○前川
委員 慎重どころか本当にこれは
米ソの間の核の均衡、つまり弾道
ミサイル型の潜水艦の通過を防いでしまうということになりますと、核均衡が崩れるということで、
ソ連としては死にもの狂いになりますね。これはここだけではなくて、バルト海の出口にしてもあるいは黒海の出口にしても、
ソ連の艦隊は戦略的な核
ミサイル潜水艦も海峡を通過しなければいけないという非常に弱点を持っていますから、これをやられるとその核均衡が崩れるということになりますと、向こうは国の存亡をかけざるを得ないでしょう。国の存亡をかけての宗谷海峡の突破ということになりますと、これは大変なことに巻き込まれるということになりますので、非常にその点を心配しているということをどうか腹の中に十分置いておいていただきたい。これは一番心配することなんです。巻き込まれ論の最たるものであると思いますので、要望をしておきます。
さて、時間がどんどんたっていきますのではしょってまいりますが、シーレーンの防衛の問題であります。
まず、シーレーン防衛という発想法は、戦争がだらだら三年も四年も続く、第二次
世界大戦型で続くということが前提にならないと、シーレーン防衛なんという発想は出てこない。
ですけれ
ども、識者に聞きますといろいろな意見があります。新聞に出ていることでも、たとえばこれは十一月二十九日の朝日新聞の「今月の目」に出てきますが、「では、
米ソが全面戦争に入りながら、核を使わない第二次大戦型の戦争をだらだら続けることがあり得るか。「きわめてアンライクリー(ありそうもない)でしょうね」と、平和・
安全保障研究所長の猪木正道氏は見る。」と。
これはいろいろな見方があります。「だが前田優
海上幕僚長は「
米ソの全面長期通常戦はあり得る」とがんばる。また、そうでなければ
海上自衛隊の存在意義があやしくなるのだ。」というえらいうがった記事が出ておりますが、実際
米ソ正面対決でそんな長いことになるのか、本当にわかりませんが、ありそうもないと思います。
しかしそれにしても、実は五十七年の七月十九日の朝日の朝刊に、全
日本海員組合組合長の土井一清さんが投書しておられます。そして、船員の戦時の被害がこの前の第二次
世界大戦では、陸軍軍人の二〇%、海軍軍人の一六%に比べ、二倍以上に当たる四三%という高率であったということを
指摘されて、船員には戦争の悪夢が消えていないのだ、戦争が終わった後でも、いまなお
海上航行の危険は絶えない、中東アラブとかベトナム戦争とかそういう場合には
海上航行の危険は絶えなかった、これらの海域に就航する船員はその都度戦火の危険にさらされ、船舶には戦争保険が掛けられるという
状態が頻発してきたんだという
指摘をされて、とてもじゃない、シーレーンなんということはもう考えないでもらいたい、もう一遍船員が危険に落とされるようなことは考えないでもらいたい、外交による国際紛争の
解決にこそ力を注いでもらいたいという要望が出ています。
これを受けまして今度は、戦没船員遺族会の常任
理事の泉谷迪さんという人が五十八年一月二十四日の朝日新聞「論壇」に投書されまして、「
日本の海運界はおしなべて、有事の際に危険な海域へ船員が動員されることに、強い反発を示す。かりに船を徴用する体制が出来ても、船員が乗ってくれなければ何にもならない。」ということを
指摘されています。幾らシーレーンに力を入れても、いざとなったら船が動かないということになればこれは何にもなりませんね。
そこで、ここで心配しているのは、だから船員に対する強制徴用ということが考えられているのではないだろうか。「徴兵制は憲法との関連で軽々に手を下せないとしても、船員徴用制度は、
国民の目に触れないところで、徴兵制に先行し進められているのではないか。」という危惧の念を強く書いておられるのです。
これは有事立法との関連ですが、従事命令というのがありますが、それとの関連でそういうことをいま考えていらっしゃるのか、準備があるのか、一切そういうことは考えていないのか、大変これは心配しておられますが、いかがですか。