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1982-12-16 第97回国会 衆議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月十六日(木曜日)     午後一時二分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君    理事 高鳥  修君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    上村千一郎君       小渡 三郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    海部 俊樹君       金子 一平君    鴨田利太郎君       笹山 登生君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    渡海元三郎君       根本龍太郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    藤尾 正行君       藤田 義光君    藤本 孝雄君       武藤 嘉文君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       新盛 辰雄君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       正木 良明君    木下敬之助君       竹本 孫一君    米沢  隆君       瀬崎 博義君    中路 雅弘君       三浦  久君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         公正取引委員会         委員長     高橋  元君         公正取引委員会         事務局長    妹尾  明君         公正取引委員会         事務局経済部長 佐藤徳太郎君         警察庁刑事局長 金澤 昭雄君         警察庁警備局長 山田 英雄君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         国土庁計画・調         整局長     白井 和徳君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省関税局長 松尾 直良君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         文部省管理局長 阿部 充夫君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省社会局長 金田 一郎君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         農林水産省農蚕         園芸局長    小島 和義君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         水産庁次長   尾島 雄一君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省基礎         産業局長    植田 守昭君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         資源エネルギー         庁長官     豊島  格君         資源エネルギー         庁石油部長   松尾 邦彦君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省港湾局長 松本 輝壽君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         建設省住宅局長 松谷蒼一郎君         自治大臣官房審         議官      吉住 俊彦君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省行政局選         挙部長     岩田  脩君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         参  考  人        (石油公団理事) 松村 克之君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 十二月十六日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     小渡 三郎君   奥野 誠亮君     森   清君   村山 達雄君     笹山 登生君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   岡田 利春君     新盛 辰雄君   竹本 孫一君     米沢  隆君 同日  辞任         補欠選任   小渡 三郎君     宇野 宗佑君   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   笹山 登生君     村山 達雄君   森   清君     奥野 誠亮君   新盛 辰雄君     岡田 利春君   米沢  隆君     竹本 孫一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)      ────◇─────
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題といたします。  この際、内閣総理大臣より発言を求められておりますので、これを許します。内閣総理大臣中曽根康弘君。
  3. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人事院勧告完全実施に移した昭和四十五年当時においては、財政事情いかんにかかわらず、この慣行を末永く守ってまいる決意を固めていたところであります。その責任は、現在も痛感しているところであります。  しかしながら、現在政府の置かれております立場もお酌み取りいただきたいと思います。  当面の人事院勧告については、各野党の質問に代表される意見も踏まえ、国会判断を尊重し、十分検討いたしたいと存じます。     ─────────────
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより質疑を行います。大出俊君。
  5. 大出俊

    大出委員 私は、長い公務員給与の経過を踏まえまして正論を述べたつもりでおりますけれども、ただいまの総理の読み上げられました中身もございますから、なるべくあとは簡略な質問にしたいと思っております、そうそう運行不能というわけにまいりませんので。  そこで、ILOに関しまする問題が、組合側提訴等と相まちまして、当面の問題になってまいります。  組合提訴をいたしましたのは、一九八二年十月十九日付の提訴になっておりまして、シンプソンILO国際労働基準局結社自由部長という方がおいでになりますが、この方から手紙で千百六十五号事件、こういうことで受理をしたという連絡が来ております。あわせて、この手紙によりますと、同日付で日本政府に対しても提訴が受理された旨通知が行われて回答を要請した、こうなっているわけでありますが、この政府回答は一体いつごろ、大体どんなことで行われることになりますか。旧例からいきますとおおむね二カ月、もちろんこれは期限は定かではありませんけれども、大体そういうことで行われてまいりましたが、まずその一点、ひとつ承りたいのであります。
  6. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  御質問のとおり、日本政府見解を求められておりますが、現在関係各省日本政府見解について検討中でございますが、大体の見込みといたしまして、来年早々までかかるんではなかろうかというふうに考えております。
  7. 大出俊

    大出委員 ここに、実は昨年不完全実施ということを政府がおやりになったわけですが、「人事院勧告不完全実施となる場合に予想されるILOをめぐる問題点などについて」「取り扱い注意 総理府」、これは総理府皆さんがお書きになった中身です。これはたまたま提訴が行われませんでしたからこのままになりましたが、これは答弁要旨でもございましょうから、当然皆さんお答えになる筋合いのものであります。  この中には、つまり昨年の管理職賃金引き上げの停止であったり、あるいは調整手当の据え置き、こういうものをめぐりまして緊急避難的措置または臨時的措置であることなどの反論を行うことが考えられる、組合から提訴が出れば、緊急避難あるいは臨時的措置だ、こういう反論皆さんはしよう、ILOにですよ、こう言っておられるのですけれども、今回は、その後に、それでもILOがいかなる見解表明を行うかは即断できないが、いずれにしてもILOに対する対応に関し、政府としては多大の努力を要するであろうなんて書いてあるのですけれども、今度は全く実施しないのだから多大の努力どころじゃないことになると思うのですよ。これは逆立ちするように努力しなければ、とてもじゃないがということになると思う。  そうすると、一部伝えられるのは、やれ緊急避難やあるいは臨時的措置は、実施しないというのだから通用しないから、そうすると、これは延期しているとかなんとか言わなければぐあい悪かろうなんという話を聞くのだけれども、私はどうしても実施させたいと思っておりますが、していただかなければならぬと思っておりますが、いまお答えになりましたけれども、この現状を緊急避難だとかやれ臨時措置だとか、一体どう考えておられますか。
  8. 関英夫

    ○関(英)政府委員 お答えいたします。  現在まだ検討中でございまして、確たることをお答え申し上げるわけにまいりませんが、この委員会におきましてもいろいろと御論議がありましたように、どうしても今回人事院勧告を見送らざるを得なかった事情、そういったものを十分説明するということがまず一つ考えられますが、現にこうしていろいろ御論議が行われておるわけでございますので、そういった国会における御論議も十分踏まえて政府見解をまとめていきたいと考えているところでございます。
  9. 大出俊

    大出委員 大変御苦労なさっておるようでありますし、神経をお使いのようでございますが、つまり中曽根総理のお手元で完全実施をなさるということになればその御苦労はなくなる、大変ありがたい、こういうことですなと申し上げておきましょう。  そこで、ILO旧来の物の考え方は、ここにございますが、結社自由委員会の百三十九次報告、一九七三年十一月、つまり昭和四十八年であります。ここで「申立ての対象となつている公務員は、争議権をもつていない。」そのとおりですね。「しかし、一定のカテゴリーのこれらの公務員に適用される国家公務員法及び地方公務員法は、紛争の調停及び仲裁に関する措置を設けていない。このような事情により、委員会は、上述した原則及び考察に注意を喚起するよう理事会勧告する。」つまり簡単に言えば、争議権禁止をするというなら強制仲裁なり調停なりの措置をとれ、これが原則だと言っておるわけですね。  それに対して政府答弁は、つまり日本政府ILO表明した見解というのは、国公法二十八条の一項で定められている情勢適応原則などを取り上げているのですが、そして、国家公務員給与等勤務条件水準に関しては常に社会一般情勢に適応するように随時これを変更すべきことが定められている、国公法二十八条第一項。とともに、中略をいたしまして、常時国家公務員の福祉と利益を保護するための機関として、一般行政機関から独立してその権限を行使するいわゆる行政委員会として人事院が設けられ、活動を行っている。現にわが国の人事院は歴年、民間企業賃金水準等についての膨大、精細な調査を行い、毎年国家公務員給与等改善について国会並びに内閣に対して勧告を行い、その都度、勧告を受けた政府及び国会は、財政上の困難がある場合も極力勧告そのままに近い給与等改善実施してきている。特に一九七〇年以来は全く人事院勧告どおり実施されているという見解日本政府ILO表明をされている。つまり、強制仲裁措置じゃないけれども、それと同じようになっているんだということを答えているのですね。  今回は、もしもきのうの総理答弁のようなことであるとすると、この政府見解は成り立たなくなる、これが一つ。  もう一つ、きのう私申し上げました全農林警職法判決田中二郎裁判官、これは色川さんは別でありますから、八対五で決まっているわけでありますが、田中二郎という裁判官は初め少数意見を出しておりますが、それを言っているわけでありますが、この田中二郎裁判官などの少数意見、これは、人事院勧告応諾義務を課するものではないから代償として十分とは言えないという趣旨見解を申し述べた。つまり、いまのILOと同じに、強制仲裁措置でない、応諾義務がない。したがって、多数意見が、勧告制度というのはよく整備された代償機関であるとしてわれわれの少数意見を否定している。しかし、さきに確認をしたILOに対する政府のいまの説明、この説明からすると、勧告という名前になってはいるけれども、実際に仲裁と同等に扱われている、こう日本政府ILOに言っている。しかし、将来に向かってこれは義務づけているというその法律的制度でないのだから、やらないということは当然想定をされる、今日のようなことが。だから、その意味で多数意見には従いたくない。この不完全な代償措置人事院という制度ならば、ストライキ権禁止が二十八条なる憲法の条項に抵触しないなどということは言えないという少数意見をつけているのですね。  その二つを踏まえまして、私は、政府旧来見解が正しいのならば、人事院勧告完全実施されなければならぬものという結論が出るのですけれども、ここのところを一体、今回の事態を踏まえてどうお考えなのか、総理にこれは承りたいのであります。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国家公務員法解釈におきましては、政府尊重義務を持っておりますし、また労働権に関する代償措置人事院制度というものが設けられておると考えております。しかし、政府は精いっぱいの努力をいたしまして、それでも諸般の情勢から見て困難であり不可能であるという場合には、部分的に実施したり、あるいは政府の裁量によりまして最善と思われる処置を行うことは認められている、そのように考えておる次第でございます。
  11. 大出俊

    大出委員 そこが非常に大きな問題で、時間がありませんから細かく引用はいたしませんけれども、いまのお話、つまり岸、天野というお二人の、多数派の皆さんに属する二人でありますが、多数意見の側の方でありますけれども、この方が、「この制度が存在するからといつて、安易に公務員争議行為禁止という制約に安住すべきでないことは、いうまでもなく、もし仮りにその代償措置が迅速公平にその本来の機能をはたさず実際上画餅にひとしいとみられる事態が生じた場合には、公務員がこの制度の正常な運用を要求して相当と認められる範囲を逸脱しない手段態様争議行為にでたとしても、それは、憲法上保障された争議行為であるというべきであるから、そのような争議行為をしたことだけの理由からは、いかなる制裁、不利益をうける筋合いのものではなく、また、そのような争議行為をあおる等の行為をしたからといって、その行為者国公法一一〇条一項一七号を適用してこれを処罰することは、憲法二八条に違反するものといわなければならない。」こううたった。  この後に「もつとも、」と言って多少の救済措置が述べられておる。「もつとも、この代償措置についても、すべての国家的制度と同様、その機能が十分に発揮されるか否かは、その運用に関与するすべての当事者の真摯な努力にかかつているのであるから、」ここからが問題だ。いまあなたは真摯な努力とおっしゃる。その意味のことをおっしゃる。「かかつているのであるから、当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、」きのう申し上げたように法律上百八条で交渉権が確立している。応諾しなければならないことになっている、権限ある当事者が。ところが、全部拒否して会っていない。尽くしていないでしょう。明確でしょう。「誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつく」すということが前提なんですよ。何にもしないじゃないですか。ここが一つ。  「可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、要求されたところのものをそのままうけ容れなかつたとしても、」条件がついておるのですよ、「そのままうけ容れなかつたとしても、」一部不実施があったとしても部分的不実施があったとしてもということなんだ。「要求されたところのもの」、人事院勧告した四・五八というものがある。四月一日実施になっている。これが一部実施されない、あるいは部分的に実施されない、そういうことがあったとしてもという意味です。「要求されたところのものをそのままうけ容れなかつたとしても、この制度が本来の機能をはたしていないと速断すべきでないことはいうまでもない。」こう言っておる。  そのまま受け入れなくともと言う。そのまま受け入れなくともどころじゃない、全く受け入れない。無視。無視しても、憲法違反であると即断すべきでないことは言うまでもないというのは、そのまま受け入れなくともというのであって、全く受け入れないということについて触れておるのじゃない。ここを皆さんはごまかされて、新聞に載っておりますような官房長官の言い回しが出てくる。ここのところは総理はどうお考えになりますか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 解釈の問題でございますから、法制局長官から御答弁願います。
  13. 角田禮次郎

    角田(禮)政府委員 御引用になりました岸、天野裁判官追加補足意見は、正確に申し上げれば多数意見そのものではないと思います。それはそれとして、このお二人の追加補足意見において言われているところは、一般論としては十分傾聴に値する御意見だと思います。ただ、全体として多数意見は、人勧制度運用についてどの程度までやれば憲法違反になるかならないかということについては直接触れておりません。そこで、私どもは最高裁判決趣旨をそんたくいたしまして、かつ憲法趣旨というものを考えた上で最大限努力をしなければならない。そういう最大限努力をした場合には憲法違反のそしりを免れるだろう、こういうことを言っておるわけであります。  その努力というのは、単に人事院勧告をどの程度実施をしたかという、いわば量的な問題とも無論関係はありますが、しかし、仮に一部の不実施であっても、非常に努力をしないですぐ不実施をするというのは、やはり憲法趣旨に反する。しかし、完全不実施であっても、そこに至るまでの間の非常な努力が積み重ねられておれば、それは憲法違反ではないだろう。必ずしも結果というか、そういうものではなくて、努力いかんと相対的な関係もあるという意味において、私は、それぞれの事態において最大限努力をしなければいけない、そういうことを申し上げているわけであります。
  14. 大出俊

    大出委員 なぜこれを聞いたかといいますと、この議事録はそっくりILOへ行っちゃうかもしれないわけでございまして、私が旧来皆さん立場というものを踏まえていま私の意見を述べた。これに対する、これは内閣法制局長官でございますから、御意見が出てきた。両方はっきりすれば、それで判断ILOという機関がなさるでしょう。そういう意味で実は申し上げたのでございまして、政府の御見解として承っておきたい、こう思います。  時間がございませんが、最後に、法務省刑事局長さんや警察庁刑事局長さんあるいは通産大臣等に幾つかの点で承りたいのでありますが、石油公団がおやりになろうとしておりますこの福岡北九州市の響灘、つまり埋め立てをいたしまして白島に石油海上備蓄基地をつくろう、こういう計画でございますね。埋め立てて、その中にこういうふうに水を入れてタンカーを置いて、そこに石油を備蓄しよう。これは総額どのくらいかかるかということと、そして金の持ち方は、民間等まで国から公団から含めましてどういうことになるのか、簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  15. 山中貞則

    山中国務大臣 大変事務的な問題でございますから、エネルギー庁長官より答弁いたさせます。
  16. 豊島格

    豊島政府委員 金額は約二千億くらいになっております。  それから資金は、資本金につきましては石油公団が七割、残りは民間。それからあと必要な建設資金は、石油公団から無利子の貸し付けをすることになります。
  17. 大出俊

    大出委員 そうすると、石油公団から七割というと千四百億円。それは国民の税金ですか、税金でないですか、答えてください。長官、七割の石油公団の出資はどういう金ですか。国民の税金ですか。
  18. 豊島格

    豊島政府委員 お答えいたします。  資本金として大体百億を予定しております、授権資本。そのうちの七割を石油公団が出資するということでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 二千億という金の内訳はどうなるか。
  20. 豊島格

    豊島政府委員 それから、残りにつきましては、建設資金でございますが、これは公団から会社に対して無利子で貸し付けをするわけでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 だから、それは結果的に国の金、つまり国民の税金かと聞いている。
  22. 豊島格

    豊島政府委員 その資金ソースとしては市中銀行から借りますが、やはり利子が要りますので、その利子につきましては特別会計からの出資金ということになります。したがって、その意味では国の金が入っておるということです。
  23. 大出俊

    大出委員 私は、いまこれが必要かどうかというのは一つありますが、人事院勧告実施しないでいっている世の中に、ここまでのことをいまなぜやろうとするか。  あわせて、これをめぐるべらぼうな利権の、それこそ何と言ったらいいのですか、私はたくさんの資料を持っておりますが、時間がありませんからこれしか持ってきておりませんが、これだけ新聞記事をにぎわして、国が国家備蓄をやろう、私はこんなふざけた話を放任できるかという気がする。細かくつきたいのですけれども、時間がありません。  石油公団がありまして、地元の企業グループがある。日立造船の方々、間組、飛島建設、新日鉄、(日商岩井)、そして石油公団の下に北九州漁業環境保全推進協議会等の漁協の皆さんが集まってやっておられまして、この責任者は梶原国弘さん、脇ノ浦の漁協の会長さん、証人威迫罪で起訴勾留中。何かまた再逮捕なさったそうですが、警察側は。ここに四十八億円の漁業補償というか、県を通ずるんでしょうけれども、これが、後の方の内部告発等がこの新聞にもございますけれども、二十人、戸畑の漁協長が言っておられるのですけれども、九人が無資格者、無資格に払っておる。域外の人にも払っている。そこらにもばらまいて、四十八億どうなっているか、正確にはつかみ切れない。それから、地元のコンサルタントと称する方々、安藤さん、満井さん、横田さん、こういう方に二十五億円、これは福岡県、北九州市がかみ合っているわけでありますが、この中で相当な金がどこかに流れているのではないか。  テープが一つここにございます。このテープによりますと、どういうことかといいますと、地元の方々が、四十六、七年ころからでございましょうか、石油事情のよくないときに、白島を埋め立てまして備蓄基地をつくろうということで、一つのグループをつくりまして民間の石油会社に持ち込んだ。全部けられた。けられた結果として、これを石油公団に持ち込んで国家備蓄という形にしよう。この国家備蓄にするのには政治的な力が要る。したがって、その意味の政治資金をプールして政治工作をしなければならぬ。これはいま申し上げたとおり、相当大きな企業でありますが、そういうことでいろいろ金が流れていった。  ここに二千万円の金を持ってきて置いていった方がいる。有力な国会議員の方。そして、この金はどうも性格不明な金だというので、その方は供託をなさっておいでになる。返そうとしても受け取らない。供託なさっておいでになる。通産大臣におなりになったころに持ち込まれた金だというふうになっておりますけれども、原因不明だから、どういう性格かわからぬから供託しているとおっしゃっておられるのですから、被害者でおいでになるのかもしれない。そういう意味では、どなたと申し上げません、現在の時点では。  そこで、この金自体があることはお認めになっておるんだから、この金は一体どこから出た金だということになるわけであります。一つの大きな疑惑であります。御本人に原因不明な金が行った。供託されているのですから、御本人の立場はよくわかります。だから、今日、責める気もありません。だけれども、金があったことは事実なんだから、その金は一体どういう金なのか、ここだけは疑問が残ります。  それからまた、地元の……(山中国務大臣「通産大臣におなりになったころと言われると、名前を言わないとなると、私も入っちゃう」と呼ぶ)だって、それは何もあなたを言っているんじゃないのだから。(山中国務大臣「通産大臣になったばかりと言って、日時を言わないと……」と呼ぶ)はい、わかりました。いま速記録に残っておると思うのでありますけれども、私は五十五年ごろでしょうと言っておりますから。山中さんも通産大臣におなりになったばかりでありますから、それでいまの山中さんからのお話はそういう趣旨だと思いますから、私は五十五年ごろなんでしょうと言ったのですから、ひとつそれで御了解いただけないかと思うのですが、山中さんの御疑念は。そこで、実は私はまだそこから先のところを自分で調べておりませんから、申し上げる気がないのでありまして、山中さんがそうおっしゃるから、そのころと、あわせて申し上げておきますので、お許しいただきたいのであります。  それからまた、有力な議員の秘書の方が、やれ地元の管理会社と申しましょうか、白島洋上石油備蓄基地管理株式会社の役員にお名前を載せておられる、登記簿謄本がここにございますが。ただ、これもよくあることで、名前を貸してくれと言ったから貸した、先ほどの政治家の方と同じで、われわれもよく利用されることもあるわけでありますから、これについてとやかく申し上げる気もない。ないが、この中心になっている相手の、当の漁協を集めて、地元のつまり金の受け渡しの相手になる方が、どうも証人威迫事件などで逮捕され、さらに再逮捕というようなことになっているとすると――しかも、これは国家備蓄という、白島の備蓄基地をつくろうという仕事でございますだけに放任ができない。だから、疑惑を晴らすことが必要だ、こう思いますので、警察庁刑事局長さんに承りたいのです。  ちょうど時間ですから三つばかり申し上げて、お答えいただければそれでいいのであります。  福岡県警の捜査四課が動いておられたわけですが、捜査二課も動かなければおかしいわけでありますから動いているんじゃないかと思うのでありますが、どういう事件だとお考えか。また、当該の北九州市になりましょうか、港湾局長さんのいろいろなこれに絡む事件が出てきましたり、暴力団の方々が介入をしておりましたり、大変複雑であります。そういう意味で、どういう事件というふうにおとらえなのかということと、あわせて法務省刑事局長さんが、これまたどういうふうにこれをとらえておいでになるかということ、この二つをとりあえずお聞かせをいただきたいというふうに思うわけでございます。
  24. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えいたします。  ただいまのお尋ねの件につきまして、福岡県警の方で現在幅広く情報を収集中でございます。捜査四課で二課の方もというようなお話がございましたが、ただいまお話がありました梶原某、業務上横領ということできのう逮捕いたしましたが……(大出委員「再逮捕ですよ」と呼ぶ)再逮捕でございます。これは捜査二課がやっておりまして、県警挙げて情報を収集中でございます。
  25. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの問題につきましては、いろいろと疑惑があるというようなことで報道等もされておりますし、こうやって国会でもお取り上げをいただいているわけでございますが、ただいま警察の方から御答弁ございましたように、当面は警察当局の方でいろいろと情報を収集し、事実関係の把握に努めているということでございます。  私どもの検察当局といたしましても、警察とよく連絡をとりまして、犯罪の疑いがあるということになりますれば適切に対応したいと考えております。
  26. 大出俊

    大出委員 たくさんの資料がございますが、まだ私自身がそれぞれ現実に当たっておりません。したがいまして、これだけ申し上げまして――やはり国家備蓄という二千億にも上る、しかも、その中には国民の金も入ってくるということになるわけでありますから、片っ方で人勧をどうも凍結する世の中でございますので、こういう金の流れ、私はどうも国家備蓄の名において許しがたいというふうに思っております。確かに、先ほど二つ申し上げましたように、名前を借りられるとかあるいは利用されるということはあり得るわけでありますが、それにしてもすっきりした形でなければやるべきではない。しかも、いま果たしてこれが必要なのかという問題さえあると私は思っておりますから、そのことを念のために通産大臣に申し上げまして、質問を終わります。
  27. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大出君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田高敏君。
  28. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、中曽根新内閣の政治姿勢を含めて、主として財政問題を中心に質問をしてみたいと思います。  その前に、私どもの同僚議員である大出委員から、主として人勧問題を中心に質問をいたしましたので、順序として、私も関連をさせて質問を申し上げることがよろしいかと思いますので、人勧完全実施に向けての要請を込めて質問をいたしたいと思います。  私から繰り返すまでもないと思いますが、人勧制度ができてまいりました歴史的な経過というものは、すでに同僚議員から具体的に指摘されたところでございます。特に人勧完全実施に向けて、この問題を国政の最重要課題にしなければならないというその視点は、私はまあ素人でございますが、大きく分けて三つあると思うのです。  その一つは、最高裁の判例にも見られますように、この問題は労働者の労働基本権に直結する問題であり、そのことは当然のこととして、憲法問題にこれまた直結する重要な観点だという視点でございます。二つ目の視点は、国際労働規範と申しますか国際労働慣行からいっても、ILO勧告に見られますようなそういう立場から見ても、わが国は当然のこととして人勧実施に向けて、これは法律的にもまた行政的にも財政的にも重要視しなければならないという視点でございます。いま一つの問題は、これらを総括した形で、大出委員が昨日来特に強調してまいりました、この国会を通じて議論をし、そして結論を出してきたというわが国国政史上における歴史的な経過。  私は、私なりに総括をいたしまして、こういう三つの観点から考えても、いま迎えております今日のわが国の財政事情を考慮するにいたしましても、重要視して対処しなければならない最重要課題であろうと思うのです。  こういう基本的な認識については、念のためにお尋ねするわけでございますが、人勧実施に向けて、制度はもとよりでありますが、その精神に沿って、具体的な施策についても尊重しなければならないという基本的立場についての御認識を総理からまず伺っておきたいと思います。
  29. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま藤田さんが御指摘になりました三つの視点からの検討ということは、十分そのとおり合理性のあるお考えであると思いまして、政府の方といたしましても、それらの諸点について十分検討した上で判断をすべきものであると考えます。
  30. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私があえて三つの視点を指摘いたしましたのは、大出委員が昨日の質問を通じて強く政府に迫った観点と同じでございます。  そこで、以上の三つの視点は、これは一応同僚議員のいままでの質問に譲るといたしまして、私は、当面しておる具体的な条件下でこの人勧の取り扱いの問題、主として財政的な見地から見て人勧にまで手をつけざるを得ないのだろうか、これは私は専門的な立場ではなくて、きわめて常識的な、政治常識の立場からきょうはお尋ねをしてみたいと思うのです。  私なりに質問をしたいわけでありますが、その前に、きわめて事務的な質問でありますが、財政当局から、五十七年度の予算の中に盛られた補助金ですね、これはアバウトで結構ですから、補助金の額は幾らになっておるか、公共事業は幾らになっておるか、今回の補正予算の追加は、公共予算の追加は幾らであるか、そして来年度以降の予算から先食いをする形の債務負担行為によって追加しようとしておる公共事業は幾ばくかということ。それと、いま一つは予備費でございますね。これは当初予算はたしか約三千五百億程度であったと思いますが、その額において間違いがないかどうか、その後減額したものが幾らで、さらには、十月あるいは十一月までに使っておる使用済みの予備費は幾らか、残っておる現段階における予備費の額は幾らか。これだけのものをちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 山口光秀

    山口(光)政府委員 最初のお尋ねは補助金の予算額でございますが、五十七年度で十四兆七千六百五十八億円、これは当初予算でございます。  それから、次のお尋ねは公共事業関係費、これは補助金の中の公共事業関係費ですか。(藤田(高)委員「六兆何千億の」と呼ぶ)公共事業の予算が六兆六千五百五十四億円でございます。それから、今度の補正予算で追加いたしました災害復旧事業費、これは公共事業になりますが、これが五千二百四億円でございます。  それから、国庫債務負担行為でございますが、今回の補正予算で……(藤田(高)委員「アバウトでいいです」と呼ぶ)失礼いたしました。国庫債務負担行為で、一般会計で申しますと、国費で一千十億円の追加でございます。  それから、最後で予備費でございますが……(藤田(高)委員「債務負担行為は四千億ぐらいじゃないですか」と呼ぶ)それは特別会計を含めてですね。特別会計を含めて申し上げますと、事業費で四千億円、国費で二千五百四十二億円でございます。  それから、予備費の使用状況でございますが、五十七年度の一般会計予備費は三千五百億円の予算でございますが、十一月末現在の使用額は約四百三十億円でありまして、使用残高は三千七十億円でございます。  今後の使用見込みがどうかというのは、予備費は、御承知のとおり、予見しがたい経費の不足に充てるわけでございますから、なかなかむずかしいわけでございますが、過去の使用実績、十二月以降の使用実績というものから推計いたしますと、約千七百億円余という平均的な数字が出ますが、アローアンスを一割程度とりまして約千九百億円程度ではないか。そういたしますと、使用額とただいまの千九百億円程度を除きました分を、今回の補正予算で千二百億円減額させていただいております。
  32. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまお聞きのとおりでございまして、私なりに事前に調べた数字と大方合っておるわけであります。  そこで、人勧の問題に触れてみたいと思うのですが、今度この補正予算が、いわゆる人勧凍結、こういう立場に立って、既定予算である一%まで根こそぎに取っ払ってゼロにする、こういうことでありますが、審議を促進する上において、これまたアバウトの数字ですけれども、一%に相当する数字は約六百七十億、完全実施の率が四・五八%として約三千二百二十億、その差額が、完全実施をした場合と一%の差額は二千五百五十億ぐらいになろうかと思いますが、この数字は大体間違いございませんか。
  33. 山口光秀

    山口(光)政府委員 大体それで結構でございます。
  34. 藤田高敏

    藤田(高)委員 そこで、大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、また総理にもお尋ねいたしたいと思うのですけれども、前段私が三つの視点から総括をいたしましたような非常に重みのある人事院勧告、この人事院勧告が、きわめて政治常識論からいいましても、国の予算の補助金が約十四兆円以上もある、これを少し手を加えることができないものだろうか、あるいは公共事業も、景気対策を含めて、今回の場合は災害復旧という性格を持っておる公共事業、大切なことは私はよくわかります。しかし、公共事業としても既定予算を含めますと七兆円余りの公共事業、その中からたとえば一%ないし二%というものの合理化が、談合問題ではありませんけれども、合理化、節減することはできないものだろうか。公共事業だったら来年度以降の予算を実質的に先食いをする、繰り上げてでも使うのだ。しかし、労働者の基本権であり、国民の生活権に直結しておる問題は、国民の生活に直結しておる問題は、これは繰り上げもまかりならぬのだ、こういう常識論が果たして通るでしょうか。私は、この観点というのは非常に大事な視点ではないかと思うのですね。  ですから、どこそこを厳密な意味でどれだけ節約しろなどということは申しません。また、予備費の性格からいえば、いまの主計局長の御答弁ではございませんが、いわゆる予見しがたい財源に充当するという性格論も明記されております。しかし、この憲法問題に直結するほどの重要な人勧実施の問題について議論をする場合に、この予備費を一部充当するようなことはできないものかどうか。こういうことは、政治論としては十分成り立つ議論ではないかと私は思うのです。  私がきわめて常識的にいま幾つかの問題、事業費、予算の項目を指摘いたしましたが、そういうところまで本当に徹底的に、世間でよく言うところの石で手を詰めるほどの厳しさで財政、予算の洗い直しをやって、どうしても財源がない、もう石で手を詰めてもにっちもさっちもいかないという状態になったときに、公務員皆さんよ、地方公務員皆さんよ、それは皆さんの権利は十分わかるけれども、国の財政も実はこういう状態になっておるのだ、何とかここはがまんしてくれないか、しかし、がまんをするにしても、四・五八だったら四・五八全部をがまんしろというのはこれは酷な相談だ、せめて半分ぐらいはひとつがまんしてもらえないか、当面は、たとえば一%というものは組んでおるのだから、残りの問題はともかくとして、一%だけでしんぼうしてくれないか、こういう対応の仕方というのが物の順序であり、一つの道理にかなった進め方じゃないかと私は思うのです。そういう手法が一切出てきてない。財政的に非常に苦しい、後で申し上げますが、確かに六兆一千億という史上かつて見ることのできないような歳入欠陥が生まれるような事情、百兆円からの借金をつくった、この責任は一口で言えば政府財政政策、経済政策の失敗じゃないですか。その失敗をもろに、極端に言ったら安易な形でこの公務員のベアの問題に直結さすということは、これはどう考えても私どもは筋も通らないし、納得するわけにはいかないわけです。そういう点から、お互いにたてまえ論を突っ張り合うのではなくて、こういう議論の中から、国会議論を通していわゆる建設的な、生産的な結論を導き出す、こういう立場から特に大蔵大臣の見解を伺いたいと思うのです。  大蔵大臣は、いろいろな問題の処理については党内的にも超ベテランだというふうに聞いておるわけでありますが、この種の問題についてやはりいまこそ知恵の出しどころじゃないかと思うのですが、そんなことを含めてひとつ御答弁をお願いいたしたい。
  35. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま藤田委員から数字を前提にし、そしてまた予算の内容を込め、最終的にはこの国会というものの議論というものが、いわば政治の上でそこに合意が成立したり建設的な結論が出る場である、その国会そのもののあり方についての認識は、私はそのとおりだと思っております。  今度こういうことを行った。私もこれをいろいろ歴史的に見てみますと、確かに昭和四十五年、これが完全実施に至るまでの間、昨日来大出委員のお話にもありましたように、あるいは九月実施であり、八月実施であり、七月実施であり、そして六月実施であり、それで五月とすべきか四月とすべきか、こういうような議論で、五月というものは結論から言って飛び越して四月実施というのがいわゆる四十五年であったと思うのであります。だから、それまで政府というものはこの趣旨に従って努力を重ねてきた。  そこで、私はこれを経済史的にあるいは財政史的に見てみますと、四十五年というのは要するに一九七〇年であります。結局、一九六〇年から七一年に至るまでの間の日本経済をして、あるいは驚異的発展とかあるいはけんらん豪華たる高度経済成長の道とかいうような言葉で表現されておりますが、いわゆる石油価格が二ドル三十五セントに始まって一ドル七十五セントという時代、俗に言う二ドル原油の時代であった。その間、財政運営の中でこの趣旨を体して詰めてきた。四十六年、すなわち初めてのドルショックのときであります。いわば三百六十円という固定観念のもとに運営されておった日本の経済、そういうものが変動相場制という全くなれないものに遭遇した。そこに、オリンピック直後から建設公債の発行というものはありましたものの、結局その危機を切り抜けてきたのは、やはり私は建設国債の発行というものが、日本の経済がドルショックから立ち直るための大きなてこであったと思っております。そのてこによって完全実施というものを元戻ししなくて済んだというのも、私は一つ努力であったと思うのであります。  そうこういたしまして、昭和四十八年、これは齋藤行政管理庁長官が厚生大臣のときでありますが、いわゆる福祉元年というものを迎えてまいりました。その福祉元年に当たってもろもろの福祉政策の充実を図るという、世界的な水準にまでこれを到達せしめるというときに起きたのが第一次石油ショックであったと私は思うのであります。二ドル原油がいきなり十ドル原油あるいは十二ドル原油、こういうことになりました。それをどうして切り抜けてきたかというと、結局福祉水準を落とさないで、国民に新たなる負担を求めないで、そこに赤字国債、いわゆる特例債の発行というものが、それなりの経済あるいはそれを支える財政運営としての機能を果たしてきた、そういう歴史的経過になるのじゃないか。  それがどのような累積をもって今日やってきたか。その間に完全実施の方向をもとへ返さないような努力というものが、やはり私は四十五年までに労使双方が、あるいは国会政府も一緒になって積み重ねてきた努力というものが、それを後戻ししなくて済んだということが言えると思うのであります。そこから素朴な感じとして、今度これを見送ることになった、昨年の一部不完全実施の問題は省略をいたしますが、そういうことに対してもっと努力すべきではないか、こういう議論が出てまいります。  いわゆる補助金の問題になりますと、まさに十四兆七千六百五十八億円ありますが、これとて社会保険関係と文教及び科学技術と公共事業、その側面からとらえればおおむね補助金の八割になります。そうして、法律補助と予算補助という側面からとらえれば、また法律補助というものが八割になる。それから、地方自治体を経由して交付されるものという点からこれをとらまえても、八割ということにおおむねなるわけです。  その中で、今度の六兆一千億という歳入欠陥に、税収の欠陥に対しまして一つ一つを切り込んだというのが今日のこの結論に達した努力の過程であったというふうに私も思うのであります。したがって、景気の問題にしても、このままでいけばあるいは二・七%とかいうようなことが考えられるときに、その二兆七百億の公共投資というもの、これに対して財政が出動することによって三・四%という目標値に努力していこう。その中の工夫ですら、いわば一般会計そのものを使わなくて債務負担行為というのも、急場の一つの知恵としての努力のあらわれではないか。このようにしました、そしてなお、いま委員御指摘のように空っけつでございます、したがって今度は御勘弁を願います、これが財政当局から見たところの努力をした一つの結果、その上に立って心からしんぼうをお願いするということに尽きるではなかろうかというふうに私は考えます。
  36. 藤田高敏

    藤田(高)委員 きょうは、大蔵大臣も初めての大蔵大臣ではないわけですから、いまさらいま御答弁になられたようなことをおさらいする必要もないと思うのですけれども、私は、きょうは大蔵大臣もおさらいをなさっているぐらいなつもりで、あえて気を長くして聞かしていただきました。私はもう少し国民の感情にも触れるような、お互いそういう議論と答弁をお願いしたいと思うのですよ。何も中曽根総理が施政方針の中で思いやりの政治ということを言ったから、そこに結びつけてあえて言おうとは私は思いませんけれども、一国の総理が施政方針の中にまで思いやりの政治というものをあえて強調されるのであったら、私がいま言っているようなところへ積極的に手をつけてでも、法律的には侵すことのできないぐらいな重みのあるこの人事院勧告を、実施に向けて一%なりとも二%なりともやっていくんだという努力が足らぬじゃないか、このことは言えるんじゃないでしょうか。  私は、実際の政治的な動きとしては、各党代表者会議で政治的にこの問題をこなす作業があることも十分承知しております。しかし私は、オーソドックスな議論としては、そういったことも大事だけれども、本来いま私が議論をしておるようなこういう形で、予算委員会で結論を出すことが議会政治の発展のためにも一番正しいことだと思う。どちらかといったら、裏で話をして問題を解決するということはむしろできるだけ避けるべきじゃないか、私はそう思っておるのです。しかし、現在各党間でやっておることを、そういう意味合においてやめろなんということは言いません。私はそういう意味合において、私のいま指摘しておるような勘どころに触れるような答弁をお願いしたい。  私はこういう性格ですから、それは、そのことによってわかったというときには私は私なりの結論も出したいと思うのです。しかし、いまの大蔵大臣の御答弁は、大変失礼だけれどもお粗末きわまる御答弁だと思いますよ。これは最終的には総理の決断にもなると思う。  また、官房長官、あなた同じ四国だけれども、抜てきされて総理の実質的な女房役の一人になったようでありますが、私は後藤田女房役の意見も率直に言って聞かしてもらいたいと思うのです。  人勧凍結というのは、鈴木前総理が打ち出した政策なんでしょう。そうでしょう。中曽根新内閣の独自の政策じゃないのですよ、これは。私は今度の組閣に対しては、いままで御批判があったような大同小異の批判を持っておる一人です。しかしながら、一面では中曽根総理というのは、事のよしあしを超えて非常に個性のある人だと思っておる。独自性を発揮する、これから恐ろしい意味の独自性を発揮なさるかもわからぬけれども、私はそういう意味ではなかなか独自性のある政治家の一人であろうと思うのです、これは事のよしあしは超えてですよ。  私はそういう点からいきますと、鈴木前総理が打ち出したこの人勧凍結を何であなたが後生大事に、臨調との関係もないといったらうそでしょう、うそかもわからぬけれども、あなたの独自性を発揮して、今度の国会が始まって以来、われわれがこの人勧完全実施に向けてこれだけ強く論理的にも現実的にも新内閣の対応の仕方について要請をいたしておる、この姿勢にこたえる必要があるのではないかと私は思うのですね。そうしないと、この国会議論というのは非常に形骸化されたものになっていくんじゃないかと思うのですね。そこらを踏まえてひとつ女房役も、また、総理の決意を含めてのお考えを聞かしてもらいたいと思います。
  37. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 昨日来の大出さん、藤田さんの御質疑を聞いておりまして、お立場は私もよく理解ができるわけでございます。  問題の焦点は、政府はともかくばっさり凍結してしまった、何か最大限努力をしたかしないかというところが議論の分かれ目になるところですね。その努力に不足をしておるのではないのか、もう少しやる方法がありはせぬか、四・何%とは言わなくても、一%の予算は組んでおったんだから、それぐらいはひとつ公務員立場考えれば政府としては温かい気持ちでやるべきではないのか、私、そのお気持ちはよくわかります。  ただしかし、政府立場考えていきますと、ともかく六兆一千億からの赤字があって、そして借金払いの基金積み立てもこの際はやらないとか、あるいは地方としてはもう当然計算の中に入れておった交付税交付金、こういうものもともかく一兆七千億これは切り込みますよとか、一般行政費は一〇%ですか、これも切るといったようなありとあらゆる努力をして、こういう努力の過程において財政当局はもちろんのこと、総理府としても何かこれはほかに方法はないのか、六百七十億ですか、その程度だから何とかならぬのかということはやはり前内閣も十分考えたと私は思うのですね。だから、六百七十億というんだから、藤田さんのお立場であれば、その程度は温かい気持ちでやれるじゃないか、こうおっしゃいますけれども、政府立場考えてみれば、この六百七十億すらごしんぼうを願わなければこの急は切り抜けられぬじゃないかといったようなことで、やはり政府政府なりに苦しみながらの最大限努力はしたと私は考えるのです。だから、お立場はよくわかりますけれども、諸般の政府の苦しい立場、これをひとつぜひ御理解を賜りたい、かように思うわけでございます。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、行管長官時代から本委員会におきまして藤田さんの御発言を非常に傾聴してきた一人でございます。特に、日本の財政構造の構造的欠陥を早期に指摘されまして、問題の先送りをやっておるのは粉飾ではないかとしばしば御指摘になりました。私はその先見性について非常に敬意を表しておりますし、日本の財政構造というものを見るについて、あなたのいままで御主張になったことは私にも非常に勉強にもなり、参考にもなりまして、立て直しについて、その分析については私も共鳴しておる点が多々あるのでございます。それを今度はどういうふうに立て直すかという具体的な選択の問題になりまして、藤田さんと考えが違う点が出てきたわけでございます。  いま官房長官が申し上げました、また大蔵大臣が御説明申し上げましたような事由によりまして、政府といたしましても最大限いろいろ努力をいたしました。給与閣僚協も鈴木内閣時代から何回か開きましたし、また、予算編成につきましては企画庁を中心にしまして、この補正予算の構造、内容についても検討してきたところでございますが、このようなやむを得ない選択になったのははなはだ遺憾でございます。
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 結論的には、現段階では私どもの主張は気持ちとしてはわかる、理解できるけれども、そうかといって現実的にどうするこうするということはできがたい、こういうことであろうと思うのですね。  私も全体的な時間の配置もございますから、このことだけに時間をとるわけにはいきませんが、私は、大蔵省が、大蔵大臣が財政的に大変な努力をして、これはやはり国会の議論を通して考えてみると、せめてこの程度ぐらいなことはことしの問題として処置しなければいかぬのじゃなかろうかという、そういう努力はまだ時間的に残っておると思うのですよ。なるほど、私は先走るようだけれども、これは一つの方法論ですよ。とりあえずは、国会が二十日に終わるのか、まあどうなるのか知りませんが、この会期中に五十七年度についてこれだけ強い国民の要求があるんだから、もう少しでも、半歩でも具体的に対応することを財政当局としては考えよう、そして万々一いかぬ場合は第三次補正じゃないけれども、補正の段階でもひとつ考えよう、そういういろいろな対応の仕方はあると私は思うのですよ。少なくともこの一%まで根こそぎにカットするというのは予算委員会が始まるまでの政府の政治判断ですからね。やはり国会を開いてみたら、政府はこういうことでいこうと思ったけれども、これは本当に石で手を詰めるような作業をもう一遍やり直して、一%でも二%でも、できることならば完全実施に向けて努力をしなければなるまい、こういう努力をすべき余地はまだ残っておると私は思います。そういうことを含めて、本日の段階におけるいわば大蔵大臣の見解を私は聞かしてもらいたい。
  40. 竹下登

    ○竹下国務大臣 藤田委員の分析の立場の上に立った御議論というものを私は否定するものではございません。が、今日、この補正予算を政府の責任において御審議をいただいておるその中身の問題につきましては、私はこれは現状において最善のものであるという考え方に基づいて御審議をいただいておるわけであります。したがって、藤田先生なり私との質疑応答あるいはこの国会を通じての質疑応答の中で、なるほど政府考えておることもわかった、こういう結論が出ることを私の立場からすれば心から期待をしておる、こういうことになろうかと思います。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私どもの主張いたしております観点というものは、立場は違っても御理解はいただいたものだと思うわけです。そういうことをしっかりと踏まえて、いま私が指摘をいたしました時間的な問題も含めて、さらに御努力を続けていただくことを総理初め財政当局に強く要請をいたしておきたいと思います。  それで、ひとまず私は人勧問題を終わりまして、私自身少しく準備をいたしております財政問題についてお尋ねをいたしたいわけであります。  まず第一に、総理の所信表明、大蔵大臣の財政演説を拝聴いたしまして私は少しくすとんと落ちないものがあるわけです。それは何かといいますと、鈴木前総理が掲げてまいりました財政再建に向けて五十九年度までに赤字公債発行をゼロにする、その鈴木総理が半ば公約をされたことが非常に実現がむずかしくなってきた、非常に困難になってきた、そういう言い方でありますけれども、これはもう少なくともいまの段階になったら、今日の段階から判断をすれば、それはきわめて困難だというような言い方ではなくて、実際問題としてはこれは断念せざるを得なくなった。まあ端的に言えばその計画は破綻した、こういうことを事実認識として明確に認めた上で、新しい内閣の手でさてどうするのかということが議論として発展していかないと、何だか中途半端な、生殺しのような認識で取り組むこと自身問題があるのじゃなかろうか、私はこう思うわけでありますが、その点についてのお考えを聞かしていただきたいのと、いま一つは、これは順序不同でございますが、どうでしょうか、鈴木総理がおやめになった一番大きな理由は何でしょうか。これは中曽根総理としてはどのように見られておるか。その見解をひとつ前段の問題とあわせて聞かしてもらいたいと思うのです。
  42. 竹下登

    ○竹下国務大臣 後段の問題は総理からお答えになるのが当然であると思います。  前段の問題でございますが、私が何度かの御指摘に対しましても、確かに五十九年度脱却というめどはこれが困難な状態になりました、困難と言わざるを得ない、こういう表現をいたしております。が、これをしていわばその計画は破綻した、あえてその言葉を使わないでこうして問答をしておりますゆえんのものは、やはり財政当局でございますので、いわばある種の数字的基礎というものも明確に国会では報告をしなければならぬ。そういうことになりますと、五十八年度予算を、いま編成作業は進んでおるさなかでございますけれども、その編成をまず終わりましたならば、当然そこに新しい中期的な計数というようなものがその予算編成の作業を通じ、予算編成を終了して出てくるであろう、そのときに私はかくかくしかじかなことでまさに断念をいたしました、あるいはそういう表現をすべき時期ではないか。  もう一つは、これは心情的な問題でございますが、政治家同士の話といたしまして申しますならば、いますでに五十九年度赤字国債脱却はやめた、そこでやはり予算編成そのもののたがが緩んではならぬ、これは政治家同士の心情的な表現であると言われればそれまででございますけれども、私はそういう気持ちもあることも事実でございます。
  43. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま大蔵大臣が申し上げましたが、特に五十九年度赤字公債脱却をするという鈴木前総理が申されましたこの旗は容易におろすべきものではない、その精神はあくまで堅持していくべきでありますし、最大限これを死守していくべきである。また、それが万一不可能になった場合でも、そのような精神で最大限、できるだけの努力を継続していくべきである、そういう考えを私持っておりまして、まだ旗をおろすというそういうところまでは、計数やその他を見まして確定的に申し上げる段階ではない、そういうふうに考えております。  それから、鈴木総理がなぜおやめになったかという御推測でございますが、総理は予算編成その他も考えてみまして、総裁交代の時期というのは十一月というのはよくない、できたら九月か、あるいはもっとよければ七月にやりたい、それが予算編成上、国政上非常にいいやり方だということをおっしゃっておりまして、そういう意味で一日も早くそういう方向へ持っていこうということと、もう一つは、自分の進退は潔く自分で決める、そういう意味の潔き進退という政治的御心境からお引きになったのだと考えております。
  44. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は一国の総理が辞職されるということは、単に個人的な潔しとするとかなんとかというそういう視点ではなくて、国民に対して公約をしたことを実現するかしないか、できなかったときにやはりその責任を明確にするというのが一国の総理の出処進退を明確にする条件ではないかと思うのですね。いまおっしゃられておるように予算編成の時期云々なんというのは、これはつけ足しのものじゃないかと思う。  私は時間の関係で多くは申しませんが、少なくとも財政問題に関する限りは、ここへこれだけの議事録も持ってきておりますが、五十九年度赤字国債発行をゼロにするということは、これができなかったら鈴木総理は、私は政治責任をとる、こういうことをこの国会で明言した。これは御承知ですね、閣僚の一人であったわけですから。私はこのことが、新しく総理になられても、現実に臨時国会をやるということになりますと、これでもうにっちもさっちもいかなくなってきた、こういうことを鈴木総理御自身が明確に認識をされて辞任された。これはいろいろその他の条件がございましょう。ございましょうけれども、やはり国会論議を通じて考えます限りは、その条件が一番大きかったのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  45. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは御本人の御心境でございますから、御本人が申し上げる以外には最も正確なことは申し上げられません。私はしかし、先ほど申し上げましたような御心境で引かれたものと考えます。ただ、藤田さんの側からお考えになれば、あなたはここで五十九年度に赤字公債脱却できない場合には責任をとるかと質問されて、総理が責任をとるとあなたにお答えになった、そういういきさつを考えてそのように御推察になるのでございましょうけれども、私たちは別の考えを持っております。
  46. 藤田高敏

    藤田(高)委員 このこと自身については、見解の一致を見るなんということは、それはできがたいと思いますので、私はそのように判断をいたしておる、そういう前提に立ちまして、そういったことも含めて、五十九年度のこの赤字公債発行ゼロの問題、これは過去を追うようですけれども、やはりこの認識をきちっとしておかないと次の議論ができないと私は思うのです。  その前に一つ大蔵大臣に特に申し上げたいのですが、先ほどの御答弁ではございませんが、五十九年度赤字公債発行をゼロにするという旗はこれはおろせないのだ、こう言いますけれども、これは私は精神的な、気持ちとしてはわかるのです。  それはなぜかと言いますと、これから新内閣財政再建大綱といいますか、財政再建構想といいますか、そういうものを聞かせてもらいたいと思うのですけれども、やはりその中の一つの大きな柱は、赤字公債からの早期脱却ということは当然これは条件になってくると思いますので、そういう意味合いで旗をおろすわけにはいかないということは言えますけれども、少なくとも数字の上では、いまの中曽根総理答弁ではないけれども、まだ五十九年度までには時間がある、だから前内閣が言っておる方針は死守するのだ、こう言っておりますけれども、現実的にそんな器用なことができますか。私は、残念ながらできないと思うのですよ。そういうできないことはできないとしてはっきり言うことが、わかりやすい政治の一つじゃないですか。私は、そこは中曽根総理は非常に頭がよ過ぎて、悪く言えばずるいのですよ。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、本当に悪く言ったら、頭がよ過ぎてずるいことになるのですよ。  そういうところは率直に、わかりやすい政治を言うのであれば、私の気持ちはこうですけれども、今日の時点でいままでの財政計画その他を見、今後の財政展望を考えるときに、残念ながらそれは一たんここで破綻宣告をして、そうして国民の皆さんに語りかけ、協力を求めなければいけません。こういうことを率直に言うことが、さっきの思いやりじゃないけれども、わかりやすい政治の姿勢ではないですか。そのことを一言言ってください。そして、あと数字のことを少しやります。
  47. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 藤田委員のおっしゃることはわかりますが、私は、まだ脳波も動いておるし、心臓も動いている、そう思っておるので、宣告するには早過ぎる。また、宣告をするというときには後始末の展望も要ります。後始末の展望につきましては、数字的なある程度の段取りも講じておかなければいけないと思います。そういう諸般の情勢考えてみまして、まだそれを断定するときではない。しかし、非常に、きわめて困難になったと申し上げておるのであります。
  48. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、国民の立場から見ると、やはり行き詰まったときには行き詰まったと、そして野党の協力も得るものは得る。これは財政再建だけではないですよ、その他の問題について、やはり野党の建設的、積極的な意見政府の施策の中にも取り入れていくのだ、こういう姿勢があって初めて議会政治の発展があると思う。そういう点では、いまの御答弁はどういう意味の、自信かどうか知りませんけれども、早晩これは認めざるを得ないことを、たてまえ論にこだわっていま言われておるような態度をとられることは、私はきわめて残念だと思う。  そこで、私は時間の関係もありますから、あえてこんな数字をいじくりたいわけではありませんが、どうですか。五十九年度赤字国債発行をゼロにすると言ったのは、たとえば国債発行額から言えば、竹下大蔵大臣がまだ大蔵大臣であったと思うのですが、五十五年度国債発行額が十五兆円、そして国債依存率が三九・六%にもなった、それは大変なことだということで、一番最初目標年次を設定して国債発行をゼロにするような計画をお立てになったのは竹下さんなんですよ。竹下大蔵大臣なんですよ、実は。これは鈴木総理でも前大蔵大臣でもないと私は認識しておる。そういう経過から言うと、竹下さん自身が、大蔵大臣自身がいまのような御答弁をされることは、私は竹下大臣らしくない、こう思うのですよ。これは率直に私の感じを申し上げて失礼だけれども。  そういう点からいきますと、五十五年、五十六年で二兆円ずつ赤字国債をゼロにするというのが努力目標だった。ところが、やり出したけれどもなかなかできない。初年度は二兆円できた、次の年は一兆五千六百億しかできなかった。結果的には三兆五千六百億しかできなかった、こういうことになったわけですね。ところが、それだけの努力をしてきたんだけれども、いま審議しておるこの補正予算の段階では、二年間赤字国債を減額した三兆五千六百億よりもまだ多い三兆九千億の赤字国債を出さざるを得なくなったのです。これは振り出しに返っておるのですよ。まだ振り出し以上にマイナスですよ。マイナスシーリングじゃないが、マイナスなんですよ。  その条件が出てきておって、五十九年度から赤字国債発行をゼロにするということはまだ可能性が一部残っているのですと、これは強弁じゃありませんか、この絶対額からいって。依存率からいったってそうじゃありませんか。依存率からいったって、五十五年度が三二・七%だった。これが今日の段階でまた三〇・二%にまでなっておるじゃありませんか。赤字公債額についても、五十五年が七兆三千億円、ちょうどまた五十七年度、結果的には七兆三千億に返っておるじゃありませんか。赤字国債の発行額、その公債財政依存率、そして、いま言う公債額のトータル、建設国債、赤字国債を含めてのトータル額、あわせてみんな五十五年度の振り出しに返っておるじゃないですか。あと一年しかないのですよ、五十八年度。一年間で、いままで過去二年間努力してきたことを含めて、そして一方では人勧に一億の金もいま出せぬと言っている、ゼロ回答だから。そういう状態の中で、今度は一方では、これまた赤字国債発行をゼロにすることがまだ可能性があるなんて言っている。これは客観的にそんなこと理解できますか、大蔵大臣。そこらはもっと率直にお答えになったらどうです。これは私は客観的に見て、そんな詭弁は国会審議に関する限り許されないと思いますよ。どうですか、それ。
  49. 竹下登

    ○竹下国務大臣 確かに藤田委員御指摘のように、五十九年度脱却というのは、五十四年一月に御提出申し上げました財政収支試算というところからスタートしております。そうして、たしか九月でございましたか、当時大平総理答弁にもございます。私の責任で編成作業に当たりました五十五年度予算編成の際には、したがいまして、いま御指摘のように、五十九年度脱却、こういう目標のもとに財政収支試算も御提出を申し上げて御審議をいただいた、こういうことでございます。確かに私は五十四年の半ばから大蔵大臣に就任をいたしましたが、民間の自助努力等によって自然増収に恵まれたときでございますので、結果として一兆八千億の国債発行をしなくて済んだ。決算ベースで言えば減額できた。五十五年は一兆円の減額ありき、こういうことで進ませていただいて、ささやかながら四百八十四億のいわゆる剰余金も出た、こういう年であります。国際情勢その他その後の変化というのが今日の状態をもたらしたゆえんのものであるというふうに考えております。  したがって、藤田さんのきわめてわかりやすい表現の中において、数値から見ればすでに不可能だからここでもう旗をおろせ、この素朴な表現の中に意図されるものが私に全く理解できないわけじゃございません。しかし私は、いま財政当局を預かる者として申しますならば、総理もいまおっしゃいましたように、確かに困難になったということはまさにこれは認めておるわけでありますが、やはりかくかくしかじかでということになりますと、この新しい再建目標というものをお示しするときに、すなわち五十八年度予算編成に当たっていろいろな知恵をしぼりながら、そして御審議をいただくに当たって、言ってみればこの新しい再建目標を示す、そういう時期にかくかくしかじかで五十九年の赤字公債の脱却は不可能になりましたという表現をするのが、やはり財政当局としてはむしろ正直な立場ではなかろうか。いま総理も言われました、やはり鈴木総理以来のそれの精神というものは貫いていきたい、このように思います。
  50. 藤田高敏

    藤田(高)委員 実質的には、五十八年度の予算といっても、もうそこへ手の届くところへ来ておるわけですから、いま言っても私はいいと思うのですよ。しかし、いまの大蔵大臣のお話を聞いておりますと、まあ五十八年度の予算のときに正直なことを言うわい、いまのところはちょっとひとつ表現だけは勘弁してくれ、こういうふうにも聞こえるわけです。私は、そのあたり、武士の情けじゃないですけれども、まあその程度にいたしておきましょう。五十八年度の予算審議のときには、いま私がここで言ったようになりましたねと、これはこういうことになるでしょう。もう実質的にはこれは断念、破綻、こう思います。  そこで私は、それこそ時間の関係で先へ進みますが、それでは新しい再建目標、新しい財政再建大綱、名前は何でもいいです、そういうものはいつお出しになるのか。そして、中曽根新内閣財政再建方針は、赤字国債発行を早期に脱却するという柱は堅持しながらも、目標をいつにしていくのか。財政再建大綱の枠組みですね。いわゆるどういう柱でやっていこうとしておるのか。せめてこれぐらいなことは、この補正予算というのは完全にぽつんと切れた補正予算ではなくて、五十七年度の当初予算との関連において、五十八年度の、来年度予算とのつなぎの予算として出てきておるわけですからね。そういう点から言えば、かちっとしたものはそれは一週間先か二週間先か知りませんが、少なくとも枠組みぐらいは出なきゃ、これは予算審議にはならないのですね。そういう点で、新しい再建構想の枠組みをひとつお聞かせ願いたい。その中心になる、バックボーンになるものは増税なき財政再建と理解してよろしいのかどうか、この点ひとつお答えいただきたいと思います。
  51. 竹下登

    ○竹下国務大臣 増税なき財政再建、これは理念として貫かなければならない、このように思っております。
  52. 藤田高敏

    藤田(高)委員 どうも理念としてという――やはり大衆というものは現実を求めるのですよ。現実の姿の中で判断するのですよ。高邁な理念もいいけれども、いまの時代は、余り自由主義とか社会主義というイデオロギーのそういう問題よりも、現実の政治課題をどう解決するかということの方が、私というよりも、一般の大衆はそういう次元でやはり国政を見ておると思いますよ。その論争は一応留保しましょう。  そこで、私は思うのですけれども、一番私の聞きたいのは、なるほど理念としてはわかる。しかし、私はこれは単なるキャッチフレーズじゃないかと思うのですよ。来年は、常識論としてダブル選挙になるのかどうか知らぬが、参議院選挙もある。選挙が終わるまでは増税なき財政再建なんというかっこうのいいところで、そして中曽根総理の大演説、大ぶろしきを広げたやつをどんどんやっていく。しかし、選挙が終わったらそのとたんに中曽根総理の個性を発揮して大増税をやるんじゃないか、それはある意味では、一般消費税という名前こそつかないけれども、何らかの形の増税に手をつけるんじゃないかということは、国民は本当に素朴にそう思っておりますよ。これだけ財政が、人勧にまで影響があるようなところまで詰まってきた。そんな、手品師じゃあるまいし、魔法のつえみたいなものはないでしょう。  私は、そういう意味において、きょうは全く時間がなくなってきましたけれども、それは租税負担率も上げないんだ、増税もやらないんだ、そういうようなことで財政再建といったって、中身のよしあしは別ですよ、増税のないようなことでできますか。不公平税制の是正だって、グリーンカード制自身が、法律を通しておきながらこれさえ、税に強い山中通産大臣も笑われておりますが、私は、やはりこれは政治不信につながる問題だと思っておるのです。そういうことさえ手をつけないでこの財政再建ができるなんということは、まともな考え方を持っておる者は本当にしませんよ。  私は、そういう意味で、財政再建の骨組みについては大体こういう方向でいま作業をやっておるんだ、かちっとしたものは五十八年度の予算審議には間に合います、こういうぐらいなものはいまここでぜひ出してもらいたいと思いますね。また、それだけの責任があると思いますよ。どうですか。
  53. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま、いわば五十八年度の予算審議の、われわれとしてはこれからの財政再建に対する手がかりとしていろいろな計画を立てるわけでございますが、それはまた当然予算審議をいただく手がかりとしてお渡しする目的で進めたい、これは私もそのように考えておるところであります。なかんずく、これは抽象的にいわゆる財政再建大綱というお言葉をお使いになりましたが、その点については、内容をいかなるものにするかというようなことは、これからのいろいろな対話を通じたり各方面の意見を聞いてやらなければならぬと思っておるわけであります。  増税なき財政再建ということにつきましては、総理がたびたびここで申し述べられておりますのは、当面の財政再建に当たっては、まず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらないということである、こう申されております。したがって、私どももこの線に沿って進んでいきたい、こういうことであります。  そこで、まず最初に取り組むのは、言うまでもなく五十八年度予算編成作業、こういうことになるわけであります。これは総理から新しい言葉として財政改革、こういう言葉を使われております。すなわち、歳出構造の見直しあるいは歳入構造の見直しと両面に使われる言葉でございますが、なかんずく前者の歳出構造というものの見直しということに重点を置きまして、すなわち、今日まで一般会計の伸び率を一・八%にまで抑えてきたわけでございますが、今年度はこれをまさにゼロとする、こういう目標でいま編成作業に取り組んでおる、これがまず財政再建の一つの新しいスタートであるというふうに考えておるところであります。
  54. 藤田高敏

    藤田(高)委員 時間の制約もございまして十分な議論のできないことを残念に思いますが、私は私なりに、建設的な意味において財政再建に向けての骨格はこうあるべきじゃないかということを私の私見として申し上げてみたいと思うのです。  それは、この既存の税の制度を、専門家もおられますけれども、一部手直しをする程度のことでは財政再建ができない。財政再建のスタンスというか、基本的な立場はやはり税収をいかにしてふやすか。その税収をいかにしてふやすかということは世界経済全体の中から見て非常にむずかしいけれども、基本的には私は、景気を浮揚さす、景気を浮揚さして自然増収をふやすような、税財源をふやすということをまずスタンスとして置かなければいかぬのじゃないかということが第一でございます。  二つ目は、なるほど退職給与引当金や貸し倒れ引当金ではございませんが、そういう引当金を実態に見合ったように不公平税制の是正の一部としてやってきておりますが、私はこの段階に来たら租税特別措置というようなものは一遍全部白紙に返す、総ざらいして白紙に返す、そして中小零細企業であれば中小零細企業に対して、中小企業対策的なものを含めて租税特別措置をやらなければいけないものを新たに制度をつくるというぐらい思い切った不公平税制の是正に手をつける、そういう制度改正はやる、そしてグリーンカード制に代表されますような、そういう税制の不公平はこの際思い切って断行するというようなことをやはり柱として置くべきではないかと思います。  三つ目の問題は、これは一部新税になりますけれども、もう数年前から、福田内閣時代から私ども同僚の石橋議員であるとか武藤山治議員から本委員会でも問題を提起いたしておりますし、社会党の独自案も提示してまいりました土地再評価税ですね。これは技術的にむずかしいとは思いますけれども、これまた財政に明るい福田元総理が、社会党の提案は十分検討するということをおっしゃられておるのです。私はここに議事録を持ってきておりますが、石橋さんのやりとりなり、武藤先生のやりとりした議事録も持っておりますが、やはり帳簿価格、極端に言ったら帳簿価格には十円としか載ってない、それが何万もするような土地になっておるわけですね。そういう再評価によって出てくるものに課税をするという土地再評価税といいましょうか、これは名前は何でもいいです、いわばインフレ所得によって利益を得るような、そういうところへは思い切った新税というかそういうものも考えていく。これは主として財源をふやす面でございます。  いま一つは、もう言葉の上では出ておるわけでありますが、やはり私は歳出削減の面では防衛費に手をつけるべきだと思うのですよ。これはこの間の新聞の世論調査を見ても、ここまで行政改革をやる、財政の合理化をやらなければいかぬ、どこから手をつけるべきかという世論調査に対して、六一%の多数に上る世論は防衛費を削るべきだ、こう言っておる。これはそれこそ、人勧の問題を再三引き合いに出しますけれども、片一方では国民の基本的権利にまで手を加えながら、防衛費だけが七%も八%も伸びていくなどということは許されませんよ。これは少なくとも現状維持、もしくは軍縮の方向じゃありませんけれども防衛費を削減していくという、やはりマイナスシーリングの方向に沿って聖域を設けない、このことをやらなければ全く片手落ちのことになるのじゃないか。  そういう意味合いにおいて、私は、きわめて時間的な制約もございまして、全く私の一つの骨組み的なものの一部を申し上げましたが、そういう方向でやはり真剣に財政再建というものを考えてもらいたい。財界の方に顔を向け、自民党だけの判断財政再建の問題に取り組むのではなくて、われわれもわれわれなりに、当然のことですが、夜も寝ずにみんな勉強しておるのですよ。本当に真剣に勉強しておるのですよ、いま。われわれが本当に勉強といいますか努力をしてきて、野党は野党なりの責任を果たす立場から問題を提起しておることは積極的にこの際は取り入れて財政再建をやるのだ、こういうことをぜひやってもらいたいと思うのですね。  私のいま訴えておりますことは十分御理解はいただけると思いますので、大蔵大臣でも総理でも結構ですから、その決意のほどをひとつお答え願いたい。
  55. 竹下登

    ○竹下国務大臣 藤田委員考え方を基礎に置いての御提言でございます。謹んで私ども承らしていただきました。  そこで、景気浮揚して税収をふやすべきである。基本的にその考え一つの見識であると思っております。当然であります。  それから、いわゆる法人税等御議論がございましたが、要するに不公平税制の是正に当たれ、これもそのとおりであると思います。なかんずく租税特別措置等は、いわば一遍全部ちゃらにして、そして出直せ、粗っぽい表現をすればそういうことになりますが、そのような気持ちを持ちながら、年々租税特別措置の問題については政府税調、党税調等、その姿勢で対応して、いろいろ是正しながら今日に及んでおる、こういうことでございます。  それから、確かに私も記憶しております、いわば富裕税あるいは土地再評価税、この問題が、かつて福田内閣だったと思いますが御議論にありまして、それそのものは政府税調においてもいろいろ御議論をいただいた報告がたまたまここにございます。「近時の地価の異常な高騰によつて土地を持つ者と持たない者との間に富の分配の不公平が拡大しているので、土地増価税を創設すべきであるとする提案」についてのことでございます。「土地増価税を所得課税として考えると未実現利益に課税されることになり適当でない」、いわば果実を生んでいないものに課税する税である、こういう否定的な意見一つありました。それから、保有税として考えると、現行の固定資産税の評価の適正化を図ることがまず先決ではないか、こういう議論がありました。また、一種の再評価税として考えると、なぜ土地だけをその対象とするかが問題であって、資産再評価全体の問題として検討すべきではないかという意見等がありまして、この報告書には「消極的な見解が大勢を占めた。」こう書いてありますが、いわば税制調査会に対しては、国会で議論された問題一つ一つを持ち込んでその都度議論をしていただいておりますので、いまのまた新しい御発言というものも当然国会の議論として税調にお伝えすることはそのとおりであります。  それから、歳出削減に当たれ、あらゆるものに聖域を設けるべきでない、こういう御発言であります。これもそのとおりでございます。防衛費の問題を特に抜き出して御議論がございましたが、防衛費の問題につきましては、御承知のように、国際条約に基づくいわば後年度負担の問題がその大宗を占めるわけでありますが、私どもといたしましては、これが編成作業に当たりましては聖域として対処していくという考え方はございません。やはり他の予算との調和を考えながら、現実に即した必要最小限度のものを計上するように努力をしたい、このように考えております。
  56. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が幾つかの点を指摘をして、ぜひそういう方向の要素も入れて財政再建に向けて一層のというか、格段のひとつ御努力を願いたいということにつきましては、そういう方向で努力をしようという御答弁であったと理解をいたします。ぜひそれは期待をいたしておりますので、同じような議論が次の国会で展開されることのないように要請をいたしておきたいと思います。  そこで、財政再建問題にも関連いたしますが、問題点一つお尋ねいたします。  今回の補正予算でもうすでに議論にもなっておりますが、いわゆる国債整理基金に対する、この補正予算では一兆二千億の繰り入れを停止をいたしております。これは私は財政の節度を確立するという意味からは、また国債問題を議論にしてきた国会の経過からいいますと、非常に残念な措置だと思うのです。しかし、そのことのよしあしは別にして端的にお尋ねしますが、五十八年、五十九年、来年度はどうでしょうか。財政制度審議会のあの報告書を見ますと、やはり来年もこれはやっても仕方がないんじゃなかろうかというふうにも読める報告書になっておりますが、財政当局のひとつ見解を聞かしてもらいたいと思います。  ちょっと資料を配らしていただきたいと思います。
  57. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今回の定率繰り入れの停止は、五十七年度の困難な財政事情にかんがみまして国債整理基金の資金繰り入れ上、公債の償還に支障のないよう、やむを得ずこれを行うことにしておりますが、これは制度そのものを廃止するものではございません。政府といたしましても、今後とも基本的にはこれを維持していくという考え方でございます。  そこで、六十年代における大量の国債償還に伴って、今回の措置いかんにかかわらず国債整理基金の余裕がなくなって、そうして多額の予算繰り入れが必要となると見込まれている、このような将来の公債償還にどのように対処するかということになりますと、今後中長期的な視点に立ってこれはやらなきゃならぬし、それから五十八年度すなわちことしと同じことをやるか、こういう問題については、予算編成の過程において検討をさせていただきたい、このように思っております。
  58. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまちょっと資料をお配りさしてもらいましたのは、私ども社会党も独自の立場でいろいろな試算を続けておりますが、この国会審議としてはこの資料を使うのがいままでの経過からいって一番わかりやすい。なぜかというと、政府・大蔵省の方から出されてきた一つの議論する重要な資料としてこれが用いられてきた。その中で、ちょうど真ん中どころへ「現金償還額」というのが一つ入っておりますね。これが私が入れた欄なんです。  これでいきますと、いま質問をいたしております定率繰り入れを、一兆二千億をやめた。来年も再来年も、いまの大蔵大臣の御答弁では、制度は残す、制度は残すけれども、財源のやりくり上この繰り入れは来年もまた残念ながら停止せざるを得なくなったというようなことで、仮に五十九年度まで定率繰り入れをやめざるを得なくなったということになりますと一番右のはたの「余裕金残高」というのが結局これは国債を償還する財源なんですね。  そうしますと、定率繰り入れをここの計画どおり、法律で決められたとおりやっていけば、六十一年までは何とか赤字公債の現金償還を含めて財源があるのです、この表は。そうですね。ところがことし、いまのこの国会で一兆二千億に手をつけると、来年も手をつけざるを得なくなって、たとえば五十九年度まで実質的にその繰り入れがとまったということになりますと、結局、結果的には余裕金がこの段階で右のはたの六兆四千三百億円というのが二兆二千四百億円しかなくなるのです。そうして、あえて私が真ん中にこの「現金償還額」という表を入れました。六十年の現金償還額を見ていただければわかりますように、三兆一千五百億の現金償還額があるのに、五十九年の段階では二兆二千億しかなくなるわけですね、引きますと。ですから、六十年の段階では現金償還の金が不足するという事態が発生するわけであります。  そういうことになりますと、これは国債発行に対するやっぱり当初の約束が違うじゃないか。十年たてばこれはどんなことがあっても現金で償還するんだと言っておるけれども、このなにからいったら金がなしになるのですよ。そうしたら、ここでは何が起こるかと言えば、言わずもがなでございまして、いわゆる赤字公債償還のために赤字公債を発行するというサラ金財政の姿がもうまるまる露骨に出てくるというのがこの表の示すところでございます。  そういう点からいきますと、私はやっぱり国債制度に対する信用保持の立場からも、この定率繰り入れというものは今後とも存続しないと問題になる。もし、ここをやらなかったら、その右側の一般予算からの繰り入れですね、余剰金の繰り入れででもこれは補てんしない限り、政府がいままでこの十年間約束してきた、人勧問題で大出委員国会審議でずっと議論して約束してきたと同じように、これは国会で毎国会、現金償還をやりますと言ってきたことがここではできなくなる。そうして、赤字公債を発行したそのしりぬぐいをまた借換債の赤字公債で発行せざるを得なくなる。こういうことになりますと、これは釈迦に説法ですけれども、財政法は赤字国債を出すこと自体について大変厳しい条件をつけておる、それを今度はその償還財源にまた赤字を出すなんということは、これは財政法が予見してない、今日の財政法では手の及ばないことをやることになるのじゃないか。そういうことだけは絶対やってはならぬ、こう私は思うのですよ。これは、この内閣の中にはそういう意味合いにおいては税に詳しい人も財政に詳しい人も率直に申し上げておられると思いますが、私はそういう点だけは、この財政の節度をきちっとつけるということを前提にして財政再建計画というものは考えるべきではなかろうかということを私なりに考えておるわけでございます。これは一つの資料でございますけれども、定率繰り入れをやめるということになればそういう非常に重大な問題が起こってくる。これに対して財政当局はどうお考えでしょうか。
  59. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、貴重な資料をいただきましたことを感謝いたします。  いわゆる国債整理基金の資金繰り状態から見た、いわば国債管理政策の大要にわたっての御質問でありますが、なかんずく六十年度以降償還時期に入りました際のこの償還の問題につきましては、先ほどお答えいたしましたように、中長期の視点に立ってこれは検討しなければならぬという課題であると思っておりますが、いま財政法の趣旨からしての御警告でございますが、少なくともそこまではおっしゃっておりませんが、いわば野方図な日銀引き受けとか、そういうようなところへしりを持っていくようなことは、これは断じてあってはならぬというふうに考えております。御趣旨を体して、この定率繰り入れ等の存続も含め、償還問題につきましては、中長期の視点できちんとした計画を立てなければならない課題である、このように理解をしております。
  60. 藤田高敏

    藤田(高)委員 最後に一つだけ、地方交付税の問題について触れておきたいと思うのです。  地方交付税も、御案内に漏れず、今回の予算措置で約一兆七千億程度が削られることになっております。交付税の性格その他につきましては、全く時間がございませんので申し上げませんが、実質的には、来年度の、五十八年度の予算編成が進む過程で財政当局と自治省との間にも具体的な折衝の始まっておりますことは、新聞その他でもちらちら出ております。  これを見る限りにおいては、今回、結果的には一兆五千四百三十三億というものが資金運用部資金に借り入れられて、これが交付税特別会計の借入金になる。そうして、この借入金をどう措置するかについては、五十三年度以降の、いまの法律制度に基づいて処置をいたしましょう。それは具体的に言えば、元金は、二分の一は自治体が持ってくださいよ、そして二分の一は国が持ちますよ、そうして、その資金運用部資金にかかる利子はこれは国が持ちましょう、こういうことで処置しておるわけですね。  ところが、国の財政が非常にしんどうなってきた、困ってきた。来年からはひとつこれはできれば利子も元金も全部地方が持ってくれないかということになって、そういう方向で政治折衝が進まれておるようでありますが、地方交付税の性格からいって、これは単なる補助金や何とは違って、国の財源と地方自治体の財源をどうするかという財政再配分の問題ですから、私はやはりその制度は壊すべきではなかろうと思うのです。これは単に地方自治体の立場でどうこう言うわけではなくて、そういう意味合いからいって、新聞その他に出ておる情報が、そんなことはないよということであれば、これにこしたことはございません。そこらのところをぜひひとつお答え願って、私は、現行制度のもとにどうぞ来年度以降も地方交付税については十分めんどうが見られるような財政計画を立ててもらいたいという要請をいたしまして、私の質問を終わりたいと思いますが、最後に御答弁を煩わしたいと思います。
  61. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま御指摘のように、五十年以来の措置でございました。そうして、五十七年度地方財政補正措置においては、年度途中の措置でもございますので、新規借入金の本年度利子全額は国が肩がわりして負担するよう、御審議いただいております補正予算で手当てをしておるところでございます。そして、五十八年度以降の問題でございますが、全体の財政計画という問題も御指摘がございましたが、いわば政治折衝という段階にまだ至っておる問題ではございません。この国の肩がわり負担の見直しという問題については、まだ検討をしておる段階であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  62. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、私の関連質問で同僚の阿部議員が継続して質問に立ちますのでよろしくお願いいたしまして、質問を終わります。
  63. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、阿部助哉君より関連質疑の申し出があります。藤田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。阿部助哉君。
  64. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、この国会は、国民の国会に期待する問題が大変多いわけであります。しかし、残念ながらいろいろな御都合で会期が非常に短い。しかも、この短い中で、私は、この委員会でこれほど政治倫理の問題が論議をされた予算委員会はかつてなかったと思うのです。それだけに今日最大の政治課題は、私は政治倫理の確立である、こう考える。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕 ところが、総理の御答弁をこの委員会で聞けば聞くほど何か不熱心だという感じを受ける。そして、むしろこの政治腐敗の問題を守っておるような感じを受けるのは私だけじゃないんだ、こう私は考えるのであります。大変残念であります。まあ、上が行うところ下これにならうというたとえがありますが、自民党の腐敗はいまや地方末端にまで浸透しつつあるんじゃないだろうか。特に地方選挙においては目に余るものがあります。選挙違反が公然と行われておる。それを考えると、来年の春はこれは一斉地方選挙が行われる、私は何か寒けをすら感ずるのであります。  そこで、これは自治大臣ですかな、国家公安委員長ですか、具体的な問題に入ります前に、まず法律解釈を確認をしておきたいと思うのであります。これは事前に私もいろいろと検討し、打ち合わせもし、お伺いもしておりますけれども、この委員会で確認をしてまいりたいと思います。  公職選挙法の百九十九条一項は、一つ、地方公共団体の長の選挙に関して、第二には、その地方公共団体と現に請負契約をしている当事者は、三、その選挙に関して寄附をしてはならないと定めておりますが、そう解釈していいのですね。
  65. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 ただいまのお話の公選法百九十九条は、お話しのとおり、地方公共団体の議員の選挙、首長の選挙に関して、当該地方公共団体と請負その他の契約のある者は、当該選挙に関し、寄附をしてはならないということでございます。  これは、二つ私は問題点があると思うのは、「当該選挙に関し、」ということと、それから、その段階の地方公共団体の議員、首長の選挙に関し、その地方公共団体と請負その他の契約のある者との関連においてこの百九十九条が規定をされておる、こう理解をいたしております。
  66. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう少し厳密に言いますと、その地方公共団体と現に請負契約をしている当事者、こういうことなんですね。そして、「関して」というのは、いろいろな自治省の皆さんが書いた本やらいろいろな判例やらをひもといてみますと、これは非常に幅広く解釈をすべきだというのが通説になっておるようですが、その点は確認しておいていいですか。
  67. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 「選挙に関し、」というのは、やはり選挙に際しましてという一つの時期的な問題がある。それから、選挙に関連をいたしますことを動機としてという、この解釈については、おっしゃるように、わりあい広い解釈になるものであろうと思います。
  68. 阿部助哉

    阿部(助)委員 この要件に該当した寄附は、それでは違法ということになりますね。
  69. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 事案の内容がわかりませんからなにでございますが、もし、これに該当するものがあるとするならば、それは違法であるということは間違いない。
  70. 阿部助哉

    阿部(助)委員 次に、この寄附を何人も勧誘する、また要求すること、受け取ることは、公選法二百条で禁止をいたしておりますね。それはそのとおりですね。
  71. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 二百条は、もうお読みくださったとおりだと思います。
  72. 阿部助哉

    阿部(助)委員 もう一つ確認をしておきます。ここで言う寄附には、金品等の授受だけでなく、その約束も含まれると考えますが、これもいいですね。
  73. 岩田脩

    ○岩田(脩)政府委員 お答えを申し上げます。  公職選挙法の中には寄附に関する定義を設けてある条文がございまして、それによりまして金品、財物の供与、それから、その約束を含むということになっております。
  74. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは、事実についてお伺いをいたします。  これは一地方のことでありますが、冒頭に申し上げましたように、来春は全国一斉に行われる。それだけに私は十分にいまから総理注意をしておいてもらいたい、こういうことで申し上げるわけであります。  実は、先月の十一月四日から私の住んでおります新発田市で選挙が行われました。十四日に投票が行われました。この市長選挙で次のようなことが明らかになりました。  新発田市の建設業協会、これが一カ月前の十月六日に新発田市内の料亭で、これは名前もみんなわかっておりますが、臨時総会を開きました。もちろん議題は何もありませんから、すぐに臨時総会は市長推薦を決定いたしまして選挙対策委員会に切りかえました。出席者は三十九名であります。そして、推薦を決定したからそこで選対構成をつくりました。これは役員が、だれが選対委員長だ、副本部長はだれだというような形で選対構成が行われました。そうして、選対構成が行われた段階に新発田市では大手と言われる伊藤組の社長から、われわれ大手の建設業者は一口百五十万円ずつ出すから、Bクラス、Cクラスの会社も応分のカンパをしてもらいたいという提案が出されました。そして、現市長であり、当時も市長でありました近氏に提供したいという提案があり、これが、中にはいろいろと不満を持っておる人もあったようでありますが、一応可決をされました。  ところが、驚くべきことに、この席上、市長も出席をしておる。本来、市長が出かけるとき連れていくのは大体秘書課長とか秘書というのでありますが、この会合に関しては工事契約担当課長である庶務課長が同席をして、初めからしまいまでおるわけであります。そうして、カンパが決定された段階で、市長は、物心両面の援助を受けることになって大変ありがたいという謝辞を述べておられるわけであります。この発言は法律禁止をする約束による寄附だ、こう思わざるを得ないのです。いまこれをすぐ公安委員長へお伺いしても無理だと思いますから、続けます。  もちろんこの出席者のうち、たとえばカンパを提案した伊藤組など数社は、現に新発田市と土木建設に関する契約を結んでおり、そうして現に工事をやっておるのでありますから、私が先ほど確認をした現に云々という項目に間違いなしに該当をするんだ、私はこう思うのであります。そうして、近氏がこの違法な寄附を受け取る約束をしたこと、これも明らかであります。このように明白な地位利用による悪質な選挙違反が行われる。ある意味では、市長と工事契約担当の課長がにらみをきかせる中でこういう提案がやられ、そうして可決し、やられるなんということは、法律を知らな過ぎるのか、もうそういうことに対して良心の苛責もなくなったのか、何かちょっと私には見当がつかぬのです。普通はこういうことは、まあ行われるだろうけれども、しゃばでは暮夜ひそかに行われるだろう、こう思っておったところが、これがまた三十九人も集まってそれをやっておる。そういう点で私はちょっと驚く以外ないのでありますが、公安委員長、警察はもうこういうことはお調べになっておるのでしょうな。
  75. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えいたします。  ただいまお話しの件につきましては、現在新潟県警祭の方で関係企業二十数社の事情聴取を行うなどいたしまして捜査中でございます。
  76. 阿部助哉

    阿部(助)委員 こういうことが、現職の市長、そして工事契約担当の課長がそこに、現場におって、先ほど言ったように、にらみをきかせるような形で行われる。そして、小さな業者は市と直接関係のない業者も多々おるわけであります。そういう人たちはまた非常な不満を持っておったようであります。だけれども、市長と、何といっても現職の担当課長のおる前で反対をしかねたという業者も数あるわけであります。私は本当は罪人を出したいと思っていない。だから私は、それを聞いたときに、警察署長に面会を求めてお会いいたしました、県会議員、市会議員も連れて。そして私は、罪人を出したくないから、なるたけこういうことが実際に行われないように注意してあげた方がいいぞという話をしたのでありますが、選挙が終わるまでは手を出しにくかったんだろうと思うのでありますけれども、これはそのままずっとやってきておるわけであります。しかし、お話によれば、警察ではいま捜査をやっておるという段階でありますから、私がそれ以上ここでお伺いしても問題は出てこないと思うのでありますが、大体いつごろまでにこれは終わりそうか、見当つきませんか。
  77. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えをいたします。  現在、捜査をやっておりますので、その終了の時期につきましては、現在申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。     〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕
  78. 阿部助哉

    阿部(助)委員 幾たびも幾たびも私は申し上げるのでありますけれども、このようなことが、総理、総裁でもおありでありますし、来年の春の選挙で行われたら大変なことになります。各市町村長あるいは県知事が関連の業者を集めて、それで、にらみをきかせながらカンパを決定するなんということが行われたら、一体どうなるのだろうか。  私はここでは余り、内容をまだいろいろ聞いてはおりまするけれども、申し上げません。たとえば、それから宴会に入った中で、担当課長は、この金は借りたようなもので、仕事で返しますなんという話までやっているわけでありもます。仕事で返すとは、一体どういうことなんだ。十億の仕事を十二億にして注文しますよということになってしまう。これで一体血税はどうなるのだろうかということを考えると、選挙は激しく行われて結構です、しかし、こういうことがこう公然と行われるようになったんじゃ、私は、もう日本の政治も行政も行き着くところへ行き着いたという感じがしてならぬのであります。私はこれはちょっと許せない。私は一地方の問題を取り上げたのは初めてであります。だけど、これは全国的に影響する問題だけに私は取り上げました。総理見解をお伺いしたいのであります。
  79. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治倫理の重要な項目の中には、選挙の粛正ということがございます。ただいまいろいろお話を承りましたが、非常に驚きました。来年の地方選挙等にかけましても、万が一にも違法行為がないように関係方面に戒めてまいりたいと思います。
  80. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、国家公安委員長の方にもお願いをしておきますけれども、まだこの後の話があるのであります。  十二月一日に反省会と称していわゆる当選祝いが行われました。これは料亭で百二十名ばかり出て行われました。そこでやはり市長は、物心両面にわたる皆さんの御支援をいただいてありがとうございましたと、こう言っておられる。そうして、その席上、驚くべきことに建設業協会の会長は、二、三警察に呼ばれて調べられた方もあるけれども、この問題はもう決着がつきまして、皆さんに御心配をかけたけれども、もう心配は要りませんと、こう言っておる。いま捜査中とおっしゃるけれども、片っ方では、もう警察と話がついたと、こうなっておる。何か政治的な圧力が加わったんではないだろうかといううわさが、いま町じゅう広がっておる。そして、片っ方では、糾弾の運動がいま起きておるというのが現状であります。まさか私は、それを政治的な、自民党支持であるから圧力でもみ消すなんということはないだろうと思うのですが、公安委員長見解をお伺いして、この問題を終わります。
  81. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 阿部委員は地元におられまして大変詳しく御存じなのですが、私どもは全然事情がわからぬわけでございまして、いろいろ承りまして私どもも善処してまいりたい、かように考えております。
  82. 阿部助哉

    阿部(助)委員 それでは、ただいま同僚の藤田委員からいろいろと財政の問題が出ましたので、時間がありませんから、少しだけ触れてみたいと思うのでありますが、わが国の財政基本法である財政法、これは前から私が主張し続けてまいりましたが、いろいろな学説を見ても、憲法第九条の裏打ちとしての意味を持っておる、そしてまた、財政インフレーションを起こさないための防波堤である、こう言われてまいりました大変重要な法律であります。  そこで、総理は改憲論者でありまして、いろいろとここでも問題がありましたが、改憲論者である総理は、財政法を守るべきものだとお考えなのか、それとも、財政も大変おかしくなってきたからもうこの辺で変えようというお考えなのか、お伺いをしたいと思うのであります。
  83. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法律は、存する限りこれを誠実に守っていかなければならぬと思います。
  84. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、総理は、近いうちにこれは変えるべきだとお考えになっておるかどうか。もちろん、現存する限り守るのは当然のことでありますが、総理のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  85. 竹下登

    ○竹下国務大臣 財政法となれば私の方になりますが、阿部さんの御質問の御意図が定かに私はわかりませんが、まあ財政法というものは、もちろん現存する限り守るべきものであります。  ただ私は、財政法の中で問題提起をこの国会でいただいたことを一つ記憶いたしますならば、予算は十二月中に提出するを常例とする、こういう項が前財政法時代からずっと残っております。その項に関しては、明治以来一遍も守られたことがないということになると、その辺はどう措置すべきかなという、純粋な財政立場から検討を続ける課題であるとは思っておりますが、財政法全体の趣旨に、いまどこを改正しようという考えはございません。
  86. 阿部助哉

    阿部(助)委員 その問題も一つあるのですが、それよりも基本的に、やはり財政法の一つの中心は第四条、第五条というあたりに、公債問題そして日銀引き受け、こういうところに焦点を合わせて私はもう一遍お伺いしたい。
  87. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる日銀引き受けの問題等について法律を改正する考えはございません。
  88. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、この委員会財政の健全化、赤字公債の問題、ほとんどそればかりやってきたのです。ある意味では、何とかの一つ覚えというふうに仲間から笑われるぐらい、私はこればかりやってきたのだから。だけれども残念なことに、今日の自民党の財政政策の失敗で、私はもう財政法は本当は打ち崩されてきたのじゃないだろうか、一体これはどこまで行くのだろうかという感じがしてならない。  そこで、一つお伺いしますけれども、資金運用部資金で保有しておる国債がありますね。この国債は、日銀へ売るということはあるのですか。
  89. 竹下登

    ○竹下国務大臣 もし不正確な点がありましたら事務当局から補足いたしますが、資金を運用するいわゆる余裕金の運用について、手持ちの国債を日銀が一時抱くということはございます。恐らく委員御指摘の問題は、要するに新発債を購入するための財源として抱かすようなこと、これは考えておりません。
  90. 阿部助哉

    阿部(助)委員 そうしますと、新しい国債引き受けのために日銀に売るということはない。これは明確なあれですね。私はこれはぜひとも守ってもらいたい。  ある意味で言えば、政府機関から政府機関への移転ということになっていき、これが許されると実質的な日銀引き受けという形になっていくというふうに考えますので、実際今日ここまで来たのは、やはり多少ルーズさ、安易さというものがこういう姿になってきたんじゃないだろうかということを考えれば、本当にいま苦しいからといっても、苦しければ苦しいほどそういう点で財政法を守ろうという努力がなければならぬと私は思うのであります。  そういう点で、先ほど藤田委員からお話がありましたように、減債基金というものをやめる、そしたら国債の信用というのはどういうことになるのです。一体返すつもりなのか、返すつもりでないのか、その辺がわからなくなってくる。大平さんが大蔵大臣のときに、特例公債を出されたときに、返済計画をつけないと大変なことになりますよ、私はこう申し上げた。それがだんだんルーズになってきて、そしてサラ金財政になるんじゃないですか、だから、苦しいけれども、国が借金をするとき、それはやはり税金が担保なんですよ、税金が担保でなければインフレーションなんです、だから、インフレーションで価値を減らしてこれをお返しになるのですか、それとも税金でお返しになるのですか、こう聞いたら、そのときは、インフレーションではありません、税金で返すのです、こうおっしゃった。私はもちろんそれが当然のことだと思うのです。  ところが、現実はと言えば、先ほど御指摘がありましたように、もう公債はふくれる一方であります。恐らく皆さんは何だかんだ知恵を出して特例公債は書きかえにするんじゃないだろうかという不安を私はいまから持っておる。しかし、あれだけ毎年毎年、現金で返します、こう言ってきたものを、借りかえます、こう言うのは大変苦痛なんだろうと思って私は見ておるところなんです。ただしかし、それは皆さんだけの問題じゃない。私たち国民全体の問題だけに、もう少し真剣にこれを考えてもらいたい。私はそういう点で、先ほどの藤田さんと私は全くの同じ意見でありますけれども、困難になったときにごまかしたりいいかげんなことを言うんじゃない。そのときは本当に国民に真実を訴えて御協力を願うという姿勢がどうも感ぜられないのが、私は一番残念なんであります。  いま苦しいのはわかっておるのですよ。そして、だれの目で見たって五十九年に赤字公債脱却なんというのは本当はもう不可能もいいところだ。だれが見たって不可能なんですよ。そのときになぜ国民にわかりやすく、こういう事態になりましたということをおっしゃらないのです。何かできるような話をして、臨時でございますとかなんとか言ったって国民は理解しませんよ。現実をもう少し真剣に踏まえなければそこから本当の政策というものは出てこない、私はそう思うのですが、総理はどうなんです。
  91. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 おっしゃいますとおり、財政等につきましては実態を国民の皆さんに正直にお知らせして、そして御協力をいただくべきものである、このように考えております。
  92. 阿部助哉

    阿部(助)委員 いや、それならば、もう先ほどお話がありましたように、まだ脳波が生きておるとかなんとかいうことじゃなしに、もうだめなんですよ。もうだめなんです、これはどう考えたって。五十九年度はもうだめだ、だから、ここでどうするかというものを皆さんが本当に考えなければならぬ。その辺がどうも国民はわかりにくい。そうしておいてごまかしていこうなんということじゃ、私は国民は納得できないと思いますよ。  どこから取るかは別ですよ。初めから私は、増税なければ財政再建なんてあり得ない。それは行革で削るのは何ぼ削ろうと努力は結構です。やってみたってそんなに削れるわけじゃないのです。行革をおやりになるのはおやりになってもいい。むだがあるならばやってもいい。しかし、そんなにできるわけじゃない。問題は、どこから税金を取るかなんです。一般消費税でやるのか、それとも金持ち、大企業から取るのかというところに問題があるというのは、私が初めから言っておるところなんです。それなしに財政再建なんてできるわけがないと私は思うのですが、総理、それでも増税なしにできるのですか。
  93. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 増税なき財政再建の基本は維持してまいりたいと思っております。現在の状況は、御指摘のとおり、非常に苦しい状態にございます。今回の補正予算の性格を見ましても、過去の後始末という面もございますし、また将来に向かっての景気浮揚という面と、暖流と寒流が混流しているという性格があります。ある意味においては過渡期的な補正予算であるとも考えられます。これは藤田議員にお答えしたとおりでございまして、新しい展望をいかにつくっていくかということは、五十八年度予算の編成等を機に、いまこれから政府が真剣な作業に入ろうとしておるところでございまして、それらも踏まえましてこれから努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  94. 阿部助哉

    阿部(助)委員 私は、たとえば皆さんの方で、これは大蔵省の方へ聞いた方がいいのでしょうかな、源泉選択分離課税をやっていますね。三五%。これは地方税が三五%でかかっていかない。こんなものはもうやめれば利子配当だけでも相当の税金が入る。大蔵省から資料はとっておりますけれども、これは相当の税金が入るのです。国会議員の皆さんは、自民党の皆さんはどうかわからぬが、われわれの方からいくと、歳費だけで大体三〇%近い税金を取られているのですね。ところが、何億という収入があっても三五%で打ち切り。これは地方税もかからない。そんなものはもう総合課税にすべきだというのが私たちの主張だけれども、それができなくとも、少なくとも五〇%ぐらいに引き上げてみたからが大きな負担じゃないのじゃないか。一五%上げてごらんなさい。大体三千億ぐらい入ります。まあ減税の小委員会で大分財源問題で苦労されたようだけれども、そんなものは、ただ自民党さんがやる気になればわけがないじゃないですか。なぜやらないのです。そうすれば、減税の財源あるいはまた公務員の人勧の財源も出てくるのではないですか。勤労者からは厳しく取って実質可処分所得が減るような現状で、何億も稼ぐような人たちが三五%で、あとは地方税もかかりませんなんというのでは、私は、余りにも金持ち保護じゃないだろうか、こう考えるのですが、この辺はもう直してもいいんじゃないですか。
  95. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 ただいま委員御指摘になりました源泉分離選択課税でございますが、五十六年分の税務統計によりますと、利子の支払い額が一兆円強ございます。したがいまして、仮にこの税率を一%上げますと約百億という計算になりますが、ただこの辺は非常に微妙でございまして、余り源泉分離選択課税の税率を高くいたしますと、総合課税のたてまえをきちんとしておきませんと低い税率へ逃げるということでございますから、機械計算で、いま委員御指摘のとおり、たとえば一五%上げますと、一千五百億という増収になるという計算になりますけれども、実際、さてそういうことになるのかどうかという問題がございます。  なお、総合課税、利子課税の今後の税制のあり方については、源泉分離選択課税、それから現在の非課税貯蓄も含めまして、いろいろ議論があることは私どもは承知しているところでございます。
  96. 阿部助哉

    阿部(助)委員 逃げるというのは、どこへ逃げるのです。マル優の方へ逃げるということなのだろうけれども、マル優はちゃんとやればいいのですよ。ただ、脱税保護をやってはいかぬのであって、皆さん脱税を一生懸命守っていくような形で、逃げると言うが、外国へ逃げるわけがないのですよ。これは理屈にならぬのですよ。問題はやる気になるかどうかです。それで人勧はだめだ、減税はだめだ、これは理屈に合わぬと私は思うのですよ。  私、この辺は、もう時間がないから、次の国会か大蔵委員会でやりますけれども、いまのような政府で――財源がないのではないのです。日本の経済は大変大きい。皆さんおっしゃるように、GNPは大変大きくなっておる。問題は、勤労者の側から取るのか、一般消費税や、それとも金持ちの方から少しいただくか、大企業からいただくかというところへ来ておるのであって、やろうとすれば、金がないなんということはないと私は思う。現に皆さんは行革をおやりになっておるけれども、日本の税負担率は決して外国と比べてそう高いものではないのです。ただ、勤労者にとって厳しいというだけであって、大変大きな収入のある方々にとってはそれほど税負担率は外国に比べて重いものだとは私は思わないのであって、自民党税調もある、政府の税調もありますけれども、何か政府の税調自体にも私は問題があるように思う。もう少し思い切って、業者代表や金持ち代表の姿ではなしに、税の公平というものがなければならぬと私は思うのでありまして、私は、もう一遍大蔵大臣の決意をお伺いして終わりたいと思います。
  97. 竹下登

    ○竹下国務大臣 わが国の所得税制の体系につきましての御議論がございましたが、一般的に言えば、課税最低限は一番高く、累進税率もまた一番高いというような角度からこれをとらまえることもできるとは思います。しかし、およそ大宗としておっしゃったいわゆる不公平税制というものについては、たゆまざる注意の眼を注いでおって、それにいつでも対応するだけの姿勢は持っていなければならぬ。これは総理が言っておられますいわゆる歳入構造の見直しという点の中にも、その言葉の中にも含まれておることであると考えております。
  98. 阿部助哉

    阿部(助)委員 終わります。
  99. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて藤田君、阿部君の質疑は終了いたしました。  次に、正木明君
  100. 正木良明

    正木委員 私は、主として今後のわが国の経済運営、財政運営等の問題にしぼって若干質問を申し上げたいと思います。  そこで、その質問に入ります前に、きょうの午前中ニュースが流れまして、韓国の金大中氏が病気治療のために仮釈放され、ソウル市の病院に入院したことが伝えられました。韓国政府はこの措置に対して、人道的な立場から行われたこと、金大中氏もしくは家族が希望すればアメリカでの治療も含めて寛大な措置をとる用意があるということを明らかにいたしておりますが、今回のこの韓国政府措置に対して日本政府はどのような認識と評価をされているのか、まず明らかにしていただきたいと思います。
  101. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 金大中氏が釈放されたということでありますが、この金大中氏の問題は、基本的には韓国の国内問題でありまして、これに対しまして政府として介入をするということは避けるべきであると考えております。そういう意味で、今回韓国政府がとった措置について詳細なコメントは差し控えたいと思いますが、しかし政府としては、金大中氏の問題に関する従来の経緯もあるわけであります。そういう従来の経緯から見まして、同氏の身柄に対しては非常に関心を持っておったわけでありますから、こうした観点から、今般の韓国政府が同氏の出所を認め、病気治療に当たらせるという人道的な措置をとったこと、及びまた今後同氏について寛大な措置をとることとしたことについては、これを評価いたしております。
  102. 正木良明

    正木委員 外務省もこの問題については情報をお集めになっていると思いますが、従来金大中氏の問題は日韓関係に大きな影響を与えてまいってきておりますので、仮釈放と言われておりますが、いまの外務大臣のお話では、実質的な釈放に至る方向というものを察知なさっているようでございますけれども、その点について、重ねて。
  103. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは病気治療ということで仮出所ということになっておるわけでありますが、私たちも、日本政府としてはこれまでの金大中氏のいろいろの経緯から非常に関心を持ってきたところでありまして、人道的な立場でこういう措置を韓国政府がとったということについては評価いたしております。と同時に、今後ともこれを見守ってまいりたい、こういうふうに思いますし、日韓の関係から見て好ましいことである、こういうふうに考えております。
  104. 正木良明

    正木委員 これは総理にお尋ねしたいと思いますが、従来懸案になっていた日韓の経済協力等の問題、これらも何らかの形でいい方向へ向かっていくのかどうかということについていろいろと論評があるようでございますけれども、基本的に対韓協力問題について総理のお考えを明らかにしておいていただきたいと思います。
  105. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 前内閣のときより、対韓経済協力問題というものは両国の重大な懸案事項でありまして、現内閣に至りましても引き継いで重大な懸案事項であると考えておりまして、できるだけ早期にこの問題を解決するように努力してまいりたいと思っております。
  106. 正木良明

    正木委員 これは国家公安委員長にお聞きしておきたいと思います。  まだ金大中氏の誘拐事件についての特捜本部が解散されないで残っているという話も聞いていますが、残されたところ、それぞれの関係者の捜査や事情聴取というのは済んでいるようだけれども、金大中氏に関しての事情聴取がまだ済んでいない。まだ韓国の国内にいらっしゃるようでありますけれども、このニュースによれば、本人や家族が希望すればアメリカへ出国することを許すという考え方のようでありますが、そういう点では、何らかの形で金大中氏と接触して、あの誘拐事件の問題についての事情聴取をする用意があるのかどうか、どうでしょうか。
  107. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 この問題につきましては、警察当局といたしましては従来から捜査を継続をしておるわけでございます。御本人の金大中氏から事情が聞ければ捜査に何らかの手がかりもできるであろう、かように考えられるところでございます。しかしながら、今日までのところ、金大中氏との接触はできていないわけでございます。しかし、できればさような接触をして、何らかの事情を承ることができれば捜査の上の手がかりとなるものと、かように考えております。
  108. 正木良明

    正木委員 それは継続してよろしくお願いします。  それじゃ、本題に入りまして、まず大蔵大臣にお伺いしたいのです。  この間からいろいろと議論になり、きょうも同僚議員からのいろいろ質問がございましたが、五十九年度赤字国債発行をゼロにするという問題について、きわめてあいまいな答えしか出てきていないということは非常に残念だと思うのです。総理はこれの見直しということをおっしゃったし、あなたは、大蔵大臣の財政演説で、脱却はきわめてむずかしいという判断を示していらっしゃる。にもかかわらず、五十九年赤字国債発行ゼロという政策は捨てない、この旗はおろさないと言う。これは国民にとってはきわめてわかりにくい話になってくると思うのですが、この点はどうですか。
  109. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは再三お答えいたしておりますが、正確に申し上げますと、五十九年の特例公債脱却は現段階できわめて困難になったということは、素直に本会議でも本委員会でも認めておるところであります。そして、その理由といたしまして本日申し上げますことは、中期的な計数というもの、これはやはり五十八年度予算編成でまず取り組んで、その編成作業の過程において、そして、その結果において数字的には断定できる時期が来るかもしれない。そういう意味におきまして、これはきわめて政治的な面ではなく計数的な面から申しますと、いまこれを断定するということは、中期的な計数というものがない今日、かえって不親切になるではないか。これが非常に困難な状態になってきたということだけは認めておるわけでございます。政治的な面は、あくまでもそういう鈴木内閣以来のその決意というものは、五十八年度予算編成に対しても持ち続けていきたい。いやしくもこれが歳出削減のたがが緩むというようなことがあってはならないという底意があることも事実であります。
  110. 正木良明

    正木委員 私は、そんなにびくびくすることはないと思うのですよ。実態的に、五十九年赤字国債ゼロはもう放棄せざるを得ない、したがって、そのゼロをいつの時点かに定めて新しい計画を立てていこうというのなら、私はそれは決して悪いことじゃないと思うのですよ。むしろ皆さん方にだけ通用する常識で物を言ってはならぬのであって、やはり社会全般、世間に通用する常識で物を言わなければもう理解しがたいだろうと思うのです。  私が心配することは何かと言いますと、九月の十六日に鈴木前総理財政の非常事態宣言というのをやりましたね。あの非常事態宣言をやった後、急速に円安が加速されていくんです。あの当時の論評は、要するに、このような非常事態の状況になって、五十九年赤字国債発行ゼロというようなことがもう破綻しているような状況の中でなおその旗をおろさずに、しかも、なお旗をおろさないわけですから、その後の財政再建の計画も具体的に述べることもなかったということが、やはり国際的に日本の財政運営についての不信感を生んで、それが円安につながっていったというのが大体一致した見方であったわけです。  そうすると、この予算委員会を通じて、総理にしろ大蔵大臣にしろ、この問題について明確に今後の財政再建ということについての目安も言わずに、しかも、だれが見てももうだめだというようなものについてまだ引導を渡さないでこのまま便々と続けていくということになれば、やはり国際的な信用という問題からいっても私は非常に因雑な状況が出てくるんじゃないかということを非常に心配するのです。したがって、脱却が非常に困難になった、見直ししなければならないような状況になっている、しかし、その旗をおろさずになお希望的な観測を続けていくとするならば、あなたが目指している、出てくるかもしれないその希望的な条件というのは何ですか。
  111. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は、正木委員の観測でございますが、あの非常事態宣言というものは、これは非常にショッキングな印象をいわゆる国際通貨社会に与えた、それが円安の一つの増幅するきっかけになったということは否定するものでございません。しかしながら、そのこと自体はいわゆる日本経済全体に対するファンダメンタルズの客観的な見直しがある種の反転につながってきたから、あの問題そのものは一時的な問題ではなかったか、これはお互い見方の問題でございますが、そういう見方をしております。  そうして私は、この場で国民の皆さん方には困難になったという表現はそれなりに理解していただける。やはり財政当局でございますから、中期的なある種の見通し、そして数値というものが明らかになって初めて、かくして困難になりましたと言うのが、より正確じゃないか。びくびくという表現も私、決して当たらないとは思いませんが、より正直に申し上げる時期は、やはり私は中期的なそういう数値というものが把握された段階ではないか、このように思います。  そうして、この財政再建に当たる一つの展望ということでありますが、五十八年度予算編成を通じて、まずそれこそ切り込むべきものを切り込んで、苦心惨たんして、国民のニーズに対応する行政需要をできるだけ、可能な限り落とさないというような考え方に立ちつつも、荒っぽくなたをふるいながらこれに対処して、そうして、その予算編成そのものを通じ、また予算書そのものも通じて国民の理解を求めながら、さて、さればどこに当面の赤字国債脱却の目標を置くか、こういうことになりますと、それこそ私は、あるいは恐らく正木委員の今後の議論の展開の中にあろうかと思いますが、新経済五カ年計画というようなもの、その中で一体成長率をどこに見ていくかというようなもろもろの問題がございますので、いまここで五十八年度予算に取り組む姿勢が出発点であるということを申し上げることはできても、されば、その中間の一つのめどである赤字国債脱却を何年度に置くかということをここで断言する環境には、準備もございません。
  112. 正木良明

    正木委員 いずれにせよ、五十八年度予算の編成をするに当たって、その見通しがつかない限り、編成もできないだろうし、それを国会に提出をして、また、本会議、予算委員会でそれを審議することも不可能だと思いますから、私は、この補正予算には間に合わないというのは、事情としてはわからないわけはないけれども、少なくとも五十九年赤字国債発行ゼロという政策を放棄するに当たって、そうして、その後の財政再建計画というようなものについては、私は、五十八年度予算の審議に際しては当然必要だと思うのですが、その点はどうですか。
  113. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私どもも編成の作業の手がかりとしてもある種のものが必要だろうと思います。そして、予算審議をいただく基礎資料と申しますか、手がかりとしても当然それは提出すべきものである。ただ、その提出する内容が従来から考えまして、五十五年までの手法、そして五十六年、五十七年の中期見通し、その手法、まあ五十五年まではケースAとかケースBというようなものもお出しいたしましたが、どういう手法になるかということもいま部内で慎重に、と言っても時間かけてこれはやるわけにもまいりませんので、検討しておりますので、五十八年度予算を御審議いただく資料としては御提出申し上げなければならない問題である。そして、その中身についてはこれから各方面の意見も聞いてみなければいかぬ、こう思っております。
  114. 正木良明

    正木委員 これは増税なき財政再建という問題と非常に複合された問題だと思うのですね。政府の方も言明なさっておりますが、われわれもそう思います。少なくとも赤字国債の発行がゼロになるような時期、これを一応財政再建が完了した時期であると見ようとしているのは、大体常識的に言って、それぞれ財政の問題を考えている人たちの頭の中にあるだろうと思うんですね。ですから、そういう意味からいって、いつ赤字国債の発行がゼロになるかということについて、私は、明確にやはり国民の前に示し、それが財政再建のめどになるということをよく覚えておいていただきたいと思うのです。  この計画というのは、従来延ばされて延ばされてきまして、本格的に赤字債が発行されたのが昭和五十年でございますが、それ以来、三木内閣、福田内閣、大平内閣、それから鈴木内閣、それぞれの総理財政再建を公約して、どんどん延ばしているんですよ。三木内閣のときは五十一年二月に財政収支試算というのを出しまして、五十五年には赤字債をゼロにするという計画を出した。ところが、福田内閣では昭和五十三年財政収支試算で五十七年ゼロというふうに延ばしてしまいましたね。それから、大平内閣では大平総理が五十三年の十二月に就任されて五十四年の一月にこれをまた延ばして、ここで五十九年赤字国債ゼロということにしたわけです。それで鈴木さんは、これはどうも異論があるようだけれども、私はもう財政再建なんというのは嫌になってしまったと途中で投げ出したかっこうになってしまった。こういう状況になっていることは事実なのです。  したがって、非常に財政再建ということは困難であるということはよくわかります。よくわかりますが、われわれが心配するのは、昭和五十九年赤字国債ゼロ、そういう公約がもう破綻しているのにもかかわらず、なおかつそれを堅持して、そうして赤字国債ゼロを五十九年にできればしよう、ないしは六十年にできればしよう、そのためには当然赤字債にかわるべき新しい財源というものが生まれてこなければならぬ。それはどう考えたって、やはり大型間接税というものを頭の中に描いているのではないか、私はそういうふうに考えますよ。したがって、いろいろわれわれも個人的にはプライベートで話をいたしますけれども、大体衆議院も来年ダブル選挙になるかもわからぬという説の根拠の中にはこれがある。たとえば衆議院は、任期満了まで行くと五十九年の六月ですからね。そうすると、選挙の前にそういう大型間接税の導入なんて、とてもじゃないができない。それは中曽根総理が幾ら勇気があっても、恐らくこれまた大平総理みたいにたたかれてしまうから、それはできないでしょう。それじゃどう考えても、昭和六十年の大型間接税の導入になるかもしれない。六十年ということになったら、六十一年にまた次の参議院が回ってきますから、そうすると、どう考えても五十八年に選挙を済ましておいて、当分大きな選挙がないのだという状況をつくって、五十九年度で導入するのではないかということが、これはちまたのうわさとしては相当信憑性がある考え方なのです。  ですから、そういうふうに考えてくると、五十九年赤字国債発行ゼロという政策を放棄しないのは、何らかの形で赤字国債をゼロにするためのかわるべき大型財源というものが彼らの頭の中にあるのではないかということは、これは皆言っていますよ。私も、当たらずといえども遠からずだなあというふうに考えますけれども、だから私は心配して、この問題については国民の前にはっきりして、大型間接税というものは導入しないのだということを明確にしてもらわなければ、やはり国民は安心できないと思うのです。これは総理がおっしゃったように、税金を国民からたくさんいただくということは、結局不景気の原因をつくるのだ、デフレの原因になるのだということをおっしゃっているのだから、まさかそんなことはしないだろうとは思いますけれども、あなたは決断の人と言われているのだから、決断のときは簡単にやるかもわからぬというあれがありますからね。それでみんなが心配しているということをどうかひとつお忘れのないようにしていただきたいと思うのです。  と同時に、これだけ財政再建の計画というものがどんどんどんどん延ばされてきたような状況の中で、中曽根総理、あなたにはもう後がありません。もう土俵際へ追い詰められたかっこうになっている。後がないというのは、後の総理大臣がないという意味じゃありませんよ。したがって、ここで財政再建ということについてはどうすべきかということを国民に本当に明示をしていかないと、私は、ますます経済運営、財政運営について国民の信頼を失うことになるだろうと思いますので、あえて申し上げたわけでございます。  そこで、塩崎経企庁長官、下方修正をなさいましたね。そうして、総合経済対策をお立てになりましたが、これで三・五%、この経済成長はあなた、確信がありますか。
  115. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 御指摘のように、十月八日の閣議決定におきまして、五十七年度の経済見通し五・二%を三・四%に下方修正したところでございます。この方向は、御案内のように、二兆七百億円の公共事業を中心といたしますところの総合経済対策を着実に実施する、これを推進することによって実現可能と考えているところでございます。  なおまた、最近の事情では、御案内のように、長期金利の引き下げ、あるいはアメリカの金利の引き下げ、円レートの好転、こんなような事情もございますので、私どもは、この見通しは可能と考えております。
  116. 正木良明

    正木委員 建設大臣、内海さん、いいですか、前倒しをやりましたね。前倒しをやったために、後半公共事業の仕事がなくなったから追加しなければいかぬと言うのですが、あの前倒しでどれだけ経済成長を押し上げるというような経済効果がありましたか。
  117. 内海英男

    ○内海国務大臣 お答えします。  〇・七%程度ということでございます。
  118. 正木良明

    正木委員 〇・七%程度じゃどうしようもないじゃないですか。しかもですよ、これから後半にやっていこうとする、いま経企庁長官がおっしゃったように、二兆七百億円のこの経済対策は中身は大したことないのです。災害復旧が七千五百億円ですけれども、実際国で支出する金は五千二百億円ですよね。それで、一般公共事業四千億円ですが、これは全部国庫債務負担行為ですね。  しかも、これは明らかにしておかなければならぬ。さっきの主計局長の数字、間違ったんじゃないですか。予算の説明書で見ると、国庫債務負担行為は一般会計一千十億二千六百万円、特別会計、あなたは一千四百と言ったけれども、一千七百六十三億八千九百万じゃないですか。合計して二千七百七十億ですよ。これは事業規模が債務負担行為で四千億で、この差額はだれ持つの。
  119. 山口光秀

    山口(光)政府委員 事業費は一般会計、特別会計合わして四千億です。それから、国費はこれまた一般会計、特別会計合わせて、先ほど申し上げましたように、二千五百四十二億でございます。  ただ、その予算額というのは、特別会計の場合には直轄事業で負担金がございます。そういうものを加えました予算額は二千七百七十四億、いまおっしゃったとおりでございます。これは一般会計、特別会計合わしたものです。一般会計はそのうち一千十億、特別会計が一千七百六十三億、こういうことでございます。何でこれが四千億が予算額で二千七百七十四億かと申しますと、補助事業を含んでおる。補助事業は、補助した後で地方負担等が加わって全体の事業が四千億になる、こういうことでございます。
  120. 正木良明

    正木委員 総理、お聞きになったとおりですよ。四千億という債務負担行為、国庫債務負担行為というのは、五十七年に計画はするけれども金を出すのは五十八年ですよ、五十八年度の予算にしか組まれないのです。そうすると、いま主計局長おっしゃったように、これが地方自治体に回ったときにはいわゆる補助事業ですから、補助金は五十八年まで来ませんよ、当然そうでしょう。ということになれば、それは全部地方自治体が、仮にこの四千億全部を、国の直轄があるかもわからないけれども、それを国庫債務負担行為としてやろうとしても、金は全部、国費の分まで自分が調達しない限り五十七年度中に支払いを済ませるという事業はできないのです。そうと違いますか。
  121. 山口光秀

    山口(光)政府委員 補助事業について申しますならば、地方団体側の対応はいろいろある。たとえば、いまおっしゃいましたように、国費の分も含めて地方が負担して契約金を払うという場合もございますし、それから地方段階でも契約だけする、つまり結局業者が立てかえることになりますが、そういう場合にはその立てかえ金の利子というのは設計段階、後ほど入ってきますから清算される、こういうことになるわけでございます。
  122. 正木良明

    正木委員 どっちにしろ、いいですか塩崎さん、五十七年度で経済成長を押し上げていくような経済効果を及ぼすような経済対策であるならば、五十七年中に金が出ていかなければこの効果はありませんよ。違いますか。それを五十八年に金払っても構わないのですというような事業がこの中に入っているということです。ちょっと待ってください。まだあるんだから、たくさん、穴だらけなんだから。  それから、地方の単独事業、これだって五千億でしょう。そんな金、地方単独事業の五千億、さらに地方一般公共事業としての国庫債務負担行為の地元負担分、もし金を払うとするならば、国費分の立てかえ、これらは自治大臣、ちゃんと地方自治体やれますか。しかも、片方で地方交付税を削るのですよ。そうして、地方税は減収ですよ。そういう状況の中でこれはできますか。
  123. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 まず、地方単独事業五千億でございますが、これは府県と市町村と分けまして、府県の方は九月の補正でやれるものは大体やったということでございます。市町村分も大体それに準じておると思います。そのほか公営企業の事業もございます。さようなものを合わせまして大体五千億、約五千億は可能であろう。  それについての財源の手当ては、自分のところの財源でやる場合もありますし、足りない分については起債も認めていこう、こういう段取りになっております。
  124. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに債務負担行為と予算の現実の支払いのある場合とで経済的な効果の差は若干はあるかもしれません。しかし、もう御案内のように、各種の経済活動は契約と同時に起こってくるわけでございます。これが経済成長に影響することは当然でございまして、その見通しが〇・七%、こういうふうに計算されていると思います。
  125. 正木良明

    正木委員 〇・七%じゃないでしょう、三・五%でしょう。三・四か。〇・七というのは前倒しで出てきたものだと建設大臣が言っている。
  126. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 総合経済対策がどの程度経済成長を押し上げるかという計算を私ども企画庁でいたしましたときに算出されました数字が〇・七%でございます。逆に言いますれば、その総合経済対策が行われなかったならば五・二%の成長率が二・七%になる、こういった一応の見通しでございます。
  127. 正木良明

    正木委員 わかりました。  そこで、これは大蔵大臣と建設大臣ですが、この債務負担行為というのは昭和五十八年度の公共事業の枠の中に入るのか、これはもう別枠に五十八年度でしてしまうつもりですか。どっちですか。
  128. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは国庫債務負担行為でございますから、五十八年度の予算の、一般会計、特別会計、それは別にいたしまして、公共事業費の中に組み込まなければならぬというふうに思っております。
  129. 正木良明

    正木委員 私の質問の仕方が悪かったと思うのですが、要するに五十八年度で要求をしておる――概算要求というのは決定じゃありませんからあれですが、その枠がありますね。その枠の中にこれが入っておって、当然この事業は五十七年度から始めるけれども、事業の総枠としてはこの四千億は入っているのかどうかという意味です、僕の言っているのは。
  130. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは詳しくは建設省からのお答えの方が正確かと思いますが、対象は大体継続事業を対象としております。そうして、この概算要求の際は債務負担行為に基づく事業量というものは入っていないと思います。
  131. 正木良明

    正木委員 入っていない。どうですか。
  132. 内海英男

    ○内海国務大臣 建設省といたしましては、入っておる予定でございます。
  133. 竹下登

    ○竹下国務大臣 失礼いたしました。  五十八年度の概算要求の中には入っておるものでございます。
  134. 正木良明

    正木委員 そうすると、結局は先食いなんですね。五十八年度予算の先食いなんです、この公共事業は。だから、いま建設業界においても非常に不況であるし、中小建設業者がどんどん倒産しているということもあるし、それに附帯する建材等の業界も非常に不況である、そうして前倒しも大して効果はなかったということになってきますと、これでその原因を求めてくると、要するに三年間公共事業が横ばいだということですね。金額で横ばいだということは、ここに物価の上昇率がございますから、要するに事業量としてはそれだけ減るわけです。それをなおかつ五十七年度の経済成長を支えるために先食いをして、そうすると、五十八年度はどうなるのですか、これは。完全に減ってしまうわけです。それは確かに五十八年度から国費としては補助金が出ていくでありましょう。そのことによって五十八年度には金の支払いが行われるかもわからぬが、もし、そうだとすれば、五十七年度においては大きな経済成長を支える力にはならない。確かに経済活動はそこで起こってくるかもわからないけれども、実際問題として地方自治体がそういうものを自分の方で金を段取りしてあえてこの国庫債務負担行為の事業にまで取り組んでくれるかどうかということは、非常に疑問だと私は思うのです。確信はあるのですか、建設大臣。
  135. 内海英男

    ○内海国務大臣 建設省といたしましては、来年度の予算ゼロシーリングということで一つの頭を抑えられておりますので、大蔵大臣の方にひとつお答えいただいた方がよろしいのじゃないかと思います。
  136. 正木良明

    正木委員 いやいや、地方自治体はそれを引き受けてやる気があるかどうかというのは確認されていますか。
  137. 内海英男

    ○内海国務大臣 地方自治体の方はやる気でおります。
  138. 竹下登

    ○竹下国務大臣 引き受け手があるかという問題は、いま建設大臣からお答えのとおりでございます。  いわゆる債務負担行為というものによって金融が稼働して、それらの五十七年度の成長率に対する寄与というものを経済企画庁において試算されたものが、およそ一兆円当たり〇・三五%程度で、恐らく計〇・七%、こういうことになっておると思います。したがって、五十八年度の景気の一つの下支えにもなり得る。そして、今度はゼロシーリングとの問題につきましては、かねて御主張のいわゆる景気浮揚の即効性のある、用地費率の少ない事業からやれとか、いろいろなかねての御主張がございますので、それはそれぞれの所管官庁におきまして知恵をしぼって、経済効果のよりあるような行政の進め方をされるであろうというふうに期待をしております。
  139. 正木良明

    正木委員 私はなぜそんなに心配するかというと、経済企画庁が立てている経済見通しは非常に甘いとしか言いようがないのです。民間の経済予測機関がそれぞれ発表しているところによると、大体五十七年度二・五%というのが非常に多いですよ。大和経研でも二・五%と言っていますし、大体二・五%、二・三%、二・一%というふうなことで、三・四%なんというようなことを言っているところはどこもないわけです。それぐらいこの五十七年度の下期におけるところの経済の伸びというものについては、経済企画庁とは大きな差のある計算をしているわけですね。こういう点について、恐らく経済企画庁は経済企画庁で研究をなさって、われわれの経済予測の方が正しい、民間の方は間違っているんだという何らかの要件があるだろうと思うのですが、それはどういうことですか。
  140. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに民間の見通しは、三・四%という経済企画庁の見通しよりも低目のものが多いところでございます。しかしながら、この民間の見通しは、御案内のように、その前提となりますところの要素、たとえばどのような政策が行われるか、たとえば総合経済対策の二兆七百億円、これの実効についてまだ十分な認識がなかったとかあるいはその評価についての違いがあったり、さらにまた、円レートをどういうふうに見ていくか、これらについても私どもの見方と相当な違いがございます。こんなところが、私はこの二つの間の差になっていると思うのでございますが、私がいま申し上げましたように、私ども下方修正はいたしましたけれども、三・四%の見通しは現在のところ達成できる、こんなふうに考えております。
  141. 正木良明

    正木委員 これは毎度予算委員会でそういう押し問答で、結局だめでしたという下方修正ばかりやっているのですよ。だから、私はそういう点は鈴木総理という人はえらかったと思いますよ。私はこの公約をもし実現できなければ政治生命を断たれたっていいと言ったですからね。だから、自分で断ってしまったんだと私は思うけれども、それはえらいですよ。だから塩崎さんも、もしも三・四%できなければ私は経済企画庁長官をやめますというぐらいのことを言ってもらわなければ困るな。当たらないことおびただしいんだ。
  142. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 大変むずかしい御質問でございます。  経済は、大変に生き物でございます。しかし、私どもは正確に見積もったつもりでこの方向で――しかも、経済の見通しというものは多分に企業家の心理、このような心理状態にも影響するわけでございます。だめだ、だめだと言うと学力まで落ちるような子供もあるように、私どもはやはり経済の見通しを立てた以上は達成できる、こう言うことが適当であろう、こういうふうに考えております。
  143. 正木良明

    正木委員 いや、それはわかりますよ、それはわかりますがね。それが大いに災いしたのは、あなたの前任者ですよ。だから、弱気なことを言うのならかえってまずかろうというので、強気強気でいって、それをもとにして大蔵省は税収を計算するものだから、世の中に粉飾決算て聞いたことがあるが、粉飾予算というのは政府が初めてやった。あれは粉飾予算です。あんなに経済成長があるなんてわれわれもおかしいと言ったのに聞かなかったんだから。そういうことが今回もあらわれてきている。だから、いまも経済企画庁長官の話を聞いていると、いささか自信がないが、みんなに元気つけるために高目に打ってありますとしかこれはもうとれぬです、あの話は。ですから、これが非常に大きな問題になってくるだろうと私は思うのです。  こういうふうなことになって、昭和五十七年度も政府の予測どおりにならない。そうして、五十八年度の予算はどういう組み方をするのだかよくわかりませんけれども、それもやらない、大した効果がないということになってくると、五十九年度赤字国債発行ゼロなんということは、そんなことはもうこの話だけでもだめだということははっきりしておるわけですよ。ですから、五十八年度予算審議までにそれを出すと言っているから、これは大いに期待をいたしております。  だから、そういうふうに公共事業もこういう実態で当てにできない、あとは設備投資の問題があるのです。これは通産大臣の管轄になるけれども、投資減税の問題も、特に中小企業の投資減税という問題を考えてほしいんだが、しかし、これは税額控除の問題でありますから、利益を生んでいない中小企業には何の恩恵もないからだめだと言うけれども、私は、いま塩崎さんの言う心理的効果から言えば、投資減税というのはある種の効果を持つということは証明されているわけですからね。しかし、これもいつまでもだらだらじゃまずいから、三年間なら三年間、二年間なら二年間という時限で、その間に設備投資をしたものについては減税をするという形のものをやらなきゃならぬと思うわけです。これは検討してもらえませんかね。
  144. 山中貞則

    山中国務大臣 まさに検討中なんでして、赤字企業の問題もありますが、要するに経企庁長官も言っていましたように、指標ばかりをもとにして日本の経済の先行きは暗い、あるいは底をついた、底割れになるんじゃないか、そんなことを政府の方から余り言いますと、じゃ、やっぱりだめなんだなといういろんな意欲の減退というものが、消費購買力なりあるいはまた買いかえ需要なり、そういうものにまで響いていくと思うのですね。  そういう意味で、私ども目下、おっしゃるとおり、検討中なんですが、問題は、これを税額控除のみならず、去年やりましたように特償と選択制にしたらどうだろう。したがって、特償であると、赤字企業で現在はまあ水面を見え隠れしているようなところが浮上できる可能性もあるわけですね。そこらで考えてはいますが、しかし、これが果たして効果が上がるかという問題ですね。  これについて、昨年皆さんの御了承を得てエネルギーに限って税額控除と特償との選択制度をとりました。結果としては、この選択制度というのは非常に効いたと見えまして、やはり自分の業種は税額控除がいい、自分の企業は償却がいい、特償がいいと、それぞれとりやすいですよね。そういうことでわりと利用者がふえまして、過去のずっと何もしなかったときの設備投資の、中小企業のエネルギー関係だけでしたけれども、ずっと平準化してきたものに加えて、あの制度が出発した去年からの実績をとりますと、非常に大きくふえておりますから、その点は財源の問題とは別に、やはり効果はあったということで、大蔵省その他関係省にも配付いたしておりますが、さてしからばそれをどうするかという問題になりますと、その規模にも制度中身にもよりますが、大変膨大な財源を要する。  先ほどからわずかな金額でも大変議論をしておられましたように、財源の用意なくして大蔵省にそれをむりやり押しつけるということでもいくまい。やはりこれは本当に中小企業が活力を取り戻す、そして大蔵省もその実績を、そうなるであろうという見通しを立てて、長い目で見ればその活動の結果、納税中小企業もふえるでしょうし、そして、それによる税収もやや間を置いて、タイムラグはあるにしても税収にもつながるという理解を得られた場合、そのときにはやりたいと思いますが、これはやはりもうここまで来ますと総理の御判断を私は仰ぎたい。でないと、むりやり力関係で押しまくるということ、何も竹下大蔵大臣より私は力が強いという意味ではありませんで、余りまきざっぽを振り上げていくのもどうかなと思いまして、やはり自民党・政府自体が、踏み切るならば踏み切るという決断をすべき大きな問題である。しかし、余りちゅうちょして時を逸したら、やはりそれはあのときやっておけばなということになってもまたいけない。そこらはむずかしい問題でございますから、ここで総理がそれを答弁しろとおっしゃっちゃ困るんで、政府の中で最終的に私が総理の御感触を承って、そして大蔵省と詰めたい、そのように考えております。
  145. 正木良明

    正木委員 まあ確かに高目の経済成長を掲げておくという方がいいけれども、私は先ほど申し上げたように、そのために大変な税収不足になって、六兆を超すような税収不足になって人勧の実施さえできないというような状態になるということは、いかに経済見通しというものをはっきりしておかなきゃならぬか、そういう粉飾的な予算を組むべきでないということは明確だと私は思うのです。  それで、いま投資減税について非常に前向きの御返事をいただきましたから、これはやはりそういう設備投資だけじゃなしに、やはり人間にも減税しなきゃいけません。これは小委員会でいつも一緒なんで私が余り言うとあれだから、減税の問題については前向きに考えてくださっているだろうと思いますけれども、私はあの委員会でも申し上げましたけれども、たとえば防衛費の問題、対外協力費の問題、それから科学技術振興の問題、こういう費目はやはり従来のシーリングの枠から外れているわけですよね。枠から外れているということは、私は決して防衛費の増額に賛成という意味で言っているわけじゃありませんが、それは伸び率を高くしているということは、政府政府なりの政策選択の優先順位をそれらの政策に与えているということでしょう。これらには、どれだけ財源がなかったらそれだけ伸ばさないなんという話は全くないのに、しかも与野党で合意して政策選択から言えばきわめて高い優先順位が与えられなければならないような所得税減税に対して、財源を持ってこなければできないのだというのは、私はおかしいのじゃないか。やはり政策選択としては、この優先順位を高くするのだ、まず減税をやらなければいかぬのだ、それは景気のためにも必要なことなんだ、税負担の不公正を正すためにも必要なことなんだという政策選択に対する優位性を与えていく。そこから物事は始まっていかなければならぬので、これはいま投資減税のことで山中大臣がおっしゃったことと私は考え方としては同じだと思うのです。それをもうやらぬ、人事院勧告はやらぬ……。  そこで、この間矢野さんの質問に大蔵大臣が答えて、人勧凍結ということになってくると、当然人勧に準拠するところの恩給はスライドしませんぞ、そのほかの共済年金や厚生年金、国民年金等の諸年金、また、これに連動する諸手当というものについては、五%以上の物価上昇がなければ物価スライドはしませんぞ、こういう話があった。  厚生大臣、これは全く人勧とは別な話になるけれども、また、それらの恩給や年金とは別になるが、生活保護というのがあるのですよ。これらの恩給だとか年金だとか諸手当だとか生活保護に該当する人数と金額を言ってみてください。もし、仮に物価スライドをするとするならば、どれだけ金が必要かということです。
  146. 林義郎

    ○林国務大臣 お答えいたします。  仮に物価スライドということで考えまして、三%ということで実施をいたすことにいたしますと、昨年と同じような形でいろいろな供給をするということになりますと、年金関係で三百六十四億円、その他の恩給、年金、手当その他全部入れまして九百三十九億円程度が要ります。それから生活保護基準の問題、要するに生活保護世帯でございますが、これをいま幾ら上げるかということはまたいろんな問題がございますから検討していかなければなりませんが、仮に一%上げるというふうにいたしますと、一%当たり約三十四億円、こういうふうに計算をしております。  対象人数は、年金が千六百四十万人、児童扶養手当、特別児童扶養手当、福祉手当、原爆被爆者諸手当等入れまして百三十四万人でございます。生活保護の対象は百四十五万人でございます。
  147. 正木良明

    正木委員 該当する人数が約二千万人、生活保護が百四十五万人。そして、これが生活保護まで影響してくるということになってくると、これは大体一千億近いという数字ですね。  要するに、人勧はやらぬ。二千万人に影響を及ぼすような恩給、年金、諸手当というもの、これも引き上げないということになってくると、個人消費はどうするのです。減税はやらぬというし、どうします。  経企庁長官、個人消費もこんな状態で、三・四%なんてどこから引っ張り出してきたのですか。
  148. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 人勧凍結の経済的な影響につきましては、もうすでに中曽根総理大臣から本会議でも御報告がございました。確かに人勧を凍結することによって、個人消費に直接の影響といたしますれば影響があることは言うまでもございません。しかしながら、国民経済全体的に見ますれば、その財源を考えてみますと、たとえば歳出の削減、あるいはまた増税による、あるいはまた赤字公債による、これらの財源の手当ての仕方によりまして、これまた国民経済の消費あるいは投資に大きな影響を来すわけでございまして、その点はなかなか一概に影響は見取れないところでございます。したがいまして、私どもは三・四%の見積もりの際には人勧凍結を含んでこれを策定したところでございます。
  149. 正木良明

    正木委員 経企庁長官、あなたは経済の専門家だから、僕は余り大きな口はきけないけれども、素人が考えてみて、国債というのは引き受けるのは何ですか、貯蓄じゃありませんか。そうでしょう。国民の貯蓄でしょう。私に言わせれば使わない金ですよ。結局の話が、それが国債を引き受けるのじゃありませんか。これは現に個人に渡る金ですよ。それをごっちゃにしてもらっては私は困るのじゃないかなという気がしますね。  現に給料が上がらない。こういう年金や何かも上がらない。そうして、恐らく来年の春闘はもう日経連や何か二%台。二%台ということになってくれば定昇と一緒です。国家公務員の定期昇給分と一緒です。そんな状況の中で、個人消費のいわゆる可処分所得を押し詰めておいて、減税しないで税金で取って――当然ふえるじゃありませんか、二%でもふえるのだから。それで個人消費を喚起するったって、政策に全く整合性がないだろうと思いますよ、このやり方は。いや国債を発行して減税をした、こんなことをしたら結局同じ状態になっちゃうというふうにあなたは考えているかもわかりませんが、片方は貯蓄じゃありませんか。だから、国債の発行ということと貯蓄率ということとは相対して考えていかなければいかぬというのは当然のことなんです。そんなのは経済学の初歩じゃありませんか。中にはひどいことを言う人だって、日本ぐらいの高い貯蓄率なら国債なんというものはどんどん出していいという人さえ大学教授でいるのだからね。  だから、そういうふうに考えてくると、公共事業は大して効果はない。そのほか、人勧は凍結してしまう。そうして、年金、恩給は上げない。民間賃金まで抑制されるおそれがあるという状況の中で、私は五十七年度も五十八年度も景気のてこ入れなんて、とてもじゃないが、やろうと思ってできるものではないだろうと思うのです。  こういう話をすると、それじゃ広げたらいいのですか、広げるには財源はどうするのですかと総理大臣はきっと言うだろう。いまそれを言おうと思って考えておられると思うが、そこらの判断ですよ。大出さんも指摘をなさったけれども、要するに縮小均衡という状況へ日本の財政を持っていくのか、拡大均衡という方へ政策転換をしていくのかということの方が大きな問題だろうと私は思いますね。自信があったら言ってください、塩崎さん。
  150. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま申し上げましたのは、人勧の財源といたしまして歳出削減、増税、赤字公債、この三つの及ぼす効果と、人勧抑制の消費に対するマイナス効果、この比較はなかなかむずかしいということを私は申し上げたわけでございます。いま申しましたように、赤字公債をこれ以上出してやることは、財政再建という大きな命題ともまた抵触いたしますし、人勧のために増税することは大きな社会的問題も起こすでございましょうし、こんなことを考えましたら、私は人勧抑制ということは、経済的にはなかなか効果はむずかしいのですけれども、三・四%の経済成長率の下方修正の中に織り込んで考えていくべきではないか、いった方が適当であろう、こういうふうに考えたところでございます。
  151. 正木良明

    正木委員 もう時間が三分しかありませんから、わざわざ公取委員長に来てもらっているから、何にもなしで帰すわけにもいきませんので。  構造不況対策問題で産業構造審議会が答申を出しましたね。しかも、これは独占禁止法との関連を言っていますね。ここで答申は、基礎素材産業対策の一環として過剰設備の処理、事業の集約化のために独占禁止法との調整が必要だ。しかし、自由経済体制のもとにおける産業構造の改善というのは、市場メカニズムを原則として行われるべきであると私は思いますが、この基礎産業対策は現行独禁法の枠内でなされるべきであると公取委員長考えていますか。
  152. 高橋元

    ○高橋政府委員 原材料の条件、エネルギーコスト、そういうことから、たとえば石油化学でございますとかアルミニウム製錬でございますとか、いまお示しのありましたような基礎素材産業について、現在非常に困難な状況にあるということは私も認識しておるわけでございますが、何と申しましても、不況の中で、それから脱却していく過程で、経済の体質を強め、活力をかけていくということのためには、いまもお話のございましたように、企業の自主的判断、企業者の創意というものが必要であるというふうに思っております。現在の独占禁止法の中でも、御高承のとおり、たとえば不況カルテルでございますとか合理化カルテルでございますとか、そのほか競争を一時的に制限しながら、経済の基本であります競争の枠を守っていく、そういう考え方なり各種の制度がございます。したがって、ただいま正木委員仰せられましたように、独占禁止法の枠の内でできるだけ構造不況対策というものをやるべきだというふうに私どもは思っております。
  153. 正木良明

    正木委員 では、通産大臣、私は構造不況対策というものは必要だと思っているのです。これを否定しているわけではありません。否定しているわけではないけれども、今回の基礎素材産業の問題については、あなたも現行の独占禁止法をおつくりになるのに、党の会長としてずいぶん御苦心をなさったし、その御苦労は、私も当時いろいろとお話を承って、相談にも乗らせていただきましたのでよく存じておりますが、いわば現行独禁法の生みの親みたいな通産大臣だからよく内容を御存じだと思いますけれども、この点について公取の委員長と話し合っているみたいな報道がありますけれども、どういうふうな方向へ持っていこうとするお考えか、もしお話ししていただけるならしてください。
  154. 山中貞則

    山中国務大臣 産業構造審議会の答申にもそのことが触れてあります。私は、触れないでおいてほしいという気があったのですが、すでに就任したときにはもうほぼ審議が終わっていたということもありまして、問題は、企業集約とかあるいは再生のための手段とかその他で、ひっかかる点があるとすればカルテルの問題と、それから、これは法律ではないのですが、元高橋、現高橋ではなくて、亡くなられました高橋さんですね、あの時代に企業合併の際のシェアを二五%というリミットを引かれたのです。これはどうも私どもとしては了承しておりませんし、二五%がなぜなのかという理論的なものもない。ここらのところは、当然ながら、今回構造不況業種を立ち直らせるためには問題になるのではないか。そこらのところは独禁法の、私は表面は法律の範囲内でやるべきものだと思うのです、しかし、その運用については、公取の委員長初め委員、事務当局、私どもの方の担当である部署の職員たち、局長たちと事前によく御指導を受けて作業を進めるように、最終の断は私と公取委員長との話し合いにあるいはなるかしれませんが、そうならないで解決できて目的が達成できるということが一番ベターでございますから、その方向でいま努力をしておるところであります。
  155. 正木良明

    正木委員 これで終わりますから。  私が心配するのは、この問題がOECDが言っているPAP、積極的産業調整、この趣旨にも反して、さらにまた新しい国際的な経済摩擦を起こす火種にならないだろうかということを非常に心配をしているわけでございます。したがいまして、これはひとつ高橋委員長ともよく相談をして調整をしていただきたいと思います。  何しろ一時間三分しか時間がありませんで、言いたいことがまだ山ほど残っているわけでございますが、私が言いたかったことは、よほど腹を据えてかかっていただかないと現在の景気回復ということはもう不可能だ、こういうふうな気持ちがいたしております。そういう点、いろいろ多方面にわたって申し上げましたけれども、どうかひとつその意のあるところを酌んでいただいて今後の財政運営に当たっていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  156. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次に、米沢隆君。
  157. 米沢隆

    米沢委員 私は、本日は経済問題、特に景気対策と財政再建がらみの経済運営のあり方にしぼりまして、総理並びに関係大臣の所信をただしたいと思います。  この問題に入ります前に、一つだけ、大変重要な問題がありますので御質問をいたしたいと思います。     〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕  きょうの夕刊によりますと、アメリカの下院が十五日、例の問題のローカルコンテント法案を多数で可決いたしましたが、この法案の廃案を期待しておりました日本の立場として、きわめて重大な事態だと思うわけでございます。総理は、この一両日の代表質問におきましても、米国等の保護主義は断固として阻止する、こう言っておられたやさきに、この保護主義の典型的な法律がアメリカで可決されたわけでございます。当面、会期などからいいまして上院を通る状況にはないと思いますけれども、こうした事態総理あるいは外務大臣はどのように受けとめて今後の対応措置をとろうとされるのか、御答弁をいただきたい。
  158. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ローカルコンテント法案は、日本時間の十二月十六日、きょう米下院本会議を賛成二百十五、反対百八十八、棄権ゼロで通過をいたしたわけであります。いまお話しのように、本法案がガット規則に反するおそれがきわめて強い、きわめて保護主義的な色彩の強いものでありまして、これが万一成立することになれば、そのもたらし得るところの貿易阻害的効果ははかり知れないものがある、こういうふうに考えております。  わが国は、こうした観点から、これまで何回かにわたりまして本法案に対する懸念を表明してまいりました。今回下院を通過したことはまことに憂慮にたえない次第でありまして、世界経済がこうした非常に困難な状況にありますときに、米国におきましては自由貿易体制の維持強化のための強いリーダーシップが期待をされるところでありますが、今後の上院の対応ぶりを含めて、米国各界の一層慎重な対応を強く期待いたしております。上院の審議に移るわけですが、上院はそう簡単には通らないとは思っておりますし、これに対する働きかけも行っていかなければならぬと思いますが、しかし非常に心配でございます。  なお、米国政府は、この法案に対しましては従来から一貫して反対をいたしております。したがって、わが国としてはこうしたアメリカ政府立場を支持するとともに、われわれとして日本のこれからの対応といいますか、アメリカが日本に対してさらに強く市場開放を求めております、そういう中でできることはやって、この法案の阻止のためのこれからの努力をしなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ローカルコンテント法案の成立につきましては、はなはだ遺憾でございます。もし、このような保護主義立法が蔓延してまいりますと、世界的にも大不況がますますひどくなるおそれがありますし、また、日本の輸出も重大な制限を受けてまいりまして、日本の不況はさらに深刻化する危険性がございます。  保護主義立法がふえていくということは、世界経済全体が縮小再生産に入るということにもなるのでありまして、結局は世界全体のためにならなくなると思うのであります。どんなことがあっても、自由貿易を国是とするわが国としては、この種の立法を起こさせないように努力しなければなりません。  この際、なぜこういう法案がアメリカで下院を通過したか、しかも、かなりのマジョリティーをもって通過したかということをもう一回よく考えてみる必要もわが方にあります。一方におきましては、こういう種の法案を排除するという強い意思を持って今後努力しなければなりませんが、また一方におきましては、かかる風潮がなぜアメリカに起きているか、特に議会に起きているかということをよく考えてみまして、わが方で、もし市場開放等についてなさざることがあればなす必要があり、また誤解があれば解く必要があり、率直に先方とよく話し合いまして、こういうような不幸な事態を起こさないように積極的な努力をする段階に、重大なときに入ってきておると考えておる次第でございます。
  160. 米沢隆

    米沢委員 これは本当に重大な問題でございまして、これが引き金になりまして全世界的な保護主義というものに油が注がれるようなことになりますと、日本も重大な局面に立ち至ります。したがって、今後も十全の対策をとっていただきますようにお願い申し上げます。  さて、本題に入りたいと思います。  御案内のとおり、第一次石油危機に次ぐ第二次石油危機を契機といたしまして、世界経済は大きく停滞をいたしております。インフレに悩む先進諸国は、インフレ抑制に傾斜をしました結果、インフレを克服しようとして不況に陥る、いわゆる安定恐慌の状態の真っただ中にあると言っても過言ではございません。そして、この世界的な不況の深刻化が日本経済に大きな影響を与えて、輸出の不振、内需の停滞が景気の足を引っ張っており、国内のあらゆる経済指標はことごとく芳しくありません。そうした中で日本の財政赤字は膨張をし続けて、その処理のめどさえつけかねて悪戦苦闘しておるという、これが現実の偽らざる姿ではないかと思います。  私は、さきにわが党の大内政審会長から、私どもの試算いたしました「財政の中期見通し」をお示しいたしまして政府見解をただしたところでありますが、いわゆる、これまでに政府が行い、かつ今後とも政府が行おうとしている縮小均衡型の経済財政運営によりましては、引き続き中曽根内閣の公約になりました増税なき財政再建の達成は不可能であると考えざるを得ません。したがって、この際、経済財政運営をこれまでの縮小均衡型から拡大均衡、少なくとも中成長型の方向へ転換することが必要であるという認識のもとに質問をさせていただきたいと思います。  さて、そこで、わが国の経済成長率の実績を眺めておりますと、第一次石油ショックは、日本経済の成長率を大体一〇%台から五%台に引き下げたと言ってもいいと思います。そして、現在わが国では、日本経済の成長力が、第二次石油ショックの影響でそれ以前の五%台から大体二、三%台へ落ち込んでしまったのではないかという議論をめぐって見解が対立しておるような感じがしてなりません。いわゆるわが国の潜在成長力論争でございます。そして、その見解のどちらをとるかによりまして、それはその人の経済社会の現状に対する価値判断の相違によっても変わりましょうけれども、現在の景気を見る目、いわゆる景気の現状判断も、景気対策が必要なのかあるいは不必要なのかについての対立になっているような気がしてなりません。政府内におきましても、大蔵省はどうも低経済成長論者的な感覚であり、通産、経企庁は五%ぐらいは潜在成長力があるのじゃないかという見方に分かれておるような実態であると私は考えます。それがまた財政が絡みますと、財政再建か景気回復かという政策目標の優先度をめぐる対立にもなっていく。いま準備されております御案内の新経済五カ年計画の骨格も、せんじ詰めればこの問題に帰着するのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで総理大臣、伺っておきたいのでありますが、あなたは現在の日本経済の潜在成長力についてどういうふうにお考えになっておるのか、また、景気の現状についてどのような認識を持っておられるのか、二点だけまずお伺いいたしたいと思います。あわせて、大蔵大臣、経済企画庁長官の見解もお伺いしたい。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、日本経済の底力というものはかなりあるだろうと思っております。貯蓄性向であるとかあるいは労働者の勤勉性とかあるいは科学技術、特に先端技術の優秀性とか、いろいろな面を見ましても日本経済には相当な底力がありまして、先般来の円安は日本経済の実力が反映されていない、こう考えております。しかしながら、何%程度の底力があるかということになりますと、これはいろいろ議論もあるところでございまして、私は特に何%ということを申し上げる立場にはございません。ただ、一般的に申し上げることは、日本経済には、先ほど申し上げましたように、ファンダメンタルズとしては世界的にも誇るべき強い力があり、そして国民のいろいろな性向やら社会的な関係等を見ましても、頼もしい国力を持っている国だと考えております。
  162. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 米沢委員御指摘のように、潜在成長力論は、大変いま論争の多い、しかもまた、経済計画の中で現実に成長率をつくらなければならない私どもにとって大きな課題でございます。それは現実に果たされた成長率というよりも、御指摘のように、日本経済が持つ固有の成長力、それは経済運営あるいは政策が適実ならばもう少し多目に達成したであろうというような成長率を考えていられるようでございますだけに、私は大変重要なものだと思っております。  かつて、もう御案内のように、日本の成長率は、一九六〇年代は、各国が五%であったときに一〇%、一九七〇年のときには、各国が三%に落ちても日本は五%、八〇年になりまして、世界各国は一%台と言っておられますけれども、日本はまだ四%から三%、こんなところを着目されて経済潜在成長力はまだあるのではないか、これをうまく引き出すのが政治の目的ではないか、こんなような御議論だと私も考えているのでございます。  確かに、日本経済の中には大変教育水準の高い優秀な労働力、それから安定的な労使環境、さらにまたエレクトロニクスを中心といたします技術進展、それから高い貯蓄率、さらにまた良好な治安状態、このような要素を考えてみますと、私は各国が悪くても日本はそれを上回るだけの成長力は持っていると考えますので、このような目標のもとに成長力を新経済計画の中にも求めていきたいと思っているところでございます。  しかし、それが潜在成長力と形で合致するかというと、多分に問題でございます。これはもう少し理想的なものではないか。したがって、おまえ、何%と言えと言いますと、これは大変むずかしい話で、これは暗やみの中で黒猫をつかまえるようにむずかしい、つまり、確かにあるのだけれども、なかなか大きさがわからない。そして、なかなかつかまえられないというような意味で、私は潜在成長力論を見ておるところでございますが、いまのような要素から見て、ひとつ経済計画の中で適切なる成長率を盛り込みたい、こんなふうに考えております。
  163. 竹下登

    ○竹下国務大臣 大蔵省に、大臣官房調査企画課に財政金融研究室というものがございます。これは御承知のとおりでありますが、そこで議論したいわゆる潜在成長力三%台、こういう試算があることは事実でございますが、確かにいまお話のありましたように、潜在成長力の測定というものは技術的には私は非常に困難な面が多いと思います。ただ、いま総理からも、そして企画庁長官からもお話がありましたように、たとえてみますと、今日経済の諸指標を見てみましても、確かにいわゆる物価の上昇率というのは世界一低く、そして失業率も世界一低く、また大変な低成長下にあって、一応この低成長の中では成長率はいわゆる先進国の中では世界一高く、そして金利の動向を見てみましても、先般ドイツが公定歩合が日本を下回りましたものの、公定歩合あるいは各種金利状態から見ても、先進国の中では非常に安定した水準を保っておる。そういう諸指標から見ても、私は日本のファンダメンタルズというものは確かに非常に堅実なものである、こう思っておりますので、そこに、経済運営の中に財政がその都度どういうふうに出動してそれの下支えをしていくかというのが、財政当局を預る者としての役目であろうと思います。それだけに、いつでも財政が出動できるだけの対応力を回復していくというのが当面の財政再建の目標である、このように考えております。
  164. 米沢隆

    米沢委員 それぞれお答えいただきましたが、日本の成長を支える基盤については、どなたもきわめて良好な状態にあるという結論のような気がいたします。  そこで、先ほど景気の現状認識についても総理にお伺いしたのでありますが、そういう力を持った日本の経済運営、現在の景気の状況等を眺めながら、いまからどういうかっこうで中曽根内閣が経済運営をされていくのか、これはいま国民が一番知りたがっておる問題ではないかと思うのでございます。  その点についてぜひ御答弁をいただき、そして重ねて、中曽根流の経済運営によると、これも何回も議論になっておりますけれども、財政再建の再建計画、指針あるいは手法あるいはその手順、今後の財政収支の展望はどうなっていくのか、中曽根内閣財政再建をどう実現していくのか、このことももう少しわかりやすい言葉で国民に説明してもらいたいし、同時に、具体的にはいつごろまでに赤字国債をゼロにするのか、それとも、もう赤字国債をゼロにするなんという計画をやるとまた間違うから、赤字国債もある程度保ちながらうまく財政運営をやっていくというふうに考えるのか、そのあたりもぜひ明るい展望をもって御説明をいただきたいと思うのでございます。  率直に言いまして、新しく中曽根丸が出航して、中曽根船長さんの手腕にすべてがかかっておるわけでありますが、われわれ国民がその船に乗せられて、一体行き先もわからない、どういうことになるかわからない、こういうことではますます国民は混迷をし、ますますまた心理的な不況感が襲ってくるであろう、こういうときにこそ、もう少し将来の展望をはっきりと示していただくことが総理の責任ではないか、そう思います。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 基本的には、この活力のある国民の力をどうして引き出して展開していくかということが、政治に課せられた大きな課題であると思っております。  私、政権を担当させていただきましてからまだ非常に日が浅い。しかも、急激にこういう変化が参りましたために、国民の皆さんに長期的な展望をまだお示しする余裕がないのをはなはだ残念に思っております。しかし、一方におきまして、いままでの社会経済七カ年計画を今度新しい五カ年計画に変えまして、その経済面から見た展望をいま一面においてつくりつつあります。それとの見合いにおきまして、今度は財政計画の方面も努力してまいりつつあるところでございます。そういう両方、両々相まちまして、しっかりとした信頼のできる案をつくってまいりたい、そう思って、多少時間をいただきたいと思っておる次第でございます。  しかし、一般的に言えますことは、この五十八年度予算というものが、ある意味においてはわれわれの政策のスタートになるであろう。そして、いままでの経済及び行政改革等の流れから見ましても、この五十八年度というものは、ある意味においては相当な歳出カットもやって縮こむ。しかし、それは伸びるための縮こみを一回やらざるを得ぬだろう。そして、整理すべきものはできるだけ整理し、簡素効率化ということを心がけて、そして次に伸びるための力を培養していく、そういう年が五十八年度になるのではないか、そういうふうに一般的に考えております。  しかし、何といっても一番大事なのは、政治にとりましては希望であり、国民の皆様方にとりましても未来があるということでございますので、この経済計画財政計画等つくるにつきましてもそういう点を十分考えて、国民の十分な活力をいかにして引き出すか、そういう点を考慮しながら、あらゆる面、周到な配慮を行って考えてまいりたいと思う次第でございます。
  166. 米沢隆

    米沢委員 いまお触れになりました日本の将来がどうなるかという関連で、いま新経済五カ年計画の策定中だと聞きます。経済審議会の審議を経て、大体四月ごろには答申がなされるというふうに聞いておるわけでありますが、しかしながら、この新経済五カ年計画一つ中身というもの、あるいは考え方というものは、来年の予算編成にもかかわり、いまおっしゃいました財政再建の見通しにもかかわる問題でございまして、それぞれいろいろむずかしい問題はありましょうけれども、早急に的確に計画を作成していただくことをわれわれは強く期待をするものでございます。  しかしながら、いまその新経済五カ年計画の策定に当たりまして、政府の部内で論議が余り多過ぎて、結果的には、先ほども議論になっておりましたように、かなりその策定がおくれるのではないか。こういうことになりますと、五カ年計画と五十八年度の予算の整合性あるいは財政再建との整合性等々、きわめてまたおかしな状態になっていくのではないかと懸念をする一人でございます。  そういう意味で、新聞等には、財政見通しをした場合に、どうもこの計画期間中の五年間では財政再建が思わしくない、したがって増税というものも入れねばならないけれども、入れたらまた怒られる、したがって選挙でも済んでから出そうかという、何か安易な方向に流れておるような気がするのでございますが、その実態はいかがなものでございましょうか。
  167. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 ただいま中曽根総理がおっしゃいましたように、経済計画は国民の大きな指針でございますし、これによって不安をなくし、また持続的な安定的な発展を図ることができる指針になる、こんなふうに思っておるところでございまして、ことしの七月から、経済審議会におきまして各界多数の有識者の御審議を経て、できるだけ早目に、五十八年度の予算の編成の際には少なくとも概案程度ができるような方向で努力しているところでございます。  確定的な成案は来年の四月以降だと思っておるところでございますが、その中で一番むずかしい問題は、財政再建計画の問題であることは言うまでもございません。しかし、財政計画が同時にまた経済計画の大きな項目でございます。需要あるいは支出の項目でございますだけに、むずかしい問題と取り組みながら、できる限り皆様方の御要望にこたえるような方向での案をつくってまいりたい、こんなふうに考えております。
  168. 米沢隆

    米沢委員 伝え聞くところによりますと、大蔵大臣、就任直後に、新経済五カ年計画とこの財政見通しとの絡みの中で、どうも新計画を下敷きに新たな再建計画をつくるのは疑問がある、こういうふうにおっしゃったと伝えられておるのでございますが、この真意はどういうことですか。
  169. 竹下登

    ○竹下国務大臣 新経済計画につきましては、いまお話しのとおり、経済審議会において慎重な審議が行われております。その中で財政再建は最も重要な国民的課題でございますので、この計画の策定に当たっては、幅広い角度から十分検討されるものと思われておりますし、大蔵省といたしましては、政府の一員としてこれに協力しておる、こういう立場をとっております。  そこで、私が就任早々記者会見等で申しましたのは、いわゆるこの国会を通じての問答の中でもございました財政再建のめどというものについて、私どもはやはり新経済五カ年計画というものの概案というものが下敷きにならぬと、なかなかそれはつくりにくい問題だ、しかし、それをつくるに当たっては、成長率を何ぼに見るかとか、わが方で言えば、それに伴って歳入歳出の構造の中で租税負担率がどのようなものになるのか、そういう非常に各般にわたる問題があるので、その新経済計画の出る前に財政再建のめどを安易にお示しすることはできない、こういうふうな趣旨で申したわけでございます。
  170. 米沢隆

    米沢委員 これもいろいろと議論がなされておりますが、財政再建、増税なき財政再建の中身についていろいろと答弁を総合しますと、五十八年は増税なしでやりたい、五十九年以降については、その後の財政状況等眺めながら検討課題であるというようなことになっているんじゃないか、こう思いますけれども、御案内のとおり、七カ年計画のときには、その租税負担率を昭和六十年には二六・五%ぐらいにしたいという目標が設定されました。  そこで、新経済五カ年計画を策定される場合に、この昭和六十年度二六・五%という七カ年計画の租税負担率が横並びで座るのか、それともそれより下がるのか上がるのか、そこらが、財政再建を増税でやるのか増税なしでやるのかという関心を持つ者にとっては非常に興味のある問題でございますが、大蔵大臣はどういうふうにお考えですか。
  171. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま総理からたびたびお答えになっております増税なき財政再建というところで、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たなる措置を基本的にはとらない、こういうことをおっしゃっておるわけであります。  そこで、その租税負担率そのものの問題でございますが、確かに委員御指摘のように、七カ年計画の中では二六カ二分の一というものが設定されております。そして、これは対国民所得比でございますので、率直に言って、この成長、いわゆる分母も上がりますが、いわゆる分子になる部分が景気によって大変な、結果的に乖離を生ずる。そこで、いわゆる全体としての租税負担率というものをかちっとしたものに決めていくというものに対しても、租税負担率というのは結果から出るものではないか、こういう議論もございます。したがいまして、基本になる成長率等の問題から検討してまいりますので、あの七カ年計画の下方修正の場合もこの二六カ二分の一は残っておりますけれども、新経済計画でどうなるかということは、やはりこれからの検討の課題であるというふうに考えております。     〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 米沢隆

    米沢委員 次は、今後の景気対策の問題をお伺いしたいのでありますが、まず最初に、例の十月八日に閣議決定をされました総合経済対策の問題点について若干質問をしてみたいと思います。  今回、この補正予算にも盛られておりますように災害復旧対策の繰り上げ等を初めとしまして、総額二兆七百億円の総合経済対策を講じられたわけでございますが、私は、これは景気の落ち込みを支えるという意味ではまずまずの力があるのではないか、そう考えますけれども、しかし、景気をいまから浮揚していくという意味では、全く不十分なものであるというように考えるわけでございます。  同時に、問題はその中身でございまして、私どもの判断は、災害復旧費七千五百億円は、建設国債の増額によって財源の裏づけがございますから景気対策としてもある程度の効果はあるだろう、しかし、さっきから議論になっております地方単独事業五千億、国庫債務負担行為の活用による一般公共事業四千億、増改築の推進を重点に置いた住宅対策費、三万戸の貸付枠の増加の三千億については、その実現に大きな疑問を感じざるを得ないわけでございます。  同時にまた、中小企業に対する投資減税も見送られましたし、単に政府系金融機関の融資限度枠を拡大したにとどまる。あるいは景気刺激策とは言いながらも、GNPの約一割程度にすぎない公共投資にしか直接的な景気刺激策を望めず、GNPの六割程度を占める個人消費を刺激するという策は全然とられていない。このままではいままでおっしゃいました潜在成長力をも阻害するおそれが出てくるのではないか。ただ世界経済の回復を待つだけではなくて、もっともっと国内需要を中心にした持続的な成長力を高める、こういうときが現在ではないか、こういうふうに考えて、総合経済対策というものに非常に疑問を持っております。  その上、御承知のとおりの人事院勧告の凍結、購買力を減らすマイナス景気対策を講じておられる。現在でも長期不況に悩んでおる消費関連業種に与える打撃というものは深刻なのでございまして、今回の景気対策なんかは吹っ飛んでしまう、デフレ効果が出てくるのではないか、そういうことさえ懸念されるのではないか、そう考えるのでございます。  そこで、質問をいたしますが、政府はこの総合経済対策で五十七年度の経済成長率を〇・七%押し上げる、こう推定をしておりまして、年初の五・二%成長がこのままでは二・七%にとどまると見ていたのを、これによって三・四%成長まで押し上げることができる、こういうふうにおっしゃっておるわけでございますが、ここで非常に不思議に思うのは、よくもよくこの経済成長率をいとも簡単に下方修正するものだという感じがするんですね。一体、この経済成長率は何だろうか、経企庁が示していただく経済成長率というのは一体何だろうかと、国民は口をあけてあきれておるのではないかと私は思いますね。一生懸命頭のいい人が寄ってたかってつくられるのでありましょうけれども、年度途中でこんなに簡単に変えていいものでしょうか。まず、そのことを経企庁長官、まじめに答えてもらいたいと思うのです。
  173. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに今回の下方修正は相当大幅な修正でございまして、一つの経済の動きに対する指針といたしましての見通しといたしましては、大変申しわけなく思うところでございます。  これまでも、昭和四十六年のニクソン・ショック、さらにまた昭和四十八年の第一次石油ショック等の際にも大幅な修正がございました。これは人為的な政策的な措置によって修正されたのでございますが、今回は、私どもが見通しの基礎といたしました五十六年の七―九くらいまでの資料に基づいて立てました五・二%という経済見通しが、十月以降の世界経済の低迷によりますところの輸出の急激な不振、このようなところを見損ねたことを大変残念に思っておわびを申し上げる次第でございます。  経済見通しの性格上、最も客観的な直近の資料ということになりますと、ことしもまた五十八年度の見通しを立てるわけでございますが、やはり七月―九月の資料が中心となる、そんなことが大きな制約でございますので、このような点についてはお許しを得たいと思うところでございます。しかしながら、OECDでも立てました一・二五%の経済見通しを、ことしの七月には〇・五%に修正する、十二月、近く恐らくOECDはさらにまた大幅のマイナスの成長率の修正を出すのではないか、こんなふうに言われておるくらい、世界の経済の質的な急激な変化があったことをここで御報告さしていただきたいと思います。  しかし、これは弁解だけしておっては申しわけございません。私ども、やはり指針となる経済活動の方向を示すような見通しは、今後とも努力によって策定していきたい、こんなふうに考えております。
  174. 米沢隆

    米沢委員 さて、自治大臣にお尋ねしますが、この対策の中の地方単独事業五千億、これはたしか年初では八千億もあったと記憶いたしておりますが、この地方単独事業を地方債まで起債して行うような力がいま地方財政にはあるんですか。
  175. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 いまの八千億という話はちょっと私どもも聞いておりません。しかし、約五千億をやるという計画につきましては、地方公共団体の場合は府県と市町村と分かれるわけで、府県の場合は九月補正でこの事業を織り込んだということでございます。また、そのほかに公営企業の方の事業もございまして、それら全体といたしまして約五千億の事業は可能であろう、こういう見通しでございます。  これが財源につきましては、自己財源によるものもありますし、また、これらを実施する上において必要があれば地方債を認めていくという措置をしていこう、こういうことでございます。
  176. 米沢隆

    米沢委員 僕は、自治大臣は本当にちょっと認識が甘いと思いますね。いま国の財政再建の中で、地方が国よりもちょっと余裕がある、したがって地方財政にいまからたかろうという、そういう予算折衝等がたくさんいろいろな省庁で出てきておるわけですね。それで、いま地方の方がひいひい言うておるのが現状なんですね。そうしたさなかに、また新たに五千億ぐらいの地方単独事業をやれ、そういうものをはいはいと受けるところが本当にあるんですか。私は、それは非常に楽観視し過ぎる、逆に言うたら、地方行政、地方財政を守っていかねばならぬ大臣が、地方財政には余裕がありますから、国がこんな事業をやるならどうぞ持っていらっしゃいというふうに語りかけているような感じがしますよ。そういう意味で、自治大臣、もっと認識を新たにしてもらいたいと思いますね。同時に、この地方単独事業というのはきわめてむずかしいだろうとわれわれは考えるということだけ申し上げておきたいと思います。  それから、建設大臣、今回、住宅対策として三万戸の融資枠を広げるという措置がとられました。しかし、専門家ですからもうすでに御存じのとおり、住宅建設というものもいま取得能力が問題になっておりまして、枠を広げられてもそんなに簡単に借りるわけにはいかない。同時に、借りたとしても、御承知のとおり、段階金利制が十月一日から発足しますね。この分がかなり響いておりまして、新しい受け付けというのは激減していますね。そうした中で新たに三万戸融資枠があったとしても果たして飛びついてくるだろうかという疑念が実際はあるわけでございます。特にまた、住宅の新設や増改築につきましては民間資金によるものが見込まれておりますが、民間資金のはほとんど伸びておりませんね。これも数字が示すところでございまして、そういう意味で追加の住宅投資が行われる可能性というのはきわめて小さいのではないかという気がするのです。もし、本当に総合対策と言われるならば、段階金利制あたりを見直すとか、もっともっと住宅の税金の面で緩和をしてあげるとか、そういうものがない限り住宅着工件数というのはそんなに伸びないでしょう。いま建設省は、住宅着工件数約百三十万戸という数を与えられて四苦八苦されておるというふうに聞いておるのですが、実際この対策がなされたとしても百万台をちょっと超えたぐらいのところにしか落ちつかないのではないか、そういう危惧の念を持っております。この住宅対策で果たして景気浮揚対策になるか、建設大臣に答えてもらいたい。
  177. 内海英男

    ○内海国務大臣 当初本年度百三十万戸を目標にして住宅建設を進めてまいったわけでございますが、最近の状況では、四月から十月までの累計で約七十一万戸、前年同期に比べまして一万戸の減となっております。しかし、最近四カ月の状況を見ますと、前年の同期を上回っておるというような状況でございますので、一年を通じて見ますと大体百十四万戸程度、昨年並み程度になるのではないかと計算いたしております。
  178. 米沢隆

    米沢委員 まあ答弁するのはどういうふうに答弁されても結構でございますが、もう少し現実の住宅着工件数の流れを見たら、いまおっしゃる楽観視されてまあ目標どおりいくでしょうなんというそんな状態じゃないのでしょう。論より証拠、きのうの新聞でしたか、「”住宅を”の大合唱に建設省渋い顔」などと皮肉られるほどに、景気対策だ、住宅対策だと総理以下一生懸命やられるものですから、受ける建設省としては着工件数が伸びないから困った困ったという、それが本音じゃありませんか。そういう意味で、私は住宅対策というものをもう少しまじめに考えてもらいたいと思うのですね。  それから、厚生大臣、御承知のとおり、住金の金利が上がるものですから厚年還元融資の枠がいま急激に伸びていますね。もうすでに年末に向けて残のないところが出てきているわけでございまして、この際、ぜひこの還元融資の枠を広げてもらうように処置してもらいたいと思います。ひとつ答弁ください。
  179. 林義郎

    ○林国務大臣 お答えいたします。  米沢議員よく御承知のことでございますが、厚生年金と国民年金の方から還元融資という形で年金福祉事業団を通じまして住宅建設のために金を出しております。出し方は、転貸法人、年金住宅福祉協会というのが大体各地にございますが、その協会を通じまして出すという形にしております。御指摘のように、金の需要が非常に多い、そういうことでございますから、現在この拡大を図るように努力をしているところでございます。一年間を通じまして四半期に分けてやっておりますので、一月―三月には少し増額をしようということで、いま検討中でございます。
  180. 米沢隆

    米沢委員 ぜひ増額をお願いしたいと思うのです。  それから、もう一回建設大臣にお願いしたいのですが、先ほども議論になっておりました債務負担行為ですね、先食い分、これがそのまま来年の枠の中に入ってしまいますと、もうすでに御承知のとおり、五十七年の当初の予算からしますとストレートに二千五百億円マイナスですね。あるいは補正後の公共事業費から計算しますと、八千七百億円少なくなるわけです。ゼロシーリングじゃなくて、五十八年度という意味ではマイナスシーリングにならざるを得ないのですね。景気がこんなに落ち込んでおる。特に公共事業に対する期待も大きい。いま新経済計画の中で公共投資をどうするかということでももめていると聞いておりますし、あるいは来年の予算折衝の中でも大蔵省と大変むずかしい局面に立ち至っておるというふうにも聞いておりますし、ぜひ大蔵大臣も御理解いただいて、公共事業の先食い分ぐらいはオンしてもらうようなことにしてもらわないと、私は景気という意味では大変なことになるのじゃないかという気がします。  特に経済白書が、去年でしたか、このごろの経済を見ておりますと、結局跛行性、企業間の格差の跛行性、あるいは地域間の跛行性、それから加工産業と基礎素材産業との跛行性、大変大きな問題だというふうに指摘をしております。特に、私は宮崎県でございますが、あのあたりは地方公共事業で飯を食うておるというところがたくさんございまして、来年のようにゼロシーリングになりますと、地方ローカル線は外される、七百億円とか八百億くらいの赤字を消すために、そうして赤字覚悟で上越新幹線をつくる。何をしておるかわからぬ。私はそう思うのですね。特にこういう状況の中で公共事業が減らされていきますと、ますます地域は過疎に拍車をかけていくのではないか、こう思います。  そうなりますと、加藤大臣、田園都市構想だとか、中核都市圏構想だとか、国土の均衡ある発展だとか、これは冗談じゃないと私は言いたいのですね。もう国土庁あたりは加藤大臣で最後にして、災害対策は建設省に譲って、もうやめたらどうですかと言いたくなるほどに公共事業をまじめにやってもらいたいと思うのですがね。これはだれに答えてもらいましょうか。総理大臣ですかね。
  181. 加藤六月

    加藤国務大臣 先生がおっしゃいました点について、私の答弁いたす範囲と範囲でないのとがあると思いますが、三全総におきましては地方定住圏構想というものを推進し、これに伴う基盤整備に必要な投資に重点を置くこととしております。ここ数年間の、近年の傾向を見ますと、行政投資実績というものを見てみますと、地方圏、地方における投資比率というのが相当高くなってきておるということは事実でございます。しかし、最近の経済情勢等から見ますと、いま先生がおっしゃいました財政依存度の高い地方におきましては、公共事業が横並びに抑制されておりますから、その点、それぞれの財政依存度の高い地域には、地域経済の発展とか地域の就業機会の創出ということに大きな影響をもたらすのではないかと心配いたしております。したがって、こういう財政制約の厳しい状況下ではございますが、長期的な国土政策の観点からも、また、当面の経済運営のあり方としても、地方に必要な公共投資の予算の確保に十分な配慮をしていかなくてはならない、このように考えておるわけでございます。
  182. 米沢隆

    米沢委員 ぜひ御努力いただきたい。特に公共事業費をぜひゼロシーリングじゃないところにまず持っていってもらいたいという希望と、公共事業の配分等については地域性と経済とを勘案されて、傾斜配分等も十分に考えられる、そういう状況をつくってもらいたい。そのとき初めて国土庁長官あたりも首がつながる、こういうことでございますから、よろしくお願いします。  それから、いままで問題点を指摘しましたが、果たしていまのようなことだけをやっておって三・四%の経済成長さえ本当に達成されるのだろうかという疑問を実は私も持っておるわけでございます。まあ私どもが計算をしますと、これから三・四%を達成するためには、十月から十二月以降大体四半期で三・一%ぐらいの成長がないと三・四%は達成できないと見ておるのですが、いかがですか。
  183. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 対前期比で見ますと、これから〇・七ずつ二期達成いたしますれば、いまお示ししております三・四%という成長率に達することになります。前期比でございますから。
  184. 米沢隆

    米沢委員 年率にしますとどうですか。
  185. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 年率にいたしますと、大体おっしゃるようなところで達成すると思います。
  186. 米沢隆

    米沢委員 御承知のとおり、昨年度は最終的には年度末の三月にちょっと公共投資がありましたが、ほとんど公共投資の裏づけがなかったですね。それがかなり経済の足を引っ張ったというのを数字が示しておるわけですね。ですから、五十六年度の末と現在、いま新しく総合経済対策をなされて大体トータルとして二兆七百億とおっしゃっておりますが、一兆円くらいしか生きてきませんね。そういうくらいのものをもし入れたとすれば、五十六年の状態と五十七年、いまからやろうとする公共事業、ほとんどとんとんみたいなものです。したがって、公共事業が、総合経済対策によってある程度成長をアップするという考え方は、ちょっと時間がありませんから申し上げかねますけれども、数字的にもほとんど問題にならない、五十六年度と同じようにマイナス成長するだろうという計算を私はしておるのですよ。そういう意味でも公共事業等の増額については、力いっぱい大蔵省さんのふところからもぎ取ってもらいたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから、時間が余りありませんので、最後に、基礎素材産業の問題についてお伺いをしたいと思います。  御承知のとおり、もう言うまでもなく、いま素材産業というものは大変厳しい局面に立ち至っております。そういうことで、この難局を打開するために、さきに、御承知の通産省の産業構造審議会が「基礎素材産業対策のあり方について」という答申をまとめられて具体的な対策案を提示されました。通産省におかれましても、すでにそれぞれの個別対策を順次実施されつつ今日に至っておるわけでありますが、そこで、通産大臣の見解を若干聞かしてもらいたいと思います。  一つは、すでにもう御承知のとおり、基礎素材産業対策は、国民経済を内需主導型に発展せしめる強力な経済施策と相まちまして、過剰設備の処理、技術開発の促進、原材料・エネルギーコスト低減のための設備投資、事業の集約化等によるこの産業の構造改善と活性化の推進を図り、もって雇用の安定確保、関連中小企業の経営対策、経営安定、地域経済の発展を図る、また通商政策の整備をも円滑に図り得る総合的な対策が必要だと思うのでございます。これらの対策を網羅するいわゆる特安法の後を受ける新特安法がいま検討されておりますけれども、一体いつごろ成案になっていつごろの時点で国会に提示されるのか。特に公取との議論が難航しますと、ずるずるいきまして期限切れまでに本当に間に合うかという、そういう心配もございます。地方選挙もありますし、そういう意味で時期的な問題が非常にわれわれとしては関心がある。そのことをひとつ明らかにしてもらいたい。  それから、法律の制定に関しまして、私どもはまず第一に、何といいましても自己責任の原則を貫徹する。どうも、ややもするといろいろと批判される向きが業界の中にあったことは事実でございまして、もっと自己責任の原則を貫徹してもらいたい。同時に、そこで働いている連中の気持ちもよく聞いてくれる、そういうシステムをつくってもらいたい。これが第一点でございます。  第二点は、目下のこの世界的な貿易摩擦問題が激化している様相の中で、われわれがいまとろうとする対策が、どうも日本に対する国際的な不信を醸成するようなものであってはならない。いまもうすでに外国あたりから、日本株式会社だとか、日本はどうも、新法をつくってやろうとすることさえ何かけしからぬという声があることも事実でございますから、そこらを外国の皆さんにもはっきりわかるように、国際不信が醸成されないような状況で法案をまとめていただきたい。これが第二点でございます。  それから、答申にもありますように、開放市場体制下にありまして健全な産業体質とするためには、やはりこの業界の過当競争体質にかんがみますと、先ほど言いました過剰設備の処理のみではなく、これらの業界の特殊性ですね、一社一コンビナートの体制だとか、一社一プラントの体制だとか、あるいはコンビナート内の連産品等の関係もございますから、こういう特殊性からいたしまして、生産の受委託による効率設備への集中あるいは共同生産・販売あるいは原料の共同購入等の事業の集約化、新規設備投資の調整などが不可欠であるわけです。  特にこの事業の集約化に関しましては、独禁法の規定、運用あるいは調整の面でむずかしい局面が予想されます。しかし、これが構造改善対策の何かメーンみたいなものになっておるわけでありますから、事業の集約化そのものが独禁法との関係でノーだということになれば、単なる設備処理だけを独禁法の範囲内でやるという、骨がすべてなくなるという、そういうものでございますから、この面での公取との配慮をしていただく調整だとか、その成否がこの構造不況業種対策のポイントだと思いますので、その点について通産大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  187. 山中貞則

    山中国務大臣 いまお話しになりましたこと、質問ではありますが、大体同感であります。  まず、いつごろまでかという話でありますが、二月十五日までには作成して国会に提出をいたします。  その間において、公取との間に独禁法をめぐって問題がどうかという、この点は最後の質問ともダブりますけれども、お任せいただいておいて結構だと思います。  私が先ほど申しました現行独禁法の範囲内でということは、独禁法そのもの並びに運用というものについて問題になるのは、カルテルと企業集約、合併等の際のシェアの問題であろう。そこらのところは、たとえば、公取委員長帰っていますから具体的な話はやめますが、要するにうまく話し合って、目的を達しない法案をつくったってしようがないのですから、これは何のために生き延びさせなければならないのだ。たとえば、アルミに例をとってみれば、アルミの地金が電力のかたまりと言われるようなものであって、アメリカのがどんどん入ってくる。日本のは七十万トン、五十万トン、三十万トンと減っている。そうすると、アメリカのダンピングだと言って調べてみたら、決してダンピングではない。そうすると、じゃアルミ産業はこのままほうっておけば、時の流れでは消えるわけですね。しかし、日本の中でアルミ産業をなくしていいかというと、これは与野党を通じて、やはり総合安全保障の立場からも、ある程度は日本国内における生産がなければならぬ。ならば、それをどうするかという問題になってまいりますから、八業種ぐらいでやるつもりでありますが、一番基本的な考え方として、いわゆる甘えの構図ではいかぬとおっしゃいましたね。私はそれを大変うれしく思うのですが、ともすれば、こういう法律をつくると、限界企業とかあるいはほうっておけばあしただめになるような企業が、この法律ができたために甘い考え方で生き残ろうとして、なおかつ、そのために残るものは過当競争であって、そして、みずからの弱体化を、いよいよお互いが足を引っ張り合うというようなことになっては身もふたもございませんから、その甘えは捨てなさい、そのかわり、厳しい自己規制、そしてまた総論賛成各論反対というような、一プラント一企業の場合なんか、自分の企業だけはつぶすのは嫌だ、そういうようなわがままを言うようであったら、その業種は外すというようなつもりでおりますので、まあ御期待を願うというのは大変僣越でありますが、一生懸命努力いたします。
  188. 栗原祐幸

    栗原委員長 時間でございます。
  189. 米沢隆

    米沢委員 もう時間が来ておりますが、簡単に一言、一問だけお願いしたいのです。  例のこの素材産業対策は雇用とのかかわりが大変重要な問題でございます。したがって、多くは述べませんけれども、この素材産業対策に関連しまして、雇用対策の強化というものについて労働省の見解を聞かしていただいて、質問を終わりたいと思います。
  190. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいま先生からお話しございましたいろいろな要因によります不況対策というものについては、特に素材産業あるいはまた構造不況産業対策において、労働省はすでに特定不況業種離職者臨時措置法あるいはまた特定不況地域離職者臨時措置法等を設定いたしまして現在鋭意努力をいたしておるところでございます。ただ、この臨時措置法も来年六月三十日には期限切れとなりますので、これらを考えながらより一層充実いたしますように検討いたしておるところでございます。
  191. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて米沢君の質疑は終了いたしました。  次に、三浦久君。
  192. 三浦久

    三浦(久)委員 まず、総理にお尋ねをいたします。  総理は、この予算委員会の再開冒頭の発言で、特にその発言の後段でこのように言われています。「当面の人事院勧告については、各野党の質問に代表される意見も踏まえ、国会判断を尊重し、十分検討いたしたいと存じます。」そうすると、この国会判断というのは具体的には何を指すのかということが少し疑問になります。まさかこの補正予算の成立に示されたる国会の意思、これがここで言う国会判断ということではなかろうと思うのですね。もしかそういうことであれば、補正予算が成立したら補正予算を尊重しますというただありきたりのことを言っただけにしかすぎないわけでありますから、じゃ別にどういうことが考えられるかというと、いま行われているようないわゆる各党の幹事長、書記長、書記局長レベルでの代表者会議ですね、こういうものの結論を尊重する、そういうふうにおっしゃられているのか、その辺が定かでありません。総理の御答弁でありますので、その点お聞かせいただきたいというふうに思います。
  193. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が申し上げました考え方は、各党でいろいろ御商議の上統一されましたお考えであります。私の解釈といたしましては、いまいろいろ御質問やその他で示されたお考え等に基づきまして各党の代表の皆さんがいろいろ御相談していらっしゃる、そういうものの結論を尊重する、そういう方向ではないかと考えておる次第です。
  194. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、現在も代表者会議が開かれておりますね。中断しながら継続していると思いますが、その結論を尊重するという意味だ、こういうことでございますか。
  195. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大体そういうことではないかと心得ております。
  196. 三浦久

    三浦(久)委員 そうであれば、この補正予算の中ではいわゆるベアの一%を減額補正しておりますね。すると、これがそのままずっと採決まで持ち込まれてしまうということになれば、人勧はこの補正予算の審議でもう全然無視するという結果になってしまうわけですね。そうすれば、各党の協議がずっと続いているその間に採決をするというようなことになれば、これは御趣旨に反するのではないかと思うのですね。そうすると、やはりこの補正の審議から、一%のベア分を減額補正したこれはやはり除かなければいけないということになるのじゃないでしょうか。それじゃないと、代表者会議の結論を尊重するということにはならないというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  197. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 各党のこの質問その他で示されましたいろいろなお考えを代表していま代表者会議が行われておるので、それを尊重する。それ以上の国会運営の問題は、これは議運やらあるいは各党間の折衝によって決まる問題でありまして、そういう方向でわれわれは処理するということでございます。
  198. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、この代表者レベルでの協議というものが調わない限りは採決に入らない。入ってしまえばこれは自民党の多数で成立してしまうわけですから、人勧無視という態度が如実にあらわれるわけですから。そうすると、私はいまの総理の御発言の趣旨と違うと思うのです。ですから、やはり代表者レベルでの協議の結果が出るまでは、予算委員会でこの補正予算の採決には入るべきじゃないというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  199. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の各党が商議している問題で、国会運営の問題は、国会でお決め願ったことに従うということであります。
  200. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、いままで政府はこの人勧は凍結するという方針をずっとおとりになってきましたね。そうすると、国会判断ですから、各党のそういう協議の結論に従うということになれば、政府の人勧凍結という方針は変わったというふうに承ってよろしいのですか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府政府としての固有の考えを持っておるわけであります。しかるところ、各党からいろいろな御質問でお考えも出たわけで、そこで、いま各党の代表がその問題等についてお話をしておる、その結論をわれわれは尊重する。しかし、国会運営の問題は、これは国会運営の問題として各党でいろいろ議運あるいは国対委員長会議等でこれから御商議なさるでしょう。そういうことでわれわれは処理していくということであります。
  202. 三浦久

    三浦(久)委員 これは総理大臣の答弁なんです。大出委員質問に対する答弁として行われた。ですから、政府政府で別の考え方があると言われたのでは、これはちょっと私はおかしいと思うのです。やはり各党でもって折衝したその結論を内閣としてものんだ。そして、内閣総理大臣としてここで答弁しておるわけでしょう。ですから、それは各党の折衝の結果をわしがただ言っただけであって、内閣内閣として別の考え方を持っておる、こういうふうに言われたのでは、何のために総理大臣が答弁したのかということにならざるを得ないのじゃないかと思うのです。ですから、いままで政府は凍結という方針をとっておった。ところが、今度は各党の代表者会議での結論に従う、こういうわけですから、どういう結論が出るかわからないにしても、そういう限りではいわゆる人勧に対する政府のいままでの方針が変更されたというふうに考えるのがあたりまえだと思うのですが、いかがでございましょうか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現内閣は、自由民主党の党議に基づきまして補正予算案原案を提出していま御審議願っております。これが政府の態度であります。
  204. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、この答弁とは違う考え方を政府が持っていて、いままでと同じような態度をとり続けているということになれば、ここでの答弁というのはただ単に言葉で何か国民に期待を持たせる、言葉の言い回しでもって国民に期待を持たせておいて、実際は人勧を無視する、そういう態度を貫く、そういうことになるのであって、私はこれはきわめて誠実でない態度だというふうに言わざるを得ないと思うのです。特にもう人勧というのは、御承知のとおり、凍結されるのが三十三年ぶりなんですよ。もう言い尽くされておりますけれども、労働基本権の代償措置としてこういう制度が制定される。それで、政府はこれを尊重しなければならないという。そしてまた、経済的に見ましても、これは公務員の生活を守るということだけではなくて、いわゆる消費不況というものをこれ以上深刻化させないというためにも大事なことでありますし、これが凍結されれば消費不況はもっともっと激しくなる。そうすると、税収が今度はもっと落ち込んでくる。そうすれば、もう増税しかないというようなそういう袋小路に日本の経済、財政というものが追い込まれてしまうと思うのです。そういう意味で、私は、まだほかの質問がたくさんありますので、この人事院勧告を完全に政府実施するように強く要求しておきたいというふうに思います。  それから、これは外務大臣にお尋ねいたします。  報道によりますと、十二月十四日にアメリカの上院外交委員会が、日本は自衛力を増強すべきだ、そういう趣旨の決議を行っております。これは私は露骨な内政干渉だというふうに思うのですね。たとえば期限を切っている。一九九〇年までに海上交通防衛を含む通常自衛戦力の展開に必要な水準を達成するために、年間国防支出を直ちにふやすべきだ。期限を切って、こうしろああしろと日本の国内の政治に干渉してくる、とんでもない話だと思うのですよ。それからまた、地位協定ではっきりアメリカが負担しなきゃならない、そういうふうになっているアメリカの艦船と航空機、この整備や修繕なども、日本にその費用の支払いを求めているじゃありませんか。これは全く露骨な内政干渉ですよ。そして、この決議は日本の防衛のためじゃない、極東の平和と安全のためだ、そんなことまで言っている。極東の平和と安全のためのまさに日米共同作戦体制、こういうものを強化をするという観点でこの決議はなされているのです。  これはもう露骨な内政干渉でありますから、何か総理は真剣に検討する、こういうように記者に語ったというふうに報道されておりますけれども、真剣に検討するに値しないものだ。私はむしろこんな内政干渉は許さない、そういう日本民族の毅然とした立場に立って、アメリカに対して抗議をすべきだと思いますけれども、外務大臣はどういうようにお考えでしょうか。
  205. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 十二月の十四日にアメリカの上院の外交委員会におきまして、いわゆるレビン決議案なるものが満場一致で可決されたわけでありますが、これは私も内容を見ましたが、日本の防衛努力を期待をするという趣旨の決議案でありますが、われわれとしては、アメリカの議会の日本に対する期待あるいは関心を表明をするものであって、これが内政干渉に当たるものであるとは決して考えておりません。したがって、米国政府あるいは議会に対して抗議をするという考えは持っておりません。
  206. 三浦久

    三浦(久)委員 だから私は、余りにもアメリカに遠慮し過ぎるんじゃないかと思うのです。日本の国会で、アメリカは軍備を削減すべきだとかアメリカは核兵器をやめるべきだとか、そういうような決議をしようとしたら、自民党の皆さんは必ず、内政干渉だからそんなことはできないと言うでしょう。  そしてまた、この決議を推進したレビンという議員がおりますけれども、このレビンというのは、この決議は、日本がより多くの防衛分担をしなければならないという日本国民に向けた強硬なメッセージである、こう言っているのですね。こう報道されています。期待と関心を持っているだけじゃない。日本国民に対する強硬なメッセージである、こう言っています。そして、共同提案者の一人であるパーシーですね、これは委員長ですが、この人は、日本の新政権、これは中曽根内閣のことだと思いますが、日本の新政権がこの決議を建設的に受けとめることを期待する、こういうように提案理由を説明したそうであります。そうすると、これは関心と期待の域を踏み出してしまって、完全に日本の国政に対する内政干渉ですよ。抗議しないと言うんだから、そういう対米屈辱的な外交は、私はやはり一日も早くやめるべきだ、そして、やはり筋を通すべきだというふうに思いますので、そのことを強く要望しておきたいと思います。  次に、法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。  法務大臣はおととい予算委員会で、今後ロッキード事件についての指揮権の発動は軽々にすべきではない。しかし、絶対にしないというのは制度の否定になる、こういうように述べて、そしてロッキード事件についての指揮権の発動の可能性というものを残す、そういう発言をされておられるわけでありますけれども、それでは、そういう指揮権の発動をする場合に、法務省内に一定のルールが制定されています。これは法務大臣自身も一定の基準があるというようなことでちょっと言われておりますけれども、そうすると、この法務省に定められているルール、これはもう数十年間にわたって行われているルールですが、これはお守りになるのですか、守らないのですか。
  207. 秦野章

    ○秦野国務大臣 ルールというものは、まず守るべきものでございます。
  208. 三浦久

    三浦(久)委員 べきであるなんと言うけれども、べきでありながらそれに違反してやる、そういう人だから、あなたはね。だから私は、べきであるという発言には納得しないけれども、まあ守るということを宣明したというふうに解釈をしましょう。  それでは法務省刑事局長ちょっとお願いいたしますが、その指揮権の発動のルールですね、もうかなり定着しているものだと思いますが、それはどういうような内容でしょうか。
  209. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの指揮権の問題でございますが、俗に指揮権の発動というふうに言われますと、何か強権力を発動するような印象を与える言葉のようにも言われるわけでございますが、むしろ事務的に言えば、指揮権の行使とでも言った方がいいんじゃないかというふうに思うわけでございます。  そこで、従来どのような扱いになっているかということの御説明でございますけれども、私どもといたしましては、たとえばわが国の存立にかかわるような犯罪であるとか、あるいはわが国の経済秩序に重大な影響を及ぼす犯罪であるとか、何種類かの一定の犯罪につきまして、その事件を処理する場合には大臣の指揮を受けるべき旨を一般的に定めておるわけでございます。したがいまして、そういう事件に当たります場合には、当然のことながらいわゆる請訓がなされて、これに対して指揮をする。  この指揮の場合には、当然そのとおりで差し支えないという指揮もあるわけでございまして、何か指揮権発動といいますと、先ほど申しましたように、検察当局の意向と反するようなことをする場合だけが指揮権発動みたいに言われるのも、ちょっと誤解ではないかと思いますけれども、それはそれといたしまして、そのほかにどういう場合があるかということになりますと、いま申し上げましたように、ごく限られた数の犯罪でございますけれども、それが一定のものが決められている。そのほかには、いわばケース・バイ・ケースと申しましょうか、当然のことながら法務大臣は法務行放の責任者であられるわけでございますから、その法務大臣が当然知っているのが相当だという事案につきましては、検察当局から随時連絡といいますか、報告があるわけでございまして、その場合に、その事案によっては大臣に指揮を仰ぐということもあるわけでございまして、それにつきましては、特段の基準といいますか、明確なものはないわけでございますが、先ほど来お話しのように、まあ良識によるといいますか、慣行によるといいますか、そういうことによって円満な、円滑な運用がなされているというのが実情でございます。
  210. 三浦久

    三浦(久)委員 処分請訓規程というのがありますでしょう。その処分請訓規程に基づいてそういう請訓というのが、いわゆる指揮を仰ぐための請訓というのが行われるのではありませんか。
  211. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほどのお答えの中で、一定の犯罪を決めて、それについては処分する場合には指揮を仰ぐようにというふうに決めているというのは、そのことでございます。
  212. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、その処分請訓規程ですね、その中に収賄罪は入るのでしょうか。
  213. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 御指摘の規程と申しますのは、部内の内規みたいなものでございますのでそういうふうに御理解をいただきたいわけでございますし、どういうものがどういう扱いになっているかということは、それ自体問題にもならぬ面もあるかと思いますけれども、やはり部内の扱いを公表するということは適当でない面もありますので、どういうものがある、どういうものが当たる、どういうものが当たらないということを個々に申し上げるのは差し控えさせていただきたいわけでございます。まあ当面の問題についてのお尋ねでございますから、結論から申しますと、先ほど申し上げましたように、国の安危にかかわるといいますか存立にかかわるとか、あるいは経済秩序に重大な影響を及ぼすとか、そういう種類の犯罪に限られているというふうに御理解いただきたいわけでございます。
  214. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、いまの御答弁趣旨から言うと、贈収賄罪はこれに入らない。そして、この処分請訓規程というのは法務大臣がつくったのじゃありませんか、どうですか。
  215. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申しましたように、いわば部内の内規でございますから、当然のことながら大臣が定めたものでございます。
  216. 三浦久

    三浦(久)委員 もう一つ聞いておきます。元総理大臣については請訓をしなければならないとか、元大臣については請訓をしなければならないというような規程になっているのか、それとも犯罪がただ列挙されているだけなのか、その辺をちょっとお尋ねしたい。
  217. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほど申しましたように、犯罪の種類といいますか、そういう形で定められているわけでございます。
  218. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、法務大臣、ロッキード事件は収賄罪ですよね。被告人は田中さんがなっていますけれども、田中被告人、元総理大臣であっても、指揮権を仰ぐための請訓はあなたのところに行かないのです。  それで、法務省にお尋ねしますが、刑事局長にお尋ねしますが、最高検の次長検事の伊藤榮樹さんがお書きになっている本がありますけれども、「いずれにせよ、法務大臣は、検事総長が自己の信任のもとに検察の総指揮に任じている以上、請訓をまたずして、積極的に具体的事件に関する指揮を行なうことは、現実には、全くといっていいほど、ないものと考える。」こういうように言われているのですが、これはそのとおりですか。
  219. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 検察庁法の理解といたしましては、ただいま御指摘のようなふうに理解しております。
  220. 三浦久

    三浦(久)委員 いえ、私は実態を聞いているのです。解釈じゃないです、これは。実際の検察の運用の実態がこうかというふうに聞いているんです。
  221. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 そういう運用になっております。
  222. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、指揮権発動する場合というのは、必ず請訓を受けて、それに基づいてのみしか発動されないわけですね。そして、ロッキード事件は収賄罪、そして田中総理もこれは例外ではないということになれば、法務大臣、あなたのところに請訓は行かないのだから指揮権の発動というのは可能性がないことになるんじゃありませんか、どうですか。
  223. 栗原祐幸

  224. 三浦久

    三浦(久)委員 いやいや、法務大臣に聞いているんです。それはもう法務大臣です。いえいえ前田さん、ちょっとそれはだめだよ、法務大臣に聞いているんだから。
  225. 栗原祐幸

    栗原委員長 私が指名したんだから……。
  226. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 事務的なことを御説明させていただきますけれども、先ほどは、そういうあらかじめ一定の犯罪について請訓をし指揮を受けるべきことを定めていると申しましたが、そのほかにも、事実上そういう請訓をして指揮を受ける場合もあるということを申したわけでございます。  あとは理論的な問題でございますから大変誤解を招くといけないわけでございますけれども、大臣は法務行政の責任者でございますからそういう指揮監督権を持っておられる、それで、その行使については検察庁法に規定がありますので、その規定に従って行使されるわけでございますから、請訓が条件ということは理論的にはないわけでございます。
  227. 三浦久

    三浦(久)委員 しかし、制度運用はそういうふうに行われているんですよ。十四条ただし書きの規定に基づいてこの処分請訓規程ができて、それに基づいてずっと行われて、理論的じゃなくて、制度の実態も請訓がなければやらない、こういう実態になっているんじゃありませんか。  法務大臣にお尋ねしますけれども、法務大臣はそういう請訓がなければ指揮権は発動しないのですか。
  228. 秦野章

    ○秦野国務大臣 私は、憲法に基づいて法律を厳重に守っていくという立場でございます。
  229. 三浦久

    三浦(久)委員 そういう抽象的なあれじゃだめですよ、あなた。私は具体的に聞いているじゃないですか、請訓がなければやらないのかと。そうなっておるでしょう。それは答えなければいかぬじゃないですか。制度運用上そういうように定着しているものについてまであなたは反旗を翻そうというのですか。だめじゃないですか。委員長、答えさせてくださいよ。そんな法の厳正とか抽象的なことを言ったってだめですよ。具体的に答えてください。
  230. 秦野章

    ○秦野国務大臣 何かばかに私が、検察庁法に基づいて、十四条のただし書きで検事総長を通じてのみ捜査を指揮できるという規定があることを根拠に、みだりにそういうことをやりそうだなというようなお気持ちでお尋ねのようでございますけれども、そういうふうに……(三浦(久)委員「みんなそう思っている、私だけじゃない」と呼ぶ)いや、こういうものはみだりにやるものじゃないの。(三浦(久)委員「みだりじゃない、絶対にやっちゃいけないのだよ」と呼ぶ)ただ、絶対ということはないと言っているの。これは……。
  231. 三浦久

    三浦(久)委員 答弁が違うのだよ。私は、請訓を受けなければやらないのかと聞いているんだよ。何を言っているんだよ、あなた。私は、あんたが絶対にやらないとかやるなとか言っているんじゃないんだよ。請訓を受けたらやる、請訓を受けなければやらないのかということを聞いているんだ。
  232. 秦野章

    ○秦野国務大臣 制度の上でそうなっている。制度の上では捜査の指揮ができるようになっている。そのことはまた慣例というようなものもある。しかし、法律の上では――いま政府委員説明したように慣例というものもありますから、そういうものも尊重せにゃならぬことは当然ですよ。そしてまた、検察庁法の――ただ、私があえて一般論で言いますと、これはロッキードとかなんとか個々の、どの事件でも同じことなんですよ。同じことでございまして、どんな事件でも仮定の上で絶対に捜査の指揮をするとかしないとかを私が発言をすることは、これは言うならば先物取引みたいなものなんです。そういうことは、法律を厳重に守るという立場からいくとかえってふまじめになる、私はそういう考えでございます。
  233. 三浦久

    三浦(久)委員 ふまじめな答弁だよ、あなた。ふまじめですよ。この検察庁法第十四条のただし書きに基づく処分請訓規程というのがある。そして、それに入ってない事件については請訓はしない、それに入っている事件については請訓する。そしてまた、法律上は確かにそういう解釈も成り立つかもしらぬ、あなたのようにいつでも指揮権発動できるというような。しかし、法務省の内部、検察庁内部では、請訓がなければ指揮権の発動はないということはもうずっと定着していると言われたでしょう。そうなっている。だから、あなたもそういう定着した一定の慣行、ルール、そういうものに従うのか、そう聞いているんですよ。それを素直に答えればいいじゃないですか。何でそれが答えられないの。
  234. 秦野章

    ○秦野国務大臣 どういう事件を請訓してくるかどうかという問題は、私も実ははっきり言って余りまだ知らないの。重要な事件というものは請訓を大体してくるんだろうと思っておりますよ。しかし、具体的にどういうことを請訓してくるのかということは、正直言って先のことでさっぱりわからないですよ。先のことで指揮するとかせぬとかをそういうふうにはっきり言えと言われても、それは可能性の問題を私は言っているのです、法律に書いてあるから。したがって、先約というのか、先物取引みたいなことは、私は、法律を厳格に運用するという立場からいくとかえっておかしいのじゃないか、こう思っているのです。
  235. 三浦久

    三浦(久)委員 あなた、指揮権の発動というのはきわめて政治的な問題、重大な問題なんですよ。それがどういう場合に発動され得るのかというようなことを、ただ検察庁法十四条のただし書きしか知らない、処分規程の内容も知らない、そんなことをよく公の席でいばって言えたものですね。あなたは不見識か、でなければふまじめな答弁をしているのですよ。  それから、一般論ということを言うけれども、あなた出身はロッキード事件について軽々には指揮権発動しないけれども、しかし、それを否定することは制度趣旨を否定することになるのだということをはっきり言っているから、私はそれを聞いているのですよ、ロッキード事件の問題について。それで、それ自身は請訓規程の中にはないわけだ。あなた、そういう非常にふまじめな答弁でごまかそうというのはいけませんよ。  それから、先のこととか先物買いとか言っているけれども、そうじゃなくて、もうずっと二十数年間、三十数年間かな、請訓がなければ指揮権は発動しないというルールになっているのですよ。だから、それに従うのですかと聞いているのです。それが何が先物ですか、仮定の話ですか、そうじゃないでしょう。あなた自身としては、そういう検察庁内部に確立されたルールに従って指揮権を発動するのですか、どうですかと聞いているのですよ。請訓がなければいたしませんか、どうですか。――いやいや、局長、あなたが指揮権発動するんじゃないんだから、あなたはされる方だから。ちょっとおかしいな。
  236. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 恐縮でございますが、事務的な御説明をさせていただきます。  先ほども申したことと同じようなことになりますけれども、一定の事件を限りまして、それは請訓し指揮を受けるべきものというふうに定められております。それ以外のものについてはいわば運用でやっているわけでございまして、それは従来から、先ほど申し上げたような実情にございます。しかし、それはいわば従来の実情であるということでございまして、大臣も恐らく今後のことでありますから、いわば仮定論としては申し上げられないということでございまして、私も理屈としてはそのとおりだと思います。
  237. 三浦久

    三浦(久)委員 制度法律に基づいて一定の指揮権発動のルールができているんですよ。だから、その定着した慣行とかルール、運用の仕方、そういうものを守るのですかという質問なんです。ですから、具体的には請訓がなければ発動しないのかと聞いているのですよ。それを何で答えられないのです。発動するつもりですか、あなたは。請訓を得てやるというのが確立された慣行になっているわけでしょう。法務大臣どうなんですか。あなたが指揮権発動するのだからちょっと答えてください。
  238. 秦野章

    ○秦野国務大臣 どういう事件を、請訓する具体的な事件を列挙しているはずがないでしょう。請訓事項に、具体的な何々事件を請訓するということを書いてあるはずがないですよ。だから結局、解釈ということになるわけです。その解釈というのが検察庁法という、言うならば、要するに行政長官の権限立法の解釈になる。その解釈で、仮定の問題で権限を行使するとかしないとかと言うことはふまじめな解釈だろう、私はそう思うのです。仮定の問題、まだ私の目の前に来ていないんだもの。そういう意味において私はまじめに答えているんだよ。あなたはまじめでないと言うけれども、非常にまじめに答えている。私どもは、法律というものは憲法によって本当に厳重に守らなければいかぬということになっているんだ、守りますよ。絶対に憲法の規定を守らなければ役人は勤まりませんよ。私どもも特別公務員ではあってもそのことは大事なことだと思っております。
  239. 三浦久

    三浦(久)委員 まだあとの別な質問がありますので、それはまた法務委員会で時間をとってゆっくりやりましょう。  総理、いまのように、指揮権の発動というのは、普通は請訓を得た上でしかやらないのですよ。指揮権の行使というのは、ああ結構だよと言う場合も、いや、だめだよと言う場合もあるでしょう。しかし、必ず請訓を得てやるというふうに運用の実態はなっているわけです。だから、そのとおりやるのかというのに対して、答えられないと言う。恐ろしい法務大臣じゃないですか。これはもう検察庁内部に無用な混乱を引き起こすだけですよ。いままで確立されてきたそういう運用の実態まで無視するかもしらぬという態度を表明しているわけですから、彼の頭は警視総監の頭なんですよ。法務大臣の頭じゃない。あなた、いまの、そういう答弁を拒否されているということについてどう思われますか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま応答を聞いておりまして、何か質問者の方は固定した観念にとらわれた質問をしていらっしゃる、こう思いました。
  241. 三浦久

    三浦(久)委員 いやいや、ひどい発言ですね。まともに答弁ができないわけで、ただ人を非難、中傷するという、そういう答弁総理大臣としては余りまじめではない答弁だと私は思いますよ。もしか、そういうことを言われるんならちゃんと論証してください。  次に、通産省にお尋ねします。  北九州市の若松区の沖の白島というところがありますけれども、先ほどもちょっと議論になりましたが、そこに石油公団が世界で初めてと言われる洋上備蓄基地の建設を計画しております。その事業費は約二千億円ですね。そして、その計画の内容は、一隻の長さが四百メートルもありますが、その船、いわゆる貯蔵船ですね、これを八隻洋上に係留する。一隻は七十万キロリットル貯蔵できるわけでありますから、全部で五百六十万キロリットル、これを洋上で備蓄しよう、そういう計画がどんどん進んでおります。これは間違いがないかどうか、ちょっとお尋ねしたい。
  242. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりです。
  243. 三浦久

    三浦(久)委員 昭和五十三年度に国家備蓄事業が行われるようになってからの計画であります。もう大分時間がたっているんですね。しかし、いまだに運輸省の埋め立て認可がおりていません、消防法に基づく許可もおりておりません、また船舶安全法に基づく検査も終了しておりません、水域占用許可もまだおりてない、これらについてどういうめどをお立てになっていらっしゃるのか。そして契約をする、また工事に着工する、こういうのはいつごろというふうに予想されておられるのか、その点をお尋ねいたしたいというふうに思います。
  244. 山中貞則

    山中国務大臣 この白島の備蓄に関して、末端といいますか末の方といいますか、その方で漁業補償に関して刑法に触れて逮捕者が出ております。したがって、おっしゃったように、非常に長い経過がありまして、私もそう間違った答弁をしてはいけませんので、エネルギー庁長官をして答弁せしめたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  245. 豊島格

    豊島政府委員 お答えいたします。  五十三年度から国家備蓄ということでそういう政策が出たわけでございますが、その十月の時点で五十七年度までに大体完成をめどとする。と申しますのは、タンカー備蓄というのをとりあえず始めたのですが、そのとき、大体五十七年度までに陸地へ移す、こういうことになっておりまして、そういう観点から自然条件その他、そのときに完工する。しかも、フィージブルといいますか、地元との関係で市やその他も期待しておる、そういうところを選んで進んだわけでございまして、そこでフィージビリティースタディーを始めたわけでございますが、そのフィージビリティースタディーそのものにつきましては、初めての計画でございますので入念にいたして、それが五十五年の春までかかった、その上でいろいろと地元の調整をして、最終的に備蓄基地としての決定をいたしましたのが五十六年七月でございます。しかし、その後もいろいろと詳細にわたって準備をしておりまして、そのいろいろな検討、たとえば工事の手順の問題、これはなるべく安く上げる、あるいは安全性の……(三浦(久)委員「大変恐れ入りますが、結論だけ」と呼ぶ)結論として言いますと、そういうことでやっておりまして、ようやくその辺はめどがついた段階でございますが、最近、いろいろな事情もございますので、その辺の推移を見てやりたいということでございまして、大体目標としては、本格的な着工は来年の春過ぎを目標にしておる。(三浦(久)委員「春というのは年度内という意味ですか」と呼ぶ)それは必ずしもそうではないのですが、一応春ごろをめどとしておる、こういうことでございます。
  246. 三浦久

    三浦(久)委員 エネルギー庁長官にお尋ねいたしますが、上五島にもう一つ同じような洋上備蓄基地の建設計画、これが行われていますね。これはいつごろ発注する予定なんですか。やはり同じですか。
  247. 豊島格

    豊島政府委員 これはまだ準備中でございまして、着工の時期その他についてはめどが立っておりません。決定しておりません。
  248. 三浦久

    三浦(久)委員 この洋上備蓄基地の建設をめぐって地元の企業グループがいろいろ策動しているんですよ、おれのところが受注しようというので。それで、これは私がにらんでいると、大きく見まして上五島は三菱のグループ、白島は日立造船のグループ、これで仕事を分け合おう、そういう談合が行われている疑いがきわめて濃いのです。  この問題について、エネルギー庁や通産大臣は御存じかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
  249. 豊島格

    豊島政府委員 本プロジェクト、白島及び上五島につきましては、いろいろ現地で現実に準備中でございますが、どういう発注方式にするかということについては、私ども具体的に決定していない。私どもと言ってはあれでございますが、それぞれの備蓄会社において目下検討中ということでございまして、それ以上のことはないと思います。
  250. 三浦久

    三浦(久)委員 そうすると、まだだれに発注するかも決めてないということでしょう。随契でやるのか指名競争入札でやるのか、そういうことも一切決めていないとおっしゃるわけですね。  ところが、次から次へと、いま私が言った、いわゆる公団を巻き込んだ大きな談合が行われているという疑いが非常に濃いのです。  時間がありませんのでもう前置きはやめてずばりいきますけれども、たとえばあなたが言われたフィージビリティースタディー、これでいわゆる実現可能性の調査をやった、こういうことでしょう。この報告書がここにある。私のところにあるのもおかしいのだけれども、あるのです。これは石油公団内部のものであって、外部には漏らさないものじゃないのですか、どうですか。
  251. 豊島格

    豊島政府委員 このフィージビリティースタディーの調査は、いろいろ基礎的なもの等を検討するということでございまして、したがいまして公表を前提としたものではないということは申し上げられます。ただ、この結果をいろいろと検討するという段階で委員会などをつくってやっておりますので、その委員会の方々にも伺っておるということでございまして、それから関係者もございます。この検討する中の関係者、そういうところへ相当部分配った、こういうことでございまして、そういう観点から、必ずしも好ましいことじゃないですが、若干外部に出たこともあり得るかと思います。
  252. 三浦久

    三浦(久)委員 この白島の基地の建設は、当初は民間備蓄として計画をされたんですね。その民間備蓄での基地の建設をやろうというグループは、日立造船であり、そして新日鉄であり、間組であり、そして飛島建設であり、日商岩井だということは御存じですね。どうでしょうか。
  253. 豊島格

    豊島政府委員 この白島の備蓄につきましては、当初民間備蓄として、いまおっしゃったような企業を中心に検討されていたということは知っております。
  254. 三浦久

    三浦(久)委員 そうしますと、このフィージビリティースタディー、これは「洋上石油備蓄システム基本計画策定業務報告書」、昭和五十四年三月という日付が打ってありますが、これが日立造船にちゃんと渡っているのです。そして、日立造船がどこどこに渡しましたという判こまで押してあるわけです。それがわれわれの手に入っています。  そうしますと、なぜ日立造船にこれが配付されたか、そして日立造船から、いま言いましたように、新日鉄や間組、飛島建設、こういうところに渡っているのか、なぜこういうことになったのか。公団がやったのかどうか。その辺、どういう調査をされたのか、ちょっとお尋ねしたい。
  255. 豊島格

    豊島政府委員 この資料が、御指摘のように、外部に出ておるということにつきましては、そういう情報も得ましたのでいろいろとあれしたのですが、結局のところ、二百五十部ぐらい部内用の資料として刷ったということで配付しておるわけでございまして、どこからどう漏れたかということはわかりませんが、それだけ多くの人に、部内秘ということでございますが配った結果、どこからか出たのではないか、このように思います。
  256. 三浦久

    三浦(久)委員 こんなに大事なものが漏れても平然としておる。まああれしました――調査しましたとも言わない。あれしましたなんということを言っていますけれども、もっと管理を厳重にしなければいけないのじゃないですか、こういうものを。もう私は、日立造船の企業グループにあなたたちが渡したのではないかという疑いを持っておる。  特にこのフィージビリティースタディーの二十四ページにどういうことが書いてありますか。ここには「曳航及び維持修繕の難易さらにはそのコスト等を勘案し、かつまた石油国家備蓄計画自体の早期完成を図るといった観点からは九州西岸地区に所在する大型設備で効率的に連続建造することが望ましい。」こういうふうに書かれているのですね。そうすると、もう特定の企業を頭に入れているわけです、この計画の段階で。  この九州西岸地区に所在するいわゆる造船の大型設備というのは、どういうものがあるのですか。
  257. 豊島格

    豊島政府委員 日立造船のドックと三菱重工のドックでございまして、前者は有明、後者は香焼のドックと二つあると思います。
  258. 三浦久

    三浦(久)委員 三菱が白島基地の建設に動いたという動きは何にもない。ところが、日立造船が動いたという事実はある。特に五十二年九月二十日に日立造船グループが日立の本社で会合している会議の要録というのが、もう全部行き渡っています。私も持っておりますが、その中では、上五島のプロジェクトについては三菱のプロジェクトというふうにはっきり言っているのですね。そしてまた、この白島の問題についてはだれがいろいろ政界工作をしているかというと、日立造船とか間組なんですよ。そういうグループなんです。三原さんおられるけれども、三原さんもいわゆる第四建に行ったことがある。ですから、三菱は白島では全然動いてないのですよ。日立造船が動いているのです。しかし、あの貯蔵船を曳航するという場合には、九州の地図を見ればわかるけれども、長崎の方が近いですよ。三菱の方が近いですよ、北九州までは。そうすると、これは三菱と日立造船グループの間に何らかの話し合いがあるということを強く推定させるものですよ。そして、もう大体が百万トンドックなんというものは、この二つと、あとは愛知県の知多半島の石川島播磨の造船所しかないわけでしょう。ですから、もうこういう談合が行われているというのは間違いないんですよ。調べてください。  それから、もう時間が余りありませんのでちょっとはしょりますけれども、基本設計を委託していますね。これは三井共同コンサルタント株式会社、それから日本技術開発株式会社、こういうところに基本設計を委託している、そういう事実はありますか。
  259. 松村克之

    ○松村参考人 お答えいたします。  そういった設計について委託をいたしております。
  260. 三浦久

    三浦(久)委員 これは業者間には秘密にしなければならない事項ではありませんか。
  261. 松村克之

    ○松村参考人 特に外部に発表するといったようなことはいたしておりません。
  262. 三浦久

    三浦(久)委員 それはなぜですか。
  263. 松村克之

    ○松村参考人 こういう設計を委託いたしましたのは、白島石油備蓄という株式会社が委託したわけでございますが、それについて、石油公団が特にこれを発表するという立場にないわけでございます。
  264. 三浦久

    三浦(久)委員 そういう答弁はおかしいんじゃないですか。いまの御答弁ですが、備蓄会社がやっているから公団関係ない、そういう形式的な答弁はいかぬのじゃないですか。その備蓄会社というのは、公団が七〇%出資しているのですよ。何やるんだっておたくと協議してやっているのでしょう。そんなこと何にも関係ないみたいなことを言われても困りますね。  制度として、こういう基本設計を委託した、そういう委託先は業者間には教えないものだ、それはなぜですか、そう聞いているのですよ。
  265. 松村克之

    ○松村参考人 私が申し上げましたのは、特に公表したかということについて、公表するというようなことはしなかったということを申し上げたわけでございまして、これを厳重な秘密として考えているわけではございません。
  266. 三浦久

    三浦(久)委員 あなたたちが指導してつくった契約規程というのがありますよ。いただきましたが、これには、契約に従事する職員は秘密を守らなければならないと書いてあるよ。それで、こんな基本設計、どこに委託したかなんということは、一々業者に知らせないのじゃないですか。そういうのはおかしいけれども、余り一つ一つ聞いていると時間がありませんので、皆さんのお手元にお配りいたしました資料に基づいて質問をいたします。  ここ、間組の事務所、北九州営業所というのが北九州市戸畑区中原西一の一〇の四にあります。ここはかなり大きな事務所ですが、そこに間組の土木設計本部八幡分室というのがある。この八幡分室に私どもが行って、そして写真を撮ってきました。そうしますと、壁に大きな紙が張ってあります。そして、そこにいわゆる企業の名前がずらり書いてある、そして電話番号が書いてある。ということは、そういう電話の張り出し方をしているというのは、結局頻繁にそこと連絡をする必要があるからだと思います。現にやっているからだと思います。ところが、この土木設計本部八幡分室に行きますと、その電話番号、どういうのが挙げられているかといいますと、北九州市の港湾局、それから四建の洞海工事事務所、それから同じく四建の小倉工事事務所、日立造船の東京SK、SKというのはどういう意味かわかりませんが、白島何とかというのかもしれません。それから、日立造船の九州支社、そういうところがずっと載っています。それから、飛島建設も本社と支店が載っている。間組の本社ももちろん載っている。それから、三井共同コンサルタント、日本技術開発、こういうのが全部載っているわけです。  そうすると、これは一体何を意味するのでしょうか。公団の方でもエネルギー庁でもいいですけれども、これは一体何を意味するのか、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  267. 松村克之

    ○松村参考人 いまの御質問でございますけれども、間組の北九州事務所の電話番号について、これが何を意味するかという御質問について、ちょっと私どもお答えする立場にないのでございます。
  268. 三浦久

    三浦(久)委員 間組が設計をしているわけです。設計をするに当たっていろいろ連絡先が、いま私が言ったところなんですよ。間組というのは基本設計をするところじゃありませんよ。間組というのは、この事業を受注する、工事の受注に基づいて施工設計をするところでしょう。そうすると、ここですでに施工設計が行われているということなんですよ。これは私どもが行って写してきた写真ですから。そうすると、これはもう国も市もぐるみでもって談合している。間組がもう工事を受注するということを前提にして仕事をする、そのことに四建も、そしてまた公団も、そして北九州市も全部協力しているということなんですよ。北九州市は埋め立てを担当するでしょう、四建はその工事の施工を担当するでしょう、日立造船は貯蔵船をつくるでしょう、そして三井共同コンサルタントや日本技術開発、これは基本設計をやっているでしょう。そういうところと頻繁に打ち合わせをしながらもう施工設計しているということを意味するのじゃありませんか。どうですか。
  269. 松村克之

    ○松村参考人 間組がどういう意図でここに電話番号を書いてあるか、私、存じないわけでございますけれども、あの会社が非常に熱心にこのプロジェクトについて研究をしているといううわさは聞いているわけでございます。ただ、私どもがこれを発注する、白島石油備蓄株式会社を含めてこれを発注する場合には、全くそういうこととは別途に、厳正に発注するということでございます。
  270. 三浦久

    三浦(久)委員 厳正にと言うけれども、あなたたちの契約規程を見ますと非常に抽象的に、随契ができるようになっているのですよ。随意契約ができるようになっている。ですから、そういう規程に基づいてこういう日立造船グループに優先的に工事をおたくが発注する、そういうことを約束しているのじゃないかという疑いが大きいのですよ。たとえば企業のリスクでもって先行投資してやっているのだ、そういう解釈も理屈としては成り立つ。しかし実際に、工事を自分のところで受注するかどうかわからないのに施工設計までやるかね。そんなことはやらないと思いますね。それは工事を受注するための仕事を一生懸命するのが先決だと思うのです。それを、受注した後の施工設計まで、もう各役所から何からとみんな連絡をとりながらやっているということなんですから。  これは私、公団また通産省、こういう疑いが提起されたんだから、よく事実を確かめていただきたい、調査をしてほしいと思うのです。どうでしょうか。
  271. 豊島格

    豊島政府委員 私の知る限りでは、役所がそういうことをばらしたとか、あるいはそういうことを確約したということは一切ございません。
  272. 三浦久

    三浦(久)委員 調査をするかと聞いているのです。
  273. 豊島格

    豊島政府委員 この問題は、直接は備蓄会社、及びそれを監督といいますか、出資している公団がございますので、公団を通じて疑いのないように十分指導したいと思います。
  274. 三浦久

    三浦(久)委員 調査はしないんですか。ちょっと変だな、調査をするかと聞いているのに。まあいいでしょう、もう時間がありませんから。また関係委員会でじっくりやりましょう。  一つずつ質問する時間がありませんからちょっと言いますけれども、まだまだ疑惑があるのですよ。  たとえば白島備蓄会社が、海洋気象情報株式会社、こういうところに、たとえば波高がどうだとか風速がどうだとか風向がどうだとかというのを調査することを依頼しています。これは洋上の仕事ですから、やはりそういうことを綿密に調べなければいかぬし、工事が始まれば、また毎日毎日の天気予報も気象庁からとって解析し、そして業者にそれを知らせなければならないわけです。そういうことで、備蓄会社が、いま言った海洋気象情報株式会社にその委託をしているわけです。この海洋気象情報株式会社、これは白島の備蓄会社が委託しているのですよ。その情報株式会社の出張所、いわゆる北九州の出張所がどこにあると思いますか。間組の事務所にあるのですよ。この北九州の営業所にあるのです。公団やまたは白島備蓄会社が、間組にもう工事を発注することになっておるから、だから、そこに事務所を置けとか、そういうような示唆をしなければ、どうしてこの海洋気象情報株式会社が、現在間組の営業所に事務所を置いているのですか。電話番号もありますよ。私、資料を出しておりますが、電話番号の証明書をもらってきております。この気象情報株式会社の電話番号、これは間組のものですよ。登録は間組の名義になっていますよ。そうすると、何かものすごい疑惑じゃありませんか。  それにさらに、もう質問できないのは残念ですけれども、言ったついでだから、もう一つぐらい言っておきましょう。  正式名称、白島洋上石油備蓄基地管理会社というのができていますね。これは、この基地が完成したときの貯蔵船の清掃であるとか、その他の管理をやる会社ですよ。これが白島備蓄会社ができたと同じ日にできた。これもおかしいですね。昭和五十六年の六月八日か八月六日かどっちか、たしか同じ日です、登記簿謄本を見ますと。何でこんなものが同じ日にできるのか。これもやはり白島備蓄会社とこの管理会社がツーツーだからなんです。そして、この白島備蓄基地管理会社はだれが役員になっているかというと、地元のコンサルタント、これは地元対策を担当している安藤とか満井というのがおります、この安藤とか満井がなっておる。それに三原代議士の秘書の竹内初男さんという方がなられておる。おかしいですね。  ですから私は、そういう意味では政界ぐるみの大談合だという疑いが非常に強いと思うのです。計画の段階からさらに完成し終わるまでの間ずっと、企業グループ、政治家、そしてあなたたち、これがもう大談合をやっておる。まさに国家的大談合だというふうに私は言わざるを得ない。そういう状況が次から次へ出てきておる。そして、だれに金が幾ら渡ったとか、そういうことも頻繁に報道され、そして捜査の手も入っておるというようなことを聞いております。  そして、この間組というのは、びっくりしました。私が十三日に石油公団と通産省を呼んで、これについてレクを受けた。そうしたら、翌日の十四日の昼に私のところに電話がありましたよ。そして、年末のごあいさつをしたい、こう言うわけです。私は何も知りませんよ、間組の人なんか。年末のごあいさつというのはどういうのか私わかりませんけれども、こういう会社なんです。ですから、私はしっかり調査をしてほしい。  それと、警察庁に最後にちょっとお尋ねしますが、いま私が言ったように、この間組とか日立造船というのは何でも金で工作をしていくという人たちです。ですから、五十二年九月二十日の日立造船グループの議事要録ですね、そこには、もう市議会は共産党を除いてみんな押さえた、十二月には三億円ないし六億円の金が要る、こんなことまで会議要録には記されているくらいです。これが民間備蓄から国家備蓄になるに当たっては県または市の推薦があったと思うのです。そうすると、これはこの段階で県知事や市長に金を握って働きかけが行われたということは容易に想像できると思うのです。  ですから、こういう一連の疑惑、そういうものについて警察庁はどういうような態度で臨んでいるのか、捜査を開始しているのかどうか、その点をちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  275. 金澤昭雄

    ○金澤政府委員 お答えいたします。  現在、福岡県警におきましていろいろと情報を幅広く収集中でございます。
  276. 栗原祐幸

    栗原委員長 三浦君、質問の時間を超過しておりますから。
  277. 三浦久

    三浦(久)委員 終わります。
  278. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて三浦君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩をいたします。     午後七時休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕