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1983-04-27 第98回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月二十七日(水曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 竹内 黎一君    理事 麻生 太郎君 理事 川田 正則君    理事 浜田卓二郎君 理事 井上  泉君    理事 北山 愛郎君 理事 玉城 栄一君    理事 渡辺  朗君       上草 義輝君    奥田 敬和君       久間 章生君    鯨岡 兵輔君       小坂善太郎君    佐藤 一郎君       玉沢徳一郎君    宮澤 喜一君       河上 民雄君    高沢 寅男君       土井たか子君    八木  昇君       草川 昭三君    渡部 一郎君       林  保夫君    中路 雅弘君       野間 友一君    伊藤 公介君  出席国務大臣         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      味村  治君         内閣法制局第三         部長      前田 正道君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁装備局長 木下 博生君         科学技術庁研究         調整局長    加藤 泰丸君         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房審         議官      宇川 秀幸君         外務大臣官房外         務参事官    山下新太郎君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省条約局長 栗山 尚一君  委員外出席者         防衛庁人事教育         局人事第三課長 西連寺 治君         防衛庁経理局監         査課長     竹下  昭君         防衛施設庁総務         部補償課長   小林 和夫君         科学技術庁研究         調整局宇宙企画         課長      吉村 晴光君         科学技術庁研究         調整局宇宙国際         課長      中津川英雄君         外務大臣官房外         務参事官    遠藤 哲也君         運輸省航空局管         制保安部長   川井  力君         郵政省電波監理         局宇宙通信企画         課長      江川 晃正君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     奥田 敬和君   石原慎太郎君     上草 義輝君   北村 義和君     久間 章生君   渡部 一郎君     草川 昭三君 同日  辞任         補欠選任   上草 義輝君     石原慎太郎君   奥田 敬和君     赤城 宗徳君   久間 章生君     北村 義和君   草川 昭三君     渡部 一郎君     ───────────── 本日の会議に付した案件  宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)  宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第一一号)  宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第一二号)  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件(条約第三号)(参議院送付)  千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件(条約第四号)(参議院送付)  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件(条約第五号)(参議院送付)  千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件(条約第九号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 竹内黎一

    竹内委員長 これより会議を開きます。  宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件及び宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件の各件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 ただいまお話のありました宇宙条約について質問いたしたいと思いますけれども、その前に、きょう報道されておりますように自衛隊機事故が起きましたので、この点について最初に短く質問させていただきたいと思います。  このたびの宇宙条約宇宙空間からの落下物事故について取り決めるものでありますけれども、これはめったにないものだという説明であります。しかし、軍用機の方の事故は、実は四月の十九日、最近でも鳥羽市の山中で航空自衛隊機墜落事故を起こしておりますし、今回、海上自衛隊軍用機事故を起こしておるのでございます。岩国基地低空訓練中というふうに聞いておりますけれども、大変不幸なことに十人の方が亡くなり、四人が重傷ということで、これは最近の自衛隊事故でも非常に規模の大きいものであるだけではなく、幾つかの点で非常に重要な一つ傾向があるように思いますので、その点を質問いたしたいと思います。  まず初めに亡くなられた方の御冥福を祈りたいと思いますが、まず第一に防衛庁にお尋ねいたします。  低空訓練飛行中、これは鳥羽市の場合もそのように伝えられております。この二つの事故には一つ共通性がある。実戦向け訓練考えられないような低空飛行をやっているわけですけれども、そこに無理があったのではないか。そして、その訓練を敢行する背後に人命尊重の精神が無視されて、人命が軽視されているのではないか。私どもはそのことを特に憂えるものでありまして、一体この訓練飛行というものをどのような立場で行っているのか、防衛庁からお伺いをしたいと思います。
  4. 西廣整輝

    西廣政府委員 先週に続きまして昨日また大きな事故を起こしまして、かけがえのない有為の人材を失いましたことについて深くおわびをする次第であります。  ただいまお尋ねの低空飛行を含む訓練必要性等についてでございますが、先週事故を起こしましたC1輸送機、これは主として有事におきまして、戦時輸送航空輸送をやるあるいは空挺団を運ぶということでありまして、敵のレーダーに発見されないようにできるだけ低空、山合い等を飛んで輸送するというような任務がありますので、一般の民間の輸送機等と違いまして、どうしても低空下における操縦訓練というものが主体になっておるわけでございます。  なお、昨日事故を起こしましたPS1、これは対潜飛行艇でございますが、これも対潜飛行艇特性といたしまして洋上におきまして、大型機でありますけれども磁気探知機等を操作するためにどうしても低空で非常にむずかしい運動をしながら相手の所在というものをピンポイントのような形で捕捉しなければいけない、そういうことでどうしても低空における操縦訓練というものが非常に重大な訓練の中身になっておるということでございます。     〔委員長退席麻生委員長代理着席
  5. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、今回の低空訓練はたまたまそういうことをやったためにこういう事故が起きたのではなくて、この飛行機特性から見て低空で行くととがむしろ本質になっている、こういうことになるわけでありますけれども、その場合、このような事故がしばしば起こるということから見まして一体人命尊重という点はどうなるのか、防衛庁としてはこのような新しい事態をどう考えているのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  6. 西廣整輝

    西廣政府委員 たまたまこのたび引き続いて大きな事故が起きたわけでございますけれども事故はあってはならぬわけでございますが、訓練経過等でたまたま起きるということでありまして、決して統計的に見て非常に多いということではございませんで、自衛隊機事故というのは世界各国の軍隊の事故率に比べますときわめて低位に、低い率にあることは間違いないことでございます。それはそれといたしまして、事故防止につきましてはかねがね注意を促し努力を重ねておるところでございますが、今回の事故に絡みましても、こういった大きな事故が続きましたので、昨夜事故発生直後に、海上自衛隊といたしましては同型機、対潜飛行艇あるいは対潜救難機、そういったものの一斉点検操縦系統の一斉点検をやるということのほかに、防衛庁長官の方から昨晩は口頭で各幕僚長に対し、そしてけさ方、異例のことでございますが、長官指示を出しまして、改めて航空機のいわゆる機材の点検操縦士等安全意識の高揚はもちろんでございますけれども、特に各種訓練実施につきましてそれぞれの訓練内容に応じました安全確保という観点からの実施要領といいますか、そういった点について抜本的に洗い直してみろというような長官指示を出して、今後とも事故防止のために最大の努力を払いたいというように考えておるわけでございます。
  7. 河上民雄

    河上委員 いまの御答弁では事故率自衛隊は非常に低いというようなことを言われましたけれども、これはいま事故が起きた直後、責任が問われている立場の方の御発言としては私どもはいただけないのでございます。  特にこれは第二点として、新聞の報道によりますと、今回事故が起きて墜落した地点は、米軍弾薬庫からわずか二百メートルのところだった、このように指摘されております。また、これは岩国基地でございますので、住宅密集地が非常に近い。一体この飛行機の速度というのはどのくらいか、私は一遍ここで伺いたいと思いますけれども、ほんの一秒か二秒の差で大変なことになるのじゃないか、私はそう思うのであります。民家を巻き込むおそれがあったのではないか。また、もしその弾薬庫に突入するというようなことがありましたら、さらに大きな被害を生じたのではないかと思うのでありますが、この点について、いま低空飛行であればどうしてもこういう危険を冒さなければならぬということを言われる以上、こうした問題について、防衛庁としてはどういうようにお考えになるか。また、もし万が一こういうことが起きた場合に、防衛庁としてはどういうように処置をするつもりか、その点をお伺いしたいと思います。
  8. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生も御案内のように、岩国基地と申しますのは、基地滑走路の延長線上の方に各種工業地帯がございまして、そういう点がございますので、早目旋回をして海上に離脱をするという形の飛行をとっておるわけでございます。今回のPS1の事故右旋回中に墜落炎上したということでございますが、抜本的には現在岩国基地沖合い移設問題等もかねがね調査を進めておるところでございますけれども、現状ではそういった基地の置かれております地形的な条件等を踏まえた飛行経路ということで、民家への被害を避けるような飛行というものを実施をしておるところでございます。
  9. 河上民雄

    河上委員 いまの御説明を伺っても、これは技術的にどうもこういう事故が起こるようにできているような感じも受けるのであります。つまり、民家を避けようとすれば無理な旋回をしなければならぬ、そこで失速が起こる、こういう形になっているのでありまして、これはもう基本的に訓練のシステムを変えない限り、また起こるという状況にあるような気がするのであります。そういう予言は大変差し控えなければいけないし、ないことを願いますけれども万が一事故住民に及ぶというような事態、あるいはいまお話のありましたように武器弾薬庫あるいはそうした工業用石油備蓄基地とかそういうようなところにもしぶつかりました場合、これはちょっと自衛隊だけではなかなか処置できないような大きな問題になるのじゃないかと思うのでありますが、その点について自衛隊としてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。     〔麻生委員長代理退席委員長着席
  10. 西廣整輝

    西廣政府委員 いま御質問にありましたような大被害民家に及ぼすというような事故が発生するということは、私どもとしては全く考えたくないわけでございますけれども、先ほど来申しましたように、そういった人口の密集地域、人家の密集している地域あるいは石油コンビナート等がある地域、こういったものにつきましては離着陸の飛行経路からそれを外すというようなことで、そういった事態が万々一起きないようにかねがね協力をし、そういう施策を講じておるところでございます。
  11. 河上民雄

    河上委員 それではいま米軍弾薬庫からわずか二百メートルのところへ墜落したということでありますが、もしその飛行機がそこへぶつかる場合、二百メートルでは何秒ぐらいの時間になりますか。
  12. 西廣整輝

    西廣政府委員 事故の細部について、まだ何ノットで飛行しておったか等把握しておりませんが、対潜飛行艇は非常に低速性能のよい航空機でございますので、恐らく数十ノット、六、七十ノットというような低速で飛んでおったと考えられますので、二百メートルということになりますと恐らく数秒間、二、三秒という時間ではなかろうかと思います。
  13. 河上民雄

    河上委員 そうなりますと、本当にわれわれは一秒、二秒の中で暮らしているわけで、これは大変大きな問題で、たまたま起こった事故というよりも、これはまた引き続き起こった事故というだけではなくて、私は根本的に考え直さなければならない事故ではないかと思うのであります。私は、きょうは長官出席を要求いたしまして、ぜひ防衛庁としての、最高責任者としての責任ある御答弁をいただきたい、このように考えたのでありますが、きょう残念ながら長官、都合が悪くて出られないということでありますけれども、これは新しい訓練軍用機の技術的な要請から低速訓練が絶対必要であるということならば、この問題はなかなか一時的な事故ということで済まされないと私は思うだけに、この点はひとつ長官にも防衛庁挙げて根本的に取り組んでいただくように要求をしたいと思いますけれども、いかがでございますか。
  14. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問の御趣旨、十分わかっております。ただ一つ御理解いただきたいのは、自衛隊機特性といたしまして、どうしても厳しい訓練有事に役立つような訓練をやらざるを得ない。その中でもなおかつ事故を起こしてはならないわけでございまして、われわれといたしましては今後も事故防止のための最大限の努力を払いたいというように考えております。
  15. 河上民雄

    河上委員 それでは、きょうは時間が余りございませんので、この事故についての質問はこの程度で終わりたいと思いますけれども、いまの御答弁の中にも、私はどうも訓練における人命軽視という傾向は否定できないと思うのです。そのことが、自衛隊隊員に対する人命軽視から自衛隊外住民に対する人命軽視につながっていく、私はそのように考えますだけに、自衛隊隊員に対する人命重視というものをぜひもう一度確立をしていただきたいと、このことを要望してこの質問を終わりたいと思います。  それでは、宇宙条約について御質問をいたします。  まず、御承知のとおり、昔、中国の故事に杞憂というのがありまして、天が崩れて落ちてくるというのを心配して飯ものどを通らなく、夜も眠られなくなったという話がございます。二千数百年前の周王朝の時代、現在の河南省に杞という国がありまして、そこのある人がそういう心配をした。それから、ありそうもないことを心配するのを杞憂と言うわけでありますけれども、どうも自衛隊事故を見ましてもそうでありますが、宇宙に打ち上げられた物体が落ちてくるという心配は、もうそれこそ杞憂にすぎないと笑い去るわけにいかない現実問題になってきたと思うのであります。そこで、この三条約審議につきましては真剣に取り組まなければいかぬ、こんなふうに私ども思っておるわけでありますが、まず技術的なことを幾つか伺って確認をしておきたいと思います。  まず第一に、宇宙で現在打ち上げられている衛星の数はどのくらいでございますか。
  16. 中津川英雄

    中津説明員 それでは、世界じゅうで打ち上げられております人工衛星の数について御説明したいと思います。  現在まで、これは五十七年六月末現在でございますけれども、二千八百十個打ち上げられております。その内訳を申しますと、国別ではソ連が千七百二十八個、アメリカが九百六十三個、日本が二十三個、それからフランスが十七個、ESAが十七個といったような状況でございます。また種類別で見ますと、技術開発とか科学衛星、これが二千百八十五個、通信衛星が二百五十九個、気象衛星九十七個、有人宇宙船八十四個というような状況になっております。
  17. 河上民雄

    河上委員 それは、打ち上げられている、打ち上がっていると私は言ったのですが、打ち上げたものと消滅したものとの関係はどうなっていますか。
  18. 中津川英雄

    中津説明員 ただいま申し上げました二千八百十個といいますのはいままでに打ち上げられたものでございまして、このうち、機能がなくなりましてすでに使ってないものが数多くございまして、現在運用されているものは千個前後ではないかというふうに推定されます。
  19. 河上民雄

    河上委員 いま政府委員の方が日本衛星は二十三個と言われましたけれども、私どもがいただいている政府説明書には二十四個となっているのですね。一個でもその一個が落ちてきたらえらいことでございますので、その辺一体どういうことでございますか。
  20. 中津川英雄

    中津説明員 日本人工衛星の数につきまして二十三個と申しましたのは、実は五十八年三月末現在まで言いますと二十六個でございまして、締め切り時期といいますか、それが五十七年六月だったものですからちょっと数字に狂いがございました。
  21. 河上民雄

    河上委員 最後に、いまの御答弁で現在作動しているのは一千個ぐらいと推定されるというお話でございますが、その推定される一千個の中には、この前落ちてまいりましたソ連のコスモス一四〇二号は入っておるわけですか。
  22. 中津川英雄

    中津説明員 合計の二千八百十個の中には入っておりますけれども、あの衛星は落下いたしましたので、現在は運用中というものには入っておりません。
  23. 河上民雄

    河上委員 打ち上げた数は大体わかると思うのですけれども、消滅したものというのは、途中で大気圏に突入するとき消えてしまうならばいいのですが、地上におっこちてくるものもあるわけですので、もう少し正確な数字を捕捉していただくことは必要ではないかと私は思うのです。これは朝日新聞に出ていた、四月十七日付でありますけれども、そこにあります数字では、一九八三年三月一日現在、北米宇宙防空司令部調べという人工天体数字がずっと挙がっております。それを見ますと、数字が全体にずっと多いのでありまして、特に日本について見ますと、現在飛行中のもの五十、消滅せるもの十九という数字が挙がっております。これといまの御説明とはかなり懸隔があるようなんですが、一体どう考えたらいいのですか。
  24. 中津川英雄

    中津説明員 お答え申し上げます。  わが国で打ち上げました人工衛星につきましては、先ほど御説明をした二十六個という数字でございますけれども、そのうちすでに機能を停止いたしまして現在運用していないものがございまして、現在運用中のものがいま御説明があった数字ではないかというふうに考えております。
  25. 河上民雄

    河上委員 いや、数字が違うわけですね。その根拠、日本政府のいまの発表北米、つまりこれはアメリカでしょうが、北米宇宙防空司令部調べというのと数字が全然違うわけです。恐らく世界じゅうの人はこちらの方を信じてやるかもしれない。
  26. 宇川秀幸

    宇川政府委員 いまの点について補足的にお答えさせていただきます。  一般に、いま科技庁から出されました数字というのは人工衛星と通称されるものの数字をとっておるわけでございまして、その上では正確でございます。一方、先生の方から新聞の記事として御引用がございました米国ソース数字は、人工衛星本体以外に、打ち上げた際の燃え殻、たとえばロケット燃え殻等を含めた数字だと私どもは了解しておりますので、その点で数字に差異が出るということだと思います。  なお、米国衛星飛行物体等追跡能力というのは非常にすぐれたものでございますので、その数値自体についてはおおむね正しいというふうに御理解いただいてよろしいかと考えます。
  27. 河上民雄

    河上委員 それにしても、政府発表では二十六、アメリカの方では五十、こうなっておるわけですね。これだけ倍近く違う。破片が分裂したということにしましても、これはずいぶん違うのですね。こんな数字のことを申しますが、いま宇宙条約審議する以上、これは落ちてきた場合の事故とか補償、それから管理を意味する登録とか、そういうようなことをいまここで国際的に決めるわけであって、国際的に決める以上は国際的に共通数字の上に立ってやらなければ、こんなことはできないのじゃないですか。もし向こうが間違っているならこちらからはっきり、これは数字が間違っている、当方で打ち上げたのはこれだけしかないはずだというふうなことを言うべきだと思うのでして、三条約審議する以上、日本日本でやっています、アメリカアメリカでこうやって計算しているはずですというのでは、ちょっと答弁にならぬと思うのです。
  28. 中津川英雄

    中津説明員 大変失礼をいたしました。先ほど御説明いたしましたものは人工衛星の数を申し上げたわけでございますけれどもインタラビア発表された数字は、人工衛星とそれを打ち上げるロケット等燃え殻も含まれているということでございまして、いまわれわれが得ておりますデータでは、一九八一年の十二月十七日現在のものでございますけれども、その数字について改めて御報告させていただきたいと思います。  地球の軌道上に回っているもののうち、ペイロードと称しております衛星が二十一個、ロケット燃え殻が二十二個、合計四十三個という数字でございまして、このうち落下したものが衛星が二個、ロケット燃え殻等が十三個、計十五個という数字、これもインタラビアの調べた数字でございますけれども、そういうことになっております。
  29. 河上民雄

    河上委員 これはかなり技術的なことですので、こういう審議をする上で、また今後われわれがこの問題に絶えず関心を寄せる上で非常に重要なことですから、国際的に通用するようなお互いの理解を持たないと、三条約趣旨からいっても大変不安定な形になるわけですね。したがって、いまの点は、もう少しはっきりだれにもわかるようにまた後ほど資料を提出していただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  30. 宇川秀幸

    宇川政府委員 取りまとめて差し上げるようにいたします。
  31. 河上民雄

    河上委員 三条約のうちの一つ登録条約があるわけでございます。ちょっと伺いますが、いま挙げた数字は全部登録されておるものなんですか。また、登録する機関がどこにあって、それはどういう形になるのか。
  32. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  条約のたてまえは、各国がそれぞれ登録簿を設置して保管する、その情報で条約の掲げております識別を可能とするようなデータを国連事務総長に提供する、国連事務総長は、提供される情報を記録する登録簿を保管することになっております。その情報は、公開されると同時に各関係国に通報されるというのがたてまえでございます。それから、現実に登録されておりますものは主として人工衛星そのものでございまして、アメリカの場合には、いま話題になりました燃え殻等についても情報の提供がございます。これは各国の追跡確認能力の差に基づくものであって、たとえば日本の場合には必ずしも毎回燃え殻について確認いたしかねるという事態であるというふうに理解いたしております。したがいまして、登録簿を設置するという主眼は、いかにして関係諸国の宇宙物体を識別するかというところにポイントがございますので、技術的に可能な一番よろしいデータを集めているという形になっております。なお、通報には宇宙物体が軌道に上がったという確認手続がございますから、打ち上げられた直後直ちにということではなくて、若干時間のずれがあるのが通常でございます。
  33. 河上民雄

    河上委員 いま登録されたもので結構なんですけれども、原子力衛星の数はそのうちどのくらいになるのか、また、軍事衛星――こういうカテゴリーがちゃんとあるのかどうか知りませんけれども、軍事衛星と目されているものはどのくらいの数に上るのか。この前、ソ連のコスモスの場合は軍事偵察衛星というふうに考えられておるのでございますけれども、その点、いかがでございますか。
  34. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  まず、登録の点でございますけれどもアメリカソ連とも、国連事務総長に対する登録に当たりましては、これが軍事衛星であるとか、あるいはこれが軍事衛星じゃないとか、そういったような区分けをしていない登録をしているものでございますから、先生の御質問の点につきましては、国連への登録に関する限りはわからないわけでございます。  他方、原子力衛星登録の件でございますけれども、これにつきましては、アメリカにつきましては国連に提出した数字でございますけれどもアメリカは原子力電池を搭載した原子力衛星が二十一個、それから原子炉衛星、原子炉を搭載した衛星が一個、これは国連へ通報いたしました資料でございます。他方ソ連の方は、これが原子力衛星だという登録をしてないものでございますから、国連の登録簿自体からは判明しないのでございますけれども、諸般の、アメリカとかフランスの信頼のおけます宇宙関係の専門誌等、これは実は去年の十月末現在でございますけれども、原子炉衛星が二十四個打ち上げられた、こういうふうに承知しております。これは現時点でありますけれども、そのうち二個が落ちているわけでございますから、打ち上げられましたのは二十四個マイナス二、全部周回しているのかどうかわかりませんけれども、そういうことになっております。
  35. 河上民雄

    河上委員 大体数字はわかりました。  ちょっと話をかえますけれども登録に関連いたしまして、いまのお話ですと、それぞれの国が登録するということになっておりますが、民間打ち上げの場合は、まずどこか政府の役所がこれを受理して登録をするんではないかと思いますが、民間打ち上げの場合、まだ日本はそこまでいっておりませんけれども、その場合に何かやはり国内法が必要だと考えられますか。今回の条約案の批准の提案に当たりましては、国内法が整わなくてもこの条約を出すということになっておりますけれども、その点はいかがでございますか。
  36. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  御説のとおり、現在、民間では独自に打ち上げる体制にございません。したがいまして、今回私どもがこの条約審議をお願いするに対して審査してまいりましたのは、現在の体制でこの条約実施できるか、その実施を担保できるかという趣旨でございまして、そのためには新たな国内立法を必要としないということで御審議をお願いしているわけでございます。  先生御指摘の将来の問題として民間が独自に打ち上げたような場合の登録手続、その場合の管理の方法については、法律の要否を含めまして相当慎重に検討しなければいけないというふうに認識いたしております。その手当ては何らかの形で必要となるものと考えております。
  37. 河上民雄

    河上委員 では、いまの御答弁は、民間が打ち上げるような時代が来たら、その受け皿となる国内法が必要であるという御見解だというふうに判断してよろしいですか。
  38. 宇川秀幸

    宇川政府委員 そういう体制をとる必要があると存じます。その場合に国内法が不可欠であるのかあるいは必ずしもそうでないのかという点も含めまして検討すべきことと認識いたしております。
  39. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、今度は、国内法がなくても民間が打ち上げることを認めることはあり得るというように考えていいですか。
  40. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  現在の体制では、打ち上げ能力は民間にございませんので、各種政府関係機関等への依頼による打ち上げの事態を予想いたしておりますので、その点については対処できると考えております。したがいまして、将来の問題として、民間が独自に打ち上げを含む能力を持ちました場合に、その辺の体制をいかに組むかということについては今後の検討課題、恐らく、先生が御指摘になるように立法の可能性も含めて検討するということになると考えております。
  41. 河上民雄

    河上委員 一般には法律がなくてそういうことができないというふうに考えられるのですね。そういう国内法がなくても打ち上げ可能な事態をやはり想定しておられるのかどうか。そこを、何かしつこいようですけれども、もう一度伺います。
  42. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  常識的には御指摘のとおりと存じます。その場合の法的な規制根拠の有無の点につきましてもさらに検討を要するというふうな趣旨でお答えいたしました。はなはだわかりにくい答弁になりまして申しわけございません。
  43. 河上民雄

    河上委員 いまのあなたの御答弁日本政府答弁になるのじゃないかと思うのですけれども、とするとこれは大変大きな問題でして、大きな日本のテレビ会社とか電力会社とかそういうのが、いまの御答弁をよりどころにして何か動き出す可能性もあるわけですからね。それで正確に私は聞いておきたい。後にもう一度伺いますけれども、これは莫大な資本を要する仕事であるだけに、そう予想しては悪いですけれども、下手をしますと大変なスキャンダルの温床になることだってあり得るわけですし、いろいろな問題が出てくるだけに私はそれを伺ったので、どうもいまの御答弁では何かはっきりしない。
  44. 宇川秀幸

    宇川政府委員 再度お答えさせていただきます。  明確に事故その他を防止し、かつその規制ができる体制を組むという方針でございます。そのために、法律を要するか否かを含めて、体制のあり方について検討を行いたいという趣旨でお答えしたつもりでございます。
  45. 河上民雄

    河上委員 それでは、その場合、どこが所管の官庁になりますか。
  46. 宇川秀幸

    宇川政府委員 恐らく、その関連する分野によりまして、それぞれの権能の範囲内で主管をすることになるかと予測いたしますが、その辺につきましても関係省庁できっちり体制をつくって臨むという申し合わせを行って、現在の審議をお願いしているわけでございます。
  47. 河上民雄

    河上委員 大臣にもちょっとお伺いしたいのでありますが、たとえば国際人権規約の批准に当たりまして、これがなかなかできなかったのは、要するに国内法が整っていなかったからだということでして、今回は、国内法は整っていないが、ともかく早く出さぬと打ち上げ世界第三位の国としてどうも通用しないからというので出した。何かその辺、論理の一貫性が全然ないですね。いま伺いますと、民間が打ち上げる場合、どうするのか。将来の問題だと言いながらも、日本の今日の経済力から見まして、そういう事態はいま予想しているより早く来る可能性が十分あると思うのですね。それに対する対応も実ははっきりしておらぬということで、一体それでいいのかどうか。  おたくは科技庁ですか。(宇川政府委員「外務省でございます」と呼ぶ)外務省ね。一体、科技庁なら科技庁で主管を決めるとか、おれはやっぱりというので郵政省ががんばっちゃっているのか、それとも外務省がやはりおれだと言っておられるのか、どうもその辺が――まあ結局それで今回国内法ができなかったというのが本当じゃないかという、意地悪く考えればそうなると思うのですが、しかしいつまでもそうやっておられない事態が必ず起こると私は思うのですよ。一体所管はどこなのか。そんなこの部分はこっちの役所、この部分はこっちの役所では、それじゃ責任が負えない。少なくともほかの問題についてはそういうことはしてないわけですね。
  48. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えさせていただきます。  全く御指摘のとおりでございまして、私どもとしては、今回は早期にこの条約案を提出できる体制を組むということと、その実施に伴いましてそごがないように関係省庁と十分その実施の体制につきまして詰めました上で持って上がっているという形でございます。あえて申し上げさせていただければ、外務省としては、自分が本件について主管すべき事項だとは考えておりませんが、その辺も含めまして、現在の体制で本条約実施には遺漏がないというふうに考えております。恐らくは、将来種々の立法措置も必要になるというふうに考えられますので、その点についても今後とも検討を続けてまいるという考えでございます。
  49. 河上民雄

    河上委員 いまの御答弁だと、どうも見切り発車的にという感じが非常に強いのでございまして、これ以上あなたを責めてもなかなか答えは出ないのじゃないかと思います。ただ外務省はその気がないということだけははっきりして、これは一人候補者が抜けたわけですけれども、ほかにも各省おられるようですけれども、私のところももうそれは初めから放棄するという省があったらいまついでに言っておいてもらってもいいです。恐らくなかなかないと思うのです。  それでは次のテーマに移ります。  われわれ素人考え考えますと、いま衛星は二千構体打ち上げている。アメリカの破片まで勘定するという計算の仕方によりますと、これはもう万を超えることになるようなんですね。幾ら広い宇宙でもそのうちいっぱいになってしまうんじゃないか、あるいは少なくともニアミスが起こってしまうんじゃないか、そういう心配が非常にあるわけでございまして、静止衛星というので、さくら二号をわが国が打ち上げるときに、ソ連の打ち上げとちょうど重なって、お互いに少しずつ遠慮し合って両方が打ち上げたというような話も聞いております。もうすでにそういう過密状態が始まりつつあるわけでして、そうなりますと、これはやはり電波監理局のようなものが国際的に必要になってくるんじゃないかと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  50. 江川晃正

    ○江川説明員 先生の御指摘は静止軌道の上でのお話でございますので、静止軌道について御説明させていただきたいと思います。  静止軌道と申しますのは、赤道の上空約三万六千キロの上空にあるわけでございますが、そこに衛星を――先ほど先生どこかの国と調整したというお話がございました。現実に昨年の八月から九月にかけまして、今回打ち上げましたCS2aと申しておりますが、この通信衛星を打ち上げるに当たりましてソ連と軌道の位置を調整いたしました。日本が東へ何度、ソ連もまた何度ずらすというふうに、二度間隔ほどずらしたわけでございますが、そういう結果、百三十二度に今度の衛星を打ち上げたわけでございます。  そういうのもそれでは何個まで上げられるのかというのが、いわば技術論的にあるわけでございますが、軌道の空間と何個までという確定的な数字考え方をとっているわけじゃありませんが、その何個というものとの関係は、いわば使う周波数とのかかわりで出てまいります。どういう周波数を使って、そしてそれを地上で受けるパラボラアンテナと申しておりますが、お皿のようなかっこうをしているあのアンテナの大きさとの関係が出てまいります。  いま世界的にこの静止軌道で使われております周波数は、衛星に向かって発せられるのが六ギガヘルツ帯、一秒間に六十億回の振動をする電波を発射する。物すごく周波数が高いわけですが、六ギガヘルツ帯で送り、その衛星で中継して四ギガヘルツ帯で返ってくるという、上り六、下り四と言っておりますが、六/四ギガヘルツ帯で使うというのが世界的に一番使いやすいということで使われております。  この周波数でやりますと、地上のアンテナが三十メートルぐらいで十分な通信ができる。その場合に、三十メートルのアンテナを用意しますと、大体二度間隔に一個ずつ置ける。つまり全部で百八十個ぐらい置ける。ところが、アンテナを三分の一の大きさの十メートルの直径にいたしますと、もう少し数が減りまして百二十個ぐらい、つまり三度間隔になります。今度のCS2aと、八月に打ち上げる予定でおります2bという二つ目ですが、これは四度の間隔で予定しております。実際に使われるアンテナは比較的小さなものということでやや間隔をとっているわけでございますが、そういう使う周波数と地上のアンテナの大きさとの関係で数は大体決まってくる。それをまとめて申し上げますと、六/四ギガヘルツ帯で申し上げますといまのような関係になりますが、日本がいま開発しております使える周波数を――今度の衛星、CS2aの場合には三十ギガで送って二十ギガで返ってくるというもっと高い周波数を使いました。そうしますと、実はもう少し広げられるという感じにもなってまいります。  そういう形で、結論から申し上げますと、いわゆる込み合っているとよく言われますが、大体二度間隔で、地上でのアンテナが十メートルぐらいを用意する、そういう感じで静止軌道の衛星の数というのが規定されてくるのではないかと考えております。
  51. 河上民雄

    河上委員 いま大変技術的な、しかしある意味では大変興味あるお話を承ったのでありますが、そういうように考えますと、宇宙というのは何か無限大のような気もしますし、えらい簡単な狭いような感じもしてくるわけでして、そういうのは静止衛星がどこかでちょっとした――さっき言ったように、日本政府では捕捉できない、アメリカだけしか捕捉できてないような破片とかあるいは一部ごみがかたまるとそれが一つ物体になるというような話もありますが、そういうものと衝突した場合、静止衛星が落ちる心配があるのかどうか。
  52. 江川晃正

    ○江川説明員 私、技術者ではありませんので伝聞のような言い方で恐縮でございますが、三万六千キロの上空に上げた衛星はまずおっこちてくる可能性はないというのが技術者の話です。
  53. 河上民雄

    河上委員 そうなりますと、私、ちょっと心配になるのでありますけれども、それならなぜソ連の軍事衛星と見られておるコスモスが二つすでに落ちておるか。ちょっと聞いてみますと、軍事衛星というのはやはり地上を偵察する必要上、そんな三万六千キロも遠くへ行ってしまったのじゃ用をなさないということで、何か五百キロぐらいの非常に短い距離であるというふうに――五百キロが正しいのかどうか知りませんが、非常に短い距離である。つまり、地上のいろいろな動きが偵察できるためには非常に近い距離に打ち上げられるのだと聞いておるのでありますが、そうなりますと、落下の危険があるのはむしろ軍事衛星だ、こう、いうふうに理解しなければならぬと思うのでありますが、いかがでございますか。
  54. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  一般論として申し上げれば、軌道が低い方が落ちやすいということでございまして、軍事的な利用の側面が大きい衛星の方が落下の危険性が多いと一概には言えないと認識しております。
  55. 河上民雄

    河上委員 いや、もちろん軍事目的を達するのに三万六千キロでもいいのかもしらぬですけれども、常識的に見てやはり距離の近い方が地上の様子を偵察するには都合がいい。現実にソ連のコスモスもそうであったということを考えますと、私どもいまこの三条約をやる場合に、単なる科学衛星がもちろん軍事目的に転用される可能性も十分ありますけれども、それよりもむしろ宇宙の軍事利用というものをわれわれとして考えなくてはならないではないかというふうにここで結論してもいいのじゃないかと思うのであります。  さきにコスモスがカナダの氷原のツンドラ地帯に落下しましたときに、わが国の国会におきましても決議がなされまして、特にあの場合は放射能汚染というものが起こったわけですから、それに対する防止策をあらゆる手段で講じなければならない、こういうふうに言っておるわけであります。また、この宇宙条約のもとになります一九六七年の略称宇宙条約によれば、「核兵器若しくは他の種類の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球を回る軌道に乗せること又はこれらの兵器を天体に設置することを慎むように諸国に要請する」、こんなふうになっております。  私は、宇宙軍事利用という問題はもはや現実に起こっているわけですから、一日もゆるがせにできない非常に緊急の課題だと思うのでありますけれども、今回の三条約に、特に軍事利用についてこれを厳しく禁止する条項がないように思うのでありますが、この点はどのように理解したらよろしいですか。
  56. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおりでございます。宇宙条約本体の規定が原則のまま生きております。
  57. 河上民雄

    河上委員 そうなりますと、この宇宙条約、いま審議中のものは、いわゆる略称宇宙条約の精神に基づいて経過的にできたというだけではなく、現実にこの三条約の中に精神が生きている、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  58. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、宇宙活動全体についてのいわば基本法が、先生御指摘の一九六七年の宇宙条約でございまして、その中で、それができました段階におきまして、この中に決めてあります救助返還であるとか、登録の問題であるとか、損害賠償の問題については、より具体的な権利義務関係を決める国際法をつくる必要があるだろう、条約を作る必要があるだろうという認識は初めからございまして、順次救助返還損害賠償そして登録というふうに国連の委員会におきましてこの条約をつくっていったわけでございますので、そういう意味では、宇宙条約という基本法を実施するための具体的な国際法という形でこの三条約は形成されていったわけでございますので、そういう意味で先生のおっしゃるような関係にあるわけでございます。
  59. 河上民雄

    河上委員 いま宇宙の軍事利用というのは、あるいは宇宙軍拡、これはもうすでに、米ソの指導者のいろいろな発言から見ますと、始まっているような印象を受けるわけでありますけれども、どうも宇宙軍拡というのは具体的にどうイメージしたらよいのか、われわれ素人にはなかなかわからない面があるのですね。これはまた専門的に説明されますと、ますますわからなくなるかもしれませんけれども幾つかのポイントを、この際一般国民に説明するという意味で示していただけませんか。
  60. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えするように努めたいと考えます。  一般宇宙における軍事利用と言われます場合には、現在、御承知のように、主として米ソが行っているわけですが、通信、中継、航法――ナビゲーションですね。測地、気象、監視、警戒等の目的、軍事的適用があり得る目的のために各種人工衛星等が利用されているということは私どもも認識いたしております。ただし、これら軍事上の情報の詳細につきましては、事柄の性格上正確に把握するのには困難があるということかと存じます。この場合、恐らく問題になりますのは攻撃的な性格を持った、新聞用語等ではキラー衛星といったような表現がございますが、そういうものの配置、配備というものが事態の変革につながるという側面がございますでしょうと同時に、現在使用されているような衛星が軍備の管理あるいは確認等の形で、それなりの抑止的な機能を持っているという側面もあるということかと存じます。
  61. 河上民雄

    河上委員 どうも余りはっきりしないですが、ただ基本条約というか宇宙条約では領有権が否定されたことと、それから大量破壊兵器の打ち上げが禁止されておる。これは非常に重要なことだと思うのでありますが、それ以外に具体的に何か決められていることがありますか。
  62. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  確かにこの宇宙条約というのは、当時米ソの間で月への到達をどちらが先にやるかというようなことが議題に上っていた中において、早期に及んで月その他の天体の領有権を禁止するということについて双方の利益が一致したというようなことがございましてできた背景がございますので、先生御指摘のように、月その他の天体についての領有権の主張を禁ずるという条項第二条はきわめて中心的な条項であると思いますし、それから先生御指摘のように、大量破壊兵器を地球を回る軌道に乗せないということ、これも重要なポイントでございます。ただそのほかに、第四条におきましてさらに、この大量破壊兵器を天体に設置しないこと、それから、いかなる形でも宇宙空間に設置しないということもあわせて決めておりますので、これも重要なポイントであろうと思います。さらにその第四条の後段におきまして、月その他の天体はもっぱら平和的目的のために利用するということで、軍事施設、軍事基地、防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験及び軍事演習の実施は禁止するということで、月その他の天体そのものは軍事利用を全く禁止しているわけでございます。そういう意味で、限られた範囲ではありますけれども、軍事利用が全般的に月、天体においては禁止されている、これもこの条約の持つ大きな意義ではないかと思うわけでございます。  そういうことで、当時この宇宙条約の御審議をいただいたときに、宇宙全体の非軍事化の原則が完全ではないという御議論があったわけでございますけれども、当時の状況において米ソ両国を初めとし各国間で合意できるぎりぎりの線でこのような形で、しかし重要な原則がこの宇宙条約において確立されたということはそれなりに意義があったということを当時も御認識いただいていたというふうに私は了解しております。
  63. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、レーガン大統領が一九八二年七月に発表いたしましたアメリカの国家宇宙政策という新しい方針の中で、これはほかのところで申しているのかもしれませんが、国境線にかかわりなく対ソ戦略ができるということを宇宙利用の非常なメリットとして述べておる。また、宇宙システムに対する故意の妨害は主権の侵害とみなす、こういうふうな話を述べておるのでありますけれども、これはいま言った宇宙条約でぎりぎりのところ確立された基本的な方針にも反しているのじゃないかと思うのであります。こういう方向、つまり米ソが宇宙利用を独占して、そしてそれ以外の者がこれに関与してくるといいますか、割り込んでくることに対して主権の侵害だというような感覚で受けとめるような傾向について、これは日本政府としても認めてはならないことだと私は思うのでありますけれども、その点いかがでございますか。
  64. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘の昨年のレーガン大統領の宇宙政策でございますけれども、このレーガン大統領の演説の中身は、米国が今後宇宙を利用するに当たっては民生と安全保障の二つを柱にしてやっていくんだということを申しておりまして、アメリカ宇宙関係します安全保障政策というものはあくまでも防衛的なものであって、またアメリカ宇宙における安全保障政策というのは国際法の許容する範囲でやるんだ、こういうことを明言しているわけでありまして、そういうような観点から、私どもとしましては、アメリカのレーガン大統領のこの政策は国際法の許容する範囲のものである、そういうふうに理解しているわけでございます。
  65. 河上民雄

    河上委員 今度の条約でもそうでありますけれども宇宙における主権の確立は拒否しております。しかし、飛行士と物体についてはその国が管理権を持つということになっております。衛星とか宇宙ステーションヘの攻撃というか、軍事的な攻撃かどうかは別としまして、何かの攻撃は主権侵害になるというふうに判断しますか。
  66. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の件は、宇宙条約の基本条約第八条に関連をしてくるかと思いますけれども、「宇宙空間に発射された物体登録されている条約の当事国は、その物体及びその乗員に対し、それらが宇宙空間又は天体上にある間、管轄権及び管理の権限を保持する。」ということと、「宇宙空間に発射された物体及びその構成部分の所有権は、それらが宇宙空間若しくは天体上にあること又は地球に帰還することによって影響を受けない。」ということになっておりますので、そういう意味では、その物体自体は各国の主権的な管理が及んだまま飛んでいる。主権といいますか、所有権自体はその影響を受けずに飛んでいるという状況になっておりますので、それに対する侵害というのは、やはり所有権の侵害といいますか、管轄権、管理権の侵害というものに当然当たるだろうと思いますので、それを主権の侵害であるというふうに表現しますと、たとえば航空機に対する攻撃が主権の侵害であるというように表現されることもございますから、そういうような観点から言いますと、ここに書いてあることからしても理解ができない表現ではないという気はいたします。
  67. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、もうすでに宇宙には千単位、そのうち万単位になると思うのでありますが、そういう物体が飛び交っている中で、もしいまのようなことをおっしゃいますと、これはもう宇宙における主権の設定は禁止はしておりますが、現実にはそうした問題が起こる。一方では、レーガン大統領の言う、宇宙システムに対する故意の妨害は主権の侵害とみなすということになりますと、軍事衛星あるいは科学衛星の正常なる作動を妨げるものは主権侵害である、そういうことになって、宇宙を舞台とする、米ソを主役とする事実上の競争といいますか、独占を目指す競争といいますか、そういうようなものが軍事的な色彩を帯びて始まっていくのではないか、こういう心配を私はこの条文その他から受けたわけですけれども、いまの御答弁で何かそういう心配を一層濃くしているわけです。その点、いかがですか。
  68. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 主権との関係でこの条約が禁止しております条項は第二条でございますが、その条項におきましては「月その他の天体を含む宇宙空間は、主権の主張、使用若しくは占拠又はその他のいかなる手段によつても国家による取得の対象とはならない。」ということで、月、天体そのもの、それから宇宙空間そのものを、どこからどこまでの空間はどこどこの国の主権に属するというような主張はしてはいけないということを決めているわけでございます。  他方、先ほど御指摘申し上げました八条におきましては、そこを飛ぶ物体につきましては、それを飛ばした国そのものが管轄権、所有権を持つということでございますので、たとえて言えば公海上を飛んでいる航空機についてその航空機登録国が主権、管轄権を持つというのと同じ関係になるのではないかと私は考えますので、そういう意味で、第二条で規定されております主権の取得の禁止の問題とはやや性質を異にした問題ではないか、こういうふうに考えております。
  69. 河上民雄

    河上委員 だんだん大きな宇宙ステーションが設置されたりいたしますと、それこそ小さな島よりもスペースが大きい場合もあり得るわけで、この条約というものを一つの手がかりにして、今後宇宙が軍事利用、宇宙軍拡の舞台にならないようにするという責任が一層大きくなってくると私は思うのであります。  そこで、大臣に、この三条約批准を提案された責任者として、そういうことにならないような決意をここで明らかにしていただきたいと思います。
  70. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かにおっしゃるように、宇宙が軍備競争の舞台にならないように努力をしていかなければならぬと思います。日本もそうした立場で、軍縮委員会等におきましては積極的な役割りを果たしていかなければならない、こういうふうに考えています。
  71. 河上民雄

    河上委員 そういう前向きで対処していただくことは大変結構だと思いますが、ただ地上といいますか大気中のいろんな核兵器の問題に関して国連等で決議が出ますと、日本は必ずしも全部それを禁止する方向で賛成しない場合も、棄権したりなんかする場合もあります、実効が上がらないとかいろんな理由で。ひとつ宇宙の問題についてはそういうことのないように、きちんとしていただきたいと私は希望したいと思います。  もう時間が余りないので先を急がしていただきますが、損害賠償に関する条約返還に関する条約にもちょっと移っていきたいと思いますけれども、その前にちょっと、先ほど来主権の問題がありましたが、領空というのはどこら辺までかということ、これはいつもよく話題になるのですけれども政府の答えを確認しておきたい。
  72. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 領空につきましては伝統的な国際法におきましては、もちろん国家は領土について主権を持っており、その主権は地下及び上空に及ぶということで、領空無限説があったわけでございますけれども、その後の技術的な発展と宇宙の利用の過程におきまして、自己の領空の上の宇宙空間衛星が飛ぶことに対して、これが主権侵害だという主張がなされたことがないというようなこともございまして、そういう意味では、各国が領空をも含めた領土主権を主張しながら、その上部の宇宙空間人工衛星等が飛ぶことに対して、これに異議を申し立てないという慣行ができてきたということもございますので、そういう意味で、領空というのは宇宙空間の下にある区域だということになるだろうと思うのでございます。  ただ、その範囲についてこれをどういうふうに定義するか、むしろ宇宙空間をどういうふうに定義するかということにつきましては、宇宙空間平和利用委員会の法律小委員会におきまして、従来とも議論をしてきたわけでございますけれども、まだ結論が出てない状況でございます。そういうことで、宇宙空間が定義できますと、宇宙空間を除いた下の空間で領土の上部にある区域が領空ということが簡単に申し上げられるわけでございますけれども、現在では漠然と宇宙活動に利用されている空間の下にある区域というように申し上げるよりほかないのではないかと思っております。
  73. 河上民雄

    河上委員 昭和四十二年、宇宙条約審議のときには、この問題については、当時の政府委員の方は百キロという一応の数字を挙げておられますけれども、これはもう否定されるのですか。
  74. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 宇宙空間をキロでどのように定義しようかということにつきましては、宇宙法律小委員会の中でいろいろと議論がございまして、これをたしか八十キロにしろという主張と百十キロにしろという主張等がございまして、いろいろと議論があったというふうに承知しておりますので、まだそういう意味で、当時は、大体当時の宇宙活動のぎりぎりの線が百十キロぐらいだと言われているので、大体常識的にそのぐらいではないかという、当時、政府から御答弁申し上げていると思うのでございますけれども、そのような状況というのは現在においても変わっておりませんので、まさにキロ数で宇宙空間を定義できれば一番簡単であるという観点から議論は行われておりますけれども、いろいろな技術面との関係もあるのだろうと思いますが、結論が出ていないというのが現在の状況でございます。
  75. 河上民雄

    河上委員 それでは損害賠償、またそれに伴う保険の問題で少し技術的なことになりますけれども、伺っておきたいのであります。  損害賠償条約を見ますと、特に宇宙条約の第七条に基づいてでありますが、これは何か事故が起きた場合の損害賠償について、国家間で解決する場合の手続であるということが非常に明確に打ち出されていると思うのであります。  そこで伺いたいのでありますが、自国で打ち上げた物体が自国民に被害を与えた場合はどうするのか。それから損害というのはどこまで補償するのか。たとえば事故で現実に第三者に被害を与えた場合はもちろんでありますけれども、将来、すでに始まっていると思うのでありますが、テレビの宇宙衛星による放送なんかをするために打ち上げたものが当然得べき利益があるにもかかわらず、打ち上げが不成功に終わったために大変な損害が生まれたというふうな場合、あるいは文化財などに落ちて被害を与えた場合とか、いろいろあると思うのでありますけれども、ここで取り上げております損害賠償というのはどういうことを意味するのか。  時間がないので先に幾つ質問をしますが、もう一つのこの条約の特徴は、無過失責任ということである。あくまで国家が責任を負うという形になっております。そして自国に対してはこの条約は適用にならないということでありますが、さっき言いましたように、民間が打ち上げたような場合はどうなるのか、そういうようなことについてお尋ねしたい。
  76. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生の御質問、三つだったと思いますが、第一の国民に対してどういうふうになるのかという点につきましては、これはもっぱら国内法上の問題として処理するのが適当であろうということで、今回の条約は国家間の交渉により取り立て得る損害について規定したというのは、先生御指摘のとおりでございます。  それから第二番目のどういう損害がこの条約の対象になるだろうかということにつきましては、この損害の定義についてこれが直接的、即時的または有形的なものに限られるのか、それとも間接的、後発的または非有形的なもの、先ほど先生が御指摘のような文化財的なものまで含まれるかということについては、必ずしも明確でないわけでございます。ただ、わが国としましては、このような損害がどのような形で起こったかということにもかかわらず、宇宙物体が落下あるいは衝突したことによって生じた損害との間に相当因果関係があるということであれば、一般的にそのような損害に含まれると解していいのではないかと考えておりますので、この相当因果関係という要因を中心にかなり広く解釈できるだろうと考えているわけでございます。そういう意味では損害賠償についてのこれは一般的な多くの国の考え方と軌を一にしておりますので、もちろん具体的には今後の条約運用に従いましてこれを解決しなければならない問題だと思いますけれども一般的にはそのように考えられております。  それから第三点は、この条約は国家の無過失責任を決めているわけでございますが、これはただ国際間におきましての損害請求の場合にのみ無過失責任を決めているわけでございますので、その他の問題については触れてないという状況でございます。
  77. 河上民雄

    河上委員 もし民間が打ち上げた場合、それが外国の人たちに影響、被害を与えた場合は国が無過失責任を負う、そのとおりです。それから国内に被害を与えた場合は、今度は国内法に従って主体である企業なり何なりが、事業体が責任を負う、こうなるのではないかと思うのですが、外国に対して無過失責任で国が何か賠償した場合、それを改めて打ち上げた民間企業体にも請求をするというようなことはあり得るのか、それは全く税金だけでやるというのか。
  78. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  将来の問題でございますが、求償を求めるのが原則と考えます。
  79. 河上民雄

    河上委員 それでは、余り時間がないので次に移ります。  今度は、保険を掛けているという新聞の記事がございました。これは成功、不成功の場合の保険、それから、もし事故を起こした場合の賠償に対する保険ということなのか、そこをちょっと伺いたい。
  80. 江川晃正

    ○江川説明員 この間の二月四日に打ち上げました通信衛星を例にして御説明申し上げます。  打ち上げの成功、不成功に関する保険が一本と、先ほど話題になりました、第三者に損害を与える場合の補償の保険が一本と、この二つ掛けてございます。
  81. 河上民雄

    河上委員 そういうことをいろいろ考えてみますと、今度はさくら二号のケースでも相当の費用がかかっているようですので、どうも国内法的な体制が十分できていないまま推移することは余り適当でないという感じを私は非常に強く受けるのでありますが、これは先ほどのお話のようにそういうことに対応する体制をつくるということでございますけれども、ひとつその点についてもう少しはっきりした答えをぜひいただきたいと私は思うのでございます。  もう余り時間がありませんので、大臣、きょうは宇宙条約ということでかなり技術的なことについてお尋ねをしたわけでございますが、最後に締めくくり的な意味も含めまして、大臣に政治的なことをお尋ねしたいと思います。  一つは、いまわれわれは宇宙条約審議しておるわけでございますけれども、これはひょっとしたら、人類の歴史で将来宇宙時代と名づけられるような時代に入っていく、その入り口のところにいまわれわれは立っているのではないか。イギリスのある歴史家が一九六〇年代の初頭、スプートニクの打ち上げ直後に、これはある意味では核の開発よりももっと大きな意味を持つということを指摘しておったのでございます。それだけにこの問題につきまして、特に宇宙の軍事利用をさせないために、それからもう一つは原子力による汚染の心配があるわけですので、これを防止するために日本としては何をしたらよいか、このことを大臣として、非常に短い答えで結構ですから、一言いただきたいと思います。
  82. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 まさに宇宙時代とも言える時代に入ろうとしておると思います。科学技術がこれからも発展していく中で宇宙の利用あるいは開発といったものが今後ともいろいろな形で進んでいくと思いますが、先ほども答弁しましたが、そういう中で大事なことは、宇宙の利用というのが平和の目的に利用されるということでなければならない、こういうふうに思いますし、軍備の競争の場にいたずらにこれが供されるということは避けなければならぬのじゃないか、こういうふうにも考えます。同時にまた、お話しのように放射能といったものの汚染をなるべく避けていくための努力もこれまた国際的に進めていく責任はある。日本宇宙事業を積極的に行っておる国でございますから、そういう意味での役割りというものは非常に大きいのじゃないか。日本の場合は御承知のように平和の目的に限るという形での宇宙利用を進めていくわけでございますが、そういう中で軍縮委員会等におきましても積極的な立場に立って、軍備の競争をいたずらに促進することのないようにいろいろの立場での努力を積極的にやっていく必要がある、こういうふうに考えます。
  83. 河上民雄

    河上委員 最後に一つだけ要望を申し上げたいのでありますが、哲学者のカントじゃありませんけれども宇宙の星とわが胸のうちというように、人間の心の動きというのは実は非常に大事でありまして、宇宙に気をとられて足元の石につまずかぬようにしなければならぬと思うのであります。今度中曽根総理がASEAN諸国を歴訪され、外務大臣も御一緒に行かれると思いますけれども、どうか一九七四年のあの田中総理大臣の訪問のときのような反日暴動に遭遇するような、そうした危険のないようにしていただきたいと思う。いま外務省は、首相のASEAN訪問に当たって防衛力強化についての誤解を解くというようなこと、理解を求めるというようなことばかりやっておられますけれども、私は、もっと必要なことはやはりASEAN諸国の人の気持ちを理解することであろう、向こうに理解させる前にこっちがまず理解することではないか、こんなふうに思うのであります。  私はフィリピンの学者から送られたフィリピンの新聞の記事をいまここに持っておる。それをコピーしてきましたので後で大臣に差し上げますけれども、これは風刺漫画ですが、中曽根総理の不沈空母の発言がいかに東南アジアの人たちに衝撃を与えたかということを物語る一つの漫画だと思うのであります。ここにアンシンカブル・エアクラフト・キャリア、不沈空母と書いて日本と書いてありまして、ここへクマが渋い顔をして腕組みをして、こっちはアンクル・サムでアメリカであります。東南アジアの人はここに、漫画には登場しておりませんけれども、実はこの漫画を掲載すること自体、フィリピンのような親米的な国でもそうだということを忘れないようにしていただきたい、私はこのことをこれから行かれる外務大臣に特に申し上げたい。  以上をもって私の質問を終わりたいと思います。
  84. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 東南アジアの国々、特にASEANの国々は、まさに日本の隣国でありますし、長い歴史の中においてもいろいろの深い関係を持ってきたわけでございますし、特に戦後、日本が経済が非常に発展をするに伴いまして、ASEAN諸国に対する経済協力といった面についても集中的に行っておるわけでございます。そういう中でASEANとの交流も漸次深まっておりまして、ただ経済だけの交流ではなくて、最近ではやはり文化の面であるとかあるいは人的な面であるとか、青少年の交流といった、心のつながりといいますか、そういう面も深くなってきておると思います。  私は、今回の中曽根総理のASEAN訪問については、ASEAN諸国も、政府だけではなくて、国民の中でも漸次期待が非常に高まりつつある、こういうふうに認識をいたしておりまして、この交流を機会に、日本とASEANの結びつきといいますか、心のつながりをさらに深めていかなければならない。また、日本に対する誤解等もいろいろとあるわけでございますが、日本はあくまでも平和外交に徹しておるわけでありますし、また防衛についてはこれまでの基本的な防衛路線、あくまでも専守防衛と他国には脅威を与えないという防衛路線を堅持しておりますから、こうした点についても、ASEAN諸国の、政府だけではなくて国民の理解を深めて一層の友好親善を図ってまいりたい、こういうように考えます。
  85. 竹内黎一

    竹内委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十三分休憩      ────◇─────     午後零時五十四分開講
  86. 竹内黎一

    竹内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。土井たか子君。
  87. 土井たか子

    ○土井委員 宇宙条約の内容に対して質問を申し上げる前に、非常に大事な私どもの課題と申しますか、世界的規模の課題と言っていいと思うのですが、その基本に考えておかなければならないことをまずお伺いをしてから三条約の中身について入っていきたいと思います。  このところ本屋さんに行きますと宇宙戦争時代の幕あけだというような表題の本がたくさん目立ちます。新聞にもどんどんそういうことが報じられるようなかっこうになってまいっておりますが、外務省とされましては宇宙戦争時代の幕あけというふうな認識をいまお持ちになっていらっしゃるかどうかということをまずお伺いをしたいと思いますが、どうなんですか。
  88. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  宇宙におきます軍備競争が将来激化するのじゃないかという懸念を抱いております。
  89. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、宇宙戦争時代の幕あけだという御認識を十二分にお持ちになって、こういう問題に対しても対応をいろいろ苦慮されているというふうに受けとめていいわけですね。そうでしょう、遠藤さんのいまの御答弁を一言で言うと。
  90. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 再びお答え申し上げます。  宇宙戦争という言葉自身の意味はともかくといたしまして、先ほど申し上げましたように、宇宙における軍備の競争に対する懸念というものは持っております。
  91. 土井たか子

    ○土井委員 もう御案内のとおりで、最初に原子爆弾が落とされたのはわが国です。それ以来米ソ両超大国の核軍備競争というのは激化の一途をたどっているわけですが、すでに抜き差しならない巨大な核兵器戦略体系というのを全世界につくり上げていると言わざるを得ないのですね。世界は核廃絶を願っておりながら、その願いはなかなかかなえられておらないのがまた現実でありますけれども、私たちはまだ宇宙が本格的に軍事化されていないというこの間に、非常に大事な段階だと思いますが、米ソによる宇宙軍拡競争の歯どめをかけておかなければならないと思うのです。そうでないと将来の世界の諸国民に相済まないというふうな気持ちを私自身は持っておりますが、どのように考えていらっしゃいますか。
  92. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、宇宙におきます軍備の競争というものに対する懸念を持つ観点から、宇宙というものに対するこういうような事態に対しまして、私ども政府といたしましても国連あるいはその軍縮委員会等の場を通じまして宇宙の軍備競争をなるべく防止していきたい、できる限り防止していきたい、こういうふうな観点から種々対処している次第でございます。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 抽象的なお答えが遠藤さんから続いているのですが、宇宙空間というのはそもそも人類の共有財産というふうに考えなければならないはずであります。平和利用というものに徹していかなければならないはずであります。そのために六三年の国連決議やその精神を盛り込んだ宇宙条約がすでにあるということであることは周知の事実であります。だからそういうことからすると、宇宙開発の原点というのは那辺にあるかということで認識をしっかり持って、宇宙軍拡競争に対して防止をしていくということにわが国が先頭に立たなければならないという自覚を持っていることがどうしても必要である、不可欠だと思われますが、外務大臣、御決意のほどを少しこのあたりで聞かせておいていただきたいと思うのです。いかがでございますか。
  94. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いま宇宙の利用が活発に行われておるわけでありますが、先ほどからお話が出ましたように、宇宙での軍備競争がこれから拡大をしていくということは避けなければならぬと思うわけであります。そのためには、日本も世界の中で宇宙の利用国でありますから、日本の場合は特に平和の目的に限って宇宙を利用するという立場に立っておりますし、そういう観点に立っての日本の積極的な国際的な役割りというものは今後ますます大事になってきておるのではないか。そして宇宙の利用全体については、宇宙条約というものがあるわけでありますし、そうした宇宙条約を守りながら、宇宙の平和的な利用ということに対して日本も国連あるいは軍縮委員会、そういう場を通じまして積極的に努力をしていく。  しかし、いろいろの決議等も行われておりますが、やはりわれわれとしては、基本的にはそういう考えですが、何といいましてもその決議とかそういうものに対しては実効ある措置というものがやはり必要で、そういうものを具体的に、現実的に一歩一歩前進をさせていくという方向で努力をしてまいりたいと思います。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 確かに、具体的措置というものを講じないと現実性はないということだろうとは思いますが、一体それならば外務省とされては、いま外務大臣がおっしゃった国連や軍縮委員会等で宇宙軍縮に対していままでどのような発言をされてきているのですか。
  96. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 国連で実は宇宙軍縮と申しますか、この問題が本格的に取り上げられるようになりましたのは一九八一年からでございます。  八一年、八二年、昨年でございますけれども、二回、国連総会自体では本件審議が行われまして、去年の例をちょっと申し上げますと、まず西側と申しますか、これはオーストラリア等々大体西側諸国でございますけれども日本も入りまして一つの共同提案をいたしたわけでございます。この骨子と申しますのは、宇宙における軍備競争を防止するよう、より実効的な方法を国際社会が採用すべきことを再確認する。そして軍縮委員会に対して、宇宙における軍備競争防止のための実効的かつ検証可能な協定に関する交渉の問題、そして特に優先課題として対衛星システムの禁止のための協定に関する交渉の問題について実質的検討を継続するよう要請する、こういうふうな共同提案をいたしたわけでございます。当然共同提案国でございますから、これはもちろん賛成したわけでございます。  さらに去年の国連総会で東ヨーロッパとそれから非同盟から決議が出てまいりまして、この決議も、骨子はやはり宇宙空間は平和目的のためにのみ使用すること及び軍備競争の場としないことに関するすべての国の意思を再確認する等々の決議が出てまいりまして、これらの決議に対しましても日本は賛成票を投じております。  それから軍縮委員会でございますけれども、ことしの軍縮委員会につきましてはまだ審議継続中でございますけれども、ここにつきましても宇宙軍備競争を防止するという観点から作業部会をつくろうという動きがあるわけです。日本としましてはその作業部会がなるべく早くコンセンサスでつくられることを希望しておる、こういうふうな立場をとっておるわけでございます。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 なるべく早くつくられるように希望するという立場をとっているとおっしゃいますが、これは積極的に、やはりどの程度努力を払われるかということが課題だと思うのです。これは希望的観測を述べられるだけでは困るので、具体的にどういう努力をそれに払っていらっしゃいますか。
  98. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  実はことしの春の軍縮委員会の会期は二月の一日から始まりまして四月の二十九日まででございますけれども、その相当期間、三月の半ばぐらいまで別の議題ばかりを議論しておりまして、宇宙軍縮問題の議論というものがほとんどなされていない状況でございます。これは四月の二十九日に春会期が終わるわけでありますけれども、また六月から夏会期が再開されるので、これは私の見通しを申し上げるのははなはだ恐縮でございますけれども、恐らく宇宙軍縮に関します作業部会というのができることを私どもは期待しておりますし、そのような方向でコンセンサスが得られるように努力しておりますし、今後ともそうしたいと思っております。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 それは御努力ということからすると、その問題に対してはまだまだ氷山の一角というかっこうでの御努力だろうと思うのですが、やはり米ソに対してどういうふうな対応が迫られるかというのは非常に現実性のある問題だろうと思うのです。  アメリカの国防総省のソ連の軍事力というのを見てまいりますと、ソ連宇宙システムの七〇%が純軍事用、一五%が軍民需用、残りの一五%が純民間用というふうに一応位置づけられているわけですね。打ち上げられた軍事衛星の中には攻撃衛星の実験を行っているということまで伝えられております。さらにソビエトは、乗組員の宇宙での長期滞在実験を行っているということもございまして、最終的には百人が乗れる恒久的宇宙ステーションの建設を計画していることも述べられているわけですね。そうすると、やがて近い将来に宇宙要塞が建設されるというのも夢ではなくなってくるということも現実の問題として考えられるのです。  このようなことにつきまして、人類の安全という観点から率直にどう考えていらっしゃるかという御意見を承りたいと思うのですが、大臣どういうふうにお思いになりますか。
  100. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 そうした軍備競争がこの宇宙空間で進むということはやはり避けなければならない。そのために日本も軍縮委員会やあるいは国連の場において積極的に活動を進めていかなければならぬ。宇宙条約というのがありまして、そうした大量の破壊兵器といったものは宇宙衛星等には積載をすべきではないというふうなことが決まっておるわけでありますから、そうした宇宙条約の精神も踏まえながら、日本としてもこうした軍備競争がこれからどんどん続いていくということに対してブレーキをかけるという立場での努力は積極的にやるべきだと思います。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 ブレーキをかけるというのは、それは条約によってブレーキがかけ得るというふうに大臣はお考えになっていらっしゃるわけですか。
  102. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん条約がありますし、その条約を守ることは米ソ両国ともそのとおりだと私は思うわけであります。しかし、いまの現実の動きはいまお話しのような情報等もあるわけですから、そうした米ソの宇宙の軍備競争というのが過熱する、何が出てくるかわからないような状況も予想されますので、これはやはり日本なんかが積極的に、それこそ米ソが席を同じくする軍縮委員会とかあるいは国連で努力をして、そういう軍備競争が進むことに対して冷やしていかなければならぬ、そういう役割りが日本にはあるのじゃないか、こういうように思います。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 米ソが席を同じくする場所での努力というのもいまおっしゃられるとおりあるのでしょうが、さてそれならば具体的にこういうことはどうお考えになるかということでひとつ承りたいのですが、八二年七月四日、アメリカの独立記念日に御案内のとおりカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地でスペースシャトル・コロンビア号の着陸に立ち会われたレーガン大統領が米国国家宇宙政策と題するファクトシートを発表されております。世界の人々はこの政策に脅威と不安を抱く中身であります。大まかにまず承りたいのですが、この米国国家宇宙政策なるものに対して政府はどういうふうに考えていらっしゃるか、御意見を聞かせてください。
  104. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のレーガン大統領の宇宙政策の演説でございますけれども、これは私の承知します限り二本の柱から成っておりまして、一つ宇宙というものを将来の民生活動の目的に使うのだということと、もう一つ米国にとりましてはこれは安全保障政策の目的に資するものだ、この二本の柱から成っていると承知しております。かつ、アメリカが言っておりますのは、この安全保障政策という観点は国際法で許容された範囲内でやるものだ、こういうふうに言っておると承知しております。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 遠藤さんというのもだんだん御答弁が上手ですね。中身について一切お触れにならないという御答弁をなさるようになりました。  このファクトシートの中身を見ると、基本目的というのは六項目、それから基本目的を達成するために九原則というのがあるのです。これは御承知のとおりなんです。この中身からすると、どうもアメリカ宇宙政策は国連決議、宇宙条約の精神に真っ向から反するということを言わざるを得ないというふうに考えられます。首をかしげていらっしゃいますから中身について言いますが、平和目的とはどういうことをここで指して言っているというふうに御理解なさいますか。まず宇宙条約及び今回の三条約について平和目的ということはどのようなことを指すかをあらかじめ御答弁の上でおっしゃってください。
  106. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 御答弁申し上げます。  宇宙条約におきましては、前文におきまして平和目的のためということをうたっておりますが、具体的に利用禁止の対象としておりますのは、第四条で、核兵器その他の大量破壊兵器を地球を回る軌道に乗せないこと、その他の禁止でございますとか、その後段の、月その他の天体はもっぱら平和目的のために利用されるものとするということで、特に軍事基地、軍事施設及び防備施設の設置、あらゆる型の兵器の実験及び軍事演習の実施は禁止するということで、間接的にそれらのものが平和目的でないということを規定しておりますが、一般的には非軍事的利用ということであろうと思います。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃったのは、今回の三条約並びに宇宙条約の中身で平和目的とはどのように考えられているかという御説明ですね。アメリカのレーガン大統領の国家宇宙政策について言うところの平和目的というのはどういうことになるのです。
  108. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  アメリカのレーガン大統領の言います平和目的というのは、正確な意味は私どもは承知しないわけでございますけれども、先ほどお答え申し上げましたように、アメリカとしては国際法の許容する範囲内である、こういうふうに説明しておりますので、私どももそういうふうに理解しております。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 遠藤さん、先ほど御答弁に先立って、レーガン大統領の米国国家宇宙政策なるものについて御認識の上で御答弁になっていらっしゃるだろうと私は思うのです。中にちゃんと書いてあります、平和目的とはと言って。もう一度読み直してください。どう言っています。具体的に言っていますよ。九原則のところを見てください。平和目的とは、国家安全保障目的追求のための活動と認めるとちゃんと書いてあるのです。どうです。
  110. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生御指摘の第一項、そのとおりでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、国家安全保障目的追求も平和目的というふうに解さなければならないのですか。もう一回、都甲さん答えてください。今回の条約もそういうふうに考えなければいけないのですか。
  112. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほども説明を申し上げましたけれども、平和目的に利用されるという一般的な理念が前文に規定されておりまして、具体的に平和目的のみに使用しろという、いわばその反対に軍事的利用を禁止しているものといたしましては、その第四条の後段におきまして、月及び天体につきましては全面的にもっぱら平和目的にのみ利用しろということで、どのようなものが禁止されておるかということを例示的に挙げており、非平和目的、いわば軍事利用というものがどういうものであるかということを例示しているということを先ほど御説明申し上げたわけでございます。ですから、宇宙条約におきましては、平和目的という場合に、これは非軍事的目的だろうと思いますけれども、軍事的利用が全面的に禁止されているのは、先生御案内のように、月その他の天体に限定されているわけでございます。その他の宇宙空間あるいは地球を回る軌道等におきます禁止につきましては、第四条の前段で大量破壊兵器を軌道に乗せないとか、これらの兵器を宇宙空間に配置しないとか天体に配置しない、そういうような義務を課しており、その軍事利用の特定の形態について禁止を課しておるというのが宇宙条約の構成だろうと思います。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 だんだん苦しくなってこられていると思うのですが、外務大臣は条約を遵守するということに多大の期待をおかけになって、そういう点からしたら条約というものが非常に効果がある、意味があるということをおっしゃっているわけであります。  それじゃ、さらに申し上げます。このレーガン大統領の米国国家宇宙政策の中身を見ますと、宇宙システムに対する故意の妨害は主権の侵害とみなすというふうに述べています。これは宇宙条約の第二条に反すると思いますが、どうですか。
  114. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  この点につきましては午前中も御議論があったわけでございますけれども、第二条に規定しておりますのは、月その他の天体を含む宇宙空間に対して主権の主張をしないということ、いわば国家による取得の対象としてはならないということで、第二条で禁止しているわけでございます。他方、第八条をごらんいただきますと、そこには打ち上げられた物体につきまして、打ち上げられたという状態にあってもそれに対する所有権については何ら影響を受けない。国家はその打ち上げた物体について管理権をそのまま維持するということが決められているわけでございます。そういう意味で私が午前中比喩的に申し上げたのは、たとえば公海の上を飛んでいる航空機については国家は主権を持っているということが言われておりますが、その航空機に対する攻撃というものは主権侵害だということは国際法上よく言われることがございます。それと同じような意味で宇宙空間に置かれるそのような物体についてアメリカが主権を主張すること自体は、これはこの条約の上から特に異とするには当たらないのではないかという御説明を午前中申し上げたわけでございます。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 これはどこに物体と言っていますか、システムすなわち物体なんですか。おかしな話ですね。ここに言っているのは、宇宙に打ち上げた物体なんてどこにも言っておりませんよ。この宇宙政策そのものは宇宙システムということを言っているのです。宇宙システムについて故意の妨害は主権の侵害とみなす。つまり、宇宙システムそのものに対して主権性を主張するということが前提にないとこういう発言、こういう政策、こういう言い分というのが成り立ち得ない。いまおっしゃっているような物体の問題じゃないのです。午前中はそんなことをおっしゃったのですか。それで答弁はまかり通ったのですか。おかしな話だ。問題はシステムですよ。もう一回読み直してください。
  116. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 これはレーガン大統領の演説の第三項における宇宙システムというものがどういうものかということを具体的に規定しなければ議論は始まらないと思うのでございますが、これは、第七項に宇宙輸送システムということが挙げてありますけれども、それについて打ち上げ方法であるというようなことで一つの物を対象としてとらえている表現が使われておりますので、第三項における宇宙システムというものもアメリカがそのような防衛目的といいますか安全保障の見地から置く物体を中心にとらえたものであるというふうに解すれば、これは先ほどのような第八条の問題になって、これについては管理権を主張するということは妨げられない、そういうふうに私は解したわけでございます。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 それは都甲解釈というようなものです。まことに便宜的、御都合主義解釈です。システムと物体そのものを同じように考えるなんというのは、これは世の中に通用しません。システムというのは日本語に直したらどうなるのですか。物体とはならないでしょう。これはちょっといいかげんな答弁じゃないですかね。そして、勝手にそんなことを解釈なさいますけれどもアメリカの政策そのものでここで言っている中身はどうかというのは確かめられておるのですか。いまの御答弁からすると、恐らくそれはうかがえませんな。いいかげんな答弁はいいかげんにやめてください。どうです。
  118. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私からお答え申し上げます。  このアメリカ大統領のレーガン演説についての細かい点のアメリカへの照会はいたしておりません。したがって、御指摘のこともあり、今後アメリカ等に照会することにいたします。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 それはそうです。これは宇宙条約の二条からすれば、違反するか違反しないか、非常に問われる問題だろうと思います。非常に大事、今後必ず早期にこれをやっていただかなければならないと思います。  それと同時に、宇宙に関するデータ取得の基本権の制限を拒否するということも述べられておるのです。宇宙に関するデータ取得の基本権の制限を拒否する、これはどういう意味なんですか。素直に読むと、軍事衛星の存在を合法化しようというふうにも解釈できるのですね。これをどういうふうにお考えになりますか。
  120. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生、ちょっと申しわけございませんが、第何項目の御言及でございましょうか。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 九原則の中にそれがあるのです。九原則の中の二項目を見てください。宇宙に関するデータ取得の基本権のいかなる制限をも拒否する、日本語に訳するとそうなるのじゃないでしょうか。
  122. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生、ちょっと申しわけございませんが、いますぐ英語にチェックいたします。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 これはしようがないですね。宇宙条約からすると、そして今回の三条約からすると、これは非常に大事な問題です。アメリカが政策として打ち出されることだから何でも結構だというのは、これは困りますよ。ソビエトの問題にはえらく目を光らせるけれども、事アメリカとなるといまのようなかっこうじゃ困る。中身に対して吟味もなさっていらっしゃらないような感じですね。
  124. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の第二項は、米国は、宇宙あるいは天体に対するいかなる国による主張あるいは主権をも拒否するということをその前で述べました後で、宇宙から諸データを取得する基本的な権利の制限を拒否するということが先生御指摘のとおり書かれております。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 いまおっしゃっていることはちょっとわかりにくい、何をおっしゃっているのかよくわからないのです。  もう一度申しましょうか。宇宙に関するデータ取得の基本権の制限を拒否するというふうにこれは訳されるのですね。これはどういうふうな意味を言っているのですか。考え方によると、軍事衛星の存在を合法化しようというふうに解釈できると思うのですが、どうでしょう。
  126. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 これは宇宙条約の中で、宇宙空間の利用については公海と同じで各国に自由に公開されているということになっておりますので、その反映といたしまして、宇宙空間を利用しているということは各国の基本権である、それを制限されるような状況は自分たちとしては受け入れられない、こういうことを表現したのではないかと私は考えるわけでございます。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、軍事衛星を持つ、軍事衛星をさらに開発していくということに対してもそれを認めよう、それを大いに促進しようということにも逆に言うとなるということが考えられるのですが、この点はどうです。むしろこういうことになってくるとそれに対しては、いや、そうじゃありませんという歯どめがどこかになければ、このまま率直に解釈するとそれを認める、合法化するということにもなる側面があるのですね。
  128. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の側面は確かに宇宙開発技術の発展とともにむずかしい問題だと思いますけれども宇宙条約自体が第一条におきまして、月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は、すべての国の利益のためにあるということが書かれておりますので、その中に、いろいろなデータを収集するということも当然探査、利用の目的の一形態だと思います。そういう意味ではデータ収集の自由といいますか、そういうものは宇宙条約が特に規定している分野であろうと思います。ですから、このデータの収集はどのように使われるかということについて、先生御指摘のようにこれは軍事利用の場合にどうかという御議論はあろうかと思いますけれども、その問題については宇宙条約は触れてないのではないかと考えております。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、そういうことに対してのチェックは今回の三条約から考えてもできっこないのですね。
  130. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  これは宇宙条約が採択された経緯に照らしましても、当時の米ソを含む諸国の間のぎりぎり合意し得る妥協点として成立したわけでございますので、そういう意味では宇宙条約そのものが完全な非軍事化を達成してないということは当時から御指摘をいただいていた点でございますが、そういう成立経過からいたしましても、いまのようなデータの軍事利用を禁止するという目的に宇宙条約がそもそも役立たない条約である、率直に言えばそういうことになるだろうと思います。そして、今回の三条約はこの基本的な宇宙条約実施するためのいわば具体化した実施細則でございます。その中の幾つかの原則を具体的に実施しようとするための条約でございますので、そういう意味ではその基本的な宇宙条約の枠組みを変えることは何らいたしてないという関係になるかと思います。
  131. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、そこで大臣にちょっと御登場願いたいのですが、条約からするといまのようなかっこうで軍事的利用に対しての歯どめがきかないんです。これは現実の問題としたら深刻なことですよ。ところが、わが国でも宇宙空間で軍事化が進むにつれて軍事利用を目指す人工衛星を打ち上げようという声があるんです。すでに国会の答弁でも角田法制局長官というのは、専守防御の範囲なら偵察衛星を保有することは法的に可能という答弁を参議院の予算委員会で出されている。いま中曽根内閣は何をやり出されるのかさっぱり、これは不安のかたまりみたいなものです。この点について、将来そういう衛星は保有すべきでないという考えを私たちは持っておりますが、一体どういうふうに外務大臣はお考えになっていらっしゃるのか、その点をちょっと聞かせておいていただきたいと思います。
  132. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も先ほど申し上げましたように、この宇宙条約はいわば国際法として定着をしつつあるわけです。これは守っていかなければならぬ、それは守るでしょうが、アメリカはもちろん守っておるわけであります。今回のアメリカの計画も、国際法の枠内においての計画であるということを言っている以上は宇宙条約というものの枠組みの中での計画である、こういうふうに理解するわけなんです。ですから、したがって先ほどから政府委員答弁をしたように宇宙条約というのが基本的に軍事的な面までは全部否定していないということは、宇宙条約の成立の経過から見まして、いまそういう条約の内容になっておるわけであります。  しかしわれわれとしては、こうした条約に基づいて軍事的な側面というのも出てくるわけでしょうが、こうした宇宙の軍備競争というのがこれからどんどん拡大をしていくということは、世界といいますか、地球にとっても大変な不安なことでありますから、軍備競争を今後制限をしていくといいますか、軍備競争にブレーキをかけるための世界的な努力、そういう中での日本の積極的な役割りというものは軍縮委員会とかあるいはまた国連などでやっていかなければならないのじゃないか、そういうわれわれの考え方を先ほどから申し上げておるわけで、私はそういう方向で今後とも日本外交としては進むべきであると考えております。
  133. 土井たか子

    ○土井委員 外交の姿勢についていま大臣はお述べになりましたが、そうするとわが国も、わが国として軍事利用を目指す人工衛星を打ち上げるということは禁物である、それは慎むべきであるという基本姿勢の上でそういう外交姿勢を打ち出されているものであると理解ができますが、その点は大臣どうですか、お触れにならなかったと思います。
  134. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国の場合は平和目的というのが宇宙開発というものの中心でありますし、これは国会の決議等もしばしばあるわけでありますから、軍事的な面はやらない、平和目的に限るという形での宇宙の利用というものを今後とも積極的にやっていかなければならない。ただしかし、法制局長官が述べておるのは、いまの憲法の範囲内での法制局長官政府立場の法解釈として述べているもの、こういうふうに解釈しております。
  135. 土井たか子

    ○土井委員 法の解釈を聞いているわけじゃありませんから、大臣に対しては日本の政治としてどういうことをお考えになっていらっしゃるのかということを承っているので、それはやはり平和利用以外は打ち上げることはまかりならないという基本姿勢を大臣お持ちなんですね、そうでしょう。
  136. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろんわが国は平和国家を目標としておるわけですから、いままでの憲法その他の枠組みというのがありますし、そういう中で宇宙事業団法ですかもありますし、要するに平和目的に限るということになっておりますからその趣旨に従ってこれをやらなければならない。国会決議もありますから、その趣旨に従ってやるのがこれはもう当然のことだと考えます。
  137. 土井たか子

    ○土井委員 科学技術庁の方が御出席ですから聞きたいと思うのですが、宇宙開発事業団というのは軍事利用の偵察衛星というのは打ち上げることができないと思うのですけれども、どうなんですか。
  138. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  わが国の人工衛星の開発あるいは打ち上げ、いわゆる宇宙の開発でございますが、これは先ほど来答弁もございましたように平和の目的に限りという趣旨でもっていままで事業を進めてまいっております。したがいまして、打ち上げました衛星気象衛星あるいは地球観測衛星通信衛星というような衛星を打ち上げたところでございます。
  139. 土井たか子

    ○土井委員 いま私が承っていることに対しての御答弁になっているかどうかちょっと問題だと思うのですね。軍事利用の偵察衛星というのは打ち上げていらっしゃるのですか、どうなんですか。
  140. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  私どもは、いま先生の御質問の軍事利用の偵察衛星というような構想につきましては、防衛庁の方からもそのような御要望があるということをいままで承っておりませんし、したがいまして、それについての検討をしたことはございません。
  141. 土井たか子

    ○土井委員 事業団の宇宙開発利用というのは平和目的に限るというのはもうはっきりしているわけですね。事業団から防衛庁に対しまして観測データなどを送っていらっしゃるのではないでしょうか。もし軍事用観測データということにそれがなっているのであるならば国会決議に真っ向から反するというかつこうに相なると思いますが、どうです。
  142. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  いまの御質問は、アメリカが打ち上げております地球観測衛星の受信データを防衛庁に提供しているかというような御趣旨の御質問と存じますが、宇宙開発事業団はわが国におきますところの地球観測衛星の開発を現在進めておるわけでございます。その一環といたしましてアメリカが打ち上げました地球観測衛星のデータを受信しまして、それが鉱物資源の探査であるとか地形の調査であるとか農林漁業資源の調査であるとかというものにどのように使えるのか、またどのようにしたら有効に使えるのかということを中心にいま検討を、調査を進めているわけでございます。その一環といたしまして、そのデータは国公立の試験研究機関あるいはその他官庁等を中心とする公共的機関に対しましてはこれを一般に幅広く提供申し上げまして、どういつだふうにそのデータが使えるかということにつきましていろいろ調査もしておりますその一環としてその中に防衛庁の方にもそのデータを提起を申し上げているわけでございます。
  143. 土井たか子

    ○土井委員 千島列島や宗谷海峡周辺などの観測データというものを防衛庁の方に事業団の方から送っておられるということは周知の事実であろうと私は思うのですが、本年初頭に、日米首脳会談の際、スペースシャトルに日本飛行士の参加をレーガン大統領から提案されて中曽根総理もこれを了承されたということが大きく報道されました。これについて、参加費用というのは本年度予算に計上されているのですか。されているのならどの省庁の予算になるのですか。そして金額はどれくらいですか。ちょっとお知らせ願いたいのです。
  144. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申します。  私ども宇宙空間で無重力を利用しました材料実験あるいはライフサイエンスの実験というものにつきましてかねがね関心を持ち、研究も進めてきているわけでございます。その一環としまして昭和六十二年前後、そのころになりましてアメリカのスペースシャトルを借りて、それを利用しましてわが国の科学者をできればそれに送り込んで、それを中心にわが国なりの材料実験等を行うというような計画を持っているわけでございまして、これにつきまして今年度も予算を要求しておりまして、その要求をしている場所は、宇宙開発事業団の予算として計上しているものでございますが、五十八年度予算につきましては、約十二億円の予算を考えているというところでございます。
  145. 土井たか子

    ○土井委員 参加者として考えられているのは一般民間人ですか、それとも自衛隊員なんですか、どうなんです。
  146. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 五十八年度におきましては、スペースシャトルに搭乗を予定する科学技術者につきましてのいろいろな選考の仕方その他につきまして検討を開始していきたい、できれば大方の選考の手始めをひとついたしたい、かように思っているわけでございまして、現在、どのような範囲からそれに最も適した科学技術者を選定していくかというような具体的な案についてはまだ決まっておりません。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 これはスペースシャトルに乗るといっても、急にきょうがあしたにどうぞ乗ってくださいということじゃないと思うのです。これは大変な訓練を必要とするだろうと思うのですね。そうなってくるとさしずめ考えられるのは、訓練について十分なる順応性を持っている自衛隊員ということにやはりなるのではないかというふうな考え方も当然のことながら出てまいります。スペースシャトルの飛行計画の目的の三分の一は軍事利用でございます。そうなってくると、日本からはこれに自衛隊員が参加をする、搭乗をするということになると、それ自身が大変問題だということに相なると思いますが、この点についてはどのように考えておられるわけですか。
  148. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  私どもがスペースシャトルに搭乗させたいと思っておりますのは科学技術者でございます。それで、特別の操縦をするとか特別の行動をするとか、そういうようなことを予定してこの実験を計画したものではございません。したがいまして、これに搭乗させる者は、一般の科学技術者の中から適性を持った方を選定するという手続でございます。もちろん適性と申しましても、宇宙開発委員会の、孤独の状況に耐えられるか、無重力というような状況に耐えられるかというような肉体上あるいは精神的な適応性ということのチェックは当然ございましょうが、いずれにしましても、それに搭乗を予定するのは科学技術者でございます。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 科学技術者といっても、それが自衛隊の中から出される科学技術者もあるのですよ。防衛庁関係の科学技術者もあるのです。ですから、その辺はどうですか。一般民間人ということを考えていらっしゃるのですね。どうですか。
  150. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほども答弁いたしましたように、現在選考の基準等の内容を検討しておりまして、これから選考に入ります。したがって、数多くの人をスペースシャトルに搭乗させることは不可能でございますので、その中から何人かを選定し、最終的に一名かそこらが乗っかるというようなかっこうになろうかと思うわけでございますが、どのような範囲の中からわれわれが考えている実験に最も適したような研究者が選び得るかというところをこれから検討するところでございまして、それは民間の方かもしれませんし、あるいは国立の試験研究機関の方かもしれませんし、大学の研究者かもしれませんし、そういったことをいまのところその辺まで幅広く考えながら、最も適した人を選定していくというような手続になろうかと思います。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それが民間人ではなくて防衛庁関係者並びに自衛隊員であるという場合も、当然のことながらいまお考えの範疇の中には入っているとしか受けとめられないようないまの御答弁です。科学技術庁はその辺のけじめがひとつもはっきりしないのですよ。何を考えていらっしゃるのですかね。
  152. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 御質問でございますが、先ほどから御答弁もしましたように私たちは、英語を使わせていただければいわゆるペイロードスペシャリストというような考え方でもって、そのペイロードスペシャリストに最も適した科学技術者を選定するということでございますので、いまの段階で、特定の範囲からどういう人を選定するとかなんとかというふうなところまでは一切考えておりません。ともかく日本人の代表として送り込む、そしてその実験が最も効率的に行われるようなそういう科学技術者を選定いたしたいものだ、かように思っているわけでございます。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 具体的にだれがどういうかっこうで選定されるかというのはこれからの問題だということは御答弁でよくわかっておりますよ。私はいま基本姿勢を聞いているのです。それがおわかりになりませんか。だれが出ていかれるのかここで具体的に言ってくださいとは私は一言も言っていないわけです。これから選定に入ります、選定基準はこれから考えます、だからそんなことを聞かれても答弁の限りにあらずという態度ですよ。どういう姿勢でそういうことを考えていらっしゃるかという姿勢の問題を私はいま承っているのです。
  154. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  姿勢の話でございますが、先ほどからの繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、わが国における数多くの科学技術者の中からアメリカのスペースシャトルに搭乗させて、材料実験あるいはライフサイエンスの実験等が一番効率的に整整と行われるような、そういうような技術者を選定いたしたいというのがわれわれの基本姿勢でございます。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、私が先ほどから申し上げておりますように、それこそ繰り返しになりますが、スペースシャトルの飛行計画目的の三分の一は軍事利用なんです。そのことを考えてどう臨まれるかという基本姿勢が大事ですよということを申し上げているのです。そういう御答弁では誠意がないですよ。余りにも中身のない答弁過ぎますよ。もう結構です。いま長官が来られましたから、長官への御質問に切りかえます。もうあなたは結構です。  今回この条約締結に当たって、科学技術庁の方は大変な努力をされたに違いないと私は思うのですけれども、しかしいろいろな問題が多々ございます。第一、できるはずであった国内法がどこかへ吹っ飛んでしまってできなかったという経緯があるのですね。国内法ができないことのために提案予定されている条約を国会審議の場所にかけ得なかったという問題がいままでほかの条約でもあるわけですが、これは後で申し上げますけれども長官がわざわざ御出席で、しかも時間の制約がございますから、端的に長官にお伺いをさせていただきたいと思います。  いま人工衛星の早期実現を要望して、三月に経団連が、近い将来民間の衛星事業なんかが本格化するというふうなことなども意思表示をされております。そういうことを考えてまいりますと、現在の宇宙開発に対してどういうことが現実動いていっているかというと、役所同士の縄張り争いというものが大変出てきているわけですね。恐らくそういう問題が今回も国内法を具体的につくる場合に難儀な問題になりまして、現実それはでき得なかったということに結論としてはなったのだろうと私は思いますが、たとえば通信衛星なら郵政省、気象衛星なら気象庁、資源探査だったら通産省、海難救助だったら運輸省、乗り物については、未来の乗り物開発というふうなことについては運輸省、学術衛星は文部省、それから漁業探査については農水省、防災無線に関しては自治省消防庁というふうに各省庁にまたがる衛星が現に開発され、そして利用されているわけですね。そういうことからすると、役所同士の縄張り争いばかりしていたのでは、開発利用の推進のためには難儀をするばかりだろうと思うのです。  そこで、科学技術庁とされてはこれを所管する主管庁になるわけですから、これに対しての一元化をお進めになるという宿題がおありになるだろうと思いますが、これについて長官はどうお思いになりますか。
  156. 安田隆明

    ○安田国務大臣 いま土井先生御指摘のとおりに、いわゆる宇宙開発行政の一元化の問題につきましては、従来とも論議を呼んでいるところでございます。そして、これをとらえた場合には二つの側面がございまして、まず第一は、宇宙開発に関する将来の展望に立ったいわゆる企画、調整、こういった行政をどうとらえていくか、各省庁の調整問題、おっしゃるとおりです。それから二番目の側面は、打ち上げた星を一体どう利用するか、そしてどうして国民の要請にこたえていくかといういわゆる企画、打ち上げ、そしてそれをいかにまとめていくか、これと使う方と二つの側面があるわけですね。これは先生御指摘のとおりであります。  そこで、まず企画をし、調整し、そしていよいよ開発をして打ち上げる、これは現在の体制の中では宇宙開発委員会がその責めを負う、こういうことになっているのですね。だから、私たちの手元にすれば、一応はそこで調整はできている。しかし、先生御指摘のとおり、その機能はどうか、しっかりやっているか、こういうことになりますと、今後われわれは検討しなければならない。利用の面でこれを一元化の方向にしぼってしまう、こういうことになりますとちょっと問題がある。具体的に申しますと、通信術昂を打ち上げてしまった。これは郵政省である。そうすると、通信衛星宇宙部門だけを別に引っ張り出してしまって、これを別途のルートで云々する、こうなりますと、やっとこできましたその資料、データがこちらに行ってしまう。通信行政は宇宙のものも地上のものも一切ここでミックスされたもので国民のニーズにこたえていっている。気象もまたしかりでございます。だから結局、いま茶の間に入ってきている星の映像だけを取り出してしまって気象観測を云々ということになりますと、気象観測は地上のデータと星のデータを全部知見したもので予報を出す、こういうことでございまして、この辺は土井先生のお考え方と私たちの行政サイドの扱い方とに少し無理があろう、こういうふうに考えておるわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  157. 土井たか子

    ○土井委員 調整ということになるとなかなかむずかしいことは百も承知ですが、それならば、行政の一元化のむずかしさも含めましてこれだけはお考えいただきたいという課題が一つここにございます。  宇宙衛星とか宇宙開発というのは高度の危険性を内価する業務であることは確かなのですね。片や徹底して平和利用を考えなければいけないのですね。この二点から指摘をするだけでさえ原子力開発の問題と似たような側面を持つわけであります。原子力開発については、その基本法であるところの原子力基本法がすでに成立している。平和利用に徹する等々を中心に置いて、公開性の原則等々を含めてあるわけです。ところが、宇宙開発問題については、現行法で見てまいりますと、宇宙開発事業団法であるとか、通信・放送衛星機構法であるとか、先ほど大臣がおっしゃいました宇宙開発委員会設置法であるとか、こういう法律しかないのです。宇宙基本法と申しますか、こういう基本法がないのですよ。これは問われている宿題だと思われますが、大臣はどうお考えになりますか。大臣、答えてください。
  158. 安田隆明

    ○安田国務大臣 基本法の設置いかんという御指摘でございますけれども、私は基本的には土井先生のおっしゃるとおりだと思っております。ただ、次のような問題がいまあるわけであります。  まず第一に、宇宙に対する問題のとらえ方がきわめて流動的でありまして、国際機関の中において宇宙とはという定義がまだなされていないわけであります。一体、三万六千キロをもって宇宙とするのかあるいは三百キロをもって宇宙とするのか、これは非常に流動的でありまして、国際機関そのものがその定義をなし得ない、こういうところで立法化に踏み切り得ないという一つの悩みを持っているということがあるわけであります。  第二番目には、これは具体的に申しますと、じゃ、シャトルというものは一体飛行機なのか宇宙なのか、この扱いにまた国際機関が……。  だからして、私は先ほど申しましたとおりに基本的には本当に土井先生のおっしゃるとおりであって、これはちょっと時間を要する、こういうふうに私たちは理解せざるを得ない、こういう現時点であります。よくよく先生の御議論は拝聴いたしておりますが、もうちょっと時間をかしていただいて、国際的な定義の問題から入らなければ国内法には踏み切れないという事情もまた先生御了解いただけるだろう、こう思っておるわけであります。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 ただしかし、基本法はどうしても避けて通れないと思うのですよ、大臣。  それで、いまの御答弁からすると、必要性は認めるけれども、まだそういう条件が整っていないというふうな御趣旨の御答弁なのですね。しかし、外務省に聞きますと、宇宙条約当時以後宇宙に対しての認識というのは国際的にはだんだんと煮詰まっているのです。これに対するお互いの意志の疎通もあの宇宙条約以後あるわけなのですよ。日本ではこれからいよいよ宇宙開発時代になってくるだろうと思います。民間からもそういう声が聞こえております。したがいまして、この宇宙基本法に対して、それは条件がどういうことかというような非常に大事な煮詰めていかなければならない各省庁間の調整もおありになりましょうが、日本としては国内法でぜひこれを、この三条約をいま国会で審議しているときでありますから、この条約だけが一人歩きするのじゃなくて、今回条約に従っての国内法の措置というものが必要であったことにどうも具体的に打ち込めなかったといういきさつもあったりしますから、これを機会にもう一つ私は大臣を激励申し上げたい。科学技術庁とされては、基本法に対してこれを制定するという方向でしっかり努力をお願いしたいと思います。それはよろしゅうございますね。
  160. 安田隆明

    ○安田国務大臣 非常にありがたい御指摘でございまして、本当に土井先生のおっしゃいますとおり、われわれある時点におきましてはそういう体系をぜひ整えなければならないだろう、こういう理解を持っております。また、御指導をお願いいたしたいと思います。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、結構です。ある時期とおっしゃるのは可及的速やかにということを御認識いただいて、それに対してイエスとおっしゃっていただいたら、どうぞ。
  162. 安田隆明

    ○安田国務大臣 よく理解しておきます。どうもありがとうございました。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 それで、今回のこの三条約の中身について損害賠償という点が非常に大きな一つのポイントになるのです。あと、国際的に米ソ間の関係からする宇宙軍拡に対してどう対処するかということは最後に一問だけ取っておきにしておきまして、損害賠償の問題について少し触れてみたいと思うのです。  御案内のとおりに、四月十九日に自衛隊のC1輸送機六機編隊のうちの二機が墜落いたしました。悪天候の中で判断を誤った操縦がなされたのではないかなどというふうなことが言われておりますけれども、三重県の鳥羽で二機が連続して墜落した。人家から約四キロしか離れていない。そこへ持ってまいりまして、これも朝から言われたと思いますが、今回は岩国の基地低空訓練中に自衛隊機PS1がまた墜落、炎上する。大変痛ましい事故だと言わなければならないと思うのです。殉職された自衛隊員の方々に対しては心から哀悼の意を表します。  ただ、これはいろいろ問題点があるであろうと思います。防衛庁の方も、これに対してはけさほどから大変額を集めて検討されているということも私たちはよく存じておりますけれども、まず申し上げたい。  PS1というのは、国会の中でも昨年の二月四日予算委員会でわが党の大出委員が取り上げて、日米共同開発であって、しかもその中身に多額の国費がつぎ込まれたといういきさつもるる質問の中で取り上げられて大変世の注目を集めたという、いわくつきだと申し上げなければならないかと思うのですが、一たんこういう事故を起こしますと、これは共同開発ですからアメリカ側にもこの飛行機の安全性なり機能なりについてもう一度いろいろ問いただすということが出てこようかと思いますが、こういう問題はどうなるのですか。
  164. 木下博生

    ○木下政府委員 PS1の開発に当たりましてアメリカから飛行艇の提供を受けまして、その提供された飛行艇をもとにしてつくったのは確かでございますが、PS1自身の開発費は、すべて防衛庁で負担して四十年代の初めにできたものでございますので、これは防衛庁が独自に開発した航空機だと私ども考えております。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、防衛庁独自で開発されたということを防衛庁としては言い切られるわけですから、アメリカ側に対してこの飛行機の構造並びに安全性等々について問いただすということは必要ない、こういうかっこうですか。
  166. 木下博生

    ○木下政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 そうですが。しかしPS1の事故というのは、これまでに四件も起きているのですね。したがいまして、これは操縦ミスなのか、訓練そのものが非常に無理な訓練を重ねていたのか。軍用機のことですから無理な訓練というのもおかしな表現になるのかもしれませんけれども、どういうところに原因があったかは別として、このPS1という機種について事故原因というものがはっきりするまで、これが今回の墜落原因であったということがはっきりするまでは飛ばさないということが常識だろうと思われますが、この点はどういうふうなお考えですか。
  168. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 担当の政府委員がおりませんので便宜私からお答えいたしますが、一般の例といたしまして、こういった事故があります場合には、全機の飛行をやめましてその機種についての点検を行うというのが通例でございます。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、機種の点検をやって、事故原因がその機種そのものにはないということがはっきり判明するまでは飛ばさないというのが通常なんですね。
  170. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 御承知のとおり、航空機事故の原因として考えられるのは、一般的に申し上げれば、パイロットのミスあるいは機材の欠陥、整備上のミス、天候気象による不可抗力といういろいろな要素が考えられますが、その中で機材の欠陥がないということがわかれば飛行の再開に持っていく。これは航空事故の原因調査とはまた別途の立場点検される、こういうことでございます。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 今回だって米軍弾薬庫からわずか二百メートルのところに墜落をするという事故であります。場所から言うと、岩国基地というのは石油コンビナートであるとか化学関係の企業群が林立しているというふうな条件がございまして、基地の移転ということはすでに計画の中にあるようでありますけれども、しかし民間から考えますと、天から降ってくるわけですから、非常に危険きわまりない場所に住んでいるということです。こういう事故のたびごとに亡くなられた方に対しては痛ましい気持ちであると同時に、まことにこれに対しては、起こってしまってから後どうこう言ったって遅い。しかし、起こってからの損害に対してどのような責任を国の方はとってもらえるのかという開題に当然のことながらなってくる。時間の関係がありますから詳しいことを申し上げるいとまはありませんけれども、雫石事故などは民事訴訟になりまして、全日空と防衛庁に対して、相互に過失責任があるということでいままだ係争中です。そうしてそれに対しては、余りに時間が長引くからということで、国の方から一人に対して千九百九十万というのを立てかえ払いで支払われるというかっこうになっているようでありますけれども、私自身一つ釈然としないのは、非常に高度な危険性というものを内蔵している問題だということを常に自衛隊機の問題に対しては考えておかなければなりません。  今回の宇宙条約考えた場合に、高度の危険性を持っている行為であるがゆえに、一たん損害が起きたときには無過失賠償ということが問題になるわけであります。いま無過失責任という観点からしますと、日本の国家賠償法では認めておりませんで、みんな過失責任を問題にするわけなんですね。高度の危険性を有しているという問題に対して、どうでしょう。いままでのようなあり方ではなしに、これではちょっと困る、高度の危険性というものを常に内蔵しているということを前提に置いて考えなければいけない問題ですから。したがいまして、そういうことからすると一般の民間航空と違うのです。自衛隊機というのは、訓練の途次、こういう非常に無理な訓練もあるということを想定しなければならない。だからそういうことからすると、高度の危険性を有しているということも考えて無過失責任ということを考える必要があるということは、当然のことながら声として出てまいります。どういうふうにこれに対してお考えになりますか。
  172. 竹下昭

    ○竹下説明員 防衛庁損害賠償を行う場合の考え方でございますが、先ほど先生もおっしゃいましたとおり、国家賠償法に基づいて行うわけでございます。無過失賠償の方法をとれということですが、今後の制度ということについては別にしまして、やはり基本的には事故と相当因果関係のある範囲で通常生ずべき損害というものにつきまして適正な賠償を行うという考えでおるわけでございます。賠償の算定につきましては、自賠法等の例によって行っておるというのが現在の状況でございます。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 それは現実に対しての説明だけじゃないですか。だから長官に御出席をと言ったのですよ。事務レベルの話を聞いているわけじゃない。現状はそうなんです。だから困ると言っているのですよ。民間航空機とわけが違うのでしょう。訓練だって、ときに無理な訓練をしないと訓練の意味がないのじゃないですか。今回だって、低空訓練をやっていたことが原因じゃないかと言われているのですよ。先日もあのC1輸送機が二機墜落したことだって、悪天候の中で非常に予定コースからそれるような無理な訓練をやっていたということが現実の問題なんですから。それからすると非常に高度の危険性を内蔵しているということを考えなければならない。全日空や日航とわけが違うのですから、その辺は。そうでしょう。民間航空じゃないんですもの。自衛隊機というのはそういうことからすれば、いまの過失責任だけで事足りるかということは、これは考えなければいけない問題ですよ。因果関係の立証で時間がかかるんですもの。天候がどうだったの、そのときの状況がどうだったの、一々挙証責任立場にある側が一生懸命その責めに任じていろいろとやかく言わなければ、中身に対して確定できない。これはちょっとわけが違うのじゃないかと私は思いますね。どうですか、これは。大臣。こういう問題について無過失責任というのは、今回の条約にとられたいわくというのは、高度の危険性を内蔵する業務活動というのがそもそもの出発なんですからね。それで国際間でこういうことに対しては無過失責任で臨むべきだということできょう議決するこの条約になっているのです。私は自衛隊機なんかについては国内的にも、いま国家賠償法というものは万事無過失責任じゃない、過失責任しか考えていないわけですが、これは課題として考えていい問題だと思いますが、大臣、どうお考えになりますか。これは大きなことですよ。大事なことだと思いますよ。
  174. 竹下昭

    ○竹下説明員 無過失賠償責任をとれということでございますけれども、まあいろいろな考え方がそのときどき、時代に応じてあろうかと思いますけれども、やはり現在の日本の賠償補償体制の中におきましては、個々の責任に応じて、その賠償責任を負うべき範囲において行う、またその原因等については徹底的に解明してその範囲で行うということしかできないということです。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 だからもうあなたの説明は要らないと言っている。それは現状についての説明に尽きているじゃないですか。それ以上あなたに幾ら聞いたって言えないでしょう、事務レベルの問題としては。それ以上、それは無過失責任というのが必要だと思いますなんて言ったら、帰って怒られるでしょうが。そんなことではないと思う。だから私は外務大臣に――少しその辺どうです、大臣。それは所管が違うから私としたらむずかしい問題でお答えできかねるとおっしゃるかもしれませんけれども、これは大事なことだと思いますよ。そして、それでは外務大臣、関係してくるのは、日本米軍基地がある限り米軍機も恐らく飛んでいるわけですから、そして、米軍機の場合もこれは訓練で飛ぶという場合もある。軍事利用ということで、軍事目的のために飛んでいる訓練というのは、これは無理な訓練をやらないと意味がないときがあるのですよ。だから、単純なそれこそ過失責任でまかりおおせる問題ではないと私は思うのです。そういう場合にはどういうふうにお考えになりますか。これはやはり無過失責任ということを損害を受けた被害者に対して考えていくということが必要なのじゃないでしょうか。どうですか、非常に大事な問題です。
  176. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 どうも私もこれはなかなかむずかしい問題だと思いますね。日本の現在の法律制度の中で対応していく以外にない。おっしゃるように、国際的な問題とは別ですし、国際条約と絡んで判断をするということはちょっと困難じゃないかと思います。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 ただ、国際的な視野からの判断というと、今回のこの条約締結して後、日本が国内法を制定するということが当面問われた問題だったでしょう。条約を遵守するという憲法の九十八条から考えて、国内法というものは整備しなければならないですよ、この条約を守るために、これが締結されれば。そうすると、国内法化する場合どうですか。これは日本の国内法としても無過失責任を具体的に決める法律が必要なんですよ。いまある国家賠償法というものは、認められているのは過失責任ばかりなんです。後ろで首を振っていらっしゃる、そのとおりなんです。無過失責任が必要になってくる。日本の国内法にそういう立法化が問われているのですよ。大臣、それは大臣に無関係じゃない。同じようなことでこれは高度の危険性を内蔵しているがために過失責任じゃだめですよ、無過失責任ということを問題にしますというものから出発したことなんです。いまの自衛隊軍用機事故というのはまさにそうじゃないですか。軍用機一般の民間航空と違うのだもの。これは高度の危険性を内蔵している軍用機なんです。これから受けた被害というものはやはり無過失で取り扱うということが責任考えられる。これは国の立場ですよ。防衛庁というのは国の立場であり、外務省というのは当然国の立場において物をお考えになるわけですから、被害者というのはやはり国民なんですから、国民に対してどう対応するか、いままでのままでいいと私は思わない、大臣どうですか。
  178. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御意見としては拝聴しますが、現在のこの起こっておる事故については、今日の国内制度によってこれに対応していく以外にはないと思います。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 今日の事故については現行法はそうでしょう。だけれども、このことを考えなければならないという将来について課題がございますね。これは否定なさらないと思いますが、外務大臣どうですか。
  180. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十分御意見は拝聴いたしました。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 日本語というものは都合がよくて、それは十分御意見拝聴いたしましたとおっしゃってくださるということは、その中身を吟味して考えてみようという意思表示でいらっしゃると受けとめてよろしゅうございますね。それはそうなりますもの。
  182. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私だけの問題じゃないのですけれども政府としていまの御意見を拝聴しまして、今後については考えるべきことがあれば考えていかなければならぬと思います。
  183. 土井たか子

    ○土井委員 考えるべきことであればとおっしゃるけれども、現に考えるべきことなんですよ。それでこの条約締結に向けて国会審議までの間に国内法を整備しておかなければならなかったという外務省においてももうすでに責任があった。その責任をいま現実の問題として果たしていらっしゃらないのですから、だから、それからするとそういう必要があればじゃない。これは現にこの条約についてはもう必要なんです。さらに、日本の国内においてはやはり自衛隊機などの訓練中の墜落、これによって被害を受けた場合どう取り扱うかということは、現行法のままでよろしいとは、これも断じて言えないだろうと思います。よって来るべき理由が理由ですから、これについても大臣はいまの歯切れの悪い答弁ではなくて、ちょっと考えてみましょうと言ってください。いかがでしょう。外務省の問題じゃない。大臣に聞いているのです。
  184. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の三条約についての国内法をこれに関連してどうするかという問題は、これまでのいきさつもありまして、今後の課題として、そういう必要があればこれは検討しなければならぬことは当然であると思うわけであります。自衛隊機の問題につきましても、私は土井委員の意見は十分拝聴いたしたわけでございますが、今日の時点では今日の国家賠償法等によってこれに対処せざるを得ないことは御承知のとおりだと思いますけれども、しかし今後の課題としていろいろと検討する必要もあるかもしれない、課題としてはあるかもしれない、こういうふうに思います。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 課題としてはあるかもしれない、あるのですね。やはりあると思いますね。  そこで、賠償の問題について少しお尋ねを進めてみますが、宇宙損害賠償条約は初めて第三者損害に関して国家が主体となって無過失責任に基づく損害賠償責任を負うことを定めた条約というかっこうになるでしょう。宇宙条約宇宙活動について国家への責任集中の原則ということを決めておりまして、当然私企業の活動から生じた損害賠償についても国家が責任を負うということになっているわけですね。宇宙条約の第六条だと思いますけれども宇宙損害賠償条約というものは、打ち上げ国の宇宙物体によって引き起された損害は、国家が無過失責任を負うことになっているというたてまえですね。そういう条約からすると、私企業の損害も国家が無過失責任を負うというかっこうになるのですか、どうなんですか。
  186. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 条約の立て方からいたしますと、打ち上げ国の中にみずから打ち上げを行う場合と行わせる場合と、その領域または施設から打ち上げられる国を全部包摂しておりますから、国としてはその領域内において行われる打ち上げについても、打ち上げ国として責任を負わなければならない、そういう状態になっておるわけであります。
  187. 土井たか子

    ○土井委員 この無過失責任というのを考えていくと、非常にいろいろ込み入った問題というものが出てくると思うのですが、国対国の間は無過失責任が問題でしょう。日本の国内に居住している外国人が日本に落下した物体によって被害を受けた場合には、どういう取り扱いをすることができますか。
  188. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 これは落ちました物体によって引き起こされた損害につきまして、どのような優先順位で損害賠償請求をするかということにつきましての条文が第八条にございますけれども、それによりますと、まず国籍国、被害発生地国、それから永住国ということになっておりますので、わが国において被害が生じた場合、その外国人の国籍国が請求をしない場合には、被害発生地国であるわが国がその外国人のために被害請求を物体を発射した国、打ち上げ国に対して行うことができる、こういう関係に立つと思います。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、今回の自衛隊機の墜落等々から考えて、こういう場合はどうかということを思うので、防衛施設庁にも御出席をいただいたのですが、米軍機が訓練中または出動中に墜落をして、日本の国民に対して被害を与えたという場合は、どういう取り扱いになるのですか。日本の国内法で賄うのですか。それとも政府政府の問題になりまして無過失責任ということでこれは取り扱うというかっこうになるのですか。どうなんですか。
  190. 小林和夫

    ○小林説明員 お答えいたします。  先生が御指摘されましたケースにつきましては、アメリカ合衆国とわが国との間におきまして地位協定第十八条五項、これが基本的な取り決めになっております。これによりますと、わが国の領域の中におきまして御指摘のような被害が合衆国の軍隊の航空機によりまして発生をいたしました場合には、わが国といたしましては当該補償額のうち七五%を合衆国政府に対して請求をする、こういうことになっております。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、その関係はどうなるのですか。過失責任で取り扱われるのですか、無過失責任で取り扱われるのですか。
  192. 小林和夫

    ○小林説明員 この問題につきまして同じく地位協定の十八条五項が基本的な取り決めでございまして、これによりますと、当該航空機が墜落することによりましてわが国の領域内におきまして生命、身体あるいは財産、こういったものに損害が現実に発生をした場合につきましては、当該損害に対しましてわが国の国家公務員等が損害を与えた場合の例によりましてその補償をいたす、こういうことになっております。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 それは、相互間に取り決めをした上で決められている中身で具体化されていますか。それとも日本がそういう解釈でそういう取り扱いをしているのですか、いかがですか。
  194. 栗山尚一

    ○栗山政府委員 地位協定の問題でございますので、とりあえず規定について私から御説明させていただきます。  委員御案内のように、いま防衛施設庁の方から御答弁申し上げましたが、十八条五項a項に規定がございまして、この種の請求につきましては「日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令に従って、提起し、審査し、かつ、解決し、又は裁判する。」こういう規定になっております。したがって、関係法令は何かということになりますが、主として国家賠償法ということになりまして、先ほどの委員の御質問の関連から言えば、原則として過失責任、こういうことになります。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、大臣、いよいよこれは無過失責任という方向で考えていただかなくてはならないということになると思いますよ。  さて、こういう例はどうなんです。  外国の、アメリカにしましよう、もしアメリカ衛星日本に落下した場合日本政府アメリカ政府にかけ合って無過失責任で交渉する。その場合、国民と日本政府との間の法的関係から言えば法的委任というのはどういうかっこうになるのですか。国内においてどういうふうに考えればいいのです。
  196. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条約上のお尋ねでありますと、この条約におきましては当然のことながら領域における打ち上げについてすべて打ち上げ国が責任を持つわけでございますから、そういう意味で国家が民間人の打ち上げについても責任を持つ、そういう関係になろうと思います。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと私の言うことを聞いていらっしゃらなかった。  被害者は日本の国民である場合ですよ。日本政府が加害者国に対して、相手国の政府に対して無過失責任損害賠償についての交渉をするわけでしょう。その場合に日本の国内においては、国民と日本政府との間の法的関係から言うと法的委任というのはどういうことになるのですかということを申し上げているのです。
  198. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  当然政府はこの条約に基づきまして無過失責任の原則に従って相手国に対して損害賠償の請求及びその損害請求の獲得のための交渉を行うわけでございます。その際に民間人との関係はどうなるかというお尋ねだと思うわけでございますが、民間人で被害を受けられた方との関係につきましては、これは民間の方の完全な法的な代理というわけでもないと思いますので、この条約実施する限りにおいて、民間の方の被害を国家がいわば吸い上げて、それを無過失責任の原則に従って相手側と交渉する、こういう関係になるだろうと思います。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 どうももう一つよくわからないのですが、日本の国内においてそういう法的委任というのが、国内法がつくられないことのためにさっぱりわからないのですよ。万が一にもそんなことは起こるまいというお気持ちで、恐らくは今回も最後まで国内法に対してそうそう力を入れるというわけではなかったのではないかとも思ったりしますけれども、この条約締結する以上は、そうしてこういう条約というものが必要視されている国際社会の中で生活をする日本国民の立場からすれば、こういう問題は現実の問題としてどうなんだろうということはまず問われますよ。そしてさらに、これは具体的に問うていくと、いっぱいあるんです。  日本政府がその加害国である政府と交渉した結果決められた金額がその被害者、国民からしたら不足している場合、それに対してどういうふうな救済措置が用意されるのか。それからまた、賠償条約の十一条からすると、国民は勝手に相手国に対して訴えることができるのですが、一たん被害者である国民が訴えたときには政府はもう口を出さないというかっこうになるのですね。そうすると、多数の被害者があったとしましょう。一人、二人じゃなくて多数あった中、たとえば百人と仮定しまして、百人の中の五十人は政府の交渉でその中身が決まる。あとの五十人は勝手に相手政府に対して訴える。そうしたときに、政府に対して任せた金額というものが勝手に訴えた人と統一がとれなくて少なかったというときに、一体、後でそれに対する救済の道があるのか、裁判を受けることができるのかどうか。そういう問題も含めて考えていきますと、これはどうなるのかなということがもう種々ございますよ。つまり、いまだ日本としては無過失責任ということを国内法で立法化されていないことのために、今後どういう取り扱いになっていくのかというのはこの条約の大きな宿題になるのです。条約締結するまではいいけれども、それを、実行するための国内的措置というものがないのです。  そこでお尋ねしたいのは、こういうときどうなるのですか、ああですかと一つ一つ尋ねていったら恐らく外務省は困られると思うのです。それは率直にお認めになるはずだ。そこで、五十年の三月に宇宙開発委員会の中に宇宙関係条約特別部会というのができまして、宇宙関係条約締結に当たって必要な国内法令に関する基本事項ということが討議されて、報告書が出されているんですね。それを受けて外務省は、五十四年に宇宙条約を国会に提出するというときに、その時点で国内法が必要だということを断言されたのです。昨年、予算委員会での答弁も国内法が必要だと言われているんです。その後、何ら環境が変化していないのに、今度は国内法が必要でないと言われているのです。一体どういうことになっているのか、説明をひとつ聞かしておいてください、この問題について。こういうのは困りますよ。
  200. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  御指摘のように、当初この三条約を国会の御審議に持って上がる際に、その当時におきましては、条約の実効ある実施を期するために国内法をつくるという発想があったわけでございまして、かつその際の国内法として想定されたものは、内容的にかなり包括的なものであったわけでございます。今回は条約実施を担保するという趣旨から、現状の関係各省の権限その他からこの条約実施が担保できるかどうか、国会での早期の御審議をいただくという趣旨から検討いたしまして、当面、国内法の立法なしにこの条約実施に移す体制に入れるという考え方に立ちまして、現在御審議をお願いしているということでございます。  御指摘のとおり、当初は国内立法を前提とした検討を行い、現在はそれと違った形を前提とした検討を行ったことは事実でございまして、若干その間にいろいろの考え方の変化、準術の体制等があったということも認めざるを得ない状況でございます。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 大臣、いまお聞きになったような調子なんです。  私、時間ですから、最後にもう一つだめ押しで言いたいのです。今回、この損害賠償の問題を取り上げた条約の中身を見ますと、高度の危険性を内蔵する業務活動から生じた第三者損害について原因者に対して無過失責任の義務を課するということが非常に目玉なのですね。特にこの高度の危険性を内蔵する業務活動から生ずるものというのは国際間においても大体認識をされておりまして、一つは原子力平和利用に伴う損害です。二つは油汚染に伴う損害です。三つは今回議題となっている宇宙物体に伴う損害です。さて四つ目は、これはまさにだから自衛隊の問題を私は取り上げたのです。航空機による損害なのですよ。これが国際間では四つの分野でそれぞれ無過失責任原則を定めた条約がすでに成立しているのです。そういうことが認識されないと困る。そういうことを考えれば、今回国内法で無過失責任を具体化したところの法律がつくれなかった、まことに日本はおくれている。大臣、よろしゅうございますか。これはぜひともお骨折りをいただきたい。そのことを最後に聞かしていただいて、私はあと非常に大事な宇宙軍拡の問題に対して尋ねたいと言っていたのは、非常に問題が大きいですから別の機会に譲ります。そのときには意欲的な遠藤さんも出席をしてもらってさらに答えていただきたいと思っておりますが、大臣、ひとついまの問題についてちょっと答えておいてください。これは本当に大事ですよ。
  202. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 先ほどからいろいろと政府委員から答弁をいたしましたように、この宇宙条約というのはずいぶん前に発効しておりますが、日本において必要であるにもかかわらず今日まで延引したわけであります。これはいろいろと関係省庁の調整を図ったわけですが、調整がつかないという面もあったわけですけれども、今回はぜひともということで提出をさせていただきましたが、最終的には半面は現行法令の枠内で対処が可能である、こう結倫に達して出させていただいた。三月二十九日に閣議口頭了解があったわけですが、これは三条約の円滑な実施のために各省庁が協力をする、将来現行法令で三条約実施を行い得ないような事態が予見される場合は必要な立法措置をとること、こういうことで了解がなされたわけでございます。いまいろいろと御質問等がありましたが、そういう点も踏まえまして、この三条約の円滑な実施に当たりまして問題が起こるあるいは必要であるという場合においては立法措置をとっていかざるを得ない、こういうふうに考えるわけであります。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 立法措置をとっていかざるを得ないという御答弁というのは、大臣、ちょっと間違っていらっしゃるのじゃないかと思うのですね。条約に対して加盟する国なりそれを締結するということに対しては国際的責任があるのです。国際社会における責任があるのです。それは国内でそのことが十分に守れるような体制をつくることですよ。それからしたら、必要なときにはそれをまた考えてみるという姿勢じゃ、これは国際社会においての信用からすると非常に後ろ向きの姿勢だということを言わざるを得ない。これは必ずやるという意欲を持っていただかなければならぬと思います。先ほど申し上げた日本がこれに対して加盟しているか加盟していないかということも問題になるかと思いますけれども、すでに国際社会において成立している無過失責任原則というものをこの高度の危険性を内蔵する業務活動に対してすでに確認をしている四つの分野それぞれについても、日本においては国内的にいま無過失責任を問題にしている法律はまだないのですから、これに向けて考えていくという姿勢を外務大臣持っていただかなければならないと思っておりますが、これは意欲的に取り組んでいただけますね。それはいかがですか。大臣、それを一言言ってください。いよいよ御出発で、お疲れのところだろうと思いますけれども、意欲的に出発してくださいよ。それはやはり元気を持って、これくらいの御答弁ははっきり言っておいていただきたい。
  204. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かに国際条約は、これはもう当然日本締結している以上はきちっと守っていかなければ国際的な責任を果たせないわけですから、積極的に守るということは基本的に必要であろう、こういうふうに思います。そういう中で、いま御提起の問題につきましては、国際的にもいろいろと動きがあることも事実でありますが、まず航空機等についてのコンセンサスもまだ十分得られていないというふうなこともあります。しかし、われわれとしては条約を遵守するという立場に立って、必要であるならばこれは当然検討して、そして立法措置も講じなければならない、こういうふうに考えるわけであります。今後の情勢を十分見きわめながら対処していきたいと思います。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  206. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、渡部一郎君。
  207. 渡部一郎

    渡部(一)委員 国連のデクエヤル事務総長は昨年八月の国連宇宙空間平和利用会議の冒頭、宇宙の軍事化を阻止するための時間はわずかしか残されていないと警告しております。この発言をどのように受けとめておられるか。米ソを中心とした宇宙軍拡の進展に対してどう考えておられるかを承りたいと存じます。  と申しますのは、最近におきましてますます宇宙における宇宙空間それ自体を軍事利用しようという方向が濃厚でございまして、こうした方向性が増大いたしますと、いままでの陸海空三軍をもってする旧来の軍事設備あるいは軍事行動というものをはるかに上回る人類に対する災害をもたらすものではないかと考えるわけでございまして、こうした問題についての日本政府の御見識、御見解というものがいまや問われている段階ではないかと考えるのでございます。従来、わが国政府におかれましては、こうした問題についてときどき、たまたま御発言になることはございましたけれども、継続して宇宙軍拡の危機について表明されることはなかったように考えているわけでございまして、大臣からこれらの問題の基本的な構図について、御決意について、御判断について承りたいと存じます。
  208. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 わが国としましては、宇宙の平和利用のための各種のプロジェクトに力を注いできておりますが、宇宙における軍備競争防止問題につきましては多大の関心を有しております。従来から国連あるいは軍縮委員会の審議にも積極的に参加をしてきております。今後わが国としましては、宇宙条約等既存の国際法による規制に加えまして、この分野においてもできる限り広範で実効のある規制措置が講ぜられるように、引き続き国連あるいは軍縮委員会における審議を通じまして積極的な役割りを果たしていかなければならないと考えております。
  209. 渡部一郎

    渡部(一)委員 非常に抽象的におっしゃったわけでございますが、宇宙軍拡それ自体の方向と現状についてどうお考えになっておられるか、そこを承りたいと思います。
  210. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私も、いまの状況が続くと宇宙全体が破壊をされるといいますか、いわゆる宇宙戦争というような危険すら感ぜざるを得ないような、いまの宇宙の軍備競争というものがこのままでいけばどんどん力を強めてくるのじゃないか、こういうふうに判断をいたしておるわけでございまして、それに対してはいま申し上げましたような基本的な態度でこれに臨まなければならない、こういうふうに思うわけであります。
  211. 渡部一郎

    渡部(一)委員 昨年七月、レーガン政権の発表した米国国家宇宙政策の中で、宇宙システムに対する故意の妨害は主権の侵害とみなすとしていることは、宇宙条約第二条、宇宙空間が国家の取得の対象とならない規定に反する強弁ではないかと存じます。  特に、昨年二月、発表されました米国の国防報告によりますと、スペースディフェンスの名目で八三年会計年度分として二億一千八百三十万ドルの研究費が要請されておりまして、これは八一年会計年度分が一億四千八百三十万ドルであったのに比べますと、二年間に四七%増額したことを意味するものでございまして、八四年会計年度にはこのほか三千二百八十万ドルの調達費が初めて顔を出すということになっているようでございます。また六月、アレン米空軍参謀総長は空軍内にスペースコマンドを創設すると表明されました。これは宇宙軍は九月一日にスタートいたしまして、米政府関係宇宙技術開発関係の諸機関を統合した宇宙センターが設置され、これら宇宙政策の新しい展開は、ソ連の一連の攻撃衛星実験の続行と、六月中旬に実施された衛星攻撃戦術まで駆使した架空戦争演習などに刺激されたものであると見られているようでございます。従来ソビエトにおきましては、防空軍というのが陸海空三軍のほかに設けられておったようでございますが、この防空軍に加えまして、さらに宇宙軍というものが創設されたように聞いているわけでございまして、こうした米ソ両軍事勢力が宇宙空間をめぐって、それを舞台とする強大な宇宙軍をつくり上げようとしているということは、新聞報道にも出ておるぐらいの公然周知の事実であります。これらの風潮というものは決して好ましいものではなく、国際的な平和の上で非常に大きな問題ではないかと思うわけでございます。これらについてどうお考えになりますか。またこれが宇宙条約二条の宇宙空間が国家の取得の対象にならないという規定には全く反するものであるという事実に対してどうお考えになるのか。本条約をわが国だけが約束をちゃんと守ればいいというのではなくて、世界じゅうの国々にそういう条約をつくった途端に一番大きな二つの国がそれを破る、無視する、公然とそれに挑戦するというふうなことに対して、日本の外務省はどうお考えになっておられるのか。大きいから仕方がないというふうにあきらめるのか。わが国だけが条約を守れば、わが国だけが幸せでいいというふうにお考えになるのか。アメリカソ連のやることはいつもひどいことで泣き寝入りをするのが正しいというふうにお考えになるのか。これは悲しい日本外交の定めだというふうにお話しになるのか。だんだんひどい表現になって恐縮でありますが、どういうふうに感じておられるのか、そこが伺いたいのであります。
  212. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘の宇宙コマンド、アメリカのスペースコマンドのこと等々を念頭に置きまして、お答え申し上げます。  先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、日本としましては、宇宙軍備競争が激化するというのは非常に望ましくない状況で、これは何とかして防止しなければいけない、こういうような観点から、実はこの宇宙軍縮問題が国連等々の場で取り上げられ始めましたのは一九八一年からでございます。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕 したがいまして、日本の本件に対する関与というのも一九八一年からでございますけれども、国連あるいは軍縮委員会の場におきましては、日本は一九八二年、たとえば去年の国連総会では西側の関係諸国等々と共同提案国になりまして、宇宙軍備競争の防止ということを念頭に置いて、まず何よりも宇宙軍備というような観点から一番問題になっております衛星攻撃兵器を対象とした規制というものを検討していこう、こういうふうなために軍縮交渉の専門機関でございますジュネーブの軍縮委員会、そこでもって検討しようじゃないか、こういうような提案をしたわけでございます。  他方、これは全く同じ昨年の国連の総会でございますけれども、東側それから非同盟が宇宙の軍備競争を停止しようというふうな提案をしてまいったわけでございますけれども、これに対しましても、日本は東側及び非同盟共同提案に対しまして賛成票を投じておるわけでございます。それから他方そういったものを受けまして、ジュネーブの軍縮委員会、これは専門的な交渉機関でございますけれども、ここにおきましても日本は、こういったような宇宙軍縮、宇宙の軍備競争の防止の問題を取り扱う作業部会が何よりもできなければいけないわけでございまして、この作業部会の設置問題につきましては、関係各国のコンセンサスが得られるように努力しておる状況でございます。残念ながらまだそのコンセンサスが成立していませんで、いま行われておりますジュネーブ軍縮委員会の春会期においてはまだできていないのでございますけれども、六月から始まります来会期には恐らくできるのではないかな、若干楽観的かもしれませんけれども、そういったようなコンセンサスに向けて日本努力してまいりたい、こういうふうに思っております。  次に、先生質問アメリカソ連宇宙に対する軍備の問題でございますけれども先生御指摘のとおり、ソ連の方ではまあかなりの宇宙空間におきます軍備増強というものをやっておるようでございますし、アメリカの方では去年の九月一日だったと思いますけれども、いわゆるスペースコマンドと申しますか、日本語で宇宙軍と訳すのでしょうか、を創設したと承知しておるわけでございます。いずれにしましても米ソの宇宙軍の創設に関しましては、もし一般的にこれが宇宙における軍備競争を招くものであるとなればきわめて望ましくないものであるわけでございますけれども、実は私どもは、ソ連なり、ことにアメリカのスペースコマンドの機能等につきましてはまだよく承知しておりませんので、今後ともその動向については見守っていきたい、こういうふうに考えております。
  213. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務省の大きな主要な任務として、条約を結び、そしてそれの遵守を行うというテクニックによって諸外国と交渉する、交渉した成果を上げていくということはわかるわけでありますが、この宇宙軍の創設のように、レーガン政権が昨年の九月に空軍内に宇宙軍司令部、スペースコマンドを発足させ、本年の一月二十八日付の時事通信によりますと、当地のモスクワにおける西側軍事筋の二十八日の表明によれば、ソ連はこのほど宇宙軍を創設したというものであった。その「宇宙軍は防空軍(総司令官バチツキー元帥)の中の一部隊としてつくられ、宇宙軍司令官には、ウラジーミル・シャタロフ空軍大将が任命されたもようである。」と新聞情報に出ているわけでございますね。ところが、これはただの軍隊の創設とは違って世界をつぶしかねない軍隊であると言うことができますし、わが国の平和外交の立場から言っても、これは見逃すことができないニュースである、対応すべきテーマであると思うわけです。こうした問題について、外務省が従来非常に関心が薄かったように見えるのはどういうわけなのか。まことに仕事の多いところで恐縮ですけれども、こうしたことについてもっと関心が濃くてもいいのではないかと素人なりに思うわけであります。しかも最近アメリカの方のいろいろな様子を見ておりますと、十月に開催されました第九回国家安全保障会議というので、安全保障政策としてハイフロンティア戦略というものが提唱されておる。このハイフロンティア政策というのは、地上の国境と無関係に対ソ戦略が遂行できる、人命関係がない、核戦争を回避できる、ソ連の戦略的攻撃兵器の投資を減少させる、米ソの軍備管理戦略兵器交渉を進展させることができるという動機のもとに、ハイフロンティア、国境線をはるかに飛び越えた宇宙空間における戦略というものが公然論議をされ始めた。これは戦略というものが宇宙に広がってきておるということが言えると思うのです。言ってみれば地上の国境線を戦車で乗り越えたり、あるいはライフルを持った兵隊が突撃するということは、いまの御時勢ではそれほど大きな脅威にはならないかもしれないけれども、この宇宙軍の創設あるいはハイフロンティア政策などというものを放置しておけば非常に大きな打撃を世界の平和に与えることは必定であるし、これにわが国が関心を持つということは当然ではないかと思うのです。先ほど大臣は、宇宙条約等既存の成果に加え、広範で実効のある措置をとりたいというふうに外務省当局の姿勢というものを非常に総括的にお述べになりましたけれども、その程度の御認識でいいのかな。それは間違いとは言いませんけれども、それではこれほどの大げさな大事件、ある意味では核兵器ができたときと同じほどの衝撃を人類が受けているときにいいのか、こういう感じがするわけであります。その辺を御省ではどう御認識されておられるのか、御返事をいただきたいと思います。
  214. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  いま先生御指摘のハイフロンティア構想と申しますか、ハイフロンティア戦略とおっしゃったかと思いますが、これは昨年アメリカの民間研究グループにヘリテージ財団というのがございますが、そこが出しました一つの構想でございまして、必ずしもアメリカ政府の政策といったものにはなっていないと了解いたしております。ただ、いずれにいたしましても、先生御承知のとおりことしの三月二十三日にレーガン大統領が国防政策に関する演説を行ったわけで、その大統領が申し述べた中の一つの柱といたしまして、例の弾道弾ミサイル防御システムに関する構想があったわけでございます。これに関連するお話かと思うのでございますが、ここで考えられておりますことは、要するに現在の戦略体制というものが先生御承知の例の報復の確実性による抑止といったような考え方、これを基礎にしているわけでございますが、それと発想を変えまして、できるならば軍備の水準を引き下げ、かつまた防衛的な方策によって脅威に対処していくといったようなことを考えたい、これにはかなり時間がかかるであろう、今世紀末までにあるいはできないかもしれない、しかしながら、そういう形でやっていくことができれば、よりもって世界の平和、安全というものに寄与し得るのではないか、かつまた、具体的にはABM条約の義務に背馳しないようにしてやっていくのだといったようなことを二十三日に大統領が演説したわけでございます。これを受けまして、さらに同大統領が三月二十五日でございますが、国家安全保障会議決定に基づく指令というものを発出いたしまして、先ほど申し上げました構想に基づく具体的な検討を指示した、こういう経緯がございます。現在そういう方向で検討するべくクラーク大統領補佐官が責任者となりまして検討を進めているというのが私どもの知っているところでございます。ただ、いずれにいたしましても国防分野におきまして、アメリカの国防省でもそう言っているわけでございますが、あくまでも防御的に物を考えていくという姿勢をとっているわけで、ただ、他方これはアメリカ一方だけで言っておりましても、世界の安全保障を確保していくためには力の均衡ということが必要でございますので、その力の均衡水準というものを維持しつつ、なるべくその水準を低くするという形での軍縮の努力、これを米国はやっているのではないか。その一環として先生のおっしゃったような趣旨の何と申しますか、構想が民間サイドから出てきている、こういうものだと私ども理解している次第でございます。
  215. 渡部一郎

    渡部(一)委員 宇宙空間の利用につきましては、一九六七年の宇宙条約で領有権の否定、大量破壊兵器の打ち上げが禁止された以外には、ほとんど何の制限もないと言っていいわけであります。しかも、これに懲罰的な条項が加わっていなかったため、さらにこれは言いっ放しということになっているわけであります。宇宙に打ち上げられた衛星に大量破壊兵器が内蔵されているかどうかチェックする方法はないからであります。そしてその結果として、一方ソビエトは特にけしからぬのでありますが、レーザー兵器だとか粒子ビームの研究開発に熱中され、最近では迎撃衛星の演習を公然宇宙空間実施した様子が世界のレーダーの上に映っております。アメリカもこれに対抗するという立場からではございましょうが、同様の兵器開発が進んでいるわけであります。平和利用をうたった宇宙条約四条の趣旨や地球の環境の悪化を避けるための必要な措置をとることを規定した同九条の精神は形骸化しているのではないか。形骸化しているだけでなく、日本政府はその形骸化するのを黙認するという形でその形骸化に手をかしつつあるのではないか。私の不満はそこであります。これをどうお考えになるか。これからもそのようなことを放任され、黙認されていくのか、それはけしからぬというのか、そこのところはいかがなものでございますか。そうでないと、本条約の批准、承認というものは余りにも単なるお話にしかすぎない、架空の物語にしかすぎない、形骸化されただけの話にしかすぎないことになるからであります。
  216. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 一九六七年の宇宙条約と軍事利用の関係について、私の方からお答え申し上げたいと思います。  先生御指摘のように第四条では、前段におきまして、地球を回る軌道に大量破壊兵器を乗せない、あるいはこれを天体に設置しない、またはこれを宇宙空間に配置しないということを決めておりますけれども、後段は、確かに平和目的のために利用されることにしておりますけれども、これは月及び天体のみに限っているわけでございます。ですから、月、天体につきましては完全に非軍事利用化をこの条約はうたっておりますので、その限りにおいては米ソとも月その他の天体に軍事施設を置く等の軍事利用をするということはこの条約の義務違反になるわけでございまして、従来までそのような計画があるとも承知しておりませんし、そういうことはしてないと思います。第四条の前段におきます禁止につきましては、これはこの条約の御審議をいただいた当時も、不完全な非軍事化しか達成していないという御批判があったことは、私ども十分受けとめております。にもかかわらず、当時これだけ限られたものであっても、地球を回る軌道に核兵器その他の大量破壊兵器を乗せない、宇宙天体に配置しない、それから宇宙空間に配置しないという約束であっても、これはこの限りにおいてはやはり重要な一つの前進ではないかという認識のもとに、当時その限られた非軍事化という欠点はありながら、その限られた目的での約束はそれなりに評価するということで御審議をお願いした経緯がございますけれども、基本的にはやはりこの宇宙条約そのものが宇宙の非軍事化ということについては限定された効果しか上げていないということが根本にあるだろうと思いますが、その点を御説明申し上げたいと思った次第でございます。
  217. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生質問の、それじゃ日本として何をすべきかという点につきまして私の方から答弁させていただきたいと思います。  日本が軍縮にどうやって取り組んでいくかというのは、これは核軍縮の例をごらんになってもおわかりになりますとおりに、やはりこれは国連の場あるいはその下部機関といいましょうか、ジュネーブの軍縮委員会というのは、日本にとってきわめて有効な場あるいは有力な場ではなかろうかと私は思っておるわけでございます。  そこで、宇宙軍縮という点に関しましても、これは先ほども答弁申し上げましたように、比較的新しい問題であるわけでございますけれども、八一年から日本は本件に積極的に取り組んでおりまして、特に先生質問の中でお触れになりましたいわゆる対衛星攻撃といいますか、とにかくそれが一番優先課題である。したがって、これに対しての禁止のための協定に関する交渉、そういったものに関する問題については、早く軍縮委員会でもりて協議が開始されるべきであるという立場をとり、かかる趣旨の決議案を共同提案国の一つとして去年の国連総会にも提出しているわけでございます。  そこで次に、それではそれを受ける軍縮委員会でどうするかということにつきましても、ことしの春でございますけれども、ジュネーブで今井大使から、宇宙におきます軍備競争の問題というのはきわめてむずかしい問題を含んでおるけれども日本としては軍縮委員会が今後ともこの問題を真剣に検討していくように期待するという演説を行っておりまして、先ほど申しましたようにまずとりあえずそれを議論する場が必要でございますから、作業部会の設置につきましては今後とも努力してまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  218. 渡部一郎

    渡部(一)委員 関係閣僚の御努力というものはそれなりに評価はしているのではございますけれども、余りにも現状の宇宙空間における軍備強化の問題が怒濤のように行われているのに対しまして、われわれの努力というものが小さくてむなしいものではないか、こういう感じを深くするわけであります。  このままでいいのか。たとえば原子炉衛星規制の問題につきまして、ソビエト原子力衛星がカナダ領に落下した問題を契機とされまして、日本政府では国連宇宙空間平和利用委員会等で原子炉衛星を打ち上げることを禁止するという提案もなさったと承っているわけでございますが、こうした問題について非常に一生懸命努力されておる、なかなか実らないけれどもがんばっておられるというのは承知しておるわけであります。要するに、しかしながら宇宙空間の軍備強化というものを食いとめるためにわが国は何をしているのか、もっと何かできないのかと重ねて伺って曲るわけであります。大臣、よろしく御答弁をお願いします。
  219. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 確かにおっしゃるように宇宙における軍備競争が拡大していくということは人類のためにまことに心配なことであります。何としてもこの勢いというものを抑えなければならない、そういうふうに思います。  そういう中で、日本がどういう役割りを積極的に果たすことができるかということでありますが、これは先ほどから答弁いたしましたように日本の力というのはおのずから制限があるわけですが、しかし軍縮委員会だとかあるいはやはり国連の場を活用する以外にはないのじゃないか。特に米ソ両国が席を同じくしている軍縮委員会あるいは国連で日本が積極的な役割りを果たしていく、確かにいままで日本努力した点について十分報われないむなしさもあるわけでありますが、やはり今後とも声を大にして訴えていく、そして実効的な措置が行われるように具体的な努力を重ねていくということが必要ではないだろうかと思うわけでございます。  根本的には、やはり米ソが反省して、こうした宇宙が今後破壊されるような軍備競争というものをみずからストップするということが非常に大事であろうと思います。アメリカもいろいろとやっておるわけでありますが、アメリカも国際法は守るということを言っておるわけであります。形骸化されているのじゃないかという御指摘もありますが、しかし宇宙条約では米ソが、不十分ではありますが妥協の産物としてあれをつくって、そして大量の破壊兵器は宇宙物体には載せない、搭載しないという約束があるわけでありますから、そうした一つの歯どめ、さらにそれに加えて、いま私が申し上げましたような日本日本なりの努力をこれからも傾けていかなければならない、そういうふうに思いますし、私も外交の責任者として今後とも軍縮委員会やあるいは国連の場で日本立場を積極的に表明をしてこれを進めてまいりたいと考えております。
  220. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、アメリカソ連とを均等に扱って両方ともがこの問題について同じ責任を負えと言っているわけではないわけでありまして、アフガニスタンに対するソビエト軍の進駐、侵略というものは現に存在しておるし、そしてそうした動向というものはここのところのレーガン政権の対ソ強硬政策によって食いとめられ始めておるということも認めた上で、私は、このような宇宙軍の強化の動きというものはきわめて危険な将来というものを日本列島ではなく世界じゅうにもたらす、これを先ほどから言い続けておるわけであります。大臣におかれても私と別に変わったことを述べられているわけではないと思いますし、確かに日本の外交としてなし得るところが余りにも小さくてかすかだというお気持ちを持たれるのも無理はないとは思いますけれども、なお一段の御配慮、御努力をいただきませんと、この問題で結局人類はせん滅されるまさにその扉のところへ来ているのではないかと私は思っておるわけであります。核兵器の恐怖についてはわが国は非常に多くのPRと啓蒙が行われているわけでございますが、いま開発されつつある宇宙兵器、この一連の宇宙軍戦略というものについてはわが国民はきわめて知識が不足をいたしております。そしてその脅威というものは多大なものでありますのに適切な対応ができないという状況にあることを国民の皆様にももっとPRをしていただく、そして世界でも御努力をいただきたいと思うわけであります。この点は御答弁は要りませんが、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕  次に、日本宇宙政策の基本は、宇宙開発事業団法第一条にあるように平和目的に限られておりまして、この精神は昭和四十四年の国会決議の中にも盛られているわけであります。  科技庁の方にお尋ねしますが、この大枠はあくまでも遵守されますか、あるいは再検討しようなどという怪しげな雰囲気になっておられるのか、宇宙開発政策大綱の見直しの考え方があるのかないのかお尋ねしたいのであります。  といいますのは、最近の資源探査衛星というものは明らかに非常に高度な戦闘目的に役に立つものでありまして、そのままで役に立つ。それどころか、この資源探査衛星というものによって軍隊の移動あるいは諸軍事設備の実力というものを全部確認することができるわけであります。したがって、平和目的に限られていると称して日本宇宙開発事業団等を初めとする各機関をもって打ち上げているものが戦争目的にすりかえられる誘惑というものはきわめて高いのではないかと思います。そしてそれが、放置しておきますと、その方が値段が安いから断固その方向で使えという議論を次には生み、その次には、正式にそれを用いて自衛隊能力を高めろという議論に飛び火をし、そしてその次には、宇宙軍を持った日本という形で世界の安全保障のバランスに奇妙な影響というものを、不安定要素を持ち込む可能性もあると私は思うわけであります。したがって、わが国における基本的な宇宙開発事業団法の解釈というものはまことに大きな意味合いを持つものではないかと思うわけであります。  したがって、いまこの場で確認をさしていただきますが、その御精神は変わらないでしょうねと承っているわけであります。あなたの御答弁はいま重大なテーマになり、今後の国会審議の骨中の骨になる質問になるでしょうから、お気をつけいただきまして慎重に確実に御答弁いただくようお願いします。
  221. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  宇宙開発事業団が打ち上げをしております実利用衛星、そういったようなもののいわば開発につきましては、先ほど先生から御意見のございました両院の御決議並びに宇宙開発事業団法第一条の趣旨に沿って現在まで進めてまいりましたし、今後とも国会の御決議の御趣旨並びに宇宙開発事業団法第一条の趣旨というものを十分に踏まえながら宇宙開発を進めてまいりたい、かように思います。
  222. 渡部一郎

    渡部(一)委員 これは重要なテーマでありますから、大臣からも御答弁を重ねていただきたいと思います。
  223. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまおっしゃるように、わが国の宇宙の利用というのはあくまでも平和目的でありますし、そうした基本的な趣旨に従って、法律のたてまえもありますし、あるいは国会の決議等もありますから、それを尊重しながら今後とも宇宙政策というものを進めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  224. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では次に、宇宙関係条約の中で、救助返還協定は昭和四十二年、損害賠償条約は昭和四十六年、登録条約は昭和四十九年に国連総会において採択されまして、最後に採択された登録条約が発効して八年余りを経過しているわけでございます。その後、昭和五十三年二月には衆参両院本会議で批准促進の決議が行われておりますが、今日までこれが提出されなかった理由は何か、まことに疑問にたえないところでございます。問題は、要するに、昭和五十七年三月八日の予算分科会におきまして同僚の沖本泰幸衆議院議員からも質問されておられるところでございますが、なぜそれがおくれておるのかという質問に対しまして、そこに御在席の遠藤さんが、国内措置がまだまとまっていない、「国内関係省庁の間での調整がついておらない状況でございます。したがいまして、残念ながらまだ批准の状況に至っていないわけでございます。」と明瞭に述べておられます。また、宇宙損害の賠償等に関する法案というものについて、科学技術庁がつくったわけでございますが、これも遠藤さんの御答弁でございますが、「御指摘のように国内措置がとられませんと、ことに損害賠償条約につきましては、その条約に規定されております権利及び義務関係を円滑に履行することはできませんので、国内法の整備につきまして今後とも関係省庁と鋭意調整の上、国内体制をなるべく早くつくりたい、こういうふうに希望しておるわけでございます。」また、損害賠償条約は、「もし打ち上げた宇宙物体が落ちた場合に、打ち上げ国が無条件にその損害賠償に応ずるという、いままでの国際法の概念には入ってない新しい概念が規定されておりまして、それを担保しますためには、たとえば両方の、つまり日本が加害国になった場合と日本被害国になった場合と二つのケースが考えられるかと思いますが、日本が加害国になった場合に、ではその財源の手当てをどうするのだという問題、それから、日本被害国になりました場合は、国がその打ち上げ国から金を取ってきて、それをどうやって被害者に分配するかという問題、こういうふうな国内体制がいまのところまだできてないわけでございます。したがいまして、それが条約に参加する非常に大きな障害になっているわけでございます。」このようにお述べになっておられるわけであります。さらに国内法の関係を調べたわけでございますが、「アメリカ、イギリス、カナダ、西ドイツ、オーストラリアの五カ国を調べたわけでございますけれども、先ほど科学技術庁の方からも答弁申し上げましたように、いずれの国も国内法は新しい立法措置はとってないわけでございます。各国とも、もしそういったような事態が来た場合には臨機応変に対処できる、こういうようなことでこの三条約に加入したわけでございますが、ただ、アメリカはその後、損害賠償条約につきましては、無過失責任の原則に従って賠償を行うための法律をつくっております。それからまた、西ドイツ、オーストラリア、イギリスは、宇宙活動を行うのは国内の政府団体だけだ、したがいまして、政府につきましては政府責任を持つから、新しい立法措置は要らない、こういう理由でもって、以上調べました国につきましては、立法措置は特にとってないようでございます。」こういう御答弁であります。これは非常に丁寧な、考えられ抜いた御答弁でございまして、いま拝見しても、りっぱな御答弁だと思います。  ただし、そのときはそれで非常によかったのですが、関係省庁との調整がついていないので批准の状況に至っていないと御答弁されたのが、今回は国内法整備について手直しの必要がないとお決めになる、これは答弁変更、方針変更が行われているわけでございます。遠藤さんが大臣ならばもうここで首になるほどの大騒動が起こるわけでございますが、本省の中の御意見がどのように変わられているのか、ここのところはきちっと御説明をいただかないといけないのではないか。また、私の前に、先ほどから土井議員が無過失責任の問題につきまして、いろいろなケースについてるる御質問されておられましたが、御答弁が余り的確でないため土井委員をいらいらさせておられた御様子でございますけれども、それもまた国内法が整備されていないのに、うまくいくと強弁なさるところに問題があるのではないかと存じますし、両方あわせてかっきりと御答弁をいただきますようにお願いいたします。
  225. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、この三条約成立発効いたしましてからかなりの時日が経過いたしましたし、特に国会における促進決議をお受けしてからもかなり時日がたったということは私どもとしてもきわめて遺憾な事態と受けとめてまいった次第でございます。当初この三条約を提出する際には国内法体制を整備する立法措置をとった上で御審議をお願いするという考えが前提にございまして、その際にはかなり包括的な立法措置が検討されたという経緯がございますが、その後三条約の早期な御審議をいただくことの方が肝要であるという観点も含めまして種々検討いたしました結果、当面は新たな立法措置がなくても関係省庁が持ち合っております諸権限をうまく使うことによりまして、かつそういう実行体制につきまして国内的に十分な申し合わせが成立すれば、この条約の誠実な履行遵守ということは可能であるという考え方に立ちまして種々検討を開始しておったわけでございまして、ただいま御引用がございました遠藤参事官の御答弁はその趣旨、かつそれを背景にした発言だと理解いたします。  その後、国内体制の申し合わせ、整備につきまして関係各省の御協力も得て鋭意検討いたしました結果、本三条約実施ができるという結論に達しますと同時に、今後とも条約の確実な実施を担保するため将来必要がある際においては立法措置をも検討するという申し合わせを行った上で、現在御審議をお願いする形で伺っておるということでございます。  損害賠償の点につきましては、一般則といたしまして、特にわが国が被害国になりました際においては科技庁が中心になりまして、損害の査定その他の作業を、取りまとめの中心になっていただく、関係各省十分協力をしてそのような体制で当たってまいるということでかなり細かい詰めを行いました上で本条約について対応していけるという考え方に立ちまして現在お願いしておるということでございます。
  226. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 過失責任の問題につきましては、この条約に入ります場合には、日本政府はその打ち上げ国といたしまして日本政府が加害国になった場合には当然に無過失責任に基づく損害賠償の責めに任ずる必要があるわけでございます。それから他国が打ち上げ国になってわが国において損害が生じた場合には、無過失責任の原則に基づきましてそのような加害国に対して損害請求を外交交渉を通じて行うことができるという関係になっているわけでございます。したがいまして、政府としては当然その原則に基づきまして今後措置をしていくということになるわけでございます。
  227. 渡部一郎

    渡部(一)委員 都甲さんは非常に理論的にめんどうくさい問題を実態的にぱっと切ってうまく説明なさる方でございますから、そちらがそういうタイプの御答弁をなさるなら、こちらもそれらしい御質問をさせていただきます。  これはおたくの方でおつくりになったペーパーなんで、五十二年六月二十二日、宇宙開発委員宇宙関係条約特別部会におきまして、「宇宙関係条約締結にあたって必要な国内法令に関する基本事項について(報告)」として中間報告がまとめられております。その中にも、もう問題がたくさんあるということがたくさん書いてあります。  たとえば「我が国が外国の宇宙物体により損害を受けた場合」「① 被害者がこの条約に基づき、国を通じて損害賠償を受けることを希望するときの手続をどうするか。なお、この場合に被害者が自ら国内的救済措置をとったときには、国は条約に基づく賠償請求ができないので、国は、被害者が国内的救済措置をとったかどうかをあらかじめ知る必要がある。」「② 国が賠償請求するにあたり、損害調査、賠償請求額の算定等を行う必要があるが、政府部内の事務分担をどうするか。この場合に専門家の協力をうける必要はないか。」「③ 国が打上げ国から賠償金の一括支払いをうけたとき、個々の被害者への支払いの方法、基準及び手続をどうするか。」「④ 打上げ国の不明等により賠償が受けられないとき、あるいは賠償額が被害者の救済に不十分なときにどうするか。」  それから、今度は次に、「我が国の宇宙物体により外国又は外国人に損害を与えた場合」「国が自ら宇宙物体を打ち上げたとき、」「国が自ら若しくは国以外の機関を通じ、他国に依頼して宇宙物体を打ち上げさせたとき、」「国以外の機関が国の領域又は施設から宇宙物体を打ち上げたときは、損害賠償条約第一条(c)の打上げ国に該当し、当該宇宙物体によって外国又は外国人に損害を与えた場合には、国は、損害賠償責任を免れることはできない。」「この場合を図示すると次のようになり、」図面が書いてありまして――引用はこの辺にいたしましょうか。  これのどこを拝見いたしましても、これに対して適切なお答えが出たとはちょっと思われない節がございますね。たとえば一体どこのお役所がこうしたごちゃごちゃした問題を全部お扱いになるのか。これは一貫してそういう問題をお扱いになる部局というものが生じなければいけないのに、ここで拝見する限りでも関係する省庁は非常にたくさんある。また、それに関してたくさんの予算を担保しプールしなければならないのに、国会における今度の審査において、予算委員会の審議の中でこれに担保するところの、無過失責任に対応するだけの予算をどの程度か算定する方法というのは恐らくなかったのではないかと思われる。またこの中には、民間の打ち上げ団体が打ち上げた場合にこの無過失責任日本国が応ずるかどうかについては、まだそれは解明されていない事項として除外されておる。私がちょっと気がついただけでもそうした問題が生じているわけでありますが、これらを一体どうお考えになっておられるのか。  私は、前には国内法を整備しなければできないと言っていたのに、恐らく今度は国会決議があったから急がなければならぬという理由と、余りおっこってこないだろうから、たまに出てきたのをみんなで寄ってたかってやればできるさという理屈と、この二つだけで対応したかのごとく見えるわけであります。これは私のひがんだ見方かもしれませんけれども、そう見えて仕方がない。こんなことでいいのでしょうか。わが国は法によって支配される国家であり、法によらずして関係各省の申し合わせで何となくなどというやり方で物事を執行するというのは、法による支配を貫徹されている日本国憲法の基礎に違反する行為ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  228. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  実は、この条約を国会の御審議に提出するに先立ちまして、昭和五十八年三月二十九日に閣議了解がございまして、「これら三条約及び宇宙条約実施する上で現行法令では対処し得ない事態が生ずることが予見される場合には、関係省庁は、緊密な協力の下に一体となつて取り組み、かかる事態が生ずる前に必要な立法措置をとる」云々とございます。  そこで、具体的な例で申し上げますと、たとえばわが国が被害国になった場合の細かい打ち合わせを関係各省庁で行っております。たとえば日本宇宙物体が落ちてきた場合に、まず一つ損害調査ということが必要だと思います。その損害調査は、科学技術庁が関係行政機関と協議してその協力を得て損害調査を行う、それからその調査の結果、請求額の算定及び決定をする必要があるわけでございますが、それにつきましては、科学技術庁はそういったような調査を踏まえまして関係行政機関と協議して打ち上げ国に対します請求額を算定する。外務省は科学技術庁その他の関係行政機関と協議して打ち上げ国に対する請求額を今度は決定する。他方次に、そういったような請求額が決定した場合に、今度は科学技術庁から被害者へこれぐらいの額を請求するよということを通知する。それから次に、今度は外務省が主体になりまして、もちろん科学技術庁その他の関係省庁との協議でございますけれども損害賠償の請求等交渉をその外国に対して行う、こういうふうな手続等々を、わりと細かい手続まで実は申し合わせをやっておる次第でございます。
  229. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ここは理論的な応酬になり過ぎて恐縮ですが、まずはこの閣議のペーパーがおかしいんですね。閣議のペーパーがおかしいなどといまごろ言っては申しわけないのですけれども、「今後の宇宙開発の展開に応じ、これら三条約及び宇宙条約実施する上で現行法令では対処し得ない事態が生ずることが予見される場合には、」この場合はもうあらかじめ予見されておるわけですね、関係法令がないんだから。「関係省庁は、緊密な協力の下に一体となって取り組み、かかる事態が生ずる前に必要な立法措置をとるものとする。」でしょう。立法措置をとらないで出してきたじゃありませんか。違いますか。
  230. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほどの私の答弁をちょっと訂正させていただきたいと思うのでございますけれども、閣議了解に関連いたしまして私が申し上げましたのは、閣議了解の一項目でございまして、(渡部(一)委員「いまのは三項目ですね」と呼ぶ)はい。三項目は、これが予見しておりますのは、たとえば今後日本が、いまもちろん日本人工衛星を上げておりますのは宇宙開発事業団とそれから文部省の管轄下にあります宇宙科学研究所であるわけでございますけれども、将来たとえば民間が打ち上げるようなことが、いまのところ予想されてないのでございますけれども、そういうふうなことがある場合にはと、そういったような状況を踏まえたのが三でございまして、私が御説明申し上げましたのは一で、「関係省庁は、これら三条約実施が円滑に遂行されるよう緊密な協力の下に必要な措置をとる。」この「必要な措置をとる。」というのが私が御説明申し上げました細かい国内申し合わせでございます。その点どうも失礼いたしました。
  231. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはそういうふうに認めてあげてもいいけれども、必要な立法措置がとられていないわけだ、簡単に言えば。そしてここの閣議了解の中では、一と三に何を対象とされるかについては別に書いてないのですよ。だからかくのごとき閣議了解では、必要な立法措置をちゃんとやってくるという閣議了解があるにもかかわらず、必要な国内的立法措置をとらないであなた方はこれを出してきて、関係省庁の権限内で適当に打ち合わせをして何とか片づけるとさっきから説明されているわけでしょう。これはまさに怠慢と言うべきものではないか。憲法で規定する法の支配というものを犯しているではないか。これはいかにも変ではないか、こう言っているわけなんです。これは後々までたたるやり方ですから、こういうやり方というのは。  それなら、こういうやり方をどうしても貫徹したいならば、既存の法令、省令、政令等にもかかわらず、無過失責任を貫徹するための特殊な立法を行わなければいけないじゃないですか。それをここに提出してこの条約審議しなければ、この条約というものの規定をわが国は遵守することができないではありませんか。もしできるというなら、立法措置が必要なのにもかかわらず立法措置をつけないでこうしたことを執行したということで、法によらざる支配というものをここで認めることになる。わが国の立法技術上最大の汚点を残すのじゃありませんか。憲法の規定、九十八条でしたか、憲法の規定によると、わが国が戦前において犯した反省からできたものでしょうが、わが国は国際法の誠実な執行を約していますけれども、その約すやり方が立法措置によらないで約したとあったら、これはどういうことになるのでしょうか。そこのところはいかがですか。
  232. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  条約に入ります場合に、その条約が前提といたします実態につきまして、それを十分に捕捉できるような国内法の体制ができていなければならないというのが大前提でございますことは、先生おっしゃるとおりでございます。  そこで、今回この条約に入ります際、国内法を種々検討いたしました結果、現在予想される宇宙活動の態様については、現行の国内法体制で各省に与えられております権限あるいは国内法のさまざまな制約の中で実施できるというふうに私どもとしては判断したわけでございまして、その際に、その国内法に基づく権限によって処理するにしても、やはり先生が初めに御指摘になったようないろいろな細かい打ち合わせは必要であろうということで、各場合につきまして、各省庁間でどのような連絡体制をとり、どのように民間の方々の損害賠償手続をしていくかという具体的な手続について話し合いを行い、その結果この閣議了解の一になったわけでございます。  閣議了解の三につきましては、これは念頭に置いておりましたのは、宇宙事業団あるいは宇宙科学研究所という、国あるいは国の直接の監督下にある機関が宇宙活動を行うということが当面予想され、純粋に民間の宇宙活動というのが当面予想されないという事態においては、国がこの条約に入るに当たっては当面新しい法律は必要としないと思われるけれども、将来民間でそのような活動を行うことになれば、それはその民間の活動を規制する必要もあるし、民間に対して、その損害賠償との関係でどのような法的な関係を打ち立てるかということについても法律的な体制が必要になるであろうということを予想して第三の点を入れたわけでございます。  そういうことで、現状における活動について日本国が外国に対してこの条約に基づく責任体制を国内法令でとるということについては、私どもは何ら遺漏はない、このように考えております。そういう結果、この閣議了解という形で各省間の手続を申し合わせたわけでございますので、そのように御理解いただければと思います。  先生が御指摘の点は、法律と条約関係につきましては、私ども国会に御審議いただくときにもちろんその一番中心になって細かく考慮する点でございますので、決してその点についての配慮を怠ったわけではないということを申し上げておきたいと思います。
  233. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、きょうはその問題を余り深く追求するだけの支度をしておりませんから、この辺でもう無罪放免として質問をやめた方がいいだろうと思いますが、私は閣議了解に基づき各お役人の皆様方の対応を定めるという点については、それはそれで十分対応できるものだろうと思いますが、無過失責任のごとき、わが国の法令上は従来例を見ない国際的な取り決めを決めているわけでありますから、それに対しては旧来の法律でこれを担保できるとはとうてい考えられないわけであります。そうしますと、これに対する国内法の整備というのは当然テーマに上がってきてしかるべきものであり、この点は論争が多くあったことはすでに承知いたしております。したがって、これで全部完壁であると都甲さんがおっしゃいますならば、私はこれは下がるわけにはいかない。  ところが、先ほどの閣議了解の中にもありますように、予見し得ぬ出来事が、宇宙のことですから予見し得ぬ出来事が起こるぞということまでを予想しなければならぬほどこの問題は複雑なのに、これで十分でございますという蛮勇的御答弁をなさるのは、そこにおられる数名の秀才の皆様方には将来の瑕瑾になる御答弁ではなかろうかと私は思うわけですね。だから先ほど土井たか子先生が論理整然おっしゃいましたところに私は大なたをふるっておるわけでございますが、今後御研究を続けられて必要な措置をとりますという御答弁をいただけるなら、私はこれで質問は終わりにしてもよろしいのですが、いまの御答弁ではとうてい納得ができない。これでもし法律上の論争になるならば、裁判所に持ち出して論争するならば、私の方がかなり有力ではないかとさえ思える部分があるわけでありまして、とてもではないけれども、いまの御答弁はちょっと甘いのではないか。いままで六年も七年も八年もかかって打ち合わせたあげくの果てに、苦悶されたあげくの果ての御答弁としてはちょっと粗いのではないかと思わざるを得ないのであります。
  234. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘のように、非常に長い間苦悩した結果がこの閣議了解に出ていることは御指摘のとおりでございます。  それで、先ほど私が申し上げた趣旨は、まさに先生がおっしゃった趣旨をこの第三項で苦労してあらわしたというつもりでおります。第三項は、政府として対処できない事態に対しては立法するという意向をここで、各省間の明確な了解でこのように閣議の席におきまして確認しているということでございますので、そのように御理解いただければと思う次第でございます。
  235. 渡部一郎

    渡部(一)委員 違うのです。閣議了解で言われていることは、予見し得ない、現行法令で対処し得ない事態が生ずることが予見された場合は立法措置をとるのでしょう。ところが、予見されないことがいま起こりそうなんでしょう。予見されないことが起こったら必要な措置はいかようにでもとらなければいけないではありませんか、一つは。それからもう一つ。いまの立法措置では、無過失責任に関しては――私はもう問題を局限しますが、きょうはほかのことを詳しく調べている余裕がありませんでした。だけれども、無過失責任に関しては明らかに、ある種の立法措置を必要とするのではないかという疑いはきわめて濃い。これに対して、今後も御研究を続けられるという御姿勢を示されるのが当然ではないでしょうか。
  236. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 御答弁申し上げます。  私どもがこのような結論になりました一つの根拠といたしましては、先ほど御引用いただきました遠藤参事官の答弁にもありましたように、西側主要各国、このような体制をとるに当たって国内立法をせずに、国家の活動については国家が責任を持てるという前提で、国内法の整備なしにこの条約に入っているという事実がございましたので、日本政府としてもそのような同様な対応が可能であろう、そういう意味で当面無過失責任につきましてはそのような形で対処できるのではないか、国家が活動の主体である限りにおいてはそのような形で対処できるのではないかということが根底にあったわけでございます。当然のことながら、将来において実態的に民間が宇宙活動の主体になることが予想される場合にはもちろん無過失責任の問題も含めて検討していかなければならない問題でございますので、先生が御指摘のように、その問題も含めて立法の問題は検討していく課題になってくることと思いますし、私どもは当然その所存でおります。
  237. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、草川昭三君。
  238. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  最初に、いまの宇宙条約の中の損害賠償条約のことについてちょっとお伺いいたします。  事故が発生した場合に双方で、加害国と被害国との政府間交渉のシステムになると思うのですけれども、いま国内法のことについて触れられておりますが、たとえば国内で事故があった場合の取りまとめは科学技術庁が窓口になるのか外務省が窓口になるのか、どちらか、お伺いをします。
  239. 宇川秀幸

    宇川政府委員 国内に関しましては科学技術庁が取りまとめの窓口になります。
  240. 草川昭三

    草川委員 これは宇宙事故でございますけれども宇宙事故の前に、目の前にたくさん空の事故があるわけでございますので、きょうは、関連した私どもの地元の問題等もございますので、お許しを得てお伺いしたい、こう思うわけであります。  四月十九日に航空自衛隊のジェット輸送機C1二機が伊勢湾の菅島に衝突して十四人が死亡いたしました。一週間たったきのう二十六日、海上自衛隊の対潜飛行艇が岩国で墜落をして十人が亡くなられたわけであります。いずれも大型機の超低空飛行中の事故であるところが共通した問題点であります。  防衛庁お話等によりますと、レーダーあるいは対空ミサイルを回避する行動から、最近軍用機低空飛行が非常に重要視されてきているわけであります。しかし問題は、C1にいたしましてもPS1にいたしましてもともに今日の兵器システムからは外れた、名機とは言われておるわけでありますけれども低空飛行性能に欠けた機材になっておるわけであります。これは現実に日米共同訓練の中でも使われていない、どちらかといえば専守防衛型の飛行機であるにもかかわらず、最近の自衛隊低空飛行訓練というものに問題があるのじゃないか、私はこういうスタンス、姿勢から問題提起をしてみたいと思うのです。  小牧の航空自衛隊輸送航空団第一輸送航空隊所属のC1六機編隊が習志野の陸上自衛隊第一空挺団の降下訓練支援のため入間基地に向けて航進中、海上において低高度航法訓練実施したところ二機が墜落をした。いわゆる低高度航法訓練はダブルミッションと言われる二つの目的の訓練になるわけでありますけれども、これは有視界飛行方式で行われたのかどうか、まず事実について確認と運輸省管制業務についてお伺いしたい、こう思います。
  241. 西廣整輝

    西廣政府委員 当日のC1の飛行は特別有視界飛行ということで、特別有視界飛行と申しますのは特定の条件が確保できる範囲内で有視界飛行をするということでございますが、そういう形で許可を得て飛行いたしております。
  242. 川井力

    ○川井説明員 気象状態に二つございまして、視界のいいのを有視界気象状態と申しまして、視界の悪いのを計器気象状態と申しております。本件、名古屋空港を離陸いたしますときの気象状態は計器気象状態でございました。  なお、計器気象状態のときに出発できるか否かという問題でございますが、航空法の規定によりまして、計器気象状態の場合には、一つは計器飛行方式によって出発する方法、いま一つは特別有視界方式によって出発する方法の二つございますが、本件C1の飛行機が名古屋空港を出発いたしましたのは、特別有視界飛行によりまして出発いたしました。
  243. 草川昭三

    草川委員 当日は非常に気象状況が悪くて、事故があった菅島の近くでは、漁師は霧で視界が非常に悪くて三十メートルの視界で漁ができないので、フォッグホーンというのですか、霧笛を鳴らして帰港をしておるということが言われております。そういう中で、実は全天候のF86D、これはいまは使われていませんけれども、全天候の戦闘機でも低高度航法訓練はやられていないというのが関係者の方々のお話でございます。低高度航法訓練をしなければならない目的というのは一体何か、お伺いをします。
  244. 西廣整輝

    西廣政府委員 C1航空機の低高度航法訓練、これは先ほど当委員会でもお答えいたしましたけれども、C1と申しますのは作戦輸送を担当する航空機でございまして、有事作戦のための空挺部隊の輸送であるとか、あるいは緊急物資の輸送という任務に従事するわけでございます。したがいまして、有事飛行でございますから、高空を飛ぶということでは相手に発見されやすいということで、低空飛行というものが常用的に使われるという形になるわけであります。したがいまして、C1の平時の訓練等におきましても、低空の航法訓練というものは特別の場合ということでなくて、通常きわめて頻繁に行われておるということでございます。
  245. 草川昭三

    草川委員 それは以前の防衛庁防衛庁というよりも航空自衛隊でございますけれども、以前は余りそのような超低度の航法訓練というのはやられていない。最近頻繁に行われるようになったわけであります。事実、小牧基地の中には洗機場、車を洗うような場所でございますけれども、機体を洗う洗機場というのがあります。ここには波しぶきを浴びてきた超低空飛行訓練を行ったC1が塩害を洗い落とすための洗機場というものが設置をされておりまして、塩害を防ぐために頻繁に水洗いをしておるということがございます。小牧空港の中に、衛生課の前、モータープールの車両整備場の横でございますが、洗機場はあるわけでございますか、お答えを願いたいと思います。
  246. 西廣整輝

    西廣政府委員 波しぶきを浴びた航空機がふえてきておるという事実は、私ちょっと承知しておりませんけれども、C1という機種を採用して以来、訓練形態が特段に最近変わったというようなことはございません。
  247. 草川昭三

    草川委員 C1というのはいわゆる輸送機でございます。専守防衛という基本的な考え方からいくとするならば、超低空は、いま触れられておりませんけれども、敵に発見されないという意味ではいわゆるレーダーを回避するということが目的だと思いますし、対空ミサイル等の問題もあるわけでございますけれども、回数がどうだとかいうことになりますと私もいまここに資料は持っておりませんけれども、現地関係者は最近は低空訓練が非常に多くなったと言っておるわけであります。しかも、伊勢湾の菅島周辺は、私は訓練海域ではないと思うのです。訓練海域は伊勢湾の外、すなわち南側にK1という広大な訓練海域が設定されているわけでありますけれども、伊勢湾は訓練海域ではないと思うのですが、これは運輸省にお聞きしましよう。訓練海域ですか、どうですか。
  248. 川井力

    ○川井説明員 先生御指摘のとおり、菅島周辺は防衛庁の使う訓練空域にはなっておりません。
  249. 草川昭三

    草川委員 ですから、訓練海域じゃないのですね。そこで、島の高さが約二百二十メートルでございますが、そこにぶつかったわけでございますから、少なくとも低高度の二百メートルラインで航行をしておる。そして、いま防衛庁の参事官がおっしゃったように常時訓練をしておるということでございますが、訓練海域でないところで訓練をするということについて防衛庁は当然だと思っておみえになるのですか。
  250. 西廣整輝

    西廣政府委員 訓練と申しますものにはいろいろ態様がございまして、自衛隊の場合はある地点からある地点に移動することも訓練でございます。たとえば曲技飛行を行うとか対戦闘機戦闘を行うあるいは超音速飛行を行うといったような極度に高度の技術を要するあるいは危険な訓練、そういったものは訓練空域で行わなければいけないというように私どもは理解をいたしております。したがいまして、通常の飛行態様で行われるもの、それが低高度である場合あるいは高高度である場合、そういったものは訓練空域の中で行わなくても通常の飛行の中で行うことができるというように理解をいたしております。
  251. 草川昭三

    草川委員 いま防衛庁の方で事故調査委員会をやっておみえになっておりますから、その結論を待たなければならないわけでございますけれども、四番機が先に出て偵察情報を送りながら進路を右に切ったというのですから、西の方へ切っておるわけでございます。ここには答志島という島と菅島という二つの島がありますが、有視界飛行でございますから、それを目標に明らかに航行したことは事実だと思うのです。ですから、そこでは訓練になると私は思うのです。しかも、それを超低度の訓練をするわけですから、K1ならK1という一つ訓練海域が湾外にあるわけでございますから、そこで十分な広さでやるべきではないだろうか。もしも人家に被害があったら大変なことになるわけです、今回はなくていいわけですけれども。人家に被害があるということは無視して訓練をされてみえるわけですか。あるかないかということを考慮の外で菅島に向けて訓練をされておみえになるのか、お伺いします。
  252. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の事故につきましてまだ事故原因を調査中ということで、私どもまだ明快なことを申し上げられる段階にないわけでございますが、特別有視界飛行と申しますのには幾つかの条件がございまして、たとえば雲の中に入らないで航行するというようなことがありますので、当時の気象条件から雲を避けて飛ぶとか、そういったことで通常のコースより五度ないし十度ぐらいを逐次ずれていったものではないかという想定もできるわけでございます。いずれにしましても、これから事故調査委員会で十分な検討をいたしまして事故原因というものを明快にいたしたいというように考えております。
  253. 草川昭三

    草川委員 そこら辺が、防衛庁というよりも航空自衛隊の基本的な姿勢に問題があると思うのです。特に、わが国の飛行というのは根本的に航空法というのがあるわけでありますけれども、航空法施行規則百七十四条には最低安全高度ということが定められております。この場合は海面上、水面上というのですか、百五十メートル以上というのがこれに当てはまるわけであります。あるいは航空法施行規則第五条には視程、目の見える範囲というのでしょうか、視程は千五百メートル、一・五キロ、そして雲から離れて云々とかというような言葉があるわけでありますけれども、視程がもし一・五キロあれば島にぶつかるわけがないでしょう。その点はちょっとまずお伺いします。視程が一・五キロあって島にぶつかることがあるかないか、その程度の能力なのかどうか。これはひとつはっきりお答え願いたいと思います。
  254. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来お答え申し上げているとおり、まだ事故調査中で明快なことを申し上げられませんが、当時の天候がどういう形で変わってきたのか、そういったことも含めて検討をすることになると思いますが、全くクリアな状況にありますと、千五百メートルの距離ということは、C1の通常の運航スピードから言いますと十数秒という余裕がございますので、ぶつかることはないということであろうと思います。
  255. 草川昭三

    草川委員 ぶつかることはないというお言葉でございますから、やはりそれは一・五キロの視程がなかったということの裏返しになると思うのです。では一・五キロの視程がない、そういう状況でなぜ計器飛行に切りかえないのか、有視界飛行から計器飛行に切りかえるべきではないだろうか。しかもそれは伊勢湾の湾内、訓練海域ではない、これだけの条件があるわけですから、事故調査そのものよりもまず根本的な低飛行訓練を行ったことの、有視界飛行飛行条件を無視して飛行をしたところに問題があると私は思うわけです。これは何回か申し上げても調査中だからということで御答弁がないわけでございますけれども、どうも市民としても納得のいかないことであります。しかも十四名の方が亡くなられたわけですから、これは簡単に結論をつけていただいては困る問題であります。しかも私どもいろいろと関係者の方々のお話を聞いておりますと、輸送航空団第一輸送航空隊の副司令で渡辺融弘、渡辺一佐が三番機に同乗をしていたというお話がございます。私は一昨日来から防衛庁に資料請求をいたしておりまして、搭乗者の名簿もいただいたわけでございますが、その搭乗者の名簿は機長以下何名という名簿よりいただいておりません。私はそういう点では非常に閉鎖性があると思うのです。一番機から六番機まで乗っているわけですから、せめて搭乗者の名簿ぐらい、私、地元出身の代議士ですから関心を持つのは当然であります。わが選挙民の方が亡くなっておるわけですから。それも明らかになっておりませんが、乗っておられたのかどうか、お伺いをします。
  256. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたします。  多分事故機でない航空機の搭乗員一人一人についてまでお答えをしなかったのじゃないかと思いますが、私の知悉しておりますところ、三番機に副司令が同乗をいたしております。同乗と申しますのは、一般の民間機で言えばお客さんみたいな形で乗っておるということであります。
  257. 草川昭三

    草川委員 同乗していたわけですね。これはタクシーにお客が乗っているというのとわけが違うわけです、訓練する飛行機ですから。よく定期便以外に、出張の際に帰省で自衛隊の幹部の方々が便乗するという例は私たくさん知っております。しかし、きょうはそういうことを申し上げる場ではございませんからあれでございますけれども、少なくとも副司令が同乗しておみえになったら、霧の中、視界が非常に悪い、そういう条件で同乗しているならば、三番機ですから、これは三番機の位置というのは、もしダイヤモンド編隊を組んだならば、これは指揮官機に値するわけです。防衛庁は私ども答弁にはダイヤモンド編隊ではない、縦一列の訓練をしておった、こう言うわけであります。三番機に同乗したというのは非常に意味があるのです。これは海軍ならば旗鑑ですよ。直接の指揮命令はしないとしても、同乗しておるというけれども、タクシーにお客が乗っておるのと違うわけですから、少なくとも基地の副司令ならば、計器飛行に切りかえろというくらいのアドバイスというのですか、同乗していた場合にはロードマスターというのですか、民間機でいうならば機内のパーサーのようなロードマスターが逐一説明しておるはずだと思うのです。しかもこの方は三月十六日に新しく赴任をしたわけですから、相当張り切って同乗したことは間違いがないと思うのです。気象条件が悪いということを知っていたはずですから、そういうアドバイスをしてもいいと思うが、その点はどうお考えになられますか。
  258. 西廣整輝

    西廣政府委員 渡辺一佐は空挺団等の演習を視察するという出張名目で同乗しておったということでありますが、この渡辺一佐はパイロットではございませんので、そういう航法について余り知識がないということで、これらの責任はやはり編隊長なり編隊の副長という者が負うということになろうかと思います。
  259. 草川昭三

    草川委員 もちろん編隊長でありあるいはまた四番機の副編隊長にあることは間違いはない。しかし非常に過酷な条件の中で訓練をしておるのを見過ごしたのか見過ごしてないのかというのは、これは航空自衛隊の幹部として非常に基本的な問題になるわけであります。その点はどうですか。
  260. 西廣整輝

    西廣政府委員 副司令がどういう判断をしたか、私まだ聞いておりませんけれども、特別有視界飛行をやっておりまして、これが計器飛行に移るべきかどうかという判断はそれぞれの機の機長といいますか、これの判断によるということでありまして、パイロットでない同乗者がその辺の判断を下すということはなかなかむずかしいのではなかろうかと私は推察をいたしております。
  261. 草川昭三

    草川委員 では、こういうことにしましょう。たとえば事故調査委員会が、これは空幕に常設をされておるわけでありますけれども、監察官が委員長ですか、四カ月以内にこれは報告をされるのでしょう。また後で答弁をしてください。当然この副司令は事故調査委員会のいわゆる調査の対象になるわけですか。
  262. 西廣整輝

    西廣政府委員 事故調査委員会は、当然のことながら今回の飛行に同行した者も含め、一番機、二番機が事故を起こしたわけですが、六番機まで全部から事情聴取するでありましょうし、あるいは基地の司令以下の計画そのものについても調査をするものというふうに考えております。  なお、若干念のためにお断りをいたしておきますけれども、私どもの方の事故調査委員会といいますのは、今回の事故の刑事責任といいますか、そういったものを捜査するものではございませんで、これは別途司法関係がやるわけでありまして、事故調査委員会の方は、今後こういった事故を再発することをできるだけ防止をするという意味の調査であります。
  263. 草川昭三

    草川委員 簡単に言っておみえになりますけれども、おたくの部下とは言いませんけれども、十四名の方が亡くなっておるわけですよ。刑事責任は、それは別としても、少なくとも責任の所在は明確にしてもらわなければいかぬですよ。それは基本的な問題ですからね。  私は別にここでそのことだけを取り上げるつもりはございませんけれども、最近の陸上自衛隊であろうと空の幹部の方々であろうとお会いをしますと、特に防大卒の方々は非常に姿勢が強いですよ。私は現地へ何回かほかのことでも行っていますよ。それからほかの事件についても、地元の要求を取り上げてなるべく、党の政策もありますから、地元民と融和政策をとるべきである、地元との融和のために勤労奉任をして古い施設を取り壊そうというようなお話を現地へ持っていっているんですよ。だけれども、そういう幹部の方々は要らぬことを言ってくれるな、こういう態度ですよ。すべてについて非常に最近の幹部の方々は姿勢がきつい。特にこの輸送部隊という名前に不満のようですね。テレビにも出ましたけれども、戦術航空輸送団という名前の方がお好きなようですね。たとえばTAGという言葉を使います。第一TAG、日本の言葉で戦術航空輸送団、戦術の航空輸送団だ。今日的には大陸進攻作戦だとか、有事というのは、わが日本の国内での専守防衛の立場から明らかにどこかへ行くために低飛行訓練をする、こういう姿勢が非常に強いです。だから彼らはそういう訓練を受けるあるいはアメリカへ行って非常に伸び伸びと訓練を受けてきますから、日本の国内へ来て非常に矛盾に感ずる。いろいろな点があるんです、防大卒と防大卒でない方々とのいろいろな対立もあります。いろいろな問題がありますけれども、いまのような参事官の答弁では私は部下の気持ちを本当につかんでいない答弁だと思うのです。少なくとも戦術航空団というような名称はやめさせて正規のフルネームの輸送航空団第一輸送航空隊という名前に看板切りかえなさいよ。そうじゃないですか、その点はどうですか。
  264. 西廣整輝

    西廣政府委員 名称につきましては、私どもそういう希望があるというふうにはまだ上申が上がってきておりませんが、もう一回お断りいたしますが、自衛隊にございます事故調査委員会と申しますのは、そこの調査結果というものを事故責任の追及その他に利用してはいけないという規定のもとにつくられている委員会でございまして、そういった責任追及なりあるいは責任の所在を明らかにする、そういったものは司法関係の別途の機関がやっておるということを申し上げておるわけであります。
  265. 草川昭三

    草川委員 それはそれでお聞きをいたしておきます。  それでもう一つ、笠取山というのが三重県にあるわけですが、ここのレーダーサイトは航跡のみを追及して、高い低いのレーダーの捕捉をしていなかったというのですけれども、その程度のレーダーなのか、レーダーにひっかからない低さの航法をしておったのかどちらか、御答弁願いたいと思います。     〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
  266. 西廣整輝

    西廣政府委員 まだ細部の報告受けておりませんけれども一般論として申し上げまして、レーダーでつかみ得る高度差というものはそれほど厳密なものではないということが一つございます。それと同時に、低高度飛行でございますから、そこと海水面との差ということは高度を正確に把握するのはレーダーとしてはむずかしい状況にあったかと思っております。
  267. 草川昭三

    草川委員 ですから、笠取山のレーダーで高低の高さが捕捉できなかったというのは一つ訓練になりますね。レーダーに映らないように進攻作戦というんですか有事に備えて実戦訓練をするということの証明になりますね。あるいはもしレーダーサイトで高低がある程度捕捉ができるような形で、少なくとも霧の中あるいは視界が悪い条件の中では伊勢湾の外まで誘導をすべきではないか。誘導という言葉が悪いのですけれども、サブでヘルプをさせるべきではないか、こう思うわけでありますし、笠取のレーダーサイトのせっかく高い予算をつけても意味がないのではないか、こう思うわけであります。  それで、これは十四名の方あるいはきのうの事故の十名の方にも関係するわけでございますが、国としての犠牲者に対する補償政策はどのようにお考えになっておられますか。
  268. 西連寺治

    ○西連寺説明員 私ども防衛庁職員の公務上の災害に対する補償に関しましては、防衛庁職員給与法第二十七条の第一項の規定に基づきまして、国家公務員災害補償法の準用によりまして一般職の国家公務員と同様の補償を行うことになっておりまして、今回につきましても同様に考えております。
  269. 草川昭三

    草川委員 もう一回これは外務大臣にもお聞きをしますけれども、いまの私ども質問を聞いていて、専守防衛のわが国の防衛政策から私は逸脱しておる訓練をルーチンワークと言うんですか日常行っておるのではないか、近隣諸国にとっては進攻作戦の訓練を行っておるのではないかともとられかねない刺激を受けることになると思うのですけれども、総理がたまたまASEAN訪問にこれから行かれるわけでありますが、一体外務省としてこのようなことを放置をしておっていいのか。少なくともこれで事故が二つあるわけです。相当国際的なニュースにもなるわけです。どうしてこのような訓練を行うのか、それはもしわが国に対すると、こういうような疑問があったとするならば大変なことになると思うのですが、一体いまの航空自衛隊の低飛行訓練というものは有事に備えて少し実戦化し過ぎるのではないか、こう思うのですけれども、どのようにお考えになられますか。
  270. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 最近引き続いて二回にわたりまして自衛隊機事故が起きたことはまことに遺憾にたえない次第であります。しかしこの訓練につきましては、あくまでも自衛隊のこれまでの通常の訓練であるし、自衛隊そのものはもちろんわが国の防衛の諸原則また自衛隊法等を踏まえて訓練その他の活動を展開しているわけでありますから、その訓練といったものが決していま御指摘のような諸外国に対して脅威を与えるものでもありませんし、わが国の防衛の諸原則を踏み出したものでもないということははっきりしておると存じます。
  271. 草川昭三

    草川委員 外務大臣はそのようにおっしゃられますけれども、私はそれはこちら側の意見だと思うのです。相手側はどういうように思われるかもわかりませんし、このような低高度航法訓練というもののあり方についてはいま少し慎重な配慮があってもいいのではないかと思います。この二つの事故の中からうかがわれるのは、危険を増す飛行訓練が最近ふえてきておる。これは最後にお伺いをいたしますけれども、事実、長官名で訓練内容に応じて見直しというのですか訓練内容のあり方についての注意喚起を行うのでしょう。行わないのですか。ちょっとお伺いをいたしますが、その点はどうですか。
  272. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の事故に関連をいたしまして、陸海空自衛隊長官から特別の長官指令を出したわけでございますが、これは機体の総点検あるいは隊員安全意識の向上ということに加えまして、訓練につきまして、訓練内容の検討ということではなくてそれぞれの訓練内容に応じた実施要領というかやり方について、安全管理という面からなお工夫の余地はないかということをもう一回洗い直したらどうかという指示をいたしております。
  273. 草川昭三

    草川委員 時間がないのでこれで終わりますけれども、乗員ばかりではなくて周辺の、特にいまお話があったように訓練海域外でこのような事故が起きておるわけです。しかも、答志島と菅島を間違えてレフトターンという指示をしたのではないかという話も実はあるわけでございます。私はきょうは時間がございませんので詰めた話をいたしませんけれども、ぜひそのことを強く要望して終わりたいと思います。  それから、一つこれは要望だけですが、渡部委員の方から申し送りがあったので大臣聞くだけ聞いておいていただきたいと思うのです。  大臣がASEAN諸国を歴訪されると伺っているが、ASEANにおいては日本の大学を卒業された諸君がその資格を認められないために冷遇されていると聞いている。インドネシアでは、水産学部のみしか大学卒とは認めていない。これでは幾ら交流しても効果は上がらない。政府はこの深刻な状況を改善する適切な措置をとれ、こういう御要望がございましたので、その旨だけ申し上げて私の質問を終わりたい、以上です。
  274. 浜田卓二郎

    ○浜田委員長代理 次に、渡辺朗君。
  275. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 本題に入る前に私も一、二お聞きをしておきたいと思います。  けさほどの新聞で、いまもお話がありましたけれども大変ショックを受けました。昨日起こった自衛隊機の痛ましい事故であります。犠牲者の方方には本当に心から哀悼の意を表したいと思いますが、先般の自衛隊輸送機事故といい、そのときにはこのような事故の再発を何とか防止したい、そのために全力を注ぐという関係者の談話もございました。にもかかわらず、またこのような事故であります。国民の方も大変ショックを受けておりますけれども、この際、訓練至上主義といいますか、それが優先して安全が軽視されているのではあるまいかという懸念がございます。その点は、いまもお聞きすると訓練計画そのものの見直しも考えられておるようでありますけれども訓練と同時に安全という大変重要な問題、これを踏まえたこれからのあり方を検討する用意はあるのでございましょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  276. 西廣整輝

    西廣政府委員 このたび引き続きまして大事故を起こしまして、貴重な、かけがえのない人材を失ったこと、また国民の皆様に大変不安な思いをさせたことに対して、おわび申し上げる次第でございます。  そういったことを踏まえまして、この際抜本的に安全対策をもう一回見直してみたいということでいま進めつつありますが、いま先生御指摘のように、訓練内容の問題もあろうかと思いますが、訓練内容と申しますのは、いわば各国ともかなり共通的なものであろうかと思います。しかも、その中で日本がかなりハードな訓練をやっているかといいますと、日本訓練は油の問題、空域の問題、いろいろございますが、残念ながらまだそれほど世界の中で非常に厳しいというほどのものではない。ということになりますと、やはり一つ一つの具体的な訓練内容に応じまして、安全対策という面からどういう配慮を加えることが可能だろうかというようなことをもう一度全般的に総点検をいたしたいというのが私どもの現在の進め方でございます。
  277. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 防衛庁関係者に対しては特にいまの点、事故の再発防止、これを文字どおり進めていただきたいということを要望いたしまして、その点は以上で終わります。  もう一つ、同じくけさの新聞でありますが、これは国民の方々がひとしく同じような印象を受けられたと思います。ある新聞によりますと、またまたあのレフチェソコ発言の問題でございまして、私、外務大臣に率直にお尋ねしたいのです。いま当委員会においても、これほど変動する世界情勢、そういうものに対応するために外交機能を強化しなければならぬではないか、そういう議論も行われているさなかでありまして、その中において外務省の職員がまたまた特定されるがごとき発言をされている。一体これは外務大臣としてどのようにお考えでどのように対応していこうとしておられるのか。  率直に言いまして、こういう問題がどんどん報道され、黙っているというのも外務委員会としてはおかしなことになるし、恐らく外務当局でも大変困ったなという気持ちでおられるであろうと思いますし、お答えは大変むずかしいと私は思います。しかし、いまの段階においてどのように外務大臣としてお考えでございますか、これを明らかにしていただくことは大変重要だと思いますので、お尋ねをいたします。
  278. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 レフチェンコ発言というものがいろいろと問題を起こしております。外務省におきましてもレフチェンコの発言によりましていろいろと疑惑を持たれておるわけでございまして、レフチェンコ発言のとおりであるということになれば、やはり私はゆゆしきことである、こういうふうに思いますので、外務省の事務当局に対しまして早速厳重に真否のほどを調べるように指示いたしまして、外務省事務当局としても目下調査を続けておるわけでございます。まだその調査の結果というものは出てきておりません。その際、また改めて新しい疑惑が出てきたということで、これは私どもも全く予想もしておりませんし、あるいはまた警察庁がレフチェンコに会って、その結果、外務省として報告を受けた、そこにもなかったことでございますので、全く唐突な感じがするわけでございます。しかし、これまた言われっ放しというわけにはまいりません。言われた以上は、どうしてもその真偽のほどというものはやはり明らかにしなければならぬ、外務省のいわば権威にも関することでありますし、また国家の威信にも関することでございますので、十分な調査をいたしまして、そして国民に対してもその結果を明らかにしなければならぬ、こういうふうに考えておりまして、鋭意調査をいたす考えでございます。
  279. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまおっしゃったように、外務省の権威をひとつしっかりと打ち立てていただき、これからの国際問題に対して対処していただくように要望をいたしておきます。  さて、本題に入ってまいりますが、宇宙条約の問題につきまして、去る三月二十三日のレーガン大統領の全米テレビネットワークを通じての演説であります。私はこれは大変重要なことを話したなというふうに見ております。新兵器体系の開発についての演説でございました。弾道ミサイル防御体系を宇宙空間まで広げるという構想であり、それの作業の開始ということであろうと思いますが、これについて外務省としてはどのような評価をしておられるのでしょうか。私は後で外務大臣にもちょっとお聞きしたいのですけれども、これは世界各国でこういう問題に対して、自由世界そのものを見ましても何か国によって対応がずいぶん違う、外務当局はこういうようなレーガン大統領の発言についてどういう評価をしておられるのか、ひとつお聞きをしたいと思うのです。
  280. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども渡部一郎先生の御質問で申し述べましたように、確かにレーガン大統領が三月二十三日に演説をいたしまして、さらにその後、国家安全保障関係の命令も出したわけでございます。ただ、先ほども申し述べましたように、アメリカ政府考え方というものは、防衛分野においていろいろ努力をいたしておりますものの、その努力はあくまでも防御的なものであるということだと理解いたしております。アメリカ政府は、防衛分野におけるそのような努力を続けることによりまして世界の安全保障のために力の均衡を図る、それと同時に、他方で力の均衡の水準をできる限り低いレベルに維持するという軍縮の努力をもあわせ行っているということではないかと思う次第でございます。
  281. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 と同時に、これは前後してでございますが、新聞の報道によりますと、アメリカの下院議員が超党派で七十六名共同提案をして宇宙兵器の全面禁止を、いわばレーガン大統領と真っ正面から反対するような形の決議案も提出されたと聞いております。これは事実でございましょうか。これについての評価はどのようにお考えでございましょう。八三年二月二日です。
  282. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先生いま御指摘のとおり、二月二日アメリカの上下両院におきまして、宇宙におけるあらゆる兵器の禁止につき、米国ソ連との間で早期に交渉に入ることを求める共同決議案が提出されたと承知しております。
  283. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 もう一遍確認しますが、これは下院が提出して、そして上下両院で議決されたのですか、どうですか。そこら辺はどうなっておりますか。
  284. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 私どもの承知しております限りでは、まだこういった提案がなされたという段階である、そういうふうに承知しております。
  285. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 関連してもう一つ。そのときに特にこのような決議が出てきたというのは、アメリカの国防総省の秘密文書が実は明らかになった。それは、宇宙兵器の開発を阻害するような国際条約米国が参加してはならない、こういうことが明記してある秘密文書が明らかになったというので、ますます米議会内においては危機感を抱いたという報道がありますが、そのようなことは事実でございましょうか。
  286. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 そういうふうな情報にはまだ接しておりません。
  287. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これはひとつぜひ調べておいていただきたいと思います。次の機会にでも報告をしてください。  ところで、大臣にお聞きします。  いまのようなレーガン大統領の提案でございます。アメリカのこのような壮大な計画といいますか、こういうものに対する大臣の率直な評価を私はお聞かせいただきたいと思います。ある人は、科学技術の対ソ優位、これを確保しよう、これがアメリカの外交戦略の一つの基本になってきているという立場から見る人があります。あるいは、いま不況からの脱却ということで、六〇年代、かつてケネディ時代に、壮大な国家目標として月への旅行計画、こういうものが打ち出されたことがあります。それに類する、いわばモラルを非常に高揚させる、そういう意図があったのではないかという見方をする人があります。それから、いまも山下さんがお触れになりましたように、これはいままでの核戦略を超えていく、そしてやがては軍備管理措置に道を開いていくというような防衛を基本にした一つの戦略というものがこれから展開されていく。いろいろな見方ができると思うのです。外務大臣は率直に、こういうようなレーガン大統領提案というのはどこに一番印象をお持ちでございますか。また、どのように評価されますか。     〔浜田委員長代理退席、委員長着席
  288. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私は、これまでの世界の平和といいますか、東西の平和が維持されてきたのは、やはり東西の力のバランス、特に米ソ間の軍事力の均衡といいますか、これが平和をもたらしてきたゆえんであろう、こういうふうに思っております。そういう状況が続いておりますが、今日、ソ連の軍事力がだんだんと力を強めてきた。それに対してアメリカとしても均衡を保つ、あるいはまた場合によっては優位を保たなきゃならぬ、こういうことで、あらゆる軍備の増強をいま図っておる、図らざるを得ないというのがアメリカ立場であるし、またレーガン大統領の考え方でもあろうと思うわけであります。やはり結論としてはいかに平和を保つかということであろうと思うわけでありますが、しかし、われわれが恐れるところは、こうした東西の軍備の増強というものが、核にしてもあるいは通常兵力にしても、どんどんと度を超していく、そして際限のない方向にいくということは、世界にとってはきわめて危険なことであると考えます。したがって、どうしてもそうした東西においてバランスのとれた核あるいは通常兵力についての軍縮というものが行われなければならない、基本的にこういうふうに考えておるわけでございます。レーガン大統領が今回構想として打ち出しました方向も、アメリカはあくまでも自衛のためだ、あるいはまた国際条約というものを遵守するという形の中での考え方に基づくものである、こういうふうに判断をするわけでございます。今日のこの軍備が東西両陣営において拡大されるという一つ傾向だけは、これは憂慮にたえない次第でありますし、何とかこれを抑制をしていくようなことでこれからわれわれも動いていかなければならぬじゃないか、こういう感じを率直に持っております。
  289. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま大臣は、宇宙空間における軍拡競争の危険性を憂慮しておられるということをおっしゃいました。確かにその問題が大変深刻な問題であろうとは思います。  ただその際に、先ほど私はそれで聞いたのですけれども、たとえば全然発想を変えて考えれば、確かにこれは一方的な見方かもわかりませんが、科学技術の急速な進歩、特に宇宙空間におけるそのような宇宙兵器とでも言いましょうか、そういうものをどんどん開発することによって通常の核戦略なるものを、これは米ソともに無能にしていく、働かないようにしてしまう、そういう結果も出てくるのじゃあるまいか、こういうことも考えられるのですけれども、大臣はそういうようなことはお考えではないですか。
  290. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 すばらしい勢いで発展をしている科学技術ですから、いまおっしゃるようなことが不可能だとは思いませんし、情報等によれば可能であるということも聞いておるわけでございます。そうした事態になることが果たして世界の平和というものをもたらすことになるのか、さらに、そうした事態を進める過程において宇宙空間における軍備競争というものがどんどん進んでいくのかどうか、それがまた世界に不安を与えるのかどうかということについては、今後情勢を見なければちょっと判断ができかねると考えております。
  291. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いま大臣も、確かにこれはなかなか即断できないというような点をおっしゃっておられました。本当を言うと、せっかくですから、この宇宙条約、これを論議しているときにいろいろな角度からそこら辺の問題を突っ込んで議論をすることが、私は日本のこれから大事なことになってくるであろうと思うのです。  そこで、大変次元の違った問題になりますけれども、本題からそれるかもわかりませんが、これはやはり一日で三条約をやってしまうというのも、正直言いましてちょっと拙速であるような気がします。特に、何か選挙絡みでもって早急に解散でもあるのではあるまいか、それまでに早く上げてしまわなければというような意思が働いているとするならば、これまた、私は本当言うと、外務委員会はもっともっと大事なことを議論すべきものが、同時選挙の可能性とかそういうようなことに大分妨げられてしまった論議になってしまう。その点大臣はいかがお考えでございます。個人的見解をひとつぜひお述べください。
  292. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 一日で衆議院でこの大事な条約の御審議を終わっていただくということは、われわれとしても非常に恐縮でございますが、しかしこれまでの議論を拝見をいたしましても、相当実りのある議論あるいは御意見も拝聴させていただいた、これからの条約実施していく上において政府としても大いに勉強になった、こういうふうに考えております。  私は、この一日で上げるということが何も選挙に結びついておるとは、これは政府立場ですから、国会の運営の方でどういうふうな御判断があったかわかりませんが、選挙に直接関係があるとは思っておりませんし、私はダブル選挙というのは反対ですから、これは何もいまやる必要はないのじゃないか。われわれ四年間任期を与えられたわけですし、そしておかげさまで自民党も圧倒的多数をとっているわけですから、政局は安定しておりますし、問題も山積しておりますから、腰を据えて取り組んでいけばいいのではないか、こういうふうに思っております。
  293. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 そこのところは一言聞きたかったのですけれども、さて、次に入ります。  基本的なことを幾つかお伺いいたしますが、国連において、重要な宇宙関係決議というのはどのようなものがいままで提出されてきていますか。特に決議の中で、八一年の十二月九日、東側、西側、その両方から決議が提出されております。それぞれどのような中身であったのか、日本の態度というのはどのようなものであったのか。私は、やはりこの宇宙条約を論議する前提にもなってまいりますので、ひとつ聞かしていただきたいと思います。
  294. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  国連の宇宙軍縮関係の決議に実は二種類ございまして、一種類の方は、たとえば宇宙条約であるとか、いま御審議いただいております三条約を、こういうのはいい条約であるからみんな早く採択しろ、こういうふうないわゆる条約推奨決議というのがございますが、これが一種類でございます。もう一種類が先生御指摘の、いわゆる宇宙軍縮に関します決議でございます。こちらの第二種類の方は、実はおととし、一九八一年から初めて本格的に取り上げられたわけでございまして、まず一九八一年に二つの決議が出ております。  一つは、ソ連を中心とします東側が出してまいりました決議でございまして、この決議は、あらゆる種類の兵器というものを宇宙に配備することを禁止しようじゃないか、こういうことを中心にする、これを念頭に置いた決議でございます。これに対しましては、日本は棄権をいたしております。  それから同じ年に、これは実は日本が共同提案になったあれでございますけれども宇宙における軍備競争は防止すべきである、それのためには実効ある方法を考えていかなくちゃいけない、その実効ある方法として一番最優先課題として対衛星システム、英語でASATと言っておりますが、その禁止のための協定に関する交渉の問題について軍縮委員会が検討すべきである、軍縮委員会で検討しろ、こういうふうなことを要求しました西側決議でありまして、これは日本は共同提案国でございますから、当然のことながら日本はこれに賛成いたしておるわけでございます。それがおととしでございます。  それから去年の第三十七回の国連総会でございますけれども、西側の方というか、日本を含めました西側は大体同じような種類の決議を出しておるわけでございます。ところが、東側と、それからこれに非同盟諸国が一緒になりまして、三十六回、つまり一九八一年の東側決議とはかなり趣を異にしました決議案を出してきたわけでございます。この決議案は、宇宙空間は平和のために利用すべきであって、軍備競争の場にしてはいけない、平和目的外の宇宙空間の使用は、効果的国際管理のもとの全面完全軍縮の目的に反することを宣言する等々の決議が出てきたわけでございます。これに対しましては、日本は賛成票を投じております。  以上、去年とおととし二年にわたりまして、東側あるいは東側と非同盟、それから日本を含めました西側と、こういうふうな決議が出てきておるわけでございます。
  295. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 続いて今度は、ジュネーブ軍縮委員会等でわが国の宇宙軍縮発言というのは、いままでどういう基本的な方向を打ち出してきておられますか。これは軍縮問題の議論に大変影響があったと思いますが、そこら辺……。
  296. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 ジュネーブの軍縮委員会におきましても宇宙軍縮問題が取り上げられましたのは、やはり国連総会そのものと時期を同じくしまして、おととし八一年ぐらいからなのでございます。それでまず、宇宙の軍備競争を防止しよう、こういうことを議題にのっけたわけでございますけれども、議題にのっけたものの、問題はどうやって論議するかという場をつくることがまず何よりも肝要でございまして、そのための作業部会をつくろうじゃないかということが当然出てくるわけでございますが、実は目下一九八三年の春会期の軍縮委員会が開かれておるわけでございますが、ここではどうも残念と申しますか、核実験の全面禁止であるとか、あるいは非核兵器国の安全保障であるとか、あるいは化学兵器禁止の問題、こういったようなほかの問題にかなりな議論を費やしまして、宇宙における軍備競争の防止につきまして、ことに作業部会をつくるということにつきましては、議論が余りはかばかしく進んでいない状況でございます。それで、あと数日しか春会期は残していないものでございますから、春会期における宇宙における軍備競争の防止に関する作業部会は設立はされないと思います。しかしながら、また六月の半ばから夏会期が始まりますので、この夏会期につきましては、わが方は何とかコンセンサスが得られて作業部会が設立されるように努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  297. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 お話としてはわかりますけれども、実際問題として、たとえば八二年十一月三日、国連総会の第一委員会におけるわが国代表の発言を見ても、あるいはまた軍縮委員会の八三年二月十日のわが国代表の一般演説を見ましても、何か大変抽象的だし、それから全然具体的でないので、私はこれで果たしていいのかなと思っているのです。宇宙における軍備競争防止に大きな関心をわが国は持っている、本年よりこういう問題に関する検討が開始されることはきわめて時宜にかなっている、わが国としては積極的に協力を行ってまいりたいというような話であって、具体的にどう積極的にいこうとしているのかうたわれていない。たとえば、ことしになってみても、近い将来の宇宙における軍備競争の懸念を生んでいると認識はしているけれども、同時に、これは具体的に何をしたらいいかというようなことが何も打ち出されていない。果たしてこれでいいのでしょうか。何かどういうものをうたおうとしておられるのか、一つの方向性みたいなものをはっきり示しておられないのじゃないでしょうか。
  298. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、宇宙軍縮の問題というのは、何分にも始まったばかりの問題でございまして、まず第三十七回の先生御指摘の昨年の国連総会第一委員会におきます大川大使の討論では、かなり抽象的でございますけれども、それを受けまして、実は先ほどちょっと申し上げましたように、まず何よりも攻撃兵器、対衛星兵器ASATの禁止を目途とした検討をしていこう、条約案の問題点を検討していこう、こういうふうな共同決議、共同提案国になっておるわけでございます。それから、ことしにつきましてのジュネーブ軍縮委員会での今井大使の発言につきましても、これを受けまして、先ほど申したように、まず何よりも場をつくろうというようなことで、確かに先生のおっしゃるように、本当に戸口もいいところだというのは、まさに御指摘のとおりでございますけれども、いままでの宇宙軍縮の問題自身が、国連等の場におきましてまだ始まったばかりである。したがいまして、一歩一歩そういったようなところから積み上げていくしか方法はないのじゃないか、そういったようなことを今後積み上げてまいりたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  299. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に、衛星落下事故対策その他についてもお聞きしたいと思いましたが、あるいは国内法整備の問題でございますが、先ほど同僚議員からの質問の中にもかなりございましたので、これは省きまして、他の問題にちょっと触れさせていただきたいと思います。  特にこれは宇宙空間における南北問題でございます。昨年の宇宙平和利用会議、これは南北の対立した主張を際立たせたということで終わったのではなかろうか。しかし、同時に、この会議で南の方から示された不安や危惧、こういった問題については、先進国側がやはり真剣に答えを出さなければ、この対立というのはますます深刻になりはしないだろうか。ある意味では海洋法会議における南北対立だとかというような問題とよく似たようなところが出てくるようにも思いますし、宇宙における南北対立、こういう問題についてわが国はどう認識しておられて、どのように対処していこうとしておられるのか、ここら辺のことについて私はひとつ大臣初め関係者の方々にお尋ねをしていきたいと思います。  特に、静止通信衛星、これは先ほどからもありましたけれども、静止軌道に何かもう過密が始まったというふうに言われるし、そこにおいては先進国の方がどうも寡占体制をしいているような姿というものが指摘されるのではあるまいか。これについてはどういうふうにわが国としてはこれから対応しようとしておられるのか、どのような意見をわが国は持って国際的に臨んでいこうとしておられるのか、この辺をまず第一番目にお聞きしたいと思います。
  300. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  御存じのように、宇宙開発というのは、人類の福祉の向上に直接貢献する面もございますし、それから科学の進歩、広範多岐にわたる技術の向上その他経済の発展に資するなど、人類全体にとっても新たな活動領域を開いていく重要な分野だと基本的には心得ております。そのような観点から、そのような利益を宇宙開発を行う能力がある先進国だけで独占するということではなくて、それは後進国とも分け合っていくべきであるという考え方が、御指摘のように、国際会議などの場でも出ておりまして、この点については、十分に私どもとしても対応していく必要があるというふうに考えます。その点は御指摘のとおりだと思います。  それから言及がございました昨年八月ウィーンでございました第二回の国連宇宙会議につきましては、宇宙開発による恩恵をすべての国が享受し得るようにするための可能性についていろいろの討議が行われているという実情でございます。  それから静止衛星軌道そのものにつきましては、基本的には使用の可能性というものは技術の進展とも当然のことながら関係があることでございまして、技術の進展に伴いまして、さらに使用の可能性もふえるという事態はございますが、ある意味では貴重な有限な資源であるという形で、私どもとしても基本的には対応していきたいというふうに考えております。
  301. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 たとえば具体的に、これから日本の静止衛星打ち上げ計画というのは、どういうものがいま用意されて計画されておりますか。
  302. 吉村晴光

    ○吉村説明員 お答え申し上げます。  ただいま静止衛星でどういうものを打ち上げるかという御質問でございますが、今年度夏に予定をいたしておりますのが通信衛星の二号のbでございます。それから、それに引き続きまして今年度もう一個放送衛星二号のaというものを予定いたしております。その後五十九年度には静止気象衛星三号、これは現在のひまわり二号の後継機でございます。六十年度に放送衛星二号のbというものを予定をいたしております。それから六十一年度にまいりますと、これは静止衛星ではございませんが、海洋観測衛星一号というものを予定いたしております。それから、六十二年度にまいりまして技術試験衛星V型、これは静止衛星の実験用の衛星でございます。それから、それに続きまして六十二年度にさらに通信衛星三号のa、これは現在打ち上げております通信衛星二号の後継機になるものでございます。六十三年度に通信衛星三号のb。  以上のような衛星の打ち上げ計画を現在持って開発を進めておるという状況でございます。
  303. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 一九八五年六月にはジュネーブの国際電気通信連合本部で、静止軌道の有効利用に関する国際会議も開かれるやに聞いております。いまお聞きすると、それ以前に一連のいろいろな計画が進行していくようであります。  ところで、ASEAN諸国にいま外務大臣も首相とともに行かれようとしております。この間中曽根首相は、ASEAN歴訪を前にしてのASEAN五カ国報道関係者のインタビューに答えてでございましたが、科学技術の分野における協力を強調しておられました。いまの宇宙衛星打ち上げというようなことの分野に限ってでありますけれども、限らなくてもいいですが、科学技術の協力ということを言われる以上、当然宇宙衛星問題なんかともこれからは関連してくるであろうと思いますが、具体策を持っての協力をしていくということの言葉でございましょうか。外務大臣はすでに構想をお持ちであろうと思いますけれども、いかがでございます。
  304. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 今回の総理のASEAN訪問におきましていろいろの問題がASEANの首脳との間に論議、討議もされるわけでありますが、その中で中曽根総理として科学技術協力というものを強く打ち出しておられます。これはやはりASEAN諸国が科学技術を推進することによって今後とも経済的な発展を図っていく、あるいはまた国民生活の充実をもたらしていく、そのためにも日本が積極的に協力をしたい、こういうことでございます。しかし、いまお話しのような放送衛星とかあるいは通信衛星についての協力について話し合われるかどうかという可能性についてはまだはっきりしていないわけでございますが、わが方からこれらの協力について具体的な提案を行うという考えはいまのところ持ってないわけであります。
  305. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 アジアの平和と安定あるいは特にこれから国際協力、科学技術の分野で、ということが強調される場合には、先進技術国家としての日本、この役割りはやはり平和的目的のために気象、通信衛星とか資源探査衛星などの分野で日本は積極的に協力するというのが本来あるべき姿ではあるまいかと思いますし、積極的にいまそれを打ち出すべきではないでしょうか。いかがでございます。
  306. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 いまわが国から宇宙衛星とかあるいは放送衛星についての協力分野について話し合おう、こういうことでわが国の方から積極的に持ち出すという考えは持ってないし、検討もしてないということでありますが、これからの日本とASEAN諸国との協力関係というものは、ASEANの諸国のやはり要望といいますか、ニーズといいますか、そういうものを踏まえてやっていかなければならない課題ではないか、こういうふうに思っておるわけでありまして、したがって一般的な科学技術協力ということで大きく打ち出しておるわけですが、それではこちらの方からということでいま具体的に案を考えておるわけではないのでして、これは話し合う中でいろいろとそうした問題も出る可能性は私はあると思いますけれども、しかしそれは先方の考え方を尊重してまいりたいというのがわれわれの考えでございます。
  307. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 一見非常に謙虚のようでありますけれども、私はさっき、これからの宇宙時代という言葉はいいか悪いかわかりませんが、そういう時代にいま入っているという認識を何遍も大臣にもお聞きをした次第でありまして、そういう時代に来ているのに、ちょっとやはり、大変待ちみたいなことではいけないのではあるまいかと思います。たとえばヨーロッパには欧州宇宙機構、ESAというのですか、これができておりますね。たとえばアジアでASEAN諸国に対してそういうものでも、たとえば平和的目的のためにということで提案するというのは、これは大事なことではないでしょうか。でないと、何か大変言いわけばかりしているような外交姿勢あるいはお金ばかり持っていって援助している、かばんをぶら下げていかなければASEAN外交ができないみたいな、そういうものになってしまいはしないだろうかという感じが私はいたします。その点、御意見を聞かしていただきたいと思います。
  308. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 もちろん、宇宙の平和的利用というのは先進国だけが独占するものであってはならないのですね。確かにいま日本を初めとする先進国が中心になってこの利用、開発が進んでいるわけですが、しかしやはり、いわば宇宙というのは人類共通のものという立場で世界の平和であるとかあるいは世界の発展のために大きく活用されていくということが必要であろう。そういう立場に立てば、アジア諸国、特にASEAN諸国がこうした面での活用ということを積極的に取り上げようということになれば、日本としてもこれに対して積極的にこたえていくという姿勢は必要であろう、私はこういうふうに思いますけれども、しかし今日の日本とASEANとの関係においてわれわれとしては大事なことは、日本から何か問題を押しつけるという形でなくて、やはりASEANの考え方を十分聞きながら、そういう中で日本がASEANの要望するものに対して積極的にこたえていくということがむしろ必要ではないか、こういう立場から言っておるわけでありまして、協力を拒否するとかあるいは否定するとか、そういう考えではないことははっきりと申し上げておきます。
  309. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 ASEANからはそのような提案がまだないとしても、中国あたりからはそういう欧州宇宙機構アジア版みたいなものは要望があったのではないでしょうか。そういうことはありませんか。  それから宇川さん、何か発言がございましたらひとつ聞かしてください。
  310. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  中国につきましては、私、承知いたしておりません。  先ほど手を挙げかけましたのは、ASEANとの関係におきましては、「ひまわり」の画像が一部諸国ですでに利用されております。それから、事実関係について申し上げますと、インドネシアがすでに独自に通信衛星を二個アメリカによって打ち上げてもらっている。それが一部アジア諸国に使われているという実績がございます。
  311. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 いまの「ひまわり」のケースですけれども気象衛星「ひまわり」をアジア太平洋の国々に利用してもらうということも大変重要なことであろうと思います。が、いまこれらの問題を向こうから要望が出てきたらという大臣のお話でございますから、こちらとしては一応の対応はしておかなければならぬだろうと思いますが、関連しまして、昨年のことでしたけれども、太平洋とその沿岸諸国の間を高度通信網で包み込もうという太平洋地域衛星構想というようなものが太平洋電気通信協議会、ここでつくられた、そして本年一月ホノルルでそのような協議会の総会が開かれて、そこで提案がされるという報道があったことを知っております。私は注目したのですけれども、これは実際行われたのかどうか知りませんが、そういうような動きがあるならば、私はそれに優先してASEANの方が先にそういうものが来なければいけないなと思うものですからいまのような御質問をしたわけであります。ただ、いま申し上げたような構想などというものは実際あったのでしょうかね。どうですか。御存じでございますか、太平洋地域衛星構想です。
  312. 宇川秀幸

    宇川政府委員 私自身、詳細を承知しておりませんが、そのような構想があった事実はございました。御言及があった会合も一月に開かれておると承知しております。
  313. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 電総研と言われるところで非常に広大な一つの構想が打ち上げられ、そして各国に提案が行われたということになっておりますけれども、特にまた開発援助が主眼だということもうたわれております。そこら辺もう少し詳しくわかりませんでしょうか。もしわからなければ、この次で結構ですから資料を下さい。
  314. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えします。  調べまして、資料を整備するようにいたします。
  315. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 次に今度は、いまASEANに行かれるわけでございますので、ひとつ関連してまたお聞きしておきますが、インドが去る十七日三回目の人工衛星を打ち上げたと報道がありますけれども、これは事実でしょうか。これはパキスタンなど近隣の国々にとっては恐らく軍事的な危機感ももたらすのではあるまいかと思いますが、このことについてはいかがでございましょう。事実関係だけちょっと教えていただきたい。
  316. 宇川秀幸

    宇川政府委員 打ち上げられたことは事実でございます。詳細については承知いたしておりません。
  317. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 これがどういう人工衛星であるのか、ここら辺をこの次にぜひお知らせいただきたいと思います。  さらに、昨年八月の第二回国連宇宙会議について、これはどんなものであったのか、わが国としてどんな成果があったのかということについてお聞かせいただきたいと思います。
  318. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  これは国連に附属する形でアドホックに組織されております会合でございまして、去年行われたのは二回目でございます。宇宙の利用全般について広く意見が交換されたという趣旨の会合でございます。さらに御関心があるようでございましたら、事実出席しておる者もおりますので、後ほど御説明に上がらせたいと思います。
  319. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 特にいまわかる範囲内で結構ですし、それから詳しくは後でまた教えていただきたいのですが、昨年の国連宇宙会議においては独立組織としての宇宙センターをつくるプランが具体化した、そしてことしの国連総会で協議されるというようにも言われております。そうであるとするならば、これから大変重要な問題になってくるであろうと思います。特に、この宇宙センターなるものの目的は一体どういうことになってくるのか、その性格であるとか任務みたいなもの、あるいは関連して、宇宙センターがつくられる、第三者機関として宇宙監視衛星というものの打ち上げが考えられているのかどうなのか、そういうことも私は知りたいと思います。
  320. 宇川秀幸

    宇川政府委員 お答えいたします。  そのような構想がございまして、現実に論議されたわけでございますが、予算面の問題から当面取りやめになっておると承知いたしております。
  321. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が少なくなりましたので、先にはしょって進みますが、経団連の報道の中に民間の衛星打ち上げがありました。経団連の衛星通信問題専門委員会、昨年の八月から産業界自前の通信衛星打ち上げということで調査を進めてきた。そして「衛星通信の民間利用早期実現を要望する意見書」というものをまとめて三月二十三日に政府に提出されたはずであります。要望書はどういう中身のものでございましたでしょうか。特に、どんな計画を持ったものなのかということと関連して御報告していただきたいと思います。
  322. 吉村晴光

    ○吉村説明員 御指摘の経団連の要望書は私どもの役所の方にも提出されてございますが、その内容をかいつまんで申し上げますと、工場とか事務所が分散化をする、一方、そういうところのオートメーション化が進むということで全国ネットワークを張っていく必要があるという事情がございます。そういうものを考えます場合、光ファイバーによるネットワークを張る道もございますが、衛星を使ってやることが非常に簡単でいい、その観点からは民間としては実用の通信衛星を使いたいということを考えておるわけでございます。それについて二つほど政府に要望したいことがある、一つは、自主技術によって早期に民間がそういう衛星を使えるように技術開発を促進してほしい、第二点は、現在の通信サービスは電電公社及び国際電電が独占をするという電気通信法の体系になってございますが、民間が独自にそういう通信サービスができるように公衆電気通信法等の法制の見直しをやっていただきたい、この二点でございます。
  323. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 その際に、開発経費を国が負担することを強く要望していると聞いておりますけれども、実際そうなんでしょうか。民間ベースで利用するものに対して国の方で負担していくというような形も考えられているのでしょうか。
  324. 吉村晴光

    ○吉村説明員 民間で利用するものすべてについて国で負担してほしいということではございませんで、民間といたしましては国際的な価格で衛星を打ち上げてほしいというふうに思っております、日本で現在国際的価格で衛星打ち上げができないわけでございますが、それは技術開発ということをあわせながら進めているという点があるためにこういうことになっておるわけでございまして、そういう意味で技術開発に相当する分については国で負担をしていただきたいというような趣旨だと承っております。
  325. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間がなくなりましたので本当にあと二、三の質問だけで終わらしていただきますが、いま端的に言いまして私自身も科学技術の分野については全然わからぬものですからお聞きしますが、今日のわが国の技術開発の状態というものは世界的に見て、いまの宇宙衛星だとかそういうものでございますけれども、どういう水準までいっているというふうに私ども受け取っておいたらいいのでしょうか。
  326. 吉村晴光

    ○吉村説明員 お答え申し上げます。  宇宙開発という分野だけに限って申しますと、米国及びソ連は第二次世界大戦後非常に多額の経費を投じて宇宙開発をやってきておりまして、これはもう世界でトップでございまして、日本とは非常に大きな差ができておるというのが現実でございます。それからそれに次ぎますものといたしましてはヨーロッパの各国が集まってやっております欧州宇宙機関、ESAという組織でございます。ロケットの打ち上げという点から見ますと、欧州宇宙機関の方が日本よりやや先行しておるという実態でございまして、日本は米、ソ、欧州宇宙機関に次ぐという状況にあるのではないかというふうに思っております。  そのほかロケットの打ち上げ能力のある国といたしましては中国、インドがございますが、中国につきましては詳細は明らかでない、インドにつきましては日本の技術力に比べるとかなり低いレベルであるというふうに理解をいたしております。
  327. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りましたので、最後に一問大臣に私お尋ねをしたいと思います。  偵察衛星という問題がいろいろ論議されたことがございました。偵察衛星を持つというのは日本宇宙開発政策との関連で実施には難点があることは事実でありましょう。しかしながら、何らかの歯どめをかけた上で情報収集手段としてこれを採用するというのは合法的でもあり経済的でもある、そういう議論がいままであったと思います。この偵察衛星問題について外務大臣、どのようにお考えでございましょうか。
  328. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 宇宙の利用、開発というものは平和目的でなければならないわけでありますが、さらにまた日本の場合はいろいろの条約あるいはまた法律さらに国会決議というものもあります。そういうものを踏まえてやらなければならぬわけでありますが、しかしそういういろいろな状況等も踏まえながら、いま偵察衛星を持つべきであるというふうな動きもあるわけでございまして、また総理もこれらの問題につきまして答弁をいたしております。私はやはり平和目的という立場から、この偵察衛星という問題は今後そうしたいろいろの動きとか、あるいは自民党の特別委員会の決議等もございますが、そういうものを踏まえながら全体の枠組みの中で検討をしていったらいいのじゃないか、こういうふうに考えます。
  329. 渡辺朗

    ○渡辺(朗)委員 時間が参りましたのでこれにてやめますが、どうぞ外務大臣、ひとつ大いにこれからASEANに行かれ活動していただき、成果も上げていただきたいと思います。それからまた、引き続きヨーロッパにも行かれるわけですか。――その際にはいまの欧州宇宙機構などもぜひひとつ見ていただく、そしてまた議論をさせていただきたいと思っております。ありがとうございました。
  330. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、野間友一君。
  331. 野間友一

    ○野間委員 最初に防衛庁にお伺いします。  例の航空自衛隊のC1二機の衝突に続きましてPS1、この事故が起こりました。  有事対処と言いつつ、こうした事故は国民の命あるいは安全から見て非常に大きな問題かと思いますが、まずお聞きしたいのは、新聞報道等によりますと、対潜哨戒飛行PS1、これが低空飛行しておったというふうな報道になっておりますけれども、一体このPS1が低空飛行するケース、これはどういうような場合があるのか、まずお尋ねしたいと思います。
  332. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御案内のように、PS1というのは対潜飛行艇でございまして、対潜機というのは飛行艇に限りませんが、潜水艦を捜索するために非常に限定された海域といいますか、限定された地点というものに飛行しなくてはいけない、相手をピンポイントのような形でとらえなくてはいけないということで、低空でかつ厳密な飛行を要求されるものであります。  また、今回の訓練はローパスということで、夜間におきます基本的な操縦訓練と計器訓練をやる予定で、その最初の段階で、ローパスというのは低速で低高度である一定地点を通過するものでございますが、海上の場合、なかなか地点がはっきり明確に出ませんので、滑走路上でそれを行ったということでございます。
  333. 野間友一

    ○野間委員 いまピンポイントの探知の話がありましたけれども低空進入攻撃、こういう場合もあるわけですね、ケースとして。
  334. 西廣整輝

    西廣政府委員 ちょっと御質問が十分聞き取れなかったのですが……。
  335. 野間友一

    ○野間委員 低空飛行のケースとして、ピンポイントだけではなしに、私いま申し上げたのは低空進入攻撃ですね、こういうものもあるのじゃないかということです。
  336. 西廣整輝

    西廣政府委員 お答えいたしますが、対潜飛行艇はあくまで対潜作戦だけやりますので、低空で進入して何かをするというようなことはほとんど考えられないと思います。通常低空飛行することが多いのは、対潜機は大体MADと言いまして磁気探知機を持っております。そしてこれがいろいろなソーナー等である程度限定された、ローカライズされた潜水艦の位置をより厳密にとらえて、最終的に魚雷等で攻撃をする際にそういう低空飛行をするというのが通常のパターンでございます。
  337. 野間友一

    ○野間委員 いや、そういうケースもあるというふうに私は聞いておるのですけれども。  ところで、本件の場合、このPS1、これは岩国の基地から一キロメートル海上の水上滑走路から飛び立った。これが二十六日の午後四時五十分ごろ、こういうふうにありますね。墜落したのが五時三十分ごろ。そうしますと、この間約五十分たつわけですけれども、一体この間何をやっておったのですか。いまローパスの話がありましたけれども、五十分何をやっておったのですか。
  338. 西廣整輝

    西廣政府委員 訓練内容、まだ細部の分刻みの報告を受けておりませんけれども、この飛行訓練そのものが、先ほど申したように、主体は夜間におきます基礎操縦訓練と計器訓練、それとクルーの訓練をやるということでございまして、いま御質問にありましたように、五時少し前に海上から離水をいたしまして、各種のクルー訓練、明るいうちにした方がよろしい訓練を先にやった後に、まだ明るい状況でございますので、ローパス、これは飛行場の関係でローパスをやったということで、これも明るいうちに済ましておきたい訓練一つだったので、それを実施したというように聞いております。
  339. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、基地から一キロメートル海上の水上滑走路、ここから五十分間言われたようなローパスの訓練をしておった、こういうことですか。
  340. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどお答え申しましたとおり、ローパスを何回やったのかというような細部を受け取っておりませんが、離水をいたしますと、ずっと大きな旋回をしてきて進入をしてくるということで、かなりの時間がかかることは間違いございませんが、その間の時間は約三十分ぐらいというように私どもは理解をいたしております。
  341. 野間友一

    ○野間委員 どうも私は、ローパスといういまのお答え、説明には納得できないのですね。これは陸上の滑走路ですね、ここでの訓練でしょう。基地から一キロメートルの海上から飛び立って、滑走路に向けて超低空のそういう訓練ということになるわけですけれども、どう考えても、こういうPS1が陸上滑走路でそういう練習をするということは、私はどうも納得できないのですけれども海上でやればいいわけでしょう。何でこんなところでやるのですか。
  342. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほども答弁申し上げましたけれども海上でそういう厳密な意味の航法訓練をやりますと、目標物がはっきりいたしませんので、最終的な厳密な飛行については地上の滑走路等を利用して行っておるというものであります。
  343. 野間友一

    ○野間委員 いろんな現地の人から聞きましたら、今回の訓練は通常、いままでこういうものは見たことがない、こういう話もいろいろ聞いておりますけれども、この日が特別のこういう訓練をしたのですか。どうですか、この点。
  344. 西廣整輝

    西廣政府委員 基礎操縦訓練なり計器操縦訓練というのは通常行われておる訓練でありまして、特別な訓練、今度初めてやった訓練ということではございません。
  345. 野間友一

    ○野間委員 ただ、ここではこういうものをいままで見たことがないと言っておりますけれども、実際それはどうなんですか。
  346. 西廣整輝

    西廣政府委員 ローパスというのは非常に低空でやっておりますし、飛行艇そのものが騒音のない飛行機でございますから、余りお気づきにならなかったのではないかと思いますけれども、通常全くやらない訓練ということではございません。
  347. 野間友一

    ○野間委員 どうもいろいろ聞いてみますと、低空進入の攻撃のそういう訓練をやっておったんじゃないかという疑惑があるわけですね。報道によりましたら、二機のPS1が前後に並んで飛行中、こうなっておりますけれども、そうすると、磁気探知の訓練の話もいまありましたけれども、単純にそういうものだけでなくて、やはり低空の進入攻撃ですね、そういう訓練をやっておった、そういう疑惑があるのですけれども、実際そうじゃないのでしょうか。
  348. 西廣整輝

    西廣政府委員 PS1は先ほど申したように対潜航空機でございまして、地上攻撃用の武器を装備をいたしておりませんから、対地攻撃の訓練をしたということはちょっと考えられないのでありす。
  349. 野間友一

    ○野間委員 しかし、これはロケットをもって撃ち込む、そういう能力を持っておるわけでしょう。
  350. 西廣整輝

    西廣政府委員 PS1に積んでおりますのは対潜ロケットでございまして、対地用のロケットというようなものを持っておりませんし、照準その他も対地用の機材を積んでおりませんので、対地攻撃に飛行艇を使うということは、機体そのものも大変大きくて鈍重であるというようなことから考えまして、余り考えられないのであります。
  351. 野間友一

    ○野間委員 いずれ新聞報道等をまだ十分調査をしなければなりませんけれども、しかしながら、この墜落地点から三百メートル離れたところにグラウンドがありますし、ここでは子供も遊んでおった。弾薬庫も、先ほどからも論議ありましたけれども、すぐ近くにある。こういう市街地でこういう訓練をすることは、安全対策という以前の問題じゃないかと思うのですけれども、私は、この種訓練はここではやるべきではない、これは強く要求しますけれども、どうですか。
  352. 西廣整輝

    西廣政府委員 ローパスと言いますのは、タッチ・アンド・ゴーに近いような形でございますが、通常の岩国飛行場を用いました離陸経路というのがございますが、これもスピードのある航空機PS1のように非常に低速性能のよい飛行機とでは、大回りする、小回りするということはございますが、高速の航空機が使う通常の離陸経路、それよりずっと内回りといいますか、すぐ基地の中から直接海面に離脱をするというコースをとっておりますので、離陸の訓練コースとしては一番安全なコースをとっておったというように理解をいたしております。
  353. 野間友一

    ○野間委員 しかし、こんなところで非常識だと私は思いますけれども、これはまた調査した上で、いずれ機会を改めてお聞きしたいと思います。この問題についてはこれで終わります。  次に、宇宙開発あるいは利用の問題についてお聞きしたいと思いますが、まず最初にお聞きしたいのは、政府宇宙開発あるいは利用についての基本姿勢、特に目的との関係で簡潔にお述べいただきたいと思います。
  354. 安田隆明

    ○安田国務大臣 宇宙開発の目的につきましては、御存じのとおり団法並びに国会決議の線、その延長線の中でわれわれは考えております。
  355. 野間友一

    ○野間委員 国会決議あるいは団法の一条、いわゆる「平和の目的に限り、」と、これが基本的な、これに即した姿勢だ、こういうことですね。
  356. 安田隆明

    ○安田国務大臣 平和目的のためにその沿線上で、しかも利用につきましても国会決議の沿線上でと、こういうふうに私たちは理解をいたしております。
  357. 野間友一

    ○野間委員 そこで「平和の目的に限り、」というのですが、決議とか法律にありますけれども、これはどういうふうに政府としては認識、理解されておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  358. 安田隆明

    ○安田国務大臣 国会の論議の中でいろいろ議論されておりますとおり、通信それから放送、それから科学、気象等々皆そのような考え方にのっとってやっているということで御理解をいただきたいと思います。
  359. 野間友一

    ○野間委員 平和の目的に限るというのは、これは国会論議の中でもありますけれども、あくまで非軍事的と、こういう意味ですね。これは非侵略、つまり侵略に利用させないというような狭いものではなくて、軍事に利用することを禁止する。これは国会論議でも明らかですけれども、この事実の確認です。
  360. 安田隆明

    ○安田国務大臣 国会論議のとおりでございます。そのように理解しておるわけであります。
  361. 野間友一

    ○野間委員 ところが長官、最近、この「平和の目的に限り、」という、いま長官は認められたのですが、これは政府の見解なりそれがありながら、何か解釈をいろいろ曲げて、特に自衛隊宇宙の開発利用を可能にするようなことが考えられているように私も耳にするわけですけれどもね。そういうことはあり得ないし、できないといまの長官答弁でも私は思いますけれども、これは明確にできますね。
  362. 安田隆明

    ○安田国務大臣 防衛庁の方からまだ具体的なそういう話を承っていないわけであります。だからして、いま承っていない段階でどうこうと、こう言うことは差し控えたいと思っております。
  363. 野間友一

    ○野間委員 一般的な意味で私はお聞きしておるのです。いまの非軍事的ということが「平和の目的に限り、」という中身だということからすれば、新聞報道等ではありますけれども、これは自衛隊宇宙の開発利用を可能にするような動きがいまありますから、一般的な意味ではそういうことはできないししない、こういうことでしょう。その点の確認なんです。
  364. 安田隆明

    ○安田国務大臣 繰り返しの答弁になりますけれども防衛庁からそういう具体的なものをまだ聞いていませんし、同時にまた、その問題が具体的に出てまいりましたときに、一体これは団法並びに国会決議とどういう絡まりになるのだろうかということは検討してみたい、そういうことでございます。
  365. 野間友一

    ○野間委員 それはまた何か後退されようとしていますけれども自衛隊がこれを利用しようとすることは、これというのは直接にはCS2についてでありますけれども、平和の目的に合致しないということで、いまのところいままでの非軍事というところで云々というような答弁が、二月五日付の予算委員会での加藤さんの答弁があります。安田さんも、平和に徹すべしということが全会一致で決議でも決められている、附帯決議もそうだ、これに基づいてというふうに答弁されております。つまり、自衛隊がこれを利用することは平和の目的に合致しないのだということを科学技術庁は明確に言われているわけです。だから、いまの答弁を聞いたら、何か後退しているように思いますね。どうなんですか。
  366. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  いま先生、この前の予算委員会での国会の答弁を御引用されましたけれども、私どもは、ただいま長官の方から御答弁いたしましたように、わが国の宇宙開発というものはあくまで国会の決議並びに宇宙事業団法の趣旨に従って進めている、これはもう間違いないところでございます。  ただ、あのときの答弁ではそこまでの答弁はしてございますけれども、いま長官が御答弁されましたのは、そういった国会の決議なり事業団法の趣旨の線上において、いまのところはまだわれわれはそういう細かい計画があることは承知しておりませんけれども、仮に何か防衛庁の方から御要望でもあったとした場合におきましては、その要望の内容を具体的にいろいろ検討させていただいた上で、いまのその趣旨に合致しているかどうかということの判断になるであろう、そういった趣旨でございます。
  367. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、それは後で聞くとして、具体的に少し聞いていきたいと思います。  偵察衛星あるいはスパイ衛星アメリカに依頼して打ち上げる、そして自衛隊がこれを使う、これは「平和の目的に限り、」ということと反すると思いますけれども、その点についてはどうですか。
  368. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 アメリカに依頼をしてというような具体的な計画につきましては、私ども、そういう案を防衛庁がお持ちであるということを伺ったことはまだございません。  それで、せんだっての参議院の予算委員会におきまして、法制局長官から、これは防衛庁が……
  369. 野間友一

    ○野間委員 私はそれはまだ聞いておりません。もしそういう場合があるとしたらこれはできるかどうかということを科学技術庁に聞いているわけです。
  370. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  そのような個別具体的な例につきまして、私どもはまだ検討いたしたことはございません。
  371. 野間友一

    ○野間委員 いや、検討したことがないではなくて、一般論として、具体的なケースはあるのかないのかは別にして、平和の目的とは非軍事的に限るのだということになっているわけでしょう。そういう基準からして、決議との関係で、こういうものは許されないのじゃないかという質問です。
  372. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 一般的な話といたしましては、せんだっての参議院の予算委員会におきまして法制局長官の方から答弁がありましたように、現行の法制上の規定のみに限って言えば、偵察衛星のようなものを保有することを妨げるものではないというような御答弁があったわけでございますが、そのように考えます。
  373. 野間友一

    ○野間委員 それは保有の問題でしょう。私が聞いているのは違うのです。いかがですか。何遍言わすのですか、衛星の保有については聞いていないわけです。アメリカに依頼して打ち上げる、それを自衛隊が利用する、こういうケースについての見解を聞いているわけです。
  374. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 これも何遍も繰り返すようでございますが、私ども防衛庁の方からそのような具体的な案についてまだ聞いたことがございませんものですから、そういった具体的な案がない段階におきまして、いま一般論としてこうだということをここでもって御答弁するような段階にないと思います。
  375. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、偵察衛星をいま自衛隊は保有しておりますか。保有していないでしょう。それでも保有についてはあなたは答えたわけですけれども、それはどうなんですか。
  376. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほど申しましたのは法制局長官の見解でありますけれども一般論としては、保有することは、法制上の規定にはそういうようなものを規定したものはないということでございますが、具体的ないまの御質問で、アメリカに依頼をして打ち上げるとか、防衛庁が具体的にそういったような人工衛星の開発をするとか打ち上げるとかいうような案につきまして、私どもは一切承知しておりません。したがいまして、具体的な事例につきまして、これが国会の決議の趣旨に合う合わない、あるいは団法の趣旨に合う合わないというようなことについての判断は、いまの段階ではしかねるということでございます。
  377. 野間友一

    ○野間委員 不満ですが、時間の関係で次に進みます。  そうすると、具体的に聞きますけれども、問題のCS2号を自衛隊が利用することは宇宙事業団法及び国会決議で禁止されている、この点については、長官もいまの加藤さんも、二月五日の予算委員会で自衛隊の利用ができないと明確に答えているわけですね。これはいまも変わりないと思いますが、再度確認します。
  378. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  私の記憶が違っていなければ、あの折の答弁におきましても自衛隊の利用はできないというような趣旨での答弁をしたことはないと思います。あれは、わが国の宇宙開発というものは国会の決議あるいは団法の趣旨に沿って開発をするものでございますというふうに御答弁したというぐあいに記憶しております。
  379. 野間友一

    ○野間委員 それでは、二月五日付のあなたの答弁、十四ページにあります、もう一遍読んでください。何を言うておるのですか。
  380. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 私の答弁の中で一番最後のところを読まさせていただきますと、「いまのところ、いままでの非軍事というところで、私ども自衛隊がこれを使うということをいまの段階では予定していないわけでございます。」というような答弁になっているかと思います。
  381. 野間友一

    ○野間委員 あなた、逃げなさんな。まじめに答えなさいよ。その前を読んでください。
  382. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 その前から申し上げます。「したがいまして、自衛隊がこれを利用するということは、これは私どもの平和の目的というのに合致しないということで、いまのところ、いままでの非軍事というところで、私ども自衛隊がこれを使うということをいまの段階では予定していないわけでございます。」かように答弁してございます。
  383. 野間友一

    ○野間委員 明確でしょう。「自衛隊がこれを利用するということは、これは私どもの平和の目的というのに合致しないということで、」とちゃんと言っておるでしょう。「平和の目的というのに合致しない」と明確に言っておるでしょうが。これをあなた、変えるのですか。長官、これはいかがですか。
  384. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 ここで申しましたことは、平和の目的に限りこれを推進しているわけでございます。国会の御決議あるいは団法の使用の目的によりましてというようなことの、私は原則論を申し上げた、その原則論の延長線上におきましてこれを申し上げたことでございまして、なおそういった原則論としまして、これを利用するということはというふうなことを申し上げたわけでございます。しかしながら、後からそこに申しましたように、「自衛隊がこれを使うということをいまの段階では予定して」はおりませんということでございまして、これを自衛隊が使うということを、原則論を育ったのでございまして、私の方としましては、それが国会の決議並びに宇宙事業団法の趣旨に従って具体的な事例が出た場合においてそれをどう判断するかというふうなことは、それは個別、具体的な問題であって、そういうことにつきましては現段階では予定していない、かような答弁であったと思います。
  385. 野間友一

    ○野間委員 あなた、うそをつくなよ。具体的なケースがあるでしょう。この上段にありますけれども、種子島における宇宙センターから実用静止衛星CS2が打ち上げられたと、民社党の塚本書記長の質問がずっとあるでしょう。この中でも通信施設、これは被害を受けて使えない、こんなことはどうかという質問がずっとあるわけでしょう。だからCS2に関する質問がありまして、その塚本書記長の二段目にもあるでしょう。通信連絡や災害出動のために自衛隊が使えないというような状態にしておいて果たしていいでしょうか、こういう具体的な質問に対してあなたは答えておるわけでしょう。うそを言いなさんな、あなた。
  386. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生がおっしゃいましたことは、塚本先生が御質問の中でそういったような状況があるということの御説明をされたものと理解しております。そのことが正式に科学技術庁の方に対しまして、防衛庁の方からそのようなことでひとつ考えてくれないかというような具体的な提案はその時点ではもちろんなかったわけでございますので、私は具体的に防衛庁の方でそういう結果を持って、それがどうかというときにおいては、その具体的な事例に即して検討をするということを申し上げたわけでございます。
  387. 野間友一

    ○野間委員 これでは質問できませんよ、こういうでたらめな答弁ばかりしていたら。ちょっと、これは理事会で協議してください。――ちょっと委員長、取り計らってください。
  388. 竹内黎一

    竹内委員長 委員長から申し上げます。  答弁者は質疑者の質問の意図をよく理解して答弁されたい。
  389. 野間友一

    ○野間委員 だから、このときのあなたの答弁は、CS2についての質疑に対して、「自衛隊がこれを利用するということは、これは私どもの平和の目的というのに合致しないということで、いまのところ、いままでの非軍事というところで、私ども自衛隊がこれを使うということをいまの段階では予定していない」、明確に言っているでしょう。CS2に対する質問に対してあなたは答えておる。二段目にも書いてあるでしょう。「通信連絡やあるいは災害出動のため、そういうことに自衛隊が使えないというような状態にしておいて果たしていいのでしょうか。」こういう質問がずっとあるでしょう。この総理に対する質問に対して、あなたが答えておるわけですよ。これはイロハでしょう。あなた、うそばかり言うなよ。後退したら後退、変更したら変更と、あなた率直に言ったらいいわけで、これほど明確なことはないでしょう。
  390. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 塚本先生の方からそのような趣旨での御質問があったということでございますが、これは私がここでもって御答弁申し上げましたようなその趣旨は、一般論として私は申し上げたというぐあいに先ほど申しましたが、私は、一般論として、わが国の宇宙開発というものは国会の決議なり団法の趣旨に従ってやっているものでございますという一般論を申し上げたつもりで、これを答弁したわけでございます。
  391. 野間友一

    ○野間委員 あなたはころころ答弁を変えるよね。私は一般論として、たとえばアメリカの偵察衛星、こういうものを自衛隊が打ち上げさせて使うことはいいのかどうかと言えば、そういうものは具体的な事例がなければ答えることはできない。ところがいまの場合には、一般論として言っただけだ、そんな使い分けしなさんな。不謹慎ですよ、あなた。あなたは明確に言ったことを何でそんなにごまかすのですか。そうすると、聞きますよ。自衛隊がこれを利用するということは私どもの平和の目的というのに合致しない、これは一般論としてあなたはそういう評価、判断をいまでも持っておるわけでしょう。
  392. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  私が申しましたその一般論というのは、繰り返しになりますけれども、平和の目的に限ってこれを推進していくというのはあくまで私は一般論でございます。一般論の線上におきまして、私ども宇宙開発を進めているということを繰り返して申し上げたわけでございます。  私のこのときの答弁が必ずしも、明確を欠いたことにつきましては、誤解を招いたことにつきましては、この段階で少し反省をしなければならぬと思いますけれども、私がここでもって申し上げた趣旨は、これは一般論として申し上げたというつもりでございまして、また具体的な事例に即しましてそれについての検討をしなければならないと言った意味も、これは一般論として申し上げたものでございます。したがいまして、いまの段階ではそういう予定がないというようなことをそこでは申し上げたというつもりでございます。
  393. 野間友一

    ○野間委員 あなた、質問に答えなさいよ。これはだれだってできない。笑っているじゃないか。何遍言わすのですかね。自衛隊がこれを利用するということは、私どもの平和の目的というのに合致しない、一般論として。自衛隊が使うということは平和の目的というのに合致しないと、あなた明確に言っておるでしょう、一般論として、それはそうと聞いたところで。そうでしょう、そうでしょうが。合致しないと思っておるのでしょう。合致しないのでしょう。明確にそう言っておるわけですよ。
  394. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほど私申し上げましたように、私のあのときの答弁の仕方が必ずしも私の意をそのままあらわしていないような表現であったとしますと、私としましてはここで反省しなければならぬと思いますけれども、私があそこでもって申しましたのは、むしろあの答弁の後段にありまして、その具体的な計画というものがない、こういう段階でもって、いまここで結論的なものを出すということはむずかしいだろうという意味を込めまして、むしろあの答弁の後段の方でもって私の意を込めたつもりでございます。
  395. 野間友一

    ○野間委員 何遍あなたは言わせるのだ。  では、平和の目的というのに合致しないという評価を当時は持っておったのかどうか。これは意図は知らぬよ、あなたが心の中ではどんなことを考えているかそれは知らない。しかし明確にあなたの答弁は、平和の目的というのに合致しないと、ここに明確に書いてあるでしょう。この事実をあなたは否定できないでしょう。
  396. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、私のあのときの答弁が、きわめて、ある意味におきましては舌足らずであった、私がもっと本来考えていたことを完全に言ってなかったということで、私の意図したことが全部あの答弁に表現し尽くされなかったといったような舌足らずの点があったことにつきましては、おわびをいたしたいと思います。
  397. 野間友一

    ○野間委員 さっぱりわかりませんよ、これは。  それじゃ聞くよ。あなたは平和の目的というのに合致しておると思っておったのかどうか、その点はどうですか。
  398. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 具体的な硫黄島との間で防衛庁が何らかのかっこうで通信をしたいといったような点につきまして、私どもはそういったような例につきまして、それが平和の目的に合致するかしないかという点につきまして、それはやはりその段階では硫黄島の通信の中身、態様、やり方というものがはっきりしなかった面がございます。したがいまして、あのときの答弁におきましては、その内容がはっきりしなかったために答弁の方が若干舌足らずだったということについて先ほどからおわびを申し上げているのでございます。
  399. 野間友一

    ○野間委員 またあなた答弁を変える。一般論として言っただけだ、硫黄島のこと、またあなた個別具体的なことを言っておるじゃないの。いや、私が聞いておるのは、この当時これを自衛隊が利用するということが平和の目的というのに合致するというふうに考えておったのかどうか、それを聞いておるわけですよ。簡単なことじゃない。あなたがちゃんと言っているからそのことを聞いておるわけだ。責任を持ちなさい、言ったことについて。
  400. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 この塚本先生の御質問の硫黄島との間の通信につきまして、それが平和の目的に合致するかどうかという点につきましては、まだ少し検討するところがあろうかと存じます。しかしながら、あの段階におきまして私の答弁が舌足らずだったということについて……(「この段階でどう考えているのか」と呼び、その他発言する者あり)いま硫黄島との間でもって自衛隊が通信回線を持つということにつきまして、それをどういった形でもって持つかといったようなこともございましょうけれども、その問題につきましては、いま関係省庁の間におきましてその考え方につきまして鋭意検討を重ねているというところでございます。
  401. 野間友一

    ○野間委員 そんなこと聞いてないじゃない。長官、この点について明確に、自衛隊がこれを利用するということはこれは私どもの平和の目的ということに合致しないと明確に加藤さん答えておるわけですよ。いま聞いたら妙なことばかり言って言い逃ればかりしますけれども、ああいう態度を大臣どう思いますか。これは実際合致しないのでしょう。
  402. 安田隆明

    ○安田国務大臣 いまほど加藤局長の答弁をお聞きしておりました。まず、あのときに御質問がありましたのは、自衛隊が軍事用にこれを使う、それについて言うという先入主のもとに加藤局長は答弁を申し上げた。私に答弁を求めるならば、自衛隊がいわゆる軍事用にこれを使う、こういうことになったらどうなるんだ、こうなれば私たちはあくまでも平和目的のために、とにかくもう通信であろうが放送であろうが今日打ち上げている星は全部平和目的のために打ち上げておりますよ、こういう答弁になるわけであります。  ただ、加藤局長から繰り返しいま答弁申し上げているものを聞いておりますというと、自衛隊があの星をどのように使うかという対応の仕方が、あのときには軍事用に使うという先入主のもとに答弁あったもの、私はこう理解しておるわけであります。自衛隊はどういう対応でもってあの星を使うかということになりますと、検討の余地を与えてください、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  403. 野間友一

    ○野間委員 話になりませんよ。何を聞いておるのですか、長官。そんなこと何も言ってないですよ。通信連絡あるいは災害出動、そういうようなことに自衛隊が使えないというような状態にしておいて果たしてよいのでしょうか。災害とか通信連絡、こういう場合でもCS2号を使っちゃならない、そんなことでいいのかどうかという質問に対する答えですよ。あなたも当時答弁しておるし、よく知っておるはずですよ。全然前提が違いますよ。その前提が違うということと、もう一つ私が言うのは、自衛隊がこれを利用するということは平和の目的というのに合致していないと明確に局長述べておるわけですね。ところがいま聞いたらころころ変わる。それじゃ大臣に聞きますけれども自衛隊が使うことが、質問は通信連絡あるいは災害出動というのがまくらにありますけれども、それは別にして、一般論として自衛隊が利用するのは平和の目的に合致しない、なぜなら非軍事というのが決議のとおり限定があるからだ、そういう考え方を持っておるのかどうか、いかがですか。
  404. 安田隆明

    ○安田国務大臣 一般論といたしましていま局長が答弁申し上げました。さらにつけ加えますと、いろいろ問答がございまして、そして結局最後に総理は、検討いたしましょう、こういうところで結んでおりますので、われわれは自衛隊がどういう対応でもってこれを使うか、この対応の仕方、それを見きわめた上でわれわれは協議をしなければならない、検討しなければならない、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  405. 野間友一

    ○野間委員 もう全然だめだ。ただ、それじゃ角度を変えますけれども、そうすると、二月五日当時は自衛隊が使うこと自体、いま何遍も言うように通信連絡や災害出動、こういう場合でも使えない、これは困るということに対していま加藤さんの答弁があるわけですけれども、そうすると自衛隊が利用するということについて、これは平和の目的に合致する場合があるということもあるのかどうか。あるのですか。
  406. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 自衛隊がいろいろな宇宙人工衛星を使いまして、たとえば通信の用に供するとかそういったような場合におきまして自衛隊が行うこと、それがすべて平和の目的に全部抵触をするかどうかというような問題につきましては、その自衛隊のお使いになるそれの内容によりましてすべてが平和利用に抵触をするものではない場合もあるかもしれない。それにつきましては具体的な事例につきましてこれを検討してまいるというのが私どもの真意でございまして、先ほどから私の答弁の中で言い方が必ずしも適切でなかった、あるいはまたこの前の答弁のときに、先ほど大臣が申しましたようにある種の先入主が私ども入っておりまして、答弁の方が片寄った点があろうかと思いますが、その点については何回も先ほどから申し上げますようにおわびは申し上げておるわけであります。
  407. 野間友一

    ○野間委員 了承できませんけれども、これは全く答弁の変更は明らかだと思うが、じゃどういう場合に平和の目的に合致する場合があるのですか。
  408. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 これもまだなかなか具体的な事例がございませんから一般論の一つの事例になろうかと思いますけれども、いま私ども放送衛星というものを開発しておりまして、放送衛星の打ち上げの計画を目下進めているわけであります。もしこの放送衛星が打ち上がりますと、テレビの難視聴地域あるいはそういった地帯におきましてテレビがよく見えるようなかっこうで放送をするわけでございますが、そういったような放送衛星から送られてくるいろいろな放送の内容というふうなものは当然国民に幅広く提供するものでございまして、そのようなものを自衛隊が御利用なさるというようなことについては、それは必ずしも自衛隊が使ったからといって平和の目的に反するということではないだろう、かように思います。
  409. 野間友一

    ○野間委員 じゃ、もう一問だけ。  大臣にお聞きしますけれども、そうすると自衛隊が使う場合に、それは平和の目的に合致する場合も合致しない場合も両方あり得るということですか。そうすると二月五日の答弁とは明確に違うわけですよ。その点明らかにしてください。
  410. 安田隆明

    ○安田国務大臣 御答弁申し上げますけれども、事業団の方がこれを打ち上げる、こういうことにつきましてはいわゆる非軍事的、いわゆる自衛隊が軍事用に供するそういう目的でもってこれを開発しておるものではない、これはおわかりだと思います。しからば、今度自衛隊がこの星を使わしてほしい、こうなりますと、これはいわゆる宇宙通信衛星機構の問題、利用側の方に行くわけですね、先生御存じのとおり。だから、その辺をどう判断するかということ、それはどういう使い方をするんでしょうかというところに問題があずからなければならない、だから、このためには協議を要しますよ、こういうことになるわけであります。これが非軍事的か軍事的か、この判断というものは、利用されるいわゆる宇宙通信衛星機構、この中においてこれは協議されるでしょう、私たちの方にもいろいろ協議があるでしょう、私はそういうように理解しておるわけであります。だから、加藤局長は一般論としてああいう申し上げ方をしましたけれども、どのような対応でもってこの星を使うか、まずこの辺を防衛庁ははっきりしてください、それによってケース・バイ・ケースで検討しましょう、だから総理は、じゃそういうふうに検討しましょう、こう申し上げておることでひとつ御了解願いたいと思います。
  411. 野間友一

    ○野間委員 そうすると、やはりあり得るということですね。要するに、自衛隊が使う場合にそれは平和の目的に合致しないという答弁がかつてあるけれども、しかし平和の目的に、使い道というか目的によってはそれは合致する場合もあり得る、いまの長官答弁はそういうことですね。
  412. 安田隆明

    ○安田国務大臣 使い得るか使い得ないか、それは検討しましょう、こう申し上げておるわけです。だから、どういう自衛隊の対応の仕方になるのか、これをひとつ見きわめたい、こういうことです。
  413. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、あり得る、そういう可能性もあるということですね。ニュアンスはそうでしょう。
  414. 安田隆明

    ○安田国務大臣 繰り返しになりますけれども、あるかないか、それを含めて検討させていただきたい、こういうことでございます。
  415. 野間友一

    ○野間委員 それじゃ、大臣は約束した時間もありましたので……。しかし、ああいう経過ですから、これはやむを得ませんので続けます。  そうすると、いまの局長の答弁でもありましたけれども、局長の答弁長官答弁ではまた違うわけですよ。あなたの場合には、放送衛星ですね、こういう場合はいいんだという趣旨答弁をいましたでしょう。
  416. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 大臣は、検討した上でそれが使える場合、使えない場合を判断いたしましょう、こういうことを申し上げたわけでございますけれども、先ほど先生の御質問の中で、どういったケースがある得るのか、これはまだ放送衛星も上がっていませんし、またユーザーも決まっていませんから、これからの段階でございますが、何かそういったような考えられる例があるかとおっしゃいますので、そういう例があるとするならば、それは放送衛星のようなものでございましょうという御答弁を申し上げたわけでございます。
  417. 野間友一

    ○野間委員 具体的にいま問題になるのは、もとへ戻りますが、CS2ですよ。しかも、この論議の中でも、通信連絡あるいは災害出動という場合にCS2を使いたいと自衛隊が言った場合に、科学技術庁は、よろしい、平和の目的に合致するという見解を持っておるのかどうか、その点。
  418. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの硫黄島との間の通信の問題でございますが、私ども細かい、具体的な中身はまだ存じませんけれども、現に防衛庁の方からも、硫黄島の通信衛星の利用について何か道はないかといったようなことを伺っております。関係省庁の間でそれにつきましての検討を現在行っている段階でございます。
  419. 野間友一

    ○野間委員 だから検討というのは、これは使用させることもあり得るということが前提でなければ検討じゃないでしょう。そういう場合もあり得るということが前提でやっておるのでしょうが。
  420. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  前提がどうかというようなことは、いまの段階ではまだ予定はいたしておりません。それがどういうふうになるか、どうあり得るかという点についていま検討をしているということで、別に前提を置いて検討しているわけではございません。
  421. 野間友一

    ○野間委員 それじゃもとに戻って、二月五日付の、「自衛隊がこれを利用するということは、これは私どもの平和の目的というのに合致しない」こういう明確な答弁をあなたはしておるけれども、この答弁そのものをいまのあなたの話からすれば明らかに変えたことでしょう。要するに自衛隊が使うということ自体がこれは平和の目的に合致しない、これは明確に、単純にやっておるわけでしょう。いまの話によれば、大臣もそうだけれども、場合によれば、趣旨、使う目的からすれば合致する場合もあり得るというようなニュアンスだったわけですね。だから、そこのところが変わっておるわけでしょう。平和目的というのに合致しないとあなた断言した。これといまの答弁と違うわけですね。そうでしょう。
  422. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほどから何遍も申し上げておりますように、あのときの答弁は私は原則論を申し上げたわけでございまして、それが先生御指摘のように、なかなか理解がされにくい、誤解したという点につきましては、私のあの折の答弁が私の意を全部尽くしてなかった、ある意味におきましては舌足らずであったという点についておわびをいたしたい、かように思うわけでございます。
  423. 野間友一

    ○野間委員 押し問答でしようがないね。そうすると、要するにそういう見解を持つとするなら、これはもちろん国会決議に対する違反にもなるし、平和利用というのは非軍事だということは明確ですね。これは政府の見解としていままでの論議の中で答弁しておるわけですね。事業団法のときでもそうです。だから団法あるいは国会決議、附帯決議も参議院でありますね、これに対する明確な違反ですよ。勝手気ままに政府がそんなことを解釈してやるのはとんでもないことだし、あなたの二月五日付の答弁とも全然違うわけで、もしそれを許すとすれば、自衛隊が使うことはこれは全部自衛のため、専守防衛のためにやるんだ、だからこれは平和目的にかなうのだということでそこに風穴をあけたら、自衛隊が使うことは全部いいということになるのじゃないですか。これはもう風穴ですよ。ちょうどレーガン大統領が去年の七月四日、これは午前中の論議にもありましたけれども宇宙政策を発表した。この中で、米国はすべての国家が平和目的と人類の利益のため宇宙を開発し、使用し得るよう委託されておる、平和目的とは国家安全保障目的追求のための活動と認める、この原則を明らかにしておるわけですね。だから自衛隊が、たとえば災害あるいは通信連絡に使う、こういう場合はあり得る、それは平和目的に合致しないということじゃないんだという論理を貫けば、これは自衛隊そのものが、政府答弁でも、もっぱら自衛に徹して、日本の平和、日本の安全を守るためだということになりましたら、自衛隊が使うこと全部が平和利用、平和目的に合致するのだということになるのじゃないか。どうですか、そういう考え方。おかしいじゃないですか。
  424. 加藤泰丸

    ○加藤(泰)政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますことは、決して自衛隊が、すべての利用というものを考えた場合においてそれが全部よろしいというようなことを御答弁しているわけではございません。大臣も申し上げましたように、事柄の事情に応じて、もちろん、われわれは国会の御決議並びに法律の趣旨というものは当然踏まえて仕事を進めなければならない立場にございますし、現在までもそうやってきたわけでございますけれども、そういった「平和の目的に限り、」というような御趣旨に、これからわれわれが検討するような内容のものがそれに照らしてどうであろうかということを、これから個別に具体的に検討するということを申し上げたわけでございまして、自衛隊のやることがすべて、それがよろしいということを申し上げたわけではございません。
  425. 野間友一

    ○野間委員 だから、すべてよろしい。答弁がそうだとするならば、逆に言って、使うこともあり得る、これは平和目的に合致するんだと、あなたの答弁の裏はそうなるわけですけれども、この点で余り押し問答しても、これ以上――これはペンディングにしておいて、いずれまた新しく機会を設けてやりたいと思います。  外務大臣、午前中にも質疑がありましたけれども、いまのレーガン大統領の宇宙政策ですね。この中では宇宙政策に関して、平和目的とは国家安全保障目的追求のための活動と認める、こういうふうになっておるわけですね。要するに、米国が自衛のため、つまり軍事利用ですね。このこと全部がこの平和目的にかなうのだということに実はなっておるわけですけれども、これは私はけしからぬと思いますけれども、しかし少なくとも日本の場合に、自衛隊が利用するあるいは活動するということは平和目的に合致する、こういうようなことは私はまかり間違っても言えないと思いますけれども、外務大臣に一遍御見解を承りたいと思います。
  426. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 レーガン大統領の示した方針は、要するに宇宙条約というのがありますから、その宇宙条約の範囲内においてアメリカが平和目的あるいはさらに総合安全保障という立場からこれを推進していくということで、これは宇宙条約の枠組みの中でレーガン大統領の方針というものが示されたものである、私はこういうふうに判断しておりますが、わが国におきましても、平和目的の範囲内において自衛隊との間の関係が生ずることはあり得ると思います。しかし個々の場合においては、これは先ほどから答弁がありましたように、個々のケースにおいては検討していかなければならぬ。これまで科学技術庁長官が答弁したとおりです。
  427. 野間友一

    ○野間委員 さあ、そこで風穴があきまして、これはいずれ決議との関係でも大論議を私はせざるを得ないと思いますけれども、それはそれとして、質問あと少しありますので続けます。  外務大臣御案内のとおり、三月二十三日、レーガン大統領が対ソ戦略の弾道ミサイル迎撃システムの研究開発の計画を明らかにしたわけですけれども、これは宇宙戦争時代の幕あけを意味する非常に危険な構想ではなかろうかと私は思うわけですね。つまり衛星を軍事の情報収集だけではなくて戦略弾道ミサイルの破壊に使う。これはますます宇宙での軍拡競争を激しくさせるだけですけれども、こういうレーガン政権の新しい対ソ戦略弾道ミサイル迎撃ミサイルシステム、これに人工衛星を使うという計画については外務大臣は支持されるのかどうか、その点聞かせていただきたいと思います。
  428. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 ちょっと申し上げたいと思うのでございますが、レーガン大統領が確かに先月の二十三日でございますが、国防政策に関する演説をやったわけでございます。その中で弾道弾ミサイルを防御するシステムに関する言及をやったわけでございますが、これはあくまでも長期的観点に立ったものでありまして、かつABM条約に背馳しない。そこのレーガン大統領が言っております新システム、それは戦略ミサイルの脅威そのものを言うなれば究極的に除去するために新しい防衛システムというものの研究開発をやれという指示をやったということでございます。ただ先生は、いま長距離ミサイルを防御するミサイルとおっしゃったのでございますが、私どもそのように実は承知しておりませんで、さらに申し上げれば、いかなる形の計画になるのか、その辺が詳細わかっていないということでございます。なお、その演説の際におきましても、レーガン大統領は、アメリカとしてこの研究開発計画をやるということがそれによって軍事的優位なりあるいは政治的優位、そういったようなものを求めることを目的とするものではない。究極的な目標は戦略核ミサイルによりもたらされる脅威そのものを除去することにあるんだ、こういうことを言っている次第でございます。  以上でございます。
  429. 野間友一

    ○野間委員 時間がありませんので、余り詳細を私申し上げるわけにもいきませんけれども、要するに地上に配備したレーザー兵器からレーザー光線を宇宙に向けて発射する。そして巨大な鏡を装備した人工衛星に反射させて発射された核ミサイルを破壊する、こういう構想のようですね。これは新聞報道等で、たとえばキーワース博士とかいろいろな人のあれがテレビでのレーガン大統領の発言を受けて補足して具体化しておるわけですけれども、こういうものでしょう。
  430. 山下新太郎

    ○山下(新)政府委員 確かに三月二十六日付でワシントン・ポストが報道したところによりますと、キーワース大統領科学顧問がレーザーを地上に配備いたしまして、これと巨大な鏡を搭載した人工衛星を組み合わせたシステム、そういったものが考えられるということを言っているだけでございます。それがこれから先ほど申し上げました指示に基づいて行われる研究の中身になるかどうか、その辺私ども承知していない次第でございます。
  431. 野間友一

    ○野間委員 承知していないというけれども、これは新聞報道等にもありますし、「世界週報」の中でも久住さんがいろいろな具体的な中身について書いておるでしょう。これは読んでおるはずですね。つまりこういうようなことが起こるというのは、単に衛星そのものをこれは偵察とかそういうものに使うだけではなくて、それによって弾道弾ミサイルを破壊する、こういうことになれば、外務大臣、どえらいことになると私は思うのですね。こういうようなことが次から次と計画される。恐らく私がいま前提として申し上げたそういうことが行われた場合、これは一体いまある宇宙条約に違反するのかどうか。恐らく違反しないと思うのですが、これはどうなんですか。
  432. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  宇宙条約が軍事利用に関連いたしまして明確な禁止を置いておりますのは、その第四条でございます。御案内のように第四条前段におきましては、核兵器その他の種類の大量破壊兵器を地球を回る軌道に乗せないこととか天体に配置しないこと及びいかなる形でも宇宙空間に配置しないことを決めているわけでございます。それから後段におきまして、月その他の天体自体はもっぱら平和的目的のために利用されるので、これを軍事利用してはいけないということで若干の例示を挙げているわけでございます。そういう意味で完全な軍事利用の禁止が及んでいるのは月その他の天体でございまして、その他の宇宙空間につきましては、第四条の前段で禁止されていること以外は特に禁止を設けていないというのが現状でございまして、これがこの条約採択の当時、この条約宇宙の非軍事化において欠けるところがあるという御批判をいただいている点であることは私ども十分認識しておりますし、当時そのような御批判をいただいたことは記録に残っております。
  433. 野間友一

    ○野間委員 だから大臣、いまの都甲さんの話にもありましたけれども、結局宇宙条約がありながら宇宙空間とか軌道の軍事利用、これは禁止していないわけですね。このために逆に言うてむしろこれが許されるという、条約では規制されておりませんからね。だから米ソの宇宙軍拡、これは次から次と進めるわけなんですね。イタリアが七九年に、宇宙条約の第四条に、月その他の天体を含めた宇宙は平和目的のみに使われる、これを加えるべきだというようなこともジュネーブの軍縮委員会に提言しておりますし、その他幾つかあるわけですけれどもね。だから、こういう午前中から論議もありましたけれども、結局宇宙空間とか軌道の軍事利用の禁止、これに向けて国際的な場でも日本がイニシアチブをとりまして、こういう方向で宇宙条約の中にほうり込んで宇宙の軍拡の拡大を絶対に許さない、そういう立場で私は取り組むべきじゃないかと思いますけれども、その点、どうなんですか。
  434. 遠藤哲也

    ○遠藤説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、実は日本政府といたしましても、宇宙での軍備競争防止というような観点から実は昨年もイタリア、その他の国と一緒だったわけでございますけれども、特に対衛星システム禁止のための効果的かつ検証可能な協定に関する交渉の問題について軍縮委員会で議論してくれ、こういうふうな案を提出いたしたわけでございます。この決議案は多数でもって国連総会で採決されたわけでございます。
  435. 野間友一

    ○野間委員 大臣、そういう意味で宇宙空間等の軍事利用の全面禁止について、宇宙条約の相当大きなざると申しますか、弱点、欠陥なんで、積極的にイニシアとりまして、こういうものをぜひとも盛られて、宇宙の軍拡あるいは核軍拡そういうものを絶対にそれ以上許さない、そういう立場でぜひひとつ強力に働きかけてほしい、そういう趣旨で私は、外務の理事会でも決議案文なるものを出しておりますけれども、それについての外務大臣の所見をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  436. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 宇宙条約というのは、御承知のように米ソのいわば妥協の産物としてできたわけでありますが、その中には、大量の破壊兵器を搭載してはならないという評価すべき点もありますけれども、一応この軍事利用を全面的に禁止しているわけではない。その中で、宇宙における軍事競争というのが行われておるわけでありまして、これがどんどん熾烈になるということは非常に危険なことでありますから、日本としても、軍縮委員会あるいは国連等におきましてもこれまでも宇宙の平和利用ということについて積極的な努力をいたしておりますが、今後ともいま申し上げましたような基本的な精神にのっとって努力を重ねてまいりたいと考えております。
  437. 野間友一

    ○野間委員 終わります。
  438. 竹内黎一

    竹内委員長 この際、委員長から一言申し上げます。  政府においては、国内法の整備をできるだけ速やかに行うことを強く要望いたしておきます。  これにて各件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  439. 竹内黎一

    竹内委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、宇宙飛行士救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体返還に関する協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  440. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  441. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、宇宙空間に打ち上げられた物体登録に関する条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  442. 竹内黎一

    竹内委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。
  443. 竹内黎一

    竹内委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  444. 竹内黎一

    竹内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  445. 竹内黎一

    竹内委員長 次に、千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件及び領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。  これより各件について政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣安倍晋太郎君。     ─────────────  千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件  千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件  千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によつて改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件  領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  446. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ただいま議題となりました千九百八十三年の国際コーヒー協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、延長された千九百七十六年の国際コーヒー協定にかわるものとして、昭和五十七年九月十六日に、ロンドンで開催された国際コーヒー理事会において採択されたものであります。  この協定は、輸出割り当ての実施によって国際市場におけるコーヒーの著しい価格の変動を防止し、コーヒーの需要と供給との間の妥当な均衡を達成するとともに、コーヒー生産国の輸出収入の安定を図ること及びコーヒー消費国への公正な価格による供給を図ることを目的としております。わが国がこの協定締結することは、消費国であるわが国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にあるコーヒー生産国の経済発展に引き続き協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十二年のジュート及びジュート製品に関する国際協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、ジュート及びジュート製品について作成された商品協定であって、昭和五十七年十月一日に、ジュネーブで開催された国際連合ジュート及びジュート製品会議において採択されたものであります。  この協定は、研究開発等の事業の実施を通じてジュート及びジュート製品輸出国の輸出収入の安定を図ることを主たる目的としております。わが国がこの協定締結することは、輸入国であるわが国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にあるジュート及びジュート製品輸出国の経済発展に協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する千九百七十一年の小麦貿易規約及び千九百八十年の食糧援助規約有効期間を更に延長する千九百八十三年の議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昭和四十六年に作成されました千九百七十一年の国際小麦協定は、小麦の市況に関する情報交換等について定める小麦貿易規約と開発途上国に対する食糧援助について定める食糧援助規約から成っておりますが、両規約は昭和五十八年六月三十日に失効することとなっておりますので、昭和五十七年十二月ロンドンで開催された政府会議において、その有効期間を三年間延長することとしました。これらの議定書は、このような延長について定めたものであります。  これらの議定書締結することは、小麦貿易に関する国際協力の促進が期待されること、開発途上国の食糧問題の解決に貢献することとなること等の見地から、わが国にとり有益であると考えられます。  よって、ここに、これらの議定書締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百八十二年六月二十四日に採択された千九百二十八年十一月二十二日にパリで署名され、千九百四十八年五月十日、千九百六十六年十一月十六日及び千九百七十二年十一月三十日の議定書によって改正され及び補足された国際博覧会に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際博覧会条約は、国際博覧会の開催頻度等について規制しており、その中で国を異にして開催される二の一般博覧会の間には、最低七年間の間隔を置くこととなっております。しかし、現在、フランスは、一九八九年にフランス革命二百年記念パリ万国博覧会を、アメリカ合衆国及びスペインは、一九九二年にコロンブス新大陸発見五百年記念シカゴ・セヴィリア万国博覧会をそれぞれ開催することを強く希望し、これらの計画を博覧会国際事務局に申請しております。博覧会国際事務局の総会は、これらの博覧会の競合問題について検討した結果、両博覧会とも歴史的事実に由来する国家的記念事業としての博覧会であるため、いずれかの博覧会の開催の年を変更することは不適当であるとの結論を得、例外的かつ特別な場合には、一般博覧会の開催間隔を短縮できることとする条約改正案を昨年六月にコンセンサスをもって採択しました。  わが国がこの改正を受諾することは、国際博覧会を通ずる国際協力に資するとともに、昭和六十年にわが国で開催される国際科学技術博覧会の成功のために各国の積極的な協力を得ていく上で重要かつ有意義であると考えられます。  よって、ここに、この改正の受諾について御承認を求める次第であります。  最後に、領事関係に関するウィーン条約及び紛争の義務的解決に関する選択議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約及びこの選択議定書は、国際連合の主催による全権委員会議で昭和三十八年に作成され、昭和四十二年に効力を生じております。  この条約は、領事上の特権及び免除その他領事関係全般に関する国際法の規則の明確化及び統一化を図るものであり、また、この選択議定書は、この条約の解釈または適用から生ずる紛争の義務的解決について定めたものであります。  わが国がこの条約及びこの選択議定書締結することは、これまで主として国際慣習法によって規律されてきたわが国と諸外国との間の領事関係を一層円滑に処理する見地から有意義と認められます。  よって、ここに、この条約及びこの選択議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上五件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  447. 竹内黎一

    竹内委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  各件に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会