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1982-12-23 第97回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月二十三日(木曜日)    午前十時九分開会     ─────────────    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      三治 重信君     田渕 哲也君      中村 鋭一君     伊藤 郁男君  十二月二十三日     辞任         補欠選任      源田  実君     伊江 朝雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 関口 恵造君                 中西 一郎君                 長谷川 信君                 藤井 裕久君                 赤桐  操君                 矢田部 理君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 伊藤 郁男君     委 員                 井上 吉夫君                 伊江 朝雄君                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩崎 純三君                 植木 光教君                 大島 友治君                 長田 裕二君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 古賀雷四郎君                 後藤 正夫君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 林  寛子君                 藤井 孝男君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                茜ケ久保重光君                 粕谷 照美君                 勝又 武一君                 対馬 孝且君                 寺田 熊雄君                 山田  譲君                 吉田 正雄君                 大川 清幸君                 太田 淳夫君                 中野  明君                 中野 鉄造君                 佐藤 昭夫君                 田渕 哲也君                 中山 千夏君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  秦野  章君        外 務 大 臣  安倍晋太郎君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  瀬戸山三男君        厚 生 大 臣  林  義郎君        農林水産大臣   金子 岩三君        通商産業大臣   山中 貞則君        運 輸 大 臣  長谷川 峻君        郵 政 大 臣  桧垣徳太郎君        労 働 大 臣  大野  明君        建 設 大 臣  内海 英男君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    山本 幸雄君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       丹羽 兵助君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       齋藤 邦吉君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (国土庁長官)  加藤 六月君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  谷川 和穗君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       塩崎  潤君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       安田 隆明君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  梶木 又三君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        総理府人事局長  藤井 良二君        警察庁警備局長  山田 英雄君        行政管理庁行政        管理局長     佐倉  尚君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  夏目 晴雄君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        経済企画庁調整        局審議官     横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局長     谷村 昭一君        環境庁企画調整        局環境保健部長  大池 眞澄君        環境庁大気保全        局長       吉崎 正義君        環境庁水質保全        局長       小野 重和君        法務省刑事局長  前田  宏君        法務省人権擁護        局長       鈴木  弘君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省条約局長  栗山 尚一君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        高倉  建君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       岩崎  隆君        大蔵省主計局長  山口 光秀君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  松尾 直良君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        国税庁次長    酒井 健三君        文部省初等中等        教育局長     鈴木  勲君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省学術国際        局長       大崎  仁君        文部省体育局長  西崎 清久君        厚生省保険局長  吉村  仁君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        食糧庁長官    渡邊 五郎君        通商産業省通商        政策局長     中澤 忠義君        通商産業省基礎        産業局長     植田 守昭君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君        中小企業庁長官  神谷 和男君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        郵政省電気通信        政策局長     小山 森也君        郵政省電波監理        局長       田中眞三郎君        郵政省人事局長  奥田 量三君        労働大臣官房長  加藤  孝君        労働省労政局長  関  英夫君        建設大臣官房長  豊蔵  一君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        会計検査院事務        総局次長     丹下  巧君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)(内閣提出衆議院送付) ○昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任についてお諮りをいたします。  委員異動により理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事伊藤郁男君を指名いたします。     ─────────────
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 昭和五十七年度一般会計補正予算昭和五十七年度特別会計補正予算の両案を一括して議題とし、これより寺田熊雄君の質疑を行います。寺田君。
  5. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 初めに、補正予算編成の最大の原因は六兆一千四百億の税収の不足によるものでありますが、このような税収見込み違いは過去にも例がありません。これは赤字公債の増発を初め、人勧凍結であるとか、これは非常にけしからぬ話でありますが、さらに恩給、年金の凍結であるとか、国民生活を非常に圧迫する悪い影響を与えておりますが、これに対して大蔵大臣は、世界経済停滞等影響による経済情勢の変化というような弁明はなさるのでありますが、一言も反省の辞もありません。遺憾の意の表明もありません。これは一体どういうことなんでしょうか。責任をお感じになっていらっしゃらぬということなのかどうか、ちょっと釈明を求めます。
  6. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 再々申し上げておりますように、この税収見積もりは、見積もりの時点におきます課税の実績でございますとか、政府経済見通しにおける諸指標等基礎として、個別税目ごとに積み上げて行っておるというものでございます。しかしながら、御指摘のように世界経済の低迷に伴って輸出が減少しておりますこと等々からいたしまして、結局下方修正せざるを得なかったという状態でございます。  これのいわゆる遺憾の意という問題でございますが、これは私も五十四年の経済運営、五十五年の経済運営責任立場にあったわけでございますので、政策継続性からいって、それがたとえ外的要因とはいえ、見通しが下方修正せざるを得なかったということについては、遺憾の意を表するにやぶさかでございません。
  7. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、中曽根総理にお伺いをいたしますが、俗称田中派から六人もの入閣がありまして、鈴木総理もそんなばかなことがあるかと言ったと伝えられております。官房長官には従来の総理は皆自派から選んでおりますのに、総理は他派閥田中派から選任をいたしました。世論は皆こういう事態を見て田中直通内閣というふうに批判をいたしておりますが、総理はこれを仕事本位人材本位と弁明いたしております。しかし、総理の論法をもっていたしますと、従来の総理は皆仕事本位人材本位ではなかったと、他の動機から組閣を果たしたということになってしまうのであります。総理のおっしゃることは一見もっともらしくは聞こえるのでありますが、深く考えると道理に合わないことが多いように思われます。これはやはり予備選を初め、総裁選田中派が強力にあなたを支援したということによる報恩人事と思うほかはないのでありますが、いかがでしょうか。あなたも田中派の事務所に予備選の終了後行って手を合わした写真まで出ております。そういうことから考えて思わざるを得ないのでありますが、いかがでしょう。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自民党内閣におきましては、いままでの内閣におきましても仕事本位人材本位でおやりになってきたと思います。ただ、そのときそのときの総理総裁考えによりまして、そのやり方は多少変わってきていると思うのであります。  私は、総裁予備選のときから当院の皆様に対して公約をいたしまして、派閥を超越して人材本位の簡抜をやりたい、そういうことを申し上げまして、派閥を超越するという意味におきまして、自分内閣におきましても官房長官は一番適材と思う後藤田氏をお願いいたしました。いままでの例は、大体自派からみんな官房長官をお出しになって、その方が便利でもあり、あるいは政策の遂行がうまくいったと思うのでございましょうが、私の場合は、やはり自分の派にも優秀な人材は雲のごとくおりますけれども、しかし、他派の中にも優秀な人材がおられる。そういう場合には、いまの時局にかんがみてどういう型の人材官房長官として望ましいかと、そういう考えに立ちまして後藤田氏をお願いしたわけであります。  後藤田氏の能力についてはすでに定評もありますし、いままで余り申し上げなかったことでございますが、特に考慮の中に入れた一つは、地震災害対策という問題もあったのであります。ここ近年、大地震ということも言われておりまして、そういう不測なことがもし万一あった場合に、全国的に手配をするなり、あるいは自衛隊や警察に対して救援を求めるというような場合等も考えてみますと、やはり官房長官が一番そういう過去の経歴やら実力から見ても適確初動動作が行えると、そういうことも考慮に入れました。  それから、全般的に見まして、いままでのように派閥順送り人事というのはやめたわけでございます。また、各派から推薦していただいた方々をそのまま入れるということは私はしなかったわけであります。大体各派にあらかじめ相談をしたり、あるいは内意を聞いたりすることはしなかったんです。私一人でいろいろ考え、そして最後に決断をいたしましてお願いをした。そういうことで、いままでの組閣とは違ったやり方をいたしました。これは、私が派閥を超越して人材本位内閣をつくると申し上げた公約に従ってやったことでございます。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 人物の評価ほど人によって違うものはありませんけれども、あなたの派のたとえば宇野宗佑であるとか、倉成正とかいうような方方、これは人物、識見においても後藤田氏にまさるとも劣るとは思われないのであります。しかし、あなたはいま地震の問題を持ち出した、これは初耳でありますが、まあひとまずおきましょう。  後藤田さんにお尋ねするんだが、あなたは田中角榮氏のふところ刀と言われておりますね、過去の徳島地方区参議院選では久次米健太郎氏と争って検挙者が二百七十二名、買収事犯百五十五件、二百六十七名という逮捕者を出しました。買収でこれが事犯を問われた人が二百六十八名、これは三角代理戦争、空前の金権選挙と言われました。そのときの選挙資金については田中角榮氏から出ているということが政界の常識のようであります。私はあなたも御存じの警察のOBにも尋ねてみたけれども、それは間違いないと言下に断定するのでありますが、あなたはそれをしも否認なさいますか。
  10. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) もう大分前の話でございますが、最初の選挙でございまして、いろいろ失敗があったことは、これは申しわけないと。選挙資金のお尋ねでございましたね、これはいろいろなところからちょうだいをいたしました。田中さんからもちょうだいをいたしましたけれども、およそ選挙でたった一人から全部お金をいただくなんということはあり得ない、いろんなところから御芳志をいただいた、こういうことでございます。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 山本国家公安委員長にお尋ねするけれども、あなたは認証式総理から任命され、天皇認証式直前田中角榮氏のところにあいさつに行ったと報道せられていますが、事実ですか。
  12. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 私どものように初めて閣僚に入れていただくということは、政治家として一区切りでございまして、過去の長い政治生活の中で大変いろいろ御懇親をいただいた方にお礼を申すというのは、大体私は人間としての仁義であろうと。これは選挙区の方もたくさんございますし、長年のつき合いの方がいろいろございます。そういう意味で、私どもお礼というよりは、ごあいさつというようなことも人間として当然のことであろうと、こう考えておるわけでございます。ただ、私はいまの心境は、これは中曽根内閣閣僚の一員、いまおっしゃるように国家公安委員会委員長ということでございます。この職責は、私は警察は厳正中正に、厳正公平に職務を執行していくというのは当然のことでございまして、私はそれを強く期待をしておるわけでございます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまあなたの御答弁は、行ったことを前提にしての御答弁としか意味はなさないけれども、あなたは警察官の元締めとしてのいま立場にいらっしゃる。それが党外刑事被告人のところにあいさつに行くとは一体何事なんでしょうかね。あなたは国家公安委員長として他の警察官に与える影響などを考慮されたことがあるでしょうか。汚職というのは政治倫理の否定につながる最も大きな、政治倫理から見て論外の事象でしょう。それを犯して、現に裁判中の党外刑事被告人のところに、認証式直前総理から任命されて国家公安委員長としてあいさつに行くということは論外じゃないか。そう思いませんか。
  14. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) これは人間山本としてそういうことを考えておるわけでございまして、それ以外に私は他念はないわけでございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 責任を感じているか感じていないかを伺っているんです。公安委員長として行ったというんだから。納得できない。
  16. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止
  17. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  18. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 私ども政治家としてやらしていただいてきた長い間のおつき合いの方がたくさんあるわけでございまして、そういう方に人間としてこういう政治家としての一区切りのときにごあいさつをするということは、私は人間の当然の気持ちとして私もやったようなわけでございます。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかし、あなたは国家公安委員長だ。そして認証式直前に行かれるというのはよろしくないでしょう。やはりそういう私情は抑えなきゃいかぬ。党外刑事被告人政治倫理を否定する人間あいさつに行く。私情としてはいいかもしれないけれども政治倫理を掲げる中曽根内閣閣僚として、国家公安委員長としてそれで責任が果たせますか。
  20. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) 国家公安委員長という職責は、警察が政治的な中立を保って厳正公平に職務を執行する、そういう立場はかたく守っていかなければならない、その職責は十二分に私は自分責任として感じておるわけでございます。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 総理はどう考えますか。
  22. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 山本大臣は、公安委員長になる前に、いままでの情義から見てごあいさつはしたということであろうと思います。しかし、公安委員長に一たん就任してからは、これは公の立場になりますから、厳正公平にやるべきことはやり、また私情を殺すべきときは殺さなければならない、そういう考えでやってもらいたいと思いますし、本人はやる覚悟であると思います。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 認証式はあなたの任命を確認するだけです、公に。任命はそれ以前にやる。じゃ、何日の何時に任命しましたか。
  24. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 認証式天皇によって認証される、そういう公の大きな仕事でございます。それによって初めて国務大臣として正式に資格を得る、そういうことであると思います。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは違います。任命総理任命であって、認証はあくまでも確認であります。
  26. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 任命権は私にありますけれども、その任命認証していただくという、そういう制度になっていると思います。私が総理大臣になりますときも、国会で指名していただきまして、そして天皇の前へ参りまして、そこで辞令をいただくわけでございますが、それまでは鈴木さんが総理大臣でございました。その天皇の前で辞令をいただいたときから私が正式の総理大臣になると。鈴木さんはそこで侍立しておりまして総理大臣として私に辞令を交付する、こういう形になっております。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大変な誤解です。あなたは総理大臣だから天皇任命するというのは、憲法規定があるからそれはそういうことになる。認証は違う。もう一遍。
  28. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 憲法規定は、いま寺田委員の言われたとおり、内閣総理大臣任命し、天皇認証するだけである。ただ、手続的に言いますと、いわゆる事実上の組閣と、それから正式の内閣総理大臣任命とは、これは若干時間の差がございまして、むしろ任命と同時に天皇認証式というふうに理解していただいて結構だと思います。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたの憲法上の判断、それは違う。納得できぬ。
  30. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 別に憲法上の規定と違ったことを申し上げているわけでございませんで、内閣総理大臣国務大臣任命するとすぐ、手続的に言いますと認証式を行いますから、そういう意味において両方が時間的に膚接しているということを申し上げたので、手続的には全然別な手続でございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 だから、その任命は何日の何時かとお伺いしておる。
  32. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) 天皇から内閣総理大臣任命されます。俗に親任式といいます。その後に引き続き宮中認証式が行われるわけです。それと同時に、天皇から総理大臣任命されなければ国務大臣任命できませんから、手続的にはそれは並行して行われるわけであります。したがって、同時というのは、先ほど膚接してと申し上げたのはそういう意味でございます。  それで、事実上の組閣は今回の場合前日に行われておりましたけれども、その際はまだ法律的には任命されておりませんから、そのことを承知の上で申し上げたわけでございます。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それでは納得できないです。  法制局長官認証任命とを同時に行うというようなこと、これは考えられないでしょう。
  34. 角田禮次郎

    政府委員角田禮次郎君) いわゆる事実上の組閣は、今回の場合もそうではございましたけれども先に行われております。しかし、二十七日だと思いますが、二十七日に書類上の手続としてはまだ完成していないわけでございます。そして、まず内閣総理大臣任命が行われるわけであります。これは天皇でございます。そして内閣総理大臣天皇から任命されますと、引き続き宮中において認証式をやりますから、その間に内閣総理大臣が、実は書類的には事前準備はいたしますけれども内閣総理大臣がそこで国務大臣任命するわけであります。そしてその国務大臣任命されますと、それにすぐ続いて天皇宮中認証式が行われるわけであります。  そういう状態は実は書類の上では事前にいろいろな準備はいたしますけれども、法律的に言いますと、総理大臣がまず任命され、そしてその総理大臣国務大臣任命し、そして国務大臣認証式というものが行われる、こういうことになるわけでございます。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 国家公安委員長、事実上前夜に組閣はなされたというんですよ。まあ法制局長官の御答弁がよしとするも、事実上あなたはもう国家公安委員長だ。黒塗りの公用車で行かれたでしょう。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま法制局長官が申し上げたとおりでございまして、まず私が内閣総理大臣任命されまして、そしてすぐ今度は国務大臣を私が任命をする、その儀式がほとんど同時刻に宮中において実は行われる。順序はいまのとおりでございますけれども、それはしかし国務大臣としての任命であります。そして今度は帰ってまいりましてからどういう補職をやるか。国家公安委員長というのは帰ってまいりましてから私が辞令を渡す。これは北海道開発庁長官にいたしましてもその他にしても同じでございまして、若干その国家公安委員長になるというのは時間的ずれがまたさらに出てまいります。
  37. 山本幸雄

    国務大臣山本幸雄君) いまのお話で公用車で行ったということでございますが、私はまだそのときは公用車に乗っておりませんで、三重県ナンバーの私の車で行ったのでございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 田中総理は昨日東京地裁の法廷で裁判官からいろいろ本人尋問を受けておる。これについては中曽根総理としてはどういう所感をお持ちですか。
  39. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本は三権分立の国でございます。特に係属中の裁判事項につきましては行政府の長といたしましてこれを論評することは差し控えたいと思います。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 恥ずかしいとは思われませんか、同じ党の人で、元党だったけれども。どうですか。
  41. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この三権分立は厳に守る必要がございまして、一切この問題については論評しないことにいたしております。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは答弁にならぬです。恥ずかしいとは思わないかと伺っているんです。答弁にならぬでしょう。
  43. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、そういうことは結局は価値判断の問題が出てまいりまして、そのことはまた裁判に影響してくる要素を持っております。そういう意味におきまして論評は差し控えさせていただきます。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたは行革を第一義としておられますね。閣僚任命に当たって臨調の方針に従って行革を行うという約束を取りつけたとおっしゃいました。これはちょっと私も、使用者が労働者を採用する場合にいわゆる黄犬契約、イエロードッグ・コントラクトというのを御存じでしょう。ちょっとそんな感じがするんですが、これは大臣は臨調の方針に一〇〇%服従して、一切その是非を判断する自由意思を持たぬという趣旨ですか。それともやはり臨調の方針といえども、気に入らないものならこれはもう反対するという自由を持つわけですか。もし前者とすると、国務大臣責任政治を行い得ないでしょう。臨調のこれはまあ家僕みたいなものになってしまう。これはおかしいと思うがどうですか。
  45. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま成立している現内閣自民党内閣でございます。自民党は党議といたしまして、この臨調答申につきましてはその大筋を了承してそれを実行していく、そういう党議を形成しております。また歴代内閣、特に鈴木内閣におきましては臨調答申を最大限に尊重してそれを逐次実施していく、特にこの第三次答申につきましては九月二十四日に正式な閣議決定を行いましてそれを決めております。これからの内閣はその閣議決定を実行していく内閣になります。国鉄の問題にいたしましても、電電や年金の問題にいたしましても、その他についてもそうでございます。いよいよそれが具体化するというところでございますから、私は鈴木内閣の方針を踏襲して臨時行政調査会の答申を最大限に尊重して実行していく、そういう考えであり、それは総裁公選のときにも党員に述べて公約してきたところでございます。そういう諸般の情勢、継続性等も考えてみますと、組閣に当たりまして、九月二十四日の閣議決定、党議決定あるいはそれ以前の諸般の臨調答申に対する閣議決定、党議決定、これを踏まえましてこれを実行していく閣僚でなければ困るわけであります。そういう意味におきまして、組閣に際しまして一人一人にそれをやる意思があるかどうかということを念のために確認をいたしました。  また、初閣議におきましても、閣議決定したことや閣議了承をしたことについては外では批判がましいことは言わないでもらいたい、ただし、私に直接言ってもらいたいと、そう言ったんであります。これは内閣は国会に対して連帯して責任を負う立場にございますから、一たん閣議決定とか閣議了承したことについてそれを疑わせるような発言をすることは、これは無用のことであります。そういう意味におきまして念のための処置をしたわけであります。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 秦野法務大臣にお尋ねをしますが、あなたは日本アミューズメントマシーン工業協会——JAMMAですね、それから日本アミューズメントオペレーター協会——NAO、顧問をしておられたことは間違いないですな。
  47. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 間違いございません。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この二つの協会の五十六年度収支計算書、五十七年度の収支予算書にはそれぞれ顧問料の記載がJAMMAの方は五十六年度五十万、五十七年度二百万、NAOの方は五十六年度九十七万、五十七年度百万と計上せられております。あなたはこれは顧問料を受け取ったのではない、あなたの御子息や奥様あるいは秘書がやっておられた「ステーツマン」という月刊誌の広告料だと弁明していらっしゃるようですが、そうですか。
  49. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) お尋ねの件でございますけれども、ちょっといきさつ申し上げさしていただきますが、この前の五十五年の選挙のときに横浜の友人が選挙に関連して私を引き合わせした。これはいま仰せのアミューズメント協会ですか、そのころは日本遊園協会と申しまして、日本で一つの、まあ大体一つでしょう、最近の高度な遊技といいますか、外国にも輸出しているような、コンピュータを導入しているような企業でございますが、そういうものを協会をつくっているので、工場等が私の選挙区にもあるということで、応援するからということで応援してもらったことがある。その後、選挙の後顧問になってくれと言うから、まあそういう関係もあるので顧問に私はなったわけです。  いまお話のように、顧問になったのも事実だし、それから後でこれは気がついたことですけれども、その協会の予算の上に顧問料があるということも事実のようでございます。私は実は顧問料は応援をしてもらったから要らないよと言ってもらわなかった。ところが、この協会がその後分裂しまして、分裂といいますか分立といいますか、やや企業の性格が違ったものが分かれまして三つになった。そのうちの二つが依然として私に顧問をやってくれと言うから、まあ大したことはないんだろうと思って私はなっておったんですよ。  私は、その顧問といっても、結局一年に一遍晴海で開かれる展示会に、外国人等も来るし、輸出産業にも近ごろなっているというような状況で、通産とか建設も後援しているというような団体だから、まずもって支障はなかろうということで、年に一遍そこへテープカット、一言言うあいさつに朝ちょっと十分か二十分行くだけのことでございますけれども、そういうことを二回やりましたかね。一回は文書だけでございましたがやりました。その私の案内をしていった選挙のときの私の秘書が、選挙を終わりましたから、私は実は自分の意見を毎月一遍書くというようなつもりで、月刊「ステーツマン」という雑誌を、これは後援会の機関誌のようなことでやるよりも、オピニオン誌としてひとつやってやろうという私の友人どもの発起で資本金百万円の会社ができたんです。これは私がやったというよりも、友人たちがそれをつくってくれた。ところが、やってみたらなかなか経営が大変でうまくいかないんで、三人も社長が変わったわけです。それで、なかなか大変だということで、最後は私の息子に、じゃちょっとしばらくやれと言って、一年余り最近やらしたわけですけれども、私の息子がやる前にジャーナリスト出身の社長の時代に、私の元その選挙のときの秘書をやっておったのが営業の方に回って、広告をとりにたまたま私の秘書として晴海に随行したものだから、社長やなんかも、有力な社長等も知って顔つなぎになったから、そこで広告をとりに行った。これは私知らなかったんだけれども、広告をとりに行って、もらったという事実がございます。あくまでも私は顧問料をもらっていないけれども、後で調べるとそういうようなことで、ステーツマン社の広告料を五十万単位で何遍かもらい、そしてまた広告も載っけたというようなことで、確かに顧問料という、だから協会の方は顧問料ということになっているらしいんですね。もらった方は広告料として請求しているわけです。  そういうような関係があって、私は顧問料としてはもらってないけれども、始めたのは私じゃないんだけれども、毎月一回は書いているというような雑誌なものだから、秦野の関係した雑誌ということを言われても当然だと思います。そういうことで、そこにお金が五十万単位でいまおっしゃったような金が入り、三遍か四遍広告が載っかった。ただ、その後分裂した協会が二つになりましたけれども、メンバーが重なっているものだから、一つの広告を出せば片方はいいよというリーダーの話だったそうでございます。私はその点は直接聞いたんじゃありませんけれども、そういうことでいろいろ、何といいますか、世間にも御迷惑かけた。しかし、これは営利の団体でございますから、私は法務大臣に就任になると同時にやめさしてもらっておるわけでございますが、過去にそういうことがあったことは事実でございます。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ここに「アミューズメント産業」という、いまの両方の協会などが出しておる機関誌がありますが、そこにあなたがいまお認めになったようにJAMMA、NAO、それぞれの収支計算、それから五十七年度の予算の記載があります。それで、この日本アミューズメントオペレーター協会——NAOの方は顧問として秦野、与謝野及び木南という、顧問報酬という記載がある。木南という人は税理士ですよね。この人に電話で聞くところによると、これは理事会の監査を経た報告書に基づいて決算書を作成したんだということを言っているわけなんです。この税理士が広告費と、それからこういう報酬のようなものとを混同するということはちょっと考えられないんですね。これはどうでしょう。
  51. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 協会の内部のことがどういうふうになっているかは私自身もつまびらかでございませんが、私自身が顧問料として個人所得でもらってないことは事実でございます。それから広告の問題は、広告料として請求していることは事実でございます。しかし、その支払われ方が顧問料という予算があってその中から出されたということも事実のようでございますが、それはいずれにしても後で考えれば協会側のやり方といいますか、そういうやり方で処理されたというふうにしか理解しようがないわけでございます。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、この五十六年度のあなたの言われる広告料、この協会の帳簿の記載では顧問報酬、これがあなたのおっしゃるように、五十六年度はそれぞれ五十万ずつ百万支払いがなされておるけれども、「ステーツマン」に対する広告というものはわずかに半ページ大の広告が一つあるだけであります。一月号です。これちょっとごらんください。どうぞごらんください。(資料を手渡す)これ半ページ大のものです。私は念のために雑誌の「世界」あるいは「朝日ジャーナル」等を調べてみたんだけれども、いずれもこの程度の広告というものは、ああいう大雑誌でさえもせいぜい五、六万、十万程度のものであります。それが、あれが百万という広告料はどういうわけでしょう。これは政治家に対する報酬としか考えられないですね。
  53. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 確かに遊園協会のは一回だったかもしれませんが、その後分かれましてアミューズメント協会とかというようなことで何遍かは出ているようでございます、たしか三遍ぐらい出ているんじゃないかと思いますが、いずれにしても広告料は比較的高くなっていると、だからそれは政治献金的色彩があるかもしれぬという御疑問はごもっともだと思います。しかし、これはごらんのとおり、何といいますか、オピニオンというか、いろんな人の意見、論文を出したりしてやっておりまするようなものですから、大変経営が苦しいので比較的高い広告料になっているということも認めざるを得ない。それでも出してくださる人があればできるだけこういうことを継続していこうという気持ちでやっておったようなわけでございます。  私も実は、余り言い逃れを言うわけではありませんけれども自分仕事が忙しいものだから、そういう一々経理やなんかのことについては、実は一年ちょっと前まである新聞社出身の人が責任者になってやってくれていました。その人に任せておったわけですよ。その人も専門の立場だから大体やってくれているだろうと。ところが、なかなかうまくいかなくなって、それならつぶしちゃおうかどうかと言ったら、もったいないからやっとけやっとけと言うような人がございまして、一時私の息子を責任者に引き続きやらしておったんです。事が始まったのが実は前の社長のときで、大変私も残念に思っておりますけれども、そういういきさつの中でいろいろ苦難に満ちた雑誌の継続をやってきたと。したがって、御批判を受けるような問題があったのも無理はないなと、こう思っております。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの広告料ですね、「世界」の場合は半ページが六万一千円です。「朝日ジャーナル」の場合は半ページが九万円。大雑誌にしてしかり、それがこの場合には両方から五十万ずつ百万取っておる。これはもう政治献金としか考えられないわけですね。  私はなぜこんなことをあえて言うかというと、やっぱり政治家が金銭の問題をやると、必ず後援会であるとか、秘書であるとか、あるいは雑誌であるとかということで、責任を他に転嫁して正直におっしゃらない。これは政治倫理としては閣僚が国会で正直に言うということがまず前提になりますよ。これはマクミラン内閣のときのプロヒューモ陸相がキーラー嬢と関係したかどうかは問題じゃないと、国会でうそをついたことが問題だということをマクミラン首相が言っていますね、もう十何年前のことです。これはあなたも御存じでしょう。だから、もっと正直にさえ言ってくれればわれわれはこんなことを追及したくはないわけですよ。ことに「ステーツマン」の場合は、やはり五十七年度も五十万広告料を取っております、オペレーター協会から。ところがオペレーター協会の広告は全然ない。これは私はことしのやつを全部とってみたが、半ページの広告もない。広告がないのに広告料を取るというのはどういうことですか。わかりにくいでしょう。
  55. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) それも私は後から聞きまして、そしたら来年の三月まで年度があるそうです。したがって、広告料の請求はしてありますけれども、実はアミューズメントの広告があれば、会員は相互に、片方の会員は一方の会員と、片方の会員はまた片方の会員と重なっておりますから、まあこれでいいんだということを会長が言っておられたということだけれども、それじゃまずいから広告原稿を出してくれと、こういうふうに言っている、会社の方としてはそう言っているようでございます。  しかし、いずれにしても、先ほど来おっしゃるように比較的高い。政治献金の色彩があるじゃないかと、私は政治献金でやった方がよかったと思っている。そんな百万もらおうがはっきりしていいんですけれども、かえってこういうことをやったために非常に苦しい思いをして残念に思っています。ただ、正直言って、これは中を見ていただければわかりますけれども、おたくの党の人もほかの党の人もいろいろ卓越した意見を載っけて、幾らかでも普通の雑誌が書いてくれないようなことを書こうというような気持ちがあったことも、寺田さんのような見識のお高い方は認めていただけるんではなかろうかと。私は、その苦しい道をあえて歩んできた、そんな感じがするんです。ただ、経営という問題になると私も素人ですから、実は私の方の政治献金から正直言って逆につぎ込むような形になっておるわけでございます。なかなか大変でございまして、御批判のあった点は、もう私は法務大臣になってからこの協会やめていますけれども、その他の関係におきましても遺憾の点があっちゃいかぬということで、刷新方については強く言っております。体制も新しく、間に合わせじゃなくて新しい体制にするという方向でいま検討中でございますので、そのことをあわせて御報告申し上げます。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういうふうに弁明されるとなお困るのは、この収支計算書あるいは予算書は、皆一月から十二月までとなっておるんですよね、これごらんになると。三月まであるということはない。だからちょっと、広告をしないのに広告料を払っていると。これは中曽根総理の言う非常にわかりやすい政治に反するでしょう。これをちょっとよく説明してもらいたい。
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いままでの問答を聞いておりまして、「ステーツマン」とかなんとか、ともかく自分たちの言えない意見を堂々と発表しようと、そういう政治家として言論活動を通じて国民に訴えようと、それも自民党だけじゃなくて、社会党の皆さんも一緒にやっていただこうと、そういう趣旨は私は政治家としていいと思います。りっぱだと思います。しかし、それをやっていくために、経営上非常に苦しくなって、そういう結果広告料とかいろんな面で算段をしてきたんだろうと思いますし、秦野さんも自分で自腹を切って埋めたという面もあるいはあったのかもしれません。そういう面で四苦八苦して経営しているというそのあり方は、若干同情すべき点もあると思いますが、しかし、いまのような形で広告料という形で出ているということは、本人も言っているように余り感心したことじゃない、なるたけこういうものは避けた方がいい、そういうように思います。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは秦野さんとしては反省しておられますか。
  59. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) もちろん、いろいろ欠点だらけでございますので、今後の問題を含めて、もっとちゃんとした前向きの姿勢をとってやるか、それができなければやめちゃうか、いずれにしても遺憾の念がないように、過去のことについては十分反省もし、今後に処してまいりたいと、こう思っております。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから、あなたの五十五年の参議院選の後半戦で田中総理が応援に来たようですが、これは間違いないですか。
  61. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) さんざんもう新聞でもたたかれて、御案内のとおりでございますが、私は自民党のかつての領袖、総理それから総理級の方方、たとえばいまの中曽根総理、これは皆さん全部応援に来ていただきましたので、その中の一人として田中さんも来られたということでございます。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ問題は、そのとき田中さんが相当な選挙資金をあなたに貢いだと、物心両面の応援をしたということが言われているんですが、いかがでしょう。
  63. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) そう言われているとすれば、それは間違いでございます。私は、各領袖の方々から陣中見舞い等それぞれ応援をいただきました。そういう関係もあって、実は正直言って東京都知事選以後大変御迷惑をかけお世話になっているわけで、物心ともお世話になっている関係で、そういう関係もあって実はどの派閥にも入らず、私はそういう意味閣僚なんか多分なれぬだろうと思っていた。そういう心境で、ただ議員活動だけはしっかりやろう、こういう気持ちで正直なところまいってきたわけでございます。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、私はかなり信頼できる自民党の国会議員からも聞いたし、それから警察のOBにもただしてみた。あなた方、もうよく御存じの方ですが、非常にあなたが選挙資金に最終の段階で窮したときに、田中総理が三千万あなたのところに資金を持ってきた。そういう最終段階のお金のないときに持っていくという、そのわずかな金でも候補者にとっては大変ありがたいんだと、これが田中の天才的人心収攬の天才たるゆえんだという説明を受けておるのですが、そういう事実はないですか。
  65. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) そういううわさはあったんでしょうけれども、ございません。私自身は、三千万最後に届けられたというんなら、私はもっと助かったと思うけれども、ございません。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それから五十六年三月十八日の予算委員会におけるあなたの質問、これはロッキード事件に関するものですが、検事総長、最高裁長官の宣明書を憲法原則に反している、違法な部分があるというようなことで論難をし、大変ロッキード事件に関する検察庁、裁判所のとった処置を非難していらっしゃるのですがね。この点は、何も五十一年のことを五年後の五十六年に取り上げたというのは、いまあなたが御否定になりました田中総理の物心両面の応援に対する報恩的な質問であるということを観測するのですがね。そういううわさがあったんですよ、かなりな。これはあなたも御存じでしょう。
  67. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) うわさがあったということはいま寺田さんから伺ったんです。私はそういううわさは聞いておりません。  それからいまの国会の論議でございますけれども、宣明書等について話したことありますけれども、それは非難じゃないんですよね。これは法律の適用について疑義をただしたというわけでございます。具体的な法律論になりますと、私はいま法務大臣ですから、一切この問題についてしかも裁判中の事件でございますから、一切もう申し上げることは差し控えさしていただきますけれども、本来は田中さんのために私は法律論を展開した覚えはない。法律の適用というものは厳正公平でなきゃならぬという立場に立ってのことでございます。その点はひとつ御理解を願います。私はそれに関連するような二、三の論文について寺田さんにも見ていただこうと思って持っていったことがあるような気がします。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 読みましたよ。
  69. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) そういうことでいろんな見解は見解、私はその法律の適用は公正でなくちゃいかぬというような立場、それから何といっても国会でございますから、政府に対して疑義があればこれを問うということは職責という立場で議論したわけで、特定の人間をどうのこうのという問題でないことだけはひとつ御理解を願いたいと思います。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しかしね、これは田中を外為法で逮捕したのは別件逮捕で不当捜査になる危険がある、逮捕状の執行状況もよくないというようなのをあなたの御意見として述べていらっしゃるのですよ。それから田中さんが私財だけをふやしたのでもないだろう、田中派閥だけを維持したためでもないだろう、いろいろのところに金も流れているらしいなど、田中に対する同情の念をこれは述べていらっしゃるのですよ。いかがですか。
  71. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 法律論を展開する場合には具体的なアップ・ツー・デートの問題が、種がないと、非常に正直言って法律論が、たとえば別件逮捕の問題でも一般論として議論なんか国会じゃできないですよね。具体的事件に関連して議論をするわけでございます。そういう意味で外為法その他について意見を言ったことございますけれども、それはだれのためとかなんとかじゃない。しかし、その議論をここでまた蒸し返してすることは私の立場上適当でございませんので、その点は御了承をいただきたいと、こう思うのでございます。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま私が読みました、田中さんが私財だけをふやしたのでもないだろう、田中派閥だけを維持したためでもないだろう、いろいろのところに金も流れているらしいというような、ロッキード事件についてこういう意見を述べられたのは、田中がやはりロッキード、丸紅を通じた金を受け取ったということ、あなたも当時そうお考えになっていたんでしょうね。
  73. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 御案内のとおり目下裁判中の事件でございますから、どうかそういう点については私が一言も申し上げることはできないという私の立場を、寺田さん御専門家じゃございませんか、御理解を願いたいと思うのですよ。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 当時のあなたのお気持ちを伺っているのです。
  75. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 当時でも、私はいま法務大臣だから。いまも当時のような議員なら自由な論議をいたしたいと思います。
  76. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、これは当時の気持ちを伺っているのです。いまの気持ちを伺っているのじゃないんです。
  77. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 寺田君、質問してください。
  78. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) もう少し御丁寧に申し上げた方がよかったかと思いますが、過去のことでも、いまこの立場でそのことを論議することは裁判に全く影響がないかと言えば、私は影響がある可能性がある。裁判官は、裁判は独立で、純粋に独立でそして検事の論告と弁護団の弁護との両方の真ん中に立って冷静に判断をしていただくわけでございますから、しかも私は原告の立場に立つ法務大臣でございます。もう具体的な裁判にかかっている問題については全く触れることは適当ではないのじゃないか、こう思うのでございます。
  79. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 おかしいです。原告とおっしゃればなおさら検察の長としてそういう主張をしていることになります。そういう主張をしておって過去においてそう思っていたかどうかということは言えないことはない。いまの気持ちを伺っているのじゃないんです。
  80. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 過去は過去でそのときの立場で議論はしている。それを私はしないと言っているのじゃございませんよ。それはもうちゃんと記録に残っているのですから。したと言っているのですよ。ただ、それは過去の立場ですよ。この立場寺田さん考えてくださいよ。  それはね、たとえば世の中のいろんな例がありますけれども、たとえば検事が弁護士になることがあるでしょう。立場が変わると別の立論でこれ闘わなきゃ商売にならないんですよ。立場というものは非常に大事でございます。たとえば労働組合の幹部の方でもたまによっては社長になることがある。そうすると、労働組合のときガーガー言っておったことが社長になったらまるで変わったことになる。これは立場の問題なんですよ。この立場の問題をどうしても考えないと私の理解がいただけないと思うのですよ。立場というものは、こういう自由社会でございますからいろんな立場が与えられる。特に自民党の議員は、正直言って自分で大臣になれるとは思ってなくてもポッとなることがある、可能性はあるわけですよ。もしその可能性を前提にしたら、その役所の批判なんかは全然できないですよ。これはもう……(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、できませんよ、それは。議員のときは、私は与党といえどもいかなる政府でも批判の態度をとったことがある、とっておりましたよ、問題問題によって。それはいいと思うんですよ。だけれども、そのときのことをいまでもそうか、いまでもどうなんだと言われても、それは立場が違うんだということ、これだけはひとつ御理解を願いたいと思います。
  81. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 だから、そのときは正しいと思っていたのでしょう。
  82. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) そのときは、もちろん夢のようなことを言ったつもりはございません、いろいろ、社会科学です、法律学も。いろんな学説があり、考え方があるわけですよ。その学説や考え方を自分のそのときの質問の立場に立ったときに、根拠になるような考え方でなきゃ質問できませんからね、できませんから。私がそういう考えを持つと、じゃおまえどう考えても、どんな立場になってもその考えを貫くのかと言われれば、組合の幹部が社長になったと同じですよ。やっぱり社長になれば会社がつぶれちゃうからね、そんなことしたら。私は同じ例だと思うのですよ。だからやっぱり、私が議員のときと同じことを言っていたら私がつぶれるか役所が壊れるかどっちかなんだ。そんなばかなことできませんよ。これはひとつぜひおわかり願いたいと思います。
  83. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、まあ学説を論ずるんじゃないんでね、それは結構です。  しかしあなたは、このときは指揮権発動をなすべしということを強調していらっしゃる。これは法務省の刑事局長にお願いしたいが、昭和五十一年十月四日付予算委員会会議録第一号の四十ページの上段からちょっと読んでいただきたい。
  84. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 五十一年の十月四日の議事録の四十ページの上段とおっしゃいましたでしょうか。(寺田熊雄君資料を示す)  当時予算委員会委員としての秦野現大臣がおっしゃったことを私から申し上げるのも大変妙なような気もするわけでございますけれども、一応議事録を読み上げるという趣旨で申し上げますと、「○秦野章君」と題されておりまして、その後に「政府は、総理がロッキード事件の真相解明に政治生命をかけるということでやってこられた。所信表明の演説の中でも政治介入はしないと、こういうことを特に強調されておりましたが、政治介入はしないという意味は、指揮権発動をしないという意味なのか、それ以外に何か意味があるわけですか。」と、こういう問いを出しておられます。
  85. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、ずっと読んでいただきたい、これ最後まで。これはそういう注釈要らぬから、ずっと読んでください。
  86. 前田宏

    政府委員(前田宏君) これも当時の秦野委員の問いに対しまして、当時の三木大臣が、「指揮権発動もその一つですよね、指揮権発動。そういうふうな政治が介入して、捜査に対して制約を加えるというようなことはしないという意味でございます。」、こういうお答えをしておられます。
  87. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それずっと読んでいただきたい、最後まで。
  88. 前田宏

    政府委員(前田宏君) どこまでお読みしていいのかちょっとわかりませんので、申し上げているわけでございますが……。  続きまして、「○秦野章君」ということになっておりまして、「まあ指揮権発動は、早々と政府は、総理は言っておられるわけですけれども、この政治介入はしないという意味は、私は多少の誤解を伴う危険がある。といいますのは、検察というものはごんと動く。政治は介入しないんだ、介入しないんだということになると、検察というものは独力で機能していくだけだということかという危険があるのですね。で、権力というものはやっぱり政府が管理するという立場に基本的にはあると思うのですよ。基本的には政府が管理するという立場にありますから、そういう意味において私は権力というものは時に行ぎ過ぎることもある。今度の田中逮捕の問題でも、私は外為法違反というのはいささか歴史的に批判に耐えぬだろうとロッキード委員会で申しました。」このくだりを全部ということでございますか。
  89. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ええ。
  90. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 「今月の中央公論を見たら、東大の藤木教授が私の説を、そういう批判も出るであろうというようなやや肯定的なことを書いています。藤木教授なんというのは自民党議員なんかの言うことはもう全然評判悪くなるはずなんだけれども、そういうことを藤木教授も言っているくらいなんだ。私はやっぱり外為なんというものは——この間も、去年でしたか、何とかという弁護士が二億円の外為違反をやりましたけれども、これは任意捜査でやってますね。そういうことで、やっぱり前総理を外為で逮捕したということはいささか歴史的に批判に耐えぬだろうということは、私はいまでも思っているんだけれども、要するに権力機関というものは、やっぱり政府の管理下にあるということだけは間違いない。いかなる検察といえども、これは確かに独立の地位を持ってますよ。したがって、独立性というか、中立性というか、警察とか検察とかというものはそういう地位を持って、その地位を尊重せにゃなりません。尊重せにゃなりませんけれども、しかし、法務大臣が座り、総理がおって、行政確保の監督のもとにあるということだけは間違いないので、政治介入をしない、政治介入をしないというようなことはむしろ私は無責任な結果になるんじゃないかとさえ思うのであります。やっぱりやるべきことはぴしっとやるということでなければ。田中逮捕なんかは私に言わせれば荒っぽいですよ、少し。やり方が荒っぽい。そういう意味においては、いまどきこんなことを言うと何か世論にさおを差すようなことを言うようなことになるかもしれないが、そうじゃないと思うんですね。そこらの点から、私は内閣責任、政治の責任というものは非常に重いんだと、特に権力というものがひとり歩きするようなことはいけないんだという点については、私はきちっとした姿勢でなきゃならぬ、こう思うわけです。この点についての所見を伺って終わります。」これに対する三木国務大臣。「当然に政府が全責任を負うことは当然です。それから独立機関として、指揮権発動等政治的にこの事件の捜査に対して影響力を与えるようなことはしないと、最終的には政府が責任を負うことは当然でございます。」、このような問答になっております。
  91. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長、大変ありがとうございました。  総理、いまお聞きになったように、結局指揮権を発動して検察の独走を抑うべしという趣旨で秦野さんは言っておられるんですよね、政治はやっぱり介入しなきゃいかぬのだということを。だから、一般にみんな秦野さんをあなたが法務大臣に任命したことを非常に危険に感じているわけです。これは総理、御承知のように——まあ、後で聞きましょう。そこらについてどう思われますか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの朗読を拝聴いたしましたけれども、これは検察権というものと、それから行政権というものの関係を論じておられる。検察権というものはそこにも言っておりますが、独立性を持っていると。これは裁判という司法に密着しているがゆえに独立性を持たしておる。そういう意味においては、大きな行政の部内には入っているけれども、行政の部内におきましても、行政から見れば半独立性ということになるかもしれません。そういう関係にあって、行政の一部であると。検察権というものの独走や暴走を抑えるという点は、これは行政の中にも一つの機能として持っておかなくちゃいかぬというのがあるいはあるのかもしれません。  戦前におきましても、帝人事件というようなことがありまして、結局はそういうことはなかったということで、検察の発動によって内閣を倒したということがありました。そのためにずいぶん多くの人が迷惑を受けたという例もあります。そういういろんな面から見ましてそういう検察庁法の文章にもなっているのではないかと思います。そういういろんな国政全般を考慮した上での法の構成というものがあって、それを私は論じておると、そう思っております。
  93. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうじゃないでしょう。いま読んだ中で、「法務大臣が座り、総理がおって、行政確保の監督のもとにあるということだけは間違いないので、政治介入をしない、政治介入をしないというようなことはむしろ私は無責任な結果になるんじゃないかとさえ思うのであります。やっぱりやるべきことはぴしっとやるということでなければ。田中逮捕なんかは私に言わせれば荒っぽい」と、つまりロッキード事件について田中逮捕に対して政治介入をすべしと言っているんですよ。
  94. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) お尋ねの個所でございますけれども、その文章、私の議論を指揮権発動をしろとか、そういうふうに翻訳していただくと迷惑なんです。それは指揮権発動というものは規定があるんだよと、だからそのことは頭に置いておけということは言いました。しかし、これは検察庁法十四条というものは、特にただし書きは、前段はこれは一般的指揮でございますから、これはやや政策的見地で麻薬を一生懸命取り締まれとか、そのときの情勢で法務大臣も指揮をするわけでございます。しかし、ただし書きの点については、具体的事件については要するに検事総長のみを指揮できると、こう書いてあるわけです。これは規定があるから、この規定というものは頭に置いておいてよろしいと。しかし、あるからと言って、それなら私がそういう説明をしますと、これは衆議院でも何遍も出たのだけれども、そういう規定があるということは事実であります。だから、それを使わないと言って、絶対使わないと言ってしまうことは要するに制度の否定になる。だから私はそうは言わない。そのことを申し上げると、いかにも秦野は指揮権を使うことが、きわめて軽々と使うような感じを与えて、大変これは誤解なんですけれども、だからといってそれなら指揮権というものはそう簡単に使えるか、政治的介入がそう簡単にできるかといえばそう簡単なものじゃないんだと、軽々しい問題じゃないんだと。言うならば、ある程度の一つの保障といいますか、民主的保障の規定なんだという理解をしていただくために私はそういう説明をしてまいったわけでございますが、絶対に使う——絶対というような言葉でもって言われましたが、そういうことは——政治介入も、政治介入という言葉が結局指揮権発動という言葉になろうかと思いますが、すべきときはするんだと、すべきときはする規定があるんだと。しかし、それは決して軽々にすべき問題ではないということだけはもう問題いないことだと思っております。
  95. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは納得できませんよ。田中某に対する逮捕が荒っぽいからやれと言っている。全然それは言い逃れだ、納得できない。
  96. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) ただいまの議論も具体的なことになりますと過去の私の議論でございます。過去の議論はでたらめだと言っているんじゃありませんが、その議論をここで、私が法務大臣になった立場でとやかく蒸し返すということは適当じゃないんですよ。検事は検事で一生懸命有罪獲得のために闘っている。その上の私はトップの責任者なんだ。それからまた、裁判というものに影響を与えちゃいけないというのが私の重大な戒めでございます。そういう立場が私に与えられちゃったんですよ。その与えられた立場についてはこれはもう職責を全うする、これが私の立場でございます。その立場影響するようなことは、過去のことでもここで蒸し返すことはできるものではないということだけは何とかひとつ御理解をしていただきたいと思います。
  97. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 裁判に影響を与えるようなことはできないということをおっしゃるならば、秦野さん、あなたは法務大臣としてロッキード事件に関して刑事訴訟法に言う公訴の取り消しを検事総長に指示するようなことは絶対やらぬと、この具体的な事件でおっしゃれるんでしょうか。
  98. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 行政も法律解釈も言うならば社会学的なものだと思うのですね。だから、私は絶対という言葉は使いたくない。しかし、常識論として、いわゆるコモンセンスとして私は普通のことを普通にやるとかねがね申しておるわけでございますけれども、そう申し上げたら、寺田さん、およそ想像がついてもらえるんじゃなかろうかと思う。私は気違いじゃありませんよ。私はそう思っているんだ。気違いを法務大臣に総理がするわけないと思うのです。そんな絶対という言葉は使いませんけれども、要するに非常識なことは断じてできない、すべきではない、それから不当な介入はしちゃいかぬ、こういうような常識というものを大事にしなければ私のポストは務まらぬし、さらにあえて言うならば、ロッキード事件というものがとにかくあるけれども、ああそういうものがあるらしいなというぐらいの気持ちでなきゃ、余り事件にとらわれたような法務大臣は法務大臣務まりませんぜ。これは、法務大臣というものは日本の法秩序の問題、日本の法治国家を守るという問題、日本の法の安定性、そういうものが基本的な立場でございますから、この問題についてだけは私はもう命をかけてもやらにゃなりませんけれども、ほかの事件はもう法務大臣が一々どうのこうのと言う問題じゃないんですよ、正直言って。見守りはしますけれども、そういうことについて一々くちばしを入れるというような、検事総長以下いるんですから、そういう立場じゃないわけです。しかも、日本の司法権は正直言って国際的にもすぐれております。検察だって私は同じように国際的にも評価を受けているし、また国民からも信頼をされていると思うんです。その信頼の上に立った私は法務大臣でございます。当然私も信頼をしてしっかりやってくれよと、これが私の立場でございますから、くれぐれもひとつその点は御理解を賜りたいと思います。
  99. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたはいま裁判に影響を与えるようなことはすべきでないとおっしゃった、法務大臣として。それから非常識なことはしないとおっしゃった。それならば、あなたは検事総長に対して指揮権を発動して、刑事訴訟法の二百五十七条による公訴の取り消しを検事総長に指揮するようなことは、こんな非常識なことはしないと。これが非常識なことだということはお認めになるでしょう。どうですか。つまり、こういうことをすれば裁判所は刑事訴訟法の三百三十九条第一項で公訴を棄却しなきゃいかぬ。検察が大変苦心をして、また国会の両院で五十一年の二月二十三日にロッキード事件を徹底的に究明をしろという決議をしているんですよ。わかりますね。あなたも賛成されたでしょう。その決議に反するような、ロッキード事件をこの際うやむやにしてしまって、政治倫理において最も大切な、その違反である汚職というようなことを、総理の汚職というようなことをうやむやにしてしまうような暴挙をあなたはやらないということがどうして言えないんですか。そういうことは非常識なことだと、むちゃなことだと、乱暴なことだということはお認めになるでしょう。
  100. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 日本の裁判制度あるいは検察の活動、きわめて健全なものだと思っております。私は一々の事柄についてどうするかこうするか、個々の事件について、これは先ほど来申し上げているように、私は健全な常識、これが基準でございます。それで御賢察を願ったらいいだろうと思います。
  101. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いやいや、公訴の取り消しが非常識なことだということは認めるかとお尋ねをしている。この答弁をお聞きしなきゃ、私はもう質問をしない。肝心なところを逃げたらいかぬ。
  102. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔速記中止
  103. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  104. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 失礼いたしました。二百五十七条ですね、刑訴。公訴の問題についてのお尋ねを含んでおったと思いますが、これは裁判に影響を与えないということをかねがね私は申し上げておりますけれども、いま公訴になって裁判中でございますから、裁判中の事件については私は知らぬよという気持ちでなきゃ法務大臣は務まらぬと言っている。だから、公訴の取り消しなどというものが常識上、私は何度も申し上げますけれども、私は夢にも思っていませんよ。公訴の取り消しなんか、いま裁判しているんですから、それに影響を与えるようなことはしませんよ。
  105. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 しない。
  106. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) はい、しません。するわけかない。これはコモンセンスでございます。
  107. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いま法務大臣の検事総長に対する指揮権というもので考えられるのはこの公訴の取り消しと、それから論告求刑において求刑が重いからもっと軽くしろというそのことしか考えられないのですよ。だから私は、その前半をやらないと言えばもうその分は消えた。後は論告求刑について干渉するかどうか。さらにもしも、これは有罪になるでしょう、有罪になると思うが、仮に無罪になった場合に、検事控訴がある場合に、これに対して干渉するかという問題はそれは将来の問題です。いま現にあるのは公訴の取り消しを命ずるかどうか、論告求刑について干渉するかどうか、この二つが検事総長に対する指揮権なんです、これ。これは総理もおわかりになるでしょう。これはやはりこんな重大なことは、国会決議に反するようなことは、いまはこんな乱暴なことは彼も夢にも思っていない、しないとおっしゃったが、これはやはりこんな重大なことは内閣の所管事項だという、これはお認めになるでしょう、これ。
  108. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 重大な案件は恐らく法務大臣、私のところへ相談に来ると思います。その相談がどういうことであるかによって判断をいたします。
  109. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いや、具体的にお尋ねしたんですよ、いま。こういうことは当然内閣の所管事項でしょうと言ってお尋ねしたんです。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) どういう意味ですか。
  111. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまお尋ねしたのは、公訴の取り消しとかそれから論告求刑に干渉するというようなことは当然内閣の所管事項でしょうとお尋ねしたんです。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その問題は第一義的には法務大臣が所掌していることであり、法務大臣が処分をしようという場合には、これは非常に重大な問題の場合には当然私のところへ相談に来るだろう、そういうことを申し上げた。そういう相談に来られた場合には、私はよく事情を聞いて判断をいたしますと。法務大臣は、しかし、あなたの御質問についてはいまここでお答えになったように答えておるわけでありますから、その考えで一貫しておられるんだろうと思います。
  113. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それではさらに法務大臣にお尋ねしますが、あなたは——先に刑事局長にお尋ねしようか。論告求刑なんていうものは大臣に対する請訓事項じゃないですね。
  114. 前田宏

    政府委員(前田宏君) 私ども内部で一定の限られた罪種の犯罪につきましてその処分を決める前に大臣の指揮を仰ぐという内部的な規定を設けておりますけれども、それはいま申し上げましたように特定のごく限られたたとえば内乱であるとか内患であるとか、そういう罪について限定的に定めておるものでございます。
  115. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これが請訓事項かどうかと聞いているんです。直接答えてほしいんです。
  116. 前田宏

    政府委員(前田宏君) そういうことから御理解いただけると思ってそういう規定の趣旨を申し上げたわけでございますが、一般的な刑法犯につきましてはそういう請訓規程上の対象にはなっておりません。
  117. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ですから、これは恐らく検察庁は法務大臣に論告求刑の場合には直前で事務連絡をするということはあるんでしょう。それからまた、法務大臣が関心を持てば論告求刑を持ってこいということをおっしゃるかもしれぬ。それを見た場合に、この求刑は重過ぎるぞ、もっと軽くしろというようなこともやるべきじゃないです、これは。私はそう思いますが、あなたはやるべきじゃないという私の意見に賛成なさいますか。
  118. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) いまのお尋ねの具体的な求刑とかそういうこと、正直言ってかなり技術的な問題でもあるし、私は余りわからないですよ。法務大臣が特定事件に余り興味を持ち過ぎる、まあおまえは非常に興味持っているんだろうと、そういう目でごらんになっておられるかもしれませんが、特定事件について余り興味を持つということは法務大臣としては落第なんです。そういう点から言っても、求刑をどうせいこうせいなんというようなことを、私はもう報告が来なきゃ来なくたっていいし、来れば見るしと。法務大臣というものはやっぱりいっぱいほかにも仕事もございますし、正直言って事件というものは検察官が一生懸命やっているんです。法務大臣が事件を一生懸命処理するというようなことはまあまあない。大きな事件になればもちろん関心があることは事実ですけれども、中身にわたって、たとえば調書でも何でもこんなに厚いでしょう、恐らく。そんなものはわかりませんよ。だから要するにコモンセンスでさばいていくということになります。
  119. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 干渉なさいませんか。
  120. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 何をですか。
  121. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの論告については干渉なさいませんか。
  122. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 寺田委員、お立ちになって発言願います。
  123. 秦野章

    国務大臣(秦野章君) 干渉なんか恐らくそんな余地はなかろうと思いますよ。私は何も聞いてない、仮定の問題だからね、何も聞いてないんだから、いまは。だけど、そんなことは仮定の問題だし何も言えませんけれども、多分そんなことは私としては言う余地はないだろうと、こう思っていますよ。
  124. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結局いまの公訴の取り消しも指揮しない、それから干渉をする余地もないと思うということは、大体指揮権は発動しないということにつながると思うんです。  今度は憲法問題について総理にお尋ねをしますが、憲法改正を政治日程にのせないという総理答弁ですね。これは現在の状況が続く限り中曽根内閣としては憲法改正の提案を国会に行わない、こういう趣旨でしょうね。
  125. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういう環境にはないと判断しております。
  126. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結局提案はなさらぬということでしょうね。
  127. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) お立ちになって質問してください。
  128. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 答えないんですもの。提案をなさらぬということかどうかを伺っているんです。
  129. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ですから、提案するような環境にないと判断しておると。
  130. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 総理としては、いかがでしょう、その環境づくりに努力するということがあなたの言う仕事をする内閣の「仕事」に入りますか、それともそれは入りませんか。
  131. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 前にも申し上げましたように憲法は国の基本法でございまして、国民がよくわきまえ、また国会議員や公職にある者もよく勉強しておかなきゃならぬところであり、このような国の基本法についてはみんなが勉強し、そして常に検討を加え、よりよきものへ志向するということは民主政治上好ましいことである、このように考えておるわけです。
  132. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 委員長、どうも私が座ったままで言うとちょっとおしかりになるようですが、直接答えないんです。  環境づくりにあなたは努力なさるかどうかということを、その政策を持って、決意なり抱負なりを持っていらっしゃるかどうかということを伺っているんですよ。
  133. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく国の大事な基本法でございますからみんなで勉強し、そしていいとか悪いとかうんと議論をしてもらい、またこれを護持すると言う者についてもそれは保守じゃないかとか、あるいはこれを改正すると言う者についてもそれは急進的ではないかとか、そういうようなことを余り言わないで、そしてともかく事実に即し、世界の方の潮流等も見詰め、国民の世論というものもよく考えながらみんなで議論し合って、そしてよりよきものへ志向していく、これはもう民主政治あるいは人類の文明前進のために当然のことであり、それでいままで進化してきたんだろうと思うのです。  そういう一般的意味におきまして、憲法問題についてもみんなでうんと議論をして、いい悪い、どうするこうする、反対だ、そういうようないろんな議論がうんと起きて憲法に対する認識が深まる、それが非常に好ましいことなんだと。憲法をタブー視して、さわってはいかぬ、議論してもいかぬ、改正を言ってはいかぬ、またその反対を言ってもいかぬと、そういうタブーをぶち破ろうというのが私の考え方なのであります。
  134. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういう政策を具体的におとりになるかと伺っているんです。
  135. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 発言はお立ちになってお願いいたします。
  136. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私がいま念願して考えておりますことは、要するに民主政治の社会においてはタブーがあってはならないということです。
  137. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それはわかりました。
  138. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) おわかりですね。  しからば、いままでややもすれば憲法問題について余りにも激しい対立があり過ぎた。そこで、それはなぜかと言えば、一面においてはタブー視しようとする考えもあるし、あるいはそれに対して激しい攻撃の矢を放つ議論もあり過ぎた。もっと冷静になって、そして国の基本法というものについて自由な論議が行われるようにしたい、昔は憲法調査会というものもあり、あるいは憲法研究会というものもあって、そしていろんな議論がなされ、それがずいぶん国民に対する認識を深めた点もあったと思います、新聞も報道いたしましたし。  私は、新聞の面におきましても、憲法についていろんな議論が掲載されることが民主政治前進の上にも望ましい、しかしわれわれの側から見ますと、ややもすると憲法というものを論じたり、あるいは憲法改正を言ったり、あるいは擁護論言ったりすることは余り激しくやりとりがあり過ぎて、それが結局タブーという問題につながってきておる。そういうタブー視してさわってはならぬ領域があるというものをぶち壊したいというのが私のいまの考え方で、またいまの内閣考え方である、私の考え閣僚が支持してくださればそういうことであろう、しかしどの条文をどういうふうに直そうとか、あるいは改憲を促進するためにわざといろんな工作をしようとか、そういうような実行行為をやろうというような考えはないんです。タブーを壊すという自由主義者としての信条に基づいてやっておることなんであります。
  139. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの御答弁は具体的で私もそれなりの了解はいたしますが、総理憲法調査会法に基づく三十一年六月に設立された憲法調査会委員となって各総会で熱心に論議しておられますね。私はその議事録を大変興味深く拝見したんです。きのうの何か総理の御答弁では過去のことを余り言われても困るというようなお話があったようですが、このときにお述べになった憲法に関する意見、これは覚えていらっしゃるでしょうね。これはいまでもそういうそのとき述べた意見はやっぱり正しいと思っていらっしゃるんですか。
  140. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人間には思想的変遷があるものであります。さもなけりゃ進歩しません。先ほど、きのうも申し上げましたように、昭和二十年代の占領下における考え方、あるいは占領直後における考え方、それから昭和三十年代の前半と後半における考え方、それから最近ここ数年の間の考え方、いろいろ変遷があります。それはまじめにいろいろ物を考えていきたいと思うからであります。  それで、いろいろな雑誌やらあるいは自分のパンフレットやらを出して、選挙民や皆さんにお訴えしたこともありましたけれども、大体大まかに言えば憲法調査会で三十年代に私が総括として述べたことがあの私の政治生涯のいわば前半期における大体考えをあらわしていると思います。それから、最近出しました、二、三年前に出しました「新しい保守の論理」という本がございます。その本に書いてある憲法及び防衛問題に関する考え方というものが大体後半における私の考え方であると思います。そういうことをきのうも答弁申し上げた。  しかしこれは個人の考えでありまして、そしていま内閣総理大臣という特別の公職につきました以上はそういう個人的意見を申し上げることは差し控えさしていただきますが、念のために私がどういう思想的遍歴をたどったかということは大体その二つのことをお読みいただけばおわかりいただけると思いますと、こういうふうに申し上げたわけです。
  141. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 具体的にお尋ねをしますけれども、当時のあなたの御意見を一言で要約いたしますと、結局制定の手続が好ましくない、国民の自由意思のない状態で制定されたからこれを国民的基盤のものにするために国民投票をやろうじゃないかと、こういうような御意見のようですが、これはいまでもお持ちですか。
  142. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それだけではなくしていろいろな内容がございます。しかしその点もあるんです。  あの当時憲法調査会におきまして制定手続に関する小委員会というものがありまして、細川隆元先生がその小委員長になっていろいろな人が集まって制定当時の状況を調べたわけです。それで、最終的にはアメリカ占領下非常に大きな影響を受けてこの憲法はできたというような表現になっていたのではないかと記憶しておりますが、その表現で果たしていいかという問題が大論争が起こりました。当時憲法調査会長であった高柳賢三博士は、これは日米合作であると、大体そういうことを言われたのです。しかし憲法というのは、国の基本法について日本と外国との合作による憲法というものは果たしてあり得るか、そういう表現がまた正しいかという疑念を私たちは持ちました。合作憲法なんというものがあり得るんだろうか、またそういうものが考えとして出していいのであろうかという。  そこで、私たち数名、八名ぐらいでしたかね、これがそれに対する意見書を出したわけです。その意見書の中には占領下アメリカの非常な影響力を受けてできた異常事態下における憲法であるというような趣旨の意見書を出した、そういうことはあったと思っております。
  143. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまでもお持ちかと伺ったのですが。
  144. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点についてはいつも申し上げますように、その具体的な項目に関する私の判断というものは、いま内閣総理大臣という特別の地位にあり、憲法擁護の義務もある、そういうような立場もありますから、誤解を受けますから意見の表明は差し控えさしていただきますと一貫して申し上げておるのです。
  145. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは私は憲法に関する見解というものは総理大臣は国民に対してこれを正直に言う責任があると思いますよ。憲法遵守義務と言ったって、憲法に対してどういう理解を持っているかということをあなたが隠したのではその責任は果たせませんよ。私は個人の意見をお伺いしているのじゃないんです。総理その人の意見を伺っているのです。隠すべきじゃないです。
  146. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いまの日本の国政は日本国憲法の上に行われておるわけです。そして内閣はこの日本国憲法のもとに法令を執行しておるわけであります。そして憲法にもその現行憲法に対しましては公務員、特別職公務員はこれを遵守するということが書かれておるわけであります。また一面におきましては憲法改正条項も書かれております。  そういう面からいたしまして、現憲法下の上にあって国政を執行しておる内閣といたしましては、この憲法に対して疑義を差し挟むようなことはなるたけ慎んだ方がいい、しかし憲法に対する論議が民間で起こりあるいは政治家の間で討論が交わされ非常に起こってくるということは望ましいことである。しかし現憲法の上に立って国政をしているというこの事実の上にある内閣としては慎重であるべきであると、そういう意味において内閣総理大臣たる地位にある者は個人的意見の表明はその地位にある間は差し控えるというのは私は政治として正しいあり方である、ここで私が個人的意見を言うということは……
  147. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 個人的意見じゃないんです、総理の意見です。
  148. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 個人的意見を言ったって総理の意見になっちゃうんです、こういう場所では。ですから、それは非常な影響を与えますから自粛して差し控えて申し上げませんと言っているのです。
  149. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 納得できません。
  150. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時委員会を再開し、寺田君の質疑を続けます。  これにて休憩をいたします。    正午休憩      ─────・─────    午後一時三分開会
  151. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十七年度補正予算二案を一括して議題とし、休憩前に引き続き寺田熊雄君の質疑を続けます。寺田君。
  152. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 午前中に引き続き中曽根総理にお尋ねをいたしますが、これは顕著なことなんですが、総理は、かねてから総理の公選制ということを強く主張しておられましたね。いまは公選制によらずして総理の地位を得られたわけですか、なおかつ公選制をいまでもあなたの意見としてはお持ちでしょうか。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公選制につきましては、昔唱えたことがございますし、そのためにいろいろ全国的な運動もしたこともございます。しかし、これは憲法改正にわたることになるわけであります。憲法改正にわたることになるという点も踏まえまして、いま内閣総理大臣となった今日におきましては、具体的意見の表明は避けたいと、こう申し上げておりますので、その点に関する個人的意見の表明は避けさしていただきたい。  しかし、前に首相公選論というものを私はいいと思って一生懸命努力したことは事実でございます。
  154. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 問題は、やはり衆議院の段階でも大変論ぜられておるのは、総理が現行憲法の平和主義、それから民主主義、基本的人権の尊重——総理は国際協調主義を言っておられますね。こういうものは高く評価するということをおっしゃるのでありますので、そこで、それじゃ憲法第九条については、これをやっぱり維持したいと思うのか、それともこの条文をもなおかつ改めたいと思っておられるのかという点を質問いたしますと、個人の意見は差し控えたいということをおっしゃるのですが、われわれはやっぱり個人の意見を求めているわけじゃないんです、中曽根個人の意見を求めてはおりません。中曽根さんという方が、いま現在その地位についていらっしゃる総理として、どういうお考えかということを伺っておるわけです。  これは私、前総理にもお尋ねをしました。前総理はこれに対して明快にお答えになっておられるわけであります。どういう答えかと申しますと、   こういう意味合いを含めまして憲法改正はする考えは持ってないと、こう申し上げておるわけでございます。さらに、わが国の現行憲法の平和主義、民主主義、基本的人権、この基本理念はいずれの国の憲法にも劣らないりっぱな理念であって、将来において仮に憲法改正等が政治日程に上る場合であっても、この基本理念は堅持されなければならないものだという信念も私は申し上げておるところでございます。この平和主義の理念をあくまで堅持すべしという観点に立ちまして、憲法九条というものは、これは堅持していくべきものだと、こう私は考えております。  と、鈴木総理が明快に述べていらっしゃる、これは総理として述べていらっしゃる。ひとり中曽根さんだけが、これは影響力がどうのこうのということを言って述べられないとおっしゃること、これは納得できませんが、いかがでしょう。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 鈴木総理鈴木総理の御見識がありまして、そのような御信念をお述べになったんだろうと思います。私は私の信念、見解、見識というものを独自にまた持っておりまして、この憲法の条文の個々にわたる事項については差し控えると、そういう基本方針をつくりまして、皆様方にも御理解をお願いしておるところです。九条であろうが、一条であれ何条であれ、具体的な問題につきましては一切差し控えさしていただきたいと考えておるところでございます。
  156. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 納得できません。答弁の拒否です。
  157. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。    〔速記中止
  158. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、現内閣におきましては憲法改政問題を政治日程に上せることはいたしませんと申し上げましたが、その中には九条ももちろん含んでおるわけでございます。
  160. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 中曽根総理憲法改正を政治日程に上せないということはもうはっきりしました。それから、その中には憲法九条が入っておるということもいまはっきりしました。それはわかりました。だから、憲法九条の改正を提案するようなことはなさらぬということもわかりますが、あなたが総理として憲法九条をどのように評価していらっしゃるか。これを改正する必要はないと、つまり世論が熟するか熟しないかというその政治的論議はさておき、あなたが憲法九条をどのように評価していらっしゃるか、これを私はお伺いしているわけですね。総理としてこれを評価して改正する必要はなしというのか、それとも憲法調査会のときにおっしゃったように、この解釈を国民投票に付する必要があるのだというような意見も述べていらっしゃいますね、憲法調査会では。だから、そういう点を詳しく伺っておきたいと言うんですが。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は、いまの憲法に対する基本的考えは本会議でも申し上げました。これは戦争前の日本と戦争後の日本を比べると非常に大きく変わったと。戦争前の日本に比べてみて戦争後の日本の方がはるかに明るくて伸び伸びして、国際的な協調性もあり、国際性も持ってきておる。それは恐らく憲法が大きく作用したのだろうと。特に憲法の中に盛られている平和主義、あるいは基本的人権の尊重、民主主義あるいは国際協調主義、あるいは福祉国家の理念、こういう大きな大原則が非常にきいてきて、いまのような世の中になったのだろうと。きのうは私は、この憲法が出現したことによって市民社会の岩盤が大きく構築された、市民社会の岩盤という意味は戦前に対して言っている発言でございまして、自由と民主主義、基本的人権の尊重というものを基調にする大きな市民社会の岩盤が出てきた、そういう意味で申し上げておるのであります。これらの貴重な諸原理、諸原則というものはあくまで保持すべきであると思うと、そういうふうに申し上げております。  この平和主義ということは、現憲法の中の非常に大事な基本的項目でありまして、この平和主義というものは今後ともわれわれは堅持していくべきであるという、そういう一般的な価値評価と、また個々の原則に対する評価を私は持っております。  そういうことを申し上げまして、そして九条に対する具体的意見ということになりますと、これは改正論とか、現状維持論とか、そういうものにわたってまいりますから、そういうことは各条章とも慎んでいただかしていただきたい。ただし、いまの基本的な諸原則というもの、あるいは平和主義に対する強烈な渇望と申しますか、評価と申しますか、それはあくまで堅持してまいりますと、このように申し述べておるところでございます。
  162. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは総理が平和主義、国際協調主義の憲法原則は尊重するとおっしゃっているんですね。それから九条の改正を政治日程にのせないこともわかったのですが、それを憲法尊重義務と言うても、個々の条文を離れた尊重義務というのはないわけですから、第九条についてはあなたは総理としてこれを維持すべきものと見ておるのか、それとも世論が熟すればやはり改正したいと思っていらっしゃるのか、その根本のところをお伺いしたいんですよ。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先日来申し上げますように、現内閣におきましては憲法改正問題を政治日程にのせないということを申し上げまして、それは九条ももちろん含まれておると、そういうことであります。それでしかも、いまの憲法に対する評価、あるいは特に大事な諸原則に対する擁護ということは申し上げたとおりでございます。  そういうような観念を持って第九条も見ているということも御認識していただいて結構であると思いますが、改正するとか、どこが不満であるとか、そういうことにつきましてはこの際発言を差し控えさしていただきたいと思うのであります。
  164. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 納得できませんな、それは。発言をしていただきたい。
  165. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔午後一時十八分速記中止〕    〔午後二時速記開始〕
  166. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。  暫時休憩いたします。    午後二時一分休憩      ─────・─────    午後三時五十六分開会
  167. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十七年度補正予算二案を議題といたします。  都合により寺田君の質疑は後刻行うこととし、これより長谷川信君の質疑を行います。長谷川君。
  168. 長谷川信

    長谷川信君 戦前、戦中、戦後の激動なこの時期を乗り越えて総理になられた中曽根総理大臣に、考え方について若干の御質問を申し上げたいと思うのであります。  総理は戦争に行かれて経験をされたのでありますし、私も生まれ年は中曽根総理と同じ大正七年であります。ただ総理は海軍少佐でありますし、私は一兵卒でありまして、戦争に行きまして潜水艦で三回もやられまして、まあ九死に一生を二回も経験をしたんでありますが、まあ同じ体験をされた中曽根総理総理になられて、私も大変感慨深いものがあるわけであります。  三十七年前に日本の国が戦争に負けて、そしてもう着る物もなかった、食べる物もなかった、そして住む家もなく、大変な時期をいろいろ経過をいたしておったわけであります。それから三十七年たちましたら、まさに今日のような、世界GNP第二位、個人所得の計算からすればアメリカと比べてもそう遜色がないような状態までのし上がった。そして物価も、まさに世界各国、ヨーロッパ、EC各国と比べましても、まさにその安定度は世界一の状態にある。また民主主義もこの三十七年間の間に定着をいたしまして、この日本のいまの言論界でも、大臣でも総理大臣でも、幾ら悪口を言っても何ともないような自由な日本の国になった。もしこれがモスクワでブレジネフの悪口を一時間も街頭で演説をやったら、あるいはひっくくられるかもわからない。あるいは共産圏のある国で幹部の悪口を言ったら、たちまちいろいろ問題が出るかもわからない。それだけ日本の国は民主主義も定着をし、所得もふえ、まさに私は、戦争に負けた国がわずか三十七年間でこんな状態になった経過あるいは歴史というものは、人類の歴史、世界歴史の中のどこのページにも書いてないと思うのです。これは国民一人一人の努力であることはもちろんでございますが、しかし、三十七年間政治を担当したかじ取りもこれまた間違っておらなかったことを、私は本当に国民の皆さんが理解をいたしておりますし、また理解を深めていただきたいと思うのであります。  そういう中で、ずっと経過をたどってきたわけでございますが、昨今どうもやはり若干世界不況のあおりを食らって、わが国の経済も若干のかげりが始まった。そして貿易の問題、あるいは国防の問題、財政の問題等々、戦後まさにかつて経験のしたことのないようないろいろ難問題が山積をいたしていることも御案内のとおりであります。ちょうどその時期に中曽根内閣が誕生いたしたわけでありますので、私は予備選挙で国民の、党員、党友の圧倒的な支援を得られたと同時に、また国民の支援を得て出られた中曽根総理内閣を組織され、大変いま張り切って仕事をやってらっしゃることに敬意を表するものであります。  いつでしたか総理はお話しなさっていましたが、いまの時代はまさにノーダウン満塁スリーボールで、もう本当に後にも引けないし、もう一球投げ損なったら大変なことになる時期に引き受けたので、まさに身の引き締まる思いであるとおっしゃっておられましたが、まさに本当にしみじみそういう感懐も深めておるわけであります。  まあしかし、総理もいつかおっしゃっておられましたように、日本の歴史をずっと見てみますと、たとえば大化の改新のときには、やっぱりあの激動の中でもってちゃんと日本の国は守り抜いたし、その問題の処理をやった。明治維新のときも、これはもうまさに日本の国がどうなるかわからないような状態の中を、明治の若い政治家は衆知を集めてあの激動の中を一滴も血を流さないでこれを乗り越えた。そして第二次大戦で戦争にべた負けに負けて、食べる物もなかった、私も総理も経験をされたのでありますが、芋のしっぽから大根の葉っぱまで食べてがまんをした、そういう経験の中で当時いろいろの政治家が出られ、あるいは吉田総理も適切な、しかも先見性のある、そして勇気もある施策をとられて方向づけをされたのであります。そういうことをいろいろ考えてみますと、まあこの難局は乗り越さなければならないし、また必ず乗り越すことができる、そういうときに中曽根さんが総理になられたのでありますが、総理の先見性と、そして英断と決断と、これを国民は期待をいたしておると思うのであります。  私は、これはたしか総理が書かれた、「正論」という雑誌の五十八年一月号、まあ非常に読んでみまして感銘を深めたのでありますが、総理にかわって私が若干読んでみますのでお聞き取りをいただいて、なお思い出していただきたいと思うのであります。  日々の生活のどこかで、変革の巨大なうねりを感じているに違いないし、切実な危機感を抱いているに相違ない。   その危機感とは何か。それは、一体これからの日本はどうなってしまうのか、日本はもう行き詰まってしまったのではないか、成長は停まり没落が訪れるのではないか——という不安であり、どうすればこの危機と混乱から抜け出せるのか、その突破口はどこにあるのか、どちらを向けて走ればよいのか——という焦燥感であり、閉塞感ではないのか。   世界史に例のない急速な経済成長に成功し、いまやGNP(国民総生産)がアメリカのほぼ二分の一、国民一人当りのGNPではアメリカと肩を並べるまでになったにもかかわらず、なぜ家庭生活の豊かさを実感できないのだろうか?   アメリカやEC諸国などがますます強硬に日本の輸出抑制と輸入増大を要求しているが、この先、日本経済は、自分の働いている会社は大丈夫なのだろうか? 自分の選んだ職業は果たして将来生き残れるのか? 不況はもっと続くのか? 税収が大幅に減ったために大増税が行われるのではないか? 増税なき財政再建なんて出来るわけがないのではないか? 国債ばかり増えてインフレが起こりはしないか? 貯金はもっと目減りするだろうか? 行政改革でもっと不景気になるのではないか? これからベース・アップは少なくなりそうだが、一体ローンの支払いをどうしたらよいのか? ロボット、メカトロニクス、光ファイバーといった技術改新、オフィス・オートメーションの進行によって、自分の職場は将来消えてしまいはしないか? 就職難がもっとひどくなりはしないか? これからの米づくりはどうなるのか? 畜産や果樹栽培は輸入が自由化されたらどうなるのか? こんなに燃料が値上がりし、二〇〇カイリ時代になった水産業は先細りなのか? 鯨はもう獲れなくなるのか? 子供たちはどんな教育を受けさせておけば次の時代に生き残れるのか? こんなに教育が荒廃していては次の世代を担う人材は育たないのではないか? 等々いろいろ書いてございますが、   老後の設計をどうすればよいのか? 支持政党なし・政治に無関心というシラケ型の人がこれ以上増加すると日本の民主主義は危機に立つのではないか? 日本もやがてイタリアのように共産党が進出し、政治と経済が低迷し、過激のテロが横行するのではないか? 戦争に巻き込まれる心配はないか? 有事立法さえ不備な自衛隊で日本の平和が守れるか? いざという時アメリカは日本を守ってくれるだろうか?……。   日本人がいま抱いている不安感、危機感、イライラの対象は、ごく身近な家庭の日常生活の問題からはじまって国家百年の大計にかかわるものまで、際限がないといってもよいほどである。しかし解決の曙光を見出せないままに、危機感はさらに増殖し、深刻さを増しつつある。政治に対する不満と不信は確実に増えている。日本の戦後民主主義はこのように最大の試煉と危機にさらされつつある。 というような、いろいろ書いてございますが、全く総理、五十八年一月号に書かれたのが今日そのまま当てはまるような感じがいたすわけであります。だから、こういうまさに明治以来、あるいは第二次大戦後、最大な難局の時期は総理になられた中曽根総理から、いろいろこれからの対応についてお考えの一端をひとつ御披瀝を賜りたいと思うのであります。
  169. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いま長谷川さんがお読みになりましたのは、総裁公選中に私が書いたもので、実は総理になる前の原稿でございました。しかし、いま挙げられましたいろいろな疑問点は国民の皆様が素直にお持ちになっておる疑問点でありましょう。自民党を支持する方も、社会党や公明党や民社党を支持する方も同じように持っておる問題点を一応挙げてみたわけでありまして、これらをどう片づけるかということが政治家の課題であると、そう思って自分で試験問題を列挙したと、そういうふうにお考えいただいて結構であります。また、それに対して厳粛な気持ちで臨んでいかなければならぬと思っております。  現在の日本の状況は、国際的に見ますと石油危機から来ております世界同時不況の一番底の悪いときにたまたま際会しております。また一方におきましては高度経済成長、それに伴う石油危機、その後の石油危機に対するいろんな手当てをやりまして、その結果、財政が非常に苦しくなりました。その財政がほとんど危機的状況と前内閣では言っておりましたが、そういう状況下、国内的条件が一番そういう状況下になってきたときに世界同時不況の中へ突っ込んできております。そういう意味からも、国内政策においても景気の脱出口をどこに見つけていくんだろうか、あるいは国際政策にいたしましてもアメリカやヨーロッパとの貿易摩擦、あるいは安全保障問題をどう解決していくんだろうか。もう一番問題山積してきて、いわばせっちん詰めみたいな情勢になっておるときに私は政権を担当させられたのでございます。しかし、喜んで担当させていただいたのでございます。それにはこれは手品とか、あるいは奇策で乗り切れるような時代ではない、やっぱり一つ一つの問題について解決策を誠実に着実に見つけながら、丁寧に一つ一つ解決していく以外にない、そういうふうに感じております。  そこで、具体的にそれは行政改革あるいは財政再建、あるいは主として対米、あるいは対EC問題の解決、あるいは景気の浮揚政策というような形で、政策としてはいま出てきつつあるところでございます。しかし、そういう政策をもって出てまいりましても、眼前にあることは非常にむずかしい事態なのでございまして、これを一挙に二、三カ月や一年の間に解決しろといったって、とても解決できる環境にはございません。そこで、国民の皆様方にできるだけこういうふうな方向で行くから自分はこういう計画を立てるとか、自分の人生設計はこういうふうに持っていけるとか、そういう目安をつけさせていただく、それをやるのがわれわれの非常に大きな責任であると思っております。  しかし、政権を担当いたしましてまだ一カ月弱でございますから、そういうような確固たる目安をつくっていただくまでの、そういう政策体系を出すまでに至っておりません。しかし、これは次の通常議会にかけて懸命な努力をいたしまして、そういう目安を立てられるに近い努力を全力を尽くしてやってまいりたいと思いますし、あるいは対米関係等の問題も逐次解決をいたしますし、ともかくこの道を行けばいいんだと、国民の皆さんも安心して内閣について行けるんだと、そういう方策を真剣に努力してつくってまいりたいと思う次第でございます。
  170. 長谷川信

    長谷川信君 次に、外交問題につきまして総理並びに外務大臣の御説明を承りたいと思いますが、総理は一月アメリカにおいでになります。いままでは歴代総理、就任後アメリカにおいでになっておるわけでありますが、先般も中曽根総理御説明をされておりましたが、日本の国がここまで成長した以上、アメリカとやっぱり若干の意見の相違があるのはこれは当然であります。私もそう思うんですよ。いままでお母さんと赤ちゃんみたいな関係であれば、ああいい子だいい子だと言って、こうやっていたのかいないのかわかりませんが、いまやや対等な立場でありますので、貿易でも摩擦、国防問題でもいろいろ意見の若干の違いが出るのはこれは総理のおっしゃるとおり当然だと思う。当然だと思いますので、今度おいでになりましたら率直に日本の国の意のあるところを、もう中曽根総理得意の弁説でもってひとつレーガンのアメリカを説得をしていただいて、やっぱり日本の国の考え方も明確に先に伝えていただかなければならないし、また伝えていただけるものと期待も申し上げておるわけであります。  そのうちの一つに農産物がございますが、これはいろいろ議論がたくさんございまして、日本の国内においてもかなり、右と左と言っていいのか、両端でかなり開いた意見がいろいろあることも御案内のとおりであります。ただ率直に申し上げて、日本のいまの食糧の自給率は世界先進国の中では最低であります。これは御案内のとおり三十数%で、アメリカ、ヨーロッパ各国——まあアメリカなどは別問題でありますが、イギリス、イタリア、フランスのような国であっても六〇%くらいの自給率を持っている。日本の国は戦争に負けて、そして外国から原料を入れて、そして一生懸命働いて、それを輸出をして今日ここまできたのでありますが、その中で農産物が若干押さえ込みをされたということも理解ができるのでございますが、少なくとも先進国並みのところまでいかないとしても、三五%というのはぎりぎりの線じゃないかと思うのですよ。  たとえば、きょう中曽根総理お帰りなりましたらてんぷらうどんをひとつお食べになって中をごらんになれば、エビはどこのエビだと思ったらほとんどアフリカとかメキシコのエビですよ。そばとうどんの原料はどこかと言えばアメリカ、オーストラリア、カナダの小麦です。しょうゆは国産だと思ったら、しょうゆ原料の大豆は中国大豆とアメリカ大豆を使っている。せめて生卵くらい国産だと思ったら、卵の飼料の九〇%はアメリカの飼料を使っている。本当の国産のものは何だと言ったらお湯だけだと言っておった。  これはひとつ総理、レーガン大統領にお会いになったら、そんなざれごとでもおっしゃっていただいて、日本の国は一生懸命アメリカの農産物を買って、これはアメリカの最大の顧客でありますから。しかし、それでもなおかつ自由化しなければならないという要望、希望はわからないわけではございませんが、それらの日本の状態というものもひとつ率直にトップ会談でお話しをなさっていただかなければならないと思っているわけであります。  いまオレンジ、ピーナッツ、たばこ、けさもいろいろ新聞に出ておりましたが、私はオレンジやピーナッツくらいでいまの貿易バランスが平らになるというふうなことは、私は全く素人でありますが、それほど簡単な数字ではないんじゃないかと思うんです。  いま日本の国が一番望んでおるものは、昨今石油の状態も若干いろいろ変化はいたしておりますが、やはり日本の欲しいものを売っていただかなきゃならない。それには私はエネルギー関係、あるいは油関係、これは考慮の対象というか、いろいろ話の対象にしていいのではないかというふうな感じもいたすわけでございますが、そういう専門的なことは私どもそれほど権威のある勉強をしているわけではございませんが、この際国防問題も——国防問題はあとでいろいろまた申し上げたいと思いますが、日本の状態というものを率直に向こうの大統領に御披瀝になって、お話しをなさって、そしてお互いに腹を割って話をするところに、総理がおっしゃっているような友好の促進というか、お互いの理解を深める一助というか、そういうことにつながると私は思うのであります。ただ何といいますか、リップサービスだけでもってやっても、なかなかアメリカの連中は考え方も違うし顔色も違うものだから、やっぱり率直にお話をされた方がいいと思います。だめなことはだめ、いいことはいい、やれることはやる、できないことはできないというように、率直にお話しなさるべきだと思うのでございますが、それらを含めて、これからの日米関係の、一番大事なのは日本の外交では日米関係だと思うのでありますが、日米関係外交、日米の外交というか、日米の関係のこれからの推測、あるいは将来の展望に立って、総理から御説明をお願い申し上げたいと思う次第でございます。
  171. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が経済的に急速に大成長いたしまして、アメリカに次ぐ自由世界のGNPを持つ大国に成長いたしましたものですから、国際的にも非常な摩擦が各方面に起こることは当然考えられるところであります。そういう結果に由来する部面も一つはあると思います。  それから、世界大不況の襲来によりまして、アメリカやヨーロッパの国民の中に、日本の急速成長を見ましてじりじりじりじりした気持ちが彼らの間にあるということも社会的に考えられるところであります。しかし、ここでこれだけ経済的に大成長をして、国際的な影響力を持った日本といたしましては、何といってもこれだけ伸びた一番大きな原因は国民の勤勉性、それと国際的にはやっぱり自由貿易のおかげであるわけです。今後もこの自由貿易を維持できるかできないかということに日本の発展の運命がかかっているとも言えるわけであります。  ところが、追い越されたヨーロッパや、あるいは追いつかれたアメリカ側においては、じりじりとした気持ちがだんだん込み上げてきまして、ややもすると衝動的な、非常に短期的な視野に立った保護主義が逐次頭をもたげて、危険な状態になりつつあるわけであります。大局的に二十一世紀までの日本の運命と発展を考えてみますと、この保護主義は今日のわれわれの責任において断じて打破しなければならぬところでございます。そのためにはわれわれとしても最大限の努力をし、相手のやり方で不合理な点は不合理として主張をいたしますが、また急速成長した日本側においても外国に理解できない問題点や、いままで日本が持っておった固有の、われわれは正当であると思っているけれども、国際的には通用しないというものもかなりあると考えなきゃならないのであります。そういう問題についてはわれわれ自体がよく反省をし、点検をして、国際的にならっていかなければ、これは国際的に日本として生きていけなくなることでございます。そういう点をよく分析し、見分けして、やるべきことはやり、言うべきことは言うと、そういう態度によってやっていきたいと思うのでございます。  農業一つの問題にいたしましても、飛行機で種をまいたり、ヘリコプターで種をまいているようなアメリカと、私のくにの先輩で俳句の名人である村上鬼城という先生がいますが、この先生が「生きかはり死にかはりして打つ田かな」という俳句を詠んでおります。日本のたんぼというものは先祖代々生きかわり死にかわりして一つ田を打ってきたわけであります。そういう二千年来一つの田を打ってきて、いま農業が継続している。象徴的に言えばそういう関係になっているわけであります。そういう家族集約的なこの世襲的な農業というものは、社会の一つの基盤もなしているという、その日本の特色もまた考えなけりゃなりません。だがしかし、国際的に見て通用できる部分と通用できない部分がまた日本の農業や産業についてもあると考えなきゃなりません。そういう意味におきましては、国際的レベルにこれを成長させると、あるいは直すべきものは直していくというフェアな態度も必要であります。  私は、今日一番残念に思っておりますことは、関税率やあるいは輸入量の問題もさることながら、日本人の輸入に対する態度、いわゆる動態といいますか、ビヘービアといいますか、それが公正でない。フェアでない。アンフェアである。言いかえれば、こすっからいと。こういうふうに日本人が受け取られていることが一番残念なことなのでありまして、これは国民一般の問題よりも、むしろそれに関係している公務員、そういう関係がかなりある。たばこの問題にしても、あるいは農産物や薬品や、そのほかの輸入の問題にいたしましても、あるいはスタンダードの問題にいたしましても、もちろんそれにはいわゆる文化ギャップというものもあります。ありますが、しかしフェアでないと言われることは非常に大きな恥辱であると私は感じておるのであります。いま政権を担当して、いまこうやってまた予算審議で日夜明け暮れておるわけでございますが、この汚辱といいますか、フェアでないと言われる点はやはり直すべきものは思い切って直して、日本人の名誉を回復しなければならない。それについては公務員や、あるいは輸入機構や、あるいは業界における基準とか、そういう問題についてやはり思い切って点検をしてみて、直すべきものは直していきたいと、こう考えておる次第でございます。
  172. 長谷川信

    長谷川信君 いまの説明、理解をいたしておきます。  次に、日本とソ連の関係、日ソの関係でありますが、これはいろいろ御案内のとおり経過がございまして、私も戦争に行って、あの当時ずっと回っておったのでありますが、不可侵条約を跳び越えてわっと来て、シベリアへみんな持っていって、私もあのモンゴルの異国の丘へ行ってみたが、全くああいうところで二年も三年も苦労するのは大変だなと、本当にもう涙の出るような状況であった。そういう一つのいろいろ経過もあったわけであります。そして、しかも北方領土はこれは日本の国のまさにわが国固有の領土である。まあ領土というものはどこか外国から戦争でとったとか、あるいはとられたとかという歴史があるのが大体普通でございますが、北方領土の場合は全くこれはわが国の本当の固有の領土。たとえばこの間のフォークランド戦争は、私は余り経過は詳しくないのでありますが、昔スペインが持っておって、それをアルゼンチンがとって、それをまたいまイギリスで、百年か百五十年でがちゃがちゃやって、なおかつあれだけの大きな問題になっておる。ところが、あの北方四島はまさに二千年、三千年あるいは五千年、まあ五千年というのは大げさかもわかりませんが、少なくとも千年、二千年の昔から全くわが国の固有の領土であった。それをああいう経過の中でソ連が占領、占有をして、しかもわが国に向かって軍事基地をいろいろ設置をしているということは、これは日本の国民感情からしたら何というか、いろいろやっぱり考えさせられることはこれはもう当然だと思うんです。  そういう中で、日ソの関係というものはどうも国民の中にもすかっとしない経過、あるいはそういう状態があると思うのでありますが、今度新しいアンドロポフ政権ができて、多少ソフトになるのか、あるいはまあちょっとわかりませんが、これもソ連のちょうどそういういまの政局の転換の時期でもありますが、新しい政権が日本に対してどのような考え方を持っておるか、あるいは機会があったら中曽根総理からアンドロポフに、北方領土の問題をおまえ一体どう考えておるのかということで、かつていろいろそういう経過もあったようでありますが、率直にやはり私は首脳外交というか、トップの関係の話し合いを、何というか、そういう機会をつくっていただいてやることが、国民に対しても、また世界の各国に対しても一番わかりやすい、総理の言っていらっしゃるわかりやすい外交である、あるいはわかりやすい政治であるのではないかと思いますし、まさに北方領土の問題はわが国としても、これは沖縄もああいう経過がいろいろあったわけでありますが、これはやっぱりソ連の諸君からひとつ考え直していただかなければならない。あれだけ広大な面積の土地を所有しておるのに、ケシ粒くらいのものを、それはまあいろいろ考え方があるかどうかわかりませんが、少なくとも国民感情としては、これは中曽根総理からやっぱり一肌脱いでいただきたいという空気が私は国民の中に多く、期待をいたしておるところであると思っておるわけでございますが、日ソ関係の展望について、総理並びにまた外務省でいろいろ情報が入っておりましたら、外務大臣から御説明を賜りたいと思っておるわけであります。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ソ連はわが国の隣の強大な国でありますし、長い間のわが国と歴史的な関係もあるわけであります。われわれとしてはこれはソ連と仲よくやっていきたいというのは当然でありますが、しかし御承知のように、いまお話しのこの北方四島のいわゆるわが国の固有の領土の問題があります。この北方四島を返還してもらいたいというのは、わが国の民族のこれは悲願でございます。これを解決することによって、私は真の日ソの友好の関係が確立されると思うわけでございます。そういう意味において、これまでも日ソ関係についてはこの北方四島の返還問題、これを基盤として、大前提として日ソの関係についてわれわれ対処してきたわけでございます。  今回、新しいアンドロポフ政権ができたわけでございますが、このわれわれの基本的な姿勢は変わりません。私たちはこの北方四島返還をする、そして日ソ間にまだ結ばれていない平和条約を結んで、日ソの真の永久的な関係を確立していきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。そういう立場から、これからも日ソ関係については、これを基本として日ソの関係を進めていきたいと思います。確かに文化の面、あるいは経済の面についてはいろいろと交流もありますし、私たちはいたずらに対立を好むわけではございません。したがって、経済の交流にしても、あるいは文化の交流にしてもこれを進めていかなきゃならぬと思うわけですが、やはり何としても本題は、この領土問題が横たわっておるという、やはり私たちは基本認識、これをあくまでも捨てるわけにはいかないわけでございます。まあこれから新しい政権のもとに、日ソあるいはソ日漁業協定も今回結ばれまして、今度の臨時国会で承認をしていただくということになりましたし、また最近ではソ連に抑留されておりました二十九人の漁船員が年内にも釈放される、そういう可能性も出てまいりまして、ソ連としても、日本に対しても新しい政権のもとにいろいろと柔軟な対応といいますか、そういう姿勢も見えないわけではないわけでございますし、われわれもそれを今後とも期待をするわけでありますが、しかし根本的にはこの領土問題、これを何としても解決しなきゃならぬ。  私は、外務大臣になりまして、パブロフ駐日大使にもお目にかかりました。この領土問題、まず解決しようじゃないかということを率直に申し上げました。そしてその領土問題を中心としてまずテーブルに着こう、そのためにも、これまで絶えてグロムイコ外務大臣が日本においでになることはなかったわけであります。日本の外務大臣は六回ばかり行きましたけれども、グロムイコ外務大臣は三回訪日であります。そして、最近ではずっととだえておりまして、まずやはりグロムイコ外相に日本に来ていただく、そして日ソ関係、領土をまず基本として交渉を進めたいと、こういうことを申し上げたわけでございまして、新しい政権ができまして、私たちはこの新しい政権が領土問題について、何らかの一つの考え方を示すことを期待をいたしておりますし、そういう期待を持ちながら、今後とも日ソの外交関係を進めてまいりたい、そういうふうに考えておるわけであります。
  174. 長谷川信

    長谷川信君 次は、外交問題もう少しお願いいたしますが、日中それから日韓の関係について外務大臣にひとつお尋ねをいたします。  日本と中国の関係、これもさっき申し上げましたように、二千年の友好というか歴史があるわけでありますが、そのうちけんかをしたと言っちゃなんでありますが、まずい時期は幾ら計算をしても百五十年にならない、もうちょっと圧縮して考えれば百年あるかなしくらいで、二千年の歴史のうち、千九百年から千八百五十年は大体友好の歴史であったわけであります。日韓の関係もそのとおりでありまして、新羅の戦争だとか、豊臣秀吉だとか、神功皇后だとか、みんな引きましても恐らく二千年の歴史のうち千八百年は友好の歴史だったかもわからない。だから隣国との友好の歴史をより戻す、あるいは継続をする、もっと拡大をするということが、日本の外交、日中、日韓外交政策の基本でなければならないし、またそれが当然であると思うのでありますが、昨今、若干ぎくしゃくしたような経過もあったわけでございますが、それらの問題も大体鎮静するというか、片づきつつありますし、金大中もさっきのテレビニュースだと、アメリカへ今晩だかあすの朝出かけるというか、出かけたというか、いろいろ状況も変化をいたしているようであります。そういう中で、これから日中の関係、まあ後で——いま申し上げてもいいと思うのでありますが、新聞その他いろいろ雑誌に、中国とソ連の関係の問題がいろいろいま喧伝をされております。ことによったらかなり接近をしているのではないか、新聞に書いてあるよりも、雑誌に書いてあるよりもはるかに事実は進んでおるのではないかというふうな見方をしている人もある。あるいはまあそう言ったって、それは五年、十年、時間もかかることで、そんな簡単じゃないよという説もありますし、私どもはなかなか定かではないのでございますが、きわめて複雑であることはいろいろ承知もいたしているわけであります。その辺、しかし何といっても基本は、日中、日韓の関係は隣国であり、同文同種であり、一衣帯水の間の関係でありますので、これはもう何としても友好を持続し、拡大をするということが日本外交の基本でなければならない、その辺について現状並びにこれからの見通し、推移等について外務大臣から御説明を賜りたいと思います。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) お話しのように、日中関係さらに日韓関係を良好なものにして、これを発展をさしていくというのがわが国の外交のもちろん基本であることは申し上げるまでもないわけでございます。いろいろと今日までの長い歴史の中では不幸な戦争というのもありました。また、その他の非常に密着した関係の時代もあったわけでございますが、いま私は日中関係、日韓関係を展望してみますと、日中の関係は最もいい時期にあると、こういうふうに思っております。最もいい状況にあるのではないか、こういうふうに思っておるわけでございまして、貿易関係も非常に順調でありますし、また政治の関係も大変うまくいっております。この日中関係をさらにより深く、広いものに持っていくためにこれからもわれわれ努力していかなきゃならぬ。ちょうど国交正常化して十年であります。これからの十年をさらにこれまでの十年以上のより高いものに持っていくために、両国が努力をしていかなきゃならぬ。幸いにしていま特別大きな懸案はないわけでございまして、非常に順調にいっている、そういうふうに存じております。  それから、日韓関係もいろいろとぎくしゃくした関係もありました。最近におきましては教科書問題等で波風が立ったわけでございますが、これも一応決着を見たわけでございまして、今回日韓の議員連盟の総会が行われまして、韓国から五十数名の国会議員がやってこられまして、非常にいい雰囲気のもとにこの総会が終わったわけでございます。  私たちは、さらにまたいまお話しのように、金大中氏の問題にしても、いろいろと不安な問題を日本にも投げかけておったわけですが、これもこの韓国の全大統領の決断によって釈放されてアメリカに行かれると、こういうことで、これもまた日韓の関係についてもいい影響が出ておると私は思うわけでございまして、大体日韓関係も非常に新しい、いい時代に入る可能性は、その素地というものがだんだんでき上がりつつあると思っております。    〔委員長退席、理事中西一郎君着席〕  問題は、日韓の経済協力の問題が残っておるわけでございますが、この問題につきましても今後私たち十分話し合いまして、互譲の精神でもってこの問題も何とか解決をしていくと、そしてやはり韓国が、非常に安定した中で韓国自体が力をつけていくということが日本の平和と安定、あるいはアジアの平和と安定にも大きく資することになるわけでございますから、われわれもそういう意味において、今後の日韓関係のよりよき発展をつくるために、今後ひとつ努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  176. 長谷川信

    長谷川信君 時間がないので簡潔に御質問申し上げますが、この間ASEAN諸国に中曽根総理御就任以来直ちに電話をされて、いろいろ何といいますか、外交を展開されたようでありますが、なかなかやっぱり、私も何回か回ったことあるのでありますが、日本の実情等について認識が深くないような感じがしますですね。  この間もASEANのある国の国会議員に私東京で会って、夜一緒に飯を食ったんでありますが、あんたの国に来たら朝から晩まで軍艦マーチ鳴っていて、軍国主義の台頭はすごいものだなと私に言ったから、あれは軍国主義じゃないんだ、あれはパチンコの歌だと言ってやったら、本当か、パチンコというのは何だと言ったから、こうやってこうなるんだよと言ったら、そんなの知らねえやなんて言っていましたが、いろいろやっぱり実情の理解が余りできておらないんじゃないかというような感じもいたしておるわけであります。  これは歴代内閣それぞれASEAN諸国をお回りになっておりますが、中曽根総理も適当な機会をとらえて、これはやっぱり日韓、日中に次いでの隣国であり、顔色も大して変わらないし、かっこうも変わらないような本当の隣国でございますので、理解を深めると同時に、親善を深め、友好を促進するということで、時間をできるだけとらえてお回りになったらいかがかと思いますが、総理の御所見を承っておきます。
  177. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 御発言の御趣旨にできるだけ早目におこたえいたしたいと思って努力いたしたいと思います。
  178. 長谷川信

    長谷川信君 あとEC、中近東、いろいろ問題たくさんございますが、時間がないので、私もう資料もございませんし、的確な質問もできないのでございますが、日本がこれだけ高度の成長をいたしておるのでありますから、やはり外交関係というものは五年前、十年前、二十年前と全く違った角度から、新しい角度から展開をしなきゃならないと思う。  この間、私も塩崎先生のあれでIPUの大会に、ローマに行っていろいろ向こうの連中とも会ってきたんでありますが、なかなかやっぱり理解は余り、向こうの国会議員であっても日本の実情というものについてはそれほど詳しくない。  いろいろ話をしている中でこういう話が出たのでありますが、総理の御見解を承りたいと思いますが、たとえば海外放送がございますね。日本の国から北京、ピョンヤンとかモスクワとかいろいろありますが、日本のいまのラジオ・ジャパンの規模並びに予算はイギリスのBBC放送の約四分の一程度であります。人員からいっても機構からいっても、すべてがその程度らしいんですね。四分の一というのは正確であるかどうかわかりませんが、少なくとも三分の一か四分の一くらい。ましてモスクワ放送だとか、ボイス・オブ・アメリカだとか、北京放送だとかと比べたら、恐らく七分の一、十分の一であるかもわからない。しかし、いま一番世界じゅうにどんどんどんどん品物を輸出をしていろんな形でもってだあっといっているのは、イギリスよりもフランスよりもイタリアよりもアメリカよりも日本が最高であるかもわからない。  そういう状況の中でなかなか日本の——この間、新潟県のある町で裸祭りがあったんですが、そのポスターをパリで張ったら、アフリカの裸祭りと間違えて、日本というのはとんでもない野蛮な国だなと言ったやつがいたそうでありますが、その程度の認識しか持っておらない。だから、金がない時期ではございますが、私はいま、さっき総理がおっしゃいましたような、国際的な中で日本のこれからの立場をいろいろ考えるなら、そういう日本の実態というもの、あるいは日本の実情というものをやっぱり外国に知らせなきゃならない。また、わかってもらわなきゃならない。そのうちの一つにラジオ・ジャパンの例を申し上げたわけでありますが、そのたった一つの海外放送の予算が何とBBCの三分の一か四分の一程度、これではなかなかやっぱり理解を深めることが他の外国諸国よりも低いかもわからない。これは総理からひとつ、実態もお調べになった上で、少なくとも先進国並みのものをつくらないと、何かやっぱり理解を深めない中でいろいろ議論が出てくるから、貿易摩擦はそれは当然摩擦になるわけでございますが、それでもわからないで摩擦をするよりも、わかって文句を言ってもらえばまたいろいろ話し合いの仕方もあるということでありますので、その辺、ラジオ・ジャパンに限ったわけではございませんが、海外向けのそういう問題についても、外交問題を考えた場合、ないがしろにすることができない問題であると思っておるわけでございますが、これは総理並びに郵政大臣のお考えを承っておきます。
  179. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) お話しのとおり、国際的な関係が大変緊密化しつつあり、また日本の国際場裏で果たすべき役割りが大きく期待されておるという時代になりましたので、わが国の実情をよく理解してもらうということは、きわめて重要なことであると思います。  これはいろんな方法があるわけでございましょうが、海外放送もまたその重要な一翼を担うものと思っております。諸外国がこれに力を入れておるのも同じ趣旨であろうと思うわけでございます。率直に申しまして、日本の海外放送はその放送規模におきましてかなり見劣るわけであります。予算規模で言いますと、アメリカの六分の一、イギリスの四分の一という程度でございます。私ども国際放送の充実には努めてきたつもりでございますが、本年、私の省の中に国際放送に関する調査研究委員会を設けまして、検討を進めておるわけでございますが、今後、委員会の結論を参考としながら、またNHKの実績を踏まえまして、御指摘のように今後国際放送の充実強化に努めてまいりたいと思っております。
  180. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 郵政大臣がお答えしたとおりでございますが、世界の経済大国としてこれだけ大きくなった日本が、自分のことを紹介することを忘れているということは、大変な私は失策だろうと思います。ただ、予算がいままでの延長線で毎年上積みで来ているものですから容易にふえないと思うのですけれども、ある段階になったらこれは思い切った政策をやらないといけないと思います。外国の教科書なんかについて、日本の古い写真がよく載っておって、非常に誤解されているというようなことを言われておりますが、そういうことが言われていること自体が私は申しわけない、日本の国民に対して政府が申しわけないと考えなきゃならぬ、こう思っておる次第でございます。
  181. 長谷川信

    長谷川信君 次に、防衛関係。  防衛庁長官並びに総理の御見解を承りたいと思いますが、シーレーンの問題がいろいろ論議をされているわけでありますが、いまの日本の防衛力で、シーレーンというのはどういう範囲だか、どこからどこまでだとか私も定かではございませんが、いわばいまの日本の防衛実力で、何といいますか、    〔理事中西一郎君退席、委員長着席〕 シーレーンに該当する区域を守ることができますか、どうですか。
  182. 谷川和穗

    国務大臣谷川和穗君) 最初に、二点だけ申し上げさしていただきたいと存じます。  有事の際には日米共同して作戦行動をいたすと、こういうことが一つでございます。  それからシーレーンと、こう言われましたが、シーレーンの概念では累積効果をねらうと。すなわち日本の周辺数百海里、もし航路帯を頭に置けば大体千海里ぐらいの範囲ということを考えて、日本は日本でわが国のできるいろんな条件がございますが、そのもとで米軍と共同して行うと、こういう考え方でございます。  それから現在の日本の持っておる力で守り切り得るかどうかという、こういう御質問がございましたが、これは武力攻撃を受ける態様によって違うだろうと思いますが、一つだけ申し上げることができますことは、現在私ども考えておりまする防衛大綱に沿って、たとえば五六中業の完成時を考えた場合には、いまより相当その力は増加してきているだろうと、こういうことだけはお答えできるだろうと思います。
  183. 長谷川信

    長谷川信君 いま防衛庁長官から御説明があったわけでありますが、いわば防衛のプロというか、専門家のいろいろ話を私どもたまに聞く機会があるわけでありますが、シーレーンは、いま申し上げたように有事の際は合同ということになるわけでありますが、それはそれとしても、仮に日米の関係がうまくいきましても、なかなかそう簡単ではないだろうという説がもうかなり専門家の間で出ていることも事実のようであります。これは私ども専門家でないのでわかりませんが、かなりこれはこれから議論を呼ぶところではないかと思いますが、私も資料がないのでなかなか突っ込んだ質問もできませんが、今後の検討問題としてまた十分御研究を賜りたいと思います。  なお、総理にお伺いいたしたいと思いますが、三木内閣当時から日本の防衛予算は一%ということが一応の物差しになっております。これは三木内閣の当時から日本の経済が御案内のとおりずっと急成長しまして、高度成長もし、あるいは神武景気だとか、高天原景気だとか、三年も五年も続いて、どんどんどんどん伸びて、これは一%やれば前年度対比でもって五%も七%もふえた時代もあったかもわからない。しかし、今日いろんな外国との関係からしても、そろそろ日本はやっぱりある程度は自分でやりなさいよという説がかなり強く出ていることも御案内のとおりでありますし、それから来年からどの程度経済がどうなるかわかりませんが、もしGNPが落ち込んだ場合になかなか現在の予算が確保できないということも、これまたそういうことも考えられるわけであります。だから、防衛というのは戦争がなければ、こんなものは何にも要らないわけでありますし、本当に大変なことになったら、これは五%だろうが、一〇%だろうが、一五%だろうが、国を守るということになったら、これはもうパーセントで戦争ができるわけはないのでありますが、その辺、三木内閣当時からずっと長い間わが国の防衛はGNPの一%が物差しであるぞという、ずっと長い経過をたどってきているわけでございますが、この辺で、多い少ないは別として、その物差しの考え方というものは、若干やっぱりここで検討を加える必要があるのではないか。検討を加えたからそれが防衛費をどんどんふやすということにつながる、つながらないは別にしまして、一%——一%ということが本当の国防、国を守る一つの金科玉条の物差しであるかどうかということになると、議論としてはいろいろ議論の分かれるところであるかもわかりません。その辺、これからわが国の国防体系の中で問題を、そういうことになると思うのでありますが、いま申し上げたような一連の問題について総理の国防に対する考え方、あるいはこれからの見通し、推移等について御説明を賜りたいと思います。
  184. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) わが国の国防は専守防衛という基本精神に立ちまして、非核三原則を守りつつ、アメリカと安保条約を提携して有効に機能させていくと、相互補完関係で臨んでいくと、そういう関係が東南アジアに不安を与えない関係にもなる、そう考えておるわけであります。  それで、GNPにつきましては、三木内閣の当時、当面一%以内という方針を決めておりましたが、この方針は守ってまいりたいと思っております。  将来のことを聞かれますと、われわれの当面の仕事は防衛計画の大綱を達成するということであります。この防衛計画の大綱を達成するという方針を遂行していく過程におきまして、経済の情勢やら、あるいはGNPの膨張率やら、そういういろんな面で変化が出てまいる可能性もなしとしません。そういう場合には、ある段階になれば、あるいは一%以内におさまらないという可能性もなくはないと思いますが、当面は一%以内を守るように努力してまいりたいと思っております。
  185. 長谷川信

    長谷川信君 次に経済問題でございますが、経企庁長官並びに竹下大蔵大臣から御説明を賜りたいと思います。  非常に近ごろは中小企業が不況であります。私も零細企業、中小企業を自分でやっている一人でありますが、なかなか大変であります。御案内のとおり、これは山中通産大臣からも御説明をいただきたいと思っておりますが、いま中小企業に従事をいたしておりますおやじ、それから家族、従業員、これらを全部合算——合算というか、合計しますと、計算上はあるいは四千五百万から五千万くらいになっている。まあ五千万と仮にいたしますと、日本国民の成年男子の三分の二は中小企業に関係をいたしているわけであります。ただ御案内のとおり、売り上げは大企業が全体の六〇から六五%くらいだと思いますが、そこに働いて飯を食っている頭数からすれば、中小企業は何と全体の七〇%も——これは農業人口よりも、大企業人口よりももうはるかに大変な数の人が中小企業で働いているわけであります。しかも御案内のとおり、中小企業は明治あるいは徳川、もっと昔から、自分の店は自分で守るんだという自立精神が非常に旺盛で、働き手で、まじめで、そして余り政府だの補助金だのに頼らない、自分のことは自分でやるという習慣でずっともう三百年、五百年やってきているわけでありますが、それが今日なかなかどこの町も売り上げが、ひどいところは三〇%も落ちておりますよ。普通で一五%から一七、八%は大体平らに落ちておるようでありますね。だから、なかなか頭が痛いのでありますが、これ業種が全部千差万別のものだから、米を上げるというふうなことで、短絡になかなかアピールもできない。そういう面で中小企業の皆さん、非常にいろいろ深刻な問題を抱えているわけでございますが、このままいったら、四月に入りましたら——いまでも倒産は前年度をはるかに上回っておる状況だと思うのであります。これはやはり放置するわけにいきませんので、これも世界景気のあおりを食らって、いろいろ諸般の状況から言って、そんなものはいろいろそう打つ手はないよ、考えてもなかなか大変だよということに、あるいはなるのかならぬのかわかりませんが、少なくともこれは中小企業がこれで大打撃を食ったら日本の国の形が変わるかもわからない。私は頭数から言っても、物のいろいろ考え方からしても、あの健全な諸君をぶち殺すようなことを自民党政府がやったら、これはあるいは中小企業の連中は化けて出るかもわからぬ。そのくらい深刻な状況のようでありますが、今後のそういうものに対する景気対策をどういう、非常にこれはむずかしい問題で私もわかりませんし、なかなかそんな簡単に書くわけにまいりませんが、少なくともいまの中曽根内閣は、やはり中小企業に対する一つのそういう政策の明示をする必要があると思う。そういう面で御担当の通産大臣、あるいは御関係の経企庁長官からひとつ御説明を賜りたいと思うわけであります。
  186. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) われわれの、これは自業自得ですけれども総裁予備選なんかやって大変ずれ込んだですね。このことが税制とか予算の、新聞の活字にそろそろ出てくるわけですね。それがすべて正確でないものもあるし、なかなか答弁がしにくい。  たとえば、中小企業投資減税とか、投資促進税制とか、あるいは承継税制とか、何かもう枝ぶりらしいものが見え始めましたので、その意味で、最終的にはこれは予算で決まることでありますから、税制大綱並びに予算の決定を待っていかなきゃならぬと思いますが、そこらを非常に心配して、総理の御指示等もいただきながら、財政難の折であっても、中小企業こそまず底辺であり、土台であり、要するに自由主義経済の危機というのはどういうときかというと、商店街に倒産が始まったときです。このことは大変重要な無視してはならないことだと私は思うんです。それは倒産件数は、商店もときには入っていますが、製造業が多い。そのかわり企業の総体の件数は、新しい企業が興って、現状にマッチしたもの、先端をとらえたものというようなことで、また生まれ変わって新しく誕生していく。しかし、商業の方はなかなかそうはいかぬですね。  そうすると、本会議でもちょっと申しましたけれども、瓦れきの上に今日の商店街を築いた世帯主の方々が、年齢的に交代の時期が来た。世代交代ですね。しかし意識的構造も含めて、なかなかおやじの後を継がせるには相続税とかいろいろなことで渋る。そこで承継税制などというものほどうだろうと考えて、中身はきょうは、後でどうせお互い知るわけですから述べるのは避けますが、いずれにしても中小企業の商店個々に補助金が出せない、私有財産に対して。そういう私企業に対する補助金というものはなかなか出せない。それならば、やはり中小企業は税と金融によってその運用よろしきを得て、その活力をそれぞれに持たせなきゃいかぬ。一つは、代がわり等のための相続をスムーズにやるということのために今回の承継税制の形もほぼ一応の枝ぶりと申しますか、そういうものにでき上がりつつありますから、ここで明細を述べることは避けますが、今後もやはり中小企業が日本の活力の源泉であるし底辺である、これが揺らいだら資本主義経済、自由主義経済は崩壊するという気持ちでもって対策を立てて進めてまいりたいと思います。
  187. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  長谷川委員御指摘のように、最近中小企業の不況感が大変強まってまいりました。ここでも論議になりましたけれども、設備投資は大企業は五十七年の一—三月には三・七%伸びたのに、中小企業はかえってマイナスの四・七であった、こんなことが言われました。大変心配されておるところでございます。これはいろいろ原因を探求いたしますと、将来先行き不安がある、これが最大の原因でございます。そのようなことから売り上げが落ちてきた、そのために設備投資が起こらない、こんなような状況であることがいま言われているところでございます。  私どもはこれから持続的な安定成長、内需を中心といたしました安定成長に乗せて、そして中小企業の設備投資を通じての新しい活力をつけていく必要があろうかと思うのでございます。幸いに長期金利も下がりぎみでございます。これをひとつ中小企業の金融面に生かしていきたい、こんなふうに思いますし、先ほど山中通産大臣の言われましたように承継税制、さらにまた今回の自民党の税制調査会では、御案内のように、前五カ年間の設備投資を上回るところの投資をしたものには特別償却を三〇%認めるというようなことがありました。このような施策を通じて中小企業の経済的な条件を上げてまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。
  188. 長谷川信

    長谷川信君 次に大蔵大臣にちょっと教えていただきたいのでありますが、いまの承継税制の問題であります。  これは、私の周りにも中小企業がたくさん、そういうところに住んでいるのでありますが、いま通産大臣からもお話がございましたように、なかなかおやじの後継ぎをしたがりませんね。おやじが朝から晩まで金の心配をするのを見ていると、もうこんなものは嫌だ、こんなものになるんだったら政治家になりたいとか、あるいは大蔵省へ入りたいとか、そういうことでなかなか後継ぎが出ないですよ。私も子供が三人いるのでありますが、やっぱり親として一番うれしいのは子供が喜んでおやじの仕事の後継ぎをするということ、これが本当に私は楽しいことでもあるし、そうしていただきたい。ところが、中小企業の間口三間、五間の店を開いていて、特に私のところなんかは雪は降るし、火鉢を抱えてこんなにしていて、もうあのおやじの姿を見たら嫌だよ、おれはもうどこかへ行きたいよということ、だんだんだんだんそうなりつつある。  そういう面で、この間税制調査会でもいろいろ御検討をいただきましたように、売り上げ八千万以下の会社の、いわば零細会社の株式で譲渡あるいは後継ぎする場合の税金というものを引いていくのだということでございますが、これはもう待ったなしにやっていただかないと困ると思うんですよ。それもさっき通産大臣がおっしゃったような助ける道の一つであるかもわからない、それだけではとてもだめでありますが。というようなことで、大蔵大臣に格別ないろいろ御配意をいただいて、少なくとも中小企業の子供がおやじの後継ぎを喜んでというか、とにかくおれはおやじの後をひとつやるよというくらいの気持ちを持たせるくらいまで何とかひとつ助けていただく方法を考えていただきたい、その中にいまの問題があるわけであります。これは大臣の御所見を承りたいと思います。
  189. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 長谷川委員と私は同じ商売でございます。そして両方とも後継ぎをしないで政治家になった、こういうことになろうかとも思いますが、御説の趣旨はよくわかりまして、なかんずく中小企業者のいわゆる承継税制の問題につきましては、これは総理からの御指示でございます。いまその枝ぶりができつつあり、そして諸手続が、すなわち党の税調あるいは政府税調等々の手続が進みつつある段階でございますので、内容につきましてはその答申を得た後確定するわけでありますが、御趣旨に沿えるものと私は考えております。  そしていま一つの景気対策に対する中小企業投資減税問題につきましても、これも総理の御指示でございますので、その方向で鋭意検討され、手続が進められつつあるということをお答えとさせていただきます。
  190. 長谷川信

    長谷川信君 次に引き続いて大蔵大臣にちょっとまた教えていただきたいのであります。  いろいろ新しい五十八年度予算編成が始まるわけでありますが、もちろんこれはまだその骨格さえもできておらないこととは思いますが、国民の中で、さっきいろいろお話し申し上げましたように、税金が上がるのではないか、あるいはインフレーションになるのではないか、あるいはいまの状態よりも悪くなるのではないかと、いろんな心配がいま充満をいたしているのであります。その中で総理並びに大蔵大臣、何回かここで言明をされておりますように、中曽根内閣の財政再建は、増税はやらない、そしてただ直間関係の見直し、その他増税でないそういう比率の見直し等々のものについてはある程度考えなきゃならない、あるいはその他いろいろ御説明があったわけでありますが、いま予算編成の前でございますので定かではないことは承知をいたしておりますが、五十八年度予算編成の大蔵大臣の何というか、かくありたいというふうなことでも結構でございますが、こんな形でひとつ予算編成をいたしたいのだというようなことを、あるいはインフレーションになるとか税金が上がるのではないか、あるいはいろいろ物価が上がるのではないかといろんな心配が国民の間で行われているわけでありますが、それらと関連をいたしまして、どういう御抱負でこれから予算編成に臨まれるのであるか、その辺のことをお聞かせ賜りたいということであります。
  191. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十八年度予算編成に当たっての基本的な姿勢とでも申しましょうか、まず、一般歳出の伸びは厳しくこれを抑制いたしまして、少なくとも一般歳出につきましては前年以下と、こういう方針を貫きたいと思うわけであります。その限りにおきましては政策の優先順位等を客観的に総合判断をいたしまして、もろもろの施策に聖域を設けることなく厳正な態度で臨みたいと思っております。また、歳入面につきましては、これは、もとより今年度新たなる大型新税等を考えておりません。ただ、租税特別措置等の見直し等によりまして、いまそれらの作業が進んでおる段階でございます。そうして、全般的な経済見通しに基づいてそれぞれが作成される糧となるわけでありますが、これにつきましては、いま予算編成作業の最終段階で経済成長率あるいはもろもろの諸指標を御提示申し上げることになろうかと思いますが、少なくとも、きょうもOECDの統計等を送ってまいりましたが、日本経済のいわゆる潜在的成長力あるいは活力というようなものからいたしますならば、なお物価という問題につきましては諸外国も落ちついてきつつありますものの、世界最低の上昇率ということを目指さなければならないと思っております。また、成長率につきましても、今年度OECDの見直しによりますと、諸外国ことごとくと言っていいほどマイナス成長であります。しかし、わが方はいささかでもプラス成長をたどっていかなければならないことでもございます。なお、失業率等の問題につきましては、OECDの見通しを見ましても、世界全体は依然として高い水準が将来二年間にわたって予測されておりますが、日本の場合はほぼ現状で安定した姿で推移しなければならない、そういう潜在的活力を引き出すためのもろもろの諸施策も当然のこととして総合的に判断しなければならない課題であると心得ております。
  192. 長谷川信

    長谷川信君 次に行革の問題につきまして総理にお尋ねをいたしたいと思います。  中曽根内閣の表看板は行革であると総理も承知をいたしておられますし、国民も承知をいたしておることと思うのであります。今回の総裁予備選挙で圧倒的な支援を得られたのもやっぱり行革に対する国民の期待が固まるというか、そういう期待のあらわれがかなり私は大きい部分を持っておるのではないかと、私も現場を回ってみまして本当にそう思っておる一人であります。で、土光会長、九十歳の年齢をひっ提げられまして、私も、土光さんの本を読んだり、フィルムを見たりして、本当に頭の下がる思いでありますが、金も要らないし、名誉も要らないし、票も要らないし、ああいう人でなければ私は行革はできないと思う。逆に、金も要るし、名誉も要るし、票も要る人はなかなか行革は、私はそれほど簡単にはできないと思うのですよ。しかし、必ずこれはやり遂げなきゃならない。中曽根総理は、いや、おれはもう土光さんと心中するんだということを行管庁長官以来数回にわたって言明もいたしておられるわけであります。私ども知識が低いのでよくわかりませんが、諸外国の例をとりましても、だんだんだんだん政府が肥大化して、政府を減量しないで、何といいますか、いろいろ増税をした国で成功したためしは、私はないと思う。イギリスにしても、フランスにしても、イタリアにしても、行革の声は出たかもしれませんが、どんどんどんどん税金を取ってずっと来て、いまどうにもならぬ——どうにもならぬと言っちゃ失礼でありますが、なかなかうまくいっておらない。私はちょうどいい時期に行革の火を上げられたと本当に敬服をいたしておるわけであります。ところが、昨今いろいろ議論がふくそういたしておりまして、本当に、総理や土光さんのおっしゃっているとおり、行革の計画事業がこのままずっとスムーズに進むのかどうかということにつきまして、いろいろ新聞、ラジオ、テレビ、週刊誌等々でも若干の批判が出ていることも御案内のとおりであります。これは、しかし、私は、明治の維新をやったあの伊藤博文を初め元勲、あの終戦のときに、日本の国は下手をしたら奈落の底に落ち込むかわからぬといったときに、吉田総理がとられた政策、これは、私は、同じくらいのやはり決断力と判断力と勇気を持ってこの行革をやっていただくことが中曽根内閣の表看板の事業である、これは総理もおっしゃっておるとおりでがんばっていただきたいと思うのでありますが、若干心配のような、何といいますか、空気、うわさ、論評も出始めておるようでありますが、この点、総理の心構えと申し上げては失礼でございますが、所見を承っておきたいと思います。
  193. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 行革の推進は現内閣の最大の政治課題の一つでございまして、全力を傾けまして御期待にこたえるように努力をいたします。組閣に際しまして、各閣僚の予定者に行革に協力してくれることを条件にお願いをいたしてありますし、また、初閣議におきましても、同じようにこの行革の重大性を指摘しまして協力を求めたところでございます。現在は臨時行政調査会におきましていわゆる第四次案を出すために懸命の努力をなすっております。一方、自民党におきましても内閣と一体になりまして、国鉄の監理法案を提出し、あるいは年金の統合問題あるいは三公社の改廃問題について具体化する努力をいまやっているところでございます。アヒルの水かきみたいに表には出ておりませんけれども、案が出てまいりましたらわれわれは強力にこれを推進して実行してまいるつもりでおります。
  194. 長谷川信

    長谷川信君 いま総理の御披瀝のとおりひとつがんばってやっていただきたいと思うわけであります。  その行革の中で、いろいろ御指摘のとおりあるわけでありますが、そのうち国鉄再建の問題が一つの目玉商品ではございませんが、目玉の仕事になっていることは国民周知の事実であります。これは、いろいろ内容がきわめて複雑多岐にわたっているわけでありますが、しかし、待ったなしでやらなければならないこともこれまた事実——事実というか、そのとおりなんでございますが、この国鉄再建法案は来年の国会でいろいろ検討されることでございますが、これについての総理並びに行管庁長官考えを承っておきたいと思います。
  195. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) 行革につきましては、先ほど総理からお述べいただきましたように、真剣に取り組んでいきたいと、こう考えておるわけでございます。  そこで、第三次答申が出まして三公社の問題が出たわけでございますが、三公社のうち、国鉄につきましては、臨調の答申の線に沿って五年以内に全体構想を固めよう、そうしてまた実行していこうということで、先般、御承知のように、国鉄再建の監理委員会を設置するということを内容とする法案をすでにこの臨時国会に提案をいたしておるわけでございまして、できるだけ早くその成立をお願いしたい、こう考えておるわけでございます。その他の電電、たばこの二公社につきましては、臨調の指標を踏まえながら各方面のコンセンサスを得て、できるだけ早く成案を得て次の通常国会には提案をしたい、こんなふうに考え、あくまでもその推進に全力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  196. 長谷川信

    長谷川信君 次に、中曽根総理の御見解をお伺いいたしたいと思いますが、行革の中の一環として、いわば官業の民営化の問題があります。これ一つ一つの問題で御質問する時間もないし、またそういうこともできませんが、原則的には官業は活力がないし民営は非常に活力がある。だから民営の活力を官業の中に入れるか、あるいは民営に近いものにするか、そういう議論というものはこれ当然出てくると思うのです。たとえば運輸関係にいたしましても、阪急でも東急でも、いろんな幾つかの鉄道があるわけでありますが、いずれも官業よりもすべての面においてうまくいっているということに一応——一応も二応もなっているようであります。したがって、民営論というものが行革の中の私はやっぱり議論をするある程度の中心課題にならなければならないし、またなってしかるべきだと思うのであります。たとえば日本航空にしてもKDDにしても、民営にしたらやっぱりサービスもよくなっておるし、経理もよくなっておるし、借金も返しておるし、利益も上げておるし、税金も払っておるし、まあ民営にして悪かったという議論は余り私は聞いておらない。そういうことでございますが、まあもろもろいろいろ複雑な状況、要素もございますが、基本論として、いわば官業の民営化というものについて中曽根総理はどのような御見解、御所見をお持ちでありますか、その点承っておきたいと思います。
  197. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 長谷川さんが申された御方針に私も全く共鳴しております。これは国鉄、私鉄を比べてみればもう一目瞭然としたところでございます。三公社の問題等についても、それを実行するという問題でポイントは、一つは予算統制の問題があります。これをいかに外してやるか。それから、労働権の回復という問題がございます。こういうような形によって、自由にそして実力が発揮できるような体系に転換してあげるということがやはり効率を上げていくもとではないか、そのように考えております。
  198. 長谷川信

    長谷川信君 行管庁長官
  199. 齋藤邦吉

    国務大臣(齋藤邦吉君) ただいまも総理からお述べになりましたわけでございますから私がこれ以上申し上げることはございませんが、民間の活力を導入するということは最も緊要な問題ではないだろうかと、かように考えておる次第でございます。
  200. 長谷川信

    長谷川信君 隣からいろいろ御指示があるのでなんでございますが、もうちょっと時間かしていただきたいと思います。  いま農業問題、農林大臣に一つお尋ねをいたしたいと思いますが、さっき申し上げましたように、農産物の自由化、これ深刻な問題で、さっき総理からもいろいろ御説明をいただいたとおりであります。  ただ、いま、私は新潟県に住んでおりますので、米の問題と食管の問題等々について農林大臣の御見解を承りたいと思いますが、私のところの米は売れて売れてどうにもならないんですよ。もう刈り取りをして農業倉庫へ入れると一週間、十日もたたないうちにほとんどの倉庫が空っぽになってしまう。だから、農協はむしろ悪い米をつくった方がもうかると言っていますね。いい米をつくってすぐ売れると倉庫料が何にも入らぬものだから、悪い米をつくって天井まで、てっぺんまで積んでおくと倉庫料ががばっと入るものだから、農協はなかなかこれ計算がむずかしいなあなどと言っているくらい大変な売れ方ぶりであります。  ところが、この間私は、場所言っていいかどうかわかりませんが、ずっと北の方の国へ行きましたら、農協の中に山積みになっておったんです。この米は一体いつの米だと言ったら、古米でなくて古々米、古古古古米もありますと。これでどのくらい金を払ったのかと聞いたら、単年度であるか二カ年であるかわかりませんが、少なくとも一千億をはるかに上回っている金を払っておる。じゃその米は売れるのかと言ったら、これはまさに豚も食わないのが大半ですよなどと、まあうそか本当か知らないが、そういう説明をいたしておる。  そういうことで、やっぱり適地適産の原則というものをもう少し農政の中に入れる必要があると思う。私は、大蔵省で金が余ってどうにもならないくらいじゃんじゃん使えやといっている時代なら、売れない米に金を払うこともあるいはいろいろあるかわかりませんが、ここまで詰まってきたらそういうことは若干のやっぱり手直しをする必要があるのじゃないか。それじゃそれをやめたらそこは大変だなと言ったら、いや、おれのところは安米でもって勝負するからいまの米値上げしなくたって大丈夫だよ。このままちょっとここで、国会で説明していいかどうかわかりませんが、おれのところの悪い米とおまえのところのいい米をがちゃがちゃとまぜてテレビで宣伝すると結構もうかるよなどと言っているくらい、いろいろ頭のいいやつは考えが進んでおる場合もあるんですよ。  そういうことで、いま減反政策もやっておりますし、私どもも農業普及員なんかに、減反減反と言っておるが一体新潟県は減反をして代替作物何がいいんだと言ったら、ヤツガシラがいいと言っておった。そんな佐渡島から粟島まで全部ヤツガシラつくれるかといってけんかをしたことがあるのでありますが、とにかく売れる米を、そういうやっぱり適地適産の原則というものをいまの食管制度の流通機構の中にも、あるいはまたいまの——それで、私のところなんか全部米がなくなっているものだから、北海道の悪い米を食糧事務所に持ってきておまえら食えといってそれを割り当てしているのですよ。自分でいい米つくっていて悪い米配給して食っているのだから、これどうなっているのかなと思っているくらいでありますが、そのくらい出ておる。それは私のところだけでなく良質米地域というものは全部そういうことでありましょうが、この辺何というか、いろいろまた極端な議論をするとおしかりをいただく面もあるかもわかりませんが、原則的に良質米の流通機構の改善等——減反だってそうですよ。いま災害で、この間も岩動先生、おれ言い忘れたから農林大臣に質問してくれというのでいま思い出して申し上げますが、減反をしてもなかなかそれは、減反をするけれどもそれはもうどんどん売れておるのでありますから、これは減反を、かなりセーブをしてもそんなことは意に介さないくらいどんどんどんどん売れておる。そういうところについての減反の問題、あるいは災害後の減反等々の問題についてやっぱり有機的な、適地適産の原則に合った、人間の心の、人間の何というか、いろいろ本当に血の通った政策というものをやっぱりやっていただかないと、そろそろやっぱり、いつまでもこの状況続いていいものであるかどうか私どもは非常に疑問を感じておる一人であります。この点農林大臣から御説明を賜りたいと思います。
  201. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 銘柄米の流通関係でございます。食管法が二十九年ぶりに改正されまして、ことしの一月から施行されております。その中に、当然現実に即した取り扱いをするような方針を入れておりますけれども、いま長谷川先生の申されておるとおり、大変実態とはまだかけ離れておることが多いと思います。いますぐ減反で手心をするとか、いろいろなそういうことをここでお約束はできませんけれども、できるだけ御趣旨に沿うように努力をいたしたいと思います。
  202. 長谷川信

    長谷川信君 最後でございますが、文部大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。  きょうも、たったいまテレビを見たのでありますが、少非年行が十七万三千件出たと、これは警察庁の発表でですね。だから、いま教育予算というものは大変金をかけておりますが、そういう面では必ずしも効果が上がっているとは思えない。と同時に、明治のあの維新のころ、ちょんまげを切って刀を捨てて何をやったかと思ったら、明治の政治家は教育をやったんですよ。だから山のてっぺんから谷底までくまなく小学校をつくった。補助金もなければ道路もなければ、トラックもなければ、グレーダーもダンプもない時代に、全くそれこそ九州から北海道の果てまで、山の中まで小学校をくまなくつくった。それが私は今日の日本の一つの源泉であると承知をいたしておるわけでありますが、今日GNP世界第一だか二になったのも、戦後の技術関係あるいは大学の普及等が効果があったこと等、それは効果は認めなきゃならない。しかし、今日文部省予算が予算の中でもかなり多額を占めておるにもかかわらず、非行が、全犯罪の半分を中学生が担当していると言っては悪いのですが、まあそういうことに相なっておる。たったいまテレビで言っていましたよ。これでは何のために教育に金をかけたかわからない。まさに私は、明治の先覚者に、本当におまえら一体何とぼけたことをやっているのだと言われても仕方がないと思われるくらいであります。だからその点一つと、もう一つ、時間がありませんので、申し上げますが、留学生問題。これは昔、唐のころ、あるいは新羅のころ、日本からみんなただで——歴史の文献を見ますと、ただで外国に行っていろいろ教えていただいて、また戻ってきて、それが日本の奈良朝文化を発展させ、平安朝文化を発展さしたということが教えられておるわけでありますが、今日これだけ日本の国が高度成長したのでありますから、私はASEAN諸国の関係あるいは発展途上国の関係の留学生くらい——こんなことを言っては悪いのですが、金にすれば、それほどぶったまげるような金じゃないと思うのですよ。これはもう希望者は、昔、唐の時代、西安に行った学生は恐らく月謝なんか出しておらないで勉強して帰ってきておる。弘法大師もそうです。
  203. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 長谷川君、時間が参りました。
  204. 長谷川信

    長谷川信君 はい、わかりました。  そういうことでございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  205. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 時間がないそうでございますから簡単に、恐縮でございますが、中学あるいは小学校等の少年の非行の問題は長谷川さんと同じように非常に心配いたしております。これは国民全体の心配であろうと思います。これはいろんな社会現象あるいは高度経済成長、もう一つ家庭の崩壊と言うと恐縮でありますが、変化、いろんな原因が錯綜しておると思いますが、いずれにいたしましてもこれじゃいけない。これはもう学校、教師も家庭も社会全体がこれに全力を挙げてこの改善に努めなければならないと、こういう考え方で進めたいと思います。  それから、いわゆる留学生の問題。これも簡単に、恐縮でありますが、少し数字を申し上げて御参考にいたしたいと思います。  昭和五十二年から五十七年までの日本に対する留学生の趨勢だけを申し上げておきますが、昭和五十二年、これは日本が国費を出してやっている留学生、それから自費で来る人、合わせて五千七百五十五であったのが、現在八千百十六と年々ふえております。まだ必ずしも十分とは思いません。これらの中で七八%、これが大体アジアからの留学生であります。まだ十分とは申し上げられませんが、非常な大事な問題でありますから、今後とも努力をしていきたいと、かように考えております。
  206. 長谷川信

    長谷川信君 終わります。(拍手)
  207. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で長谷川信君の質疑は終了いたしました。     ─────────────
  208. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、中野明君の質疑を行います。中野君。
  209. 中野明

    中野明君 私は、まず最初に、総理が一月に訪米をされるわけですが、それに焦点を合わせたといいますか、アメリカの国会で決議をしたり、あるいはいろいろ手をかえ、圧力と言ったら語弊がありますが、向こうの考えを押しつけてきております。それに対しまして、最初に総理にお聞きしたいのですが、アメリカも国会で決議をしたりいろいろのルートで自分の気持ちを伝えてきておりますが、日本の国会でも決議をしたり、あるいはそれぞれの団体が意思を表示しているわけです。そういうことを大前提としてぜひ対等、平等の交渉をしていただきたい、強く思います。最初にそれは要望しておきます。  それで、まず総理にお聞きをしたいんですが、総理の所信表明、初めて総理になられまして所信表明を述べられました中で、いろいろ時間の都合とか、いろいろの都合があるんでしょうけれども、農林水産に対する言及がございませんでした。それで、きょうは、私こういう機会でございますので、改めて内閣総理大臣としての農林水産に対する所見をお述べいただきたい、このように思います。
  210. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 所信表明におきましては、正面からとらえたところはございませんが、食糧の安全保障、食糧政策という面からとらえておる点は部分的にございます。  農業につきましては、前から私は言っていることでありますが、農は国のもと、農業はまた生命産業である、そういうことをかねがね言ってまいっております。国のもとという意味は、戦前は軍国主義的な観点から言われておったようでございますが、戦後におきましては、一面においては食糧を補給し、自給するための基盤であり、かつまた日本の人間の精神的基盤にもなっております。特に家族、家庭というものを中心に構成されておる日本におきましては、農業とか農家の重要性というものは非常に私たちは大切にいたしたいと思っておるわけです。  それから、生命産業という意味から言いますと、豚を育てるのでも牛を育てるのでも、あるいは稲を育てるのでも生命を扱っておるものでありまして、これは本当の愛情がなければ育つものじゃありません。共産圏や社会主義国で農業がまずいというのは恐らくその辺に大きな重大欠陥があるのではないかと思うのです。それと同時に、やっぱり汗をかいた者は報いられると、そういう原則も大事ではないかと思うのであります。その上日本の農業の場合は家族集約労働でございまして、一家が仲よく汗を流して働くという、そういう美風の上にも成り立っておるというところでございます。そういう点を大切にしつつ、さらに近代化して国際競争に耐え得る農業に発展さしていかなければならないと感じておるところであります。
  211. 中野明

    中野明君 それではもう一点、総理ね、日本の農業の現状ですね、先ほども長谷川委員から議論がありましたが、いま世界で一番食糧の輸入国になっております。それとあわせて日本の農業の現状を総理はどう認識をしておられますか、お答えいただきたい。
  212. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本の農業は国際的な重圧のもとにかなり苦悩してきている点がございます。それは牛肉やオレンジの問題にも象徴されますし、そのほかの農産物の自由化の問題でも象徴されておるわけでございます。また一面におきましては減反問題等がございますし、あるいは予算、財政的な問題から圃場整備というような予算も余り十分つけられない状態にもなっておりまして、生産費を下げて、そして営農団地をつくろうという農林省の長期的な近代化の政策もややもすれば停滞しがちであります。そういう点について農村の皆様方も非常な焦燥感をお持ちではないかと思います。また、林業につきましても、それ以上のまた問題点がございまして、そういう点を一つ一つ打開していくところにわれわれの今後の仕事があると考えております。
  213. 中野明

    中野明君 それではもう一点お願いしたいと思いますが、まあわが国は海に囲まれた島国でございますが、独立国としての食糧の自給率、これを総理としてどの辺までは確保しておかなきゃならぬと、こういう目標といいますか、それをお持ちかどうか、お聞かせいただきたいのですが。
  214. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 現在の自給率は、たしかカロリー計算でいくと五四%とかなんとか、そういう数字があったと思います。いろいろなアイテム、対象の選び方によりまして自給率というものは違っていくようでありますが、しかし国の安全保障全般を考えてみますと、ある程度の高い自給率を持っておるということは非常に大事な要素であり、それがバランスがとれた自給率であるという点が大事ではないかと思います。数字については農林水産大臣からお答えさしていただきます。
  215. 金子岩三

    国務大臣(金子岩三君) 数字の問題ですから政府委員から答弁させます。
  216. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  昭和六十五年を目標年といたします農産物の長期の需要及び供給見通しを政府は決めておりますが、これによりまして、昭和六十五年におきましては目標の自給率は大体七三%というように定めております。
  217. 中野明

    中野明君 自給率のことにつきましてはいろいろまた議論をしたいと思いますが、そんなに高い目標を持っておられながら現状は非常にさみしい状態であります。  それで、十七日にワシントンに行ってこられました佐野経済局長、農産物協議をしに行ってこられて、マスコミでは決裂というふうに報じておるんですが、その状況をちょっと御報告願いたいんです。
  218. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  十二月の十六、十七両日、この春以来問題になっておりました残存輸入制限品目六品目につきましての扱い方及び関税の引き下げにつきまして米側から要求のありました約四十品目につきましての討議を行ったわけでございますが、アメリカ側はIQの残存六品目につきまして、わが方の回答は非常に不満であるというように回答いたしました。そのためにガット提訴の問題につきまして、一週間以内にこれを検討して結論を出すというように言いました。そのために、関税四十品目については話し合いが行われなかったわけでございます。そういう状態で今回帰ってまいりましたが、本日になりまして米側から、昨日安倍外務大臣からガット提訴につきまして見合わせてほしいという要請を在京のマンスフィールド米大使に申し入れをしましたところ、本日になりまして、ガット提訴については結論を一週間以内に出すというような米側の回答につきまして、これを撤回するというような話がございましたので、そういう状況に現在なっております。
  219. 中野明

    中野明君 佐野経済局長は見えてないんですか。あなたがお行きになったんじゃないんでしょう。経済局長はおりませんか。——経済局長から行った状況と感触をお聞きしたいということを通告しておったんですが……。
  220. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 佐野経済局長おりませんか。
  221. 中野明

    中野明君 おられませんか。——行かれた人でないと、感触をお聞きしたいと思っておったんですが。あなたは報告をお受けになっただけでしょう。
  222. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) さようでございます。
  223. 中野明

    中野明君 ですから、それでは困るんですが……。(「しっかりしてくださいね、質問通告をちゃんとしてるんですから。そういう対応は明確にしてくださいよ。」と呼ぶ者あり)
  224. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 質問通告受けていておくれて来るのはいけないじゃないですか。
  225. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えをいたします。  十七日の日にアメリカ側と協議をいたしました際は、先ほど官房長からもお答えいたしましたような結末でございましたが、外務省の御尽力によりまして、けさ、アメリカ側からガット提訴の話について一応それを打ち消すような連絡がございましたので、少なくとも現状においては険悪な事態にならずに済み得るものというふうに思っております。
  226. 中野明

    中野明君 私がお尋ねしているのは、ワシントンで農産物の協議をされました。そのときの状況を少し、あなたの感触もまじえて御報告をいただきたい、こういうことでございますので、もう一度。
  227. 佐野宏哉

    政府委員(佐野宏哉君) お答えいたします。  実は、主題でございました六品目につきましては、先方と合意を見るに至りませんでしたが、私の受けました印象といたしましては、秋に入りましてから、アメリカの議会の空気が非常に厳しくなっておりまして、そういう事情のもとでなかなか日本との安易な妥協は許されない、そういう背景のもとにアメリカ側の交渉当事者が置かれているということが一番話をまとまりにくくしている事情として作用しているように私は印象を受けて帰りました。  そういう事情のもとで、一たんガット提訴などという話も出たわけでございますが、外務省のせっかくの御尽力によりまして、そこは一応考え直す状態になっておるというふうに認識をいたしております。
  228. 中野明

    中野明君 過去の経緯を私どももいろいろ聞かしていただきますと、アメリカの農産物の自由化要求に対する外交交渉のあり方というのですか、これ非常に私混乱しているような気がしてなりません。東京ラウンド交渉の末期でもそういうこと見られたんですが、前言を翻して、初めに立ち返ってまたやり直すというような交渉の仕方、本年の五月もやっぱりそうでございます。ですから、やはり外交には外交秩序というものが私はあるような気がしてならぬのですけれども、何かガットに提訴すると言っておどかしてみたり、それで、こっちがそれじゃやるんならやってくださいと言えばやめたと言ってみたり、何だか非常に混乱をしているような気がするのですが、外務省として、農産物の自由化を求めてきているアメリカの真意というのはどこにあると思っておられるのでしょうか。
  229. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、農産物の交渉につきましては、アメリカが二転、三転しております。混乱をしておると言えば混乱をしておると言ってもいい状況にあります。これはやはりアメリカの経済が非常に悪くなって、その結果議会にその空気が強く反映をして、それがまたアメリカ政府の態度を時によって変えておると。ですから、昭和五十三年までは一応農産物については、交渉といいますか、これは決着しているのですが、その以前から新しい農産物についてのアメリカの要請が非常に根強く起こってきていると、こういうことでございます。そして、基本的には現在アメリカは農産物の完全自由化というものを推進をする。自由化についての日本側の態度の表明がなければこれは不満だというのが根本的な主張で、これを崩す気配というのはないわけでございますが、わが国としても、御承知のような国内の農業の実態でありますから、自由化をそれでは約束するという状況にはもちろんありませんで、しかし、テーブルに着いてとにかく話をしようではないかということで、この交渉には、ぜひ交渉しようということでテーブルに着くことを求めておるわけでございます。  そういう中で、いま申し上げましたようなガット提訴といったことも起こってきておるわけでございますが、しかし、私からもきのうマンスフィールド大使に要請をしまして、このガット提訴を一応撤回と、こういうことになりました。これは、わが国が市場開放に対して努力をしておるということをアメリカ側も配慮したわけでありますし、これがまた、アメリカの、今後の農産物の交渉態度にも微妙に反映をしていくのじゃないかと、こういうように私たちは判断をいたしておるわけでございますが、これからの推移を見守ってまいりたいと存じております。
  230. 中野明

    中野明君 私ひとつこれは外務大臣にもう一度御答弁願いたいのですが、向こうは非常に強く出てきておるということは、確かに政治の場ですからそうなんでしょうけれども、アメリカの国内の世論というのは、農産物そのものにそれほどないんじゃないかというような感触をお持ちになったのか。ついこの間まで外務大臣としてわが国を代表して交渉に当たってこられた櫻内さんは、いま自民党の中で、農村議員協議会の会長に就任をされて、農産物自由化反対と、そういうことで、絶対反対ということで旗を振って、署名をおとりになって、いま大運動をしておられるわけです。ですから、当事者が、それほどいままで苦労して折衝してきた当事者であった方が、国内に帰って、外務大臣をやめると同時にそういう運動をなさっているということは、余りこれ、心配するに及ばぬという判断が働いているんじゃないだろうかというような気がするのですが、外務大臣どう思われますか。
  231. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま日米関係で、いわゆる貿易摩擦といった問題として残っているのは農産物が中心でありまして、関税その他の問題については相当幅広く日本は市場開放してきておるわけで、現在では農産物、そしてまたアメリカ側からするとこの農産物を依然として自由化しないということが、日本が市場開放を渋っておるその象徴的なものであると、こういうふうに考えておりまして、農産物がいわゆるいまのアメリカの求めておる市場開放の象徴的な産品になっておる。そしてまたこれが、アメリカが常に主張しているいわゆるアンフェアという日本のこの状況の、またこれが象徴になっておるということで、この問題は非常にいま日米間で大変貿易の関係の中では厳しい存在になっておることは、これは間違いはないわけでございます。しかし、これについては、わが国はわが国の主張もあるわけでありますし、なかなか引くに引けない一線もあることは御承知のとおりでございますので、いろいろと難航をしていることは、これは事実であります。
  232. 中野明

    中野明君 これ、総理は「わかりやすい政治」と、こうよくおっしゃるのですが、ついまだ一カ月たってないわけですから、この間まで外務大臣をして外国で日本を代表して折衝に当たられた人が、もうやめると同時に自由化絶対反対ということで、その旗頭でがんばっておられるということになると非常にわかりにくい。もしそれで自由化がどんどんなし崩し的にやられるということになると、結局農業が何かいけにえにされているんじゃないだろうか、そういうふうに農家はひがんでとるおそれがございます。  その辺アメリカは、私どもが計算をしてみましても、アメリカの農務省も、農産物が全部自由化されたからといって、貿易の不均衡はなくならぬことは認めておるわけですから、そうなると、国内での説明というものが非常にむずかしい。うわさでは、総理がアメリカへ行くのに農産物をおみやげにして行くんじゃないかというようなことも言われているわけなんですが、この農家の皆さん方の不安に対して総理はどうおこたえになりますか。
  233. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本農業の重要性につきましては、もう先ほど申し上げたとおりでございますので、総合的なバランスのとれた農政を実行していくと、また、農民の皆さんにも安心して農業についていただくような、そういう心構えを持ちまして、言うべきことは言い、聞くべきことは聞いて、そうして合理的に話し合いをいたしたいと思っております。
  234. 中野明

    中野明君 それで、新聞の報じるところによりますと、アメリカの大統領から総理に親書が来て、特にたばこ関税に名指しをして値下げをしてくれというような親書が来たということなんですが、この事実はございますんですか。
  235. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私に直接親書が来たということはございません。
  236. 中野明

    中野明君 それでは、マスコミの報じているのはどうなんでしょう、官房長官、そういうことについて一部の新聞では、二階堂幹事長に来て、それで政府に報告をされたとか、いろいろ書いてあるのですが、どうでしょう。
  237. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) お答え申し上げます。  一部の新聞に、レーガン大統領から直接総理にそういう親書が来たといったような記事がございましたが、そうではございません。これは党の有力者の方に、先方のこれまた側近の方からレターが来たというのが真相でございます。
  238. 中野明

    中野明君 それを受けたかどうか知りませんが、政府が方針を決めて、たばこ、菓子関税二〇%とか、あるいは農産物は四十品目とか、このように関税の下げを政府の方針としてけさ方決定されたと、こういうように伝えられているのですが、これはどうでしょう。
  239. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) けさほど私ども関係閣僚が討議をいたしましたけれども、これらの問題につきましてはまだ決定されておりません。
  240. 中野明

    中野明君 できるだけ、国会ですから本当のことをおっしゃっていただきたいんですが、新聞にこれほどはっきり「政府方針」と、このように書かれてあるわけなんですが、決まっておりませんか。
  241. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) 先ほど申し上げましたように、まだ決定されておりません。
  242. 中野明

    中野明君 じゃ、この新聞に書いたような結果にならないように私期待をいたしております。大抵後になってから、あれはそうでしたというようなことが多いものですから、非常に——いまそうおっしゃるんですから、そのお言葉を信用いたしておきます。  それでは、次の問題に移りたいと思いますが、行政改革の問題です。  先ほどもお話がありましたが、第三次の答申を受けて、日本電信電話公社と専売公社の改革について、通常国会に法律案を出すべく準備を進めると閣議で決定をされているのですが、官房長官、臨時国会に提出をなさいますね。
  243. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) この臨時国会に提案するということはございません。
  244. 中野明

    中野明君 ちょっと聞き取れなかったのですが、なさるわけですね。
  245. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) いやいや。
  246. 中野明

    中野明君 ああ、通常国会です。通常国会に。
  247. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 第三次答申を受けまして、次期国会に出すべく、政府内部で現在検討中でございます。
  248. 中野明

    中野明君 郵政大臣にお聞きしますが、この電電公社の経営形態を郵政大臣としてはどうお考えになりますか。
  249. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 御案内のように、ことしの七月末第三次臨調の答申がございまして、その答申を受けて九月の二十四日に行革大綱、いわゆる行革大綱が定められたわけでございます。その行革大綱では、臨調の答申の趣旨に沿って、次期通常国会の関係法案を出すべく準備を進めるということでございますので、私のところでも、省内に電気通信基本問題協議会を置きましたし、また、電電公社との間には電電公社経営問題連絡会というものを置きまして、鋭意検討を進めておるところでございます。
  250. 中野明

    中野明君 そうしますと郵政大臣としては、経営形態は臨調の答申のとおり民営化の方向に行くことは好ましいと、個人的にもそう思っておられますか。
  251. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 私にいま与えられておりますのは、臨調の答申と行革大綱でございまして、その方向に沿って検討を進めておるのでございますが、申すまでもないことでございますけれども、このことは電気通信行政の根幹にもかかわることでございますので、私としてはにわかに私の見解を申し述べるということはいかがかと思うわけでございます。慎重に検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  252. 中野明

    中野明君 閣議で臨調の答申を最大限尊重していくということが決まっております。ですから、そのことについての大筋の方向はお認めになっているんですね。
  253. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 申し上げましたように、閣議におきまして行革大綱が決定されておるわけでございますから、答申の趣旨を最大限尊重するということは当然のことと心得ております。
  254. 中野明

    中野明君 それでは、電話料金のことでお尋ねをいたします。  公社の遠距離通話料金というのは世界一高いというので、これは有名なんですが、私どもはこれを是正をしろということで、年来やかましく言ってまいりましたが、やっと先日のこの予算委員会でも大臣が答弁しておられましたように、来年の通常国会に遠距離の通話料金を是正するという値下げ案を提出されるということになっているようでございます。公社にお尋ねをしますが、それによって出てくる減収は幾らと見ておられますか。
  255. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) お答えいたします。  平面的に計算いたしますと約千四百億ぐらいになりますが、いままでいろんな値下げをしました経験から、プラスの弾性値が幾らかございますので、時間がたつにつれて九百億ぐらいの減収になるのじゃなかろうかというふうに見積もっております。第一年度はもっと大きな減収になると思います。
  256. 中野明

    中野明君 いま千四百億だけれども、安くなったから利用者がある程度前よりふえるということで最終的には九百億だろうと、こういうことでございますが、私ここで公社に申し上げたいのですが、公社が出されるこの収支の試算というのが、見積もりですね、これが一年たったらもうべらぼうに違ってきているのですが、昨年の八月にお出しになった、これは申すまでもなく昨年納付金を国に納めるということで大騒ぎしました。そのときに、それが済んですぐ出された収支の見積もり見通しとことしの八月に出されたわずか一年の間にこんなに大きな差が出ていいものだろうか、何か積算がいいかげんではないかというような気がするのですが、その辺をちょっとわかるように説明してください。
  257. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 御説明申し上げます。  五十六年度の予算は私が着任前にもうできておりまして、そのとおり議会の御承認を得て五十六年度の予算の実行が始まったわけでございますが、私、民間から参りましたものですから、民間の大企業並みの月次決算制度というものを初めて電電公社の中に実行を始めました。その制度をいろいろ教育しながら始めまして、幸い職員が皆本気になってそれの新しい、いままで経験のないやり方についてきてくれましたので、実は大きく狂ってしまったわけでございます。それが一つと、それからもう一つは予算で予定してありました収入見込みが家庭用の通話が予定の見込みよりもかなり伸びてまいりましたための収入増というものがございます。それともう一つは電電債の弾力発動、債券運用の弾力発動をお願いしまして、電電債の早期償還を資金のキャッシュフローの許す限り徹底的にやりましたために金利の予算よりも減少ということが五百億ちょっと出てきたという、いろんなそういうものが積もり積もりまして合計二千六百億の予算との食い違いが出てしまったというのが現実の姿でございます。
  258. 中野明

    中野明君 総裁は、いま申されたように五十六年度は予算で九百三十八億の収益ということで国会承認になったわけですが、決算をしてみると約三倍、三千五百五十八億、三倍以上ですね、そういう収益が出たと。五十七年はこれは総裁になってからなんですが、これも出していただいたのが収益は九百億だろうというのが、一年たったらもう千四百億になるだろうというふうに変わっております。それでこれ決算をすると恐らくまた三千億超すんじゃないかというような気がするのですが、その辺どうでしょう。
  259. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) いま五十七年度の予算経過中でございますが、いまのさっき申し上げましたような手法をさらに続けておりますが、一つ非常に予算編成のときと様子が変わってまいりましたのは、夜間の値下げをやりましたことに対するプラスの弾性値、それから日曜、祭日の値下げをやりましたためのプラスの弾性値というものが案外大きなものが出てまいり始めまして、収入の面でかなりの誤算を来した。ことに夜間あるいは日曜祭日の通話でございますので、個人用の、家庭用の通話の呼び数は余り変わりませんが、お話が長くなったために、非常にその予算をつくったときと違った現象が出てまいりましたためにふえたということと、それからやはり支出の方の合理化がだんだん時間がたつにつれましてみんな月次決算中心の運用の仕方が上手になってまいりましたので、さらに少しずつどこからかこうにじみ出るように小さな数字が集まってかなりの数字になりつつあるというのが現状でございます。
  260. 中野明

    中野明君 総裁はちょっと気の毒なんですよね、見込み違いがふえ過ぎていま答弁をなさっているわけで。大蔵大臣、よく聞いておいていただきたいんですが、大蔵大臣の方は六兆円も見込み違い、少なくなって、これはもう大問題だ。こっちの方は三倍も見込み違いでたくさん入ってきたということですから、やはり日ごろわれわれが言うておりますように、薄利多売ということでやれということでやったんですが、やっぱりそういう効果はこれ出てきているんじゃないか、こう思います。  そういう面からいきますと、やはり国民に金を持たすということ、所得減税をやるということが結局国民の購買力を誘発するということになってまた税収にはね返ってくると、こういう理屈はもう当然出るんですね。それを六年も減税はしない、人事院は、もう勧告は凍結すると、こういうことでは思いやられるわけでありまして、少しは真藤総裁の経営の仕方を見習っていただきたいような気がしてなりません。  そこで、それほど利益があるんでしたら、先ほど郵政大臣もお答えいただきましたが、遠距離格差の是正というのは公社に課せられた最大の責任であると思っておりますが、これが六十対一だったんですがね。ひどいものです。これが今度の改正で四十対一になるというんですが、まだ完璧に胸を張れるところまで行っておりません。ですから、これだけ経理に余裕が出てきたのであるならば、利用者に還元をする。当然であろうと思います。  ですから、遠距離値下げの発表のあったすぐ直後に副総裁が、将来の構想としてこういう考えもあるのだということを述べられている背景もそういうところにあるのじゃないかなと私は想像しておりますけれども、来年、これから出されるわけですから、公社の経理に余裕があるのでしたら、思い切って中距離も、区域内を現状にしたままで中距離の手直しもなさるべきじゃないだろうか。それがやはり加入者に対する公社の責任であるし、そういうふうに思うのですが、郵政大臣、どうでしょう。
  261. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 御指摘のように、来年夏ごろに遠距離電話料金の引き下げを図るということを予定をいたしておりまして、次期通常国会は公衆電気通信法の改正を提案するつもりでございます。  私は、長期に考えますならば、電電公社の財務に余裕があるならば、それを利用者に還元するというのは一つの筋であるということに私は異論はございません。  ただ、先ほど、まだ四十倍ではないかというお話がございましたが、実は近距離電話、つまり三分間十円という料金は実はこれは世界的に見ましても最も低いものであります。先進国の中で約半分の料金になっておるわけでございますから、四十倍というのはまだ高過ぎるというのは、少し実は事情が違うわけでございます。  でございますので、中距離料金の改定の問題は料金体系全体の検討の結果私は手をつけるべきものであると思っておるわけでございまして、今後の課題として十分検討を進めてまいりたいと思っております。
  262. 中野明

    中野明君 安いのはいいんですよ。安いのは大いに胸を張ってもらいたいんです。安いから世界の水準に上げるんだという考えは捨てていただきたいと思います。  それで大蔵大臣にお尋ねをしますが、来年の予算の編成に当たりまして、新聞が伝えておりますが、電電公社からまた納付金をちょうだいしたいというような考えをお持ちになっているやに聞いておりますが、どうなんですか。
  263. 竹下登

    国務大臣竹下登君) とにかく危機的な財政状況のもとにありまして、公債発行額をできるだけ縮減したいということ、そして五十六年度決算補てん分の繰り戻しというような特別の要請もございますので、税外収入というものに対して真剣に検討して、それらの大きな一つといたしまして電電公社の納付金の増額、こういうことをいわゆる経営に支障のない範囲内でより一層の御協力をお願いしたいと、こういうことで、予算折衝の段階でございますのでまだまだ結論的なことを申し上げる時期ではございませんが、一生懸命でお願いをしておるところでございます。
  264. 中野明

    中野明君 総理、この前電電公社から納付金をいただくときにも私議論をしたわけですが、財政再建というのは、もう極力枠を広げないように、歳入を、知恵をしぼって歳入を広げないで、とにかく節減をすると、行政経費の節減をするということがあって初めて財政再建というものが筋が通ると思います。それを苦し紛れに、とにかく泥縄式と言ったら語弊がありますけど、苦し紛れに財政を膨張させることに力を入れたら財政再建はますますおくれる。行政改革にもならないし、財政再建にもならない。私はこのように考える一人でございますが、昨年のときに議論をしまして、もう今後、これは特別異例の処置でもう一切こういうことはしませんと、このように国会でたびたび御答弁いただいているわけです。特別異例の措置でございまして、こういうことはもう万々いたしませんということになっているんですが、またいま大蔵大臣はそんなことをおっしゃるいうのは私納得できません。それで、そんなお金があるのでしたら、私がいま申し上げているように、郵政大臣に質問しましたようにもっと下げてもらいたい。これが利用者に対する郵政省なり電電公社の考えでなきゃおかしいと思いますし、また真藤総裁が先ほど述べられたように、経営努力というものはこれは大変なものだろうと思いますよ。それには公社に働いている皆さんの協力がなかったらこういうこともできてないと思います。ところが、一生懸命協力をして、そして黒字を出したら政府がぽいと油揚げを持っていくみたいに取っていくと。これでは働いている人だって納得できません。労使の信頼関係をもっと深めなきゃならぬということを総理も所信に述べておられます。これで労使の信頼関係が、人事院勧告の凍結も一緒なんですけれども、労使の信頼関係がこれでふえるとお思いになるでしょうかね。この私の考え、間違っているでしょうか。
  265. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公社の改革問題というのは、先ほども申し上げましたように、簡素、効率化して生産性、能率性を上げていく、そういう面からいたしますと、やはり一つは予算統制の規制をできるだけ解除して自由にしてやる。もう一つは働く労働者に対して労働権を回復して、完全に自主性を経営者、労働者両方が持って自主的に運営していく、これが基本ではないか。そういう考えに立って今回の公社の改革案というのはつくられつつあるのではないかと思います。しかし、千二百億円のお金を電電公社から特例措置としていただいているわけでございますが、何せ予算編成は非常に苦しい中にありまして、いまどういう状態になっているかわかりません。まだその辺もはっきり固まったわけじゃないと思いますが、その辺は大蔵大臣にお尋ね願いたいと思います。
  266. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 具体的な内容につきましては予算編成作業中でございますので、その経過中にあるということで御容赦をいただきたいと思います。しかし、いま御指摘のように私は電電公社の経営、その経営努力というものは労使にわたって、基準を私がつくるのは別でございますが、模範的な姿であるというふうな認識をかねていたしております。したがって、その模範的な姿にさらに甘えるというような御指摘は私の気持ちの中にも存在をしております。が、何分今日異例の状態下でございますので、いま私どもがいろいろお願いしておりますのは、いわゆる五十六年度から臨時国庫納付金として五十九年までの四年間、毎年度千二百億円という問題を前倒ししていただけないかという考え方でお願いをしておる、そこまでがいまお答えする限界ではなかろうかと思います。
  267. 中野明

    中野明君 新聞はなかなか鋭く書いておりますね。前倒しをしてまだその上に上積みをせいと、それで電電納付金三千億を要求するのが大蔵省の考えだと、こういうふうになっておるのです。これを見たら、私、昨年議論した経緯がございますのでこれは黙っておるわけにいきません。郵政大臣、どうでしょう、この納付金をこれ以上追加するということ、賛成ですか。
  268. 桧垣徳太郎

    国務大臣桧垣徳太郎君) 私は、四年間千二百億ずつ、合計四千八百億円の国庫納付金の法制化をいたしましたゆえんのものは、いまの財政事情にかんがみまして非常緊急の臨時措置であると心得ておるわけでございます。でございますので、新しい賦課金の何といいますか増大ということには、私は率直に言って賛成いたしかねるのでございますが、国の財政事情も閣僚の一人として十分承知をいたしておるわけでございますので、電電公社の財政の許す範囲内で五十八年度予算の編成に貢献できることは協力しなければならないというふうに思っております。
  269. 中野明

    中野明君 そんな財政が許せば私は電話料金をもっと下げてもらいたいと言いよるんです。そうしないと、今後経営努力を怠けてきたらどうするんです。それを言っているわけです。大臣の言われることは閣僚ですからわからぬことはありませんけれども、その辺をしっかりと踏まえていただいて考えていただきたいと思います。そういうお金があるのならば利用者に還元してくれ、そうしたら公社で働いている人も経営努力をして協力をしたかいがあると喜んでくれるわけです。その辺をお願いをしておきます。  それから最後に、これ確認ですが、大蔵大臣、一時何でもかんでも金を取ろうということで電話利用税とかいうような話が出ましたが、これはもうなくなったと考えてよろしいですね。
  270. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 電話利用説につきましては、衆議院大蔵委員会の減税問題に関する特別小委員会において議論の過程で出た話である、こういうふうに承っております。この電話利用税というものはさまざまの意見があるところでございますので、いま一応小委員会の過程で出たということもございますので、政府として所見を述べるという立場にはただいまはない、こういうふうに理解をしていただきたいと思います。
  271. 中野明

    中野明君 政府の方針は新税はつくらぬというんでしょう、どうですか。
  272. 竹下登

    国務大臣竹下登君) その小委員会の過程という問題を除いてお答えいたしますならば、委員御指摘のとおりでございます。
  273. 中野明

    中野明君 それでは時間の関係で厚生大臣にお尋ねをいたします。  来年一月一日から薬価基準が四・九%引き下げられることになりました。これ非常に結構なことだと思っております。これによって国民の医療費が大分節減できると思うのですが、どの程度節減できると積算をしておられますか。
  274. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  金額にいたしまして、医療費ベースで約二千億円、こういうふうに推算をいたしております。
  275. 中野明

    中野明君 この薬価の基準、これは実勢価格とやはり違うということがよく指摘されておるのですが、これは毎年毎年見直して実勢価格に近づけていくという方針は変わりございませんか。
  276. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申します。  いま御指摘のような方向でやりたいと考えております。
  277. 中野明

    中野明君 それで、薬価基準の引き下げのときには必ずと言っていいぐらい診療報酬のことが議論になるわけですが、厚生大臣として、薬価と診療報酬の関係、このことについてお考えをお示しいただきたい。
  278. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 薬価基準の改定は薬価の実勢——実際の販売価格その他の問題によって常に流動するわけでございますから、先ほどお答え申し上げましたように、一年を大体限度として変えていこう、こういうことでございます。  診療報酬はそれに関係ないわけでございまして、診療報酬は医師の診療その他の関係という形で、たとえば人件費が上がっていくとかその他の情勢があれば変えなければならないということはあると思いますが、これに連動する考え方というのは論理的に成り立たないものだろうというふうに考えております。
  279. 中野明

    中野明君 それで、現在、厚生省では診療報酬の見直しについてはどう考えておられるのですか。
  280. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  来年一月に四・九%の薬価の引き下げを行いますが、それに関連しての診療報酬の引き上げということは考えておりません。
  281. 中野明

    中野明君 けさテレビでは、診療報酬が引き上げられると、こういうことを厚生省が決めたというようなことが全国放送で流れているんですが、真相はどうなんですか。
  282. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  私は、実はその話は聞いておらないんですが、そういった話が流れているということを後で耳にいたしました。現在、中医協を中心にいたしまして、老人保健法の施行が二月一日でございますから、そのときの老人の診療報酬体系というものをいろいろ議論をしていただいておるところでございます。  その中で、今度やりますのは七十歳以上の方々でございますが、七十歳の人をやりまして、六十九歳の人はどうかなと、こういうような問題もありますので、そういったことにつきまして御議論をいただいていることは事実でございます。  そういったようなことでございまして、まだ何%とかなんとかという話は決まっていないわけでございますし、現在、中医協で一生懸命御審議をいただいているところでございますから、その審議の結果を見守りたい、こういうふうに考えております。
  283. 中野明

    中野明君 だれかがお話しにならなければそういうことは流れないと思うんですがね。しかし、まだ老人保健法も施行されてないことですし、いまから——しかも薬価基準の引き下げがいま一月一日から実施されようというときにそういうことが出るということは、非常に大臣のお考えと違うわけですね。誤解を持たれます。国民の方も納得できない、こういう気がいたしますので慎重にお願いをしたいと思います。  それで、引き続いて国保の問題をお尋ねをしたいんですが、いまお話が出ております老人保健法の改正ができまして、過疎地の国保、老人の多いところはほっと一息というところではあると思いますが、しかしながら所得の伸びよりも医療費の伸びが非常に多いんですね。それで非常に先行き過疎地の国保は、私はもう成り立たないんじゃないかと心配をしております。  そこで、まず厚生省に聞きたいのですが、健康保険——一般の健康保険がありますが、この成立の基準、加入人員の基準をどの程度とお考えになっていますか。
  284. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) お答え申し上げます。  健康保険組合、一般でいわゆる会社の方の関係でございますが、法律上は被保険者数が三百人以上と、こういうことになっております。それから運用上の取り扱いといたしましては、単独の健康保険組合につきましては千人以上、総合健康保険組合、いろんな中小企業の方々が集まっている場合には三千人以上と、こういうふうな一応の基準にしております。
  285. 中野明

    中野明君 実際に厚生省は行政指導といいますか、それではとてもその人数ではだめだということで行政指導しておられるということを承知しておりますが、私が住んでおります高知県へ行ってみますと、ひどいんですね。五百人とか三百人とかいうのがあるんです。これではもう保険の安定した運営は無理だと思います。それで、これを広域化すべきだと、せめて県単位あるいはブロック単位、こういう意見があり、私どももそれを願っておるわけでございますが、このたび国保問題懇談会から大臣に答申が出されたようです、報告が。その中身について大臣のお考えと、中身に賛成であれば具体的にどういう作業をなさろうとしますか、それをお答えいただきたい。
  286. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) 先生御指摘のように、国民健康保険組合、非常に小さなところがあるということは事実でございまして、保険でございますからやはりある程度まで被保険者の数がふえないと保険機能というのは、私は有効に果たし得ないんだろうと思うのです。したがって、大きくした方がいいんですが、ただ健康保険でございますから、やはり住民に密着したことでやらなければサービスもなかなかできないということもございます。その辺の調整をどう図っていくかということが私は大切なことだと思いますし、確かに小さな組合ですと財政的に非常に不安定であるということもあると思いますが、具体的には財政の調整をやっぱり図っていくということが非常に大切なことであろう。  それから、特に高額の医療の問題につきましては、小さいところでは、一遍で大きな医療費というものがかかったら、その保険組合がパンクしちゃうというようなこともございますから、そういったものについては共同事業を推進していこうということでございまして、大体こういうふうな物の考え方でこの二十日の日に、国保問題懇談会の方から御答申をいただいております。そういった考え方でこれから各方面と話し合いをしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  287. 中野明

    中野明君 懇談会ですか、国保問題の。懇談会のこの方針、示された方針については大臣は賛成ですか。
  288. 林義郎

    国務大臣(林義郎君) その方向でやってまいりたいというふうに考えております。
  289. 中野明

    中野明君 それでは文部大臣にお尋ねします。  予算編成のときになりますと、必ず最近は財政再建とか行政改革とかいうような名目で、教科書を有償にしろという話が出てくるのですが、今回もマスコミなんかが先取りをしているのか、教科書有償ということについて話が出ておりますが、この教科書有償問題、これはせっかく憲法の精神に乗っかって教科書無償、義務教育の教科書は無償ということで、私どももその存在を高く評価しておるわけでありますが、文部大臣のこのことに対しての御所見をお聞きしたいと思います。
  290. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 教科書の無償制度をどうするかということは、近来予算編成ごとに財政当局との間で議論があるわけでございますが、これはいまお話のとおりに憲法二十六条あるいは教育基本法の精神に基づいて人間の平等、それから教育の機会均等という大きな精神から発して、無償の制度が確立されておるわけでございます。そういうことで文部省の立場といたしますれば、これは基本原則でございますからぜひ崩しちゃならない、こういう考えを現在持っておりますが、臨調の勧告といいますか、答申ではその無償制度をどうするかということも含めて検討を要するということになっております。でありますから、現在中央教育審議会で教科書をめぐる諸問題とあわせて検討をお願いしておりますから、この結論を待っていかにすべきかの方針を決めたい、現在そういう立場でございます。
  291. 中野明

    中野明君 臨調といえども法律を無視して、あるいは憲法を無視してまでやれということはおっしゃってないと私は考えております。その点文部大臣しっかりがんばっていただきたいと思うわけですが、結局行政改革というのは福祉や教育にしわ寄せされるという代表的なものとしていつもこれが出てくるわけですね。今回もまた育英奨学金ですね、これに利子を取ろうじゃないかという話がまた持ち上がっているというんですが、これはどうですか。
  292. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そういう意見も出つつあるそうでございますが、まだ確たる勧告はございません。現在同じく検討中でございます。
  293. 中野明

    中野明君 文部大臣としてはどう思いますか。日本の現在の育英資金を受けている人たちの現状と、そしてこれに利子を取る、どうですか。
  294. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げましたように、憲法の精神から言いましても教育基本法にも財政的な経済的な立場で弱い人にはこれに援助を与えなきゃならぬという教育基本法の規定もあります。そういう観点から言いますと、諸外国の例に比べますとまだまだ不十分な点があると考えておるような状態でございまして、できるだけこれはもう少し伸ばす方に努力をしなければならぬ、利子を取ることがいいのかどうなのか、これはもう少し検討してみなければわからない、こういうことでございます。
  295. 中野明

    中野明君 利子を取るどころか、これは中身をもっと充実してあげないと現状には合わぬと私は見ております。きょうはこのことで議論をこれ以上詰めようと思いませんが、そういうことを総理、行革とかなんとかで余りにも、どういうのですかね、弱い者いじめという代表のようにいつもこれ出てくるわけですが、非常に政治的にも、金額は私大したことないんじゃないかと思っております。政治的にもこれ非常に中曽根内閣のイメージとしても、総理が所信でも述べておられるように思いやりのあるとか家庭をどうとかおっしゃっていますが、いま何でしょう、減税はとまっているわ、景気は悪いわ、もうそういうときにこういう話が出てくるということになると、まじめに働いている人を、それでも苦しいのになおそういうところがどんどん切られるということになりますと、もうどうしようもありませんので、この辺は真剣にお考えをいただきたいと私は思うわけであります。  それで、次の問題に入ります。おとといになりますかね、わが党の馬場委員と経企庁長官のやりとり私も聞いておりましたが、経済見通し、公社と違って逆の方に誤られました。そして三・四%ということになったんですが、これ本当に経企庁長官、大丈夫ですか。
  296. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  五・二%の成長率を三・四%に下方修正いたしましたことにつきましては、たびたび申し上げましたように大変遺憾に存ずるところでございます。これは五十七年度の見通しが御案内のように五十六年のいまごろ、十二月ごろ、当時の七—九月の経済数値を資料といたしましてつくるためであると思っておるわけでございます。そのときまでは五・二%の成長率のペースでございましたが、その後の急激な世界経済の落ち込み、日本のその結果としての輸出の停滞、これが大きく影響してまいりました。さらにまた、アメリカの高金利が反騰したり、大変な混乱があったこともたびたび申し上げたところでございます。しかし、ことしの十月修正いたしました三・四%につきましては、これもしばしば申し上げておりますように、二兆七百億円の公共投資を中心といたしますところの総合経済対策、さらにまた昨今におきますところの長期金利の低下、さらにまた円高の傾向、きょうも大変円高の傾向が二百四十円を割るというようなかっこうで見られるようでございますが、これらの傾向があること、さらにまた昨今民間研究機関が五十八年度の予想をいたしておりますが、いずれも回復の兆しを、徐々でございますが、しているところから見て、私は三・四%の成長率は達成できる、こんなふうに見ているところでございます。特に経済は大変心理的な要因もございますので、特に経企庁長官は自信を持って成長率の達成ができると、こういうふうにお答えしなければならないと思っておるところでございます。
  297. 中野明

    中野明君 お答えをしなければならないという、そういう御発言でございますが、まことにこれ情けないことでありまして、毎年毎年同じことを繰り返して、そして三月になってまただめでしたと、これでは大変でございます。特に馬場委員への答弁の中で、人勧とそして所得減税はこれはもう計算していませんと、こういう御答弁がありましたが、そのとおりですか。
  298. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  十月の策定当時には人勧凍結は決まっておりましたので織り込みましたし、そのときには所得減税の大きな方向についての小委員会の合意がございましたけれども、財源その他について未確定でございましたのでこれは織り込んでおりません。
  299. 中野明

    中野明君 そうしますと、これはちょっとその減税の問題については私も文句はあるんですけれども、まあそれはいいでしょう。ただ、それを入れていないとすると、なおさらこれは実現は不可能ですよ。だって、これを実現しようと思ったら民間消費にほとんどおんぶされなきゃいかぬのでしょう。ところが、人勧凍結する、減税はない、こういう状況の中で、民間の予想では、平均して恐らく二・九いったらいい方だろうというのが民間の平均です。これ三・四ですから。もう一度言っておきますけれども、当初予算のときに、こんなことはできないと言って各委員から指摘されて、胸を張って絶対できると。家も建つ、中小企業もどんどん設備投資をやりそうだと。これ見たらもう全然違うのでしょう。大丈夫ですかね。もう一度念を押しておきますが。
  300. 塩崎潤

    国務大臣(塩崎潤君) お答え申し上げます。  修正されました三・四%の相当部分は、御指摘のように、民間消費支出の伸びでございます。それは、四・七%と見ておりました消費者物価の上昇が三%程度に低く安定して、これがずっと持続しているからでございます。私は、所得税減税をなくいたしましても、その点は確実に消費支出の伸びによって成長が図れると、こういうふうに見ているところでございます。
  301. 中野明

    中野明君 本当に政府の言うことが信用できないことばかりで、もうまことに情けないんですが、物価が安定したら消費は伸びると言っておられたのが、全然伸びないというのが去年でした。ですから、もうとにかく一々心配でしようがないので言うんですが、これ、もしこの見込みを間違ったら、もう財政再建どころじゃございませんよ。大変なことになると思いますので、それで心配をして聞いているわけです。  それでは、時間がございませんので次の問題に移りますが、これは決算の問題でちょっとお尋ねをしたいと思います。  総理、十二月十三日に会計検査院が五十六年度の決算検査報告というものを出して、説明を受けられておりますが、その説明をお聞きになって総理の所感を述べてください。
  302. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 会計検査院長から報告書をいただきまして中を拝読いたしました。  それほど不当あるいは非違の事件がふえているということではございませんが、相も変わらず公務員の不正経理、不当経理というようなものがまだありますことをはなはだ遺憾に存じた次第であります。
  303. 中野明

    中野明君 総理、これをなくそうとしたら、どうすればよろしいでしょうか。
  304. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはやはり個々の公務員の綱紀を粛正して、会計法等にのっとりまして正しい経理を行ってもらう、また、監督者が厳重にそれを監督して非違を防止する、そういうこと以外にないと思います。
  305. 中野明

    中野明君 検査院にちょっとお尋ねしますけれども、検査院が指摘をしたいろいろ改善を要する事項等があります。その中で不当事項、これはまことにけしからぬと私も思うんですが、この不当事項というのはどういうことですか。もうこれは弁明の余地がないという問題なんですか、ちょっと説明してください。
  306. 丹下巧

    説明員(丹下巧君) 決算検査報告に掲記すべき事項につきましては、会計検査院法の第二十九条に規定がございまして、ここにいろいろ列記しているわけでございますけれども、その中に「検査の結果法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項」という項目がございます。これに該当するものを検査報告の中で不当事項ということで掲記しているわけでございますけれども、中身的にもう少し具体的に申し上げますならば、たとえば租税、保険料などの収入関係でございますと、調査が不十分なために徴収不足を生じているとか、あるいは支出の関係でいきますと、工事のような場合に予定価格の算定を誤ったために契約額が割り高になっているとか、あるいは工事の監督あるいは検査が適切でなかったために工事ができ方が悪くて不良になっている。あるいは補助金につきましては、審査、指導といったものが不適切であったために過大に補助金を交付したり、あるいは補助の目的外に使用されていて補助の目的を達していない、そういった事態がございますけれども、そのほかに、たとえば職員が公金を横領したといったような不正行為、あるいは架空の目的で旅費を支出して別途に経理しているといったような不正経理、あるいは補助金を二重に要求して不正に受給しているといったような事態も含まれております。  以上でございます。
  307. 中野明

    中野明君 総理、これは行政改革以前の問題ですね。  それで、毎年毎年同じことを指摘されているというのは、私もう残念でならぬのですが、それも各省、各機関の中にそれぞれ内部的に監査体制というのが僕はあると思うんです。その人たちが責任を持って監査しているにかかわらないで、会計検査院が行って、そして調べたらこれだけ出てくるという。ですから、そうすると、内部機構の責任というのは一体どうなるのかということ、こういうことが問題になると思います。この辺もやっぱりはっきりしないと後を絶たないのじゃないかということが一つございます。これ、心にとめておいてください。  それから、毎年毎年同じことを繰り返して、その結果こういうものが出ているんですね、何年度決算検査報告に関する処分処置調。役所の方でこういう処分をいたしましたと、それが出ているわけです。  たまたま私、五十五年度のを見せていただいたわけです。一番新しいのはこれしかありませんから。そうしますと、ほとんど注意です。不当事項ですから、不当事項というのはもう横領とか、法律違反とか、補助金のいいかげんな使い方とか、そういうことですから、言い逃れできないことです。ところが、その大半が、横領とか着服というのははっきりしているから懲戒免職、こうなっておりますが、ほとんどが注意です。注意ということは、これはどう言ったらいいでしょう、本人にとっては痛くもかゆくもないということのようです。これが千三百件の中で大方の千百は注意です。こんなことで後を絶つということになるだろうかということが一つです。  マスコミにも、会計検査院が検査結果を発表するたびに、その前後に大変な論評が出ますが、そういうことについて国民も非常に疑問を持っております、税金をむだ遣いしたとか不正なことをやっているわけですから。  これはもう少し何とかしなきゃならぬと思うんですが、じっと見せてもらいますと——きょうはもう時間がありませんからやりませんが、ちょっと見せてもらいますと、事務次官通達をもって注意を喚起した、それから口頭で注意した、ほとんどです、これが。こんなことでどうするんだということが一つございます。この辺信賞必罰、税金をいいかげんにやるような公務員についてはきちっとしてもらいたいということが一つでございます。  それからこれは各省に聞こうと思いましたが、もう時間がありませんのでやめます。もう各省、報告を出しておられるから、各大臣おわかりだと思います、自分のところのことは。もうほとんど注意です。そんなことで後を絶つ——恐らくやられた人は交通違反にひっかかったみたいぐらい程度しか思ってませんよ。おれのところまんが悪かった、運が悪かった、みんなやってるのに、というような感じしか持っていないんじゃないかという心配をしております。  それからもう一つ、総理、これは提言でございますが、大蔵大臣のどちらでも結構ですが、補助金なんかをいいかげんに扱うこの風潮をやめなきゃなりません。だから、補助金で不正をしたりあるいは補助金でいいかげんなことをしたその役所、その省ならその省には制裁罰として補助金を減額する、全体を。こういうことな制度的に何か考えなければならぬのじゃないか。そうしないと、幾ら補助金で指摘をされても、現場では注意、そして予算は前年対比でまたついてくる。これではらちが明かぬと思うんですが、この辺考える余地はございませんでしょうかね。
  308. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も中野委員の御指摘は同感でございます。  そこで、財政当局としては、毎年の会計検査院の検査で指摘されておるということはまことに遺憾なことであると思います。したがって、各省庁において、補助金適正化法の定めるところによって補助金の返還等を含めて厳正に対処する、これが一つ。  それから財政当局としましては、補助事業の執行の適正化について補助金等適正化連絡会議を通じての注意の喚起、そしてやっぱりいま中野委員御指摘のような気持ちを体して、予算査定に当たって十分留意をする、このことであろうと思っております。
  309. 中野明

    中野明君 大臣ね、制度的にきちんと何か考えてほしいんですよ。そうしないと、返したら終りや、補助金を使い込んで見つかったら、返したらしまいやと、こういう考え方では後を絶ちませんので、そういうずさんな補助金の使い方をするようなら、補助金はその金額だけ削りますよと。そうしないと結局こういうことになると思うんです。  補助金の予算で総枠でこういきますと、おかしな補助金をやったところは恐らく次は切られるでしょう、そこは。そうすると、予算が変わらなかったら、同じ補助金を受けるグループの中で不正なことをする人ができたら、そこはもらわぬから、ほかのところが分配がふえるということになる心配があるんです。ですから、予算編成のときによく決算ともにらみ合わしていただいて、そして制度的に、今度から補助金の不当事項があったらそれは削りますよと、総額で。こういう制度を、総理、つくる必要があると思う。毎年毎年ですもの、同じことを。それも総理さっきおっしゃったように減ってない、ふえはせぬけれども減ってないというような言い方をされていますけれども、年によったらどっとふえたり。ですから、補助金に対する公務員の姿勢というものをきちっとさせる上において、連帯責任でそれぐらいの制裁措置が必要だと私は思うんですが、総理、御所見ちょっと。
  310. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 確かに信賞必罰を徹底しませんと効果は上がらないと思います。いまの御発言は参考にさしていただきたいと思います。
  311. 中野明

    中野明君 大蔵大臣にお尋ねしますが、いま人事院の問題は実務者会議で一生懸命やっていただいているんで、ことしのことは私はそちらにおまかせをして、来年の当初予算に——人事院の勧告を尊重するということは政府の基本方針で、これは間違いないと思いますので、尊重されるんなら来年の当初予算に組み込むべきであると、こういう考えでございますが、いかがでございますか。
  312. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いまの御指摘でございますが、五十八年度の財政事情はきわめて厳しい状態にありますので、目下いわゆる給与改善費計上のめどは立っていないとお答えせざるを得ません。  しかしながら、昭和四十四年度予算におきましていわゆる給与改善費が設けられた。そして率こそ変化しましたが、今日まで続いてきておる。そのことも私どもとしては念頭に置かなければならぬ。しかし現状の環境はそれを計上するだけのめどは立っていないという状態でございますので、今後予算編成の過程において検討をいたしてまいりたいと、こうお答えするしかないと思います。
  313. 中野明

    中野明君 人事院総裁にお尋ねしますが、もし予算の都合とかなんとか理屈をつけて計上されなかったとしたら、人事院はどう考えますか。
  314. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) いま大蔵大臣から御答弁ございましたように、給与改善費というのは四十四年から制度化されてきておるわけでございます。これは完全実施ができやすいような財政的裏づけという意味に理解をいたしておりまして、人事院といたしましても、やっぱり改善費というものは適正に計上していただきたいという強い希望は持っております。  ただ、財政状況その他のことがございますので、仮に——仮にということでございますが、給与改善費が計上されないという場合はどうかというお尋ねだろうと思いますが、その場合におきましても、現在の人事院勧告制度がございまする限り、従来の手順に従って、従来どおりの方針でもって作業は続けるという方針には変わりはございません。
  315. 中野明

    中野明君 しっかりしてくださいよ。  最後になりました。もう時間がありませんので、環境庁長官にお尋ねをいたします。  最近、環境行政が何か後退ぎみだという風潮が出てきております。まあ自民党の中でも環境庁もう要らぬのじゃないかというような説まで出す人がおって大騒ぎになったんですが、来年は公害健康被害補償制度の見直しのときです。これに対して財界からかなり見直せというようなことが出ているようですが、これはもってのほかだと私は思います。これに対する環境庁の考え……
  316. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 中野君、時間が参りました。
  317. 中野明

    中野明君 はい。  それから交通公害対策に対する考え、湖沼法の早期制定に対する考え方をお聞きしたいと思います。
  318. 梶木又三

    国務大臣(梶木又三君) 最後、時間がなくなられてはしょった質問になられたわけでございますが、公害健康被害補償制度、これは私どもも大変大事な問題でございまして、発足しまして八年たっておりますから、大気の状態も若干変わっておりますけれども、いまお話しのとおり、たとえば窒素酸化物は変わっておりませんけれども、横ばいでございますが、硫化物の濃度、これは大分改善されておる。こういうことで指定地域を解除しろとか、あるいは暴露要件、これの見直しをやれと、こういう意見もございます。しかし一方、いま申し上げたように窒素酸化物が変わっておりませんので、それを指定要件に入れろとか、いろいろ意見がございます。しかしこれらは、医学も含めまして科学的な大変大事な問題でございますから、慎重に冷静に私ども判断して対処したい。  それから中公審にもいま答申を願っております。これを受けて私ども慎重に法の精神にのっとって、被害者の方々の救済、これが大事でございますから、その精神にのっとってやっていきたいと、かように考えております。  それから交通公害、これもおっしゃるとおり、自動車はふえておりますし、飛行機、新幹線、いろんな問題で公害が大変出ております。これら関係関係のお役所で大変努力を願っておるわけでございますが、まだ十分目的を達しておりませんので、これらにつきましても今後とも努力をやっていきたい。これもいま中公審の部会に御検討いただいておるわけで、この答申をいただきましたら、関係省庁とも十分御相談申し上げて、総合的な交通体系とともに公害対策、これを考えていきたいと、かように考えております。  それから湖沼法でございますが、これは水質汚濁が大変ひどくなってまいりまして、一刻もゆるがせにできない、これは御指摘のとおりでございます。昨年来、政府部内でいろいろ検討いたしたわけでございますが、残念ながら合意を見るわけにいかなかったわけでございますけれども、何とか政府部内で意見の調整をしまして、次の国会には湖沼法を出したいと、こういう気持ちでおるわけでございます。  いま中野委員おっしゃるように、環境行政が何か後退しておると、こういうお話でございますが、決してそんなことございません。それからまた、環境庁なくなりましたら私、大臣になれませんし、これはやっぱり必要な役所でございますから、ぜひ存続をさしていただきたい、かように考えておる次第でございます。
  319. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 以上で中野明君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ─────────────
  320. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 次に、勝又武一君の質疑を行います。勝又君。
  321. 勝又武一

    ○勝又武一君 十二月の十七日の補正予算が衆議院通過の折に、各党代表者会議の申し合わせの事項があります。特に五十七年度人勧実施については、「野党の意見を踏まえ、誠意をもって検討する。」とありますけれど、この進展状況はいかがでございますか。
  322. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) その申し合わせに従いまして、今日なお鋭意各党間で御協議をお願いしておると、こういうことでございます。
  323. 勝又武一

    ○勝又武一君 一体きょうを幾日だとお考えですか。いまの答弁は全く納得できません。いやしくも各党代表者会議で自民党が誠意をもって検討すると約束したことであります。  中曽根総理は自民党総裁ですね。あなたは総理総裁分離論に強く反対をされました。あなた自身が総理総裁を望んだわけであります。自民党総裁としてこれは全く無責任です。総裁としての指導性は一切ないと言わざるを得ません。こんなことではとても予算審議はできません。
  324. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、各党代表の協議をじっと見守っておる次第でございまして、協議が調えば直ちにいろんな措置を講じなければならぬと思っております。
  325. 勝又武一

    ○勝又武一君 とてもできませんよ。きょう幾日だと思っているんですか。きょうは二十三日です。あしたは二十四日です。総裁としての指導性はどういうことになるんですか。  私は、いまの総裁と官房長官答弁では本当に納得できません。あなた方が約束したことでしょう。そしてこの人勧は、少なくともいままで何回となく議論されたように、憲法違反だと言われている。最優先すべき問題でしょう。そして、あなた方は六百二十一億を国会に相談もなしに削ってしまったんじゃないですか。一度も相談を受けておりませんよ、まだ。この補正予算を出したときが初めてじゃないですか。そういう国会無視をしておいて、いまの総裁の答弁はどういうことですか。これでは予算審議を私は本当にまじめに続けることができません。
  326. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点につきましては、まことに恐縮でございましたが、各党間の御協議を煩わすことになりまして、そして各党間におきましていまもって誠意をもってお話し合いが続いておるので、それをわれわれは見守っておるということなのでございます。
  327. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。    〔速記中止
  328. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午後七時十分休憩    〔休憩後開会に至らなかった〕