長くして待っている北海道の人々に、そしてこうした産業構造の中にあえぐ人々に、大きな励ましを与えるだろうということを私からの期待として申し述べておきたいと思います。  お時間があるそうですから、ちょっとここで休憩の時間をとらせていただいて、再開後にいたしたいと思います。
  104. 登坂重次郎

    登坂委員長 午後一時十分に再開することといたし、この際、休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ────◇─────     午後一時二十分開議
  105. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田哲君。
  106. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それでは、問題を基本のところに戻しましてお伺いをいたしたいと思います。  御努力いただいたプレサミットで、累積債務に悩む南北問題を解決するために、従来のような金融上の援助、救済措置だけではなくて、貿易面での対策も含めてやらなければならない、こういうことが合意されたというふうに承っております。これはどういう意味でありましょうか。
  107. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほど触れたこととまた違った表現で、結果は同じことを申し上げますが、一番債務累積国に対する懸念と対策を強調したのがアメリカでした。さらにアメリカは、メキシコ、ブラジルというのをさらに力点を置いて物を言っておりました。しかし、私どもとしては、ブラジルに対してもつい三週間ほど前ですか、新しい発電所の協力に対するゴーサインを出したばかりでありますし、アメリカとメキシコほど日本はメキシコとの関係はそうない。したがって、世界的にアメリカがそう言っているからといって、そのままの国別の対応策については、日本としてはたとえば違う点が出てきて、アメリカは、いわゆるそういう累積債務国というものに対して、あなたがおっしゃるように金融だけでやると、それの金利だけでも返済に困ってくるので、自然と外貨の流出を防ぐために国を閉ざす保護貿易の傾向がすでにあらわれておる。これをやらしてはいけないから、開放体制に向かわせるために貿易でそれを助けてやらなければいかぬ。いわゆる債務累積国や途上国、そういうところに向かって自分たちの国を開いて、そして自由主義で受け入れて、その国々が正常な貿易によって得た自国の収入による借入金の返済という手段をとるべきだという考え方でありました。  この点は、各国そう異論はないようでしたけれども、先ほどもちょっと申しましたとおり、そういう国々が輸出しようとする物はほとんどが第一次産品なものですから、それぞれの国の内部事情はおくびにも出さないのですね。ですけれども、その姿勢は合意しておこう。  それと、同じ援助を受ける国にしても、日本は一応卒業生も出すべきではないか、いつまでもずっとやるというのもおかしい。A、B、C、三クラス、私は使いたくない言葉ですが、国際的に一番下のクラスを最貧国と呼んでおります。やむを得ませんのでそう言わせてもらいますが、私どもは、援助を受ける国の中ではまあまあ高い所得の国について、一定に達したら、自助努力の方は加勢するとしても、援助の形は優等生だということで卒業させろという意見を言ってみたのですが、それは、発展途上国側から見ると、われわれの団結といいますか、途上国側の中にくさびを打ち込んで混乱を引き起こすための戦術であるという受け取り方をしておりまして、非常に合意はむずかしいようでありました。  それから、日本の主張としては、最貧国に対しては、自活努力、自助努力ということを言ってみてもなお無理なんだから、金利をもう一段安くするとか、手厚い処遇をしてやる必要があるのではないかというのに対して、主として諸外国では、区別はしてあるけれども、最貧国をこれ以上金利の面まで含めて甘やかすという必要はないではないかという空気の方が支配的で、その意味では、日本の主張は全体として受け入れてもらえなかったということになると思います。  いまお話ししたことで、その空気はおわかりいただけたと思います。
  108. 上田哲

    ○上田(哲)委員 累積債務国を何とかしなければならぬというのは、縮小の道ではなくて拡大の道をとる、これはそういうことだと思うのです。いま御事情説明していただきましたが、どうも金貸しの感覚というのは違うようですね。困ったところにはもっと高く貸せというふうな感じのようですから、おっしゃるようにどうもその辺がぴったりこないという問題点もよくわかります。  日本としてはどうするのでしょう。
  109. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、その際、国際的に合意してなされることが最も理想であるけれども、私どもはまず理屈の前にやるべきことはやっている。たとえば、OECDでカントリーリスクとして挙げられた韓国に対しても、四十億ドルを先般借款に合意したところであり、先ほど申しましたブラジルなんかとんでもない国だという考え方の中に、われわれはブラジルに新しい援助というものを与えたばかりである。そして、目下日本中曽根総理は東南アジアを回りながら、各国二億ドルぐらいずつの御加勢を申し上げながら回っておる。したがって、日本日本ですでに行動しているし、IMFの増資にしても、アメリカをはるかに上回る増資比率の向上を図っている。それらのものをまず自分たちからやって、それぞれの国が自分のやるべきことをやって、それを積み重ねていけばいいじゃないかということについては反論はなくて、合意が完全にできないならば、むしろいま日本の提唱した、自分のできるところからやる、しかもそれが途上国援助であり債務累積国である場合は、なおその国が一層努力をするということの方がいいのじゃないかという空気で、その意味では日本の主張に耳をじっと傾けてくれた。  ただ、アメリカは、IMF増資の姿勢に見られるように、安易な貸し付けというものについてはレーガン政権は非常に厳しい見方をしておりまして、いままでのように牽引車で金も出す口も出すという態度から、そういう金はしばらくアメリカは余り出さないよ、そして自活する力を見せたらしようじゃないかという態度に変わっていると思いますので、アメリカは若干の出資の増加等に見られるような、そういう国際的な協調機関に対するアメリカの負担というものについては、レーガン政権はいままでとやや異なった姿勢を持ってきておりますが、今回もその姿勢を崩さなかった、私はそう判断しております。
  110. 上田哲

    ○上田(哲)委員 日本の努力は当然としても、日本だってなかなか台所は楽なわけじゃないですし、アメリカもそういう姿勢だ、各国とも苦しい事情になってくると、国際的な機関の力が問題になってくるわけで、IMFとかガットとかいうところに何らかの流れはあるのでしょうか。
  111. 山中貞則

    山中国務大臣 IMF、ガット等は、各国の協力によってできている国際機関、ことにIMF等は出資によってそれを貸し付ける機関でありますから、たとえばIMFの感触としては、事務総長が言っておりましたが、発展途上国あるいは援助を受ける図の意見にも耳を傾けなければならない。私のところには絶えずそういう国から、道があるのになぜあげてくれないかという話がある。  ある一つの例を言えば、アルゼンチンは、自分たちは牛肉を売らせてくれれば優にそれぐらいの借款の返済は可能なんだ、ところが各国がそれを規制していてできないので、道をあげる方法を考えてくれという話があったということを報告しました。しかし、私は口には出しませんでしたが、IMFの事務総長は口蹄疫というものを知らないな、御存じのとおりのことですが、アルゼンチンは口蹄疫汚染国でありますから、出せる国は汚染国しかない。そのことの原則を知らないで物を言っているなと思いましたけれども、強いておまえは何も知らぬなということを満座の中で言う必要はありませんから黙って聞いておりましたが、そういうような発展途上国側からの、自分たちがこういう手段をとらしてもらえれば債務の累積も防げあるいは返済もできるのだというものがあるのだから、それにもまた耳を傾けるべきであるという態度でございました。しかし、アメリカの出資が少ないとか腰を引いてしまったとかということに対する非難の声は、さすがにIMF当局からは出ませんでした。
  112. 上田哲

    ○上田(哲)委員 口蹄疫なんか、地元の問題もありますから大変お詳しいだろうと思うのです。お話を聞いておりまして大変よくわかってくるのですが、つまり厳しい話ですね。明るい話、南の国がああよかったというような話が出てくるというふうには受け取れないわけですね。  例のグループ77がブエノスアイレスで開かれた。その総会で、来年のUNCTADの総会に向けて途上国の公的債務をひとつ棒引きすべきじゃないかというのを出していますね。これは乱暴なようだけれども、実際に引き算から言えばそれしかないことになってくるわけで、きれいな言葉の援助などというよりも、そういう形の処理の仕方というのは現実的であらねばならぬという側面を持っていると思うのですね。これはいかがでしょうか。
  113. 山中貞則

    山中国務大臣 貿易・大蔵大臣のところでは、UNCTADというものを意識して、あるいはそれが近く開催されることを踏まえての議論もありました。しかしながら、棒引き論はもちろん先進国から出るはずがないのですが、どこからも正式にそういう議論は出ませんでした。UNCTADではあるいは出るかもしれません。  しかし、これは日本も含めてですが、棒引き論というのは確かに手っ取り早い方法でしょうけれども、貸してあげます、貸してくれ、要するに貸したのだけれども後でくれということは発展途上国にとっても余りいい方法ではないのじゃなかろうか。金利とか延納を認めるとか返済を長くしてあげるとか、いろいろなことで国家として自活あるいは自立への道をたどりながら、それを先進各国は温かく見守ってあげるという姿勢が必要であって、棒引きというのは安易過ぎる、これは日本も賛成はいたしかねる、そう思います。
  114. 上田哲

    ○上田(哲)委員 大臣が棒引き論は否定されたというふうに受け取るわけですが、棒引きというのは乱暴な話だということはわかるし、知恵の問題じゃないでしょうけれども、物理的にはそれしかないところまで来ているという問題ですね。だから、この77の提案というものは無視できない現実を物語っていると思うのです。  そういう点でいいますと、LDCに対して貿易金融を絡めてやるのだ、金融だけじゃないのだという段階に来ているといっても、ほとんど実効が上がらぬという事態を冷厳に見詰めなければならない。詰めて言えば、メキシコをどうするかということにアメリカはなるわけですね。だから日本がドイツに全部何とかしてくれ、あのとき以来国際電話が日本の銀行に飛び交っているというのはもう間違いのない現実なわけでありますから、そういう肩がわりは日本の立場では免れ得ないのじゃないかという実態だと思うのですが、いかがですか。
  115. 山中貞則

    山中国務大臣 国ごとに論じますといろいろまたやり方があると思うのですが、棒引き論というのは、棒引きにしたらその国は発展途上国から直ちに逸脱する、先進国への道を歩き出すことになるのかと言えば、過去の借金は利子も含めて棒引き、しかし新しくまた立ち上がるための金を貸せということに必ずなる。そうすると、それも棒引きするのかということになるわけで、要するにそれは貸す方から言えば、貸すのじゃなくてやるのだということになると、これは国民感情もありましょうし、国民の生活あるいは国民の税負担、いろいろなことを考えて、国内でやればこういう仕事ができるのにということになりますから、棒引きが一遍で、後はもう借りには来ないという保証があって、しかもそれが立ち直るのだということになるならば考える余地がないことはないと思いますね。しかし、そうじゃないのじゃないでしょうか。
  116. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それは私は異論はないのです。ぜひ棒引き論をやれということを言っているわけではないのです。棒引き論というのは少し乱暴過ぎる。国民感情と言われたけれども、国民感情からいってもそれはちょっとというところはわきまえております。しかし、その上に立って、実際にアメリカだってもう小さい銀行は全部大きい銀行に吸収する、そしてそこからの突き上げが政府にずんずん来るわけですね。因ってしまっている現実がある。そこから出発すると、私は棒引き論をやれということを主張しているわけではないのですし、それは大臣の意見に同調する立場ですけれども、さりとて何らかの形でこれは引き受けなければならない。そういうところになっているのではないかという認識を伺っているわけです。
  117. 山中貞則

    山中国務大臣 確かにUNCTADの累次の経過を見ても、いまのままのやり方でいいとは思っていないようですし、またこれ以上論争が激しくなると、そこにわれわれがあるいは先進国が恐れておるはずであります思想的なものが入ってくる。いわゆる思想の対立ということになってくると、これは東西問題にまたかかわってくる。したがって、UNCTADをそういう性格のものにしてはいけないなという合意は、口にしませんが、みんな持っていたように思います。したがって、アメリカはメキシコに対しては特別のかかわりを持っておりますし、ことに中南米のあの状態を見ると、メキシコの安定がアメリカの安定ということにも、安全保障上の配慮もあるでしょうからそれはわかりますけれども、アメリカがメキシコに対して抱いているほどの責任とか情熱とかというものには日本はほど遠いような気がいたしました。
  118. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そこも同感なのです。ただ、何もしないというわけにいかなくなっているという現実があるのでしょう。それは、たとえばUNCTADで大臣が全部否定できないということではないが――棒引きが違うよというのはいいですよ。いいのですが、何かしなければならぬだろうと言わされるでしょう。言わされるという言葉は失礼かな、言わなければならぬでしょう。そして、何かしなければならぬ現実があるのじゃないですか。そこのところなのですかね。
  119. 山中貞則

    山中国務大臣 メキシコから言わせれば、日本は三十万キロリットルを売ってくださいと言い続けてきた国でありながら、石油情勢が変わったら急に十万キロリットルに落としてしまった、いま十五万キロリットルということになっていますが。そこらのところは日本もわがまま、身勝手な国であるなという気持ちがメキシコにあっても私は無理はないと思うのです。かといって、メキシコから三十万キロリットルを頼んだのだから仕方がないということでずっと引き取り続けておれば、日本はそれを引き取ってどうできるかという難関に逢着する。そういうこともありますから、日本がメキシコに何をなし得るか。メキシコが日本を見ている目はどういう目であるか。そしてまたアメリカとメキシコの関係も、われわれはアメリカと無関係であり得ない立場にありますので、それも一応は念頭に置かなければならない。したがって、メキシコに限って言うならば、日本は何らかの考え方を打ち出させられる日が来るかもしれないと思いますが、目下のところは先ほど申し述べた展望に立っております。
  120. 上田哲

    ○上田(哲)委員 メキシコのと言ったら少し直接的過ぎるけれども、いわばアメリカのでしょうね、そういう立場で大臣の日本側的立場というのはわかりますよ。またそうでなければならぬでしょうけれども、そこのところがどうしても、UNCTADの中でもその辺のところまでは行かなければならぬことになるだろう、それはそれでしようがないとしての話なのですがね。だから何らかの貢献、努力ということをさせられるとしたら、相手がメキシコじゃなくて、アメリカに向かって何らかの交換条件といいましょうか、譲歩といいましょうか、そういうものを日米間の問題として引き出していくということがあるべきじゃないか、これが一種の外交じゃないのかというふうに思うのです。  たとえば、アメリカの高金利政策の転換の問題とか日本の産業にかかわる対ソ禁輸措置の問題とか、あるいは、これはもし御開陳いただければありがたいけれども、さっき言われた為替協調介入の問題を力を入れられたようですから、そうした問題のとば口をつくるとか、この辺はきわめて政策的にメキシコ問題をそういう日米間の問題として展開していくということをお考えになるべきじゃないかな、こう思うのですが……。
  121. 山中貞則

    山中国務大臣 そういうことも絶無ではないと思います。たとえば、なぜ日本はトルコに援助をするのかということになったら、まさに論理はそのとおりの論理でトルコにやっておるわけでありますから、ましてやアメリカがトルコ以上に自分の身近な立場にあるメキシコに対して、メキシコの感情はややアメリカに対しては複雑なところがあることは御承知のとおりですが、それを乗り越えてアメリカが考えているメキシコの地政学的な立場、そういうもの等は日本にも大なり小なり協力要請という形になるのか、あるいは日米が何かをなすことによって、結果メキシコがプラスになるのか、そういうことは今後問題になるかもしれませんが、アメリカもメキシコに対して日本に何かしろというような言い万をするようには思えません。たとえば保護的な措置等は、アメリカはどういうふうに受け取っておるかということの一例ですが、アメリカの資本が出ていって助けてやろうということを言ったら、出資比率は五〇%以下でなければならないという、こんな閉鎖的なことを言っている。これじゃとても加勢できるものじゃないという言い方ですが、これはいままでアメリカが、一般の経済でもそうですが、自分の国でつくったものを売ってドルを稼ごうという気が全然官も民も政治家にもなかったと私は思うのですね。その国がようやくよその国に物を売る、売るときに障害があるとかなんとかということを言い出してきたので、日本にとってみれば四九%の出資であることが前提であるなんというのは幾多も前例があって、それを乗り越えてきて日本はやってきているわけですから、まだアメリカは対外的にはある意味では過去の日本より考え方がおくれているな、そういうふうに思いました。ですから、そういう考え方の上に立ってのメキシコ観であるということを踏まえますと、日本についていまアメリカがメキシコに対して何か要求するということはむしろ余り考えられないと思いますが、これはいまのところではわかりません。
  122. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私は、災いを転じてといいましょうか、転んでもただじゃ起きないという言葉は悪いけれども、どうしてもそういう趨勢があるのだったら、アメリカの政策変更を求めていく、そういうてこに使うというあり方を考えるべきじゃないかというふうに思うわけで、そこはそれでひとつまた後の議題にいたしたいと思いますが、メキシコに限らず、実際に何とかしろということがないわけですよね。ですから、できることならなるべくたくさんやりたいわけですけれども、どうも実効が上がらぬ。  そこで、一つの問題ですけれども、そういう問題よりももりと南北問題自身という立場では、先般のASEAN訪問中に打ち上げられた話ですけれども、発展途上国の輸出所得補償の新しい制度、これは説得力があると思うのですね。一次産品の輸出所得補償の制度、これは財源の事情でなかなか進まなかったというふうに伝えられていますけれども、この際ひとつ、わが方の南北問題の具体的な実効あるポリシーとしてサミットなりUNCTADなりで御提案なさって実現していくという方向はどうでしょうか。
  123. 山中貞則

    山中国務大臣 これもアイデアとしては大変一つのアイデアであるとは思いますが、しかし、それは国際的な価格補償制度を先進各国が補償してやるわけでありますから、ある意味で安定に貢献すると思います。  しかし、これまた日本意見もあるにしても、アメリカはこれに対しては食糧の共同備蓄も含めて、そういう制度等までいくことについては強い反対をしております。これは、アメリカが実態は農業国であるということも作用しているかもしれませんが、姿勢として、そういうものに余り賛意を示していないように思います。  日本がそれを提唱することになるかどうかは総理とまだ打ち合わせておりませんが、提唱して賛成者がなかったというようなことになると無残なことになりますので、そこらのところはよく瀬踏みをして、やるならやる、提唱するなら提唱する。その提唱する価値はある。ただし、われわれにとっては大変なリスクと重荷を伴うものであることだけは間違いはない、そう思います。
  124. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そうすると、この問題は、言うならば前向きに検討してみる、できたら提案をしてみることも含めて考えてみるということですか。
  125. 山中貞則

    山中国務大臣 総理とまだ打ち合わせておりませんので、そこまでのはっきりした見解を表明することは、通産大臣としてはちょっと越権であると考えます。
  126. 上田哲

    ○上田(哲)委員 今度のサミット、UNCTAD、これはまさに山中大臣の活躍の舞台ですよ。総理なんて言わないで、一つくらいはこれやってみようかというのはどうですか。
  127. 山中貞則

    山中国務大臣 アイム・ソーリー、私は総理じゃないんです。
  128. 上田哲

    ○上田(哲)委員 越後の方でだれか言った言葉に似ているので、混同されても困るので、ぜひこれくらい一つやらないと何もないじゃないですか。禁輸でなくとも貿易もとか、財政再建だけでなくて景気刺激を、そしてまた、これは時間がある限りいろいろ伺うのですけれども、内需喚起と言っても、例の十一項目もなかなかぱっとしていかないということを考えるなどの中で、こちらもどうだというほどりっぱなものがたくさんあればいいけれども、八方詰まりではあるけれども、こんなものはいまおっしゃったようにこれでとめるべきかもしれないけれども、十分検討の価値ありと言われたのだから、ほかにもっといいのがあれば別ですけれども、こんなことをひとつやってみよう――ちょっと重ねて聞くのはなんですけれども、どんなものでしょうかね。
  129. 山中貞則

    山中国務大臣 通産大臣としての答弁にもなりますが、今度は発言しませんでしたが、私は政治家として世界の先進国にあえて警鐘乱打をしたいのは、この地球上に三億の人口が飢えている、毎年三百万の人間が飢えのために死んでいる、そのうちの大部分は子供である、そのことに目をつむって先進国の繁栄があってはならないし、そのことをこの地球上からは、先進国の能力のあるものにおいて、金なら金あるいは物なら食糧そのもので、とにかくそういうような地球上の片隅でひそかに進行しているものに目を向けないでけんらんたる国際会議を開く姿にむなしさを感じます。やはりそのことはいつか取り上げる日があっていいのではないか。取り上げる日がなければならないのではないか。その問題には私は政治家として、日本が真っ先に余剰米その他の問題も含めて用意もあるわけでありますから、飢えた国々を救う先進国という合意がなされるべき日があっていい、またそれをやっていい、やらなければならないことであるということは考えております。
  130. 上田哲

    ○上田(哲)委員 申すまでもなく、これは農産物を中心とした一次産品が対象でありますから、いま大臣の御表明というのは、間接的表現ながら、最大限のこうした提案について検討するという意味だというふうに理解をいたします。せっかく御努力をいただきたいと思います。  何かにつけて出てくるのはやはりアメリカの影ですから、私は、メキシコ問題なんかで多少泣かされるなら、そういうものをてこにしてやってみろということをさっきから申し上げているわけだけれども、今回のサミットは東西問題はほとんどないという本野さんの報告が出たというふうに伝えられているわけですけれども、本当にそうなのか。そうだとすれば、アメリカが主張してやまない東西問題、対ソ禁輸、こうした問題についてわが方の主張なかるべからず、その問題が大きく出てこないとなればそれでいいんだということにはならないだろうと思っているわけですね。問題は、幾つかの問題がすでに処理されている、たとえば天然ガスの問題とかエネルギー問題、信用供与条件の問題を除けばほとんど問題は解決した、こう言われているわけでありますけれども、ココムの規制強化、わが国は非常に影響があると思うのですが、この規制強化がどうなっているか。先月の二十八、二十九日に日本からも代表が出た高級事務レベル協議が行われたわけでありますけれども、その辺はどういう事態になっているか、ひとつ。
  131. 山中貞則

    山中国務大臣 ココムはアメリカの主導で禁輸品目追加、一部にはもう普遍化してしまったから落とすものもあるかもしれませんが、問題はその追加という品目がいま検討されているところであります。具体的に言うと浮きドックとかそういうものまで。日本が浮きドックをウラジオストクに輸出したためにミンスクは極東艦隊に入ってきた、そのことがアメリカの太平洋艦隊の戦略に大きな変化を与えたことは紛れもない事実でありますし、浮きドックを今回入れると言われることは日本にとっては大変恥ずかしい気がしてなりません。そういうようなもの等が入って、いまいろいろと先端技術その他でどこの分野で線を引くのかというようなこと等が議論されている最中だと聞いておりますが、先ほどのやりとりをしておりましたことよりも、東西問題とすればこのココムの方が相当タイトな議論になるのであろう、私はそう見ています。
  132. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まさに禁輸品目の追加におっしゃったように浮きドック等、ICプラントやコンピューター、六十四品目について許可基準の強化というのが打ち出されているということですが、いかがですか。
  133. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 東西関係の一環で、米国から対ソ高度技術製品の輸出につきましていろいろなレベルで提案があることは事実でございます。現在ココムの場におきまして検討中でございますけれども、品目につきましての討議の進行状況あるいはその内容等につきましては、ココムのルールといたしまして、その状況を進行の途中におきまして御説明することは各国で控えるということになっておりますので、内容につきましては言及することを控えさせていただきたい、御容赦いただきたいと思います。
  134. 上田哲

    ○上田(哲)委員 そういう制限の中で聞くのですけれども、今回の日ソ・レビューで一つロボットは入っていますね。
  135. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 新聞紙上等ではいろいろ出ておるようでございますけれども、具体的な提案の内容につきましては、各国どういうような提案をしているかあるいは検討状況がどういうことであるかということにつきまして、厳格に審議の途中で内容をコメントすることは控えておりますので、どうか御了解いただきたいと思います。
  136. 上田哲

    ○上田(哲)委員 だから、ロボットだけでいいですよ、ほかは聞かないんだから。入っているのは間違いないんだから、入っている、はい、でいいです。
  137. 中澤忠義

    ○中澤政府委員 この点につきましても、各国審議の前提として、具体的な品目につきましてそれが検討対象になっているかどうかということが触れられることにつきましても、大きな影響がございますので、各国のココム協議の前提でございますので、御了解いただきたいと思います。
  138. 上田哲

    ○上田(哲)委員 まあ入っているということですね。  だから、そこでひとつ大臣に伺っておきたいのですけれども、ロボットは日本の大変進んだ技術でありますし、したがって国際競争力が高い。ロボットを使うことがいいか悪いかという議論は別にありましょうけれども、そういう技術レベル。別にアメリカの技術供与によってつくったものではないわけですね。それに禁輸品であるかどうかというのは業界自身はよく知っているわけですからね。それを民間企業が仮に輸出しようとしていれば、それを勝手にというか、政府が抑えるだの、しかも言えないだのみたいなことを言っているというのは大変おかしいわけですよ。ですから、まあアメリカといろいろ緊密な関係があるのは結構だけれども、こういうココムの問題を、それはいろいろなルールがあろうとも、一方的に項目に載せられるというようなことであってはならない。これはやはり追従だと私は思うのですね。そういう追従があってはならない。特にたくさんいろいろ言いませんから、浮きドックの話もされたわけですからこちらもロボット一つにしぼったので、そのことについて、ひとつアメリカ追従を排してこういう形にはしない、すべきでないというところをはっきり聞かしていただきたいと思います。
  139. 山中貞則

    山中国務大臣 もう局長からはあれ以上の答弁は出せないと思います。しかし私たちは、ココムに入っていることの是非、これは一応賛成をしてやっているわけでありますから、これに対する意見は賛否両論がありましょうけれども、そのココムに入っていることによって、日本がこれから新しい未来を創造するいろいろなものがつくられていきます、そのときに日本の発展そのものが阻害されるような要因になるものについては、日本日本なりに厳しい抵抗あるいは合意しない反論をいま展開中であります。したがって、あなたの言われたものはその議論の中に入っておる、しかもそれはそういう方向日本は対応しておる。――こんな抽象的な言葉は使わせないでください。僕は余り好かぬです。
  140. 上田哲

    ○上田(哲)委員 私の申し上げたものについて御答弁がございましたのはよくわかりました。ぜひその方向でやっていただきたいと思います。歯にきぬ着せて言わなければならぬ立場でない方向をぜひ私も期待をするわけです。  もう一つ、さきにレーガン大統領が議会に送った輸出管理法の改正案、これは一言で言えば対ソ戦略を強化しようというものでありますから、しかも、その中心となるアメリカ企業からライセンスを得て海外で生産をしている外国企業が禁輸品目を対ソ輸出した場合に、その企業のアメリカ向け輸出をストップするなんという、そんなことはもう理不尽だと私は思うわけですね。こんなものを大統領権限などということで行うのは、やはり他国の主権を侵すという性質のものだと思います。容認できないというふうに思いますが、これについての御見解、いかがでしょうか。
  141. 山中貞則

    山中国務大臣 これに対しては、日本のみならずヨーロッパでも相当な激しい抵抗があることは御承知のとおりであります。しかし、アメリカはアメリカの国の法律でやるわけでありますから、確かにその該当した国があったら輸入をとめることはできるかもしれません、先般、ハーレー・ダビットソン一社を救済するために四五%も関税を値上げする乱暴なことのできる国でありますから。しかしそれは、諸外国が賛成しておるという形で実行は不可能だと思います。当然諸外国はそれに対して報復の措置をとることができるわけでありますから、アメリカの国内法は他国に及ばない、しかし国内法の限りでやられて、それが今度は輸入をさせないという場合には、相手の国は報復権を持つわけですから、まさかそんな乱暴なことまでしないだろうといまのところ見ております。
  142. 上田哲

    ○上田(哲)委員 明快で結構です。  これは今度の会議議論となる場合に態度を明確にされると思いますけれども、抗議ということをなさいますか。
  143. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう細かな問題は余り議論しないのじゃないかと思いますね。今度の会議というのはサミットのことですね。今度のサミットは議題を決めないで、首脳同士のフリートーキングという形になっておりますからどういうものが出るかはわかりませんが、そのようなアメリカが各国から一斉に総反抗を食らうような問題は首脳会議では持ち出さないのではないかなと思っておりますが、しかしこれは私の想像にすぎません。
  144. 上田哲

    ○上田(哲)委員 やはり東西問題がほとんど大きな問題にならないだろうなんということは、にわかに予測しておいてはいけないことであって、これはそうであっても、わが国の立場は、軍事緊張を根底にする東西の緊張はできるだけ緩和していくという努力に傾かなければならないと思いますね。  そういう立場で、たとえばこの八日にアメリカ議会の技術評価局が「技術と東西貿易」というレポートを出しました。カーター大統領やレーガン大統領の出した経済政策というのは、実際には東に大きな影響を与えておらぬということを言っておるわけですね。ですから、むきになってアメリカがやろうとしている対ソ禁輸あるいは東欧圏への制裁措置なんというものを、やはり何とか日本の役割りとして、この真ん中にある島国の位置づけからいっても、防衛庁長官を初めさまざまな立場に立たれた、いま対外経済政策の責任者である大臣が、そうした立場でこの問題をサミットの中でも、その問題が中心にならないだろうみたいな観測で逃げるのではなくて、むしろ前向きにひとつ東西緊張緩和、経済政策上の緩和という方向でせっかく御努力をいただくべきじゃないかというふうに、これを例にして申し上げたいと思います。
  145. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに今日、経済政策は外交手段の中でも非常に大きなウエートを占めておりますから、それらの経済に関することであっても、国と国あるいはまた東と西、そういう形で議論をされる場合において、日本の言動については限界もあるが、しかし日本の主張は主張としてしなければならないと私は思っております。これは個別具体的な例を挙げて申し上げているわけではないので、日本はそのような姿勢を持つべきであるということを申し上げております。
  146. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ちょっと広げて、どうもアメリカ側の姿勢からすると、日本の先端技術の抑制といいますか、つぶしという意向が強いように思えてならない。私は、さきに山中大臣が軍事技術供与の問題について明確な見解を示された点を評価しておるのですが、これは別な視点から言いますと、非常に誤解を恐れない言い方をすると、日本の先端技術がアメリカの軍事技術にのみ使われている間はいい。これは非常にアクロバットな言い方をしているわけですが、実はそもそも日本に軍事技術なんかないのですから、日本の民生技術というのが全部向こうの軍事技術に使われるだろうという問題なんですから、いまは。これが実は軍事技術に応用されている分はまだまだいいが、これが向こうの、言ってみれば先端技術産業のパテント奪いになるということでいいのか。私は、武器輸出三原別、その武器という概念の中に技術が含まれるというような解釈の問題ではなくて、日本の産業構造に責任を持つ通産省が長くこの問題について否々をしてきたのは、日本の産業政策上の立場があったと思いますね。だから、これをたたく、あるいは持っていくということになっていけば、武器輸出原則という範囲では占めることのできないもっと大きな、日本先端技術産業のマイナスというものが出てくるし、それをまたアメリカはねらってはいないかというふうにも思うわけですね。この点はいかがでしょう。
  147. 山中貞則

    山中国務大臣 民間政府の命ずることに従う、そういうことはないわけです。政府は命じないわけですから、民間の行動は自由であります。  いまおっしゃった懸念のちょうど逆の一つの具体例を御記憶でしょうから取り上げますが、京都セラミックがアメリカに全額出資の会社をつくっていた。ところが、それは前の取引先のアメリカ人たちが新しく興した会社である。先端技術ですね。ところが赤字ばかり出していて、そろそろ手を引こうと思っていたころに、ある日突然ペンタゴンの受注を得た。ところがペンタゴンの条件は、日本人の社長以下重役を全部やめさせろ、それから、接触をするなという条件だったそうです。社長は、自分の会社であるにもかかわらず、ゲートまで行ったら追い帰されたというのです。それでホテルに帰って、何ということだ、金は全部おれが出しているんだよ、報告ぐらいはせいとアメリカ人のかわった社長に言ったら、ホテルのロビーで会うのも禁止された、そう言うんだそうです。そこで、これ以上アメリカの軍事技術の中に組み込まれた先端産業の会社に金を出しておるなんということは、責任が第一とれないし、ばかばかしいことであるというので撤収を決意して、全部引き揚げたということを私は直接、どういうことだったのか、新聞報道等でわからない面がありましたので聞いてみましたら、そういう意外な事実がありました。  これはちょうど、日本からアメリカへじゃなくて、日本の資本でしたけれども、アメリカの方ででき上がったものに日本の会社が関係した。しかし、これはほうほうのていで御免だと言って帰ってきちゃった。それをアメリカは、帰るなとも言わぬし、日本は、そのままとどまってペンタゴンに協力しないとも言ってないわけですから、そこらのところは、まあ危険な見方をすれば、あるいはそういうふだんの先端産業の交流というようなものは、日米の正式の交流などもしているわけですから、そういうものがアメリカのみに吸い上げられて、日本のせっかく開拓した分野が向こうに移転しちゃって、日本の方が吸い取られてしまうというようなことがあるのかどうか。  これらのところはやはり注意していかなければなりませんが、日本民間人あるいは財界人というのは、そこらのところは最近は国際性を持ってきておりまして、この問題はちょっと危険だと思う場合、そういうシグナルを事前に感知するような能力はようやく備わってきたように思います。そして日本人全体の気持ちを踏まえて、将来日本自身が危なくなる、あるいは日本自身が失ってしまうようなものを相手の国に渡す行為については、置き得を除き、そういうことは余りないような気がいたします。しかし、それは、監督官庁としては小さな動きでも見逃さないように注意してまいりたいと思います。
  148. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それで結構なんです。  そこで、監督官庁としてはという言葉を続ければ――私は、きょうは時間がその部分にいきませんから軍事技術の話はもうしませんが、現在、軍事技術供与というのが具体的にどんどん流れていくという状態であると思っていませんから、それ自身は将来の議論として置いておきますけれども、少なくともそういう交流といいましょうか引き合いが盛んになったとしても、それは日本にとっては軍事技術じゃなくて民生技術であるわけですから、そういうものが、民間に対する政府の強制はないんだよ、これはたてまえとしてはそのとおりには違いないけれども、国の外交の問題としてあれだけの太い線がついたわけですから、実際問題として判こを押すか押さないかみたいな形式論なら別だけれども、拒否できるかできないかという問題は、なかなかむずかしい問題が出てきましょうね。これをそのときになってからといって、個別の問題じゃできないわけですからね。いま大臣が言われたような方向で僕はいいと思いますから、そういう意味では、かた苦しい言い方でなくてもいいから、日本の先端技術産業の何とか運営原則みたいなものでもいいのですけれども、たとえば、本当にそのパテントを民生技術という枠の中では守ることができるとか、あるいは向こうに供与した場合にも一定の協調的な立ち入りといいましょうか、そういう種類の査察みたいなもの――査察と言っては言い過ぎかもしれませんが、ある種のオブザーベーションあるいはサーベーランスができるとか、最終的な一定の限界を超えた場合にはこれを拒否するとか引き揚げるとか、せめてこの三つぐらいの何らかの原則、ルールというようなものをつくっておくことが――これは軍事技術じゃないのですよ。非常に裏返した言い方をしているわけですけれども、誤解があるかもしれないのを私もかなり勇気を持って言っているつもりなんです。軍事技術として限定されて使われている場合はいいけれども、これは非常に変な言い方になるのですが、私どもは軍事技術供与には反対なんですから、それとは別に、くどいようですけれども日本の民生技術のいわばノーハウというのがそういう形で吸い上げられてしまうということを守るといいましょうか育てるといいましょうか、そういう三原則みたいなルールの確立ということに踏み出される、検討されることが必要ではないでしょうか。
  149. 山中貞則

    山中国務大臣 上田さんが言うような形の三原則みたいなものは大変むずかしいと思います。  しかし、現実日本の特許行政は完全公開ですね。ところがアメリカでは、特許商標庁長官が安全保障上必要と認めた場合には、その特許について国家機密として公開を禁止する権限があります。そうすると、公開されている日本の特許というものの制度の中で生まれたものがアメリカに渡って、それが何らかの形でアメリカの特許商標庁による安全保障上における公開禁止に指定されたときに、その一要素になっている日本の特許は、アメリカの国内だけならしようがないですけれども日本についてどう取り扱うかというような問題も起こってきます。もちろん答えは、日本は依然として自由である、アメリカが何を指定しようと日本は自由であるという体制は貫いていくことに変わりはありません。法律も国によって違いますし、そのような問題は起こり得ることの一つではあろう。しかし、それの対応は、日本側は依然として日本の現在の特許公開体制を崩すものではない。  これを一つの例にとって申し上げれば、ほかの三つにしぼるかどうかの問題点の提起はちゃんと承っておきますけれども、それに対する日本の対応の仕方というものは一応の御説明ができたのじゃないでしょうか。
  150. 上田哲

    ○上田(哲)委員 今後の検討課題として残しておきたいと思います。  そこで、先ほども、内需拡大、これは日本にとっての喫緊の課題であると同時に、国際公約というレベルで考えようというふうな御発言をいただいたわけでありますが、実際問題として、特に私などが目を向けている中小企業というようなところからすれば、この内需の拡大というのは、とてもじゃないがまだあさっての話ですね。今度出された十一項目、検討すべき三つを含めて十一項目ですから、問題がまだ大変弱い。いざはしをつけてみようと思ったら食べるものがないじゃないかという評がどこかにありましたけれども、そんな感じがするわけです。  おとといから例の親子二代ローンの受け付けが始まったけれども、第一勧銀で六件ですか、富士銀行の本店で一件だけだったみたいな報道があります。なれてないということがあるかもしれないけれども、変動利息というようなものに対して非常に未来設計が立ちにくいという、これは不景気という時代の一つの反映だと思いますね。そういう意味で、出された政策というのがどうも余り食えるようなしろものが少ないということになっていくので、いろいろ議論をしたいのです。  最も強いのが、公定歩合の引き下げの問題であります。〇・五%、七円でパーになるということから考えれば、円高の基調がしっかりしなければならぬという立場もよくわかりますし、またそれ以上に、これは日銀専管事項でありますから、みだりに口にすべきものではないということもいろいろあると思うのですが、中小企業がここまで悲鳴を上げている中での担当大臣という立場から、この公定歩合引き下げの機は熟した、あるいはそれに対する希望を述べるという点としてはいかがでしょうか。
  151. 山中貞則

    山中国務大臣 七カ国大蔵大臣会議には、日銀あるいは向こうは連銀総裁等も一緒になって会議をやっていると思いますが、その席でも、どうも公定歩合に連動していくレートの安定という問題について話が進んでいない。ボルカー議長その人ははっきりと公的に、協調介入すべきである、レートは安定さすべきであるということを主張しているのですが、その人が今度は任期切れでどうもやめさせられそうだという理由は、カーターが任命したんだから任期が来たらレーガン政権ではもう要らないというような単純な理由らしいのですが、しかし、こういう政策上の問題でもはきはき物を言われると、アメリカが考えていることに対して連邦準備委員会委員長としての資格だけで物を言う、それが世界に広がる、こういうことなどが少しその裏にあって、もう今回限りという声が出るのかもしれませんが、私ども日本から言えば、連邦準備委員会委員長の発言の方にアメリカがぜひ耳を傾けてほしい。そうすると、為替の安定も必要がそこに生まれてきて、公定歩合を日銀が操作できる日が近いのではないか。  この問題を相当突っ込んでアメリカとやってみたのですが、リーガン財務長官とやったのですが、相当したたか者でして、じゃ教えてくれ、もしそれを実現させるとなれば日本は何円で、あるいは何円を中心に安定させたいのかと言いましたから、そんなこと教えてやれるか、これから交渉事をやらなければならぬときに日本の手の内を見せるようなことはせぬ、いや教えたっていいじゃないか、参考になるじゃないかと言いましたから、じゃアメリカのドルが安くなった、高くする方法はどうだと言ったら、世界のどこかでか紛争を起こせばよろしい、紛争に強い通貨、ドル、そういうことをアメリカが言えるか、言えないだろう、君が言えないなら日本も幾らにするということは言えないよ、お互いさまじゃないかと言ったら、MITIとしては二百五十円ぐらいを考えているのではないか、その手には乗らぬ、と言って別れた一幕もありましたけれども、いまのところ虚々実々の探り合いが続いていると私は見ています。  ただ問題なのは、欧州のスネークフロート、これがどうもECの中でうまく機能していない。フランスの経済悪化したからレート会議をやってみたら、フランスは案に相違して開き直って、ドイツに向かって、おまえがおれの国をこんなにしたんだからマルクを切り上げろと言う。大変な騒ぎになって、ドイツは脱退を覚悟したくらいだったらしいんですけれども、まあまあとなだめられて、結局は逆に今度はフランスが脱退するかもしれないという状況を阻止するためにドイツが切り上げに甘んじたという、そういう、中の葛藤にくたびれ果てているわけですね。  そうすると、やはり基軸通貨マルクということになると、三極で、あるいはスイスフランを入れるにしても、そういう支え方をされた場合に、自分は国際協調まではもうかなわぬという気持ちが少しドイツにはありまして、前はドイツ、スイス、ともに日本と同じか、もしくは日本よりか先にスワップなり何なりをやっていた国が、どうも最近は様子がやや弱腰になっている。しかし、ここらのところは、もし国際会議等で話が出ればアメリカも全く取りつく島もないという状態ではない。  ただ、問題はレーガン哲学。これが、初めからレートはフロートさせておけ、そうすると変化があったらそれに対応して動くんだ、一番正しい方法じゃないかというこの哲学です。これをリーガン財務長官にしてもシュルツ国務長官にしても、われわれは議論しているわけですから、果たしてこれを中で突き崩すことができるかどうか、ここのところが最後の一点じゃないかと見ております。そこが、何とか哲学が少し変われば、このレート問題が動き出して安定化の方向に向かって、そしてわれわれのやってほしいと去年から願っておる公定歩合の引き下げということが、あるいはひょっとしたら生まれてくるかもしれないという一縷の望みをまだ捨ててはおりません。
  152. 上田哲

    ○上田(哲)委員 時間が大分詰まってきましたから簡単に伺いますけれども、ということは、いまの大臣の感覚というのは、日本の公定歩合引き下げの機は熟していないということになりますか。
  153. 山中貞則

    山中国務大臣 日本の円は五ドル石油値下げによってもっと上がるべきであったし、もっと遠いスピードで反応すべきであった。それがしていない。それは、国際投機資金あるいはオイルダラー、そういうようなもの等が入り込んできて、レートを複雑に動かしている。だから、これらの状態ではなかなかむずかしいだろう。乱高下の中で公定歩合だけをやった場合には、当然ながらそれはまた円安ということにはずみをつけるでしょうから、今度は、国が政策的に意図して円を安くしたという非難に耐えなければならない。そして、輸出黒字はまたさらにふえていく、貿易摩擦を激化させるということになるでありましょうから、よほど慎重な判断を、いまは日銀総裁その他のスタッフがやっているところだろう。私は国際的な面を述べました。しかし、国内的な感覚を問われれば、やはりいまの為替の現状はまだまだ安定したとは言えない、したがって公定歩合もすぐにはできないだろうなと思っています。
  154. 上田哲

    ○上田(哲)委員 金融政策がむずかしいとなると、財政政策しかないわけでありまして、これは税の専門家であります大臣にずばり伺うのですけれども、問題の所得税減税ですね。これは、財源だ何だというぐるぐる回った話ではなくて、そうなると、これは断固処置しなければならぬではないかということになりますが、いかがですか。
  155. 山中貞則

    山中国務大臣 私は、一応昨年の臨時国会が始まるときに、減税の必要性について与野党の意見の一致を見た、そこで財源対策について個々の財源を検討したが合意を見るに至っていない、引き続きそれについて合意を見るまで検討を続けたいという中間報告書を議長に提出したものであります。したがって、その延長線上から言えば、その線を続けてほしいと思っていますが、いまは入閣いたしましたので、通産大臣としての景気浮揚という面から考えても、財源がどのような状態にあるか等を一切抜きにして考えた場合に、そろそろ所得税の減税はやらなければならないし、やったら景気浮揚効果に、先ほどの石油の五ドル値下げによる政策効果その他が相乗作用をしていって、日本経済の最終消費支出に対して大きな貢献をするという気持ちで私はおります。いまその担当ではありませんけれども、私の願望であります。
  156. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは非常に前向きな御答弁で、私も同感でありますが、財源論が先行すべきではないところへ来ている。そういう意味で、減税の規模、わが党が提案しております数字、そして時期、これも可及的速やかでなければならない、この点は御同意いただけますか。
  157. 山中貞則

    山中国務大臣 ここから先はもう与野党の交渉にゆだねるしか……。現在の場所では私の手は及びません。
  158. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、及ばないのはわかるのですが、大蔵省がこう言う、通産省がこう言うということではなくても、経済大臣として、景気刺激策としての観点からそのようなものが妥当である、額においても、つまり規模においても時期においても、そういうものでなければならぬだろうというふうにお考えになるかどうかです。
  159. 山中貞則

    山中国務大臣 減税をやるには、経済指標に好影響を与え、そして最終消費支出に貢献をするに足りるものということであれば、相当なものにならざるを得ないだろう、そしてまたそうあってほしい。私としては、経済運営の立場から、一向に明るさが訪れない日本経済について、むしろ願望しておるということであります。
  160. 上田哲

    ○上田(哲)委員 理念として伺っておきますけれども、財源論という立場で議論していれば、大蔵省はそれしかないわけでしょうが、景気浮揚策という立場で議論していくなら、財源論ということをむしろ後回しにするという立場での一定の効果ある減税の規模、時期というものを政策選択として選択しなければならない、そういう考え方というものは御同意いただけますか。
  161. 山中貞則

    山中国務大臣 それは党同士でやってください。私の方では、大蔵省の来年度の歳入の欠陥は五兆円に達するであろうということを、知らないとは言えない立場におります。それは普通の通産大臣だったら、わからないで要求だけすることのできる立場の人もいるでしょうが、ずいぶん長い間党の税制調査会長をやってきて、大蔵省のことし、来年のふところぐあいは全部知っておりますから、そのときに財源に関係なく政策として優先してやれということを言うにはちょっと問題がある。しかし、減税というのはそろそろ相当規模でやってもらわないと景気対策の打ちようがない。心理的にもそれに対して、さあ歩き出そうかという浮揚へ向かっての足取りを与えることができない、そういうもどかしさまで感ずる立場におるわけでございます。
  162. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いっぱいのところを言っていただいたと思いますから、そのことでその辺は踏まえて議論をいたしますけれども、私も踏み込んで申し上げれば、財政再建、赤字克服というのが大事じゃないなどということは毛頭言わないけれども、また省庁間の問題などを議論するつもりはさらさらないけれども、現在の大蔵省のペースというもので考えていったら、これはいつまでたっても景気浮揚というところにはいかないだろうという問題に突き当たらざるを得ないわけですね。大蔵と通産がどう意見が違うなどということを言うつもりはありませんけれども、ここで大蔵省ペースと通産ペースを上手に使われては困る。大蔵省のペースでぐいぐい振り回されれば、みんな悲鳴を上げて景気対策を求める声が満ち満ちたところで、これは仕方がないから抱き合わせでいこうかというので、待ってましたと一般消費税が出てくる、名前は違っても。付加価値税であれ何であれ、間接税大増税という形になってくるという手順が見えるわけですね。この手順は私はまずいだろう。これはまた特に景気政策を担当される、産業政策を担当される通産大臣としては、やはりその轍にはまってはなるまいというふうに考えるわけです。私はそういう認識なのでありますが、その大型間接税の一方的な導入という危機を感ずるという声に対して、どのようにお考えでありますか。
  163. 山中貞則

    山中国務大臣 予算編成権は大蔵省にございます。
  164. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは最後の質問ですが、予算編成権は大蔵省にありますが、通産大臣は大蔵大臣の下風に座するものではありませんし、先ほど来お話しのように、五兆円を超える歳入欠陥を、ほかは知らずとも、税制の専門家である山中大臣が知らずと言うわけにはいかない。そうした財政欠陥を知らないと言うことができないという立場は、同じレベルにおいて、経済政策がそのまま半身不随であっていいということにはならないということと通ずると思います。そういう立場では、何も大蔵、通産のあり方を権限を侵して物を言えというつもりはさらさらありませんけれども、これほどの悲鳴が聞こえる。  私がここに座っていたら、大臣になられた山中大臣が私の肩をたたいて、おお、こんなところに何でいるのかという話だった。おおそうか、地元は中小企業が多いな。そのとおりでありまして、私は、中小企業の振興なしに日本の産業社会の発展はないだろう、あたりまえなことですけれども、常にそのことを厳しく思っておりますから、そういう意味では悲鳴がよけい聞こえるという自負を持っています。その限りでは、予算編成権は大蔵省にありますという言葉だけでは家へ帰らない。通産大臣はどうあろうとも、大蔵省のさまざまな、ある種の大蔵省の思惑やペースを乗り越えても、今日の産業政策をしっかり打ち出すということでなければならないと思うし、その限りでは、私は、財源論と景気浮揚論というものをリンクするという議論だけでは困るというふうにさっきから申し上げておるが、その話はおきます。その話はおきますから、まさに所管省の大臣としてのみならず、経済政策全般の最高責任者という立場で、この際大型間接税、こうした問題について、私どもはやはり一方的な悲鳴を背中に背負うような導入ということがあってはならぬと思うわけでありまして、この点について慎重に検討しなければならぬという立場の御発言をいただきたいと思います。
  165. 山中貞則

    山中国務大臣 中小企業の五五%は法人税を納める必要のない赤字法人であるということは、統計的に正確かどうかは別にして、異常だと思うのですね。事業活動を営み、営業活動を営み、当然ながら営業の収益をもってさらに生活の向上を従業員も含めてやっていくのが企業であるとするならば、税を半分以上の企業が納めていない中小企業の現状のあり方というものは――納めていないというのは、逃げている、脱税しているという意味じゃありません。法人税を納める必要のない中小企業の方が多いんだ、それは正常ではないと思うのです。中小企業であっても税は納めるだけの活動を、実質の力を持っている企業でなければならない、一〇〇%とは申しませんけれども。  そういう場合に中小企業の振興ということは、まず実態そのものが、中小企業が納税できるような体質を持つようにしなければいけない、そのことも私は非常に大切なことだと思います。  あるいは一般消費税(仮称)等の問題については大蔵大臣が予算委員会で、衆参両院で手をもみながら精いっぱいの答弁をいたしておりましたので、私の口から、それをやるとしたらとか、あるいはやるなとかいう発言は慎ましていただきます。
  166. 上田哲

    ○上田(哲)委員 終わります。
  167. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、上坂昇君。
  168. 上坂昇

    上坂委員 私は、官公需の問題とそれから商品取引、もう一つは大店舗の問題、そして最後に特許庁の問題で質問をいたしたいと思います。  一番初めに、官公需の問題について御質問をいたします。  いま大臣からお話がありましたように、税金を納めることのできない中小企業が五〇%以上に達しているというような、非常に不況が長びいて大変な状況に来ております。したがって、生産面に携わっている、あるいはサービス面に携わっている中小商工業者の中では、何とかして少しでも仕事を確保したい、こういう考え方になるのは当然であります。その仕事の中でいわゆる官公需の仕事、これは不渡り手形も出ないし、国ですから倒産もしないだろうということで、非常に安心した、安定的な契約の相手側になるという形では非常に重要な経営の役割りを果たしている。  そういう意味で、われわれが日ごろ官公需に対して、できるだけ中小商工業者に多く渡してくれ、したがって政府も五〇%ぐらいに達するまで努力をしよう、こういうことになってきているわけでありますが、五十六年度では三兆七千七百二十億円、比率で言いますと大体三七%に達している。五十七年度では〇・二%引き上げて三七・二%の目標を設定したということになっておるわけでありますが、五十七年度の実績はどうなのか、そして五十八年度についてはどういう見込みが立てられるのか、このことをお伺いをいたしたいと思います。そしてまた、そのとき地方公共団体等におけるところの、いわゆる地方におけるところの官公需についてはどのぐらいのパーセントに達しているか、それもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  169. 神谷和男

    ○神谷政府委員 五十七年度の目標は、先生ただいま御指摘のとおりの数字でございますが、現在各省庁から実績の報告と申しますか、実績の取りまとめを依頼して当方に報告していただくようお願いしているところでございまして、まだ集計が終わっておりません。したがいまして、数字は後刻御説明さしていただきたいと思います。  五十八年度の目標はどうなっておるか、こういうことでございますが、これは実績取りまとめを依頼すると同時に、現在五十八年度の目標そのものを各省庁でいろいろ検討を願っておるところであり、私どもといたしましては、それに関連して種々のヒアリングあるいは討議、アドバイス等を行いながら、極力高い比率でこれが実現されるよう各省庁と共同作業を行っておるところでございます。  ただ、これもしばしば御説明申し上げておりますけれども、五十八年度予算、マイナスシーリング等で非常に厳しい予算編成をいたしましたが、その過程におきまして、ずばり申し上げれば、どちらかといえば中小企業が比較的受注しやすいような経費、庁費関係と申しましょうか、そういったようなものの削減がどうしても現実問題として節約その他で多くなってきておりまして、他方、たとえば本四架橋であるとか、あるいは科技庁関係の「もんじゅ」がスタートすると金額が大きくなるというような大規模なものがふえておる、こういう状況にございますので、取りまとめ作業に各省庁の精いっぱいの努力をお願いしておりますけれども、客観情勢は非常に厳しいところにございます。しかし、そういう中にありましても、われわれとしてはやはり後退はしたくない、一歩でも前進をしたいということで、かなり細かい点につきましても各省庁といま対話をいたしておるところでございます。
  170. 上坂昇

    上坂委員 目標パーセンテージを立てることはなかなかむずかしいということもわかります。ただ、各省庁に対して協力を要請する場合の問題になりますが、快く協力をしてくれるところもあるけれども、なかなか首を縦に振らないところも実際にはあるのではないかと思うわけでありまして、一層努力をして協力をしてもらう体制をつくってくださるようにお願いをしたいと思います。  ところで、この官公需の問題と関連すると思いますのでお伺いするのですが、前に中小企業の定義の改定について通産省で作業に入ったということを仄聞したわけですね。現在これはどんなふうになっているのか、その後ちょっととだえてしまったような感じがしますので、お伺いしたいと思います。
  171. 神谷和男

    ○神谷政府委員 従来、何回か中小企業の定義の改定を行ってまいりましたが、どちらかと申し上げれば、資本金を引き上げて定義をかさ上げと申しますか、高いところに持っていくことに関して余り異論もなく、ほぼ大方の賛成を得ながら定義改定が行われてきたわけでございますが、今回、一昨年ぐらいから検討をいたしておりますが、その過程では賛否両論、これが非常に激しく対立をいたしております。恐らく安定成長、あるいは俗な言葉で申し上げれば、パイが小さくなってまいりますと高度成長時代のように余り大らかにはいかないということもございまして、特に調整問題等を主体といたしまして反対する声が強い。一方では、中堅的企業育成のためにどうしてもやはり引き上げるべきであるという両論ございます。われわれといたしましては、やはりそれらをよく出尽くすまで議論していただこう、こういうことで、特に拙速をいたしましてこれを進めるつもりはございません。  官公需に関連いたしましては、理論的に申し上げますと、定義を上げたりあるいは下げたりいたしましても、具体的にその定義の中で何%あるいはどれだけの金額のものの発注が可能かというのを各省庁が下げておりますので、上げれば比率を高いところに目標を持ってくる作業は比較的楽になりますし、そんなことはありませんが、下げれば比率はどうしても低いのが出てまいりますので、問題は、実態として中堅あるいは小さな中小企業にどれだけのものが回せるような体制を各省庁がとってくれるか、こういうことでございますから、論理的には直接関係がないと私は個人的に思っておりますけれども、しかしこの問題に関しても、やはり何か分け前といいますか、余り入れ物を大きくしてそれに注がれるものが少なくなるんではないかという危惧もございます。そういう心理的な問題も余り無視できませんので、こういう御意見も御意見としてはよく拝聴しながらこの問題は考えてまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、現在は両論をいろいろ聞き、それに関連したデータを整備中ということで、いま方向は定めておりません。
  172. 上坂昇

    上坂委員 前には本当にすんなりいってしまうじゃないかという危惧をしていたわけですが、その後非常に議論が沸騰して賛否両論になっているということについては、私はいいことだと考えざるを得ないのです。  実は、一律拡大で余り広げてしまいますと、大企業の範囲は狭まるかもしれないけれども、中小企業の範囲がぐっと広がってきて、どこに線を引いていいかわからないと、小企業の部面が大変な問題になるというふうに考えますので、そこのところを十分考えて、ひとつまだまだ論議をしていっていただきたいというふうに思うわけであります。  ところで、今度は中小企業の定義、現在のものをとってみますと、製造業では資本金が一億円以下または従業員が三百人以下ということになっておるわけでありますね。そうしますと、たとえば資本金が五億円でも二百八十人だったら中小企業に入ってしまうという結果になってしまいます。したがって、地方なんかに行けば、一億円以上の資本金を持っているものは大変な大企業でありますけれども人数が少ないということになる。特に、いま合理化あるいは技術革新が進んでおりますから、雇用がそれほど多くなっていかないというところでは非常に人数が少ない。しかし、やはり中小企業の段階に入っている、こういう形になっておりまして、それがいろいろ問題になると思います。こんなことは言うまでもなく御承知のとおりだと思いますが、そういうことで、私たちは現行の定義の改正の場合にも、こういう点を十分注意をしてもらいたいのですが、中小企業向けのいわゆる官公需の発注比率、これが年々歳々少しずつ伸びているとはいっても、果たしてその中身を検討した場合に、それが本当に中小企業になっているのかどうか、こういう問題が出てくると思うのです。  それが昨年の九月に出てまいりました「官公需についての中小企業者の受注の機会の確保に関する行政監察結果報告書」、これに載っているわけでありますが、これを見ますと、行政監察結果では、契約実績の中に明らかに大企業に対する発注額というものが含まれているという指摘がされているわけであります。これは十六ページに出ておりまして、一例を言いますと、一般企業で十二億五千万円で、従業員が一千五百八十二人いる。それを中小企業扱いしたものが三件、こういうふうに出ているわけですね。それからその次に、一億円で千百二十五人の従業員を持っておるものを中小企業扱いしたものが四件ある。こういう報告をされると、どうしても中小企業向けの発注の比率が上がってくるわけであります。しかし、厳密に検討すると、実はこれは大企業に対する発注であったということになりますから、果たして五十六年度の三七%というのは本当に三七%であったのかどうかということになりますと、疑問を持たざるを得ない。あるいは三五%何か下がっているのかもしれない、こういう問題が出てくると思います。  それからもう一つは、この報告書にあるのですが、いろいろ検討して、いまの同じページに出ておりますが、「誤謬の種類」というのがありまして、「大企業等を中小企業に計上したもの」が国で十四、公社公団などで三件、合計十七件もある、こういう報告が出ています。  それから、本庁に報告をした契約金額の中で監査をしてみると、実は契約金額が少なかった報告が多かったという例があるわけです。この差額が四億九千六百万円に達しているわけですね。そうしますと、これは水増しの報告になる。そうすると、中小企業に対しては大変たくさん金額が発注されているんだ、こういう結果になってしまって、通産省がせっかく一生懸命になっているのに正確な報告が行われない、こういうことになったのでは努力したかいがなくなるという形になると思うのです。  そこで、こうした問題をなくしていくということが必要なので、各省庁に対するいわゆる協力のあり方、それから各省庁の各本庁等に対する報告並びに通産省に対する取りまとめの報告、そういうものも本当に正確を期してもらわなければならない、こう思うわけでありますが、その辺はいかがでしょう。
  173. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のような誤りがあったことは事実でございますし、われわれもそれに関連してフォローの整理、調査等をいたしてみました。御指摘のように、いかがかと思われるような間違いもあるのでございますが、中にはやはり非常にむずかしい問題で、たとえばある企業体をサービス業としてとらえるか、製造業としてとらえるか、われわれでも首をひねるようなときがございまして、その場合に、製造業としてとらえた場合には中小企業に計上いたします。ところがサービス業であるということがよく調べるとわかれば、これは中小企業の範疇には入らないという定義が御承知のような形になっておりますので、したがいまして、その種の間違いというのは、ある意味では無理からぬと言うと怒られますけれども、もう少し慎重にやっていただかなければいけませんけれども、ここのところは逆に、担当の方々にわれわれももっとよくいろいろな定義等を御説明しなければいかぬなと、中小企業庁自身も反省をいたしたわけでございます。  したがいまして、これらの非常に紛らわしいようなもの、こういうものを主体にいたしまして、このケースはどちらに入るというようなことをかなり細かく整理いたしましたものもわれわれで準備いたしまして、各省庁に改めて御説明すると同時に、支分局あるいは関係特殊法人等に周知徹底をしていただくことにいたしております。さらには、それに関連した帳簿類の整備あるいは担当官の研修、内部点検の実施といった改善措置等もきめ細かくお願いをいたしておるところでございまして、関係省庁でも担当官の研修等はむしろやってほしい、こういうような御意向もございますので、われわれの方でも努力をいたしたいと考えております。  いずれにいたしましても、誤りとはいいながら、そういうことが起きることは適切でございませんので、この際、かなり各省庁で疑問が多いし、間違うケースが多いようなものに関しましては特に留意をいたしまして、各省庁の報告を正確にするような努力をいたしたところであり、今後とも続けてまいる所存であります。
  174. 上坂昇

    上坂委員 中小企業基本法というのがあって、中小企業の定義、また小規模企業の定義がありますが、私は、これは将来中小企業の範囲を広げていく場合に、小規模企業基本法みたいなものをつくらないと困ってしまうような状況が起きてくるのじゃないかという気がしておるのであります。  それはさておきまして、小規模企業の現在の定義によりますと、製造業では常時使用する従業員が二十人以下、小売サービス業では五人以下になっているわけであります。ところが、こうした非常に零細な企業というものがわが国では非常に多く、八割程度のものを占めているというふうに考えるわけであります。そうしますと、実際の官公需、特に地方に参りますと、そうした小規模企業といいますか零細企業といいますか、そういうものに対するものが官公需の大宋を占めているのではないか、こんなふうに考えざるを得ないわけであります。  そこで、小規模企業者は非常に力が弱い、弱いから大きな企業あるいは中堅企業と対抗するためには協同組合をみずから組織をして、そして受注体制を整備する、そしてそれを各官庁に報告していわゆる官公需の適格組合の証明をもらって、資格をもらって、その上で官公需の発注を受ける、こういう形になってきている、それが今後もどんどん進んでいくのではないかというふうに私は思いますが、現在の適格組合の組織状況と、それから受注実績というものの推移についておわかりになっておりましたら、できるだけ新しい資料でお答えをいただければありがたいと思うのです。
  175. 神谷和男

    ○神谷政府委員 適格組合の数及び直接並びに間接の受注額といったものは、このところ逐年増加をいたしております。  ちなみに、五十二年度の組合数は二百四十六組合でございますが、五十六年度末の組合数が三百九十七組合でございます。これに対して直接受注額、五十二年度は百六十九億円を二百四十六組合で受注をいたしており、間接受注額を含めた場合には四百五十三億円という数字になっております。これが五十六年度数字でございますと、百六十九億円に対応するものが五百三十五億円、間接受注を含めた四百五十三億円に対応するものが千百一億円という数字になっております。五十七年度はまだ数字が出ておりませんが、五十七年十二月末の組合数は四百三十一組合ということで、五十六年度末よりさらに組合数はふえておるところでございます。
  176. 上坂昇

    上坂委員 中小企業庁の御努力によりましてこういう結果が出てきているということについては非常に感謝をするわけでありますが、先ほど申し上げましたように、それでもやはり各省庁の中では、これは指摘すると語弊があるから余り直接に言いはしないけれども余りうちには関係がない、あれは勝手に中小企業庁が証明しているものだから、適格組合などというものよりは従来からおつき合いのある方がいいというような形になってしまうのだろうと思うのですが、そういう省庁もまだまだあるわけでありまして、実は適格組合の中から、窓口で適格制度も知らない、それから協同組合のことについても余り勉強していない、そういうところがある、これは非常に困るんだという声があります。  したがって、ひとつもっと徹底をしてもらいたいと思うのですが、先ほどの監察結果報告書の四十七ページでは「中小企業者の受注活動積極化の促進」ということで、「官公需適格組合の活動の充実」に対する勧告が出ておるわけであります。その勧告の中で指摘されているのは、窓口で事実上門前払いをしたり、せっかく入札参加者となっていても、いまだかつて一度も指名を受けたことがない、あるいは随意契約の見積もり合わせにも参加したことがない、こういうのがかなりあるというふうに指摘をしているわけであります。契約金額はきわめて少ないから発注実績がない、こういうことを言われてだめになっているものもあるわけですね。いろいろな指摘がなされております。  それで私は、こういう形のものが監査報告で指摘をされるということは、まだまだ浸透が足りないということを証明するものであると思うのですね。そういう点でもっと徹底したPRというのですか、そういうものが必要だと思うのです。特に「通商産業省は、適格組合の積極的活用を図るため、各省庁に対し本制度の周知徹底に努めること。」というふうに言っているわけですね。これは通産省に対する、中小企業庁に対する警告でありますから、これをひとつ十分心にとめてもっと積極的な活動をお願いいたしたいと思います。  そこで、もう一つ問題になっているのは地方公共団体との関係なんですが、地方公共団体の方が国の段階よりは中小企業者に対する発注が進んでいる、多くなっているということは聞いているわけです。ただ、なぜ多いのかというと、実は地方に行きますとそんなに大きな企業というのはありませんから、大体中小企業、特に零細企業ですから、受注するということになればどうしてもやはりそういう形のものになっていくと思うのです。ですから、比率が高くなるのはあたりまえだと思うのです。ところが、その地方公共団体の中でやはりだめなのがあるのですね。特に東京都が悪いのです。東京都に適格協の人たちやあるいは分野協の人たちが交渉した結果を私は報告を受けているわけでありますが、一応都の方も国と同様に方針とか通知とかというものを関係機関には出しているようでありますけれども、適格組合に現実に仕事を出すかという段階になりますとなかなかうまくいかないのですね。  どういうところに原因があったのかというと、中小企業庁の方からは地方公共団体に対して要請の通達が出ているわけです。ところが、都の方で言うのは、これは財務局とか労働経済局で言うのですが、中小企業庁の方からは通達があるんだけれども肝心の自治省の方からないからだめなんだ、こういうことになっているわけです。そこが日本の縦割り的なお役所仕事の弊害だとは思いますけれども、何か自治省からお墨つきがあれば積極的にこれを活用していく、こういう結果になってしまうわけなんですね。これは私は非常に問題だと思うのです。  昭和三十八年には、中小企業庁長官と自治省の行政局長との間で覚書が交わされておるわけでありますが、そこで中小企業庁は何度か通達を出してきたというのが実態だろうと思うのですね。これは毎年出してきていると思うのです。ところが、それの対応ができないということになりますとこれは問題なんで、実は自治省の人が来ていれば一番いいわけですが、自治省の人が来ていなければ何ともしようがない。――来ていますか。
  177. 登坂重次郎

    登坂委員長 来ています。
  178. 上坂昇

    上坂委員 来ておれば、どうしてこういう結果になっておるのかということについてお答えをいただきたい。
  179. 中島忠能

    ○中島説明員 昨年の十月一日から地方自治法の施行令を改正いたしまして、随意契約のできる限度額というのを都道府県及び大都市については国並みに一挙に引き上げました。その結果がどういうふうに施行されているかをわれわれも承知する必要があるということで、地方団体の方にそれ以来ときどき出張しておりますけれども、そのときにいろいろ話を聞きますと、現在地方団体の発注する工事量というのですか、発注量というのが非常に減っておる。まあ予算が厳しいからそうなるんだと思いますが、減っておる。そうしますと、いろいろな方面から、地方団体がどういうところに発注し、どういうところが受注するのかというのをウの目タカの目で見ておる、そういう環境にあると思います。  そこで、そういう環境にある地方団体が、契約事務を執行するときに現在一番何に頭を悩ませているかといいますと、契約事務の公正な執行、それともう一つは、県民から預かっている税金というものをできるだけ効率的に使いたい、この二点に頭を悩ませておるようでございます。そういうような要請の中にあって、随意契約を選択するのか、それとも競争でいくのかということの結果が現在出ておると思うのですけれども、私たち、いろいろ地方を回って話を聞きますと、地方団体の方というのは、総体的には、先生がお話しになります小企業者というのですか、零細企業者ですか、そういう人たちへの発注はずいぶん配意していると私は思います。  そこで、東京都の例をお挙げになりましたけれども、東京都がどういうふうに考えてそういうことを言っておるのか、一度東京都の方から話を聞いてみて、私たちの方もそれなりの助言をしてみたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、総体として私たちが現在つかんでおる感じというのは、まあまあ地方団体の方も相当な努力をしてきておるなという感じを持っております。先生のお話しになります東京都の例は、せっかく先生の御指摘でございますので、財務局ですか、一度、担当の課長なり部長なりを訪ねましてよく話を聞き、また、私たちの方の考え方も述べてみたいと思います。
  180. 上坂昇

    上坂委員 これから調査をして対処してもらうことはぜひやってもらわなければならぬと思います、自治省と中小企業庁の方は二十年前にある程度合意をしているわけですから。二十年前というのはもう時効にかかってしまったのだというのでは困ってしまうのですけれども、そうでなければ生きているわけですから、通産省がそれに基づいて通達を、適格組合に対してなるべく出してやれよという形で出すわけですから、通産省中小企業庁から出ている通達というものについて、やはり自治省としてもそれには努力しているのだから、地方自治体としてもできるだけ努力されたいぐらいの文書は出せるのじゃないかと思うのだけれどもね。そういうものをぽっと出せば、もう喜んでいただいちゃって一生懸命やるというのが、どうも地方公共団体のような感じがしてならないのですね。  僕が言っているのは、先ほど言ったように、全部の地方公共団体ではないと思うのですよ。地方公共団体は大体よくやっているのです。だけれども、国の各省の段階でもあるように、地方公共団体の中にもそういうところがあるということでありますから、そういうところに対しては、やはりいま言ったような配慮ぐらいはできるのじゃないか。こんなこともできないというふうなお答えがあるとは思わないのだけれども、その点はどうですかね。
  181. 中島忠能

    ○中島説明員 私たちは契約制度について所管しておるわけでございますけれども、私たちの方で契約について物を言う場合には、やはりいま契約制度について何が一番国民から注視されているかということを度外視して契約について物を言うわけにはいきません。  それで、先生がそういう話をされるわけでございますから、私たちも実はそういう話はかつて中小企業庁からも聞きました。聞きましたけれども、私が申し上げますように、契約についていま国民が何を注視しているか、何を見ているかと考えますと、やはり契約事務の公正な執行と効率的な金の使い方ということだと思います。したがいまして、そういう点を度外視してわれわれが契約について物を言うわけにはまいりませんので、そういうことも考えますと、せっかく中小企業庁の方からお出しになりまして、そして、それが地方団体の方でよく熟知されておる、われわれはそういうふうに見ております。そういう熟知した上で地方団体がどういう道を選択するかということを、いま地方団体の方で真剣に考えておる。また、考えた結果が、先ほど申し上げましたように、まあまあの結果が出ておるということでございますので、私たちとしては契約事務全般についての所管ということで、特定のものについての考え方というのは、先生がいま東京都の例をお出しになりましたように、そういうふうに特定の地方団体で、先生のお言葉をおかりして申し上げますと、どうも協力的でないところがもしありましたら、個別にそういう話をしてまいりたいというふうに思います。
  182. 上坂昇

    上坂委員 あなたの言っているのはあたりまえのことを言っているわけだから、それならそれで反発する理由はどこにもないのでね。ただ、私が文書を出せるのか、特定のところにも出せないのかと言ったら、特定のところでもそういう問題があれば出せますよ、こういう回答になるのかどうか。その辺いかがですか。
  183. 中島忠能

    ○中島説明員 特定のところに一片の通知を出すというふうなことは、余り意味がないと私は思います。そういう特定のところにつきましては、やはりひざを交えてといいますか、顔を見ながら、どうしてそういうお考えでこういう事務を執行されているのかということをよく聞きながらアドバイスをしていくというのが、やはり親切な行政ではないかというふうに思います。
  184. 上坂昇

    上坂委員 では、その親切な行政指導をぜひやってくれるようにお願いをしておきます。  ところで、この適格組合の制度が発足をしてから十六年になりました。前に、影山長官かだれかのころだと思うのですが、この制度化を法的に明確化するということもできないことではないというような委員会答弁があったような気がするわけでありますが、適格組合というものをできるだけ明記をして本当に周知徹底をさせるような方向ができるならば、その方向にこれからひとつ努力をしていただくようにお願いをしたいと思います。四十一年の長官答弁で、会計法の体系の範囲内においても、特に同質同価の場合には中小企業の方に回してやるというような規定の仕方も政令段階でできないわけではない、こんな答弁をされておる。そのことが適格組合の制度化というようなものになってあらわれてきていると思うのですが、その辺もひとつ考慮をしていただきたいと思います。  それからもう一つは、中小企業向けの官公需の中で、大企業がダミーを使って落札をする場合を聞いているわけであります。これは調査をすれば、どことどことどことわかりますけれども、そういうことについても十分注意をされた上で、中小企業向けの官公需を発注する場合に考慮をしていただくように、これは注意してくれるように要請をしておきたいと思います。このことでちょっとお答えをいただいて、次の質問に移ります。
  185. 神谷和男

    ○神谷政府委員 適格組合制度、これを制度上どういうふうに考えていくかということに関しましては、御指摘のように歴代長官、いろいろ検討もし、また御答弁もしておるようでございますが、基本的には、本質的にはこの適格組合というものは、組合として、要するに組織面あるいは財政面等から一体的な活動をするに十分な基礎を備えておるということが証明し得ることでございまして、これ以外、個々の、工事を受注するだけの能力ありや、資格ありやという問題に関しましては、やはり個別の発注者ごとに検討をしていかなければならない問題であろう、こう考えますので、これらを全般的に法制化をして現在以上の意味のあるものができるかどうかという点は、さらに勉強が必要ではないかと思います。  御指摘のように、同質のものであり同条件であればというのは、これは法律の問題というよりも、国の行政を進めていくに当たっての基本的スタンスとして、そういう場合には中小企業に回すのだ、これはもう閣議決定しておるわけでございますから、これで十分であり、それはまた各省庁によって当然遵守され実行されるべきもの、このように考えておるわけでございます。  ただしかし、先ほども指摘ございましたように、この適格組合制度は、制度そのものが各省庁、各機関にやはり十分認識されなければ効果は発揮できないわけでございますので、従来も行ってまいりましたし、また行管の報告も受けまして、われわれといたしましては先般、この三月、末端までこの適格組合の制度というものを周知徹底していただくよう、適格組合のリストも加えて、また関係省庁にお願いを私の名前でしたところでございます。また、各地方通産局ごとにも出先機関等にお集まりいただきながら、地元の中小企業団体あるいは適格組合の方々とよく意見交換をし、周知徹底を図り、隘路をできるだけ除去するような努力を進めてまいりたい、このように考えておるわけでございます。  この官公需そのものに関しては御指摘を受け、勉強すべきことは多々あると思いますが、会計原則その他、やはり良質ということを考えていかねばなりませんので、非常に細い道を通っていかなければならぬケースもありますので、むしろ実際面で各省庁の御協力を一層要請したいと考えております。
  186. 上坂昇

    上坂委員 商品取引の問題について質問をいたします。  海外商品取引受託規制法がことしの一月十五日に施行されたわけでありますが、私たちはこの法律の審議の際に、当局に対して、この法律は悪質な海外商品取引を実質的に禁止するものであり、これによってなお被害が後を絶たない場合は改正または新たな立法措置考えるというような答弁がありまして、この姿勢を評価して、クーリングオフの条項を追加修正して法律が制定をされた、こういう経過があります。  その後、通産省また農水省は、立法趣旨にのっとりまして積極的な対応を見せていることもわれわれは十分承知をいたしております。テレビでも、一般大衆を勧誘する海外商品取引業者は一〇〇%悪である、何か昔、長官が言ったようなことが出てきたわけでありますが、そんなことが断言をされているということで、これはまた消費者の啓発に非常に役に立っているということで評価をしております。  ところが、業者もなかなかさる者で、この法律の対象が香港市場に限られているということを逆手にとって、最近はニューヨークやシカゴ、さらにはロンドン等の市場を舞台にした取引を始めているわけであります。そして、その被害がかなり多くなっているということが報道をされております。これは非常に問題で、ここに資料がありますが、「ご用心!甘い誘い」「女性、老人ら被害」「香港市場から〝転進〟」こうなっておりますね。「米国市場舞台に暗躍」こういうのが出ております。そして、金だけではなくて、コーヒーや砂糖やココアにずっと及んできております。  そこで、その政令指定外のこうした市場の取引について、今後通産省はどういうふうな対応をしていくのか、このことについてお答えをいただきたいと思います。
  187. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のとおり、海外先物取引規制法の対象といたしましては、いまは香港についてでございます。その理由は、従来の先物取引の被害の大半が香港の商品取引にかかわるものであったということに基づくものでございまして、それ以外のところにやらないというわけでは決してないわけでございます。  ただ、御指摘のように、アメリカのようなところで被害が出ているケースも若干見られるわけでございますけれども、現在のところでは、アメリカの方にどんどん出るという情勢ではないんじゃないかというふうに考えております。と申しますのは、香港でございますと、あそこにはやはり日本系の企業がいろいろあるものですから、そういうところで取引がしやすい、言うならば代理店契約などがやりやすいという問題がございます。それがアメリカの場合にはないという問題がございます。それからまた、売買の方法につきましても、香港は日本に比較的近いのでございますけれども、アメリカはそういうかっこうではないということで、大勢として見ますと、いまの段階ではアメリカの方にそういった先物取引がどんどん行くという情勢ではないんじゃないかと思っております。  したがいまして、いまのところは、アメリカなど法規制の対象外の業者につきましては、必要な場合には個別の行政指導を行うという態勢で臨んでおりまして、今後もし必要があるということになれば、おっしゃるように政令の追加指定というのも十分考えてまいりたいということでございます。
  188. 上坂昇

    上坂委員 いま、これから必要があればいろいろ考えていく、政令指定の行われる市場も出てくるということだと思うのですね。  それはそれでいいのですが、この前の金の市場開設の場合にも申し上げたのですが、次々と指定をしていくのだけれども、その場合に、質問すると、もうこれ以上は大体ないと思います、大丈夫だと思うのです、大抵こういう答えが返ってくるわけですね。そこでわれわれも納得せざるを得ないから、納得をして法改正に賛成をする、こういうかっこうになってしまうのですね。金のときは、もう出てきませんよというわけだったのですね。ところが、今度は金ばかりじゃなくて、プラチナから銀から出てきて、そのうちダイヤモンドも出てくるんじゃないかというように言われておるわけです。そういうことがありますから、この点は十分心にとめて状況を把握していただきたいと思うのです。  そこで、去る三月二十日ですが、通産省日本貴金属に対して立入調査を行った。そして三カ月の業務停止命令を四月八日に行ったわけであります。ところが、この日本貴金属というのが全く反省の色がありませんで、聞くところによると、国家賠償請求訴訟を起こすと言って息巻いているという報道もあるわけであります。  それからもう一方で、セントラル交易、ニットー貿易、ケイオー貿易という三つのダミー会社を設立しております。これはやはり同じ日本貴金属の本社のあるところに置いておくわけですね。そして、全く同じ手口で不法な取引を行っているというふうに言われております。こういう会社がたくさんあるということに対して、通産省はどんなふうに対応をされていくのであるか。  それから、農水省の方が来ておればもう一つ、プラングッド・インベストメント・ジャパン株式会社ですか、ここへの立入調査を三月三十日でありますが、行った。その結果についてもいろいろ報告をいただきたいと思うのです。  問題なのは、こういう非常に悪い業者、悪徳業者がいま二百社以上に上っているんじゃないかということが言われております。したがって、一つ一つ立入調査をやるということもなかなか困難であろうと思うのです。だけれども、悪いのは、訴訟を起こしたりあるいはいろいろな消費者センターとか何かに対して訴えが起こされておりますから、大体わかると思うのです。そこで、この悪徳業者を公表してしまうということがいまのところは一番効果があるんじゃないかというふうに思うわけでありますが、これに対して当局はどんなふうに考えておられるか、お答えをいただきたいと思います。
  189. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 日本貴金属の件でございますが、御指摘のように、先般、業務停止命令三カ月というのを科しましたところ、日本貴金属の役員が辞任、退社をいたしまして、新たに三法人を設立して、そして元従業員を使って営業活動を行っているという情報がございました。どうもそのように見受けられます。私ども、いまその実態調査を急いでおるところでございまして、業務停止命令の効果意味がなくなるということでは何のために処理したのかわかりませんので、実態をよく調べました上で必要な規制措置をとってまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つ、悪質業者の社名公表の御指摘がございました。おっしゃるように、業者の営業活動に大変大きい影響が出てくることが期待されますので、また、一般大衆に注意喚起するという上でも効果が大変大きいというふうに考えられますので、私どもも悪質なものについての社名公表というのをいま考えているところでございます。今後、具体的な方法などにつきましては農水省と相談をいたしまして、しかるべく処置したいと考えております。
  190. 登坂重次郎

    登坂委員長 いいですか、農林省も来ておりますが。
  191. 上坂昇

    上坂委員 いまの答えで、その後でやってもらいますから。  いまのお答えですが、遅くなればなるほど被害が殺到するわけであります。これは現実に私たちのところへも直接来るのです。ですから、早くやってもらわないと困るのですね。  そこで、早くやってもらいたいということですが、農水省の方ではその点についてどんなふうにお考えになっているか、お答えをいただきたい。
  192. 伊藤礼史

    ○伊藤説明員 先にお尋ねのプラングッド・インベストメント・ジャパン株式会社に対する立入調査及び処分の件でございますが、三月三十日に立入検査をいたしまして、先ほどの海外取引規制法八条、十条等に違反する行為がございましたので、四月二十八日に一カ月間の営業停止を命じたところでございます。その後、この会社の状況を監察しておりますが、当社は、新しい会社を設立するとか解放するとかいう状況は認められません。  それから二つ目の、悪質な業者の氏名公表についての私ども考えでございますが、通産省同様、苦情申し立て件数が特に多いと認められる業者の氏名を公表するシステム等につきまして、通産省と十分相談をいたしまして検討してまいる考えでございます。
  193. 上坂昇

    上坂委員 いまお話しになったような点は、一日も早くやってくれるようにお願いをいたしたいと思います。  そこでもう一つ、警察庁の方に、来ておりましたら質問いたしますが、いままでこの法律によって警視庁が摘発したのは一件ですね。ユニット通商株式会社、麻布台にある会社でありますが、これに対して四月八日の朝に摘発を行った、こう出ておるわけであります。これは詐欺まがいの先物取引というふうに言われております。言ってみれば、クーリングオフ期間中の買い付けを行ったり、あるいはのみ行為をやっている疑いがあるというふうに聞いているわけでありますが、これらの実態はどういう形であってそこで摘発をしたのか、このことについて御説明いただきたいと思うのです。
  194. 清島伝生

    ○清島説明員 お話のございましたユニット通商につきましては、新しい海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律の第四条、第五条に基づく書面不交付という事犯で検挙をいたしました。  なお、詐欺まがいの事案というお言葉がございましたけれども、この件につきましても、果たして詐欺事案があるのかないのか、追及しているところでございます。
  195. 上坂昇

    上坂委員 実を言うと、警察の手が入るということになるとこれは一番効くのですね。そうすると消費者も、ああこれは大変な悪いことをしているんだなと思うから、うっかり乗っていかないような状況が出てくるのです。だから、本当はどんどん摘発すれば一番いいわけでありますが、かつてマルチ商法の場合、このときには摘発に次ぐ摘発が行われたということなんです。それで、訪問販売法によるところの摘発については、根絶やしとまではいかないけれども、かなり大きな効果を上げて、それから訪問販売については非常に大きな効果を上げたというふうに思うのです。  ところで、いまどうしてこれができないのかということを考えた場合に、海外商品取引規制法の中での第九条の問題が出てくると思うのです。ここで重要事項の告知義務違反という問題が出てきまして、いまのところでは重要事項の範囲というものが「相場の変動」に限られている。「相場の変動」ということになりますと、これは商品取引でありますから、相場は常に変動しているわけであります。ただ、これに対する報告をするとか何かということは、これはだれか考えてもやらざるを得ないことだというふうに思うのです。このことだけが重要事項として認められているということで、そのことを理由にしてはなかなか手が入らない。先ほど、四条、五条の書面不交付の問題で検挙をしたということもありますけれども、大体われわれのいままで取り扱ったものでは、書面不交付というもので検挙をされるような事態を招いている業者というのは本当は少ないんですね。大体書面交付だけはちゃんとやっておるんですね。これは先にやるか後にやるかは別にして、とにかくやったことになっているわけです。ですから、これはなかなかむずかしいんだと思うのです。  そこで、マルチ商法の場合には、これはどういうことになったかというと、その重要事項の範囲というのが、もしそれを聞いていれば契約しなかったであろうというような条項、こういう条項があった。そこで摘発が容易であったということを聞いているんですが、この点についてはどんなふうに考えたらいいのか。これは通産省のお考えとそれから警察庁、両方からお答えをいただきたいと思うのです。
  196. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘の件でございますけれども、現在「相場の変動」というのを入れております理由は、この相場が変動するということすら相手方に理解をさせない、要するに、必ずもうかりますよというようなかっこうで取引の中に誘い込むというのが非常に多いために「相場の変動」というのを入れているわけでございます。当然のことでございますけれども、変動がありますよという程度では不十分でございますから、「相場の変動」というふうに政令で指定をいたしておりますことについて、どういうことをやらせるかといえば、最低一週間の相場の動きぐらいは告知をさせる。そしてそれによって、一週間以上といいますか、一週間の変動でもって利用者の方に警告をしてもらうといいますか、注意をしてもらうということを考えているわけでございます。  御指摘のように、「相場の変動」以外の問題につきましても政令で指定ができることになっておりますから、そういう問題が具体的に出てまいりますれば、そういうものももちろん考えてまいりたいと思っておりますけれども、いまの段階ではきわめて初歩的な手口が多くて、もうかりますというところで乗せられちゃっているというのが多いものですから、これを中心にして考えているわけでございます。  今後、政令で追加が可能でございますから、必要なものは追加をしていきたいと考えておるわけでございます。
  197. 清島伝生

    ○清島説明員 お話がありましたように、法第九条で規定する重要な事項といたしましては、「相場の変動」が定められているわけでありますが、この種事案の検挙事例等を見ますと、商品取引において相場が変動するのは当然であるのに、顧客に対しまして絶対にもうかる等々と申し向けまして勧誘しております。商品取引においては、特にこの「相場の変動」について顧客に正しい認識を与えることが重要であるというふうに考えております。  ただ、警察といたしましては、重要な事項としてさらに政令で指定すべき事項があるのかどうか、今後の取引の実態なり犯罪の動向というものの把握に努めまして、必要な場合には関係省庁と政令指定について協議をしてまいりたいというように考えております。
  198. 上坂昇

    上坂委員 われわれもいろいろ勉強して意見を申し上げて、もしそういうものがあれば政令指定をしていただくようにお願いをしたいと思うわけであります。  そこでもう一つですが、悪徳業者の中でも四月十七日の報道なんですが、悪徳商法についての内部告発だということで、社員が客から預かった金を会社に入れないで保管をしておいた事件があります。そこで会社は、これは着眼、横領の容疑があるということで訴えたわけであります。これに対して警視庁は、両成敗という形で会社側についても取り調べを行っているというふうに伝えられておりますが、差し支えなければ報告をいただきたいと思うのです。  この業者は、有名な悪徳業者で豊田商事という大阪の会社でありますが、全国に支社、支店四十カ所以上を持っておって三百億円ぐらい集めているのじゃないかと言われている。従業員が約三千人いるということで大変な会社であるということが言われておりますが、これは一方、ぱっとつまずいたときに大変な被害が生ずるんじゃないかと思って私は心配をしておるわけであります。そういう意味で、報告ができるところがありましたらお願いしたい。警察庁の方、いかがですか。
  199. 清島伝生

    ○清島説明員 豊田商事というお名前が出ましたが、この豊田商事につきましては私どもも重大な関心を持っておるところでありますが、ただいま先生お話のありました事案についても多少報告は聞いております。いろいろ問題もございますので、ここで具体的な答弁をすることは差し控えたいと思っております。
  200. 上坂昇

    上坂委員 そこで一つ注意を促しておきたいと思うのですが、いろいろな形で手が入ったりして危なくなってきた場合に、偽装倒産といいますか、計画倒産みたいなものが起こることもあるのではないかと思うのです。そういうことについても十分注意をしてもらって、そうしたことの起こる前に事前に手を打ってくれるように規制の強化をお願いいたしたいと思います。  もう一つは、プラチナと銀について政令指定をやりたいというような動きがあるというふうに思いますが、これについてはどんなふうになっているか、お伺いをいたしたいと思うのです。  先ほど申し上げましたように、金の先物市場が開設をされるときに私は基本的に反対をしたのです。なぜ反対をしたかというと、金の商品としての性格からいって、これを国で公認をするというような形になるとブラックでなくてかえって白くなっちゃって、これは国まで保証しているものだからということで、これを利用した現物まがい商法とかいろいろな問題が出てくるのではないか、こういうことをおそれたからであります。案の定、香港市場を中心にしたそうした現物まがい商法がまかり通っている。それに加えてプラチナや銀とかが横行してきた、こういう結果だろうと思うのです。  そこで、問題になるのは第八条の逆転解釈だと思うのです。商取法の逆転解釈について、私はどうしても納得がいかないのです。最近、裁判所の解釈でも、大津地裁の彦根支部あるいは大阪、高知、神戸各地裁で、第一審では、従来の政府の解釈が妥当であるという判決が出ているわけであります。したがって、ここでは通産省あるいは内閣法制局の考え方と判決との間にそごが出てきている、食い違いが出てきている。こういう傾向について、これをどう考えるか。この二点についてお答えをいただきたい。
  201. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 最初に、八条の逆転解釈の問題から申し上げますが、これは私どもとしましては政府の統一解釈ということで決まったものでございますから、いまの商取法八条の解釈につきましては、この前変わった解釈にのっとって行政をせざるを得ないという立場にございます。ただ、御指摘のように、しからばこの運用についてどういうのが適切であるか、要するに、従来の解釈が変わったことに伴って行政の立場として改めてどういうのが妥当であるかという問題は依然として残りますので、これにつきましては、これは御存じと思いますけれども、すでに商品取引所審議会に諮問を行っておりまして、現在検討いただいているところでございます。この取引所審議会の結論に即して今後処理してまいりたいと考えているわけでございます。  それから、銀とプラチナの件でございますけれども、商品等の取引問題研究会という学識経験者の組織、これを通産省の産業政策局長の私的諮問機関という形で設けまして、ことで御検討いただきましたところ、せんだって五月十二日に中間取りまとめということで、銀、プラチナの上場は適当なのじゃないかという御指摘をいただいております。これは私的諮問機関でございますので、明後日、五月二十日に商品取引所審議会に正式に諮問をいたしまして、二、三カ月で結論が出していただけるものと期待をいたしておりますけれども、仮にその審議会で上場が妥当ということになりますれば、そういう方向で処理をすることになろうかと思っております。  以上でございます。
  202. 上坂昇

    上坂委員 最後に、名古屋に本社のある東海交易株式会社というのがありまして、昨年も三日間ばかり業務停止を食ったわけでありますが、この会社が最近また事件を起こして調停にかけられたのです。実は紛議調停の勧告が出たわけですね。ところが、これをけっ飛ばしちゃったのです。そこで今度は、加盟している商品取引所が指示を出したのですが、これもけっちゃったのです。それで調停制度が結局効果を発揮してないわけですね。いままでこういう例はほとんどなかったわけです。こういう業者がまかり通ってきつつあるというところに非常に問題があって、どうも仕事が荒っぽくなってきているのじゃないかという感じがするのです。いざとなれば倒産でも何でもしちゃいますよというようなかっこうのものが出てくるおそれがあるので、こういう問題についてどんなふうに通産省は見ておられるか、お答えをいただきたいと思うのです。
  203. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘の具体的案件につきましては、私、ちょっと正確には承知してないのでございますけれども、いまちょうど民事訴訟の行われている最中だそうでございますから、この状況をよく見守りましてしかるべき措置をとってまいりたいと考えております。
  204. 上坂昇

    上坂委員 それでは、大型店の問題について二つばかりお尋ねをします。  五十六年の秋から行っている大型小売店の出店規制に対して、この出店規制はいつごろまでやるつもりなのか、これからこの出店規制についてはどういう態度をとっていくのか、この点が第一点。  それから、聞くところによりますと、出店規制をしてはいるけれども、実は大手スーパーごとに出店規模を示唆している、これは事実かどうか。たとえば、ダイエーならばことしは大体五万平米ぐらいいいだろうとか、イトーヨーカドーだったら、あなたのところはダイエーに次ぐから四万平米ぐらいは何とかやってもいいのじゃないか、こういうようなことを通産省が言っているというふうに言っているのですね。そこで、どういうふうに言うかというと、それを三月までに決めてもらわないと実はその指示された数字効果を発揮しなくなっちゃう、そこで三月までに何とかして三条届け出審議をやってくれ、受け付けてくれ、こういうことを理由にしながら三条の届け出を促進をする、こういう方向に使われているということでありますが、この点について事実かどうかをお伺いいたしたいと思います。  それからもう一点、最近無店舗スーパーというのが出てきた。これは何かというと、カタログ商売なんですね。カタログを全部配っておいて、そして電話の注文を受けると途端にぱっと配送してしまうわけです。いまのナショナルスーパーを初めとする、いわゆる中堅スーパーもそうですが、大体コンビネーションでやっているわけです。それは、店舗を構えて売るのと、もう一つはブランド製品を売ること、もう一つは配送センターをつくってどこまででも運んでいく。この三つによってダイエーの総売り上げは一兆三千億とかというものではなくて実は三兆円を超している、こういうようなことまで言われておるわけでありまして、こうしたものが出てきますと、配送力というのが非常にすごいわけです。そこで、無店舗スーパーが関西に今度できたわけでありますが、これが全国に蔓延をしたら一体どうなるか。三条届け出も五条届け出も今度は要らないのです。大店舗法というのは全く役に立たなくなってしまう。これに対して早急に手を打っておかないとだめなんですね。そこで、大店舗法の改正という問題が当然私は持ち上がってくるだろうと思うのです。これらの点について御意見を伺いたいと思います。
  205. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 現在の暫定措置でございますけれども、これは御存じのように一昨年の秋から昨年の初めにかけまして、大型店問題懇談会でもってかなり集中的な検討をしていただきまして、結論を出していただき、それにのっとる措置がいまの暫定措置になっているわけでございます。この大型店問題懇談会の議論を、後からの懇談会の方々が、非常に急がれたために当面の措置ということでこれを打ち出したけれども、やはり中長期的な視点に立ってもう少し遠いところまで見通した措置というものが本来あるべきである、非常に急がれたので当面の措置ということでこれを取り決めたという御指摘がございました。したがって、大型店出店抑制措置につきましては中長期的な判断が要るということが、私どもの課題にまず残っているわけでございます。  したがいまして、そういった流通のあり方、将来の中長期的な見通しというものにつきまして、昨年の秋から、通産省産業構造審議会流通部会と中小企業政策審議会流通委員会の合同会議で御検討をいただいているわけでございます。これが、ことしの夏ぐらいを目途にしていろいろ作業が進んでおりますから、そうしますと、ことしの夏ないし秋になりますと中長期的な見通しというものがはっきりし、それからまた昨年の暫定措置、これはいつまでかというお尋ねがございましたけれども、当時暫定措置を決めたときには、いつまでということが必ずしも明確にはなっておりませんけれども、まあ当面の措置ということでやったのだから、こういうものがある程度どういう効果があるか見定めるのは、最低二年ぐらいが要るのではないかというような意見もございまして、私どもも、大体二年ぐらいの感じかなということで受け取っているわけでございます。  したがいまして、ことしの秋ぐらいになりますとビジョンも出、それからまた、先ほどの暫定措置もかなり効果がはっきりいたしてまいりますから、そういったものを踏まえて次の措置をとるということになろうかと思います。  それから、特定の大型小売業者に対して何か特別の枠をつくっているのではないかという御指摘がございましたが、これは御存じのように、昨年の二月の暫定措置の中で、大型店出店抑制策の一つといたしまして、特定の大手大型小売業者の出店届け出について、個別企業ごとに抑制的な指導をするということが入っております。と申しますのは、その特定の大手大型小売業者というのは、非常に活力があると申しますか、従来から大変出店の積極的な業者でございますから、そういう業者については特別に配慮せねばいかぬだろう。配慮をするといいますのは、抑制的な面の配慮をしなければいかぬだろう、こういう趣旨でございます。  これは御存じのように、昨年の暫定措置に基づきましても、地元に事前に十分説明をして、そしてその上で三条の届け出を行うようにという指導を行っているわけでございますから、いまの特定の業者につきましても、当然そういう地元での説明その他の手続は経て、かつ商調協で十分議論がなされた上で決まるわけでございます。それに加えまして、私どもは、大手大型小売業者からは、年間どのぐらいのことを考えているのか、仮にあちこちの商調協で全部それらの業者の申請がオーケーされるようなことになりますと、抑制という効果が減殺されますので、したがって別途大手大型小売業者、まあ十社余りでございますけれども、そこからは計画をとって、従来の出店のテンポを上回るようなことのないように一方で抑制の指導をする。他方では地元説明、そして商調協という一般の出店手続と同じようなことをやらせておるわけでございますから、特定の大手小売業者に対する措置というものは、特別に枠を認めるということではなくて、むしろ抑制的な指導をやっているのだというふうに御理解をいただきたいのでございます。  それから三番目に、カタログスーパーの御指摘がございました。現在のところはまだ、こういったカタログ販売などの通信販売の小売販売額というのはそんなに大きいものではございませんで、現在通産省の持っております商業統計では、こういったカタログ販売等の通信販売の小売販売額に占めるウエートというのは一%にまだ達しない状況でございます。〇・六%というのが五十四年の商業統計にございます。  ただ、今後どうなるかという問題は、御指摘のように、十分な配慮が必要かと思っております。これにつきましては、先ほど申し上げました産業構造審議会流通部会と中小企業政策審議会の合同会議で、「八〇年代流通ビジョン」の中でどういうふうに評価をするか、いろいろ検討していただいておりまして、そういったものを踏まえて、必要があれば今後の措置ということになろうかと思っております。  以上でございます。
  206. 上坂昇

    上坂委員 それでは最後の質問に移りますが、昭和五十二年の十一月十日に、私は質問主意書を当時の保利議長に対して提出をいたしました。「工業所有権制度の国際化に伴う審査体制に関する質問主意書」、こういうのを出したのです。  その中で、第四項なんですが、「特許庁における資料の増加は、審査処理能力向上のための人員増と相まって深刻なスペース問題を提起しており、私の調査においても、分断された既存の二つの庁舎の許容限度をはるかに超えている。かかる観点から以下の件につき回答を求める。」ということで、技術革新にふさわしい、日本の工業力にふさわしい特許、工業所有権の開発、そういう促進、審議、こういうものについてどうしたらいいのかということで、特に特許庁の庁舎の非常に狭いこと、それから資料を置くところに非常に支障を来していること、閲覧についても支障を来していることを指摘したわけであります。  これについて通産省の方から回答がございまして、いわゆるいまの第一期、第二期庁舎を勘案しながら、第三期庁舎について十分勘案をしたい、こういう回答が寄せられたわけであります。  そこで、来年の秋ごろに第三期工事が完了するということになっておるようでありますから、これを目前にして、ひとつ根本的な特許庁のあり方についての検討をしていただきたいというのが私の考え方なんですが、これについて大臣、どんなふうにお考えになっているか、お答えをいただきたいと思うのです。
  207. 山中貞則

    山中国務大臣 特許庁は、建物、内部構造、スペース、それから近代化への対応、いずれも恥ずかしい状態にございます。しかも、内容世界のトップレベルにある内容を職員が真摯に遂行しております。これを何とか近代的なビルにしたいと思って考えていたのでありますが、私は第一期、第二期というような工事は知らなかったのですが、建てる予定であった敷地には郵政省が建ってしまったのだそうです。これは厄介なことだなと思いながら、この前もずっと庁内を見て回ったわけでありますが、これは作業効率からいっても、あるいはまた物によっては周辺の静ひつさ、あるいは審査に対する周りの見守り方といいますか、妨げないような構造というものがどうしても要るということを現実に見ながら感じました。長官から絶えずそういうようなことは訴えられているわけでありますが、その場所がない。しかし、いまの場所は相当な広さではあるのですね。あそこを壊して、立体化は可能でありますからやってはどうかということも言ったのですが、それをやると、いまの敷地のところをただ立体化するだけでは特許庁としては余り気乗りがしないというようなことでございまして、目下のところ思案に暮れているという感じの状態のままでございます。  これから先の私たちの日本が進む新しい頭脳というもの、いわゆる頭脳がわれわれの民族の未来を開いていくのだということを絶えず言っておりますが、いずれにしても頭の中から生まれてきたものを、審査の日数の長さにしてもあるいはまた積滞しておる状態にしても、これをこのままでほっておいてはいかぬ、早ければ早いにこしたことはないわけであります。  そういうわけで、いろいろ述べましたけれども、せっかくの日本人の頭脳をあそこにためてある、大変な宝物が入っている、それが大変古ぼけた状態である。危険という建物に近くなっておる。しかも一般の閲覧室等は中庭にトタンぶきでつくってありまして、あれはトタンかスレートかわかりませんが、そこに朝から行列をなす。それは収容し切れないわけなんですね。そういう申請者ばかりでない、その手前の勉強している人のお役にも立っていない、こういう状態でありますから、限りある霞が関かいわいの土地でありますけれども、通産本省の周辺というところを理想の場所としながらも、なるべく早く探してみたいと考えております。
  208. 上坂昇

    上坂委員 大臣がいろいろ庁舎を視察されて御心配をいただいているということについては感謝を申し上げたいと思いますが、実際にわれわれも行って見まして、審査系と事務系とありまして、資料があっちこっちにすっ飛んでいるから審査官があっちへ行ったりこっちへ来たりしているわけですね。そうしますと能率が上がらない。実を言うと四十万件からの申請が行われている。年間の処理能力が私の質問した当時二十二万ぐらいだったのですが、いまはどのぐらいになっているかちょっとわかりません。それが四十万にも五十万にもなりっこはないだろうと思うのですが、最近の申請のふえ方などには大変なものがあると思うのです。したがって、申請がふえている限りにおいては資料も膨大なものになってくる。これはよっぽどりっぱな頑丈な建物でないと、本当のことを言うと危険な状態が出てくるおそれがあるということだろうと思います。  そこで、新しい庁舎をつくる場合にはこれに対応するような体制がつくられなければならない。今度の第三期庁舎ですと地上十八階、地下三階という建物だそうでありますから、相当これが利用できると思うのです。いまの第一期、第二期の方の庁舎はそんなに高くないわけでありますが、これは相当なスペースがある。これを全部使えばどうなのかというような問題もあるだろうと思うのです。  そこで、これについて特許庁長官としてもいろいろな計画を持っておられると思うのですが、ひとつ特許庁長官からそうした計画について、発表できるものがあれば発表していただきたいと思うのです。
  209. 若杉和夫

    ○若杉政府委員 特許庁の置かれましたスペース問題については、先生の御質問あるいは大臣の御答弁のとおりでございまして、非常に困難を来しつつあります。したがいまして、われわれとしてはこの解決に努力しております。  先生先ほど申されました第三期庁舎の完成が、見通しから言えば再来年あたりにできると思いますが、この一期、二期、三期、あるいは現在三年町の古い建物を使っておりますが、通産省全体といたしましてそれを有効活用していく、こういう感覚でございます。したがいまして、今度の新三期庁舎ができたからといってそれを全部特許庁が使うというわけにはいきませんで、通産省全体の調整の中で、しかしスペースは通産省全体としてはいまよりはふえるわけでございますから、われわれとしては特許庁のスペースをできるだけ確保するように努力する所存でございます。  そして、先ほども申しましたように、その過程で閲覧室の問題についても、まあ事務の効率とスペースとのバランスの調整がこれまたあります。しかし、公共サービスということも非常に重要でございますから、そこも勘案しつつ、必要な閲覧室スペースもできるだけとってまいりたい、こう思います。  さらに、長期的な問題については、先ほど大臣が申し上げましたとおり、特許庁としては長期の問題についていま検討いたしております。長期ビジョン検討委員会を設けまして、各方面から、二十一世紀を目指して特許庁としてはどうあるべきか、どういう対策が必要かということを目下鋭意検討中でございます。まだ結論は出ておりませんが、逐次その具体化を図ってまいりたい、かように思っておるわけでございます。
  210. 上坂昇

    上坂委員 できることならば統一した場所で、統一した形で特許庁の仕事ができるということが一番望ましいと思うのです。ただ、いまの段階で三つに分かれているから、いまの特許庁の本拠のあるところをどうするかという問題もあるだろうからそう簡単にはいかないと思うのですが、できるだけそうした統一的な形での、その中でも特に審査官と資料との関係は本当に統一されなければ能率が上がらないから、ここのところは十分考慮していただきたいと思うのです。  それから、いまの閲覧室の問題ですが、聞くところによりますと、いま大阪の府立図書館へ行ってしまう人が大分いるということなのですね。向こうも特許関係の、工業所有権の資料が非常にそろっておって、しかも向こうの方が広いそうですね。これではだめなので、大臣も行列をしているということをごらんになっているそうでありますが、いまの大体三倍ぐらいないと収容ができないのじゃないかという感じがするわけです。したがって、そうしたサービスの面については、特に技術革新の問題でありますから、これについては十分考慮をしてもらって、これについてはまた特別な御配慮をいただきたいというふうに考えるわけであります。  その点を質問いたしまして、私の話を終わります。
  211. 山中貞則

    山中国務大臣 大変特殊な役所であります特許庁についての高い角度からの御進言を賜りまして、慎んでその方向に向かって検討したいと思います。
  212. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、清水勇君。
  213. 清水勇

    清水委員 きょうは、こういう一般質問の機会を久しぶりに持たれたわけですから、大型店問題にしぼってやや突っ込んだ形で、大臣を初め関係の皆さんに若干の御意見を申し上げながらその所信を承りたい、こう思います。  実は、去る三月の初めに予算委員会の分科会で大型店問題についてただしたことがございます。その際、大臣はきわめて明快な所信を披瀝されたわけであります。非常に長い言葉ですから議事録を読むということはいたしませんが、たとえば要約をして申し上げると、大型スーパーが原点を忘れて資本の論理、強者の論理で走っているのではないか、強者であれば強者なりの倫理が求められるべきである、最近地方で大型店が出ることによって周辺の七つ、八つの町村の商店街が完全になくなっちゃい、顔もへそもないようなのっぺらぼうな過疎町村が累々と横たわるようになる、こういうことにしてしまってはいかぬ、ここらあたりを調和させるため通産行政のこれまでの展開はどうであったか、原点から洗い直し、商調協も逮捕者が出るようなことに乗ってはいかぬし、逮捕者を出すような企業は社会に不必要な企業だ、こういうふうに大臣が言われたわけです。これはいま大臣、うなずいておられるので御記憶のとおりですから、改めて振り返って御意見を求めませんが、この大臣見解といいましょうか答弁というものは新聞等に報道されて、全国の小売業者に大変な勇気を与えていると伝えられております。  そこで、私はきょう、そうした大臣の持っておられる基本理念といったようなものに沿いながら少しくお尋ねをしたい、こう思います。  そこで、まず最初に聞きたいのは、昨年二月に新しい指導方針を出された、いまこれに沿うて調整を進めておられる。新しい指導方針を出したということ自体は、大型店の集中豪雨的と言うとオーバーかもしれませんが、出店によって大変な混乱が地域に起こっている、こういう状況を回避するために、いわば抑制的な方向で現行大店法を運用せざるを得ない、こういうことが出発点であったと私は思うのですが、その辺はいかがなんでしょうか。
  214. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のとおりでございまして、一昨年の秋から昨年の初めまで大型店問題懇談会で議論をいただきましたのは、おっしゃるような大型店出店ラッシュをどうやって調整するかという問題でございました。したがいまして、そこで出ました結論が昨年の一月末から実施をされているわけでございまして、方向としては御指摘のとおりと考えております。
  215. 清水勇

    清水委員 そこで、一つだけ聞いておきたいことがあるのですが、昨年の二月以降現在までの三条届け出の件数は何件になっているか、あるいは去年の二月以前の届け出の分を含めていまだ調整が済んでいないという件数は合わせてどのくらいになっていますか。
  216. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 届け出状況でございますが、ちょうど年度で切っておりますので年度でお答えさせていただきたいと思うのでございますが、昨年の二月の初めから措置を実施しておりますけれども、やはりこういう措置は具体的に軌道に乗ってまいりますまでに若干の時間がかかりますので、二月からの実施というのは四月ぐらいからの効果というふうに御判断いただいて間違いないだろうと思うのでございます。  五十七年度の三条の新設の届け出というのは百三十二件でございます。百三十二件というのは、ピークでございました五十四年度の約五分の一、それから五十六年度は百九十四件でございますけれども、これと比べて約三分の二という店舗でございます。  それから、もう一つお尋ねの調整中の案件でございますけれども、これは日々出入りがございますので、細かいところの数字は必ずしも正確ではないのでございますけれども、五十六年度末の調整中の案件がラウンドで申しまして約七百件でございます。これが最近では大体五百件という状況になっております。
  217. 清水勇

    清水委員 さっきの件数は一種関係ですね。(斎藤(成)政府委員「そうです」と呼ぶ)二種は何件ですか。
  218. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 二種は五十七年度が二百六十九件でございます。ピークの五十四年度が千二十九件でございますから、四分の一ぐらいということでございましょうか。ちなみに五十六年度は三百六件でございます。
  219. 清水勇

    清水委員 いま一種、二種の三条届け出の件数について報告がありましたが、確かにピーク時と比較をするとかなり少なくなっているし、前年比でも少ない、こういうふうに言われるわけですけれども、ただ五十七年度の動きを見ますと、たとえば四―六期等と比較をして、ことしに入って一―三期等は一定の上向き傾向を示している。たとえば四―六に対して七―九というふうにだんだん増加の傾向にある。ですから、ピーク時と比較をすればかなり減ってきているが、これは私もそのとおりだと思いますが、しかし五十七年度を四半期別に見ると、だんだんその数字が増加を示してきているし、今後もそういう趨勢をたどるのではないかということが懸念をされている。  そこで私は、昨年の二月以降の抑制的指導、これが若干数字の上にもあらわれてきているとは思いますけれども、今日一年を推移して、どうも大型店側の自粛の態度あるいは通産の抑制指導といったものも、だんだんに月日の経過を経て薄らいできているのではないのか、このままではいわゆる自粛も抑制もだんだんかけ声倒れになっていくようなことが心配されるのじゃないか、こう思うのですけれども、いかがでしょう。
  220. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のように、五十七年度について見ますと、四―六からことしの一―三にかけての傾向というのは漸増傾向にございますが、私どもの理解では、この五十六年度の秋からきわめて極度に抑制をいたしまして、そして五十七年の二月から新しい暫定措置に基づいて商調協その他の運営方式についていろいろ改善を加えましたので、そういった新しい方式がだんだん軌道に乗ってきたがゆえにふえてきたというふうに考えておりまして、別に御指摘のような、昨年の暫定措置の後だんだん気を緩めているということでは決してないわけでございます。私ども、各、これは主として通産局なりあるいは都道府県なり市町村なり会議所なり、そういったところの協議体制をもとに運用いたしておりますので、そういったところに対する指導につきましては、昨年の二月以降私どもには姿勢に変更はないということでございます。
  221. 清水勇

    清水委員 これは最近の趨勢をどう見るかという見方の問題でもありますから、見方についていろいろ議論をしても始まりませんから承っておきます。  そこで、この三月に大臣が言われたように、強者には強者なりの倫理があってしかるべきだ、私もそう思うのです。ですから、その反映が大型店側の出店自粛というような、こういう形にあらわれてこなければならないだろう、こういうふうに私は見ておるわけでありますが、そのために通産としては具体的にどういう指導を進めておられますか。
  222. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 業者に対する指導でございますけれども、昨年の二月からの暫定措置、これは御存じのように、地元への事前の説明でございますとか、あるいは特に小規模な市町村についての出店についての慎重な取り扱いの指導、ほとんど抑え込んでしまっているわけでございますけれども、そういった指導をやっておりますが、それと並行いたしまして、特定の大手大型小売業者につきましては個別に、企業ごとに指導するということが昨年の暫定措置で決まっているわけでございます。  したがいまして、私どもは、約十社余りの特定大手大型小売業者につきましては別途出店計画を出してもらいまして、そして、従来の出店の傾向から見てこういうときに著しくふえるようなことのないような個別指導も別途やっているわけでございます。そういう意味でこの指導も十分効果を上げておりますので、大手業者につきましては、この届け出の件数という点で着目をいたしますと、効果も上げておるし、指導にも服しておるというふうに考えております。
  223. 清水勇

    清水委員 いま言われた個別指導の中で、たとえば出店計画等について、どういう計画を持っているかということについて話が行われるというようなことがあると思うのですけれども、その場合に通産の側では総量規制という形で、まああなたの店の場合には何万平米ぐらいを一応のめどにするといったようなやりとりがあるのですか、ないのですか。
  224. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 個別の指導は、そういう場合には従来の傾向から見てことしどのぐらいの計画があるということになりますと、多過ぎる場合には当方は、それでは多過ぎるという指導をいたすわけでございます。ただ、そこでもって、仮に従来の枠、従来の傾向から見て伸びがそれほど著しくない、まあその辺ならというものでございましても、それをオーケーするというわけではございませんで、御存じのように、別途各商工会議所ごとに地元への説明、そして商調協での審議という手続を経るわけでございますから、要するに二重に規制をしている、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  225. 清水勇

    清水委員 個別指導の中で出店計画の聴取をされる、そしてやや多い場合には首をかしげる、まあこういうニュアンスのお話ですけれども、そういう中で何を根拠に多いとか少ないとかという判断を通産がされるのかということも一つ問題だし、またそういう一種の総量規制といいましょうか、こういうものを示唆することが出店についてきわめて可能性があるという印象を相手側に与えるといったような、そういうことはどうでしょう、ありませんか。
  226. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 私どもは全くないと考えております。つまり、個々の出店につきましては、繰り返しになりますけれども地元への事前説明を行い、その上で商調協での審議を経て方向がはっきりするわけでございますから、その際に、通産省の方で総枠で、これはここならいいよといったことが地元の審査にすぐ反映する、これはそんなに直結する体制ではございませんで、地元での審議というのは地元商調協を中心にやってもらっておりますから、そういう意味では私どもの方で、総量でその辺なら妥当であろうと仮に言いましても、それが地元審議に影響する、そういうことは全くないと考えております。
  227. 清水勇

    清水委員 審議官、全くないなどとえらい断言をされるんだけれども、たとえば大型店出店がそれこそ集中豪雨的に行われる、あるいは出店以前の届け出が行われる、そういうことをめぐって調整に非常な混乱が予期される、そこで新しい指導方針をもって、たとえば大型店出店の自粛を一面では促す、一面では抑制的方向に沿って調整上の指導を強化する、こういうわけでしょう。  ところが、現実に従来の出店傾向とにらみ合わせて、まあまあという程度の出店であるならば、おおむねこの程度のものは認められていいのではないかというようなことが、仮に出店をしようとする大型店側に政府からのお墨つきをもらったなどというような印象で、たとえば個々の出店計画を具体的に届け出という形であらわしていくような場合に、それぞれの地域でのその後展開をされる工作等々の場面に全く影響ないなんということは、僕は考えられないと思うのです。その辺は影響がないと言うんだから、これは何ともしようがないんだが、どうですか。
  228. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 地元審議は、御存じのように、商調協のメンバーで審議をするわけでございますから、その地元商調協審議の際に、これは通産省からいいと言われておりますとかなんとか、そういうのが入る余地はないわけでございます。特定の大型業者について別に私どもがお墨つきを渡したり、これがいいと言っていることはないわけでございまして、その年度間の計画数量を見て、それが従来の店舗――と申しますのは、従来の店舗をそのまま認めておるわけではございませんで、従来の店舗を大幅にカットしたところで、このぐらいならやむを得ないかというような指導をしておるわけでございまして、私どもがそこでもって特定大型業者についてそれを仮に是認をしましたとしましても、それが商調協委員態度などに反応するということはあり得ない。つまり、独自に商調協は判断をしているというふうに考えております。
  229. 清水勇

    清水委員 これは、商調協運営については後で触れます。独自に行われているか、通産の指導に基づいて運営をされているか、その辺のところは後で多少突っ込んで承ります。  さて、そこで、私がいま少しやかましく承った意味は、いずれにしても三年越しの長期不況が続いている。そうした中で、とりわけ消費の面での不況傾向というやつは深刻なんですね。現状、ただでさえ既存の地元商業者、商店街等はまさに塗炭の苦しみを味わっているわけですね。ですから、どこの地域でも一部に駅前再開発事業であるとか都市再開発事業がらみの核店舗が欲しいというような要請はあるにいたしましても、それ以外の地域等の場合には、おおむね客観的に見た場合には、大型店には出店をしてもらいたくない、こういう機運というものが圧倒的なわけですね。ですから、私はそういう状況のもとで行われる通産行政の展開というものを考えた場合に、いささかでも弱きをくじく、この場合、地元商業者をくじくというような発想があってはならない。予算委員会の分科会で大臣とやりとりした際に申し上げましたけれども、俗っぽい言い方だけれども、強きをくじき弱きを助けるという発想が大前提として貫かれるようなことでなければならないんじゃないか、私はそう思っているわけなんです。そういう考え方についてはどうですか。
  230. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のように、大型店出店がその地元その他に悪影響を与えるということは大変困るわけでございますから、そういう意味での調整、指導が現在なされておるわけでございます。  その場合に、私どもは従来から大型店の問題につきまして、地元消費者の利益をひとつやはり考えなければいかぬということを言っているわけでございまして、そういう意味で、地元消費者の利益と、それからまた地元商業者の利益と、それと学識経験者の公正な判断、その三つを柱にして商調協運営されているわけでございまして、その商調協考え方は、そもそもこういう制度というのは、大型店の資本力に物を言わせる出店ということについて適切な調整を加える、そういう考え方に基づくわけでございますから、おっしゃるように、弱きを助け強きをくじく、そういう考え方の商調協というふうに考えております。
  231. 清水勇

    清水委員 私も、消費者のニーズにこたえるような商業活動、これは無論一つの前提だと思いますね。消費者を抜きにしてどうあるべきかなんというような議論をしても始まらない。だがしかし、大店法の目的の大きな柱は、それを踏まえつつ中小小売業者の事業機会をどう確保するか、ここにはやはりウエートが置かれていることは、これは明白な事実ですね。  そこで、いま言われるように弱者、この場合には地元商業者、前提として消費者のニーズとの関係、これは言うまでもありませんけれども、そういう立場に立ちつつも、実は大型店の新たなる出店というものをめぐって、御承知のようにまだまだたくさんの紛争事案がある。通産の見方ではかなり紛争は鎮静化をしている、こうこの春も言われているわけですけれども、しかし、現実には地域的に見ると、紛争は激化をし、深刻化をしているという事例がずいぶんまだたくさんあるわけですね。  そこで、この際にちょっとお尋ねをしておきたいのですけれども通産省で把握をしている紛争地域というのは何カ所くらいと見ておりますか。
  232. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 紛争の定義がなかなかむずかしいものでございますから、ちょっとその数字はどういうふうにお答え申し上げるか、私どももお答えしにくいわけでございます。たとえば商調協をスムーズに運営しているところであって、かつ意見が大幅に対立しているところもございますし、それから、大幅に意見が対立した結果として商調協が必ずしも円滑に開かれてないようなところもございます。いまの段階では、大体地元の了承がはっきりとれてないものは余り届け出が受理されておりませんけれども、こういった去年の二月からの措置がとられる以前にすでに届け出が受理されておって、そして商調協の場をめぐっていろいろ対立抗争がなされているというものは、いまだに続いているわけでございます。  繰り返しになりますけれども、そういういろいろな態様がございますので、ちょっと件数としてどうというのはお答えしにくいのでございますが……。
  233. 清水勇

    清水委員 件数がはっきり言えないということは理解をいたします。  ただ、一面、私なりに認識をしておりますのは、御承知のように全国小売連絡協というものが設立をされて、いま活動を展開しております。これには百以上の紛争を抱えた地域の、たとえば近代協と言われているような小売商業団体等が参加をされている。だから少なく見ても、そういう小売連絡協等に加わっておられるような地域、これは紛争地域と言われるような状況ではないのか、実はそう思っております。それはそれとして、どうなんでしょうか、紛争が長引いてなかなか調整ができないのは何が原因だというふうに思っておられますか。
  234. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 基本的には、地元小売業者の立場というものが大型店出店によって影響を受けるというところにある、つまり利害の対立が基本にあるというふうに考えております。ただ、それの背景として、従来からいろいろ御指摘がありますように、景気が低迷をしておりますとかあるいは都市によっては再開発の動きが活発になってきているとか、いろいろ副次的な要因はもちろんあるわけでございますけれども、基本的なところは、ある限られた地域の消費者需要というものをどういうふうに分担するか、どういうようにニーズにこたえていくかというところの、言うならば利害の対立点が基本にあろうかと考えております。
  235. 清水勇

    清水委員 これはいま言われるように、確かに基本的な側面と副次的な側面と二つあると思いますね。  私は、予算の分科会でもちょっと指摘したのですけれども、たとえばニチイの賄賂工作が発覚しましたね。いま裁判にかかっているわけです。これはニチイだけのことではなく、私は氷山の一角だというふうに見ておりますし、恐らく審議官も、これはニチイだけのケースだなんというふうに見ておられないに違いない。笑っておられるから多分そうでしょう。     〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕  そこで、今日大型店出店をする場合には、いずれも莫大な工作費が使われているというのはもう社会的に常識化をしている、こういうふうに言われているわけですが、私はここが一つの問題点じゃないか、こう思います。たとえば、いまも言うように、贈収賄で逮捕をされたなどというのはまさに氷山の一角ということなんであって、実際には商調協委員に金品が贈られる、こういう事例は決して少なくないのじゃないかと言われているのですね。  これは商工会議所会頭の私的諮問機関的な商調協委員ということですから無論公務員ではない、金品の授受が仮にあっても、俗に言う贈収賄という事件にはならない、ならないからいいじゃないかというような発想が万が一にもあってはならない、私はこう思うのです。ところが、これが余り問題視されないものですから、おかしいじゃないかということで地元商業者等がこれを問題にし、地元というか地方の通産局に申し入れをしたり抗議をしたりというような運動に発展をするなんというケースもあるわけですね。あるいは、ごく一部のことでしょうけれども、商工会議所に向けてそういうような行動が展開をされる。僕は考えてみると、そういうことが行われることはあたりまえじゃないかと思うのです。  そこで、旧聞に属するのですけれども、去年この委員会で同僚の上坂委員が広島フジの件に触れて質問をしております。元商調協委員が、フジから菓子折りに現金を添えて贈り物をもらったといつことを言ったわけですね。ところが、いただいた本人がフジ側から届けられていると言っているのに、通産局の方は、そういう事実はない、あまつさえ、考えてみれば菓子折りを持っていく程度のことは名刺がわりであって認められていいのじゃないかと思います、などというような対応が行われている。そうすると、そういうものをめぐってまた新しい大きなトラブルというものが、審議官も御承知のように広がっているわけでしょう。だから、基本的な紛争の要因と副次的な要因、側面があると僕が言うのはそこのところなのですけれども、こういう点、広島フジの場合などはどう思っておりますか。
  236. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 私、具体的な広島フジの事例について答弁をする立場にございません。情報を正確につかんでおりませんから、これについてはちょっとお答えいたしかねますけれども、おっしゃるように商業活動調整協議会、商調協の活動が公正さを欠いては本来の機能を果たせないわけでございまして、そういう意味で私どもは、商調協が公正に行われるようにということには極力配慮をいたしまして、いろいろ注意、指導を行っているところでございます。従来も御指摘がございましたので、商業活動調整協議会の規則などでも、公正かつ誠実にその職務を遂行しなければならないという職責を定め、そして、それに反するような場合については解職をするような手続も定めているわけでございます。  具体的な個所につきましてこれに反するようなことが仮に出た場合には、私どもは厳しい姿勢でこれに対処をさせるようにいたしているところでございます。
  237. 清水勇

    清水委員 事実関係は把握されておらないとおっしゃるから新聞報道を参考に申し上げますけれども、ここにありますが、広島フジをめぐって紛争が激化をしていった、その一つのプロセスが紹介されているのですね。  フジの出店地域にある広島市西部商店連合会会長は、名前は申し上げませんが、こう言っているのです。「地元商店との話し合いもせず、これだけ大規模出店をするとは許せないと思っているところへ、元商調協委員の中から、フジが金品を委員に渡した、ということが明らかにされた。もうこれで絶対反対ということになった」という談話をインタビューに答えて言っているわけですね。そういう事実は御存じありませんか。
  238. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 フジの件については承知いたしておりません。ただ、その時点がいつであるのか、昨年の二月以来の新しい措置がとられてから後そういう問題が起こるのだろうかと、ちょっと私としても腑に落ちない感じがするのでございますが……。
  239. 清水勇

    清水委員 いま時期のことを言われましたが、これは昨年七月にいろいろと問題になったケースなんですね。  念のために、自民党小売商業問題小委員長の塩谷代議士もその時期に広島に行っておられるのですよ。ことに新聞報道があります。たくさんのことを印象として述べておられるのですが、いまのフジの問題に触れてこうインタビューに答えている。「広島市の「ふじ」出店問題で同社の吉田副社長に会い、金銭の授受が商調協委員との間で行われたことを確認した。この問題は商調協の腐敗ぶりを示すモデルケースとも言えるもので」云々、こう言っているのです。こういう事実関係のあったことも御存じありませんか。
  240. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 私、ちょっと正確には事実関係を存じてないわけでございますけれども、そういう問題があって商調協委員については更迭をしておるというふうに聞いております。
  241. 清水勇

    清水委員 無論これは凍結になっておりますね。僕は、凍結になっているからそれで免罪されるという性質のものだとは思わない。僕が問題にしているのは、この広島フジが出店をするに当たって商調協委員にまで、たとえば金品を渡したじゃないかという疑惑があった、その中である委員が証言をした、そこで問題になって指導に当たられる通産局へ行った、あれこれのやりとりが行われた、そういう中で現金の授受の事実はなかったと言われた上で、しかし菓子折りぐらいは社会通念として認められてよいと思う、こう言っているわけですよ。こういう感覚、こういう態度では、たとえばさきに山中通産大臣が、この際原点に立ち返って通産行政の展開というものを洗い直していく必要があるということを力説強調されても、これはだめじゃないかということを実は僕は言いたいわけなんです。大臣、いかがでしょう。
  242. 山中貞則

    山中国務大臣 私が就任し、大型店問題について御答弁をいたしました後、恐らく職員たちは、もし仮に何かあったとしても襟を正していることは間違いないと思います。あるいは私の台風が通り過ぎるのを待っているのかもしれません。しかし、私が、いまのような大型店には大型店、強者には強者なりの倫理が必要だと言ったのは、消費者のニーズというものもあるのでしょうが、しかし、そこのけそこのけ大型店舗様のお通りじゃという、その通り過ぎた後には、親子何代にもわたってその土地に住みながら商業を続けてきた人たちの死骸が累々と転がっておるというようなことは、私はあってはならないことだと思うのです。  しかも、現在のように消費不況で、スーパーそのものの売り上げも対前年比どころか、年度赤字であるというような状態を背景にしながらも、なお自分たちの出城を広げていこうとする、それはもうすでに非情な資本の論理が支配していると私は思うのです。そのようなことでは、これはもう――最近は百貨店もどうもまねを始めたようですが、百貨店を含む大型店舗については、わが日本列島においてはこれ以上は新しい展開をさせないというようなことを法律で明確にする必要があるかもしれない。商調協の人たちに金を届けて、しかも監督官庁は、菓子折りくらいなら問題にせぬでもいいじゃないですかという感覚がもし事実であるとすれば、私はそこの担当者も含めて許すことはできないと思うのです。これはもっぱら地域の人たちの問題であるとはいっても、国の施策というものの目からそれを完全に逃れ得るものではないので、わが国の経済のあり方、そして都市型、農村型あるいは漁村型、山地型、いろいろなところがありましょう。しかし、それはそれなりに必死に皆努力をして自分たちの生まれてきたところを守り抜こうとしているし、過疎になってもなお老齢者の多い地域で何とか自分たちの未来を、この村を振興させる努力をしたいと必死になっているはずであります。そこのところで、一般の商店街というものが根こそぎ吹き倒されるというようなことが起こることは、村の政治、町の政治ができなくなるということに結局はなると私は思うし、そのような町や村ができてはならない、そう思っております。  したがって、大都市におけるあり方あるいは中都市におけるあり方、まあ何万で線を引くかは別として、県庁所在地あたりかあるいは三十万都市、税制から言えば三十万あたりで区切っていますが、それから先の方はみんなが一生懸命に、隣近所の人たちが自分の隣近所の人たちの物を買って、お互いの売り買いも商売の中で成り立たせながら生きているような地域の人たちを、もうおまえたちは時代おくれである、だから死んでしまえというようなことは、国は許してはならないし、それを見逃しておくような政治だと――私どもは自由主義経済社会をとっておりますが、自由主義経済社会の底辺は商店街です。商店街が倒産を始めたら、いかなる支えをしても支え切れるものではありません。いまの企業倒産件数は主として製造業でありますから、次々とまた新しい製造業が起きてきて、年間の総件数で言えば企業倒産件数の総計よりも結果的にはふえているという、たくましい日本の力を反面は示すものでありますが、商店街のローラーをかけられた後に何がそこに建てられるか。商業をやっている人は立ち上がる勇気はありません、死骸となって横たわるしかありません。そのようなことは政治の名においてさせてはならないことであります。  しかし、いまは暫定的なそういう指導方針のもとにやっているようでありますから、私のこの言葉を聞けば、全国の通産局も恐らく、新しい大臣はいままでと違うということを知るはずでありますから、あえて、少し言葉が過ぎたかもしれませんが、日本の政治のあるべき姿というものからとらえても、この問題は単に菓子折りや現金や罪にならなければそれでいいといって見過ごすものでは断じてないということを明言しておきます。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  243. 清水勇

    清水委員 また明快なお話が披瀝されたわけでありますが、そうした理念にのっとって今後の行政展開というものを図ってもらいたい。  私がこれまでの経過に触れてあれこれ言っている意味は、そういうものをほじり出して嫌みを言おうなどというけちなつもりは一つもありません。ただ、抽象論を何回重ねて指摘をしてもこれはそれだけのもので、ちっとも発展がないものですから、ある具体例を指摘しながら、実は襟を正してもらうべきものは正してもらう、あるいは謙虚に受けとめ反省をしてもらうものは反省をしてもらう、そうした中で心機一転、いわゆる地域経済を支えている消費者を含む全体的な信頼にこたえられるような、そういう行政指導を展開してもらいたいという立場で申し上げているわけでありますから、そういうふうに前向きに受けとめていただきたいと思います。  そこで、そういう観点でもう一点承っておきたいことがございます。通産省は当初、五条受理後というものは審議の期間が限定をされているから、そこで商調協における円滑な審議が予測できないといったような状況の場合には、五条受理については慎重に取り扱うべきである、こういう態度をとっていたというふうに私、理解をしているのですが、いかがでしょう。
  244. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 おっしゃるように、五条の届け出になりますと法律に基づきまして検討の期間というのが限られますので、これの扱いにつきましては十分慎重である必要があろうかと思っておりますが、この裁定につきましては、昨年二月以来の新しい暫定措置では四者協議ということで、通産局と都道府県と市町村とそして会議所と四者で集まって、その判断の遺憾なきを期しているという状況でございます。一方的にだれかの意見で決めるということではなしに、その四者の調整でもって適切な処理をしてもらっている状況にございます。
  245. 清水勇

    清水委員 新指導方針による四者協議ということは私も承知をしておりますが、つまり五条受理という事柄についてできるだけ慎重にその取り扱いを考えていくという基本的な態度は変わったのか変わらないのかということを、もう一回お聞かせください。
  246. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 十分慎重に判断するべきであるということについては変わっておりません。
  247. 清水勇

    清水委員 それならば一つ具体例を挙げて承りたいのですけれども、僕はきょうはできるだけ固有名詞を使うことをしたくないのですけれども、これはどうしても挙げないとわからないものですから、この場合は岡谷というふうに言わしてもらいます。  地元商業者が調査機関に依頼をして、大型店が出てきた場合における影響度というものがどうなるか、いわゆる影響調査というものをやったわけですね。この調査機関による調査結果によりますと、一般商品で二、三割の売り上げダウン、たとえば大型店が性格上、まあどう言ったらいいのでしょうか、中心的に扱っているような業種の場合には五割以上の売り上げダウンが予想される、こういう調査結果を資料として皆さんの方へも出しているわけですね。ところが通産局は四者協議の中で市側から要請があって、途中の事情は省略をいたしますが、市側の要請にこたえて五条受理を行う、こういうことになったわけでありますが、市から四者協でいかに要請があったからといって、簡単に五条で受理をするということはいかがかという疑問を私は持つのです。  それでもう一つは、地元商業者によるそうした大型店出店に伴う影響調査などというものは、皆さんの方ではくその役にも立たない、何の参考資料にもならないというような態度ではまさか取り扱われないと思いますね。これは一つの参考資料として若干の材料にはされるのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょう。
  248. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 商調協におきます議論というのはかなり自由に行うということになっておりますので、いろいろ調査の結果が提出されますれば、その商調協の場で議論がされるはずでございます。また、しからば商調協議論が誤りないかどうかということをどこで判断するかという問題があるいはあろうかと思いますけれども商調協議論され、そして五条の手続が仮に終わりましても、最終的には大型店審議会で必要があればこれをチェックするかっこうになっておりますので、いまのところ、そういった議論地元で十分行われてないということはちょっと、あるいはそういう地域があるのかもしれませんけれども、私どもはよく承知しておりません。
  249. 清水勇

    清水委員 私の聞き方が悪かったのかもしれませんけれども、そういうことではなくて、五条受理というものは慎重に考えなさい、こういう基本的な態度がある。昨年二月以降は四者協議会で相談をする、こういうことになっている。それはよく知っているのです。そこで五条受理をめぐって、たとえば大型店出店をするとこういう影響が出るのだ、だから五条受理については通産当局はよくよく慎重を期してもらいたい、こういうことを地元の商業者が参考資料を添えて陳情しているわけでしょう。だから、そういうものは少しは参考にされるのかどうかということを聞いたのです。
  250. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 もちろん、そういう資料も含めて四者の間で検討し、処理をする、そういうふうに理解しております。
  251. 清水勇

    清水委員 そうすると、一応参考に供するということになるのでしょうが、商調協運営に指導責任を持つ通産当局として、たとえば岡谷の場合には五条結審も終わっているわけです。これからいよいよ大型店出店をすることになる。そうした場合に、地元商業者が調査機関を煩わして影響調査をした結果、これこれのダメージが出てくる、そんなことはないだろうということで一定の結論をつけるわけですけれども、しかし残念なるかな、出店調査機関の予測のようにダメージが出てきた。地元商店街、個々の商業者が、まさか全部とは思わないが部分的に店を閉じなければならない、あるいは商店街が閑古鳥が鳴くような状況になる、やっていけなくなるというような事態になった場合に、どういう責任をおとりになるのですか。
  252. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 出店の影響についての判断というのは、やはりそれぞれ各地商調協で基本的に判断をしてもらうというのが主でございまして、遠くの方から特別に判断をして、それはよろしい、それは悪いという批評を加えるというのは、私はやはり適切ではないだろうと思うのです。ですから、いまの手続、システムでいきますと、地元商調協で判断をし、そしてその結論について大幅な変更を必要とするような特別の問題があるかどうかということについては、今度は大型店審議会で、ここも学識経験者その他有力者が入っておりますから、そこで御判断をいただくということで、仮にも私どもが、これは影響があるからだめとか、これは影響がないからいいと、地元意見に制肘を加えるというのはむしろ不適切であると考えております。
  253. 清水勇

    清水委員 そうすると、通産当局とすれば、商調協が一定の判断をして結論を下したことであるから、仮にどういう影響が起ころうと、それは残念ながら通産省としては責任が負えない、こういうことになりますか。
  254. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 今後の事態についての言うならば予想と申しますか、成り行きの判断でございますから、しかるべき権威と責任のあるところが判断をするのが適切である、そうすると商調協あるいは大型店審議会ということになろうかと思います。
  255. 清水勇

    清水委員 時間がありませんから、これをいつまでもやっているわけにいかないのですけれども、そもそも商工会議所を煩わしてたとえば商調協を設置する、二種店舗については都道府県を煩わして大店審を置いて御苦労を願う、これは国の一貫した施策として行われているわけですね。ですから、そういう国の施策の中で、極端に言えば下請と言っては適切な言葉じゃないと思いますが、そうした方針に沿うて商調協の皆さんが一定の結論を出す。これは出さざるを得ないから出すわけですね。出さなくていいのなら出さないケースというのはたくさん出ると思うのですが、これは期限もあるし出さざるを得ない、出す。ところが、残念ながら悪い影響が出てくるといったような場合に、それは国の関知するところではないというのはちょっと冷たい話じゃないか。しかるべき権威のあるところ、それは大店審であり商調協である。権威がないとは言いませんが、国のように権威がありますか。
  256. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 国がすべてについて最も適切な判断をするという保証があれば別でございますけれども、やはり地元の問題でございますから地元意見を中心にして判断をしてもらって、そしてそれに基づいて、それを土台にしまして、最終的には大型店審議会の学識経験者でもって判断をしてもらう。国の役割りというのはそういう調整のシステムと申しますか、制度をつくるということであって、その内容についての判断まで地元の人と別個に私どもがするというのはやり過ぎではないかというふうに考えます。
  257. 清水勇

    清水委員 言いたいことはまだたくさんあるのですけれども商調協運営についてそれぞれの通産局から担当官が出かけていって、あれこれと助言や指導をされているわけですね。これは非常に有力なものなんです。しかし、商調協委員というけれども、商業活動をいかに調整することがベストでありないしベターであるかなどと、全員の委員の皆さんが必ずしも認識を持たれているわけではない。大変御苦労し、勉強されてもなかなかそうはいかない。そういうときに、通産当局の担当官からの助言や指導というものがしばしばリーダーシップという形になっているわけでしょう。国というと東京というふうに誤解をされては困るのですけれども、地方、地方の通産局は、その地方、地方のたとえば商業流通等々の問題について一定の通暁をなすっておられる。そういうものを念頭に直きながら指導や助言に当たっておられる。しかし、しょせん決めるのは商調協であり大店審であって、国じゃないのだ。それは形式的にはそうでしょう。だからといって、その後の悪い影響がよしんば出ても、何とも国としてはやりようがないということでは、僕はいささかおかしいと言わざるを得ない。  大臣、いかがでしょう。
  258. 山中貞則

    山中国務大臣 いままで、本省も出先も含めて、それぞれに懸命に努力はしているのだと思います。しかし、これは私企業対地域の問題であるとしてかかずらわることをなるべく避けようとする姿勢であってはならないので、やはりわが国の産業政策の展開、私どもは過去にいろいろな法律をもって、工業再配置促進法とか、つい最近通してもらったテクノ法とか、それぞれに日本の産業をいかにこの列島に点在せしむべきか、そしてその活動はどのような姿であるべきか、そして未来をどのように切り開いていくべきかという角度から、いろいろなものをやっているわけですね。だからこそ、皆さんに法案もお願いして、実行もし、議論もしてきたわけです。  しかし、それは国がかかずらわったから失敗したときには国が責任を持ちます、新産都市でもしかりです、テクノポリスでもしかりですということで、はっきり割り切って考えるべきものではないので、やはり日本列島全体の、この島国から成るわが国の産業構造の展開、かつては太平洋ベルトラインに人口が大変集中して工業活動が行われて、その結果、構造不況等が起こってきた。そしたら、それを、内陸部等を考えながら、まあ臨空と申しましょうか、それがこの間のテクノポリスであった。やはり試行錯誤はどこの国にもあるでしょう。しかし、それは絶えず民族の前進につながるものでもって収拾していかなければならない。大店舗と、その受け入れを余儀なくされると申しましょうか、その地域の人々との争いは、ときに地域においては親類縁者あるいは地域の小さな範囲の政治的な問題、町長選挙とかそういう問題にまで響いてまいる問題であります。大店舗の方がそのようなことにさえ乗り出さなければ平和な村であったものが、それによって問題を超こす。それは、私どもは産業政策としてやはり無視してならないことであって、このことのおのずからなる限界は、私ども通産省としてはやはりちゃんと持っていなければならぬと考えております。いままでの大臣と私の考えとは違うかもしれません。しかし、今日以降、この大店舗法の運営については、通産省は私の考えに従って行動させます。また、そうさせてもらいます。
  259. 清水勇

    清水委員 そこで審議官、大型店が結局出店をする。さっき申し上げたように、地元商業者にとっては悪い結果が出てしまうという場合に、たとえば大型店対策資金という特別な融資制度があるのじゃありませんか。
  260. 神谷和男

    ○神谷政府委員 大型店等進出対策融資制度というのが五十三年以降設けられております。
  261. 清水勇

    清水委員 特定の都市の名前は申し上げませんが、関東のある市、そこの商工会議所自身が出店促進の旗振りをされた。そして、反対運動をやる商業者については、いま長官が述べられた資金の融資手続をとることを拒否する、こういう事実があるのですけれども、どういう指導をなさっておられますか。
  262. 赤川邦雄

    ○赤川政府委員 先生の某市におけるそういう問題があったというお話を聞きまして、昨晩以来調査をしましたけれども、国が関与している高度化資金、それから中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金、これらに関してはそういう事実はないというふうに聞いております。  ただ問題は、国が全然関係のない、自治体が自分で行っている低利融資がございます。その場合については若干の問題があったように聞いておりますが、その実態はよくわかっておりません。
  263. 清水勇

    清水委員 たとえば商調協なるものは、商工会議所の会頭の諮問機関という形で設置をされるわけですね。それぞれの商工会議所、一生懸命御努力されていると思います。  ただ、その中のごく一部なのかもしれませんが、会頭さんがデベロッパーである、あるいは大型店舗建設の請負業者であるというような場合になりますと、地元の商業者が、進出をしようとする大型店と癒着がありゃせぬかという疑念を持ったり、これが一つ紛争の種になるということはやはりあり得ると僕は思うのですが、かなりそういうケースというのはあるのですね。これはどういうものでしょうか。どんなふうにそういうケースというものを受けとめておられますか。
  264. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 商工会議所の会頭は地元の有力者がなっている場合が普通でございますから、おっしゃるように、大型店出店に関係する場合というのがあり得るだろうと私ども考えております。そういう意味で、大店法に基づき会議所として意見書を出してくる場合には、要するに会員の個人的な利害に左右されないように、その会議所の常議員会などの機関でそれを決定するというふうに指導いたしております。  それからまた、会頭が直接的に利害関係を有するような場合に商調協運営にかかわりますと、これも御指摘のようにいろいろ疑惑の目で見られますので、そういう場合には、その店舗の商調協審議とか意見の取りまとめなどについては一切関与しないように指導いたしておるところでございます。
  265. 清水勇

    清水委員 挙げたいことはたくさんあるのですけれども、時間との関係があるからそうたくさん申し上げられませんが、いずれにしても去年から通産省としても商調協のあり方をめぐって、いろいろ問題がある、運営上の欠陥も指摘をされた。そこで、一面では、いささかなりとも権威をつけようじゃないかといって省令事項にする。しかし、法律事項でないものですから、結果的にはやはり任意な組織であるわけですね。  そこで、これは将来の課題ですけれども、いま大店法の改正といった問題が一つの俎上に乗りつつあるわけですけれども、そういう中で、たとえば商調協というものを法律事項にする。そして、より公正に、そして地域の商業集積等についても、行政を通じて日ごろ通暁している市区町村といったものを単位にたとえばいまの商調協を控えていくといったようなことにでもしないと、複雑な利害関係が入りまじったり、あれこれと工夫をこらしてもなかなか疑惑あるいは疑念が晴れなかったりというような不適切な面をなかなか解消できないのじゃないかという感じがするのですが、いかがでしょう。
  266. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 御指摘のように、商調協のあり方について疑惑を招くことは大変遺憾なことでありますから、私どももいろいろ検討いたしておりますし、それからまた、現在の産業構造審議会流通部会あるいは中小企業政策審議会流通委員会の合同会議あたりで、今後「流通ビジョン」の結論が出てまいりますと、今後それを参考にいたしまして、どういう措置で調整をしていくのがいいかということの議論をするようになろうかと思います。  ただ、私のいまの感じを申し上げますと、お話のように、市区町村におろせばいいというものではないのだろうと思います。要するに、いまの商調協もいろいろ難点がございますけれども、これについてどこかよそにひょっと移せば問題がすっと解決するというほど簡単な問題ではない、やはり今後ともいろいろ勉強してまいりたいと考えます。
  267. 清水勇

    清水委員 もとより私も、審議官が言われるように、市町村におろせばうまくいくなどという短絡的な判断をしていま見解をお聞きしているわけじゃなくて、たとえば、ベストというようなものは求められないかもしれぬが、よりベターなものを求めるという立場から、たとえばそういうようなことは現行制度と比較をしてよりベターと言えるのじゃないかということであれば、そういう点についても前向きに、これはこれからの課題ですけれども考えるべきではないかということを申し上げたわけです。これが一つ。  それから、いずれにしてもいま「流通ビジョン」についてもいろいろ検討してもらっている、こういうお話がありましたから、ついでにこの際申し上げたいのですけれども、どっちにしても新しい指導方針、一応二年と言っているわけですから、来年の一月をもって切れる。じゃ、その後どうするかという問題が一つありますね。もう抑制なんということはやめたらどうだなんという意見もたまには耳にすることもないではないが、いや、そうではなしに、もっと強めるべきではないかという声がたくさんある。いずれにしても、今後どう調整をするかということが大きな課題であることは間違いない。その場合に、いずれにしても新しい指導方針を持たざるを得なかったということは、現行大店法では十分に、円滑に調整し切れない、つまり現行法の一定の限界というものを前提にして措置をされているわけですから、私は、一昨年秋前後、通産省自身も現行法の改正問題について検討を加えられたということをよく承知をしております。それから二年たとうとしておるわけですから、あれこれの経過がありましたが、いずれにせよ、現行法の改正問題ということは避けて通れない一つの課題になっておるのじゃないか、そう思うわけです。現在、この点についてどんなふうにお考えになっておりますか。
  268. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 現行法についていま直ちにどうするという立場にはございませんで、先ほど来申し上げておりますように、昨年の二月以来実施しております暫定措置効果を十分見定めて、これに改善すべき点があるかどうかということをまず考えなければいかぬかと思います。それから、別途「流通ビジョン」が出ますと、中長期的にどういうふうに取り組まなければいけないかという問題が出てまいるかと思います。  それらを総合勘案いたしまして、法律の手直しが必要ということになれば、御指摘のように法律の改正をお願いするということになろうかと思います。いまの段階では、法律の改正が要るかどうかというところについて、私ども公式に論評する段階にはまだ参っておりません。
  269. 清水勇

    清水委員 こういう場ですから、審議官のお立場で言えば、おっしゃるとおりと言うわけにもなかなかいかない事柄でしょうから、いまのお話を承っておくわけであります。  しかし、率直に言えば、調整をめぐってよりベターな法制度を何とか確保する、こういう気持ちは変わらないと思うのですね。そもそも、そういう意味では法改正というものを考えざるを得ないということは、件数がふえた、減ったということは別として、引き続き大型店出店に絡む紛争があり、混乱の状態がある。さっきの御報告によれば、昨年二月以前の分まで含めれば五百件とも七百件とも未調整件数があると言われておるわけですが、それだけ膨大な量を抱えておる。これは全国の商調協がやるのですから、それは分散をすれば大した数でないという見方もあるかもしれませんが、これはなかなか大変だと思いますね。  そうだとすれば、僕は審議官等が日夜腐心をされておられる現実を直視をしながら、できるだけ慎重に、かつ抑制的な方向に立って円滑な調整をやっていきたいものだというのであれば、未調整の件数が非常にたくさん積み残されているわけですから、とりあえずよりベターな制度というものを何とか速やかに確保するような努力を一面では図る。他面では、その間は、一昨年秋に三条届け出を一時凍結されたということがございましたが、いま深刻な景気の打開、その見通しがまだなかなか立たない、こういう特異な時期でもありますから、皆さんの見方では、秋口ごろからは何とかなりはせぬかという見方もあるようですけれども、その辺も勘案しながら、この際ひとまず当分の間届け出を凍結するようなことを考えてみたらどうか、こういうふうに申し上げたいのですが、どうでしょう。
  270. 斎藤成雄

    斎藤(成)政府委員 いろいろ学識経験者の方に集まっていただきまして出された結論が現在の当面の措置でございまして、昨年の二月以来、私ども見ておるところでは、逐次効果を上げつつあると考えますので、いまここで唐突に凍結するという必要はないと思います。むしろ、いまの効果を見定め、それから、先ほど来の繰り返しになりますけれども、「流通ビジョン」を踏まえて、しかるべき時期に適切な制度というものを考えたいと考えます。
  271. 清水勇

    清水委員 しかるべき時期とか適切とかというようなことは皆さんの慣用語ですから、どういうふうに受けとめていいかよくわからないのですが、何か私が申し上げたことが唐突だというふうに言われていますけれども、決してこれは唐突じゃなくて、巷間、そういう期待感というものは非常に多いのですね。  そこで私、委員長に御要望があるのですけれども政府政府として精いっぱい努力をされているのでしょうけれども、これは与野党問わず、各党ともに、大型店出店をめぐる状況というものはどなたも心配しているということは共通をした認識でもありますし、この際、大型店出店の自粛を求める、あるいは政府に、凍結を含めていわゆる出店抑制の措置なり凍結といったことなりを求めるような本委員会としての何らかの意思表示というようなものをされるようなことを考えてもらう必要がありはせぬか、こんなふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  272. 登坂重次郎

    登坂委員長 清水委員の御意見は、理事会においてよく検討することにいたしたいと思います。
  273. 清水勇

    清水委員 それじゃ、お願いをいたします。  最後に、警察庁に二、三お尋ねをいたしたいと思います。おいでになっていますか。――先ほど来のやりとりを通じて、大型店出店をめぐる紛争であるとかあるいは問題点であるとか、ある程度理解をいただいたと思います。  そこで、理解をいただいているという前提に立ってちょっとお尋ねをしたいのですけれども、これもどこそこというふうに私は申し上げません。申し上げませんが、各新聞に大きく取り上げられるような一つの事例として、たとえば地元商業者たちが、このまま商調協が開催をされていくと出店者側のペースで事が進められて地元商業者にとっては大変な事態になる、まさに死活問題である、こういうことから、商調協等に対してあれこれと切々たる陳情だとか行動だとかを展開される。そんなわけで、なかなか当初に段取りをしたように商調協が円滑に進まない、こんな事例を持つ地域商調協幾つかあるわけですね。そこで、事はめんどうだというわけで、それならばこの際、円滑に商調協が開催できるように警察に入ってにらみをきかせてもらって、そうしてじたばた言わないような雰囲気の中で商調協の開催ができないものかということから、警察の介入を要請する、そういう意図あるいは動きというものが、私の承知をしている限りでも四つくらい現にあるわけですね。  僕は、これは大型店地元商業者の対立ではあろうかと思いますが、しかし一面で見れば、それこそ五十年、六十年という長い期間いまの商店街を形成しているような皆さんは、地域社会の消費者の皆さんと今日の地域社会、地域経済というものを営々と築き上げてきているわけですから、それを何とか守ろうというわけですから、そういう対立の中に、要請があったからといって警察がそう簡単に入るとは私も見ておりませんけれども、入られるということはかえって事態を混乱させるというようなことになりはせぬか、こういう懸念が実はあるのです。  だから、基本的には警察自身が判断をされることですけれども、私の意見をあえて言わせていただけば、この種のケースについては要請があったからといって出ていくというようなことではなしに、不介入ないし中立的な態度で、粘り強く当事者間で話し合いあるいは調整が進められる、こういうような立場をとってもらうべきものではなかろうかといった感じを持つのですが、いかがでしょうか。
  274. 国松孝次

    ○国松説明員 お答え申し上げます。  大型店出店に伴いましていろいろと地元の方の反対運動がある、それに関連して関係者の方から警備要請等がなされる事案もあるわけでございますが、われわれ警察といたしましても、警備要請があったから当然出るということでももちろんございませんで、その事案の規模であるとか態様であるとか、それから出すにいたしましても出す時期であるとか、そういうようなことは私どもの独自の立場で判断をさせていただきまして、そして誤りのないよう適切に行うということでございます。  それから、そうした住民のいろんな反対運動というものがどういう形で行われるにいたしましても、それが秩序正しく平穏に行われている限り、警察として何ら関与すべきでないということはもちろんのことでございます。ただ、その過程におきまして違法行為が行われる、あるいはそれが行われるおそれが非常に強いというような事態がありました場合には、これはわれわれの立場といたしまして、その事案の態様でありますとか、いろんな諸般の事情を勘案いたしまして、適切な警察措置をとるということにいたすというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  275. 清水勇

    清水委員 基本的な考え方はわかりました。たとえば違法行為が起こらないように、これは言われるとおりだと思いますが、問題は、さっきの大臣の言葉じゃありませんが、そこのけそこのけお馬が通る式に、強大な力を持つ者が、それこそ力の弱い商業者をはじき飛ばすというような場面が仮にありとすれば、ちょっと待ってくれと言わざるを得ないということはあり得るわけですね。ですから、こういう場合はどうする、ああいう場合はどうするということは一々聞きませんけれども、そういう因果関係といいましょうか、状況といいましょうか、こういうものも適切にとらえてもらわないと、何か知らぬけれども地元の小売商店の連中が徒党を組んで騒いでいるなどというような発想だけで判断をされると、これは間違いを起こすということもあり得ると思うのですが、その辺はどんなふうでしょう。
  276. 国松孝次

    ○国松説明員 もちろん、私どもといたしまして、現象面で起こるいろいろな事案の底流といいますか、そこに何があるかということは十分考えまして、そういうものをよく考えた上で、なおかつ現場におきましては、われわれ警察の使命といたします違法行為は看過をしないという立場を何とか貫いていくというのが、この種の事案に対します私どもの対処方針であろうと思っております。
  277. 清水勇

    清水委員 そこで、もう一つ聞いておきたいのは、これは今後そういうことがあってはならないという立場で伺うわけですが、昨年来ある市で、大型店出店をめぐるトラブルが多少ありました。トラブルというか紛争ですね。それで、そうした中で、警察は行き過ぎじゃないかとか過剰警備じゃないかとか、そういう批判がずいぶん出たことがあるのです。これはつかんでおられるかどうか知りません。たとえば大型店出店に反対をする運動が起こる、その反対運動のリーダーを警察に呼んで事情を聞く、あるいは何人かの幹部の商店を訪ねて事情を聞く。さらには、たとえば商調協が開かれる会場へ地元商業者の皆さんが大ぜい陳情とか申し出とかというようなかっこうで出かけていく、そうすると、そういう状況を監視をしたり干渉がましいことを言われる。それで、これは不当じゃないかという申し入れを受けた際に、地元署の立場で、犯罪を未然に防止をするためのいわば警察の当然の行動なんだ、こういうふうに答えられたそうですけれども、小売商業者というのは、日ごろ警察と仲いいかどうか知りませんけれども、警察の皆さんからちょっと来いと言われたりあれこれ聞かれたりするということは、大変な威圧感を感じたり、何か悪いことでもやっているのかと思ってしり込みをするというようなことがえてしてあり得るわけなんです。そういうことを通して反対運動に水が差されるというようなことがあるということは、おもしろくないことじゃないのか。あるかないかは別の問題として、仮にあるとすればおもしろくないことじゃないか、私はこうも思わざるを得ないのです。いま私が申し上げたように、それはちょっと過剰じゃないのかといった認識についてどんなふうにお感じでしょうか。
  278. 国松孝次

    ○国松説明員 この種の事案でございますと間々あることでございますけれども、たとえば反対をなさる、その場合、その反対の仕方につきまして、会議その他が開かれるのを実力でも阻止するというようなことをあらかじめ公言をいたしまして、そのとおりいろいろと行うという場合も間々あるわけでございます。そうした場合に、その過程において違法行為が行われるということもございますので、私どもとしては、事前に、そういう状況が客観的にあるという事態になりました場合には、これは必ずしも反対派だけではございませんが、関係の方をお呼びいたしまして、ひとつ平穏に秩序正しくやってくれというようなことを申し上げることはあるわけでございます。  また、先ほどお答えしたことに関連するわけでございますけれども、この種事案は現象面で起こってきたことだけを処理すればいいというわけではございませんで、その裏にある事情というのをよくつかんだ上で対処しなければならないわけでございますから、その意味におきまして、関係の方々からいろいろと事情を聞かせていただく、どういう事情でこうなっているのかということをお聞かせいただくこともあるわけでございます。ただ、それが、いやしくも過剰であるとかあるいは威圧的であるとかいうことのないように、事情聴取なりあるいはいろいろ指導をし、警告をするというようなやり方につきましても、その方法につきましては適切に行われるように指導してまいりたいと思っております。
  279. 清水勇

    清水委員 残念ながら、別に小売商業者の皆さんの立場をわが党が代表しているというような立場にないものですから、うちの方でしかるべくああする、こうするというようなわけにはなかなかまいらぬと思いますが、しかし、どちらかといいますと、従来この種の組織的な運動というようなものを余り体験なさっておられない商業者の方々なんですね。ですから、ときによれば僕らもびっくりするような荒い言葉遣いをするというようなこともそれはあるかもしれませんが、しかし、事は死活問題なんですから、生きるか死ぬかというようなときに少々言葉として強い言葉が用いられたからといって、これは危険だというような発想ですぐ何かをするのではなしに、やはりいま言われているようにバックグラウンドなるものも十分に掌握をされ、できるだけ円満に事の解決が図られていくというような方向へ警察も関心を持ってもらう、こういうことをこの際強く御期待を申し上げたいというふうに思います。  時間が参りましたから、なお聞きたいことはございますが、きょうはこの辺で終わります。ありがとうございました。
  280. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、来る二十日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十七分散会