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1982-12-25 第97回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月二十五日(土曜日)    午前十時四十分開会     ─────────────    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     近藤 忠孝君  十二月二十五日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     杉山 令肇君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         戸塚 進也君     理 事                大河原太一郎君                 中村 太郎君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 塩出 啓典君     委 員                 岩動 道行君                 上田  稔君                 衛藤征士郎君                 河本嘉久蔵君                 嶋崎  均君                 杉山 令肇君                 鈴木 省吾君                 塚田十一郎君                 藤井 孝男君                 藤井 裕久君                 藤田 正明君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 竹田 四郎君                 丸谷 金保君                 桑名 義治君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 柄谷 道一君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        経済企画庁調整        局審議官     横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局審議官   及川 昭伍君        大蔵政務次官   遠藤 政夫君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局次        長        窪田  弘君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  加藤 隆司君        大蔵省理財局次        長        勝川 欣哉君        大蔵省国際金融        局長       大場 智満君        国税庁次長    酒井 健三君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        臨時行政調査会        事務局主任調査        員        菊地 徳彌君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○みなし法人課税事業主報酬制度期限延長に関する請願(第一八号外三五件) ○たばこ及び塩専売制度の存続に関する請願(第四六号) ○一兆円所得減税に関する請願(第一〇四号) ○記帳義務法制化反対、一兆円減税早期実現に関する請願(第二三〇号外一件) ○大幅減税等に関する請願(第三八八号外一一件) ○公立高校用地確保のため筑波移転跡地払下げ等に関する請願(第五八一号外四件) ○所得税課税最低限度額引上げ等に関する請願(第一〇四七号) ○継続審査要求に関する件     ─────────────
  2. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として近藤忠孝君が選任されました。     ─────────────
  3. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま議題となりました昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十七年度におきましては、租税及び印紙収入は、当初予算に対し六兆一千四百六十億円の減収となることが見込まれ、このため、従来にも増して既定経費の徹底した節減、税外収入確保追加財政需要圧縮等を行っても、なお多額の公債追加発行が避けられない状況にあります。  しかしながら、公債消化環境はきわめて厳しく、公債追加発行額についても極力これを縮減し、市場の状況を勘案して消化可能な範囲にとどめる必要があります。  このような状況のもとで、当初予定した国債費定率繰り入れ等を停止することとすれば、それだけ公債追加発行額の縮減が可能となります。  他方、国債整理基金資金繰り状況を見ますと、昭和五十七年度の公債償還は、同基金にこれまで積み立てられた余裕金によって対処可能であり、国債費定率繰り入れ等を停止するとしても、公債償還に支障はないものと見込まれております。  以上の状況にかんがみ、昭和五十七年度の国債費定率繰り入れ等を停止することとし、このため、昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案提出する次第であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  毎年度国債の元金の償還に充てるため国債整理基金特別会計繰り入れるべき金額は、国債整理基金特別会計法第二条第二項に規定する前年度首国債総額の百分の一・六に相当する金額及び同法第二条ノ二第一項に規定する割引国債に係る発行価格差減額年割額に相当する金額とされておりますが、昭和五十七年度におきましては、これらの規定は適用しないことといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 竹田四郎

    竹田四郎君 竹下大蔵大臣は前にも大蔵大臣をおやりになってて、しかも大臣になる前には自民党の幹事長代理というような職務をお持ちになっていたわけでありますから、ただ単に大蔵大臣におなりになった方とは違って、いろいろな責任の問題、あるいはいままでとの連続、継続的な問題、こういう問題ではなかり責任がおありだと、こういうふうに私は思いますけれども、その辺は、大蔵大臣はここで就任されて前との関連でどんなふうにいまお考えになっておりますか。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 第一の二年ぶりに再び大蔵大臣の職についたことでございますが、率直に申しまして、当時五十四年度財政運営は、民間の活力に支えられて自然増収があり、結果として一兆八千億の国債を出さなくて済んだとでも申しましょうか、決算ベースで言えば減額することができた。あるいは、その下支え等がありまして、五十五年も最初に一兆円の減額をし、それを途中で増発することなく四百八十四億円の剰余金が生じたという時代でありました。それだけに、来てみますと、そのさま変わりを痛感をいたしておりますが、しかしながら五十六年、五十七年、これらの財政運営は、五十四年、五十五年の財政運営継続性の中にあるという意味におきましては、継続性の中における責任を痛感いたしております。  次の、党の幹事長代理から大蔵大臣に就任いたしましたということにつきましては、幹事長代理とはすなわち国会運営を初め、あるいは政策等の協議におきまして、野党との接点の立場にありましたので、その際いろいろ協議した問題については実質的に責任を背負っておるという認識は持っております。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは、今日の日本財政事情については、当面の職にはなかったにしても、ずっと責任をお感じになると、こういうふうに承っておきます。  そこで、今日の大変大幅な赤字財政、これについてどんなふうにお考えになり、その根源は一体何にあるというふうに大臣は認識しておられますか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは五十四年、五十五年がいささかでも状態のいい決算をやることができましたのは、結局ある意味においては、五十年代における公債の増発というものが景気下支えをして、それが財政にはね返ったものであって、その限界がすでに五十五年には来ておったのではないかというふうに考えますことが一つ。  それと、その後における不透明、なかんずく国際経済停滞というもの、それに伴いますところのわが国へのいわゆる外需の落ち込み、そして米国の高金利、さらには円安の加速というようなことが、予想外財政運営上税収不足というものをもたらしたのではないか、こういう印象を持っております。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまおっしゃられるのを見ますと、まるで私は責任がない、全部外国が悪いんだ、OECDもそうじゃないかということを言わんばかりのような言い方なんです。  それじゃ、ちょっと伺いますが、五十六年度の税収欠陥は二兆幾らでしたね、今度は六兆ですね。これは一体どういうことなんですか。五十六年度に二兆出たならば、五十七年度は当然これに対して修正をせざるを得ないでしょう。一体五十六年度の経済成長率実質幾らだったんですか、五十七年度の実質見込み幾らですか。そう変わりないでしょう。それなのに税収欠陥が二・五倍ぐらいも大きく離れるというのは、国際的な問題だけじゃないでしょう。  国際的な問題だって、その当時一体OECD経済見通しはどれだけ低くなったんですか。ぼんと物すごく低くなっているんじゃないんです。それも急激になったわけじゃないんですよ。そういう点は一体どこから出てきたんですか。  去年の新聞等によりますと、いわゆる当時の財政政策の基本である増税なき財政再建だとか、あるいは五十九年の赤字国債脱却、こういうことのために、むしろ五十七年度の経済成長率企画庁の方に高くしてくれと大蔵省は頼み込んだんじゃないんですか。五十七年度における六兆にも及ぶ大幅な税収欠陥というものを招いた原因はむしろそこじゃないですか。それについては、当時そういうことを言ったのは竹下さんじゃないでしょうけれども、ここにほかにおられる局長連中がそういう動きを盛んにしたんだろうと私は思う。その辺の反省はあるんですか、ないんですか。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十七年度予算編成当初経済実質成長見積もり五・二%、その中で四・一が内需でございましたか、一・一が外需。特に、委員指摘は、内需の落ち込みというものについては、国際経済もさることながら、内政上の運営そのものに遺漏がなかったか、こういう御指摘であろうと思っております。  率直に申しまして、内需そのものも、世界経済停滞というものにもとより影響を受けるものでございますので、それが大きな影響をもたらした一つであるというふうには言えると思うのでございます。当初見積もりというものが、いろいろその過程においても議論されたことでございますが、総体的に申しまして、大蔵省の方から経済企画庁へ、高くしてくれと、こういうことを言う傾向にはございません。どちらかといえば、通産省が少し高くて、大蔵省が低くて、その真ん中ぐらいが経企庁というふうなことをよく俗な言葉で言われるのでございますが、それなりに鋭意詰めて、当時の見通しとして、内需の四・一を目標に置いて、それが事実上達成しなかったと、こういうことであろうかと思います。  それに対する財政運営そのもの責任、これは私も継続性の中で当然責任は痛感すべきものであるというふうに思っております。それがゆえにこそ、本予算でただいま議了成立さしていただきました総合経済対策というものを中身に、下方修正しました成長率が達成することをめどに、鋭意これからその執行に当たって努力しなければならないというふうに考えておるところであります。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうことであるというならば、もっと大蔵省は、去年は経済企画庁に対して、それは高過ぎるとなぜ食ってかからないんですか。ちっとも食ってかかったようなことはしていないんじゃないですか。むしろ上げてくれ、上げてくれという報道はあった。しかし、高過ぎるからどうしても下げてくれというようなことは、少しも行動していないじゃないですか。それでいてことしになって、潜在成長率が五%だ、三%だという争いだから、むしろ通産省経企庁の方が高い成長率を言うんだ。そんなばかなことはないじゃないですか。  それは経済企画庁一つ計画を出すでしょう。しかし、それに対して、あなた方は財政を預かっているんでしょう、経済企画庁財政を預かっているわけじゃないでしょう。そうしたら当然にそれは修正するようにもっと強く要求すべきじゃないですか。私だって予算委員会でずいぶん、高過ぎるじゃないか、高過ぎるじゃないかと何回も言ったんじゃないですか。もっと景気対策をしなければ、この経済成長率は達成できないということを何回か私は言っているわけです。そういうことにちっとも耳をかさなかったじゃないですか。そしていまになって、ここで国債整理基金繰り入れをやめさしてくれと。どの面下げてそういうことが私の前で言えるか。そういう反省が少しもないじゃないですか。どうですか、その点は。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに経済企画庁、なかんずく計画局等はまさに、私は私見を交えて申しますならば、ケインズ学派の流れをくむエコノミストの集団というふうにも言えるのではないかと思うのでありますが、その論評は別といたしまして、その中で経済企画庁そのものがいろいろ議論されておつくりいただいたものが、言ってみれば、民間中心一つめどでありまして、それに対して財政そのものが、その中で果たすべき役割りというようなものがこれだけの効果を上げなかったと言えば、素直にそれはそのとおりでありますと言わざるを得ない。ただ、当初から、いわば粉飾と申しますと言葉が適切でございませんが、過大なものを意図して掲げておったというふうには私は思っておりません。何分経済生き物でございますから、なかなか思うようにいかないということであろうかと思っております。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣、確かに生き物ですよ。生き物だけれども、今日こういうふうになるというのは予想されていたんですよ。だから去年は、一年前の補正予算のときからそういう議論がずっとされていたでしょう。それにもかかわらず直さなかった。河本さんの言い方だっても、五・二%は絶対これだけいくと言ったんじゃない。かなり大きな目標なんだと、こういうことをずっと言っているわけですよ。だから経企庁自体も五・二%はそのままいくとは言ってない。それに対して機動的な財政政策というのは全然やってこないじゃないですか。国会だけは長く開いていたけれども、何らそれをやってきていない。今度だって何にもやってない。こういうことでまた五十八年度もやるということになるだろうと私は思うのです。こういうことでは、いまの財政事情というのは私は好転できないと思う。  そこで、そういう議論をしていてはこの議案の問題から離れますから、次へいきますけれども、今度の国債整理基金繰り入れ停止は今年度限りという形になっているのですが、これは来年度は決してやりませんか。どうなんですか、その辺は。はっきりしてください。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 言ってみれば、いまの時点はまだ五十八年度予算編成過程でございますので、断定的な表現は差し控えさしていただくといたしましても、五十六年度に国債整理基金から借り入れまして始末いたしましたものは、法律上五十八年度にこれを返さなければなりません。そういうこととかれこれ勘案いたしまして、私どもいま、五十八年度もこの措置をとらしていただかなければならないではないかと、こういう考え方に立っております。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、一体いつになったら赤字国債から脱却できるか。そういうことを考えておられるのですか、おられないのですか、どうなんですか。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは本会議等でも申し上げましたように、当初昭和五十四年大平総理から、一月でございましたか言われた、五十九年度赤字国債脱却を当面のめどといたします、このことが困難になったということは、素直に申し上げるべきであろうと思っております。  さて、しかればそのめどをどこに置くか、こういうことでの御質問でございますが、私どもいろんなことをいま考えてみております。率直に申しまして、きょうの時点赤字国債からの脱却めどは何年であるということを正確に申し上げるだけの実質的な準備も心の準備もできておりません。これはいま経済企画庁でいろいろ御検討をお願いして、かなりの時間がかかるではないかという感じもいたしますが、新経済五カ年計画概案づくりということを一生懸命で作業をなすっておるところでございます。したがって、それらの見通しの中において、何とかおぼろげながらでもというような感じがいたしますけれども、率直に言って、経済五カ年計画最終年度が六十二年だから、六十二年までになくしますとかいうようなことが言える自信は、今日いまなお、ないということを率直に申し上げたいと思います。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 企画庁、新しい五カ年計画はいつできるんですか。もうほとんどできているというようなお話も聞いておりますし、具体的には「二〇〇〇年の日本」という中には、大体それへの道行きが出ているわけですね。  これなんか閣議決定はしてないそうでありますけれども経済企画庁としてはおまとめになったものなんですから、おおむねそういう二〇〇〇年までの経済成長の中でこの五年間は一体どうなるのか、こういうものはすぐ出せるんでしょう。そういう段階にまで来ているんじゃないんですか。すでに「二〇〇〇年」ので経済成長率は大体四%台でいこうというふうに書いてあるわけですよ。だから、その線が出れば、ここの六十二年の五カ年計画というやつはそうむずかしくないんじゃないですか。
  19. 及川昭伍

    政府委員及川昭伍君) 「二〇〇〇年の日本」というレポートが経済審議会長期展望委員会から出ておりますが、これは長期展望委員会限りのものでございまして、相当自由な立場で御議論いただいてお取りまとめいただいたものでございます。  昨年の六月にそれは報告されておりますが、ことしの七月、政府から、内閣総理大臣から、経済審議会に新しい五カ年計画を諮問いたしまして、いま鋭意御検討いただいているところでございますが、この当初の予定では、十二月ころに概案を、来年の四月ごろ最終案をという予定審議を進めておったわけでございますが、御存じのように、内外経済情勢が非常に厳しい環境にありますし、あるいは特に財政について必ずしも明確な展望をつくることも非常にむずかしい状況にも相なっておりますし、そのようなこともありまして、経済審議会における審議が必ずしも十分に予定どおりには進んでいないというところが率直なことであろうかと思います。  そういうことで、十二月末の概案取りまとめは若干おくれることになろうかと思いますが、われわれといたしましても鋭意進めておるところでございまして、できるだけ早急に何らかの形の中間的な取りまとめをいたしたいというふうに思っているところでございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 それこそ不透明です。まさに不透明な感じがするんです。審議官ね、これはいつまでもこういう不透明な形で置くというのでは、これからの財政計画あるいは国債の問題、こういうものについて大変大きな動揺というものが出る心配があるわけですよね。そういう意味では、早く計画をつくっていただかなければいろんな問題が進んでいかぬと思うんですよ。  だから、いまのお話ではなるべく早くということなんですが、それも不明確でありますけれども、もう少しこの辺は詰められないんですか。少なくとも通常国会再開ごろまでに詰められないんですか。大体いつごろまでにはその計画ができるという詰めはできませんか。その辺を早く明示してくれなければ、私どもの今後の財政議論あるいは経済議論というものはなかなかできないんじゃないでしょうか。どうなんでしょうか。
  21. 及川昭伍

    政府委員及川昭伍君) 私どもといたしましても、できるならばそのような形にいたしたいと思いまして、当初の予定では十二月末という予定を、概案でございますが、予定しておったわけでございますが、まさに非常にむずかしい問題がいっぱいあるわけでございまして、それらの詰めを行うのに非常に時間を要しているというのが率直なところでございます。そういう意味で、十二月末という予定が若干延びますが、その延びがどの程度になりますか、私どもとしては、できるだけ早くというふうに申し上げましたけれども、まさに通常国会における御審議にできるだけ間に合うようにいたしたいと思っているわけでございます。  ただ、政府だけ、あるいはわれわれだけで決めるということでもございませんで、各界の有識者、経済審議会には二百六十名ばかり御参加いただいているわけでございますが、それらの御審議、御議論取りまとめ過程でまたいろいろとむずかしい問題も出てくるかと思いますが、御趣旨に沿うようにできるだけ努力はいたしたいというふうに考えているところでございます。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、この前出している財政中期展望、あれは廃案にしたというふうに見てよろしいんですか、どうなんですか。そして新しいものを出すのか、出さないのか。出すとすれば、何かいますぐは出ないようでありますけれども、いつまでに出して今後の財政問題の審議に当てるのか。その辺を明確にしてください。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる五十七年度予算審議に際しまして提出いたしましたもの、この中期展望、それから私が大蔵大臣でありました当時は財政収支見通し、そういうことでお願いしておったわけでありますが、予算審議に供するタイミングで提出をしなければならぬと思っております。  内容につきましては、いろんな工夫をしてみようと部内で折々検討しておるところでございます。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 いつまでに出すということを明言してもらわなければ困るじゃないですか。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 再開国会予算審議が行われるときに間に合うようにと、こういうふうに思っております。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 去年の衆議院予算委員会に今後の「国債整理基金資金繰り状況についての仮定計算」というのをケース1、ケース2というので出しましたね。これはそのまま有効的に働くんですか、これも出し直すんですか。
  27. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) これも、その後補正予算国債を増発しておりますし、あるいはこの定率繰り入れを停止いたしますと、数字が変わってまいりますので、出し直しをいたします。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、これはいまのところわれわれのすぐの参考にはならないということになるわけですが、大蔵省は今後の国債償還、借りかえ、こういうものの年次計画というのはおありになるんですか。
  29. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 償還すべき公債予定表はこの前お出ししたような形でございますが、しかしそれをいかなる資金で返すかと申しますと、従来から申しましたように、国債整理基金から充てるべきもの、それでなお足りなければ予算繰り入れをすると、こういうことでございます。ただ、この国債整理基金は六十二年には枯渇いたしまして、六十二年からは大幅な予算繰り入れが必要になる。これは今回の定率繰り入れを停止するとしないとにかかわらず、そういう状況でございますので、今後の国債整理国債償還見通し、これをどうするかということは、今後財政再建見通しとあわせて検討してまいりたいと思っております。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃ大蔵大臣、六十二年には予算からの、一般会計からの大幅繰り入れをしなくちゃならぬというお話でありますが、そのときに償還になるべき国債というものは、建設国債についてはある程度の借りかえもあるでしょう、これは一般会計から出せるということですね、六十二年になれば。そのときには国債整理基金は枯渇するというんですから、そのときになれば一般会計からそれだけの部分を出せるということですね。そのときの額は、大体償還に必要な額はどのくらいになりますか。
  31. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 国債は期限が来れば当然償還しなければなりません。したがいまして、その償還財源をどうするか、それはそのときの予算の問題でございますが、いまのこの補正後の仮定の計算でいきまして、六十二年度は大体二兆五千億円台の繰り入れが必要になると思います。  ただし、そのときに一体どういう財源でそれをやるのか。特例国債は借りかえをしないということが法律に決まっております。したがいまして、これはどういうやりくりをするか、それはそのときの予算編成の問題として考えなければならないと思っております。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま主計局次長、大変重要な発言をなさっていると僕は思うんですね。そうすると、特例国債というのは、十年間で全額を現金償還するというのが特例法の趣旨ですよね。いまそのときに返す赤字国債だってあるわけですね、現実に持っているわけですね。どこが持っているかわかりませんが、持っているわけですね。その特例債も借りかえをする場合がある、こういうことですね。
  33. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 個々の公債をお持ちの方には、それはきちんとお返しをするわけです。しかし全体の償還財源は、そのために二兆五千億程度のものが必要になりますので、それは予算上どういう形で鋭意調達をするか、これは予算編成全体の中で検討すべき問題だと申し上げたわけです。個々の持っている方のを強制的に借りかえるというわけではございません。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、その辺明確にしてください。どういう返し方をするのか。これは何も個々の個人だけじゃないと思うんですよ、特例国債を持っているのは。いろんな団体だって持っているだろうと思うんですよ。これはどういう借りかえの仕方をするんですか。  この分でいきますと、恐らくそのように国債がたくさんになってくる、金融状態が逼迫してくる、こういうことになれば、いまだってやっているでしょう、借りかえのときに銀行なんかには。勧奨借りかえというので借換債を持ってくれと言って半ば強制的におやりになっていますね。これは金融が逼迫してまいりまして国債が売れなくなれば、これは恐らく強制的な借りかえ、こういうことがずっと続いていくじゃないですか。そういうことになれば、これは特例債は売れなくなりますよ、これから。来年だって相当な額を出さなくちゃならぬわけですけれども、現実には売れなくなってきますよ。  この点は一体、大蔵大臣、どういうふうに処置をしますか。これは重大な問題ですよ。このそろばん勘定からいけば、強制的な借りかえの方向しかないと私は思う。それでも借りかえなくちゃならぬ。しかし特例債は十年たったら返すという約束で出しているわけですからね。重大な問題だと思うんですね。それを明確にしていただきたい。
  35. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず特例公債の大量償還、これは六十年度以降に始まるわけでございますが、いま私どもの姿勢としては、したがって当面は、新規の財源調達手段としての特例公債のまず縮減に全力を挙げよう。したがって、申しましたように、五十八年度予算編成に対しては、残念ながら、当初予算に比して減額しますということを言う自信も――事実それはできないことでございますが、せめて補正後に対しては、公債全体から見ても、これを縮減に全力を挙げようという考え方、そうして特例公債の借りかえは行わないということを、国会答弁では、昭和五十年、それから五十一年から五十七年にわたりましては、法律の規定で定められておりますので、これを尊重してまいりたいという考え方でございます。  ただ、将来の公債償還の問題そのものにつきましては、それこそ各方面の意見を聞きながら幅広い中長期の視点で、いまのような御指摘の事実はあるわけでございますから、検討をしてみなきゃならぬ課題だなと、こういうふうに理解をしております。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう意味で、どうなんですか、考えることは。ここでこういうふうな国債整理基金への定率繰り入れということをやめるということになれば、ますますそういう形で国債償還がむずかしくなる、国債償還に対する国民の信頼というのがますますなくなっていく、その根源をつくるものだと私は思うんですね。  特例債が一番最初に出るころの議論というのは、もうこんなに将来たくさん出るなんということは全然議論になっていなかった。われわれがそういうようなことを言ったって、そういうことはありませんと言ったのに現在こうでしょう。その特例債だっていつ返ってくるのか、わけのわからぬというような時代になってきたわけでしょう。  恐らく、この国債整理基金定率繰り入れあるいは剰余金繰り入れ、こういうことはむしろ、赤字国債あるいは国債を余り出さない、財政法の趣旨で歳入歳出をやっていく、こういう趣旨のもとに私はできているものだと思うんです。一種の国債発行に対する歯どめの一つ制度だと、こう思うんですよ。これがますます働かなくなる、こういう心配が必ず出てくる。だから、いまここでこういう歯どめを外すということになれば、今度は、いまお話のあったように、特例債の借りかえも公然とやられる、こういうような形が今後出てくるだろう。そういう歯どめについては大臣は何か考えませんか。
  37. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 率直に申しまして、この今度の措置は、減債制度そのものを廃止するという考え方は持っておりません。確かに御指摘のように、国債の信用維持ということは何よりも必要なことであります。諸般の金融情勢等を勘案して可能な範囲内における発行、そういう償還については絶えず時宜に適応した措置を行ってきておりますものの、今後の問題について国債の信用を維持していくということは、一つは、とにかく国民の保有する公債については、満期が到来したら個々の保有者に対して全額を現金で償還すること、これはやっぱり公債政策の根幹であるということには変わりないと思うんであります。  したがって、基本的には減債制度を維持して、そうして公債の確実な償還を行いますとともに、歳出の節減、合理化、財政の健全化のための努力を重ねて、これだけ政府そのものも財政の健全化のために努力しておる、それがためにはすべての政策が現状維持の前提においてなされるものではないというところまで、国民の皆さん方に理解をしていただいたその努力というものが、やはり間接的には公債政策に対する国民の信頼を得ることになるではないか。基本的にはそのような考え方を持っておるわけであります。  したがいまして、大量償還が始まります六十年、いまおっしゃいましたように、六十二年はいわば資金ショートするではないか、こういうことでございますが、これは時間もございますので、それこそ幅広く各方面の意見を聞いて検討を続けていかなければならぬという重大な問題てあると思っております。  委員も御指摘のように、私どもも、この建設国債が、オリンピックの翌年の戦後最大の不況と言われたときでございますが、最初出た当時からずっと、国民の信頼をつなぐためのもろもろの議論がなされて、そうして国債整理基金繰り入れというものが制度化されたわけでございますから、これは国民に対する公債に関する信頼度の歯どめの大きな一本の柱であるという考え方に基づいて、この根幹は揺るがしちゃいかぬという方向でこれからも努力を進めてまいりたいというふうに考えております。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、今度は四条債ですが、この四条債は、十年債を考えれば、十年後に六十分の十は現金償還をする。あとは借りかえていくと、こういう形になりますね。これはどうなるんですか。これは返してくれますか。特例債が返せないというんだから、これも返さない、全額四条債は借りかえと、こういうことになる可能性の方が多いですね。  建設国債は、少なくともいまの考え方で言えば、六十年間で大体返せばいいんだ、一回に返すのは大変だから、六十分の十ずつ十年間で返していく、こういう思想だと思うんですよ。そうなると、特例債も全部現金償還ができないということになれば、十年債が十年たったときに六十分の十を現金償還するというようなことも、これもできないわけですね。個々には若干いろいろなことがあるにしても、全体としてはない、こういうことになりますな。
  39. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 返せないとおっしゃいますが、その公債をお持ちの方には必ずちゃんとお返しするわけでございます。  全体としての返済財源をどう調達するか、用意するかという問題でございまして、確かに御指摘のように、国債整備基金はその負担を平準化しよう、償還がきたときに一遍に調達するんじゃ大変だから、だんだんに積み立てておこうという制度で設けられたことは確かでございますが、しかしことしこれを無理に積み立てようといたしますと、結果的にはまた一兆二千億の特例公債をそのために出さなくてはならない、こういう状況でございますから、やむを得ず今回は停止をさせていただいているわけです。  しかし、その償還財源を全体としてどうするかという問題が残るということは、ただいま大臣から申したとおりでございますが、四条債であっても、赤字国債特例国債であってもそれは返す、お持ちの方に返すという点においては、全く変わりはないわけでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 あなた、そんなのんびりしたことを言っていますが、これから買ってくれますか、自由に売れると考えていますか。恐らく国債を持っている者には十年たったから返さにゃならぬ、おまえは借換債で券で返すよと、そういうことになるんですよ。そんなにあっちこっちいままで持っている人に返して、そして借りかえて返すなんというそんなことできるような事態にはならぬですよ。  もしそれをあえてやるということになれば、それは強制割り当ての形で戦時中の国債と同じですよ。もっと市場の原理を使ってやるというようなことは、これだけ国債がたまっていけば、残高がたまっていけば私はできないと思うよ。いまの時代はおっしゃるとおりやっているでしょう。それだって勧奨でしょう、金融機関には。資金運用部と日銀には強制的な借りかえでしょう、いまだって。これから国債がうんと出てくる、しかも返るか返らないかわからぬ。こういう事態になれば、そんなあなたの言っているほどのんびりした形で国債が喜んで買われるはずがない。  いまだって、理財局長あれでしょう、たとえば特例国債と建設国債と言ったら、特例国債の方が売れ行きいいでしょう。十年たったら現金化されるという期待があるからでしょう。建設国債じゃ借りかえを強制されて、また借りかえをしなくちゃならぬということになれば、資金が長期に寝ちゃうでしょう。だからいま大蔵省は中期債を出しているんです、一生懸命。中期債の方が売れるから中期債をなるべく多くしよう。それが中期債の発想でしょう。そうなったらば四条債と特例債、十年で返すということにしても、特例債の方が売れ行きよくなりますよ。そんな次長の言うようなのんびりしているような事態というのは私は来ないと思うよ。その辺はもう少し真剣にいま考えておかなければ。  しかも長期の財政計画はない、日本経済はどうなるかわからぬ、整理基金のこの減債基金制度は守れるのか守れないのかわからぬ。そういう事態の中で先の方のことだけうまくいきますよなんということ、だれが保証できますか、そんなこと。大臣、これは非常に重大な問題ですよ。現在の状態をそのまま六十二年にあるいは六十二年以降に移していくという考えは私は誤りだと思いますよ。そんな容易なものじゃないと思いますよ。大臣どうですか。
  41. 加藤隆司

    政府委員(加藤隆司君) 御指摘の中に、いろんな御指摘が一緒くたになっておりますので、ちょっと整理をさせていただきたいと思うんですが、一つは、当面の状況の問題と、現在のように国債がどんどんふえていくというようなのが長く続いた場合の状況お話がまじっております。  前段の現在のところで考えた場合に、まず第一点は特例公債の方が売れ行きがいいかどうか。これは五十年に出しました当初、若干そういう議論があったのですが、これはただいま窪田次長が言いましたように、建設国債であれ特例公債であれ、国債を持っている人に対しては、償還期限が来たときには全額現金で返すわけです。その現金をどうやって調達するかということが別の問題になっているということです。したがって、そういうことがわかるようになった二、三年後には一物一価の原則が貫いております。  それから市中の銀行が持っている国債を強制乗りかえさせているではないかという点でございますが、これはその言葉意味のとおりの強制乗りかえというのはやっておりません。ただ現実に預金を持っておって、公債を持ったわけですから、そこへ現金の償還がある、その償還があったお金を目指して、今後こういう条件の国債があるのだから、返ってきたお金で買ったらどうですかというような問題はありますが、強制というようなことはないわけです。  それから日銀と運用部の持っているやつが強制的に乗りかえということの御指摘がございましたが、これは通常乗りかえと言っておりまして、広い意味の借りかえの中に乗りかえと借りかえがあるわけですが、乗りかえは、中央銀行運用部は明治以来、あるいはどこの国でも、乗りかえということでやっていく。これは当面の問題でございます。  現在のように、年々国債がふえる、あるいは減るぐあいが小さいというのが先々一体どうなるかという御指摘でございますが、現在、ことしの九月末に、日銀の調べによりますと、個人貯蓄の残高が三百六十兆あるわけです。国債の残高がアバウト百兆。大体現在のような景気情勢で、金融情勢であるならば、本年補正後十四兆三千でございますが、昨今の市況をごらんいただきますように、金利は上げないでむしろ下がってくる、そして売れ行きは悪くないというような状況にございます。  ただ、もう一点つけ加えますと、短期債にだんだんと追いやられているではないかという御指摘がございます。これは二つ要素があって、市中の金利が高いときには短期で出した方が利子負担が少ないという問題があるわけです。それから同時に、投資家の方は、先行き金利がさらに上がるのてはないかというような見込みがあれば、とりあえずは短期のものを買っておこうというような、供給者と需要者の両方から短期志向になるということは言えますが、それを追い込まれていると見るのか、あるいは両方の損得計算がたまたま出会って短期の方に向いていると見るのか、そういう問題は日本だけでなくてどこの国でもございます。  アメリカの場合には、特にTBにウエートが移っていっている。高金利であるから、財政当局の方が、短いもので借りれば、金利が安いわけですから得なんです。投資家の方も、金利動向が不確定ですから、とりあえずは短期で運用していくと、そういうふうに解説されております。  それで、次の長期の問題なんですが、これは公債の発行状況が現在のような状況が続くとすれば、まさに御指摘のような問題は当然起こってまいります。そこはこれから一体どうするかということで、当然われわれは財政再建ということでいろんな方途を尽くそうとしているわけでございますが、それは当然御指摘の点は非常に重要な問題であろうかと思います。
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 理財局長ね、あなたは勝手にそういうことを言うけど、われわれにいまこの定率繰り入れをやめるということをあなたは提案しているんでしょう。それで、いつになったらこの定率繰り入れが始まるかということは明確じゃないでしょう、さっきからの答弁で。われわれに何にも材料を与えないでおいて、こっちが議論するのは、おまえのものはごちゃごちゃで、何もかも一緒に言っているというのは、ずいぶん失礼な言い方だと私は思うよ。ちゃんと財政計画を出しなさい。材料を全然出さないでおいて――あなた方の頭の中には計画があるでしょう。私どもの方にはないんだから、何にも。それは余りにも勝手な言い方じゃないですか。幾ら局長と私が近いところに住んでいるとしても、それはずいぶん失礼な言い方じゃないですか。  そういうことで、大臣は一体どう思うのか。私はその辺が非常に重大で、その辺がはっきりしなければ、本来この法律の改正案を審議すること自体僕はおかしいと思っているよ。計画がいろいろ出て、だからこれは将来は税収がこんなにふえますよ、経済もこのぐらい成長しますよ、税金もこれくらいうんと取れますよ、だから確実に、十年たったら、いままでどおりのやり方で国の借金はお返ししますよというのが出てくるなら、私どもわかりますよ。何一つ出てないんじゃないですか。  これは主税局長、一体これからの税金はどうなるんですか。六十二年度には、さっきもおっしゃったように、二兆幾ら予算繰り入れというものは完全にできますか。いまの行政水準をそのままにしてそのぐらいの金できますか、六十二年になったら使えるように。
  43. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 先ほど来議論がございますように、五十六年度、五十七年度、相当額の当初の見積額からの減収が生じるわけでございます。したがいまして、従来中期展望等で提出申し上げておりました中長期の税収見積額は、当然のことながら土台が大きく下がったものでございますから、作業をし直さなければならない状況でございます。  ただ、現在の時点で、まだ具体的にそういう作業をいたしておりませんので、ただいまの委員の御質問に対して的確なお答えを申し上げる用意はございませんけれども、概括的に申し上げますと、第一次オイルショック後、あるいは第二次オイルショック後を通じまして、この約十年間の租税弾性値は非常に低下してきております。したがいまして、五十六年度、五十七年度の租税弾性値は実は一を下回っているわけでございまして、これが先行きどういうふうになるか。税収弾性値がそう長期間にわたって一を下回るという状況は、私は続かないと思いますけれども中期展望で前提といたしました租税弾性値一・二というものをそのまま、今後見通す場合、使ってよいのかどうかということは、改めて私は検討しなければならないというふうに考えております。  したがいまして、現在の租税体系のもとで税収を見積もるとすれば、非常に情勢は厳しいというふうに言わざるを得ないと考えております。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 でありますから、六十二年になって、そのときの経済状況がどうなるかということがわかれば、それは税金がこのぐらい取れるだろうということもわかりますよ。いま何にもないでしょう。そういう中でこの歯どめをまた外す、減債基金制度というものを実質的にワークしないようにしてしまう。そういうことは私は大変大きな問題だと思うんですよ。だから、そうなるとまた何か、赤字国債を出さなくちゃならぬのに金をこっちへ積み立てるなんて、そんなばかなことあるかと、こういうお話になると思うんですがね。  どうなんてすか、政府のいろんな資産等をもっと点検したらどうですか。十分に点検したら、ここで繰り入れをやめる一兆幾らですか、こんなものは出てきますよ、ちゃんと。政府の出資金だっていま十何兆あるてしょう。これだってもう一回精査し直したらどうですか。特別会計のいろんな積立金、準備金をもう少し精査し直したらどうですか。若干やっているようですね、今度も。だから四兆五千億というのがやっと出てきた。これは私もかなり言っているつもり。こんなことをやるよりも、まず自分の財産を一回全部洗い直してみたらどうですか。  土地もあるでしょう。建物もあるでしょう。株券だって、いいのか悪いのか知りませんが、持っているでしょう。外国関係の資産だって持っているでしょう。それを全部洗い直しても出せません、だからこれをやめてくださいというなら、私は理解しますよ、賛成しますよ。そっちは全然洗ってないじゃないですか。洗ったことありますか。そちらから多くの金を引き出したことありますか。出資金を一回洗い直して、これはいい、これはこの際引き揚げてよろしい、こういうことをやったことありますか。大臣どうですか。
  45. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まさに公債発行は、歳出を増加させるための負担を一次的に将来に繰り延べるという性格でございますので、この歳出の節減、合理化に努力すると同時に、いわゆる税外収入でございますね、これを特に洗い直さなきゃいかぬ。それが今度の五十八年度予算でもわれわれがいま一番工夫しておるところの一つであります。例示的に申し上げますならば、補助貨幣の積立金の問題等が考えられるわけでございますけれども竹田委員は、もっと広範に洗い直すべきだと、こういう御主張であると思います。  まさにその洗い直す作業をやって、当面私ども税外収入として今度の歳入に見積もらしていただこうというものが、いま多少やっておるがと、こういうことでございましたが、きょう、来年度予算編成に当たりまして、歳入の中へ組み込むという方向でまさに最終的な詰めの段階に入っておるということでございます。基本的な考え方は私は賛成でございます。
  46. 竹田四郎

    竹田四郎君 そこに遠藤次官もいますが、たとえば労働保険関係、あるいは雇用促進事業団、あるいは労働福祉事業団、これなんかのやり方を見てたって、ずいぶんむだが多いですよ。こういうものへ向けて一般会計からかなりの金が出ているでしょう。この辺だって少し洗い直したらどうですか。私は二、三洗い直したって非常に疑問を感ずる事柄がある。あるいは出資の問題だって同じ。直接出資ないにしても、たとえば中小企業育成株式会社のあり方などというものは、昭和三十八年程度の成長期にできた組織ですよ。これだって中小企業金融公庫からかなりの出資が出ているでしょう。こういうものだって洗い直してみたらどうですか。  そういうことをしないで、金が足りない、赤字国債を出す。先に行ってその国債は返してもらえるかどうかわからぬ戦時中の国債みたいな感じの心配すらある。そういうようなことで、行政改革だ、財政改革だと第一言えますか。だから、もう何か大蔵原案を、きょうの晩か、あしたは出さなくちゃならぬという緊急な事態ですが、一回洗い直して通常国会の中で、税外収入で入れるものは入れて赤字国債を消していく、そういう作業を機動的にやってみたらどうですか。  特別会計の中だってたくさんあります。私が調べてみたら、たくさんあります。たくさんあるから、自動車損害賠償責任のあの再保険特別会計からも出してきたんでしょう。その辺でたくさんあるんですよ。どうですか、徹底的に洗い直す。全各省にわたると思いますが、洗い直すような対策を大蔵大臣とりませんか。  一つの家だって、家が左前になってくりゃ、女房や子供のいろんな余っている金まで引き出してきて、そしてそれによって倒産を防ぐ努力を個人だってしているんですよ。政府だってそのぐらいのことをしたらどうですか。私はそのことを約束してもらいたい。もう時間が来ましたから私はやめたいと思いますけれども、それひとつ約束してください。
  47. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十八年度予算編成に際して、いま若干御指摘のように、税外収入としていまおっしゃいました自動車損害賠償保険の問題もその中の一つでありますが、その問題はすでに合意に達したわけでございますけれども、いろんな角度からこれは洗い直しました。しかしこれで私も済んだというものではないと思います。いまの精神を体して洗い直しの作業は引き続き鋭意進めます。このことはお約束できると思います。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから減債基金制度というものは、この法律によって将来やめるということじゃないんですね、ワークさせるということは言えますか。
  49. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさにワークさせるべきものであるという考え方であります。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、まず最初に、大蔵大臣鈴木政権時代の大蔵行政に比して特にどういう点の政策転換を考えておるのか、そういう新しい政策転換はないのかどうか。その点はどうでしょうか。
  51. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 大きな政策転換があるのか、こうおっしゃるといたしますならば、政策の大転換ということは、どの方面から手をつけていくべきか、中長期のビジョンを語れと言われても、それだけの自信は、率直に言って、ございません。したがって、まず当面は、五十八年度予算編成に際して、一般歳出を昨年度以下に抑えるということが具体的な政策の取っかかりの第一の仕事である、こういうふうに御理解願えれば幸いであります。
  52. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いままでの衆参の予算委員会あるいは本会議等で、五十九年度の赤字国債脱却は非常にむずかしい、このように政府も答弁をしているわけでありますが、これはいつまで延ばすのか。また毎年、財政中期展望というものを政府予算委員会審議に合わせて出してきているわけでありますが、こういう新しい指針はいつごろ出す予定であるのか。これを伺っておきたいと思います。
  53. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 中期展望につきましては、国会再開予算審議に間に合うようにお出ししたい。ただ、何分にも五十五年度予算までは収支見積もり、それから六年度予算、七年度予算につきまして中期展望を御提示したわけでありますが、本委員会等においてたびたびの御指摘でございますので、御審議いただく手がかりとして、できるだけ要望にこたえるような形のもので中期展望を出さなきゃならぬということにつきましては、いろんな工夫をしてみなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  54. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると当然、中期展望を出すときには、いままでの計画では、五十九年赤字国債ゼロという方向でつくられてきたわけでありますが、今度の新しいものは、その五十九年度というものを先に延ばしたものを出すと、こう理解していいわけですね。
  55. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十九年度赤字公債からの脱却というのはきわめて困難になりましたと、こう申し上げておるわけでありますが、かくかくしかじかでギブアップいたしましたと、こういうことを言えるのは、その時期、中期展望等をお出しする時期ではないかなというふうに私も考えております。
  56. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、五十九年を六十二年に延ばすとか、こういうような話もあるわけでありますが、実際、いまのような状態では本当に六十二年もむずかしいんじゃないか。結局、大蔵省のつくった計画というものがだんだん先送りされて、本当の財政再建というものについては全く進んでいない、むしろ後退をしておるんじゃないかと、そういう感じがしてならないわけであります。  それで、今回も、この法律にいたしましても、国債整理基金に充てるべき資金繰り入れを停止するということで、本当の合理化ではなしに、こっちの金をこっちへ回すと、そういうようなことをやっておる。そうして一方では、歳出を圧縮してもそれ以上に税収が減ってきておる。そういうような状態では、六十二年脱却というようなこともこれは大変むずかしい課題である。本当に財政再建というものが前へ余り進んでいないんではないかという、こういう心配も非常にしているわけでありますが、大蔵大臣としてはそういう点どのようなお考えであるのか、承っておきたいと思います。
  57. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いまの塩出さんの認識と私も余り変わりません、率直に申しまして。  で、五十九年度脱却、これを私も振り返ってみますと、過去何度か変化があって、大平内閣のときに、五十四年の一月ですか、五十九年脱却というのが明確に打ち出されたわけです、言葉の上で。そうして今日、これはきわめて困難になりました。  で、中期展望を出すときに、かくかくしかじかとしてできなくなりましたというふうな説明にもなる資料を提出しなきゃならぬというようなことを考えて、さてはて六十二年、よく議論されます六十二年とは何ぞやということになると、恐らく経済計画の五カ年とすれば、その終期というものが六十二年として考えられる。しかし一体本当にそれができるであろうかということを考えますと、実際私は、これだけ不透明な世界経済というものをしみじみと認識させられるわけです。  で、昭和五十五年度予算を組んで、できたらこれを財政再建元年にしたい。すなわち、当初予算ベースでまず一兆円の減額ありきと、こう言ったわけです。そうしてそのときの計画から見ると、次に二兆やって、そうして一兆八千、一兆八千とやれば、大体五十九年の脱却めどというものが言葉の上で説明ができた。五十五年は何となく増発することなく終わりました。五十六年も、予算編成では、初めに二兆円の減額ありき、これはできた。が、中途において、いわゆる経済見通しの狂いとでも申しましょうか、歳入欠陥問題からして、これが途中で増発する、こういうことになった。五十七年しかり。そうすると、五十八年予算編成に当たって、いま、私がきょうも閣議で申しましたのは、当初予算に比して一兆円の減額ありきとこれなら若干勢いがいいんであります。少しは大きな声を出してもいい。が、補正予算に比して一兆円の減額ありきと、こう言いますと、まあ真ん中ぐらいの声ですが、まあ私も説明ができなかった。  ことほどさように、世界経済停滞、これの見通しというのが不透明だということになると、塩出先生、このようにして六十二年にはかくかくしかじかな減額計画が見えますということが実際言えるであろうかということになると、余りたびたび違いますとこれは政治不信もいいところで、そうするとこれはよほど慎重にならざるを得ないという気がしておるんであります。  したがって、当面は、とにかくこの一般歳出をゼロベース以下に抑えるところをスタート台とする。五十五年予算を編成するときは、私は財政再建元年とでも言いたい気持ちでした。しかし結局、歳出の伸びが五%以下と思っておったのが五・二%だった。だから、財政再建元年と言えないで、前の晩ぐらい、イブぐらいまでしか言えないという自己採点をしたのでありますが、今度は本当にまさにこの五十八年度予算編成一つのスタート台である、こういう認識のもとに各方面の協力を得ながら進んでいかなきゃならぬ。素直に深刻な心境を披瀝いたしまして、塩出さんの御指摘と私の認識にそう相違がないという考え方であえて申し上げたわけであります。
  58. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま異常なかつてない厳しい経済情勢の中で、中小企業、いろいろな経営者の人もそれだけの決意は持っておるわけでありますが、そういう中でいろいろ、たとえば補正予算景気対策をやってもらいたい、こういうような声もないことはないんですけれども、しかし心ある人は、そういうようなことで結局それがまた増税になっては困る、そういう意味で、じゃ一体どのように日本財政再建をしていくのか、本当に歳出カットでいくのか増税でいくのか、ともかく見通しが立たないのは非常に困る、こういうような声が非常に多いわけであります。  確かに、日本の国のいろいろな経済計画というものがそれぞれ各企業の設備投資の計画にもなっていく。いまエネルギー等も非常に消費量が減って電力の設備投資計画も大幅に下げていかなくちゃいけない。こういうような見込み違いはいろんなところに大きなひずみを残すわけで、そういう意味で私は、政府のつくる計画というものはある程度実現可能な、またいつもしょっちゅう変わるような計画では困ると思いますし、そういう意味で私は、六十二年にしろとかいうことを言っているわけじゃないわけですけれども、そういう点はまた政治的な判断で、粉飾決算的なこういう計画ではなしに、本当に実現可能な計画をつくりそしてつくった以上はもう断固それを実践していく、そういう計画をつくってもらいたい、このことを要望しておきたいと思います。  それともう一つ大蔵大臣に伺っておきたいことは、与野党減税小委員会をつくって減税問題をいろいろ検討してきたわけでありますが、来年度予算の中にはいわゆる所得税減税は入っていないわけてありますが、勤労者、サラリーマンは税金がちゃんと捕捉されて、総体的にはどんどん勤労者所得税というものは増税になっているわけであります。本来ならば減税をしなければならない。しかしそれが現在の財政状況の中ではできないわけでありまして、そういう意味から言いますと、いわゆるクロヨンとか、トーゴーサンとか、こういうものがますます拡大をしているんじゃないか。先般の政府税調の答申の中でも、こういう問題は検討していかなくちゃいけない、こういうことが言われているわけでありますが、税の公平という点から見ると、不公平の方向にどんどん行っておる。こういう点を何とかしなければならないと私は思うのですが、そういう点について大蔵大臣としてはどのように考えておられるのかお伺いしておきます。
  59. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる五十八年度予算における所得税減税、こういう問題が一つございます。  従来までのお答えといたしましては、政府としては、いままで申し上げておることを整理してみますと、財政再建めどがついて、そして財源的にもかくかくしかじかなものがあり得るという判断に立ったときに減税というものを考えるべきで、その環境にはございませんと、こういう答弁を繰り返してきたわけです。  そこで、院に議長御裁定に基づいて減税小委員会というものができて、この中で歳入、いわゆる財源をも含めて検討してみようということで、その中間答申というものを読んでみますと、減税はすべきであるという合意に達したが、その財源では合意に達しなかった。したがって私どもも、お願いという言葉は語弊がありますが、期待をして、今国会でもまた小委員会をつくっていただきたいのだが、きょうまでに、簡単な報告しか受けておりませんが、どうもそれが結論を得るに至らなかった、こういうことになる。  そうすると、国権の最高機関でいろいろ協議しておられる、それに対しては尊重して対処します。しかしそれがなくなった。こういうことになれば、通常国会でどのような御判断があるかは別として、政府自体としても中長期の中でそういう税の問題を考えていかなきゃならぬ。これは当然のことではございますが、その使命がより多くなってきたと、こういうふうに考えざるを得ないわけです。  したがって、今度の税調等でいろいろ考えられておりまして、不公平税制あるいは税の合理化、適正化というようなことで、租税の特別措置の中で若干のことを考え、そしてまた中小企業の投資減税とか、あるいは中小企業者の相続に関する俗に言う承継税制、そういうようなことも念頭に置いて答申をいただいた。これは具体化しなきゃならぬ。  しかし、いずれにしても、いま御指摘があったように、長期的に見たならば、最終的にはまず切り詰めるだけ切り詰めた後、なおこれだけの行政需要というものには対応しなきゃならぬと、こういうことになったとすれば、いわば受益と負担との問題から議論をしていかなきゃならぬ。それは最終的には国民の選択にゆだねる。  こういうことになるのじゃないかという考え方から見ましても、中期な税制の問題については、私が五十四年、五十五年大蔵大臣のときには、たとえば直間比率の見直しをしますと言えば、直ちに大型消費税かと、こういう反応が起きるような時代であったが、いまは直間比率の見直しというものは、諸外国等から比べれば直接税の依存度が高いだけに、見直してしかるべきじゃないかというのも、ある種の国民世論として、それはわりに素直に受け入れられる議論である。そういうことを総合的に勘案して、私は、税制というものを中期に検討していかなきゃならぬ課題であるというふうにはしかと認識しておるつもりでございます。
  60. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 特にクロヨンとか、なぜそういう感じを持つかということについては、法人の場合は個人用途のも法人の交際費とかで使える、サラリーマンはそういうことはできない、こういう点で何となく個人というものは、税金がサラリーマンの場合は非常に重い、そういう感じを持っているんじゃないかと思うんですね。  最近も、たとえばホテル・ニュージャパンの横井氏の脱税問題とか、あるいは三越の例の脱税問題、こういうような問題は、実はほかの事件から波及して脱税しているということが明らかになっておるわけで、ああいうのを見ておると、ほとんど大口で、たまたまああいう人は見つかったから悪かったようなものの、何かそういう印象を一般サラリーマン、庶民は持たざるを得ないわけです。  こういう点も、執行面においてもこういう公平な執行をしていくということは、国民の納税に対する気持ちを育てる上にも、私はこのような脱税的な行為は厳重にできないような制度にしていかなくちゃいけないと思うんですけれども、こういう点については大蔵大臣としては特に今後何かお考えを持っておるのかどうか、これを承ります。
  61. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはクロヨンでございますとか、御指摘のように、あるいはトーゴーサンでございますとか、そういう言葉が存在しておる。その言葉が存在しておるという事実は、最も正確に把握される給与所得者から見た場合、税の不公平感、こういう感じとして率直に、実態一つ一つの個々の問題は別でございますが、この実態をとらまえてそういう認識があるということは私も同感でございます。  そこで、一体この税制そのものの中における最も公平であるものはむしろ間税税じゃないかと、こういう議論もないわけでもない。しかしいま御指摘の、いま一方、その執行面において不公平感が生じないような執行をすべきであると、これは事実であります。確かに私は、庶民感情と他の事件から波及して出たいわば大型脱税というもののギャップというのは、これが一番不公平感というものを感じさせる大きなモメントであると思いますだけに、汗かいていま税務職員はいろいろ仕事をしておるという事実は私も認めつつも、今後とも執行に当たっては、なお公正を旨としなきゃならぬ問題であるというふうに認識をいたしておりますことは共通の認識であると思っております。
  62. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、国債整理基金特別会計法という法律は明治三十九年に制定されておるわけであります。以来七十余年を経てきておるわけでありますが、この制度は十分な働きをしてきたのかどうか。また、今日までの経過を見ますと、この減債制度は一時停止をしたりあるいは一部縮減の期間もあったようでありますが、こういう点はいかなる理由によって停止をされたものであるのか、簡単で結構ですから、お尋ねをいたします。
  63. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この制度そのものは、御指摘のように長い沿革がございますが、たとえば大正九年から十一年は一時停止をしておりますが、これは軍備の拡充のために非常に財政支出負担が大きかったために一時停止したというふうに記録にとどめられております。また昭和六年度、これは非常に財政困難な年でございましたので、この年は一部減額をしております。四千六百五十七万円入れるべきところを四千四百万円減額した、つまり大部分を減額をしております。またさらに昭和七年度から二十七年度は、本来一万分の百十六入れるべきところをその三分の一に縮減をいたしております。さらに二十八年度から四十一年度までは、これは国債の発行がございませんものでしたから、停止をいたしております。  ごく簡単に申してそういう経過でございます。
  64. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この制度は、アメリカ、イギリス、フランス等にも、かつてはそういう減債制度があったようでありますが、現在はほとんど機能していない、あるいは廃止されていると、このようにお聞きをいたしております。したがって、現在のこういう減債制度というものはわが国特有の制度のように理解をしておるわけでありますが、諸外国においてこのような減債制度がだんだん廃止の方向に歩んできたのはいかなる理由によるものであるのか、これをお伺いいたします。
  65. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) アメリカにおきましては、減債のための支出権限というものは残っておりますが、しかし現実にこの権限に基づいて繰り入れをされているということはないようでございます。  イギリスにおきましては、過去に減債基金がございましたが、現在は存在をしておりません。これは戦時中の国債の発行が非常に巨額でございまして、十分に対処できなかった事情、あるいは財政の黒字による償還とか、あるいは借りかえで対処するというふうな運用でやった方が、財政の運営として効率的と申しますか、お金を積んでおくよりはそのときどきに対処した方がいいと、こういう考え方もあるようでございます。  なお、西ドイツとフランスにはそもそもこういう制度がございません。そういう考え方はないようでございます。
  66. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わが国の現在の減債制度ができたのは、できたというか、現在の制度がスタートしたのは、昭和四十二年であるとお聞きをしておるわけであります。四十二年の改正が現在まで続いておるわけでありますが、この四十二年の改正、現在の制度への改正ですね、この主眼はどこにあったのか、どういう背景のもとに行われたのか、まずこれを伺っておきます。
  67. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 四十年度の補正予算から再び一般会計の公債発行が始まったわけでございますが、その初年度の国会の御審議過程でこの問題が論議になりました。そこで、私どもはこれを財政制度審議会の御意見を伺う、財政制度審議会にお諮りをいたしました。  そのときの結論の要点をごく簡単に申し上げますと、公債償還については、基本的な考えさえ確立しておけば、あえてその額や方法を法定する必要はなく、むしろ財政運営の弾力性を確保する見地から、政府の運営にゆだねるのが適当であるという考え方も成り立つ。しかし、わが国の財政をめぐる政治的、社会的環境を考慮すると、全く年々の予算編成にゆだねるのでは、公債償還考え方そのものが没却されるおそれなしとしないので、やはりこれを制度として法定しておくことがいいんじゃないかという御結論でございました。  そして、その眼目は四つございまして、まず第一に、公債政策に対する国民の理解と信頼を得るためにもこういう仕組みがあった方がいいではないか。  第二に、これに繰り入れるために一定の額を先取りいたしますと、それだけ他の歳出に充て得る財源が制約されることになるので、財政の膨張、ひいては公債残高の累増に対する間接的な歯どめになるではないか。  第三に、償還が一時に来た場合に財政負担がその年に偏りますので、ある程度の一般財源を制度的に繰り入れることとすれば財政負担を平準化する効果が期待できる。  第四に、そうやって資金がたまりますと、国債の市価維持のために活用するとか、そういうことも考えられ、国債管理に役立つではないか。  この四点を眼目としてこういう仕組みを設けるのが適当であるという御結論をいただき、現在のような制度をつくったわけでございます。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回、この国債整理基金への繰り入れを一年間停止するわけでありますが、いまお話にありましたように、このような減債制度をつくる一つの目的は、国民の皆さんから安心をしてもらう、信頼をしてもらうと、こういう点にあったと思うんですね。確かにわが国も、あの戦時中、戦後、国債が紙切れになった。こういうことはございましたけれども、最近においては、金利が非常に上昇していくときに国債の金利が低くてなかなか発行できない、こういうこともございましたけれども、おおむね信頼を得てきているんじゃないかと思うんであります。しかし国債整理基金への繰り入れも結局できないということで、国民の信頼が非常に揺らいでくるというおそれがあると思うんです。  今回のこの処置について、財政制度審議会の報告書等も拝見いたしますと、公債政策に対する国民の信頼を維持するための処置をちゃんとやるべきではないかと。「政府は、こうした無用な誤解が生ずるのを避けるため、五十七年度の定率繰入れを停止しても公債償還には支障がなく、満期到来債の保有者には従来どおり全額現金で償還が行われることを、国民に対して明確にすることが望ましいと考える。」と、こういうように言っておる。私もそのとおりだと思うんですがね。  ただ、ここで、当委員会でこれは心配ありませんというだけでいいのかというと、そういうわけにはいかぬ。何らかの国債に対する国民の信頼というものを揺るがせない処置を考えなくちゃいけないと思うんですよね。こういう点、何か考えていますか、具体的に。
  69. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 国債に対する信頼と申しますと、先ほども大臣からお話がございましたように、まずやっぱり財政の再建をできるだけ早くして、特例公債依存の体質から脱却をするということが基本であろうかと思いますが、そのために特例公債をできるだけ縮減しようと努力をしているところでございます。  五十七年度の補正で申しますと、この定率繰り入れをやりますと、どうしても特例公債の増発に結果としてなってしまうもんでございますから、やむなく停止をさしていただいているわけでございますが、今後ともこの基本的な制度をなくしてしまうということは考えていない。あくまでも一時的に停止をさしていただく、制度は維持していきたいと考えておりますし、また財政審の御指摘の提言につきましては、大臣の記者会見、その他あらゆるPRの機会にそういったことをお話しをいただくとか、そういうことで国民の理解を得たいと考えております。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねいたしますが、確かに早く財政再建をして、国債がどんどん減ってくる、こういうような状況になれば国民も安心できると思うんですがね。けれども、なかなかそういう状況にはならないわけで、またこの繰り入れ停止の処置も今年度限りで、来年度は繰り入れるんだということも、いまの段階ではなかなか約束できないんじゃないんでしょうか。五十八年度は必ずやる、今回の法案は五十七年度限りと。そういうことは断言できますか、いまの段階で。
  71. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは予算編成の最終段階に来ておる、そこで明確に申し上げるというのにはタイミングがやや適切でないとも思うんでありますが、要するに五十六年度に整理基金からお借りしたものを、五十八年は、当然のこととして、法律上お返ししなきゃならぬ。そういう時期でありますだけに、それに見合うとかいうような考え方じゃございませんが、五十八年同じ措置をやらしていただかなければならないのかなと。ならないのかなというよりも、やらざるを得ないだろうという考え方になっておるということを率直にこれは申し上げるべきであると思います。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから、われわれもそうだと思います、実際ね。だから、私はそれはそれでやむを得ないんじゃないかと思うんですが、それならば国民の皆さんに本当に信頼していただけるものは何かといえば、これは恐らく、この財政制度審議会の答申の中にも書いていますように、「将来における大量の公債償還にどのように対処するかについては、中長期的視点に立った検討が必要である」と。だから、来年無理をして国債整理基金への繰り入れはやると当初予算にはあっても、また補正で、ことしのように、見込み違いでしたということで繰り入れ停止を五十八年度も行うと。こういうような計画見通しの悪さでは、国民の信頼も非常になくなってくるんじゃないかと思うんですね。そういう意味では、先ほどから申しましたように、財政再建の中長期的な計画を、しかも政府としての責任のある、余りしょっちゅう変わるような計画ではなしに、本当に実現可能であり、また必ず実現していく、そういう計画をぜひつくって、そうして国債に対する国民の信頼を崩さないように政府としても努力をしていただきたい、このことを要望しておきます。  この制度につきましては、実際現在のような特例公債を発行しているときに償還財源を積み立てるということは、結局はそれだけ特例公債の発行がふえる、それはまた将来の償還のための財源を利子を支払って蓄えるということで非常に不合理であるという、こういうような意見もあるわけでありますが、しかし大蔵省としては、この制度については今後とも維持する、あくまでも繰り入れ停止という処置は臨時異例の処置であって、この制度は維持していく方向であると。このように理解してよろしいのかどうか、これを伺っておきます。
  73. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま、いみじくもおっしゃいましたように、きょうまで私は、臨時異例の措置として五十七年度この措置をとらしていただいた、こういう御説明を申し上げておるわけですね。そうすると、いま、塩出さんの御質問に対して、五十八年も同じような措置をとらざるを得ないと、私はこう申しました。  そうすると、臨時異例というものは、一遍は臨時異例ですが、二度になると、臨時異例というこれは、私ども政府当局でもある種のマンネリズムあるいは惰性、そういうものが確かに生じてくると思うんです。強いてその惰性をどこで歯どめしておるかということを考えると、特例公債というものはイージーに出すべきものでないという考え方から、とにかく毎年毎年法律を出しておる。したがって、今度の場合も、ことし一年です、今度は五十八年度にもということで、毎年毎年この法律を出して、当分の間とか、何カ年間とか言わないその姿勢が内に対する一つの戒めの姿勢ではないかと、こういうような考え方を自分なりに自問自答しておるところでございます。  したがって、確かにこの減債基金制度というものは、これはそもそも公債政策を始めまして、それを会社のバランスシートのごとく見てみますと、償還とそして新たなる借り入れあるいは公債とを比べてみると、ある意味においては、新しい公債は、結果として、バランスシートで見る限りにおいては、償還のための財源としてそれを調達しておる。こういうことが、バランスシートを見るとそう感じられてくる。それは公債政策というものの一番大きな基本的な矛盾だと思うんであります。  したがって、私は、いろんな事情がございましても、この減債制度というものはやっぱり維持していくべきものだと。まさに五十七年にやらしていただきたいといまお願いしているわけです。五十八年もやらざるを得ませんと、こう申し上げておる。その二つの問題を考えながら、みずからイージーになってはいかぬなと。そうすると、減債基金制度そのものは、これは堅持すべきものだという考え方に立って率直な感想を披瀝いたしたわけであります。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 政府は、五十六年度の赤字決算の処理に当たりまして、国債整理基金から二兆二千五百億円を借り入れたわけであります。今回また一兆一千九百八十四億円の繰り入れを停止し、五十八年度もどうも繰り入れ停止の方向である。そういうことになりますと、国債整理基金についてのこういう一連の処置は現在の減債基金制度を根幹から覆すことになると思うのでありますが、今後、いわゆる減債基金に積み立てて、そうして償還の財源を平準化していくという考え方が非常に崩れてくると思うんてありますが、政府としては、今後の国債償還というものはどういう見通しであるのか。いまさっきの御答弁では、昭和六十年ごろまではあるようでありますが、それから以後はもう財源がなくなりますと。結局、諸外国と同じように、減債基金なしで償還を行う、そういうことを考えておるのかどうか、その点はどうですか。
  75. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いま御指摘がございましたように、減債基金制度は維持する、こう申しました。そこで、五十八年度予算編成に当たって、一つの素人考えとして、五十六年お借りしたものを返さない、延期するための法律案というものを出したらどうか、こういうことも考えられる一つの方法ではある。しかし借りたものは返すという法律に基づいて、まずその行為だけは行うべきだ、こういう結論に達しまして、五十六年はお借りしたものはお返ししようということで、予算編成の作業の終局を迎えつつあるという状態であります。そこで借りたものだけは返すというだけの姿勢はとった。繰り入れるものは五十八年もひとつ勘弁願おう。そういうある種の選択、異質な問題でございますが、国債整理基金というそのものの金の出入りからすれば、ある種の選択というものが結局そういう結論になったということであります。  したがって、先ほど来の議論のように、まずある間はいい、しかしなくなったらどうするか。それは直ちに一般財源で全部いわゆる税収等でやるのか。またはその返すための借換債の問題が先ほども議論になっておりましたが、これは個人個人に渡るものを借りかえるわけではございませんけれども、そういう問題も、いま念頭にあるわけではございませんが、中長期の場合に議論としては出てくるかもしらぬ。  結局、これは中長期の視点を眺めながら本当に各方面の意見を聞いて、その大量償還の始まります時期をめどに、この中長期の考え方で償還方法というのは話を詰めていかなきゃならぬ問題だ。いま直ちに特別な新しい新税をもって充てるべきものですとか、あるいは借換債でやるべきものですとか、そういうことを言う段階にはもとよりありませんが、したがって、当面はどうするか。やっぱり発行そのものを減額して姿勢を示すところから始めるべきだというのがいまの率直な心境であります。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今年二月大蔵省が明らかにいたしました「国債整理基金資金繰り状況についての仮定計算」によりますと、負担平準化のための予算繰り入れを行わない限り基金余裕金残高は六十二年度でゼロになるわけでありますが、ところが、先ほど申しましたように、繰り入れ停止、そういうようなことになりますと、また昨年の一般会計へのこの赤字分の穴埋めに回すと、こういうようなことになりますと、六十二年度余裕金ゼロはもっと早い時期に到来するんではないか、このように思うわけであります。  したがって、今回一兆二千億の繰り入れ停止を行うということでありますならば、当然この資金計画と申しますか、国債整理基金資金繰り状況がどのようなことになるのか、これを私は当委員会にも資料として提出すべきである、このように思うわけでありますが、政府の見解はどうですか。
  77. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) この二月にお出しをいたしました仮定計算は三つ変わる要素がございます。第一は、五十六年度の穴埋めのために決算調整資金へ二兆二千五百億円ほど繰り入れたことによる余裕金残高の運用できる部分が減りますので、運用益が減るという影響でございます。第二は、補正予算国債追加発行いたしました、三兆九千億円ほど発行いたしました。そのために、定率繰り入れとして増加する額が将来ふえてまいります。第三に、今回の定率繰り入れの停止によって余裕金残高が減る。この三つ大きく減る要素がございます。  これにつきましては、ごく概算をいたしますと、大体六十一年度末まで余裕金残高があるというそのことは変わりございません。お出しした資料によりますと、六十一年度末に二兆九千九百億円の残高が残ることになっておりますが、試算いたしますと、大体これが一兆四千億円ほどになります。額は減りますが、残高はこの年までもつということは同じでございます。六十二年度末にはゼロになる、こういうことでございます。  また、国債を今回追加発行いたしますことによって、将来、五十八年度以降六百億円ほど定率繰り入れが毎年増加をいたします。また余裕金残高が落ちることによりまして、運用益が毎年度千億円ぐらい減る要素がございます。  いずれにしても、五十八年度予算の編成にかかっておりますので、この五十八年度予算の結果をも取り入れまして、来年度の予算編成の御審議に間に合うように、改めてきちんとした計算をお出しをさしていただくということにさしていただきたいと思います。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 近い将来基金残高がゼロになった場合、国債償還と利子の支払いは、国債整理基金を素通りして、実質的には一般会計の国債費という形となり、国債償還がピークとなる昭和六十五年度について見ますと、現金償還額八兆三千七百億円、利子支払い費九兆円、合計十七兆三千七百億円、こういうように上ると解釈していいのかどうか。
  79. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 大まかな傾向としてはそうでございますが、五十八年度にまた国債を出したりいたしますので、その結果また若干数字は動いてくると思いますが、まあそういった程度の大きな額であるという事実は変わりございません。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、これは最後の質問でございますが、将来の国債費は、本年二月段階での政府資料によるものでありまして、いまお話がありましたように、今回の補正による三兆九千五十億円の増発分は計算に入っていないわけであります。  さて、近い将来天文学的数値に達する国債償還について、大きくのしかかっているのは赤字国債償還であります。赤字国債については、特例法によって借換債を発行しないことが明記されておるわけですが、巷間、借換債発行に追い込まれる羽目に陥ることは間違いない、このように言われておるわけであります。  大蔵大臣にお尋ねをしたいわけでありますが、赤字国債の借りかえはしないという方針を堅持し続ける考えであるのかどうか。また、借りかえないのであるならば、乏しい財源の中から膨大な償還財源をどのようにして調達していくのか、その方途を明らかにしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  81. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、一つの問題でございますが、法の示すごとく、赤字国債の借りかえということはしないという方針を貫いていきたい。で、塩出委員は、さようしからば、あるいは日銀引き受けでも考えてもいるのではないか、こういうようなお考えの上に立っての御質疑かとも思うんでありますが、財政法五条の定めによって、これは守っていくべき根幹であるというふうに思っております。  されば、いかなる財源をもってこれに充てるかという具体的な計画を示せと言われますと、結局、まず歳出の削減等をやりまして、当面赤字国債の発行額を抑えていくということ、そして、それでもなお国民の行政需要というものを現段階のままに維持すべきであるという場合には、それは受益と負担との関係において最終的には国民の選択するところとなるんではないか。こういうふうに考えておりますが、いま、それらの償還財源というものを念頭に置きながら、それに対して新たなる税目を設けてそれに充てようというような考えは、今日ございません。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 終わります。
  83. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 午後一時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ─────・─────    午後一時四十二分開会
  84. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) ただいまから大蔵委員会再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 午前中の質疑の中で、現在の総合的な減債制度を守っていく、こういう御発言がございました。この制度ができた当初には想定されていなかった特例公債の発行、現段階でこれについても守っていくのが相当だということでいままでやってきたと思うんです。私は、それを守っていくということは、単なる口だけではなくて、政府の基本的な方針としてしっかり守っていくという、そういう決意があると思うんですが、その辺はどうですか。
  86. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのとおり御理解いただいて結構です。
  87. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 問題は、午前中も指摘されておりましたけれども、百分の一・六の繰り入れだけでは早晩これは大変な事態になるだろう。このことはいままでの国会でも毎回指摘をされてきた点であります。それに対して大蔵省の方の答弁としては、そのような事態にならない努力をすべきで、五十九年度までに特例公債からぜひとも脱却したい、こういうことを繰り返して述べてまいりました。  それに対しては、それは単なる願望で、具体的な対策や措置がないではないか。これは午前中も指摘されておりましたけれども、そのことはいままでも繰り返し指摘をされてきた点であります。それに対して、今後の問題は別として、これは五十九年までに特例公債から脱却した後に直ちに予算繰り入れができるよういまから検討を続けていきたいというのが、これがいままでの回会の答弁なんです。  そうなりますと、私は、実際にそういう対策を立てたのではないか、こう思うんですが、その点はどうですか、具体的にその辺の対策、方策。
  88. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 従来のお話でございますが、中期展望は六十年度までの試算を一応しておりまして、その先まで実はまだ具体的に数字をはじいておりません。したがって、そういう方針として申し上げていただけで、具体的にこうするというところまでは言っておりませんでした。
  89. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 ですから、一つの試算であって、端的に言えば、一つの願望でもあったと思うんです。  ですから、要するに、いままでここ何年か三〇%もの国債の発行を続けてきたということは大蔵省としては、返す方策も具体的にはないまま借金を続けて、それが雪だるま式になっていまに至っている、こう指摘をせざるを得ないわけです。そうしますと、これではサラ金地獄に落ち込んで夜逃げや自殺に追い込まれているサラ金被害者、いまその法案は当委員会に継続していますけれども、それと余り実態変わらぬじゃないか。実際そういう状況だったんじゃないかと思いますけれども、その辺についてはどうですか。
  90. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 中期展望の税収がもしあのとおりに、大体従来はその路線に乗っておりましたが、五十六年度からギャップが生じました。そういった世界経済の低迷とか、いろんな事情でそういうふうにならなければ、大体五十九年度から特例公債脱却という路線に乗って、歳出削減等の努力は軌道に乗っていたわけでございますから、おっしゃるようなことではなかったと思います。
  91. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 外国のせいによくするので、そうするなということは、たとえば本会議なんかの不規則発言でもよく出ているところだと思うんですね。  それで、問題は、これは五十五年四月十八日の大蔵委員会でわが党の佐藤昭夫委員が、具体的にこういう状況から脱却するための方策を二つ提起しています。  一つはいま言った百分の一・六の繰り入れ率をもっと高率にすべきではないか、それから第二点は国債償還財源に揮発油税を特定したらどうか、こういう提案をいたしました。  このときの大蔵大臣竹下さんでありまして、大臣としてこの提起をどのように検討いたしましたか。
  92. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 確かに百分の一・六は建設公債しか出していなかったころの率でございまして、その後特例公債を出すようになってこれをどうするかということは、財政制度審議会でも議論がございまして、特例公債を出しながら特例公債でこういうものを積んでいくのはどうかというふうな御議論も当時ありました。しかし国債償還制度の維持という点から、基本的には当分継続すべきだそのままで継続すべきだという御意見をいただいて、私どももそうしてまいったわけでございます。  ガソリン税の問題もございますが、しかし国債発行というのはいわば税金の先取りみたいなものでございますから、返すときはやはり一般財源で返すべきものであろうと思います。
  93. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 このときの竹下大蔵大臣の答弁を見てみますと、特定財源の問題、「実は私もいま初めて聞いた議論です。したがって、やはりそれが著しく奇想天外なものでない限り、それなりのことを素直に税制調査会へまとめて報告すべき課題であるというふうには、理解をさしていただいております」と。  この佐藤委員提案は奇想天外だったんでしょうか。いまの答弁ですと、全くこれはもう議論の余地もなく、税調で言うまでもなく却下されてしまったような感じですけれども大臣として、せっかくの具体的提案をどのように検討し、措置されたのか。二年前ですけれども、ひとつ思い起こして御答弁いただきたいと思います。
  94. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 奇想天外という表現、要するに特定財源でございますから、特定財源を新たなる特定財源にするという意味においてはある種の奇想天外のような感じで聞いておったことは事実であります。  ただ、私が税制調査会へ報告すると申しましたのは、税制調査会というのは常置されておって、それが奇想天外だと仮に思いましても、国権の最高機関たる国会議論された問題だけは少なくとも、こういう問題が議論されましたという報告は絶えずすべきである、こういう精神で今日まで来ているわけです。  本質的に言って、一般財源で返すべきものを新たなる特定財源をもって振りかえる、こういうことで問答しましたのは、それは漏れなく報告いたします。それが特別の議題には上がらなかったんじゃないかなと、こう思っております。
  95. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私がお聞きしたいのは、この問題になりますと、結局、返すことも大事だけれども、大事なのは借りないことだ、だから借りるのを少なくしていくんだと、こういう議論にこれはずっと前からなるんですよ。大平さんの時代にもそういう質問をしますと、そういう答弁になり、そして五十五年のときにも結局はそういう答弁が基本なんです。しかし、それでは結局国債発行残高が減らないじゃないか、ますます雪だるま式にふえていくんじゃないか、よほどの決意で返すことを考えなきゃだめではないかということで、一つ具体的な提起があるわけですね。  そうなりますと、特定財減の話は、私は不満ありますけれども、それはそれでわかりましたけれども、もう少し高率の繰り入れをすべきじゃないか。これは実際どのような検討をし、そしてどうしてそれがいまだに採用されていないのか。この辺はどうですか。
  96. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) たとえば参議院のこの大蔵委員会の御審議の場でも、特例公債は十年で返すんだから、その分は十分の一ずつ積むべきではないかというふうな御議論がございました。しかし特例公債を発行していて、できるだけこれを減らしていこうというときに、その率を高めますと、結果的にはそれだけ特例公債の増発にならざるを得ませんので、いまのは総合的減債制度でございますので、何とかいまの制度でやってまいりたい、またそうした方がいいんじゃないかという財政審の御答申もいただいておりますので、特に率を上げることは考えていないわけでございます。
  97. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 次の問題に入りますが、来年度の問題で、午前中の質疑にあったのですが、私ちょっと公選法特別委員会に出ておりましたので、正確に聞いていないので確認いたします。  来年度の定率繰り入れは、決算調整資金からの返済の方を結局は優先させるということになって、来年度の繰り入れはやはりむずかしかろうとこういうことに結果的にはなるわけですか。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 結果的にはそのとおりでございます。
  99. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 それはそうですね、制度的に言えば、決算調整資金からの返済の方が順序的には優先すべきだろうと思いますね。しかし、ここでまた私は来年度も税収不足が起きる可能性もあるんじゃないかと思うんです。よく政府の見込みは狂いますから、その場合またこれを借りるわけですね。恐らくそうなると思います。そうすると、結局税収不足が起きた場合にはそうなるんで、実質的には二年連続定率繰り入れ停止となりますと、そこだけが残ってしまって、みんなが心配するのは、それが常態化してしまうんではないかと。そうなりますと、では五十九年度は絶対しない、こういう断言が本当にできるのかどうか。その点はどうなんですか。
  100. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私が申しましたように、法律そのものを一年一年御審議いただくというのは、臨時異常な措置であるぞよ、法案の提出者である政府自体もそういう認識の上に立つべきだと、こういうことで当分の間なんということはしないわけですよね。したがいまして、五十八年もここの委員会でまた御審議いただくわけでございますが、まさに常態化しないという形での御答弁を申し上げることになろうと思います。  五十九年をどうするか、こういう問題につきましては、いまのところそれを三度目やるということは念頭にはございません。
  101. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 その答弁はどうもたてまえ上の答弁で、いまそんなことを言えないから言っているんだけれども、しかしそのときになってみなきゃわからないというようなことで、断じてしない、こういう決意があるのかどうか、これをちょっと疑わしく思うんですね。  というのは、やっぱりずっと前からそうなんです。これは昭和五十年に当時剰余金がかなり出ましたね。二分の一を五分の一にしてくれということで、そのとき私、指摘したんだけれども、まず返すことを先にやったらどうかと言ったら、これはそのときの異例特例の措置でございますので何とかそれをと。結果的に数字を合わせれば同じなんですよと、出て行く関係からいいますとね。そういうようなことで、返すことを怠ってしまったわけです。  しかし、それで新しく借りる方を抑えりゃいいんだけれども、逆にそれからふえてきたわけでしょう。そしてまたこういう事態が起きてきて、また特例の措置でございますというと、特例がしょっちゅう出てきますね。われわれから見ますと、特例がどうも常態化してしまうんではないか。いまの大蔵大臣の答弁も、どうもたてまえ上そう言っているにすぎないんだと思うんですけれども、これはむしろ逆に決意のほどを伺わしてほしいと思うんです。
  102. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは来年度の経済見通しを一応三・四%に置こうということで、それを基礎とするのみでなく、もろもろの積み上げ方式で税収見込みというものは立てておるわけですから、来年度の予算審議をいただくときに、税収の不足があるかもしれませんと言うことは、それはできませんが、いわばまさに臨時異例の措置であるから、五十九年にまたやりますというようなことのないようにしろという御叱正に対しては、私の決意も委員のお考えと同じでありますと、こういうふうにお答えいたします。
  103. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 このことは特例債の借りかえ問題についても、これは先ほどそういったことはしないと言うんですが、私はこれも、なってみなきゃわからぬという問題だって、大臣の頭のどこかにはあるんではないかと思うんですね。そういう場合、この場合には制度的に違うんだ、断じてやらないと、それはそう断言してしかるべきだと思うんですが、先ほどの午前中の答弁では、いたしませんと、あるいは日銀の引き受けなんというようなことも含めて、いたしませんというような答弁でしたけれども、私はこれはもっと強い大臣の決意表明があってしかるべきだ、特にこの特例公債の借りかえ問題ではそうだと思うんですが、どうでしょうか。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私の決意は御指摘のとおりであります。私の答弁のトーンが幾らか弱いじゃないかと。私は元来やさしい言葉を使いますのでね。  各方面で借りかえもやむないじゃないかとかいう意見のあることも承知しております。それがかなり見識のある人の意見の中にもある。しかしながら、そういう意見があるからといって、それを念頭に置いて事を処するべきではない。だから決意を示せとおっしゃれば、委員指摘のとおりの決意で臨みますと。大きな声を出せとおっしゃいましても、その点は元来やわらかい調子でございますので、御了解いただきたいと思います。
  105. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 別にでかい声を出せと申したわけではないんですけれども、やさしい声でも結構です。  同時に、大臣は大変な練達の政治家である。ということは、よく言えば練達の政治家で、逆に悪く言えば別の意味もこれは含まれておりましてね。やさしい言葉で言って、あとどうなるのか、こういう意味も私はちょっと持っておるんですね。ですから、そういう点で、特に強い決意をここで表明されたということで私は伺っておきたいと思います。  次に、先日答申のあった五十八年度の税制改正に関する政府税調の答申に関して伺います。  その中で、今後の問題について、「当調査会は、既に昭和五十五年十一月の「財政体質を改善するために税制上とるべき方策についての答申」において、税負担及び税体系のあり方について幅広く検討する必要がある旨の指摘を行っているところであるが、今や、こうした観点からの税制の基本的な見直しは避けて通れない喫緊の検討課題となっている」という点がございますね。これを私は大臣としてどう受けとめているかという点をお聞きしたいんです。  問題は、この中期答申、そこでは課税ベースの広い間接税の導入ということを言っているわけですから、今回の政府税調答申も、事実上この立場に立って、政府に五十九年度大型間接税導入を求めたものと見るのが私は素直な見方だと思うんです。大臣はこれをどう受けとめているのか。要するに五十九年度以降ですね、大型間接税を導入するように大蔵省政府に求めておるのかどうか、その点いかがですか。
  106. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 大臣の御答弁の前に、ただいま御指摘のように、先ごろちょうだいいたしました税制調査会の答申では、いま委員が御指摘になった点と、もう一カ所触れておられるところがございます。それは、五十八年度においては所得税減税は見送らざるを得ないというふうに方向が出ておるわけでございますが、それに関連いたしまして、五十九年度以降できるだけ早期に所得税の課税最低限や税率構造等について抜本的な検討を行う必要があるという御指摘がございますが、その抜本的な検討を行う際には、税制全体の見直しを行う中で所得税の見直しを行えと。こういうふうに二カ所将来の検討方向についての指摘があるわけでございます。  この点につきましては、これも事実関係として御紹介申し上げるわけでございますが、この答申を総理にお届けになった後、小倉税制調査会長が記者会見をされました。そこで、公式の記者会見の場で、税制調査会長はこれらの点に触れられまして、来年通常国会が終わった後できるだけ早い機会にこれの専門の委員会なり特別部会というものをつくって、秋ごろまでに中長期的な税制の姿を、税調としての考え方をまとめたいというふうにおっしゃっておりました。  いずれにいたしましても、この答申をまとめられる過程でわれわれ事務当局はずっと審議を伺ってきたわけでございますが、具体的にいま近藤委員がおっしゃいましたような新しい間接税を念頭において、つまりそれの方向を念頭に置いてこの文章はでき上がったわけではない。むしろもっと税体系全体を一切の予断なく原点に立ち戻ってもう一度見直すんだ。その場合に、五十五年に出ました中期答申でございますね、これも一つ考え方であるかもしれないというふうな取り上げ方で進められたというふうに私どもは見ておるわけでございます。
  107. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 全体的に抜本的見直しをするということは、確かにそのとおりだと思うんですね。しかし言葉としては、ここはそれなりに完結した文章でして、ここを読む限りは、大蔵省にこのことを求めていると、私はこう見ざるを得ないわけです。片や、これは大臣自身、増税なき財政再建をうたった臨調基本答申にこの中期答申は沿ったものだと、こういうことを述べておるわけです。そうなりますと、ここで大型間接税導入というものが重要な要素を占めてくるわけですね。どうしてもそれが消え去るわけにはいかないわけです。ですから、そのようなものとしてもそのことを考えておられるのかどうか、大臣として、いかがですか。
  108. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私が前回大蔵大臣を務めておりましたときには、中期答申に基づいていわゆる一般消費税(仮称)というようなものが議論の中心であったわけです。もろもろの問答を重ねながら、結局国会の決議がありまして、財政再建というものは緊要なものであるが、しかしながらそれにはいわゆる一般消費税(仮称)の手法等をとることなく、歳入歳出両面から真剣に検討しろという趣旨の御決議を両院で賜っているわけですね。したがって、その精神は今日生きておると、私はこう思うんであります。  ただ、そのころ直間比率の見直しという議論がときたま出ました。ところが、直間比率の見直しとは即大型新税と言われたいわゆる一般消費税(仮称)そのものにつながった。したがってある種のタブーみたいな環境にあったとも思うんです。しかしながら、その後の世論の推移から見ますと、直間比率の見直しというのは、これは先進諸国等に比べた場合、議論の場に乗っけるべきであると、こういう環境がそれなりに私は熟してきておると思うんであります。  そういう意味において、私は、当時は精いっぱい、消費税全部を否定されちゃかなわぬというので、いわゆる一般消費税(仮称)の手法はとりません、しかし消費一般にかかる税制そのものを否定するものではないと、学説でもってそこのところだけをガードさしていただいたような、振り返ってみればそんな印象があるわけです。したがって、これが議論の場に上って、そうしてそれが税調答申等の中でも指摘されてくれば一層のこと、われわれ大蔵当局自体としてもそれは検討を真剣にすべき問題である。ただ、これを直接大型、中型、新型と言うのも、これもまた比較対照の問題でございますけれども、かつて念頭に置いた一般消費税(仮称)という手法につながるものであるというふうには私は理解をいたしておりません。
  109. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 聞いておると、何かタブーがいつの間にかぐにゃぐにゃぐにゃと崩れてしまうような、そんな感じを受けるので、大変遺憾であるということを表明します。  時間が参りましたので、あともう一点。  先ほど梅澤さんが指摘された答申の中で、所得減税問題ですが、所得減税でいろんな考えがある、景気対策上も必要だという意見もあるけれども、これこれしかじかでやらないということになっていまして、私はこれを見まして、本当に景気対策上真剣に考えたのかどうかということを心配せざるを得ないんです。特にその後の新聞報道でも、実質増税になっていまして、ふえた賃金比率よりも増税やその他の負担率が多いということは、これはもうどのような計算をしても明らかに出てくるわけですので、そういう点で消費不況との関係で本当に真剣に考えたかどうか、その点だけ答弁していただいて、質問を終わります。
  110. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは消費不況というものに減税政策というものが結びついていく、これは私も理解できます。大ざっぱに言って、アメリカ式景気浮揚と言えば減税、日本景気浮揚と言えば公共事業の増額。一つの歴史的経過の中に、大ざっぱに分けて、そういう感じというのはあったと思うんです。  そこへもってきて、日本人の場合、貯蓄性志向が非常に強い。しかも物価も世界でずば抜けて一番安定しておる。そういうことになると、減税効果というものが、人の心情に与える問題は別として、単なる具体的な事象として減税と消費とを結びつけた場合一体どれだけの効果というものがあるだろうか。もちろん、ないと申すわけじゃありません。そういう議論もいたしました。  しかしこの所得税減税を見送らざるを得ないというのは、それはいま厳しい財政事情のもとにあって、従来私の五十四年以来その言葉だけ変わっておりませんのは、財政再建めどがつくことと、そしてそれに当たるべき財源がめっかるということがないと減税はできない、こういうことを言ってきておるわけですね。  しかし、それではといって、私も当時党の責任者の一人でありましたが、税制小委員会等で取り上げられ、また本院で当時植木予算委員長の発言があって、それからまた議長が各党の会長をお呼びになって、そしてその問題も含んで各党でこれから協議したまえと、こういうようなお達しもあった。そういうことがありますので、むしろそういう客観的な場において議論が続けられることに対しては、政府としてはそれに直ちに尊重して従いますと、こういう立場をとってきた。不幸にしてきのう何かパアになったと、こういう話でございますが、それを来国会でもまたつくっていただいた方がいいとか悪いとかというふうになりますと、党の中のその折衝の責任者であった私の立場が現在大蔵大臣になっておりますので、つくった方がいいとか悪いとか言うのは、これは院に対して非礼ですから申しませんけれども、そういうものが残っておった方がよかったかなという私的な印象は今日なおございます。
  111. 柄谷道一

    柄谷道一君 最初はきわめて初歩的な質問でございますが、国債整理基金特別会計法第二条の第二項によりまして、国債の元本償還資金として前年度の国債残高の百分の一・六に相当する額を繰り入れる、こうしてあります根拠は、建設国債の見合いの資産の平均的な効用発揮期間を六十年と見て、国債の最終的な償還を六十年を経過した段階で行うという考え方から、毎年度六十分の一、すなわち百分の一・六を繰り入れると、こういうふうにしたと解してよろしゅうございますか。
  112. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 建設国債の対象の資産にはいろいろなものがございますが、それを全体として考えますと、大体耐用年数が六十年でございます。ということから、いまおっしゃったとおり六十分の一を定めたわけでございます。
  113. 柄谷道一

    柄谷道一君 次の確認でございますが、定率繰り入れの機能でございます。  一つには国債償還を保障して国債政策に関する国民の信頼を確保すること。第二には償還に伴う財政負担を平準化すること。第三に国債の繰り上げ償還により国債の市価の維持に活用できること。第四に一般財源から一定の額が先取りされるわけでございますから、これによって他の支出に充て得る財源が制約されるために、財源の膨張、ひいては国債残高の累増に対する間接的な歯どめとして働き、結果として財政節度を保つのに役立つ。  以上、大きく述べますと、四つの機能が挙げられると思いますが、この認識は間違いございませんか。
  114. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 四十一年の十二月二十六日にいただきました財政制度審議会の減債制度についての報告にその四点が掲げられておりますし、私どももそのように考えております。
  115. 柄谷道一

    柄谷道一君 いままで二つ確認いたしました事項からして、今回の措置は、減債基金制度の根本を揺るがすものであることは、これは明らかであろうと思います。定率繰り入れを停止しますと、目先の財政の苦しさは確かに一時的にしのげます。しかし昭和六十年度以降は、ただいままでの質問でも明らかにされましたように、巨額の償還財源の予算繰り入れが必要になることは明らかでございます。  そこで、この定率繰り入れの停止は、問題を先送りして将来に禍根を残すいわば苦肉の策である。財政がいかに背に腹はかえられないとしても、これは基本的にはとるべき手法ではない、こう認識するものでございますが、いかがでございますか。
  116. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) あくまでも臨時異例の措置だと考えております。
  117. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣にお伺いいたしますが、あくまでも臨時異例の措置といま御答弁がございました。  ところが、大臣は、この十一月二十七日の記者会見、これは新聞で拝見したわけでございますが、定率繰り入れの本年度の停止については、臨時国会法律改正案を提出するけれども、来年度以降については整理基金からの借入分を含めていま財政制度審議会で検討してもらっておると。ここまではいいですが、後に続いているんですね。毎年毎年の法律改正で乗り切っていかざるを得ないのではないだろうか、こう述べられたと報道されているわけでございます。  この報道記事が正しいとするならば、五十八年度以降もこの特例措置は続くということの可能性がきわめて強いことを示唆されたと受け取らざるを得ません。現に、本日の答弁で、五十八年度も特例措置は続けざるを得ないであろう、こう言われたわけです。  異例というのは、一年が異例でございまして、二年続くと果たして異例と言えるかどうか。これは通例になってしまうわけでございますが、五十九年度以降、ただいま同僚議員の質問で決意は述べられたんですが、その確信には触れられなかったわけですね。仮に三年以上もこれが続くということになりますと、答弁の上では減債制度は堅持する、こう言いましても、それは言葉だけで、少なくとも減債制度というものは形骸化いたしまして、決して臨時異例の措置とは言えないという事態になる、こう思われるわけでございます。五十九年度以降の方向について、再度確信を含めてお答えをいただきたい。
  118. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、いま新聞記者会見の御指摘がございましたが、本委員会でも申しましたように、五十七年まさに臨時異例の措置である、そうして五十八年に対しましては、その当時大変悩んでおりました。  それは申すまでもなく、五十六年のときにお借りしたのを少なくとも返すというのがまず先ではないだろうか、国債整理基金という箱そのものを対象にいたしました場合。そうすると、いろいろな関係で財源不足の場合、仮に国債整理基金というものを念頭に置いて考えれば、やはりまず返すのが先だというふうな考え方に結論としては到達いたしまして、したがって、きょうこれから最終的な詰めに入るわけでございますが、予算の歳入の中身の中に五十八年も定率繰り入れは停止させていただきたい、五十六年度の分はこれは返させていただく、こういう編成方針にいまなったわけであります。  で、一年一年国会でと申しましたのは、異例の措置というのは、当分の間というような感じでやるべきものではなく、あくまでも一年一年国会審議を経てやるべきものであるという精神が貫かれなきゃならぬという意味で申しました。しかし、御指摘のように、そもそも特例公債も毎年やっておるんですから、これが毎年続くと異例が通例になる、常態化する、この議論は私もわからぬわけじゃございません。したがって、五十九年以降の問題、こうしたことは過去においても随時とられたことはあるにいたしましても、これはやらない、こういう決意で臨まなければならぬと思っております。
  119. 柄谷道一

    柄谷道一君 内閣のこの異例という言葉がなかなかわからないんですね。私、たとえば昨年も鈴木前総理に対して、人事院勧告を完全実施できなかったことに対して質問しましたところ、今年限りの異例の措置である、来年はどうですかと言ったら、尊重する、こう言われたんですが、ことしもまたその異例が続いた。今回の繰り入れ停止も、よもや五十九年度に再び政府がこれを出してこられることはあるまい、こう私は信じておきたいと思います。一方的な信じ方になるかどうか、これは政府の姿勢を見守りたい、こう思います。大臣の決意はわかりました。  そこで、予算委員会提出されました「定率繰入等の停止に伴う財政事情展望」、これの仮定試算というものを詳細に分析さしていただきました。本日は質問時間が短いので、その内容に触れることは避けたいと思いますが、読めば読むほど、私の得ました分析結果は、今回の措置は、当面の財政の苦しさはこれによってしのげるが、しかし六十一年、六十二年度以降にこの負担を先送りしたということであって、本質的には財政再建に何ら寄与するものではない、こう読み取るほかはないと思いますが、そのような認識で間違いございませんね。
  120. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 将来、予算繰り入れが増加するという意味では、そういうふうに見ることも可能かと思いますが、ただ、ことしこの定率繰り入れを続けようとしますと、特例公債の増発という結果にならざるを得ないという意味ではやはり負担の先送り。ことしまた新たな特例公債を増加すれば、それもまた負担が先にくるわけでございますから、私どもは必ずしもそういうふうには考えていないわけでございます。
  121. 柄谷道一

    柄谷道一君 じゃ問題の視点を変えて大臣に御質問いたします。  昭和五十四年の十二月十九日、財政制度審議会が報告を提出いたしております。その中には、「既発行の特例公債償還財源を確保するために、現行制度以上の積立てを行うべきであるとする意見」と、「少しでも特例公債の発行額を縮減すべき時に多額の特例公債を発行しつつ将来の償還に備えて国債整理基金に財源を積み立てておくことは不合理であり、現行の減債制度を見直すべきであるとする意見」、この両論が併記された後、その結論として、「両者の考え方には、それぞれ一応の理由があるとはいえ、これらを含めて前述したような本制度を設けた各種の事情をも総合勘案すれば、基本的には現行の減債制度の仕組みはこれを維持するのが適当であろう。」、こう結んでいるわけでございます。  この財政審報告の考え方は、今後とも政府は堅持していかれますか。
  122. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 大臣の御答弁の前にちょっと説明をさしていただきますと、五十四年の答申のときに、実は財政審の中で大議論がございまして、なかなかまとめられなかったわけでございますが、それはいま御指摘のような二つの意見がございました。そこで、いわばその折衷案として「基本的には」という文言で両者の御意見の折衷が図られたわけでございます。  それはそのとき、五十九年度までに特例公債から脱却するという政府の決意を背景として、いつまでも特例公債をどんどん出していくわけではないんで、この制度を維持しつつ特例公債減額に努力する、それならば基本的にいまの制度を維持すべきではないか、こういうことでございました。今回この停止するに当たりまして、私どもはもう一度財政審にお諮りをしましたところ、この「基本的に」の文言をめぐりましてやはり非常な議論がございました。  そして、結局今日、本年十月二十七日の報告にございますように、「今後とも現行の制度は維持すべきものであるが、財政状況等により一時これを停止するなどの措置をとることもあながち否定されるべきものではない」という、そういう趣旨にこの「基本的」という言葉を解そうと。そこで、五十七年度の定率繰り入れを停止することは、「減債制度についてのこれまでの当審議会の考え方に反するものではないと考える。」と、わざわざ五十七年度の御答申と今回の御答申との関係について御議論がございまして、今回の御答申の中にそういうふうに触れられているわけでございます。
  123. 柄谷道一

    柄谷道一君 この二年にわたる答申を見まして、「基本的に」という解釈は、今回の財政審でただいま述べられたような見解に一致したと。しかし、それはあくまでも一時的にという例外異例の緊急避難の措置であって、これが通例として続くということまで容認する趣旨ではない、こう読み取るのが正しい読み方ではないかと、こう思うんですが、これは大臣そのとおりですね。
  124. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私もそのとおりであると理解しております。  それで、本院におきましても、いま柄谷さんおっしゃった問題、そして財政審で議論された問題等振り返ってみますと、赤字公債がゼロになるまでは、むしろそれは定率繰り入れ自体が矛盾ではないかというような議論やらずっときております。だから、そういうもろもろの議論が五十七年、そして今度は五十八年度予算の基礎となるべきその答申において逐次整理されておるというふうに理解しております。したがって、あくまでも臨時異例の措置であるという視点で私はこれをとらまえるべきであると思っておるんです。
  125. 柄谷道一

    柄谷道一君 臨調にちょっとお伺いしますが、いま臨調では予算編成のあり方を検討しておる臨調第二部会の第三分科会で、私の知るところでは、予算編成のあり方について、国債整理基金の取り崩しなど一時しのぎの緊急避難措置はとらない、第二には国債発行限度を定める、第三に国民に財政状況を正確に知らせる情報公開制度を確立する、この三点が中心となって議論され、おおむねその趣旨が臨調答申の中に盛り込まれるであろう、こう言われておるわけでございます。  政府定率繰り入れ等の停止などの一時しのぎを繰り返せば、国の歳出削減努力が不徹底になるというのが、いま臨調で議論されている考え方の根底にあるのではないか、こう私は理解しておるわけでございますが、臨調での検討の現況について、時間もございませんので、簡潔に御披露いただきたいと思います。
  126. 菊地徳彌

    説明員(菊地徳彌君) お答え申し上げます。  私どもの分科会、第二部会の第三分科会でございますが、ここで予算編成予算執行、それから財政投融資等のあり方につきまして検討しておることは事実でございます。ただ、まことに申しわけございませんが、目下審議の途上にございまして、一月の上旬をめど審議を集中的にやっている最中でございます。どっちの方向に向かっていくのかというのは、非常にまだ揺れておりますので、中身につきましてこういう方向であるということを申し上げる段階にないという点だけは御承知おきいただきたいと思います。
  127. 柄谷道一

    柄谷道一君 中曽根内閣の大きな目玉は臨調答申の尊重でございます。財政審と臨調の答申が食い違うのかどうか、ここらはまだわかりませんけれども大臣予算編成のあり方等に対する臨調答申が出ました場合は、これを尊重されますね。
  128. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはもちろん尊重すべきであると私自身思っております。  予算編成のあり方というのは、そもそもの議論は、私はいわゆる内閣機能の強化の視点からずっといろいろ議論されてきまして、そういう歴史的経過をいろいろ知った方がまた臨調でも御議論いただいているなと、こう見ておりますだけに、私どもがとてもそんなことはできるものじゃないというような答申が出るとは思ってもおりませんし、当然尊重すべきことであると思っております。
  129. 柄谷道一

    柄谷道一君 鈴木前総理が九月十六日の記者会見でこういうことを言っておられるんですね。各国の制度を見ても、現在定率繰り入れをしているのは日本だけで、西ドイツにはないし、米国でも実行されていない、こう述べていらっしゃるわけでございます。問題の本質を考えておられない逆立ちの論理ではないか、こう私は思うんです。  で、現行制度のいわゆる減債制度の機能は、冒頭質問して、おおむねそのとおりである、こうお答えになりました。いわばこういう制度が存在すること自体が健全なのでございます。ないこと自体が不健全と言わなければならない。  そこで私は、何も諸外国の財政制度が不健全であるということを披瀝して、わが国がその不健全さに見習う必要は毛頭ない、こう思うんですけれども大臣の率直な御所見いかがでございましょうか。
  130. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは財政立場からも、来月もございますが、先進国の蔵相会議というものが、こういう時代でございますから、頻繁に行われるんで、そういうときに私ども確かに見習うべき点もあると思うんでありますが、いま財政経済に果たした役割り等々から考えれば、率直に言って、そういう会議で印象として受けることは、日本に見習おうとして一生懸命でお聞きになる。ところが、一体私は教える資格があるだろうかと、こういう矛盾を感じながらいつでもそういう会議を過ごすわけであります。したがって、諸外国にない諸外国の問題をことごとく対象にして論議するという考え方には必ずしも立つ必要はないと私も思っております。
  131. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまの御答弁からしますと、鈴木前総理は何か思い違いをしてこういうことを言われたんではないかとしか受けとめられないわけですね。私はあくまでも今回の措置は、賛成反対にかかわらず、この制度は堅持するんだと言っておられるわけですから、現行のこの制度こそ健全な財政の姿である、しかし、ことしは何ともならないんだ、だから臨時異例の措置として承認してもらいたいというのが政府の姿勢で当然であるべきであって、外国がこんな制度をしていないから云々ということは、ちょっと問題の本質を踏み違えた御発言であるという印象を持っておることだけは、もう総理大臣やめられましたんで質問のしようがございませんが、指摘をいたしておきます。  そこで、ただいま次長の方から十月二十七日の財政審の答申の内容が披露されたわけでございますが、それが終わったその当日、財政審の桜田武会長が記者会見をしていらっしゃいます。その記者会見の中で、五十九年度までに赤字国債の発行をやめることが目安だったけれども日本財政が恐慌状態にあることを考えるとそうばかり言っておられない、赤字国債の借りかえ措置はやむを得ないと思うと、こう述べておられるわけでございます。これは今後慎重に検討していくべき財政審の会長自身が、すでに赤字国債の借りかえ措置はやむを得ないというお考えを持っておられる。  また、これは新聞報道でございますけれども大蔵省当局が、六十年度から十年の満期になった赤字国債について半分は現金償還する、半分は赤字国債で返済することによって実質的な償還期間を二十年にするという案が有力である、こういう記事も報道されているわけですね。  今回の定率繰り入れの停止等も絡めまして、昭和六十年に、これから財政審で検討されるとはいえ、この借りかえ措置が制度として導入されてくる可能性がきわめて大きい。いま大蔵省としては、国債償還政策そのものの転換を検討されていると受けとめざるを得ないわけでございます。これは今後大問題に発展すると思うわけでございます。この点に関しまして、大臣のひとつ展望とお考えをこの際明らかにしていただきたい。
  132. 窪田弘

    政府委員窪田弘君) 大臣のお答えの前に一言説明をさしていただきますと、その記者会見のときに私は立ち合っておりました。それはこういう状況でございます。  全部記者会見が終わったときに、ある記者が桜田会長の個人的な見解を伺いたいが、こういう問題についてどう考えるかと、気楽な雑談的に聞きました。そのときに会長は、民間の会社じゃそんなことはありゃしません、借金をしながら積立金を積むなんてこともないし、また借金の期限が来れば、そのときは銀行と御相談して借りかえたり、いろいろ自由にやるんですというふうな話をされたのが、ああいうふうな記事になっておりますので、私としては、記者の取材の仕方としては非常にどうかなと思っております。桜田会長の真意では恐らくあるまいと思います。  それから大蔵省として、二分の一とかなんとかというのは、具体的にいま検討していることはございません。
  133. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいままでの質問によりまして、大臣赤字国債、いわゆる特例債の借りかえについて、現在のところ念頭にはないという現在の心境は言われたんですけれども、六十年度以降もそういうことにするという考えは念頭にないと、こう理解してよろしいですか。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そのように理解していただいて結構でございます。
  135. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が参りましたので終わります。
  136. 穐山篤

    ○穐山篤君 具体的にこの法律の話に入る前に、グリーンカードについてお伺いをしておきます。  グリーンカードは、御案内のとおり、明年一月一日から実施をすることになるわけです。野末委員の質問に対して、大蔵大臣、明確な答弁をしておりませんでした。  そこでお伺いをするわけですが、当然準備が幾つかあるわけです。一つは、グリーンカード実施に関する政令、省令、通達、そういうものがすべて完了しているかどうかという問題が一つあります。  それから二つ目は、朝霞に計算センターをつくっているわけですが、予定によれば来年の三月に完成をする。これの見通しがあるかどうか。  第三番目には、カードそのものを含めて、各種の資料といいますか、そういうものの準備が進んでいるかどうか。  最終的には国民の理解というものを十分に受けているかどうかということになろうと思いますが、いま私が申し上げた問題についてどういうふうになっているのか、その点をお伺いをします。  また、当然のことでありますが、不公正税制を正すという意味でこの種の名寄せが行われるわけですが、本来の五十五年に改正をしましたその課税そのものの準備というものも含んでいることは当然でありますので、念を押してそのことについても申し上げておきたいと思います。
  137. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) まずお尋ねの前段の方でございますが、まず、グリーンカード制度は五十八年一月一日以降実施になるわけでございますが、そのグリーンカードの申請あるいは交付等前段階に必要な手続上の政令並びに省令はすでに公布済みでございます。執行上の準備の問題は国税庁の方から御説明申し上げます。
  138. 酒井健三

    政府委員(酒井健三君) 私ども、グリーンカードの準備につきましては、五十八年一月から開始できるよう所要の準備を進めてきておりますが、その主なものとしては、先生御指摘のような建物を朝霞に建設しておりまして、これは昨年の五月に着工いたしまして、本年十二月に完成をいたしまして、現在舗装等の外回りの工事を行っている現状でございます。  それから電算処理の関係でございますが、グリーンカードを電算によって処理する計画でございまして、システムの開発の方、これにつきましては昨年の九月に着手をいたしまして、本年の九月に個別のプログラムの開発の完了を見ております。  その他、私どもの方の機構の整備とか、いろいろの実施についての職員の研修その他は行っております。しかし現在のところ、カードの用紙はまだ印刷はいたしておりません。  そういう状況でございます。
  139. 穐山篤

    ○穐山篤君 そうしますと、グリーンカード実施についての準備は一〇〇%でき上がっていないと、そういうふうに理解をするわけです。  そこで大蔵大臣法律の上では明年一月から実施ということになっているわけですが、いまのような説明では、これは十分行政措置としては行われているというふうには理解できないわけですが、どういうふうにされますか。
  140. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私、先般本院の予算委員会におきましてお答えいたしました。そのときは、いわゆる立法府において今日法律案が存在をしておる、そうなれば、法案が通るという可能性に対する期待権とも言えるものが残っておる。したがって、だめになったらかくいたしますということを前提に置いてお答えするのは、国権の最高機関に対する行政府のあり方としてはいかがなものか、したがって、コメントすることは避けるべきじゃないか、こういう趣旨のお答えをしたわけであります。きょうになりますと、いま衆議院大蔵委員会で廃案ということが、恐らく本会議も終わっているだろうと思いますが、決定したということになれば、それをいまからここへ出し直してということは、可能性の期待権としてはあり得ないんじゃないか。こうなりますと、やはりきちんとしたそれに対する対処策というものを当然やっていかなきゃならぬ。  この問題につきましては、いろんなことを検討をしなきゃならぬわけでございますが、少なくとも予測される混乱が起きないような措置というものを早急にこれは国民の前に発表して御安心いただくような、御安心といいますか、人によって安心する人とけしからぬという人とあるんでございましょうが、国民の理解を得られるような措置そのものを行うよう早急に検討を命じたという段階でございます。  ただ、命じた者も隣におりますので、どの程度検討しておるかということになりますと、まだ定かにお答えするわけにはまいらぬ。私なりにも、政治家でございますから、その予測の上に立って多方面、いろいろきょうの意見を聞いておりましたが、穐山先生、このようにしてやりますわということをいまここで言える状態にはまだ立ち至っていないと、こういうふうに御理解いただければと思います。
  141. 穐山篤

    ○穐山篤君 結論として、準備が進んでいないと。当然年が明けますと混乱が生ずる。そのことについて政府は十分に責任感じてもらわなきゃ困る。これは幾ら議論しておってもこれ以上進まないと思いますが、ただ節目だけはきちんとつけておかなきゃならぬというふうに思います。グリーンカードはこれで終わります。  次は、午前中からも議論がありますが、現行の減債制度というのは昭和四十二年にでき上がった。もちろん昭和四十年に約二千億円近い特例公債を発行した。それから四十一、二年、三年になりますと、国債依存度が一〇%台に入った。非常に危機を感じて減債制度を、ある意味でいいますと、確立したわけですね。それから昭和五十年に入りますと、国債の依存度が二〇%から三〇%台になってきた。歴史的に見ますとそういうことになっているわけてすね。  そこで、大蔵大臣の認識をお伺いするわけですが、昭和五十年から特例公債も非常にふえたわけです。なおかついろんな法律を出しまして財政上のやりくりをしているわけです。五十年から五十七年まであるわけですが、たとえば昭和五十年に決算上の剰余金処理の特例措置というのをやりました。あるいは五十年度補正で、毎年、地方財源不足対策として、交付税特別会計が資金運用部資金より借り入れられる。将来返済元金の二分の一利子負担の全額を国庫が負担すると。たとえば五十年度はそうです。五十二年、五十三年、五十四年、五十六年、いろんなことをやってまいりました。  私はそこでお伺いしますが、いろいろな方法をとりましたが、わが国の財政構造を強くするというふうなものは一件もなかったというふうに思うんです。制度的にあるとするならば、せいぜい決算調整資金、そういうもの程度でありまして、それ以外はほとんど何もない。税金を上げる、手数料を上げる、いろんな増収対策をやってきましたが、過去のいろんな政策、施策というものを客観的に見て、わが国の財政構造を強化するためにいろいろな努力をしてきたというふうには私は思えないんですが、その点はいかがですか。
  142. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは穐山さんの御叱責と申しますか、御批判、私はそれは受けるべきであると思っております。  決算調整資金、確かにそれなりの機能を果たしておると私も思います。  地方財政と国の財政との経緯について例示されましたが、交付税率が三二プロになりましたのは昭和四十一年だったと思います。福田大蔵大臣、佐藤内閣のときであります。その後、地方財政の方から、どちらかと言えば、国が借りておったという状態が続いておりました。石油ショック後、いま御指摘になりました五十年以降のお話が出ましたが、今度はそれが逆になりまして、交付税特会に対して借り入れ等の措置が行われるようになった。それがその当時は臨時的な措置であるという物の考え方から、元本並びに金利の問題がそれぞれ措置されておった。それが今日まで続いてきて、いよいよ限界になって――きょうも自治大臣とのその地方財政の問題についての折衝、ゆうべ話がつきませんでしたので、きょうまたやらなければならぬわけでございます。  その置かれた立場は別といたしまして、確かに財政が苦しいときには、御批判を受けるようなことに対して、それ一つ一つ弁解しておっても私はいけないと思うんです。だから、新しい財政再建というのは結局、構造的なものの中にもメスを入れていかなければならぬ問題がたくさんあるという限りにおいては、私は傾聴すべき意見であるというふうに認識をいたしました。
  143. 穐山篤

    ○穐山篤君 最近は、尊重するということを言いながら凍結をする世の中ですから、どんなお話を聞いても本当に信用できるかどうかわかりませんけれども、私の意見として申し上げておきます。  つじつまを合わせることは非常に上手であったけれども財政構造を強くするということには、いままでの各種の施策というものは何ら貢献してこなかったというふうに指摘しておきます。中でも後年度負担というものをたくさんふやしてきた。その責任も大いに感じてもらわなければなりませんし、そのことも財政再建の上で十分配慮しなければならぬ点だと思うんです。  たとえば昭和五十六年、農林公庫、住宅公庫への利子補給金を圧縮する、約八百億ですね、後年度負担。あるいは交付税特別会計の資金運用部借り入れの返済金の償還方式を変更する。これも六十年以降負担が物すごくふえてくる。それから例の五十六年度決算に当たり歳入欠陥処理で国債整理基金から金を借りた、二兆二十五百億。それから地方交付税交付金の減額留保、これが一千百億円、これも残しておる。それから行革国会で出ました公的年金の国庫負担の問題についても、約二千億円の後年度負担をしょってしまう。数え上げればたくさんのものがあるわけです。  そこで、過去のことを大いに反省してもらうと同時に、後年度負担をどんどんどんどんふやすようなつじつま合わせというのは、これは財政再建を口にする以上絶対にやってはならぬことだというふうに思いますが、その点どうでしょうか。
  144. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的に考え方は一致しておると思います。そもそも公債政策というものがいわゆる後世の納税者に負担を残すわけでございますから、良心の許容し得る範囲内は、したがって資産に残る建設公債ではないかと、こういう議論がたびたびやられてきた。それが赤字国債に踏み切らざるを得なかった。しかし、私はあの第一次石油ショック以来の一つの措置として、日本国民にそれを消化する能力があったからこそ、今日諸外国に比べればずば抜けて経済のファンダメンタルズはいい、こういうことは言えると思うんです。  しかし、それがおのずから限界がきただけに、われわれとしては、まさに後年度負担というのは、後世の納税者にそのツケを回すわけでありますから、それをどうして少なくしていくか、なくしていくか、これがやっぱり財政の根本に据わるべき課題であるという認識は一緒でございます。
  145. 穐山篤

    ○穐山篤君 竹田先生から午前中厳しく指摘がありましたので重複を避けます。しかし、私は財政再建の問題について物の考え方を大蔵大臣に聞いておきたいと思うんです。  先日就任のごあいさつを伺いましたが、わが国の財政の厳しいお話はよく説明をされて、あとはがんばりましょうという決意表明であったんです。たまたま前渡辺大蔵大臣が、五十五年七月二十四日当委員会でごあいさつを含めて決意が述べられたんですが、そのときのことを私はいまだに強い印象として持っております。ちょっとそのことを例に挙げながらお伺いします。  これは大蔵大臣がしゃべった部分です。「財政再建の方途は、結局のところ負担の増加を回避するために公共サービスの水準を思い切って低下させるか、公共サービスの維持向上を目指すために負担の増加を行うか、あるいはこの両者の組み合わせによるか、この三つの中から選択を」する。ややおどかしのような感じの話でありました。  ただ、これでいきますと、収支の回復というふうな感じ以上に出ていないんです。財政再建というものについてのニュアンスが非常に離れているという感じがしてならないわけてす。収支を合わせるだけならばいろんな方法があると思いますが、しかし、いまわが国の財政事情財政構造というのは、そんななまやさしいものではないというふうに思います。午前中も議論がありましたように、仮に借りかえをいたしましても、利払いや手数料その他を含めて倍々ゲームになっていくわけですね。そういう意味で言いますと、財政再建の基本的な考え方というものを整理整とんしておきませんと、サービスを下げりゃいい、あるいは増税をすればいいというような単純な手法に終わる可能性があるわけですが、その点、しかと大蔵大臣考え方をお聞きしまして私の質問を終わりたいと思います。
  146. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この財政再建という問題を一面からとらえますと、いま穐山委員は収支の回復というお言葉をお使いになりましたが、そういう側面からのとらえ方も、私はそれは現実にあるとらえ方の一つだと思うんであります。一番理想的な財政の姿を考えれば、まさにいわゆる借金のない収支相整った財政、そうしてしかもいつでもまた経済に対するその機動力として財政が発動する余力を持つこと、こういうことになろうかと思うのであります。  しかしながら、今日私は、そういう中で、当面する目標として、赤字公債脱却の時期というものを鈴木前総理はこのめどとして置いておられた、そういう見方が一つあると思います。  それからもう一つは、財政再建とは、今日の財政を運営し、今日の財政の中に受益を受けるわれわれとしては、後世の納税者にその負担を回すということをできるだけ避けていくというのが、まず基本理念として存在しなきゃならぬ。  その意味におきましては、私ども今日のあり方について、それは苦しい中やむを得ない、御理解いただきたいと言いつつも、これが未来永劫に続けるべき施策ではないという基本認識には立っておるつもりであります。     ─────────────
  147. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま河本嘉久蔵君が委員辞任され、その補欠として杉山令肇君が選任されました。     ─────────────
  148. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  149. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、日本社会党を代表しまして、昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対し反対の討論を行うものであります。  本法律案は、国債の元本償還に充てるべき資金として、国債の総額の一・六%相当額を、また割引国債発行価格差減額を、国債整理基金特別会計繰り入れなければならないとされていますが、今年度に限りこれを停止し、約一兆二千億円の歳出の縮減を図ろうとするものですが、経済見通しの失敗、財政運営の欠陥というものを補うつじつま合わせではないか、きわめて悪法であると思います。  まず指摘しなければならない点は、六兆一千億円余の歳入欠陥を生じさした政府責任はきわめて重大であります。われわれは、昭和五十六年度の予算及び五十七年度予算編成審議の際におきましても、成長率政府見通しの甘い分析であることを口をきわめて警告もしました。また税収は大幅に不足することになるだろうと、この点も指摘をいたしましたが、政府は最後まで楽観論に終始をし、財政再建を全く困難にしてしまったのであります。  第二は、補正の財源は国債三兆九千億円余、特にこのうち三兆四千億円は赤字公債の増発によって賄うという安易な政治姿勢であり、かつ健全財政主義を明示しました財政法の精神を崩壊させようとするものであります。  言うまでもなく、国の歳出は原則として租税をもって充てるものとしており、公債や借入金のような借金をもって充てるべきではないと厳に規定をしていますが、これは健全財政主義の表明であります。例外として公共事業費、出資及び貸付金の財源として公債の発行は認めてはおりますが、これは消費的な支出ではないからという点を配慮し、例外扱いとしているものです。いずれもその金額はその都度国会で議決するというきわめて制限的なものであります。この厳しい原則を守れというのが健全財政主義をうたっております財政法であります。  昭和四十年、当時の福田大蔵大臣は、約二千億円の赤字公債の発行に関し全く臨時異例の措置で、今後は一切いたしませんと胸を張りましたが、結局赤字公債は慢性化し、わが国の財政体質を全く弱めてしまったわけでありまして、その責任はきわめて重かつ大であります。  第三は、国債整理基金繰り入れるべきものを停止するということは、償還資金確保国債発行の歯どめ、財政負担の平準化、資金の活用による国債価格の維持などを機能するわが国固有の減債制度を崩壊させてしまったということであります。一口で言うならば、国債発行に対する国民の信頼を失わせたということであります。  現に多くの国民は、満期到来の国債償還が果たして現金で払われるかどうかという心配を持っているのは当然であります。また一面、財政公債依存体質から脱却しようとする政府の意図は今回の特別措置によってますます困難になり、財政の再建は絶望的であります。  以上をもって反対の意見としますが、国民はこれら財政運営の失敗を後代まで国民の負担に転嫁されることにはあくまでも大反対であることを強く表明をしまして、反対討論を終わります。
  150. 増岡康治

    ○増岡康治君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、ただいま議題となっております昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対し、賛成の意を表明いたします。  昭和五十七年度におけるわが国経済は、世界経済停滞等を反映して、現在なお景況の明るさを見ることができない状況にあり、その影響を受けて、租税収入は、当初予算に対し六兆円台に上る減収が見込まれるに至っております。  このような異例の事態に対処するため、政府は、これまでにも増して、徹底した既定経費の節減、税外収入確保及び追加財政需要の圧縮を行い、それでもなお避けることができない公債追加発行についても、公債の厳しい消化環境から見て極力縮減する必要に迫られております。  本法律案は、このような状況のもとに、本年度において当初予定国債費定率繰り入れ等を停止し、これにより公債追加発行を約一兆二千億円縮減しようというものにほかなりません。  幸いにして、本措置を講じても、国債整理基金資金繰りから見て、本年度の公債償還に支障はないものと見込まれております。したがいまして、本措置は、臨時異例の財政状況に対処するためのまことに必要にしてやむを得ざるものと言わざるを得ません。  しかし、国債整理基金は、わが国の世界に誇り得る減債制度の根幹として、今後ますますその重要性は高まるものと考えられます。政府は、この減債制度について、その維持、確保に最大限の努力を傾注されんことを要望して、本法律案に対する私の賛成討論を終わります。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案について、反対の討論を行うものであります。  まず反対理由の第一は、政府財政再建計画を破綻させたことであります。  政府経済財政運営の失敗は、昭和五十六年度に引き続き、五十七年度も巨額な税収不足をもたらしたのであります。この巨額な税収不足は、政府も認めざるを得ないように、五十九年度に赤字国債から脱却するという政府財政再建計画を完全に破綻させております。今日まで、財政再建の名のもとに、国民に負担と犠牲を強いながら、簡単に公約を棚上げする政府責任はきわめて重大であります。しかも、新たな財政再建計画はいまだ何も明示しておりません。財政再建の破綻の責任を明確にしないままその場しのぎの定率繰り入れの停止をする政府の態度はとうてい納得できません。  反対する理由の第二は、政府財政法を形骸化させ、財政運営の節度を失っていることであります。  政府は、本来わが国財政法では認められていない赤字国債昭和五十年度に発行して以来、法人税の年度区分の変更や歳入欠陥を国債整理基金からの借り入れで埋め合わせるなど、その場しのぎの糊塗的な方法で財政をゆがめてまいりました。今回の国債整理基金への定率繰り入れの停止もその一環であるとともに、将来国債償還のための財源を取り崩してしまうことであり、国債に対する国民の信頼を失う道につながり、さらに赤字国債の借りかえにつながることは、必至であると言わなければなりません。国民に増税と福祉後退を押しつけながらこのような財政健全化に逆行する措置は、看過できるものではありません。  反対する理由の第三は、政府が国民生活を無視した政策をとり続けていることであります。  不況の長期化に伴い激増する失業者や企業倒産を知りながら、相変わらず帳じり合わせ的な財政再建策に固執し、所得税減税を見送るなど景気回復に対してきわめて消極的であります。また財政の再建計画も明らかにしないばかりか、大型間接税の導入すら画策しております。これら政府の姿勢は反国民的と言わざるを得ず、本法案に反対する理由でもあります。  以上をもって討論を終わります。
  152. 近藤忠孝

    近藤忠孝君 私は、日本共産党を代表し、昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対して反対の討論を行います。  第一に、国債整理基金への定率繰り入れを停止することとなったのは、今日の深刻な財源難によるものであります。その原因は、政府・自民党が、憲法や財政法の精神にも反した特例国債を含めた大量の国債を返すめども立てずに発行し続けて財政を危機に陥れたこととあわせ、昭和五十六年度補正予算、五十七年度予算で過大な税収見込みの粉飾を行って巨額の税収不足を生み出したことにあります。この過大な税収見積もりについては、わが党はもちろん、多くの識者や福田元総理などまでもが指摘していたところであります。  ところが、わが党議員の質問に対し、鈴木前総理は税収見積もりは最善のものと開き直り、国民を欺こうとしたのであります。その結果、昭和五十六年度では補正後二兆八千八百億円、当初比では三兆三千三百億円もの税収不足を発生させ、決算に当たってこの国債整理基金から二兆二千五百億円を借り入れるという不始末を引き起こしております。今年度は税収不足の規模が実に六兆円を上回るという事態となり、本法案による措置をとることとなったのであります。  このような異例異常の深刻な事態を招いたみずからの責任は棚上げし、そのしわ寄せを財政に、ひいては国民に強要する政府大蔵省の態度は無責任きわまるものと言わざるを得ません。  第二に、減債制度財政の健全性を確保する上できわめて重要であることは言をまちません。そのための中心である基金への定率繰り入れを停止する措置がいかに異常であるかは、基金の長い歴史の中でも、完全に繰り入れを停止したのは、戦後の国債を発行しなかった時期以外には大正九年から十一年のときに国防充実のために財源不足に対処するために行ったにとどまっていることからも明らかであります。  この措置がとられれば、減債のための原資の枯渇が早まり、特例国債償還が本格化する六十年代に入った途端に基金の原資がゼロという行き詰まりに直面せざるを得なくなるのであります。これでは国債償還はもとより、国債政策への国民の信頼の確保財政負担の平準化、財政膨張に対する間接的歯どめ、公債の市価維持という本来の役割りもとうてい果たせず、いわば減債制度そのものの存在を否定するに等しい暴挙と言わざるを得ません。  第三に、将来の減債財源の先取りで当面を糊塗する一方、将来の財源難を一層深刻なものといたします。定率繰り入れをやめて一兆二千億円を今年度で浮かしたとしても、その分はいずれ繰り入れなければならないものであります。償還財源がゼロになってからの国債元利償還は、十数兆円にも及ぶ国債費の全額が毎年の予算で先取りされるのであります。自民党悪政の遺産が、福祉や教育の切り捨て、増税、高負担として国民にツケ回しされることは明らかであります。  こうした国債制度の大改悪が衆議院で十分な審議を経ることなく採決が強行され、参議院においてもわずかな審議で問題点が十分解明されないまま採決に至るということは残念であります。  私は、ここで改めて大企業本位、軍事優先の無責任で節操のない財政運営をやめ、国民生活優先、真の財政再建を目指すため財政経済政策を根本的に転換することの必要性を強調し、反対討論を終わります。
  153. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となっております昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対し反対の討論を行うものであります。  申すまでもなく、国債整理基金への定率繰り入れ、減債基金制度は、国債償還を保障し国債政策に関する国民の信頼を確保するとともに、あわせて財政負担の平準化、財政の膨張に対する間接的歯どめ、公債の市価維持等の重要な機能を持つ制度であります。  本案による定率繰り入れ等の停止は、質問の過程でも明らかにしたように、目先の国の財政の苦しさをしのぐには役立つとはいえ、それは後年度に負担を先送りしたことにすぎず、本質的には財政再建に何ら寄与するものではないのであります。  のみならず、定率繰り入れ等の停止は、減債制度の基本を崩し、長期的に見れば、歳出縮減への努力を鈍らせ、ひいては国債発行の歯どめ、すなわち財政の節度を失わしめるおそれがきわめて強いのであります。  このような重要な問題を抱える定率繰り入れ等の停止措置を、五十七年度のみならず五十八年度においても、継続することを現在編成作業が進められている来年度の当初予算案の中で政府が企図していることは、きわめて遺憾と言うほかはありません。このような政府の安易な姿勢が続くならば、後代の国民負担の膨大な増大、増税、特例債の借りかえ措置へと発展していくことを危惧するものであります。  以上申し述べましたとおり、定率繰り入れ等の停止は、問題を先送りして将来に禍根を残す苦肉の策と言うべきものであり、経済財政政策の破綻に対する責任や根本的な反省もないままこのような措置をとろうとすることは、財政が背に腹はかえられないという窮迫した事情にあるとしても、絶対に容認されるべきではないことを強く申し上げ、私の反対討論を終わります。
  154. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより本案の採決に入ります。  本案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  155. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  大河原君から発言を求められておりますので、これを許します。大河原君。
  156. 大河原太一郎

    大河原太一郎君 私は、ただいま可決されました昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合、新政クラブの各派共同による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。 一、現在の減債基金制度は、公債政策の導入に際して、国民の理解と信頼を得るために確立された我が国特有の制度であり、今後ともその制度を堅持するよう努めること。 二、満期到来の公債が、保有者に対して支障なく償還されることは公債政策の基本であり、所要の償還財源を確保し、公債に対する国民の信用を失墜することのないよう万全を期すること。  右決議する。  以上であります。  委員各位の御賛同をお願いいたします。
  157. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) この際、大河原君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  158. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 全会一致と認めます。よって、本附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  159. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  160. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  162. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 次に、請願の審査を行います。  第一八号みなし法人課税事業主報酬制度期限延長に関する請願外五十七件を議題といたします。  本委員会に付託されております請願は、お手元に配付の付託請願一覧表のとおりでございます。  理事会で協議いたしました結果を御報告いたします。  第一八号みなし法人課税事業主報酬制度期限延長に関する請願外三十五件は議院の会議に付するを要するものにして内閣に送付するを要するものとし、第四六号たばこ及び塩専売制度の存続に関する請願外二十一件は保留とすることに意見が一致いたしました。  以上のとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  165. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 継続審査要求に関する件についてお諮りいたします。  貸金業の規制等に関する法律案、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律案につきましては、閉会中もなお審査を継続することとし、両案の継続審査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  166. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認めます。  なお、要求書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 戸塚進也

    委員長戸塚進也君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会