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1982-12-24 第97回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月二十四日(金曜日)    午後三時一分開会     ─────────────    委員の異動  十二月二十四日     辞任         補欠選任      伊江 朝雄君     源田  実君      亀長 友義君     梶原  清君     茜ケ久保重光君     佐藤 三吾君      中野  明君     塩出 啓典君      大川 清幸君     鶴岡  洋君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 関口 恵造君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩崎 純三君                 植木 光教君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 梶原  清君                 木村 睦男君                 源田  実君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                茜ケ久保重光君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 佐藤 三吾君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 大川 清幸君                 太田 淳夫君                 塩出 啓典君                 鶴岡  洋君                 中野  明君                 中野 鉄造君                 佐藤 昭夫君                 田渕 哲也君                 中山 千夏君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房広報室長        兼内閣官房内閣        広報室長     小野佐千夫君        総理府人事局長  藤井 良二君        臨時行政調査会        事務局首席調査        員        山本 貞雄君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        経済企画庁調整        局審議官     横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        科学技術庁原子        力局長      高岡 敬展君        科学技術庁原子        力安全局長    赤羽 信久君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省人権擁護        局長       鈴木  弘君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省体育局長  西崎 清久君        厚生省公衆衛生        局長       三浦 大助君        厚生省保険局長  吉村  仁君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        松田  泰君        郵政省人事局長  奥田 量三君        労働省労政局長  関  英夫君        自治省行政局選        挙部長      岩田  脩君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        原子力安全委員        会委員長     御園生圭輔君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十七年度一般会計補正予算昭和五十七年度特別会計補正予算の両案を一括して議題といたします。  これより中山千夏君の質疑を行います。中山君。
  3. 中山千夏

    中山千夏君 初めに総理お願いがございます。人事院勧告をぜひ完全実施していただきたいんです。これは労働者との最低の約束ですし、それから人事院にしても一生懸命仕事をしてきたわけですから、ぜひ実施していただきたい。このことについてはもうほかの議員がたくさんお触れになりましたので、お願いだけにとどめますが、よろしくお願いします。  まず最初に、外務省とそれから大蔵省にお伺いしたいと思います。  七月五日の決算委員会で、私が五十四年度の補正予算目明細書記載について改善を求めました。その論点は、当初予算書補正予算目明細書が対応していない、予算内訳が明確さを欠いているということだったんですけれども、これにどのような御答弁をなすったか、ちょっと確認させてください。外務省大蔵省お願いします。
  4. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) そのときの答弁を申し上げるのですか。
  5. 中山千夏

    中山千夏君 はい。
  6. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 「いまお話を承りますと、補正予算の各目明細書のつくり方が少し不親切ではないか、もう少しそこで丁寧に書いておけばわかるではないかと、こういうようなお話のようでございます。各目明細書は各省、この場合で言いますと外務省においておつくりになるわけでございますが、私ども外務省と御相談をしながら、なお丁寧な、どなたが見てもわかっていただけるようなものに努力をしてまいりたいと思います。」、こういう答弁をしております。
  7. 門田省三

    政府委員門田省三君) お答え申し上げます。  七月の決算委員会で各目明細書をよりわかりやすくするようにという御指摘がございました。この御指摘を体しまして、私どもは、たとえば積算内訳の欄に記載するという可能性も含めまして、わかりよくなるようにただいま検討いたしております。  ただ、この問題は全体として統一を図る必要がございます。したがいまして、大蔵省とも十分協議をさせていただきまして、御指摘がございましたように、工夫をしてまいりたいと存じております。
  8. 中山千夏

    中山千夏君 十分念頭に置いてそのように対処させていただきたいと思うというお答えを外務省の方からもいただきました。ところが、現在議題になっている五十七年度の補正予算目明細書を見ましても、やっぱり前と余り変わっていないんですよね。補正予算で初めて計上された国連兵力引き離し監視軍と、レバノン暫定軍への分担金という名目はどこにも書いてなくて、説明書の方を見ますと、これにはその名目が書いてあるんですけれども、どちらを調べてもおのおのが幾らかという内訳がわからないというふうになっているのです。これはもう少しこの予算のときに間に合わせるように改善できなかったんでしょうか。
  9. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 便宜私からお答え申し上げますが、前々からいまお話しのように、予算書とか、それから予算参考書がございますが、これをできるだけわかりやすく、また丁寧にするということについては、私どもも実はかねがね心がけてきたわけです。それは、もう申すまでもなく国会の御審議をいただくわけでございますし、それから国民財政に対する理解を深めるという趣旨からも当然工夫していかなきゃいかぬ課題なんでございます。  ただ、予算書なり予算参考書というものは一種の公文書でございまして、厳密さが要求されるという側面がございます。ですから、わかりやすくといっても余り砕けるわけにはいかないという面もございます。  それから、詳しくという点につきましては、何しろ予算政府が決めましてから、印刷して国会にお出しするまでに、本予算の場合でございますと二週間程度しかない。その間に予算書だけでも二千ページ、そのほかの書類を合わせますと四千ページにわたる膨大な書類でございますから、詳しくという点についてもやはり限界があるということは否めないと思います。  ただ、お話しのようにできるだけわかるようにということを心がけていくのは当然でございますので、今後ともその点は心がけてまいりたい。ただ、先ほど来から申し上げておりますように、やりはりある限界はあると思います。予算書だけでおわかりいただけない場合もあろうかと思いますので、そういう際には、お問い合わせいただけますれば、もう可能な限り最大限御説明申し上げるという努力をしてまいりたいと存じます。
  10. 中山千夏

    中山千夏君 指摘した問題は補正予算から出てきたもの。ですから私気にしたわけなんですね。それを具体的に後ろの方の内訳を見ますとほとんど何も書いてないんだけれども、これからはここにもう少し記載をしていくというような方向で、次の予算書からはその結果が歴然とあらわれるように改善していただけるんでしょうか。外務省からまずちょっとお伺いしたい。
  11. 門田省三

    政府委員門田省三君) 仰せのラインに従いまして努力をしてまいりたいと存じます。
  12. 中山千夏

    中山千夏君 外務に限らず、防衛庁の場合でも、総理、たとえば当初予算では陸海空と分けて記載されているものが、今度補正予算になりますと、一括して計上されているというふうなことがあるんですね。それを見ますと、やはり少し補正予算というものを何となく軽視したという感じがしないでもないわけです。全般にわたって予算書を拝見しますと、当初予算に対応していなくて、少しく不親切じゃないかという気がしますので、これからその点を改善していただきたいと思うんですが、総理の御意見いかがでしょう。
  13. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) ただいまの御指摘お話は、たとえば当初予算でございますと、国会の議決をお願いいたしますのは項という項目なんでございますが、それの説明をいたします場合に、さらに事項に分けてそれぞれその経費の性格なり、目的なりというものを記載してある、御説明申し上げておるということなんです。  ところが、補正予算段階になりますと、補正で新しくこの項目を設けた場合は別ですけれども減少したとか、あるいは少しふやしたとかいう場合には、まとめまして項一本で説明する。つまり、たとえば項の中に事項を仮に分けましても、それぞれこれは節約不用による減少であると、その次も節約不用による減少であるということを三回も四回も書くというようなことはいささか繁雑であるので、そういう場合には一本にまとめて書く、節約不用による減少であると、そういうことなんでございます。
  14. 中山千夏

    中山千夏君 技術的な問題も御苦労もあるでしょうが、財政民主主義というのは大変大切だと思いますので、今後も見ていきますのでよろしく御努力ください。  それから次に、内閣人事の問題についてちょっと総理にお伺いしたいと思います。  中曽根内閣というのはロッキード裁判に干渉するだろう、自民党政治腐敗をさらに進めるだろうというような印象を多くの人々が持っています。私自身もそういう印象を持っている一人なんですけれども、その大きなもとというのは、やっぱり人事だろうと思うんですね、一つは。  総理は適材適所というようなことを言われるけれども、どうして国土庁北海道開発庁長官加藤六月さんでなければならないのか。それから、法務大臣秦野章さんでなければならないのか、そこのところはどうしてももう一つわからないので御説明いただきたいんですが。
  15. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点は、総理大臣になりましたときの記者会見でも申し上げまして、全国民皆様にもお聞きいただいたと思います。  加藤六月君につきましては、ともかく党内におきまして八面六臂の活躍を政調会でもやるし、非常に精励恪勤勤勉家でもありますし、言いかえれば政務調査会の鬼と言われるぐらいにすべてに精通して一生懸命努力してくだすっております。いろいろ不幸な経験をされておったわけでありますけれども、しかし、これだけ力のある、これだけ一生懸命やって、何回もまたその後当選されて選挙民が支持している、こういう政治家には政党人としてやっぱり一遍はひのき舞台に出してあげて、力を試さしてみたいと。そうして国民の目の前でどの程度働きをするかということを見た上で、その上で、本当人間というものを見定めていただきたい、そういう気持ちがいたしまして、政党というものはそういうところもお互いに情を持ってつき合うのが政党ではないか、そういうふうに感じているわけでございます。  国土庁という役所は非常に大事な役所でございまして、特に災害の問題とか、地震なんかのあった場合には一番働かなきゃならぬ役所でもありますし、それから水の問題がいまや日本でも大きな問題になっております。そういう意味におきまして、力のある加藤君にお願いしたと。  それから法務大臣秦野君につきましては、すでに何回もここでも申し上げました理由でお願いしたわけでございます。
  16. 中山千夏

    中山千夏君 御説明でお二人が大変力のあるりっぱな方だということはよくわかりますし、そうかもしれないなと思うんです。だけれども、ただ二人は、国民が大いに、さっき申しましたロッキード事件に関して疑惑を抱くことは間違いない人物なわけですよね。そのことを人事をするときにお考えにならなかったですか。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ロッキード事件に干渉するなんということは絶対ありません。それは天地神明に誓って私は申し上げます。  私は、内閣首班として、総理大臣として、この内閣仕事については全責任を国会及び国民の前に持っておりまして、国民から指弾されるようなことは絶対、断じていたしません。
  18. 中山千夏

    中山千夏君 総理がそうやって保証してくださるんですから、今後そういうことがない方が私もうれしいわけです。  ところが、私がいま伺っていることは、そういう実際どうかは別として、疑惑国民から持たれるに決まっている方々なんですよね、そういう方を人事した。そのおかげで当然のことながら世論は沸きまして、国会でも物すごく問題になったわけですよ。だけれども、本来、聞いていますと、加藤さんの政治倫理性ですとか、それから秦野さんの政治家としての発言の一貫性といったようなことは、国会審議のちょっと前の段階の話じゃないかという気が私はすごくしたわけなんです。ですから、そういう話で貴重な審議時間をつぶすというのは実にもったいないし、国民に対して申しわけないことだという気がするんですね。だけれども、そういう状態を生み出す人事をあえてなすったわけですよ。そういう、はっきり言って余り高次元とは言えないような、物議を醸すような人事をどうしてあえてなすったのか、そこが不思議なんですけれども
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 世論世評というものも非常に大事でありますが、私はそれもさることながら、人間真実性というものもまた大いに大事にしなければいけないと思っておるんです。  秦野法務大臣につきましては、ここで国会に出まして何回か答弁もなすって、次第にその人物像はおわかりになっていただけておるように思っております。ともかくざっくばらんで、そしてうそを言わないで、それで真実を追求する、権力にもめげない、そういう良心を持っておる政治家である、そういうことが非常に鮮明になってきたんではないかと思います。  また、国土庁長官につきましても、水の問題やら、あるいはいまの防災計画やら、日本全体の国土計画、あるいはさらに党内運営の問題にまでも非常に努力していただいておりまして、非常に私は感謝し、高く評価しておるところであります。こういうことも次第に国民皆様にわかっていただけると思うんです。  世評に伝えられるというところにはわりあいに真実と離れた面もあります。真実をついたところもございますけれども、伝え聞いた話というものが多いわけですから、かなり離れたものもあります。  そういうものをこういう場所に立って、テレビを見ている全国民の皆さんに見ていただいて、目玉や表情まで見ていただけば、これは本当を言っているか、うそを言っているかわかると思うんです。そういうことで次第次第に真実が究明され、人間がわかってくれれば、私は理解していただけると思っておるんです。
  20. 中山千夏

    中山千夏君 見ただけで悪いかどうかわかったらすごく便利だと思うんですけれども、警察も楽だろうと思いますが。  どうもいろいろ伺っても、どうしてこう騒ぎになるような人事をしたのかというところはお答えいただけないんですね。  そうすると、人から疑われないでなおかつ適材という方が、自民党にはいなかったのかしらという気がするんですけれども
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういういわゆる世評というものと、それから本当内閣を私が首班として組織を命ぜられた場合に、どういう仕事をやるかということとの考え方であります。世評を一々気にしておったら、本当仕事はできないということもあり得る。しかし、ある程度そういう点も考慮しながらも、この内閣は何をやろうとしているか、行政改革財政再建や、対米関係の打開や、景気の問題や、そのほか、ともかく何をやらんとしているかということを考えると、力のある、そしてしかも信念を持っておる政治家を集めなければいかぬと、そういう考えに立ちまして、仕事ということを非常に重要視してやったのであります。  それで、いわゆる世評というものについては、これはここで答弁に立っていただけば次第にわかっていただける、誤解は払拭することができる、人間真実味はだんだんわかっていただける、私が見抜いて信じている程度に、あなたも国民皆様もそのうちになっていただけると私は思っております。
  22. 中山千夏

    中山千夏君 世評はできるだけ気にしていただいた方がいいと私は思っておりますけれども、ともかくいままでのお話ではちょっととても残念な人事だという気しかしないんですが、今後は国民疑惑を裏づけるような、そういうロッキード裁判に圧力を加えるような政策は絶対とらないということですか。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 絶対にとりません。
  24. 中山千夏

    中山千夏君 次に、優生保護法についてお伺いしたいと思います。  厚生大臣にお伺いします。優性保護法の一部改正を政治日程に入れていらっしゃいますでしょうか。
  25. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 中山議員にお答え申し上げます。  政治日程にのせるかどうかという非常にむずかしい御質問でございますが、優生保護法の問題につきましては、いろいろと国会でも議論があったところでございます。  私の方でも、厚生省公衆衛生審議会というのがございまして、その審議会優生保護部会というのがございます。現在そこでいろんな点につきまして御検討をいただいているところでございます。  この問題は、御質問の前になるかもしれませんけれども、いろいろむずかしい問題が私はたくさんあると思いますので、できるだけ国民全体のコンセンサスが得られるような形で話をまとめていかなければならないだろうと、こういうふうに考えておるところでございます。
  26. 中山千夏

    中山千夏君 「経済的理由」を削除するという動きが一部の自民党議員にありますけれども、どう思われますか。
  27. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 「経済的理由」というのを削除しろと、こういうふうな御意見は、いま一部の自民党議員とおっしゃいましたが、そうでなくて、もう少しいろんなところから私の方には御意見が来ておるわけでございます。またそれに、正直申しまして反対だという御意見もあります。これも現実にあります。ですから私らは、先ほど申しましたように、この問題はやはり国民の広いコンセンサスが得られるような形で解決をしていかなければならない問題だろうと、こういうふうは考えておるところでございます。
  28. 中山千夏

    中山千夏君 私が考えますには、経済大国に日本がなったから「経済的理由」は要らないんではないかというような意見がありますけれども、どんなに国が経済大国になりましても、個人のレベルでは絶対に「経済的理由」というのは明らかに存在しているんです。  改正論の主眼といいますのは、優生保護法の一部改正によって安易な、あるいは恣意的な中絶をできなくするということなんですね。この点でもぜひ広く国民のコンセンサスを得るというときに、女性の意見をなるべく中心に聞いていただきたいと私は思うわけなんです。国会でも、それからいろいろ決める場所というのはほとんどが男の方でして、もちろん男に女のことはわからないと言うつもりは全然ございませんけれども、女の体に直接起こることについてはなかなかほっと察していただけないんじゃないかと思って、それできょうこういう機会にぜひ皆さんに聞いていただきたいと思っているんです。  総理は二十二日のたしか答弁の中で、核に関して、核を使いたい首脳はどの国にもいないということをおっしゃいました。私も核に関してその点だけは意見は一緒なんです。そういう見方のできる総理であればわかっていただけるんじゃないかと思うんですが、妊娠中絶を好んでしたがる女というのはどこにもいないと私思うんです。いかがでしょうか、総理総理に伺っているんです。
  29. 林義郎

    国務大臣林義郎君) お答え申し上げます。  中山さん、お答え申し上げますが、担当でございますから。  いろいろ私はそういう御意見あると思うんです。ですから、先ほど来申し上げましたように、国民のコンセンサスをと、こういうことでございますし、これやはり母体の問題もございますし、女性の方々のいろんな御意見というのは十分に尊重していかなければならない、これは私は当然のことであろうと、こういうふうに考えております。
  30. 中山千夏

    中山千夏君 総理お願いします。
  31. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題は、社会的にも、あるいは思想的にも非常に重大な内容を包含していると思います。非常に慎重に考えてやるべきだと思います。  社会的という意味は、たとえば経済的理由とか、あるいは日本の社会のいろんな関係であるとか、そういういろんな問題が一つにはございます。それからもう一つには、人道主義的な見方、生命尊重という哲学や宗教性から考え出される問題もございます。カトリックでは、大体子供は全部産みますね。だからカトリック信者は子供が非常に多い。それはやはり、そういう宗教的信条に基づいておやりになりているんでしょう。そういう意味のかなり深いところから来ている人道主義や、宗教性という問題から来ている問題もある。しかし、また一面におきましては、これだけ複雑化して、多様化してきている現代社会という中の多様性や、複雑性というものもまた現実にあるわけでありますから、その調和をどうとるか、そういう面においてよく深く考えてやると。いま厚生省においてせっかく深く研究しておるところでございますから、厚生省における結論を見守っていきたいと思っております。
  32. 中山千夏

    中山千夏君 私の質問に答えていただけますか。
  33. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかくこの問題は非常に深い大事な問題である。したがって、よく厚生省において慎重に取り扱ってもらう、その結果を見守っておると。私ごときまだ浅い人間がここで結論を申し上げるというには大それた深い問題でもあると、そうとも感じておるんです。
  34. 中山千夏

    中山千夏君 それじゃ、中絶によって胎児は傷つきますよね、もちろん。胎児の次に一番深く体と心が傷つくのはその女性自身だと、これは同意していただけますか。総理総理お願いします。
  35. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 私が担当でございますから、私からお答えをさしてもらいます。  いまいろいろそういった問題を含めまして、胎児が確かに傷つく、それから母体に影響が出てくる、これは当然の話でございますから、そういったような問題も含めまして、いま一生懸命検討しているところでございます。
  36. 中山千夏

    中山千夏君 総理の御意見を聞きたいんです。
  37. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはやっぱり女性が体験することでございまして、中絶をするということについてはずいぶん悩まれる方もありましょうし、あるいは母体というものも考える方もありましょう。しかし、またせっかく宿った生命というものを、途中で失わさせるということに対する罪悪感というものも出てくるんだろうと思うんですよ。そういう罪悪感は、生命の尊厳性というものを神の摂理としてとって、カトリックではそういうことをやらせないようにしているわけですね。だから非常に深い問題があるわけです。そういう意味におきまして、安楽死ですらいま大きな問題でしょう、やっぱり同じような性格のものですね、生命の尊厳性に関する問題ですから。ですから、よく深く研究してもらいたいと、そう思っておるんです。
  38. 中山千夏

    中山千夏君 いまほとんど御同意いただいたように、女性自身が中絶によって非常に心も体も傷つくわけですよね。だから、安易に中絶を好んでしたがるという女性はいないわけです。だけれども、現実にはたくさんの女の人たちがあえて中絶せざるを得ないような状況に陥っているんですね。  それで、母性保護の見地から、いまもおっしゃいましたように、中絶はなくしていかなければならないと思います。ただし、核に関する総理のお言葉をかりれば、現実的な実効ある施策をとっていかなくちゃだめだと思うんです。あえて中絶せざるを得ない状態、状況に陥っているというその現実に対して、法律で中絶を禁ずるというのは、全くの実効のない、非常に安易な愚策だと私は思います。これは多くの人たちの意見です。法で禁じたからといって現実は変わらないわけです。だから、結局やみ医療ですとか、さらに母性を傷つけるような問題を増すばかりなんですね。  そういうことがあったから、それだからこそ一九七四年に同様な改正案が出されたときにも、世論の強い反対があって廃案になったわけです。いまも日本医師会を初めとして多くの団体、個人が反対を表明しています。ここにちょっと私の手に入ったところだけでも、(「賛成もいるんだ」「避妊すればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)賛成は私は一つしか知りませんけれども日本母性保護医協会それから日本看護協会、家庭生活研究会、東京都家族計画協会、日本家族計画連盟、そのほかいろいろ私聞いていますけれども、特にいままで母性保護、母子保健、婦人医療、性問題などに取り組んできたたくさんの女の人たちから強い反対の声があるんだと、この点には政府はぜひ留意していただきたいと私は思うわけです。何といっても妊娠、出産というのは女性の体と心と人生に大きくかかわる問題ですから、その問題を考える場所においては、さっきも同意してくださいましたけれども、女の人の意見をなるべくたくさん聞いていただきたい。  それから、いまやじがありましたが、避妊をすればいいんです、本当に。ですから、避妊の教育ですとか、性教育ですとかということに力を入れて、本当の生命尊重、それから母性保護、中絶の解消という方向に向かって実効のある方法をとっていただいて、決して安易な法の改正なんていうことで片づけていただきたくないと思うわけです。いかがでしょう。
  39. 林義郎

    国務大臣林義郎君) 中山議員にお答え申し上げますが、私も単に物理的にこの問題が解決される話ではない。総理も御答弁いただきましたように、非常に宗教的な問題、人の倫理の問題、そういった問題もあるわけでございます。特に一番問題になりますのは、女性の方ですから女性の方々の御意見はこれは十分聞くということは当然のことだろうと思いますし、また、やるのも単に法律でどうだこうだという話ではないと思うんです。後の看護の問題であるとか、その方がどういうふうな状況に置かれているかとか、そういった問題をやっぱり総合的に考えてやっていかなければならない。  一つには、先ほど総理からも御答弁ありましたけれども、生まれてくる子供というのは、やっぱりその人の生命の尊厳というものをたっとぶということは、私はやっぱり憲法の精神にも合致していることだろうと思うのです。そういったようなことをいろいろ考えてやらなければなりませんので、私の方もこれは慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。結論として申し上げますならば、いろんな角度から考えていかなければならない点がたくさんあるということでございます。
  40. 中山千夏

    中山千夏君 ぜひとも慎重にお願いしたいと思います。  次に、パレスチナの問題について少々お伺いしたいと思います。  去る九月十五日から十七日の間にパレスチナ難民が、千人、二千人、三千人とも言われておりますけれども、虐殺されたという事件がございました。まだ記憶に新しいことだと思うんですが、そのことについて総理はどういう御見解を持っておられますでしょうか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に大きな不幸な事件でありますし、亡くなられた方には御冥福をお祈りしたいと思いますし、そういうことを起こした加害者については大きな憤りと怒りを覚えております。
  42. 中山千夏

    中山千夏君 各国政府がこの事件の後にイスラエルに対して非難をする声明を出しました。前櫻内外相もそのような声明を出されましたんですが、安倍外相はいかがでございましょうか。
  43. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 櫻内前外相と同じような立場をとっておりますし、いま総理答弁いたしましたように、ああいう事件が二度と起こらないようにやらなければならない、こういうふうに感じております。
  44. 中山千夏

    中山千夏君 こういう事件がまだ記憶に新しいときに、従来政府の政策としては、イスラエルの生存権とそれからパレスチナの自決権の同時承認という方針を持っていましたね。それをイスラエル先行承認に転換したということを聞いているんですけれども、これかなり乱暴でちょっと奇妙に思われるんですが、総理のお考えはこの辺どうなんでしょうか。
  45. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間ジョルダンのフセイン王がお見えになりましたときに、この問題でいろいろお話をしました。私が申し上げましたことは、日本は従前どおり国連の安保理事会の決議二四二号、これを支持しますと、二四二号は、一九六七年のときにイスラエルが占領したアラブの領土は全部返しなさいと、そしてパレスチナ人の固有の民族自決権、その固有の権利を認めなさいと、そういうことを中心にしてできている考え方で、あの侵略を否定した考え方ですね。それをわれわれは支持しておりますと、まずそれを申し上げました。その後、各国がいろいろ努力したけれども、進展しないのは残念だけれども、この間フェズ憲章というものをアラブの国が集まって初めて統一的見解を出した。これを非常に高く評価いたしますと、これを申し上げました。しかし、私はレーガン大統領がこの間提案したレーガン提案というものを支持いたします、日本としては支持いたしますと。問題はレーガン提案とフェズ憲章はかなり接近してきておると、キャンプ・デービッドの線から見るとレーガン提案はかなり前進していますね。エジプトの王様のファハド皇太子が出した八項目というものに前進して、さらに前進してきつつあるわけですね、両方が。そういう意味で、この両方のレーガン提案とフェズ憲章をいかに調整するかということが、具体的にこの問題を進めていくやり方として一番いいと思いますと、そうフセイン国王に申し上げたら、非常に喜んでおられました、私もそういうふうに思うと。そこで問題は、いまイスラエルがウエストバンク、ジョルダン川の西岸地域あるいはガザ地区にどんどん入植を進めて既成事実をつくっておる、これではパレスチナ国家はできなくなるじゃないか。レーガン提案でも、あるいはフェズ憲章でも、やはりあのウエストバンクやガザ地区を中心にパレスチナ国家というものが想定されておる。それを独立の国家にするか、あるいはジョルダンとの連合国家にするか、あるいは独特の政府形態を認めた形にするか、それは今後の問題でありますね。その大事な場所にイスラエルがどんどん既成事実で植民地みたいな入植を進めていってしまえば、これは取り返しがつかなくなる。早くとめなきゃいけない。とめる力を持っているのはアメリカでしょう、イスラエルに対して。そういう意味において、アメリカのアクションをせかせるためにも、フェズ憲章の中でそういう文章があるのです。イスラエルの生存権というところについて、国連安保理事会は、中東地域のパレスチナ国家を含むすべての国家が平和裏に存続する権利を保障すると、こう書いてあるわけです。ここにあるすべての国家が平和裏に存続する権利を保障するという中にイスラエルが入っているんですかと私が質問した。そうしたら、入っていますと、ジョルダンの王様がおっしゃったんです。それじゃ、そこまでお考えになるんなら正式に明示したらどうでしょうか、そうすれば、われわれはアメリカに対しても、それだけ踏み切ったんだからアメリカはイスラエルの入植をやめさせなさいと、もっといろいろ前進することをアメリカに助言もできます、一歩前進するんじゃないですかと私は申し上げて、ただ残念ながら、PLOはPLOの憲章の中でイスラエルとの共存をまだ認めていない、イスラエルの国家の存在を認めていない、だから表に書くことはむずかしかったんでしょうねと、しかしここまで来たならば、いまのPLOの状況やその他を見てみるというと、いま私が言ったようなことをすることが問題解決へ一歩前進するんじゃないでしょうかと、そういうことをジョルダンの王様に申し上げた。ジョルダンの王様は、日本がそういうことについていままでと比べて明白な意思表示をしてくれたことを高く評価する、いままでは日本が自分の独自の見解を余り出したことかない、ここへ、東京へ来てよかったと、あなたのおっしゃったことは自分は帰ってアラブの国とも相談しましょうと、アラファト議長にも相談しましょうと、そう言ってお帰りになったと、これが真相であります。
  46. 中山千夏

    中山千夏君 けさの新聞でしたか、大使の方々の御意見ですと、同時承認が望ましいというようなことが出ていたように思うんですけれども、外務大臣としてはどうお考になっておられますか。
  47. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま総理答弁をされましたように、やはりイスラエルの生存権を認めるということと同時に、PLOの新しい国家を認めるということが、同時に行われることが日本にとっても望ましいという基本的な考え方は変わっておりません。
  48. 中山千夏

    中山千夏君 総理お話では、まずイスラエルの権利を認めたらどうかということではなかったでしょうか。
  49. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私、いまエジプトのファハド王と申し上げたあれはサウジアラビアの間違いでありました。  それから、日本の基本的立場は相互承認です。しかし、いまの目前の問題で、イスラエルが既成事実をどんどんつくってしまうことを阻止することが現実の問題として大事じゃありませんかと、ジョルダンの王様がわざわざ日本へおいでになってあれを阻止したいと盛んにおっしゃっておりましたから、それを阻止するためにも、この国の中にはイスラエルも含むと、そこまでおっしゃるならば、それをもう少し明示なすったら最も効果的に前進するんじゃないんでしょうかという、私の知恵と申しますか、サゼスチョンを王様に申し上げたわけで、もちろん同時に承認されて、そうしてパレスチナ国家、あるいはPLOもイスラエルを承認する、イスラエルもそのパレスチナ人の国家なり政府を承認する、これは同時に行われればそれでもちろん結構なんです。最終的にはそういう形になるでしょう、恐らく。しかしPLOもアラブの側もやはりイスラエルの生存権を承認するという、そういうところまで踏み切らなければこの問題は永久に解決しないというおそれを私は持っておりますから、それを進める一つの方策として王様に申し上げたのです。
  50. 中山千夏

    中山千夏君 外務省にちょっとお尋ねしたいんですが、十二月二十三日にフセイン・ヨルダン国王とレーガン大統領会談が行われたと聞いておりますが、その概要をお知らせいただけますでしょうか。
  51. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 二十一日と二十三日ですか、レーガン大統領とフセイン国王との間で会談が持たれまして、ジョルダンの中東和平における役割り等について会議が持たれたということは聞いておるわけでございますが、何といいましても、レーガン大統領とフセイン国王の間の会談でございますし、いま私がこれを明らかにする立場にはないわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  52. 中山千夏

    中山千夏君 最初にパレスチナ人の虐殺の事件の御意見を伺ったんですけれども、そういう時期的に、パレスチナ人民の虐殺が行われて、そしてイスラエルが大変非難を受けているという時期にイスラエルを認めなさいということを言い出されますと、そういうふうによそ目から見ていますと、政策が少し変わったというふうに見えるわけですね。事実そのように報道してあるものも少なくありませんし。そうすると、どうしてもイスラエルのパレスチナ難民虐殺と連動したような感じがしてしまうわけです。アメリカがイスラエルの後押しをしているんじゃないだろうか、どうも第三者的じゃないという感じかするんですね。こういう意見を持つ人は少なくないだろうし、パレスチナ人にとってはなおさらそうだろうと思うわけなんです。本当に中立の立場で平和を願う第三者国であるとしたら、パレスチナの人々をも納得させられる説明がこのことについてできなくちゃいけないと思うんですよね。それを総理にちょっとお伺いしたいんです。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おっしゃることはよくわかります。よくわかりますが、私はアラブ友好議員連盟の会長もしておった人間で、アラブの問題については一番関心もあり、またアラブのために力をかしてあげようと思っていままで努力してきた人間です。特にパレスチナ人の正当な権利を回復する、そういうためには情熱を持っている男です。一九七三年の田中内閣が官房長官声明を出しまして、この安保理事会決議二四二を支持する内閣声明を出しましたね。あの声明を出したときに私は通産大臣をいたしておりまして、あの声明を出す推進力に実はなったのであります。あれは二階堂声明と言われておりますが、それぐらい熱意を持っておる人間なんです。そのために、いまああいう虐殺が起こったことについては非常な憤りを持っておりますし、またイスラエルが軍事力に任せて、そうして余りわがままや傍若無人なことをやることについては非常に世界の厳しい批判を受けるということもよく知っておる。しかしアラブの諸国がフェズ憲章という名前のもとに全員が一致して、そうしてあの付近にある国家の平和共存を認めたということは一大前進なんですね。その中にそのイスラエルとの共存も含むという話を私は聞きましたから、そこまでおっしゃるんでしたら、お互いのみんなの努力でアメリカを督促してやらせましょうやと、これはもう一番イスラエルに言うことを言えるのはアメリカで、アメリカが動かなきゃ何にもできない状態なんですから、アメリカを動かすには何が大事かと、具体的な問題を考えれば、それは結局イスラエルと、それから両方の共存を認めるということなんですね。ところが、イスラエルの方もまた頑固ですよね。しかし、アラブの方がそこまで前進してきたなら、アメリカに次の行動を起こさして、イスラエルにわれわれが望ましい方向の行動に向けていくためには、そういうところまで出たらどうでしょうかというふうに、私の助言と申しますか、考えを御参考までに申し上げた。そういう立場から言えば、むしろパレスチナ民族の本当のためを思って、特にあのいまやっている入植を阻止するという一番大事な仕事を、眼前の問題を解決していきたい、そういう熱意から申し上げたということを御理解願いたいと思います。
  54. 中山千夏

    中山千夏君 いまのことに関連しまして、十一月中旬の前外相とマンスフィールド米大使の会談の中で、レバノン国際監視軍への協力構想というものが出てきたと聞いています。その後の経過をちょっと話していただけますか。
  55. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 櫻内前外務大臣とマンスフィールド大使のいまお話しのような会談があったことは承っております。レバノンにおけるいわゆる国際監視軍が、レバノンの平和と安定のために非常に大きな貢献をしておる、そうして再びああした虐殺事件が二度と起こらないような努力をしておるということについては、われわれも評価をいたしております。したがって、こうしたいわゆるレバノンの平和と安定に役立つために、われわれがどういう協力ができるか、日本がどういう協力ができるかということにつきまして、この会談を踏まえていま目下検討をいたしておるわけであります。
  56. 中山千夏

    中山千夏君 レバノン国際監視軍の性格をちょっと説明してください。
  57. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) お答え申し上げます。  監視軍には米国とフランスとイタリアより四千百名の兵隊が派遣されておりまして、これはイスラエルとシリア、それからPLOの軍隊がレバノンから引き揚げますに当たって、その残された地域を平和に、そして安全に保ち、九月に行われましたようなパレスチナ人の虐殺のような事件がもう二度と起こらないように、安全を確保するためのものでございます。
  58. 中山千夏

    中山千夏君 五十七年九月のいわゆる外交青書というんですか、を拝見しますと、国連の平和維持活動に関して、初めて財政面だけではなくて、平和維持活動への要員、つまり人の参加を積極的に検討するという方針が打ち出されています。だけど、国連以外の監視軍への協力ということには触れられてないんじゃないですか。
  59. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この国際監視軍は国連が派遣した軍隊ではないわけでありまして、ですから国連とは違っております。しかし、レバノンの平和と安定には大きな貢献をいましておる、ああした虐殺事件が二度と起こらないように貢献をしておるわけですから、日本としてもそうしたレバノンの安定と平和のためにどういうふうな形で協力できるかということについて、いま目下検討をいたしておるわけであります。これは研究しておりますが、私たちは何らかの形で、できればこのレバノンの平和のために協力をしたいと、こういう気持ちを持っておるわけであります。
  60. 中山千夏

    中山千夏君 それは国連以外の監視軍へも協力することに政策が発展したということなんですか。
  61. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだその辺のところがいま研究中でありまして、何としてもやはりレバノンの平和のために大きな役割りを果たしておるわけですから、日本としても何らかの形でこれに協力をしたいということですが、まだそこまで踏み切ってやれるかどうかということ等も含めて、実はいま研究しているわけです。どういう方法があるかということをいま研究をいたしておるわけですが、何らかの形で協力はしたいものだと、こういうふうに実は考えております。
  62. 中山千夏

    中山千夏君 私、すごく協力したいというの心配なんですけれども、国際監視軍への協力ということになりますと、ほかのいろいろな軍隊への協力ということに道を開いて、それが将来海外派兵というところにつながっていくんじゃないでしょうか。そういう危険はないですか。
  63. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん、わが国が海外派兵なんというのはできるはずがありませんし、また毛頭考えていないわけでありますが、しかしああしたレバノンにおける虐殺事件、大変不幸な事態が起こったわけで、そういう中でとにかく国際的にこういうことを二度と起こさないようにというので軍隊が派遣をされておるわけです。そういう中で、日本がもちろん派兵なんということは考えておりませんが、しからばどういうことでレバノンの安定と平和にわれわれが貢献できるかという道をいま研究しているわけですから、もちろん日本のこの憲法もありますし、あるいはこれまでのいろいろの原則があるわけですから、そういう原則を踏まえて、そういう中での日本の協力の道、これをいま研究しているわけです。ですから、おっしゃるように、何もこれでもって派兵をするとか、あるいは日本の原則に反したような行動を日本がしよう、こういうことでは毛頭ないということははっきり申し上げておきます。
  64. 中山千夏

    中山千夏君 こんなことを言うのはちょっと変かもしれませんけれども、いまお話に出た日本国憲法の中に私が大変好きな一条項があるんですが、それはこういうものです。   日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。  前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。  この第九条の価値判断は別としまして、この憲法に従ったら私たちは戦力を持つことできないと思うのですよ。ところが、にもかかわらず私たちは自衛隊というりっぱな軍隊、戦力を持っているわけです。つまり、法に従うのではなくて、なし崩しに法を空洞化していって、それから法を変える、法の方を政策に従わさせていく、そういう路線を軍事については政府は歩んできたんですよ。だから、いま法律では海外派兵はできません、だから大丈夫ですと言われたときに、海外派兵禁止になっているからといって安心できないと思うのですね。そこのところで私はどうしても安心できないと思うわけなんです。だから、まず国連軍の人員派遣というのが海外派兵を禁ずるというものをなし崩しにしていって、そしてそれがもう第一歩であって、それから今度国際軍というものに協力していくというのはもうその第二歩なんじゃないかという気がするわけなんです。そうじゃないという保証を外務大臣、それから総理にしていただきたいと思います。
  65. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中山議員は少し思い過ごしをされているのじゃないかと思いますがね。  われわれがいまのレバノンの国際監視軍に対して何らかの形で協力をしたい、こういうことを言っておるのは、何も派兵をするというようなことは毛頭考えておらないわけで、日本はもうそういう意思は初めからないわけでありますから。ただ、レバノンのいまの現状を見ますと、やはり世界の諸国が何としてもレバノンに平和と安定をよみがえらせたい、こういうことですから、そのために日本も平和的な手段、平和手段によってやはり何らかのこのための協力はしなきゃならぬ、こういうふうに考えて、その方法をいま検討しておるわけですから、いまおっしゃるようなそういう協力が軍事的な、あるいはまた海外派兵といったものに結びつくものでは決してないということははっきり申し上げておきます。平和的な、平和手段によって私たちはあくまでも海外に対する協力は進めるわけであります。この基本原則は変わっておりませんし、今後も変わらないわけであります。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 外務大臣が申し述べたとおりであります。
  67. 中山千夏

    中山千夏君 最後に、企業経営が苦しいときに、まず企業では大幅に広報費を削るというふうに聞いています。思い切って政府も、財政難ですから、広報費を削ったらどうかという提案をしたいんです。テレビ、週刊誌、新聞などの意見広告は一切やめた方がいいんじゃないかと私は思います。  この理由の第一は、国民政府の意見広告を歓迎していません。それから第二には、福祉や教育と違って、広報費を削っても国民は少しも痛まないんです。それから第三には、マスコミに政府の意見広告が出なくても国民はちっとも困らないんですね。  だから、いろいろなところを苦労して削っていらっしゃるようですけれども、ここは大変国民を痛めなくて削れるところですから、これをお削りになったらどうかと……
  68. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 中山君、時間が参りました。
  69. 中山千夏

    中山千夏君 提案をいたします。総理はいかがお考えですか、これが最後です。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これは中山さんのお言葉とも思えない御質問だと思うのです。この情報時代におきまして、マスコミュニケーションを通じてわれわれの真意やらあるいは商品を宣伝するというのは非常に重要なことです。来年は国連はコミュニケーションイヤー、そういう年にもなるので、いかに情報というものが大事になってくるかというときです。私はわかりやすい政治、国民に語りかける政治ということを言っておりまして、われわれの方からむしろ新聞やあるいはテレビを通じてわれわれの考えをお伝えし、聞いていただく、そういう積極的努力をしなけりゃならぬので広報費は非常に大事な費用である、そう思って、国民の皆さんはよく見ていらっしゃると確信してやみません。
  71. 中山千夏

    中山千夏君 ありがとうございました。
  72. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で中山千夏君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  73. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、野末陳平君の質疑を行います。野末君。
  74. 野末陳平

    ○野末陳平君 私は、農産物の自由化、それからサラリーマン減税、それから医療費の抑制支出というようなことで質問したいと思います。  貿易摩擦の解消に関して、非常に総理初め政府の皆さんがいろいろと御苦労なさって、前向きの案も幾らか出てきました。非常に評価します。しかし、これからの米国との交渉の焦点になります牛肉、これが気になりまして、この牛肉自由化の見通しを総理はどのようにお持ちになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  75. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農林大臣にお答えさせます。
  76. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 牛肉の自由化の見通しでございますが、ただいまアメリカと協定しておるのは一九八四年まで協定しておるわけでございます。それから先どうするかというお尋ねと思いますが、まだ相当期間もありますので、ひとつその時期になりましてから、国内牛肉の生産の状況、それから需要の動向、そういうものを勘案して決定いたしたい、こう思います。
  77. 野末陳平

    ○野末陳平君 八四年までの時期はまだあるけれども、しかし方針を決めるのは急がれるわけなんですね。  そこで、総理、聞くところによりますと、米国事情の視察からお帰りになりました松永外務審議官ですかが、あなたに報告した内容に、日本がかなりの、みずから痛みを感じるぐらいの思い切った措置をとらないと日米関係は大変だというような報告をなさったということを聞いているわけなんです。総理の口からもうちょっとそれを具体的に内容を教えていただけますか。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ヨーロッパ及びアメリカを回って、いろいろ報告を、その結果を聞きましたが、日本の市場開放を強く要望しておる、そして向こうが関心を持っておるアイテム、対象というものは、牛肉やらオレンジやらあるいはたばこやらビスケットやら、あるいはチョコレートやらウイスキーやら、そのほか幾つかのそういう品物を挙げまして、向こうが一番関心を持っている品物はこれらの品物でございますと、そういう説明がありました。
  79. 野末陳平

    ○野末陳平君 徐々に前向きな案を政府も打ち出していることはいいんです。しかし、牛肉にこだわりますのは、やはりこれは最大の問題ですし、これがいずれは自由化に踏み切らざるを得ないのもわかっているわけですから、早く態度を決めるということの方が当面の日米関係、とりわけ来年のレーガン大統領との会談についてもやはり僕は必要であろうということなんで、もちろんアメリカの要請で言うのじゃありませんね、国民の間にも、多くの国民はこの牛肉の自由化ということを非常に望んでいるわけですよ。なぜ政府が頑固に自由化に踏み切らないのかと、その案を出さないのかというのを不思議に思っている国民もかなり多いんじゃないかと思われるくらいですね。  そこで、いまの農水大臣のお答えでしたけれども総理、八四年から先のことなんですが、しかしまだ時期が早いからそのときになってというのでは遅いわけですね。これはもう日米関係をお考えになればわかるわけですよ。そこで総理、担当ではないようなお顔で農水大臣を御指名なさいましたけれども、どうでしょう、総理が大切になさるこの家庭の団らんというのは当然安い牛肉が必要なわけですから、となりますと、総理はこの自由化の見通しを御自分ではどうすべきだとお考えになっているか、それが聞きたいです。やはり総理のお考えが一番大事です。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) できるだけ早期に市場開放をやるべきであると、これが自由貿易を一番とうとぶ日本の基本的態度であると、そう思っております。  牛肉等につきましても、しかしアメリカ側の要望はよくわかりますし、また消費者の御希望もよくわかりますけれども、一面において牛を飼っておる農民のことも考えていかなきゃなりません。この人たちの生活もまた大事な政治の対象でもあります。そういう点を考えてみますと、アメリカのテキサスであのカウボーイが何千頭という牛を追いかけて飼育している姿と、日本の場合は一頭とか三頭とか、そういうものを家族経営的に本当に家族同様に育てているところとは全く環境が違うわけですね。それらの人々も日本国民で、また牛肉の供給に協力してくれている方々なのであります。それらの人の立場を無視しては政治はできないわけなんです。  そういう点も考えながら、どういうふうにして日本の消費者と、それから外国の要請と、日本の大事な農家の立場と、こういうものを調和させるかという点で政府は脂汗をいままでしぼってきたわけで、それを簡単に外国の皆さんがおっしゃる、あるいは消費者の皆さんがおっしゃるからといって、農家の声を無視して政治を行ったら穏当を欠くことになると思う。その調整をどういうふうにしていくかということでいままで努力もしてきたし、今後も努力を継続していくということだと御理解いただきたいと思います。
  81. 野末陳平

    ○野末陳平君 全くそのとおりだと思いますよ。私の郷里も農家ですけれども、ミカン農家が多いですから、それは簡単に無視して消費者の立場だけで言うと、そういうことはできません。しかし、調整に汗を流していらっしゃるんですが、できるだけ早期にと言うけれども、そういうようなあいまいな表現がだんだんできにくくなる環境ですね。となると、できるだけ早期にと言いながらも、具体的な検討を当然していなきゃならぬわけです。  そこで、私は農水大臣に改めてまた聞きますが、自由化ショックを当然避けながら段階的なプログラムで農家の立場も考えていかなきゃならぬわけです。そこが政府の頭の痛いところですが、牛肉について言えば、たとえば輸入枠の拡大を毎年二〇%ずつということで五年先と、これは八四年以降ですがね、こういう案がある。これだったら実現可能ではないかと思うんですが、いかがですか。
  82. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 先ほど総理からもお答えしておりましたが、日本のいわゆる牛肉生産農家というのは四十五万戸、相当規模の生産を拡大しております。毎年生産が伸びておる。こういう状況を見まして、輸入を年次計画でこれから数量を決めて何年先にというような目標を立ててこれを実行に移すということは、やはりわが国の農民を大変圧迫して生産にせっかく活動しておるのが動揺を来す、こういう心配がありますので、もうしばらく需給の動向を見てこの問題は結論を出していきたいと、このように考えています。
  83. 野末陳平

    ○野末陳平君 そういうあいまいな――苦心のところはわかりますが、あいまいな対応策でアメリカの方が来年あたり納得すると思われますか、総理
  84. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) われわれは、いまの消費者あるいは牛を飼っておる農家、それからアメリカあるいは外国と、そういうような三つの間の関係を全力をふるって調整して、そして市場開放の方向に一歩ずつ前進していきたい、誠意を持って努力していきたい、こういう立場を持っておるのでありまして、一朝一夕にしてこういう農業問題、牛という生命を扱っておる、一年に一回しか子供を産まない、そういうものを機械生産と同じように急に物を変えるわけにはいかないのであります。その間の調整をわれわれは誠意を待って今後も努力していきたいと思っておるのであります。
  85. 野末陳平

    ○野末陳平君 ただ、その場合に国内の農業問題にとらわれる余り、国益を損なう心配もあるので、その辺を早急にというお願いなわけですね。やはり、これはアメリカの保護貿易の機運も高まる、あるいは何か貿易部門の報復措置もあるとかいろんな心配もあるわけですから、そこであえて具体案をできるだけ早く出すべきだと、その一歩ずつ前進も早く前進という必要があるように思うのです。  そこで外務大臣にお聞きするんですが、いま農水大臣は具体案については非常に消極的なんですが、これ外務省に、何か非公式だとはお聞きしましたけれども、専門家に委託して、市場開放を具体的にどうするかというような報告書があるということを聞いたわけですね。そしてそれには、私がいま言いましたように牛肉の場合は毎年二〇%ずつの輸入枠を拡大していって五年後に制限を撤廃すると、こういうような考え方も示されているやに聞いたわけなんですが、これは外務大臣はちゃんと参考になさっているわけですか。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまアメリカが日本に対して農産物の自由化、特にビーフ、オレンジ等については非常に自由化を強く求めておるわけであります。そういう中にあって日本のこれからの農業、特に畜産業が一体どうなっていくか、そういうことを前提としまして外務省で、私の前任者の時ですが、学者に、わが国において完全に自由化をした場合に一体わが国の農業はどうなるかということを実は研究をしてもらいました。その詳細な資料が出ていることは事実であります。しかし、これはあくまでも参考の意見でありまして、これから日本とアメリカがテーブルに着いてこの農産物の交渉等を始めるときにおいても、一つの参考意見として、参考の資料として供したいと思うわけでございますが、しかし、わが国の基本的な農産物に対する態度はいま農林水産大臣が申し上げたとおりであります。
  87. 野末陳平

    ○野末陳平君 政府の現在における基本的な態度は大体わかるんですけれども、しかしながら、外務大臣に重ねてお聞きしますけれども、いま市場開放は損得を超えた政治問題ですから、開放したから金額的にとか貿易面でというよりも、やはり政治問題としてとらえなければならないということになりますと、やはりこの日米関係を険悪にしないためには、賢明なる外交というのは、いまの学者の報告書もこれも一案でしょうが、外務大臣もかなりこの農産物の自由化というものに積極的になって総理の方にいろいろとアドバイスなさる方が、どうでしょう、大局から見てプラスだと思うんですがね。ちょっと外務大臣の答弁は物足りないんですが……。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) わが国のいまの経済摩擦に対する基本的な態度は、これは申し上げるまでもなく、いま世界にとうとうと起こっておるところの保護主義というものをいかにして抑圧するか、そしてやはり自由貿易体制というものを世界で堅持していかなければならぬと、これ以外に日本としては生きる道はないわけですから。そのために、日本としていろいろと諸外国から閉鎖国家であるとかなんとか言われております、市場開放しろと強く求められておりますので、日本としてできる限りの市場の開放は進めていかなければならない。そうしなければ保護主義を抑えることはできないという基本的な立場に立って現在市場開放を積極的に進めておるわけでございます。  そういう中にあって、いま農産物の問題は大きな課題として浮かび上がっておるわけでございますが、われわれは、たばこについても、あるいはビスケット、チョコレートについても、関税の引き下げ等についても非常に厳しい中で苦しい中で大いなる決断をしよう、こういう段階にもきておりますし、また、その他の農産物についてもできるだけの関税の引き下げあるいは枠の拡大等もすでに合意を用意しておるわけでございます。そして、最後に残るのがビーフあるいはオレンジでありますが、これは、日本農業と直接大きな関係を持つ課題でございますから、日本農業というものも考えながらこの問題に対応していかなければならない。アメリカは自由化を強く求めております。しかし日本の場合、それじゃすぐそれに応じられるかどうかというと、やはり国内体制はそこまできていないということで、しかし何らかの努力をしていかなければならぬ。こういうことで、いま全体的に日米間でもテーブルに着きあるいは日本とEC間でも協議をしようと、こういうことでございます。  全体的にはいま申し上げましたような基本的な考え方、しかしわが国にはわが国の立場があるわけでございます。やはり引けない一線もあるわけでございますし、農業はわが国だけが保護しているわけじゃなくて、世界じゅうが農業について保護政策をとっております。アメリカも、アメリカ農業に対しては保護政策をとっております。ECも補助金まで出して外国に輸出するという非常な保護政策をとっているわけですから、世界じゅうが農業については保護政策をとっているということも、私はやはり日本の農業を考える場合に、あるいは日本の農産物の市場開放を考える場合にやはり国民の皆さんに知っていただいて、その上に立っての判断をしていかなければならない、こういうふうに思います。
  89. 野末陳平

    ○野末陳平君 これからもがんばっていただくという以外にありませんので、できるだけ早期に、それと同時に、やはり日米関係というのが非常に重大だということだけをお願いして、それから次に……。  そう言えば総理は、私が思うところ、いままでの総理と比較するのは失礼ですが、わりとはきはきいろいろとおっしゃるんで、好感は持つんですが、やっぱり一番聞きたい自由化ということになると、憲法とか防衛のようにはきはきなさらないから残念なんです。  この間、所信表明演説がございましたね、衆議院で。あの後に法務大臣と田中元総理が本会議場で握手なさったでしょう。あれはごらんになっていましたか。
  90. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は議場の方を見ておりましたから知りません。
  91. 野末陳平

    ○野末陳平君 私はもう新聞で見たんですよね。だから事実であることは確かなんですけれども、さてここが問題なんですね。ごらんになってなくてもその事実はわかるわけで、私は新聞で見た。そしてちょっと驚いたんですが、総理は、その握手の事実をどういうふうにお感じになりましたか。どんなお気持ちでしたか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この間、そういう質問秦野さんにありまして、秦野さんからそのときの心境やら、状況の説明がありました。それを聞きまして、ああそういうことだったのかと思いました。
  93. 野末陳平

    ○野末陳平君 ぼくは、法務大臣のあれを残念ながら聞いておりませんので。
  94. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 聞いてください。
  95. 野末陳平

    ○野末陳平君 でも、総理のお考えの方が大事なんで、秦野さんを煩わすこともないんですが、もし総理からでしたら、じゃ改めてお聞きしましょう。
  96. 秦野章

    国務大臣秦野章君) 本会議場で、すぐ私の前の席で、ぽぽっとこう出てこられて、こうやられたんですよ。嫌だ嫌だよと、こうやった方があなたいいとおっしゃるかもしらぬが、人間というものはそんなものじゃないだろうと。本会議場にちゃんと議員としていらっしゃるし、嫌だ嫌だと、私はそれはできない。できない方が人間だと、こう思うのでございます。
  97. 野末陳平

    ○野末陳平君 道で握手するならばそのとおりで、それは確かにその方が人間的ですよ。だけれども、公人としての立場というものもあるわけですから、そこが永田町の感覚と世間の感覚の違いだろうと思うのですよ。ということは、大事なことは、そういうことがどういう印象を与えているか、それが中曽根内閣に対して誤解を招くとかえって損だということであえて総理にお聞きしているので、たとえば、求められれば嫌だなんて言えないとおっしゃられるけれども、ここは場が違うじゃありませんかということは言えなくはないですね。永田町感覚ではいいでしょう、当然だ、人間らしいじゃないかと。だけれども世間では、必ずしもそうとってないですね。やっぱり不見識じゃないですか、あれは。ちょっと軽率で無神経じゃないかと思いますよ。やはり田中元総理は刑事被告の座におられる。そして法務大臣は法の最高責任者ですね。そうすると、いかに個人的おつき合いといえども人間味の表現とはいえども、そこで握手をするということはこれはどうでしょうか。ちょっとオーバーな言い方になるかもしれませんが、やはり国会という場をわきまえていないじゃないかと、本会議場ですからね。それからやはり三権分立ということに対して大胆不敵な挑戦ともとれますよね。ですから私は、ここで総理に強調したいことは、国会とか永田町とかという狭い世界ではそれはあたりまえの感覚で通るかもしれませんけれども、世間の人はそう見ませんよ。その辺のずれというものは、政治に信頼を持ってもらう、これから財政再建で大なたをふるおうという場合に非常に大事なことですね。そのずれを問題にしたいので、総理は、どういうふうに感じられたか。まあまあ普通だなと思うのか、ちょっと困ったことだと思ったのか、不愉快だ、腹が立つと、その辺がお聞きしたかったんですよ。どうでしょう、あなたの見解は。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御当人たちは、無邪気な気持ちで自然でおやりになったんだと思いますけれども、もし社会に誤解を与えているとすればそれは遺憾でございます。
  99. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは、他人事みたいなお答えではちょっといただけませんね、やっぱり。無邪気でといって、あなた、立場というものがある、お互いの。まあいいでしょう、それは。もう個人的なことだと割り切るならば割り切るでいいですが、誤解を与えていますよ。ですからこういう誤解が積み重なるから、やはりあなたが内閣を組織するに当たって、結局は仕事内閣と言うけれども、実態はそうじゃなさそうだということをますます裏づけていくので損なんですね。ですから、庶民感覚というと非常に抽象的な言い方ですが、その辺のことも余り永田町感覚だけで物事はいい悪い判断しない方がいいんだろうと僕は思っているわけです。これは勝手な僕の総理に対するアドバイスだととっていただいて結構ですから。  さて次に、サラリーマンの減税についてお聞きしたいのです。  今回、減税が見送られたことは特にサラリーマンにとっては非常にがっかりすることだろうと思いますよ。そこで減税なんですが、所得税減税――一般的な減税も必要なんですけれども、私は、やはりもうこの際サラリーマン減税というものを本気で考えなければ、これからの税のあり方はもう考えられないと、こういうふうに思うのですよ。トーゴーサンという言葉がありますけれども、あれに象徴されるように、サラリーマンのこの税の不公平感ですね、これはもう無視できませんね。あくまでもこれは不公平感なんですね。ここが問題なんですね。税理論から言うといろいろ問題がある。それから不公平不公平と言う人に一人一人聞いてみると、何か不公平か本人でもよくわからないというところもありますが、不公平感というものがサラリーマンには物すごい勢いで充満している。  そこで、大蔵大臣の前に当局にお聞きしますが、サラリーマンの中には自分たちは必要経費を認めてもらってないと勘違いしている人もいるくらいなんですよ。  そこでこの給与所得控除というものをちょっと深めてみたいのですが、この給与所得控除というのはサラリーマンだけにある制度ですけれども、勤務に伴う経費と、こういうふうになっていますね。いわばこれは必要経費だと、大ざっぱに、こういう解釈でよろしいですか。
  100. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) わが国の所得税法におきます給与所得控除は、従来政府税制調査会での公的な制度の意義づけにおきましても、まず一義的には勤務に伴う必要経費の概算的控除である、同時に勤労性所得でございます給与所得と他の所得との負担の調整という点も加味されておると、こういうふうに説明されております。
  101. 野末陳平

    ○野末陳平君 とすると、まあ必要経費プラスアルファというようなのが給与所得控除だと思いますが、さて、これがどのぐらい認められているかと、こういうことが問題なんでして、給与所得控除が、たとえば年収三百方円のサラリーマンでは一体幾ら認められていて、それが年収における比率は何%になっているか、それを当局に……。
  102. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 年間の給与収入三百万のクラスでございますと、控除額が百五万円、割合は三五%でございます。
  103. 野末陳平

    ○野末陳平君 サラリーマンとほかの業種を同列に比較することはもう無理がありますけれども、それを承知であえて言いますと、いまの年収三百万円で必要経費――まあこれ給与所得控除、これが百五万円、三五%というのは、ほかの自主申告でも大体三五から四〇ぐらいの経費率で認めてもらえますから、まあまあ妥当な必要経費だと思うんですよ。  そこで大蔵省、次は四百万円、五百万円、八百万円と年収が上がるに従って、そのサラリーマンの給与所得控除はどうなっているか。ですから四百、五百、八百と、この三つだけをいまのように給与所得控除額と率とこれでお示し願います。
  104. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 私のいま手元にあります資料は二百万刻みになっておりますので、ちょっとお許し願いたいんですが、五百万の場合でございますと割合が二九%、それから二百万円刻みでございますから、七百万円になりますと二五%でございます。
  105. 野末陳平

    ○野末陳平君 額は。
  106. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五百万の場合が百四十五万円、七百万の場合が百七十五万円でございます。
  107. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなりますと、三百万ぐらいの年収のサラリーマンだったらまあまあほかと比べても特に問題はないんですけれども、年収が上がるに従ってだんだん給与所得控除認められているというけれども、必要経費という考え方からすると、ちょっとほかと差があり過ぎるんじゃないかと。たとえばいまの大蔵省のお答えですが、五百万円で百四十五万円の給与所得控除――まあほぼ必要経費とするとこれが二九%であると、七百万になると二五%に落ちていくということは、ほかの自主申告の人たちは節税もいろいろ工夫できますが、なおかつその上に必要経費というものがやはり三五%、四〇%ぐらいは認められている、白色の場合だってそうなんですから。それに比べると、やはりこれは必要経費プラスアルファが給与所得控除であるという定義づけで言うならばやや低い、年収が上がれば低過ぎる、これは負担がきついであろうと、こういうことが言えるんですね。ただ、この私の意見は、ほかの職業とサラリーマンを同じく経費がかかるものだという前提に立っていますから若干無理はありますが、しかしだ、やはりどうでしょうかね。ほかの職業では経費は実額で出したりしますから上がっていく、年とともに。ところが、サラリーマンの場合のこの給与所得控除は、四十九年から全く引き上げがなされていないわけですから、どうやらここの辺がそろそろ引き上げてしかるべき段階に来たのだと、こう思うんですね。  大蔵大臣、このサラリーマンのために、これは給与所得控除引き上げによるサラリーマン独自の減税になってしまいますけれども、この引き上げはもうやるべきだと。どう思いますか。
  108. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまの野末さんの御主張、まあかねての御主張だと私も承知しております。まあ最近よく、このいわゆる給与所得控除という問題のみでなく、よく、独身貴族に熟年こじきとか、あるいは若年天国熟年地獄とか、まあそういうような言葉が使われております。そういう言葉の中に私も、いま御指摘のことが盛られておった事実は私も読んだことがございます。ただ、税調答申におきまして現行の給与所得控除、これはまあ給与所得者の勤務に伴う経費を概算的に控除するという御点から、かなり高い水準にまで達しておるという意味におきましては、いまこれを直ちに変えようという考えはございません。
  109. 野末陳平

    ○野末陳平君 それは給与所得控除が必要経費とプラスアルファの、このアルファの部分ですね、ここをやはり重視すべき時代もあるわけですから、いまはお考えがなくても、このアルファの部分には負担の調整というところもありましたけれども、やはり何と言ったって不公平感の解消というところを含めないとまずい。これはまあ額としては、私なども簡単に試算してしまえば、標準世帯で年収五百万のサラリーマンで給与所得控除を二十万円ぐらい引き上げますと、所得税が三万何千円かは安くなりますし、住民税にはね返りますから、まあまあの減税ですね。もちろんサラリーマンだけに減税するということがいいとは思えませんから、その辺の問題もあるし、それから同族法人などは家族みんなに給与所得控除を認めていいかどうか、これはもう大変な不公平が別に生まれますから、私は簡単にやれと言うんじゃないんですが、ここのサラリーマン層の不公平感を何が何でも解消するために思い切った手を少々無理でも打たないとこれからの税のあり方は考えられないんじゃないかということがまあ聞いていただきたいところなんですよ。何たって理屈どおりに割り切ってくれりゃいいけれども、しかしなかなか納税者はそうはいきませんから。  そこで、改めて、まあこれから本気でひとつこのサラリーマンの減税というものを、一般的減税と大きな枠の中で一緒でもいいんですが、考えてほしいということをじゃ要望しましょう。これならば少し前向きのお答えいただけますか。
  110. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは所得税制全体の中で、まあ先ほど申しましたようないろいろな批判もございますので、私はやはりいわゆる累進税率の問題でございますとかただいまのような問題というものは、当然絶えず私どもの検討する念頭にあらなければならぬ問題であるという認識は私にもございます。
  111. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあひとつ、減税は次の脱改正と一緒にまたいろいろ議論をしたいと思いますが、時間なくなりましたからね、厚生大臣に来ていただいて、医療費の抑制の支出という、これ一番大きな財政再建の問題ですからね、これをと思いましたけれども、この時間ではもうできませんので、次回に譲らしてもらいますから。  そこで、あと残りの時間で大蔵大臣は、続いて、例のグリーンカードがどうやら、この例の五年延長するというあの法案が、議員立法の、どうやらこの国会では成立しそうにありませんから、とすれば来年からは実施の法律がこれはいま生きているということになる。と、交付を求められたら出さなきゃならない。国民だって、グリーンカードやるのかやらないのか、延長法案が宙づりなんですから、これはもう混乱と迷惑の極ですね。そこで、どうしろこうしろとは言いませんけれども大蔵省としては、納税者が混乱を来たさないようにしかるべき手を早く打たないとまずいですから、それだけの用意はあるでしょうね。それをお聞きしておきます。
  112. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いまおっしゃいました、いわゆる延期法案が成立しなかった場合に起こるであろうもろもろの予測される混乱ということに対して、何か対策を立てるべきである、あるいは現在あるであろうと、もう考慮しておるのじゃないか、こういうことでございますが、それは私は貴重な意見としてそのことは承っておかなければならないと思っております。ただ、いま国会はまだ開会中でございます。そうして、現に議員立法で法律案そのものは提案されておる。そういう場合に、立法府に対する行政府の態度としての私なりの定義づけをしてみますと、やはり法律案が通るであろう可能性に対する期待感、あるいはそれは期待権とも言えるかもしらぬ、そういうものが残っておる時点において、このようなことがだめになったらかくしますという前提においての答弁というものは、やはり国権の最高機関に対する行政府のあり方としてはコメントすることは避けるべきじゃないかと。やはり、いまや国権の最高機関の意思決定を静かに見守り、そして可能性の期待権の中にわれわれが存在しておる、こういうふうに理解すべきではなかろうかというふうに思っております。
  113. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあいいでしょう。  それならば聞きますが、グリーンカードは、これはもうなくなるという前提でなくて、いいですか、ここで何とかしたいと思った不公平なある部分がありますが、このグリーンカードにかわる代案というものをもうお考えで、そしてこれがあればこそグリーンカードが延長になっても大丈夫だということになるのかどうか、その代案についてだけお聞きしましょう。
  114. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 可能性の期待権の範囲内においてその代案というものを申し上げるのは、たとえば国会が閉会になる、じゃ一分前には言えるのかとか、あるいは三十秒前には言えるのか、まあかつては時計をとめてやったこともあるというようなことを考えますと、その期待権の存在する限りここで代案を申し上げるというのは非礼に当たるんじゃないかと、こういうふうな感じがしております。
  115. 野末陳平

    ○野末陳平君 何か落語の大家さんの話みたいで、もう本当に困っちゃいます。
  116. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 野末君、時間が参りました。
  117. 野末陳平

    ○野末陳平君 はい。  じゃ最後に厚生大臣、医療費の抑制支出で今後一番重点の課題、これをお答え願って終わりにします。
  118. 林義郎

    国務大臣林義郎君) せっかくお話があるときょう思っておりましたのですが、時間かないから残念だというお話でございます。  私は、医療費というのはいままで非常に伸びてきている。特に私は老人医療費が非常に伸びてきている点は考えていかなければなりませんし、先国会におきましても老人保健法というものができまして、健康を中心としたところの保健制度からいろいろやっていこう、健康を保っていく、予防を図っていくということが私は一つあると思うのです。そういったような物の考え方というのは、私は医療費抑制のやっぱり基本だろうと思います。やはり国民が健康でなければならない、豊かな充実した家庭の中で健康に暮らしていくというのは私は一番基本なことで、われわれが考えていかなければならないことだろうと思うんですよ。しかしながら現実にはやっぱりいまでも十三兆円という医療費があります。それをやはりいろいろな形で抑制をしていく。そうすると医療を需要する方、いまのわれわれの方ですね、診療を受ける方の側。それの方の問題もありますが、供給をする方、その方の問題でいろんな点が私は直していかなければならない点がたくさんあると思います。医療費を統合的に見直しをしていこうということを臨調答申もございまして、私たちはいま進めておるところでございますが、実際の診療に当たられるところのお医者さん、病院その他の問題についてもいろんな手を打って、医療費が効率的かつ合理的に支払われるようなかっこうというものは考えてまいらなければならないと思います。  特に老人の問題につきましては老人保健法の施行が来年の二月ということになっておりますので、いろんな点老人というのはやっぱり病気にかかりやすいということもございます。しかし現状を見ますと入院をしておる患者が非常に多い。これはやはり通院に変えていくとか、あるいは在宅の治療にしていくとか、在宅の健康ケアをうまくやっていくとか、そういったことを総合的に私は考えていく施策をとっていくべきではないだろうかというふうに考えております。
  119. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で野末陳平君の質疑は終了いたしました。  暫時休憩いたします。    午後四時三十四分休憩      ─────・─────    午後七時四分開会
  120. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度補正予算二案を議題とし、昨日に引き続き、勝又武一君の質疑を行います。勝又君。
  121. 勝又武一

    ○勝又武一君 まず、労働大臣にお伺いいたしますが、去る十二月十一日の与野党国対委員長会談におきまして合意された事項につきまして、閣僚の皆様の御理解も一層確認していただくために、ひとつ正確に読み上げていただけませんか。
  122. 大野明

    国務大臣(大野明君) お尋ねの十二月十一日の与野党国対委員長会談の合意事項をお読みいたします。  一 仲裁裁定については、政府は裁定通り完全に実施することとし、十二月十四日議決する。   なお、年内支給を可能にするため、労使が直ちに配分交渉に入るよう指導する。  二 政府は労使の自主交渉に対し介入するつもりはない。  三 労使交渉で決定した結論に政府が異議をはさむことはない。  四 なお、自民党といたしましても、政府をして期末手当の労使交渉が促進されるよう環境づくりに努力するものとする。  五 人事院勧告については、各党代表責任者会議を促進し、その結果を尊重する。  以上でございます。
  123. 勝又武一

    ○勝又武一君 仲裁裁定の年内支給と、この労使の配分交渉、その現状についてお聞かせください。  なお、政府が労使の自主交渉に介入したような事実がありましたら、そのことも御報告ください。
  124. 関英夫

    政府委員(関英夫君) お答えいたします。  仲裁裁定実施のための配分交渉の状況でございますが、電電公社、林野、印刷、造幣、アルコール専売、以上は配分交渉の結果妥結いたしまして、年内に支給する予定ということになっております。国鉄、専売、郵政は交渉中と聞いております。  それからなお、年末手当のお話がございました。年末手当については、この配分交渉前に、各公企体等におきまして、支給月数分については妥結いたしておるわけでございますが、この仲裁裁定実施後の貸金で計算した年末手当にするかどうかについて、現在労使交渉中でございます。  なお、私どもといたしまして、政府がこれに干渉しているというようなことは聞いておりません。
  125. 勝又武一

    ○勝又武一君 電電公社はいないみたいですよ。待ってます、総裁来るまで。――真藤総裁に来たところすぐお伺いをいたしますが、大変御苦労さまです。  いま労働省からお話聞きましたが、電電公社の場合の仲裁裁定の実施状況につきましてお伺いをいたします。特に諸手当の問題について、夏の手当等についてどういう状況かひとつお聞かせください。
  126. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答え申し上げます。  労使関係で、この間御指摘がありましたとおり、本給分につきましては労使交渉で結論が出まして、細部の精算を含めまして一月中には支払いすることに話がつきまして、いま事務的に進行中でございます。  期末手当につきましては依然として労使交渉、別の労使交渉を進めておりますが、私、まだ時間がたちませんのでよくわかりませんけれども、長い間のいろんな労使間の歴史があるようでございまして、まだ結論を得ず、労使間で激しい交渉をしているというのが現状でございます。
  127. 勝又武一

    ○勝又武一君 郵政省はいかがですか。
  128. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 仲裁裁定、御決議をいただきまして、十二月の二十一日に当局側の配分実施案を組合に提示をいたしたところでございまして、それに基づきまして現在交渉中でございます。  なお、六月のボーナス、それから十二月のボーナスにつきましては、当時の情勢のもとで、いわゆる仲裁裁定以前の旧ベースで妥結をいたしまして、それぞれ支払い済みでございます。
  129. 勝又武一

    ○勝又武一君 公社と郵政と両方にお伺いしたいのですが、夏期手当に関する協約というのがあると思うのですが、それは六月一日現在においてその者が受けるべき俸給自衛、扶養手当、調整手当などの合計額、いわゆる基準内賃金に決められた割合を乗じた額とする、こうなっていると私は思うのですが、両方ともいかがでしょうか。
  130. 奥田量三

    政府委員(奥田量三君) ただいま六月、十二月のボーナスの協定そのものを持っておりませんが、その趣旨はただいま先生おっしゃいました、おおむねそのようなものであると考えております。
  131. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は逓信委員長をやっておりましたときに、ちょうど逓信委員会ですからよく覚えているんですけれども、前郵政大臣は完全実施をするということを明確におっしゃっていたんです。いつこういうように変わっちゃったんでしょうかね。旧ベースでやるなんていうことは、どだいこの協約から言っても生まれてこないはずです。新ベースになってその旧ベースとの差額をなぜ払うという交渉がスムーズにいかないのでしょうか。去年まではいってたはずですね。この点、それぞれ公社と郵政両方お聞かせください。
  132. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 大変申しわけないのでございますが、過去の経緯について私もつまびらかにしないのでございます。  ただ、今回は私どももいろいろ考えたわけでございますが、六月及び七月期における国家公務員一般職のボーナスの支給状況等を統合的に勘案いたしまして、この際は旧ベースということで、組合側には当局側の考え方を提示をいたしておるという段階でございます。
  133. 勝又武一

    ○勝又武一君 公社。
  134. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) さっき申し上げましたように、労使関係のいろんな独自の事情でもつれておりますものですから、まだ結論できずにおるわけでございます。
  135. 勝又武一

    ○勝又武一君 どうも真藤総裁にしては私ずいぶんおかしい、お悩みになっていらっしゃる答弁のようにお聞きをするんですがね。きのうはずいぶん公社を褒められておりましたしね、閣僚の中でもそれに大賛成の向きもあったわけですよね。どうしてことしだけこんなになっちゃっているんですか。どうも私は政府が介入しないと言いながら、いろいろ介入しているんじゃないかということを、ここにちょっとあるんですけれどもね。労働大臣にお聞きしますけれども、さっき介入していないと言ったけれども、どうなんですか、本当に介入していないのですか。
  136. 大野明

    国務大臣(大野明君) お答えします。  いずれにいたしましても、政府が介入すべき問題じゃございませんので、私どもといたしましては一切介入もいたしておりませんし、また同時に介入したということも聞いておりません。
  137. 勝又武一

    ○勝又武一君 労働大臣が介入していないということになりますと、官房長官にお伺いしますけれどもね、あなたの方で何か介入していることはありませんか。
  138. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ボーナス交渉は、これはもう当然労使間の話し合いで決めることであって、政府がこれに介入をするというようなことはございません。やっておりません。
  139. 勝又武一

    ○勝又武一君 それではお伺いをいたします。官房筋のきわめて重要な方が、それぞれ各当局に対して次のような電話での、率直に受ける方は指示と受け取るでしょう、こういう文面です。ボーナスについては六月期及び十二月期ボーナスの算定ベースについてその改善は行わないもの、つまりベースアップのボーナスへのはね返りはない、すなわちボーナス算定のベースは昨年度ベースと承知している、こういう電話の指示をしているというように事実を聞いているんですけれども、そういうことは官房長官のところでは承知をしているんですか。それともいないのですか。
  140. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 官邸の重要な人物というのはどなたか承知しておりませんが、私はそういう具体的な指示をなさったということは聞いてはおりません。
  141. 勝又武一

    ○勝又武一君 公社の方も郵政の方も、私は非常にさっきの答弁ではおかしいと思いますね。何らかのものがなければ、昨年と全く同じはずなんです。本来国会の議決は昨年と同じだった。違いますか。
  142. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私も公企体等のボーナス交渉で、新ベースでなくて旧ベースで交渉をやっておるというような話は聞いております。しかしながら、政府の方から具体的に旧ベースでやんなさいよといったような、いわゆる官邸筋の指示ということをやったということは私は聞いておりません。
  143. 勝又武一

    ○勝又武一君 そんなことを聞いているんじゃないのです。去年の仲裁の議決とことしの仲裁の議決が同じかどうかということを聞いたんです。そのことに答えてください。
  144. 関英夫

    政府委員(関英夫君) お答えいたします。  仲裁裁定の内容につきましては、労働組合員の基準内賃金の四月一日以降の引き上げを裁定として出しているものでございまして、額なり率は年々違いますかもしれませんが、その性格といいますか、そういうものは去年もことしも同じでございます。
  145. 勝又武一

    ○勝又武一君 総理にお伺いします。同じですよね、いまお伺いのとおり。去年とことしと全く国会の意思は同じ。そして、郵政と公社に聞きますとね、言外にあると私は思うのですよ、完全実施したいという。ところが、そうならないということになると、もう何らかの介入があるとしか考えられない。しかも、私のところには具体的にこういう電話指示をしたという官房筋の話がある。この点がもし本当にそういうことがあったら、総理としてはどういう責任をとっていただけますか。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 労使の自主的交渉で決められるべきものでございまして、そのようなことはないと確信しております。仮に干渉がましいことがあれば以後注意させます。
  147. 勝又武一

    ○勝又武一君 以後注意ではなくて、この指示は取り消していただけますか。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 指示しているということはないと思っております。
  149. 勝又武一

    ○勝又武一君 総理のいまの最初の答弁と後の答弁と、このことについて総理が知らないからそうおっしゃったと思いますが、これについては、官房長官に伺いますが、官房長官の手元で、特に重要な人物ですから確かめてはりきりしていただけますか。
  150. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 事実の有無について調査をいたします。
  151. 勝又武一

    ○勝又武一君 事実の有無について調査をして、事実であったらそのことは具体的にどういうように各当局に対してそれをしていただけますか。
  152. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) まず事実をよく調べまして、そして、その事実の有無その他わかりましたらその段階で検討したいと、こう思います。
  153. 勝又武一

    ○勝又武一君 自信を持って一番おしまいまではっきり言ってください。私はちょっと耳が遠いものでよく聞こえないんです。
  154. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 事実の有無をよく調べまして、そして、その内容がわかりますから、それがわかった段階において検討をいたします、御返事をいたしますと、こういうことです。
  155. 勝又武一

    ○勝又武一君 それではこのことは最後に官房長官お願いしておきますけれども、具体的でしたら各当局に対して官房長官が責任を持って、こういう事実はない、こういうことは誤りである、そのことを明確にしていただく、そのことがいま言っている意味だというふうに私は理解をしておきます。  それから次の問題ですが、本年の三月十日本予算委員会のことでありますので、特に中曽根総理と安倍外務大臣にお聞きしたいんですが、経済見通し五・二%は余りに高過ぎる、こうわが党がこれは徹底して追及をいたしました。これに対して政府答弁は、機敏で適切な経済運営に努める、そういうことをやれば五・二%の成長率は可能だ、こういうように答えたというように議事録には書いてありますけれども総理と安倍外務大臣は御記憶がございますか。
  156. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 当時通産大臣をいたしておりまして、大分日本の景気さらに国際的な景気も悪くなっておったわけでありますが、わが政府が、当時の政府が五・二%という見通しを立てましていろいろと対策を進めておった段階でございますし、そう私たちはこの見通しは努力すれば実現ができるものと、こういう判断に立った見通しでございますので、あらゆる努力をしていかなきゃならない、そして見通しの経済成長を果たしたい、こういうことで答弁したわけであります。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は当時行革三昧でおりましたので、そういう答弁をしたかどうかいまのところはっきりいたしません。しかし、速記録に載っておればしたんであろうと思います。
  158. 勝又武一

    ○勝又武一君 中曽根現総理は行管庁長官だけではなかった、副総理格でしたよね。そして安倍外務大臣はまさにおっしゃるように通産大臣、だからお聞きをしているんです。そこでお二人とも、機敏で適切な経済運営に努めるということを、具体的に四月から九月末までの間にどういうようになさいましたか。
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず公共事業の前倒し七七・三%、これはやはり経済見通しを実現していくためには公共事業を前倒ししなきゃならぬということで当時の政府として思い切った措置をとったわけでありますし、当時私は通産大臣をしておりまして、やっぱり民間の設備投資を推進しなきゃならぬということで、電力であるとか、あるいはガスであるとか、そうした民間の設備投資の主力の業界に対しまして、五十七年度の民間設備投資の前倒し等の推進を要請したことを記憶いたしております。
  160. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのころ河本さんが経済企画庁長官をしておりまして、前倒しであるとか、そのほか諸般の政策を推進しておられまして、私もそれを信頼して、いけるだろうと思っておった次第であります。
  161. 勝又武一

    ○勝又武一君 それにしては十月の八日と十月の二十九日の閣議決定は私は納得できませんね。機敏で適切な経済運営というのは全くおろそかだった。特にいまのお二人は、私はむしろ政争に明け暮れていた向きもあるというように思いますよ。そういう意味では本当に、五・二%を三・四%に下方修正せざるを得なかった、そしてそのためにきわめて大変な六兆一千四百六十億に及ぶ税収の不足を生じた、そういう責任は私はお二人にずいぶんあるというふうに考えるわけですけれども、その点の反省はいかがですか。
  162. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 内閣は連帯して責任を負いますから、こういう結果が出ましたことは反省しなければならぬと思っております。
  163. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま中曽根総理がおっしゃいましたように、私たちも全力は尽くしたわけでございますが、輸出入等も低下をいたしましたし、個人消費、設備投資が思うようにいかなかったということで経済見通しの実現ということが不可能というふうに判断をしたわけで、したがって、その後、十二月八日に総合的な経済対策を推進する、こういうことになったわけでございます。その点においては私も非常に残念に思っております。
  164. 勝又武一

    ○勝又武一君 本年度の税収見込みが三十六兆六千二百四十億、それに対して六兆一千四百六十億という膨大な税収不足、それと比べますと一%は六百七十一億ですね、だから私はやっぱり逆さまだと思うんです。前内閣の重要閣僚であった総理と安倍さんがそういう責任をお感じになって、遺憾だとおっしゃるなら、まず先にそのことの責任を明らかにされてからこの一%を削ると言うならまだ話はわかる。あなた方はそのことの責任は何もいままで明確にされていないんじゃないんですか。そして一%を削る方は、六百七十一億を削る方は、当初予算にちゃんとのっていた、それを何ら国会には相談もなしにお削りになった、これは一体どういうことなんですか。
  165. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはやっぱり私が大蔵大臣に就任いたしましてから、その責任において提出した予算でございますので、私からお答えするのが当然かと思います。  要するに給与問題につきましては閣議決定が行われて、とにかく昭和四十五年以来のいろいろな問題を尊重して討議しながらも、最終的に諸般の厳しい財政事情のもと、とにかくその痛みを分かち合っていただこう、こういうことでそれが決定された、こういう前提に立ちますならば、これはやはり給与改善費ということで上げられた一%は減額補正するというのがいわゆる財政民主主義のたてまえ、そのものを提出して御審議いただきますことが筋ではなかろうかと、このように考えております。
  166. 勝又武一

    ○勝又武一君 それは全然答弁になりません。私は、六兆一千四百六十億もの膨大な税収不足を生じた責任をまず明らかにしなさいと。そしてそれが明らかになってから国会に対して、四月にちゃんと決めてもらったけれども、六百七十一億はまことに申しわけないけれども削らせてくれと、こういうことを言うのが筋じゃないかということをお聞きしているんですから、そのことに答えてください。
  167. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 税収不足をもたらしたということに対しましては、そのことも素直に、国際経済情勢の急変、経済の停滞に基づきまして、その影響を受け、歳入がそのような見込みどおりに入らなかったということも素直に提案をいたしまして、それらの措置についての内容を盛り込んだ予算を御審議いただいているわけでございますから、六兆と六百七十一億とのその金額の相違はございますが、国会で御審議いただいておるということについては、財政民主主義のたてまえ、御理解をいただけるように精いっぱい御説明し、お願いするが筋ではなかろうかと考えております。
  168. 勝又武一

    ○勝又武一君 公務員の組合等に十分話をしなかったということについては遺憾だったと反省されていますね。しかし私は、国会に対しても、いまになってこういう時間にこんなことをやっているんじゃなくて、もっと早くいろいろの手だてを政府としては講ずべきじゃないんですか。そういうことをなさいましたか。
  169. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに、御指摘をいただきますならば、この予算案そのものはこれは前内閣時代にすでに編成が終わっていましたとはいえ、提出する事前にその内容について関係方面へ御了解をいただくような、いわば事前の根回し行為とでも申しましょうか、あるいは誠心誠意ある態度を示すことに竹下大蔵大臣は欠けておったと思います。
  170. 勝又武一

    ○勝又武一君 全然誠意ある反省もされていないし、責任もとられていない、そう私は断ぜざるを得ません。三権分立ということを総理もおっしゃいましたけれども、まさに国会軽視ですね、あなたのやっていらっしゃることは。これは猛省を促しておきます。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですが、補助貨幣回収準備資金というのは現在幾らございますか。
  171. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 流通残高が約一兆一千億ほどございまして、預託されておる分が一兆円余でございます。
  172. 勝又武一

    ○勝又武一君 補助貨幣回収準備資金、これはいままでに運用益はどのくらい生まれていますか。
  173. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 御質問が非常にむずかしい質問でございますが、いままでというのを一年ということでお答えさせていただきますと、大体、六、七%で回っておりますので五、六百億というような感じでございます。
  174. 勝又武一

    ○勝又武一君 いままでにこの資金から取り崩したことはございますか。
  175. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 記憶でございますが、戦前四回ほどございます。
  176. 勝又武一

    ○勝又武一君 戦後。
  177. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 戦後は昭和四十五年以降オーバーフロー分を国庫の一般歳入に上げております。
  178. 勝又武一

    ○勝又武一君 この補助貨幣回収準備資金については、再三、いままでの予算委員会大蔵委員会等でも、こういう金に使うべきだと特に野党が追及をしていると思いますが、そういうときに政府はどういう答弁をいままでしておられますか。
  179. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 貨幣の信認を維持するために預託されておるもので、取り崩すのは必ずしも適当ではないんじゃないかということをいままで申し上げております。
  180. 勝又武一

    ○勝又武一君 大蔵大臣に伺いますが、この六百七十一億を削る前に、四・五七%を実施するには約三千三百八十億ですか、およそその程度。そうすると、その差額の二千七百億ぐらいはこの金を使えばできる。そういうことをなぜおやりになりませんでしたか。
  181. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) その財源につきましては、目下五十八年度予算編成の過程におきまして有力な税外収入源としていま部内で折衝中でございます。したがって、五十七年度にこの一過性のものをどのようにして使うかという議論も必ずしも詰まっておりませんでした。これを崩せば一遍きりとでも申しましょうか、したがいまして、今後、もう迫っております予算編成作業の中で、五十八年度予算編成におけるいわゆる税外収入の有力な財源として検討をしておる、こういう段階でございます。
  182. 勝又武一

    ○勝又武一君 一過性という意味ならば、人勧の五十七年度分に使うのも五十八年度の一般会計に入れるのも同じではないですか。
  183. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 一過性のものだから何に使ってはならない、何に使うべきであるという定義は、それは必ずしも成り立たないと思います。各般の事情を検討いたしまして、今日いままでは、できるだけ使うべきものでないという答弁に終始しておりましたが、新たなる税外収入源として五十八年度にさて手を着けようかと、こういうことのいま検討の段階にある。だから、これに使ってこれに使えないという性格のものではないという御指摘に対してはそのとおりであると思っております。
  184. 勝又武一

    ○勝又武一君 新聞報道によりますと、この一兆三千億から一兆円を五十八年度の一般会計に入れるんだ、こういうのが出ておって、何か、あしたじゅうにはそれを決めるということで新聞報道もございますね。そこで私はわからない。五十六年度までは、減税のこういう金に使えとか、こういう金に使えとか、ここにあるんじゃないかということを言ってきた。五十七年度は、二千七百億の財源があれば人勧が完全実施できる。この金に使おうとすれば使える。それにもどうしても使わない。それなら、五十八年度も使えない、使わないというのが筋じゃないんですか。何で五十七年度は使わなくて五十八年度になると一遍に使えるんですか。
  185. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、やはり先ほど理財局長から答弁を申し上げましたように、この種の財源というものについては、これが運用益を生めばオーバーフローしたものは国庫の歳入にもなってまいった経験、経過もございますので、できるだけやはり温存したいという気持ちが今日まで続いてきた。いま検討の対象にいたしたということは、事ほどさように五十八年度予算編成に当たって、歳入歳出両面に対していろいろ厳しい査定を行ってまいりますに当たりましても、歳入を考えますときに、残念ながら一過性とはいえ有力な税外収入として検討をすべき対象に今日なることに対して踏み切らざるを得なかったと、こういうことであります。
  186. 勝又武一

    ○勝又武一君 蔵相にお伺いしますが、外国為替資金特別会計、これはいま現在幾ら残っているんですか。
  187. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 五十六年度決算で積立金が二兆六千五百億程度ございます。片や外国為替等の繰越評価損というのが二兆九千億程度ございます。
  188. 勝又武一

    ○勝又武一君 この外国為替資金特別会計も何らの法律の改正を経ずして使えますね。この中からわずか二千七百億の人事院勧告の財源に充てようということをなぜおやりになれなかったんですか。
  189. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) ただいまお尋ねの点は、積立金ではなくて運用益、その年々の運用益の一部を一般会計に繰り入れる道があるじゃないかと、こういうお尋ねでありますが、外国為替特別会計の運営に支障のない範囲において、実は五十七年度の当初予算で二千億一般会計に繰り入れたわけでございます。これは五十六年の決算を見込みまして、運用益の中から支障のない範囲で繰り入れたわけでございまして、すでに措置済みでございます。  五十七年度以降の話がどうなるかというのが今後の問題として残されているわけでございまして、それ用に五十七年に使うということは目下の段階では考えられない、こうお考えいただいていいと思います。
  190. 勝又武一

    ○勝又武一君 大蔵大臣に伺いますけれども、全然おかしいでしょう、いまの答弁。五十八年度の、あした決まるという中には、この中からも四千億回そうとなさっていらっしゃる。違いますか。
  191. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 五十八年度予算の編成に際しまして、特別の税外収入をいろいろ検討をしていることは事実でございます。外為会計の運用益につきましても検討していること、これまた事実でございますが、これはつまり五十七年度に実現するであろう運用益を、それを五十八年度に使うということでございまして、五十七年度に使っちゃうという話ではないんでございます。
  192. 勝又武一

    ○勝又武一君 それはおかしい。それは全然おかしい。納得できませんね。竹下さんほどの方が、あした決めようとなさっている中に四千億入れようとするんでしょう。少し知恵を出せばこれは十分できる財源ですよ。しかも、法律的にこのことをやれないという根拠は一つもない。やっぱり本当に私は、人勧の六百七十一億を削るときの気持ちが、そういうことを本当に財源を勉強、検討されなかった、真剣に。その反省もない、冒頭申し上げたように。本当に反省をしていて、何としてもこれはやらなくちゃならぬと、人事院総裁も何回もお答えになっていらっしゃるように、どうしたってこれやらなくちゃならぬものだという気持ちがあれば、私はこの外為の金からも、さっきの補助貨幣の方からも、どっちからでも二千七百億くらいはひねり出すことは十分できたと、そう思いますけれども。いまでも間に合うわけです。そういうお気持ちにはなりませんか。
  193. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 総論としての御質問はわからぬわけじゃございませんが、この外為の運用益の問題、確かに長らくいろいろ議論して、五十七年度当初予算編成のときの税外収入として、五十六年に生じた運用益をもって充てたと、これは事実でございます。したがって、やはり外為の運用益というものを、私も定かでございませんが、年度当初に取り崩すということについてはいささか疑問がございます。したがって、いわゆる一過性のコインのお金とかいうものとは若干性格を異にするものだというふうに私は理解しております。
  194. 勝又武一

    ○勝又武一君 この両方とも五十八年度には使おうとされている。補助貨幣回収準備資金の方を五十七年度の人勧に使えないという、この法律的根拠がございますか。
  195. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 補助貨幣回収準備資金は、もし取り崩そうと思えば回収準備資金制度そのものを再検討しなければならない、先ほど加藤理財局長がお答えしましたように、貨幣の信認維持のために必要な制度として構築されているわけでございます。その辺の検討も必要なわけでございます、制度そのものをどうするか、それはいま検討中なんでございます。その結論が出まして五十八年度に使えるかどうかということになるわけでございまして、その場合にそれじゃ今後の貨幣回収準備資金制度はどういうふうに維持していったらいいかということもあわせ考えていかなきゃならないわけでございます。  それから、いずれにいたしましても、いま御議論になっております貨幣回収準備資金を取り崩す問題とか、あるいは外為会計の利益を、決算上のこれ利益でございますから、決算してみなきゃはっきりしないわけでございますが、そういうものを入れるという問題、これはいわば、先ほど大臣からお話がありますように一過性のものと申しますか、臨時的な収入でございます。恒常的な経費の財源に充てるには適当でない財源ではないかというふうに考えております、財政の節度という面から。もしも臨時的な支出がありまして、それを臨時的に埋めるために集めるというならば許されるでありましょうが、恒常的な財源、ことしはその財源があるけれども来年はその経費が続くものに対して、来年はその財源はなくなっちまうと、そういうことで適当であろうかという問題があろうかと思います。
  196. 勝又武一

    ○勝又武一君 中曽根内閣は、国民にわかりやすい政治ということをおっしゃっていますね。私はできるだけ、専門家の話でない、国民にできるだけわかりやすいように私もお聞きしますから、お答えをいただきたい。  これは法律で言えば造幣局特別会計法ですね。造幣局特別会計法に基づいた補助貨幣回収準備資金、これはいまおっしゃったように、もしそれを検討して変えるということになるなら、何で五十七年度の人事院勧告には使えないけれども、あした決めるという五十八年度の一般会計に使えるんですか。もう使うということを決めているんじゃないですか、あなた方は。まずそこがわからない。だから、逆説的に言えば、五十八年度の一般会計に使えるくらいならば、五十七年度の一般会計、つまり人事院勧告の三千三百七十億、そのうち六百七十億があるから、あと二千七百億をそこから持ってくればいいんだから、何でそのことができないのか。この造幣局特別会計法というのを変えなければ、検討なんということを言っていますけれども、違うんじゃないですか、あなた方がおっしゃっているのは。納得できませんよ。
  197. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) いずれにせよ法律改正が必要なわけで、現行法そのままでやれるという問題じゃございません。先ほどから申し上げておりますように、臨時的な収入を経常的な経費の財源に充てるということには私どもは抵抗を感ずるわけでございます。
  198. 勝又武一

    ○勝又武一君 五十八年度の一般会計に使うためにも法律改正をやると。そうすると、五十七年度の人事院勧告に埋めるためにも――これはまさに今年度だけでしょう。皆さんの方も五十七年度だけ、何か初めは凍結と言って、きのうは大蔵大臣は見送りとかと言いましたね。そういうようなことを言っていた。だから、これはまさに五十七年度分だけでしょう、どうしてできないんですか。もしそれができないと言うなら財政法に基づく法律的根拠を明らかにしてください。
  199. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これはできるできないを法律的根拠で明らかにせよという趣旨のものでは私はないではないかと。これは法律改正をいたしますならば、まあいたさなければならないであろうという前提と、そうしていわゆる補助貨幣の信用維持のためには、さればいかなる裏づけが必要かということも総合的に検討をした上で、コメ印、予算関連法案として当然御審議をいただかなきゃならぬ問題である。それがもっと早くやれば使えないことはないではないかと、この議論はそれはあり得ると思うんでありますが、やはりいま主計局長は抵抗を感ずるという表現をいたしましたが、それらのまさに臨時的措置による一過性の財源というものを恒常的な財源のほかに使うということには、私もやはり予算編成の当事者としては抵抗を感じております。法律上それは絶対できませんと、法律を変えればこれは可能なものであるということは委員指摘のとおりでありますが、それをいわゆるベア財源に充当するにはその財源の持つ性格から適当であるとは判断しがたいと、このように考えます。
  200. 勝又武一

    ○勝又武一君 これでは国民は全くわからないと思いますよ。五十八年度の一般会計には使えるんだ、また皆さんは使おうとしているんだ、この一兆を補助貨幣から、それから外為の方から四千億、これは五十八年度だけでしょう。五十八年度は七兆にも及ぶ大変なことだから持ってこようとなさっているわけでしょう。そうですよね。五十七年度の人勧の私が主張している約二千七百億持ってこいということと、どこがどう違うんですか。全く同じじゃないですか、その点は。
  201. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは歳入歳出両面の議論をしてまいりますと、されば災害復旧に要する経費のテンポをおくらして人件費に使えばいいではないか、そのような議論にもまた通ずる議論でございますので、ある意味におきましては、政策選択の順位の勝又委員と私どもの見解の相違と、こう言わざるを得ないのかなと、このように考えます。
  202. 勝又武一

    ○勝又武一君 それを一番初めから言えばいいんですよ。政策選択の順序だと言うんでしょう、政策選択の順序だと。  総理にお伺いします。政策選択の順序から言ったら、最優先するのは人事院勧告ではないんですか。
  203. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのことそのものがやはり政策選択の順位のいわゆる判断基準における見解の相違と、こういうことを申し上げるべきではなかろうかと思います。
  204. 勝又武一

    ○勝又武一君 これで私は一つはっきりしたと思うのは、こういうことだと思うんですよ。いままでは財源がない、財源がないから人勧はやれないと何回も言ってた、総理もね。これは本会議でも総理おっしゃいましたよ。ところが、財源があるというのがはっきりしたんだ。財源はあるんだけど、政策選択の順序だと言うんだ。ここですよ、僕が一番お聞きしたいのは。財源があるのに、政策選択の順序として、五十八年度の一般会計は赤字だから、その一般会計に一兆四千億埋めるんだ、だけど人事院勧告は五十七年度やらなくたっていいんだ、こういう政策選択の順序だ。片一方では人勧というのは憲法違反だ、何回も人事院総裁もお答えになっている。こういうときにそういうお話が出ているんですから、私はことで人事院総裁にお聞きをしたい。こういう事態のときに人事院総裁としてはどういう御意見をお持ちになるのか、御見解を承りたい。
  205. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 人事院の給与勧告に関する重みにつきましては、いままで繰り返して私から申し上げてまいりました。したがいまして、この勧告というものは尊重をしていただかなければならない。過去においてもそのことは一般に御了解をいただいて、四十五年以来ずっと完全実施ということできておる。そういう厳然たる事実がございます。そういうものを踏まえて、これはやはり勧告を出した限りは尊重をしていただかなきゃならぬということを繰り返し申し上げておるところでございます。
  206. 勝又武一

    ○勝又武一君 総理にお伺いをいたします。  重ね重ね人事院総裁の見解が表明をされております。そして、いままで繰り返し繰り返し議論をされておりますのは、憲法で規定をしたこの権利の代償機関としての人事院勧告、それは最も尊重しなくちゃいけないものだ。そして、これはもう繰り返しませんけれども政府も完全実施を約束をしてきた、国会におきましてね。そして、総理は財源がないからできないんだということをおっしゃってきたんだ。ところが、いま財源はあるんだ。政策選択の順序だと、こういうところへいま差しかかっているわけですから、私はこれは総理総裁として、夕べは総裁としてということをお聞きしましたけれども、まさにそのとおり、総理総裁として、これは最優先して人勧をこそやるべきでないか、それをこそ総理としては選択をすべきでないか、そう思いますけれども総理の見解はいかがですか。
  207. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 勝又さんの御意見はよくわかります。しみ通るようによくわかるんです。われわれの方も、公務員の皆さんの給与の問題については、もう夏以来ずいぶん会議も重ねまして検討も加えてきたところでございます。それで、何しろ六兆一千億円というようなどえらい赤字が出ましてまことに申しわけない情勢でもございます。そういう中にありまして、どういうふうにしたらいいのかと考えまして、結局は一部は赤字公債に頼ってそれを消さなきゃならぬ。また、昨年の欠損については減債基金まで使わなければならぬ、そういう財政的にはいままでにないようないろいろな苦労をしてまいりまして、何とかつじつまを合わしてきた。率直に申せばそういうことになってきた。こういうことは財政運営全体から見ればまことに申しわけないようなやり方であります。そういういろんな面から見まして、日本財政状態というものは、前総理が声明を出したぐらいに非常にむずかしい事態にもはまり込んでしまいまして、そういう面からいたしまして、公務員の皆さんに対してめんどうを見てあげる当然の仕事もやむを得ずこれはできないと、そういう決断を下さざるを得なくなった。そこで、残念ながら一%をほかに使わしていただく、そういう形になって、ともかく財政を切り抜けていくという苦労をしておるわけでございます。そういうときに、なるほど補助貨幣の回数準備金というようなものは、あなたが御指摘になるとおり、あることはあるのでございますけれども、しかし、国の財政全般というものを考え、また臨調答申等にもよりまして、赤字公債をできるだけ減らしていく。前内閣におきましても五十九年度までに赤字公債脱却をやる、そういう声明、約束をやりまして、そういう観点から補正予算というものも実は組まれて、できるだけ減らす、また五十八年度におきましても引き続きその精神を堅持していく、こういうことで、自民党内閣としては一貫してその精神を堅持していくということでやってきておるものでございますから、そういうことを全部考えてみまして、この際はやむを得ず公務員の皆さんに御迷惑をおかげする、しかし、財政をできるだけ健全にする、そういう一貫した約束に対して、国民の皆さんの方に、これは残念ながらそういう方向で遂行していかなきゃならぬ、そういう考えに立ちまして、前総理も私も決断をいたしまして御迷惑をおかけしている、こういうことなのでございまして、その点はぜひ御了承、御理解をいただきたいと思う次第なのであります。
  208. 勝又武一

    ○勝又武一君 全然私の質問に答えてない。お答えください。真正面に答えてください、私のお聞きしたことに。
  209. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 勝又さんは、その金があるのになぜ公務員の方に使わないのかと、端的にそういうふうに御質問なすっているわけであります。こちらの方は、内閣といたしまして、赤字公債からできるだけ早く脱却していく、そういうことも公約いたしまして、財政を健全化する、このピンチを切り抜ける、そういうような配慮もございまして、そしてやむを得ずそっちの方にそのお金を使わしていただく、そういう選択をしたということではないかと思うのでございます。
  210. 勝又武一

    ○勝又武一君 私はこのことを徹底してお聞きをしたいんです。しかし、大蔵大臣は政策選択だとおっしゃっている、金はあるけれどね。総理はいま、赤字公債をなるべく早く脱却したいとおっしゃった。残念ですけれども総理がそうおっしゃると、私はここを聞かざるを得ない。  現在赤字公債の残高は総額幾らですか。――ごめんなさい。赤字公債じゃない、両方で。建設国債と赤字国債の両方で幾らになりますか。
  211. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 今回の補正予算案でお願いしている分を含めますと、ことしの年度末には公債全体で約九十七兆、赤字公債約四十兆という残高に相なります。
  212. 勝又武一

    ○勝又武一君 数字ですからもうちょっと大きい声で言ってください。  建設国債と赤字国債は、その内訳は幾らですか。
  213. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 四条債、すなわち建設公債が五十六兆、それから特例公債が四十兆余りでございます。
  214. 勝又武一

    ○勝又武一君 総理が赤字国債からの脱却ということをおっしゃいましたので、重ねていまもう少しお聞きしますけれども、償還計画をされておりますね、大蔵省が。いままでの資料の中でお聞きしますから、五十九年度、六十年度、六十三年度、六十四年度、六十五年度、その間の建設国際と、特例公債とおっしゃっているけれども、赤字国債と言った方がわかりいいから赤字国債と言いますけれども、この両方で計画は幾らになっておりますか。  それから、六十四年と六十五年の赤字国債の償還計画、これは幾らですか。
  215. 加藤隆司

    政府委員加藤隆司君) 本年の二月の予算委員会に御提出しております資料がございますが、最初の御質問でございますが、五十八年から六十五年まで四条公債が六十七兆六十九百億でございます。特例公債の償還額のトータルが二十七兆五千七百億でございます。  それから、将来の三年次ほどの御指摘でございますが、六十三年度の四条公債の償還額は十一兆、特例公債が三兆四十、六十四年度が十兆、特例公債が六兆二千、六十五年度の四条公債は十兆一千、特例公債が七兆一千でございます。
  216. 勝又武一

    ○勝又武一君 続いて六十四年と六十五年のその間の国債の利子は幾らになりますか、年間。
  217. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 六十四年の利払い費は九兆、それから六十五年の利払い費も九兆というふうに見込んでおります。
  218. 勝又武一

    ○勝又武一君 これ以外に、総理、もう御存じだと思いますけれど、建設国債の借りかえとの差額の現金償還額、これが約一兆円ありますね。そうしますと、償還の方だけで、赤字国債の償還だけでも七兆、それにいまの建設国債の現金償還額が一兆、利息が九兆、十七兆ですよね。これが、十七兆というのが六十四年、六十五年に続く。  そしてもう一つ申し上げたいのは、いま赤字国債を減らすとおっしゃいましたけれど、皆さんの検討されている五十八年度予算を見ましても、来年度も赤字国債が七兆、建設国債が六兆五千億、十三兆五千億ですね。これは毎年一兆五千億ぐらいずつ五年かかってやっとゼロになりますね。仮に一兆五千億ずつやったところで五年かかる。来年は一兆五千億減らす計画はないでしょう。去年の二兆二千五百億を返すというのがありますからね、去年の借りた分が、五十六年度の。これを返すのにやっとやっとでしょう。そうしますと、総理がおっしゃっている赤字国債の返済というのは最も早く一兆五千億ずつ返しても六十三年ですよ。そして六十三年、六十四年、六十五年というのは、いま私が指摘したように十七兆ぐらい返さなくちゃならぬわけです。総理が言うように、五十七年の人事院勧告節約することが赤字国債につながるということは、この数字をもってしても全く違う、全然違う話なんです。そんな十七兆なんというものを減らすのはもっと別の方法をやらなければ減らないんです。そこは、私はこれは全く違うというふうに指摘せざるを得ませんよ。  もう一つ、これで時間もありませんから総理に伺いますけれど、総理は行管庁長官で行革に命をかけると、こうおっしゃっていますね。そして歳出規模を減らすんだとおっしゃっている。五十兆規模でも、よく言われますように、国債と地方交付税を引きますと、これは大蔵大臣にもお聞きしたいんですけれども、両方にお聞きしますけれども、大体三十二兆ぐらいでしょう、歳出規模は。国債と、いま言った償還額なり、利息なり、地方交付税、竹下さんがよく聖域とおっしゃるそれを抜けば、一般歳出規模は三十二兆。この三十二兆から最高三十五兆ぐらいの歳出規模のうち、私はやっぱり歳出で五兆、六兆を減らさなければ、総理が言うようにならないと思いますよ。そういうことができますか、総理総理が行管庁長官として歳出を削るというんだから、歳出の三十二兆の規模で五兆、六兆削る方法をひとつ国民にわかりやすく教えてくれませんか。防衛戦は削らないと言うんでしょう。ふやすとおっしゃるんでしょう。
  219. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先ほど来の答弁で若干舌足らずの点がございましたが、私がたびたび一過性というようなことを申し上げました。確かに、私どもが、いま、さきにも御指摘のございました五十六年度の国債整理基金への繰り戻しが五十八年にございますので、それらが念頭にある一過性の対象であるというふうにお考えいただきたいと思います。  それから、いま一つはこの赤字国債の問題でございますが、これはここで議論するまでもなく、建設国債というものは要するに後世の納税者に対しても資産が残る、赤字国債というのはまさに後世の納税者に対しての借金と、結論から言うとそういうことになります。したがって、財政の健全性からしてまずこの発行額を少しでも縮めていこうと、こういうところからきておるわけでございます。  そうして明年の見通しについても言及なされたわけでございますが、とにかく私どもは国債発行額を、それは当初予算ベースで減らせますとはこれ残念ながら申し上げる自信はございません。少なくとも御審議いただいております補正ベースで考えたら何とか減らさなければならぬという考え方で、歳入、歳出両面、まさに桃外収入等々に一生懸命苦心をしておるさなかでございます。しこうして、これからいわゆる一般歳出の中で五兆、六兆というようなものが実際問題ばっさりばっさりと削れるかと、こういうことでございます。私もこれは非常に困難なことであると思っております。防衛費にいたしましても、根っことすればまだ二兆六十億と、こういうことでございますが、率直に申しまして社会福祉も九兆もありますれば、そして、いわゆる公共事業、そしていわゆる文教、そういうふうな順番になってくるわけでございますけれども、それらになかなか大なたをふろうということは困難であります。しかしながら、国民の皆さん方に現在行政が対応しておりますその水準を全部いまのままで守っていただくと、こういうことになりますれば歳入、歳出両面からいろいろな検討を加えましても、最終的には受益と負担の原則からして風民の皆様方自身に選択を求めなければいけない課題であると。したがって、私どもはいま大ざっぱな話として五兆、六兆直ちに削るだけの能力を持っておるかとおっしゃれば持っておりません。しかしながら、その中にあっても本当に政策の総合性といわゆる政策の優先順位というものをきめ細かに配慮しながら、できるだけ歳出というものを縮めていくと、特に一般歳出につきまして五十八年度予算は今年度の歳出以下にすると、こういうことに重点を置いて編成を鋭意進めておるさなかであるということを、現状を素直に吐露いたしましてお答えとさしていただきます。
  220. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 勝又さんが御指摘したような内容も多少考えまして、そして五十九年度赤字公債脱却ということは非常に困難になりましたと率直に申し上げておるわけです。  それで、五十八年度予算の編成につきましても、一般会計の中でいろいろな経費が込み合っておる中で、おっしゃるように、五兆、六兆というものをばっさり切るということは非常にむずかしい状態。さればこそいま大蔵大臣が来年度予算についていろいろ苦悶もし、われわれも頭痛でいま鉢巻きしていると、そういう状態であることを率直に申し上げる次第です。
  221. 勝又武一

    ○勝又武一君 そうしますと、重ねて総理にお伺いしますけれど、この一般歳出規模ですよ、くどくなりますけれど一般歳出規模で三十二兆程度で五兆、六兆を削るのは大変だ、しかし六十三年、六十四年、六十五年等のピークになれば、国債費だけで十七兆も必要になる、そういう段階ですから、これは私はやっぱりその五兆、六兆を削ることができなければ、もう大増税をやるしかない、総理の言う増税なき財政再建というのはまさに不可能になっていく、こう思わざるを得ませんけれど、いかがですか。
  222. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、確かに増税なき財政再建と私ども申しておりますが、財政再建なき増税、これが一番悪いことであると思っております。したがって増税ある財政再建、これも財政再述としては一つの手法ではありましょうが、私どもは現在理念としてまず増税なき財政再建、これを理念として貫いていこうと、そういうことになるわけであります。したがって、さればその増税なさとはと、こういうことになりますと、臨調の答申にもございましたいわゆる歳出を徹底的に切り込んで、租税負担率というものに着目して、そしてそれを基礎に置いて考えていかなきゃならぬじゃないか。これをそれが定義かと、こうおっしゃいますと、今度は租税負担率とは幾らがその基準かと、こういうことになりますと、いわゆる対国民所得比でございますので、分母も分子も動いてまいりますので、確定して幾らということを申し上げる段階には私はなかろうと思いますが、その精神にのってとにかく工夫をしてやってみると、そうして本当にこの水準を断じて落としてはならないという、いわば行政需要にこたえるために、その際、私は初めてこの受益と負担というものを、なるほど国民次元において考えていただける時期、それにはまずわれわれが切るべきものを切ってからでないと、その問答を国民皆様方に対してする環境にはいまないではないか。こうして勝又先生と問答しておりますことも、あるいは速記録を通じ、新聞を通じ、テレビを通じ、国民次元に少しでも理解していただけるならば、先生と私の見解の相違はありますにしましても、国民全体が増税なき財政再建というものに対する理解度というものもまた深まっていくことではなかろうかと、このように考えております。
  223. 勝又武一

    ○勝又武一君 総理が、赤字国債の克服のために、人勧ということからこのような横道に少し入ってしまいましたけれど、理念としての問題はひとつ通常国会――来春、予算委員会の中でもう一度十分な議論をいたしたいというふうに私も思います。ただ、いまお話しになっていることでは、人勧をやらないという理由には全くならない、国民を納得させることは私はできない、そうもう断ぜざるを得ません。いまの論法でいけば、この増税なき財政再建ということはできなくなるし、三兆から五兆規模の大増税をやるか、あるいは赤字国債の大増発をやるしかなくなる。そこで私たちが常に言うように、人事院勧告を完全に実施する、それから所得税の減税をやる、このことが本当に内需の刺激になるし、景気の回復になっていく、こういうように私はもう確信をしているわけでありますけれど、たまたま昨晩総理に御質問をいたしました。総理は総裁として、自民党が野党と相談をしているこの五十七年度人勧実施については、野党の意見を踏まえ、誠意を持って検討するというこのことは依然として続いているわけですから、このことと、きょう四時半ですか、与野党の国対委員長会談でも決めた「本院各会派でも引続き結論をうるよう努力する。」というこの人事院勧告の五十七年度の実施について、さらに総理努力をしてもらいたいし、またそのことを続けていただきたい、こういうふうに考えますけれど、総理の見解はいかがですか。
  224. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公務員の皆さんに人事院勧告をそのとおり実施できないのははなはだ遺憾なことでございまして、引き続いて誠意を持って努力してまいりたいと思います。
  225. 勝又武一

    ○勝又武一君 本国会はね、きのうもきょうは幾日だと聞きましたけどね、きょうは二十四日、あしたは二十五日、だから……
  226. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 勝又君時間が参りました。
  227. 勝又武一

    ○勝又武一君 私は、きょう二十四日であした二十五日ですから、最後の最後までやっぱり総理としていまの気持ちが、誠意を持って検討するというのがこの文章だけではなくて、本当に来年度の予算を決めるという最後の段階ですから、ぎりぎりまで総理に、総裁としても総理としても努力をすべきだと重ねてお聞きをしますけれども、いかがですか。
  228. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 引き続いて誠意を持って努力をいたします。
  229. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で勝又武一君の質疑は終了いたしました。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  230. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。     ─────────────
  231. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、吉田正雄君の質疑を行います。吉田君。
  232. 吉田正雄

    吉田正雄君 最初に、仲裁裁定に関連して質問をいたします。  政府は公企体労使間の交渉には干渉すべきでないし、干渉もしないと言うが、勝又氏は干渉の事実があると主張し、官房長官は事実の調査を約したわけですね。その結果干渉の事実があったらどうするかという質問に対し、官房長官は、事実があった段階で検討すると言っておるわけです。事実があったら取り消すというのが首尾一貫したものではないか、そういう点でごまかしてもらっては困るんですよ。改めて答弁を求めます。
  233. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 本来ボーナスの問題は労使間の交渉でやるべきものですから、事実があれば仰せのとおりにやらなきゃならぬと、こう思います。
  234. 吉田正雄

    吉田正雄君 とにかく官房長官はあくまでも干渉は今後もしないということですね、そして、事実があればもちろんそれは正すということですね、よろしゅうございますね。  それでは続いてお尋ねいたしますけれども、昨年と同様の仲裁裁定の議決が行われたわけでありますけれども政府は責任を持って予算措置を講ずるようにするわけですね。
  235. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) それぞれの公企体の当事者が予備をつくることになると思います。
  236. 吉田正雄

    吉田正雄君 形式的にはそうであっても、政府として責任を持って国会の議決を尊重するわけですから、そういう点では、その予算編成に支障のないように措置をすべきだと、そういう配慮をすべきだということなんですが、いかがですか。
  237. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 恐らくそれぞれの各省大臣からお答えなさるべきかとも思うのでございますが、私の方にも仲裁裁定対象の三公社五現業、対象がございますので、仲裁裁定の実施のためには、これは万全の努力をすべきであると思っております。そうして、あえて申しますならば、恐らく各省担当の者の中で移流用等の協議、これは私の方へ参るかもしれませんが、それはその都度都度において対処すべきことである、いま直ちには移流用問題は出ないだろうと思いますので、そのようなお答えにしておきます。
  238. 吉田正雄

    吉田正雄君 現在の労使の交渉状況ですと、期末手当、年末手当にそれがはね返っていないというふうに聞いておりますけれども、その理由は何でしょうか。
  239. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 現在、年末、期末手当の問題につきましては、労使間の交渉中でございまして、当局からは算定の基準となる給与は、仲裁裁定の実施によって改定される新賃金ではなく、それ以前の賃金の賃金額で算定した月数分の手当といたしたいという提案をいたしておりまして、それをめぐって現在労使交渉中だと思います。  それぞれの労使交渉の場合に、どういう理由でそれを申し上げているかと言いますと、それぞれ違いがあろうかと思いますが、先ほど電電公社、郵政大臣からもお答えございましたように、人事院勧告の実施状況……
  240. 吉田正雄

    吉田正雄君 まだ聞かないことを答弁しないでください。
  241. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 失礼しました。
  242. 吉田正雄

    吉田正雄君 期末手当が団体交渉である、その団体交渉の内容というのは月数ではないんですか。
  243. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 月数と、その算定基礎となる給与が何であるかという内容、両方を含んでいると思います。
  244. 吉田正雄

    吉田正雄君 従来の労使交渉はどうだったんです。
  245. 関英夫

    政府委員(関英夫君) たとえばことしの夏の手当につきましては、五十六年六月一日現在における基本給、基本給加算給、扶養手当及びその他の手当の月額の合計額に幾つを乗じて得た額というような内容のものを、月数と同時に協定いたしておるというふうに承知いたしております。
  246. 吉田正雄

    吉田正雄君 期末手当は、しかるべき算定の賃金に月数を掛けるんですよね。いいですか。その月数が交渉事項になっているんですよ。したがって、あるべき賃金の算定については国会で完全に実施をするという仲裁裁定の議決がなされた。昨年も同様です。だから、それが議決をされ、実施をされる前の段階での交渉と、それが議決をされ、実施をされた段階の後では当然違ってくるんですよね。どういうふうに理解されているんですか。従来そんな交渉なかったでしょう。
  247. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 仲裁裁定の実施に伴いまして、夏期手当あるいは年末手当の算定基礎をどうするかということにつきましては、従来から一般的に新賃金に関する労働協約の中で何らかの規定を設けて、この規定に従って新しい賃金の算定基礎とするというふうに処理されてきたというふうに承知いたしております。
  248. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、国会の議決によって仲裁裁定は完全に実施をされるわけですから、算定基礎の賃金が変わるわけでしょう。だから、当然それは実施をされなければならないと言っているんですよ。
  249. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 繰り返しになりますが、新賃金に関します協定、つまり仲裁裁定実施のための新賃金に関します協定の中で、あるいはその附則で、従前支払った夏期手当あるいは十二月の手当について、それを内払いとみなして精算するというような協定を結んで、従来は差額分を支給してきているということでございます。
  250. 吉田正雄

    吉田正雄君 だから、従来はそれでやってきたわけでしょう。そして、今回の仲裁裁定の国会における議決も昨年と同様なんですよ。したがって、昨年と同様にやるべきだということを指摘をしているわけです。どうなんですか。大臣どうですか。
  251. 大野明

    国務大臣(大野明君) 従来、その新賃金に対して、労働協約の中で何らかの形でいかにするかということについては上がったやに承知はいたしておりますけれども、しかし、やはりそのときでも労使間において、そのときどきの自主交渉によって決めておるというふうに私どもは承知しておりますが、いずれにしてもやはりその時代時代の背景というものを考えて、本年は先ほど来いろいろと議論になっておる人勧問題等もありまして、その点も含めての話をしておるということもあるかもしれまぜん。旧ベースにするか新ベースでやるかというような問題は、いずれにしても労働省が介入することじゃなくて、これは自主交渉でもってやってもらうということになっております。
  252. 吉田正雄

    吉田正雄君 いま大臣の口から人勧との関係もありというふうなことが出たんですけれども、これは人勧とは直接関係ない話なんですよね。あくまでも仲裁裁定の完全実施という議決が行われたわけですよ。昨年はどうだったんですか。
  253. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 昨年におきましても新賃金協定、仲裁裁定実施のための協定の中で、既払いの給与は内払いとみなし、この新賃金によって精算するような趣旨の協定を結んで精算をいたしておるわけでございます。
  254. 吉田正雄

    吉田正雄君 したがって、ことしも昨年同様の議決が行われたわけですから、当然それに従って実施をすべきだという指摘をしておるんです。そういうことで理解をしてよろしいんでしょう、大臣。
  255. 関英夫

    政府委員(関英夫君) ことしにつきましては、新賃金協定で本体部分について妥結をしたところがすでに半数以上あるわけでございますが、先ほど私が申し上げましたような既払いの期末手当についての協定部分については、継続交渉にするとか、あるいはそれをめぐってまだ交渉が妥結しないというのがことしの状況でございます。
  256. 吉田正雄

    吉田正雄君 交渉が妥結しないということ自体おかしいんじゃないですか。従来の慣行では、期末手当というのは月数についての交渉が主体なんですよね。したがって、仲裁が完全に実施をされれば、当然新賃金ベースに基づいて自動的に後に精算払いをされるということが、あなたも慣習として行われてきたと言っているわけでしょう。今回変えなきゃならぬという理由は何ですか。これだけ議決をされているんですから、変えなきゃならぬ理由があったら言ってください。それじゃ完全実施じゃないじゃないですか。
  257. 大野明

    国務大臣(大野明君) いずれにいたしましても、算定基礎というものは自主交渉でもってやるということになっております。
  258. 吉田正雄

    吉田正雄君 自主交渉の中身は月数だといって指摘しているんですよね。従来はそういうことでずっと慣行として行われてきたわけです。慣行を変えなきゃならぬことがあるかと言っているんです。それでは完全実施じゃないじゃないですか。
  259. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 繰り返しになって恐縮でございますが、従来、新賃金交渉では本体の賃金をどうするかということの協定と同時に、すでに支払った期末手当についてどうするかということを労使で話し合って決めて、両方とも協定の中に書いてあるのが一般的であると承知しております。したがいまして、ことしすでに妥結いたしましたところは、その新賃金協定の本体部分についての協定をし、もう一つのすでに支払った期末手当についての部分を継続交渉にしておる、そういうふうに承知いたしております。
  260. 吉田正雄

    吉田正雄君 過去にあったかと聞いています。いまの答弁じゃ全然納得できないですよ。国会議決を無視するものですよ。なかったわけでしょう。
  261. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔午後八時三十八分速記中止〕    〔午後八時四十八分速記開始〕
  262. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  263. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは郵政当局、電電公社当局ですね、労働省にもお伺いいたしますが、従来は期末手当については基本となる分母、これ賃金です、これに月数を掛けてきた。そして、この分母たる賃金が仲裁裁定によって変わった場合には、それを新たなる分母として月数を掛けてきたというのが従来の慣行であった、そのように実施をしてきたということだけはこれは事実のようですが、この点だけまず確認をしておきます。
  264. 奥田量三

    政府委員(奥田量三君) 郵政事業の場合でございますが、公労法制定以来ということについては必ずしも自信がございませんが、少なくとも私が承知しております過去十数年につきましては、事実の取り扱いといたしまして、仲裁裁定が実施された場合、すでに支払い済みの湖末手当につきましていわばベア分の精算、追加払いをしてまいったということは事実でございます。なおその場合には、仲裁裁定の実施に関する協約の中でその旨の明文の規定を設けて合意をしてまいったわけでございます。
  265. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えします。  過去は、仲裁裁定が決まりますと、それの新しいベースによってやってきたのは事実でございます。
  266. 関英夫

    政府委員(関英夫君) 従来、公企体におきましては、新賃金協定を結びました際に、分母が変わりますれば、その変わった新しい分母で期末手当についても支払う旨を協定してやってまいったということは、先生のおっしゃるとおりでございます。
  267. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは、政府と公企体当局に要望しておきますけれども、従来の慣行を変更する理由が特にありませんので、従来の慣行を尊重するということと、国会議決の精神はそこにあるわけですから、それを尊重して、自主交渉で解決をしていただきたいということをくれぐれも強く要望しておきます。よろしゅうございますか。――よろしゅうございますかと聞いている。
  268. 大野明

    国務大臣(大野明君) 再々申し上げているとおり、これはもう自主交渉でございますから、これはひとつ各公企体の方にそういう御要望をしていただければ結構でございます。
  269. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) この前の勝又先生の御質問にお答えしましたように、目下労働交渉中でございまして、できるだけ早く詰めていきたいというふうにいま両方で努力しているところでございます。
  270. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 御要望は承りましたが、いま交渉中でございますので、自主交渉によって協定をつくりたいと思っております。
  271. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  272. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  273. 吉田正雄

    吉田正雄君 過去の慣行を踏まえて誠意を持って解決に向かって努力をするという決意をひとつ披瀝していただきたいと思います。
  274. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 吉町委員の御要望、御意見はしかと承りました。申し上げましたとおり、労使の交渉に係る問題でございますので、今後誠意を持って交渉に当たりたいと思います。
  275. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 私どももいま郵政大臣がおっしゃったのと同じ方向で努力いたします。
  276. 吉田正雄

    吉田正雄君 文部大臣にお尋ねいたします。  国公立大学の共通一次試験について、ことしで五年目を迎えた共通一次試験に対する批判というものが日ごとに強まっております。たとえば大新聞の社説のタイトルで説明いたしますと、十一月十一日付読売新聞が「受験生にまだ重い共通一次」、同じく十一日付毎日新聞が「共通一次離れか大学離れか」です。十二月に入ってからも、十二月十一日付毎日は「夢のない共通一次の受験生」、同じく十三日付朝日は「「共通一次」を批判する前に」といったぐあいに、各新聞社も問題を指摘をいたしております。  批判されている問題点は、三十五万人前後の受験生を対象に世界に類を見ない画一方式がとられ、受験生の負担が重く、大学間の序列がいよいよ鮮明化していることにあります。欧米のように受験生の個性や大学の自主性を生かしたいわゆるアラカルト方式に移行すべきであると思います。  文部省も事態の重大性を認識されまして、文部時報七月号に、「六〇年度以降は各大学の判断により決定できることとした」と発表をいたしております。この考え方を一層推し進めていく必要があろうかと思いますが、文部大臣の所見をお伺いいたします。
  277. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 共通一次試験は、いまお話しのように、過去四回実施してまいりました。これは国大協その他高校等のいろんな協議の結果四回の実施をしておりますが、現在はおっしゃるようないろんな意見が出ております。そこで、現在いろんな、時期をどうするかとか、あるいは教科をどうするかとか科目をどういうふうにするかとかいう意見がありますから、国大協または大学入試センター、文部省、こういうところで現在研究、検討をしておりますから、できるだけ早くその結論を見て対策を講じたいと、これが現在の考え方でございます。
  278. 吉田正雄

    吉田正雄君 この七月号の文部時報に記載されております「六〇年度以降は各大学の判断により決定できることとした」とあるのは、これは何を指しておるのですか。
  279. 宮地貫一

    政府委員(宮地貫一君) お答えいたします。  五教科七科目の科目の選定につきまして大学に自主的な選択を認めるという方向で六十年度以降運営したいというのがその趣旨でございます。
  280. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁で文部当局の積極的な取り組みの姿勢というものがわかりましたので、ぜひそういう方向に向かって努力をしていただきたいと思うんです。  これは私も高校の教師をやったことがありますけれども、やはり教科セクトと申しますか、そういうものが生徒の進学、進路にいい影響を及ぼす場合もありますけれども、それがかえってマイナスに働くという場合もあるわけです。あくまでも生徒の将来を思ったそういう進学でなければいけない。進学そのものが高校教育に影響を及ぼす、あるいはさらに中学校、小学校へと波及をするというふうなことでは非常によくないわけです。そういう点で現在の共通一次制度というものが下級の学校の教育活動、生徒指導に非常に大きな悪影響を及ぼしておるということが今回の批判になって強く出ておると思いますので、そういう点で時期等もあわせてさらに文部省に積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣いかがですか。
  281. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど私からも御答弁申し上げたとおり、なお局長からも申し上げたとおりでございますが、これは非常に大事な問題でございますから、できるだけ積極的に検討を進めたいと、かように考えます。
  282. 吉田正雄

    吉田正雄君 人事院勧告の実施については、今日まで代表者会議、実務者会議で話し合いが行われてきましたし、今後もさらに各党間での話し合いを継続することになっていますが、委員長並びに政府においてもその実施のため前向きに対処されるよう強く要望したいと思います。
  283. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 人勧実施の御要望につきましては、今後委員長におきましても理事会に諮り、その趣旨に沿うように努力してまいりたいと存じます。
  284. 吉田正雄

    吉田正雄君 引き続いて文部大臣にお尋ねいたしますが、学校給食問題についてお伺いいたします。  補助金の整理合理化を検討している臨調の第三部会が今月末まとめる部会報告、補助金等保護助成策の整理合理化の基本方針が報道されましたが、それによると学校給食費の保護者負担を強化することが打ち出されております。  学校給食は、戦後の困難な食糧事情のもとで、生徒を救済するための応急対策として始められたものであります。その後、学校給食法等の制定により制度上の整備が図られ、給食に対する国民の理解も深まり、父兄の強い要望もあり、現在は小学校で九九%、中学校では八二%の高い実施率で千六百万人の児童生徒が学校給食を受けており、重要な教育活動として定着をいたしておりますが、そこで、総理行政管理庁長官にお尋ねいたしますが、学校給食の果たしてきた成果や意義についてどのように評価をされておりますでしょうか。
  285. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 学校給食が非常に大事な問題であることは私も十分理解をいたしております。  ただ、この問題は、ただいま臨調の部会において慎重に審議されておる問題でございまして、どういう部会報告が出るのか、いまの段階では私は全然承知いたしておりませんので、それ以上のことは申し上げることはできないと思います。
  286. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官のとおりでございまして、臨調答申を見守っております。
  287. 吉田正雄

    吉田正雄君 けさの新聞報道によりますと、ただいま申し上げました臨調第三部会で補助金整理について検討いたしておるわけですけれども、つい先日、部会報告がほぼまとまったということが報道されたのですけれども、きのう、一昨日と開かれました同部会で修正案が提案をされた。これには、自民党あるいは大蔵省、財界等の強い働きかけがあったのではないかというふうなことも報道されているわけです。  私は特に総理お願いをしたいのですけれども総理は、行革は政治生命をかけてやるというふうにおっしゃっているわけですから、そういう点で、行革が真に国民の立場に立った検討ができるように、いたずらなる介入、干渉があってはならないと思いますし、また、政府のみずからの姿勢において諸般の事情というものを検討して、特に行革が、小さい政府から大きな軍事国であるとか、あるいは弱者切り捨てというふうなことになっては困ると思うのですね。ここで仮に給食調理員の補助というものを外すということになりますというと、一食約百円、年間にして一万九千円、これが地方交付税の中で積算をされておるわけですけれども、約三千億円と言われているわけです。したがって、もしこの給食費の補助についてそのような調理員を減らすというふうな措置がとられますと、増税なきではなくて、確かに名目は増税ではありませんけれども、三千億円という膨大な額が父兄負担になるという重大な事態が生ずるわけです。そういう点で、私は、今日まで学校給食が果たしてきた役割り、評価、そういうものからして、当然これは継続すべきであるというふうに思っておりますので、そこで先ほど評価を聞いたのです。そういう観点からはいかがですか。  総理と行管庁長官答弁をお聞きします。
  288. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先ほども申し上げましたように、学校給食の非常に重要な問題であるということは私自身承知はし、理解もいたしております。しかし、この問題は、御承知のように臨調の部会において各方面の意見を聞いて慎重にいま検討をしておる問題で、結論は出てないのです。部会報告もまだ臨調の方に出ておりません。そういうわけでございますので、これ以上、臨調が非常に慎重に審議されていることについて私が行管長官としてとかくのことを申し上げることはいかがであろうかと、こういうふうに存じておることを申し上げたわけでございます。
  289. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行管長官と同じ考えでございます。
  290. 吉田正雄

    吉田正雄君 その説明はわかりますけれども、いま私がお伺いいたしておりますのは、学校給食の果たしてきた大きな教育的成果、そういうものについては十分理解をされておるのではないかと。直接的ないまその行革案に触れなくても、そういう認識はお持ちですかということをお聞きしているんです。いかがですか。
  291. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) これは行管長官の所管じゃございませんが、私は私なりに十分理解をしておるつもりでございます。
  292. 吉田正雄

    吉田正雄君 総理、いかがですか。
  293. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 学校給食が、特に初期におきまして日本の学童の体質改善といいますか、そういう面にかなり効き目があったということは承知しております。また、それに対しまして、PTAの皆さんが非常に協力していただいて、PTAと学校が一体になっていくという一つのモメントをつくったという点もあったと思います。  最近におきましては、いろいろ議論がございまして、これだけ経済が成長したらもうそろそろどうかとか、しかしまた、一面においては牛乳をもっとうんと飲ませるとか、お米も食べさしたらいいではないかとか、そういういろいろな議論があるものですから、臨調の方においていま慎重に検討をしておるのだと承っております。
  294. 吉田正雄

    吉田正雄君 総理と行管庁長官には、特にいま総理からおっしゃったような意見もあるやに聞いてはおりますけれども、給食の果たしてきた大きな役割りとしては、私は何といっても、偏食をさせない、もちろん体位の向上もそうですけれども、生徒の保健上きわめて重要な位置づけを持っておったし、正しい食習慣というものを身につけさせるということが第一点だろうと思いますし、第二としては、教師と児童生徒の心の触れ合い、今日生徒の非行化問題が盛んに言われておるわけですけれども、この学校給食の場というものがきわめて重要な教育の場になっておるということと、さらに、児童生徒に集団生活を体得をさせ、共同、協調の精神というものを身につけさせ、非行化防止に有効であるというふうな、非常に大きな成果を上げてきておるということで、この存続は私は父兄のほとんどの皆さんが強く望んでおいでになるということをつけ加えて今後配慮をしていただきたいということを強く要望いたしておきます。
  295. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 先生のおっしゃったこと、私も十分認識をいたしております。
  296. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、農産物自由化問題についてお伺いします。  これは、本委員会におきましても同僚各委員の皆さんからすでに発言をされております。したがって、私は簡潔に質問をいたしますけれども、農業の重要性、改めて私が総理に申し上げるまでもなく、きのうの答弁でも明らかであります。ただ問題は、やはり日本農業の置かれた立場というものを考えますというと、アメリカの事情はアメリカ、しかし日本農業の立場は立場であるわけですから、日本総理として、いたずらに一月の訪米の段階で約束をして、さらにそれが事態を困難にさせるということにならないよう強く要望しますが、首相の見解をお聞きします。
  297. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 農業の重要性は私もよく認識しておりますし、各国においても農業については各政府は特別の関心を持ってきておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、主張すべきものは主張し、聞くべきものは聞き、合理的に、しかも日本の立場に立って会談をしてまいりたいと思います。
  298. 吉田正雄

    吉田正雄君 エネルギー政策についてお伺いいたします。  政府のエネルギー政策の根幹というのは、どこでつくられるのでしょうか。
  299. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 通産省の方で総合エネルギー調査会を学識経験者等に委嘱いたしまして、そして、その結果、エネルギー対策推進閣僚会議というところで長期エネルギーの展望というものを策定してまいっております。
  300. 吉田正雄

    吉田正雄君 六七年の二月の第一回答申からことし四月の第六次の中間報告まで、六回にわたって答申と報告がなされております。平均して二年半に一回であるわけです。見通しが、長期と銘打ちながらこのようにしばしば改定をしてこなければならなかった最大の理由というものをどういうふうにお考えになっておるのでしょうか。
  301. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 計画は、私たち日本として立てるわけでありますが、第一次、第二次エネルギーショックと申しますか、日本ではパニックに近いものになったんですが、そういうもの等がありまして、逐次代替エネルギー計画等を踏まえながら、やはり新エネルギー、代替エネルギー、省エネルギー、いろんなことをやりながら、石油の依存度も七五%から五〇%までに減らしていくというような、いわゆる他国依存というような形を一方においては減らしていこうとしたのですが、なかなかそこらのところが、価格の面で痛めつけられたりなどいたしまして、その計画どおりにはいっていないということは認めざるを得ないと思うのです。
  302. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、省エネとか産業構造の転換ということもありますけれども、見通しの最大の誤りというのは、将来の特定年次における需要の過大な見積もりにあったのではないか、このことは数字ではっきりと裏づけられておりますけれども、この点はいかがお考えになっておりますか。
  303. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 結果として過大になったこともあると思いますし、たとえば石油そのものの輸入量などは、いまや各般の国民全体の、瞬間テレビスイッチを消して、というような涙ぐましい協力まで踏まえて、大体二億四千五百万キロリットルぐらいで、昭和四十五年ぐらいの輸入量まで落ち込んでいるというようなこと等もございまして、結果的には、あるときには過大になるかもしれません。しかし、それはやはり将来の民族の、ことに生活のエネルギー、産業のエネルギーでございますから、その基盤をなすものについて、なるべく確かな見通しのもとに、確かな足取りで進むということがなければならぬと思いますが、一、二回の蹉跌は認めざるを得ないと思います。
  304. 吉田正雄

    吉田正雄君 過大な見通しがなぜ出てきたのかという点で、いろいろ分析をしてみますというと、需要の算定というものは、これは基本的にきわめて厳密に行われなければならないということなんですが、その点の見積もりというものが非常に厳密さに欠けておったんではないかというふうに思うわけですね。家庭における省エネというのは、量からしても率からしてもほとんど影響がない。この見通しの過大見積もりというものは、それをはるかに超えておるということなんです。  時間もありませんから次にお伺いいたしますけれども、危機論ということが盛んに言われておるわけですね。私は、このエネルギー危機論の中身というものが非常に混同されて使用されているのではないか。いま多くの国民は三十年後には石油がなくなるのではないかという心配をしているわけですね。いわゆる三十年石油枯渇説です。これが誤りであるということははっきりしていると思うのですけれども政府はどのように危機というものをとらえておいでになるのかお聞かせ願いたいと思うのです。
  305. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) なるべく簡単に答えるつもりでおりますが、第一次エネルギーショックといまは言うようになりましたが、日本が最初にエネルギーショックを受けてパニック状態に陥って、そしてトイレの紙の買い占め事件まで大騒ぎをやったというあのときのことでありますが、私たちは相手の国の立場というものを考えてみるという思考の方針を持っていなかったんです。いわゆる産油国のアラブ、まあ産油国の中近東の国々に限って言いますと、自分たちの砂漠の下のものをアメリカその他が買い取っていって、王様にいろんな金を払って、王様はある程度の豪勢な生活に近いものができていたが、しかし、だんだん考えてみて、探鉱その他をやってみると、いまおっしゃったいわゆる有限のものであることがわかってきた。そうすると、当然ながら産油国としては、まあ中東戦争がきっかけであったにしても、これを戦略物資に使う。先進国はわれわれのところから持っていってあんなに繁栄している、ならば、これを戦略武器に使うということをねらえば、当然出す量を減らして価格を高くして、手取りは、はね返りは別として、その限度までは当然考えるであろう。そのことを私たちは全然考えていなかった。要するに無限に安く手に入れられるエネルギーとして石油をとらえていた。そこにあの第一撃を食らって、あたりまえのことだったと、向こうにとってはあたりまえのことだったというところから、今日私は第二次の石油ショックがあっても政府が心配するような買い占めの騒ぎとかいろんなことも何も起こらないで冷静に、経済は苦しくなっていますが、それを乗り越える努力をしようとしている。このことは遅まきながらやはり日本が世界の大勢に目を向けつつ日本の置かれた立場というものを相手の産油国の立場になってみて考えてき始めた。そのことに問題があって、私はその意味では非常に喜ばしいことであったし、私たちもそれなりに産油国の立場に対して考えなければならない点が今後もあると、そう考えております。  少し駄弁を弄したようでありますが、一応そういうふうに私は過去の石油ショックはとらえておりますが、しかし、危機というものはいろんなものがありまして、それが産油国の意思でない場合に日本に油が届かないという場合もありましょうし、長期契約をしておった石炭や天然ガスというようなものが何らかのきっかけで売ってやらないと言われることになるかもしれません。いずれにしても私たちは、自分たちで代替その他開発できるものは一生懸命努力をするけれども、少なくとも、これこそ資源のある国と相互、互恵ということで一生懸命永続的なエネルギーの安定の道を模索しなければならぬ、そういうふうに考えておりますので、少し答弁が長くなりましたが、お許しを願いたいと思います。
  306. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまのお話は、ほぼ国民の皆さんも理解をされていると思うんです。しかし、相も変わらず枯渇論がしみついておる。  化石燃料についてはどの程度というふうにお考えになっておりますか。化石燃料の資源についてはどれくらいあるというふうにお考えになっておりますか。化石燃料。石油、石炭等ですね。
  307. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 化石燃料につきましては、どのくらいあるかということで一時は非常に短いと言われた時代もあったわけですが、御承知のように、最近非常に石油が、OPECでも生産量が一千万バレル減るということで、ある程度その寿命も長くなったということでございますし、それから他方、石油価格が上がったということで、従来開発に値しないと思っていた石油もふえてくると、こういうことでございまして、いま手元に正確な数字を持っておりませんが、しかし、いずれにしても、このまま続いた場合には一九九〇年代にはある程度石油の需給バランスが崩れる、二〇〇〇年代になると相当苦しくなる、こういうことは事実として言えると思います。
  308. 吉田正雄

    吉田正雄君 需給バランスが崩れるということと、枯渇しそうだというのでは、全然意味が違っているわけですよね。もうちょっと調べておっしゃってください。――いまは石油だけでいいです。
  309. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 石油については大体三十年と言われております。
  310. 吉田正雄

    吉田正雄君 そういう認識が国民に非常に不安感を与えるのですよ。三十年というのは、過去百年間に約一兆バレルが確認をされておる、そして、ここ約十年間ほどで二千億バレルくらい消費をしております。しかし、また同時に、七〇年代の十年間で一千億バレルが確認をされておるということですから、現在の確認埋蔵量というのは大体六千億バレル強になっているわけですね。これを現在の消費量で割ると三十年くらいになるんだろうということなんですが、それには新規発見が全然含まれてないということなんでして、過去の例からしますというと、むしろ確認埋蔵量というのはどんどんふえてきておるのですね。そういう点で、各見通しも五十年や百年ではなくならないという数字が出てきておりますし、三十年というのは、特にメキシコのあの巨大油田が発見される前の数字なんですよね。ところが相も変わらず三十年で枯渇をするという、そういう認識が国民を必要以上に不安に陥れている。そういうところからまた、私はエネルギー需給見通し、つまりエネルギー政策が基本的に何か大きな誤りを犯しているんじゃないかというふうに思っているのです。  時間がありませんので余り数字を挙げて突っ込んでは言えないのですけれども、ことし出されました長期エネルギー需給見通しの見積もりというのは、従来の実績と、それから今後の経済成長率から見ますというと、まさに実態から遊離をした大変な数字になっているのですね。それでも下方修正はされているのです。下方修正はされておりますけれども、まだ現実から非常に大きく遊離をしているということが指摘できるのです。  そういう点で、その見通しについてだけ若干お聞きをしますけれども、この見通しの想定ではどういうふうになっておりますか。経済成長率それから電力需要率の伸び、それから総需要電力量の対GNP弾性値というものをどういうふうに見ておいでになるのですか。
  311. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五十七年七月の見通しでは、大体五十五年から六十五年まで経済成長率は五%程度と、こういうことでございます。それから弾性値はエネルギーとして〇・六四、それから電力は〇・八六ということで計算しております。
  312. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは「新しい文明を考える会」の宇治田さんが計算をされた数字ですけれども、六七年から八一年までの期間を三つに分けて、高度経済成長期、第一次石油ショック以降と第二次石油ショック以降というものを分析をされているのですね。これは数字が出ておりますからはっきりいたしますけれども、この三つの区間に区切ってやりますというと、年間販売電力量の伸び率というものが、最初の期間が一二%、次が五%、そして最後が一%。それから最大需要電力の伸びも、一三%、五%、二%。それからGNPの伸び率というのが一〇%、五%、三%というふうに下がっているわけですね。この数字といま発表された数字というものは全然結びつかない数字なんですね。そういう点で私は、この長期エネルギー需給見通しというものについては、また大きく現実から離れた、そしてまた二、三年たつと変えなければならないんではないか、そういう想定の上に立って各個別のエネルギー政策というのが立案をされているわけですね。こういう点については大臣どういうぐあいにお考えになっていますか。
  313. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) さっきはちょっとびっくりしました、言葉を知らなかったものですから。ごめんなさい。  石油については絶えず不安定要素かつきまといます。それから、わが国の方で計画して計画だけはあるが、やや達成のテンポ等に不安があるものは原子力だと思います。その他海外依存度もいろいろありますが、需要はその程度あるものではないかと。私は報告を受けた程度でよく知りませんが、詳しくはエネルギー庁長官から答弁させます。
  314. 豊島格

    政府委員(豊島格君) ただいま御指摘の、予想がいろいろ狂っておるということでございますが、これは、過去の数字につきましては先生御承知のとおり、経済成長率の五%ということは達成しておりません。それから、特に最近におきまして伸び率が、電力あるいはGNP弾性値が落ちておりますのは、急激な石油の価格の引き上げということで省エネルギーというのが非常に進んだということでありまして、産業面におきましても非常に進んでおるということでございます。  それから、特に電力多消費型産業におきましては、高エネルギーのために国際競争力が非常になくなったということで、たとえばアルミなんかも百三十万トンから七十万トン、それが最近は三十万トンと、そういう多消費型産業における落ち込みが非常に大きい、こういうことに大きな原因があったと思います。  それから、そういう中でどういうふうに各個別のエネルギー政策を展開しているかということでございますが、基本的には石油は、先生先ほどおっしゃいましたように、三十年というのはふえておるということでございまして、私どもも、三十年たったらなくなるということを申し上げておるわけではなくて、現在確認されておるものでは三十年と。しかし、その後当然ある程度の量は、新発見といいますか、埋蔵量の確認が進むわけです。しかし、その中で、やはり石油が有限であるといいますか、先細りであるという事実は当然でございますので、したがって、代替エネルギーの開発というのがどうしても必要であると。特に石油につきましては埋蔵量のほかに中東への依存度が高くて非常に不安定であるということもございまして、したがって、そういう中でやはり安定した供給源として原子力、それからLNG、石炭というものを中心に、さらにそのほかの地熱、水力あるいは新エネルギーの開発というものを、整合性を持ち、かつ安定性を考えて展開しておると、こういうことでございます。
  315. 吉田正雄

    吉田正雄君 電力予備率ですね、これはここ五年間くらいどういうふうになっておりますか。
  316. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 電力予備率は四年以上前は大体一〇%台だったと思いますが、たしか五十五年は二五%、五十六年は一八%か九%、ことしの夏も大体一八%ぐらいだったと思います。
  317. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの数字は通産省から発表された数字よりも低い数字のようですね。電力は非常に余っておるわけですね。したがって、この原子力というものを代替エネルギーの中心に据えて整合性をとるということですけれども、私は、原発についてもう少し政府が抜本的な検討をする必要があるんじゃないかというふうに思うわけですし、電力でもこれだけの電力予備率を持って、これ以上の一体原発開発が必要なのかどうなのかということで、いろんな点から心配を抱き始めておるんではないかというふうに思っております。  原発が必要かどうかという点については、ただいまの長期需給見通しのバランスが現実から非常に遊離をして過大な見積もりをやっているというふうなことを指摘申し上げたのですけれども、そのほかに長期計画あるいは原子力開発利用長期計画の中で言っておりますように、果たして経済性にすぐれておるのかどうかという検討がきわめて不十分なんですね。経済性の有利な点というのはどういう点ですか。
  318. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 原子力につきましては当然設備費は非常に高くかかるわけですけれども、燃料費が、石油がこれだけ高騰いたしたわけでございまして、一たんつくると、その燃料費といいますか、運転費が非常にかからないということで、石油火力あるいは石炭火力に対して非常に有利であるということでございます。
  319. 吉田正雄

    吉田正雄君 有利だというこのコストについて一応通産から発表されておりますが、これは各電源別にどういうぐあいになりておるのですか。
  320. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 五十七年度といいますか、本年度の運転開始ベースということで考えますと、大体原子力は十二円、石炭火力は十五円、これは一キロワットアワー当たりですが、LNGは十九円、石油火力、一般水力は大体二十円と、こういうことになっております。
  321. 吉田正雄

    吉田正雄君 この初年度コストの指標の妥当性が問題だと思うんですね。設備利用率と耐用年数はどういうふうに計算されておりますか。
  322. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 設備利用率は七〇%、ただし水力は四五%でございます。それから、償却は法定償却年数が織り込まれているわけでございます。
  323. 吉田正雄

    吉田正雄君 設備利用率の七〇%というのは、耐用年数の間を平均しての数字ですか。
  324. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 計算は一つのモデルといたしておりますので正確に申し上げかねますが、大体耐用年数を通じてということとお考えいただいていいと思います。
  325. 吉田正雄

    吉田正雄君 通産省から発表された数字とは全然異なっているんですね。耐用年数三十年として七〇%へは絶対いっていない。平均したら三〇%台になって半分以下になるだろうと。これは計算されればすぐわかるんですね。そういう点で積算の指標、その根本においてすでに誤っておるということが言えるわけです。  それから、建設費については単価にどれくらい入っているというふうに見積もられておりますか。
  326. 豊島格

    政府委員(豊島格君) 一般水力は六十万円程度、それから石油火力は十三万円程度、石炭火力は二十万円程度、LNGは十七万円、原子力は二十七万円と、キロワット当たりでございます。なお、稼働率につきましては、非常に低いということでございましたが、今後、正常な運転が行われる最近におきまして原子力特にいいわけでございまして、そういうことを考えれば決して三〇%ということはないと思います。
  327. 吉田正雄

    吉田正雄君 建設費の計算もリードタイムが長いんでして、当初、そこで出されているような数字はこれも大変違ってきております。それから年利というものを、利息というものをほとんど考えておらない、それから再処理費用についてはほとんど積算のしようがないと。とりわけ廃炉の問題、それから廃棄物の処理、処分の問題については通産から出された資料あるいは科技庁から出された資料等でもほとんど計算をすることができない。そういう点で、その辺のコストというものをほとんど無視か、もしくは過小見積もりをやっているという点で、私は原子力のこのあたり方については、もう一回コストの面からも含めまして少し検討されたらどうかと思うのですが、いかがですか、大臣。
  328. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の知らないことを教えてくださったほどの知識の持ち主でございますから、私自身にいろいろと御指導をいただいて、私がまた事務当局と検討したいと思います。まじめに言っているんですよ、本当に。いろいろ教えてください。
  329. 吉田正雄

    吉田正雄君 安全委員長にお尋ねをいたします。  やはり、原子力への国民の抱く不安というのは、核への転用ということももちろんでありますけれども、環境への放射能というものをどう阻止し得るのか、人間環境から隔離をすることを未来永劫にわたってできるのかという点だろうと思うんですが、安全行政の基本的な考え方を聞かしていただきたいと思います。
  330. 御園生圭輔

    説明員(御園生圭輔君) 原子力の安全確保といいますのは、究極的にはおっしゃるように、周辺に対して放射線被曝を与えないということでございまして、そのために万全の方法で出ないようにやっております。十分なモニターをいたしまして、実際に、現在原子力発電所周辺におきましては年間五ミリレムという量を十分下回るように保たれております。今後ともそういう方向で安全を確保していきたいと考えております。
  331. 吉田正雄

    吉田正雄君 この問題については、最後に通産大臣にお尋ねしますけれども、商業用原子炉における労働者被曝の実態というのは非常に深刻になっているのです。中央で一括管理センターもございますけれども、ここでは実情がほとんどつかめておらないということが指摘をされております。また基準も、各発電会社によってまちまちであるということでありますから、これらについては今後実情を十分に調査をされて改善に向けて努力をされるべきだと思うんですが、いかがですか。
  332. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そこらのところは私も少し知識として持っておりますので、御指摘のような点があるのかどうかも含めて検討し、方向はいやしくもそのような従事する現場の職員が職務のゆえに被曝するというようなことは事故以外に考えられないし、またそのような事故を起こしちゃならぬ、またふだんもそういうことが絶対にないようにしなければならないのが最大の原則だと思っております。
  333. 吉田正雄

    吉田正雄君 総理と外務大臣にお尋ねをいたします。  わが国外交の基本理念というのは、もう憲法前文というよりも日本憲法全体に示された理念にのっとってやるべきだと思うのですが、この点当初にお考えをお聞かせください。
  334. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) わが国外交の基本につきましては、日米関係を外交の基軸としながら西側の民主主義国との連帯と協調を図るとともに、近隣のアジア諸国を初め各国との間に相互理解と友好協力関係を発展をさせ、またわが国の立場から政治的、経済的役割りを果たすことによって世界の平和と安定に寄与する、積極的に貢献をしていくことである、こういうふうに考えております。
  335. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 平和と人類の福祉のために貢献する、それを基本にしまして、いま外務大臣が申し上げたとおりであります。
  336. 吉田正雄

    吉田正雄君 昨年の鈴木前総理の訪米によって、いわゆる日米同盟ということになりたわけです。この同盟の中身というのは当然軍事も意味しているわけですし、その後のアメリカの対日防衛力増強要求の中にもそのことがはっきり出てまいっておるわけです。  そういう点で、私は総理が訪米されるに当たりまして、いやしくも日本憲法にとってきわめて重大な問題を提起をするとか、あるいは日本の非核三原則に抵触をするような、そういう要求が出た場合にどうされるのか、その点について見解をお聞かせください。
  337. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛は自分の国のためにやるものであり、憲法の範囲内において専守防衛ということに徹してやりますし、非核三原則はもちろん守ります。
  338. 吉田正雄

    吉田正雄君 アメリカ議会で日本への要求としてGNPの問題がずいぶん論議をされておるわけです。ところが、GNPの内容について明確でないということでありますから、防衛庁にお伺いいたしますが、この防衛費一%という中身は、NATO並みあるいはアメリカ並みの積算基準になっておるのか、そのことを明確にしていただきたいと思います。
  339. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛費の積算は、各国それぞれその国の歴史的な背景、伝統ございまして、さまざまでございます。わが国の防衛費の積算はアメリカ並みの積算にはなってございません。
  340. 吉田正雄

    吉田正雄君 どういうものが違うんですか。
  341. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) アメリカで俗に防衛費といいますか、国防費といいますと、狭義の場合と広義――広い場合と二つございまして、広い場合には、たとえばエネルギーといたしまして原子力の問題なども入っておりまするし、さらに海外の活動費なんかも広い意味では国防費の中に含めておるようでございます。
  342. 吉田正雄

    吉田正雄君 たとえば人件費の場合、軍人恩給あるいは遺家族恩給等がNATO等では含まれているというふうに言われておりますが、日本の場合どうですか。
  343. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 戦前の軍に従事いたしました方々に対する軍人恩給などは、戦後の自衛隊は戦前の軍隊とは全く連絡いたしておりませんので、わが国におきましては防衛費といいますか、防衛庁の中の予算の中に軍人恩給などは含まれておりません。
  344. 吉田正雄

    吉田正雄君 そういう防衛費の内容ですね、内容について綿密な対比をされたことがございますか。
  345. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 綿密な対比をいたしたことはございません。それから綿密な対比はなかなかこれは実を申しますとやりづらい点がございます。というのは、先ほど申し上げましたように、いろいろ国によって防衛費の積算の仕方も違います。と同時に、まあ先ほどから申し上げておりますように、わが国はわが国の独自の、わが国でみずからの国を守るという形からでき上がっておりまする防衛費のためにそのような綿密なことはやったことございませんが、たとえばミリタリーバランスのようなところで国際的に何となしに標準をつくりましてとらえておるような標準は一応はございます。
  346. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、GNP一%の枠云々ということで諸外国との比較というのは余り意味がなくなってくるのじゃないですか、そういう厳密さがないということになりますと。
  347. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) GNP比一%というのは、わが国の閣議における決定事項でございまして、これをもって諸外国と比較しようとか、そういう意味でつくり上げた物差しではございません。
  348. 吉田正雄

    吉田正雄君 したがって、諸外国との比較で日本は低いではないかというそういう要求に対しては余りそれは根拠にならないのではないかと思うのですかね、どうですか。
  349. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 防衛費につきましては、私自身も何か一つの物差しといいますか、ものが常にあることが好ましいと思いまするし、この一%につきましても五十一年に閣議決定をしておりますけれども、これはできるだけ守るべきであるというふうにも考えておりまするし、それから高い低いの論になりますると、実を言いますと私どもがいま行きたいと思っておりますことは、防衛の大綱の水準に一日も早くといいますかできるだけ早く到達をいたしたいと、これは私どものいま考えておりますことでございまして、現在のところ閣議決定をされておりまするこの一%の水準の中でこれを守っていきたいと、こう考えて作業をいたしておるところでございます。
  350. 吉田正雄

    吉田正雄君 最後に総理日本の核武装について大分心配をする方があるわけです。つい先日の大新聞の世論調査でも、中曽根総理印象としては非常にタカ派ではないかということが歴代首相の中でも最も何か鮮明的に出ておったようなんですが、これについて総理はどういうふうにお考えになっておりますか。
  351. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の真意が誤解されていることを大変残念に思います。
  352. 吉田正雄

    吉田正雄君 総理は原子力基本法の提案者でもあるわけです。そういう点で日本の憲法あるいはNPT――核不拡散条約等との関係で日本は将来にわたって永久に核武装すべきではないと思いますが、この点はいかがですか。
  353. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、日本は専守防衛そして非核国家として行くことは好ましいと考えております。
  354. 吉田正雄

    吉田正雄君 好ましいではなくて、日本の中曽根総理は核武装論者ではないかというふうなうわさも一部に取りざたをされているわけですね。そういうあらぬうわさを否定していただくためにも、ここで総理の決意をお聞きしたいです。
  355. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私を核武装論者というもし人がおったらそれはとんでもない誤解で、勉強してない人の言うことであると思っております。
  356. 吉田正雄

    吉田正雄君 将来の日本の核武装に向かってやるべきではないということですが……
  357. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 吉田君、時間が参りました。
  358. 吉田正雄

    吉田正雄君 最後もう一回その点をお聞かせください。
  359. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は核武装などはしない方がいいと思っています。
  360. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で吉田正雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  361. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、寺田熊雄君の質疑を昨日に引き続き行います。寺田君。
  362. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 憲法改正につきましては、総理中曽根内閣としては憲法改正を政治日程にのせることはしないということはおっしゃって、それはわれわれ了承いたしたのですが、さて、憲法第九条につきまして総理の御所見を伺いましたところ、個々の条文についての批判は差し控えたいという御答弁でありました。  しかし私どもは、一国の総理は国の基本法の中核をなす重要な条文についての見解の表明を避けるべきではない、率直に国民にこれを吐露すべきであるという見地から再考をお願いしておりました。これ、いかがでしょう。
  363. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、寺田さんにも申し上げましたように、現憲法の中にあります平和主義、基本的人権の尊重、国際協調主義あるいは福祉国家の理想、こういうような諸原理を高く評価して、これを護持していかなければならぬと確信しております。また、いまの日本国憲法が歴史的に果たした役割りも評価しておるものであります。したがいまして、この現憲法九条の平和主義を国民もまた高く評価しており、私としてもそれを尊重したいと思っております。  また、憲法九条を含めて憲法改正を政治日程にのせることはしない、これはこの前も申し上げたとおりでありますし、憲法改正について現に世論が成熟しているとも思いません。そういう段階政府として独走することはいたしません。政府として憲法改正を政治日程にのせることはしないという方針を申し上げている以上、個々の条文の改正の可否について個人的見解の表明は差し控えさしていただきたいと、このように考えております。
  364. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 憲法の平和主義、民主主義、基本的人権の尊重を尊重すると、こうおっしゃる。しかし、いま現憲法の平和主義に関する条文は第九条があるだけであります。したがって、平和主義を高く評価すると言う以上は、当然それについてのただ一つの条文である第九条を尊重、評価するということがきわめて当然の論理でありまして、これをことさらに見解の表明を避けるということは論理的にも合わないわけであります。また、政治家としても決して勇気のある態度とは言えないと私は考えておるわけであります。しかし、まあいま総理の御答弁はいままでの御答弁よりは一歩前進だと、だが不十分ではあると。私どもこれ、いまの総理の御答弁を了承しているわけではありませんが、これからのさらに論議を進めたい、その出発点としてお聞きをしたわけであります。  さて、この間もお話をいたしましたように、鈴木総理は、これは五十六年三月十一日の予算委員会で私の質問に対してはっきりと現憲法の九条はこれを堅持していくべきものであるというふうに意見を表明されたわけであります。
  365. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 寺田君、時間が参りました。
  366. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総理はこれを表明するといろいろ影響があるから表明は避けたいとおっしゃったのですが、鈴木さんがこういう意見を総理としておっしゃったことによってどういう影響がありたのか、これは党内の力学において影響があったと言われるのか、国民的基盤において影響があったとするのか、あるいはないというのか、その点ちょっとお伺いして質問を終わります。
  367. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人が違うとおのずから判断や考えや傾向も違うものであります。鈴木総理は鈴木総理の御識見でそのように申されたと思いますが、私はまた私の見識におきましていままで申し上げたようなことを申し上げている次第でございます。
  368. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 答弁非常に不十分ですが、次回に譲りたいと思います。
  369. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で寺田熊雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて質疑通告者の発言はすべて終了いたしました。質疑は終局いたしたものと認めます。     ─────────────
  370. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それでは、これより補正予算二案に対する討論に入ります。  討論の通告がございますので、順次これを許します。なお、発言者は賛否を明らかにしてお述べ願いたいと存じます。山田譲君。
  371. 山田譲

    山田譲君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております昭和五十七年度補正予算案に対し、反対の立場から討論を行うものであります。  以下反対の理由を申し上げます。  その第一は、中曽根内閣の憲法に対する基本的な姿勢の問題であります。  本委員会の審議の過程において、わが党からの憲法、とりわけ第九条の問題についての質問に対し、総理は、一応、現内閣においては憲法改正は政治日程にのせるつもりはないと言いながらも、一方では、内外の情勢に応じてこれを研究することは大いに結構であるとか、世論の趨勢によっては改正もあり得るようなことを暗にほのめかすような発言を繰り返したのであります。このことは、鈴木前総理が憲法第九条の精神を高く評価し、この精神は絶対に遵守するということを明言しておられたのに比べ、大きく後退したものと言わざるを得ません。しかも、現に新内閣においては中曽根総理を初め多くの改憲論者がその閣僚に名を連ねていることを見るにつけても、果たして現内閣が世界に誇るべきわが国の平和憲法を守り抜く決意ありや否やについて大きな不安を感じざるを得ないのであります。  その第二は、政治倫理の問題であります。  総理は、今回の組閣はあくまでも適材適所を基本としてこれを行ったと言っておりますが、その実態は相も変わらず各派閥の力関係を最大限に配慮して行われたものであることは明々白々の事実であり、しかも事もあろうに刑事被告人田中角栄の強く息のかかった人物や、汚職、選挙違反等についてとかくの風評のあった人物がその枢要なポストを占めているのであります。このようなことで中曽根内閣本当国民ひとしく期待してやまない清潔な政治を実現する内閣と言うことができるでしょうか。残念ながら全く絶望的と言わざるを得ないのであります。  第三は、無責任きわまる財政方針についてであります。  鈴木内閣においては、五十九年度赤字国債ゼロということを財政再建の最大の旗印として、曲がりなりにもそれなりの努力をしてこられました。そして、わが党としては多くの根拠を挙げて、そのような財政再建は不可能であることをつとに指摘してまいりました。果たせるかな、その財政再建が全く絶望的になったときに、鈴木内閣は無責任にも政権をほうり出したのであります。  ところで、今回提出された補正予算案については、その根拠となる財政再建計画が全く示されていないのであります。政府は本予算案において、三兆四千億円に及ぶ特例公債を発行しようとしておりますが、一体いかなる原理原則に基づいてこれだけの赤字公債を発行しようとしているのか、そして今後いかなる計画に基づいていわゆる赤字国債を減額していこうと考えているか、その基本方針が明らかにならなければ予算審議のしようがないのであります。  第四は、地方財政との関連についてであります。政府の相も変わらぬ過大な経済見通しとそれに基づく収入見込みの誤りによって、六兆円に上る巨額な歳入欠陥をもたらしたのでありますが、このことは当然地方財政に連動し、地方交付税一兆七千億円の減額という最悪の事態を招く結果となったのであります。そして、政府はこれが補てん措置として、不当にも給与改善費、老人医療費等の需要費千五百億円を全く一方的に勝手にカットし、残り一兆五千億円を全額、資金運用部資金から借り入れようとしているのでありますが、このことは地方財源の均衡化を図り、地方団体の自主独立性を強化することを目的とした地方交付税法の精神に全く相反する措置であると言わざるを得ません。  最後に、国家公務員の給与の問題であります。政府はすでに九月の閣議において人勧凍結を決定し、それに基づいて今次の補正予算案において、すでに計上されている一%の給与改善費を減額しようとしております。わが党の数次にわたる要求に対しても頑としてその姿勢を崩そうとしておりません。このことは憲法に保障された労働基本権を全くじゅうりんし、かつ人湖勧全実施という従来からのよき労使慣行を頭から否認するものであって、絶対に容認できません。そして、このことは単に公務員労働者の問題にとどまらず、ひいては全労働者を低賃金に抑え込もうという陰謀にもつながる結果になると断ぜざるを得ないのであります。わが党はこのような政府の暴挙に対しては、今後とも徹底して闘い抜く決意であることを、この際はっきりと申し上げておきたいと存じます。  なお、政府はすべての地方公共団体に働く地方公務員の給与についても全く一律に同様の措置をとろうとしているのでありますが、これは単に地方公務員の労働基本権の問題にとどまらず、自治体職員の給与は、地方自治体自身が自主的に決めるという地方自治の大原則に対する重大なる侵害行為であると言わざるを得ないのであります。  以上述べた理由により、わが党としては本補正予算案に対しては、断固として反対せざるを得ないものであることを重ねて申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
  372. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、藤井裕久君。
  373. 藤井裕久

    藤井裕久君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十七年度補正予算二件について賛成の討論を行います。  本年度は、内需を中心とした経済財政運営により景気の回復を期待いたしたのでありますが、世界的な不況、アメリカの高金利による円安も加わって、個人消費は振るわず、中小企業の設備投資の低迷、輸出の減少、雇用情勢の悪化など、景気は総じて足踏み状態が続いております。  石油危機以降、景気の落ち込みに対処するため、公債の大量発行により財政が景気対策の主導的役割りを果たしてきたところでありますが、いまや公債残高は巨額に上り、その利払い費は大幅に増高するなど、財政の機動的な運営が困難となる事態を招来いたしております。このため、政府においては、財政再建を最優先の政策課題としてとらえ、本年度は一般歳出の伸び率を一・八%に厳しく抑制する措置を講じているところであります。  しかしながら、世界経済全般にわたる予想外の景気の回復のおくれなどの影響もありて、五十七年度の税収は当初予算に比べ、六兆円を超える落ち込みが見込まれるに至っております。  本補正予算はこの歳入不足の補てんに当たり、既定経費の思い切った節減を初め、国債費定率繰り入れの停止など異例の措置を講じ、特例公債の増発を三兆四千億円にとどめております。現実の問題として五十九年度特例公債脱却が困難になったことはまことに残念ではありますが、同時に、その中にあって、政府財政再建を貫く努力は大いに評価いたしたいと考えております。  また、今回の補正予算のもう一つの特徴は、災害復旧事業を中心とした公共事業の追加が行われていることであります。  史上最大の災害復旧に対処するため、今回は過去に例のない進度により復旧が行われることとなるほか、厳しい財政事情の制約の中にあって一般公共事業について債務負担行為を追加したことは、景気回復にも大いに資するものと考えるものであります。  最後に、政府においては本補正予算に盛り込まれた諸施策を速やかに実施に移し、国民生活の充実発展に尽力されるとともに、いわゆる増税なき財政再建の姿勢を今後とも貫かれることを要請して、私の賛成討論を終わります。(拍手)
  374. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、田代富士男君。
  375. 田代富士男

    田代富士男君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十七年度補正予算二案について、反対の討論を行います。  第一には、政府自民党の政治責任についてであります。  鈴木総理の突然の辞任、四十日に及ぶ政治空白は、現下の内外の厳しい諸情勢を全く無視した無責任政治のあらわれであり、いま国民はこのことを厳しく批判しております。  また、引き続き発足した中曽根内閣には、清廉高潔な政治を待望する国民世論をいささかも省みようとしない姿勢が随所に見られ、まことに遺憾に思います。  私は、発足直後の中曽根内閣がきわめて低い支持率であることに総理は深く思いをいたされるよう、まず申し上げたい。そして、この際、総理は政治倫理の確立を最第一の政治目標とするとともに、平和、民主、人権のすぐれた現行憲法をどこまでも遵守されるよう特に申し上げておきたいと思います。  第二に、防衛問題についてであります。  総理は、質疑を通じて、防衛費のGNP比一%突破を肯定し、対米追随の姿勢を示されました。これは、厳しい財政事情への配慮を欠くばかりか、わが国がアジア近隣諸国に対して平和外交に徹し、軍事大国にならないとした歴代自民党内閣の姿勢を大きく後退される暴挙と言わなければなりません。防衛費の突出を改め、恒久平和主義、平和五原則に基づく自主平和外交に徹し、反核、軍縮を貫き、日本、アジア、そして世界の平和に貢献するよう努力すべきと考えます。  第三に、景気対策についてであります。  現下の経済は、政府がこの夏二番底宣言をして以来、全く回復感が見られず、むしろ景気底割れの危険すら高まっています。完全失業率は二・四%に達し、十月には月間倒産件数は千五百件を大きく上回り、雇用不安は拡大する一方であります。特に、中小零細企業や構造不況業種においてはさらに経営悪化が進み、賃金抑制措置さえとられているところもあります。  政府は、五十七年度当初において目標として掲げた成長率五・二%の達成は困難と見、十月には三・四%と大幅に下方修正をしました。これは、世界経済の動向とわが国経済の実態を正しく認識せず、経済成長の願望にいたずらに引きずられた結果であり、まことに責任重大と言わなければなりません。  第四に、財政再建についてであります。  総理は鈴木内閣において行政管理庁長官として行政改革とともに財政再建についても特に責任ある立場であったにもかかわらず、みずから総理に就任するや否や、鈴木内閣が最大の公約とした五十九年度赤字国債依存脱却を破棄し、財政再建の前途多難をうかがわせました。しかも、一方において増税なき財政再建を口に唱えつつも、五十九年度以降の増税を示唆し、他方において国民に福祉や教育予算の切り捨てを押しつけようとしており、国民の不信を増長しているのであります。  五十七年度補正予算においては、さらに国債三兆三千八百五十億円もの追加発行が見られ、いまやその残高は百兆円に迫りつつあり、きわめて危険な状態と言わなければなりません。しかもこのときに当たり、本補正とあわせて財政再建の目途は何ら示されませんでした。しかも、本補正予算によっては景気対策に十全を期しがたいと思われます。すなわち、補正予算によれば、一般会計においては公共事業費は五千二百億円でしかなく、二千七百億円は国庫債務負担行為によるものであり、また、地方単独事業も地方債による地方財源依存であり、いずれも景気対策上の年度内の実効は何ら期待できません。  最後に、住宅建設の促進についてであります。  景気対策上、また国民生活の安定向上のためにも、住宅建設の推進は急務であります。  しかしながら、政府の本年度の建設目標である百三十万戸はとうてい達成困難であり、百十万戸に乗せるのがやっとのことではないかと危惧されており、景気にも微妙な影を落としております。  これに対してわが党は、国民の住宅取得能力の改善とともに、宅地供給に地上権つき分譲の促進、土地区画整理事業の完了した造成済み宅地の放出など各種の抜本策を講じるよう主張してまいりました。  しかし、政府はこれを座視し、住宅金融公庫の貸付枠の拡大など小手先の手段に終始しており、住宅を待望する多くの国民を裏切っていることは否めません。  以上、五十七年度補正予算二案に反対する理由を幾つか申し上げましたが、政府はまず、人事院勧告の完全実施と所得税減税の速やかな実行によって、景気の回復による国民生活の安定と、それがもたらす税収の自然増による財政再建という理にかなった政策をとり、国民生活にいささかの犠牲をも強いることのないようことに強く要望し、私の反対討論を終わります。(拍手)
  376. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、沓脱タケ子君。
  377. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表して、補正予算二案に反対の討論を行います。  わが党は、補正予算案の内容を、国民の暮らしを守り、経済の国民本位に立った民主的再建のために、次のようなものにするべきであることを主張してまいりました。  一、人事院勧告を完全に実施すること。二、教育、福祉、中小企業対策等、国民生活予算の削減をやめること。三、年度内に一兆円減税を実施すること。四、地方財政確保の緊急対策を実施することなどであります。そしてその財源は、軍事費のうち、正面装備未執行分の削減や、大企業向け支出の圧縮及び大資本優遇税制の緊急是正で賄うべきだと、道理ある主張をしてまいりました。  しかるに本補正予算案は、一言で言えば、自民党政府の失政の結果を、すべて国民への犠牲に転嫁するものとなっておるのであります。  反対理由を具体的に述べますと、その第一はこの補正予算案が、国民生活に新たな困難を強いることになるからであります。  政府の鳴り物入りで宣伝する景気対策は、心理的効果をねらっただけの全く見せかけのものでしかなく、国民が強く願った一兆円減税は夢と消えました。それどころか、六百万人の労働者に直接重大な打撃を与える人事院勧告凍結方針をあくまで貫き、さらに私学助成、中小企業対策費などの国民生活関連事業費を軒並みばっさりと削っているのであります。  人勧凍結は憲法が保障する労働基本権剥奪の代償措置である、財政を理由に完全実施しないことはしないとしてきた従来の政府の公式見解や最高裁の補充意見をも踏みにじる二重の意味での憲法違反であり、絶対に許すことはできません。しかもこの五十八年度も完全実施する考えの全くないことを言明するとは言語道断であります。  反対理由の第二は、この補正予算案が一兆七千億近い、史上初めての地方交付税年度内減額を強行し、新たな地方財政危機を引き起こすとともに、地方公務員への人勧凍結方針を地方自治体に強制しようとするものだからであります。  第三の反対理由は、この補正によって財政の破局的危機がさらに進行するからであります。財政再建のかけ声とはうらはらに、三兆九千億に上る空前の国債大増発によって国債発行額は史上最高となります。  わが党は、当初予算案に対し、それが税収を過大見積もりしたいわば粉飾予算であり、根本的に見直すべきだと繰り返し警告してきたではありませんか。この警告を無視した結果がわが国財政史上に類を見ない大失態に至ったのであります。この責任のほおかぶりは許すことはできません。  反対理由の第四は、軍事費や大企業補助金などの聖域が今回もまたほとんど手つかずで残されているからであります。  その上、わが党佐藤議員質問で、国権の最高責任者が外国の諜報謀略機関、それも悪名高い米CIAのエージェントと二十年間にもわたって深い交わりを持っていたことが明らかになりました。この驚くべき事実は、自民党政権の底知れない対米従属ぶりを象徴するものであります。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)わが党は、レーガン核戦略に盲従した軍事大国化に断固として反対するものであります。  予算案の審議を通じてますます明らかになりた総理みずからの疑惑解明を拒否する態度や、証人喚問拒否などに見られる中曽根内閣のロッキード隠し、露骨な改憲志向に国民は強い危惧を抱いているのであります。  わが党は、亜ねて強く現行法による証人喚問の実現を要求するとともに、中曽根内閣の危険な路線に対して国民とともに闘うことを表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  378. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、伊藤郁男君。
  379. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして、ただいま議題となっております昭和五十七年度一般会計補正予算案及び同特別会計補正予算案に対し、一括して反対の討論を行うものであります。  わが国経済は、かつてない厳しい状況にあり、国民の間には、一体この日本経済がいつ回復に向かうのか、先行き不安感が大きく広がっているのであります。  最近におけるわが国経済の成長率は、昭和五十五年度が三・七%、五十六年度が二・八%にとどまり、今年度も下方修正した政府見通し三・四%をさらに下回る可能性があります。  確かに経済は生き物であり、的確な予測が困難なものであるとはいえ、政府の見通しと現実との乖離は余りにも大き過ぎると言わなければなりません。初めから裏づけのない希望的観測に基づいた経済運営であったと断ぜざるを得ないのであります。この結果、六兆一千億円に上る未曽有の規模の税収欠陥をもたらすに至ったのであります。  今日のわが国の低成長は、世界不況の余波による側面もあるとはいえ、政府が第二次石油危機のもたらすデフレ効果を過小評価し、所得減税や公共投資の拡大など積極的な景気対策を講じなかったのみならず、景気回復に逆行する大幅増税を強行したことなど政策の対応を誤ったことに起因するものであり、明らかに政策不況と言わざるを得ません。そして不景気によりて税収不足が生じ、税収不足から景気対策が講ぜられず、それがさらに景気を悪化させ、ひいては一層の税収不足を招くという悪循環に陥っているのであります。  現在のこの悪循環を断ち切るには、わが国の持つ潜在成長力を顕在化させ、内需中心の成長を達成することであります。  そのために、まず第一に、所得税、住民税の減税、中小企業の投資減税など大規模な減税の断行であります。第二は、良質な住宅建設、下水道及び公園等の生活環境の整備、都市再開発、国土の均衡ある発展等に対する中長期のビジョンを明確にし、計画的な公共事業投資を実施することが不可欠であります。  しかるに政府は、勤労者や中小企業者が切望している減税の実施には目をつぶり、また赤字国債脱却についての確たる見通しもいまだに明らかにしていないのであります。これでは国民の先行き不安感も払拭できず、わが国経済の活力はますます衰退していくばかりであります。政府の発想の転換を求めるものであります。  次に、本補正予算案に盛り込まれている国債費の中の定率繰り入れ等の停止についてでありますが、この定率繰り入れ等の機能は、言うまでもなく、国債の償還が保証されること、償還に伴う財政負担を平準化すること、一般財源から一定の額が先取りされることにより他の支出に充て得る財源が制約されるため財政の膨張に対する歯どめとして働き、財政の節度を保つことなどであります。この定率繰り入れ等の停止は、目先の国の財政の苦しさをしのぐには役立つとはいえ、それは後年度に負担を先送りしただけのことであり、本質的には財政再建に何ら貢献するものではないのであります。この問題を先送りして将来に禍根を残す苦肉の策とも言うべき定率繰り入れの停止は、減債制度を崩し、長い目で見ると、歳出の縮減への努力を鈍化させ、ひいては国債発行の歯どめ、すなわち財政の節度を失わせるおそれがきわめて強く、たとえわが国財政が背に腹はかえられないという窮迫した状況にあるとしても絶対に容認さるべきものでないことを強く申し述べる次第であります。  反対の第三の理由は、国家公務員の給与に関する人事院勧告制度を無視し、給与の抑制を決定したことであります。言うまでもなく、人事院勧告制度は憲法で保障された国家公務員の労働基本権を制約する代償として設けられたものであり、政府は完全実施のため最大限の努力を払う義務を負うものであります。これを単なる財政的理由によって抑制することは政府みずから制度を否定するものであります。  また、人事院勧告の抑制は行政改革とも相反する措置であります。行政改革とは、臨調答申で述べているように、むだな仕事や行政機械を整理し、公務員定数を大幅に削減し、それによって総人件費を抑制することにあります。それができないから公務員全体の給与を抑制するということは、行政改革とは相入れない本末転倒の措置であると言わざるを得ません。  さらに、政府の今回の措置は、民主的労働運動の基本理念にのっとり、法と秩序を守りながら職務遂行に専念し、国民的課題である行政改革に率先してこたえるべく努力してきたまじめな良識ある公務員労働者をはなはだしく裏切る行為でもあります。政府の行為は、今後違法ストを助長し、公務運営をいたずらに混乱に陥れることになりましょう。その責任は労使間の約束をみずから破った政府が負うべきであります。  以上の点は、わが党が一貫して政府に問いただしてきたものであります。しかし、残念ながら、政府の態度はかたくなに自己の立場に固執し、われわれの要求を拒否してきたのであります。これでは今日わが国経済が置かれている実情を無視し、国民が国政に対し切実に求めている要求を無視した補正予算と言わざるを得ず、わが党はこれに強く反対するものであります。  最後に、政治倫理の確立についてでありますが、本国会の論議を通じて明らかにされた中曽根内閣の態度はまさしく国民に背を向けたものであり、日本の民主政治を崩壊の危機に導くことを憂えるものであります。猛省を促しつつ反対討論を終わります。(拍手)
  380. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で討論通告者の発言はすべて終了いたしました。討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  昭和五十七年度一般会計補正予算昭和五十七年度特別会計補正予算の両案を一括して採決をいたします。  両案に賛成の方の起立を願います。    〔賛成者起立〕
  381. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 多数と認めます。よって、昭和五十七年度補正予算二案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  382. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後十時二十七分散会