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1983-05-12 第98回国会 衆議院 安全保障特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十八年五月十二日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 小渕 恵三君    理事 有馬 元治君 理事 椎名 素夫君    理事 中村 弘海君 理事 三原 朝雄君    理事 上田  哲君 理事 矢山 有作君    理事 鈴切 康雄君 理事 吉田 之久君       石原慎太郎君    坂田 道太君       塩谷 一夫君    竹中 修一君       玉沢徳一郎君    丹羽 雄哉君       箕輪  登君    石橋 政嗣君       前川  旦君    部谷 孝之君       東中 光雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君  出席政府委員         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務省国際連合         局長      門田 省三君  委員外出席者         外務省北米局安         全保障課長   加藤 良三君         農林水産大臣官         房エネルギー対         策室長     石堀 俊夫君         農林水産省農蚕         園芸局肥料機械         課長      松居  努君         農林水産省畜産         局流通飼料課長 阿部 敏明君         食糧庁業務部需         給課長     武田  昭君         安全保障特別委         員会調査室長  桂  俊夫君     ───────────── 委員の異動 四月二十八日  辞任         補欠選任   東中 光雄君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     東中 光雄君 五月十二日  辞任         補欠選任   神田  厚君     部谷 孝之君 同日  辞任         補欠選任   部谷 孝之君     神田  厚君     ───────────── 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ────◇─────
  2. 小渕恵三

    小渕委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  この際、谷川防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。谷川防衛庁長官
  3. 谷川和穗

    谷川国務大臣 去る四月十九日午前七時二十分ごろ小牧航空自衛隊輸送航空団第一輸送航空隊所属CI型輸送機六機編隊が習志野の陸上自衛隊第一空挺団降下訓練支援のため小牧基地から入間基地に向けて航進中、海上において低高度航法訓練を実施していたところ、同編隊のうち二機が、三重県鳥羽市菅島の山中に墜落し、両機の乗員十四名全員が死亡いたしました。  四月二十六日十七時三十七分ごろ、訓練飛行中の岩国海上自衛隊航空集団第三十一航空群第三十一航空隊所属PSI型機岩国基地東側に墜落し、乗員十一名が死亡し、三名が負傷いたしました。  これらの事故において、隊員の多数が死傷し、航空機を失い、かつ、周辺住民の方々に少なからざる不安感を与えたことは、まことに遺憾であります。  両事故原因については、現在それぞれ航空事故調査委員会において鋭意調査中でありますが、防衛庁としては、かかる大事故が引き続き発生したことにかんがみ、事故原因の究明を急ぐとともに、四月二十七日特に航空事故防止に関する長官指示を発出し、航空機安全点検隊員安全意識の高揚及び教育訓練実施要領等の総点検を行うよう指示したところであります。  これを受けて各部隊等においては、具体的な安全対策を講じて、事故防止に特段の努力を傾注しているところであります。  自衛隊は、国の守りに当たるという重大な任務を遂行するため、日ごろから厳しい訓練を行い、練度維持向上に努めてきたところでありますが、この際、事故防止という観点から必要な諸施策を講ずることにより、国民の信頼にこたえるべく一層の努力を重ねてまいる所存であります。     ─────────────
  4. 小渕恵三

    小渕委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。有馬元治君。
  5. 有馬元治

    有馬委員 私は、この際、中距離核ミサイルSS20の問題につきまして、政府側に御質問を申し上げたいと思います。  今日の軍縮問題の中で最も優先的な課題は、何といってもSTARTとINF等米ソ両国による核軍縮交渉だと思います。特にINF交渉につきましては、本年末のアメリカ欧州におけるミサイル配備に向けまして、ことしが一番重要な年、これからが非常に重要な時期だと思います。特にこの十七日からはジュネーブでINF米ソ交渉が始まるわけでございますから、この時期においてこの問題をひとつ真剣に政府側に考えていただきたい。  私は一昨年の当委員会におきましても、この中距離ミサイルの問題について、これはヨーロッパだけの問題ではないんだ、日本の問題でもあるのですよ、アジアの問題だ、グローバルに考えなければいかぬということを、あのときも訴えておいたのでございます。  そういう意味におきまして、まず冒頭に、このINF交渉の再開に当たりまして、政府はこの問題に対して基本的にいかなる立場をとっておるか、わが国立場についてまず基本的な姿勢についてお答えを願いたいと思います。
  6. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から仰せのございましたように、INF交渉は、この八三年におきまして重大な段階に入っておるわけでございます。御案内のように本年末までに交渉が合意を見ない場合には、NATO側による二重決定に基づく配備実行に移されるというふうな背景があるのでございます。  仰せのございましたように、政府といたしましては、INF交渉欧州のみならずわが国を含むアジア安全保障に影響を及ぼすものとして、従来から交渉の成り行きに重大な関心を寄せているところでございます。このINF交渉が成功裏に終わるためには、政府といたしましては、何よりも西側諸国が一致して交渉当事国である米国立場を支持していくことが必要である、かように考えております。アジア安全保障交渉の成功を期するという観点から、政府といたしましては、総理外務大臣、あるいは事務レベル等のあらゆるチャネル、レベルにおきまして、米国を初め他の交渉当事国でございますソ連ソ連の場合には大臣事務レベルでございますが、アメリカ及びヨーロッパ諸国に対しまして、わが国の考えるところを余すところなく明らかに申し入れているというところでございます。  なお、先生すでに従来におきましても御指摘のございますところの問題点、つまりSS20の移動性に基づく世界的なグローバルなべースでの問題の処理解決という点、これは非常に重要なところでございます。特にアジアへのSS20の移動の問題、これはきわめて重要な問題でございます。私どもといたしましては、わが国を含むアジア安全保障を一層脅かすような形での問題の解決、これは論外である、アジアへの移動、これは論外であるというふうに考えております。また、欧州との対比においてアジア安全保障がいかに十分配慮されるか、この点きわめて重要な問題であるという認識に立っているのでございます。
  7. 有馬元治

    有馬委員 私の二年前の記憶からいたしますと、当時グロムイコとへイグの会談が始まる直前でございましたが、当委員会において園田外務大臣にお尋ねをした。ちょうどミュンヘンNAA会議から帰った直後でございます。ヨーロッパは非常に緊張をしておりました。それに比してわが国の当時の外交御当局はちょっと関心が薄い、ぴんときておらない、こういう印象をいまだに持っておるのでございます。あわてて松田説明員が、そうじゃございません、一生懸命やっております、現にせんだってもアメリカカールッチ国防長官と篤とこの問題については話し合っております、こういう具体例を挙げて御説明がございましたが、いまだに当時の状況、この問題に対する関心が薄い。  これはなぜ薄いか。与党が一番この問題においては熱心であり、野党はややもすると、ソ連のやることは悪いことはないのだ、アメリカが悪いのだと、人ごとのようなことを言っておる。こういう傾向が強いものですから、なかなかこの問題が全国民的な関心事に至らない。(発言する者あり、笑声)笑っているが、おかしいことはない。真剣な話だ。そういう状態で、これは笑い事じゃないのですよ、僕は後からきちっとやりますから。いいですか。  そういうことで、ぎりぎり決着の今日の段階において、もっと真剣に政府は取り組まなければいかぬ。そういう意味で、当時の取り組み方と今日と、事務当局お答えは一貫しておりますというお答え見え見えでございますけれども、私どもに言わせれば、当時のような状態ではいかぬ、真剣にやらなければいかぬ、これをひとつお答えいただきたいと思います。
  8. 門田省三

    門田(省)政府委員 ただいま先生指摘がございましたように、この委員会の場で、ミュンヘンNAAに御出席になられた体験に基づく問題点の御指摘がございましたことを、私明らかに記憶いたしております。ただ、INF交渉につきましては、その時点では十分な進展がなかったということもございます。また、仰せのように、私ども念頭には踏まえてはおりましたけれども、御期待の程度にまで十分配慮をいたしていたかどうか、この点、反省はいたしております。  しかし、その後の推移にかんがみまして、昨今におきましては、先ほど御説明申し上げましたように、先般のASEANにおける中曽根総理御みずからの訴え、あるいはそれに先立つ総理アメリカ大統領との会談、あるいは外務大臣アメリカ国務長官との話し合い、高級事務レベル、あらゆる機会におきましてわが国関心のあるところは余すところなく伝えておるということでございまして、この点、御理解を賜りたいと存じます。
  9. 有馬元治

    有馬委員 二年前とその後の交渉進展のぐあいで、どこが米ソの間に食い違いがあるかということはその後はっきりしたことだろうと思いますが、一番大きな米ソ立場の違いというのは、この問題を、今日アメリカがはっきりしているようにグローバル観点から取り上げるという立場と、ソ連のようにアジアヨーロッパ関係ないんだ、別々だというふうに切り離して考える考え方と、そこに大きな違いがあっているのではないかと思います。その辺がはっきりしてきた時点というのはいつですか。
  10. 門田省三

    門田(省)政府委員 この点がはっきりしてまいりましたのは、交渉がかなり進みました後において、レーガン大統領アメリカの基本的な立場を述べた原則の中の一つとして明らかにされているのでございます。  私どもといたしましては、このような原則、つまりグローバルINF問題は考えなければならないという点が明らかにされた背景には、先ほども申し上げましたように、わが国アメリカに対するいろいろなレベルを通じての申し入れ、これがやはり有効であったのであろう、かように考えておるのでございます。
  11. 有馬元治

    有馬委員 ここの基本的な立場の違いが今日尾を引いて、グロムイコにああいうふうにぬけぬけとこのアジアへ持ってくるというような発言を誘発しておるわけでございます。この点は、交渉の過程をよく見守りながら、その時点時点における対応の仕方をしていかなければ後の祭りになってしまう。  私、昨年ロンドンNAA総会に参りまして、お見え三原先生の代理で日本代表として演説をやりました。その冒頭に言ったことはこの問題なんです。グローバル観点から考えなければいかぬ、中距離核ミサイルの削減問題はそういうふうに考えてくれということを冒頭に訴えたわけです。それに対して、ロジャースというNATOの総司令官ひとり来賓席の一番真ん前におってうなずいておりました。これが今度のINF交渉の一番大きなポイントなんです。  こういう経過から言いましても、非常に大変なことがいま生じつつある。私どもは絶えずソ連脅威ということを言っておりますけれども、その脅威の分析をするならば、第一にSS20なんです。極東配備が始まってから数年たっておりますね。今日において百八基が配備されておる。日本を含めてアジアを壊滅させるには十二分以上の核兵器じゃありませんか。しかもこれがいままでのSS3だとか5だとか、古い物、陳腐化した兵器を更新する範囲においてならばまだ話がわかる。それを大幅に超えて、いつの間にかアジアに百八基も配備しておる。知りませんでした、こういうことは、政府当局としては一体何をやっているんだ。日本の安全にとって一番恐ろしい兵器じゃございませんか。  第一にSS20、第二にバックファイア、第三にウラジオを中心とするソ連の太平洋艦隊の増強じゃありませんか。四番目にベトナムにおけるカムラン湾、ダナンの基地化じゃございませんか。目の前に見え北方四島の増強ということは、これは確かに目の前に見えるし、のど首に何といいますか突きつけられているという感じがいたしますけれども脅威の実体からいったら問題にならない。だからこそSS20の増強、いまある物に対する撤去撤去のみならず廃棄、それと、今度の追加配備、ここに至っては、もうこの問題に国を挙げて、世論に問うてでも対処していかなければならない。草の根運動が燃え盛っても、去年の特別総会が終わったらもう下火になっておる、これは持っていき場所がないからです。あの運動を、一部の勢力がたきつけたという非難はありますけれども、私は、これはまともに受けて、そしてこれを受けとめて実行に移すものは政府であり自民党である、こういう意気込みを持っておるものでございます。  そこで、先ほどにもう一度戻って、このグローバル観点からこの問題を見なければいけない、私は痛感しているのは、さっきのロンドン総会におきましても、やはり反応の仕方が違う。ロジャース司令官は敏感に反応する。しかし二百人余りの各国の国会議員は余り強い反応はない。それほどの関心なんですよ。ヨーロッパから見まするならば、後でも申し上げますけれども交渉はどこかで妥協しなきゃならぬ。そうなりますと、ゼロオプションでアジアを含めて完全にゼロになるならばこれは問題ないのですけれども、どこかで妥協するならば、削ったものをこっちへ持ってくる、そう言われたときに、最後はやはりそれでもやむを得ない、ヨーロッパはそういう感じになるでしょう。困るのはアジアじゃありませんか。  そういう意味で、この問題は、どうも国内も世界関心が薄い、頼るところはアメリカしかないということがわかっておりながら、この問題をアメリカにももちろんでございますが、ヨーロッパにも訴えていかなければ、これがこれからの世界の危機の一番大きな問題です。私は少し言い過ぎかもわかりませんが、二年前の本委員会における質問におきまして、この問題の処理を誤っていくならば第三次世界大戦の引き金にもなりかねませんよ、そのぐらいのつもりで軍縮問題をやらなきゃいかぬ。軍拡もむずかしいけれども軍縮はなおむずかしいのですよ。  皆さん方はもう昭和の生まれかもしれませんが、私ども昭和初期を経験したものにとっては、ワシントン会議の苦痛を嫌というほど知っております。五・五・三に削られたときの国民の憤激は手にとるようにわかるのでございます。しかし、これは大きな政治決断としてやったことで、私どもはこれは非常に高く評価しておりまするが、その後の始末が悪い。青年将校のふんまんが爆発して昭和維新となり、それがまた大東亜戦争につながったではありませんか。それほど軍縮問題というのは厳しいし、むずかしいのです。国の運命をかけなきゃならぬ問題です。だから私は、この問題にもっともっと真剣に取り組みなさいということを冒頭に言いたいわけなんです。  そこで、その後の政府対応ソ連がこう言った、ああ言ったということはすべて御承知という前提で、これにどう対応してきたか。この点の主な点を、昨日のパリにおける国務長官との会談を含めまして今日まで主な対応の仕方、これについて御報告を願いたいと思います。
  12. 田中義具

    田中(義)政府委員 これまでの対応でございますが、基本的には、先ほど国連局長からも御説明がありましたように、このSS20の問題については西側団結を維持していくことが必要である。しかも、先生指摘のように、この問題はグローバルであるということを訴え続けるということが、日本の国益を維持しアジアにおける安全の問題をこのSS20との関係で確保するという上で最重要のことでございますので、そういう形で一つ西側に対してあらゆる機会を通じてこの問題の持つグローバル性格、これがアジアヨーロッパ両方にとって非常に重要なことなんだということを訴えてきているわけです。  アメリカへの訴えについてはすでに国連局長より御説明がありましたが、ヨーロッパ側に対しても、たとえば、四月、先月には、一連の政治問題、安全保障問題についての協議フランスイギリス等と行いまして、これは局長あるいは次官レベル政治協議でございますが、そういう際に、日本側のこの問題についての考え方、特にこれがグローバル性格ということが非常に重要なんだ、そういうことを詳しく説明いたしましたし、それから、このたびの外務大臣パリ訪問に際しましては、フランスシェイソン外相日仏定期協議を行いまして、その際にまた改めて外務大臣からこの問題についてのグローバル立場に立った解決ということを訴えております。  こういう日本側の主張に対しては、アメリカはもちろんのことヨーロッパ側にもだんだんその理解が高まってきて、先般のシェイソン外相との会談でも、フランス側も当然グローバル対応しなければいけないということで日仏間に意見の一致を見ているという状況でございます。  イギリスとの間でも同じような認識がございます。  ソ連に対しましては、これは従来より、極東を含むソ連全域において、このSS20に代表される中距離核ミサイル撤廃ソ連側に要請してきておりまして、特に最近の動きとしましては、先月の十二、十三日に行われました日ソ事務レベル協議において、カピッツァ次官に対して、日本側としてはSS20の極東への移転追加配備などは論外であるということで、全域からのSS20の撤廃という立場に立ってソ連側日本立場を訴えることを行いました。  政府としては、今後とも、このソ連との関係においても、いろいろな機会をつかまえまして、SS20のソ連全土からの撤廃ということを訴え続けていく考え方でございます。
  13. 有馬元治

    有馬委員 四月二日のグロムイコ発言は、私どもにとっては非常に大きなショックであり、予想された問題だとはいいますけれども、これは許せない発言でございます。  そこで、ソ連側本音といいますか根性を知っておく必要があるという観点から、最近報ぜられておりまするアジアにおけるSS20の発射基地増強しておる、しかも数カ月前のアメリカ偵察衛星によってその状況はわかっておる、こういうことが一部の報道として伝えられておりまするが、これは一体どういう実情になっておるのか、御説明をお願いしたいと思います。
  14. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御引用になりました報道につきまして、私どももそのような報道を耳にいたしております。詳細については確認し得る立場にないのではございますけれども、この報道によりますと、恐らく現在すでに構築されているものとほぼ同様のレベルの追加的な基地の建設ということが内容になっているのではないかというふうに承知いたしております。
  15. 有馬元治

    有馬委員 このソ連のやり口といいますか本音というのが、こういう場面を通じてはっきりとするわけでございます。私は、交渉事でございますから、それは交渉進展し成功する場合と不調に終わる場合と、それから百点満点にいく場合と三十点どまりのときもあるだろうと思います。だからいろいろな対応の仕方はそれぞれの国がやらなければいかぬことは当然でございますが、しかし、交渉の当初においてもうすでに極東配備を計算に入れてその基地を整備するということは一体何なのですか、これは。これに対してどういうふうな対応をするつもりですか。
  16. 田中義具

    田中(義)政府委員 ソ連側は一貫してこのSS20を増強しておりまして、欧州でもずっと増強してきましたし、最近ではさらに極東への増強というのに力を入れているという状況でございます。  ソ連側説明では、これはソ連に向かって脅威を与えている核が世界じゅうにあるので、それに対応して増強しているんだ、アジアにも太平洋地域核兵器があふれている、そういうのに対抗して対応しているんだ、こういうふうに説明しているわけですが、これは、わが国のように平和憲法のもとでいかなる国にも脅威を与えない政策をとっている国から見れば全く理解できないことでありますので、先ほど来御説明しているとおり、ソ連に対しては二国間の協議の際に、極東への増強あるいはその極東への移転などはもちろん論外ですが、ソ連全土からSS20を撤去するようにということを訴えておりますし、それから、より基本的にはアメリカ軍縮交渉西側全体として支援する、西側全体として支持していく、そういう基本的な立場に立って西側団結を図り、西側全体として軍縮交渉を通じてそういうソ連増強を抑えていくという方向で外交的な努力を行っているという状況でございます。
  17. 有馬元治

    有馬委員 こういうところにソ連本音が出ているんだと思いますが、こういう実態というのは適時的確につかんで、そしてやはりアメリカ並び国際世論なりあるいはヨーロッパに訴えていくということは絶えずやらなければ、このグローバル観点から云々ということが、ややもすると交渉の途中において消えてしまう。そして妥協だから仕方がないじゃないかということで既成事実を積み上げられてしまう。  そうなったらてこでも動かない。アフガンの例を見たって、それから北方四島の増強状況を見ましても、そうでしょう。一たん築き上げた実績は絶対後に引かない。既成事実ということはそれだけ重要なんですよ。そういう意味においても、この問題はやはり私は絶えず監視しておく必要があると思います。  そこで、先ほどわが方の対応の一環として御説明がありました中に、四月十二日の第三回日ソ事務レベル協議というのが開催されたことは新聞でも承知しておりますが、このときにソ連カピッツァ外務次官から、ソ連側は、非核原則を守るならば日本との間に核不使用協定を結んでもよい、こういったことをぬけぬけと言われたそうでございますが、これは一体どういうことなのか、そして、これに対して外務省はどう対応したのか、この点をひとつ御説明願いたいと思います。
  18. 田中義具

    田中(義)政府委員 先生指摘のとおり、先般の日ソ事務レベル協議におきましてソ連側は、日本非核原則を堅持するならばソ連日本核兵器を使用しないというふうに述べるとともに、その表現については別の言い方を探求することができよう、いまここでこのような協定を提案しているわけではないが、その協定の中では、平和共存原則善隣関係などや両国関係基本原則をうたい、政治問題解決のために武力を行使しないことや、情報交換各種レベル交流促進を規定することができるというような言い方で、ソ連側立場説明したわけです。  これは二つ問題がございまして、一つは、日本非核原則を堅持するならば核を使用しないというような、何か日本側が条件を守れば核の不使用を約束するというような言い方をしているわけですが、これは国連憲章上武力行使ということは、核であれ非核であれ禁止されているわけでありまして、日本側からソ連に対して武力行使をすることがないのが明らかなわけですから、要するにソ連側の言っていることは、ソ連日本に対して武力攻撃をする場合に核を使わないということを、日本が何か条件を守れば約束しようというような話であって、これはそもそも武力攻撃を前提としていること自身が国際法の侵犯になるわけで、日本としてとうていのみ得る考え方ではないわけです。  したがって、そのようなことは、そもそもまず大前提として核を使わないというのが核保有国の当然の義務ではないかということで反論したわけですが、そういうわが方の反論に対してソ連側は、いやソ連側が言っているのは追加的な保証であるというようなことを言っておりました。これはいろいろそういうことで、こちらの反論があるとそれに対して表現が変わってくるということで、ソ連側として何か首尾一貫性に欠けるような主張であったというふうに考えております。  わが国としては、この問題については、核不使用という約束は、核兵器の削減といった具体的な軍縮措置のない限りは実効性を確保し得ず、このような実効性を欠いた約束をすることは安全保障上問題があるというふうな立場に立って対応している次第でございます。  それから、ソ連側のいまの、非核原則を守れば核を使わない協定を結んでもいいという言い方がそこだけにとどまらず、そういう協定の中には平和共存原則とかいろいろな両国間を律する基本原則をうたってもいいのだというようなことまで言っているということは、ソ連側のねらいが、こういう何か核不使用協定という名目の協定を結ぶという形で、片方において、これまで日本側が拒否し続けてきました善隣協力条約の変形とも言えるようなものを提案しているというような側面もあるように見られますので、そういうような考え方自身にも、日本としては、まず必要なものは領土問題を解決して日ソ平和条約を結ぶことであるという原則的な立場に立ってこれに反論したというのが、先般の日ソ事務レベル協議の際の協議の内容でございます。
  19. 有馬元治

    有馬委員 ただいまの説明でもおわかりのように、この不使用協定の背後にはやはり日ソの善隣友好条約的な考え方がちらついているわけでございます。それほどこの問題は重要な問題でございますから、ごまかされないようにきちっと対応していかなければ、日本の将来といいますか国益を大きく阻害することになりますので、こういった問題は事務当局においてもひとつきちっとした対応を絶えず続けていっていただきたいと思います。  そこで、もう一つお尋ねしておきますが、この一月末でしたか、パルメ委員会の提唱で非核武装地帯の設置構想というのがちらっと出たことがございますね。私は、この核不使用協定考え方非核武装地帯構想の考え方、これがやはりソ連の平和攻勢の一つの態様だろうと思うのです。  これに対してヨーロッパ側はどういう受けとめ方をしておるのか、アメリカはこれに対してどう対応しておるのか、そしてわが国はこういう非核地帯構想に対して、提案があった場合にどう受けとめるのか、この点の考え方をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  20. 門田省三

    門田(省)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生仰せがございましたように、パルメ委員会の報告に準拠いたしまして、スウェーデン政府ヨーロッパにおきますところの非核地帯の案を提言いたしました。これに対しまして、ソ連の方から、さらに内容を修正した、つまり地帯の幅をより広げた案を明らかにいたしているのでございます。  ただ、この非核地帯構想に対するヨーロッパ側反応と申しますのは、その目的が那辺にあるのであるか、ただいまヨーロッパにおきます平和と安全の維持という問題が、東西間のバランスによって保たれているということがございます。そのバランスと申しますのは、核あるいは非核、通常兵器を含むあらゆる兵器体系の上に立つ軍事力のバランスということでございまして、このバランスをそういう非核地帯というものが壊す懸念があるのではないかということで、きわめて懐疑的な態度で臨んでいるというのが実情でございます。  この際、非核地帯についての、アメリカあるいはヨーロッパ、またわが国考え方について申し上げさせていただきますと、非核地帯の設置という問題は、核の拡散を防止するというメリットがあること、これは疑いを入れないところでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたような、安全保障上の意味合いというものが十分配慮される必要がございます。私どもが考えます場合に、非核地帯を構築する場合には、少なくともその地域の中にある国が自発的にそのような非核地帯の設置を望むこと、及び核を持つ国、核保有国の同意というものもないといけない。また、そのような非核地帯をつくることが、国際の平和と安全にダメージを与えないかどうかということも十分検討する必要がある。あわせまして検証の問題がございます。そういう非核地帯の構想に同意をしても、本当にそれが実行されるかどうかという検証の問題、あるいは特に航行に関します国際法というものが十分準拠されるかどうか、こういったような諸条件というものが具備されて、この非核地帯構想というものが初めて実を結ぶのではないか、かように考えているのでございます。  このように考えてまいりますと、現状において果たして非核地帯を構想することが容易であるかどうか、これは容易でないということを申し上げざるを得ないのではないかと考えております。
  21. 有馬元治

    有馬委員 私は、非核地帯構想まで追及するつもりはなかったのですが、やはりスウェーデンの実情を見ましても、構想自体はよくても、ソ連がこれを提唱して実行する意図を示すかのごとき提案でございますけれども、これは信用ならない。現に、あの海域に核を持った潜水艦がうろちょろしているじゃないですか。こういうことが現実なんですから、この点は国内にもいろいろな御提案はあるけれども、現実をよく踏まえてひとつ外交を展開していただきたい、老婆心ながらお願いを申し上げる次第でございます。  最後に、今月末、アメリカのウィリアムズバーグでサミットが開かれると思いますが、これはまたとない絶好の機会でございますから、この機会をとらえて率直な意見交換を総理にお願いしたい。これは経済中心のサミットでございますから、表舞台の話になるのか裏舞台の話になるのか、その辺は私、わかりませんけれども、この機会を逸したら、もう中距離核ミサイルの削減についての日本側の強烈な訴えを聞く機会はないのでございます。そういうことで、ひとつぜひこの機会を有効にとらえてやっていただきたい。  それに対する対応の仕方といいますか、いま考えておることを、事務当局限りでもよろしいですからお答え願いたいと思います。
  22. 門田省三

    門田(省)政府委員 主要国の首脳が一堂に会されますサミットの機会におきまして、従来からも経済問題のみならず、ときどきの重要な国際政治上の問題について意見の交換が行われているところでございます。したがいまして、次回のウィリアムズバーグにおきますサミットにおきましても、政治問題について意見交換が行われるのではないか、かように考えております。  その場合に、現下の重要な国際政治問題という場合には、先生指摘がございましたように、私どもといたしましては当然INF交渉の問題、これをないがしろにはできないものであろうというふうに考えます。したがいまして、この問題がサミットで取り上げられる場合におきましては、わが国といたしましては、この交渉アジア安全保障にも十分配慮してグローバル観点から進められるべきである、欧州からアジアへのSS20の移転は受け入れられないとの立場で臨むべきではないか、かように考えております。
  23. 有馬元治

    有馬委員 筋書きとしてはそのとおりだと思いますが、私は冒頭に申し上げましたように、今回のグロムイコ発言によるSS20の追加配備の問題、これは絶対に許せない問題でございます。先ほどから申し上げますとおりに、この脅威の第一がSS20なんですね。それにまた追加をしていく、こういうソ連発言でございますから、これはひとつアメリカを頂点とした西側が一致結束して、グローバル立場からこの横暴な発言を取りやめてもらって削減に向かって努力をしていただきたい。そして、こういったいわば日本の幕末の黒船以来の大きな脅威にさらされてきた時代でございますから、本当に外務省はもう全力を挙げて、外務省の浮沈にかけてやっていただきたい。  幸いにして総理は中曽根さんだし、外務大臣は安倍さんじゃありませんか。そしてモスクワに駐在しておる高島大使は君らの一番信頼する先輩じゃありませんか。これだけの三人がそろった時代というのは珍しい。私どもから見れば強力布陣ですよ、最強の布陣です。これで最大の問題に取り組めない理由はない。絶好の機会でございますから、ぜひひとつこのトリオの健在なうちにこの問題を徹底的に解決していただきたい。お願いを申し上げます。  と同時に、冒頭申し上げましたようにNAAの春の総会が六月十日からコペンハーゲンでございますが、私ども議員の立場で、しかもオブザーバーの立場で国際舞台に出るわけでございますから、発言力は大変微々たるものかもしれませんけれども、あらゆる機会をつかんで世界じゅうに訴えたい、そして日本の安全を守りたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。  どうかひとつ政府もよくきょうの質疑のやりとりを体して、これから一生懸命やっていただきたいとお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
  24. 小渕恵三

    小渕委員長 前川旦君。
  25. 前川旦

    ○前川委員 先ほど自衛隊機の事故についての御報告がありましたが、まだ調査が進んでいないせいか中身が余り具体的になっていませんが、このことについてまず伺います。  この事故が起こりましたときに、谷川長官は、記者会見でしたか、事故を起こさないことも訓練のうちである、こうおっしゃいましたね。私はこれは大変見識のある言葉だと思って、最初に敬意を表しておきます。  この質問に当たりまして、失われましたとうとい人命に対しては心から哀悼の意を表したいと思います。それから、負傷者に対しては一日も早い御全快をお祈りいたします。  さて、こういう痛ましい事故が二度と起こらないためには、徹底した科学的な原因の追及が必要であります。その結果がたとえ自衛隊にとって大変苦いものであったとしても、やはりこれは国民の前に明確にすべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  26. 谷川和穗

    谷川国務大臣 最初に重ねて申し上げさせていただきますが、引き続きまして大きな事故を起こしまして、国民の皆様方に大変大きな不安感を与えましたこと、まことに遺憾でございます。また、先ほど報告にも述べさせてもいただきましたが、有為な人材も失いまして、また国民の財産でございまする機材も失いまして、まことに申しわけない限りでもございます。  この二つの事故原因につきましては、それぞれの航空事故調査委員会において、人的、物的環境、指揮管理等のあらゆる角度から現在鋭意調査を進めておるところでございます。なお、事故調査委員会の行います調査は、事故の実態を明らかにして、同じような事故の再発防止に資することを目的といたして行っておるわけでございまして、従来から航空機事故につきましては、航空事故調査委員会というものをつくっては、その原因追及について、ただいま申し上げましたような観点から科学的にこれを行ってきておるわけでございます。  私自身といたしましては、今回に限って申し上げさせていただきますと、今回の事故の規模、また与えた社会的な反響等にかんがみまして、調査結果の概要につきましては、もちろんこの調査はわれわれ内部で事故再発を防止するということに資するために行うものでございますが、と同時に、この調査結果の概要について、しかるべき手段をとりながら、できるだけ国民の皆様方には明らかにできることにつきましては明らかにしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  27. 前川旦

    ○前川委員 私は、シビリアンコントロールの基本的な考え方というのは、国民自衛隊をコントロールする、国会や防衛庁長官はその一つの手段であって、基本的には国民側がコントロールするのが本質であると思いますので、どうか都合が悪いことは自衛隊の中で隠すようなことがないように、少々都合が悪くても国民の前に明らかにしていくという姿勢を貫いていただきたいと思います。  それから、いままでの航空事故でしたら、民間でもそうなんですけれども、往々にしてパイロットミスということでとどめてしまう、個人に全部責任を押しつけてしまうという傾向があったように思いますが、仮にパイロットにミスがあったとしても、そのようなミスを犯さざるを得なかった背景にまでメスを入れた調査をしていただいて、単にパイロットミスだということで問題を終えないようにしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  28. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今回引き続いて生起いたしました二つの大きな事故につきましては、実は先ほど来ここで答弁させていただいておりますような観点から、特に長官指示を出しまして、そしてその長官指示には、すでに御案内のような主として三つの基本的な問題を取り上げるように指示もいたしたわけでございます。そして、いま御指摘のような問題点も含めましてすべて総合いたしまして、この事故調査について再発防止に資するような徹底した究明を現在いたさせておるところでございます。
  29. 前川旦

    ○前川委員 それではCIの事故について、これは技術的な質問ですが、悪天候のもとで演習を決行する、この判断を下したのは、これはどういう機関あるいは個人ですか。どこが下したのでしょうか。
  30. 西廣整輝

    西廣政府委員 飛行計画を決定いたしますには幾つかの段階がございます。まず今回の場合でございますと、週間の飛行計画というものがございまして、これは輸送航空団司令が承認をして定めるというものであります。その週間の飛行計画に基づきましてその日その日の、日々飛行計画と申しておりますが、これは細部の飛行計画でございまして、どの航空機を使うか、あるいはどういうクルーを乗せるかといったようなことを含めた計画でございます。  それは飛行隊長、今回の場合は第四〇一飛行隊でございますが、その飛行隊長がそれを作成をする、そうしてそれによって決められた編隊なり機長というものが、今回の場合は六機編隊でございますので、編隊長がその日の気象状況その他を勘案をいたしまして飛行方式というものを決めます。そしてその決めた飛行方式について飛行隊長の了解をとって飛行をするということになっております。
  31. 前川旦

    ○前川委員 最初に離陸するときは有視界飛行のできる状態であった、これは新聞に出ておりましたが、そのときに、四番機は気象の偵察に出ていますね。あの事故を起こした近辺は非常に気象が悪いということはつかめていたのか、それとも最初出ていくときは低空の有視界飛行が可能だと判断しても、途中で急変したのか、その辺はどうだったのですか。
  32. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま事故調査中でございまして、まだ細部申し上げる段階にございませんが、先生質問のように、離陸時には編隊長及び飛行隊長が判断し、かつ小牧の飛行場の航空管制をやっております運輸省側も有視界飛行で離陸をすることを許した状況であったことは、報道されたとおりでございます。なお、四番機が先行して気象偵察を行っておるわけでございますが、その段階で四番機から特段の経路変更なりあるいは計器飛行への転換を勧告するようなことがあったというようには聞いておりません。  したがいまして、まだ正確なことは申しませんけれども、かなり急激に気象が変化したものではなかろうかという気がいたしております。
  33. 前川旦

    ○前川委員 そこで、急激に気象が悪くなって有視界の低空飛行のできる条件ではなくなったという場合には、これは編隊長が当然計器飛行に切りかえるとか、あるいは訓練を中止するとかいうのは、編隊長の責任でやれるのだろうと思いますが、ただ、そこで問題になるのは、本当に自由に編隊長が人命の安全を考えて的確に訓練中止とか計器飛行に切りかえるとか判断できるようなバックの状況があったのかどうか。  たとえば、そういうことを簡単にできないような雰囲気が隊にあるのではないだろうか。命令で出ていったら、それは少々危険であろうともあくまでもやり遂げなければいけないのだというふうな何かせっぱ詰まった雰囲気があるのでしょうか、それとも、そういうことは自由に決められるのだという、もっと明るい心理的な感覚の状況であったのか、その辺いかがですか。
  34. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御質問の件も、これからの調査結果の一つ関心の的であるわけでございますが、一般論としてお答え申し上げますが、まず、有視界飛行というのはある一定の気象条件というものが維持されるという条件のもとに許されておるわけでございまして、そういう条件が満たされないような場合には、航空法上はそれぞれの機長の判断で計器飛行に移らざるを得ないということになろうかと思いますが、御案内のように今回の場合は編隊飛行でございますので、編隊全般としてのそういった判断は、当然のことながら編隊長がするということになりますし、各機の機長はそれぞれの判断があろうと思いますが、必要な場合は編隊長に勧告をするなりあるいは意見具申をするということになろうかと思います。  なお、編隊長の自由裁量の余地でございますが、今回の場合は、先ほどから申し上げておりますように有視界飛行で移動訓練をやっておるわけでございますから、レーダーサイト等から特に指示を受けた経路を通っておるということではなくて、気象その他を踏まえて編隊長の判断で経路を選択できるという形の訓練でございました。
  35. 前川旦

    ○前川委員 私が心配をしているのは、結局編隊長個人のミスに全部問題を、何というかそこにしてしまうという、それは非常に気の毒な話であるし、とてもじゃない、本人にとっても遺族にとってもたまらぬことだと思いますよ。ですから私が心配しているのは、少々気象条件が悪くても、これは訓練であろうとも有事即応態勢の実戦訓練ですから、無理してでもやらなければいかぬのだ、そういう雰囲気が隊にあるのではないだろうか。いわば昔で言えば特攻精神みたいな、そういうのを実は心配をしておりますので、その辺のバックにまでメスを入れてもらいたいということでございますから、その点どうぞ御留意をお願いしたいと思います。  それから、笠取山というところにレーダーサイトがありまして、そのスコープが事故の直前から直後の十六分間ずっと機影をとらえていたということが新聞に報道されております。機影をとらえていてなぜ危険を通報しなかったのか、これは危険が探知できなかったのか、あるいは通報するようなシステムになっていないのか、それとも、なっていても何かそこにミスがあって通報できなかったのか、これは大変不思議に思うところなんですが、いかがでしょうか。
  36. 西廣整輝

    西廣政府委員 若干私の想像が入ることをお許しいただきたいと思うのですが、まず笠取のレーダーサイトに与えられておりました任務というのは、この編隊訓練移動していく際に、離陸後笠取のレーダーサイトの見える範囲でその前方に、他のたとえば民間航空機とか、そういったものが飛んでいるかどうかという情報を与える任務を持っておったわけでございます。したがって、編隊そのものの飛行経路なりそういったものの選択は編隊長が持っておったということで、編隊そのものはレーダーサイトの指示で動いておったものではないということが第一点でございます。  もう一つ、それにしても、編隊見えておったのだから島にぶつかる可能性というのを感じられたのじゃないかというようなお話だろうかと思いますが、この部分が私、想像と申し上げるのですが、レーダーサイトからの低空のレーダーで見る範囲の誤差の問題でございますが、その百メートルなり二百メートルというものが厳密にレーダーサイトで判定できるかということになると、それはノーであろうというように私は考えております。
  37. 前川旦

    ○前川委員 レーダーサイトではその危険を判断する能力はなかったというふうに想像されるということですか。
  38. 西廣整輝

    西廣政府委員 高度数百メートルの範囲内のところで、ここで行けば島にぶつかるとかそういった厳密な高さの判定は不可能であろうというように考えております。
  39. 前川旦

    ○前川委員 しかしながら、十六分間機影を追求しているわけでして、当然地上には島があるということもレーダーサイトでわかるはずでありますし、針路がずれているということもわかると私は思いますよ。針路がずれているなら、ずれているから危ないという指示くらい出すのがあたりまえじゃないかと思って私はどうしても腑に落ちないのですけれども、一体どうなんでしょうか。
  40. 西廣整輝

    西廣政府委員 ちょっと言葉が足りなかったかもしれませんが、前段で申し上げた点がその針路の点でございますが、今回の飛行は有視界飛行ということでございますし、先ほど有視界飛行の条件について申し上げましたが、有視界飛行というのは幾つかの条件を満たしながら飛ばなくちゃいけない。たとえば、雲に入らないことであるとか、あるいは千五百メートルの視程を持ちながら飛ぶとか、そういったような条件がございますので、雲の状況によって針路というものは変えざるを得ないということで、あらかじめこの針路を飛ばなくちゃいけないということで飛行しておったものではないということを御理解いただきたいと思います。
  41. 前川旦

    ○前川委員 よくわかりませんが、もう一つ。  編隊長の指示は絶対なのか。後続機は少々おかしいと思っても編隊長の指示どおり後ろをついていかなければいけないということになっているのか。  たとえば、新聞の報道によりますと、五番機、六番機は、どうも少し針路がずれているということをパイロットは感じながら進言ができなかったということが新聞の記事に出ていますが、少々おかしいなと思ってもやはり編隊長機には無理してついていかなければいかぬということになっておるのか、それはおかしいですよという進言ができて、それに基づいて修正できるようなそんな自由な雰囲気になっているのか、そこはどうなんです。
  42. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど申し上げましたが、本来有視界飛行というのはある条件が満たされていることの条件で飛んでいるわけでございますから、それぞれの機長がその条件が維持されておるかどうかということは判断する必要があると思います。  なお、先ほど申したように、編隊全般としてはそれは編隊長の判断によるわけでございますが、その際に他の機長がどうも自分の機は有視界飛行状況が維持できないということであれば、当然その旨を編隊長に申し出て変更してもらうとかそういった措置をとることになろうかと思います。
  43. 前川旦

    ○前川委員 それでは、いまのように、これは三番機ですか、六百メートルの距離を維持できなくて千八百メートルに計器飛行で直しましたね。そういうふうに、これは危ないと思ったら無理してついていかなくても自由に自分の判断で計器飛行に切りかえたりする自由はあるんですね。そういうふうに教育はしているんですね。
  44. 西廣整輝

    西廣政府委員 長官も申し上げたとおりでございますが、安全を維持するということも非常に重要な要素でございますので、当然のことながら安全のための飛行間隔をとるとかあるいは飛行方法を変えるといったことも大事なことでございますし、そういうことはできるようになっておるというように私どもは考えております。
  45. 前川旦

    ○前川委員 どうかそういうふうに徹底をしていただきたいと思います。どうも自衛隊のユニホームの方は閉鎖的な雰囲気がしてなりません。それと、旧軍の精神主義的な要素がそのまま残っているんじゃないかという気がどうしてもいたしますので、民主主義の国ですから、どうかその辺を十分に注意していただきたいと思います。  さて、今度はPS1ですが、この事故を起こしましたPS1は昭和四十三年七月に納入されたPS1の一号機ですが、十五年たっていますね。普通、乗用車はずいぶん乱暴に乗る乗用車でも十五年はもつはずはないのですが、老朽して危険であったということは考えられないのですか。私ども常識的に考えて、十五年も乗っていたら老朽化していたのではないだろうか、つまり耐用飛行時間とこのPS1一号機の飛行時間との関係はどうなっていたのだろうか。これは非常に心配な点なんですが、いかがですか。
  46. 木下博生

    ○木下政府委員 航空機の場合には耐用命数は飛行時間によって決めておりまして、個々の機種によってそれぞれ耐用命数を決めて運用しておるわけでございます。  この飛行機は、いまおっしゃいましたように四十三年度に購入したものでございますが、一号機でございますが、PS1機の場合には五千四百時間というのが耐用命数ということで防衛庁では運用いたしておりまして、当該航空機の場合には約四千時間の飛行時間でございまして、十分耐用命数以内で運航しておったわけでございます。当然のことでございますが、定期修理、定期検査等はちゃんと行っておりまして、特にそういう面での問題はなかったと私ども考えております。
  47. 前川旦

    ○前川委員 この飛行艇は昭和五十三年でしたか、四国で一度墜落して全員死亡するという事故を起こしておりますけれども、これは原因が不明のままで終わっていますね。ですから、今回もどうかひとつ徹底した原因究明をしていただきたいと思います。  さて、このPS1はローパス訓練をやっていたというのですが、ローパス訓練とは一体何のためにやるのか。飛行艇が陸上の滑走路上でローパス訓練をしなければいけない理由は何なのか。これはどうなんでしょうか。
  48. 西廣整輝

    西廣政府委員 ローパス訓練と申しますのは、一般的に申しまして低高度におきます航空機の速力なりあるいは高度あるいは距離感といったもの、そういった感覚を養うのが最大の目的になっております。  それじゃ海の上で飛ぶ飛行艇がなぜ陸上でそういったローパス訓練をするかということでございますが、御案内のように飛行艇というのは洋上で荒海で着水をしなくてはいけない、あるいはまた潜水艦攻撃に際してはピンポイントに飛行して、そこで魚雷発射といったことをしなくてはいけないということで、低空における非常に厳密な飛行を要求されておる機種であります。ただし、ただそういった距離感なり厳密な地点に飛ぶということについて、洋上でありますとどうしても目標物がはっきりしないということで、最も基礎的段階では地上においてそういった感覚を養うということで地上でローパス訓練をやるものであります。
  49. 前川旦

    ○前川委員 もともと洋上で作戦する飛行艇で、洋上で低空飛行で飛ぶ訓練を陸上でするということは陸上にいろいろな目標があるから、それでは余りにも安易に過ぎはしませんか。私はどうも腑に落ちませんが、しかし、もう少し実態がわかってからでないと質問できませんので、これはとどめておきます。  先ほど文書でいただきましたこの報告ですが、一番最後のページに「隊員安全意識の高揚」という言葉がありますが、これは具体的には一体どういうことなんでしょうか。長官からお答えいただきましょうか。
  50. 谷川和穗

    谷川国務大臣 今回特に長官指示を出した中に触れてもおるのでございますけれども、ただ単に機材の点検あるいは訓練のあり方だけではなくて、それを総合してやはり全体的に隊員訓練に取り組む意識、その中に私はたまたまそれを、事故を起こさないようにするのも訓練のうちという表現を使ったわけでございますが、安全という問題もこれを確保していくのも、これは訓練として練度を高めなければならぬ、こういうことを意識いたしましてそのような用法を使ったわけでございます。
  51. 前川旦

    ○前川委員 それは最初に申し上げましたように長官のすぐれた見識だと思います。  さて、それではこの問題の最後に、いろいろな新聞の社説がありました。  毎日新聞の社説では「事故背景について、ある防衛関係者は「気のゆるみだ。最近の自衛隊はおごり浮かれている」と指摘した。」こういう文章があります。「一連のトラブルの裏に、ゆるみとおごりがあるという指摘は、当たっているだろう。」「自衛隊を包んでいる最近の弛緩した風潮とどこかでつながっているといいたい。」それから「別の防衛関係者は、急速に激しさをましてきた有事即応訓練が、事故をもたらした、と述べた。」それから「日米共同軍事演習の頻度も急激にふえた。それにともない、有事を想定した自衛隊訓練も過重になったといわれる。」  つまり、有事即応で米軍との共同訓練が激しくなって、訓練が非常に過重になったということ、もう一つは気の緩み、おごり浮かれているということが指摘されております。  それから読売の社説では「比較的練度の高い米軍との共同訓練を実施するようになってから、自衛隊練度の水準のあり方を見直すべきだとの声も一部に出ていた。」と指摘しています。つまり、向こうの方がはるかに練度が高いということで急な焦りがあったのではないだろうかということを指摘していると思います。  それから、朝日の社説では「隊内に人命軽視の空気があるのではないか。旧軍のいちばん悪い体質の一つ「人命軽視」に触れた思いがする。」それから「自衛隊内の教育は、人命尊重からスタートすべきだろう。装備や訓練の安全について隊員の間に不安があるなら、それを吸い上げる態勢を工夫しなくてはいけない。危険な指揮にも盲従していく隊員ではなく、市民の感覚と判断力を備えた隊員を養成することだ。」  たくさんありますが、これだけ読んでみました。こういうふうに社説は述べておりますが、ここで指摘されたことに対して長官のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  52. 谷川和穗

    谷川国務大臣 ただいま御指摘のございました各紙の論調あるいは論説に触れます前に、四月二十七日に長官指示を出しましたのは、実は私の気持ちといたしまして、一遍ここで機材の点検、あるいは隊内における安全意識、さらには訓練のあり方、こういったものをそれなりに総点検をいたしておきたい、こういうことであの指示を出したわけでございます。自衛隊は、ここでちょうちょう申し上げる必要もございませんが、常に正当なしかも精強な隊員をつくり上げていくために激しい訓練にみずから立ち向かわなければならないという大きな使命を持っておるわけでもございます。したがって、そういった厳しい訓練のあり方と、それから国民不安感を与えてはならない、事故は絶対起こしてはいけないという問題、自衛隊として常に考えていかなければならぬ両面を持っております。  主として社説を御指摘になられましたが、そればかりではなく、幾つかの事故を中心といたしました紙面あるいはテレビ、ラジオ、その他一般国民の方々からの自衛隊に対するいろいろな御指摘は、これはこれなりに自衛隊に対する厳しい叱責として謙虚にわれわれとして受けとめておるところでございます。  しかしながら、われわれ自身は今日までも実は自衛隊訓練のあり方につきましては十分基礎的なしかも周到な訓練計画をつくり上げて、それに対して検討を加え、そして訓練の効果的な実施とともに安全の確保に努めてきたことも、これまた事実でございます。自衛隊の中にあって、おごりとか人命軽視といったような空気があるとは実は私は感じておりません。
  53. 前川旦

    ○前川委員 この問題は終わりまして、防衛庁長官に伺いますが、いまアメリカのとっている戦略は同時多発報復戦略であると言われております。これはどういうものであるか、長官としてどのようにこの戦略を理解されておられますか。
  54. 新井弘一

    ○新井政府委員 お答えいたします。  同時多発戦略という言葉でございますけれども、厳密にはアメリカ側もこの言葉を使っておらず、レーガン政権発足以来の国防政策、特に通常戦力の面での国防政策を、むしろわれわれが便宜的に同時多発戦略であるというふうに呼称しているというのが第一点でございます。  他方、その中でどういう理解をわれわれが持っているかといいますと、アメリカ認識といたしまして、これは私どもも同意するわけでございますけれどもソ連が過去四半世紀にわたって軍事力を増強し全世界的にパワープロジェクションを行ってきている。従来ソ連につきましては多年にわたりまして欧州第一主義ということが理解されて言われていたわけでございますが、いまや欧州第一主義のみならずソ連は同時に多方面で攻撃能力を有するに至っている。これはソ連みずから実は言っていることでございます。  こういう事態に対応して、アメリカは御承知のとおり七〇年代、特にニクソン、キッシンジャー時代からでございますけれども、いわゆるデタントという状況背景にいたしまして一カ二分の一戦略を採用してきた。これは具体的には一つの大規模な戦争ともう一つ小規模な戦争、これが〇・五でございますね、少なくもこれに対応する戦力を維持するということによって抑止力の信頼性を確保するということであったわけですが、いま述べましたようにソ連自体がそういう多正面に同時に侵攻し得る能力を備えてきたということから、アメリカの戦略といたしましても一カ二分の一では十分な抑止力にはならない、そういうことからアメリカ側も同時に多正面で攻撃があった場合に対応し得る位置と能力を確保する、それによって抑止力の信頼性を高める、そういうふうな考え方に変わってきた。これがレーガン政権の基本的な政策である。で、これがいわゆる同時多発報復戦略というふうにわれわれ観念しておるということでございます。
  55. 前川旦

    ○前川委員 防衛庁も同意すると言われましたが、時間がもったいのうございますのでそのままずばりと申し上げますと、これはちょっと古い記事ですが、昭和五十六年の一月二十九日の朝日ですが、ワシントン発の特派員の報告で、「デービッド・ジョーンズ米統合参謀本部議長は二十八日、議会に八二会計年度軍事情勢報告を送った。レーガン政権初の同報告の中で、ジョーンズ議長は中東など米国や同盟諸国に死活的利害のある地域に対するソ連の攻撃に対し、米国は同地域で軍事的に対応するばかりでなく、他地域でもソ連の軍事的弱点に報復攻撃をかける新戦略を提唱した。」こうなっています。  もっと具体的に言うと、「新戦略を説明した同議長は」と記事に書いてありますが、「「紛争が発生した場合、米国は優勢な軍事力を攻撃地点ばかりでなく、世界各地のソ連の多くの弱点に使用すべきだ」と述べた。」また「ソ連がイランに侵攻すれば、米国世界各地のソ連の軍事的弱点をも報復攻撃し、「ソ連の海軍力を全滅できる海域もある」と語り、陸上ばかりでなく海上でも報復することを明らかにした。」これはアメリカの議会での話です。  平たく言えば、中東で米ソが軍事衝突したらそこだけにとどめませんよ、ヨーロッパでもアジアでもソ連に弱点があるところはこちらからたたきますよ、こういうことでしょう。いままでとはがらっと変わった、こういうふうに私ども認識をしているのですが、その点いかがですか。
  56. 新井弘一

    ○新井政府委員 ただいま先生指摘の点は、まさに昨年の国防報告においても類似の表現があったことは事実でございます。  ただ、アメリカのねらいというのはあくまでもそういうことによって抑止のクレジビリティーを高めるということにもともとあったわけでございますが、この点こういう記述によって抑止という面が若干誤解されて、アメリカ自身が戦線を拡大するということで、あるいはアメリカ自身グローバルに戦争を発展させるのではないか、そういうような一部の論評あるいは警戒を不信をむしろ呼んだということから、発想、考え方は全く同じでございますけれども、ことしの八四年の国防報告ではその部分の記述が修正されております。  以上でございます。
  57. 前川旦

    ○前川委員 修正されているというけれども、基本的な戦略はちっとも変わっていないはずです。私は、いままで日本の有事という発想法の中には、安保条約のとらえ方ですけれども、ずっといままでの長い議論の間、日本有事の場合に安保条約が日本の防衛を補完するのだ、それから極東の範囲の場合も朝鮮半島の紛争を前提としたような議論であったと思うのです。ところが、この同時多発報復戦略ということになりますと、米軍がみずからの国の自衛権の行使を、日本を使ってアメリカの自衛権の行使をするのだ。同時多発ですから、中東で衝突すればアジアでもヨーロッパでも、ソ連の弱点があればそこをつくのだということになりますと、ソ連をつくとなればこれは日本基地を使わざるを得ないでしょう。これは日本の自衛の問題ではなくて、アメリカの自衛に日本基地を使うのだということになると私は思うのです。  そうすると、いままでずっと考えてきて議論したことと大分見方が変わってこざるを得ない。あくまでも日本の防衛だ、安保条約はそれを補完するのだという発想法、日本は盾の部分を担当してアメリカはやりの部分を担当するのだ、こういうふうな発想できたのですが、日本基地の使われ方が、日本アジアの平和ということからアメリカの自衛のためというふうに質的に変わってきているのではないか、こういう視点から考え直さなければいけないのではないだろうかと思いますが、その点いかがですか。
  58. 新井弘一

    ○新井政府委員 私の方から一言、その後外務省からも答弁があるようでございますので、述べさせていただきます。  いわゆる同時多発戦略ということで、私はアメリカ考え方、またそれについての私の認識を申し述べましたけれども、この戦略を前提として議論する場合に、この戦略があくまでも要するに抑止戦略である、抑止の根本は要するにクレジビリティーである、このための戦略である。そういう位置と能力を保持することによってどこでも戦端を相手に開かせないというところに実は最大の重点がある、これが前提でございまして、この前提を取り去りまして、この同時多発戦略ということを、いわばそのまま具体的な戦闘の運用という次元で考える、議論するというのは、私はアメリカの基本戦略を正しく理解するゆえんではないのではなかろうかというふうに考えております。この点一点だけつけ加えておきます。
  59. 加藤良三

    ○加藤説明員 ただいま防衛庁の方からも御説明がございましたけれども、私どもの前提というものは、やはり米国がそもそも自衛権というものを行使している、これが大前提になっているわけでございます。たとえば、わが国にあります施設、区域の使用ということについてでございますけれども、そこにおります米軍の部隊というものが、わが国からたとえば中東なんかを含めて他の地域に単に移動していくということ自体、これは安保条約上問題がないわけでございます。移動は問題がないわけでございます。  また、いま御質問なされましたところの、たとえば極東の平和と安全に対する脅威が実際に存在しないという状態のもとにおいて、米軍がたとえば中東地域なんかでの事態に対処いたしますためにわが国の施設、区域を戦闘作戦行動のための基地として使用する、しつこいようでございますが繰り返させていただきますと、極東の平和と安全に対する脅威が存在しないという前提のもとにおいてわが国基地を戦闘作戦行動のために使うというようなことを念頭に置かれてのもので、もし御質問がございましたら、それは事前協議の有無という問題以前の問題といたしまして、そういう施設、区域の使用は安保条約上認められないということになるわけでございます。そういう基地性格と申しますか、あれは全く変わっていないということと思っております。
  60. 前川旦

    ○前川委員 それでは、当然、アメリカだけの自衛権の発動では日本基地は使用できないという御答弁だったと思いますね。そういうことですか。いまの答弁は、安保条約の適用じゃないと。  たとえば中東で米ソが衝突して、そして多発報復戦略、これは防衛庁がそうお答えになりましたけれども、これは五十七年二月八日のサンケイ新聞にも現地の特派員の報告が載っていますが、ワインバーガー国防長官が議会に提出する八三年度国防報告の内容を公表した。その中に「要約すれば」ということで、「米国に形勢不利となる場合、ソ連の他の地域に攻撃を仕掛けることで相手の戦力を分散させる」という内容が含まれていて、八四年度も変わっていないはずです。  ですから、私が聞きたかったのは、そういうアメリカの自衛権のために日本基地を使われるということは絶対ないし、ノーだということをはっきり確約できますか。
  61. 加藤良三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  ちょっと私の先ほどの御答弁を正しく御理解いただけなかったように思うのでございますけれども、私は実はこれまで国会の場で種々論議されてまいりましたこと以上のことを申し述べたつもりはございません。  すなわち、私が申し上げました趣旨は、極東の区域に対しまして武力攻撃が行われた、あるいはこの区域の安全が周辺地域に起こった事情のために脅威されるような場合に、米軍がこれに対処するためとることのある行動の範囲は、必ずしも極東の区域に局限されるわけではないということ、これは前から私ども述べてきたとおりでございます。  なおまた、米軍がわが国の施設、区域を使用できるその目的と申しますか、それはあくまでも極東の平和と安全の維持のためである。その要件が満たされれば、逆に申し上げますれば、施設、区域を当然使用できるということでございます。
  62. 前川旦

    ○前川委員 だんだんわからなくなってきましたが、中東有事というのは、それはアジアに対する平和と安全が脅かされたように判断できるのですか。どうなんですか。
  63. 加藤良三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  現時点で考えます場合に、中東で何か有事が起こったということそのこと自体が、直ちに極東の平和と安全に対する脅威となるということではないと思います。
  64. 前川旦

    ○前川委員 この同時多発報復戦略という戦略に日本防衛庁が乗っていきますと、米軍の自衛権行使に日本が協力するということになると、これは集団的な自衛権ということになってしまいますので、そこのところはどうぞひとつ、日本の将来の問題でありますから、しっかり限界をわきまえたことにしていただかないと大変なことになりますので、そのことを要望をしておきます。ただ、先ほどのお答えではどうも私よくわかりません。明確な、胸にすとんと落ちるようなお答えをいただきませんので、これはまた宿題にしておきたいと思います。  さて、最近、防衛問題がいろいろにぎやかになるに従いまして、元制服の最高幹部の人がいろいろと本を書かれています。たくさんの本がありますが、その本を読んでみても、どの本も一致しているのは、日本に対して直接ソ連が単独で、ある日計画的に、大量に攻撃をかけてくるということは考えられない、もし日本が攻撃を受けるとすれば、それは全世界的な規模で米ソが衝突したときであろう、あるいは中東での米ソの衝突がアジアに波及してきた場合であろうということ、制服の皆さんが書いているのは全部それが前提になっているのです。  防衛庁長官はこういうことも御存じだと思いますが、そういう発想に対してどうお考えになりますか。単独で日本が攻撃を受けたり、侵略、着上陸を受けたりするような大規模な攻撃が発生する可能性があるとお考えですか。それとも、もし万一そういうことがあるとすれば、それはグローバルな形での戦争状態というときでなければあり得ないというふうにお考えでしょうか。長官、いかがお考えですか。
  65. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず現状の認識から申し上げさせていただきますと、現在の国際情勢においては、東西間の全面的な軍事衝突やあるいはそのおそれを引き起こすような大規模の武力紛争は、少なくとも現時点抑止されておるというふうに私は判断をいたしております。しかし、もともと国際情勢というものはいろいろな条件で激しく揺れ動くという性格も持っております。そういうことから申しますと、わが国に対する武力攻撃がどういう態様をもって行われるかというようなことをいまからあらかじめ予測するというようなことは、なかなかこれは予測しがたいものがあろうかと思います。  ただ、御指摘のございましたようなごく限られた何か一つ考え方を持って判断として議論をした場合には、大規模な侵攻が日本だけを対象にして行われるということがあるかないかは全然別の議論としても、われわれとしては、あくまで、そういう大規模な侵攻ばかりでなくあらゆる形の侵攻に対しても、これをまず未然に防止することが一番基本的な問題だ、こう考えております。どういう形の侵攻が行われましてもこれに対しては適切に対処しなければなりませんが、と同時に、やはり米国との安全保障体制を堅持することによって、いかなる態様の侵攻に対してもこれに対応でき得るような防衛の態勢を常に維持し、さらにこれを強化していくということがわが国防衛の基本だというふうに私は考えておるわけでございます。
  66. 前川旦

    ○前川委員 長官、そうおっしゃるけれども、攻める方よりか守る方が不利ですね。攻める方は場所を選択できますし、方法を選択できますね。ですから、ありとあらゆるのに備えるなんということは、実際問題として不可能な話でしょう。  長官、私はあなたを非難するわけじゃないですよ、対話をしたいと思っているのです。そうすれば、どんな形でどこから来るのだろうかということをあらかじめ計画しないと兵力の配置もできないでしょう。いろいろな準備もできないでしょう。そこで、制服の方が言っておるのは、北海道あるいは裏日本に侵攻がある、それは何で始まるかというと中東有事から始まる、それがアジアに飛び火すると、そういうことをみんな言っているわけですよ。ですから、陸上の一番精強な師団を北海道に張りつけるとか、あるいはどこから来たやつを音威子府かどこかでなにをするとか、そんなことばかり本に書いてあるわけですよ。御存じだと思います。ですから、そこのところで全部に対応というのは不可能なんですから、どういう形で日本の有事があり得るかというのは、当然防衛庁としては考えていらっしゃるはずなんです。ですから、そこのところを長官に伺いたいわけです。  つまり、単独であるのか、それともグローバルな形のときでなければ日本に対する侵攻はないと判断しておられるのか、その辺の長官のお考えはどうなんですか。
  67. 谷川和穗

    谷川国務大臣 単独であるかグローバルであるかということは、先ほど来申し上げさせていただいておりますように、幾つもの問題点もございます。国際情勢とかあるいはその他の問題もございまして、その態様についていまからすべて考えること、これはなかなか不可能に近い問題だと思います。  それはそれといたしまして、わが国に対する侵攻が大規模な侵攻であるか小規模な侵攻であるか、私は、いかなる侵攻に対してもその侵攻の態様に対して、まず未然にこれを防止することが大事だが、侵攻が起こったときはそれに対する適切な対処が必要だ、こういうことを申し上げました。  対処の内容については触れませんが、一点だけ感じますことは、仮にそれが、グローバルなとかそういう問題を離れまして、わが国に対して何らかの侵攻の意図を持って組織的に、しかも大規模に、大変大きな侵攻を企てるということがあり得たとしましたら、これは全く離れて理論的に議論をいたしているわけでございますけれども、四方海に囲まれているわが国でございまして、いづれかの地点に部隊を集結してそれなりの準備をしてという形になりますと、やはりそれはそれなりに、現在のいろいろな手だてからいたしますと、緊張が高まってきて事前に相当いろいろわれわれとしても対処を必要とするような事態が当然生じてくる種類のものだ、こういうふうに私は考えております。
  68. 前川旦

    ○前川委員 議論がかみ合いません。残念です。  さて、次に参りますが、「日米防衛協力のための指針」、このガイドラインの中に、アメリカは「核抑止力を保持する」と、こうなっています。ここで言われている「核抑止力」とは何を指していますか。たとえば、核抑止力というと、いろいろな戦略核がありますね、ICBMとかSLBMとか。ここで書かれているこの「核抑止力」はどのことを指しているのですか。アメリカの空母機動部隊の攻撃力を指しているのですか。
  69. 加藤良三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  抑止力ということの本質のところから入らせていただきたいと思いますが、抑止力というものは、仮に侵略を行いました場合に、相手が耐えがたい反撃をこうむる、損害をこうむるということを明確に相手方に認識させることによりまして、手段のいかんにかかわらず侵略自体を思いとどまらせる、これが抑止力の本質であろうというふうに考えております。  そしてその抑止力というものは、米国の場合、当然通常戦力及び核戦力というものの総和から成るということでございまして、結局米国の核抑止力というものは、そういう意味での一般的な核戦力の抑止力を総称したものであって、それ以外のものではないというふうに考えております。
  70. 前川旦

    ○前川委員 私は総論を聞いているのじゃなくて各論を聞いておりますので、防衛庁のお考えを聞かしていただきたいのですが、これは、米ソの間にいろいろ戦略核兵器がありますが、ここで言う「核抑止力」というのは、一般的なことを言っているのか、ずばり言って空母打撃力のことを言っているのか、その点のお考えはいかがですか。
  71. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ただいま外務省からも御答弁がありましたとおり、われわれがアメリカの核抑止力として認識しているものは、総合的なアメリカが持つ核戦力全体を指している。そしてその中にはそれではたとえば第七艦隊が装備するであろう核兵器が入るかということであれば、有事の際装備するであろう、あるいはするかもしれない核戦力というか核兵器というものも、その抑止力の一環をなすものと認識しております。
  72. 前川旦

    ○前川委員 防衛局長、これは常識論として、仮に日本が核攻撃を受けたときに、アメリカが自分の国の滅亡を賭してまでICBMをどーんとぶち込むということは考えられないことなんです。ですから、もし仮にあなた方の立場で核抑止力を考えるとすれば、やはりこれは第七艦隊の空母の核、これしか考えられないと思いますね、皆さん方のサイドに立って考えた場合に。それはどうでしょうか。いまそういうお答えに近いお答えがあったように思いますけれども、もう少しはっきりお答えしていただけませんか。
  73. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカは、わが国との安保体制を堅持することによって、わが国に対する脅威が、軍事的な侵攻があった場合にそれを支援する、核を使ってもそういうことをやるという決意を示しているわけでございます。そしてそこで使われる核兵器が何であるかということについてはもっぱらアメリカの戦略、国防政策に関することでございまして、私の方から具体的に何々であるということを申し上げるのは必ずしも適当ではないのではないかというふうに思っております。
  74. 前川旦

    ○前川委員 それはアメリカの選択に任せるのだというようなお答えであったと思います。それにしても、第七艦隊の持っている、有事の際には核を積載するであろうといまおっしゃいましたね、それが核抑止力になるのだというふうに話の筋道から言えば私は感じ取りましたが、それでよろしいでしょうか。うなずいていらっしゃいますけれども局長
  75. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これは一般論でございますが、アメリカわが国の周辺を行動する、たとえば第七艦隊が有事の際、核兵器を持つことがあるかもしれない、その核兵器というものもアメリカの有力な抑止力、総合的な抑止力の一部を構成するものと思っております。
  76. 前川旦

    ○前川委員 防衛局長は三月二十四日の参議院の内閣委員会で、ソ連を攻撃に向かう米空母機動艦隊を護衛できると答弁されました。日本海へ入って沿海州に攻撃に向かう空母機動部隊も理論的には護衛できると答弁されました。それから、それとは別に四月十八日参議院の決算委員会では、核積載の米国の艦艇を守れると答弁されました。これを重ねますと、核を積んでソ連攻撃に向かう艦隊を守れるということになりますが、そういうことでよろしいのでしょうか。
  77. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず第一点、御理解をいただきたいと思いますが、この米艦船の護衛の問題というのはあくまでも、アメリカのたとえば第七艦隊というものを海上自衛隊が護衛をして粛々と行動するということを前提としているものではございませんで、この議論の発端は、衆議院の予算委員会において提起されたように、わが国の周辺においてわが国を防衛するために共同対処をしているアメリカの艦艇がわが国に武力攻撃を加えている国から攻撃を受けた場合に、日本はそれを救出というか助けに行くことができるか、こういう御議論からこの米艦護衛という問題が提起されたわけです。  アメリカの艦艇がわが国を防衛するために共同対処の行動をしている、わが国が自衛のための行動をとっている、そういう範囲内であれば、その艦艇があるいは核を積んでいることによってそれを救うことができないということは不自然ではないかということを申し上げました。それはいまでも変わりございません。
  78. 前川旦

    ○前川委員 それは議事録に載っておりますから私も承知しておりますが、参議院の内閣委員会ですか、秦さんの、日本から沿海州攻撃に向かうアメリカ空母機動艦隊に対して間接護衛を要請された場合の対応にはどんなことが考えられるかという質問に対して、いま言われたように、「必要に応じてその米艦隊がわが国を防衛するために行動しており、わが国の米艦護衛の仕事が日米共同対処の一環として行われるのであれば、当然これは個別的自衛権の範囲として認められるというふうに理解しております。」と答えられて、新聞の見出しは、「ソ連攻撃に向かう米艦 「護衛できる」と見解」これは毎日。「「有事」自衛隊の米軍護衛 ソ連基地攻撃でも」これは読売。またこれは朝日ですが、「対ソ展開中の米空母部隊 日本海で護衛可能」 非常にセンセーショナルに報道されました。  私はきょうの質問は常識的なことしか聞いていないのです。国民の不安に思っていることだけを常識的に聞いているのですが、いままでは専守防衛だということでみんなある程度、われわれはまた別の立場ですけれども、一般的に言って、国民の方は専守防衛ということで納得しているのですよ。それがソ連攻撃に向かう核武装したアメリカの空母艦隊も守ることができるのだ、それは個別的自衛権の範囲なのだというふうなお答えになると非常な不安があるわけですよ。  ですから、私最初に言いましたように、攻撃に行っている米艦を護衛できる、あるいは核武装しているのも護衛できるとなったら、核武装して沿海州攻撃に向かうということは、場合によったら核攻撃もあり得るということなんですが、あり得るということでなければ核抑止力になりませんね。初めから使わないというのだったら抑止力になりません。抜かないという刀だったら何にも抑止力にならないので、いざとなったら抜くぞと言うから抑止力になるのでありますから、やはりその危険があるわけでしょう。それまでも個別的自衛権の範囲だという見解は非常に不安です。  答弁の中で、これは理論的な問題で、実際にあり得るとは思えないだろうということもあったと思いますが、できれば私は、こういうのはやはりちゃんと否定してもらった方がありがたいわけですよ。その点、いかがですか。
  79. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いまいろいろな答弁をそのまま重ねられるとそこに若干の混乱が生じるのではないかということを思います。  まず第一に申し上げるのは、護衛というのは、船団を護衛するかのように第七艦隊を護衛するなどということは現実の場面としてはあり得ない、そういうことを前提としたものではないということを第一点、これは御理解いただけると思います。あくまでも、いわばアメリカの艦艇がわが国周辺において行動しておる、それは日本を防衛するための行動であるというふうな縛りがいろいろあるわけでございます。わが国は当然個別的自衛権の範囲内で行動している、そういう範囲内でアメリカの船を守ることは可能であろうということを申し上げました。  そのアメリカの船が、たとえば日本海におってどういう任務を持っているか知りませんが、少なくもわが国防衛のために行動しているということであれば、そういういろいろな条件の中に含まれるものであれば、それは守ることは可能であろうということを申し上げたわけでございまして、ソ連に核攻撃に向かうことがはっきりしている第七艦隊を護衛していくというふうなことを申し上げたつもりはございません。
  80. 前川旦

    ○前川委員 端的にずばりと質問は、ソ連に核攻撃するかもわからぬで核を積んで行っているのを日本自衛隊が護衛するなどというのはとんでもないことだ、それが常識的な考え方なのです。それはきっぱり、そういう非常識なことはありませんと否定なさったと理解してよろしいですか。
  81. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 同じようなことを申し上げるわけですが、米艦護衛というものの範囲として、わが国に対してすでに武力攻撃を受け、アメリカ日本は共同対処をしている、そしてそのアメリカの当該艦艇はわが国防衛のために行動をしている、それからもちろん、一方においてはわが国は憲法の個別的自衛権の範囲内で行動しているというふうな枠組みの中での議論でございます。そういう範囲内であれば、その当該艦艇、米艦が相手側から攻撃を受けたときに、それが核を持っていることが想定されても守ることはできるであろう、これはあくまでも理論的な話としてでございますが、そういうことを申し上げました。
  82. 前川旦

    ○前川委員 秦さんの質問と防衛局長の答弁といまのお答えとちょっとニュアンスが違うように思う。僕は好ましいように、ニュアンスが違うように受け取りますが、共同対処する場合には、日本が守る方、盾の方を担当して、米軍はやりの方を担当するということなのでしょう。そうすると、米軍のやっていることは、相手に対する攻撃もあれば、日本の防御ということもある。広い意味で防御ですけれども相手を攻撃するという場合もある。いまあなたの言われた日本を防御するためという言葉の中にはやりの役割りも含んでのことですね。  となると、また初めの話に戻って、ソ連へ攻撃に行っている、核を持って行っているのを守ることができるということに、いまの答弁も同じことになってしまいませんか、その守るということの中には攻撃するということも含めているということになったら。その辺、行きつ戻りつでおかしいのですが、どうもはっきりしませんけれども、ここのところ、本当に不安なのですよ。もうちょっとこの不安を打ち消すような発想はありませんか、お答えはありませんか。  日本の個別的な自衛権で、専守防衛で一応国民の大多数は安心しているのですけれども、ずいぶん危ない話で、下手したら完全に日本は報復攻撃を受けます。先ほどの有馬さんのお話じゃないけれども、私非常に敬服して伺っていましたけれどもSS20というのがあるのですから、これは大変なことになるのです。トラのしっぽを踏むかもわからぬようなことなのですから、その辺は非常に心配しておりますので、くどいようですが、いかがですか。
  83. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず第一に、私どもは核戦争というものは全く念頭にない。これは、アメリカが今度の「日米防衛協力のための指針」におきましても核戦争というものは前提にしていない、それからわが方の防衛力整備も、そういった通常兵器による紛争、戦争というものを前提にした防衛力整備を進めているということでございまして、あくまでも核を使うということを前提にした議論ということではないわけでございます。  ただ、核の脅威に対してはアメリカの核抑止力に依存する、そういうことであれば、アメリカの全体的な核抑止力の中にそうした有事の際にわが国の周辺において行動する第七艦隊も核を持つことがあるかもしれない、そうした艦艇、これはあくまでも仮定の話として、理論的な話として申し上げておるわけでございまして、核攻撃に向かうアメリカの艦艇を云々ということになれば、そういうものを前提とした防衛力整備なり私どものいわゆる防衛についてのすべての考え方というものは、あくまでも核は前提にしておりませんので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  84. 前川旦

    ○前川委員 核戦争になれば、もうこれはおしまいだと思います。したがって、核を前提にしたことは考えてないとおっしゃいました。そうしますと、一時非常に議論されましたあの限定核戦争、限定的に中東なりヨーロッパなりアジア核兵器が使われる——限定的にもアジアでは使用されることはないと判断されますか。
  85. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 核兵器というものは、その性格から申し上げて、たとえ限定的であろうとも非常にエスカレートする危険性を持っておるということから、そういう危険性をはらんだ核兵器の使用というものは強く抑制されておるというふうに思います。
  86. 前川旦

    ○前川委員 長官、私と同意ができますかどうか。核抑止力に依存するとおっしゃるけれども日本の場合は核抑止力というものが効かないと思うのです。というのはなぜかというと、抑止力というのは攻撃されたら相手に対して同じような報復をして、同じような、それ以上の損害を与えることができるという状況があって初めて相互に抑止力が効くのだと思いますよ。そうじゃないでしょうか。  たとえば、それじゃ日本ソ連とが、日本アメリカの核の傘、ソ連ソ連核兵器を持っている、抑止力で均衡しているということになるのでしょうが、仮に考えてみると、シベリアの人口密度というのは一キロ平方二人なのですよ。非常に人口が希薄ですね。それから日本の場合四百人近いのです。しかも、日本は七割くらいが森林で、森林の占める割合としては日本世界一なんだそうです。私は知らなかったのですけれども、この間NHKか何かのクイズで出ておりました。そういう可住面積の狭いところへ一億二千万の人間が住んでいる。そうしますと、人口密度がまず非常に違う。  シベリアで都市といえば、一番大きい都市がイルクーツクで四十五万人です。ウラジオストクが四十四万人、これは人口ですよ。ハバロフスクは四十四万人、チタが二十四万人、コムソモリスクが二十二万人、ヤクーツク七万人。日本で言ったらほんの中小都市だけが幾つかあって、あとは一万人ぐらいのあれがばらばらと漁業基地みたいに散らばっている。それと日本と対等で核抑止力というのは絶対働かないと私は思う。  ですから、アメリカの核抑止力に依存すると言うけれども、とてもじゃないけれども日本は核戦争には耐えられないし、まして使えるということが前提でなければ抑止力にならないのですから、使わせてはいけないし、第一抑止力理論が、これほど状況が違うのですから、与える損害が違うのですから、いざやり合った場合に、同じ十発の核兵器を投げ合いしたって全然状況が違うわけですから、この核抑止力という発想法、あるいはいま夏目さんが核戦争は想像していないと言われましたけれども、この核抑止力という考え方はどうも日本は捨てた方がいいのじゃないか、捨てざるを得ないのじゃないか、それ以外に道はないのじゃないかと私は思います。  長官、いかがですか、そういうお考えはどうでしょう。
  87. 谷川和穗

    谷川国務大臣 紛争の抑止というものはあくまでもすべてトータルで考えられるべきであって、核だけを引き出して抑止の議論はなされ得ないかと思いますが、これを核に限って申すならば、少なくともわが国の場合にはアメリカの核抑止力に依存をいたしておるということは従来から答弁いたしてきているところでございます。そして、そのアメリカの核抑止力というものはただ日本列島の上だけに限られた核抑止戦略ではないはずでありまして、アメリカは、それこそグローバルパワーという言葉で呼ばれておりまするが、全世界に展開をいたしておるわけでありまするし、アメリカの核抑止という戦略に限って申し上げれば、これは世界至るところにおきまするいずれの核による攻撃に対してもこれを十分抑止するだけの核の抑止能力を持っておる。  実は、このことにつきましては、昭和五十年八月でございましたか、シュレジンジャー長官が訪日をいたしましたときに記者会見がございまして、そのときに、いま先生指摘のポイントとちょっとポイントがずれてはおりましたけれどもアメリカの核抑止力に日本は完全に依存し得るかというていの質問が場内からありましたときに、シュレジンジャー長官が答弁をいたしておる中に、アメリカの核抑止力というものはグローバルな問題である、アメリカ自体全世界に展開をいたしておって、いずれの地点でもアメリカの核抑止力が働かないという地点はないという趣旨の答弁をいたしております。  その後、アメリカの歴代の国防長官いずれもが日本の依存いたしておりまするこの核抑止力について、その信頼性については常に主張し続けてきておりまするし、同時に、日本が依存をいたしておりまするアメリカの核抑止については、日本に対して言質といいますかコミットメントといいますか、それを与え続けてきておるわけでございます。  したがって、私は、いま先生日本列島と沿海州といいますかシベリアという問題だけを取り上げて御議論いただきましたが、どういう形で核攻撃というものが行われるか、これはいろいろな想定があろうかと思いまして、それを議論するわけにいきませんが、しかし少なくとも大前提となりまする、大原則となりまする、日本アメリカの核抑止力に依存をしておって、その抑止力はいかなる態様においても必ず働き得るものである、この信頼性はいささかも疑念を持つ必要がないものだ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  88. 前川旦

    ○前川委員 このアメリカの核抑止力は本当に働くのか、信頼できるのかということはグローバルな問題でして、世界じゅうで皆問題にしておりますので、これは平行線、世界じゅうで平行線ですから、これはこの程度でやめておきましょう。  さて、今度の予算委員会では米軍による単独の三海峡封鎖が問題になりまして、統一見解が出ました。あれは幾ら読んでもわかりませんので、それはそれとして置いておいて、日本が独自で行う海峡封鎖について伺いますが、まず最初に、日本の自衛権については非常に厳しい制限があります。たとえば自衛権発動の三要件、わが国に対する急迫不正の侵害があること、この場合に他に適当な手段のないこと及び必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。この必要最小限度の実力行使にとどまるということはたびたび議論して明確にされておりますし、自衛隊法八十八条にも「防衛出動時の武力行使」として「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならないものとする。」こうはっきり書いてあります。この自衛権行使の要件、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これはいまでも生きてますね。厳然としてこれは生きてますね。いかがですか。
  89. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 生きております。
  90. 前川旦

    ○前川委員 それでは、これは五十八年二月二十六日のサンケイ新聞の夕刊ですが、どうも腑に落ちない記事が出ています。ワトキンズ作戦部長が米議会の公聴会の記録で証言していることが明らかになっているのですが、「わが同盟国は多くの機雷を保有している。日本はその代表的な例だ。われわれは(日米の)二国間およびNATO内部で、この問題について同盟国と極めて突っ込んだ形で作業をしている」、こういうことと「米国は機雷を取り除く掃海に力を集中し、同盟国がわれわれとの共通領域で機雷敷設に専念できるようにする」。こういうことで、日本NATOが海峡封鎖は機雷を敷設する、日本が主役なんだ、アメリカは掃海の方に力を集中するのだという非常に珍しい記事が出ているのですが、これは一体どういうことになるのですか。  海峡封鎖は日本がやるとする場合にはどんな方法でやるのですか。これは機雷でやるのですか。どういうふうに考えていらっしゃるのです。
  91. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず、幾つかの御指摘があったわけでございますが、これも「日米防衛協力のための指針」にも明らかなように、わが国周辺における海峡を含めた防衛能力というか防衛というものは、海上自衛隊が主体になってやるのだというふうなことが決められておりますので、そういう一環としていわゆる海峡防備ということを海上自衛隊の主要な任務として考えております。  そこで、いま海峡封鎖というふうな御指摘がございましたけれども、私どもは海峡防備、あるいは必要に応じて通峡阻止という用語を使っておりますが、この通峡阻止ということは、わが国に対して武力攻撃があった際に、その武力攻撃を加えている国の艦船の自由な出入というか通航というものを阻止するあるいは抑制するということを目的としておるものでございまして、このために使用される作戦というのは、対潜ヘリコプターを使う場合もあるし、水上艦艇あるいは潜水艦、こういった総合的な兵力を駆使しまして、いわば段階的にそういうものを阻止する、そうして必要があれば機雷を敷設することもあり得るということでございます。
  92. 前川旦

    ○前川委員 その機雷の敷設でありますが、宗谷海峡を封鎖する場合にはソ連の領海に機雷をまくのですか。もしそれをやるとしたら自衛権行使の厳密な制限からはみ出ませんか。しかし、封鎖するとしたら向こうの領海へもばらまかないと実効は上がらないでしょう。これはどういうふうに考えますか。
  93. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 機雷を敷設する場合に、対馬海峡あるいは津軽海峡というわが国の領海あるいは公海部分については法律的な問題というものはないと思いますが、ソ連の領海あるいは対馬海峡の西水道についての韓国側の領海については、私ども自衛隊が機雷を敷設するという考え方は持っておりません。
  94. 前川旦

    ○前川委員 いまのは韓国側の話でしたね。ちょっと待ってください。予算委員会局長の答弁では、韓国側の領海のぎりぎりまで公海部分までは封鎖しても韓国の領海までは封鎖しないという答弁があったと思います。しかし、考えれば、幾ら領海へ入ってこなくても領海すれすれまでよその国が機雷をまくなんというそんな勝手なことはいま国際信義としてできないと思いますね。事前に協議するか何かしないとできないと思います。  私が伺ったのは、宗谷海峡でソ連の領海に機雷をまいたり、そこまで日本の艦艇が出ていって通峡阻止ができるか、それが自衛権の範囲に入るかということを伺っているのです。
  95. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私は、いま一般的な問題として、宗谷海峡のソ連の領海部分と対馬海峡の西水道における韓国の領海部分については敷設する考えがないことを申し上げたつもりでございます。
  96. 前川旦

    ○前川委員 できないのでしょうね。またそういうことを考えてない。しかし、それでは通峡阻止の実効は上がらないという批判が出ますね。その場合にはどうするのですか。その部分は、宗谷海峡のソ連の領海については米軍に、つまり攻めるやりの方に依頼するということになるのですか。
  97. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず通峡阻止の実効という点の御指摘一つあったかと思いますが、通峡阻止というものは、ほかの作戦でもすべて同様でございますが、一〇〇%パーフェクトな形でやれるというふうなものはなかなかむずかしいのだろうと思います。そういった意味合いから、わが国の領海部分、公海部分についてそのような阻止能力を持っているということは相当抑止効果として重要な意味があるだろうというふうにまず認識しております。  それから、それではソ連の領海部分あるいは韓国の領海部分についてはどうするかということにつきましては、これは日米共同作戦の中で今後検討される問題でございまして、いま直ちにアメリカがやるとかどうとかいうことを申し上げる段階にございません。
  98. 前川旦

    ○前川委員 いま言える段階ではないと言われましたので、これ以上追及できませんが、私は、日本が単独で自衛権の発動として通峡阻止をするときにソ連の領海までやったら報復を受けて大変なことになると思います。これは非常に心配をするところであります。  さて、それではその次に、通峡阻止の対象は何を考えていらっしゃるのか。  たとえばこれはワインバーガー国防長官の発表した八三年のソ連の軍事力によりますと、ソ連の太平洋艦隊には弾道ミサイル型、これはディーゼルを含めて三十隻ある。この弾道ミサイル型潜水艦は戦略核を積んだ潜水艦であって、日本に対して向けられたものよりか米本土に対して向けられたものであることは常識であります。これを阻止することが日本の自衛権の範囲に入るとは思えない。これは幾ら第五条が発動されていても米国に対する戦略潜水艦です。  それから攻撃型の潜水艦が九十隻配置されているとなっておりますが、その主な任務は、主として自分の国の弾道ミサイル潜水艦の防衛に回されるであろう。そのほかは今度はアメリカの弾道型潜水艦SSBNの追尾に回されるであろう。そうすると、攻撃型潜水艦もそのほとんどは戦略的に使用されるであろう。  そこで、実際にシーレーンの攻撃に振り向ける可能性があるのは通常型の潜水艦、それも十八隻ぐらいであろう。それを三交代でやるとしたらせいぜい六隻ぐらいだろうというのは、左近允尚敏さんという制服OBの方の書かれた判断の中に出てまいります。  いずれにせよ、通峡を阻止する潜水艦のほとんどは米ソ間の、ソ連アメリカに対する戦略的な配置に使われるのであって、シーレーンに回されるものは少ないであろうというのも常識だろうと思います。これを阻止するということが自衛権の範囲に入るでしょうか、どうでしょうか。
  99. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず第一に、いま先生が御指摘のように、潜水艦のいわゆる種類として御指摘のようなものがあるというのは、ソ連に限らずアメリカにおいても同様なことが言えようかと思います。そして現在、極東におけるソ連の潜水艦にそれらのすべての種類があることもこれまた事実でございます。  ただ、前提として申し上げたいことは、あくまでもわれわれが行うべき通峡阻止というのは、すでに日本に対しての武力攻撃があって、それに対してわが国が自衛権の範囲内で必要な行動をするということでございまして、アメリカのために通峡を阻止するとかいうことがまずない、わが国の防衛のために必要な範囲でやるということが第一点でございます。  それから、これは仮定の話でございまして、先生はいまソ連の潜水艦をいろいろ御指摘になりまして、あたかも日本がいまソ連と戦争をした場合のことを想定されるようなことを言われたわけですが、いまここでもって具体的な国名を挙げて私が御議論申し上げることは、いろいろまた問題も起こしますし、適当でないと思います。  いずれにせよ、通峡阻止をする場合に、潜水艦というものは非常に大きな一つの対象でございます。その潜水艦が潜航したまま来れば、それが何型の潜水艦であるということは直ちにわかるものでもございませんし、たとえば、いまのやつはSSBNであるから見逃してやろうとか、そうでないからやっつけようというふうなことは、現実問題としてはなかなかできるはずがないのではないかというふうに思います。
  100. 前川旦

    ○前川委員 ですから、米ソ間の戦略潜水艦、あるいはその戦略潜水艦である弾道ミサイル潜水艦を護衛するための攻撃型の潜水艦、それを含めて日本海上自衛隊が機雷なりなんなりで防いでしまうということは、過剰な自衛力の行使ではないかと思います。  それから、これはワインバーガー報告ですが、潜水艦じゃなくて、今度は水上艦艇が八十隻以上ウラジオには配置されているそうです。しかし、この左近允尚敏さんの専門的な分析によりますと、これらの水上艦艇の主な任務も、自分の国の弾道ミサイル潜水艦の防衛の対潜作戦が主であろう、したがってウラジオストクかペトロパブロフスク周辺で主として対潜作戦に従事するであろう、太平洋に出てきてシーレーンの攻撃に向かうようなことは、エアカバーがありませんからやらないだろう、こういう判断をされております。これはなかなか科学的な判断であると思います。立場は違いますけれども、その判断はなかなかおもしろいと思うのです。  そうなると、これまた米ソ間の戦略的な配置につく、ソ連の軍艦と言っては悪いのでしたら言わなくてもいいですけれども、それも機雷なんかで一挙に防いでしまうということが一体自衛権の範囲に入るのか。それから、機雷は船を選びませんが、カムチャツカ半島等には四十二万人のソ連の民衆が住んでおります。それに対する食糧その他の供給、これはソ連にとってはシーレーンですね。その商船も含めて封鎖するということが日本の自衛権の範囲に入るのかどうか。これは大変素朴な疑問なんですけれども、いかがですか。
  101. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 特別の国名を挙げての御指摘お答えするということでなくて、一般論的にお答えせざるを得ないと思いますが、わが国の自衛のために必要であれば、それは潜水艦に限らず通峡を阻止することは大いにあり得るというふうに思います。
  102. 前川旦

    ○前川委員 私は、日本を攻撃するためでない艦船まで封鎖して通峡を阻止するということが日本の自衛権の範囲で必要最小限の実力行使の中に含まれているとは思わないわけなんですね。しかし、局長はそこのところはお答えになりませんでした。  これは長官、私は過剰な自衛権の行使になると思いますが、いかがですか。
  103. 谷川和穗

    谷川国務大臣 わが国有事の場合に、つまりわが国がいずれかからの武力攻撃を受けた途端に直ちにわが国周辺の海峡を封鎖する、こういうように連動するようにはまず一つはお考えいただかないで、この通峡阻止という問題は、当然のことでございますが、沿岸国あるいは第三国に与える影響が非常に大きい作戦でございます。したがって、わが国が、わが国に対する武力攻撃が行われた場合に、その敵性の艦船に対してこれを通峡阻止をするというわが国の自衛の範囲の中で行います作戦行動におきましても、通峡阻止作戦を行う場合には十分慎重に、また、ただいま申し上げましたような事柄について十分配慮をしつつ行う作戦でございます。  しかもその通峡阻止という行為は、何が何でも直ちに機雷をばらまいてしまって全部ブロックしてしまうというような作戦を直ちにとらない、先ほど来政府委員からも御答弁させていただきましたように、航空機、水上艦船あるいは潜水艦、必要があれば機雷をまくこともあり得るでありましょうということを申し上げているわけでございます。  再々答弁させていただいておりますように、第三国あるいは沿岸諸国、こういったものに対する配慮をいたしまして、慎重にこれを行うつもりでございます。
  104. 前川旦

    ○前川委員 慎重どころか本当にこれは米ソの間の核の均衡、つまり弾道ミサイル型の潜水艦の通過を防いでしまうということになりますと、核均衡が崩れるということで、ソ連としては死にもの狂いになりますね。これはここだけではなくて、バルト海の出口にしてもあるいは黒海の出口にしても、ソ連の艦隊は戦略的な核ミサイル潜水艦も海峡を通過しなければいけないという非常に弱点を持っていますから、これをやられるとその核均衡が崩れるということになりますと、向こうは国の存亡をかけざるを得ないでしょう。国の存亡をかけての宗谷海峡の突破ということになりますと、これは大変なことに巻き込まれるということになりますので、非常にその点を心配しているということをどうか腹の中に十分置いておいていただきたい。これは一番心配することなんです。巻き込まれ論の最たるものであると思いますので、要望をしておきます。  さて、時間がどんどんたっていきますのではしょってまいりますが、シーレーンの防衛の問題であります。  まず、シーレーン防衛という発想法は、戦争がだらだら三年も四年も続く、第二次世界大戦型で続くということが前提にならないと、シーレーン防衛なんという発想は出てこない。  ですけれども、識者に聞きますといろいろな意見があります。新聞に出ていることでも、たとえばこれは十一月二十九日の朝日新聞の「今月の目」に出てきますが、「では、米ソが全面戦争に入りながら、核を使わない第二次大戦型の戦争をだらだら続けることがあり得るか。「きわめてアンライクリー(ありそうもない)でしょうね」と、平和・安全保障研究所長の猪木正道氏は見る。」と。  これはいろいろな見方があります。「だが前田優海上幕僚長は「米ソの全面長期通常戦はあり得る」とがんばる。また、そうでなければ海上自衛隊の存在意義があやしくなるのだ。」というえらいうがった記事が出ておりますが、実際米ソ正面対決でそんな長いことになるのか、本当にわかりませんが、ありそうもないと思います。  しかしそれにしても、実は五十七年の七月十九日の朝日の朝刊に、全日本海員組合組合長の土井一清さんが投書しておられます。そして、船員の戦時の被害がこの前の第二次世界大戦では、陸軍軍人の二〇%、海軍軍人の一六%に比べ、二倍以上に当たる四三%という高率であったということを指摘されて、船員には戦争の悪夢が消えていないのだ、戦争が終わった後でも、いまなお海上航行の危険は絶えない、中東アラブとかベトナム戦争とかそういう場合には海上航行の危険は絶えなかった、これらの海域に就航する船員はその都度戦火の危険にさらされ、船舶には戦争保険が掛けられるという状態が頻発してきたんだという指摘をされて、とてもじゃない、シーレーンなんということはもう考えないでもらいたい、もう一遍船員が危険に落とされるようなことは考えないでもらいたい、外交による国際紛争の解決にこそ力を注いでもらいたいという要望が出ています。  これを受けまして今度は、戦没船員遺族会の常任理事の泉谷迪さんという人が五十八年一月二十四日の朝日新聞「論壇」に投書されまして、「日本の海運界はおしなべて、有事の際に危険な海域へ船員が動員されることに、強い反発を示す。かりに船を徴用する体制が出来ても、船員が乗ってくれなければ何にもならない。」ということを指摘されています。幾らシーレーンに力を入れても、いざとなったら船が動かないということになればこれは何にもなりませんね。  そこで、ここで心配しているのは、だから船員に対する強制徴用ということが考えられているのではないだろうか。「徴兵制は憲法との関連で軽々に手を下せないとしても、船員徴用制度は、国民の目に触れないところで、徴兵制に先行し進められているのではないか。」という危惧の念を強く書いておられるのです。  これは有事立法との関連ですが、従事命令というのがありますが、それとの関連でそういうことをいま考えていらっしゃるのか、準備があるのか、一切そういうことは考えていないのか、大変これは心配しておられますが、いかがですか。
  105. 佐々淳行

    ○佐々政府委員 お答え申し上げます。  船員の徴用という制度は現在ございません。御指摘のように、自衛隊法百三条第二項で都道府県知事の仕事になっておりますが、総理大臣がその二項地域、すなわち戦闘地域以外の地域であるというふうに布告をした地域において医療関係、輸送関係、土木建築関係の三業種に限りまして業務従事命令というのが出せるような制度がございます。  しかしながら、これは徴用制度とは本質的に性格を異にするものでございまして、これに対する罰則であるとか、従わなかった場合の何とかというのはございません。  物と人とに分けて考えてみますと、物につきましては災害救助法等がございまして、適正な補償を行うという条件で、かなり公共の福祉といいますか、国家の安全のためにこれを収用して使うということは十分あり得ると思いますが、人については生命の安全にかかわる問題でございますので慎重に臨むということで、現時点、有事法制の研究対象の中に船員を徴用するというような考え方での研究は行われておりません。  御承知のように、有事法制の進捗状況は、現在与えられております法制でもっていざというときに自衛隊が十分活動できるかどうか、法的な不備な点はないかどうかという研究を進めている段階で、まだ立法の段階でもございませんし、さらに国全体の、国民生活維持のための措置はどうするのか、これはまさに総合安全保障政策の課題でございまして、防衛庁だけではとても処理できる問題ではない、政府全体でお考えいただく問題であろうかと考えております。
  106. 前川旦

    ○前川委員 はっきりした御答弁、よくわかりました。  さて、防衛局長が予算委員会でいろいろ答弁をされておりますが、外国船の護衛もできる、こういう答弁がありました。これも国民的な常識ですけれども、よく考えてみて六億トンも輸入している船舶を守り切ることはあり得ないと思います。たとえば航路帯を設けて、その間コンボイ方式でなくて、もちろんコンボイ方式なんかとても護衛艦の数が足りませんし、そうじゃなくて船団を組まないで独航さすにしても、それはもしやられたら救助することはできませんからね。これだって大きな問題があるし、とても国民の必需品を輸入することは考えていらっしゃらないのじゃないかというふうに受けとめられるのです。  というのは、結局は東京湾からグアム、グアムというとアメリカの大きな基地がありますね。それから今度は大阪から南西航路ですか、フィリピンの北まで、あそこにはスビック軍港という物資の集積地がありますね。ですから、常識的に考えられるのは、日本国民生活に必要な物資の輸送ではなくて、グアムから日本へ送る軍需物資、局長は弾薬等の護衛ができると答弁されていますけれども、できるじゃなくて、それが主ではないか。  スビック軍港から日本に対する軍需物資の輸送、その船はとても日本の船は使えませんから、アメリカが強制力をもって徴用したアメリカの船舶を護衛する。つまり、軍需物資の護衛なんです。だからこそ千海里以遠の護衛はどうするんですか、米軍に依存します、米軍はそれを引き受けてくれます、それだったらわかるんです。一千海里というとグアムに届きませんし、フィリピンに届きません。途中までです。そこまで行ったら、後はグアム島なりフィリピンなりのエアカバーがあって向こうで守ってくれるんだ。ですから、日本の食糧品その他の生活物資じゃなくて、軍需物資の輸送とそれを守るのがシーレーンなんだというふうに受けとめるのですよ、常識的に考えたら。  それはいかがなんですか。符合しているんですよ。弾薬輸送できるとか船舶輸送できるとか、千海里以遠はアメリカに守ってもらうとか、そこはみんな符合しているんです。いかがですか。
  107. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 ごもっともな御議論でございまして、私どももこのシーレーン防衛の重要性を訴えるに当たってまず第一に申し上げたいことは、アメリカの海軍の戦略構想の中の大きな柱の一つとしていわゆるシーレーン防衛、海上輸送路の確保ということが主要任務の一つにございます。一方、これも一般論として申し上げますれば、ソ連海軍の任務の一番大きなものの一つの中に、いわゆる西側陣営というか自由主義国間のシーレーンの破壊ということがあるわけでございます。  わが国の防衛を考えるに当たって、これはもう御指摘のとおり、あらゆる物資を海外に依存しているというふうな国では海上交通の安全確保というのは非常に大事であるという意味から、シーレーンの防衛は大事だということを申し上げているわけですが、その際、いわゆる継戦能力の維持、そういったこともあわせて申し上げているわけでございまして、いま先生指摘のような問題も含めて、私どもは重要なシーレーン防衛の対象であるというふうに考えております。  ただ、それだけが目的であっていわゆる商船を守ることは一つのフィクションではないかということであれば、全くそうではないので、それも大きな目的の一つであるということを御理解いただきたいと思います。
  108. 前川旦

    ○前川委員 いま局長は、防衛する対象のウエートは継戦能力を維持するためというふうにウエートをかけられて、いやそれだけじゃなくて生活物資の商船もありますという物の言い方をされましたから、私が最初に質問したことと大分平仄が合うというか何というか、合ってきたように思います。  さて、それはそれとして、農林省を呼んでいますが、見えていますか。——いま言ったように、もしこの周辺で米ソが争うようなことになれば、仮に中立化していても船舶はとまるのですから、社会党の立場としても有事の問題は真剣に受けとめておかなければいけないと思うのです。特に私は飢えを知っている世代ですから、農林省にお答え願いたいのですが、有事、これは皆さん食糧安保で有事の中にはいろいろ大きなストライキだとか災害だとか入っていると思いますが、ここでは戦争状態ということに限ります。有事の場合に備蓄が余りにも少ないではないか。特に米の備蓄なんかいまランニングストックさえ危ないと言われていますね。古米も処理が終わりますね。あとわずかのランニングストックしかないということは非常に不安であります。  それから、時間がありませんから全部一緒にお尋ねしますが、これは食用の穀物だけではなくて、いま日本の畜産は一〇〇%外国の飼料に頼っていますね。これがとまったら豚も鶏も全部だめですね。そうなりますね。ですから、食用の穀物の備蓄は少なすぎる、これからどうするのか、飼料の備蓄はどうするのか、まずその二つを先に伺っておきます。
  109. 武田昭

    ○武田説明員 米の備蓄の問題でございますけれども、相当の数量を持っていたわけでございますが、三年連続不作ということがございまして、現在著しく低い水準になっております。  ただ、米の備蓄の問題につきましては、コストの問題でありますとか、それから実際問題として現在の消費者の新米嗜好の問題、いろいろな問題もございまして、農政審議会からもいままでのやり方について見直しの御指摘もございまして、現在、来年からのお米の需給均衡化対策をどうするかという検討の一環として、備蓄の問題につきましても、重要な問題でございますので鋭意検討中でございます。
  110. 阿部敏明

    ○阿部説明員 お答えいたします。  飼料穀物の備蓄対策につきましては、飼料穀物の国際的な需給動向等を勘案いたしまして、短期的な輸入途絶に対するために年間需要量のおおむね一カ月分を目標としまして国の財政負担によりまして備蓄を推進いたしております。またそのほかに、民間におきましても通常在庫を一カ月分を割らないように指導を行っているところでございます。  五十七年度末現在、社団法人の配合飼料供給安定機構が、国の助成によりましてトウモロコシ、コウリャン五十六万トン、また政府が直接でございますが、飼料用の大麦につきましては八万七千トンをそれぞれ備蓄いたしております。今後、五十八年度におきましては、トウモロコシ、コウリャンにつきましてさらに三万トンを積み増しいたしまして、また飼料用の大麦につきましても七万五千トンの積み増しを行う、こういうことにいたしております。  今後におきます備蓄の積み増しにつきましては、当面配合飼料メーカーなど民間のサイロの建設動向だとかあるいは国際的な飼料穀物の価格動向、国内の飼料需給あるいは国の財政事情等を勘案しながら着実な積み増しに努めてまいりたいというふうに考えております。  なお、飼料穀物の備蓄につきましては、輸入障害等の不測の事態に対処する上で有効なものでございますが、一たん取り崩しますとそれ限りであるというようなことだとか、あるいは膨大な費用を伴うということなどの限界もございますので、その主眼は短期的途絶という事態の対応に置いております。したがいまして、より長期的な不測の事態に備えましては飼料の自給力の向上に努めることが基本でございますし、これと同時に、主要輸出国との情報交換等を緊密に行いまして飼料穀物の安定取引関係を確立するということのほかに、開発途上国に対する農業協力等を通じましてまた積極的な確保に努めたいというふうに考えております。
  111. 前川旦

    ○前川委員 どうか簡潔にお答えいただきたいと思いますが、肥料や農薬等の備蓄はどうなっていますか。
  112. 松居努

    ○松居説明員 肥料の製品在庫でございますが、通常は工場段階における製品在庫が二月ないし三月分ということになっております。これは御存じのように、わが国の肥料の輸出というのは非常に減ってきておりますが、依然として世界的に見ますと大きな輸出国でございまして、肥料の輸出に際しましては通産省と協議いたしまして、短期的な不測の事態に対応するために常に主要な肥料について二、三カ月分の在庫を持つという前提のもとに輸出承認をしているということでございます。  なお、それ以外に、流通段階にどの程度の在庫があるかということについては正確に把握できませんが、五十五年に小売商等を対象にした調査によりますと、通常三カ月分ぐらいのものを持っているということでございます。
  113. 前川旦

    ○前川委員 いま聞いてみるとみんな一月とか二月とかということなんで、どんなに皆さんシーレーンなんて力んでみても、いざとなったら国民が飢えざるを得ないという非常に寒い状態です。  それから最後に、農林省、農業用の石油の確保についてどう考えていますか、簡潔にお願いします。
  114. 石堀俊夫

    石堀説明員 食糧は申し上げるまでもなく国民生活の最も重要な物資でございます。このために、有事などにおきましてわが国へ石油が大幅に供給不足になるような場合に、石油需給適正化法によりまして農林漁業者に対する石油の供給は優先的に確保されることになっております。農林水産省といたしましては、食糧確保の重要性にかんがみまして、こういう石油需給適正化法の趣旨に即しまして、関係省庁の協力も得て石油の確保を図ってまいりたいと考えております。
  115. 前川旦

    ○前川委員 農林省の皆さん、ありがとうございました。いろいろ考えているようでございますけれども、余りにも寒い状態です。  私は農林省に一つくぎを刺しておきますが、農林省の食糧安保の発想法の中には、米は日本で自給できるということが前提になっているのです。これが大きな間違いなんです。  第一、油が確保できなかったらどうやってたんぼをやりますか。いまたんぼのできる馬や牛がいますか。それから、馬や牛の使える人がもういませんよ。ですから、油が確保できなければ、要するに農業用トラクターや耕運機やバインダーやコンバインがなかったらもう水田農業はやれません。やれる人がいないのですよ。牛や馬だって子供のときから——僕はやったことないけれども、しきりに笑っているけれども先生やったことがあるのですか。石うす引かして教えなければいけないのです。いまごろからそんなことをやって間に合うはずがない。  それから、最優先とおっしゃるけれども、いざ有事になれば、自衛隊は平時の四倍から六倍油を使うでしょう。それは先に持っていかれますよ。各省庁で奪い合いになる。通産省は電力の油が先だと言い出す、運輸省は輸送のための油が先だと言い出す。一番おくれをとりそうな感じがしますから、私は農林省にしっかりお願いをしたいということを申し上げて、農林省に対して終わりにします。  時間が参りましたので、最後に大急ぎで谷川長官にお伺いしますが、長官はこの間、五月六日の午後、東京丸の内の日本工業倶楽部で開かれた防衛懇話会第十八回総会出席して約一時間講演されたという毎日新聞の記事が出ております。その中に「極東ソ連軍の目ざましい増強が続く中で、米国が平時でも太平洋から出ていかない、むしろプレゼンスを約束してくれたことは有り難い決定だ」と述べたとありますが、どういう御趣旨だったのですか。
  116. 谷川和穗

    谷川国務大臣 俗に肩がわり論というのがございます。その中で、シーレーンに関連をいたしまして、私が防衛庁長官に任命を受けましてから半年の間、主として東南アジアの政治的指導者の方々あるいは世論をつくられる立場にあるような方々とお話をいたしておりますと、アメリカ太平洋地域から出ていってその間を日本が埋めるというような発想がシーレーン防衛ではないかというような懸念が表明されましたので、そうではない、むしろアメリカが太平洋にプレゼンス、それも平和時におけるプレゼンスも強化しつつあるということが幾つかの事柄で今日明らかになっておるのでありまして、このこと自体は太平洋地域あるいは極東の安全に非常に大きく益するところである、こういうふうに申したわけでございます。  それについてもう一点申し上げますと、環境あるいは歴史、伝統の異なる太平洋地域の国々が一つのスタンディングな同盟軍をつくり上げるということはなかなかむずかしい。有事のとき以外、平時には、あり得ないとは言えないかもしれないけれどもむずかしい。したがって、現在の枠組みであるアメリカを中心にした米韓、米比あるいは米日といった形の安全保障体制が最も好ましい、そういう意味からいってもアメリカのプレゼンスがここにあるということはきわめて好ましいことだ、こういう話をいたしたわけでございます。
  117. 前川旦

    ○前川委員 時間が切迫してきましたから簡潔に申し上げます。  これは毎日新聞のことしの二月十八日の記事ですが、「レーマン米海軍長官ら米海軍三高官は十七日、下院軍事委公聴会で証言し、」とあって、その中で従来のスイング戦略を放棄したとはっきり証言をしているのです。いわゆるスイング戦略はもうないんだ。かつて、中東有事の際は第七艦隊は向こうへスイングするんだ、その空白を埋めるためにうんと軍備を増強しなければいけないんだということが非常に声高に叫ばれましたが、スイング戦略というのはもうないんだということがアメリカから送られてくる新聞の記事に幾つもあるのです。  これは長官どうですか。スイング戦略というのはもうなくなったと考えていいですか。
  118. 新井弘一

    ○新井政府委員 厳密な意味ではもともとスイング戦略というのはなかったと私は理解しております。ただ、例の中東等におきましてああいう危機が発生したということから、第七艦隊の一部がインド洋により強力に展開されたということからスイング戦略と名づけられた。  その前に、いま先生御引用になったレーマンの発言をより明確に彼が述べている発言を昨年の十二月二日にやっております。スイング戦略というのは、一定の地域で緊張状態が起きたときに、本来は他の地域に従来向けられている戦力をスイングさせる、移動させるということでございますが、その際、それに関連してレーマンが言っているのは、もし移動させたときに、そこにパワーバキューム、力の真空ができないという保障があるならばスイング戦略は可能である。ところが、御承知のとおりソ連の海軍が世界的に展開してきているということで、もしアメリカが一定の地域から他の地域に移動するということになるとその後を埋められる危険性があるということからスイング戦略はとれないのだ、したがって、アメリカは全世界的に平均的に海軍力のプレゼンス、展開を確保しなければならないという認識であると考えております。
  119. 前川旦

    ○前川委員 実はもっと長官と対話したいと思ってたくさん資料を持ってきたのですけれども、時間が参りましたので残念ですが、いまのは去年の十二月二日でしょう。日本経済新聞の記事をここに持ってきておりますが、「理性のある人間なら、スイングできると主張するものはだれもいないだろう。」という強い表現があります。しかし、いざ中東有事の際は第七艦隊は向こうへ行ってしまうんだとか、ここに非常な論理の欺瞞があった。第三艦隊という太平洋艦隊がもう一つあるということを押さえておいて、もし空白になったら来るだろうということを隠しておいて、ただ第七艦隊が向こうに行くから空白になるだろうということでずいぶん防衛費増強のてこに使ったなという感じがいたしますが、スイング戦略というのはもうないんだとはっきり——初めからなかったのだとおっしゃったのですから、これはもうないんだというふうに確認をしておきまして、残念ですけれども終わりにいたします。
  120. 小渕恵三

    小渕委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十四分休憩      ────◇─────     午後二時九分開議
  121. 小渕恵三

    小渕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まず、自衛隊機の墜落事故について御報告が防衛庁長官からございましたので、そのことに関連しまして一言二言質問を申し上げます。  四月の十九日、小牧航空自衛隊輸送航空団第一輸送航空隊の六機編隊のC1型輸送機二機が山中に墜落して十四名全員が死亡し、しかも、一週間後、岩国海上自衛隊でPS1型機が岩国基地東側に墜落し、十一名死亡し三名負傷するという大惨事を引き起こしたことにつきましては、公明党を代表いたしまして、亡くなられた方々の御冥福を祈ると同時に、負傷された方々の一日も早い回復を祈ってやまないのであります。  そこで、先ほどから厳しい訓練練度を必要とするということを防衛庁長官は言われましたが、それは当然のこととしても、人命が失われたということは人命軽視である、そのように国民的な非難をされても私は仕方がない問題だろうと思います。  長官は、四月二十七日、陸海空幕僚長あてに、一つは、改めて航空機安全点検を行うこと、二つ目には、隊員安全意識の高揚を図ること、三番目には、教育訓練実施要領等事故防止観点から総点検し、安全対策を講ずるよう指令をされました。もちろん調査委員会を設置して原因究明をされることは当然だと思いますが、亡くなった人にすべての責任を押しつけるようなことがあってはならないと私は思います。  むしろ一番責任を感じなければならないのはここにおられます谷川防衛庁長官だと思いますが、あなたはその点についてはどうお考えでしょうか。
  123. 谷川和穗

    谷川国務大臣 午前中の冒頭に報告をさせていただきましたと同時に、改めて当委員会におきましても私から申し上げさせていただきましたがごとく、ただいまも御指摘ございましたが、引き続きましてきわめて短時日の間に、しかも大型の航空機事故が発生をいたしまして、二十五名に及ぶ若い優秀な隊員を失いましたし、また国民からお預かりをいたしておりまする航空機三機を失うという事故を招来をいたしまして、しかもそのことによりまして国民の多くの方々に不安感を与えたということ、まことに遺憾の限りでございまして、申しわけなく思っておる次第でございます。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  なお、ただいま御指摘もございましたが、事故原因につきましては目下鋭意調査中でございますが、あくまでもわれわれはこの事故調査は再発防止というものに資したい、こういう考えから行っておるところでもございます。  なお、引き続いて起こりました事故でございます。これまた御指摘のように四月二十七日に長官指示というものを与えたわけでございますが、この基本になりました考え方は、これも午前中当委員会でも御報告させていただきましたが、私といたしましては、ここで総点検の時間を持って、そして機材の点検のみならず、訓練のあり方、あるいはこれまた先ほど御指摘のございました安全教育のあり方、こういったものに対しても点検をいたすということで与えた指示でございます。指示に従いまして、それぞれ部隊で目下その検討をいたして、それぞれの訓練に資しておるはずでございます。  以上でございます。
  124. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はそのことを聞いているのではないのです。要するに政治責任というのは結果責任である、だから防衛庁における低空飛行訓練というものは必要であるというそのことはわかるにしても、しかし、その結果人命が失われるまでこういう状態を続けておったということに対する政治責任は、長官、あなたにある、私はそう言わざるを得ない。  それをあなたは自分の政治責任を明確にしないで、そしてこの問題について総点検をしたからどうの、あるいは安全のチェックを指示したからどうという問題ではないだろう。二十五名という有能な飛行士が亡くなったということを考えたときに、あなたはもう少し真剣にその問題についてあなたの政治責任というものについて深刻に反省をしなくちゃならない。そういうのを一言も反省していないじゃないですか。どういうことですか。
  125. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど来申し上げさせていただいておりますように、多くの人命を失いまして、しかも国民の方々に多大の不安を与えたこと、まことにもって遺憾でございます。そして、私といたしましては、長官指示の基本にございますように、現在鋭意調査委員会による調査の結果を待っておるわけでございまして、そういう観点からいたしまして、ただいまこの委員会において私が御報告並びに発言させていただいておりますような気持ちをもちまして現時点を迎えておる、こういうことでございます。その点につきましてはひとつよろしく御了解、御了承いただきたい、こう考えておる次第でございます。
  126. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 調査委員会において調査をするということでありますけれども、死人に口なしといいますか、すべて責任を亡くなった方に押しつけるというようなことがあってはならぬ、だから私は、長官を含めて関係者のこの問題に対する責任は明確にすべきである、そのように申し上げます。  いつごろまでに調査結果がまとまるのか、また結果が出たら、責任を含めてどういう取り扱いを決めるのか、あるいはまた、これは当然公表される問題だと思いますけれども、その点は明確にしておいてもらいたいと思います。
  127. 谷川和穗

    谷川国務大臣 最初にきわめて事務的な手続のようなことから申し上げさせていただきたいと存じます。  航空機事故にかかわらずでございますが、事故につきましては内規がございまして、長官の訓令によりまして、事故発生以来四カ月以内には原因調査を完了するということを一つのめどにいたしております。  しかしながら、今回の事故に関しまして申しますると、今回の事故は比較的近くの地点で起こっておる事故でもございますので、できるだけ早く原因調査を完了いたしたいということで、実はC1事故におきましても、菅島というところでございますが、その機体あるいはその他島にございますものをできるだけ早く引き揚げる、そして持って帰ってそれを調査するということを指示をいたしましたし、それから岩国基地におきましては、これは基地内でございましたので直ちに出動ができたものですから、そういうことから、今回の二つの事故につきましては、四カ月とございますが、できるだけ早く調査の結果を得たい、こう考えておる次第でございます。  もちろん航空機事故でございますので、それにはそれなりのしかるべき手続、調査その他ございまして、急いでやりましても、ある特定の時間というのはどうしても必要だということにはなろうかと思います。  それから、調査の結果を得ました後につきましては、これも午前中答弁をさせていただきましたがごとく、国民の多くの方々に対しまして、知り得ました原因について、事故調査の結果につきまして公表できる限りにおいて公表をさせていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  128. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 墜落事故の問題はそれだけにいたします。  次は、政府の従来からの統一見解によりますと、「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。」これは従来からの統一見解であります。だから日本の場合は憲法の制約上、個別的自衛権しか認めていないということは、これは再三の政府の答弁にも明らかになっております。  そこで、日本有事における公海上での日米共同対処行動が、あくまで個別的自衛権の範囲内でやるということであるならば許されると、さきの国会で政府は明言をいたしております。しかし、それは特にわが国の安全のために必要な限度内であるかどうかという事実についての判断がもととなると言っておりますけれども日本有事における公海上の日米共同対処行動にもおのずと制約があると見てよいかどうか、その点についてはどうでしょうか。
  129. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国に対して武力攻撃が行われた際、すなわち日米安保条約の第五条が発令されてアメリカ自衛隊は共同対処行動をとるわけですが、その際といえども自衛隊の行動というものはわが国に認められた個別的自衛権の範囲内に限られるということでございます。
  130. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから個別的自衛権の範囲内であるということは、これは当然制約がある、こういうことになるわけであります。  そこで、個別的自衛権と集団的自衛権とは紙一重の違いであります。わが国の安全のために必要な限度内であるかどうかという事実の判断がもととなるといっても、判断する人によって見方が違ってきますし、個別的自衛権と集団的自衛権の明快な違いの定義、また必要限度内であるかどうかの判断の基準、そしてまた判断する立場の人の地位、これはどういうふうにお考えでしょうか。
  131. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず国家が、国際法上といいますか、一般的に個別的自衛権、集団的自衛権の双方を持っておるということは、これはもう再三お答えをしているわけでございます。わが国わが国に対して武力攻撃があった際に必要最小限度の反撃が認められるという意味で個別的自衛権が認められるということでございまして、わが国に対する武力攻撃がないにもかかわらず、わが国と密接な関係のある国に対する攻撃をもってわが国に対する攻撃とみなして、それに対して自衛権を発動するようなことであれば、それは集団的自衛権の行使になるということでございまして、いま先生紙一重とおっしゃいましたが、私どもとしてはその間に厳然とした差異があるのではないかというふうに思っております。  それから第二点は、これは事態の判断というものはそれぞれの事態に応じて判断されるべきことでありましょうが、これは防衛庁立場からお答えするのが適当かどうか必ずしも私わかりませんが、一般的にといいますか、一義的には政府が判断すべきであろうというふうに思っております。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 必要限度内というのは具体的においてどういうことを意味しておるのでしょうか。
  133. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛権の範囲として必要最小限度の範囲内ということが従来御議論になりますが、これはそのときの脅威の態様といいますか侵略の態様、そういうものによっていろいろと変わり得るものでございまして、必ずしも具体的にここで明確に規定することはむずかしいのではないか、個々の事態に応じて判断すべきであろうというふうに思います。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは具体的な問題についてちょっとお伺いいたします。  たとえば日本有事の場合に、わが国の平和と安全に必要ということであるならば、エネルギーの確保は欠くべからざる問題の一つである。となると、石油を確保するために中東産油国から安全輸送を期していくことは個別的自衛権の範疇に入るのでしょうか。
  135. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 おっしゃるように、資源のほとんどすべてを海外に依存するというわが国の立地条件、環境というものを考えました場合に、そうした海外からのエネルギーのわが国への輸送ということはきわめて重要でございますし、またわが国国民生活の維持、そういった面からもバイタルな問題であろうかと思います。  しかし一方、翻って自衛権を行使することを考えた場合に、それではエネルギーというものがわが国にとって不可欠であるという理由だけでもって、たとえばペルシャ湾岸まで海上自衛隊が進出してある種の作戦を行うということはいかがか。やはり自衛権の範囲という行動の範囲というのは、もちろんわが国の領土、領海、領空に限られることなく、必要な範囲で公海、公空に及ぶということはございますが、やはりそこにはおのずから自衛権の範囲という限界があろうかというふうに認識しております。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 要するにこれは自衛権の範囲という限界があるから、いわゆる日本有事の場合にあっても、中東から安全にエネルギーを輸送するということについて、そこまで自衛権の行使の範囲は決めていない、これはやはり憲法上の制約によるものである、言うならば中東石油確保ということについての自衛権の行使は必要最小限度の範疇から逸脱するからできないのだ、こういうことなのでしょうか。
  137. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 エネルギー確保の重要性ということと、それを守るために、維持するために自衛隊が行動し得る限界というものとはおのずから別個であろうというふうに思います。そこでわれわれとしては、一方そうしたエネルギーの確保ということが重要であるということからわが国海上防衛力の整備を行っている、しかもこれはわが国周辺数百マイルあるいは千マイルということをめどにして防衛力の整備を行うということを考えますと、そういった能力の面からもそうしたペルシャ湾の方まで出かけていくような能力は望み得ない。一方自衛権の範囲、すなわち憲法上の制約からいっても、世界の至るところにおいての行動ができるようなものはやはり問題があるのではないかというふうに考えております。  そういう意味で申し上げているので、エネルギーの確保そのものが、あるいは海上交通の安全を確保することが自衛権の範囲を逸脱するというふうには認識しておりません。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 エネルギーの確保ということ、これはもう絶対必要欠くべからざる問題だけに、具体的な問題を実は聞いているわけであります。ですから、あなたのおっしゃるように、いまの段階においては能力は要するにないのだ、能力がないから、だから言うならば南西、南東一千海里、周辺数百海里ということのシーレーン防衛を決めているのだということでありますけれども、それじゃ防衛計画が達成されたらさらに、言うならばエネルギーの維持のためにもう少し拡大をされていくのかどうか。あるいは中東のエネルギーを維持するためにはそういう問題でさらに大きく拡大をされていくのかどうか。いまあなたは憲法上の問題もやはりあるとおっしゃっておられるということは、少なくとも一千海里、それから周辺数百海里、これは憲法上の制約の上からいっても適当な場所である、そういうふうにお考えになっていましょうか。
  139. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 まず最後の御質問でございますが、現在防衛力整備のめどといたしていますところの数百マイルなり千マイルというものが憲法上の制約であるというふうにストレートには考えておりません。あくまでも現在の「防衛計画の大綱」で考えている防衛力整備というのはそういったものを一つの整備目標として考えている。すなわち、わが国周辺海域における防衛能力を持つことは自衛権の範囲内であろう。しかし、それが千マイルを少しでも超えたらいけないのかということでは必ずしもないと思います。  ただ、やはり無制限に拡大していいものとも思っておりません。自衛権の行使の範囲というものは、そのときの事態によってある程度考えられるべきでしょうけれども、おのずから何か限界がある。ただ、それを数量的に、では二千マイルかとか千マイルぎりぎりかということをお答えするのはなかなか困難であろうというふうに思います。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 二月五日に、うちの書記長の質問に対しまして角田法制局長官が公海上においての米軍との共同対処行動に触れ、「米艦船が、たとえばわが近海において敵国と申しますか、」「わが国から見れば、同時に、わが国に対する攻撃国つまり敵国の攻撃が行われているわけでありますから、それをわが国が米軍と一緒になって対処するということは、これは共同対処行動の一環として当然許されるであろう」と答弁されておりますが、これはいままでの政府の答弁の中に、もちろん個別的自衛権というものに対しては領土、領海、領空、そしてまた公海、公空も含むんだ、これはもう政府が言われているとおりでありますけれども、それよりもさらに限定された近海という言葉が使われたということについては、「近海において」というのは具体的にはどの範囲を指しているのでしょうか。
  141. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これはわが国に対して武力攻撃があった際の、いわゆる有事において米艦を守ることができるかどうかということを、種々の前提を置きながらわが国近海においてわが国来援に駆けつける米艦を守ることは個別的自衛権の範囲内であるというふうな趣旨の御答弁をしているわけでございますが、これは米艦を守ることができることの一つの例としてきわめて典型的な例を申し上げたわけでございまして、その近海がそれでは何百マイルか何十マイルかということをまた申し上げるのはなかなか困難であろう。いずれにしても、アメリカのカリフォルニアの沖まで行ってそういうことをやるものではない、そういうことでございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それじゃ具体的な例で問題を提起いたしますけれども、「防衛計画の大綱」の水準の達成を目指して先ほど話がありました南西、南東航路帯千海里、周辺海域数百海里としていわゆる装備の近代化をうたったシーレーン防衛というのは、これはもう当然わが国の近海の範囲内に入る、こういうことですね。
  143. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国周辺数百マイル、航路帯を設ける場合は千マイル、これを防衛力整備の目標としていることも再三御答弁しておりますが、このことがいま先生指摘の近海と同義語かということになれば、必ずしもそうではないんじゃないか。少なくとも、近海と言うときの概念ははっきりはしておりませんが、そうしたいま私どもが防衛力整備を考えている範囲の中であるというふうな認識のもとの御答弁であったように私は理解しております。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 おかしいじゃないですかね。要するに、いま日本の国としては個別的自衛権のもとに「防衛計画の大綱」を決めておる、それも具体的な問題としてシーレーン千海里並びに周辺数百海里、こういう形で決めているわけでしょう。それじゃ、これは個別的自衛権であるというならば、当然この範囲内において、私はそれはかっきりと筋を引くべきものではないにしても、当然共同対処行動ができる近海というのはこれが含まれなくてどこが具体的になるのでしょう。
  145. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先生の御質問を若干取り違えておったようでございますが、わが国の防衛力整備の目標がいま言ったようなことにあれば、当然その範囲内での共同対処がおのずから一つの限界ということでありまして、それより遠く出ていく能力というのはまだないわけでありまして、そのための防衛力を整備しつつあるわけでありますからそういうことになります。  ただ、私が先ほど申し上げたのは、近海という言葉がすなわち周辺数百海里云々と同じだという必ずしもかたい定義があるわけではないということを申し上げたかったわけであります。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、結局防衛力整備計画をやっているわけですから、当然個別的自衛権で対処する範囲内ですね。個別的自衛権で対処できる範囲内は、公海、公空と言いながらも、角田法制局長官は近海だと言われたわけですから、これはもしアメリカ日本が有事であるという場合においては当然共同対処行動はできる、こういうことでしょう。
  147. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 話がちょっと混乱してまいりましたが、周辺数百マイル、航路帯千マイル云々というのはあくまでも防衛力整備の目標としての範囲というかめどでございまして、これがすなわち個別的自衛権の範囲内とイコールであるということを申し上げたつもりではないわけであります。ただ、実際問題として、そういうものを整備の目標としていることから考えてみると、それをはるかに超えるようなところでの行動は現実問題としてできないだろうということを申し上げたわけであります。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いや、シーレーン防衛というのは、言うならば南西、南東千海里並びに周辺数百海里と、必ずしもそれだけではない。それは谷川防衛庁長官も言われているわけですね。だからそれは一つの例であるということを私は申し上げたいわけです。  そこで、当面防衛計画達成ということで五六中業の装備の近代化も図っておられるわけでありますけれども政府としては、五六中業に果たして「防衛計画の大綱」は達成できるのかということになるとかなり疑問視されている点もありますけれども、果たして五六中業に達成できるか。  それはさておいて、自衛権行使の範囲というものは相手方の脅威のいかんによって変わり得るものであると判断されているのか、あるいは憲法の制約によって自衛権の行使は必要最小限とする以上簡単に変わるものではない、そのようにお考えになっておりますか、その点はどうなんでしょう。
  149. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 自衛権の範囲ということの範囲という意味が、いま先生どういうふうな御趣旨でおっしゃったのか、いわゆる地理的な範囲としてとらえておっしゃったのか、そうでなくいわゆる自衛権の一般的な抽象的な意味での範囲とおっしゃったのか、必ずしもつまびらかにいたしませんが、いずれにせよ自衛権の範囲がどういうものであるべきかという一つの基準として申し上げられることは、長距離戦略爆撃機であるとかICBMであるとかいうようなものは持てないだろう。あるいはシーレーン防衛に関連して言えば、海域を分担して、ある一定の海域をわが海上自衛隊が全責任を持ってわが国以外の第三国の船を含めて守るというふうなことであれば、これもまた個別的自衛権の範囲を逸脱するものであるというふうに、おのずから限界があろうかと思います。  ただ、具体的に兵力の規模であるとか、いろいろな行動の態様という個々の問題については、必ずしもここでもってある一つの定義をつけてこれまでということを具体的に申し上げるのはなかなかむずかしいのではないかということでございます。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、シーレーン防衛は憲法の制約なのか、それとも政策的判断によって防衛庁としては「防衛計画の大綱」の中の具体的な問題として取り上げられたのか、その点はどうなんでしょう。
  151. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 シーレーン防衛というものは、先ほど来御議論がありますようにわが国が資源のほとんどすべてを海外に依存するというふうな立場から考えて、わが国国民生活あるいはわが国がよって立つところの一番バイタルな問題であるという意味合いで、それを守るということ、個別的自衛権の範囲内で守るということは、これはまた憲法の範囲内であろう。  ただし、周辺数百マイル云々ということは、そうした憲法の枠内において、わが国の政策として、いま防衛力整備の目標としてそういうものを設定した、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、憲法上の制約であると同時に、言うならば政策としてもそういうふうなシーレーン防衛という一つの具体的な問題をとったんだ、こういうことであると、シーレーン防衛というものは、相手方の脅威というものが考えられますけれども、やはり憲法の制約に基づいてということもあり、政策上の問題として取り上げているということであるとするならば、そう簡単にシーレーン防衛というのは、「防衛計画の大綱」が達成されても、それよりも大幅に変わるということはない、そう考えてもいいでしょうか。
  153. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 いまの防衛力整備の目標というか、目標とする数百マイル、千マイルというものをどこまで憲法の枠内で延ばし得るか、こういう御質問だと思いますが、現在数百マイル、千マイルということを申し上げているものを少しでも延ばすと、それは憲法に違反するというふうには必ずしも考えておりません。ただ一方、だからといってどこまで無制限に、野方図に延ばしていいとも思っておりません。  いずれにしても、現在われわれは、大綱というものを防衛力整備のいわゆる基本的な考え方として、周辺数百マイルのシーレーン防衛が可能なような防衛力整備を目指しているということでございます。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回中曽根さんがASEANにおいでになりまして、日本は軍事大国にならないんだ、そのように明言をされました。それはシーレーン防衛がどこまでもわが国を守るためのものであるということが大前提であり、専守防衛であるということが向こうの理解を得たというふうに思っております。  だけれども、まことに不明確な点は、憲法の制約があり、そして政策上そういうふうな道をとったんだと言うけれども、実際にシーレーン一千海里並びに周辺数百海里のその部分がきちっと筋を引いてどうのということにならぬということはわかるわけでありますけれども、たとえばフィリピン等が一番心配している問題は、フィリピンの以北という、そこまで延びてくるのじゃないだろうかということが非常に心配であったわけでして、あなたのおっしゃるその考え方からいいますと、きちっとしたものではないけれども、場合によってはもう少し延びていくような感じを与えるということになりますと、中曽根さんが軍事大国にならないと言ったその言葉が、意外と国会の答弁においては違った方向に来ている。  だからフィリピンの方々も、ああ口では言ったけれども、実際には国会においての論議というものはそれよりもまだ延びてくるな、そうなると結局はフィリピンの以北まで来るのじゃないか、こういうふうにとられがちですよ。この点どう思われますか。
  155. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 おっしゃるとおりでございまして、シーレーンの範囲というものを考えた場合に、やはりわが国周辺の国々の関係というものを慎重に考慮しなければならないと思います。  ただ私が申し上げたのは、数百マイルなり千マイルというものが一種の言葉としてのひとり歩きをしておって、これも国会でも一、二議論があったわけですが、たとえ一マイルでも超せば云々、憲法に違反するというふうな議論があったものですから、そういうことを念頭に置いてお答えしたわけです。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本海ですが、距離的に見ますと、隣接国と日本とは全く目と鼻の先であります。三海峡封鎖といっても、相手国の日本海の行動を制限するための軍事行動にほかならないわけであります。となると、もちろん相手国の主権の及ぶところは除かれるにしても、政府の考えておられる有事におけるいわゆる近海の範疇に日本海は入る、こう見ていいですね。
  157. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 わが国に対して武力攻撃があった際にわが国自衛隊が行動する範囲として必要である、自衛権の範囲内で必要であるということを前提にして、日本海も当然含まれると思います。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本海は近海に入るから、だからあなたがおっしゃっているように、米空母の機動隊がわが国防衛に来援する場合に、日本周辺からソ連の沿海州の敵地を攻撃に向かう場合に自衛隊が米艦と共同対処行動を起こすこともあり得るということは、あなたがおっしゃったように日本海というのはそういうふうな立場にあるというふうに理解をしております。  次に、黄海と東シナ海、これはいわゆる近海の範疇に入りましょうか。もちろん中国と日本とは友好条約を結んでいる関係にもあります。過去の不祥事、不幸な出来事を清算した両国である以上、さらに友好関係は増進させる必要があるというふうに私は思っておりますけれども、地理的なとらえ方として、日本を基点とした場合においてはこの黄海と東シナ海というのは近海に入る、こういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  159. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これも一般的な議論として申し上げれば、黄海、東シナ海も必要なときには——必要なときというか、近海といいますか、そういう範囲に入ると思います。ただあくまでも、実際にそうした中で自衛力を行使するときは、関係国というものの存在ということを念頭に置きながら慎重に対処すべきであることは申すまでもございません。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、東シナ海に隣接した場所に沖縄がございますね。これは日本の領土です。沖縄の実はすぐ近所に台湾という島がある。その台湾海峡というのはやはりそういう部類に入りましょうか。日本としても非常に関心のある場所であり、言うならばそういう範疇に入るか。
  161. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 台湾海峡といいますと、これは一千マイルの外へ出るようなお話でございまして、軽々に口に出すべきことでもないし、いま私どもが防衛力整備を考える場合にそこまではまだ届くようなものではない、こういうことでございます。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 谷川防衛庁長官がシーレーン防衛の性格について二月四日にこういう御答弁をされておりました。「ある特定の海域あるいはある特定の場所だけを考えましてシーレーン防衛を考えておるのじゃございませんで、シーレーン防衛は、わが国有事の場合に、港湾あるいは周辺、あるいはその周辺の中には海峡も含まれますが、そういうものに対して現在保有するわが国の防衛能力でどの程度のことまでができ得るかということを考えながら、累積効果を考えつつ検討いたしております。」これをおっしゃいましたね。  となりますと、いま防衛力整備計画の中でシーレーン防衛、一千海里南東、南西、そして周辺海域ということで実は防衛計画がいろいろと進んできているわけでありますけれども、先ほど防衛局長が、日本海あるいは黄海、東シナ海の防衛ということまで考えなくちゃならない問題であるということになれば、当然シーレーン防衛構想が直ちに適用できるような状況になるのでしょうか、その点はどうなんですか。
  163. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど防衛局長は、シーレーンという言葉がひとり歩きいたしているようでございましてという答弁もさせていただきましたが、実は私どもは、わが国は四面海に囲まれている島国であって、国土の防衛と同じように海上交通路の安全確保というのはわが国の安全を確保する上に非常に重要な施策である、こう考えておるわけでございます。そして海上交通路の安全の確保にはさまざまな安全確保の方途があるわけでございます。それからその範囲でございますが、これにつきましては、たとえば周辺数百海里、それから航路帯を設けるとすれば南西あるいは南東それぞれ千海里程度というふうな例示の仕方をしておるわけでございます。  以上が実は私が答弁をいたしてまいりました海上交通路の安全確保の基本になる考え方でございます。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうでなくして、確かに具体的な問題としてシーレーン千海里並びに数百海里ということなんですが、あなたがおっしゃったのは、それだけを対象にしたものではないんだ、シーレーンというのはもっと広範囲にいろいろ積算をしながらまとめたものであるということであるとするならば、いまやっている防衛力の整備計画によってそういうふうなたとえば日本海の有事の問題とか、あるいは先ほどそういうことはないだろうとはおっしゃったけれども、黄海とか東シナ海等の問題についてもそれは全部振りかえができて、当然その防衛力整備計画の中ですべてができる体制になっているのか、あるいはそういうところまで考えるのはちょっと違いますよ、これはどこまでも千海里の問題だけであって、そういうところまでさらにやるとするならばこれは防衛力整備計画というものをもう少し手直しする必要があるのかどうか、その点はどうなんですかと聞いているのです。
  165. 谷川和穗

    谷川国務大臣 いまの御質問に触れる前に一つ申し述べさせておいていただきますが、あくまで海域分担というような防衛の施策はわれわれは考えておりません。それは集団自衛権に踏み込む可能性があり、あくまでわが国の憲法のもとで申しまするわが国が攻撃を受けましたときのわが国防衛のための自衛の許す最小限度、こういうことで考えております。  それから現在整備を続けておりまする海上交通路の安全確保の整備の計画は、先ほど申し上げましたようなところが現在われわれが努力をいたしておりまする整備の対象でございます。具体的には周辺数百海里、その中には幾つかの海峡防備、通峡阻止というふうな問題も含めまして、これは整備の対象になっております。それから、あえて航路帯というものを設けるとすれば、いまのところ考えられておりますのは二つの航路帯、それぞれ南西、南東の方へ下っている航路帯、こういうものを頭の中に考えながら整備をいたしておるというところでございます。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 では「防衛計画の大綱」を満たすということは、すべて日本の有事について十分にそれが振りかえられることができる、だから「防衛計画の大綱」というものについてはいま手直しをする必要は毛頭もないんだ、これの達成に向かって全力を挙げていけばいいんだ、こういうことでよろしゅうございましょうか。  それからもう一つは、いま近海という話が実はあったわけですね。近海という、そういう話があった場合に、空の場合はどうなんですか。近海に基づく空の場合は、近海と空との関係性というのはどうなんでしょう。
  167. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 先ほどの御質問に対して、たとえば周辺数百マイルという中には日本海もおのずから入る、それから航路帯を設ける場合には云々というようなことを申し上げましたが、これは全く仮定の話でございますが、もし航路帯というものを全く考慮することがないということになれば、その航路帯に振り向ける兵力というものは、もともと海上兵力といいますか海軍力というものは、航空機にせよ水上艦艇にせよ機動性というのか振り回しのきく兵力でございますから、それはそのときの脅威の態様によっていろいろな形で振り向けるべき性格のものであろうというふうに思います。  それから、大綱は、現在私ども五六中業によって達成するように努力はしておりますが、この五六中業によってもこの大綱の水準というものを完全に達成することはまだ不可能な状況にあります。航空機、あるいは海上自衛隊の対潜哨戒機、航空自衛隊の要撃機等においてもまだまだ不足しておる段階でございまして、いまこういう段階で直ちに大綱を見直さなければならないということよりはむしろ大綱の水準を一刻でも早く達成したいというのが私どもの願いでございます。  それから、もう一つの最後の質問でございますが、近海というふうなことでございますが、近海とはどういう……。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 近海というのは大体いまお話がありましたから、近海に基づいて空の部分はそれよりももっと大きく範囲が広がるものか、あるいは空もやはり近海に基づいて、近い空なんというとおかしいでしょうけれども、どういうふうな関係性になるのか、その点はどうでしょうか。
  169. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 これも、わが航空自衛隊の主任務というのはわが国の防空でございますが、あくまでも本土の防空ということを考えるに当たっても、わが国の領空に入ってくるまでは手が出ないということではなく、その周辺、公海の上空すなわち公空においても行動できる。その範囲というものはこれまた必ずしもどこまではいいということは申し上げませんが、少なくとも相手国なり第三国の領空に入るということは考えておりませんが、公空の範囲内でしかも現在われわれが持っております要撃機の行動範囲、あるいはレーダーサイトのレーダー覆域の範囲内で行動するということに相なろうかと思います。それが海上自衛隊の行動海域というものとどんぴしゃり一致するかどうかということは別でございますが、周辺の公海、公空の部分において行動するということになろうと思います。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまの御答弁なんですけれども、いわゆる相手方の領海、領空にはもう入らないのだ、こうなりますと、近い海と全く一致しちゃうんじゃないですか、大体において。その点どうなんですか。
  171. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 近海とか近海の上空という言葉は必ずしもあれなものですから、そういう意味合いでは周辺の海空域、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 苦しい御答弁だからそのくらいにしておきましょう。  実は「防衛計画の大綱」の水準を目指して五十八年度から五六中業を発足したわけでございます。かねてから六十二年までに「防衛計画の大綱」の水準まで到達するのは困難であるんじゃないかというふうな意向を防衛庁は明らかにしておったのですけれども、このところ防衛庁長官は急に、五十九年度の業務計画作成に当たって五六中業見積もりを六十二年までの期間内に達成するよう全力を挙げる方針を強調したということでございます。  そうしますと、実は大変に問題になってくるのは、もうすでに御存じのとおり五十八年度はGNPの〇・九七八%ですから、もう一%、これは防衛庁の概算要求の中においては少なくともオーバーする、そういうふうに考えてよろしゅうございましょうか。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕
  173. 谷川和穗

    谷川国務大臣 まず最初に、五十八年度予算におきまして、私どもが当初期待をいたしておりましたほど実は主として正面装備の問題につきましても、財政のこういう時代でございますので伸びは得られませんでした。しかしながら、その時点において五六中業をもうこれは達成不可能ということで投げ出したというようなことは、実は一度もいままでございません。常に、日本の国の経済が再活性化を果たして国の財政事情が許してくれば、われわれとしてはあと残された計画年限の中で何としてでも五六中業を達成をさせていただいて「防衛計画の大綱」の水準にできるだけ早く近づきたい、到達をいたしたい、こう念願をいたし続けてきておるわけでございます。  それから五十九年度概算要求に当たりましては、実はまだこの時点でどういう概算要求を財政当局にいたすかということは煮詰まり切っておりません。それからさらに、わが国の経済並びに財政のポジションと申しますか状態につきましても、実はまだいま五十八年の五月でございます。まだこれからしばらくの期間読み切れない問題点もございまして、いまこの時点で一%超える、あるいは超えないということにつきましては、ちょっと余りにも整わない条件が多過ぎるものでございますから、主として私の立場から申し上げさせていただきますと、五十九年の概算要求をどういう形でいたすか、いまこれから鋭意それを検討をいたしていく段階でございまして、今日ただいまこの時点で一%を超えるとも超えないとも言い切れないということは御了解をいただきたいと思っております。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはちょっと、あなた急に慎重になったのですが、三月二日にあなたはこういうことを言っていますね。経済の成長にもよるが、一%を超えないとは言い切れない感じを持っている、そして、五十九年度には一%を突破する可能性が強い、とあなたはおっしゃっているじゃないですか。  急にいまここへ来て、もうそんなことはまだまだ決めていませんなんておっしゃるけれども、もしあなたが一%を突破するようなそういう概算要求を出したら、あなたは責任をとりますか。
  175. 谷川和穗

    谷川国務大臣 私のただいま答弁をさせていただきましたのは、実はまだどういう形の概算要求をするかということを決めて財政当局に提示した時点でございません。これからその概算要求につきまして検討いたすわけでございまして、まずそのことが第一点。  それから第二点は、経済の動向でございます。それから五十七年度の状態のままでこれをそのまま伸ばしていけば、あるいは概算要求の要求の仕方いかんによりましては一%を超えるということが起こるかもしれないぐらい経済は落ち込んできておることは、これも認めざるを得ないということも事実でございます。  ただ、問題は、それならばどういうような状態になっていくかということにつきましては、先ほど申し上げましたように二つの要因がまだ確定いたしておりませんので、この時点では一%を超えるとか超えないという議論をいまここで申し上げるわけにはいかない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 あなたは要するにSAMXの導入に着手するということで、来年度の予算にその指針を明らかにしたということですね。こういう新しいプロジェクトを入れるということになりますれば、これはかなり金のかかることなんです。あなたがおっしゃるように、一%を超えないと言い続けてそれが確実になっていっていただくのは私は望ましいことであるし、そうあってほしいと実は思うのですけれども、早晩一%をどうしても超えなければならないようなそういう事態が来たときに、防衛庁としてはどういうふうにその一%の問題について取り扱いをするのでしょうか。  結局あなたが概算要求を組んで、そして政府の最終的な査定を待って、それは一%であるか一%でないかという問題よりも、むしろ防衛庁が組んだ概算要求が一%を超えるというようなそういう概算要求を提出せざるを得ないような場合においては、防衛庁としてはこの一%問題についてはどういうふうに取り扱いをされるのでしょうか。
  177. 谷川和穗

    谷川国務大臣 御存じのように、政府原案が決まりますときに、経済見通しというものが確立をいたすわけでございます。概算要求の段階におきましては、防衛庁としては防衛庁の独自の考え方によって要求を提出するわけでございますが、当然政府原案が決定いたすときには、国の他の施策あるいは国民理解あるいは経済のそのときの動向などによって防衛庁費というものは決まっていくものだと思っております。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  しかしながら、概算要求のときにどういうような基本的な考え方で概算要求をいたすかということは、これは実は毎年五月のころに業務計画の作成ということで長官指示をいたしませんと、内部の作業が進みません。それで最近に至りまして、新聞でも報道されましたが、長官業務指示をいたしたわけでございます。  なお、いまSAMXのことにお触れになっておられますけれども、実は五十七年度予算におきまして認められておりまする、これは全く新規の事業でございますが、これを五十九年度にどういうふうに発展せしめていくかということをこれから考えなければいけません。そういう意味で、長官指示の中では、現在進められている検討の成果を踏まえて所要の措置を講じよ、こういう形になってございまして、実は五十九年度の予算の概算の中で具体的な積み上げをして、どういうふうな概算要求にして財政当局に出していくかということは、このSAMXの問題につきましても実はこれから詰めていく、概算要求のところで防衛庁としての態度を決めていくというところでございます。まだこれから詰めていかなければならぬ問題でございます。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きのう厚木の基地を見せていただいたのですが、P3Cの対潜哨戒機の哨戒活動に必要で大切なのは、これはハードの部分よりもソフトウェアの部分、すなわち情報の部分であろうと私はきのう見させていただきながら感じました。情報の分析及び識別については、アメリカとしても実は機密の部類に入っております。いかなる潜水艦がいかなる形のものかの情報はすべてアメリカにゆだねられているというふうに前は御答弁があったのですが、その後、いま日本としては音紋の分析とかそういうものに対しての識別とか、そういうものはできるようになったのですか。
  179. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 潜水艦の識別というのは、主として音紋によるわけでございますが、この音紋解析の能力というのは、何といっても長年の蓄積が大事でございまして、そういう意味合いから、アメリカわが国に対して相当進んだ能力と実績を持っておることは間違いございませんが、わが自衛隊も最近においては、海洋調査を含めてそうした能力の向上に努めておりまして、海上自衛隊ではそういった解析というものができないということは決してございません。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる音紋の分析、識別、これは必ずしも全部が全部海上自衛隊でできるはずはないわけでありまして、やはりアメリカに頼る部分が実は非常に多いわけであります。その情報については当然わからない部分があるわけですから、アメリカと常に情報交換という形をとられている。また、とらなければ、P3Cの機能を十分に発揮することは実はできないわけですから、そういう意味からいいますと、やっているわけですね。だが、やはり極東有事の場合においても当然そういう状態は日常使われていると同じような形で進められる、こういうふうに判断をしてよいでしょうか。
  181. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 アメリカわが国は、安保体制によって有事の際には共同対処をするということがたてまえでございます。そういう意味合いから、平時、有事を問わず情報の交換というものは密接に行われるべきこと、これまた当然でございます。また現在においても必要な情報交換というものをやり、アメリカ側からいろいろな支援なり協力を得ていることも事実でございます。  ただ、具体的にどういう情報をやっているか、あるいは極東有事にはどうかということについての具体的な答弁は、これは各国とも内密にしていることでもございますので、具体的な御答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これで質問は終わりますけれども、情報の問題については、いま言いましたがP3Cの音紋の識別あるいは分析という問題は、これはやはり軍事的な専門をやっているものであるならば、およそそれは重要な情報交換一つになるわけですが、それまで深く言うことは差し控えたいということでありますから、そのことについては御質問をすることは差し控えさせていただきます。  時間が約束の時間でございますので、これをもって質問を終わらせていただきます。
  183. 有馬元治

    有馬委員長代理 以上で鈴切康雄君の質問は終わりました。  次に、吉田之久君。
  184. 吉田之久

    ○吉田委員 今度の鳥羽沖並びに岩国基地における一連の自衛隊機の墜落事故につきましては、大変遺憾千万であります。非常に残念であります。同時に、その犠牲になられた自衛隊員の方々に対しまして、また遺族の方々に対しまして深く弔意を表する次第でございます。  ただ、私は最近のこうした事故を顧みて端的に思いますことは、その昔八甲田山において旧陸軍が雪中行軍をいたしました。そうした本質的な次元における一種独特の訓練に対する風潮というものが、何かまだ今日もなお残っているのではないかというふうな気がしてならないわけであります。  CIの輸送機の問題につきまして私から質問申し上げ、PSIにつきましては部谷代議士から関連質問をいたしたいと思いますが、特に、どうしてあれほどの超低空で訓練をしなければならなかったのか。およそ訓練というものは実戦を想定して訓練するはずのものでありますが、実戦の場合にそれほど低空で輸送機が飛ばなければならないかどうか、この辺をどう判断なさっているのでございますか。
  185. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御案内のように、CIは航空自衛隊の戦時におきます空中輸送をやる航空機でございますので、当然のことながら、戦闘が行われております地域で空挺降下をさせたり、あるいは物資の輸送をするということで、できるだけ敵に発見をされないような形の飛行をするということになろうかと思います。したがいまして、当然のことながら、レーダー等に発見されにくい低空で移動をするという訓練はかねがね行っておるわけでございます。したがいまして、平時の訓練におきましても、航空法上許されております最低の安全高度百五十メートルというのがございますが、それ以上の線で、やれるときにはできる限り低高度の航法訓練をしておるということでございます。
  186. 吉田之久

    ○吉田委員 最低高度百五十メートル、そういう訓練の実績はきょうまでずっと続いておりますか。
  187. 西廣整輝

    西廣政府委員 C1が移動する際に、天候状況によりますけれども、有視界飛行でやります場合の高度というものは最低百五十メートル以上はなくてはいけないわけでありますが、と同時に、たとえば視程千五百メートルの中で、そういう条件で航行いたします際には、逆に今度は最高の高度というのがございまして、視程千五百メートルで航行する際の最高の高度は海上においては三百メートル以下ということになりますので、百五十メートル以上三百メートル以下の中で航行するというのが通常の形になるわけであります。
  188. 吉田之久

    ○吉田委員 それでは、有視界飛行にはそれぞれ与えられた条件というものがありますね。当日の条件は有視界飛行として適切なものだと判断したのかどうか、あるいは離陸後そういう異常な気象の変化が起こった場合、いままで何遍も訓練なさっていますね、そういうときにはどういう対処をいつもとってきておられますか。
  189. 西廣整輝

    西廣政府委員 当日のフライトプランは、離陸時におきましては特別有視界飛行ということで、特別有視界飛行と申しますのは、地上からの視程が千五百メートル以上あるという条件のもとで行われるということでございまして、以後、管制空域を出ますと有視界飛行に移るわけでございますが、有視界飛行の条件、視程が千五百メートル以上あること、雲の中に入らないこと、さらに地上または水面が引き続き視認できることという条件のもとで飛行をしておったということでありまして、仮にそういった条件が維持できないような状況に天候の変化があったということになりますと、当然のことでございますが、当日は計器飛行状態にあったわけでございますから、計器飛行に移らなくてはいけないということになります。
  190. 吉田之久

    ○吉田委員 その場合、先ほど前川さんの質問にもありましたけれども、御答弁の中で、本来こういう訓練にはコースは特別決まったものはない、こういうことでありました。ところが、あの事故発生のときに、生田目空幕長は、これはどうも本来のコースから外れているのではないかというふうな発言をなさったやに新聞は報じております。ということは、生田目さんの間違いですか。
  191. 西廣整輝

    西廣政府委員 ある地点からある地点に移動する際、当然のことながら予定されたコースというものがございます。当日一応予定しておりました経路は、小牧から多治見、岡崎、それから伊良湖岬、御前崎、沼津、横須賀を経由して入間に入るという一応の予定経路であります。  ただ、先ほど前川先生お答え申し上げましたのは、有視界飛行というものは、先ほど申したように一定の気象条件が確保されなければやってはいけないことになりますので、そういう条件を常に求めながら飛ぶということで、いま申し上げた経路をそのとおり飛ぶことは必ずしもできないということを申し上げただけであります。なお、通常の形でございますと、小牧というところから東の方に飛行する際にはできるだけ早く海上に出るということでございますから、伊良湖岬をかすめて太平洋上に出るのが一番通常のコースであろうと思います。
  192. 吉田之久

    ○吉田委員 ということは、空幕長がおっしゃったのは空幕長の勘違いでありますか。どちらなんですか。
  193. 西廣整輝

    西廣政府委員 もし与えられた飛行条件が満たされておれば、もう少し東寄りの伊良湖岬をかすめるような経路を飛ぶのが通常のコースであったろうと思います。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕 したがいまして、先行した気象偵察のために飛び立ちました四番機はそのコースを飛んでおりますが、残りの編隊編隊長機以下の五機は、どうも逐次少しずつ当初の予定したコースといいますか経路よりも西寄りにずれておるということで、天候の状況に合わせながら、それを避けながら飛んだのではなかろうかというのが、これは想像でございますので調査が終わるまでははっきりしたことは申せませんが、そういう状況に考えられます。
  194. 吉田之久

    ○吉田委員 調査結果を待たなければなりませんが、その辺が非常にデリケートなところだと思います。責任がどちらにあるのかというようなことも、いろいろ判断すべき一つのポイントだろうと思います。  同時に、訓練空域が雫石の事故以来だんだん狭められてきているのではないか、また大変遠くなりつつあるのではないか、最近訓練空域というものが十分確保されているかどうか、この機会に承っておきたいと思うのです。
  195. 西廣整輝

    西廣政府委員 訓練空域につきましては、空というのは広いようでございますけれども、何せ高速の航空機が飛びますものですから、民間の航空路、航空機の運航の安全を確保しながらかつ訓練空域を確保するというのはなかなかむずかしい問題がございます。  御案内のように、現在の訓練空域は大部分が、昭和四十六年の雫石の事故の後に航空交通安全緊急対策要綱というのができまして、それに基づいて設定されたものでございます。現在航空自衛隊が有しております訓練空域は、高高度の訓練空域が十三カ所ございまして、約十二万平方マイルあります。それから低高度の訓練空域が九カ所約一万平方ノーチカルマイル、さらに超音速飛行空域が一カ所ございまして約一万平方マイルということでございます。  いまだんだん減ってきておるのではないかというお話でございますが、雫石事故後設定をいたしましてからは、たとえば日中の航空路が開設されまして、それに伴いまして九州西方海域にございますP空域と申しますが、その一部について時間差分離で開放したとか、あるいは航空路の変更に伴いまして訓練空域の一部を削減するということはございますが、いずれにしましても微調整ということで、四十六年以後大幅に訓練空域が減ったという事実はございません。
  196. 吉田之久

    ○吉田委員 そうすると、今度の訓練は結果的に事故を起こしたことになったわけですが、それは訓練空域の範囲内で、絶えず訓練されている場所ですか。
  197. 西廣整輝

    西廣政府委員 低空を真っすぐ飛ぶということは特別の訓練空域で行わなければいけないという航法ではございません。訓練空域で行います訓練と申しますのは、いろいろの戦技を行うとかそういう危険を伴う航法で、そういったものを行うときには訓練空域で行わなければいけないのでありますが、たとえばある地点からある地点に真っすぐ飛ぶ際に、低空で飛ぶあるいは高空で飛ぶということについては、特別の訓練空域を必要としないということでございます。
  198. 吉田之久

    ○吉田委員 特別の空域を必要としないかもしれませんけれども、特に危険を伴うどころか今度は墜落して死んだわけですから大変危険を伴ったわけです。やはり低空の訓練の広げ方についてこの機会に根本的に危険な場所をなるべく避ける、その辺の慎重な配慮が必要ではないかと思うのですが、いかがですか。
  199. 西廣整輝

    西廣政府委員 特別の運動を伴いません航行でございますので、これは一般の民間機と同じように、航空法に定められました最低安全高度なりあるいは有視界飛行の条件なり、そういったものを守って飛べば本来は事故はないものであろうと思いますけれども、あってはならない事故が今回起きたわけでございますので、今後いろいろ研究させていただきますが、通常の訓練といたしましては、そういう移動そのものは通常の民間機と同じように一般の航空法の定める範囲内で安全運航していくことになろうかと思います。
  200. 吉田之久

    ○吉田委員 その辺が私は考え方が違っていると思うのですね。特殊飛行だけが特に配慮されなければならない訓練ではなくて、こういう百五十ないし三百程度で飛ばなければならないというのは大変な訓練なんですね。それは決して通常航法ではないと思うのです。その辺に何か考え方の盲点があるのではないですか。宙返りをしたり背面飛行をしたり急降下をしたりということ、それはもちろん特殊な訓練ではありますけれども、こういう輸送機が、しかも非常に気象現象の変わりやすいそんな時期を選んで、非常に低空でずっと持続的に飛ばなければならない、それを通常航法と同じくらいな考え方でおるからこんなとんでもない事故を起こしてしまった。私は、やはり何か発想を転換しなければいけないと思いますよ。その辺反省が要るのではないでしょうかね、長官
  201. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これはすべて事故調査委員会調査に待つべきことであろうかと思いますが、いずれにしましても、いま先生が御懸念いただきました問題点、これは事故調査委員会の、たとえば機体の整備の問題だとかあるいは訓練計画の立て方とかという問題とまた別途に、隊全体として訓練事故なく完成をさせていくという問題にもつながる大きな問題であろうかと思います。  そういう意味で、このたびの事故調査委員会調査は再発防止のために資したいということでやっておりますが、その調査の結果を見まして、私どもといたしましても十分、いま先生がここで特に御懸念いただきましたようなところも踏まえまして検討していかなければならぬ問題だ、こう考えておる次第でございます。
  202. 吉田之久

    ○吉田委員 こういう事故を再三起こしていくということはまず士気に大きく影響いたしますし、同時に国民もがっかりすると思うのですね。じゃ結局自衛隊なんてない方がいいのじゃないかという考え方に発展していきますと、容易ならぬ問題だと思うのですよ。  ですから、長官もおっしゃっておりますとおり、訓練といえども安全を守ることがまさに訓練の重要な要諦なんだとおっしゃることは大変正しいと思います。もっと真剣に安全を追求していくという姿勢をとらないと、今後またまたこういう事故が連続して起こりましたらもう大問題になると思います。  そういう点で、ただ特殊飛行だけが配慮しなければならない空域で特別いろいろと関心を払うべきであって、今度のような輸送機の低高度飛行なんかは日常茶飯事のことなんだ、コースから言ったって別に問題ないんだ、この程度の天候なら当然やるべきなんだということで突っ走られましたら、私は大変容易ならぬ事態が起こると思います。その辺まだまだ真剣な受けとめ方が足りないのじゃないかということをひそかに心配する次第でございます。  次に、これも先ほど前川さんへの御答弁でほとんど答えられたわけですけれども航空機の耐用年数は諸外国と比べてどうなのか、その辺のところを御説明いただきたい。
  203. 木下博生

    ○木下政府委員 航空機の耐用命数は航空機の種類によって千差万別でございまして、それぞれの機体によりまして耐用命数を決めております。  わが国で開発しましたPS1とかC1というような飛行機の場合には、わが国で疲労試験等をいたしまして、それに基づいて耐用時間数を決めておるわけでございまして、今回事故を起こしたものも当然その範囲内での飛行であったわけでございます。したがいまして、一概にどの飛行機だったら幾らということは申し上げられません。  ただ、わが国米国等から導入しております航空機につきましては、当然のことながら米国で採用しております耐用命数等を参考にしてわが方もその耐用命数を決めておるということでございます。
  204. 吉田之久

    ○吉田委員 時間がありませんのでまたの機会に詳しく御説明をいただきたいと思いますが、特に耐用年数の基準あるいは安全点検のいろいろな仕様、こういう点が日本独特であってはならない。諸外国とも十分比較対照しながら、かつ日本の場合すぐれて完璧でなければならない、こう思いますので、その点についても抜かりのないようにしていただきたいと思います。  次に、輸送機C1がいまおっしゃるとおり百五十ないし三百程度の低高度で飛行する訓練を常時かなり長時間続けていくとするならば、やはりルックダウンの装置が要るのではないかと思うのですが、これはないのですね。その辺についての御説明をいただきたい。
  205. 木下博生

    ○木下政府委員 先生指摘のルックダウンの装置といいますのは、ルックダウンの機能を備えたレーダーということではないかと私存じますが、ルックダウン機能を備えたレーダーといいますのは、航空機が飛んでおります場合に、自分の飛行機よりも低いところを飛んでおります動いている物をとらえるためにルックダウン機能をレーダーに与えたものでございまして、現実には要撃戦闘機等、敵機の侵入をとらえるためにそういうレーダーを備えているものでございます。  それで、普通のレーダーで地上あるいは海面を照らしますとクラッターというものでほとんど真っ白く戻ってまいりますので、下を飛んでいる飛行機について異同がわからない。したがって、むしろ移動しておりますものだけを出してあとのクラッターを全然消してしまうような形でのレーダーでございますので、そういうようなレーダーを据えつけていれば今回のような事故はなくなるということには必ずしもならないというふうに考えております。
  206. 吉田之久

    ○吉田委員 その点はわかりますが、それでは静止している地上物をどうして見るのか、肉眼で見るのか。こんな荒天候になれば全然見えないのでしょう。それで計器飛行しても計器に頼るだけでしょう。計器に全部ここに山があるとか出てくるわけじゃないですね。それではこんな訓練は非常に危険千万、目隠ししてぶつかりにいくようなものじゃありませんか。どうするのですか。
  207. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどからお答えしているところと関連いたすわけでございますけれども、こういう低空飛行をやる際には有視界飛行という条件の中でしかやれないということになります。したがいまして、有視界飛行の条件というのはいろいろございますが、今回の場合のように視程千五百メートル、それから雲の中に入らない、それから地上あるいは水面が連続して視認ができるという三つの条件が付せられておりまして、その際には、先ほど申したように最低が百五十メートル以上、最高が水面上でありますと三百メートル以下を飛ぶということになります。そのほか、管制空域に入りますと最高高度が二百メートル以下になりますので、二百メートルから百五十の間で飛ばなくてはいけないという条件のもとで、目で見ながら飛んでいくというのが有視界飛行の条件になるわけでございます。
  208. 吉田之久

    ○吉田委員 その有視界飛行の条件が全くなくなっている中でこの事故が起こっているのですよ。ですから、この事故に関してのいまの答弁は私は全く承服できません。このようなことであるならば、これからも幾らでもこのような事故は起こり得るはずなんです。起こるべくして起こったような事故だと言わざるを得ませんよ。ですから有視界飛行になっていないにもかかわらず飛んだ、というよりも飛ばせたということになるんじゃないですか。私はその点、これは調査結果を待たなければなりませんけれども、ただ操縦ミスだとか編隊長の判断ミスだとかということだけで片づけられないような気がしてならないのですが、その辺、この事故一つの区切りとして、ひとつ長官みずからも絶対この種の事故を起こさない、起こしてはならないという考え方から、もう一度抜本的に再検討をいただきたいと思います。  百五十、三百で飛んで飛行機が落っこちて自衛隊員が死ぬことを繰り返していくよりは、三百でも五百でもその辺を飛べばいいと私は思うのです。そして訓練できる可能なときに、条件のそろったときに思い切り下へおりるということをやっていいと思うのですよ。何かどこかその辺の発想が狂っているのじゃないかというような気がしてならないのです。  そこで次に、特に今国会では、衆議院におきましても参議院におきましても、日米共同対処の問題がいろいろ大きな問題になってきております。私は、有事の場合に、日本を守るべく出動しておるアメリカの艦船を自衛隊が可能な限り援護するということは当然だと思うのです。しかし、先ほどの夏目局長の御答弁なども聞いておりますと、やはりそういうときには、たとえばアメリカの航空母艦は核を搭載していると思うべきですね。絶対に核を搭載していないだろうなどというような、そんな有事はないと思うのです。そういう航空母艦を日本自衛隊が守りにいく。守っていいと思うのです、近海において。先ほどいろいろ問題がありましたその辺の海域、空域において日本は守るべきであります。  しかし、核を搭載していると思われる航空母艦がその近海から日本の領海を通過する場合に、あるいは日本の港へ入ってくる場合に、非核原則とのかかわりをどうするのですか。ここまでは守りましたけれども、ここから先は領海でございます、イエスもノーもおっしゃいませんけれども、核を積んでいるかもしれないから、われわれは非核原則のたてまえもこれあり、ここでおりますと思っておりるのか、あるいは核をおろしなさい、それから入りなさいと言うのか、あるいはここから向こうへ帰りなさいと言うのか。そんなことはできないと思うのですね。  私は、非核原則は非常に重要な政策だと思いますし、それは平和を維持するための一応の有効な政策だと思いますが、しかし本当に有事の際に、あるいは核戦争がまさに起ころうとするような寸前あるいは起こってしまった後では、非核原則というものはもはや意味を失うのではないか。そういうことを考えますと、非核原則を堅持しながら、同時に世界の核の廃絶をどう迫っていくかというところに積極的に踏み出さない限りこの問題は完結しない、このテーマは完結しない。  同時に申し上げたいのは、非核原則だけを堅持しておれば事足れりという考え方がもしも政府部内や国民の中にあったのでは、それは決して完璧ではない、こう考えるのです。時間がないのでまとめて申しましたけれども、そういう共同行動と非核原則とのかかわりについて、夏目局長はどう御判断なさいますか。
  209. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 核を装備することあり得べしという米艦艇の護衛の問題については、先ほど御答弁申し上げたとおり理論的な可能性として申し上げたわけでございまして、アメリカが保有しています各種の核の抑止力ということを考えた場合に、この核の存否について明確なことを言うことはあり得ないというふうに思います。そういう意味合いから、あくまでも、おれは核を持っているぞという船を積極的に守るということを申し上げたのではなくて、米艦艇の護衛をするに当たってそういうふうな艦艇も当然含まれるであろうということを理論的な意味で申し上げたということが第一点でございます。  それから、非核原則ということから核の持ち込みはわが国としては拒否するという立場をとっておりますので、アメリカとしてもそういうわが国の政策をまた十分認識しておることから、わが国の領海内あるいは寄港ということはあり得ないのではないかということで、私が申し上げている、公海上において核を持っていることあり得べしという米艦艇を守ることと非核原則というものは必ずしも矛盾するものではないということを申し上げます。
  210. 吉田之久

    ○吉田委員 矛盾するとは言っておりませんけれども、そういう有事の際に一々チェックできるはずはありませんので、その辺はないと信じながら、わが方のたてまえを堅持しながら、しかしいよいよ共同対処に入る場合にはともかく完璧に、われわれとしての個別的自衛権の範囲内でわれわれを守ろうとするアメリカの艦艇を守っていくということなんですね。そういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  211. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 結構でございます。
  212. 吉田之久

    ○吉田委員 それでは部谷君にかわります。
  213. 小渕恵三

  214. 部谷孝之

    部谷委員 きょう、本委員会の開会の劈頭、防衛庁長官から、去る四月十九日に三重県鳥羽市の山中においてC1輸送機二機が墜落し、両機の乗員十四名全員が死亡し、引き続いて四月二十六日山口県岩国基地においてPS1対潜哨戒機が墜落をし、乗員十一名が死亡し、三名が負傷した事件について御報告があったわけであります。  この際、私はまずこれらの事故によってとうとい生命を失われた自衛官の方々の御冥福をお祈りするとともに、ひとつ負傷された方々の一日も早い御全快を祈りたいと思うわけであります。  そこで、先ほどの吉田委員のC1輸送機に続きまして、私は岩国基地におけるPS1の事故につきまして若干の質問をしてまいりたい、このように思うわけであります。  事故原因につきましては、現在航空事故調査委員会において鋭意調査中である、こういうふうな御説明があったわけでありますが、きのう、つまり五月十一日からこのPS1の訓練が再開されておるわけであります。あるいはある程度事故原因の究明について見通しを得られて再開されたのではないかというふうにも思うわけでありますが、今日までの段階では、事故原因はどのように究明されたのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  215. 西廣整輝

    西廣政府委員 事故調査委員会調査につきましては、先ほど来お答えしておりますように、パイロットの操縦上の問題あるいは機材の問題、整備上の問題、さらには気象の問題あるいは訓練計画なり指揮管理上の問題ということで目下鋭意調査中ということで、まだ全く結論は得られておりません。  なお、十一日から訓練を再開したわけでございますが、これは同機種の飛行艇の機材点検について一応全部完了した、さらに乗員の安全教育について終わったということとあわせまして、余り長期間にわたりまして飛行停止をしておりますとパイロットの技能が急激に低下いたしまして、それがまた安全対策上もぐあいが悪いということで、基礎訓練から逐次訓練を再開したということでございます。ただ、先般の事故にかんがみまして、地上におきますローパスについては事故原因が完全に解明されるまでは停止をするということで訓練再開を許可した形になっております。
  216. 部谷孝之

    部谷委員 当日、事故発生時の気象状況、これはどういう状態でありましたか。
  217. 西廣整輝

    西廣政府委員 私の手元に届いております報告では、気象的には全く問題がなかったというような報告を受けております。
  218. 部谷孝之

    部谷委員 気象状況に全く異常がない、乱気流を発生せしめるような要因もない、そういう状態の中で起こった事故である、こういうことになるわけですね。  そこで、先ほど耐用年数の話が出てまいりましたが、PS1の耐用年数は一体どれくらいのものなのか。そして事故を起こしました五八〇一号機、これは大体いつごろ製造され、そして耐用年数をオーバーしていたのかいないのか、すでに寿命が来ていたのではないか、その点はいかがでしょうか。
  219. 木下博生

    ○木下政府委員 事故を起こしました航空機は、この同型機の中の一号機でございまして、昭和四十三年度に防衛庁が取得しております。  PS1の耐用命数でございますけれども、これは防衛庁の方で五千四百時間というふうに決めておりまして、この事故を起こしましたPS1の一号機につきましては、事故当時四千時間をちょっと超えた程度の飛行時間であったわけでございます。
  220. 部谷孝之

    部谷委員 耐用時間内に起こした事故だ、こういうことでありますが、これは再検討する必要のある数字でしょうか、どうなんですか。
  221. 木下博生

    ○木下政府委員 この航空機につきましては、防衛庁の方で疲労試験等を実施いたしまして、その結果五千四百時間が適当な耐用命数だということで運航しております。いままで取得しましたものの中で一機だけはすでにその五千四百時間が参りましたので用途廃止をしているものがございますけれども、そういうことで、特に今回の事故があったというようなことで耐用命数について再検討する計画は持っておりません。
  222. 部谷孝之

    部谷委員 飛行艇というのは私がいまさら申し上げるまでもなくフロートというのがありまして、艦載機とか陸上機に比べまして海上浮遊物にぶつける、そういうことによる事故が起こる可能性がきわめて大きい、艦載機等に比べればそういう事故を起こす可能性の多い飛行機、同時に、飛行艇でありますから、機体そのものが当然海水に浸るわけであります。アルミ系の金属が海水鹹水に弱いということは、これは常識になっておるところであります。  したがって、そうした艦載機だとかあるいは陸上機に比べまして飛行艇というのは、機体あるいは操縦系統のいろいろな機器、そういうものが海水の浸食によるところの故障が非常に多いと考えるのは常識だと思うわけですが、そういう浸食によるところの故障の防除、それは当然考えられておるのでありましょうけれども、そうした面でこの安全性に万全であったのかどうか、その点はいかがですか。
  223. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問のようにフロートによる事故が過去三件ほど出ております。その後フロートの補強というようなこともいたしておりますが、いずれにいたしましても、陸上の飛行場を使う場合と違いまして、どうしても洋上に着水いたしますので、いろんな浮遊物があるとかそういったことで、離着水に対する事故の可能性というものは排除できないというように考えております。  なお、海水の上に離着水することによる腐食その他でございますが、もともと飛行艇というのはその目的でつくられておりますから、そういった点には十分配慮いたしておりますし、飛行後の点検なり整備という点で万全の策をとっておりますので、そのために若干稼働率が下がるというようなことがございますけれども、陸上機に比べて手入れに時間がかかるというようなことはございますが、腐食をするとかふぐあいが生ずるというような問題はございません。
  224. 部谷孝之

    部谷委員 岩国基地におけるPS1の事故を調べてみますと、昭和五十一年から今日まで七年間に墜落事件が三件、着水事故が二件、フロートの破損が三件、計八件。そのうちでこの三件の墜落事故でありますが、五十二年の墜落事故乗員一名が死亡し、十三名が重傷を負っております。五十三年、高知沖の山中激突墜落事故、これでは乗員十三名が全員死亡いたしております。そして今回の墜落事故で、事故内容はきわめて大型のものである。こういうことになって、私はこのPS1は事故率が高い飛行機だというふうな認識を持つのですが、その点いかがですか。
  225. 西廣整輝

    西廣政府委員 飛行艇そのものの事故率でございますが、わが方、大事故といいますか、航空機が使えなくなったとか人身事故を起こしたような事故事故率で比べて統計をとっておるわけでございます。戦闘機とかその他の飛行機に比べて飛行艇が特に高いということではなく、どちらかというと事故率は若干低目であると考えております。
  226. 部谷孝之

    部谷委員 岩国基地アメリカの海兵隊と海上自衛隊が共用する本土における最大の実戦基地であります。米軍は滑走路を空母の甲板に見立てましていわゆるタッチ・アンド・ゴーの訓練を繰り返しております。また、PS1は沖合い三キロぐらいのところで離着水訓練を行うのが通常であるというふうにマスコミの報道によると書かれておるのですが、なぜ今回は陸上を低空で飛んだのか。US1であれば車輪があるわけですから滑走路を使用することももちろん考えられるのですが、PS1が陸上を低空で飛しょうしたと言う。なぜそのようなことをしたのでしょうか。
  227. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回の事故はローパスという訓練中の事故でございます。ローパスと申しますのは、低い高度である地点を航行する、そういうことによりまして低高度におきますスピード感覚なり距離感、そういったものをつかませるという訓練でございます。  御案内のように、飛行艇の場合は常々水上を航行しておりますが、水上ですと目標物がはっきりしないということ、それから地上に人がおりませんので、正確にどの高さを飛んだか、あるいは正確なコースをとったかというようなことについて確認がなかなかむずかしゅうございます。そこで、ときどき陸上においてそういう確認をするという訓練をいたすわけでございます。
  228. 部谷孝之

    部谷委員 それでは、ローパスというのはそうした訓練計画の一環として通常行われておるものですか。
  229. 西廣整輝

    西廣政府委員 基本的な操縦訓練の一環としてあるものでございます。
  230. 部谷孝之

    部谷委員 それから、〇三号機との間のニアミス説が出ておりましたが、この点はどうなのでしょうか。
  231. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生質問のように、当日は夜間操縦訓練にこの事故を起こしました〇一号機と〇三号機の二機が離水をいたしまして、交互にあるいは同時にローパスをやるということで、第一回目は〇一号機、〇三号機ともに巡航速度によるローパスをやった、それから第二回目に今度は〇一号機が滑走路上を低速によるローパスをやる、それから〇三号機は巡航速度による誘導路上のローパスをやるということでございまして、いずれもそれぞれがやることは承知いたしておりますし、同じタワーが一元的に管制いたしておりますので、ニアミスが起きたというようなことはないと確信いたしております。
  232. 部谷孝之

    部谷委員 それでは、いまの墜落機のそのときの速度、高度はどういう状態だったでしょうか。
  233. 西廣整輝

    西廣政府委員 生存しております乗員その他いろいろな者が発言いたしておりまして、確定的な数字はまだ申し上げる段階にはございませんが、速度につきましては七十ノット前後、高度につきましては百フィート強と考えております。
  234. 部谷孝之

    部谷委員 そういたしますと、速力が大体七十ノットといいますと一・八を掛けると百二十キロぐらいですね。それから高度が百フィート、三十メートルぐらいですね。これは常識的に考えて高度もきわめて低い。先ほどC1のところで百五十メートルあるいは三百メートルという話がありましたが、三十メートルの高度でのローパスというのはいかにも低過ぎるのではないか。それから、速度が七十ノットといいますと巡航速度の三分の一ぐらいですね。そうしたきわめて低い、きわめて低速の飛行というものは、私はいわば極限状態の操縦であると考えなければならぬと思うわけでありまして、そういう極限状態の操縦をスタッフというかクルーというかそういう人たちに求められておるわけであります。  だから、そうした厳し過ぎる条件設定を行って訓練をさせる必要があるのかどうか。先ほどのC1機の吉田委員質問の中にも同様な意味での質問がありましたけれども、その点いかがなのでしょうか。
  235. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、飛行艇は水上に着水してオペレーションをするということでございますので、まず離着水をするということが宿命的に与えられた任務になるわけでございますが、その際にまず波の高さ、波の方向、そういったものを確認し、かつ浮遊物等もないということを確認して、できるだけ低速で着水するということでないと着水できないわけでございます。そのために非常に厳密な飛行をして、きわめて低高度のところを最低の速度で飛ぶということが一番重要な操縦訓練の基本になっておるということでございます。
  236. 部谷孝之

    部谷委員 そういう意味でのローパスならば、私はやはり海上に何か目標物を置いてやるべきだろう、そのことが事故を防止する一番いい方法だと思うのです。そのような極限の状態を陸上でやるというところに大きな問題があると私は思うわけでありまして、この辺は今後お考えいただきたいと思います。  それから次に、五八〇一号機には航空事故原因究明に使いますボイスレコーダー、フライトレコーダーがなかったということでございますが、なぜこうした機器を使わないのか。いかがなのでしょうか。
  237. 西廣整輝

    西廣政府委員 航空法上の規定では自衛隊機はその種のものを積まなくてもよろしいということになっておるわけでございますが、たとえば戦闘機なりP2Jのような陸上型の対潜機にはそういった両者を積んでおります。  なお、このPS1にはフライトレコーダーの方は積んでおります。
  238. 部谷孝之

    部谷委員 このたびの事故現場の西二百メートルのところに米軍の弾薬庫があるわけです。南百五十メートルのところには岩国市の屎尿処理場がありまして、ここには大体十人以上の職員が常駐しております。それから、激突いたしましたあの土手を越えていたと仮定いたしますと、そこではちょうどアサリの漁が行われていて、七十そうぐらいの船が出ておったと言われております。ですから、百メーターから二百メーターもしもあの事故の位置がどっちかへずれておったとするならば、これは人身事故を伴う、つまり地域住民を巻き込んで被害が拡大されておる、こういう状態になっておるわけであります。またPS1が右旋回せずに真っすぐそのまま行って墜落したといたしますと、申し上げるまでもなく、そこには帝人岩国工場がありまして、その構造物に突き当たってまさに大惨事に発展しておる、こういうことでありまして、よくもまあこれだけの最小限の被害でとどまったものだと思うぐらい、後で考えてみるとまさに冷汗三斗の思いがするわけであります。  それで、平素から航空機の墜落事故におびえております地域住民に与えました衝撃、これはきわめて大きいものがある、こういうふうに思うわけですが、こうした重大な事態に対しまして長官はどのような措置をおとりになったか、御答弁いただけますか。
  239. 谷川和穗

    谷川国務大臣 事故を起こして地元の皆様方に多大の不安感を与えましたこと、まことに遺憾でございまして、現在PS1につきましては、実は直ちに、残りました機種の総点検を初め、訓練のあり方につきましても指示をいたしたところでございます。と同時に、現地に調査委員会を派遣いたして、現在鋭意検討中であることは御案内のとおりでございます。  岩国基地の特に滑走路の位置につきましては、先ほど来先生が御指摘のような地形になっておることも、これもわれわれとしても実は以前からもちろん十分存じておるところでございます。したがって、今回のこの事故については、事故調査の結果を待たなければならぬと思っておりますが、とりあえずPS1並びに岩国海上自衛隊航空機訓練につきましては、先ほど申し上げましたようなことから、直ちに総点検をさせたというところでもございます。
  240. 部谷孝之

    部谷委員 長官がおっしゃったような当面の措置が必要であることは申すまでもないところなんですが、やはり抜本的な解決策は基地の沖合いへの移設だろう、このように私は思うわけであります。地元の長い運動の過程の中で、今年度七千八百万円の調査費がつけられまして、移設を前提とする本調査、これに入っていただいたわけでありますが、この際、その移設の年次計画、これはどのようになっておるか、お答え願いたいと思います。
  241. 塩田章

    ○塩田政府委員 御指摘のように五十八年度七千八百万円で調査に入ったわけでございますが、これは私どもはいわゆる基礎調査と称しておるものでございます。引き続き、調査としましては、環境アセスの関係調査がありましょうし、基礎設計なり実施設計なりというふうにだんだん進んでいくわけでございますが、いまの時点でいわゆる年次的な意味で何年間にどういうふうにやっていくというような意味での具体的な計画を示せということでございますれば、それはまだそこまでいっておりません。基礎調査に入ったという段階でございます。
  242. 部谷孝之

    部谷委員 そうした年次計画がまだ立てられていないということですが、今度のこの事故で、これはとにかく急がなければならぬ、そういう気持ちをお持ちになったかどうか、いかがですか。
  243. 塩田章

    ○塩田政府委員 今度の事故にかんがみまして地元の方が非常に御心配になりまして、岩国基地沖合い移設の問題をさらに促進してくれという強い要望がありまして、私どももすでに地元の方と何回かお会いいたしまして御要望も受けておりますし、それは当然のお気持ちであろうと思います。また私どもといたしましても、地元の方がそういうお気持ちになったということは当然のこととして受けとめていかなければいかぬというふうに考えております。
  244. 部谷孝之

    部谷委員 そこで、間もなくまた五十九年度予算の御検討に入られるわけでありますが、こうした事故をきっかけといたしまして、岩国基地沖合い移設というものを最重点に最優先して対応していかなければならない、あるいはそうしていただかなければならない、こういうふうに思うのでありますけれども長官、どのようにお考えでしょうか。
  245. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほども指摘のございましたように、事故があってということでなくて、岩国基地の沖合い移設の問題についてはもう長い年月かかって皆様方御努力なさって、そして五十八年度予算に七千八百万の調査費がついたという経緯がございます。なお、今回の事故にかんがみまして、地元岩国市、市長を中心にいたしまして関係の皆様方、それから山口県、それぞれに直接その早期沖合い移設の完成を求めたいという非常に強い御要望も出てまいっております。  私といたしましては、大変財政が厳しい時期でございますが、この問題につきましては、事故があったということで皆様方そういうふうに現在非常にまたより一層早期達成を願っておいでになられまして、私どもとしても事故が起こらないようにあらゆる手だてをするのは当然でございますが、同時に、本年の調査費を最大限に使いながら鋭意御期待に沿うように努力していきたい、こう考えておるわけでございます。
  246. 部谷孝之

    部谷委員 私は、もうこの際何千万という単位でなくて、十億くらいぽんと組んでいかなければこうした問題は進まないのではないかというふうに思うのです、その期限を短縮していくという意味におきましても。F15が大体一機百十億円と言われております、それからPS1が一機で五十億と言われておるわけですが、正面装備を充実していくということももちろん必要だと思うのですけれども、後方体制とうまく有機的に連動していかなければせっかくの正面装備がその機能を十分発揮しない、こういうことになるわけでありまして、こうした問題につきましては国防の目的を達成させるようにいわばグローバルな国の安全保障観点からとらえなければならない、こういうふうに思うわけであります。  仮に今度の事故が住民に被害が及んでおったとするならば、基地に対する地域住民の空気が一変することは容易に想像できるところでありまして、一転いたしまして基地撤去運動、そういうものに発展することは間違いない、私はこういうふうに思うわけであります。  こうした背景を十分配慮しながら岩国基地沖合い移設は推進されなければならないと思うのですが、最後に長官、もう一度御決意のほどを伺わせていただきたいと思います。
  247. 谷川和穗

    谷川国務大臣 先ほど来答弁させていただいておりますように、今後にかけまして私たちといたしましても鋭意努力を傾注いたしたい、こう考えております。
  248. 部谷孝之

    部谷委員 終わります。
  249. 小渕恵三

  250. 東中光雄

    東中委員 一連の自衛隊機の訓練中の事故に関連してお聞きしたいのですが、C1輸送機が、鳥羽沖で悪天候の中で低空航法訓練をやっておった。そういう中であの事故が起こったわけですけれども、C1が非常な低空での訓練を悪天候の中でやるほど、そういう重要なことなのかどうか、なぜそういう輸送機の低空航法訓練が必要なのかということを、まずお伺いしたいと思います。
  251. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、C1輸送機は有事において空挺団の輸送の任務に当たる、あるいは物量投下等によりまして戦時の作戦輸送につくということでございまして、一般の民間輸送機と違って戦闘地域に入って輸送するということになりますので、敵に発見をされないように移動する必要があるということで、当然のことながら低空飛行ということが非常に重要な要素になるわけでございます。
  252. 東中光雄

    東中委員 戦闘地域と言われているのですが、戦闘地域での兵員なり物資の輸送ということですが、戦闘地域はどこを想定されておるのですか。
  253. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、自衛隊の場合は、わが国の防衛、自衛に当たるわけでございますから、特に、陸上自衛隊の作戦に協力するということになりますと、陸上自衛隊わが国土を守っておるわけでございますので、国土内に敵が上陸をした、その際に、たとえば空挺部隊を敵の背後に降下をさせる、あるいは要地を先にこちらが押さえるといったような場合の空挺降下、あるいは前線で戦っている部隊への物資の輸送というようなことをやるわけでございます。
  254. 東中光雄

    東中委員 そういう場合に、二百メーター以下のような低空でなければいかぬというのは、一体なぜですか。
  255. 西廣整輝

    西廣政府委員 高空を飛びますと、当然のことながら野戦のレーダー等にも捕捉されますし、早くから発見されればミサイル等で攻撃をされるおそれもあるということで、対地支援の航空機というものはできる限り山かげ等に沿って低空飛行で移動するというのが戦術になろうかと思うわけであります。
  256. 東中光雄

    東中委員 だから、日本国内においてそういう場合を想定されているのは、戦闘地域というのは敵が——敵がと言ったら語弊がありますが、相手国が一定地域をもう完全に制圧しているというふうな状況を想定しての訓練なんですね。たとえば補給処から、あるいは空挺団の師団からどこそこの地域へ送っていくというよりは、その戦闘地域内でのそういう輸送ということになれば、戦闘地域というのは、もう相手方は上陸をし、それから一定の地域を占領しているという状態、そういう状態での訓練ということになるわけですね。  それで、レーダーといったら、向こうはレーダーも持ってきて、ミサイルも持ってきてという状態になっている。では、そういう場合の空の状態はどうなんだというようなことを想定した場合ですよ、まさに本土決戦ですな、沖縄でやられた戦闘のような場面が本土で行われることを想定して、そしてそういう訓練を、いわば悪天候の中で猛訓練をやっておられる、こういうふうにしか思えないのですがね。そうですか。
  257. 西廣整輝

    西廣政府委員 C1の輸送にはいろいろな任務がございますが、私が申し上げたのは、陸上部隊等への支援のための輸送、作戦輸送について申し上げたわけでございますが、当然のことながら、陸上自衛隊わが国土に外敵が侵入した場合にこれを排除するという任務についておるわけでございますから、そういった際の戦闘についての協力要領を申し上げたわけであります。
  258. 東中光雄

    東中委員 前に私はこの委員会質問したことがあるのですが、MC130Eが沖縄にいて、それでイランへ捕虜救出ということで行ったということがありましたね。あのときは、まさに向こう側のレーダーにかからないように超低空で行ったか、とにかく特殊な——これも政府側の答弁は、MC130Eということについては答えないままで、アメリカ側はC130だと言うているということだけでこの委員会では押し切ってしまったわけですけれども、実はそれがMC130Eであるということがアメリカの議会でその後質疑の中で出てきていますから、そういう超低空で行くということは、相手国のレーダー網を突破して行く、そういうことの訓練にしかならないのじゃないか。  いま言われているような、日本国内における陸上戦闘をやっているということを前提にして、その相手方の占領地域といいますかその後方へ、あるいは第一線で戦っているところへ物資を補給するということのために、百メーターとか二百メーターとか、そんな低いところで飛ぶ訓練をしなきゃならぬ、そういうことを想定してやっておるとすれば、もう自衛隊というのは日本本土を本当に戦場にしてしまうということを前提にしてということになっちゃうので、むしろ素直に考えれば、相手国の領土内へ行くということを前提にしての訓練なら、それはそれでわかるのだけれども、こういう訓練がなぜ特別に悪天候のとき、悪天候でないときにそういう訓練をやるというのだったら、またそれも戦技の向上というふうな意味でいいかもしれませんけれども、そういう訓練を悪天候のもとでなぜやらなければいけないのか。それほど自衛隊のC1の任務というのはそういうものなのかということを言いたいわけなんですけれども、それはもう当然やらなければいかぬのだ、ああいう悪天候の中でもやらなければいかぬほど、それほどいま切迫した臨戦態勢というものを目指してやっているということなのかどうか。  なぜそういう訓練がああいう時期に、あの場所でやられなければいけなかったのかということについて、防衛庁としてはいまどう考えていらっしゃるのか。
  259. 西廣整輝

    西廣政府委員 現在の陸上部隊の防空能力というのは、野戦防空能力でございますが、それぞれの師団なりが持っておる防空火力というものもかなりのものになっておりまして、特に先進国においては、当然のことながら野戦用のレーダーなりミサイルあるいは高射砲に類するものを数多く持っておりますので、そういったものを避けるためにいま申したような低空飛行が必要だろうというふうに考えておるわけでございます。  なお、御案内のように、空中から緊急輸送しなければならないというのは、いずれの場合も地上の輸送ではなかなか間に合わないような場合に、そう大量は送れないけれども緊急に輸送しなければならないという場合がございますので、状況によっては天候のいかんにかかわらずそういった任務につかなくてはいけないという場合も想定されるわけであります。
  260. 東中光雄

    東中委員 任務につくかつかぬかじゃなくて、そういう悪天候の時期にそういう訓練を組んだことについて、それは別にあたりまえなんだ、今後もまたそういう場合にもそういう訓練は組んでいくんだというお考えなのか。大体訓練というのはそういうものじゃないのですよ。私はそう思っているのですが、そこらを聞いているのです。
  261. 西廣整輝

    西廣政府委員 若干御質問を取り違えておりまして申しわけありませんでした。今回行ったようなC1の低空によります移動訓練、航法訓練は、さほど特殊な訓練というふうに私ども考えておりませんで、かねがね移動機会には、低空訓練が可能な条件であればできるだけそういう訓練を実施するということでありました。     〔委員長退席、有馬委員長代理着席〕  なお今回の場合は、天候、気象状況等をこの訓練の実施前に検討いたして可能であるという判断をし、これは傍証になりますけれども、離陸時には小牧の方の管制官からも有視界飛行が可能であるということで許可を得て飛び出しておりましたので、初めから悪天候でその種の有視界飛行が困難であるという前提の中でなおかつ無理をして飛び出したというふうには私どもは考えておりません。
  262. 東中光雄

    東中委員 それはそうでしょう。事故を起こすために訓練を行う人はおらぬ。しかし結果はああいう事態が起こっておるわけでしょう。管制官が有視界飛行できるだろうというふうに思ったからそういう状態でやるのは当然なんだ——私も有視界飛行しかしておりませんが、雲高が低いときというのは大変なんですよね。ところが断固としてそういうときもやる、そのことについては何の反省もない。何も考えていない。いま言われたのではどうもそういう感じ見えるのです。やるのは当然だという判断をしておったし、やれるという判断をしておった。  しかし事故が起こった。しかも二機も。三機目だってあれは事故ですよね。木の葉にひっかかるというのはパイロットの立場から言えば大変なことなんですよ。私はそう思います。コンマ一秒違ったらそれでおだぶつですから。そういう性質のことをやったけれども、管制官もちゃんと見て有視界飛行可能として出したんだからそれはそれでいいんだというふうな考え方というのは、私は、自衛隊というのは、いまそこまでやらなければいけないような態勢になっているのかということなんです。
  263. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回こういう天候下でこの種の訓練をやって結果的には事故が起きたわけでございますが、そういった判断なりが誤っていたかどうかということについては、先ほど来申し上げておるように今後の事故調査を待っておるわけでございますが、いずれにいたしましても私どもの方は、かなりの悪天候下でもその種の訓練を強行しなさいといったように、現時点で非常に危機感に燃えて、従来と違った訓練をさせておるというような事実はございません。
  264. 東中光雄

    東中委員 岩国のPS1の場合にしましても、コンビナートがある、これは人口密集地帯がある。そういう中で、陸上を海上のように想定してのタッチ・アンド・ゴーということをやられておった。これに対しては市長も来られて、一つ間違ったら大変なことになるということをいろいろ言っておりましたね。それがあえてずっとやられてきておるというふうな状態で今度の事故が起こった。これについてはどういうふうに思っていられるのですか。
  265. 西廣整輝

    西廣政府委員 私ちょっと御質問の趣旨を取り違えておるかもしれませんが、タッチ・アンド・ゴーをPS1がやったわけではございませんで、PS1はローパスということで、ある一定の高さで一定のスピードで飛ぶという訓練をやったわけでございます。これはそういった意味では基礎訓練、基本的な訓練の中の一つであろうと思いますが、先ほど来申し上げておりますように、海上ではなかなか正確な目標がつかめない、あるいは正確な高さ、正確なコースを飛んだかどうかわかりにくいものですから、何回かに一度、ある期間において一回はそういった地上におけるチェックをやるということでありまして、海上でやれるような訓練であったけれどもそれを陸上であえて強行しているということではございませんで、チェックのためにそういう訓練も必要であるということを申し上げておるわけであります。
  266. 東中光雄

    東中委員 本来PS1は対潜哨戒飛行艇ですから、海上での任務ですから海上でやるのがあたりまえなんで、海上でやって、その訓練の成果というものを正確に知るためにはそういう措置をとればいいのであって、本来の任務でない陸上へ来て、それでこういうことが起こって、それでなお、これくらいのことは時たま正確性を判断するためにやっておるにすぎないのだからというのは、私はどうも防衛庁というところはえらいところだなという感じを持つのですがね。  調査してみなければわからぬというような問題とは違うんですよ。その地域の住民の皆さん、あるいは特にコンビナートがある、こういうふうな問題で、当たらなかったからいいようなものの、当たっておったら大変なことですよね。そういう性質のものなんだということからいうて、こういう訓練は必要なんだ、だからやっておるのだということだけでは私はどうかと思うのですけれども、そういう点、長官どうでしょう。
  267. 谷川和穗

    谷川国務大臣 これは、事故の実態調査を含めまして結果を見てから申し上げるべきだと思いますが、PS1の訓練は、当日も実は海の上でも、離水してから一遍回って、さらにまた別の海水域で回りまして、それからいま政府委員から答弁いたしましたローパスの訓練を一回やって、二度目に実は落ちたというようなことになっておるようでございます。  いま御指摘のありましたように、川が北側にあってその向こうはコンビナート地帯でございます。したがって、ローパスをする、あの一番機ばかりでなくてその他の航空機もう一機、僚機もそうですが、高度を上げてすぐ右へ旋回しております。そういう意味から申しましても、どうしてあそこで事故が生じたかということが現在一番大きな問題として、事故調査委員会での調査のさなかであろうかと思います。  したがって、私といたしましては、とにかくできるだけ早く事故調査を完了したらその報告を上げさせて、それによりまして十分検討を加えていかなければならぬとは思っております。  ただ先生が御指摘のように、PS1が絶対に陸上で訓練をしてはいかぬというわけにもいかないところもあるような感じがいたしますが、岩国での訓練におきましては、さらに一層今後の訓練のあり方について、調査の結果が出たらその結果に基づいて十分検討して、再発防止をしなければいかぬ、これは確かにそのとおりと考えておるわけでございます。
  268. 東中光雄

    東中委員 こういうふうに相次いで起こってくるのは、結局有事即応訓練といいますか、それから日米共同の軍事演習が非常にふえてくる、米軍自身は全く即応態勢で展開をしている部隊だというふうな関係で非常に無理な訓練が、そういう日米共同演習の頻度がどんどん高まってくる中で一層ふえてきていると感じられるわけです。  そうすると、もう完全に北西太平洋における米軍の中で共同訓練をやる、そしてそれと同じような態勢で進んでいく、そのための訓練が非常に激化される、米軍の場合は相手方の沿岸を攻撃する、あるいは敵地内も攻撃に行くということ、これは当然そういうものとして日本国憲法の立場ではないわけですから、そういういわば次元の違うものが一緒に共同訓練をやることで米軍と同じような訓練の方向へずっと激化していくというところから起こってくるそういう問題ではないかと思うのですけれども、大きな自衛隊訓練自体の問題、これは日米共同軍事訓練、演習ということとの関係でこの問題は根本的に検討し直さなければいかぬ問題があるのではないか、こう私は思うのですけれども、この点はどうでしょう。
  269. 西廣整輝

    西廣政府委員 御案内のように、最近米軍との共同訓練というのはだんだんと数を重ねてきたわけでございまして、その間いろいろな面で日本側が学ぶべき点も多かったわけでございますが、といって現在のところ、たとえばPS1なりC1の訓練内容というものを変更したということもございません。またかつ、今回起きました事故はいずれもPS1なりC1の訓練内容から言えば、低空航法による編隊移動あるいはローパスといったような比較的訓練内容から言えば基本的な部分に属するところで起きたということで、かえって私どもとしては大きなショックを受けているわけでございまして、なぜそういったような基本的な訓練内容の中で事故が起きたかということについて現在鋭意調査中ということでございます。
  270. 東中光雄

    東中委員 いままでと変わってない、そして基本的な訓練だったという点も変わってないということで、なぜこういう事故が起きたかということについては、現場を調査したってわかるような性質の問題ではないですよ。     〔有馬委員長代理退席、委員長着席〕  何を調査しておられるのか知りませんけれども、なぜこれが続いて起こったのか、あるいはなぜ一遍に二機も激突をする。これはもう私の常識的な感じで言えば、輸送機なんというのは最も安定した操縦のできる種類のものですね、スピードだってそう速くないんだし。それが編隊を組んでおって、一番機と二番機が衝突して、三番機が木の葉に当たった、こんな事態が起こるということは、現場を調査したらわかるとか、事故原因調査したらわかるというようなものではない。  それはそういう調査をするのは当然ですけれども、それとは別に、訓練そのものについてどういうところに原因があるのかということは調査委員会調査してわかるというような問題ではない性質のものではないかと思うのですけれども、そういう点では、先ほど言ったような米国の対ソ極東戦略の前進基地日本がされて、それの役割りを要求されておる、そういう中で共同軍事訓練がどんどんふえてくる、そういう中から起こってきている問題としてとらえなければ理解のしようがないわけです。いま参事官言われたように、何でこんな基礎的なことで、従来と変わってないことでなぜこんなことが起こったんだろう、従来と変わったことのない基礎的なことで事故がなぜ起こるのかということは、その事故の具体的なケースを何ぼ追及したってわかってくるものじゃないと思うのです。そういう点で、訓練そのもの、それから自衛隊の体制そのもの、ここが私は問題だと思っているのですけれども、そういう点は防衛庁長官、そういう面からの反省、検討というようなことはされないのですか。
  271. 谷川和穗

    谷川国務大臣 輸送機のような航空機には、操縦士ばかりでなくてほかに何人もの乗員、搭乗員もおります。それから、PS1のような飛行艇は、任務上当然のことでございますが、やはり同じように操縦のみを任務とする以外の搭乗員もございます。しかしながら、操縦士、パイロットということから申しますと、米軍の極東における何らかの大きな意味の戦略の変化によって自衛隊航空機訓練が過度に練度を要求されておりつつあるというような形で事故が起こってきたというような感じは、私はいたしておりません。  ただ、全体的に申しまして、航空機燃料の問題があって、確かにいろいろとパイロットの訓練時間、そういったものに対してなかなか制限が大きいというところは聞いてもおりますし、それから訓練空域に出るまでの距離のような問題と航空燃料やあるいは滞空時間の関連から常にパイロットは訓練において非常に時間的に制約を受けつつあるということも聞いてもおります。しかし、そのこと自体と、それから米軍が最近になってにわかにここで共同訓練を行う自衛隊に対して過度の練度を要求するような形で自衛隊訓練がむずかしくなってきているんだ、そういうふうに私は直接には判断はいたしておりません。
  272. 東中光雄

    東中委員 日米共同軍事訓練の頻度がどんどんふえてくるということ自体は、基礎的な訓練じゃなくて、あるいは自衛隊だけでやらないで、ではなぜ米軍と一緒にやるのかということも含めて、それはどんどん頻度がふえてきている。これはもう明らかに米軍の方向としては対ソ極東戦略の前進基地としての日本ということで打ち出してきていることは、もう明白ですね。そのことによって何も変わらないんだったら、なぜそんな訓練をやるのですか。共同訓練の頻度をどんどんふやしていかなければいかぬのですか。  単なる戦技の向上ということだけだったら、そんなものは必要はないわけです。特に飛行機の操縦とか航法についての研究、訓練なんというようなものは、共同軍事演習なんというものは必要ないわけです、本当を言えば。それをやっている。だから、共同作戦態勢、共同対処行動ということでの訓練を強めてきているわけでしょう。そういう中で起こってきているんだ。いままで起こらなかったことが起こってきているんだと言わざるを得ない、私はそう思います。そういう点についての反省が防衛庁には余りない。それならなぜ起こったんだろうと言ったら、それを調べているんだ、それじゃもうお話にならないんじゃないかというふうに私は思っています。  それと、もう一点聞いておきたいのですが、伊勢湾沿岸を軍事訓練空域にすることが決まったのはいつですか。
  273. 西廣整輝

    西廣政府委員 伊勢湾は訓練空域ではございません。
  274. 東中光雄

    東中委員 訓練空域じゃなくて有視界の低空航法訓練をやったのですか。
  275. 西廣整輝

    西廣政府委員 私ども訓練と申しますのは、離陸、着陸も含め移動する、飛ぶこと自体を全部訓練と申しておりますものですから、低高度の航法訓練、低いところを飛ぶことを低高度航法訓練というふうに申しておるわけでございまして、その種のものがすべて訓練空域で行われなければならないというふうには考えておりません。
  276. 東中光雄

    東中委員 それじゃ、ここは訓練空域じゃなくて、たまたまこれは伊勢湾の上を飛んだけれども、大阪市街の上二百メーターで低空移動訓練だというてやっても、それは自衛隊としては一向に構わぬ、こういう考えですか。
  277. 西廣整輝

    西廣政府委員 航空法に定められた飛び方で飛ぶということであります。
  278. 東中光雄

    東中委員 だから、航空法で定められた範囲内であればということで、二百メーターで山に衝突したわけでしょうが。そういうふうな航法で、それは航空法で定めているわけじゃないでしょう、そんな低空で飛んで山に当たりなさいというようなことが決まっているわけないので、だから、どこへでも行って、伊勢湾の空域は訓練空域ではない、しかしこれは低空航法の訓練場所として、移動に伴って——移動と言ったって入間に行くのに反対の方に行っているのですからね。そういう航法をとっても、訓練空域じゃないけれどもそれはどこへでも行けるんだということですか。
  279. 西廣整輝

    西廣政府委員 有視界飛行といいますのは、それぞれの条件がございまして一概に申せないわけですが、たとえば陸上であれば、地上あるいはその上に建造物があればその上から何メートル以上、さらに何メートル以内で飛ばなくちゃいけないとか、それぞれ規定があるわけでございます。同様に、海上に出れば、海上で最低高度は水面から百五十メートル以上、さらに、その区域が管制空域であれば最高高度が二百メートル以下であるとか、あるいは管制空域を外れれば三百メートル以下で飛びなさいということに、それぞれ航空法なり航空法施行規則で決まっておりまして、その中で飛んでいくことになるわけでございます。
  280. 東中光雄

    東中委員 それじゃ、その範囲内で、普通の移動の有視界飛行というのじゃないのですよね、編隊を組んで、C1というようないわば大きい飛行機ですよね。有視界飛行として言えば大きい飛行機ですよ。そして、それも編隊を組んで、あの編隊も非常に変わった編隊だと思いますけれども、まあ輸送機だからそうなんでしょう。下から見ていたら、これは妙な飛行機がたくさん次々に行くなあということですよ。セスナが飛ぶというのとちょっと違うのですからね。そういうものを、しかも自衛隊は低空の訓練としてやっている。それは一切訓練空域と関係なしにやれるんだ、今後もやっていくんだ。それがどこへ行くかも知れない。管制区域外ならばこれだけだ、航空法でやっていくんだということになるのですかな。
  281. 西廣整輝

    西廣政府委員 たびたび申し上げるようでございますが、訓練空域で行う訓練と申しますのは、戦技訓練のような非常に危険を伴う飛び方をする場合にそこで行わなければならないということになっておるわけでございまして、通常の航行については航空法に定められた規定によって運航するというのが、民間機と同じように自衛隊にも求められておるわけでございます。したがいまして、計器飛行であればかなりの高度のものを計器状態で飛ぶことになりますし、有視界飛行であれば、条件によっていろいろ違いますが、たとえばある高度以上の高さを有視界飛行で飛びたいと思えば、それなりのよい気象条件その他に恵まれないとそういう高さのところは飛べませんし、最低の条件、たとえば、先ほど来申し上げているように、千五百メートル以上の視程があればいいというような最低の条件で飛ぶ場合には、水上百五十メートルから三百メートルまでの間を飛ばなくちゃいけないとか、それぞれ決められておるわけでございます。  なお、さらにつけ加えますれば、そういう航空法等の規定上の問題以外に、たとえば住宅地の上を飛ぶとかそういうことになれば別に騒音問題とかいろいろ生じてまいりますので、そういうことは当然のことながら避けるということで、今回のC1の場合もできるだけ早く海上に出て、海上を通って移動するというような考え方のために、一度南下をしてそれから東進をするという予定コースをとっておるわけでございます。
  282. 東中光雄

    東中委員 人家の上だったら騒音問題も起こるからできるだけ避ける、できるだけ避けるけれども、避けなくてもいいんだということになるわけですね。しかも、それが訓練だということで、わざわざあそこまで回っていっているわけですからね。また、伊勢湾の鳥羽の島の人が、ちょっと違っておれば自分のところに来るかもしれないということで非常な危険を感じていますね。そういう問題は単なるセスナ機が飛ぶというのと違って、編隊を組んで訓練としてわざわざ低空航法としてやっていく。それが戦闘行動として必要だから、そういう練度を上げていかなければいかぬからということでやったんだということをさっきも言われているわけですね。そういう訓練としてやっておる。  それから同時に、特殊な訓練ですね、編隊というのは。だから、一番機についておったから二番機が当たったんだ、三番機は、これはおかしいと思いながら辛うじて回避できた、こういうことなんですからね。  訓練空域、特にそういう低空なんかの場合ですよ、これは防衛庁長官としては、それはそれで航空法の範囲内でやっておるんだから、一機がどう飛んでいくというものじゃなくて、あるいは移動のために飛んでいるというんではなくて、あるいは空から観光のために飛んでいるというんじゃなくて、編隊訓練としてやっていくというようなものについて、これはもう構わない、今後もそういう体制で続けていくということになるんでしょうか。それ自体も検討しなければいかぬ問題だということになるのでしょうか、どうでしょう。
  283. 西廣整輝

    西廣政府委員 たびたび同じことを申し上げるようでございますけれども自衛隊、これは編隊を組む場合であろうが単機であろうがでございますが、離陸することから、飛び立ってあるところに移動する、それそのものをすべて訓練というように称しておりますので、訓練の中にもいろいろあるということでございまして、訓練空域でやらなければいけない訓練、それから通常の民間機と同じような規制のもとに飛ぶ訓練飛行、それも訓練であるということを申し上げておるわけであります。
  284. 東中光雄

    東中委員 編隊飛行と言えば、それ自体が普通に飛ぶ訓練とはまた違った訓練ですね。それから特別に低空の訓練ということになれば、これはやはり特別の訓練なんです。だから、現にそういう危険が起こっているわけです。しかも、それは任務を持ってやっているわけですから。一番機について二番機が行く、三番機が行く、あるいは別に気象観測のために一機を飛ばすというふうなことさえやっている、まさに訓練そのものですよ。こういうものを平気でやられたら、やられる国民の側というのはもうたまったものじゃない。たまたま今度は当たらなかったからそういう被害がはっきりしていないだけのことであって、当たっておったらそんなことはとてもじゃないが言えるような性質のものじゃないと思うのです。その点は厳重に、国民の安全ということについて、それから訓練をやっている自衛官の安全といいますか人命というか、そういうものについて、訓練なら訓練のようにそういうものとしての体制をつくってやってきたということを強調をしておきたいと思います。  時間がなくなってしまったのですけれども、もう一点お聞きしたいのは、全然話は別になりますが、ガイドライン第三項による極東有事における日本の便宜供与問題について、施設庁長官が防衛局長のときだったですか、自衛隊として便宜供与で協力できるとすれば自衛隊基地の共同使用ということしかない、その範囲ですということを言われましたね。それは極東有事の際に米軍が自衛隊基地の使用を申し入れてきた場合ですね。共同使用を認めるとすれば、その根拠は何かという点についてお聞きしたいと思います。
  285. 塩田章

    ○塩田政府委員 まず、安保条約の条文あるいは地位協定等に基づいて提供をいたしますが、また同時に国有財産の米軍への提供についての法律もございますので、そういった法律が根拠規定になろうかと思います。
  286. 東中光雄

    東中委員 安保条約六条とそれから地位協定の二条一項(a)、これは本来の新規の基地提供になるわけですね。それ以外に二4(b)による提供ということを答弁されておりますが、極東有事ということで米軍が自衛隊基地を二4(b)で使うというふうなことが、そこから戦闘行動に出るというふうなことが二4(b)でできるのかどうかということについて聞きたいのです。
  287. 加藤良三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  日本にあります米軍が使用している施設、区域を使って米軍が直接戦闘作戦行動に参加するという行動をとります場合、これは事前協議の対象になるわけでございます。
  288. 東中光雄

    東中委員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。ガイドラインの三項に言うている便宜供与の一環として自衛隊基地を米軍に共同使用を認めていくという形での、それ以外のことは自衛隊でなくてほかのところがやることであって、自衛隊としては自衛隊基地の提供ということが便宜供与の一つの重要な部分であるし、それ以外は余りないのだという答弁をされておるけれども、この自衛隊基地を米軍に提供するについては二4(b)によってやれるのかどうかということを聞いているのです。
  289. 加藤良三

    ○加藤説明員 米軍に対しまして二4(b)に基づいておっしゃるような施設、区域の提供を行うということは、当然あり得ることだと思います。
  290. 東中光雄

    東中委員 ただ、二4(b)は一時使用でしょう、四つの項目がありますけれども、一時使用でしょう。極東有事だからということで、そして自衛隊基地の共同使用を申し入れてきたというときに、一時使用の四つの項目のある政府の統一見解が出ている、その四つの項目とは明らかに違うわけですからね。そういうことで二4(b)なんというのは持ってこれないんじゃないかということを言っているわけです。
  291. 加藤良三

    ○加藤説明員 安保条約の第六条におきまして、米軍は極東の平和と安全の維持のためにわが国における施設、区域を使用できるということになっておるわけでございます。しかして、その施設、区域というものが、これが一時使用にかかるようなものであろうと、二条一項にかかるものであろうと、その点についての区別は特にないということでございます。
  292. 東中光雄

    東中委員 それじゃこう聞きましょう。中曽根さんが防衛庁長官だったころに政府統一見解が出ましたけれども、その後、いわゆるリエントリーは現行の地位協定上はできないという結論を日本政府としては出したというのを、答弁として鶴崎さんがやっておるわけですけれども、それじゃいまはいわゆるリエントリーができるというふうに考えておられるのか。要するに、日本へ返還をした、そして自衛隊基地になった、国有財産になった、そこへ有事駐留ということで、極東有事になったからということで使用を申し入れてきたら、すぐに共同使用を認めるということになったら、これは根拠は一体何かということを私は聞いているわけです。現行地位協定上、二4(b)ではできない、いわゆるリエントリーは、極東有事だということで有事駐留はできないのだということがあのときの政府答弁ではなかったのですか、それを聞いているんですよ。
  293. 加藤良三

    ○加藤説明員 繰り返しになって恐縮でございますが、日米安全保障条約の第六条のもとで、米国は、極東の平和及び安全の維持のためにわが国の施設、区域を使用する権限を有しているわけでございます。その施設、区域の態様ということについての特段の定めはないわけでございます。
  294. 東中光雄

    東中委員 特段の定めはありますよ。あなたの言っているのは、地位協定の二条一項(a)を言っているわけでしょう。地位協定の二条一項(a)、(b)とあるじゃないですか。それで、いま問題になっているのは二4(b)でしょうが。だから二4(b)で共同使用ができるということはあるけれども、二4(b)が適用される一時というのはこの四つの項目でありますと、もう時間がないから、言わぬでも御承知だと思うから言わぬだけのことで、ところがそれとは別に、いわゆるリエントリーというのが議論になったでしょう。有事になって駐留をするということは、現行地位協定上はできないという結論を鶴崎さんははっきりと言っているじゃないですか。それじゃその見解を変えるのですか。
  295. 加藤良三

    ○加藤説明員 お答え申し上げます。  私が申し上げておりますのは、東中先生が御指摘になっておられます四つの形態、すなわち「年間何日以内というように日数を限定して使用を認める」場合、それから「日本側と調整の上、そのつど期間を区切って使用を認める」場合、それから「米軍の専用する施設・区域への出入のつど使用を認める」場合、「その他、」これらに「準じて何らかの形で使用期間が限定される」場合という四つの類型であると承知いたしております。  私は、安保条約六条のもとにおきまして、米軍は極東の平和と安全の維持の目的のために日本の施設、区域を使います場合に、いまからどのような具体的な要請を米軍がわが方に持ってくるかということを予断する立場には全くございませんけれども、いま申し上げた四つの中で処理できるものはあり得るのではなかろうかということを申し上げたわけでございます。
  296. 東中光雄

    東中委員 だから地位協定の範囲内においてしかできないわけでしょう。現行地位協定では、いわゆる有事駐留といいますか、そういう形のリエントリーはできないというのが政府の解釈じゃなかったのですかということを聞いているわけです。
  297. 加藤良三

    ○加藤説明員 共同使用の形の場合も含めましての米軍に対する施設、区域の提供は、当然安保条約及び地位協定に従って行われるわけでございます。
  298. 東中光雄

    東中委員 昭和四十七年の五月二十五日の衆議院内閣委員会で鶴崎政府委員が、有事駐留ということについて「いろいろ研究をして何とか弾力的な運用でいけないかということもあったのですけれども、最終的には、どうも現行の地位協定のワク内でそれを読んでいくということは非常にむずかしい。したがって、このリエントリーをやるということになれば、どうしても地位協定の改定ということにつながってくるわけです」、しかしいまは「現行地位協定でこのリエントリー問題を読むということはできないというような結論になっておるわけでございます。」から、いわゆる当時中曽根さんが言った共同使用、それから有事駐留というのはできない、やるとすれば、自衛隊基地の米軍の使用ということになれば二4(b)の範囲に限られる、この範囲はきわめて一時的な、あるいは数日とかあるいは期間を定めてとかいうことになっておるので、極東有事になったからそれでということになれば、これは事柄の性質上二4(b)とは違うじゃないかということを言っているのですよ。そういう点についてどうなのか。  二4(b)の基地提供ができるということはこれはもうわかり切っているのです、書いてあるのだから。ところが、極東有事で自衛隊基地の共同使用ということは、そういう形ではできない、地位協定を乗り越えたことはできないということをはっきりすべきだということを言っているのです。それだけ答えてください。
  299. 千秋健

    ○千秋政府委員 お答え申し上げます。  先ほどから議論になっておりますリエントリーの問題は、当時、米軍の施設を返還されまして仮に自衛隊の施設というような形で維持し、再度駐留する際にそれを使用させる、こういう議論であったかと思います。  返還に当たり、リエントリーという形の約束をつけて施設を返還してもらい、再提供する、こういうやり方は現在の地位協定の枠内ではできないということは現在も変わっておりません。そういう意味ではそういう変更は何もありませんが、先ほどから外務省の方で御答弁いただいているのは、有事の際においても現在の地位協定に基づきまして新たに施設、区域を提供する事態、これは二条一項(a)の場合もあれば、それに二条四項(b)を適用する場合もあり得る、それはそのときどきの事態に応じていろいろなケースで現在の地位協定に基づいて提供することはあり得る、こういうことでございます。
  300. 東中光雄

    東中委員 時間ですから終わります。
  301. 小渕恵三

    小渕委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三分散会