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1983-02-22 第98回国会 衆議院 社会労働委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年二月二十二日(火曜日)     午前十時五十分開議  出席委員    委員長 稲村 利幸君    理事 今井  勇君 理事 大石 千八君    理事 丹羽 雄哉君 理事 牧野 隆守君    理事 金子 みつ君 理事 田口 一男君    理事 平石磨作太郎君       逢沢 英雄君    古賀  誠君       白川 勝彦君    津島 雄二君       戸沢 政方君    友納 武人君       中野 四郎君    長野 祐也君       浜田卓二郎君    船田  元君       山下 徳夫君    大原  亨君       川本 敏美君    栂野 泰二君       永井 孝信君    森井 忠良君       大橋 敏雄君    和田 耕作君       浦井  洋君    小沢 和秋君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大野  明君  出席政府委員         防衛施設庁労務         部長      木梨 一雄君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働大臣官房審         議官      平賀 俊行君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省労働基準         局安全衛生部長 林部  弘君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       増田 雅一君         労働省職業訓練         局長      北村 孝生君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局計画官  谷  弘一君         通商産業省産業         政策局産業構造         課長      田辺 俊彦君         社会労働委員会         調査室長    石黒 善一君     ───────────── 二月十日  駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二五号) 同月十五日  特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案内閣提出第二四号) 同月十六日  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願三塚博紹介)(第五三六号)  同(石橋一弥紹介)(第五六五号)  同外二件(倉成正紹介)(第六六四号)  保育所振興対策確立に関する請願田中龍夫紹介)(第五三七号)  同(石橋一弥紹介)(第五六八号)  同外二件(今枝敬雄紹介)(第五六九号)  同(工藤巖紹介)(第五七〇号)  同(越智伊平紹介)(第六六五号)  同(倉成正紹介)(第六六六号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願逢沢英雄紹介)(第五五六号)  同(草川昭三紹介)(第五五七号)  同(塩谷一夫紹介)(第五五八号)  同(住栄作紹介)(第五五九号)  同(友納武人紹介)(第五六〇号)  同(平泉渉紹介)(第五六一号)  同(船田元紹介)(第五六二号)  同(武藤嘉文紹介)(第五六三号)  同(山崎拓紹介)(第五六四号)  同(足立篤郎紹介)(第六二一号)  同(大橋敏雄紹介)(第六二二号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第六二三号)  同(瓦力紹介)(第六二四号)  同(木野晴夫紹介)(第六二五号)  同(倉成正紹介)(第六二六号)  同(小山長規紹介)(第六二七号)  同(田邉國男紹介)(第六二八号)  同(武田一夫紹介)(第六二九号)  同(玉生孝久紹介)(第六三〇号)  同(中西啓介紹介)(第六三一号)  同(中村正三郎紹介)(第六三二号)  同(丹羽雄哉紹介)(第六三三号)  同(根本龍太郎紹介)(第六三四号)  同(牧野隆守紹介)(第六三五号)  同(宮下創平紹介)(第六三六号)  同(越智伊平紹介)(第六六八号)  同(大石千八紹介)(第六六九号)  同(大村襄治紹介)(第六七〇号)  同(小渕正義紹介)(第六七一号)  同(古賀誠紹介)(第六七二号)  同(高村正彦紹介)(第六七三号)  同(谷垣專一君紹介)(第六七四号)  同(中野四郎紹介)(第六七五号)  同(平沼赳夫紹介)(第六七六号)  同(水平豊彦紹介)(第六七七号)  同(村田敬次郎紹介)(第六七八号)  同(粟山明君紹介)(第六七九号)  民間保育事業振興に関する請願太田誠一紹介)(第五六六号)  同(山崎平八郎紹介)(第五六七号)  同(倉成正紹介)(第六一五号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願小林進紹介)(第五七一号)  同(原健三郎紹介)(第五七二号)  同外二件(木村守男紹介)(第六一七号)  同外一件(櫻内義雄紹介)(第六一八号)  同外八件(三原朝雄紹介)(第六一九号)  同外六件(國場幸昌紹介)(第六六七号)  障害者社会への全面参加平等実現等に関する請願栗田翠紹介)(第六一六号)  じん肺法改正に関する請願大橋敏雄紹介)(第六二〇号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願石井一紹介)(第六六〇号)  同(原健三郎紹介)(第六六一号)  療術制度化阻止に関する請願石井一紹介)(第六六二号)  同(原健三郎紹介)(第六六三号) 同月十八日  栄養士法資格免許制度堅持に関する請願井出一太郎紹介)(第七二一号)  同(小川平二紹介)(第七二二号)  同(小沢貞孝紹介)(第七二三号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七二四号)  同(串原義直紹介)(第七二五号)  同(倉石忠雄紹介)(第七二六号)  同(小坂善太郎紹介)(第七二七号)  同(清水勇紹介)(第七二八号)  同(下平正一紹介)(第七二九号)  同(中村茂紹介)(第七三〇号)  同(羽田孜紹介)(第七三一号)  同(林百郎君紹介)(第七三二号)  同(宮下創平紹介)(第七三三号)  調理師法資格免許制度堅持に関する請願井出一太郎紹介)(第七三四号)  同(小川平二紹介)(第七三五号)  同(小沢貞孝紹介)(第七三六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七三七号)  同(串原義直紹介)(第七三八号)  同(倉石忠雄紹介)(第七三九号)  同(小坂善太郎紹介)(第七四〇号)  同(清水勇紹介)(第七四一号)  同(下平正一紹介)(第七四二号)  同(中村茂紹介)(第七四三号)  同(羽田孜紹介)(第七四四号)  同(林百郎君紹介)(第七四五号)  同(宮下創平紹介)(第七四六号)  痴呆性老人対策に関する請願井出一太郎紹介)(第七四七号)  同(小川平二紹介)(第七四八号)  同(小沢貞孝紹介)(第七四九号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第七五〇号)  同(串原義直紹介)(第七五一号)  同(倉石忠雄紹介)(第七五二号)  同(小坂善太郎紹介)(第七五三号)  同(清水勇紹介)(第七五四号)  同(下平正一紹介)(第七五五号)  同(中村茂紹介)(第七五六号)  同(羽田孜紹介)(第七五七号)  同(林百郎君紹介)(第七五八号)  同(宮下創平紹介)(第七五九号)  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願外二件(江藤隆美紹介)(第八三一号)  保育所振興対策確立に関する請願岡田直紹介)(第八三二号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願外二件(加藤紘一紹介)(第八三三号)  建設国民健康保険組合改善に関する請願渡部行雄紹介)(第八三四号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願石橋一弥紹介)(第八三五号)  同(中尾栄一紹介)(第八三六号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願砂田重民紹介)(第八三七号)  同(松本十郎紹介)(第八三八号)  療術制度化阻止に関する請願砂田重民紹介)(第八三九号)  同(松本十郎紹介)(第八四〇号) 同月二十一日  積雪寒冷地冬期雇用促進給付金制度の存続に関する請願北山愛郎紹介)(第八七〇号)  てんかんの総合対策に関する請願寺前巌紹介)(第八七一号)  同(米沢隆紹介)(第九五五号)  優生保護法改正反対に関する請願寺前巌紹介)(第八七二号)  同(藤原ひろ子紹介)(第八七三号)  民間保育事業振興に関する請願藤原ひろ子紹介)(第八七四号)  同(植竹繁雄紹介)(第九八九号)  同(江﨑真澄紹介)(第九九〇号)  優生保護法改正反対に関する請願蓑輪幸代紹介)(第八七五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第九三二号)  同(田中恒利紹介)(第九三三号)  基準看護指定病院入院患者付添看護婦等容認に関する請願佐藤孝行紹介)(第八七六号)  同外三十七件(鳩山邦夫紹介)(第九四三号)  同外五件(米沢隆紹介)(第九四四号)  同外一件(小沢一郎紹介)(第九六六号)  同外一件(浜野剛紹介)(第九六七号)  同外一件(志賀節紹介)(第九九一号)  じん肺法改正に関する請願栂野泰二紹介)(第八七七号)  同(米沢隆紹介)(第九四五号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(阿部未喜男君紹介)(第八七八号)  同(小川国彦紹介)(第八七九号)  同(川俣健二郎紹介)(第八八〇号)  同(清水勇紹介)(第八八一号)  同(前川旦紹介)(第八八二号)  同(稲葉誠一紹介)(第九〇四号)  同(今井勇紹介)(第九〇五号)  同(佐藤誼紹介)(第九〇六号)  同(戸沢政方紹介)(第九〇七号)  同(村山喜一紹介)(第九〇八号)  同(山口鶴男紹介)(第九〇九号)  同(山下徳夫紹介)(第九一〇号)  同(横手文雄紹介)(第九一一号)  同(愛野興一郎紹介)(第九四六号)  同(小沢一郎紹介)(第九四七号)  同(塩谷一夫紹介)(第九四八号)  同(田口一男紹介)(第九四九号)  同(栂野泰二紹介)(第九五〇号)  同(中村重光紹介)(第九五一号)  同(浜田卓二郎紹介)(第九五二号)  同(森田一紹介)(第九五三号)  同(米沢隆紹介)(第九五四号)  同(嶋崎譲紹介)(第九六八号)  同(臼井日出男紹介)(第九九二号)  同(國場幸昌紹介)(第九九三号)  同(藤本孝雄紹介)(第九九四号)  同(山下元利紹介)(第九九五号)  優生保護法の一部改正反対に関する請願土井たか子紹介)(第九〇三号)  療術制度化阻止に関する請願土井たか子紹介)(第九一二号)  同(永井孝信紹介)(第九七一号)  失業対策事業関係予算確保等に関する請願矢山有作紹介)(第九四〇号)  市区町村社会福祉協議会法制化に関する請願外三件(福永健司紹介)(第九四一号)  保育所振興対策確立に関する請願植竹繁雄紹介)(第九四二号)  同(戸沢政方紹介)(第九六五号)  カイロプラクティックに関する法律制定反対に関する請願土井たか子紹介)(第九六九号)  同(永井孝信紹介)(第九七〇号) は本委員会に付託された。     ───────────── 二月十七日  老人保健法の施行に伴う負担軽減策等に関する陳情書(第三七号)  老人保健法における保健事業実施体制整備に関する陳情書(第三八号)  沖縄県内国立療養所四施設の職員定数増員に関する陳情書(第三九号)  労働行政体制確立に関する陳情書(第四〇号)  失業対策事業補助金削減反対に関する陳情書(第四一号)  食品添加物指定及び使用基準安全規制に関する陳情書(第四二号)  積雪寒冷地冬期雇用促進給付金制度改善に関する陳情書(第四三号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法期限延長に関する陳情書外八件(第四四号)  厚生年金制度改善に関する陳情書外一件(第四五号)  精神薄弱者福祉向上に関する陳情書(第四六号)  診療報酬引き上げ等医療制度の拡充に関する陳情書(第四七号)  老人保健法における一部負担金制度見直しに関する陳情書(第四八号)  栄養士等資格制度堅持に関する陳情書(第四九号)  中国引揚者援護強化に関する陳情書(第五〇号)  特定不況地域離職者臨時措置法等期限延長に関する陳情書外一件(第五一号)  市町村社会福祉協議会法制化に関する陳情書外三十八件(第五二号)  優生保護法改正反対に関する陳情書外十件(第五三号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案内閣提出第二四号)  駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第二五号)  労働関係基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 稲村利幸

    稲村委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田口一男君。
  3. 田口一男

    田口委員 大臣予算委員会関係で少しばかり時間がずれましたですが、まず身体障害者就職の問題についてお伺いをしたいと思います。  昨今の経済情勢から、雇用問題はいわゆる健常者の方にとっても厳しいということですから、ましてやハンディキャップを持った障害者などについてはより御苦労が多いと思います。それだけに、こういった方々雇用問題についてはより真剣に役所の側も社会全体も考えていく必要があるだろう、こう思います。  そういった観点から、実は去年の暮れからことしの正月早々にかけましていろいろな障害者団体が会合を開いておるのですが、その中でまず、略称障全協と言っておりますが、これは障害者生活と権利を守る全国連絡協議会、それから私の地元の三重県身体障害者福祉連合会、こういったところが寄り合いをやりましていろいろな要望を出しております。  ちなみに、この障全協というところが、全国盲学校聾学校、それから養護学校、こういったところの高等部を昨年の三月に卒業された方を対象にアンケートをとっておるのですけれども、その結果によりますと、いま言った学校を卒業された方のわずか四四・五%しか就労をしていない、とりわけ養護学校なんかになりますとわずか一五・三%しか就労をしていない、こういう実態なんですね。  そこで、これはいろいろな部門について労働省も努力をされておるということはわかりますけれども、以下申し上げる二つ、三つのことについてお考えを聞きたいのです。  まず一つは、資料で後でいただいても結構ですが、概略をまず聞かせていただきたいのは、雇用促進法十三条の規定によって、国家公務員任免に関しては毎年労働大臣に通報しなければならぬ、こういう決めがありますが、この国家公務員各省別障害を持った方々任免状況はどういうふうなのか。最近の数字で結構ですから、まずお答えをいただきたいと思います。  それから、いま言った団体の方で強い要望、これだけは何とかしてもらいたいということは、身体障害者雇用促進法の中でいわゆる雇用率雇用義務ということを課しておりますが、この中に知恵おくれが入っていないんですね。いわゆる精神薄弱者といいますか、もうそろそろ、労働省のそういった職業何とか研究所の方での成果もあるでしょうから、この法律の別表の中にいわゆる知恵おくれの方々も加えるべきではないか、こう思うのですが、この点についてどうでしょうか。  まず、その点だけ先に聞かせていただきたい。
  4. 谷口隆志

    谷口政府委員 まず最初の、身体障害者国家公務員への任用状況についてでございますが、一昨年の昭和五十六年六月二日から昨年五十七年の六月一日までの一年間におきます中央省庁における新規採用身体障害者数は、百三十六人となっております。  省庁別に主なところを申し上げますと、多いところでは郵政省が五十七人、建設省が三十二人、文部省が十三人、労働省十二人、通産省六人というようなところでございまして、その他の省庁におきましてはゼロから三人ぐらいになっております。  なお、新規採用がゼロのところにつきましても、雇用率、非現業ですと一・九%、現業一・八%の雇用率は達成しておるか、若干達成していなくても不足数はゼロというような状況でございます。  それから、続きまして、精神薄弱者方々雇用促進対策について、雇用率適用すべきではないかという御質問でございますが、御存じのように、精神薄弱者方々雇用の問題につきましては、こういう方々雇用に適するかどうかという判定がむずかしいこととか、あるいは精神薄弱者方々に対する適職の開発がおくれているとか、また、職場生活に直接関係はないけれども社会生活指導面で特別の配慮を必要としておるとか、またプライバシーの問題とか、いろいろな問題がございまして、御案内のように、現行の身体障害者雇用促進法におきましては、雇用義務の直接の対象にはしておらないわけでございます。  しかし、それ以外の面、たとえば職業紹介とか職場適応訓練の問題、あるいは現に精神薄弱者を採用されておりますと雇用納付金の減額の対象にするとか、また、雇用促進のための助成につきまして納付金を原資とする助成措置を実施するとか、大部分の条項につきましては、精神薄弱者方々についても適用されておるわけでございます。  そこで、雇用率制度適用を含む今後の雇用対策についてでございますけれども、いま申し上げましたようないろんな問題がございますので、私どもとしましては、当面そういう問題を一つ一つ実質的に解消いたしまして、雇用につき得る条件整備を図ることがまず必要だろうというふうに考えまして、そのための能力開発推進とかその他、いろいろ具体的な措置を積極的に積み重ね、推進をいたしまして、条件整備の進展に対応いたしまして、雇用率制度適用については検討をすることといたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  5. 田口一男

    田口委員 まあむずかしい問題だと思うのですが、そこで、いまの問題に関連をして二つほど、一つ大臣にちょっとがんばってもらいたいと思うのですが、せっかく雇用促進法十三条で「職員任免に関する状況労働大臣に通報しなければならない。」こうなっておるのですから、それを聞いて、はあ、そうですかと言うだけではどうも法の精神としてはおかしいのじゃないか。したがって、いま二、三の役所の例を出されましたけれども世間一般の常識から言って、ここらあたりは一人や二人採用してもというところには、大臣がちょっとプッシュする。こういったことがなければ、障害者特別雇用制度といったものも生きてこぬのじゃないか。したがって、まあ一律的にどの省を何人、何%満たすようにやれということも必要でしょうけれども、いま見ると郵政、通産労働、文部、建設ですか、ちょっと聞くと、まあ障害者所管庁である厚生省には一つもない、こう思うと、厚生省どうなのかというふうに声をかけてもらう、こういうことが必要なんじゃないかと思うのですね。そういった点が一つ。  それから、いま言った盲学校聾学校養護学校高等部を卒業された方の、これは去年の調査なんですけれども、出先の職業安定所に行くと、たしか障害者方々雇用にかかりっきりの担当官安定所に一人見える、全部にはおりませんけれども。ところが、学校側からいうと、新卒の学生の就職について職安がいろいろと飛び回って御苦労いただくのと同じように、こういった盲学校聾学校等新卒についても担当職員が欲しいなという要望があるのですね。これはもう一律的には無理だと思うのですけれども、そういった要望にこたえるようなこともひとつ考えてもらえないか、こう思うのですが、どうですか。
  6. 大野明

    大野国務大臣 ただいまの田口先生の御質問の第一点の方は、これは法定雇用率につきましてはすでに政府委員から答弁いたしましたように、一応国としては達成はしておる、しかしまだ低いじゃないかという点の御指摘もございますし、その点につきましては、現在の社会情勢、一般的に雇用という問題が非常にむずかしいときでございまして、しかしながら、やはり私どもが率先して、そして民間企業にも大きく影響を与えたいということを考えておりますし、また同時に、昨年の十月二十九日の閣議におきまして、これは私の前任の労働大臣から、各省庁に対して、もっと身障者方々雇用をふやしてほしいという強い要請を行ったところでございますし、また、いまの政府委員からの答弁の中で、通産とか労働とか——厚生省みたいなところは入っておらぬじゃないかという御指摘につきましては、私は十分承知いたしましたので、厚生大臣にも直接そういう話をしておこう、こういうふうに考えております。  また、第二点につきましては、いまちょっと先に政府委員から説明させます。
  7. 谷口隆志

    谷口政府委員 精神薄弱者方々雇用促進につきましては、先ほど申し上げましたようないろいろむずかしい問題がありますので、それを一つ一つ解決しながら条件整備をして進めていくということでございますが、先生も御指摘になりましたように、こういう方々につきましては、やはり職場生活の面、それから社会生活の面でもいろいろ相談指導を十分行うということが非常に重要でございますので、そういう意味では、たとえば職場にそういう方々雇用管理指導を行う職員を置く場合は助成をするとかというような制度もございますが、同時に職業安定機関にも相談員を配置するとかというようなことをいたしておりますけれども、いずれにしましても、御指摘のありました養護学校その他の学校等職業安定機関連携、あわせて雇用される方の事業所等との連携、こういうところを十分にしながら、そういう相談指導に当たられる方々配置等も含めてよく連携をとって進めてまいりたいと思います。
  8. 田口一男

    田口委員 これはあと身障者の問題の要望になると思うのですが、例の職場適応訓練費というのがありますね。五十八年度は前年度に比べてそれぞれ月額千円を増額をしておるのですけれども、この職場適応訓練費について、いまはたしか中軽度の方については六カ月、重度については一年というふうな大体の決めがあるようですけれども、これは案外好評です。好評で多々ますます弁ずるんではないのですが、この訓練制度延長してもらいたいという声が、事業主の方からも、そして、まあ預かっておるPTAと言うとなんですが、親の方からも案外要望が強いのですね。私はここでどうだというふうな言い方をしませんけれども、そういったせっかくの職場適応訓練費という制度ですから、期間の延長などについても、いまの一年を、一遍に二年ということにならぬでしょうけれども、追い追い延長していく、こういったことももうそろそろ考えてもらってもいいんじゃないかと思うのですが、この点は一応要望だけにしておきます。お考えは後でお伺いをしたいと思います。  次に、雇用の問題はちょっとまだあるのですが、時間の配分から後に回しまして、労働災害労働安全という問題についてお伺いをいたします。  一つは、労働安全衛生法の十三条か何かに、事業規模がたしか五十人以上だと思ったのですが、産業医を置かなければならぬというふうになっておりますが、私は、この産業医の設置、この十三条の精神というものをもっと生かしていかなければならぬ。といいますことは、調べてみますと、最近そういう傾向が特に強いらしいのですが、職場で働いておる最中に心筋梗塞であるとかそういったことで死ぬ方が多い。こういった問題から、日ごろの生活環境健康管理、こういう指導のために産業医がより必要になってくる。これはある公務員の、役所関係なんですけれども、去年一年でそういう心筋梗塞に類したようなことで九人も亡くなっている。こういう状況からより必要性があるのですが、去年の十月にある民間の調査機関が調べたところによりますと、同じような規模の民間で産業医を置いていないところは一%程度しかない。ところが、官公庁の事業場には一三%も置いていないという数字が出ておるのですね。約十倍。これもさっきの問題と同じように、せっかくつくった決めでありますから、そういう傾向が多い昨今、やはり産業医は置くべきじゃないか、どうなんだという指導は、労働省からもやっていただく必要があるのじゃないかと思うのです。
  9. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 産業医の問題につきましては、先生指摘のとおり、これは事業場における健康管理ということで非常に重要な仕事になっていただいておるわけでございまして、御存じのとおり、労働省におきましても産業医科大学を設置するということで、産業医につきましては力を入れているわけでございます。  それで、先生いまおっしゃいましたように、五十人以上の規模の事業場におきましては原則として産業医を置かなければならぬということになっております。そこで、いま御指摘の民間の調査でございますけれども、確かに官公庁の設置状況がおくれているという調査結果が出ているわけでございますが、ただ、この調査結果を私もしさいに見てみましたところが、未選任の事業場の数は比率にいたしますと多いわけでございますが、その内容を見てみますと、民間の場合は、たとえば千人以上で二つの事業場が未設置、官公署は三つの事業場が未設置ということで、分母になっている数字が民間の方が多いものですから、比率の上では非常に大きく出てきているわけでございますけれども、数自体は二とか三ということで非常に小さいわけでございます。  ただ、それでは果たして民間と官公庁と比べて産業医の設置状況はどうか、労働省はどういうふうに把握しているかという観点から調べてみますと、これは御存じのとおり基準法の適用があるのは現業官庁でございますが、非現業の官庁につきましてはこれは国家公務員法で適用がない。それからもう一つ、地方公務員法につきましては、これは適用はあるけれども、監督、報告等のたぐいは御存じのとおり人事委員会でやられておりますので、非現業の関係は実は私ども調査対象から外れておりますが、私ども状況を見ましても、確かに官公庁の産業医の設置状況はおくれていると言わざるを得ないわけでございます。  それで、私どもとしましては、やはりこのような現状、これは残念な状況だと思いますので、今後とも、現業官庁における産業医の設置につきましては従来にも増して指導いたしていきたいというふうに考えておるところでございます。
  10. 田口一男

    田口委員 次に、労災問題で、これは去年の九月三十日に大阪地裁で判決があったのですけれども、大東マンガン判決と言っておりますが、これは例によって職業病、この職業病が発生をして、企業に責任があるというだけならば、私は、これは労災問題としてもよくあることだと言われても仕方がないだろう、ちょっと語弊があるかもしれませんが。ところが、この大東マンガン訴訟の判決の意義が、こういう判決があるのですね。これは役所の方でも知っておるでしょうけれども職業病の発生を防ぐため、国は企業に対して規制権限を行使する法的義務がある、その義務を果たしていないから違法行為だというのですね。こういったいままでにないこういう職業病、労災の判決だと思うのですが、この判決に対してどう受けとめているか。これをまずお伺いしたい。
  11. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 これは先生がおっしゃいましたように、去年の九月三十日に、大阪の植田満俺製錬所というところの従業員が、マンガンの製錬業務をやっておってマンガン中毒にかかったということにつきまして問題とした判決でございますが、この判決におきましては、これは事業主の責任をまず認めたわけでございますが、そのほかに国についての責任をも論じておるわけでございます。  それで、この判決の考え方につきましては、国の責任につきましては、まず労働災害の防止のための労働基準監督署等の監督機関の責任につきまして、権限行使につきまして、これは一般論としましては監督官が自由裁量でやるということであるけれども、しかし特殊の場合については責任があるということで、長年にわたり所轄の監督署がこの植田満俺を監督指導いたしたわけでございますけれども、そのうちの昭和四十三年から昭和四十六年の夏までの分につきましては、裁量の範囲を著しく逸脱して、かつ、合理性もまた著しく欠けておる特殊な場合なのだということで、このような特殊なものについては不作為の違法責任を負うということで、事業主の責任の一部について国にも連帯の責任を認めるという理論構成をとっておるものでございます。  そこで、私どもといたしましては、まずこの監督機関の責任というのは、これは監督する責任はございますけれども、しかしながら、その責任の行使につきまして損害賠償責任を持つような性格のものではないというふうに考えておるわけでございまして、その点は理論的には分かれておるわけでございます。  それで、私どもとしましては、そのほかにも、たとえば植田満俺の事業所につきまして、昭和四十二年度から衛生管理特別指導、私ども衛特と言っておりますけれども、このような事業場に指定するということで、私どもとしましては、その当時の水準といたしましては適切な指導を行ってきたというふうに思って、裁判所にその旨を弁論の際に申し上げたわけでございますけれども、残念ながらこれは認められなかったということで、この点につきましても不満があるということで、実は高裁に控訴いたしておるわけでございます。  ただ、先ほど申しましたように、私どもとしましては、労働基準監督署はやはり監督機関としての責任があるということで、この安全衛生の問題につきましては、御存じのとおり労働行政における最重点事項の一つといたしまして、安全衛生の面について力を入れているところでございます。
  12. 田口一男

    田口委員 確かにおっしゃるように、この大東マンガンの判決に返って言うならば、国と企業に対していま言ったような責任があるから、四千六百二十万ですか、そういった賠償責任がある。私は、これはいま局長がおっしゃるように争う余地もあるだろうと思うのですが、私が言いたいことはそうではなくて、一体出先の監督官、監督署、つまり国が積極的に監督指導ということに乗り出していかなければ、こういった職業病なり、ほかのこともあるのですけれども、だれが救済してくれるのかという気持ちを、被災者はもちろんのこと、職場労働者も持っておるわけですね。そこのところに対してこの判決が問いかけておるのじゃないのか。  かつてこの委員会でも、六価クロムの問題であるとか、それから和歌山の発がん性のおそれのあるベンジジン、こういった問題などについても議論いたしましたが、これはつい最近の新聞なんですけれども、本年二月十日付の「国政通信」という新聞で、こんなに二面使って工場の事故のいろいろなケースを挙げておるのです。ここでたくさんの労働者が死んでおる。労働者だけじゃなくて、巻き添えを食っておるという例もある。ここでみんな一概に言っておることは、ちょっとした不注意で、手抜きでこういう問題があるのだから、こういったところを常日ごろ監視をしておれば防げたはずだという言い方なんですね。  そうなってきますと、さっきの大東マンガンで裁判所が問いかけておるように、国が積極的に監督指導に乗り出さなければだれが救済するのか、こういった点でいくと、私は、出先の監督官の御苦労というもの、それでこういう事故が起きれば賠償責任を問われる、大変なことだと思うのですけれども、そこまで言われるのならば、よく言われておるように、もっと監督官の体制を整備する必要がある。私どもは前々から、今日、行革だとか何だかんだとか言って公務員の定数が削減をされる傾向の中で、必要なところはもっとふやすべきじゃないか、こう言っておるわけですけれども、こういった判決を一つのよりどころにして、理由にしてどうだこうだという気持ちはありませんけれども、どうも労働省の定数を見た限りにおいては、こういう画期的な判決、問いかけがあるにもかかわらず、大臣、減っておるのですね。一般会計が、五十八年度末と五十七年度末と比較をいたしますと、五十八年度末の定数が一万四千七百七人、五十七年度に比較してマイナス七十一。特別会計は一万五百三十二人で、これもマイナス三十九。こういう状況であるならば、私は、出先の第一線の監督官がそういった賠償責任を問われて、しかも人が減っていく。これでは士気の点について問題があるのじゃないかという気がするのですが、いかに行革だ、どうだこうだと言っても、こういった問題がある以上は、大臣、人の面でちょっとがんばってもらわにゃならぬと思うのですが、どうでしょう。
  13. 大野明

    大野国務大臣 ただいまの大東マンガンの問題につきましては、基準局長から答弁がございましたとおり、現在裁判係属中でございますから、その中身については御勘弁願うとしても、いずれにしても労働省としては、事業主に対しての指導監督、そしてまた、個々に対しては事業主がやるべきことであろうという体制でまいったのが、今度の裁判では国にも責任あり、こういうことなので、ひとつ心新たにせにゃならぬかなという気持ちは持っております。  しかし、その結論はまだこれからでもございますのでさておき、いまの先生指摘の、こういう事態が生じるんだからひとつ人をもっとふやすのが本当じゃないかということでございますけれども、基準局としては二十五人減っておりますが、監督官あるいはまた安全専門官、衛生専門官は、少しではございますけれども現実に毎年ふやしておるということでございまして、基準局の枠の減った中はほかのところであれして、労働災害についてはできる限りの配慮をしておるという御認識をいただきたいと思います。
  14. 田口一男

    田口委員 一番初めに言った身体障害者の方の雇用問題についても、盲学校とか聾学校養護学校高等部先生方が、付きっきりとは言わぬけれども、こういった方を対象にする専門官が欲しいなあと言っておるのですね。また、いまの大東マンガンの例で見られるように、この監督官の監督権限を十分行使しなかったのだから四千何百万よこせ、賠償せよ、こう言っておる。監督権限を持っておったって、行使をしようにも人手がない、平たく言えば。そうなんですから、現実にある部署ではふやしておるかもしれませんけれども、この数字、マイナス七十一人、三十九人。労働省全体で五十八年で百十人の減です。これはひとつ、いま言ったこういう要望、それから判決などにかんがみても、私は、いまはやりの行革の範疇にこれを入れるべきではない、こう思うのです。そういう点でひとつがんばってほしいと申し上げているわけでございます。
  15. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、非常に人をふやすということはむずかしい時代であることは御認識いただいておりますけれども、しかしながら、一方において、いま御指摘のような問題というものが多発していくような産業構造等もこれあり、私といたしましては、今後とも、関係職員の増員増強、そしてまた、機動的な、効率的な配慮をしていこうと考えておるところでございます。
  16. 田口一男

    田口委員 じゃあ、そういう点についてこれからもがんばっていただくことを要望しまして、次に、失対事業の問題についてお伺いをいたします。  最近、これは皆さんの方にもこういったはがきが来ておると思うのですけれども、私のところにも毎日のように来ております。「今回政府労働省は六十五歳以上は一・五日分削減、七十歳以上は甲現場へ移行させようとしております。これは六十五歳線引きと失対打ち切りにほかありません」云々。こういったはがきが毎日のように来るのですけれども、たしか昭和五十五年に、俗称大河内委員会調査報告の中で、昭和六十年をめどに六十五歳以上云々といった、採用しないようにといったような報告が出ておるのですけれども、ここに言うはがきをそのまま言うならば、六十五歳以上はもう線を引いて、俗に言う首切りということになるのか。その辺の実態はどうなんですか。
  17. 増田雅一

    ○増田政府委員 御承知のように、失対事業につきましては三十有余年の歴史を経ているわけでございますが、就労者の長期滞留による高齢化が著しくなっておりまして、六十五歳以上の就労者が五二・七%、七十歳以上の就労者が二七・四%を占めるに至っているわけでございます。  そのために、事業は著しく非効率また非経済的なものとなっておりまして、事業主体もその事業種目の選定に非常に悩んでいるような事情がございます。  また、就労者の高齢化によります労災事故の発生、あるいは通勤災害の多発というような傾向にございまして、その災害の内容も、通常の労働者であれば災害には遭わなかったであろうというような、きわめてささいな原因で災害を起こしているというふうな状況にもございます。  このように失対事業におきます問題点が顕著になったことにかんがみまして、昭和五十五年にいま御指摘の失業対策制度調査研究報告が出されまして、失対事業は労働政策の事業として維持運営できる限界に来ており、基本的には終息を図るべき段階に来ているというふうに指摘されているところでございます。  なお、同報告におきましては、旧産炭地域や、同和対策対象地域の実情や、失対事業のこれまでの歴史的経過というようなものにかんがみれば、失対事業をなお暫定的に実施することもやむを得ない。この場合においても、失対事業を労働政策の事業として適正に維持運営する必要がある。このための措置として、五年程度の経過期間後におきましては、六十五歳以上の者を紹介対象者として取り扱わないものとすることが必要であると指摘されているところでございます。  こういう報告に基づきまして、五十五年の報告をいただきましてから五年程度をめどにいたしまして、六十五歳以上の方々につきましては失対事業の紹介対象者としないという措置考えているところでございます。
  18. 田口一男

    田口委員 そこで、私は、はがきが来たからどうこうという意味で言うんじゃありませんけれども、同じように、労働省が有識者に依頼をして高齢化社会問題研究会というのですか、りっぱな答申が去年の十月に出されております。私はその片言隻句をとらえてという意味じゃないのですが、ここにこういうくだりがあるのですね。「高齢化問題が生じる基本的な要因は、高齢者の高い就業志向に需要側が十分に対応しえていないことにある。」このくだりから、私は、いまのいわゆる高齢者の失対労務者の方々について言ってみたいのですが、いや効率が悪いのとか滞留といったようなことはよく聞きますけれども、ひとつ高齢者の労働政策として考えた場合に、六十五歳だからだめだ、七十歳だからだめだというふうに、年齢で一律的に能力は判定できないだろうということが一つ。それからもう一つは、いま三十何年という歴史を持っておるそうですけれども、本来ならば、民間の企業に三十年も働けば年金、退職金でもおつりが来る。ところが、この場合そういったものがないでしょう。ないと言ってもいいのじゃないか。そういった問題がある。とすると、いま六十五歳で線を引いて、確かに大河内委員会の方でそういった指摘もありますけれども、ここのところはやや弾力的にといいますか、一遍に六十五歳でやることは無理があるのじゃないかという気が私はするのです。しかし、一定の歯どめ、線引きは必要だということも否定ができないけれども、もう六十五歳だからやめていきなさいということも、いままでの歴史からいって、年金、退職金もない状態の中ではちょっと無理が出てくるのじゃないのか。そこのところをやはり、人間相手ですから、効率的でないとかどうとかというそしりは私も耳にしますけれども、一定の年限を区切って一掃しようということにはどうも無理が伴う、こういう気がするのです。これについてどうでしょう。
  19. 増田雅一

    ○増田政府委員 先生指摘のように、わが国も高齢化社会を迎えつつございまして、そのために、高齢者の雇用問題については私どもも非常に重要な関心を払って、そのための対策を立てているところでございます。  しかしながら、六十歳を超えますと労働者も個人的に非常に差異が出てまいります。体力とか能力の面で非常に差異が出ております。そのために、平均的に六十五歳という年齢はほぼ就労生活からの引退年齢というふうに各種の統計にも出ておりまして、お元気な方につきましてはそれより長い期間働かれる方も現実にあるようでございますけれども労働につく機会というものはきわめて少なくなっておるわけでございます。  また、労働政策といたしましても、すでに特別の給付金等につきまして大体六十五歳ということでその支給をやめるというようなことをやっておりますし、六十五歳というのが一応労働政策の限界ではないか。お元気な方もおられるかもしれませんけれども、しかし、そういう労働政策の限界という年齢が六十五歳であるということをとらえまして、また先ほどの研究会報告も、一般の民間労働者につきましては現在六十歳定年も完全には普及していない状況であるし、また、そういう方方は先生おっしゃるように確かに年金とか退職金とか、ある程度のものが支給されるようなこともありましょうが、しかし、現在とられております民間一般労働者の保護と比較いたしまして、著しく非効率な失対事業につきまして、国費なりあるいは県費なりあるいは市町村地方自治体の費用を投じて事業を続けていくということについて疑問があるということで報告が出されたわけでございまして、私どもといたしましては、この報告の趣旨を尊重していきたいというふうに考えているわけでございます。
  20. 田口一男

    田口委員 一般論として言うならば、私は、この高齢化社会問題研究会が指摘をしておりますように、就業意識、就業志向というものが強い、これは普通ならばありがたいことだと思うのですね。年になりました、引退しますと言って、年金の方にいけば、年金財政にまた問題が起こる。それを働こうということですから、その接点を何歳にするかということは議論のあるところでしょうが、私は一般論として、高齢者の方がまだ働けるうちは働こう、こういうことですから、これはむしろ歓迎すべきことだと思う。ところが、これを失対事業という具体的な問題にはめ込んで考える場合に、いま言われたように、非効率的であるとか滞留云々であるとか、これは前から言われておることですが、しかし、高齢者というものに年をとったら多少は能率は上がらなくてもいいんだよという言い方をすれば、やはりそういった仕事も設けておかないことには、高齢化社会に対して対応できぬのじゃないかという気がするのです。その試験台に失対事業がなれとまでは私もここでは強調しませんけれども、いままで三十何年続いてきた失対事業を無理なく、この委員会の言葉を使えば終息をさせようとすれば、六十五歳で線を引くということについては、私は、先ほどから言っているようにちょっと無理があるのではないか、こういう気がするのです。  いま各府県庁なんかに行ってみますと、府県庁の前で、この寒いのに座り込みなんかをやっておる。それはやはり、多少無理があるからああいう行動も起きておるのではないのか。したがって、ここらのところを実態に応じて、たとえば昭和六十年をめどに六十五歳云々を多少実態に応じて、むろん歯どめはしなければならぬでしょうが、そういう弾力性も持っていいんじゃないかということを重ねて申し上げるのですけれども、その点についての御見解を改めて伺いたい。
  21. 大野明

    大野国務大臣 いま先生指摘の問題につきましては、これは現実に五年間の経過期間を設けたり、また同時に、六十五歳以上の方々が引退された後も円滑に自立できるようにというような、特別な配慮もしてきたところでございます。  また、今後とも、引退なされる方々のその後の保障というようなことについても、なるべく納得がいけるような手段を講じたいなということは考えておりますが、いずれにしても、職業安定機関あるいは事業主体あるいはまた社会福祉関係等の諸機関と緊密な連絡をとってやっていこう、こんなふうにいま考えております。  また、いずれにしてもこれは、いまも先生指摘の六十五歳が云々とおっしゃるけれども、市街化区域と調整区域の線引きも大変むずかしかったように、いろいろ考えるところがあると思いますが、一応のめどとして、先ほども高齢部長から答弁したように、一応の労働政策としてのあり方としては六十五歳と常識的に考えられるのではないかと考えておりますが、引退後のことについてもできる限り配慮したいと考えておるところです。
  22. 田口一男

    田口委員 では、失対の問題はきょうはこの程度にとめておきます。  次に、最近はやりのというんじゃないのですが、就業構造がだんだん変化をしてきた、それに産業ロボットが普及をしてくるといった問題で、これからのこの問題を考えると、通り一遍ではなかなかむずかしいと思う。  そこで、まず初めに、労働省の方でどういうふうにこれをつかまえておるのか。たとえば第三次産業がふえてくる、ふえてくると言っておるのですけれども、どういうふうに変わっていくか、どう予測をしておるかということについての、細かい数字は別として、大ざっぱな数字としてどういうふうに変化をしてくるのか。一次、二次、三次の産業についてこれをまず伺いたい。
  23. 谷口隆志

    谷口政府委員 ただいま先生指摘のとおり、現在産業構造がかなり動いておりますし、それに関連して就業構造も変わってきている、今後ともかなり転換が見込まれるわけでございますが、現状私どもが推計いたしましたもので新しいものとしては、昭和五十六年六月に、労働省に設けております雇用政策調査研究会から報告が出されております。「労働力需給の長期展望」という報告でございますが、それによりますと、昭和五十五年から六十五年にかけまして就業者は四百九十五万人増加すると見込まれておりますが、産業別に見ますとやはり第三次産業の増加が非常に大きいわけでございまして、約五百万人の増加を見込んでおります。その中でもサービス業での増加が大きくて三百二十六万人くらいの増、御小売業につきましては増加は続きますけれども百万程度ということで、伸びは鈍化するというふうに見込まれておるわけでございます。  サービス業の中でどういう業種がふえるであろうかという見込みでございますけれども、高齢化の進展とか福祉ニーズの高まりに伴いまして、社会福祉とか教育文化、医療保健等の分野で発展が見込まれておりますとともに、企業におきますサービス機能の外部化の進展とかあるいは専門的な知識や能力の需要の拡大等によりまして、対事業所サービス、専門サービス、情報処理サービス等の分野での就業者の増加が顕著になるであろうというふうに見込まれているところでございます。
  24. 田口一男

    田口委員 いまお話しのように、約十年通していった場合に五百万程度の就業者の増があるだろう。そのうちのほとんどが第三次産業。そこで、第三次産業と一口に言うけれども、その中で伸びるのと案外伸びないのとある。こういった第三次産業がふえてくる、またふえざるを得ない。そこのところで一体労働行政としてどういう点が出てくるのか。  たとえばこの間、電機労連がME白書というのを今年の二月に出しております。具体的な数字が挙がっておるのですが、要約をいたしますと、この電機労連のME白書はこう言っておるのですね。「中高年・女子に対して直撃」という言葉を使っておるのですけれども、直撃をしてくる。したがって、問題は労働者が第一次、第二次産業から第三次産業へ流入するという量、四百万、五百万という量的変化に加えて、この労働力市場に質的な変化が起こってくるんじゃないかという指摘をしておるわけです。  また一面、全国金属という労働組合が調査をしているのですけれども、いろいろな技術革新なんかによって配置がえをしなければならぬ、その配置がえをする場合に必要な「教育・訓練が不足しておる」ということを指摘しておりますね。そして、労働者の側から見ると、六十になってもNCといったような旋盤を使う人もあるけれども、概してそういった技術を持っていないので、技術革新に立ちおくれるということが自分の雇用を危うくするのじゃないか、といって夜学に行くというような暇もない。そこのところを何とか教育訓練の場がないものかという要望が、全国金属の調査なんかに強く出ております。  したがって、これは職業訓練という企業内訓練か、公的職業訓練の場でやるか、その場がいろいろ出てくると思うのですけれども労働者がそういう技術革新の動きに対して何とかこれを乗り越えて生きていかなければならぬ、そういったことにこたえる必要があるのじゃないか。いままでは、職業訓練、公的訓練にしろ企業内訓練にしろ、極言すると物をつくるということにしか訓練の科目がなかった。つくる訓練であった。ところが、今度は言うならば使う訓練といったことが必要になってくるのじゃないか、いま言ったような労働者の要望からも。これに対して、まず基本的に職業訓練のあり方といいますか、そういう問題についてどうお考えでおるのか。
  25. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 先生指摘のように、雇用構造がだんだん変わってまいりまして、第三次産業関係がふえてまいります。就業者の第三次産業に占める割合が一段と高まっておるわけでございますので、公共職業訓練施設では、従来からいろいろ第二次産業関連のサービス関係、さっき職業安定局長が対事業所サービスというふうに申し上げましたけれども、そういうような関係の職種のほかに、販売科であるとか、インテリアサービス科であるとか、電子計算機科等の第三次関連の職種の訓練科の増設に努めてまいったわけでございますが、公共職業訓練施設だけではなかなか対応できない部分がございますので、そういう部分につきましては専修学校とか各種学校等に委託するというような弾力的な措置も講じて、特に中小企業のそういう方々のための訓練の推進に努めてきたところでございます。  企業内につきましても、御指摘のように、この技術革新に対応する訓練の拡充ということは非常に大事な問題でございまして、私どもは、雇用をされておる現在職場におられる労働者については、これは職業訓練法のたてまえから言いましても、事業内で企業主の責任で職業訓練をしていただくというたてまえになっておりますので、大企業は自前で大体やってもらえるわけでございますけれども、中小企業についてはなかなかそうはいかないということで、いろいろ助成措置を講じて、そういう技術革新に対応した訓練、それから、そういう技術革新に中高年齢者がなかなか対応できないという問題がございますが、この問題につきましては実はなかなかむずかしい問題がございまして、容易にはいかないわけでございますけれども、そのためには、まず若いときから一貫した段階的な職業訓練の体系を企業内でつくっていただく必要があるということで、生涯教育訓練体系というものを企業の中でつくっていただこうということを考えまして、そのための促進給付金というものを本年度から新たに設けまして、特に中高年齢の方がそういう教育訓練を受けられる場合には助成をしようという制度を設けたところでございます。  そういうことで、これからの職業訓練のあり方は、先生のおっしゃいますように、第三次産業の使う技能の問題についても大いに力を入れていかなければならぬ、こういう考え方で進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  26. 田口一男

    田口委員 先ほど安定局長のお話の中に、約四百九十五万就業者がふえる、そのうちで第三次産業は五百万何がし。これは全部が新卒じゃないと思うのです。この中身を見た場合には、第一次から第三次にいった者もあるだろうし、第二次から第三次にいった者もある。そうすると、いまお答えがあったように、第一次、第二次から第三次へ移った者は、年齢で言うならば若い人が少ない、やはり中高年が多い。その中高年が、さっき言った電機労連白書で女子・中高年を直撃してくるということにもなるんですけれども、聞いてみると、これはいまに始まったことではないのですが、大企業から中小に移った場合には賃金が六割、七割に落ちる。いわゆる上層移行というよりも下層沈でん型移行と言うそうですが、結局いままでの生活を維持するにはむずかしい。下へ下へと沈んでいく。それを防ぐためにはいま言ったように技能を覚えたい。それから、舌をかむような略称OA、こういった専門能力も持ちたい。といって各種学校へ行く時間がない。いまお話しのように、企業内で中高年を対象にしたそういう訓練をやるところには助成をすると言っておりますが、私は、いまの県立の職業訓練校であるとか事業団の訓練大学というところを見ると、先ほどから言っておりますように、つくるというところに力点を置いて、使うというところになかなかまだいっていない。  そこで、科目の問題にもなるのでしょうが、県庁所在地の都市というふうに一概には言えぬと思うのですけれども、そういった労働者が、仕事が終わって退庁後に一時間なり二時間なり、そういったところで、夜学ですね、こういう職業訓練を受けられる、またそういった科目を公的訓練施設の方で持つ必要があるのではないか。各種学校その他でやりなさい、企業内でやりなさいというのでなしに、そうなると訓練指導員の勤務形態なり何なりの問題も派生をしますけれども、そういった受け皿というものを公的訓練機関がこの際持つことを求められておるのじゃないのか。この辺について検討をしていただきたいものだ、私はこう思うのですが、どうでしょう。
  27. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 中小企業の在職者が、特に中高年齢の方が、そういう新しい技術革新に対応するために教育訓練をみずから受けたいというような強い意向がございまして、その点につきましては、私ども調査をいたしましてよくわかっておるわけでございます。  そこで、私どもは、五十八年度の予算でお願いをいたしておるわけでございますけれども一つは、中小企業の事業主の方がその雇用をされておる労働者に対しまして、こういうOAとかマイクロエレクトロニクスの関連技能労働者を養成するために、自分のところではなかなかできないということからどこか外部に委託をして訓練をされるというような場合には、そのための経費の一部を助成するというような予算をお願いをしておりますし、それから、先生がさっきおっしゃいました公共職業訓練施設につきましても、大体各府県の県庁所在地の県立の訓練校に置いておるわけでございますが、成人訓練センターということで、そういう訓練校につきましてME関係職業訓練、コンピューターであるとかNC旋盤であるとかというようなものを計画的に設置をしていこうということで、それを向上訓練の場で在職労働者に利用していただこうということで、現在そういう二つの予算をお願いをしておるところでございます。  今後とも、そういう方向で一層の拡充を図ってまいりたい、このように考えております。
  28. 田口一男

    田口委員 MEなんかの問題があって職業訓練、これも必要なことは言を待たぬのですけれども、もう一つ私は、並行して訓練の中に入れるかどうかは別として、労働災害ということも考えてもらいたい。  去年かおととし、兵庫県でしたか、ロボットの殺人事件が一件あったのですね。ロボット殺人事件というと推理小説みたいなんですけれども、現実に一人起きております。私は、これは将来もどんどんとそういったものが普及をしてくると、あってはならないことですが、ロボット災害というものは出てくると思うのです。亡くなった現場をちょっと見たんですが、これは人間のわれわれの本能と同じですね。そのロボットはこういうふうに片手を上げ、下げする動作をするんです。ちょうど片手を上げたところで、ここで昼休みになったというのです。こう上げている。昼休みで、みんなこうなったままで、飯を食いにいく。そして、飯を食って帰ってきた労働者が、そのロボットのところへ行ってうっかりスイッチを押す。そうするとボンと殴られるわけですね。それから、これもまたよくあるそうですが、ぐうっと締める動作をするロボットがある。そして、こういうふうに両手を開いたままのところで昼休みになって、そのままの状態で飯を食いにいく。それで帰ってきて、やはり同じようにうっかりスイッチを押してしまう。そうするとロボットの手が動いて、首をぐうっと締められてしまう。待ってくれ、待ってくれと言ったって、向こうはロボットだから待ってくれない。それで大けがをする。こういう事例が、MEなんかが普及すればするほど出てくる。この辺の労働災害対策ということも、訓練と相まってやってもらわないと、だれの責任だということになるんですね。ここらのところもひとつ考えていただきたいと思うのですが、そういう用意がもう労働省にあると思うのですが、どうでしょう。
  29. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 私どもも、先生指摘のロボットに関連した労働災害の問題につきましては、実はこれは新しい問題ということで受けとめているわけでございます。  一般的に申しますと、ロボットが入ってくるということは、従来から危険、有害な業務を代替するということで安全面では貢献してきたということは言えると思います。しかしながら、ロボットが入ってくることによっていままで考えられなかったような新しいタイプの災害も出てきておるということは、これまた事実でございます。  それで、実はどういうようなことが起こっておるのか、どの程度の数のものが出てきているのかということで私どもも大変関心がありますが、実は現在の統計上はロボット自体をとらえるような災害統計の項目がありませんものですから、こういうような観点から、昨年の夏に、ロボット災害の関連がどうなっているかということで、ロボットを導入した百九十の事業場につきまして、五十三年から五十七年夏までの時点でどれくらい災害が起こっているかということを調べたわけでございます。この事例調査の結果を見てみますと、死亡が二件、それから負傷が九件という報告が出ておりますし、また負傷に至らなくても、ひやりとした、はっとしたというような、接触事故が起きそうになったというような事例はもう少し多くなっておるという状況でございます。  そこで、これを見てみますと、先生の御指摘のような例もあるかと思いますが、一般的に申しますと、点検調整中に、ロボットのアームと申しますかマニピュレーター、こういうものが予期せざるような動作をして災害に巻き込まれたとか、あるいはロボットに動きを教える、教示と言っておるようでございますけれども、これは電気を入れながら教えるわけでございまして、そうしますと、それがプログラムされてそういう動きを繰り返す。ところが、電気を入れながら動かしておるものでございますから、思わざる動きをしたときに災害に対する抵抗がなかなかできない、こういう問題点を幾つも私どもは見出しておるわけでございます。  そういう観点から見た場合に、現在の機械に関する安全衛生の規則が十分かと申しますと、必ずしもそれに対応できるような規則のつくり方にはなっていないというふうに私どもは思いますので、いま申し上げましたような運転、点検調整中の場合にどういうような措置をとったらいいか、それからまた、先ほど申しました教示の際にどういう措置をとったらいいかという観点で、安全衛生規則の改正を予定しまして、実は先週、中央労働基準審議会に私ども改正案を諮問いたしているところでございます。この点につきましては、来月あたりになれば答申を審議会からいただけるのではなかろうか。これにつきましては、委員の先生方も非常に関心をお持ちでございまして、労使ともいろいろな観点から御質問をいただいておるわけでございますが、来月になれば答申をいただける、その結果を持って規則改正をやりたいというふうに私ども考えておるところでございます。
  30. 田口一男

    田口委員 いろいろな問題がこれから惹起されるであろうし、しかも現実に失業の不安がある。いま言った就業構造の変化にどう対応するか、いろいろむずかしい問題を労働行政としてやっていただかなくてはならぬのですが、ひとつそれらの声にこたえていただくことを要望いたしまして、質問を終わります。
  31. 稲村利幸

    稲村委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ────◇─────     午後二時五十三分開議
  32. 稲村利幸

    稲村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。和田耕作君。
  33. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 社会労働委員会にまた帰ってきましたので、よろしくお願いを申し上げます。  大臣、最近の雇用状態、かなり私も気になっておるのですけれども、完全失業者の百三十六万から百三十七、八万という数字ですね、この数字をどのように考えたらいいのか。これは日本の戦後初めての高い数字だと私は思うのですけれども、いかがでしょう。
  34. 谷口隆志

    谷口政府委員 先生御案内のように、現在、世界経済の停滞に伴いまして輸出が減少しているとかその他、景気の回復が緩慢になっておりますので、雇用失業情勢につきましては、有効求人倍率が低いまま動いているとか、いま御指摘のような失業者の増加というような事態になっております。  そこで、御指摘のありました失業者の数とか失業率でございますけれども、昨年の四月ごろから大体百三十万人台になりましてずっと推移をいたしておりますし、失業率も五月からですか、二・三%台から最近では二・四%前後で動いております。その間、昨年の六月と十月時点ですか、二・四八%という失業率を記録いたしましたが、この率自体は昭和三十一年の四月以降指標としては最高の失業率でございます。ただ、その後経済の情勢も変わっておりますし、また雇用市場なりあるいは労働力の需給構造も変わっておりますから、その当時とは直接の比較はできない点はございますけれども、現状はかなり厳しい雇用失業情勢が続いておるというふうに認識をいたしております。
  35. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは、最近の五十七年の数字で見ますとでこぼこしておりますね。しておりますが、今年の上期、たとえば五月ごろまでかけて失業者というのはどういう傾向のものなのですか。そして、この失業数は実質上アメリカとかヨーロッパと比べる場合に問題点がいろいろあると思うのですけれども、専門家としてあなた方がごらんになって、この実数はアメリカの失業の実数とどういうふうに比較して考えたらいいのか、そういうことについてお答えいただきたい。
  36. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近の失業者数なり失業率等に関連します失業者の動きでございますが、第二次オイルショック後、五十六年の初めごろからだんだん悪くなってまいりまして、その後、先ほど言いましたような世界的な不況を背景として悪い状況が続いておるわけでございます。  その状況がどういうふうな状況であるかということの認識でございますけれども、先ほどお答えしました失業者数なり失業率は、前回の不況のとき、すなわち五十二、三年ごろに比べますと、失業者数も失業率とも若干悪くなっているというような状況がございます。  しかし、労働力需給の方の求人倍率で見てまいりますと、前回の不況のときが五十二年、五十三年年平均で見まして〇・五六倍でございました。最近の有効求人倍率は昨年の五月から〇・六倍を割りましたけれども、その後大体〇・五八倍から〇・六倍の間で推移をしているということで、前回不況時の労働力需給の悪い状況に近い状態ですけれども、そこまでは落ち込んでいないというようなこともございますし、また最近特に問題になっております構造的な不況に陥っている業種からの離職者、あるいはそういう業種が集積いたしております地域における失業情勢、こういうもの等につきましても、大体前回の不況のときに匹敵するような落ち込みで続いておるということでございまして、そういうことを背景に、たとえば各企業で雇用調整等が行われておりますけれども、現状の雇用調整、だんだん雇用調整を実施する企業の割合がふえてまいりまして、私ども調査では、昨年の十−十二月、それからことしの一−三月で見ますと、大体三〇%ぐらいの事業所が何らかの形で雇用調整を実施されているということでございます。この点は、前回の時点、たとえば五十二年の十−十二月で見ますと三九%ぐらい雇用調整を実施いたしておる事業所がございまして、そこまではいっておりませんけれども、だんだん三〇%の状況も、雇用調整を実施します事業所がふえてきておるというような状況もありますし、また関連して、新規学卒者の就職問題とか、いろいろ問題を抱えながら推移をいたしておるという状況でございます。
  37. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 外国との問題を……。
  38. 谷口隆志

    谷口政府委員 外国の失業率、特にアメリカとか西ドイツ、イギリス等におきましては、イギリスがもう現時点で一三%くらいの失業率ですし、アメリカもこのところ一〇%を超えた失業率が続いております。経済パフォーマンスのいい西ドイツも昨年あたりからずっと高くなってまいりまして、ことしの一月ですか、一〇%になったというような状況もございまして、失業率としてはかなり悪い数字で推移をいたしておりますし、それに比較いたしますと、日本の失業率は悪くなってもいま二・四%程度ということでございますけれども、これはその国々の労働市場なり労働力の需給状況によって事情が異なりますから、端的には比較できないわけでございます。しかし、一般的には、まだ日本の場合は外国に比べて失業率としてはいい状況が続いておるというようなことだろうかと思います。
  39. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これはお願いですけれども、こういうふうに日本の経済も世界の経済の中の日本ということになっておりますから、そして、いろんな面でも先進国の外国との比較ということが重要なファクターになっておりますから、これは比較できるような数字をひとつ御検討いただきたいと思うのですよ。これはいろんな問題があると思いますね。  たとえばアメリカであれば、失業になってしまう人を企業で保留しているという要素もあるでしょうし、婦人労働者の問題もあり、パートタイマーの問題もあるでしょう。いろいろむずかしいと思いますけれども、やはりアメリカなりヨーロッパなりと日本の失業の実態が比較できるような数字を、これくらい問題になっておりますから、ぜひとも労働省として御研究をいただきたい。できぬことはないと思いますよ。ちょっと大臣、いかがでしょう。
  40. 大野明

    大野国務大臣 いま和田先生から御指摘がありましたことは、まことに今日の時期において適切なことだろうと考えております。私も大臣になりましてから、日本の失業率であるとか失業者数、これは把握でき得るのは当然でありますが、諸外国が非常に高い、これはアメリカが一〇%強であるとかイギリスがそうであるとかというようなことは大体御承知だろうと思うのですが、計算、積算の方法とかいろんなことが日本と果たして同じにやっているかどうか、どうも自分にもわからないから、早速そういうようなことから調査しろということを言ってございます。だからそれを、いま先生のおっしゃることは、もう一歩進めて、パートタイマーであるとかそういうようなことまでひとつ把握できるような状態へ持っていけということでございますが、まず前段の一応の総体的な数字を把握できるような体制を整え、それからまた細かいところへ入っていくというような二段階で考えていきたい、こう考えておるところでございます。
  41. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いまの経済的な状態からすると、アメリカの景気も少しは明るい要素もあるという情報もありますし、円はかなり強くなってきている、あるいは石油の値段が下がってきた、いろんないい要素があると思いますね。景気がよくなってくるというのは一番大事なことですけれども、しかし、アメリカの景気にしましても、石油あるいは円が強くなったということについても、このように日本の経済が外国から警戒されておるということになりますと、いままでの自由経済の状態のように日本の経済の伸びをそう期待できるかどうか、これは大変問題だと思うのですね。少なくともかなり時間はかかっていく。したがって、悪くなる見通しになればなおさらですけれども、この失業状態に対してやはり政府としては積極的な手を考えていかなければならない。これは能力再開発とか雇用のための再訓練等の問題もありますけれども、それらのことについて、現在がしばらく続くものとして、対策を大づかみにどのようにお考えになっておられるのか、お示しをいただきたい。
  42. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほど御指摘もありましたし、お答えいたしました最近の雇用失業情勢の動向に対しまして、この雇用状態を改善するためにどういう施策を講じるかということでございますけれども、いずれにしましても、雇用の安定を図るということは国政の中で非常に重要な課題でございますので、まず機動的な経済運営によりまして一定の雇用需要を確保しながら逐次景気の回復を図って、雇用の安定を進めていくということが重要であろうかと思います。そういう経済対策とあわせまして、雇用対策の面におきましては、従来から、失業の予防とかあるいは離職された方々につきましては早期の再就職促進するための施策を充実するとか、また、特にここのところ落ち込んでまいっております構造的に不況に陥っている業種とか、あるいはその集積いたしております地域に対する対策を充実するとか、そういうような施策を中心的な柱といたしまして雇用対策を充実することによりまして、雇用対策の面からもできるだけ雇用の安定が図られるような施策を充実強化していくというような基本的な考え方でございます。
  43. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 その対策と関連しまして、ゆうべ私、中曽根総理のNHKの放送を聞いておりました。雇用の問題についての大事な点だと思って耳に残っているのは、たくましい文化ということと社会福祉政策とはちょっと両立できないんじゃないかという曽野さんの指摘に対して、いやそれは両立できます、しなければいけません、こう答えながら、福祉政策の対象になる人、たとえば身体障害者あるいは心身障害者あるいはまた高年齢者、こういう人たちに、できるだけ自分でできることは自分でできるように援助をしたい、これはできるだけやりたいということを強調しておられましたね。これは私も賛成です。賛成だけれども、つまりそのことは、心身障害者なりあるいは高年齢者なりの、まともに労働の競争市場でなかなか働けない人たちに仕事の機会を与えるということになるわけですね。そうならないと、自助と言っても自助にならない。それを中曽根総理は、とにかくこれは重点として考えていきたいと言うわけですけれども、そういう心配りで、特に高年齢者の失業というのは日本の特徴ですね、この人たちに職を与えるということについて労働大臣、格別のアイデアを持って御検討なさっておられるかどうか。あるいは心身障害者の問題についても、ただお金を出して生活の援助をしてやるというのではなくて、たくましく自分たちができることはやるんだというための仕事を与える、そういうふうなお考えを御検討なさっておられるかどうか。中曽根さんが自分一人の思いつきで言ったとは私は思わないけれども、あるいはまだ労働大臣のところまでこうこうこうと言ってきていないかもわからぬが、そういう問題、どうでしょう。
  44. 大野明

    大野国務大臣 ただいまの御質問、私は昨晩の総理のテレビは拝見しておりませんが、そのような内容であるということはけさ方ちょっと承りました。高齢者の方あるいは身障者方々、これは一口に言えばいわゆる弱者と言えるのかもしれませんが、しかしいずれにしても、高年齢者の方々については、御承知のとおり労働省としても、定年制の延長であるとか、また六十歳台前半層の方々についての雇用促進であるとか、いろいろな形で今日までもやってきております。それについて、その方々雇用促進というか就職あっせん、シルバー人材センターだとか、いろいろな形でやっておりますが、この内容の充実とかこういう問題については、これからまだまだやっていきたいと思っていることもございます。また身障者方々に対しても、これは自立自助といういまお話しがございましたが、やはりその方々社会において職についてりっぱにやっていけるようにするために、職業訓練等を充実してやっていくような措置も講じておりますので、これから先、またでき得る限りそういう方々のために施策を講じていこうと考えておるところでございます。
  45. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 総理は、この問題は一労働省だけでなくて政府全体として取り組んでいきたいということを言っておりましたが、もうそういう具体的な指示はありましたか。
  46. 大野明

    大野国務大臣 まだ衆議院の予算委員会の総括がきのうやっと終わったという段階でもございますので、その方に精いっぱいでそこまではということでございますが、いずれにしても、私もひとつ、逆に総理に対して、一日も早くそういうことを内閣としても真剣に取り組みましょうという話をしておこうと思っておりますから、明らかな指示はまだない、きのうのきょうでもあろうかと思いますので、その点よろしく御理解のほど賜りたいと思います。
  47. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 あの人はああいう癖のある人だと私は前から思うんだけれども、しかし悪いことじゃないです。これは悪いことじゃないから、そういう問題をぜひともやってもらいたい。特に、今後高年齢社会に入っていくというふうな展望のある場合に、そしてまた活力のある福祉社会、私どももそういうふうに言っているのですが、できる仕事をさせていくという機会を拡大していく以外にないと思いますよ、自分の力でということになりますとね。だから、この問題は格別な配慮が必要じゃないですかね。  私は、選挙区で、心身障害者の授職の仕事をしている機関でよく知っている人があるんだけれども、大変苦労なすっている。こういうことをもう少し、これはそれこそ労働省だけでなくて各省が協力すれば私はまだ仕事の機会を与えるということができると思うのですね。そういう問題をひとつぜひとも考えていただきたい。そうでないとまた、中曽根さんがああいうところで言うただけで一つも具体的なことをやってないなんということになりますからね。いいことだからぜひともひとつやっていただきたいと思います。  その次の問題、いま話に出ておりました構造不況業種の問題ですけれども、これは四、五年前の構造不況業種と大分様子が変わってきたような感じがしております。そうしてまた、かなり広い範囲になってきたと思うのですが、通産省の方見えてますか。——いま構造不況業種というのはどれぐらいの業種があって、これが今後どういう見通しになるのか、そのことをひとつ簡単にお答えいただきたい。
  48. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先生指摘くださいましたように、いま大変世界的な不況の中で、一般的に産業の不況の状態という現象がございます。さらに、私どもが構造不況業種と言いますときには、その原因からまず考えまして、先ほど来の第二次石油ショックを経まして原材料とエネルギーコストが急騰いたしました、そしてその影響をもろにかぶっている産業群、これが私どもが言いますところの基礎素材産業でありまして、構造不況業種はほぼこの基礎素材産業群に当たると言っていいかと思います。基礎素材産業群、これは全体の製造業の中で約三割ぐらいのシェアを占めておりますけれども、この中で、基礎素材産業群の中でも、みずから技術開発をしたり、みずから省エネルギー努力によって克服している業種もございます。  私どもがいま基礎素材産業群の中で構造不況だと言っておりますのは、概して八業種挙げております。これは第一にアルミ製錬でございます。それから第二が電炉、第三が石油化学、第四が化学肥料、第五が塩化ビニール、第六が合繊を含む化繊、それから第七が紙パルプ、第八が合金鉄といった業種でございます。これらはエネルギーコストの急騰、それから構造的な需要の低迷と産業組織の不適正、過当競争という状況のもとで製品安、コスト高という状況で、非常に著しい構造的困難に直面しているということでございます。  通産省といたしましては、これら構造的不況業種、基礎素材産業群の活性化のために、まず現在、今国会におきまして特定産業構造改善臨時措置法を提出しているところでございます。これは旧特定不況産業安定化法の一部改正でございますが、基本的には、どうしても経済性を失ってしまうというものに関してはやむを得ず撤退せざるを得ないという撤退の作戦と、それから将来経済合理性を回復し得るという見込みのある部分について活性化を図る。このためには、活性化の設備投資を奨励するあるいは事業提携によってスケールメリットを追求するといったようなさまざまな施策によって、その産業群をより合理的なものにしていきたいと思っております。  私どもの法案の考え方の中には、雇用のなだらかな調整という考え方も入ってございまして、労働省と緊密な連絡をとりつつ、この構造不況業種の活性化のために努力していきたいという状況にございます。  これらの対策、さらには税制、財政投融資、技術開発のための予算を含めまして、一つの総体としての基礎素材産業不況対策というものを現在進めようとしているところでありまして、これらによって、経済環境の好転も期待しておりますけれども、数年後には、規模は縮小いたしますが、かなりの程度経済合理性をもって活性化するというめどを持っている次第でございます。
  49. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この中で、私どもも前から構造不況業種というようなことを言ってきたんですが、石油価格の高騰ということが新しい要素になって、これが今後ずっと下がってくるということになると、やはり下がるにつれてこれらの業界が好転していくというふうに見ていいかどうか。その問題はどうですか。
  50. 田辺俊彦

    ○田辺説明員 先ほどお答え申し上げましたとおり、本来の現下の構造不況の原因は、第二次石油ショックによりますエネルギー価格の急上昇がございます。現在その状況がいまも続いておりまして、各産業はそういう新しい価格体系への適応を進めている、その過程で適応がうまく進まない業種が、いわゆる構造不況業種として要対策業種になっているわけでございます。  現在石油価格低下の動きがございます。これについてはなかなか予測しがたい面がございます。私どもいまここで何ドル低下ということは確言いたしかねますが、仮に幾ばくかの石油価格の低下がありましたときには、もちろんさまざまな状況の変化がありますが、直接的には、この基礎素材産業群のコスト面で多少とも有利な、あるいはプラスの影響が出るということを期待しております。ただしそれは、私が先ほど申し上げました構造改善対策、構造改善臨時措置法による法律推進と相まって、そういう状況が出ますれば、この基礎素材産業あるいは構造不況業種の活性化は一層円滑に進むということで期待をしているわけでございます。
  51. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 この構造不況業種から出てきた失業に対する対策については、労働省ももう長年御苦労なすっていることだと思いますけれども、この段階で、この問題についていままでの政策をもっと強化していこうというような点が何かありますか。
  52. 谷口隆志

    谷口政府委員 ただいま通産省の方から、構造的に不況に陥っている業種の問題について答弁がございましたが、そういう業種なりあるいは業種が集積しております地域につきまして、雇用についてかなり問題が継続いたしておりますので、御案内の現行の特定不況業種離職者臨時措置法、それから特定不況地域離職者臨時措置法がことしの六月三十日で期限切れになるのを契機に、この二つ法律を統合整備して施策の充実を考えていきたいということで、法律案を提案をさしていただいておりますけれども、その中で考えております充実強化の施策でございますが、一つは、業種なり地域の指定につきまして、雇用の動向等に着目して機動的に指定できるようにしようという施策でございます。それから、こういう構造的に不況に陥っております業種では、雇用調整する場合に下請中小企業へそのしわが及びやすい、あるいは早期にそういうところに影響が出てくるということもございますので、下請中小企業への雇用対策について配慮するという点が第二点目でございます。それから第三番目は、こういう関連の雇用問題につきましては、失業された方の事後的対策ということだけではなくて、失業というような状態をなくする前向きの対策を講ずることがより有効であろうという観点から、たとえば離職せざるを得ないような方につきましても、職業転換がしやすくなるように離職前に訓練を実施いたしまして、そういう訓練を実施される場合に助成するとか、あるいはそういう不況の事業主の方が、離職者が出る場合でも、そういう方々のために再就職のあっせんの努力をされまして、そういう方を雇い入れられる事業主に賃金助成をするとか、そういう失業の予防というような点に重点を置いた施策を充実しようということを考えておるわけでございます。
  53. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 全体的な雇用対策の問題は後回しにしまして、もう一つはロボットですね。これはいまコンピューターの問題と並んで、並んでというより一つのものですけれども、いまの技術革新の一番中心に座っていくものですが、イギリスとかヨーロッパ、アメリカの諸国では、このロボットの問題で失業との関係でいろいろ問題が出ているようです。日本の場合は、経済全体の量がぐっと伸びていくという状態でロボットの導入が行われてきたので、ほとんど問題が起こっていない、いまでもまだロボットを採用していこうという空気が強いというふうに思われるのですが、これは経済が停滞してまいりますと急速に状態が変わってくるのではないかと思うのです。その場合に労働省として、低成長の時代あるいは停滞した、よどんだ成長の時代においてロボットの採用というものを積極的に進める政策をとるのか、あるいは抑制する政策をとるのか、現在の段階でいずれなのですか。
  54. 谷口隆志

    谷口政府委員 ロボットなりマイクロエレクトロニクス技術を応用いたしました技術革新というのは、現在非常に早いスピードで進んでおります。先生いま御指摘のように、このマイクロエレクトロニクス技術を応用した技術革新が進んでまいりますと、労働面でいろいろな問題が出てまいります。特に雇用面では、現在のところ失業というような問題にはつながっておりませんけれども、これが急速に進んでいきますと、省力効果ということもございますし、そういう面で雇用への影響等が拡大することも懸念されておりますので、私どもといたしましては、こういうものを導入するに際してどういう問題があるかということで、現在調査研究をいたしておるところでございますが、御質問になりましたこういう技術革新についての考え方につきましては、やはり技術革新の進展というものは経済の活性化とか産業経済の発展という点から見ますと必要なことでもございますので、むしろ問題は、そういうことを進めるに際してやはり関連して摩擦を生ずるとかの問題が出てくるわけでございますので、そういう問題をできるだけ早く克服する、回避するような手だてを講ずるということと、それから、そういう技術革新によって生産性が向上するわけでございますが、そういうものの成果を経済の発展とか福祉の向上に生かしていくことが必要だろうというふうに考えております。基本的には、そういう考え方でこの技術革新に適切に対応をしていく必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  55. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 技術革新全般というよりも、いまのロボットの問題ですが、ロボットの問題に対して、これをまだまだ積極的に活用しながら、起こってくる問題については労使で、あるいはしかるべきところで解決をしていくというお考えと承知していいのですか。
  56. 谷口隆志

    谷口政府委員 御指摘のとおりでございまして、私ども、ロボットの導入に伴いますいろいろな影響とか問題点につきましては、調査研究を深めまして、そういうものをもとに、労使関係者の意思の疎通を十分図りながら対応を進めていく必要があるというふうに考えております。
  57. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私もそういう方向でいいと思うのですが、経済が停滞していく、不景気が続いていくということになりますと、その方向だけではなかなか解決できない問題が出てくるおそれが十分あるのですね。まだどの業界を見てもこの問題が本格的に起こっておるとは思われない。自動車なんかでは、いままで積極的に進めてきたものを待てよという感じがもうすでに出てきていますね。鉄鋼でもそうですね。まあ待てよ、いままでの状態をもう一遍考えてみなければならぬという。いまのこの状態で今後の問題を考える場合にも、これはもっと本気になって調査を進める、そして諸外国の状態もよく把握をするということが僕は非常に必要だと思う。急激に来ますよ、この問題は。四年も五年もかかって来るのではなくて、その時期になれば急激に出てくるという性質のものでしょう。だから、労働省としては、組合の諸君は無論のことですが、学者諸君も含めた一つの研究機関を緊急に——いま何かありますか、そういう問題を研究する機関が。
  58. 谷口隆志

    谷口政府委員 ロボットの導入あるいは先ほども触れましたマイクロエレクトロニクスの技術を応用する技術革新、雇用に限らず、いろいろな問題が出てまいります。労働災害の問題あるいは労使関係にどういう影響があるかとか、そういうこともありますので、労働省としては、昨年からすでに研究に着手をいたしております。  たとえば雇用に関します影響ですと、雇用職業総合研究所というところで、ロボットとかマイクロエレクトロニクス技術の応用をいたしました技術革新の雇用に及ぼす影響ということについて研究いたしまして、八月に中間的な報告をいただいておりまして、その後さらに量的にどういう影響が出てくるかとか、定性的に性質としてどういう影響が出るかとか、あるいは国際的な関連、あるいは中小企業に及ぼす影響とか、非常に多面的な研究も進めておるところでございます。  その他、先ほど申し上げました労働条件、労働災害等に関連する問題、あるいは能力開発に関連する問題、労使関係に関連する問題を含めまして、労働問題に影響する問題につきましては総合的に研究を進めるということで、来年度の重点として引き続き実施するということで進めておりますし、これも先ほどお答えいたしましたが、そういう調査の結果をもとに、労・使・学識経験者、それに国と地方公共団体の代表で構成しております雇用問題政策会議等におきましても、議論の対象として相互に意思疎通を図りながら、問題の克服のために努力をしていくというような態勢をとって進めておるところでございます。
  59. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 これは自動化、つまりオートメーションの段階ではまだ時間を減らしたりする対策があると思うけれども、ロボットというのは人そのものに変わっていくわけですから、これは時間を減らすということではなかなか解決できない面が今後出てまいりますよね。したがって、生産量そのものを調整するなんということになると、いままでなかったような問題が出てくる可能性があるわけですね。そういうことを含めて、ロボットというものは、オートメーションの最後の仕上げみたいなものですから、これはぜひひとつ慎重に、しかも急速に研究をし、しかも労働者側との調整を図っていく必要がある。これは、本格的に進んでいけば全く新しい社会の状態が出てくる可能性すらある、全産業にわたっていきますと。なかなか全産業まで広まっていくにはこれから十年、数十年かかりますから、それまでいろんなことがあるけれども、主要な産業、機械化的な産業は急速に進みますよね。このロボットの問題は、いままで日本の経済がこのように急成長して世界に伸びてきたから問題は起こらなかったけれども、やはりこれはかなり急速に起こってくる問題ですから、ぜひともひとつ、研究に抜かりがないように研究を進めていっていただきたいと思います。  そしてもう一つは、今年度の大学、高校の卒業生の就職の問題、その状況について、去年、おととしとの比較において御説明いただきたいと思います。
  60. 谷口隆志

    谷口政府委員 ことしの三月に卒業されます高校卒あるいは大学卒の方々就職の問題でございますが、最近のこういう景気を反映いたしまして落ち込んでおるわけでございまして、新規高校卒業者についてまず求人動向を見てみますと、昨年の九月末時点で対前年で求人が一四・五%減ということになっておったわけでございます。そういう事態になりましたので、私どもやはりこれはかなり対策を進めていかなければならぬということで、その後、求人の需給調整会議、需要県と供給県を集めまして需給の調整を図るための会議を、これは十八年ぶりに実施したわけでございますが、そういう需給調整会議によりまして地域間の求人の不均衡を全国的に調整するというような活動、それから、特に需要県を中心にしまして積極的な求人開拓等を行うというような指示を行い、就職促進に努めてきたわけでございます。  その結果、求人等も徐々にふえてまいりまして、十二月末現在では対前年比で一一・八%減というところまで回復をいたしてまいりましたし、特に就職決定率で見ますと、十二月末現在が八四・七%、これは前年とほぼ同様の水準になっておるわけでございます。ただ、求人の状況についてもそうでございますが、地域的にアンバランスがございまして、求人の少ない県等におきましては、前年に比べてまだかなり落ち込んでいるというようなところもございますけれども全国的に見ればそういう就職決定状況にまでこぎつけたわけでございます。したがいまして、最終的には求人倍率も、昨年の三月卒業の新規高校卒の者につきましては一・八三倍でございましたのが、一・五倍ぐらいのところでおさまるのではなかろうかと思っておりますけれども、まあこういう全体の景気の落ち込みの状況でございますので、大企業の求人が少なくなっておるとかそういうような点から、そういう質的な問題は若干残っているのじゃなかろうかと思います。  それから、大卒につきましては、求人は大手企業で若干減少いたしましたけれども、中小なり中堅の企業で増加をいたしまして大体昨年並み、あるいは技術系ですと、こういう産業需要を背景として技術関係の求人は昨年より五%程度ふえているとかいうようなこともございましたが、就職決定状況もほぼ前年並みに落ちついているというような状況でございます。
  61. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 いま大学の卒業者で、たとえば浪人が中学校も高等学校にもおるんですけれども、このように不景気が続いてくると、学校を出て仕事がなくて、二年、三年遊ぶというような人たちは出ておりますか。あるいは何らかの形で、どこかで働いておるという形になっておりますか。その問題はどうでしょう。
  62. 谷口隆志

    谷口政府委員 そういうケースがあるような、話としては伺っておりますが、体系的にどの程度卒業後浪人しているとかあるいは定職についてないかというようなところまでは把握をいたしておりませんけれども、景気の停滞とか求人の動向等との関連でそういう者が非常にふえているというようなところまでは至っていないというふうに私どもは思っております。
  63. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 まだそういう人たちのことが社会問題として表面に出てきてない感じも私もしますので、やはりこれは何らかの形で、高年齢者との交代という現象が特に中小企業等の場面で起こっておるんじゃないかと思うんですね。日本の場合に若年層の失業という問題がまだ余り出てない。これからつまり高年齢者との交代という問題が中小企業の場面で起こってくる可能性がある。特に中小企業の場合は高年齢者が多いですね。そういうふうな現象も私、一度調査してみる必要があると思いますよ。大学を出て就職試験を受けて失敗した、就職できなかったという若者が、その後一年、二年のうちにどういうふうに就職のシステムの中に入っておるかということ、こういうこともひとつ少し手をかけて調べをしていく。  つまり私が申し上げたいことは、いまの日本の経済構造からいってもあるいは労働需要の状態からいっても、かなり質的に変化しておるときでしょう。ロボット等の問題もそうです。したがって、いままでの把握した資料では対策がとれない問題が幾つか出ておりはしないかということです。先ほどの日本と外国との失業状態の比較の問題もそうなんです。これは何か様子が違う違うと言いながら、日本は二%でアメリカは一〇%だ、こういうふうなことになっている。これではいけないので、やはり実態的な数字が必要だ。いまの就職できない学生の問題もそうだし、そしてロボットに関係するいろいろな問題もそうです。こうした転換期の状態を把握するために、労働省としてひとつ御努力を賜りたい、このことを特にお願いをしたいと思うんです。大臣、この問題についてひとつ格別の努力をいただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  64. 大野明

    大野国務大臣 確かに考えてみれば、有効求人倍率が〇・六ぐらいのところで、これは平均的なことを言っておるわけでございますけれども、どうも中高年になってくるとそれが数字で言えば〇・一一ぐらいのところでございます。ということは、実際大きな差異がある。そして、外国といってもアメリカあたりの例ですと、アメリカあたりは若者が何というか相当失業しておる。日本の場合は、その気にさえなれば若い人たちは何とか就職の道はあるとかいうようなギャップ、これは確かに研究調査する価値のあることでございまして、先生のおっしゃるようにこれは相当大きな問題でございますから、なかなか調査するといってもむずかしい面もございますけれども、それを何とか努力をして御期待に沿えるようにやってみようと思っております。
  65. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 それでは最後の質問でございますけれども、経済企画庁の方いらっしゃいますね。——いま非常に先の見にくい状態になっておりますし、そして、この四、五年間の中期経済見通しというものも、内容的に実際の状態とは合わなくなってきている。したがって、今後の中期の経済の見通し、見直しという問題をいま経済企画庁を中心に御努力なさっておるわけでありますけれども、その見直しという場合のポイントになっている点と、そして、その中の中期展望における労働力需要の見通し等についてお答えをいただきたい。
  66. 谷弘一

    ○谷説明員 和田先生の御質問に説明をさせていただきます。  まず、全体の計画の進捗でございますが、現行新経済社会七カ年計画は三年半前の五十四年の八月に策定されたわけでございますが、昨年の七月になりまして、経済審議会に対しまして新しい経済計画の策定を諮問したわけでございます。その諮問を受けましてその策定作業を続けてまいりましておったところでございますが、本年の一月の十三日、経済審議会で総理から新たな要請が加わったということでございまして、その中身といたしましては、五年という期間を超えた長期的視野でわが国経済社会の展望と経済運営の指針を示すようにという御指示であったわけでございます。  そういうことで、これまでの、こういう新しい御指示が加わる前に策定の作業、検討をいただきましたその結果につきましては、経過報告という形で公表させていただきまして、これはこれからの策定作業の審議の非常に大切な素材としたいということでございます。  新しい経済計画の策定につきましては、そういうことで今後とも引き続きまして経済審議会の場所で、より長期的な視野でわが国経済社会の展望と経済運営の指針を御検討をいただくということになっております。  それで、いま申しました経済運営の指針あるいは展望をこれから検討いたしますときの素材になりますその経過報告というところで、どういう点をポイントとして挙げているかということをちょっと申し述べさしていただきますと、まず、新しい計画の役割りといたしまして、成長、雇用、物価、それから対外均衡という四つの点につきまして、政策の現実性に裏づけられました展望を示すことで将来の不透明感を払拭したいということ、それから、そういう中で長期的な方向といたしまして、二十一世紀というものを一つ視野に入れて、そのための地固めをするという方向で検討をしなければいけないだろうということで、運営の基本的な柱あるいは課題といたしましては、適度な経済成長のもとで完全雇用を達成し物価の安定を確保するという、非常に抽象的でございますがその点と、それからもう一つ、財政の改革あるいは行政の改革という、この二つの基本的な課題を挙げております。  したがいまして、先生の御質問ございました労働需給等につきましては、今後検討を、作業を進めていくという状況にございます。
  67. 和田耕作

    ○和田(耕)委員 私、ちょっと時間の段取りを間違えまして、もう時間がなくなってしまいました。また次の機会にいたしたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  68. 稲村利幸

    稲村委員長 小沢和秋君。     〔委員長退席、今井委員長代理着席〕
  69. 小沢和秋

    小沢(和)委員 本日は、大臣の所信表明に関連して、賃上げ、減税問題、それから雇用失業問題、労働行政の姿勢、この三つの問題についてお尋ねをしたいと思います。  初めに、まず大臣にお尋ねをしたいと思います。  大臣が所信表明の中で「適切な経済運営により景気の着実な回復を図る」というふうに述べておられるわけですけれども、そうなりますと、政府が昭和五十八年度経済成長率を三・四%と設定し、そのために国民の消費支出の伸び三・九%がどうしても必要だということになっておる、この三・九%を達成するために、国民の圧倒的な部分を占める労働者の賃金をどうしても引き上げなければ、この経済成長率三・四%を確保することはできないのではないかということを私、考えるわけです。ところが、政府の方は、人勧は凍結する、そして民間の方もこれに呼応して、春闘で賃上げの要求が出てもこれを抑えるというようなことを言っておる。これではとても、こういうような経済成長などということは達成することはできないのではないだろうか。労働大臣として、この人勧の凍結あるいはことしの春闘の賃上げ抑制はすべきでないということを、ぜひ積極的に見解を明らかにしていただきたいと思うが、どうか。  それから、これに加えて、減税の方も五年連続して見送られているわけですね。だから、賃上げが伸びないことと減税の見送りと、そのほかにもいろいろ要因はありますけれども、実質的な可処分所得というのがマイナスになってしまっておる。これでは景気の着実な回復などというのはとうてい望むべくもありませんし、だから、どうしても大幅な減税もまた必要だということを考えるが、どうか。  大臣は、労働者の生活について最も関係の深い部門を所管しておられるわけですけれども、閣僚の一人として、こういうような問題について積極的な意見をぜひ閣議でも述べていただきたいという期待も含めて私、質問するけれども、いかがでしょうか。
  70. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、雇用の安定を図るためにも景気の回復ということは当然大切なことでございます。しかしながら、今日のわが国の財政等もこれあり、また同時に、やはり何といってもいまは、わが国の経済を語るということになると、世界経済というかこういうものも大きな関連があって、輸出の減少等によって、なかなかそこら辺からの景気の足取りというものが非常に力強さがないというか、残念なことですが、現況はそんなところであります。  そこへ人勧の問題等いま御質問あったわけでございますが、人勧、これはいずれにいたしましても、未曽有の財政危機のために今回異例な措置として、前内閣において閣議決定して見送ったという経緯がございますから、私としてもやむを得ないのではないかな、こう思っております。  また、春闘の問題がございますが、賃金等につきましては、そのときの国民的視野に立った経済というか経済状態をよく把握して、労使間が話し合って、そして円満に合理的に解決するというのがいままでのパターンでございますから、これについても私からどうのこうのと言うわけにはまいらないし、また同時に減税問題も、九十六国会、前の通常国会で、衆議院の大蔵委員会の中に減税に関する特別小委員会等もつくりまして、るる議論があって、減税をやることについては各党とも御異議がない。それは当然だと思うけれども、しかしながら、やはり財政措置の問題でいろいろあって、これが今日のような状態になっておりまするが、これまた、現在国会において審議もされておるやに承っておりますから、私は、その推移を見てからじゃございませんと何とも申しかねる点がございます。これは、先ほども予算委員会でそのような同じような答弁をしてまいりましたけれども、いずれにしても、いまおっしゃられることについて閣議で発言するかどうか、前の二点については発言すべきことでもないし、また同時に減税問題は国会でやっておりますから、いますぐどうのこうのと言われても、私としてはちょっと困るということです。
  71. 小沢和秋

    小沢(和)委員 労働大臣の答弁としては私はいささかがっかりするのですね。先ほども言いましたように、日本の経済を三・四%成長させていくという上で決定的なかぎを握っているのは、国民の消費購買力をどれだけ高めるかだという点ではみんな認識が一致しているのではないかと思うのです。そうなると、賃上げということを抜きにしてどうやって国内の消費購買力を高めていくのか、大臣としては、そこをお考えになった場合には、もっと前向きの答弁があってしかるべきではないのでしょうか。まして、一閣僚としてというだけじゃなくて、労働問題を扱う主管大臣なんですから、もう一遍、もうちょっと積極的な姿勢を示せないものかどうか、お尋ねします。
  72. 大野明

    大野国務大臣 残念ながら、同じ答弁しかできないと私は考えております。
  73. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いまも申し上げたように、そういう姿勢では、労働大臣としては、いきなり落第点をつけて悪いけれども、及第点はちょっとやれないということを私は最初に申し上げざるを得ないと思います。しかし、このことできょうは余り時間をとりたくないので、先に進みたいと思います。  第二に私がお尋ねしたいのは、雇用失業対策であります。  非農林業に従事している者の数を労働白書で調べてみますと、昭和四十七年から五十六年までの十年間で、三千八百七十九万四千人から四千五百七十二万人に大幅に増加しているわけであります。ところが、その中で製造業だけは、この十年間で千三百二十九万八千人から千二百八十六万三千人に、四十三万五千人減っている。しかし、これもよく見てみますと、三百人以上の大企業で四百八万九千人から三百三十一万一千人にと、七十七万八千人もここでは減っているわけであります。だから、製造業でも中小企業ではこの十年間をとればふえているわけですね。私は、いま雇用失業問題は非常に深刻だと言われておりますけれども、問題は結局ここに特にあるのではないかと思うのです。  いま不況だ不況だと言われていますけれども、不況のもとでも多くの大企業は高利潤を上げ、国際競争力もあり過ぎて、欧米各国と貿易摩擦をしきりに起こしたりしているわけであります。こういうようなところがさらに減量経営で一層人減らしをしながらもっともっともうけようというようなことで、さらに雇用失業問題を深刻にするというようなことを野放しにしておくわけにはいかないのではないだろうか。この点について、労働省として特に取り組んでいることがあればお示し願いたいと思います。
  74. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近の雇用失業情勢が、世界経済の停滞を反映いたしまして輸出の減少等により景気の回復が緩慢なことになっておるとか、それに基づきまして労働力需給が緩和しておるとか、失業者が増加して雇用失業情勢が厳しい状況にあるということは、もう申し上げるまでもないことでございます。  そこで、いま御指摘になりました規模別に見てこの雇用失業情勢の厳しさはどうかということでございますが、御指摘のように、製造業なり建設業で最近雇用者数等が低迷をいたしておりますが、全体的に見ますと、そういう産業別の跛行性はございますけれども、全体で見ますと雇用者は大企業において小規模企業よりも増加しておるということが一つございますのと、それから雇用調整の方法等について見ましても、大体残業を規制するとかあるいは求人の抑制というようなことが中心になりまして、解雇等を伴う雇用調整は少ないというのが現状でございます。これは、大企業の場合は中小企業と比較して多角的な経営が行われておりますし、また関連企業も幅広く存在しておりますので、人員削減等の措置が余儀なくされた場合におきましても、配置転換とか出向とか再就職あっせんということが可能でありますので、労働省としては、こういう情勢のときにはできるだけ失業という状態を回避するということが重要でございますので、そういう失業を経験しない形での雇用調整が行われるように、たとえば雇用調整助成制度の活用というようなことを通じて、事業主等に指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  75. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま首切りというような激しい形での人減らしが行われていないということで、何か余り事態が悪くないような話をされたように思いますけれども、いま私が示しましたように、全体としてここ十年間見れば、製造業全体としても中小企業の部分ではふえておって、大企業の部分で大きく落ち込んでいる。だから、全体として見れば製造業で減っているという数字が出ているわけですよ。だからあなたが言われるように、全体としては大企業——ほかの流通部門とか金融とかそんなものをみんな入れてそこでふえているじゃないかでは、私の質問に対する反論にはならないわけです。製造業の部分でこういうふうにどんどん落ち込んでいっている。そこの部分も、一つ一つの企業を見れば決してもうかってないわけじゃない。七割操業でももうけているとか言って豪語しているような企業がいっぱいあるわけですよ。だから、こういうような企業に対して、もっと社会的に雇用をふやすような責任を真剣に追及すべきではないかという問題意識を持たないのかということをお尋ねしているのです。
  76. 谷口隆志

    谷口政府委員 産業別に見まして製造業が停滞をしておるとかあるいは減少しておるというのは御指摘のとおりだと思いますが、これは世界的な規模での不況というようなこと、それから、そういう中で構造的に不況に落ち込んでいる業種が製造業に多いというようなことから落ち込んでおるということで、私ども十分認識をいたしておるわけでございまして、ただ、個々の企業の経営につきましてはそれぞれ企業の経営者が経営の立場で進めておられるわけでございますけれども雇用対策担当する労働省といたしましては、いろんな生産調整なり雇用調整というものを行わざるを得ない場合においても、解雇というようなあるいは失業というようなことをできるだけ回避して行われるような努力をされる必要があるというようなことを基本的な考え方といたしまして、たとえば雇用調整助成金等につきましては業種指定を機動的に行う。昨年の十一月時点で二百六十職種が、その後現在二百七十四職種までふえてまいりましたが、そういうような雇用調整助成金の業種指定を機動的に行うことによって失業予防を進めていくとか、あるいはまた、現在提案をいたしまして御審議をお願いすることになっております特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法におきましては、失業の予防というような点に重点を置いた施策を充実するというようなことも考えておるわけでございまして、そういうような観点から雇用対策を充実していきたいということで考えておるわけでございます。
  77. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私が特に言いたいと思いますのは、これだけ雇用をふやさなくちゃいかぬということが大きな問題になっているときに、労働時間短縮というような、私は雇用をふやしていく上ではこの観点というのは非常に重要だと思うのですが、ほとんど進んでいない。週休二日制の問題にしてもあるいは残業、有給休暇、どれをとっても非常にはかばかしく進んでいないのではないかというふうに私は考えるわけです。  具体的にお伺いをしたいと思うのですけれども、週休二日制の問題にしても、大企業では週休二日制が非常に広がっているというようなことがよく言われるのですが、労働白書で、五百人以上のこれも製造業をとってみますと、所定内の労働時間というのは、昭和五十年が月平均百五十三・六時間、五十三年が百五十七・四時間、五十六年が百五十六・一時間。週休二日制がずっと進んでいったら、労働時間は所定内についてはずっと減らなければならないはずですけれども、これはひいき目に見ても横ばいというか、むしろ五十年と五十六年を比較したらふえているでしょう。これは私は全くつじつまの合わない話じゃないかと思うのですね。しかも残業が五十年には月九・七時間、五十三年十四・四時間、五十六年十九・五時間と、これは大幅に延びていますね。そうすると総労働時間はふえているわけです。六十年には二千時間というようなことをかけ声をかけているけれども、人を減らして残業までさせて、それで雇用をふやす、少なくとも減らさないというような社会的な責任をこれらの企業は果たしている、そういう姿勢に立っているというふうに、この数字を見て言えるかどうかですね。どうお考えになりますか。
  78. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先生、五十年当時からの労働時間の動向を挙げて御質問をいただいたわけでございますが、わが国の労働時間を全体的に見ますと、高度成長期に大幅に短縮が進んできたわけでございますが、四十九年からの石油ショック、ここでまあ大幅な短縮がさらに落ち込んだというような現象が出ておりまして、その後若干労働時間が延びて、さらに最近は着実なテンポで減少いたしておりますが、最近の経済情勢から見て、ややその傾向にブレーキがかかっているということが言えるのではないかと思います。  そこで、四十九年、五十年当時に総実労働時間が減っているではないか、その後ふえているではないかという点でございますが、これは、このときはいわば石油ショックの直後でございまして、残業時間が極端に減りました。それからもう一つ、所定内労働時間の減少については、これは一時帰休制を採用した企業が非常にたくさんございました。そういうことで、これがこの労働統計にあらわれてまいりまして、先生がおっしゃったような数字になってあらわれてきているわけでございます。その後、景気の回復によりまして、一時帰休制をやっておった企業が通常に返った。それから所定外労働時間につきましても、経済の活況とともに所定外労働時間もふえてきたというようなことで、石油ショックの立ち直り時期の好況期には帰休制が減ってきた、それから所定外労働時間もふえてきたということでもって、一時急激に落ち込んだ総実労働時間が実はふえたということはそのとおりでございますが、これはそのときの極端な現象だったわけでございます。その後は、そういうような極端な現象がなかったわけでございますけれども、第二次石油ショックがあり、あるいは最近の経済の停滞ということも反映しまして、必ずしも総実労働時間の減少は思わしくいっておりませんが、それでも着実に減っているのではなかろうかと思います。  また、週休二日制につきましても、その状況を見てみますと、この点につきましては、先ほどの総実労働時間のような景気の直接のと申しますか、第一次石油ショックの直接の影響はございませんが、四十九年、五十年までかけていわばウナギ登りに上ってきた週休二日制の上昇傾向が、その後それほど急激な上昇ではない、やや鈍化してまいりましたが、それでも上昇傾向を着実にたどっておると言うことはできるのではないかと思います。
  79. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま着実に減っているというようなお説だったようですけれども、私は数字を挙げて申し上げたのですけれども、ふえているんじゃないですか、総実労働時間は。いまのような説明では私は納得することはできません。  それで、景気が停滞をしているから、だから労働時間の短縮、週休二日が進まないのはやむを得ないというような説も、これは私は納得することはできません。いま景気が停滞しているという中でも、諸外国では、日本の製品というのはずば抜けた競争力を持っているというので、あっちでもこっちでも摩擦を起こす。そしてそこでいつも問題になるのは、日本は長期間で低賃金で働いておるではないかという劣悪な労働条件がいつも問題になるわけですね。こういう国際的な摩擦を解消していく上でも、景気がよかろうと悪かろうと、とにかく六十年には二千時間ということを、私はこれはどうしてもやり上げるという強力な指導をすることが必要ではないかと思うのです。諸外国では、景気が悪くなってきても、いわゆるワークシェアリングというか、そういう考え方は強力に進めているのではないですか。そして中小企業も含めて、よその先進国と言われるようなところでは、週休二日制はもうあたりまえになっちゃっているわけでしょう。景気がいいとか悪いとかいうようなことで手かげんをしておったら、結局これはいつになったってできないんじゃないですか。どういうふうにしていつまでにこれをやり上げるという確固とした姿勢がいまこそ労働省に求められているのではないかと思うのですが、その点お伺いしたいと思います。
  80. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 週休二日制につきまして特に御質問、御指摘があったわけでございますが、週休二日制の動向につきましては、先ほど申しましたように、四十九年以降はそれまでに見られるような上昇傾向ではございませんでしたのですが、しかしながらそれ以降も伸びておりまして、たとえば週休二日制の適用を受けている労働者について見た場合に、四十九年はこれが全労働者に対する割合は六七・五%でございましたが、五十六年でとってみますと七四・七%というふうに、これは労働者の数にいたしましても伸びているわけでございますし、また週休二日制を採用している企業の数の割合を見ましても、四十九年当時は四二・八%でございましたが、五十六年におきましては四七・八%というふうになってきております。  そして、その内容を見てみますと、中小企業と大企業では実はかなりの格差があるわけでございまして、この普及状況を見てみますと、労働者に対する適用の割合を見てみますと、千人以上の企業につきましてはほぼ何らかの意味での週休二日制をとっているものが九割、それに対しまして九百九十九人から百人までが六割、それから三十人から九十九人までが四割ということで、中小企業がかなり苦しい状況にあるということが言えるのではないかと思います。  それで、問題の点でございますが、私どもは、労働時間の短縮というのは基本的にはやはり生産性向上の成果の配分ということにあるのではなかろうかと思いますので、現在経済成長の低迷ということで、労働時間の短縮はかなりむずかしい状況にあるということは言えると思います。  ただ、むずかしい話、困難な話をいま申し上げたわけでございますけれども、その中でも、たとえば銀行の月一回の土曜閉店制をやるということが本決まりになりましたわけでございまして、ことしの夏から全金融機関がそろって実施に移されることになるのではなかろうかと思います。私ども去年の初めに全銀協に申し入れたわけでございまして、ある程度時間もたったわけでございますが、実現を見たわけでございます。  こういうような実情とか、それから先ほど申しました中小企業の実情、こういうものも踏まえ、また全体の経済状況も見ながら、着実な指導に努めていきたいというふうに思っております。
  81. 小沢和秋

    小沢(和)委員 残業の問題にしても、さっき数字を挙げたとおり、残業がずっと大企業でもふえていっている。そういう中で、幾ら何でも残業ぐらいは抑えようという動きが出てきたのは結構なんですけれども、ところが、これもまた見てみますと、基準は非常に緩いし穴だらけで、果たしてこれでまたどれだけ実効が上がるか、大変疑問だというふうに言わざるを得ないわけです。三カ月百五十時間というのが一つの目安のようですけれども、大体そんなに残業している労働者が全体のどれくらいおりますか。これはごくわずかでしょう。しかも、残業時間がどうしても長い傾向が出る研究開発とか運転とか建設とか、こういうようなものは除外してある。こんな緩くて穴だらけというのでは、私はほとんど効果が、また数字の面で出てこないのではないかという気がするのですけれども、これはもう、基準を出したばかりですけれども、早速にも見直すことが必要ではないのか、その点お尋ねします。
  82. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 御指摘の三六協定に関する省令の改正、これは本年一月一日から実施に移したわけでございます。この点につきましては、私ども、残業というものにつきましては、日本のような終身雇用制というような場合におきましては、残業時間というものは、外国のように景気が悪くなるとレイオフでもって対応するというようなことができない、そのかわりというような機能も持っておるのではないかということをまず認識しなければいけないというふうに考えておりますが、それを超えてやるような長時間の残業時間については、やはり規制が必要ではなかろうかという観点から、こういう改正を行ったわけでございます。  この改正につきましては、確かにいろんな議論がございました。それで、これを審議していただきました中央労働基準審議会におきましても、労使ともいろんな御意見があったわけでございます。それで、そういうことを経て実行に移しているわけでございますが、しかしながら、この残業時間の規制につきましては、労働組合側からもこれは前進であるということで評価をいただいております。  たとえば同盟の指針を見ましても、大きな意義を持っておるとか、あるいは電機労連の方針を拝見しましても、前進として評価できるとか、あるいは総評の方も公聴会におきまして、私としてもこれは評価に値するとかいうような、それぞれ評価をいただいているわけでございます。  一方、それに関しまして使用者側の方につきましては、いろいろと御意見もあったわけでございます。問題点につきましては、先ほど先生が申されましたような例外も考えたわけでございますが、現在その実施に移っておりまして、私どもとしましては、これが現在実施に移りましてどういう反響であるかということは非常に関心を持っておるわけでございますが、非常に真摯に受けとめていただいているのではなかろうかというふうに見ておるところでございます。
  83. 小沢和秋

    小沢(和)委員 端的に、いまの関係でもう一つだけお伺いしておきます。  そうすると、少なくとも労使が三カ月百五十時間を超えるような協定をして監督署に持ってきた場合には、これは行政指導としてでしょうけれども、こういうのはやり直してきなさいと言って、突っ返すようなことはしてくれるわけでしょうね。
  84. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 これは一週十五時間、一ヵ月五十時間、三カ月百五十時間という御存じの目安がございます。これは性格はやはり目安でございまして、こういうことを決めなさいというふうに言うことは、私は現在の労働基準法の性格からいってできないのではないかと考えるわけでございます。そういう意味で目安という言い方をしているわけでございます。  私どもとしましては、先生が例を挙げられたようなものが仮に出てきた場合にどうするかということでありますれば、これはこういう趣旨の性格ということは説明しますが、これは労使で協定したものだということになれば、私どもとしましても突き返す権限がないわけでございますので、お話し合いによって納得していただけることを期待するということではなかろうかと思います。
  85. 小沢和秋

    小沢(和)委員 結局、詰めたところそういうようなことになってしまうというと、これではきわめて実効性に乏しいのじゃないかと言わざるを得ません。  それから、さっき年休という言葉も言いましたから、年休についても一言お尋ねしておきますけれども、あなた方の方からいただいた数字によると、三十人以上の企業で年休をどれだけ消化しているかという日数を見ると、五十五年が八・八日、これに対して五十六年は八・三日というふうに、一年間に〇・五日も減っているというふうになっているけれども、これは間違いないかどうか、ひとつ確認をいただきたい。  それで、いずれにしても、年休の消化が非常に悪いんですよ。どうしてかということを私などもいろいろな人に聞いてみるのですけれども、年休をとりにくいというのですね。大抵の職場が年休には理由をつけて許可を願い出るんですよ。こんなことはそもそも年休をとる上で必要なことなんですか。こういうことを改めさせなければ年休の消化は進まないのじゃないか。あるいは中には年休の取得状況を一人一人グラフにして工場の中に張り出している。これは私がかつて東洋工業の問題でここで問題にしたこともあるのですよ。こういうようなことをやっていたら、年休を消化したら勤務評定で悪く出るんじゃないかということで、みんなとらなくなることはわかっているじゃないですか。こういうようなことを一つ一つ改めさせることが必要じゃないのでしょうか。監督署に、管内の個々の企業についてそういう実態まで調べて、年休の取得率を上げるように指示をするというような考え方があるかどうかも含めてお尋ねをしたいと思います。
  86. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 御指摘の有給休暇の取得の日数でございますけれども、これはそのとおりの数字でございます。また割合にいたしましても、取得率でございますね、これは六割から五・五割ぐらいに、いま比率としても残念ながら減っているというような状況にあるのではなかろうかというふうに思っております。  それで、いま先生の御指摘の年休のとり方の問題でございますね。許可願いというようなことをやっておるではないかというふうに例をお挙げになったわけでございますが、私どもとしましては、別に許可願いであるからといってこれが直ちに労働基準法違反であるというものではないと思っております。どういうようなやり方でやっていくかということ、これは労使のお話し合いの対象になったとしても、このことをもって直ちにこの労働基準法の三十九条に違反するものであるというふうに言うわけにはいかないと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、年次有給休暇の取得につきましては、これは最近はやや減ってきておるということでございますが、私どもこれから詳細に原因、理由を考える必要があると思いますが、一つはやはり、最近の景気低迷ということも反映しているのではなかろうかというふうにも推察しておるわけでございます。  一方、この年休のとり方につきましては、いま日本の企業の慣行ということを考えてみた場合に、やはり全員がそろって休むというようなやり方が、日本の風土と申しますか、企業慣行に適したやり方ではなかろうかというふうにも思いますので、たとえば夏休みを一斉にとるとか、お盆などを利用してとるとか、あるいはゴールデンウイークにとる、こういうやり方が年休の消化を伸ばすのではなかろうかというふうに考えておりますので、こういう方向での年休の取得を推進していきたいというふうに考えております。(小沢(和)委員「管内の総点検は……」と呼ぶ)  先ほど申し上げましたように、許可願いというようなことにつきましては労働基準法の違反ではないというふうに考えております。
  87. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、だから一つ一つの企業について、どうして年休の一〇〇%消化ができないのかということについて、実態を調べて具体的な指導をするように、各管内でそういう総点検などをやるべきじゃないか。大体、いままであなた方は、この年休については統計も、最近でこそとるようになったけれども、つい何年か前まではこれはとらないぐらい関心がなかったわけでしょう。だから、そういうようなことについて指導をもっとやれということを私はいま言っているわけですよ。そういうことを具体的にやる気はありませんか。
  88. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 いま申し上げたような数字、これは確かに最近とり始めた数字でございますが、これも、私ども関心を持ってきたからやり始めたわけでございます。  それで、いま申し上げましたように、やはり根本的な原因としましては、日本の風土として、個人個人でやるというのはなかなかやりにくいというようなこともあるだろうというふうに考えますので、一斉にとるというようなやり方を進めているわけでございます。
  89. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いや、そんなことは聞いていない。端的に言ってください。管内の総点検をするかと聞いているのですよ。
  90. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 ただいま申し上げましたように、基準法違反という観点からの総点検をいたすつもりはございません。
  91. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、違反でなくても、適切なことかどうかということも含めて指導を強めるということは考えないのですか。いま私が例に挙げたようなことをあなたは違反でないと軽く言われるけれども、そういうような、一々理由を付して許可を願い出るというようなことが、年休の消化にとってあなたはプラスだと考えるのですか。第一、そんなことは法律上必要な要件じゃないでしょう。だから、そういうようなことは、消化をする上で適切ではないから、やめたらどうですか。様式についても、そこまで懇切に指導するようなこともやってもいいんじゃないですか。そういう立場からの指導のために、各企業を具体的に見て点検したらどうだと言っているのですよ。どうですか。
  92. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先ほど申し上げましたように、基準法違反ということでない以上は、点検とかそういうことはやはり私どもとしては差し控えるべきじゃなかろうかと思います。やはり全体としてどういうふうに有給休暇が消化されるかという観点から見まして、先ほども申し上げましたようなやり方がいいのではなかろうかという観点から推進していきたいと思っておるところでございます。
  93. 小沢和秋

    小沢(和)委員 だから、いま私は週休二日、それから残業、年休と三つ挙げてみたのですけれども、どれも本当にほとんど進んでいない。あなた方が考えてみたって、これから何年たったら、そういうようなものについて国際的な水準に達したと言って胸を張れるかということを考えてみたら、どれだって何も見通しはないでしょう、いまのようなやり方でいったら。しかも、それを具体的にもっと前に向けるためにこうしたらどうだという提案についても、いまあなたが答えられたように、それは違反でないからもうそれもできません、さっきの三六協定も届け出があればしようがない、そんなことで本当に進むのですか。進まないでしょう。いま私は三つ例を挙げたけれども、この三つが今後そういうような姿勢で進むと、あなたは確信を持ってここで言い切れますか。
  94. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 私は、労働時間短縮というのは、全体として見れば着実に進んでいるのではないかと思います。  ただ、現在の状況が御存じのように非常に苦しい、厳しい状況でございますので、やはり先ほど例を挙げましたように、中小企業などでは経営が苦しいということもございますので、足踏み的な傾向も見られると思います。その中で、私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、たとえば銀行について土曜閉店制を進めるとか、あるいは三六の協定につきまして省令の改正をやるとか、あるいは特例業種について、例の基準法四十条につきまして、やはり規則について所定の改正をするとか、こういうようなことを私どもとしましては着々とやっているつもりでございます。
  95. 小沢和秋

    小沢(和)委員 私は、そういうような姿勢では今後の改善というのは余り望むことはできないんじゃないかというふうに感じます。  時間もありませんから、第三の労働行政の姿勢の問題で一言お尋ねをしたいと思います。  最近財界が、臨調が民間の活力を活用するために政府は余り介入するなというふうに言っていることに便乗してだと思いますけれども労働省がいろいろ指導をしていることに事ごとに反発をしております。二、三の例を挙げてみても、八一年の九月には経済四団体が、育児休業について企業の労務費がかさむので法制化に反対という申し入れをいたしました。八一年の十一月には日経連が、最低賃金審議会については満場一致制にすべきだという要求をいたしましたし、八二年の三月には日本商工会議所が、定年延長について大臣書簡は行き過ぎだという見解を表明しておる。こういうような労働省指導をはね返すような姿勢に対して労働省がどう対処をするかということは、こういうような問題について、本当に働く人たちを保護するような政策が貫徹できるかどうかという点で非常に重要だと私は思うのですが、労働省としてどう対処してこられたのか、お尋ねをします。
  96. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先ほど先生がお挙げになりました幾つかの例でございますが、たとえば定年延長の問題とか時短の問題などについて、昨年秋、日経連から当時の初村労働大臣に対して申し入れがあったわけでございます。たとえば、いろいろな行政指導をやっておる、メジロ押しではないかというような点とか、あるいは労働時間短縮にしても、現在成長率が落ちているというときにちょっと前提が変わってきたのではないかとか、やり方についてもいろいろな御批判があったわけでございます。  たとえば労働時間短縮というものについて例をとって御説明を申し上げたわけでございますが、その際にも、私どもとしまして、基本的には、この労働時間短縮という点については、社会の大勢と申しますか世界の大勢と申しますか、そういうことも考えてやはり当然やるべきである。そういう点については格別申し入れられた側からも御否定はなかったわけでございます。また、これを行政指導で進めているということについての問題点については、私どもがこういうことをやることににつきましてはそれぞれ所定の審議会、たとえば労働時間短縮につきましては中央労働基準審議会で公労使の一致した了解を得ているところであるというふうなことも申し上げ、そしてまた、行政指導に当たっては別に行き過ぎということはないんだ、そして産業、企業の実情も踏まえながら、もう一つ、行政指導というのはあくまで労使のコンセンサスというものを基本にして、自主的に進めていただくのを基本にしてわれわれは行政指導をやっていくのだということを説明して、われわれとしては、この点につきまして日経連の御理解はいただけたものであるというふうに考えておるわけでございます。  そういうようなことで、日経連の批判があったから矛先が鈍っているのではないかというような御趣旨でございましたが、私どもは決してそういうことはございませんで、労働時間短縮につきましても、従来から考えておりますたとえば労働者の生活の充実とか、あるいは高齢化社会への対応とか、またさらに、考えられる今後の成長率の低下に伴う雇用維持の確保の問題であるとか、こういうふうな観点から進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  97. 小沢和秋

    小沢(和)委員 いま、こういうようなことに対しては毅然と対処をしておるという御趣旨だったように思いますけれども、しかし実際には、労働省の大企業に対する姿勢というのは非常に弱いということを私、さっきから具体的に指摘をしたつもりです。  その点でもう一つこの機会に申し上げたいと思いますのは、五十七年度の基準行政の基本方針で、労働者から法違反があるということで申告をされたような場合にでも、「労使共に自主的に協議・改善し得る能力を有している大企業等については、可能な限り労使間の自主的な解決を促すこととし」というふうに通達して、大企業の中で労働基準法違反の事態が申告されても、事実上これへの是正措置を放棄するような事態になっているのじゃないかということなんです。  もっと具体的に言ってみましょうか。実際にこれは私自身が経験していることですが、私の地元で、新日鉄八幡の労働者の三交代の引き継ぎ作業が時間外に行われておる。これは明らかに本来作業の一部であって、当然時間外の割増し賃金を含む賃金を支払わせてもらいたい、こういう申告をしたわけであります。事実をよくつかむために申告者たちの現場に立ち入って作業の実態を確認してもらいたいということで、私自身もこのことについては何回も申し入れをしたわけですけれども、事実について関係者から聴取をしただけで、しかも一年近く結論を出さずにおいて、ようやく結論を出したと思ったら、その結論というのは、この機会に時間外に行われている引き継ぎ作業の実態を見直して、本来業務とそうでない部分とを分けなさいというような、あいまいな口頭指導を行ったにすぎないのですね。監督官は、もうあなたもよく御存じのとおり、基準法で現場に立ち入る権限を持っている。いままでも、いろいろなこういう申告事案を解決するために、この権限を行使して入っていろいろ調査したりしたことがあるわけですよ。今回、私自身もそう言って何遍もお願いしたけれども、これについてはそういうようなことをしなかったというのはなぜか。私は、先ほどの通達との関係を非常に意識せざるを得ないわけです。しかも、この指導がなされた、ではいつになったらその結論を出してそういうような改善をしてくれるかと言ったら、期限を切っていませんと言うのですね。では急いでくださいということを何遍も言って、結局ことしじゅうぐらいには何とかということが近ごろ言われているけれども、いままででももう一年以上たっているのです。二年も三年も申告事案について引きずっておいて、これで「優先的かつ迅速な処理」というようなことが言えるのか。こういうような状態が、実際に第一線の現場ではこの通達の結果として起こっておるのですよ。だから私は、いまの新日鉄八幡の問題の対処も具体的に改善をしてもらいたいのだけれども、何よりも、こういう大企業については事実上労働省が聖域化してしまって余り介入したがらないような、この前の五十七年の通達そのものの姿勢を改めてもらいたいということをこの機会に強く求めたいと思いますが、いかがですか。
  98. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先生の御指摘のその通達は、いまお読みになった趣旨のことが書かれているわけでございますが、この問題点につきましては、先生、去年の八月に質問主意書をお出しになりまして、大企業に対する指導の問題、それから新日鉄八幡の問題につきましてそれぞれ私どもからお答えしておりますので、私どもの基本的な考え方についてはここで繰り返すつもりはございませんけれども、私ども考え方といたしましては、別に大企業を聖域化しているとかあるいは迎合しているとかという気持ちは全くございませんで、労働条件の改善が中小企業とか零細企業の分野でおくれておりますので、こういうところを重点の対象として行政の運営を進めるというのが従来からの考え方でございまして、私どもは特にこの考え方をこの際ここで変える必要はないと思っております。  それから、新日鉄の八幡の指導につきましては、先ほど先生からお話がありましたように、去年の九月に会社に対して申し入れをしたわけでございます。私どもの理解といたしましては、現在、会社は、問題になりました引き継ぎ残業等の問題につきまして実態の調査を進めておりまして、改善策も検討されつつあるというふうに承知をいたしております。
  99. 小沢和秋

    小沢(和)委員 そうすると、いまの答弁の趣旨というのは、大企業であろうと中小企業であろうと、申告がなされた場合には同じように考えて扱うという趣旨だというふうに私は理解しておきますが、それでいいですか。
  100. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先ほど申し上げましたように、中小企業とか零細企業におきましては労働条件の改善がおくれておりますので、それで、その監督指導の行政に当たりましては、ここを重点分野として行政を運営するということで、このような基本的な考え方に沿ってやっておるのでございまして、仮に法違反があるということがはっきりすれば、その法違反の問題は、大企業であろうと中小企業であろうとこれはまた全く関係のない話でございますが、行政運営の指針といたしまして、中小零細の企業分野を重点にして行政を進めるという考え方でございまして、これは従来の考え方でもございますし、またこれを変える必要は私どもはないというふうに考えておるわけでございます。
  101. 小沢和秋

    小沢(和)委員 では、時間が来たようですから、最後に一つだけ大臣質問をいたしたいと思うのです。  いま臨調の中で、これは部会の段階だと思いますけれども、婦人少年局をつぶしてしまえとか、労働基準監督署あるいは安定所を減らせとか、盛んに議論がなされておるようであります。これらの部分は大変国民のために重大な役割りを果たしておりますし、先ほども監督官の手が足りないではないかというような議論がなされておりましたけれども、私どもは一層これは充実すべき分野であるというふうに考えております。こういうような臨調の中で行われている議論というのははなはだ暴論ではないかというふうに考えますけれども、この機会に大臣として、こういうような点について明確な見解を述べていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
  102. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、現在臨調において御審議中でございますから、私から明確な答弁をと言われても差しさわりのある部分もございます。労働省というものにつきましてはいま一生懸命やっているじゃないかという激励も受けたような気がいたし、ありがたいと思っておりますけれども、いずれにしても、労働者の職業の確保であるとか、あるいはまた労働条件の向上であるとか、労働者の福祉の増進であるとか、そのときそのときの社会情勢経済情勢、また行政需要等々に適応してやってまいりました。そういうような情勢の中で、またこれから高齢化社会であるとか技術革新によるいろいろな問題等もございまして、ますますやらなければならないということはもう当然のことでありますから、臨調に対して賛成とか反対とかということは、きょうの時点ではちょっと、いま御審議中でございますけれども、私としては今後とも、より一層労働者諸君のために一生懸命労働省はやっていくのだという決意だけははっきり申し上げておきます。
  103. 小沢和秋

    小沢(和)委員 終わります。      ────◇─────
  104. 今井勇

    今井委員長代理 内閣提出特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案並びに駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案、以上の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。大野労働大臣。     ─────────────  特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案  駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  105. 大野明

    大野国務大臣 ただいま議題となりました特定不況業種特定不況地域関係労働者雇用の安定に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  わが国におきましては、内外の厳しい経済情勢を反映して、雇用失業情勢にも厳しいものがあります。とりわけ、二度にわたる石油危機を背景とした原材料、エネルギーコストの上昇、発展途上国の追い上げ等最近における経済的事情の変化に伴って、アルミニウム製錬業等の素材産業を中心として構造不況に陥っている業種が少なくありません。これらの構造不況業種におきましては、当該業種の労働者はもちろんのこと、関連下請企業の労働者やこれらの業種が集積している地域全体の雇用失業情勢に深刻な影響を与えているところであり、これら関係労働者の失業の予防を中心とした雇用の安定のための施策を積極的に進めていくことが緊急の課題となっております。  政府といたしましては、このような課題に適切に対処していくため、本年六月三十日に有効期限等が到来する特定不況業種離職者臨時措置法及び特定不況地域離職者臨時措置法を統合整備し、これら関係労働者の雇用の安定のための施策を一層推進することとし、そのための案を関係審議会に諮問して、その答申に基づきこの法律案を作成し、ここに提出した次第であります。  次にこの法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一に、この法律対象とする特定不況業種とは、従来、国の施策により事業規模の縮小等が行われる業種に限定されていた点を改め、内外の経済的事情の著しい変化により、その製品や役務の供給能力が過剰となっており、その状態が長期にわたって継続することが見込まれるため、事業規模の縮小等を余儀なくされ、これに伴い雇用量が相当程度に減少しており、または減少するおそれがある業種を言うこととしており、また、特定不況地域とは、特定不況業種に属する事業所が相当程度集積しており、これらの事業所の事業規模の縮小等に伴い雇用情勢が悪化し、または悪化するおそれのある地域をいうこととしております。  なお、特定不況業種及び特定不況地域の指定は、期間を付して行うこととしております。  第二に、従来特定不況業種について職業紹介等に関する計画を作成することとしていた点を改め、特に必要があると認められる特定不況業種または特定不況地域について、失業の予防、再就職促進のための措置推進に資するため、新たに雇用の安定に関する計画を作成することとしております。  第三に、特定不況地域の雇用情勢の一層の悪化を防止するために必要があるときは、相当数の離職者を発生させることとなる事業規模の縮小等を行おうとする特定不況業種事業主に対して、労働大臣雇用の安定のための措置を講ずることを要請することができることとしております。  第四に、失業の予防、雇用機会の増大等を図るため、離職予定者に対する教育訓練の実施その他雇用の安定に必要な措置を講ずる事業主に対して、雇用保険法に基づく雇用安定事業または雇用改善事業として必要な助成及び援助を行うこととしております。  第五に、関連下請中小企業につきましては、親事業所に先行して雇用調整が実施されるという実態にかんがみ、特定不況業種として指定される前の一定期間内に離職した者に対しても求職手帳を発給し、この法律に基づく援護措置を講じることとしております。  以上のほか、現行の離職者二法に基づいて講じてきた特定不況業種事業主による再就職援助等計画の作成及びその公共職業安定所長による認定、特定不況業種離職者に対する求職手帳の発給、就職指導の実施及び職業転換給付金の支給、四十歳以上の手帳所持者及び特定不況地域離職者に対する雇用保険の個別延長給付の特例的な支給等の施策は、継続して実施することとしております。  なお、この法律は、本年七月一日から施行し、五年後の昭和六十三年六月三十日までに廃止することとしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、それぞれ、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づき、特別な就職指導の実施、職業転換給付金の支給等各般の施策を講ずることにより、その再就職促進生活の安定に努めてきたところでありますが、これら二法は、前者が本年五月十六日限りで、また、後者が本年六月三十日限りで失効することとなっております。  しかしながら、駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、今後においても、国際情勢の変化等に伴い、なおその発生が予想されますので、政府といたしましては、現行の駐留軍関係離職者対策及び漁業離職者対策を今後とも引き続き実施する必要があると考え、そのための案を中央職業安定審議会にお諮りして、その答申に基づき、この法律案を作成し、提案した次第であります。  次に、その内容を御説明申し上げます。  第一に、駐留軍関係離職者等臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十三年五月十六日までとすることであります。  第二に、国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十三年六月三十日までとすることであります。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  106. 今井勇

    今井委員長代理 これにて両案の趣旨説明は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会