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1983-04-13 第98回国会 衆議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年四月十三日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 原田  憲君    理事 三枝 三郎君 理事 三塚  博君    理事 宮崎 茂一君 理事 湯川  宏君    理事 福岡 義登君 理事 吉原 米治君    理事 西中  清君 理事 中村 正雄君       阿部 文男君    小里 貞利君       大村 襄治君    鹿野 道彦君       川崎 二郎君    久間 章生君       佐藤 文生君    志賀  節君       谷  洋一君    近岡理一郎君       浜野  剛君    原田昇左右君       井岡 大治君    小林 恒人君       沢田  広君    下平 正一君       浅井 美幸君    小渕 正義君       辻  第一君    三浦  久君       四ッ谷光子君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君  出席政府委員         内閣審議官   林  淳司君         厚生省年金局長 山口新一郎君         運輸政務次官  関谷 勝嗣君         運輸大臣官房長 犬井 圭介君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君  委員外出席者         自治省行政局振         興課長     濱田 一成君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         日本国有鉄道常         務理事     橋元 雅司君         運輸委員会調査         室長      荻生 敬一君     ───────────── 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   津島 雄二君     小里 貞利君   辻  第一君     三浦  久君 同日  辞任         補欠選任   小里 貞利君     津島 雄二君   三浦  久君     辻  第一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案内閣提出、第九十七回国会閣法第三号)  船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四六号)  海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第四八号)      ────◇─────
  2. 原田憲

    原田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。井岡大治君。
  3. 井岡大治

    井岡委員 国鉄再建の問題はこれで何回かやったわけですけれども、その都度、昨日も同僚の福岡君が申しておりましたように、これで大丈夫だ、これでやるんだ、こういうことをその都度聞くわけですけれども、しかしだれも責任をとろうという者がおらない。責任をとった者もおらない。ここに私は親方日の丸、こう言われるゆえんがあるのではないか、こういうように思います。したがって、今度の法案審議するに当たって、どうもお互いが本当に再建をするんだ、こういう熱意というものがややもすれば薄れておるんではないか、ずっと聞いておりましたけれども、そういう気がしてなりません。本当にこれでもって再建をするのだというのであれば、もっとやはり真摯な態度というものが必要であると同時に、自分はこれにかけるんだ、こういう思想がないと幾らやったって同じことだ、こういうように思われてなりません。  そこで、大臣御病気のようですから私は大臣には余り質問をしませんけれども、ここのところだけは大臣としてひとつ明確にお答えをいただきたい、こう思います。
  4. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 御同様、国鉄再建については何回となくこの席上で法案を見たり助成策に対して賛成したり、そして国鉄全体が再建できるように御期待申し上げたことは御同様でございます。しかしながら、結果においては今日のような破局的なことになったので、国民全体が国鉄の問題というのは国民的課題として考えるように至った。一部関係者だけ、一部専門家だけの問題ではなくなったというところに今度の大きな意義があろうと私は思います。  私個人といたしますと、やはり総理大臣運輸大臣、さらに国鉄総裁、こういう人々が本当に決意を持って、国の中のもう一つ赤字国鉄、これを何とかしなければならぬという決意が燃えることが大事だ、こう考えていままで来ました。幸いにいたしましてか不幸にしましてか、今度のこんな時期に私が運輸大臣を拝命したものですから、少なくともそういう意味において、お互いが本当に責任をとる意味において、それがまた働く諸君に対する勢いをつけることであり、職場規律ということが昨年以来言われて、ようやく立ち直りつつあるという信用を獲得して、そんな中に長期債務の問題であるとかあるいはまた年金の問題であるとか、みんなで考えてこの際生かしていくという姿が大事じゃなかろうか。井岡さんおっしゃるとおり、まさにいままでそんな意味では責任をとる人がおりませんでした。しかし私は今度が絶体絶命だと思っておりますから、このとおり皆さん方に、ときに法案撤回とか反対とかいろんなことを言われるけれども、よくお話願ってここまで来た、それをまた責任を持っていまから先、私自身が、再建法が通った後、総理大臣指揮下において懸命に努力して責任をとるつもりです。
  5. 井岡大治

    井岡委員 大臣の御決意、本当に感謝をします。  そこで、当事者である総裁はどういうお気持ちか、聞かしてください。
  6. 高木文雄

    高木説明員 御指摘のように、長い間しばしば立て直しについて御意見を賜りました。私どももそれなりに一生懸命やってきたつもりではおりますが、結果、なお一層こういう新しい形でお取り組みをお願いしなければならない事態になりましたことについて、まことに残念と申しますか、力足らざるを感ずる次第でございます。  しかし、本来この問題は大変大きな問題でありまして、最近の行政改革なり財政再建なりという問題の中で、非常に大きな位置づけにあるということがこのたびまた改めて浮き彫りになってまいりましたわけでございますので、私どもも謙虚にそれに向けて邁進をいたしますが、委員会ができましたならば、そこでまた速やかなる思い切った解決策の御提示があることを強く期待をいたしておりますし、また、私どもは同時に、まず第一に私どもが取り組むべき事項の持つウエートが非常に高いわけでございますので、一日一日そういった仕事の積み重ねに努力をしてまいりたいと考えております。
  7. 井岡大治

    井岡委員 原因が、もちろん国の政策の中で交通というものに対する基本的な考え方、総合的な計画、こういうものがなかったことは事実です。だからといって責任が逃れられるものではない。やはり一つのことにすべてをかける、こういう気魄がないと物事は決して成就するものでない、こういうように私は考えるわけなんです。したがって、総裁にもう一度お伺いしますが、ややもすればトラックに荷物を奪われたとかあるいは客が逃げてしまったとか、モータリゼーションによって客が少なくなったとか、そういうことは当然頭の中に置いて考えられることなんです。そこに逃げようとする、私は、そこに親方日の丸思想が依然として残っている、こう言わざるを得ません。したがって、今後この問題を通じて再び国会の場で国鉄再建について論議をすることのないようにぜひひとつお願いしたい、この点についてもう一度お聞かせを願いたい。
  8. 高木文雄

    高木説明員 確かに国鉄の置かれております環境は、独占の時代と変わってきたということは前々から認識しておるわけでございますけれども、つまり、競争時代に入っていったという場合の、その競争時代に対応する姿勢といいますか、腰固めといいますか、そういう点が頭ではわかっておっても、なかなかそれが実践に結びついていってないということは御指摘のとおりでございます。貨物等につきましても、待ち姿勢であり過ぎる、もっと攻め姿勢であるべきだということをかねがねいろいろ言われてまいったわけでございますし、何とかそういう工夫といいますか、姿勢転換を早くいたさねばという気持ちは持っておるのでございますけれども、まあ長年のしみついたものといいますか、そういうものとの関係でなかなか攻めというところにいってないということでございまして、問題は、そうした情勢の変化に応じて、すべての面においてよい競争条件のもとにあるのにふさわしい態勢といいますか、姿勢というものをとるべく指導してまいらねばならぬと考えております。徐々に変わってきているつもりではおりますけれども、いかにも変わり方が不十分といいますか、遅いといいますか、そういうことでいま御指摘を受けているものと感じております。なお今後職員を督励いたしまして、姿勢転換に努めてまいりたいと考えます。
  9. 井岡大治

    井岡委員 法案審議に入る前に、もう一つだけ聞いておきたいのです。  総裁、新しく建設をされようとしておる線区、それからいま建設中の線区は何線ありますか。
  10. 高木文雄

    高木説明員 ちょっと正確な数をいまここで申し上げられませんのですけれども国鉄でかねがねつくってまいりました線区につきましては、この夏に中央東線の塩嶺トンネルができますとほぼ一段落という形になろうかと思っております。  なお、鉄建公団等関連で、一つ東京周辺京葉線区、それから東北新幹線に関連いたしまして、大宮から赤羽までをつなぎます通勤新線といったものが非常に大きなプロジェクトとして、通勤新線の方はすでに始めておりますし、京葉の方はこれからということになっております。また、関西におきましては、調査中といいますか、まだ実施に入っておりませんけれども片町線福知山線をつなぐ線、それから、いま貨物線として専用しておりますところの環状線旅客用にするという計画といったようなものが大変大きな計画としてありますが、最近の設備投資の抑制ということとの関連もありまして、現時点においてはもうしばらく様子を見るということにしておるわけでございまして、御趣旨にお答えすることになっていないかもしれませんけれども、大きな線区といたしましてそういう線区はほとんどないわけでございます。  なお、以上とは別に、御存じの鉄道建設公団鉄道敷設法以来の懸案事項として進められておりました、あるいはAB線という名のもとにおいて、あるいはCD線という名のもとにおいて行われている新線建設線区があるわけでございますけれども、現実問題としては、ごくわずかの線区を除きましては、現在、いわば凍結の状態になっておるということでございます。
  11. 井岡大治

    井岡委員 総裁といったらおおらかにできておりますから、細かいことはわからぬ。そこに問題があるのですよ。少なくとも建設をしようという線区ぐらいは覚えておいてもらわなければ、つくった後で赤字が出た、これは私は知らぬ。私が責任と言ったのはそこなんですよ。そういうことを今後十分気をつけていただきたいと思います。  そこで、法案に入りますけれども大臣、お疲れだったらいつでも結構です、最後に私は大臣に聞くところが一つありますから。  この法案で、第一条で「行政調査会答申を尊重し」、このことで先日来からかなり議論のやりとりがありました。本当の姿勢というのは、お話のように民営、こういうことを考えてやるけれども、しかし、それでいかなければどうするのだということ、これがない。だから、民営ということ、これはいずれにしたって民営的手法、私はそういうように解釈をする方がよりベターでないか、こういうように思うのです。そうでないとはっきりした答えは出てきません。もし、そうでないというのなら、法案はやはり民営法という法案出してくるべきですよ。五年かかったって幾らやったって、尊重ということに対する答えが、この間から聞いておるとどうも二様三様に聞こえてならないのです。だから、ここのところをもう一度はっきりしてください。
  12. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。  臨調答申は、この基本的な考え方は、国鉄のいまの状況から見て、現行公社制度というものの部分的な手直しではもはや対応できないという認識に、基本的には立っておるということでございます。したがって、そういう状況である以上は、現行公社制度という枠組みを超えて、もっと幅広く経営形態というものを検討すべきだ、こういう基本認識に立って臨調では検討が行われた。その結果、臨調としては、一つ方法論といたしまして分割民営化というのが一番いいだろう、こういう結論をお出しになったわけでございます。  そこで、私ども政府としましては、その臨調考え方というものについては、きわめて妥当な方向を示しているのではなかろうか、こういうことで、臨調答申は最大限尊重する、こういう閣議決定をした上で、今回の法案をお出ししたわけでございます。この法案におきまして、第一条で、御指摘のように臨調答申を尊重して体制を整備する、こう書いてございますのは、そういう臨調考え方及び一つ方法論というものについて、これを特段の合理的な事由があれば別でございますけれども、そうでない限りは最大限その考え方に沿って対処していく、こういうことでこの法案をお出ししたわけでございます。したがいまして、この第一条の基本方針に従って監理委員会がこれから検討していくに際しましては、臨調答申基本的な考え方である現行公社制度枠組みを超えて抜本的に検討する。その場合の一つの手段、方法としまして分割民営化、こういうことを提言しております以上、その線に沿って監理委員会としてはまずは検討を進めていく、これが基本になると思います。  ただしかし、臨調答申は再々申し上げますように、基本的な考え方しかまだ示しておりません。具体的にじゃ分割民営というのはどういうふうにするのか、さらにその実施可能性は一体どうなんだという点については、臨調答申はまだそこまで何ら突っ込んでおらない。基本的な方向はきわめて妥当ではあるけれども、その点については具体的に検討を詰めませんことには、これは現実の施策に落とせません。したがいまして、今回の法案におきましては、それをこれから検討していく、そのために監理委員会をつくって御検討を願う、こういう枠組みにしてあるわけでございまして、したがって、監理委員会においてこれから検討する以上、検討した結果どうしてもそれによりがたいという特段事由がございました場合には、分割民営化以外の結論を出さざるを得ない場合も出てくる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  13. 井岡大治

    井岡委員 答申の中で、前段は別として、新しい仕組み必要性という項の中で、「現在の国鉄にとって最も必要なことは、」と書いて、経営者が真の経営責任を自覚し、こういうところから始まって三項目に分かれているわけですね。こういう問題についてじゃどういうようにお考えになりますか。これははっきりこれが一番国鉄が現在必要なことなんだ、こう言っているのです。これを検討されたかどうか。あなたはそれはいやこれから監理委員会をつくるんだから、こういうことでございますけれども、少なくとも国鉄再建するというのであれば、臨調を尊重するというのであれば、何も民営かあるいはこのままかという論議でなくて、このことを先に論議をすることが先決ではないかと思うのですが、この点いかがです。
  14. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 先生指摘のとおり、臨調答申では現在の国鉄に必要なこととして三つ項目を掲げてございます。この問題を解決するためには、現行制度手直しではこれはむずかしい、したがって新しい仕組み考える必要がある、こういうことで分割民営化方向提言しているわけでございますが、私どもといたしましても、この三項目について、これはやはりいままでの国鉄経営の上で非常に問題があった事項であり、こういう点について十分考えながら今後の再建考えなければならぬ、こういう基本的な認識は持っておるわけでございまして、したがいまして、おおむねこの答申提言と申しますか、この答申がいろいろ分析し、検討された事項については政府としても同感できる点があるということで、これを閣議で最大限尊重して今後の対策を講じていこう、このように考えておるわけでございます。
  15. 井岡大治

    井岡委員 そういう答弁だろうと思ったのですが、私は臨調のなには、民営民営でないかという論議よりは、こういうところが大事に大切にされなければ臨調の価値というものがないと思うのですよ。ところが、こういう問題について国鉄当局も、また運輸省も本当に真剣にお考えになったかどうか。この点、運輸省の方から聞きましょう。
  16. 永光洋一

    永光政府委員 現在の公社制度のもとで、先生がおっしゃるような三項目について徹底的にやっていけば臨調答申趣旨にも合うのではないかという御議論と、さらに従前どういうようなことでこの一、二、三項目についてわれわれとして行政をやってきたかというお尋ねでございますが、過去、再建計画におきましての反省をもとに、昭和五十五年につくりました経営改善計画におきましては、ここに書いてありますように、できるだけ国鉄管理責任としての経営責任を自覚して、第四次の経営改善計画推進するように、改善計画にも十分にその趣旨を盛り込み指導しておるところでありますし、さらに職場規律等々、国鉄職員の厳しい現状に対する認識についても、十分これを訴えつつ指導をいたしておるところでありますし、さらに国鉄自主性等につきましても、できるだけ法の範囲内では自主性を尊重する形で行政をしてきたつもりでございますが、どうしても国鉄の現在の公社制度のもとでのいろいろな制限がございまして、いろいろな面で至らない点もあると思いますが、われわれとしましては、こういう提言もある意味においては採用しながらやってきたつもりでございます。
  17. 井岡大治

    井岡委員 いままでやってきたつもりだと言われるんだったら、この提言を受けたのは去年ですね、少なくともこれに対しての運輸当局考え方というものを明確にされるべきだったと思うのです。いまだ聞いたことありません。民営民営でないかということになって初めて腰をお上げになったんじゃないですか。少なくとも去年の七月にこの提言が出されているのですよ。提言が七月に出されたら、あれから約一年近くなるわけなんですよ、そういうことで、少なくとも当面この提言に基づいてわれわれはこう考えるという考え方があってしかるべきだと思うのですが、それありますか。言葉だけの遊戯はもうやめましょうや。そうでないと、大阪の言葉で言って、しんどくてかなわぬということですよ、正直に言って。ここのところを、あなた方が提言を受けて考えられたことを具体的に言ってくださいよ。
  18. 永光洋一

    永光政府委員 先ほど申しましたように、五十五年の改善計画におきまして、責任体制確立なりあるいは職員意識の高揚といいますか、認識につきまして、これをベースにしまして現在の改善計画を遂行しておるところでありますが、臨調答申後におきましては、昨年九月二十四日に緊急項目を策定いたしまして、その中で職場規律確立等について重点的に政府考え方を鮮明にし、そしてそれに基づきまして、国鉄に対しましても職場規律確立等につきまして指導をいたしておるということは、これは臨調答申のこの三項目の中の一つの具体的な施策の遂行である、こういうふうに考えております。
  19. 井岡大治

    井岡委員 なるほど二項の問題については、あなた方は十項目出しましたよ。一項目の問題はどうなるのですか。これについてあなた方が国鉄に指示したそのことを教えてください。
  20. 永光洋一

    永光政府委員 一項目と申しますのは、「経営者が、経営責任を自覚し、それにふさわしい経営権限を確保し、企業意識に徹し、難局の打開に立ち向かう」、こういうことでございます。具体的にと申しますか、これは緊急実施非常事態宣言政府として行った以降におきましても、国鉄当局経営者に対しまして、われわれとしてこの一項目に書いてございますような、いわゆる経営責任の自覚なり企業意識に徹するようにはかねがね十分に指導をいたしておるつもりでございます。
  21. 井岡大治

    井岡委員 それでは総裁、この一項についてあなたは具体的に何をやったか、一遍聞かせてください。
  22. 高木文雄

    高木説明員 若干私は、井岡委員のこの答申についての読み方と違う読み方をいたしております。経営者経営責任を自覚し、難局に立ち向かうということが必要だという点においてはまさにそのとおりでございますけれども臨調では「これらのことは、単なる現行公社制度手直しとか、個別の合理化計画では実現できない。」こうおっしゃっておるわけでございまして、いま委員の御指摘のようなことでこれを指摘されているのではないのではないかと思っております。私どもといたしましては、その三つ項目具体化といたしまして、そうした「新形態移行までの間緊急にとるべき措置」ということを指摘されておるわけでございますから、これにいま全力を挙げておるわけでございます。  おっしゃるように、必ずしも現行公社制度手直しをしないでもこれらのことができるではないかという意味であれば、その点については私は今後監理委員会で御論議いただけるということに受け取っておるわけでございまして、公社制度はだめだとここにはお書きになっておりますので、私どもは、いまおっしゃったようにこれを受けて、去年からいままで何をしてきたかということについては、強いてそこにはウエートを置かずに、それまでの移行のための措置というところに重点を置いてきておるわけでございます。
  23. 井岡大治

    井岡委員 臨調は、いま林さんの御答弁では二年かかってこの問題を一遍検討する、こう言っているのですよ。民営にするか、民営がだめならどういう方法があるか、こういうことを二年かかって検討する、こう言っているのですよ。それを、臨調待ちあるいは委員会待ち、こういうことだから私は初めに言っているのです。責任の所在というものを、責任をとろうという者はおらない。だから言っているのです。これは直ちにやったっていいことじゃないですか。そうしてそのことによって国鉄経営にプラスになるということであれば、臨調のいわゆる次につくられる委員会の中でも、なるほどこれだ、こういう実証ができるのではないですか。私は、総裁としてはそういうことを考えるのが当然だと思うのですが、私の読み方はあなたと違います、だから待っているんです、こんな無責任態度というものは、私はどうしても納得できません。もう一遍聞かせてください。
  24. 高木文雄

    高木説明員 その点が今回の臨調のお考え方とわれわれの考え方とも違う点でございまして、臨調としては、この点を打開する道として公社制度の見直しとか、個別の合理化計画では実現できないと断定されておるわけでございます。それに対して私どもとしましては大いに異論を持ちますけれども、しかしこれは臨調答申答申でございますし、いま御指摘を受けている点は、それがためには、その数行下にいろいろありますように、新形態移行までに緊急措置をとれということを言われており、これは私ども全く同じ意見でございますから、先ほどの政府閣議決定にも基づきましてそれと取り組んでおるわけでございまして、この点においては若干の認識の違いがあるということを率直に私は考えております。
  25. 井岡大治

    井岡委員 どうも私は納得しませんね。ところがあなた、二項については大胆に十項目をお出しになったじゃないですか。一項については、監理委員会ができるまでわれわれは読み方が違うんだ、民営ということは利点はあるけれども、われわれとしてはこの点については考え方があなたと違います。おかしいじゃないですか。それだったら、出した十項目を引っ込めなさいよ、こう言いたくなりますよ。どうです、その点。
  26. 高木文雄

    高木説明員 ここに挙がっております問題点指摘としての三項目のいずれにも関連して、十一項目が指定されているものと考えております。「職場規律確立し、」云々ということがございますけれども、十一項目というのは必ずしも職場規律の問題だけじゃないわけでございまして、たとえば「企業意識に徹し、難局の打開に立ち向かう」ということの一つ方法として、新規採用の原則停止であるとか、設備投資の抑制であるとか、貨物営業の合理化であるとか、いろいろ言われておるわけでございまして、それのうち十一項目に言われていることは、必ずしもいまの御指摘の三項目の第二項目に関することだけでないわけでございますので、そういう意味ではこの十一項目との取り組みが一項目関係ないじゃないかという御指摘であれば、私はそう受け取らないわけでございます。
  27. 井岡大治

    井岡委員 この問答をやっておったらばからしくなってきますから、ここに責任を持とうという姿勢がない、こういうように私は理解します。  次に移ります。  そこで林さん、体制の整備、最前から言われて、この間からも何回も聞いておりますから改めて聞くのはどうかと思いますけれども民営的手法、こういうような理解の仕方もある、こういうようにお考えになりませんか。
  28. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 現在の国鉄民営的手法を取り入れてできる限り早急に経営改善を図るということは、これはきわめて大事なことだと思います。ただ、臨調答申にも言っておりますけれども民営的手法現行の公社制の枠組みの中で果たしてどこまで生かし切れるかという問題がやはりあるんだろうと思います。たとえば予算統制でありますとか、こういうことは給与から何から全部国の統制を受ける、こういう経営自主性がない現在の公社制度というもので、果たしてどこまで民営的手法が生かし切れるのかという問題があるんだろうと思います。そういうところから、臨調答申もその枠を超えた検討が必要であるという認識に立ったんだろうと思いますし、私どももそういう観点からの検討を十分詰めてみる必要があるんではないか、こういうふうに考えております。
  29. 井岡大治

    井岡委員 そうすると、現在の枠組みの中ではかなり無理はあるけれども民営的手法ということも検討する、こういうふうに理解していいですか。
  30. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 国鉄は現在公共企業体ではございますけれども事業をやっているわけでございまして、旅客営業あるいは貨物営業ということでございますから、やはり他の運輸交通機関と同様に、これについて民営的な発想あるいは手法でもって仕事をどんどんと伸ばしていく、進めていくということは可能でありましょうし、できる限度でそれはやるべきであろう、こういうふうに考えております。
  31. 井岡大治

    井岡委員 私たちも臨調と同様に、現在の国鉄再建について約一年かかって検討したわけです。その中でいわゆる支社制度、これにもっと権限といいますか、こういうものを委譲して、分権をした中で手法というものを取り入れるならば、かなり大胆なことができるのじゃないか。ダイヤをつくるのにほとんどが中央で幹線を中心にしてつくっている、こんな官僚的なやり方。だから本線が通っている、幹線が通っている、そこへ五分前に着けば十分乗りかえられるのです。ところが行った後へ着くものですから、その人は一時間も一時間半も待たなければいかぬ、こういうことで客離れが出ている。私は、これは単なる一例じゃないと思うのですよ。客離れの大きな原因はここにもある、こういうことでお考えになりませんか。
  32. 高木文雄

    高木説明員 ただいまの御指摘の、ダイヤが非常に全国統一的といいますか、地元の御要請に密着していないという点は、私どもも最近特に反省をいたしておる点でございまして、必ずしも分割民営化ということでなくても、現行組織のもとでもそういった点をもっともっと直すべきではないか、また、直し得るのではないかという点は全く同感でございまして、そのようなことをつい最近の会合におきましても強く指示をいたしております。しかし、そこへ近づくには、残念ながらうちの体質が十分ついていっていない点がありますので、私も大いに督励をいたしまして、いま御指摘のような点を早く直したいというふうに考えております。
  33. 井岡大治

    井岡委員 林さんからも答弁をいただきたい。総裁答弁は僕は全く……。
  34. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 分権化の問題でございますけれども、これも先生おっしゃるような実態的な面、すなわちダイヤとか地域に密着した経営とか、そういう面からは非常に有効な一つ方法であろうと思います。ただしかし、分権化の場合は一つの企業体の中でのいわば組織論でございますので、それで果たして事業体として、経営論としてそれが成り立つかどうかという問題もあろうかと思います。やはりその辺のところもこれから十分詰めてみる必要があるだろうと思います。ただ、おっしゃるような方向一つ方向であろうとは私も考えております。
  35. 井岡大治

    井岡委員 いまの問題は十分監理委員会の中で検討してください。というのは、分権化することによって手法が十分生かされる、こういうように私たちは信じております。だから、この点だけは十分検討してください。  そこで、その次ですが、二条の一の項です。「経営する事業に関する効率的な経営形態確立」、これは、あなたが言われるように民営あるいは民営でいかなければ手法を生かすということにならないと思うのですよ。そういうように理解していいですか。そうでないとその次の項が生きてこないのですよね。「当該経営形態の下における適正な運営の確保」、こういうようにならないのですよ。この点、どうですか。
  36. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 法律の第二条の「効率的な経営形態確立」という言葉の表現の意味でございますけれども、これは特定の会社形態とかあるいは公団とかあるいは事業団あるいは特殊会社というふうな、特定の外形的なものを指しておるのではございませんで、経営の内容というものが自主性があり、しかも非常に効率的な運営もできる、管理もきちっとしておる、そういうような仕組みを備えた組織体というもの、これを「効率的な経営形態」というふうに考えております。
  37. 井岡大治

    井岡委員 そうでしょう。だから私は初めに言っているのですよ。分権をすることによって効率的というようなことがあり得る、またできる、こういうように解釈していいか、こう言っているのはそこなのです。  もうあと時間が十五分しかありませんし、同僚が待っておりますから、次に移ります。  二条の「長期の資金に係る債務の償還」、これは、何も再建監理委員会をつくらなくとも、いまでもできることなのですよ。私は、この臨調答申の中では飛躍をしていると思うのです。先ほど総裁にお尋ねをしました点について、それからこれらについて、現在どうするかということでなくて、民営にしてからやるのだ、こういう発想なのです。私は、これはどうも意図的なように思われて仕方がないのです。本当に国鉄再建しようというのなら、何も二年も三年も、これは五年かかる、こう言っておいでになるのですから、そうでなくたって、これをこっちへ先に持ってきたって差し支えないじゃないですか。どうお考えになりますか。
  38. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 長期債務の問題につきましては、過去において二回、二兆五千億、五兆というふうに、現実に現在の国鉄という経営形態のままで棚上げをしてきております。ただ、その後、その時点と現状とでは国鉄経営も格段に違っておりまして、非常に破局的ともいうべき状況になっておる、累積債務もものすごい額になっておるというのが現状でございます。  そこで、そういう現状を踏まえて、この際、経営形態の問題も含めて、これは従来なかった発想でございますが、経営形態の問題も含めて国鉄経営体質そのもの、全般について抜本的に見直さなければならぬというのが現在の状態だろう。したがって、そういう状態の中で、一つの大きな要素である長期債務という問題も、ほかの経営形態の問題あるいはその他の諸問題とあわせて総合的に解決していかないと、切り離しての解決はなかなかむずかしいのじゃなかろうか、こういうことで臨調答申出したわけでございまして、私どももそれを受けて監理委員会と、その辺を非常に重要な項目としながらも、総合的に解決を図っていこう、こういう考え方に立っているわけでございます。
  39. 井岡大治

    井岡委員 ですから私は、監理委員会をつくらなくともこの問題は早急に結論を出すべきだ。そうでないと、五年先になってごらんなさい。六十年には二十四兆と言われているのでしょう。六十二年になったら三十兆になるでしょう。ますますやりにくくなる。こういうように考えて、この点について大臣、まことに申しわけありませんが、ひとつ御所見をお伺いしたいと思います。
  40. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 最近、累積赤字がどんどんふえていることは本当に危機的状況です。また一方、ときには棚上げなどをして応援もしてまいりました。工事費の中に助成などもしてきました。いまのような経営の体質ならば、赤字がふえようと何しようと親方日の丸で結構だ、こんな感じが、私はやはりこの際に分割民営という線と、それを受けて立つような真剣な姿の中に国民の税金が正しくとらえられる、こういう信用がなければ、長期債務の問題等々、ふえることは間違いないけれども、ふやし方が違ってくるというふうな感じを持っておりまして、そういう意味ではこの監理委員会方式というものが生まれて、その際に改めて十二分に御議論いただく。国民国鉄ですからそういう思想が大事じゃなかろうか、こう思っております。
  41. 井岡大治

    井岡委員 いままでおやりになったこと、これは私も知っています。しかし、なまはんかであったということだけは事実なんですね。やったやったと言われるけれども、なまはんかであったということだけは事実なんです。だから、この点については特に考えていただきたい。いまでもやれる、こういうふうに私は信じております。格段の御努力をいただきたいと思うのです。  あと時間がありませんから一つだけ言います。  この法律を全部読みまして、運輸大臣というのは一つもないのですよ。内閣総理大臣国鉄再建は所管大臣内閣総理大臣ですか。
  42. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 現在の状態では、国鉄の所管大臣運輸大臣でございます。
  43. 井岡大治

    井岡委員 ここが私はどうも納得がいきませんね。これは自分の所管であって、そして再建管理委員会がどのように作業されようかということについて運輸大臣として意見を聞く、この項すらないのですよ。関係閣僚から意見を聞くことはある。関係閣僚とは複数でしょう。運輸大臣としての所管事項である限り、大臣の項というのはどんなに読んでみてもたった一項目、第八条にあるのですよ。「内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係行政機関の長に勧告することができる。」これだけでしょう。どこにもないのですよ。勧告を受けるだけの責めは負わされているのです。こんな奇妙な法律はありますか。大臣どう考えます。
  44. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 この法律仕組みについて御説明いたしますが、経営形態の問題も含めた非常に幅広い国鉄についての改革をする、こういうことになりますと、関係する省庁が非常に広範にわたります。おっしゃるとおり、これは運輸大臣が中心であることは間違いございません。ただ、しかし運輸大臣だけではなくて複数大臣関連するいろいろな問題が出てくる。  そこで、ではこの問題はどう取り扱ったらいいかということで、臨調答申が出る段階でもいろいろ議論があったわけでございますけれども、これについてはいわゆる八条機関という形で国鉄再建に関する案の企画、審議、こういうことに限って、複数省庁にまたがる以上は所管は内閣総理大臣ということにならざるを得ないわけでございますが、内閣総理大臣に直結した形で八条機関としてそういう企画立案をする機関をつくろう、こういうことになったわけでございます。したがいまして、これはあくまで国鉄再建のための案の企画立案機関でございますので、通常の行政機関ではございませんし、したがって、現在の運輸大臣国鉄所管大臣であるということとは全く抵触もしないということでございます。したがって、運輸大臣としては通常の国鉄のいわゆる監督、指導あるいはその他の業務は従来と同様に続けていく。  さらに、それではこの監理委員会から意見が出てきた場合にどうなるかということでございますが、監理委員会から意見が出てまいりますと、内閣総理大臣がこれを受けとめまして、政府全体としてこれを実施に移していくわけでございます。その場合、大蔵省とかその他いろいろございましょうが、それぞれ所管に応じてそれを実施に移していくわけでございますが、その場合に、この監理委員会意見実施に当たって、中心となるのは所管大臣としての運輸大臣であるというふうに考えております。したがって、こういう状態のもとで政府全体として取り組んで、国鉄再建計画を立案し、つくり上げていく、こういう仕事だけ取り出しまして、これを内閣総理大臣に直結する機関としてこの監理委員会にゆだねることにした、こういうことでございます。
  45. 井岡大治

    井岡委員 回りくどい言い方で、私はわかったようなわからぬような気がしますよ。少なくとも運輸行政の担当者が監理委員会意見を述べられるような項目がない限り、勧告は内閣は尊重するのですから、運輸大臣は責めだけは負わされて自分の拒否権すらない。(発言する者あり)そんなことはできませんと言うことすらできない。外野席で運輸省不信任だ、こう言われておりましたが、これでは運輸大臣を全く無視したと言われても決して過言でない、私はこう思うのです。  第十二条だってそうなんです。資料だけ出せ、はい。これもはいですよ。前もはいですよ。これはなるほど監理委員会法と言いながら、監理委員会法に所管大臣意見を述べられないということ、このことについてはこの法律は欠陥だ、こう断定せざるを得ません。もう一遍答弁してください。余り回りくどいのはわかったようなわからぬような答弁になりますから。またその答弁に文句を言いたくなりますから。
  46. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 第十二条に、先ほど先生お触れになりましたが、監理委員会関係行政機関の長に対して意見の開陳を求めることができる、こういう規定がございます。したがいまして、資料提出とかあるいは説明だけではなくて、意見の開陳、これを求めるということにしておりまして、この規定を使って運輸省監理委員会とは密接に意見交換をしながら、連携をしながらやっていこう、こういう考え方でございます。
  47. 井岡大治

    井岡委員 何条に。
  48. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 第十二条でございます。
  49. 井岡大治

    井岡委員 第五条第一項または第二項で講ぜられる施策または措置に関してでしょう。第五条は、「委員会は、次に掲げる事項に関し、企画し、審議し、及び決定し、その決定に基づいて内閣総理大臣意見を述べる。」こうですよ。何もこれは所管大臣は書いてないですよ。そんなごまかしを言うのはやめておいてくださいよ。何回も何回も読んだのですから。
  50. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 いまのは第十二条でございます。ちょっと読みますと、「資料の提出その他の協力等」、「第十二条 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び日本国有鉄道総裁に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。」ということで、意見の開陳というのがこの中にあるわけでございます。
  51. 井岡大治

    井岡委員 これも私は読みました。ここで初めて運輸大臣が出たなと思ったのですけれども、当該所掌しておる運輸大臣がその他大ぜいと同じように並べられておるというところ、ここが欠陥だ、こう私は言っているのですよ。この点はどんなに言われても、初めて運輸大臣と書いてあるのです。だから、こういう点についてもっと質問したかったのですけれども、同僚がきょうは質問がありますからこれで終わりますが、十分大臣も心していただいて、この点は気をつけていただきたいと思うのです。同時に、監理委員会も独走しないように、厳に慎んでいただくことを希望して私の質問を終わります。
  52. 原田憲

    原田委員長 関連して小林恒人君。
  53. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 冒頭、昨日の質問時間の件でございますが、ちょっと私の早とちりもありまして、時間的な制約を若干犯しましたことについては大変委員長に御迷惑をおかけいたしました。冒頭おわびを申し上げておきたいと思います。  関連でございますが、昨日これだけはちょっと確認をしておきたいと思いながらできなかった部分について、一部質問を続行させていただきたいのでありますが、青函トンネルの件について一件だけお尋ねをしておきたいと思います。  昨日の御答弁の中で、青函トンネルは領土ではない、しかし領土と同様の管轄権は及ぶという、こういう解釈でございます。そういう状況の中で、領土ではないということですから、領土がふえるということには相ならぬわけですが、自治省さんにちょっとお尋ねをしておきたいのでありますけれども、恐らくこれは関係をする市町村が発生をしてくる、このように考えるわけです。その場合に、関係をする市町村に対して地方交付金というようなものが発生をしてくるのかな、その場合どういった角度からの面積計算をするのか、こういった部分について御検討をされているとすればお答えをいただきたいと思います。
  54. 原田憲

    原田委員長 小林君、大変行き届いた発言をいただきまして、かえって恐縮します。
  55. 濱田一成

    ○濱田説明員 お答えいたします。  公海下の部分のトンネルという問題でございますが、それがまずいずれの地方公共団体の区域に属するかという点が先行するわけでございます。この点につきましては、地方自治法第七条の二の規定に基づきまして内閣が関係地方公共団体の意見を聞いた上で定めることとされておるわけでございまして、工事の今後の推移を見守りながら慎重に検討してまいりたいと考えておるわけでございます。  そこで、そういったことで今度は地方公共団体の区域の中に入った場合に、その地方公共団体の面積がどうなるかというお尋ねでございますが、地方公共団体の区域といたしましては、陸域のみならず、領海等も含まれるわけでございますけれども、一般的に地方公共団体の面積といいます場合には陸地の面積を指すのが通例のようでございます。したがいまして、陸域部分の面積ということになりますと、青函トンネルの完成が直ちに関係団体の面積に影響を及ぼすということはないものと考えられるわけでございます。
  56. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 国鉄にもこの件でお尋ねをしておきたいのですが、そういった場合、国鉄が従来各市町村に納付をいたしております地方納付金、こういったものについて国鉄の側は御検討されておりますか。
  57. 高木文雄

    高木説明員 まだそこまで十分検討いたしておりません。
  58. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 次に御質問いたしますが、本法案の三条に、「緊急に構ずべき措置」として、「国及び日本国有鉄道は、第一条に規定する体制整備に資するため、」云々とありまして、緊急に措置を講ずる必要があると認められる事項が具体的に示されることはなるわけです。これはもちろんこの中でも書き示されておりますように、「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づく措置その他の必要な措置を講ずるものとする。」こういうことになっているわけでございますけれども、昨日も若干御質問申し上げましたけれども、当面緊急に措置すべき事項としてすでに今日まで取り扱ってきた項目というのは、結構多岐にわたっていると考えるわけです。加えて、経営のより効率化を推し進めていくという角度からは、ダイヤ改正の都度取り組まれた国鉄側の経営努力、こういったものも各所に点在をするわけですけれども、あえてこの第三条を起こして緊急に措置すべき事項というものが出てきたのか。これは、ここに書き示さなくとも、もうすでに実施をしているものが数多くあるだけに奇異な感じを持つわけです。あえてここに書いたということは、さかのぼって考えれば、もうすでに経営改善計画で推し進めてきた事項などを、いま改めて監理委員会法の中でもって形態を整えるという、おくればせながらという、こんなことなのかなという気がしないではないわけですけれども、あえて第三条を起こされた根拠についてお示しをいただきたいと思うのです。
  59. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 お答え申し上げます。  第三条を起こした趣旨でございますが、この法律は、これからの国鉄再建枠組みを決めた法律でございます。そこで、基本的には臨調答申を尊重して体制を整備する、その体制整備を図るために、合理的な経営形態確立、あるいは関連する長期債務等の諸問題、これを国としては適切に解決をしていく、これが主たるこれからの再建の道筋でございますけれども、この効率的な経営形態確立という問題、これに密接に関連する問題としていわゆる緊急措置があるわけでございます。緊急措置の進捗度の成否のいかんによりまして、効率的な経営形態確立というものに非常な影響を及ぼしてくる、密接不可分の関係にあるということで、したがって、この緊急措置というものについても、今後の再建枠組みとしてはこれを取り入れておかなければならぬということが一つと、それからもう一点は、それでは緊急措置を一体どういう法制下で行うのかということについて明確にしておかなければならない。これについて、現行特別措置法というものは、これは生かしていきましょう、こういうことで、この法律に基づいて経営改善を進めていく、その中で緊急措置実施していく、こういう仕組みの中で緊急措置を行っていきましょう、こういう二点からこの第三条を起こしたわけでございます。
  60. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 そこで、重ねて御質問申し上げたいのでありますが、本年一月、日本国有鉄道は「新しい鉄道貨物営業について」、いわゆる貨物経営改善の進め方を明らかにされました。五十八年度、五十九年度、二度にわたってダイヤ改正を実施する、当面、五十九年二月のダイヤ改正を一つのめどにしながら、終局的には昭和六十年度の収支均衡の実現を図っていく、健全経営の回復を図りたい、こういう趣旨でございますが、中身を読ませていただきますというと、国鉄の貨物輸送方式は大きくは二分されると思います。直行系輸送とヤード系輸送、こういうことになるのでありましょうが、この中で指し示されている中身というのは、ヤード系輸送体系というものを省力化をしてしまって、直行系の中ではコンテナとそれから物資別専用貨物、こういったところに集中を進めていく、こんな考え方になっているようでありまするけれども、総体的にコンテナ九百万トン、物資別専用列車で五千二百万トン、こういったものについては、従来以上に若干の営業体制の強化といいましょうか、そういったものを見込むことができるのかなという気がしないではありませんが、一方、ヤード系の貨物輸送体系がほとんどなくなっていってしまう。列車の本数にして一日当たり二千四百五十本あるわけですから、年間輸送量で約五千万トン。こういった貨物輸送体制が仮に昭和六十年度をめどにして生み出されてくるとした場合、すでにこういう計画が着々と進んでいるという状況の中で、果たして、日本国有鉄道は貨物輸送体制の四分の一くらいになりましょうか、こういった部分についてはもう放棄をしてしまったのだろうか、こういう疑念を持たざるを得ないわけです。私どもが従来主張してまいりましたように、総合的な交通体系、旅客、貨物を含めてやはり国鉄が担っていかなければならない課題というのは大変大きいわけですし、特に年間五千万トンの輸送量が従来もあったという、そういう体制をしいてきたということから考えますると、これはちょっと乱暴な施策ではないのかな、こんな気がしてならないわけです。この点について運輸省の側としては、こういう体系を組み立てるに当たって他に派生をしていく課題、こういったものなどを含めて、特に考え方があったらお示しをいただきたいと思うのです。
  61. 永光洋一

    永光政府委員 国鉄の貨物につきましては、国鉄経営収支に非常に影響がありまして、現在の収支状況の悪化の大きな要因になっておりまして、昭和六十年度には貨物の固有経費でもって何とかつじつまが合うところまで合理化をしていこうということが一点、それからやはり鉄道の特性としまして、貨物については大量定型輸送で物流ニーズに合うように形にシステムを変えていこうということが基本であると思います。その中で、いわゆるヤード系輸送方式と申しますものは、過去においては過半が国鉄貨物はこういう方式で運ばれておったのであります。しかし、近年輸送量が減少しまして、非常にこのヤード方式のコストがかかるということもありまして、先ほど申しました固有経費の均衡あるいは物流ニーズに対応するという観点から、先生いま申されましたように、拠点間の直行輸送方式に輸送方式を全面的に転換していこう、こういうことでございます。したがいまして、どうしてもヤード経由の輸送にしかなじまない貨物というものは、どうしても鉄道に乗らなくなるわけでございまして、現在ヤード輸送で経由しておりますものでもコンテナ化できるもの、あるいは拠点直行輸送へ集約できる貨物は、できるだけそちらの方に吸収していく営業努力なり、地元の協力を求めるべきだとわれわれも思いますので、できるだけそういう形で国鉄の貨物の分散を防ぐという努力は必要かと思います。  しかし、それをいたしましても、五千万トン近くありましたヤード経由の貨物につきまして、相当程度がこれは他の輸送機関等へ分散するということになると思いますが、われわれ企画部門等とも内部でいろいろ議論をいたしまして、マクロ的には他の交通機関等へ場合によっては移行しても、全体の流通としてさほどのインパクトはない、こういうふうにわれわれ現在では考えておるところであります。
  62. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 そこで国鉄にお尋ねをしたいのでありますけれども、そういうヤード系が全面的に廃止の憂き目を見るということになりまするというと、たとえばローカル線の廃止をも含めて危険品輸送であるとか、あるいはヤードの集約等によって、私ども調査している範囲内でも、数多くの個所で大幅な輸送困難に遭って、トラック輸送で賄っていかれるのかという大変大きな心配が出始めてきております。  たとえば千葉県の野田など発着を含めて二百万トンに近い輸送量、野田醤油の場合ですけれども、こういったものが存在をしてきたにもかかわらず、結果としては原料の輸送体制あるいは製品の輸送体制、こういったものが国鉄を利用できなくなる、こういった部分が数多く出てまいっているわけであります。加えて清水港線の廃止など、こういったものが具体化をされてくる状況の中で、ここらに対する従来の荷主対策、こういったものは具体的に進めてきた経過があるのかどうなのか、ここらについてつまびらかな御説明を賜りたいと思います。
  63. 橋元雅司

    ○橋元説明員 お答え申し上げます。  一月の三十一日に今回の改善案を発表申し上げて以来、連日のように先生指摘のようないろいろな荷主さんの声あるいは関係団体からの御陳情を受けておるわけでございます。  今回のヤードを使わない輸送、拠点間直行輸送に全面的に転換するということになりますと、まずもってやはり少量分散型の貨物が私どもの輸送にうまくフィットしないということになるわけでございます。まず米でございます。これは発地が分散しておりまして、着地が大都会へ入るということでございますが、これにつきましては全農を初め関係の団体といまお話を進めておりまして、発を集約することについていろいろお話を進めておりますし、また、コンテナ化の具体的な方策について、現にこのコンテナ化の実績がかなり上がっております。昨年に比べて本年、五十七年度でございますが、これは約三割五分程度、三五%以上コンテナ化の実績が上がっております。そういったことで、米については具体的にそういったお話を進めておるところでございます。  また、肥料は米と逆でございまして、発は工場から大量に出るわけでございますが着地が非常に分散型でございます。これにつきましても具体的に荷主さん方とお話を進めておるところでございます。  それから一番頭の痛いのは化学工業品でございます。これは現在四百三十万トンばかり扱っておるわけでございますが、何も手を打たないとすればやはり二百万トン程度なかなか輸送が困難になるということでございまして、危険品を含めましてこの品目につきましては十分慎重に、具体的に荷主さんとお話を進めようということでやっております。  そのほか連絡社線の問題であるとか、通運事業者の問題であるとか、いろいろ影響は多岐にわたっておりますが、具体的によくその点はお話を進めてまいりたいと思っております。実は現在私ども、八千事業所の荷主さん、大体九〇%の実績をカバーするわけでございますが、八千ぐらいの荷主さんにいろいろアンケート調査をいたしまして、今度の輸送方式によってどういうふうな御影響を受けるか、それをどういった形で拠点間直行に切りかえられるか、あるいはコンテナ化できるかというようなことをいろいろ調査を進めまして、それに基づいてまた具体的な解決策をやってまいりたい、こう思っておるところでございます。
  64. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 努力をしているということについてはわかりましたけれども、当面、営業割引制度というものが現行存在するわけですけれども、たとえば荷主、通運事業者、こういった部分に対しては、月間千トン以上の荷主、通連事業者に対しては二割五分ないし三割程度の営業割引というものが行われてきた、これは国鉄の貨物局長通達によって実施をされてきたわけですけれども、たとえば現行八百五十四駅が四百五十七駅に減となっている。約四百に近い駅が五九・二から廃止になる。こういう状況の中で、もうすでに営業割引制度も廃止をしていきたい、こういうような動きがあるやに伺っているわけです。廃止をした後は荷物がなくなるわけだから、そんなことはあり得ないことはわかりますけれども、五九・二ということになりますとまだ相当時間がある。にもかかわらず廃止の方向で作業が進められていっている。一体これは、みずから荷物を避けて通っている政策のように思えてならないのでありますけれども、真正面からお伺いをいたしましたら、国鉄の貨物の側では今日検討中です、こういうお答えなんですけれども、現地の危機感、それから加えた心配、それから国鉄側の答弁とに大きな食い違いが出てきているのですね。この点について、五九・二までどうするのか。その後、いま言われたような集約体制に伴う割引制度、こういったものについてどのような考え方を持たれているのか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  65. 橋元雅司

    ○橋元説明員 割引につきましては一定の期間を限って契約をいたすわけでございますので、多くの場合四月、十月というのが更改期になっております。したがいまして、四月更改の際に具体的な条件についていろいろ荷主さんとお話をするわけでございますが、先生指摘のようなことがあれば、よく現地を指導いたしたいと思っております。私どもとしては、現に託送いただく貨物について特段そういったことを考えているわけではございません。ただ、五九Xと申しますか、来年二月以降の新体制をある程度頭に置いて、できるだけ早目に荷主さんにその事情を御理解いただいて、できるならば拠点駅へシフトしていただくということもあわせ考えながらやってまいりたい、こう思っておるところでございます。
  66. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 しつこいようですけれども現行では営業割引制度というのは存在をするし、従来どおりだということですね。
  67. 橋元雅司

    ○橋元説明員 原則的にはそのように考えております。
  68. 小林恒人

    ○小林(恒)委員 終わります。
  69. 原田憲

    原田委員長 次に、関連して下平正一君。
  70. 下平正一

    ○下平委員 関連質問でありますので、重複を避けて二つの点にしぼって御質問を申し上げたいと思います。  その前に、国鉄再建に対するわれわれの基本的な考え方を若干申し上げたいと思います。  数年前から政府関係企業で赤字問題が大きくクローズアップされました。いわゆる三K問題、政府管掌健康保険、食管会計、国鉄。かなりの論議をいたしまして、完全とは言いませんけれども政府管掌健康保険、食管会計は安定とまでいかなくとも、ほぼ見通しの立つ状況になったわけです。ところが、最大のKの一つ国鉄問題は、いろいろ論議をされながらも、また、二回、三回と再建計画が立てられながらも、依然としてよくなるどころかだんだん悪くなってきている。いままでの質疑を通じて明らかなとおり、もうすでに国鉄は破産寸前だと思います。民間会社ならとっくに破産しているはずであります。そういう状態になっておりまして、これは一体どこに原因があるか、それらの点については同僚がいろいろ質問したから省略しますが、私は二つ、三つただすべき原因があると思います。  その一つは、大変変化をする経済情勢、進歩していく社会情勢に適切に対応できるような運輸の政策、もっとせんじ詰めれば国鉄に対する政策というものが残念ながら政府から示されていない。同時に、国鉄がこの変化に対応できる体制になっていない。これが最大のポイントじゃないかと思います。二つ目には、累積赤字にしろあるいは構造赤字にしろ、国鉄赤字の現況というものはほぼ浮き彫りにされているわけであります。浮き彫りにされていながらも、食管会計で処理されたようなあるいは政管健保で処理されたような思い切った手というものが依然として打たれていない。まあまあ、まあまあというその場逃れ、場当たりに過ごしてきたということが最大の原因ではないかと思うのです。  私は、今回がチャンスだと思います。したがって、このチャンスを逃しては、再建はおろか破産に現実的に追い込まれると思います。政府責任論、国鉄責任論ということは別にいたしまして、さてそれではどうやったら解決できるかということで、私がいまこそチャンスだと言うのは、臨調答申出しました。国民的に大変な世論も喚起をいたしました。政府監理委員会法を出してきました。政府も真剣に取り組んだと私は思うのです。そういう意味から見るならば、内容等について異論はあっても、方法論意見が違っていても、政府も、与党、野党も、国民も、すべて真剣に国鉄問題を考える時期に来たんだ。したがって、このチャンスを逃してはいけないという立場で私どもは何とか実のある結論出したい。監理委員会ができましても、答申を出すのは六十年ということですから、この監理委員会の論戦を通じてもできるだけ建設的な意見を私ども出しまして、実のある結論を六十年には出したい。これが私たちの基本的な態度であります。  ところが、今回の法案になぜ私たちが反対をするのか。政府・与党の諸君がこの監理委員会法を通すことによって再建が可能なり、こういう判断に立っていることは理屈も主張も理解できます。しかし私ども考えるならば、この再建法案では国鉄再建ができないんだ、こういう論点に立っているわけであります。なぜできないか、その理由を一言で言うならば、国鉄というものの持っている公共性、これが純粋たる民間企業に分割された場合に、果たして公共性の追求ができるのか。結論から言うならば、公共性というものがずっと利潤追求に従属されてくるのではないかという心配を持っているわけであります。その点が一つであります。さらに、国鉄の最大のポイントというものは、国鉄自主性がないわけであります。国鉄自主性というものがどうやったら確保できるか、この自主性と公共性追求の点について、まだ政府・与党の説明だけではなかなか納得できない、逆になるのではないか、こう考えまして反対をいたしているわけであります。  われわれの立場はさておきまして、具体的に質問を申し上げたいことは、ずいぶんこの委員会の質疑に参加をして、多くの人の意見皆さん方答弁を聞いてみました。どうしても解せない点は、きのうの質問、きょうの井岡さんの質問にもありましたけれども、尊重するということはどういうことか、ゆうべ試みに広辞苑を開いてみました。尊重するということは「とうとび重んずること。」こう書いてありましたが、政府の説明を聞いてみると、それにもう一つついた。最大限尊重すると出た。最大限に臨調答申を尊重する、こういう答弁であります。ここに大変食い違いがあるわけであります。  特に聞きたいことは、民営分割を尊重するが、ほかによい方法があれば考えてもいいというのが政府の林さんの答弁長谷川大臣答弁は、合理的な手だてがあれば民営分割にはこだわらない、こういう答弁でありました。前の委員からもいろいろ質問がありましたけれども答弁を聞いてみてすべて監理委員会任せ、そういう態度が見えてなりません。現に国鉄は、いま続けておられる再建対策が進んでいるわけです。六十年まではこれは進んでいくわけです。答申が出るのが六十年、それを実現する法律にするために一年や二年かかってしまう。まだ四、五年もあるのであります。そういう際に、一体運輸大臣は、合理的な手だてとは何を考えているのか、抽象論でなしに具体的に答えていただきたいと思うのです。
  71. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 あなたのように国鉄に詳しい方から今日の国鉄が破局状態であるということをお話しいただいた、共通の認識に私は敬意を払います。  おっしゃるとおり、長く国鉄関係している諸君といえども、まさに国政の大重点が国鉄再建である、これはほとんど全部が認識されていると思うのです。その際に政府が御提案申し上げているのは、国鉄再建監理委員会です。いままでの三Kの話も出ましたが、三K、それぞれ手当てをしてまいりました。それぞれの場面において一度ならず痛い思いをして、党内なり国会議論も出ました。しかし、一つの曙光が生まれたというのがお互い認識です。が、なぜ一体国鉄だけは曙光が生まれないのか。黙っておったらまさに破局である。いろいろな経営改善計画もありますけれども、それがやられている間に政府が十項目にわたって重要施策を示し、それに向かって国鉄の諸君がいま努力をしているという姿も出ているわけです。  私はそんな感じからしますというと、国鉄再建分割民営という世論というものを背景にして、ここでしっかりと企業体質、経営体質、こんなものをみんなで改めて認識するということが大事じゃなかろうか。しかし物事でございますから、いろいろなことをやってみてもどうもまずいのじゃないかということも世の中にはあり得るわけです。そういう場合には、またその場合として考える余地もありはせぬか。しかし問題は、最大限に尊重するこの分割民営という線でしっかりと計画をやり直し、お互い考え方をそこに総ざらいしてみるというのが一番大事なことじゃなかろうか、こう考えております。
  72. 下平正一

    ○下平委員 これは政府の林さんの方からも答弁をいただきたいと思いますけれども、まだ大臣答弁はちょっとぴんとこないのです。もう少し具体的に聞きたいと思いますけれども、たとえば、いまの経営形態は公共企業体と言われておりますね。公共企業体というものが、発足の当初からさかのぼってみて果たして十分な論議をされ、国情に合った形でパブリックコーポレーション、公共企業体ができたかというと、私は疑念を持っているわけであります。  昭和二十二年の一月から二月にかけて、マッカーサー司令部へわれわれは何回も呼ばれました。二・一ストの直前であります。私は第一線の責任者として、ちょうどここにおります、ちょっと行ってしまいましたが、同僚の沢田君は、当時国労の企画部長として、お堀端——当時、お堀端とわれわれは言ったわけですが、キレンという労働課長に何回も呼びつけられました。そうして示された案は、君らがあくまでもストライキをやるというならば国鉄分割するぞ。キレンが示した案は、国鉄を七ブロックに分割をするという案でありました。ストライキをやめるなら何とか団体交渉だけは確保するようにしよう、やめないとするならそれも剥奪する、国鉄は分断だ、こういう案を示されたのであります。なぜこんなことを私が言うかといいますと、公共企業体発足の動機は占領軍の労働政策にあったわけであります。したがいまして、この労働政策に合ったところと合わないところでは変わってしまった。同じ現業体でありながら、全逓、これは公務員としてスト権を禁止される状況になった。国鉄は、中間のパブリックコーポレーションとして、団体交渉権だけは認めるけれどもストライキ権はだめだ、経営については国家が管理する、こういう中途半端な形で公共企業体が発足しているわけであります。言うならば、本来国鉄の持つ使命は何か、国民の足とはどうあるべきか、そのために経営形態はどうすべきかということが真剣に論議され、国会でも論議され、総意を尽くしてやられなかったのです。したがって、労働問題もきわめて不均等な形になっております。同じ現業でありながら片方は公務員、片方は公共企業体、片方は電通のようなかっこうになる。そういうところにあって、本来議論の対象とすべき国民の足を守る経営形態はいかにあるべきかという議論が足りないのです。やられていないのであります。そうして発足されたものがそのまま慣行としてあるいは惰性的になされてきているというところに一番大きな問題があるのではないかと私は思います。したがいまして、私ども民営分割には反対であります。  簡単にさっき言いました、多くのわれわれの委員が言ったとおりでありますが、さりとて、それでは現行というものを一歩も曲げない、現行制度というものは絶対手を触れさせないという立場だけを固執しているものではありません。公共企業体の発足から歴史を見、正すべきは正すという立場に立って、民営分割以外の手段があるのではないか、こう考えておりますので、これらの点については専門家の林さんから答弁をいただきたい、こう思います。
  73. 林淳司

    ○林(淳)政府委員 ただいま先生おっしゃいましたとおり、公共企業体というものの発足の経緯等から見て、現在の公共企業体、これは言うならば国の機関、いわゆる政府関係機関でございますが、国の機関とほぼ同様の認識で現在見られておるという点が一つ。当然のことながら、そういうことでありますと、予算統制その他の面で当事者能力が非常に大きく制約されておるというのが現在の国鉄経営の実態だと思います。そのことについて臨調答申は、現在のこういう運輸交通という実態から見て、こういう仕組み経営形態ではいまの破局的な国鉄再建することはできないのではなかろうか、こういう認識が恐らく臨調答申の発想の原点だろうと思います。そこで、そういう仕組みの問題まで立ち入って検討を加える必要がある。そのためには、臨調としては分割民営化という方向が最もよろしい、こういうことで提言されたのだと思います。したがいまして、今回の法案もそれを尊重するということでございますので、そういう基本的な考え方を踏まえ、いわゆる経営自主性というような一番重要な問題を踏まえながら、かつ臨調提言した一つ方法であります分割民営化というものをまずは検討してみましょう、臨調答申を尊重ということでございますので、まずその方向で、監理委員会としては分割民営という方向検討いたしましょうということでございます。  ただしかし、先ほど来申し上げておりますように、分割民営ということについて、臨調ではその基本的な考え方は示しておりますけれども、その具体的な内容は示しておりませんし、その実施可能性についても何ら検証いたしていない。したがって、監理委員会におきましてその点を含めて、むしろその点を十分詰めて、その結果分割民営ということで特に支障がなければそういうことになりましょうが、もしそれでうまくいかないという、重大な支障があるということになりました場合には、分割民営という結論出し得ないわけでございまして、それ以外の結論を出すこともこれは可能性としては当然あり得る。これから検討することでございますから、したがって可能性としてはそれ以外の選択もあり得る、こういうことにならざるを得ないわけでございます。理論的にでございますね。法律ではそういう仕組みになっておる。  では、それは法律ではどこにどうなっているんだということでございますが、臨調答申を尊重してという言葉の解釈でございまして、これは私どもの解釈といたしましては、特段の合理的な事由がない限り、ある物事についてその方向で対処していくということだろうと思います。したがって、特段の合理的な事由があればその方向で対処しない場合も当然含まれるわけでございまして、尊重という言葉の中にはそういう意味合いも含まれておるわけでございまして、そういう法律上の表現で先ほど申し上げましたような考え方になっておるわけでございます。
  74. 下平正一

    ○下平委員 これ以上質問をしても答弁もむずかしいと思いますから、これでやめますけれども大臣、いま林君からの答弁は非常に回りくどいのですよ。いままでの質問にありましたとおり、本来なれば、最大限尊重するという字句を使う限り、民営分割化でやると書かなければうそなんです。筋が通らないです、最大限尊重するということになると。それが欠けている。説明をいろいろ聞いてみるとあれですが、現行体制をそのまま、コーポレーションの形をずっと一歩も直すなとは言いませんけれども民営でなしに合理的な方法があればと、運輸大臣として、運輸省として、政府として、臨調臨調として、検討したことがありますか、また、これから検討する用意がありますか、そこを聞かしてください。
  75. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 いままでのところ、私自身とすればそこまで踏み込んで研究したことはございません。しかし、このたびこうした新しい提言がされて国会論議になっているときですから、分割民営、ここの線でしっかりと勉強してみたい。そしてまた、ときにはどうしても何かの都合があるということであれば、その際にはその際として考える余裕もありはせぬか、こう思っております。
  76. 下平正一

    ○下平委員 最後に念だけ押しておきます。  この監理委員会法によって監理委員会出してくる結論も、私は役に立たぬと思います。大方の合意というものが私は成り立たぬと思います。参議院で法案が通るでしょう。これも通るかどうかわかりません。さらに、監理委員会が出す結論の段階できちんとした方針を政府もわれわれも国会も出さない限り混乱する、監理委員会の運営の中から必ず期待せざる問題が発生する、私はこう思いますので、合理的な手段があればという人ごとのようなことを言わずに、真剣に長谷川大臣、合理的手段とはどんなものがあるということを検討してもらいたいと思います。これだけお願いしておきます。  時間でありますので、もう一点だけ高木総裁にお伺いします。  高木総裁が藤井総裁の後を受けて総裁に就任されたのはたしか五十一年ころではないかと思います。そのときあなたは副総裁とともに私の部屋に就任のごあいさつに来ました。そのときに、覚えておられるかどうか、あなたに私は二つのことを申し上げたのです。磯崎総裁が就任してマル生という運動をやった、よい悪いは別です。しかし結果論として国鉄の職場はすさんでしまった、特に一体になるべき管理者と働いている諸君の間に越えられないような溝ができてしまった、十人や二十人のファミリー企業ならいざ知らず、三十万、四十万という職員を持っておる企業体として、労使の間に溝があるままにしておいたのではどんな再建策もだめです。この労使間を曲がりなりにも正常にすることがあなたの最大の使命でしょう。したがって、いままで大蔵省その他の官僚畑を歩いてこられたあなたに思い切って前だれをかけてくれと私は申し上げたはずです。それから七、八年たちました。いまの国鉄の労使関係はあなたの感じでよい方向に行っているのか、ぎくしゃく幅が広がっているのか。よい方向に行っているとすれば伸ばすためにどういうお考えを持っているか。ぎくしゃくしているとすればそれを正すためにどういう考え方と手だてを講じておられるか。この点を高木総裁に御答弁願いたいと思います。
  77. 高木文雄

    高木説明員 過去においていろいろな労使関係がございました。私が責任を持ってまいりました期間においてもいろいろな変遷を経てまいったわけでございますが、やはり労使の間で心が通ずるといいますか、話し合いができるといいますか、そういうことが基本であるべきものというふうに私は考えてまいりました。たとえばいわゆる団体交渉事項でなくても、経営といったような問題についても、団体交渉とはまた別の座敷で話ができるような雰囲気をつくろうじゃないかというようなことも言ってまいりました。ある時期にはそれができた時期もありますが、残念ながら、今日ただいま一部の組合とはできておりますけれども、一部の組合とはできていないという状態になっております。基本としてはあくまでお互いに話す機会をたくさん持って、そしてそこに心の通い合いを持ちたいということでございますけれども、どうもそれが実現できない面があります。といいますのは、先生のお言葉で表現すればぎくしゃくということになろうかと思いますが、そういうことが現実にたくさん残っておりますのはまことに残念でございます。これはどっちが悪いということではなしに、そういうことは別に、いずれの場合にもよく心が通い合うといいますか、理解を深め合うということが必要なわけでございまして、そういうぎくしゃくといった場面を一挙になくすることはできないにしましても、何とかやわらげてまいりたいと思っておりますが、それがまだうまくいっていないのは私の至らざるところでございます。全体として国鉄の置かれている状況はきわめて厳しいわけでございますから、それぞれのお立場を主張するというか、角突き合わせてということではなかなかうまくいかないわけでございますので、こうした国鉄の現状なり、高度成長下から低成長下に移ってまいりました社会経済情勢なりをもっとよくお互いに話し合って、共通の地盤を持ちたいと思っております。ここしばらく必ずしもそういう方向に行ってないということは、大局的に言って最高の責任を負わせていただいております私の責任でございますが、どうもいまトンネルの出口を見つけあぐんでおります。いろいろ御指導いただいて何とかしてまいりたいと思っております。
  78. 下平正一

    ○下平委員 総裁が必ずしもよくいってない、ぎくしゃくしている面がある、こう言いましたけれども、早くそのぎくしゃくを取り除くにはどうやったらいいか。当面の責任者として総裁はどうやってこのぎくしゃくを取り除くという努力、どういう方針を持っておられるか、それをお伺いしたいと思います。
  79. 高木文雄

    高木説明員 よその社会と違ってむずかしい問題になっておりますのは、組合が二つ以上ある。それが全体として大きく分かれているということではなしに、各現場現場において二つあったり三つあったりしているという問題が基本的悩みでございます。しかし、これはそれぞれ主義主張を持っていることでございますので、それが一緒にテーブルに着くことになかなかならないわけでございますが、基本はやはりそういう方向をつくり上げていくことが必要だというふうに考えております。  それから、第二の問題といたしましては、それぞれの組合がそれぞれ違った運動方針なり理念を持っておりますことによりまして、私自身がなかなかフランクに話ができないという問題がございます。そうしたことにつきまして、基本となるのは、わが国鉄というものが置かれております現状の認識が末端にまで達してないからであろうかと思います。皆さんごらんになりまして、こんな状態のときになぜ争いをしているのだということが一般の方々の御見解ではないかと思うわけでございまして、それには組合との間ということもありますけれども、まず私ども経営陣の近いところにおります局なりあるいは現場の管理者なり、さらに職員との接触度の深い助役の諸君といったような人たちが、一生懸命やってくれてはおります、まじめにやってくれてはおりますが、国鉄の置かれた現状なり世の中の移り変わりなりということについて、私から見ますとまだ認識が十分でないと歯がゆく思っておるわけでございます。これはひとえにわれわれの教育指導の至らざる点だと考えておるわけでございます。そういう方向を通じて、現場の一人一人の職員に最も接触の厚い現場の管理者の諸君の教育訓練といったようなことを通じて進めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  80. 下平正一

    ○下平委員 高木総裁、労使関係というものは拍手のようなものなんです。右手の経営者がどんなにがんばって——本当に一生懸命経営者の諸君もやっていると思う。左手の労働者も一生懸命国鉄のためにやっていると思う。しかし、拍手で音が出るためにはこれが一緒にならなければだめよ、あなた。私は、いま国鉄の労使双方、労働者、経営者それぞれの立場で見れば一生懸命やっていると思う。組合から見れば意見が違うからあれは反動だと言うかもしれない。経営者から見ればあの組合は横暴だと言うかもしれない。しかし、全体から見るなら両方ともいい音を出そうと思ってやっているのよ。総裁の任務というのは単なる経営者のトップだけじゃないのですよ。経営陣、当局側のトップじゃない。国鉄三十五万の職員のトップとしているのであります。そこで、あなたももう七年も八年もやって、そう長く国鉄総裁をやっているわけじゃないだろう。年もそうだし任期もそうだ。あなたは、任期中にこの音の出るような労使関係に持っていかれませんか。それには、あなたは経営者という立場を離れて、両方の立場のおれが最高責任者だという誇りと自信を持って、手の鳴るように、両方合わせてください。呼吸を合わせ、あなたが努力すれば必ず音が出ます。だから、あなたの最大限の努力を心から期待をいたします。そして、それができるような客観的な条件づくりは、及ばずながら国会議員の立場、国会の立場でもあるいは政党の立場でも努力したいと思います。総裁の誇りを持った、勇気と自信を持った労使のまとめを心から期待をして、終わります。答弁があったらしてください。
  81. 高木文雄

    高木説明員 大変心のこもった御指導なり御激励を賜りまして、ありがとうございました。ぜひそうした心組みで一生懸命やってまいります。
  82. 原田憲

    原田委員長 午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  83. 原田憲

    原田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福岡義登君。
  84. 福岡義登

    福岡委員 総理大臣、統一地方選挙の前段が終わったわけでありますが、東奔西走まことに御苦労でございます。ある意味では国鉄再建監理委員会法案関係すると思いますので、法案の中身の質問に入る前にちょっとお伺いをしておきたいと思うのです。  この統一地方選挙の前段の結果を見ますと、マスコミも報道しておりますように、中曽根政治に対する国民の拒否反応が示された、私どもはそう思うのでありますが、中曽根総理の御見解なりあるいは今後の政局運営について、お考えを聞かしていただければ幸いだと思います。
  85. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 統一地方選挙につきましては、自由民主党といたしましてはおおむね順調であった、前半戦はそのように考えております。知事さんの場合でも大体十一対二、十一勝二敗というような状況であります。もっとも、北海道と福岡で敗北を喫しましたことはまことに残念でございます。いろいろな原因があったと思いますが、自民党の至らざるところもあったと反省をいたしております。  ただ、新聞面や実態面を見まして、ストップ・ザ・ナカソネと正面から言ってきたのは東京の松岡さんでございまして、その場合を見ますと、八十数万票も引き離して鈴木さんが勝っておりまして、一番批判性の強いと言われた山の手地帯においても鈴木さんが群を抜いて勝っているところを見ますと、これはストップ・ザ・ナカソネというのは当たらないのじゃないか。また、北海道あるいは福岡の場合でも、大体革新隠しと新聞に報道されておりまして、自民党と同じようなかっこうをとって票を集めたのではないかということが新聞に書かれております。真偽のほどはわかりませんが、どうもそういうにおいも感ぜられまして、むしろ中央の政策が論ぜられるよりも、地方的な問題や個人的な問題が論ぜられたのが多いのではないかというふうに私は観察をいたし、また識者も観察をいたしたように思っております。しかし、いずれにせよ大事な北海道やあるいは福岡で敗北を喫しましたことは、熱いおきゅうをいただいたものといたしまして、大いに考えていかなければならないと思っております。
  86. 福岡義登

    福岡委員 今後の政局の運営についてのお考えが聞けなかったのが残念でありますが、私どもは、今度の統一地方選挙の前段のこの結果というものは、中曽根政権に対する国民の拒否反応が出た、こう思っておりますが、それは見解の相違ということもあるでしょうから、それはこの程度にいたしておきまして、本論に入らせていただきたいと思います。本会議でも中曽根総理の御見解をただしたのでありますが、きょうは少しゆっくり時間を与えていただいて、総理の見解をお伺いすることができるのは非常に幸いであると思っております。  国鉄がなぜこうなったか。本会議総理大臣の御答弁は、時間の関係もあったと思いますが、社会情勢の変化ということで片づけられたわけであります。私は、具体的に例を挙げまして、確かに国鉄の労使の責任もないとは言わぬけれども国鉄をここまで追い込んだ大半の責任は歴代の政権にある、また、ある意味では私ども国会にも一半の責任があるということを申し上げたわけであります。国鉄再建考える場合に、なぜこうなったかということを明らかにしていかなきゃならぬと思うのであります。十分な時間はないのでありますが、私ども考えておりますその原因というのはおおむね五つあると思うのであります。  一つは、車社会に対応することが非常におくれたという点であります。交通施設の投資を見ましても、空港、港湾、道路、そういう投資と国鉄に対する投資は大変な開きがあるわけで、しかもその投資に対する財源を見ましても、道路その他の投資はほとんどが国の予算であり、あるいは助成である。ところが、国鉄の場合は国の助成を受けておるのはわずかに四%程度しかない。特に、新幹線はできましたけれども、地方交通線の整備がおくれまして、いわゆる車との競争関係に負けたということが一つの大きい理由であろうと思うのであります。それから第二番目には特定人件費であります。いわゆる外地鉄道からの引き揚げ者を国鉄が引き受けた、あるいは軍工厰の職員国鉄が国策によって引き継いだ。そういう者がここ十数年間退職時期が集中しましたために、特定人件費、退職手当でありますとかあるいは年金というものがかさんできておる。後で具体的な数字は申し上げますけれども国鉄経営を大変に圧迫しておるのであります。さらに、借金政策をとられて膨大な長期債務を抱えて、これに莫大な利子を払わなきゃならぬ。これも後で数字は申し上げたいと思うのです。第四は、赤字を承知の上で地方交通線をどんどん建設をしていった。現在、これらの線区はたしか三十七本あると思いますが、根岸線という線一本を除いてあとは全部赤字であります。営業係数は二〇〇をはるかに超えておる状態であります。もう一つの点は、予算で統制をしたり、あるいは権限の制限をしたり、国鉄当局経営権を与えなかった。したがいまして、歴代内閣が任命されました優秀な総裁は仕事をすることができなかった。  大まかに申し上げまして、国鉄の現状を招いた原因は、以上申し上げましたように五つに要約されると思うのであります。これはいずれも歴代政権の責任であるし、ある意味では、申し上げましたように私ども責任もあると思うのであります。この原因を明らかにして初めて今後の対策が考えられると思うのであります。確かに初めに申し上げましたように、国鉄の労使の責任に負うべき分野も相当あることは否定をいたしませんが、それよりも歴代政権の責任というものは大きいと私は考えておるのでありますが、総理大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  87. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 おっしゃいますように、今日の国鉄状況につきましては、国鉄だけの責めに帰すべからざるものもあると考えております。また、政府責任も回避するものではございません。しかし、一つ考えてみますと、国鉄経営と申しますか、労使が中心になって国鉄を動かしておるものでございますが、この経営のあり方等についてもこれは考えるべき点も多々あるのではないかと考えております。  いずれにせよ一番大きな理由は、モータリゼーションの大きな世の中の変化がございまして、それから貨物輸送の変化というものもございまして、人並びに貨物の動きというものに対応するだけの対応力が国鉄になかったということが一つの大きな原因ではないかと思っております。国鉄につきましてはたしか六回目の改革をいまやっておるのでございまして、いままで何回も、三回も四回も五回も改革案が出ましたけれども、それが十分完全に行われなかったという結果をよく分析して反省してみまして、われわれは今後の対策を立てなければならぬと思っております。  臨時行政調査会におきましては、これらの過去の改革案の跡もトレースしまして、そして今度のような建言になってきたと考えておりまして、政府はこの建言については心をむなしくして耳を傾けて、最大限に尊重して実行すべきものであると考えておるわけであります。
  88. 福岡義登

    福岡委員 まことに残念なんでありますが、歴代政権の責任もあるかという後のお話を伺いますと、その大半はやはり国鉄責任がある、こういうように聞こえてならぬのでありますが、申し上げましたように、確かに国鉄にその責任の相当部分があることは否定をいたしません。しかし、やろうとしてもできない仕組みになっておった、あるいは政府みずからが対応しなきゃならぬのにそれを怠っておったということも私は大きな問題として考えていただきたいと思うのであります。国鉄赤字に転落をいたしましたのは昭和三十九年度からであります。二十年の歳月が流れておるわけであります。もう少し早い時期に対策を講じておれば容易に国鉄再建できたはずであります。二十年間も放置しておった責任というのもこれまた大きいと思うのであります。  きのうも運輸大臣の御見解をお伺いしたのでありますが、昭和三十九年の九月二日に国鉄の監査委員会から運輸大臣に対しまして、いままでの国鉄計画というものが国鉄だけのものであった、それでは再建ができない、国全体の問題として閣議において取り扱うべきであるという意見具申も出ているわけであります。しかるに何もやっていらっしゃらない。さらに毎年会計監査が行われまして、その都度幾つかの提言がなされております。この提言具体化されていない。一々申し上げる時間がないのですが、要約をして言うとそういうことなんであります。  さらに、これも本会議で申し上げた事柄なんでありますが、具体的なもう一つの問題を挙げますと、昭和五十四年の十二月二十九日、国鉄の運賃の公共割引については、その内容にかんがみまして、関係各省庁が相談をして早急に結論を得て措置するということになっておるわけであります。自来会計年度としては五十八年度を含めますと四回の会計年度を迎えるわけであります。四年間かかっても何もされていない。一回か二回、あるいは何回か協議をされたようでありますけれども、五十八年度予算には全然計上されてない。聞くところによりますと、運輸省が一億だけ予算の項目を起こしたいということで予算要求をした。ところがそれが削除されまして、予算の中には計上されてない。ある意味ではこれは小さい問題のようにも考えられますが、しかし国鉄再建という立場から考えますと非常に重要な問題点なんであります。たしか六百二十数億、後でこれも数字が出ますけれども、このことを一つとってみても、政府はやるということを閣議で決定されておりながら、四年の会計年度を迎えておるのに全然手がつかない。どうでございましょうか。
  89. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 確かにいわゆる公共負担の問題は、累次御指摘をいただいてきたところでございます。監査委員会からもそういうお話もかつてございました。また、今回、臨時行政調査会答申におきましても、同じようにこの問題の措置を要請されておると心得ております。いずれにせよ、この国鉄再建監理委員会におきましてその方向をはっきり明示していただきまして、それによりましてこれを処理してまいりたいと考えております。
  90. 福岡義登

    福岡委員 せっかくの総理大臣のお話ではありますが、もう政府閣議方向を決めているのです。国鉄が負担する筋合いではない、関係省庁で相談をして結論出し措置をする、こう決められているわけです。優秀な役人がたくさんおられるのでありますから、やろうとすればその方法が見つからないはずはないと思う。  これ以上は申し上げませんが、私は、国鉄がこうなったその原因の大半は歴代政権にあるとしてお考えをいただきたいということと、また、その後の対策も十分でなかったということをこの機会に申し上げて、次に移りたいと思うのであります。  きのう本委員会で、以下申し上げる事実関係を確認をさせていただきました。いわゆる言われておる構造欠損であります。きのうの委員会で確認されました内容をしばらく申し上げますので、お聞き取り願いたいと思います。  昭和五十六年度の国鉄の一般勘定の決算の赤字は一兆八百五十九億円であります。その中身を見ますと、先ほど申し上げました特定人件費、退職手当が二千六百三十八億、年金千八百四十八億、合計四千四百八十六億であります。支払い利息は六千三十億であります。運賃の公共割引、先ほど申し上げた点なんでありますが、六百二十八億であります。合計いたしますと一兆一千百四十四億であります。この一兆一千百四十四億のいわゆる構造的欠損に対しまして、政府の助成は三千四百二十八億であります。これを引きますと、残る構造的欠損額は七千七百十六億であります。先ほど申し上げました欠損総額一兆八百五十九億円からこれを引きますと、残る三千百四十三億円がいわゆる構造的欠損外の欠損である、つまり国鉄が企業努力をする範囲のものであると考えます。構造的欠損は、そのよって来る原因から考えてみまして、国鉄が責めを負うべき問題ではない。国策として発生をした構造的欠損でありますから、別の観点から処理をされなければなりません。また、国鉄に余力があれば、国策の一環を担うという意味からこれを負担していくこともまたあり得ると思うのであります。いまはその能力はないのであります。  ついでに五十八年度予算について同じような計算をしてみますと、収入と経費の差は一兆二千六百七億円の赤字であります。この中で特定人件費、手当と年金を合計いたしますと五千四百三億であります。支払い利息が一兆十二億であります。公共割引が五百六十二億であります。合計いたしますと一兆五千九百七十七億ということになります。これに対する政府助成は三千三百九十三億であります。引きますと、残る構造的欠損額は一兆二千五百八十四億円であります。これを申し上げました収支欠損一兆二千六百七億円から引きますと、残るのは二十三億であります。つまり、よくこの内容を分析してみますと、企業の責任において解決するべきものは、申し上げましたような数字になるわけであります。  そこで総理にお伺いしたいのは、私が五十六年度決算と五十八年度予算から数字を申し上げたのでありますが、申し上げましたような構造的欠損というものは国鉄責任を持つべきものでない、あるいは協力をするということはあり得ると思うのですが、責任を持つのはむしろ政府である、したがって、その対策についても政府が別途お考えになるべき筋合いのものではないか、こう思うのですが、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  91. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨時行政調査会答申におきましても、国鉄再建、合理化という面につきまして、主として民間企業的経営を導入する、そして経営の主体性を確立し、また、労働の方面におきましても主体性を確立して、労使が主体的に責任を持ち合って国鉄のために協調し合い、再建に励む、そういう基本的精神に立って改革案というものがつくられていると思います。しかし、それを推進していくにつきましても、国鉄の責めに帰すべからざるいろいろな要因もございまして、いま御指摘の点も考慮に入れなければならぬと考えておりまして、そういうどうしても国鉄だけで負担すべきではないと思われるものについては、やはり国なり公共団体が出動しなければならぬ部面も残るのではないかと私は思います。  しかし、いずれにせよ、そういう民間経営的手法というものを強く導入しまして、労使が責任を持って事業を遂行していくという体系に方向をはっきり向けまして、そして再建の第一歩を踏み出させようという考えではないかと思っております。私たちはこの考え方がやはり正しいと思いまして、いずれ監理委員会におきまして、包括的に国鉄全体を見通した改革案、再建案をつくっていただくと期待しておりますので、その線に沿ってわれわれは努力してまいりたいと思う次第であります。
  92. 福岡義登

    福岡委員 私どもといたしましても、国鉄経営を効率化していくということについては賛成なのであります。ただ申し上げたい点は、責任の所在と、そしてその対策は十分配慮していただきたい、構造的欠損は構造的欠損として処理するように考えていただきたいということを申し上げまして、次に移りたいと思います。  臨調では島別分割、四国、北海道、九州、それに本州を四つぐらいに分けて、七つぐらいに分割をするという答申出しておられます。これもきのう委員会運輸大臣あるいは国鉄総裁に事実関係を明らかにしてもらったところなのでありますが、五十六年度決算で北海道の赤字は二千五百七十九億であります。四国は四百六十三億、九州が二千百六十一億であります。  そこで、きのうお伺いしました点は、経営改善計画が完全に実施された後にこれらの島の赤字額は幾らになるでしょうか、こういう質問をいたしました。ところが数字は出ないのであります。検討して後で示します、来年度予算編成ぐらいまでには検討して数字を出すということになったのですが、仮に経営改善計画が完全に実施されたとしても、この赤字額はそんなに多くは減少しないでしょうというのが国鉄当局のお答えであります。北海道では三十六本の路線がある。経営改善計画によりますと、これを二十三本廃止または転換をするとなっている。三十六本の二十三本でありますからこれは大変なものなんです。それほどやってみても二千五百七十九億という赤字はそんなに減少しないであろう、こういう御見解なのであります。ですから、臨調が言うように島別分割をやるということになりますと、公共交通を放棄するという以外に問題の解決はないのであります。赤字を承知で引き受ける者はいない、民営にすると言ってもだれがやるか。結局、公共交通を維持しようとすると、効率を高めた後に生ずるやむを得ない欠損については、しかるべき対策が講じられなければならぬ、こういうように私ども考えておるのであります。これは答弁は要りません。そういうことになるということだけ申し上げておきたいと思うのであります。  時間がありませんから先を急ぐのでありますが、監理委員会について、まず、これは事務的な面になるかもしれませんが、五人の委員の選任される方針、法案が通ればそういう作業に入られると思うのでありますが、五人の委員の任命基準はどう考えられておるか、お伺いしたいと思います。
  93. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄監理委員会委員は非常に重要な仕事をお引き受けいただくことでありまして、何としても全国民的視野に立って物を考える識見のあるお方である必要があります。それから、労使関係及び経営について、やはり相当な見識を持った方である必要があると思います。そういうような点もよく考えまして、国民各層を代表し得るようなりっぱな人士で、しかも国鉄改革について情熱を持っている方をぜひ選任いたしたい。国会承認人事でもありますから、国会の皆様方のお考え等もよくそんたくして選ぶべきであると考えております。
  94. 福岡義登

    福岡委員 五人の委員の任命につきましては、また機会をいただきましてわれわれの見解も述べたいと思っております。  そこで、この監理委員会の所掌事項であります。  臨調答申を尊重してとも書いてある。臨調答申を尊重するということは、分割民営が柱であります。私は経営形態を論ずる前に、まず優先して解決をしなければならぬ問題があると思う。私どもの見解は、分割民営では国鉄再建はできない、国鉄の解体につながりかねない、こういう懸念すら持っておるのですが、その論争はさておくといたしまして、国鉄に現在緊急に必要なことは、分割民営ということよりも、先ほど申し上げました構造的欠損を排除していくことである。この構造的欠損を解決するために監理委員会なり諮問委員会を持たれるというならば、私どもはある程度賛成であります。このことをないがしろにして経営形態を先行して論ずるということは適当でない、こう思います。  もう一つ申し上げますと、臨調答申は緊急に処理するべき事項として十一項目挙げております。その中に、たとえば貨物の縮小、廃止というのがある。確かに国鉄の貨物は赤字である、固有経費も確保できない、大きな赤字になっておることは承知いたしております。しかし、日本の将来の物流を考えてみますと、大量輸送機関であるレール輸送というものを廃止するなんということは暴論である。しかし、現状を考えてみますと、申し上げましたように貨物が赤字である。それはたとえばヤード作業の改善を図っていく、その他の輸送形態について工夫をしなければならぬ面はたくさんあると思いますが、縮小、廃止ではなくて、活用するために具体的な知恵を出していく、こういうことが必要であろうと思うのです。こういう任務になっておるのでありますが、私は、申し上げました特定人件費あるいは長期債務の解決あるいは貨物輸送の改善というようなことを中心に議論する監理委員会ならば賛成だ、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  95. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 監理委員会は、総合的な、全体的な見方から国鉄検討していただきまして、国鉄の健全経営再建を図るという考え方でやっていただくべきものであると思っております。もちろんその中には、国鉄がいままでしょっておるいろいろな負担等につきましてもよく分析をしてみて、そしてこれをどういうふうに将来解消していくか、当面どこにそれを持たせるか等々の問題は、過渡的には十分あり得る考え方であると思っておりまして、監理委員会の皆様方が現実的な立場に立脚しつつ、将来の国鉄の立ち直りというものを念頭に置いて、総合的に判定してくださるように期待しておるわけであります。
  96. 福岡義登

    福岡委員 監理委員会がいろいろ作業をする、その場合に私ども意見は、政府としての考え方をまず示して、それを検討していただくということがいいんじゃないかと思う。臨調答申が昨年の七月三十日に出された、それをそのまま監理委員会に手渡す、そこで監理委員会がいろいろな角度から検討されるというようにお考えになっておるように思えるわけです。そうじゃなくて、臨調答申を受けられました中曽根内閣として、これをある程度検討されて、国鉄再建方向というものはかくやりたい、みずからの考えを示して監理委員会検討を受けるべきである、こう思うのですが、この監理委員会に対して、中曽根内閣としては、国鉄再建についての考え方は全然示さないで白紙委任されるのかどうか。私どもは、考え方を示して検討する方が適当であると思うが、その点はいかがでございましょうか。
  97. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄再建に当たりましては、他の二公社と同じように、政府としては臨時行政調査会をつくりまして、調査会にその改革を含めて再建案をお願いしたわけです。これを鈴木内閣が行いまして、そして七月答申というものをいただいた。それを政府はいただいて閣議決定をいたしまして、最大限に尊重してこれを実施していくという趣旨の内閣の決定を見ておるところでございます。中曽根内閣は鈴木内閣のこのお考えを引き継ぎまして、同じように最大限尊重してこれを実行する。実行するにつきましては、臨調答申に盛られた線に沿いまして国鉄再建監理委員会をつくりまして、その再建監理委員会がこの臨調答申趣旨を踏まえまして再建案をつくっていただく、それを政府は受けて実施に移す、こういう手順と段取りになっておりまして、その線でいくのが正しい政府としてのやり方であると考えております。
  98. 福岡義登

    福岡委員 臨調も大切なところは避けて通っている、問題を先送りしていると思うのであります。また、政府の方も、長期債務であるとか特定人件費などについて問題を避けている。それをそのまま監理委員会に持ち込もうとしていらっしゃる。どうも私は腑に落ちない。責任逃れじゃないかと思う。臨調の悪口を言っても仕方ありませんが、本当に私どもは土光さん苦労されたと思うのでありますが、国鉄再建に関する限り、重要な問題は避けて通っていらっしゃる、問題を先送りにされておる、そういう内容をまた政府としてもそのまま監理委員会に持ち込まれようとしておる。まことに遺憾であります。  ここでそれを論じても際限がありませんので、次へ移りますが、結局私は、中曽根総理大臣、こう思うのであります。監理委員会は企画立案をすることが任務である。いい再建案をおかきになるかもわからない。しかし、その程度のことはいまの政府機構でできないはずはない。結局一つの隠れみのを考えていらっしゃるのではないかという疑いを持ちますが、それはさておくといたしまして、結局、監理委員会は企画立案をする立場である。これを執行するのは政府であります。あるいは国鉄当局であります。いままでの政府の、歴代政権のやられた経過をたどってみますと、どうも信用がおけない。いい再建案が仮にかかれてみたとしましても、それが実行されなければ意味がないのであります。どういうものがかかれるか、それは監理委員会がいまからやられるわけでありますが、私は、監理委員会の手を煩わさないでも、いまのりっぱな官僚機構の中で、あるいは中曽根政権でかけないはずはない、こう思うのですが、それはそれといたしまして、りっぱな企画立案がなされても実行されなければ何の意味もない。いままでの経過からしてどうも信用できない、こう思うのですが、総理大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  99. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府はわざわざ臨時行政調査会を設置いたしまして、委員の皆様方が非常な御熱意をもって案をおつくりいただきまして、国民の大多数もそれを支援していままで推移してきたわけでございまして、政府といたしましても、臨調答申を尊重して実行する義務と責任があると心得ております。その中で国鉄監理委員会をつくるということになっておりまして、いまその再建監理委員会法案を御審議願っている次第でございますが、やはり臨調答申全体の流れの中でそういうふうな方向が明示されておりまして、監理委員会をおつくりいただいて、それが具体的に再建案、言いかえれば再建法律案をつくる、そういう具体的な仕事をやっていただくということでございます。これには官僚だけではとても効率的な名案が生まれるとは思いません。やはり、実際の経営をおやりになって、民間としての効率的な経営の勘どころを知っておる方々の御意見も入れまして、そして適切な新しい再建案をつくっていただく、それを政府は受けて実行する、こういう筋合いになっておりまして、そのやり方の方が賢明である。これだけの大きな、明治以来続いてきている国鉄の大改革でございますから、よほど腰を据えて、そしてじっくりじっくり各方面に目を配ってつくり上げませんと、拙速でやったらこれはめちゃめちゃになる危険があると私は思っております。したがいまして、やはり腰を据えてじっくりじっくり的確な案をつくっていただくというふうに期待しているところなのであります。
  100. 福岡義登

    福岡委員 積極的な取り組みを強く要望して、次に移りたいと思います。  あと五、六分しかないのですが、わが党が考えております国鉄再建案、これを御紹介申し上げまして総理大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  ここで申し上げますのは六点であります。一つは先ほど申し上げました特定人件費、長期債務の利子などの解決が国鉄再建一つの課題である。そのやり方につきましても私どもとしては一定の提案をしておるのでありますが、ここでは省略いたします。第二の点は国鉄の当事者能力。経営権を大幅に付与するべきである。たとえば経営委員会というものをつくってそこに大幅に権限を移譲する、これが第二であります。第三は地方分権を基礎にいたしまして管理機構の整備強化を図るというのであります。第四は総合交通施設特別会計というものを創設をしたらどうか。交通にかかわる設備投資はばらばらにやるのではなくて、統一的に、計画的にやっていく。そのために総合交通施設特別会計というようなものを創設したらどうか。第五は企業会計と公共会計というものに区分したらどうか。企業会計というのは名実ともに国鉄責任を持つ分野であります。公共会計というのは、赤字であっても遂行しなければならぬ公共輸送の分野であります。これは国鉄もあるいは国も地方公共団体もそれぞれの負担をしていくものである。そういうように今後の経営を企業が責任を持つ分野と、公共的に輸送を遂行するものに区分をしたらどうかというのがわが党の第五の提案であります。第六の点は関連事業推進であります。いま政府指導国鉄は遊休地をどんどん売却をしております。国鉄の遊休地を、売却するよりも活用して関連事業を開発していく、そして経営の立て直しをしていくというのが適切であろう。  以下省略をしますが、主要な点としてわが党はこの六点にわたって昨年の四月、国鉄再建について提言をしておるところであります。ここで具体的な御回答をいただけるとは思いませんが、私どもといたしましても積極的に国鉄再建考えている。今後またわれわれの意見を述べる機会をいただきたいと思いますが、とりあえず総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。  最後にもう一つ、時間がありませんので一緒に質問させていただきますが、特定人件費のうち年金問題を解決することが国鉄再建の重要な柱である。政府におかれましてもいろいろ検討されまして、年金問題の法案をようやく国会に出されました。私ども再建監理委員会法案年金法案を並行して審議していこうという約束をした段階もあります。しかし、残念ながら年金法案審議が非常におくれている。政府の提案も相当おくれたわけであります。この年金問題をぜひ処理をしていただきたいということを含めてお答えをいただきたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 いま国鉄改革に関する社会党のお考えをお述べいただきましたが、これは一つの御見識であると思います。かなり現実的観点に立脚しつつお考えになった案であると拝察いたしております。ただ、臨時行政調査会の観点は、企業経営方式、民間経営方式による能率化ということを非常に重要視している点がございまして、そういう点においていまの考えと若干違う点があるように考えております。いずれにせよ再建監理委員会におきまして案を至急つくっていただきまして、政府はそれを最大限に尊重してまいりたいと思っております。  なお、公的年金の統合問題は再建監理委員会設置法案審議にもかなり重要な関連性を持つものであるとわれわれも心得ておりまして、法案の提出が若干おくれましてまことに申しわけない次第でございますが、審議を促進いたしましてそのおくれを取り返すように努力いたしたいと考えております。
  102. 福岡義登

    福岡委員 以上で終わります。
  103. 原田憲

    原田委員長 西中清君。
  104. 西中清

    ○西中委員 本委員会におきましては、行政改革の柱とも言うべき国鉄再建監理委員会法案審議中でございますけれども、一方で衆参ダブル同日選挙というような話も出ており、総理もこれについて種々御発言をなさっておられるところでございますが、過日の参議院の予算委員会では、内閣不信任案の提出が解散の大義名分になるとの御見解も示されたようでございます。いずれにしてもこういう重要な法案審議の中で、やはり選挙は非常に影響を及ぼすことでございます。今後の法案の行方にも微妙にかかわり合いを持っておると思いますので、内閣不信任案の提出が解散の大義名分になるというお考えはいまも変わりはないのか、そして同日選挙はどういうようにお考えになっているのか、伺っておきたいと思います。
  105. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 私は前から衆議院議員は任期満了をもって原則とし、よしとする、そう考えておりまして、それは一貫して言っていることでございます。今回統一地方選挙の前半が終わりましたけれども、その結果によってこの考えが影響を受けていることはございません。解散のことは考えておりません。
  106. 西中清

    ○西中委員 いま御答弁いただきましたけれども、内閣不信任案の提出が解散の大義名分になるというような御発言があったわけですが、このお考えは変わりはないかどうか、伺っておきます。
  107. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 そういう質問を受けましたときに、憲法の解釈論としてそういう判断も一つあり得る、前にそういうことで解散が行われたこともたしかあったと思う、そういうことを申し上げたのでありまして、だからといって私がそれで解散するということを申し上げたわけではございません。私は解散は考えておりません。
  108. 西中清

    ○西中委員 それでは本題の方に入らせていただきますが、国鉄の改革は国民的急務であることは申すまでもございません。今日の国鉄の破局的な状況考えますと、これにはさまざまな理由が考えられるわけです。ただ私ども非常に残念でもあるし、また、事の複雑さということがあると思いますけれども、こうした状況に陥りながら、本来企業ですと責任の所在を明確にするわけですが、国鉄にもある、運輸省にもある、政府にもある、また、政治にもあるというようなさまざまな議論が行われるわけでございまして、先ほど来総理もその責任を痛感をしておられるということでございますからこれ以上申し上げませんけれども、この点については政治も、また行政の方も謙虚に責任を感じるということ、そこから再建がスタートするということを私たちは十分考えておかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。この点については先ほど御答弁がございましたから私もこれ以上申し上げませんけれども、原因の分析と同時に責任の所在、これはおのおのがみずからにあるのだ、こういう立場に立っていかなければならぬ、このように私たちは考えなければならぬと思っております。  そこで、国鉄経営形態の問題についてしばしばここで議論が行われました。それぞれ立場が若干違っておるためにニュアンスの違いがありますけれども法案の中身として「効率的な経営形態確立」ということがこの監理委員会の責務として挙げられておるわけでございます。本来、臨調答申では、分割民営、このように明示をいたしておるわけですね。答申の尊重をうたうということになりますと、端的に申しまして分割民営化、このように盛り込んでくるのが非常に素直な形だろうと思います。元来、監理委員会の設置は、臨調答申でも改革への手続、手順としてこの監理委員会が必要だ、やるべきだと、こういう提言ですね。そして、その改革は分割民営なんだ、こういうようになるわけですから、当然この監理委員会の責務というものは分割民営にあらねばならぬ。その途中の他の形態というか、そういう検討をせよというようなことは全然ないわけですね。ですから私たちとしては、行政改革を進める大きな柱と言われておるこの国鉄法案の中において、早くも臨調答申とは若干距離のある、乖離のあるこの「効率的な経営形態確立」、こういう法案をお出しになっておる、これは、行政改革のいわば柱であり、当初の重要な法案として出てまいったにもかかわらず、若干の後退をしているのじゃないか、私たちはそのような印象を受けておるわけでございます。この点について総理はどういうお考えなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  109. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 設置されまする国鉄監理委員会におかれましては、臨調答申の線を尊重して、その線に沿って改革案をおつくりいただけるものと期待をしております。それが政府としての基本的な立場でございます。
  110. 西中清

    ○西中委員 総理はこの委員会にきょうお出ましいただいたわけですけれども、これまでの御答弁の中では、たとえば国鉄総裁にしても、また、政府答弁の中でも、分割民営検討してみるけれども、それがどうもいろいろ問題がある、もっとより合理的な方法があるんだ、形態があるんだということになればそっちをとるんだと、いわば並列的な説明の仕方、それから総裁は、分割民営にはきわめて消極的な御発言をされておるわけですが、こういう点では、私どもは総理の指導性というものに大きな期待をかける以外にないわけでありますけれども、どうかその辺の御決意のほどを伺っておきたいと思います。
  111. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府は、閣議決定をもちまして、臨調の方針を最大限に尊重する、そして逐次これを実行するというふうに決めておるわけでございますから、その線に沿ってわれわれは行動しなければならぬと思っております。今回の法案再建監理委員会におきましても、この臨調答申を尊重するという方向で努力が追求されていくであろうと期待しております。われわれは、そういう期待を持ちながら、国鉄再建監理委員会が仕事をしてくれることを見詰めてまいりたいと思っております。
  112. 西中清

    ○西中委員 私が先ほど申し上げましたように、むしろいい知恵があって、それを出していただいて、合理的な経営形態、こういうものが見つかるかどうかというものを探りたいというような御発言もあるわけですから、まずはきちっと分割民営がゴールなんだということを明快にして、これについてあらゆる障害を取り除くという立場でこの論議が行われ、立案されていかなければ、この分割民営にもさまざまな障害があることは十分予想されるわけですね。行き当たったからもうこれはどうもだめなんだというような判断が出てくるようでは困る。まずはスタートからしてそういうあいまいな形で出ては困るというのが私たちの考え方です。もう一度総理の御答弁をいただきたいと思います。
  113. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申の線に立ちまして、分割民営基本線としてひたすら追求し努力していただく、こういう考えで見守ってまいりたいと思っております。
  114. 西中清

    ○西中委員 次に、国鉄経営自主性という問題について、過日の本会議で私は質問をいたしましたけれども、そのときに総理は、臨調答申趣旨を踏まえまして、予算統制をできるだけ排除して経営の主体性を確立する、労使関係の主体性を確立して両方責任を持つ体制をつくる、このねらいは妥当であると考える、また、国鉄の主体的経営と弾力性を回復するため運賃法定制の緩和や投資対象事業の拡大等法律改正を行ってきた、あとは国鉄が努力することが必要と、こういう御答弁をしていただきました。  そこで伺っておきますが、予算統制を排除するというのは一体具体的にはどういうことを指しておるのか、お伺いしたい。さらに、国鉄法三十九条の各条項に規定されておる予算の項目、この改正を検討することまで含めてのお答えであったのかどうか、伺っておきたいと思います。
  115. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調でいろいろ審議がなされましたときに、その過程で一番強く出てきたものはやはり予算統制という問題で、この予算統制があるから公社という形態をとっておる、しかしこれを民間的効率的経営転換させるというためには、一々大蔵省に伺いを立てて、その大蔵省の認許のもとに経営が動いていくというのではとても機動的な経営はできないし、責任経営もできない、そういう意味において大蔵省側の過度な予算統制を排除して、できるだけ自由な、創造的な企業経営が行われるようにしなければだめだ、資金的にもそうであると、そういうような考えがありまして、いまのような私の発言もあるわけでございます。しかし、これは一般論として申し上げたのでございまして、具体的にどの項目をどういうふうにするかということは、国鉄監理委員会ができましたら委員の皆さんが専門的に御研究していただくところではないかと思います。
  116. 西中清

    ○西中委員 そうしますと、同じような御答弁になるかと思いますが、労使の主体性の確立について、総理はいわゆる労働権を回復していくといったような御発言があったわけでありますけれども、これはどういうことを意味しておるのでしょうか。たとえば国鉄労働者にスト権を与えるという意味を含んでおるのでしょうか。
  117. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 やはり民間的経営という方向に持っていって能率化を図ろうとすれば、労も使もおのおの主体性を持って、そうしてできるだけ自主的に解決し得るという立場をとることが望ましい、おのおのが責任を持った、主体性を持った立場で相向かう、相協調する、そういうことを意味していると私は思います。その場合に労働権がどの程度回復されるか、完全に民間と同じになるのか、多少のほかの規制的なものが残るのか、それは国鉄全般の改革のでき上がりぐあいを見ながら監理委員会委員の皆さんがお考えになることでしょう。私は、しかし方向としては、労も使もともに主体性と責任性をできるだけ回復するというやり方の方が結局効率的なことになるであろうと、そう考えております。
  118. 西中清

    ○西中委員 時間もありませんのであれでございますけれども、私は一つ意見を持っておるわけですが、現在国鉄は、予算も当然そういうことでございますね。それから労使の関係、こういったものも、それなりの過去の経緯もあっていろいろな制約もございます。同時に、経営の健全化という点では、これはやはりいまの国鉄の持っております関連事業の範囲、これは非常に大きな問題があると私は考えております。民間の鉄道を考えましても、いわゆる輸送部門だけで採算を合わすということはきわめて困難なことはもう明白でございます。現在関連事業はいわゆる直接投資ではなくて間接投資という形でしかできないというような形でございます。言うまでもなく、これは国鉄法の三条と六条にかかわる問題でございまして、われわれとしてはこの三条と六条をもう少し見直してはどうかという意見を持っております。やはりこれから国鉄再建について職員が将来に希望を持ってやっていくということは、夢がなければならぬし、そのためにもより意欲的な仕事をしていくという点では、関連事業が間接投資にとどまっておるということではだめだと私は思うのです。もちろん武家の商法ということも十分考えていかなければなりませんけれども、そういったようなことを言っているような段階ではないと私は思っております。したがって、この三条、六条を改正する御意思はないか、手足を縛って泳げというようないまの法律的な縛り、行政の介入、こういうものをできるだけ取り払っていくということがこれから国鉄が再生していく上で大きな問題であろうというふうに考えております。総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄経営に幅を持たせて弾力性と機動性を持たせる、これがある意味においては人材を活用するし、あるいはうっせきしている人事問題を解決するし、あるいは能力を発揮させるゆえんである、そういうふうにも考えられます。いままでそういう国鉄事業につきましては若干緩めてまいりましたが、必ずしも十分ではないのではないかと私は思っております。思い切って国鉄が民間として、いまの民間と同じくらいに自由にやれるようにしてあげることは、責任性を持たせ、効率を上げる、総合的経営としていい成績を出すのではないか、そういうふうにも考えておりまして、これらにつきましてもいずれ監理委員会の皆さんがお考えいただくことであろうと思っております。
  120. 西中清

    ○西中委員 大体御質問しました中身の御返答というものは、監理委員会検討を任せるという言葉が余りにも多いわけで、やはり政府としても指導性を持って、方向の大まかなところはどんどん示していく、これが大事ではないかと思います。その点の御要望を申し上げておきたいと思います。  それから、最後でございますけれども、過日の新聞にですね、労使交渉が悩みかどうかもう一つはっきりしませんけれども、新聞ではそうなっておりますが、国鉄の助役さんが自殺をなさいました。きわめて残念なことでございます。再建に当たって重要な問題は、これはひとり国鉄だけに限らず、組織というものは何でもどこでも長とその構成員、これらの関係性というものがその組織の成長、衰退につながる問題でございますから、きわめて重視をしておることは事実でございます。  そこで、政府臨調の第三次答申を受けまして九月に当面緊急に講ずべき対策十項目をお決めになりました。このトップにもやはり職場の規律ということが言われておりますね。このことは民間では当然のことでございます。きわめて常識的には考えられない話も伝わってくるわけでありますけれども、いずれにしてもこの職場の規律の乱れ、多くの原因があると思いますが、一つの大きな要因としましては、要因といいますか遠因、こういったことを考えますと、昭和四十六年のマル生運動、このときの挫折という問題を挙げることができると私たちは考えております。このとき、当局側に多くの犠牲者も出ました。そういったことが今日まで大きな不信となって尾を引いているのではなかろうか、このように私たちは考えております。今後、まじめに純粋な気持ち職場規律確立に努力する職員や管理者に対しまして、この当時と同じような犠牲を強いるような、そういう轍を再び踏まない、こういうふうなことでなければとてもこの問題は解決しないというように私は判断いたしております。こうした点について総理はいかなる決意でこの問題に当たっていかれるか、伺っておきたいと思います。
  121. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 ときどき報ぜられます助役さんの周辺に起こる悲劇につきましては、われわれも常に心を痛めておるところでございます。やはり国鉄再建一つの大きな動因というものは労使の協調にあると確信しております。労も使も国鉄の重大な使命に目覚めまして、一体になって、手を握り合って国民の皆さんの前に労使協調の実を示すということが国鉄再建のスタートではないかと考えておりまして、その方向に労使ともに御努力あらんことを期待しております。
  122. 西中清

    ○西中委員 これで終わりますけれども、私がいま申し上げました重要な点は、労使の関係をよくすることについていまさまざまな職場における努力がなされておる、しかしこれは途中で挫折するようなことがあってはならぬということでございまして、総理の全面的なバックアップを強く要望いたしまして私の質問を終わります。
  123. 原田憲

    原田委員長 中村正雄君。
  124. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 総理も御承知のように、国鉄赤字に転落しましてから、四十年の前半に国鉄再建しなくてはいけないということで、以来数次にわたって再建計画が出されてまいりましたが、これはことごとく失敗した。そういう関係から、以来国鉄が現在のような状況になって、国鉄再建するについては国鉄自身の力ではどうにも再建できない、また、政府考え方施策でも再建することはできない、いわんや監督官庁でありまする運輸省の力でも再建することはできない、こういう事態になって、第二臨調答申した監理委員会というものに国鉄の今後の再建のプランを立てさせよう、こういうことで今回の臨時措置法が出されております。したがって、いままで政府にもできなかった、官庁にもできなかった、国鉄自身でも再建できなかったとなりますれば、別な機関によって将来にわたる国鉄再建の基礎プラン、実施計画をつくってもらう以外には方法がない、私は、こういう意味で第二臨調答申にあります今回の臨時措置法、監理委員会の設置に賛成いたしたいと思います。そういう立場から私は、いま行政改革の目玉が国鉄でございます。したがって、第二臨調がいろいろ答申いたしておりまする行政改革の真っ先にあります国鉄再建、これができるかどうかということが今後の行政改革一つの目安になると思います。そういう関係から、第二臨調をおつくりになりましたときの行政管理庁の長官である中曽根総理は、自分は行革三昧だという言葉を使われておりましたし、また、鈴木内閣の方針を継承する、こういうことでありますので、私は、国鉄再建に対しまする総理の基本的な姿勢等について二、三お尋ねいたしたいと思います。  第一は、第二臨調国鉄の改革について出されましたいろいろの意見国鉄が今日に至った原因、現状の分析等、確かによくできておると私は思います。したがって、私は私なりに第二臨調答申は評価いたしたいと思います。ただ、第二臨調国鉄の現状の分析、今日に至った原因についていろいろ指摘し、当面やらなければならない項目について指摘いたしております。したがって、表面上の問題については、現象面については第二臨調指摘いたしました点を今後精力的に実現することによって再建はある程度できると私は思いますが、国鉄が今日に至るような破産状態になった原因を、臨調が余り掘り下げて究明いたしておらない二、三の点について、私は総理の所見を伺いたい。  その第一は、国鉄がこのような事態になりますと、確かに自主性がない、あるいは経済変化に対応できなかった、いろいろな問題もあると思いますけれども、私は、その根本の原因は人にあると思うのです。それは、昭和二十四年に国鉄の現業部門だけを切り離していまの企業体にした。そのときに、当時の官庁機構そのままに国鉄の機関に当てはめていき、そうしていままでの行政機関と同じように人事の運営をやってきた。そこに、国鉄という企業に対します責任感というものが、どこまでも行政機関の官僚的な責任感であって、企業経営者としての責任感ではなかったということが、国鉄が今日に至った根本の原因ではないかと私は思うわけであります。  御承知のように、数次にわたる再建計画、それを国会でも承認するような事項もございましたし、政府が決定し、あるいは国鉄が決定して実施いたしましたけれども、初年度においてもうすでに失敗いたした、こういう事態がたびたびあったわけであります。しかし、これに対します国鉄責任者が、この再建計画が失敗したからといって責任をとられた例は一度も聞いてはおりません。また、国鉄のそれぞれの重要なポストにある役員が、いろいろな面について、国鉄の運営について投資し、それが失敗して国鉄に大きな損害を与えた、こういう事例もたくさんございますけれども、それに対しまして責任をとったという例は聞いておりません。これは企業家であれば、企業の経営者であれば、やはり再建計画が失敗すれば、株主総会に対しまして責任も感じなくてはいけないし、また、進退伺いも出すでありましょう。また、企業に損害を与えたのであれば、これは責任をとるのは当然ですけれども、官僚的な責任感というものは、法律に縛られたりあるいは規則に違反さえしなければ責任はない、二年なら二年たてばそのまま上級職に移転するとなれば、おのずから企業に対します責任感はないわけでございます。そういう国鉄のいままでの、人事の面が行政機関の官僚機構そのままに運営してきた、したがって企業家的な責任観念というものがない、企業家であるという意識が足らなかったという点が根本の原因ではないかと私は思うわけでございます。したがって、よく第二臨調答申あるいは第二臨調がそれぞれ国鉄の問題を討議いたしておりますときから、マスコミや世間一般は、国鉄がこのような状態になったことは労使の関係が悪いからだと、労使という言葉ですべて表現されておりますが、労使というよりも使の体制が根本の原因ではないか。業務の運営、企業の運営というものは管理者の責任だという責任感の欠缺、これが職場の荒廃を生んだ根本の原因ではないか。この点について、今後の再建基本の問題でありますので、総理はどうお考えになっておるか、所見を伺いたいと思います。
  125. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 中村さんから御指摘いただきました点は、私も大いに同感とするところでございます。やはり事業は人なりでありまして、いかに機構を改革しても、人の魂が入らなければ絶対に再建などできるものではございません。そういう意味において、これを機構いじりに終わらしむることなく、本当に労も使もともに責任を感じて、国民のためによき国鉄にするように精神的にもしっかり立ち上がっていただく、これが要諦ではないかと私も感じております。
  126. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、確かに第二臨調国鉄の問題を取り上げていろいろと審議いたしましてから、国鉄の管理体制も徐々にはよくなっておると思います。また、組合関係も徐々には改善されておると思います。しかし、組合関係は別にして、管理体制の面について、たとえばこれは民間の企業であれば、いま会社がつぶれるかもしれないというのであれば、これを立て直すためには、短日月の間にそれぞれの体制を立て直すと思うわけです。国鉄の管理体制が、立て直さなくてはいけないと言われましてからもう一年以上たちますけれども、いまなお国鉄は、徐々にはよくなっておりますけれども、まだまだ管理体制が立て直されたとは見られません。そういう点について、やはり親方日の丸的な気持ち再建の衝に当たっておる国鉄の幹部にはあるのではないかということを非常に遺憾に感じております。したがって、国鉄というものの現状をもう少し認識し、緊迫感を感ずるような気持ち国鉄の管理者はこの問題に取り組んでもらいたい、私はこのように考えるわけでございます。  第二番目の点は、これは監理委員会の権限外の問題でありますので、総理の意見を伺いたいと思うわけでありますが、それは、国鉄がこのような事態になった一つの原因は予算制度にあると思うのです。総理も御承知かと思いますが、諸外国の国有鉄道を見ましてもほとんど赤字でございます。やはり国が相当援助いたしております。しかし、諸外国の国有鉄道を見てまいりますと、国の援助というものは、いわゆる会計年度を単年度において処理いたしております。たとえば、ことしこれだけの赤字が出たら、翌年度において国がその赤字の補てんをするという措置をとっております。ところが国鉄の場合は、赤字をすべて長期債務、長期借入金ということで処理してまいりましたから、御承知のように、その赤字だけの長期債務が積もり積もって七兆円になっておる、こういうわけでございます。もしこれを単年度で、たとえば一昨年度の赤字が出た場合は本年度の予算でこれを処理する、こういうふうにすれば赤字が累積しない。また、そういうような予算措置を講じますと、いま国鉄は国の援助を含めて二兆円近い赤字になっているわけでありますから、したがって、ことし国鉄に二兆円の援助をする、国が予算面で措置を講ずるとなれば、二兆円という膨大な国民の税金をいまの国鉄に使うのが妥当かどうかという世論がおのずから起きてくるわけであり、また、国鉄経営者国鉄の監督官庁も、国鉄経営について厳しい姿勢で臨むようになると思います。したがって、そういうことを単年度で処理するという措置をとっておれば、あるいはこのように累積赤字が多くなり、国鉄が現在のような状態にならずに終わったのではないかと思います。  それと同時に、もう一つはやはり国鉄の予算制度。自主性がない、いろいろ言われておりますけれども、やはり企業の経営の予算を行政機関の予算と同じような款項費目でつくってそれで拘束するということでは、私は、企業的な経営はできないと思います。財政学上言う包括予算制度といいますか、そういう予算制度でないと、国鉄の企業的な運営はできない。  この二つの問題は監理委員会の権限外でございますので、どうしたら国鉄が立ち直れるか、再建できるか、予算の面のいま指摘しました二点について、総理の見解を伺いたいと思います。
  127. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 中村さんが御指摘になりました点は私も前から触れている点でございまして、いわゆる予算統制をできるだけ排除しなければいけないと思うという意味はそういう意味でもあります。やはり民間経営の手法を入れるという形になりますと、社長なり専務なり常務なり、あるいは事業本部長にそれぞれ責任分担がありまして自分で決裁できる、それで機動的に、かつ責任を持って物が進んでいくわけであります。これが親方日の丸みたいになって、そして後から国がおしりをふいてやるという形でやると、どうしてもこれはぐずぐずして責任のある処置がとれないという形になりがちであります。今回の改革は、そういうところにも目覚めまして、監理委員会におかれて、臨調答申の筋を尊重しておつくりいただくのではないか、そう考えておりまして、民間手法を大幅に取り入れた新経営方式を確立していただいたらいいと考えております。
  128. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私はもう一つ国鉄がこのような状態になったことについて、政府・与党の責任をひとつ総理は痛感願いたい。と思いますのは、いままで過去二十数年にわたって国鉄の運営を見ておりますると、いわゆる国鉄の運営の一つ一つ国会におきまする与党側の国会対策の取引の道具に使われてまいった。したがって、国鉄自主性云々と言いますけれども国鉄がこれは是なり、正しいと考えておりました運営が、自民党の国会対策の道具として与野党の取引に使われた。そういうことが国鉄の今日の状態に至った一つの大きな原因であるということを私は指摘せざるを得ないと思うのです。それは世に言われておりまする生産性運動の挫折、これがまさにその最たるものでございます。したがって、総理は、自民党の総裁としてこれから国鉄再建国会対策の道具には使わないということを言明できるかどうか。当然言明していただきたいと思います。
  129. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄のような国家的に重大な事業体の再建につきまして、それを国会対策の道具に利用するということは邪道でありまして、そういうことはやらないように努力してまいるつもりでおります。
  130. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 最後に一つ総理に注文といいますか、所見を伺いたいと思います点は、今度の監理委員会、これは国鉄再建についてのこれからの処方せんをつくる委員会でございます。これは政党の制約も受けない、監督官庁の制約も受けない、国鉄経営者からの制約も受けない、経済の動向を見、世論の動向を見、将来の国有鉄道、現在の国鉄がいかにあるべきかという立場から白紙の気持ちで臨んでこれからの処方せんを立案してくれると思います。したがって、いまの行政機構の中にありては、この臨時措置法に述べられておりまするような監理委員会の位置以外には方法ないと思います。したがって、法文から見れば監理委員会意見は、総理は「尊重しなければならない。」こういうふうな、「尊重」という言葉で表現されておりますが、しかし、政府にも国鉄再建関係閣僚会議をつくられております。したがって、それのもとで監理委員会がいろいろと国鉄再建についてのプランを立てる、こういう一つのシステムになっておると思いますので、これからの国鉄再建については、監理委員会政府や政党が制約を加えるようなことは、特に与党が制約を加えるようなことはもう絶対に禁止してもらいたい。そうして、監理委員会出しまする意見については、法文では「尊重」と書いてありますけれども、一応それを責任を持って実施するという、実質的な立場で善処されると私は思いますし、善処していただきたいと思うわけでございますが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  131. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 監理委員会の構成につきまして前から申し上げておりますように、国民的な視野を持った、そして国鉄経営につきましても高い見識を持っておって、そして国鉄の改革に情熱を持ち、かつ労使関係に明るい人が望ましい、そういうことを申し上げております。願わくは監理委員会が独立の意思で、そして自由闊達に一番最善と思う道を案としてお出しくださることを希望いたしますし、政府といたしましても、そういう案をお出しくださるように側面的に御協力申し上げることが必要であると思います。  出ました案につきましては、これを政府の立場として検討した上、これを実施するということでございますが、臨調答申の線に沿ってお出しいただいたものは全面的にこれを尊重するという立場を基本的にとっておりますので、そういう立場で処理してまいりたいと思っております。
  132. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 最後に、これは事務的なようには聞こえますけれども、今後の監理委員会方向国鉄再建方向を決定づけると思いますので、総理の所見を伺いたいと思いますのは、監理委員会の事務局の構成でございます。  総理は行政管理庁の長官をやっておられまして、第二臨調審議の経過は十分御承知だと思います。あれだけ土光さんが努力をされましても、いわゆるそれぞれの膨大な事務局がそれぞれ案をつくってそうして会議出してこられた場合、それをチェックすることは非常に困難でございます。私は監理委員会に望みたいことは、いま総理のおっしゃっておりますような人材を監理委員会にお集めになるのであれば、事務局と監理委員会との関係は、少なくとも国鉄再建についての基本方針並びに重要な点は監理委員会で決めて、事務局はそれの具体的な作業をする、こういう運営をやらないと、事務局が案をつくって監理委員会出し検討願う、このようなことであれば第二臨調と同じような結果になると思いますので、したがって、事務局は簡素化するということと、監理委員会基本的なものは決定して、事務局はその監理委員会の作業をやる、こういう事務局の運営の方向にしなければ第二臨調の二の舞を踏むと思うわけでございますから、この点は特に中曽根総理としても留意願いたい。要望申し上げて私の質問を終わります。
  133. 原田憲

    原田委員長 辻第一君。
  134. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、まず最初に臨調答申の言う分割民営化という問題に関して総理に質問をいたします。  私は三月二十五日の運輸委員会におきまして、分割された会社の採算制の問題、経営の困難な問題、そして列車ダイヤ、車両運用あるいは運賃の問題など具体的に指摘をいたしました。また、分割民営が実際上困難であるということを示したのでございます。そして政府考え方をただしたわけでありますが、これに対する政府答弁の中で、「分割民営化と申しましても具体的にどうするのかということについて、まだ臨調答申はその基本的な考え方だけであって、具体的なその内容を示しておりません。実施可能性についての検証もまだなされていないという段階でございます。」また、「いまの段階で可能である、不可能であるということを断定するのは、私どもとしてはちょっと早計ではないかというふうに考えております。」さらに、別のところですが、「そういう技術的な問題があるがゆえにそれは非常に非効率を招いて、分割というものがかえって非効率になるという場合もあるかもしれません。」こういうふうに答弁をされたわけであります。このことは臨調答申分割民営化というものが実施可能性などを検証していない、また、具体的にどうするかということについては検討していないということが明らかになりました。  ところで、総理は昨年九月二十六日、NHKの政治討論会に行政管理庁の長官として出席をされました。そのとき、終局的には民有、分割に持っていく、このような見解を述べられました。  さて、いま総理になられた今日、同じように、終局的には分割民営化に持っていく、このような見解を持っておられるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  135. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 政府臨調答申を最大限に尊重して実行するということを言っておりまして、臨調答申の線は、最終的に民有、分割という線が基本的に設けられていると心得ております。したがいまして、そういう線を尊重してまいりたいと考えておるわけであります。
  136. 辻第一

    ○辻(第)委員 ところが、私が質問した中でも、実施可能性などは検証していない、具体的なことについてどうするのかということはこれから検討するのだ、こういうことでございます。  臨調答申がこういう段階であるのに、やはり終局的には民有、分割化に持っていく、この行政管理庁長官としてのときの見解ですね、いま総理となられても同じような見解なのかどうか、再度お尋ねをいたします。
  137. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申を最大限に尊重するという線は、行政管理庁長官であった鈴木内閣のときも、あるいはいま総理となりました現内閣のときも、一貫して同じでございます。
  138. 辻第一

    ○辻(第)委員 行政管理庁長官のときと現在の時点と、やはり大分状況が変わっておると私は思うのですね。それでもあくまでも終局的には分割民営化に持っていくということでございましょうか。
  139. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄監理委員会がどういうようなことをお決めになるか、それを見なければわかりません。救っていただくために国鉄監理委員会を設置しておるわけであります。しかし、国鉄監理委員会は多分臨調答申を尊重しておつくりになるものであると予想しております。したがいまして、われわれとしては臨調答申を尊重した線で出てくるものと期待をしておりまして、その線に沿って検討の上、努力してみたいと考えておるわけであります。
  140. 辻第一

    ○辻(第)委員 それではちょっと具体的なことになるわけでありますが、分割された会社の経営が本当に成り立つ、このようにお考えでしょうか。具体的に証拠というのですか、そういうものを示していただければありがたいのですが。
  141. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これは、監理委員会でどういう具体案をおつくりになるか、それを見た上でなければ何とも申し上げられないと思います。
  142. 辻第一

    ○辻(第)委員 それでは、この問題についてはやはり分割民営化に持っていくという見解ではないか、このような理解をして次は移っていきたいと思います。  次に、国鉄赤字の原因と責任の問題について質問をいたします。  今日国鉄は、赤字が二兆円、累積債務が十八兆円というまさに破局的な状態でございます。私どもは、この最大の原因は借金に基づく過大な設備投資にある、このように見ているわけであります。この国鉄赤字昭和三十九年から始まりました。そして中曽根総理は昭和四十二年に運輸大臣になられましたですね。そして、昭和四十三年、国鉄財政再建推進会議、この第三部会では次のように述べているわけであります。四十三年度までの前期四年間におよそ一兆四千三百億円の投資が実施されてきているが、これによる投資規模の拡大及びその投資のほとんどを外部からの借り入れに依存せざるを得なかったことによる利子負担の増加が資本経費の大幅な増高をもたらし、国鉄財政を圧迫する大きな要因となっておる、このように言っているわけでございます。この指摘を受けて、推進会議意見書、これは従来の年五千億の投資規模を十年間に三兆七千億としたわけであります。政府もこれに従って、四十四年九月十二日に閣議決定で、「再建期間中に日本国有鉄道が行なう設備投資の規模は、おおむね三兆七千億円を限度とし、日本国有鉄道財政再建のための近代化、合理化措置の進ちょく状況、国の財政事情等を勘案して、各年度における投資額を定める」、このように決めたわけであります。このことは、当時の政府国鉄赤字の最も大きな原因は借金による過大な設備投資であるということを認めて、投資規模を縮小したということであります。  ところが、政府・自民党は、その翌年膨大な設備投資を要する新幹線整備法を自民党の議員提案でつくったわけでございます。これは、きょうもお見えになっておりますが、提案者でありました細田吉藏議員が財源の確たるめどがつかなかったと国会答弁をしておられるように、国鉄に投資負担を負わせるものでありました。そして昭和四十八年二月二日の閣議了解「日本国有鉄道財政再建対策について」、これでは国鉄の投資規模は従来の十年間三兆七千億から十兆五千億に、一挙に三倍に引き上げられたということです。そのうち四兆八千億が全国新幹線網であります。  このように国鉄経営状態を無視した膨大な設備投資拡大を行ったもとが田中内閣の列島改造論であります。昭和四十七年九月十二日の運輸委員会で、佐々木運輸大臣は次のように答弁をしています。「新幹線の九千キロなんというものも、もちろん日本列島改造論、総理の御主張のもとから出ております」、「たまたま総理から八千五百キロということばも出たような状態でありますから、九千キロ必ずしも絶対動かすべからざる数字だとも考えておりません。あるいは七千キロでなければならないというのは、動かすべからざる理論だとも思っておりません。やはりお話しのように、経済的な面から申しましても時代は常に変わっていくのでありますから、その点の問題は今後ともに調整をとらなくてはならないのじゃなかろうかと思います。しかしながら日本列島改造論の中にありますように、六十年になりますと人的輸送が二・六倍、あるいはまた物の輸送が五倍ないし六倍になるということになりますと、トラックやあるいはまた自動車輸送だけでは、道路の整備その他から考えましても、現在の輸送状況ではとうてい間に合わすことができない。そうした実情から勘案いたしまして、何としても新幹線というものにたよらなくちゃならぬという結論になっておりますので、日本列島改造を実施するためには、いろいろな障害がありましょうとも、九千キロ、ある程度の変動はありましても、それを目途として実施すべき方向に現内閣は進まなくてはならぬと思います。」このように述べておられるわけであります。このようにして東北・上越・成田新幹線計画が進められました。引き続いて青函トンネル、さらに本四架橋三本同時着工ということが強行されたのでございます。そしてその結果が、今日、東北・上越新幹線では年間四千億の赤字をいまの深刻な国鉄はさらに積み重ねる。また、青函トンネルが開通をいたしますと、新たに九百億を上回る赤字をもたらすという事態であります。  以上で明らかになりましたように、国鉄に借金による過大な設備投資をもたらした列島改造論、列島改造政策が、今日の国鉄赤字の最大の原因であると私は言わなくてはならないと思います。総理の所見を伺いたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 必ずしも列島改造論というものが最大の責任者であるとは考えておりません。いろいろの社会経済情勢の変化ということもございます。また、新幹線を敷設するにつきましては、それだけの意味もあったわけであります。したがって、新幹線の敷設がすべて罪ばかりであるとは考えておりません。敷設された住民の皆さんの喜びというものはわれわれの想像以上の喜びを持っていらっしゃいますし、また、上越新幹線あるいは東北新幹線等の営業成績等も、最近見ておりますと、当初期待された以上に成績は上がってきているという面もございます。そういういろいろな面を考えまして、その時代時代にふさわしいような経営方針をとっていくあるいは時代に沿った改革を断行していく、そういうような点において、国鉄あるいは運輸省あるいは政府において考うべき点がかなりあったのではないか、そのように反省もしておるわけであります。
  144. 辻第一

    ○辻(第)委員 私は、国鉄赤字、今日の深刻な赤字を生み出している、そのような状況の中で、列島改造論、列島改造政策、これが深刻な赤字を積み上げている、このことを言っているわけであります。私は、この列島改造論こそが今日の深刻な国鉄赤字を生み出している最大の原因であると再度指摘をいたしまして、質問を終わります。
  145. 原田憲

    原田委員長 中馬弘毅君。
  146. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いまからちょうど六年前になります。国鉄の例の運賃法定制を撤廃する法案が出てまいりました。議事録を見ますと五十二年四月十二日ですから、本当にちょうど六年前なんですけれども、このとき私どもが、国鉄はいずれ民営という形態に移行すべきだということを提唱し、運賃法定制その他で当事者能力を持たせることはもちろん必要であるけれども、しかし、もう国鉄はいままでのような政府助成や運賃値上げでは再建できない。そして「国鉄の現状は数年後の日本の姿を想起させるものがあり、身の毛のよだつ思いがいたします。いわば国鉄問題は、行財政全般の行き詰まりの予告編であり、第二、第三の国鉄をつくり出さないためにも、この問題をきっかけに、行財政改革に抜本的な対策を講ぜられんことを切に」望む、こういう本会議での質問をしたわけでございます。そのときの大臣あるいは総理大臣国鉄総裁、いずれも、こういう形でそれぞれの当事者能力を持たせれば何とか改革できるんだということでございましたが、結果はやはり私たちが言っておったように、民営しか仕方がないというところに達したわけで、それなりに私たちはようやくここに手がついたかということを評価しているわけでもございます。  しかし、これはただ国鉄だけの問題ではなくて、ここにも指摘しましたように、日本のいままで行ってきた諸制度の中で、時代的な役割りを終わったかなり国家社会主義的な制度を新たな形に組み直すという大きな作業であるわけで、国鉄だけではなくて、食管制度あるいは健康保険制度あるいは専売その他の公社制度、こういったものの全般の見直しが必要なわけでございます。  この国鉄だけではなくて、その他の改革にも総理としては思い切った着手をされるとおっしゃっておりますけれども、その点について再度の御確認をいたします。
  147. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 国鉄の前途に対する見通しについて、中馬さんがすでにおっしゃった先見の明には非常に敬意を表する次第でございます。  今回の臨調答申の線もそういう線に沿った答申であると心得ておりまして、民間経営方式をできるだけ導入して効率化を図る、労使関係の主体的健全性を図る等々を踏まえて、われわれは国鉄改革案が出てくるものと期待をしておる次第でございます。もし案を出していただきました上は、よく点検いたしまして、そういう線に沿って努力をしてみたいと考えておるところでございます。
  148. 中馬弘毅

    ○中馬委員 この行政改革は、総理が行政管理庁長官時代から熱心に主張されまして、そして現に総理大臣になられてこれに着手しておられるわけでございますけれども、いわばこれは、先ほど申しましたように国家的な大事業なんですね。短期の内閣でできるものではないと私は思っております。総理がかねてから御主張のように、首相公選制あるいは大統領制といったものに持っていかなければ、いや必ずしも持っていかなくても、かなり安定した長期の政権でなければこれだけの国家事業にはなかなか取り組めないんじゃないか。すぐ、最近のところでは二年で終わる、二年で総理が交代するわけですし、大臣は一年そこそこでおやめになってしまわれる。こういうことで、この国家的な大事業というのはなかなか完遂できないと私は思っております。そういう意味におきまして、かねてより主張されておる首相公選制ないしはこの国家的な大事業に取り組まれるいまのあり方ですね。アメリカの大統領でも四年、そして場合によっては八年、こうなっているわけですから、そのことがなければこの国家的な大事業、こういった行政改革、いままでの古い制度を改めて新たな日本の構築をやっていくこの大事業には取り組めないと思いますけれども、総理のお心構えはいかがですか。
  149. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 中馬さんの、長期的安定ということを考える政策の継続性というお考えについては私も同感でございますが、いわゆる首相公選制あるいは議院内閣制の問題というのは憲法問題に絡んでまいりまして、憲法問題については私は具体的発言はしないということにしておりますので、その点は御容赦をお願いいたしたいと思います。  いずれにせよ、自民党の灯は永遠に消えないだろう、相次いでこれを遂行していくだろうと確信しております。
  150. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ずっと先ほどからの御答弁、その前の大臣なんかのお話におきましても、経営形態というのは要するに監理委員会意見に任すんだということでございますけれども、しかし一方では、これは臨調答申基本的に尊重する、こういうことでございます。そうしますと、分割民営、こういうことになるのですけれども、しかし先ほど言いましたように、分割の是非については後でまたお尋ねしますが、民営ということだけはこれを外してしまったら全く意味がないと思うのですね。経営形態が、いや特殊会社でいっても大丈夫なんだとかあるいは民営でなくても、こういう民営的な手法でいいんだと言ってしまったのでは、これこそ、先ほど言いましたような意味におきましても全く意味をなさなくなってしまうわけで、少なくとも民営化という点については絶対に方針から外さないというお心構えかどうか、総理大臣にお伺いしておきます。
  151. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 臨調答申も、おっしゃるような筋に沿って答申されていると思いますし、国鉄監理委員会ができました上は、それを尊重してその答申がなされるものであると私も予想しておりまして、言いかえればそれは民営化ということでございましょうが、民営化ということは具体的にはどういうことであるかというと、やはり予算統制の規制を排除していく、それから労使関係を、お互い責任を持った、主体性を持った関係に直して、お互い責任を持ってもらうようにする、そういうようなところが大きな目玉になる。そうして機動的な経営方式を行い、また、いわゆる事業本部制とかあるいは各部署部署に責任を持たして機動的に行っていく、そういうような形で民間経営はできておるものでございますから、そういう形を志向しておるのではないかと考えておるわけであります。
  152. 中馬弘毅

    ○中馬委員 ところで私たちは、民営化、しかも分割ということは少し疑問を持っております。分割してしまうことが果たしていいのかどうか。交通というネットワークの必要な事業において、これを分割することがいいのかどうかというのには私たちは疑問を持っているんです。もちろん、あれだけの巨大な管理体制の中で、それぞれを事業部制で、内部管理を分割的にやっていくということは私たちは賛成なんですけれども、しかし会社形態を別にしてしまうということについては非常に疑問に思っております。七ブロックに分けて、それぞれをということになりましても、たとえば北海道のようなところが、そういう意味でそれぞれ分割した場合に、民営化できるのかどうか。そうすると、結局そこは民営化されずに国営のままに残ってしまうということを恐れております。そういうことから、分割ということについては、一つ方法論として会社形態を分けてしまうか、あるいは内部管理を分割的にやっていくかということについては少しニュアンスが違いますけれども、今度の委員会分割民営の、分割にまでこだわった基本方針とされているのかどうか、そこの点について総理の御認識をお願いいたします。
  153. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 これを審議しました臨時行政調査会の中における議論等聞いてみますと、こういう現場業務を持ったところの管理能力というものは大体五万人ぐらいの職員が限度だ、それ以上は非常にむずかしい、そういう話も聞いておりまして、多分そのような考え方等もあって分割という考えが出たのではないでしょうか。これを分割しないで、一元的運営のもとにそういう独立採算制あるいは独立責任制を持たしてやったらどうかという議論もなきにしもあらずであったと思いますが、それではかえって不徹底で、また中途半端なことになりはしないか、そういう議論もあったやに聞いております。
  154. 中馬弘毅

    ○中馬委員 実施の期限でございますが、四年後の六十二年七月末ということになっております。しかし、これはどうも悠長なんですね。いま国鉄改革は本当に焦眉の急でございまして、日本発送電のときには、公益事業委員会が設置されたのが二十五年十二月、そして九分割実施されたのが二十六年五月、五カ月でやっております。四年間というのは余りにも悠長だと私は思いますが、総理は、これを早めてでも体制整備を完了する御覚悟で臨まれるお気持ちかどうか、お伺いしておきます。
  155. 中曽根康弘

    ○中曽根内閣総理大臣 電力の九分割のときには委員会ができましたが、その委員会がつくった案はマッカーサー司令部が受け入れないで、たしかポツダム勅令で九分割が強行されまして、そういうマッカーサーの威令のもとに、一年間にああいう大英断が下されたのであります。その結果がよかったか悪かったか、それは歴史が功罪を問うと思いますが、いまのような民主的な世の中で、しかも、いまこれだけ大きな、膨大な問題を抱えている国鉄を処理していくということになると、これは過早にやってはいけない。やはりじっくり腰を落ちつけて、そしてあらゆる部面を見渡して、整合性を考えながら、じっくりじっくり、一歩一歩着実に進めていくことが大事であると私は考えておりまして、五年という年度を切ったことは妥当ではないかと思っております。
  156. 中馬弘毅

    ○中馬委員 いずれにしても、途中で挫折することなく完遂されんことを望みまして、私の質問を終わります。
  157. 原田憲

    原田委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  158. 原田憲

    原田委員長 本案に対し、自由民主党三枝三郎君から修正案が提出されております。  この際、提出者から趣旨の説明を求めます。三枝三郎君。     ─────────────  日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  159. 三枝三郎

    ○三枝委員 私は、自由民主党を代表して、本法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の案文はお手元に配付してありますので、その朗読を省略させていただきます。  修正案の内容は、本法律案の附則第三項中の、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法の法律番号の年の表示について、昭和五十七年がすでに経過しておりますので、これを「昭和五十八年」に改めようとするものであります。  何とぞ御賛成くださりますようお願い申し上げます。
  160. 原田憲

    原田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  161. 原田憲

    原田委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎茂一君。
  162. 宮崎茂一

    ○宮崎委員 私は、自由民主党を代表して、三枝三郎君提出の修正案及び修正部分を除く原案に賛成の討論を行うものであります。  昭和四十四年以降、数次にわたって立てられました国鉄再建計画は、いずれも短期間で挫折し、いまや後のない計画と言われている経営改善計画が、昭和六十年度を目標として推進されているところであります。  これまでの再建計画は、国民の負担、すなわち運賃の値上げ、国の助成及び国鉄自身の経営努力の三つの柱によって進められてきたのでありますが、運賃の値上げは、他の交通機関との関係において、国鉄離れを惹起して限界となり、また、国の助成も最近の国家財政の逼迫により頭打ちとなっております。まさに国鉄労使の一体となっての血のにじみ出るような国鉄再建への努力こそが、今日最も望まれているのであります。  現行経営改善計画は、予想以上の貨物の減退、特定地方交通線対策の遅延、特定人件費等、国鉄経営の限界を超える経費の増大等によって、その目標達成は困難視され、昭和五十五年度以降赤字は毎年一兆円を超え、長期債務は毎年二兆円ずつ増加し、昭和六十年度には二十四兆円にも達することが見込まれるという、まさに国鉄財政は破局の状態にあります。  従来から国鉄は労使とも親方日の丸と言われる体質を持ち、地方公共団体、さらには国民一般まで国鉄に甘えを持つに至ったゆえんのものは、昭和二十四年、国鉄が公共企業体として発足したときにあると言っても過言ではないと存じます。すなわち、公共性と企業性の調和を図るべく設立された公共企業体の性格を十分検討する時間もなく発足したため、公社でありながら国有鉄道という、国民に錯覚を与えるような名称をつけたことにもあらわれているように、国鉄は企業体というより、鉄道省時代と同様の体質を持ったまま公社に移行され、また一方、予算、給与等国の統制によって国鉄自身の自主性を付与されず、さらには独立採算制を強要されるとともに、公共性のみを強調され、企業性を軽んじてきたところに国鉄の今日の破局的状況に立ち至った原因があると言えましょう。いまや国鉄再建問題は、その経営形態にまで踏み込んで論議を必要とする事態に立ち至っております。  第二臨調は、国鉄の改革を今回の行政改革の重要な柱として位置づけ、昨年七月の第三次答申において国鉄分割民営化を目指す抜本的な改革に関するさまざまな提言を行い、その線に沿って本案が提出されたのであります。本案は、単なる国鉄再建監理委員会の設置のためのみの法律案ではなく、国鉄経営する事業再建推進するための法律案であります。  この意味において、本案は、まず臨調答申を尊重して国鉄事業に関する効率的経営形態確立や、長期負債等の問題の解決を図ることにより、国鉄事業再建推進するという基本方針を規定するとともに、これに必要な国が講ずべき施策を規定していることはまことに時宜に適したものと、まず賛意を表する次第であります。  第二に、国及び国鉄は、国鉄事業運営の改善のために緊急措置を講ずべきことが規定されておりますが、国鉄がいまや浮沈の瀬戸際に立たされていることを思うとき、国鉄労使が最大の努力を傾けて徹底的に経営改善に取り組み、必要な措置を緊急に実行しなければ、国鉄事業再建はとうてい不可能であり、これが達成し得るかどうかが国鉄改革の基本的な前提となるものでありますので、この緊急措置の規定を設けたことは、重要な意義を有するものと存ずる次第であります。  第三に、国鉄再建監理委員会を総理府に設置し、前述した国の施策を講ずべき事項等について企画、審議、決定を行い、内閣総理大臣は、同委員会意見を尊重しなければならないこととしていることは、国鉄の改革問題が国政上の最重要課題の一つであり、その解決すべき問題の多様さ、大きさを考えるとき、政府内閣総理大臣のもと、一体となって所要の施策推進しようとする本案の仕組みはまことに適切なものであり、決して屋上屋を重ねたものでないと高く評価するものであります。  第四に、国鉄改革のために必要な施策は、昭和六十二年七月三十一日までに講ずるとの期限を付されていることは、国鉄赤字が日一日と増大し続ける今日、その対策がおくれればおくれるほど国鉄の改革はより困難となることを思うとき、きわめて妥当な措置であると考える次第であります。  なお、三枝三郎君提出の修正案は、法案の成立が遅延したことに伴う所要の整理でありますので、当然のものと存ずる次第であります。  最後に、国鉄経営の現状にかんがみ、国鉄再建監理委員会の速やかな発足を願うとともに、人格識見ともにすぐれ、国鉄改革に熱意のある委員が選任されることを強く要望いたしまして、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  163. 原田憲

    原田委員長 吉原米治君。
  164. 吉原米治

    ○吉原委員 私は、日本社会党を代表して、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案の原案及び修正案に反対の立場から討論を行います。  まず第一に、本案の目玉である監理委員会の設置とその役割りであります。  基本方針で明らかにされているように、昭和五十七年七月三十日に行われた臨調答申を尊重してこの委員会が運営され、審議が進められる限り、国鉄経営形態民営分割方向検討されることは明らかであります。一体、現在までの国鉄の持っている公共性あるいは国家的交通の基幹事業として、民営分割などの手法がなじむのかどうかということであります。もし仮にそのことが行われるとするならば、もはや国鉄再建ではなく、国鉄の破壊となることは明白であります。  反対理由の第二は、監理委員会の所掌事務、第五条で明記してある効率的な経営形態確立と、長期債務の償還対策であります。  この二つの課題は、昭和三十九年、国鉄経営赤字に転落して以来、幾たびか論議が続けられ、検討され尽くされてきた課題であり、どうすれば解消できるかもその方針は明白であります。要は、政府みずからがその決意に踏み切れるかどうかにかかっております。昭和五十五年、不退転の決意政府が提案された現行再建特別措置法、私どもは一部修正案を提出しておりますが、その中でも明確になっております。いまさら監理委員会を別につくり、むだな経費と時日をかける必要はありません。したがいまして、国鉄当局経営責任と権限を与えず、政府がいわゆる構造欠損と称される部分を国の責任で処理しない限り、再建は不可能であります。  いたずらに屋上屋を重ねるような監理委員会設置を中心にした本法案及び修正案には、以上の理由によって断固反対するものであります。  終わります。(拍手)
  165. 原田憲

    原田委員長 西中清君。
  166. 西中清

    ○西中委員 私は、公明党・国民会議を代表して、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案について、賛成の立場から討論を行うものであります。  国鉄再建が叫ばれてから十数年が経過しました。その間、数次にわたって国鉄再建計画が策定されてきましたが、その経営状態は改善の方向すら見られないという失敗に終わりました。いまや国鉄は破局的状況にあり、いまをおいて国鉄再建の機会はありません。国鉄再建責任を持つべき立場にある私たちは、まずこの点を深く認識すべきであると思います。  今日まで国鉄再建をなし得なかった政府責任はきわめて重く、輸送構造の変化への対応のおくれ、労使の再建意欲の弱さ、累積赤字の処理、構造的赤字の解決の先送りなどなど、国鉄経営悪化に至った過去の原因は種々指摘することができます。とりわけ、昭和三十九年から発生し始めた国鉄経営赤字に対して的確な対処ができなかった政府責任は重く、私は強く反省を求めるものであります。  しかし、いまは批判のために時間を費やすよりも、まずは国鉄の改革に向けて第一歩を踏み出すときであると思います。国民の大多数は、臨調答申に沿った国鉄の改革を望んでおり、本法案はその期待を担ってスタートをするということであり、私はその成立を強く望むものであります。  現在、国民国鉄に対して、国の助成という形で七千億円以上にも上る負担をしているのであります。このことからも、国鉄再建に取り組む政府姿勢と改革の成否は、国民の政治に対する信頼感に大きく影響を与えると言っても過言ではありません。したがって、もはや失敗は許されません。心して対策を立て、関係する組織も個人も一致協力して事に処すべきであると思うものであります。  最後に、この法案の成立に際し、政府に対して特に要求しておきたい点は、監理委員会委員の人選についてであります。  いままで申し上げましたように、国鉄の改革が国民的課題であるという認識に立って、委員国民各層の声を代表する幅広い分野からの人選であることを強く望むものであります。この点、十分配慮されるべきであることを申し添えて、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  167. 原田憲

    原田委員長 中村正雄君。
  168. 中村正雄

    ○中村(正雄)委員 私は、民社党を代表いたしまして、いま議題となっておりまする原案並びに修正案に賛成いたします。  賛成いたします理由は、国鉄再建がいま第二臨調答申の目玉であり、それは当然行政改革という国民の熱望いたしますることに対しまする最初の問題であるからでございます。したがって、この国鉄再建が成るか成らないかということは今後の行政改革に大きな影響を与えるものでございます。  そういう立場から、今日までたびたび国鉄再建に関しまする計画がなされ、それが実行されてまいりましたけれども、ことごとく失敗いたしております。したがって、国鉄再建国鉄自身の手によっても政府の手によってもどうにもできなかったという現段階におきましては、別な機関に再建をゆだねるということもやむを得ないと思います。したがって、本法案の骨子でありまする監理委員会の設置、私はこの監理委員会国鉄再建の処方せんをゆだねたい、これが本法案に賛成いたしまする基本的な考え方でございます。  ついでに、二つだけ私は政府に要望しておきたいと思います。  監理委員会がこのような重要な役割りを持つ委員会であります関係上、この委員の人選につきましては党利党略を離れ、真に国鉄再建に情熱を持ち、広い視野を持つりっぱな人を選んでいただきたいという点でございます。  第二は、いまの行政機構の立場からいえば、監理委員会行政機関の中におきまする位置は法案の内容以外にはないと思います。しかしながら、実際国鉄再建監理委員会に任すというのでありますならば、監理委員会出しました処方せんにつきましては、総理大臣はその意見を尊重するというような文面だけでなくして、それが真に国鉄再建に役立つものであり、世論の動向を踏まえ、経済の動向を考えて、将来の国鉄のあるべき姿の意見でありますならば、これをそのまま受け入れて、たとえ困難であろうともこれを実施するという決意を持って今後の国鉄再建に当たってもらいたい、この点を要望いたしまして、賛成討論といたします。(拍手)
  169. 原田憲

  170. 四ツ谷光子

    ○四ッ谷委員 私は、日本共産党を代表し、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し、反対の討論を行います。  まず初めに、本法案は、国鉄の真の再建を進めるどころか、逆に国鉄の解体処分を強行するものであるということです。  本法案が尊重すると明記している臨調答申が言う国鉄分割民営化とは、今日の深刻な国鉄危機をつくり出し政府・自民党や財界、大企業の責任を全く免罪し、もうかる路線や膨大な国鉄所有地など、甘い汁を吸えるところは残らず食いちぎり、国鉄を最後の最後まで食い物にしようということにほかなりません。しかも、もうかる路線だけの営業とか、不動産業を初め関連事業のもうけを保証するための鉄道事業という私鉄経営の限界とゆがみを持ち込み、公企業の第一義的存在理由である国民への奉仕、公共性を葬り去るという点でも、まさしく財界による国鉄の解体処分そのものであるということです。  第二に、臨調答申を最大限に尊重するという政府姿勢に根本的な誤りがあるということです。  公社制度こそ諸悪の根源であり、国鉄分割民営化しかあり得ないときめつけた臨調答申が、実はその実行可能性さえ検討していないしろものであること、また、分割民営によって逆に効率的経営が阻害される問題や、乗客の利便性とサービス低下をどうするかなど、臨調は全く検討していないことが政府答弁によって明らかにされたではありませんか。さらに、国民、利用者にとって最大の問題である、分割民営によって国鉄の全国的幹線網は一体どうなるのか、地域の鉄道網は一体どうなるのか、臨調答申では何一つ明らかにされておりません。私も質問で明らかにしましたけれども、北海道を初め東北、四国、九州には黒字の路線は現在一つもないではありませんか。北海道の場合、長期債務年金、退職金など特定人件費の経費を取り除いた幹線系の五線だけをとってみても、年間九百億円以上の赤字が生じています。経営が成り立たなければレールは次々とはがされ、鉄道網がずたずたに分断されることは火を見るより明らかなことであります。  第三に、本法案は、国民の重要な関心事である国鉄の膨大な赤字と借金をどうするのか、その具体的な解決策を何一つ示していません。政府の無責任ぶりがここにきわまっております。この膨大な赤字をつくり出し政府・自民党がその責任に一切口をつぐもうとしているその態度とともに、絶対に許せないことです。  分割民営化の実行可能性を検討するまでもなく、国鉄が抱えている莫大な長期債務は国の責任で処理しなければならないものです。さらに、戦後の国策によって生じた年金、退職金の負担、完成すれば新たに年間千数百億円の赤字要因となる青函、本四の大型プロジェクト、いずれも政府責任で解決すべきものではないでしょうか。しかし、この対策はきちんとした財源手当てをしなければ何一つできないものです。ところが、政府は、財源対策には何の権限も能力もない国鉄監理委員会に、国鉄赤字も借金も処理させるということが明らかになりました。これは、中曽根内閣は最初から国鉄赤字対策も再建対策も放棄したということにほかなりません。百害あって一利もない本法案の撤回を改めて要求いたします。  わが党は、国が経営責任を持つ国有企業の形態を守り抜き、国鉄を真に国民の足として再建させるため奮闘する決意を表明して、反対の討論を終わります。(拍手)
  171. 原田憲

    原田委員長 中馬弘毅君。
  172. 中馬弘毅

    ○中馬委員 私は、新自由クラブ・民主連合を代表して、日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に賛成の立場で討論をするものであります。  わが国は、明治維新以降この方、それまでの鎖国政策の反動として、西欧列強に追いつき追い越せとする近代産業育成政策を一貫して推進してまいりました。これらは製鉄、造船、炭鉱、紡績などを中心とする基幹産業を国家みずから経営する富国強兵、殖産興業政策であります。  鉄道事業は、明治五年九月、新橋—品川間において蒸気機関車が開通して以来、官業、民業併営の後、明治三十五年には鉄道国有法が成立、官営として日本列島の鉄道が一元的に経営されることになったのであります。電信電話事業は、明治二年、工部省による事業としてスタート、明治十八年には逓信省へと引き継がれました。また、専売事業は、明治三十一年、葉煙草専売法施行と同時に、それまでの民間各社の事業を国有化して、官営としてスタートしたのであります。さらに健康保険制度は、大正十一年に制定された健康保険法を基盤として拡充されてきたものであり、食糧管理制度は昭和十七年、戦時中の米不足時代、少ない食糧を国民に等しく分け与えるために導入されたものであります。  これら一連の国策がわが国の近代化と民生、福祉の安定、向上に大きな役割りを果たしたことは言うまでもありません。民間にまだ蓄積された資本がなく、国民も貧しい生活を強いられている段階では、国家が事業経営し、国民に画一的ではあるが、最低限の食糧や医療を施すことが必要であり、かつ最も効果的な施策でありましょう。  問題は、どの段階で民間の自由な活動にゆだねるか、国民の自主的な選択に任せるかであり、この決断と実行が民族の将来に責任を持つ為政者の務めであります。わが国においても、紡績業や造船業はかなり早い時期に民間に払い下げし、鉄鋼業や電力事業など戦時中に国策会社としたものも、戦後民営に移管したものは、いずれも民間の活力を存分に発揮し、国際市場に雄飛していることは御承知のとおりであります。  ところが、さきに掲げた国鉄、電電、専売三公社の事業や、国鉄とともに三Kと言われている食管、健保の制度など、過去の惰性で続けられている国家社会主義的諸制度は、程度の差こそあれ、それぞれ時代的役割りを終えた後は、そのいわゆる親方日の丸経営の非効率さ、硬直さゆえに、民業との競争、代替産業との競合、さらに国際競争に敗れ、破綻への坂道を一直線に転落しつつあると言えるのであります。一刻も早い民営移管ないしは自由化が望まれるゆえんであります。  議題の日本国有鉄道の改革に関しては、私どもは、時代的役割りを終えた国営としての鉄道事業、すなわち、国鉄民営移管を政党的立場で最も早くから主張してきているものであります。その改革手順をも示した国鉄改革案を提示し、単なる赤字減らし的な再建案や将来の運輸交通体系をいかにするかのビジョンなき場当たりの改革案では解決にならないとも主張してまいりました。この観点から、遅きに失したとはいえ、本法案により、ついに民営化方向に動き出したことを評価し、基本的に賛意を示すものであります。  ただ、これから委員会が設置され、意見が出され、国鉄改革が実施される過程において危惧される点の第一は、監理委員会の権限が弱いことであります。それをカバーする意味においても、委員には国民に信頼が厚く、各界に強い影響力を持った方々でなければなりません。  第二は、委員会基本方針とする臨調答申は、国鉄の日本列島七ブロック分割による民営提言していることであります。分割は鉄道特性であるネットワークを阻害するものであり、また、ブロックはそれぞれ条件が違い過ぎて競争関係も成り立たず、北海道などは自立条件が整わず、いつまでも民営化されずに終わることとなりましょう。ここのところは私どもが提案するように、鉄道特性が発揮できる線区での単一の民営鉄道会社として委員会意見をまとめられるよう望むものであります。  第三は、施策実施期限が実に悠長なことであります。国鉄改革は焦眉の急であります。四年後の昭和六十二年七月といわず、可及的速やかに体制整備を図るべきです。  最後に、国鉄改革の行く手には、国鉄の各労働組合、関係各省庁、関連業界団体、そして与野党政治家諸氏などのさまざまな介入や圧力が十分に予想されます。内閣はこれら一切の妨害や抵抗に屈せず、世論を背景としてこの歴史的事業を貫徹されんことを強く要望して、私の本案に対する賛成の討論といたします。
  173. 原田憲

    原田委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  174. 原田憲

    原田委員長 これより採決に入ります。  内閣提出日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案及びこれに対する三枝三郎君提出の修正案について採決いたします。  まず、三枝三郎君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  175. 原田憲

    原田委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  176. 原田憲

    原田委員長 起立多数。よって、本案は、三枝三郎君提出の修正案のとおり修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  177. 原田憲

    原田委員長 この際、本案に対し、湯川宏君外三名から、自由民主党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。湯川宏君。
  178. 湯川宏

    ○湯川委員 ただいま議題となりました日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対し附帯決議を付すべしとの動議につきまして、自由民主党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び新自由クラブ・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。      日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案に対する附帯決議(案)   日本国有鉄道経営が未曾有の危機的状況にあることにかんがみ、その事業再建の円滑な推進を図るため、政府及び日本国有鉄道は、次の事項につき、適切な措置を講ずべきである。  一 日本国有鉄道再建監理委員会委員の人選については、同委員会の任務の重要性にかんがみ、適切かつ公正に行うこと。  二 日本国有鉄道経営する事業に関する効率的な経営形態のあり方については、我が国の交通体系において鉄道輸送が担うべき役割、経営の主体性の確立等に配慮しつつ、日本国有鉄道再建監理委員会において慎重かつ十分な検討を行うこと。  三 事業再建に当っては、その前提として日本国有鉄道長期債務に係る負担、青函トンネル等現在進行中の大規模プロジェクトに係る負担、国鉄共済年金に係る負担及び職員構成の歪みに起因する特定人件費に係る負担等に関する問題を解決することが極めて重要であるので、日本国有鉄道再建監理委員会意見を尊重して政府において適切な措置を講ずること。  四 政府は、日本国有鉄道再建監理委員会意見を受けたときは、速やかに、事業再建の具体的な目標を確立し、所要の施策推進を図ること。  五 日本国有鉄道は、労使相互の十分な理解のもとに相協力し、業務運営の効率化等その経営改善の推進に積極的に取り組むこと。 以上であります。  本附帯決議案は、当委員会における本案審査におきまして、委員各位から述べられた御意見及び御指摘のありました問題につきましてこれを取りまとめたものでありまして、本法の実施に当たり、本委員会の決議をもって、政府において特に留意して措置すべきところを明らかにし、その実施に遺憾なきを期することといたすものであります。  以上をもって本動議の趣旨の説明を終わります。何とぞ御賛成を賜りますようお願い申し上げます。
  179. 原田憲

    原田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  湯川宏君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  180. 原田憲

    原田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、長谷川運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。運輸大臣長谷川峻酸君。
  181. 長谷川峻

    長谷川国務大臣 日本国有鉄道経営する事業再建推進に関する臨時措置法案につきましては、慎重御審議の結果、御採決を得まして、ありがたく御礼申し上げます。  また、ただいまの附帯決議につきましては、その趣旨を十分に体し、その実現に努力してまいる覚悟であります。どうもありがとうございました。     ─────────────
  182. 原田憲

    原田委員長 お諮りいたします。  ただいま修正議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 原田憲

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  184. 原田憲

    原田委員長 次に、内閣提出、船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより両案について順次趣旨の説明を聴取いたします。運輸政務次官関谷勝嗣君。     ─────────────  船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案  海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  185. 関谷勝嗣

    ○関谷(勝)政府委員 ただいま議題となりました船員の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  船員の雇用の促進に関する特別措置法は、海上企業をめぐる経済事情及び国際環境の変化等により、離職を余儀なくされる船員の数が増大していること等の状況にかんがみ、船員の雇用の促進に関して必要な措置を講ずることにより、船員の職業及び生活の安定を図るため、昭和五十二年十二月に制定されたものであります。  現在、この法律の附則第二項の規定に基づいて、事業規模の縮小等に伴い相当数の離職者が発生している近海海運業、内航海運業、はしけ運送業、船舶製造・修理業の四業種に係る離職船員の再就職を促進するため、昭和五十八年六月三十日までに離職する者に対し、就職促進給付金を支給する特別措置を講じております。  しかし、これら近海海運業等は、国際経済の停滞による輸送需要の低迷、日本船の国際競争力の低下等の事情に加え、国内の不況業種の影響も受け、今後も引き続き事業規模の縮小等がなされ、これに伴って離職船員が相当数発生することが予想される状況にあります。したがいまして、この就職促進給付金の支給に関する特別措置の対象となる者の離職日に関する期限を、特定不況業種・特定不況地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法案等の他の不況対策立法の期限に合わせて、昭和六十三年六月三十日まで延長する必要があります。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成いただきますようお願い申し上げます。  ただいま議題となりました海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  海洋汚染の防止につきましては、各国が協調して取り組むことによって初めて十分な効果が期待できるものであるため、早くから関係条約が作成され、国際的に統一された規制が実施されてまいりました。四面を海に囲まれた海洋国家であるわが国といたしましても、国際社会の一員としてこの問題に積極的に取り組み、従来から油及び廃棄物の海洋への排出について厳しい規制を実施するとともに、監視取り締まり体制の強化等に努めてきたところでありますが、今後とも海洋環境の保全に関する国際的な動向にも十分対応しつつ、海洋汚染防止対策の充実強化を図っていく必要があると考えております。  今国会に別途提出されております千九百七十三年の船舶による汚染の防止のための国際条約に関する千九百七十八年の議定書は、近年におけるタンカーの大型化、油以外の有害な物質の海上輸送の増大等を背景として、船舶に起因する海洋汚染の包括的な防止及び規制の強化を図ることを目的として、昭和五十三年二月に採択された条約であり、本年十月二日に発効することとなっております。  主要な先進諸国は、すでに同議定書の締約国となっており、世界でも有数の海洋利用国であるわが国といたしましても、早期に同議定書に加入し、これらの国々との国際的な連帯のもとに海洋汚染の防止を積極的に推進するとともに、その国際的な責務を果たしていく必要があります。さらに、同議定書におきましては、各締約国が船舶の検査を実施し、その発給する証書を国際的に互認する仕組みとなっておりますので、わが国外航船舶の円滑な運航を確保する面からも、今国会において御承認をお願いしているところであります。  このような情勢に対処するため、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正し、同議定書への加入に伴い新たに必要となる国内法制の整備を図ることとした次第であります。  次にこの法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、新たに、軽質油の排出についても重質油と同様の規制を行うとともに、一定のタンカーについて構造規制を行う等、船舶からの油の排出に関する規制を強化することとしております。  第二に、新たに、船舶からの有害液体物質等の排出について、油と同様に規制を行うこととしております。  第三に、船舶からのその活動に伴う廃棄物の排出について、一定の船舶に排出防止設備の設置を義務づける等、規制を強化することとしております。  第四に、新たに、一定の船舶またはタンカーの海洋汚染防止設備等について検査を義務づけるとともに、合格した船舶には国際海洋汚染防止証書等を交付することとしております。  なお、本法の施行につきましては、それぞれの規制内容に対応する議定書の各附属書の発効日等をその期日として、今後三年間にわたり順次施行していくことを予定しております。  以上が、この法律案を提案する理由であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  186. 原田憲

    原田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会