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1983-03-22 第98回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十二日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 登坂重次郎君    理事 野田  毅君 理事 原田昇左右君    理事 森   清君 理事 渡部 恒三君    理事 後藤  茂君 理事 水田  稔君    理事 長田 武士君 理事 中野 寛成君       天野 公義君    浦野 烋興君       越智 通雄君    奥田 幹生君       梶山 静六君    木部 佳昭君       島村 宜伸君    田原  隆君       中島源太郎君    野中 英二君       鳩山 邦夫君    宮下 創平君       粟山  明君    上田  哲君       上坂  昇君    清水  勇君       城地 豊司君    中村 重光君       渡辺 三郎君    岡本 富夫君       北側 義一君    横手 文雄君       小林 政子君    渡辺  貢君       石原健太郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  山中 貞則君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         通商産業政務次         官       渡辺 秀央君         通商産業大臣官         房審議官    野々内 隆君         通商産業大臣官         房審議官    斎藤 成雄君         通商産業大臣官         房審議官    池田 徳三君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省基礎         産業局長    植田 守昭君         通商産業省生活         産業局長    黒田  真君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         中小企業庁長官 神谷 和男君         中小企業庁計画         部長      本郷 英一君  委員外出席者         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画課長     伊藤 欣士君         労働省職業安定         局雇用政策課長 稲葉  哲君         商工委員会調査         室長      中西 申一君     ───────────── 委員の異動 三月二十二日  辞任         補欠選任   石原健太郎君     阿部 昭吾君 同日  辞任         補欠選任   阿部 昭吾君     石原健太郎君     ───────────── 三月十日  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案長田武士君外二名提出衆法第二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三〇号)  特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)      ────◇─────
  2. 登坂重次郎

    登坂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定不況産業安定臨時措置法の一部を改正する法律案及び特定不況地域中小企業対策臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  3. 水田稔

    水田委員 まず、大臣にお伺いしたいわけですが、この六年ぐらいずっと基礎素材というのは低迷を続けておるわけです。  考えてみますと、日本高度経済成長というのは、前にも一遍申し上げましたが、安い原油原料エネルギーのもとにして、そしておくれた技術外国からの技術導入ということ、そして改良し、いわゆるスケールメリットというような形で高度経済成長を続けてきた。これが四十八年のオイルショックで、このときは一バレル一ドル五十セントから二ドルの原油が大体五ドルぐらいまでに上がった。それからの三年間を考えてみると、製品に油の値上がり分だけをオンしていく、消費者価格にかけていく、大体それで何とか乗り切ることができたという安易さが——第二次のオイルショックは、考えてみると、これは一九七九年ですが、一年間で十三ドルから十四ドル、十八ドル、二十四ドルまで上がったわけです。これはとてもじゃないが、第一次のオイルショックのような形で価格吸収することは困難な状態であった。その時点で、これまでの日本産業構造というのは根本的に考え直すべき時期にあったと思うのです。この特安法がその一年前にできたわけですけれども、そういう中で、実際には二三%の設備廃棄というのはほとんど実施できたけれども景気浮揚といいますか、活性化を全く取り戻すことができなかったという経過をたどってきたわけです。  ですから、考えてみると、通産行政として、そういう大きなもとになるエネルギーなり原料の状況が変わった中で日本産業構造が一体どうあるべきか。相当急激な転換をせざるを得ない。しかし、そこでは雇用の問題が大きく影響する、社会問題にもなるという問題を抱えておるわけですから、そういう点での方向というのをきちっと出し得なかったのではないか。  もう一つは、第一次オイルショックを乗り切った業界の、価格にオンしていけば何とかやれるという甘さ、二次の大変大きな変動に対して対応の甘さがある。たとえてみれば、設備廃棄しても、コストを下げるために設備を更新する、そこではスケールアップをまたやるような甘さがあったのではないか。これは通産省、同時に業界の甘さがあったのではないか。そこから、どうやってそれを乗り越えて日本産業活性化を求めていくかという重大な岐路に立っておる。  私は、まず大臣に、その点でこれまでの対応の甘さがあったのではないかということについてどういうぐあいにお考えになっておるか、お伺いしたいと思うのです。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 日本の戦後の急激な経済の姿、いろいろな見方がありますが、一つには、太平洋ベルト地帯という形で、関東からずっと瀬戸内海、北九州に至る、そういう形の上ではまた拠点メガロポリスというようなものを形成しながら、臨海型の産業発展をしていった。ここに石油を運んできて、日本で精製しながら各種の方面に燃料その他で使っていく日本経済の姿が必然的に構成されていったのだろうと思うのです。  それで、私は議員立法で、各党の御協力も最後にいただいたのですが、過疎地域緊急措置法という法律をつくらなければならなかったのですが、議員立法でやりましたときにしみじみと考えたのが、岡山もそうですが、広島あたりもそうでした、太平洋メガロポリスを抱えている瀬戸内海沿いの方では人口過密になっていく、その同じ県の中国山脈寄りの方は過疎町村が非常に多い。この現象というのは、日本列島全体から見てもちょっといびつな構造であるというようなことが、結局はいまおっしゃったような、一々ごもっともなスケールメリット追求型の、いまは基礎素材産業型のそういう装置産業というものになっていった。  ところが、肝心の装置産業の源は、いわゆるスケールメリットを求める過程としてエネルギーというものに非常に依存しているのだ。そこのところが、われわれとしては、かつて石油は、石炭衰退といいますか、石炭固体エネルギーから流体エネルギーへの変化、革命というようなものの上に、安くて幾らでも手に入るものであるという前提考え方が無意識に、これは単に産業人のみならず政治家も含めて、日本政治行政の中にあったのではないか。  だからこそ、石油が上がったときに、われわれはショックという言葉を使いましたが、最近諸外国人たちと会って、経済の行方、展望等を公的にも私的にも責任ある方々と話をしますが、日本以外の国からは、石油ショックという言葉は出てこないのです。私が石油ショックという言葉を使っても、ああそういう表現もあるのかというような受けとめ方をしておるのに気がつきました。これを見ると、やはり私たち依存度が極端に石油に高かったせいもありますが、それに対する対応が全体としてあわてふためいた、そしていまのような第一次構造不況対策というものをやらざるを得なかった。ですから、まず石油の問題から発生した原因による不況ということでとらえましたから、造船などというものも入っていた。しかし、造船不況というのは、単にそういうような油の問題だけだろうか。一次的にはそうだったろうけれども、これからは、やはり運輸行政の中で考えてもらうべきことではなかろうか。  われわれは、今回は基礎素材産業、これは、ほっといたら日本から消えてしまう産業というものをなくするわけにはいかぬ。ですから造船は外して——不況という言葉も、これはイメージの関係もあるそうで、今度法案を出すときには不況という字は取ってください、でないとほかの人たちが、あそこは不況地帯だからなどと言うので、企業の問題じゃなくて地域が困るのですという話がありまして、中身は同じことですけれども不況という言葉を取らしていただきました。  そういうようなことで、私たちのたどってきた道、そして第一次石油ショックに遭遇した後の対応の仕方、そしてこの延長するもととなった法案をつくってからのそれに対する対応の仕方、それぞれに、戦後の急激な成長というものから一部の特定産業が足踏みを余儀なくされたときの対応として適確であったかということを振り返ると、法律も、さっき言ったように、そこまで行くべきだったのかなという業種も含めておりましたし、行政も初めての対応なものですから、民間大産業、大きな企業に対してどういう指導や物の言い方を個別にしたらいいのかも戸惑ったり、第二次石油ショックとわれわれが呼ぶ三十四ドルへの引き上げがなかったならば、恐らく今回はこのような法律を出さないで切り抜けられたかもしれない。  しかし、アルミのように、水力発電でアメリカ、カナダが問題にならない価格で地金を持ってくれば、どこまで守ってやるかは別にして、この法律みたいなものがなければ助けてやれないのでしょうけれども、しかし第二次石油ショックというのは、せっかくこの法案をつくって、みんなが初めての体験で手探りに、まっしぐらに進んできたのが少し後退するわけですから、手探りでやっているときにまた第二撃を食らったということで、若干この法案の成立の当初の意気込みとその進展には、いま考えると反省すべき点が相当あったと思います。でありますので、今度の法律ではそういう点を、なれたと言えばなれた、あるいは法律反省すべき点は反省しながら、今度延ばすようなことのないように、今度はりっぱなものを結果が生み出すように努力したい。  これは私の考え方でございますから、先生のお考えどおりにはぴたっとした答えにならなかったかもしれません。しかし、最初の総論として私の所感を申し述べさせていただきました。
  5. 水田稔

    水田委員 大臣からも、初めてのことでということで、反省すべきことは反省してというお言葉がありましたが、五年間やってきたわけてありますから、この一部改正ということは、当然五年間の評価というものがなければならぬわけです。  先ほども申し上げましたが、全体で二三%の設備廃棄で、ほぼそれを達成した。しかし、こういう批判があるわけですね。この特安法の五年間の運用について、処理量を上回る能力増処理したけれどもそれを上回って能力がふえた、たとえば電炉の問題。あるいは安定基本計画を超えた企業の撤退、これはアルミですね。百六十万トンから百十一万トン、そして七十万トンにしたけれども現実には三十万トン前後の操業という。中には企業の自主的な判断で撤退したものもある。そして、処理方法としては、廃棄格納休止、譲渡と規定しておるけれども、実際には格納休止によるものがかなり見られる。これは私が言うのではなくて、そういう批判があるという意味です。また、全企業一律方式による設備処理も見られる。指定された十四業種の大部分が、設備処理を行われた後もなお稼働率は低く、収益改善国際競争力の回復もなし得ない、全くそういう点では効果に疑問があるではないか、こういう批判もあるわけであります。  通産省として、この五カ年間の特安法というものがどういう効果と、そしていま、そういう批判が出ておるということについてはどういうぐあいな反省があるのか、お伺いしたいと思うわけです。これは局長で結構です。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 企業というのは、やはり利潤追求ということの前には、少々の社会的なモラルぐらい踏みつぶしかねないところを本来持っているものなんですね。そのような企業のみに通用する論理というようなものは、このような国の法律保護下に置かれた場合は、私はやはりその法律の国家に対する、自分たちは恩恵でしょうが、義務が伴う。それに対しては、企業のあくなき論理の一部は、これは義務としてそれを慎まなければならなかったと思うのです。しかし一部、部分的に、一々の業種は申しませんが、そのようにありがたいことであるが、自分のところはこの際うまくひとつ、総論は賛成だがちょっとちゃっかりやろうかというようなことをやりかねないものであります。  したがって、今回この法律を継続することの可否についても、私は問題を部内で提起しながら、企業甘えというものは絶対に許さない、甘えの構図の上に法律をさらに延長し、さらに手厚くある部分においては見ようとするようなことはあってはならないことであるので、自由主義経済であるならば、まず企業甘えを徹底的に排するということを前提でなければ、この法律国会に出すこと、そのことについて私は認めようとしなかったわけであります。  その結果、企業甘えというものを徹底的に排除することを条件として作業に入ったという経緯もございますので、これからは、自分企業さえよければほかはどうでもいいというような考え方法律の上で許す余地はないようにしたい、そのように考えております。
  7. 小長啓一

    小長政府委員 先生指摘のように、特安法指定業種につきましては、処理率平均二三%、その平均達成率は九五%ということでございまして、当初目標といたしました処理目標はほぼ達成されたというふうに私どもは考えておるわけでございます。  ただ、先生も御指摘ございましたように、第二次石油危機によりまして一定程度その特安法の成果が弱められたということも事実なわけでございますが、逆に申しますと、第二次石油危機による影響がこれによって緩和されたという面もあるわけでございまして、全体の期間を振り返ってみますと、過剰設備処理進展をし、需給の改善も図られたのではないかというふうに私どもは評価しておるところでございます。  ただ、今後の反省の問題といたしましては、先ほど大臣もお触れになりましたように、企業甘え構造は絶対許さないということでございますけれども、新法の施行に当たりまして、私ども三つの点を特に留意をしたいと思うわけでございます。  つまり、第一は、基礎素材産業活性化を図るためには、従来の過剰設備処理に加えまして、事業集約化や原材料、エネルギー低減のための設備投資などの対策を同時に行っていくことが必要であるということ。  第二といたしましては、今後とも各業種の実態に応じまして、効率性配慮をいたしました設備処理の実施に引き続き努めていくことが必要であると考えております。  それから第三といたしましては、設備処理とあわせまして行う設備の新増設の制限の規定運用に当たりましては、活性化投資を積極的に推進する必要がある点について、従来以上に配慮していく必要があるのではないか。  以上のような三つの点に特に配慮いたしまして、本法案運用に遺漏なきを期してまいりたいというふうに考えております。
  8. 水田稔

    水田委員 いま三つ反省と言われるのですが、われわれの側から見ますと、この間に少なくとも基礎素材産業から、断定的には言いませんが、四十万人ぐらいの労働者雇用を失ったという事実があるわけですね。そういう点について私は、企業活性化はいい、そのために労働者がはみ出すのは仕方がないということでは困るというのが、この一部改正では一番のわれわれとしての焦点であるわけですね。  その点についてはいま説明がなかったわけですが、反省としては一番大きな、三項目だけではなくて四項目の柱としてなければならぬと思うのですが、その点いかがですか。どういうぐあいに受けとめられておるか、数字等もあれば挙げて承りたい。
  9. 小長啓一

    小長政府委員 先ほど先生指摘になりましたように、基礎素材産業全体といたしまして、昭和五十年から昭和五十五年ぐらいの五年間の過程におきまして、約三十数万人の労働者基礎素材産業から退出をしたというのは事実でございます。  ただ、ではそれがすぐ失業者になったかと申しますと、そうではございませんで、当時非常に成長力の高かった加工組み立て産業への吸収であるとか、あるいはその関連事業への吸収であるとかいうことも行われたわけでございまして、特安法の中にも規定してございます雇用の安定の措置によりまして、なだらかな調整が行われた面はあったのではないかと思うわけでございます。  ただ、これからの、先ほど先生の御指摘になりました第四のポイントといたしまして、雇用の安定につきましては、本法案におきましても最重点配慮事項ということで考えておるわけでございまして、なだらかな調整雇用の安定に努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  10. 水田稔

    水田委員 やはり通産省の姿勢というのは、企業に目が向いておりますね。労働者の問題は労働省という感覚がやはりあるのではないかという気がするわけです。言葉では、いま再質問したから、雇用の問題最重点という答えが返ってきたわけですね。  しかも答弁の中で、いわゆる加工産業吸収された、こう言われるのですが、恐らくこんな細かい統計というのはとれていないと思うのですね。実際、私どもが現地で見る限り、これはいままで働いておったところに比べて賃金が八割ならいいところですね。恐らく七割ぐらいですかね。もっと以下のところ、いわゆる三次産業関係へ流れていっておるというのが多いわけです。そして、きょう現在の失業率というものを考えれば、場所によっては、一たん失業するとその周辺では再就職はできないという困難な問題もたくさん抱えた状態が起こっておるのだ、そういう理解をしないと、いまのように、周辺のいわゆる加工メーカーへという考え方は私は甘いと思うのですよ。  たとえば例を申し上げますと、これは北海道の伊達に志村化工というのがありますね。ここ伊達市には精糖関係の工場と志村化工しかないわけです。そこで志村化工はいわゆるフェロアロイをやっておりましたけれども、つぶれたわけです。どこへも出ることはできない。その周辺には全く働く場所というのは——一たん失業すると永久に失業者という形になる、そういう問題等現実にあるわけですね。だからそれは、いま局長がお答えになったように、反省すべき大きな点として、地域的な問題を含めた雇用の問題が大変大きな社会的な問題として存在しておるという理解で進めていただきたいと思うのです。  そこで、雇用の問題でありますが、雇用確保も重要なものとして一応は法文上あるわけであります。これは前回の原案に私どもが出しまして、括弧書き雇用安定に関する条項というのを入れたわけです。「(雇用の安定を図るための措置を含む。)」と、こう入れておるわけです。そして、三条六項では「関係審議会は、」「労働組合意見を聴かなければならない。」こういうぐあいに、あるいは十条では、設備処理その他の措置を行う場合には労働組合と協議して、というように入っておるわけです。しかし、現実の問題としては、いま私が申し上げましたように、起こっておる事態というのは、そうすんなりと労働の側が転換できたかというと、そうはなっておらないわけです。部分的なことですが、問題があるのは、まとまった一つ業界とまとまった労働組合というのがあればいいのですけれども、そうでない、たとえば中小ですね、あるいは系列、関連のところは、一つ業界意見も、まあ何といいますか、一つの大きな業界がある、そのすそ野にある中小というのは、ここは聞いてもらっている。こちらの方は一体どういうぐあいに意見が聴取されたのか、あるいはそこに働く労働者意見はどういうぐあいに吸い上げることができたのかというのが、一番問題として私ども指摘されるところなんですね。  したがって、そういう点は、小さくて数が少なくても、その職を失う人にとってみれば、大企業、大きな産業企業の中での人も、中小の中の人も、全く本人にとっては同じことなのですね。片一方は法律の上である程度意見も言うし、仕方がないかと納得もしながら雇用転換を図っていく。しかし、中小の方は意見も全く聞かれない。まあ上の方の業界労働組合で何か決まって設備廃棄するんだから、おまえのところは出ていけというようなことでは、納得できないじゃないかという意見がたくさん出るわけです。そういう点については、今度の法律を見ても、それが十分吸収できる、そういう規定はないように思うわけです。ですから、その点は一体どういうぐあいに考えられておるのか、あるいは運用ではどういうぐあいにお考えになっておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  11. 山中貞則

    山中国務大臣 今回の法律目的の第一条に、お話にありましたように、「措置を講ずることにより、雇用の安定及び関連中小企業者経営の安定に配慮しつつ」特定産業構造改善を推進するんだということをまず書いてございます。それを受けた各条項において、審議会あるいは計画策定等の場合の労働組合意見の反映、さらに下請を中心とする関連中小企業労働組合の問題、これは確かに大きな問題だと私は思うのですが、ただ、ここで講じようとするのは構造改善計画でございますから、したがって、それに対して配慮をするということを第一条に書いてございますので、当然ながらその問題は、いかなる場合においても、たとえば大臣がその計画を確認する場合でも、労働組合との関係はどういうふうに話し合いがついたのかというようなこと等は確認をすることになっております。ただ、法文の体裁上、こういう構造改善法律でございますから、これの目的一つに、労働組合との関係というものを項目を立てて書くのには、ちょっと法律になじまない。じゃ下請ばかりではなくて、ほかにもいろいろ今度は製品を購入する方の立場とか、極端に言うと輸出、輸入の問題等にも、取引関係もありましょうし、だから配慮がどこまでいったらいいのかは、いろいろと意見もまた出てくるだろうと思うのです。  ですから、私どもとしては、通産省企業だけを見ておるという考え方、そういう御批判を受けないようにしなければいけない。絶えず、企業経営者労働者とがおって成り立つものである、親企業があれば必ず下請企業がある、そういうようなことから、一方の方のそれが無視できない地域は、いわゆる企業城下町として関連中小企業の方が大変だというようなところについては、城主様の衰退に従って新しい法律もまた延長しておりますし、そこのところは一部やはりダブるところも当然出てまいります。したがって、そういう配慮は確かにしてございますし、また政策的に見ますと、今回まだ国会に提案をいたしておりませんが、俗にテクノポリス法と言っているものについても、それは先ほど冒頭に申しました、臨海工業地帯として急速な発展を遂げたわが国の戦後経済構造の中で、飛行場の周辺ということになりますと、大体少し内陸部に入りますね。したがってその内陸部の方に、先ほど広島岡山の例をとりましたが、全国的な傾向としての太平洋メガロポリスから、内陸の新しい近代産業として生まれ変わる地帯への移動なり何なりも行われるのではないか。また、そういう目で通産行政というものは、地域の問題、地方の問題に通産省の方が手を差し伸べていくべき問題ではなかろうかというようなことで、現在は関係省庁との最終調整に入っており、間もなく国会に御提案したいと思う、そういう思想も新しく反省の上から生まれてきておると御理解を願いたいと思います。  あと、小長局長から答弁させます。
  12. 小長啓一

    小長政府委員 大臣のお話にもございましたように、雇用の安定というのは最重点配慮事項ということで、本特安法においても具体的に明示をされているわけでございまして、そのための所要の規定の整備が図られておるわけでございますけれども雇用の安定の中には、関連中小企業における雇用の安定というのが含まれるのは当然でございまして、関連中小企業労働者につきましても、十分な配慮を払ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  そのためには、基本的には特定産業活性化及びその関連中小企業経営の安定というのがきわめて重要ではないかというように私どもは思っておるわけでございまして、そういう観点を踏まえまして、構造改善基本計画において所要の配慮を払うなど新特安法のもとにおきます措置のほかに、新城下町法との有機的連携を確保することによりまして、関連中小企業経営の安定を図って、関連中小企業雇用の安定に努めていくというふうにやっていきたいと思っておるわけでございます。  それから、関連中小企業労働組合意見の反映の問題でございますけれども、私どもは、運用の問題といたしまして、関係審議会関連中小企業界の意見が反映されるよう配慮してまいりたいということ、そしてまた、関係審議会から意見を聞かれる労働組合に、関連中小企業労働組合意見を踏まえて意見を述べていただくというようなことによりまして、万遺漏なきを期してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、先ほど先生、何か法律的なスキームになるような方法はないのかというような御質問もございましたけれども、その点につきまして、確かに本法案では明示的なスキームというのは考えてないわけでございます。これは具体的に申しますと、三つばかり理由があるのではないかと思うわけでございます。  第一点は、関連中小企業労働者につきまして、その範囲などが必ずしも明らかでない場合が多いのではないかということ。  それから第二番目に、関連中小企業関係事業者団体とか労働組合といった構造改善の直接の当事者でない人の意見関係審議会が聴取するというスキームを仮に設けるといたしますと、バランス上、同様の立場にございますユーザーであるとか貿易事業者であるとか金融機関といったような人たち意見聴取規定も設ける必要があるのではないかということでございまして、仮にそういうことになりますと、そもそも審議会で各界の代表に参加をいただきまして総合的判断を行うという制度との差がつかなくなってくるのではないかということも問題ではないかと考えておるわけでございます。  それから第三番目といたしまして、現行法にもございますし、また新法にもございます構造改善の直接の当事者である特定産業事業者団体及び労働組合意見を聞くという制度の趣旨が、結果的に薄められるかっこうになるのではなかろうか。  以上、三点の理由によりまして、具体的な法的スキームとして明示することは必ずしも適当でないというふうに考えておりますけれども先ほど運用によりまして所期の目的は達することができるのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  13. 水田稔

    水田委員 日本産業構造というのは、確かに生産量では大企業が圧倒的ですけれども雇用という点から言えば、中小企業というのが大変な雇用の場として存在しておる。それはわれわれの側から言えば、企業活性化という法律上の援助を受けて企業はやる、当然労働者に対してもそういう同じような、自由に労使でやるとか、企業同士の自由競争ならその中でやられれば仕方がないことですけれども、政府が手を出すということになれば、その点については大企業よりむしろ雇用という点では中小企業に対する配慮が必要ではないか。  もう一つは、労働組合の組織というのは労働法で、全部が全部ほかのものじゃいけませんけれども、どういう組織をつくろうか自主的にやるわけですから、その業種でなくてもその中の代表がその中に存在しておる労働者意見を代表するわけてすから、全く関係のないという言い方は、一般社会の契約ならともかく、労働法に基づいてできた適法な労働組合なら、その中に存在しておる関連業種を代表する資格はあるわけですね。  ずばり言えば、たとえば合板の関係で、合板だけでは小さいですから、それがほかの業種も入って一つの大きな全国組織をつくっている。しかし、このことについて意見を言いたいと言ったけれども、現行法では、おまえのところは関係ないからといって門前払いをするというようなことが現実にあったわけです。今度の法というのも、それが何もなければ当然そういう扱いになるのではないかという不安があるわけですね。現にそこには、不安が残ったまま職を失っていった労働者がたくさんおるということがあるから念を押して申し上げているので、そこらをどういうぐあいに吸収できるのか。いまの三つの理由の中の二番目に言われたのは、そういうのはいけません、こういうことですが、それでは困るわけです。いかがですか、その点は。
  14. 小長啓一

    小長政府委員 私が反対といいますか、問題があるのてはないかと申し上げたのは、法律的な立場からの理由づけということで申し上げたわけでございまして、具体的な運用の問題といたしましては、先ほども申しましたように、関係審議会関連中小企業界の意見が反映されるよう配慮するということは、具体的な運用の中で配慮してまいりたいと思っておるわけでございます。  それからもう一つは、関係審議会から意見を聞かれる労働組合の代表が、関係中小企業労働組合意見も踏まえて御発言願えるというような形に持っていくことも考えていく必要があるのではないかと思っておるわけでございまして、運用の面で具体的な改善は可能ではないかというふうに思っておるわけでございます。
  15. 水田稔

    水田委員 これ以上申し上げませんが、見解の違いですから改めてまた別の方が詰めた話をすると思います。  それから、これは考え方の問題で、私は参考人で経営者団体の方にも伺ったのですが、私の言うように考える、こう言うのです。大事なことは、どうも現行法では、構造不況だから、何%余っておるから設備廃棄する、当然そこにおる労働者は余るのだ、これはやむを得ぬ、だからそれはいわゆる雇用安定法の方で受けてもらって職業転換してもらうという考え方の方が強かったと思うのですね。しかし、考えてみると、法律の手助けをもらって企業活性化を図る、余った労働者はそっちでやってもらうというようなことは片手落ちだろうと思うのです。  そこで、今回の改正では、少なくとも一つは、設備投資等も新しい考え方の中に入れていくわけですね。そうすると、企業活性化と同時に、そこの中でその企業雇用を確保するための努力をするということが一緒について回らぬと、労働者だけにしわ寄せを負わすことになる。だから一つは、この構造改善で何%の設備廃棄をしなければならぬということになった、その中で、新しい設備投資でどれだけ吸収できるのか、まずその企業の努力ですね。もう一つは、グループなり関連の中でどういう仕事で吸収できるかという努力。そして、お互いに努力してなおかつはみ出すものについては別の法律でいわゆる再訓練を受けて再就職してもらう、そういう心構えがやはり業界にもなければならぬし、この計画を指導していく通産省も基本的にはそういう考えでやってもらわないと労働者側に大きな不満を残す制度になるのではないか、そういうぐあいに思うわけですが、その点についての通産省のお考えを伺いたいと思います。
  16. 小長啓一

    小長政府委員 この新特安法を立案する過程山中大臣から六原則の提示があったわけでございますが、その一つに縮小と活性化というのがあるわけでございます。これは、経済性を喪失し、将来とも回復改善の見込みのない部分についてはできるだけ迅速かつ円滑に縮小する。同時に、今後回復させる部分については原燃料転換や原燃料コストの低減、高付加価値化、技術開発、事業集約化等によって活性化をするという、縮小と活性化考え方によって積極的な産業調整を行うというのが本法の一つ考え方になっておるわけでございます。  したがいまして、現行法では設備処理ということで縮小だけが課題であったわけでございますが、新法では縮小と活性化ということで、前向きな施策も十分取り入れられておるわけでございます。したがいまして、先ほど先生の御指摘のように、技術開発であるとか活性化設備投資あるいは事業集約化等を通じまして、企業の内部あるいは企業グループといたしまして新しい雇用の場を創設するということは、従来より以上に可能性を増してくる面はあるのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  したがいまして、労使が具体的に雇用の問題を話し合いされる際に、グループ内におけるあるいは企業内におきます職場転換とか子会社への出向というような形で、労働省に具体的に御厄介になる前の段階で、産業政策の立場で雇用の機会を創設する努力を続けていくことは当然であるというふうに考えております。
  17. 水田稔

    水田委員 当然であるというのは、企業がそうやるだろうということでは困るわけで、指導する側の通産省もやはりそういう考え方でやってもらわなければならぬ、こういうことであります。  同時に、こういう構造不況に陥ったところで、端的な例でまあ変な話ですが、佐世保ドックなどは人を切って、そして労働条件を下げてやるわけですね。えてして立ち直ろうとする場合には、労働条件の切り下げということがほとんど出てくるわけです。自由競争の中で労使の力関係で決まる場合はそれはやむを得ないでしょうが、少なくともこういう法律の適用を受けて産業活性化を図ろうという場合、労働条件というか労働時間はすぐやるわけです。賃金は三年間凍結、労働時間は一時間延長、いままでの長い歴史で積み重ねてきた労働条件を切り下げるということをよくやるわけです。そういう点については、これだけの廃棄をすればどれだけ人間が余るという計画の中で、少なくとも通産省としても、労働条件が著しく低下するような計画というのは認めるべきではないと思います。そこで低下させれば、それだけ余分に労働者がはみ出します。その点は、計画を詰める中で通産省がきちっとしたものを持ってもらわないと、出してくるものは、将来に向かってこの時点では黒になるという収支だけを見るのではなくて、労働者状態というのはどうなるのか、その点の詰めはきちっとやっていただかなければならぬと思うのですが、この点はいかがですか。
  18. 小長啓一

    小長政府委員 新法の八条の二の三項四号に「当該事業提携計画に係る提携事業者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。」というのが一つの承認の条件ということになっておるわけでございますが、これは労使間の話し合いが行われているかどうかを確認する規定というわけでございまして、具体的には、個々の従業員の具体的問題を取り扱うというものではなくて、提携計画が全体の従業員の立場に立っているかどうかについて主務大臣として確認をするというような立場での承認の要件ということになっておるわけでございます。  具体的には、配置転換等によりまして離職者の発生の防止に努めることとなっておるかどうかというようなこと、それから、やむを得ず雇用調整に踏み切らざるを得ない場合におきましても、計画的にこれを行い、または雇用関係法を活用する等によりまして、従業員の地位に配慮を行うこととしているかどうかというような点につきまして、主務大臣として確認をするという趣旨になっておるわけでございます。
  19. 水田稔

    水田委員 それはそのとおりなんです。だから、たとえば労働時間を延長して、あるいは休日が多いじゃないか、減してというようなものが出てきた場合に、それは労使で決まったのですから結構ですと言えば、強い労働組合の場合はきちっとできるかもしれぬけれども、まあしようがないわというところは、労働者にたくさんな労働時間の延長とかあるいは休日を減してというような形が出てくる危険性というのはあるわけですから、そういう点ではある程度通産省もその計画を見る段階で、そこにも目を向けてもらわなければいけませんよ、こう言っているのです。目を向けるのか、向けないのか、いまの一般的な要望だけではなくて、お考えを聞かせていただきたい。
  20. 小長啓一

    小長政府委員 法律全体のたてまえといたしまして、雇用の安定は最重点配慮事項ということでございますから、その限りにおきまして私どもも十分注意をしてまいりたいと考えております。
  21. 水田稔

    水田委員 それでは、その点はぜひそういうぐあいにお願いしたいと思います。  今度、新しくここへ入った条文の中に事業提携計画というのがあるわけですが、これは前は設備廃棄だけだったわけです。構造改善基本計画をつくるときには関係審議会労働組合意見を聞かなければならないというのは三条関係であるわけですが、ところが、この事業提携計画の共同行為については主務大臣の承認を受けるだけでよい。カルテルや共販などの共同行為を行う場合も設備廃棄と同じようなやはり合理化ですから、そこでは人が余ってくるということは当然なんですね。それがなければ共同行為をする意味はないわけです。ここでも雇用の問題というのは大きな一つの焦点になるわけですが、この場合は労働者意見を聞くという条項はないわけですね。いわば設備廃棄も共同行為も、ともにそこには雇用に大きな影響が出るということですから、当然同一に扱うべきではないかと思うわけです。その点はいかがなものでしょうか。
  22. 小長啓一

    小長政府委員 設備処理事業提携との相違を申しますと、設備処理業界全体として取り組む問題であるわけでございます。事業提携というのはそのグループごとの問題ということでございまして、必ずしも業界全体で取り組む問題ではないわけでございます。したがいまして、事業提携の実施の際には、第十条第一項にございますように、事業者は労働組合と協議をするという規定はあるわけでございますが、その主たる労働組合意見を聞くというようなことは、いまのような観点から見ますと必ずしも必要ではないのではないかというふうに思っておるわけでございます。
  23. 水田稔

    水田委員 私も、業界全体でやるものは全体ので聞けばいいのですが、単一の企業の中だけでやるのでなくてグループになりますね。この中での意見というのは聞く条項がないわけです。共同行為というのはグループになりますね、だからその中での労働者意見を聞くというスキームは一体できないのか、必要ないのか。一つだけでは問題がそこに起こるのではないかということを申し上げておるのです。その点はいかがですか。
  24. 小長啓一

    小長政府委員 その点につきましては、第十条第一項の、事業者が「労働組合と協議して、」「失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努め」ることとなっておるこの規定によりまして、前広に労働組合と話し合いは行い得るのではないだろうかというふうに私どもは考えております。
  25. 水田稔

    水田委員 これは聞かなくてもいいことかもしれませんけれども、現行法はここで不況業種に指定される、今度の場合は特定業種に指定される。そこから失業者が出る場合には離職者法の適用が当然受けられる。今度は労働省の方に聞いてみますと、これは全く関係ない、独自にうちは業種を決めるのです、こう言うのです。ここの中で指定された業種というのは離職者法、労働省関係法律の適用は一体どうなるのか。全く関係ない、これは企業城下町についても関係ない、こう労働省の方は言われるわけですが、通産省としてはどういう話になっておるのか、聞かせていただきたいと思います。
  26. 小長啓一

    小長政府委員 労働省の新雇用安定法案におきましては、現行離職者法に規定してございます「法令に基づく行為又は国の施策に基づき」という文言が確かに落ちております。したがって、先生もその点をおとらえになりまして、関係がないのじゃないかというふうにおっしゃっておるわけでございますが、この落ちておる理由は、労働省に確かめたわけでもございますけれども、国の施策に基づいて事業規模の縮小を行うものに限定せずに幅広く雇用安定対策の対象としようという趣旨から落ちておるわけでございまして、したがって、その趣旨を体して具体的に本法案との関係を見ますと、私どもといたしましては、新雇用安定法の業種指定を必ず受けられるものというふうに理解をしております。
  27. 水田稔

    水田委員 いや、理解をしておるというのでは——何か労働省との間では、わが方が指定した場合は受けてもらうという覚書ですか、話がついたのかどうか。こっちが理解しておる、しかし向こうに知りません、こう言われれば、こっちは全然別ですからね、それは仕方がないことでしょう。その点を念のためにお伺いしておるのですから、ひとつ。
  28. 小長啓一

    小長政府委員 労働省との関係におきましては、この法案の立案段階から常時密接な連携をとっておるわけでございまして、この法案施行後におきましても従前どおり密接な連携をとることになるわけでございますけれども先生指摘の点につきましては、私どもは必ずこの対象になるというふうに確信をしておりますし、現実にその両省との間の覚書ではその旨が確認をされております。
  29. 水田稔

    水田委員 構造改善をやる場合、全体の業界で見れば、生産量だけで見るとこれは大企業が圧倒的に多いわけで、中小というのは、いわば効率だけで考えれば、設備も効率はよくないということで、えてして一番切られやすいのですね。先ほども申し上げましたように、日本産業構造では、中小企業というのは労働者雇用という点では相当なウエートを持っておる。そういう点を計画段階で何か配慮することはできないのか。あるいは、たとえば全体のシェアの中で一定の〇・〇何%という小さな業種等を計画の中からは外して、それはそれなりの地域で生きていく、地場産業として生きていく。何かそういうような全部を十把一からげにすると、どうしても大きなところ、あるいは効率のいいところに集中するということになれば、そこらは切られるという心配があるわけですね。  これは、たとえば紙パルプで見てみますと、この法律改正がおくれて、本当は去年ぐらいからやっておったらどうかと私ども申し上げたのですが、そういう中では、事実上、地方のその地域ではほかに産業はない、これだけだというような工場が、たとえば出水製紙ですか、あるいは鶴崎は周辺にコンビナートができましたけれども、そういうぐあいにつぶれていった。出水なんかは、その周辺では勤め先が全くないというようなことになってきたわけですね。ですから、中小に対する計画段階での配慮というのは、先ほどいろいろ意見を聞くとかなんとか言われましたけれども、聞くだけでは困るので、そういう点はもともと計画の中で、ある一定のシェア以下の小さなものについては対象外にして生きていく方法を考えるとかなんとか、そういうことはできないものだろうかというぐあいに思うのですが、いかがでしょうか。
  30. 小長啓一

    小長政府委員 この法律は、構造的困難に直面をしておる基礎素材産業につきまして、設備処理事業提携、活性化投資技術開発等によりまして構造改善を積極的に推進していこうというものであるわけでございますが、この中では当然、大企業のみならず中小企業も含まれてくるわけでございまして、業界全体といたしまして経済性の回復を図り、活性化をしていくということを目指しておるわけでございます。したがいまして、本法律特定産業に属する中小企業につきましても、構造改善活性化の道が開かれておるというふうに私どもは考えておるわけでございます。  なお、その構造改善基本計画の策定に当たりましては、第三条第五項に「構造改善基本計画は、当該特定産業に属する事業者の雇用する労働者雇用の安定及び関連中小企業者経営の安定について、十分な考慮が払われたものでなければならない。」という明示的な規定もあるわけでございまして、私どもは、中小企業にしわ寄せが行われることのないように十分注意をしてまいりたいと思っておるわけでございます。  さらに、現在あわせて御審議をお願いしております新城下町法と連携を確保することなどによりまして、関連する中小企業経営の安定、振興を図ってまいるということに努めてまいりたいと考えております。
  31. 水田稔

    水田委員 だれが書かれたか知りませんけれども法律の条文とその心構えだけでは困るわけですね。私は具体的に申し上げておるのです。  たとえば製紙を考えてみますと、大手があってその関連がある。この全体で考えれば、発言力から何から考えてみれば、関連なんか、このグループでとにかく活性化ということになれば、効率の悪いのは切れ、ここへ集中しようとだれでも考えるわけです。そこで起こることは、ここの労働者がその地域のほかの産業に移転できない、そういう地域であれば雇用に一番影響するという問題。あるいは、その地域産業というのは企業城下町で救うことはできぬわけです、廃棄というのは基本計画で決めるわけですからね。そこらは計画段階で、中小なり地域への配慮通産省計画を見る段階でしてやらなければ、いまお答えになったような、法文でこういうふうな配慮をしておる、それでやったけれども、結局大きいところだけ残ってここはなくなった。それは企業城下町でやれと言ったところで、もとがなくなるのですからね。ですから、言葉ではそのとおりなんです。言葉では答えられるとおりですが、そういう問題をどう考えるか。それを計画段階でチェックしてやるべきではないか、その点はいかがですか、そういう質問をしておるわけです。
  32. 小長啓一

    小長政府委員 業種の具体的問題につきましては、必ずしも私が答弁できる資格はないわけでございますけれども、一般論として申し上げますと、先生の御指摘のような問題につきましては計画の中で十分な配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
  33. 水田稔

    水田委員 ぜひそういうぐあいにお願いしたいと思うのです。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げたのですが、いま不況と言われる業種の中でも、長い労使の歴史で、過剰人員を抱えながらその中で努力しておる企業もたくさんあるわけです。今度また法律が一部改正されて改めて指定されますと、特定業種に指定されたのだから、おい、これだけ余っておる、たとえばいま一万人おって一千五百人余剰人員を抱えてがんばっておる企業というのはたくさんあるわけです。しかし今度は、指定されたのだからそのうちの半分はやめてくれ、逆に言えば、指定されたことによって、いままで労使で努力してきたことをふいにするようなことになりはしないかという心配が出てくるわけです。そういう点は一体どうなんですか。そういうことにならないような方策というのは一体お考えになっておるのかどうか。これは行政指導でできるのかどうかわかりませんけれども、大変苦労してそういうことはやっておる。労働者も少々は給料の上がるのをしんぼうしておるかもしれぬ。あるいは企業も、これだけの負担というのは大変なんだけれども、長い将来を考えれば、長い労使の歴史を考えれば、これでがんばろうということでやっておられるところがたくさんあるわけです。しかし、これで指定されますと、いいチャンスですから、この際半分ぐらいは出てくれということになると、これをやったことが結局失業者をふやすことにつながりはしないかという心配があるわけです。
  34. 小長啓一

    小長政府委員 何度も申し上げましたように、この法案自身は雇用の安定というのを最重点配慮事項ということで考えておるわけでございますし、それからのその法律の性格自体も、撤退と活性化を車の両輪として進めていきたいというふうに考えておりますので、従来よりは雇用の機会がふえる可能性もあるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、そういう意味で私どもは、この法案を契機に首切りをする、あるいはこの法案が首切り立法ではないかという非難は当たらないというふうに考えておるわけでございます。  また、現実設備処理とか事業の提携なんかの承認に当たりまして、あの要件を踏まえて具体的に対処していきたいというふうに思っておりますので、私どもは、雇用の安定につながり、あるいは仮に雇用に問題が起こるとしても、なだらかな調整に終わるということに努めてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  35. 水田稔

    水田委員 私が申し上げたのは、この法律のずばりの適用とか運用よりは枠をはみ出したあれですね。ですから、なかなかむずかしい問題なんですが、そういう心配があることは事実ですから、いろいろな計画が出てくる段階で、いま私が申し上げたように、指定されてこの計画をやるということを理由にこれまでの潜在的な失業者といいますか、こういう努力したことをふいにすることのないような何らかの物申すことをやってもらいたい。そうしないと、そうなる心配がありますよと言っておるのです。いまのお答えでは、その点まで触れてないのです。法律運用だけなんですね。運用の枠を少し出ますから、その点を通産省がきちっと踏まえて対処してもらわないと、潜在的な失業者が顕在的な失業者になるということですから、ぜひその点は心の中にちゃんと持ってもらって、計画が出てくればそのことも触れてやるということを言ってもらわぬと困るのですが、それはいかがですか。
  36. 山中貞則

    山中国務大臣 御意見のやりとりを聞いておりまして、ではこの法律を何ら新しい方向なり体質改善も指示しないままに期限切れを待ったといたしますと、確かに大問題が起こるのだろうと思うのです、それは労使の関係だけをとってみても。ただいまお挙げになったのは、必死になって過剰労働力を抱えてがまんしていた、それが新法指定になったので勘弁してくれというような非常にいい企業の例をとって、しんぼう強く企業外にほうり出さないで抱えていた企業の話だろうと思うのですが、私が申します企業というのは、外国の例を見れば最もわかるわけですが、雪が降っただけでレイオフしちゃうわけですからね。そういうことを考えると、日本産業の終身雇用企業に対する、外国人から見れば忠誠心と映るらしいのですが、そこは経営者も血の通ったものを持っているだろうと私は思うのです。ですから、労働組合の責任者だった人が最近は会社の重役になることもさして珍しくない日本の社会になってまいりました。したがって、この法律は、このままでは企業の労使ともにほうっておけない、しかし、国が一々企業の労使の問題にまで法律でくちばしをもし入れていくとしますと、正常なる労使関係に、不正常な部分が仮にあるとしてもそれは企業労働組合の話ですから、そこまで通産省法律そのものを振りかざして切り込んでいくのはどうであろうか。ただ、この計画は承認にかからなければならないものでありますから、企業が非常に乱暴な、まず人を切ってしまえば人件費が幾ら浮くからというような計算から先に始めるような企業のあり方は決して承認を得られないというような姿勢は、私を先頭にして関係局長たちにも厳しく命じておきますから、重々配慮してまいりたいと考えます。
  37. 水田稔

    水田委員 次は、これはぜひ大臣にお答えいただきたいのですが、新聞報道を見る限り、原油の値下がり、円高差益を含めて、石油に対するあるいは電力に対する通産省の考えというのは非常に揺れておる、こういう感じがして仕方がないわけです。  これは冒頭申し上げましたように、日本産業構造というのが安い原油原料エネルギーとして使ってきた。これは将来展望、必ずしも未来永劫下がるものではないし、上がるということも考えられなきゃならぬ。しかし反省というのは、やはり三十四ドルになったときに一体どう産業構造を、大変な激変じゃなくて年数をかけながら、社会問題にならないような形で産業構造を変えるかということがまだ十分、いま進行中でありますけれども、できてなかったというところに問題がある。この特安法を一部改正してさらに第二次の構造改善をやるとしても、基礎素材というのは、たとえば石油化学を見ればナフサが原料ですが、この価格がとにかく決定的に影響する、あるいは非鉄金属、アルミ等は電力が決定的なものなんですね。この構造改善をやればそれですべて活性化していくのかというと、私はどうしてもそうは思えないわけです。  これはこの数年言い続けてきたことですが、電力の問題、いま原油が下がった段階で電力の問題あるいはナフサの問題、ナフサは自動的に下がるわけです、国際価格で連動する形ですね、そういうものとそれからエタン系とこれからどう競争していくかという問題等があるわけです。この前、平均で五〇%、高いところは六七%。私のところは六七%で、いまでも夜間電力さえキロワットアワー三円高いということでは、夜間操業を集中的にやったとしてももはや基礎素材は成り立たないという状態が起こっているわけですね。いろいろ調べてみると、いまの電気事業法なり供給規程等を見ると、がんじがらめになっているわけですね。それで、電力は場所によっては余って、もっと買ってほしいと思っておるけれども、値段の点でとてもそれではやれないというような問題が起こっておるわけです。ですから、この法律がまさに有効に機能するためには、背景にある電力といわゆるナフサという原料の問題についてのこれからの基本的な方向がきちっと並行的に出されないと、この法律が有効に機能して、わが国のいま特定産業として指定される業種活性化は取り戻せないと思うのです。  それで、毎日のあれを見ると違っておるわけです。引き下げる——もちろん一般消費者と同時に産業がどう生き残っていくかということで、これは短兵急な決め方は失敗するのではないか。むしろ日本産業構造をどうしていくか、その中における産業のためにどうするか、あるいは一般消費者のためにどうあるべきかということを、これは基本的な方向を出すべきときに来ておるのではないか。ですから、第二次オイルショックのあのときの、仕方がないということで上げていったということを、いま下がる段階で調整をきちっとすべきではないだろうかということについて、大臣の御見解をぜひ伺いたいと思うのです。
  38. 山中貞則

    山中国務大臣 三十四ドルからの二十九ドルという考え方の前に、バレル二ドルあるいは二ドル五十セントというころをバネにして日本基礎素材を含めた装置産業とかそういうものが一斉に始動したわけです。ですから私は、三十四ドルから二十九ドルというのは現実ですけれども、しかし、かつて二ドルを踏まえて出発したものが現在二十九ドルになっておる、そういうとらえ方をしろということを絶えず省内でいまやっておりますし、総理を中心にした関係大臣による、先週一回やりましたが、今週またさらに新しい経済政策というものを、国民に活力を与えるためにいろいろと持ち寄って知恵をしぼっておりますが、そのときにも、いまちょうどおっしゃいましたように短兵急に対応するということよりも、たとえば電力はいかにあるのが理想的なのかという考え方は、安定して安ければ安いほどいいのですが、安定して長期的にそれがエネルギー源として計算できるということだろうと思うのです。ナフサについてもそうだろうと思います。  そうすると、今回OPECの国際カルテルの力というものは壊れはしなかった。壊れはしなかったが経済の原則には太刀打ちできなかった。そしてブーメランの結果、自分たちが五ドル下げることに同意せざるを得なかった。しかし、カルテルのもとであるOPECそのものは崩壊したとは見れないですね。そうすると、これに私たちがさあ来たというので、たかだか五ドルだし、二ドルから見ればまだこれは十三倍近いわけですから、それをもとのような姿勢で一斉に、それを下げろ下げろということに仮に応じてまいりましたときに、各国もそのようなことになるかもしれません。そうして石油の需要がまたぐんと増してきた場合は、今度は逆にOPECはまた再び戦略的にカルテルを強力に売り手市場で構成できる余地がいつでも残っている。なぜならば、それは有限の資源であるからだということであります。そうすると、私たちほとんど輸入に依存する国にとって、受けるメリットも世界で一番大きいメリットを受けたと思わなければなりませんが、それであるだけにいろいろな政策分野、産業分野、しかも国民の全部の生活、こういうものを踏まえながら、いかにうまく日本がこれを利用するか。干天の慈雨としてただ吸い込まれて消えるだけでなくて、それでのどを潤して、さらにまだ干天も続くかもしれませんが、日本という国は大きく第一歩を踏み出したという感じの引き金にしたい、それが私の念願であり、私でなくても、日本経済が世界経済の縮小均衡へ進もうとしている保護貿易主義の中を突破して、そして日本が再び動き出したという形をとらないといけないと思います。  したがって、これはクールに受けとめながら、前の失敗の反省どもしながら、じっくりと腰を据えてやろうということでは事務当局と私とは何ら変わっておりません。したがって、ぶれてもおりませんが、ただ電気料金どうするんだと、そこを一つだけ質問をされますと、それはすべてのいろいろな施策の中のファクターの一つでございますと、これはまた当然そうですね。そう言うと、電気料金値上げに積極的、意欲的という活字に報道がなってしまうわけですね。その前後を全部見ますと、事務当局も言っておりますが、この際じっくりと受けとめて計画的な見通しを立てて、望ましいことはなるべく長い間安定した供給体制、価格というものが維持されるようにやっていきたいということでございまして、決してぶれているわけではございません。  しかも、今回の基礎素材産業に対する貢献は、実は対外経済の面でも競争の面でも、相手の国にも同じメリットを等しく与えておるということを考えますと、日本基礎素材産業だけが油を値下げしてもらったわけでもないし、ナフサを値下げしてもらったわけではない。等しく恩典はまたがっている。そうすると、原材料がもともとない国の基礎素材産業というものはその不利は依然として残っておる、その点も私たちはいろいろ考えていかなければならない要素の一つである、そのように考えております。
  39. 水田稔

    水田委員 電気料金、それからナフサの問題だけやっても、それだけで一時間でも足りないぐらいですから多く申し上げませんが、ただこれだけは申し上げておきたいと思います。  五〇%平均で上がったときに、そうなれば当然電力多消費の基礎素材関係というのは、国際協力をどんなにしても、企業内努力ではどうにもできない状態であったことは間違いないわけですね。ところが一方、電力料というのは、通産省は握っておられるかもしれないけれども、これは原価計算を国民の前に明らかにしていないわけですね。そうして、たとえば五ドル下がった、だから五千億ぐらいですか、円高と両方やれば一兆何千億という話が出てくる。それは設備投資に置いておくのだというような、いろいろなことが新聞報道されるわけですが、少なくとも公共料金ですからね。普通の商品ならば市場メカで上がりもすれば下がりもするわけですが、電力はそんなことはないわけですね。いま需要が減っても下がらぬです。ということですから、本来の電気料金のあり方の基本的なもの、それから上がったときにはそのままストレートに上げたわけですから、その部分は国民の前に明らかにして、何千億というのはどういう形で消費者に還元するのかあるいはどういう形で日本産業構造に、そこには雇用という問題が絡むからこういう形でやるのだということが納得できるガラス張りのものを、電気料金の決め方なり今度の原油の値下げによって起こってくることをもう少しきちっとして納得できる形にしてもらいたいのが一つ。  それからもう一つは、アルミはもはやほとんど買電はないわけですから、今度は重油なり石炭になるわけですが、これはコストに四〇%も五〇%も電力料が占めるようなものについては、たとえば重油なら重油はもう税金を、何か恩典を与えれば国際的に問題が起こる、しかしよそより以上の税金をかけた重油を使ってアルミをつくれというのであれば、これはハンディキャップを背負って競争するということはできっこないわけですから、たとえばそういうことも含めたこの特安法の一部改正ということと同時に、同じウエートで原料の問題ということを通産省としてぜひ検討を願いたいということ、これは要望で答弁は結構ですから、時間の関係でお願いだけしておきたいと思います。  それから、もともと別々にやろうと思っていたのでなにしてなかったのですが、企業城下町法について、これも私の理解が、資料が少ないのかもしれませんが、指定された地域で市長なんかの見解を聞いてみると、あるいは私の地元近くにもあるわけですが、見ておると、どうも公共事業の枠を少しもらって仕事をするというのが精いっぱいで、中小企業は、そこに働いておる人々がどんどん首を切られてどうにもならぬ、有効求人倍率は〇・二五ぐらいになったというようなことではみ出してしまって、そういう中小企業は新しい設備投資なんかをやって少しは活性化を取り戻したということはないわけですね。たとえば造船なら造船で全体が少し持ち直した、それで少し雇用が返ったということで、そういう点では機能が十分だったとは思えないわけなのですね。いわば公共事業が少しその地域でふえた、しかしそれでは雇用はふえないわけです。昔なら人を使うのですが、いまは機械がやるわけですから、幾らかの土建屋が動くということで済んじゃうのじゃないかというような感じがして仕方がないものですから、その点の評価と、今度の場合はそういう点では一体どういう点が特徴的に、まあ新分野の開拓というのが入るわけですが、これも考えてみると、いまの産地中小企業対策法というのに基づいて振興事業というのがあるわけですね。だから、そういうものがどういうぐあいになっておるのか、それとの違い、それからその産地中小企業対策法に基づく振興事業の成果、そういうものを見ながら、今度の新しい法律によって新しい分野も入れるわけですが、そこらの見通しをどういうぐあいにお考えになっておるか。  時間の関係がありますのでまとめて全部申し上げましたが、企業城下町法に関連する問題としてお答えいただきたいと思います。
  40. 神谷和男

    ○神谷政府委員 御指摘のように、企業城下町法を施行いたしました際には、第一次オイルショック後の急激な特定事業所の落ち込みによって地域がかなり疲弊いたしておりましたので、公共事業等も現在と状況が違った環境でございましたけれども、それらの市町村にできるだけ配慮をしてもらう、こういうような方式をあわせ行うと同時に、認定中小企業、主として特定事業所と関連の深い、しかも特定事業所が操業を大幅に切り詰めたことによって被害を受けた認定中小企業者に対しての緊急的な経営安定剤だ、こういうことで緊急安定資金の融資あるいは信用保険枠の拡大といったようなものを行いまして、いわゆる底割れを防ぐ。それと同時に企業誘致を行い、あるいは、先生おっしゃいましたように、いわゆる城主様と言われるような特定事業所が何とか体質改善して立ち直っていって、地域も再び繁栄を取り戻してもらいたい、こういう気持でつくった法律でございますが、御指摘のように、その後再度第二次オイルショックが参りましたので、城主様の立ち直りというのはなかなか思うようにはいかぬで、むしろ現状は逆の方向に行っておる。さらに、企業誘致といいましても安定成長下でなかなか思うようにいっていない。一定の成果は上がっておると思いますけれども、いかない。  こういう状況下でございまして、御指摘の有効求人倍率等も二、三の地域を拾ってみますと、指定になりましたとき、たとえば北海道の室蘭ですと〇・二一でございますけれども、それが五十五年、五十六年と〇・三〇、〇・四三と、こう上がってまいりますけれども、再度、五十六年末期からの全体的な不況がかなり深刻化してきたことに伴って、また〇・二四に落ちてきておる。愛媛県の新居浜でも、事情はもう御説明するまでもございませんので省略いたしますが、やはり同様な動きを示してきておる。大分の佐伯、これも二平合板が五十六年の二月に倒産いたしましたので、やはりその後持ち直しておりました求人倍率が急激に落ち込んできておる。  こういう状況で、ある程度全体の経済の状況もございましたが、少しずつ何とかなるかなという兆しも見えかけたところに第二次オイルショックの影響が強く押しかかってきておる、こういう状況でございますので、今回は緊急安定対策等も状況に応じてわれわれは用意いたしておりますが、むしろ地域そのもの、いわゆる城主様の回復にまつということではなくして、地元の中小企業そのものを振興することによって、息は長いわけでございますが、盛り立てていきたい、こういうことで新分野開拓事業等を導入して再度法律の延長をお願いしておるわけでございます。  ところが、このいわゆる振興事業は産地法等でいろいろやっておるではないか、これとどう違うのだ、ダブるところもあるじゃないか、こういう御指摘でございますが、産地法は御承知のように産地そのもの、これは中小企業が形成しておるわけでございまして、その中小企業が円高等の影響でいろいろなインパクトを受けた。自分たちの体質を改善し新しい分野を切り開くために、自分たちが主体となって自分たちの方向をどういう方向に進めていくか、それのいろいろ勉強をしたり研究をし、国はその支援をしてきた。今回の城下町法の場合には、自分たちがというよりもむしろ特定事業所がおかしくなって、その周辺の、したがって指定業種以外の関連中小企業がおかしくなった、これをどうしていくのか、こういうことでございますので、産地法とは主体が一つ違っております。それから影響の受け方、原因も違っております。しかし、新しい事業分野を開拓していくという努力においては、そう異質のものではございません。  ただ、下請関連企業等いろいろ異業種のものが集まっておる関連でございますので、企業城下町法の方が新分野開拓事業はなかなか骨が折れるかもしれませんが、それなりに指導をしていきたい、こう考えておりますので、対象、原因は違いますけれども、向かう方向は同じ、こういうことで努力をさせていきたいと思っております。
  41. 水田稔

    水田委員 これはどうなんですか、いま質問した産地中小企業対策法の振興事業の実績ですね、それがどうなのかということも質問したわけですから。
  42. 神谷和男

    ○神谷政府委員 産地法では百九十以上の産地を指定いたしまして、やはり五カ年間にわたりましていろいろな事業を行わせております。先発の産地では、これはノーベル賞もののような新しい技術ができたということはございませんけれども、それなりにやはり新しい商品を開発したり新しい産品をつくり出し、それを売り出す努力をいたしております。  したがいまして、私どもでは、五十八年度はこれらの先発組の産地の新製品等を一堂に会して、全国産地フェアというようなものを行いながら、今度は販路開拓の面でひとつ応援をしていこうか、このように考えておるわけでございまして、評価、見方はいろいろあるかと思いますけれども、私どもとしては一定の成果を上げておる、このように考えております。
  43. 水田稔

    水田委員 最後になりますが、公取、おいでいただいておりますね。  特安法については、いろいろ五年間の実績について公正取引委員会としての評価なり見解というものを新聞紙上等で私ども大分見せていただいたわけです。基礎素材が非常に大変で何とかしなければならぬ。しかし、独禁法にこれから風穴をあけるという言葉をよく使われたんで、そういうことでの論議が非常に多かったわけです。通産省との間に新しい調整のスキームというものができたわけですね。中には、これを一つの突破口にして独禁法に手をつけるというような考え方を言われる人もなきにしもあらずなんです。私ども、いまの基礎素材については何とかしなければならぬという気持ちが非常にあると同時に、独禁法というのは、いわゆる企業の自由競争という原則を貫いていく上には大変大事な法律だと思っておるわけです。そういう点で、通産省との間で調整をなされたわけですけれども、そういう今後についての心配はないのかどうか、公正取引委員会の御見解を伺いたいと思うのです。
  44. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 エネルギーコストが上がり、それから素原材料の価格が上がり、それから、先ほども御議論ございましたけれども、かつてマスプロの道を追ってまいった基礎素材産業部門で過剰な設備ができる、そして企業がかなりの数にわたって赤字を続けておる、雇用についても不安がある、こういうような事態でございますから、これに対して法的な措置をどういたすかという御相談が昨年の暮れ以来ございました。その過程で私どもは、いまもお話ございましたように、独占禁止政策というのは不況下ではなかなかつらい面もあると思いますけれども不況を切り抜けて将来に向かって日本の強い柔軟な経済の体質を持ち続けていくためには基本的に重要なものだという認識のもとに、いろいろ折衝を繰り返してきたわけでございます。  いま御審議願っております法案の中では、公取との関係で二つの点に集約できるかと思いますが、一つ設備廃棄でございます。この点につきましては、過去五年間の特安法運用上、たとえば一律の設備処理というものが多くなかったか、また格納とか休止とかいう一時的な設備の封印というようなことで終わってはいなかったか、そういう問題はございましたけれども、かつて五十二年、五十三年当時考えておられましたような原燃料事情、企業経営の不安、そういう状態が依然として続いておる、そういう認識のもとに、この過剰設備処理につきましては現在の特安法の単純延長という形で対処をいたしました。そういたしますと、公正取引委員会設備処理カルテルについて同意をするという権限がそのまま残っておりますので、独禁法との関係では問題が残らないというふうに考えたわけでございます。  それから、もう一つの大きな問題であります事業提携でございますが、事業提携につきましては、御提案申し上げておる法律の十二条の四項から九項までに、産業主管省との間に意見調整を施すようなスキームというものが書かれてございますけれども事業提携、集約化提携ということをどう認めるかということになりますと、基本的には独禁法の現行の条文の範囲、枠内で処理をしていくということでございますから、この法律はせんじ詰めますと独禁法との関係では、独禁法に穴をあけるというような議論もございますけれども、そういう結果にはなっておらないと思います。  冒頭にも申し上げましたように、これから先だんだんと世界の景気も立ち直ってくる時期も迫ってまいりました。日本経済の競争力なり活力というもの、また物価の柔軟な体制を維持しながら新しい経済構造変化に応じて日本経済の競争力を持続していく、そういうためにもますます独禁法の意味というものは大事だというふうに思っておりますので、私どもとしてはそれらの点についてさらに一層心を新たにして、皆様方の御理解もいただいて進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  45. 水田稔

    水田委員 終わります。
  46. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、長田武士君。
  47. 長田武士

    長田委員 まず最初に、通産大臣にお尋ねをいたします。  今日、産業政策と競争政策をいかに調和させていくかということが重要な課題であろうと考えております。ところで、この産業政策という言葉についてでありますけれども、これは経済の伸長に伴いまして資源、環境問題などが発生をいたしました。また、世界的な不況の克服などの必要から、OECDあたりで用いられたということであります。しかし、この言葉は本来、自由主義経済体制から言えば行政介入を意味する言葉でありまして、経済政策としては財政、金融政策と同じような位置づけではされていないということが基本でございます。したがいまして、主流派経済学者からは経済政策として認知されていないばかりか、これらの人々は、産業政策とは通産省の行う政策であるとまで言い切っておるわけであります。  そこで、通産大臣は、独禁法の五十二年の強化改正に大変御尽力をされましたが、この産業政策について、政府が産業に深くかかわり合いを持つ、介入していく、これは当然であると考えておるのか、あるいはそうでないのか、独禁法との関係について明快な御答弁をいただきたいと思います。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、今回の追加された新しい部分については、独禁法を適用除外するという観念は初めから持たなかったことであります。いままでのこれから延長します既存の法律では適用除外条項がございますが、今回新しく追加した部分は適用除外にはなっておりませんで、行政法とそれをまた規制、監督するといいましょうか、監督法といいましょうか、独立して存在する独禁法というものとはばらばらに動いてはならないし、ましてや風穴をあけるようなことがあってはならない、これは私の考え方であります。かといって勝手にやって、独禁法が勝手に動いて、それはだめだとか、それは黙っていようとか、審判にかけるとか、そういうようなぎすぎすした法律をつくっては国民が迷惑なのですね。  ですから、ここで独禁法の精神と基礎素材産業活性化への新しい道というものが、一種の共同行為とか合併とかいうものを伴いますから、独禁法の中に当然その規定がございますので、そこの範囲内でうまく産業を指導する行政法というものが機能し得る道はあるはずだ。だから、私の命を受けて通産当局は、公正取引委員会当局と何回も何回も飽くことなく、お互いの主張を持ちながらも協議をいたしました。そして私は、昨年の暮れの臨時国会で、今度つくります法案はいままでかつて存在しなかったユニークな法案になると思いますと言って、まだできもしないうちから確信を披瀝してしまっておったのですから、でき上がったものをごらんになりまして、いままでの独禁法と関係なく存在した行政法と違っておることはお認め願えると思うのですね。  それは、その実施の途中において公正取引委員会に報告をして、そして公正取引委員会の持つ独禁法上の基準なりその他諸権限がございますから、消費者不在ではないかとか、合併のしわが過大で寡占の方向に国の行政法が誘導しようとしているのではないか、ガリバー型寡占になって価格の上方硬直あるいは一方的な支配というようなものをもたらすのではないか等の途中における相談ができるという法律をつくりまして、これは今後日本における行政法、ことに産業界に対する法律が主でありますけれども、単に通産省のみならず、きちんと正面から独禁法の存在を踏まえた国家として、自由主義経済の上に当然ながら、強き者、富める者、大きい者、それにはそれだけのまた自制というもの、あるいは国家、社会から要請される自粛自戒というものが伴わなければなりません。その反面、また一見弱者であっても、それが勝手に弱者の権利というべきものを振り回して、弱者の言うことは絶えず正しいのだということも、これもまた独禁法から見ればあってはならないことである。そこらのところが大変うまく整備されておりますので、独禁法改正とかなんとかという声も一部あるようですけれども、そうではなくて、独禁法というものは大切にしたいと私は思っております。大切にしながら、独禁法とうまく組み合わされた形の行政法というものが最も望ましいことである、そのように基本的に考えております。
  49. 長田武士

    長田委員 独占禁止政策につきましては、すでに世界の三十九カ国に独占禁止法制がしかれておるわけであります。OECD加盟国のうちでも独禁法がないのはイタリア、トルコそれからアイスランド、この三カ国であります。このうちイタリアではECの競争法規の適用がありますので、事実上は独禁法を持っておると言っても決して過言ではないと思います。また、ブラジル、インド、パキスタン、メキシコといった発展途上国でさえ、すでに十八カ国が独占禁止法を制定いたしております。そのほか、独禁法を持っていない国でも、憲法の中でカルテルやトラストを禁止いたしております。それはビルマとかペルー、二十カ国も実はあるのですね。さらに、ECやEFTAなどの国は設立条約の中にいわゆる独占禁止条項を持っておるわけであります。  そこで、通産大臣と公取委員長にお尋ねをしたいのでありますけれども、公正で自由な競争を推進していくという独禁法の理念は、いまや世界を通ずる普遍的な一つの理念になっておる、私はそのように実は考えております。  さらに先日、私、物特委でこういう答弁を聞きました。アメリカでは反独占の思想を小学校のときから教えているが、わが国は協調を美徳とする国民性であって、アメリカから輸入した独禁法は日本人になじまないという趣旨の政府答弁を私は聞いております。あわせてこの二点について御答弁をいただきたいと思います。
  50. 山中貞則

    山中国務大臣 アメリカの独禁法というのは、実は非常に整っていないのであります。一八九六年に出発をしたクレートン、シャーマンという、そういう提案者の名前のついた法律で来ておりますが、いずれにしても判例の積み重ねというものの中で無言の、一種の前例というものができていくのですね。ですから、アメリカの独禁法というものは、法体制としては日本に比べて著しく劣ったものである。  そして、日本が戦後、昭和二十二年にアメリカから独占禁止法というものをつくるように言われてつくったのが原始独禁法。戦後、日本が気息えんえんと横たわっているときに、その日本を相手にして人体実験を行ったのがアメリカの占領軍の一部の人々のやったことだと私は思うのです。しかもそれが、戦後公開されたアメリカの外交占領史の中に、日本に独禁法をつくるように自分たちが占領政策でやっておるという報告が一行もなされていない。しかし、過度集中排除法等はちゃんと載っているのですね。ということは、どうも占領軍として来ていた一部のアメリカの、その当時の進歩的といいますか、そういう人たちが、日本が抵抗しないことをいいことにしてあの原始独禁法を押しつけたと私は思っております。したがって、その後二回にわたって緩める方への改正が行われたのもやむを得ないことであった。  しかしながら、第一次ショックを契機として、大企業は庶民の敵、国民の敵、また大企業の中には、千載一遇の金もうけのチャンスなどというふざけた内部文書を流した者等もおりまして、日本産業のモラルが荒廃した。それによって労働組合には、産業の中の人であるにもかかわらず、大企業に対して悪とする考え方が広まりつつあった。しかし、うちに帰ってみると、電気冷蔵庫、洗濯機、電気がまから全部大企業製品の中で、みんなが生活内容としては質の高い生活を営んでおる。そこらのところが、ともに繁栄しなければならないのにうまくいっていない風土になりつつある。ここでやはり独禁法というものはもう一遍きちんとして、そして悪いことをしたらいけませんよ、悪いことをしたら課徴金を取られますよというのが象徴的でありますが、そういうことまでやらないとあの当時の企業の混乱ぶりは収拾できなかった。私は、確かにそういう時期があったと思っております。したがって、現在の日本の独占禁止法というものは、その他の国々の法律も全部承知いたしておりますが、すぐれて優秀な、整備された体系でつくられておると私は思っております。  ただ、一部、こういう低成長時代ということに入ってまいりますと、そこらのところで、いまの独禁法の中である意味の企業の活力を自由にまたふるわしてやらなければならぬところもありますから、そこらのところが若干手直しが要るのかなということなどで反省もいたしておる点がございますが、さしあたり今回の法律では合併のシェア——これは法律ではございません、公取の内部規定でございますが、二五%を超えたらいけないというようなこと等は話し合いの中で、この業界の場合は特別であろうというようなこと等も出てこなければ構造改善そのものができないことになりますので、そういう話し合いをするという意味で非常にユニークな法律と受け取っていただきたいと思います。
  51. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いま詳細お話しいただきましたように、世界で競争政策は普遍の原理という位置づけになってきておると思います。各国に反トラスト法規がいかに普及しておるかということは、ただいまお話もございましたとおりでございますから繰り返しませんけれども、かつて、アメリカそれからドイツと違いまして、比較的カルテルを緩やかに認めて弊害規制というような勢いに走っておりましたイギリスでございますとか、そういうヨーロッパの国でも、弊害規制とは申すものの、わが国の独禁法の運用とほとんど変わらないような非常に厳格な運用という実績に次第に到達しておるというふうに思います。  なぜかと申しますと、これは通産大臣からもお話がございましたことですが、物価が下方硬直的にどんどん上昇していってしまう。それから、経済が沈滞をいたしまして技術革新の動機がつかめない。次第次第に経済が沈滞しながら物価が上がっていくいわゆるスタグフレーションというものを解決するためには、やはり自由な競争、できる限りの企業の創意工夫、そういうものを取り入れた経済のパフォーマンスがぜひ必要なのだという認識から出発しておるのだと思います。  そこで、いま世界の普遍の原理としての競争政策ということになるわけでありますが、経済の効率化と申しますか、限られた資源で極大の経済効率を上げていく、それから物価を柔軟に保って需給を反映した価格が実現することによって経済の新しい方向を見出していく、そういうことが非常に大切なことであるというふうに思いますし、自由で公正な競争を維持していくことがそういう目標に沿って経済を前進させるゆえんであるというふうにも考えておりますので、私どもは、運用その他につきまして経済の実態をよく把握してやっていくというつもりでおりますけれども、やはり基本となります反トラスト法規、日本で申せば独禁法なり景表法なり下請法なり、こういう法律の枠組みというものはしっかり持ち続けていかなければならない、こういう認識でおるわけでございます。
  52. 長田武士

    長田委員 御存じのとおり、昭和三十年代から四十年代の高度経済成長時代から第一次石油ショックにかけて、数多くのカルテルが行われたのもまた事実であります。それは多くの国民から批判を受けました。思えば、戦後、独禁法の施行とともに財閥は解体されました。株式が国民に開放されて、自由主義経済体制のもとで貿易も自由化されたわけであります。これがわが国の経済体制の二本の柱となっておるわけであります。これはとりもなおさず、反独占の思想に基づく独禁法の理念であると私は考えます。すでに独禁法施行後三十六年たっておりまして、私は、国民の中にはもう定着をしておるという判断をいたしております。  そして、昭和五十二年に、国民の要望にこたえまして独占禁止法が改正をされました。第一点は、違法なカルテルに対する課徴金制度の創設、第二番目には、価格の同調的値上げに対する報告徴収、第三番目には、独占的状態を排除するための営業の一部譲渡等であります。  いま、通産大臣がおっしゃっておりましたけれども、私は最近、低成長時代に移行したことから、これを背景といたしまして財界から独禁法を改正してほしいというような動きも大分にぎやかになっているように聞いております。また、自民党にも働きかけておる、そういうふうに私は聞いておりますけれども、この言い分は、五十二年の独禁法改正以前に戻してほしい、いまの改正の三点をやめてほしいというのがどうも本音のようであります。この点について通産大臣はどういうお考えでしょうか、重ねてお尋ねをいたします。
  53. 山中貞則

    山中国務大臣 この独禁法の解釈については、私は自民党の中の最少数派であります。援軍なし、党員全体反対の中で結局は仕方がないかということで、余り賛成の声も大きな声は出なかったような環境の中でつくったわけですが、それはそれなりに日本の独禁法というものを、アメリカを含めて勉強に来る。アメリカの方が進んでいるようにおっしゃいますけれども、たとえば独禁法によっては企業の分割はできないとわかったアメリカは、それに対して過度経済力集中排除法によって初めて大企業といいますか、もとの財閥の解体ができたのであって、独禁法ではできなかったのです。  でありますから、この独禁法の中では確かにそういう営業の一部譲渡という規定がありますが、これは商法の二百四十五条を否定しておりません。あるいは商法の方で、独禁法の命令があったときにはそれに従わなければならないという規定も設けてございません。したがって、実際には審決が行われて経営者にはその拘束は及びますが、株主総会の拘束はしてないというところにこの微妙なバランスがとってあるわけでございまして、したがって、公正取引委員会の命令によって企業が分割、一部譲渡等を一方的に強制されるということは中和してございます。しかしながら、そのことがあることによってある程度企業の方の自粛というものも、少なくとも経営者の方は責任を持たされるわけでありますから、わざと総会を流会させたりあるいは否決の方向に誘導する行為はまた独禁法によって処罰されるというようなことになっておりますから、そこらのところは運営上バランスがとれておる、私はそのように考えます。  また、先ほど指摘になったあと二つの点でありますけれども、これも課徴金は刑法の罰金でもなく、あるいは科料でもないということで、全く新しい制度でございましたが、現在は、私自身、それから以降の課徴金を納付させられる実態を見て、公取に裁量権を与えておく必要があったのだという反省点を持っております。ということは、全く機械的に製造その他の事業、製造、卸、小売について決められたパーセントでその期間の売り上げを計算して国庫に納付せしめなければならないと書いてございますから、そのことが、零細段階の企業、末端等でカルテルが発覚した場合に、企業そのものが課徴金を納めるために倒産するというような原因をつくるようなことがあってはならないし、そのおそれに近いところまで行った例もございます。そういうこともありますから、この点等は将来の運用を見ながら、課徴金で企業を破産に導くようなことは、裁量権というものがあればそれが救われていくのだ。まあ、これも公取に一方的に裁量権を与えたらどうかという議論がありますが、裁量権は何らかの形で必要ではなかろうか。  それから、同調値上げでありますが、これは確かに罰則も何もつけてございませんし、従わなかったら国会に報告をするというだけでありますけれども、これは財界の人々にとってはずいぶん気になるらしいのですね。ですから、まあシグナルを青から黄色ぐらいのところに掲示することによって、なるべく第一位の企業と五位以内で、一定のシェア以上を持っているものが三カ月以内に値上げをした場合は同調値上げとみなしますよということが置いてあるだけでございます。一部には、同じ原材料を同じ船賃で持ってきて、同じ設備で製造したものが、たとえば原材料の値上がりが行われた場合は一緒に上がるのがあたりまえではないかというごもっともな反論がございます。しかし、そこらのところは三カ月間がまんをしていただければいいわけでございますから、一斉にやるということについては、やはり消費者の、広範な国民大衆の立場から考えれば、この点はいましばらくのごしんぼうをと私自身は考えております。  この点については、いまは通産大臣でありますから私の意向が通産省に及んでおりますが、私がやめた後は自民党の中でどんな形が出てきますのか、私も自民党内のたった一人の推進者というようなことに余りなりたくもありませんので、いまのところ、私の通産大臣中はこういう見解を持っておるということにとどめたいと思うのです。
  54. 長田武士

    長田委員 高橋公取委員長、いまの三点については、五十二年以前に戻したいという財界等の動きがあるようですけれども、ひとつ簡単に御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  55. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、自由で公正な競争を守っていくということが必要でございます。  四十年代になりましてから、かつてのように技術革新と生産の拡大によって経済成長していくという単純な形がなかなかやっていけなくなりまして、どっちかといえば、売り手市場のもとでどういうふうに経済をうまく運営していったらいいか、企業経営をしていったらいいかということが、言われております不況下における独禁法の適用のむずかしさということだと思います。  ただ、それが直ちに五十二年改正をもとに戻すという結論に短絡してはいけないと私は思っておるわけであります。カルテルのやり得ということが四十九年、五十年ごろに非常にしばしば言われまして、それが物価の下方硬直、一本調子の上昇という形で消費者の利益を害したわけであります。そこで、それに対する反省から、価格の同調的値上げに対する報告の制度も導入されましたし、課徴金という行政制裁の制度も入ったわけであります。そういう現在、過去の、四十年代後半からの企業のさまざまなビヘービアをどうやって防止したらいいかという工夫から出てまいりました五十二年改正の問題点というものはそのまま保ち続けていって、それによって日本の生き生きとした経済の体質というものを持続しなければならぬというふうに私どもは考えておる次第でございます。
  56. 長田武士

    長田委員 一九八二年五月十一日でありますが、OECD閣僚会議で積極的調整政策、いわゆるPAPを閣僚宣言として発表いたしております。このPAPの骨子は、第一に、産業構造などの調整については、産業の救済ではなく、あくまでも市場メカニズムの中で活性化を図っていくものでなくてはならない。第二に、仮に急激な不況に遭って構造的に弱体となった産業を政府が援助する場合であっても、それは一時的なものであって、かつ、可能な限りスケジュールに従って漸減させなければならない、というわけであります。つまり、政府が介入する産業政策というものがこういう形で認知されたわけですね。  そこで、通産大臣に確認をしておきたいのでありますが、このPAPの精神は厳としてこの新特安法に生かされておるのかどうか。さらに、新特安法が諸外国からの批判に対しましてPAPの精神に沿って十分たえ得るものかどうか、この自信のほどをお聞かせいただきたいと思います。
  57. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろん、その精神どおりにやっておるわけであります。たとえば、企業の自由な活性というのは、国際的に言うと自由貿易主義、ガット精神の堅持ということでありましょうから、それはそれで私たちも従っておりますし、国家権力の介入というものが長期にわたってはならぬというのは、私たちは、これは時限法でございますから、延ばしたいといっても五年間のうちに成果を上げてもらうということで、後はまた自由に戻ってもらうわけでありますので、この精神はちゃんと踏まえて議論もしております。  ただ、最近アメリカ等を中心に、日本産業政策の過去にまでさかのぼって、たとえば、なぜ日本のコンピューターがこんなにすぐれた製品を生むようになったのか。その出発点は、国家助成という手厚いものがあって、その蓄積の上にあらわれたものであるので、日本産業政策についてわれわれは問題にしなければならないという声が反抗的に上がっております。  たとえば、ブロックUSTR代表が日本に来る前にも、日本産業政策を問題にするらしい、今度の基礎素材産業政策についても問題にするらしいという情報を私は得ておりました。しかし、会って話をしてもそのようなことは決して申しておりませんし、触れれば、私たちはさっきのOECDの精神を踏まえておるし、それにたえ得るものであるし、そのようなことを言うことは内政干渉である、君たちがエジプトに補助金つきで小麦を出したのはあれは何だというようなことを言うつもりで準備いたしておりましたけれども、そういう話は出ておりませんので、アメリカが日本産業政策にくちばしを入れてくるというそのことが、私はアメリカの力の衰えというものから焦った発言だと見ておりまして、傾聴に値する点があれば、私どももやはり国際協調の一翼を担うものとして謙虚さは持たなければなりませんが、この法律を中心として考えた場合、あるいは日本の現在とっている産業政策を考えた場合に、私たちは、それに対してアメリカから文句を言われる筋合いはない。  たとえば、日本がこれだけ進んできて、たった一つ欠落しているのは何かと言えば、ジェットエンジンの開発を自力でできない。これは、敗戦直前にはすでに一機ジェットエンジンができていた日本として、占領期間中にその方面の研究を禁止されたことが大きなブランクになって、致命傷を日本は背負っておると思うのです。世界の工業先進国で、自力で国産エンジンがつくれない。ましてや旅客機の分野においては、YS11はロールスロイスのエンジンをつけなければならないとか、あるいはYXについてもボーイング七〇、イタリー一五、日本一五というような、卑屈な、どんがらの一部をつくらしてもらうようなもので、それがYS11にかわる後継機だというのには、どうも胸を張って世界には通らないんじゃないか。みずから日本産業の力によってジェットエンジンというものをつくり得る国家にならないと、空の距離を時間ではかるようになったジェット時代に、私たちは先進工業国として大きなものを一つ欠いているということを国民的にも自覚してやっていかなければならぬ。  こういう政策について、それは企業に対する補助金であるとか、あるいは日本産業政策の再び——アメリカの新聞に一部出ておったようでありますが、日本は近い将来にジェットエンジンの分野でもアメリカを脅かすに至るであろうというような大変御親切な、先行き、自分たちの国の飛行機を売りまくっておるくせにそういうことを言う資格があるかどうかわかりませんが、私たちは、国民総生産から見ても、日本の近代工業力から見ても、この日本がまさかジェットエンジンのつくれない国だと思っておる国の方が少ないのではないかと思うのです。ならば、当然そういうものには、外国が何と言おうと、日本日本民族としての力によってジェットエンジンはみずからつくれる国になってあたりまえだと思うのですね。  そういう意味で、産業政策全般についての外国批判があっても、私たちは自信のある方向でやっていくのでありますから、何らたじろぐものではない、そのように考えておる次第であります。
  58. 長田武士

    長田委員 通産大臣、就任されてから言うべきことはきちっと言ってくるという基本的な考え方であるようですから、どうかひとつそれを堅持していただきたいと思います。  次に、現特安法につきまして、同法の意図する効果が達成されたかどうか。過去五年間経過を見ておりますけれども、そういう点が心配される向きが実はあります。たとえば、電炉については現行特安法を適用いたしまして過剰設備処理を行いました。この業界の生産能力は適用前に比べて逆にふえたわけですね。このような設備処理が行われたにもかかわらず、結果的には過当競争体質が解決できなかったという結果が実は出ております。どこに原因があるかということをいろいろ調べてみますと、アウトサイダーの問題とどうも深くかかわり合っておるということなんであります。そういう点で、どうしてもアウトサイダーに対する共同歩調といいますか、そういう点がこれからの対応としては話し合いが十分行われませんと、一方では設備廃棄しました、一方では増設をしたというようなことであったのでは、この特安法が生かされていかないのじゃないかという懸念がありますが、その点どうでしょうか。
  59. 山中貞則

    山中国務大臣 アウトサイダー規制の問題は、私もずいぶん考えました。やはりこの時限法の中で立ち直ってほしいと願っておる国家的な産業、その中でアウトサイダーが勝手に暴れまくって、集約、合理化、設備廃棄、そういうものを奇貨としてみずからのみが膨張することについて、それをなしにしてやっていけるだろうかということを考えたのですが、産業というものは、他動的には電力料金がどうだこうだとかいろいろ理由があります。ありますけれども、本来自分たちで自立すべきものなのです。その業界の中で一匹オオカミがおる場合に、通産大臣がそれに対して命令とかあるいは勧告とかということも、法律上はつくればつくり得ましたけれども、そういう業界ならば五年間めんどう見てあげてもだめならだめで仕方がない。産業はみずからが自立するのが基本なんだから、したがって、一方においてはアウトサイダーを抱えておってやっていけないというようなことならば、みずからが指定を辞退するというぐらいのものでなければならない。官僚統制といいますか国家統制といいますか、あるいは公権力の介入が異様に厳しいということは避けるべきなのが産業政策である、そう思っておりますので、最終的には私の決断でアウトサイダーについては触れない、通産大臣としての命令権もあるいは勧告権も持たないでもっぱら自立にまとう、そのようなことがまかり通る業界はやむを得ない、消えていってもらいましょうという割り切り方をいたしました。
  60. 長田武士

    長田委員 こうした過剰設備処理につきましては、絶えず業界は不安を抱いているようであります。  と申しますのは、新特安法のねらいどおりこの計画を具体化いたしましても、果たして国際競争力に耐えられるかどうかということが一つ問題があります。紙板業界のように、現行の特安法下で二割近い設備廃棄をやっております。一たんは立ち直ったわけでありますけれども、結局輸入品との競争に実は敗れまして、混乱状態に戻ったという例があります。したがいまして、過剰設備廃棄製品の需給改善や過当競争を避けるのには役立つわけでありますけれども、そのことが必ずしも国際競争力の強化には結びつかないという点が実はあるのです。その点については通産大臣、どうお考えですか。
  61. 山中貞則

    山中国務大臣 業種によってそういう現象が起こるだろうと思います。たとえば今回の通商摩擦改善の一環として、アメリカパインの合板を認めるということになりそうでありますが、そうなりますと、日本の合板製造業界あるいはまた現在厚さが百六十ミリ以上なければならないという強度の問題、そういう問題は一体どうなるのか、そこらについては最終的に決定をするまでに日本に与える影響、アメリカは喜ぶでしょうけれども日本もまたその産業が存在するわけでありますから、しかも成長率が速いために年輪間隔は広くて横への衝撃に弱いもの、そういうものが果たして使えるかどうか、強度試験には合格したようでありますが、そういう産業政策との面を考えてやりませんと、日本産業自体、いま構造不況を立て直そうとする業界が思わぬ横波をかぶるということがございますので、政府全体としての調整の中で慎重に配慮していきたいと考えます。
  62. 長田武士

    長田委員 そのとおりでありまして、やはり古い設備、国際競争に勝てないそういう設備廃棄して、新しい設備をつくるということもあわせてやりませんと、この点負けてしまうと思うのですね。  次に、紙パルプ業界の問題でありますけれども、特に段ボール原紙についてお尋ねをしたいと思っております。  段ボール原紙業界昭和五十三年以来、現行特安法のもとで業界ぐるみ設備廃棄をいたしました。そして、設備の新増設はしないということでやってまいったわけであります。昨年末には、新特安法を利用した第二次構造改善に取り組むという方針もすでに決定しておるようであります。ところが、この方針を決めた直後に東京のある大手メーカーは、八十億円から百億円をかけて新設備を建設するという報道がなされておるわけです。  そこで、こうした計画について通産省はどのように見ていらっしゃるのか。私は、先ほどの電炉の問題等にも関連しますけれども、一方では廃棄をする、一方ではこういうふうな形になるということになったのではちょっと穏やかじゃないなという感じがしますが、どうでしょうか。
  63. 黒田真

    ○黒田政府委員 お答え申し上げます。  段ボール原紙製造業におきましては、いままで、五十八年三月まで新増設の禁止ということを決めておりまして、その期間に大きな増設ということが行われたことはございません。  ただいま先生指摘のケースは、ある大手メーカーが計画中のものをおっしゃっておられると思います。これは新聞等にも出ておりましたし、私どもも事情の報告を受けております。今回の法律が一方で縮小と同時に他方で活性化ということをうたっておるわけでございますから、省エネルギー、合理化のための投資というものは必要なわけでございます。しかし他方、過剰状態にある設備処理しようということでまとまろうとしている状況のもとで、そういった設備投資が大規模な能力増に結びついてしまうということであればこれは問題であるということでございまして、私どもといたしましては、当然、新しい合理化投資が行われても能力増には直ちに結びつかない、スクラップというようなものが他方行われることを強く期待しておるわけでございます。
  64. 長田武士

    長田委員 業界によりましてはアルミとかフェロアロイ、これに見られますように国際競争力は完璧に失った、そうして予想以上に輸入がふえてしまっておるということです。そういう点では、産業活性化どころか逆に衰退してしまうという結果を招くわけであります。私が先ほど申し上げました電炉のように、設備処理が行われても結果としては限界企業が温存され、過当競争体質の解決につながらなかったというケースも実はあります。さらに設備の新増設を禁止あるいは抑制したために、結果として国際競争力を失ってしまった、こういうマイナス面も実はあります。これは合成繊維等であります。こうしたことが起こらないためには法律が有効に動くということ、活用される、さらに業界との協力体制も私はどうしても必要だろうと考えます。  しかし一方、この新特安法運用に当たりまして、従来の独禁法の運用の枠を超えた運用がなされるのではないかという心配も実は一面にはあります。この点については公取委員長の所感をお尋ねしたいのであります。
  65. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 主として事業集約化についてのお尋ねだというふうに思います。  独禁法のもとで、現在私どもは合併のガイドラインというようなものをいろいろ出しまして、小売業と全体と二つ出しておりますが、それによって合併なり事業提携なりその他の生産ないし販売の共同化をどういう基準で独禁法上見ていくかということを世の中にお示ししているわけでございますけれども、これは申し上げるまでもなく、今度の法案の中での事業集約化は独禁法の枠内で行われるわけでございますから、そういう意味で、制度的に適用除外という心配は全くないわけでございます。  そうなりますと、運用で二五%を超えたシェアになりますような合併を幾らでも弾力的に認めるという形で、非常に緩められてしまうのではないかということだと思いますけれども、私どもは、新法の運用に関して関係省庁と連絡を密にして、それぞれの立場、それぞれの政策目的はあるわけでございますから、それをお互いに調整し合って、その権限の中で協調して政策運営をやっていきたいというふうに思っておりますし、その際、公取の立場からは、独禁法が弱められたり支障が生ずることのないよう、従来どおり独禁法の適確運用というものに努めてまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  66. 長田武士

    長田委員 新特安法において、いわゆる業務提携あるいはグループ化、合併等の事業提携について、新たに主務大臣による事業提携計画の承認という制度が導入されておるわけであります。この事業提携計画については一応公取と通産が協議をする、公取は意見を述べることができることになっております。  仮に意見が調わない、意見がどうも合わないというようなケースの場合、通産大臣は見切り発車されるのかどうか、あるいは公取の意見に従って、これはだめだというふうに指示されるのかどうか、この点はどうなんでしょうか。
  67. 山中貞則

    山中国務大臣 その前に、そういう構造改善計画についての行政指導は、当然私どもしなければならない。相談相手と言いかえてもよろしいですが……。  たとえば石化業界において、一部伝えられたA、B、Cと言いましょうか、三井グループ、三菱グループ、一番大きいのが旭化成グループでしょうか、そういうもので話がまとまったという話が伝わりましたけれども、しかしその後、余りにも大きなシェアをトップグループが持つと残りの二社というのがやっていけない、だからすべての条件を乗り越えて残りは一社にしようというような計画が少し聞こえてきましたので、それはいけない。三社七〇%という問題も同調値上げではありますし、寡占の問題については七五%というものもありますし、二社で一〇〇%というようなことは結果的に何らかの形で弊害をもたらすということで、二社一〇〇%というのは私が認めないということで、いまそれに対応すべくいろいろと内部で相談をしておられるようでありますが、そのような視野で公取との協議を始めるわけでありますから、公取との協議が調わないようなものをまず持っていかない。私が目を通したものについて公取が絶対反対であるというような形をとるようなものは持っていかないわけですから、ないだろう。したがって、公取が断ったときあるいは独禁法違反だと言ったときにどうするかとかという問題を起こさないための法律というふうにお受け取り願いたいと思うのです。
  68. 長田武士

    長田委員 非常に話はスムーズでありまして、独占禁止法とのかかわり合いというのが私は本法案で最も大きな問題だろうと考えております。その点はどうかひとつ、風穴をあけてみたり、そういう方向はぜひしないような決意で臨んでいただきたい。  次に、石油問題について少しくお尋ねをいたします。  五ドル、原油が値下がりをいたしました。これはわが国に対しまして年間一兆五千億円ぐらいのメリットを生じます。この利益は一次的には産業界のメリットとして当然計上されますけれども、それは産業界のみならず広く国民に、経済全般の活性化に結びつくものでなくてはならないと私は考えておるわけであります。通産大臣も同じ御意見だろうと思いますけれども、この点について、現在電力とかガス料金引き下げ云々が論議の的になっておりますけれども大臣も前向きの発言をされておるようであります。私の質問では非常に慎重論でしたけれども、最近は値下げを非常に積極的に指示しておるような発言がされておるようであります。わが国経済の原動力でありますところのエネルギーの値下がりによりまして国民に還元をするということは、私は基本的には正しいだろうと思います。  と申しますのは、原油の値上がりによって電力料金も上げてまいりました。あるいは円安によって、やむを得ない事情によって上げたとか、そういう円安要素、こういう二つがあの審議会ではいろいろ審議されたわけであります。そういう点から考えますと、五ドル原油が下がった、一兆五千億の三分の一は電力に関係してくるわけですから、私は電気料金の値下げあるいはガス料金の値下げということが話題になってくるのは当然だろうと思います。そういう点で、私はこの値下がりの還元が問題であると思うのです。どう還元していくのか、この点について通産大臣考え方をひとつ基本的に明らかにしてもらいたいのです。
  69. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほどの質問にお答えいたしましたが、私は、この原点を三十四ドルから二十九ドルに下がったという見方から出発しない。二ドルから今日の二十九ドルに一応なっておる。しかも私たちは、第一次石油ショックは何とか混乱の中を切り抜け得たものの、第二次石油ショックの後はどうも切り抜け切っていなかったわけです。三十四ドルの重みに耐えながら、日本産業も国民生活も、中小企業、大企業を含めて前途に暗雲がたれ込めて、一体日本の未来はどうなるのだろう、日本の国際貿易の中で占める地位を確保できるのだろうか。総理のよく言われます経済的にも世界の孤児になりはしないか、そういうときに五ドル分だけ石油のコストが安くなったことは、これはもう日本にとって短期的に見ても長期的にも大変すばらしいことであって、自分たちの力ではお願いしても聞いてもらえるわけでなし、航空母艦を持っていって何とかするわけでもなし、武器を売るわけでもなし、そういう日本が、ただひたすら、上げられたらその値段でしか買えない、下げていただいた、ありがとうございますという感謝しかできない国としての立場を考えれば、この五ドル、値が高くなったのが戻ったということを絶好の転機としてとらえて、心の中では、OPECの人たちも大変だろうな、ブーメランという経済原則を知らずに一方的に戦略物資にして混乱せしめたことの償いというものあるいはその結果というものがこういうふうになるとは思わなかったという、困っておられるであろう立場も理解してあげなければならぬと思いますが、しかし一方、私たちは五ドル値下げをしてもらったことに対しては、これを懸命に国民の経済活性化、国民生活の向上というものにうまく活用していかなければならぬと思います。これで、第二次石油ショックから立ち直り切れなかった前途に一筋の光明を見出し、私たちは立ち直るチャンスをつかんだ、このチャンスをぼんやりとして見過ごしてはならない。  電力料金についても、私の発言が変わるようにおっしゃいますが、変わっていないのです。第一、いま日本に二十九ドルの油が来ているわけじゃないのです。あの人たちが相談をして、まあ二十九ドルで一応統一するかと言ったら、北海原油の方がまた少しそれならばと言い出す、ナイジェリアがまた言い出す、いろいろなことがありまして、これは最終的に二十九ドルで済むものか、あるいはまたどれぐらい続くものか、なかなか予測が困難だと思うのです。  ですから、日本に三カ月ぐらいで着いて、三カ月ぐらいかかって、高いいま持っております油と入れかえて、価格をならしながらおろしていくことになるでしょうが、その五ドルの天の恵みは、日本産業界にも国民生活にも、きわめてじわっと均てんされておりていって、そして国民生活を土台にした国家経済というものが、ぐっと日本の力として前進する一つの引き金になる。そのときに、どういう配慮をどういうところにするかという問題の中で、直ちに電力というのをどうするかという話がありますが、これもやはり基本的にはおっしゃるとおり、下がった分だけ下げればいいじゃないかと言うのは簡単ですが、例にとられましたように、円高になったから下げるといって、一軒に三百円返して一年半後には五〇%もまた値上げをしたという、そういうことは長期展望がないいまはまして慎まなければならない。しかし、配慮の要素の一つに電気料金が入らないというのはおかしいので、それは当然入ると思うのです。  私の発言がいろいろ変わるように受け取られるのは、恐らく電力業界人たちが、社長さんたちが皆写真入りで、五ドルぐらい下がったって電気料金は下げないということを勝手に発言されるものですから、私としては予算委員会で大変苦々しく思っておるということを言いました。そうしたら、それ以来静かなようですが、いずれにしても公共料金として定める、それだけの公共性を少なくとも九電力、それぞれ地域において持っているわけです。しかも、地域経済の各種会合の責任者、指導者は電力会社の社長がなっておるという事実を見ても、それだけの地域への公共性というものはあるわけですから、上げてくれというときだけ持ってきてわいわい言うのじゃなくて、下げなければならない客観情勢がきちんとある場合にはそれに対して電力会社はどう対応すべきかという、そういう検討を良心的になさるべきである。それが、下げないぞということを勝手に言うというなら、これからは上げるということを持ってきても、私たちは、勝手になさい、うちは受け付けませんという態度でいきますから、したがって結論は、国民全体が、国民経済がこの転機を逃さずに生き生きとして動き出す第一歩にしたいということに尽きます。すべての政策をにらんでやりたいと思うのです。
  70. 長田武士

    長田委員 通産大臣意見について、私は非常に賛成なのです。実際問題、電力の値下げの問題については、円レートは二百四十二円、それからバレル当たり三十三ドル強だと思いましたね。そういうふうに見てますから、余り高くなったのが下がったんだという感覚じゃなくて、公共料金ですから、原価主義ですから、そういう基礎計算の上においてもう完璧壁に安くしなければいけないという意味で私は申し上げたのです。そういう意味では、還元の仕方は国民の納得できるような、しかもわかりやすい、そういう還元の方法がやはり日本経済にとってもプラスだなという感じが私はいたしております。  次に、三月十八日の日本経済新聞の一面に、OECDが原油の値下げ効果について試算を行っております。この対応次第では逆効果にもなりますよというようなことも警告をいたしております。  原油値下げの対応といたしましては、最近私は物特でもやったのですけれども石油税の引き上げ問題等が論議されておる。OECDあたりの試算によりますと、最もまずい対応の仕方である、こういうふうに第七番目にランクされておるわけであります。せっかく原油の値下がりにもかかわらず、マイナス面に経済が動くというようなことになりますと、これは重大問題であろうと私は思います。  そこで通産大臣にお尋ねするのでありますけれども、現在出ております石油税、これは従価税ですから、価格が下がると税金が下がってしまうこれを何とか補てんしようというようなことで税金を上げようということですね。これに対して、私は、せっかくこれだけ経済にプラス面が出てきたのにこういうことをやってしまうと、かえってマイナス面の方が出てきてしまうという感じを強く抱くのですけれども、通産大臣、どうでしょうか。
  71. 山中貞則

    山中国務大臣 ことしの予算は、当該年度以前の大蔵省と三・五%の従価税率をつくったときの申し合わせに基づいて組んでありますから、これは何ら年度途中の心配は要らないと思いますが、来年からどうするかという問題はやはり一つ考えなければなりません。  ということは、代替エネルギーその他への国家的な意欲をこれで緩めてはならぬという一方のまた守らなければならない鉄則があると私は思っておりますから、そうすると、特別会計の財源ですから、これについてどうするかは今後大蔵省と話し合いをいたしますが、しかし四ドル下がったからそのうちの半分は税金で取ってしまえという乱暴な構想等がもしあるとすれば、石油値下がりを機としてそれを税金で取る、まことしやかな話等が伝わっておりますが、これには私は断固反対し、認めさせないという決意でおります。
  72. 長田武士

    長田委員 それから、これからの原油価格の見通しですけれども日本経済新聞によりますと、アメリカのメジャーオイルの年金積み立て運用担当者や大手商業銀行の資金運用の責任者たち言葉といたしまして、石油は不需要期の夏ごろには二十五ドルまで値下がりするだろう、そうすれば一番利益を受けるのは日本であり、円は百八十円まで高くなるだろう、われわれは資産を日本に移して運用したい、こういうことを言っているらしいのですね。  そういう点で、石油価格の見通しとしては非常に不確定要素がたくさんございますけれども、下がる見通しを立てていらっしゃいますか、あるいは逆に上がるんじゃないかなという懸念も抱かれておりますか、その点お尋ねをいたします。
  73. 山中貞則

    山中国務大臣 現時点においては、先ほどもちょっと申しましたように、現在の合意された価格構成のもとでは非常に不満を持っておる国もあります。たとえばイランは戦争をやっておりますから、それの戦争保険分を油代で引いてあげないと買いに来ないとか、あるいはサウジアラビアは割り当て量を最終的にのまなかったということは、自分たちの調節者としての立場を保持しようとしておる。ここらも、内部の方もこのままでうまく機能するんだろうかという心配に、先ほど申しました北海原油とナイジェリアとの関係というものも絡まっておりますから、イギリスもすでにそのような言動をし始めておりますし、そうなるとまたOPECはそのままではやっていけないわけでありますから、私どもの内部では一応五ドルないし六ドルの値下げの研究をしておりますが、最終的に二十五ドルになった場合、ここら近くへ参りますと、石炭の代替エネルギーとのコストの問題とかなんとか、いろいろと事実上の採算面に問題が起こってくる線に近くなりますから——アメリカはどういうわけか、シュルツ国務長官が二十ドルになった場合のことを言っております。これは、私たち日本は情報量が足りないのかもしれません。アメリカはいろいろCIAその他の情報がありますからそこまで見通して言っているものか、あるいはやはり二ドルだったものがせいぜい十倍の二十ドルぐらいのところという簡単なことで言っているのかよくわかりませんが、私どもの国の場合は、代替エネルギーとの関連において二十五ドルラインというものを研究しておかなければなるまい、そのように思っておりますが、果たしてそうなりますかどうか。  しばらくは、たてまえはアラビアン・ライトで二十九ドルを維持していこうとする努力が続くであろう。ただ、いつまで続くか、そこらのところが、産油国の累積債務を持つ国をどうするかという議論まで、OFECが非加盟国のものをどうするか、助け合っていくようなところまでの新しいやり方でも考えていけば違った形のものがまた世界に構成されるでしょうが、しかし、なかなかそこまではいかないだろう。したがって、目下のところ、二十九ドルで議論をしておくことの方が現実的であろうと思っております。
  74. 長田武士

    長田委員 それでは、最後になりましたけれども、先日参考人をお招きしましていろいろ新特安法について意見を聴取いたしました。その中で、特に電力料金の素材産業に対する低廉な政策料金をひとつ設定してほしい、こういう要望がたくさん出ました。私は、電気料金は消費者におしなべて不公平にあってはならないのではないかという意見も申し上げました。  そこで、現在の電気事業法の枠内でその政策料金の設定ができるのかどうか、あるいは電気事業法を変えてまでそういう政策を遂行する考えがあるかどうか、この点を最後にお尋ねしまして、終わりにいたします。
  75. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう考えはございません。
  76. 長田武士

    長田委員 終わります。
  77. 登坂重次郎

    登坂委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ────◇─────     午後三時三十七分開議
  78. 登坂重次郎

    登坂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横手文雄君。
  79. 横手文雄

    ○横手委員 私は、今回提案されましたいわゆる新特安法に対して、私自身の若干の意見も交えながら、大臣並びに政府各員に御質問申し上げます。  御案内のとおり、わが国基礎素材産業は大変な不況の中にあり、労使の懸命な努力にもかかわらず、その深刻度は深まるばかりであります。このような実態にかんがみ、わが民社党も早くから特定製造業安定臨時措置法を内外に示し、これの成立を訴えてきたところであります。  また、わが国素材産業及び関連する産業労働組合を結集して組織されております日本化学エネルギー労働組合協議会、さらには全民労協の前身母体であります政策推進労組会議もまたその政策の中心として同様の要求を掲げ、五十六年十月から一貫して主張してこられたのであります。  このたび政府が現行特安法の本年六月の期限切れを機に、現行法は設備廃棄重点としているのに、さらに産業活性化目的として事業提携の条文を加え新特安法を提案されたことについて評価しながら、以下御質問を申し上げます。  新特安法の政府案作成に当たっては、産構審の意見具申を受けておられます。その内容は、民間の厳しい自助努力を前提として、具体的には、共同行為を認めて過剰設備処理し、事業集約化を促進し、また金融、税制、予算上の支援措置による活性化のための環境整備を図る法的措置を講じ、これらについて独禁法上の問題が生じたときは公正取引委員会調整を図るスキームを確立するということであります。  ところが、一方では、この法案に対して疑問も投げかけられているのは御承知のとおりであります。  私なりに大別いたしますならば、次の三つに集約されるかと思います。しかし、その疑問も、現在の基礎素材産業が深刻な窮状にあり、容易ならざるものである。したがって、速やかに適切な措置を講じなければならぬという前提に立ってのいろいろの意見について申し上げてみたいと思います。  まず一つは、政府の介入は必要最小限にとどめるべきである。今日までこの法律が実施されてきた、その前提は産構審の意見を聞きながらきた。しかし、今日過剰を招いてしまった。その生産量、あり方についても政府の指導を受けてきた。しかし、今日ではこうなってしまった。その政府の指導に対する反省があらわれていない、これが一つ。  さらにまた、産構審の提言は傾聴に値するところが少なくないけれども、民間の厳しい自助努力という前提が実際に政策の中に明らかでなく、全体として産業保護政策的色彩が濃厚に過ぎはしないか、こういう疑問が投げかけられておるわけでございますが、これに対する大臣の御所見をお伺いをいたします。
  80. 山中貞則

    山中国務大臣 たしか二つ……。(横手委員三つになります」と呼ぶ)どこのところですか。
  81. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、続けて申し上げます。  二つ目は、窮状にあるからといって、一挙にカルテルやあるいは事業集約化を独占禁止法の適用除外としたり、あるいは緩和措置を講じ、積極的推進によって事態を解決しようとするのは問題が残る。というのは、たとえこれらの措置によって産業が首尾よく窮地を脱したとしても、一たびカルテル体質、独占体制が定着すれば、企業は安易に供給制限、価格の引き上げを繰り返す可能性があるから、提言が期待するような効率化や活性化は起こらず、逆に独占への弊害が表面化するかもしれない、この二点についてまず大臣の御所見をお伺いいたします。
  82. 山中貞則

    山中国務大臣 政府介入については、原則としては政府の直接的な権力的な介入はなるべく慎むということでございますが、しかし、そのことを配慮し過ぎたために過去の既存の計画のもとの進行の中で、幾分政府の当初の法律目標達成にその対応で遺憾な点があったのではないかという反省はないのかという点と両方あったと思います。  反省の点は、いずれ実績問題その他で局長に答弁させますが、今回法律をつくるに当たりましては、やはり政府の公権力の介入というのはなるべくやめる。たとえばアウトサイダーに対する大臣の命令とか勧告とか、そういうものもいろいろ議論がありましたけれども、要するにそういうことはやめて、とにかく民間が自分たちで立ち上がるからこういう点を御協力願えますか、あるいは民間の立ち上がりに対して国がどの程度手をつけてくれるのかということにこたえる形にしようということにしたわけでございます。  それから、民間の自助努力の点が法律上明確でないということでありますが、いま言ったようなことも踏まえて民間がみずから作成して上げてくる計画というものでなければ、役所の方があるいはお上の方が、こういうことでやれとかなんとかということはやってはいけないということで、法律の明定という意味ではあるいはそうかもしれませんが、しかし民間の厳しい自助努力、あるいはむしろ民間の甘え構造というものがあるならば、甘え構造部分までは政府は手をつけてやらないということを厳しい前提にいたしておりますので、その方の法律の表現の仕方というものはあるいはちょっと足りないというお気持ちを持たれたのかもしれません。  それから、独禁法の問題は大変ユニークな御質問で、いまこうして独禁法と調整をして仮に法律が通って、実際上民間産業が活力を求めて自助努力を始めた、そして何とか目標を達成した、そして期限が切れた、さて、その後企業に残るものは安易なカルテル体質というもので、かえってそういうことが残ってしまって、そのために企業が活力を逆に失っていくのではないかという、企業自身が非常に陥りやすい心理状態ということをつかれたのだろうと思いますが、確かにそういう心配が残るおそれがあります。しかし、この五カ年間の期限が切れましたらこの法律は消えますから、それと産業の実体は、カルテルはカルテルなりにあるいは不公正な競争は不公正な競争なりに、もろに独占禁止法の網をかぶるわけでありますから、そのような構造は決して現実には許されない環境の中を生きていかなければならない。そのことは大変いい御質問で、事前にその意味は参加する業種もかみしめておかなければならぬことだと思います。
  83. 横手文雄

    ○横手委員 今日までの指導の反省についてはいかがですか。
  84. 小長啓一

    小長政府委員 過去五年間の特安法運用状況でございますけれども先ほど大臣の答弁にもございましたように、私どもは、政府の介入というのは極力避ける方向で努力してきたつもりでございます。したがいまして、民間の自助努力、そして自主的な責任というものを念頭に置きながら行政指導にも相努めてきたつもりでございまして、そういう意味では、その精神はこの新しい法律にもそのまま引き継いでまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  85. 横手文雄

    ○横手委員 私が反省点と申し上げたのは、先ほど来この議論を聞いておりますと、通産省、指導する、指導するという言葉はよく出てくるわけであります。しかし、産業におる人たちはプロパーであります。その人たちが一番詳しいことは当然のことであります。そこに余り指導する、あるいはたとえばアルミの地金の問題にしても、産構審でこの程度の国内における生産量というものが出る、そして企業はそれを目安にする、しかし実際はそれは全然架空の数字であった、結果としてそれは設備の過剰を招いた、ここに行政指導の誤りがありませんでしたか、こういうことをお聞きをいたしておるわけであります。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 その点は、私も大臣就任前に税制調査会長をしていたものですから、この法律関係していろいろと相談を受けた。そのときのアルミに例をとれば、七十万トンという話だったんですね。さてなあ、そんなこと本当に明言して大丈夫かと言うて……。まあしかし、ほっておくとこれはアメリカ、カナダの豊富な安い水力電気料金によるものにとても競争できない。ダンピング提訴をやろうと思ったけれども、何らダンピングの行為がない。そして、日本のものよりかはるかに価格面ですぐれているという状態をほっておくと、日本からアルミ産業がなくなる、これは何とか救ってくださいという税制上の対象の陳情を受けました。  いま自分が当事者になったわけですが、現在見ると、もう三十万トンというようなところになっております。これは、それに対して産業が努力を怠ったわけでもなく、あるいは行政が介入しようにも、実質的に電力料金の差が歴然として、しかもダンピングでない地金が入り込んできてそれがどんどんシェアを広げていくという状態は、とても行政介入どころの問題ではなかっただろうと思う。この法律によってこれからまた計画もつくりますでしょうが、少なくとも日本が最低限は、国家安全保障上からいっても、国民の生活のために必要なアルミ資材からいっても、一定量を持っていないと、日本が完全に生産ゼロの国になった場合には、水力料金の安い電気だとかなんとかということは言えやしないですよね。もう全部売り手市場になったら、かつての油のごとく一方的な値段で押しつけてくるということになるわけでありますから、ここで最終的な安全保障の歯どめを政府の力で、国会の皆様に御賛成願った法律の名において支えようということしかできないのじゃないかと思っております。
  87. 横手文雄

    ○横手委員 私は、この法律を是とする前提に立ち、そして、このような批判があります、これに対して大臣いかがでございますかということを申し上げておるわけでございまして、こういった批判があるという事実を、しかもおっしゃるように、七十万トンということを明らかにしてそれに向かって業界が取り組んだら実際は三十万トンであった、結果として設備過剰であった、いろいろな理屈はあるのでございましょうけれども、かつての政府の指導に誤りがあったと指摘されてもやむを得ない点があったのではございますまいか、今回この法律をつくるに当たって、そのような批判が出てきておりますということを申し上げているのであります。今後ぜひ生かしていただきたいと思います。  三つ目は、対外の通商外交において、相手方にあらぬ口実を与えることになりはしないかということであります。  私は昨年、衆議院の日米交流団の一員としてアメリカに行ってまいりました。ちょうど日米の貿易摩擦の最中でございました。そして、かの国の政治家あるいは政府関係者ともお会いをしてまいりました。私は英語が全然わかりませんので、すべて通訳さんに頼る以外にないのでございますけれども、ただわかったのは、かの人たちが言われる言葉の中で、行政指導、不況カルテル、これは私でも通訳さんに頼らずにわかるわけであります。そのくらいかの国では、このわが国の産業政策というものに対して誤解があるという気がして帰ってまいりました。  今回、このような法律国会に提案をされるということになれば、またかの国では、それ見たことか、こういったようなあらぬ口実を与えることになりはしないだろうか。この際、そういったものでは断じてないということを、法律の制定に当たって、わが国の責任者から明らかにしておいた方がいいのではないかというぐあいに感じましたので、大臣の御所見をお伺いをするところであります。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 私どもは、官民挙げて血みどろになって、世界のGNPの一割を占める国家の地位を占めてきたわけでありますが、その道程において、日本の場合はいわゆる行政指導、そしてその裏には、国が税制、金融あるいは財政、そういうようなものを多角的に駆使しながら、日本に近代産業発展させてきた過去の実績というものまでさかのぼって、日本の今日の先端産業のすさまじい、アメリカを凌駕しようとしているようなところまで来ているものはいずれも、たとえばコンピューター分野とかそういうようなもので、直接、間接の手厚い保護を受けてとうとうここまで来てしまった。だから、その点は、今後日本産業政策についてわれわれは厳しい批判をしなければならぬということで、いろいろと品目を挙げて言っている人がおります。  たとえばUSTRの代表のブロックさんが日本に参られましたが、そのときに、あの人の背中には主として議会の方から、このいま出しております法案の名前もちらつかせながら——ほっておけば、アメリカのアルミ産業日本を支配できるわけですからね。それを今度は逆に支えようというわけですから、そういうものは産業政策としてアメリカは反対だということを言えという声を受けて、日本に来られたような空気だったと思うのです。しかし、私と会いましたときに、二回にわたって、正確には三回ですが、一つは四極の会議でありましたけれども、それらの席を通じて、日本産業政策そのもの、あるいは今回われわれが国会に出そうと準備している基礎素材産業あるいは企業城下町法という名前で呼ばれている法律、そういうものについて産業政策の批判という形でもあるいはずばりそのものでも、何ら私に対しての表現はございませんでした。もしそういうことを言われたならば、まず第一は内政干渉であること、第二はアメリカもやったらよろしいじゃないか、事実ヨーロッパと穀物戦争をやって、エジプトに補助金つきの小麦を出したアメリカの実態は何だというようなことで準備しておったのですが、どちらもジャブを出さずじまいで別れました。私たちは、やはり日本という国の実態をもう少し外国に知らせる必要がある。  ECに行ってもそう感じました。日本という国は小さい島国だ。そこに一億一千七百万が住んでいる。資源がない。海外から武力の威嚇もしくは武力の行使によって資源を持ってくることもできない国。平和裏にお願いをして、相談をして売っていただいた物を持ってきて、そして何と言われようと、日本人の勤勉な努力の上で高い付加価値をつけて諸外国に買ってもらうしか生きる道はない国なんです。したがって、自転車操業と同じで、その道を日本が輸入にしろ輸出にしろやめさせられるということになったら、日本は倒産する。日本という国家、自転車は倒れる。そういうことをECのトルン委員長とかそういう人たちに話をしまして、週休二日の定着がなぜ末端までいかないのか、盆と正月に休めればありがたい方だという零細中小企業の実態まで話をしました。ただし、その日本の生きざまが、生きていくたった一つの道が、アメリカに千二百万、ヨーロッパに千二百万という失業者を、直接短絡的に日本が輸出したからとは言わないが、その結果そういう苦しみを与えているとするならば、それには謙虚に耳を傾けて、日本も皆さんと一緒に地球上の自由主義社会で生きていきたい、そのことはよくわかってほしいというような話をいたしますと、日本がみずからを説明するのにそのようにはっきりとしたことをわれわれは初めて聞いた。実はそういう説明の仕方をしてくれる人がいなかったということを言っておりました。  でありますから、今後まだいろいろな問題が起こるかもしれませんが、私たちも相手方に対する配慮をしながら、日本という国の行かなければならない道というものをきちんと説明をして、そして要請があったら、できないことはできません、あるいはこれはやらざるを得ないのですというようなことで、はっきりとしていかないと、これから先日本が文字どおり経済的に世界の孤児になってしまうということは国民の未来が閉ざされることになりますから、私たちは、私たちの次の世代にりっぱな日本を渡したい、そう思って国会議員をやっておるわけでありますから、その意味で、日本が胸を張って世界を歩ける国になるように、産業政策でもしかと踏まえてやりたいと考えております。
  89. 横手文雄

    ○横手委員 私は、貿易立国日本にとって、そのことは大変大事なことだというぐあいに考えておりますし、直接大臣にお話がなかったにしても、多少背景は違いますけれども、長繊維の薄物の織物に対するアメリカの二一〇%というようなダンピング率、こういうことを平気で言うと言ったらちょっと語弊があるかもわかりませんけれども、そういった関係にあるという事実があるわけでございますから、今後それらの通商外交に対する政府の毅然たる態度を期待を申し上げる次第であります。  次に、法案の中身について若干御質問を申し上げます。  いただいておりますこの法律案新旧対照表、これでページ数を申し上げますから、ひとつよろしくお願いいたします。  この法律には、先ほども申し上げましたように、二つの目的を持たせてあります。すなわち、一つ過剰設備廃棄であり、いま一つ事業集約化、つまり事業提携であると理解をしております。そのことは、二ページ、第一条に明らかにされております。「計画的な設備処理及び生産若しくは」云々、こういうことで書かれておるのであります。そして、十三ページ、第三条の第二項第五号、ここにもまた「第二号の設備処理又は前号イの事業提携」云々、こう書いてある。ところが、四ページ、第二条の第一項八号、ここを見ますと「過剰となるとともにその業種に属する事業者の相当部分の生産」云々、こういうぐあいに書いてあるわけであります。  この法律は、一つ設備廃棄、そして、それと同等の立場で事業提携、こういう性格を持たせながら、第二条一項の八号では設備過剰を上に置いて、そして、それとともに「その業種に属する」ということで、事業提携その他については設備過剰が上で、そして、それに事業の提携等がついてくる、こういうような印象を受けるわけでございますが、この整合性についてはいかがでございますか。
  90. 小長啓一

    小長政府委員 ただいま先生指摘の四ページの方の、第二条第一項第八号の中にございます「生産能力が著しく過剰となるとともに」云々ということで、その後に「その業種に属する事業者の相当部分」云々というのが出ておりますが、これは過剰設備と、それから「生産若しくは経営の規模又は生産の方式」の不適当が併存していることが業種指定の要件であるということを示しておるものでございまして、事業提携が設備処理に従属をするということを意味しているものではないわけでございます。
  91. 横手文雄

    ○横手委員 第一条と第三条の項とでは同じような表現に対して、一つは「又は」ということであるし、もう一つは「とともに」、こういう従属的な表現がされておりますが、これは何か意味があるのですか。
  92. 小長啓一

    小長政府委員 四ページの二条一項八号の方の「とともに」と書いてございますのは、政令指定の要件を並列したという意味で「とともに」という用語を使っておるわけでございます。
  93. 横手文雄

    ○横手委員 もう一遍同じ質問をいたしますけれども、二ページの一条の「計画的な設備処理及び」ということできちっと分けてもう一本の柱を立てる、あるいは十三ページ、三条の第二項五号でもそのような表現に、「処理又は前号イの」こういう形になっておりますが、これは意味が違うのでございますかという質問なんですよ。
  94. 小長啓一

    小長政府委員 用語の書き方は違っておりますが、中身は同じでございます。
  95. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、そういうことで確認をいたしました。  それでは五ページ、第二条第一項八号、この三行目に括弧書きが新たに入っているのであります。つまり「その業種に属する事業者の製造する物品の生産費の相当部分」云々、こういうことが新しく創設をされた。この理由は特に何かありますか。と同時に、これは特定の業種を頭の中に想定をしながらこの括弧書きを新設されたのかどうか、この辺についてもお伺いいたします。
  96. 小長啓一

    小長政府委員 その括弧の中の関係のところでございますが、原材料・エネルギーコストの要件ということになるわけでございますが、今回の対策は、先生御承知のとおり、二度にわたる石油危機という、企業の自己責任の範囲を超える経済事情の変化を契機といたしました原材料・エネルギーコストの著しい上昇によりまして構造的困難に陥っている業種につきまして法的措置を講ずるということでございまして、その産業分野を限定的にするということで意味があるわけでございます。したがいまして、単なる経営判断の問題、あるいは循環的要因によりまして経営が不安定になっているような産業につきましては、まさに民間の自助努力と他の一般的な産業政策で対応をしていくということでございまして、本法の対象にはならないということでございます。  また、別の言葉で申しますと、この括弧の中の要件は、いわば基礎素材産業の定義とも言うべきものではないかと考えるわけでございまして、産業連関表とか企業会計などから見まして、買い入れ部品や附属部品を除いたいわゆる原材料とエネルギーのコストが全体の相当部分、すなわちおおむねは五〇%以上ということでございますが、を占ということを意味しておるわけでございまして、この結果といたしまして、原材料・エネルギーコストがこれ以下である加工組み立て産業というようなものは対象から外れるということになるわけでございます。
  97. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、新たに括弧書きの中に組み入れられた、創設をされたこの条文、これはこういった原材料及びエネルギーが少なくとも五〇%以上の業種に限るということを前提にしてこの法律運用します、こういうことでございますね。——その点を確認いたします。  そのほか、この第二条ではそれぞれ業種が指定をされておるわけでございまして、八号で、これから政令の中で定める、しかもその前提は、いま括弧書きの中に書いてあるような業種である、こういう前提があるわけですが、いまのところ考えておられる業種なり、あるいはこの法律ができ上がったら私のところも乗せてもらいたいというような業界からの要望、そういった動き、あるいは通産省が考えておられる業種はどんなものがありますか。
  98. 小長啓一

    小長政府委員 通産省といたしまして、現在、この政令指定の対象の業種となる具体的なものはまだ頭に置いておりません。これから一年半の政令指定の期間があるわけでございますから、その間に業界の方からの必要性が高まり、かつ、この法律の対象にしてもらいたいというその業界の熟度が高まったものが出てまいりました場合に対象業種として指定していくということでございまして、目下のところ頭には具体的な業種は置いておりません。
  99. 横手文雄

    ○横手委員 一部業界からの要望として申し上げておきますけれども、この八号で政令指定される場合に、原料が同じであり製品のそれぞれの名前は違う、あるいは用途も多少は違うけれどもほとんど同じような用途で使われているようなもの、これは品目別に規制をするのではなくして、総括的にやってもらえないだろうか。たとえば高圧ポリエチレンあるいは中低圧ポリエチレンあるいはポリプロピレン、この種のものは原料も同じであり、製品もほとんど同じような用途に使われている。これらの問題をそれぞれ分けずに、関連性があるわけですから一括してその対象にしていただきたいという要望がございますが、いかがでございますか。
  100. 小長啓一

    小長政府委員 いま先生の御質問から出ました御要望の点につきましては、しかと頭の中に置いておきますけれども、具体的にはそれぞれの業界からの申し出の実態を見た上で私どもは判断をしてまいりたいと思っております。
  101. 横手文雄

    ○横手委員 それでは、そのような業界からの要請が出ればそれに応じてまいります、応じる方向で検討するというのでしょうかね、役所の答弁はむずかしいのですけれども。おおむね常識的に言って、こういった申請が出ればわかりましたというのが前提でございます、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  102. 小長啓一

    小長政府委員 いま先生がおっしゃったところまでも私ども答えられないのでございますけれども、本法の趣旨に照らしまして、設備の縮小とそれから活性化設備投資技術開発事業集約化等を通じます活性化というものを車の両輪として進めていくわけでございますから、そういう方向に沿った立場から見た場合に、どういう業種対応が一番いいのかということをよくわれわれも見きわめた上で具体的に対応してまいりたいというふうに考えます。
  103. 横手文雄

    ○横手委員 先ほども申し上げましたように、通産省から見られて、いろいろ指導する、あるいはそれが法にかなっておるかどうか、こういうことも大変大事だと思いますけれども、実際に事業に携わっておられる人たちはプロパーでございますので、そういった人たち意見を十分に聞いていく、それがまた民間の自助努力を厳しく求めるということにもつながると思いますので、要望をさせていただきます。  次に、八ページでございますが、第二条第六項でございます。現行法ではこれが発足をする期間が一年、今回は一年半と定められました。特に理由がございますか。
  104. 小長啓一

    小長政府委員 これは、現行特安法運用状況から見まして、一年の政令指定期間であったために、具体的にその一年の期間がたってから政令指定の対象になりたいということを言ってきた業種もあったという先例もあったわけでございますし、それからやはり今度の場合には設備処理の問題だけではなくて、事業提携も含めて業界があらかじめ話し合いをして一つのコンセンサスをまとめ上げるわけでございますから、前よりも時間のかかる点もあるのではないかという点も考慮いたしまして、一年半というのを具体的な結論として出したわけでございます。
  105. 横手文雄

    ○横手委員 私は、逆な面で一つ心配がございます。というのは、いままでは設備廃棄が主目的でございました。ところが今度は、事業提携その他の活性化がもう一つつけ加えられたのであります。  私は福井県でございます。繊維産業、よく設備廃棄をいたします。設備廃棄計画から大体三年くらいで終わります。ですから、設備廃棄だけだったら残された三年半で何とかなる。それ以前にヒヤリング等が行われるわけでございますから何とかなると思うのですが、さてそれを行って、さらに共版会社をつくるとかあるいは事業提携をするとか、場合によっては企業の合併を行うとかというようなことが今度の新しい法律の中にございますが、残された三年半でこれはとても終わるものじゃないという気がいたしますが、どうですか。
  106. 小長啓一

    小長政府委員 構造改善のために具体的な必要期間につきましては業種によってまちまちだと思うわけでございますけれども特安法の経験や当省における調べから総合して判断をいたしますと、最小限三年というのは必要なんではないかということでございまして、十分な効果の見きわめやあるいはさまざまな配慮をしながら漸進的に行わなければいけないというようなものについては、五年必要な場合もあるのではないかというように考えておるわけでございます。現実にその特安法における設備処理の所要期間というのは、準備期間等も含めまして二年程度というのが実績でございました。  ところで、今回の法改正に当たりまして、先ほど先生からの御指摘もございましたように、政令の制定期間を現行特安法の一年から一年半ということにしたわけでございます。したがいまして、新法の期間は五年であることから逆算いたしますと、この指定期間ぎりぎりに指定される業種構造改善期間というのは三年半ということになるわけでございますけれども、新法におきましては、対策の緊急性が高くて十分な時間をかけて構造改善を行うべきものにつきましては法定をしておるわけでございます。法定七業種というのは、これは向こう五年間、構造改善の期間を持っておるわけでございますから、その面では時間的に十分対応できるのではないかということでございますし、それから先ほどの政令指定業種で、一年半の間に指定をされて後というものにつきましては、最小限三年あれば構造改善はあらかた成果が上がるのではないかというふうに考えておりまして、したがって、期間といたしましては五年というのが適当ではないかというふうに判断をしておるわけでございます。
  107. 横手文雄

    ○横手委員 こういう法律案を出されたわけでありますので、私はそういう答弁以外にないと思うのです。  ただ、実際に、たとえば福井県で過剰織機の設備廃棄をいたします。これは一年ほど前からかかってヒヤリングその他準備、仮受け付けをやるわけでございますが、実際に破砕にかかってからでも三年かかるというのが今日までの大体の実態だったというぐあいに思うわけであります。そうしますと、今度の場合にはそれだけではなくして、それに加えて活性化のために、いままで他人であった人たちと一緒になりましよう、あるいは共販会社をつくっていきましよう。その企業にしてみれば、大げさに言えば、一遍一か八かの勝負をやってみる、生きるか死ぬかだ、こういうことにもつながってくるわけでございますので、この三年半というのは私は大変危ないような気がいたします。これからのことですから、これ以上の議論はやめておきますが、それらの点について、政令指定で各業界から出てきたときに、これの対応というもの、それを適確にやるという通産の処理は大変重要な問題になってくる。やりかけてついに日切れになってしまった、中途半端になってしまった、このくらいなら最初からやらなければよかった、こういうことにならないように十分にその見通しをつけていただきたいと思う次第でございます。  次に、独禁法との関連について御質問を申し上げます。  現行法第五条に係る設備廃棄については第十一条において、第十二条の一項から三項を前提として独禁法の適用除外となっておりますが、新法において新しく取り入れられた事業提携の実施に当たっては独禁法の適用除外になっておりません。公正取引委員会事業提携について独禁法適用除外としなかった理由と、通産省との両者で調整できた審査基準、つまり第十二条四項から九項に係る内容についての説明と、従来とどう違うか。通産省はこの間において、合併等に係る一般的な基準の公表を入れたい、こういうことを言われた。公取としては、それはまずい、こういうようないきさつもあったということを聞いておるわけでございますが、その経過と、前回とどう違うのか、この問題についてまず通産省から……。
  108. 小長啓一

    小長政府委員 まず、先生指摘過剰設備処理事業提携につきましては、独禁法の観点から見まして、私どもは次のような差があるのではないかと思っておるわけでございます。  すなわち、過剰設備処理と申しますのは、当該産業の需給ギャップの解消を図る見地から業界全体で取り組む必要があるということであるのに対しまして、事業提携と申しますのは、参加する者がグループを形成することによって合理化を図ろうというものでございまして、業界全体の取り組みというよりも、参加する者がグループを形成するということでございますので、業界の一部が取り組んでおるという意味で、片方は全体、片方は一部という意味の差があるのではないかと思っております。したがいまして、過剰設備処理につきましては、主務大臣業界全体に対しまして、公正取引委員会の同意を得た上で一定の設備量の処理を指示する場合に、その指示に従って行う事業者の共同行為を独禁法の適用除外として計画的な処理が行い得るような措置をしたものでございまして、これは現行法の制度を踏襲したということになっておるわけでございます。  他方、事業提携の方でございますが、これはグループ化ということでございますけれども、これは業界全体で何か一つの共同行為をするということではないわけでございますが、ただ、グループの規模等によりましては独禁法との関係も生じてくるおそれがあるわけでございます。したがいまして、事前または事後に主務大臣公正取引委員会との意見調整規定を置こうとしておるのが新しい法律考え方でございまして、これによりまして、独禁法の適用除外の規定はないわけでございますけれども事業者は構造改善を積極的に進めることができるということになるのではないかと思っておるわけでございます。  ところで、先生指摘の十二条第四項から第九項の規定の具体的な運用でございますけれども事業提携計画の承認に際しまして、主務大臣公正取引委員会意見調整を行うということになっておるわけでございますが、その場合、主務大臣におきましては、承認に当たりまして主務大臣産業政策上の判断を公正取引委員会に説明すると同時に、当該計画に基づく行為に対する独禁法の観点からの評価を、輸入品とか代替品等の動向を含めまして、産業政策の観点から判断をいたしまして意見を述べるということになっておるわけでございます。それに対しまして、公正取引委員会は、主務大臣意見を尊重しつつ、主務大臣の提携計画の承認前に、主務大臣に対しまして独禁法上の観点からの意見を述べるということになっておるわけでございます。  このような法律上の調整プロセスを通じまして、両者間の適切な調整が図られるのではないかと私どもは期待をしておるわけでございます。
  109. 横手文雄

    ○横手委員 先ほど申し上げましたように、これの法律をつくるに当たって、通産省からは、合併等に対する基準の公表をこの際したらどうだというようなことを公取の方に申し入れられた。公取の方としては、そのようなものを出すということはまずいということで、これは日の目を見なかったというような話も聞いておるわけでありますが、いま通産省の方からは、これらの扱いについていろいろと御説明がございましたけれども公正取引委員会としてはいかなる見解を持っておられますか。
  110. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 生産、販売、購入、保管または運送の共同化、生産品種の専門化、合併、営業の全部または重要部分の譲渡、その他これらに準ずる行為、これがいまお尋ねのございます事業提携の内容でございます。  そこで、そういうことを構造改善のために必要とするという前提通産省といろいろ調整をしておったわけでございます。これらのことは、たとえばカルテルの要件を備えれば不況カルテルでもできるわけでございますし、合理化カルテルを活用することも可能である。共販会社の設立にいたしましても、株式の取得、保有、それの許可という形で可能である。いろいろな行為の形式を考えてまいりますと、結局独禁法の枠の中でいま御説明しておりますような事業提携を実現することは可能であるし、設備廃棄のように指示カルテルによってやらなければならぬという性格のものでは直ちにないだろう、こういうことから、先ほど産政局長からもお答えがありましたような現在の条文になっておるわけでございます。  ところで、お尋ねは、その中で合併をやる場合または合併に準ずる事業提携をやる場合に基準を示すべきであるという点だと思います。これは私ども昭和五十五年でございましたか、合併に関するガイドライン、翌年に小売業の合併に関するガイドラインというようなものをつくりまして、どのような要件を備えた合併の届け出であれば重点審査の対象になるか、またはそのまま認められるかというようなことを世の中に明らかにしておるわけであります。そういうものを示すべきだということを法律で書けというのが当初の話でございましたけれども、私どもとしても、独禁法を理解していただいて、その上で企業の行動を決定していただくことが望ましいのは言うまでもないので、かねてからそういう合併のガイドラインのようなものは進んで発表してきておりますから、今回の構造改善の対象になりますような業種について、その特性に応じた合併の基準というのは、行政的に私どもの方からガイドラインとしてお出ししましょう、そういう話で、それでは法律をもって合併基準を示せと言う必要はない、そこは行政の実情に応じて、公正取引委員会がこの御審議いただいております法案の成立後公表いたします特定産業の合併審査基準というものによって、特定産業に属する企業の方々が判断をして、事業提携計画の承認申請をなさるということでいいであろう、そういうことでいまの形に落ちついているわけでございます。  十二条の四項から九項までの内容については、ただいま産政局長からお答えがありましたけれども、その中でとりわけ四項から六項までが、事業提携計画を承認する際に公正取引委員会通産省ないし主務省の間でどういうやりとりがあるかということを書いておるわけでございます。これがいわゆるガイドラインでございますから、この趣旨に従って意見のやりとりをしながら実態を明らかにし、かつ行政調整を図っていこうということが趣旨でございますから、いまお尋ねのございましたような点につきましては、私どもとしては十分対応できるというふうに考えておる次第であります。
  111. 横手文雄

    ○横手委員 公正取引委員会から「特定産業における合併等事業提携の審査に関する基準の骨子」というのが出されておるわけでございますが、私は特にこの議論を通じて、通産省公正取引委員会を押したとか、あるいは公正取引委員会が下がったとかいうような議論はやめにしまして、この際これを見てみますと、公正取引委員会は合併等について(一)で「特に考慮する事項」ということで、アからイ、ウ、エと書いてあるわけでございまして、こういったような背景があれば、これはいまでもできるのでございます、だから公正取引委員会としては特に後ろへ下がったものでもありません。それから、一の(二)の「市場占拠率との関係」については「二五%以上となる案件についても」云々、こういうことでございますが、こういう要件があれば、いまでも二五%以上ということには特にこだわりませんよといったような公取の手の内を見せたということ。そしてまた、大きな二番目としては、合併等以外の事業提携についてはこのような原則でやっておる、だから公取としてもこの際協力をしていきましょう、こういう態度であるというぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  112. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 年間千件ぐらい合併の届け出があるわけでございますが、その一々について詳細な審査をいたしますのは双方の事務が非常にふくそういたしますので、そこで合併のガイドラインによりまして、重点的に審査すべき合併はいかなるものであるか、その場合の総合的な審査の基準はどうであるかということをもうすでに公表して、それによってやっておるわけであります。  その中で、特に今回の特定構造改善の対象になります業種について関心が深かろうと思われる点を集めて、さきに通産省から発表になりました合併基準の骨子の中に盛り込んだわけでございます。したがいまして、現在でも、シェアが二五%を超えたら直ちにその合併はいけないということを別に言っているわけではございませんで、たとえば会社がつぶれかけになっておりまして、フェーリングカンパニーというのてすか、もうすでに競争力を失っておる、そういう会社がよりしっかりした会社と合併しようというときには、別にシェアにとらわれずそれを認めている例も多々ございます。  そういうことで、現在の合併審査基準によりましてもできること、それをより特定産業の実態に即してわかりやすく書いて、法的な安定性とかこの制度の理解に資する、こういう趣旨であります。
  113. 横手文雄

    ○横手委員 次に、第八条の三の二項、二十五ページでございますが、ここには次のように書かれております。「当該事業提携計画の変更を指示し、又はその承認を取り消さなければならない。」前に示した条項と適合しなくなったという事業者に対してはこのように書かれているわけでございますけれども、これの突っ込みでございますが、たとえばある時期に許可をいただいて、そして共販会社等をつくり上げてきた、ところがその過程において、もうでき上がって営業を始めようかというときに、他の会社がその品物の生産をやめてしまった、結果としてその独占率がうんと高くなってしまった、そういったときにもこれは取り消しをなさるわけですか。この限界はどの程度にありますか。
  114. 小長啓一

    小長政府委員 先生指摘のように、第十二条第九項の規定によりまして、事業提携計画の承認後に客観的な事情の変化によりまして独禁法の問題が生ずることとなった場合には、直ちに独禁法に基づき排除措置等の手続をとるのではなくて、公正取引委員会が主務大臣あてにその通知をするということになっておるわけでございまして、その通知を受けた主務省と公取委員会との間で意見交換が行われまして、事情の変化に即した適切な構造改善の方途を求める仕組みとなっておるわけでございます。この立法の趣旨は、放置することによって事業者が独禁法違反の事態を招くことを未然に防止をしながら事業集約化を進めていこうというものでございまして、むしろ構造改善促進の観点から事業者の便宜を図ることになるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  先生指摘の、たとえば輸入者の数が減ったとか等々によりまして、共販会社について独禁法違反のおそれが出てきたという場合を仮に想定いたしますと、その場合もいきなり解散させるというようなことではなくて、公正取引委員会とよく話し合いをいたしまして、構成員の見直しとかあるいはその対象品目の見直し等をやりまして、独禁法に違反しないような範囲内に事情改善というのができればそれで事態の収拾はでき得るわけでございますので、私どもは、そういう形で公正取引委員会とよく意見調整をいたしまして、いきなり解散ということではなくて、次善の策を発見をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  115. 横手文雄

    ○横手委員 いろいろおっしゃいますけれども、すでにでき上がった、たとえば共販会社等については、もう共販会社として命を持ったものにいまさらこれを取り消せ、取り消すぞということはしません、こういうことでございますね。
  116. 小長啓一

    小長政府委員 共販会社の具体的な態様にもいろいろございまして、きわめてハードな結合になっているような合併に近いものもございますし、もっと軽い共販形態もございますので、一概にどうということは申し上げられませんけれども、私どもといたしましては、事業提携計画の承認をいたしましたものについてその後事情の変更等があって問題を生じておるという場合には、よく公正取引委員会意見交換をいたしまして、さっき申し上げましたような構成員の変更であるとかあるいはその他の措置を通じまして事態の改善を図りまして、結果的には解散という事態に追い込まない形での収拾ができる道を探ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  117. 横手文雄

    ○横手委員 公正取引委員会と相談をするということは繰り返し言われるわけですけれども、公取としては、この関係法の第十五条、これに基づいて一定の時期が経過をしておればそれは容認をされるものだ、こういうぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  118. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 合併の審査期間というのがございまして、事前に公正取引委員会への届け出ということが必要であります。その一定の取引分野における競争を実質的に制限するような合併というものは禁ぜられておるわけでありますから、その三十日の間、これは九十日まで延長ができるわけでございますけれども、その間に審査をいたしまして合併をしていいか悪いかということを決めていくわけですが、その三十日または最高九十日までの審査期間が過ぎてしまいますと、その後の事情変更があったとしても法的には合併を独禁法で排除することはできないというのがいまのたてまえでございます。したがいまして、産政局長から繰り返し御答弁がありましたように、そこは実際の合併をしてしまった会社、事業の譲り受けを受けてしまった会社、それが競争制限的なポジションに、または競争制限的なパフォーマンスにならないように、行政を通じで指導していくということに相なろうかというふうに存ずるわけであります。
  119. 横手文雄

    ○横手委員 あとまだ、雇用問題とそれから基礎素材産業の問題点等について二つほど質問を残しました。しかし、明日城下町法でまた質問の時間をいただいておりますので、その城下町法の質問に入る前に雇用問題と素材産業の問題点について御質問を申し上げたいと思います。  時間が参りましたので、これでやめます。ありがとうございました。
  120. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、渡辺貢君。    〔委員長退席、原田(昇)委員長代理着席〕
  121. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 まず最初に、新しく改正される法案の幾つかの条文の問題について、解釈、御説明などをいただきたいと思うわけであります。  今回の一部改正により、題名も「特定不況産業安定臨時措置法」から「特定産業構造改善臨時措置法」というふうに変わりましたし、さらに内容等についても、「安定基本計画」というふうな現行法でありますが、改正法によっては「構造改善基本計画」というふうに、法律の性格そのものが大きく変わっているというふうに考えるわけであります。  そこでお尋ねをしたいと思うのですが、第一条の目的と、第三条の二項にある「構造改善基本計画に定める事項」というのは、現行の「安定基本計画に定める事項」とどこが大きく変わっているのか、まずこの点について御説明をいただきたいと思います。
  122. 小長啓一

    小長政府委員 現行特安法の場合は、設備処理を政策手段といたしまして経営の安定と不況の克服を図るというのが目的であったわけでございますが、新法におきましては、設備処理という撤退作戦にあわせまして、事業提携とかあるいは活性化設備投資とかあるいは技術提携等の活性化施策を併用いたしまして、両政策を車の両輪として進めていくというところが構造改善という具体的な名前であらわれておるわけでありますが、顕著な相違ということになっておるわけでございます。  したがいまして、それを踏まえまして、三条の「構造改善基本計画」につきましても、設備処理の問題に加えまして、二項四号にございますように、「生産若しくは経営の規模又は生産の方式の適正化に必要な次に掲げる事項」ということで、事業提携に関する中身が具体的に掲記されておるところ、これが大きな相違点ということでございます。
  123. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま御説明があったわけでありますけれども、撤退ではなくて、あるいは今度は前進攻撃的な性格を持つというふうに、しかも構造改善という産業構造の基本問題にかかわるようなそういう内容の計画の策定になるわけでありますから、大変積極的な姿勢を感じるわけであります。  そうなると、当然法改正の中でも、たとえば第二条の第一項に一号から七号まで候補業種が七業種ぐらい挙げられているわけですね。それだけではなくて、これから大体一年半くらいの間にこの法律によって、ある意味では対象に挙げられるであろうという業種も想定をされて指定をする、こういうことになっているわけなんですが、その中で具体的にどういうものをいま考えているのか。ここまでかなり具体的な問題を掘り下げて提起しているわけでありますから、どういう業種を考えているか、これが一つ。  それから製鉄、特に高炉の問題でありますが、一時高炉も基礎素材産業一つの典型的な業種であるというふうに言われておりました。しかし、日本の高炉産業というのは、世界でもすぐれた生産能力あるいは生産力も第一位である、こう言われていますから、もし高炉がそういう特定産業にということになると、日本産業は壊滅的だというふうに感じるのですが、まさかあの高炉を考えていらっしゃるとは思いませんけれども、この二点についてどのようにお考えですか。
  124. 小長啓一

    小長政府委員 新法の対象候補業種でございますが、構造的問題に直面しておる基礎産業につきましては、緊急に対策を講ずる必要があることにかんがみまして、昨年来産業構造審議会においていろいろ検討を進めてきた結果を踏まえまして、構造的困難に直面しており、かつ構造改善へ向けての意思が明らかな業種につきましては、できる限りこれを法定したところでございます。法定七業種というのはそういう意味でございます。  しかしながら、今後の業況の動向とか業界内の構造改善に向けての熟度の高まり等、実態に応じまして候補業種の指定の必要性が出てくる場合も考えられるところから、先生指摘のように、第二条第一項第八号の規定を用意したわけでございます。ただ、現時点で政令候補業種の予定は必ずしも明らかになっておりません。私ども、まだ具体的に頭に置いておる政令候補業種はございません。  第二点の鉄鋼高炉の問題でございますけれども、基礎原材料・エネルギーコスト比率の要件とかあるいは過剰設備の要件という意味では、この政令の指定要件を満たすわけでございますけれども、他方、生産もしくは経営の規模の不適当、あるいは生産方式の不適当、またそれの結果としての経営の不安定といったところの要件は満たさないことになっております。したがいまして、鉄鋼高炉につきましては本法の対象とは考えておりません。     〔原田(昇)委員長代理退席、委員長着席〕
  125. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 それでは、次に入りたいと思います。  積極的な産業政策を展開していくということで、第九条では「資金の確保」、さらに第九条の二で「課税の特例」というふうにあるわけですね。撤退するだけではなくて、活性化のためにあるいは新技術の開発のために、これは現行法の企業法などでも開銀の融資など、あるいは課税の特例措置もあろうかと思うわけでありますけれども、一体この「資金の確保」ということはどんなことを考えていらっしゃるのか。さらに「課税の特例」、租特あるいは法人税本法そのものにもかかわるような、そういうことも考えていらっしゃるのか、この二点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  126. 小長啓一

    小長政府委員 まず、「資金の確保」のところでありますけれども、これは具体的には基礎素材産業活性化設備投資に対する低利融資ということで、日本開発銀行に五十八年度財政投融資資金で百五十億円が用意をされることになっておりまして、原材料・エネルギーコスト低減のための設備投資事業集約化のための設備投資等に対しまして融資を行うということになっております。それから、基礎素材産業設備処理に伴いまして必要となります運転資金に対する低利融資制度を新たに創設をしたわけでございまして、これは五十八年度百億円ということでございまして、興長銀債の資金運用部による引き受けということを通じまして運転資金の低利融資の道を開こうということでございます。さらに、開発銀行の中のエネルギー有効利用融資とかあるいは産業技術振興融資といったような既存制度の活用ということもあわせ考えております。これは特に金額は特定はされておりません。  それから税制でございますが、まず活性化投資関係では、基礎素材関係活性化に資する設備投資に係る施設の特別償却制度の創設ということでございまして、対象施設は省原料基礎素材産業活性化に資する施設でございまして、特別償却率は初年度一八%ということになっております。  それから、二番目に設備処理関係でございますが、過剰設備廃棄により生じます除却損に係ります欠損金につきまして法人税法上の繰越控除の期間を、本則は五年間でございますけれども、特例的に十年間としております。  それから、三番目に事業集約化関係でございますが、第一番目に、産業体制整備に資する現物出資により取得した株式に係る課税の特例、いわゆる圧縮記帳制度の創設が第一でございます。第二は、産業体制整備に資する合併、現物出資、営業譲渡等に係る登記の登録免許税の軽減措置、本則税率のおおむね三〇%軽減ということが行われることになっております。第三に、産業体制整備に資する現物出資、営業譲渡により取得いたします不動産に係る不動産取得税の軽減ということで、軽減割合六分の一という措置が認められておりまして、これはそれぞれ本法に掲記されているところでございます。
  127. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 「資金の確保」あるいは「課税の特例」という問題でも、かなり優遇的な措置がいまの御説明の中でも明らかにされているというふうに思うわけなんです。  この法改正の第一条「目的」の中で、「構造改善基本計画を策定し、計画的な設備処理及び生産若しくは経営の規模又は生産の方式の適正化の促進等のため」、こういうふうな目的規定でも、冒頭私も質問で申し上げましたように非常に積極的に、ある意味では構造改善の内容のみならず、経営の形態とか規模とか、そういう企業運営にかかわるような問題まで、この条文を見ると印象づけられるわけなんですね。しかも、主務大臣がこういう計画を策定し、そして同時に資金の確保やあるいは課税の特例を設けて全体として進めていくというふうになりますと、現在臨調は終わったわけでありますけれども、教育や福祉がいろいろの面で抑えられていく、ゼロシーリングである、あるいは六年間課税最低限も動かされないままで深刻な不況に国民が直面をしている中で、これは確かに日本基礎素材産業だし、産業の根幹をなすものだというふうに言われる特定の産業でありますけれども、余り計画に基づくそういう施策が、国のいろいろな意味での政策導入、過保護的な政策導入があるのではないか、こういうことを感じるわけなんですが、こうした点について通産大臣としてのお考え方はいかがでしょうか。
  128. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほど答弁しましたように、いろいろ金融、税法等である程度の配慮をいたしておりますが、これはむしろこういうことをして、そして産業の自主的な活性というものを取り戻してあげないと、その産業並びに下請関連を含めた経営もあるいは従事者自身も、すべてが地位を失うし、企業として消える。そうなった場合、日本全体の産業日本国民の経済生活、そういうものに決してこの日本国から消えてなくなるようなことがあることはプラスにならない。その広い意味で、国民の皆さんが税制の面でもめんどうを見てあげましょうという範囲が書いてございまして、だからやりなさいとか、こういうふうについてこいとか言うつもりでは全くございません。やはり国民経済全体から見て、国民生活の将来から見て、こういう産業をほっておいて、力はまだ残っているものの、環境が悪いということのためにだけみすみす消え去らせることは、日本産業の将来にも国民経済の上にもマイナスになる、そう考えて、私たちがある程度のインセンティブを与えてやることによってみずから手を挙げて入ってくるという産業を並列しておるわけでございます。
  129. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま大臣から、確かに国民経済的な視野に立って見た場合に、こうした産業活性化が大事だ、そういう立場からだ、こういうお話でありますけれども、われわれも決してそれを否定するものではありません。ただ、現実にその企業が置かれている現状をいろいろの角度から検討をして、やはり国としての政策方針を決定しなければならないということで私は触れているわけでありまして、この点についてはもう少し具体的に問題点を詰めながら、さらに質問をいたしたいと思うのです。  特に、今度指定される業種の中でも石油化学の問題は最も大きな産業として取り上げられているわけなんですが、この石油化学の根幹であるエチレンのプラントですね、エチレンセンターの現状。現在十二社が稼働しているわけでありまして、そういう意味ではわが国のエチレンプラントというのは、世界でもかなり優秀な設備を持って、六〇年代から七〇年代、産業の面のリーダーシップといいますか牽引車の役割りを果たしてきたというふうに思うのですけれども、それが指定業種の候補業種として挙げられている。  そこで、現在エチレンプラントの年産の能力、それから稼働開始の年月、経過年数、それからエチレンプラントの法定償却年数、それから稼働状況、そういう点について簡単に、全体的なことで結構ですけれども御説明をいただきたいと思います。
  130. 植田守昭

    ○植田政府委員 エチレンにつきましては、現在内需の低迷等ございまして、生産も大変減少しております。過剰設備を抱えているわけでございますが、数字を若干申し上げますと、年間のエチレンの生産能力は六百三十五万トンでございまして、その生産量は三百五十九万トンということになっております。これを平均稼働率で見ますと五九%ということでございます。  なお、設備の経過年数も大変たっておりまして、平均いたしますと十二年八カ月ということになっております。これは法定耐用年数九年を超えているわけでございまして、非常に老朽化も進んでいるというのが現状でございます。
  131. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 いま基礎産業局長から説明があったわけですけれども先ほど表一でわが国のエチレンセンタープラントの現状について差し上げたわけですが、ほぼいまの御答弁と一致すると思うのですね。  この中でやはり問題だと思いますのは、年の生産能力がいまの御説明ですと六百三十五万トン、私の方の資料では六百二十四万トン。これは日本化学工業協会の資料等で算出をしたわけですが、特にプラントの経過年数を見ますと、加重平均でいま御説明があったように十二・八年ですね。単純平均だと十五・一年。しかも休止中のプラントを見た場合には、加重平均で十六・一年、単純平均で十七・五年なんです。こういうふうに見ると、償却年数の九年というのを相当大きく上回っているというふうに思うのです。中でも、たとえば三井石油化学岩国・大竹工場などは稼働開始から二十三年、あるいは三菱油化の四日市工場の場合には二十二年。ですから、本来のもうとっくに耐用年数を経て倍以上使われている。ですから、設備処理するという場合に、当然その当該企業がみずから設備処理しなければいけない、そういう現状にあると思うのですよ。改めて国が活性化のための基本計画を立てていろいろの手厚い施策をするというのじゃなくて、企業自身がそういうことをしなければならないにもかかわらず、こうした現状に置かれているというのが第一表であります。  そういう点からいいまして、過剰設備の問題、これはもう企業努力ではできないんだからということで単純に通産省の方で、自助努力といいましょうか、当該企業あるいはグループの相互的な協力関係を否定して、それじゃ認めましょうという安易な形で設備廃棄していく、あるいは融資もさせましょうということになると、これからの日本産業を長期的に見ていった場合に、逆に活力を失ってしまうのではないか、こういうことを危惧するわけなんですが、この点について通産大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  132. 山中貞則

    山中国務大臣 たびたび申し上げますが、今回の法律改正、延長するに当たっては、過去にそうであったと断定はいたしませんが、企業甘えというものは絶対に許さない、甘え構造というものを法律の中には絶対に盛らないということを前提に作業を進めてまいりました。したがって、いま問題とされている点は、そのような角度からいけば、企業みずからが償却の努力を怠ったということも言えるかもしれませんが、その能力すらなかったという状態で今日に至っておるのを見れば、やはりそれに対して配慮をしてやることはやむを得ないことではなかろうかと思います。
  133. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ちょっと、企業そのものが能力がなかったというのは、評価が大変甘過ぎるのじゃないかと思うのですね。とにかく、石油化学エチレンプラントなんかを見ても、日本の大企業である三井であり、三菱であり、住友ですし、そう意味では、六〇年代、七〇年代、大変な高度成長のリーダーシップをとってきた、世界に冠たる日本企業だと言われたわけでありますから、そういう力がなかったというのではなくて、やはり五年前に特安法ができて、さらにその時期、前後して第二次のオイルショックがある、また何かやってくれるのじゃないか、こういうものがあったのではないかというふうに感じられるわけです。ですから一方で、そういう状況を国内の生産設備の中では放置をし、そして過剰生産だ、あるいは設備が稼働していないというふうに言いながら、海外進出については石油化学もアルミも、かなり積極的な姿勢を示しているわけであります。  ちょっと御説明をいただきたいと思うのですけれども、一九七二年三月末と一九八一年三月末を比べまして、化学と非鉄金属の海外投資の状況についていかがになっているでしょうか。
  134. 植田守昭

    ○植田政府委員 ただいま詳細な資料がちょっと手元にございませんが、化学と非鉄金属につきましてのおおむねの状況を申し上げます。  まず、石油化学等につきましては、いわゆるナショナルプロジェクトと俗に言われておりますが、たとえばシンガポールでございますとか、サウジでございますとか、等におきますプロジェクトが進行しておりますし、それからまたアルミにつきましては、アサハンあるいはアマゾンでいまスタートしているのがございますが、そのほかにおきましても、アルミにつきましては六、七件につきまして、これは主として民間ベースでございますが、海外プロジェクトが行われております。そういったことを通じまして、アルミにつきましては、その七件の中でアマゾンを除けば稼働に入っておりまして、すでに日本にも物が入っております。  それからまた、石油化学につきましては、シンガポールにつきまして近く稼働に入りますし、またサウジにつきましては、先日定礎式が行われたというふうな状況になっております。  詳細な資料に基づかない説明でございますが、おおむね以上のようなことになっております。
  135. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 おおむねの御説明でありましたが、これは大蔵省の統計でありますが、八二年版の海外市場白書によりますと、たとえば、化学産業を見た場合に、海外投資総額というのは一九七二年三月末で七千六百万ドル、一九八一年三月末で二十六億二千六百万ドルですね。約三十四・五倍の投資額になっているのです。非鉄金属を見た場合に、一億八千八百万ドルから二十六億一千九百万ドル、これも十三・九倍。製造業全体を見ると、十二億五千三百万ドルから百二十五億七千三百万ドル、約十倍なんですね。その中で化学、非鉄金属の部分というものの伸びが大変高い。ですから、一方では国内で過剰設備を抱えていて不況だと言っている、一九七三年からですからね。その時期に、一方ではグループを中心にして海外に進出をしている。そしてこれだけの、これは直接民間の投資でありますから、かなり膨大な投資を行っているという事実をやはり見ていかなければならないと思うのです。  さらに、いまお話がありましたように、アルミを見ますと、インドネシアのアサハンから二十二万五千トン、これはもう入ってきているようでありますが、そのほかにニュージーランドなど四つのプロジェクト、これは民間を中心にしたものでありますけれども、この間に約七十万トン、海外における生産が伸びている。いわゆる自由主義国、資本主義圏全体では百五十万トンなんですね。百五十万トンの増加の中で、日本企業が参加をして海外で合弁企業をつくって、そこで開発したものが約七十万トン、四七%を占めているわけです。これが日本に入ってきているというふうに見ると、石油化学の場合でもアルミの場合でも、単に一つ企業不況だということだけではなくて、グループ全体を見ていくとこういう状況になっているという現状なんです。  ですから、構造改善基本計画を策定していく場合でも、国内の現状がどうなっているかというだけではなくて、海外のこういう状況についても十分に勘案しなければならない。企業の努力というのはそちらの方に向かっているわけですから、これをやはり今後の問題としても重視をする必要があろうと思うのですが、この点について大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  136. 植田守昭

    ○植田政府委員 若干数字的なことが入りますので、私から答弁させていただきます。  ただいまアルミにつきまして、世界の総能力増に占める日本の参加プロジェクトの割合につきまして約半分近く、四十数%という御指摘がございましたが、七三年から八一年までのプロジェクトにつきまして世界の全体の能力増は約三百万トン弱でございまして、そのうちの七十万トンということで、おおむね二三、四%というふうに私どもはとらえておりますので、若干数字的なことでございますが、私どものとらえ方を御報告させていただきます。  それから、国内でいろいろといま問題が起こっているアルミでございますが、外へ出たことのはね返りではないかというあるいは御趣旨かと思いますが、このアルミにつきましては、御承知のように、資源のないわが国といたしましては、諸外国における豊富な資源と、それからまた水力その他の低廉な電力を活用いたしまして、安定的な資源の供給という見地から、先ほど申しましたような海外プロジェクトがかなりなされてきたわけでございますが、五十六年度で申しますと、海外から入りましたいわゆる開発輸入のアルミは約三十万トンでございまして、御承知のように、この年には総輸入量は百万トンを超えておりますので、この海外プロジェクトからの輸入三十万トンのほかに、さらに七十万トンという別のルートを通じての輸入があったわけでございまして、こういったことから申しましても、この開発プロジェクトが国内製錬を圧迫したというよりも、国内製錬の問題は、やはりエネルギーのきわめてドラスチックな変革、条件の変化による面が強かったのではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  海外プロジェクトにつきましては、資源のない日本といたしまして、安定供給の見地から、確保すべきものはやはり確保する必要があるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  137. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 大臣の答弁をいただく前にちょっと……。  いま局長から御説明があったのですけれども、この指標のとり方がいろいろあるのですね。一九七三年から八一年までということで約三十万トンということなんですが、それ以降はほとんど設備投資はされていない。生産は伸びていないわけなんですが、アサハンがその後加わっておりますし、また、開発した七十万トンのうち三十万トンの輸入だけれども、アサハンの場合にはほとんど、二十二・五万トンは引き取らなければならない、こういう現状にありますから、それは若干年代における指標のとり方の違いはあるけれども、いずれにしてもその時期にかなり海外に進出をしている、それで莫大な投資がされているということは否めない事実だと思うのですね。  石油化学の場合を見ても、たとえば先ほどお話しのあったように、イラン、サウジ、シンガポール、いずれもほぼナショナルプロジェクトになっているわけですし、アルミを見ると、一九八一年度の投資額が千百八十一億円、これは海外投資ですね。一九八二年を見ると、千百五億円なんです。これは通産省で出している資料を見せていただいたわけなんですけれども。一方、国内の投資というのは、八一年が百六十五億円、八二年が百四十二億円、主としてメンテナンスという投資になっているわけです。  ですから、確かに日本は資源がない国だから海外に進出して、そこで開発しなければいけないということが一方で衝動的に起こってきている。そして、七〇年代から相当莫大な投資があるし、現在も続いている。一方では、国内で設備廃棄しなければいけないし、あるいは活性化投資等でさまざまな優遇措置がとられる。こういう矛盾をただ、やむを得ないんだというふうに見過ごすわけにはいかないと思うのですね。ですから、個別の企業が出ていくだけではなくて、グループとして出ていっているわけなんでして、こういうことをこれからの構造改善基本計画を立てていく場合に一つの重要なファクターとして考えていかなければならない、そういうことで私は主張しているわけなんでして、その点で大臣の御見解を伺います。
  138. 植田守昭

    ○植田政府委員 仰せのとおり、海外プロジェクトと国内のプロジェクトというものはもちろん関係のあるものでございますから、総合的に考えた政策を出していかなければいけないと思います。  アルミに関して申しますと、七十万トン体制というところからいま三十万トン弱というふうに瞬間風速ではなっているわけでございますが、私どもといたしましては、やはり国内にミニマムのアルミは確保したいということからいろいろと政策をしてきているわけでございます。確かに七十万トン体制がいま三十万トンを切るような状況でございますけれども、この点につきましては、電力なりエネルギーなりの急激な変化がもちろん構造的にあるわけでございますが、それに加えまして、特に昨年あたりの世界的な異常な市況の低迷、循環的にも異常な低迷でございまして、昨年の夏は千ドルを切るという市況でございました。トン千ドルを切りますと、世界のメジャーでも赤字であると言われたわけでございますが、実は最近に至りまして世界の在庫もやや減りぎみでございまして、ことしの一月から二月にかけましていま千三百ドルを超えている、急激な市況の回復途上にあるわけでございますが、こういった異常な市況の低迷がございましたので、いまの状況はやや突っ込み過ぎているのではないかという感じもするわけでございます。  私どもは、そういった状況も踏まえまして、国内の方もできるだけの努力をしなければならない。と同時にまた、海外のものにつきましては、資源確保、安定供給という観点を考えていかなければいけない。そういう意味で、御指摘のように、海外の問題と国内の問題とは総合的な見地から考えまして、今後十分そういった点も含めまして政策の中へ織り込んでいきたいというふうに考えるわけでございます。
  139. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 なかなか大臣お出にならないのですが、局長一つ一つ答弁されますし、そうなると私の方も言わなければならないのです。  私が言っているのは、そういうさまざまな外的要因もある。しかし、そういう中で、実はその企業の所属するグループなどが、こうして海外に生産の拠点を求めて膨大な投資を行ってきている。それが国内における産業を圧迫する要因にもなっているんだ。そういうことになれば、やはり政策上、基本計画を立てていく場合に、そういう外的な要因があるんだから国内では設備廃棄しなければいけない、あるいは活性化の投資もいろいろの優遇的な措置をとらなければいけない、単純にそうなってしまったのではまずいのではないかということを指摘しているわけです。  しかも、海外に進出した資本の利益高などを見ますと、これは産業政策局で編さんした「わが国企業の海外事業活動」第十回、第十一回の編さんでありますが、たとえば非鉄金属を見ると、国内では売上高に対する利益率は一・三%、海外法人の場合には九・八%、化学の場合には国内が二%であり、海外法人の場合には三・九%だ。これは産政局の資料でそういうふうに明らかになっているわけなんです。つまり、国内における企業の利益のメリットより、海外に投資した方がメリットがある。資本が海外に流出していく、こういう事態だということなんです。  これが続いていったのでは日本基礎素材産業も重大な事態に陥るのではないか、そういう心配がありますから、だからこういう海外に進出している現状も踏まえないと構造改善基本計画のりっぱなものはできないんじゃないか、これを私は主張しているわけなんでして、そういう点で、もうこれだけ論議すればいいと思うのですが、大臣、ひとついかがですか。
  140. 植田守昭

    ○植田政府委員 海外と国内の関係につきましては、業種によりましてももちろん一律に考えられないわけでございますが、たとえばアルミにつきましては、先ほどのようなことで国内は大変苦しいながらもミニマム、それをキープしていこうということでがんばっているわけでございますが、石油化学等につきましては、われわれの見通しでも、少なくとも三百数十万トンというものは今後とも維持しなければならないし、また維持できるであろうという想定のもとに政策を進めつつございますが、確かにシンガポールなりサウジなりという問題はございます。それからまた、さらに天然ガス保有国の非常に安いものが入ってくるということもございます。その辺のことも十分勘案した上で、私どもは、ある程度の輸入はいたし方ないということも含めまして政策を立てていかなければならないということを考えているわけでございまして、御指摘のように、国内が空洞化するように何でもかでも外へ出ていくというふうなことにはすべきでございませんし、また今後とも、海外のプロジェクトの新たなる推進につきましては、国内とのバランスの問題等も含めまして十分考えていくべきだろうと思っているわけであります。
  141. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 大臣、ひとつ答えてください。
  142. 山中貞則

    山中国務大臣 法案には賛成してくれますか。反対だったら私の立ち上がる回数は少ないわけですが……。  まあ、いまおっしゃったような一面の傾向は否定できないところだろうと思うのですね。しかし一方、今度は、それらの海外の資源国というものは、どこかの先進技術を持った国が来て自分たちの資源を開発し、製品化してもらい、雇用貢献はもちろんのこと、その利潤その他も自分たちの国に落としてもらいたい。インドネシアにしてもあるいはブラジルにしても、まさに国の望みというような形になっております、形は私企業でありますが。  ただしかし、石油の問題は、日本が戦後とってまいりました、消費地日本に持ってきて精製するという一貫した政策から、製品をつくる企業として、シンガポールとかイランとかそういうところで、産油国以外のところもしくは産油国そのものが付加価値をつけて出そうというような形に日本が余り深入りすることについては、過去のものはやむを得ないとしても、現時点では賛成できないし、あるいはそれなら思い切って、日本原油を持ってきてすべての油種を精製する手段というものを根本から考え直すかどうかの問題に来ていると私は思うので、一私企業の行動であっても、それに対しては日本の政策と整合性がなければならぬなということを考えております。
  143. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 やはり審議でありますから、反対であれ賛成であれ、十分な論議を尽くしていきたいと思います。  いずれにしても、アルミでも石油化学でも、典型的なナショナルプロジェクトとして、特に七〇年代の後半から八〇年代にかけて行われているわけでありますから、そういう意味からいっても、十分やはり全体を俯瞰して、単純に内外経済情勢が悪いというだけではなくて、その点をしっかり押さえていく必要があろうか、こういうふうに考えるわけなんです。  次に、公取委員長にお尋ねしたいと思うのですけれども、昨年の十二月三日に、高橋委員長が記者会見の中でこんなふうなことを言われていらっしゃるのですね。「日本以外のどこの国にも、競争制限をして不況産業構造改善するという発想はない」、さらに「(合併審査などを特別ゆるやかにするといった)競争制限的な措置をとらなくても、不況業種構造改善は可能であり、いまの独禁法の枠内で十分対応できる」というふうに語っていたと報道されているわけですが、これは、基本的にそういう御認識は今日もお変わりございませんか。
  144. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 あれは昨年の十二月三日でございますか、私が日本記者クラブに行きまして、独禁政策とその運用についてお話をしたことがございます。その節いろいろ御質問があった中に、いまお示しのようなくだりが含まれておったかというふうに思いますが、欧米の先進国で、独禁法制の中身はさまざまでございますけれども構造不況に当面したからという形で独禁法を緩和したり、独禁法の適用除外を設けている国は見られないと申したことは事実でございますし、そのこともまた事実でございます。  それからもう一点、私どもは、五十三年法の制定のときからそういうことを申し上げておったわけでございますが、指示カルテルによらなくても、不況カルテルの運用によって設備廃棄は可能であるという主張をずっとしてまいりました。それとの兼ね合いで、特安法の延長ということに対しても、まず現在の独禁法の枠で対処することが可能であろうし、合併であれ営業の譲渡であれ、そういうことでも独禁法の十五条、そういう条文を運用すれば可能ではないかということをお答えしたのは事実でございます。
  145. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 その際に、あわせて、たとえばこういうふうなお話もされているわけなんです。「エチレンのコンビナートを仮に四グループに集約するとなれば、非常に大きなグループが生まれることになる」というふうに指摘して、ビールや板ガラスの寡占業種を引き合いに出して、「こうした業種は国民生活や物価の面で、かつて問題になったことがある」というふうに語っているわけなんですが、ビール、板ガラスなどの業界の市場占拠率といいましょうか、これらの業界がやはり国民生活の面では大変大きな役割りと同時に影響力を持っているわけでして、最近も麒麟の社長が、九月ごろには九%ぐらい値上げしなければいけない、こういうふうなことを言っているわけです。そういう意味で、ビールと板ガラスについては現在どのぐらいの寡占の状況にあるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  146. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 その前に、いまお示しの記事が出た経緯でございますけれども、私が申したのはこういうことでございます。  当時、産構審の答申、部会の答申でございましたか、ありました時代で、エチレンセンターの合併ということがかなり話題になっておったわけでございます。そこで、公取は二五%という合併の場合のシェアの基準を設けておるから、全体を四つにリシャッフルしてまとめたらそれでいいのかという質問がありまして、私は、四つということになりますと、板ガラスだとかビールだとかウイスキーだとか、そういうぐらいの業種しか思いつかないけれども、それは業種に属する企業の数としてはかなり少ない方でしょう、したがって、企業数が少ないからといって直ちに企業のパフォーマンスがいいというわけにはいかないので、それはまた高度寡占業種にはいろいろな弊害があります、こういうふうに申し上げた。それが新聞で非常につづまって報道されたわけでございますから、私は、ビール、板ガラスのことをそのとき議論したわけではないということを最初にお断りしておきたいと思います。  御質問でございますからお答えを申し上げますと、ビールの場合には現在、五十五年の私どもがやっております出荷集中度調査でございますと、上位三社のシェアは九一・六となっております。それから板ガラスは、ガラス全体で申しますと、これは三社がほとんどでございまして、九八%というのが出荷シェアでございます。
  147. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 かなりの寡占でして、ビールの場合には、公取の資料によりますと麒麟が六二%ですね。板ガラスは旭硝子だけで四九%です。最近、五十六年前後ですか、それぞれ一二、三%ぐらいずつの値上げをやっているわけですが、すぐほぼ横並びの同調値上げということになるわけでして、そういう意味でも寡占化というのがどれほど国民生活に大きな影響を持っているかということの一つの証左でもあろうと思いますし、たびたびこうした問題についても公取からいろいろ指摘があったというふうに聞いているわけなんです。  国民生活に直接影響を及ぼすし、同時に国民経済的な視野から見た場合にどうしても活性化が必要だ。ある意味でのグループ化、今度の新特安法では、事業集約化というのもその一つの大きな核をなすものだと思うのですけれども、逆に寡占化の進行が産業活性化を奪ってしまう。アメリカの自動車やあるいは鉄鋼なんかも、その明白な例だと思うのですね。アメリカの場合には、もちろん軍需産業に傾斜しているという面もあろうと思うのですけれども。そういう意味で、今度の改正案で新設された第八条の二「事業提携計画の承認」、さらに第十二条第四項以降にあるいわゆる調整条項についてなんですが、この事業提携、さらにこれを具体的に進めていく場合の調整条項など、こんなふうな批判もあると思うのですね。独禁法の運用面で公取委の従来の権限に切り込み通産省が実をとった、そういう印象が深いとか、形の上では公取委の拒否権は残るが、主務大臣も発言権を確保するという法的に新しい権限を獲得した、こんなふうな論評もされているわけであります。さらに、先日の本委員会における参考人質疑で、経団連の河合良一産業政策委員長が、経団連は現在独禁法の弾力的運用と抜本的見直しを検討しているというふうに述べられた上で、調整条項というのは独禁法見直しまでの暫定的な時間稼ぎの有効な方法だと考えている。ということになると、調整条項というのは独禁法を見直す、独禁法を改正する、何かそういう前提の上に過渡的なものなんだ、暫定的なものだ、こういう解釈がされるということになると、独禁法そのものもまさに骨抜きになってしまうのではないかということで、調整条項に対するいろいろの危惧があるわけなんですが、この点については委員長としてはどんなふうにお考えなんでしょうか。
  148. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまお話のありましたような御意見というのは、一部の御意見としてはあり得ることであろうと思っておりますけれども、よく言われておりますのは、不況下になってくると独禁法は要らないのじゃないか、こういうような御議論を伺います。売り手市場である場合には、供給者の方が共謀いたしましたり結合いたしましたりしていろいろな問題を起こす可能性があるけれども、買い手市場になればむしろその力が弱くなるわけだから、供給者の側ではむしろ結合をもっと緩やかに認めてもいいではないか、こういうのが御主張の中身かと思うわけでございますけれども、低成長に移っていけばいくほど、公正で自由な競争という形で経済活性化を図っていく、それから価格がやたらに管理価格で上がっていくことを防ぐ、それ全体が国民の経済の利益につながるということは明らかだと思います。市場メカニズムにのっとって自主的な判断、創意工夫というものを発揮して企業が活発に事業活動を行っていくということが競争政策のねらいとしておるところでございますから、そういう意味で、低成長下であればあるほど独禁法のその意義というものは重要になってくるというふうに思います。  そのことは昨年の十一月でございましたか、京大の馬場先生ほかの方々に私どもが作業をお願いしておりました経済調査研究会、経調研、そのリポートの中にもその趣旨が出ておりますし、私どもは、あえて私どもの役所の立場で申し上げているだけではなくて、いわゆる近経の学者の方々も含めてそういう御指摘が非常に強いというふうに思っております。  要は独禁法の趣旨、それからその重要性ということについて、関係の皆様方に御理解をしていただくことが大事なわけでございますから、私どもは常々そういう努力を重ねてまいっておる次第でございます。
  149. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 まさにそういう意味でも、国民生活や国民経済的な視野から公取の設置されている意義、あるいは独禁法の第一条の目的規定などを十分に活用されて、あいまいさを残さないでひとつ対処をしていただきたいというふうに考えるわけであります。  次に、この改正案の目的の中、あるいはそれぞれの条項の中でも「雇用の安定及び関連中小企業者経営の安定に配慮しつつ」というふうなことが明記をされているわけなんです。この点で、今日まで約五年間、現行法の総括的な内容を見ますと、産構審の基礎素材産業対策特別委員会の報告書あるいは経済調査研究会の報告書などによりましても、造船を含めて十四業種で、昭和五十二年度に比べて五十六年度では十一万人あるいは十数万人、基礎素材産業全体では約四十万に近い雇用の減少があったと、この表にも示しているわけであります。  そうなると、今後さらに設備廃棄がかなり大規模にやられていくであろう、そうして事業の提携、集約化活性化投資ということで、ある意味では労働者の皆さんも、第一次オイルショックから第二次オイルショックに至る期間のいわゆる第一次減量経営の時代に大変苦い経験を持っておるわけなんです。今度は第二次の減量経営ではないか、こういうふうな心配が大変強いわけなんですが、この点について、現行法と今度の改正法ではほとんど表現は変わっていないわけですけれども、実際上これは大変大きな問題になろうかというふうに考えるわけですが、この辺については今後どんなふうにお考えになっていらっしゃるか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  150. 小長啓一

    小長政府委員 ただいま先生指摘のように、第一次石油危機以降最近までの間、具体的には五十年から五十五年までの六年間でございますけれども、工業統計表の数字によりますと、約三十万人の雇用が減少しておるということは御指摘のとおりでございます。  しかし、この間に加工組み立て産業やサービス産業部門等で雇用数の増加が見られておるわけでございますし、また同時に、現行特定不況産業安定臨時措置法等の効果もございまして、急激な影響が回避されるということもまた事実であったわけでございます。そのために、当該事業者や労働者の努力とかあるいはその関連事業者の協力ということによりまして、新たな職場を確保する努力が行われたことも事実であろうと考えております。  新法でございますが、先ほど先生の御指摘のように、雇用に関する規定につきましては大体現行法と同じ規定ということになっておるわけでございますが、冒頭にも申し上げましたように、この新法は縮小と活性化ということで、撤退作戦と前進作戦とを並行して取り上げるということになっておりますので、雇用の確保、安定という立場から見ますと、前進作戦の方ではうまくやればその雇用を、増加とはいかなくても、少なくとも他への転換をおくらせてその企業内に滞留させ得る余地というのは残し得るわけでございまして、そういう意味で、新しい雇用確保の道が開かれている面もあるわけでございます。  しかし、私どもといたしましては、現行法どおり、この期間五年間のうちに雇用の点につきましては急激な調整が行われないように、なだらかな調整が行われることを念頭に置いておるわけでございまして、具体的には、その企業内に余剰人員が存在をしておる状況下において職業訓練を施すこととか、あるいは関連企業へ出向さすとか、あるいは新規採用を抑制するとかいうような形で個別企業が弾力的に対応していくことを期待しておるわけでございまして、そういう意味で、雇用のなだらか調整がこの新法のもとにおいて行われることを私どもは期待をし、またそういう方向で見守っていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  151. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 現在までの五年間を経過してみても、歯どめをかけるというのはなかなか厳しいと思うのですね。  現実には住友関連企業の中で、あるいは三井や三菱などでも、いままで五十歳で勧奨があったということですけれども、最近は四十五歳から勧奨が来ている。三カ月間ぐらいの技能習得期間を設けて、この間には一〇〇%給料を払ってやる、そしてその後は退職である、こういうふうな傾向も私の調査でも幾つか見られるわけなんです。中には課長さんが技能習得の研修だといって何をやっているかといったら、ラーメン屋さんで仕事をしている。三カ月間そこで研修をするんだとか、あるいは料理学校に五十代の方々が大分ふえてきているというふうな傾向も見られるわけでありまして、そういう意味では、特に中高年齢層の雇用というのは今後大事な問題でありますので、これは法文の中にも労働大臣との意見の交換という問題もございますし、労働省所管の関係法規もさらに充実されるようでありますが、ぜひその点十分な配慮を強く求めておきたいと思うわけであります。  時間がありませんので最後に。私、愛媛県の新居浜にこの間行ってきたのですが、あそこはまさに住友の城下町でして、住友化学、住友アルミ、あるいは鉱山、重機、金属、そして新居浜の臨海部分は全部住友なんです。ですから、住友がどこかこければ全部こけてしまうというふうな、町の中を回ってみてもそういう印象でございましたし、市長さんやあるいは関係者の皆さんも、こもごもこういうお話をされておりました。率直なところ、必ずしもこの特安法に余り大きな期待をかけていないというのが現実でありまして、それだけ影響が深刻なんですね。  しかも、愛媛県では昭和三十九年から新居浜を中心にして東予開発新産都市計画ということで、第一次、第二次、第三次と、これは国の資金の投資もありますけれども、地方自治体を含めてこの十七年間に総額五千百八十三億円投資をしているというのです。この中の約半分が用地あるいは臨海の港湾の設備などでありますが、あとの半分ぐらいは住友が進出するに伴ってのつまり社会資本の充実。これがずっと後退をして、一時は一万五千人ぐらいいた労働者が、いまはもう四千人ぐらいに減ってしまったということで、町の死活問題だというふうなお話もございました。  さらに、ここでは鉄鋼組合が、いわゆる産地法に基づいて適用されて、現在いろいろ販路の開拓、人材養成などもやっておるわけなんですが、これが五十九年には適用が切れてしまうというふうになった後では、一体われわれとしてはどうなるんであろうか。今度の企業城下町法でうまくカバーができるんだろうか、こういう心配があるわけでして、できれば産地法もさらに延長をしてもらいたいし、城下町法でもいろいろカバーをしてもらいたい、こういう御意見も強いわけなんですが、ちょっとその点について中小企業庁長官の御見解を承りたいと思います。
  152. 神谷和男

    ○神谷政府委員 新居浜の状況については、私どもも関心を持って調査をいたしております。  産地法と城下町法、これはいわゆるともにその地域が苦しんでおることは事実でございますけれども、原因、主体が違う。これは午前中の当委員会でも御説明いたしましたけれども、産地の場合には、産地を形成しておる中小企業自身が経済の激変の影響を受けて非常に苦しんで、新しい道を一生懸命努力しておる。それから城下町法は、いわゆる特定事業所が影響を受けたことによって、それに付随しておる、あるいはそれからの影響のもとでかなり事業活動を行っておる中小企業者が、やはり新しい道を開拓しながらそちらの方で活路を見出していきたい、こういうことでございますので、原因あるいは対象は異なりますけれども、たまたま産地の指定を受けておるところが、別途の特定事業所の影響を受けて城下町法でダブルで指定されるというようなところもございます。これらのところでは、新事業、新分野の開拓につきましては両者の関係をよく見ながら、私どもの方としては適切な運用をしてまいりたいと思っておりますが、産地法につきまして期限が六十一年に参ります。あるいは五年間の新分野開拓事業をいろいろ行っていただいておりますが、これがその先どうなるのか、こういう御意見があることもわれわれかねがね伺っておるわけでございますが、産地法に関してまず申し上げれば、これは当初二、三年かけまして地域指定を行いながら、地域指定を受けたところに関しては五年ぐらいのところで新しい分野を開拓していきたい、こういうことで七年の時限立法になっておるわけでございまして、われわれといたしましては、それらの中から出てきた新しい努力を、午前中も申し上げましたが、販路開拓等の努力の後押しをしながらひとつ生かして、産地ができるだけ新しい分野で活躍していただけるよう進めていきたいと思っております。  現在のところ、時限立法でございますので、私どもとしては、その先のところというのはいまの段階では特に新しい方策というものを明示いたしておりません。その時点において産地がどういう状況であるかということをよく見きわめながら検討してまいりたいと思っておりますが、やはり一定の後押しをした後、できるだけ自主的な努力で進めていっていただきたいと思っております。しかし、これに企業城下町でダブルの影響を受けておるものは、当然のことながらこちらの法律でその地域の実態を見ながら、両者の重複というものは避けながらも適切な運用を進めてまいりたい、このように概略考えております。
  153. 渡辺貢

    渡辺(貢)委員 ぜひそういう努力を引き続きしていただきたいと思うわけでありますが、私どもは、決してこうした基礎素材産業に対する国の助成というものを単純に否定するわけではありません。  ただ一時間余りの論議の中で幾つかの問題点を私も指摘したわけでありますけれども、この表の三に、これは一つの典型的な例でありますが、住友グループ十一社ですね。経常利益、昭和五十二年三月期と五十七年の三月期を対比してみた場合に、五十二年三月期は九百九十九億九千万円、五十七年三月期は三千二百九十八億七千五百万円、しかもこの中で従業員の数は一万人減っているわけなんです。  これだけグループ全体としては大変大きな利益を上げていく。そして、先ほども触れましたように、海外に資本が進出していく場合には、単純に単一の企業ではなくてグループとして進出をしていくわけでありますし、あるいは国内で新しい臨海なら臨海に進出をする場合でも、グループ全体として進出をしながら利潤を上げていくというのが現状でありますので、ぜひそういう点を十分にこれからの施策にも踏まえていただいて、まさに国民経済的な視野、国民生活が守られるような、そして日本経済が新たな活力を持って前進できるように私どもも努力をしたいと思うわけでありますけれども、時間が参りましたので、以上で質問を終わりたいと思います。
  154. 登坂重次郎

    登坂委員長 次に、石原健太郎君。
  155. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 繰り返しのような質問でちょっと恐縮なんですけれども、どうもまだ腑に落ちない面がありますので、お尋ねをさしていただきます。  今回の法の改正を考えますときに、世界経済の面では日ごろ保護主義反対、保護主義反対ということを唱えておりますけれども、国内経済面では特定産業について保護的な施策をとろうとしているということで、やはりこれは貿易摩擦の火種になるのではないかと心配に思われるわけです。  現についこの間自民党の議員団、加藤紘一さんが団長でアメリカに行ってこられたようですけれども、アメリカ側からは、日本産業政策についても批判の声が強かったということが言われております。また、OECDの積極的調整策がある程度そういった保護的なこともやむを得ないというようなことを言っていると、大臣再々言われるわけでありますけれども、OECDの場合には域内で一〇%からの年々のインフレがあり、また失業も七%という大変高い失業率にあるわけであります。そういう前提に立ってのOECDの積極的調整策が出されているわけで、これも保護的な経済政策を国内でとるということの隠れみのにはなり得ないのではないかという感じがいたします。また、このOECDで言っていることは、こういった保護的な政策をとる大前提として、そういう政策がとられるのはただ二つの場合だけだということで、その一つには、この産業がわずかながら生き残れる望みがあり、一時的な援助を供与することが社会的な面から云々ということと、もう一つは、かかる産業が国際的市場において真に競争的になり得るという仮定に基づいた場合、その二つの場合だけ許されることであるというようなことを言っておるわけであります。  こういうことであってもやはり大臣は、海外から批判を受けるようなことはないというふうに確信を持っておられるのかどうかをまずお尋ねしたいと思います。
  156. 山中貞則

    山中国務大臣 アメリカとECの間などは日本とアメリカどころじゃない、大変すさまじいやりとりをいまやっています、ガットの場とかあるいは二国間協議等で。それで今度はECと言っていますが、構成十カ国の間ではこれまた大変、きのうのEC通貨のスネークフロート幅の合意にしても、フランスがわがままを言う、ドイツはそうはいかぬと言う、ああいう調子で、ECと言いながら地域の中ではそれぞれ国の主張を繰り返しておりまして、要するに、自分の国家、民族が生きていくためにとらなければならない主義は自分の国で決める、おまえの国でやっていることに文句を言わない。——あるいは、おまえの国のことには文句を言うというのも中にはいるようですが、そういうことですから、日本の方も余り卑屈になる必要はないと私は思っています。卑屈というか、言われたら何か対応しなければいかぬだろう、指摘をされたらどうしようかという。  これからいかがでしょうか、やはりこちらの方も、さっきは内政干渉と言うつもりだったと私は言いましたけれども、アメリカのやっていることでも日本から見たら気に食わぬこともあるわけでしょう。自動車の輸出をアメリカの小型自動車が軌道に乗るまで待ってくれないかという二国間交渉をやって、じゃ二年間待ちましょう、三年目はその継続の可否を含めて検討する、四年目はいかなることがあってもやらない、こう書いてある。しかしアメリカは、議会を中心にあるいは自動車業界を中心に、おまえは日本に行ってぜひ四年目をかち取ってこいというのがUSTRのブロック代表に対するはなむけの言葉だったわけですね。しかし、じゃ交渉に入った場合にどうであったかといえば、三年目の継続の可否について検討するということについては、日本側の見解は可である、よろしい、通告は前年度同台数とする、以上が日本の通告である。四年目についてはやらないとお互いに確認をしているのであるから、日本の方も四年目についてはやらないということをはっきり言いましたけれども、むしろありがとうという感じで、日本配慮に感謝するという態度で帰りましたが、その後それに対して、日本に行ってきたけれどもけしからぬ大臣だったというようなことは言っていませんです。  確かにアメリカの政界や産業界の中で、日本がいろいろな手だてを講じながら、輸出補助金こそガット違反だからしないようになったけれども、とうも日本産業育成政策というのはこそこそやって、いつの間にか気がついたときにはアメリカが追いつかれておるというような——最近は、さっきもちょっと触れましたが、日本はいずれ飛行機のジェットエンジンの部門でもアメリカの脅威となるであろうというようなことまで言うくらい、まだこっちの方は全然その段階に達していないのに、もう先を読んで警戒信号を出すというような状態があります。  四極で集まりましたときもそうですが、集まって話し合いをするとみんないいことを言うのですよ、保護貿易阻止、自由貿易堅持ですね。そしてそれが終わって、共同記者会見を終わって今度はアメリカとカナダとECとで始めると、さっき打ち合わせたことなどはもう全部どこかへ置いてしまって、やれフランスはビデオテープがどうだの、やれ誘致した企業なのにそれに対してシャシーキットは減らせとか、全くきのうの人ときょうの人と同じかいなと思うような交渉をやっていますが、こっちも遠慮することはないので、どんどん相手方のやっていることの不当なこと、そういうものを、少なくとも日本経済外交で悪いことをしていない、指摘されたからといって服従する必要はない、交渉はするという姿勢を持って進んでいかなければならぬと私は思う。  しかし、先ほども述べましたように、アメリカの千二百万の失業者というものを政治の上から、為政者の上から考えれば大変なことである、日本の場合に当てはめれば六百万人の失業者ですからね。そういう私たち配慮すべきところは、アメリカの民衆の苦しみは理解してあげる。そういうことを背後に持ちながら、不当な言いがかり等に屈していくということはやらないという姿勢を貫いていきたいと思います。いまに山中はけがするさ、そんなことでやれるものかと言う声も聞こえます。しかし、けがしてもその方向が日本の未来のためにプラスであれば砕けてもともとでしょう、というつもりでやってまいります。
  157. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 日本経済的繁栄は貿易に依存するところが非常に大きいと思うのです、特に自由貿易ですか。そうする場合、国内で今回のような産業保護的な政策をとるという場合に、外国に保護主義的な芽が芽生えてきたときに、外国に向かってそういうことはけしからぬと言いづらくなっていくのじゃないでしょうか。
  158. 山中貞則

    山中国務大臣 全然そんなことを感じておりません。日本日本産業活性化、あるいはまた日本特定産業が沈んでしまうということに正当な理由がある、それを国が少し手をかして立ち直らせてあげるということをやるわけですから、それを外国から言われたからといって別段へとも思いませんし、言いたい者は勝手に言えばいいじゃないかというつもりでおります。
  159. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、外国に保護貿易主義的な傾向がだんだん強まっても、それに対しても文句は言わないということでしょうか。
  160. 山中貞則

    山中国務大臣 私たちのいまやろうとしていることは保護貿易じゃないのです。輸入を阻止しようとかなんとかということは考えておりません。しかし、アメリカ、ヨーロッパでは明白に、日本からの輸入を阻止しようとする動きをするわけですね。まだヨーロッパではできていないからというだけの理由で、ディジタル・オーディオ・ディスクの関税を九・五%から一八%に上げよう、音響機器の二倍の関税にして、まだ日本で一台も輸出していないのにもう垣根をつくるわけですね。だから、そういうやり方は君たち一体——このディジタル・オーディオ・ディスクの発する音というのはすばらしい音であって、カラヤンが聞いて、自分が初めて聞いた音だと驚嘆した。そういうものを、ベートーベンから始まってビートルズまで出したあの地域の伝統的にすばらしい耳を持っている国民のニーズというもの、自分たちも聞きたいというニーズは全然おいて、そういうことをあなたたちはなぜやる。それならば日本業界を、フィリップスでも何でもそっちと話にやるから、ヨーロッパの中で日本も加勢をするから、ヨーロッパの民衆の耳が欲しがるものについてまず提供する努力をしなさい。自分たちが一緒に始めたのにまだ販売できないのを恥と思いなさい。だから、話し合いにやるから関税を引き上げるなんということはやめなさい。しかし、引き上げて一九%にしても、あるいはそれを乗り越えてすばらしいものは民衆は買うかもしれないよということで堂々とやっていまして、向こうも、言われてみればそうかなということになっていますから、まあ余り天が落ちてきやしないかという心配をしないで、これからはひとつ胸を張ってみんな一緒にがんばっていこうじゃありませんか。
  161. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 確かに今回の法の改正が、輸入を規制しようとかなんとかしようとしているものじゃないということは私もよくわかりますけれども、世界経済の面では自由主義、自由主義と言いながら、国内経済では保護的なものをとろうとしているところに矛盾があるのじゃないでしょうかということを私はちょっと感じておるので、いまのような質問を申し上げた次第であります。  それから次に、今日の経済的な発展は国民すべてが大変努力したその成果であるとは思いますけれども、それと同時に、自由主義経済体制だったからこそこういう成果が得られたのじゃないかと思うわけであります。計画経済であるとか社会主義経済であればどうしても産業の効率というのは落ちるようでありますし、現に世界を見渡したときもそういう実態になっているのじゃないかという感じもするわけであります。  今回のこの法の改正は、一部の業界計画経済といいますか政府規制を取り入れようとするものでありますけれども、こういう低成長の時代だからこそ、公取委員長も言っておられましたけれども、競争というものが大切になってくるのじゃないか。また効率の悪い産業に保護を加えて温存すれば経済全体の活力を損ねるのではないか、こういった点も心配に思われるわけであります。政府規制を加えることがこの法律目的とする国民経済の健全な発展ということに本当に役に立つのかどうか、この辺疑問に感じておりますけれども大臣はどのようにお考えになっておられますでしょうか。
  162. 山中貞則

    山中国務大臣 今回の法律は、政府がこういう法律だからこうしなさいと命令をしているという法律ではありません。業界の、政府のインセンティブを与えられたことによって再生、発展しよう、生き延びようとするものに対して手助けをするわけでございます。大臣がアウトサイダーに対して口を出すこともないと本当は問題があるのですけれども、それはしかし、業界の自主性はそういう状態にあるのだから、そこまで文句を言うのはやめようということで、私の決断でそれは落としてございます。  ですから、業界の自主性で、指定業種に入ったから自分のところはやれというのではなくて、やり得る条件を政府が整えてくれた、やるかやらないかは業界でございます。  したがって、ここに七業種書いてあって、政令で、いまのところは考えられませんが、仮にあるとしても、それも一年半の余裕しかありませんから、自分たちで手を挙げて積極的に進むものしかインセンティブを与えないということでありますから、政府が強制して一部の産業を救済しようという意味ではありません。救済は後についていくものであって、産業が先に出るということでございますから、外国から見ても、また国内政策から見ても、特定のものに不当な行き過ぎた援助を与えるという意味には、ちょっとこの法律はそこまではいっていないものという確信を私は持っておりますから、御理解を願います。
  163. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 今回対象になっている産業というものは、大変容易でない立場に置かれていることは理解できるわけですけれども、こういうある種の産業が衰えたり、また新しい産業が活発になってくるということの繰り返しで経済というものは発展してきたようにも思えるわけであります。  今回、そういう容易でない産業に対していろいろ税の特別措置であるとか財政的な支援、あるいはカルテルを認める、いま救済でないとはおっしゃいましたけれども、救済でなければ助成というのですか、そういう措置をとられる目的というものがいまひとつわからないのですけれども……。
  164. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほどアルミの例で申しましたように、水力の廉価のものでもってつくられるアメリカ、カナダ等を象徴的な国としてとらえて言えば、地金がどんどん輸入され始めた、しかしとても日本の電気料金で計算したのでは、まさに半分ぐらいの値で入ってくるのです。こっちは最初はダンピング提訴のつもりで調べてみたのですけれども、全然ダンピングではなくて、正確な計算のもとのコストで日本に着いてしまう。ということは、日本関連、競争する対象にある企業は、ほっておけば消える。消えた場合には、これは輸出国の一方的な売り手市場になりますから、たちまち二倍の値段で売られても、それを買わざるを得ない日本に陥ることがいいか悪いかという問題は、やはり高度の私たちのあり方、経済のあり方、国民生活の将来を考えて判断をして決めなければならないことだと思うのです。  したがって、私たちは、日本の国民生活あるいはまた国家経済というものの上から、やはり最低のものは保障しておくだけのことは、これは国家的にも要請されることでございます。もちろん業種はしぼってございますし、それは自発的なものでない限り計画が出てこないわけでありますから、一年半待ったところで、そういう自立意識のないところは手を挙げてこないかもしれません。しかし、これは五年間なんですから、五年たったらもう何の保護もありませんよ、まさに独禁法の規制のもとにぴたりと一般産業界のように入ってしまうわけでありますから、いい悪いは別として、五年間の立ち上がる余裕を与えてあげるというだけのことでございます。
  165. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 輸出国の一方的市場になるだろうということを心配されているようでありますけれどもアルミなんかにしましても、輸出国は特定の一つの国に限られているわけではなくて、あちこち、アメリカ、カナダ、ベネズエラとかあるわけです。  そうすると大臣は、そういう国々が国際的なカルテルでもやるということを心配されているのでしょうか。  それからまた、もしそういうお考えに立つならば、日本は世界競争に勝てるあらゆる産業を備えていかなくてはならない、こういうお考えに立っていらっしゃるのでしょうか。
  166. 山中貞則

    山中国務大臣 冒頭私が申したわが国の特徴、原材料をほとんど自国の領土内に持っていない国、それが高度の工業国家に変貌してきております。なおさらに、地域産業その他ハイテクノロジー等を含めて、人類の未来を創造する、そういうところまで日本産業は来ておりますが、しかし、少なくとも原料を海外に仰いで、そして付加価値をつけていかなければならない、そういう宿命というものを日本が持っておるということを申しました。  したがって、原材料が国内で入手できる国、そういうものはそれなりに自分たちの国のものとして、法律も必要なしでやっていけると思うのです。たとえばアメリカなどは、日本よりも高い国民所得を持って構成する二億を超える消費者がおって、マーケットがあって、資源も、石油も含めて本気になれば自給国でありますね。したがって、ほとんどの原材料を持って、大量生産、大量供給、大量消費というローテーションが一国だけで組める国、うらやましいと思います。しかしそのアメリカでも、チタニウムというものはどうもアメリカの国内ではないということになりますと、アメリカはチタニウムを国家備蓄として輸入をして、これは軍需用もありましょうが、ちゃんと備えている。そういうことを考えますと、みんな自分たちの国家の未来について、やらなければならないことはやっておる。  日本の場合はことに、原料の確保から始まって、日本に持ってきて工業活動になるわけでありますから、その意味では、ほかの国々とはやや趣を異にした、むしろ奇跡の経済発展をやっている国ということを考えますと、その原材料の面で、エネルギーを含めて問題があれば、そこらのところは国民的な合意を得ながらある程度めんどうを見て差し上げる、そういう必然性といいますか、日本はそういう立場に置かれた上の工業国家であるということを、この際やはり根底から考えてみなければならない。  そうすると、何をしてあげなければならないのか。しかし、甘え構造を許さないというのはどうするのか。それは、五年目にはもうめんどうは見ませんよ、五年間でやってごらんなさいということを言っておるわけでありますから、その後は本当の企業論理に基づいた合理的な努力をする、そしてできないものは、それはそのときの話でやむを得ないのじゃないかという姿勢をとるわけであります。  諸外国から見られても、日本の持っている原材料と製品との特殊な関係、もし日本以外の国だったら、これだけ無資源国に近い日本でこのような工業発展をすることは不可能であったろうと私は思います。それをなし遂げた日本民族というものの教育レベル、世界的に最もすぐれたレベルを人々が持っておるということを考えますと——たとえば、日本の統計というのは世界の最高レベルですね。それは、私は何を言おうとしているかと言えば、たとえば中国では、人口が実際幾らあるのか、正確につかむのに苦労しているわけですね。しかし日本の場合、アメリカよりもイギリスよりもすぐれた国勢調査ができるという能力、国勢調査の依頼票を差し上げてちょっと説明をすると国民全部のレベルが高いですから、末端の全国の部落会長さんのあたりまですばらしいレベルの人々がいる日本、そのことによって、それらの人々がつくってくれる統計というものを全国集計した場合に、日本の統計の技術というのは世界一であると言われております。それは技術を超えて、日本国民の全体のレベルが非常に優秀であるということを証明しているものだ。  ちょっと本質と外れた発言でありますが、日本の特性というものを考える上で、御参考までに申し上げる次第でございます。
  167. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 世界全体を考えますときに、世界各国がそれぞれの国で最もふさわしい産業を伸ばしていって、お互い足りない面を補っていくというところにより大きな発展が望めるのじゃないか。また日本が、あらゆる産業といいますか、原料を輸入しなければならない産業すべてを賄っていかなくてはならない、そういう面で国際的な競争力をつけていくんだということになってまいりますと、ますます日本は輸入する物が少なくなって、貿易摩擦が激しくなっていくんじゃないか。外国の方が有利に生産できるものは外国に任せて、日本日本にふさわしいものをつくる、こういうことが大切なんじゃないかと思いますが、その辺はいかにお考えですか。
  168. 山中貞則

    山中国務大臣 そういう見方をしてもいいと私、思うのです。もしそうなった場合に、日本人はどういう生活になるか。いわゆる高度な工業は存在しない国家になりますから、そうすると、たとえば私たちの食事のことを考えると、御飯は何とかなるでしょう。みそ汁は、これは輸入大豆でございますから、まずみそ汁は余り食べられない。そして、漬物の方は何とか国産できても塩の方が問題がありますから、味気ないものになるでしょうし、漁業は世界のトップのクラスにあるといっても、石油を輸入できないという状態の国家になった場合、そうすると、油をたいて外の海に出て魚を持って帰ってきて、その油のコストを魚価に転嫁して初めて漁業というものは成り立つわけですね。しかし現在の漁業者は——今度四ドル、五ドル下がりましたからもう一歩前進した計画は立てられるかもしれませんが、漁業者というものは、油高によって、自分たちは一体何だろう、漁業というのは何だろう、海に出て魚をとって持って帰れば、消費者の魚離れもあり、魚価に転嫁できなければ——漁業に出るたびに、帰ってきたら赤字なんですね。ことに外洋に出る遠洋漁業などは、帰るたびに一億ないし一億何千万というような赤字を抱えながら、それをやめられない。なぜだというと、持っておれば当然固定資産税から、あるいは岸につないでおいても係船料、あるいは働く人たちに対して月給を払わなければならぬ、そういう立場に立ってやめるにもやめられない、そういうことであります。手こぎ舟で「おやじの海」の歌のように、右手に櫓こぎ左で何とかというのがありますね、ああいうふうにしてやれば、まあ近海魚あたりとれないことはありませんから、何とか魚は一週間に一回ぐらいは食ぜんに上ると思いますが、そういう生活に日本の国民が戻れるだろうか。また、そういう生活に戻していいんだろうか。もう自分の手でつくるものしか生産できないということになると、荷車の時代になり、あるいはまた手車の時代になり、そういう状態。たんぼはまたかじ屋さんの打ったすき、くわで耕さなければならぬ、そういう時代に日本を戻すことは不可能だと私は思うのですね。  そうすると、日本国民の生活を維持しながら、なお向上への道をたどっていくという場合には、日本の場合、先ほど申した特質を踏まえて、何も産業の怠けているものを助成する気は全くありませんので、そういう自立を促すために、国民経済の低下を防ぐために私たちがやらなければならないこと、これは現時点において国の政治のうちの相当大きな選択の一つだと考えます。そのようなことから今回の法案提出されておるとお考えいただきたいと思います。
  169. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 大臣はちょっと、私の言い方が悪かったのかもしれないのですけれども、飛躍して物をおっしゃっている。私は、あくまでも今回の法の対象になっている、無理をしながら日本に守っていこうというような産業について申し上げたわけでありまして、自動車だって電気製品だって、別にそういった政府の特別な助成とかなんとかがなしにちゃんとやっていっている産業も幾らもあるわけで、私がいま申し上げたのはアルミとか石油化学とか、そういったことを対象に申し上げたつもりであります。  それで、お伺いいたしますけれども、今回のこの法の改正がなされれば、アルミとか石油化学にしましても、本当に国際的な競争力がついていくものとお考えになっているのかどうか、その辺をお伺いいたします。
  170. 山中貞則

    山中国務大臣 私が飛躍して極端なことを言ったのではなくて、そういうことにしてはいけない、言うならばやはり日本は苦しくとも前進しなければならぬのですね。その前進のための選択の一つにいまのものがある。たとえば自動車とか電気とかお挙げになりましたけれども、これだって原材料が入ろうにも入れない状態になれば、日本から自動車は消えていくしかないと思うのですよ。そういうことを考えてさっき手車、荷車ということを言ったわけです。しかし、日本の財政を健全化させながら、そして国民経済活性化していくということを考えた場合に、私たちの選択の一つとしての決断であって、しかも、あくまでも国家が強制するものではないということの方で、さっき申し上げた、日本が原材料を入手できない国になったときにはというのは確かに極論ではありましょうけれども日本政治に携わる者として、日本国民の現在の生活の繁栄なり幸せなり、そういうものを少しでも質のいいものに、もっとよりよきものにしていくためにもやらなければならないことがある。その中で基礎素材産業は、それの周辺を含めて、あるいは従業者も含めて、単に経営のみならず、あらゆる配慮をしてあげて、できれば五年後に世界経済に伍して堂々と歩く産業に立ち直ってほしいという願いを込めての法律でございます。
  171. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 事務方の方にお尋ねいたしますけれども、さきの委員会で参考人から意見をお聞きしたときに、河合参考人は、今回の法が改正されたとしても立ち直ることのできない、国際競争力を持つことのできない産業が幾つかあると思います、こう言っておられましたけれども通産省の方ではどう考えておられるのか。それからまた、そういう産業に対しては一体どのような構造改善基本計画を立てていくおつもりなのか、大ざっぱなところでいいですからお聞かせいただきたいと思います。
  172. 小長啓一

    小長政府委員 新特安法の対象業種、法定業種としては七つの業種があるわけでございますけれども、これは設備処理という縮小の政策と、それから事業提携とかあるいは活性化設備投資あるいは技術開発といったような活性化措置と併用することによりまして、一方において縮小、一方において活性化ということで総合的な政策を講じていきたいというふうに思っておるわけでございます。  ただ、本法の対象として、いわゆる総合エネルギー対策そのものはこの法律では十分対象にはなっていないわけでございまして、それはきょう大臣の御説明にもるるございましたように、最近の原油価格の値下げというその好機をうまくつかみまして、先ほどの縮小と活性化の内容を持っておりますこの新特安法を早く国会で成立をさせていただきまして、業種対策として実現できるようにしていただくことをわれわれは切望するものでございます。
  173. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、今回この法が改正されれば、いま問題になっている特定の業種あるいはこれから政令で指定されるであろう業種、そういったものはすべて国際競争力を持てるようになる、こう想定していらっしゃるわけでしょうか。
  174. 小長啓一

    小長政府委員 業界の自助努力と相まちまして、この政策的支援が背後にあることによりまして、業界にとって活路を見出していくことができるのではないかというふうに考えておりまして、いわゆる言われるところの客観的な国際競争力が短時日のうちにできてくるかどうかということにつきましては、これからの推移を十分見守ってまいりたいというふうに考えております。
  175. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それから次に、提案理由の中で、第二次石油危機が発生したために再び設備の過剰が生じた、こうあるわけでありますけれども、いろいろ業界を見てみますと、五十二年と五十六年の内需を見てみますと、平電炉、アルミ、ナイロン短繊維、長繊維、ポリエステル長繊維、短繊維、肥料関係を除いては、すべて内需というのは拡大しているわけですね。それにもかかわらず過剰が生じたというふうに言われるわけでありますけれども、そうすると、石油危機というものがどういう面でそういった業界不況になるような作用を与えたのか、どう判断しておられるのか、お聞かせください。
  176. 小長啓一

    小長政府委員 特安法対象業種の十四業種につきましては、平均処理目標率が二三%で、平均処理達成率九五%ということで設備処理が行われたわけでございまして、それによりまして退出企業数も百五十一を数えておるというような状況なわけでございますが、そのような設備処理とあわせまして、需要の回復によりまして稼働率は上昇をしたわけでございます。造船を除く十三業種についての平均稼働率を見てみますと、五十二年度の段階では六八%ということであったわけでございますが、先ほど設備処理の円滑な推進とそれから国内需要の回復等によりまして、五十四年度には八七%まで回復をしたわけでございます。しかし、その後の第二次オイルショックの影響によります内需の減少、輸入の増大等によりましてほとんどの業種稼働率の低下が見られまして、再び過剰設備状態になっておるということが現状でございまして、具体的には、五十六年度の段階では稼働率は七五%まで下がっておるという状況になっておるわけでございます。
  177. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そのオイルショック前と五十六年を比べて、内需は拡大しているにかかわらず操業率が落ちている。それは、石油危機がどういう働きをしてそういう過剰設備を生じさせていると判断していらっしゃるのですか。
  178. 小長啓一

    小長政府委員 私どもの対象十四業種について見ますと、内需はむしろ減っておるわけでございまして、輸入が増大をしておるということでございます。
  179. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうすると、輸入が増大したことが設備の過剰を生み出したということですか。
  180. 小長啓一

    小長政府委員 原材料・エネルギーコストの上昇等の構造的要因によりまして国際競争力が低下をいたしまして、その結果輸入が増大をしたということでございまして、その結果構造的困難が一層深まっておるという状況なわけでございます。
  181. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、今回の法改正は、やはりその輸入に対抗するための一つの手段というふうにも理解できるわけでありますけれども、同時に、こういった設備の過剰の問題、こういった産業の置かれている問題を本当に解決しようとするならば、エネルギー、原材料あるいは輸入、そういったところの問題を解決しないとこの業界の問題は解決できないんじゃないでしょうか。
  182. 小長啓一

    小長政府委員 先ほど先生の御所論にもございましたけれども、私どもは、保護貿易主義という政策はとらないわけでございます。したがいまして、輸入が増加している状況下にありましても、歯を食いしばってでも開放経済体制は堅持しながら構造改善を進めていくというのが基本的姿勢なわけでございます。  しかも、本法におきましては、先ほども申しましたように、設備処理を中心といたします縮小政策と、それから事業提携、技術開発、活性化設備投資を中心といたします活性化施策ということと両々相まちまして、産業構造改善を進めていきたいというふうに思っておるわけでございまして、そういう施策によりまして私どもは、その構造的困難に直面しておる業種につきましても活路を見出すことができるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  具体的には、税制、財投、予算上の支援措置を講ずることによりまして、原材料・エネルギーコスト低減のための設備投資技術開発を積極的に推進してまいることを考えておるわけでございますし、それをさらに具体的に申しますと、省エネルギーや省原料型の設備の導入とか、あるいは石油共同火力の石炭転換等の原燃料転換の問題とか、あるいはアルミニウム溶鉱炉法等による新しい製法の技術開発といったようなことを、各業種の実態に応じまして講じてまいるということを考えておるわけでございます。
  183. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 電力料金一つとりましても、日本ではいま一キロワット時十六円ないし十七円ぐらいなんですか。欧米では米国が四、五円、カナダではいまでも一、二円。これは電力料金の例ですけれども、こういった相違を考えますときに、エネルギーコスト低減のための技術革新とかなんとかいっても、相当年数がかかってきて、結局こういった助成策あるいはカルテルというものが長期間にわたるおそれがあるんじゃないかというふうに考えられますけれども、その点はいかがに判断されておるんでしょうか。
  184. 小長啓一

    小長政府委員 私どもは、この法律は五年間の時限立法ということで対処するつもりでございますし、技術開発そのものは、おっしゃるように物によっては五年間で終わらないものがあるかもしれませんが、技術開発そのものは本法の対象ということではなくて、継続して進め得ることは十分可能であると考えておるわけでございます。  それから、先生指摘のように、いわゆる基礎素材産業内部における省エネルギーとかあるいは代替エネルギーとかといったエネルギー対策のほかに総合的なエネルギー対策が必要であるという点は、御指摘のとおりでございまして、基礎素材産業の電力コスト対策につきましては、基本的には、現在進めております原子力発電の促進ということを図ることによりまして総発電コストを低減していくということが基本的に重要ではないかと考えております。また、従来から実施をされております需給調整契約を活用することによりまして、基礎素材産業の負荷調整面における協力のもとに電気の供給を効率的に行いまして、そのメリットをそれらの産業に還元することによりまして電力コストの低減を図ってきておるわけでございますけれども、今後とも、この需給調整契約の活用を図ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  185. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 それから次に、今度法律の中で事業の提携ということがうたわれているわけでありますけれども、いままでの法律のもとでも、企業の合併、営業譲渡、共販会社の設立、生産の委託、受託、そういったことはやられてきたわけですね。それを、いままでもやってきたものをなぜ今回特に法律に明記したのか、その辺の理由について御説明いただければと思います。
  186. 小長啓一

    小長政府委員 御指摘のように、確かに現行特安法下におきましても、 幾つかの業種につきましては合併や営業譲渡あるいは共販会社の設立、生産の受委託といったような事業集約化が行われたことは事実でございます。ただ、新法にございますように、事業集約化を円滑化するための特別な規定というのは設けられてなかったわけでございますから、そういう規定があればもっと進んだであろう事業集約化が進まなかったということは、指摘できるのではないかと思うわけでございます。と申しますのも、事業集約化というのは、具体的に進める場合には、やはり地域社会との関係であるとかあるいは金融機関との意見調整とか、いろいろ複雑な利害関係が絡んでいる場合が多いわけでございますし、それからまた、独禁法との関係も問題になることもあるわけでございまして、そういう意味で、その実施がためらわれる場合が見られるわけでございます。  ところが、新法におきましては、事業提携につきまして基本計画の中でその方向を明示いたしますし、具体的な事業提携計画の承認に当たりまして、主務大臣公正取引委員会と事前に十分意見調整をし、また事後につきましても、事情の変化等に応じまして意見調整をするということになっておるわけでございます。しかも、税制、財投等によりましてバックアップの措置もとられておるわけでございますので、業界といたしましては、正々堂々とこの法律のもとで事業提携を進めていくことができるのではないかというふうに考えております。
  187. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 そうしますと、結局は、いままで窮屈だった独禁法のいろいろな枠組みというものを、少し窮屈でなくするといいますか、そういった提携というものをもっとやりやすくするといいますか、独禁法のいままでの枠組みを少し緩めるというか、そういうことが目的一つになっているわけですね。
  188. 小長啓一

    小長政府委員 事業提携につきましては、独禁法の運用を緩めるとか、あるいは独禁法の土手っ腹に穴をあけるとかということではないわけでございまして、新しい調整のスキームが法的に担保されたということになっておるわけでございまして、事前、事後の主務大臣公正取引委員会との意見調整を通じまして、どこまでの範囲が独禁法上大丈夫であるか、どこが問題であるかということがはっきりわかるわけでございますから、その範囲内におきまして、正々堂々と業界事業提携を推進することができるということでございます。  それからさらに、合併の問題でございますが、ガイドラインというものは、初めは、法律の中で判断基準の公表をすることを主務大臣公正取引委員会に求めるという規定を要求しておったわけでございますが、結論的にはそれは削除ということになったわけでございますけれども、この法律が制定される時期までに、公正取引委員会の方で合併に対する判断基準、ガイドラインというようなものが公表されることになっておるわけでございます。この合併に関する新しい審査基準というのも、業界にとりましては一つの目安を示されることになるわけでございまして、合併を考える場合の予見可能性ということを持ち得る形になるわけでございますので、これも業界にとっては好ましいことではないかというふうに考えております。
  189. 石原健太郎

    ○石原(健)委員 疑問も大体わかりましたので、これで質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  190. 登坂重次郎

    登坂委員長 次回は、明二十三日午前九時三十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十五分散会