運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1983-04-12 第98回国会 衆議院 環境委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十二日(火曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 國場 幸昌君    理事 天野 公義君 理事 中村正三郎君    理事 畑 英次郎君 理事 牧野 隆守君    理事 阿部未喜男君 理事 串原 義直君    理事 有島 重武君 理事 中井  洽君       橋本龍太郎君    八田 貞義君       勝間田清一君    水田  稔君       永末 英一君    藤田 スミ君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       加藤 陸美君         環境庁企画調整         局長      正田 泰央君         環境庁大気保全         局長      吉崎 正義君  委員外出席者         参  考  人         (成蹊大学名誉         教授)         (中央公害対策         審議会環境影響         評価部会長)  金沢 良雄君         参  考  人         (岡山大学医学         部教授)    青山 英康君         参  考  人         (東京工業大学         講師)         (工学院大学講         師)      磯辺 行久君         参  考  人         (全国公害弁護         団連絡会議副幹         事長)         (川崎公害訴訟         弁護団事務局         長)      篠原 義仁君         参  考  人        (東京都副知事) 野村 鋠市君         参  考  人         (経済団体連合         会環境安全委員         会委員長)   岩村 英郎君         環境委員会調査         室長      綿貫 敏行君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   水田  稔君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     水田  稔君 同月二十四日  辞任         補欠選任   水田  稔君     山花 貞夫君 同日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     水田  稔君 同月二十五日  辞任         補欠選任   水田  稔君     中西 績介君 同日  辞任         補欠選任   中西 績介君     水田  稔君     ───────────── 三月三十日  中国自然歩道維持管理費財政措置に関する陳情書(第一七〇号)  霞ケ浦の水質改善対策の強化に関する陳情書(第一七一号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案土井たか子君外二名提出、第九十四回国会衆法第五号)  環境影響評価法案内閣提出、第九十四回国会閣法第七一号)      ────◇─────
  2. 國場幸昌

    國場委員長 これより会議を開きます。  第九十四回国会土井たか子君外二名提出環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案及び第九十四回国会内閣提出環境影響評価法案の両案を一括して議題といたします。  この際、お諮りいたします。  両案につきましては、第九十五回国会におきましてすでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 國場幸昌

    國場委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────  環境影響事前評価による開発事業規制に関する法律案  環境影響評価法案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  4. 國場幸昌

    國場委員長 これより質疑に入ります。  本日は、参考人から御意見を聴取し、参考人質疑を行うことといたします。  ただいま御出席いただいております参考人は、成蹊大学名誉教授金沢良雄君、岡山大学医学部教授青山英康君、東京工業大学講師磯辺行久君、全国公害弁護団連絡会議幹事長篠原義仁君、東京都副知事野村鋠市君経済団体連合会環境安全委員会委員長岩村英郎君、以上六名の方々でございます。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございま、す。参考人の皆様には、それぞれのお立場からどうか忌憚のない御意見をお述べいただきますよう、お願い申し上げます。  なお、御意見の開陳はおのおの十五分程度に要約してお述べいただきますよう、お願いいたします。その後、委員質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、金沢参考人からお願いいたします。
  5. 金沢良雄

    金沢参考人 私は、ただいま御紹介いただきました金沢でございます。  私は、中央公害対策審議会環境影響評価部会部会長をいたしており、昭和五十四年四月に中央公害対策審議会として「環境影響評価制度あり方について」の取りまとめを行いまして、速やかに環境影響評価法制度化を図られたい旨の答申をいたしました。したがいまして、私は、政府案早期成立を心から望むものであり、本日は、このような観点から意見を陳述いたします。  中央公害対策審議会では、昭和五十年十二月に環境庁長官から「環境影響評価制度あり方について」の諮問を受け、以来三年有余年月をかけて、わが国実情を踏まえた制度あり方について慎重に検討を行いました。その検討の結果、私どもといたしましては、環境影響評価制度を早急に確立することが必要であるという結論に達し、法律による制度化必要性環境影響評価制度内容などについて答申をいたしました。  まず、環境影響評価が必要となりました背景について申し上げます。  わが国では、過去、深刻な環境破壊を経験いたしましたが、公害発生自然環境破壊は、一たん起こりますと、その対策には多くの費用と年月を要し、また、その完全な回復はきわめて困難であります。したがって、環境保全のためには、環境汚染未然防止を図ることが第一と考えます。とりわけ、わが国は約三十七万平方キロメートルという狭い国土の上に一億を超える人口を擁しており、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業実施前に、まず環境影響評価を行い、環境汚染未然に防止することが環境保全を図るための必須の条件であります。  このような認識は広く定着しており、各省庁の行政指導などによりまして、事業種類別に、また、各地方公共団体におきましては条例あるいは要綱などによって、地域別に、それぞれ環境影響評価が行われております。また、目を海外に向けますと、アメリカ合衆国の国家環境政策法を初めとして、スウェーデン、オーストラリア、フランスなどにおきましても、環境影響評価制度の一般的な根拠法が制定されております。さらに、一九七四年には、OECD加盟国に対し、OECDは、環境の質に大きな影響を与えると思われる事業環境に対する影響予測し、明確にするための手続方法を確立するように勧告を行っているのであります。  このような背景のもとに、中央公害対策審議会におきましては、環境影響評価制度について検討を行ったわけであります。  まず、従来のわが国環境影響評価実情を見ますと、環境影響評価を行う目的対象調査予測及び評価を行う時期、環境保全範囲、その具体的な手続がさまざまな状況にありました。たとえば、環境影響評価といっても、事業実施環境に及ぼす影響についての事前調査予側及び評価をすることで足りるのか、あるいは関係行政機関関係地域住民意見をも聞くことが必要なのか、さらには関係地域住民意見はだれがどのようにしてこれを聞くのか、あるいはまた、地方公共団体事業者の行う手続にどのような関与の仕方をするのかなどについてさまざまな実情でございました。  このように、環境影響評価制度の輪郭が明らかにされていないことから、環境影響評価について過大な期待、また反面、不安が持たれておりました。調査等の項目や方法が明らかでないことから、一体どの程度まで調査を行うべきかをめぐりまして混乱が生じたり、あるいはまた、関係地域住民に対する周知、意見聴取につきましても、事業者関係地域住民双方に無用の警戒心が生じ、関係地域住民理解を得る上で支障があったわけであります。こうした混乱を避けるために、環境影響評価の統一的なルールを、法律によって早急に確立することが必要であると考えるに至りました。  法律によることが必要であるという理由といたしましては、次のようなことが考えられます。  第一に、環境影響評価が確実に行われるようにすることであります。そのためには、環境影響評価を行うことが公法上の義務であることを明らかにするとともに、その義務内容を明確に定めておく必要があります。  第二に、国、地方公共団体関係地域住民事業者との関係を明確に定めることであります。特に、地方公共団体事業者との関係につきましては、事業者が行うべき調査などに地方公共団体がどのように関与するのかということを明らかにしておく必要があります。  第三に、地方公共団体制度と国の制度との関係を定めるには、法律によって定めることが必要であります。  次に、環境影響評価制度目的について申します。  事業計画決定に際して、従前はややともしますと、環境保全要因に対する配慮が忘れられがちであり、事業実施段階支障が生ずることもありましたが、このようなことがないように、環境保全要因を不可欠なものとして社会的、経済的要因とともに事業者配慮するようにさせておくことが目的の第一であります。  第二に、環境影響評価の過程において、関係行政機関役割り関係地域住民関与を明確にいたしまして、これらの者の意見事業計画決定に反映させていくことであります。したがって、制度の基本的な仕組みも、この目的に対応して事業者事前に十分な調査等を行い、その結果を公表して、地域住民意見をも聞き、十分な公害防止等対策を講じていくものとして構成しております。これは、事業者主体となって手続を行っていくという、いわば事業者セルフコントロールを中核とした制度であると考えられております。  さて、政府案でございますが、その目的基本的仕組みは、以上述べてきたような答申趣旨に即したものであると考えております。本法案では、対象事業から発電所が除外され、これは答申と異なる点でありますが、その一方では、また法案は、その作成段階において改善された点も幾つか見受けられるのであります。  第一に、地方公共団体により手続進行管理が行われるようになり、関係地域決定準備書面の縦覧など、手続の節目となる重要なものを知事が行い、その適正な手続進行が図られるようになったのであります。  第二に、対象事業許認可に当たりましては、許認可権者環境影響評価の結果について適切な配慮を行い、行政へこれを反映させることによって環境影響評価手続のけじめをつけるということ、この点は二十条以下の、いわゆる横断条項によって定められているところでございますが、このように政府案は、全体といたしまして見た場合には、答申趣旨に沿うものであり、環境汚染未然防止に重要な役割りを果たし得るものであると確信しております。  このような法案提出されて以来、三年目を迎えておりますが、統一的なルールがないことによる混乱を避けるためにも、できるだけ早期政府案成立させることが必要であり、環境保全のため、着実に前進するよう努力すべきであると存じます。  中央公害対策審議会環境影響評価部会では、三年有余年月をかけ、多大の努力を払って、各界の意見を十分に聞き、早期に統一的な法制度をつくるべきであると答申を取りまとめたのでありましたが、答申以来、すでにまる四年を経過しているのであります。  私は、本法案成立により、この中央公害対策審議会における努力の結晶をぜひ実らせていただきたいと切に願うものであります。私ばかりでなく、和達中公審会長政府案早期制定を強く要請しておられる次第であります。  最後に、今国会における一日も早い政府案成立を望むことを重ねて申し述べまして、私の陳述を終わります。
  6. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、青山参考人にお願いいたします。
  7. 青山英康

    青山参考人 岡山大学青山でございます。  私自身は、いまから二十年ほど前に、新産都法による各地の工業開発が進められていた段階で、わが岡山でも水島地域工業開発が進められましたが、その際にすでに事前調査必要性を指摘してまいりましたし、私どもの著書の中にも、地域工業開発に当たっての事前調査必要性というものは指摘をしてまいりました。  その後の公害健康被害者発生、そして、その救済というものに直接関係をさせていただいた立場から、特に健康被害について、医学立場から、きょうは発言をさせていただきたいと思います。  事前調査につきましては、前もっての調査結果、そして、その後の開発経過、そして、その開発が行われた後の状況、そういったものを科学的に調査をし、科学的に予想をし、それを地域住民方々公開をし、そして、地域住民の了承を得て開発が進められていくということが民主的なルールだろうというふうに考えます。  その意味で、今回のこの法律案に関しましては、一日も早く法案を制定していただきたいと思いますし、また、制定されるに当たりましては、よりよいもの、より内容のあるもの、効果のあるものを通していただきたいというふうに思います。  そこで、そういうふうな考えのもとに、この事前調査アセスメント法案はどういうふうな目的でつくられなければならないのかという原則を述べてみたいと思います。  まず、その法案必要性を三点挙げてみたいと思うわけです。  第一番目には、前もって開発が行われる事前状況を正確に把握するということ、そして、事業が進められる経過の中で、それがどのような状況になるのか、そして、開発が進められた段階ではどういうふうな状況予想されるのか、こういうことを科学的に正確に把握するということだろうと思います。  第二番目には、この開発が進められた結果として起こり得る、たとえば健康被害だとか、また、環境破壊だとかといった、そういう悪い影響未然に防いでいくということが目的だろうと思います。  第三番目には、そういった科学的なデータ予想というもので、常に住民の同意を得てこの開発が進められる、この民主的な行政あり方というものを確立していくというのも目的だろうというふうに考えます。  そういった意味で、この目的を果たす、また、目的に向かって進めていくためにはどういうことを考えていかなければならないのか、私、七点ほど原則を挙げてみたいと思うわけです。  まず第一は、この法案対象とする開発事業の問題だろうと思いますけれども、いままでのいただきました資料を点検させていただき、また、この法案審議経過を見させていただいて第一に感ずることは、この対象は、法制化ですから、できる限り統一して、幅広くカバーすべきだろうと思います。  第二番目に、その場合の許認可の問題というのは、やはり統一的な許認可主体を明確にするべきだろう。なぜならば、その許認可責任主体を明確にするという意味でも、対象別許認可主体が変わってくるということは混乱を招くだろうというふうに考えます。  第三番目には、責任主体を明らかにするということになるわけですが、この責任主体を明らかにする場合に、大規模事業、また小規模事業地域といっても都道府県を二つ以上超える場合、いろいろな状況が考えられる。少なくとも、許認可責任主体というものは、できるだけ地域段階でまずは行われることが望ましいことだろうというふうに考えます。  第四番目に、事前調査及び経過調査、それから予測という、そういったものは、科学的にも、また中立公正の機関によって行われなければならない、この調査主体というものを明確にしておく必要があるだろう。さらに、こういったものの評価の基準、技術というようなものは、国でもって統一的な、特に環境庁等による科学的な技術水準が示される必要があるだろうというふうに考えます。  第五番目には、この事前調査及び経過の中での調査の結果が適確に生かされて、いわゆるフィードバックされて、計画というものが常によりよい計画に改善されていく、そういう機構もこの中で備えておる必要があるだろうというふうに考えます。  第六番目は、住民参加の問題でございます。住民参加という場合の住民対象の問題でございますけれども対象とする住民の場合には、十分な科学的な知識も不足している場合があります。そういう場合には、どうしても住民の側としては、その専門家、全国的な規模説明もし、分析もする住民が必要でありましょうし、住民投票ということになれば、直接影響を受ける住民に限定されてくるかもわかりませんが、説明会参加し、そして意見をつくり、また、意見を述べるという段階においては、この住民範囲を限定すべきではないだろうというふうに考えるわけです。  最後に、事前調査を行い、この事前調査科学性について、また、経過をフィードバックし、生かす場合、また、予想が立てられて、それが状況が変わってきた場合、そのために不正があるとすれば、やはり明確に罰則規定も設定しておかなければならないだろうというふうに考えるわけです。  そういうふうに考えてみますと、今回の法案の討議の中で、お互いに何か事業開発を進めることが悪であるとか、また、住民参加をすれば混乱を招くだろうというふうな不信状況での両者の言い争いを幾ら続けていても、これは不毛だろうというふうに私は考えます。  民主的な行政というのは、当初は時間もかかり混乱も招くかもしれませんが、やはりこれは執拗に、より幅広い住民参加が得られ、より科学的で正確な評価が下されるような努力は、民主主義行政として行われなければならないだろう。言うなれば、これまではそういった民主的な手段が、とかく事業の期間を早めるという形で犠牲にされた点が不信を招いたのだろうというふうに私は考えます。  いままで私も数多くの地域段階における事前調査、また、評価というものに参加をさせていただきましたけれども、少なくとも、公開の場で住民の中にデータを出して、この事業開発によるメリット、そして、デメリットを正確に科学的に説明し得た場合には、混乱を起こした経験を持っておりません。そういった意味で、やはり民主的なルールというものは、時間はかかっても、それが正確に科学的に数多くの住民に納得の得られる形の手段さえ正確に踏んでいけば、混乱もなく、成果も大きいのではないだろうかというふうに考えます。  そういった意味で、最後にもう一点加えておきたいことは、こういう公害問題といいますか、地域的な開発による環境影響というものを考えた場合には、非常に地域性があるだろうというふうに考えるわけです。  すでにアセスメントにつきましては、たとえば電源開発による場合、また、それぞれの都道府県によってもこういった条例を持っております。これはその地域その地域によって非常に特徴がございます。そういった意味で、法的に統一的に取り扱うことが必要ではありますけれども、また、地域の特性についても十分尊重される必要があるだろう。そういった意味では、法律でもって、現在、より進んだ条例を持っているものを、これを排除するようなことが法律の施行でもってなされてはならないだろう、こういうことを最後につけ加えさせていただきまして、当面の私の意見にさせていただきます。
  8. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、磯辺参考人にお願いいたします。
  9. 磯辺行久

    磯辺参考人 ただいま御紹介いただきました東京工業大学磯辺でございます。ちょっと声を悪くしておりまして、多分これはたばこのせいだろうと思うのでございますけれども、お聞き苦しい点はひとつ御了承いただきたいと思います。  私自身、きょうは少し違った角度からお話しというふうに思っておるわけでございますけれども、まず、アセスメント制度そのものに対しましては、従来の環境行政の中できわめて評価すべきことであるというふうに基本的には考えております。ただ、私ども観点と申しますのは、多少技術的な観点から、この運用に当たりまして、いろいろお願いをしてみたいというふうに実は考えておるわけでございます。  御承知のとおり、わが国国土三十七万平方キロ、四つの島に一億二千万の人間がひしめいている。国土の約七・五%というところに全人口の三八%が居住しているという、きわめて特異な状況にあるということ、さらに、日本列島の特質から言いまして、火山灰性の土壌の分布というのが非常に顕著でございまして、これがきわめて自然災害をもたらす要因になっておるということでございます。  さらに、雨量について申し上げますと、年間の雨量は千八百ミリと言われておりますけれども、これはちなみに、世界平均以上ということになっておりますが、人口一人当たりの雨量につきましては、世界平均のほぼ五分の一である。一体これは何を意味するのかといいますと、結局、水需要と水の資源のアンバランスがきわめて大きく作用しておる。その意味で、いま申し上げました水の資源、それから土地資源というのは、きわめて重要な環境資源であるというふうに私どもは基本的に理解しておるわけでございます。  多少個人的なことになりますけれども、私自身アメリカで、ちょっとお耳になれない言葉かと思いますけれどもエコロジカルプランニングというものを長いこと勉強しておりまして、これは環境利用適性評価皆さん方影響評価という言葉をお使いなんですが、私がいま申し上げているのは適性評価、これがエコロジカルプランニングと言われるものの内容でございます。  ちょうど私が勉強しておりましたころ、今回の法案のある意味でのもとになっております国家環境政策法が制定された時期でございまして、私もそういったような仕事をしておったために、この法律の何らかの影響を受けて作業をしておったというふうに理解をしているわけでございます。  ただ、ここでアメリカ国家環境政策法と今回の法律についての比較を申し上げるのは適当ではないのでございますけれども、私がどうしても気になりますことは、アメリカ国家環境政策法日本で言えば環境保全基本法に当たるものであろうと思うのですが、その目的の中に、環境人間の豊穣で快適な調和を助成するということを、きわめて理想的なものを掲げていると同時に、きわめて重要な生態系天然資源について十分理解いたしなさい、いま申し上げましたエコロジカルプランニングとは言いませんけれども、エコロジカルという言葉がその法律の頭に出てきているわけでございます。  先ほどの話に戻りますと、エコロジカルプランニングは何かといいますと、これはアメリカでできた学問でございますので、御承知と思いますけれども、最小のコストで最大の利益をもたらす土地利用、あるいは先ほど申し上げました水資源土地資源利用の最良の方法を工夫するための学問であるというふうに言ってしまってよかろうかと思います。  これもまた、多少個人的なことになりますが、ちょうどそうした折に、私どもアメリカにおりましたときに、日本のお役所から一通の手紙が舞い込んでまいりました。これは、あるお役所で山形県に、当時列島改造の一環だと思うのでございますけれども、米沢で工業団地をつくります、ついては環境アセスメントなるものをいたしたい、日本で余り経験がないので、私どもの大学に専門家がいるであろうから、ひとつ来て協力をしないかということでございました。そういう理由で私、日本に参りましたのは昭和四十七年でございます。  当時まだ、アセスメントがそれほど普及していなかったというふうに理解しております。そのときに、アメリカから日本に帰りまして、日本エコロジカルプランニングをやるときには何が一番大事なのかという話をされてきたわけでございますけれども、その中で、日本では地下水の問題が非常に重要である、地下水というのは、火山列島では絶対量が大変少のうございます。それから分布が非常に不均等でございます。それともう一点、海岸の保全をしなさい、これが要するにアメリカ大陸などと違う、日本が列島であることの性格による、日本でこれから環境問題を考えていく場合の重要なポイントになりますよということで、日本に参りまして、実は作業を始めたわけでございます。  ちょうどこの工業団地が、御承知と思いますけれども、山形県を代表する河川である最上川の源流地と申しますか、源流地というのは、河川がだんだんこうしてきまして、それが流れ出すというのが源流地でございまして、したがって、源流地では地下水位が非常に高いわけでございます。地下水位が高いというのは、ちょっと掘れば地下水が出てくる。もし、こういう状態の中で工業団地、当時予定されておりました工業団地といいますのは鋳鍛造、鋳物でございます。当然これは水の汚染あるいは重金属の汚染というのが予想されるわけでございますので、私どもは、アセスメントするに当たりまして地下水の分布を調べまして、地下水位が一番低いところ、つまり上に出てきてない部分で工業開発をやれば、そうでないところよりも影響が少ないであろうということで、地域の選定をしたわけでございます。同じ米沢盆地いろいろございますけれども、多分この辺は比較的地下水の問題が少ないであろうというところを実は選定したのですが、御承知のとおり、日本アセスメントというのは、当時からすでに場所が決まっておったということなのでございますね。  その当否はここで問うつもりはないのでございますけれども、いまのいろいろなお話の中で、多分食い違っておるのは、そういったような多少の代替案、まだ物を決める前に多少の選択の余地があるということ、これがつまり代替案でございます。それからもう一つは、代替案が成立するということは、対策、そこでもし重金属の汚染があるならば、二次処理、三次処理をしますよという対策がきわめて立てやすい、これが第二点、したがって、環境あるいは公害対策にかかるコストがきわめて廉価で済むであろうという、選択の問題がどこまで可能になるのかというのが、実は先ほど申し上げました、環境の適性と環境影響評価という、二つの違った考え方にあるわけでございまして、むしろ私どもがここで申し上げたいのは、環境の適性を利用することによって、先ほどアメリカの例で申し上げましたように、自然の資源をなるべく有効に使おうという、そういう基本的な理念がございませんと、多少口幅ったいことでございますけれども法律がどんなにりっぱであろうとも、その運用に当たりていろいろな支障が起こってくるであろう。  つまり、私どもが申し上げておりますのは、この法律が制定されるに当たりまして、いま幾つかお願いしましたような基本的な理念について、ひとつ何とか合意をおつくりいただきたい。  といいますのは、もう少し技術的に申し上げますと、ただ単に影響評価することではなしに、自然の資源が持っておる、自然作用というふうに私ども申し上げておるのでございますけれども、自然の作用をもう少し活用すること。もう少しわかりやすく申し上げますと、たとえば、いま影響評価対象になっております大気の質であるとか水の質、あるいは植物の緑であるとか土壌という個々の問題の評価自身は、必ずしも人間がそこで何かをするというときのコスト計算をするのには適当でない。つまりわかりにくい要素を持っておる。じゃ、どういうことを評価しておいたらいいのかといいますと、たとえば、いまの山形の例で申し上げれば、どの部分が地下水の分布が汚染に対して一番いい状態にあるのか、悪い状態にあるのか、あるいは表流水といいまして、地上の表を流れる水が汚染されやすい地域条件とか、汚染されにくい地域条件、あるいはもっとわかりやすく言いますと、たとえば大気というものがございまして、これはいろいろな複雑な動きをいたします。  そこで上がっているたばこの煙がこっちへ流れてくるというのは、そのドアがあきますと風が入ってまいりますから――いや、別にたばこをおやめいただかなくても結構なのでございますけれども、そういう自然の風の動きで煙がどちらへ流れるかというのが実は非常に重要なのでございます。  これは要するに自然の、言ってしまえば神様がつくった部分というものを、先ほど申し上げましたエコロジカルプランニングでは非常に大事にするわけでございます。そういったようなことで、大気がどちらへ流れるかというようなことを判断しながら、どこに煙突を建てたら一番人間に被害のないところへそれが移動するかというような判断についても、きわめて大事になってくるわけでございます。  一体、私は何を申し上げようとしているのかといいますと、一番の問題は、事業計画ができてから影響評価することのむずかしさがやはりそこにあるのであろう。エコロジカルプランニングあるいは先ほど日本語で土地利用適性評価と申し上げたのは、そういったような環境情報を事前になるべく早い機会に整備しておく。  話が前後いたしますけれどもアメリカ国家環境政策法で私どもが作業しておりましたときに、そういったような情報は日本に比べてきわめて豊かであるというのは事実でございます。そういったような情報をひとつ十分に整備していただくこと。それに当たって、自然作用というものを十分に理解していただくこと。  私、きょうは実はそういったような観点から、公共団体がいろいろな試験的なあるいは実践的な仕事をしておられるのを御紹介しようと思っておったのですが、時間がなくなりますので、ちょっと割愛させていただきますけれども、たとえば私どもアメリカからそんなものを勉強して帰ってきたときに、日本のある人に言われたのですが、そんなことは日本では昔からちゃんとやっておった。たとえば皆様方よく御承知の鬼門という言葉がございます。これは多分地下水の涵養源に当たるはずだ。だからそこへ便所はつくってはいけませんよ。あるいは方位という言葉がございます。これは詳しく勉強いたしますと、必ず風の道とのかかわりがあるはずです。こういうことに関しては村の故老は必ず知っておられるのではなかろうか。  たとえば最近よく言われております地名の問題でございます。この中にもエコロジカルな要素が非常に入っておる。二、三例を申し上げますと、谷の口という地名がございます。これは必ず豪雨に見舞われる地域でございます。それから宮の前、尾崎というような地名がございます。これは必ずお宮が建っておりまして、いつでも風が強いところで、こういうところに家を建てるものではない。あるいは谷戸、谷津、久保、窪というのは、これは必ず谷間の地形でございますし、がけ地としては乃木とか野呂とか、それから水だまりとしては瀞でございます。  ところが、最近御承知のとおり、みんな地名が変更されるだけでなしに、地形が変更されておりますので、そしてみんな希望が丘だとか桜台というような名前がついておりますので、過去帳がなくなっております。こういうものをちゃんとたどっていけば、土地の条件というのは必ずわかるはずだというような考え方、これが先ほど申し上げました、自然の作用というものを十分に理解した、非常に貴重な資源の使い方なのだというのが、実は私のきょうの御理解いただきたいポイントの一つでございます。  最後に、長くなりますので、環境アセスメントの中心になります環境情報、これがきわめて重要なんでございます。私、いろいろ読ませていただいたのでございますが、今回の法律の中で環境情報の中立性というのをどこで担保できるのか。端的に言ってしまいますと、つくりたい人が集めた環境情報というのはどうしてもそれに傾斜してくる。あるいは、つくりたくないと思う方が環境情報を収集されると、これはなかなかむずかしいということで、私は、とりあえず五つの条件が環境情報にはあるだろう、それだけ申し上げておきたいと思うのです。  まず、情報の一つは自然の条件である。これは大気とか水質とか緑とか土壌とかいったようなもの、いわゆる神様にかかわる部分でございます。それから二番目が土地利用の現況でございます。あるいは将来の動向、これから土地がどう変わっていく、どう使っていく、いまどう使っておるのかという、これは人的な利用にかかわる部分でございます。それから三番目は、先ほどちょっと御紹介いたしましたけれども自然災害の実績というものがございます。どこでどういうふうな洪水が起こり、地すべりが起こったかという実績でございます。これは多分神様と人間の共同作業の結果であろう。それから四番目には、いわゆる公害の現況でございます。どこでどういうふうにppmがどうなっておるかという、いわゆる人間がつくった部分、神様と不調和の部分である。それから五番目には各種の法規制、これは行政がおやりになることですから重要である。この法規制というのは、御承知のとおり、公害にかかわるもののみならず、各種計画等々が含まれるわけでございます。  これを全部重ねてまいりますと、私どもの専門用語で仮にこれを地図の上に重ねてみます。そうしますと、いろいろなことがわかってくるわけでございまして、端的な例ですけれども、たとえば神奈川県のある大都会では、公害が非常に悪い状態であるところに同時に自然の災害がそこに密集しておるというところが、きわめて人口密集地であり、さらにその上に開発計画が乗っておるというような計画が幾つでも出てくるわけでございます。私どもがいま非常に大事だと思っておりますのは、そういったような環境情報を重ね合わせることに、あるいは総合的に判断することによりながら、一体どうしたらいいかということを考えていくのが、環境人間の豊穣で快適な調和を助成することであろうということになりますし、もう一つ大事なことは、住民参加というのは、私どもの考えでは、そういう情報がくまなく公開されることである。アメリカの例なんかで申しますと、こういうのは最近はテレビで全部流れておりますので、わざわざ皆さんが集まって協議することもなかろうというふうにさえ言われているわけでございます。  最後に、時間がなくなりましたので、今回の法案につきまして、私、大変賛成でございます。ただ一つだけお願いしたいのは、この法案の運用に当たりましては、いま私がるるお願いしたことが、精神としてどこまで生かしていただけるか。特に、これからの行政指導あるいは公共団体でいろいろおやりになる場合の行政指導の面で、私がいまいろいろ申し上げたことは無理なくやっていただけるのではなかろうか。それから、基本的にはこの法案開発の阻止あるいは開発の免罪符というような、非常に短絡的なものでお使いいただくことが絶対ないように、先ほどアメリカのきわめて理想的な例を御紹介いたしましたけれども、限られた水資源土地資源をどのように有効に使っていくのか、この一点に戻りませんと、どんなに議論をしても、反対と賛成の合意をつくることがきわめて困難であるのではないかということで、私は、そういう意味で、まさに環境行政の新しい第一歩、つまり環境行政の転換を期待しておるわけでございます。  その第一歩として、いろいろな問題は残されていると思いますけれども、こういったような土俵をつくることがまず先決であると基本的に考えておりますので、その点十分御配慮いただきたいと思います。ありがとうございました。
  10. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、篠原参考人にお願いいたします。
  11. 篠原義仁

    篠原参考人 弁護士の篠原です。  私は、川崎市のアセスメント条例ができまして、昨年末まで六年間、そこの審議会に参加しました。その経験を踏まえまして意見を述べさせていただきたいと思います。  私の基本的な立場ですけれども、率直に言って、環境を保全する意味で大変内容のいいアセスメントができるならばそれは賛成であります。今回出ました二つの法案について言いますれば、社会党案について多くの点で私は一致する点があります。しかし、政府案についてはこのままでは同意しかねる点がありますので、その点を具体的に指摘しつつ、私の意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、私は六つの柱を立てて問題点を指摘していきたいと考えています。  一つは、情報公開住民参加の問題です。当然、環境影響評価は、環境影響を与える行為について住民意見を表明し、その意見が十分に反映されることが不可決だと考えます。したがいまして、すべての人がみずから環境に対する意見表明、参加できるような機会と機構が制度的に保障されている必要があると思います。同時に、この意見表明が実質的に担保されるためには、すべての情報がわかりやすく――ともすると、環境アセスメントは大変むずかしいわけです。私どもの川崎市の経験でもむずかしいわけです。ですから、わかりやすく、住民の知る権利が保障されなければならないと考えます。  その場合の制度的な保障を見てみますと、たとえば政府案では、日弁連案と対比してみても明らかなわけですが、そういった知る権利を保障される制度かない。日弁連案では、市民環境保全事務所というのをつくって、そこで情報を収集して住民に情報を提供しよう、こういうことになっているわけですけれども、その配慮がないわけです。  さらに、住民参加条項について言いますと、川崎市の条例から見ても、あるいは社会党案その他から見ても、政府案は大変後退しているということを指摘せざるを得ません。  説明会の開催の問題ですけれども法案では、原則的には事業者が行うとなっています。しかし、私どもの川崎の経験では、事業者が行った場合には、参加した人が質問しても全くそれに答えない、しゃんしゃんと終わることが圧倒的に多いわけです。これはもっと積極的に行政にかませるとか、ほかの公的機関にかませる必要があるというふうに感じています。  住民参加の二つ目ですけれども意見書の提出できる範囲を「関係地域内に住所を有する者」というふうに政府案十条は定めています。これは、先ほども意見があったとおり、全く狭過ぎる問題です。地域住民だけでなくて、大変専門的な知識を要する問題ですから、広く科学者も含めて知恵を結集し、意見を述べる機会を与える、それが正しいあり方だろうと思います。  政府案十二条では、公聴会の開催が書いてありますけれども、そこでは開催の権限は知事に属し、しかも「特に必要があると認めるとき」に開催できるという表現になっています。私どもは、これは基本的に住民の公聴会の申し出権を認めて、申し出があった場合には必要的な開催にすべきだというふうに考えます。この公聴会の公述人の範囲についても、やはり「関係住民意見を聴く」ということで関係住民に限定しています。これも意見提出と同様にきわめて狭過ぎる。ここら辺が改善されなければいけない基本的な観点だろうと思います。  法案においては、公聴会の運営内容については触れていません。しかし、私たちの経験では、この公聴会の運営内容自体が、このアセスメント内容を充実させるのか、あるいは開発に手をかすような形どおりの公聴会に終わってしまうのか、分かれ道だと考えています。私どもが考えていますのは、公聴会が真に住民参加に役立つようにするためには、運営方法内容、そこに本当にかかっているのだと考えます。  したがいまして、公聴会は公述人の範囲をどうとるか、人数をどうするかということを、機械的に開発業者側三人、住民側三人という形、しかも十分、十五分というふうに区切ったものではなくて、基本的にはこう考えます。裁判形式等でありますように、対審構造を導入する形で、一回や二回限りの公聴会で終わりということはしない。開発を一律的に善だ悪だと割り切る必要もありませんし、しかし、それを一回、二回でまた議論を尽くすことも不可能です。  したがいまして、民主主義は時間がかかるといいますけれども、一年、ときに一年半かかってもいいわけですけれども、基本的にそうした対審構造でもって徹底的に双方の言い分を出す、その中で一致点を見出していく、それが民主主義の基本であると思いますし、真にアセスメント制度の本旨がそこにあるというふうに考えます。したがいまして、公聴会のあり方について、運営方法内容に立ち入って配慮した討議が望ましいというふうに考えます。  二つ目は対象事業です。法案は、第二条で対象事業をきわめて限定していまして、しかも、対象事業から発電所または発電施設の設置を除外しています。これは御承知のとおりです。社会党案はもっと広いわけですけれども、たとえば川崎市の条例を見ますと、大変小さな規模開発対象事業に入れているわけです。都市計画法第四条第一項に規定する開発行為(一ヘクタール以上)、埋め立て、一ヘクタール以上の団地施設、いわゆるマンション、一ヘクタール以上を対象事業にしてアセスメント対象にしています。  これは一つの自治体の範囲ですから、一ヘクタールというのが小さい、国レベルではもっと大きいという議論があるかもわかりません。しかし、国の定め方としては、国の法律案の場合には余りにも広過ぎるのであって一ヘクタールが適当かどうかは御議論いただくにしましても、もっと幅広くきめ細かに、小規模開発にも対象事業の幅を広げていく必要性があるだろうと思います。  ちなみに、政府案が除外しました発電所施設について言えば、昨年末に川崎においては、東京電力の川崎の新火力発電所について、これもアセスの対象にしています。こういった点から言っても、政府案は際立った対照を示しているように感じます。  三つ目は調査予測評価の問題です。政府案は、調査、予側そして最終評価に至るまで、すべてその主体事業者に任せています。事業者は、開発事業の及ぼす環境影響事前調査予測し、手続的には関係住民意見ですとか、公聴会あるいは知事、さらに主務大臣ですとか、環境庁長官意見を聞くということにはなっていますけれども、最終的には事業者独自の判断で行い、公的機関の審査を受けない仕組みになっています。川崎市の条例では、学識経験者その他が参加する中で環境影響評価審議会というものを設置しまして、最終的に公的機関の審査を予定しています。こういった第三者機関、公的機関の審査なしに、すべて事業者任せにしてしまうということには大変問題があるということを指摘せざるを得ません。  また、政府案が予定している評価項目は、これは社会党案と比べてもその差が著しいわけですけれども公害の防止及び自然環境の保全に係るものとして、典型七公害自然環境に限定しているわけです。私どもの経験で言いますれば、これはこんなに狭く限定するわけはないわけでして、自然的、社会的、文化的諸環境――文化的諸環境も含めてそれは当然予測評価する必要があるというふうに考えます。  四つ目は、代替案検討実施時期の問題です。政府案には、代替案――複数案と言いかえてもいいんでしょうか、その検討の指摘がありません。しかし、開発をしないことを含めて、代替案検討を当初からやらしておく必要は大変あるだろうと思います。何もそれは開発問題を最初から阻止するという趣旨ではなくて、危険な場所にマンションをつくる必要はないわけですし、危険な場所に大規模開発をする必要はないわけですから、A案の場合にはどうなんだろうか、B案の場合にはどうなんだろうかということで、一つの案にこだわらずに、対象範囲を広く広げて検討する必要があるというふうに考えます。  評価実施時期についても、私どもの考え方では、開発事業の構想段階計画段階実施段階のすべてにわたって数次的に実施させる必要があると考えます。  具体的に言いますと、道路計画関係で私どもよく経験します。道路計画等都市計画事業というのは、十年前、二十年前に計画が決まっていることが多いわけです。それを経過措置的に、すでに計画実施に入っているのはアセスメントしないとなりますと、すべてそれがアセスメント対象から落ちてしまう。ましてや、現在段階アセスをやっておいて、十年後に道路計画をやった場合には諸環境が変わるわけです。それが、すでにアセスで済んでいるからということで脱落させてしまうということは、アセスメントの本旨を忘れた議論になってしまう。都市計画事業は圧倒的にそういった十年刻み、二十年刻みの計画が多いわけですから、その意味で、実施時期について単一的に定めるのではなくて、構想段階計画段階実施段階、そのときどきにわたってやる必要がある、このことをアセスの上では強調しておく必要があると考えます。  五つ目は、都市計画に係る開発事業の特例に関してです。政府案の二十五条では、都市計画に係る開発事業の特例を設けて、環境影響評価手続と都市計画手続をあわせ行うとしました。しかし、環境保全を主目的とする手続開発志向の手続をあわせ行うということは、結局綱引きで、どちらかというと、開発志向に綱引きが持っていかれたというのが、実は私ども、六〇年代の公害が激発する中で経験してきたことです。  私自身も、全国の公害、薬害、食品公害等々と取り組んでいる多くの弁護団で、いま連絡会議の役員をしているわけですけれども、こういった経験を踏まえて言うならば、環境保全の主目的手続と、開発志向の手続が併合的に行われるということは、根本的に考え直されなければいけないというふうに考えます。形の上ではきれいごとで、開発優先ではない、免罪符ではないと言っておきながら、環境開発を同時にやられた場合に、調和どころか開発が優先してきてしまった、この過去の経験に学ぶ必要があるというふうに考えています。  六つ目が、地方自治体の権限の問題です。政府案は、基本的に言いまして、地方自治体の役割りを、率直に言わせていただければ、徹底的に軽視しているというふうに私自身は感じています。地方自治体が、四大公害裁判を初めとする多面的な公害反対運動の展開の中で、大衆的な運動に突き動かされて、公害環境行政を、規制の面でも補償の面でも前進させてきた、それは国に先駆けて公害環境行政、補償行政を前進させてきた、このことを私たちは見忘れてはいけないと思うわけです。そして、現にアセスメントの問題についても、国の法案に先駆けて幾つかの自治体でいま条例が生きているわけです。私どもが経験しました川崎市の条例もその一つです。  ところが、この関係で言いますと、政府案の四十二条は、法対象事業以外の事業について自治体が条例で必要な規定を定めることを妨げるものではない、逆に言いますと、法対象事業については法律範囲内に条例が縛られますよという含みのある表現になっています。たしか、公害防止条例東京条例でしょうか、四十四年七月にできて翌年の十一月に改正があったときに、硫黄酸化物の上乗せ、横出し規制について、法律条例の抵触関係に触れて、どちらが優先するか議論があったと思います。率直に言いまして、法律で地方自治体の条例を縛るような条項をつくってほしくないというのが私の意見であります。法対象事業であっても、地域特性に応じて、その地域状況というのは自治体レベルが一番わかることですから、その自治体の権限において上乗せ、横出しができることを率直に認めるような、そんな内容法案であってほしいというのが私の意見です。  以上のことを指摘しまして、私の意見にかえさしていただきます。
  12. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  次に、野村参考人にお願いいたします。
  13. 野村鋠市

    野村参考人 ただいま御紹介いただきました、私、東京都副知事野村でございます。  東京都の環境保全行政につきましては、日ごろから先生方の一方ならぬ御指導と御協力を賜っております。この機会に厚く御礼を申し上げたいと存じます。  このたび、環境影響評価制度法制化するため、本委員会で御審議いただいておりますことは、東京都といたしましても、大変感謝している次第でございます。  そこで、私は、環境影響評価法の早期成立を心から願っております地方自治体を代表いたしまして、政府案をぜひ今国会成立さしていただきたいという立場から、意見を述べさしていただきたいと存じます。  さて、環境影響評価制度でございますが、これが必要とされるようになってまいりました背景について考えてみますと、一つは、これまでの地域開発に対する反省があろうかと思われます。  御承知のように、わが国世界でもまれな高度経済成長を遂げてまいりました。このような経済発展に伴い、国民の生活水準は向上してまいりましたが、反面、事業活動等による環境汚染自然環境破壊など、環境の悪化をもたらしてまいりました。この事象に対し、国、地方自治体においては、各種の公害対策や自然環境保全のための制度を次々と確立をし、一応の成果をおさめてまいったところでございます。  しかし、今後とも、よりよい環境を保全していくためには、これにとどまらず、公害自然環境破壊などにより、環境を悪化させないよう、その未然防止を図っていくことが強く要請されております。  また、近年、行政の各分野で、住民参加の意識が高まり、特に地域環境に重大な影響を及ぼす開発事業等を行う場合におきましては、地域住民や利害関係者などの理解のもとに進めることが望まれております。このような理解を深めていくための手続ないし制度の制定が強く要請されてきておりまして、これにこたえることが行政として必要不可欠となってきております。  さらに、もう一点つけ加えて申し上げますと、御承知のように、環境アセスメント制度は、米国ではすでに十数年前から実施され、以後、フランス、オーストラリア、西ドイツなどにおいて実施され、制度として定着しながら、環境保全上大きな効果を上げてまいっております。  このような国際的、国内的な背景を踏まえて、わが国における環境アセスメント制度を概観いたしますと、国のレベルでは、昭和四十七年の、各種公共事業に係る環境保全対策についての閣議了解によって、環境アセスメント実施が政府の方針とされ、個別の法令や行政指導によって実績が積み重ねられてまいっております。  一方、地方自治体のレベルにおきましては、環境保全に対する住民の声の高まりを背景に、条例や要綱によって制度化する団体が次第にふえてまいっております。都道府県や政令指定都市の中で、現在、条例を制定しているところは、東京都、北海道、神奈川県、川崎市の四団体であり、要綱を制定している自治体は十八に上っております。その他の自治体におきましても、制度化について検討が行われております。いまや、環境アセスメント制度化は、全国的に普遍化する傾向を示しております。  このような国内的傾向の中で、私ども東京都が制度確立のため取り組んできた事情を若干述べさせていただきたいと思います。  私どもは現在、マイタウン東京構想による人間性豊かな明るい町づくりを、長期計画に基づいて総合的に推進しているところでございます。このような立場から、東京をさらに住みよくするために、生活基盤施設の整備や都市機能の再生に向けて、さまざまな事業の推進が必要とされております。環境を悪化させることなく、これらの事業を推進いたしますためには、あらかじめ事業実施による環境影響予測評価して、環境破壊未然に防止するための環境影響評価手続を確立する必要がございました。  東京都では、昭和五十六年十月一日に東京環境影響評価条例を施行いたしました。昭和五十二年に制度化検討を始めて、足かけ五年の期間を経てまいりました。東京都の環境影響評価制度は、地方自治体としての都が、条例によって実施し得る可能な範囲での手続仕組みとして構成されております。  この制度を構成するに当たりましては、第一に、都民に制度趣旨理解され、参加、協力が得られやすいものとすること、第二に、運営に当たって、円滑に機能し得るものとすること、第三に、予測評価について、より科学性、合理性を確保できるようなものとすることなどに留意をしてまいりました。  条例施行後、現在まで二十件余りの事業手続に関して、事前の指導を行っております。そのうち四件の事業条例による手続を進めておりまして、すでに手続を完了しているものもございます。これらの手続の進捗の過程にありましては、特段の混乱や遅延などもございませんでした。このように手続の円滑な運用が図られておりますのは、条例による一定のルールの確立によるものと評価しております。  さて、ここで、地方自治体の条例や要綱による環境アセスメント制度を概括してみますと、これらの制度には幾つかの問題点を見出すことができます。  まず、その第一は、大規模かつ広域にわたる事業実施された場合、環境アセスメントについては、単に一自治体における制度化だけでは所期の成果を十分に発揮することは困難と思われることでございます。近隣自治体が、相互に調和のとれた環境アセスメント制度実施することが望ましいわけでありますが、それぞれの条例や要綱の制度の違いによりまして、十分に調整を図ることは必ずしも容易なことではございません。  その第二は、国及び国に準ずる公団、公社等の法人が法律に基づいて行う事業につきましては、ほとんどの地方自治体が国などとの協議制を採用しておりまして、条例や要綱を直接適用する制度にはなっていないことに関してでございます。この協議による場合でありましても、国の行政指導環境アセスメント手続実施することもありまして、条例、要綱との手続が重複するケースもあらわれ、この協議の制度が必ずしも十分に機能し得ない実態もございます。  その第三は、許認可制度との関係でございますが、環境アセスメントの結果は許認可等の審査に適切に反映されることが必要でございます。このことが環境アセスメントの実効性を担保する上で非常に重要であるかと存じます。現行法制度のもとで、地方自治体の制度といたしましては、環境アセスメントの結果を配慮して許認可等を行うよう、許認可権者に対して要請することが許される限度であります。条例や要綱では、その結果を許認可に直接反映できないことが限界と考えております。  以上のような点から、環境アセスメント制度が、法律により全国的にも体系的かつ統一性のある手続として制度化され、地方自治体の制度と相まって、整合性のある形で実施されることが強く望まれております。  法による制度が確立されますれば、全国に共通する統一された手続実施され、環境アセスメント制度が円滑に機能し、事業の適正な推進に資するものと考えております。  よろしく、これらの点を御勘案いただきまして、政府案早期成立いたしますよう、強く要望する次第でございます。  引き続きまして、地方自治体といたしましては、政府案成立した場合には、その円滑な運用を期する必要があり、その立場から次の二点について御要望申し上げたいと存じます。  一つは、制度運用が自治体の実情に即したものとなるよう、お図りいただきたいという点でございます。環境アセスメントは、国の問題であるとともに地域の問題でもあります。したがいまして、国と地方自治体との関係においては、環境悪化を未然に防止するため、それぞれの役割りを明確にして、環境アセスメント実施していくことが強く期待されるのであります。また、地方自治体の立場といたしましては、環境アセスメント実施に際して、特に地域の特性に対応できることが必要と考えております。  さらに申し上げたいことは、地方自治体では、すでに条例や要綱に基づき環境影響評価手続実施しているところもございまして、これが円滑に運用されている実績もございます。  以上述べたような次第でございますので、環境影響評価法が成立した場合には、地方自治体の実情に即した運用が図られますよう、施行令、施行規則等の制定過程において、十分に御配慮いただけることとなるようお願いを申し上げるわけでございます。  次に、環境アセスメント制度実施に伴う財政上の措置について御要望を申し上げます。  本制度は、環境保全対策の有効な手段として全国的に大きな成果を上げるものと期待されております。しかしながら、この制度実施される当初から、完全なものとして機能させることは容易なことではないと考えております。今後の制度の運営の過程で、逐次その整備を図っていく必要がございます。地方自治体といたしましても、本制度を定着させ、環境保全施策の一層の推進を図っていく考えでございます。そのため、予測評価などの技術手法の開発、情報の収集及び提供などに関する執行体制の整備につきまして、一層の努力が必要でありまして、これに要する費用も相当なものと考えております。  さらには、この制度の適用を受ける公共事業について、環境アセスメントに要する費用はかなりなものと予想をされておりまして、地方財政への負担も無視できないものかと存じます。  以上述べましたような次第でございますので、現在の地方自治体の逼迫した財政事情を御勘案の上、環境アセスメント制度実施が、地方財政にとって過重な負担とならないよう御配慮いただきますことを、特にお願い申し上げたいと存じます。  最後に一言申し添えますと、環境アセスメント法制化は、今日の環境行政を一層前進させますとともに、地方のレベルでは、地域住民の安全と健康、快適な生活環境の確保に多大な成果を上げるものと期待されております。また、これは事業の適正、円滑な推進にも資するものと考えております。  環境影響評価法案成立につきましては、かねてより全国知事会、全国市長会等から要望してまいりましたが、去る三月十七日には、東京知事と十大指定都市首長の合同による、環境影響評価法の早期成立に関する要望書をもってお願いをしてまいったところでございます。  以上、意見と要望をるる申し上げましたが、これはひとり東京都のみならず、環境影響評価法の早期成立を願っている地方自治体の総意とお受け取りいただければまことに幸いと存ずる次第でございます。  以上をもちまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  14. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  最後に、岩村参考人にお願いいたします。
  15. 岩村英郎

    岩村参考人 私、経団連の環境安全委員会委員長をしております岩村でございます。  本日、この環境委員会におきまして、環境アセスメントに関する両法律案について、私どもの見解を述べる機会をいただきまして、ありがたく存じておる次第でございます。  まず初めに、私ども産業界の環境アセスメントに対する基本的な考え方を申し上げ、続いて法制化に伴う問題点を五つ指摘したいと存じます。  環境アセスメントに対する産業界の基本的考え方は、環境アセスメントそれ自体は必要であるという一言に尽きます。私ども環境アセスメントの意義、必要性については十二分に理解しており、開発事業実施に先立って、事前にその影響予測評価し、環境汚染未然に防止する対策を講ずることは当然であると考えております。現にこのような観点から、産業界では既存の各種関連制度行政運用等によって環境アセスメントに積極的に取り組んでまいっております。公害対策基本法に言う、いわゆる大気汚染、水質汚濁を初めとする典型七公害発生の有無はもとより、自然景観、動植物などの自然環境や社会環境に対する影響についても、現在得られている最高の科学的知見をもとに、最新の技術を駆使して、綿密に調査し、影響予測を行い、評価し、これに対する所要の対策実施しているわけであります。  重ねて申し上げますと、私どもアセスメントそれ自体は必要なことであって、法制化のいかんを問わず今後とも最善のアセスメント実施し、公害防止と環境保全に努める所存であります。産業界が問題にしておりますのは、環境アセスメント実施すべきか否かということではなく、法制化によってどのような問題が生ずるかという点であります。  第一に、訴訟、紛争の続発により、必要な開発事業が大幅に遅延するのではないかという問題であります。先ほども申し上げましたように、産業界では最高の科学的知見と最新の技術を駆使して環境アセスメント実施しておりますが、私どもの経験から申しまして、人体、動植物、自然環境等への影響について、影響予測をし、それを評価するための知見、科学的手法が、現段階では不十分と言わざるを得ない状況にあります。たとえば温排水については、拡散予測は可能だが、海生生物への影響の定量的予測法は未確立であり、評価のための基準もないというのが実情であります。あるいはまた、地域住民の方からは、低濃度大気汚染下における農作物等に対する目に見えない影響、具体的に申し上げますと、環境基準以下のもとでミカンの甘さにどのような影響があるかというような問題でありますが、こういった細かな点にまで現に疑問が出されているわけでありまして、そのような疑問に答えられる科学的知見並びに調査手法は現在のところないわけであります。  こうした現状で、法制化を強行すれば、予測評価の妥当性をめぐって、混乱、紛争が生じ、特に一たび訴訟に持ち込まれた場合には、これらについての論争はゴールなきマラソンとなってしまい、手続の長期化を招くことは必至かと存じます。  確かに、アセスメント法が制定されたからといって、これにより新たな訴訟が増加することはないとの御意見もお聞きします。しかしながら、これは法的な見地から見て、裁判所が正面から取り上げるような有効な訴訟はふえないだろうということであって、社会的現象としての訴訟がふえないということとは全く別の次元の問題かと存じます。アセスメントが立法化されれば、事業に係る許認可がおりるまで一連の手続義務づけられることになりますが、これら手続の節目節目において、その手続の瑕疵や、先ほど申し上げたような予測手法、評価基準についての知見の対立等を理由に、手続が違法か適法かという問題が生じ、訴訟の多発が危惧されるわけであります。  遺憾ながら、わが国の現状では、開発事業に反対するためには、ルールを認めず、実力によって事業を阻止しようとする方々もおられます。そういった人々は、阻止するためには何物をも利用しようとし、法廷戦術も有力な手段の一つとされております。このような方々に対して環境アセスメントと立法化は、まさにかっこうの口実、手段を提供し、判決でたとえ門前払いされることが予測されても、事業を一日でも長引かせ、遅延させるための有効な手段として、訴訟が利用されることは必至かと存じます。これら訴訟が起これば、判決が出るまでの間、実態上後続のアセスメント手続はストップし、開発事業は大幅に遅延を来すこととなります。  また、政府案では、第二十条により、許認可環境アセスメント実施及び手続とを直接リンクさせておりますので、これが立法化された場合、当然、許認可取り消しの訴訟も起こり得るわけであります。さらには、アセスメントの立法化は、環境権の主張に法的な手がかりを与え、差しとめ訴訟の根拠として利用されることもあり得ると聞いております。工場誘致など、地域開発を求める強い声が地方にはあるわけでありまして、そのような要望も無視すべきではないと存じます。  また、環境アセスメントに係る科学的、技術的知見の問題につきましては、私どもはじみちな、たゆまない調査研究の積み重ねに努めるほかはないと考えております。その意味で、この場をおかりしまして、国におかれましても、関係省庁の協力のもとに総力を結集して、予測手法、評価基準に関する調査研究に取り組んでいただくことをお願いする次第であります。  第二に、わが国の社会風土の現状において、適正な住民参加が期待できるのかどうかという問題があります。  両法案とも、説明会、公聴会の開催について規定されておりますが、現実には、開発事業の阻止、妨害のためには手段を選ばないとする一部の方々のために説明会、公聴会が開催できなかったり、機動隊の物々しい警備の中でやっと開催したという例は、原子力発電所の立地や安全審査に係る公開ヒヤリングなどに見られるように、枚挙にいとまがありません。  さらには、柏崎刈羽原子力発電所敷地の保安林解除に係る聴聞会の例のように、反対派の意図的な妨害行動により開催が不可能となったことを盾に、そのことをもって手続に瑕疵があるとして、行政訴訟が提起されたというものまであります。  政府案では、事業者の責めに帰することのできない理由で、説明会が開催不可能な場合は開催することを要せず、代替措置で可能としておりますが、たとえ免責事由を定めておいても、現実での具体的局面で、それに該当するのかどうかで紛糾するおそれがあり、また、手続に瑕疵があるとして訴訟提起の因となることを危惧するわけであります。  環境アセスメント法案住民参加を取り入れた趣旨は、地域住民の生活感覚に根差した意見を反映するためのものであるとされておりますが、前述のように、わが国状況を考えますと、合理的かつ適正な住民参加を実現することは非常に困難であり、かえって立法化により混乱に輪をかけることになるかと存じます。  第三に、法律による条例規制に対する疑問であります。国が法律をつくらないと、地方自治体がばらばらに条例化し、しかも、内容のより厳しいものが出てくる、だから立法化を急がねばならないとの主張があるやに聞いております。  しかしながら、私どもは、むしろ国で法律がつくられますと、それが結局ナショナルミニマム的なものになって、かえって逆に行き過ぎた上乗せ条例を誘発する結果になることを懸念するわけであります。法律条例内容が真っ向から抵触する場合には、一般的に条例より法律が優先するとも言えましょうが、環境アセスメントのような問題で、国よりさらに徹底した内容条例が定められましても、これを法律規制することは、実際上は大変むずかしいと思うのであります。  第四に、行政改革との関連から申し上げます。御案内のとおり、先般、臨時行政調査会から最終答申が出され、いまや行政改革は実行の段階に入っております。新規に環境アセスメント法を設けますと、必ずやこれに携わる行政部局が中央、地方とも新増設され、公務員の数もふえることになるかと存じます。また、手続も増加し、これに伴って行政も民間も負担がふえることは避けられないわけであります。行政簡素化が国家的喫緊の課題とされているときに、これとどのように調和させるかが問題になろうかと存じます。  第五に、総合的評価必要性であります。  開発行為を行えば環境面に対し何らかの影響を及ぼすことは避けられないかと存じますが、それにもかかわらず、空港、道路あるいは工場立地等の開発プロジェクトを進めようというのは、国としての必要性もあり、地域開発への効果、国民生活の向上、社会福祉の増進等のメリットがあるからであります。こういったプロジェクトの持つ社会的経済的影響まで含めた総合的評価をいかにして行うかが問題になろうかと存じます。単に環境の保全のみの観点から評価を行うことは、片手落ちと言わざるを得ないわけであります。  なお、対象事業に関しまして、一言付言させていただきます。政府案におきましては、対象事業を国や地方自治体が行う公共事業にしぼるというのが基本的な考えと理解しておりますが、民間事業と直接、間接に関連の深い埋め立てやダムが対象に含まれており、さらに政令の定め方いかんによっては、民間事業まで際限なく対象事業が広がるおそれがあると私どもは考えております。  以上、環境アセスメントが立法化された場合に危惧される問題点を申し上げたわけでありますが、制度は一度立法化されれば、これを改正することが至難であることは、公害健康被害補償法などの例によっても明らかであります。  当委員会の先生方におかれましては、私どもの意とするところを御理解いただきまして、両法案については何とぞ慎重なお取り扱いをいただきますよう重ねてお願い申し上げます。  終わります。
  16. 國場幸昌

    國場委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  この際、申し上げます。  岩村参考人が所用のため退席されますので、御了承願いたいと存じます。     ─────────────
  17. 國場幸昌

    國場委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水田稔君。
  18. 水田稔

    水田委員 参考人の先生方、本当に御苦労さまでございます。  参考人の皆さんに御質問する前に、委員長にひとつ要望しておきたいと思います。  この法案を今日まで、非常に長い期間をかけて論議をしておるのは、まさに発電所を含め、民間の大型開発については全部法案から除外されておるというところに、先ほど参考人からたくさん御意見がありましたように、本来法律が有効に機能することをみんな期待しておるわけです。それが、一方的に、ためにする利用とか、時間がかかっても民主的にやっていくべきだというのが皆さんの御意見だ。われわれもそうなんだ。言うて、それに答えないなら、私は意見を言ってもらう必要がないと思う。私は御本人に文句を言う。委員長委員会の運営について、そういう点では大事な問題ですから、一番そこらを、外してしまったものが、法律ができて、それが係れば、全部いわゆる訴訟で利用されて開発ができない、一方的な言い分を言いっ放しで帰るというのは、委員会の運営として好ましくないと私は思いますので、委員長の方で、今後の運営についてはひとつ十分御注意を願いたいということを、冒頭、要望申し上げておきたいと思うのです。
  19. 國場幸昌

    國場委員長 水田委員にちょっと誤解があるかもしれませんが、いまの退席問題に対しましては、事前理事会において決定しまして、その承認の上で参考人を招致したわけなんですね。だから、それは今後よく気をつけますが、そうなると、参考人の陳述する内容に対してでも、やはり事前において察知する必要があるということを痛感するわけです。
  20. 水田稔

    水田委員 委員長、違います。参考人の皆さんはそれぞれのお考えがあり、私たちもそれに対して論議をするわけじゃない。御質問申し上げる、国民の前に明らかにするわけですが、質問には答えないという、それを条件に出席をされるなら、それは御遠慮いただきたい。そういう運営をしていただきたいと思います。内容について聞いてもらいたいということを申し上げているわけじゃありません。
  21. 國場幸昌

    國場委員長 はい、わかりました。  それでは質疑を続行します。
  22. 水田稔

    水田委員 金沢先生に一つお伺いしたいのですが、アセスメントの問題について、環境影響評価あり方について、中公審の専門部会で御検討なさって御意見を出していただいたわけです。その内容と、いまの政府案というのは大分違うわけですね。その一番大きなものは、やはり電源立地が外されておるということ、それから、私どもから言えば、民間の大型プロジェクトが外されておるという点では大変不満があるわけですが、そういう点について、中公審の方では御論議なさって、中心でやられたわけですが、御意見はなかったわけです。法案を一日も早くという御意見だったのですが、その点はいかがなものでしょうか。私どもは、やはりこの法律をせっかくつくるのであれば、環境を守るために十分有効に機能してもらいたいという気持ちがあるのですが、その点、いかがでしょうか。
  23. 金沢良雄

    金沢参考人 お答えいたします。  発電所がこの法案対象事業から外されましたことはまことに遺憾と存じます。  それから、対象事業でございますが、これは御承知の、法案の第二条、ここに対象事業として掲げられている十二のものでございまして、「その実施により環境に著しい影響を及ぼすおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。」こうなっております。この十二の種類というものは、これは国の関与する、といいますか、国が行うもの、あるいは国が許認可をするようなもの、そういうものがここに挙がっているわけでございますが、何分にも環境影響評価制度というものがどのような実績ができるのか、そのいわば最初の試みとしては、まず、国についてその姿勢を正していくというのがこの法案立場かと思います。その点はこの程度でいいのではないか、私は、出発の今日の段階におきましては、実行可能な段階として、この程度のものを考えていいのではないかと存じます。
  24. 水田稔

    水田委員 中公審としては、理想的なものとしてのお考えを出されたと思うのですが、御存じだと思いますけれども、これは鯨岡長官が、各省の折衝がまとまらないということで、当時の鈴木総理じきじきから、発電所を外せばということだったわけです。そういうことになったという事実が、いままでこの法案の一番の問題点になってきたわけです。そういう点は、中公審の委員として、政治が大変強い力で、まじめに御論議をいただいた中公審の皆さんに大変失礼だと私は思うのですね。その点についてのお考えをお伺いしたい。遺憾であると言われたのですが、ここから出発して順次よくしていこう、中公審としてはこれで満足していない、そういうぐあいに考えていいですか。
  25. 金沢良雄

    金沢参考人 中公審として満足していないかどうかということは、私から申し上げるわけにもまいりませんが、私個人といたしましては、ただいまの点、電力が外されているということは遺憾に存じますし、恐らく和達会長も同意見かと存じます。
  26. 水田稔

    水田委員 それでは、時間が限られておるものですから、青山先生にお伺いします。  一つは、篠原先生からもお話があったのですが、この法律原案は典型七公害に限定しておる。そうしますと、結局、日照の問題であるとか電波障害とか生態系に相当大きな影響を及ぼすものも、この中では評価対象にならないという場合に、一体十分な評価と言えるのかどうかということと、もう一つ、これも篠原さんからお話がありましたけれども、私どもは、住民がどういう形で、というのは、一つは情報が十分出されてもわからぬという人が多いわけですね。限定された人間だけに公聴会参加ということであれば、当然それは聞いてもわからぬということが多い。これは労働法では、労働者が十分知識がなければ、第三者が委託を受ければ当事者になり得るという、専門家を使うことが労使の間でできるわけですね。そういう点から言えば、まさに先生の言われたような、住民意見を述べるということで、専門家参加というのは大変重要なことだろうと思うのですが、その二点について、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  27. 青山英康

    青山参考人 お答えいたします。  まず第一点の、評価対象がこの七つに限られているということに関しては、すでにその他の状況について、たとえば私も建築審議会の委員をいたしておりますけれども、日照権相当に関しての測定の方法も確立されておりますし、技術的にも確認されているわけですから、現在の科学水準でカバーし得る評価対象というのは、まだまだ大きく広げられるだろう。先ほどからすべての参考人が陳述しているように、この事前評価法案に対する期待というのは、いわゆる環境保全公害健康被害未然防止だろうと考えられますが、今日の科学技術水準で対応し得る評価対象については拡大すべきだろう、それが正確に住民の中に伝えられることが重要だろうというふうに考えるわけです。  さらに今度は、住民の規定の問題でございますけれども、私も、たとえばこの事業開発に賛成するか、しないかという最終的な意思確認は、その地域に居住する住民に限定されるのはいたし方ないだろうというふうに考えるわけですけれども、出されたデータ説明を聞き、それを理解し、それに対して疑問を出し、そして、その疑問に対する回答を十分理解しようとすれば、事業所の方はその専門技術者をそろえることができるわけですけれども地域方々にそれだけの専門的な知識と技術を習得しろということは非常にむずかしいわけで、これは住民に協力する方々の協力を得なければならないだろう。この協力する人も非常に限られている。  大体こういう場合に、私の経験といたしまして、企業に協力している方が研究費も来るだろうと思いますし、住民に協力すると研究費も少なくなるだろうと思います。そうなると、ますます幅広い状況での住民に協力してくれる学者や研究者の参加を得られなければ、せっかく正確に測定、調査をしても、それを正しく理解をする、そして、正しく疑問を投げかけ、また、正しくその回答を理解するということは不可能だろうと考えますので、データに対する公開対象、それに対する疑問、そして、回答を得る状況の中での住民というのは、幅広く設定をしていただきたいと考えるわけです。
  28. 水田稔

    水田委員 もう一つ、青山先生にお伺いしたいのですが、実は環境庁の役割りが、許認可は主務官庁がやりまして、環境庁はそれに対して意見を言うだけ。先ほど篠原先生からお話があったのですが、第三者機関評価をすべきではないかという御意見、私どももそういう原案を出しているわけです。私どもは、そういうぐあいに、意見を述べるだけでは環境庁の役割りというのはきわめて不十分だというぐあいに考えるわけなんですが、その点はいかがでしょうか。
  29. 青山英康

    青山参考人 お答えします。  環境庁ができて以後の環境庁の果たした役割りというのは、功罪いろいろあるだろうと思いますけれども、私は高く評価をしたいと考えておりますし、職員の方々の御努力は、私は十分理解をしているつもりですけれども、今回のこの政府案が施行された場合には、いわゆる許認可というよりも、補助金の問題で主管の大臣の方に判断が移ってしまうわけですから、環境庁は要らなくなってしまうのではないかという不安を私は非常に感じるわけです。  先ほども私が申し上げましたように、環境庁の方からいわゆる国としての評価基準、科学的な基準、先ほど研究開発に対する東京都の方からの御要望もありましたけれども、そういった研究開発技術水準というものは、環境庁で国の統一的な水準を示すべきだろうと思いますし、許認可に対する環境庁の役割りとしては、全行政機関環境保全対策について期待をされているわけですから、その中での環境庁の役割りというのはきわめて重大であり、それが所管のほかの省庁と同格か同格以下に置かれるというのは、逆に環境保全対策としての環境庁の役割りに対する国民の期待を裏切るのではないだろうか。あれだけの環境庁の職員の皆さん方努力が本当に生かされる状況となるように、大臣の役割りを果たしていただきたいというのが私の希望でございますし、意見でございます。
  30. 水田稔

    水田委員 磯辺先生にお伺いしたいのですが、環境情報の中立性ということで五つぐらいのお話があったのですが、残念ながら、日本の社会ではまだまだ行政のいわゆる情報公開というのはごく一部に進んでいるわけですね。それがない中で、いま青山先生にお伺いしたのですが、いわゆる住民参加住民公開されるということが十分でない、環境庁は意見を述べるだけということで、この法案のたてりはそうなっているわけです。  私、先生の御見解をお伺いして本当に勉強になりましたが、そういう点、具体的に先生が言われたようなことでこれができるなら、私どもも大賛成で、すぐいこう、こういう話になるのですが、そういう点がいま申し上げたように、情報が十分住民には提供されておらない。そして、もし出されたとしても、いまの公聴会で出されるのは専門的なもの、大きなものを出して、住民が見てもこれは何かわからぬというような形の中で、しかも限定されたものである。そして環境庁が意見を言うだけということでは、私どもはその点に大変不安があるのですが、その点は先生はどういうぐあいにお考えか、ちょっと聞かせていただけたらと思います。
  31. 磯辺行久

    磯辺参考人 大変むずかしい御質問でございまして、まず、いまの御質問の最初の部分にございましたけれども、一体環境情報とは何かということです。  私どもが基本的に考えておりますのは、一般の人がわからないものは環境情報じゃないんだ、つまり、これは学術的なデータであり、まあまあ科学的なデータであるということは認めますけれども、少なくとも環境情報というのはそういうものじゃない。先ほど私のお話の中で申し上げましたけれども、大気とか水とかいうふうに、やはり断面的に物を見ていきますと、どうしても、言葉は悪いのですけれども、攻める方にとっても守る方にとっても非常な不自由が出てまいります。それともう一点は、わかりやすさという意味では、情報の提示の方法というのがいろいろあるであろう。これは私どもアメリカで勉強してきた方法で、これが日本で一般的かどうかということは別にしまして、まず基本的には、わからないものは情報じゃないということであるということと、それから、情報というのはきわめて地域的なものであり、地域にふんだんにあるものだ。たとえば私どもは、地図の情報というのは非常に重視するわけでございます。なぜ地図を重視するかといいますと、開発計画とか、そういったようなアセスメント対象になるというものは、すぐれて地図の上に出てくるわけでございます。ところが、従来、そうじゃない部分の情報というのは、たとえば日照権であるとか、きわめて抽象的な内容データがなかなかそれとかみ合わないということで、先ほど私、五枚の地図の例を申し上げたわけでございます。  結論で申しますと、そういう情報というのはかなりあるはずなのです。つまり、基本的に言えば、何を基準にして判断しなければいけないかということに返ってくるわけで、きわめて科学的な細かい数字が果たして判断にとって重要かどうか、つまり一番大事なことは、先ほど申し上げましたように、地域環境資源の適性な利用ということにあるわけで、その不適合は公害をもたらすのだという考え方でございますから、きわめて一般的に言ってしまえば、地域の公共団体が過去恐らく七十年、八十年の間に積み重ねてきたデータが幾らでもあるわけでございます。そういうものをうまくつなぎ合わせることによって、私はやはり十分なデータというのはあり得る。しかし、申し上げたように、何をデータとするか、何を基準にするかという違いがきわめて重要なのではないかということでございます。
  32. 水田稔

    水田委員 もう一つ、環境庁が意見を言うだけという点はいかがですか。
  33. 磯辺行久

    磯辺参考人 これは非常にむずかしい質問でございますけれども、私は、まずどれだけデータを持っているかということが意見を言うときの厚み、つまり、それが意見の強さになるであろうということで、これは環境庁にも非常に弱い点もありますし、あるいは開発官庁の方が強い部分もあるということをやはり考えなきゃいけないと思うのです。そういう意味で、私どもはまず土俵をつくった後で、新しい環境行政の展開を図らなきゃいけない。ちょっとこれは論外になりますけれども、たとえば環境を管理していくというような考え方、私どもは本当は、この後に来るものに多大な期待を持っておるわけでございまして、これについてはちょっと論外でございますので、また機会があればということにいたします。
  34. 水田稔

    水田委員 篠原先生に一つお伺いしたいのですが、先生の御意見にも、それからいまの磯辺先生の御意見にも、環境というのは非常に地域の特性というのがある、この法律政府案というのは、いわゆる横出しは認めるけれども上乗せは認めない、こういうことなんです。先生からの御意見もあったのですが、実際問題として、川崎では相当やっていますね、発電所もこうやって。この法律ができると、それの上に出ておる分は一体どうなるのか。環境庁は、ばっさりとはいかぬけれども、だんだんこれに合わすように、こういう指導をやっていく、こういう答弁をいままでしておるわけですね。そういう点では、実際に川崎で先進的に努力されたことが、この法律がこのまま通ることによって、住民がいままで積み上げたものが一遍にふいになるという心配を私はするのですが、そういう点はいかがでしょうか。
  35. 篠原義仁

    篠原参考人 率直に、同様の心配をしているわけです。ただ、前提条件としまして、先ほど例に挙げました東京都の公害防止条例が出たときに、法律条例とどちらが優先するか、率直に言って学界に両説があるようですけれども、東大の原田尚彦先生、川崎の居住者ですけれども、先生たちのように、それは条例を優先させていいというふうに、憲法九十四条、地方自治法十四条の精神を持ってきて主張している学者も大ぜいいるわけです。私たちは、基本的にできても、法律論としては条例はそのまま適用されるであろうと思っていますけれども、そうでない学者もいますし、現実の運用というのは、環境庁から、さらにいろいろな行政官庁の意を体した形で来るわけでしょうから、現実の行政混乱を持ち込むことはあり得ると思います。  たとえば、抽象論だけでなくて、具体的に川崎市には幾つかの問題があるわけですね。いま言った対象事業の問題でも問題が出てくるでしょうし、具体的な評価対象でも出てくるわけです。御承知のとおり、五十三年七月十一日にNO2の環境基準が、私の用語では改悪されたわけですけれども、川崎市では、全国の地方自治体では数少ない自治体で、旧環境基準日平均値〇・〇二ppmを維持しますということを言っているわけです。現実に環境保全水準の中でも、中間目標値としては〇・〇四ppmを六十年一月一日にやると言っていますけれども、最終的には〇・〇二ppmをやりますと言っているわけです。それはまさに、東京都の硫黄酸化物の規制の問題で議論になったようなことがもろにかぶってくるわけです。法律論としては、私たちは条例優先で死守したいと思っていますけれども、当然、行政混乱は起こるであろうし、好ましい状態ではない。ですから、政府案で四十二条になりますか、というのは、ああいう形で規制しない方がいい、ああいう形の表現はしない方がいいだろうというふうに感じております。
  36. 水田稔

    水田委員 篠原先生にお伺いしたいのですが、一つは、川崎ではいわゆる第三者機関といいますか、公的機関審議会をつくって、そして発電所対象としてやっておる。そういう点で、これまで運用をやられて、うまくいっておるのか、機能がちゃんとしておるのかどうかということについて、実態をひとつお話しいただければありがたいと思います。
  37. 篠原義仁

    篠原参考人 経団連の方が言いっ放しで帰りましたが、アセスメントができると紛争がふえる、そうなんでしょうか、実証的に僕らは議論した方がいいと思うのです。川崎市においてはもう数十アセスメント条例が適用されています。いまのところむしろ一件も裁判は起こっていません。東京電力の問題は、私ども川崎の公害裁判をやっていますので、それはこのアセスメントとかかわりなく、新しく設備ができれば、別個の問題として、当然土俵に乗っているわけですから、それは将来――まだ裁判になっていません、将来どうするかは別論としまして、一般的に言えば、アセスメントが本当に審議会、説明会、これは若干機能していませんけれども、公聴会、一応従来の各地で行われている自治体の公聴会よりも、川崎市は大変苦労しまして、公述人の意見調整も三回相互質疑等で発言できるとか、大変そこら辺は運営に苦労した中で、一定程度公聴会も機能し、審議会も一応そこで議論する。率直に言って、私は学識経験者で入っているのではなくて、住民団体代表の住民委員で入っているのですけれども、そういう立場で、住民のかわりになった形で、弁護士が入れるというような形で審議会は議論していますので、そういったことは、経団連の方が御心配している条件はむしろなくて、かえって運営はスムーズにいっているということを強調しておきたいと思います。
  38. 水田稔

    水田委員 東京都の野村知事にお伺いしたいのですが、東京の副知事ということで自治体全体を代表して、早期に制定してもらいたいと私どものところへ参られましたけれども、いまの問題なんですが、条例のいわゆる横出しは認めるけれども上乗せは認めないということで、いま川崎のように、若干学者がおられて、憲法上問題がない、こういうものもあるのですけれども、それ以下の要綱でやっておられるところもある。あるいはそれ以上に、本当に努力してやっておられるところもある。それが一律に横並びということになることについて、全部が同じ条例、要綱を持っておるわけじゃないと思うのですが、自治体が集まってそういう点での御心配、お話はないわけですか。たとえば川崎の方がそういう中で意見を出す場合は、それは地域の特性があるのだから、そこらあたりは上乗せについてもというような御意見が、いまのお話からすると、当然自治体同士の中であってしかるべきだ。そういう点はいかがなものか、横出し、上乗せの関係の自治体のお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  39. 野村鋠市

    野村参考人 ただいまの上乗せ、横出しの件につきましては、この問題はやはり自治体の間にとりましても大変大事な問題であるというふうに私ども考えております。上乗せを法案審議過程において認めないという見解につきましては、これは審議の過程における見解であるということであろうかと存じますけれども条例に基づく環境影響評価制度が、先ほど私、述べましたように、これまで円滑に運用をされてきておりますし、それなりの実績が着実に積み上げられております。そういったことにかんがみまして、国におきましても、今度の法律案で体系的かつ統一性のある手続制度化されるということになった場合に、地方自治体の現在ある制度と相まって、この法案と地方自治体の制度が整合性のある形で実施されるということを私どもは強く望んでおるわけでございまして、こういう観点からいたしますと、これも先ほどちょっと申し上げましたが、今後施行令や施行規則等が定められる過程の中で、地方自治体と環境庁との間で十分な話し合いを行いまして、条例趣旨を損なうことのないように、法案と整合が図れるようなものということを私どもでは願っている次第でございます。
  40. 水田稔

    水田委員 最後にもう一度、金沢先生にお伺いしたいのですが、これは、上乗せは認めないけれども横出しは認める、そして何にもこの中に入ってないものは条例でやれるわけなんですね。そうすると、たとえば発電所を各都道府県なり政令市ならやるということはあり得るわけですね。そういうことによって起こる――これはむしろ全く同じものをやることはないわけです、全然違うわけですから。そういうことの問題が今後、発電所をのけたことによって起こるのではないかという疑念もあるわけですね。これは中公審とは言いません、中公審の委員である先生の御見解を最後にお伺いしたいのですが、いかがなものでしょう。
  41. 金沢良雄

    金沢参考人 ただいまの御質問、大変むずかしい問題でございますが、私は、このような考え方を持っております。それはどういうことかと申しますと、本来環境問題というのはやはり地域の問題である。発生的に見ましても、法制上は条例が先行しつつ、そして、公害問題もそうですが、国の法律が後追い的にそれを整合性のある形にまとめ上げていく、こういうことでございます。  そこで、先ほど申しましたように、現在、電力、発電所がこの法案から除外されましたことは、私といたしましては遺憾でございます。しかし、県の条例発電所対象事業となさいますことは、これは構わないんじゃないか。そうして、そういう条例がもしもあちらこちらでだんだんとふえてきたときには、その勢いに押されて、国の法律も再び発電所対象事業となさるというような時期が将来来るのではなかろうかという予測でございます。
  42. 水田稔

    水田委員 先生方いろいろありがとうございました。限られた時間ですから、あと、やりますと、時間がオーバーいたしますので、ありがとうございました。  終わります。
  43. 國場幸昌

    國場委員長 有島重武君。
  44. 有島重武

    ○有島委員 参考人方々には、大変貴重な御意見をいただいて、ありがとうございました。  最初に、金沢参考人青山参考人のお二人に伺いたいのですけれども、私どもは、基本的に環境管理の推進といった立場で政策を進めているわけなんですが、いまのお話を伺っておりますと、金沢参考人も、産業の開発が進むといろいろな弊害が出てくる、公害が出てくる、それで回復が困難である、だから公害未然防止ということが一番発想のもとである、こういうことを言われたわけであります。確かにそのとおりでございますけれども、もう少し積極的に、環境もこういうふうに利用していったらいいのだという、ほかの参考人からの御意見がございましたが、そういう視点については、中公審としてはどのような御見解、どういうような御議論があって進められておるのか、その辺をまず第一番に……。
  45. 金沢良雄

    金沢参考人 お答えいたします。  中公審としてということは私、ちょっとお答えできませんので、私個人の意見ということで御了解いただきたいと存じます。  環境汚染未然に防ぐということが必須要件、第一の要件であるということを申しました。ところで、それじゃ環境汚染というものは何によって起こるのか、これは開発によって起こるわけですね。何がしかの開発が行われれば、従来の秩序というもの、社会経済、さらに環境自然環境も含めまして何がしかの変化をそこに及ぼさざるを得ないわけでございます。その場合にどういう変化が起こるのかをまず見きわめなければ、未然防止といったところで何をやっていいかわからないわけでございます。  環境影響評価制度というものが今日やかましく言われてきているのはそこにあるわけで、つまり、ある開発が行われた場合にどういう影響環境に及ぼすのかということを調査して、それを検討し、さらに評価していくということがまず必要ではないか、これが根本問題になったわけで、その意味環境影響評価法律化というものが必要になっているというふうに理解することができると存じます。
  46. 有島重武

    ○有島委員 確かに開発が行われる、そうすると、どういう影響が起こるだろうかということが大変大切でございますけれども、こういう国土についてはこういった産業が本来は合理的であるというような、いつも後手に回って、それを防ぎとめる、そのための調査であるというような視点もあろうかと思うのですが、積極的に環境と和解しながら産業を進めていく、そういう視点ということについてはどんなふうに考えていらっしゃるでしょうか。
  47. 金沢良雄

    金沢参考人 ごもっともでございまして、そういうようないわば産業構造とか、産業のあり方というものを自然環境あるいは広い意味での環境との調和の上において進めていくという、これは私は、御指摘の点は非常に重要なことかと存じます。しかし、それは結局はどこがやるか、その行政はどこがやるかということになりますと、結局は産業担当の行政になってくるだろう。通産省であるとか運輸省であるとか農林省であるとかいうことになってくるだろう。そういう各権限を持たれた、許認可権、監督権を持たれた官庁行政においてそういう産業行政が行われるわけでございますが、その場合に、そういうような指針と申しますか、先ほどもお話があった、環境適性化ということを観念に置いた環境管理というものが必要であるというような視点をはめ込んだ産業行政というものが今日行われなければならないかと思います。御指摘のとおりだと思います。その一環として、あるいはその前提として、この環境影響評価制度というものが非常に重要であるというふうに私ども理解しているわけでございます。
  48. 有島重武

    ○有島委員 同じような質問でございますけれども青山先生はどのようにお考えになっていらっしゃるかお願いいたします。  特に、いま金沢参考人からも御意見がありましたけれども、その開発を進めていく方は、通産省であるとか農林省である、建設省であるということになりますですね。しかし、それが何か決まってくる。決まってくると、それを受け太刀でもって、これはいかぬと言ってブレーキをかけるのが環境行政のような印象を一般的に与えていると思うのですね。それをどうにかしなきゃならない。どうにかしなきゃならないというしかないのですけれども、そういうことについて御意見がありましたらば、お教えいただきたい。
  49. 青山英康

    青山参考人 お答えしたいと思います。  まず、立場が違いますと、開発は悪である、公害を守るのが正義であるという言い方。一方においては、私どももいろいろな企業とも関係がございますけれども、企業の方々に言わせると、最近の漁民は海の方を見て魚を釣っていない、沿岸の方を見ながら魚を釣っている。何か煙は出ないか、魚を釣るよりは、煙と排水の色を見ている方が漁民の仕事だなんという言い方をされるわけですね。ここの立場をかえれば、どちらが正義でどちらが悪かというのが全く逆転してくるわけです。ところが、そこが問題であって、それはなぜかというと、事前調査がなかったからじゃないだろうか。  これは私、いまだに思い出すわけですが、私の大学の先輩でもあるし、公衆衛生の先輩でもある当時の三木知事が、水島地域工業開発に当たって、私は強く、後輩として、また公衆衛生の専門家として、事前調査を進言したわけですね。そのときに三木知事がおっしゃったのが、青山君、工業開発というインダストリーというのはダストがインだよ、公害は出ないんだよとおっしゃったのですね。ところが、現実にはアウトダストリーであったわけで、いわゆる公害は絶対出ないんだとか、悪影響は絶対ない、このオール・オア・ナッシング的な形での立場を両方がおっしゃるから、悪であり正義になって、立場をかえれば全く正反対のことが出てくる。それをただしていくのがいわゆる住民参加の公聴会であり、討議であろうというふうに考えるわけです。もうオール・オア・ナッシングの話ではなくて、どういう開発についてはメリットがある……。  私、先ほどちょっと私の意見の中で、これは言い忘れたのですけれども磯辺先生がおっしゃっていただいたので追加する必要もないかと思いますけれども、この事前調査における提示の場合は、ストラテジー、複数の計画案が示されなきゃいけないだろう。住民はその中でどれを選ぶのかということが示されなければならない。残念ながら、今度の法案の中で、複数の計画案の問題は出ていませんけれども、ただ、社会党案の方で、経過措置によるフィードバックということが出ておりますので、私は先ほど申し上げましたけれども経過の中でのフィードバック、また事後の継続した観察、この三点ですね。事前、それから経過の中でのフィードバック、事後の継続的な観察、そういったもので、より積極的な、先生がおっしゃる開発のよりベターな方向へこの計画を進めていくということが必要であろう。  したがって、私、先ほど申し上げましたように、最終的な住民の判断は、これぐらい汚れるけれども、こういう開発のメリットがあるんだというので投票をなさったら、これはやむを得ないだろう。危ないよと幾ら専門家住民方々説明しても、地域住民が、もういいんだ、少々汚れても給料の上がる方がいいと言って選ばれたら、もうこれはやむを得ないだろう。  われわれ日常生活の中で、われわれは健康問題で一生懸命努力しておるつもりですけれども、まだ努力が不足ですけれども地域方々に、健康を守るための生活の知恵と技術というものをわれわれ一生懸命健康教育という形でやっておりますけれども、そのすべての人たちが健康のために生きているわけではないのは事実だろうと思いますし、そういう中で、だから最終的な判断は地域方々だろう、それはやむを得ないだろう、しかし、正確な情報は流される必要があるだろうということで、もうオール・オア・ナッシングの論議だとか、どちらが正義でどちらが悪だという討議は、もうこの段階では不毛の論議になるだろうというふうに考えております。
  50. 有島重武

    ○有島委員 与えられた時間がきわめて短いものですから、もうこれで終わりなんですけれども、ちょっとお許しいただいて、いまの青山参考人事前という言葉がございました。それは、何かこういったものをつくろうといってから、その事前調査を始めるわけですね。私なんかが考えておりますのは、そういうこと以前の、もう一つ前の事前といいますか、わが県においては、わが市においては、大体こういうようなことがというような、これだけはもう初めからだめなんだというのは、もう少しワイドな事前調査というものが一般化していくということが何か必要なんじゃないのだろうかというように思うわけなんですが、そういったことについてはいかがでございましょうか。
  51. 青山英康

    青山参考人 お答えします。  先ほど私、紹介をさせていただきました、私の著書の「環境管理」という本の中にはその点を書いているわけです。もっと全体的な地域開発が、そういった事前調査だとか、それから経過の測定結果のフィードバックというような形で有効に機能しておれば、こういう、先生がおっしゃるような、より有効な地域開発というものは進められるだろうと思うのです。ですから、私は、逆にこの法案に対する期待というのは、そういうものが出てくるだろうというふうに期待をしているわけです。  これもちょっと私、先ほど一番最初の意見の陳述のときに忘れてしまったわけですけれども、追加させていただきたいと思うわけですが、開発に当たってのいわゆる事前調査の場合に、もう一つ考えておかなければならないのは、都市計画法による線引きの問題ですね。後から計画でぽんと線引きを変えられちゃったら、これはどうしようもないわけです、計画が。そういった意味でも、有効な地域開発、また都市計画案の中での事前調査ということが、非常に重要な意味を持ってくるだろうというふうに私は考えております。
  52. 有島重武

    ○有島委員 ありがとうございました。
  53. 國場幸昌

    國場委員長 中井洽君。
  54. 中井洽

    ○中井委員 民社党の中井でございます。参考人の皆さん、ありがとうございました。十分しか時間がございませんので、簡単にお尋ねをいたします。  最初に青山先生にお尋ねをいたしますが、先生のお話の中で、地域の特性を尊重していくというお話がございました。具体的にどういうことをお考えになって、あるいはどういうふうに法運用をしていけば、そういった精神が生かされるとお考えでしょう。
  55. 青山英康

    青山参考人 お答えします。  今回の、この法案に対する目的の三つ目に、私、挙げさせていただいたわけですけれども、やはりこういう地域住民の生活に直接的にかかわるものというのは、民主的な行政ルールで判断をされるべきだろう。先ほども申し上げましたが、地域によっては、もうこれ以上豊かにならなくてもいいんだ、その上では開発が要らないというところもあるでしょうし、もうこんな状況の中では、もう少し給料が上がった方がいいだろう、少し空気が汚れてもというところもあるだろうと思いますし、地域状況というのは非常に違ってくるだろうと思います。  環境行政の中で、私、やはり一番重要なのは、各地域においての地域住民の判断だろうというふうに思うわけです。それが正しいか間違いかというのは歴史的に証明するだろうと思いますけれども、直接的な生活との関連の判断ですので、まず地域方々の判断ということを考えれば、地域特性というものを認めざるを得ないだろうというふうに私は申し上げているわけです。
  56. 中井洽

    ○中井委員 ありがとうございました。  東京都の野村知事さん、同じくお話の中で、実情運用ということでたびたびお訴えをなさったわけでありますが、具体的にはどういうことなのか、これが一点であります。  それから、もうすでに条例をつくられておやりになっておるわけであります。先ほどの社会党の先生と同じことになりますが、この法案がもし通ったとき、上乗せの問題についてどういう発想でおやりになるか。たとえば一番肝心な電力、発電所の問題が出てこようかと思うのです。それらについてお考えがありましたら、お聞かせください。
  57. 野村鋠市

    野村参考人 第一番目の、地方自治体の実情に即した運用ということでございますが、アセスメント調査あるいは予測評価を行うに当たりまして、その項目や評価の基準などで地域の特性が十分に配慮される、そういう運用が必要ではないかと私どもは考えている次第でございます。  具体的に申しますと、東京都の場合には、条例におきまして審議会を設置しております。したがいまして、知事意見書を作成するためには、その審議会で審議をしていただきまして、そして、その審議会の答申を得て知事意見書を作成するという手続をしておりますが、そういう場合、意見書を作成するための期間を十分にとるというようなことは、非常に必要なことであろうというふうに考えております。  いずれにいたしましても、こういった実情に即した運用というものは、この法案成立をいたしました暁におきましても、ぜひひとつその運用の中で考えていただく必要があるのだろうというふうに考えております。  それから、第二番目の問題でございますが、条例法案との整合の問題かと存じます。  この問題につきましては、現在までの審議経過をいろいろお伺いしておりますと、また私どもが考えてみますと、法案成立に伴って、条例につきましては所要の改正をする必要が起こるのではないかというふうに考えております。しかし、その内容につきましては、先ほども申し上げましたけれども、施行令、施行規則等が定められる過程におきまして、自治体といたしましては、環境庁とも十分よく話し合いを行いまして、自治体の条例趣旨を損なうことなく、法案と整合が図れるように、私ども、今後いろいろ努力をする必要があろう、また努力をしてまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  58. 中井洽

    ○中井委員 磯辺先生にお尋ねをいたします。  大変参考になる御意見をありがとうございました。青山先生のお話にもあったと思うのですが、本当は代替案を持ってというのが一番いいのでありましょうが、日本の場合には、残念なことに、何かをやるというと、まず土地が安いかとか、どうだというのが先にずっと決まっていって、最後環境、こういうことになる。環境にまずいことがあったら、これはこう変えたらいいのじゃないか、そういう形でのアセスしかできないというのが実情なんですね。それでもやっていかなければならないと私どもは考えておりますが、土地の狭い日本で何か事業をやる場合に、先生方のおっしゃるような代替案、二案をつくるということに関しての、実際うまくできるような考え、あるいはそれにかわってこういうやり方があるじゃないかというようなお考え、そういうものを何かお持ちでしたらお聞かせをいただきます。
  59. 磯辺行久

    磯辺参考人 お答え申し上げます。  なかなかいい方法はないと思うのですが、ただ一つ、いま先生はお金の話をなすったのですけれども、最近、自然災害が絡んでまいりますと、お金が非常によく理解される。御承知と思いますけれども地方公共団体に参りますと、環境部に自然災害を取り扱う部局が含まれているケースがございます。この場合には、コストの中に自然災害という要素が入りやすいのではないかという感じがございますので、そうすれば事前にいろいろな対策を講じておくということがきわめてやりやすくなるという例はあるかと思います。  それからもう一つ、御質問の趣旨から多少反することになるかもわかりませんけれども、やはり一番大事なのは、地域に対する環境の将来のビジョンといいますか、こういうものがありませんとなかなか合意はしない。反対する人と賛成する人が裁判の場で幾ら議論しても、恐らく何百年やっても議論は尽きないであろうという意味では、そういうことを言うと大変口幅ったいのですが、法律そのものの運用というのはきわめてむずかしいであろう。先ほど有島先生からもちょっとお話があったのですけれども環境の管理という考え方、要するにこれは何かというと、地域環境のビジョンをどうするのかという合意をつくっていく、こういう考え方がこれからどうしても必要になってくるのであろう。いま参考人の諸先生方のお話でも、大体開発と保全というのはもう対立概念はないのだということであれば、まさにこの時期にこれができるのではないか。  何か一つ欠けているといえば、また同じことを繰り返して恐縮でございますけれども、恐らく環境情報なんです。いま環境情報というのは、日照がどう、植物がどうだということではなしに、もう少し広い意味での環境情報の整備、先ほどちょっと表流水だとか、がけ崩れだとかいったようなことを申し上げたのですが、要するに何かといえば、環境利用するに当たっての制約要因を地図の上に明記しておくということです。つまりこれは、開発をする方は、開発をこうしたいのですということを必ず地図の上にかいてこられるわけです。地図の上で来たものに対して、ppmですと言っても、なかなか御理解がうまくいかないし、議論がかみ合わない。つまり、文法が違うのではないかということが環境管理の一つの手法としてのあり方で、やはり情報というのはそういうふうに考えないといかぬ。  これは大変余分なことになるかもわかりませんけれども環境庁が委託研究の一つといたしまして、エコロジカル・マップという研究会をお始めになっております。これはまさに時宜を得ていることであろうと思います。これは橋本道夫先生が主査でやっておられます。これは何をやっておるかというと、環境利用するに当たっての制約要因を地図の上に明記するのだ。この考え方がこれを機会に出てまいりますと、先ほど言っておられた、わかる、わからない、あるいは賛成、反対という問題について、もう少し情報が一般に流布されるのではないか。  最後に、蛇足でございますけれども、地図というのはテレビの画面に乗りますので、これはこれからの応答テレビ等々にとっては、きわめて有効な手段になるのではないか。大変余分でございますけれども、その点だけ……。
  60. 中井洽

    ○中井委員 時間ですが、金沢先生に一つだけ御意見をお聞かせいただきたいと思うのです。  先ほどから、この法案早く成立をという強い御要望がございました。他党のことも恐縮でありますが、私ども自身もたびたびこの委員会で、アセスメント法案を出せということで強く要求をしてきたわけでございます。出た段階で三年間ストップをしておるというのは、私どもも大変心苦しいわけであります。それは他党の皆さん方にとりましては、少し骨抜きじゃないか、特に電力、発電所を抜いてあるのはけしからぬじゃないか、こういうお考えであります。私自身も、発電所を抜いたことによって、いまの法案体系そのものが少しおかしなものになっておると考えておりますし、逆に、発電所を国の方から抜いたことによって、地方の条例に、先ほどの水田先生のお話のように、全部目玉として載って、そして、それが横出し禁止ということではありませんから、ばらばらにやれる。電力に対する、エネルギーに対する環境行政というものがばらばらにやられるということを実は非常に心配をいたしまして、おかしな法案だということで、今日までいろいろな折衝の中で、遅々として審議が進まなかったわけでございます。いま自民党さん、何か急に審議を促進なんということを言われておるようですが、私どもはいまだに迷いがあるわけでございます。そういったことに対して、率直に、どんなお考えをお持ちなのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  61. 金沢良雄

    金沢参考人 お答え申し上げます。  私といたしましては、一日も早くこの法案成立することを祈願しております。と申し上げますのは、意見の陳述の際にも申しましたように、中公審の答申以来まる四年というものが全くブランクになって、いわばもてあそばれているのではなかろうかという危惧さえも、これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、危惧さえも感ずるような状態かと思いますので、ひとつ委員の先生方の御尽力によりまして、早期成立することを念願させていただきたいと思います。
  62. 中井洽

    ○中井委員 ありがとうございました。
  63. 國場幸昌

    國場委員長 藤田スミ君。
  64. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 参考人の先生方、きょうは御苦労さんでございます。私が最後でございますので、よろしくお願いいたします。時間が十分しかございませんから、二、三お伺いして終わりますが、最初に金沢先生にお伺いしたいと思います。  今回の法案につきましては、専門委員会の報告から答申まで四年かかっております。委員会の方も時間はかかっておりますが、私は機会があれば、どうしてこんなにかかったのか、率直なところをぜひお聞かせいただきたいと思っておりました。中公審では、専門委員会の報告が出てまいりましたら、短時間のうちに答申になっていくのが普通だと私は考えておりますけれども、どうして今回の場合はそうならなかったのか。もう一つの点は、先ほど、発電所が除外されたということでは先生は遺憾だとおっしゃいました。  たしか、この答申が出ましたときにも、それから、最初の専門委員会の報告が出ましたときにも、アセスの柱は住民参加であるということがうたわれていたというふうに私は理解をしておりましたけれども、肝心のそこのところが、公聴会の問題にいたしましても、それから住民意見を述べていくという、その範囲の問題にしましても、大変な制約が加えられてしまって、これで住民参加が本当に保障されていると言えるのだろうかということでは私は遺憾に思いましたが、その点も先生の御意見をお伺いしておきたいと思います。
  65. 金沢良雄

    金沢参考人 はっきりと御質問の点を把握しているかどうか、ちょっとわかりませんが、まる四年と申しますのは、中央公害対策審議会答申から四年かかっているということに理解してよろしゅうございますか。(藤田(ス)委員「専門委員会、専門部会の報告から答申まで」と呼ぶ)中央公害対策審議会の中での話ですね、それはお答え申し上げます。  専門委員会、これは音田専門委員会委員長のいわば技術的、専門的検討が行われまして、それを受けて中央公害対策審議会が諮問に応じて答申案をまとめる段階に入ったわけでございますが、何分にも、この問題はわが国としては新しい問題でもあり、また各方面の意見を十分に聞かなければならない。さらに、諸外国の事例なども十分に参考にしていかなければならないというようなこともございまして、一年や二年ではなかなかできない。委員も中にはお忙しい方もございますし、専門的にそればかりにかかっているわけにもいきません。でございますので、四年というのは、外からごらんになりますと長い期間であるかと存じますが、その間アヒルの水かきもいろいろとございまして、四年は、こういう問題をまとめるについては、そんなに長い期間であるというふうにも考えられないのではないかと思うわけでございます。いろいろな方の御意見その他を聞く機会もございます。その中公審の議事録も残っていることでございますので、それをごらんいただければ、その間の事情も御理解いただけることかと存じます。  それから、もう一つの問題は住民参加の点でございます。この住民参加ということは、広くはパブリックアクセプタンスというような言葉で言われておりますが、何らかの行政決定に対する直接的な参加ということは、わが国の間接民主主義原則とする国政のもとにおきましては、これはまず望ましくないということが言えようかと存じます。そこで次には、行政決定に対する――余り問題を広げますといけませんので、環境影響評価制度に限定をして申し上げますならば、その環境影響評価制度について何が必要であるかということは、住民意見がこれに十分反映されるものであるということ、そのためには住民がだれでも自由に意見を述べられる、その機会が十分に与えられているということが基本的に必要でございます。それを補うものとして公聴会であるとか説明会であるとか、いろいろな手段があるわけでございます。  環境影響評価に関する諸国の法令を調べましても、住民意見を聞く、あるいは個人の意見を聞くという機会は必ずといっていいほど与えられております。しかし、必ず公聴会を開かなければならないとかというような規定が全部あるかというと必ずしもそうではない。基本はそこにあるわけでございます。その点は、この法案は十分に条件を満たしている、住民意見を述べる機会が十分に与えられているというふうに理解していいかと思います。
  66. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは最後に、篠原先生と青山先生、磯辺先生、三人に同じ質問をしたいと思います。  今度出されている法案は、先ほど金沢先生が、たとえば住民意見についても十分反映できるようになっているとおっしゃいましたけれども、私はなっていないというふうに思うのです。磯辺先生は特に諸外国の例にお詳しいようですが、私、環境委員会の方からスウェーデンに参りましてお尋ねをしたときに、デンマークからも意見を言いにくることができると聞いてびっくりしました。もちろん日本は、地図の上では隣は余り遠過ぎますから、そんなことまでする必要はないと思いますが、狭いというだけに地域を限定して住民意見を、範囲を縛るということはとんでもないことだと思いますし、先ほどから非常にむずかしいと、確かに調査をされたものを出されても大変むずかしい、わかりやすくしてもらってもむずかしいものだという点でも、私は、専門家意見というものを、その知識を住民が大いに活用していかなければ、本当の意見の反映にならないという点では、住民参加範囲を決めているということについては大変意見を持っております。  その他、代替案の問題だとか典型七公害の問題だとか、いっぱい意見がありまして、したがって、この法案が出たときに、骨抜きどころか小骨も大骨も抜かれたというマスコミの批評もございました。そういう中で、いま私たちはこの法案を抱えておりますけれども、ないよりはましだという意見が一方でございます。この骨のない法案でも、ないよりはましなんだという意見がございます。  私は最後に、先ほどから三人の先生方の御意見を聞いていて、やはり先生方の意見とは合致していない法案だと思いますので、大変主観的な言い方になって恐縮ですが、そういうふうな余りにも不十分過ぎる法案でも、ないよりましというふうに御意見をお持ちでしょうか。三人の先生方にお伺いをして、終わりたいと思います。
  67. 篠原義仁

    篠原参考人 私、先ほど言ったとおりで、社会党案については多くの共感する点があります。政府案については六つの柱を立てて批判的検討をしましたから、私はこの案では同意しかねる。賛成できない。地方自治体においてせっかく積み上げた成果を、根こそぎ奪うような政府案だったら同意しかねるというのが私の結論です。
  68. 青山英康

    青山参考人 今後のここの委員会での審議状況がわかりませんので、また力関係が十分理解できませんので、いわゆるないよりましのようなものに対する改善ができるのかどうかという見通しが私もわかりませんので、何とも言えませんけれども、ただ、ないよりましという形で出されて、今度はあとのマイナス点も評価していかなければならないだろうというふうに考えます。  もう一つ、期待としては、委員会での今後の審議が、どこまで先生方が政府案を改善できるのかという、その力が私は読み切れないものですからわからないのですけれども、ないよりましの法律ができたときに、この法律がどういうふうに運用されるかという、悪い方だけ、その小骨も残ってない肉だけの悪い方だけが効果が出てくるのか、それとも、先生から見られたら小骨もないかもしれないけれども、小骨がひょっと残っておって、それが運用の妙で効果を発揮するのかという、今度はその辺の運用の期待もありますので、これを一概にイエス、ノーでお答えすることは、やはり学問をやっている者としては無理じゃないかと思います。
  69. 磯辺行久

    磯辺参考人 先生御自身、ヨーロッパのことに大変お詳しいようでございますのでなにでございますけれども、先ほど私が申し上げましたエコマップについては、ECが最近やっと着手いたしまして、これは御承知と思いますけれども、必ずしも公害というよりも、要するに資源を共同で管理しようという、きわめて切実な目的でのようでございまして、したがって、これはちょっと日本の場合と問題が違うと思いますけれども、少なくともそういう情報を完備しておるがために、お互いの連帯意識、したがって、隣の国からも文句が言えるというに足る情報があるのだろうというふうに思います。  それから、きわめてむずかしい踏み絵でございますけれども、これも私ども運用いかんと申し上げるのですが、きょう御紹介できなかったのですが、実際に仕事柄いろいろな公共団体でいろいろな例を拝見しておりますと、たとえば先ほど御指摘にあった代替案でございますね、つまり、A、B、Cどれが一番マイナスが少なくて、どれが一番効果があるかということについては、行政指導と申しますか、要するに担当者の考えで十分でき得るという実績はございます。  したがいまして、私どものお願いは、これは先生方が十分監視していただくことによって、かなり実行はできるというふうに考えますので、何も事法律の問題あるいは環境庁の問題というよりも、先生方がひとつ地元、あるいは実際の地域の問題として十分に監視していただく、恐らくここに係る部分がかなり多いのではないかというふうに考えておりますので、とにかくまずこれがないと先へ、つまり環境行政の転換ができないという事情もございますので、何とかひとつ土俵をつくっていただくということを私としてはお願い申し上げたいと思います。
  70. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ありがとうございました。終わります。
  71. 國場幸昌

    國場委員長 以上をもちまして本日の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十六分散会