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1983-05-18 第98回国会 衆議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十八日(水曜日)     午後二時開議  出席委員   委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       小渡 三郎君    奥田 敬和君       木村 俊夫君    鯨岡 兵輔君       熊川 次男君    小坂善太郎君       島村 宜伸君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    松本 十郎君       河上 民雄君    高沢 寅男君       土井たか子君    八木  昇君       渡部 一郎君    林  保夫君       中路 雅弘君    野間 友一君       伊藤 公介君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村山 良平君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         警察庁刑事局国         際刑事課長   金田 雅喬君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十八日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   石原慎太郎君     島村 宜伸君   古井 喜實君     熊川 次男君   宮澤 喜一君     小渡 三郎君 同日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     宮澤 喜一君   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   熊川 次男君     古井 喜實君   島村 宜伸君     石原慎太郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、各質疑者に申し上げます。  質疑時間につきましては、理事会申し合わせのとおり厳守されるようお願い申し上げます。  なお、政府におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井たか子君。
  3. 土井たか子

    土井委員 きょうは初めて中曽根総理出席を得たこの外務委員会の席でございますから、聞きたいことはいっぱいあるのですけれども、時間の制約でわずか二十五分ということでございます。そこで、いろいろ後の案件に先立って、これからのお取り扱いについて確かめておきたいことを申し上げたいと思うのです。それは金大中事件に対してのお取り扱いであります。  先日、十二日に後藤田官房長官記者会見の席で、金大中氏が条件に固執なさる限りは事情聴取をする考えはないということを言われまして、事実上事情聴取に対して断念する旨を表明されております。私は、これについていろいろ言いたいこともございますけれども、時間の関係から、この後藤田発言、談話を受けまして、よもや金大中事件捜査本部を解散なさるなどということはないであろう、こう考えておりますが、総理、そんなことはないでしょうね。いかがですか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 金大中事件についてはいわゆる捜査続行中でございます。最近、金大中氏の御発言動向等にかんがみまして、政府といたしましてもいろいろの対応、方策を考え、進めてきたところでございますが、官房長官発言のとおりの状況でございますので、これ以上積極的にどうこうという段階ではございません。  捜査本部云々の問題につきましては、いまのような事情でございますので、警察当局においてどういうふうに判断をするか、政府の側といたしましては現在の事態を見守っている、そういう状況でございます。
  5. 土井たか子

    土井委員 どうも歯切れの悪い御答弁じゃないですか。捜査本部を解散するかしないかというのは一大事だと私は思うのですね。大問題だと思うのです。これに対しては、事件解明はまだされていないし、現に事件解明に向けて捜査続行中であるということじゃないですか。総理、どうなのです。いまの御答弁からすると、捜査に対して、警察当局がこれで打ち切りたいということになれば、総理としてはそれに対して了承なさるのですか。そんなばかな話はないと思うのですよ。
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 冒頭にも申し上げましたように、まだ捜査続行中である。しかし、この捜査のいまの進行状況やら内容等について私はまだ何ら具体的な報告を受けておりませんから、そういう報告を受けてから私の判断をなすべきものである。そういう報告が来るまでは、警察当局捜査続行され進行している、それを政府は見守っておる、こういう意味であります。
  7. 土井たか子

    土井委員 警察当局捜査自身というのは、何も勝手にやられているわけじゃないのでありまして、金大中事件の総合的な取り扱いにおいて、政府がそれを認めてなすってきたという過去の経緯があるわけであります。したがいまして、最高責任者はどなたかといえば、警察庁長官じゃない、中曽根内閣総理大臣なのですよ。したがいまして、これは、中曽根総理大臣がいまおっしゃったような歯切れの悪い答弁では大変困る。といいますのは、最近政府首脳の中で、これを機会に捜査本部を解散してはどうかというふうなことを言い出しておられるということがそろそろ私の耳にまでも聞こえてきているのです。これは大問題だと私自身言わざるを得ない。総理、ただいまは非常に含みのあるような御答弁ですから、これは後に引けないのですよ。そこのところをはっきりしておいていただきたいのです。どうですか。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 冒頭に申し上げましたように、捜査を行う、そういう方針でまだ本部も解散しないで続けておるのでございまして、私はその状態をそのまま是認しておるわけです。変化があれば私のところに言ってくると思うのですが、一向そういうことも聞いておりませんし、捜査本部を解散するということも聞いておりません、そういう現状であるということを申し上げた次第であります。
  9. 土井たか子

    土井委員 そうすれば、だめ押しのような形で申し上げますけれども、現状である限り捜査本部に対しては解散などということは総理としてはいまのお考えの中にない、いまの御発言からすればこのことははっきり申し上げることができますね。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は、警察が諸法規等に基づきましていろいろと捜査を実行してきていることでございまして、政治の方が上からとやかく余り言うべき筋合いのものではない。政府方針はかつて決められて、その方針に基づいて警察捜査を続けておるのだ。政府方針警察当局を動かすという意味ではありませんが、そういう事件があったということにかんがみまして警察は独自に捜査をやっているのだろう、そういうふうに私は思うのです。警察の行為というものは、公安委員会がこれをいろいろ監督指揮しておることでございまして、ある意味におきましては政治的介入を避けるというのが、私は警察運営基本方針にあると思うのであります。国家公安委員会がどういう態度をとるのか、そういうようないろいろな段階もあるわけでございますから、政府の方がとやかく先に言うべき問題ではない、そう思っておる次第です。
  11. 土井たか子

    土井委員 これはしつこいようでありますけれども、警察当局捜査というこの活動も二度にわたる政治決着の中での活動なのです。したがって、政府の方からとやかく言う筋合いのものではない、総理はいまそう御答弁をなさいますけれども、捜査活動自身政治の中にあるのです。政府がどういう基本方針で臨まれるかという中にあるのです。したがいまして、総理のきょうの御答弁いかんによって、これから先の動きに対して、ある意味で私たちはどういう動きになるかということをうかがい知ることのできる問題だと私は思っているのです。そういうことからすると、非常に歯切れの悪い物の言い方をされるのは、この問題に対していたずらに混乱を巻き起こす原因にもなりかねない、このように考えます。日ごろの総理らしくきっぱりここのところはおっしゃったらいかがですか。どうですか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きっぱり申し上げておるのでありまして、私は法律の解釈の厳格な、きっぱりした態度の上に立って言っているのであります。国家公安委員会というのは、私の記憶ではいわゆる諮問機関としての八条機関ではなくして三条機関であります。国家行政組織法における三条機関の地位というものは、政府としてはこれは尊重して取り扱いを大事にしていかなければならない機関である、そうはっきりした考えを持っているからそう申し上げておる次第であります。
  13. 土井たか子

    土井委員 ならばもう一言だけ。  その三条機関であるといまおっしゃる公安委員会並びに警察に対して政治的な圧力は断じてかけない、そういうことをすること自身が間違いである、このように総理自身はお考えになっていらっしゃいますね。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん警察というものを政治的に中立を保たせるという配慮から国家公安委員会三条機関というものが設けられているので、その法の趣旨については明確に政府は守っていかなければならぬと思っております。
  15. 土井たか子

    土井委員 いよいよ総理は五月二十八日から三十日まで第九回先進国首脳会議に臨まれるということでございますが、それに先立ってレーガン大統領とのお話し合い予定の中にあるようでございます。また、ジョンズ・ホプキンズ大学卒業式にも臨まれまして、英語で演説をなさるということも予定の中にあるようでございます。これはアメリカ側からすると非常に注目されている日程の中身であるということに相なるかと思いますが、きょうは時間の都合で多くのことを申し上げることができませんから、この問題について特にお尋ねを進めてみたいと思うことを取り上げます。  SS20というのは、極東配備されているものについて、私たちからするとなくしてもらいたいという念願があります。アジア人たち、そうして日本のわれわれにとって脅威であることは言うまでもありません。これをなくしてもらうことへの切り札総理としてはどのように考えていらっしゃいますか、日本としてはどのように考えていらっしゃいますか。いかがですか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 われわれは、唯一の被爆国として核兵器を廃絶したいと切願しておる国民であり国家であります。できるだけ速やかに地上から核兵器を追放して地上からなくなしたいと考えておるものであります。この大前提の上でわれわれは行動してまいっておる次第でございますが、SS20につきましても、これは全地球的意義において、あるいは影響力においてとらえられるべきである。すでに政府からも声明もし、あるいはソ連当局にも言ってあるとおり、日本アジアの犠牲においてこの問題が解決さるべきではない、アメリカにも強く申し入れしておるところでございます。しかし、現実問題になると、これは米ソ間の話し合いで行われておる。最近、ソ連はイギリスやフランスの核兵器の問題を指摘しておるようでございますが、いずれにしても、これはいま米ソで主として話し合われておる問題でございまして、われわれはアメリカに対してもソ連に対しても、日本外務大臣がすでに宣明した方針をよく伝えて、その趣旨に沿って実行してもらいたいと思いますし、もしサミットにおきまして軍備管理の問題が出てまいりまするならば、そしてもしそういう必要があるという場合には、その趣旨に沿って強くそれを主張したいと考えております。
  17. 土井たか子

    土井委員 米ソ交渉いかんに万事はかかるということで、それに期待をかけているというお気持ちのほどの御披瀝がいまあったわけでありますが、現にINF交渉いかんでは、ヨーロッパSS20がアジア日本に向けて配備されるということになるかもしれません。そうならないためにどういう切り札を持っておられるかというのも、これは大変問題なのです。米ソ交渉に万事ゆだねるとか、また折あらばそれに触れて演説をしたいとか、そういうことで果たしてこの問題に対して効果的な切り札になり得るかどうか、これは大変問題が多いと思いますが、どうですか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ヨーロッパにおける核兵器、特にSS20、パーシングⅡの問題はかなり長い年月を経た因縁のある問題でありまして、今日突然起きた問題ではございません。この問題をわれわれが望むような方向解決していくためには、解決の障害になっていることを一つ一つ解きほぐしていかなければなかなかできる問題ではないのです。そのいろいろな問題について現実的に建設的にアメリカソ連が話し合うということが解決への道であるだろうと思うのです。そういう方向にわれわれは強く物が動いていくようにわれわれの主張を繰り返し、また世界世論にも訴え、あるいはヨーロッパの国やアジアの国とも国連その他におきましてチャンスがあればやり、そういう国際世論とも相まって米ソを中心にするこの削減交渉が合理的に行われるように、しかも速やかに行われるように希望しているものなのであります。
  19. 土井たか子

    土井委員 それは一般的常識論なんですね、いまおっしゃっている総理の御答弁というのは。そういうことはだれしもがまず演説のときには口にして言う中身でございますけれども、現に、ならばグアムにB52Gの配備であるとか、三沢に対するF16の配備であるとか、それからパーシングⅡ、巡航ミサイルニュージャージー極東配備であるとか、あるいはミッドウェー日本寄港、さらには韓国の核の新装備等々、アメリカは現に極東に新しく核の増強配備計画実行中でございます。このことは、見ておりまして、ソビエトSS20を抑えるために対抗してただひたすらにアメリカ核戦力増強ということがなされるというかっこうでございますが、いま日本からすると、このアメリカ核戦力増強に頼って米ソ交渉というものの成り行きを見よう、こういうことに相なろうかと思いますが、そういう現実に対してはどのように総理自身対応されるのですか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 不幸にして現在の世界の平和は、抑止力とそれから均衡によって戦争が回避され、平和が維持されているという事態にあると思います。しかし、最近における、ここ数年来の極東における軍事バランスを見ますと、ソ連軍事力強化はきわめて顕著であります。アメリカ側ベトナム戦争で大きなやけどをして、アジア方面から撤退をし、あるいは軍事力の問題につきまして国民関心度が非常に去っている。その間にソ連軍事力世界的に増強されて、しかもアジアの地域においては全軍事力の約三分の一がアジアの方に展開されていると想像されております。ミンスクも来ておりますし、あるいはSS20も百基以上が展開されていると言われるし、最近の情報によれば、それがその倍ぐらい展開されているやの情報も来ております。これらは三沢の配置とかあるいはB52の問題以前にすでにこういう現実先方側に行われておるのでありまして、抑止力均衡という考えから考えると、これはアメリカ側が、日米安保条約及びアメリカ自体防衛という両方の面から考えてみても、極東における補強を行いつつある。そうして均衡を維持して戦争を回避しようという、いわゆるいまの国際的な戦略、国際的に一応通念とされている戦略に立った体系を整えておるというのが現状であると思っております。  そういう意味におきましては、むしろ自由世界方向は受け身であると私は思っておるのです。しかし、こいねがわくば、ソ連アメリカもできるだけ早期に適当なパリティで、そしてこれを縮減していく、レベルダウンをしていく、そういう方向に進めていってもらいたいと思っております。そういうチャンスをいかにしてつかむか、国際情勢機微の中で、あるいは軍縮交渉機微の中で行われることでございますが、われわれはそういう時期が一日も早く来るようにいろいろの面で努力してまいりたい、こう思っておるのであります。
  21. 土井たか子

    土井委員 いまの総理の御発言を承っておりますと、アメリカ核軍事力増強しつつソビエトに対していろいろと迫っていくということに対して、これは是認なさっている前提に立っていらっしゃるんですね。いまのような御発言からしますと、軍事力てこソビエト譲歩を迫るという、いわゆるアメリカ側基本方針、また西欧諸国対ソ方針基本になっている点を踏まえた形で総理自身がお考えになっているということがうかがい知れるわけであります。そうなってまいりますと、どうなんですか総理日本非核原則の国であり、平和憲法の国であるにもかかわらず、核積載米艦船寄港母港化を拒否することもできなければ、またF16に核ミサイルを積載することも拒否できないというかっこうになってくると思います。というのは、基本的にソビエト軍事力てこにしてこちら側が譲歩を迫っていくというかっこうをとり続ける限りはこういうかっこうに相なるかと思うのですが、この点はどうなんですか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が先ほど申し上げましたのは、アメリカ側がこういう考えでやっているのだろうということで申し上げておるので、今度日本防衛自体に関しまするならば、これは憲法範囲内において専守防衛非核原則あるいは外国に脅威を与える攻撃的兵器を持たないでいく、いままでわれわれが数次にわたる言明あるいは自民党内閣の継承してきた政策、これを堅持してやっておるのであります。しかし日米安保条約を一面において持って、日本列島防衛を全うしようというその中の一つには、一般的にアメリカ核抑止力に依存していることも事実であります。これは否定できない事実でございます。そういうような総合的な思慮、考察のもとに、やはり日本に関する限りについては、われわれは非核原則を堅持してこれをやりますけれども、われわれの主権の範囲外においてアメリカがいろいろおやりになることまでわれわれがとかくと言う権利はございません。
  23. 土井たか子

    土井委員 まことに矛盾したことをおっしゃるんですね。アメリカ核抑止力に依存する限りは、アメリカからの核持ち込みに対して拒否することは本来ナンセンスなんです。非核原則の国であるから大丈夫だというのは、これはお守りのようなものでございまして、呪文のようなものでありまして、現実はなかなかそうはいかないんじゃないですか、いまのおっしゃったような論法でいけば。それならば、非核原則の国であり、平和憲法というものを守っていく国であるというあかしをいかにして具体的に対アメリカに対してなさいますか、またサミットのその場所でなさいますか。特に、もう具体的にアメリカ核戦略体制をこのアジアにおいて、太平洋においてとろうとしているし、また現にとっているのじゃないですか。ニュージャージーに対してどう対応なさるのです。また、ミッドウェー日本寄港に対してどういうふうに考えられるのです。そういう問題に対して、いまの現状をそのまま置いておいて幾ら演説をなすったって、その演説は生きた演説にはならない。  むしろ対ソ政策対ソ外交ということからすれば、アメリカ西欧と一味違うことを日本としては持ち出さないといけないんじゃないですか。西側の一員であるからというので強硬路線に同調すべきじゃなくて、非核平和国家を目指すという国からいたしますと、やはり軍縮外交経済協力その他非軍事的な手段というものを最大限に生かしていくどいうことが問われると同時に、具体的には、いまアメリカがなしつつある核戦略体制核強化体制に対して物を言わなければならない。核抑止力が、日本アメリカによって賄われるということで、何でもかんでも結構ですといったら、いま申し上げていることが全部破産してしまうと私は思うのです。  外務大臣どうです、今度いらして、アメリカで具体的な提案を何らかなさるのですか、またアメリカに対して具体的な申し入れをなさるのですか。いかがなんですか。
  24. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどから総理がしばしば答弁しておりますように、戦争を防止するためにはいまの抑止力、力の均衡というものによってこれが行われていることは、残念ながらいまの現実であります。そういう中で、日本の理想はやはり世界から核を廃絶していくということでありまして、この点につきましては、私どもは国連総会におきましても、あるいは軍縮委員会におきましても、日本自身非核原則原則を高く掲げて、軍縮に対しては積極的に活動をいたしておるわけであります。同時にまた、先ほどからお話がありましたような現在行われておるところの、あるいは行われようとするところのINF交渉におきましても、ソ連に対してはもちろんでありますが、米国あるいはまたヨーロッパ諸国に対しましても、やはりともに軍縮中距離核兵器レベルダウンを、平均のとれた形でレベルダウンをしていく。最終的にはゼロオプションといいますか、全廃に持っていく、そのために日本が積極的な活動をいたしておることは御案内のとおりであります。
  25. 土井たか子

    土井委員 いまのもまた抽象論なんです。  総理大臣はきっぱり物をおっしゃる方ですから、前回もきっぱり物をおっしゃった、今回はさらにきっぱり物をおっしゃるであろうということを国民は大変注目しているわけであります。アメリカに行かれて、レーガン大統領との対話の中で、具体的にいま私が申し上げたようなことについて、アメリカに対して日本側からの提案なり、アメリカに対しての意見なりを持ち出されておっしゃるに違いないと思うのです、対ソ問題というのは最重要だと申し上げていいですから。いかがでございます。さらに、サミットに対する対応をどのように考えていらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が念願しておることは、最初に申し上げましたように、地上から核兵器を廃絶して地上の平和を獲得しよう、こういうことでありまして、あらゆるチャンスをつかみながら核兵器縮減率を高めていく、レベルダウンを達成していく、こういう努力をしていかなければならぬのであります。しかし、現実の問題になりますと、私はアメリカの核軍縮――軍縮代表をした、日本の大使をやっていたアレクシス・ジョンソンという人とかなりこの問題を昔話したことがあるのですけれども、非常に専門的な緻密な、技術的な議論の先端に立ってそれは行われておるのです。核弾頭MIRVをやるとかやらないとか、そのMIRVの効力はどの程度であるとか、あるいは陸上のミサイル、ICBM、IRBM、そのほかあらゆるものの複合体、そういうような非常に専門的な技術的な、アリの穴まで埋めるようなタイプの厳しい議論で彼らはそれをやっておるのでありまして、やはりそういう現実を見ますと、抑止力均衡で平和が維持されておるのだな。われわれはいい気になって夜中に酒を飲んで寝たりしていますけれども、彼らはわれわれが寝ている間でも真剣に、この両方の核のレベルダウンをうまく具体的にどうチャンスをつかむかということでやっておる。本当に人類の運命がかかっているような真剣さでやっているのを、私はアレクシス・ジョンソン氏からいろいろな話を聞いて、非常に感動したことがあるのです。われわれはそれを聞いておりまして、やはり具体的な建設的なそういうもので進めていく以外にこれは進めることができないのだなという気がしております。しかし、ある意味においては、そういう基礎の上に立ちながら政治家が決断すべきことであります。人類の運命を考えて、そして十年、二十年、あるいは二十一世紀を考えて、政治家が現実を離れて決断するという要素もあると思うのです。  そういういろんな面も踏まえながら、この核兵器地上から追放し、かつ現在の核兵器が増加するという危険性を減殺して、そして合理的な水準によるレベルダウンが具体的に進むように、チャンスを見てわれわれは外交的努力をしていきたいということを申し上げておるのでございます。
  27. 土井たか子

    土井委員 そうすると、いまの御論法からすれば、アメリカに対して具体的に、太平洋なりアジアに対して核装備が増強されていく、この現実に対しては何もおっしゃらない、それは大変意味があることだというふうな理解をもって総理が臨まれるというかっこうになるのですか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が申し上げましたのは、現在の平和が維持されている基本を原理的に申し上げたので、遺憾ながら、それは抑止力均衡によって平和が維持され戦争が回避されているというのが現実である。われわれの防衛の体系もそういうものが根拠にあって抑止力の理論でできている、そういう基礎的な認識を申し上げておるのであります。
  29. 土井たか子

    土井委員 そんな認識ばかりを聞かせていただいたってしようがないのです。現に、アメリカへ出かけられて何を提案されるか、具体的なことを聞いておりますのに、現状認識ばかりここに披瀝されたのでは、それは答えにならないのです。現状認識さえ言っておれば、それで事が好転してうまくいくのだったら、何の苦労もないだろうと思うのですよ。具体的にどういう苦労を払われるかということを、私は最初からずっとお伺いを進めていっておるわけですから。いまだに総理は、先日のテレビでは語彙が少ないとみずからおっしゃるけれども、何のことはない、華麗な表現でもって国会ではしゃべり過ぎるぐらいおっしゃるのです。大分それは御自分の御認識と違っておるようでありますが、時間のかげんがありますから、それじゃ申し上げたいと思います。  総理は非常に精力的に韓国にいらっしゃり、アメリカにいらっしゃり、そしてASEAN諸国を回られました。アジア全体の平和からすると非常に大切な中国に対して、ソビエトに対して総理自身が訪問される御用意がおありになるかどうかというのは、非常に政治的課題だろうと思います。この点はどうですか。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中国に対しましては、さきに二階堂幹事長を特使とし、また最近は櫻内前外務大臣を派遣いたしまして先方の御意見も聞き、われわれの考え方も申し上げて、連絡を緊密にしております。  ソ連に対しましても、われわれには領土問題という基本的重大問題がございまして、これを避けて通るわけにはいきませんが、しかし日ソ間には漁業問題もあれば、あるいは経済開発の問題もあれば、科学技術や文化問題もある。そういう包括的な問題という考え方も私は持っておる。しかし、その基本にあるのは領土問題であるということは忘れることはできない。そういう立場を踏まえつつ、粘り強く日ソ関係をさらによきものへ前進させたいと思って、打開したいという熱意を持っておるのであります。  しかし、それにはやはり向こうの方もそういう態度を具体的に示してもらいたいので、グロムイコさんにどうぞ日本に来てくださいと。わが方は外務大臣がたしか六回ぐらい行っているのだけれども、向こうは三回しか来ていない。総理大臣は三人も行っているけれども、向こうは一人も来ていない。これじゃ日本人だって、顔がありますからね。だからまず、歓迎いたしますからグロムイコさんいらっしゃい、そういう話を申し上げておるわけであります。
  31. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、井上泉君。
  32. 井上泉

    ○井上(泉)委員 われわれ社会党に与えられた時間はあと十分になりましたので、総理も簡潔に御答弁願いたいと思います。  日本がよく西側の一員と言われるのでありますけれども、その西側の一員である以前に、アジアにおける重要な使命を持つ、アジアの国の一員である、こういう認識の上に立っての西側の一員ということなら私は理解できるわけですけれども、西側の一員であって、アジアの一員ということはその後に続くものですか。総理はどういう見解を持っておりますか。
  33. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アジアの一員という要素も非常に重要であると私は思っております。  われわれは西側の一員という一つのことがまずあり、それから、第一日米関係は安保条約で結ばれておるというそれ以上の特殊な関係もありますが、しかし第三点においてはアジアの一員という非常に重大な、地球ができてから存在し、また永遠に存在していくという大事な問題があり、アジアの隣人を大切にして共存していくという大きな使命を持っておると考えております。
  34. 井上泉

    ○井上(泉)委員 いまアジアにおける緊張激化の要因としてソ連核戦力極東配備のことが論議をされておるわけでありますが、ソ連核戦力極東配備されておるというのは一体どこを目標にして、どの目的でやっておると総理は理解しておるでしょう。
  35. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはクレムリンに聞いていただかないとわからないことで、われわれの方は仮想敵国を設けていない国であることをぜひ御了承願いたいと思うのであります。
  36. 井上泉

    ○井上(泉)委員 クレムリンに聞くということでなしに、私は、わが国としてはわが国がその対象でない、こういうふうな理解は当然すべきだ、こう思うわけであります。  今日の世界の平和あるいは核兵力の削減、いわゆる核の廃絶、そうしたことをしていくためには、米ソが中心におけるこうしたとめどもない核軍拡の競争に歯どめをかける、その歯どめをかける重要な使命を背負うのは、私はアジアにおける日本の大きな使命だと思うわけであります。そのアジアにおける重要な使命を持つ日本総理が韓国に行って、そしてアメリカに行って、ASEANに行って帰ってこられた。こういう外交の日程というか、そういうことのやり方というものは、韓国へ行く前になぜ――アメリカはそういう関係で行くとしても、アメリカへ行ったら今度はその足で中国へ行くとか、アジアにおける重要度というものを考えた場合に、韓国よりも中国がもっと大事ではないか。比重を比べるものではありませんけれども、中国へは特使を派遣した。しかし特使と総理とは大変な違いでありますので、そうした点で最近におけるあなたの精力的な外国めぐりというものは若干順序が間違っておるのじゃないか、こういうふうに思うわけです。いま土井先生も質問をされたわけですけれども、特使を中国へ派遣するのとあなた自身が行かれるのと大変な違いであるわけなので、韓国へ先に行き、アメリカへ行き、ASEANに行き、中国はまだ予定にない、こういう状況の中で今度の訪問を大きな成果と受けとめておるでしょうか。
  37. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は日程が立ち次第、中国へもぜひ伺いたいと思っております。ただ、いろいろな物の順序等々あるいは緊急度合い等々も考えてみまして、日韓の間は例の経済協力の問題や教科書問題等ありまして、できるだけ早く、これはトップレベルの話でなければうまく片づかないという感じがいたしまして参上したわけであり、アメリカは経済摩擦や防衛摩擦が非常に危険な状態まで来ておりましたから、ある意味においては緊急避難的措置としても伺ったということもあり、ASEANは伝統的に日本にとって非常に大事な場所であります。そういうことで、いまのような順序になったわけでございます。  中国につきましては、昨年十月に鈴木前総理がお伺いして大変な御歓待をいただいて恐縮しておるのでありますが、それからすぐ私が総理になりまして、そう何回も御歓待いただくのはちょっと恐縮なような気もいたしております。こちらの方は胡耀邦総書記さんに御来日を御歓迎すると申し上げておる関係もありまして、そういう点で中国の方はぜひ行きたいとは思っておりますが、いまの国会やら外交日程から見まして、いまのところちょっと無理だと考えておるのは遺憾でありますが、しかし心がけておるということは申し上げる次第なのでございます。
  38. 井上泉

    ○井上(泉)委員 私はそういうアジアにおける日本の使命というものは、中国との関係をより緊密にするということ、そうしてアジアにおけるこうした米ソ間の争いの中に日本が巻き込まれることのないように、そうしてそのアジアにおける緊張を緩和するためにはこれは避けて通れない、どうしても考えなければならないことは朝鮮民主主義人民共和国との関係だと思うわけであります。  昨日の朝鮮民主主義人民共和国の法律の専門家との会談の中で安倍外相も、きわめて短い時間でありましたけれども、有意義な話をされたということであります。この朝鮮民主主義人民共和国との関係において、漁業協定に向こうの玄峻極朝日友好親善協会の会長が来るというのを日本政府が拒否して、それがために民間における漁業協定というものがとまっておるわけです。これを打開するためには、日本政府の朝鮮民主主義人民共和国に対する考え方が大きく変わってこなければこの打開の道も求めることは困難ではないか。そういう点から朝鮮民主主義人民共和国との関係をどういうふうにして打開をし、円満な関係を築くようにしようとしておるのか、総理の御意見を承りたいと思います。
  39. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮半島の情勢につきましては、われわれはいつも重大な関心を持っております。そうして平和的な会談によって、自主性によって、みずからの力によって南北が平和的統一をされる日が近からんことを熱望しておるものであります。そういう意味におきまして、全斗煥大統領が北に対して話し合いを呼びかけているということを非常に高く評価して、それが実らんことをわれわれも大いに期待しておるものでございます。  それと同時に、この朝鮮半島の平和に関係あり、関心を持っておるソ連なり中国なり日本なりアメリカなり、こういう周囲の国々がその平和統一を可能ならしむるように、できるだけ環境馴致の協力をするということも大事であるだろうと思います。しかし、あくまでそれは北と南の自主性においてみずからおやりになるべきことであって、外から強制したり押しつけがましいことをやるべきものではございません。そういう分限をよく心得つつ、まず南北の対話等々、朝鮮民族と申しますか漢民族と申しますか、それらの同文同種の同じ血を持った人たち話し合いによって解決されることがまず望ましい、そう考えておるわけであります。
  40. 井上泉

    ○井上(泉)委員 朝鮮の統一はもちろん自主的に、平和的にやるのは当然のことであるし、わが国がそれについてとやかく言うべきことではないのですが、わが国は韓国との間においては国交関係を持ち親密な関係を持っておるわけですけれども、一方、民主主義人民共和国に対しては何らそういう関係を持っていない。ところが民主主義人民共和国との関係というものもわが国にとっては非常に大事なことである、この関係をよくしていくということは朝鮮半島における緊張激化というようなことを防ぐためにも大事なことではないか、それがアジアの重要な使命を持つわが国としての任務ではないか。だから、私は朝鮮民主主義人民共和国のそうした漁業交渉日本へ来るというのをけちをつけて、そして漁業協定が壊れた、これは日本国民として大きな損失であり不幸な出来事でありますので、この朝鮮民主主義人民共和国との関係において、そうした向こうの関係者が日本に来ることを今日の段階においては政府としてはもっと積極的に受けとめるところの姿勢を堅持し、友好関係をつくり上げていくということも大事なわが国の外交の基本方針ではないか、かように思うわけなので、その点をお聞きして、私は質問を終わります。
  41. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 朝鮮民主主義人民共和国との間では、経済的な関係あるいはスポーツや文化の関係等を持ちまして良好な関係を維持しているのは妥当であると私は思っております。しかし、われわれは韓国との間に国交を正常化して、経済的にも交流し、また自由主義陣営の一員としてわれわれは協力し合っているということで、朝鮮民主主義人民共和国とはそういう正式の国交がないという不幸な事態にあるものでございますから、おのずから外交にはニュアンスの差が出てくるのはやむを得ない。しかし、この現状のもとにおきましてもできるだけ良好な関係を維持するように両方が協力し合うということは望ましいことであると思っております。ただ、その場合においても、やはり相手方が日本に来る場合にはちゃんとした日本の主権の範囲内において約束を守ってもらうあるいは法律を守ってもらう、そういうことが望ましい。そういうような信義のあることを両方が重ね合いながら、その両方の関係を改善していくという善意を持ってやっていくのが私はいいのではないかと思っております。
  42. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、玉城栄一君。
  43. 玉城栄一

    ○玉城委員 中曽根総理は、たびたび沖縄の方に御来島されて、沖縄の事情につきましては歴代総理の中でもよく御承知の総理のお一人だと思っているわけであります。そこで、大変いい機会でございますので、伺っておきたいことは、沖縄が本土復帰をいたしまして今月で満十一年になるわけであります。解決すべき課題はたくさんございますが、その中の大きな問題の一つとしまして全国の米軍基地の五三%がまだ沖縄に集中的に存在して、日常的にトラブルが発生もし、県民に不安を与えているということであります。結局、沖縄の中に基地があるのではなくて基地の中に沖縄があるという実態、よくこう言われているわけでありますが、そういうこともまだそのままという感じでありますが、総理の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 沖縄が復帰以来、特振法のもとに皆さんが懸命の努力をなさいまして、特に海洋博以来かなり沖縄の経済成長が見られたということは御同慶の至りでございます。しかし、その後また成長がやみつつあるのではないかということを憂えておるものでございます。特に、沖縄におきましてはそういう政府関係に頼る公共事業の比率というものが非常に民生の上に影響しているところが大でございます。いわゆる民間産業的工業というものが余りございません。したがって、政府財政に頼るところが非常に多い地帯であります。それから農業に関しましても、パインであるとか黒砂糖であるとか特殊の地域でありまして、これらも放置しておいて農業が繁栄するという状況にはいかないところでございます。そういう意味において、本土復帰を期待してわれわれと一体になりました皆さんに挫折感を抱かせないように、われわれは今後とも努力をしていく、そういう意味において特振法も延長しましたし、今後もいろいろ政府の施策におきまして細心の注意を払いながら積極的に努力してまいりたいと考えておるところでございます。
  45. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで重ねて伺っておきたいのは、ああいう小さな島に巨大な米軍基地がずっとあるということは、国の防衛ということは理解しつつも、そのことも程度問題ですけれども、非常に負担過重である、このように思いますが、総理はそのようにお考えになりませんか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国の防衛の面からも、沖縄の皆さんは非常に大きな貢献をしていただいており、場所によってはある意味においては犠牲を負っておられる地域であると考えております。これらにつきましては、政府としても一面において感謝しつつ、また地元の皆様方の御納得がいく協力ができるように今後とも努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  47. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、総理がこの間訪米のときにお使いになられた不沈空母という言葉がございますが、沖縄の場合、嘉手納の基地にしましてもいわゆる有事即応態勢ですから、私はこれはおっしゃる意味の不沈空母という感じがするわけです。ですから、先ほど総理のお話を伺っておりましても、これは充実拡大ということではなくて、むしろ基地というものは整理縮小という方向に持っていくのが当然であると考えるのですが、総理はそうはお考えにならないのでしょうか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般論といたしまして、基地を縮小していくことは望ましいし、われわれもそういう方向に努力していくべきであると思っております。  ただ、防衛力の整備というものは相対的なものであり、われわれは憲法範囲内で、わが方はすでにいろいろ申し上げておりますような原則に基づいて防衛力を整備する、その上に日米安保条約によりまして抑止力均衡を維持しておる。そういう面からいたしまして、本州、四国、九州、北海道、沖縄、みんなが協力し合って、そしてその抑止均衡により戦争を起こさせない、平和を維持していく、そういう点についてお互いに苦労を分かち合う、そういうことが望ましいと思っております。
  49. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで総理のお話をずっと伺っておりますと、何かこれはやむを得ない、感謝もする、いろいろなこともおっしゃいましたけれども、現実の厳しい国際情勢という立場からすれば、沖縄にそれだけの巨大な基地があったにしても、がまんする以外にやむを得ないというような感じに受け取れるのですが、そういうことでしょうか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 やはり人間の存在には歴史というものがございまして、明治、大正、昭和以来、あるいは第二次大戦以来そういう歴史というものがありまして、この現実を無視するわけにはいかぬわけであります。その現実の中に立ちましてできるだけ改善をし、歴史を改革していく、こういう現実的、建設的な努力を積み重ねていきたいと考えているわけであります。
  51. 玉城栄一

    ○玉城委員 一言もおっしゃらないのでなんですが、それでは一言ちょっと具体的な問題を伺いたいのです。  私この委員会で歴代の外務大臣に伺ってきたことは、日常的に米軍の基地関係でいろいろなトラブルが発生するたびに、県議会を初め大挙して高い経費をかけて東京までいろいろ談判に来るわけですけれども、一向らちが明かない。したがって現地にそういう外交権を持った外交官が常駐、これは一人でもいいし、北海道にもあるわけですから置いて、そういうものの解決に当たらせた方がいいのではないかということを申し上げてきたわけですが、予算の関係等々ということでいままでそういうことについて実現していないわけですが、総理はその点についていかがお考えでしょう。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はいまその必要はないのではないか、沖縄担当の国務大臣もおりますし、また政府の代表部みたいな機能も果たせる開発の総合事務局もありますし、また県知事さん、県議会というものもあるのでございますから、それらの国家的あるいは地方公共団体的機能が十分に発揮され、うまく提携していけば、こういうときでございますから人間をふやしたり何かするということはできるだけ差し控えさせていただいた方がいい、そう考えております。  ただし、いろいろ問題が起きましたり沖縄の皆さんがお困りのことがあれば、これは間髪を入れず電話でもあるいは飛行機でもございますから、われわれの方から出向いても問題を解決する、そういう善意を持って一生懸命やらしていただかなければならぬと考えております。
  53. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、総理この間もASEAN歴訪していらっしゃったわけですが、鈴木前総理がASEAN訪問について人づくりということで沖縄にも沖縄国際センターというものをつくろうということで、約四十億内外でことしから始まって六十年完成ということで非常に結構なことなんですが、ただ、この国際センターの今後の活用の仕方というのは非常に重要だと思うのですね。ですから、総理は幸い今回行かれて二十一世紀にわたる友情のための友情計画というビジョンも出しておられるわけですから、この沖縄につくる国際センターについてどのように、日本とASEANとのまさに接点になるわけですから、これは非常に重視して活用すべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は国際センターをつくる前に現地も行ってみましたし、またつくるにつきましてもいろいろ関係した一人でもございます。そういう意味におきまして、特別の関心も持ちまして、あの国際センターをつくる趣旨が十分に機能し、生かせるように今後とも政府としても心がけてまいりたいと思っておる次第であります。
  55. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、この国会終わりますと、総理サミット先進国首脳会議に御出席になるわけでありますが、先ほどの御質疑も伺いながらいろいろ私なりに感じておったのですが、総理とされても当然いろいろな重要な問題を考えていらっしゃることは、これはもう当然だと思うのです。その中の一つに、レーガン大統領と事前にお会いになるわけでありますから、非常にいま世界じゅうが注目しておりますのは、例のジュネーブで再開になりましたINF交渉、これがもし万一うまくいかない、あるいは決裂とかそういうことになりますと、これは非常に重大な、まさに米ソ再び核軍拡にエスカレートしていく、人類の生存にきわめて重大な脅威になる、まさに恐怖の時代に入っていくと思うのですね。そうならないためにも、クアラルンプールでも総理も何かそういうふうなことをおっしゃっておられますので、レーガン大統領に、この際米ソ首脳会談をやったらどうかというふうなことを御提案するお考えはございませんか。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 核兵器を廃絶して、そして軍縮をできるだけ早期に現実的に実現していくというのは、わが中曽根内閣の大きな目標の一つでございます。そういう意味におきまして、あらゆる機会を使ってそういう方向にわれわれとしては懸命の努力をいたしたいと思っております。  けさも私は自民党の外交調査会で申し上げましたが、アメリカレーガン大統領にせよあるいはソ連のアンドロポフ書記長にせよ、人類の一員としての良心を持っておると私は確信しておる。そして、核兵器というものはいかに恐ろしい兵器であるかということは、われわれ以上にその責任者の方がよく知っておるはずだ。地位が高くなればなるだけ、また核兵器が多くなれば多くなるだけ、それは人間として考えてみれば打ちふるえるくらいのものではないかと思っておる。しかも、米ソ両国とも考えれば内部にいろいろな問題も抱えておるし、世界世論も、ひしひしとして地球から核兵器の廃絶がもう大合唱みたいに起きている。こういう状況を見れば、恐らく二人ともできるだけ合理的な現実的なあるいは建設的な話し合いをつけて、そして両方が削減を行い、あるいは協定なりあるいは了解に達して地上の人を安心させたいという熱望を持っている、そういうものを実現していくためには、何しろ政治であり外交でありますから、ポーカーゲームをやっているのかもしれぬ、ポーカーフェースをとっているのかもしれぬ、しかし内心はそのチャンスをつかもうとして懸命の努力をしているのだろうと私は想像しておる。これは人類の一員としてそういう善意を持っていると信じているからであって、そういう善意を持っていないと、もしわれわれが考えるなら地球は暗黒の時代になってしまう。そういう意味においても、われわれはそれがサミットであろうと国連総会であろうとあらゆる機会をつかんで、そういう人類的良心で両方が手を握れるようなチャンスをつくるために今後とも努力していきたい。両方の、サミット、首脳会談というのも、われわれとしてはできるだけ早くそれが行われるように待ち望んでいますし、そういう機会をつくれるようにわれわれも側面から協力してあげたい、そう思っております。しかしこれはなかなか、先ほど来申し上げましたように、核兵器の問題には科学的な技術的な面がございまして、抽象論演説だけでは済まされない要素はあるということを、私は軍縮交渉やSTARTやSALTの内容を多少勉強しておりますから知っておるわけでございます。そういうものの積み上げの上に、そして現実的な建設的な妥結を行って、一日も早くトップ会談ができるように私たちも積極的に努力してまいりたい。その一つの方法としては、やはり西方が結束しなければだめだと思っておるのです。均衡ということを考えると、足並みが乱れたりがたがたになっていたらこれはだめだろうと思っております。やはり西の方が結束して一枚岩になって、そして合理的な考え方でまとめて、そしてレーガンさんを激励してそういうところに持っていく、そういうような考え方が、現実問題としては、やり方として現実的な建設的なやり方ではないか、私はそう考えております。
  57. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  58. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  59. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 総理サミット出席を前にされまして、アジアの一員としての立場を持ちながら出席されるという言葉を言っておられましたが、それは非常に大事なことだし、結構なことだと私は思います。ただし、具体的にそれではどういうことがアジアの一員としての立場なのかということになりますと、私はいま一つまだ明確に理解できない点があります。そういう点で、その立場から、先般アジア歴訪されましたそのことについてお尋ねをさせていただきたいと思います。  一つは、ASEAN諸国のリーダーの方々といろいろ政治的あるいは経済問題その他の問題につきまして議論をされました。当面する情勢についてもお話があったと思います。安全保障の問題についてもお話があったと思います。その際に総理は、そのようなリーダーたちとのお話を通じてASEAN諸国の人々が、特にリーダーは、最近の情勢に対して、たとえばソ連影響力、ASEAN諸国に対してどのような形で来ているのか、それをどのように受けとめているのか、脅威として受けとめられているのかどうか、たとえばそういう点について、リーダーたちとの話し合いの中で総理はどのように感じられたのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一般論といたしましては、ASEANのリーダーが一番関心を持っているのは、ベトナム問題であります。ベトナムが非常に強大な軍事国家になって、そしてインドシナ半島はおろか、はみ出して出てきたら困る、そういうことを心配している向きがあるのではないかと私は思っています。したがいまして、カンボジア問題をできるだけ早く解決したい、そのためにASEAN諸国は一致していわゆる民主連合政府を支持して、ベトナム軍が一日も早くカンボジアから撤退をして平和が来る日を待ち望んでおる、そういう意味において、国連の決議や国際諸会議の決議をASEAN諸国は一致して支持しております。日本もその立場にあって、ASEANのこの立場を強力に支持しております。したがいまして、カンボジアからベトナム軍が撤退しない限りはベトナムに対する経済協力は凍結する、私はそういうことを言明してASEANの態度を強く支持することもまた申し上げてきた次第で、そういう情勢を見ると、カムラン湾やダナンに、あるいはさらに最近はコンポンサムにソ連の力が強く及んできているということについては、ある程度の恐怖か脅威か、そういうものを感じているのではないかということを想像いたしました。これはベトナム問題を通じてそういうことを想像した次第であります。
  61. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお触れになりましたカンボジア問題の解決、これはASEAN諸国にとっては緊急の問題であろう、また重要な問題であることは確かであります。しかし、同時に、それは中ソというものの枠組みの中で解決するしか方法がない。これについては総理は具体的にどのような青写真をいまお持ちでございますか。どのような方式でカンボジア問題の解決を図ろうというお考えでございましょうか。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中ソのお話が出ましたが、中ソ会談というものをいろいろ情報をとってみますと、やはり中国は三つのこと、つまりベトナム、つまりカンボジア、それからアフガニスタン、アフガニスタンに対する侵入、それから中ソ国境における膨大なるソ連軍の展開、こういうものについてソ連側の善処を求めておる。ソ連側は、中ソ関係以外の第三国の問題について触れることにはきわめて消極的のようでありまして、そういう点からは中ソ会談というものはある一定限度以上進まないのではないかと観測されておる。私は、実態は聞いたわけでも見たわけでもないから知りませんが、そういう要素はあり得ると想像しております。そういう状態のもとにこのベトナム問題というものが現在あるのではないかと思いまして、これを解決していくについては、やはりソ連、ベトナムというものが世界や周囲の考え方というものをよく理解されて、そして平和的に処理をしていく、そういう方向に進むのが賢明だ。最近一部のベトナム軍がカンボジアから撤退をしたやに報道等で伝えられていますが、もしこれが真実に、現実に兵力が削減されて、これが続行されてカンボジアから外国軍隊が完全に撤退するということになれば、われわれとしては非常に大きくこれを歓迎したいと思いますし、ベトナムに対するわれわれの態度も変化を兆すモメントをつくってくれるのではないかと考えておる次第です。
  63. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまお話の中に、ASEAN諸国のリーダーたちソ連の力あるいは軍事力、ベトナムを通じてそれが行使されているということに対して恐怖あるいは脅威というようなものを持っているのではないかというふうにおっしゃいました。そうであるとすると、安全保障という観点から日本は一体何をなすべきなのか。おっしゃったように、私どもは軍事大国にはならないという立場を総理も鮮明にされました。しかしながら、そのような脅威がASEAN諸国に存在するという場合には、日本はその問題に対してノータッチでいくわけでしょうか、何らか別の角度から、安全保障の観点から見た場合に、ASEANとの協力関係というもののあり方というものはお考えでございましょうか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ASEANというグループができた背景には、私は、これは私の想像でありますが、ベトナム戦争で米軍がベトナムから撤退をして、アメリカの議会において、もう外国には兵を出さないというような種類の決議がなされる、そういうような背景のもとにASEANの五カ国が結束してそして相助け合おうという、そういう理由がASEANの形成には一つあったのではないか。もちろんほかの理由もたくさんあるでしょう。歴史の趨勢として、あそこに集まっている国々がお互い非同盟中立というような旗のもとに集まって趣旨を鮮明にして国際的影響力を持っていくという、そういう積極的な意味もあるでしょう。いろいろな理由でそれはできていると思いますが、日本は軍事的にそれらの問題について貢献したり、協力することはできません、このことははっきり申し上げてまいりました。ASEANの諸国の防衛は、各国がみずからの主権において、あるいはその周辺の国々の話し合いやら協力関係において、みずからの防衛として各国の独自の主権においてこれは行われるべきことであると思って、われわれがとやかく申し上げることではない。われわれが協力申し上げるのは内政の安定、福祉の向上、社会の安定、そういう面について日本としてはできるだけ協力申し上げる、そして国の基礎を強固にしていく、これが日本が協力する方向であると考えております。
  65. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 クアラルンプールのスピーチ、五月九日に行われました。その際に総理は、従来のASEAN外交は継承する。しかし、これを同時に発展強化して新たな次元にまで高めたいということを述べておられます。特に、従来のASEAN外交を継承する、強化発展させる、これはわかりますが、次に、新たなる次元にまでこれを高めたいということは、具体的にどういうことでございましょうか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回ASEANへ参りまして私が感じましたことは、いままでの歴代自民党政府は非常に努力をされ、また、日本の与野党を通じてASEANを重要視して、その汗と努力の成果が非常に実りつつあるということを非常に痛感しまして、歴代の政府や与野党の御努力に対して感謝と敬意を表した次第であります。だがしかし、前から私は自分で感じておったことでありますが、本当に腹の中でASEANの国の方々が日本を仲間と思い、友だちと思ってくれているのであろうか。それは経済援助とかいろいろな面がありますから、お互いにパートナーとかフレンドシップという言葉を使いますけれども、過去の大戦の非劇のことも考え、あるいは先般来教科書問題等につきましてもいろいろな反応があった等々考えてみますと、日本人の反省といたしまして、本当に腹の底から友人と思い、信頼してくれているのだろうかということを私は腹の中で不安に感じ、危惧に思っておる一人であったわけであります。ASEANの方々の心情は、われわれは外人でありますからはかるべくもない。しかし、日本人として過去の大戦の反省の上に立った深い、ひだの濃い考え方や思慮や政策というものは当然あるべきであると思っておるのです。そういう意味において、二十一世紀にかけて、いまの青年も含めて長期的に日本を本当に友人と思い、きょうだいとして手を握っていく相手としてもらうというところの殻をぶち割ったところまで入っていきたいというのが私の考えでありました。第二次世界大戦に参加した兵隊の一人として、私はそういうことを痛切に感じておったわけであります。そういう意味において本当の、もう一層深層心理と申しますか、腹の底から割って話し合える友人になっていきたい、われわれの誠意もよくわかってください、そういう意味趣旨を込めてそういうことを申し上げた次第なのであります。
  67. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 私、総理のお気持ちはよくわかります。しかしながら、いまのお話を聞いておりますと、どうもレトリックの方が先に立っていて、これからの青写真というようなものが示されない、そこに私は不安を感じます。一つわからないと申したのはそこであります。特に、今回サミット出席に当たりまして、日本総理アジアの一員としてどのような主張をされるのか。ASEANの要望も恐らくお伝えになるでありましょう。どのような要望をお伝えになろうとするのか。いまお話を聞いておりますと、カンボジア問題の解決一つとりましても、平和的な解決を期待するという願望のみがあって、そのプロセス、具体的な手段をお示しになられていない。私はそこをお聞きしたいのでございます。いま一言、そこら辺について踏み込んでいただけませんでしょうか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外国の紛争に関して、日本のような憲法を持って個別的自衛権と自国防衛のみを考え防衛体系を持っておる、軍事政策を持っておるという国にはその節度があるはずでありまして、われわれがやるやり方というものは、あるいはほかの国から考えればまだるっこい間接的な長期的な考えであると言われるかもしれませんが、私は、そういうやり方が結局長い目で見て平和を早く回復し、続けるもとになるのではないか。余り速効性を考えたカンフル注射みたいなことは副作用が多過ぎる場合も間々あります。そういう面に立って、日本としては長期的な考えで進みたい。  今回、私が青少年交流をもっとやろう、一国から百五十人、学校の先生がいいと思っていますが、夏休みに一カ月毎年御招待をする、ASEAN全体で七百五十人御招待する、そしてこれを続けよう、こういうこととか、あるいは科学技術大臣会議をやろう。これらも、日本が待っておる先進国としての科学技術あるいは技術移転ということを非常に欲しておられます。これを単なる商業ベースだけでやるのじゃなくして、科学技術という面において政府レベルでいろいろな面についてお話し合いもし、お互いが助け合う、そういう意味で科学技術大臣会議というようなことも申し上げて御賛成を得た。そういう点において政府としては一歩先に前進してきている、そういうふうに考えておるわけであります。
  69. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 質問を終わるに当たりまして、最近の国際情勢のいろいろの変化に対応して外交機能というものが強化されることを私ども国民として期待するわけであります。恐らく総理も、先般来訪韓され、あるいはASEANを訪問され、またまたサミット出席を前にして、外交機能の強化ということの必要性は痛感しておられると思いますが、一言で結構であります、御所見をお伺いして質問を終わらせていただきたいと思います。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 外交機能の強化につきましては、衆参両院、与野党を問わず、行政管理庁長官のときから御陳情もいただき、私も外務省の内部を調べておりまして痛感しておるところでございます。したがいまして、定員問題等につきましては行管長官当時からできるだけの配慮をしてきておるつもりでございますが、今後とも努力してまいりたいと思う次第でございます。
  71. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  72. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  73. 野間友一

    ○野間委員 まず、中曽根内閣の防衛政策に関連して質問をしたいと思います。  各マスコミの世論調査の結果はすでに御案内のとおりだと思いますけれども、多くの国民が中曽根内閣の防衛政策に対して拒否反応を示しておることは御承知のとおりであります。それは、軍事大国化を目指すそういう政策だという受けとめ方だからであります。とりわけ、いわゆるあの不沈空母の発言とか運命共同体といった発言に対しては、朝日新聞の世論調査の結果によりますと、これに「反発を感じる」というのが六一%、「その通り」というのが一五%という異常な状況であります。ASEAN諸国を歴訪されまして軍事大国化しないと、いわばぶりっ子ぶりと申しますか、盛んに平和のポーズをとってこられましたけれども、国民の軍事大国化への疑惑を払拭することはできないと思います。  そこで、今度サミットに行かれる、あるいは首脳会談もやられるわけですから、少なくともレーガン大統領に対しまして発言された不沈空母あるいは運命共同体という発言は撤回ないしは取り消しをされる、これがしかるべしだと私は思いますけれども、その点について見解を聞かせていただきたいと思います。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の防衛政策につきましては、前からの内閣の線を継承して、重ねていつも申し上げましたように、平和憲法を守り、そして個別的自衛権の範囲内で専守防衛に徹してやる、そういうことを言っておるのでありまして、いままでの内閣とそう変わったことではありません。ただ、野党からの質問に対して、ここまでは憲法上やれるというガードレールをはっきりした点はあります。それはいままであいまいであったり、質問がなかった点について質問がありましたから、憲法上ここまではやれます、これ以上はやれません、そういう限界点をはっきりしたという点はあります。  そういう点におきまして、私は、国民の御理解を正直に得ようと思って物を隠さないでやろうと思ってきておるので、最近著しくその御理解を得てきたと喜んでおる次第であります。共産党の方を除いてはほとんどみんなわかってきてくれたのではないかと思っております。(発言する者あり)それから、不沈空母なんて話をレーガン大統領にした覚えはない。これはワシントン・ポストの朝食会で出た言葉でありますが、そのとおり私が言ったかどうか、これは新聞でも出ているとおりのことでありますが、要するにこれは形容詞である、そういうことで、申し上げたとおりであります。
  75. 野間友一

    ○野間委員 よけいなことを言わないでください。それで、ワシントン・ポストに正確にそのとおり言うたかどうかということについての発言がいまありましたけれども、少なくとも不沈空母の発言については、総理は後でもこれを追認されておりますね。私のいまの質問は、サミット、首脳会談へいらっしゃるわけですから、これをしかるべきところで撤回ないしは取り消しをやられるべしだと思うのですけれども、これは撤回されるかどうか、その点についての端的なお答えです。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 撤回する必要はありません。
  77. 野間友一

    ○野間委員 それでは、運命共同体についても不沈空母の発言についても同様ですね。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 撤回する考えはありません。しかし、あの当座ああいうことが新聞に報道されて、意に反した形で解釈されて誤解を生んだことは遺憾であった、そういうふうに申し上げてあります。
  79. 野間友一

    ○野間委員 結局、いろいろな平和的なポーズをとられますけれども、このことを撤回すらやられない、平和を志向するそういう姿勢に私は非常に疑問を持つわけであります。恐らく国民防衛政策に対する疑惑や不安がさらに増幅されるだろうと思いますし、またASEAN諸国の受けとめ方についても、これから非常に大きな問題になるのではないか。一千海里の防衛の問題についても、あなたが帰られてからフィリピンの大統領がいろいろなことも言っておられますが、時間がありませんので次に進みます。  次は、非核原則の問題であります。総理非核原則については不変の国是というふうに断言されるかどうか。これは世界でも例のない平和的な原則だと私は思いますけれども、その点についての御認識はいかがですか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国是であると思っております。
  81. 野間友一

    ○野間委員 ところが、実際にはこの非核原則が守られておるかどうか。この点についてNHKの世論調査では、国民の七九%が日本への核持ち込みへの疑惑を示しておるわけですね。確かに非核原則はありまして、国民には事前協議があるとかアメリカを信頼しているとかさまざまなことを言われます。国会決議もあります。ところが現実には七九%の国民がいまなお核持ち込みの疑惑を持っておるわけですね。総理はこの点について、針の穴ほども疑惑は全くない、そういうことはあり得ないといまでも思っていらっしゃるのかどうか、いかがですか。
  82. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私もしばしばこの席で申し上げましたとおり、日本非核原則を遵守しておりますし、また、核持ち込みに関しましては日米間でしばしば話もしておりますが、アメリカ日本との約束は守るということをはっきり言っておるわけでございます。日本としては、核持ち込みについては事前協議の対象になるし、事前協議があったときはすべてノーだということをこの国会においても申し上げたとおりであります。これは政府の変わらない方針でございますし、国民の皆様もこれを理解しておると信じております。
  83. 野間友一

    ○野間委員 総理、国内では安心しろ、信頼しろ、事前協議があるじゃないかといろいろおっしゃいます。しかし問題の寄港とか通過、これについて一体アメリカに対して物を言ったのかどうか、申し入れしたのかどうか。外務大臣もエンタープライズのときも非核原則ということでお話をされたやに私は報道に接しておりますけれども、少なくとも寄港とか通過、こういう具体的なものを挙げて、こういうことについてのアメリカに対する言及がない、ここに私は最大の問題があるんじゃないかと思うのです。ほかの委員会でも私は総理に対して、共産党からすでに申し入れをしております非核日本宣言、これを提起してその点についての質問をいたしております。日本から核部隊、核基地の疑いのある一切のものを撤去させる。それから核兵器を積んだ艦船、航空機の寄港も通過も認めない。疑わしきは入れずという確固とした態度ですべての核持ち込みを拒否する。この三点を挙げまして、これを内外に政府は宣言する必要がある。非核原則を文字通り一点の疑惑もなしに内外ともに明らかにするということになりましたら、私は大変この宣言は効果的だというふうに判断しております。すでに総理には申し入れもしております。これについての御見解を承りたいと思います。
  84. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 核持ち込みにつきましては、先ほどから寄港であるとか領海通過をアメリカに対してはっきり言っておるかというお話でありますが、これは政府委員もしばしば答弁しておりますように、岸・ハーター交換公文、あるいは藤山・マッカーサー口頭了解等で日米間で了解事項としてはっきり出ているわけでございます。また政府は、総理を初めとしてわれわれが国会におきまして寄港も領海通過も核の持ち込みであるということを明言をいたしております。これは十分アメリカ側としても承知をいたしておるわけでございますから、問題はないと信じております。
  85. 野間友一

    ○野間委員 しかしそう言われても、これだけの疑惑があるのですよ。七九%の国民がそう思っておるのですね。総理、この非核日本宣言はお読みになったと思うのですけれども、総理答弁をぜひ聞かしていただきたいと思います。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核原則を厳守するで私は結構であると思っております。
  87. 野間友一

    ○野間委員 全く検討する余地がないとおっしゃるのですか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非核原則を厳守するで十分であると思います。
  89. 野間友一

    ○野間委員 そういう対応をされておるからますます疑惑が増幅されるのはあたりまえだと思うのです。世界の常識でしょうが。エンプラにしたってミッドウエーにしたって、あるいは基地においても横田から岩国、嘉手納、いずれもそうでしょう。本当に非核原則を完全なものにする、私たちは法制化の問題も提案しておりますけれども、少なくともそういう努力を政府はしてしかるべきだと思いますけれども、いまなおそういうようなあいまいな対応しかやられないというところに中曽根内閣の大きな問題がある、私はこう思います。  ところで、国連で今度総会が秋にありますけれども、園田さん、鈴木さんいずれも行かれまして演説をされております。この中では非核原則について言及されておりますけれども、しかし、演説中身を読んだ限りでも、通過あるいは寄港を認めないというような表現はないわけです。私は、総理みずからが非核原則を厳守すると言われるならば、少なくとも国連総会に行かれて寄港や通過にも触れて内外に宣明される必要があると思いますけれども、いかがですか。行く意思、計画があるのですか、ないのですか。
  90. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 国連総会総理外務大臣いずれが出るかについては今後検討しなければならぬわけでありますが、非核原則につきましては、これはもう内外に対して日本が宣言をしておるわけでありますし、また、日米間でもきちっとした了解ができておるわけですから問題はない。国民もこれを信頼しておるとわれわれは信じております。
  91. 野間友一

    ○野間委員 寄港や通過について演説中身として私は入れるべきだと思うのです。そういう意思があるのかないのか、その点のお尋ねです。
  92. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 寄港や領海通過につきましては、先ほどからもしばしば言っておりますように、日米間でもきちっと了解ができておるわけですから、非核原則という大原則を明示すれば、私はそれで十分であると考えております。
  93. 野間友一

    ○野間委員 だから、非核原則を厳守すると言うなら何で寄港や通過の問題について文字の上で表現できないのですか。それが私はわからないのです。できなければ、なぜできない理由があるのですか。やったらいいでしょう、非核原則を守ると言うならば。演説中身に入れることができないという理由について、もしあったらお聞かせいただきたいと思います。
  94. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 非核原則の一つの核の持ち込みを許さないという中に、領海通過であるとか寄港であるとかいうことが含まれておるということを、政府はこの国会において何度も明言をいたしております。これは世界に対して明言をいたしておるわけでありますから、問題はない。非核原則を高らかに掲げればそれで十分であると考えております。
  95. 野間友一

    ○野間委員 答えになっておりません。いろいろなことを言われますけれども、この点について表現上文字を使う、言葉であらわすということについてはなぜ避けられるのか、私は全くその理由がわかりません。  時間がありませんので、最後に国際人権規約について総理にお尋ねしたいと思います。  人権問題は平和問題とうらはらの関係であります。この人権規約の批准のときに、当外務委員会でもいろいろ論議をいたしました。そこで三項目にわたりまして留保した条項があります。園田外務大臣はその当時、この留保は解除の方向に向かって努力をする、またその責任があるのだということを明確に述べております。それから四年経過しておりますけれども、どんな努力をされたのかということが一点。  それから、留保せずに承認をした中に無償教育の問題があります。私はいま政府の中で教科書の有償化の検討がなされているやに聞いておりますけれども、無条件に採択した無償教育の原則に反すると思うのです。この条約の関係で、有償化は絶対すべきでないと私は思います。これは総理判断だと思いますけれども、この点についてお答えいただきたいと思います。
  96. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  第一の人権規約に関してでございますが、お示しのございました三つの留保条項につきましては、わが国が国際人権規約を批准する際に慎重な検討を行いました結果、わが国の状況等にかんがみて留保を行ったというものでございます。したがいまして、これらの留保の撤回につきましては、現状ではきわめて困難であると申し上げざるを得ないのでございます。しかしながら、今後諸般の動向を十分見守って慎重に検討を続けてまいりたい、かように考えております。  第二のお尋ねの点、つまり人権規約A規約第十三条にいいますところの無償化、これは何かという点でございますが、私どもは、この無償化の意味は授業料を徴収しないということと解しております。言いかえますと、教科書の有料化が十三条に反するのかどうかという点につきましては、これは教科書の無償化まで十三条は求めているものではない、かように解しております。
  97. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので、総理、これは教科書の問題、こういう無償の制度をとっておる、それが前提となってこの規約を批准したわけです。私はそういう意味で、教科書の無償化は今後とも継続する必要がある。これは条約の趣旨からしても私はそうだ。いま明文の、それは条約上含まれるのかどうか、これについては答弁がありました、私は不満でありますけれども。総理、少なくとも教科書の無償化だけは存続させるということをぜひここで確約していただきたい。それをいただきまして私、質問を終わりたいと思います。――総理言ってくださいよ、総理
  98. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 先ほど申し上げましたとおりに、規約第十三条は教科書の有料化の問題を取り上げていない、無償化は教科書の有料の問題を求めていないということでございます。
  99. 野間友一

    ○野間委員 総理言ってください。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府委員が答えたとおりです。
  101. 野間友一

    ○野間委員 いやいや、条約を離れてでも無償化を継続するかどうかという質問、総理に対する質問です。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府委員が答えた解釈に従ってわれわれはこれから政治を行ってまいります。
  103. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので、全く不満ですけれども終わります。
  104. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。
  105. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 私に与えられた時間は五分でございますので、一方的に並べて質問をさせていただきますので、ひとつ総理からそれぞれ御答弁をいただきたいと思います。  まず最初に、先ほど同僚議員からも御質問がありましたが、金大中事件でございます。――実は私きょう、ちょっと質問を前もって出させていただきましたが、何せ五分でございますので、きょう皆さんの質問を聞いて若干順序が違いますけれども、質問させていただきたいと思います。  後藤田発言は、条件が整わなければ事情聴取を断念する、こういうことを表明されたわけですけれども、私はやはり事情聴取しなければ事実はわからない。犯人の捜査には私は時効がないというふうに思うのですけれども、ぜひ事情聴取ができる方向日本政府は努力してもらいたいというのがまず第一点です。  総理が訪韓をされ、訪米をされ、このたびASEANの歴訪をされる姿を、私ども国内でテレビを見たり新聞を読んだりしてまいりました。久方ぶりにといいますか、なかなか背のすらっとした――やけに私は背が気になるわけでありますけれども、しかも英語が非常に上手な、直接私は聞いたことはないのですけれども、英語が大変上手な総理ということで、いわゆる最近では非常に国際派の日本総理ということで、それなりの評価があるようでございます。それは一つの外見、非常にかっこいいということでありますが、いよいよサミットに行かれるわけでありますが、この中では、中身でも非常にかっこいい中曽根総理の具体的な提案をして、世界の中における日本が平和な勢力としてしっかりした提言をしてもらいたい。総理はどういう決意で、またどういう具体的な提案を持って臨まれるのか。かつてケネディとフルシチョフのウィーン会談あるいは米ソのデタント時代におけるニクソンあるいはフォード、カーターともにブレジネフ書記長との対話が少なくとも当時一つの大きな成果を生んできたわけでありますが、どうもレーガン大統領ソ連の首脳とそうした道を開くような様子がうかがえない。この辺で中曽根総理がひとつ仲を取り持って米ソ首脳会談等の提案ができないのかという気がいたすわけでございます。  それから、もう一つ具体的な点でございますけれども、婦人の差別撤廃条約というのがあります。これは昭和八十五年までに批准をするということになっているわけでありますが、実は推進本部長が総理大臣だそうでございまして、文部省等のいろいろな手続がおくれているというようなお話も伺っておりますが、責任を持って八十五年までに批准ができるかどうか、留保することなくできるかどうかということを総理に伺いたい。  最後に、サミットに出かけた後の総理の外遊日程があれば伺いたいと思います。そうして、秋口には解散の密約説というのも何かあるようでございますが、私の方にもいろいろ都合がありますので、ひとつ密約説、あったかどうか総理に伺いたいと思います。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、金大中事件につきましては官房長官が国会で御説明申し上げたとおりであります。  サミットにおきましては、先ほど来申し上げましたように、まず第一は世界経済が回復に向かいつつあるというこのときでございますから、各国の協力によって世界経済を確実に回復に向かわせる、そういう希望の土地にウィリアムズバーグをぜひしたい、サミットを転機に世界景気が歴然と回復に向かったという成果を生むように努力してまいりたいと思いますし、また東西問題等につきましても、合理的な現実的な建設的な手続と順序を経て、米ソ間にINFやSTARTの問題について妥協が行われるようにわれわれも積極的に努力してまいりたいと思います。  なお、婦人の差別撤廃条約につきましては各省でいま調整中でございますが、できるだけ早く調整を終えてわが国も批准してみたいと思っております。  解散について、秋口解散とかという新聞記事が出ておったそうでございますが、これは全くナンセンスな記事であります。
  107. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 終わります。
  108. 竹内黎一

    竹内委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  109. 竹内黎一

    竹内委員長 速記を起こして。  次に、土井たか子君。
  110. 土井たか子

    土井委員 引き続き外務大臣に質問をさせていただくことにいたします。  問題にしなければならない課題が多くある中で、特に朝鮮問題について焦点を当ててお伺いを進めたいと思うのです。レーガン政権が昨年夏ごろより朝鮮民主主義人民共和国を中心とした朝鮮半島政策に対してだんだん変化が出てきているというふうに私自身は受けとめているのですが、外務省としては、そして外務大臣はこれに対してどのような御認識を持っていらっしゃるかということをまず総括的に承りたいと思います。外務大臣いかがでございますか。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 朝鮮半島の現状認識としては、私は、基本的には緊張の状況というものは変わってないのではないか、こういうふうに判断をいたしておるわけであります。しかし、韓国にもあるいはまた北朝鮮におきましても、統一を求めるための、あるいはまた対話を求めるための動きが出ておりますし、またその環境をつくるためのいろいろの働きかけ等もあるわけでございますので、私どもとしてはやはりこの動きがさらに積極的な状況になることを期待し、そのための環境づくりのために努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  112. 土井たか子

    土井委員 そのための努力をしてまいりたいという御発言が最後にあったわけですが、実は国連開発計画の基金供与について、朝鮮民主主義人民共和国の鉄道敷設資金千八百四十万ドルの要請があったのに対しまして、アメリカは、当然のことながら拒否権を行使するのではないかと思われていたところが、拒否権行使をせずに、これが承認されたという結果になっております。このアメリカの変化というのは、国際情勢を見ました場合に大変重要なことであるというふうに受けとめられるわけですが、これをどのように考えていらっしゃいますか。
  113. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 私どもの理解では、アメリカ日本と同じように、朝鮮半島の緊張が全般として緩和の方向に行くべきであるという点においては私どもと同様だと存じます。しかしながら、米国の北あるいは南に対する基本的な政策については変化がない、こういうふうに私どもはアメリカから説明を受けております。
  114. 土井たか子

    土井委員 大臣は、アメリカからの説明はともかく、いまこの事実に対しての認識をどのようにお持ちになっていらっしゃるかということについて承りたいのです。やはり国際情勢の中でいままでになかったことが具体的に出たわけでありますから、したがいましてこれは無視するわけにはいかない。どういうふうに大臣は受けとめられますか。
  115. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま橋本局長が言いましたように、私も実はシュルツ国務長官とも朝鮮半島の問題等について話し合ってまいったわけでございますが、朝鮮半島の緊張緩和のためにやはりアメリカとしてもそれなりの環境づくりに努力をしていきたいというふうな感じは、私自身としても受けとめたわけであります。たとえばクロス承認というふうな問題が韓国側から持ち出された段階においても、アメリカ側としてもそうした問題について十分検討していきたい、こういうふうなことでありましたし、あるいはまた、ロサンゼルスのオリンピックあるいはまた韓国でのオリンピック、そういうものも控えて、そうしたいわゆる朝鮮半島の情勢緩和という方向にするための努力は進めたいというふうな感じは、私は受けとめたわけであります。しかし、具体的にそれではどういうことをその後やっておるかということに対しては、そうした動きについては、私どもは具体的な動きについて確たる情報はまだ持っておらないわけであります。
  116. 土井たか子

    土井委員 緊張緩和の方向アメリカ自身が努力しつつあるということに対しての御認識はおありになるわけですが、そうすると、さらにそれに対する追い打ちをかけるというような形でお伺いします。  ことしの三月に入りますと、アメリカの国務省は朝鮮民主主義人民共和国の人たちの米国入国ビザについてケース・バイ・ケースで認める方針というのを打ち出しております。そしてまた朝鮮民主主義人民共和国の国連常駐代表の韓時海氏がアメリカに対しての再入国ビザを得て、ニューデリーの非同盟諸国首脳会議出席をしたという実際もございます。  これら一連の動きというのを見てまいりますと、まさにアメリカの朝鮮民主主義人民共和国に対する政策に何らかのアクションを起こしたというふうに見るべきだという向きが現にあるわけでありますが、外務省、外務大臣はどういうふうにこの実態を御認識になりますか。
  117. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 確かに先生が御指摘のように、北つまり朝鮮民主主義人民共和国の方の米国に対する入国のビザでございましたか、そういったもろもろのことはございますが、これは最初お挙げになった例は、恐らくアメリカのロサンゼルスでのオリンピック関係の方の入国ビザの問題だったかと存じます。そういう関連におきまして、アメリカとしましてもやはりスポーツでございますとかあるいはそういった文化でございますとか、そういう面については、これは先ほど申し述べましたとおりに、アメリカの朝鮮半島全般に対する基本的な政策の変更ではございませんが、しかしながら、やはり緊張緩和に役立つということであるならば考えてみようかなというような配慮から出た結果であろう、こういうふうに解釈しております。
  118. 土井たか子

    土井委員 そういうふうな御認識でこういう事実に対して注目をされているというふうに私は受けとめるわけですが、ただアメリカは御案内のとおり、従来南北朝鮮の問題に対して、特に七五年当時キッシンジャー政策の中では、クロス承認の提案をしてきております。しかし、このクロス承認というのは、実際問題実現不可能であるということがいろいろな事情から認識できるということも周知の事実でございます。  そこで、現実対応ということから、こういう実質的な関係改善の道をアメリカは歩もうとしているのではないかというふうに受けとめられるわけでありますが、これは外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  119. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、アメリカの北に対する基本的な姿勢というものは変わっていないと思いますが、しかし技術的な意味での改善措置というものは緊張緩和ということも踏まえて行われておるのではないか、こういうふうに判断しております。  たとえば、アメリカの外交官の北の外交官との接触等につきましても、社交的な接触はこれを認めるといったような方向にも改善をされたということでありますから、いまお話しのようないろいろなことが、やはり技術的にそうした緊張緩和のために役立つ努力というものが行われておるということは確かに言えるのではないかと私も考えております。
  120. 土井たか子

    土井委員 そうすると、実際アメリカがこのような朝鮮政策に対して、いままでそれに対しては全くかたくなな姿勢で臨んだとも言い方によれば言える朝鮮民主主義人民共和国に対する政策において、何とか歩み寄りを、そして何とか緊張緩和をという方向で努力を続けつつあるのはどういう理由からとお考えですか。  先ほど来、八四年のロサンゼルス・オリンピックに対して配慮するというようなことがやはりその理由の一つであるというふうにお答えの中には出ているわけでありますけれども、どうもそればかりではなさそうにわれわれは思うわけです。外務省としてはそれだけだとお考えですか。外務大臣、いかがでございますか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 緊張緩和についてはだれしも望むところでありますし、現在特に韓国からもクロス承認案の打診がわれわれのところにあったわけであります。同時にアメリカに対しても打診をしてまいったわけでありますから、韓国自体としてもそういう方向へ努力するという機運にあるわけでございます。そうした動き等も背景になって、オリンピックの問題もありますし、アメリカとしても全体的に判断をして技術的なそうした措置を重ねておるのではないかと考えております。
  122. 土井たか子

    土井委員 そうすると、総体的に見た場合にはアメリカは今後ワン・コリア・バット・ノット・ナウという政策を推し進めていくというふうに考えてもいいのですか。つまり一つの朝鮮、ただそれはいますぐということはむずかしいけれども一つの朝鮮という認識をその根底に置いてこういう対応を進めている姿であると理解してよろしいか。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカがこれまでの対朝鮮半島に関する認識とか基本的な考え方を変えたとは思いませんけれども、しかし、先ほどから申し上げますように、緊張緩和のために努力をしていく、改善を加えていくという点は十分考えて、そのための措置をとってきているのではないか、こういうふうに思うわけです。
  124. 土井たか子

    土井委員 関係改善を意図してずっと努力を続けつつあるのではないかという大臣の御答弁ですが、本年の二月に御承知のとおりチームスピリット83が行われております。西側最大規模の演習であることはすでに周知の事実になっております。十九万一千人をこれに投入している。うち在韓米軍七万三千人、韓国の兵員十一万八千人、この米韓の演習に沖縄を初め日本が在韓米軍支援補給兵たん基地として使用されたといういきさつが御承知のとおりにございます。これに対しては、中国がシュルツ米国務長官に対して、そしてまた、わが国の二階堂幹事長に対して、強い抗議を持ってこられているという事実も大臣御承知のとおりであります。  日米韓軍事演習というのは、恐らくは制服組からすると望みたいところであろうと思いますけれども、しかし、いまずっと承ってまいりましたとおりで、朝鮮半島に対して片やいま当のアメリカも、朝鮮民主主義人民共和国に対しての関係改善を意図して努力の積み重ねをしている。言うならば朝鮮半島全体について微妙な変化がなされつつあろうとしているときだということを認識しなければなりません。このときに演習などをすると、せっかくの緊張の緩和であるとか、朝鮮半島に対して平和友好の機運をもたらすということに対してこれをぶち壊すということにもなることははっきりした実際問題として認識しておかなければならないことであると思います。少なくとも日米、米韓を別々に演習の上では区分けをいたしまして別個のものとするというこそくな手段をとっておりますけれども、日韓間の演習などをするようなことがあれば、これは幾らASEANで日本は軍事大国化の道をとらないということを説明し、平和憲法の枠を踏み外すことはないと百万遍言われたとしても、それは水泡に帰す問題であろうと思います。こういうことはまさか許されるはずがないわけですから恐らくあり得ないと思いますけれども、日韓間の演習などというものはどうですか大臣、あり得ようはずがないと思いつつ私は質問しているのですが、断じてお認めになりませんね。また、認めらるべきものでないというふうにお考えでしょうね。どうでしょう。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日韓間で軍事的な意味合いを持つ共同的な行動が行われるということはあり得ない。というのは、日本の場合はあくまでも個別的自衛権、専守防衛というのが日本防衛基本方針でございます。日米間にはもちろん安保条約というものがございますから、安保条約に基づくあるいはその関連規定に基づくいろいろの共同の作業というものが行われるわけでありましょうけれども、日韓間にはそういうものはありませんし、その他の諸国とも日本の場合は軍事的な結びつきは一切持たないというのが原則であります。
  126. 土井たか子

    土井委員 それははっきりした話だと思うのです。こんなことがあり得ようはずがないのであって、当然それは許されるべきものではないわけでありますけれども、そこで大臣にお尋ねをしたいのは、対馬海峡の封鎖で西水道部分についての問題であります。  昨年の七月に日韓議連の会議におきまして日本側が対馬海峡の封鎖問題を提起をいたしまして、ことしの五月に東京で日韓議連の協議、これは外交安保委員会で海峡封鎖の具体案が討議の議題となっているわけであります。日韓間でこういう問題に対してお互いが共同防衛の任に当たるなんということは少なくとも許される話じゃないわけでありますけれども、しかし議連の中では現に議題となり、具体的に討議をされるということが進められつつあるのです。しかし、こういうことは実際問題としてできない相談であると思いますけれども、大臣はどういうふうにお考えですか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日韓議連の場合は自由な立場でありますから、いろいろなことが自由に討議されることはそれはそれなりに許されるわけでありますけれども、しかし、少なくとも日韓の政府間において対馬海峡の共同防衛とか共同封鎖とかいうことを行うというようなことは、現在の日本のとっておる基本的な政策からしてあり得ることではないわけであります。
  128. 土井たか子

    土井委員 しかし、対馬海峡というのは一体のものであります。東水道だけを封鎖したって対馬海峡に対して封鎖をする意味はない。やはり西水道に対しての封鎖がなければ海峡封鎖の効果は挙げ得ない。したがって、そういう点からいたしますと、韓国側に対して何らかの対応をしない限りは対馬海峡に対しても海峡封鎖になり得ないという現実の問題があるのです。だから海峡封鎖について日韓間でそういう連絡がない、また、あり得ない、する問題ではない、すべきでない、こういうふうにお答えになろうとしても、実際問題としては、それがないことにはこの対馬海峡の封鎖は実効性を得ない、こういう関係にあるのですが、大臣、どうでしょうか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 少なくともいま日本政府日本の立場としましては、韓国との間で共同防衛であるとかあるいは共同して封鎖をするとかいうことは日本の今日の立場からできない、こういうことははっきり言えると私は存じております。
  130. 土井たか子

    土井委員 平時、有事を問わず封鎖実施を韓国に対して通知をしたり通告をしたり、そうしてこういう問題に対して協力を要請するというふうなこと自身はどうでしょう外務大臣、集団自衛権の行使に当たると思いますが、どのようにお考えですか。――大臣にお答え願います。いや、大臣にお答え願いますよ。
  131. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 先に栗山条約局長
  132. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 集団的自衛権との関係でございますので、ちょっと私から法律的な面の御説明をさせていただきたいと思います。  従来から政府の方で御答弁申し上げておりますように、全く仮定の問題でございますが、西水道において有事の際にわが自衛隊が――これは韓国と共同してやるということでは全くございません。個別的自衛権の範囲内で、西水道でいわゆる通峡阻止という行動をとる場合に日本の一存でできるかという問題提起がございまして、そういう場合には、韓国は対岸の沿岸国でございまして、韓国も同様に西水道という海峡水域に対して非常に利害関係を持っているわけでございますから、そういうわが国有事の際の自衛隊の個別的自衛権の行使の一環としての通峡阻止というものが全く韓国の意向を無視して行うわけにはいかないであろうということを御答弁申し上げているわけでございまして、これは決して韓国と一緒に委員御指摘のような集団的自衛権の行使というような形での軍事行動というものを想定して御答弁申し上げているわけでは全くございませんし、またそういうようなことは憲法上も可能ではなかろうというふうに考えております。
  133. 土井たか子

    土井委員 実際問題、その海峡封鎖という問題、そして海洋封鎖という問題は、以前この外務委員会で取り上げたとおり、これは戦時国際法の対象になる行為なんです。また、この行為を行えばすなわち宣戦布告をしたに等しい。そういうことからいたしますと、いまきれいごとの御答弁をおっしゃっていますけれども、韓国に対してその通知をするとか、韓国に対して封鎖実施というものをいろいろと協力を呼びかけるとか、また封鎖実施に対して了解を求めるとかというふうな行為自身は平時において考えられる行為じゃない。すなわち、そのこと自身が戦時に突入している行為というふうに受けとめねばならないのです。そういうことからいたしますと、これは自衛権の行使ということからいたしましても集団自衛権に当たるという気が非常にするわけでありまして、それは理屈の上で、いま条約局長はいろいろつじつま合わせの御答弁をなすっておりますけれども、現実の問題からするとなかなかこれは疑義をはらんでいる問題であります。大臣、これはどういうふうにお考えになりますか。私は、従来から理屈には理屈でもってこたえるということになしおおせておりますけれども、現実の問題として考えた場合にはこれは非常に大変なことだと思いますよ。どうです。
  134. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういう事態が起こるというのは全く仮定のことでありますし、まさに有事の際であるわけでございますが、その際においても、これは国会でもしばしば政府答弁しておりますように、日本の行動はあくまでも個別的自衛権に基づかなければなりませんし、自衛の範囲内でなければ行動できないわけでございますから、そうした基本的な立場を踏まえて通峡阻止という面で日本は行うわけでございます。しかし、いま条約局長が申し上げましたように、対岸が韓国でありますから、その際において韓国に対して通知するとかそういう措置は、これは仮定の問題でございますけれども、そういうことは当然考えられるわけでございます。これが個別的自衛権に反するとか集団自衛権になるという問題ではない、私はこういうふうに考えます。
  135. 土井たか子

    土井委員 理屈に対して理屈でもってこたえようとすると幾らでも三百代言的な理屈は講ずることができるわけでありますが、こういう問題は現実になってみたときにいろいろやったってこれは遅い問題ばかりでありまして、平時においても有事においてもこの問題については日本としては許せない、許される範囲ではないというところは明確にされておかなければならないことだと思うのです。  そこで、先日のチームスピリットの問題に対しまして中国側から二階堂幹事長に対して抗議が寄せられたことに対してはどういうふうな答え方をなさっておられますか。何らかの答えをなすったのですか、無視をなすっていらっしゃるのですか、どうなんですか。
  136. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 せっかくの先生のお尋ねでございますが、私の聞いております限りでは、二階堂幹事長が総理の特使としまして訪中しました際に、このチームスピリットについて抗議あるいは注意喚起のようなものがあったという話は実は二階堂先生からもまた随行しました外務省の職員からも私は聞いておりません。
  137. 土井たか子

    土井委員 手元にある資料からいたしますと、二月に訪中をしましたシュルツ米国務長官、二階堂自民党幹事長に対しまして、中国側が米韓演習への抗議と日本の対韓政策に強い不満を述べるというようなことが具体的に書かれているわけであります。そうすると、ここに書かれていることがうそなのか。それとも、いまの御答弁の上ではそれはあずかり知らないけれども、事実あったかなかったかということはもう一度調べてみないとわからないということなのか、いかがですか。
  138. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 シュルツさんが訪中をいたしましたときに、中国側から先生御指摘のような意思表示があったことは私は明確に記憶しております。私の記憶に誤りがなければ、韓叙外交部副部長がチームスピリットに関する中国側の公式態度を書いた紙をシュルツさんに対してメモ通り読み上げたということは私記憶しておりますが、二階堂幹事長に対して中国側がそのような申し入れあるいは注意喚起をしたということは私は聞いておりません。
  139. 土井たか子

    土井委員 そうすると、ここに書いてあることについては事実を聞いておられないのか、それともこの事実がここに書かれているとおりではないのかという二つに一つという問題になるわけでありますが、いずれにしろ、中国側に対して日本側はチームスピリットの中身に対していろいろとお答えになるということは過去の経緯としてはなかったわけですね。どうなんですか。あったのですか、なかったのですか。
  140. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 私もずっと昔のことまでは必ずしも正確に全部知っておるわけではございませんが、私の知る限りではこのチームスピリット83あるいは82、ずっと続きますが、これにつきまして中国政府から公式に日本政府に対して申し入れあるいは注意喚起、抗議、その他の明確な意思表示があったというふうには私は記憶しておりません。
  141. 土井たか子

    土井委員 そうすると、日本側としてはその問題に対しての意見を表示するということも事実上は不必要であるというかっこうで今日まで来ているというふうに受けとめていいわけでありますね、どうなんですか。
  142. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 先方から何もお申し入れがないわけでございますから、こちらから特に申し述べる必要もなかったかと存じます。
  143. 土井たか子

    土井委員 そこで、きょう初めの方から承ってまいりましたアメリカの朝鮮民主主義人民共和国に対しての緊張緩和に対する努力の問題なのでありますが、これは新しい対外関係を打ち立てていく努力という点からいうと、私は非常に画期的なことだというふうに受けとめていかなければならないのじゃないかと思うのです。つまり、朝鮮民主主義人民共和国に対する単独修好という可能性を示唆したものであるという意見が、こういう一連の具体的な事実を通じて示唆されつつあるわけでありますが、これに対してはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  144. 橋本恕

    ○橋本(恕)政府委員 御指摘の単独修好というお言葉の意味が、もしアメリカと北鮮との外交関係樹立あるいは承認というような意味でございますれば、先ほど大臣も御答弁しまして私も御答弁申し上げましたが、アメリカの最近の動き、とりわけ先生御指摘のもろもろの事象につきましては、これはアメリカが朝鮮半島全体の緊張緩和を考えているということが一つ。それからもう一つは、アメリカのそのような動きが南北対話促進に資するものであるという前提、さらにアメリカの南に対する同盟関係は全く揺るがない、そういう前提のもとでの動きと解されますので、したがいまして、方向方向といたしましても、私はただいまのところでは、先生の御質問を正確に理解すればアメリカの北に対する単独修好あるいは北に対する承認に至るような動きというものは、ただいまのところではまだ見られない、かように解釈しております。
  145. 土井たか子

    土井委員 しかしいずれにいたしましても、従来とってまいりましたアメリカの朝鮮民主主義人民共和国に対する政策が、ことしに入ってだんだん具体的な事例を通じて関係修復と申しますか、緊張緩和の方向に刻一刻努力が払われつつあるという事実に対してはやはり注目をし、外務省としてはそれなりの評価をそれに対して認める、こういうお立場であることは疑う余地がありませんね。どうなのですか、外務大臣
  146. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かにいま橋本局長が言いましたような理由で、アメリカが北に対するこれまでの措置を多少技術的に改めているということは言えるかもしれませんが、しかし基本的にアメリカと北との関係についてのアメリカ政策というものが変わってはいない。これはわれわれも日米間でしょっちゅう朝鮮半島の問題については協議をいたしておりますが、アメリカにそうした基本的な政策を変えるというふうな徴候は見られないということであります。
  147. 土井たか子

    土井委員 そうすると、アメリカ基本姿勢は変わらない中にも、しかし以前と変わってきている点がこういうふうにあるわけですから、それに対しては、私は無視するわけにはいかない問題であろうと思うのです。  さて、日本が朝鮮民主主義人民共和国に対する対応に対して、最近は朝鮮社会科学法学院法学研究所の副所長が日本に来られるときに、これは快く入国ビザに対しても認められるというふうないきさつがあったわけでありますが、今後やはりこれに対しての努力というふうなことを具体的に何かお考えになっているところがあるならば、外務大臣、聞かせていただきたいのです。
  148. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の会議は国際会議でありまして、これまでもずっと続いてきたもので、韓国の代表も北の代表もずっと出席をしていたわけで、たまたまこれを東京で開くということでございますから、これはこれまでどおり日本としても招待をしたということでありまして、日本の北に対する考え方が大きく変わって、今度の国際会議で北の代表をこの会議に招いたということではありません。
  149. 土井たか子

    土井委員 外務大臣自身サミット総理に同行されます。そして帰ってこられまして中国なりそれからアジアにおける枢要な国に対して、ソビエトも含めまして訪問をされるというふうな御予定がおありになりますか、どうですか。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 サミットから帰りましたら大いにあちこちへ行きたいと思っておりますが、まだ日程の方はつくっておりません。  中国の場合は、先ほど総理も申し上げましたように胡耀邦総書記がわが国に来られるということでございますから、あるいはまたこの秋には日中の閣僚会議を東京で開くということでもありますし、そういうことも踏まえながら対応してまいりたいと考えております。
  151. 土井たか子

    土井委員 そうすると、場合によれば外務大臣が訪中されるということもやぶさかではないというふうに受けとめさせていただいていいわけですね。
  152. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま具体的にそういうことを考えておりませんし、そういう日程等の協議もいたしておらないわけであります。まず外務省としては胡耀邦総書記を迎えるということでその辺の詰めをしなければなりませんし、同時にまた日中の定期閣僚会議もことしじゅうに開くということでございますから、そうした準備等もこれからしていかなければならない、そういうふうに考えております。
  153. 土井たか子

    土井委員 先ほどこの秋の国連総会に向けての質問もあったようでありますが、昨年の第二回国連軍縮総会に向けまして、日本国民は大いに反核・軍縮の問題で行動したわけであります。政府とされましても、当時の鈴木総理大臣が総会における軍縮演説演説としてされたわけでありますけれども、しかしながら言うこととなさることとは大変に落差がそこにございまして、なかなかこういう状況を見ていて黙っているわけにはいかないという全国にたくさんの国民があることは、外務大臣もよく御承知のとおりなんです。  わけても女性というのは平和に対して非常に真摯な気持ちでこの中身考えて、戦争はどんなことがあっても許してはならないということに対しては確信を持っていると申し上げていいと私は思いますが、その中のお一人である、兵庫県にお住まいの、四歳のときに脊椎カリエスを患われてそれ以来刻苦の人生を送ってこられた一人の女性が、たった一人で「国連への提言」という、ここに持ってまいりましたパンフを自費で出版されたのです。中身を読んでまいりますと、これはそれぞれが大変示唆に富んだ中身でありまして、一女性が精魂を傾けて一つ一つの問題に対していわば命がけで考えられた中身がこの中に収録されているということを私は申し上げたいと思うのです。  これは三つばかりの国連への提言でございまして、一つは国際食糧銀行、これは仮称でございますが、それを設置すること、一つは世界の恒久平和のために厳守していただきたいこと、三つ目には核廃棄物の海洋投棄を厳禁すること、この三つの項目から成っておりまして、一つ一つの問題の中身に対して触れていくという時間の余裕がございませんけれども、外務大臣におかれましてはこれを一つお手持ちになっていただいて、そして今回サミットに向かわれる飛行機の中ででもこれをお読みいただきたいと私は思うのであります。どうですか、外務大臣にいまここで差し上げたいと思いますけれども、ひとつ、この一女性、喜多川千寿子さんの書かれました「国連への提言」に対して、目を通していただきたいと思います。差し上げたいと思いますが、これ、読んでいただけますね。
  154. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 喜んで、いただきたいと思いますし、また十分熟読をさせていただきまして、今後この提言に対してわれわれはどういう行動をするかということにつきましても検討してみたいと思います。
  155. 土井たか子

    土井委員 具体的検討というのはどういう形で表現していただくかということもございますが、国会のこういう席で質問させていただくということも一つの方法であろうかと思いますけれども、一つ一つの項目について書いてございますから、それぞれの項目について外務大臣なりの御所見をひとつ文書で披歴していただくということが大切じゃないかと私は思うのですが、それはどうでございましょう。お願いできますね。
  156. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 読ましていただきまして、私の所感を各項目について申し上げさせていただきたい。これを文書にしてももちろん結構でございます。
  157. 土井たか子

    土井委員 さて、先ほど国連婦人年十年というのが八五年で、そして婦人に対するあらゆる形態における差別撤廃条約というのを日本は批准をするという約束ですでに署名がされて、作業が進みつつあるのでございますけれども、実質的にはその作業にかけられる時間はあと一年半ぐらいしかありません。一年半ぐらいしかないあと残りわずかのこのときになりまして、いろいろな作業を見てまいりますと、少し進んだものと大変おくれているものとまだ手がついていないもの、いろいろあるわけであります。さっき、総理大臣が推進本部長でいらっしゃいますから、したがって本部長に対しての要請がございまして、それは督励をするという御答弁もございましたけれども、わけても文部省、これは大変おくれている。それから労働省、これもなかなか問題点がまだまだ整理が十分にされ尽くしているとは言えません。条約締結ということになりますと、条約審議は当然この外務委員会ということにもなり、条約について責任をお持ちいただくのは外務大臣ということになるわけでありますから、外務大臣からひとつ、この作業については留保なしで締結をするというのが当初の約束なので、そのことに対しては督促方をひとつ要求したいと思うのですが、どうでしょう外務大臣、それを責任持ってやっていただけますか。
  158. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 しばしば国会でも御指摘がありますし、私も何としてもこれは批准をしなければならない、こういうふうに存じております。各省間でまだまだ問題が残っておりますが、これは鋭意督促をいたしまして、問題を詰めて間に合わせるようにしたい、こういうふうに考えます。
  159. 土井たか子

    土井委員 それでは質問を終わりますが、これをいまから外務大臣にひとつ差し上げたいと思うのですが、こそくな一人一人の利害の立場に立って考えるんじゃなくて、非常にグローバルな世界の恒久平和ということと人類の共存共栄ということを願うという立場でこれは書かれている中身なんです。したがいまして、これからいいますと、きょうの総理大臣のよって立たれる立場、それは力には力を、核戦力には核戦力を、そうして抑えていくという立場での核廃棄への交渉に初めて意味があるという立場とこれは真っ向から抵触する立場です。人類の共通の悲願であるところの核全面廃棄、そして平和に向けられるひたむきな気持ちというものを生かした外交方針、外交政策というものはどういうものであるかということをもう一たび初心に立ち戻るような気持ちで外務大臣にお考え願うということでこの提言をここで差し上げたいと思いますから、先ほど申し上げたとおりひとつお願いいたします。では委員長、これをお許しいただいて。  それでは時間です。終わります。
  160. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡部一郎君。
  161. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は法律の域外適用の問題を先日から議論させていただいているわけでございますが、大変問題が複雑でめんどうな問題を含んでおり、今後の対米摩擦の最大の課題になろうという問題に発展しつつあるというのを伺いまして、なお御研究をいただくということにいたしているわけでございますが、まずこれを今後ともよろしくお願いしたいと存じます。  今日は、その問題の中間報告を求めますとなるほど大変な問題がたくさんある御様子でございますので、次週またはその先の質問にさせていただきますが、とりあえず本日申し上げたいと存じますのは、高級外車を百十台アメリカのリース会社から借りた日本系の会社がそれを日本側の方へ輸出をいたしまして、船上売却の形でそれを船の上で売却し、船荷証券を見せてそれを引き取り、日本国内で売却したという記事が最近報道されているわけであります。  この問題を調べてみましたところが大変めんどうな問題がたくさんございまして、日米間で起こった問題の中で幾つかの、今後の貿易摩擦以上の問題に発展するのではないかと思われる節がございますので、これについての政府当局の現在の御見解を承っておきたいと思うのであります。  私が申し上げましたのは、昭和五十六年春ごろからサンフランシスコ市内にあるロールスロイス販売代理店ブリティッシュ・モーターカー・ディストリビュータ社の子会社BMCリーシング社がロサンゼルス市センチュリーパーク・イーストサイド地区の日系の貿易商社センチュリー・コマース・コーポレーションに対して月数十万円のリース料でロールスロイス・シルバースピリット一台約三千八百八十万円相当をリースしたところ、二、三カ月して同社が突如として閉鎖され、経営者がロールスロイスとともに行方をくらました。さらにロールスロイスの方は、同年六月に大阪市内の貿易会社を荷受け人として船積みされ、日本に輸出されていたということが判明したと報じられている件であります。この件につきまして、現在どのようなことになっているのか。まず警察の御担当の方から承りたいと思うのでございますが、これは贓物収受というような日本側のどの法律に適用されるものであるか。現在の状況並びに犯罪名としてどういう形に該当するものであるか、その辺から承りたいと思います。
  162. 金田雅喬

    ○金田説明員 いま御質問がございましたように、アメリカのリース会社がリースをした車が日本に輸出されているということに関して、アメリカ捜査機関から警察庁に対して調査依頼が行われているということは事実でございます。これに対しまして、警察庁では関係警察調査を指示しまして結果をアメリカ側に逐次送付いたしております。それと同時に、わが国でもこの事案が国民の国外犯に当たるかどうかという点について検討するためにアメリカ側に対して必要な調査を依頼いたしております。  いま先生おっしゃいましたどの犯罪に当たるかということでございますけれども、こちらから目下調査を依頼いたしておりますので、はっきり罪名はまだ申し上げることができませんけれども、一応考えられる犯罪といたしましては詐欺あるいは横領あるいは贓物罪というふうなことが考えられるかと思います。
  163. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この調査についてでございますが、私もあらかじめ承ったところによりますと、詐欺罪でございますなら日本にもあることでございますから国外犯の適用を受けるが、横領ならば国外犯の適用はないということでございますが、そういうことになるわけでございましょうか。  また新聞紙上では贓物州間移動罪でFBIは捜査をしているということでございますが、わが国においては贓物州間移動罪というものはございませんし、そういう意味ではわが国内の法律に該当しないということになるのではないかと思われますが、この辺の御見解、いかがでございますか。
  164. 金田雅喬

    ○金田説明員 詐欺罪は国外犯になるけれども横領罪はならない、そのとおりでございます。  それから贓物の関係につきましては、州間移動という罪名はございませんけれども、わが国にも贓物収受あるいは贓物運搬というふうな罪名がございます。念のために申し上げますけれども、私、まだ犯罪に明らかになると申し上げているわけではございませんので、犯罪になるとすればということでございますので、あらかじめ御了解を得ておきたいと思います。
  165. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいま先ほども申し上げましたように、アメリカの中で当該事犯が発生したのは五十六年のことでございまして、ただいまは言うまでもなく五十八年、二年を経過している問題であります。それに対して犯罪事実も明確でないのに調査が依頼され、わが国がこたえるというのはどういうルールに基づくものであるか。確かにアメリカ日本との間には犯罪人引き渡し条約というものが存在するし、犯罪人引き渡し条約の場合には明らかに犯人というものは引き渡さないという原則が堂々と、第五条には「被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。」と明記されており、要するに自国民についての責任は当該国が負う、当該国が保護するという原則が貫かれているわけであります。したがって、引き渡し条約の中には、引き渡しについてはその刑の言い渡し書の写しとか適切な証拠書類等を十分にそろえてでなければ請求すらもできないというふうに、ここは明示されているわけであります。そうすると、調査の依頼に当たりましても、当然わが国の刑法においてどの個条に触れるかということまたはそれを示すに足る適切な証拠というものが添付されて請求されるのが妥当だと思うのですね。そういうような正式の書面、そうした適切なる証拠というものは表示された上で警察庁に対して調査依頼があったものかどうか承ります。
  166. 金田雅喬

    ○金田説明員 本件は犯罪人の引き渡しというものではございません。あるいは犯罪の証拠を引き渡せというものでもございません。それ以前の捜査段階における捜査資料あるいは情報をもらいたいという依頼でございますから、例に出されました犯罪人の引き渡しに見られるような厳格な事実を添えて、あるいは証拠を添えてこちらに調査の依頼が行われたものではございません。ただ、捜査機関としてこういう事実を把握しておるけれども、これについて調査をしていただきたいという依頼があったわけでございます。
  167. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ますますめんどうな話になるわけでございますが、私の方から見ますと、これは犯罪の捜査ではなくて、調査依頼を受けて警察としてはインターポールとかあるいは日米間の司法当局同士の友好的な調査結果の交換、情報の交流という立場でおやりになっていた、こういうふうに理解してよろしいわけですね。――うなずいておられますからもう結構です、立ちますと時間がかかりますから。  そうしますと、ここでもう一つめんどうが起こりますのは、リース契約というものはリースをした時点において、洋の東西を問わず、変更を予測した条項あるいは内容というのを持ち合わせているものであります。たとえば事故が起こったとか紛失があったとかでその物を返せないというケースもあるわけでありますし、中には、まれではありましょうけれども、リース契約を破棄して買い取りたいという要望をする場合も予測されているわけであります。したがって、リース契約の絡む詐欺、横領等になりますと、これを贓物と指定し抜くということは非常にむずかしいものではないかと思います。また、州によりましては、横領された横領物、犯罪実体というものが手元にないと犯罪として構成要件を欠くというような厳格な法規を持ち合わせているところも存在すると聞いておりまして、これはどの州が関与しているかは存じませんけれども、犯罪として追いかけるにしても、FBI側並びにアメリカ警察側もかなり困惑している事犯ではないかと思われますが、その辺はどういうふうに御認識ですか。
  168. 金田雅喬

    ○金田説明員 犯罪の捜査に使われるということは、必ずしもその捜査資料が本人を訴追するためにだけ使われるものではございません。調べた上で、本人がその資料でもって無実であるということがわかる場合もあるわけでございます。そういう事実を究明するための資料を当方は提供するというわけでございます。
  169. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 いま話しておられるのを聞いておると、犯人をかばって発言が続いているように聞こえてしまうだろうと思いますが、私の心配は、このケースを見ていれば見ているほど、当初リース契約を行った人が途中まで横領の意思がなく、中間でこれを日本に持ち出して横領しようという気分になりますと、日本側の法律には触れないことになりますので、当人は日本で安穏に生活するということが可能になりますでしょう。また、時間を節約するために省略させていただきますが、税関の申告は、いまわかっている部分については正規に行われているそうでございますし、また、運輸省による型式承認も正規に行われている御様子でございますから、こうしたルールでは食いとめる方法はない。そうしますと、このルールをもう少し洗練した形で広げてまいりますと、今後アメリカの自動車をリース契約を含んで日本に盗品を持ち込む、あるいはリース契約に基づいてアメリカの売った自動車を、アメリカ側に廃車証明がないのをよいことにして廃車処分というものを経た後日本に持ち込む、あるいは自動車の一部を小細工した上で新車のごとく装って持ち込む等々の処置が簡単にできるような法制にあるのではないかと思われるわけであります。  そして私の言うのは、そういうやり方を放置いたしますと、結局アメリカの犯罪の終着点としての日本、自動車をかっぱらって持ち込んでも何の罪にも問われない日本という危険性がきわめて濃厚であることを示すのではないかと私には見えるのでありますが、その点は捜査当局はどうお考えでございますか。
  170. 金田雅喬

    ○金田説明員 一般論を申し上げますけれども、犯罪というものは捜査をしてみなければ事実はわからないわけでございます。最初に容疑があり、それを資料に基づいて解明をしていって犯罪であるかどうかということがわかるわけでございます。いまお話しになりました事件というものはそういう段階で、目下犯罪の容疑があるということでアメリカ捜査機関捜査をしている、容疑があるということでございます。
  171. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それはわかっているのです。  そこで大臣に伺います。いま問題になっているのはアメリカの国内における犯罪であります。そして、その結論として、アメリカ側では犯罪なのでありましょうけれども、日本国内では犯罪として決められたこともなく、アメリカの犯罪捜査調査を依頼されて日本側が応じているという現段階にとどまっております。しかしながら、この事件が起こってすでに二年、リース会社の方は倒産するほどの打撃を受け、自動車は現に日本を走っており、普通の常識で言えば泥棒か詐欺か何かでございましょう。しかし、国境線を越えたために妙なことに、犯罪であるかどうかがわからない妙な状況の中で、両国捜査当局が御苦労に御苦労を重ねられていま調査をされている段階だと思います。そして、こういうことが恒常化してくる、あるいはいまの場合だったらまだ向こうが追いかけますでしょうけれども、もっとこうかつな手口が発生しますと、日米間の非常に政治的な摩擦行為にまで発展する可能性を含んでいるのではないかと思うわけであります。したがって、類似事件が発生しないためには、司法当局者を交えた打ち合わせあるいは立法上、行政上の何らかの措置が早急に必要ではないかと思いますが、大臣いかがお考えでございますか。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 事件の実情につきましていまここでお聞きしたわけでありまして、まだ、犯罪の容疑ということでアメリカの司法当局から日本警察庁に対して調査の依頼があったということで、警察庁が鋭意やっておられるということでありまして、この事件に関する限りはどういうふうになっていくのか、私自身もお聞きしながら判断がつかないわけでございますが、これは捜査当局の判断によることだと思います。しかし、こうした事件がどんどん起こってくるということになれば、これはやはり日米間で非常に問題が起こり、そして悪い関係が出てくるということでありますから、外交の立場から見ましても、こうした問題がどんどん起こってこないように外交としても考えなければならぬわけでありますけれども、いまここでそれじゃどうしたらいいかと言われても、外務省としての方向をはっきり打ち出すだけの用意もありませんし、それだけの判断も事実つきかねておるという状況であります。
  173. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 まず、アメリカ側の輸出のルールというものがこうした犯罪を予測せず、きわめて簡単な形で輸出ができるというところに欠陥がございます。また、日本側のルールの中でこうしたものをチェックするルールが、輸入港水揚げの瞬間にこちら側にないというのも一つの問題でございましょう。それと同時にこのルール全体を通して見まして、日本側の詐欺罪あるいは横領罪あるいは贓物に対する取り扱いと、先方の国家におけるそれというものに微妙な落差があるため問題が起こっていることは明らかです。  したがって、私のお願いしたいのは、今後御検討いただきまして、この問題も含めて適切な処置をおとりになる。少なくとも両国間の不平、不満と、両国間の今後の緊張関係にまた一石を投ずることのないようにお計らいを願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  174. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 この問題につきましては、もちろん捜査当局の問題でございますから、われわれとしてはこれに対して何ら言う筋はありませんが、しかしいまお話しのように、日米関係が輸出の法規あるいは輸入の法規、そうした問題等をめぐりましていろいろと混乱をする、あるいはそういうことでいろいろと対立をしていくということになっては、現在それでなくても貿易摩擦という問題は深刻でございますから、これらの輸出入の問題等につきましては十分検討して、そうした問題が起こらないように双方で努力をしていかなければならぬ、こういうふうに考えます。
  175. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 以上です。
  176. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡辺朗君。
  177. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 先ほどカンボジア問題の解決についてお尋ねをいたしました。どうもよくわからぬものですから、外務大臣に重ねてお伺いをいたしたいと思います。  OECDの閣僚理事会に出席された途中でしょうか後でしょうか、外務大臣は、ヘイドンさんとおっしゃるのですか、オーストラリアの外務大臣と会談をしておられますね。そのときに、カンボジア問題について話し合いをされたと報道では伺いました。どうなんでしょうか、意見が一致しておりますか、食い違いがございますか。それはどこら辺で一致したのでしょうか、食い違いが出てきたのでしょうか、そこら辺をちょっとお聞かせください。
  178. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 オーストラリアのヘイドン外務大臣とはパリにおいて話し合いをいたしました。問題の中心はやはりカンボジア問題でございましたが、カンボジア問題、ベトナムに対する考え方につきましては、日本とオーストラリアとの間には認識の相違があることをお互いに認めたわけでございます。たとえば、わが国は、カンボジアからベトナム軍隊が撤兵をするまではベトナムに対しては経済援助をしないという方針を決めて、これを進めておるわけでありますが、オーストラリアは労働党政権になりまして、ベトナムに対する援助の再開についていま検討しておる。決定をしたというふうにもはっきり言われなかったわけですが、検討をしておる。労働党の方針は援助再開ということのようでありますけれども、政府としてこれをその方針どおり行うかどうかについていま検討しておる、こういうことでございました。  その背景は、ベトナムに対して援助をすることがソ連のベトナムに対する影響力というものにブレーキをかけることになるのではないか、それがまたカンボジアからのベトナムの撤兵という方向へ進んでいく話の糸口を見出すことになるのではないかというふうなことで、日本のようにはっきりと、カンボジアから撤退するまではベトナムに対する援助はしないということとはやはり認識が違うな、こういう感じを持ったわけでございます。しかし、基本的にはやはりお互いにカンボジアからのベトナム軍の撤兵、そしてインドシナ三国とASEANとの対話、和解の成立ということで努力をしていかなければならぬ、その方法について考え方に相違があるということでございました。
  179. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その場合、もう一つ確かめておきたいのですが、ヘン・サムリンに対する評価は食い違っていないのですか。たとえば、いまのような状態をずっと続けていけば、日本のような立場をとっていけばヘン・サムリン政権は態度を変えていくというふうにお考えでしょうか、オーストラリアなんかの方ではそれはもう不可能だと見て、戦略的、戦術的に変えてきたのでしょうか。そこら辺の見解の一致点あるいは違いというものがどこかありましたら聞かせてください。
  180. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりオーストラリア政府もそうですが、私もそうした考えを持っておりますが、ベトナム自体もこれからいろいろと流動化していくのではないか、それからベトナムとソ連との関係にも変化が起こる可能性もある。そういうふうな見地から、ベトナムに対してもっと積極的な外交努力を重ねていきたい、そこに何らかの一つの変化が起こってくることもあり得るのだ、これがヘイドンさんなんかの考え方のように承ったわけであります。
  181. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これはカンボジア問題の解決の方式としてでしょうか、作戦として、外務大臣はラオス援助ということをタイの外務大臣あるいはシンガポールの外務大臣にお話をされたと思いますが、いかがでございましょう。どのような意図からそのようなお話をされたわけでしょうか。
  182. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 タイのシティ外相とカンボジア問題について話をした際に、タイのシティ外相は、いまはもう乾季が終わりまして雨季に入ったわけですが、乾季におけるベトナムの軍事作戦あるいは外交攻勢は失敗をしたというふうな判断であります。それで、これからは恐らくベトナムの積極的な平和攻勢が起こってくるだろう、ASEAN諸国としてもいろいろな角度からベトナムとの対話も進めていきたい、こういうことでございます。しかし、その基本はあくまでもカンボジアからのベトナム軍隊の撤兵というのが大前提でございます。カンボジアに自主独立の政府ができるということが大前提でございます。  そうした意見交換をしているうちに、ラオスについては一体どういう認識を持っているのか、こういう発言をしたわけであります。それに対してシティ外相は、ラオスとタイとの関係は歴史的にも非常に深いものがあるというふうな話もありまして、私は、日本としてはとにかくラオスはこれまでも外交関係がありますし、今後とも続けていく。そういう中で、ラオスは最貧国である。そしてラオスに対してはベトナムの勢力も相当入っているように聞いておるけれども、しかし、ラオス自身が一個の独立国であることは、これはもう間違いないわけであるし、インドシナ半島三国の一国である。そしてまたベトナムに対しても深い外交関係にあるので、日本としてはラオスに対して細々と経済援助を続けてきておるけれども、もしラオス自体と日本との外交関係を強化していく、あるいはまた援助関係をさらに進めていくというふうなことをした場合に、それがまたベトナム、カンボジアの関係打開、インドシナ半島の関係打開の糸口になる何らかの一つの要素になるということならば、日本もインドシナ半島の平和、カンボジアからのベトナムの撤兵ということに対しては非常に重大な関心を持っておるし、お手伝いもしたいと思っているので、そういう点では日本自身として検討してもいいんだ、こういう話をいたしました。シティ外相も、これは非常に重大な御意見であるし、やはりタイとラオスとの関係、そしてラオスに対するベトナムの影響も非常に強いけれども、日本がそうしたラオスに対する援助を続けていただくということはインドシナ半島の平和回復ということに一つの大変役立つことではないだろうか。これは、シティ外相としては、自分は大賛成であるから、ラオスとの関係強化にひとつ日本も努力をしてもらいたい、これが何らかの解決の糸口につながっていくかもしれない、こういう話でありました。私としてもそうしたシティ外相等の意見も踏まえまして検討してみたい。  この点については、実はパリでパールというオーストリアの外務大臣国連におけるカンボジア問題の委員長をしておられます。この方ともカンボジア問題について意見の交換をした際に、私からラオスの問題について意見の交換をいたしました。そのときにもパール外務大臣から、日本がカンボジア問題を解決するためのそういう一つの努力をしていただくということならば、これは大変歓迎するというふうな見解の表明がございました。
  183. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そこでもう一つどうもよくわからぬのですけれども、先ほどの平和的解決、確かに平和的解決は望ましいのですが、見ていると、ソ連のベトナムに対する影響力を牽制するというような角度か、あるいはまたインドシナ三国のラオスに何かニンジンをぶら下げてそちらの方に誘導するということでカンボジア問題への解決の糸口をと、いずれにせよソ連の影響下にあるベトナム、これに対する硬軟こもごもの働きかけを意味しているように思えるわけであります。そこら辺についてもう少し突っ込んでお聞きしたいと思うのですが、時間の制約もありますから、関連してOECDの会議の際に、恐らく途中であったと思いますが、大臣は、インタビューか何かに答えて言っておられます。サミットについては、米欧の対立が心配された東西の経済問題、これに対しては、今回、米国の出方が穏健だから楽観できるのではなかろうかというような趣旨のことを言っておられますが、そういう見方でいいんでしょうか。実際問題として、いまのソ連の問題についても、陰に陽にアジアの問題を考える場合にいろいろ意識しながらやっております。特に、日本の立場としては経済制裁を緩和するのか強めるのか、そこら辺がよくわからぬところで、いろいろ動いて、われわれから見るとよく理解ができない動きをしておるのでありますけれども、今度のサミットの中心議題の一つは、表面に出ているかいないかにかかわらず、やはり対ソ経済制裁をどうするのかという問題があろうかと思いますが、これについてちょっと外務大臣、見解と方針を聞かせてください。
  184. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 御承知のように、昨年のサミットでは東西経済問題について米欧が非常に対立して、非常なその後の対立の激化が進んで世界を騒がせたわけでございます。その状況というのは今日も変わっておりません。一応七カ国会議等でおさまったのですが、しかし状況としては変わっておりませんで、また再びサミットで東西経済問題についてアメリカのああした姿勢が打ち出される、これに対してフランス、イギリス、ドイツ等の反対が行われるということになれば、せっかくの成功させなければならぬサミットがまた東西経済問題で分裂をするということになりまして、非常にまずい結果になるわけですから、日本としてもこの東西経済問題がどうなるかということは一つの大きな関心事項であります。したがって、今回のIEA、OECDの閣僚の理事会を通じましてこの東西の経済問題がいろいろと扱われたわけでございますが、その推移についてはわが国としても非常に重大な関心を持って見守ったわけでございます。同時に、私自身もシュルツ国務長官に会ったり、あるいはフランスのシェイソン外務大臣に会ったりして、この東西経済問題についての意見の交換もいたしたわけでございます。  わが国としては、基本的には東西経済問題については西側が一致してこれに対応しなければならない、この東西経済問題で西側の足並みが崩れて西側に亀裂が起こる、対立が起こるということはまずい、そのための努力、西側の結束のための努力はする、亀裂は避けなければならぬということがわが方の考え方でございます。したがって、そういう立場で臨んだわけでございますが、幸いにいたしましてIEAあるいはOECDで東西経済問題についてはアメリカが弾力的な姿勢で臨みました。そして、これに対してフランス等も、これまたアメリカとの正面対決を避けて非常に弾力的な姿勢で臨みました。そして最終的には合意が見られまして、コミュニケが円満裏に採択をされたわけでございますし、またその他の会談を通じましても、サミットで東西経済問題で西側が分裂するということは避けなきゃならぬというのがアメリカ側考えとしてもあるようでありますし、またフランスやドイツもそういうことを考えておるようでございますので、私は全体的な見通しとしてはサミットでこの東西経済問題をめぐって西側陣営が分裂するといいますか、アメリカヨーロッパが対立するということはないのではないだろうかと推測をしております。しかし最終的に、推測であって、まだまだそれで間違いないと言えるところまでは至っておりません。レーガン大統領が果たしてどういうふうな態度に出るかということもこれからサミットが近づくにつれてはっきりしてくると思いますが、全体の見通しとしては私はそういうふうな判断を持っております。
  185. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 質問を終わりますけれども、その前に、これは大事なことなんで、ひとつ外務大臣の御感想なり評価を一言でいいですから、聞かしておいてください。  イスラエルとレバノンの間で、イスラエル軍のレバノン地域からの撤退、これが協定が結ばれたというニュースがありました。と同時に心配なことは、シリアであるとかPLOが反対をしている、こういう問題もあります。新たな紛争のあるいは火種になるかもわからない。これは日本としてはどちらに評価をしたらいいんでしょう。心配の問題があると同時に、プラスの面もあるような気もしますし、外務大臣としては、これはもう大事な点でございますから、一言御感想を。
  186. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私自身も非常に心配はしております。シュルツ国務長官に会ったときも大変疲れ果てたような表情でありました。あれだけ努力をされたわけですが、一面においては、このイスラエルのレバノンからの撤兵ということで成功したのでしょうが、一面においては、シリアが拒否するということでございますから、事態は完全に解決されたわけじゃない。また、これはその後いろいろと尾を引いておりまして、また険悪な状態も出ているように見えるわけであります。いずれアメリカの努力が続けられると思うわけでございますが、何とかこれ以上の険悪な対立、そしてまたそれが熱い紛争というものにつながらないで円満に解決されることを、ただわれわれとしては念願をいたしておるわけであります。
  187. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ありがとうございました。
  188. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  189. 野間友一

    ○野間委員 対米武器技術の輸出の問題について、私はいまからお伺いしたいと思いますが、まず最初に、この件に関する事務レベルでの協議が七月から始まるやに聞いておりますけれども、いかがですか。
  190. 山下新太郎

    山下(新)政府委員 具体的にいま御質問のようなことにはなっておりませんです。
  191. 野間友一

    ○野間委員 法制局長官にお聞きしたいと思いますけれども、従前から国会の中では、武器輸出、これは技術も含めてですが、これに関連する憲法との関係ではかなり数多い政府の見解なり答弁が出ております。私は確認の意味でお聞きするわけですけれども、これは政府の統一方針、三木発言、これも含めましてですが、従来の答弁方針は、憲法の精神あるいは平和国家の理念、憲法の理念という表現もあります。これに基づいて三原則、三原則というのは政府統一方針も含めますが、これを決めたものだというのが一貫しておるわけですね。特に、国際紛争の当事国あるいはそのおそれのある国、これについても全く条件がありませんで、自衛のためであれ、あるいは侵略あるいは制裁、いずれにしても無条件に紛争当事国あるいはおそれのある国に対する武器ないしは技術の輸出についても、憲法の平和の精神、理念に基づいてできないというのが従来からのあれだったと思いますけれども、この点についてまず確認をしておきたいと思うのです。
  192. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 いわゆる武器輸出三原則につきましては、これはたびたび御答弁申し上げておりますけれども、直接、憲法九条二項に違反するようなものではない。ただ、それが憲法の平和主義の精神にのっとったものであるという意味答弁をいたしております。それで、恐らく御質問の御趣旨は、今回のような決定がいま申し上げたような憲法の平和主義の精神に反するというような前提でお尋ねになっておられるのではないかと思いますが、とにかく憲法の平和主義の精神というものが武器の輸出なり武器技術の供与というものにかかわりがあることは、これは否定できないと思います。  ただ、憲法の平和主義の精神というのは、言うまでもなく憲法の前文なり憲法の九条にあらわれているところの基本的な理念であるわけでございますが、実際にそれを実現するために、そのときどきの情勢に応じて国際社会なりわが国の平和と安全を維持する、あるいは確保するための方策としてどういう政策を選択するかということは、それは平和主義の精神の範囲内において選択の幅のある政治的な課題であると思います。したがいまして、平和主義の精神にのっとったものである、今回の措置についてもそのような理解をしているわけでございます。
  193. 野間友一

    ○野間委員 聞いたことに答えてください。私が特に聞いたのは、この三原則のうちの三つ目が、国際紛争当事国ないしはおそれのある国、これについてもひとしく、自衛であれ、制裁であれあるいは侵略であれ、そのいかんを問わず、国際紛争国に対しては武器ないしは技術の輸出をしてはならないということも、ひとしく憲法の理念あるいは憲法の精神から出ておるものだということの確認をまず求めておるわけです。
  194. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 ただいまそれを申し上げたつもりでありますが、武器輸出の三原則なりその後の政府統一見解というものは、紛争当事国に対しては武器なり武器技術の供与をいたさないということを決めておるわけであります。したがって、それが憲法の平和主義の精神にのっとったものであるということは当然だと思います。
  195. 野間友一

    ○野間委員 そこで、外務省にお聞きしますが、今回の一月十四日の閣議決定によって、アメリカだけはこの三原則から外していくことになっていますね。これに関連して衆議院の予算委員会の中で栗山さんは、自衛目的、国連憲章ですね、この自衛目的以外には使わない、自衛目的の範囲であればいいんだという答弁をされておるわけであります。  そこで私、確認の意味で再度お尋ねしたいのは、そうしますと、事アメリカに限って、事武器の技術に関しては、アメリカはそれを受けて、そして国連憲章に反しない限り、あるいは自衛目的の範囲内であればアメリカは自由に使ってもよろしい、あなたの答弁ではこういうことになるように思うのですね。特に私申し上げたいのは、アメリカが紛争当事国になり、なおかつ安保の効果的な運用あるいはそのもとでの関連する取り決め、これとの関係は別にして、中東とかヨーロッパで事が起きるというような場合が特に問題になるやに思いますが、これは長くなりましたけれども、聞きたいのは、自衛の目的の範囲内ならば自由に使えるというのが今度の閣議の決定の中身かどうかということですね、いかがですか。
  196. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 私の答弁も、それから私の答弁を含めまして従来から本件に関して申し上げておりますことは、今回の決定が、安保体制の効果的運用というものを通じてわが国の安全及び極東の平和と安全に資するものであるということを基本的な前提といたしまして、それを実施する場合に、相互防衛援助協定の枠組みの中でこれを行う。そうなりますと、当然のことながら、いま野間委員の方から御指摘がありましたように、相互防衛援助協定、いわゆるMDA協定の一条一項の規定というものが本件供与にも適用になりまして、供与された技術というものを国連憲章と矛盾するような形で使用してはならない、すなわち自衛目的以外のために使ってはならないということも当然MDA協定に基づくアメリカが負う義務の一つになるわけでございます。そういうものを全体として判断いたしました場合に、憲法のよって立つ平和国家としての日本基本理念、これはいま法制局長官の方からも御答弁がありましたが、武器輸出三原則のよって立つ基本理念というものがそういう憲法の平和国家としての基本理念というものと共通であろうと思いますが、そういう基本理念というものには反しない。したがいまして、今回の政府の対米武器技術供与の決定というものは、ただいま申し上げましたようなことで、憲法に定めております平和主義というものの基本理念には反しないであろう、これが政府考え方でございます。
  197. 野間友一

    ○野間委員 聞いたことだけに答えてください。そうすると、アメリカが自衛の目的の範囲内、つまり国連憲章に反しない限りこれは自由に使ってよろしい、こういうことになるのではないかと私は聞いておるのです。
  198. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 MDAの枠組みのもとでアメリカに課される制約というものの一つとしてまさにそういうことでございまして、それに反しない限りアメリカとしては日本から供与された技術を自由に使用することができる、こういうことでございます。
  199. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、たとえばかつてベトナム戦争がありましたね。これは自衛のためと言ってやった、アメリカが。その前には朝鮮戦争もありました。いままた中米、南米でも、ニカラグアとかあるいはエルサルバドル、こういうところでも問題がありますけれども、具体的に聞きますと、少なくともベトナム戦争あるいは朝鮮戦争、こういう場合を想定して考えた場合に、これはいいという考え方になると思うのですが、どうですか、あなたの考え方からすれば。
  200. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 アメリカが関与しました過去の国際紛争の例についてのお尋ねでありますが、今後アメリカがどのような事態のもとでどういう紛争に関与することになるかということは一概に申し上げられませんが、わが国といたしましては、アメリカ国連憲章に従って行動するであろうということは当然の前提でございまして、御承知のように、安保条約の一条においてもそういうことは日米関係の基本として確認されておるわけでございまして、政府としては、アメリカは当然国連憲章に従って行動するであろうと期待しておるわけでございます。
  201. 野間友一

    ○野間委員 したがって、たとえばそれではベトナム戦争ですね。この場合にはいまの取り決めの中では使ってもよろしいということになるのではなかろうかと思うのです。その質問です。
  202. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 過去におきましてベトナム紛争の性格についていろいろ国会においても御論議がありましたことは承知しておりますが、政府といたしましては、ベトナム紛争におけるアメリカの介入というものが国連憲章に反したものであったというふうには認識しておりません。
  203. 野間友一

    ○野間委員 それでは結局使えるということですね。予算委員会の中でも問題になりましたけれども、中東とかあるいはヨーロッパにおきましてもいわゆる安保の効果的な運用、あるいはその中での、MDAの枠組みの中でいろいろ言っておられますけれども、中東やヨーロッパアメリカがこれを使ってそして紛争の当事国となるという場合でも、自衛のためであればいいという考え方になるわけですか、それはどうですか。
  204. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 本件供与の決定に当たりました政府基本的な認識は、アメリカは安保条約の相手国でありまして、そういうアメリカ防衛能力というものに日本の技術を通じて寄与するということが安保体制の効果的運用に資するものであるというのが政府基本的な認識でございます。  他方、そういうMDAの枠組みのもとにおいて供与された技術を特定の地域に使ってはならないというようなことは、委員御承知のように、相互防衛援助協定の規定からは出てまいりませんし、政府としても、使用についての地域的な制約をアメリカに課そうというふうな考え方は持っておらないわけでございます。
  205. 野間友一

    ○野間委員 非常に重要ですね。法制局長官、聞いてほしいのですが、従来、田中角榮氏が通産大臣のときでしたか、四十七年の予算の分科会の中での答弁もありますけれども、要するに、国際的な紛争に武器を出すことによって間接的にそれに関与することになる、したがってこれは慎重でなければならないという明確な、憲法の精神を引きながらの答弁がありますね。ところが、憲法の精神に基づいて決めた原則が事アメリカに限って安保の効果的な運用というようなことでこれだけ取っ払ってしまうということになりましたら、歯どめなしにこれが自由に歩いてしまうということになると思うのです。しかも自衛かどうかというようなことについては、これはわからない。だから自由に使ってよろしいといういま外務省の、大体そういう趣旨答弁ですけれども、では一体、今度の閣議の決定を前提とすれば、アメリカは自衛の目的の範囲内というような名前であれば自由に使ってよろしい、一体どこに歯どめがあるのかと私は思うのですけれども、法制局として、どうなんですか。
  206. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 実体的な理由づけについては先ほど条約局長からも答弁申し上げましたし、また今国会においてしばしば政府当局の見解として申し上げたことで、それ以上私が加えるべきものもないと思います。  ただ、一般論としては、そういうことが議論になると思いますので先ほど冒頭に申し上げましたので、憲法の平和主義の精神というものは基本的な理念としてあくまで、政府がいかなる政策をとる場合にも、それを尊重し、それに従わなければならないと思いますが、しかし、それ自体として、その精神の範囲内において選択の幅のある政治課題であるというふうに申し上げたわけでございます。
  207. 野間友一

    ○野間委員 ですから、そうなりましたら私は逆立ちになると思うのです。つまり、政策的な決定あるいは方針に従って、憲法の精神がだんだん侵食されていく、形骸化していくということにならざるを得ないと思うのです。私いま申し上げたように、従前からずっと国会論議を見ておりましても、全く条件を付さずに、無条件で紛争当事国に対する輸出は、これはしてはならない、アメリカとの間では安保があり、MDAがある、これは例外だというようなことは一切いままでないわけですね。しかも答弁では、それは政策だとおっしゃる。政策だからこれは大丈夫で、しかも憲法の理念にはもとらないんだということになりましたら、一体どこに歯どめがあるのか。それが延長しましたら、それでは紛争当事国ないしはおそれのある国といえば、これは自衛のため、この場合には別だというようなことにならざるを得ないと思うのです。そういうことになりはしませんか。そうなったら、これは際限がなくなっていく。だから私は、いまの閣議の決定はやはり憲法の精神にもとる、憲法の精神に従って考えた場合には、これは精神に違反しておると言わざるを得ないと思うのですけれども、長官の再度の見解を聞かしてください。
  208. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たびたび同じことを繰り返すようでございますが、憲法の平和主義あるいは平和国家としてのわが国の立場というものに矛盾するものではないという確信のもとに、政府はこのような措置をとったわけであります。政策が一部変更されたということは認めますが、それはあくまで憲法の平和主義あるいは平和国家としての基本的な理念の範囲内において一部変更が行われたということでございます。
  209. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんのでやむを得ませんが、最後にもう一つだけお聞きしたいのは、国会決議との関係なんですね。いまこれは議長預かりになっていますよね。国会決議と閣議の決定との関係についてですね。  そこで長官にお伺いしたいのは、国会の意思は国会で決めるのは当然なんだ。ここで要するに無条件にアメリカに対する、また武器技術についても、これをも含めて国会で決議をしておるものなんだ。国会の意思としてそれが決まった場合、当然閣議の決定というものはこれにもとることになるわけですね。そうしますと、一体この閣議で決めたこのものはどうなるのか、責任はどうなるのかということですね。私は、一つは政治責任のとり方としては、この国会決議に反した閣議の決定だとなれば、責任のとり方としては、この閣議の決定を国会決議に即して、その趣旨に即してやはりこれを変えざるを得ない、これも責任のとり方の一つだと思うのですが、いま終盤を迎えまして非常に大きな課題でありますから、この点について長官の見解を承っておきたいと思います。
  210. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 御質問にお答えすることは、どうも法制局長官の職務権限の範囲内でないように私は思います。(野間委員「一般論で……」と呼ぶ)しかし、たっての御質問でございますから一般論としてお答えをいたしますけれども、国会の決議というのは、言うまでもなく国権の最高機関である国会を構成する両院のそれぞれの意思を表明したものであると思います。したがって、それを政府は尊重しなければならないことは当然なんで、仮に、仮にですが、政府がそういう国会決議に反するというようなことをやったというか、そういう事態に立ち至ったならば、そういう事態が生じたならば、政府としては国会に対して当然その政治的責任というものを負っているわけですから、何らかの措置をとらざるを得ないと思います。いま政府の決定を再び修正するというふうなお話がございましたけれども、国会に対する政治責任のとり方というのは、それぞれの具体的事情に応じていろいろあると思いますから、一概にそういう方法がとられるということを私の立場で申し上げられませんが、そういうような考え方も一つの考え方としてあり得るのかもしれません。
  211. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  212. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十三分散会