運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-03-22 第98回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十二日(火曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 稲村 利幸君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 金子 みつ君   理事 田口 一男君 理事 平石磨作太郎君    理事 塩田  晋君       逢沢 英雄君    古賀  誠君       斉藤滋与史君    白川 勝彦君       田邉 國男君    津島 雄二君       戸沢 政方君    中野 四郎君       長野 祐也君    浜田卓二郎君       船田  元君    山下 徳夫君       池端 清一君    大原  亨君       川本 敏美君    栂野 泰二君       森井 忠良君    大橋 敏雄君       小渕 正義君    浦井  洋君       小沢 和秋君    菅  直人君       柿澤 弘治君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大野  明君  出席政府委員         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       増田 雅一君         労働省職業訓練         局長      北村 孝生君  委員外出席者         通商産業省産業         政策局産業組織         政策室長    藤島 安之君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      田辺 俊彦君         中小企業庁計画         部計画課長   吉田 文毅君         労働大臣官房審         議官      白井晋太郎君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ───────────── 委員の異動 三月四日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     岩垂寿喜男君   栂野 泰二君     木島喜兵衞君 同日  辞任         補欠選任   岩垂寿喜男君     川本 敏美君   木島喜兵衞君     栂野 泰二君 同月五日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     木島喜兵衞君 同日  辞任         補欠選任   木島喜兵衞君     川本 敏美君 同月七日  辞任         補欠選任   川本 敏美君     藤田 高敏君 同日  辞任         補欠選任   藤田 高敏君     川本 敏美君 同月十六日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     木村 俊夫君   白川 勝彦君     鯨岡 兵輔君   船田  元君     宮澤 喜一君   大橋 敏雄君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     古賀  誠君   鯨岡 兵輔君     白川 勝彦君   宮澤 喜一君     船田  元君   渡部 一郎君     大橋 敏雄君 同月二十二日  辞任         補欠選任   古賀  誠君     木村 武雄君   浜田卓二郎君     田澤 吉郎君   池端 清一君     武藤 山治君   大原  亨君     塚田 庄平君   和田 耕作君     小渕 正義君 同日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     古賀  誠君   田澤 吉郎君     浜田卓二郎君   塚田 庄平君     大原  亨君   武藤 山治君     池端 清一君   小渕 正義君     和田 耕作君     ───────────── 三月十八日  原子爆弾被爆者等援護法案森井忠良君外六名提出衆法第四号) 同月十日  優生保護法改正反対に関する請願安井吉典紹介)(第一三三一号)  同(河上民雄紹介)(第一四四五号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願大村襄治紹介)(第一三三二号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三七八号)  同(鳩山邦夫紹介)(第一四一〇号)  同外二件(亀岡高夫君紹介)(第一四四七号)  同(小泉純一郎紹介)(第一四七〇号)  同(齋藤邦吉紹介)(第一四七一号)  同(渡辺紘三君紹介)(第一四七二号)  じん肺法改正に関する請願大原亨紹介)(第一三三三号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三六八号)  同(池端清一紹介)(第一四七三号)  同(森井忠良紹介)(第一四七四号)  医療保険制度におけるマッサージ・はり・きゆうの取り扱い改善等に関する請願浦井洋紹介)(第一三五二号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願浦井洋紹介)(第一三五三号)  同(辻第一君紹介)(第一三五四号)  同(寺前巖紹介)(第一三五五号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一三五六号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三六九号)  同(戸田菊雄紹介)(第一四一二号)  てんかんの総合対策に関する請願山本政弘紹介)(第一三五七号)  同(平石磨作太郎紹介)(第一三七〇号)  優生保護法改正反対に関する請願藤原ひろ子紹介)(第一三五八号)  同(浦井洋紹介)(第一四七五号)  同(藤田スミ紹介)(第一四七六号)  年金制度改善等に関する請願伊藤茂紹介)(第一四一一号)  国立腎センター設立に関する請願河野洋平紹介)(第一四四三号)  優生保護法一部改正反対に関する請願串原義直紹介)(第一四四四号)  保育所振興対策確立に関する請願鹿野道彦紹介)(第一四四六号) 同月十六日  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願外一件(天野公義紹介)(第一四九七号)  同外五件(柿澤弘治紹介)(第一五四八号)  同外一件(野中英二紹介)(第一五四九号)  同(小林政子紹介)(第一六一一号)  同(不破哲三紹介)(第一六一二号)  同(有島重武君紹介)(第一六五六号)  同外二件(与謝野馨紹介)(第一六五七号)  民間保育事業振興に関する請願村岡兼造君紹介)(第一四九八号)  保育所振興対策確立に関する請願村岡兼造君紹介)(第一四九九号)  同(渡辺美智雄紹介)(第一五〇〇号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願小坂善太郎紹介)(第一五〇一号)  同外七件(三池信紹介)(第一五〇二号)  同(渡辺美智雄紹介)(第一五〇三号)  同外三件(伊東正義紹介)(第一五五〇号)  同外二件(大村襄治紹介)(第一五七八号)  同外二件(三塚博紹介)(第一六五八号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願外三件(白川勝彦紹介)(第一五〇四号)  同(森井忠良紹介)(第一五七九号)  同(岩佐恵美紹介)(第一六一五号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願堀昌雄紹介)(第一五〇五号)  同(谷洋一紹介)(第一六五九号)  療術制度化阻止に関する請願堀昌雄紹介)(第一五〇六号)  同(谷洋一紹介)(第一六六〇号)  年金制度改善等に関する請願岩垂寿喜男紹介)(第一五五一号)  優生保護法改正反対に関する請願土井たか子紹介)(第一五七七号)  同(佐藤観樹紹介)(第一六一三号)  同外九件(蓑輪幸代紹介)(第一六一四号)  社会福祉拡充等に関する請願浦井洋紹介)(第一六一〇号)  優生保護法第十四条の改悪反対に関する請願田中伊三次君紹介)(第一六五五号)  優生保護法の一部改正反対に関する請願平石磨作太郎紹介)(第一六六一号) 同月二十二日  食品衛生法改正及び食品被害者救済法制定に関する請願外十件(浅井美幸紹介)(第一六九一号)  同(大橋敏雄紹介)(第一六九二号)  同(柴田弘紹介)(第一六九三号)  同外一件(稲富稜人君紹介)(第一八〇六号)  同(西村章三紹介)(第一八〇七号)  同(吉田之久君紹介)(第一八〇八号)  同(米沢隆紹介)(第一八〇九号)  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願(竹入義勝君紹介)(第一六九四号)  優生保護法改正反対に関する請願外一件(土井たか子紹介)(第一六九五号)  同(河上民雄紹介)(第一七七六号)  同(土井たか子紹介)(第一七七七号)  保育所振興対策確立に関する請願相沢英之紹介)(第一六九六号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願武田一夫紹介)(第一六九七号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願渡辺朗紹介)(第一七〇九号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一八一〇号)  労働災害、職業病による患者の医療と生活保障等に関する請願田中伊三次君紹介)(第一七一〇号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願小沢貞孝紹介)(第一七一一号)  同外一件(岡田正勝紹介)(第一七一二号)  同外一件(小渕正義紹介)(第一七一三号)  同(塩田晋紹介)(第一七一四号)  同(部谷孝之紹介)(第一七一五号)  同外二件(山口鶴男紹介)(第一七一六号)  同外一件(山田太郎紹介)(第一七一七号)  同(和田耕作紹介)(第一七一八号)  同(安藤巖紹介)(第一七一九号)  同(岩佐恵美紹介)(第一七二〇号)  同(浦井洋紹介)(第一七二一号)  同(小沢和秋紹介)(第一七二二号)  同(金子満広紹介)(第一七二三号)  同(栗田翠紹介)(第一七二四号)  同(小林政子紹介)(第一七二五号)  同(榊利夫紹介)(第一七二六号)  同(瀬崎博義紹介)(第一七二七号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第一七二八号)  同(辻第一君紹介)(第一七二九号)  同(寺前巖紹介)(第一七三〇号)  同(中路雅弘紹介)(第一七三一号)  同(中島武敏紹介)(第一七三二号)  同(野間友一紹介)(第一七三三号)  同(林百郎君紹介)(第一七三四号)  同(東中光雄紹介)(第一七三五号)  同(不破哲三紹介)(第一七三六号)  同(藤田スミ紹介)(第一七三七号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一七三八号)  同(正森成二君紹介)(第一七三九号)  同(松本善明紹介)(第一七四〇号)  同(三浦久紹介)(第一七四一号)  同(三谷秀治紹介)(第一七四二号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一七四三号)  同(村上弘紹介)(第一七四四号)  同(山原健二郎紹介)(第一七四五号)  同(四ッ谷光子紹介)(第一七四六号)  同(渡辺貢紹介)(第一七四七号)  同(井上一成紹介)(第一七八〇号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第一七八一号)  同外三件(飛鳥田一雄紹介)(第一八一一号)  同外二件(伊藤茂紹介)(第一八一二号)  優生保護法改正反対に関する請願外九件(藤原ひろ子紹介)(第一七四八号)  同(寺前巖紹介)(第一八〇〇号)  優生保護法の一部改正反対に関する請願勝間田清一紹介)(第一七四九号)  同(嶋崎譲紹介)(第一七五〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第一七五一号)  同(田中伊三次君紹介)(第一七五二号)  同外二件(藤原ひろ子紹介)(第一七五三号)  同外三件(新盛辰雄紹介)(第一七七八号)  同(田口一男紹介)(第一七七九号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一八〇一号)  同(西中清紹介)(第一八〇二号)  同(野間友一紹介)(第一八〇三号)  優生保護法改悪反対に関する請願安藤巖紹介)(第一七五四号)  同(岩佐恵美紹介)(第一七五五号)  同(浦井洋紹介)(第一七五六号)  同(小沢和秋紹介)(第一七五七号)  同(栗田翠紹介)(第一七五八号)  同(小林政子紹介)(第一七五九号)  同(辻第一君紹介)(第一七六〇号)  同(藤田スミ紹介)(第一七六一号)  同外二件(藤原ひろ子紹介)(第一七六二号)  同(蓑輪幸代紹介)(第一七六三号)  同(四ッ谷光子紹介)(第一七六四号)  同(小林政子紹介)(第一八〇四号)  優生保護法一部改正反対に関する請願土井たか子紹介)(第一七六五号)  同(野口幸一紹介)(第一七六六号)  同(野口幸一紹介)(第一八〇五号)  優生保護法第十四条の改悪反対に関する請願土井たか子紹介)(第一七六七号)  同外一件(藤原ひろ子紹介)(第一七六八号)  社会保障の充実に関する請願安井吉典紹介)(第一七七五号)  身体障害者福祉法改正に関する請願岩佐恵美紹介)(第一七九四号)  保育所増設保育料父母負担軽減等に関する請願藤田スミ紹介)(第一七九五号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願浜田卓二郎紹介)(第一七九六号)  じん肺法改正に関する請願浦井洋紹介)(第一七九七号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願浦井洋紹介)(第一七九八号)  療術制度化阻止に関する請願浦井洋紹介)(第一七九九号) は本委員会に付託された。 同月十一日  優生保護法改正反対に関する請願(第一八九号)は「横路孝弘紹介」を「山口鶴男君外一名紹介」に訂正された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案内閣提出第二四号)      ────◇─────
  2. 稲村利幸

    稲村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
  3. 池端清一

    池端委員 質問時間がかなり削減をされましたので、私の方も整理して申し上げますが、答弁もひとつ簡明直截にお願いをしたいと思います。  まず最初に、長期にわたる景気の低迷、深刻な不況を反映いたしまして、雇用失業情勢も一段と深刻な状況に直面していると思うのであります。去る三月八日に総理府が発表いたしました労働力調査、これによりますと、ことし一月の完全失業率は二・七二%、総理府昭和二十八年にこの統計をとって以来史上最高数字になっている、こういう状況でございます。私はこれは最悪の状況ではないかと思うのでありますが、労働省雇用失業状況の実態についてどのように認識をされているのか、まずその点からお伺いをしたいと思うのであります。     〔委員長退席大石委員長代理着席
  4. 谷口隆志

    谷口政府委員 ただいま御指摘ございましたように、第二次石油ショック後、世界経済不況が長引いておりますし、そういう関連でわが国経済景気回復の足取りが緩やかであるというようなことがございまして、非常に厳しい雇用失業情勢が続いております。  たとえば昨年の四月から失業率が二・三%台になりまして、その後二・四%前後の失業率推移をいたしておりますし、有効求人倍率も昨年の五月から〇・六倍台を切りましてから、〇・五八、〇・五九、〇・六倍程度推移をいたしておるわけでございます。ただ、いま御指摘のございましたことしの一月の二・七二%の失業率につきましては、この労働力調査内容が、労働力人口、それから就業者雇用者、それに失業者数すべてが非常にふえたという従来と違った数字が出ておりますことと、私ども労働省の方での雇用関係指標、たとえば有効求人倍率とか毎月勤労統計とかそれらの状況、また私ども職業安定機関からとっております情報等によりましても、ここ一、二カ月で急激に悪化したというような報告もございませんし、それらとは若干乖離した数字になっておりますので、労働力調査内容につきましては、なおしばらく推移を見守りたいと思いますし、また、雇用失業情勢はいろいろな指標を総合して勘案しなければならぬと考えております。  いずれにしましても、冒頭申し上げましたように非常に厳しい雇用失業情勢で、同様な状況が続いておるというふうに認識をいたしておるわけでございます。
  5. 池端清一

    池端委員 厳しい雇用情勢だということを認識をされているという御答弁でございますが、しかし伝えられるところによりますと、去る三月八日の閣議で、大野労働大臣は、この数字労働省調査とはかなり乖離をしているということで、クレームをつけたというのですか疑義を表明したというのですか、そういう発言があったやに私は聞いておるわけであります。数字というものは冷厳な事実でありまして、これは私は厳粛に受けとめていかなければならないと思うのでありますが、そういう疑義を表明するということは雇用失業情勢についての見方が甘いのではないか、安易に過ぎるのではないか、言っていることと実際やっておられることが違うのではないかというような疑念を私は持つのでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  6. 大野明

    大野国務大臣 ただいま先生指摘の点でございますが、三月八日の閣議総務長官から調査の発表があった、その中身につきましてはいま局長答弁したようなことでございますけれども、いずれにしても、私はその数字を否定したのでなくて、労働省関係有効求人倍率であるとかあるいは毎勤統計であるとかその他の指標というものを報告を受けておりまして、そう変化がない。しかしながら、総理府労働力調査によるとその前月はたしか二・四ぐらいのところであったのが急に二・七二になった、これは何か調査が偏ってないかということを実は心配したわけであります。やはり労働省としては、不況業種であるとかそういう点を十二分に考え、今回も法案を出させていただいておりますけれども、そのほかやはり失業者とかそういう問題は全般でございますから、そうなると偏っていたら困るなというような疑念を待って、クレームでなくてちょっとただした。そうしたら、いままでとは労働力調査が、総理府においても人を三万から四万にふやした、ふやしたということは逆に言えば統計が精密になるということも言えますけれども、一方においては地域も変えたということをあとで聞きましたので、それじゃこれは一カ月だけのものを見ておってもいかがかな、ひとつこれが本統計に影響があるかどうかということをもう一回考え直そうじやないか、そして労働行政にも資すると同時に、やはり失業というさびしい思いをしている人たちをより多く広範に拾うためには、私としてはそういうことを考えてこの発言につながったということでございますから、御理解賜りたいと思います。
  7. 池端清一

    池端委員 確かに調査の方法は変わっておりますね。従来の三万から四万のサンプルにした。しかしこれも、お聞きするところによりますと、一挙にやったのではなくて過去四カ月にわたってなだらかに四万に変えていったという話も聞いておりますし、さらに労働省調査有効求人倍率、これだって完全なものではなくて、全国六百程度の職安を通じて求職求人をした数をもとにしたものであって、全求職求人数の約二〇%程度しかフォローしていないのではないかとすら言われているわけですね。ですから、有効求人倍率がこうだから総理府調査はどうかというような投げ方をするのではなしに、私はやはりこれは厳粛に受けとめてもらいたいということを強く要望しておきたいと思うのであります。  私の地元の例をとってちょっと申し上げますが、私の地元北海道室蘭でございますが、この地域は鉄鋼、それから造船、ニッケル等のいわゆる特定不況業種が集積をしている地域でございます。ことし一月の有効求人倍率は〇・一六でございました。これは季節調整済みのものではございませんので、生の数字でございますから必ずしも全国平均の〇・六倍と単純比較はできないにしても、かなり深刻な状況になっているわけであります。さらに雇用調整助成金制度利用状況を見ますと、五十七年度は五十七年四月から五十八年一月までに二十一社延べ三万四千八百九人がこの制度を利用している、実に五十六年度の三倍強にも達している、こういう状況でございます。  歴代労働大臣は、完全雇用は政治の大きな目標であるとか、あるいは失業人生最大の不幸であるというようなことを言われてそれぞれ取り組んでこられたわけでありますが、ここで大野労働大臣として、この今日の雇用情勢に対処するために雇用政策についてどのような方針をお持ちなのか、そしてまたどういう決意でこれに対処しようとなさっておるのか、その決意、所信のほどをお伺いしたいと思うのであります。
  8. 大野明

    大野国務大臣 ただいま先生から御指摘ございましたように、現在雇用失業対策というのは労働行政の中において最重点であり、また歴代労働大臣もこう言ってきたじゃないかというのも当然のことでございまして、この雇用問題については、何といっても勤労者諸君生活の安定がこれまたわが国社会経済の安定にもつながるのは当然の理でございますし、私もより以上にそういうことを踏まえて、安んじて働いてもらえるような対策というものについていろいろと手だてをいたしておるところでございます。  先生御承知のとおり今回法律案をまた出させていただいたのも、もう一つ現在の法律よりも一歩進んだものにしたいという証左でございますから、その点も御勘案賜りたいと思いますが、いずれにいたしましても、経済運営を適切に行うことが景気の着実な回復にもつながる、景気回復なくしてこれまた雇用問題というのはなかなかむずかしい、そういう点に力点を置いて、そうして雇用問題については、もう先生が先におっしゃられてしまったようなことでございますが、要するに雇調金の弾力的なそして適切な運営によって、何といっても失業の予防、そしてまた、離職者に対して職業安定関係挙げての再就職の促進に努めてもおります。  ただ、いずれにしても今日から先を考えますと、新しい時代でいろいろな形態に産業構造雇用構造も変わってくる、これに対応してやっていくということも雇用問題、労働行政としての大きな問題でございますから、これらにも非常に注目をして、そうして先取りをするような行政を行わなければ、こういうふうに考えておりまして、まだちょっと発表できる段階ではございませんが、いま労働省の中に私が大臣になってすぐ八つのプロジェクトチームをつくりまして、これらのものに対しても対応できるような体制を労働省全体として、いわゆる安定局だ、基準局だというようなちっぽけな考え方でなくて、それを横断して省を挙げてやっておるところでございます。いずれにしても五月ぐらいにきっと発表することができるのではないか、かく考えておるところでございます。
  9. 池端清一

    池端委員 経済運営を適切に行う、何といっても有効需要をつくり出すための経済政策への転換ということが今日必要なわけですけれども、そのためには何といっても、いま人事院勧告凍結なんということをやっておっては、景気回復を図るとか経済運営を適切に行うといっても、これは絵にかいたもちにしかすぎないと思うのですよ。やはり人勘凍結解除、これに踏み切る、あるいは大幅な所得税減税の実施、それから賃金抑制政策ではなしに実勢に合った賃上げを行う、こういうようなことをやらないでおって、口では景気回復を図ります、経済運営を適切に行いますと言ったって、今日の雇用情勢は一向に回復をしない、私はそのことを申し上げておきたいと思うのであります。  そこで、新経済社会七カ年計画では、完全雇用の達成をうたっておる。完全失業率は一・七%程度有効求人倍率は一倍に近い水準を目標にして、五十四年度から六十年度までの計画が策定をされているわけであります。この計画と一体のものとして、労働省としては第四次雇用対策基本計画というものを策定しております。これも七カ年計画でございますね。しかし、この計画は実は実現にほど遠い、こういう状況になっているわけでありまして、当然見直しが必要だと思うわけですし、労働省も現に見直しを進めている、こうおっしゃっているわけでありますが、この見直しの検討状況についてお伺いをしたいと思います。
  10. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近わが国を取り巻きます内外の経済情勢は非常に厳しい状況でございます。そういう状況を背景に、現在の経済計画なりあるいは雇用対策基本計画目標といたしております状況と違った状況が出てきておるということでございます。  たとえば世界経済の停滞が長期にわたっておりますし、またわが国では財政の大幅な不均衡等が続いておる。そういうことがございますので、今後中長期的に見ました場合に大きな雇用需要の伸びというものが期待できないということがございます。  そのほかに、労働力の需要供給の面におきまして、たとえば需要面でございますと、いま御審議をいただいておりますような構造不況業種がいろいろ出てきておるとか、あるいは関連して産業構造の転換が進んでおる、またこれとも関連いたしまして、サービス経済化に伴います第三次産業の拡大、したがいましてその産業での就業者がふえているということもございます。また、マイクロエレクトロニクスの技術を利用いたします技術革新も急速に進展しておるということがございます。  供給面におきましては、よく言われております高齢化が急速に進んでおりますこと、それから女性の職場進出が非常に活発になってきておりますこと、あわせて労働力供給の高学歴化が進んでおりますこと、そういう労働力の需要供給両面におきまして構造変化が進んでおるわけでございますので、そういうような全般的な雇用需要の動きの問題と、労働力需給の構造変化に的確に対応しなければならぬということで、現在経済計画につきましても見直しの検討が進められておりますし、これと並行いたしまして私どもの方の第四次雇用対策基本計画につきましてもその見直しを進めておるところでございます。  昨年の夏以降、雇用審議会にお諮りをいたしまして審議を進めておるわけでございますけれども、いずれにしましても、この雇用対策基本計画につきましては、雇用対策法にも書いてありますけれども経済に関する計画と調和のとれたものでなければならないということもございますので、そういう観点から、中長期的な視点に立った雇用政策のあり方についての検討を進めてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  11. 池端清一

    池端委員 それでは、法案の具体的な中身について一、二お尋ねをしたいと思うのであります。  現行法では、特定不況業種として四十業種が指定をされているわけでありますが、構造問題を抱えて離職者が多数発生しているにもかかわらず産業政策がとられていない、そういう理由だけで指定を受けられない業種が今日までございました。新法においてはこの点をどのように改善するおつもりなのか、その点をお伺いしたいと思います。
  12. 谷口隆志

    谷口政府委員 新法におきまして、特定不況業種の定義でございますけれども、一つは、やはり構造的な要因によりまして長期にわたり不況に陥りそのため供給能力が過剰となっておるということ、二番目に、それとの関連で事業規模の縮小なり事業の転換等を余儀なくされておること、三番目に、雇用量が相当程度減少しているかまたは減少するおそれがあるという状況にあるということと、そのほかに、そういう状況にあることを前提にこの法律に基づきます特別の対策を講ずる必要がある業種であるかどうかということが基準になるわけでございます。  そこで、ただいま御指摘のありましたように、現行の特定不況業種離職者臨時措置法におきましては、こういう労働力過剰の状況の中で事業の規模の縮小をしなければならないわけですけれども、その事業の規模の縮小なり転換が法令に基づく行為とか国の施策によって行われるという条件が一つございましたけれども、現行法の施行の過程におきまして、そういうことを要件にいたしておきますと、業界のまとまり等その他いろいろな条件で、非常に問題のある状況にもかかわらずなかなか国の施策が講じられないというようなこともございましたので、今度の法案におきましては、要件から「国の施策」云々というものを除くことといたしておるわけでございまして、その他の要件につきましては、ただいま申し上げましたとおり、構造的に不況に陥っておる業種に対する対策という趣旨においては現行法と同じでございますので、現行法の考え方をおおむね踏襲することと考えておるわけでございます。
  13. 池端清一

    池端委員 要件から「国の施策」を外すということでございますね。その具体的な例として私は一つ挙げたいと思うのでありますが、たとえば精糖業でございます。  従来、国の施策というような観点からこれは指定の対象にはなっておらなかったわけでありますが、精糖業等については、新法においては対象業種になり得るというふうに私は思うのでありますが、これはいかがでしょうか。
  14. 谷口隆志

    谷口政府委員 精糖業界におきましては、もう御案内のとおりでございますけれども、国民の甘味離れ等による需要の低迷、あるいは代替甘味料の進出等によりまして非常に厳しい状況に陥っておりますし、操業率も非常に低水準にありまして、過剰設備が表面化しておるというふうに私ども承知をいたしております。それとの関連におきまして、事業所閉鎖等の事業規模の縮小等が行われ、解雇を含みます雇用調整が実施されておるという非常に深刻な雇用問題も発生しておるというふうに承知をいたしております。こういう状況に対しまして、私どもとしては昨年の十一月に雇用調整助成金の対象業種として指定をいたしまして、それに基づく措置を講じてきたところでございますが、その際、現行の特定不況業種離職者臨時措置法の対象業種にするかどうかということにつきましては、業界のまとまりが弱いというようなこともございまして、国の施策をむしろ望まれないというような状況もございましたので、現在の法律のもとでは業種指定になっておらないわけでございます。     〔大石委員長代理退席、委員長着席〕  新法におきましては、先ほど申し上げましたように「国の施策」云々というものは除いておりますので、そういう面では指定に際しての問題はなくなろうかと思います。いずれにしましても、新法に基づく業種指定をするかどうかということにつきましては、新法が制定されました以後、この指定基準を中央職業安定審議会にお諮りして決めるということになっておりますので、そこで決められた指定基準にのっとりまして具体的な検討をいたしたいというふうに考えております。
  15. 池端清一

    池端委員 第二条の第四項で、特定不況業種を指定しようとするときは「労働組合の意見を聴かなければならない。」というふうにされております。この場合の「労働組合」とはどの範囲を指しておるのでしょうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  16. 谷口隆志

    谷口政府委員 御指摘ございました第二条第四項の問題でございますけれども、この条項は、現行の特定不況業種離職者臨時措置法の第二条二項と同趣旨の規定でございまして、運用も現行とほぼ同様のものを予定をいたしております。すなわち、当該業種にかかる労働組合の全国組織を考えておるわけでございます。
  17. 池端清一

    池端委員 当該労働組合の全国組織を考えておる、こういうことですか。  それで、その全国組織といっても、産別の全国組織には複数の場合があるわけですね。こういう複数の場合は、この複数の組合から意見を聞くというふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  18. 谷口隆志

    谷口政府委員 全国組織が複数ございます場合は、複数の組合から意見を聞くということで、御指摘のとおりでございます。
  19. 池端清一

    池端委員 次に、特定不況地域の件についてお尋ねをいたしますが、新法の対象となる特定不況地域については、どのような基準で指定されるお考えなのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  20. 谷口隆志

    谷口政府委員 この法律に基づきます特定不況地域でございますが、まず一つは、特定不況業種を多く抱えている地域であるということと、それから、当該不況業種において事業規模の縮小等が余儀なくされておるということ、そういうこととの関連で雇用状況が著しく悪化しておるか、または悪化するおそれがあると認められるという状況にございまして、かつ、この法律に基づきます特別の雇用対策を講ずる必要があるという地域を考えておるわけでございます。従来の中小企業対策の実施地域に限定されずに、私どもとしては、雇用対策の観点から必要な地域を機動的に対象としてまいりたいというふうに考えております。  ただ、具体的な地域の指定につきましては、業種と同じでございまして、法律制定されました以後、中央職業安定審議会に指定基準をお諮りいたしまして、決められた指定基準で具体的に指定をいたしてまいりたいと思っております。
  21. 池端清一

    池端委員 具体的な地域は、今後中央職業安定審議会へ諮問されてそこで決定ということでありますが、具体的なケースでお尋ねをしたいのでありますが、たとえば北海道の場合、二百海里問題で北洋漁業に甚大な影響を受けておりまして、そういう漁業基地を多く抱えているわけであります。この地域不況業種が集積をしている地域、こういうふうにみなして対象となるというふうにこれは理解してよろしいものか、その点をお尋ねしたいと思います。
  22. 谷口隆志

    谷口政府委員 漁業離職者につきましては別に法律がございますので、本法におきましては漁業をこの法律特定不況業種として指定するということにはならないわけでございますけれども、漁業関連の地域につきましては従来から地域雇用失業情勢の影響が大きいということから、現行の特定不況地域離職者臨時措置法の指定に際しましてそういうことも勘案して指定をされておるところでございまして、そういう従来の経緯等も考えながら、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づく特定漁業等につきましても、この法律に基づきます特定不況地域の指定の根拠となるように法文上規定をいたしておりますし、またそういうふうに指定をしてまいりたいと考えております。
  23. 池端清一

    池端委員 この特定不況地域を抱える公共職業安定所の役割りというものは今後ますます重要になってくると私は思うのであります。さらにこの業務量というのは一層増大をする、こう思うわけであります。現行の体制では、私どもが再三指摘をしておりますように定数その他の面で十分これにこたえられる体制になっていない、こういうふうに思うわけでございまして、この改善を強く求めてきておったところでございます。それで、この公共職業安定所の体制の強化拡充ということが緊急な課題だ、私はこう思うのでありますが、その対応策について何か検討されていることがございましたら、これを明らかにしていただきたいと思います。
  24. 谷口隆志

    谷口政府委員 公共職業安定所の業務につきましては、御案内のとおり職業紹介関係業務、それから雇用保険の関係業務、これらを中心にいたしまして中高年齢者、心身障害者に対します職業相談なり職業指導、また求人開拓の実施、定年延長、雇用率達成指導の実施あるいは各種給付金の支給、雇用情報の提供とか、非常に広範多岐にわたっておるわけでございます。  一方、最近の行財政の厳しい状況の中で定員削減が進められておるわけでございまして、そういう中で、私どもといたしましては、必要な業務につきましてはできるだけ増員を図るということで、増員にも努力をいたしておるわけでございますけれども、定員削減は非常に大幅に行わざるを得ないという状況の中で、率直に申し上げまして、定員削減と増員の関係では差し引き減員になっておるというような状況でございます。  そこで、一方で業務量も増加するとかあるいは多岐にわたる業務をこなさなければならぬというような状況にもございますので、これに対応するためには業務の処理の機械によります合理化、効率化等を図るというようなこと、あるいは安定所の内部組織の再編整備等を行うとか、また各種給付金の整理統合を行うとか、そういうような業務の効率化を図りながら、できるだけ第一線の機関におきまして必要とする行政の需要に的確に対応するようにということで努めておるわけでございます。  今回の新法の実施に当たりましても、不況業種なり不況地域関係業務につきましては、これを担当する職員の配置も予定しておるところでございますが、いずれにしましても、こういう行政運営につきましては、需要に応じた的確な対応ができるようにいろいろな知恵を出し、工夫しながら的確に対応してまいりたいと思っておるわけでございます。
  25. 池端清一

    池端委員 新法の施行に伴って、これに対応する担当職員を配置する予定だ、こういうお話しでございました。その数はどのくらいですか。
  26. 谷口隆志

    谷口政府委員 従来から不況業種に対する就職促進指導官ということで八十三名配置されておりますが、来年度はこれに加えて六名の増員を予定しておるわけでございます。
  27. 池端清一

    池端委員 私もときどき職業安定所へ参りまして職員の皆さん方といろいろ懇談する機会があるわけでございますが、現場の皆さん方の御苦労というのは局長御承知のように本当に大変なものでございまして、私は現状ではもうどうにもならないのではないか、こういうふうに思っているわけであります。今回新たに六名程度増員をされるようでございますけれども、特定不況地域というのは現行でも四十四地域ですね、不況業種四十業種、これに対応するにはまさに焼け石に水ではないか。一方では、増員するけれどもそれを上回る定員削減が行われているわけでありますから、何ぼ業務の効率化を行うと言ったってこれには限度、限界がございます。ですから、今日この不況に対応するためには、こういう職員というのは必要なんだということは労働大臣も堂々と胸を振って主張して、今日の行政改革の時代でございますけれども、これは必要なものとして何としてでもとる、こういう不退転の決意がなければならないのじゃないかと私は思うのです。現場の皆さんは本当に御苦労されているわけでありますから、この御苦労に思いをいたして、大臣初め局長の皆さんにひとつがんばってもらいたいということを強く申し上げておきたいと思います。  そこで、職業訓練の問題でございますが、離職者の再就職を促進するためには何よりも職業訓練を積極的かつ機動的に実施されなければならないと思うのでありますが、この職業訓練体制についてはどのように考えておられるのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  28. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 技術革新の進展であるとか産業構造の転換に伴いまして、いろいろ摩擦的に離職者が発生してくるということについては避けられない問題でございます。私ども、職業訓練の問題については、まず第一に、日ごろからの備えが大事であるということを痛感しております。そういう意味で、離職者に対する訓練ということの前に、在職中からの訓練の充実ということがきわめて重要であるという観点から、生涯教育訓練体系というものを私どもの考え方として打ち出しておりまして、企業で特に中高年の方々に訓練をしていただく、向上訓練をしていただく、そうしてそういう技術革新とか将来の産業構造の転換に備えていただくということが重要であるということで、これに対する助成措置を五十七年度から講じておるところでございます。また、これに対しては公共職業訓練施設を活用してもらうということで、雇用促進事業団の総訓校を技能開発センターへ転換をしていく、そしてそこで向上訓練を行っていくというような体制をとっておるわけでございます。  もちろん、こういう在職中からの訓練を充実いたしましても離職者の発生は避けられないわけでございますので、離職者が万一発生いたしましたときには、特に不況業種地域というような集中して発生をしてまいりましたようなときには、これに対する備えを怠ってはならないということで、将来雇用の発展が見込まれるような職種をその地域地域の実情に応じて訓練科目に組み込んでいくというような備えを一つはいたしております。  それからまた、単位制の職業訓練を拡充いたしまして、入校時期を多様化して、いつ離職者が出てきても対応できるようにというような体制をだんだんに築き上げておるところでございます。  それからまた、職業訓練校では対応できないような職種等もございますので、それにつきましては、地域の実情に応じまして各種学校等への委託訓練というような制度を設けまして、これを活用していくというような体制をとってまいりたいと思います。もちろん当該地域だけではなくて、隣接地の職業訓練校の応援体制というようなものも着実に図っていかなければならない、このように考えております。
  29. 池端清一

    池端委員 これはやはり既設の職業訓練施設にこだわらないで、いま御答弁がありましたけれども、各種学校や専修学校その他、いろいろな事業所への委託というようなものも積極的に活用して、離職者のニーズにこたえられる、あるいはその地域のニーズにこたえられるような機動的な対応というのはぜひ必要だと私は思いますので、ひとつそういう幅広いものに考えていっていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  そこで、ちょっと問題を変えまして、シルバー人材センターの問題についてお尋ねをしたいと思います。  昭和五十五年度から、高齢化社会への対応策の一環としてシルバー人材センターが発足をしたわけであります。この運営に要する経費は国や地方公共団体が助成するということになっているわけでありますが、補助期間が御承知のように五年間という時限的な措置でございます。このシルバー人材センターというのは営利を目的とする団体でございませんから、五年間で補助が打ち切られましたらもうそこで完全に運営はストップ、こういう状況になるわけで、これはいま大変な問題になっているわけであります。この時限措置を何としてでも撤廃をしてもらいたい、私はこう思うわけでありますが、これについて今後どのように対処されようとお考えになっておるのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  30. 増田雅一

    ○増田政府委員 国の補助金につきましては、先生御承知のように、五十四年の十二月二十九日の閣議におきまして、すべての新規補助金は原則として五年以内の終期を設定するものというふうに、また終期到来時におきましては、存続の必要性等につき厳格な見直しを行った上、特にやむを得ないものと認められたもの以外は整理するというふうに決定されているところでございます。このため、シルバー人材センターの補助金につきましても五年の期限が到来する時点、すなわち昭和五十九年度におきましては改めてこの補助金の必要性について厳格な見直しをするということにされているところでございます。しかしながら、シルバー人材センターにつきましては、発足以来地域の公共団体、事業所あるいは家庭から非常に好評をもって迎えられておりますので、私どもといたしましてもこの活動を今後とも育てていきたいということで、五十九年度における見直しにつきましてはこれをぜひ延長するように努力してまいりたいというふうに思っております。
  31. 池端清一

    池端委員 シルバー人材センター、名前だけは非常にいいのでありますが、内容はまだまだ不十分だと私は思うのであります。現在のような予算措置で実施をしているということに大きな問題点があるのではないか、やはりこれは何らかの法的な裏づけが必要ではないか、法制化について検討すべき時期にこの問題は来ている、こう私は思うのでございますが、これについての大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  32. 大野明

    大野国務大臣 シルバー人材センターの問題につきましては、これからますます高齢化社会を迎えるわけでございますから、内容もいろいろと充実してやっていきたいという考え方を持っております。ただ、その問題がだんだん広範になってまいってきておりますので、これらを法制化するというような点についても検討を進めるべく努力をしておるところでございますので、いずれにいたしましても、私は労働大臣になったとき、シルバーなんてさびしいからゴールドにしろと言ったくらい、この高齢化の社会に対応する問題点として取り上げていきたいという決意を持っております。
  33. 池端清一

    池端委員 シルバー人材センターの運営の問題について、それぞれの団体ではいろいろ御苦労をされておるわけでございますが、幾つかの問題点がございます。私はもう時間もございませんのでまた別の機会に申し上げたいと思うのでありますが、一つだけ、人口十万人以上という規模要件、これについてはやはり再検討すべきではないか。いま確かに弾力的に運用はされておるようでありますけれども、十万というものはどうしても一つの基準になっておりますので、これについて再検討すべきではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  34. 増田雅一

    ○増田政府委員 シルバー人材センターにつきましては、やはり地域のそういう仕事の需要がございませんとなかなか運営が困難でございますので、一応私どもといたしましては十万人という規模を基準としておるわけでございますが、先生いまおっしゃられましたように、やはり十万以下の都市におきましてもぜひ設立したいという御希望が非常に強くございますので、現在でもその基準にこだわりませず弾力的に運用しているところでございますが、より小さな都市におきましても設置をしたいという御希望が非常に強うございますので、なお今後ともその点については検討してまいりたいと思っております。
  35. 池端清一

    池端委員 次の問題は、中小企業関係における労働者の労働条件の切り下げの問題がいま幾つか発生をいたしております。不況の中で企業の減量合理化がいま急速に進められ、労働者は雇用不安と労働条件の切り下げという中でまさに悪戦苦闘をしているわけであります。とりわけ中小企業においてその傾向は顕著にあらわれております。ここに幾つかの資料を持ってきておりますが、これはまた別の機会に具体的に政府の見解等もお尋ねをしたいと思うのでありますが、中小の造船であるとかあるいは紙パルプ、合板といったような業界では、今日すでに労使の間で協定をし実施をしてきておった週休二日制を中止するとか、あるいは労働時間の延長を行うとか、あるいは賃金の切り下げを行うといったような労働条件の切り下げ、改悪、こういう動きが具体的にいまあらわれてきている、あるいは具体的に組合側に提示をされてきている、こういうような状況でございます。これはまさに、労働省が掲げております週休二日制の推進であるとか労働時間の短縮、こういう大基本方針から見ても逆行するというような状況ではないか。これに何らかの歯どめ策を講じなければこの影響はきわめて大きい、こういうふうに思うわけでありますが、これについての労働省としての方針を明らかにしてもらいたい、こう思うのであります。
  36. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先生おっしゃるように、景気の停滞の長期化に伴いまして、不況業種を中心に一部の事業場で、御指摘のような労働条件面での後戻りと申しますかそういう現象が生じていることは否定できないと思います。労働基準行政におきましてもこれらに重大な関心を持っておりまして、従来からその法違反その他については施策を進めているわけでございますが、来年度の運営方針におきましても、この厳しい経済情勢を反映いたしまして、不況業種を中心に倒産、解雇、賃金不払い等の問題が懸念されますので、関係情報の早期的確な把握に努めますとともに、適時適切な監督指導を実施しまして、賃金不払い等の労働基準法違反につきましては、特にその防止と早期是正を重点課題としているところでございます。  ただ、労働基準監督機関としましては、具体的問題としまして、労働条件の切り下げが法令に抵触しない限り直接権限行使の対象とすることはできないという面がございまして、もちろん労働条件の一般的な維持改善はその務めでございますが、それぞれの不況業種不況企業の中で、雇用を維持するためにまたは企業を守るために労使の話し合いが行われるとかいろいろなケースがあるわけでございまして、その間の労使の十分な話し合いが必要であるというふうに思っております。しかし、その上でさらに就業規則の変更等については法の定める所定の手続が必要でございますので、いま申し上げましたような観点から必要な指導を行い、法違反については厳正に処置する等そういうふうな方法によりまして、これらに対処してまいりたいというふうに考えております。
  37. 池端清一

    池端委員 実は法違反かどうかという問題以前の問題なのですよ。週休二日制、従来やってきておったものを中止ですか、中止したらそれじゃ即法違反になるかというと、そういう問題ではありませんね。労働時間の短縮、それを延長する、それも労基法の範囲内なら別にこれは法違反だということで問題にはできない問題であります。しかし、法違反ではないにしても、いま積極的に時短なり週休二日制というものを全体的に推進しようとしていくこの時期に、不況業種だから不況を乗り切るためにがまんせい、生き残るためにはこれしか道がないのだということでぐいぐい押しつけて、せっかくのこういう制度をほごにするというやり方は時代に逆行するやり方であって、これは労働省としても黙視していい問題でないと私は思うのであります。やはりもっと大局的な立場から、こういう企業があれば、それはわれわれの考え方と違うよ、いまの状況にこれは即さないよということでの積極的な指導があってしかるべきだ、私はこう思うのです。  今日までこれらの構造不況業種における労働者、とりわけ中小の労働者は、たえがたきをたえ、忍びがたきを忍んで、いろいろな合理化に協力する、協力させられてきたわけであります。こういう状況でがまんにも限界がある、限度がある、こういうところにいま追い込められているわけでございまして、そういうような状況を見るならば、単にこれは労使の話し合いでやってもらう、その際に就業規則その他に違反があれば指導するという消極的な態度ではなしに、もっと前向きの姿勢が必要ではないか、こう私は思うのですが、労働大臣どうでしょう。あなたの考えからいってもこれはうまくないのじゃないですか。
  38. 大野明

    大野国務大臣 確かにおっしゃるとおり非常に厳しい情勢下にある中小企業に働く方々、やはり生活という問題がございますからこれはできる限りの手だてはしていきたいと思いますが、個々のいろいろなケースがございますので、いま一概にすべてそうするというわけにもまいりませんけれども、できる限り私どもができ得る範囲内において現況は対処していく以外にない。そういうケースが多々ふえてきたということはまたいずれの機会かにお話しいただけるということでございますので、それらを伺いながら対応していきたい、こう考えております。
  39. 池端清一

    池端委員 この問題、いま本当に重要な問題だと私は思うのですよ。具体的な事例等も私は、持っております。また別の機会にこれらについてお尋ねもし、私どもの考え方も述べてまいりたい、こう思います。  最後に、時間が参りましたので大臣にお尋ねをいたします。  冒頭申し上げましたように、完全失業率が二・七二%になった、こう言ってもまだまだ日本はいいや、欧米の一〇%台に比べてもまだまだ低いとあるいはお考えになっているかもしれないし、またそうおっしゃるかもしれないと思うのであります。しかし、わが国雇用構造の特質は、御承知のように三百万人とも五百万人とも言われるその日暮らしの臨時日雇い労働者や、雇用主を持たないまま自活をしております大工さんや左官屋さん等の建設関係労働者、この膨大な方がいらっしゃるわけでありまして、これらの方々の数字というのはこの失業率の中にあらわれてこない。これはいわゆる潜在失業者だ、私はこう思うわけであります。そのほかにパートタイマー、アルバイトといったようないわゆる不安定雇用者といいますか不安定雇用労働者といいますか、こういう人たちも数多くおるわけでございまして、決して二・七二%だから欧米諸国に比してまだまだ大丈夫なんだというような楽観すべき状況ではない、私はこういうふうに思うわけでございます。事態はまさに深刻である、そういうふうにいま受けとめなければならないと思いますし、先ほど来労働省の方も厳しい状況だということは言われておるわけであります。  そこで最後でございますが、雇用対策の積極的な展開、これが今日きわめて喫緊の課題になっている、私はこう思うわけでありますが、これについての大臣決意を重ねてお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  40. 大野明

    大野国務大臣 現在のわが国雇用失業情勢というものについては、非常に厳しいものであるという認識は十二分に把握もし、また持っておるところでございます。  いま御指摘の欧米先進諸国が一〇%以上、わが国は低水準だからということに安んじておるわけではないのでございます。いずれにしても、企業内においての労使のお互いによりよい話し合いをして、そうして何とか雇用の安定に努めておられるということも大きな要因であると同時に、政府といたしましても、いろいろ失業が起こらないように諸施策を講じておるということが一つの大きな原因ではないかと思っております。  また一方、パートタイマーのお話しがあったわけでございますが、これは要するに、最近婦人層が非常に社会に出て就業したいあるいは就業しておる、特に家庭婦人が職場に進出するというようなことで、いわゆる雇用関係の構造の変化はやはりございます。それはなぜかというと、サービス経済化のこの変化等に伴って御婦人が大変出てきたということ、これらに対しましてもこれから労働条件その他を勘案した施策というものを十二分にやらなければならないのではないかということで、鋭意努力をいたしております。  いずれにしても、量的にも質的にも、両面とも内容の伴った雇用政策ということが重要課題でございますから、今後の労働市場というものを十二分に把握して、そしてその地域性であるとかそういうものも加味をして対応してやっていきたいというふうに考えており、またこれを現在も進めておるところでございます。
  41. 池端清一

    池端委員 以上で終わります。
  42. 稲村利幸

  43. 川本敏美

    川本委員 池端議員の質問の後を受けて、私も特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の問題点について、若干質問をいたしたいと思います。  まず最初に、大臣にちょっとお聞きしたいのですが、大臣はこの法律の提案理由の説明の中で「二度にわたる石油危機を背景とした原材料、エネルギーコストの上昇、発展途上国の追い上げ等最近における経済的事情の変化に伴って、アルミニウム製錬業等の素材産業を中心として構造不況に陥っている業種が少なくありません。」こういうふうにおっしゃっておるわけでありますけれども、先ほど来の質問の中でも出ておりましたように、現在まで構造不況業種といいますか、それが前の法律で四十業種ほど指定をされておる。ところが、最近特にOPECでもアラビアンライトの価格を一バレル当たり五ドルほど引き下げるというような協定も成立したということで、いわゆるエネルギーというものについても新しい情勢が生まれつつあるんじゃなかろうかと思うのですが、そういう中で構造不況業種というのは、大臣の趣旨説明で言っておる構造不況に陥っている業種というのは大体どういうものを考えておられるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思うのです。
  44. 谷口隆志

    谷口政府委員 お尋ねの、この法律で言っております構造的な不況業種というのはどういうものかということでございますが、本法案は、内外の厳しい経済情勢を反映いたしまして、雇用情勢が厳しい状況が続いておりますが、そういう中で一時的な景気変動ということではなくて、構造的な要因によりまして事業活動の縮小を迫られている業種と、その関連地域における雇用問題に的確に対処しようというものでございますから、この法律で言います構造的な不況業種といいますのは、二度にわたる石油危機を背景とした原材料、エネルギーコストの上昇とか、あるいは発展途上国の追い上げ等の国際経済環境の悪化また消費構造の変化等に基づく内需の低迷、そういうような状況から、いわば構造的に不況に陥っている業種というものを想定しているわけでございます。そういう業種としましては、素材産業を中心といたしまして、提案理由に挙げておりますようなアルミニウム製錬業のほかに、電気炉による製鋼・圧延業とか合板製造業等々の業種が挙げられようかと存じます。
  45. 川本敏美

    川本委員 そこで労働省、できれば労働大臣にお伺いしたいのですが、現在通産省が国会に出しております法律の中に、いわゆる特定産業の構造改善臨時措置法ですか、これが出されているわけですが、これとの関連についてはどのようにお考えですか。
  46. 谷口隆志

    谷口政府委員 構造的な問題を抱えております基礎素材産業等につきましては、いま御指摘ございましたように、別に通商産業省から特定産業構造改善臨時措置法案提出されておるわけでございますが、この法案におきましては、産業政策の立場からその活性化等の施策を講じようとされておるものだと存じております。その産業政策が実施されます過程で、過剰設備の処理とかあるいは集約化等に伴いまして、雇用面につきましてもいろいろな影響が出てくることが懸念されるわけでございまして、そういうような事態になりました際は、労働省といたしましては、この法律の活用も含めまして、これらの業種の関係労働者の安定のために必要な施策を講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  47. 川本敏美

    川本委員 通産省、おいでいただいていますね。ただいま申しました特定産業構造改善臨時措置法ですか、この法律は設備の処理とか事業の提携とかそういう形で事業の活性化を図っていく、と同時に、そこで雇用される労働者の雇用の安定もあわせて図るのだという趣旨の法律だと理解をしておるのですが、その点通産省はどのように考えておりますか。
  48. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 特定産業構造改善臨時措置法の趣旨につきましては先生指摘のとおりでございまして、過剰設備処理、いわばある意味での縮小でございますけれども、さらに経済性を持ち得るものに関してはさまざまな形で活性化を図るということによって、全体として基礎素材産業の構造改善を円滑にしていく、その支援のメカニズムでございます。  また、この法案の実施に当たりましては、雇用の安定と中小企業の経営の安定というものを最重点配慮事項として考えていく、そういうたてまえとなっております。
  49. 川本敏美

    川本委員 通産省にお聞きしたいのですが、特定産業構造改善臨時措置法、この第一条で言うところの「計画的な設備の処理」というのは大体どういうことを指しておるのか。あるいは「経営の規模又は生産の方式の適正化」これは大体どういうことを指しておるのですか。
  50. 藤島安之

    ○藤島説明員 過剰設備の処理の方の関係についてお答え申し上げます。  構造的な不況に陥っています基礎素材産業におきましては多くの過剰設備を抱えておりまして、市況の低迷に苦しんでおるわけでございますが、こうした中長期的な需給見通しを踏まえまして過剰設備を処理する、そして計画的に処理をしていく、そのことによって中長期的な需給の改善を図っていく、また稼働率の向上を図っていく、それによるコストダウンを図って、こういった構造不況に陥っている産業の経営の安定を図る、こうした考え方に基づいて行っていくわけでございます。
  51. 川本敏美

    川本委員 私はその「処理」という言葉の内容をいまお聞きしたのですが、この法律の中にも設備の廃棄とか長期の格納とか休止という言葉が出てきておる。いわゆる計画的な設備の廃棄というのは、設備を廃棄したり長期格納をしたり休止をしたりということになりますと、それで雇用が安定されるということになるのですか。その点どうですか。通産省どう考えておりますか。
  52. 藤島安之

    ○藤島説明員 お答えいたします。  過剰設備の処理の考え方でございますけれども雇用との関係でいきますと私は二つの側面があるのではないかと思うのでございますが、一つは、いま申し上げましたように過剰設備の処理をいたしまして中長期的な需給の改善が図られる、そして稼働率が向上する、あるいはそうしたことによりまして高効率設備への生産の集中が行われる、こうしたコストダウンによって企業の経営の安定というものが図られていく、それを通じて雇用の安定につながっていくというのが一つでございます。  第二番目は、計画的な過剰設備の処理の実施ということでございますが、これは放置しておきますと急激な経済変動にさらされました企業は倒産といった事態も考えられないわけではございませんので、なるべくそういったことのないように計画的に過剰設備の処理をしていく、その場合に雇用についても十分配慮していく、そうした考え方に基づくものでございます。
  53. 川本敏美

    川本委員 いまおっしゃいましたけれども、私は通産省の考え方をどうも納得できないわけです。簡単に言いますと、いま言葉の中に経営の安定が雇用の安定につながるんだ、こうおっしゃった。設備を廃棄したり長期の格納をしたり休止をしたり、あるいは経営規模を適正化したり生産方式を適正化したりする、そういう中で経営が安定すれば雇用が安定するんだ、こういう考え方は私は全くの詭弁だと思うわけです。  特定産業構造改善臨時措置法といま審議中の特定不況業種あるいは特定不況地域関係労働者に対する特別措置法、これはいわゆる法律の一つの表と裏、うらはらの関係において、企業が労働者の首をスムーズに切れるようにしよう、こういう意図を持った法律ではないか。言いかえれば、これは首切り促進法の両面をなすものではないかと私は思うわけです。そのことについて労働大臣どうお考えですか。
  54. 谷口隆志

    谷口政府委員 この特定不況業種・特定不況地域雇用の安定に関する法律でございますが、まさにこの法律の名前が示しておりますとおりでございますが、現行の法律におきましては特定不況業種離職者臨時措置法、特定不況地域離職者臨時措置法ということでございますけれども、これらの施行の過程を通じまして、今後におきましてはできるだけ失業を防止するということが必要でございますので、そういう施策の内容を充実強化いたしまして今回の法案を提案をいたしておるわけでございます。  いま御指摘のありました雇用の安定ということにつきましては、私ども法律の中ではいろいろな施策あるいは手続を考えておるわけでございます。たとえば再就職援助等の計画につきましても、離職ということだけでなくて、そういう構造的不況に陥っている業種につきましていろいろな産業政策の面からも手を打たれるわけでございますけれども雇用対策の面におきましても、ただ過剰の者を離職させるということだけでなくて、配置転換あるいは出向とかそういうものを含めて、できるだけ失業を防止するということにつきましては事業主に最大限の努力をしていただけるようないろいろな行政面での指導援助をしてまいりたい、そういうことを内容といたしておるわけでございまして、そういうものに基づいて行政を進めていきたいと考えております。
  55. 川本敏美

    川本委員 通産省にもうちょっとお聞きしたいのですが、この新構造法の中の「構造改善基本計画」です。これは主務大臣が定めることになっている。そこでは失業の予防とか雇用の安定というものを基本計画の中に盛り込まなければいかぬことになっておるわけですが、そこで言う失業の予防とか雇用の安定というものは、具体的に先ほどおっしゃったように経営が安定すれば雇用が安定するんだということさえ盛り込めばそれでいい、こういう考え方ですか、どうですか。
  56. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 新法に基づきます失業の予防と雇用の安定に関しまして先ほど来先生に御指摘いただきましたが、まとめましてもう一度御説明させていただきます。  一つは設備処理、これ自体は先ほど御説明したとおりでございますが、計画的に行うということ、それから事業提携といいますのは、これによって産業自体が大きく活性化するその礎となるという意味で、急激に崩壊する産業の構造的困難を食いとめるという意味で、一つの雇用のなだらかな調整という意味を二つとも持っておるわけでございます。  それから第二のジャンルでございますが、これは基本計画の中に、まず新しい活性化のための設備投資を行うということがございます。それによって、単に企業の経営が安定するばかりではなくて、一種の雇用の機会というものもある意味ではそこで安定化する意味を持っております。それからその次には、技術開発の推進とかあるいは新商品の開発とかいった新しい雇用機会をその素材産業も追求していくということを基本計画に掲げることによりまして、新たな雇用の創造を通ずる雇用の安定、総体として雇用の安定ということを最重点配慮としてこの法律の仕組みができ上がっているということでございます。
  57. 川本敏美

    川本委員 参考までに申し上げますけれども、先ほど来いろいろおっしゃっていますけれども、たとえて言いますと、今度の新しい特定産業構造改善臨時措置法、その法律の指定業種の中には製紙または板紙製造業ですか、今度は新しく入れる。ところが、紙パルプ関係の企業の決算状況について見ますと、これは私が申し上げるまでもなく通産省の方が御存じだと思いますけれども、王子製紙はことしの三月の決算予想は史上最高の黒字だと言われておる。王子製紙は五十六年三月の決算では七十七億四千二百万円、それが今度の五十八年三月の決算予想は百三十億と言われている。大昭和製紙は五十六年三月には十三億九千六百万円の赤字を出しておった。五十七年三月の決算では七十九億八百万円のこれまた赤字。それが今度の三月の決算予想では、この赤字を埋めてなおかつ四十億の黒字といま言われておる。中越パルプは五十六年の六月には売り上げが三百三十六億二千八百万円、そして利益は四億三千二百万円の赤字だった。それが五十七年六月の決算では、売り上げが三百八十三億七千七百万円、これは売り上げでは前期よりも八・三%増加しておるわけです。ところが黒字は、決算の利益は、前年度は四億三千二百万円の赤字であったのが、五十七年六月の決算では前の赤字を埋めて四億六千八百万円の黒字が出ておる。売り上げが八・三%伸びて利益は実に三・八倍の黒字になっておる。こういう状況と、いままで十年間の経過をつぶさに見てみますと、一九七三年、昭和四十八年ですね、そのときには製紙、板紙業が合わせて八百九十九社ありましたのが、現在七百十七社に減っておるわけです。従業員数について見ますと、七三年、昭和四十八年には九万二千二百三十四人おった従業員数が八一年、昭和五十六年末ですけれども七万三千十九人、七九・二%まで従業員数は減っておる。うち板紙関係だけを抜いてみますと、二万八千五百五十五人であった従業員数が、この十年間で二万一千四百四十二人、七五・一%まで従業員数は減っておるわけです。約四分の一従業員が減っておる。従業員が四分の一減って、そうして会社の方はいま史上空前と言われる黒字を生む状態が生まれてきておる。ところが、それでも今度は特定産業の指定業種に入っているわけですね。なぜ特定産業の指定業種に入っておるのかということを考えてみますと、これにはいろいろ理由があります。製紙連合会の会長で王子製紙の会長の田中文雄さんが紙上で談話を言われておるわけですが、恐らく製紙業界はここしばらくの間に、王子、十條、本州製紙、三菱、山陽国策、中越パルプ、大昭和等のいわゆる十グループぐらいに再編成されることになるだろうということを言っておる。その証拠に、また十條板紙と千住製紙が四月一日から合併をします。本州製紙と福岡製紙と東信製紙というのも合併をいたします。本州パッケージと佐賀板紙との合併もあります。こういうことで、事業提携といいますか合併というものがどんどん進む。こういう中で、先ほど経営が安定すれば雇用が安定するんだとおっしゃるけれども、私どものこういう数字を見てみると、経営が安定する陰では労働者の首が切られて従業員数が減らされているわけです。だから私たちは、一概に経営の安定を目指すことが雇用の安定につながるんだというようなそんな考え方をうのみにすることはできぬと思うのですが、その点労働大臣どうでしょう。経営の安定がそのまま雇用の安定につながると労働大臣は思っておりますか。
  58. 大野明

    大野国務大臣 いま紙パルプ業界のことについてのお話しでございましたが、いずれにしても、そういうような形態のものが、あるいはほかにあるかもしれませんけれども、本体がやはり経営が安定してきて、そしてその中において従業員数が減っておる、しかし関連企業であるとかあるいはまた傍系企業であるとかそういうところへ吸収して、そして従業員がその企業からは減ったように見えても、その方々がすべて失業するのでなく、ほかへの再就職あるいはまたその関連企業内への配転というか、そういうようなことで吸収しておる面もあると私は思います。しかしながら、すべて企業そのものがそのままもし不況のために倒産していったというようなことになればもっと深刻になるんではないか、その場合はその前の手だてとしての方法論はやはりいろいろ講じてやっていくべきではないかと考えますし、また現実にこういう問題ですから労使間でその間にも話し合っている面も多々あると私は承知いたしておりますけれども、これらの配慮というものについては政府としても勘案もいたしておりますし、企業また労働組合すべてがよりよい方向に向かう努力はいたしていることは事実でございますから、先生指摘のように、企業はよくなった、だけれども少ないじゃないか、その人たちはどうするんだとおっしゃっても、決してそれだけでなく、きちんとその点をやっているところは多々あるように私は見受けておるところでございます。
  59. 川本敏美

    川本委員 重ねて通産省にお聞きしたいのです。  この特定産業構造改善臨時措置法の中に、これは第三条の関係になると思うのですが、「雇用する労働者の雇用の安定」ということがあるわけです。この雇用される労働者という中に、通産省はいわゆる臨時工とか社外工とかパートタイマー、こういう人たち雇用される労働者の範疇に入ると考えておられるのですか、どうですか。
  60. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 新法の条文の中に「雇用の安定」という言葉が出てまいりますが、私どもといたしましては、本法の対象は広くこれら雇用者全体の安定に資することを最重点配慮事項とするというふうに理解しております。ただこれは、具体的な規定におきましてそれぞれ適用いたしますと、たとえば他の規定、三条の五項でございますが、ここでたとえば先生指摘の社外工が含むかどうか、これは私どもとしては大変むずかしい問題ではないかと思っております。いずれにせよ、新法自体は、全体として雇用の安定を広く最重点配慮事項としたものであると理解しております。
  61. 川本敏美

    川本委員 労働省の方にお聞きしたい。  これは特定産業構造改善基本計画の問題になるのですが、ここで、雇用する労働者の雇用安定という中には、いま御答弁ありましたように、臨時工とか社外工とかパートタイマーなどはどうなるんだ、常用とか社員だけか、本工だけかということを私は質問したわけですが、それに対して、社外工はどうかと思うけれども広く臨時工とかパートも含めて雇用される労働者と私は理解しておると言うのですが、労働省は基本的にこれに対してどういう考え方を持っているのですか。
  62. 谷口隆志

    谷口政府委員 この特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法でございますが、この法律に基づきまして行おうとする施策の対象は、構造的な不況に陥りまして事業規模の縮小等を余儀なくされておる事業所の労働者の雇用の安定ということでございますので、基本的にはやはり、あらかじめその雇用期間の定まっておるような方につきましては必ずしもすべての方が対象になるとは限らないと思います。ただ実態はいろいろあるわけでございまして、臨時とかパートとかというような名前の労働者の方でも常態として継続して雇用されておるというような労働者もあるわけでございまして、そういう労働者の場合は常用の労働者とみなして同様な取り扱いをするというようなことも含めまして、個々の労働者の実態に即しまして不利益をこうむらないような特段の配慮をしてまいりたいと思っております。  それから、社外工の問題はまた別に、不況業種であります親事業所との依存関係でその取り扱いの判断をすることになろうかと存じます。すなわち、親事業所に依存する度合いが高くて、当該事業所の事業規模の縮小により相当程度の影響を受ける事業所につきましては、この法律の対象業種としていろいろな施策を構ずるということにもなっておりますので、そういう事業所に属する社外工の場合にはこの法律の対象となる労働者ということになるわけでございます。
  63. 川本敏美

    川本委員 ちょっとこの関係で先ほど池端議員も質問しておられましたが、池端さんのは特定不況業種地域の方、労働省法律の方ですが、私は通産省の方の法律、これについてお聞きしたいのですが、主務大臣がいわゆる構造改善基本計画を策定する際に、関係審議会の議に付さなければならぬ。第三条第六項ですか、関係審議会は労働組合の代表の意見を聞く、こういうふうに法定されておるわけですけれども、私は関係審議会というのは恐らく産業別の審議会みたいな、その関係審議会がないときは云々という言葉がありますから、そこで審議会にかけられることになると思うのですが、この審議会に委員としてやはり労働組合の代表を入れるべきじゃないかと考えておるのです。  ただそこで、先ほども池端さんは労働大臣にお聞きしておりましたけれども全国組織が二つある場合があるのですね。たとえば紙パルプでいったら紙パ労連という総評系の労働組合と紙パ総連合というのですか同盟系の労働組合と二つあると思うのですけれども、こういう場合に、二つの労働組合の代表を委員として入れるべきだと思うのです。労働大臣の方は先ほど、両方入れます、こういうお話しだったのですが、通産省の方はいままでどうなっているのか知りませんけれども、これからはどうですか。
  64. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先生指摘の条項の関係審議会は、通産所管業種であります場合には産業構造審議会を予定しているわけでございます。産業構造審議会には各産業別の部会がございますが、労働組合の代表の方に御出席していただくことになっております。かつてもそうでございましたし、これからもそういうつもりでございます。  それからまた、先生の御指摘は紙パ産業の構造改善についてでございましたが、現在の産構審の紙・パルプ部会におきましては、御指摘の二つの組合の代表の方が入っております。私どもは、他の産業につきましてもケース・バイ・ケース、個々にその組合と産業のかかわりの実態を見ながら、適正な代表の方に出席していただくよう配慮していくつもりでございます。
  65. 川本敏美

    川本委員 そこで、私は、労働省に対してやはり要望しておきたいと思うのですけれども、今日まで企業の中においては、いわゆる雇用調整を行う場合に、あるいは先ほども議論されておりましたが、定年制の問題とかあるいは新規学卒の採用の増減とか、臨時工とかパートタイマー等のこういう人たち雇用の調整を図ってきておる。定年制を動かしたり新規採用の数をふやしたり減らしたり、あるいはパートをやめさせたり臨時工をやめさせたり、こういう形で企業の方は雇用調整を図ってきておる。それをまた政府も認めておるような形になっておるんじゃないかと思うわけです。先ほど池端議員の質問の中でも言われておりましたけれども、私は、これからの雇用の調整あるいは雇用の安定という中にはそういう安易な道を選んでもらったのでは困ると思うわけです。私は少なくともそういう人たちも含めた雇用の安定を図る労働行政であってもらわなければいけないと思うわけです。  そこで大変細かいことになりますが、これは労働省にお聞きしたいのですが、この特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の方の第五条の第一項を読んでみますと、労働大臣雇用の安定に関する計画を作成することになっておる。先ほどもちょっと議論の中に出ておりましたが、雇用の安定に関する計画という中に、いま申し上げましたいわゆる定年延長の問題とか、あるいはパートタイマーの処遇の問題とか、新規学卒採用の問題等も織り込んで、長期の展望に立ったものでなければ私は意味がないと思うのですが、そこではやはり企業任せじゃなしに、国や都道府県がみずから行ういわゆる新しい公共事業といいますか公的就労事業といいますか、そういうものも盛り込まれていかなければこれからはやはり対応できないんじゃないか、受け皿の中にはそういうこともひとつ考えなければいけないんじゃないかと思うわけです。  そこで、失業対策事業につきましても、従来の経過がありまして、六十年、六十五歳ということの方針も打ち出されておるようですけれども、先日来全日自労やあるいはその他の総評の皆さん方も労働省でいろいろ話し合いをしてきておるようでありますけれども、今後の失業対策事業の問題についてはどのようにいま考えておられますか。
  66. 増田雅一

    ○増田政府委員 失業対策事業につきましては、去る五十五年の十二月に失業対策制度調査研究報告が出されまして、現在の失業対策事業が、就労者の高齢化あるいは非効率化というふうな事態を迎えておりまして、もはや終息の段階にある。しかしながら、失業対策事業の今日までの歴史的経過あるいは産炭地域、同和対策対象地域の就労状況というものを考えると、当面は暫定的に存続させるべきである。しかしながら、労働政策の事業として実施する限りにおきましては、民間労働者とのバランスあるいは労働政策としての現在の施策の状況等を考えまして、六十五歳以上の方々につきましては、五年程度の期間を置いて失業対策事業の就労者の紹介対象者としないというふうに報告をされているところでございます、私どもとしてはこれを受けまして、失業対策事業につきまして今後の問題を検討していかなければならないというふうに考えておるところでございます。  しかし、現在就労している方々をどういうふうなことに持っていくかということにつきましては、この報告の実施につきましては、就労者団体、事業主体その他の関係団体等の御意見を伺いながら、ちょうど六十年には失業対策事業の見直しをする機会がございますので、また調査研究会をつくるということにもなると思いますので、調査研究会にもいろいろ御意見を伺って対処方針を決めてまいりたいというふうに考えております。
  67. 川本敏美

    川本委員 私は前にも申し上げたことがあると思うのですが、六十五歳で労働政策は打ち切り、だから失業対策事業も六十五歳でやめてもらうんだ、これは全くむちゃくちゃな議論であります。私は、年寄りと言いますけれども、六十五歳というのは今日余り年寄りの部類に入らないと思うのですよ。まして、その人の健康状態とか体力によって千差万別、一人一人違うと思う。もう五十歳でも働けないような病弱な方もおるわけです。六十五歳になってもまだまだ健康な方もおる。七十五歳になっても健康で働いておられる方もおる。だから、それをもう、六十五歳になったらいかに達者で健康で働く意欲があって求職活動をやっておる人であっても、それは労働政策上は失業者じゃないんだ、もう高齢者だから仕事してもらわぬでもいいんだ、こんなばかげたことは私はやはりおかしいと思うわけです。だから、一律に六十五歳で線を引くということじゃなしに、年齢にかかわらず――そしてもう一つは、地域によると思う。産炭地域とか同和地域とか、そういう地域においては新しい仕事につくというのは大変なことなんですから。しかし働かなければ生活できない。シルバー人材センターの話が出ておりましたが、シルバー人材センターというのは、あれはいわゆる企業とか官公庁で働いておって、そして共済の退職年金とか厚生年金の老齢年金をもらっておる、年金を中心として、土台としておる方々であればシルバー人材センターでいけるわけです。国民年金の福祉年金しかないような方々は、とても国民年金の二万五千円や三万円では生活できないんですから、やはり生活の中心は労働に置かなければいけない、獲得所得によらなければいけない。そういうことを御理解いただいてもう一度ひとつ再検討していただくように強く要望しますとともに、新しい公的事業といいますか公共事業、それもいままでの経験を踏まえてひとつりっぱなものを考えていただくということで、強く要望をしておきたいと思うわけです。  次に、もう一つ第六条の関係になるのですが、再就職援助等の計画ということです。再就職援助等の計画というのは、私は大体気に食わぬ、この言葉が。なぜかと言うと、再就職というのはその前に首切りがあるということを認めておるわけです。首切った者の再就職ということだから、私はこういう表現の仕方というのはもう法律としてはあるまじきことだと思うている。首を切っておいてそれの再就職のお世話をしますって、それだったらこれは首切り法だということになるわけです。だから、本当から言えばこんな呼び方をすべきでないと思っておるのですが、ここで、いわゆる再就職援助等計画の中で「相当数の労働者が離職等を余儀なくされる」という言葉があるわけです。これはいままでの法律では大体三十名ぐらいが一ヵ月に首切りされる場合が相当数という数字になっておったんじゃないかと思う。今度の法律ではどう考えておられますか。
  68. 谷口隆志

    谷口政府委員 再就職援助等の計画についての名称につきましては、先生指摘もございましたわけでございますが、この言葉は第六条に書いてございますように、「再就職の援助その他の雇用の安定に関する計画」ということのいわば略称でございまして、それにつきましてもいま言われましたような配慮も必要かと存じますが、先ほども申し上げましたように、この新しい法律自体は、現行の法律内容に、失業の予防というようなことも充実強化するということで進めておるわけでございますが、名前につきましてはいまの法律施行以来五年にわたって使われてきたものでございまして、関係労使にいわば定着しているというようなことで踏襲したわけでございますが、中身はいま言われたように、離職させてそれに対する対策ということだけでなくて、配置転換とか関連会社その他への出向等によりまして失業を防止するというようなことも含む措置を記載するようになっておるわけでございますが、そういう観点から十分指導をし、行政を進めていきたいと思っております。  そこで、お尋ねございましたこの相当数の労働者が離職を余儀なくされる場合の数の問題でございますが、現行は御指摘ありましたように一月で三十名以上かまたは離職者を含んで百名以上の雇用調整をするということでございまして、この基準自体は法律制定後中央職業安定審議会に諮りまして決めますので、いま明確にそのとおりだということは言えない状況でございますが、考え方といたしましては、この法律の趣旨自体変わっておるわけではございませんので、まあ現行と大体同じようなことでいこうというふうに考えております。
  69. 川本敏美

    川本委員 私は、三十人であればこの法律が適用されて二十九人だったら適用されない――まあどこかで線を引かなきゃいけないわけですけれども、やはりその辺については柔軟にケース・バイ・ケースで対応できるような弾力性を残してもらうことが必要じゃないか、このように思うわけです。  そこで、いま局長失業予防の面を充実するんだ、重視しておるんだとおっしゃいましたけれども、私は失業予防の面が非常に軽視されておるんじゃないかと思うわけです。先ほど池端さんの質問とも重なるわけですけれども、第六条の三項では、いわゆるこの法律によって新しい計画を立てようとする事業主は、その事業計画を職業安定所長のところに提出して認定をしてもらう、こういうことになっていますね。そのとき、失業予防の内容についての認定ですけれども、先ほど来申し上げましたように、池端さんの質問に対しても明確な御答弁がなかったわけですけれども、定年制は六十年六十歳を目指すというのは労働省の方針ですよね。あるいは労働時間が、従来二千二百時間が二十を割る千九百時間とかというのは前の大臣も言っておられる。あるいは障害者、中高年齢者の法定雇用率はまだまだ達成されていない。こういういろいろな労働省が従来やってきた一つの政策なりそういうものが基準としてあるわけです。事業主の立てるあるいは事業主団体が立てるこういう計画の中に、この定年制の問題や労働時間の短縮の問題やあるいは週休二日制の問題や法定雇用率等の達成の問題は、もし無視されておるとしたらこれを認定しない、私はこの基本方針は明確にすべきだと思うわけです。そこで、まず労働省がそういう点についての基準を定めて、事業所が計画を立てるときにはこれだけは守りなさいよという義務づけをする、それを職業安定所長に示して指導をさせる、こういういわゆる産業政策の中に労働政策をやはり強力に指導をしていく、こういう基本的な観点がなければ、私はこの法律は首切り促進法以外の何物でもないということになるおそれがあると思うのです。だから、その点について局長からまず答弁を。
  70. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほどの答弁にちょっと補足をいたしておきますが、再就職援助等の計画につきましては、現行の法律では一月に三十人以上の離職者を出すような場合は、これは義務として作成し提出しなければならぬということでございまして、それよりも少ないような離職者を出す場合につきましても、この法律に基づいたいろんな施策を受けようとする場合は、この計画をつくって安定所へ提出して確認すればこの法律の施策に乗っていける、こういうことになっておりますので、そういうことで従来も指導しておりますし、進めてまいりたいと存じます。  そこで、お尋ねになりましたこの再就職援助等の計画の認定に当たりまして、定年の延長とか高年齢者、障害者の雇用率の達成とか労働時間の短縮について、明確な基準を出して指導したらどうかということでございます。  私ども一般的に申しまして、不況に陥って企業経営が苦しい場合に、何と申しましても再就職のむずかしいような方、たとえば高年齢者とか障害者の方々に影響が大きく及ぶようなことのないようにというようなことは、一般的な強い方針として持っておりまして、そういうことで各出先の職業安定所に指示をいたしまして、そういう努力はいたしてきておるわけでございまして、定年延長にいたしましても規模別にいろんな形で指導を進めるとか、あるいは雇用率の問題も、これは仮にこの構造改善を進めるために事業規模を縮小しなければならぬ場合でも雇用率が未達成でいいということでもないわけですから、そういう指導も当然あり得るわけでありますし、いろんな形での指導はしなければならぬと思いますが、一般的にその基準を示してこういうことをやるとなりますと、それぞれの事項はそれぞれの政策目的に応じてやっておることでございまして、労働時間の問題につきましても、先ほどの池端先生の御質問への答えのように、これも賃金が減るということですとまたこれ労働者の生活にもかかわりますし、賃金を同じにして時間短縮するとコストの問題にもなるとか、いろんなそういう個々の問題も出てくるわけでございますので、そういう一律の基準を設けて、それをもとに、再就職援助等の計画で事業主にそれを守るように行政を進めていくということは非常にむずかしかろうかと存じますけれども、冒頭申し上げましたような、一般的にはこういう方々へのしわが寄ることが少なくなるようにという基本的な考え方で進めてまいるつもりでございます。
  71. 川本敏美

    川本委員 いまの御答弁では私は納得できぬ。というのは、それだったら、事業所なり事業主団体が立ててきた計画は、仮に法律にさえ違反していなければ先ほど基準局の方もお答えになったけれども何でもいいのだ。それじゃ労働省は、いわゆる週休二日制の推進とかあるいは労働時間の短縮とか定年延長とか掲げている以上、不況業種に指定さえされればそれは守らなくてもいいのだ、あるいは中高年や障害者の雇用率を達成しなくてもいいのだ、そういうものでも認めるんだという言葉に通じるじゃないですか。それは守らせるのでしょう。どうですか。
  72. 谷口隆志

    谷口政府委員 いまお答えしましたように、法的にその義務となっております雇用率等につきましては、これは不況業種であると否とにかかわらず適用されるわけでございまして、それは守ってもらうような指導は十分しなければならぬと思っておりますが、その他の点につきましては、やはり個別の事情等を全く無視した指導をするというのは少しむずかしかろうかと存じます。
  73. 川本敏美

    川本委員 強力に指導していただくように要望いたしておきたいと思うのです。  次に、通産省中小企業庁においでいただいていると思うのですが、特定不況地域中小企業対策臨時措置法というのが出されていますね。この法律の中には「別に講じられる失業の予防、再就職の促進等の措置と相まつて、」というのが第一条に入っておる。「別に講じられる」というのは、これは中小企業庁なり通産省が別に講じるのですか。失業の予防対策とか再就職の促進、これはいま審議をしておる労働省のこの法律を指しておるのですか、どうですか。
  74. 吉田文毅

    吉田説明員 お答え申し上げます。  いま先生指摘の点につきましては後者でございまして、政府として一体となって中小企業対策、労務対策を講じようという趣旨をあらわしております。
  75. 川本敏美

    川本委員 特定産業の構造改善臨時措置法や特定不況地域中小企業対策臨時措置法にも、失業の予防とか雇用の安定というのは出てくるけれども、大体法律内容を読んでみると、これは別に講じられるというような考え方ではないか。その別に講じられるという内容を突き詰めていくと、いま審議をいたしております特定不況業種または特定不況地域関係労働者の特別措置法に裏づけをしてもらうのだという思想があるのではないかと思うわけですが、特安法を読んでみても、その中には中小企業の経営の安定ということが入っておるけれども、先ほど指摘をしましたように雇用の安定というのが抜けておる。雇用の安定はどうなんだと言ったら、経営さえ安定すれば雇用が安定するのだ、こういう考え方、ここらあたりに労働省としては、通産省の関係で出てくる失業者の後の始末は労働省でやってくださいよ、向こうの方は経営さえ黒字になったらいいので、失業者は何ぼ出てもいいのだ、その後の始末は労働省でお願いします、簡単に言えばこういうことですよね。それをそのままさようでございますか、私の方で全部処理をいたしますということで、労働省失業の給付期間を延長したり、手帳を交付していろいろな職業訓練をやったり、これでは全く企業のやり方に盲従をする労働政策。産業政策の中に労働政策が入っていかない。先ほどからの答弁を聞いても私はなかなか納得できないわけです。だから、その辺についても労働省は十分考えてもらわなければいかぬと思うのです。  そこで、この特安法にも第十条第四項で「国及び都道府県は、第二項に規定する事業者の関連中小企業者について、その経営の安定に資するため必要な措置」というような言葉が入っておりますし、あるいはこの労働省特定不況業種・特定不況地域の特別措置法の中にも関連下請企業に対する規定があるわけですけれども、それを読んでみますと、現在までは元請に対する中小企業の依存度というのが大体二分の一以上のものを下請企業とみなして制度が活用できるような仕組みになっておると思うのですが、その点どうなっていますか。
  76. 谷口隆志

    谷口政府委員 本法案におきましては、特定不況業種事業主には、特定不況業種に属する事業主のほかに、その事業主と一定の下請事業主も含まれることにいたしておるわけでございますが、これはその下請企業が不況業種そのものに属していなくても、その不況業種に属している親企業の影響を、構造不況の影響を非常に大きく受けるという場合に、やはり雇用対策を講ずる必要があるということで設けておる仕組みでございまして、そういうような考え方でいきます場合に、どの程度までその業種そのものに属していない業種を対象としていくかという場合は、やはりこの依存度がおおむね二分の一以上であるというようなこと、それから中小企業であるというようなことが一般的に妥当な基準だろうということを考えまして、現在においてもそういう基準で考えておりますが、今度の法律におきましてもそういうことをもとに考えてまいろうかと思っています。
  77. 川本敏美

    川本委員 私は依存度が三分の一であっても従業員を解雇しなければならぬというような事態が起こる可能性はあると思うわけです。だから、その辺についてはこれも弾力的に運営できるようにひとつしておいていただきたいと思うわけです。  それから最後になりますが、もう時間もありませんので、大臣に一つお聞きしたいと思うのです。先ほど来池端さんも触れておられましたが、ことしの一月に総理府が行ったいわゆる労働力調査ですけれども、先ほど来のお話に出ておりましたように完全失業者が百六十二万人、二・七二%ということで、前月に比して、前月というのは五十七年十二月の調査で百三十五万人だったのですね。それが百六十二万人と大幅に増加をしたということで、労働大臣閣議の席上で先ほど御答弁があったような疑義を挟まれたということもあるわけです。その調査の方法が変わったとかいろいろ技術的な問題はあろうかと思いますけれども、しかしながら深刻なこの不況景気の停滞、そういう中で失業者の数がだんだんふえてきているということはこれは否めない事実。特に着目をしなければならないのは、従来二十四歳以下の方々の失業率というのは非常に低かったわけですが、今度の調査では特に急激に変わりつつある。労働省有効求人倍率を見てみても、二十四歳以下が今度は一月では〇・九六に落ちていたと思うのですが、だからこれはやはり戦後二番目の求人倍率ですね。だからそういう点では大きく着目をしなければならぬと私は思っておるわけです。  そういう中でいま八三年春闘がいよいよ始まろうとしておる。町の景気は非常に悪い。中小企業も経営が困難だ。こういう状況の中で八三年春闘が闘われているわけですが、私は先ほどもお触れになりましたように国家公務員、地方公務員の人事院勧告凍結とかあるいは恩給や年金の凍結とかというようなことがやはり一つの原因になり、一兆円減税もなかなか行われない。そういうことで可処分所得が減少しておる。これが国内の景気を大きく停滞させる一つの原因になっておると思うのです。今度は日経連や経団連等も賃金の抑制を打ち出しておりますけれども、いままで労働大臣は一貫して三公社五現業、公共企業体の仲裁裁定についても完全実施をしてもらいたい、公務員の人事院勧告についてもこれは凍結すべきでない、こういうような基本的な態度を常に閣議でも表明せられ、談話も発表されてきたところです。大野労働大臣、今度の春闘に当たっては、やはり可処分所得が増大できるような保障がなければ国内景気も麻痺してしまうおそれがある、私はこう思っておるわけです。その点について大野労働大臣はどのように考えておられるのか、ひとつお伺いしたいと思います。
  78. 大野明

    大野国務大臣 御指摘の五十八年春闘がいままさにやや始まったところでございます。組合関係の方々もまた使用者側も、これは双方、現在のわが国経済的な状況というものを十二分に把握しておるというか認識しておられるような気が私はいたしております。と申しますことは、いずれにしても大変景気が停滞しておる。これでもって経済状態は悪いからどうしても失業率も非常にふえておるというようなことで、しかし、といってただそれだけで事が済むわけではございませんが、いずれにしても勤労者諸君の方はこれはもう実質収入というものを高めたい、それによって内需の拡大を図って景気回復を図り、雇用の安定にも資したいというようなことで、大体七%ぐらいを要求しておる。私が一番最初に言った認識をしておられるということは、去年は一〇%を要求しておったがことしは七%である、ここいら辺は私は非常に理解を示しておるような気がいたしております。また一方経営者の方も、これは生産性基準原理内においての賃上げだ、中にはゼロだというような厳しいことを言う方もおりますけれども、これもやはり日本の経済社会の実態を把握しておる言であろうかというふうに私は認識もいたしております。  いずれにしても春闘、この賃金問題というものは私が介入すべき問題でもございませんから、こういうような経済社会というものを背景にしての五十八年の春闘ですから、労使双方でよりよい話し合いをしていただいて、合理的な解決をしてもらうようにいまその推移を見守っておるというところでございます。
  79. 川本敏美

    川本委員 労働大臣、私が介入すべきことではないと言いながら、いままでは八一春闘でも八二春闘でも労働大臣が私鉄の賃金決定時に介入をしたりしてきたわけです。そういう都合のいいときだけは介入をして、都合が悪くなれば私が介入する問題ではないというのは、そんなことでは大野労働大臣労働省の地盤を沈下させる原因になります。やはり労働大臣というのは一定の線を守って、そして日本の労働行政がスムーズにいくためには、勇気を持って経営者団体であろうと閣議であろうとどんどん発言をしていくことによって、これは大野労働大臣、将来総理大臣にしてもらわなければならぬなということにもなるわけですから、ひとつ元気を持ってがんばってと要望して、私の質問を終わります。
  80. 稲村利幸

    稲村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ────◇─────     午後三時三十五分開議
  81. 今井勇

    ○今井委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案に対する質疑を続行いたします。大橋敏雄君。
  82. 大橋敏雄

    大橋委員 私はこの数年、この社労を出まして科学技術あるいは法務あるいはまた地方行政、逓信と巡業してまいりまして、四年ぐらいですかまたもとに戻りました。真剣に取り組んでいきたいと思います。よろしくお願いします。  ところで、先般総理府の労働調査報告が新聞報道されておりましたけれども、それを拝見してまいりますと、一月の完全失業率は、これは季節的な変動要因は除かれているわけでございますが、二・七二%、百六十二万人、わが国統計史上最悪の記録を示した、こういうふうに報道をされておりました。このような雇用失業情勢の中で労働大臣という要職につかれた大野大臣はいまいかなる御心境であるか、あるいは御決意をお持ちであるか、伺いたいわけでございます。  申し上げるまでもなく、ただいま大半の企業は景気低迷と輸出の減少、このダブルパンチを受けまして、きわめて深刻な状況にあります。適当な言葉かどうかわかりませんが、青息吐息というような状況にあるわけです。  また五十八年度の設備投資計画を見てまいりましても、前年度に比べましてたしか〇・三%マイナス、このような水準というものは第一次石油ショック以降八年ぶりの最悪の状態に陥っているということでございます。  また、主要企業は第二次雇用調整期に入ったと言われておりますが、確かに人減らし、設備投資の縮小あるいは繰り延べを始めているわけでございます。労働者にとりまして、失業というものは最大の敵であります。本当に不幸なことであるわけでございますが、特に家計を支えている男性世帯主の失業者が五十七万人にふえているということでございますが、全く深刻な問題でございます。  ところで、労働者を守る立場におられる大野労働大臣の、いま言いました御心境なり御決意なりをお伺いしてみたいと思います。
  83. 大野明

    大野国務大臣 先生指摘のように一月の労働力調査、二・七二というようなことで、私ども労働情勢が非常に厳しいことは認識いたしておりましたが、前月に比べていかにも急に率が上昇したというような点、まあいろいろと現在、産業構造の変化等によって労働力の需給の変化等もあったのではないかということで、鋭意調査もいたしておるところでございます。  いずれにいたしましても、世界の経済というものがこういうふうに停滞しておるし、それに伴ってわが国は何といっても輸出というものが国是であるというようなことで、この最大の輸出が減少しておる、そのために景気回復というものもどうしても緩慢であるし、また同時に、伴って失業者もふえるというような悪循環があります。そこで、何といっても雇用の安定を期するということは労働行政の中において当面一番の課題でございますから、それに正面から取り組んでおるところであります。  いずれにしても失業者というのは、その失業者個人の不幸ということのみならず、いま先生の御質問の中にもあったように家庭の崩壊にもつながるというような悲劇にもなるでしょうし、また同時にそれは社会の損失であるし、国家の大きなマイナス要因であるから、これらを是正しなければならないことは当然でございます。  そこで、まず失業の予防ということに重点を置いて雇調金という制度を十二分に活用していく、また離職者の方々の再就職、これは安定所関係全力を挙げて取り組んでおるところでございます。  いずれにしても、そういうような厳しい情勢下において、一方ではまた御婦人が就職を希望する人が多い、またどうしても高齢者社会に対応してやっていかなければならぬというような、先生指摘のとおりむずかしい時代の労働大臣になったわけでございます。しかし、むずかしいと言っておるだけではだめでありますから、いままでと違って、いままでのいい面は踏襲するにしても、これからの新しい時代、新しい構造の中でみんなが本当に安んじて働けるような社会をつくっていこうということで、前向きに取り組んでおるところでございます。
  84. 大橋敏雄

    大橋委員 先ほど申し上げました総理府労働力調査完全失業率二・七二%、これは本当に深刻な数字が出ているわけでございます。しかし、たしか午前中の質疑応答の中で局長さんは、この数字労働省調査のやり方とずいぶんとかけ離れておるのだというような趣旨のお話しがあったようでございますが、そうなんですか。
  85. 谷口隆志

    谷口政府委員 雇用失業情勢につきましての現状認識でございますけれども、昨年の四月から失業率も二・三%を超えまして、その後二・四%前後の比較的高い失業率推移いたしておりますし、有効求人倍率も昨年五月に〇・六倍を割りまして、〇・五八、〇・五九あるいは〇・六倍ということで推移いたしておるわけでございます。そういう意味におきまして、失業者の増加とか労働力需給の緩和という厳しい情勢は続いておるという認識はいたしております。  ただ、一月の労働力調査によります失業率二・七二%につきましては、私どもの方の有効求人倍率とかあるいは毎月勤労統計数字、それから私ども定期的に職業安定機関を通じて各地の企業整理なり雇用の変動等についての報告をとっておりますけれども、そういうものに基づきましても、この一、二ヵ月で急激に大幅に悪化したというような状況報告はございませんので、それらとの乖離があるということは事実でございます。  問題は、労働力調査にいたしましてもわれわれの調査でも、ただ一ヵ月だけで見るよりも若干時間をかけて見る必要もありますし、またいろいろな調査を総合的に見て雇用失業情勢を判断しなければならないと思っておりますが、私どもといたしましては、厳しい雇用失業情勢状況がずっと続いておるという認識は持っておるわけでございますけれども、二・七二%というものをどう評価するかについてはもう少し時間をかけて見る必要があるのじゃないか、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  86. 大橋敏雄

    大橋委員 私は総理府調査というものはそれなりに権威があるものだと思うのですね。民間の方が趣味でやっている調査とわけが違うんです。それにははっきり二・七二%という数字が出たわけですね。これは労働省調査とはちょっと調査内容が違うからというような認識に立たれるということは、私は重大な問題じゃないかと思うのですよ。たとえばわが国失業の定義、これは外国とは多少違うと思うのですよ。しかし、この定義が変わったわけじゃないんです。あるいはまた、いまおっしゃっているように調査方法が幾分違ったことはあるかもしれませんけれども、その調査方法だって四カ月ぐらいかけて変えていったという話ですから、その間に問題化したなんという情報は一つも入っておりませんし、そういうふうに見ていきますと、労働省の物のとらえ方が甘いのじゃないかな、私はこういうふうに思います。  確かに一月の完全失業率は二・七二%、そして百六十二万人、昨年の十二月、一ヵ月前は二・四一%でしたからその差〇・三一%、また百四十一万人ということで二十一万人、つまり〇・三一%と二十一万人の完全失業者が一ヵ月にわっと出てくるということも確かに唐突な感じもしないわけじゃございませんが、やはり総理府のこの統計を私は深刻に受けとめるべきではないか、こう思うわけです。  と申しますのは、労働省の労働経済動向調査というのも最近発表されておりましたね。これを見ますと、ほとんどの中堅の企業が採用を手控える、あるいは雇用を縮小する事業所が三割を超えている、第二次石油ショック以来、つまり五十三年の四月から六月期以来の悪い状態であるということを発表しておりますね。あるいは倒産による失業多発、解雇の増加傾向、新規採用手控え、もう大学を出ても就職できないというような深刻な状況労働省みずからが発表いたしておりますね。ですから、いまの失業状態というものはもう想像を絶する実態にあることをもう少し正しく認識することが大事じゃなかろうかと思うのですね。このことを幾ら論議してみても、認識の違いあるいは見解の相違と言われればそれまでになるわけでございますが、いずれにいたしましても深刻な雇用失業情勢にあるんだということは間違いないことである。  じゃ、この最悪事態を打開する第一歩は一体何だろうか、これを考えなければならぬと思うのですね。よく言われることでありますけれども、勤労者の所得税の大幅な減税を実現することである、もう一つは実勢に即した賃上げをこの際やるべきである、そして個人消費、内需の増大のために大幅減税やるべし、もはやこの大幅減税というのは天の声と言っても過言じゃないと思います。先ほど大臣は、失業の予防、雇用の安定についていまからの新しい情勢の中で手を打っていくんだとおっしゃっておりましたが、どのような手を打たれましょうとも、当面やるべき問題は何かと言えば、景気回復のためのあるいは不況脱出のための大幅減税、実勢に即した賃上げではないかと私は思うのでございますが、これまた大臣の御意見を承りたいと思います。
  87. 大野明

    大野国務大臣 ただいまお話しのございました減税問題等、これはもうそれに限らず、景気回復ということが当面の課題でございます。いずれにしても雇用の安定を図る、失業者をなるべく出さないようにしようということを念頭に置いておけば、いろいろな施策はあるわけでございますけれども、その中で金融面からの解決すべき問題もございますでしょう。また本年度もそうしたわけでございますが、来年度もいわゆる公共投資の前倒しをするとか、と同時にやはり所得税減税、これも一つの要素でございます。  私は、本年の二月十二日でございましたか、岐阜で記者会見がございまして、そのときにも、所得税減税景気回復のためにこれもやらなければならぬということを言いました。そしてどれくらいだと言われたので、額のことは私の立場上当然幾ら幾らとは言えないけれども景気浮揚に資するということを申し上げた。その後衆議院の予算委員会でも、私はその日は出席しないでもよかったのが急に呼び出されて、岐阜でこんなかっこうのいいことを言ってこっちへ来たらかっこう悪いじゃないか、そうじゃないですよ、よく読んでくださいと言ったらばわかってもらえたのですが、勤労者諸君が本当にいまの厳しい時代を乗り切っていくためのいろいろな施策は、労働省としてまた労働大臣としても考えておるところでございます。  いずれにしても、この減税問題につきましては衆議院の議長見解等もございますので、いま与野党でお話し合いをいただいておるということで、むしろその発言後いろいろな動きが出たので、一歩前進したので、自分としては大変うれしく思っておるところでございます。  また賃上げの問題、これは春闘が始まったばかりでございますけれども先生仰せのとおり、組合関係は実質所得を引き上げ、そうしてそれが個人消費につながって、それが内需の拡大、景気回復につながるのだから七%ぐらいを要求しておる。しかし一方、この経済状態の中で不況な企業もございますし、いろいろな形で、従来どおり使用者側は生産性原理というものを基準としてやっておる、これでなければ困るというようなことでございます。しかし、それにしても、いまのこの社会を労使双方が実態をよく把握して、本当に円満に、合理的に解決してもらいたい、こう願っておるところでございますが、いずれにしても、前段の減税問題につきましては私もできる限りの努力をしたいと考えております。
  88. 大橋敏雄

    大橋委員 中曽根総理がおっしゃった言葉の中で、今回の中曽根内閣は仕事のできる内閣だ。その閣僚の一人である大野大臣です。特に労働者は労働大臣に期待するところ大であります。いまも申し上げましたように、変な仕事をしてもらっては困るわけでございますが、とにかくいまの経済情勢あるいは社会環境、そういう中から雇用の安定あるいは失業の防止というものを考えていく場合には、より基本的な体制を組まねばならぬと思います。しかしながら、当面とにかく手を打たねばならぬ問題は何かといえば、いま言ったように有効需要を浮揚させていく経済政策転換といいますか、これを早急にやらなければならぬということであります。その先頭に立ってもらいたいわけです。その経済政策転換は何かといえば、いま言ったような大幅な所得税減税あるいは実勢に即した賃上げのことであります。  過日労金会館で「八三年日本経済の在り方を考える」シンポジウムが行われたわけでございます。その報道の中で、辻村江太郎慶大教授、前経企庁の経済研究所長をなさっていた方でございますが、その方のお話しが出ておりました。「「経済現象は徐々に変化して行くものだと考えられがちだが、ある限界点を超えると急変する。政策転換をおこたれば、不況が急速に深刻化し、失業率も急上昇する時期が来るのではないか」と指摘した。」こうあります。  いま私が申し上げましたように、有効需要をつくり出す経済政策転換の必要性を訴えております。また、先ほど減税の幅についても景気回復、浮揚させるだけのものは必要だ、こういうお話しがございましたが、これも御承知のとおりに、所得税の課税最低限は昭和五十三年度からもう六年間据え置きされてきているわけです。今度大蔵省が予算委員会提出した資料から拝見してまいりますと、五十三年度から毎年毎年五十八年度まで物価調整のための減税をやったとすれば一兆三千六百億円になるのだ、これは実質増税なんだ、こういうことに当たるわけでございまして、サラリーマンは特に不公平感を抱いております。そのことをしっかりと胸におさめていただいて、その先頭に立っていただきたいことを強く要望しておきます。時間の関係もございますので、次に移ります。  このように続々と失業者がふえてきた。そしてまたこれからも予想されるわけでございますが、このような状況になったならば、失対事業、やはりもう一回その門戸を開く必要はないのだろうか、私はこのように思うのでございます。この際、失対事業に対する政府の考え方をお尋ねしたいわけでございます。  この失対の見直しに関する経緯は、私は私なりに理解しているつもりでございますが、失対事業の就労状況等について説明を仰ぎたい。まず就労人員あるいは男女別の内容、平均年齢等。その前に、まず失対事業の門戸を開く必要はないかどうかということからですね。
  89. 増田雅一

    ○増田政府委員 失業対策事業につきましては、昭和四十六年の中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の制定の際に、その附則第二条によりまして、新たな就労者の受け入れは行わないこととされているところでございます。  さらに、昭和五十五年の失対事業制度の検討の際に提出されました失業対策制度調査研究報告におきましても、失業対策として国あるいは地方公共団体が特別の事業を起こして失業者を直接吸収するというような方式につきましては、かえって失業者を滞留させ、またその再就職につながらないという基本的な問題があり、今後の雇用失業対策は、各種給付金制度等の民間企業における雇用の安定や雇用の促進のための施策を拡充し、またその積極的活用を図ることが基本であり、失業対策事業のような方式はとるべきでないとされているところでございます。したがいまして、いま先生お話しのような失業対策事業の門戸を開くということは考えておりませんけれども先生が再三おっしゃられておりますような現下の厳しい雇用失業情勢にかんがみまして、助成金の活用による民間企業の雇用の場の拡大を図りながら積極的な求人開拓を実施して、失業者の吸収制度の活用等による公共事業への就労促進などに努力してまいりたいと存じております。  次に、失対事業の現況でございますが、紹介対象者数は年々減少いたしまして、五十七年九月末には約七万二千人となっております。また紹介対象者の高齢化が著しくなっておりまして、平均年齢は六十四・六歳でございます。就労者総数の五二%は六十五歳以上の者となっております。六十五歳以上の就労者が過半数を超えている状況でございます。また、男女別には女性が約七〇%を占めているという状況でございます。
  90. 大橋敏雄

    大橋委員 先ほども申しましたように、失対の見直しに関する経緯は私なりに承知しておりました。しかしながら、いまも申しますように、余りにも大量の失業者が予想される今日、従来とってきたような対策だけで間に合うんだろうかという心配が実はあったわけです。いずれにしましても、失対事業に対して基本的な方針は変わらないということでございますが、五十八年度の予算案を見てまいりますと、吸収人員も大幅に減少しておりますね。あるいは高齢者の就労日数も一・五日分削減されておりまして、非常に厳しい内容になっているように思われます。私はこれはもう実態を無視した机上のプランじゃないか、そういうことじゃだめだなという気がしてなりません。それから、昭和六十年、六十五歳打ち切り方針もまたしかりでありまして、実態に即した対応をぜひしていただきたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。  いまも報告されましたように、非常に高齢者の方々ばかりでございますが、これは好きこのんでこうした高齢でつらい仕事をしたいと考える者はまず私はいないと思うのですね。家庭経済上やむなく老体にむちうつ思いで就労していらっしゃるんだろうと私は思うわけです。したがいまして、こういう方々の実態、すなわち生活がかかっているんだということを頭に入れながら特段の配慮が必要だ、私はこう思うのでございますが、いかがですか。
  91. 増田雅一

    ○増田政府委員 いま先生指摘のように、来年度の失業対策事業関係予算は五百七十一億でございまして、今年度に比べまして約二十八億の減になっております。したがいまして、吸収人員も五万七千七百人から五万三千百人と四千六百人の減を数えておるわけでございます。ただ、この問題は、財政の問題を別にいたしましても、失業対策事業の就労者が先ほど申しましたように非常に高齢化をしてきておる。また、したがいまして事業の効率という面でも非常に問題が出てきておるわけでございます。そこで、先ほど申しました昭和五十五年の失業対策事業制度調査研究報告におきましては、失業対策事業は本来終息の段階にあるんだけれども、いろいろな事情を考慮して暫定的に実施することとして、ただ五年程度の期間をおきまして、六十五歳以上の就労者の方々につきましては失業対策事業の就労者としないというふうな御報告をいただいておるところでございます。  この問題は、六十五歳以上の方々を現在でも職業安定行政の施策の対象としてはいないということ、あるいは六十五歳以上の方々が民間の企業の労働者にとってみますと大体引退年齢になっているというようなこと、それからさらには、六十五歳以上の高齢者につきましては、失対事業一般にそうでございますけれども、特に災害が非常に多くなっているというようなこと、あるいは失対事業の就労者の就労状況というようなことを考えまして、一応六十五歳という線を引きまして、それ以上の方々につきましては失対事業の就労者としないというふうなことを報告では述べているわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、そういう高齢失対就労者の方々の就労状況、特に災害が非常に多いというようなこと等を考えまして、六十五歳以上の方々につきましては吸収枠を減らしまして、来年度につきましては月二十・五日、本年度から比べまして一・五日の就労減を考えたわけでございます。しかしながら、そのことによりまして収入が減るというふうなことになりますと、これは生活の問題に直結いたしますので、その一・五日の就労減は日雇雇用保険で保険金を出すということにいたしまして、現実にと申しますか実際に就労者の収入につきましては、五十八年度分につきましては五十七年度のものよりも少なくならないように配慮しておるところでございます。また、就労者の状況によりましてはその日雇雇用保険の級が上がるというようなことになりまして、かなりの増収になる方もおいでのようでございます。また、五年程度を置きまして六十五歳以上の方々を失対事業の就労者としないということにつきます、いわゆる六十年ごろに六十五歳以上の方々を紹介事業の対象としないというようなことにつきましては、これは私どもといたしましても、研究報告にも述べられておりますように、失対事業のこれまでの経緯あるいは産炭地域あるいは同和地域というような特殊性をも考慮しながら、現在の就労者の方々をどういうふうにめんどうを見ていくかという点については、関係方面といろいろなお話しをしながら案を考えていきますと同時に、ちょうど六十年は失対制度の見直しの時期にも当たりますので、再び調査研究会を組織いたしまして、学識経験ある先生方の御意見を伺いながらその実施の方法について考えていきたいと思っておるところでございます。
  92. 大橋敏雄

    大橋委員 いまの御答弁の中で、就労日数は減らしたけれども収入の面はむしろふえるのだ、こういうお話しがございましたけれども、どういうふうにふえるのか、ひとつ具体的にその説明をしてくれませんか。
  93. 増田雅一

    ○増田政府委員 現在来年度の失対賃金表を決める段階にございまして、近く発表されることになるかと思います。したがいまして具体的にいまの段階で申し上げるわけにはいきませんけれども、予算的に見ますと失対賃金の労力費単価は三・四%引き上げられております。失対の貸金がそういうことで引き上げられましたために、日雇雇用保険の適用上、いままでたとえば三級をもらっていた人が二級に上がるというふうなことになりまして、その不就労日にもらう雇用保険の額あるいは臨時の賃金の額というようなものにはね返りまして、かなりの増収になるということであります。
  94. 大橋敏雄

    大橋委員 先ほど就労日数は確かに一・五日分減る、しかしながら日雇雇用保険から出るから大体それは同じだ。そうしますと、五十七年度は就労日数は二十二日でございましたね、そのときも日雇保険から三日間出て、合わせますと二十五日分になるわけですね。いまのあなたの答弁からいきますと、今回は二十・五日になるわけですから、その不足分の日雇保険から出るのは四・五日分ということですね。これはいいですね。そして、二十五日という日にちは一緒になる。  それから、いま賃金単価のお話しが出たわけでございますが、私がそれなりに調査した内容からいきますと、乙事業の平均として四・五%アップされる、甲事業の平均として三・六%アップされるのだと聞いているわけでございますが、そのアップからいきますと、たとえば五十八年度の乙事業の収入は平均千五百六十四円ほどアップされるのではないか、あるいは甲事業では五十八年度は前年度よりも四千百六十五円がアップされるのではないか、このような資料を私はいただいたわけでございますが、それはそのとおりになるわけじゃないのですか。
  95. 増田雅一

    ○増田政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在先生に御指摘いただきましたような失対就労者の賃金表はいま作成中でございます。この賃金表は適用地域ごとに分かれておりまして、たとえば東京都のようなところには第一表を、それから鹿児島県あたりの鹿児島市を除く他の市町村につきましては第七表というぐあいに、七表に分かれておるところでございます。それで、いま先生が挙げられた乙の四・五%、甲の三・六%という数字はこれらの表を平均いたしました場合のアップ率でございまして、就労者の構成等によりまして予算の労力費単価の三・四%よりも大きな数字になっているわけでございますが、それをわれわれといたしましては、失対賃金審議会の御意見もございまして、第一表つまり賃金の高い方につきましては少なく、七表のような賃金の低いところに対しましては高く上げるように、失対賃金表を作成中でございます。そういうことによりまして上薄下厚と申しますか、できるだけ失対就労者の方の生活が楽になるような形で賃金を考えておるところでございます。     〔今井委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 大橋敏雄

    大橋委員 いずれにしましても前年より下回ることはまずない、こう理解してよろしいですね。(増田政府委員「はい」と呼ぶ)  それでもう一言大臣にお尋ねしますが、六十年、六十五歳打ち切りという一つの基本方針があるわけでございますが、先ほど言ったように実態というものは御承知のとおりですから、実際に働いている人を六十五歳になったからすかっと首を切るというようなことは絶対やってもらいたくない、それは当然配慮していただきたいと思いますけれども大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  97. 大野明

    大野国務大臣 大橋先生は失対問題について大変御勉強なさっておられるし、同時に、地元が失対事業の多い選挙区であるということも私はよく知っております。その大橋先生が言われるのですから私ども以上に知っておるところがあるかもしれませんけれども、いずれにしても一つの線引きというか、そういうような形で現在六十五歳ということで、また、その問題についてはこれからの社会の変化等もございますし、そういうものを配慮しながらやっていく。生首を切ろうということが私どもの真意ではなくて、やはり時代というものを考えた上で図らなければならない点も多々ございますので、よく研究をして、同時に、六十年ごろにはまた一度見直しもしてやっていこう、こういうことでございます。
  98. 大橋敏雄

    大橋委員 残念ながら時間がもうあとわずかになりましたので、最後に私、まとめてお尋ねしますからよく聞いておってください。  今回の法改正で業種指定あるいは地域指定がいろいろなされていくわけでございますが、だれがどういう基準でそれを決めていくのかということをお聞きしたいことと、事実、私の地元に直方市というところがございますが、ここはそういう業者がたくさんいまして、大変な不況の波を受けて困っているところです。五十七年、昨年の十一月に実施した「景況調べ」というのがあるわけでございますが、こういう状況下にあるものは地域指定を受けられるのかどうかということも含めて答弁していただきたいのです。  これは二百七十社を対象として調査したものでございますが、回収企業数は九十九社、回収率三七%でございましたけれども調査結果は以下のとおりでございます。  「最近の売上高は」ということで、「減少している」というのが八十七社、「横ばい」が十一社、「上向いている」が一社であります。その実績について減少しているものを見ますと、一割減少が十社、二割減少が二十六社、三割減少が二十七社、四割減少が十三社、五割減少が五社、五割以上減少が六社、合計八十七社です。それから「影響を受けた受注先」は、回答企業数八十二社でございますが、鉄鋼だけで三十三社、四〇〇%を占めております。造船で十三社、一六%、あとは時間がないので省きます。「今後の見通し」も、九十八社の中で「悪くなる」というのが六十八社、「横ばい」が二十七社、「よくなる」というのがわずか三社でございました。  それから特に大事な点を申し上げますと、「不況に伴う休業等の実施状況」は、「すでに実施した」というのが十七社ありました。「今後実施する予定」が八社、「今の状況が続けば実施」というのが六十社、全部で八十五社です。それから「最近の雇用状況」、これは最近六カ月間ですけれども、求人倍率を見ますと、六月は五十六年度の〇・二〇が五十七年度は〇・一一、七月が同じく五十六年度〇・二二が五十七年度〇・一一、八月が〇・二四が〇・一五、九月が〇・二八が〇・二四、十月が〇・二〇が〇・二二、十一月が〇・一九が〇・一四。それから求職倍率も、いまの順番で行きますと六月が五十六年度四・九が五十七年度八・七五、七月が四・五九が八・九七、八月が四・一八が六・八七、九月が三・五六が四・二一、十月が五・〇六が四・四九、十一月が五・二九が七・〇三。  そのほかたくさんあるわけでございますが、非常に厳しい状況下にあるわけです。この大半の企業が鉄鋼あるいは造船の下請なんですね。そして企業団地ができているわけでございまして、そういう意味から私は、こういうところこそ地域指定がなされるのではないかな、こう思うわけでございますが、いかがなものでございましょうか。これで最後の質問にいたします。
  99. 谷口隆志

    谷口政府委員 まず、この法律に基づきます特定不況業種、それから特定不況地域の定義でございますが、特定不況業種は、構造的要因により長期にわたり不況に陥っておりまして、供給能力が過剰であるということ、それから事業規模の縮小等を余儀なくされておるということ、また雇用量が相当程度減少しているか、あるいは今後減少するおそれがあると認められるもの、そういう状況にございまして、かつ、この法律に基づく特別の雇用対策を講ずる必要があるという業種がこの特定不況業種になるわけでございます。それから特定不況地域についての定義でございますが、特定不況業種を多く抱えている地域であるということ、それから特定不況業種において事業規模の縮小等が余儀なくされておること、その結果雇用に関する状況が著しく悪化をしており、または悪化するおそれがあると認められる状況にありまして、かつ、この法律に基づく特別の対策を講ずる必要がある地域であるということでございます。  そこで、こういう定義に基づく業況の指定基準につきましては、この法律制定されました後におきまして中央職業安定審議会にお諮りをいたしまして、それに基づいて決めまして、それをもとに業種なり地域の指定をするわけでございますので、いま明確なことをお答えすることはできないわけですけれども、趣旨そのものは現行法とそう変わるわけでもございませんので、私どもとしては、大体現行の基準等を踏襲することになろうかと思うわけでございます。  そこで、お尋ねの直方市の関係でございますけれども、もともと現行の法律なりこの法律で考えておりますのが、内外の経済事情の著しい変化によりまして構造的な不況に陥っている、また雇用情勢も悪化しておるというようなことをとらえて対策を講じようという趣旨の法律でございます。そういう面からいたしますと、直方の場合はいまいろいろ御説明のございましたような非常に厳しい状況が続いておるわけでございますけれども、従来から悪い地域というのはそれはそれなりにいろいろな対策を講じておられる。たとえば産炭地域ですと産炭地振興のための対策を講じておられるとかいうようなこともございまして、この法律の趣旨に適合するかどうかむずかしい面もあるいはあろうかと思いますけれども、いずれにしましても新法制定後指定基準を決めますが、その基準にのっとって少し検討させてもらいたいと存じます。
  100. 大橋敏雄

    大橋委員 終わります。
  101. 稲村利幸

  102. 小渕正義

    小渕(正)委員 今回、二つの法律案を一本化した特別法になったわけでありますが、その主な改正のポイントは、まず一つは、特定不況業種の指定に当たって、産業政策その他が発動されない中においても、雇用量の変動に応じて機動的にそういうものに対応していこうというのが一つ。それから、不況業種指定をされる以前の一定期間の間に生じた関連下請中小企業に対しても、離職者対策を推進していこうというのが二つ目。あと一つは、今回新しく、失業の予防と雇用の安定という立場から、離職前の訓練が特に関連下請企業の中において実施できるようにする。  拝見いたしますと、大体この三つが大きな新しい骨組みではないかと思うわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  103. 谷口隆志

    谷口政府委員 前回の不況の時期に、いわゆる構造不況業種と言われる業種におきまして非常に急激に相当規模落ち込んだわけでございますが、そういう状況を背景に、現行の特定不況業種離職者臨時措置法なり特定不況地域離職者臨時措置法が制定されまして、それに基づきまして特別の雇用安定の対策を講じてきたわけでございますが、この現行二法の施行の経験なりあるいはその後の雇用情勢等の問題を検討いたしまして、やはり二つの法律に基づく対策を総合的に実施する必要があるということ、それからいま先生指摘のありましたような業種なり地域の指定を雇用の観点から機動的に行う必要があること、また下請業者等には特別の配慮をする必要がある、それから特に失業を防止するような施策をできるだけ充実強化する必要がある、こういうような観点からそれらの内容を含めて充実強化した法案を提案した次第でございます。
  104. 小渕正義

    小渕(正)委員 そういう立場から、実態の中で主にこれを実際にどう運用していくか、そういう運用面を中心にして御質問していきたいと思いますが、まず、そのためのそれぞれの指定基準があります。今回新しく、業種指定というだけでなく、雇用量の変動に応じて機敏に対応しようとしている一つの特徴がありますが、これの考え方といいますか指定の目安というものはどういうものがあるのかということが一つですね。  それから、同じくこれからいよいよそういう不況業種の指定等が行われるわけでありますが、一つのポイントとしましては、非常に不況が長引いた関係から、ずっと生産量が低下して下降線上に行く、それに準じて雇用量もある程度下降傾向にある、そういう状況がずっと長期的に三年、四年という関係の業種もありますから、そういう点において、新たな指定をするといういまの指定基準の中では、ちょっとそれに該当しなくなってくる可能性があるのじゃないかという懸念がされるわけであります。そういう意味で、指定基準についても若干そういう状況に応じて運用の幅といいますか、考え方のそういう面における運用についてのあれはないものかどうか。ただ従来の指定基準だけの考え方でいきますならば、結果的にはそういうことでずんずん下降線上に低下していく。そういう下落状況から考えますと、現行の指定基準の中でかえって逆に救えないような状況が出てくるのではないかというおそれがありますが、その点に対する配慮が何か考えられるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  105. 谷口隆志

    谷口政府委員 この法律制定されました後におきまして、業種なり地域なりその他いろいろな指定基準につきましては、先ほど来申し上げておりますように、中央職業安定審議会にお諮りをいたしまして決めることになっておりますので、具体的な中身について現段階では明確に申し上げる状況にはないわけでございますが、これらの基準につきましては、やはりこの法律に基づきます対策は、内外の緒済事情の変化によりまして雇用失業情勢が悪化しておる業種なり地域に対しては、ほかよりもかなり手厚い対策を講ずるということでございますので、そういう点では現行の二法と同じ思想でございますので、そういう面で基本的には、現行法による指定基準とそれほど異なったものになるというようなことではなかろうと存じますけれども、いずれにしましても、中央職業安定審議会で審議され決められる際に、先生のいま御指摘のありましたような点とか、そのほか産業の実情等については十分御審議をいただこうというふうに考えておるわけでございます。
  106. 小渕正義

    小渕(正)委員 そういう長期的な不況の中でだんだん下落傾向にある業種等がかなりありますので、ひとつそこらあたりの断層がないようなもので配慮の中に入れておいていただきたいと思います。  それとあわせまして、そういう指定基準が制定されたならば、実際に指定を行う場合にこれは事務的な作業に入りますが、これとこれはそういった状況の中で指定基準に該当するというそういう指定というものは、労働省だけの判断で行われるのかどうか。でき得ればそれぞれの業種別ですか、その該当業種である労使の参考的な意見も聞く、そういう機会を考えながらやっていくのかどうか。その点についてはいかがか、お考えを示していただきたいと思います。
  107. 谷口隆志

    谷口政府委員 この法律におきまして、特定不況業種の指定は政令で行われることになっておるわけでございますけれども、政令の制定なり改正をしようとするときは、あらかじめ事業主団体とか労働組合の意見を聞かなければならないということになっておりますので、基準につきましても、先ほど来申し上げておりますように、公益・労・使三者構成の中央職業安定審議会にお諮りして決めまして、それに基づきます業種指定につきましては、また関係の事業主団体とか労働組合の意見を聞くことといたしておるところでございます。
  108. 小渕正義

    小渕(正)委員 それでは次に移ります。  指定不況業種として指定した期間について、現行法では指定されたなら有効期間中は自動的な指定になっておったわけでありますが、今回の場合には指定期間というものについて、産業政策との兼ね合いもありましょうけれども、一応の期間を設けて行うということになっておるようであります。その期間についてはどのようなお考えなのかということと、それから、時間がありませんのであわせて質問しますが、特に今回の法の第二条四項に、労働大臣は第一項第一号による指定の改正を立案しようとするときはと、いろいろありますが、これらの業種の新規指定のみでなく、指定期間の延長または再指定の是非、こういう問題については関係労使の意見を聞くというふうに一応理解しておっていいのかどうかということ、この二点についてお尋ねいたします。
  109. 谷口隆志

    谷口政府委員 まず指定期間の問題でございますけれども、この法律におきましては、特定不況業種とかあるいは特定不況地域の指定を雇用対策の必要に応じて機動的に実施するということで、たとえば業種の指定に際しましては、現在の法律にあります法令に基づく行為とか国の施策に基づいて事業規模の縮小等が行われるという国の施策云々は削除いたしまして、もっぱら構造的に不況に落ち込んでいるかどうかとか、あるいは地域の指定につきましても通産省の関係の特定不況地域中小企業対策臨時措置法の中の指定の地域から決めるというようなものを外しておりますけれども、同時に、いま御指摘のありましたような指定期間という規定を設けております。  そこで、この指定期間をどのくらいにするかということでございますけれども、まず業種につきましては、その業種ごとに構造改善なり事業規模の縮小等が実施される期間が決められておる場合はその期間を勘案して決めることとしたいと思いますし、そういう期間がはっきりしない業種につきましては二年を予定をいたしております。ただ、その指定期間を経過した後におきましてもなお引き続きこの法律による業種指定をする必要があるものにつきましては、引き続き指定期間を延長するということを当然行うことで考えております。  それから、業種の改廃についても関係労使の意見を聞くかということでございますけれども、先ほども申し上げましたように業種の指定は政令で行いますし、それの改正も政令で行いますが、政令を制定するに際しましては事業主団体、労働組合の意見を聞かなければならないこととなっておりますので、関係労使の御意見は聞くことになるわけでございます。
  110. 小渕正義

    小渕(正)委員 じゃ、次に移ります。  今回の法律案の一つの目玉でもあります関連下請企業対策でありますが、特に関連下請企業対策といいますと、親企業が特定不況業種の指定を受ける場合、不況の影響は親企業よりも早くそういう関連下請企業にあらわれる傾向、これは一つの大きな傾向であるわけであります。そういう意味で、ある期限をさかのぼって指定しようという一つの今回の法律の新しいものが考えられておるわけでありますが、親企業のそういう不況業種の指定よりもさかのぼること大体どれくらいの期間をめどに考えられておるのか。これはそれぞれの業種業態によって異なるから一概に機械的に、一律的に言えない面もありますが、一応考え方としてはどういう期間を考えておるのか、その点をお尋ねします。
  111. 谷口隆志

    谷口政府委員 関連下請事業主に係る離職者に対します手帳発給の特例の遡及期間の問題でございますが、この期間といたしましては三カ月を考えておるわけでございます。この三カ月を考えております理由といたしましては、いま先生も御指摘がありましたように、関連下請中小企業におきましては雇用調整の影響が早く出るということがあるわけですが、従来の傾向等を見ましても中小企業では大企業に比べておおむね三カ月程度前に雇用調整が始められる傾向が見られるということがございますし、またこの対策はあくまでも構造的な不況に陥った業種における事業規模の縮小等に伴いまして離職をした離職者に対する対策でございますので、やはり余り長期にさかのぼりますとその辺の事情がなかなかとらえにくい、離職事由がはっきりしなくなる、あるいは職業安定機関として当該事由に基づく離職者を公平に把握するというようなことがむずかしくなるという観点から、三カ月さかのぼるということで考えておるわけでございます。
  112. 小渕正義

    小渕(正)委員 これはそれぞれの業種業態が異なりますのでなかなかむずかしい面もあろうかと思いますが、事金属関係といいますか、たとえば造船、重機械産業とかそういう業種の中では、ちょっと三カ月では、せっかくそういうことを考えられておるにもかかわらず少し厳しいのではないか、厳しいというよりも、もともと実はこういった関連下請企業に対しては早くこういう現象は出てくるわけでありますから、それは一律に律することはできないと思いますが、少なくともつくっておる製品その他、そういう業種業態によっては一年前からもう雇用調整をせざるを得ないという状況が出てくるわけです。それで、繊維関係のように何か一つ大きな仕事が入ってくるとすぐそれがかかられる、作業されるような状況と違って、ああいう重機械産業等の業種になりますと、少なくとも二年くらい先の受注という形の中で、一年前にはもう仕事がどの程度ダウンするかということが明らかになるわけでありまして、そういう明らかになった時点で、受注その他である程度カバーできたとしても、それがすぐ目先に間に合うものではなくて、あくまでもそれはまた受注後一年間、少なくとも最低半年以上しないとそういうものが改めて作業量として、仕事量として流れていかない、そういう製品構造によっては非常に長い、一年くらい前からもう徐々に雇用調整をしていかざるを得ないような状況がはっきり出てくるわけですから、そういう点考えますならば、ぜひひとつ、せっかくここまで考えられるならば業種業態にもよりましょうけれども、やはりそこに幅のある、もう少しそういう実態というものを見ていただいて、たとえば三カ月、四カ月、五カ月、六カ月というような形で、そこらに適用の幅を持つようなことをぜひ考慮していただかぬことには、せっかくそういう配慮をされたにもかかわらずそういうものが生かされてこない。もちろん最終のところでは三カ月ですから生かされますけれども、もう初めから、特に下請企業関係においてはそういう余力というものを持ち合わせませんから、雇用調整後即座に、そういう現象が何カ月後には出てくるということがわかれば事前に手を打っていきますから、そういう点でぜひ隔たりのないような対策をひとつ考えてもらわぬことには、せっかくこうして法の中で生かされようとしておることが不十分になってしまう、こういう面がございます。だからその点ひとつ、ここですぐこれをどうしろということを言っても、はい、そうですかとも言えぬでしょうけれども、そういう問題がかなりあるということを頭に入れておいていただいて、実際の運用の中で若干のそういう幅は考えるということはいかがかどうか、その点いかがでしょうか。
  113. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、この対策の対象となる事業主なり労働者につきましては、構造的な不況に陥っておるために事業規模の縮小を行わなければならぬ事業主なり、あるいはその事業主から事業規模の縮小によって離職を余儀なくされる方々を対象といたしておりまして、またそういう面で手厚い対策を講じておりますので、そういう事由が明確に把握できる対象であるということ、それからやはりどこかで一つの線は引かなければならぬというようなこともありまして、三カ月ということで決めたいと考えておるわけでございますが、いろいろな基準等につきましてはまた、労使参加しておられます中央職業安定審議会の中で十分御審議をいただこうかというふうに考えておこります。
  114. 小渕正義

    小渕(正)委員 その点は、ただいま私が申し上げたところだけではなしに、その事業所の全体の事業量の中で親企業への依存度がどの程度の割合を持っているか、それにもまた関連がありますから、そういう意味で、たとえば親企業からは五〇%程度依存して事業量としてはある、そういう事業所であれば先ほど私が申し上げましたような現象は早いときからたちまち出てくるわけです。だから一概に言えませんけれども、そういう事業量の依存度というものも考え、それから業種業態ですか、そういったものも考えながら、ひとつここらでもう少しうまくそこらあたりをよくかみ合わせながら考えてもらわぬと、ただ一律的な基準のみではいけない面がありますよということを申し上げておきますが、その点ぜひよろしく御理解をしておいていただきたい、かように思います。  次に、一つまた最近こんな問題が出ておるわけでありますが、最近のこういう企業は非常に多様化しておるわけですね。そして、事業も各種なものを取り込みながらいろいろなものに取り組んでおりますから、特定不況業種指定を受けている企業の中で、そうでない業種とそれを受けている業種とがあるわけです。そういう業種がいろいろ入り乱れてたくさん複合的にあるわけでありますが、そういう場合における特定不況業種の指定を受けるという業種の場合、全体のそういう多様化している企業の中での事業の割合の数値がここで考えられている五〇%以上でなければならぬということでは、この雇用の調整という問題で何とか失業を防止しようというたてまえからいきますならば、ちょっとこれではせっかくのそういった問題も救えぬのではないかと思うのでありますが、そこらあたり、いま申し上げましたような考え方のよりどころというものをもう少し、方向転換ではないですけれども緩めていただくというか、そういう幅を持っていただくということがやはり法の運用の中で必要ではないか、こういう気がするわけでありますが、その点いかがでしょうか。
  115. 谷口隆志

    谷口政府委員 現行法におきましても、特定不況業種事業主に該当するかどうかの判断基準といたしましては、その事業所の事業活動全体に占めます特定不況業種に係る事業活動の割合がおおむね二分一以上であるということを要件といたしておりますけれども、これも先ほどの議論と同じようなことですが、やはり経済的な事情の変化によりまして急激に悪化した業種の労働者の雇用の安定を図るという観点から、そういうところを把握して特別の対策を講じておるわけでございまして、そういう観点から考えました場合は、特定不況業種が、事業の総体として事業規模の縮小を進めていく中で、その影響が個々の事業所のレベルで見る場合にやはり半分以上ぐらいが一般的に妥当であるということで見られておることと、それから二分の一以下ということ。いろいろな業種を行っておられます場合は、雇用調整を実施する場合でありましても、他の部門への吸収を図るというようなことも可能となってくるわけでございますので、そういう面から見ましたら、この二分の一というのは、おおむねということを言っておりますけれども、やはり一つの基準ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。  ただ実行面では、同一事業所の中にありましても、場所的、機能的に明確に区分されておりまして独立性を有しているというような場合などは、一定の要件に該当する部分は除外して適用するというような運用も行っておりますので、個々の事業所の実情を踏まえて適切に対処できるようにしていきたいというふうに考えております。
  116. 小渕正義

    小渕(正)委員 いまの点、確かに一般判断としてやはりそこらあたりが常識的な線かもしれませんが、いま申し上げたように、もう対策としてほかの事業の方に回す、対策としてそれは打つが、しかしなおそれでもどうにもできないような業種があり、しかもそれがより深刻な場合に、それがいまも言われたような明らかに客観的にもそういう独立性があるような場合は、やはり五〇%以下であってもそういうものを適用さしていくというようなそういう考え方を持っていただかぬことには、せっかくこれだけの法律ができていよいよ運用する場合になってからどうしても漏れてしまうという面がございますので、これは先ほどの面と同様にぜひひとつこれからの運用の中で配慮していただきたい、かように考える次第です。  それから次は、離職前の訓練というのは特に今回新しく盛り込まれておるわけでありますが、実際問題として三カ月前から、あなた、もうここはやめますよということで、では離職前訓練をやりましょうかというふうには、いまの日本の企業の運営はなかなかそこまでなり得ないと思うのですよ。だからそういう意味で、これはどういうことをお考えになっておられるのか。普通はいま基準法で一ヵ月の予告手当でやめますが、もちろん先ほど申し上げましたように、あと半年したときにはうちの仕事量はなくなるから、あなたはやめることになりますよということを、そういうふうにあらかじめ事前に半年とか三カ月前にはっきり明らかにして、そしてそのために、あなたはほかの仕事へ移るためのこういう訓練を受けなさいということが、いまの日本の下請企業あたりを特に中心に考えた場合に、果たして実態に合うのかどうかということを私は非常に懸念するわけでありますが、これはもちろん下請だけではなしに普通の親企業であってもあり得ると思いますけれども、この点について大体どういう考え方なのか、その点お尋ねいたします。
  117. 谷口隆志

    谷口政府委員 御指摘のございました離職前訓練の助成対象事業主の要件といたしましては、再就職援助等計画を作成しまして安定所長の認定を受けた事業主であることと、それから離職前訓練の実施に関しまして労使間で合意がされていること、それから再就職援助等計画にのっとりまして事業規模の縮小等に伴い離職させることとなる労働者について、雇用を維持したまま賃金を支払いながらその者の再就職を容易にするために必要な職業に関する教育訓練を受けさせる事業主であること、というようなことを考えておるわけでございまして、いま御指摘のございましたように何カ月も前からその離職する者を特定することは非常にむずかしいというような実態の御説明もございましたが、私どもこの制度の創設をすることといたしました考え方と致しましては、やむを得ず雇用調整を実施する場合においても、やはりなだらかな雇用調整ということがこういう厳しい情勢の中では必要でございますし、そういう意味で、離職を余儀なくされる方々につきましても次の職業への再就職が容易になるとか、早期になるとかいうようなことを一つ考えたことと、それから離職を余儀なくされる、離職をせざるを得ない場合におきましても、二ヵ月なり三カ月なり四カ月なり半年とか、そういうような次の就職のために必要な訓練が雇用を維持したまま行われるということが、なだらかな雇用調整にもつながるというようなことから考えたわけでございまして、実態としていろいろ労使関係の中でむずかしい面があろうかと思うわけでございますけれども、不幸にしてもう構造的不況に陥って非常に厳しい情勢にある業種の中で、その労働者の活用の安定のためにはできるだけ早目に対応する準備を整え、それによってなだらかな雇用調整が行われるということを私ども期待をいたして、こういう制度を設けることを考えたわけでございます。
  118. 小渕正義

    小渕(正)委員 この離職前訓練、マル景教育、現在マル調教育と言いますが、企業によっていろいろのやり方がありますが、私は長崎を例にとりましてちょっと調べてみたのです。親企業においてはこの教育訓練という点についてはかなり生かされて運用されているわけでありますが、中小企業の下請関係になりますと、件数にしてもほんのわずか、しかもその中で、休業関係はあっても訓練関係はほとんどないというふうな数字がかつての五十二年、五十三年のときの長崎県下における数値としては出ているわけですね。そういうことを考えますならば、休業関係の分は別として、やはりこの訓練という問題はそれぞれの力を持ち合わせていないとなかなか自前でやれないという問題が明らかにあるわけです。そういう意味では、親企業の場合にはそれぞれの力を出し合ってやる、制度を活用するということはありましょうが、事下請企業というかそういった関連企業になるとなかなか自前でこういうことまで、なるべく企業内で雇用を確保するための教育訓練の制度を生かしていこうということについては真に実行し得ない面が非常にある。それがまた下請企業の弱さだと思います。そういう意味では、せっかくそういう趣旨が盛られているわけでありますから、雇用確保の面での訓練という問題については、たとえば親企業あたりに委託して下請関係雇用調整のための訓練でも別途行うという方法が採用されれば、中小企業の下請関係雇用の確保には非常に有効になるのではないかと思うわけです。それがちょっといままでの運用の中ではできませんし、そこが一つの非常なネックじゃないかと私は思います。だから、親企業も下請企業もお互いに構造的不況で苦労している中でどう雇用を確保し守っていくかということですから、親企業の方にもう少し委託をして訓練ができるような道はないものか。そうするとこの制度がかなり生かされる、特に中小企業関係には生かされる、かように思うわけであります。人的にも能力的にも設備的にも、いまの中小企業の中ではなかなかこの制度を生かし切るような教育訓練ができ得ない面があるということを私は感ずるわけですが、その点について何かもう少し前向きにせっかくの趣旨を生かすという意味で取り組まれる姿勢はないかどうか、その点はいかがでしょうか。
  119. 谷口隆志

    谷口政府委員 雇用調整として行われます教育訓練につきましては、やはり単に休業して休んでいるというよりも、能力の開発向上という面で効果的なこともあります。そういう意味で、雇用調整として教育訓練を実施するというのは望ましい形態でもございますし、またあわせて、この法律で創設を予定しております離職前訓練につきましても、再就職に際しまして能力開発なり職業訓練が重要である、効果的であるという観点から、実施する場合に助成をするということを考えたわけでございます。その際、先生の御指摘のとおり、中小零細企業におきましてはみずから訓練を実施するというのは能力なり体制の面からもいろいろ問題があろうかと存じますが、雇用調整助成金の対象として行います教育訓練も、それからこの離職前の教育訓練につきましても、自分のところで行うということだけではなくて、たとえば公共職業訓練施設等に委託をして行うというものにつきましても助成の対象となるように検討を加えて、せっかくの訓練を実効あるものにするように考えていきたいと存じます。
  120. 小渕正義

    小渕(正)委員 これは親企業あたりに委託してやってもらうのが一番いいでしょうし、今度は中堅企業がお互いにプールして、みんなで何とか知恵を出し合ってやっていこうというようなものを何か考えないと、個々の企業ではせっかくのいい趣旨をなかなか生かし得ない面があるという点を特に指摘して、御配慮をしていただきたいと思います。  それから最後になりましたが、あと一つ、事業規模の縮小に伴ってそれぞれ不況業種として指定を受ける場合に、特に再度また適用を受けるというような場合ですね。造船業を例に挙げますと、造船業としては一応対象業種になっておったわけであります。御承知のように四〇%の設備削減をやったわけです。それで現在、前の基準からいきますとずっと落とした状況の中で操業がやられているわけであります。そういう中での再指定を考えた場合に、先ほどのあれと一緒で、ずっとレベルが落ちてしまった中で、そこでまた何%という従来の基準でいかれますと、適用の中に入り得ないような面がありますので、その点は、数値的なものはちょっと持ってきていませんが、一つの長期的な傾向のあれと一緒でそういう現象もあり得るということをぜひ御配慮をしておっていただきたいということが一つ。  それから大臣にお尋ねします。労働大臣もまだ労働にタッチされて長くならないと思いますが、いまこういった離職者対策法律が何本あるかといいますと七本、たとえば炭鉱離職者臨時措置法とか駐留軍関係離職者等臨時措置法とか、戦後の歴史からいけば非常に長い法律からこういう法律まで、離職者関係法律が七本あるわけです。それぞれ設立の経緯というものはありましょうけれども、ここらあたりになりますと、離職という意味においては考え方をすっきり一つにまとめて、それぞれの個々の特殊な部分についてのでこぼこというかプラスアルファ的な運用をするということで、個々にこういうものをやるのじゃなしに一本化する必要があるのじゃないか。労働行政としての離職者対策については思い切ってここらあたりですっきりと一つの太い柱を出して、その上に個々の特徴的なものがあれば積み上げていくという方向でやるべき時期じゃないかと思うわけであります。そうしないと、離職そのものに対して機敏に対応ができないのじゃないか。こういう業種であれば今度これもつくらなければいかぬ、こっちのこういう産業でこういう業種ができたらまたこれをつくらなければいかぬということでは、個々の変動する雇用情勢に応じて機敏に対応する機動性がいまの場合失われているのではないかと思うわけであります。そういう意味で、これからの課題として、この点に対して大臣としてぜひ取り組んでいただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  121. 谷口隆志

    谷口政府委員 前段で御指摘のありました造船を例に挙げられまして、業種としての経営なり雇用状況が動いている業種についてどうかということでございます。  造船につきましては、五十三年ごろ急激に落ち込みましたが、その後五十四年以降順調に回復をいたしておったわけでございます。ところがまた五十六年から受注量が非常に急減しておりますために、非常に厳しい状態に陥っているということは承知をいたしております。そういう状況に応じて業種の指定等は考えなければならないということでございますけれども、造船業を含めてそういう動いているものについてどうするかということにつきましては、関係各省とか関係者等の事情聴取も行いながら適切に対応していきたいというふうに考えます。
  122. 大野明

    大野国務大臣 離職者問題について七つばかりあるからこれをひとつ一本化したらどうだという御指摘でございますが、それぞれみなそのような法律をつくるべき背景もございましたし、またそれに伴って経緯、歴史があるわけでございます。いますぐにというわけにはまいりませんでしょうけれども、一つの勉強の課題として長期的にやっていかなければならない問題であろうとは思いますので、検討してみたいと考えております。
  123. 小渕正義

    小渕(正)委員 終わります。
  124. 稲村利幸

  125. 小沢和秋

    小沢(和)委員 まず、最初に大臣にお尋ねしたいと思うのですが、今回、従来の特定不況業種離職者臨時措置法と特定不況地域離職者臨時措置法が整備統合されて、特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法となったわけであります。この法案は従来の二法とどこが違うか。言うならば、国の産業合理化政策が発動されている業種に限定せず、雇用量の変動に着目して特別の雇用対策をとるようにしたということ、現行法での離職者に対する特別の措置を継続するとともに、離職前訓練や雇用を促進するための助成措置など、わずかではありますが、新たな特別措置を行おうとするものだと思います。そういう点では現行二法の若干の改善だとは思います。  しかし、先ほどから言われているような第二次減量経営と言われる激しい人減らしが強力に推し進められて、労働者にそのしわ寄せが来ている今日、この程度の若干の改善ということでは、雇用の確保、失業の予防というようなことが果たしてできるのか。いままでの二法をただ一本にしたということで余りかわりばえのしない結果にしかならぬのじゃなかろうかというのを私は全体として検討してみて思うのですが、大臣はどうお考えでしょうか。
  126. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近の雇用失業情勢につきましては、第二次石油危機後世界的に不況が長引いておりますために、国内の景気回復の足取りが緩やかであるということで、失業者の増加とか労働力需給の緩和とかいうような面から厳しい情勢が続いておるわけでございます。私どもそういうことを十分認識をして、雇用対策を講じなければならぬというふうに思っておるわけでございますが、そういう厳しい雇用失業情勢を背景に、政府といたしましては、まず来年度は経済成長率三・四%をもとにした経済運営を図ることによりまして着実な景気回復を図る、雇用対策の面でも、いまこの程度のということで指摘がございましたが、雇用対策といたしましては、雇用調整助成金のように失業を予防する対策につきましては関係予算も増額し、また対象業種も昨年十一月で二百六十業種をいま二百七十四業種まで拡大するなど機動的に業種指定をして対応するとか、また特定求職者雇用開発助成金も増額いたしまして、就職困難な方々の雇用機会の開発を進めるとか、あわせて特に落ち込んでおります業種なり地域対策を充実強化する、その他職業安定機関挙げて求人開拓に努めまして就職のあっせんの努力を重ねるとか、いろんな対策を打ちまして、厳しい情勢に対応しようということで取り組んでおるわけでございます。
  127. 小沢和秋

    小沢(和)委員 以下、具体的に若干の点をお尋ねしたいと思うのです。  現在、特定不況業種というものが四十、それから特定不況地域が四十四あるというふうに承知をしておりますけれども、国の施策が発動されていることを業種指定などの要件から外すというようなことになりますと、対象をそれなりにこの機会にかなり広げるということも考えているんじゃなかろうかというふうに思うのです。この業種、地域の指定、それぞれどのくらい広げようというような案があるんだったら示していただきたい。
  128. 谷口隆志

    谷口政府委員 現行の二法が六月三十日をもちまして効力を失う、それを契機に今回の法律を考えたわけでございますけれども、この法律内容の一つの重要な点といたしまして、業種なり地域の指定を雇用対策の必要性の面から機動的に行おうということで、そういう面で、業種につきましてはいま御指摘のございましたように、法令に基づく行為とか国の施策によりまして事業規模の縮小なり転換を行うという部分を削除をいたしまして、法令に基づく行為とか国の施策がなくても、構造的に不況に陥っている業種で、相当の離職者なり雇用調整を余儀なくされるというような業種で、この法律に基づく対策の必要な業種については指定をする考えでございますし、地域につきましては、現行法は通産省の関係の特定不況地域中小企業対策臨時措置法で決めます地域の中から労働大臣が指定することになっておりましたが、これも雇用対策の面から指定するということで、機動的に指定をしようとしておるわけでございます。  そこで、現在の四十業種なり四十四地域がどうなるかということでございますが、いま申し上げたところを除きますと、今度の法律がねらっております趣旨も現行法と同様でございますので、指定基準等もいまの指定基準をそう変えることは適当でないかと思っておりますが、いずれにしましても、そういう基準は法律制定後中央職業安定審議会にお諮りして決められますということもございますし、また、いまの状況で四十業種、四十四地域がどれだけふえるかというようなことは明確には申し上げにくい点でございます。  しかし、いずれにしても、たとえば国の施策がないために、経営も悪化し離職者といいますか雇用量も相当落ちているような業種もあるわけでございまして、そういうものも今後この対象にできるかどうかは施行の際に十分検討してみたいというふうに思っております。
  129. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私の地元である北九州あるいは筑豊というのは、全国的に見てもいま最も失業の深刻な地域じゃないかと思うのです。先ほど直方という名前が出ましたけれども、北九州は最近鉄冷えという言葉がはやるくらいに、新日鉄八幡あるいは住金小倉といったようなところに減産が集中をしておる、そのために特に下請などではずいぶん首切りやら出たりしておるというような状態でありますし、実際に私が調べてみましても、八幡の職安の今年一月の有効求人倍率が〇・二二、就職率が一・七三なんですね。門司などは〇・一七というようなひどい状態にある。  この特定不況地域雇用失業情勢という資料、ここについておるのですけれども、これを見てみると、いま私の申し上げたような〇・二二よりも大分上回っているような有効求人倍率などのところでも指定を受けているようなところがたくさんあるのですよ。そういう点からいっても、最近の北九州の状態から考えると、当然入らなければならぬ地域じゃなかろうかというようなことを私は考えるけれども、先ほど具体的にはまだ検討が全部進んでいるわけじゃないというように言われたようですけれども、こういう北九州などの実情を考えたら、あなた方の判断では該当するのかしないのか、どうお考えでしょう。
  130. 谷口隆志

    谷口政府委員 具体的な市町村が新しい法律の特定不況地域に該当するかどうかは、先ほども申し上げましたように法律制定後中央職業安定審議会の議を経て決めます指定基準に基づいて決定するわけでございますので、具体的なことは申し上げられないわけですけれども、考え方として現行一法に基づきます基準と、法律の趣旨が変わりませんので、それほど異なったものになるとは考えられないわけでございますが、その考え方といたしましては、現行法なりこの法律は、最近における内外の経済事情の著しい変化によりまして構造的に不況に陥っている業種なり、それが集積している地域に対する対策でございます。したがいまして、たとえば旧産炭地域等につきましては、産炭地振興法なりそれに基づく振興計画等あるいはまた離職者対策法のようなものもあるわけでございまして、そういういろいろな制度なり仕組みで対応する性格のものであろうと存じますし、また……(小沢(和)委員「北九州にはそういうものばかぶっていないのですね」と呼ぶ)北九州市につきましては、これは北九州市がどうかというよりも、政令指定都市のような大都市地域につきましては、構造不況業種の集積性というようなものも検討しなければならないわけですけれども、政令指定都市のような大都市につきましては、そういう落ち込んでいる業種もございますけれども、また現状維持なり伸びている業種あるいは第三次産業のように拡大している業種とか、いろいろなものが複合いたしておりますので、いろいろなそういう複合しておる産業における雇用需要等を全体的に勘案いたしますと、政令指定都市のような大都市地域は、この法律の対象としては一般的には考えられないような地域ではなかろうかというふうに考えております。
  131. 小沢和秋

    小沢(和)委員 大都市地域だからそれは考えられないというのは私はおかしいと思うのですよ。あなたはいろいろな産業なり業種があるというように言われるけれども、全体として見たら、八幡はどうかといったら〇・二二とか門司は〇・一七というように、これは全体としての数字がそこに現に出てきているわけでしょう。だからその数字に着目するのであれば、大きいとか小さいとかいう都市の規模というのがそんなに問題になるのは私はおかしいんじゃないかと思うのです。しかし時間がありませんからそのことばかりは議論しませんけれども、実態に即するならば指定をされてしかるべきではないかということは私はもう一度申し上げておきます。  次にお尋ねしたいのは、今度の法律は、名称も離職者臨時措置法から関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法というふうに変わりましたし、各条文の中にも失業の予防というようなことが何回も出てくるわけであります。首切りを出さずに雇用を維持させるということが私はやはり一番肝心の問題だと思うのです。しかし、最初にも申し上げたように、どういう新しい手法でそれを実現していくのかということは、この法律を私なりに研究した範囲ではよく理解できませんね。  だから、もうちょっと具体的にお尋ねしますけれども、事業主には具体的に何を求めるのか。第三条では「失業の予防その他の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」という趣旨になっておりますけれども、これは訓示規定であって、中身は別にないのじゃなかろうか。第六条で「再就職援助等計画」というのがあるのですけれども、ここでは失業の予防というのは言葉としても出てこないのですね。そうすると、事業主に対しては結局のところそういう精神でいきなさいという以上のものはないというふうに私はこの法律の中身を理解したのですけれども、具体的に失業の予防という点で事業主にどのような責務を課しているのか。私の理解が誤っていたら指摘していただきたい。
  132. 谷口隆志

    谷口政府委員 失業の予防の手法でございますけれども、この法律の前にすでに雇用調整助成金という制度がございまして、一時失業なり教育訓練をされる場合に賃金助成をする仕組みがございますので、この活用によりまして失業の防止を図るということもございますが、この法律に基づきます手法として、先ほど御指摘のありました「再就職援助等計画」、これはこの第六条を見ていただくとおわかりだと思いますけれども、「再就職の援助その他の雇用の安定に関する計画」のいわば略称でございまして、この「雇用の安定」という中には当然失業の予防も含まれておるわけでございます。現に、現在実施しております再就職援助等の計画の中では、離職者だけでなくて、配置転換とか出向というような対象となる労働者についても記載をしていただくように書いておるわけでございます。これは事業主とされまして、そういう苦しい、厳しい情勢の中でありますけれども、できるだけ離職するあるいは失業するというような状況を回避するような努力をしていただこうということを前提といたしまして、こういうような仕組みにいたしておるわけでございます。
  133. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ほかのところでは失業の予防というようなことがはっきりとうたわれておって、ここのところだけが、「その他の雇用の安定」云々というところにその趣旨が入っているんだと言うのは、私は大分苦しい説明じゃないかと思うのです。  それで、国の施策の方はそれではどうかということなんですね。第四条の方では、労働者の「失業の予防、再就職の促進その他の雇用の安定を図るために必要な施策を総合的かつ計画的に推進するよう努めなければならない。」ということに一般的になっておって、これを受けて第五条で、「特に必要があると認められる業種又は地域」について「雇用の安定に関する計画を作成するものとする。」というふうになっているわけです。従来は職業紹介等に関する計画というものだった。これからいけば、首を切られてしまった人を再就職させるというのが従来の姿勢だったわけでしょう。これがこういう積極的な表現になったというところは、私も表現としては評価するのですけれども、それじゃ具体的な中身は何かというとはっきりしないわけですね。この第五条で言う計画の中身としてどのような失業の予防の施策がこの中に入るのか。  それから、この文言からすると、特定不況業種地域に指定されたものその全部についてこういう計画を立てるわけではなさそうに読めるわけですね。その中でもまた特に必要な場合に限って計画を立てるように読めるものですけれども、そうなのかどうか。そうすると、またそこでもう一つしぼりをかけるのはなぜかという点がちょっと疑問に思えるわけです。
  134. 谷口隆志

    谷口政府委員 五条の「労働大臣の作成する雇用の安定に関する計画」は、まさに御指摘いただきましたとおり、職業紹介に関する計画という事後的なものだけではなくて、失業の予防等も含めた雇用の安定を図ろうという趣旨から、こういう計画を特に必要があると認められる場合に作成することとしたわけでございます。したがいまして、お尋ねになりましたその内容につきましても、たとえば不況業種について定めます場合は、特別な対策が必要な労働者の数とかあるいは態様、たとえばどういう技能を持った方とか、どういう資格を持った方とか、あるいは無技能者とか、そういう職種別の労働者の態様、それから、こういう条件に対しまして事業主が講じる措置なり、あるいはその見込みといたしまして休業とか配置転換、出向、希望退職募集等の雇用調整についての対象人員なり時期、それからこういう状況に対応して国として講ずる措置の計画、各種助成金制度の活用の見込みとかあるいは事業主への奨励、職業紹介、能力開発の方針等でございます。  不況地域についての内容も大体同様なものでございまして、労働力需給の見通しあるいは離職者の量と態様、それからその地域内の事業主のこういう状況への対応の予測なり見込み、国として講ずべき措置、これは同様に、各種助成金の活用の予測なり事業主への奨励、職業紹介、能力開発の方針、そういうものを考えておるわけでございます。
  135. 小沢和秋

    小沢(和)委員 もう一つ聞いたでしょう。地域について、あるいは業種についてですか、指定されたもの全部を対象にするようにはちょっと私は読めないのだけれども、そうなのかどうかですね。
  136. 谷口隆志

    谷口政府委員 失礼しました。  いまの御指摘の、全体の労働者についてどういうふうに対応するかというのは、多分にまた経営の問題にも関連いたしますことでございますし、むしろ労働行政なり雇用対策の面からはそこまでは踏み込んでおらないわけでございますが、構造不況に陥りまして雇用調整を余儀なくされる範囲の労働者等を対象にどういう対策を講ずべきかというようなことをもとにして把握し、あるいはそういうものの計画をつくって対応するというようなことが中心かと存じます。
  137. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私が聞いているのはちょっとそれでははっきりしないのですよ。指定されているもの全部についてそういう計画を立てるのか、指定されているものの中でまたさらにしぼって、特に必要と認める場合ということでまた限定して計画を立てるのかということをさっきから聞いているわけですよ。
  138. 谷口隆志

    谷口政府委員 失礼いたしました。  この第五条の趣旨でございますけれども、特に必要があると認められる業種なり地域について定めることといたしておるわけでございまして、これはやはりそういう不況地域状況とかあるいはそういう地域でどういう雇用調整が行われるとか、そういる厳しい状況にあるもの、そういうようなものを中心に把握していくことになるというふうに存じます。
  139. 小沢和秋

    小沢(和)委員 それから、第八条で新しく大臣に、関係事業主に対して雇用の安定のための要請をする権限を与えることになるわけですね。しかし、この文言も「再就職の援助その他の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることを要請することができる。」というようになっていて、失業の予防が抜けているのですよ。解雇をやめてほしいというような要請も私は仕方として当然あり得ると思うのです。しかし、これではそういうようなことは想定されていないのじゃないか。そういう意味で、この要請というのは非常に弱いものにしかならぬのじゃなかろうかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  140. 谷口隆志

    谷口政府委員 この雇用の安定のための労働大臣の要請の場合ですが、これもやはり、特定不況業種が集積いたしておりまして、そういう業種で大量の雇用調整が行われておるために落ち込んでいる地域を中心に、そういうすでに厳しい情勢のある地域でまた相当数の離職者が出るというようなことになりますと、その地域雇用不安等も発生するおそれもありますので、そういう非常に厳しい地域につきましては、ここで書いてありますように「一層の悪化を防止するため特に必要がある」ということで、そういう地域でこの要請を考えておるわけでございます。  そこで、いまこれに失業の予防等を考えていないのかどうかということでございますが、一般的にはこの法律に限らず雇用対策の基本としてできるだけ失業者の発生を防止するというような指導はするわけでございますけれども、個々の業種なり事業所等につきまして失業を出さないようにとかいうことになりますと、これはやはり経営の問題にもなってくるわけでございまして、この経営の中身というものはやはり基本的には関係の労使がそのことに通じておられるわけでもございますし、そういう労使で十分話し合いを進めて行われるべきことだろうと存じておるわけであります。そういう意味におきましては、経営の中身に立ち入るまでの、たとえば失業者は何人出さないように、解雇はやめたらどうかとか、そういうようなところまで要請するというのはいかがかと存じます。
  141. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、こういう規定を置いてあっても具体的には何をするのかということが余りはっきりわからないのですよ。午前中に議論になりましたけれども、たとえば紙パルプなどでずいぶんたくさん首切りをやった。そして、最近では王子製紙を初めとして莫大な利益を上げるような状況になってきている。結局、企業の方はそうやってみごとに立ち直ったというか利益が出るようになったけれども、ばかを見たのは首を切られた労働者だ、こういうような結果になったのでは話にならぬのじゃないかと思うのです。実際、私の地元を見ておっても、いわゆる鉄冷えということでむしろ会社の方が大宣伝して、下請などでも首切りやら下請単価の引き下げなどがずいぶん強引に行われている。それだけではなくて、本工の職場などでも労働条件のずいぶん露骨な切り下げなどが行われているのですよ。  一つだけ例を挙げますと、これは私のところに訴えのあったケースなんですけれども、新日鉄の戸畑コークス工場で炉を一つとめたわけです。そして、それに見合うほど減産にならないようにほかの炉で増産しようというので、たとえば年次有給休暇など月に一人当たり〇・五日以上はもう見込まぬからな、だから一日休暇を取る場合には直接の上司である工長を経て作業長まで許可を申し出ろ、二日以上という場合には今度は係長のところまで許可をとれ、こういうような締めつけをやって休暇もろくに取らせないようにする、こんなことが不況不況という大宣伝の中で現実にやられているのですよ。これは余りひどいというのでとうとう組合も取り上げて撤回させました。私も監督署に連絡をして、署長もあきれて、これはもう年休のイロハも知らぬということで早速会社には指導をされたということを私は聞いているのですけれども、こういうように、不況だということをむしろ利用してといいますか、人減らしやあるいは労働条件を切り下げたりということがやられて、締めてみたら会社がちゃんとたっぷりもうかるように不況というものをうんと利用させてもらった、こんなことになったのでは話にならぬのじゃないかということですよ。こんなことにならぬためにも、客観的によくそういう状況のつかめる労働省なりが、大臣の要請する権限というものをここで持つなら、それで積極的な指導に当たっていくべきじゃないか、私はそういうことを強く望んでいるわけです。これはどうですか大臣、こういうような点について、あなた自身がそういう権限を持つようになるわけなんですけれども、積極的にいま私が申し上げたような立場に立って指導をすべきだというふうにお考えになりませんか。
  142. 谷口隆志

    谷口政府委員 ちょっと私からあらかじめ御説明申し上げたいと思います。  先ほど来お答えしていますように、全体の経営にかかわるような問題につきましては、やはりその事業所の経営等に詳しい労使で話し合いの上進められるべきでありまして、この労働大臣の要請を含めまして、あるいは再就職援助等の計画の認定を含めまして、この法律に基づきます対策において労働大臣なり職業安定機関がそこまで立ち入った指導というのは問題があろうかと思います。  ただ、そういう厳しい情勢の中で雇用調整が行われようとするわけでございますから、労働省といたしましては、やはり基本的に失業の発生を防止する、あるいはやむを得ず失業者を出さざるを得ない場合でもできるだけ少なくする。そのためには配置転換とか出向とかございますけれども、そういう観点に立ちまして、そのためにはこの法律に基づいてどういう対策が打てるかとかあるいはどういう助成があるか、そういうようなことにつきましては指導援助を加えながら雇用の安定のための対策を進めていこう、その前提、よりどころとするものがこの雇用安定のための要請でございます。  いま御指摘のありましたような個々の企業の中における具体的な中身というものは、経営にかかわりましてきわめてむずかしい問題等もございますし、それらは関係の労使で十分話し合いをしていただきたいと存じますし、また、逆に行政の側がそこまで出ていくのはいかがだろうかというふうに存ずるわけでございます。
  143. 小沢和秋

    小沢(和)委員 だから私が言うように、特定不況業種になったというようなことを最大限に逆に利用して、結果としてはそれで会社の方はうんともうかって、労働者は泣かされるような結果になった、これが野放しでまかり通っていくようになったら、私は労働省の存在の意義そのものを問われるような事態だと思うのですよ。そうさせないためにも、要請権といういわば伝家の宝刀をあなた方は準備なさったんじゃなかろうかと思うのですけれども、そういうものじゃないのですか、この要請権というのは。
  144. 谷口隆志

    谷口政府委員 この法律に基づきます対策は、あくまでもそういう構造的不況に陥って非常に厳しい状況にある中で雇用調整を実施せざるを得ないというところに着目して、私どもはいろんな対策を講じようとするわけでございますから、そういうことに着目して離職者を出すというようなことは本来あってはならない問題であろうと存じます。  いずれにしても、個々の事業所において行われますいろんな合理化その他につきましては、やはり基本的に労使でよくお話しをした上で進められることが必要だろうと思いますし、行政がいろんな指導をやる場合も、個々の事情に応じて適切に対応しなければならぬというふうに考えます。
  145. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いまの点については、私は強く労働省に対して警告を発しておきたいと思うのです。  それで第十四条で、関連下請労働者には指定日前の解雇でも手帳が手渡されるようになった、これは私も改善だと思うのですが、先ほどもお話しがあったが、これは三カ月さかのぼるというふうに考えているというお話しだったのですけれども、これは私の感じでは短か過ぎるんじゃなかろうかというふうに思うのです。この三カ月というのは、実際にそれくらいさかのぼれば、まず本工にしわ寄せが来る前に大抵下請にしわ寄せが来ますから、それが大体三カ月くらい前から見ておけばほぼカバーできるというようにあなた方はいろいろ調査をした上で出した数字ですか。私はこれは短か過ぎるんじゃないかというふうに感ずるのです。
  146. 谷口隆志

    谷口政府委員 この法律に基づきます構造不況業種に対する対策は、構造的に不況に陥った業種における事業規模の縮小等に伴いまして離職を余儀なくされた労働者を対象とするものでありますし、また、そういう労働者を対象とする対策でありますから、下請企業の場合であっても、その業況が悪化すればすぐ離職者を出せばいいというようなものではないわけでございまして、そういう意味では余りに長期にさかのぼるのは適当でないというふうに考えております。  三カ月と考えておるということの理由といたしましては、先ほどお答えいたしましたように、確かに中小企業においては大企業に比べて早く雇用調整が及んでおりますし、その開始されるのがどのくらい前からかというのを傾向として見たものがございますのと、同時に、そういう構造不況業種対策として手厚い対策を打つからには、構造不況に陥ったために事業規模の縮小で離職を余儀なくされるということをしっかり把握できなければならない。そういう意味で、余り長期にさかのぼりますと、その辺がそういう事由に基づく離職であるかどうかということが把握しにくくなるような問題もありますし、職業安定機関としてもその辺を公平に把握しにくいというような問題がありますので、三カ月といたしておるわけでございます  そういうことで、余り長期にさかのぼるのは適当でないと存じますし、実際の運用に当たりましては、こういう趣旨を職業安定機関から構造不況関係の事業主等には十分徹底をしながら、法律の施行を進めていかなければならぬというふうに考えております。
  147. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま私、大企業が不況ということを逆手にとって労働者にいろいろしわ寄せをするようなことを許してはいかぬということを申しましたけれども、それに関連して、大企業の雇用調整助成金の乱用ともいうべき問題をちょっと一言指摘をして、指導を要請したいと思います。  もう御存じのとおり、新日鉄などに対しても雇用調整助成金を支給して、いわゆる職業に関する教育訓練というのが去年の十月からですか行われるようになっております。この雇用調整助成金を出しながらの教育訓練については六項目ほどの要件がありますね。この要件をいずれも満たしていないとこれが受給できないということになっているわけです。ところが、私が雇用調整助成金のことでどんな教育訓練をやっておるかという話を聞いてみたら、これは率直な話ですが、かなりいいかげんだという声が強いのですよ。たとえば業務から離れて一日教育しなければいけないわけでしょう。ところがある職場などでは、この教育訓練がもう短時間で終わって、後は現場へ行けと言って、現場で本来の作業そのものをさせたんじゃないのですけれども、いわゆる安全のために通路に白線などを引いたりするような仕事をさせたというわけですよ。こういうようなのは非常にいいかげんな使い方じゃないかと私は思うのです。あるいは、会社が当然作業に必要だということで教育訓練をやらなければいけない、それを、たとえば新しい設備ができたというようなことで、それの教育訓練などというようなものをこの訓練でやったりしているというようなことも私は聞いておるのです。これは、職場はどこで、いつ、何時ごろやったというような話も私は全部聞いていますけれども、きょうはそこまで一々は挙げません。しかし、逆に労働者の方から、せっかく教育訓練をするんだったらもっと身につくようなものをやってくれと、あなたがそういうことを言う機会があるなら言ってくれと言われたんですよ。こういうような実態について、もっと本来の趣旨に沿うようなものにきちんとしなさいというような指導がやはり必要じゃないですか。
  148. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用調整助成金の対象となります雇用調整措置を、単なる休業だけじゃなくて教育訓練等についても適用しているわけでございますが、その本来の趣旨が、休業といいますのはどちらかと言えば消極的な形の雇用調整でございます。せっかく業務から離れてやる場合に、それが労働者の将来の能力開発、向上なり何なりに結びつくような形でやられるものであればむしろ積極的な効果も将来期待できるということで、教育訓練もその対象にしているわけでございます。ただ、一日のうちでフルタイムで教育訓練をやる場合と部分的にやる場合といろいろ判定がむずかしくなりますので、その意味で、要領では六つの要件を書いてやっているわけでございますが、元来が単なる休業よりも積極的意義があるというところに教育訓練の意味を見つけておりますので、御指摘のような非常にルーズなやり方があるとすれば、私どもとしても当然事前にあるいは窓口でチェックをするような指導を強めなければいけないと思いますが、教育訓練それ事態については申し上げたような趣旨でやっておりますので、言うならレイオフその他に至らないで雇用が維持できるような、雇調金の趣旨が生かされるような形でやられるように指導してまいりたいと思います。
  149. 小沢和秋

    小沢(和)委員 現場の人たちは、どうせ教育してくれるなら身につくような積極的な教育をしてくれという立場から私に言っていますので、その立場でぜひ指導をしていただきたいと思います。  それから、第二十一条以下に公共事業への就労の促進のことが定められているわけですね。民間での就労を最大限に促進すると言っても、現実にはそういうような民間企業そのものがない、だから就労できるような見通しがないというようなところがずいぶんあるわけですし、公的就労事業を国や自治体などが起こしてでも就労の場をつくっていくことが非常に大事だと私どもは考えるわけです。そういう立場から改善特開事業の問題について若干お尋ねをしたいと思います。  最近、福岡県の大牟田、熊本県の人吉、宮崎県の都城といったようなところでいわゆる改善特開が試験的にやられていると承知しております。これは五十八年度予算でたしか十カ所ぐらいでしたか、ふやしていくという考え方になっておったと私は承知していますけれども、その点まず確認しておきたいと思います。
  150. 増田雅一

    ○増田政府委員 改善特開につきましては、先生指摘のとおり、昨年の十一月から試験的に実施しておりますが、五十八年度予算におきましては吸収人員二百七十名ということで実施を予定しております。
  151. 小沢和秋

    小沢(和)委員 この法律で特定不況地域に指定されたようなところについては、改善特開などを積極的に実施していくように関係市町村に対して援助、助言をしていくべきではないかということをお尋ねしたいのです。改善特開の実施要領では職安が市町村の意向を把握するというふうになっているようですけれども、ただ把握するというのでなくて、こういうような制度もありますよ、活用してみませんかというような援助、助言をすべきじゃありませんか。
  152. 増田雅一

    ○増田政府委員 改善特開事業につきましては、特開事業のいままでの状況が就労者の滞留ということにあるという事実を踏まえまして、これを改善するために行っておるところでございますので、当然私どもとしても実施主体であります市町村に対しましては勧奨することにしたいと思います。しかしながら、改善特開は特開事業の反省の上に立って、この実績の上にやっておるものでございますので、現在の特開事業を実施している市町村あるいは特定地域外の市町村にこれを実施していくのは適当ではないと考えております。
  153. 小沢和秋

    小沢(和)委員 この改善特開については、さっき挙げた三カ所についてもせいぜいまだ半年程度しかたっておらないと聞いておりますから、その評価をここで軽々に下す段階ではないと思いますけれども、私どもも大牟田に行ってその実情などを見てまいりましたので、問題点も感ずるわけです。今後の改善、検討を願いたいと思うのです。  その一つは一年限りという問題。いま滞留ということを言われましたけれども、こういう低い賃金のところにずっといたいと初めから考えて、そういう意思でいわゆる滞留をしている人はいないのじゃないかと私は思うのです。大牟田もそうですけれども、いまこの特定不況地域になるようなところはほとんどが仕事を一生懸命探してもないところなのですよ。だから結果としてこういうところに、いままでのいわゆる失対事業やらでもそういうことでついつい長くなるというのが経過だったのじゃないかと思うのです。そういう意味では、この一年限りというのはそういうような現地の実情に合わないということは多くの人が言っているけれども、この点についての弾力的な運用をする意思があるかどうか。  それからもう一つは、いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニング、これはその考え方は一応理解するのですけれども、六カ月就労者の場合四日間の集中講座ということらしいのですけれども、四日間というと、これは常用雇用としてのトレーニングとしてはお粗末過ぎはせぬか。しかも一日六百円という単価、これも実際に役に立つような訓練という点で見れば単価は低過ぎるのじゃないかという感じがするわけです。こういうような点も改善すべきでないか。  それから、事業類型のA、Bというのは従来の失対事業などでもやられてきたのとほぼ同じじゃないかと思うのですが、いわゆるC、調査・測量などというのは、これはホワイトカラーなどの失業者にもこの事業の対象とするという上では重要な内容だと思うのですけれども、これは具体的にやるような計画があるのかどうか、これもお尋ねをしておきたいと思います。
  154. 増田雅一

    ○増田政府委員 先ほど先生指摘のように、この改善特開事業は現在試行的に実施しているものでございまして、いま御指摘のような問題点につきましては、この数年間の試行の結果を見て検討してまいりたいと思っております。  なお、いま挙げられましたCの調査・測量等の事業につきましては、これを実施できるような事業が見つかり次第やりたいと考えておるところでございます。
  155. 小沢和秋

    小沢(和)委員 ぼつぼつ時間も来ているようですからあと一つ質問と、もう一つは要望をして終わりたいと思うのですけれども、事業主体の側からもいろいろ要望も出ているのですよ。他の起債事業なども、たとえば河川債とかそういうようなものもこの改善特開の対象にしてもらいたいとか、単価をもう少し引き上げてもらわないとやっていけないのじゃないかとかいうようなこともいろいろ聞いています。だから、こういうような点についても検討する意思があるかどうかということをお尋ねしたい。  それから要望というのは、先ほどから大分議論されていましたけれども、いまの失対事業から六十五歳以上の人たちについて一・五日就労を減らすとかいうような問題、これは就労者団体とは話し合いで一応の合意に達したということは聞いておりますけれども、いままでも繰り返して言われてきたように、高齢者社会は急速にやってくる、しかも核家族だということで、私どもの知っている失対就労者というのは一人とか老夫婦とかいうようなことで、もう自分は元気な限り働いて生活をしないとやっていけないというような人たちが、いま失対で働いている人の大部分じゃないかという感じがするのですね。しかも会ってみると、こっちが年齢を聞いてびっくりするように、高齢者でもぴんぴんしているというような人がたくさんいるわけですね。こういうような人たちが元気な限り働きたいと言っているのを、一律線引きというようなことで六十年にはやめさせるというようなことにならぬように、先ほど六十年には改めて調査研究会の意見を求めた上でやりたいという慎重な姿勢を示されたから、私はその点は評価しておきたいと思いますけれども、ぜひこういう声をあなた方も念頭に置いて対処していただきたい。これを一つだけ質問をしておきます。
  156. 増田雅一

    ○増田政府委員 御指摘の改善特開にかかる問題につきましては、これは試行の結果を見てから検討さしていただきたいと思います。なお、単価につきましては、五十八年度予算の施行の過程において考えてみたいと思います。
  157. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。
  158. 稲村利幸

    稲村委員長 菅直人君。
  159. 菅直人

    ○菅委員 きょうはこの特定不況業種不況地域雇用の安定に関する特別措置法案についての審議ということなのですが、朝以来いろいろな議論がなされたようですけれども、多少重なる部分もあるかと思いますが、私からも何点かの問題についてお尋ねさしていただきたいと思います。  大分長い問いわゆる不況と言われる状況が続いてきているわけですけれども、これまではいろいろな意味で不況が継続している割りにはわが国雇用状態というのは失業率が二%、多少超えることはあっても、他の国などに比べれば相当低いレベルだということで、政府の方もその問題に関しては比較的胸を張るような形での発言が多かったと思うのですが、せんだって発表された失業率のデータによると相当急激に上がってきているということ、政府自身そういう報告を発表しているわけですけれども、まずこの不況感の非常に強い長期にわたる不況状態と、今回失業率が増大をしてきたということに関して、どのように大臣は見通しを立てられているのか。これがさらに大きな失業の増大の前ぶれというふうに心配する向きも相当あるわけですけれども、その点についての見解をまず伺いたいと思います。
  160. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近の雇用失業情勢についての認識でございますけれども、第二次石油危機後の世界的な不況が長引いておりますために、景気回復の足取りが遅い、そういうことを背景に、失業者の増大とか労働力需給の緩和という面で非常に厳しい情勢が続いておるわけでございます。  失業率の方で見ますと、昨年の四月から二・三%の失業率を超えましてから、その後大体二・四%前後の失業率推移してまいりましたし、有効求人倍率は昨年の五月に〇・六倍を割りましてから、〇・五八、〇・五九倍ないし〇・六倍で推移をいたしております。そういう意味では非常に厳しい状態で横ばいの状況にあるというふうに認識をいたしておるわけでございますが、いま御指摘のありました、ことしの一月の失業率が二・七二%になったということについての問題でございますけれども、この労働力調査の中におきましては、労働力人口、それから就業者雇用者が非常に大幅に増大している。一方にそういう状況がありながら、失業者も非常に増大しているというような、従来の状況と違ったような一つの状況が出ておりますことと、それから、私ども労働省関係有効求人倍率とかあるいは毎月勤労統計での動き、あるいは私どもが定期的に職業安定機関からとっております報告によりましても厳しい状態が継続はしておりますけれども、ここ一、二ヵ月で急激に悪化したというような状況では必ずしもないわけでございまして、そういう意味で、私どもの方でとらえておる失業情勢と違った傾向があるというようなことから、この二・七%ということに関連いたします問題は、労働力調査だけではなくて、もっと有効求人倍率とか毎月勤労統計のような雇用指標も総合的に見なければならぬということ、それから、もう少し期間的に数ヵ月の動きも見なければならぬということで考えておるわけでございますけれども、いずれにしましても、雇用失業情勢は非常に厳しい状況推移をしておるというふうに認識をいたしております。
  161. 菅直人

    ○菅委員 この二・七二という数字についての見解が政府内でもいろいろな議論を呼び起こしておるということは報道なんかで承知をしておりますけれども、私も、いまの局長のお話しのように、これが数字の上の一つのサンプルのとり方等であるのならば、それはそれとして幸いな話だと思うのですが、かなり長期にわたる不況の中で、あるいは日本もそろそろ抱え切れなくなった労働力が一斉にこういう形で出てくる、そういう危険な状況にあるのじゃないかということを心配をしている向きも大変多いわけで、この点については、確かにこの一度の調査で結論が出るわけではないと思いますが、やはりそういう警戒心を持って見ていただくべきではないかということを申し上げて、次に、この法案それ自体の問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  まず、この法案は、もともとこれまでに行われてきたことについての、一つの日切れを迎えての延長に類する法案ということだと思いますけれども、これまでこの法律によってどういった成果を上げてきたというふうに、主管官庁である労働大臣としては見ておられるのか、まずこれまでの成果についてお尋ねをしたいと思います。
  162. 大野明

    大野国務大臣 現行二法を制定いたしまして以来、この不況業種あるいは不況地域の労働者の皆様方の失業の予防であるとか、または離職者の方々の生活の安定であるとか、再就職の促進であるとか、私どもはこの法律によって相当な成果を上げたと思っております。  しかしながら、現在不況業種地域というような関連するところの感覚から言いますと、いずれにしても内外の経済情勢は非常に厳しい、そのために大変離職者も出ておる。また一時的に多くの離職者が出る可能性も秘めておるということを考えると、現行法と同時に、それを充実したものをつくるべきではないかという趣旨でもって、今回こういう新しい法律を御審議願っておるところでございます。  いずれにいたしましても、同様、失業の予防であるとかあるいはまた関係労働者の方々の生活の安定に資するということが一番の問題でございますので、どうかその点を御理解いただいて、一日も早くこの法案成立を願っておるところでございます。
  163. 菅直人

    ○菅委員 私もせんだってたしか北海道に行ったときに、飛行機から見ていると、アルミの製錬の施設が何というのですか池があって、それを見ていたら、ほとんど操業を停止しているというようなことの現場を見たり、また幾つかの地域では撤退というようなことも行われているということで、こういう不況業種あるいは地域というものに対するこういった特別な手当てが必要だということはよくわかるわけですが、今回の法律の中で、特に第八条で「再就職の援助その他の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることを要請することができる。」労働大臣にこういう一種の要請することができるという権限を付与されているわけですけれども、この要請というのは、もう少し具体的にはどういうことをねらって、またどういうことを実行しようとしているのか、それについて、お尋ねしたいと思います。
  164. 谷口隆志

    谷口政府委員 この第八条の雇用の安定のための要請に関する規定でございますけれども、この要請は、すでに構造不況業種が集積いたしておりますために非常に雇用失業情勢が悪化して、特定不況地域として指定されているような地域におきましてさらに大規模な雇用調整が行われて雇用情勢が非常に悪化するというようなことがありますと、雇用不安その他の面で非常に問題がございますので、そういうような状況の場合、「特に必要があると認める」と書いておりますが、そういうような状況があります場合に、事業主に対しまして、その「事業所に雇用される労働者に関し、再就職の援助その他の雇用の安定を図るために必要な措置を講ずることを要請することができる。」ということで要請することを考えておるわけでございますけれども、その内容といたしましては、雇用調整で一定の離職者等の発生を余儀なくされる場合におきましても、できるだけ失業の防止を図るということを基本としてもらうように、そのためのこの法律なりその他のいろいろな助成金等の制度も活用していただくような指導援助を含めて要請をするというようなことを考えておるわけでございます。
  165. 菅直人

    ○菅委員 ちょっといまの説明では余り、具体的と言えば具体的なんですが、よくわからないのです。あれですか、不況業種とか不況地域の中で一定の離職者が出た後にさらに大幅な離職者が出るような状況のときには、簡単に言うと、それを何としても出さないでほしいということを要請するということなんですか。それとも、普通要請という表現がこういう法律に出てくるというのは、何といいましょうか、法律用語としては若干珍しいケースじゃないかという気もするので、もう少し具体的に、あるいはこの要請に応じない場合には何かの措置があるのか、もしあればそういうこともあわせてお聞きしたいと思います。
  166. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 この大臣の要請は、先ほどもほかの先生からお尋ねもございましたが、元来企業内の労使の問題でしたら、たとえば雇用量を減らす、減らさないの問題は関係労使で話し合って決めていくのが基本であるわけです。ところが、もともと雇用情勢の悪い地域にさらに特定の不況業種に属する企業から大量の失業者が出るということになりますと、その失業者がふえる影響は累増するような形で地域雇用情勢に悪影響を及ぼすわけでございます。したがって企業内の問題が企業の外、言うなら地域全体の雇用に非常な悪影響を及ぼすという事態においては、労働大臣としてその企業に対して一定の要請をしたいというのがその趣旨でございます。  中身として具体的にどんなものを考えているかと申しますと、先ほど局長もお答え申しましたが、この法律に基づいての各種助成措置をいろいろ考えております。当然企業としてもそうしたものを承知している場合もありましょうし、承知していない場合もあると思いますが、承知していてもなかなか利用できないというケースもあろうかと思いますが、少なくともそういう各種の援護措置をフルに活用していただいて、ある意味では、離職者が出るのをなだらかなかっこうでやっていただくということも一つの効果としては期待できるのじゃないかと思うわけでございます。一遍に大量の離職者がその地域に新しくつけ加わるということではなくて、たとえば離職前訓練の助成金を活用するといった形で、失業の状態を経ないで他へ再就職の道をとるとかという形で、離職者の上積みがその地域になるたけ出ないような形をとっていただきたい、そういう趣旨での努力を企業に対して要請するというのが、たとえばの例でございますが、そういう形のものを考えているわけでございます。
  167. 菅直人

    ○菅委員 一種の行政指導ということを法律で裏づけたということだと理解をすることにしたいと思いますが、時間もないので、最後に、予算にかかわる問題を一つだけお聞きしておきたいと思います。  この法律を実施する場合にそれなりの予算措置が必要になると思うのですが、その場合にどういうふうな予算措置をされているのか。特に一般会計と特別会計とのそれぞれの繰り入れ金の問題があると思いますし、それから、その場合にいまの保険料率に一度に響くことはないにしても、現在の特別会計の将来見通しの中でどういうことになっていくのか、まだ当分は大丈夫という判断なのか、そのこともあわせてお尋ねをしたいと思います。
  168. 谷口隆志

    谷口政府委員 この新法の関係の五十八年度の予算につきましては、この施行に関する経費として総額百五十八億円ばかりの予算を計上いたしておるわけですが、その内訳は一般会計十六億、労働保険特別会計の雇用勘定が百四十二億円ばかりでございます。そこで、労働保険特別会計の雇用勘定でかなりの予算を計上いたしておりますので、いま御質問のありましたような雇用保険の保険料率を改正するかどうかという問題でございますけれども、ここ数年の非常に厳しい雇用失業情勢を背景といたしまして、雇用勘定もかなり悪い状況推移をしてきておるわけでございます。しかしなお積立金とか雇用安定資金も相当額を積み立てておりますので、いますぐ保険料率の改正というようなことは考えておらないわけでございまして、私どもとしては、こういう厳しい雇用失業情勢の中で、今後雇用動向を注意深く見守りながら、これらの施策の実施状況をあわせて考えていかなければならぬことだと思っておりますけれども、当面保険料率の改正というようなものは考えておらないわけでございます。
  169. 菅直人

    ○菅委員 終わります。
  170. 稲村利幸

    稲村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、明二十三日水曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十分散会