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1983-03-25 第98回国会 衆議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年三月二十五日(金曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 古屋  亨君    理事 東家 嘉幸君 理事 中川 秀直君    理事 中村 弘海君 理事 井上 一成君    理事 新村 勝雄君 理事 春田 重昭君    理事 神田  厚君       伊東 正義君    植竹 繁雄君       小坂徳三郎君    桜井  新君       近岡理一郎君    高田 富之君       宮田 早苗君    中路 雅弘君       楢崎弥之助君  出席国務大臣         労 働 大 臣 大野  明君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働大臣官房会         計課長     高橋 伸治君         労働大臣官房審         議官      小粥 義朗君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省労働基準         局安全衛生部長 林部  弘君         労働省婦人少年         局長      赤松 良子君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       増田 雅一君         労働省職業訓練         局長      北村 孝生君  委員外出席者         内閣審議官   椎谷  正君         総理府人事局参         事官      熊澤 二郎君         大蔵省主計局司         計課長     加藤 剛一君         大蔵省銀行局中         小金融課長   日吉  章君         文部省社会教育         局社会教育課長 石井 久夫君         建設省住宅局民         間住宅課長   鹿島 尚武君         会計検査院事務         総局第三局長  坂上 剛之君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    田中 清定君         参  考  人         (雇用促進事業         団理事)    橋爪  達君         決算委員会調査         室長      石川 健一君     ───────────── 委員異動 三月二十五日  辞任         補欠選任   三浦  久君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     三浦  久君 同日  理事津島雄二君同月二十三日委員辞任につき、  その補欠として近藤元次君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和五十四年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十四年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十四年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十四年度政府関係機関決算書  昭和五十四年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十四年度国有財産無償貸付状況計算書  昭和五十五年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十五年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十五年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十五年度政府関係機関決算書  昭和五十五年度国有財産増減及び現在額総計算書  昭和五十五年度国有財産無償貸付状況計算書  (労働省所管)      ────◇─────
  2. 古屋亨

    古屋委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。これよりその補欠選任を行いたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、近藤元次君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 古屋亨

    古屋委員長 次に、昭和五十四年度決算外二件及び昭和五十五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、労働省所管について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として雇用促進事業団理事田中清定君、橋爪達君、以上両君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 古屋亨

    古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  6. 古屋亨

    古屋委員長 それでは、まず、労働大臣から概要説明を求めます。大野労働大臣
  7. 大野明

    大野国務大臣 労働省所管昭和五十四年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも四千八百五十六億五千二百八十九万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額四千五百四十一億七百六十万円余、不用額三百十五億四千五百二十九万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数六百四十四カ所、事業数二千三百六十三、失業者吸収人員一日平均八万一千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、雇用保険国庫負担金等であります。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労働保険特別会計法に基づいて昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆九百四十六億九千二十五万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆百四十億六百十二万円余でありまして、差し引き八百六億八千四百十三万円余の減となっております。これは、徴収勘定からの受け入れ予定より少なかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆九百七十八億六千二百二万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆九百四十六億九千二十五万円余、前年度繰越額三十一億七千百七十七万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額七千十億五千三百七十二万円余、翌年度繰越額八億八千六百一万円余、不用額三千九百五十九億二千二百二十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  保険給付支払い件数は五百二十五万三千件余、支払い金額は五千二百一億三千八十三万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、支払い備金等に充てる経費であります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆五千五百四十億八千九百八十二万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆二千二百億三千九百四十八万円余でありまして、差し引き三千三百四十億五千三十三万円余の減となっております。これは、失業給付金等不用額を生じたこと等により、積立金からの受け入れを必要としなかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆五千五百五十六億九千四百十四万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆五千五百四十億八千九百八十二万円余、前年度繰越額十六億四百三十二万円であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額一兆八百三十一億二千百六十七万円余、翌年度繰越額七億二千九百八十九万円余、不用額四千七百十八億四千二百五十七万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等事業に必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇い労働求職者給付月平均受給者人員は、一般求職者給付六十四万四千人余、日雇い労働求職者給付十二万六千人余、また、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付受給者数は、短期雇用特例求職者給付七十一万五千人余、就職促進給付五万四千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付六千九百七十四億三千七十四万円余、日雇い労働求職者給付二百九十二億五千二百九十二万円余、短期雇用特例求職者給付一千二百七十四億百八万円余、就職促進給付五十九億三千六百五十七万円余となっております。  また、雇用安定事業等事業に係る支出実績は、支出済み歳出額一千七百六十二億四千五百五万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、失業給付金等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆七千五百三十一億六千八十二万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆五千八百五十八億三千三百二十一万円余でありまして、差し引き一千六百七十三億二千七百六十万円余の減となっております。これは、賃金上昇率予定より低かったこと等により、保険料収入予定を下回ったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも一兆七千五百三十一億六千八十二万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額一兆五千八百三十七億八千五百万円余、不用額一千六百九十三億七千五百八十一万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰り入れに必要な経費であります。  この事業実績概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数百七十六万三千余、労災保険適用労働者敬三千七十五万九千人余、雇用保険適用事業場数百二十二万九千余、一般雇用保険適用労働者数二千四百四十四万人余、日雇い雇用保険適用労働者数十七万三千人余、となっております。  なお、不用額の主なものは、他勘定繰り入れに必要な経費であります。  最後に、石炭及び石油対策特別会計のうち、労働省所掌分炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額及び歳出予算額とも百七十三億二千五十九万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額百六十二億三千三百六十三万円余、不用額十億八千六百九十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業実績概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数四十三カ所、事業数二百、就労人員延べ六十四万二千人余となっております。  次に、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十八カ所、事業数百七十七、就労人員延べ七十三万四千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和五十四年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  なお、昭和五十四年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  次に、労働省所管昭和五十五年度決算について、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳出決算について申し上げます。  歳出予算現額は四千九百二十四億一千九百三十八万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額四千九百二十二億九千八十二万円余、予備費使用額一億二千八百五十五万円余となっております。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額四千三百三十六億六千三百七十七万円余、不用額五百八十七億五千五百六十万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものについて申し上げますと、雇用保険国庫負担金及び失業対策事業費等であります。  これらの経費は、雇用保険法に基づく求職者給付等に要する費用の一部負担及び緊急失業対策法に基づき実施した失業対策事業に要したもの等でありますが、このうち失業対策事業の主な実績は、事業主体数六百四十一カ所、事業数二千二百七十六、失業者吸収人員一日平均七万六千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、雇用保険国庫負担金等であります。  次に、特別会計決算について申し上げます。  まず、労働保険特別会計について申し上げます。  この会計は、労働保険特別会計法に基づいて昭和四十七年度に設置されたものであり、労災勘定雇用勘定及び徴収勘定に区分されております。  初めに労災勘定について申し上げます。  歳入につきましては、歳入予算額一兆二千五十七億二千二百五十一万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆一千五百五十七億三千七百七十三万円余でありまして、差し引き四百九十九億八千四百七十七万円余の減となっております。  これは、徴収勘定からの受け入れ予定より少なかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆二千六十六億八百五十三万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆二千五十七億二千二百五十一万円余、前年度繰越額八億八千六百一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額七千六百七十億五千四百五十七万円余、翌年度繰越額十一億六千三百七万円余、不用額四千三百八十三億九千八十八万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、労働者災害補償保険法に基づく保険給付に必要な経費及び労働福祉事業に必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  保険給付支払い件数は五百四十一万四千件余、支払い金額は五千六百七十二億八千八百四十四万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、支払い備金等に充てる経費であります。  次に、雇用勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆五千八百二十四億八千九十六万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆三千百二十億二千三百五十三万円余でありまして、差し引き二千七百四億五千七百四十二万円余の減となっております。これは、失業給付金等不用額を生じたこと等により積立金からの受け入れを必要としなかったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額一兆五千八百三十二億一千八十五万円余でありまして、その内訳は、歳出予算額一兆五千八百二十四億八千九十六万円余、前年度繰越額七億二千九百八十九万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額一兆二千五百八十億七千九百六十一万円余、翌年度繰越額七億一千六百九十五万余、不用額三千二百四十四億一千四百二十七万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、雇用保険法に基づく失業給付に必要な経費及び雇用安定事業等事業に必要な経費等であります。  この事業実績概要について申し上げます。  失業給付のうち、一般求職者給付及び日雇い労働求職者給付月平均受給者人員は、一般求職者給付六十六万二千人余、日雇い労働求職者給付十二万五千人余、また、短期雇用特例求職者給付及び就職促進給付受給者数は、短期雇用特例求職者給付七十三万三千人余、就職促進給付四万九千人余でありまして、支給金額は、一般求職者給付七千七百四十五億九千三百万円余、日雇い労働求職者給付三百九億二千八百八十七万円余、短期雇用特例求職者給付一千四百四十億五千二百六十五万円余、就職促進給付五十八億六千百三十二万円余となっております。  また、雇用安定事業等事業に係る支出実績は、支出済み歳出額二千五百四十七億二百二十万円余となっております。  なお、不用額の主なものは、失業給付金等であります。  次に、徴収勘定について申し上げます。  まず、歳入につきましては、歳入予算額一兆九千九百三十億九千五百四十万円余に対しまして、収納済み歳入額一兆八千七百七十二億三千九百七十一万円余でありまして、差し引き一千百五十八億五千五百六十八万円余の減となっております。これは、賃金上昇率予定より低かったこと等により、保険料収入予定を下回ったこと等によるものであります。  次に、歳出につきましては、歳出予算現額及び歳出予算額とも一兆九千九百三十億九千五百四十万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額一兆八千七百四十億四千九百三十九万円余、不用額一千百九十億四千六百万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものは、労災勘定及び雇用勘定への繰り入れに必要な経費であります。  この事業実績概要について申し上げますと、労災保険適用事業場数百八十三万九千余、労災保険適用労働者数三千百八十三万九千人余、雇用保険適用事業場数百二十八万五千余、一般雇用保険適用労働者数二千四百九十六万人余、日雇い雇用保険適用労働者数十六万七千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、他勘定繰り入れに必要な経費であります。  最後に、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計のうち、労働省所掌分炭鉱離職者援護対策費及び産炭地域開発雇用対策費歳出決算について申し上げます。  歳出予算顔額及び歳出予算額とも百八十二億四千百八十一万円余であります。  この歳出予算現額に対しまして、支出済み歳出額百七十億三千九百三十五万円余、不用額十二億二百四十五万円余で決算を結了いたしました。  支出済み歳出額の主なものについて申し上げますと、炭鉱離職者緊急就労対策事業に必要な経費及び産炭地域開発就労事業に必要な経費であります。  これらの事業実績概要について申し上げます。  まず、炭鉱離職者緊急就労対策事業につきましては、事業主体数四十二カ所、事業数百九十四、就労人員延べ六十二万一千人余となっております。  次に、産炭地域開発就労事業につきましては、事業主体数四十九カ所、事業数百七十、就労人員延べ七十二万六千人余となっております。  なお、不用額の主なものは、炭鉱離職者援護対策費であります。  以上が労働省所管に属する昭和五十五年度一般会計及び特別会計決算概要であります。  なお、昭和五十五年度決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりでありまして、まことに遺憾に存じております。  これらの指摘事項につきましては、鋭意改善に努め、今後このような御指摘を受けることのないよう一層努力をいたしたいと存じます。  以上をもちまして、労働省所管に属する一般会計及び特別会計決算説明を終わります。  よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  8. 古屋亨

  9. 坂上剛之

    坂上会計検査院説明員 昭和五十四年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項四件であります。  検査報告番号一〇七号は、架空賃金支払い、これを別途に経理していたものであります。  愛知及び広島両労働基準局では、労働者災害補償保険給付等に関する業務のうち簡易な事務については、臨時職員を雇用して行っておりますが、昭和五十三、五十四両年度において臨時職員出勤簿賃金支給調書等関係書類を作為し、一部臨時職員を雇用した事実がないのに雇用したことにいたしまして架空支払いにより資金を捻出し、これらを別途に経理し、部内外の会食の経費臨時職員に対する通勤費等に充てていたものであります。  また、検査報告番号一〇八号は、労働保険保険料徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。  労働保険労働者災害補償保険及び雇用保険を総称するものでありますが、この保険事業に加入している事業主保険料を申告納付するに当たりまして、保険料算定基礎となっている賃金総額が事実と相違しているなどにより、徴収額過不足があったものであります。  また、検査報告番号一〇九号は、雇用保険失業給付金支給が適正でなかったものでありまして、雇用保険事業における失業給付金受給者が再就職しておりますのに、引き続き失業給付金のうちの基本手当等支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  また、検査報告番号一一〇号は、雇用保険中高年齢者雇用開発給付金支給が適正でなかったものであります。  この給付金雇用安定事業一環として、中高年齢者雇用機会増大を図るため、一定条件のもとに、中高年齢者を雇用した事業主に対してその中高年齢者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、その支給要件を欠いておりましたのに給付金支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  引き続きまして、昭和五十五年度労働省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明いたします。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三件であります。  検査報告番号一二七号は、労働保険保険料徴収に当たり、徴収額過不足があったものであります。  労働保険労働者災害補償保険及び雇用保険を総称するものでありますが、この保険事業に加入している事業主保険料を申告納付するに当たりまして、保険料算定基礎となっている賃金総額が事実と相違しているなどにより、徴収額過不足があったものであります。  また、検査報告番号一二八号は、雇用保険失業給付金支給が適正でなかったものでありまして、雇用保険事業における失業給付金受給者が再就職しておりますのに、引き続き失業給付金のうちの基本手当等支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  また、検査報告番号一二九号は、雇用保険中高年齢者雇用開発給付金支給が適正でなかったものであります。  この給付金雇用安定事業一環として、中高年齢者雇用機会増大を図るため、一定条件のもとに、中高年齢者を雇用した事業主に対してその中高年齢者に支払った賃金の一部を助成するものでありますが、その支給要件を欠いておりましたのに給付金支給しており、給付の適正を欠いていたものであります。  以上、簡単でございますが説明を終わります。
  10. 古屋亨

    古屋委員長 これにて説明の聴取を終わります。     ─────────────
  11. 古屋亨

    古屋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上一成君。
  12. 井上一成

    井上(一)委員 私はまず最初に、臨調の答申を受けた行革、その行革に伴って削減される労働者、特にそのしわ寄せが高齢労働者に加わるのではないだろうか、この点についての大臣の見解。  さらには人勧が持つ意味。本来、人事院勧告は制度的に当然遵守すべきものだ。ところが、三回にわたっての給与関係閣僚会議によって凍結が決定されたわけでありますが、もともと労働基本権制約代償措置の一つとして人勧があるわけであります。したがって、人勧凍結を解除しないということは、労働基本権を認めた憲法二十八条の精神に反するのではないか、労働大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  13. 谷口隆志

    谷口政府委員 最初に、臨調の答申に基づきまして職員の退職等の問題がどうかという点でございます。  もう先生御案内のとおりでございますけれども、さきに出されました臨時行政調査会の答申におきましては、公務員の定員管理につきまして、当分の間採用者を一定数以下に抑える、または離職者数の一定割合以下とする、あるいは配置転換職員を受け入れる等の措置を講じ、新規採用を抑制することにより、定員の縮減を行うということが提言されているわけでございます。  そういう関係から、臨調答申によります行政改革が進むことによりまして高年齢の公務員が直ちに排除されて出てこられるということは、一般的には考えがたいところでございますし、また私ども労働行政の立場から見ましても、そういう方々が行政改革によって解雇されるということは望ましくないわけでございまして、そういうことを期待いたしておるわけでございます。たとえば国家公務員の場合ですと、五十五年ごろからでしたか、省庁間の配転等を進めることによりまして相互の調整を図るというようなこともとってきておるわけでございまして、そういう意味からいきましたら、先ほど申し上げましたように、高年齢の公務員が排除されるということはないような形で進められることを期待しておるわけでございます。  ただ、そういう状況の中でももし万一高年齢の公務員の方々が排除されるというようなことが出てくるといたしましたら、私ども職業安定機関といたしましては、その関係の国なり地方公共団体と十分連携をとりまして、やはり就職あっせんにつきまして最大の努力をしなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  14. 大野明

    大野国務大臣 本年度人事院勧告を見送ったということは、国家的な未曾有の財政危機のためにやむを得ない措置であった。しかしながら、労働基本権の制約の代償措置の一つである人事院勧告制度でございますので、今後とも政府としてはこれを維持尊重していくということは変わりございません。本年度についてはまことに遺憾であり、まことに残念なことだと思っております。
  15. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私は、臨調では年金の支給開始年齢の引き上げについて答申されているわけですが、労働省の見解を聞いておきたいと思います。
  16. 谷口隆志

    谷口政府委員 ただいま御指摘のございましたとおり、臨調答申におきましては支給開始年齢の問題が取り上げられておるわけでございます。私どもといたしましては、雇用と年金の関係につきましては、基本的には両者が相まちまして高年齢者に生活の不安を招くことのないようにするということが基本であるというふうに考えております。こういう観点から、年金の支給開始年齢の引き上げの問題につきましては、高年齢者の雇用の動向を勘案しながら検討されることが当然必要だという考え方でございます。  そういう観点から、厚生省とはすでにかねてから、局長クラスとか課長クラスとか、あるいは大臣も出られるとかいうような形、いろいろな形で連携をとりながらそういう問題の検討をいたしておるところでございます。
  17. 井上一成

    井上(一)委員 両省庁間の協議ということは非常に大事なことだと思います。  僕はここで、具体的に大臣に、厚生年金と共済年金との乖離、たとえば公立大学から私立大学へ就職した場合には年金が受給できる、私立大学から私立大学へ再就職をしてもこれは年金が不受給なんですね。こういう点についての年金受給の問題について、労働大臣としての見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  18. 谷口隆志

    谷口政府委員 いま御指摘のございました年金なり共済組合のそれぞれの制度間の不均衡の問題につきましては、直接には厚生省なりそれぞれの共済制度あるいは社会保障制度を担当される省庁の問題でございまして、私どももその点まで詳しく詰めた検討をいたしておりませんけれども、やはりそれぞれそれらの制度が設けられているいろいろな背景もありまして、いままでの経緯等も考えますと、この不均衡の問題というものの是正等は非常にむずかしいことだろうと存じますけれども、臨調答申にも関連した問題について触れられておりますので、そういう方針に基づいて進められていくのであろうというふうに考えておるわけでございます。
  19. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、臨調答申の中にもございますので、私どもとしては前向きの姿勢で考えていきたい。しかしながら、いま局長から答弁ございましたように、その経緯等もございますので、これらの関係省庁との問題もございますから、これから進めていきたいと思っております。
  20. 井上一成

    井上(一)委員 余り労働大臣はこの問題については認識をお持ちでないようにいまの答弁で理解するのですが、こういう、公平を欠くと言うのでしょうか、そういう制度の見直しというものは、過去の経緯がいかにあろうとも、やはりそれこそいま見直していくべきだと思うのです。それは年金受給を断ち切れというそういう発想で私は質問をしているのじゃなく、むしろ、年金受給の資格を持ちながら年金が受給できない実態についてやはり考えていくべきである。もちろん厚生省と十分な協議をしていかなければいけないと思うわけです。  そこで、労働大臣として、雇用の創出、いろいろな意味で雇用拡大を図っていっている労働省側として、私は、主管大臣としての認識、お考えを聞きたいわけです。  また、もう一度、やはり公平に年金が受給できるように前向きに取り組んでいただけるというお考えであろうと思いますが、改めてここで念を押しておきたいと思います。
  21. 大野明

    大野国務大臣 先生御指摘の点はごもっともでございますし、これはできる限りそうあるべきものと考えておりますが、いずれにいたしましても、労働省という立場でこれをいま直接明確なお答えをするわけにいきませんが、これはいま厚生大臣が年金担当大臣ということでございますので、私も十二分にその精神にのっとってやっていこうという決意でございます。
  22. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私は、ここで高齢化社会における現在の社会情勢の中で高齢者雇用についての取り組みを大臣に伺っておきます。
  23. 大野明

    大野国務大臣 わが国は本当に類を見ない高齢者社会への推移というものが非常に早く来る、また、中高年齢者が社会の構成として一番大きくなっていくというような時代を迎えるわけでございますから、労働省としてもやはり中高年の雇用対策というものに重点を置いていま施策を実行している段階であり、また今後やらなければならないというようなことで、省内にもプロジェクトチームを設けましてやっておるところでございます。  御承知のとおり、六十歳定年制の実現のために今日まで努力もいたしておりますし、いまも鋭意推進、促進するべく努力の最中でありますが、それと同時に、やはり何といっても六十蔵前半層の方々、こういう人たちの企業内における雇用の延長であるとか、また、六十五歳とかそういう年になってくると、これは個人個人の健康の問題もあるでしょうし、個々の方々の就業のニーズというものは変わってまいりますので、そういうような点もいろいろ含めていま鋭意検討いたしておりますが、いずれにしても、シルバー人材センターというようなものを大いに活用し、またこれを普及していくということに努めておるところでございます。
  24. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、私は、一月の完全失業率が二・七二%、完全失業者数が百六十二万人、わが国の統計史上最悪の状態であるということが総理府による労働力調査で明らかになったわけです。この状況を労働大臣はどのように認識し、どう受けとめていらっしゃるか、お聞きをしたいと思います。
  25. 大野明

    大野国務大臣 労働力調査によりまして二・七二と非常に高い水準になった。私どもこの労働力調査は、労働省で調査しておるものと非常にかけ離れているところがありましたので、まあ統計のとり方というような問題もございますでしょうが、いずれにいたしましても、雇用指標というものは労働力調査だけではございませんから、ほかに労働省でも毎月勤労統計であるとか有効求人倍率であるとか、そういうものを含めて、また職安関係からの情報等も含めていろいろと研究はいたしておりますけれども、この間の総理府の二・七二、しかし、そういう面も、私どもが知らないところがあるのかもしれないので、これは大いに参考にし勉強しなければならぬということで、いま総理府の統計局とも、どうしてこういうふうに数字が私どもの調査したものと違うのであろうかという点も、鋭意お互いに連絡をとって勉強を、また検討を進めております。しかし、いずれにしても非常に厳しい情勢にあるという認識は持っております。
  26. 井上一成

    井上(一)委員 労働省の調査とかけ離れているということですが、むしろ私は、厳しく深刻に受けとめているわりに、何か労働大臣の取り組み、決意が余りにもなさ過ぎるような気がいたします。むしろ私は、現実の深刻な状態をこの総理府の労働力調査は示している。総需要抑制政策、いわゆるがまんの哲学、そういうことが言われてきたわけですが、むしろ有効需要をつくり出す経済政策へ転換をしていかなければならないんではないだろうか、そういう雇用対策がここで大きく問われているのではないだろうか。まあ国民春闘のさなかでもあるし、あるいは労働省としては軽く見て、この場は流していくというポーズをとることで何か当面この問題から逃げられるような判断をしているのではないだろうかとも思うわけです。決してそうあってはいけないし、そういうことだけでこの問題が終えるものではないだろう。むしろ、いろいろないままで労働省がとってこられた対策も、より強化をしなければいけない部門もあるでしょう。職業紹介機能の強化だとかあるいは能力の開発だとか、いろんな問題はあるでしょうけれども、さらにもう少し積極的な取り組みが望まれるのではないだろうか、このように思います。大臣からの取り組む強い決意をひとつ示してほしいと思うわけです。
  27. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、私ども労働省といたしましては、これはもう先ほども申し上げましたように、真剣にまた深刻に受けとめておるところでございます。ですから、今日まで、まず失業の予防ということについて、雇調金の活用、また再就職の促進、あるいはまた昨日衆議院で上げていただいたわけですが、不況業種あるいは地域の雇用の安定ということを考えた法律等々をいま行っておるところでございまして、また、御指摘のこの職業訓練なんかも非常に充実してやりつつあるということは御承知のことだと思いますが、いずれにいたしましても、こういうような形で今日進んでおりますが、先ほども申し上げたような、非常に失業、また完全失業者も多いということを踏まえた上での強力な施策をますます推進していく所存でございます。
  28. 井上一成

    井上(一)委員 それでは具体的な問題について、ひとつ問題を提起していきましょう。  現在の身体障害者雇用促進法、これは御承知のように昭和三十五年に制定され、それはそれなりにその役割りを果たしております。しかしこの雇用促進について、その対象とされているのは身体障害者のみであって、精薄者については除外されているわけであります。この点については、同法の附則第四条の中で「適職に関する調査研究」を行うとしているのでありますが、現在もなお精薄者に対する具体的な措置が講じられていないというのが現状であります。この点について労働省としてはどのような取り組み、どのような措置を講じているのか、この点について聞いておきます。
  29. 谷口隆志

    谷口政府委員 精神薄弱者の方々の雇用の促進の問題、非常に重要な問題でございます。  いま先生御指摘のように、現行の身体障害者雇用促進法のすべてが適用されておるわけではございませんが、現段階におきまして精神薄弱者の方々につきましては、まず社会生活指導面で特別な配慮が必要でございますし、雇用との関係で見ますと、雇用に適するかどうかという判定がむずかしいこととか、あるいは適職の開発がまだ進んでいないとか、あるいはプライバシーに関する問題もあるとか、そういうような問題がございますので、現行の身体障害者雇用促進法におきましては雇用義務の直接の対象とはされておらないわけでございます。ただ、それ以外の事項、たとえば職業指導とか職業紹介、職場適応訓練、それから身体障害者納付金の減額、納付金に基づきます助成金の支給、そういうような条項を含み、かなりのものにつきましては精神薄弱者の方々にも適用されておりまして、雇用の促進と安定に配慮いたしておるところでございます。  そこで、御指摘がございましたように、法律の附則の四条で今後検討するということになっておるわけでございますが、私どもといたしましては、今後の問題といたしましては、いま申し上げましたようないろんな問題をやはり一つ一つ実質的に解消していくことによりまして、精神薄弱者の方々が雇用につき得る条件の整備を図るというようなことがまず前提でございますし、そのために、たとえば能力開発の推進とかそういうようなものを含む具体的な措置をいま進めておるところでございまして、そういう条件整備を図りながら将来雇用率制度の適用について検討する必要があろうというふうに存じておるわけでございます。
  30. 井上一成

    井上(一)委員 それじゃちょっと大臣に尋ねます。  私がいま問題を指摘した精神薄弱者について、厚生省の所管では心身障害者対策基本法があるわけなんですね。御承知だと思います。また身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法が制定されているわけです。労働省の場合は、身体障害者雇用促進法があるだけなんですね。精神薄弱者雇用促進法はつくられていないわけなんです。ただ、労働省は、精神薄弱者についても職業訓練を行う授産施設がつくられているわけです。そして、そこでいろいろと能力開発、技術習得に一定労働省の取り組みが見られるわけなんですね。これは評価すべき問題だと思うのです。  ところが、その習得した技術あるいは開発された能力を生かせる場所、いわゆる雇用の保証が全くないわけなんです。私は厚生省をなぜ引き合いに出したか。労働省も授産施設等で取り組みはしているということを、私はやはりそれはそれなりに評価したい。しかし、それが生かされるような保証が雇用の保証だと思うのです。そのことが十分なされていないということは片手落ちである。本来、精薄者の雇用促進法もつくらなければいけない。私は、もう当然立法措置が講じられるべきであるということは再三申し上げているわけなんですが、ここでも強く大臣に、まずそのことは申し上げておきたい。  しかし、その立法制度が確立されるまでの間、少なくとも身体障害者の雇用促進法、いま労働省がこれは持っているわけなのですが、この一部を改正して、その雇用率の中に精神薄弱者を含める、いわゆる精薄者もその中に含めるのだというような措置をとるべきではないだろうか。そのことが授産施設の充実、充足強化、さらには雇用の保証にもつながる。こういう意味で、精薄者に対する雇用問題について十分な配慮が足りないので、どうでしょうか、いま私が指摘をしたそのような考えを早急に取り入れていただくお考えはないでしょうか。ぜひ持っていただきたい、こういうことをお聞きしたいのですが、大臣からお考えを聞かせてください。
  31. 谷口隆志

    谷口政府委員 私から事務的にまずお答えさせていただきますが、いま先生御指摘になりましたように、精神薄弱者の方々の雇用促進の問題にはまだいろいろ残された問題があろうかと思いますけれども、先ほどお答えいたしましたように、雇用に関しましては、適しているかどうかの判定の問題とか、あるいは適職の開発がおくれているとか、その他いろいろの問題もございまして、現状で直接雇用率というような形で法的な義務にすることは問題があるわけでございますので、その面はまだ適用されていないわけですけれども、たとえば雇用されている場合に納付金の減額をするとか、あるいはこういう精神薄弱者の方々を雇い入れられる事業主に対しまして、施設の整備とか、あるいはこういう方々の労務管理のための必要な経費とか、そういう面での助成をするとか、いろいろな面でできるだけ対応いたしております。同時にまた、今後ともやはりこれらの方々が職場に適応するというような面での能力開発の面も必要でございますので、こういう面も、たとえば企業と授産施設が連携して能力開発をされる場合に助成するとか、いろいろなことを進めておるわけでございますけれども、直接の法的義務にする雇用率の問題につきましては、冒頭申し上げましたようないろいろな面の条件整備あるいは調査、検討をもう少し進める必要があろうかと存じますので、当面は、それ以外の点はほとんど適用になっているわけでございますが、そういういろいろな手だてを活用いたしまして雇用促進を図っていこうというのが、私どもがいま考えているところの内容でございます。
  32. 大野明

    大野国務大臣 御指摘の点につきましては、せっかく授産所等においてそういうような能力開発をして、しかしながら端的に言えば宝の持ちぐされであるというような御指摘だと思いますけれども、いずれにしても先ほど言ったようないろいろな問題がございますので、これを一つ一つ具体的に解決しなければならぬと思いますけれども、ただそういう法律の中へ、一時的というかとりあえず組み入れたらどうだ、そんな法律をつくるまでは時間がかかるだろうからということでございますので、その点、確かにそういう気の毒な方々でございますから、私も何とかその方々のためになるような、まあ法的措置というのはなかなかむずかしいですけれども、そうして組み入れられることができるならばやっていきたい。いま御指摘がございましたので、早速検討をしてみようと思います。
  33. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、弱い立場の人たちをどのようにして社会の中で組み入れていくか。そのことは、かわいそうだから、いや、気の毒だからというそういう発想でなく、その人の持つそれなりの役割り、持っている能力を社会に生かしてもらう。そのことはむしろ社会全体の思いやりが必要ですよ。制度ができたからすべてが解決する問題でもないわけなんです。しかし、その社会全体の思いやりの前段であるべき制度すら不十分であるということになれば、これはもう何をか言わんやですね。ですから私は、とりわけ事務レベルでの答弁というのは限界があろう、こう思います。やはりそこが政治だと思うのですよ。だからいま前向きに——大臣の発想は気の毒だからという、大臣大臣なりにそういう発想で取り組まれても、要はその人たちの生きる社会への役割りが果たせたら、僕はそれでいいと思うのですけれども、ここでその発想の議論をするのでなく、その人たちをどう生かしていくか。せっかく授産施設で学んだ、あるいは習得したその技術が、その腕が生かされないということなら、実際あなた方は何を考えていらっしゃるのですか、こう聞きたくなるわけです。もう一度念を押すようですけれども、制度が確立されるまで十二分にいまの労働省の持っている身障者の雇用促進法の中に精薄者も包括をしていく。私は一部、これは労働省だけの判断あるいは労働省だけの取り組みが先行すればなし得ることだと思うのです。そういうことに取り組んでいただけると私は理解をしますが、大臣、取り組んでくれますか。
  34. 大野明

    大野国務大臣 先生の御発言、私は、ただ弱い人、気の毒だからということのみでなく、せっかくそうやって、お気の毒ですが、身体的な障害があるというような人でも一生懸命努力して技術を身につけたのだから、その宝を持ちぐされにしないようにということを申し上げたように、何もそういう先生の御指摘のことばかりでなく、私は同じような考え方を持っております。  それだけに、ただ単にその方々が法律で決めて雇用の機会を得たからというだけでは意味がないと思うのです。やはり働くというのは一つの生きがいでございますから、そういうことを理解してくれるような社会にしなければいかぬし、またそういう気持ちを酌み取ってもらえるような形で雇用というものに対して十二分に配慮していくことが大切であろうかと思いますから、それらも含めて私としては進めていこうということで、早速検討いたします。
  35. 井上一成

    井上(一)委員 早急に明るい結果を私は期待をいたしておきます。  さらに、高齢者の雇用の問題については私は再三当委員会で指摘をしてきました。とりわけ、特殊法人なり役所の中で未達成の省庁に強く指摘をして、それなりの成果を得てきたわけです。さっき大臣からも、高齢者の雇用対策の一つに、シルバー人材センターの問題が答弁の中で少し出てきました。私はこの問題も当委員会で再三再四、その実態を十二分に充足して強化をしていくべきだ、こういうことを指摘してきたわけであります。私の調査では、現在全国で百七十八団体、そこに参加をする会員が七万人ということで、高齢化社会を迎える中でシルバー人材センターの役割りはますます大きいわけであります。この制度が発足して以来、全国各自治体にますますシルバー人材センターが広がりつつある。ところが、これまた自治体での取り組みだけにゆだねられておって、法令上の整備がかなりおくれているわけですね。むしろ自治体が先行している。国の取り組み、国の法令上の整備というものは全くお粗末きわまりないというのが実態であります。大臣も、シルバー人材センターを高齢者の雇用の問題として大きく位置づけをされておるわけですが、そういう意味からも、もっともっと積極的にシルバー人材センターの制度化について取り組む必要があると私は思うわけです。大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  36. 増田雅一

    ○増田政府委員 シルバー人材センターにつきましては、いま先生が申されましたように、すでに百七十八の補助対象のセンターができているわけでございます。発足以来いろいろな問題も出てきておりまして、シルバー人材センターの構成の問題あるいは発注者との問題あるいは会員の権利義務の問題というふうなことについて、やはり何らかの法的規制と申しますか、そういうものについて検討すべき段階には来ているというふうに思っておりますので、そういう点につきまして検討させていただきたいと思っております。
  37. 井上一成

    井上(一)委員 シルバー人材センターの運営に関する補助制度の問題については、発足時に、五年後、つまり昭和六十年で打ち切るということが閣議で決められた経緯はあるわけなんですね。しかし、いまも指摘をしたように、このシルバー人材センターの果たす役割りはますます重要かつ大なるものがある、こういうふうに思うわけなんです。当然これは昭和六十年で打ち切るなんというのは、さっきからの大臣の答弁とは大きく食い違ってくるし、逆なことになってしまうわけです。この期間をさらに延長すべきであると私は思うんです。どうなんですか。
  38. 大野明

    大野国務大臣 私も同感でございます。
  39. 井上一成

    井上(一)委員 さらに延長するための努力をしますね。
  40. 大野明

    大野国務大臣 当然でございます。
  41. 井上一成

    井上(一)委員 次に私は、高齢者、とりわけ五十歳以上の労働災害の発生状況について概略の数字をここで報告を受けたいと思います。
  42. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 昭和五十六年度の労働災害、これは休業四日以上で死傷者数をとってみたわけでございます。これが約三十万八千人でございますが、そのうち五十歳以上は約十万三千人でございまして、全体の三三・五%を占めておるわけでございます。これを五十二年と比較いたしてみますと、五十二年は二九・八%でございますので、三・七%の増加になってきております。ちなみに、五十歳以上の雇用者がどのくらいの割合でふえてきたかを労働力調査で見てみますと、五十二年は一八・一%で五十六年は二〇・五%でございますから、この間二・四%の増加になっておるということで、私どもとしましては、高齢者の増加に伴って災害がふえておるけれども、あるいはそれ以上にもふえているのじゃないかと認識しております。
  43. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、高齢者の労働災害がとみに増加をしている、いまの報告でおわかりだと思います。それだけ災害の多い仕事に高齢者は就業あるいは取り組んでいるというのが実態だと思うのです。  現在シルバー人材センターの加入者については、労働省の指導で民間損保に加入しているわけです。実際は個々の加入者は一般の労働者と同じ仕事に従事している場合も多いわけです。ほとんどがそうなんです。私は、当然労災の適用を考えるべきではないだろうかと思っていますが、労働省の見解あるいは今後の対応、取り組みを含めて尋ねておきたいと思います。
  44. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 シルバー人材センターの会員につきましては、御承知のように会員とセンターとの間におきましても、また発注者との間におきましても雇用関係がございません。そういうことから、一般の労働者と同じ扱いの労災保険を適用することは困難であると存じます。  ただ、御存じのように、たとえば建設業における一人親方とかあるいは個人運転手とか、こういう方たちにつきまして特例加入という制度がございます。この特例加入の対象になり得るかということで私どもも検討したわけでございますが、この場合の給付について考えてみますと、たとえば休業補償給付ということになってまいりますと、シルバー人材センターの会員につきましては非常に就労日数が少ないということで、原則としては連日働くということで考えられておる建設業の一人親方の場合と同機に取り扱うことはなかなかむずかしいのではないか、いわば労災保険の給付体系になじみにくい面があるのではないかという点が一つございます。  また、特別加入の保険料を考えてみますと、現在の労災保険と同一の給付水準を確保するということを考えてみますと、これに必要な費用を賄うものでなければなりませんので、これは相当高額なものになるのではないかというふうに思われるわけでございます。現在シルバー人材センターにつきましては民間の団体傷害保険が使われているわけでございますけれども、この保険料と比べますと大変高額になってくるのではないかということで、労災保険につきましては、一般の場合も、また特別加入の場合につきましてもすんなり適用しがたいようなむずかしい面が多いのではなかろうかというふうに考えております。
  45. 井上一成

    井上(一)委員 さらに、シルバー人材センターに対する現在の一つの基準として、補助金交付を十万人以上の人口の都市、こういう基準があるわけです。これはもう再三再四、十万人以上の都市に住む高齢者も五万人以上の都市に住む、あるいは小さな自治体に居住される高齢者も、生きる権利はひとしく同じであり、もちろん国からの受ける対応も公平でなければならない。さらに、高齢化社会に移行しつつある今日は、このシルバー人材センターの活用というものがより人口の少ない自治体にも波及をし、むしろそれを奨励をしていくのが労働省としての務めだと私は思うのですよ。そういう意味で、この一定の基準を取っ払うべきである。そんな十万人の線で物差しを持つということにどうも役所的な発想がある。実際は、私が指摘をしていろいろ皆さんに納得をしていただいて、十万人以下の都市にも大いなる協力、助成をなさっているという事実も私は知っております。だから、この際こういう十万人という一つの物差しはもう捨ててしまうべきである。そして、本当に真剣に高齢者の雇用対策に自治体が取り組んでいる、その中身において私は国も手厚く対応をしていくべきである、こういう見解なんです。  そういう意味で、きょうもまた人口で物差しを決めていくというそのような考え方に私は抵抗があるわけでありまして、労働行政は居住する人口の大小で対応を変えてはいけませんよ、こういうことなので、ひとつ大臣の考えを聞いておきたいと思います。
  46. 大野明

    大野国務大臣 シルバー人材センターの事業を行う上においては、一定事業規模というか、こういうものが継続的に行われなければ意味がございませんので、それが行われるようなということになると人口としては十万人ぐらいが適当であろうかということで始めたことでございまして、いま先生御指摘のように、それ以下の人口のところでもやっておられるところがある。私どもはかたくなに十万と言わず、一つのめどとしてはございますが、それ以下のところでも、いま申し上げたような一定の規模が継続的に行われるというところであれば、まあ弾力的に運用していくというつもりでおります。
  47. 井上一成

    井上(一)委員 ぜひひとつ人口での物差しは取りやめてほしい、取りやめていくべきである、私はこういうことを強く要望しておきたいと思います。  続いて、国際職業訓練競技大会、技能オリンピックの件について尋ねておきたいのですが、昨年の春、国際職業訓練競技大会組織委員会において、六十年の第二十八回大会の日本開催が決まったわけです。これは大阪府、市を中心とする関西での二十一世紀計画の中で六十年に技能オリンピックを大阪で開催すると決めておるわけなんですけれども、大阪府としても、大阪開催を積極的にするということであるわけです。六十年日本での開催が決まっていても、それを大阪で開催するかどうか決定すべき時期はいま検討中だと聞き及んでいるわけでありますが、労働省としての取り組みあるいは開催地決定の時期等についての見解を聞いておきます。
  48. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 技能五輪の国際大会、昭和六十年に日本で開催されることになっておりますが、この大会は民間主催で実施されるものでございまして、現在産業界が中心となって、その準備を進めるために財団法人を設立するように作業が進められているというふうに承知をしております。  この大会の日本における開催地を大阪にするかどうかという問題につきましては、現在財界においていろいろ相談がなされておるようでございまして、最終的には日本組織委員会が近く開催される予定であるというふうに聞いております。ただ、この時期についてはまだ未定でございますので、はっきりしたことを、いつごろ決まるかということについてはお答えができませんが、その場で決定をされると聞いております。  労働省といたしましては、先生御存じのとおりの従来の経緯等諸般の事情もございますので、そういう点について関係方面と十分連絡をとりまして、民間の意向を尊重しながら、適切に対処をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  49. 井上一成

    井上(一)委員 この技能オリンピックは、今日の世界経済情勢の中で、わが国の批判を受けている経済摩擦の解消だとかあるいは国際親善の強化にもつながっていく、その意義は非常に大きいと思います。たしか四十五年の中央技能開発センターでは国は開催費用の二〇%を負担したと私は承知しているのです。民間の協力ですべて行っていくということもそれはそれなりの意義がありますけれども、やはりこういう国際的な大会は、当然国もそれ相応な負担が必要である。財政が非常に厳しい今日でありますけれども、その点は労働省としても十分な対応をしていただけると私は思いますが、念のためにここで労働省の取り組む姿勢を聞いておきたいと思います。
  50. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 六十年に開催されます技能オリンピックにつきましても、前回の例にならって努力をしてまいりたいと思っております。
  51. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、女性の労働という問題にもいま大きな関心が寄せられています。  一つは、アメリカのコンピューター業界紙「マイクロウエーブ・ニューズ」の報告であります。ビデオスクリーンを使うOLに流産、奇形児出産が多発しておる、また、いわゆる白内障、顔面発疹などが非常に多いという報告があるわけです。日本においてこのような事例が報告されているのかどうか、国内で調査をする意向があるのか、さらにアメリカからそのようなデータの入手を行っているのかどうか、ここで尋ねておきたいと思います。
  52. 林部弘

    ○林部政府委員 お答えいたします。  御質問が三点あったように思いますが、問題のレポートでございますが、もう間もなく入手できると思います。  それから、国内でこのような事例の報告があるかどうかという点につきましては、アメリカで問題になりましたような事例としての報告はまだ聞いておりません。  それから第三点でございますが、調査につきましては、アメリカの報告その他もう少し情報の収集をいたしました上で調査研究を進めるということになると思いますが、このVDT作業そのものにつきましては、女性の労働者が非常に多く就労いたしておりますので、五十八年度以降、私どもの関係いたしております産業医学総合研究所、それから産業医科大学が連携をいたしまして、VDT作業関連につきまして調査研究を開始することになっておりますので、その中でいろいろな問題が取り込まれていくということになろうかと思います。
  53. 井上一成

    井上(一)委員 いま、少し答弁の中にありましたけれども、実態を早急に、アメリカのレポートを入手されて、速やかな対応が私は望まれると思うのです。  労働省が二月十七日に発表した「産業用ロボット等の安全衛生対策の推進」の「産業用ロボット等の調査、研究」の中に、ビデオディスプレー、端末機作業における健康障害に関する調査を三カ年で行うとしているわけであります。今後どのような予定でこの調査研究を行うのか。むしろ私は、三カ年という予定が立てられていますけれども、障害が不可逆的なものであると大変なことになろうと思うのですね。だから、そういう意味では母性の保護の面からとらえるならば、やはり早急に調査研究を行って対策を講じていくべきである、こういうふうに思うのです。労働省の見解を聞いておきます。
  54. 林部弘

    ○林部政府委員 いま先生御指摘の母性保護の見地からの問題でございますが、これはアメリカの報告書を入手いたしました上で十分判断しなければならないという点が一点ございますが、一般的に、妊娠の早期に問題になる要素としては放射線の影響が一番大きいのではないかと考えられるわけでございますが、現在の時点までに私どもが入手いたしました情報あるいは専門家等の集めました情報の評価等を通じましては、現在使われておりますVDT作業の機器から発せられる放射線のレベルというものは恐らく問題になるレベルではなくて、おおむねバックグラウンドと同じぐらいではないかというふうに現在の時点では思われているようでございます。母性保護の見地からの判定というものは、なかなかむずかしい問題がございますので、具体的にそういう事例が発生しているのかどうかということの確認を、情報を集めまして行うということからやってまいりたいと思います。  それから、いま先生の方からお話ございました三カ年計画の話は、母性保護というよりは、むしろVDT作業に伴いまして視機能に対する影響とか、あるいはその作業に伴って首、肩、腕にどういうような影響があらわれるかとか、そういったいわゆるVDT作業一般に考えられる作業管理上の問題というものが中心になって研究が行われるわけでございまして、妊娠その他に対する影響の問題につきましては、むしろ広く情報を集めまして、果たしてそのような可能性があるのかどうか。放射線の影響につきましては、いまお答えいたしましたように、直ちに問題があるというレベルのものではなさそうである。そのほかにそういうものがあるのかどうか、当然検討してまいるということになると思います。
  55. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、いま私は、文化の中から、いわゆる近代化していくそういう社会の中から起こり得る障害、その中からの母性保護の立場を指摘したわけです。  大臣御承知だと思います。私が指摘した問題でもあります。故意に人為的な形の中から母性の保護が軽んじられたケース、もう申し上げる必要がないかもわかりませんが、あの社会を騒がした富士見産婦人科病院事件ですね。厚生大臣が辞職をされた。大臣御存じでしょう。そのことはもう一過性のように忘れ去られているようなきょうこのごろなんですね。  そこであえて私は大臣に、婦人の健康保持の立場に立つ労働大臣、あるいは勤労婦人の母性保護という立場に立ってもですし、政治家としてもですし、これからの健康社会、そういうことをつくり出すためにも、この問題は忘れることができない一つの大きな問題である。その被害に遭った人たちが、今日もなお痛められた身体、心も体も、肉体だけでなく精神も痛めつけられて今日を苦しんでいるというのが現状であります。  あえてことで大臣に、この問題についての現状を十分御承知なのかどうか。あるいは恐らく大臣は、厚生大臣の所管ですよと、大変先に答弁を想像して悪いのですけれども、そうおっしゃられるかもわからない。私はそれはそれなりで結構です。しかし、いま指摘をしたようなことを考えるならば、きょうここでひとつ、厚生大臣とも、十分なその報告を受けて、労働大臣として新しい取り組みをこの問題はしていただかなければいけないのではないだろうか、こういうふうに思うのです。大臣の見解を聞かしてほしいと思います。
  56. 大野明

    大野国務大臣 いま先生が先に答えられちゃったようなもので、これは所管としては厚生省ではありましょうが、ただ政治家としては、当然こういう問題に対しては非常な義憤を感じております。それにはいろいろと厚生行政の中でと言うと厚生省に悪いけれども、指導監督の面で多々あったというふうに私は理解いたしておりますが、いずれにしても、中身についてはそうつぶさに知りませんから、いま先生からのお話、私、新聞報道等ぐらいのものでございますからお答えするに足るようなことも申し上げられませんので、ひとつ早速資料を取り寄せて勉強して、またいずれ次の機会にお答えさせてもらおうと思います。
  57. 井上一成

    井上(一)委員 大臣が義憤を感じる、まさに政治家としてそうあるべきだとは思いますし、私も、これからもその一点に立ってこの問題に取り組んでいきたい。だから、次の委員会で必ず厚生省の報告を受けながら大臣の見解を私はお聞かせをいただきたいと思います。  さらに、この問題について大蔵省に聞いておきたいと思います。  この富士見産婦人科病院の問題については、ある金融機関が多額な融資、その融資がまた問題を引き起こした引き金になったのではないかと私は推察をするわけですけれども、もっともっと未然に、早い時期に、この問題を最小限の被害で食いとめることがひょっとしたらできたのではないか。そういう資金援助の問題で金融機関が融資をしていた。その融資の内容については私はきょうは指摘をしません。あえてしません。ただ、その金融機関が、つい先日この病院に対して競売の申し立てをしているわけです。大蔵省も実は国税滞納によって差し押さえをしているんですよ。大蔵省は、一つは差し押さえをしている、一つは行政監督の立場に立って金融機関を——債権保全のための対応だと恐らく金融機関は言うでしょう。しかし、過去の取引あるいは過去の状況等もやはり大蔵省としてはその実態をつかんで、今回の競売申し立てそのことが、ただ単なる金融機関の債権を保全するためだけのものであってはいけない。先ほど指摘したように、大きな痛手を受けてなお毎日を後遺症に苦しんでいる被害者の皆さんの立場、この立場を十分配慮しつつ金融機関に対する適切な行政指導が必要である、こういうふうに私は思うのです。大蔵省の見解を聞いておきます。
  58. 日吉章

    ○日吉説明員 お答え申し上げます。  某金融機関が、先生ただいまお尋ねの芙蓉会富士見病院に対しまして融資をいたしておりますのは事実でございます。この融資の経緯につきましては、個別案件でございまして私ども定かに承知はいたしておりませんが、少なくとも医師として国家から免許を受け、保険医療機関なりあるいは保険医の指定、登録が認められている病院に対します融資という観点から、妥当なものと思いまして当該金融機関は融資を行ったのではないか、かように考えております。  ところが、不幸にして先生御指摘のような事態が起こり、これらの指定なり登録が取り消され、現在営業が行われていない、病院が閉鎖されている状態になっているのは承知いたしております。  ところで、当該金融機関の債権につきまして、現在、競売の申請を行っているというのも先生御指摘のとおりでございまして、私ども承知いたしております。これにつきましては、一般論ではございますが、先生もただいまおっしゃられましたように、不特定多数の預金を預かっております金融機関としましては、その預金者保護の観点に立ちまして金融機関の債権の保全について万全を期すべきものだという考え方がございます。金融機関といたしましては、まず最初にそういう考え方に立つのは当然であろうかと思います。そういう意味におきまして、その限りにおきましては当該金融機関が債権保全のためにとりました措置そのものについては特に問題はないのではないか、かように考えます。  しかしながら、先生もただいま御指摘ございましたように、本件につきましてはいろいろな社会問題も発生しておりますし、かつ不幸な被害者も出ているのは事実でございます。また、一般論といたしましても、債権の保全、回収に当たりましてはできるだけ円満な方法によりましてそれが確保されるということが望ましいのは事実でございます。したがいまして、本件につきましても、今後当該金融機関が事を具体的に処理するに当たりましては、これらの情勢を総合的に考えまして、どのような方法で処理をするのが金融機関としての責めも果たし、かつまた社会的な責任も果たす最も望ましい方法であるかという点を種々よく検討して適正に処理されることを、指導監督官庁にあります私どもとしても期待していきたい、かように考えております。
  59. 井上一成

    井上(一)委員 いま答弁がありました。私は大蔵省にも、後遺症に苦しむ被害者のいまの実態、実情、そういうものも十分把握した上でこの問題については対処をしていただきたい、このように思います。  労働大臣はさっき非常に前向きなお答えをいただいたので、これはつけ加えておきますが、労働省も債権者としてそれは差し押さえをしているのですよ、額の大小の問題は別として。だからこの競売申し立てについては大いに関係があるわけです。大いに発言権があるわけですし、特定の一金融機関の判断で左右されることのないように、ひとつ十分配慮してほしい。大臣、一言……。
  60. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 御指摘のように、労働省の方も、所轄の埼玉労働基準局におきまして、債権保全のために川越社会保険事務所が差し押さえております病院所有の土地、建物につきまして、参加差し押さえ五十万円余につきまして行っておるわけでございます。  これにつきましては、今後、こういう抵当権者あるいは差し押さえの先着者であります社会保険事務所の動向なども見守りつつ、また御指摘の事情も踏まえつつ対応を検討してまいりたいと考えております。
  61. 井上一成

    井上(一)委員 大臣、世の中には矛盾というか、おかしなことがたくさんあるわけなんですよ。ひとつ最後大臣に、これは政治家と政治家という形で質疑をしたいと思うのです。  この富士見の問題は、大臣が義憤を感ずるという、いわゆる正義感というか社会問題としてとらえてくれるその答弁で結構です。後、そのようにしてほしい、このことを強く要望しておきます。  実は雇用の問題で、いま国民の実質的な所得が結果的に引き下げられている、そういう中で、共働きあるいは家庭主婦のパートというのは当然起こり得ることです。そんな中でいろいろな仕事につきます。食品産業のパートもあれば大型スーパーでのパートもあるでしょう。あるいは時間的な問題があって、訪問セールス、化粧品を訪問してセールスする、そういう仕事もあるでしょう。お互いにどちらにしてもわずかな所得、収入を求めて皆さんが努力をされておる。  具体的に、化粧品等を訪問して販売している人たちに対する税金の問題、課税の問題について、パートタイマーで働いている人たちと非常に格差があるわけです、不公平が。だから、たとえば年間七十九万円以下の販売員の収入に対する課税取り扱い、こういうものとパートタイマーとして勤務した人々に対する課税取り扱いを比較すると、非常に課税上の特別配慮が認められているものと、認められていない——私はこれは誤解のないように、どちらも認めるべきであり、もっともっと認める範囲を、控除すべき範囲を拡大していくべきである、こういう認識に立っているのですよ。だからこのことは——大臣、すぐに事務当局からあなたにレクチュアがあるわけね。そうじゃないわけです。これは本来は大蔵省の問題で、労働省の問題じゃないのです。だから、制度的な問題を大臣から聞こうと思いません。一生懸命働いている人たちに対してはやはり公平であってほしい。だから、公平にするために制度を見直していくというのが行政ですから、そういう意味で、そういう矛盾があるのですよ、こういう矛盾は直していくためにひとつ努力してくれませんか、こういうことなんです。ごくやさしい私の質問なんです。ごくやさしいのですよ。何にもむずかしいことじゃない。パートタイマーで働く人たちも訪問して販売をする人たちも、同じような条件の中で、状態の中で、そして控除を七十九万がいいとか百万がいいとか、もっともっと特例控除を拡大していくべきだという意見もあるのです。しかし、それは大蔵とやります。ここでは大臣に、すべて同じでなければいかぬのじゃないだろうか、こういうことなんです。私がいま尋ねたことについて、大蔵省にかわって答弁をするのじゃなく、働く婦人、働いている家庭婦人に対する思いやりはひとしく同じであってほしい、すべきだという私の見解についてのお考えを聞かせていただいて、私の質問を終えます。
  62. 大野明

    大野国務大臣 近年いろいろな形で勤労婦人が増加しておる、特にパートタイマーを御家庭の主婦なんか非常に就業を希望しておる、その中においていろいろな事業所に働いておるから、先ほどもお話がありましたように、スーパーへ行く人もいるだろうし、また家庭の訪問販売をやる方もおられるだろう、しかし、みんな勤労婦人には変わりないのだからひとつ一緒にしろ、間違いなければこういう御趣旨に承ったのです。  だとすれば、勤労婦人としては変わらない、ただその形態が多少違うというところ、ここら辺の問題の整理をしなければならぬとは思います。いずれにしても、これからますます女子就業者は多くなる、特にパートなんかの人たちが、三次産業がますます進展する中においてふえることは事実ですから、それらも含めて前向きにやっていこうと思います。
  63. 井上一成

    井上(一)委員 ひとつ前向きに大蔵省とも対応してください。  これで終わります。
  64. 古屋亨

    古屋委員長 新村勝雄君。
  65. 新村勝雄

    ○新村委員 まず最初に、人勧凍結について大臣のお考えを伺いたいのです。  先ほど大臣は、財政の厳しい現状のもとにおいてはやむを得ないというお話でありましたが、大臣は、この問題の解決、すなわちこの人勧実施ということについて今後とも御努力をなさいますか。
  66. 大野明

    大野国務大臣 本年度人勧につきまして、先生も先ほど聞いておられたということでございますからより以上申し上げませんが、いずれにしても、そういうような決定を見た中において、政府としては良好な労使関係あるいはまた労働基本権の制約、こういうことを十二分に踏まえて決定を見たのでございますから、私としては、お気の毒だとは思いますけれども、やむを得ないと考えております。
  67. 新村勝雄

    ○新村委員 五十八年度についてはどういうお考えですか。また、見通しはどうですか。
  68. 大野明

    大野国務大臣 五十八年度につきましては、いずれにいたしましても、議長見解等もあり、また同時に、人事院勧告そのものが出たときに考えなければならぬ問題であるというふうに思っております。
  69. 新村勝雄

    ○新村委員 次に、現在日本の経済は、これは世界経済も同じでありますが、長期の不況の過程にあるわけです。その中で、最近失業率が次第に高まっておりますが、特に一月は二・七二ということで、急に上昇したというわけであります。これについて労働省では、統計の信憑性を疑うわけではないのでしょうけれども、疑問があるというようなことも言っておられますけれども、労働省としては独自にどういう調査をなさっておって、この統計の示す数字に対する何らかの別の指標なり、別の、これは高過ぎるという考え方を裏づけるものが何かおありなんですか。
  70. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほど発表されました労働力調査の結果でありますが、一月の完全失業率が二・七二%に関連しての問題でございます。  そこで、私どもの雇用失業情勢の認識でございますが、御案内のように、第二次石油危機後の世界的な不況が長引いておりますために、国内の経済も景気の回復の足取りが弱い。そういうことを背景といたしまして、雇用失業情勢は非常に厳しい情勢が続いておるというふうに認識をいたしております。たとえば、失業率も昨年の四月に二・三%を超えまして、昨年の後半は大体二・四%程度の失業率で推移しておりますし、有効求人倍率も昨年の五月に〇・六倍を割りまして、その後大体〇・五八とか〇・五九、〇・六倍台で推移をしておるということでございます。  そこで、いま御指摘の一月の失業率二・七二%についてどうかということでございますが、私どもが問題を提起いたしましたのは、一月の労働力調査の結果では、失業者数も大幅にふえ失業率もふえておりますけれども、就業者とか雇用者も非常にふえておる、また労働力人口がかなりふえておるということで、労働力調査自体が従来の傾向とかなり変わったところも出ておりますし、それから雇用失業に関しましては、私どもの方の指標といたしまして有効求人倍率あるいは毎月勤労統計、さらには雇用保険失業給付の指標とかいろいろあるわけでございますが、そういうものの動き、また職業安定機関からいろいろ各地域の企業整備の状況とか雇用調整の状況の報告をとっておりますが、そういうものを見ましてもこの一、二カ月で急変したということがないわけでございますので、二・四%ぐらいから二・七二%に上がったことについては、私どもの方の雇用失業情勢を示しておる指標と乖離があるということで問題を指摘したわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、雇用失業情勢を判断するには労働力調査も一つの重要な指標でございますし、いま申し上げましたような私どもの方のいろいろな調査なり業務報告なりをあわせて総合的に勘案する必要があるし、また、いろいろな調査統計は若干ぶれることもありますので、労働力調査自体についても、もう数カ月の動きを見ながら雇用失業情勢を分析する必要があろう、傾向を見るにはそういうことが必要ではなかろうかということで考えておるわけでございます。  しかしながら、雇用失業情勢につきましては私ども非常に厳しく受けとめておるということは従来と変わっておらないわけでございます。     〔委員長退席、東家委員長代理着席〕
  71. 新村勝雄

    ○新村委員 労働省はそれなりの調査なり労働行政に対する確信を持っておやりになっておられるわけでしょうけれども、やはり失業率というのは客観的な一つの数字ですから、これについては厳しく受けとめていただかなければ困ると思うのです。  それから、労働経済動向調査によって、最近各企業における雇用の過剰感が強まっておるということが伝えられておるわけです。そういたしますと、現在失業していないけれども、雇用はされているけれども、その企業の中でかなりの過剰雇用があるということが言えるわけですけれども、これは失業の可能性を常に持っておる、こういう状態なわけですが、こういう状態について労働省はどう認識をされ、またどう対処をされようとしておりますか。
  72. 谷口隆志

    谷口政府委員 いま先生から御指摘がありましたように、労働経済動向調査のこの二月の調査の結果では、一つには、雇用調整を実施しております企業がこの一—三月では、これは一—三月はまだ見込みでございますけれども、三〇%を超えて三四%ぐらいになっております、これは製造業の場合ですが。これが徐々に、少しずつですけれども雇用調整を行います企業の割合がふえてきておるというのは事実でございます。  同時に、この調査の中では過剰雇用感についても調査をしたわけでございますが、同じく製造業について見ますと、三〇%ぐらいの企業で過剰雇用感を訴えておられる。しかしその割合は、過剰が五%未満というのが四〇%ぐらい、また五から一〇%ぐらいが四〇%ぐらいで、八割は一〇%以下の過剰ということでございます。しかし、ともかくそういう過剰感を持っておられる企業もかなり多いということでございまして、今後の経済の推移、また、こういうことを背景といたしまして雇用失業情勢に影響が出てくるということも私どもやはり重大な関心を持って絶えず注視をしておかなければならぬと思っておるわけでございまして、そういう雇用の動向等を注視しながら適切な対策を打っていかなければならぬということでございます。  この雇用対策の内容といたしましては、一つは、こういう状況の中では失業の防止ということが非常に重要でございますので、雇用調整助成金を活用するという観点から、業種指定等も機動的に行う、たとえば昨年の十月時点では対象業種が二百四十八でございましたか、最近は二百七十ぐらいを業種指定いたしておりますけれども、こういう雇用調整助成金を使いまして失業の防止を図るとか、あるいは職業安定機関で求人開拓等を実施しながら、同時に、特定求職者雇用開発助成金というような賃金助成の制度がございますが、こういうものを活用して再就職の促進を図るとか、また、いま御提案をいたしておりますけれども、構造的な不況に陥っている業種あるいはその関連地域の雇用の安定に関します対策を充実するとか、そういうようないろいろな手だてを使って雇用の安定のための政策の努力を強力に進めていかなければならぬと考えておるわけでございます。
  73. 新村勝雄

    ○新村委員 日本の場合には終身雇用制ということもあって、各企業がそのときの経営状況によって直ちにレイオフをしない、これはいい慣行だと思いますけれども、しかし、それにも限度があるわけでしょうから、現在雇用過剰感が強まっているということ、それは企業の耐え得る限度ということを考えた場合に、これはどの程度の状態になっているのか、あるいは現在の状況が全体としてどの程度に限度に達しておるというか、失業の危険度ですね、これがどの程度になっておるのかということはどうなんでしょうか。
  74. 谷口隆志

    谷口政府委員 結論的に申し上げますと、どの程度なら限度かというのはちょっと具体的にはなかなか決めがたい点だと思いますが、いま先生がまさに御指摘になりましたように、わが国の場合は終身雇用慣行あるいは労使関係の安定を背景に労使でよく話し合いをされてできるだけ離職者の発生を防止するというような慣行がありますので、そういういい慣行を背景に、雇用が諸外国なんかと比べまして非常に安定しているという状況でございまして、こういう点は今後とも引き続きそういうことで進められていかなければならぬ問題だというふうに思っておるわけでございます。  そういうような個々の企業での労使の努力を支えるようなことを私どもとしては政策の手段を使って進めていかなければならぬと思っておりますけれども、いま御指摘のありました、どの程度ならという点はむずかしいわけでございますけれども、私どもとしてはいまの雇用失業情勢、かなり厳しい状況で進んでおりますので、一方では適切、機動的な経済運営を図りながら、雇用対策でもいま申し上げましたような施策をいろいろ進めることによりまして、できるだけいまよりも悪くならないような、今後これが回復へ向かうような方向で進めていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  75. 新村勝雄

    ○新村委員 雇用の過剰感が強まっておるということは、それは失業の危険が各企業の中で次第に醸成されて、それがだんだんと限度に達して失業という現実になってあらわれてくるということでしょうから、そういう点から言うと、現在は実際には失業していないけれども、失業の危険が迫っておるという事態もかなりあるんじゃないかと思います。それから、過去においても、業種別によって違うと思いますけれども、かなり合理化が進んで人減らしが進んできておるわけでありますから、そういった過去の経過等を考えれば、業種別、産業別に分析をしていけば、今後の雇用状況がどう推移するかということ、もちろん景気の推移も関係ありますけれども、ある程度の推理はつくのではないか、こういう先見的な分析あるいは施策を十分進めていただきたいと思うわけでございます。  次の問題でありますが、中国の引き揚げ者の就職について伺いたいわけです。  中国引き揚げ者、これは過去の大変悲しい歴史の中から生まれてきた本当に気の毒な方々でありますけれども、そういう人たちが相当多数日本に引き揚げられておりますが、引き揚げたけれども円滑に就職ができないという事実があるようであります。その最大の原因は、何といっても言葉がわからない。日本語教育を受けて職場に適応できる条件をまずつくらなければいけないわけでありますが、そういう点について必ずしも国の施策が十分でないと思われるわけです。最も必要な日本語教育、受け入れのうちで第一に整備をしなければならない日本語教育の施設はどうなっているのか。——これは文部省ですか。
  76. 谷口隆志

    谷口政府委員 日本語教育の施設がどうなっておるかまでは、私ども詳しく把握をいたしておりませんでしたが……。
  77. 新村勝雄

    ○新村委員 これは通告をしてあるのですけれども、文部省の方は来ておられない——ああ、文部省来ておられますね。
  78. 石井久夫

    ○石井説明員 日本語教育のいま文部省、文化庁で行っております施策でございますが、成人帰国者に対します日本語学習の充実を図りますため、文部省といたしましては、実際的な日本語教材を編集いたしまして、日本語学習を希望いたしております本人及び関係機関に無償でこれを配布し、また、これを用いました日本語指導者の研修を行っているところでございます。なお、市あるいは区立の夜間中学校において、成人帰国者を対象にいたします日本語を中心とする教育を行っておりますところが実態として五十七年五月一日現在十八校あるわけでございまして、こういうところでも教育を受けているわけでございます。  ただ、いま先生御指摘の全般的に日本語教育の実態がどうなっているかということでございますが、これにつきましては、実は厚生省の方においていろいろと学識経験者を集めてその教育の方法など御検討されたわけでございますが、五十七年八月二十六日、厚生省の中国残留日本人孤児問題懇談会というところで意見が出されておりまして、日本語教育を効果的に行うためには、センターをつくりましてそこで集中的にやった方がいいというような御意見が出ているわけでございまして、私どもがお聞きしているところでは、五十八年度の予算において、厚生省の方で中国帰国孤児定着促進センターというものの設置について予算要求されているというふうに聞いているわけでございます。  また、実態といたしまして、中国引き揚げ者に対する日本語の指導につきましては、現在都道府県の民生部及び福祉部などにおきまして日本語教室などを開催して実施しているということが実態になっていると思うわけでございます。     〔東家委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 新村勝雄

    ○新村委員 引き揚げ者は五十七年の十二月現在で四千八十一名引き揚げておるということでありますが、この人たちに対する就職をするための国の総合的な教育、特に日本語教育、それが統一的になされていないというふうに聞いておりますけれども、その施設はあるのですか。
  80. 石井久夫

    ○石井説明員 先ほど申し上げましたように、厚生省におきまして中国残留日本人孤児問題懇談会というのを設置いたしまして、五十七年の八月二十六日にこの御意見が出されているわけでございます。この懇談会に関係省庁、私ども文部省もオブザーバーとして参加させていただいたわけでございますが、先ほどちょっと申し上げましたように、この懇談会におきましては、日本語教育を集中的に行い、あるいは生活指導を行うという観点から、センターをつくってそこで集中的に、たとえば帰国後すぐに四カ月程度ここに収容いたしまして教育を行った方がいいということで、センターの設置を要求しているというのが現状であるというふうにお聞きしているわけでございます。
  81. 新村勝雄

    ○新村委員 センターの設置を要求しているわけですね。ですから、まだないのでしょう。(石井説明員「はい」と呼ぶ)  そこで、現在はまだ国としてそういう施設もないし、責任を持って対処できる態勢にないわけですよ。そこで、そういう国の施策の不足を補うために、総評が日本語学校をつくろう、こういう計画があるようです。これは結構なことですけれども、その前に、こういう引き揚げという事態がずっともう続いておるわけですし、相当の数の引き揚げ者が、現に総数においては四千人を超えると言われておるわけですね、そういう方々に対する日本の受け入れ体制がない。まず、日本がそういう方々を受け入れるためには、何よりも大切なことは言葉の問題ですから、その言葉の問題を国の責任において系統的に教育をする施設がないということは、これは大変国としては怠慢だと思うのですけれども、大臣、この事態についてどういうお考えですか。
  82. 大野明

    大野国務大臣 中国からの引き揚げ者の方々の問題でございますが、この方々は、言葉の問題もございますでしょうし、社会の慣行にも慣れておられないでしょうし、また、労働省関係としては技能を習得しなければならぬというような問題もございますでしょうし、厚生省にも問題はあるしというようなことで、各省庁にまたがっておりますからして、これは関係省庁とよく連絡をとってやっていきますが、いずれにしても、入り口としては言葉がやはり問題でありますから、日本語の学校をつくるということは大変結構なことです。ただ、私は文部大臣じゃないので、つぶさに知らないのでまことに申しわけないのですけれども、いずれにしてもそういういろいろな関連したことをまとめていくべき段階であろうと思いますので、ひとつ私も一生懸命やろうと思っております。
  83. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣は文部大臣ではないわけですけれども、引き揚げ者が日本に帰って定着をするためには、これは遊んでいるわけにはいきませんから労働しなければいけない、就職をしなければいけないわけですね。就職をするためには言葉がわからなければ話になりませんから、まず最初の段階としてやはり日本語教育を完全に行う、そういう受け入れ体制が必要だと思います。そういった面で大臣も、文部大臣ではいらっしゃらないわけですけれども、労働大臣としてもこれは重要な問題であると思いますので、ひとつ御努力を願いたいと思います。  それから、次の問題ですが、臨調の答申によって、いままで長い間の問題になっておった地方事務官をこの際廃止をして、国か地方団体かどちらかに帰属をさせる、そこですっきりとした行政組織をつくるべきだという答申があるわけです。これは申し上げるまでもなく、身分と、それから指揮命令権あるいは職務内容、それがちぐはぐになっておる存在でありまして、地方事務官というのは前から問題になっておったわけです。特に地行あたりでは十年も前から問題になっておったわけですけれども、この問題がいままで未解決で来たということは、やはりこれは政府のそういった面での怠慢ということが言えると思います。  今回臨調の答申によってこれが何らかの形で解決をされると思いますが、この地方事務官は労働省にも関係があるわけであります。その実態、それからこれに対処をする基本的な考え方、これをまず大臣から伺います。
  84. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 地方事務官問題は、御指摘ございましたように二十数年来の大問題でございまして、今度臨調の答申で一つの解決策が出されたわけでございますので、その方向に沿って私どもも対応していきたい、こう考えておるわけでございますが、現在労働省関係につきましては、約二千名の地方事務官が都道府県庁に、職業安定課あるいは雇用保険課、こういうような組織の中におる、こういうことでございます。今後こういう組織についての具体的な進め方につきましては、関係省庁ともよく相談をしながら進めていきたい、こう考えておるわけでございます。
  85. 新村勝雄

    ○新村委員 大臣いかがですか。
  86. 大野明

    大野国務大臣 臨調の方針に沿って私どもは努力いたす所存であります。
  87. 新村勝雄

    ○新村委員 臨調の方針に沿うことは当然だと思いますけれども、いままでの地方事務官という問題がどういう問題を持っていたのか、それから、実際に労働行政を進める上において、労働省内における地方事務官という問題がどういう問題点なり矛盾なりを持っていたかということですね。これは労働省さんは、その部分に関する限りはもうよく御存じのはずですね。  そういった点を中心にしてこれから対処をしていただきたいわけでありますが、まず一つお伺いしたいのは、労働省としては、この地方事務官という立場にある方々を地方公務員にしようとするのか、あるいは国家公務員にしようとするのか。これはどちらかにしなければいけないわけですから、どちらにしようとなさっていますか。
  88. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 今度の臨調の答申で示されております考え方は、地方事務官が担当しております仕事のうち、地域性、独自性の強い、たとえば都道府県が事業主体となってやるような業務、出かせぎの援護事業であるとか、あるいは地域の雇用開発推進事業であるとか、失対事業であるとか、そういったような業務、あるいはまた市町村に対する指導、こういったような業務は県に残せ、そしてそれ以外の業務については、特に全国的なネットワークでやる必要があるというふうなこともございまして、これは労働省で、国サイドでやれ、こういう考え方であるわけでございまして、そういう業務に応じまして、地方事務官についてもそういう形で一部について地方公務員にするという者も出てまいりますし、業務量からいきますと大部分は国家公務員になる、いわゆる労働事務官になる、こういうような形での対応になってくるかと存じます。
  89. 新村勝雄

    ○新村委員 いまのお答えの前半については、これは仕事を国あるいは地方団体のどっちかに帰属をさせるという話ですね。身分の問題ですよね。いま現在そういう仕事をされておる職員の方が全部で二千三百人ぐらいいらっしゃるわけですから、こういう方々の身分をどうするかということですけれども、こういう立場の方々は一体どういうお考えを持っているか、これをつかんでいらっしゃいますか。
  90. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 大部分の方は国家公務員として位置づけてほしい、こんな考え方を持っておられるというふうに承知をいたしております。  身分の問題は、先ほど申し上げましたように、一部は地方公務員になる、そして大部分は国家公務員になる、こういう振り分けになってくる、こう考えておるわけでございますが、臨調の答申にも述べられておりますように、職員の希望というような事情もよく考慮しながらそういった振り分けをしていく、こういうような対応が必要になってこようと考えております。
  91. 新村勝雄

    ○新村委員 われわれの聞いたところでは逆でありまして、地方事務官の方々は、むしろ地方自治体にこれから将来帰属することを望んでおられるというようなことを聞いておるわけです。  それから、いままでの地方事務官に対する本省の人事管理にも大いに問題があったのではないか。というのは、地方事務官の方々に対しては、本省として必ずしも十分な配慮が、これは人事管理の上でですが、なされていないというふうにわれわれは見ているわけです。どちちかというと、地方の県庁等に職場があるわけですから、身分としては国家公務員であることには変わりはないのでしょうけれども、人事管理、処遇、特に昇進という点についてはほとんどもう将来に希望の持てないような処遇しかしておらない、こういうことも聞いておるわけですが、そういう面で、人事管理、配置等について、こういう方々に対して非常に不利な扱いをいままで本省としてはしていたのではないか、こういう指摘がありますけれども、その点はいかがでしょうか。
  92. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 たとえば、こういう地方事務官も含めまして、公共職業安定所の職員も含めました全労働という組織、職員組合がございますが、この職員組合においても、ほとんど全員一致に近い形で、国家公務員になりたい、こういうような方針が出されておるというようなところにもうかがえますように、私どもとしては、ほかの省庁についてはいざ知らず、労働省の関係につきましては国家公務員になりたいというのが大部分だ、こういうふうに理解をしておるわけでございます。  御指摘にございました処遇の問題でございますが、これは、われわれとしてはこういう安定所の職員と地方事務官というのは人事上交流をいたしておりまして、県庁に入っております地方事務官が、適当な時期が来ればたとえば公共職業安定所の課長になって出る、あるいはまた所長で出る、それでまた所長が県の雇用保険課長になるというような形で、こういう職業安定行政の中では、そういう県の課長という一応トップクラス、それからまた公共職業安定所の所長という所のトップクラスというようなことに皆つながるような形での人事管理をいたしておるわけでございまして、処遇といいますか、給料等の面につきましては国家公務員一般の給料、そしてまた昇進あるいはまた昇格の経路をたどってやっておるわけでございます。そういう意味で、私どもとしては特にこういう地方事務官が一般の国家公務員に比べて何か恵まれない形になっておるというふうには考えておりませんが、私ども職員管理の立場にある者としましては、さらに希望を持たせるようないろいろな配慮は今後ともしていきたい、していかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。  実は、こういう地方事務官を含めまして、公共職業安定所の職員あるいはまた県の雇用保険課長さん方が毎年御退職になるようなときも、その方々に東京の労働省に全員集まっていただきまして、御夫妻そろって、生涯労働行政にささげていただきましたいろいろの御苦労や御功績に対しまして、大臣初め幹部一同が出そろいましていろいろその労を慰めるというような会も開くなど、できるだけの配慮を私どもはしておるつもりでございます。しかし、御指摘の点はさらに今後私どもも十分人事管理上配慮してまいりたい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  93. 新村勝雄

    ○新村委員 今後この問題の解決を進める場合にも、その立場にある人たちの御意見なり希望なりを十分聞いて、ひとつ無理のない進め方をしていただきたいと思います。  次の問題は、これも前に何回かお願いしたことがあるのですが、日雇い労働者の問題です。  この問題は、すでにかなり前から問題になっておるわけですが、労働省としては、六十年に六十五歳以上の者を排除をしていくという方針で進められているというふうに聞いておりますけれども、この問題についての対処の仕方をまず伺います。
  94. 増田雅一

    ○増田政府委員 現行の失業対策事業につきましては、失業者に一時的な就労の場を与える、それから常用雇用につくというようなことを目指しまして、昭和二十四年に創設されまして、以来三十有余年続いてきたわけでございますが、その間、地方におきましてそれなりの仕事をしてきたわけでございます。しかしその後は、高度成長期の労働力不足下におきましても、民間雇用の再就職につながるということがなく、就労者が滞留してきたような状況にございます。そのために、最近では高齢化が非常に進みまして、また、病弱者も増大してきております。したがいまして、労働災害が多発したり、あるいはその災害の状況につきましても非常に重篤なものがございまして、事業の効率におきましても著しく非効率あるいは非経済的な状況となってきております。  そこで、昭和五十五年に失対事業の見直しをしたわけでございますが、その際に「失業対策制度調査研究報告」というのが出ておりますが、その報告におきましても、失業対策事業は、すでに労働政策の事業として維持運営できる限界に来ており、基本的には終息を図るべき段階に来ている。しかしながら、失対事業の、いま申しましたような歴史的な経緯、あるいは産炭地域、同和地域における特殊性というふうなこともございまして、なお暫定的に存続すべきである。しかしながら、六十五歳以上の方々につきましては、労働政策としての事業を維持運営するという点から、また民間における雇用慣行、あるいは民間においては六十歳定年制が進行中であるというふうなバランスの問題等を考慮いたしまして、五年程度の期間を経過した後は、六十五歳以上の就労者の方々については失対事業の紹介対象者としないというふうな提言がなされたわけでございます。  このような研究報告の趣旨を踏まえまして、私どもといたしましては、失業対策事業に就労しておられる六十五歳以上の方々の自立、引退の措置を進めてまいったわけでございますが、近くこの五年程度の期間が経過いたしますので、六十五歳以上の方々のさらに自立、引退を進めなければいけないと考えておるわけでございますが、ただ、何分にも高齢な方々ということと、現下の雇用失業情勢というものを考慮しながら、今後の実施方策については、就労者団体、事業主体あるいはその他の関係団体とも意見を交わしながら、その対策について検討してまいりたいというふうに思っております。
  95. 新村勝雄

    ○新村委員 この制度が今後長く維持されていくべきであるとは思っておりません。また、これは単なる労働問題というよりはむしろ社会問題、労働政策というよりは社会政策的な色彩が強いと思います。しかし、同時にまた、過去においてこの制度が、あるいはまた、ここにいま現に働いている皆さん方が過去において果たした役割りは決して少ないとは言えないと思いますね。それと、この事業にいま残っておられる方々は、どちらかというと大変気の毒な方々が多いわけですよ。  そういうことを考えた場合に、この制度はいつまでも維持存続できる制度ではないということはこれはわかっています、終息を図るべきだということはこれはやむを得ないと思いますけれども、その終息の仕方が問題なんです。いま政府がやっておられることは、何か厄介者を早く厄介払いをすればいいんだという感じがどうもするわけです。それではいけないわけです。終息をするにしても、その仕方を、この制度の中でいままで生きてこられた、働いてこられた方々の立場を十分尊重してひとつやっていただきたいというのがわれわれのお願いなわけです。いまここに現におられる方々一人一人に話を聞いてみますと、いずれも、早く言えば戦争の犠牲を一身に負っている方々とか、あるいはまた社会のひずみを負っておられる方々、そういう方々が大部分なわけです。そういう点を踏まえてこの問題を考えていただかないと困るわけですね。  それで、やめたその後における保障についても、これは国民年金ですね。それ以外の社会保険はない。国民年金ですけれども、この国民年金さえも経済的な事情で掛けられなかった、悪意ではなくて掛けられなかったという人も少なくない。それからまた、掛けている人についても五年年金あるいは十年年金ということであって、短期の加入しかしていないために給付も非常に低い、こういう事情もあるわけです。そういう事情をひとつ十分考慮されてこの問題に対処をしていただきたいと思うのですが、もう一回ひとつ伺います。
  96. 増田雅一

    ○増田政府委員 私どもといたしましても、高齢の就労者の方々の状態については十分承知しているつもりでございますし、またいま先生のおっしゃられましたような事情につきましても十分配慮いたしまして、先ほど申し上げましたように、関係者の方々といろいろお話を伺いながら対策について考えていきたいというふうに思っております。
  97. 新村勝雄

    ○新村委員 余りそっけないお答えですね、それでは。どういうふうに具体的に考えるのか。  たとえばこういうことがあるわけですよ。やめるときに一時金というのをもらいますね。これは支度金として十万円ですか。ところが地方自治体では、いままで直接地方自治体、市町村がそういう人たちにかかわり合いを持ってきたわけですから、そういう人たちを十万円で追っ払う——追っ払うと言うとおかしいのですが、やめてもらうということについては忍びないということで、各自治体がこの十万円にプラスをしているのですね。こういう実態があることは御存じだと思いますけれども、そういうことを自治体はしているわけですよ。ところが、これはプラスアルファですから自治体によってみんな違うわけです。十万円にプラス十万円支給するところもあれば二十万円支給するところもあるということで、一定してないわけです。ですから地域によって大変アンバランスがあるというふうなこともありますが、こういったことはもう少し改善する余地はないのかどうか。あるいは地方自治体が出すとすれば、これは統一をして地域的な不均衡のないようにすることとするとか、いろいろ配慮の余地がこういう面にもあると思うのです。たとえばそれ一つをとらえてみても、まだ未解決というか不十分な点があるわけですから、そういった点はどうでしょうか。
  98. 増田雅一

    ○増田政府委員 高齢の就労者の自立、引退につきましては、私どもも十分配慮いたしまして、一昨年には特例措置といたしまして一人につき百万円の、何と申しますか引退のための費用というものを用意いたしまして御引退を願ったこともございますし、また来年度におきましては、就職支度金につきまして従来六万円でございましたのを十万円に引き上げまして、またこれに対応いたしまして、先生おっしゃられましたような地方公共団体におきますいろいろな配慮もございますので、自立、引退につきましてはなお配慮すべき点もあるかと思いますけれども、われわれとしてはできる限りの用意をして自立、引退の促進に努めたいというように思っておるわけでございます。
  99. 新村勝雄

    ○新村委員 それから、先ほど申し上げたやめた後の社会保障の問題ですね。こういう方々は国民年金に入るべきなんですけれども、実際にはいろんな事情で入れなかった、あるいは入らなかった人が多いのですが、こういった点についての救済方法は何かないですか。
  100. 増田雅一

    ○増田政府委員 現在の失対就労者の方々の年金の受給状態につきましては、先生がおっしゃられますように、いま余りよくないと申しますか、大部分が国民年金の受給者でございまして、老齢福祉年金あるいは五年年金、十年年金の受給者であることは承知しております。もし失対事業をおやめになりますと、その生活につきましてはかなり苦しくなるというふうなことも懸念されます。  私どもといたしましては、失対事業ではないけれども、なお民間の事業に就労したい、雇用されたいというふうなお考えの方につきましては、できるだけ就職の世話をするとかというふうなこともいたしてまいりたいと思いますし、また体力がないし働けない、あるいは働く意思がないというような方々につきましては、社会福祉の面でいろいろな手当てを考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  101. 新村勝雄

    ○新村委員 とにかく、いま残っている方々は社会の矛盾を一身に負われた方々であるか、あるいは戦争の犠牲者である場合が多いわけです。だから、そういうことを十分留意をされて、この方々に対して今後できるだけ思いやりのある施策をお願いしたいと思います。  大臣最後にその点について伺います。
  102. 大野明

    大野国務大臣 失対就労者の方々の点につきましては、先ほど来先生から、これは将来とも続けていくということは無理かもしれぬというようなお話でございましたが、いずれにしても御年輩の方でありまするし、また弱い立場というかいろいろな事情もあった方々でございますから、やはり後々の生活もあり、また人間大変長生きになってきたのですから、その点も配慮しながらの対策も考えていこうと思います。
  103. 新村勝雄

    ○新村委員 次に婦人労働者の問題、先ほども出ましたけれども、重複しないように幾つかの点を伺ってまいりますが、婦人労働者が最近ふえておる、しかも正規の労働諸法の保護を受けないいわゆるパートの婦人労働者が急激にふえておるというお話が先ほども出ましたけれども、この問題についてであります。  最近の調査によりますとこの実態がかなり明らかになっておりますが、労働時間にしても一日六時間ないし八時間働いている方々が過半数を占めている。それから、月間の就労も平均十九・五日であるというような統計があります。そうしますと、正規の労働者と労働時間においてもほとんど違わない。ところが一方、賃金は法定の最低賃金に及ばない者が六%弱、一日三千円未満の者が二七%、三千円から四千円が五〇%ということで、最低賃金に及ばない者が六%もいるということは、これは大きな問題だと思います。それからまた、最賃以上であっても一日三千円、四千円という方が半分いるということは大変大きい問題ですね。そして労働条件はというと、労働諸法規の保護を受けていないわけであって、有給休暇のある者が二二%、これ以外の人は有給休暇がないわけであります。生理休暇のある者が一三%ですから、それが八七%はない。育児休暇のある者が六%ということですから、労働条件が極端に悪いわけです。そして一方労働災害は、こういう方々は安全教育も受けていないし、なれていませんから被災率が高い、こういうことが指摘をされております。  こういう状態は何としても解決をしていかなければいけません。こういう方々はいまのところ労働諸法規の保護をほとんど受けていないわけですけれども、こういう形の労働がこれからますますふえていく傾向にあるわけです。こういうことに対してもう包括的な一つの立法を考えるべき段階に来ているのではないか。いままでは、労働諸法規は適用されておりませんので、各企業の中で企業主の裁量によって、ある程度の施策なり保護なりが経営者の善意と自由な裁量によって行われてきたということなんですね。ですから、そういうことをこれから放置すべきではないと思うのですけれども、こういう事態に対する基本的な方針なり考え方として大臣はどうお考えですか。
  104. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 パートタイム労働者につきましては、いま全雇用者の中に占める割合も先生御指摘のように非常に高くなってきておりまして、雇用の中における重要なファクターではなかろうかと思います。  ところが、このパートタイマーの労働条件につきましては実は労働基準法が完全に適用があるわけでございますけれども、その使用者の中には、あるいは御本人自身も労働基準法は適用がないんじゃないかという間違った認識があるのが非常に残念な点でございます。また、雇い入れの際につきましても、パートタイマーというせいでありましょうか、労働条件がどんなふうになっておるのかということがお互いの間ではっきり交わされていないというようなことで、いろいろとトラブルが出ているような事例もございます。  そういうことから、私どもとしましては、まずパートタイマーは労働基準法の適用があるんだということをはっきり認識してもらうということをやっておりますし、またもう一つ、そのためにも就業規則を整備するということで、パートタイマーの場合にはどういうことであるかということを就業規則に明確に書いてもらうということもやっていただいておるわけでございますが、今年度からは特に、雇い入れの際のドラブルが起こらないようにということで「雇入通知書」という制度を始めたわけでございまして、ここには労働時間とか、賃金とか、そういうことについてどんなふうになっておるのかということを書面に書いてもらう。実は労働基準法上は書面に書くのは賃金だけということになるわけでございますが、そのほか労働時間についてもはっきり書いてもらうという制度、「雇入通知書」の制度を始めまして、この「雇入通知書」の関係の書類には労働基準法も適用がありますよということをしっかり明記して知らせるようにもなっております。そういうことでこのパートタイマーについての労働基準法の完全適用、適用されているんだという認識を図ってもらうとともに、また労働条件についてもはっきりさせてもらうという制度を始めたわけでございます。これにつきましては目下大都市のある地域において始めておりますが、さらにこれが実施に当たっていろんな問題が出てきますれば、この「雇入通知書」の改善を図っていくということも考えておるわけでございます。  また、それだけではございませんで、先生御指摘のようにいろんな問題もございますので、パートタイマーにつきましてはそのほかにも出てくる問題も含めまして総合的に検討する必要があるんじゃなかろうかということで、現在私どもの労働基準局だけではなくて、ほかのところも含めて、いわば全省挙げてこの問題にどういう総合的な対策を考えるかということで取り組んでおる最中でございます。
  105. 新村勝雄

    ○新村委員 法の保護を受けているとおっしゃいますけれども、実際には受けていないのですね。さっき申し上げたように、最低賃金も守られていない部分がある。それから労働条件ですけれども、これは有給休暇、生休、育児休暇なんというのはほとんど恩恵を受けていない。それから安全教育についても受けていない。それからまた、これは別の調査によりますと雇用保険、これは全部入るはずなんですけれども、法律で加入が義務づけられているわけですが、雇用保険に入っていない企業が、これは零細企業でしょうけれども六割もあるという調査があるわけです。ですから、雇用保険にさえも入っていないというのは労働行政の上からいったら大変な問題だし、大変な落ち度だと思いますね。  大臣どうですか。こういう事態があるわけなんですよ。雇用保険に六割も入っていないというのは大変な事態ですよ。それから、パートについては法の保護を受けていない部分があるということ、さっき申し上げたとおりなんです。こういう点について、大臣は一大決意をもってこういう法の保護から疎外をされている人たちの保護をひとつ図っていただきたいと思いますけれども、大臣の決意のほどを伺いたい。
  106. 谷口隆志

    谷口政府委員 先に、雇用保険の御指摘がございましたので、ちょっとお答えしておきたいと思います。  雇用保険制度は、賃金を得てそれで生活をするという方々が失業した場合の生活保障ということででき上がっている制度でございますので、臨時、アルバイト的に就労される方は、そういう保険の仕組みからも適用にならないということでございます。  ただ、パートタイマーというような名前で雇用されている方々につきましても、賃金とか労働時間以外の面の労働条件が、そこで雇用されている通常の労働者と同じような形で雇用されておりまして、労働時間がそういう通常の労働者の方々に比べて四分の三以上で、週二十二時間以上働いておられる方々は雇用保険の対象といたしておる、そういう基準を設けて実施をいたしておりますので、労働時間がそれ未満の方々は適用になっていないわけでございますけれども、それ以外に、もし適用漏れとか加入していないというようなことがあれば問題だろうと思います。その辺は十分行政としても気をつけていかなければならぬ問題だと存じます。
  107. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 有給休暇の点についてちょっと申し上げておきます。  有給休暇につきましては、これは一年間働いた場合に次の年から認めるということでございますが、御存じのとおりパートタイマーにつきましては五日とか六日というふうに出てくる人もいますし、中には一日置きに出てくるという人もいるわけでございまして、この年次有給休暇の制度は、いわば一年間を継続して勤務した場合に与えるということが前提になっておるというふうに思えるわけでございます。そこで、この点につきまして考え方があいまいであってはいけませんので、私どもといたしましては週の所定労働日数が五日または六日の者につきましては、一年間継続勤務した場合に出勤率が八割以上であるときには、労働基準法三十九条に従って与える。しかしながら、四日未満の者につきましては、これは労働基準法の解釈としてはそうはできない。しかしながら、四日の者についてはそのような扱いをすることが望ましいという方針を出しておりまして、これは先ほど申し上げましたパートタイマーの「雇入通知書」にも明記したところでございます。
  108. 大野明

    大野国務大臣 パートタイマーにつきましては、近年雇用構造の変化というかそういうようなことで急速にふえてきたところでございます。特に三次産業なんかに多い、また家庭の主婦なども就労希望が多いとか、そうなると、必ずしも長時間でなく短時間でとか、いろいろな形がございます。  いずれにしても、基準局長も安定局長も答弁いたしましたけれども、今日までの中で不備な点を整備しなければならぬということが、たとえば「雇入通知書」をつくったとかいろいろなこと、これは事業主も就職希望者の方もどうもよく知らなかった点もございまして、こういうものもつくり、啓蒙もしておりますが、それだけではまだまだ対応できるものではございませんので、いま労働省としてもプロジェクトチームをつくりまして鋭意検討を進めておりますので、もうしばらくの時間をいただければ、もう少し進展したものがお答えできるのではないかと思います。
  109. 新村勝雄

    ○新村委員 終わります。
  110. 古屋亨

    古屋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩      ────◇─────     午後一時三十五分開議
  111. 古屋亨

    古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春田重昭君。
  112. 春田重昭

    ○春田委員 私は最初に、人事院勧告の問題についてお尋ねしていきたいと思いますが、五十七年の人事院勧告が昨年の八日に四・五八%勧告されているわけでございますが、政府方針で現在凍結の状態となっております。人事院としての御心境なり対応をまずお伺いしたいと思うんです。
  113. 斧誠之助

    ○斧政府委員 お答えいたします。  先生御承知のとおり、人事院勧告制度と申しますのは公務員に労働基本権が制約されておる代償措置として設けられたものでございます。そういう意味で、公務員制度にとりまして非常に重要な制度であるということは従来からたびたび申し上げておりまして、幸いにこの点の御理解も得まして、過去十年来完全実施ということの完熟した制度になってきたわけでございます。それが、昨年政府側は見送りという決定をいたしましたわけでございまして、こういう人事院勧告制度の趣旨から申しまして、私たち人事院の責任者といたしましては大変遺憾であると申し上げざるを得ないところでございます。  ただ、人事院勧告は内閣と国会両方に勧告申し上げておるところでございまして、幸い現在国会におきまして各党協議ということでなお協議が続けられておるところでございます。人事院といたしましてはぜひともその協議の中で適正な結論を出していただきたい、そういうふうに切に願っておるところでございます。
  114. 春田重昭

    ○春田委員 昭和二十三年に人事院が創設されて今日までなるわけでございますけれども、こうしたいわゆる凍結という状態は過去例があるんですか。
  115. 斧誠之助

    ○斧政府委員 昭和二十四年に一度ございました。
  116. 春田重昭

    ○春田委員 昭和二十三年に創設されて、昭和二十四年にドッジ・ラインで一時凍結された例があるみたいでございますが、昭和四十五年以来今日までずっと完全実施されているということでございます。そうしたことが五十七年度に来て崩れるということは、人事院としては財政事情が非常に厳しいのでやむを得ないと見ているのか、何としても実施すべきである、完全実施でなくても部分実施でもやってほしい、従来からやってきたことは何らかの形で残してほしい、そういう気持ちがあるのかどうか、この辺のこともお聞きしたいと思うのです。
  117. 斧誠之助

    ○斧政府委員 先ほど申し上げましたように、人事院勧告制度は公務員制度の中核をなすと言ってもいいぐらい重要な制度でございます。財政事情はわれわれも公務員の一人としてよくわかっておるつもりでございますけれども、やはり制度を守っていくことが大変大事なことでございまして、そういう意味から、人事院といたしましては、勧告がその年度において見送られてしまうということはまことに忍びがたいことでございまして、ぜひとも完全実施をお願いしたいという気持ちはいまも変わらないわけでございます。
  118. 春田重昭

    ○春田委員 五十七年度も、三月がいわゆる年度末とすればあと一週間もないわけでありますけれども、現在与野党の実務者会議で検討されているわけでございますが、その見通しをどう見ておられるのか。これは内閣官房の方から大体の見通しをお聞かせいただけますか。
  119. 熊澤二郎

    ○熊澤説明員 ただいま国会で人事院勧告の取り扱いについて与野党協議中であるけれども、この見通しはどうかというお尋ねかと思います。  この問題、政府といたしましては、五十七年度人事院勧告でございますが、労働基本権が制約されているという問題、あるいは良好な労使関係を維持していかなければいけないという観点、そういった観点から種々検討を進めてきたわけでございますが、御存じのように未曾有の危機的な財政事情のもとにおいて、国民的課題である行財政改革を進めなければならない、行財政改革を担う公務員が率先してこれに協力する姿勢を示す、そういう必要もあるだろう等々といったようなことを考えまして、総合的に判断いたしまして、きわめて異例の措置として五十七年度人事院勧告は見送らざるを得ないという結論に達したものでございます。  この結論につきましては、予算委員会あるいはそのほかの委員会でも総理大臣、関係大臣からも答弁申し上げましているように、政府としては現在この方針を変えていないわけでございます。ただ、勧告は内閣と同時に国会に対してもなされているわけでございますので、ただいま内閣といたしましては与野党の協議を見守っているという状況でございます。
  120. 春田重昭

    ○春田委員 そういう経緯は知っているのですよ。大体いつごろ出そうなのか、その辺の見通しはわからないのですか。わからないならわからないと言っていいのですよ。
  121. 熊澤二郎

    ○熊澤説明員 ただいま実務者のレベルで協議を進めているということは承知いたしておりますが、どういう話し合いが行われているか、詳細については私ども存じ上げておりません。
  122. 春田重昭

    ○春田委員 これは総理府の方は知っていますか、この辺のことを。
  123. 熊澤二郎

    ○熊澤説明員 公務員の給与問題につきましては総理府が所管でございますが、私ども、いま御説明申し上げましたように、詳細については存じ上げておらないということでございます。
  124. 春田重昭

    ○春田委員 要するに内閣官房として、この問題というのは、いわゆる国会だけでなしに国民の大きな焦点になっているわけですよ。会議だけやって中身は知らない、推移もわからないというようでは、これは怠慢と言わざるを得ないんじゃないですか。  人勧制度というものは、先ほどからも話しているとおり、昭和二十三年に人事院が創設されて以来ずっと今日まで守られてきたわけでございまして、特に昭和四十五年以来完全実施という制度が守られてきたわけでございまして、五十七年、これが凍結されたならば、これは根本的に人勧制度というものが崩されるわけでございます。  そこで、大臣にお尋ねしますけれども、大野労働大臣としては、労働者を守る立場の大臣でございます。また一方では内閣の一閣僚という席もあるわけでございまして、非常にむずかしい立場にあると思いますけれども、私はやはり大野労働大臣としては、働く労働者の方の味方といいますかそちらの方にウエートを置いて、確かにむずかしい問題でございますけれども処理すべきじゃないか、こう思っているわけでございます。先ほどからこの問題については大臣から御答弁がございますけれども、もうちょっと前向きの御答弁がなければ、労働大臣としての肩書きがちょっと私たちにとっては物足りないなという感じを持つわけでございます。どうですか。
  125. 大野明

    大野国務大臣 五十七年度人事院勧告の問題につきましては、前内閣で未曾有の国家財政というようなことから決定をしたので、やむを得ないものと思っております。いずれにいたしましても、決まるまでは私も、労働者の問題についていろいろとやっておる役所でございます、またそこの大臣でございますから、声を大にして申し上げるつもりでございますけれども、決まってしまったものは決定に従わざるを得ない、こういうふうに考えておるところでございます。
  126. 春田重昭

    ○春田委員 内閣で決まったことを飛び出して発言をしたら、内閣不統一という問題で、これもまた野党から突かれるから、その辺も確かにつらい面があろうかと思いますけれども、決まるまでは大臣としては相当努力したという話でございます。確かに御努力なさったと思いますけれども、一たん決まったけれども、いろいろな性格といいますか、言い方にもよるかもしれませんけれども、いわゆる立場からいけばどうも大臣の御答弁というのはクールに聞こえて仕方がない。もうちょっとがんばってほしい。こう決まったけれども、要するに私は労働大臣という立場で最大限労働者の味方として闘っていくんだ、こういう何といいますか、はみ出しといいますか、そうした強い姿勢といいますか、信念といいますか、また行動も伴わぬといけませんけれども、そういうことが労働大臣の肩書きとして必要じゃないか、私はこう思うわけでございます。御努力なさっておると思いますけれども、さらにその上に、これはまだ決まったわけじゃないわけですから、いま実務者会議でやっているわけですから、そういう形で実務者会議も進んでいるわけでございますから、そういう面でも側面から協力してほしいし応援もしてほしい、私はこう要望しておきます。  そこで大臣人勧凍結という方針でございますけれども、春闘へどう影響すると大臣自身はお思いになりますか。
  127. 関英夫

    ○関(英)政府委員 私からちょっと前にお答えいたしたいと思います。  人勧凍結以来、一部の新聞報道にもございますように、人勧凍結になったんだから民賃も抑えるべきであるというような議論がなされている面もございますが、現在ちょうど春闘に入りまして、組合側の要求が出され、経営側とまさに交渉に入った時点でございます。労使が十分話し合いをして、そして円満に解決に向かわれることを私ども念願しているところでございます。
  128. 大野明

    大野国務大臣 人勧の問題が影響して春闘にどのような影響が出てくるかというお尋ねでございますが、いずれにいたしましても、賃金交渉というのは労使間の円満な話し合い、またその時代の背景、経済的な背景その他を勘案しておやりになることでございまして、私どもこの点について介入するという余地もない、こういうふうに思っております。
  129. 春田重昭

    ○春田委員 介入しなくてもその影響はあるわけですよ。たとえば、春闘というのは労使の話し合いといいますか綱引きになるわけでございまして、経営者側としては少しでも抑えようとするし、いわゆる働く労働者としては少しでもベースアップしたいという、この綱引きで決まってくるわけです。そういう面で、やはり人勧凍結されたならば、公務員だって凍結しているんじゃないか、民間の給与も抑えるべきだ、こういうことで、日経連なんかでも一部出ていますけれども、いわゆる定昇だけの二%でいいじゃないかという意見も出てくるわけであって、これは影響はあるわけですよ。そういう面で、私はこれは、何といいますか、対岸の火事みたいな形で見ているものじゃない、こう思うのです。  それで、もう一点だけ大臣にお聞きしますけれども、人勧と景気の問題ですね、これはどのように影響するとお思いになりますか。
  130. 大野明

    大野国務大臣 人事院勧告によってこれが景気にどう影響するか。景気の動向というものは人事院勧告のみに左右されるものではございませんから、これは現況、景気が非常に悪い、足取りも緩慢である、しかしながら世界経済の中においてアメリカも大分景気が上向きつつあるやに聞いておりまするし、また同時に原油価格もバレル当たり五ドル安くなったというようなことが、私は日本経済に徐々に大きな影響をもたらすと思いますが、いろいろなファクターの中での人勧ということでございますから、マクロ的な中においてそれが景気に対してどうというふうに言われると、ちょっとお答えでき得ないと思います。
  131. 春田重昭

    ○春田委員 景気の問題はかなりいろいろな要素がございます。しかし私はあえてひっかけるならば、人勧凍結というものが景気の足を引っ張る方にいくのではないか、いわゆる直接的な大きな影響はないとしても、間接的なものはある、こう思っているわけですよ。大臣、その点はどうですか。
  132. 大野明

    大野国務大臣 いま申し上げましたように、それがどうというふうな一つのものだけを取り出してはなかなかむずかしいですけれども、何と申しますか、それもある部分でのあるいは影響があるかもしれないというふうに考えます。
  133. 春田重昭

    ○春田委員 意地悪質問ではございませんけれども、大臣、五十八年度の経済成長の目標、目安は何%か御存じですか。
  134. 大野明

    大野国務大臣 三・四%でございます。
  135. 春田重昭

    ○春田委員 そのうち内需で何%の寄与度と見ているか、御存じですか。
  136. 関英夫

    ○関(英)政府委員 うち国内需要で二・九%というふうに存じております。
  137. 春田重昭

    ○春田委員 別にいじめるためにやったのではないですけれども、いずれにしましても、私の考え方としては、人勧、春闘、こうした問題は、やはり景気の中で、要するに個人消費という全体を一〇〇としたら五二%を占める。これに非常に大きな影響がある。現在この個人消費は若干伸びつつあるといえども、まだ非常に厳しい面があるわけです。この個人消費を伸ばすには、物価の安定、減税、そして春闘でのベースアップというのは大きな要素になってまいります。春闘でのベースアップというものは当然労使間で話し合うわけでございますけれども、政府が直接介入する問題ではないということでありますけれども、私は景気全体を引っ張る一つの大きな作用になるだけに、この人勧問題は労働大臣に大いに関心を持っていただきたいし、また強い姿勢で進めていただきたい、こう思っておるわけでございます。  そこで、経企庁の五十八年度経済成長では、雇用者所得の伸びを六・六%と見ているわけです。一人当たりの伸びは五・二%と見ております。五・二%を伸ばすためには所定内の賃金の伸びが必要であるわけです。この所定内賃金に占める春闘のベースアップというのはきわめて重要になります。したがって、今日の冷え切った景気を引っ張る牽引力としては、この春闘での大幅なベースアップ、そして人勧実施ということが当然必要になってくるわけでございまして、そういった面で私は労働大臣の勇気ある行動といいますか、決断というものを期待したいわけでございます。  そこで、今春闘でございますけれども、従来の対決姿勢とは違って話し合いの方向に変わりつつあるのじゃないかということが巷間言われておりますけれども、大臣は、今春闘で労使間の話し合いをいろいろされておりますが、どういう御見解をお持ちになっておりますか。
  138. 大野明

    大野国務大臣 御指摘の今春闘でございますが、まだ入り口にかかったというところでございますので、いろいろ動きはあると思いますけれども、必ずしもいますべてを把握しておるという段階ではございません。
  139. 春田重昭

    ○春田委員 どうもかみ合わないのですけれども、次へ進みます。  大臣の私的諮問機関でございます産業労働懇話会で論議されております人事院そして公労委の制度見直しについて、端的に言いますならば、二点について大臣の御意見を聞きたいわけでございます。  一つは、官公労働者のスト権付与の回復についてどう思うか。第二点目は、人事院の勧告制度をなくして民間型の労使交渉にゆだねるという、これはフリートーキングの中で自由な意見が出てきているみたいでございますけれども、こうした意見が出てくることは、ある程度そうしたいろいろな方向にも将来なるかもしれない、こういうことも含んでいるのではないかと私は思うわけでございますけれども、この二点について大臣の率直な御答弁をいただきたい。
  140. 大野明

    大野国務大臣 いずれにいたしましても、現在の状態というものをこれからも維持していくということでございます。
  141. 春田重昭

    ○春田委員 次に進みます。  人事院にお伺いいたしますけれども、昨年の夏答申されました臨調の基本答申の中には、民間給与の実態について、いわゆる小規模企業の民間給与もそうした実態の中に入れるべきじゃないかということで、民間給与の実態について広げるべきであるという意見があるやに聞いているわけでございますけれども、この問題に対してはどう対応なさっていくつもりですか。
  142. 斧誠之助

    ○斧政府委員 人事院勧告基礎となります民間企業の調査対象の規模をどうするかという問題は、相当以前から各方面からいろいろな意見が出ております。中には、公務員の組織あるいは業務、そういうあり方からいけば、現在は百人以上の企業で調査しておるわけですが、もっともっと大きな企業を対象にすべきだという意見もありますし、それからいま先生おっしゃいましたもっと小さな企業まで含めるべきだという意見もございます。そういう中で、私たちが企業規模百人以上、事業所規模五十人以上ということで調査対象企業をしぼっておりますのは、これが民間従業員の約六割を占める、まあまあ民間の勤労者を代表する平均賃金と見て余り差し支えないのではないか、それから仲裁制度も百人以上の企業でやっておるということとの均衡、そういうことで昭和三十九年以来調査対象としておるわけでございます。  昨年臨調で答申がございました答申の中身は、職種によりということで、私たちがやっております行政職全部とその全職種にわたってという趣旨であるかどうかということも、若干臨調側からも説明を受けましたが、余りはっきりしない面もございます。それから、入れるべしという結論を出したのではなくて、検討したらどうかという答申でございます。しかし小企業を含めるべきであるという意見は非常に多数の方面からいただいておりますので、これはやはり検討する必要があるということで、本年は百人以下の企業についても、ひとつそういう企業の企業制度のあり方、それからわれわれの調査は職種別調査でございますので、そういう公務員に類似するような職種が一体どれぐらい把握できるのかどうかというようなことも試験的に調査をしてみて、やがてそういうものを入れるべきかどうかということの検討の素材にしたいと思って、まだ予算も人員もいただいておりませんのでそう大規模なことはできませんけれども、できるだけこのことは調査してみたい、こう思っておるわけでございます。
  143. 春田重昭

    ○春田委員 次に、国鉄、林野の三月の期末手当の問題について。  期末手当をカットするという報道も出ているわけでございますけれども、政府の御見解をいただきたいわけでございます。この問題も労使の問題だと思いますけれども、国からかなり出資金なり補助金等を出している部門でございますし、何ら国が関与しないという問題でもないと私思うのですけれども、この点どうお考えになっておりますか。
  144. 椎谷正

    ○椎谷説明員 お答えいたします。  先生よく御承知のように、期末手当の問題につきましてはまさに基本的には労使が交渉で決めるべき問題でございまして、その間におきまして私どもがとやかく言うということはかえって労使交渉の円滑な解決を阻むかもしれないということでございますので、現在のところは、その労使交渉でどういう形でお互いに納得し合うのかというところを見守っておるところでございます。
  145. 春田重昭

    ○春田委員 もし三公社五現業の間で賃金格差が出た場合は、政府としては、これはやむを得ないとお思いになるのか、格差はなくすべきであるという御見解なのか、その辺のところをお答えいただきたいと思います。
  146. 椎谷正

    ○椎谷説明員 期末手当の問題ということで申しますと、いま交渉をしている最中でございますので、その結論につきましてあらかじめこういうことを予想して私どもの考え方というのを述べるのはいかがかというふうに思っております。
  147. 春田重昭

    ○春田委員 時間がございませんので、この問題はこれで終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、仲裁裁定は昨年国会で六・九%と決定されてございますけれども、六月と十二月の期末手当は旧ベースで支払われているわけでございまして、その上こうした格差というのはやはり好ましくないと私は思います。さらに人勧凍結に絡む問題でも、退職者が不利益にならないような救済措置も五十七年度図るべきであると私は主張して、この問題については終わりたいと思います。人事院の方と総理府の方、もう結構です。  次いで、移転就職者用宿舎の問題について質問をいたします。  雇用促進事業団の移転就職者用宿舎というのが五十五年度決算検査報告指摘されておりますけれども、時間がございませんから、ひとつ簡潔に御説明いただきたいと思います。
  148. 坂上剛之

    坂上会計検査院説明員 それでは御説明いたします。  雇用促進事業団が、移転就職者等の宿舎、つまり職業安定所の紹介によりまして住居を移転して就職する者等に、移転先での住宅が確保できるまでの間、暫定的に貸与することとして設置し運営しておる宿舎は、五十五年度末で九百九十六宿舎、十一万四千戸に上っております。  それで、この宿舎の入居状況につきまして私どもが調査をいたしましたところ、近年経済情勢の変動、そういうことによりまして移転就職者の数が減少していることなどによりまして、設置した戸数のうち入居しておる戸数は約十万二千戸でございますが、そのうち移転就職者が入居しているのは約三二%程度にとどまっておりました。特に五十年度以降に運営を開始いたしました比較的新しい宿舎につきましては、移転就職者の入居は非常に低うございまして四・八%、中には移転就職者が全く入居していないという宿舎もございました。また、先ほど申しましたとおり、入居期間というのは暫定的な期間でございますけれども、二年以上の長期にわたって入居している者が入居戸数のうちの六七%に当たっている状況でございました。  このような宿舎の設置、運営がこのまま推移いたしますと、移転就職者用宿舎設置のために投下されました多額の事業費が本来の目的に即した効果を十分に発現しないということになりますので、昭和五十五年度決算検査報告におきまして、特に掲記を要する事項と認めて掲げた次第でございます。
  149. 春田重昭

    ○春田委員 いま検査院から御報告があったように、要するに入居状況、入居率でございますけれども、特に五十六年三月末現在で入居率は、当然資格があって入るべき人の平均が大体三二%だというのですね。五十年以降のものになりますと四・八%しか入っていない、こういうことなんですね。  そこで、事業団の田中理事がお見えになっておりますけれども、なぜこのように宿舎設置の趣旨に照らして適切でない人、資格がない人が入居しているのか、また、そういう宿舎が建設されるのか、この点事業団の御答弁をいただきたいと思います。
  150. 田中清定

    田中参考人 先生御承知のように、昭和三十五年以来、逐年、移転就職者用宿舎を建設してまいったわけでございますが、当初は広域職業紹介活動に係る移転就職者逐次雇用の実態に合わせまして、安定所管内から管外へ移転する者を対象にするとか、あるいは管内においても通勤困難な者等を移転就職者に含めて対象に含めておったわけでございます。四十八年以降は、いわゆる移転就職者に該当しなくても住宅困窮ということで宿舎を確保することが雇用の安定につながる、こういうような方々に移転就職者の入居に支障のない限り入居させようということで対象を拡大してまいったわけでございますが、何せ当初の入居率との比較において、いま会計検査院から御指摘のような問題がいろいろございます。  ただ、いわゆる移転就職者に該当しない者でも、安定所の紹介を経ないということであって、実質的にはそれに準ずるような方々もいないわけではない。私どもとしては今後の運営の面でそういう事実上移転就職者に準ずるような方々をできるだけ優先的に入居させるとか、あるいは現在入居しておられる方々に対しても宿舎の本来の趣旨を十分御理解いただくような工夫をいろいろやってまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  151. 春田重昭

    ○春田委員 要するに建設地が一つの大きな問題じゃないかと思うのです。雇用促進事業団一般業務方法書、その中の三十二条には「宿舎」というものは「特に当該地域における移転就職者の受け入れ数、宿舎の必要度等を勘案して設置するものとし、その設置の場所を選定するに当っては、就職先の事業所との交通の便、日常生活上の利便等を十分に考慮するものとする。」ということで書かれておるわけでございますけれども、受け入れ実績、また今後の受け入れ見込みがあって、住宅事情が逼迫している地域にこれが建設されるのが宿舎の目的であるわけですね。  ところが、現在のいわゆる用地確保といいますか、また宿舎の建設というものはこういう方法になっております。時間がないので、こちらから一方的に説明しますけれども、市町村が建設用地を確保して、その中から事業団が希望のあるところから優先度をつけて建設していくわけでございますけれども、その用地を確保した地域は資格のある人が非常に少ない地域が多い。最近では、移転就職者の該当する地域が二〇%であって、あとの八〇%はそれが該当しないところに建てられている、こういう状況でございますから、たとえ建ったとしても、入居募集してもその資格のある人がなかなか入居しない、結果として資格のない人が入居する、こういう形になっておるわけです。当然、この土地を獲得する以上には、非常に予算上の問題もあろうし、年間大体二千五百から三千戸建てるという目的がございますから、そういった面ではなるたけ数をふやすためには、要するに地方といいますか、田舎といいますか、土地の安いところに集中して今日まで建っているわけです。これが大きな原因じゃないかと思うのです。検査報告にもありますけれども、百三十一宿舎の一万五百九十戸においては移転就職者が全く入居していない、何のための移転就職者用の宿舎なのかということも指摘されているわけでございまして、この土地の確保といいますか、選定といいますか、この辺に問題があるし、従来とっている甘い姿勢があるのではないか、私はこう思うのです。  こういう点で私は今後改善していく必要があるのではないかと思いますけれども、これはどうですか。
  152. 田中清定

    田中参考人 先生御指摘のように、会計検査院指摘された問題の背景には、そういう用地確保の困難というような問題があるわけでございます。そういう御指摘かねがねいただいておるわけでございまして、私どももできる限り都市部の移転就職者の多いところに建設を進めたいということで、予算的にも五十七年度からは都市部の高層の予算などもいただくというふうなことで、極力本来の趣旨に沿う方向での努力をしているわけでございますが、何せ二千戸ないし三千戸の用地を年度当初に決めなければならぬというような差し迫った仕事の進め方で、非常に苦慮しているような次第でございます。  今後労働省ともよく相談いたしまして、極力趣旨に沿うような用地の選定、決定ということに努めてまいりたいと思うわけでございます。
  153. 春田重昭

    ○春田委員 先ほどもお話があったように、いわゆる資格のある人の平均入居率は三二%である。ところが、移転就職者の流入の多い十都道府県の入居率は五六%という形ですね。平均を約二〇%も上回っているわけです。ところが、その他の三十七県では一九%しか入っていないということで、この点からも今後の建設地の選定というものが非常に大きな問題となってくると思うのです。大都市といいますか、そういうところは非常に土地の価格も大変でございますから、建設戸数の目標に達しないかもしれませんけれども、あくまでも雇用保険を納めている人がこれに入る資格があって、それに還元するための移転就職者用の宿舎なんですから、そういった面でも、たとえ建設戸数が減ったとしてもそういう目的に沿った建設をすべきである、こう私は思いますけれども、この点、労働省の御見解どうですか。
  154. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほど来お話がありましたように、移転就職者用宿舎というのは労働者の地域間移動を円滑にするために設置するものでございますので、そういう者の入居が少ないということははなはだ問題な点でございますから、私どもとしても、設置の地域の選定に当たっては十分本来の趣旨が生かされるような形で考えていかなければならぬと思っております。  先ほど雇用促進事業団からの答弁もございましたけれども、都市地域にはそういう移転就職者もかなりおられるわけでございまして、高層住宅をつくるとか、あるいは最近では地方分散ということで地域開発等も進んでおりますので、そういうものの需要を正確に見きわめるとか、また政策的な色彩の強い住宅、たとえば身体障害者用の住宅とか、そういうものに重点を置いて建設するような方向で十分注意してまいりたいと存じます。
  155. 春田重昭

    ○春田委員 最後に、この移転就職者用の宿舎でございますが、既存の古い宿舎については、非常に狭いということで、入っている方からいろいろ要望が出ているわけでございます。たとえば二戸一改造の問題とか一部屋増築とか、そうした要望が出ているわけでございますけれども、これについては、要するに私は近代的生活ができるそうした住宅に改造すべきである、こういう意見を持っておりますけれども、労働省としてはどういう御見解をお持ちになっておりますか。
  156. 谷口隆志

    谷口政府委員 御指摘のように、初期に建設いたしました移転用宿舎は、間取りが六畳と三畳ということで狭隘なために、居住性の改善を図らなければならぬという状況でございます。そういう観点から、昭和五十年度以降計画的に二戸を一戸に改造することを進めておりますが、まさに先生御指摘脚とおり、今後ともそういう狭隘な住宅につきましては、二戸を一戸にするとかあるいは増築するとか、そういうような方向で考えていくことにいたしております。
  157. 春田重昭

    ○春田委員 私の地元の私部宿舎でも一部そうした工事に取りかかっているわけでございますけれども、今後引き続き鋭意工事を続行していただきたいということを要望しておきます。  最後に、雇用促進事業団の宿舎につきまして、大臣のまとめの御答弁をいただきたいと思うのです。
  158. 大野明

    大野国務大臣 雇用促進住宅につきまして、先ほど来るるお話がございましたが、これはやはりつくるときの趣旨というものと今日の社会の実勢が変わってきておるというようなこともございますし、また同時に、臨調の答申の中にも盛り込まれておりますので、その意を体してやっていこうということでございます。  ただ、私、いま一番最後の問題で、昔の宿舎は、当然ではございますけれども、狭隘であるということで、文化的な生活を営むのには少し物足らぬじゃないかということでございますので、それらと同時に、私はいま事業団に対してもあるいはまた労働省の所管の局長に対しても言っておりますことは、私も実は東京でマンションに住んでおるのですが、議員宿舎ですと集会所がございますが、ああいうところは集会所がないのです。これは冠婚はともかくとして、葬祭の方は本当に困っておるのじゃないか。だから、土地もあって庭がある、その一部にそういう集会所みたいなものをつくるとか、そういうことはまた一つの社会活動なり何なりをする上において大切なことであろう、こういうことを考えて、むしろ充実していくこと、そしてまた同時に、御指摘のような観点から高層住宅を都市部なんかつくっていく、いろいろな改革をとれからしていこう、こういうふうに考えておりますが、いずれにしても限られた予算の中だということでございますので、また予算獲得のときはひとつ御支援をいただきたいと思います。
  159. 春田重昭

    ○春田委員 もう時間がないものですから、この問題についてはもっと突っ込んでやりたかったわけでございますけれども、建設省の方せっかくおいでいただいたわけでございますけれども、次回に質問していきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  あと五分ということでございますけれども、最後に、女子パートの問題についてお尋ねしてまいりたいと思いますが、女性の雇用確保の問題でございます。  現在、非常に雇用確保がむずかしい環境の中で、女子の入職者の数は確実にふえているわけでございます。たとえば五十七年度の上期と五十六年度の上期を比較してみても、約六万人、四・六%増加しております。この期間、男性は約一万五千人、一・三%の減となっているわけです。ところが、離職者も同じ期で見ると、女子で二万五千、二・四%の増加、男子で約四万人、四・一%の減となっておるわけでございまして、女子労働者の入職者と離職者が非常に多い。この原因は、パートの多くを占める婦人パートの労働条件の不安定さがこうした数字に出ているのではなかろうかと私は思っているわけでございます。  そこで、労働基準法では、パートタイマーを採用する場合は賃金、労働時間について明示しなければならないとなっております。特に賃金については文書で交付しなければならないとなっておりますけれども、昭和五十七年の東京労働基準局の調査によりますと、百人以下の企業、いわゆる小さな会社になるほど守っていない、約三分の一の三六・五%が文書では明示しないで口頭で示している、こういうデータが出ているわけでございます。要するに、法あって中身はなしという形で今日まで来ているわけでございまして、こうした労働条件をきちっと守るためには私は文書で明確に示すべきであると思っておりますけれども、労働省としてはどう対応しているんですか。
  160. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 お答えいたします。  パートタイマーの労働条件につきましては、先生いまお話しのとおり雇い入れの際に労働条件の明示が不十分だということで、たとえば賃金の問題とか労働時間の問題とか、いろいろな形でトラブルが出ておるわけでございます。  そういうことから、私どもといたしましては今年度に「雇入通知書」という様式を定めまして、これを大都市地域に多いサービス業を中心としたところでまずテストをしてみるということを始めたわけでございます。これには、労働時間の問題それから賃金の問題その他労働基準法上の重要な事項、さらにパートタイム労働者につきましては労働基準法が適用されないのではないかという意識もあるようでございますので、この点も、労働基準法が適用される、安全衛生法も適用されるということをその様式の中にも書きまして、この制度をスタートさせたわけでございます。そうして、私どもとしましてはこれをいわばテストしまして、さらに問題が出てくればこの様式についてさらに完全なものにしていきたいと思っております。  こういうことによりまして、入職の際の労働条件の取り決めが双方の間で不十分であるということから出てくるトラブルというものを防止していきたいと考えているところでございます。
  161. 春田重昭

    ○春田委員 さらに年次有給休暇の問題も、法の上では勤続一年八割以上の出勤をしていれば有給休暇を与えなければならないとなっておりますけれども、パートタイマーについては、わかっている範囲では二二・七%しか年次有給休暇の付与もされてない、こういうデータが出ております。また、雇用契約期間も定めてない企業が全体の六〇%もある。また、最低賃金を下回って法違反をしている企業も数件出ているわけでございますし、雇用保険に当然入らなければならない対象者でありながら入ってない、こういったトラブルが女子パート、婦人パートがふえるに従ってあちこちで出てきているわけです。  そういった面で、今日の、野放しとは言いませんけれども、整理がされてない女子パートの問題については、この際きちっと整理していくべきである。雇用、景気の安全弁として女子パートは使われているわけでございまして、採用、解雇が簡単にできるということで、企業にとっては使いやすい立場にあるわけでございます。しかし、このままにほうっておけば、結果として女性全体の賃金の伸び率や勤労者全体の所得の伸びを抑え込むことになるわけでございまして、いまこそ働く女性の地位向上をさせるためにも、この雇用関係の改善、整理というものを明確にすべきである、このように主張しておきたいと思います。  最後に、この問題に対する大臣の御決意、対応といいますか、その御見解をいただいて、私の質問を終わります。
  162. 大野明

    大野国務大臣 近年、産業構造の変化に伴って雇用構造も同様に大きく変化しておるところでございます。その中において、女子のパート、特に三次産業などに多く見られるわけでございますけれども、どうもパートというと企業の方もあるいはまた就労者の方も、何か軽くというとおかしいですが、安易に物事を考え過ぎている点があるのじゃないかという感じがいたします。  そこで、先ほど局長が答弁いたしましたように、「雇入通知書」をつくって、基準法も適用されるのですよとか、そういうことでお互いに啓蒙しなければいかぬし、また労働者としてもそれを指導監督すると同時に、やるべきことはなしていかなければならぬということで、いま省内にプロジェクトチームをつくりまして、これは基準局ばかりじゃない、安定局も関連ある、あるいは婦人少年局も関連あるということで鋭意努力をいたしております。  そういうようなことでございますので、近い将来、結論とは申しませんが、先生のお尋ねよりも大分進んだ感覚でのお答えができるのではないかということで作業しておるところでございます。
  163. 春田重昭

    ○春田委員 高等職業訓練所の決算的な問題もやる予定でございましたが、時間がございませんので次回にやらしていただきたいと思っております。  終わります。
  164. 古屋亨

    古屋委員長 宮田早苗君。
  165. 宮田早苗

    ○宮田委員 本日は、最近の景気停滞の長期化に伴って大変悪化しておりますので、雇用問題について幾つかお尋ねしてまいりたい、こう思います。  まず雇用情勢でございますが、最近発表されました総理府統計局の完全失業率は本年一月について二・七%ということで、戦後の特殊時期を除けば近年最高の失業率となっておりますが、その実態と、今後の雇用情勢に対しましてどのように考えておられますか、お伺いをするわけであります。  また、一月の失業率統計について総理府統計局のデータに対しまして労働省として異なった見解をお持ちのように聞いておるわけでございますが、その内容についても説明をしていただきたい、こう思います。
  166. 谷口隆志

    谷口政府委員 最近の雇用失業情勢についての認識でございますが、第二次石油危機以後世界的な不況が長引いておりますために、わが国経済の景気の回復の足取りが緩やかである、こういうことによって雇用失業情勢も非常に厳しい情勢が続いておるわけでございます。たとえば、失業率につきましても、昨年の四月から二・三%を超えまして、特に年の後半におきましては二・四%程度の失業率で推移をいたしておりますが、有効求人倍率も昨年の五月ごろに〇・六倍を切りましてから、その後〇・五八、〇・五九、〇・六倍で推移をいたしておるわけでございます。  そこで、お尋ねのございましたことしの一月の労働力調査で失業率が二・七%と非常に高い率を示したことについての問題でございますけれども、この一月の労働力調査の結果は、失業者数も相当大幅にふえ失業率も高率になったわけでございますけれども、同時に就業者、雇用者も非常にふえておる、また労働力人口が非常にふえておるというような面で、従来と異なった傾向を示しているというのが一つございますし、また、私どもの方の労働省の関係で雇用失業情勢を示します指標として有効求人倍率あるいは毎月勤労統計、これらの内容を見ましても、また同時に、私ども定期的に出先の職業安定機関から各地域の企業整備なり雇用調整の状況の報告をとっておりますけれども、そういう報告に徴しましてもここ一、二カ月で急に変化をしたというような状況にございませんので、そういうものと乖離した結果が出ておるという点があったわけでございます。  そこで、雇用失業情勢を見るにつきましては、やはり労働力調査と同時に有効求人倍率あるいは毎月勤労統計、そういうようなものを総合的に見なければなりませんし、同時に、いろいろな調査につきましては、月々によって若干のぶれも出てきますので、労働力調査自体も少し期間をかけて分析する必要があろうということで、労働力調査の結果につきましては、この数カ月調査対象の人員をふやしたとか、数カ月前から調査対象を変えているとかいうようなこともありますし、そういうものが影響しているのかどうか、これは総理府等と連携をとりながら現在分析しようということにいたしておるわけでございます。  しかし、私どもの認識といたしましては、ともかく非常に厳しい雇用失業情勢が横ばいの状況で推移をしているというふうに見ておるわけでございます。
  167. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、雇用対策についてでございますが、ただいま御説明もありましたように雇用情勢は大変厳しいものがあるわけでありまして、今後についても予断を許さない状況にあると思います。  したがいまして、その基本対策として早急に景気浮揚策をとる必要があると考えるわけでございます。しかし、当面の厳しい雇用情勢に対しまする対策もその都度適切に進めていかなければならないと考えますし、また、今日のような状況に対応して政府はどのような雇用対策をとられたのか、この点を説明していただきたいということと、現在のこの景気低迷はしばらく続くことも予想されるわけでございまして、特に中小企業につきましては一層厳しい環境となっていると思うわけでございまして、今後はさらに雇用対策、失業者対策を強化しなければならないと考えるところでございますが、どのような強化策が考えられておるか、それをお尋ねしたいということ、特に中小企業並びにその労働者に対して特段の配慮をすべきと思いますが、どのように考えておられるか、この点もお伺いをする次第です。
  168. 谷口隆志

    谷口政府委員 失業の減少と雇用の安定を図るということは非常に重要な政策課題でございます。  そのためには、やはりまず雇用需要の確保ということが重要でございますので、来年度におきましても適切な経済運営を機動的に実施するということで、三・四%の経済成長をもとにした経済運営をするということで需要の確保を図りますと同時に、私どもの労働行政なり雇用対策の面におきましては、まず一つは失業の防止をするということが重要でございますので、雇用調整助成金等を機動的に活用する、業種指定を機動的に行うというようなことで対応しなければならぬと思っております。昨年の十月時点では二百四十八業種ぐらいでございましたが、現時点では二百七十ぐらいに業種指定が拡大されておりますけれども、これらを機動的に業種指定をして対応するということ。それから、やむを得ず離職された方々の雇用機会の確保といいますか開発といいますか、そういう面におきましては現在職業安定機関挙げて求人開拓を最重点業務として取り組んでおりますけれども、そういう求人開拓と同時に、就職困難な特定求職者の方々につきまして、雇用開発助成金という賃金助成の制度もございますし、こういうようなものを活用して就職あっせんに努めるとか、あるいは職業訓練、能力開発を拡充実施して就職の促進を図るということ、それから現在提案をいたしまして御審議をいただくことになっております構造的に不況に陥った業種の対策として、特定不況業種とかあるいはその関連の不況の地域につきまして関係労働者の雇用の安定、なかんずく失業の予防という点での施策を充実強化することにいたしておりますが、そういうことを内容とする対策も来年度は充実して実施していきたいと存じております。  なお、お尋ねがございました中小企業等につきましては、やはり経営基盤の問題とか、あるいはそういうこととの関連で不況の影響を受けやすいというようなこともございますし、雇用対策の面でもいろいろ配慮いたしておるわけでございますが、先ほど申し上げておりますようないろんな雇用関係の助成金につきましては、三百人未満の中小企業については、それ以上の大きい企業に対しますよりは助成率等を引き上げるとか、そういうような配慮をしながら、現実に合った対応をいたしておるつもりでございます。  なお、今後とも、先行き私ども楽観を許さないと思っておりますが、雇用の動向には十分注意を払いながら、業種とか地域とかあるいは労働者の実態に応じた対策を機動的に打っていかなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
  169. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいま答弁の中でちょっと触れていただきました雇用調整助成金のことについてでございます。  景気の低迷という今日の諸情勢の中で、企業の活力をできるだけ維持しながら構造転換をソフトに果たしていくといった機能を備えた雇用調整助成金の果たす役割りといいますのは非常に大きい、こう考えておるわけでございます。そこで、この厳しい経済情勢にあってこの助成金の支給が増加しているものと思うわけですが、その活用状況についてお伺いするわけです。
  170. 谷口隆志

    谷口政府委員 この活用状況について見ますと、ここ二、三年の支給決定金額でございますが、五十五年度が二十七億五千万円程度、五十六年度が九十三億三千万円程度、五十七年度は四月からこの一月までで約六十九億六千万円程度となっておりますが、五十五年秋以降の景気の停滞を反映して積極的な活用が進んでおるのじゃないかと思います。  なお、助成の対象となる業種につきましても、数は先ほど申し上げましたように五十五年秋以降増加を続けておりまして、この三月一日現在では二百七十四業種に達しており、特に昨年秋以降は鉄鋼とか自動車の関係とか建設関連業種の指定の増加が目立っておるところでございます。
  171. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、特定求職者雇用開発助成金の問題についてお伺いをいたします。  特定不況業種離職者臨時措置法並びに特定不況地域離職者臨時措置法、これの本年六月期限切れに伴って、特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法が現在審議中でございます。衆議院は通過したわけでありますが、参議院で審議されると思います。この法案についてはその重要性にかんがみぜひ成立をさせるべきであると考えるところでございますが、これまでの臨時措置法によって支給された特定求職者雇用開発助成金、そして就職促進手当、もう一つは訓練手当、これらの活用状況はどのようなものであったか、また今後の見通しはどうなるのか、これもお尋ねをいたします。
  172. 谷口隆志

    谷口政府委員 現行法の特定不況業種離職者臨時措置法と特定不況地域離職者臨時措置法によりますそれぞれの業種の離職者に係る各種援護措置の活用状況でございますけれども、お尋ねになりました特定求職者雇用開発助成金の受給資格決定数は、五十六年六月に制度が創設されたわけですが、それ以後五十八年一月までの累計で三千六十一人となっております。また就職促進手当の支給決定者数は、延べ人数でございますけれども、この法律施行になりました五十二年以来五十八年一月までで約三百四十九万人日となっているわけでございます。  そこで、今後の見通しでございますけれども、現行法がこの六月末で期限切れになりますので、いま新しい法律の御審議をお願いいたしておりますが、一応新しい法律になりますので、その法律に基づく対象業種なり対象地域をこれから決めるわけでございます。大筋、対応しようとする政策の趣旨が同じでございますからそう変わった指定基準等になるわけじゃございませんけれども、いずれにしましても、そういう業種なり地域がまだ未定でございますし、また個々の業種や地域あるいは事業所によりまして雇用への具体的な影響がそれぞれ異なりますとか、あるいは産業政策で提案されております新特安法に基づく産業の活性化施策等の今後の施策と密接な連携も持っておりますので、そういう事情からはちょっと現段階で予測することは困難であろうかと存じます。しかし、こういう厳しい情勢の中で深刻になっております不況業種とか不況地域の実情に合った指定等をいたしまして、その情勢に的確に対応していく所存でございます。
  173. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、雇用安定資金の運用についてお伺いをいたします。  雇用調整助成金、特定求職者雇用開発助成金などの雇用保険特別会計の雇用安定資金について、五十六年決算においても予算に対しかなりの見込み差があり、他項目から繰り入れを行っている実態があるようですが、その内容について説明をしていただきたい。  また、これら給付金の予算が不足するような事態も想定されるわけですが、そうした場合、雇用対策に支障がないだろうかと思うのです。また、その場合の予算上の対策はどうなるのか、それも説明をしていただきたいと思います。
  174. 谷口隆志

    谷口政府委員 雇用安定事業給付金の予算につきましては、ここ数年、実績と若干の見込み差が出てきたというようなことは御指摘のとおりでございますけれども、予算を要求いたします際に、従来のやり方で、概して従来の実績等をもとにしたということが一つございますが、同時に、景気の動向等によって利用状況に変動がございまして、そういう景気の変動の予測に若干見込みが誤ったというようなこともございまして、予算額と実績に見込み差が出てきたというようなことがあろうかと思います。ただ、五十六年度におきましては、予想以上の景気の停滞によりまして、休業等の雇用調整を行う企業が当初見込みよりも大幅に増加をいたしまして、雇用調整助成金の支給が増加をいたしましたこと、また、特定求職者雇用開発助成金につきましては、五十六年六月八日に新たに創設される制度でありましたために予測がつきにくかったこと等の理由もあろうかと存じます。しかし、この点、予算を見込むに際しましては今後ともできるだけ正確な見込みの立て方をしなければならぬと思います。  二番目に指摘のございました、予算が不足する場合に雇用対策に支障がないかどうかの問題でございますが、給付金ごとに見ますと予算の不足することはありますけれども、この場合には一般的には予算の項目間の移流用あるいは予備費の使用というふうなことで対処いたしますし、それでまたカバーし切れない大きな変動がありました場合に備えて、実は昭和五十二年から雇用安定資金制度というものを設けて積み立てておるわけでございますので、そういう大幅な変動があった場合にはこの安定資金からの支出によって対処するというようなことで、現状では雇用対策に支障を来すようなことは当面なかろうというふうに考えておるところでございます。
  175. 宮田早苗

    ○宮田委員 次には、沖縄並びに産炭地層用の対策についてでございます。  沖縄県におきましては失業率が非常に高い、全国平均の二倍以上ということになっておるようですけれども、特に重点的な雇用対策が必要でないか、こう考えるわけでございますが、どうかということ。また、産炭地においても同様に厳しい状況が続いておるわけでございますが、これら地域に対する雇用対策についてどのように考えられておりますか、その点もお尋ねをするわけです。
  176. 谷口隆志

    谷口政府委員 先ほど来申し上げております特定不況業種の集積いたしております不況地域の雇用問題とあわせまして、非常に雇用問題の厳しい状況にあります沖縄と産炭地の指摘があったわけでございます。  沖縄におきます雇用失業情勢は、復帰後、海洋博を契機にして非常に悪化をいたしまして、いろいろな対策を講じてきたわけで、幸い最近徐々に好転の兆しが見受けられますけれども、それでもなお、たとえば五十八年一月の失業率は五・五%と、全国平均が生数字で言いますと二・八%でございますが、それに比べて非常に高いわけでございまして、私どもの安定行政の方の有効求職倍率もかなり高いものになっております。こういうものに対応いたしまして、沖縄におきます雇用失業対策につきましては、従来から、たとえば復帰に伴う離職者の方々あるいは駐留軍の関係の離職者の方々、こういう方々につきましては、各種の援護措置を活用して就職の促進を図るとか、あるいは職業訓練を充実いたしまして就職の促進に努めるとかというようなことも進めておるわけでございますけれども、沖縄におきます失業の一つの特色は、若年の方々の失業が全国に比べましてもかなり高いわけでございまして、そういう若年の方々の雇用促進を中心に、やはり県内でそういう方々の雇用を開発すると同時に、特に県外への就職促進なり定着促進というものも一つの重点だろうと思います。  しかし、いま雇用対策の前提といたしまして、何といたしましても雇用の需要がなければ雇用の安定はしないわけですから、そういう意味では産業振興を進めていくということが必要だろうと思いますし、そういう面につきましては沖縄開発庁その他関係のところとも現在十分連携をとりながら雇用の安定にできるだけの努力をするような施策を進めておるところでございます。  それからもう一つの雇用情勢の厳しい旧産炭地域の問題でございますけれども、これらの地域につきましても、なかなか雇用失業情勢が改善しないということで私どもも頭を痛めておりますけれども、五十六年の五月に、御存じのように産炭地域振興臨時措置法の十年延長が行われたわけでございまして、こういう法律をもとに地域振興を進めると同時に、雇用対策の面では、五十五年十一月の産炭地域振興審議会の答申の趣旨を尊重し、合理的な運用を図ることに配慮しながら、緊急就労対策事業とか産炭地域開発就労事業等、地域の産業の振興に寄与してまいりたいということで考えております。そういう事業の実施に加えまして、職業安定行政、雇用対策、先ほど来申し上げましたようないろいろな政策手段を持っておりますが、こういうものを十分活用して、そういう地域の雇用の安定にはまた格段の努力をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  177. 宮田早苗

    ○宮田委員 本会議の予鈴が鳴ったようでありますので、これでひとまず中止します。
  178. 古屋亨

    古屋委員長 この際、暫時休憩いたします。本会議散会後直ちに再開いたします。     午後二時五十二分休憩      ────◇─────     午後三時四十五分開議
  179. 古屋亨

    古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮田早苗君。
  180. 宮田早苗

    ○宮田委員 民間の就職情報機関の問題について、最近「アルバイトニュース」とか「とらばーゆ」、こういうふうな就職情報雑誌が人気を呼んでおるようです。またそうした民間の機関も増加しているように見受けられますが、これら機関、企業が、民間の自由な活動によって雇用がスムーズにいくという面で意味を持つものと考えられますものの、その内容、あっせんへのかかわり次第によっては問題も生じかねないと思われます。一方、こうしたことが増加していることは、国の紹介事業に不十分な部分があるとも受け取られるわけでございますが、これらについて労働省としてどのような見解をお持ちでございますか、お聞きをいたします。
  181. 谷口隆志

    谷口政府委員 いま御指摘ございましたように、民間就職情報誌等がかなり広範に普及をいたしてきておりますけれども、もともと労働力の需給調整につきましては、公的な機関であります安定所が求人と求職の結合を図る一つの方法、それから特別な技能とか技術がある職業につきましては民間に職業紹介事業大臣が許可して実施してもらっておる場合、そのほか事業主がみずから募集される場合として、いま御指摘のありましたような週刊情報誌等の広告による方法と、それから直接縁故等で募集される場合等、いろいろあるわけでございます。  そこで、民間就職情報誌がかなり広範に普及しておりますことについて考えてみますと、やはり手軽に利用できるとか応募者を比較的早く集められるというようなことによりまして、よく利用されておるのではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども、ただ、この就職情報誌等につきましては、営利事業として行われておりますために、大都市圏のような十分大きな労働市場圏に限られておりまして、全国をカバーしていない面が一つございます。それから求人内容が、どうしても若い人、若年者に限られまして、しかも職種が営業その他に偏っておる、したがいまして、逆に言いますと、高年齢者とか身障者の求人というのはほとんど皆無でございます。そういうような制約もあるわけでございまして、昭和五十七年三月の労働力調査の特別調査によりますと、完全失業者の求職方法としては、最近では、調査の結果では、公共職業安定所に申し込みをするというものが三年前よりもふえておりますし、就職情報誌によるというものは若干減っておるというような状況でございます。  しかしながら、私どももときどき、広告をするとすぐ人が集まるというような批判なり話を承ることもございまして、やはりそういう面では公的な職業安定機関としても十分反省しなければならぬわけでございます。  最近のように、産業構造なり就業構造の変化の中で求職者の多様なニーズに応じますために、昭和五十五年度から安定所の再編整備というものを行っております。安定所へ行かれるとお気づきになられようかと思いますが、いろいろ自分で仕事を選べるような比較的若い層とか、あるいは専門的な技能、技術を要する層とか、また逆に身障者とか高年齢者のようにケースワークでやらなければならぬ方々、そういう求職者の実態に応じた窓口にいたしまして、カラー等も活用いたしまして非常に利用しやすくするとか、いろいろな形で多様な求職者のニーズにこたえまして、求人と求職が円滑に結合するような努力をいたしておるわけでございまして、いろいろな御要望とか御意見等も踏まえまして、一層効率的な職業紹介を進めていきたいというふうに存じております。
  182. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、高齢者雇用対策についてでございます。  経済の低迷に加えまして今後ますます高齢化が進むわけでございますが、高齢者の就業意欲は高まることが総理府あるいはまた経済企画庁などの予測で示されてもいるわけであります。こうした傾向に対しまして政府はどのような施策を考えておられるかということと、第四次雇用対策基本計画の中で定年延長の促進策を打ち出しておられるわけでございますが、この推進状況はどうなっておるのか、また定年延長奨励金の活用状況、これはどうなっておるかお伺いをいたします。
  183. 谷口隆志

    谷口政府委員 高齢化社会が急速に進んでおりますので、高年齢者の方々の雇用安定を図るための対策というのは雇用対策の中でも最重要の一つの課題として取り組んでおるわけでございまして、高年齢者の方々の雇用対策といたしましては、一つは、やはり高年齢者が従来みずから開発され身につけられた技能が生かされるような職場で働かれることが重要でございますので、定年延長ということが基本でございますし、いま昭和六十年には六十歳定年を一般化しようという目標で進めておりますけれども、そのためのいろいろな積極的な指導とか援助というのがまず一つでございます。  それから、六十歳を超えられた方々につきましては健康とか能力に個人差が非常に出てまいりまして、こういう方々につきましては、基本としては同じ職場での雇用延長が図られるということが重要であろうかと思いますけれども、あわせて、そういう肉体的な条件、能力的な条件に合った多様な就業意欲があるわけでございまして、そういう意欲なりニーズに応じた対策を進めなければならぬ。それが一つは地域の補助的、短期的な仕事との結合を図るシルバー人材センターでございますし、その他パートタイムの就業を希望される方々にはそういうお世話をするとか、多様な対策を講じていかなければならぬと思っております。  そこで、御指摘になりました六十歳定年の推進の状況でございますが、このところ毎年調査をいたしておりますが、一番最近の調査では五十七年一月の調査がございますけれども、六十歳以上の定年は全体の企業の四五・八%になっておりまして、五十五歳の定年が三五・五%でございますので、十ポイントばかり上回っておりますし、これもかなり伸びておると同時に、今後六十歳以上に定年を予定しておるあるいは決めておるというような企業を含めますと、五六・九%の企業でそういう定年が実現する見込みになっておるわけでございまして、私どもとしては大勢としてそういう方向に向かっておると思うわけでございます。こういう傾向が、経済なり雇用の情勢が悪化して逆戻りしないように、できるだけ高齢化社会へ向けてまた引き続き指導援助を進めていかなければならぬと存じております。  それを促進させるための一つの助成措置としての定年延長奨励金につきましては、ここのところかなり支給実績が上がってまいりまして、五十六年度実績で見ますと前年度の二・六倍の約八十億円になっておるわけでございます。
  184. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、職業訓練制度についてです。  低成長経済への移行あるいはまた技術革新によって産業構造が変化をしており、高齢化の進展などに伴って職業技術訓練が一層重要性を増しておるわけであります。新しい産業構造、新技術に対応する職業訓練制度のあり方について考えなければならぬときと思いますが、それについての見解があれば聞かしていただきたいと思います。
  185. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 産業構造の変化、技術革新の進展に伴いまして、労働者に求められる技能も大きく変化をしてきております。労働者がこのような大きな変化に対応していくためには、職業生涯の全期間を通じて、必要な時期に適切な訓練を受けることによって常にみずからの職業能力を開発、向上していくという生涯訓練体制というものを確立することが必要であると考えております。  このために、昭和五十七年度から生涯職業訓練促進給付金制度というものを設けまして、各企業の中に生涯訓練体制というものが確立されるようその普及に努めているところであります。  また、公共職業訓練の分野におきましても、雇用促進事業団の総合高等職業訓練校を、高度の技能労働者を養成する職業訓練短期大学校というものと、もう一つは在職労働者に対する技能向上訓練などを行います技能開発センターというものに転換するというようなことを行いまして、こういう産業構造の変化や技術革新に伴います技能の変化に対応した職業訓練を推進してまいる考えでございます。
  186. 宮田早苗

    ○宮田委員 ただいまの答弁に関連をいたしまして、訓練施設、指導者ということについてでございますが、職業技能訓練に伴って重要な役割りを果たすはずの公的訓練施設が、新しい技術に対応する設備、指導者の質、量についてとかく不十分であるという声も聞くわけでございますが、この点についての見解をお伺いしたいということと、またそれらについて公的機関と民間企業とのタイアップ、民間施設の活用、あるいはまた人材交流などを積極的に推進すべきであると思いますが、これについての見解もあわせてお聞きいたします。
  187. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 公共職業訓練施設におきましては、このような技術革新に対応いたしますために電子計算機料であるとか情報処理料というようなものを設けまして、情報処理技術者の養成訓練を行っておりますが、そのほかにも機械料であるとか事務料というような職種につきましても、マイクロエレクトロニクス等の最新の技術に配慮した訓練に努めているところでございます。また、中小企業の在職労働者などを対象にコンピューターやNC旋盤等というようなものを使います向上訓練にも努めております。  そのために必要な機械設備の計画的な整備を進めているところでございますが、先生御指摘のように、この機械設備だけでは実はうまくまいりませんので、指導員の資質の問題がございまして、この問題につきましては職業訓練大学校などで指導員研修というようなものを実施いたしまして、何とか訓練指導員の資質の向上に努めているところでございます。  それから、民間との交流の問題でございますが、この問題につきましては、公共職業訓練施設におきまして職業訓練を実施する場合に、生産現場の新しい技術、技能を導入するという観点から、民間の方に講師を御依頼するとか、あるいは職業訓練指導員を民間企業とか大学とか研究機関等に派遣をいたしまして研修を実施するというようなことを行いまして、交流に努めているところでございます。  ただ、何分にも、公共職業訓練施設は、先生御指摘のようにややもすると生産現場とか労働の現場から遊離しがちであるという傾向がございますので、今後とも公共職業訓練施設の設備あるいは指導者の質、量両面にわたる充実、あるいは民間との充流につきまして積極的に推進していかなければならぬ、こういう考えでございます。
  188. 宮田早苗

    ○宮田委員 もう一つこれに関連するわけでございますが、技能検定制度。  技術労働者のモラルアップと資質向上にとって技能検定制度の持つ意味は非常に大きいと思いますが、残念なことに一般社会での認知とか評価がいま一歩という気がするわけでございまして、これに対するPRの進め方あるいはまた資格者の特典などについて検討すべきだと思うわけでございますが、それに対する考え方がありましたらお願いします。
  189. 北村孝生

    ○北村(孝)政府委員 技能検定制度は、先生御承知のように昭和三十四年度に創設されまして、現在百二十七の職種につきまして試験を実施しておるところでございます。昭和五十七年度までの累計の受検者数は約二百六十万人、累計の合格者数は百万人を超えておる現状でございまして、五十七年度におきましても十七万人が受検するというふうに、じみではございますけれども着実に制度として浸透してきているというふうに考えております。  ただ、これが一般社会において広く認知をされておるかという先生の御指摘でございますが、私どもといたしましては、技能検定のPRにつきましては毎年十一月を技能尊重月間というふうに定めまして、職業訓練の振興の問題とあわせまして技能検定の周知あるいは受検の奨励というようなことを図ってまいっておるわけでございます。この技能尊重月間だけではなく、日常的にも国、都道府県の職業訓練課、あるいは職業能力開発協会というのが中央と都道府県にございますが、こういう協会を通じまして、それぞれ積極的にPRをしておるところでございます。なかなか一般の認知を得るまでには至っておらないのが残念でございますけれども、今後とも、各段階に応じた一層効果的なPRを行うように努めてまいりたいと思っております。  それから、技能検定試験に合格した方の問題でございますが、一定の程度以上の技能を有すると公的に認めたわけでございますので、労働省の所管のものはもちろんでございますけれども、他省庁等が行います資格試験等におきまして、それぞれ対応する職種の技能士に対し試験免除等の特典が付与されるように従来も措置をしてきておるところでございますが、今後とも、そういうような特典についてできる限り促進するようにして技能検定制度の充実に努めてまいりたいと思っております。
  190. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に、MEとロボットについて伺いますが、ME革命、ロボット化などの進展によって雇用不安の声も聞かれるわけであります。あるいは技能転換の必要性が高まっておるというふうにも思われます。この問題に対する対策、そして検討が進められておるかどうかということと、このような新技術導入に関しては労使の事前協議の徹底が重要であろうと思われるわけでございますが、これに対しまする行政指導のあり方ということをお伺いするわけでございます。  それと、時間の関係がございますから、これは最後になりますが、大臣にお聞きしたいことがございます。  労働行政のあり方についてでございます。雇用対策を初めといたします各種助成事業の充実は一定の評価ができると思いますが、従来からその制度が複雑多岐にわたっておりまして、わりにわかりにくく、手続がめんどうであるという声が聞かれるわけでありまして、また労働行政についてもイメージアップが必要であると考えられますので、これのPR活動を初めとする国民への理解についてはどういうお考えを持っておるかということと、低成長、高齢化社会、産業構造の変化などに対応いたしまして労働省の役割りというのが非常に重要になってくると考えるわけでございまして、ことにこれに対しますところの労働大臣の決意のほどを最後に聞かせていただきたい、こう思います。
  191. 加藤孝

    加藤(孝)政府委員 まず、ME、ロボット関係の問題でございます。  現在産業用ロボットなどの普及が急速に進んできておりますが、これまでのところについて見ますと、それによりまして新しい職域が拡大する、あるいはまた労働者がこれに対して高い適応力を持っておるということ、あるいは配置転換が円滑に一応進んできた、こういうようなことによりまして、特に失業の発生、こういったような深刻な問題は生じてきておりませんが、しかし、今後さらに広範な分野でこのロボット化が本格化いたしますれば、雇用問題を初め労働問題全般に大きな影響を及ぼす懸念があるわけでございまして、そういった面に対しては私ども特に十分な対応を考えていかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。このために現在、雇用職業総合研究所を中心にいたしまして、こういうMEを中心とした技術革新の雇用に及ぼす影響につきまして、五十七年度、五十八年度の二カ年の予定で鋭意検討を進めておるところでございまして、具体的には、本年度はMEの技術特性、そしてこれが雇用への影響についての理論的な整理、あるいは中小企業への影響についての定量的な把握、こういうようなものを主なテーマにやっており、また五十八年度につきましては、職務内容の変化から来る労働者のたとえば意識の変化、こういったようなものなどいろいろそういう質的な問題へのインパクトの研究、こういったものを進めているところでございます。また、省内にプロジェクトチームを設けまして、本年の五月ごろを目標にこの問題についての一応の報告を取りまとめてみたいということで鋭意努力をしておるということでございます。  また、職業訓練の関係でございますが、一つには、こういう電子計算機科とかあるいは情報処理科というようなものでこういう問題についての新たな技能付与という問題について対応いたしますほか、公共訓練におきまして、こういうMEに関するコンピューター科あるいはNC旋盤料、こういったものにつきまして急速な増設をいたしておるところでございます。また、企業内の配置転換というものも当然出てまいりますので、これについては生涯職業訓練促進給付金制度というものを活用いたしまして、こういう企業内での技能訓練、配置転換という問題についての対応を進めておるところでございます。  また、この労使のコンセンサスの形成、これが特に重要と考えておるわけでございまして、これにつきましては、政労使の代表者を加えました雇用問題政策会議というのを労働省で設置をいたしておりまして、そういう場などを通じまして労使関係者の間で十分な意思疎通が図られるように考えておるところでございます。こういう率直な労使での話し合いを通じましてコンセンサスの形成が図られることが、特にこのME、ロボット問題の対応については最も重要な点である、こういう認識のもとに、労使間の意思疎通を図るための環境づくりというものに今後とも努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。  次に、この労働行政についての御理解を国民の皆様にいただくための対策といたしまして、労働省としましては、いろいろテレビ等の作成等を通じまして懸命な努力はいたしておるわけでございます。特に身障問題あるいは定年延長問題、週休二日制の問題等につきましては、特別な三十分ないし一時間近い番組をつくりまして、それを特にゴールデンアワーなどに放映していただくというようなことでの努力だとか、あるいはまた、大臣等に「あまから問答」というようなものあるいは文芸春秋といったような非常によく読まれておるような雑誌にもいろいろ出ていただきまして、労働行政のPRに努めますほか、いろいろな手当等につきましての給付金制度がわかりにくいという御指摘は確かにございますので、できるだけ絵入りのわかりやすいものを、とにかく省の衆知をしぼりまして一生懸命そういう面での努力をいたしておるところでございます。今後、そういった国民のために役立つ労働行政というためには、せっかくわれわれがつくりました制度が国民の皆様に御利用いただけないのでは残念でございますので、そういった点、特に努力を払っていきたいと考えておるところでございます。
  192. 大野明

    大野国務大臣 現在、労働行政を取り巻く環境はきわめて厳しいということは十二分に認識をいたしております。特に先生御指摘の経済の低成長というか安定成長、こういうような時代に入ってきた、また同時に、産業構造の変化あるいはまた技術革新、また高齢化社会というような、非常に新しい問題でありむずかしい問題が労働行政としてはたくさんあるわけでございまして、そのためには今日までできる限りの努力を積極的にいたしてはまいりました。しかしながら、こういう変化の激しい時代でございますから、産業、経済、社会というものを十二分に的確に把握して今後に対応していかなければならぬということは申すまでもございませんし、そのような観点から労働行政を進めていこうということでございます。  それで、来年度、五十八年度におきましては、やはり雇用失業情勢に即応できるような雇用対策というようなこと、あるいはまた高齢者の対策、あるいはMEの進展にかかわるような対策、また三次産業が非常に急速に伸びてきたというようなことがございますので、三次産業に対する問題等々、すべて予算措置を講じまして、来年度はこれまた最大限の努力をいたす所存であります。いずれにいたしましても、先ほど官房長から申し上げましたように、これらの諸方策に対しましていま省内で全省的に取り組んでおるプロジェクトチームをつくっておりますので、五月ごろということでございましたが、大体そのころには何かよい検討結果を生み出すように、いま鋭意作業をいたしております。  なお、PRにつきましても、官房長からすでにお話しいたしましたが、あらゆる媒体、あらゆる機会を通じて労働省としても現在やっておりまするが、なお行政用語というのがわれわれ一般国民には非常に理解しにくい面がございますので、これらをもう少しわかりやすい言葉に直すようにというような指示もしておるところでございます。
  193. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  194. 古屋亨

  195. 中路雅弘

    中路委員 きょうは、主として雇用調整助成金の問題、特に教育訓練にかかわる問題について御質問したいと思います。  昨年十月一日付で、一カ年間、高炉による製鉄業、同製鉄関連業が雇用調整助成金の対象業種に指定されましたが、大手の高炉メーカー五社も適用対象となって、いま各社とも雇用調整を目的としてこの雇調金の教育訓練を行っていると聞いていますが、指定後すでに五カ月経過をしています。大手高炉メーカー五社の教育訓練に対する雇用調整助成金の支給決定状況はおわかりになりますか。
  196. 谷口隆志

    谷口政府委員 雇用調整助成金の支給実績に関連する問題でございますが、鉄鋼業という分類で把握しておりまして、大手高炉五社のみについての実績は把握していないわけでございますが、鉄鋼業の最近の支給決定状況を見ますと、五十七年十一月が約一億五千万円、十二月が約二億八千万円、五十八年一月は約四億六千万円となっておりまして、そのうち教育訓練に対する助成は、五十七年十一月が約三千九百万円、十二月が約一億五千万円、五十八年一月は約三億一千万円となっております。
  197. 中路雅弘

    中路委員 労働省から提出いただきましたいまお話しの「鉄鋼業における雇用調整助成金支給決定状況」五十七年十月から五十八年の一月までによりますと、分類では大企業と中小企業とありますが、この中の大企業の教育訓練に関する支給決定状況を見ますと、事業所数で昨年十月が三カ所、十一月七カ所でありますけれども、十二月は二十一カ所、一月が四十四カ所と一挙に急増しております。延べ日数で見ましても十月が二千百二十六人日、十一月が五千九十人日でありますけれども、十二月は二万四千三百四十九人日、十一月比べて五倍近くなっていますし、一月はさらに五万一千二百二十四人日、十一月に比べて十倍になっているわけです。一事業所当たり延べ日数で調べてみますと、十月が七百八・七人日、十一月が七百二十七・一人日ですが、十二月は千百五十九・五人日、一月が千百六十四・二人日と、十一月に比べていずれも六〇%ほど増になっていますが、この十月、十一月実施の教育訓練に対応した支給決定状況は十二月、一月分に計上されてくると聞いていますが、間違いありませんか。
  198. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用調整助成金の支給手順としまして、実績が出ました後で企業の支給申請を待って支給決定をするという手続でございますので、したがって、通常の場合、教育訓練を実施した月よりも一カ月ないし二カ月支給決定の時期がずれるという状況にございます。おっしゃるとおり、十月あるいは十一月の実績に対してはまる二カ月ぐらい後に支給決定がなされるという状況でございます。
  199. 中路雅弘

    中路委員 いま確認をいたしましたけれども、十二月及び一月の支給決定状況が急増しておる。したがって、これはやはり昨年十月から大手の高炉メーカー五社が業種指定されたことによって雇用調整助成金による教育訓練を開始したことを示している、大ざっぱに言えばそういう数字ではないかと思いますが、この点は大体そういう確認でいいですか。
  200. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 ここ数カ月の鉄鋼業の支給実績を見ますと、確かに教育訓練が非常に伸びてきております。その最も大きな理由としては、いま先生おっしゃったような状況によるものというふうに私どもも考えております。
  201. 中路雅弘

    中路委員 これは日本鉄鋼連盟の出しています旬刊紙「鉄鋼界報」のナンバー千二百八十九、ことしの二月十一月号ですが、これによりますと、こういう個所があるのです。「一例を高炉会社にとると、雇用調整助成金による教育訓練の実施状況は一〇月約四万人・日、一一月約六万人・日に達しており、少なくとも八三年三月までは一一月程度の実施状況が続くものとみられている。」という記述がございますが、先ほど労働省の提出いただいた高炉大手五社を含んだ鉄鋼業の大企業の教育訓練に関する雇調金の支給決定状況は、十月実施分に相当する十二月支給決定分で約二万四千人日、十一月実施分に相当すると思われる一月支給決定分で約五万一千人日となっていまして、十月実施分で単純に計算しますと約一万六千人日、十一月実施分で九千人日労働省の把握している延べ日数より多くなっているわけですが、鉄鋼連盟の労働課にも確認しますと、支給決定の数だとおっしゃっているのですが、数字の食い違いはどういうところから出ているのですか。
  202. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 先ほど御説明いたしました教育訓練の実施時期と支給決定の時期、通常は一、二カ月のずれでございますが、これは状況によって幅がございますので、必ずしも正確に二カ月後にそのまままるまる計上されるということではございませんから、あるいは十一月あたりの実施の分が内容の審査その他等もございますので二月なりに食い込む場合もございます。したがって、その辺はそれぞれの月に分散されることがございますので、その辺のずれじゃないかと思っております。
  203. 中路雅弘

    中路委員 きちっとずれがなくてやられていれば、高炉メーカーの中には大手五社以外も含まれますからこちらの方が多くなるのが普通なんですけれども、逆に差が出ていますからどういう理由かということでお尋ねしたわけです。  いまのことを前提にしてお尋ねしたいのですが、大手の高炉メーカー五社の一つである日本鋼管の京浜製鉄所の例ですが、教育訓練の状況をお聞きしますと、昨年の十月段階ではシームレスパイプの職場が対象になっていましたけれども、年明けからはその職場の枠を外して全工場にわたって教育訓練が受けられるようになってきています。組合の出しているニュースで見ますと、不況業種の指定に伴う教育訓練の実施について教育訓練の内容が書かれていますけれども、第二特別技術教育と言われるもの、あるいは電気の基礎、コンピューター等の共通技術の特別教育、あるいは短時間危険予知訓練や安全衛生特別訓練などの安全教育、省エネルギー教育となっているわけです。しかし、実際一例を挙げますと、たとえば京浜製鉄所の冷延工場の場合、冷延改造工事という改造工事が一月から二月にかけて冷間圧延機を四十日間休止して行われて、その間に教育訓練が行われていますが、その実態は、たとえば一月二十日、二十一日は改造による現場でのオンライン教育となっていますけれども、実際は現場の清掃作業がやられている。通常は業者が入ってやっている清掃作業です。これが雇調金による教育訓練ということで実際にやられているという実例があります。また、一月三十一日から二月四日までのハイクラワンミル、HCミル計算機に関する教育訓練は、改造工事によって圧延機の機構が変わるためのハイクラウンミルの技術教育とされていますけれども、実際にはやはり清掃がやられたりしているということが実態なわけです。私も現地でいろいろ実情を聞きましたが、一般的に言ってこの清掃作業というのは雇調金の対象となる教育訓練に当たりますか。
  204. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 具体的に日本鋼管の場合にどういう形の清掃作業が行われたか承知しておりませんので、一般論でのお答えになるかと思います。  いわゆる清掃作業であれば一定の拘束のもとにおいて業務につかせる一つの形態になろうかと思いますが、通常の教育訓練には該当してこないと思います。かつて鉄鋼業で、昨年十月以前にも休業を必要とするような事態がございまして、単なる休業よりも、従業員の勤労意欲の問題を意識した面もあるかと思いますが、清掃あるいは草むしりといったことでもしてとにかく雇用をつなぎたいということは過去にもございましたので、あるいはそういう形態のものが出ているのかもしれませんが、教育訓練に該当するかどうかということであれば、これは一般的には該当しないだろうと思います。
  205. 中路雅弘

    中路委員 雇調金の場合に、教育訓練と、消極的意味では休業というのがありますね。しかし、教育訓練というのはもっと積極的な面を持っているわけですし、いまおっしゃったように、一般的に清掃というのはこの雇調金の教育訓練に入らないというのは当然だろうと思います。しかもいままで業者が入ってやっていた仕事そのものなわけですから、この清掃作業は一般的には雇調金の対象となる教育訓練ではないといういまお話ですから、この受給には私は問題があると考えるわけです。  もう一つの例ですけれども、この冷延工場の場合、一九六九年の二月の在籍人員は八百五十一名で、生産能力は月産約四万トン、対してことし一月では、二百二十三名で生産能力が月産約八・七万トンですから、人員は四分の一まで縮小されていますけれども、生産能力は約二倍強にアップしているわけです。これは、設備更新によって生産能力の向上とあわせて省力化が徹底して行われ、自動化を図ってきたためでありますけれども、冷延改造工事の結果、四月にはさらに減員されて百九十九名になることが予定されています。  一例を挙げましたけれども、企業の方針として省力化のために何千億のいわゆる設備投資を行って余剰人員をつくり出し、それを、景気の変動等を口実にした、いわば企業自身の責任でつくられた余剰ですが、これも含めて国から雇用調整助成金を受け取るというやり方は、本来の雇用調整助成金の制度の趣旨から言っても問題があるのではないかと私は思うのですが、この例の場合にはいかがですか。
  206. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用調整助成金の適用は事業所単位にやっております。したがって、その事業所の中で幾つかの部門があった場合に、ある部門で生産が上がっていても、事業所全体として見た場合にその生産活動が前年に比べてダウンしているという場合に雇調金が適用になるわけでございます。したがって、通常の場合、企業としてある部分の生産性を上げるために設備投資をして合理化を図るということは通常あり得るわけでございますが、それをやって、全体として生産活動が前年を上回るような姿でありましたら問題になると思いますけれども、そうじゃない限りは、ある部門だけをとらえてどうこうということにはならないかと思うのでございます。
  207. 中路雅弘

    中路委員 最初にお話ししました、具体例としてシームレスパイプの工場の場合、過剰な設備投資が行われていま雇用不安が出てきているわけですが、たとえば現在稼働中の大径管工場は、十一月に四直三交代を三直三交代にシフトダウンしてシームレスパイプの減産を行う。一月末で要員は五百四十七名ですが、第四・四半期の生産計画は月産約五万トンと言われています。このほかに小径管工場がありますから、この二つの工場であらゆる口径のものが製造可能でありますけれども、さらに新しいシームレスパイプの中径管の工場を完成して、営業生産を五月から予定しているわけです。現在調整運転中でありますけれども、月産能力約五万トンで、わずか百三十名の要員で稼働できるわけです。需要が大幅に減少しているために、三工場とも一〇〇%稼働はあり得ないわけです。新鋭工場で生産可能な口径のシームレスパイプは、当然この新鋭工場で生産されることになりますから、わずか四分の一か五分の一の人員で稼働となると大幅な人員削減ということは明らかなわけです。  このように、企業の省力化といいますか、自動化を含んだ設備投資によって余剰人員を生み出し、一方的に雇用調整を行う。国の方も企業の言うなりに雇用調整助成金をつぎ込むという形でのこの雇用調整助成金の運用ということでは、企業の方が余りにも身勝手で、その社会的責任という点では問題があるのではないか。そういう点で、こうした問題について雇用調整助成金の本来の趣旨を生かしていく上で何らかの検討が、あるいは必要な場合は規制を考えていくべき時期に来ているのではないか。そうしないと、どんどんそういう形で雇用調整助成金が、企業の責任で余剰人員をつくり出してそれに全部適用されていくということになるのではないかと私は考えるのですが、もう一度いかがですか。
  208. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 企業が設備投資をし、省力化を図り、生産性を向上させる、その動機づけとしてはいろいろなケースがあろうかと思います。いま一般に鉄の市況が非常に厳しいという中で、なるたけ生産性を上げていかなければいけない、といって、上げればそれだけ人が余ってしまう、それを、一般の場合でしたらレイオフあるいは解雇という形になるものを、雇用調整助成金を使って雇用を維持してもらうという面ではそれなりの機能を果たしていると思うのでございます。  ただ、合理化あるいは設備投資、その動機が何でもかんでもいいのかという点については、いま御指摘のような点、先ほど申し上げたようにある部分だけ取り上げてどうこうは言えないと思いますけれども、企業が、厳しい中で生産性を上げていくための方策として許容されるものはやむを得ないものというように考えておりますが、問題はその辺の限界だろうと思っております。
  209. 中路雅弘

    中路委員 だから、私がいまお尋ねしているのは、限界というお話がありましたけれども、そういう点を放任していくという形じゃなくて、国の資金を使っていくわけですから、実態について把握して、適正なものには当然出す必要があるわけですけれども、やはり規制しなければいけない問題もあるのではないか。ただ放任で、申請どおり出していくということでは問題が大きいんじゃないかというふうに思うわけですが、その点の何らかの検討、規制の方法がいま必要になってきている時期ではないかというように考えるのですが、いかがですか。
  210. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用調整助成金の運用自体につきましては、いま御指摘のような事実、問題のほかに、あるいは出向に対する助成をどうするかといったような問題もございますので、私どもはそれなりに不断の検討を加えていきたいと思っております。そういう中で検討させていただきたいと思います。
  211. 中路雅弘

    中路委員 もう少し関連したことで突っ込んでお聞きします。  特に減産もしていない職場から無理に教育訓練の要員を出す、そのために逆に、残った人員が不足をする。かえって労働強化になったり、あるいは年次有給休暇も満足に消化できないというような問題も出てきているわけです、職場によっては。こういう減産もしない職場から教育訓練の要員を出して、逆に、職場で残業が多くなるとか、あるいは年次有給休暇も十分取得できない、もともとの人員計画そのものが。ということになりますと、やはり雇調金の制度の趣旨にそぐわないのじゃないかと私は思うのですが、こういった例の場合、いかがですか。
  212. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 企業がいろいろな事業部門を持っている場合に、その要員配置というものはそれぞれの事業所の事情によって行われるケースがございます。したがって、雇用調整助成金の場合は、具体的にどの範囲の部門でどのぐらいの教育訓練をやるのか、それぞれの部門の労働者の問題にも深いかかわりを持ちますから、これはすべて労使の協定でもって行うような教育訓練について助成の対象とするという形をとっておりますので、ある部分そういうような逆転現象が出ることはあるかもしれませんけれども、労使の協定の上で行われているものについては、それ以上行政としてとやかく言うのはいかがかと考えているところでございます。
  213. 中路雅弘

    中路委員 雇用調整助成金の雇用調整を行う以前から、三六協定の締結を理由にして、たとえば残業が日常化されているとか、年次有給休暇も消化を保障するだけの人員が配置されない、買い上げやそういうものが行われて事実上自由に休暇がとれないという問題ですね。労働省も五十三年以来労働時間短縮の行政指導を、いわゆる労働強化なしの労働時間短縮や年次有給休暇を保障する人員計画の改善ということでは行政指導もやられてきているわけですが、余剰人員をはじき出してそして教育訓練の実施計画を決めることに対して、結果としてそういう事態が起きているということについて、企業のことだということで何らチェックしないで助成だけやっていくということは、労働省がいま強調されている時間短縮の行政指導、この中には有給休暇が十分保障されるような計画あるいは長時間の労働にならないような計画ということを指導されているわけですが、教育訓練の実施計画の届け出を受理した際に、本来基準法上も、時間短縮などのために人員増を行うべきときは、余剰人員から改善分に相当する人員をむしろ繰り入れるといいますか、削減するような指導をやるべきじゃないか。人員計画によって逆に年次有給休暇もとれない、相当の残業が日常化される、そうしてそういう人員計画で余剰人員を出して、そこに雇調金がいくというような計画の場合には、やはり一定の有給休暇もとれるだけの計画に戻すといいますか、その余剰人員の中から充てれば十分そういうことができるわけですから、こういった点での行政指導というのは、労働省の行政指導の枠の中でいままでの通達やそういう趣旨からいっても当然やるべきじゃないかというふうに私は考えているのですが、いかがですか。
  214. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 労働時間の短縮については、労働省としても従来から行政指導を進めてきておるところでもございますし、いろいろな事態はありましょうけれども、そうした方向に進むことが望ましいことは申すまでもないことでございますが、これは元来労使の問題として基本的には処理をされなければならない問題でございます。  いま、雇調金の適用の場合に、一方でそういう時間短縮に逆行する形が出てもなおかつ助成の対象にするのかという点の御指摘だろうと思いますが、いわゆる不況の企業の中で、一種の緊急避難的に雇用を維持するためにはそういう形もやむを得ないというケースもございます。これは決して望ましいこととは申しませんが、雇用を維持するためにはある場合やむを得ないこともあり得るのじゃないか。それはまさに労使間の話によってそういう決定がなされたとすると、それを行政の立場であれこれと言うことはいろいろ問題を生ずる面も一方にあるわけでございますので、先ほどお答えしたような趣旨になるわけでございます。
  215. 中路雅弘

    中路委員 労働省は、たとえば五十三年の五月二十五日、都道府県知事あるいは都道府県の労働基準監督局長あてに次官通達を出しておられますが、こうした労働省の通達の中身を見ましても、たとえば「当面の対策の重点」の中ですが、第一番に「過長な所定外労働時間の削減」、二番目に「年次有給休暇の消化の促進」、三番目に「週休二日制の推進」、これに重点を置いて労働時間短縮の行政指導を進めるという、現在当面の対策の三本柱とも言える対策を出しておられるわけです。そしてさらに、「恒常的に相当程度の所定外労働時間を前提とするような生産計画ないし人員配置計画は、労働基準法の精神からして好ましくないものであり、除去改善する必要がある。このため三六協定の適正化等について指導することとする。」と述べておられるわけですから、労働省自身がそういう場合は三六協定の適正化等についても指導するということを通達で出しておられるわけですから、この通達の精神に基づけば、私が先ほど例を挙げたような点については、やはり労働省として全く放任しておくというわけにはいかないのではないかと思うのですが、もう一度いかがですか。
  216. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 先生のいまおっしゃいました五十三年の次官通達に、三六協定に基づいて余りにも過長な残業時間がある場合に適正化の方向で進めるという方針が出ておりますが、実は、先生御案内だと思いますけれども、昨年の夏にこの過長な残業時間の適正化につきまして労働基準法施行規則の改正をいたしたわけでございます。  改正の内容につきましては、一定の期間についての延長時間について定めをした、ちょっとわかりにくうございますので例を挙げて申してみますと、一週間について十五時間、一カ月間について五十時間、三カ月間について百五十時間というようないわば目安をつくったわけでございまして、これから三六協定をお結びになる場合は、労使の間でこの目安を参考にしてやっていただきたいという原則を示すということで具体化を図ったわけでございまして、現在、この省令改正を一月一日から施行しておりますので、この徹底方を図っておるところでございます。
  217. 中路雅弘

    中路委員 もう一例挙げますと、いまのに関連して、やはり例を日本鋼管に挙げるのですが、いま行われている交代制動務では、二十日間に一回、年間に十八日ですが、連続勤務があります。これは二回の直勤務を一日でやってしまうというもので、たとえば、午前七時から午後三時までの一直と午後三時から九時までの二直を連続して勤務するという長時間勤務でありまして、この連勤の後、翌日も通常勤務の場合もあるわけです。非常に職場では問題になっておりますが、健康管理、安全確保の上でもこういう連勤は解決されなければいけないと私は思うのですが、それを解消するだけの人員増は、余剰と言われて雇調金をもらっている人員の一部を充てることでこれは可能なわけですし、年次有給休暇を保障することも可能ではないかと思うのです。  そういう点で、本来労働省が強調されているそういう方向と逆行するような人員計画に対しては、やはり労働省として当然行政指導を含めた対策が必要だと思いますし、また、それがそのまま雇調金の対象になって、ある意味では乱用になるということになれば、それは本末転倒ではないかと思うのですが、いかがですか。
  218. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 いまおっしゃいました交代制の場合に、先ほど申しましたような三六協定の適正化に関する省令の目安とどういう関係になってくるか。これは具体的にはちょっと私自身も実例を初めてお伺いしたわけでございましてわかりませんのですが、私どもとしましては、先ほど申し上げましたその目安に沿いまして今後三六協定をお結びになる場合にはひとつやってくださいということでお願いしているところでございます。
  219. 中路雅弘

    中路委員 いまの労働省のそういう具体的な指導に、実例で挙げましたから検針ということもあり得るでしょうけれども、そういう指導から見て問題があるという経過については、やはり私は行政指導が何らか必要になってくるのではないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  220. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 残業の長さにつきましてはいろいろあるだろうと思いますが、この三六協定の適正化の指針、目安を定めるに当たりましては、実は関係の労働組合なりあるいはその使用者の団体なりのお話を伺いながら一つの方針を定めたわけでございまして、先ほど申し上げましたとおり、この実際例につきましてはどういう長さになるかわかりませんけれども、関係の労使の皆さん方とも、関係と申しますか、労働四団体、総評、同盟あるいは中連、それから東商、日経連、商工会議所、こういうところとも相談して一つの方針を出したわけでございますから、私どもとしましてはとりあえずこのような方針に沿ってやっていきたいと思っておるところでございますが、この場合につきましても、何らかの残業が必要になってまいりますれば、これは、その定めた目安との関係でどういうことになってくるかということで、具体的には問題として多分登場してくるであろうとは思いますけれども、これは省令との関係で見るということになってくるということで私どもは考えたいと存じます。
  221. 中路雅弘

    中路委員 省令との関係でやはり問題になってくれば、それは検討しなければいけないということだと思います。  もう一点お伺いしますけれども、この雇用調整助成金の支給申請は企業主が行う仕組みをとっているわけですが、いわば不正な支給申請の有無ですね。こうしたものはどういうふうにチェックを行っているわけですか。
  222. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 雇用調整助成金の支給手順としましては、あらかじめ休業なり教育訓練を行います前に計画を出していただきます。そこで第一段階まず安定所で内容をチェックするわけでございます。実施をした後、実績に基づいての支給申請が出てまいるわけでございます。その実績、これは書面で出てくるわけでございますが、必要によっては賃金台張等照合するといったようなこともやりまして、その実施の中身を点検した上で支給決定をするという手順を踏んでおります。
  223. 中路雅弘

    中路委員 都道府県でも、県でも私は聞いたのですが、大きな企業のように教育訓練対象者が非常に多い場合、一件ごとに確認していない、せいぜい支給申請書に記載されている月間の教育訓練延べ日数、総数を信用する以外にないということを県でも言っていますし、職業安定所で全数についてチェックしているということは、体制は全くないとしか考えられないわけですね。そういう場合に、問題があるとか、あるいは不正があるという場合にどういう検査をやられるわけですか。
  224. 小粥義朗

    ○小粥政府委員 一般的には、先ほども申し上げましたが、支給申請に当たって添付されてくる書類についての審査ということになるわけでございますが、内容がそれだけでは不十分な場合には、さらに事業主にいろいろ必要な資料を出させて疎明をさせるとか、場合によっては事業所へ行く場合もございますが、確かに全部の申請案件についてそれをすべからくやるというわけにはなかなか実際上まいらない面もございますので、たまたまピックアップしてやるという形で行われるケースがほとんどでございます。
  225. 中路雅弘

    中路委員 私は幾つか雇用調整助成金に関連してお伺いしたのですが、私が特に強調したいのは、これは大臣にも聞いてほしいのですが、いま不況下で、でも大企業の方はやはり資料を見ましても、鉄鋼大手五社の内部留保だとか総資産だとかを各社別に集めた資料もありますが、たとえば昨年十二月に高炉メーカー大手五社が提出した半期の報告書を見ますと、八一年九月から八二年九月までの一年間で、内部留保で千百六十七億円ふやしておるわけですし、総資産では五社で五千百五億円もふやしています。そういう中で、特にいま中小企業の倒産というのが大変なんですね。月平均でも三年間連続して危機ラインと言われている千五百件近くに追っているわけですから、せっかくつくられた雇用調整助成金について、大企業はいけないと言っているわけじゃなくて、やはりこうした中小企業なんかにももっと手厚く優先適用させるという道も活用すべきじゃないかというふうに思いますし、それから、基準行政上からもこの運用については厳正にしていかなければならない、必要なチェックと指導を行っていくということが必要ではないかと思うのですが、この点は政治の指導の問題ですから、行政指導の問題ですから、大臣からも一言御意見をお伺いしたい。
  226. 谷口隆志

    谷口政府委員 ちょっと私から先に答弁させていただきますが、雇用調整助成金につきましては、もう御案内のとおり、景気の変動とか産業構造の転換に際しまして事業規模が縮小される場合に、一時休業とかあるいは教育訓練することに対する助成でございまして、やはり中小企業の方が経営基盤も弱いし、そういう不況等の影響も受けやすいとか受け方が大きいとかというようなことも勘案しまして、すでに助成金の制度の中では助成率を高めるとかそういう配慮をいたしておるわけでございまして、いろいろな状況をにらみながら今後運用していかなければならぬと思いますけれども、こういう厳しい雇用情勢の中で、やはり雇用調整助成金が設けられている本来の趣旨に基づいて適正に活用されるようにという面からは、十分気を使って配慮、努力をしてまいりたいと存じます。
  227. 松井達郎

    ○松井(達)政府委員 私どもももちろん基準法違反があればこれは当然基準法違反として指摘するものでございますけれども、しかしながら、いままでお話し申し上げたような、たとえば三六協定の適正化の指導につきましても、これは先ほど申し上げましたとおり三六協定を結ぶ目安を決めているわけでございまして、あくまで三六協定は労使の話し合いが前提になっておるものでございますから、その辺はひとつ御理解をしていただきたいと思いますし、また、私どもといたしまして、その根本にあるような人員計画とか生産計画とか、これはさらにその奥の話でございまして、行政指導に当たりましては、先ほど申しましたように基準法違反であるかどうかとか、あるいはさっきまで申し上げましたような労働時間に関する行政指導の柱に沿った指導であるとかいうことで物を指導するという方針でやっておるところでございます。
  228. 大野明

    大野国務大臣 雇調金の問題に関しまして、いずれにいたしましてもその制度の趣旨を十二分に踏まえて今日まで労働省としても努力をいたしてきております。  先生御指摘のように、大企業はどうだとか中小企業はこうだとかいうことでなくして、現実にそういうような縮小を余儀なくされたというようなことで転換せざるを得ないとかということを考えますと、企業というもののあり方からいって、いずれにしても、失業を予防するとか、そういうことに大きく活用して、また寄与しておると思っておりますので、今後ともその趣旨を踏まえてやっていきたい。また、制度の中身等についてはもうすでに両局長からお話があったとおりでございます。
  229. 中路雅弘

    中路委員 これで終わりますけれども、先ほど例で挙げました、たとえば清掃作業がやられている。実際に報告ではオンライン教育となっていますけれども、中身は、私も現場で、現地で調べてきたことですが、清掃作業がやられているとか、あるいは先ほど言った冷延改造工事ですね、これは十月の業種指定から半年前の去年の三月に決められて従業員にも明らかにされているものなんですね。予定されている改造工事に伴う通常の教育訓練、それを雇調金の対象にするということは、この雇調金について労働省の職業安定局が出された雇調金の関係の解説を見ましても、通常行われる教育訓練ではないことということが強調されている、そういう点で、私が例示で一、二挙げましたけれども、この点では一度出先を通じて調査をしていただきたいということを最後にお願いしたいのですが、いかがですか。
  230. 谷口隆志

    谷口政府委員 御指摘のありました点については調査をしてみたいと存じます。
  231. 中路雅弘

    中路委員 時間ですので、終わります。
  232. 古屋亨

    古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十六分散会