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1983-05-13 第98回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十三日(金曜日)     午前九時四十五分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 山下 元利君    理事 井上  泉君 理事 北山 愛郎君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       奥田 敬和君    北村 義和君       鯨岡 兵輔君    小坂善太郎君       佐藤 一郎君    玉沢徳一郎君       中山 正暉君    古井 喜實君       松本 十郎君    井上 普方君       河上 民雄君    高沢 寅男君       土井たか子君    八木  昇君       渡部 一郎君    林  保夫君       中路 雅弘君    野間 友一君       伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房長 枝村 純郎君         外務大臣官房審         議官      藤井 宏昭君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省中南米局         長       羽澄 光彦君         外務省経済局次         長       妹尾 正毅君         外務省経済協力         局長      柳  健一君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         食糧庁次長   山田 岸雄君  委員外出席者         科学技術庁長官         官房審議官   福島 公夫君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         外務大臣官房外         務参事官    木幡 昭七君         外務大臣官房外         務参事官    野村 忠清君         外務大臣官房領         事移住部長   藤本 芳男君         農林水産省食品         流通局食品油脂         課長      慶田 拓二君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   河上 民雄君     井上 普方君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   井上 普方君     河上 民雄君     ───────────── 四月二十八日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願佐藤誼紹介)(第三一一三号) 五月十三日  核兵器禁止全面軍縮等に関する請願下平正一紹介)(第三四八五号) は本委員会に付託された。     ───────────── 四月二十八日  ILO差別待遇条約第百十一号の早期批准に関する陳情書外五件(第一九〇号)  朝鮮民主主義人民共和国へ帰還した日本人妻安否調査に関する陳情書外一件(第一九一号)  朝鮮の平和統一支持に関する陳情書(第一九二号) は本委員会に参考送付された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)  千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送付)  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送付)  千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  3. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根総理大臣は、四月三十日から五月十日までの間、インドネシアタイシンガポールフィリピン及びマレーシアASEAN五カ国を公式訪問し、帰途ブルネイに立ち寄られました。私は、うちインドネシアタイシンガポールの三カ国に同行し、その後OECD閣僚理事会等会議出席のためパリに赴きました。  ついては、まず総理大臣ASEAN諸国訪問につき御報告申し上げます。  総理大臣各国首脳との会談において、国際経済問題、カンボジア問題等国際情勢わが国安全保障政策、日・ASEAN諸国関係、二国間問題等について建設的、かつ、忌憚ない意見交換を行われました。  私も、インドネシアタイシンガポールにおいて、首脳会談出席するとともに、モフタル外相シティ外相ダナバラン外相との間でそれぞれカンボジア問題を中心会談を行いました。  総理大臣は、世界不況長期化に懸念を表明され、自由貿易体制の堅持の重要性を主張されるとともに、わが国としても特恵のシーリング枠拡大を初め市場開放のため一層の努力を行っていく旨述べられました。また、総理大臣は今後ともASEAN諸国との関係を重視する旨、また、カンボジア問題に関しては、わが国は、包括的政治解決実現のためASEAN諸国努力を引き続き支持する旨を確認されました。  総理大臣は、わが国安全保障政策に関し、わが国が専守防衛を旨とし、近隣諸国に脅威を与えるような軍事大国にはならないとの基本方針を守って行く旨述べられ、これに対して各国首脳より十分の理解支持を得ることができました。  総理大臣は、経済協力の推進が国際社会におけるわが国役割りの一つであるとの認識のもとに、新中期目標を立ててODAを拡充してきている旨、その中でASEAN諸国援助の最重点地域とするとの政策が不変である旨、また、農村、農業、エネルギー人づくり中小企業の分野に重点を置くとの基本政策を続けて行く旨を述べられました。総理大臣は、また、今後の協力の新しい側面として、産業技術の移転、プラントリノベーション協力科学技術関係閣僚会議の開催を含む科学技術面での協力及び青少年、教員等中心とした人的交流拡大を挙げられました。これに対し、各国首脳は感謝の意を表明いたしました。  総理大臣は、五月九日クアラルンプールにおける総理大臣主催昼食会において、ASEAN繁栄なくして日本繁栄なしとの立場から前述の諸点を総括した政策スピーチを行い、出席したマハディール首相を初めとするマレーシア政府要人の高い評価を受け、報道関係者の間でもきわめて好評でありました。  今回の中曽根総理大臣ASEAN諸国訪問は、総理大臣ASEAN各国首脳との間に理解と友情に基づく個人的友好信頼関係を構築され、また、各国との友好親善関係を強化し、今後のわが国ASEAN諸国との関係を長期的により安定したものとするための基礎を一層固めた点で、広くわが国外交全般、特にアジア外交にとって大きな意義を有するものと考えます。  私としては、今回の訪問を通じて総理大臣早期実施ないし前向きの検討を約された諸般の措置わが国が着実に実行に移すことにより、ASEAN諸国の期待にこたえることが必要であると考えます。この面で、特に各位の格別の御理解と御協力をお願いします。  次にパリにおける国際会議等につき御報告いたします。  第九回国際エネルギー機関閣僚理事会は、五月八日パリで開催され、わが国からは山中通商産業大臣会議を含む諸行事に出席し、私はその一環であった閣僚夕食会での討議に出席しました。  今回の会議中心テーマエネルギー必要量安全保障でありましたが、山中大臣よりは、国際石油情勢産油国との関係中東訪問成果、及びエネルギー必要量安全保障研究につき発言し、私からは、エネルギー必要量安全保障研究を行ってきたこと及びその対応策につき意見一致が見られたことは時宜を得たものである旨発言しました。  最終的に採択されたコミュニケにおいては、わが国立場は十分確認されたものと考えており、エネルギー必要量安全保障研究結論が続いて行われたOECD閣僚理事会においても承認されたことは、意義深く、また、ウィリアムズバーグ・サミットを控え、西側諸国の協調に資するものと考えます。  次に、OECD閣僚理事会は、五月九日、十日の両日開催されました。今般の会合には、米国からシュルツ国務長官リーガン財務長官ボルドリッジ商務長官ブロック通商代表等、仏からはシェイソン外相ドロール蔵相、西独からはゲンシャー外相ラムズドルフ経済相、英からはピム外相ハウ蔵相等外務経済担当有力閣僚出席しました。  今次会議全体の雰囲気は、インフレ鎮静化石油価格下落等の好条件影響もあり、米欧景気回復の兆しが出始めているため、総じて明るいものであり、全体としてよい成果をおさめたとの評価ができると思われ、来るべき先進国サミットや第六回UNCTADに向けての良好な雰囲気づくりの面で役立ったと思われます。  マクロ経済政策については、インフレなき持続的成長をいかにして定着させていくかが中心的政策課題であるとの認識一致しました。  貿易問題に関しては、保護主義に対する巻き返しを行うべきこと、特に最近の景気低迷期に導入された措置を緩和、撤廃すべきことにつき合意されたことは、今次会合の大きな成果と申せます。  東西経済関係については、かなりの議論がありましたが、全体的には、厳しい対立的雰囲気には至りませんでした。コミュニケにおいてOECDにおける東西経済関係は、従来の分析、検討を踏まえて、今後ともこれらを適宜見直して行くことで意見一致を見たほかに、IEAエネルギー必要量安全保障研究結論OECDとしても承認することとなりましたが、これはフランスもIEAの作業の結論を受け入れたということを意味し、評価し得ると考えます。  南北問題について、債務累積問題の解決のためには、途上国側の調整も必要だが、輸出拡大のための環境づくりも重要であるとされ、ODAの拡充の必要性も強調されましたが、これらは、六月のUNCTADを控え、意義あるものと思われます。  また、私はOECD閣僚理事会の機会を利用して、次のような会談を行いました。  米国との間においては、日米間の絶え間のない協議一環として、シュルツ国務長官ボルドリッジ商務長官及びブロック通商代表との間で、国際情勢及び二国間の懸案につき意見交換を行いました。  また、日欧協力関係をさらに促進するため、日仏外相定期協議、日・EC議長国外相協議を行うとともにチンデマンス・ベルギー外相フルダラースイス経済相ハフェルカンプEC委員長会談を行いました。とりわけ、ゲンシャー外相等との間で行った日・EC議長国外相協議は、わが国EC十カ国との間の最初の制度化された協議であります。ECは主要国際問題につき近年共同歩調に努めており、本件協議日欧関係の強化のみならず、わが国外交の幅を広めるものであると考えております。  さらに、ヘイドン豪外相とは豪州労働党政権発足後初めての閣僚レベル会談との面も有しており、その面からも意義深いものでありました。  皆様方の御協力に感謝するとともに、今後とも一層の御協力を賜りたいと存じます。     ─────────────
  4. 竹内黎一

    竹内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上泉君。
  5. 井上泉

    井上(泉)委員 私は、大臣がまた来られるまでの間事務当局にお尋ねを申し上げるわけですけれども、今度のASEAN訪問でそれぞれ六百七十五億、六百七十三億あるいは六百五十億と、大体二千億以上の金がずっとばらまかれておるわけですが、こういう金の出し方というものには何か基準でもあるのですか。
  6. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 特別の基準と申しますよりか、日本政府は、先生承知のとおりに発展途上国、特にASEAN各国の民生の安定それから経済的な根本的ないわゆるインフラストラクチュアを構築していくに当たって、つまりそれに協力する、そういうことによりまして全般的なその国の経済発展に寄与する、こういう趣旨による協力でございます。したがいまして、御承知のとおりにASEAN各国はいずれも世界不況影響を受けまして経済が苦しいものでございますから、長期低利の金、つまり円借款をできるだけたくさん供与してほしいということでございますが、わが国わが国で、先生承知のとおりに、国家財政の約三分の一を借金、国債で賄っているというような苦しい状況にございますので、その両者の、つまり先方の要望と日本政府の苦しい財政事情というものの間におきましてぎりぎりの接点を求めた結果、以上のような一応の数字が出てきた、こういうことでございます。
  7. 井上泉

    井上(泉)委員 一応の数字が出てきた、こう言われるわけですけれども、これはつかみ金ではない。新聞ではつかみ金でサンタクロースよろしく各地へ配ったと言うが、こういう話は何か目安というものがなければいかぬでしょう。これはだれが算定をして、向こうとこっちとの接点でこの金を出した、こう言うが、これは中曽根総理がやったものじゃないでしょう。——時間がないから簡単に要領よく、あなたの頭のいいところを発揮してください。
  8. 柳健一

    柳政府委員 お答えいたします。  それぞれの国につきまして、それぞれの国からプロジェクトに関する、プロジェクト基礎にいたしました要請がございまして、それらの要請を私ども、御承知の四省庁で審査いたしまして決定したものでございます。
  9. 井上泉

    井上(泉)委員 それは、たとえばインドネシアの六百七十五億という合計になった数字というのは、どういう内訳になっておるのですか。
  10. 柳健一

    柳政府委員 インドネシア内訳は十三のプロジェクトがございますが、一々のプロジェクトについて全部申し上げましょうか。
  11. 井上泉

    井上(泉)委員 いや、六百七十五億の積算基礎……。
  12. 柳健一

    柳政府委員 積算基礎は、十三のプロジェクト、たとえば洪水制御計画とか治水計画とか灌漑計画とか水力発電計画、それぞれ、たとえば西ジャカルタ洪水制御計画は五十七億七千四百万円、それからバカルの水力発電計画は百七億八千三百万円、こういうふうに一々全部積算基礎がございまして、これを全部積み上げますと六百七十五億円になるという十三件が入っております。
  13. 井上泉

    井上(泉)委員 その六百七十五億のインドネシア中身についてはそういうことで、向こうからの要求がどれだけあって、それで日本はそれについて、六百七十五億に決めるのにはこれこれの理由によって六百七十五億に決めた。つかみ銭ではないから、これはしっかりとした根拠があるはずですから、インドネシアタイシンガポールフィリピンマレーシア、そして最後に訪問した国がブルネイ、これらの国に出した金額内訳というものと向こう側要求というもの、これを資料として出していただけますか。——これはすぐ出るでしょう。
  14. 柳健一

    柳政府委員 インドネシアについて申し上げますと、私正確には記憶しておりませんが……
  15. 井上泉

    井上(泉)委員 いや、インドネシアだけではなくて、僕が言ったのは、今度ASEANへ回って出した金の内訳資料を出してくれ、こう言っているのです。
  16. 柳健一

    柳政府委員 今度の内容でございますか、これは出すことができます。提出いたします。
  17. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、過去においてもずいぶん、福田総理が行ったとき、あるいは鈴木総理が行ったとき、これは全部片はついておるのですか。
  18. 柳健一

    柳政府委員 福田総理大臣が一九七七年八月に訪問されましたときに円借款無償資金協力それからASEAN工業プロジェクト、また鈴木総理が八一年一月に訪問されましたときにも円借款その他約束をされておられますが、まず福田総理意図表明をされました円借款につきましては順調に実行されておりまして、大体九〇%以上の執行率になっております。無償資金協力につきましては全額実施されております。それからASEAN工業プロジェクトでございますが、これは福田総理のときに一般的に意図を表明されまして、鈴木総理のときにフィリピンインドネシアマレーシアにつきまして額をプレッジされたわけでございますが、これはまだ最近、二年前のことでございますので、執行率はまだそんなにいっておりません。それから、鈴木総理のときの借款あるいは無償資金協力、これも順調にいっております。また、鈴木総理のときに特別にお約束されました、総額約一億米ドルに達しますところの無償資金協力技術協力から成ります人材養成のためのASEAN人づくりプロジェクトでございますが、これはきわめて順調にいま進捗中でございます。
  19. 井上泉

    井上(泉)委員 福田総理鈴木総理中曽根総理、この三人の方だけの向こうの方への、ASEAN諸国に出した金を集めますと約一兆円になるわけです。そうなると、いままでにこれらのASEAN諸国日本が提供して、約束をしてきた無償そして有償を含めての援助金額というものは総計でどのくらいになるのですか。
  20. 柳健一

    柳政府委員 総理訪問されましたときには金額意図を表明されることもあれば、金額はまだ決まっていなくて、ずっとこういうふうなプロジェクトについてできるだけ協力するというふうな意図表明をされることもございます。それから、特に技術協力金額ではちょっとはかり得ないものでございますから、全体を足してみて幾らかということは、ちょっといま私も手元数字を持っておりませんので、全額で幾らということは、申しわけありませんが、申し上げることはできません。
  21. 井上泉

    井上(泉)委員 僕は余りあなたを知らぬが、あなたは経済協力局長ですか。それならそれくらいのことは常識としてわかっていなければ経済協力の行政を進めていくのにも困りはしませんか。いままでどれくらいの借款を供与しておる、それがどうなっておるかということぐらいは、あなたは優秀な頭の中でそれぐらいのことが理解されないのですか。いままで供与したものが福田総理のときでも四千億、そうして鈴木総理のときの二千五百億、今度の二千六、七百億、これだけでも一兆円ですから、それ以前にこれらの国に一体どれだけ出しておるのかということをあなたは常識としてわかっていないのですか。
  22. 柳健一

    柳政府委員 円借款全体といたしまして、たとえば現在パイプラインがどれくらいあるとか執行率がどのくらいになっておるかという数字はございますが、ASEANだけを特定いたしまして、しかも無償技術協力も加えた金額を統計した数字というものは、私、ただいま手元に持っていないわけでございます。
  23. 井上泉

    井上(泉)委員 ASEAN以外も含めて、円借款海外に出しておる金はいままで幾らあるのですか。
  24. 柳健一

    柳政府委員 これは年によって違うのでございますが、円借款地域別配分は、約束額ベースで申しまして大体七〇%から八〇%ぐらいでございます。
  25. 井上泉

    井上(泉)委員 そんなことを問いはせぬですよ。ASEAN以外も含めて全体でどれくらいあるか、こう言うのです。日本海外に対するこうした形の経済協力資金はどれくらい出しておるのか。
  26. 柳健一

    柳政府委員 実績ベースで申し上げますと、一九八一年度におきまして日本海外に対する、ODAと申しております政府開発援助総額は三十一億七千万ドルでございました。
  27. 井上泉

    井上(泉)委員 それはどういう形で——たとえば今度のASEAN約束した円借款の、たとえばインドネシアにしろあるいはタイにしても、これは金利とか償還計画とか償還とかいうのはどういうことが条件になっておるのですか。
  28. 柳健一

    柳政府委員 条件はその国の発展段階によって違っておりまして、たとえばインドネシアの場合には従来三%、三十年、十年ということでございましたが、八三年度から三・五%にしております。それからマレーシアのような発展段階の進んでいる国につきましては四%というふうに、いろいろと国の発展段階に応じまして条件が異なっております。
  29. 井上泉

    井上(泉)委員 借款のそういう条件も、提出をしていただく資料の中に含めていただきたいと思います。  それからいま円借款については三十一億ドル、こういう話をされておりましたが、韓国へこの間約束したのも四十億ドルですから、私はそういう韓国——現在まだ四十億ドルは出してないけれども、三十一億ドルやそこらではないのではないか、こう思うわけです。これは国民の非常に疑問に思うことですから、日本は金がないのにえらい気前よくまた二千六百億、七百億もばらまいてきたものだな、こういうふうに国民は皆だれしも考えておるわけですから、国民のそうした疑問に答えるためにもこの中身というものは十分承知をせねばならぬし、いまあなたが言われるのは三十一億ドルや何じゃないと思うが、これについても私は議論をせねばいかぬ、国民立場から納得せねばいかぬわけですが、大体借款を供与してきたその後の支払いというものは順調にいっていますか。
  30. 柳健一

    柳政府委員 先ほど日本政府開発援助総額三十一億七千万ドルと申し上げましたのは、一九八一年度の実績でございまして、かつこれは円借款だけではなくて、無償資金協力技術協力もすべてを含めたものでございます。これは実績でございます。  さらにつけ加えますと、この三十一億七千万ドルというのは、円で申しますと約六千九百億円でございました。  それから韓国に対する経済協力でございますが、四十億ドルと言われますが、その中で政府開発援助のめどとして考えられている額は十八億五千万ドル、こういうことになっております。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 つまり、わからぬですけれども、私は福田総理がやってきたときにも四千億やっておる、鈴木総理が行ったときも二千五百億でしょう、これだけでも六千億を超しておるのですから、どうもあなたの言われる説明、妙に納得ができないのですが、これは私が頭が悪いから、理解がしにくいから納得できないのかもしれないけれども、あなたの説明は妙に明確でないのですけれども、大体そういう六千九百億、ASEANのこの二回でやっただけでも六千九百億ですよ。二回の二人の総理がやっただけでも六千億を超しておるのですから、だからとてもじゃないが、六千九百億や七千億以上の金じゃないか、こう思うわけですけれども、それは間違いないですか。一年分を答えたってだめですよ。いままでどれくらい出しており、また約束しておるのか、こう聞いておるのです。
  32. 柳健一

    柳政府委員 これは私もちょっと正確に記憶しておりませんが、円借款だけについて申し上げますと、従来約束してまだ支出されてないのが一兆二、三千億だったか四千億だったか、ちょっと正確に覚えておりませんが、それくらいございます。  それから支出の問題でございますが、たとえばことしインドネシアに六百何十億ということを約束いたしますと、ことしじゅうに一遍に全部それが支出されるわけではございませんで、工事の進捗状況に応じまして今後数年間にわたって支出されていく、そういうことになるわけでございます。そういうものの支出のそれぞれの金額が全部積み重なって、無償技術協力も加えて、一年分の実績、毎年毎年の実績になって出ていく、こういうわけでございます。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 それで、私の質問は、私の理解の仕方が悪かったからくどくど質問したわけですが、それじゃ、いままで約束をしてまだ実行もしてないけれども、いままで約束してきた、その実行しておるとしていないとにかかわらず、この約束をした金額が、今度の中曽根総理約束した金と加えて、有償、無償含めて幾らになって、それがどれだけ支払いがされてきておるのか、そうしてまだ支出されない金がどれだけあるのか、そういうことをやはり私は国民説明する資料としてちょうだいをしたいのですが、いいですか。
  34. 柳健一

    柳政府委員 いま御指摘の資料は提出できると思います。  たとえば一例を申し上げますと、インドネシアにつきましては、一九八一年に円借款無償技術協力と全部加えて二億九千九百万ドル出ておるわけでございます。これは一年分でございますけれども、こういうのが毎年、たとえば前の年は三億五千万ドル、その前の年は二億二千万ドル、毎年支出実績がきちんと出ておるわけでございまして、この中身円借款であり無償であり技術協力である、こういうことになっておるわけでございます。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 またその資料を出していただいてから、なおまだ疑問点は質問することにいたしたいと思うのですけれども、要は、これはどういう形であろうとも日本国民の税金ですから、そしてその日本国民の税金を使うわけです。あなたの給料も国民の税金である。私の報酬も国民の税金である。国民の税金を使う立場にある者が外国にこうしてたくさんの金を出す。一億の日本国民がどういう状態にあるのか、そういうことを考えてみますと、ただこうばらつきの形で、これは、外務大臣来られておるのですが、今度は外務大臣に問うわけですが、あなたの報告は全部りっぱな成果で褒めたたえておるわけですが、あなた、そのりっぱな成果の中にやはり考えるべき点はなかったのか、反省すべきものはなかったのか、その点についてのあなたの報告を、行った感想を承りたい。全部いいことばっかりですから。
  36. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 全般的には、今回の中曽根総理ASEAN訪問というのは成功したと私は思っておりますし、両首脳といいますか、ASEAN首脳との間の個人的な信頼関係も高まりましたし、その他いろいろな問題につきましての意見も合意を見た点が多いわけであります。また、日本について、たとえば日本の防衛政策等につきましていろいろと言われておったわけですが、こういう点についても、中曽根総理説明ASEAN諸国理解は完全に得ることができた。  いま私も行ってみまして、毎年毎年ASEAN日本との関係というのは全体的にはよくなっておると私は思っております。しかし、これでもって安心はできないと私は思うわけで、これから長い将来にわたっての信頼関係、親善関係というものを進めていく上においては、やはりここでしっかりと腰を据えて、ASEANの政府間の関係をきちっとするとか、あるいはまた国民国民との間の信頼関係もいろいろと高めていく必要があるんじゃないか。やはりASEANの諸国民の間には、日本がよくやってくれているということに対しては理解もしておるし、また一面において感謝もしておりますが、反面において、やはりどちらかというと、経済が先行するという面についての批判が必ずしもないわけではございませんで、こうした経済だけの関係ということでなくて、もっと文化であるとかあるいはその他人的交流であるとか、青少年の交流であるとか、そういった経済以外の面の幅の広い交流関係というものをこれから拡大をしていかなければならないということを痛感をしたわけであります。
  37. 井上泉

    井上(泉)委員 とにかく、この膨大な経済協力資金が流れておるわけで、今度ずっとやってきた中でも、中曽根総理は、最後にブルネイ訪問して、そこで話をされてこられた。そこはインドネシアタイの国のようにいろんな利権がかさんでいない、いわば新聞論調によると、手あかがついていない、さらのところだ、そことうまい話をして、そこから天然ガスやあるいは石油を輸入することによって中曽根総理は大もうけをするんじゃないか、そういうふうな酷評までされておるような今度のASEAN訪問です。大体、これはもう風見鶏の典型。ここへくると、ASEANを回ってくるというと、本当に日本は、平和憲法を守ります、武器輸出三原則を守ります、千海里のシーレーン、こう言ったところで、日本からフィリピンまでは千海里もありませんよと言って、沖縄のことをのけて言っておる。全く私は中曽根総理の風見鶏の典型的なASEAN訪問である、こういうふうに思わざるを得ないわけなんです。  そういう点からも、今度のこうしたばらまきの外交によって、日本中曽根総理が持っておるところの危険な軍事面での考え方というものをこれで隠してしまってきておる。これは、金をもらう方にとっては、もうそんなことは、中曽根総理が言うから、はいはいそうでしょう、それはまあ結構でございます、とにかく私のところにはこれだけの援助をしてもらいたい、こう言うのですから、一つも日本政策を批判するということはしない。しかし、彼が一歩その国から出ると、みんなこれに対する批判を下しておる。  こういう現実というものを直視した場合に、こういうふうな形のASEAN外交というものについては反省すべき点がありはしないか。本当に心と心の触れ合う、本当にASEAN諸国に対する日本経済協力というものがその国の国民にとって幸ある効果が期待されるような、そういう経済協力の仕方をしなければならぬのではないか。回っていって、そのままそこで六百五十億やります、七百億渡します、そういうふうな、もっと事前にこうしたことがわからないのか、あるいは事前に検討されたものを向こうへ持っていったのか、そこは外務省御当局のことですからわかりませんけれども、もうちょっとこうした内容については、国民に明らかにするようなことは当然すべきではないかと思うわけなので、そこはひとつ、まじめな外務大臣としてどう考えておられるのか、見解を承っておきたい。
  38. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 経済協力につきましても、いま言われますようなばらまきということではないと私は思います。  いろいろと円借款等もやっておりますが、これもまた今度はASEAN訪問を契機にふやしたことは間違いありませんが、しかし、これは各プロジェクトごとに両国間で十分検討し合って、その結果確定をいたしたものでありまして、相手の国が非常に強く求めておるプロジェクトである。したがって、これはやはり具体的に明らかになれば、政府はもちろんでありますが、国民の間においても、こういうプロジェクトであったかというふうなことで、非常に日本に対する信頼といいますか、経済協力というものが生きたものに使われておるという感じを国民にも与えるわけでございますから、私は、これまでの経済協力もそうでありましたが、これからの経済協力についても、やはり日本のやっておる経済協力というのはまさに具体的案件ごとの、プロジェクトごとの、非常な相手の国のニーズというものも踏まえながらの協力でありますから、これは、日本国民に対しても明らかにしなければなりませんが、相手の国に対してももっとPRをして、日本がいかに相手の国の本当に必要とする案件について協力をしているかということを知らしめる必要があるのじゃないかということを私は痛感をしたわけであります。全体的にはこうした経済協力は今後とも、ASEANはいま経済的にも大変苦しい状況にありますから、これに対して日本協力を進めるということは必要であろうと思います。ただ、もちろんいまお話しのように経済協力だけでなくて、その他の幅広い文化あるいは人的交流といった面も含めた交流というものが、今後将来にわたっての日本ASEAN関係を考えるときに必要になってきているというふうに感じておるわけであります。
  39. 井上泉

    井上(泉)委員 中曽根総理は、千海里のシーレーンが東京からのシーレーンだというような、いわばごまかしを言うて、フィリピンにもASEAN諸国にも脅威を与えるものではないというような言い方をしておるわけですけれども、これは恐らく私は早晩暴露されるであろう、こう思うわけであります。  そこで、今度アメリカが中南米に対する日本経済協力というようなものを強く要求をしておるわけですが、アメリカからそういう形でやってくると、日本援助政策というものは何を目的でやるのかということを考えますと、アメリカの戦略に沿うた形で日本経済協力というものがなされておるのじゃないか、こういうように私は思うわけでありますけれども、中南米に対するアメリカの援助要求というものをどういうふうに理解しておるのですか。
  40. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 実は、今回ヨーロッパに参りました際に、アメリカのシュルツ国務長官との間でいろいろとお話し合いをしたわけでありますが、その中で両国の援助政策についての話し合いもいたしました。私はその際はっきり申し上げたわけです。日本経済協力援助政策は、やはり日本には日本立場があります、人道的な協力、さらにまた相互協力、相互理解といった面についての援助協力といったものがあって、日本はそうした大きな二本柱を中心にして援助を続けておるし、これからも援助していくということを申し上げたわけでございます。そういう中でアメリカのシュルツ長官から、中南米についてもいろいろと日本援助をしていただいてアメリカとしても喜んでおる、こういうお話がございました。  日本と中南米との関係は、相互的にもこれまでもつき合いがあるわけでございますし、また中南米諸国がいま世界の不況の中で大変苦労しておられる、こういうことですから、そうした日本の基本原則に従いまして中南米諸国に対しても協力をいたしておるわけでございます。いま中南米はアメリカにとっても非常に頭痛の種でありましょう。それだけにやはり日本協力というものはアメリカにとってもありがたいことだという率直な謝意の表明というものであらわれた、私はそういうふうに理解をいたしております。
  41. 井上泉

    井上(泉)委員 幾つか質問を申し上げたいので、私は今度のASEAN訪問についての質問は以上で終わりますけれども、最近の日本に対するアメリカの軍事面における、つまり言葉としては防衛ということで表現をしておるわけですけれども、そういうふうな要求が非常に強いということは、もうあらゆる機会に、新聞論調を見ましてもよくわかるし、そうしてまたその中で、この日本韓国との関係の中で日韓米三国の軍事力を強化するような形に日本の自衛力というものを持っていこうという傾向にあるわけです。そうなると、日本は一体どこを意識して、日本はどこに戦争の危険性を持っておるのか。私は、日本独自としては戦争の危険性というものは何もないと思います。それで相手方を攻撃するというようなことも何もないと思うのです。また、相手方が日本を攻撃するというようなことも何もないと思うのです。それがアメリカのために日本の防衛というものが絶えず対ソという関係の中、いわゆる米ソの関係の中に日本が置かれておる、こういうことを私は非常に残念に思うわけです。アメリカのとめどもない軍拡の要求というものに対して、いわゆる平和外交に徹せねばいかぬ外務省としてはどういうふうに決意をしておるのか。ここらあたりで決意をして、平和外交を積極的に推進をしていただかないと、防衛庁の代弁者のような外務省になっては大変なことだから、私はその点についても外務大臣の決意のほどを聞かしていただきたいのです。
  42. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま世界の情勢を見ますと、米ソ間の軍備拡張というものが続いておる、そしてこのままの状況でいけば世界が非常に危なくなってくるというふうな感じすら持たざるを得ないわけでございます。したがって、日本としましては、そうした世界情勢の中にあって、いかにして米ソを中心とするところの世界の軍縮というものがこれからバランスのとれた形で進められていくかということに重大な関心を持っておりますし、また、日本はそれなりの役割りを果たしていかなければならぬ、こういうふうに思うわけでございます。  特に、いま当面の課題としてはINFの交渉あるいはSTARTの交渉があるわけでございます。INFの交渉につきましては、これはもう米国とソ連というだけではなくて、日本自体についても非常な大きなかかわり合いのある問題でございますから、これに対しては特別な関心も払わざるを得ないし、それなりの意見を欧米諸国に対しても日本は述べざるを得ないわけでございます。私は今回もヨーロッパあるいはアメリカの首脳に対しまして、このINF交渉というのはまさにことしの最も大きな課題であって、これが成功するか失敗するかというのはこれから世界が非常に危ない方向に行くかどうかの、ある意味においては一つの分かれ目の状況の交渉であると言っても過言でない、そういう中で、あくまでもグローバルという立場でこのINF交渉が進められて、まさにバランスのとれた軍縮が米ソ両方によって行われることを心から期待するということを述べたわけでございますが、日本はそうした立場で、いまの国際情勢を十分認識しながら日本なりの平和外交の立場に立った軍縮に向かっての国際世論の喚起、あるいは日本自体がそのための努力をこれからも続けていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  43. 井上泉

    井上(泉)委員 そこで、新聞報道でも、極東の軍拡に拍車をかける意味でグアムへB52Gを配備する、こういうことで外務省もこれに対してそれは核バランスを維持するための措置として肯定的に受けとめておる、こういう話を聞くわけです。そういうふうになってくると、日本がいわばアメリカの核の傘に守られるどころではない、アメリカの核のおかげで日本全土が全滅するような状態の中に日本がいま置かれてきておるのじゃないか、こういうふうに思うわけですけれども、これも外務省としては了解しておるのですか。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまの世界の平和というのは、いわば米ソの軍事力のバランスというものが平和を維持しておる、これは現実、厳粛な事実としてわれわれは認めざるを得ないわけでございます。したがって、現在のように極東におけるソ連の軍備力、軍事力が非常に増大をしておる、こういう状況の中にあってはやはり軍事力の均衡を保つ意味において、アメリカの軍事力というものがそれなりの力を持って均衡を得るということが極東の平和のためにもやむを得ないことではないだろうかと思うわけでございます。そういうような中で軍縮というものは、先ほど申し上げましたようにわれわれ日本としては強く求めながら、米ソの交渉が均衡のとれた形で軍縮の方向へ進んでいくことを一面においては強く期待をし、努力を重ねていっておるというのが現実のわれわれの外交の実相でございます。
  45. 井上泉

    井上(泉)委員 せめてそういうことをすると非常に危険だからと懸念を表明するぐらいの外務省の姿勢であってほしいと思うわけですけれども、そういう懸念も表明をしない、これは知らないんだというような形で、これを肯定するようなことは私はすべきではないと思うのです。  そこで、そういう極東の米ソの関係の中に日本が置かれて、その日本の中で韓国との関係というようなことをいろいろ考えてみますというと、朝鮮半島における平和関係をつくり上げていくような日本としてのとるべき道があるではないかというように思うわけなんですが、けさの新聞を見ますと、金大中の聴取を断念する、政治決着の釈明は無理だ、こういうようなことを言ってこれを断っておるわけでしょう。これで金大中の問題は一切触れませんよということで、そういうような報道がされておるでしょう。外務省に来たものは事実ですか。それに対して後藤田官房長官は、外務省にそういうアメリカからの報告が来てその報告に基づいて検討した結果、もう政治決着をしておる以上はこんなことを言うてきてもだめだからもう一切やめます、こんなやり方というのは最初から取り組む姿勢がなかったんじゃないかと私は思うわけですが、こういう文書がアメリカから外務省に来たのですか。
  46. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 きのうアメリカから報告、連絡がございまして、大臣がゆうべお帰りになりましたものですから、私まだ大臣にも御報告申し上げておりませんので、僣越ながら事務当局から答えさせていただきます。  事実関係から簡単に申し上げますと、発信人は金大中さんでございまして、受信人はアメリカ司法省の代表でございます。いわゆる日本政府からの金大中事件に対する事情聴取ということの要請、要望に対します回答として十日付の書簡で発信されまして、郵送されましたので十一日、そこで時差がございまして、手紙の内容が昨日私どものところに届いた、こういうことでございまして、要点は、きわめて簡単に申し上げますと、金大中さんが主張されておりますのは三点ございまして、拉致事件は日本政府が金大中氏の身辺保護を怠ったために生じた、それから第二点は、日本政府は真相究明を約束しながら政治決着をつけて金大中氏の人権を無視した、第三点は、金大中氏に対する死刑判決が政治決着に違反していたにもかかわらず、日本政府はこれを韓国政府に対して取り上げなかった、以上の三点を骨子といたしまして、そこでこの三点についての日本政府の考え方を明らかにしてほしい、したがってそういうことの結果、金大中氏としては現在のところ日本政府要請のあった事情聴取に対して応じるとも応じないともはっきりした返事は申し上げかねる、こういうのが全文の重要な趣旨でございます。  これに対して昨日早速警察庁と外務省とで十分協議いたしました。この問題につきましては先生御案内のとおりに、警察庁といたしましては、きょう警察庁の方が来ておりませんので、私が警察庁にかわって答弁するのは大変僣越でございますが、そもそもは、事件の被害者あるいは当事者から直接に事情を聴取するというのが捜査の常道であるという警察庁の御意向を受けまして、そこでわかりました、それでは外務省が責任を持って取り次ぎましょうということで、ただし金大中さんは現にアメリカにおります、したがいましてアメリカ政府を通じて金大中さんに日本政府の意向を取り次ぐのが筋道であると考えて、警察庁の御意向を外交チャンネルで金大中さんに伝えた、それに対して回答がいまのようなこと、こういうことでございます。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕  そこで、私は先ほど申しましたとおりに警察庁を代表するわけにまいりませんが、そもそも外務省に頼んでまいりました警察庁におきまして、純粋に刑事事件の被害者としての金大中さんから事情を伺いたいのだ、それに対して金大中さんは先ほどのような回答でございまして、事情聴取を受けるためのいろいろの条件を言っておられる、しかも受けるとも受けないとも現在のところは回答を保留する、こういうことであるとすれば、警察庁捜査当局といたしましても現段階で事情聴取を行うことは非常に困難だという判断に固まっているというのが私の理解でございます。そこで、警察庁、外務省の協議の結果をけさの新聞報道にございますとおりに、きのうの午後官署長官が、当面の一応の政府の考え方として記者会見で御説明された、こういうふうに了解しております。
  47. 井上泉

    井上(泉)委員 それは刑事事件といっても、日本韓国との間における政治事件ですから、これは単に刑事事件だから事情聴取は条件をつけてはいかぬのだという理屈はないし、私はこの三項目は当然のことだと思うわけです。しかし、このことにつきましては次のときに同僚議員等からも十分究明されると思うわけですけれども、こんなことに日本政府はいわばいちゃもんをつけて、もう一切聴取を断念をして、政治決着の釈明もせずに金大中事件をそのままやみからやみへ葬ってしまうということは日本としてはなすべきではないということ、そしてまたそれと同時に、この問題については私は委員長に申し上げたいと思うのですけれども、この金大中の問題については当外務委員会としてもずいぶん論議をされた問題でありますし、これは一遍委員長が外務委員会としての派遣を考えていただきたい。  いま五分という要求がありましたので、非常に不十分でありますけれども、私もう一問申し上げておきたいのは、アジアの緊張を緩和するための関係で、朝鮮民主主義人民共和国との関係は非常に重要な段階にあるわけで、その点は今度法律家を日本に入れるという話もできてくるし、あるいは中国との、不幸というか、不測の事故でありましたけれども航空機の問題等についての韓国と中国との関係、そういう中で日本としてはアジアの緊張が激化するような形の中に協力をするのではなしに、アジアの緊張を弱めていく、平和関係をアジアにつくり上げていくためにも朝鮮民主主義人民共和国の存在を無視しての日本の外交はないと思うわけです。そういう点については大臣も前向きな見解を示しておられるわけでありますけれども、委員会としても朝鮮民主主義人民共和国へ行って、向こう関係者、政治家等と懇談をするとか、そういうふうな機会をつくることもこれまた私は大事なことではないかと思うので、この点について委員長の見解と外務大臣の見解をお聞きをして、私の質問は、残る時間は土井さんで補ってもらいます。
  48. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 北朝鮮との間では御承知のように国交がないわけでありますが、しかし、その他経済の交流であるとかあるいはまた人的交流といったものは続いておるわけでありますし、日本としましても、朝鮮半島の緊張緩和ということがやはり極東の平和、世界の平和に非常に重要であります。わが国の平和にもかかわり合っておることでありますから、朝鮮半島の緊張緩和のための環境づくりというものはやらなければならぬ、こういうふうに思っております。そういう立場でいろいろと今日まで努力しておるわけでございますし、朝鮮半島緊張緩和のための具体的な環境づくりのために今後ともいろいろと機会をとらえて努力を重ねてまいりたい、こういうふうに思っております。
  49. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 ただいま井上委員の御発言の中で委員長の見解ということがございましたが、これにつきましては後ほど理事会において十分協議いたしたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  50. 井上泉

    井上(泉)委員 どうもありがとうございました。
  51. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 関連質疑の申し出がありますので、これを許します。土井たか子君。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど井上委員の方からの御質問の中にございました金大中氏事件に関しまして、残余の時間ひとつ簡単にお尋ねをさせていただくかっこうになると思います。  先ほどの橋本局長のお答えによりますと、これは正式にFBIから日本に寄せられた金大中氏自身の正式回答であるというふうに考えてよろしいのですか。
  53. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 正確に申しますと、文書をもって日本政府から要請を受けたアメリカ政府、具体的にはアメリカ司法省が、金大中さんに対して日本政府から文書をもってこういう要請が来ているがどうしますかということを聞いたのに対して、先ほど申しましたとおりに、十日付の返簡でもって金大中さんから司法省の責任者に回答が来ている、こういうことでございます。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、繰り返しになりますが、FBIを通じて金大中さんが正式に文書でもって回答を寄せられた、その正式回答が日本にFBIを通じて伝達された、こういうかっこうに相なるかと思いますが、どうですか。
  55. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 くどくなって恐縮でございますが、これは外交チャンネルでございまして、もう一度正確に申しますと、日本外務省からアメリカ政府を対外的に代表する国務省に依頼をしまして、国務省がアメリカ国内における所管官庁である司法省に要請した。そこから先はFBIを使いましょうと何しようとこれは司法省のことでございます。したがいまして、その回答も、手紙が司法省の当局から行ったものでございますから金大中さんもアメリカの司法当局に対して返簡を出された。それが今度は司法省からアメリカの国務省に報告が行きまして、アメリカ国務省が在ワシントン日本大使館を通じて本国政府、つまり日本外務省に伝達された、こういうことでございます。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。だから、その間のルートは、国のそれぞれの機構の外交ルートを通じてやりとりがあるというそのトンネルはわかります。そのトンネルを通じて金大中さんから回答はこうでありますというのが正式に日本に返ってきた、こういうかっこうだと受けとめてよろしいですね。つまりこれが金大中さんの正式な回答であるというふうに受けとめてよろしいですね。
  57. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 頭が悪いものですからちょっとよく理解できないのですけれども、正式か正式でないのか、あるいは先生のそういうお言葉にとらわれる必要はないかもしれませんが、私どもは金大中さんのお考えがこの書簡によって明確にされたというふうに現在のところ受け取っております。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  そこでちょっとお尋ねをしたいと思うのですが、金大中さんはいまどういう旅券を持ってアメリカに滞在中ですか。アメリカ以外の国に行くことができる旅券ですか、アメリカしか行けない旅券ですか、それはどういうかっこうになっておりますか。
  59. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 正直に申しまして、私どもは金大中さんが現にお持ちの旅券を拝見したわけでございませんから、確信を持ってお答えできかねますが、私どもが得ました確実な情報によりますと、金大中さんは米国に対してのみ有効な韓国政府発給の旅券を所持しているということでございます。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 その確実な情報とおっしゃるのは、韓国政府に問い合わせをおやりになった結果そのような確実な情報を入手されているのか、それとも他のルートを通じての確実な情報であるか、これは大変違うと思うのです。いまの問題で韓国側に対してどういう旅券を所持されているかということをお確かめになった過去の事実がございますか、どうですか。
  61. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 きわめて権威ある公式筋からの通報連絡による結果として申し上げました。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 結論は確実な情報であって、出どころはいまの御答弁からするとどうも確実性を欠いているようなかっこうに相なるところが摩訶不思議と言えば言えるわけでありますが、外務省としてはそういうことを確実な情報としてキャッチされている。そうすると、今回奇せられてきた回答からすると、問題は大きく分かれると思うのです。どういうことかというと、先ほど御答弁になりました三点を日本側が回答の中で意思表示をしないと事情聴取には応じないと言われているのか、回答する、しないにかかわらず日本に行って、現場検証して、事情聴取に応じましょうということを言われているのか、この受けとめ方によって大変違うと思うのですよ。これをどのように受けとめていいのでしょうか。必ずこの三点について日本が意思表示をして見解を明らかにしないと事情聴取には応じませんと言われているのか、この点に関しては日本側がたとえ見解を明らかにしなくとも、日本に行って、日本で現場検証しつつ事情聴取に応じますと言われているのか、この点はどういうふうに理解されていますか。
  63. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先生御質問の御趣旨を私が十分よく理解しているという前提でお答え申し上げますと、まず金大中さんの書簡を拝見したのはきのうのお昼ごろでございまして、警察庁との間で——本件はそもそも、先ほども井上先生の御質問に御答弁申し上げましたとおりに、ずばり言ってしまえば警察庁から頼むと言われて、外務省の外交上の配慮を加えた上で、よかろうということでお引き受けしたわけでございますから、極端に言いますと、現在なお警察庁と一言一句これはどういう意味だろうということを正確に把握するべく検討中でございます。  それからこれに対して日本政府としてどうするかということにつきましては、先ほど井上先生に御答弁申し上げましたとおりに、とりあえずの感触といたしまして——官房長官がきのうの午後四時に内閣の記者団に対しまして一応の御見解をお述べになりましたけれども、金大中さんの書簡に対して日本政府全体としてどのように対応するかということにつきましては、実はゆうべお帰りになりました私の直接の上司であります外務大臣にも現在に至るまで何の報告もしてございませんし、また、いわんやこれからどうするかにつきましては外務大臣の御指示も何も承ってない現段階におきましては、まことに申しわけございませんが、しばらくの御猶予をいただきたいと思います。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 それではこれで終わりますけれども、ただ一問最後にこれだけは確認しておきたいのです。  先ほどの旅券については、アメリカに行くのみの旅券であってそれ以外の国に対しては行くことができない中身でしょう。警察の側が現場検証その他について事情聴取を日本でするということを了承され、日本の政府としてもその協議が調えば、これは韓国側政府において旅券の発給というものはどういうかっこうでなされるのですか。日本政府がそれを要求されないとできないことではないかと私は思いますが……。
  65. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 簡単にお答えいたします。  本来、ある国の国民に当該国の政府が旅券を発給するか否かということは、あくまでもその国の政府と国民との間の問題でございまして、したがいまして、他国の政府がとやかく言うべき筋合いのものではないというのが私どものとりあえずの見解でございます。  なお、これ以上につきましては、先ほども申し上げましたとおりに、私は大臣にも一言も報告、御相談あるいは御指示を承っていない段階でございますので、その点御了承願います。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。  そうすると、日本の政府からは金大中さんに対して、日本に来られるための旅券発給を韓国政府に要求することはない、金大中さん個人が韓国政府に対して旅券の発給をあくまで要求されるべきものである、このような基本姿勢を外務省としてはお持ちになっているというふうに理解をさせていただいて間違いはないのですか。このことを確認して終わります。
  67. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 大きな政治の判断があれば別でございますが、私は外務省事務当局としていまの段階で御答弁するといたしますと、さっきも申しましたとおりに韓国人である金大中さんに韓国政府が旅券を発給するか否かということはあくまでも韓国内部の問題でございますということしかいまのところではお答えできないと思います。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 非常に政治問題でありますけれども、それについては基本的には政治問題でないという前提でいまお答えになった点は一般論だと思います。改めて次回、これについては質問をすることに相なるかと思います。それまでに政府の協議もいまとは違った形で進展するであろうということを予期して、きょうの質問はここで終えさせていただきます。ありがとうございました。
  69. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 次に、玉城栄一君。
  70. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務大臣にお伺いしたいわけであります。今回、二週間近くになると思うのですが、ASEAN諸国OECD閣僚理事会等出席されて、本当にハードな外交スケジュールをこなしてこられたことについてまずその労に心から敬意を表したいと思います。  そこで、御同行されました外務大臣中曽根総理ASEAN歴訪についてぜひ伺っておきたいわけでありますが、先ほど、今回の中曽根総理ASEAN歴訪は一般的には大成功であった、信頼関係も大変深まったし、わが国の防衛政策についても大変な支持をいただいた、成功であったということを大臣井上先生の御答弁でおっしゃっておられたわけですが、これは私、報道で私の感想を申し上げたいのですが、今回の中曽根総理ASEAN歴訪は事前に十分外務省当局が根回しをされて、そのレールの上を大変タカ派でいらっしゃる中曽根総理があたかもいわゆるハト派のごとく装いながら、外交辞令とはいえ本当に歯の浮くようなお世辞を並べられて、しかも先ほど御質疑あった援助ばらまき、そういう約束をして低姿勢で突っ張ってこられた、そういう感じが私はいたします。一言で言いますと、いわゆる中曽根総理の訪米での発言あるいは国内での発言、今回のASEANでの御発言あるいはその態度、本音とたてまえを本当にうまく使い分けた、みごとに使い分けたという感じがいたします。これは私の感想ですが、いかがでしょうか。
  71. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も半分ほど同行したわけでありますが、中曽根総理各国首脳との会談というのは非常に和気あいあいのうちに行われました。率直な意見の交換も行われましたし、特に中曽根総理が強調されたのは、ASEANに対する基本的な外交政策というものは歴代の内閣がとってきた政策の上に基づいてやっていくのだ、また日本の防衛政策というものも歴代内閣がこれまで確立した原則の上に立ってこれを行うのだ、こういうことをはっきり言われたわけでございます。これはいまの内閣としては当然のことを言われたことであろう、私はこういうふうに思っておりますし、そうした点についての、ASEANの政府もあるいは首脳も、そうした日本基本政策基本方針というものについては十分な理解を得ることができた、こういうふうに実は自分は考えております。これは、ここで政府間の一つの理解ができたということだけではなくて、私、ずっと回ってみましても、ASEAN国民日本に対する感情というものも、わずか短時日ではございますけれども、やはり年を経るごとによくなってきている、日本との関係が定着をしつつあるというふうな感じを率直に言って持って、大変私自身も喜んでおる次第でございます。
  72. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務大臣とされてはそういうふうなお答え以上のものは出ないと思うのですが、先ほど井上先生もおっしゃいましたとおり、本当は中曽根総理がこの委員会に出られた方が話もしやすいわけですけれども、まさに、本当に今回のASEAN訪問について見る限り、風見鶏、非常に面目が躍如たるものがあるなという感じがするわけです。それは、歴代総理ASEAN訪問、それなりの哲学がありました。今回の中曽根さんに関する限り、見るならば、いわゆる改憲隠し、軍拡隠し、いわゆるタカ派隠し、本音隠し、そんな感じがするのですが、いかがでしょうか。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府そして日本総理大臣としては、これは国会でもずっと中曽根総理も主張しておりますし言明しておりますように、やはりこれまでの基本的な外交政策あるいは防衛政策、そういうものを踏まえて中曽根内閣としてはやっていくのだということを言っておるわけでございますから、いま言われましたようなこれまでとは全然違うのじゃないか、本音を隠して言っているのじゃないか、こういうふうなことを言われましても、そういうふうには私は受け取っておらないわけでありまして、これまで内外に対して中曽根総理大臣として言明した線をASEAN諸国に対しても懇切丁寧に説明をしたということである、こういうふうに理解しております。
  74. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、例のばらまき援助じゃないかということなんですが、先ほど橋本局長さんもおっしゃいましたように、わが国財政の三分の一は借金だ、そういう中でこういう経済協力をするにしても、あるいはいろいろな協力約束しておられるわけですけれども、大変な負担になることは間違いないですね。ですから問題は、言葉より実行ということがあります。まさに今回の中曽根総理ASEAN歴訪、適切に言葉より実行が内外から強く問われる問題ではないかと思うのです。これはすでに現地の新聞論調でも世論でも、美辞麗句もいいけれども、しっかり、その言ったことをちゃんとやってくれ、そういうことですね。これはまさにそのとおりだと思うのです。もしもこれが言ったとおり実行できないということになりますと、これは口舌の徒、オポチュニスト、口先だけだ、それは即日本の国というのは信用置けない、不信感をつのらせるという結果になるわけですね。  それで、先ほど柳さんも、いろいろ過去のASEAN約束した援助、ちらっとお答えで一兆四千億ぐらいは総体として約束したけれどもまだ実行していないというお話がありましたね。それをちょっと確認しておきます。そうすると、それがわかるのは、総体がわかるわけでしょう。
  75. 柳健一

    柳政府委員 先ほど一兆余りと申し上げましたのは、ASEANだけではなくて円借款全体の過去のパイプラインがその程度あって、さらに先ほど申し上げましたように円借款というのは約束いたしましてから実際に支出が行われるまでに数年かかりますから、これはその使い残りではなくて、いわば約束した金額が毎年用意してある、こういうことでございまして、ASEANだけに対する使い残りという意味ではございません。
  76. 玉城栄一

    ○玉城委員 外務大臣も御存じのとおり、田中さん時代から、福田さんもそうですが、鈴木さんもいろいろの援助協力約束をしていらっしゃるわけですね。それは順調にいっている面もありますよ。しかし実際はほとんど手つかずのところもありますね。今回の中曽根さんの約束だって、これはどうなるかわからぬという感じです、いまのわが国の厳しい財政の状態からしますと。  それで大臣にお伺いしたいのですが、果たして今後中曽根さんが約束したことが国の財政の状況から実行できるのかどうか。もしこれができなかったら、さっきおっしゃられた成功であったということはそのときにしかわからないわけですね。それが本当に誠実に実行できたか、そのときに成功であったか、失敗であったかが問われるんで、いまそういうことは言えないと思うのです。大臣、いかがでしょうか、できるのかどうか。
  77. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 約束をした援助につきましては、日本の財政状況がどうあろうと、約束はやはり守っていかなければならぬわけでございますから、今回ASEAN諸国に対して総理大臣が公式に約束したものはわが国としてはきちっと守るということははっきりしておるわけでございます。  ただ、円借なんかについて言いますれば、援助の内容というのはプロジェクト中心でありまして、相手の国の要求によって日本もこれに対して調査をして、その結果このプロジェクトでよかろうということで合意して積み上げた金額でございますから、相手の国の事情でそのプロジェクト進捗がおくれるということはあり得るわけでございまして、おくれるとかおくれないとかいうことは相手の国の実情によってできるわけでございますから、日本としては一九八二年度とか八三年度とか少なくともこれだけのことはいたしますということで約束した金額については、相手の国との話し合いがつけばきちっと援助約束は果たすということが日本の基本的な考えでありますし、それはこれまでずっと通してきたわけでございます。  二国間で話が詰まらないといいますか、相手の国の事情でどうしてもプロジェクト進捗しないというもので残った面も実行ベースではあるわけでございますが、全体的な面で見ると、これまで歴代内閣がASEAN諸国との間で合意した援助はおおむね実行されてきておると言っても過言でない、そういうふうに私は考えております。
  78. 玉城栄一

    ○玉城委員 改めてもう一回、今度の中曽根総理ASEAN歴訪について重ねて申し上げておきたいのですが、これはまあ調子のいいことをおっしゃってこられたな、その変身ぶりといいますか、変身の装いがみごとなものだなという感想がしてなりません。先ほど井上先生もおっしゃいましたように、運命共同体だとか不沈空母だとか海峡封鎖だとか、盾だやりだとか同心円とかGNPの一%を超えてもやむを得ないとか、自分は議員としては改憲論者であるとか、とうとう向こうではそんなそぶりも全然ないのですね。これはもうみごとなものだと思うわけです。  そこで、今度は具体的な問題でちょっと伺っておきたいのです。その援助の問題についてもしかりですが、鈴木前総理が五十六年一月にASEAN訪問されたときに、いわゆる人づくりプロジェクトということで一億ドル約束されて、それは順調にいっているというお話がありました。その一環で沖縄に沖縄国際センターという人づくりのためのセンターをつくるということで、ことしの八月から着工で六十年完成ということになっている。この国際センターと今回の中曽根さんのいわゆる二十一世紀に向けての友情計画というビジョンとの位置づけはどうなるのでしょうか。それとも、鈴木さんのあのときの遺物と言ったらおかしいのですけれども、関係ないことであるということで済ましていいのかどうか。
  79. 柳健一

    柳政府委員 鈴木総理が提案されましたASEAN人づくりセンターも、今般中曽根総理が言われました人物交流も、人の交流という点では、つまり人材養成という人の交流とか人材養成という点では共通しておりますが、プロジェクトそのものとしては別のものでございます。
  80. 玉城栄一

    ○玉城委員 いや、その一環としてつくる、そして地元の県は敷地も提供して建物もつくるという計画になっておる、それはわかるのですが、どういうふうにこのセンターを活用するかというのはいまもってあいまいなんです。はっきりしないのです。したがって地元の県は、これは大変だということで、この間、知事を先頭にASEANをPRに回っているわけですね。一体これはどうするのですか。つくるのは大いに結構ですが、活用の仕方です。関係者に言わせますと、これは閑古鳥が鳴くのではないかと憂慮する人もいるわけです。目玉は大体どういうふうにして活用するのですか。今度の中曽根さんのASEAN訪問でいろいろなことをおっしゃっておりますが、このセンターについて、目玉はどういうことをしてこれを日本ASEANとのかけ橋としてどのように有効に活用するか、そういうものが全然ないでしょう。それをおっしゃっていただきたいのですね。
  81. 柳健一

    柳政府委員 御質問は沖縄センターの活用の問題だと了解してよろしゅうございましょうか。沖縄センターは、御承知のようにASEAN各国に一つずつつくるセンター、これの一環としてできたわけでございますが、主な事業は、ASEANから研修生を連れてまいりましてこのセンターで研修を受けさせるというふうなASEANとの人的交流をやるのがまず第一でございます。それからASEAN各国に設置されるセンター、職業訓練センターその他いろいろございますが、こういうセンターに対する支援、サービスあるいは連絡調整、こういう役割りを果たすということにいたしております。
  82. 玉城栄一

    ○玉城委員 そういう話は最初から聞いてわかっておりますよ。それだけじゃこれは閑古鳥が鳴くということを申し上げたのです。  といいますのは、今度の中曽根さんの訪問の中で、これは報道で、シンガポールのホテルでもと日本に留学したASEANの学生のそういう協会の代表十名と懇談した席で、あなたの息子をもう一回日本に留学させたいと思いますか、十名のうち二人はします、二人は、いや、しません、あとの六名は手を挙げない。その手を挙げない六名の一人は立って、私はもう一回自分の息子を日本に留学させたいとは思いません、欧米にさせたい、なぜならば、日本でせっかく勉強させても日本の企業は就職がむずかしいし、もちろん管理職とか重役にはなれない、しかし欧米は違うのだ。突き詰めて言えば、日本はアジアとは言うけれども異質の文化を持っている国だ、日本に対する違和感が強いわけです。  ですから、大臣がおっしゃった信頼感が深まる、これは皮相的ですよ。ですから、いまおっしゃるような抽象的なことでこの沖縄の国際センターだって活用できないわけです。いかがでしょうか、大臣。そういうきちっと決めたもの、言ったことが活用できるようにしていただきたい。その沖縄の国際センターについて、大臣は同行されたわけですから、どういうふうに活用したいというお考えを持っていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  83. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本ASEANとでいろいろと歴代内閣が約束をした案件については着実に実行しておるということははっきり言えると思いますし、またその点についてはASEANの諸国と会談をした際もそうした日本努力ASEAN諸国の政府は評価をしておりました。したがって、今回中曽根総理訪問した際の約束も今後にわたってきちっと守っていくということは、日本ASEANとの信頼関係を確立していく上において大前提でなければならない、こういうふうに思うわけであります。  それからまた同時に、先ほどお話がありました、たしかシンガポールでありましたか、私も出席したのですが、日本に留学した学生、旧学生が集まったときにいろいろと質疑応答があって、そして自分の息子は日本にはもう一回やりたくないのだというふうな発言があったことも事実であります。そして、シンガポールなんかうんと日本の企業が出ているわけですけれども、日本へ留学した者をどうも十分に活用してくれない、こういうような苦情が出ましたことも事実であります。私はその後、進出している日本の企業との会談においても、進出している日本の企業がそうした日本へ留学した人たちをもっと積極的に活用するということが必要である、政府は政府で一生懸命やるけれども、やはり民間がさらにそれと並行してやらないといけないということを言いましたけれども、しかし全体の空気としては、十年前にいろいろの事件が起こりましたが、ああした空気はだんだんなくなってきて、国民の方も日本に対して、それは全面的に信頼ということではありません、批判もあることは事実でありますが、日を追うごとに日本ASEANとの国民の間の感情的な信頼関係もだんだんと固まりつつあるな、全体的に見て私はそういうふうに感じまして、非常に愉快に思ったわけであります。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、いまの問題でもう一回重ねてお伺いしたいのです。  先ほど、沖縄の国際センターの件についても抽象的なお話で目玉のものがないじゃないか、それではだめですよということを大臣に申し上げたわけですね。大臣のお話の中でも、日本ASEANとの関係経済優先だけではだめなのだ、文化交流とか人的交流が大事だということをおっしゃっておるわけですね。ですから私、せっかく四十億近い金をかけて沖縄にそういうセンターをつくるわけですから、それを本当に生かすということを、大臣、真剣に考えていただきたいわけですよ。これは日本ASEANとの今後の二十一世紀に向けて、おっしゃるところのそういうものを生かしていくには、金をかけてつくるそういうものをどう生かすかということが非常に大事だと私は思うのです。それはまさに成功するか失敗するかのかぎを握る、この国際センターの活用は一つの例です。いかがですか、大臣、もっと真剣にこのセンターについて目玉をいろいろ考えるとか、そういうことについて大臣の見解をちょっと伺いたいわけです。
  85. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはりセンターなんかを建設した場合においては、本当に有効に日本ASEANとの親善関係を進めていく上においてこれが活用されなければならない、こういうふうに思いますし、また皆様方のいろいろな御意見も承りながら積極的に経営の面については努力を重ねていきたい、こういうふうに存じます。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 今度、北村さんに伺います。  この前の委員会でも、いわゆる米軍基地内における日本人警備員に拳銃を携帯させてはならないという立場で何回も申し上げたわけですが、この問題で最後にもう一点伺っておきたいのですが、これはいま現地の方では県と米軍の司令官とが話し合いをしているわけです。といいますのは、軍人さんあるいは警官、これは特殊な方ですが、そういう日本人に、たとえ基地内といえども、拳銃を持たせてはならないわけですよ。ところが最近、米軍はそれはいいですよという考え方ですが、外務省の方が非常に持たせたがっていると言う。これはなぜですか、お伺いしたいのです。
  87. 北村汎

    北村(汎)政府委員 御指摘の件につきましては、先ほど委員からおっしゃいましたように、四月六日付で全駐労の沖縄地区の本部から、沖縄県における米軍日本人従業員の雇用主である西銘知事に対して、いまおっしゃいましたように拳銃保持の問題について申し入れが行われまして、そしてそれに基づいて知事とそれから現地の米軍との間で協議が行われて、そういうことで米軍としては拳銃を保持する地域について将来考えていくというような回答をしたというふうに承っております。  先ほど委員から、外務省が拳銃を持たせたがっておるという御発言がございましたけれども、そういうことは、外務省としてはこの前から御答弁申し上げておりますように、米軍が日本人の従業員に対して拳銃を持たせておりますのは、これは地位協定第三条の一項に基づいて、いわゆる施設、区域の中における警護のために必要なすべての措置をとるという米軍の管理権の範囲内の問題でございますので、これは日米協定上は認められているというのが私どもの考えでございまして、外務省がそれを持たせたがっておるというようなことではございません。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 では持たせたくないんですね、どうですか。
  89. 北村汎

    北村(汎)政府委員 私どもといたしましては、あくまでも米軍がその管理権の範囲内として必要であるかどうかを判断すべき問題であって、外務省が持たせるべきであるとか持たせてはならないとか、そういうようなことではないと思っております。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、昭和二十七年にそういう協定があって、それを見直したらどうですか、あなたの時代に、そういうことはやめましょうと。それは軍人さんとかそういうものは別にして、日本人警備員にそんなものは持たさぬ方がいいという話し合いをする用意はありませんか。  それではもう一つ、時間がありませんので……。  もし現地で県と米軍側でもう持たせないという合意が成り立った場合は、当然尊重されますね。
  91. 北村汎

    北村(汎)政府委員 現地でそういう協議がなされてそういう合意がなされましたときは、また米軍と外務省との間あるいは合同委員会においてこの問題が取り上げられると思います。そこで現地沖縄に限っての話になるのか、あるいはまた全国的な問題になるのか、そこは合同委員会での話になると思います。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  93. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、林保夫君。
  94. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣にはASEAN諸国の御訪問、さらにはIEAOECDの閣僚理事会に御出席で、御苦労でございました。  先ほど来議論になっておりますように、援助の問題はわが国にとってきわめて重要な問題、決してこれは金額の問題ばかりでなくて、姿勢の問題、いろいろあると思います。  そこでお伺いしたいのでございますが、大臣の御帰国報告、ただいま経済協力の推進はわが国役割りの一つであるという認識、そしてその中でASEAN諸国援助の最重点地域とする、これは不変である、このようにおっしゃっております。と同時にまた、大臣が十一日にパリでアメリカのシュルツ国務長官会談なされまして、朝日新聞でございますが見出しだけ簡単に読みますと、「中東・中米への援助拡大、米、暗に対日要請」こういうことでいろいろお話し合いをなされている。決して世界はアジアだけではございませんので、いろいろと手を尽くさなければならないと思いますが、そういうような国際環境を踏まえて、大臣としてこれからの経済協力、対外援助をどういう形でお進めになるかの御方針を承りたいと存じます。
  95. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 わが国経済協力の基本理念というのは、人道的立場、それから相互依存、この二本立てでこれまで進めておるわけでございます。わが国は最近非常に経済的な力を持ってまいりました。そして国際的にもその発言力が高くなったわけでありますが、同時にまた国際責任というものも強く主張される時代になりました。私はやはり経済協力というのはそうした基本的な立場というものを踏まえながら、国際社会における信頼を日本が回復していく、信頼を確立していく上においては、日本がこれから積極的に取り組んでいかなければならない課題であろう、こういうふうに思っておるわけでございまして、そうした基本的な考え方に立って今後ともこれを進めてまいりたい、こういうふうに思います。
  96. 林保夫

    ○林(保)委員 つまり中東、中米への援助拡大はどうされますでしょうか。
  97. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本経済協力につきましては、御承知のように七割がアジアを中心にこれを行っている、これはやはり日本と最も相互依存関係が深いわけでありますから当然のことであろうと思います。そのアジアの中で三〇%以上がASEAN諸国にあるわけでございますから、したがってASEANが最大のウエートを持っておるということもはっきり言えるわけでございます。しかし残された三割というものは、あるいはアフリカであるとかあるいはまた中南米であるとか、そうしたいわゆる開発途上国に対しましてこれを行っておる、中南米もその一環として行っておるということであります。
  98. 林保夫

    ○林(保)委員 ずばり伺いますが、カンボジアその他はどういうふうにされますでしょうか。
  99. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 カンボジアはいま紛争中でありまして、日本としてはカンボジアにベトナム軍が侵入しているということでございますから、これがいわゆる撤兵するまではベトナムに対してはいま援助を凍結する、今後とも撤兵をするまでは凍結をするという基本的な考えであります。カンボジア自体につきましては、いま三派が民主政府をつくりまして、いわゆるカンボジアに自主独立の政府をつくるための努力を行っておりまして、三派に対しましてはASEANがこれを支援しておりますし、このASEANの外交の姿勢というものにわれわれは協力をいたしておりますが、直接的にはいまのところは援助はいたしておらない。カンボジアに自主独立の政府ができれば、これに対してわれわれはできるだけ早く積極的な援助を行っていかなければならない、こういうふうに思います。
  100. 林保夫

    ○林(保)委員 御承知のように、アフガニスタンへのソ連の侵入、それから中東紛争、そこでパキスタン、トルコへの援助がスタートしております。今回もシュルツ長官は、ジャマイカへの援助を高く評価する。これは一言で言うならば紛争周辺国への援助でございますが、これについては大臣はどのように取り組まれる御覚悟でしょうか、承りたいと思います。
  101. 柳健一

    柳政府委員 先生御指摘の紛争周辺国への援助の概念は、タイとパキスタンとトルコだけでございまして、今般いたしますジャマイカに対する援助の考え方は、紛争周辺国に対する援助ではございません。
  102. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がございませんので、先へ急ぎたいと思います。  今回東南アジアを御訪問になりまして——間違っていたら局長ひとつ訂正をしていただきたいのですが、インドネシアへ六百七十五億、タイへ六百七十三億六千万、フィリピンに六百五十億五千万、マレーシアへ六百十億円、合計二千六百九億一千万円、対前年比ですか、二七・三%という数字を外務省の方から私ちょうだいしたわけです。これに間違いないかどうか。
  103. 柳健一

    柳政府委員 いまおっしゃいました数字そのものはそのとおりなんでございますが、インドネシアにつきましては昭和五十八年度の約束でございます。それから、それ以外のフィリピンタイマレーシアにつきましては昭和五十七年度の数字でございますし、さらに、マレーシアにつきましての二百十億円プラス四百億円の特別円借款合計六百十億円というのは今回ではございませんで、先般マハティール首相が日本を訪れましたときにプレッジしたものでございます。したがいまして、今度総理が行かれましたのは残りの三件のプレッジでございます。
  104. 林保夫

    ○林(保)委員 ところで大臣総理に同行されまして、こういうお約束意図表明ないしはいろいろな形でなさいましたようですが、これの根拠はどこで、たとえば閣議で決定するとか、何とかの法律に基づいてやるとか、そういう問題があろうと思いますが、大臣はどのようにお考えになってこれを約束されたのでございましょうか。
  105. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほども申し上げましたように、わが国援助基本方針としては、これはやはりアジア中心でありますし、特にASEANにその主力を置くということでこれまでやってきておりまして、毎年そうしたASEAN諸国に対する経済協力というのは強化をしておるわけでございます。そうした観点から、せっかくここで総理大臣訪問という機会をとらえて、両国間でいろいろと事前にも話し合いもいたして、その結果合意を見た案件についてプレッジをした、約束をしたということでございまして、総理大臣が行くから大盤振る舞いをした、こういうことではなくて、プロジェクトごとに懸案を調査いたしまして、同時にまた、ASEANというのは大事であるという基本認識の上に立った、まさに合理的な合意ではないだろうか、われわれとしてはこういうふうに判断しております。
  106. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のそのお気持ちはわかるのです。しかし、国民から見ますと、大変中曽根さん評判がよかったという、それはいいのはあたりまえだ、あんなに二千億もばらまいたら僕が行ったって評判がいいのは決まっている、こういう議論も出ますし、これは真剣な問題だと思うのです。今日財政大赤字になっていて、なおその苦しい中で国際的に協力もし、対外援助をふやしていかなければならぬという日本立場はわかるのです。わかりながらも、なぜこうなのかという問題で、一体どこでこれを決めたんだ、こういうことでございますので、事務当局、ひとつお答えいただきたいと思います。
  107. 柳健一

    柳政府委員 先生御案内のように、円借款をいたしますときは、最初にまず意図表明を今度やったわけでございますが、これは意図表明でございまして、金額を、たとえば六百七十五億円なら六百七十五億円を限度とする借款を供与する用意があるという意図表明でございまして、この意図表明を行うまでの間に先方の要請内容を、先ほど大臣が申されましたように昨年の評価に基づきながら決めていく。そうしまして、さらにこれから外交折衝をいたしまして具体的な中身を詰めまして、交換公文を行います。そのときに閣議にかけて決定する、こういう手続をこれからさらに踏むわけでございます。さらにその後、海外経済協力基金が先方の政府と借款契約を結んで、そして初めてそこから実施に入る、こういうことになるわけでございます。
  108. 林保夫

    ○林(保)委員 詳細を資料要求いたしたいのでございます。先ほど同僚委員の方からの御質問の中で六百七十五億なら六百七十五億の中の項目、仕分けの御要求があったと思いますが、私もそれを要求いたしたいと思います。  それで、たとえばインドネシアタイフィリピン、六七五、六七三、六五〇・五ですか、なぜこういう差が出るのでございましょうか。交換公文をやるときに出たらいいので、そこまで大臣が、五千万円あるいは六千万円までやらなければならぬというのは、これはどういう事情から来ているのですか。
  109. 柳健一

    柳政府委員 これは従来からそういう慣例になっておりまして、まず最初に先方の要請をよく見まして、大体粗ごなしに見まして限度額としての意図表明を行う、それに基づいてさらに中身を詰めていくという慣例になっておりますので、そうしておるわけでございます。
  110. 林保夫

    ○林(保)委員 御承知のように、昨年、わが党は援助の実行状況調査に大きなグループを組みまして、元外務次官の法眼晋作さんにも御指導をいただきまして実際に調査をいたしました。その結果出てきますものは、こういう金額が、どういうことからわが国日本は見ているのだ、非常に大きな意義を持つわけです。ですから、こういうものを決める場合には、なぜこうなんだということをきっちりと持っておかれたのでしょうけれども、なお外にもはっきり見せていただきませんとわかりにくい。たとえばインドネシアタイとを比べましても、人口が違う、経済発展度が違うあるいは日本への貢献度が違う。大臣、私はそこを大臣にも御配慮いただきたいのです。大臣がはっきりと、日本に対する経済的な、政治的なあるいは安全保障上の問題でインドネシアタイとはこれだけ違うのですと言い切れるだけのものを持ってこういう差をつけられるかなにかのことでないと、この援助がただ単にあめや缶詰ジュースを配るだけ、こういうことになってしまうことを恐れるから私は申し上げているのでございまして、その辺のところを、きょうは時間がございませんので、またきっちりやりたいと思うのです。  したがって、私もこの委員会で何回となく援助の根拠を聞きました。出てこないのです、大臣。ですから、大臣にぜひそれをつくっていただきたい。たとえば柳さんがつくられました「経済協力の理念」という、これは大変りっぱな本です。しかし、これが外務省の決定なのか、閣議の決定なのかということまで突きますと、御返事が必ずしも明確でない、こういうことです。これはりっぱな本です。これを閣議決定されて、あるいはこの中の大事なものを法律でもつくられて、それで、こうやりますということを政府はきっちりとやらなければならぬ段階に来ているのじゃないかと思います。ここに議事録もいま急に取り寄せて見ておるのでございますが、ここに書いてありますが、たとえば、文化交流とかあるいは経済協力、これについて論議されない日はないぐらい日本は国際的な役割りを担い、それだけの実力を蓄えておる、それでは一体、文化交流を何の基準でやっておるのかという質問を、私は五十四年十二月の本委員会でやりました。当時、大来さんでございます。昔々にこういうものがございますと、こういうことで政府機関ができましたときの原則を読まれまして、かいつまんで言いますと、それ以後はありません、こういうような御回答でございます。大臣、一度調べてみたらいかがです。そしてこの中でも、いま大臣は人道上とかあるいは相互的とか申されましたけれども、これは梁井さんが監修をされたのでございますか、外務省経済協力局・経済協力研究会編でございます。梁井さんが序文を書いておられる。これは本当にいいものと思う。その中にもはっきりと「我が国は、なぜ政府開発援助を行うのか」、その副見出しとして「日本の総合的な安全保障を確保するための国際秩序構築のコストとして」こう書いてあります。いろいろあるのですが、「平和国家としてのコスト」そして「経済大国としてのコスト」、これは中見出しでございます。「経済的対外依存に対する補強」などございまして、当時問題になりましたのは、いま私がずばり申し上げた紛争周辺国への援助が一体どういう位置づけになるのか。これは突き詰めますと、よその国からの要請、これは国際協力一環かもしれませんけれども、なおはっきりしない。こういう点で私なりの持論をたびたび本委員会でも申し上げておるわけでございますけれども、何かひとつ、もう国民も認め、世界も認めるような立法あるいは要綱ぐらいきっちりと打ち出しませんと、年間一兆円もの大きなお金が出るような状況になって、国民の疑惑のもとにこれがなされるということであれば、総理外務大臣もきわめて心外だと思います。私も同じ立場で毎回ここでこのような問題を議論していかなければならぬ。そしてもう一つ大事なことは、やはりお金を出す以上は、私はむしろアンタイドローンについては批判的なのでございますけれども、国民のお金ですから、これをきっちりと日本に役立つという保証のもとに出していただきたい、このことを特に大臣にはお願いを申し上げておきたいと思うのでございますが、何か対外援助法といってもよろしいし、あるいは経済協力法といってよろしいし、それにかわるような立法措置大臣としてお考えになる御用意がございますでしょうか、承りたいと思います。
  111. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまおっしゃることはきわめて大事なことだと思います。日本がこれからも経済協力あるいは対外援助を進めていくわけでございますが、それはやはり本当に日本国民にも理解をされ、相手の国民からも本当に喜ばれるものでなければならない、こういうふうに思うわけでございますが、そういう基本的な姿勢の中にあって、日本としてはこの経済援助をする場合において、これまでも実は基準を持ってこれをやっておることはいまさら申し上げるまでもありませんし、われわれはそうした基準に基づいて人道的あるいは相互依存という立場からこれを行っております。  日本と最も大きい、深いつながりがあるのは何としてもアジア特にASEANでありますから、これがASEANに集中しているということも当然のことであろうと思いますし、また、相手の国の国民所得であるとかあるいは外貨の情勢であるとか、あるいはまたいわゆる相手の開発のための要請とか、そういうものをいろいろと踏まえながら、わが国としてはこれまでのいわゆる経済協力基準に基づいて厳格にやっておるわけでございますので、この点についてはもっともっといまお話しのように国民のために、国民理解を求めるということもまた必要であろうし、またこれを支援をしておる相手の国にも、ただ政府だけじゃなくて、相手の国民にも十分理解をしてもらうという努力日本としてはもっとやらなければならないということは私は感じておるわけでございます。
  112. 林保夫

    ○林(保)委員 お言葉を返すようですけれども、大臣が言われました基準は、私も不幸に見ておりませんのですが、事務局の方でその基準を、どういうものなのか、お見せいただけますか。
  113. 柳健一

    柳政府委員 私どもが援助を決定いたします場合の基準と申しますと、非常にたくさんあるわけでございますが、たと見ば一つ申し上げますと、一人当たりの国民所得でございます。これが、たとえば有償援助をやる場合、無償援助をやる場合、技術協力をやる場合、いろいろございます。  一例を申し上げますと、たとえば中南米に対する援助、これは御承知のように発展段階が進んでおりまして、所得の高い国が多いものでございますから、たとえば配分の場合でも、円借款無償は相対的に少なくて、むしろ技術協力のシェアがたとえば二〇%ぐらいいっているとか、これは一つの例にすぎません。それからその国の経済の状態、産業の発展状況、一人当たりGNPの状況とかいろいろな状況、それからわが国との相互関係、そういうような大変たくさんいろいろと条件がございまして、そういうものを総合的に判断して決める、こういうことにいたしておるわけでございます。
  114. 林保夫

    ○林(保)委員 それじゃその基準の詳細をひとつ資料要求いたしますので、届けていただきたいと思います。よろしゅうございますか、局長
  115. 竹内黎一

    竹内委員長 出せますね。
  116. 林保夫

    ○林(保)委員 私が見るばかりではだめなんで、やはり国民の目から見てこれがなるほどというようなものがなければならぬということをひとつ私は大臣にお訴えしておきたいと思います。  それからもう一つは、一度出した援助額は、大臣これは切れませんね。その辺の長期的な展望はちゃんと総理大臣も見てやっておられるのだと思いますけれども、しかしなおそれを断るだけの根拠を、私はこの機会に法律なり閣議決定の要綱なり何かでやっておかなければこれは危ないぞ、こういう実感を実は持っておるわけです。財政もこれからどういう形に、赤字国債が累増していくのかあるいはきっちりといまの政府がこれを解消していくのか、その辺のことによっては、この援助額も実際にやれるかどうかということで、将来に対して非常に危惧を持たざるを得ない。そういう中で外へつんのめっていて、これは国際信義の問題になりますから、一%でもふえていくのはいいです。がくっと半額になったときに、一体向こうがどう言うだろうか。また総理が行って石を投げつけられるような状況にならなければいいがと、こういう心配を私ばかりではなしに、国民の多くがやっております。したがって、断ることもできるような条件をやはりきちっと基本方針の中に入れて、法律なりあるいは要綱なりをつくっておいていただきたい。これは後世のためのいまの私たち政治家の責任だと思うのですが、大臣、その辺はどうお考えになりますか、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  117. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれが協力する場合は、何としましても開発途上国というのが基本でありますから、そうした開発途上国がそれぞれ力を持ってきて、そして中進国あるいはまた先進国というふうな状況にまで力が出てくれば、日本援助を行うということについてもおのずから限界が出てくるのは当然でありまして、われわれとしてはそうしたわれわれ援助を行っておるところの開発途上国あるいはまたASEAN諸国経済的な情勢というものを総合的に踏まえながら今後援助政策というものは弾力的に運営をしていかなければならない、こういうふうに思っておりますし、また、相手の国もそうした援助を受ける場合において、どういうふうな立場日本援助を行っておるかということは認識をしておるわけでございますから、その国が力を持ってくれば、おのずからまた私たちは話し合いでその点についてのいわゆる協力の度合いについては合意を見ることができるのではないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  118. 林保夫

    ○林(保)委員 少々大きな声をいたしましたけれども、やはり開かれた外交という以上は、原則と根拠がなければなりませんので、そこらあたりの明示を重ねて御要望申し上げまして、これからもひとつ対外関係しっかりがんばっていただきますよう御期待申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  119. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  120. 野間友一

    ○野間委員 ASEAN関係から主として外務大臣にお伺いしたいと思います。  クアラルンプールでの総理のスピーチの中で「日本ASEAN諸国との関係を新たな次元にまで高めたい」こういう表明がありますけれども、これは一体どういう意味なのか、まずその点からお伺いしたいと思います。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま日本ASEANとの関係は、これまで順次年を追うごとに緊密化しておるわけでございますが、さらにそれをより高い緊密な関係に持っていきたい、こういうふうなことでいまの発言があったと私は理解しております。
  122. 野間友一

    ○野間委員 その中身が聞きたいわけですね。これは総理のスピーチなんですけれども、外務大臣ですから同行もされておりますから。「新たな次元」と言う限り、いままでの量的な発展ではなくて質的な何かがあるのじゃないかというふうにこの表現から読み取られるわけですね。その中身についてお聞きしておるわけです。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今度の中曽根総理ASEAN訪問の一つの大きな意義というのは、これまでの経済中心にした協力関係というものにさらに加えてもっと幅広い協力関係、文化交流であるとかあるいは青少年の交流であるとか人的交流であるとか、そうしたASEANとの幅広い関係をこれから充実していきたいというのがその基本に認識としてあり、それが一つのそうした発言となってあらわれておる、こういうふうに思うわけであります。
  124. 野間友一

    ○野間委員 その答弁では私は納得できないわけです。といいますのは、いま言われた産業技術の移転とかあるいは科学技術面での協力あるいは人的交流、これはいままでからずっとあるわけですね。それを量的に発展させるかどうかはともかくとして、そのことといま申し上げた「新たな次元にまで高めたい」ということは違うと私は思うのですね。しかも、この「新たな次元にまで高めたい」というその「なぜなら、」というところに「今日の世界情勢は極めて流動的であって、既存の路線の踏襲をもつて安んじていてはならないから」だと、明確に「世界情勢は極めて流動的」云々、こういう位置づけがちゃんとなされておるわけですね。だから、いま安倍さんが言われたような幾つかの新たな提案が確かにスピーチの中にありますけれども、もっと深い意味があるのじゃないか。ASEAN日本西側諸国にとって一体何なのかという点の何かがあるのじゃないか。たとえばあそこはインドシナ三国にも接しておりますし、タイなんか特にそうですけれども、その中で反社会主義のとりでと申しますか、そういうようなもので西側の陣営の中につなぎとめていくというふうなことで、これから政治的にも経済的にも、あるいは場合によれば軍事的にも、何かそういう意図があってこういう表現になったのではなかろうかと私は思うのですけれども、その点について御見解はいかがですか。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本ASEANとの関係については、確かにおっしゃるように今後いろいろと世界情勢も変化するわけでありますし、いろいろと流動化の状況の中でこれからの関係というものもまた、これをどういう形で強化するかという中においていろいろと変化もあることは事実でしょうが、大事なことは日本ASEANとの関係をより緊密にする、それは経済的な関係だけではなくて政治的な政治協議といった面も大事であるということを私は認識いたしまして、たとえばカンボジア問題等も控えておりまして、ASEANはいわば相当厳しい情勢にあるといいますか、危機感を持っておるわけでございます。そういう中で日本がそうしたASEAN諸国に対してどれだけ政治の面で手を差し伸べられるかということも今後の課題としては大きな課題であろうと私は思うわけです。ですから、そうした政治的な協議、さらにまた経済のみならず、先ほどお話がありましたような技術移転の問題なんかも、ASEAN諸国と話し合ってみましても、ASEAN諸国としては、これからの経済ASEANの国々の開発というものを考えるときに非常に大きな関心を持っております。この技術移転をどういうふうに進めていくか、科学技術の関係閣僚会議の発足であるとか、また、青少年の二十一世紀に向けての交流というものをより深く高めていくことも、新しいこれからの日本ASEANとの大きな課題ではないだろうか、こういうふうに私は思うわけでございます。  いまお話を聞いておりますと、その真意は、ただそうしたいま私が申し上げたような関係だけでなくて、むしろ日本ASEANとの軍事的な何かを求めておるのじゃないか、どうもこういうふうな意図がその御質問にあるかもしれませんけれども、これは、今回の首脳会談等についてもいろいろと意見の交流としては出たわけでありますけれども、日本日本立場があって軍事的な協力はできないということは、中曽根総理会談のたびに明確に述べておるわけでございます。その点については、日本ASEANとの関係は明快に割り切ってASEAN諸国も考えておる、こういうふうに私は思います。
  126. 野間友一

    ○野間委員 福田総理あるいは鈴木総理の折も、政治的、経済的な強靱性ですか、そういうことをいままで言われてきておったわけですね。カンボジアの問題、いま外務大臣もお話がありましたが、そうすると、「今日の世界情勢は極めて流動的で」という世界情勢の中には軍事的な側面、性格、こういうものも含めて総理は言われたわけですか。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 もちろん、世界情勢ですからそうした東西関係等も含めた非常な流動性があるということを全体的な判断として述べられたことは当然であると私は思います。
  128. 野間友一

    ○野間委員 そうでしょう。ですから、ASEANを、パックと言ったら、いろいろニュアンスが違いますから語弊がありますけれども、しかし、少なくともASEANを一つにして、社会主義へのとりでと申しますか、そういう意味で西側の結束の中に入れていこうというような趣旨のニュアンスがありはしないかと私は懸念するのですが、その点について、本当にないと断言できるわけですか。
  129. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは、いまおっしゃるようなASEAN自体が判断をすることであって、いまASEANの大半は非同盟国に入っておるわけでありますから、ここで西側の陣営の中にこれを引き入れていくとかどうするとかいうことは考えられないことであります。ASEAN自体もそれぞれ独自な外交政策を持っておるわけですから、西側と一体になるとか西側の陣営の中へ入っていこうというふうなことは何らその兆しもないと思うわけであります。ただ、カンボジア問題等を控えましてASEAN自体が結束を強化しなければならない、そういう意識というものはやはりより強くなっておると私は見ております。
  130. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、この問題についてはあれですけれども、私は、ASEAN意図とか目的でなくて、日本側として「新たな次元」ということの中にそういう問題が含まれていはしないか。そうだとすれば、これはさらに東南アジアに緊張を激化させるということを危惧するものですから、その点についてまず聞いたわけであります。  次に円借款、これは朝からずっと皆さんお聞きになったわけですけれども、これを五十六年度の実績と比べてみますと、ASEAN関係で約五百十億円の増加ですね。タイが五百五十億から六百七十三億、インドネシアが五百八十億から六百七十五億、マレーシアが五百四十六億から六百十億、フィリピンが四百二十億から六百五十億、合計しますと、五十六年が二千九十六億円ですか、計算しましたら約五百十億円ふえておるわけですね。私は、これは異常な伸びだと思うのですね。経済協力そのものが必要であることを私は否定しませんけれども、先ほどから皆さん質問しておりますように、これは、つかみ金と申しますか、戦略援助ではなかろうか。対前年度対比で考えてみましても異常な伸びではないか、韓国に対しては五十六年はゼロ、五十七年度が四百五十一億円、これを加えてみますと九百六十一億円、これがASEAN関係あるいは韓国関係でふやされておるわけですね。だから、中南米についての戦略援助の問題の新聞報道、玉城委員の方からも質問がありましたけれども、どうもそういう意味での西側の陣営の強化というための戦略援助ではなかろうかという疑いを私も払拭することができないわけですね。その点について、全くそうではないということを明確に外務大臣はおっしゃるわけですか。
  131. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本日本として基本の立場援助政策というのがあるわけです。人道的なあるいは相互依存というものを二つの基本路線として進めていくわけでございますから、そういう中でアジアあるいはまたアフリカあるいはまた中南米の援助問題とも取り組んでおるわけであります。
  132. 野間友一

    ○野間委員 ASEAN関係についていまもお聞きしたのですけれども、対前年度対比で五百十億円もふえておる、これはもちろん適切だという評価に立っておるから約束してきたと思うのですけれども、あくまで適切だと考えておられるわけですか。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはインドネシアは八三年、その他の国は八二年度の円借でありますが、先ほどから局長申し上げましたように、限度として円借を供与する、こういうことをプレッジしてきたわけでありまして、現在のASEANの直面しておる事態からは、そしてまた日本との相互依存という関係からはこれぐらいのことはすべきじゃないかというのが日本の基本的な認識であります。
  134. 野間友一

    ○野間委員 いま行革という方針の中で国民の暮らしが次から次へと切り下げられる、とりわけ老人保健法の問題、病院から老人がほうり出されるという事態も現に起こっておるわけです。老人保健をやめてもとに戻すというためには計算上約七百九十億円あれば済むということを私も聞いてきたわけですけれども、民生の安定とか人権問題、これは経済外交の柱としていつも言われるわけですけれども、内政での国民の生活の切り下げ、ところが一方では異常な伸びを示しておる、そこに非常にアンバランスがある。だから、私は国民の暮らしを切り捨ててもなぜこういう莫大な経済援助をしなければならないのかということについて、アンバランスという点から対前年度対比で非常に疑問を持つわけですけれども、外務大臣は国務大臣としてそういう内政面でのことの関連も含めてどういう見解を持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  135. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、やはり基本的にはわが国の外交、内政というのはバランスをとってやっていかなければならぬと思います。  そういう中で、それではいま世界の中において日本が占めておる役割り日本の地位というものから見て、いまの経済援助政策というものが内政と比べると非常に行き過ぎたものになっておるかどうかということになりますと、実は今回のOECD議論等でも発言もあったわけでありますが、いまの日本経済協力というのは全体の国民所得、GNPの中では〇・三二ぐらいですね。ところがOECD等の先進国の役割りとしては〇・七%ぐらいはやるべきであるということを言われて、事実それを実行している国も多いわけであります。ですから、日本は量的にはこれだけの大きなGNPを持っておりますから、世界の中でも大きな援助国になっておりますが、しかし、GNPに占める援助の比率から見ると先進国の水準、先行している国々の水準にはまだまだとうてい達してないということでありまして、私たちはそうした面もやはり踏まえながら、やはり財政再建というものも同時に考えながらこれからの日本援助政策というものは進めていかなければならない、こういうふうに考えまして、全体的に見ると、私はやはり世界における日本立場というものから見ますと、財政再建という一つの大きな枠組みの中ではありますけれども、もっとできるだけのことはしていかなければならぬ、少なくとも倍増計画程度はこれは実行していかなければならぬ、こういうふうに考えるわけです。
  136. 野間友一

    ○野間委員 それから、どういう理由、どういう意図で、どこに対してということがまさに経済援助の最大の問題であって、これが戦略援助であるかどうか、いつも問題になる最大のポイントなんですね。大臣がせっかく言われるわけですけれども、その点についての疑問はどうしても私は払拭することができないわけであります。  次にお聞きしたいのは、日本のいまの軍備拡大、これの路線への懸念の問題ですけれども、特に周辺の海空域一千海里の防衛論、この防衛に対する脅威、これはASEAN諸国理解をしてくれたというようなコメントなりそういう報道もあるわけです。ところが、インドネシアのスハルト大統領は、この一日の夕食会でわざわざ、「軍事力が自衛の必要性を超えてしまえば、それは大いに平和を脅かす」こういうことを発言されているわけですね。これは御案内のとおりだと思います。私は、首脳会談としてはこういう発言は異例じゃないか。だから、これは恐らくスハルトさんは、日本のいまの軍備の拡大路線に対して非常に警告を発したのじゃないか、こう私は思うわけです。  そこでお聞きしたいのは、いまの日本の自衛隊、軍事力の強化、これ以上の強化ですね、これがインドネシアを初めASEAN諸国に対して全く懸念を与えない、そういう見解をお持ちかどうか、この点についての確認をさせていただきたいと思います。
  137. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 スハルト大統領の夕食会での発言、確かにそういう発言もありました。しかし、その前に行われました首脳会談では、中曽根総理わが国の防衛政策についての説明に対してスハルト大統領は、日本の自衛の範囲内における日本の自衛力の整備についてはわれわれは何ら異存は言わない、こういうことを明快に言っておるわけでございますから、インドネシア政府としては、大統領としては日本のいまの防衛力の整備充実に対して理解を示したということははっきり言える。ただ、それはもちろん、自衛力の限界を超えるということになれば、これはもう警告を発してくることは当然のことでありましょうが、自衛の範囲内における防衛力の整備については何ら異存は差し挟まないということは言っておるわけで、これはタイにおいてもあるいはフィリピンにおいてもそういう見解がその国の首脳から示されたわけでございまして、いまの日本がやっておるところの自衛力の整備計画は日本の憲法の範囲内において、日本の自衛の範囲内において行われるものでありますから、そうした意味において何ら他国に対して脅威を与え、他国の日本に対する不信が出てくるような問題ではない、こういうふうに私は思っております。
  138. 野間友一

    ○野間委員 その点については、まだお帰りになったところですから、しばらく事態の推移を見ながら、さらに改めて提起をしたいと思います。  次に、核兵器に関連する問題についてあと残り時間お伺いしたいと思います。  まず初めに、ジョージ・ケナン氏が、これは外交界の長老であることは御案内のとおりですけれども、こう言っておるのですね。歴史上ただ一人恐るべき核攻撃の犠牲となった国民の手、その手は現在の戦争のはらむ危機に対して警鐘を鳴らし、他の国々が破滅の断崖すれすれに近づくことのないよう抑制を呼びかける上で、どんな国民にもまさる道義的権利を備えている、被爆国日本国民に対して、期待としてこういうことを言っておるわけですね。こういうケナン氏の日本国民に対する期待に対してどういう御見解をお持ちでしょうか。
  139. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  わが国は唯一の被爆国でございます。また平和憲法のもとに平和を追求していく、なかんずく非核三原則という国是もございまして、核の軍縮というものを中核にして努力しているわけでございまして、そういう背景においてわが国わが国としての軍縮外交のあり方というものを当然に推進していくもの、こういうように考えております。
  140. 野間友一

    ○野間委員 核兵器の使用禁止条約締結に関してお伺いしたいのです。  御案内のとおり、去年の十二月国連総会で、これはインド提案ですが、核兵器使用禁止条約締結に関する決議、これが採択されました。賛成が百十七、反対が十七、棄権が八、日本はこれに賛成しませんでした。棄権しておりますね。この決議は三七—一〇〇Cですね。なぜ賛成しなかったのかというわが党の質問に対しまして、本会議での答弁ですが、核兵器の削減等の具体的な軍縮措置のない限り実効性を欠くとか、あるいは具体的な安心できる検証措置を伴った着実な保障措置を含まなければならない、こういう答弁、見解を述べておられます。  そこで聞きたいのは、核兵器の使用を禁止させるのになぜ検証措置が必要なのか私はわかりませんので、ひとつお尋ねしたいと思います。
  141. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 核を使用しないということにつきましては、これは単なる口約束であってはならない。たとえば核兵器を削減するというような具体的な軍縮措置が伴うということがやはり重要でございまして、特に国際的な安全保障という側面を念頭に入れる場合にはこのような実効性の問題実効性という場合には検証ということになるわけでございますが、これが不可欠である、かように考えるのでございます。
  142. 野間友一

    ○野間委員 しかし、核兵器というのは使えばすぐわかるわけでしょう。違いますか。ばあんとキノコ雲を出しましてすぐわかるわけでしょう。なぜそういう検証措置がなければだめなんですか。すぐわかるわけでしょうが。
  143. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 私どもは、核軍縮を考える場合には、核が現実に使われるという事態ではなく、それ以前の問題を念頭に置いているのでございます。
  144. 野間友一

    ○野間委員 ですから、ことさら検証措置というようなもので、この種、決議案もずっと長い間出てきていますけれども、いまの答弁、私は隠れみのとしか考えることはできないわけです。  ジャイパル氏、御案内のとおり国連の軍縮委員会の事務局長ですね。この人はこう言うわけですよ。日本政府の言うように検証制度が必要かというわが党の国際関係の専門家の問いに対しまして、核兵器の使用、爆発したかどうかはだれでもわかることです、したがって、使用に関する検証問題は大して重要ではありません、明確にこう言っておるわけですね。ジャイパル氏のこういう見解、これは間違いですかどうですか。私は真っ当だと思うのです。
  145. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 核を使用しないという約束を結ぼうとすることと並行して核兵器の拡充あるいは増強が行われていくということであってはならないわけでございまして、核が使用されないための具体的な裏づけのある措置というものはやはり必要である、こういうふうに考えるのでございます。
  146. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、ジャイパル氏のこの見解、これに対してはあなたはどういう評価というか考えを持っておるのですか。
  147. 門田省三

    ○門田(省)政府委員 ジャイパル氏の発言につきましては、私具体的につまびらかにいたしておりませんので、お答えが十分にできないわけでございますが、ただいま委員がお述べになられましたことから推察いたしますれば、なるほど、たとえば核の実験の場合もそうでございますが、具体的に爆発を行えば検証措置があればそれは明らかになるということであろうかと思います。
  148. 野間友一

    ○野間委員 答えになっていないですね。いまの決議、いま採決の状況を言いましたけれども百十七が賛成、十七が反対、それから八が棄権そういうことでしょう。だからまさに百十七、世界の国の圧倒的な多数がこの決議に賛成しておるのに、日本はこれに賛成していない。ここに私は、冒頭に申し上げたジョージ・ケナン氏ですら日本国民あるいは日本国に対してそういう期待を持っている、道義的な権利を持っているのだということを明確に言っておるわけでしょう。だから、そういうことに対して、どうも日本政府の態度というのは、世界の核兵器をなくしていくという願いに相反する、そういう見解なり行動をとっている。口ではいろいろなことを言いましても、実際にはそうだとしか考えようがないわけですね。私は、いま言われたようなことは理由、根拠に乏しい、こう思うわけであります。むしろ積極的に、本当にただ一つ原爆の被害を受けた国であり国民でありますから、あらゆる国際的な舞台の中で核の廃絶あるいはその使用禁止の条約締結ということについて、もっと積極的に取り組まなければならぬ。  改めて私は外務大臣にお聞きするわけですけれども、検証措置というものを強調すること自体が、どうも、条約締結にわざわざ難題を吹っかけて、これの成立を阻害するというような役割りを果たしていると私は思うのです。ジャイパル氏とかあるいは軍事専門家のこれに対するさまざまな意見があるわけです。原爆については検証措置は重要な問題じゃないんだ、これは軍縮委員会の事務局長の話であります。だから政府の見解としても、外務大臣、果たしてこういうものが本当に不可欠なものであるかどうかということをもう一度考え直す必要があるのじゃないかと私は思うのですけれども、御見解はいかがですか。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 われわれは何といいましても原爆の洗礼を受けておりますから、やはり核が世界からなくなるということは心から祈っておりますし、これがための努力をしていかなければならぬわけですが、現実に国連等で議論し、そしてまたこれを実行するということになりますと、まさにこれは現実的なものでなきやならぬし、あるいは実効的なものでなきゃならぬ。実効的な一つの要因としては検証ということも実効性を高める上には必要になってくるわけでございます。ですから、こうした実効性とか、あるいはまた安全保障という面も一面あると思いますが、そうした総合的な現実的な観点から決議案等に対してわれわれは対応していっているわけであります。したがって、何でもかんでも棄権をするとか反対をするというわけではなくて、実効性の備わった決議案等に対してはわれわれは積極的に賛成もしておるし、また日本自体が決議案を提案していることも御案内のとおりでございます。したがって、われわれは基本的にはそうした理想を持ちながら、現実問題としては実効性を伴うことが国連における決議等についてはどうしても必要になってくる、こういう考えで対応しておるということを申し上げるわけであります。
  150. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたのでやめますけれども、私がお聞きしたのは、どうしても検証措置そのものが不可欠なのかどうか、とりわけ、いま申し上げた軍拡、米ソの際限のない核兵器の拡大競争の中で、どうしてもやはり使用しちゃならぬとか廃絶の課題に向けて日本がもっとイニシアをとらなきゃならぬ。その際に、検証措置がどうしても必要だということで延び延びにしておったら、これはどうにもなりませんので、一体検証措置が本当に不可欠なものかどうか、もう一遍日本政府も考え直す必要があるのじゃないか、こういう質問ですけれども、どうですか。
  151. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはただ言葉だけではどうにもならないわけでありますから、実効性を伴うということになればやはり検証ということはどうしても重要な要件になってくるもの、私たちはこういうふうに考えております。
  152. 野間友一

    ○野間委員 では、不満ですが、時間が参りましたので終わります。
  153. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、伊藤公介君。
  154. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 外遊大変御苦労さまでした。今度の中曽根総理ASEANの歴訪は、ASEAN諸国との信頼関係をさらに強固にするということが旅の目的であったろうと思いますが、われわれが新聞で現地の様子をずっと伺ってまいりますと、総理の防衛力の増強というものに対する対日批判というものがなかった。現地の中曽根総理のにこにこした、満足した顔写真が毎日載っていたと思います。しかし、どうも日本の国内の国民総理に対する感情は必ずしもそう受け取っていないというふうに思います。むしろ、レーガン大統領のアメリカの軍事戦略というものとしっかり手を結んで危険な方向に進んでいくというものが中曽根総理の中には内在している。外相は今度の歴訪の中で、現地の声もありますけれども、日本国民国民感情の中にもそういうものがあると私は思いますが、外相の御意見を伺いたいと思います。
  155. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 中曽根内閣の防衛政策に対する日本国民の受けとめ方はそれぞれあると思いますが、今回のASEAN訪問に関して言えば、少なくとも中曽根総理わが国の防衛政策についての説明に対してASEAN首脳が十分な理解を示したということは、私も三国の首脳会議に列席をしまして、その辺ははっきり確認をしてまいったわけであります。
  156. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総理は「二十一世紀のための友情計画」と名づけて、次代を担う若い人たちの交流を行いたいという提案をされました。私もこの計画には大変賛成でございます。しかし、かつてしばしばこの委員会でも指摘をされていたところでありますけれども、日本にすでに留学をして、現在いるアジアの留学生も当然おりますが、この日本に留学をした学生の人たちが、日本における学生生活が十分できない。あるいは日本の国の中において、どうも住んでいる人たちとの交流もなかなかうまく進んでいない。日本語を生かす職場に就職をするということも大変むずかしいし、大学での資格の問題という点でも大変問題がある。要は日本側の受け入れの体制というものをもっと改善する必要があるんじゃないかというふうに思いますが、外相の御意見を伺いたいと思います。
  157. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も総理とともに日本に留学した人たちの意見訪問した国々で承ったわけでありますが、昔と比べますと、留学する場合の日本の受け入れの状況というものも最近では大変改善をされたということを皆言っておられたわけであります。したがって、自分たちとしては日本に留学したことに対して非常に喜びを感じておるし、いまでもそれはありがたいと思っているけれども、ただ国に帰った場合の、たとえば日本の進出企業などのわれわれに対する受け入れ方というのが大変不満だ、というのは、どうも日本で勉強をしたからといって積極的な受け入れをしようとしない、あるいはまた受け入れたとしても、たとえば、一生懸命働いても管理職というような立場にはとうていしてもらえない、英米系等はどんどん引き抜いてそういうことをやっておるけれども、どうも日本の進出企業はそういう扱いをしてくれない、こういうものに対する不満というものが現実に非常にあることは事実であります。これはやはり進出している企業がその点については十分今後配慮してもらわなければならない課題ではないだろうか。こういうことがずっと続いていきますと、やはり日本ASEANとの間の不信感がそういうところから芽生えてきて、せっかく友情計画をもってこれからどんどん留学あるいは研修等を進めても、その効果が半減をしてしまうのじゃないか、こういう心配を持っておることも事実であります。
  158. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 総理にこんなことを言うと大変恐縮なんですけれども、どうもキャッチフレーズを掲げてぽんぽん計画を打ち出すけれども、それが実を結ぶように、ぜひ国の中におけるそうした温かい受け入れ体制を整えることができるように御努力をいただきたいと思います。  さて、インドネシアのスハルト大統領から、防衛産業の育成に対する対日協力要請があったというように伺うのでありますが、事実はいかがでしょうか。
  159. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 六カ国を回りましたので細かい表現は覚えておりませんが、私の記憶によりますと、首脳会談の際にスハルト大統領から非常に一般的な形で、日本ASEANの防衛産業育成に協力できるものであろうかできないものであろうかと非常に軽く打診があったというふうに私は記憶しております。それに対して総理から、非常に明確な表現で、わが国経済協力基本方針として軍事的な用途に充てられるような経済協力は実施できないのだ、これは日本にとっての原則問題であるということを明確に説明されまして、どうかそういうことであるから御理解を願いたいということで、先方が了解したというふうに私は理解しております。
  160. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 さきの予算委員会でも対米武器技術供与が大変論議されました。日本の武器禁輸政策がどうも変わったのではないかというふうに大変心配をされているわけでありますが、日本は他国から武器を求められても絶対に応じないということをもう一度外相に確認しておきたいと思います。
  161. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これはしばしば申し上げましたように、日米関係についてはいわゆる武器技術の供与については道を開いたわけでございます。その限りにおいては日米間における政策の修正が行われたわけでございますが、その他の国々に対しましては、依然として武器輸出三原則あるいは政府の基本方針というものは堅持していくというのが日本の政府の考え方でございます。
  162. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 もう一点伺っておきたいと思いますが、アメリカのシュルツ国務長官が、中東、中米など、アメリカが非常に戦略的には重視をしている不安定地域に対してわが国援助要請してきたというふうに伺うわけであります。どうもこれは日米同盟というものを盾にして経済援助面でもアメリカの世界戦略的な、ある意味では補完的な役割りを果たすということになっていくのではないかというふうに思うわけでありますが、わが国経済援助というものは、あくまでも民生の安定あるいは福祉の向上ということ、それが原則でありますから、この方向を安易に絶対に変えてはならないと思いますが、いかがでしょう。
  163. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、わが国経済協力については原則というのがあります。人道的な立場である、あるいはまた相互依存というものを重視していく、この二つを基本として今後とも援助政策を進めていくということについては、私からもシュルツ長官に日本立場を明快に述べました。その限りにおいては、アメリカもこれに対して理解を示したということであります。
  164. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 実は、けさ新聞に載っておりました金大中事件についてでありますが、後藤田官房長官は、政府としては金大中が三つの条件に固執をする限り事情聴取をする考えはない、事情聴取を断念するということを表明したようでありますけれども、私は、この事件が単なる刑事事件であるということではなくて政治事件ではないかと思うのです。この金大中氏の日本に対する、これはアメリカの司法当局に対する回答でありますけれども、八〇年の韓国政府の死刑判決は政治決着に対する違反ではないか、こういう指摘をしているわけでありますけれども、外務大臣はいかがお考えでしょうか。
  165. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先ほど社会党の委員の御質問に私詳しくお答えしたつもりでございますが、率直に申しまして、ゆうべ安倍外務大臣がお帰りいただきまして、そして私まだ、この問題、つまり金大中さんの回答全文、それからこれが意味するところ、それからこれに対して日本政府、外務省としてどう対応するかということについて、大臣の御指示も御相談もいただいておりませんので、しばらく猶予をお願いいたしますということを申し上げましたが、そういう前提でとりあえず、私限り、つまり事務当局の考えを御答弁させていただきますと、そもそもが、金大中さんに対する事情聴取の申し入れ、それに対する今度の金大中さんの回答と申しますのは、先生御案内のとおりに、警察庁が捜査を継続中、日本政府として金大中事件の捜査継続中ということでございまして、その捜査を行うためにはどうしても当事者、つまりこの件についていいますと、被害者からの事情聴取ということが捜査の常道であるということで、外務省もよかろうということで外交チャンネルで相手に取り次いだ。それに対する回答が、捜査のために事情聴取ということにさらに先生御案内の三つの条件がついてきた。そこでは、事情聴取したくも非常に困難になった。そこで、昨日記者団に対しまして官房長官から、金大中が条件に固執する限りは事情聴取を行う考えはないという趣旨の御説明をされたと承っております。
  166. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 いままでの日本側の態度から考えますと、金大中氏のこの三つの条件というものは私は大変意味があると思うのです。むしろこの条件が出てきたということで幸いだったということで事情聴取を断念した、この三つの条件を断念するためにむしろ使っているという気がしてならないのですけれども、私はこれが絶対的な金大中氏の条件ではないと思うのです。しかもこれはアメリカの司法当局に対する回答でありますから、私は、日本政府としてはもう少し確認をしていくべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  167. 橋本恕

    橋本(恕)政府委員 先刻も御答弁申し上げましたが、私ども金大中さんの返簡といいますか返事を拝見いたしましたのはきのうのお昼ごろでございますから、そこで一行一行につきましてこれはいかなる意味であろうか、どういうふうに解すべきかということを現在警察庁と外務省との間で慎重に相談をし、かつどのように解するべきかということを再度検討している段階でございますので、本日の段階では、まことに申しわけございませんが、以上のとおりでございます。  それからなお、蛇足でございますが、金大中さんが、先生御指摘のとおり、三つの条件と申しますか、三つの問題点を提示されておりますが、これは、この問題の本質は、日本政府との関係に関して申します限りにおきましては、これは十年前に政治決着がついたということでございまして、われわれは外交決着と呼んでおりますが、つまり一国と一国との間、それを代表する政府と政府との間で政治決着をしたということは、後になってとやかく言わないということが政治決着の本質的な部分であろうかと存じます。
  168. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので質問を終わりますけれども、外務大臣には、これは人権問題でありますし、日本だけでなしに国際的な事件でもありますから、どうぞひとつ納得のいく処理ができますように御努力をいただきたいと思います。
  169. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 まだごく最近の実情についてはいま報告を受けておりませんが、報告を受けまして、これに対して慎重に対応してまいりたいと思います。
  170. 竹内黎一

    竹内委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  171. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件及び領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣安倍晋太郎君。
  172. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 本日、当委員会において「千九百八十三年の国際コーヒー協定」について御審議いただく前に、現行の一九七六年の国際コーヒー協定有効期間の一年延長について、一言御報告いたします。本件有効期間の延長については、昨年七月に国会の承認を得たところでありますが、昨年九月にロンドンで開催された国際コーヒー理事会は、同九月十六日付で、「千九百八十三年の国際コーヒー協定」を採択することにより、本件有効期間の延長の条件とされていた一九八三年十月以降の新協定に関する決定を行いました。よって、本件有効期間の延長のための条件は満たされ、現行の一九七六年の国際コーヒー協定は、昨年十月一日から本年九月三十日まで効力を有することとなりました。  右御報告申し上げます。     ─────────────
  173. 竹内黎一

    竹内委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  174. 河上民雄

    河上委員 いま外務大臣から、一九七六年の国際コーヒー協定有効期間の一年延長について御報告がございました。もうすでに御案内のとおり、この件につきましては昨年本院において審議をいたしました際に、一九七六年協定の延長要件の問題で、純法理的に言えばすでに失効していたコーヒー協定を当外務委員会で審議したという経緯があったことを思い起こすわけであります。わが党の同僚議員がその点について非常に厳しく追及したわけでございますが、いまのお話によりますと、これで延長のための条件は満たされたということでありますが、今回の新協定の作成が手間取った理由というのはどこにあるかということです。
  175. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  協定の作成に手間取りましたこと、御指摘のとおりでございまして、その主な理由は、大体輸出国の間の調整がつかなかった、生産国間の調整がつかなかったということでございまして、それは輸出割り当ての配分の問題、それから使用しなかった不使用分をどういうふうに扱うかというようなことが主たる対立点だったわけでございますが、特に大きかったのはこの輸出割り当ての配分をどうするかということで、主要生産国の間の意見の調整がなかなかつかなかったということが最大の理由でございます。コロンビア、ブラジルといった国がその主要生産国なわけでありますが、コーヒーに対する依存度が非常に大きい、しかもそれぞれの利害が違うものでございますから、ブラジルのような伝統的生産国、コロンビアのように最近になってどんどんのしてきている国ということで、利害関係が違うためになかなか調整がつかず、それで新協定の成立に手間取ったということでございます。
  176. 河上民雄

    河上委員 では、今回こういうふうにまとまりましたのは、ブラジルとコロンビア、つまり伝統的な生産国と新興生産国との妥協が成り立ったというふうに理解してよろしいわけですか。
  177. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおりでございます。
  178. 河上民雄

    河上委員 しかし、聞くところによりますと、ブラジルとコロンビアの妥協案に対しましてアジア地域の生産国、つまりインド、インドネシア、パプア・ニューギニアなどが強く反対したというように伝えられているのでありますが、それはどういう点にあったのでしょうか。
  179. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  基本的にはいまと同じ問題でございまして、輸出割り当ての配分の問題でございます。特に私ども聞いておりますところでは、インドとかインドネシアが問題にしていたのは、初年度の割り当てを決めたわけでございますが、その決め方がどうもはっきりしない、算出基準が明らかでないといったこと、その基本には少な過ぎると思うという不満があったわけでございます。
  180. 河上民雄

    河上委員 日本政府は、そういう問題について何らかの見解を表明しておられるのか、あるいは表明する機会があるのかどうか、いかがですか。
  181. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  日本といたしましても、できるだけ最近のコーヒー貿易の実態に即した仕組みが望ましいと考えたわけでして、そういう意味では、たとえば割り当てをするときの基準にはできるだけ最近の年のデータを用いるべきであるというふうな立場を表明したわけでございまして、これは同時にインドやインドネシアの主張していたことと同じことを言ったわけでございます。ただ、これは生産国の間で相談して一つの案をまとめて持ってくるというかっこうで処理されるものでございますから、生産国は生産国、消費国は消費国で会議をしてやるということでありますので、生産国の間でそういうかっこうでまとまって出てまいりましたので、日本だけがそれに異を唱えるのもおかしいということで、生産国が持ってきたものを最終的には尊重したいということでございます。
  182. 河上民雄

    河上委員 大臣、先ほど特に発言を求められて、有効期間の延長のための条件を満たしたという御報告をいただいたのでありますが、昨年もこういう問題があったわけでございますので、いかがでございましょうか、そういうような問題を余り繰り返すことは国会の権威、特に当外務委員会の権威にもかかわることでございますので、このようなことは今後ないようにしたいというふうに、ここで明言をしていただけるでしょうか。
  183. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 こういうことを繰り返さないように、最大の努力をいたしたいと思います。
  184. 河上民雄

    河上委員 ひとつその点は安倍外務大臣、ぜひその点を今後外務当局としても御確認をいただきたいと思います。これはなかなかまとまりにくい問題で、いまのお話を伺っても今回もめた原因というものは決してなくなっていないわけですから、繰り返される可能性が非常に多いので、それだけにそういうことのないように、ぜひひとつお願いをしたいと思います。  今回のこのコーヒー協定につきまして、いろいろ検討、審議に当たって多少勉強させていただきましたが、そこで非常に大きな特徴といたしまして、わが国などの消費国クループ——いまは生産国グループの間の利害の衝突の問題でありますけれども、今度、わが国は消費国グループに属しているわけですが、消費国グループでもいろいろ議論があるのじゃないかと思うのであります。聞くところによりますと、わが国などの消費国グループでの検討会議で、輸出割り当ての、使わなかった不使用分の配分方法、それから消費振興などいろいろ論議があったと聞いておりますけれども、消費国間の対立点、問題点というのはどういうところにあったわけですか。
  185. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  コーヒー協定交渉における主な問題は、大体今回は生産国の間の問題でございまして、私ども記憶する限りで消費国の間で大きな対立、問題があったということはございませんでした。
  186. 河上民雄

    河上委員 それでは、消費振興ということがこの協定の中でもうたわれておるわけでして、この消費振興基金、要するにテレビなどでコーヒーを飲みましょうというようなコマーシャルがありますけれども、あれはどういうところでやっているのかということでわれわれ疑問を持っておったわけですが、この消費振興基金というものがこの協定に基づいてある。そしてこれは、その基金を預かっているところがああいうことをやっているというふうに聞くわけですけれども、消費振興基金の構成というものは、生産国が拠出して消費国での広告宣伝に充てる、それが半分であって、あとは地元といいますか、日本のコーヒー関係業者が基金を拠出する、大体半々で成り立っておるというふうに聞いておるのでありますけれども、具体的に言えば、日本の場合全日本コーヒー協会がそれに当たるというふうに承知いたしておりますが、この全日本コーヒー協会というのは大体どのくらいの規模の基金を持っておるのか。
  187. 慶田拓二

    ○慶田説明員 お答えをいたします。  今回の消費振興事業は一九八〇年を初年度事業として始まっておりまして、八〇年は二億六千万の規模の消費振興事業でございまして、うち半分がICO、国際機関からの基金でございまして、半分が全日本コーヒー協会から出したものでございます。全日本コーヒー協会は、コーヒー協会のメンバーが拠出したものでございます。それから二年度の事業は二億五千六百万でございまして、同じように半分ずつということでございます。それから三年度の事業が二億七千万。四年度の事業が八二年の十月から八三年九月まで、昨年の十月からことしの九月まで実施するわけでございますが、これが三億円の規模で実施するわけでございます。
  188. 河上民雄

    河上委員 そうしますと、全日本コーヒー協会というのは国際的な基金からの分を預かり、自分の方の拠出分と合わせて事業をしているということでございますか。それとも、全日本コーヒー協会が半分ということになりますと、三億円のうちの半分、一億五千万で仕事をしているということなんでしょうか。
  189. 慶田拓二

    ○慶田説明員 国際機関から半分と自分の協会で拠出したもの半分、両方合わせて消費振興事業を実施しております。
  190. 河上民雄

    河上委員 私ども当委員会における過去の審議状況を振り返ってみますときに、この基金というのがいつごろからあったのか必ずしもよく承知しておらないのでありますけれども、かつて戸叶里子委員あるいは伊藤惣助丸委員が質問に取り上げた問題がありまして、それは基金の使い方というものの内容についてであります。その結果当時農林省がその使い方についてチェックをするということで一応決着がついたというふうに聞いておるわけでございますけれども、いまのお話でございますと、一九八〇年から始まっておるようでございますが、この問題が取り上げられましたのはもっと前のことであります。  いずれにせよ、今日この基金の具体的な使い方、それに対するチェックというのはどこでやっているのか。会計報告とかそういうものはちゃんと提出されておるのか、それともそこまでは農水省としてはやっていないというのか、どういうことでございますか。
  191. 慶田拓二

    ○慶田説明員 お答えをいたします。  全日本コーヒー協会は社団法人でございまして、一九八〇年の八月二十日に設立をされておりまして、適宜農水省が指導監督、監査を実施しておりますし、また先ほど申し上げましたように、半分の資金は国際機関から拠出をされておりますので、年度ごとにきちんと会計報告等は国際機関に対して行っておるということでございます。
  192. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、戸叶、伊藤委員が質問した当時とは違って、一九八〇年以降は非常にきちんとやっている、こういうことでございますか。それ以前は必ずしもきちんとしていなかったが、八〇年を契機にそうなったということでございますか。
  193. 慶田拓二

    ○慶田説明員 お答えをいたします。  御指摘の点は、恐らく一九六六年から七三年までに実施されたコーヒーの振興事業のことだろうと思います。この間に国際機関から七年間の合計で約十一億円の基金が拠出されております。この事業は日本コーヒー振興委員会というものがありまして、その委員会中心に毎年度事業計画を定めて実施をしておったわけでございますが、これは公益法人でございませんで、役所サイドできちんと監督が必ずしも行き届かなかったという点が御指摘の点ではないかと思います。
  194. 河上民雄

    河上委員 コーヒー人口というのは日本でどのくらいになっているのか、私も十分承知いたしておらないのでございますけれども、私の選挙区の神戸市というのは人口一人当たり喫茶店の一番多い町だというふうに町の案内によく書いてございます。それは、一つはコーヒーの豆問屋が多いせいだともいいますし、神戸っ子の気質からそうなるという説もある、いろいろあるのですけれども、私もコーヒーが好きな方の一人ですから、コーヒーの消費振興のためにいろいろ努力をされることは結構でございますけれども、ただ、かなりの巨額の金でございますので、実際にはどういう仕事をしておられるのか余りよくわからないというのが国民一般の感じではないかと思います。  いまのお話ですと、国際機関に報告をするということになっておりますが、金を出す以上、効果がどうなっているかというようなことは当然向こうは心配するのじゃないかと思いますが、そういうような観点から注文が出たり何かするようなことはあるのでございますか。それとも、もう全く出した金については、金は出すが口は出さないというかっこうになっておるのですか。
  195. 慶田拓二

    ○慶田説明員 お答えいたします。  消費振興事業の効果につきましては、短期間にその効果を見きわめるというのは非常にむずかしゅうございますが、まあコーラだとか炭酸飲料だとか果汁だとかいろいろな飲料がございまして、それが最近では消費が伸び悩んでおりますが、コーヒーの消費量はこのところずっと増大を続けておるということで、この消費振興事業の効果というものはかなり大きいものがあるというふうに考えておりますし、国際機関の方でもそれなりの評価をしていただいておると考えております。
  196. 河上民雄

    河上委員 今度のコーヒー協定の条項を見ますと、このコーヒー協定というものの性格の一つとして、主なる生産国が大体属しております開発途上国と先進国との関係、南北問題ですね、南北問題の解決に資するようにということがうたわれておるわけでございます。  そういう点から見まして、今回安倍外務大臣インドネシアを含むASEAN諸国へ行かれたわけでございまして、特にインドネシアは、伺いますと、ブラジルとかコロンビアのような中南米の生産国に次いで、アジアでは飛び抜けて大きな生産国であるというふうに聞いておるわけでございますけれども、そういうふうに考えますと、今回の首相及び外務大臣ASEAN歴訪と全く無関係ではないという感を受けるわけでございます。  今回、安倍外務大臣インドネシアへ行かれましたときに、もちろんフィリピンタイ等にも同様でございますが、六百七十五億円の円借款を含む幾つかの援助約束して帰ってこられました。こういうことにつきましては当然今後熱意を持って当たられると思うのでありますけれども、先ほど伊藤委員が質問されました点との関係でございますが、軍事協力については、これははっきりと断ったというふうに先ほどおっしゃられました。私は断られるのは当然であろうと思うのでありますけれども、インドネシアフィリピン等、ASEAN諸国から軍事協力要請が幾つか来ているのではないかと思いますが、それはインドネシアのほかにもあったのでございましょうか。
  197. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 インドネシアにつきましては、スハルト大統領と中曽根総理との間で、首脳会談で、インドネシアの防衛産業を助けるような方法を日本としては考えることはできないかという趣旨の発言がありましたが、それに対しては総理から、日本の場合は経済協力はするが軍事協力は一切できないのだ、これは国の基本方針としてできないし、これはやる考えはないというふうにはっきり言っております。  同時にまた、タイにおきましても、これは首脳会談のレベルではそうした話も出なかったと認識しておりますが、ただやはり、カンボジア問題をめぐりまして相当国塩周辺では紛争が続いておるということもあって、そうした協力、特にいまASEAN支持しておるところの三派の政権に対して何か軍事援助というものができないか、一番欲しいのは、三派は武器である、こういうふうな話もありましたが、これはもちろん日本としては当然できないし、そういうことはよく知っておられるとおりだということを明快に言っておりまして、その他にはほとんどそういう話は出なかったように思います。  これは、ASEAN諸国としても日本立場は十分知っておるというように私は判断をいたしておるわけです。
  198. 河上民雄

    河上委員 それでは、フィリピンについては何もなかったのでしょうか。事務当局のレベルでそういう話は事前にありませんでしたか。
  199. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 フィリピンにおいてはそういうことはなかったように聞いております。
  200. 河上民雄

    河上委員 いま外務大臣が、インドネシアタイについては、お話があったけれども、明確に拒否された、これは非常に結構なことでありますし、当然のことであろうと思うのでありますけれども、じゃ、これは将来についてもそういう姿勢は全く変わらないか、将来の対応についてはいかがです。
  201. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本政府としては、今後といえどもそういう方針は変わらないということであります。
  202. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、それは非常に大事なお答えとして私ども承っておきたいと思うのでございますが、ただ、先ほど外務大臣は、ASEANについてははっきりノーと言ったが、アメリカについてはイエスと言った、道を開いた、こういうふうに言われたのであります。一体、その違いはどこから出てくるのか。
  203. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは日米関係、安保条約がございまして、安保条約のいわゆる効果的運用を図るという立場から、いわゆるこの武器技術については道を開いた、こういうことであります。
  204. 河上民雄

    河上委員 そこのところがいま一つちょっとわからないのでございます。それじゃ、ASEAN諸国について断ったのは、それとの関連でどういうふうに……。
  205. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本は武器輸出三原則あるいはまた政府見解というものをもって、日本は国の政府の基本方針として武器の輸出はしないあるいは武器技術の輸出はしないということを堅持している、そういう基本方針を堅持しているので、これはできないのだ、こういうことを言っておるわけであります。
  206. 河上民雄

    河上委員 外務大臣、今回総理に随行されまして、それぞれ先方の当局者と会談をされてこられたわけですが、総理はもとより外務大臣もこのASEAN重視ということを大変強く言われたのであります。ASEANから言えば——われわれはあくまでも今回軍事協力要請に対して断られた政府の立場は当然だというふうに考えるものでありますけれども、ASEANから言わしむれば、じゃASEANに断って、なぜアメリカだけいいのかということは当然残るのではないかと思うのです。今後繰り返しまたそういう要請が出てくる——今回は総理がはっきり断わった以上、もうこれ以上出さないということかもしれませんが、今後繰り返し出てくる可能性は十分あるのじゃないかと私は思うのでありまして、どうもその明確な理由というのはない。こちらをイエスと言いあちらをノーと言う明確な論拠というのはない。日本の国是的なものであると主張されるならば、どうも明確な根拠がない、こういうふうに向こうとしてはなるのじゃないか。向こうのみならず、われわれからいってもないというふうに考えられるのでありますが、その点、外務大臣、いかがでありますか。単なる安保条約ということだけですか。そうしますと、ASEANとはそういう条約がないからということになるわけですか。
  207. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 アメリカに対して軍事技術相互交流の道を開いたというのは、いまもお話がありましたように、日本とアメリカとの間には安保条約が結ばれておる。安保条約によって日本の平和と安全が確保されておる、こういう観点からこの安保条約というものを効果的に運用していくことが日本の平和と安全をより確固たるものにするのだ、こういう立場からこれまでの政策の一部を修正した、こういうことでありまして、これについてはASEANの諸国も日本立場を十分理解いたしておる、私はこういうふうに思います。
  208. 河上民雄

    河上委員 時間が参りましたのでさらに突っ込んでお聞きすることはできないのでありますが、最後にもう一度確認をさしていただきたいのでありますけれども、日米安保条約のもとにおいても軍事協力はいかなる国に対してもしないという方針は過去においては厳然として存在しておったのであって、安保条約なるがゆえに道を開かなければならないということでは必ずしもないわけであります。そこには一つの政策、政治的な判断というものがあったというふうに私は理解せざるを得ないのでございまして、これはアメリカがどうのASEANがどうのということじゃなく、実は日本が軍事技術協力をしないという方針が確立しているかどうかという問題じゃないかと思うのです。その点ひとつ外務大臣、もう一度明確に表現をしていただきたいと思うのであります。
  209. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは何回か申し上げたわけでありますけれども、安保条約を効果的に運用する、その安保条約日本の平和と安全のために結ばれた条約である、こういう基本的な観点に基づいてアメリカの要請もあったわけであります。そういうものも踏まえて日本としては武器技術については道を開いたわけでございますが、その他の、たとえば武器そのものの相互交流の道を開くかということに対しては、もちろん中曽根内閣としてはこれはしないということを言明いたしておりますし、同時にアメリカ以外の他の諸国に対してはこれまでどおりに武器輸出三原則、同時にまた政府見解を堅持していくというのが政府の基本的な考え方であることはいまさら申し上げるまでもないわけであります。
  210. 河上民雄

    河上委員 時間が参りましたので私の質問はこれで終わりますが、いまの大臣の御答弁を踏まえまして、きょうはコーヒー協定の質問でございますのでこの程度でやめますが、今後さらにこの問題は明確にしていきたい、こういうふうに思っております。それでは私の質問を終わります。
  211. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、土井たか子君。
  212. 土井たか子

    ○土井委員 私はこれから領事関係に関するウィーン条約について質問を申し上げるわけでございますが、まず、その条文の中に入ってお聞きをする以前に、少しお尋ねをしておきたいことがございます。  戦前にも領事関係条約があったはずであります。それはいつごろございましたでしょうか。そして、日本がその領事関係を結んだのはいつごろでございますか。
  213. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  戦前におきましてわが国領事関係についての条約を結んでおりましたことは当然でございますが、戦後におけるほど明確な形での条約は当然のことながらなかったわけでございます。戦前におきましては、そういう意味で国際慣習が明確でなかった点が多いので、二国間の条約の中で規定を置いておりましたけれども、かなりまちまちな規定が置かれていたということがございます。  第二次世界大戦前に締結した領事条約といたしましては、一八九六年に締結されました日独領事条約、一八九六年の日伯領事条約がございます。それからオランダの海外領地及び植民地に関する領事条約と称する日蘭条約が一九〇八年に約ばれております。この三つが結ばれておりまして、日独、日伯領事条約につきましては日本側の通告によって一九一一年の七月七日以降失効いたしております。それから、オランダとの条約は第二次大戦前まで有効であったわけでございますが、戦後復活されることなく終了しております。  それで、このほか通商航海条約等を中心とする二国間条約の中に規定が盛られているのがございますが、その中で領事館の設置であるとか職務権限、特権、免除において簡単な規定を置いているのが幾つかございましたけれども、いずれにしてもこのような規定につきましては、重要なポイントにつきましては相互主義あるいは最恵国待遇という形で処理してきている例が多く、余り詳細な規定が置かれてなかったというのが戦前の実態でございます。
  214. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまおっしゃった戦前のそれぞれの領事関係を問題にした条約というのは戦後追認されることなく無効になっているということで今日に及んでいると思うのですが、いま日本が二国間領事条約を結んでいる国はどこどこですか。
  215. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 わが国が現在二国間条約を結んでおりますのは、米国、英国、それとソ連の三カ国でございます。
  216. 土井たか子

    ○土井委員 いま米、英、ソとおっしゃった、この三カ国の間にある日本との二国間条約と先ほどお述べになった戦前のそれぞれの条約内容とはどれほど違いますか。違う点がどういうところにあるか、それは余り詳しくは述べられないかもしれませんが、お教えいただきたいと思います。
  217. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 主とした違いは、戦後におきまして領事関係につきましての二国間条約の先例がたくさんでき、そういう意味でアメリカ、イギリス等を中心として条約の内容がかなり充実したものができてきたわけでございますので、戦後のものが特権、免除あるいは職務内容等につきましてかなり包括的なものになってきている、この点が一番大きな差でございます。そういう意味でウィーン領事条約が作成されます過程におきまして、そういう意味で領事関係に関する国際法というものがかなり明確な形をとってきていたということ、それに従ってアメリカ、イギリス等との間でかなり包括的な領事条約が結べるようになった、この辺が一番大きな差であろうと思います。
  218. 土井たか子

    ○土井委員 その特権、免除の点において米、英、ソという国との間に日本は二国間領事条約締結しているわけですね。その中でこのウィーン条約に入っていない国があるはずであります。どうですか。
  219. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 米国、英国ともウィーン条約には加盟しておりますが、ソ連だけは加盟しておりません。
  220. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、このウィーン条約と二国間条約との取り扱いの上で言うと、条約条約の上ではこれに対しての国際的な一般原則というのが問題にされてまいっておりますけれども、この二国間条約ウィーン条約との間で特権、免除の上で差があるというふうなときにはいずれに重点を置いて考えるのですか。ウィーン条約ですか、二国間条約ですか、いずれですか。
  221. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 二国間条約ウィーン条約との関係につきましては、ウィーン条約の中に規定がございまして、「この条約と他の国際取極との関係」ということで規定が置かれておりまして「この条約は、他の国際取極であってその締約国の間において効力を有するものに影響を及ぼすものではない。」「この条約のいかなる規定も、諸国が、この条約の規定を確認し、補足し、拡大し又は拡充する国際取極を締結することを妨げるものではない。」ということが書いてございますので、そういう意味では両方、二国間条約とこのウィーン条約ともに効力を有するまま続くという関係になると思います。その際に、特権、免除についてこのウィーン条約と二国間条約の間で当然のことながら厚さといいますか、広がりが違う場合があるわけでございますけれども、その際にどういうふうに処理するかということについては、私どもとしていろいろ検討いたしました結果、両方を比べてより厚い方を適用するという形にすれば問題がないだろう、こういう考えで処理をしていくことにしております。
  222. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、米、英、ソについてはそれぞれ二国間条約締結することに当たって、署名をまずやって、そして国会の審議を経て承認の結果批准、こういう行為があったと思うのです。今回のこのウィーン条約について、日本は署名なさっていらっしゃいますか、どうですか。
  223. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ウィーン条約については署名いたしておりません。
  224. 土井たか子

    ○土井委員 そこでちょっとお尋ねしたいのです。署名をするということの意味を外務省としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  225. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 署名につきましては二国間条約の場合と多数国間条約の場合とは当然違うわけでございますが、特に多数国間条約についてのお尋ねだろうと思いますけれども、条約につきまして一般的に批准、受諾等を条件とした条約への署名というものは、条約のその後の締結について最終的なコミットメントといいますか、そういうものをあらわすものではないというふうに考えております。そういう意味で、署名をするということがその条約についてそれを締結することを義務づけるものではないというふうに考えております。しかし、ある条約に署名するということは基本的にはその条約の構成、趣旨等に賛成を表明するものであるということでございますので、政府としては、署名が締結の前提条件とされていない条約につきましては、国内法の整備状況等も含めて、条約締結についてある程度のめどが立った段階でこれに署名するということにいたしております。そういう意味で、署名をするに当たってはやはり締結のめどを立てた上で署名するのが筋であろう。法理的にはもちろん署名によって締結を義務づけられるわけではないわけですけれども、一応そのような形で賛意を表するということは、条約についてこれを締結をするのが筋だろうと考えて、最近はそのように処理しております。
  226. 土井たか子

    ○土井委員 いまのは、どうもわかりにくい説明なんですがね。都甲さん、いままでのいろいろな当委員会で取り上げた条約に当てはめていくと、ずいぶんいまの御説明から漏れる事例というのは出てまいりますよ。  たとえばILOの百二号条約、これは署名してからずいぶん長い間ほったらかされていたのです。そして、これまた留保をつけて批准するというかっこうになっている。留保事項についても、今後国内的措置というのを可及的速やかに整備するという約束がいまだに果たされていない。こういう問題も片やあるのです。いまの御答弁では、批准を前提としないで署名というのは考えていかなければならない、これが一点なんですね。署名ということに当たっては、国際間でいろいろ討議をする席で、日本としてはこの中身に対して賛成であるという意思表示もこれは込められている、これが一つですね。  しかしその次に、またこれとは違った意味もおっしゃっているのです。国内的な措置がまだそこまで達していないとき、いろいろ条件日本としては整っていない場合、これは署名をしないという場合もある、こうなります。  そこでお伺いしたいのですが、過去の例からしたら、いまこれはいろいろおっしゃったことを当てはめていくと、全部当てはまらない事例というのは確かにたくさんあるのですが、最近どうも外務省とされては、署名をすると、途端に早く批准をと言われることが大変に困るので、署名をしないという傾向がどんどんふえてきているように私には思われてならぬのです。そうすると、署名をしてしまうと、後、国内的条件を整えていくためにも外務省非常につらい、そして努力が問われるという立場に立たされる、各省庁にそういうことを持ち出してしっかりやってくださいよと言うのもしんどい限りだという意味も含めてでしょうか、最近署名をなさらないということがどんどんふえてきているように思われてなりません。これはそうでないのならそうでないとおっしゃっていただきたいし、署名をしないという件数がふえているのはこういうわけでありますという理由がそれならば説明されないと、どうもわれわれとしたらおかしいなという気持ちをぬぐい去るわけにはいかないのです。どうでございますか。
  227. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほど御説明申し上げました署名についての政府の態度というのは、最近一貫してこれをとってきておりますので、最近において署名をする条約が少ないのではないかという御指摘は、必ずしも私どもはそのように考えていないわけでございます。  それで、条約が作成されます場合に、当然のことながら国内関係官庁とは十分に協議をいたしまして、その条約の内容等につきまして十分審査をした上で、署名のときにも関係省庁の合意を得た上で署名をするという形をとっておりますので、外務省だけが判断をして署名をするということはないわけでございます。そういう意味で条約の内容に一般的に賛意を表明できるかどうかということは、やはり政府全体としての見解でございますので、その後の処理に当たって各省との間で困難を生ずるというような問題を頭に置いて外務省だけが署名を拒否するというようなことは余りやっていないのではないかというふうに考えております。
  228. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、いよいよ外務省に対して物を申さなければならなくなってまいります。  二国間は、これは署名をしないと批准に向かうということにならない。先ほどの御答弁です。多数国間の条約が問題だ。国内で、各省庁で協議をする。外務省だけが何も勝手にこれに対して署名することがいいか悪いかを決めるわけじゃない。いま簡単に申しますと、都甲さんの御説明はこういうことになるのじゃないかと私は思います。  外務省の主導権というのは那辺にあるのです。外交関係日本が継続していくという立場からすると、国際社会において国際関係上この条約については日本は賛成であるという意思表示を一〇〇%しなければならないと外務省が思っても、ほかの関係する部面にわたる問題でほかの省が、ちょっと外務省さん、これは国内的措置としたら急にできませんよ、時間をかなりかけていろいろやらなければならないので困った問題ですと言われたら、署名は見送るというかっこうになるのですか。そういうときに外務省の主導権と申しますか、外交関係において責任をとらなければならないという省としての、外務省設置法のそれこそ立法趣旨というのはどこら辺にあるのです。いまのお答えを聞いていると、外務省はなくてもあってもいいようなことになってしまいます。
  229. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 当然のことながら、条約締結につきましては外務省として責任を有しておるわけでございますし、主体的な判断をしてこれに対する態度を決めているわけでございますけれども、当然のことながら、条約というのは国内の多方面にわたる拘束を生ずるものでございますから、これに当たっての判断を下す際には、もちろん大局的な外交上の判断、その利害得失のほかに、国内官庁の方々との協議が必要であるということは当然であろうと思うわけでございます。  ただ、先生に誤解を生じたとしたら私申しわけないと思いますが、しかし、基本的にはやはり関係省庁の意向をも体しつつ、大局的な外交判断を加えた上で、最終的に判断は外務省が行っているということでございますので、そういう意味で、外務省として条約締結に当たっての権限をいわばないがしろにしているというようなことはないというふうに御理解いただきたいと思います。
  230. 土井たか子

    ○土井委員 それほど外務省自身が国内的には他の省庁の意向なり立場なり逆尊重されるということになってまいりますと、それが外務省の期待に必ずこたえられるような条件というのがなければ、外務省の考えていらっしゃる意見といいますか、意思といいますか、期待といいますか、それは生かされないだろうと思いますね。  たとえば先日の宇宙三条約、どうです。外務省とすれば国内法というのは必ず用意してこの条約に対しては提案をして、審議をお願いしますという約束があった。国内法はついに出ずじまいで、この条約についての審議をお願いします、早くこれについても採決をお願いしますとせっつかれるわけですよ。考えてみればわれわれもいいかげんなものだけれども、外務省は本当にいい面の皮だなと私は思っていますよ、そういうことをおっしゃるのなら。これはこけにされているようなかっこうじゃないですか。国内的に他の省庁の立場というものを尊重するためにずいぶん時間を待たれたに違いない。国内法というものができて、この条約について同時にこれを提案するということの約束がいま吹っ飛んじゃっているのですよ。  したがいまして、署名の問題のあり方についても、それほど義理立てて、国内的にその条件が整わないとだめだ、だめだということをどれほど外務省としては考えていらっしゃるのか。むしろ国内的措置というものを講ずるための努力を、国際水準はここまでいっているのですよ、日本ははるかにそれから考えたらおくれているじゃありませんかということを言うべきが外務省の立場ですよ。どうですか。
  231. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の点はごもっともだろうと思いますし、外務省といたしましても、最近におきましても一、二の事例におきまして、国内調整との困難がありましたけれども、みずから責任をとって立法したり、あるいは関係省庁の取りまとめに苦労をして、条約を、国内法をつくった上で入ったという事例もございます。最近では、たとえば前国会で御審議いただきました南極条約に基づく国内法がございましたけれども、これなどは国際的な責務を果たすべきであるという観点から、大変苦労いたしました上で、外務省みずから、やや異例ではございましたけれども、国内法をみずからの責任でつくりまして、国際的義務を果たすために努力をしたという一つの例であろうと思います。昨年御承認いただきました生物兵器禁止条約につきましても同様な事例がございました。  今回、宇宙三条約につきましては、確かに経緯的に国内法をあわせて御提出申し上げるという方向で御答弁申し上げた経緯もございますし、それから過去におきましては、五十四年に確かに国内法をあわせて提出しようという試みをなしたこともございましたけれども、結局、現時点におきまして最小限どのぐらいの措置をすれば宇宙三条約の義務が果たせるかという新たな観点から検討いたしました結果、今回、この前も御説明申し上げたわけでございますけれども、民間の活動が予想されない時点におきましては、国内法なしで各省の権限を調整していくことによって十分にその義務が果たされるという結論になったものでございますから、先日も御説明申し上げましたように、国内法の措置なく、閣議了解という形で具体的な措置についての申し合わせをし、それから将来必要が生ずる場合あるいはそのような事態が予想される場合には、国内立法をするという各省間の申し合わせを口頭了解という形で閣議の場で確認していただいた上で、三条約の御承認をいただくことにしたわけでございます。  そういう意味で、今回三条約を御承認いただいた現段階におきましては、国内法はないにもかかわらず、条約上の義務は十分に果たせる状況になっているということでございますので、その点につきましては、私どもとしては全く遺漏のない処理をしたと考えております。
  232. 土井たか子

    ○土井委員 都甲さん、われわれとしては遺漏のない措置をしたというのはまことに独善的なんです。国会に対しては国内法を出しますという約束をなすったことについてはどうなすったのですか。これはやっぱり条約審議に当たって、まずお約束を履行することができなかったというのを外務省側から積極的に審議の前にお断りがあって当然だと思う。むしろ質問の中で、それに対してはいや遺憾であったとか、その点に対してはちょっとそれはわれわれとしては十分なることができなかったというふうに思っていますなんというのが初めて出てくるわけで、外務省としては、国会に対して約束なすったことを守り切れなかったということに対しての措置としては、これはとられなかったのですよ。われわれがそごのない措置を講じたなんというようなことをおっしゃるのは独善的だと私は言いたいのですがね。
  233. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の点でございますが、私どもとしてはその方向で検討しているということで従来御答弁申し上げましたけれども、国内法が要るかどうかという点も含めて検討をしたわけでございますので、そういう意味で、確かに望ましい姿としては、将来いかなる事態が起こった場合でも、これを対処できるような完全な包括的な国内法があるということがより万全な措置だったということは言えると思いますし、またその方向で国内法が整備できれば、それにこしたことはなかったわけでございますけれども、ただ、先般の結論に至りましたのは、国会方面からの決議におきましても、早急な批准を勧奨されており、国際的な義務も果たせないという状況でございましたので、当面必要最小限の措置をとるということで条約に入ることがこの際重要であろうと考えまして、先ほどのような措置をとったわけでございます。  もちろん、先生の御発言は私ども激励をいただいているというふうに受けとめまして、今後ともその方向で努力はしてまいりたいと思っております。
  234. 土井たか子

    ○土井委員 今回のこの条約について署名をしなかったという理由を、それじゃ端的に聞かせていただきましょう。
  235. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 今回のウィーン領事条約につきましてこれを署名いたさなかったのは、これが作成された当時におきまして、領事関係に関する国際法が必ずしも明確ではなかったということがございますので、わが国はそれまで二国間の条約で処理してきていたわけでございます。それで、当面各国がこの条約にどのような態度をとるだろうかということ、それから領事関係についての国際法がどのように定着していくだろうかということを見きわめる必要があるというふうに考えたものでございますから、当時、このウィーン領事条約というのは、わが国締結しましたたとえばアメリカとの、領事条約とのより厚い特権、免除を定めていたものでございますから、わが国としては当面様子を見たいと、こういうふうに考えて署名をしなかったわけでございます。
  236. 土井たか子

    ○土井委員 なるほど、アメリカとの間の二国間条約が非常に厚い特権、免除を定めているので、このウィーン条約の中でそれにこたえる中身になり得ているかどうかを見きわめるために署名をなさらなかった、こういう理由なんですね。  それじゃ、ちょっとお伺いを進めさせていただきますけれども、いま二国間条約でやりおおせてきたのでという御発言がありますが、米、英、ソ以外の二国間領事条約というのはありますか、ありませんか、あるとするならどういう国との間でありますか、そして件数はどれくらいありますかをついでにここでまず言っておいてください。
  237. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 その前に、一つだけつけ加えさせていただきたいと思います。先生がただいま日米の領事条約の方が厚い特権を定めているというふうに御発言いただいたと思うのでございますが、これはむしろウィーン条約の方が日米に比べて厚い特権を規定しておりましたので、私どもとしてはこれに当時直ちに賛意を表しかねたということでございます。  それから、領事条約はこの三つのほかにはございませんで、他の国との間では通商航海条約の中に領事規定を盛り込んだものがかなりございまして、それによって一般的に処理してきていたということでございます。
  238. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどの通商航海条約の中で領事関係を特に認めている条約の件数がどれぐらいあるかというのは、また後でそれを出しておいていただきたいと思います。  それで、先ほどから都甲さんの御発言一つ一つ言葉じりを取り上げるわけではないのだけれども、二国間領事条約で賄い切れたからとか、それから、さっき私の聞いていることにもし誤解があるのならばそれはそれでいいのですけれども、聞いている限りにおいては、日米間の条約の中で特権、免除というのは非常に厚いので、この条約との兼ね合いでどういうことになるかというのをウィーン条約についての中身を少し見守る必要があったという向きにおっしゃっているように私は聞いたのです。だから申し上げたのです。  そこでちょっと承りたいのは、いまの御答弁から出てくるわけですが、説明書を見ておりますと、説明書の概説の「3 条約及び選択議定書締結により我が国が負うこととなる義務」の(1)に「もっとも、この条約に定める規則の相当部分は、既に国際慣習法として確立していると考えられる。」とあるのですね。国際慣習法として確立している分については、恐らく日本としては異論がある、なしにかかわらずそれを認めるということでおありになるだろうと思うのですが、「規則の相当部分は、」ということがここに書いてございますから、国際慣習法として確立していない部分があるということも認識されていないとこういう表現にならないと思うのです。国際慣習法でない部分というのはこの条約の中のどこなんですか。
  239. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 現在、この領事条約は百三カ国がもうすでに締約国になっておるわけでございますので、この条約が多数国によって受け入れられていることは確かだと思うのでございます。そういう意味で、多くの国によってこれが支持されている条約であることは確かでございますし、この中に入っている公館の不可侵とか身体の不可侵、それから課税免除等の項目につきましては、国際慣習法として領事にはこういうものが当然与えられるべきだということがかなり明確になってきているということはございます。  ただ、特権、免除の範囲については依然として、たとえば日米、日英と日ソを比べてみるとわかりますけれども、日ソにおいて特権、免除を非常に厚くするという傾向がございます。これは、特にイギリス等を中心として領事関係につきましては外交関係と違って国家を全面的に代表するものではなくて、相手国に在住する自国民の保護のための派遣国の行政機能を果たすものであるから、これには限られた特権、免除を与えればいいという伝統的な考えがあって、それに対して共産圏諸国等は、同じ国家公務員として派遣されるのであるから外交官と同じ特権を与えるべきであるという主張があって、この二つの主張がぶつかったわけでございますが、ウィーン領事条約はその妥協としてできてきているということでございますので、当然のことながら公館の不可侵、身体の不可侵等につきまして各国の間にまだ意見の相違があるということがございますので、そういう細部にわたって完全に国際慣習法になったとは言い切れない面があるのではないかと考えております。  たとえば公館の不可侵でございますけれども、ソ連はこれを外交特権と同じように全面的に不可侵としており、館長の同意がなければ公館に入れないという形で考えておりますし、日ソ領事条約もそのような観点からできております。ウィーン領事条約におきましては火災等の緊急事態においてはそのような同意があったものと推定するということになっておりますし、日米、日英につきましては、外務大臣の同意がある場合あるいは司法当局の決定があるような場合には入ることができるということにさらにこれを緩めているということがございます。  そういうことで、具体的な特権、免除の範囲をどこにするかということについては必ずしも完全に国際慣習法が確立したとはいえない状況にあると考えております。
  240. 土井たか子

    ○土井委員 特権、免除について一般論としていまおっしゃったのですね。条文で言うと、特にこの条約の中ではまだ国際慣習法化されていない部分であると御認識になっていらっしゃる条文はどういうところですか。
  241. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 特に領事関係に関するウィーン条約の名誉領事に関する規定等はこの条約によって新たに設けられたものでございまして、従来日本政府といたしましても名誉領事について特別な特権、免除を与える考えで処理してなかったわけでございます。それで、今回この条約に入りますればこれに従って処理をしていくので、その面では新たに条約に決められた内容であると考えておりますし、これは慣習法とは必ずしも言えないのではないかと考えております。
  242. 土井たか子

    ○土井委員 名誉領事の問題は大臣がここにまたお戻りになってから私はちょっとお尋ねしたいことがありますから、後で取り上げるということにさせていただきます。  そこで、まず領事任務の中で身分事項登録官としての資格、これに類する資格、そして行動、行政的性質ということが一定の任務として認められているわけですが、いまそれぞれ日本の在外領事館というのはどれくらいの仕事をなさっていらっしゃいますか。
  243. 藤本芳男

    ○藤本説明員 身分事項登録官としての領事任務といたしましては、在外におります邦人の通常の保護、通商経済関係の促進それから船舶関係その他の証明事務、緊急事態におきます邦人の保護、その指導、こういうふうなことを任務としております。
  244. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その事務の中で、今回法務省の方でいろいろ作業が進められつつございます国籍法が変わることによって事務内容も従来に比べて違ってくる部面が出てくると思うのです。国籍法の改正の作業の中で、法制審議会にも外務省からは臨んでいらっしゃると思うのですけれども、特にその中で、私は時間のかげんがありますから一般論は横に置いておきまして、国籍の留保の問題について外務省としては、二月一日の中間試案が出ましたときにA案、B案がございました、そのA案についてどうお考えになっていらっしゃるか。B案についてどういう御認識がおありになるか。外務省としてはどういうことがこの問題については好ましいというふうにお考えになっていらっしゃるか。その辺をまず承りましょう。
  245. 藤本芳男

    ○藤本説明員 中間試案、二月一日に出ましたものは、これはあくまでも中間でございまして、A案、B案、両案が併記してございます。すなわち留保届を一たんやめるのか続けるのか、こういう選択の問題でございます。私どもといたしましては、法制審議会に去年の初めから作業に参画しておりまして、この作業の中身を持ち帰り、かつまた中間的な議論を進めながら検討してまいったわけでございます。したがいまして、現在外務省といたしまして留保届制度につきましては最終的結論を出していないということでございますが、領事任務に関連いたしましては、留保届をやめるか続けるかということによりまして領事の任務の範囲が若干変わってくるということが予想されます。
  246. 土井たか子

    ○土井委員 若干どころでなくて、大変変わってくるのではないですか。それではこういう聞き方をしましょう。重国籍になる子供を全部対象にして、出生の段階で子供の国籍の選択を親の申告にかかわらせてしまうというのが、端的に言うとA案の内容だと思うのです。そうでしょう。これは子供の国籍選択の権利ということからすると、どうも問題なしとしないと思うのですが、この点についてどう御認識なすっていらっしゃいますか。
  247. 藤本芳男

    ○藤本説明員 私が中間試案を理解しておりますところでは、まずB案につきましては、もし国籍の選択制度を採用いたしますならば、基本的に本人の意思を尊重するという精神が貫かれているわけでございまして、当初の十五歳までの段階で法定代理人が選択をするということはあり得ましょうけれども、基本的な考え方は、やはり本人が二十歳なりあるいは二十二歳になったときまでに選択の意思を表明する、こういうことでございます。御指摘のように、A案ですと留保制度を続けることになり、この方が親が恣意的に決めてしまうということになりはしないかというふうに考えます。
  248. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、外務省とされては、このB案の物の考え方ということに対して結構ではないかということをお考えになっていらっしゃいますか。
  249. 藤本芳男

    ○藤本説明員 先ほど申し上げましたとおり、外務省としての最終的な結論は得ておりませんけれども、ただ現在の国籍の概念というものを考えてみました場合に、国籍の考え方がやはり人権的な権利の行使の保障、あるいは福祉を受けることの保障の要件というふうな色彩が強くなっておりますので、そういう点も考えますと、B案の意味というものはなかなか大切であるというふうに認識しております。  他方、A案につきましては、これは現在あります留保制度を続けますと、出生地主義国におきます子供が国籍をきちんと確定できるというメリットもございますので、領事事務が非常にやりやすくなる、日本国民というものが確定しやすくなるので領事事務がやりやすくなるというメリットもございます。あれこれを勘案いたしまして検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  250. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことをお答えになるということになってまいりますと、こういう留保制度の手続的な管理について責任を持って領事館としたら取り扱いを十分することができますということでなければならないんですね。それについての心づもりをどういうふうに御用意なすっていらっしゃいますか。経費の上からいっても人的な的からいってもいまのままで大丈夫なのですか。そしていままでどおりのいろいろな事務処理のやり方でこれはやりおおせるというふうにお考えですか。
  251. 藤本芳男

    ○藤本説明員 留保制度を続けました場合には変化はないわけでございますけれども、もし留保制度を廃止するということで、現在B案に出ております選択制度を採用いたしました場合には、御指摘のような仕事の整理というものをきちんとやっておかないといけないという問題点が出てまいります。特に重国籍者がふえますので、すなわち二十歳、二十二歳までの選択でございますから、それまでは重国籍になるのをやむを得ないとして認めることになりますので、重国籍者の数がふえる。ふえますと領事事務がそれだけ複雑になるわけでございまして、日本人かどうかということを決めて領事事務を進めていかなければならないという点がございますので、そこのところをきちんと手続を決めるというふうなことが出てまいろうかと思います。もちろん現在領事窓口担当者の人数が非常に少のうございまして、大変に担当官は苦労しておりますけれども、それなりにやっております。もちろん領事事務は人数がふえればふえるだけ手厚い窓口サービスができますので、この人員がふえるということを私どもは大変に強く期待しておる次第でございます。
  252. 土井たか子

    ○土井委員 どうもこういうところで質問しますと、きれいごとしかおっしゃらないものですから、現実の問題になっていくと全然当てが違ったことがよく出てくるのです。質問するときにはそういう一つ一つの事情を取り上げてやった方が、これについてどうですかという突っ込んだことについて避けて通れないという答弁者側の立場も出てまいりますからいいのかもしれませんけれども、とにかく時間の制約の中で言おうとするといつもきれいごとになるので、私としたら一体これは質問する意味がどの辺まであるのかという気にも本当になってしまうのです。  先ほど重国籍者のことについて、留保ということが、したがって非常に意味があるということを言われたのですが、いま国籍留保制度というのが単にそれだけの問題ではなくて、必ず日本の戸籍制度と密接に結びつく問題になるのです。外務省としては御存じだと思いますけれども、国籍を留保するとその旨が戸籍簿に記載されるのは現在でも同じでございます。しかし今度は、その留保をするということによって新しく戸籍簿に特定の外国籍、それからまた重国籍者ということが記載されるということがいま検討されつつあるということを聞いておりますけれども、外務省としてはそういう事情について御存じですか、どうですか。
  253. 藤本芳男

    ○藤本説明員 確かに御指摘のように、国籍と戸籍の関係というのは大変に議論になるところでございます。現在法制審議会において鋭意議論が行われておりまして、これは法務省あるいは法制局の方からの御答弁が正しいかと思います。審議会での議論が進行中ということでございますので、私の方からはお答えは控えさせていただきたいと思います。
  254. 土井たか子

    ○土井委員 これはやはり国籍をどう考えるかという問題と密着した問題に日本の場合にはなる事情がございますから、したがって外務省とすれば、法務省がお考えになればいいでしょうということで振り切ってしまわれるのではなくて、領事事務の上でこれが結びついた問題として動いてくるわけですから、認識を十分にお持ちになるばかりでなくて、やはり発言して立場を主張してもらわぬと困るのです。  御案内だと思いますけれども、先日ある新聞が「記者の目」という欄の中で、この重国籍者というふうに記載することが現に戸籍の上で検討されつつあるということを取り上げられまして、国際結婚をした家族の一員が重国籍者と戸籍に記載されることは新たな身分差別となりやすいという事情を取り上げて問題にされております。これはやはり差別ということがその中から引き起こされるということになってまいりますと、これ自身は人権の点から考えても非常に好ましくない、また国際人権規約というものに日本は入っている国ですから、したがってそういう立場からすると、これは日本独自の行き方でありまして、国際的に考えていくと、どうもこういう取り扱いがいまのままでいいのかという問題もありますし、さらにいまとは違って、新たに重国籍者という記載をするということが果たしてどういう方向で取り上げられ、そして具体的な場合には意味をなすかという問題もありますから、外務省としてはこの戸籍の取り扱いについてどういうお考えをいま持っていらっしゃるかということを私自身聞かざるを得ないのですが、どうお考えですか。
  255. 藤本芳男

    ○藤本説明員 外務省の立場といたしましては、在外におります邦人を保護しその権利をできるだけ擁護したいというのが立場でございまして、これは設置法に決められている権限、任務でございますので、それと国籍、戸籍との関連ということになりますと、私どもといたしましては、もし、戸籍に重国籍を書くか書かないかということ自体は邦人を保護するという立場からは関係がない。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 すなわち日本人であるという戸籍を持っているということがわかった場合に、旅券なり証明なり、その戸籍をもとにした援護活動ができる、こういうふうに考えておりますので、しかし、なおかつ最終的な御意見を申し述べる立場には現在ございませんので、御意見を十分承ったわけでございますから、この点は法制審議会におきましてもいろいろと審議をしてまいりたいと思います。
  256. 土井たか子

    ○土井委員 それと海外の方々にいろいろ聞いてみますと、国籍について自主的に決定するということをどのように認めていくかという制度の上での配慮というのは非常に大切であるけれども、今回重国籍に対しての解消の問題ばかりを強く考えることのために、むしろ無国籍者をなくするようにしてほしいという切なる要求がどの程度生かされるかというのは非常に気にかかるところだと言われます。無国籍者をなくする方策として今回の中間試案の中ではこれで事足りるとお考えですか。
  257. 藤本芳男

    ○藤本説明員 無国籍者をなくするという方向といたしましては、現在の中間試案は私はその方向に沿ったものだということを確言できると思います。それは御案内のように、選択制度のB案を用いました場合には確かに重国籍者がふえるということを許容することによって無国籍者がなくなるという効果が出るわけでございまして、またA案におきましても、つまり留保届制度を残した場合におきましても、子供の出生に関しましての父母両系主義が採用されますと、仮にA案でありましても無国籍者は前よりは少なくなる、無国籍者がなくなるという効果を期待できるであろう。ただ御案内のように、B案の方が手厚くなるということはございます。
  258. 土井たか子

    ○土井委員 これは領事事務の上からいうと、具体的には「外国の国籍を離脱することができるときは、」という認定が非常にむずかしい問題が出てくると私は思うのです。父母両系主義になって、しかも出生地主義の国ということになってまいりますと、いよいよこれは問題があるだろうと思うのですが、本国法に離脱の道があるならという意味に理解していいのか、特定の個人が離脱できるというふうな意味に理解していいのか、ここのところの解釈によって大変違ってくるのです。御本人が離脱したいというふうな意思をお持ちになっても本国法に離脱の道を許してない、それを認めてないという場合にはどういうふうに考えていいかという取り扱いの上での問題が出てまいりますし、領事事務の上ではこれから国籍法がどういうことになるか、中間試案の段階ですから、したがって中間試案の段階でいろいろ外務省としてはお考えを披瀝されることは非常に大切だと私は思うのですが、どのようにお考えになりますか。
  259. 藤本芳男

    ○藤本説明員 先ほど御指摘の、国籍離脱を認めない外国もある場合はどうかというお尋ねでございます。確かに御指摘のとおりでございまして、現在出ております中間試案の国籍選択制度によりました場合に、二十二歳になって日本の国籍を選択するということを宣言いたしました場合でも、たとえばブラジルの場合にはブラジル政府が国籍の離脱を認めないということはございましょうけれども、これはその場合には仕方がない、すなわち日本の国籍を取りたいということを宣言したことによっての日本国籍の確認ということをやると同時に、このブラジル国籍を持っておるということについては不問に付すと申しましょうか日本政府に関する限りは日本国民として扱うということになろうかと思います。
  260. 土井たか子

    ○土井委員 この問題はさらに種々細かいことを言い始めますと具体的な問題として法務委員会という場所でやらなければならないことがたくさんございますから、その席でまた外務省としてのお考えを聞かざるを得ないこともあろうかと思います。追ってそういうときにはまた出席要求したいと思います。  ただ一つ、外務省にじかに関係する外務公務員法の取り扱いが一体どうなっているかということはやはりこの場所で聞かざるを得ない。  以前にこの問題を取り上げて予算委員会で質問をいたしました一昨年の二月二十六日、そのときは伊東外務大臣であったわけですが、外務公務員法についていろいろ考えてみます、考え直さなければならないという中身であるという御認識をお持ちになったのですが、現在この改正についての作業は進んでおりますか。進んでいるとするならば、どういうふうな作業内容になっていますか。
  261. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 御指摘のとおり、この問題につきましては予算委員会でも審議され、またわれわれとしても検討課題として承知いたしております。いずれにせよこの国籍法の父母両系主義ということになり、かつまた配偶者の問題につきまして両性の平等ということを確保するということになりますと、この外務公務員法その他の関係の問題について検討を進めないといけないということでございまして、現在検討中でございますが、まだこの外務公務員法の問題の調整についても必ずしも確たる結論を得ておるわけではございません。いまのところの考え方としては、この外務公務員法の七条自身を手直しする必要は必ずしもないんじゃなかろうか、政令による欠格理由ではそれの例外という点で処理できるのじゃなかろうかというふうに考えておりますが、まだ法制局と検討しておる段階でございます。
  262. 土井たか子

    ○土井委員 実は第七条自身を手直しする必要がないとおっしゃるのがどうも私ひっかかるのですね。従来はこの第七条の中の慣行として、実は第七条を目こぼしして適用されているという点がありはしないかと私は思っているわけですが、それはどういうことを言っているかといいますと、この第七条の条文そのものを読みますと、一項、二項から成っておりますけれども、一項では「国籍を有しない者若しくは外国の国籍を有する者又はこれを配偶者とする者は、外務公務員となることができない。」というのが一項なんですね。それからまた二項では、「外務公務員は、前項の規定により外務公務員となることができなくなったときは、政令で定める場合を除く外、当然失職する。」こうなっているのですね。つまり一つは、外務公務員としての適格性の問題と、もうあと一つは、失職するという問題と二つです。失格と失職というのはこれは別問題なのです。国籍を有しない者あるいは外国の国籍を有する者と結婚をすれば外務公務員としての適格性がないということがまずここに問題にされてしまっているわけですから、この点に対する手直しはいまの御答弁からすれば必要ないというふうにお考えになっていらっしゃる、そしてまた手直しはこの節作業としてはお考えになっていらっしゃらないと考えられる御答弁なんですが、それはそのままでいいんですか。
  263. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 土井委員の御指摘ももっともといいますか、文理上そういうふうに読める可能性全くないということじゃないと思いまして私どもなりに検討いたしたわけでございますけれども、これは、第一項といいますのは、外務公務員が採用される場合にこういう人間はなれないということを定めておるわけでございまして、これは国家公務員法自体の欠格条項、国家公務員法の三十八条などにもならった規定でございまして、次に第二項の方は、外務公務員が外務公務員になってからある一定の条件を満たすに至った場合には、政令に定める場合を除いて失職する、それで失職するという言葉の法令上の意味につきましては、欠格事由を満たすことにより離職する、こういうふうになっておりますので、つまり失職と外務公務員になれない、このことを二つに分けて考える必要がない、つまり外務公務員になることをやめるというのと同じように読んでいい、ただ法令上そういう用語を使ったにすぎないというふうに解釈いたしておりますので、先生のおっしゃいましたような外務公務員としての身分は失うが職は保っておるという状況は発生しないというふうに考えております。
  264. 土井たか子

    ○土井委員 それはおかしな話ですね。いまるる御説明を賜っても、どうもそれは条文を素直に読む目からすると、いたずらに三百代言まがいのことをおっしゃっているにすぎないというふうにしか聞こえませんよ。条文を素直に読めば読むほど、やはり素直に第七条を変える必要があるのじゃないですか。国家公務員法とは別に、外務公務員法というのは特別法ですから、この中ではほかの公務員法で決められていることに準じて考えていかなければならないということになるだろうと思いますけれども、この辺は解釈の上でいろいろな解釈が成り立つような部面があるならば、やはりだれの目から見ても違った解釈がむずかしいような表現なり条文内容なりに変えるということの方が好ましいと私は思うのです。これに対しては全く必要を感じていらっしゃらないのかどうか。どうもこの条文のままでいいとは私はちょっと思いません。
  265. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 まさに私も法律必ずしも専門家ではございませんし、法学部も中退いたしておりますので、そのまま読みますとそれなりの疑念を感じたわけでございまして、法制局あたりの意見も聞きまして解釈を定め、またこの外務公務員法を出しますときの趣旨説明などにも当たってみたわけでございますけれども、その結果として、先ほど申し上げましたように、第一項の方は採用時における規定であり、第二項の方は採用後そういう事態が発生した場合には特別の例外を除いて、政令で定める場合を除いて失職する、こういうことを定めたものというふうに理解しております。また、現実にいままでそういうことで配偶者が一年以内に国籍を取得しない場合には失職するということで運用をしてきておりますし、そういう解釈が実際上も確立しておるというふうに考えておりますので、法律の手直しは必ずしも必要としないのではないかと思いますけれども、今回の国籍法との整合を図るための措置というものは、何らかの形ではもちろん講ずるつもりでございます。
  266. 土井たか子

    ○土井委員 これは言い始めるとこればかりに時間がとられてしまうようなかっこうになりますけれども、採用時の問題が一項で、二項はその後の問題だということは、二項の条文を読めば、それは成り立たないのです。したがって、これはどうもどのように一生懸命整合性を求めてある目的的な解釈をやろうとなすっても、条文というのは素直に読まなければいけませんから、一項、二項との関係からすると、全く別のことを一項、二項、法文というものが特にそれを明確にして規定している場合もございますけれども、大抵は一項に準じて、一項で決めていることに対して、あと二項はしたがってという意味で読むのが普通なんです。だから、そういうことからしますと、どうもいまの官房長の御答弁というのは、ちょっと私はまだまだいただけないと思うのです。外務省としては、これは再考を要求しますよ。それは法制局といろいろ詰めをおやりになるということも必要でしょうけれども、外務省としては、やはり法文というのはだれが見たって無理のないような解釈ができるような法文にするということが問われているのです。社会常識だということを私は言わざるを得ないと思うのです。だから、いろいろ疑義をこの条文の解釈で醸し出すような中身というのは、やはりいろいろな機会に改めることはいいんじゃないですか。だから、そういうことからすると、私はこれは再考を要求したいと思います。そして政令で定める場合というのも、これは恐らくはいまの国籍法がどう変えられていくかということによって中身が考えられるということになるであろうというふうに私自身も理解をいたしておりますけれども、それによって外務公務員の人たちの仕事を選択するかそれから結婚を選択するか、二者択一の問題に迫られるというふうなことがないようにひとつ申し上げておきたいのです。  これは結論だけを言うとわかりにくいのですけれども、現実の問題としたら、必ずこれは出てくるのです。たとえば、いま帰化条件というのをどのように中間試案で考えられているかということを申し上げれば、その点はすぐに非常にはっきりしてくると思うのですが、三年日本に居住するか、三年婚姻生活を継続しているか、あるいはその場合一年日本に居住していなければならない、こういう条件が整わないと帰化条件ということが整っていないというかっこうに男女ともになるわけでありますから、そういうことからすると、外国籍の人と結婚をするという外務公務員に対しては、その外国に赴任をしておられる方を必ず日本に呼び戻す、そして日本で少なくとも三年間は本省で仕事をするということを約束されないと、これは結婚か仕事かのいずれかを選択しなければならないという立場に必ず立つようなかっこうにもなってまいります。その点、大丈夫でしょうね。どうなんですか。
  267. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもといたしましても、せっかく採用した職員でございますし、これが自分の意思などに反してやめざるを得ないような状態になったり、せっかく私どもとして訓練してきた人がそういうジレンマに立つということは避けたいところでございます。外国人を配偶者にしている職員というのは現在九十三名からあるわけでございますし、これからも当然年間四、五名というようなことで最近は来ておりますので、予想しないといけない事態でございます。また、女性の外交官というものもふえる傾向にございますので、おっしゃるような点は十分に配慮いたしまして、これは私ども人事政策上の要請でもございますので、法制局その他関係方面と十分審議をいたしまして、なるべく国籍法の改正によってそういうジレンマに立つことがないような手段を考えていきたいと思っております。  抽象的でございますけれども、方針はそういうことでございます。
  268. 土井たか子

    ○土井委員 そういう措置というのは、具体的なケース・バイ・ケースだというかつこうになっていくかもしれませんけれども、もっとそれの基本から言うと、こういう外務公務員法というのは特別法として、ほかの公務員とは違うのであるというので立法されたところに大変意味があると思うのです。いま外国で、外務公務員に対して結婚がこういうふうなぐあいに取り扱われている外国の例というのは御存じですか。外国籍の人と結婚すれば、本来は外務公務員としての身分を失うなんという決め方をしている外国例、ございますか。
  269. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 これは過去におきましては、主要国、日本と同じように、外国人を配偶者とすれば国籍を失うということでないにせよ、自国籍を選択するように要請する、こういう方針をとっておった国、かなり多うございますが、七〇年代の後半に至りまして、イギリス、アメリカなどもその方針を放てきするようになっておりまして、主要国の中では現在はそういう要請をする国は、フランスだけが残っておると承知しております。
  270. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっといま枝村さんがおっしゃったのは問題が違うようでありまして、外国籍の人と結婚する、つまり外国籍の人を配偶者とする者が外務公務員となることはできないと考えている国がほかにありますかということなんです。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私、そういう趣旨に理解してお答えしたつもりでございます。つまり、外国人を配偶者とする場合外務公務員であり得ないという規則を持っている国は日本のほかにどこがあるか、それは現在のところ、私どもが承知しております範囲では主要国としてはフランスだけでございます。
  272. 土井たか子

    ○土井委員 だから、それは非常に少ないわけですよ。そして、どんどんそれも減っていくと思うのです。国際性ということがその職務の上で非常に問われるということになると、外国籍の人と結婚したという利点が考えられる側面も大いにあるのではないかと思います。先日も新聞に、その利点を生かしたいきな計らいの人事が外務省の中にあったということも記事として出るくらいですから、珍しいことだ、日本の外務省もここまで来たかと思いながら私はその記事を読んだわけでございますけれども、そういうことからすると、非常に帰化しにくい条件があるために外国籍の人と結婚したことが外務公務員を続ける上からしたらあだになるということであってはならないと思いますから、再度その点をはっきり申し上げておいて、その辺の御配慮を必ずするという御努力のお約束をひとつはっきりしておいていただきたいと思います。
  273. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま御指摘の趣旨を十分踏まえまして、今後の措置を考えてまいりたいと思います。
  274. 土井たか子

    ○土井委員 いま国籍法のことを問題にしたわけですが、日本においてもこの国籍法の改正問題がにわかに具体的なスケジュールの中に出てまいりましたのは、申し上げるまでもなく婦人の差別撤廃条約日本が署名をして以後の話であります。さっきの話ではありませんが、署名をいたしまして、そしてこれをやがて批准に向けて日本はただいま努力している最中なんです。  外務大臣に一つお尋ねをしたいのですけれども、すでに私は一昨年の二月二十六日の予算委員会の席でこの問題を取り上げて、外務大臣にこの条約の批准に向けて留保というものを考えないで日本としては努力を払うことが非常に大事だと思いますけれども、大臣としてはどうお考えですかと言ったら、留保なしで批准をする方向で最大限の努力をしたいという御答弁だったのです。大臣、この条約の批准に向けて留保はやはりせざるを得ないとお考えですか。留保なしでいけるとお考えですか、どうですか。
  275. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろと調整はしておりますけれども、もちろん留保なしという方向でこれはやった方がいいのではないかということで努力を重ねておるわけです。
  276. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、具体的に法務、文部、労働、厚生、人事院、自治、防衛等々に関係するところの各省別に言うと、具体的な法を改正しなければならないという宿題を持っているところもあれば、行政措置を変えることによってできるという省もあれば、いろいろな行政指導の中を再検討しなければならないという省もございますけれども、いろいろな作業の中でいま一番懸案になっていて、どうもこの辺がなかなか先の見通しがむずかしいと言われる点があるならば指摘しておいていただきたいと思うのですが、どういう問題ですか。
  277. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  この条約の締約国になるにつきましては、先生御指摘のとおりいろいろな省庁が関係してくるわけでございますけれども、そのうちで国内法令上の措置がどうも必要ではないかと思われる大きな点がまず三つございます。したがいまして、その三つについて御説明申し上げます。  一つは国籍法の問題でございます。これは御承知のとおり日本の父系主義から父母両系主義への改正、それから帰化条件を男女同一に改めるということ、これが国籍法の点でございます。  それから第二に、男女同一の雇用の機会を確保するための労働雇用分野においての立法その他の適当な措置をとること、あるいはこの関係で女子の権利を制限するなど女子にとり差別となるような労働関係法令を改めること、この二点、これが第二点でございます。  それから第三点が、同一の教育課程への機会並びに教育における男女の役割りについての定型化された概念の撤廃を確保するための学習指導要領における家庭科等の取り扱い、ここを男女同一に改める。この三点が非常に大きな点でございます。  なお、このほかにも、社会保障関連規定などにおきまして男女の取り扱いを異にしておる規定があるわけでございまして、これらにつきましても、本条約の批准に際しましてどうすべきかという点については目下検討しているところでございます。
  278. 土井たか子

    ○土井委員 それは、どういうところが問題になっているかはもう言われて久しいのですよ、遠藤さん、いまあなたがおっしゃったようなことは。いま作業の上で非常に難儀を来している——留保なく批准することが好ましいと大臣おっしゃるけれども、八五年が国際婦人年の十年目なんですよ。どの省庁に聞きましても、八五年までに批准することが好ましい、それに向けて努力しております、こういうことですけれども、八五年が来まして留保なしで批准ができるかどうかということ、そのための努力をしているとおっしゃるけれども、その点でいま一番努力が問われているのは一体どの点か聞いているのです。つまり、立ちおくれがあって、それに対して手直しをすることは非常にむずかしいということが言われているのはどの点でしょうか、率直に言ってくださいと言っているのです。
  279. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先ほど私が指摘いたしました三つの大きな点につきましては、国籍につきましてはいま検討されていると承知しておりますし、恐らく一番大きな問題となるのは第三点に申し上げました教育、学習指導要領と申しましょうか、その点ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  280. 土井たか子

    ○土井委員 外務省としては、この条約批准に向けての主管省でございますから、文部省に対しまして督促をされていると思いますけれども、どういうことをおっしゃっていますか。
  281. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  いま私ども外務省がやっておりますのは、まずこの条約の解釈の確定、これは実はなかなかむずかしい作業でございますが、この解釈の確定をやっておりまして、これは実はほぼ固まりつつある状況でございます。  それと同時に、関係の省庁につきましては、先生御指摘のように、これは総理大臣を長とします婦人問題企画推進本部で八五年の暮れまでに、それもできればそれ以前の早い時期に本件条約の批准をするという申し合わせをしておりますので、あともう時間も余りございません。したがいまして、文部省あるいはその他の関係省庁に対しましては、いますでにいろいろな協議を重ねておりますし、今後時間のファクターも考えながら最大限の努力をしてまいりたいと思っております。
  282. 土井たか子

    ○土井委員 解釈の確定とおっしゃっているのはどの部分の解釈ですか。
  283. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 これは雇用の問題あるいは教育の問題あるいは社会保障の問題、すべてについての条約全体に対します解釈の問題でございます。
  284. 土井たか子

    ○土井委員 いまの御答弁では御答弁にならないですね。すべての解釈なんて、それは八五年までにやっていたらそれだけでも時間が足りないですよ。どういうことをおっしゃっているのですか、それは。解釈とおっしゃる以上は、解釈をする対象があるでしょう、具体的に。それをおっしゃってくださいよ。
  285. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  解釈の問題だと申しますのは、たとえばこの条約にございます「差別」とは何ぞや。ちょっと具体的な例で申し上げますと、既存の法律をとりました場合に、たとえば一見女子保護というようなことになっておっても、果たしてそれが本当に実態的な効果としまして女子保護になっているのか、あるいはむしろ保護よりも差別の方に働いているのではないか、こういうふうな問題もあるわけでございまして、そういった観点からこの主な項目につきましての解釈を固めつつあるわけで、これはできました暁にはまた御相談させていただきたいと思っております。
  286. 土井たか子

    ○土井委員 できた暁というのは、それはどれぐらいのときにできるのですか。
  287. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 いつということは申し上げられないのでございますが、そう時間がかかる問題じゃございません。
  288. 土井たか子

    ○土井委員 そう時間がかからないというなら、それはいつごろというのは言えるのじゃないですか、遠い将来なら言うことはむずかしいけれども。いつごろですか。
  289. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほど申し上げましたようにいつとはお約束できないのでございますけれども、非常に近い将来に確定できると思っております。
  290. 土井たか子

    ○土井委員 遠藤さん、こういうやりとりを何遍もやるなんというのは私は本来やりたくないのですよ。だけれどもあなたの答弁を聞いていると、そうでございますか、では次にとはとても言えない。ことし何年です、八三年でしょう。八五年が十年目なんですよ。いままだその解釈について云々やっている段階だということを聞かされますと、これはいっその決着をおつけになるかということをはっきりしておいていただかないと、それから作業が始まるのですからね。今年度中に必ずその解釈に対してはきちっとした中身が出ますか。
  291. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 八五年までに本件条約を批准しなくてはいけないというタイムファクターはもう十分認識しておりまして、私が申し上げました解釈確定等々というのは、そんなことし中なんという話を申したわけではなくて、ここ一両月というわけにはいきませんけれども、大体それぐらいの見当でいたしております。
  292. 土井たか子

    ○土井委員 一両日中という見当でやっていらっしゃるわけですか。
  293. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 一両月でございます。
  294. 土井たか子

    ○土井委員 なるほど、一両月中ですか。まあ遠藤さん、そうもったいつけなさんなよ。一両月中というと七月までに出ますね。
  295. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そのように努力いたします。
  296. 土井たか子

    ○土井委員 この条約の三十五条を見ると私はちょっと気になることがありますから、さらにお尋ねをしたいと思うのですが、「領事機関が無線送信機を設置しかつ使用するには、接受国の同意を得なければならない。」となっているのです。日本で電波法の改正が問題にされているということを私たちは見聞いたしておりますけれども、現状はどのようになっておりますか。
  297. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 昨年わが国の電波法が改正されまして、本年の一月一日から、外国の外交領事機関がその公用に供する無線局を相互主義により設置できるようになったわけでございます。そういうことでございますので、従来その面での制約がございましたのは、相互主義にのっとる限り認め得るということになったわけでございます。
  298. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、その相互主義という点からすると、外国に日本が設置しようというときには、日本は電波法の第五条というのを変えなければどうにもならないのじゃないでしょうか。だからそういうことからすると、電波法の改正問題についてにわかにこれが問題になって作業が進められているということを私はかいま聞いているのですが、具体的事実としてそういうことがありやなしや、またあったとするならば、そういう作業が現にどこまで進んでいるかということもひとつあわせて聞かしていただきたいと思います。
  299. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいま申し上げました趣旨は、まさにその点の改正が昨年行われて、現在可能になったということを申し上げておるわけでございます。
  300. 土井たか子

    ○土井委員 そうですが。可能になったとすると、日本としてはその後どことどこの国にこの送信機を設置したかという問題が具体的に出てきていると思うのですが、その後どういう国にそういう作業を展開されましたか。
  301. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもとしてもまさにこの電波法の改正をお願いしたのは、国により任地によって無線を必要とするところがある、その場合に、やはりこちらが認めなければ向こうに認めさせることがむずかしいということでやったわけでございまして、現実にわが方の無線機械を設置しておるところがあるわけでございます。  ただ、まことに申しわけないのでございますけれども、そういうのはどういうことで設けるかと申しますと、本来商業用の回線を使っておる。大部分専用回線でございますけれども、それがいろいろなことでどうもちょっと不安心であるという第二の構えとして無線を置くわけでございます。どうしてその第二の構えが必要になるかということになりますと、これはやはりいろいろな理由があるわけで、そうなりますと、国名を挙げるということはこういうところではいささかはばかられるように思いますので、御勘弁をお願いしたいと思うのでございますが、それなりに活用させていただいて、その第二の構えを十分にしくことができるということになっております。
  302. 土井たか子

    ○土井委員 反面、日本に対して無線送信機を設置するということの要望が従来からあったと思いますけれども、それに対してよろしいですと日本側が言われた件数はふえていっておりますか。現にどれぐらいありますか。
  303. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 申しわけございませんが、大使館につきましては承知しておりません。領事条約についての審議でございますので、領事関係についてだけ数字が上がってきておりますが、これはゼロ、いまのところ領事機関からはそういうものはないというふうに承知しております。
  304. 土井たか子

    ○土井委員 さて、先ほど大臣が少し退席されました間にお聞きしたいことを後に置いていたことと、あと一点、これは国籍法にも関係をする問題でございますけれども、事、教育問題に関することでありますから、これもひとつ大臣の御所信を聞かせていただきたい。この二点を申し上げたいと思うのです。  日本がこのウィーン条約というものに、署名はいたしておりません、加盟をすることにかなり長い時間おかけになって成り行きをずっと見守られたといういきさつがあることをお尋ねを進めてまいりますと、従来の国際慣習の中では確立されていない部分についてまでも特権、免除というのがこの条約の中にあるところが非常に気にかかるというふうなことをおっしゃって、それはたとえばどういうところですかと申し上げたら、名誉領事の問題であるということも御答弁の中でおっしゃっていただけたわけです。  この名誉領事というのは、本来はやはり一国の名誉領事にとどめるべきであって、二国、三国それぞれ務めるということは私自身は好ましくない話だと思っているのです。二国にわたる名誉領事これはあるのかどうかわかりませんが、場合によったら三国にわたるような名誉領事というのは本来好ましくないと思われますが、大臣、どうお考えになりますか。
  305. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 おっしゃるように、二国とか三国にまたがるというのはできるだけ避けるべきではないだろうか、こういうふうに思います。
  306. 土井たか子

    ○土井委員 現地から、名誉領事として任命をされている方々にどういう方がおありになるかということは外務省としては掌握なすっていると思いますが、これは全部御存じでしょうね。
  307. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 ただいまの御趣旨は、日本において名誉領事として任命されておる者ということでございましょうか。
  308. 土井たか子

    ○土井委員 外国から名誉総領事並びに名誉領事として任命されているということです。
  309. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 もちろん名誉領事を任命します前に外務省に同意というようなものを求めてまいりますので、すべてこれを把握いたしております。
  310. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、現在名誉総領事並びに名誉領事というのは二国兼ねている方があることも外務省としては御存じですね。
  311. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 わが国におきまして、二国から名誉領事を委嘱されているケースが三件ございます。私どもその点について把握いたしております。
  312. 土井たか子

    ○土井委員 そういうときには、いまの外務大臣の御答弁からすれば、本来は好ましくないというふうな意思表示を外務省としてなさることができるのかできないのか、なさることができるにもかかわらず黙っていらっしゃるのか、その点どうなんです。
  313. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ウィーン領事条約上は、第十八条におきまして、「二以上の国は、接受国の同意を得て、同一の者を接受国におけるそれぞれの国の領事官として任命することができる。」と書いてございますので、これは当然名誉領事にも当てはまる規定でございますので、同意を得れば二以上の国が同一人を名誉領事に任命するということは可能でございます。
  314. 土井たか子

    ○土井委員 可能であるか可能でないかという問題と好ましいか好ましくないかというのは別問題だと思うのですね。しかし、私が先ほど聞いたのは好ましいかどうかという問題をお尋ねしているのです。  これは、本来はやはり好ましくないというお考えが奥にあって御答弁をいただいたわけです。だから、そういうことからすれば、可能であるから何でもやってよろしいということにはならないだろうと思われるので、その間その辺の外務省としての対応、いままでどういうふうに対応なさってきたか、三件あるのだそうですから、三件に対して対応をどのようにお進めになったか、それをちょっと聞かしておいていただきたいと思うのです。
  315. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私は、大臣の御答弁の趣旨は実はわが方が任命する名誉領事のことかというふうに考えておったわけでございまして、その場合には私どもとしてはほかの国の名誉領事なり総領事をすでにやっておる人は任命しないというようなことを一つの方針にしております。外国の場合は名誉領事、総領事に与えられております権限などがそれぞれ異なっておりまして、二つ以上を兼ねることがいいか悪いか、その場合場合にもよりましょうし、それが私どもから見て何か外交上特に不都合が生ずるというような場合には、拒否するといいますか、一つのケースになり得る、そういう場合にそこまで兼ねておっていいのかなということは一応のチェックポイントということとしては見るわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように名誉領事に与えておる任務、権限が各国それぞれ違いますので、いままでのところ、そういうことで具体的に不都合であるということが生じたケースはなかったということでございます。
  316. 土井たか子

    ○土井委員 具体的に不都合だということが生じたら、これは大変なんです。そのときになってどうこうといったって実は事後処理にしかならないと思うのですが、私も名簿をずっと見ておりますと、財界の方であるとか経済活動をなさっていらっしゃる方であるとか、そういう方が大半ですね。中にはわけても二国にまたがる名誉総領事、名誉領事という方が先ほどの御答弁では三例にも及んでいるということが言われているわけです。これは他の国から言われてきた場合には、どうもこれは不適当だというふうなことを認識して取捨選択というのは、こちらには一切ないわけですか。
  317. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 実際にいろいろなケースがあろうと思うわけでございますけれども、権限としてもちろん拒否することはできるわけでございまして、実際にはそういうことを正式に接受を求めてくる前にいろいろな段階で意見交換が行われるというのが普通であろうというふうに思っております。それで、先ほど申し上げましたように、二つか三つ兼ねておるというような場合には、一つのチェックポイントで不都合なことがないかという、特にその観点からは検討するわけでございまして、実際にその通告を受ける前に相談を受けることが普通でございますので、友誼的なアドバイスとしてどうかという問題提起をしたりすることは当然あり得るわけでございます。ただ、やはり名誉領事の任命というのは派遣国の方の権限でございますので、私どもの方として格別の不都合がない限りは、拒否するには相当の理由がなければならぬということだろうと思います。
  318. 土井たか子

    ○土井委員 これは非常にむずかしい問題ですけれども、しかし何といってもこれは特権がありまして、たとえば公文書に対して不可侵だとなっていますが、公文書と私文書とのけじめというのはだれが点検するのかというのはこれまた問題であります。それからまた関税上の特権というのがあったりしますから、これを利用して経済活動というものが大いになされるというふうなことに対して、絶対ないという保証はこれまたむずかしいわけですから、そういうことからするとこれは非常に微妙な問題だと私は思うのですね。特権というのが善用されるという前提でこれは認められている制度であるということは言うまでもありませんけれども、しかしそういうことに対しての何かけじめをつけた上での保証といいますか、そういうことはどのようにお考えですか。
  319. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私、すべての事例を当たっておりませんが、現在外国から任命されておる名誉総領事、日本に駐在しておりますのはすべて日本国民ではないかと思うわけでございますが、その場合には今回のウィーン条約によりましても、第七十一条によりまして、接受国の国民または接受国に通常居住する者につき特権を制限する規定というのがございます。従来からもわが国国民である名誉総領事には格別の特権を認めてきておりませんし、今回のウィーン条約上も非常に限られた狭い範囲の事項についてたしか裁判管轄権の免除が認められておるということにとどまっておると思いますので、そういう点からの不都合はないのじゃあるまいかというふうに感じております。
  320. 土井たか子

    ○土井委員 それで、日本側からいうと、外国に対して名誉領事、名誉総領事というのを現在までのところは認めているのですか、認めてないのですか。
  321. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもも名誉総領事、領事を各国に任命いたしております。主として広報でございますとか、あるいは一般的な意味での在留邦人の保護に対する補助でありますとか、そういうことで大いに活躍してもらっておるわけでございます。
  322. 土井たか子

    ○土井委員 その活躍ということは結構なんですが、これは称号だけでなく日本について理解をしてもらうということも大変大切ですから、日本に来てもらっていろいろ実情に触れていただくということのための努力なり予算なりこれは考えなければならない課題として今後、いよいよこういう条約日本締結するということになると、出てくるであろうと思われますけれども、この点外務大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  323. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま官房長が言いましたように、名誉領事、総領事が諸外国にいて日本のためにやってもらっておるわけでございますが、今後とも活性化していくといいますか、日本人の在外活動というのも非常に活発になっておるわけですから、そういう意味での名誉領事等の活動にこれからも期待をかけていきたいと思いますし、そういう面で、これまでも大体五名程度は毎年外務省の予算で日本のために働いてもらっておる名誉総領事とか領事を日本に招待しておる、こういうことを聞いておるわけでございますが、こうした制度は今後とも生かしてまいりたい、続けてまいりたいと思います。
  324. 土井たか子

    ○土井委員 もう時間ですから、最後に一問大事なこと。  領事第一課からいただいた資料を見ておりますと、「海外子女教育関係予算政府原案」というのが出ているわけですが、それを見ますと「シドニー方式」と書いてあるのです。シドニー方式というのは何なのですか。どういう方式を指してシドニー方式とおっしゃっているのですか。
  325. 藤本芳男

    ○藤本説明員 これはかなり前でございますけれども、シドニーにおける日本人学校に対する校舎建設の際の校舎建設費用の半額に相当する金額を補助するというのをシドニー方式と言ってきておるわけでございまして、二十数校に対して適用されております。
  326. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、校舎並びに施設について国から半額補助が出る方式をシドニー方式と一般的に呼んでいらっしゃるわけですか。
  327. 藤本芳男

    ○藤本説明員 補助の形はいろいろございます。一番大きいものは文部省の予算で見ております教師の給与でございますけれども、外務省の予算では校舎の方の半額を見ておるというのがシドニー方式でございます。
  328. 土井たか子

    ○土井委員 半額あるいは七割、八割、海外における特に義務教育に当たるような教育課程での教育には熱を入れていただく必要があると思うのですが、ここで大臣に一言最後に申し上げたいのは、現行国籍法の関係もあるのですけれども、外国籍の人と日本の女性が結婚いたしまして、その間に生まれた子供は日本国籍を持ち得ません。たとえば西ドイツにおいて、その子供が西ドイツにある日本人学校並びに日本語の補習学校、準全日制学校等々に行こうといたしますと、日本人でないからだめだと言って断られたりするのです。これは母親からしますといたたまれない問題であります。断られることにいろいろほかの理由というのが出てくるかもしれませんよ。たとえば、受け入れ体制からしたら人員がオーバーしているから無理であるとか、財政は万事商社に依存しているということが理由としてあるからその商社の意向に従って考えていかなければ学校運営はできないのだとか、いろいろあると思いますけれども、こういう実情が海外の教育の中身にあるということに対して、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  329. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 日本人学校があるところの国の法制がさまざまであろうと思いますが、いまお話しのようなことは、私も外を回っておりまして聞いておるわけでありますし、また要請も受けておるわけでございます。これについては、学校の運営の立場もあるわけですけれども、またいまお話しのように現地の日本の企業等が学校運営に対してもいろいろと協力等もしていることは事実でございます。しかし、余裕があればこれは受け入れるべきじゃないか、できるだけ受け入れるように努力すべきじゃないかということは私も言っておるわけでございます。現地の方々もその点は十分理解しておる、そしてできるだけそういう方向に持っていきたいというふうなことも言っておられますので、そうした日本人学校に入りたい、しかしいろいろ法制的な立場、規制があってなかなか入れないという場合も本人あるいは本人の両親の希望が何とかかなえられるように外務省としてもできるだけの努力、指導といったようなことは今後ともやっていかなければならぬ、こういうふうに思います。
  330. 土井たか子

    ○土井委員 そういうことを大臣おっしゃるわけですから、それでは申し上げておきますけれども、かつてあった西ベルリンなんかの例を引き合いに出しますと、日本国籍を持っていない子供は受け入れないということが大きく新聞に取り上げられたのです。そこで、大あわてにあわてまして、領事館としてはこれに対して初めて御努力を願ったというようないきさつもあるようであります。アテネあたりではまだそういうことに対する取り扱いは十分いっているとは言えないような実情もあるようであります。大臣、一回海外の領事館を通じて学校の取り扱いがどういうことになっているか一斉点検していただきたい、そうしてそれが今後どういうふうに改善されるべきかという問題もこれを機会に当たっていただきたい、このように考えます。  最後になりましたけれども、いつも年度別にいただく領事第一課からの原案を見ておりまして、またここにも小冊子がございますけれども、「子女教育」と書いてあるのです。これはどういうふうに英語にトランスレートされるのですか。何の気なしにみんな使う言葉ではあるようでありますけれども、子女教育と言われるのは表現からしたら私はどうも気にかかる。これは、外務省が率先してこのあたりの姿勢を正していただく必要があるように思いますが、どうでございますか。
  331. 藤本芳男

    ○藤本説明員 この「子女」という言葉につきましては、日本で昔から、かつ広く使われている言葉を慣用的に使った、こういうことでございます。
  332. 土井たか子

    ○土井委員 それは、いま私が言っていることに対してのお答えにはなっていないのですけれどもね。
  333. 藤本芳男

    ○藤本説明員 どういう表現が適切かについては、検討してみたいと思います。
  334. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。ありがとうございました。
  335. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、玉城栄一君。
  336. 玉城栄一

    ○玉城委員 国際コーヒー協定ジュート協定、小麦協定、国際博覧会条約、領事条約合わせて五つの条約、協定について一括して質疑をさせていただきたいと思いますが、最初に領事条約について数点伺っておきたいわけです。  まず最初に、わが国とアルゼンチンとの領事関係の現状を御説明いただきたいと思います。
  337. 藤本芳男

    ○藤本説明員 わが国とアルゼンチンとの間には二国間の領事関係はございませんが、国際慣習法に従いまして、領事事務の遂行につきましてはケース・バイ・ケースで最善の努力をしておるということでございます。また、アルゼンチンにおきましては大使館があるだけでございますが、大使館の中の領事部が領事事務を遂行しておるということでございます。
  338. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この機会に関連して伺っておきたいのは、一九七〇年代にアルゼンチンにおいて大量の人々が検挙をされていまもって行方不明、大きな国際的な人権、人道問題になって、もちろんアルゼンチン政府に対して非難がされているわけですが、その大量に検挙された中に日系の方々、沖縄関係の方々がいらっしゃるわけですが、その実態についてどういう調査をし、どういうふうに掌握をしているのか、お伺いをいたします。
  339. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えいたします。  現在、アルゼンチンのいわゆる行方不明問題という事件の中に少なくとも十名日系の方がおられまして、そのうちの三名は日本の国籍もお持ちであるというふうにわれわれは調査の結果見ております。そしてこの行方不明問題が発生いたしましてから、昭和五十一年、まず大使館からアルゼンチンの政府に対しまして実態の調査等を要請いたしましたけれども、続きまして五十四年、五十六年また今年に入りましてからまず二月に、その後何ら進展が見られないけれどもどうなっておるのかと、引き続き鋭意調査方を要請したわけでございます。ところが、この四月二十八日、アルゼンチンの軍事評議会におきまして、いわゆる最終文書というものが出ましたので、わが方としましては、この最終文書にもかかわらず、現在行われているはずの調査をさらに鋭意進めてもらいたい、そしてできるだけ早くその結果をわが方に知らしてもらいたいということを申し入れた次第でございます。それに対しましてアルゼンチンの外務省は、最近の例で申しますと、一番最後の五月のわが方の申し入れに対しまして、日本側のおっしゃるような問題特に日本側のこの問題に対する関心といいますか、それはやはり重大な人道問題としてアルゼンチン側も理解するのでできるだけ早くお答えしたいとまず答えまして、その第二弾といたしまして、この最終文書にもかかわらず、現在行っております調査というものは続けて行う、それでその結果につきましては判明次第できるだけ早く日本側にお答えしたいというような回答が来ております。
  340. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題についていまのお答えに、五十一年、五十四年、五十六年、ことし二月、アルゼンチンの政府に要請して、進展が見られない、それでただいま四月二十八日に向こうのアルゼンチン軍事評議会の最終文書というものの報告があった、それについて政府としていまおっしゃったようなことをされたということなんですが、アルゼンチン軍事評議会、その報告書の概要をちょっと御説明いただきたいのです。
  341. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 お答えします。  この文書は、四月二十八日、「反テロリズム戦争に関するアルゼンティン軍事評議会の最終文書」、こういう題で発表されました。そしてその文書は全国のテレビ、ラジオを通じて報道されたわけでございます。  要旨を申し上げますと、軍部は、当時の政府、すなわちイサベル・ペロン大統領の政府でございますが、の命令によってテロリストとの戦闘に乗り出した。テロリストに対処する上で軍部・治安当局側の取り締まり活動に行き過ぎがあったかもしれないけれども、全体としてこれらは正当な軍務の遂行として行われたものと認められる。行方不明者にはテロリストグループ内の粛清などによって死亡した者もあり、また多くの者が軍隊との戦闘において死亡したと認められる。現在、消息のわからない行方不明者は、国外逃亡者及び潜伏している者を除き、全員死亡したものとみなされる。こういう結論になっております。
  342. 玉城栄一

    ○玉城委員 先ほどのお答えで日系関係の方々というのは十名とおっしゃいましたが、これはどれぐらいの行方不明者がいらっしゃるのか。そこで、ちょっといまの報告の内容で、行き過ぎがあったかもしれない云々ということは、当時の逮捕した軍部だとか治安当局の行き過ぎがあったというのはどういうことなのか。いまもって全然行方がわからない、伝えられるところによってはあるいは虐殺された疑いもあるとか、特に関係者はいろいろ心配しておりますが、その辺をもう少し御説明いただきたいのですが。
  343. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 一体行方不明者が何人いるかということにつきましてはいろいろな説がございまして、はっきりした数字はなかなかつかみにくいのでございますけれども、その規模をあらわすものとしましては約七千人から一万五千人くらいが対象になっておるのではないか、こういうように一般に言われております。そして、軍部がその対処上行き過ぎた点があるのではないかという点につきましては、どういつだ点が行き過ぎであると認められているのかということまでは具体的に述べられておりませんけれども、戦闘におきまして必要以上に過大な反応をしたといいますか、武力の行使において行き過ぎが認められたということが一般に意味されておるというふうにわれわれは解釈しておるわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、アルゼンチンでわが方の大使館等に協力要請があった人たち及びわが方で聞いたりなんかした結果、いまのところ大体十名ということでほぼ考えられておるわけですが、果たして全くこれだけで、これ以上の者はないと断言できるかと言えば、それはもちろん事件の性質上断言はできませんけれども、一般にこの十名というのはここ何年間にわたりまして問題になっておりまして、そのほかの要請とか問い合わせ等々がございませんので、いままでのところはこの十名というのは少なくともまず解明すべき問題であろう、こういうふうに考えております。その十名が、先ほど申しましたいろいろなカテゴリー、たとえば行方不明なのか潜伏しているのかということはいまアルゼンチン側にわが方が照会している内容のもちろん一部をなす問題でありまして、現在のところはその十名に関してどういう状況にあるかということは判明していない情勢でございます。
  344. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、この報告書、行き過ぎがあったということ、過剰な武力の行使等、殺害ということも含めていろいろ言われているような憂慮すべき状態だというふうに受けとらざるを得ないわけですが、七千名から一万五千名ぐらいだとおっしゃいましたけれども、関係国、たとえばイタリアとかフランス、スペイン、この報告書に対してどういう反応を示したのか。そして、アルゼンチン政府はどういうコメントをしたのか。
  345. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 一番多くの人が関連しているアルゼンチン以外の国といいますとイタリアでございまして、イタリア国籍ないしはイタリア系の人が非常に多くこの事件に絡んでおる、こう見られておるわけでございます。それで、この最終文書が出ました後、イタリアの大統領がまずアルゼンチンの大統領に電報で抗議いたしましたけれども、アルゼンチン政府はこれを内政干渉であるということで反駁しております。イタリアのほかにはフランス、スペイン、米国等がございますけれども、フランスは外務省がアルゼンチンの代理大使に対して、フランス人は大体十五名と言われておりますけれども、その解明の努力を引き続き怠らないでほしいということを申し入れております。これに対してアルゼンチン側が具体的にどういう内容の回答をしたかということはわかっておりません。それからスペインの人も多いわけでございますが、いまのところ私どもが承知している限りでは、スペインの外務省のスポークスマンがスペイン系の行方不明者の調査を引き続きやってほしいということを発言しております。米国におきましては国務省のスポークスマンが、米国政府は同問題に対する疑問点が解明されることを希望する、しかしこれはアルゼンチン国民みずからが解決すべき問題と考えるという談話を発表しております。
  346. 玉城栄一

    ○玉城委員 それでは、わが国政府としては先ほどお答えがありましたとおり、これは最終的なものなのかどうかということをおっしゃいました、そして引き続きこの実態を調査してもらいたいという内容、そんなふうにおっしゃいましたですね。それで、向こうの政府は、日本の政府の立場をよく理解できるので、関係方面に伝えたいというようなことを言ったということですが、それはどういう関係方面にどういうことを伝えるということなのか、その辺、どのように受けとめていらっしゃるのか。
  347. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 この文書の中自体には、最終文書というのは表題にも載っておりますし、内容にもそのように書かれておるわけでありますが、日本政府といたしましては現在まだ、先ほど申し上げましたように少なくとも十名の人に関しまして解明を要するということでございますので、従来から行われているその調査を鋭意促進してもらいたい、その結果をできるだけ早く知らしてほしい、こういうことを言ったわけでございます。それから向こうは、では、関係者に日本側の申し入れがあったということを伝えて、どう処理したらいいかということについて協議をするということで、先ほど申し上げたような答えぶりになったと思うのですが、一番最近の向こう側の回答によりますと、政府部内で従来行われてきた調査は、今回のあれでやめるわけではなくて、まだ解明するための努力は続けるのだ、それで政府部内でその調査に当たっている部局は日本側の再度の要請の次第は十分心得て、それで調査を継続しておる、したがって、結論が出次第、日本側に回答することにしたい、こういう回答が来ております。
  348. 玉城栄一

    ○玉城委員 出たら、早急に日本に回答したいということですが、これは四月二十八日にこういう報告書が出て、その後、大体いつごろというふうに見ておられますか、向こう側の回答は。
  349. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 先ほど申しましたように、一番最初にわが方が要請いたしましたのは五十一年でございまして、それが現在までまだ具体的な回答が来ていないということは、わが方としても遺憾と思っている次第でございますが、今回のわが方の要請に関しまして、アルゼンチン側がいつ具体的な答えができるかということはなかなか予測できがたい、こう思っておりますけれども、この問題は非常に人道問題として重要な問題であるとわれわれは考えておりますので、必要に応じましてアルゼンチン政府に督促をしていきたい、このように考えております。
  350. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、先ほどお話のありましたイタリアの場合は、大統領みずからが電報で厳重に抗議をしておるわけです。これは日系の方々も十名という、それ以上あるかもしれませんが、一般的に十名ということですが、テロリストとか、いろいろなそういうことで逮捕したようですけれども、実際はボランティア活動とか、そういう全然政治にかかわりない人も含まれていると関係者はそういうことを言っているわけです。ですから、逮捕されて、裁判も何もされずにいまもって行方不明、あるいはもう殺害されたのではないかという疑いが非常に濃いわけですね、そういう状態の中で、いまのようなことではなくてもっと厳重に、どういうことになっておるのか、抗議をきちっとやらない限り、この問題は一向にらちが明かないと思うのですが、いかがですか。
  351. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 わが方としては、できるだけこの問題に関してはわが方の重大な関心を先方政府にも伝えまして、速やかな解決を図りたい、こう思っておるわけでございます。それで、先生もおっしゃいましたように、向こう側に言って関心を表明するだけではなかながらちが明かないんじゃないかということで、そういう面もあるかと思いますので、われわれとしてもいろいろその親族の方とか、関係者とも話し合って、その事態のできるだけ速やかな解決を図りたい、こう思っておるわけですが、政府の調査する中に、人身保護令に基づく調査が行われているわけでございます。特に、先ほど先生が申されましたような人道的な見地も取り入れましてそういった調査も行われているとわれわれは理解しておるわけでございますが、調査いたしましたところ、そういった人身保護令に基づく調査をアルゼンチン側に要求していない関係者もございまして、これらに対しましてはわが方の大使館からも意見を述べまして、そういうことはやはり人身保護令に基づく調査関係者の方から直接要求するのが事態解決を促進する道であろうと申しまして、現在は先ほど申しました十名の件に関しましては、すべて人身保護令に基づく要請が、これは関係者がすることになりますので、関係者から要請が出ておりまして、アルゼンチン政府はそれに基づく調査をしており、その結果わかったことは、外交チャンネルを通じてわが方政府にも報告がある、こういうふうに了解しております。
  352. 玉城栄一

    ○玉城委員 これは局長さん、いま関係者から出ていないという話ですが、このことについて関係者が現地で言うことについては、非常にそれによる何らかの影響が出てくるという可能性が強いわけですね。ですから、とにかく黙っていなくちゃいかぬ、一言でもこういうことを言うと、今度はいろいろな累が及んでくるということもありまして、これはおっしゃるようなこともあると思うのです。そこで、これは政府が本当にきちっとやらないと、これはもう非常に——ですから、そういう家族の方とか親戚の方とか、あるいは沖縄にもそういう関係者がいるわけですから、そういう方々がどうなっているか心配だ、調べたいということについて政府もいろいろな形で便宜を与えるということは、当然やっていただかなくちゃいかぬと思うのです。それでいま、そういう関係者についてこの件によっていろいろな、弾圧と言ってはなにでしょうが、そういう形の影響が及ぶということが絶対にないようにということは、きちっと向こうの政府に言わなくちゃいかぬと思うのですが、いかがですか。
  353. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 まことに先生のおっしゃるとおりでありまして、非常に大きく言えば、たとえば日本政府の行動に関しましても、これは人道問題としてわが方が調査要求し、重大な関心を示すということは、先ほど申しましたように、アルゼンチン政府の方も理解しておりまして、それに応じてできるだけ早く実態を解明したい、こう言っておるわけでございますが、たとえば下手に行き過ぎたことをしたりいたしますと、内政干渉というようなことで逆効果を生む嫌いもございますので、そういうことは避けるというのもございます。しかしまた、その関係者が非常に心配しておられるということは、当然われわれも非常に同情している次第でございまして、先ほど申しました人身保護令のことにつきましても、そういった要求をすることによってその当事者に何らかの迷惑がかかるということは絶対にないように、わが方としても関心を表明しておりますし、われわれの理解する限り、現在までのところアルゼンチン政府はそういった要請がなされるということにはもちろん理解を示しているようでございまして、そういった事態は起こっておらないわけでございますが、日本政府といたしましても、今後とももちろん行方不明者の実態を解明するということも必要でございますし、その実態解明の途上においてその関係者が迷惑をこうむるようなことがもしありますと、これは非常に困ったことでございますので、そういうことは絶対にないように、われわれとしても十分留意してやっていきたい、こう考えております。
  354. 玉城栄一

    ○玉城委員 この問題は、最後に強く要望しておきたいことは、現在、日本とアルゼンチンは歴史的にも緊密な友好関係にあるわけですが、今後もそれは発展させなくちゃいかぬという大事な関係からしても、やはりこれは向こうも触れたくない、あるいは皆さん方は余り触れたくない、そういうことでほおかぶりする。そういうきちっとしなければならぬ問題——ですから、どうならどうという事実関係を明らかにして、何らかのきちっとしたものを早くしていかないと、このままということはもう許されないと思うのですね。ですから、その点は強く要望しておきますが、局長さん、いかがですか。
  355. 羽澄光彦

    羽澄政府委員 まことに先生おっしゃるとおりでございまして、この問題がこじれたり、あるいは非常に長くわだかまりとして残るようなことがありますと、先生がおっしゃいましたアルゼンチンと日本との伝統的な友好関係そのものにひびが入るという危惧もあるわけでございまして、できるだけ今後この問題を解明し、両国間の伝統的な友好関係をさらに促進する上に何らの支障とならないように願ってわれわれはやっていきたい、こう思っております。
  356. 玉城栄一

    ○玉城委員 では次に、時間がありませんので、残っている四つの協定について一、二点ずつ伺ってまいりたいと思います。  最初に国際コーヒー協定ですが、この協定はこれを含めて四回の改定になるわけですが、八三年の国際コーヒー協定と現行七六年の国際コーヒー協定の主な相違点とそのメリットについて概略御説明いただきたいと思います。
  357. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  新協定と七六年協定との主要な相違点は三つございまして、第一点は、基本輸出割り当ての算出についてでございます。前協定では過去の輸出実績基礎とするということになっていたのに対し、新協定では初年度につきましては配分率を附属書に定める、その後は理事会が決定するという形になっているということ。それから第二点は、主要輸出国の取り扱いでございまして、その輸出割り当てを、従来の一定の自動増加というやり方から、主要輸出国全体で総輸出割り当て量の何パーセントを割り当てるという方式に変わったということ。それから三点目が、消費振興基金の利用についてでございます。これは従来、加盟輸入国における消費の振興目的ということになっていたものを、輸出国内における振興目的に使ってもいいということに変わった。それからそれに合わせて、資金の利用方法について二点ばかり制限がございましたけれども、その制限を外したということでございまして、これが主要な違いでございます。  第二に、わが国にとってのメリットということでございますが、基本的には前協定と同じ利益ということになると思いますが、要するに価格の安定を図るということは消費国にとっても利益になる。そういう点でわが国にとっても利益のある協定であると考えられるということでございます。
  358. 玉城栄一

    ○玉城委員 そこで、ほかの商品協定には緩衝在庫制度があるのですが、これにはない。これは何か理由があるわけですか。
  359. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  商品協定で価格安定を図るやり方は、非常に大ざっぱに言いまして輸出統制という形と緩衝存庫と両方あるわけでございまして、どちらをとるかということは、結局、輸入国、生産国それぞれがどちらを好むかということによって基本的に決まります。それから、両者を組み合わせるやり方もあるわけでございます。基本的に、緩衝在庫を置いた場合に非常に多くの資金を要するもの、それから、いろいろな種類の品質があって技術的にやりにくいという場合は、むしろ輸出規制を中心にするということが言えるのじゃないか、とりあえず気づく点を申し上げますとそういうことでございます。
  360. 玉城栄一

    ○玉城委員 次にジュートの協定です。この協定は本年七月効力発生を目標としておるわけですね。本協定は昨年の十月一日に締結をされたわけですが、現在署名国は日本を含めて六カ国にすぎず、締約国はいまだない。したがって協定の発効はしていないが、その見通し。これは早く発効させることが重要だと思うのですが、そういう外交努力はされているのかどうか。
  361. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  まず現状についてでございますが、明示的に御指摘がございませんでしたけれども、これは輸出国よりも輸入国の問題であろうかと思います。輸出国につきましては、バングラデシュが署名しておりますし、インドもそういう見通しがございます。そのほかもう一カ国入ればいいわけでございまして、輸出国の立場からすれば当然早くやりたいということになるので、問題は輸入国だろうと思います。輸入国につきましては、御指摘のとおりいまのところまだ署名しているのも六カ国という現状でございます。私どもの方では今度国会で御審議いただくに当たりまして最近の状況各国に聞いたわけでございますが、大体のところ主要国は署名の意向を持っているのではないかと思われるわけでございます。具体的には、パキスタン、EC、豪州、ソ連といったところが締結の見込みでございます。これは一部間接的な情報もございますが、そういう情報がございます。それからアメリカも締結の方向ということでございまして、大体アメリカ、パキスタン、ソ連、豪州、日本、この五カ国が締結すれば成立することになるわけでございます。はっきりとした見通しということになりますと、現時点では確実に七月一日に発効するということまで申し上げるわけにまいらないわけでございますが、いまのような状況でございますので、少なくとも暫定発効ということは考えられるのではないかというふうに考えておりますし、日本はバングラ等主要輸出国に対する関係からしましても率先締結に応じるべきものであるというふうに考えているわけでございます。
  362. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がありませんので次に移ります。次は国際小麦協定について伺いたいわけですが、アジア・太平洋地域の開発途上国が深刻な食糧問題を抱えていることは、国連食糧農業機関が発表した「二〇〇〇年の農業」の中で明確に指摘をされておりますが、経済大国としての日本が果たすべき役割りは、経済協力大国としての役割りを一層拡充することにあると思います。その中で、近隣の開発途上国に対する農業開発における経済協力のあり方を厳しくかつ積極的に問い直さなければならない時期にあると思いますが、いかがでしょうか。
  363. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  わが国の対外援助の実施に際しまして、農業開発等を重点分野としてまいっていること、先生御案内のとおりでございます。そこで、こうしたプロジェクトに対して協力いたすに際しましては、わが国といたしましては、先方からの真のニーズはいかなるものであるか十分聴取をいたしまして、先方とも十分意見交換を事前に行いましてやっているわけでございます。これまでの成果といたしましては、ほぼ先方の満足も得られるような結果になっているんじゃないかと考えております。ただ、これは私どもだけの一方的な評価ではいけませんので、最近私どもといたしましても、相手国と一緒になりましてわが国援助についての効果の評価ということをやっているわけでございます。  一例を挙げますと、たとえばバングラデシュでございますが、バングラデシュにおきまして農林省農業研究所に対しまして、ダッカの北方にございますところの園芸研究プロジェクト協力をした例がございますが、そういうところでは、わが方の協力の結果、これまで乾季にしか栽培できなかった野菜等が雨季を含めて一年じゅう収穫できるようになったというような成果もございます。  もう一つの例は、マレーシアでございますが、ペナン州の稲作機械化訓練センター、これにもわが国技術協力をしてまいりましたが、これは、わが方が訓練活動等一応の約束期間を終えた後にも引き続き先方で順調に運営して成果を上げているというような例もございますので、私ども、決して自己満足だけではいけませんが、先生のおっしゃいますように、厳しく見直しもしながら引き続きこの面の協力を進めてまいりたい、このように考えております。
  364. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまの小麦協定のことでもう一点だけお伺いしておきたいのは、途上国から、軍事費を食糧援助に回せ、回すべきであるとかいうような、いろいろな先進国に対する批判を含めて要求があるわけですが、そういう中でアメリカがアジア開発基金の拠出金を大幅に削減していきたいという方針であるというようにも承っているわけですが、そういう場合に、わが国としてこれを肩がわりしていくのか、あるいはアメリカの方にそういうことをしては困る、従来どおりきちっと出してもらいたいというふうにやっていくのか、その辺は何らかの方針を持っていらっしゃるかどうか、いかがでしょうか。
  365. 木幡昭七

    ○木幡説明員 このアジア開発基金へのアメリカの拠出問題でございますが、若干事実関係を簡単に御説明させていただきたいと思います。  アジア開発基金の第三次財源補充決議はすでに昨年の七月総務会により採択されまして、本年四月に発効しているわけでございます。米国が、この財源補充決議に定められた自国の拠出額を削減するというふうなことは実は私ども聞いていないわけでございますが、この点に関しましてもうちょっと事実関係を続けて補足させていただきますと、アジア開発基金の第三次財源補充につきましては、当初の案といたしましては、補充規模を四十一億ドルということを事務局は提案したわけでございます。これに対しましてアメリカは、拠出国の会合におきまして四十一億ドルにするという規模の問題につきまして終始反対、消極的な態度を示したということがございます。その結果、補充の規模が実質的には伸び率ゼロになったというような事実関係がございます。決まったことにつきましては、アメリカが削減するとか、あるいは日本がその肩がわりをするとか、そういうようなことにはいまのところなっていないわけでございますが、その拠出国の会議におきましてそういうことがあったということであろうかと存じます。
  366. 玉城栄一

    ○玉城委員 いまのお話は、アメリカは減らない、減らさないということで理解していいわけですか。
  367. 木幡昭七

    ○木幡説明員 拠出国会合において正式にアメリカが約束した分について減らすことにはならないだろうということでございます。
  368. 玉城栄一

    ○玉城委員 今後もやはりその分担の拠出金、割り当て、きちっと決められたものについてはちゃんとアメリカはその義務を履行していく、それだからそういうことは心配するなということでいいわけですか。
  369. 木幡昭七

    ○木幡説明員 これはアメリカの政策の問題でもございますが、わが国はアジア開銀におきましてはアメリカと並ぶくらいの大きな拠出国でもございますので、十分アメリカの拠出の態度には注意を払い、正式に約束した分については拠出の約束を守っていただくというような話は引き続き緊密な連絡を保っていく必要があろうかと思います。
  370. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、国際博覧会条約の改正ですが、これは昨年だったと思いますが、この関係の審議もこの委員会でもあったわけですが、この条約で伺っておきたいのですが、現行条約が一九七二年に全面改正された大きな理由、目的は、一定の開催期間を設けて博覧会を権威あらしめ、開催国の財政負担を軽減することにあったことを顧みました場合、このたびのこの改正はそれと逆行していくのではないかという感じがするのですが、その点、いかがでしょうか。
  371. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  七二年の改正の趣旨はまさにただいま御指摘のとおりの点にあったわけでございますが、今度の改正につきましては、まず基本的な考え方を変えたということではございませんで、従来の原則、原則として十年の間隔を置いて一般博覧会を開催するという原則は原則としていままでどおり維持されるわけでございまして、その伝統的な考え方は変えないということをこの際コンセンサスでこの決定に当たって確認されているわけでございまして、今度の改正された点はそういうことであくまでも例外ということでございますし、やり方としても三分の二の多数決ということで、乱用されないようにという配慮は加えられているわけでございます。事柄といたしましては、フランス革命の二百年記念あるいはコロンブスの米大陸発見の五百年記念という非常に特別な事情についての配慮ということでございまして、実態的にもあくまでも例外的なものと考えられますので、逆行するといいますか、原則は変えない、あくまでも例外的なものであるということで受けとめているわけでございます。
  372. 玉城栄一

    ○玉城委員 最後に、これは、わが国も六十年に科学技術博覧会をやるわけですね。そういうこともあって非常に早手回しに今度はぱっと出してきたような感じがするのですが、そういう意味も含まれていますか、今回非常にてきぱきと国会に出してきているわけですから。
  373. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  正直に申し上げますと、そういう配慮もございます。実は科学万博の昭和六十年開催ということについては、これは国際的にはそう簡単な話ではなかったことは委員承知のとおりでございまして、実はこれはバンクーバーでカナダの国際交通博覧会というのが八六年、翌年に開催するということが先に決まっていたわけでございまして、その後から日本がその前年である一九八五年に科学万博をやるということを申し出たわけでございまして、その際はカナダを初めカナダといろいろ緊密な関係にある幾つかの国から科学万博反対という意見が非常に強く出たわけでございまして、そういうことで日本の構想自体がこの博覧会の国際事務局の総会で再検討しろと言われたことがあったわけでございまして、その後いろいろな経緯を経まして科学万博の登録ということまでこぎつけたわけでございますが、この過程で、御指摘のとおり、カナダもそうでございますが、アメリカとかフランスとかいろいろな国に対する非常に積極的な働きかけというものをやっているわけでございまして、そういう点も背景にあるということは事実でございます。
  374. 玉城栄一

    ○玉城委員 大変御苦労さまです。  以上で終わります。
  375. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、林保夫君。
  376. 林保夫

    ○林(保)委員 コーヒー、ジュート、小麦、博覧会、領事、五条約につきまして御質問いたします。  大臣にまずお聞きしたいのですが、外交を円滑にやるためには、こういうものが余りたまっておってはいけませんですね。そういうことで、私ども審議の促進ということでずっとやってまいりましたけれども、現在はどういう状況認識しておられますでしょうか。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 今回もこれを決着つければ本国会での役割りは私ども終わるわけですけれども、しかし、なおやらなければならぬ条約でまだ出し切れてないというようなものとか、これは協定調印上の手続などいろいろございますけれども、御就任以来どういう実感をお持ちでございましょうか。これを御質問申し上げるのも、三年前ですか、外務委員会資料要求いたしましたところ、もうたまりにたまっておる。いつもこれは審議未了になっている。背景に与野党伯仲があったかもしれませんけれども、そういう状況でございまして、外務委員会はそのことのために、一会期中四十二本も条約を上げるということでかなり協力したつもりでおるわけですが、現存大臣はどのように御判断なさっておられますでしょうか。
  377. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の国会は、おかげさまで大変な与野党の皆さんの御協力を得まして、条約関係法が非常に円満に審議が進みまして、いまおかけしておる案件が終了すれば、可欠していただければ、全体で外務省として今国会の一応の目的が達せられるわけであります。ただしかし、まだ各省と調整等で残っている案件はもちろんあるわけでございますが、これらの問題は、政府部内で一日も早く調整を終えまして、いずれ国会で御審議をお願いしなければならぬと思うわけでございまして、いずれにしても、大変な御支援、御協力をいただきましたことを大変感謝を申し上げておるわけであります。
  378. 林保夫

    ○林(保)委員 注文をつけるわけじゃございませんけれども、積極的に、そういう国際的な問題で解決しなければならぬ問題は、ぜひひとつ大臣御推進くださるよう厚くお願いもしておきたいと思います。  そこで、きょうの五つの条約でございますけれども、時間の点もございますので、ポイントを三つぐらいにしぼりまして御質問申し上げたいと思うのです。  まず一つは、食糧庁なりあるいは気象庁に聞いた方がいいのかもしれませんけれども、外務省は、外国に対するアンテナとして重要な役割りを果たしておられます中で、今日、これは国民的な関心とも言っていいわけですが、国内で米の倉庫が空っぽになってしまうというような状況、そしてそれについては大丈夫だという食糧庁の見解も過般の国会答弁の中で出ておったというふうに了承しておりますけれども、なお世界的な気象の異変、それからアメリカの大きな作付制限ですね、こういったものがやはり一体どうなるのだろうか、こういうことでございますが、外務省としてはどういう御判断を持っておられますか、まずその点を承りたいと思います。
  379. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のような気象上の異変が世界の食糧事情に大きな影響を与えるということは、当然私どもも農林省同様注意をしているところでございます。  それで、最近の事例では、たとえばソ連の四年続きの小麦の不作とか、あるいは昨年の豪州の小麦の干ばつによる被害、収穫がほぼ半減するという事情があったわけでございます。そういうことがそれぞれいろいろ影響を与えるということは当然でございまして、私どももそういう点については十分注意しなければいけないというふうに考えております。  それで、それでは結局全体としてどうかという点でございますが、いままでのところでは、局地的には異常現象が起こるわけでございますが、世界全体としての言うなれば同時不況的な全般的な干ばつとか異常現象というのは、少なくとも最近ではございません。全体としては非常に大きな問題ということにはなっていないというふうに考えております。  たとえば去年からことしにかけましても、豪州などのことはございましたけれども、アメリカやカナダの豊作ということがあったので、全体としては去年よりも三%穀物生産がふえている。在庫も去年よりか二〇%ふえているということがございます。それから、ことしから来年にかけてでございますが、いまのところありますのは、たとえばアメリカの農務省の発表というものが先般出たばかりでございますが、それではアメリカは、ただいま御指摘もありましたような現物供与、PIKの実施による減産というものが見込まれているわけでございますが、世界全体として見ると、前年度を若干下回るけれども、むしろ史上二番目の豊作ということになり、穀物の供給不足が生じるということは当面ないというのがアメリカの判断でございまして、大体そういうことが言えるのではないかというふうに考えているわけでございます。これはとりあえずの状況についての判断でございます。
  380. 林保夫

    ○林(保)委員 私が外務省に要望をしたいのは、さきの、十年前のエネルギー危機、オイルクライシスのときのことを思い出すわけですけれども、実態の需給以上にある特定の勢力、国際的なメジャーと言ってもいいわけですが、大きな石油資本が介在いたしまして、必要以上に事態を悪くしてしまったという印象を禁じ得ないわけです。そういった形で、次のターゲットが食糧だという本がいっぱい出ておりますね。そういうものに対して、やはり外務省はそれなりの情報なり何なりをわれわれにも提供していただきながら、国の食糧の安全、世界の食糧の安定の体制に寄与するという形をぜひとっていただきたい、こういう視点で実はお伺いしたわけでございます。  なお、御承知のように今回審議いたします食糧援助規約の中でも、発展途上国の食糧事情は、全体がいいにもかかわらず依然改善されていない。これらに対しましてわが国がどういう基本的な態度をおとりになるのか。そしてまた、所得の低い国がありますが、ここらにどういう配慮をおやりになるのか。そしてまた、日本の場合は日本米を中心に供与してきておりますが、一方、タイ、ビルマなどの発展途上国からの強い要請によってこれら諸国の産米も一部使っていると聞いております。その辺の実情をひとつ詳細に御報告いだだきたいと思います。
  381. 木幡昭七

    ○木幡説明員 お答え申し上げます。  まず、食糧問題についてのわが国援助についての基本的な考え方でございますが、これにつきましては、わが国といたしましては、開発途上国の食糧問題は、基本的には当該国の自助努力によりまして食糧増産を図るということによって解決を図るべきものだというふうに考えております。こうした観点から、わが国は開発途上国の自助努力を支援するということを目的といたしまして、肥料であるとか農薬であるとかあるいは農機具等の食糧増産に必要な資機材を供与してまいっております。特に昭和五十二年度からは、国会の御承認もいただきまして食糧増産援助という予算措置が認められました結果、開発途上国の農業開発を一層支援するということで効果的な援助ができることになってきております。  それから、所得の低い開発途上国との関係で、どういうふうに考えているかという御質問でございますが、ただいま御審議いただいております食糧援助につきましては、所得の低い開発途上国に対する援助を特に優先するということが一つございます。詳しく申し上げますと、世界食糧計画というものがございますが、そこで定めております食糧援助のための指針及び基準の中に、第三点といたしまして、所得の低い食糧不足国への供与を優先すべきことというのがございます。わが国といたしましてはこういう点に配慮いたしまして食糧援助を行ってきているわけでございます。  さらにはまた、第三点の先生の御質問でございますが、余剰米の問題さらには開発途上国産米の使用等の関連でございます。これにつきましては、わが国は食糧援助におきますその使用穀物につきましては、一方においては被援助国、受け取る方の嗜好、他方におきましてはわが国の余剰米処理の必要性、あるいは東南アジアにおきますタイ、ビルマ等の開発途上国からの自国産の米を使ってほしいというような要請等々、総合的に判断、勘案いたしまして決定しているわけでございます。御案内のとおり余剰米につきましては、わが国の余剰米処理の問題がございますために、五十四年度より日本米を食糧援助の中に含めて使用してきているわけでございます。しかし、この余剰日本米の処理期間は五十八年度をもって終了するという予定でございますので、わが国としましては、今後はタイ、ビルマ等からの自国産米の使用の強い要請に対して一層前向きにこたえる体制になれるのじゃないか、このように考えております。
  382. 林保夫

    ○林(保)委員 いまのタイ、ビルマなどについては、五十八年度以降大体どんな程度の規模で、どういうふうにやるかという構想はもうすでにできておるのでございましょうか。
  383. 木幡昭七

    ○木幡説明員 五十八年度の計画につきましては、関係省を含めて鋭意検討中でございまして、いまこの時点で詳細を申し上げるようなところまではまだ至っておりませんが、前向きにその辺の要請に対処してまいるという予定で打ち合わせ中でございます。
  384. 林保夫

    ○林(保)委員 ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  それから、国際ジュート協定に関連いたしまして、この意義は、私ども産地にも実際に、バングラデシュは見ておりませんけれども、ほかを見たりいたしまして、必要性ないし重要性を認めるのでございますが、でき方がややおくれたような感じが一つございます。どうしておくれたのかという点が一つと、もう一つ一緒に、IPC十八品目、既存協定以外のものでございますが、いまの交渉状況がどうなっておるか、二点お伺いしたいと思います。
  385. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  まず、ジュート協定の成立がおくれた理由でございますが、これはやはり、ジュートについてはどういう措置をとるのが最も適切かということについて、主として生産国とそれから消費国の意見が分かれていたからだということでございます。特に、ジュートというのは、ジュートそのもの、これはバングラが主で、それからジュート製品になりますと、これはインドでございますが、ジュートに対して措置をとるという場合、ジュートそのものとジュート製品とでやるべきことは同じなのか違うのかという問題もございます。それから緩衝在庫ということが考えられるのか、緩衝在庫というのは基本的には、長期的にはその市場価格に沿っていって差し支えないものの一時的な変動を抑えるということでございますが、ジュートについては長期的に価格低落傾向というのがありますので、生産国はその緩衝在庫をやりたいけれども、消費国としてはそれが適当かということで消費国の意見が非常に分かれまして、その中でバングラと関係のある国は何かできないかということをいろいろ考えて、いろいろな案を出したりしていたわけでございます。そういうことで、基本的には何をやったらいいのかということで、意見が分かれていたということがおくれた最大の理由でございます。  それで、結論的にはやはり緩衝在庫というものはむずかしいということで、現在のような協定案にまとまったわけでございます。これはこれでそのジュートの特性から考えれば一番適当な内容を持った協定ができたというふうに私どもは考えております。  第二に、一次産品総合計画、IPC十八品目のうち、すでに協定がないものの検討状況でございます。これは御承知のとおり砂糖、コーヒー、ココア、すず、天然ゴム、オリーブ油、ジュート、これら商品協定があるもの、それから現在御審議いただいているものでございます。それ以外のものといたしましては、熱帯木材について、ことしの春に一回目の交渉会議が行われまして、恐らくことしの秋にまた行われるということになると思います。そこでうまくいけば話が全部ついて熱帯木材協定が成立し、熱帯木材事務局、機関ができるということになるわけでございます。  それからそのほかの十一品目は、まだ予備協議の段階でございますが、このうちお茶、硬質繊維については商品協定を作成する方向で作業が進んでおります。ただ、お茶につきましては、生産国の間でいろいろ意見が分かれていたのが、従来なかなか作業が進まない理由になっております。これも昔からの伝統的な生産国と新興生産国の問題がございます。  それから硬質繊維もやはりジュートと似たように、何をやるのが一番いいのかということで、長い間なかなか結論が出ないで作業に時間がかかっているわけでございます。  そのほか、食肉、植物油脂というものについても協議がかなり進んでおりますけれども、現在のところは、恐らく新しい商品協定をつくるというところまではいかないのではないかという感じがするわけでございます。これは内容的にも開発途上国産品であると同時に、むしろ先進国産品という面も非常に強いわけでございます。むしろFAO等の既存の場で追加的に何ができるかというのが現在の考え方の大勢でございます。  これ以外に綿花、綿糸、バナナ、銅、鉄鉱石、マンガン、燐鉱石、ボーキサイトというものがあるわけでございますが、これらは大きな進展がございません。物によっては、どうやったらいいか具体的な対策が余り考えられないものもございますし、銅のように、本当は一番いいのは緩衝在庫だけれども、そのためには数十億ドルの資金が要るというようなものもございます。  そのほか一つ一つ見ていきますと、なかなか作業が進展しないというのが実情でございまして、全体を取りまとめますと、ただいま申し上げましたように、現在御審議中のジュートのほか、熱帯木材が当面非常に可能性の強いものであって、それ以外はお茶、硬質繊維等について、いずれ何らかの形の商品協定ができ上がる可能性があり、その他ははっきりとした見通しが立たないということでございます。
  386. 林保夫

    ○林(保)委員 けさほど審議いたしました対外援助のほかに、日本は資源のない国でございますだけに、こういう協定で日本が安定的な資源の供給を受け得る体制ができるのだとすれば、これはひとつぜひ進めていただかなければならぬ大きな課題だと思います。せっかくの御努力をお願いしたいわけでございますが、いまお話しになっておりました熱帯木材の件で事務局機関を設けるというお話でございますけれども、東京が非常に有力だという情報も私自身得ております。これの見通しはどうなのか。そしてまた、どれくらいのお金があったらこういうものができるものなのか。ほかの商品協定の事務局でも、何もよそへ取られることはないので、日本がこれだけの通信システムと計算システムを持っており、頭脳があるならば持ってきていいということも言えますし、私なりの持論でもございますけれども、どういう状況ですか。具体的にまとまるであろうことしの秋の結論を少しお話しいただきたいと思います。
  387. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  熱帯木材についてでございますが、成立する場合の事務局の問題につきましては日本が最初に立候補いたしまして、そのほかイギリス、オランダ、ベルギー、フランス、ギリシャと、全部消費国でございますが、その本部を誘致したいということで立候補しております。生産国は、一度ペルーだったかと思いますが、立候補いたしましたが、結局取り下げまして、生産国側からは全然立候補がございません。日本は熱帯木材の世界最大の消費国でございますし、かつ、日本が輸入しているものはその大部分が近隣のASEAN諸国で生産されたものであるということ、それから、技術的な面でも日本は非常に進んでいること、それから、日本がこれだけ国際社会に貢献しながら国際機関というものが案外いままで日本に本部が置かれていないということ、そういういろいろな点を考えまして、この熱帯木材協定ができました場合、事務局本部を日本に持ってきたいということで積極的な働きかけをやっているわけでございます。  その現状と見通しでございますが、実は先ほど申し上げましたように、ずいぶん予想外と言っていいぐらいたくさんの国が関心を持って立候補したわけでございまして、しかも、ヨーロッパの国は全部EC、欧州共同体の加盟国なんですが、そのEC共同体の中で調整がつかないでばらばらで立候補しているというような状態で、いきさか乱立状態なものですから、逆に日本としてもやりにくい点もあるわけでございます。大体こういう国際機関は、一部はアメリカにございますが、ヨーロッパがその商品取引の中心であり、いろいろな面で便利だということで、従来伝統的にこういうのは欧州にたくさんありますので、日本は離れているし、新しいものを日本だけにつくる必要があるのかという議論がかなりございます。しかし同時に、日本にも一つぐらいあっていいじゃないかということで、日本を積極的に支持してくれている国もあるわけでございまして、日本としては特に生産国の支持を取りつけることを第一にして、生産国の支持を得ながら消費国の間の話し合いというものもやって、何とか日本に本部が持ってこれるようにできれば一番いいのではないかと考えているわけでございまして、実は今回の総理等のASEAN訪問の際にも、外務大臣からも国によってはこの問題を取り上げていただいたわけでございます。現にタイにおいては、外務大臣からそのことを提起されたところ、タイの外相から積極的に支持するという御返事をいただいたわけでございます。  それから、まだ見通しははっきりしておりませんが、何とか日本に持ってくるように今後とも努力したいと考えているということでございます。  次に、これができた場合、その資金がどうなるかということでございまして、その辺は実はまだ余り詰まっておりません。恐らく事務局を置けば数千万円ぐらいの金が誘致するために要るのではないかと思われます。それから、その活動内容が調査研究的なものが多いものですから、どの程度の事業計画を実施するかということによって大きくもなるし、小さくもなるということでございます。従来議論されておるのでは、たとえば一億ドルぐらいの計画が考えられるのではないかという議論もありますが、これもすぐやろうということではなくて、数年間に一億ドルぐらいの事業が考えられるのではないかというような意見もございます。ただ、これはいま申し上げましたように一つの考えでございまして、具体的には、最終的には、大体でき上がったところでみんなが集まって相談して決めていくということになると考えます。
  388. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、いまのお話でございますけれども、熱帯木材の機構事務局を日本に誘致する問題、金銭的にも私は可能だと思いますし、日本立場からいっても大消費国として必要だと思われますが、大臣も過般、ASEAN諸国でそういう了解工作をおやりになられて御努力されたと思いますが、ぜひ取ろうという御決意を承りたいと思います。
  389. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは大方の国際機関が皆ヨーロッパに集中しておるのですが、この熱帯木材については何といっても生産地がASEANですから、日本は非常に大きい消費地でもありますし、どうしてもこの際は日本に持ってきたいというのがわれわれの念願であります。今回ASEAN訪問した際も、各国外務大臣にはこの日本誘致に対して積極的に協力してほしいということを要請をいたしました。大体の理解を得た、支持をしてくれるものである、こういうふうに思っておるわけでございますが、これは今後とも幅広く要請を続けまして、何とかこのぐらいは日本に持ってきたいものだ、こういうふうに考えております。
  390. 林保夫

    ○林(保)委員 ぜひひとつせっかくの御努力をお願いしたいと思います。商品関係あるいは金融関係、メタル関係をひとつ日本で、世界をコントロールするわけではございませんけれども、資源のない日本としては、そういう頭脳的なものをやるということは国民みんなが望み、また歓迎しているところでもございますので、ぜひせっかくの御努力で実らせていただきたい、このことをお願いしておきたいと思います。  続きまして、国際博覧会条約の改正でございますが、これのメリット、どうしてもいまやらなければならぬ、それを一言で結構ですが、事務局、お答えいただけますか。
  391. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 結論的に申し上げまして、ぜひお願いしたいと考えております。  理由は、簡単に申しまして、みんなが賛成して事実上コンセンサスで決まったことでございます。国際協調の精神から支持していただきたいということが一つでございます。  それから第二に、これは日本の筑波博とも関係があるわけでございまして、筑波博を実現するに当たってはかなりの反対論があったのを、積極的な根回しをいたしまして支持を取りつけて登録するところまでこぎつけたわけでございます。日本は自分がやることについては一生懸命になってほかの国の支持を得たけれども、フランスそれからアメリカ、スペインが文化的伝統と国の威信をかけてぜひやりたいということにはそっぽを向くということですと、やはり対外的にも非常にやりにくいわけでございますので、そういう意味でもぜひ御支持いただきたいと考えるわけでございます。
  392. 林保夫

    ○林(保)委員 次に、領事条約の点でございますが、今回の条約に関連いたしまして、従来の二国間条約もあったわけでございましょうが、それとの関係、従来二国間ではどことどこがあったのか、御説明いただきたいと思います。
  393. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 戦後わが国締結いたしておりました二国間の領事条約は、米国、英国、ソ連、この三カ国でございます。
  394. 林保夫

    ○林(保)委員 今度の国際条約批准に伴ってその二国間条約が何か支障を来すとか、もっと拡張解釈ができるようになるとか、そういうようなものが何かございましたですか。
  395. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 三カ国のうち米国と英国がこの領事関係に関するウィーン条約に加入しておりますので、これらの国との関係では、この領事関係に関するウィーン条約と二国間条約の双方が適用されていくという関係になるわけでございます。それで、この領事関係に関するウィーン条約米国あるいは英国との領事条約よりやや広い特権、免除を定めておりますので、私どもこの条約に入るに当たって二国間条約との調整をどうしようかということを考えたわけでございますが、結局、より広い特権、免除を定めている方を適用するということにすれば問題ないであろうということで、そのように対処することにしておりますし、それからアメリカ、イギリスともそのように処理することについて特に異議がないということを確認いたしております。それからソ連との間では、ソ連はこの領事関係に関するウィーン条約に入っておりませんから、従来どおり二国間条約で処理していくということでございます。
  396. 林保夫

    ○林(保)委員 第三章の名誉領事官あるいは名誉総領事の問題について先ほど来もいろいろ話がありましたけれども、一般的な通念というと名誉領事というのは大体どういうことになっているのでございましょうか。実は、時間がございませんので先へあれいたしますと、広辞苑を引いてみたのです。そうすると、名誉領事とは「領事の一。本国から派遣されず、その国在留の本国人または接受国人の中から選任されるもの。一定の報酬は受けるが、本国の官吏ではなく、兼職ができる。」このようになっているわけです。名誉がつくというのは大体給料はなしだというのが私どもの一般の概念なんですけれども、実態はどうなんでございましょうか。名誉領事というのを概念と一緒に、ひとつその点も含めて御説明いただきます。
  397. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 名誉領事の与えられております職務は、先ほども申し上げましたように各国によってさまざまでございまして、国によってはかなり広範な証明事務でありますとかあるいは査証事務でありますとか、そういうものまで扱わせておる例もございます。わが国の場合はどちらかというと非常に狭い範囲で、指定されました監督といいますか、命令権を持った公館長が格別の指示をしない限りにおきましては、日本国民の保護、そういうことに伴う地方官憲との折衝あるいは主として広報活動、そういうことで活躍してもらうということになっておりまして、証明とかということは非常に限られた範囲だけの事務を認めておるということでございます。
  398. 林保夫

    ○林(保)委員 報酬はどうなっていますか。
  399. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 報酬というほどの名に値するものじゃございませんで、最近若干値上げに努力してきたわけでございますけれども、たしか名誉総領事が月額百五十ドル、名誉領事が九十五ドルでございます。
  400. 林保夫

    ○林(保)委員 わかりました。私は広辞苑を書きかえなければいかぬのかと思ったのですが、やはり出ていることは出ているわけでございますね。  それから、続きまして外務省の資料、これが公式のものかどうかわかりませんけれども、ちょうだいいたしたところによりますと、日本におきます名誉領事は——ちょっと数字を正確に教えていただきたいのです。私は百二人とここでいま勘定したわけですが、先ほど御指摘がありましたように二国を一人がやっておるケースもございます。どうなっておるのかという、その数でございますね。  それからもう一つは、日本の名誉総領事、名誉領事は、名誉総領事が三十七名、名誉領事が十三名、三十一カ国、五十名、このように聞いておりますが、そのとおりでございますか、どうでしょうか。
  401. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 日本におります外国の名誉総領事、名誉領事合わせまして百二十六名でございます。  他方、わが国が任命しております名誉総領事、領事は、ただいま先生御指摘のとおり、名誉総領事が三十七名、領事が十三名、合計して五十名、三十一カ国でございます。そのとおりでございます。
  402. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、人間を任命しているわけですから、見方はそれぞれにあるかと思います。しかし、やはり外務省としては基準を持ってこういうものを取り仕切っておられると思うのでございますが、大体どういう形の基準でやっておられるのでございましょうか。具体的に言いますと、名誉領事をやって給料が少ないとすれば、きっちり仕事をやっておるとかあるいは資産がある。よそとの出入りであれば招待もできる。それからまた、人のめんどうを見なければならぬとすればその余力があるとか、社会的に言いますと犯罪とかいろいろ犯してないとか、そういうものが一般的に考えられますけれども、外務省はどういう基準でこれを審査なさっているか、その基準をお聞きしたいと思います。
  403. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 名誉領事につきましては、外務省設置法上、外務大臣が必要と認めれば設けることができる、そして外務公務員法上、外務大臣は外務人事審議会の意見を聞いて名誉総領事、領事を任命する、こういうふうに定められております。したがいまして、手続的には私ども名誉総領事、領事の候補者を外務人事審議会にかけてその御審査を経るわけでございます。その場合に参考に供する事項といたしましては、別に法令上その他の定めがあるわけではございませんけれども、まず当該地域に在留邦人はどれぐらいいるのかとか、その他の観点からの必要性でございますね。この点を御説明するわけでございます。それから、ただいま御指摘がございましたように、候補者自身の人物と申しますか、社会的な信望あるいは資産の状況とかいうことについてそれなりの調査をいたしまして、これも御参考に供しております。当然そういうことに伴いまして管轄の在外公館長としての意見、勧告というものが入っておるわけでございます。  基準と申し上げますと以上のようなことでございます。
  404. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、いわゆる外務人事審議会あるいは外務大臣が拒否されたケースというのはあるのでございましょうか、ないのでしょうか。
  405. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 これは内部的にはいろいろ可能性としてあり得るわけでございますけれども、しかしこれは外務大臣が任命するわけでございまして、それから外務人事審議会に任命の候補者をかけるわけでございますから、理論的には外務大臣が拒否するということはないわけでございます。ただ外務人事審議会が拒否するという場合、候補者を受けないという場合は理論的にはあり得ますが、私の承知しております限りそういう例はいままでのところございません。私どもが御審査願った候補者はすべて御了承いただいております。
  406. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一つ、名誉領事と一般の領事の違いといいますか、制限されているところがこの中でいろいろ出ておりますが、その点どういう違いがあるのか、違いをひとつ御報告願いたいと思います。
  407. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 これは職務上は格別の違いがあるわけではございませんが、やはりその職務の客観的な重要性、置かれております都市の大きさその他を主として考慮いたしまして総領事と領事ということに分けておるわけでございますけれども、趨勢といたしましては、領事から総領事にだんだん格上げするという方向でやっております。  それから、ちょっとお許しを得まして訂正申し上げたいのですが、先ほどたしか月額百五十ドルと九十五ドルと申し上げましたが、その後さらに努力の結果値上げをされておりまして、国によって、地域によって違いますが、アメリカの場合ですと名誉総領事は二百ドル、領事は百五十五ドルというふうになっております。なお、報酬というには余りに僅少でございますので、事務経費ということで支給しておるわけでございます。
  408. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、今度のウィーン条約ができまして後、こういうことはよけいきっちりしなきやならぬし、またきっちりできると思うのでございますが、名誉総領事、領事にこだわるようですが、これはふやすお考えでしょうか。あるいはどういうふうに、足りてるのか、足りてないのか、その辺の……。
  409. 枝村純郎

    ○枝村政府委員 私どもといたしましては、幸い今日まで人を得まして、名誉総領事、領事、大変活躍してもらっております。特に最近広報の重要性が言われておりますアメリカなどにおきましては、各地におります名誉総領事、領事、最近は方針として名誉領事一人だけ残っておりましたのを、これも総領事に格上げする予定でございますけれども、大変活躍してくれております。私どももその活躍にこたえる意味で、名誉総領事会議というようなものを開いて、特に広報上の施策について検討をいたしたり、先ほど大臣から申し上げましたように年間五名を一つの目標にいたしまして、各国から名誉総領事を招聘するというようなこともやっておりますので、今後とも大いに活用を図っていきたいと思っております。したがいまして、必要な場所に適格者がいれば、なるべくふやす方針で考えておるというふうに申し上げられると思います。
  410. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。終わります。
  411. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 次に、野間友一君。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
  412. 野間友一

    ○野間委員 外務大臣、お疲れかもわかりませんけれども、ちょっとお聞きしたいと思いますので。  条約の審議に先立ちまして、午前中質疑がありましたインドネシアからの防衛産業育成の協力要請の件についてまずお伺いしたいと思いますが、午前中アジア局長が、スハルト大統領から日本ASEANの防衛産業の育成に協力できないかと話があった、これに対して中曽根総理は明快に、わが国経済協力基本方針として軍事的用途に充てられるものはできない、これは原則問題だ、こういう立場でこう言って拒否したという趣旨の答弁がありました。それに関連してお聞きするわけですけれども、このインドネシアの方からの要請はいつ、どういう会談の中で出たのか、まずその点伺いたいと思います。
  413. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは五月一日、総理とスハルト大統領の会談が行われましたときに、大統領より一般的な形で、日本ASEAN諸国の防衛産業の育成に協力し得るものであるか、こういうふうな質問がありまして、わが国から、経済協力基本方針から軍事的用途に充てられる協力は実施し得ない旨が答えられたわけでございまして、これを向こう側も了承した。首脳会談であります。
  414. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、ちょっとその中身について少し詳しく聞きたいのですが、これはインドネシアの防衛産業に関する要請なのか、それともそれも含めたASEAN全体の防衛産業に関する要請になるのか、その点どうなんですか。
  415. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは私も会談出席しておったんですが、日本の防衛方針について中曽根総理から基本的に相当詳しく説明がありまして、これに対して理解した、日本の防衛の範囲、憲法の範囲内なら依存はありませんという中で、そこで防衛産業的なものに協力するというふうなことはできませんでしょうかというふうな問いかけがあったんですね。私は、このインドネシア自体なのかASEANなのか、そこのところまでは厳密にその場でははっきりは言われなかったと思いますが、受け取り方としては両国の首脳ですから、またインドネシア大統領としてもどちらかというとインドネシアのことを言われたんじゃないか、そういうような感じを私は持ったわけですが、明快な形で質問があったわけではございません。
  416. 野間友一

    ○野間委員 そのときに武器輸出の要請とか、そういうものはあったんですかどうですか、防衛産業に関してだけですか。
  417. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 そういうことは全然ありませんでした。非常に簡単な形で、防衛産業といったような面の育成といいますか協力といいますか、そういう面が取り上げられただけで、武器輸出であるとかあるいは武器技術の協力であるとか、そういう具体的な要請はなかったと承知しております。
  418. 野間友一

    ○野間委員 新聞報道によりますと、総理がこれを拒否されたその理由については、憲法や日本政策としてできないと明確に拒否しておる、こういう報道がありますけれども、そういうことでよろしいわけですか。
  419. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 総理からは、日本としては軍事協力は行わない方針である、それが日本立場である、こういうことを簡単に説明があったということです。
  420. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、憲法の立場からというようなこと、あるいは国会決議ももちろんありますけれども、その理由について明快に言われたわけですか。
  421. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 憲法とかそういうふうなことは言われなかった、こういうふうに承知しております。
  422. 野間友一

    ○野間委員 恐らくこの要請が公式には初めてではなかろうかと思うのですけれども、従前からあったのでしょうか、これが公式の会談では初めてでしょうか。
  423. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ASEANからは、これはインドネシアだけではありませんでタイなんかからもそうですが、いろいろと大臣レベルあるいはまた事務レベルの会談等では、そうした趣旨のASEAN側の一つの希望といいますか、そういうものはなされたことはあります。
  424. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、今回が初めてではなくて、従前からそういう意味での要請は公式にあったというふうないまの答弁ですか。
  425. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 首脳会談で取り上げられたのはこれが初めてですけれども、しかしその他の会談ではそうした趣旨の希望表明、要請表明というのがあったことは、これは私も覚えております。
  426. 野間友一

    ○野間委員 その点で私は不可解なんですけれども、憲法がありそれから武器輸出禁止の国会決議なり政府の方針があるわけでしょう。それに基づいて従前からずっと対応されておったら、そういうものはこういう首脳会談の席上で改めて公式の場で要請はしないはずだし、なかったはずだと私は思うのですけれども、従前のそういう要請に対する対応が非常にあいまいだから、こういうものが首脳会談の席で出たというようなことではないのでしょうか。
  427. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いや、これは決してあいまいじゃなくて、日本の場合はその際ははっきり物を言っているわけなんですが、首脳会談はずいぶん長時間の会談でしたが、その中でスハルト大統領が一般的な形でちょっと触れられたということであって、もちろんASEANの諸国も日本立場というものは十分承知しておられると思いますが、私はそういうことを前提として触れられたのじゃないか、こういうように承知しております。
  428. 野間友一

    ○野間委員 前提であれば、そういう要請は私はあってはならないし、ないはずだと思うのですね。実はいろいろ過去の外務省当局の資料をくくってみますと、たとえば七九年の七月十日に当時の外務大臣の園田さんが、これは帝国ホテルの内外情勢調査会で講演されたわけですが、これが中央公論に出ております。これを見ますと、インドネシアが、トラック、ジープあるいは内火艇、そういうものは必ずしも戦争用と決まっておらぬ、それなのに軍が使うとなると日本は売ってくれぬ、ただでくれとは言わない、売ってくれればいいのだ。こういうことが七九年の七月初めのインドネシアでのASEAN拡大外相会議出席したときに個別にASEANの外相と話し合った中で出た、こういうことが実はあるわけですね。  さらに続けますと、これは八一年の一月二十二日、当時のアジア局長の木内さん、この人の講演記録を私はこの場でしばしば引いておりますけれども、これの中でも、インドネシアの軍部は日本から掃海艇やそれにたぐいするものをぜひ欲しいということを盛んに言っているわけです。これは例の鈴木総理の当時のASEANの歴訪に関連して木内局長がこういうことを言っておられるわけですね。  さらに、牛場顧問、これは八一年の十月に大阪の関経連での話ですが、インドネシアの民間人との話として出ておりますのは、インドネシアの期待の第一は武器の輸出の問題だ。「確か五カ年間に三十億ドル使ってASEAN全体で軍備をやるつもりだから日本は一番工業力が進んでいるから、日本でもっと安い良い武器をつくって売ってくれ。」だから「武器をつくって売ってくれ」、これは武器輸出ですね。それから「もう一つはASEANの防衛産業——と言っても、まだまだそういうことが言える段階まではいかないと思いますけど、工業力の育成に協力してもらいたい。」まさにスハルト大統領が首脳会談の中で要請したそのこと、そのほとんど同じようなこと、さらにこれは武器輸出が加わっておりますが……。  七九年あるいは八一年、いま三つばかり引きましたけれども、常に一貫してインドネシアは武器輸出なり防衛産業に対する協力要請ということを言ってきたわけのようですが、こういうものに対して、やはり憲法とかあるいは国会の決議、政府の方針、こういうものを踏まえてきちっと対応しなければ、これは次から次へと出てくるのではないか。逆にと申しますか、私は危惧するのは、一月の十二日ですか、例のアメリカに対する武器技術の輸出についての決定、こういうことが特に首脳会談でも出る大きな契機になっておるのじゃないか、こう思うわけでありますけれども、さらにこの間のクアラルンプールでのスピーチの中で、総理が外交の最も重要な基本政策の一つとして挙げられておるのが、ASEAN諸国との間の友好的で緊密な関係の維持だ、こう言われていますね。  そういうような点で、私はアメリカに対する武器技術の輸出、これの決定、それからASEANとの関係について、いま私が引きましたスピーチの中身、こういうところから、アメリカにその技術を輸出して、ASEANにはそれはしないという法はないというようなことで、こういう要請が公式の場で出るようになったのではないかというふうに私は思うのですけれども、見解はいかがですか。
  429. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 このクアラルンプールでの演説と、インドネシアにおける首脳会談のいわゆる防衛産業協力問題とは全く別問題だ、こういうふうに思います。いまお話しのように、インドネシアからは、これまでしばしば御指摘がありましたような形で、日本に対して要請的なことがあったことは事実であります。今度の首脳会談でも、それが一般的な形で触れられたことも、いま申し上げたとおりでございます。これに対しては中曽根総理としては、日本としては軍需産業への協力というようなことは日本立場からもできないのだということを明快に言っておりました。これはスハルト大統領も了解をしたというふうに考えておるわけでおります。
  430. 野間友一

    ○野間委員 そうしますと、ASEANに対しては、将来とも武器輸出の要請には応じない、あるいは防衛産業の基礎となるような協力は将来ともしない、それはここで確約できますか。
  431. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 これは今国会において中曽根総理からも中曽根内閣の、政府の見解として出ておるわけでありますが、中曽根内閣としては、アメリカに対しては武器技術についての相互協力を行うけれども、その他の国に対しては行わない、武器輸出三原則、あるいはまた政府の見解は、その他の国に対してはこれをきちっと守っていくということを言っておるわけであります。内閣の姿勢としては、そういう基本的な姿勢を今後とも維持していく、堅持していくということであります。
  432. 野間友一

    ○野間委員 いま言いました外交の最も重要な基本的政策の一つとして、ASEANとの友好的で緊密な関係の維持、こういう位置づけをされていますので、これを一つのてこにしてこれからこういう要請がさらに出てこぬとも限らないと思いますし、やはり憲法と国会決議とを踏まえてきちっと対応をしておかなければ、再三にわたってこれが出てくるということになると思いますので、この点について、いま答弁がありましたけれども、再度、これはやはりきちっと対応するということをさらにひとつ確認しておきたいと思います。
  433. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 ASEAN諸国としては、いろいろと外部からの危機というものがあるだけに、日本のすぐれた防衛技術だとか、あるいは防衛産業に対する協力を求めるという気持ちは、やはり今後とも行われる可能性はあると思うわけでありますが、それに対して、いま中曽根内閣の姿勢は、先ほど申し上げましたように、防衛産業に対する協力とか、あるいはまた武器技術の輸出であるとか、あるいは武器そのものの輸出といったものはしないというのが確固たる方針であることは、これまでももう申し上げたとおりであります。
  434. 野間友一

    ○野間委員 それでは、ジュート協定について少しお伺いしたいと思いますが、このジュート協定には経済条項がないわけですね。これは、この協定の中でのウエートとか重点の問題についていろいろな経過の話がありましたが、経済条項のかわりの措置が規定されておりますね。ジュートの需要の拡大とかあるいは生産性向上のための財源、これは一体どこをどう何を当てにしておるのか、まずこの点からお聞きしたいと思います。
  435. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の点は、研究、開発とか市場の拡充、費用の削減というような事業を実施する資金はどこから提供されるのかという御趣旨だろうと思います。これは特別勘定でやるということになっておりまして、その資金源として考えられるのは、共通基金、コモンファンド、それから地域的あるいは一般国際的な金融機関それから各国の任意拠出というその三つの場合が考えられるわけでございます。
  436. 野間友一

    ○野間委員 一次産品の共通基金、これは一九八〇年に採択されながらまだ発効しておりませんね。これはどうしても早く発効させる必要があると思いますけれども、それに関して政府が何か積極的な役割りあるいは行動、こういうものをとってきたのか、あるいはとっておるのか。いかがですか。
  437. 野村忠清

    ○野村説明員 共通基金の早期発効ということにつきましては、わが国はこの協定ができました直後から積極的に努力を続けてきておる次第でございまして、わが国自身、御案内のように、共通基金の協定が採択されました翌年の六月に協定を批准いたしておりまして、これは五番目の批准国となったわけでございますけれども、その後も引き続き、国連でございますとかあるいは二国間の話し合いの場を通じまして、この協定の早期批准のために積極的に働きかけをやってきておるわけでございます。とりわけ国連の場におきましては、昭和五十六年の第三十六回国連総会あるいは昨年の三十七回の国連総会におきまして、早期批准を進める独自の決議案をつくりまして、関係国と協力いたしましてこれを提出いたしまして、採択されております。このような努力をやっておりますし、また今後も続けていきたいという考えでございます。
  438. 野間友一

    ○野間委員 第六回のUNCTAD、これがたしか六月にあると思うのですが、この一次産品の共通基金で、このときにもやはり積極的な役割りを果たさなければならぬ。もう直前ですので、何か具体的な提案が用意されているのかどうか、その点について聞かせてください。
  439. 野村忠清

    ○野村説明員 先生御指摘のとおりに、第六回のUNCTADの総会はことしの六月にベオグラードで開催される予定になっております。すでにこのための各種の準備が進められておりますが、まず、UNCTADの事務局の方からすでに提案が出ておりまして、この中では、共通基金協定の未批准国に対して早く批准するようにという提案が含まれております。またこれを受けまして開発途上国のグループは、先般行われましたブエノスアイレスの閣僚会議で同じような趣旨を盛り込んだ決議案をすでにつくっております。わが国といたしましては、先ほど申し上げましたように、共通基金の早期批准ということを強く望む立場でございますので、同じような立場に立った国々と協力いたしまして、UNCTADの場でもこの協定の早期批准に向けて積極的に努力したいと考えております。
  440. 野間友一

    ○野間委員 いつも問題になりますけれども、発展途上国の輸出所得の下落防止ですね。このための措置とかあるいは救済措置、こういうもので検討中のものがあるのかないのか、その点についてもあわせてお聞かせいただきたいと思います。
  441. 野村忠清

    ○野村説明員 御質問の御趣旨は、すでにあるものというよりはむしろ新しいものという御趣旨かと思いますが、この点につきましては、すでにIMF等の既存の措置もございますけれども、かつまたこれも拡充されてきておりますけれども、他方、UNCTADの場におきましては、第六回の総会に向けまして新しいこういうような輸出所得の補償制度というものをつくったらどうかという考え方がすでに事務局から出ておりまして、また開発途上国側の方でもそういう考えを持っておるようでございます。さらに、西側の国々の中でも、そのような趣旨に沿った考え方をこれからまとめていこうという動きがあることも事実でございます。  そこでわが国の考え方でございますけれども、わが国といたしましては、一次産品に関する基本的な考え方としては、せっかくまず共通基金というものがあって、これを早期に発効させる必要があるというところで、これを最優先してぜひ実現に持っていきたいという考え方を持っております。ただこの共通基金では、すべて共通基金による措置によって裨益しない国もあるというところから、これらの国に対する配慮も必要であろうということは考えておりまして、これを補完するものとしてその他の輸出所得補償措置検討というものには応じていきたいというふうに考えております。
  442. 野間友一

    ○野間委員 このジュート協定に関して、経済条項そのものをどう位置づけ、そしてこれが将来どうなるというふうに考えておられるのか、これも聞いておきたいと思います。
  443. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  経済条項は設けられていないわけでございますが、生産国側が最初から緩衝在庫的な措置を希望していたことは非常に明らかなわけでして、最初からそういう態度をとっておりまして、その問題は最後まで残ったわけでございます。そのため、結論として、協定上も価格安定化措置について継続的に検討していくということは規定として残っておりますので、今後この協定が発効し活動を始めれば、理事会その他しかるべき場においてその問題もその検討対象となるということは予想されるわけでございます。  ただ従来の経緯から申し上げますと、これは最初の、ジュート検討を始めてからすでに六年ぐらいたっているのだろうと思いますので、そうしますと、それぐらいたってやっとここまで来て、しかもそれは経済条項を含まない形の協定になっておるわけでございます。それからしますと、新たに緩衝在庫を含むような形で協定の修正が行われていくという可能性は、これは個人的意見かもしれませんが、私は余りないのではないかというふうに考えるわけでございます。これは経済的にも技術的にも緩衝在庫になじまない面がありますので、なかなかむずかしいのではないかと思います。ですから、むしろ現在の協定が発効した後、実際どういうふうに運営され効果を上げていくかということを見ながら継続的に頭に置いておくべき問題ではないかというふうに考えるわけでございます。
  444. 野間友一

    ○野間委員 では、私これで終わりまして、関連して中路委員の方から質問したいと思いますので……。
  445. 竹内黎一

    竹内委員長 中路雅弘君。
  446. 中路雅弘

    ○中路委員 私はあと残された時間で、領事条約の関連で外務医務官の問題について若干御質問したいのです。  この問題は最近私、イラクの石油精製施設の下請労働者として従事して、昨年の十二月ですが、現地で病気で亡くなった、家族からいろいろ補償の問題で訴えがありまして、それを機会に外務省の皆さんからも資料をいただきまして、ぜひ一度御質問したいと思って取り上げるわけです。  在外公館に外務医務官が配置されているわけですが、いただいた資料を見ますと、昭和三十八年以後現在二十二名配置されている。看護婦さんは三名ですが、その現状をまず最初にどのようにお考え、認識されているか、お尋ねしたいと思います。
  447. 藤本芳男

    ○藤本説明員 在外に配置されております医務官全体の総数は、御指摘のとおり二十二名でございます。十八カ国に派遣されております。  医務官は、本来的には在外公館員の健康管理ということがまず第一の職務でございますけれども、あわせまして、在外邦人の医療相談に応ずるとか、あるいは健康管理についていろいろと示唆をするということで努力しております。この在外邦人の健康管理、医療の問題は大変に大事なことであるというふうに私ども認識しておりますので、この医務官もできれば将来ふやすような方向で考えてみたい、こういうふうに思っております。
  448. 中路雅弘

    ○中路委員 医療機器あるいは医薬品、これはどういうふうに確保されていますか。たとえば予算の上ではいまどういう状態にありますか。
  449. 藤本芳男

    ○藤本説明員 共済組合からの経費でもちまして薬品を購入いたしまして医務官に供給しているというのが主な本省側からの措置でございます。
  450. 中路雅弘

    ○中路委員 五十八年度の予算では、医療機械の方は予算がついているのですが、幾らか御存じですか。
  451. 藤本芳男

    ○藤本説明員 まことに申しわけございませんが、私のところの主管でございませんで、数字については承知しておりませんので、御勘弁願いたいと思います。
  452. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞きましたのでは、五十八年度予算で機械等に充てて九百十九万という予算がついていますが、先ほどお話しのように、医薬品は予算化されていない。外務省の共済組合費から使っているということですね。こうなりますと、看護婦さんも三名、ほとんどいないわけですし、薬の方もない。共済組合の費用で充てられておる。この点では、先ほど外務医務官も将来ふやしたいというお話ですけれども、全体として特に看護婦の問題、薬なども予算化されていませんから、こういう点は早急に改善すべきではないかというふうに考えるわけですが、いかがですか。
  453. 藤本芳男

    ○藤本説明員 御指摘のとおりでございまして、この点はかなり大幅に改善しなければならない分野であるかと思います。  ただ、医務官の職務というものを考えてみますと、なかなか在外公館の中だけでは通常の医療行為というものができない、それから手術の施設もございません。したがって、現地の医療機関について詳しく熟知し、現地の医療機関と邦人とを結びつけるパイプの役を果たすというふうなことが期待されるわけでございまして、いろいろなやり方がございますけれども、医務官自身による健康相談を受けるということもございましょうけれども、基本的にはやはり現地の医療機関を把握してそれを邦人に伝えるということが非常に大事だと思います。  それにいたしましても、御指摘のとおりに予算的には非常に微々たるものでございますので、今後ふやさなければならないということは御指摘のとおりでございます。
  454. 中路雅弘

    ○中路委員 これもいただいた資料で見ましたら、合計ですけれども、昭和五十六年の九月から五十七年の八月までの一年間で外務医務官が診られた、いわゆる受診者の総数を見ますと、館員と家族とで合計六千十八名ですね。それから、先ほどお話しのように、在留邦人を医療相談ということなどでめんどうを見ておられるわけですけれども、この在留邦人がやはり同じ一年間で四千四百六十七名。その他というのがありますが、恐らくこれは旅行者か何かではないかと思いますが、九百八十三名。合計しますと、二十二名の配置されている外務医務官の受診者数が年間で一万一千四百六十八名になるわけですね。そして、それとは別に薬だけですね、投薬者は、家族や在留邦人その他合計しますと七千四百十名になりますから、双方合わせますと二万人の人が利用しているということになるわけです。もちろん、いまおっしゃったように現地の医療機関を紹介するとか、そのパイプの役割りを果たすということもありますけれども、外務医務官自身が直接診察をする、あるいは医療相談にあずかる、投薬の相談にあずかるというのだけで二万人からの人たちが世話になっているという数字が、皆さんの資料からでも出てきているわけですね。近年は海外での企業活動もますます盛んになってきていますし、これも資料で昭和五十六年の十月一日現在のいわゆる三カ月以上の長期滞在者、海外に仕事で赴任している者の数ですね、家族を含めて合計で見ますと十九万五千人になっています。十九万五千人の中で、累計でしょうけれども、年間に二万人からの人が外務医務官に何かの形で世話になっているということにもなるわけですから、もちろん現地の医療機関との提携ということもあるでしょうけれども、この外務医務官の制度そのものを、これだけいろいろ対応されているわけですし、一層充実する必要がある。また現在ある公館の医療施設ですね、私も若干のところを見てきましたけれども、小さい診療所のような一部屋を置いてありますけれども、キーステーションとしてやはりこういうところも拡充する必要があるのではないかということも痛感してきたのですが、この点についてお考えいかがでしょう。
  455. 藤本芳男

    ○藤本説明員 御指摘のとおりでございます。この医務官の活動を拡大しなければならないということでございますが、ただ一つだけ私ども心配しておりますのは、この医療活動をやる場合にはその国のライセンスが要るというのが普通のパターンでございまして、ライセンスは問題ないところもございますけれども、ほとんどの国におきましては医療のライセンスというものが前提にならないと、現地のお医者さんの職場を奪うというふうなことを言うところもあるわけでございます。ですからそこら辺は上手に、先ほど申し上げましたようなそういう現地の医療機関、現地の医師と連絡もとりながら、なおかつ在外公館の中での医療相談その他ということをもっともっと拡充したいし、またする必要があるというふうに思っています。  なお、それに関連いたしまして、私どもがもう十数年前からやっております巡回医師団というものがございまして、年間十ないし十二チームが行っております。このチームは邦人の健康管理の相談を受けておるわけでございますけれども、延べでやはり五千七百人ぐらいの患者を診ているということがございますので、これも拡充をしたい。  それからもう一つ、第三番目でございますけれども、現在企業協会あるいは企業の組織におきまして、東京にございますけれども、将来開発途上国にできれば診療所みたいなもの、あるいは補助のお医者さんを送るということでも構わないのですが、そういう現地での医療活動を企業のイニシアチブによって何とかできないかという案がいま進んでいます。それらをあわせまして努力をしたいというふうに思っています。
  456. 中路雅弘

    ○中路委員 いま答弁の終わりにありましたことですが、これは私も要請しようと思ったのですね。これだけ海外に企業が出ているわけですから、また企業の在留邦人に対する健康管理の責任、これについても明確にしていかなければならないだろうというふうに考えています。しかし、いずれにしてもこれだけ、さっき巡回の話も出ましたけれども、邦人を含めていろいろ喜ばれているわけですし、またいま現地の医者との仕事の関係をおっしゃいましたけれども、特に最近では保健や医療施設が未整備で、医療水準の高くない地域の在留者がまた増加しているわけですね。そういう意味では、私はこういう在外の邦人の医療不安というものは非常に深刻ではないかというふうに思うのです。  いま若干質疑をしてきましたけれども、大臣もお聞きいただいていると思いますが、在外の公館あるいは家族、それだけでなくて、在外邦人の医療の問題について、やはりこの医務官の増加を含めてひとつ抜本的な検討をしていただいて、こうした医療の面での不安がいま非常に大きいわけですから、この改善のために力を入れていただきたいと要請したいのですが、いかがですか。
  457. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 確かに、私も外国へしばしば出張いたしますたびに非常に感ずるわけでありますが、医療に対して、在外公館にいたしましても、あるいはまた現地の日本人にいたしましても、非常な不安を持っておるわけでございまして、まず第一にやはり在外公館の医療体制というものを整備することは非常に大事だということは痛感をしておるわけでありますが、何分にも外務省の予算が思うようにいかない、財政再建という中で非常に制限、制約を受けているということで、なかなか思い切ったことができないわけでございますが、しかしやはりこれからますます外交活動は非常に重要になってくるわけでございますから、私としてもそういう点は十分踏まえながら、今後とも外務省としてできるだけの努力を重ねてまいらなければならない、そういうふうに強く感ずるわけであります。
  458. 中路雅弘

    ○中路委員 外務医務官の増加も考えなければいけないのですが、私も事情を聞いて驚いたのですが、先ほどお話ししましたように、医務官は一応二十二名派遣されていますが、医薬品代も予算化されてない、外務省の共済組合の費用でやっている。こういう点はぜひ改善をしていく必要が早急にあるのじゃないかということを痛感します。  あと一、二問。最初に私、この問題を少し調べるきっかけになりました問題ですけれども、これは横浜にあります千代田化工という、イラクのベージ、バクダードの北方ですが、そこで石油精製の施設、製油所の建設工事に勤務をした下請労働者が、山内敏見さんというのですが、去年十二月に亡くなったときは四十七歳ですけれども、その方の家族から話があったわけです。事情を聞きますと、行く前に定期検診、検診をやっているのですね。そのときからやはり高血圧と肝機能障害で、現地でも定期的な検診を要するという診断を受けて現地へ行っているのですが、いま言いましたように、十分な医療の体制もありませんから、そういう検診もないまま昨年の十二月に気管支炎とそれから心筋梗塞ですね、これで亡くなった。しかし、この海外に最近行く従業員の場合、いろいろ雇用関係が、下請で行くとか業務契約で行くとかという形で明確でないのですね。  亡くなった後、家族の話を聞きますと、雇用保険も去年の八月に停止になっている。だから、実際には海外の旅行者の傷害保険ですね、これでどうするかというような話でいま解決の話をしたりとかいう問題もありますから、雇用者の責任の問題ですね、海外へ従業員を送った場合、それからそうした健康管理の問題いろいろ問題が海外邦人の問題でいま多いんじゃないか。企業がこれだけ進出してきていますから。これは一例ですけれども、こうした例がたくさん出てきているのじゃないか。その点では、ひとつ外務省としても労働省や関係の省庁とも一度協議をしていただいて、こうした海外の、従事する邦人の従業員の身分の問題やあるいは雇用の問題について、やはり制度的な問題をきちっとさせていく必要があるということをこの問題を扱いながら痛感をするわけですが、この点について、きょうは労働省も、もう時間もありませんから来ていただいてないのですが、外務省としても一度関係の労働省その他とこうした海外の邦人の、特に業務契約や何かでみな下請の形で実際に働きに行っている、死亡があった場合にもその補償をどうするかということも全く明確でないというような、こうした問題についての解決検討も一度していただきたいと思うのですが、どちらで御答弁かわかりませんが、いかがですか。
  459. 藤本芳男

    ○藤本説明員 私ども外務本省におきまして企業の代表者と定期的に相談をしております。特に緊急事態が起こったというふうなときはそうでございますし、それからまたクーデター、ハイジャックというふうなときも、もし企業が関連する場合には相談するということをやっております。  御指摘のような雇用関係につきましては、実はまだそこまではやっておりませんで、むしろその前の段階であります、たとえば国民健康保険が海外にいる間にも適用になるというふうな制度的な改革などをまずやりたいということで努力しておりますし、また年金の問題も同様でございます。もちろん御指摘の点もございますので、おいおい各省と相談しながら邦人の福祉、福利の増進に努めたい、こういうふうに思っております。
  460. 中路雅弘

    ○中路委員 いま御答弁もありましたけれども、これを機会に、私も、身分の問題、雇用の問題、こうしたことを含めてひとつ、これだけ海外へいまたくさん働きに出かけているわけですから、一度関係省庁とも制度的な面を含めて御検討をいただきたいということを強く要請しておきたい。  あわせて、具体的な一例としてせっかく取り上げましたので、私がいま取り上げました山内敏見さんの問題は、神奈川県議会でも少し論議になった問題なんですね。どうしてこういう問題、補償についても解決しようかということなので、一度調査をいただいて、この解決にも力をかしていただきたいということを最後に要請をしておきたいと思うのですが、この御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  461. 藤本芳男

    ○藤本説明員 いまの山内さんのケースにつきましては領事二課で把握しておると思いますけれども、なお調査いたしまして御連絡いたしたいと思います。
  462. 中路雅弘

    ○中路委員 じゃ、終わります。
  463. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、井上泉君。
  464. 井上泉

    井上(泉)委員 大変お疲れのとき、これは遅くまでおつき合い願って恐縮ですけれども、与えられた時間内で私の任務を不十分ながらも果たしていきたい、こう思っていますので、よろしくお願いします。  まず最初に国際博覧会のことですが、これは時間がありませんので明確に答えていただきたい。  この国際科学技術博覧会に現在参加をするということで返事の来ておる国もわずか三十カ国足らずというような話でありますし、また出展者にいたしましても、これは衆議院、参議院の附帯決議にあるような中小企業者というものは一件もない。全く筑波の国際科学技術博覧会というのは大企業のための一つの宣伝のためのサービスじゃないか。これは科学技術博覧会という名に値しないやり方で行うんではないか、こういう心配を持つものですが、この国会の附帯決議との関連において、この筑波の博覧会をどういうふうに成功させようとしておるのか、まずその点をお聞かせいただきたい。
  465. 福島公夫

    ○福島説明員 科学技術庁の博覧会を担当しております福島でございます。  先住の御質問の趣旨、私ども当初より非常に大事なことだと思いまして、御記憶のように、博覧会の特別法を審議していただいた際に附帯決議ということで中小企業あるいは伝統工芸というものに十分参加できるような形で扱いなさいという御指示をいただきまして、われわれもそのとおりだと思いますので、その後民間出展の場及び政府出展の場におきましてこの趣旨に沿った方向で進めてきております。たとえば民間出展の方でございますけれども、ただいま二十九の企業、団体グループというものが民間出展に申し込んできているわけでございます。一見中小企業として参加しておるのはそのうち一件だけというふうに見えますが、実はグループの中の中小企業の数を見ますと、全体の参加する企業の中の約二五%が中小企業ということで、われわれとしますと、当初より民間出展の勧誘、勧奨をしたときから数多くの中小企業の方に出展をお願いしてきた成果があらわれたのではないかと考えて自負しているわけでございます。  なお、政府出展の中におきましても、中小企業庁あるいは都道府県の御協力を得まして政府館の中に中小企業あるいは地場産業、伝統工芸といったものの特別のコーナーを設けることになっておりまして、その辺で御趣旨に沿うようにやっておるというふうに考えております。
  466. 井上泉

    井上(泉)委員 中小企業出展のものも含まれている、こう言うのですが、たとえばタコ焼き屋とかアイスクリーム屋とか、ああいうものまでその出展の数に入れておるのと違うのですか。
  467. 福島公夫

    ○福島説明員 現在、申し上げました出展というのはあくまでも民間出展二十九の出展グループという中に入ってくる企業でございまして、先生のおっしゃられましたようなものは含まれておりません。ただ、営業参加という制度もございまして、会場の中でいろいろな物品の販売あるいは食堂等がございますが、これにつきましても、地元を中心としました恐らく中小企業が大部分だと思いますけれども、そういったものの参加の道が広く開かれておりまして、別の意味で大いに参加していただくというふうに考えております。
  468. 井上泉

    井上(泉)委員 いま二十九の企業、団体の申し込みがある。ところが、全部の企業名を見ますというと日本有数の大企業ばかりである。その企業の中に含んでおるのを中小企業者、こういうことで、メーンになるのはあくまで二十九という今日日本で言われる代表的な企業の方がメーンになっておる、こういうことでしょう。
  469. 福島公夫

    ○福島説明員 いま申し上げましたように、二十九のグループという中では一つだけフジキンという完全な中小企業もございます。ただこれも、一社だけでは中小企業のこういった出展というのは苦しいということもございまして、同じような中小企業協力しながらやっていこう。それから、先生も言われましように、確かに大企業も入っているグループの中に中小企業も入って参加しているという形でございますが、企業数としますと中小企業というのは相当多くのものが入っておりまして、全体の二五%に相当するものが参画しております。
  470. 井上泉

    井上(泉)委員 それは独立して参加するようになっておるのですか、この二十九の企業のいわゆる子会社として参加するのですか。どういうふうになっているのですか。
  471. 福島公夫

    ○福島説明員 これは子会社としてではなくて、対等の地位といいましょうか、要するに金を出し合って——確かに金を出す量は中小企業の方が少ないかもしれませんけれども、一応、対等、平等の立場で出資して共同の出展という形をとっております。
  472. 井上泉

    井上(泉)委員 日本中小企業というのは技術水準というものが非常に高い。大企業にしぼられるから一生懸命技術を練磨してやっておるわけですから、高い。むしろこういうふうな日本のすぐれた技術を持った中小企業紹介することによって、日本海外に対する貿易というものにも非常に有効に作用するわけですが、いま二十九という大企業と、それとまた別な全体の何%になるのか、まだ全部の数字を私承知しておりませんけれども、国会決議の趣旨に沿うた結果が生まれると予測できるのですか。
  473. 福島公夫

    ○福島説明員 その意味では、いわゆる出展、それから先ほど申しましたように営業参加、あるいは先生言われたように、下請ということではございませんけれども、たとえば政府出展なんかを計画しておりますと、その中には中小企業の中でも非常に特殊な技術を持っているものがございまして、そういうものを政府出展の中に取り入れてやるというようなものも当然あるわけでございます。それは下請ということじゃなしに、中小企業の技術を示す場が与えられるというふうにも考えられまして、全体としては中小企業、地方の伝統工芸というものもいままでの二回の博覧会に比較してずっと多い比率といいましょうか、ウエートが大きい形でやっていけるというふうに考えております。
  474. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは予算的には大体どれぐらいの配分になるのですか。中小企業の出展に対する政府の協力の予算というのはどのぐらいですか。
  475. 福島公夫

    ○福島説明員 特に予算的に幾ら中小企業向けということはございませんけれども、一つの例で申し上げますと、政府館の中で、先ほど申し上げました中小企業あるいは地場産業、伝統工芸というもののコーナーをつくっておりますけれども、これは展示の中のたしか七%くらいの場所をこれ専用でとっておりまして、予算的にも政府の金でもってそういう中小企業あるいは地場産業というものの展示を行うということでございます。ただ、全体でこれが中小企業のための予算であるとか地場産業のための予算であるとかいう分け方はしておりません。
  476. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、予算的なものはないならどういう形で中小企業の出展の参加の要請をされるのか。ただ文書で通達を出すだけなのか、どういうふうなPRの仕方をやるのか、どういうふうな効果があるからと中小企業者に出展を要請するのか、どういう手だてを講じたのですか。
  477. 福島公夫

    ○福島説明員 手順は、実は昨年の四月、五月に民間出展の説明会というのがございました。それの前に約二千社の中小企業に対して御案内を出しております。これは直接中小企業の団体を通じまして勧奨したわけでございますが、確かに一社で一つのパビリオンを出そうということは大企業でも大変な現状でございますので、みんなグループをつくってやろうということでございますので、中小企業が一社でもってやろうというのは私たちとするとほとんど不可能だろうと考えておったわけでございます。にもかかわらず、先ほど言いましたフジキンという中小企業が一社でがんばって出していただいたということは、われわれが勧奨をした成果というものが出たのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  478. 井上泉

    井上(泉)委員 まだその過程にあるわけですから、その成り行きを注視していたいと思うのですけれども、もう期日も切迫しておる中で、参加国というのは正式契約したのは二十四カ国とか、こういうふうなことを聞くわけで、沖縄博よりも下回るじゃないか、こういうことが言われておるわけですが、そういう心配はないですか。
  479. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  現状につきましては御指摘のとおりでございますが、これまでもいろいろな機会を使いまして最大限の勧誘努力というものを行っているわけでございます。これまで延べ十五回のミッション派遣、それから今度の総理外務大臣ASEAN訪問を含めまして数多くの政府首脳の往来という機会を活用することを含めましてできる限りの努力はやっているわけでございます。それから、これは各国の参加が容易になるようにという点でもいろいろな配慮が必要なわけでございまして、特に開発途上国については経費の負担の軽減を図ることによってできるだけ多くの国が参加して、博覧会をそれだけ充実したものとすることができるようにということで努力しているわけでございまして、今後とも一層こういう努力を続けていきたいと考えているわけでございます。
  480. 井上泉

    井上(泉)委員 この条約わが国会で批准されない、仮にそういう事態になった場合にはこの博覧会はどうなるわけですか。
  481. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 条約の規定によりますと、五分の四の当事国が手続をとって発効いたしました場合には、わが国も自動的にそれに拘束されるという状態になります。そういうことでございますので、ほかの五分の四の国がこの条約の手続をとるということであれば、この新しい改正のもとでの博覧会の開催は支障なく可能になるわけでございます。
  482. 井上泉

    井上(泉)委員 これは恐らくそういうこともないと思うわけですけれども、大体この筑波の博覧会にしても、そうしてまたいままでやった博覧会にしても、特に今度の博覧会のやり方を見てみますと、結局大企業のために博覧会をやるんであって、それがために莫大な国の財政を投資する、こういうふうなことが懸念をされてしようがないわけであります。それでまた、二千万人を想定しておる。二千万人を六カ月ということになりますと、一カ月約三百万人、そうすると一日十万人の輸送をしなければならぬ。そのくらいの輸送体制があの地域の中で十分確保できるのか、いろいろな問題があるわけで、その点につきましては、そういうものに対する整備ですから当外務委員会でなくてもまた論議をする場所もあろうと思うので、その場所で論議をしていきたいと思うわけですが、通産省はこの博覧会に対して中小企業者の参加についてどれだけの行政活動をされておるのか、その点通産省の御意見を聞きたいと思います。
  483. 竹内黎一

    竹内委員長 通産省、どなたか答弁ありますか。——科学技術庁福島審議官
  484. 福島公夫

    ○福島説明員 通産省さんにはこの博覧会非常にお世話になっておりますので、恐らくこの関係の方がお見えになってないと思いますので、私かわって答弁させていただきますが、先ほど来御説明申し上げましたように、特に中小企業がどうやったらこの博覧会に参加できるかということを大変腐心されまして、当初ある程度の金を中小企業の方から集めて中小企業館というものを建てようかというようなことを計画されましたが、こういう経済情勢下でそれも大変むずかしいということもございまして、政府も協力して政府館の中に中小企業館とも言うべきコーナーをつくり、ただし品物あるいは人手等は中小企業の方で参加していただくという形で、中小企業が積極的に日の当たる場所でいろいろな活動をできるようにする、これは中小企業庁の方が相当苦心されてやっていただいたことでございます。
  485. 井上泉

    井上(泉)委員 科学博覧会については跡地の利用の問題等もあるわけですけれども、これはまた別の機会に譲りまして、博覧会条約の改正についての質疑は以上で終わりたいと思います。  次に私は、国際小麦協定の問題でお尋ねしたいのですが、今度ASEANに行って中曽根総理約束をしてきた十四万トンという米は、協定に基づく三十万トンの枠内か枠外か、どっちですか。
  486. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えします。  いま先生の御質問の趣旨は、食糧援助規約に基づいて無償援助で出すのか、それとも先般総理インドネシア訪問されて、インドネシアに延べ払いの輸出要請がございましたそれなのか、こういうことでなかろうか。御案内のように、食糧援助規約に基づきますお米の輸出ということになりますと無償でございますし、先般総理インドネシア訪問時に議論されました問題は延べ払いで有償でございますので、有償の場合はその協定に規定されたものではない、こういうふうに私たち考えております。したがいまして、枠外と申し上げてよかろうかと存じます。
  487. 井上泉

    井上(泉)委員 穀物援助協定では三十万トンは無償だから、そうすると十四万トンは別枠だ、こうなるでしょう。十四万トンの延べ払い輸出、それは枠外で別である。これはどういう条件インドネシアへ出すことにしておりますか。
  488. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  インドネシアに延べ払い輸出の要請がございました件については、なお具体的には話がなされてないわけでございまして、これから外交ルート等を通じて事務的に条件を決めていく、こういうふうになろうかと思います。したがいまして、いまのところは、延べ払いの期間をいかようにするか、金利をどのようにとるか、こういうことは話し合われてないような状態でございます。
  489. 井上泉

    井上(泉)委員 それじゃ、十四万トンの米の約束は、中曽根総理向こうへ行って機嫌よく、おれのところは米が余っておる、おまえのところは米は困っておるから十四万トン出すわ、こう言って農水省に相談もなしに総理の気持ちで決めたものと理解していいですか。
  490. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 総理に回答していただくにつきましては外務省、農林水産省双方で十分検討しておきました結果でございまして、決して相談なくお答えいただいたということではありません。
  491. 井上泉

    井上(泉)委員 大体、十四万トン出せるのか十五万トン出せるのか、えらい端数で十四万としておるわけですが、どうしてこの十四万トンという数が出たのか。それから、話をする過程の中で、これは有償だから、延べ払いだから、どういう条件でやりましょうということは、農林省、米を出す側としては大体どれぐらいのもので延べ払いとして認めておるのか、計算に入れておるのか、その点。
  492. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 お答えいたします。  当初インドネシア側からもう少し大きい数字の輸出要請があったように承っておりますけれども、私たち、インドネシア等に対する延べ払い輸出の枠といたしましては、他の輸出国等と協議しておりまして、伝統的な輸出国に対して悪影響を及ぼさない範囲、こういうことを考えて、一応十四万トンを限度とする、こういうふうに考えておりましたのでその数字を提示していただいた、こういうことでございます。  なお、延べ払いの条件につきましては、先ほども申し上げましたように現段階ではまだ決まってないわけでございますが、一応価格等につきましては従来インドネシアと延べ払いの交渉等もやっておりますし、国際価格を一応基準といたしましてやるということは、従来もやっている関係から見まして相手側もおおむね知っているのではなかろうか。具体的に幾らにするかということにつきましては、これから双方で協議していくことになるかと思います。
  493. 井上泉

    井上(泉)委員 前に韓国に三十万トン米を出したときに、十年据え置いて後十年間か二十年間で延べ払いとかいう条件で、現物を供与するという条件で米を出した。これも当時農水で議論したことを私は覚えているわけですが、その当時、いまそういうふうに韓国に三十万トンの米を出すということは大変な金の支出ではないか、財政負担ではないかと言うと、日本は米が余っておるから、日本の倉庫に入れておくより韓国人の胃袋へ入れておく方が安上がりだからというふうな説明を農林省はしたのです。大体そういう経過があるのですが、そのときの条件に基づく返済は終わっておるのですか。
  494. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 第一次の過剰米の処理につきましては現物で貸与する方式、それからまた延べ払いによる方式、こういう方式をとっておりまして、いま先生御指摘のように、当初韓国に対しましては現物で貸す方法をとっておりました。これの返還につきましては、現物で返していただくということではなしにそれを金額評価いたしましてお金で返していただくということで、現在毎年均等に一定額が返されておるということでございます。  なお、今回の五十四年以降におきます第二次の過剰処理におきましては、韓国に対しましては五十四年度に二十五万トン、これは現金ベースで輸出したものでございますが、五十五年度におきまして約三十一万トン、これは延べ払いでございます。五十六年度に約五十四万トン、これも延べ払いでやっております。  一応こういうことになっております。
  495. 井上泉

    井上(泉)委員 その場合の価格とか延べ払いの期間等はどうですか、五十四年、五十五年の分は。
  496. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 延べ払いの条件について申し上げますと、五十五年分につきましては十六万トンについて十年据え置き、この間の金利は二%でございます。その後二十年の支払いをしていただくということで、その間の金利は三%。その後の分につきましては条件を若干従来よりはきつくいたしまして、五年据え置き、金利二%、その後十年間で返還していただき、その金利は三%ということにしております。
  497. 井上泉

    井上(泉)委員 米の価格はどうですか。
  498. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 価格は、その契約時点におきます国際価格に準拠して決めております。
  499. 井上泉

    井上(泉)委員 順次入ってきておるということですが、それはそれなりに信用しておきましょう。  ところが、今度のインドネシアへの十四万トンというのは、何年、どういう条件で支払うということもまだ決まらない。こういうものは大体いつ決まるのですか。
  500. 山田岸雄

    ○山田(岸)政府委員 これからインドネシア側からの接触がございまして、いつごろ具体的な交渉をやるかという相手側からの申し出を私たち受けまして、それからいろいろと協議いたしたい、このように考えております。
  501. 井上泉

    井上(泉)委員 この食糧援助条約に基づきわが国の方の穀物で三十万トン、それからまたこれにかわる現金をということですが、この価格も国際価格ですか。
  502. 木幡昭七

    ○木幡説明員 国際価格でございます。
  503. 井上泉

    井上(泉)委員 これは無償だから——現金でやる場合には金を渡す、こういうことになっているが、いままでは金の方が多いですか、それとも現物が多いですか。
  504. 木幡昭七

    ○木幡説明員 現金拠出でございます。
  505. 井上泉

    井上(泉)委員 同じくタイに対しては食糧援助タイ米を使用するように努力をする。日本でよくしないことを努力と言うこともあるが、これは使用努力で、タイ米を食糧援助として幾らか出さなければいかぬというきちんとした要求は受けておるのですか、それとも努力したけれどもだめだという役人の考え方でこういうように書いたのか。
  506. 木幡昭七

    ○木幡説明員 実際に要請タイから受けておりまして、また、現にタイ米を使って援助をいたしております。
  507. 井上泉

    井上(泉)委員 それはどれくらいの量ですか。
  508. 木幡昭七

    ○木幡説明員 五十七年度を例にとりますと、トン数にいたしまして四万九千百二十五トンでございます。
  509. 井上泉

    井上(泉)委員 もっといろいろ質問したいと思いますけれども、対外援助、食糧援助条約、こういうものについては、当然国際的な任務を背負うために日本としてはやるべきことだと思うわけですが、条約で決めて、その条約の中で果たさねばならない責任。そうしてまた、条約ではないけれども、インドネシアへの十四万トンにしても、どういう形で数量を決められたのだろうか。また、タイ米を使用して援助する。タイにはお米があるのにどうしてタイに食糧援助をやるのか。こういうことを非常に不可思議に思うわけですが、これはどういうことですか。
  510. 木幡昭七

    ○木幡説明員 これはタイに対してお米を援助するということではございませんで、たとえばインドネシアから食糧援助の形で米を援助してほしいという要請があります場合に、米を生産しておりますタイタイ米を使って援助するというような形でやっている、すなわちインドネシアに対する援助タイ米を使っているということでございます。
  511. 井上泉

    井上(泉)委員 わかりました。それは十四万トンとは別だね。
  512. 木幡昭七

    ○木幡説明員 別でございます。
  513. 井上泉

    井上(泉)委員 そうすると、結局インドネシアに対する米の援助というのは十四万トンをはるかに上回る勘定になりはせぬですか。私、計算したらそんなになるが……。
  514. 木幡昭七

    ○木幡説明員 KR米の援助は別になるわけでございます。いわゆる食糧援助という形でやる場合とあと延べ払いの供与というのとまたあるわけでございます。
  515. 井上泉

    井上(泉)委員 延べ払いでやろうと食糧援助でやろうと、とにかく食糧として日本政府の負担によってインドネシアへ提供する量は十四万トンを上回るかどうかということを言っておるのですから、これは明確になるでしょう。
  516. 木幡昭七

    ○木幡説明員 十四万トンを上回ることでございます。
  517. 井上泉

    井上(泉)委員 ASEANの報告にしても、どうも国民には理解しにくいごまかし的な内容で、この点についてはなお吟味しなければいかぬわけです。  そこでジュート及びジュート製品に関する国際協定、これはバングラデシュというめっそう豊かでない国の製品であるし、これについての国際協定を結んで、そしてジュート等のいわば市場を拡大していく、そういうことが今後可能なのかどうか、その点を承っておきたいと思います。
  518. 妹尾正毅

    ○妹尾(正)政府委員 お答え申し上げます。  ジュートという産品の性格からしまして、できることとできないことがあると思いますが、とにかく今度の協定で目指しておりますのは研究、開発それから市場の拡充、費用の削減という事業の実施、情報のとりまとめそれから重要事項の検討でございますが、そういうものを通じてジュートの競争力をそれだけ強めかつ市場を拡充していこうということでございまして、目的はそうでございます。みんなが協力してうまくいけばそういう成果を上げることができると考えるわけでございますが、ただ、それは事柄の性格上緩衝在庫による価格の安定とは違う目的になるわけでございます。
  519. 井上泉

    井上(泉)委員 この国際協定をなすということは、結局ジュートの生産国というのはこれ以外に余り頼るもののない国でしょう。これらの国のいわば経済を少しでも豊かにしてやるためにこのジュート製品の用途の拡大もやり、あるいは品質の向上もやって他の製品との競争力もつけていく、そういうことが目的のための条約であることはちゃんと書いてくれているから、あなたの説明を受けるまでもなく、私はそれをあえて質問しているのではないのです。  そこで、こういうふうな商品協定の中で日本各国に、発展途上国にずいぶん金を出しておる。そこで最近は、これに対する借金を棒引きせよ、棒引きをしてやらなければとても払えぬじゃないか。日本だけではありませんが、いわゆる貧しい国に対して金を貸しておってもなかなかその金が払えぬじゃないか、そういうことから借金を棒引きしたらどうだ、こういうことが、日本関係者の方からもそういう意見が出されておるということを聞くわけですが、そういうような論が起こっているということについては、これは主として外務省ですが、外務省の経済協力局の方では承知しておりますか。
  520. 木幡昭七

    ○木幡説明員 そういう要求があるということは聞いております。
  521. 井上泉

    井上(泉)委員 そういう考え方、意見というのは事務当局としてはどう思いますか。できればというなにがあるのですか。
  522. 野村忠清

    ○野村説明員 お答え申し上げます。  いま先生の御指摘のような要求につきましては、とりわけ今回六月にベオグラードで予定されております第六回のUNCTADの総会との関連で開発途上国の側からすでに出ております。開発途上国は先ごろブエノスアイレスで閣僚会議を開きましたけれども、そこで作成されてまいりました決議の中にもそういう項目が含まれております。  そこで今度のUNCTADとの関連で申しますれば、この債務の問題、とりわけ後発開発途上国の債務の問題というのが大きな問題、中心的なテーマになるということはほぼ確実な情勢でもございますし、またECなどを初めといたしまして、西側の国の中でもこういう動きを考えながら何か対策を考えるべきではないかという動きがあることも事実でございます。そういう状況を踏まえまして、私どもも現在政府部内で、このような要求に対して何かできるかどうかということを検討中の段階でございます。
  523. 井上泉

    井上(泉)委員 一次産品の生産地のそういう状態についての対策を立てていく中で、古い借金をいつまでも抱え込んでおるというようなことは大変だ、私はこう思うのです。そういう面についても、各国協力をしてこうした一次産品の輸出国に対する救済措置というものを講ずるのは国際的な義務だ、こう思うわけですが、これに加盟しておる国でよその国はどういう意見ですか。
  524. 野村忠清

    ○野村説明員 一次産品の問題につきましてはいろいろな面での国際的な協力があり得ると思いますが、特に国連のUNCTADの場に出てきておりますものとして、一次産品共通基金という御案内の基金の協定がございます。これはまだ発効はいたしておりませんけれども、日本を初めといたしまして西側の国の中にも、これをできるだけ早く発効させようという動きが一つございます。  それからまた、先ほどちょっと申し上げましたUNCTADとの関係で言えば、一次産品の輸出から出てまいります所得の落ち込みに対しまして、これを補償するための何らかの方策を新しく考えるべきではないかという動きもございまして、これにつきましてもすでにUNCTADの事務局でございますとか、あるいは開発途上国側からの考え方の提示もございますし、また西側の国の一部の中にもそういう考え方をいままとめつつある国もございます。日本といたしましても、そういう提案については、これは検討していこうということで考えておるところでございます。
  525. 井上泉

    井上(泉)委員 検討するということは、これはいわば棒引きを考えるという面で検討するのか、あるいは何とかして払ってもらうようにするために検討するのか、検討の道が二つあるわけでしょう。ところが現実の状況としては、たくさんの借金を抱えておるこれらの国々というものはとても払えない状態の中にあるし、そういう払えない状態の中にいつまでも借款借款と言って貸し付けをするというふうなことをしても意味をなさぬじゃないか、そうしたことについて国際的に先進国が話し合って何か始末をつけなければいかぬ問題じゃないか、私はこういうふうに思うので、その点について大臣の見解を承って私の質問を終わりたいと思います。
  526. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 LLDCといいますか最貧国は、世界経済が非常に不調が続いておるために、ますます債務が累積をしておるわけであります。これに対しましては、日本を初めといたしまして先進国は、これに対する経済協力、特に無償供与等も相当積極的に進めておるわけでございますが、借金を棒引きというようなことになりますと、これは日本だけの問題でありませんし、なかなかそう簡単に国際的な合意を見るということも困難であります。議論としてはあることは事実でありますが、この問題につきましては、今後のそうした国々の経済的な情勢等も見ながらこれに対して対応を進めていかなければならない、こういうふうに思います。
  527. 井上泉

    井上(泉)委員 私、きょうは非常にはしょって、これで質問を終わるわけですけれども、次の機会にこういうわが国海外に対する借款、こうした問題については改めて質問したいと思いますし、午前中にその資料要求してあったのをひとつできるだけ早く届けていただくということをお願いしておきたいと思います。  終わります。
  528. 竹内黎一

    竹内委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  529. 竹内黎一

    竹内委員長 それでは、速記を起こして。  これにて各件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  530. 竹内黎一

    竹内委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  531. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  532. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  533. 竹内黎一

    竹内委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  534. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  535. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  536. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  537. 竹内黎一

    竹内委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十五分散会