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1983-05-16 第98回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十六日(月曜日)     午後四時三十二分開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 中村 弘海君 理事 三原 朝雄君    理事 上田  哲君 理事 鈴切 康雄君    理事 吉田 之久君       坂田 道太君    塩谷 一夫君       玉沢徳一郎君    石橋 政嗣君       前川  旦君    安井 吉典君       寺前  巖君    中馬 弘毅君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         外務省アジア局         長       橋本  恕君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         安全保障特別委         員会調査室長  桂  俊夫君     ───────────── 委員の異動 五月十六日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   寺前  巖君     東中 光雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ────◇─────
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝雄君。
  3. 三原朝雄

    三原委員 きょうは非常に短い時間の審議でございますので、与党はなるべく短目にやれということでございます。できるだけ野党さんの発言を多くしてもらうために短縮いたしたいと思います。  そこで、総理、昨年末内閣を組閣されて約半歳が終わろうとするわけでございますが、その間における総理初め各閣僚の寧日ない熱心な執務ぶりには心から敬意を表しておるところでございます。  本日は、安保委員会でございますので、安保防衛について私はお伺いをいたしたいと思います。  今日まで安保防衛につきましては、ともすればどうもその施策方針等を不透明のまま流してきたというような感も深くいたしておったのでございます。しかし、総理が就任されまして、中曽根内閣総理大臣を初め、谷川防衛庁長官あるいは外務大臣等におかれましても、総理方針に従っていろいろと積極的に大胆な御発言も願ってまいりました。  そこでそういう点について、たとえば憲法論議の問題でございますとか、あるいはわが国防衛方針である専守防衛の問題、あるいは日米安保の運用の問題、あるいは非核三原則、あるいは防衛力整備、また訓練、活動等問題等におきましても、いままで国民に不十分な説明に終わっておった、そういう受けとめ方をなされておったのが、中曽根内閣になって明確にその方針なりあるいは枠組み等について所信を明らかにしていただいたという点につきましては、私は、安保防衛の問題についてこれを高く評価をいたしておるものでございます。  内政においてそうでございますとともに、外交におきましても、総理は自由、平和の精神と申しますかそういうものに徹せられて、さき韓国訪問をなさり、また引き続いてアメリカ訪問、また近くはASEAN諸国歴訪をしていただいたのでございます。  ただ、この点につきましても、私は率直に申し上げたいと思いますが、私は韓国にお供をいたしましたが、日本防衛立場なりあるいはアジアの平和について率直な御意見交換もなさったことと思いますし、またアメリカにおきましても、レーガン大統領との会談も、報道するものは防衛問題についていろいろな誤報もあると私は伺っておるのでございます。特に、随行いたした方々のお話によりますれば、総理自身日本防衛は自主的な体制整備をしていくし、また日本防衛体制なり、アジアの平和、世界の平和につきましても、十分レーガン大統領意見交換をなさったということを側近の方々から承ってまいっておるわけでございます。また、ASEANにおきましても、総理は、平和に徹したみずからの姿勢をもって、日本軍事大国にはならない、そういう専守防衛方針のもとに日本防衛力整備をやっていくのだ、かつての軍国日本というようなイメージは断じてないのだということを各国において御説明を願ったことを、承知をいたしておるわけでございます。  しかし、先ほども申しますように、大胆しかも率直に総理所信を述べられた、そういうものが国民の一部に誤伝されると申しますか十分な理解を願っていない、総理のせっかくそうした平和に徹する心境のもとに防衛安保施策を進めておられる点について、国内の一部にもあるいは周辺諸国においてもそういう誤解のあったということは残念でございますけれども、絶えざる努力によってそれらが逐次明確になりつつあることは、その成果に対して感謝をいたすものであります。また、それだけの評価をいたしておるわけでございます。  したがって、私は、この機会総理にそういう立場からみずからの安保防衛に対する所信というものを、短時間でございますけれども、ひとつお述べいただきたいというのが第一点でございます。  第二点は、今月の末からアメリカにおいてサミットが開会をされるわけでございます。サミットにつきましては、一九七五年、あの第一次石油危機世界経済に及ぼす影響等が懸念されて、世界西側先進国首脳レベルにおける会議が行われて、そこで世界情勢の問題についてお互い意見交換し、政治的な一つ結論を出し、これを世界に表明することによって世界のこうした難局の打開に処する会議であったと思うのでございます。  しかし、これも年々回を重ねるに従って、どうもサミットがマンネリになったのではないか、あるいは何かセレモニー的に終わるのではないか、一部にはそういう批判も出てまいっておるのでございます。  しかし、私は、このサミットというものに対するそうした一部の批判はありますけれども、やはり大きな期待と願望を持っておるわけでございます。特に今日の世界情勢というのはきわめて重要な段階になってまいったことは御承知のとおりでございます。これは内容的に見ましても、経済問題からスタートいたしましたが、それがやはり防衛安保の問題にも関連をしてくる。言いかえるならば、大きく世界平和の問題もその俎上に上がらざるを得ないという状態でございます。内容的にそうであるとともに、地域的に見ましても、当時はやはり大西洋を中心としてこれらの論議が進められた、そういう傾向にあったと思いますが、今日の世界の志向というようなものの重点が東洋にも向かいつつある、あるいは第三世界問題等におきましてもやはり大きな課題が投げられておることは、私がもう申し上げるまでもないわけでございます。  そういう点を考えてまいりますると、いま申し上げましたように、ただ単なる経済問題ではなくて、本質的には政治外交の問題、あるいは防衛、平和の問題に関連をしてまいるわけでございます。したがって、そのこと自身大きな内容をはらみますとともに、国家間の体制におきましても多少様相が変わってきた。たとえば、ヨーロッパソ連との経済交流なり信用供与の問題、あるいはヨーロッパにおける安全と平和の問題、たとえば、最近INFの問題と申しますか中距離核兵器交渉問題等一つの大きな課題でありますが、それはただ単に西側だけの問題でなくして、やはりグローバルな世界情勢の問題であると思うのでございます。したがって、西側最高首脳レベルにおける会議でございますけれども、それ自体、いま申し上げましたように、一地域ヨーロッパの問題ばかりでなくアジアの問題であり、また経済の問題ばかりでなく平和の問題であり、あるいは軍縮問題なり、そういう問題とも内容的には相関連をいたしておるということでございます。  たとえば、いま申し上げましたように、ヨーロッパにおける安全、核兵器の問題なり、あるいは安保、平和の問題等が、それがSS20のごとく東洋にもその影響が結果的には出てくるというような事態でもあるわけでございます。  そういうことを考えてまいりますれば、今回、西側首脳会議というようなものにつきましても、やはり総理といたしましては、そういう立場から、有機的にあるいは総合的に御判断を願う必要がある。しかもそれは、一地域だけの結論でなくて、やはり統合的な判断に立ってのお互いコンセンサスが必要である。その得られたコンセンサスによって各国お互い協力し合う。そこにはお互いの信頼あるいは理解協力というようなものがなければできないわけであろうと思いまするが、そういう点からサミットを見直してみる重要な段階であると私は思うのでございます。  日本の地位が非常に向上してまいりましたし、それだけに、責任なり使命も抱かれるような状態になったわけでございますので、総理として今回サミットにお出ましになるわけでございますけれども、非常な注目の的になる日本総理大臣として、いかなる考え方、いかなる方策をもってお臨みになろうとしておられるか、そういう点について、私はこの機会に、事前ではございますけれども、お話しを願うことができればと思うのでございます。  以上、二点をお伺い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 第一点の安全保障防衛基本方針についてでございますが、前から申し上げますように、三つの点からわれわれは日本安全保障を考えております。  第一は、憲法のもとに節度のある防衛力をつくって、みずから自分の国を守るという体制整備するということ、第二は、日米安保条約を有効に機能せしめるという形によって、安保条約日本防衛力というものを補完関係に置いておくということ、第三番目は、外交あるいは国際経済協力あるいは備蓄その他国際世論等をよく考え、平和と軍縮へ向けての環境整備を図っていくということ、この三つによってわれわれは安全保障の問題を考えてまいりたいと思っております。  それで、中曽根内閣成立以来いろいろな御批判もいただきましたが、私がやっておりますことは、従来、鈴木内閣福田内閣歴代内閣がやってきたことの継承を行っていると考えております。と申しますのは、最近の時点においては、鈴木レーガン会談における共同コミニュケであります。あれは両国のいわばトップ同士約束でありまして、現内閣もこれを引き続き継承しておるものであります。  あの約束の中におきましては、国際情勢等認識を論じながら、やはり日本日本なり——イーブン・グレーター・エフォーツという言葉があの中にございます。より力強き努力を行う、そう約束しておるわけで、こう約束をした以上は守るのはあたりまえのことであり、そういう約束をすること自体が、日本みずからを守るためにやっておるわけであります。  そういう意味におきまして私はそれを継承いたしまして、その延長線で諸般政策を進めておりますが、その中におきまして、まあ多少変わっているということを申しますれば、憲法の枠内において、ここまではやれる、これ以上はやらぬ、あるいはやれない、そういうガードレールをはっきりしたという点があるだろうと思います。  従来は、さまざまな関係等におきまして、そういうことに言及しなかったりあるいは御質問がなかったりした問題がございます。そういう問題につきまして、現憲法のもとに、従来のわが国の「国防の基本方針」及び歴代内閣が守ってまいりました非核三原則、あるいは軍事大国にならない、専守防衛をもって行う等々のその政策を引き継ぎまして、そして個別的自衛権範囲内で行うということを厳然と確立しつつ、わが国防衛でここまではやれるという面を明らかにした、しかし、これ以上はやらないという点も明らかにした。そのあいまいであった点が明らかにされたという点でややジャーナリズムにショッキングな受け方をされて報道されたということがあったと思いますが、私の方から見ますれば、質問がありましたから、憲法上許される点を明確にした、そういうことであると思っています。  また、わが国自分で守ります、また、守るということを国民にも訴えるということは、これは当然安保条約を有効に機能せしめるためのまた一つの大事な考え方でもあります。みずからが自分の国を守ることが大事であるということは当然で、当然のことを言うことでありますが、その当然のことを言うことがまた安保条約を有効に機能せしめる結果を持ってきている、そういう両面を持ちまして言明してきた、こういうことであると御理解願いたいと思うのであります。  この方針は、韓国に参りましても、あるいは特使を中国に派遣いたしましても、あるいは私みずからASEAN諸国に参りましてもいろいろ御説明申し上げまして、関係諸国からは完全な理解をいただき、ある方面ではまた強い支持をいただきました。そういう結果であるということを御報告申し上げる次第であります。  それから、ウィリアムズバーグで開かれますサミットにおきましては、元来これはいわゆる経済サミットという形で出発したのでございますが、当然東西問題、東西問題の中にはココムそのほかの貿易問題も入るでしょうし、当然また軍縮問題も入るであろうと予想しております。それから南北問題、こういう諸般政治経済関係の問題が含まれてくるであろうと思います。  私は、今回の会議は非常に重要な意味を持ってくると認識いたしております。その理由は、ちょうどソ連との間におきましてINF交渉とかSTARTの交渉が微妙な段階になりまして、ある意味においては両方が駆け引きをしてチャンスをねらっているという段階であるのかもしれません。そういう意味におきましてもなかなか重要な段階であり、そのときに西側先進国が集まってアメリカにおきまして相会するということは、世界的な成果を生むか生まないかという点についても、私は影響力を持ってくるのではないかと思っておるわけであります。  それで、レーガン大統領も、いままでのいろいろな準備会議の話を見ますと、主宰国アメリカであって、そしてレーガン大統領ホスト役を務めますし、かなり意欲的であります。それで、来年はもう大統領選に入ります。そうなりますと、わりあいに余裕があるのはこの六、七月から夏までの間だろうと想像されます。  そういうアメリカ大統領選の時期等もかんがみ、その主宰国アメリカである、そのアメリカソ連といろいろな問題で軍縮そのほかの交渉の主役をなしていく、そういう点を考えてみますと、このサミットはほかの国で行われる場合のサミットに負けない重要な意味を持ってきつつある、そう思いまして、この八三年のサミットというものは、ある意味においては八〇年代の運命を決するような重要なことが結果的にいろいろ論議される可能性もあるのではないか、そう思いまして、慎重に対処してまいるつもりでおります。
  5. 三原朝雄

    三原委員 再質問はいたしません。
  6. 小渕恵三

  7. 上田哲

    上田(哲)委員 初めに、さきASEAN歴訪におきまして、総理シーレーン問題等の御説明の中で、ひとしく平和憲法を守るということを強調されました。私どもは、そのことについてはこれを評価いたします。  そこで、こうしたASEAN歴訪に続いて間もなくアメリカにも行かれるわけで、月末、大統領やその他との会談が予定されていると伺っております。ASEAN歴訪のそうした成果を役立てるということになりますなら、先般一月訪米の際にたまたまワシントンポスト等に報道されましたように、総理が改憲の時間表を持っているという報道がございまして、今回のASEAN諸国での御発言と相背馳することはないかというふうな疑念も生じさせてはならないだろうと思うのであります。  私どもは、こうした評価の上に立って考えるのでありますが、ひとつ訪米の際、大統領に対してもあるいはジャパンソサエティー等々で御講演も予定されているようでありますから、アメリカの有意な世論に対して、ASEAN諸国におけると同じように、平和憲法を守るということを御発言なさるのが適切ではないかと思うのであります。いかがでございましょう。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 同感であります。
  9. 上田哲

    上田(哲)委員 大変結構であります。ぜひひとつ高らかに平和憲法遵守の道を発表していただきたいと思いますし、そのことはいま、帰国早々国会で開かれる最初の機会ASEAN諸国の各地から注目されていることにこたえるだろうと思います。せっかくお願いをいたします。  そこで、総理の御就任以来、あるいは一月訪米そして帰国以来の今国会質疑の中で、総理の構想される防衛構想、軍事構想なるものがいろいろ浮き彫りになってきたと思います。当委員会はそのことを締めくくらなければならぬと思うわけでありますが、たとえば不沈空母論あるいは運命共同体論同心円論、これははなはだ形容詞的でありまして、もう少しく内容的に、組織的に詰めなければならないと思います。  総理が言われる防衛構想基本は私は三つだと思います。バックファイア阻止、三海峡通峡阻止、そしてシーレーン確保ということになろうと思いますが、防衛構想である以上、これらは脈絡一体をなすものでなければならない。そうした戦略構想があるはずであります。総理には基本的なところをこの機会に伺いたいと思いますので、防衛局長確認だけしておきます。二点。  一点は、この戦略構想中心をなすものは、いわゆるグアム以西フィリピン以北一千海里、北東太平洋三角海域シーコントロールである。  もう一点、この海域においては日米、具体的には日本自衛隊及び第七艦隊は密接不可分関係にあり、しかもこのシーコントロールについては現状まことに不十分であるという認識を持っている。この二点について御確認をいただきたいと思います。
  10. 夏目晴雄

    夏目政府委員 まず、シーレーンがいわゆるグアム以西フィリピン以北三角水域といいますか、それをコントロールするものではないか、こういう御質問だと思います。われわれが考えているシーレーン防衛というのは、これも繰り返し何回も御答弁申し上げておりますが、周辺数百マイル、航路帯を設ける場合には千マイル程度を防衛力整備のめどとして考えているということでございまして、いま御指摘のような海域日本責任を持って守るというふうな意味合い、言いかえれば海域を分担するというような考え方ではないことが第一点でございます。  それから、この有事の際のシーレーン防衛につきましては、言うまでもなく日米共同対処というものを前提にしているということが第二点。  それから第三点は……
  11. 上田哲

    上田(哲)委員 いいです。私の聞いてないことはこの際関係ないのでありまして、もう一遍イエスノーかで答えていただきたい。  二回に及ぶハワイ会談の中で防衛庁がはっきりいままで確認されていることを私は繰り返しているだけなんですから、こうした海域海域分担をしているだろうと言っているわけではないのです。シーコントロールという言葉が出ているわけですから、シーコントロールというのが主要な戦略目標であるな、そしてそれについては日米両海軍の密接不可分関係というもの、そしてシーコントロールはいまだ十分ではないという点の認識を聞いているので、イエスノーかでお答え願いたい。
  12. 夏目晴雄

    夏目政府委員 シーコントロールという言葉の定義が必ずしも明確でございませんが、わが国海上交通の保護をする、すなわち船舶の安全を確保するという意味であれば、そのシーコントロールということで結構だと思います。  それから、その能力現状において必ずしも十分でございません。
  13. 上田哲

    上田(哲)委員 結構です。  総理には、そうした上に立ってひとつ基本的なことを伺いたいのでありますが、そのシーコントロール、私はそれを制海権だとかその他の日本語に訳すと問題が起きますから、日米で使われているシーコントロールという言葉を使っているわけですから、その解釈の言葉をここで争いません。問題は、いま言われたようにそのシーコントロール、不十分であるということでありますから、総理にひとつ基本的に伺いたい第一点は、つまりこのシーコントロール日本だけでやるのですか、日米共同対処なんですか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 シーコントロールという言葉はちょっと誤解を生むような言葉だろうと私は思います。むしろシーディフェンス、ディフェンスという言葉の方がより正確ではないかと思います。  それで、これはいま夏目君が申されましたように、日本周辺数百海里、それからもしインベージョン、侵略が行われたという場合には二つの航路帯を想定してアメリカといろいろ協議する、そういう形で協議がいま始まった、それは共同対処前提にして進められている、こういうことであると思います。
  15. 上田哲

    上田(哲)委員 単独ではない。それでシーコントロールシーディフェンスならシーディフェンスでも結構です。その言葉に私は乗りますが、そのシーディフェンスがいま十分でない、十分でないというのをどうしても十分にするために御努力なさることが総理防衛構想基本にありますね。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは「防衛計画大綱自体が、いま十分でないから充実させようというのでそういう一応の目標ができて、それに近づけようという努力が行われているわけです。
  17. 上田哲

    上田(哲)委員 そうしますと、「防衛計画大綱」が満たされればこのシーディフェンスが完成されるという意味ですか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま考えておる一応の目標を達することができるということであると思います。
  19. 上田哲

    上田(哲)委員 アメリカ側はこの実務者会議でも、これでは足りないと言っているのですが、認識の差異がございませんか。
  20. 夏目晴雄

    夏目政府委員 このシーレーン防衛能力が十分かどうかについての議論、一〇〇%云々ということから見て必ずしも十分でないというふうに申し上げておりますが、アメリカもそういった認識に立って、わが国に対する防衛努力期待という表明が再三にわたってある状況でございます。
  21. 上田哲

    上田(哲)委員 大変時間がないものですから話がそれないようにお願いしたい、私はシーディフェンスで結構ですから。  いま総理が言われたのは、「防衛計画大綱」をその不十分さを満たすためにやっているのだ。だから、「防衛計画大綱」が満たされた場合にはそのシーディフェンスなるものが完了するのか、こういうことを聞いているわけです。アメリカはこれに対して不十分だと再三言っているわけです。これは周知の事実ですね。  そうすると、そのアメリカ側の考えと総理考え方に差が出てくることになりませんか。これはもう総理がおっしゃったことですから、そっちの話でなくて結構です。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 わが国としては、いまのところはほかの計画は考えません。現在の大綱を達成するように努力していくということで、一生懸命やりたいと思っています。
  23. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると、アメリカが要請していることがあっても、そしてシーディフェンスなるものが十分でなくても、つまり、「防衛計画大綱」が完成してもシーディフェンスなるものを完了したとはアメリカ側が考えないような場合、こういう場合でも総理としては「防衛計画大綱」以上の進展は考えない、こういう意味でありますね。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「防衛計画大綱」を達成することにいま全力を注いで、予算の範囲内またほかの経費とのバランス、国民世論等も考えつつ努力していくということ以外は考えません。
  25. 上田哲

    上田(哲)委員 繰り返しますが、総理の言われるシーディフェンスが「防衛計画大綱」の完了によって充足されなくても、それから先のことは考えないわけですか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はいまの段階においてと、こう申し上げておるのでありまして、いまの段階においてはまずそれを達成することに努力をしていくということで、ほかのことは考えないということであります。
  27. 上田哲

    上田(哲)委員 繰り返しますが、「防衛計画大綱」以外いまは考えない、「防衛計画大綱」が完了してもシーディフェンスが完了するとはいえないという場合があるわけですね。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、大綱の水準が達せられた場合に次の段階は考える、そのときの国際情勢がどういう状況にあるか、あるいは日本防衛力がいろいろの周辺の状況について相対的にどの程度の充実度を国土、本土防衛、列島防衛という面から持っているか、そういう点を調査してみて、そして防衛問題というものを考える、こういう段階であるだろうと思います。
  29. 上田哲

    上田(哲)委員 それはお互いアメリカ側日本が詰めている見解としては、ずれが拡大されたことになります。これは今回基本的なことを総理に伺うわけですから、後に残すことにいたします。  そうしますと、いま総理の言われるシーディフェンス、われわれは三角海域と言っているわけですけれども、そのシーディフェンスで充足を願っていく、計画充足をしていこうとする目標は、平時の場合ですか有事の場合ですか。——いやいや、これは総理でなければだめですよ。こんな基本的なことは総理から答えなければ話にならぬ。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは「国防の基本方針」及び歴代内閣が持ってきた日本防衛力整備方針にのっとってやっているわけであります。もちろん、侵略が行われた場合、そういう想定もあるように、いわゆる有事、侵略が行われた場合ということも想定の中に入っているわけです。
  31. 上田哲

    上田(哲)委員 そうすると有事だということですね。  有事だということであれば「防衛計画大綱」と違ってくるのですよ。「防衛計画大綱」は、総理防衛庁長官をおやりになりましたから当然知悉されておるように、これは基盤的防衛力整備です。基盤的防衛力整備というのは平時であります。その平時ではなくて有事を想定しておやりになるのだということは、根本的に変わってくるわけですね。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基盤的防衛力整備というものは有事が全然想定の中に入ってないということはないと思うのです。防衛という問題は一刻もゆるがせにすべからざることでありまして、もし侵略があった場合にはいつでも有効に発動できるようにしておくということが防衛当局の責任であり、政府の責任であります。そういう意味におきまして、基盤的防衛力というものがもし侵略があった場合に全然役立たない、機能しないということが前提で行われておったら、そういう考えは間違いではないかと思います。
  33. 上田哲

    上田(哲)委員 新説が出てきたわけでありまして、基盤的防衛力というのはそういうものでないわけです。  そこのところは後の議論にいたしますけれども総理にそこのところでぜひ議論しておきたいと思うのは、第一に、こうした総理の言われるシーディフェンスについて言うと、そのためには日米の戦力の常時補完体制がなければシーディフェンスというものの意味がないわけですね。それから今日、その大きな、海域と言ったら問題があるんだったら、範囲の中では、アメリカに対する有事と日本に対する有事とは区分できない。どの艦艇を守れるかなんという議論では全然末梢的になるわけでありまして、それから三番目の問題は、日米の配備と共同訓練がリムパックなりチームスピリットなり、もうすでにその段階まで、有事即応のところまで来ているわけです。  こういう状態を考えますと、これはどういうふうに言われても、本来共同対処というのは安保条約第五条から出ている言葉なんですけれども、その言葉がもう実は安保条約第五条に適合しなくなった、これをお認めになることが正しいのじゃないかと思うのです。
  34. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は同心円ということで説明申し上げましたが、要するに自衛隊は盾の役割りをする、そして安保条約により米軍はやりの役割りをする、盾とやりというのは同じポイントから出ておって、狭い範囲が盾であり広い範囲がやりの役目、だから同心円になる、そういう意味のことを申し上げているので、共同対処ということは当然考えられることであります。
  35. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、その共同対処というのが無理になってきたというのは、まさに総理がいま言われたように運命共同体、同心円、これは日米それぞれに対する有事、脅威というのを分離できないということになっているわけです。どんなケースをつくって、これはいいかこれは悪いかマル・ペケをつけるというようなことでは済まない状態になっているわけですね。  試みに伺いますけれども、それでは、この範囲の中で日本に対する脅威とアメリカに対する脅威とを完全にあらゆるケースに区分できるとお考えですか。
  36. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 安保条約の発動及び日本防衛の発動というのは日本に対する有事、日本に対する脅威というものが中心に展開されておるので、アメリカの有事ということは安保条約で想定している対象ではない、日本の有事というものが中心で行われる、こういうふうにお考え願いたいと思います。
  37. 上田哲

    上田(哲)委員 だからそれは言葉の遊びでして、実際にこれだけの共同訓練、共同配備、しかもこれだけの設定がある中で、これは別々にすることができないという状態になっているわけです。  ここから先は言葉の遊びになりますから、私は時間を節約いたしますが、総理にひとつこの問題についてはっきりした御答弁をいただきたいと思いますのは、総理が言われる運命共同体というのはそういうことだと思うのですよ、分離ができないというところにあるわけです。一方が沈めばこっちも沈むということになるはずなんです。それは安保条約第五条の拡大解釈では済まなくなっている。まさに西側同盟、あるいは日米同盟でもいいのですが、その一員としての共同集団行動というところに踏み込んでいるわけです。さっき総理三原委員にお答えになりました鈴木総理の一昨年五月の日米共同声明以来、その方向がはっきり確定した、あの時点からは変わってきている。  私は総理立場は違いますけれども総理の立つ立場においてならば、つまり日米共同声明の立場に立ってならば、これは明らかに集団防衛である、個別自衛権ではなくて集団自衛権である。言葉のことはいいんですが、現状、実態においてはすでに個別自衛権は存在しておらぬ、すでに集団自衛権の段階に入っているんだということを明らかにされて、西側同盟の一員としての集団自衛権の行使、こういう立場にいまわれわれは立とうとするんだと説明される方が防衛庁なり何なりの説明も非常にすっきりしてきて、私たちは議論がしやすくなるだろう。それが正しいのではないか。意見は逆ですけれども、その立場をここで宣明されることがふさわしいのではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それはあなたの独断でありまして、われわれとは考えが根本的に違います。運命共同体という言葉を連発されましたが、私が申し上げましたのは、日本アメリカとの間は自由、民主主義という信条を同じくしているというその思想の面、それから膨大な経済的な通商関係、相互依存の関係を持っている。それから安保条約によって防衛お互いが相互的に協力し合っている。その場合、もちろん日本防衛というものが主軸で行われているわけです。こういう三つの大きな点において運命を分かち合っている、シェア・ザ・デスティニーという言葉が使われている。運命共同体という一言があるわけじゃないのです。私は運命共同体という英語を知りません。シェア・ザ・デスティニー、そういう言葉で、それには自由、民主主義、経済、それから安保条約、そういうものによる運命の分かち合いということを言ったので、軍事面における、しかもあなたがおっしゃるような集団的自衛権を前提にした運命共同体なんという概念はさらにないということを御存じ願いたいと思う。
  39. 上田哲

    上田(哲)委員 運命共同体を連発されたのは総理でありまして、国民はひとしくそれに対して恐怖感をすら抱いているわけでありますから、それを英語で言いかえられても私どもは困惑するばかりであります。しかし、どうかひとつ、総理の教養のために伺っておきますが、個別的自衛権——私は的をつけるべきじゃないと思っているのですが、個別自衛権と集団自衛権は明確に区分できるんだと断言されますね。
  40. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 明確に区分できます。
  41. 上田哲

    上田(哲)委員 その区分がいま消滅している。消滅しているという認識に立つことを私はあなたに申し上げて、今後の議論にゆだねておきたいと思います。  若干の資料を持ってまいりましたので、時間がないので、これをちょっと見ていただきたい。  私が伺いたいことは、今後の軍事費についての展望なんでありますが、私が試算したものが主でありますから、概数として大まかにつかんでいただければいいのですが、一番おしまいのところを見てください。時間を節約するために粗ごなしをいたしましたから……。  これは防衛庁の資料ですけれども、五三中業で人件費、食糧費、人糧費が四七・八%になっております。こういう形というのは非常にバランスを欠いているんではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さんがお示しになった意味は、正面と後方と人間とのバランスの意味でございますか。(上田(哲)委員「四七・八%までいっているわけですね」と呼ぶ)これは五三の場合は人員、食糧が四七・八%。しかし五六になると、あなたの資料によると減っておるようですね、人間の方は。つまり正面がふえてきている。これはやはり大綱が目的としている方向に合致している、そういうことになるように努力している……。
  43. 上田哲

    上田(哲)委員 いや、四七・八%というのはやはりバランスを欠いているということですね。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五三中業において人件費、糧食費が多いということは防衛の上から見ていささかどうか、そういう意味においては私も同感の感があります。
  45. 上田哲

    上田(哲)委員 そこで、じゃあこれから先どうなっていくかということなんですが、いま五六中業のお話もされましたが、五六中業もそのパーセンテージならばいいということですか。
  46. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はこういう数字まで及んで計画の詳細の内容をまだよく存じておりません。これは非常に専門的なことでありますから防衛局長から答弁させます。
  47. 上田哲

    上田(哲)委員 じゃあいいです、さっきの御答弁の中に含まれておりましたから。  細かいことを聞いておるわけじゃなくて、人件費、食糧費が四七・八%というのは、これは大変例は悪いかもしれないけれども、普通の企業であれば成り立たないことですね。だから、これは数字としては非常におかしいじゃないか、五六中業で改善がなされるはずじゃないか、こういう御意見でありますから、どこが適切な線かということを聞くのも無理でしょうから、それはそれでいいと思うのです。  問題は、いまのは防衛庁から出された数字なんですが、その数字に従ってずっと見ていきますと、これからの五六中業、実は大変ラフな数字だけれども説明する時間を省くためにお渡ししているんですが、このまま行きますと、五十七年と五十八年の人糧費の伸び率というのが一・七%ふえるのです。その計算でずっといきますと、五六中業中の人糧費が六兆三千四百九億円という数字になります。これは人勧も入っていない生の数字でそういう数字になるわけでして、これはもう一遍一番下の数字を見ていただきますと、おしまいから三枚目、五六中業十五兆六千億円という想定の中で六兆四千億円、これは丸い数字ですけれども、ほぼいっぱいになってしまうわけです。つまり、言いたいことは、いまのままで人勧を含めないで進めていっても、五六中業で人糧費は目標としているところまでほぼいってしまうということを言いたいわけです。こういう状態でさらに人勧分を乗せる、物価上昇分を乗せる。  それから、もう一つ重要なことなんですが、一枚目の紙なんですが、これも試算でありますから正確な数字ではありませんけれども、ざっと四千人は、少なく見積もっても正面装備に必要な人員が必要になってくるわけです。  こういう数字を全部加算いたしますと、つまり、途中の細かいことは言いません、説明のために申し上げたんですが、四七・八%では大変不適正だろう、それを何とか減らさなければならないだろう、そこで五六中業の計画では四〇%くらいに持っていきたいということになっているのが、正面装備に必要な人員や人勧を含めただけでももうとっくに突破してしまうわけです。私の推定では、一番最後に書いてありますように、四二・一八%までいってしまうわけです。これは非常に低く見積もって、曹士の線でやっていますから、非常にレベルが低いのです。  そういう細かい数字はともかくとして、大まかに言って、このまま行くと五六中業で人糧費が相当高いところになる、こういう状態になることをどうお考えになりますか。
  48. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 できるだけ正面の方へ回して、そして人間は節約して、高度の科学技術的装備を持った質的に高い防衛力を節度を持って整備する、そういう方針の方向に移行しつつあることで、私はいい方向であろう、そういうふうに思っております。
  49. 上田哲

    上田(哲)委員 そういかないのですね。このまま行きますと、当然ぎりぎりのところで五六中業でねらっている線を超えてしまうのですよ。超えてしまうのだから、方法は総理、二つしかないのです。その二つの方法は、言うまでもなく、このままで——そこまで人糧費を下げられないけれども、このままで行きましょうということが一つでしょう。そうでなければ、防衛庁が勘案しているのは全体のパイですね、全体の十六兆何がしというパイをふやさなければならない。この二つなのです。  人糧費というのがこのパーセンテージになっていることが不適切であるとお考えである以上は、このままいかれるのか、それとも五六中業全体のパイをふやそうという方向をおとりになるのか、この二つのいずれをおとりになりますか。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 上田さんは、恐らく一 %をいつ超すか、そういう含みがあって御質問をなさっているのではないかと思いますが、一%はもう最大限守るように今後も努力していくつもりです。  いまの正面と後方と、それから人糧費の割合というものは非常に技術的な数字になりますから、防衛庁長官なりあるいは局長から答弁させます。
  51. 上田哲

    上田(哲)委員 では結構です。一%の議論なんか、私は歯どめにならないと思っていますから、やっていないのです。一%なんか、この中でとっくに飛んじゃっているのだ。総理、これは不勉強だ。  いいですか、こんなものは認める、認めないじゃない、議論にならないのです。そんなものは議論にならないと先に言っているので、人糧費だけを取り上げても、このままいかれるか、ふやすのか。どのみち自衛隊が動けなくなるんですよ。だからその総帥である総理が、このままでいくのか、さらにパイをふやすのか、そのどちらをおとりになるのかしかないわけでしょう、物理的に。どちらをおとりになるべきだとお考えなのですか。一%論などではありません。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これからの計画の中身につきまして、私はまだ防衛庁から詳細な報告も受けておりません。恐らく適当なときに防衛庁長官から相談があり、国防会議等においても相談するという段階になると思うので、あなたとここでやみ取引みたいに話をしてもそれは意味ないことで、もう少し防衛庁内部における正確な積み上げを経た上で皆さんに御答弁申し上げることが適当であろうと思います。
  53. 上田哲

    上田(哲)委員 やみ取引なんということはないですよ、総理。これはもうちょっと勉強した言い方をしてくださいよ。何もここでもって決定的な結論を出せとは言いませんが、それでは質問を変えましよう。  このままでいったら人糧費はもっと加算されてしまっていまの計画どおりいかない、それではまずいなというふうにお考えになるのか、これで結構じゃないかとお考えになるのか。それは別に細かい試算がなくたって言えるはずなのです。天下の総理大臣なのでありますから、国防会議議長なのでありますから。このままの数字では問題があるなとお考えになるのかどうかだけ、一点伺います。——だめだ、総理に聞いているのに、あなた答えたってしようがないじゃないですか。
  54. 谷川和穗

    谷川国務大臣 総理が御答弁なさる前に一点申し上げさせていただきます。  まだ五十九年の概算要求の骨子につきましても総理に御報告に上がるまでに至っておりませんので、その問題はここでは触れさせていただかずに、いままでの大きな流れについてだけ一点申し上げさせていただきます。  人糧関係の問題についていまいろいろ数字を挙げられましたが、実はわれわれがめどとしてつくっております五六中業は、正面装備につきましては相当精緻に積み上げておりますが、人種その他についてはまだそれほど精緻に積み上がってないことが一点でございます。  それから全体の流れといたしまして、比率のお話がございましたが、実は五十一年度に至るまで石油ショックの影響も非常に大きくて、人糧の伸び率は、実は前年度対比三〇%を超しているような年度が五十一年、五十二年と続きました。五十三年、五十四年に対してこれが非常に、非常にというのは少し大仰なのですが、モデレートになってまいりまして、いまようやく正面装備の方へその分だけ努力をしよう、実はこれが五六中業の基本になっておるわけでございまして、その意味では比率その他につきましては、その年次、年次におきまする中で決まってくるものでございまして、いま数字を挙げて積をお立てになられましたが、実はわれわれとしては、五六中業の中では、人糧につきましてはそれほど精緻に積み上げておりません。
  55. 上田哲

    上田(哲)委員 そんな答弁をするために時間をとっては困りますよ。総理に伺ったことを一つだけ答えてください。このままでよくないなら、やはり何とか考えなければならないなとお考えになるなら、それでこの質問をやめますから。時間が本当にないので答えてください。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最初に申し上げましたように、五十年以降の傾向を見ておりまして、私はできるだけ正面の方へ移行していくのが適当である、そういう基本的な考えを持っておりました。そういう方向でいろいろ計画も進められてきておったことは、いま長官の御答弁のとおりであります。基本的にはそういう考えを持っておるということを申し上げますが、具体的な数字やら何かにつきましては、防衛庁からいずれ報告が来るであろうと思っております。
  57. 上田哲

    上田(哲)委員 それでは最後に伺っておきたいのですが、総理は軍拡主義者ではない、一生懸命軍縮を考えなければならぬということもさっきの御答弁の中にもありました。当然のことだろうと思います。米ソ、米の中には日本を含むという形でもいいから——いいというのはそれが総理立場であるということを認めた上のことで、私たちは違いますが、少なくともたとえばSS20の百八基をどれだけ削減すればこちら側も削減するというふうな具体的な軍縮提案というものをお持ちになるのでなければ、軍縮主義者という言葉は画餅の問題だろうと思うのですね。そういう具体的な提案をお持ちになっておられますか。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはアメリカソ連とやっておる交渉でありますが、日本が迷惑を受けるという危険性があるからわれわれは日本の国益を踏まえて発言しておるので、少なくともこれはゼロオプションが一番よろしい、もしゼロオプションが不可能で妥協が行われる、もし万一そういう際におきましても、アジア日本がその犠牲にならないという考え方に立って行わるべきであるということを強く思っております。
  59. 上田哲

    上田(哲)委員 一問だけ。  最後に、そうした意味ではアメリカに対して毅然たる態度をおとりになるということが、自分の国を自分で守るということのスタートだと思います。私は、かねがね一つ伺いたいと思っておることでありますが、総理が先般訪米される直前の十二月二十一日のアメリカ上院本会議が、次のような決議をいたしました。日本は一九九〇年までにシーレーン防衛に十分な軍事能力をつけるため軍事費を迅速にふやすべきである、また日本は在日米軍の駐留費、米艦や航空機の維持修理費などを負担すべきである、これをアメリカ上院が全会一致で決議をいたしました。  私は、どのような友好関係にあるとはいえ、あるいは同盟関係にあるとしても、アメリカ上院が決議として他国の軍事費、防衛費、予算問題について決議をするということは、内政干渉のそしりは免れないと思うのであります。この点について、総理の御見解はいかがでありましょうか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 恐らくあれはパーシー委員会でやった決議であろうと思います。〔上田(哲)委員「上院本会議です」と呼ぶ〕そうですか。ともかく上院におきましてそういう決議が行われたということは、アメリカのストレスを表明しておる、われわれはそれを参考にしつつ、日本日本独自の見識に立って物を決めていく、そういうことであります。
  61. 上田哲

    上田(哲)委員 独自の見解を持っていただくことを強く要望して、終わります。
  62. 小渕恵三

    小渕委員長 鈴切康雄君。
  63. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、総理だけで御答弁いただけばいいと思います。  総理が今回ASEAN歴訪されまして最終的に締めくくられた演説の中で、専守防衛を貫き、軍事大国にはならない、これは単なる政策でなく過去への厳しい反省に立った、国民感情に深く根差したものだという趣旨のことを述べられております。しかし、さきアメリカでのレーガンとの会談の、日米運命共同体とか、あるいは日本列島不沈空母とか、あるいは四海峡封鎖とか、日米は同心円であるとか、憲法改正の発言等を見る限り、ASEANでの発言との間には余りにも大きな落差があります。総理が言う軍事大国という意味が抽象的でよくわからないわけでありますが、軍事大国にならないという中身は何を意味しているのか、その点についてお伺いします。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 アメリカでの発言にまず最初に御言及になりましたが、私の言葉の足りなかったところもあり、その点は遺憾であります。しかし私は、いままで述べてきたようなことをアメリカでもみんな述べてきておるのです。そういうようなところは新聞に載らないで、どうもショッキングなところしか載らない。そういう片言隻句がとられたという点もあることをぜひ御了知願いたい。私は一貫して、いまここで冒頭三原さんの御質問に対してお答えしましたような、わが防衛政策を述べてきておるのであります。そのことはASEANにおいてもまた述べてきておるところなのでありまして、一貫したことを申し上げているということをぜひとも御認識願いたいと思う次第でございます。
  65. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、ASEANでは一貫して言われているというわけでありますけれども、まさかアメリカでお話しになったようなそういう言葉をお使いになったわけではないでしょう。私はそう思うのですが……。  そこでASEANがやはり心配している問題は、シーレーン防衛で南東、南西千海里それから周辺数百海里を設定して「防衛計画大綱」達成を目指している日本が、軍事力の近代化と増強をやっているわけでありますが、その影響力をさらに伸ばしてくるおそれがあるのではないだろうか。日本有事でも個別的自衛権の行使の範囲には限界があります。総理は、シーレーン防衛範囲を拡大するということはない、そういうふうに明言されましょうか。
  66. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままで言明してきたこと以上に拡大することは考えておりません。
  67. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、南東、南西千海里そして周辺数百海里というのはもう自衛権行使の限界である、だから決してそれよりもさらに延ばしてフィリピン以北とかいうことは全く考えていない、こういうことですか。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それより延ばすことは考えておりません。
  69. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはいわゆる個別的自衛権範囲でもない、そしてまた言うならば憲法の制約という問題もあるから、やはりいま現在設定しているところのシーレーン千海里そしてまた周辺数百海里だ、こういうふうにおとりになっていましょうか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 どの程度が憲法範囲内であるかという問題は、法制局長官にぜひお聞き願いたいと思うのです。しかし、私は歴代内閣防衛政策を継承しておりまして、その線上においていままで言明もし、それを約束も実行しているということでありまして、千海里という限度を守っていくというのがいまの私の考え方でございます。
  71. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 時間の制約がありますから、次から次へ変わったことをお聞きしますが、かねてから防衛費の予算的な歯どめとしてGNP一%以内ということでありましたけれども、五十七年度はGNP〇・九三三%、五十八年度は〇・九七八%、五十九年度ではF15とかP3C等の購入がふえたために後年度負担に伴う義務的経費の歳出化分が約一兆円くらいあります。となりますと、五十九年度分はGNP一%をオーバーすることは必至ではないかという大方の見方があります。  そこで、総理はGNP一%の枠を五十九年度にも守るというお考えでおられるか、あるいは「防衛計画大綱」水準を達成するためには極力努力するけれども、GNP一%をオーバーしてももうやむを得ない時期に来ている、そのように判断されているのか、その点と、GNP一%を超える場合は何らかの歯どめに、五十一年十一月五日に決められたものにかわるものを政府として考えておられるのか、その点の御答弁をお願いいたします。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 GNP一%以内を守るべく全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  73. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 GNP一%以内を守るべく努力する、それは結構な話でありますけれども、しかしまだこれから防衛庁の方としては概算要求等を組まれるわけでございますが、そういう形で防衛庁が概算要求にどうしても一%を超えるような事態を総理に提出をされたときに、総理は、私はもうGNP一%以内で防衛庁の方の予算を抑えるんだ、こういうふうに決然とこれに対処されるのか、その点どうですか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 とにかくGNP一%以内を守るように全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  75. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、防衛費については六・五%の対前年突出の問題が実はございました。なかんずく福祉と教育がかなり伸び率がなかった、そういうことから考えて、大変に国民の中からは防衛費六・五%突出はけしからぬじゃないか、そういう非難が実はありましたけれども防衛費について総理は聖域化をしない、そういうふうなことは断言できますか。
  76. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは臨調におきましても聖域を置かずということでありましたが、来年度予算編成におきましても聖域は設けないで努力していきたいと考えております。
  77. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その聖域の問題でございますけれども、ことし五十八年は六・五%という形で防衛費をあれされたわけですけれども、聖域化をしないということは、その六・五%というものをオーバーするということになれば、これはまた問題が非常に大きくなるわけでありますが、結局は六・五%程度ぐらいはお認めになるのでしょうか。
  78. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 来年度予算につきましてはまだ雲をつかむような話でありまして、そういう数字に言及することは差し控えさせていただきたいと思います。
  79. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理は今月末のウィリアムズバーグ・サミットに出席されますが、今回のサミットは、先ほどもお話がありましたように世界経済をどう活性化するかということが最大の課題であります。同時に、米ソのINF削減交渉あるいは中東問題を含め国際情勢の分析、さらには軍縮問題を積極的に取り上げるべきよいチャンスであり、そういう意味から言うならば非常に重要な会議になろうと私は思いますけれども総理としては具体的な問題をお考えになって御提案をされましょうか。どういうふうな現実の行動をおとりになるのか、その点をまずお伺いいたします。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この点は各首脳の私的代表がいろいろ話し合ってアジェンダとかその他を相談している最中でございまして、まだわが方として正式態度を決めたものはございません。いずれじっくり態度を決めて臨みたいと思っておりますので、いまお答え申し上げる余裕がないのは残念であります。
  81. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理はなかなかガードがかたくて、国民に余り語りかけないような形になっていますね。実際にはやはりこういう場所である程度のことは明らかにして語りかけることが必要じゃないかと私は思うわけでありますけれども、唯一の被爆国として日本の国がなし得る核軍縮の問題については、もう少し見識ある積極的な態度で臨むできではないだろうかと私は思うのです。  それは米ソの問題だとかINFの話が何だかんだとやられている間だから、その成り行きを見てと言いますけれども、もしもINFの問題を含めて極東にSS20が振りかえられるというような問題になりますと、これは事が重大な問題になってくるわけでありますから、やはり日本立場として、どうしても軍縮に確固たる決意と、それからまた場合によっては核の凍結ぐらいの熱意をもってこういうふうなところに臨むべきじゃないか。それに対して、これからいろいろと相談をしながらとおっしゃるのですけれども総理あなたが考えていかなくちゃならない問題だ、あなたがリーダーシップをとっていかなければならない問題に、そんな消極的なことではしようがないと思うのですが、いかがでしょう。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 サミットまでまだ二週間もあるというときに、余り前宣伝がましいことはこれは慎しんだ方がよろしい。やるときにはやります。
  83. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やるときにはやりますというのはどういうことをやるのですか。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 軍縮、軍備管理の問題は非常に重要な問題でありまして、いまやアメリカソ連ともに悩みつつ、またおのおのの国情を考えてみますと、チャンスをつかんで手を握ろうという気配が必ずしもゼロとは言えない要素はある。両方ともいろいろな国内情勢等あって、ポーカーゲームをやっているのかもしれませんね。  そういうようないろいろな国際情勢を多面的に考えながら、日本としては世界が一日も早く平和になるように、軍備管理が合理的水準において達成されるように、強く主張したいと考えておるのです。  しかし、具体的にどういう場をつかんでどういうふうにやるかということは、外交の駆け引きにも関係し、またわれわれがそういうことをやるについては西側陣営が一枚岩になって、がっちりと手を組んでレーガン大統領を支持しつつやらなければ成果は見込まれない、そういういろいろな面もございますから、二週間前の前宣伝は早過ぎる、そう申し上げているのです。
  85. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、総理、ウィリアムズバーグに行かれるわけでありますけれども国民の声を聞くということは非常に大切な問題だろう、私はそう思うわけでありまして、そうなりますと、事前に各野党の党首会談を持たれるというお考え方はございませんか。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 さきASEAN訪問及びサミットに向かう、そういう両方のこともございますので、ごあいさつに伺いたいと思っております。
  87. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 少し話は生臭くなってまいりますが、総理は東南アジア訪問中、八月いっぱいは解散をしないと言われたということで、新聞は一斉にいよいよ秋口に解散があるのではないかというような受けとめ方をしたような発言でもありました。ところが帰ってこられて、今度は、十二日には任期満了を強調した発言に変わってきております。総理が持ついわゆる専権事項である解散権によって解散があるのかないのか、世評で取りざたされた例はいままで余りなかったようであります。総理は、解散に対してどういう考え方でおられるのか、率直に国民の前にその真意を明らかにしていただきたいと思います。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 クアラルンプールにおきましていろいろ御質問、懇談がありました際に、これからの日程はということで、これからはともかく行革及び重要法案を成立させることに全力を注ぎます、この重要法案が成立すれば今議会の意義は相当達せられたものと考えていいと思う、したがってそれができれば解散を行う理由はないでしょう、そういうことを申し上げました。  それで参議院選が次にありますから、参議院選に全力を注ぐ必要がある、参議院選が終われば次には臨時国会、参議院選後の参議院の構成に関する国会が開かれます、そういうことでそっちの方の仕事で、解散なんかやるということはないでしょう、そういうことを申し上げて、では八月まではないのかと言うから、多分そうでしょう、そういうことを申し上げたので、それ以上のことは何にも言わないんです。九月にやるとか密約説とか、新聞というのは余分なことを書くものだとつくづく思った次第であります。
  89. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 御存じのとおり会期末は間もなく来るわけであります。行革四法案、二本は何とか通りそうでありますけれども、あと二本はどうもこのままでは参議院まで行くというのはちょっとむずかしいような状況なんですけれども、そうなった場合、何としても通すということで日にちも延ばさなくちゃならぬじゃないかというようなことなんか、ちらっと脳裏にはありますか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴切さんの御協力を得て会期内に全法案を通していただきたいとお願い申し上げる次第です。
  91. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後です。  それでは、政府としてはいよいよ本腰を入れていかなければならない問題に行政改革の問題があります。行革大綱をいよいよ閣議決定されるという状況にあって、この問題は国民の中にもかなり賛成する人もいますし、また中には自分の利害等もありますから反対だというふうなそういう方々もおられます。そういうことからいいますと、国民の中に理解協力を非常に求めなければならない重要な問題であります。そう考えますと、総理としてこの問題について国民にどのように働きかけをされていくのか。またあわせて先ほどから申し上げた点との絡みはどうお考えでしょうか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最終答申を出していただきましたので、これを実現するためのいわゆる新行革大綱と申すべきものを二十日、遅くとも会期内につくっていただくように行管長官にお願いをして、いま鋭意党とも打ち合わせをして努力しております。それを閣議決定いたしましたならば、その線に沿って逐次これを実行していきたい。いよいよ行革も本番でございますから、不退転の決意で進めてまいりたい。党並びに各党各派の御協力をぜひいただきたいと思います。また、国民の皆様にもいろいろ御説明申し上げまして、御理解と御協力を賜りたいと思っておる次第であります。
  93. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、そういうふうな大きな、これは一つ政治課題ですよ、そういうことは先ほど申し上げました解散とかそういうもので信を問うという材料には全くならぬものだか、その点についてはどうなんでしょうか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ダブル選挙はありません。
  95. 小渕恵三

    小渕委員長 吉田之久君。
  96. 吉田之久

    ○吉田委員 過日来総理ASEAN各国歴訪されました。かなりハードな日程でありましたけれども、なかなかに華麗な外交を展開してこられたように思うわけでございますが、しかし、先ほどの質問にも総理は、特にわが国防衛力整備の問題に関しては首尾一貫同じことを言い続けてきたとおっしゃっております。今度のASEAN各国に対しては大体首尾一貫同じことを言ってこられたように私も思うわけなんでございますが、しかし、総理が同じことを言われても、それぞれ国によって立場が違うわけでございますから、若干それに対する評価においてニュアンスの差があったのではないか、あったはずだと私は思うわけなんでございます。  特にタイの場合には大陸の一国家として直接ベトナムやソ連の脅威を背に受けている国情でありまして、そういう点でわが国防衛力の増強をきわめて歓迎したようでありますし、また総理はそれに対して大変に感動を示されたようでありますが、しかしインドネシアやフィリピンの場合には少し事情が違ったのではないか。これは韓国日本が大陸に対する脅威の感じ方が違うように、やはりこれらの国々においてもそのニュアンスの差があるのではないか。その辺について総理はどう御判断なさいましたか。
  97. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いずれの国におきましても、わが国が現在行っておりまする防衛政策については、非常に温かい御理解をいただきましたものと心得ております。
  98. 吉田之久

    ○吉田委員 私たちが懸念いたしますのは、たとえばフィリピンのマルコス大統領がレーガンにかつて会ったときに、日本に対して余りに防衛の肩がわりを言ってくれては将来増強された日本の軍事力が東南アジアに向けられないという保証はないということを言っておられるようでございますし、インドネシアのスハルト大統領もかつて同じようなことをレーガンに言われたと聞いておりますが、そういう感じはお感じになりませんでしたか。
  99. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の説明に対しましてはいろいろ深く耳を傾けていただきまして、そういう考えでおやりになるならば十分理解できる、そういうように温かい理解を示していただきました。
  100. 吉田之久

    ○吉田委員 もしも将来これらの国々においてもう少し日本防衛力を増強してほしいという強い主張、あるいはもうこれ以上防衛力を増強しないでほしいというストップに似た表現が出てきた場合、総理は、先ほどから同心円と言われてなかなか幾何学の大家のようでありますけれども、数学の方でいう最大公約数をとられるのか、最小公倍数をおとりになるのか、この辺について伺っておきたいと思います。
  101. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま説明申し上げ、また国内におきましても鮮明にしておりまするわが国防衛政策を、一貫してたじろがないで進めていくということであります。一貫性ということが大事であると思っております。
  102. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、南西航路帯一千海里はバシー海峡までも届かず、したがって、ASEAN諸国に脅威を与えるものではないと強調してこられましたけれども、これは有事においても自衛隊の艦船は一切ASEAN海域に入らないということを言明されたことになりますか。もしも有事においてもこうしたことが厳正に約束できるのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  103. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一千海里以内ということでありまして、それ以上には及ばないということであります。
  104. 吉田之久

    ○吉田委員 有事において一千海里以遠の南西方面のシーレーン防衛には、ASEAN諸国協力してくれると期待していいのでありますか。
  105. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それ以遠のことはアメリカの力に依存する、あるいはASEANの諸国は自国の領海あるいは必要な自衛権の範囲内において自分の国土、国家防衛の責務をおのおのの国がおのおのの自主権に基づいてお決めになっておやりになることであろうと思います。
  106. 吉田之久

    ○吉田委員 バシー海峡を有事の際にどう守っていくか、あるいはもっと以遠でありますところのマラッカ海峡はそういう有事の場合にはどうなるのか。全く日本の手の届かないところだと思いますが、総理はどうお考えになりますか。
  107. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん日本がそんなところまで行くというようなことは考えておりません。その関係国のある首脳部は、マラッカ海峡は関係国において守る、そういうことを言明されておられました。
  108. 吉田之久

    ○吉田委員 次に、ウィリアムズバーグのサミットに行かれるわけでございますけれども、先ほども、このサミットはまさに八〇年代の世界の命運を決する重要な問題が論ぜられるサミットになるであろうと総理自身がおっしゃったわけでございますけれども、八〇年代の命運を決する最も重要な問題、それはやはり核の脅威をどうわれわれ人類の上から払いのけるかという問題になってくると思うのです。  このサミットが最初に行われますときにジスカールデスタン氏は、これは究極においてソ連との話し合いを西側がどう進めるかという問題になるはずだということも申されていると思います。私どもはそういうことを考えますと、経済サミットと呼ばれてはおりますけれども、もとより経済問題、貿易摩擦の問題もきわめて重要でありますけれども、現下の世界の急務というものは、いかにして核を削減に運んでいくかというこの重要な問題にこたえるべきだと思います。  先ほど来各委員からもいろんな御質問があったわけでございます。私が特に総理にお願いしたいことは、先ほどもお話しありましたあくまでもレーガンを軸として西側が一体となってこの問題に対処していこうという構え方のようでありますが、私は、ときによってはレーガンを外して、残る西側で米ソの核削減交渉をどう進めていくかということも論じ合わなければならない時期に遭遇しているのではないかと思うわけでございますけれども総理はいかがお考えでございますか。
  109. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、政治家といたしましても、核兵器の廃絶を強く望んでおるものであり、私の何回目か書きました著書の中におきましてもそれを宣明しておるものでありまして、核兵器を地上から永久に追放するという大きな仕事がわれわれ政治家の、特に日本政治家の大きな使命であり、そのために努力したいと思っております。ただ、現実の政治の場になってまいりますと、いろいろ具体的な問題がありまして、困難な問題がありますが、一つ一つ困難を克服しつつ、合理的、現実的、建設的にこの目的を果たしていきたいと念願しておるわけです。  今回のウィリアムズバーグのサミット、なぜ大事であるかということを考えてみますと、私はソ連のアンドロポフ政権というものもまだ政策形成期にあって、じっと見ている要素があると思います。内部の問題についていろいろ論評がありますが、それがどの程度のものであるか、われわれが検証して知っておるわけじゃありませんが、ともかく政策形成期にあると見ております。また一方、アメリカにおきましては、来年は大統領選挙の年でありまして、国民にアピールするという大事な時期がこの夏以降アメリカ政界を訪れます。  そういういろいろな面を考えますと、六月に行われるウィリアムズバーグ、それ以降の米ソの関係というものは非常に重大な関心を持って注目するシーズンに入っていくのではないかというふうに、私は見ておるのであります。そういう意味において、この六月初めに行われるウィリアムズバーグの会議というものを非常に重要視しておるわけであります。  しかし、これを成功させるためには、西側陣営がばらばらで成功するはずはない。やはり西側陣営が一体になって一枚岩の上に、レーガンさんに対ソ交渉をやってもらう、そういうレーガンさんに力を与え、また余裕を与えておくということが、この対ソ交渉を実らせる大事なキーポイントになると私は現実家として見ておるわけであります。もちろんアメリカは、いろいろなことをやるについては、われわれに内報して、これでどうだ、あれでどうだと相談してくるに決まっております。いままでも相談が来ております。  そういう意味におきまして、西側の結束というものを前提にしたアメリカの弾力性のある交渉ということを私は頭の中に置いておるわけであります。
  110. 吉田之久

    ○吉田委員 トータルとして西側の力を合わせること、それがソ連を牽制し、世界の平和を確立する重要なプロセスであることを認めるに私もやぶさかではございません。しかし、いみじくも先ほど総理がおっしゃったように、何か米ソがポーカーゲームをやっておるのではないだろうか、あるいはときには抱きつきすりをやっているのじゃないだろうかと論評する評論家もあるわけであります。この二大大国だけがいろいろと交渉したり、あるいは牽制し合ったり、適当にうまくやっておると思われるようなことでは、私はなかなかに世界軍縮というものは、核軍縮というものは進んでいかないと思うのです。  そこで、ゼロオプションが一番望ましいことはわかりますけれども、しかし、同時にまたパリティ、何がパリティであるかという問題もなかなか陣営によって、国々によってむずかしい問題であると思うのです。  そこで私どもがお願いしたいことは、まずはとりあえず米ソが少しずつでも戦略核兵器あるいは戦域核兵器を減らしていこうとするそういう動きを促進していくこと、そしてそれが次第次第にお互いにその核の戦力というものを削減することによって辛うじて八〇年代そして二十世紀の世界の平和というものがコントロールされながら保持されていく、こういう答えしか当面は出てこないのではないかと私たちは思うわけなんです。  そうなりますと、サミットの中でそれが正式な議題になるかならないかは別といたしまして、やはり各国の首脳たちと総理がむしろその具体的な核軍縮のきっかけをつくる、そういう旗手の役割りを果たしていろいろと交渉されることは、世界のためにもアジアのためにも日本のためにも非常に望ましいことではないかと私どもは考える次第でございますけれども、重ねてそういう御意見をお持ちにならないかどうか、お考えをお持ちにならないかどうか、お伺い申し上げる次第でございます。
  111. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは事前の用意、話し合い、それから会議に入った場合のその場の情勢、こういうものに絡んでくると思っております。しかし、先ほど申し上げましたように、私は米ソ首脳部ができるだけ早く建設的な段取り、話し合い、たとえばアメリカ側国会でも言っていますように、検証可能な査察制度というような問題についても、両方で話し合い、妥協を行って、安心して軍縮ができるような環境をつくっていく。それのみに限るわけではございませんが、ともかくそういうみんなが安心できるような体制軍縮が着実に行われて、特に核軍縮の話し合いが成立して、両首脳部が相会見、会談を行うという機会が一日も早く来ることを私も望んでおるし、全世界も望んでおるのではないかと思います。  しかし、それをやるについては両方とも苦労しておるのじゃないかと内心私は察しておるのであります。そういうようなところについて余り余分なことを言わぬ方がいい。本気でみんなそういうふうにやろうとしているならば、やはり相手の気合いも見、様子も見て、物事は駆け引きというものがありますし準備という点もあるでしょうから、その辺はよく洞察力を持ってやる。しかし、意見を言う機会があり、また必要である場合には言う必要はあるでしょう。アメリカは一月以来は、INF問題等々につきましては西欧のNATO並みに私のところへいろいろ相談をかけてきております。そういう実績から見ますと、これからの準備段階におきましてもあるいは現場に臨んだ場合におきましてもいろいろ相談があり得る、そう考えております。  したがいまして、その情勢をよく見つつ最善の判断をするように努力してまいりたいと思っておる次第であります。
  112. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。
  113. 小渕恵三

    小渕委員長 寺前巖君。
  114. 寺前巖

    寺前委員 限られた時間でございますが、三問、総理質問をしたいと思います。  まず第一番目の問題は、先ほどからもサミットについての質問がいろいろなされました。私も、サミットにどういう態度でお行きになるのだろうか、あるいはサミットの最中に日米首脳の会談もやられるだろうか、どういうふうに今度は臨まれるのだろうか、気にしているところがあります。というのは、去る一月の日米首脳会談で、総理は、後日いろいろ言いわけがあったにしても、日米運命共同体とかあるいは日本列島不沈空母だとかあるいは四海峡封鎖の発言をなされたようであります。これに対して日本国民の中からずいぶん批判が出ました。また、世界的にも注目が払われました。こういう経過を持ってのサミットへの参加であり、日米の首脳の会談がなされることである。こういう段階において、総理はこの一月の首脳会談で表明されたあの内容を訂正されるのだろうか、それともあの内容のさらに上乗りをしていくということになるのだろうか、そこのところはどういう態度で臨もうとお考えになっておるのかを、まずはお聞きしたいと思うのです。
  115. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は先ほど申し上げましたように、わが国防衛政策というものは平和憲法のもとに一貫して専守防衛個別的自衛権範囲内、そして攻撃的、他国を脅威するような航空母艦や長距離爆撃機のような脅威的兵器を持たない、そういう範囲内で非核三原則を守りながらやっていく、そういうようなことをアメリカでもASEANでもこの国会でも申し上げて、一貫して言っておるのでありまして、今後増幅することも減少することもありません。一貫したわが国防衛政策を言ってくるつもりであります。
  116. 寺前巖

    寺前委員 国民の問題にされた点についてどのような態度をとられるのだろうかというその点が、私は非常に不鮮明だというふうに思います。  第二番目に、総理はきょうも再三ゼロオプションということを支持することを表明されております。総理が本当にゼロオプションという立場であるとするならば、ソ連のSS20に対してだけではなくして、世界の核軍拡競争の根源となっている米ソ双方に対して、日本政府として核は全廃すべきであるということを主張すべきではないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  117. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはいま吉田委員に申し上げましたとおりでございまして、私は政治家としても核の廃絶を目指しておる一人であります。核兵器は地上から追放しなければならぬと思っておる一人でございます。今回のウィリアムズバーグにおけるサミットにおきましても、これを実現していくについては現実問題として非常にむずかしい過程があると思いますけれども、しかし、そういう目標をあくまで捨てずに、チャンスをつかんで必要な措置なり行動をとってまいりたい。  ただ、それを実現していくためには、やはりこれは交渉事でもありますから、西側陣営が一体になって、そして分裂を起こさない。足元を乱さないようにしつつ、レーガン大統領交渉をやらせるということが賢明なやり方ではないか、実りの多いやり方ではないか。もちろん、その時期により必要に応じてレーガン大統領に助言をしアドバイスすることも、こちらから必要であるという場合にはどしどしやるつもりでおりますけれども、しかし基本立場というものは、やはりやるのはアメリカソ連がやっておるわけでありまして、その中に、英仏の核をどうするとか極東に持ってくるとかこないとか、日本関係することや英仏に関係することも出てきておるが、やはり主役はアメリカソ連でありますから、そういうような立場もよく踏まえて実りのある成果を生むように努力してまいりたいと考えておるわけであります。
  118. 寺前巖

    寺前委員 先ほどからもINF交渉の問題が出ておりました。総理は、ヨーロッパのSS20問題の解決が日本アジアの犠牲で行われることは真っ平御免だという態度をすでに述べられているところでありますし、また、SS20のアジア配備に対して抗議をする意思の表明をすでにされています。しかし、この核の問題についてはもう一方のアメリカの側に対して、アメリカではすでにグアムの核巡航ミサイル搭載予定でSRAM、核専用空対地ミサイルを持つB52G型の配備が行われております。アジアでの核軍拡競争をこれ以上激化させないためには、ソビエトに対する意思表示をするだけではなくして、アメリカに対してもこれらの配備をやめるように指摘をすべきだ、主張すべきだというふうに思いますが、いかがなものでしょうか。
  119. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 B52のG型十四機が、従来の古い型であるB52D型にかえて、代替化されて配備されていくということでございますが、この措置は、アメリカといたしましていわゆる戦力の近代化を進めて抑止力の維持向上を図るということでございます。また、御指摘の三沢にF16の戦闘機を配備するというこの措置も、これは極東における軍事バランスの改善というところから、やはり米国の対日防衛のコミットメントの意思を明確にするいわば日米安保体制の効果的な運用ということでございますので、私どもといたしましては、これらの措置というものに対してアメリカに削減を申し入れるという考えはございません。
  120. 寺前巖

    寺前委員 私は、F16の問題については聞こうかなと思っておったのですが、まだ聞く前におっしゃいましたからあれですけれども、すでにアメリカがB52G型の配備を行っていることは広く周知の事実であります。それからまた、過般、F16の三沢配備の問題について安倍外務大臣が、ソ連に対して軍事力のバランスをとるためにはやむを得ない措置であるという見解を述べておられます。しかし、五十六年の防衛白書でも、アメリカが戦域核としてF16を位置づけているということが指摘されておりますし、また、八〇年の三月十三日、アメリカの上院の軍事委員会のウェード国防次官補の証言でも、明確にF16が戦域核として位置づけられております。  こういうふうにF16が戦域核として位置づけられてきており、そして核爆弾積載可能な航空機である以上、これを三沢に持ってくるということは、いま軍事力のバランスの問題としておっしゃいましたけれども、戦域核のバランスの上からもあるいは核持ち込みの危険の上からも、この撤回をむしろはっきりとアメリカに言うべきであると私は強く感ずるわけであります。  時間もあれでございますから、総理にこの点について、日本国民が持っている疑惑でございますので、はっきりお答えをいただきたいと思うのです。
  121. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 われわれは非核三原則をあくまで堅持してまいるものであります。  日本防衛は、現在世界全体の防衛と同じように抑止力に基づく均衡、そういう形によって平和が維持され戦争が回避されるという環境がつくられておるわけでありまして、そういう考えに立ちまして先ほどアメリカ局長は答弁をいたしました。私はこれを支持いたします。
  122. 寺前巖

    寺前委員 時間が参りましたのでこれ以上時間をとることはできませんけれども、私は本当にゼロオプションを総理がおっしゃり、そしてSS20の問題が日本アジアの犠牲で行われるということは真っ平御免だという態度をおとりになるとおっしゃるならば、戦域核のバランス上からも、また日本国民の核持ち込みに対する拒否の姿勢からも、アメリカにはっきりと物を言うことがきわめて重要だ、私はその点を指摘して、質問を終わります。
  123. 小渕恵三

    小渕委員長 中馬弘毅君。
  124. 中馬弘毅

    ○中馬委員 限られた時間でございますので、こちらの要望も含めまして総理に三点ほど基本的な御見解をお伺いしておきます。  ASEANをずっと御歴訪なさいまして御苦労さまです、こう申し上げますが、韓国、米国そして東南アジアと精力的な外交を展開されております。また、ヨーロッパには外相を派遣になり、中国には首相の特使を派遣されております。これは私どもそれなりに評価をいたしておりますが、今後、中国、ソ連を首相みずから訪問していただきまして、そして率直に意見交換することが相互信頼につながるわけでございますから、そういう意味におきまして早急にひとつ接触していただき相互信頼の実を上げていただきたい。  それからさらに韓国、北朝鮮の問題でございますけれども、北朝鮮に対しましては総理も非常に柔軟な態度をおとりになっているようでございます。この平和的な統一というものは、これはただソ連アメリカ、中国の関係だけではなくて、日本民族の一つ責任があろうかと思います。そして、これの平和的統一がまた極東の平和、アジアの平和につながってくるわけでございまして、こういった周辺の国々に対するいろいろな経済あるいは文化的な外交の御方針もおありでしょうけれども、時間がございませんので、防衛の観点からする基本的な総理外交方針をお聞かせ願いたいと思います。
  125. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中国につきましては、私の政治日程等も考えまして、これは将来の課題として訪中の点もいろいろ検討してみたいと思っております。  ソ連との関係におきましては、グロムイコ外相の来日を歓迎したい、そう思っております。  また朝鮮半島の問題につきましては、これは当事者がまず第一義的には話し合って行うべきものであって、外にある者が内政干渉がましいことをやることは差し控えたい、全斗煥大統領はオリンピック等も控えまして北に対する平和対話を呼びかけている、この事実をわれわれは歓迎するものであります。そして、これが実りあるように期待しているものであります。  防衛問題につきましては、いままで三つの点を申し上げました。  一つ自分自分の国を守る、第二に日米安保条約を有効に機能させる、三番目には軍縮であるとかあるいは備蓄であるとかあるいは経済協力であるとか外交であるとか、そういう平和維持の環境をつくるために懸命の努力をする、そういう複合的なやり方で平和の維持、防衛を全うするということに努力してまいりたいと思っております。
  126. 中馬弘毅

    ○中馬委員 次に、防衛力整備範囲でございますが、歴代内閣平和憲法範囲内で必要最小限度の防衛力整備という決まり文句をずっとお使いになっておりました。鈴木総理はもちろんそのことをおっしゃったのですが、総理の施政方針演説でこの必要最小限が取れておったことから、誤解も含めたかなりいろいろな議論が起こったわけでございます。しかし、クアラルンプールのスピーチにおきましては、再度必要最小限とはっきり言っていただきました。これは私どもはそれなりに評価いたしております。  そして、この必要最小限度の具体的な数字の裏づけがGNPの一%、国防会議で決まったわけですね。われわれこの旗印だけはどうしてもおろしてほしくない。これはなぜかと言いますと、防衛費の使われ方は必ずしも非常に効率的に使われているとは——いまの日本の置かれた立場であるとか周辺が海に囲まれているといった状況からして、そしてそれが効率的に使われるならば、一%の枠内で十分であるという認識に私たちは立っております。それが国防会議一つ結論であったのかもしれません。ですから、自衛隊のいまのあり方に対して行革の対象外ではなくて行革としてでも、いまの三軍の制度のあり方あたりも見直すことも含めて、一%あれば十分ではないか。ですから、それを促進させる意味においても、一%を外してしまいますとそれが行われない。  たとえば、先ほどの御質問にもありましたように、人件費、糧食費が五〇%近いものを占めている。こういうのが果たして有効かどうかというのは、私どもは少し疑問に思っております。  こういう自衛隊のいまのあり方が、もろもろの費用の効率的な使われ方ということも含めて、本当にこのままでいいとは私たちも思っておりませんが、その点についてGNPの一%を、少なくとも中曽根内閣としてはもちろん遵守していくんだということと同時に、防衛のいまのあり方、人件費が非常に多くて正面装備がなかなか少ないということを改める意味におきましても、改革の御意図がおありかどうか、その点をお伺いしておきます。
  127. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、五十年以降の趨勢を見まして糧食、人件費と正面装備との比率を、正面装備の方へ重点を置くようにやっていくことは好ましいと申し上げておきましたが、そういう考えは私はいまでも持って改善を加えていってもらいたいと思っております。  しかし、いわゆるGNP一%ということは、今後も守るように努力してまいりたいと思います。
  128. 中馬弘毅

    ○中馬委員 まず民間の防衛のことを少しお伺いしておきます。  この委員会もそうでございますが、確かに防衛というものは、国土、民族の総合的な安全保障でございますので、ただ武力によってだけの安全のはずではないのですね。そして対外的な侵略を防ぐという意味におきましても、ただ防衛だけを整備して、武器だけを整備して守れるものではないと思っております。  その点につきまして、たとえば各省庁のいろいろな基準にしましても、これは戦争という事態ではなくて大きな災害、そういったときのことまでも踏まえて非常に不完全なものじゃないかと思うのです。  防衛のことに限って言いましても、七四型戦車が重さとして三十八トンある。ところが建設省の橋梁の基準は二十トンだ。ほとんど北海道から移動できないじゃないか、こういうことにもなってしまうわけです。  それから、いろいろ民間のことにしましても、大きな意味での備蓄ではなくて、家庭の蓄えすら、いまではほとんど当用買いになっております。  そういう中で、防衛の必要性が起こったときに、あるいは戦争ではなくて何か大きな地震が起こったりあるいは大洪水が起こった場合においてもパニックになってしまうような状況、こういうことを少し真剣に考えるならば、ただ軍備をふやすだけではとうてい国が守れるものではない。それ以前に一つのパニック状態が起こって、国民が戦争状態に耐え得るような状況ではなくなってくるわけでございますから、そういうことに対して本当の意味での社会のシステムをもう少し危機対応能力のあるものにしていく、それで初めて本当の意味での総合安全保障になるのではないかと思うのですが、その点につきまして今後どう取り組んでいかれるか、総理の御見解をお伺いしておきます。
  129. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛は自衛隊のみで行われるものでなく、しかも日本防衛の場合は列島防衛、本土防衛という防衛のシステムでございますから、官民の協力なくして一朝有事のときには防衛を全うできるものではございません。その意味におきまして自衛隊法、防衛庁設置法でしたか、そういうことに関するいろいろな規定もございますが、まだそういう規定は必ずしも全部現実化しているわけではございません。あるいは民間の防衛意識の問題等もございます。そういう点につきましては御指摘のように今後とも努力してまいりたいと思う次第でございます。
  130. 中馬弘毅

    ○中馬委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  131. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十二分散会