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1982-12-14 第97回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月十四日(火曜日)     午前九時三十二分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君    理事 高鳥  修君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小澤  潔君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    倉成  正君       笹山 登生君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    玉沢徳一郎君       渡海元三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       渡辺 栄一君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       野坂 浩賢君    武藤 山治君       山田 耻目君    草川 昭三君       正木 良明君    矢野 絢也君       竹本 孫一君    木下敬之助君       小沢 和秋君    金子 満広君       瀬崎 博義君    藤田 スミ君       正森 成二君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣審議官   林  淳司君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         総理府恩給局長 和田 善一君         臨時行政調査会         事務局次長   佐々木晴夫君         臨時行政調査会         事務局首席調査         員       山本 貞雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁経理局長 矢崎 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁長官 塩田  章君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         防衛施設庁施設         部長      千秋  健君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         経済企画庁調査         局長      廣江 運弘君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       高倉  建君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         国税庁税部長 角 晨一郎君         国税庁調査査察         部長      大山 綱明君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省大学局長 宮地 貫一君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省年金局長 山口新一郎君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         会計検査院長  鎌田 英夫君         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人        (日本銀行総裁) 前川 春雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 十二月十四日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     倉成  正君   小渕 恵三君     玉沢徳一郎君   橋本龍太郎君     小澤  潔君   村山 達雄君     笹山 登生君   正森 成二君     藤田 スミ君 同日  辞任         補欠選任   倉成  正君     宇野 宗佑君   笹山 登生君     村山 達雄君   玉沢徳一郎君     小渕 恵三君   渡辺 栄一君     橋本龍太郎君   藤田 スミ君     小沢 和秋君 同日  辞任         補欠選任   小澤  潔君     渡辺 栄一君   小沢 和秋君     三浦  久君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)      ────◇─────
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、質疑を行います。矢野絢也君
  3. 矢野絢也

    矢野委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、総理を初め関係閣僚にお伺いをいたします。  まず、総理組閣の問題ですけれども、いわゆる田中軍団による内閣ハイジャックじゃないかなんというような見方もあるようですし、灰色と言われている方々が党の要職あるいはまた閣僚になっておられる。あるいはロッキード事件についてこれに批判的な見解国会発言しておられた方が法務大臣になっておられる。一口に言えば、ロッキード隠しのためのロッキードシフト内閣ではないかなどという見方もあるようでございます。  こういうことでは総理政治倫理に対する信頼というものが揺らいでくると思うわけでございますが、このような私どもの批判あるいは国民批判について、その批判は当たらない、間違っておる、こういうふうに思われますか。
  4. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 今回の組閣に当たりましては、前にも申し上げましたように、仕事本位、派閥を超越いたしまして、その適役に当たる人を簡抜して閣僚に任命したつもりでございます。ロッキード隠しとかあるいはロッキードシフトと言われていることは、私にとりましては非常に心外で、かつ残念でございます。しかし、そういう批判が私の意思にかかわらずあるということにつきましては、またよく耳を傾けておかなければならぬと思っております。
  5. 矢野絢也

    矢野委員 仕事本位、これはいろんな内外重大な問題がございますから、ばりばり仕事はやっていただかなくちゃならぬ。しかし、仕事と申しましても、閣僚のお一人お一人で仕事ができるわけではないと思うのですよ。やっぱり官僚、お役人の協力も必要でしょうし、もっと大事なのは国民内閣に対する理解信頼というものがなければ、幾ら仕事仕事と言ったって、それは言葉だけになってしまう。総理政治を支えるものは国民信頼なんだといみじくもおっしゃっておるわけでございます。その仕事本位という総理のお考え、それはやはり国民信頼がなければ、その仕事はできないんじゃないでしょうか。しかも、その信頼は、総理自身批判批判として受けとめるとおっしゃっておりますけれども、こんなことで仕事できるでしょうか、総理
  6. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民皆様方がいかにこの内閣を見ているかという点につきましては、私も大きな関心を持って見守っておるところでございます。しかし、誠心誠意、いま重大な当面の課題につきまして勇敢に取っ組んで解決してまいりますれば、国民も必ずや信頼していただけると確信しておる次第でございます。
  7. 矢野絢也

    矢野委員 総理国会での答弁もお仕事のうちだと思いますが、これ、仕事ですかな。
  8. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議員の御質問にお答えすることは、憲法上あるいは国会法等にも決められている大きな仕事でございます。
  9. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、仕事本位らしくちゃんとした答弁をここでやっていただきたい。  まず総理政治家というものは、これ、あなたのことを言うわけじゃないんですけれども、状況によってくるくる変わるような風見鶏であってはならない。あなたのことと違います、一般論。したがいまして、政治信念というものは政治家にとってきわめて重要なものであると思いますが、いかがでございましょう。
  10. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのとおりであると思います。
  11. 矢野絢也

    矢野委員 今回の組閣に当たりまして、総理はそれなりに真剣に人選をされたかと思いますが、どういう基準で、たとえば全部国会議員の方ばかりでございます。国会議員としての実績あるいはいろんな場面において示された御見識あるいは発言、これは組閣に当たっては一切関係なかったでしょうか。基準として重要な基準だったでしょうか。
  12. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 過去の業績等すべて総合的に勘案いたしまして、この職にはこの人が適当である、そのように考えて選考いたしました。
  13. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、法務大臣の御人選に当たられましては、過去の実績――実績の中には国会議員としての活動も含まれるかと思いますけれども、これは考慮されましたか。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろん考慮いたしました。
  15. 矢野絢也

    矢野委員 考慮されたんでしょうけれども、法務大臣が過去においてロッキード問題についてこの捜査あり方あるいは検察あり方について、これは大胆な御意見と言うべきでしょうか、勇気のあるお立場質問をなさった。これは人選に配慮されましたか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は任命する前に、参議院における速記録を全部読んでみまして、それを読んだ上で任命したわけでございます。
  17. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、ごらんになったその速記録における秦野参議院議員考え、この考え法務大臣としてふさわしい考えであるという判断をされましたか。
  18. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 秦野法相は、当時は一国会議員として憲法上並びに国会法国政調査権等等に基づいて質疑をしたのでございまして、そういう疑問をただすということは国会議員職責一つであると考えておりました。
  19. 矢野絢也

    矢野委員 私の伺いましたのはそんなことじゃないのです。そこでの秦野さんの質問趣旨考え、もちろんその考えには長年の秦野さんの御経験から来る法律解釈、こういったものがあると思います。これを妥当だと思われましたか。
  20. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が読んで解釈したところによりますと、あの秦野さんと司法当局検察当局あるいは法務省との応答、そういうものを読んでみますと、疑念をただしておるわけです。そして、法律的解釈について意見を聞いておるわけでございます。それは国会議員としての職責一つであると思っております。
  21. 矢野絢也

    矢野委員 詳しくは御本人に後で伺いますけれども、その質問の中で、あのような捜査の仕方は憲法違反である、あるいは嘱託尋問のやり方は違法の疑いがある、むしろ違法であると、単に解釈を示されたというのではなくして憲法違反であるとか違法であるという見解をきわめて確信を持ってそこで述べておられるわけであります。それでも妥当だと思われますか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あの文脈全体を読んでみますと、疑念を表明してそれをただしている、そういう文脈全体になっておると思っております。
  23. 矢野絢也

    矢野委員 これは疑念ではございません。きめつけておられるわけです、憲法違反であると。  そこで総理国民の間では、ロッキードシフトと言うと総理は不本意だとおっしゃいましたけれども、そんなことはないと思いますけれども、今後ロッキード裁判に対し、あるいはロッキード事件に対して総理指揮権発動するのではないかなどという懸念があるようでございますが、指揮権発動するというようなことはございませんか。
  24. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ロッキード事件について指揮権発動するという考えはございません。
  25. 矢野絢也

    矢野委員 絶対にございませんか。
  26. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ございません。
  27. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、法務大臣に伺いますけれども、法務大臣予算委員会におきましても、あるいは出版されておる「法令ニュース」という雑誌におきましての林修三内閣法制局長官との対談でも、「検察庁法十四条ただし書による起訴の指揮はあり得ないとこう言って、ここで絶対っていう言葉なんてものは宗教、哲学ならいいけど、法律運用なんかに絶対なんかあるわけないんだ。」これは予算委員会でおっしゃっている。それから「法令ニュース」では、「法務大臣には指揮権発動するという職責というか、権限があるわけですね。だから、この指揮権発動するということは、違法でもなんでもなくて当たり前のことなんです。」「この事件指揮権発動しないということを政府当局が天下に声明するということは、ある意味職権放棄で、法律理論からいくとおかしいんじゃないかと思いますね。」とおっしゃっておるわけでございます。  いま総理指揮権発動しない、絶対ないか、絶対ない、このいまの総理発言職務放棄職権放棄でございますか。
  28. 秦野章

    秦野国務大臣 お答えいたします。  いまお尋ねの件につきましては、言うならば検察庁法解釈の問題だと考えます。一般論として、検察庁法には、法務大臣検察行政について一般的な指揮ができる、それから具体的事件につきましては検事総長を通じてのみ捜査指揮できる、こう書いてあるわけですね。これは法律に書いてあるわけです。この法律法務大臣の言うならば職権として国会がつくった法律でございます。そういう制度がある。この制度があるというにもかかわらず――これは制度があるということなんですよ、一般論として。したがって、そういう制度があるにかかわらず指揮をしない、しない、絶対しない、断じて絶対しない、しないと、私が言っているのは一般論ですよ、言うことも間違いなら、する、する、すると言うのも間違いだ。そういう制度があるということなんです。その理解が、そういう検察庁法というものが、検察官が言うならば司法権に準じて独立した立場にあることに対して民主的基盤が与えられているものだと思うのですよね。  私はそういう意味において、この事件というよりも、誤解が少しあっては困る。(矢野委員「あなた、この事件質問しているんですよ」と呼ぶ)この事件というよりも一般論として言っているんですよ。一般的理論としてそういう誤解があってはいかぬという意味で申し上げておるのでございまして、この事件につきましては、私はいま法務大臣だから指揮をするとかしないとかいうようなことを軽々に申し上げる立場にはこざいません。いまやもう公判係属中でございますので、さよう御了解を願いたいと思います。
  29. 矢野絢也

    矢野委員 ちょっといろんな問題がいまの御発言であるわけだけれども、まず、一般論として云々ということですけれども、私はいま、ロッキード事件について指揮権発動は絶対なさいませんかと総理に伺ったら、絶対しない、具体的事例についてお尋ねしたわけです。あなたの言う一般論、これはこのケースに当てはめた場合、職権放棄になるのかどうかと聞いているんですよ。  もう一つ、あなたいま問題なことを言いましたね。法務大臣として指揮権発動するかしないか軽々にここで言うわけにはいかぬ。することもあるんですか、一般論じゃなしにこの問題で、ロッキードの問題で。
  30. 秦野章

    秦野国務大臣 お答えいたします。  この事件について指揮権発動するとかしないとかというような問題を、いま裁判係属中でございますから、私が軽々に触れるということは適当じゃないというふうに考えております。
  31. 矢野絢也

    矢野委員 総理、あなたは指揮権発動はしない、絶対にしないですか、しない。法務大臣、するかしないか軽々に言えないと言う。どういうことですか。
  32. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は矛盾しているとは思いません。それは、あるケースが具体的に出てきた場合にどうするかという仮定の問題について、法務大臣は注意深く法一般立法一般という立場から法務大臣立場というものを考えておるわけであります。私は、内閣全体としての政治責任あるいは国会に対する連帯責任、あるいは国民世論、あるいはこの事件の影響、そういういろんな面を考えてみて、そして、やらないという方針を私自体が持っておるわけです。そういう具体的問題が出てきた場合に法務大臣判断を私に求めるでしょう。その場合には私は私の考えを言う、そういうことであります。
  33. 矢野絢也

    矢野委員 いまの総理の御説明では、法務大臣、今後具体的なケースがいろいろある、出てくる、したがって、そのケースあり方によっては指揮権発動可能性もあるし、ないかもわからぬ、だから、そこは非常に軽率に言えないから慎重な言い方をしておられる、こう述べておられるわけですけれども、指揮権発動を予想しなくてはならない具体的な状況総理のお言葉なんですけれども、あるのですか、法務大臣
  34. 秦野章

    秦野国務大臣 お答えいたしますが、一〇〇%確実にどんな事件でも指揮権発動するとかしないとかということを私の、つまり法務大臣責任で言うことは、法律それ自体の、つまり法律制度を否定することになるわけですよ。一〇〇%しないとかするとか、つまり絶対論ですね。絶対とおっしゃるから、絶対的にしないとかするとかということになると、制度を否定する議論じゃございませんか。私は、具体的事件についてそこまで言うのは制度否定議論になるから言えない、こう申し上げているわけでございます。
  35. 矢野絢也

    矢野委員 私は検察庁法十四条の問題のお説教をここで伺おうと思っているわけじゃないのです。確かにその法の趣旨はあなたのおっしゃるとおりですよ。そういう法律に基づいて法務大臣指揮権発動をするかしないかはあなたの判断としてあるわけなんです。法律解釈を聞いているのじゃない。しかも総理は、指揮権発動はしない、絶対しない――絶対という言葉総理の口からはおっしゃらなかったけれども、絶対しないかということに対して、しないとおっしゃったので、絶対しない。  法務大臣、その法律解釈はあなたに聞かなくても私だってよく知っております。この事件についてあなたはどう考えておるかということを聞いているのです。絶対にこの具体的なロッキード事件については指揮権発動はしないとあなたは断言するなら断言してください。できないならできないと言ってください。
  36. 秦野章

    秦野国務大臣 ただいまのお尋ねでございますけれども、係属中の事件でございます。いま公判中の事件でございますから、そういう問題についても私がとやかく発言することは適当ではない、こう考えております。
  37. 矢野絢也

    矢野委員 要するに法務大臣は、指揮権発動はしないという発言はとうとう最後までなさらなかったと受けとめてよろしゅうございますね。  あなたは嘱託尋問、いわゆるコーチャン証言について、あれは憲法原則に反する、違法だとおっしゃいましたが、その認識はいまでもお持ちでございますか。さらにまた、その当時のあなたの認識について御説明を願いたいと思います。
  38. 秦野章

    秦野国務大臣 ただいまの問題につきましては、私は議員のときに、参議院議員として予算委員会その他、あるいはまた文筆の上でもそうでございましたけれども、言論の自由という立場において発言をしておったわけでございまして、しかもその場合には、いろいろ学者や専門家意見も聞きながら発言をしておりました。そういう意見も、議員として発言したことが全くでたらめだったとは思いません。しかし、私はいま法務大臣ですから、法務大臣というのは検察法務行政責任者でございます。検事も汗をかいてやっているわけでございます。そういう立場になりますと、はからずも法務大臣になった、そういう立場になると、いまおっしゃったような問題について、前のことをほじくられて、おまえもその考えかと言われても、それは立場が違うので、私はいまの立場を誠実に責任を持って尽くしていく、こう申し上げるよりほかはございません。
  39. 矢野絢也

    矢野委員 立場の違い、これは人間いろいろ立場が違ってきますから、立場の違いというのはあるのですよ。私が聞いているのは、立場の違いはどうあれ、あなたの考えはどうなんですか。あなた、あのときに嘱託尋問コーチャン証言は非常に憲法原則に反したことである、これは私は大変違法な部分があると思うのですけれども、というようなことをいろいろおっしゃっていますけれども、この考え方、立場は別にしてくださいよ、立場が変わったからといって秦野さんという人間が変わったわけじゃないでしょう。あなたの中身が変わったわけじゃないでしょう。あの考え方はいまでもお持ちなんですかと聞いているのですよ。立場なんか聞いていない。立場が変わったことぐらい私だってよくわかっています。
  40. 秦野章

    秦野国務大臣 確かに人間は同じでございます。人間は同じでございますけれども、立場が違えば、その立場責任を尽くすということが第一義的に大事でございます。内心のいろいろ思想とか考え方というもの、内心の自由は私は持っています。持っていますけれども、これはたとえば矢野さんが法務大臣になられたら、いまおっしゃっていることと同じかどうかわかりませんで……(矢野委員「同じです」と呼ぶ)いや、それはわからぬわ。それは、立場に立てばその責任を尽くすということがやはり第一義的なものであって、内心はどうの、内心はどうのとおっしゃって、いまの憲法論の問題でございますけれども、昨日も社会党の嶋崎先生のお話にもあったが、嶋崎先生自身も、憲法違反という問題については多少疑念があるんだけれども、おまえはもっと激しく堂々と言っているではないかというようなお尋ねがあったんだ。  要するに、学説というものは社会科学でございますから、私は議員のときに、社会科学というものはすべて相対的なものである、いろんな学説もあれば考え方もある、絶対論はないんだ、そういう柔軟な考え方でなければ与党が政府に質問するなどということはほとんどできません。私は終始一貫、与党といえども政府を鞭撻し、行き過ぎがないか、あるいはまた足らざるはないかということで質問をし続けてきたんです。そういう信念でやってまいりました。その点はひとつ御了解願います。
  41. 矢野絢也

    矢野委員 法務大臣、これは憲法原則に反したやり方だとか違法のものだというかつてのあなたの、かつての――いま立場が違ったそうだから、これはいま、あのときおれは間違った考え方だった、いま法務大臣になって、いろんな官僚のレクチュァを受けるにつけても、何とおれは恥ずかしい質問をあのときしたもんだ、まことにざんきの念にたえぬ、したがってこの席で、あのときの私の発言は謹んで取り消します、こうおっしゃいますか。取り消さないんなら、いまでも生きているということですよ。どっちですか。
  42. 秦野章

    秦野国務大臣 大変恐縮でございますけれども、さっき申し上げましたように、議員のときに自由なる論議として発言をしたことを、いま法務大臣になって、法務大臣という職責を尽くすという立場にたって、それで間違いか間違いでないかというお答えをすることはちょっと無理ですね。私は、それはでたらめ、あの当時議員としてでたらめを言ったつもりはございません。しかし、いまは法務大臣で、しかも、この事件公判係属中なんですから、それに影響を及ぼすような発言をここで私が言うことは適当でないということだけは御了解を願いたいと思います。
  43. 矢野絢也

    矢野委員 それじゃ、少なくともあの当時はああいう考えを述べたが、あれば間違ってなかった、あの当時の考え方としては、そう思われますか。
  44. 秦野章

    秦野国務大臣 いろんな当時がございまして、私はわりあい執筆とか対談とか大変多いんですよ、たくさんあるんですよ。だから、その当時のことは、その当時その当時、私はでたらめを言ったとは思ってないのです。いまは法務大臣なんです。法務大臣という立場では、それはいま事件係属中でしょう、その責任を尽くすということが私の立場ですから、やっぱり検事も脂汗をかいて一生懸命やっているのです。そのトップの立場に立てば、それはその立場責任を尽くすということが私の立場でございますので、これはひとつぜひ御了承願いたいと思います。
  45. 矢野絢也

    矢野委員 この問題を余り立ち入っても仕方がないのですけれども、最後に、あなた答弁拒否なさっているのですから、私も質問拒否するかもわかりませんよ、ほんまに。いろいろあるとおっしゃっているけれども、私が言っているのは予算委員会でのあなたの発言で、これは一番公式な場所ですからね、あなたのこの論理をそのとおり私なりに理解しますと、検察がこの事件の最も重要な証拠としておるいわゆるコーチャン証言、これに証拠能力はないということになるのです、あなたの論理からいきますと。このコーチャン証言に証拠能力があるのかないのか、明確にお答えをいただきたい。
  46. 秦野章

    秦野国務大臣 いま、その問題につきましても裁判が係属中でございますから、私がその問題について、いまのお尋ねに御満足のいくようなお答えを申し上げることは適当ではない、こう考えておりますので、御了承願いたいと思います。
  47. 矢野絢也

    矢野委員 人間てそんなに簡単に、これはたしかことしの委員会だったと思いますよ、そんなに簡単に、立場が変わる、立場が変わったからといって、人間、変わるわけではないと思うんですよ。頭の中の構造がどこかで洗脳されたわけでもないと思うんですよ。私は、これは明らかに答弁拒否だと思います。  委員長から、ひとつ私が申し上げておる予算委員会での、嘱託尋問というものは憲法原則に反する、コーチャン証言というものは違法である、こういう考え方からいけば証拠能力なしという判断法務大臣が持っておるということになる、これについて明確に答えをするように委員長から御指示願いたい。そんな便利な、個人と内閣、私と公人、そんな使い分けができるような内閣じゃ国民政治不信をますます助長するだけじゃありませんか。いいかげんな言い方はやめてもらいたい。
  48. 秦野章

    秦野国務大臣 国会議員立場でやはり議論を……(矢野委員「あなた、いまだって国会議員でしょう」と呼ぶ)ですけれども、国会議員ではあるけれども、法務大臣という具体的な職責を負ったわけでございます。その具体的な職責を持った場合には、その職責を第一義的に、第一義的というか、何といったってその職責を尽くすということが私の立場でございますから、それは議員のときに持った考えでいまでもやるのかやらないのかという問題については、私は法務大臣という職責を尽くすという立場でしか物を言うべきでもないし、また考えるべきでもない、こう考えております。
  49. 矢野絢也

    矢野委員 昨日も総理を初め閣僚の皆さん方は、常にこの論理を使っていらっしゃるわけです。私と公人、議員内閣総理にも憲法論で後また同じことをあなたに言わなければいかぬことになるのだけれども、こういう論議を予算委員長として適当と思われますか。これじゃ議論できないです。政治家には政治信念が大事だと総理は言われました。組閣に当たっては国会議員としての実績を十分検討したとおっしゃった。そういう立場組閣をされておりながら、議員としての実績、活動について質問すると答えられません。これじゃ、総理、おかしくありませんか。総理、一遍答えてください。
  50. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのうも申し上げましたように、日本は民主主義の国でありまして、お互いまた自由主義を信ずるものであると思います。したがいまして、憲法あるいは法律に許された範囲内で自由に言論を行い、タブーを置かない、聖域を置かない、そして国民の各層にあるあらゆる議論国会に反映されるということが好ましい民主政治の姿であると思っておるのです。ですから、議員である間は思い切って活発な御議論をしていただいた方がいい、そう私は思っておるのです。  しかし、国務大臣あるいは内閣の一員という立場になりますれば、今度はその立場を第一義的に考えなければならぬのでありまして、その職責を尽くすということは、過去の議員の言動等につきましても影響を持ってくる。ということは、議員としての立場を国務大臣あるいは総理大臣になった場合にそのまま言っていいかと言えば、これは別個の新しい立場が生まれて、国政全般を見なければならぬという立場にもなるわけであります。したがいまして、当然それには差があり節度もあるわけでございまして、その点はぜひ御了承願いたいと思っておるのです。
  51. 矢野絢也

    矢野委員 ですから、私は、過去における議員としての発言が、あれは間違っておったなら間違っておった、それならそれで法務大臣としてのお仕事をなさるに当たって何の誤解もない。間違っておったともおっしゃらない、あれはあれで正しかったとおっしゃっておるわけです、はっきり言えば。その考えが頭にあるわけです。しかし、国務大臣として、法務大臣として仕事をやるに当たっては物を言うてはいかぬ。これは、わかりやすい政治総理はおっしゃっておるわけなんですけれども、私もそう頭は悪くないつもりなんですよ、それは総理ほど頭はよくありませんが、しかし、そう頭は悪くないと思うのだけれども、わかりませんな、これは。  最後に、もう一遍だけ伺います。  嘱託尋問コーチャン証言について、憲法原則に反するとか違法であると言われたあの発言。まず第一点は、あなたのあの発言からいけばコーチャン証言には証拠力なしということになるが、あのときのあの発言でいけば証拠能力なしという論理になりますかということがまず第一点。そして、いまもそのお考えをお持ちですか。この二点をお答えください。  あと、もうちょっと物騒なことであなたに聞きたいことがあるのです。
  52. 秦野章

    秦野国務大臣 いまお尋ね嘱託尋問についての意見ですね、私が法務大臣になる前の。その意見は、意見として述べたことは事実でございます。しかし、重ねて同じようなことを申し上げて大変恐縮でございますけれども、そういうことを申し上げたことは事実でありますけれども、私は法務大臣というような職責にいまなってしまって、そういう職責になると、これはもうそういう具体的事件として裁判が係属中でございますから、係属中の裁判について私が証拠能力がどうのこうのなどと言うことは、裁判に対する干渉といいますか、大変これは慎重を要する問題だと思っているのです。だから、日本の裁判というものは司法権の独立、大変りっぱなものだと思っておりますから、議員のときに批判をしたということは、もし先生のようなことをおっしゃると、自民党の議員なんか下手をすると大臣になる可能性があるから質問なんかできなくなっちゃうんですよ。私は、議員のときには、与党といえども意見があればあえて質問をするという姿勢は議員職責だ、こう考えておりますので、ぜひひとつその点は御了承いただきたいと思うのでございます。
  53. 矢野絢也

    矢野委員 私、秦野さんが大臣になる前にそういう質問をしたのがいかぬとか、その中身がどうとかこうとか、私の意見を申し上げれば中身が適当でないと思いますけれども、そのことを何も議論しているのじゃないのですよ。あなたが間違いなくそういう発言をなさって、しかも、単に解釈を示すのではなしに、憲法原則に反するとか違法だという認識を、まさにきめつける勢いでおっしゃっておるのです。そして、まさにそれはあなたがおっしゃったはからずもでしょうけれども、中曽根総理は、そういう発言があったからそれを理由にして法務大臣に登用された、あなたまた怒るかもしらぬけれども、そう見られてもしようがないような、いまのやりとりを総理もお聞きになっておわかりだと思うんだけれども、それが法務大臣になったからまるで過去がなくなったみたいな、それじゃあの考え方は取り消しますかと聞けば、取り消さないとおっしゃる。これは本当に――指揮権発動するかどうかと聞けば、はっきり言えないとおっしゃる。  総理法務大臣として国民信頼される法務行政、これは総理も望んでいらっしゃると私は信じたいわけでありますけれども、いまの法務大臣発言は、国民理解し、中曽根内閣信頼できるような答弁だと思われますか、簡単に言ってください。わかりにくくてしょうがない。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ある物件が証拠能力ありやなしやというようなことは、攻撃、防御を聞いて裁判長や裁判官がお決めになることである。しかも、事件がそういうふうに係属中であるというときに、一方で検察側の大元締めである法務大臣がそれに関係するような発言はできないのはあたりまえであると私は思っております。昔、議員として国政調査権等に基づいていろいろ疑義をただすということは、これは国会議員としての一般的職責でやっておることで、私はそういう点はちゃんと使い分けてしかるべきであると考えております。
  55. 矢野絢也

    矢野委員 まるで議員時代には何をやっても大臣になれば全部免責されるみたいな論理に聞こえますよ、総理。どんなことを言っておろうが、どんな発言をしておろうが、その所管大臣になればそれについては職務上答えなくていいんだ、それは詭弁ですよ、総理。そういう発言、私はその発言をここで法理論的にいいとか悪いとか言うつもりはないけれども、そういう過去における考えというものを重要な参考とされて、むしろ法務大臣になさらなかった方が適当じゃなかったのですか。あれだけの力量と見識のある方ですから、何も法務大臣にしなくたって、たくさん大臣はありますよ、ポストが。よりによって何でまた紛らわしい人事をなさったのですか。適当と思われますか。過去の発言でも免責されますよ、あなたの論理によれば。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 秦野君は、私は前からずっと見ておりまして、非常に信念の強い、また時流にこびない、そして国会におきまして国会議員らしい勇敢な質問もしておる。与党といえども総理大臣を恐れない質問もできる人である。そして、良心を持っておる人である。性格的に言うと、物事をとことんまで突き詰めないと済まないという性分を持っておる。そういういろいろな面からいたしまして、法の厳正な維持、法の番人という点については、その信念で必ず正しい職責を尽くしてくれる、そう私は感じたのであります。
  57. 矢野絢也

    矢野委員 臨時国会、通常国会、引き続きこの問題は、総理御迷惑かわかりませんけれども、毎回しつこくお伺いするつもりでおりますから。  秦野さん、ゲーム機の製造業者でつくっておる日本アミューズメントマシン工業協会の顧問をしていらっしゃる。それから、ゲーム機の設置業者などでつくっておる日本アミューズメントオペレーター協会の顧問もしていらっしゃる。この両協会の会員さんの中には、大阪府警の警官汚職事件に関連する被疑者が含まれております。秦野さんはこの二つの会の顧問、無償で名義だけで顧問になっているのであるということですか。
  58. 秦野章

    秦野国務大臣 若干のいきさつから申し上げますと、いまお尋ねの二つの協会は、私が顧問になったときは一つで、日本遊園協会と言っておりました。たしか四年か五年か前でございましたが、この遊園協会というのは全国で四、五百あったのでしょう、メンバー、会員が。東京に本部がございまして、言うならば中身は文化娯楽というようなことで、また確かに新しい遊技、ドリームランドとかああいうところで使っているいろいろな新しい機具をつくって、年商もだんだん伸びて、ただ子供なんかが使うようなもので危険防止というような面もあるのでしょう、これは通産とか建設省も後援をして、晴海でもって展示会を毎年一遍やっておる。ことしは私は行けなかったけれども、去年とおととしやりました。東京に協会があるので、私は正直言って上の二、三人しか知りませんけれども、それに顧問をしてくれぬかということで頼まれて、まあよかろうということで顧問に就任しました。無償でございます。それで今日に至っている。私は法務大臣になると同時に、協会それ自体は営利団体じゃありませんけれども、営利の会社が集まって協会をつくっているということでございますから、やめておるわけでございます。
  59. 矢野絢也

    矢野委員 「アミューズメント産業」八二年の四月号というのがあるわけですけれども、この協会の臨時総会の記録が載っておりますが、収支予算承認の件という中でこう書いてある。「秦野先生に日本アミューズメントオペレーター協会との共通の顧問になっていただくための予算」として二百万円が計上されておる。決算書がついておりまして、五十万円は支出されたことになっております。そして、二百万円は予算として計上されておるのですけれども、これは決算書を見るとお金が五十万円出ていることに読めるのですけれども、そういう事実はございませんか。
  60. 秦野章

    秦野国務大臣 予算にはそういうふうになっているということを私も聞きました。しかし、現実に私が個人として顧問料をいただいたことはございません。
  61. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、その問題、法務大臣、けしからぬじゃないかと言って取り消しを求められましたか。
  62. 秦野章

    秦野国務大臣 協会の中の予算の項目でございまして、私もそういう項目を知りませんでしたが、けしからぬと言うほどのことでもなかろうというふうに考えております。
  63. 矢野絢也

    矢野委員 この問題は、そんな簡単なことで済まされる問題じゃないのですよ、賭博ゲーム機械の問題は。東京、大阪、全国的にいま機械は広がっているわけです。それで、このゲーム機によって金を使い果たした人が心中したり自殺したりというようなことになっているのです。そしてまた、大阪では警官による汚職事件という形になっておるのですよ。単なる協会の顧問になったというような問題ではないのですよ。そして、これはもう堂々たる予算、決算。五十万円は決算書では出たということになって、その顧問はあなただけしかなってない。参議院秦野章先生に日本アミューズメントオペレーター協会との共通の顧問になっていただくための予算、こう書いてある。決算書もちゃんと五十万円出たことになっておる。今後というか、その時点では予算ですけれども、もう二百万円出ることになっておる。それで、そんなに訂正を求めるほどの問題じゃないというのは一体どういう御認識なんですか、これだけの大問題。まさに法務大臣としての資格にかかわってきますよ。
  64. 秦野章

    秦野国務大臣 最初、その後もそうですけれども、その協会の主要なメンバー、これは東京の人ですけれども、私も二、三人しか知りませんが、その人たちはりっぱな実業家のように、私はいまでもそう思っていますが、全国のメンバーが、要するにたくさん、数百おるわけでしょうから、大阪の方にああいう事件を起こすようなメンバーがおったというようなことが私にわからなかったということは不明のいたすところでございます。しかも、警官のああいう汚職まで出てきたというようなことについては全く私も驚いているわけでございますが、大変残念に思っております。
  65. 矢野絢也

    矢野委員 金はもらっていませんね。
  66. 秦野章

    秦野国務大臣 もらっておりません。
  67. 矢野絢也

    矢野委員 間違いないですね。もらっているか、もらっていないか、もうちょっとしたらはっきりすると思います。  それから、お金の話で、ついでですから。  ジャーナリズムによれば、総理、まさかこんなことないと思うんだけれども、田中角榮氏がロッキードからいただいた五億円のうち三億円は中曽根氏に回されたという、こういう表現がございますけれども、こんなことは本当だと思いませんけれども、やはり内閣の信用にかかわる問題ですから、念のために伺っておきます。
  68. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのようなことは全くございません。
  69. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、こういう記事が活字に載っておって、取るに足らないことということで放置されてあるのか。あなたはかつて週刊雑誌に対しても告訴された事例があるわけだけれども、あるいは法的措置をとられたのか、訂正を求められたのか、あるいはほうってあるのか、どうですか。
  70. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか訂正を求めるように私が言いまして、やったと思いますが、結果は聞いておりません。
  71. 矢野絢也

    矢野委員 そんな程度の簡単なことでいいんでしょうか。いやしくも、これはあなたは不本意だとおっしゃるけれども、ロッキードシフトだとかロッキード隠し内閣だなどという批判がある。そしてまた、ロッキードのお金の五億のうち三億はあなたに渡ったんではなかろうかと活字になっておる。これについて、訂正を求めたけれども後は知りませんなんて簡単なことでいいんでしょうか。
  72. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く事実無根でありますから、それは厳重に抗議をし訂正を求めたい、結果を確認してみたいと思います。
  73. 矢野絢也

    矢野委員 ぜひそれははっきりされた方が、国民政治信頼を取り戻すためにも必要なことであると思います。ほかの、つまらないことじゃないわけですから、この記事は。  それから、国土庁長官加藤さん、手持ちぶさたな顔をしていらっしゃるようでございますから。  まず総理加藤さんの問題は刑事事件としては決着しておるというようにきのう答弁されたように思いますけれども、そのとおりでございますか。
  74. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 加藤六月君に関する限りはそうだと思います。
  75. 矢野絢也

    矢野委員 刑事事件として決着しておるという御認識は、金の授受という事実があったんだけれどもこれは請託という事実がなかったとか、したがって単純収賄であるから時効にかかっておるという意味でこれはもう決着しておるという意味なのか、あるいは、もうその金の授受そのものがなかったということが司法的にも刑事事件としてもはっきりしたから決着した、どちらですか。
  76. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 その点につきましては、昨日刑事局長からも申し上げましたけれども、政府の立場としては、秘密会における報告について言及するということは許されないと思います。ただ、きのうもお話がございましたけれども、実際は速記録に出ております。その速記録によりますと、ただいま御指摘のような前段、つまり請託の事実がないということで起訴されなかったというふうに書いてございます。
  77. 矢野絢也

    矢野委員 総理、お金の授受というのはなかった、こういう御認識でございますか。――総理に聞いている。あなたが大臣を任命したのですよ。
  78. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 先ほどの答弁を繰り返すことになると思いますけれども、検察当局の秘密会における報告書が国会の議事録に掲載されているところでは、先ほど申し上げたようなことになっておるということでありまして、それはすべて……。
  79. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど、先ほどじゃわからない。金の授受があったのかなかったのかと、認識を伺っておる。
  80. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 その認識を私が申し上げるなりあるいは総理が申し上げることは、これは秘密会における報告を政府側として公の場で言及するということになりますから、それは申し上げられないということを昨日も申し上げたわけでございますが、それはそのとおりだと思います。ただ、国会の公にされた議事録の中に載っておる事実としては、金銭の授受はあったけれどもということは書いてございます。
  81. 矢野絢也

    矢野委員 加藤長官、あなたはいままで御自分が潔白であるという立場を主張されながらいろいろな批判に耐えてこられた。ある意味では大変な御苦労がありたと思うのですよね。  せっかくの機会ですから、あなたは、かつてロ特で、十一月一日ころなんという言い方はいいかげんだ、こんなでたらめな言い方はない、私は一日はこれこれしかじかでこうだったんだ、非常に明確にあなたの立場としてのアリバイをお述べになったわけでございますが、その後の六・八判決等によりますと、一日じゃなしに十月三十一日なんだ。きのうも、その辺の判決文もよく勉強しておりますと、こうおっしゃっておりましたから、私が言うまでもなくよく勉強しておられる。一日はあなたは岡山にいたということをおっしゃったわけだけれども、三十一日はどこにいらっしゃったのですか。
  82. 加藤六月

    加藤国務大臣 昭和四十七年十月三十一日は東京におりました。
  83. 矢野絢也

    矢野委員 それで、この三十一日に、これは文章を読むと長くなりますけれども、加藤さんにお金の交付をした際の状況等については具体的に供述がされておる、こういうふうに判決文にあるわけですけれども、この三十一日にも、副島さんですか、秘書課長に会われたりあるいはお金を受け取ったというようなことはないわけでございますか。
  84. 加藤六月

    加藤国務大臣 日にちの問題を除きましては、昭和五十一年十一月四日のロ特委で申し上げたとおりでございます。
  85. 矢野絢也

    矢野委員 つまり、会いもしていないし、お金の受領もしていない。それが事実だとすると、これはあなた堂々といわゆる議院証言法に基づく証言をなさった方が、あなたの――総理も、なかなか加藤君は有能な人材である、こう高く評価していらっしゃるわけですね。その有能を今後ますます発揮される上においても重要ではなかろうかと思うわけですけれども、証人として証言されるお気持ちはございますか。閣僚になったからもうやめたんやなんて、そんな秦野さんと同じようなことを言わんと、はっきりしておるじゃありませんか、金はもらっていない、その人にも会ったことはない。そうなんでしょう。そしたら、どこにでも行って堂々とおっしゃった方があなたのためになると思うのですけれども、証人に出られますか。
  86. 加藤六月

    加藤国務大臣 参議院会議並びに当委員会においてすでにたびたび申し上げておるところでございますが、現在は国会において議院証言法の取り扱いが各党間で真剣に協議されている現段階でございます。その点につきましての私の発言は差し控えさせていただきたい。ただし、最終的には国会の御決定、御判断に従いたいと考えております。
  87. 矢野絢也

    矢野委員 この問題、予算委員会での御発言は偽証罪という問題がないわけでございます。証人として御発言なさるときには偽証罪という問題がつきまとう。しかし、あなたがおっしゃっていることに間違いがないなら偽証になるわけじゃないのですから、余り回りくどい言い方をしないで、総理大臣が出ると言ってくれないからおれは出れないで残念だと、前に涙を流しておっしゃったこともあるわけで、今度も中曽根さんが出ろと言ってくれれば喜んで出るんだ、こうおっしゃいませんか。
  88. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、最終的には国会の御判断、御決定に従っていきたい、こう考えております。
  89. 矢野絢也

    矢野委員 閣僚になってからずいぶん慎重になられましたね。加藤さんのよさがなくなったような気がしますよ。  そういうわけで、総理、議院証言法の改正ということが国会でいま問題になっているわけですけれども、議院証言法は改正した方がいいという御判断ですか、総理のお考えとしては。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、前に証言台に立ったことがございますが、その最後のときに、いまの議院証言法は人権を守るについて非常に不備がある、そういう意味においてぜひ直してもらいたい、いまの現行法でやるのは私をもって最後にしてもらいたい、そういう強い要望を述べまして、委員長もこっくりしておりましたから、それで自来各党間において改正問題が問題として提起されまして、そして、この間うちは議長にお預けになり、いま議会制度協議会でいろいろ各党で協議しているところでございます。なるたけ早く協議を調えて、新証言法を成立させていただくことが好ましいと考えます。
  91. 矢野絢也

    矢野委員 いわゆる灰色と言われた方々につきましては、本人のためにも、また国民の疑惑を晴らすという意味からも、証人として証言なさることがきわめて重要であり、かつ緊急の問題だと思うのですよ。加藤さんのためでもあるし、また国民政治に対して不信を持つ、徹底的に晴らすという意味からも、国民的要請といっても過言じゃないと私は思います。  それと、議院証言法の改正は各党各派でいろいろな御意見が持ち寄られて議論されておる、総理が言われたとおりです。しかし、いつまでたってもこの話し合いがつかない。現に前国会においてもつかなかった。大変失礼だけれども、自民党さんはテレビの撮影を制限するとか、あるいは補佐人に異議申し立て権を認めるとかというような、あらずもがなのプラスアルファのハードルを設けて、それこそ意図的に議院証言法の改正をおくらせようとされているのではなかろうかと思わざるを得ない状況が前国会にございました。したがって、これは各党各派でよく話し合いをされる、これは話し合いをしていいんです。しかし、この問題は国民的要請であり、急ぐ問題ですから、現行法で証人を呼んではいけない、こんな事情でもあるんでしょうか、総理。  たとえば、総理はいま、こういう現行法による証人は私を最後にしてもらいたいと言ったとおっしゃっていました。しかし、若狭判決におきましても、証人喚問の手続、特に人権擁護という面から見て、現行証言法でも適正であると判決文に明確に述べておるわけです。いまのこの議院証言法は欠陥法律だなんて裁判所は言っておりません。人権擁護も十分配慮してあるという立場から現行証言法は適正である、裁判所がそう言っている。それをことさら、まるで極悪非道のリンチをやるような議院証言法であるかのごとき受け取り方をされるのは、これはいかがなものかと思いますよ。現行法による証人喚問ということは、総理、反対ですか、賛成ですか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現行の議院証言法は、私は、日本のいままでの法体系から考えてみますとやはり不備があると思うのです。したがいまして、改正することが望ましいし、それでいま各党間で話し合いが進められておるわけでございますから、ぜひ御促進願いたいと思います。
  93. 矢野絢也

    矢野委員 こういう問題は国会にげたを預けるという言い方は適当じゃないと思うのです。国会は御承知のとおり各党各派がいろいろな主張があるわけです。法律がないわけじゃない。議院証言法というりっぱな法律がある。裁判所も適正だと言っておる、判決文で。しかも、民間人も政治家もこの現行法で証人喚問をしてきておるわけです。なぜ、変えなければ証人は出ない、こういう立場をおとりになるのですか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題には前国会以来いろいろないきさつがございまして、議長さんまでお預けになるという国会仕事になっておるわけでございます。特に議員の身分や地位に関する問題にも関係してくる問題であるために各党各派でいろいろ御相談なすっていることでございますから、ぜひ早くそれを実らしていただきたいと念願しております。
  95. 矢野絢也

    矢野委員 佐藤孝行代議士の問題でございますが、この経過はもう総理御存じのとおりでございます。普通、民間の場合ですと、警察に取り調べを受けただけでもこれは肩身が狭いというか、ちょっと会社におれない空気です。ましてや、起訴されたてなことになりますと、まあちょっとこれは会社におれません。起訴じゃない、有罪の判決が出た。民間なら普通、それでもおれは二審、三審で争うんだからなんというようなことは一応常識的ではない。それがいいか悪いかは別として、やはり社会的な責任というものがあるわけです。ましてや国会議員、有罪の判決を受けられた、そこで辞職勧告決議案というものがいま国会で問題になっておるわけでございます。  嫌みを言うわけじゃございませんが、佐藤さんは、現在はどうか知りませんけれども、かつては中曽根さんの右手、左手、腹心と言われた有能なお方である。あなたから見れば頼りがいのある佐藤代議士であった。身内をかばうというんじゃなしに、あなたはそんなお気持ちはないと思いますけれども、むしろ泣いて馬謖を切るという言葉もあるわけでございまして、中曽根内閣の本当の政治倫理に対する正しい姿勢を示すためにも、この辞職勧告決議案に総理は賛成をなさるべきじゃないかと私はむしろ御忠告を申し上げたいと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題につきましては、昨日も申し上げましたように、国会議員職責国会議員と選挙民との関係、国権の最高機関としての国会の機能、それをつくっていく国会議員の地位、そういういろいろな面から考えまして、他からこれは強制すべきようなものではない、本人が自分で判断するのが適当である、こう申し上げましたが、そのように考えております。
  97. 矢野絢也

    矢野委員 鈴木前総理はちょっとあなたと違う言い方をされているんですよね。簡単に言えば鈴木さんの方がもっとりっぱな答弁をなさっておるわけでございます。「この問題につきましては、国会議員の身分、それから選挙民によって選ばれた議員としての立場、」ここまではあなたと同じ。「また国会全体の権威の問題、政治に対する国民信頼の問題、総合的な判断をしなければならない重要な問題である、」これはわが党の正木議員質問に対して本年の六月二十四日、予算委員会で答えておられるわけですね。つまり国会の権威、それから国民政治に対する信頼の問題、こういうことも総合的に判断しなくてはならぬ、こう鈴木前総理発言された。言われただけで、余り大した結果は出ていませんけれども。しかし、言葉だけでもりっぱです。いいじゃありませんか。少なくともあなたよりはりっぱだ。あなたが言っているのは、国会議員の身分、国権の最高機関の国会議員の身分、選挙民に選ばれたというこの経過、したがって、その身分を切断するような、強制的に切断できるかどうか、これは疑問だ、本人の決断に待つべきだとおっしゃるのですけれども、国権の最高機関の権威という問題は総理の頭にはないのですか。
  98. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 あればこそ申し上げておるのでございまして、昨日以来、やはり国権の最高機関の機能を構成している、主権在民という形から選挙民がその代表者を選挙によって選んで国会を構成させている、それが主権の重要な部分を構成し、機能しているという関係であります。そういう非常に厳粛な、重大な関係であるこの信託関係と申しますか、代表関係と申しますか、選挙民と負託された議員との関係を第三者が強制的に切断できるかどうか。事案にもよります。もちろん事案にもよりますけれども、いま三審制度のもとで裁判を争っている、そういう状態のもとで果たしてそれが適当であるかどうか、私はその点について疑問を持っておるのであります。これは自分の憲法観あるいは代表制とか、そういうような法学的な認識や自分の信念からそういうふうに申し上げているわけでございます。
  99. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは、国権の最高機関である国会が佐藤さんお一人で成り立りているみたいなことをおっしゃっておるのです。佐藤さんという国会議員がいらっしゃる。確かにこの国会を構成する一人のメンバーであることには変わりはない。しかし、数多くの議員によって国会というものが構成されておる。その数多くの議員が、本当は佐藤さん御自身が自分で御判断なさるべきことでありましょうけれども、なかなか御判断なさらない。したがって、国会の権威という立場から国会の意思を辞職勧告という形であらわそうではないか。これは国会の権威の問題になる。あなたは佐藤さんのみを国会の権威に結びつけて、全議員による意思という問題をことさら無視しておられる。結果的にそれが国会の権威を傷つけることになると思いませんか。
  100. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点も大いに考えなければならぬことで、矢野さんのおっしゃることは傾聴すべき御議論であるとも思います。しかし、また他面、冷静に考えてみた場合に、私が申し上げるような立場があるのではないかと思います。国会の権威という面は、常に考えなければならぬと思っておりますけれども、しかし、議員の職能、責任あるいは代表制、そういうものを考えますと、一人一人の議員のその地位を尊重しなければ、国会全体の機能も十全には動かないと思っておるのであります。さればこそ、憲法国会議員の地位は普通以上に保障されておるわけでございます。そういうことを考えてみまして、いまのような発言をしておるわけでございます。
  101. 矢野絢也

    矢野委員 やはり国会の権威ということは、政治的道義的な責任についても看過しないでけじめをつけていくというところに国会の権威があると私は思うのです。しかも総理は、すぐこの私の話を佐藤さんの罷免を直ちにさせるような手続をとるかのごとき受け取り方をなさっておるようでありますけれども、そうではないのですよ。国会の権威という立場から、国会の意思として、政治的道義的にいろいろと責任が問われておるこの佐藤君に対して辞職勧告を決議しようと言っているのですよ。勧告なんです。何も切断するとか首をねじ切るとかいう性質の決議案じゃない。それは決議案になってもなおかつ佐藤君が居直る、そういうケースもあるかもわかりません。しかし、少なくともこの決議をすることによって、国会の姿勢、国会の権威というものは国民に対して示されると私は思うのですよ。その決議、勧告決議にも総理は御反対でございますか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、先ほど来申し上げましたような考えに基づきまして、そういう切断をする、選挙民と議員の地位というものを切断するという行為を第三者が勧告するということが果たして妥当であろうかどうかという点に疑問を持っておるわけであります。
  103. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、国会議員で有罪の判決を受けた者に対して国会は意思表示をしてはならないみたいな話になりますけれども、そういうことですか。
  104. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いや、言論は自由でございますし、また国会法その他でいろいろな行動は認められてございますから、それは御自由でございます。しかし、議員には個々の意見がまたございます。また、見識も皆さんお持ちでございます。私はそういう考えを持っておるということであります。
  105. 矢野絢也

    矢野委員 ですから、議員個々の見識、各党各派の御見識というものを本会議場で決議に賛成か反対かという形で決着をつければいいじゃありませんか。あなたの言うとおりになるんじゃありませんか、そのようにした方が。個々の御見識がはっきりしていいや、その方が。あなたの論理は矛盾していますよ。反対なら反対、中曽根総理がこんな辞職勧告決議は反対だ、これはあなたの御見識、やはりこれは勧告すべきだ、それも見識。私とあなたで議論するよりも、本会議場で佐藤孝行君の辞職を勧告する決議に賛成か反対かでやればいいんじゃありませんか。どうですか。
  106. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういういろいろな御議論は、国会で、各党各派の間で交渉も行われ、あるいは議院運営委員会という手続もとられ、そうして出てくるものでございまして、それは国会でぜひ御処置願いたいと思うのです。
  107. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは都合の悪い問題になると、国会国会でと。いやしくも内閣総理大臣であり、政治についてのリーダーシップを発揮されなければならないお立場総理としてのそれこそ見識を疑いたくなる言い方ですよ、それは。  文部大臣、瀬戸山さんに伺います。  あなたは記者会見で……(「ちょっとまだ寝ているから」と呼ぶ者あり)寝ている……。文部大臣、文部大臣、法務大臣じゃございません。秦野さんじゃございません。瀬戸山さんでございます。よろしゅうございますか。寝ていたらいけませんぜ、あなた、こんな大事な問題で。  あなたは閣僚就任の記者会見で、改憲論議、あなたはいままで熱心にお進めになってこられましたね。記者会見のときに所信を明らかにされましたが、改憲問題につきまして「党と閣僚としてのそれぞれ対応が違うことはあり得ない」、こうお述べになった。新聞で報道されておりますね。これは事実ですか。
  108. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。  記者会見では、従来、党において憲法調査会長として憲法問題を研究してきたが、閣僚になってはどうだと、研究することはちっとも変わりませんと、こういうことでございます。
  109. 矢野絢也

    矢野委員 そういう意味じゃないですよ。「党と閣僚としてのそれぞれ対応が違うことはあり得ない」、党におろうが閣僚になろうが、対応、行動、物の言い方、変わりはあり得ない、こうおっしゃっておる。そのとおりですか。
  110. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 対応が変わらないということは、私は、憲法というものは、ちょっと長くなって恐縮でありますが、国の政治の基本あるいは国民生活の基本になっておると思っております。でありますから、これは閣僚であろうが国会議員であろうが一般の国民の皆さんであろうが、常に憲法をよく念頭に置いて、どうあるべきか、これでいいのか、こういうことは常に私は考えてもらいたいという希望を持っておるのであります。それが、いまの憲法が本当に志向しておる平和で民主的な、人権を尊重する、いい国になる、まだ私は、失礼でありますけれども、これは言い過ぎかもしれませんが、そこまで日本の憲法国民の中に、本当にこの憲法の精神がよく、茶の間でも語られるようになっておらないような気がします。茶の間でも語られるようになっておらないような、私はそういう認識を持っております。でありますから、この大きな試練を経てできた憲法でありますが、この精神はどこにあるんだ、一体憲法はわが国の政治、経済のあり方国民生活のあり方、社会のつくり方について何をねらっておるのかということをよく皆さんが考え、語り、そしてその真髄をきわめてもらいたい。もし、それがわが国の状態に合わないものがあれば、どこに合わないものがあるのか、これは国民の魂と私は考えておりますから、そういう問題はどこにおろうがここにおろうが変わるものではない、こういう考えを持っております。
  111. 矢野絢也

    矢野委員 どこにおろうがここにおろうが変わるものではない、党におろうが内閣におろうが、従来のあなたの考え、行動、発言、これは変わるものではない、こういうことでよろしゅうございますか。考え方だけじゃなしに、発言、行動。
  112. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 行動にはいささか変わりがあると私は思っておるのであります。といいますのは、私は、党においては憲法調査会長として、責任を果たすためにいろいろな研究をいたしました。私だけじゃなしに、調査会という多くのメンバーの人といろいろな学者の意見も聞き、あるいは文献も読み、毎日の新聞、雑誌等の憲法に関する記事は、私の目にとまる範囲においてはよく調査をしてまいりました。そういうことでありますけれども、文部大臣という重責を担いますと、そういうことに毎日かかずっておる時間がない、こういう意味で、行動が全部同じというわけにはまいらない。文部大臣の責任はまた重うございますから。そういう意味で、従来の行動と、閣僚として文部大臣になりましたときの行動が同じだということに規定されるとちょっと違う、こういうことでございます。
  113. 矢野絢也

    矢野委員 たとえば文部大臣として教育行政を指導なさる場合、従来から現行憲法に対する批判的なお考えを文部大臣はお持ちであったわけですけれども、この憲法を変えなくてはならぬというお立場でいろいろ作業してこられたし、現にそういうお考えが脳裏にあると思います。そういう考え方は文部行政には一切反映しない、こう受け取っていいのですか。
  114. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 私は、憲法に限らず法律でも何でもそうでございますが、これは一応国民が決めたものでございます。でありますから、文部行政であろうと何であろうと、決めたものについて従ってやるということになっておりますから、これが変えるのがいいのか、どこをどう変えるかということは検討中でございますから、変わるまではもちろん現在施行されておる憲法あるいはこれに基づく法律に従って行政を進める、これは責任であろうと思っております。
  115. 矢野絢也

    矢野委員 文部大臣、後からまた伺いますから、居眠りせぬように起きとってくださいね。  総理に伺いますけれども、総理は、憲法の問題では、憲法は将来再検討し、再改革する機運にある、百万同胞が祖国復帰した後、憲法を再検討するのは当然だと、これは防衛庁長官として、福岡県の久留米の陸上自衛隊幹部候補生学校で訓辞されたわけですね。それから、自民党の夏季研修会、これは五十三年ですか、現行憲法制定には手続的に瑕疵がある、現実にそぐわない点は改正した方がいいと発言しておられる。また、総務会長の当時には、自衛隊合憲を明確にしないのは政治家の怠慢とおっしゃっている。これはもう間違いなく発言なさっておるわけでございますが、こういうお考え、いまもお持ちでございますか。
  116. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 過去におきましていろいろ私は憲法問題について発言をいたしました。しかし、現在内閣総理大臣という別の重い地位にございますので、個々の問題についての発言は差し控えておる次第でございます。
  117. 矢野絢也

    矢野委員 現憲法の核心部分は平和、人権、民主の三原理である。総理は、この憲法の民主主義、基本的人権の尊重、平和主義、国際協調等の諸原則は高く評価すると、さらにまた、将来にわたって尊重すると、こういう平和とか人権とか民主とかいう問題については将来にわたって尊重する、この平和、人権、民主は将来にわたってあなたの信念として尊重すると、こういうことでございますか。
  118. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろんそのとおりでございます。
  119. 矢野絢也

    矢野委員 ところが一方では、どんな法律制度も完全無欠ではあり得ない、常によりよいものに志向して見直すのは当然だとおっしゃっておる。具体的に現憲法に問題があるとお考えでございますか。
  120. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法に対する扱いについて一般論を私は申し上げたのでございます。それで、いまの憲法考えてみると、戦前の日本と戦後の日本を見ると非常に大きな変化がある。それはやはりこの憲法の果たした大きな機能というものをわれわれは評価すべきである。そういう戦前に比べてよくなったと思われる諸原則は、これは守っていかなければならない、そういう私の考えを申し述べた次第でございます。しかし、法律でも制度でも、一般論として完全無欠というものはないのであって、常によりよきものへ志向していこう、そういう意味で勉強し、検討していくということは正しいことである、そう申し上げておるのであります。
  121. 矢野絢也

    矢野委員 従来から憲法に疑義を唱えておられたわけでございますが、二つあると思うのですね。一つは、憲法が成立するに至る過程、手続、これを問題にする立場、それから、この憲法の条文、内容それ自体を問題にする立場、こう二つあると思いますけれども、まず、この憲法制定のいきさつについて、総理としては疑義をお持ちでございますか。
  122. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、昭和三十年代の初頭、憲法調査会に所属しておりまして、そこでいろいろ発言をいたしました。そのときに、私のほかにかなりの数の議員が、あるいは委員がこの憲法の制定の過程について調査をし、その結論について大体考えが一致したので、その一致した意見を連名で具申したことがあります。当時憲法調査会長であった高柳賢三博士は、最終的にはこの憲法はいわば日米合作の憲法である、そういう結論をお出しになったのです。しかし、憲法について日米合作というようなものがあり得るであろうか、一国の権威のある憲法について。まあそれはいわば比喩的に申された言葉であったと思いますけれども、そういうものがあり得るであろうか、そういう疑問を私は持ったのであります。そこで、いまの憲法は占領下、占領軍の非常に大きな影響のもとに、異常な状態のもとにつくられた憲法であるということは間違いない事実であろう、そういう表現を私たちはまたいたしました。それは、そういう議論をかつてしたということでございます。
  123. 矢野絢也

    矢野委員 そういう議論をかつてなさったということですけれども、いまでもそうお考えですか。
  124. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ともかく、この憲法に関する具体的な問題に対する発言というようなものは、私はいま現職の総理大臣として、憲法遵守の義務というものを重視しておるわけでございます。この憲法のもとにいま内閣は成立し、また国政が運用されており、憲法遵守の義務というものは非常に重いと思っておるわけでございますから、したがって発言は慎んでおるわけでございます。
  125. 矢野絢也

    矢野委員 総理憲法遵守の義務は憲法で規定されておるわけです。いつも総理が力説されるように、憲法を変える手続も憲法で規定されているわけですね。常に憲法問題はタブーであってはならないとおっしゃっているわけですけれども、総理として憲法の問題について個々に議論をするということは、閣僚として、内閣としての憲法遵守義務に反するとお考えになっておるわけですか。
  126. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 こういう公式の場所で個人的意見を言いますと、ややもすれば誤解をされるおそれがあるわけです。したがいまして、そういう点は私は慎んでおる。しかし、議員として、あるいは一般の国民の皆さんが憲法についていろいろ御議論なさることは、それはぜひやっていただきたいし、憲法もよく勉強もしてもらいたいし、いいところ、悪いところを自分で見分ける力を持っていただきたい、それが民主政治を盛んにするゆえんである、そう考えておりまして、内閣総理大臣としてこの憲法のもとに国政を運用しているという公的地位と、それから国民の皆さんが憲法をつくる主権者として憲法についていろいろ御発言なさるということは、日本の民主政治を躍動させる上において大事なことであるから活発にお願いいたしたい、そういうふうに思っております。
  127. 矢野絢也

    矢野委員 私の質問にお答えになっていないわけで、憲法を遵守する内閣の義務から、憲法問題についての議論を中曽根さんがしてはならないということになるのですかと聞いているのです。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は国政の重きに任じている者でございますから、その影響等も考えまして、具体的問題に関する発言は差し控えておる、そういうことでございます。
  129. 矢野絢也

    矢野委員 影響がなければ別に構わないわけですか、そうすると。
  130. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 総理大臣という地位にある以上は、影響がないということは恐らく考えられないと思います。
  131. 矢野絢也

    矢野委員 私が聞いているのは、内閣憲法遵守義務という憲法の規定から、内閣総理大臣憲法改正問題の個々の問題について発言を禁じられていると憲法解釈をなさっているのかということを聞いているのです。
  132. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは政治意味でその影響をおそれて慎んでおる……。
  133. 矢野絢也

    矢野委員 法律解釈で伺っているのです。
  134. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法律解釈の点は、法制局長官に御答弁願います。
  135. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 たびたび申し上げておりますが、憲法九十六条自体には、御承知のように、憲法の改正手続を規定しておりますから、その改正について論議をしたりあるいはそのための研究を行うということは、もとより憲法第九十九条の尊重擁護義務に違反するものではございません。
  136. 矢野絢也

    矢野委員 総理はその見解を支持されますか。
  137. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 法律論としては、そのように思います。
  138. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど総理は、憲法の成立の過程においてはいろいろ問題があるということを中身を挙げてお答えになりました。百歩譲って憲法成立の過程に問題があるとしましても、私はそうは思いませんけれども、百歩譲ってそうだとしましても、でき上がった憲法がりっぱなものならば、たとえその経過がどうあろうともその憲法は守っていくべきものだ、改正する必要はない、こういうお考えはお持ちになりませんか。生まれたいきさつが悪ければ、できた子供も悪いですか。
  139. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう有力な議論もございますが、それに対する評価は差し控えさせていただきます。
  140. 矢野絢也

    矢野委員 憲法の内容の問題に立ち入りますけれども、かねてから総理は、憲法改正を主張してこられて、かなり具体的に御発言をなさっているわけでございますが、たとえば内容について問題があるというお立場は、第九条については何ら改変をする必要はないというお立場なのか、あるいはこの第九条、平和憲法と言われておるこの憲法の原点とも言うべき第九条でございますが、これは変えるべきである、問題がある、こういう御認識でございますか。
  141. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのう以来、そういう具体的な問題に対する発言は影響が多いので慎んでおりますと申し上げている次第です。
  142. 矢野絢也

    矢野委員 なぜ影響が大きいのでしょうか。
  143. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣といたしまして国政の負託にこたえておるわけでございます。したがいまして、その公の地位にある者がいまの憲法の個々の文章について個人的意見を申し上げるということは、かなり影響があると思うからであります。
  144. 矢野絢也

    矢野委員 全然抽象的ではっきりしませんよ。影響があろうがなかろうが、内閣の総責任者として御自分の所信を述べるというのが、むしろ国民に対してわかりやすい政治をするというあなたの信条にかなうのじゃありませんか。影響が大きければ何でもかんでも黙っているのですか、あなた。国民に知らせないのですか。あなたの信念というものを率直に言われることがなぜ悪いのですか。影響が出ることは今後も一切内閣としては国民に知らさない、総理大臣として物を言わない、こういうことですか。
  145. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は先般来、憲法改正を政治日程に上せることはいたしません、そう申し上げておるのでございまして、そういう基本的立場を持っておりますから、発言も慎重にしておる。将来、国民の皆さん方が憲法に対するいろいろな合意ができてきて、そして国論の大半がそういう方向に動いてくるということになれば、民主政治でございますから、国民の意思に従って政治はまたおのずから動いていくでしょう。しかし、現在は、まだそういう国民の大多数の合意というものはできておりません。そういうときに、国論を分裂させるようなことは政治としては得策ではない。目前にもっとやるべき大事な大きな問題を抱えております。そういう観点から、政治日程に上すことは適当でない、こう考えてもおりまして、そのように発言しておる次第なのです。
  146. 矢野絢也

    矢野委員 現内閣憲法改正を政治日程に上すことは考えてない、こうおっしゃっておるわけですが、そんなものはあたりまえのことなんですよ。政治日程にのせようったってのせようがないじゃありませんか。そういう傍観者的な意見じゃなくして、あなたは憲法改正を政治日程にのせるべきであるという論者なのか、いや、この憲法は正しい憲法だからさような政治日程にのせることを考えてはならない、べきでないという論者なのか、国民が聞きたいのはそういうことなのです。  政治日程にのせるつもりはない、あたりまえのことですよ。のせられっこないじゃありませんか、いまの自民党内閣で。いまの国民世論から考えても、のせようがないじゃありませんか。国民が知りたいのは、のせるべきであるかどうかということについて、総理が一国のリーダーとしてどういう政治信念をお持ちなのか、これを聞きたいわけなのです。影響があるから言いません、ほかに大事な問題があるから言いませんなんて、しょせん詭弁にすぎませんよ、こんなことは。どうなんですか。
  147. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、現在内閣総理大臣という重責にあるのでございまして、個人的な信念や意見を申し上げることは必ずしも適当でないのであります。国政全般を考えてみて、そのように感じておるわけでございます。
  148. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは財政再建とか、あるいは政治倫理とか、あるいは増税なき財政再建、あるいは景気対策、こういったものについて、総理として、あるいは個人としての政治信念をこの席でお述べになるでしょう。お述べにならないですか。お役人さんが書いた文書を棒読みにされるのですか、あなた。政治家中曽根康弘として、御自分の政治信念内閣総理大臣立場でお述べになるでしょう。なぜ憲法問題だけ述べられないのですか。
  149. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは事案にもよります。影響力そのほかも考えてみて、国政の混乱あるいは国民の中における混乱、そういうものも考えなければなりません。したがいまして、事案にもよります。しかし、政治、経済問題に関して一般的に私がここで申し上げておることは、内閣総理大臣としての発言であります。
  150. 矢野絢也

    矢野委員 事案によりますという判断は、あなたがするのじゃなしに、私ども国会議員質問する権利もありますし、国民もあなたに聞きたいと思う権利があるのです。まさにこの憲法改正問題という事案は、国民が知りたい事案なのです。それをあなたが、差し控えますなどというようなまことに傲慢な態度でこの問題についての答弁を拒否される、これは国民を愚弄するものですよ。事憲法問題です。第九条の問題、これは将来ともにあなたは守っていくべきものだとお考えなのかどうか、もう一度お答えいただきたい。
  151. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は国政の重きというものを恐れ慎んでいるから申し上げているのでありまして、決して傲慢とかなんとかということで考えておるわけではございません。いままでいろいろ申し上げましたような考えに基づきまして、節度を持ってお答えを申し上げておる次第なのであります。
  152. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは、議員当時の考え、これは改憲論者であったということは否定されませんよね。そうですね、議員当時は改憲を主張された、烈々たる確信を持ってそれをお述べになったということは否定しませんね。
  153. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は改憲論者でありました。
  154. 矢野絢也

    矢野委員 いまはどうなんですか。
  155. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 先ほど来申し上げておるように、内閣総理大臣という大きな立場におりますから、自分の個人的意見は差し控えさせていただいておるということです。
  156. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは、大変個人的なことで恐縮なんですけれども、政治家になられたときに、内閣総理大臣になろうと思っておられましたね、若いときから。そして、長年の念願が実現いたしまして、まことにおめでたいことだと祝福を申し上げますけれども、総理になられたわけでございます。しかし、それはある日突然、願ってもみなかった、なろうとも思わなかったのになったわけじゃない。若いときからなろうと、朝に昼に夕に夜に思い続けてこられた。総理大臣になる前提であなたは政治活動をしてこられたと私は受けとめております。したがいまして、議員当時の発言が、総理大臣になったからわしの知らぬこっちゃという論理は、あなたのいままでの人生から考えてもこれは矛盾ですよ。  あなたが総理大臣になること、まあ嫌みなようで恐縮でございますが、嫌みじゃなしに、本当におめでとうございました。しかし、それは念願かなってなられた。その当時にあなたは改憲論をぶっておられた。総理になるという御自分の意思と裏表の形で改憲論というものが存在しておったのですよ。それを総理大臣になったから昔のことは知りませんみたいなことでは、自分の人生を裏切ることになりませんか。
  157. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は議員当時のことを否定しているのではありません。議員当時の活動は、われながらよくやったと思っております。
  158. 矢野絢也

    矢野委員 総理、私はできるだけ穏やかにやるつもりでお尋ねしているのですよ。そんな論理が通用しますか。私は間違いなく改憲論者でございました、こうおっしゃっている。現内閣においては憲法を変えるのは政治日程にのせておりませんとおっしゃっておる。ところで、私は、政治日程にのせるべきだと思っているのか、思っていないのか、政治日程にのせたくてものせられないからのせないのか、いや、この憲法はいい憲法だからのせないということなのかということをお尋ねしたけれども、お答えがないのです。もう一遍答えてください。
  159. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法は大いに勉強し、検討し、そして、この憲法をどういうふうに考えたらいいかという考えをみんなが持っていただくように、認識を深め、勉強すること、検討すること、それを私は念じております。
  160. 矢野絢也

    矢野委員 それは答えにならないのですね。のせられるならば政治日程にのせたい、客観情勢が許すならば、国民世論が成熟し、そして、あなたの与党が憲法改正発議に必要な議席を確保しという状況になれば、政治日程にのせたいとお考えですか。
  161. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 将来のことは、そのときの国際情勢やら国内情勢全般を考えてみなければ決断できないものであります。
  162. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、三分の二の議席があって、国民世論があなたの主観的判断として憲法改正という方向で熟したという状況でも、政治日程にのせないということがあるわけですか。
  163. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 民主政治でありますから、国民の大多数がやれと言ったらやるべきであり、やるなと言ったらやらないというのが民主政治だと思います。
  164. 矢野絢也

    矢野委員 あなたは、国民がやれと言うことを期待されますか。
  165. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、そのときになってそういう情勢が出てこなければ、いま軽々発言はできない。そのときの国際情勢……。
  166. 矢野絢也

    矢野委員 いまあなたは、将来の問題としてそれを、いまの内閣総理大臣として、過去のあなたの御発言等と照らし合わせて、国民憲法を改正しなさいという世論が成熟することを期待されるかどうかと伺っているのです。もういいかげんにしてくださいよ、私もずいぶんがまんしながらお尋ねしているのですから。
  167. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民皆様方憲法についてよく認識し、よく勉強され、よく検討される、そして、どういうお考えをお持ちになるか、それがどういうふうに、わき出てくるように、あなた方はよく地涌の菩薩という言葉をお使いになりますが、全国にそういう気分がどういうふうに出てくるか、そういうことをよく見きわめて政治は動いていくべきであると思います。
  168. 矢野絢也

    矢野委員 あなたはそれを期待されるのですかどうですかと伺っているのです。
  169. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、国民の世論に従って動くというのが政治家仕事ではないか。大多数の……。
  170. 矢野絢也

    矢野委員 国民の世論がそういう方向に変わることを期待されるかと聞いているのですよ。あなたの一国のリーダーとしての、総理としての期待を伺っているのです。
  171. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民皆様方が勉強して、いろいろな人の意見も聞き、あるいはみずからも勉強され、そして、どういうふうに世論が変化していくか、それは政治家として注目していくところであろうと思っております。
  172. 矢野絢也

    矢野委員 それでは、最後にもう一つだけ伺っておきますけれども、あなたは総理をやめられたら、再び憲法改正論を主張されますか。
  173. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのときの情勢にもよりますが、多分やるだろうと思います。
  174. 矢野絢也

    矢野委員 総理の間だけ過去を忘れ、ということでございますな。  委員長、同じことを何遍も聞いているのですけれども、議員として私は改憲論者でありましたと明確に言明されておる。そして、国民世論がどうなるか、活発にひとつ議論してもらいたいともおっしゃっておる。そして、政治日程にはのせないとおっしゃっておる。のせないのは、のせられないのか、のせたいけれども条件が熟さないという意味でのせられないのか、自分にその意思がないのかと聞けば、申し上げかねます。第九条についてあなたは、自衛隊合憲を言わないような人間は議員として失格だ、怠慢だとまでおっしゃっておるのですよ。九条を完全に否定した発言をあなたはしておられるのです。その方が、九条についての意見は差し控えたいとおっしゃっておる。委員長のお立場で、この問題についての総理並びに政府の統一見解をひとつ出していただきたい。
  175. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会でいろいろやりとりにつきまして御意見を承りまして処置をいたしたい、こう思います。
  176. 矢野絢也

    矢野委員 やりとりはここでさんざんやっておるのです、あなたの前で。
  177. 栗原祐幸

    栗原委員長 それはそのとおりですが、理事会で質問者と政府側の答弁についていろいろ理事の皆さんの御意見を承りまして処置をいたしたい、こう思います。
  178. 矢野絢也

    矢野委員 処置じゃ困ります。統一見解を出すとお約束をいただかなければ質問できません。私は同じ問題を何遍も総理に丁寧に伺っているつりなんですよ。こんないいかげんな内閣議員の使い分けがこれからもまかり通れば、国会なんというものは何の意味もなくなるじゃありませんか、あなた。
  179. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、内閣総理大臣といたしまして国政の重きに任じ、そして内閣としての立場に立って発言を申し上げておるのであります。私は、過去の議員のときにいろいろ発言をした、それは御指摘のとおりでございまして、それは否定するものではございません。しかし、内閣総理大臣という地位につきました以上は、国政全般を考えて、国論が混乱をしないように、政治がスムーズに動くように、そういういろいろな配慮もしなければなりません。私がここで個人的な意見を申し上げることは、そういう不測の混乱を起こす危険性もないとは言えません。そういう面も考えて、節度を持って申し上げておるのを御理解いただきたいと思います。
  180. 矢野絢也

    矢野委員 統一見解をお約束いただきたいと思います。いかがでございますか。
  181. 栗原祐幸

    栗原委員長 ですから、先ほど来申し上げておるとおり、この問題については、後刻理事会をやりますので、いろいろ皆さんの御意見を承りまして処置をいたしたい、こう言っておるわけでございます。  政府の方で御意見ございますか。
  182. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野委員質問の急所は、中曽根内閣総理大臣は改憲を進める意思があるのかどうか、そういう点にあると思うのです。(矢野委員「ほかにもありますけれども」と呼ぶ)急所はそこだろうと思うのです。  そこで、私は過去においては改憲論者でもあったし、議員としてそれは間違っておるとは思いません。しかし、内閣総理大臣という地位にある以上は、軽々発言はできません。そして、国政の混乱やそのほかを招かないように十分注意していかなければなりませんし、国民世論国民がどいうふうにお考えになっているかということもそんたくしなければなりません。自分の、個人の独断で国民に押しつけたり何かすることは、これは十分戒めなければならぬと思っているわけです。  したがいまして、国民の世論がどういうふうにわいてくるか、どういうふうにお考えになるか、民主政治のもとにおきまして、基本法である憲法というものについてどういうふうな認識をお持ちになってくるか、よく勉強してください、よく検討してください、そして、どういうものが出てくるかということを政治は静かに見守ってまいりますということを申し上げておるのでありまして、それがいわば政府の統一見解と申すべきものであります。
  183. 矢野絢也

    矢野委員 それが政府の統一見解なら、私の質問をすべて議員個人と内閣という巧みな立場の使い分けではぐらかしておられるわけであります。あなたは改憲論者であった、内閣は改憲を政治日程にのせない、そこまではいいのですよ。そののせない理由は、御自分は改憲を希望するけれども、諸般の情勢のためのせられないということなのか、いままでの改憲の気持ちをもう放てきされたのかと、これを伺っておるわけなんです。それは内閣総理大臣としてのお考えを伺っておるのです。個人としては答えられずに、内閣総理大臣としてお答えいただけばいいのです。
  184. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣としてこういう立場に立ちました以上は、自分の個人的な独断を国民に押しつけるというような考えはありません。そして、国民の皆さんが、この憲法問題について十分勉強していただいて、どういうお考えをお持ちになるか、それを十分見守って政治を行いたいという考えであります。
  185. 矢野絢也

    矢野委員 政治日程にのせないという理由は、情勢が熟さないからのせないのか、あなたに改憲の意思がなくなったからのせないのか。政治判断内閣の政策決定として政治日程にのせないということを決められたのでしょう。その理由を私は聞いているのですよ。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の中にいわゆる合意が十分熟成しておりません。混乱を起こすだけであります。したがって、その問題は政治日程にのせないということであります。
  187. 矢野絢也

    矢野委員 先ほど申し上げたとおり、それじゃ委員長の御発言どおり理事会でお取り計らいを願いたいと思います。  総理、今度アメリカにいらっしゃるそうですけれども、レーガンさんとどんな話し合いをされる予定ですか。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は組閣に当たりまして、大きな仕事として行政行革、それから財政再建、それから景気の問題、それから対米関係信頼強化ということを申し上げていましたが、その一つでありまして、日米間におきまして、いま国際的にも微妙な変化が全世界に起きつつあります。ソ連では新しい体制が出ましたし、あるいは中東情勢におきましてはフェズ憲章というものも出てまいりまして、日本が重大な関心を持つ中近東の諸国がどういう反応を持って動いてくるであろうかという問題もございます。あるいは日米間には二国間のいろいろな問題もございます。そういう諸般の情勢を踏まえまして、十分な意見交換を行って日米関係の相互信頼をさらに高めたい、そういう考えを持って渡米したいと思っております。
  189. 矢野絢也

    矢野委員 大変失礼いたしまして、日銀総裁に御出席をいただいて、十一時から十一時半というふうに伺っておりましたが、あなたとの議論に夢中になりました。総裁、まだいらっしゃいますか。――どうも失礼いたしました。  それでは、簡単にちょっと途中に聞きますけれども、四点伺いますが、日銀総裁は、現在及びこれからの景気見通し、どういう御判断をお持ちであるか。  二番目に、最近、一時より一ドル三十円を超える円高という状況になってきておるわけでありますけれども、この円相場の見通しはどういう見通しをお持ちであるか。  第三点は、アメリカでもきょうまた公定歩合の引き下げを行ったという報道がございました。七回目だそうでございますけれども、わが国における公定歩合の引き下げ、もう整ってきたのではないかという気がするわけですけれども、どうか。  第四点は、公定歩合となりますとなかなか御見解を承りにくいという感じもいたしますが、長期金利――大蔵大臣、こそこそ言ってはいけません。国債の金利を含めた長期金利は引き下げが望ましい、こういうお考えであるかどうか。  この四点、お尋ねをいたしたいと思います。
  190. 前川春雄

    ○前川参考人 景気でございますが、現状は、最近私どもいわゆる短観アンケートをとりました以前に私どもの考えていたよりも停滞傾向が強まっておるというふうに思います。これはやはり海外の景気が非常に悪いものでございますから輸出が伸び悩んでおる、そういうことから限界的な需要が伸びないということが大きな理由であろうかというふうに思います。  先行きの見通しにつきましては、非常にいろいろな環境、海外の環境等がよくなる見込みは余りございませんので、余りほっとしない、はかばかしくない状態が続くであろうというふうに思います。ただ、企業は低成長に対応する態勢がだんだん整ってきておる。また、企業の収益状況はそれほど悪くない。若干悪くなっておりますけれども、それほど大きく落ち込んでおるということもないわけでございまするので、現在の状況から判断いたしまする限り、景気がどんどん悪くなるという環境には必ずしもないのではないかというふうに思います。  円相場でございまするが、円相場につきましては、ことしの春から夏、秋口にかけまして円相場が非常に円安に振れました。必ずしも日本の国内に、円相場がこれだけ安くなる、そのように安くなるような要因があったとは思いません。しかし、ドルが強い、あるいは国際的な政治問題あるいは金融問題の不安ということからドルが非常に強い、その反面で円あるいはドイツ・マルク等が全部安くなったということであろうと思います。十一月以降円相場は回復してまいりました。一時は、十一月の一日には二百七十八円という安値をつけましたけれども、現在のところは二百四十六円ぐらいのところまで円相場が回復してきておるわけでございまするが、基本的には円安、不当な円安が修正されておる局面であるというふうに思います。もう円高になったというふうな感じよりも、円安が修正されつつある局面であるというふうに私どもは判断しております。  これから先の見通しにつきましては、これも内外の環境が非常に不透明でございまするから、必ずしもはっきりした見通しをつけることはできませんが、円安の大きな要因として内外の金利差というものがございまして、アメリカの金利が高い、日本の金利が安い、そういうことから資本の流出があり、円安に拍車をかけたということがございます。いまお話がございましたように、アメリカの公定歩合もだんだん下がってまいりました。海外の金利が下がってまいりましたので、内外金利差というものはだんだん縮小してまいりました。そういうことから申しますると、私どもは、希望といたしましても、円高にもっと振れて円高の方向で安定するということが望ましいというふうに考えております。  アメリカの公定歩合がきのう下げられてきょうから実施でございまするが、下げられたと申しましても、アメリカの公定歩合はまだ八・五%ということでございまして、日本の公定歩合に比べまするとまだ金利差というものは非常に大きいわけでございます。日本の公定歩合につきましても、金融政策、毎々申し上げておりまするように景気、物価あるいは円相場、そういうものを総合的に判断して運営してまいる、また機動的に運営してまいるつもりでございます。ただ、いま申し上げましたような点から考えまして、円相場の状態、円安修正の局面ではございまするけれども、必ずしもこのままさらに修正が進むかどうか、また、いままでの修正で十分であるかどうか、あるいはこの先安定していくかどうかということについては、まだいまのところ判断を下すには早いというふうに感じております。そういう点から、公定歩合の引き下げにつきましてはまだ環境が熟しておらないというふうに判断しております。  長期金利につきましては、金利が下がることがもちろん望ましいというふうに思います。ただ、長期金利につきましては、主として国債の金利、いまのところ国債の金利はこの円高につれまして下がってまいりました。市場金利は下がってまいりましたけれども、基本的には国債の需給関係がバランスが崩れておるという環境にございまするので、長期金利が下がることを私どもは望ましいと思いまするけれども、なかなかその引き下げあるいは長期金利全体が下がるという点につきましては、これから十分に考えて対応してまいらなければいけないというふうに考えております。
  191. 矢野絢也

    矢野委員 日銀総裁には、時間のやりくりをしていただいて、しかもお待たせをして恐縮ですが、これで結構でございます。ありがとうございました。  大蔵大臣、長期金利の引き下げが望ましいという日銀総裁の御意見でありましたけれども、主として国債の利息という問題だと思いますが、このことに一言……。
  192. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま日銀総裁からもお答えがあっておりましたが、国債の市況、最近の状態にかんがみまして、十二月債から若干の引き下げをしようということでいまネゴに入ったわけであります。したがって、その推移を見て、私は、その方が好ましい傾向にあるということは、認識は一致しておると思います。ただ、長短金利の格差が大きい現状でございますので、金利全般の引き下げを図る環境が整ったとか熟したというところまではまだいっていないんじゃないか。私自身、前回就任いたしましたときは二百四十二円、やめるときは二百十九円二十銭、今度就任いたしまして、いま日銀総裁の言葉では円安修正、こういう状態にありますけれども、毎日の動きを見ておりますと、まだ若干のぶれがございますので、そういうことも念頭に置いて考えなければならない問題である。  公定歩合問題はもちろん日銀の専権事項でございますが、お願いして、私が大蔵大臣に就任のときに九%まで上げていただいて、いま下がっておりますものの、いま総裁からも御発言がありましたように、なおまだ三%という差がございますので、それらを総合的に勘案して金利問題には対応していきたい、こういうふうに考えております。
  193. 矢野絢也

    矢野委員 またもとに戻りますけれども、どんなメンバーで訪米されるつもりかということ。  それから、訪米で、防衛費の特別扱いあるいは増額、こういう要求がありましたときには、総理はどう対応されるか。  それから、在日米軍がいろいろ経費がかかるということで、アメリカ側から日本に肩がわりの要求があるわけでございますが、これは外務大臣に伺っておきたいのですけれども、たしか金丸防衛庁長官の時代でしたか、労務費の上積みの分について負担の肩がわりをされたときに、安保条約の地位協定から見て、これはいささかおかしいので、思いやりで出すんだという判断があったわけですね。アメリカ側からの要求は、思いやりというようなことで済ませるような内容になっておるのか、あるいは地位協定を変えなくてはならぬような過大なものであるのか、一緒くたに聞きましたけれども、まず総理から。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 米国へ参りますのは一月十八日の会談でありますが、恐らくそのころは五十八年度予算の政府案は決まっておるだろうと思います。しかし、いずれにせよ、防衛費の問題は、日本の政府及び国民が自主的に決める問題でこざいまして、先方がどう言われるか知りませんが、それについては参考にする、そういうことであるだろうと思います。
  195. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 地位協定によるところの労務費であるとか施設整備費の増強につきましては、アメリカ側から要請があることは事実であります。これまでもこれにこたえてきたわけでありますが、それはあくまでも地位協定の枠内においてこたえてきたわけでありまして、労務費につきましては、これまでとってまいりました措置が地位協定の解釈上も限度である、こういうふうに考えておりまして、アメリカにこれを伝えております。
  196. 矢野絢也

    矢野委員 労務費本体の肩がわりをすることは、これは地位協定を逸脱すると思いますけれども、どうでしょうか。
  197. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 労務費本体につきましては、もちろん地位協定によって米軍が負担をしておるわけでありますが、労務費につきまして、たとえば福利厚生費といったようなものにつきましては、これは地位協定の解釈の枠内においてこれまで日本側が負担をしてきておる、こういうことであります。
  198. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣、防衛予算は自主的に決めるんだと総理はおっしゃっておるわけですけれども、防衛庁からもいろいろと要求があるようですが、概算要求の七・三五%増、大蔵省はこれを削り込みたい、切り込みたい、こうおっしゃっておるようでありますけれども、これはどうなりますか。
  199. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御案内のように、まず当初のシーリングにおきましては、防衛費関係について、いわゆる国際条約の実施に伴い必要とされる既国庫債務負担行為等の昭和五十八年度歳出化に係る経費の特例枠、これはあくまでも当該歳出化に係る経費が条約上の義務の履行に伴い必要とされるものであるという経費の性質に着目してシーリングのいわゆる特例とした、こういうことで、シーリングのときにはそういうものが出ているわけです。  もとより、総理の初閣議での説示もございましたように、防衛費についても聖域ということはしないで、要求枠の範囲内で厳しく検討して、わが国防衛のために必要最小限の経費を計上してまいる、こういう方針で編成作業に臨みたい、このように考えております。
  200. 矢野絢也

    矢野委員 総理も、いまの大蔵大臣の御答弁のとおり、要求枠の範囲内、これはちょっと弱い表現だと思いますけれども、がっと切り込むとかそういう発言がなかったことは残念だけれども、いずれにしても、この範囲内でとどめる、そういうお考えですか。
  201. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣の考えを支持いたしたいと思います。
  202. 矢野絢也

    矢野委員 この防衛問題は、また通常国会に持ち越すことにいたしましょう。  人勧の問題ですけれども、完全凍結というお考えに変わりはございませんか。
  203. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国家公務員法の規定等を見ますと、政府も尊重しなければなりませんし、でき得べくんば凍結をしない、そういう考え方で進みたいと努力もしてまいりましたが、何せ六兆一千億円のような歳入欠陥が出てまいりまして、まことに不本意ではございますが、この考えを貫かなければできない、そういうふうに考えております。
  204. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣、いま代表者会議で、各党の書記長、幹事長、それに準ずる方々、そういう人々で人勧問題の話し合いをすることになっておるわけですが、これは、われわれは完全実施という要求をしておるわけです。もっとも公明党の場合は、行政改革を断固推進すべしという前提に立ちながら、やはり給料はちゃんと上げてあげなさい、一方でスト権を奪っておるわけですから、というわけなんですが、代表者会議で完全実施あるいは部分実施というような結論が出ましたときには、大蔵大臣、お金はどういうふうに段取りするのですか。
  205. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは御指摘のとおり、人事院勧告は国会及び内閣に対して勧告が行われておる。政府の方針は、先ほど総理がお述べになりましたように、これはすでに決定をいたしております。したがって、現在、財政当局の私とては、国会の動きがいかにあれ、仮定の事実を置いてお答えする立場にはございません。  政府としては、いま総理がおっしゃったとおり、また書記長御指摘のとおり、行革というものを遂行するために痛みを分かつ、まず公務員から、こういう精神に基づいて決定しておりますので、それに伴って、予算といたしましては六百七十億の一%分も減額いたしまして補正予算で御審議をいただいていく、こういう筋に財政当局の立場からはなる、こういうことであります。
  206. 矢野絢也

    矢野委員 部分実施か完全実施か、それは今後の代表者会議による議論ですけれども、補正予算を修正されますか、何ぼか出すということになりますときには。あるいは再補正をなさるのですか。あるいは総理のポケットマネーでお給料を払ってくれるのですか。そんなことはあり得ないですよね。ですから、この補正予算をこの段階で修正なさるということなのか、再補正をなさるのか、どうなんですか。
  207. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、財政当局といたしましては、国会の場における各党間の話し合い、それも幹事長、書記長会談、その推移について関心を持つのは当然のことでありますが、いまその推移がどうなっていくという仮説のもとにおいて、私どもとしては考えておりません。すなわち、政府で決めた……(矢野委員「純財政的技術論として、その場合にはどうなりますか」と呼ぶ)わかりました。純財政的技術諭と言えば、それは予算修正という問題は、政府修正という問題もありますし、国会の修正という問題もございましょう。しかし、私どもといたしましては、それに対していま修正する考え方、修正する準備、これはしておりません。なかんずく二次補正――いま補正を審議する段階においては、この補正が現時点において最善にして最高のものである、こういうことで補正の御審議をいただいておるのですから、二次補正などというのは念頭には全く持っておりません。
  208. 矢野絢也

    矢野委員 大蔵大臣、私ども、これは真剣に代表者会議で話し合おうと思っているわけですよ。ですから、部分実施にせよ完全実施にせよ、人勧について有額の結論が出たという場合には、予算の修正をします、あるいは再補正をします、何か言ってもらわなければ、何のために僕らこれを話し合うことになるのですか。これはどうなんですか。仮定じゃありませんよ、これからやるのですから。成り行きによっては、これは本当に補正だっておかしくなってきますよ。  ですから、仮説じゃなしに、そういう結論を国会が出したときには、あるいは政党間で出した場合には、補正予算の修正に応じます、間に合わなければ再補正でやります、あるいは竹下さん独特のお知恵でもありまして、そのときにはこういういい手がありますとか、何か教えてくださいよ。
  209. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私、財政当局といたしましては、私どもの考え方と一致した各党の話し合いの結論が出ますことを心から期待をいたしております。
  210. 矢野絢也

    矢野委員 これは各党の国対委員長さんに一遍議論してもらわなければいかぬですな。人事院勧告については代表者会議で結論を得る、誠意ある話し合いをするというようなことで予算委員会が始まっているわけですよ。ところが、政府の考えどおりに各党で結論が出ることを期待するでは、私はあなたの子分でもなければあなたの生徒でもない。勤労者大衆の立場に立てば、やはりこの問題についてはここではっきりとしたお話を聞いておかなければ、きょうの昼からかあしたからか知りませんが、私たちは何の話をしたらいいのですか、あなた。この委員会が始まったその前提になる信頼関係が失われますよ。
  211. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは、財政当局の私としてはそういう期待を持つということは、期待感というものはあっていいのではないかと思います。
  212. 矢野絢也

    矢野委員 ですから、政党間でそういう結論が出れば、金は、補正か修正か、第三の道か、何か考えますか、大蔵大臣、そのときには。何ぼ政党間で結論を出しても受けつける余地はないとおっしゃるのですか。どっちですか。
  213. 竹下登

    ○竹下国務大臣 その政党間の結論が出る、どういう結論が出ますのか、あるいは私は、その政党間の話し合いそのものが、人事院勧告とはいかにあるべきかとか、こういう話し合いもあろうものかという感じももっておりましたが、要するに、大局的に申しますれば、これは国会の意思は尊重すべきである、こういうことは言えると思います。が、それに対応する予算編成上の技術論という問題は、今日私どもが考えておると同じような結論が出ることを期待申し上げておる、こういうことに尽きるかと思います。
  214. 矢野絢也

    矢野委員 期待するのはあなたの御自由だけれども、私たちは公務員の給料が上がることを期待申し上げておるわけです、こっちも。それで話し合いをするわけです。そのときにあなた方の方で、どういう結論が出ようとも補正予算の修正もしませんぞ、再補正もしませんぞなんて愛想のないことを言われたんじゃ、一体何のためにわれわれは話し合いをすることになるのか。知恵者の竹下さんだから――たしかあの減税のときもいろいろ知恵を出しました。結果的には、何じゃかんじゃ言うていまだに減税は行われていないけれども、あの手には二度とひっかからないと思っていますけれども、しかし、この人勧の問題についての財源の措置についてもう一遍伺っておかなくては、場合によってはこれは国対委員長会談を昼からやってもらうというようなことになるかもわかりませんよ、そんないいかげんな返事では。そういう政党間の結論が出れば、それを受けて財政当局として善処いたしますぐらいは言いなさい。
  215. 竹下登

    ○竹下国務大臣 国会の意思は最大限に尊重するというのは、これはわが国の議会制民主主義の基本であると思っております。
  216. 矢野絢也

    矢野委員 人勧問題で私がこう申し上げるのは、総理、これは経済団体のリーダーの方々も、人事院勧告がああいうふうに抑え込まれるんだから、春闘も安くしよう、民間労働者の給料も人勧凍結並みに抑え込もう、こういう発言がもうすでに出てきておるんですね。そしてまた、伝えられる話によりますと、従来の慣例によりますと、人事院勧告が実施された、給料が上がった、それに見合って、いろんな年金とか恩給、私どもの資料によりますと、恩給の受給者が約三百万人いらっしゃる、共済年金、いろんなあれがありますけれども約百六十四万人いらっしゃる、厚生年金五百七十万人、国民年金七百六十万人、福祉年金三百万人、諸手当百六十三万人、合計二千万人、つまり、人勧凍結、完全凍結という結果を受けて、いま申し上げたような二千万人にわたる各種年金、恩給の受給者、従来は物価の上昇分だけスライドする、それだけ金額をふやす、こういうことでございましたが、いま申し上げた各種年金、恩給について従来どおり物価上昇に見合った金額の増額をなさると、総理、これはもう時間も終わりですからお答えいただきたいと思いますが、あるいはそれも抑えるということなのか。抑えるというようなことであれば、この人勧は断固としてわれわれはがんばらなくちゃならぬ。公務員の暮らしももちろん大事だ。しかし、それを、お役人も痛みを分かったんだから、苦しんでるんだから、恩給や年金の人も苦しんでもらおうじゃないかみたいな、そんな形で恩給、年金を切り込まれたんじゃたまったものじゃないということで、私は人勧問題についてやかましく申し上げておるわけでございます。もちろんスト権を奪っておる代償ということを公務員の暮らしを守らねばならないという立場からも申し上げておりますけれども、その後に続くのがこわい。春闘の抑え込み。  これは労働大臣、春闘の見通しというのを一遍聞かしてもらいたいし、大蔵大臣に、私が申し上げた各種年金、恩給、どうなさるか。その後総理にお答えをいただきたい。
  217. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの御質問、大要いたしまして、恩給の改定に当たりましては、前年度の公務員給与の改善率を指標として用いてきた、これが通例になっております。次の厚生年金等につきましては、法律上、前年度の消費者物価上昇率が五%を超えた場合に物価スライドを行うこととされております。  したがって、今度の予算の編成につきましては、公務員給与を見送らざるを得ない、こういう厳しい財政事情にございますので、予算編成に当たりましても一般歳出を前年度同額にまで圧縮することを目標に作業を進めているところでございますので、恩給、年金の改定はきわめてむずかしい状態にある、このように考えております。  特に、年金の御指摘がありましたが、法律上、前年度の消費者物価上昇率が五%を超えた場合、物価スライドを行う必要がある、こういうことがございますが、いま上昇率は五%を相当下回りまして三%程度であるという実態もやはり留意しなければならない、このように考えております。
  218. 矢野絢也

    矢野委員 そうすると、恩給、年金は上げない、こういうことですか。
  219. 竹下登

    ○竹下国務大臣 予算編成の過程においてそういうことを念頭に置いて編成作業を進めておる、いま断定すべきではない、このように思っております。
  220. 矢野絢也

    矢野委員 総理、人事院勧告問題も非常に重要でございますが、私ども公明党といたしましては、中小零細企業、あるいは病気の人や老人、暮らしが大変なわけでして、いまのような大蔵大臣の答弁じゃ、思いやりのある政治、温かみのある政治というような総理の方針と違うように思うのですけれども、総理、いかがでございますか。
  221. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 来年度の予算の状況を見ますと、増税なき財政再建というものを貫くためには相当の歳出カットをやらざるを得ません。したがいまして、初閣議の冒頭から、来年度予算については一般的にゼロシーリングということでやる意気込みでやるからと各閣僚に御協力をお願いしている、こういう実情でございます。大蔵大臣も非常な苦衷を述べておられたわけでございまして、私は、大蔵大臣を支持せざるを得ない、そう考えております。
  222. 矢野絢也

    矢野委員 山中さん、大蔵委員会の減税小委員会でいろいろ御苦労されたわけでございますが、いま閣僚になっておられる。直接の担当のわけではないけれども、大蔵減税小委員会でどういう結論をお出しになったか、ここでまず皆さんのところで説明していただきたい。
  223. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは担当大臣は実はいないわけですよね。議長見解というものに基づいて衆議院大蔵委員会の小委員会でやったわけですから。私が一応の臨時国会までの区切りをつけたという意味では、所得税の減税については与野党意見の一致を見た、必要性について。(矢野委員「もっとはっきり」と呼ぶ)所得税の減税についてはその必要性について与野党合意を見た。それから、その手段としては、赤字国債等の手段によらないこと。いわゆる戻し税等を過去にやって、あれはわれわれ反省するところがありますね。そういう意味で、恒久的税制、すなわち基礎控除とか累進税率とかそういうものを恒久的税制として行う。財源については、個々の税目を挙げて種々議論したが、今日現在に至るまで具体的な合意を得ていない。したがって、以上二点を踏まえて、今後、すなわち臨時国会の今会期中も合意を得るための努力を与野党において続けることとしたいということで、衆議院議長福田一殿ということで公文書をもって提出いたしております。  以上です。
  224. 矢野絢也

    矢野委員 各党御努力をされてその結論を得られた。一兆円減税とかというような非常にはっきりした数字じゃ出てない。その点は残念ですけれども、減税の必要性は与野党一致された。しかも、それは戻し税じゃなしに課税最低限の引き上げという形でやるんだ。これは大蔵大臣、そういうわけなんですよ。あなた、ことしの減税の問題のときにも幹事長代理で私どもと話し合いをされて、きょうは時間がないからあのときの記録は一一言いませんけれども、あなたが御苦労されて、そして減税小委員会というものができて、山中さんの御努力もあってあの結論になったのですけれども、減税をやりますか。(発言する者あり)
  225. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは出しゃばるわけじゃなくて、財政再建と減税とは実は関係がないという仕組みにしない限りむずかしい。財政再建ですね、大蔵大臣の。いわゆる財源が足らない。歳出を切らなければならぬ。この中で幾ら必要性を認めても、影響のあるような、すなわち大蔵省の歳入に影響のあるような手段ではむずかしい。したがって、与野党みんないろんな、税目は省略しますが、こういうものならばどうだろうかという、要するに一定の、あえて新税とは言いませんが、既存の税目以外のものによって増収を得たものをそのままそっくり所得税の減税に回すということで、念を押して言えば、仮によけい税が入ったからといっても、その分も全部減税に回すのであって、それは一般会計には繰り入れないということも言っています。ということは、いまの財政再建に別な影響のない流れをつくるということで、まず歳入をつくってそれを全部減税に回すということが、これは議長見解の中にもその財源問題も含めて書いてありますので、この点で与野党一致して、議論はその基本線に沿ってやっておりますから、大蔵大臣に減税ができるかどうかと言われたときに、現在の大蔵省のスタンス、いわゆる財政再建の形の中からは生まれてこない、そういうことを私が言っておきませんと大蔵大臣が苦労しますから、一言言っておきます。
  226. 矢野絢也

    矢野委員 苦労するのがあたりまえなんでありまして、余っている金から減税せいと言っているわけじゃないので、それが大蔵大臣の仕事なんであります。  そういう経過も踏まえ、かつ消費の拡大あるいは税の不公正の是正、勤労者の税負担の増大、こういった諸般の事情から、大蔵小委員会の御意見もさることながら、それを踏まえつつも、いま申し上げた消費の拡大とか、そういうことを考えて、大蔵大臣として減税に踏み切るべきだと私は思いますが、大臣の所感を伺いたい。
  227. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは書記長いま御発言のとおり、幹事長、書記長会談の結論に基づき、政調、政審会談で作文をしていただいて、そして議長見解として出され、そして小委員会ができて、いま山中前小委員長の御説明のような経過を経て中間報告がなされておる。したがって、そういう経過からいたしまして、政府として正式に言えることは、減税小委員会で財源問題を含めて与野党合意の結論が得られればこれを尊重してまいりたいと考えております、こういうことであろうと思います。
  228. 矢野絢也

    矢野委員 そうじゃなしに、それもさることながら、五年間も減税をやらないできたわけですから、むしろ財源を拡大する、景気をよくする、所得税も法人税もたくさん入るようにする、そのためには消費の拡大も必要だ、そういう発想から、山中さんの御苦労は御苦労としながらも、むしろもうここでえいっと言って大蔵大臣が、やります、独自の判断で大蔵省の見識でやります、こう答えられませんか。これで最後。
  229. 竹下登

    ○竹下国務大臣 今日まで政府が述べてまいりました所得税減税の要件、一、歳出歳入両面にわたる徹底した見直しにより財政再建の明白なめどをつけるとともに、二、所得税減税の適切な財源の手当てが可能である、こういう状態のことをいままで申しておりますので、その状態が変化があったとは大蔵省自身の考え方としては申されません。
  230. 矢野絢也

    矢野委員 どうもありがとうございました。
  231. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて矢野君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三分休憩      ────◇─────     午後一時十五分開議
  232. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大内啓伍君。
  233. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、民社党・国民連合を代表いたしまして質問いたします。  まず総理総理は、本会議の代表質問あるいは今度の予算委員会質疑応答を通じまして、国民理解と協力なくしてこの難局を乗り切ることはできない、しばしばこう申されてきたわけなんでありますが、私もいま日本が抱えている内外の重要問題を見ますときに、全く同感であります。しかし、政策遂行の土台というのは、何といっても政治倫理の確立でありましょう。国民がやはり政治家信頼し、政治信頼することなくして、強力な政策遂行はできないと思うのであります。  そこで、まず総理にお伺いをしたいのでありますが、この数年来、政治腐敗の象徴的な問題としてロッキード事件というものが起こってきた、そして、いまやこれが公判段階にある。このロッキード事件解明に示された捜査当局の捜査というものについて全幅の信頼を置いているかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
  234. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 捜査当局は懸命に努力してやったと思っております。
  235. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、総理総理就任に当たりまして、みずから資産の公開というものをやったことを評価いたします。全閣僚が同じことをやったらどうでしょうか。いかがですか。
  236. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御発言はごもっともな点もあり、検討いたしたいと思います。
  237. 大内啓伍

    ○大内委員 これは政治を正す一つ内閣の姿勢だと思うのですね。これはもちろん他の国においても、法制化され、実行されているところもあるわけであります。いま総理は検討したいというお話でございますが、ぜひ実現をされるよう要望しておきます。  そこで、何回も議論されたことでございますが、佐藤孝行氏の議員辞職勧告の問題であります。  これは総理は、本人自身が決めることだ、また決めるべきことだ。実は私どもも本来そのことに同感なんであります。私どもがこの問題と取り組んだスタートも、これは本人自身が決めなければならぬ問題なんだ、しかも、それは自発的に決めるべきものだ、何回もそういう主張をいたしました。  ただ問題は、この議員辞職勧告決議という問題が国会の中で出てきたゆえんというのは、その佐藤氏自身がみずから進んでそのモラルについてのけじめをつけない、これではいかぬということから、国会におけるそうした決議という問題に発展してきたと思うのでありますが、私は静かに考えてみて、もちろんこういうロッキード事件法律的に起訴され、そして判決を受ける。これが一般公務員の場合は、総理も御存じだと思いますが、起訴の段階で処分です。一般の公務員に対してはそれぐらい厳正に行われています。そして私は、この問題というのは、一人の政治家のモラルの問題にとどまらず、やはり日本の政治全体あるいは政治家全体、あるいは内閣の姿勢として問われている、ここに一つの大きな視点があると思うのであります。ですから、もし個人の一人の政治家がみずからの政治責任のとり方についてその正しい判断を誤り、ないしはその政治的道義的な責任の回避に入ろうとした場合に、政治全体としてあるいは議会という権威にかけてこの問題についてけじめをつけるということも、内閣にとっても政治全体にとっても一つの選ぶべき選択ではないか。今日の佐藤孝行氏の議員辞職勧告問題というのは、そういう意味で問われている。ですから、中曽根総理のおっしゃる、それは本人が最終的に決定すべきだというこの問題は一面しか言っていない。一人の政治家が、あるいは数人の政治家がそうした事件を引き起こすことによって問われているのは、その政治家のモラルと責任だけではない。それによって国民の皆さんはどんな感じをお持ちになったでしょう。政治家に対して嫌悪感を持ち、政治に対して不信感を持つ。このことを払拭するということが議会の、そして政府の使命ではありますまいか。  私は、そういう意味から言いまして、たとえば中曽根総理がおっしゃるように、本人がこれは決すべきものだということをまず理解するにいたしましても、仮に議員辞職勧告が本院で可決されても、それは本人の選択を妨げるものではありません。なぜなら、それは憲法の第五十八条の二項に言う議員の除名とは根本的に違います。その政治家に対してモラルを求める院としての決意を表明することなんであります。私の所論に対してどういう御見解をお持ちでしょうか。
  238. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんのいまの御発言は、私も謹聴いたしました。謹んで承った次第でございます。確かに院全体の権威という問題もあり、モラル保持という問題もございますが、昨日以来申し上げておりますように、主権を構成する機能という面から見まして、選挙民と代表者との関係を第三者が強制力に近い形で切断するということは、果たして適当であるかどうかという点も思いをいたしてきておるわけでございます。そういう観点から、これは本人がみずから決すべき問題であり、あるいはさらに選挙民が選挙の際に判定を下すべき問題ではないか、私はそう考えておる次第でございます。
  239. 大内啓伍

    ○大内委員 私は余り押し問答しようとは思いませんが、選挙の投票によってすべての責任が免れるという考え方も、一つは私は真理だと思うのです。しかし、先ほど来申し上げたとおり、この事件によって政治家全体に対して国民全体が嫌悪感を持つ、不信を持つ、それをどう打開するかという問題がいま日本の政治に問われている一番の問題だと私は思うのであります。ですから、選挙によって、洗礼によってこれが全部免れるという議論は、問題の重要さというものを必ずしも自覚していないのではないか。民主政治の根本というのは、全国民政治信頼をどう得るかという問題なんであります。したがって、この議員辞職勧告というものが決して選挙民と国会議員の間を切断するものではなくして、あくまでも最終的には本人の選択にゆだねられているという余地を残しているという意味で、議会の意思とかあるいは議会の権威を守るという意味一つ意味ある提案ではないか。  そういう点について、やはり自民党の総裁としても内閣総理大臣としてもお考えをいただきたいということを申し上げたつもりでありまして、私はこれ以上押し問答するつもりはありませんが、ぜひそういう問題についても総理が十分お考えをいただきたい、こう思っている次第であります。いかがでしょうか。
  240. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんの御提言は、本当にこれは謹んで考えなければならぬ重要な部分を含んでいると思います。昨日来そういう御発言が野党から相次いで起こっておりますが、私も十分考えてみたいと思います。
  241. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いま総理の十分考えてみたいという意味は、先ほど来までの総理答弁とは大分違ったニュアンスが出ている、われわれの一つの所論に対しても十分耳を傾けるという姿勢が看取されるようにも思うのでありますが、ぜひそれを形の上であらわしていただきたいなと思う次第であります。  そこで、秦野法務大臣にお伺いいたします。  昨日あるいはきょうにかけまして、いろいろ秦野法務大臣のかつての発言を基礎にいたしまして、いろいろな議論がございました。そこで、私はそれらを踏まえながらできるだけ端的に御質問を申し上げたいと思うのであります。  田中総理に対する求刑というのが、まあ俗には二月であろう、こうよく報じられております。その段階において法務大臣といたしましては、検事総長に対してその求刑について報告を求める、こういうことをお考えでしょうか。
  242. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ね事件の報告の問題でございますけれども、これは法務省に一定の基準がございまして、その基準にのっとって私が報告を承ることは当然でございますが、その基準の中に、いま仰せのようなことが入るかどうかは、実は私もまだよく存じておりませんので、御了承願いたいと思います。
  243. 大内啓伍

    ○大内委員 もちろんこれは報告して差し支えない、場合によっては、問題の重要性にかんがみて報告すべき問題になるであろう、こう思うのでありますが、法務大臣としては、基準に従えばその報告を求める、こういうことでございますか。
  244. 秦野章

    秦野国務大臣 一般的にこの報告は、一々私がああいう報告を聞きたい、こういう事件の報告を聞きたいというようなことはほとんどしないのでございまして、慣例上、下から上がってくるものを聞く。その慣例に従って、私は聞くことがあるし聞かないこともある、こういうわけでございます。
  245. 大内啓伍

    ○大内委員 秦野法務大臣は、公判中の個々の事件について指揮権発動するかどうかというようなことは明らかにすることは適当ではない、こう言われてまいりましたね。どうしてでしょう。そういうことは明らかにしてもいいんじゃないですか。というのは、秦野法務大臣もよく御存じのとおり、検察庁法第十四条、ここにその法文がございますけれども、これには「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」つまり個々の事件については、この十四条で堂々と指揮権発動することができると法律的になっていますね。おっしゃられてもいいんじゃないですか、法律的に許されていることですから。どうでしょう。
  246. 秦野章

    秦野国務大臣 法律の上では、検事総長を通じて捜査指揮ができるとあることは仰せのとおりでございます。ただ問題は、公判係属中の事件、裁判中の事件につきまして、私が指揮をするとかしないとか、そういうことは、特に指揮をする場合のお尋ねでございますけれども、大体そもそも検察庁法検事総長を通じて指揮するというようなことは、これは軽々にすべき問題じゃないのでございます。そういう意味におきまして、現に公判中でもありまするから、法務大臣の私の口から、そういうことをするんだとかなんとかというようなことは全く言うべきではない、こう考えております。
  247. 大内啓伍

    ○大内委員 たとえば、刑事訴訟法第二百五十七条によりますと、これは秦野法務大臣もよく御存じだと思いますが、第一審の判決があるまでに公訴を取り消すこともできるのですね。そして、そのこと自身についても実は指揮権発動することができるわけですね。稲葉法務大臣は、法務大臣立場から、指揮権発動しないと言っておりますよ。坂田法務大臣もそのことを了承されておりますよ。同じ法務大臣でしょう。ロッキード事件は個々の事件でしょう。同じ法務大臣が言えることを、どうしてあなただけが言えないのです。
  248. 秦野章

    秦野国務大臣 検察庁法という法律制度の運用という基本論の上に立ちますと、検事総長を通じて捜査指揮できる、こう書いてあります。しかし、私が何かいまロッキード隠しとかなんとかいろいろ世間で言われているのですけれども、私は法の適用というものは厳正でなくちゃならぬという立場で、被告人がだれであろうと、そういう立場を堅持することがいわば法の番人と言われている私の立場でございます。そういう意味におきまして申し上げておるわけでございますけれども、指揮権を絶対的に発動しないというような意味で言うと制度の否定論になるということを、論理として、一般論として申し上げているわけでございます。そういうふうに一般論立場として申し上げていることを御了解願いたいと思います。
  249. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、一般論は全然聞いておりません。このロッキード事件に関して指揮権発動しないということを、稲葉法務大臣を初め歴代の法務大臣がはっきり言っているのに、どうしてあなただけは言えないのかと言っているのです。はっきり言明してください。
  250. 秦野章

    秦野国務大臣 前の大臣がおっしゃった前後の言葉等を私もしさいに検討しておりませんけれども、私は制度論で申しておるわけでございます。そして、運用につきましては、軽々にこういう捜査指揮というようなものをやるべきではない、不当に干渉にわたるようなことはやるべきではないという考え方でございます。
  251. 大内啓伍

    ○大内委員 委員長に要求いたします。  私は、一般論として聞いているんじゃない。ロッキード事件に関して指揮権発動しないと歴代の法務大臣は言っているけれども、あなたはどうかと聞いているのです。答えていません。ちゃんと答えるように言ってください。
  252. 秦野章

    秦野国務大臣 ロッキード事件について指揮権を行使するかしないかという問題については、軽軽しく指揮すべきではないんだ、こう申し上げておる。そしてまた、絶対にしないんだと、こう言い切ってしまうことは制度を否定することになるんではないか。それなら、じゃ簡単にするのかといえば、そんなことはないんだ、容易にこんなことはできるものじゃないんだ、すべきものじゃないんだという、制度趣旨からかんがみて、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  253. 大内啓伍

    ○大内委員 困りますね。非常に貴重な時間で、私もたくさんの質問を残しておりますので、それじゃ別の聞き方をしてみましょうか。  じゃ、秦野法務大臣は、ロッキード事件に対する捜査当局の捜査全体については全幅の信頼を置いていますか。
  254. 秦野章

    秦野国務大臣 正直言って、日本の裁判ももちろんのこと、検察も国際比較から見ても大変すぐれた存在だと思っております。したがいまして、検察はその責任を全うするために大変汗をかいた努力をしておるという評価をしております。
  255. 大内啓伍

    ○大内委員 捜査当局の捜査に全幅の信頼を置いておられますかと聞いておるのです。さっき総理は、置いておるとはっきり答えられました。法務大臣はなぜ答えられないのですか。同じことを聞いているのです。  いいですか。稲葉法務大臣国会における物の言い方を御披露してみましょうか。私は、「法務大臣としても、検察当局の厳正公平な捜査処理に信頼し、いわゆる指揮権発動のごとき措置はとらないという基本的な態度を厳に堅持してまいりました。」  同じことが言えませんか。軽々に言えないのですか。あなただけが言えないのですか。その理由はなぜですか。
  256. 秦野章

    秦野国務大臣 お答えをいたします。  法務大臣の権限として、その権限を行使するかどうかという問題については、私は、私なりの識見と、見識に乏しいながらも、その立場で厳正な法の執行と適正な運用という立場で対処してまいるつもりでございます。そういう観点から、指揮権というようなものを軽々に運用するといったようなことはすべきではないという考え方でございます。
  257. 大内啓伍

    ○大内委員 同じことが繰り返されていますが、これ、総理、歴代の法務大臣は、このロッキード事件の重みというものをしっかりと踏まえて、捜査当局の厳正公正な捜査に対して信頼し、したがって指揮権発動しない。指揮権発動というのは、御存じのとおり、司法に対する唯一の接点なんです。そして、この指揮権発動する、しないということは、すぐれてその政府の政治姿勢にかかわる問題なんです。だからこそ、このロッキード事件という個々の事件にかかわりながら、歴代の法務大臣は、捜査当局の捜査に全幅の信頼を置いて指揮権発動しないとおっしゃり、総理も、その趣旨のことをお答えになっているわけでございます。しかし、法務大臣は、軽々には言えぬと、こう言うのです。そうすると、少なくともその言葉という面から見ますと、歴代の法務大臣と中曽根内閣法務大臣というのは姿勢を異にしているとしか受け取りようがないのです。これでは内閣の間に、総理法務大臣との間に食い違いが起こります。これ、どういうふうに処理されますか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 矢野委員質問に対して、指揮権発動するかと私、聞かれました。私は、いたしませんと言いましたが、総理大臣には指揮権発動の権限はないのです。矢野委員がそう言われましたからそう答えたのですけれども、指揮権発動の権限があるのは、法務大臣検事総長に対してのみあるわけで、私にはそういう権限はないのです。ですから、私の発言というものは、法務大臣に対して一般的指示権と申しますか、内閣の統一を保持するための権限がある、そういうことであると思います。  いま、稲葉法務大臣とそれから秦野法務大臣の言説の比較がありましたが、私は、両方ともそれぞれの見識において言っておられることだろうと思うのであります。それは、稲葉法務大臣は稲葉法務大臣立場から、いままでの経緯等にもかんがみて言っておられるのだろうと思いますし、秦野法務大臣は、また法の番人としての独自の見解をお持ちになっていて、現在係属中、裁判続行中の問題に対して、その絶対的な立場というものを法務大臣がとるべきものではない。そういう制度解釈の運用、そういう問題も踏まえて発言しておられるのであって、私はその両方の立場をよく理解できる。秦野法務大臣がそういう答弁をしたから指揮権発動をすると即断することは間違いであります。また、しないということも間違いであります。そういう部分はやはり制度の扱いの心得として、自分の見識において処理していることである、そう私は思っておりまして、両方とも法務大臣というものの地位の重要性にかんがみて、自分の独自の見識を示されておるのではないか、甲乙はないと私は思います。
  259. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、見識という面を議論しているのじゃないのですね。確かに総理がおっしゃるように、見識という面では甲乙がないかもしれません。しかし問題は、このロッキード事件に取り組む内閣としての決意の問題を最高の責任者、その道の最高責任者である法務大臣がはっきり明らかにするかどうかということは、これは非常に重要な問題で、見識の問題ではないのです。ですから、少なくとも前々の法務大臣がそろって捜査当局のこの捜査に全幅の信頼を置き、そして指揮権発動しないと言い、そしていま中曽根内閣法務大臣軽々にそれは言えないということは、明らかに違いがあると思うのですね。それは見識の問題じゃなくて、その問題に対する対応の仕方について明らかに違うと思うのですよ。  では、秦野法務大臣に聞きましょうか。二月か一月末かは存じませんが、その段階における田中求刑という段階において、指揮権というものの発動可能性制度として残されている、こういうふうに理解していると理解していいですか。
  260. 秦野章

    秦野国務大臣 お尋ねの点につきましては、一般的な制度としては確かにそういう制度がある。国会がおつくりになった法律にそういうことがる。あるけれども、その制度に基づく権限といいますか、そういうものを運用するというような問題になったときに、特にいま裁判係属中でもございまするし、私の口から軽々に論ずべきではない。特に指揮権などというものは、これは重大な影響もあるわけでございますから、軽々しく使うはずもないし、また軽々しく論ずること自体も慎むべきであるというような考え方を私は持っております。  なお、つけ加えさせていただくならば、検察に対して私が何か全幅の信頼がないというような意見にとられると困ると思って申し上げますけれども、私は全幅の信頼をしております。ただ、検察庁法で、検察が全く政府と離れて、裁判権の独立と同じように独立なんだということにはなっていない。それになるというと、三権分立じゃなくて四権分立になりますから。  そういう意味において、検察庁法は、内閣の一員である法務大臣検察庁法に基づいて一定の権限を与え、そして、そのことが検察に民主的な基盤を与えている、そこに調整機能と申しますか、そういうこともあろうかと思います。私は、検察一体の原則で、検察というものは裁判の独立に準じて独立しているという趣旨をよく理解をし、これに政治が不当に介入することは厳に慎まなければならない、これは当然のことであります。同時に、検察がまた民主的基盤を喪失して、四権分立のような形になって走るということについては、いささかの危険が伴うことは当然であり、それはまた議会制民主主義からいってそういうことにはなっておらぬ、これは大事なことだろうと私は思っております。
  261. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いま秦野法務大臣ロッキード事件に対する自分の確信を述べられたと思うのですね。つまり、捜査当局の捜査に全幅の信頼を置いております、こう言ったのですね。昨年の三月十八日の参議院予算委員会では、秦野議員ですね、その段階では、ロッキード事件捜査は違法であるとおっしゃったのですよ。いまおっしゃったこととこれは相当違いますね。そうすると、これは修正されたというふうに見ていいかどうか、これが一つですね。というのは、何も法務大臣という立場だけではなく、ロッキード事件捜査に対するあなたはいま確信をおっしゃった。だから、それは修正されたというふうに理解していいかどうかということが一つと、もう一つは、軽軽に言うべきではないというお話が指揮権発動について再三言われているわけですが、一つだけ確認しておきたいのですが、予想される田中総理に対する求刑に際して指揮権発動という問題は留保されているのかどうか、この二点だけは承っておきたいと思います。
  262. 秦野章

    秦野国務大臣 私が議員のときに、捜査の一部について違法論を唱えたのは事実でございます、これは議員のときに。御案内のとおり、やはり法律学も社会科学でございますから、いろいろな学説や考え方がございます。そして、議員としては権力の運用といったような問題になると、あえてやはりただすという立場もございますので、これは私は議員職責として当然であったと私自身は考えております。しかし、いまはどうかというお尋ねでございますけれども、いまは私は法務大臣にはからずもなりましたので、法務大臣というものはその発言が影響も大きいし、また法務大臣職責を尽くすということが第一の責任でございますから、その考えをいまもってやるかと言われれば、その考え方を全部私がやったらむちゃくちゃになります。そういうものではなかろう、こう考えております。  それからいま一つ指揮権の留保の問題がありましたが、指揮するという問題は、あらかじめ留保するとか留保しないとか、そういうような問題じゃございません。全くそれは、そんなようなことで理解すべきではないと私は考えております。
  263. 大内啓伍

    ○大内委員 いずれにしても、私は、国民の皆さん、これをごらんになっていて、おのずから判定が下ると思うのですよ。議員のときは明らかにロッキード事件捜査は違法である、こう言い切って、いまは全幅の信頼を置いている、こう言って、それはあのときは議員のとき、こっちは法務大臣になったとき、そんなことが通用するか。その人の政治家としての品性を疑われますよ。そういう使い方が余りにも多過ぎる。それでは国民は混乱してしまう。その誠意を疑ってしまう。私も決して皆さんの揚げ足を取ろうと思って質問しているのじゃありません。やはり中曽根内閣法務大臣というのは、これは非常に重要ですから、しかも、これから田中求刑、判決というものを迎える重要な時期に、いろいろな疑いがかかっているだけに、この問題について明確にしてほしいなと思って聞いたわけなんであります。  まだ本当は秦野法務大臣にはずいぶん聞きたいことがあるのですが、少し先を急がなければなりません。まあ、この次にやりましょう。  加藤国土庁長官、中曽根総理があなたを紹介する際に、非常にりっぱな政治家である、政策マンとしても非常にすぐれた能力を持っている。私も加藤先生とおつき合いをさせていただいて、いろいろな論議をしていく過程でそれを実感しています。あなたは相当すぐれた政策的な能力を持って、しかも非常な努力家です。私はそのことに敬意を表しています。ただ問題は、あなたに対してかけられているいろいろな灰色高官といったような疑惑、これについてやはりただすべきものはただすということが私どもの使命でございますので、お許しをいただきたいと思うのであります。  もうすでにたくさん論じられましたように、橋本、佐藤両氏に対する受託収賄事件に対する論告求刑であるとか、あるいは昭和五十三年十二月二十日の検察側の副島調書であるとか、あるいはその副島氏の法廷における供述であるとか、さらには五十一年十月十五日の稲葉法務大臣の中間報告であるとか、あるいはそれを受けての同年十一月二日の安原刑事局長の秘密会におけるいろいろな説明であるとかという中で、あなたに対してロッキード社の資金として二百万円が渡ったということがるる述べられているわけなんです。  たとえば、検察側の副島調書の内容を見ますと、こう書かれているんですね。これもしばしば引用されたところでありますが、わかりよくするために申し上げるのでありますが、副島氏が加藤六月氏に対し現金二百万円を供与した状況としまして、   政務次官室は加藤先生しかおらず同先生は議員バッジをつけておられました。 これは副島氏の供述ですよ。   私がドアを開けて中に入って行くと加藤先生も机の椅子から立って机の脇まで出て  来ました。私は、図のような位置で加藤先生に    丸紅の秘書課長の副島でございます。    この度全日空が先生に差し上げるお礼を預かってまいりました。  と言いながら風呂敷から二〇〇万円入りの封筒を取り出し、    どうぞお受取り下さい。  というと加藤先生は    これはどうも。ご苦労さん。 「御苦労さん」というのは、あなたよく言うんですね。われわれとの会談の後でも御苦労さんというのをよく言うのですが、  と言って受取って下さいました。 これがあらゆるところに言われているわけなんですね。  たとえば二階堂幹事長の場合は、そういうものを受け取ったことは一切ない、もし、それを渡したと言う人間があるなら対決をしたい、こう言っているんですね。  あなたは、その後の一身上の弁明等においても潔白だというような物の言い方をしているのですが、私はそれは抽象的な物の言い方で、はっきりしないと思うのですよ。この二百万円のお金は受け取ったのですか、受け取らないのですか。その金の趣旨は別ですよ、趣旨は論争のあるところです。この二百万円という副島氏が出したお金は受け取ったのか、受け取らなかったのか。その事実関係だけをまず明らかにしていただきましょう。
  264. 加藤六月

    加藤国務大臣 その点につきましては、昭和五十一年十一月四日のロ特ではっきり申し上げております。
  265. 大内啓伍

    ○大内委員 受け取っていないということですね。
  266. 加藤六月

    加藤国務大臣 そのとおりでございます。
  267. 大内啓伍

    ○大内委員 この副島調書というのは、裁判所において証拠として採用された調書ですよ。これは瀬戸山文部大臣、かつて法務大臣を御経験されているだけではなくて、裁判官としてのキャリアをお持ちになっている。ここにその瀬戸山先生のいろいろなコメントが出ているのですよ。これを見ますと、「わたしは裁判官だった経験からいってこれは疑いようのないことだ。判決で断を下されたのに従わない問題は本人の良識の問題ということになる。」つまり、この種の調書等が証拠として採用された場合には、これはまず事実であるというのが常識であるという趣旨のことをおっしゃられているのですよ。これは瀬戸山文部大臣に御答弁いただこうとは思いません。加藤先生、そのように裁判所が証拠として採用するということは大変な重みを持っているのですよ。副島さんは具体的にこういうふうに渡したと言っているのですが、証人として対決するということについて国務大臣云々というお話がございましたが、副島氏を参考人として呼んでみたらどうでしょうか。  私は委員長に、これは後で要求したいと思っているのですが、二階堂幹事長、それから伊藤元丸紅専務、加藤六月氏、そして副島元丸紅秘書課長、この四人を本委員会で証人として喚問することを正式に要請します。  同時に、私は、これは議院証言法の改正という問題が頭にありますので、それができないうちは、漫然と手をこまねいているわけにはいかない、したがって、副島氏を参考人としてお呼びいただいて、加藤氏はもらわないと言う、副島氏は渡したと言う、この辺の事情を本委員会で究明する必要がある。正式に要求いたします。
  268. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会で協議をいたします。
  269. 大内啓伍

    ○大内委員 そこで、法務当局にお伺いをいたしますが、私は、二階堂氏の問題に関連いたしまして、ことしの六月二十四日にいろいろとお伺いをしたのです。そのときに前田刑事局長は、供述の部分部分を裏づけるような意味での証拠、そういうものはあるのだという趣旨のことをおっしゃられているのです。  加藤氏の場合は何かそうした物的証拠はありますか。
  270. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 この前も申し上げたかと思いますけれども、先ほど御引用になりましたような副島氏の証言があるわけでございます。それがいわば直接の証拠といいますか、認定資料になるわけでございますが、それを裏づける情況証拠といいますか、間接証拠といいますか、そういうものはあるわけでございますけれども、たしかこの前も申し上げましたように、たとえば殺人で人を殺した凶器というような意味での物証というものはない。ただ、副島氏がいろいろと行動しているわけでございますから、それをその時点時点で裏づけるような証拠は間接的にはございます、こういうことでございます。
  271. 大内啓伍

    ○大内委員 それは具体的に何か言えますか。
  272. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先般の判決、これは当然のことながら橋本、佐藤両氏に対するものでございますけれども、その中で、経過としての認定と申しますか、副島証言の信用性について判示した部分の中で触れているところでもございますが、副島氏はお二人以外のところにも回っておるわけでございまして、その他の方につきましては議員会館で面会票が残っているというようなこともあるわけでございます。そういうことで、直接的ではございませんけれども、その行動の裏づけが部分部分にある、こういうことでございます。
  273. 大内啓伍

    ○大内委員 加藤六月氏が二百万円を受け取ったという問題について、いま司法当局は部分部分についてその証拠はある、あなたはそういうことはない。あなたとしてはこの問題をどういうふうに決着をつけたらいいとお考えでしょう。
  274. 加藤六月

    加藤国務大臣 本会議並びに当委員会においてもたびたび申し上げたところでございますが、最終的には国会の御決定、御判断に従いたい、こういうところでございます。
  275. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、お聞きのようなことでございまして、やはり国民というのは、こういう議論を聞いて何か割り切れない、ただ国会の決定に従いたいというだけでは割り切れない問題を残していると思うのです。私は中曽根内閣のためにも、むしろこの内閣国民に対する大きな責任として、これらの一連の問題が正しく解決されるように総理としても格段の御努力をいただきたい、この問題について御決意だけを承っておきたいと思います。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議院証言法の問題にも関係してまいると思いますが、速やかに各党間におきまして合意を成立させて、議院証言法が成立し、そして実行をされるように希望してやみません。
  277. 大内啓伍

    ○大内委員 次の問題で、憲法問題で一言だけお伺いしたいのです。というのは、これは相当午前中も議論されましたので。  中曽根総理は、憲法改正問題は政治日程にはしないということを盛んに述べられたわけなんです。私が一言という意味は、その政治日程としないという意味は、けさ来の議論を聞いておりますと、国論を分裂するような、それを助長するようなことは政治的にも適当ではない、つまり意訳すれば、国民の意識がそこまで成熟していないという意味政治日程としないということを申されたんだと思うのですね。この憲法改正問題を政治日程としないという意味は、中曽根内閣中は、こういうふうに理解していいのですか。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国民の世論の側におきまして、まだ十分熟成しているものもございませんし、また、政府・自民党側におきましても、改正案を提出するだけの準備が十分できているわけではございません。政府側においてはありませんし、自民党側は憲法調査会でいま一生懸命勉強しているという最中でございまして、主観的にも客観的にも情勢が熟しているとは思いません。そういうときに無用に国論を混乱させることは政治としては愚策である、そう考えておるからでございます。  中曽根内閣が続いている間というお話でございますが、私は、内閣がどの程度まで続くかわかりませんが、まず当分の間そういう考えは持っておらない。しかし、非常な長期政策にでもなって、国民世論が熟成して内外ともに準備でもできれば、それはそのときの国民議論をよく聞いた上で考えることである、そう思います。
  279. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、佐藤内閣のように七年八カ月も続いたときには、それは政治日程に上せることもある、そういう意味ですな。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まずそんなに続くことはないと思いますから、御心配ないと思います。
  281. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は相当議論されましたから、私が聞きたいところはその一点だけを聞きたかったのです。本当は、佐々木委員長憲法九条についてあなたに問いました、それに対して必ずしも真正面から答えられませんでしたので、これを詰めたいと思いましたが、けさ来の議論を聞いておりますと、余り個々の問題について総理大臣がいま見解を述べることは慎みたいということでございますから、押し問答になると思いますので一応やめます。  さて、そこで財政、経済の問題について質問をいたしたいと思います。  まず一つは、五十九年の赤字国債ゼロ方針、これにつきまして総理は数字的に見てきわめて困難であろう、これは大蔵大臣もそうですね、そう言いましたね。このことの意味は、五十九年度の時点で赤字国債をゼロに持っていくということは困難である、無理である、そう判断した、こういうふうに受け取っていいでしょうな。余りその辺をいろんな可能性があるという理論的な問題にずらさないで、現実の政策の選択の問題になってきておりますから、話し合いの起点を合わせたいと思いますので、明確にしていただきたいと思います。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴木前総理があの御発言をなさいましたときと今日とは、世界経済の情勢も非常に変わってまいりまして、また、日本経済の情勢も非常に冷え込んでまいっておる情勢であります。この情勢が著しく改善されれば別でございますが、しかし、いまのような冷え込み状態で低迷しているという情勢であるとするならば、これはきわめて困難になるであろう、そう考え発言した次第でございます。
  283. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、中曽根総理が行管庁長官の時代に、この問題も相当深く鈴木総理、鈴木内閣の各閣僚との間に論じてきました。したがって、私どもの所論はよく御存じだと思うのです。私どもは、良心的に考えて、どうはじいても五十九年に赤字国債をゼロにすることは不可能だ、したがって、もっと現実的な案というものを考えよということを再三にわたって提起しました。しかし、結論は残念ながらわれわれの予測どおりになったのであります。  私は、今日の事態を招いた責任一つの原因が国際的な要因にあることを否定するものではありません。しかし、この国際的な要因は、われわれから見ましても相当予見できることでありました。したがって、たとえばわが国が経済成長率を立てる場合においても、それらについての相当の予測をもって立てなければならなかったわけなんであります。しかし私は、政府のそうした予測の立て方、その後の財政運営には、明らかに失敗があったということを、この前の六月の段階でも相当論証したと思うのです。ですから、繰り返すつもりはありません。ただ、九月十六日に、私は、鈴木総理が財政非常事態宣言を発したときに、ああこれによって政府はみずから財政破綻を告白したな、こう思いました。  というのは、たとえば昨年度の経済一つとってみましても、その特徴はもうきわめて明らかであります。個人消費がだめ、設備投資がだめ、住宅建設がだめ、輸出がだめ、こういう状況の中で昨年度の経済は動いていったのです。そして、そういう段階において政府がとった措置というのは一貫して楽観論であります。河本経企庁長官は、昨年の五月の段階においては、景気は底離れしたとさえ言ったんです。そして、その楽観論というのが政府をずうっと支配してきて、政府が打った政策というのは全部不況路線なんだ。経済を引き上げる政策なんというのはどこにもとられてこなかった。  いま中小企業の皆さん、大変なんですよ。本当に困っていますよ。私もちまたへ入って中小企業の門をあけてみて、扉をあけてみて、その人たちの切実な思いなんというのは大変なものなんです。政府がここのところでやったのは何なんですか。五十六年、五十七年とかけて一兆七千億に上る増税じゃございませんか。景気を引き上げるための個人消費の引き上げなんかには何の手も打ってこなかったじゃありませんか。中小企業がどんなに苦しんだって、その融資条件の緩和すら手をつけてこなかったじゃありませんか。そして、中小企業が設備投資をやろうと思ったって、投資減税すら見送ったじゃありませんか。そして、いま出てきているのは人勧の凍結です。しかも、午前の議論で言えば、恩給も年金もこれを抑制しよう。人勧の凍結に対する影響力というのは幾らか御存じなんですか。少なくとも一兆二、三千億に上るはずです。いま政府が出している景気対策は二兆七百億です。片方において景気対策を出して、片方においてまたその景気を引っ張る政策を掲げているのが政府のやり方じゃございませんか。  私は、そういう意味で、今日の低成長に落ち込んだ原因を国際的な要因に転嫁しようというこの政府の態度が続く限り、本当の意味での財政再建や景気回復はできないと思っているのです。その認識を本当に改めていただく必要があると思うのです。あのゴールドスミスが、本当の名誉というのは、一回も失敗しないことではなくて、失敗したときに立ち上がる勇気を持つことだ、私はこれは身にしみていまの時点に当てはまると思うのです。私は、失敗は失敗として認めていただいて、だって野党だって本当に何も党利党略で景気の問題を論じているんじゃない。経済成長率の問題を論じているんじゃない。ましてわれわれはそうだ。本当に何とかして財政再建を政府にやってもらいたい、中曽根内閣においてもやってもらいたい、景気も回復してもらいたいと思うから本当のことを言い続ければ、そんなことは馬耳東風でそのときは聞き流して、そして欠陥が出ればそうでございます、私はそんなことは国民という立場から言って許されないと思うのです。  私は、少なくとも政府の財政運営を見ておりますと、また同じ過ちを繰り返すおそれがある、それを実は心配しているのでございます。というのは、いま政府がやろうとしているのは機械的なマイナスシーリングですよ。公共事業を三年横ばいでやってまいりましたけれども、さらにそれをまた続けようというのです。減税の問題も、山中通産大臣が非常な努力をされましたけれども、その規模はまだまだきわめて小さい。しかも、そのめどもまだ立っていないんです。いま個人消費を見たって、設備投資を見たって、輸出の行方を見たって、みんな悪いんですよ、皆さん。きょうだって月例報告が、十二月のものが出されてきたじゃありませんか。そういう中で政府が本当に財政再建をやろうったって、いまの物の考え方、政策の基本を正さなければ、やることはまず赤字国債の借りかえ、これがまず起こってきますよ。第二、国債整理基金への定率繰り入れの停止が起こってまいります。その次は大増税ですよ。これが政府の結論ですよ、いまのやり方を見れば。  そこで、ちょっと配ってください。私は「財政の中期見通し」というものを、いまちょっとお配りさせていただきますが、つくってみました。これは事前に大蔵省の主計局にもお渡しをいたしております。これは、いま政府が部分的にとろうとしているいろいろな方針がございますが、そういうものを前提としております。つまり、一番最初に書いてありますように、政府の行おうとしている経済、財政運営の基本を前提として、一定の予見し得る仮定のもとに、中期的な財政の姿を試算したものがこの表でございますが、経常部門における特例公債の発行規模が今後いかなる推移を示すかというものを検証することがこの資料の目的でございます。  これの一番最後にいろいろな前提が書いてありますので、一番最後のページをごらんいただきますと、国債費、これは五十七年度以降、定率繰り入れ及び発行差減額繰り入れは行わない。それから、地方交付税については、名目のGNP成長率を七・五%とし、過去の平均的な弾性値等を前提とする。あるいは、一般歳出の伸びは五十七年度補正予算と同額として、つまり一・八%以上には伸びない。税収は、これはこれからの新経済計画で恐らくこの数字がはじかれてくると思いますが、名目でGNP成長率を七・五%等々、ここに書いてある前提を基礎にいたしますと、つまりこれは政府がとるであろうという政策ですよ。これを前提にしますと、一ページの「特例公債」というところを見ていただきたいのです。これでおわかりのように、五十七年度の特例公債は七兆三千百億です。仮に五十九年ゼロという方針を、ここできわめて困難だ、無理だとあきらめて、そしてこれを六十年代の初頭、六十二年まで引き延ばしていくということに仮定いたしましても、特例公債は減らないのですよ。減らないどころじゃないのですよ。逆にふえていくのですよ。六十年度は四兆三千億、六十一年度は五兆七千九百億、六十二年度は五兆三千八百億。つまり、五十九年赤字国債発行ゼロという方針を撤回されて、そして、いま政府がとろうとしている政策でこの財政再建に当たろうとしたら、赤字国債は逆にふえていく、財政再建はできないというのがこの資料なんですよ。これはそんな恣意的な数字じゃないのですよ。事前に大蔵省の主計局にもお見せをし、もし、ここで不当なところがあったら指摘してほしいとまでわれわれは謙虚に物を言っているのですよ。私は、こういうやり方では恐らく政府の財政再建は再び失敗の方向に入ってしまう、そのことを特に大蔵大臣には真剣に考えてもらいたいし、総理も真剣に考えていただきたいと思うのであります。  そこで、もう一つの資料、定率繰り入れ。これは大蔵大臣、定率繰り入れは五十七年度以降停止するのですか。
  284. 竹下登

    ○竹下国務大臣 まず、このような試算をおまとめいただきまして、本委員会で配付される前、大蔵省の方へお示しいただきましたことに敬意を表します。  国債費の定率繰り入れ問題でございますが、いまの資料にも明らかなるごとく、昭和六十年度以降、財政負担を重くするだけで、財政再建に寄与しないと思われる、こういう御指摘でございます。そして、いまの試算を見ますと、恐らく、いまいろいろなことが言われております特定財源の一般財源化とか、そういう問題をも下敷きにしながらおつくりになっておるというふうに思ったわけであります。したがって、五十八年度についてどうするか、こういう問題になりますと、これはまさに五十八年度予算編成の過程で、五十六年度、算処理に伴いますところの国債整理基金への繰り返ししの問題、そうして五十八年度の財政事情を踏まえて検討してまいりたい、今日では答弁はその域を出ないと思っております。そうして、五十九年度以降の検討の日程につきましては、もとより具体的に申し上げる段階にはございませんが、いずれにしても、将来の公債償還の問題については、この資料ももとより参考にさせていただきます。私どもがいま作業をしておるもろもろの問題もございますが、中長期的視点に立って幅広くこれを検討してまいりたい。  で、定率繰り入れを停止すれば後年度の財政負担が大きくなるということは御議論のとおりでございますけれども、仮に定率繰り入れを実施するとして、結局その分だけ繰り入れのための特例公債を増発しなければならない、こういうことになりますし、これに伴う利払い、償還のための後年度財政負担が同様に増大する、こういうことにもなりますので、まさに御指摘の筋を踏まえながら五十八年度予算編成の過程において慎重に検討させていただきたい、このように考えております。
  285. 大内啓伍

    ○大内委員 もう一つの資料で、「定率繰入等の停止に伴う財政事情の展望」というのが書いてあります。  大蔵大臣は、これからの定率繰り入れを停止するかどうかまだ明らかではないとおっしゃっておりますが、仮に定率繰り入れを停止した場合、これがこの一ページに出ておりますが、その場合、実は昭和六十年度から余裕金の残高はゼロになりまして、その段階からは予算の繰り入れが必要になるわけです。そして、その額は、六十年度から六十二年度にかけて、この三年間に十一兆八千六百億円にも達することになるのです。したがって、これらの年度に大きな財政負担がかかりまして、予算編成できないと思いますよ。この三カ年に十一兆八千六百億円も予算繰り入れが必要になるわけでございますから。定率繰り入れをやった場合、逆に定率繰り入れをやった場合ですよ。やった場合は、五十七年度から六十二年度までの六年間に実は十兆五千四百億ですね、ここに書いてありますように。一兆三千億円余り減少するだけではなくて、六十年度から六十二年度の要繰入額というのは大幅に減少しますね。  つまり、このことの意味することは、もう言うまでもないと思うのですが、定率の繰り入れの停止というのは、目先の国の財政の苦しさというのは確かにしのげる。しかし、それは後年度、つまり六十一年から六十二年度にかけて負担を先送りすることであって、基本的には財政再建に全く寄与しない。これが実は差し上げた資料なんでございます。というのは、この方針を政府が選択する余地がきわめて高いのですよ。ですから、私はあえてこういう表をつくって申し上げているわけなんです。したがって、私は大蔵大臣に、この定率繰り入れの停止というのはぜひもうやらないようにお願いをしたいのですが、いかがですか。
  286. 竹下登

    ○竹下国務大臣 これは財政審においてももろもろの議論があったことは承知いたしておりますが、先ほど申し述べましたように、今後の問題については十分検討させていただきたいと思います。
  287. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、前後しますけれども、先ほどの「財政の中期見通し」で、いま政府がとろうとしているような、たとえば定率繰り入れの停止等をやった場合には赤字国債が六十二年度にかけて逆にふえるということをここで立証したのですが、実は特例公債はこのケースよりかもっとふえるケースの方が多いのですよ。というのは、たとえば五十九年度以降の一般歳出が、五十七年度当初の予算ベースの伸び率、つまり一・八%ですね、以下に抑制できない場合は特例公債はまたふえちゃうんです。それからもう一つは、名目のGNPが七・五%達成ができない、あるいは租税弾性値が最近のようにぐうっと下がってきて一・二%にまでいかないという場合には赤字国債はふえちゃう。それから、投資部門の税収全額が、これはいま一般経常部門へ編入したいという検討がされているそうですが、これは大変困ったことではありますが、もし、そういうようなことも仮にできないというようなことになると、赤字国債はもっとふえるんですよ。総理、財政再建というのはこのぐらい厳しい状況にあるのですよ。そのことをぜひ厳しく認識していただきたいのですよ。  大蔵大臣、特例債の借りかえはやるのですか。
  288. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いま特例債の借りかえ問題という問題につきましては、本日の本会議でも御答弁を申し上げたわけでございますけれども、大量償還が始まりますのは六十年度以降でありまして、当面、いま考えておりますのは、とにもかくにもこの新規の財源調達手段としての特例公債の縮減にまず全力を挙げることが先決だ、こういう基本的な考えでこれに当たっております。  そこで、昭和五十年度の国会答弁、それから法律の規定によりまして五十一年から五十七年度、借りかえを行わないこととされておりますので、これを尊重していきたいというふうに考えております。やはり将来の公債償還の問題につきましては、先ほど来申しましたように、今後時間をかけて各方面の意見を聞いて、幅広く検討してまいらなければならない問題であるというふうに考えております。
  289. 大内啓伍

    ○大内委員 私が冒頭に申し上げたとおり、いまの政府の財政運営というのは縮小均衡型なんですよ。つまり、家計に赤字が発生した場合にこれをなくそうという対策を日本の国の財政に当てはめようとしているんですよ。そうでしょう。みんな縮小均衡型の政策しか出されてないでしょう。ですから、この政策路線をとる限り、いま大蔵大臣が考えてない、考えてないと言った定率繰り入れの停止の問題も、あるいはその赤字国債の借りかえの問題もいやがおうでもやる方向に追い込まれるじゃないかと言っているんですよ。そして、行き着く先は五十九年度から大増税しかないじゃないか、こう言っているんです。ですから、この辺でこの縮小均衡型の財政運営を転換して、もっと拡大均衡型に移行する必要がある、でなければ日本の財政なんか立ち直るはずがないということをいま警告しているわけなんです。  そこで、増税なき財政再建、こう言っているわけですね。私の見ている範囲では、これはずるずるいくと大増税に入っていく路線になっている。ですから、いま警告を発して、何とかその物の考え方を変えてもらいたいな、こう言っているんですよ。  そこで、きのうも議論がございましたけれども、臨調は、増税なき財政再建という問題についてこういう一つの条件を出していますね。これは総理もよく御存じのことであります。「租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」これは総理もお守りになるということをお話しでございましたが、これはどうなんでしょうか。減税等を仮にやる、したがって租税負担率がそれによって上昇しない、その場合には新規増税をしても構わない、こういう考え方ですか、大蔵大臣。
  290. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる臨調三次答申のことにつきましては、いま御指摘なさいましたが、整理するために簡単でございますので読み上げますならば、「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率(対国民所得比)の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」こう書かれてあることを、いま御指摘なさいました問題を整理したわけであります。  そこで、この増税なき財政再建というものは、この臨調答申の意味するところは、まさに当面の方策、こういうことに受け取れるわけでございますし、現にこの答申の中でも中長期的には租税負担と社会保障負担の合計の負担率は現状より上昇することとならざるを得ないということを認められておるわけでございます。しかし、認められておるからそうするという意味で申し上げたわけではございません。  そこで、たとえば、そういう意味におきましては単なる直間比率の見直しというようなことは増税にはならない、こういうふうにも読み取れるわけでございます。  ただ、租税負担率の問題でございますけれども、国民所得が分母になって国税収入と地方税収入とを足したものが分子になるというときに、やはり国民所得という分母の動き方によって租税負担率は違ってまいりますので、私も、昨日御指摘を受けましたので、その租税負担率というものをどこで確定すべき問題であろうかということは非常に困難な問題ではないかな、だから租税負担率というものを確定して、いわゆる具体的な負担水準としてそれを設定するということはかなりむずかしい問題があるなというような感じがしたわけでありますが、租税負担率の上昇をもたらすような措置を基本的にはとらないということでございますので、公平適正化の観点から、やはりそれは大幅な上昇をもたらさないようなことは念頭に置いていかなければならぬではないかというような考え方で、実はこの大内さんの資料に基づく御質問に対して私なりに頭の整理をしてみたわけでありますが、確かに租税負担率というものの厳密なとり方、分母が大変変わってまいりますだけにそれを確定することはむずかしいが、その中における直間比率の見直しとかいうようなことは念頭に置いてしかるべきことではないかというふうに考えております。
  291. 大内啓伍

    ○大内委員 租税負担率は、御存じのとおり、五十七年度当初見通しでは二五・四%ですね。しかし、現状は二五%ぐらいです。臨調の答申が言っておりますのは、やはりその現状の租税負担率というものを基準としていると思いますよ。ですから、二五%の現状の租税負担率を引き上げない、そういうような新たな税制上の措置というものは基本的にとってはならぬ、こう言っているわけでしょう。ですから、その租税負担率という問題は、現状の大体二五%程度、これ以上は引き上げない、それが臨調の方針なんじゃないのですか。それは守られますか。
  292. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私も恐らく観念的には現状ということはあるのではないかというふうな感じはいたします。それから一方、見直しの対象であるという御議論もいただいております例の七カ年計画における二六ヵ二分の一、こういうものが、私どもがかつて大蔵大臣をしておりました当時の念頭に非常にございますので、分母が変わりますだけに、租税負担率をどこで確定さすかということをここで明確に定義づけすることにはちゅうちょを感じております。
  293. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、租税負担率そのものがよくわからぬということになりますと、これはいろいろな増税のやり方がありますね。臨調が求めているものは、現状程度の租税負担率というものを常識的に言っているのであって、私も臨調の人に確かめましたよ。ですから、いまは二五%程度ということなんですよ。ただ、たとえばこれはきょうの朝刊ですけれども、大蔵省の首脳は拡大解釈して、増税なきとは、大型間接税を念頭に置かないという意味だ、したがって前回の一般消費税、つまり昭和五十四年に国会で決議された一般消費税と同じものでなければ、大型間接税を導入して直間比率を変更することは増税なしの政府公約には反しないのだということを大蔵省の首脳が述べているという大きな記事が出ていますよね。これはやはり国民に対しても相当関心を呼んでおります。  増税なきということを一回整理してくれませんか。大蔵大臣、きのう来も言っていますが、この臨調の答申を踏まえてそれをある程度実行しよう、そして増税なき再建に入ろうという場合に、その増税なきということをびしっと整理してここで定義してくれませんか。
  294. 竹下登

    ○竹下国務大臣 きょうの朝刊に出ました問題の御指摘もございました。これは私の記者懇談の記事ではないかと思いますので、私の責任においてその間の事情を簡単に御説明を申し上げます。  私が昭和五十四年、五十五年、大蔵大臣をしておりました当時、いわゆる一般消費税(仮称)、この手法を財政再建には用いない、歳入歳出両面から厳しく洗い直して、各方面の意見を聞きながらこれに当たる、こういう趣旨説明をすると同時に、消費一般にかかる税制そのものを否定するものではありません、こういうのを繰り返して答弁をしておりました。その国会決議の説明を私が歴史的経過に基づいてやりましたのがそういう観測となって出たのではないかな、こういう感じがいたしております。しかし、これは報道の自由のことでございますので、そして、ただ記者会見でございませんから首脳となっておりますが、その首脳が私を指しておるとすれば、そのような発言がもとになったのではなかろうかと思っております。  したがって、きのう増税なき財政再建、こういうことにつきまして総理からそれぞれお答えがございました。「「増税なき財政再建」とは、当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、ということを意味している。」これは私もこれを参考にすべきものである。ただ、ここでいわゆる租税負担率とはというような議論になりますと、正確に申し上げる準備を今日いたしておりません。時間をおかしいただきたいと思います。
  295. 大内啓伍

    ○大内委員 それじゃ、これからちょっと税の項目を述べてみますので、これは検討するとか、それは検討の対象とはしないとか、明言できる面があったらできるだけはっきり言ってもらいたいのです。  いまいろいろな検討の対象になっているマル優の廃止という問題については、大蔵大臣は検討するのですか。
  296. 竹下登

    ○竹下国務大臣 マル優の廃止問題につきましては、税制調査会におきましても会長にレポートが出され、そして臨調の、部会は忘れましたが、にもそういうレポートが配付されたという事実は聞いております。ただ、何分この対象は国民の大変な数に当たることでございますので、いま直ちに検討をするという段階にはまだございません。
  297. 大内啓伍

    ○大内委員 たとえば減税の段階で電話利用税というものが出ましたね。それから、たとえば広告税、ギャンブル税、これらはどうですか。
  298. 竹下登

    ○竹下国務大臣 減税小委員会の中で議論された税目というものを私も報告を受けております。その中にはすでに政府税調において議論をされたものもございます。しかし、詳細一つ一つについては、私は正確を期するために事務当局から答弁さすことが正しかろうと思いますので、そのようなお許しをいただきたいと思います。
  299. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 いま御指摘になりました三つの税目でございますが、最初のいわゆる電話利用税は、先ほどから御議論になっております衆議院の大蔵委員会の小委員会で議論されております問題でございますので、現段階では税制当局としてこの税についての是非の問題についての論評は差し控えさせていただきたいと思います。  それから、いわゆる広告税、ギャンブル税につきましては、ただいま大蔵大臣の答弁にもございましたように、過去、税制調査会において長年検討項目として議論されてまいりました税目でございますが、政府の税制調査会におきましてもいろいろな意見がございまして、現在まではっきりとした答申のようなかっこうで結論をいただいておりません。したがいまして、中長期的に今後の検討課題の税目ではあるにいたしましても、さしあたり五十八年度これを取り上げるかどうかということにつきましてはなお慎重な検討を要する問題であると考えております。
  300. 大内啓伍

    ○大内委員 大蔵大臣、増税なき財政再建、これは期間はどのくらいなのです。つまり、この臨調が要求している増税なきという一つの原則を貫く、内容の問題はいろいろいま議論しましたけれども、これはいつまでです。つまり赤字国債脱却までですか。
  301. 竹下登

    ○竹下国務大臣 増税なき財政再建、一番いけないのは財政再建なき増税、これは一番いけないと思います。それから、増税ある財政再建、これももとよりいけない、いままでの方針に反します。  そこで、増税なき財政再建、この増税なき財政再建という定義につきましては、きのう申し上げてみたわけでございますけれども、さて、その当面の目標というものがとりあえず五十九年度赤字国債脱却、こういうことにあったことは事実でございます。そうすると、五十九年度赤字国債脱却の期間までが一つの設定された増税なき財政再建の期間として位置づけされておったものではないか、私はこういうふうに考えております。  ただ、この問題そのものが困難になりましたと明確に総理からもまた大蔵大臣としてもお答えをいたしておりますので、したがって、いわゆる財政再建の定義からいたしまして、理念としてはやはり貫くべきものでございますが、これはことしの総理の説示にもございましたように、まず全く昨年同額の、一般会計の伸び率ゼロにするという考え方、そして、それに伴う歳入につきましても、税外収入等を十分に考え、さらに、いままでぜい肉を切るという言葉でいろいろやってきましたものを、結局総理が使っておられます言葉の中に財政改革という言葉が使われております。その財政改革とは、要は歳出構造の見直しではないか。すなわち国が受け持つべき分野、あるいは地方自治体が受け持つべき分野、企業の受け持つべき分野、個人の受け持つべき分野、それらの仕分けをはっきり見直して、それに伴いまた歳入構造にも見直しをする時期が来ておる、そういう努力を重ねた上で、なおかつ現行の制度の中でどうしてもこの水準は守らなければならないという前提の上に立って初めて受益と負担との関係において国民の選択を求めていく、こういう手法の上でないと私は安易な増税など考えるべきでない、やはりいつまでということは別として、理念としてこれは堅持していくべき課題であるというふうに考えております。
  302. 大内啓伍

    ○大内委員 じゃ、総理に伺いましょう。  増税なき財政再建で、増税なき、これは内容はいろいろこれからあると思いますが、これを貫こうとする期間はいつまでです。いま大蔵大臣は、五十九年度が一応の物の考え方であるかのようにおっしゃいましたが、五十九年の赤字国債ゼロというのは現実に無理だということで崩れたわけでしょう。ですから、その財政再建期間というものを外にもっと延長しようというのでしょう。しなきゃできないでしょう、現実の問題として。それが財政再建期間でしょう。ですから、つまり赤字国債からの脱却ができるまでは財政再建期間と考えているかどうかということをお伺いしているのです。これはやはり総理にお答えいただく問題であります。
  303. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 臨調答申には、正確な発言ではございませんが、たしか、当面あるいは当分という言葉があったと思いますが、増税なき財政再建でいく。そして、増税なき財政再建とは、租税負担率、GNPに対する租税負担率と括弧してありましたが、租税負担率の上昇をもたらさない範囲内で、税目、歳入構造の内部の模様がえとかそういうものは認めるような表現になっておりまして、租税負担率の上昇をもたらさない範囲内においてそれは考慮されてしかるべき、そういう表現が出ております。  私たちは、臨時行政調査会の答申を最大限に尊重して行うという考えを公にしておりまして、この臨調のお言葉をどういうふうに解釈してやっていくか。まず当面五十八年度予算についてはこれを貫く。その中には、いわゆる大型の新税というようなものは念頭に置かない。租税特別措置の見直しとかそういう程度に、いままでやっているような手直しは認められる、そういうような考え方。あるいは新税は設けない、五十八年度におきましては。そういうような考えを貫いて、ともかく五十八年は思い切った歳出削減を敢行してやり抜いてみせる。そうして、その後、五十八年度の財政運営、経済情勢等を見通しながら、次の段階を考える。  実は日本の財政状況は、公債の負担、ただいま大内さんが申されましたような将来の償還分等を考えますと、相当大きい国債費を年々計上しなければならぬ形になっておりまして、その前途を考えるとそう甘いものではないのであります。だといって、国民負担というものもまた考えていかなければなりません。そういう中において来年度は財政運営、経済運営を行いながら、どういう選択をわれわれはするかという段階に入る可能性もある、そう見ておるのであります。正直に申し上げるとそういうところだと思います。
  304. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、五十九年度の段階においては大型新税の導入あり得る、こういう結論になりますね。その可能性があるわけですか。
  305. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大型新税の導入可能性あり得るとは申しません。租税負担というものを、国民負担というものをできるだけ軽くして、そして、できるだけ歳出カット、歳出削減によって財政運営をやっていこうというのが基本方針でございますから、いまそのように明言することはできないと思っております。
  306. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、いまの財政事情からして、具体的に財政再建をする政策が示されておりませんので、わざわざ資料をつくって、いまのままで政府がとろうとしている政策をとれば赤字国債はどんどんふえていきますよ、またさらに、その予定のものすらもっとふえていく可能性がありますよ、したがって、そこからとられる政策というのは、五十八年度は確かに臨調が言うような増税なきという方針が守られても、参議院選挙が済んだ途端に大増税が打たれてくるのではないかということを国民の一人一人が心配していると思いますよ。  そういうことについて、政府としてはできるだけそういう方式をとらないで、こういう財政再建方針をとりたいのだということを示すことが中曽根内閣の大きな責任であるし、それをやろうとすれば、いまのような縮小均衡の財政運営じゃだめだ、拡大均衡への財政運営に転換しなければだめだ、私はこう申し上げているわけなんです。  そして、その拡大均衡への財政運営をどうやるかという問題は、第一に、行政改革ですよ。これを徹底してやってみる。そして、ここからどのくらいの財源を生み出せるか最大限努力をしてみる。しかし、全然努力なんかしてないでしょう。たとえば公務員の定員削減、何かやりましたか。やってないでしょう。  私はここに数字を持っておりますが、昭和四十三年から昭和五十七年、つまりことしまでに十五万一千六百七十人削減しています。ところが、同じ期間にふえた者は十四万一千六十八人。差し引き減った者はわずかに一万人です。いいですか。過去十五年間にですよ。過去十五年間に減らした公務員の数はたった一万人です。  私は東京都を調べてみました。これは東京都の財務局長からいま持ってきたものです。あの鈴木都知事が実現して、あの当時は赤字は一千十二億あったのですよ。そして三年六カ月、その赤字は縮小し、五十六年度決算においては黒字になったのですよ。三十一億円の黒字を発生した。なぜでしょう。職員の定数削減を生首を切らずして円滑にやった。あの人は三人の副知事を二人に減らし、局長の数を減らし、部課長の数を減らし、自分の給料を半分にすることから手をつけたのですよ。そして、この三年六カ月の間にだれの生首も飛ばさずに純減で九千二百五十五人やった。そして、黒字に転換したのですよ。並み並みならぬ努力ですよ。  私はいまこれを計算してみますと、一般職の公務員の皆さんは五十万六千五百六人ですよ。そして、このうち毎年退職されていく方が二万一千人から二万四千人ございます。もしこの半分に補充をとどめたら、毎年一万一千三百人、つまり五年間で五万五千人以上の人々が、だれの生活を脅かすことなく縮減することができるのですよ。そういうことを一つもやりもしないで、行革には取り組む、一生懸命やる。補助金一つとったって、いままでなかなか切れやしない。いままでいろいろな局とか部とか縮小をやってみたけれども、特殊法人も含めてほとんど行革なんか進んじゃいませんよ。言いわけばかりの数字ばかり申している。ですから、少なくとも東京都でやったことが国でできないはずはない。これは私は総理の決意の問題だと思う。われわれは、政治倫理の確立にしてもあるいは行革にしても、本当にそれが働いている人々を苦しめることなく行革が遂行できる方法を一生懸命皆さんに提言しているのですよ。一つでもいいから実行したらどうですか。公務員の補充を半分にするという提案について総理はどうお考えでしょう。これは現実的にできますよ。
  307. 齋藤邦吉

    ○齋藤国務大臣 お答えをいたしますが、公務員の定数削減というのは私は行革の重要な課題だと考えております。そこで、昭和四十三年から五十六年まで、先ほどお話しのように十五万人削減をいたしましたが、新規需要が十四万人ありますためにネット減一万人になった、これはそのとおりでございます。  そこで、こういう状態ではやはり申しわけありませんので、さらに強化しようというので、実は昨年、五十七年から六十一年度までの間に五%削減という方針を決めて、五十七年度それぞれの削減を行い、さらに五十八年度において所要の削減を行っていくということでございます。大内委員の仰せになりましたような新規採用をみんな半分ぐらいやめろとかなんとかという御意見、私はそういう意見ももっともだと思いますよ。  しかしながら、御承知のように、各省庁には削る一方で別な行政需要があるわけでございます。病院とかあるいは医学部の病院とか、そういう新規需要というものを勘案し、削るものは削る、必要な行政需要のものはこれを満たすということによって定数管理をやっていくというのが私はより現実的じゃないだろうか。削りっ放しでいったら、これはもう病院でも何でも看護婦さんたちが足りない足りないになってしまいます。大学の病院が来年はたくさん新しくできてきます。三つ病院ができるのです。そういうこともありますので、たとえば食糧管理事務所その他において定数はどんどん切っていく。しかし、一方において、行政需要は新しくある。それとにらみ合わせながら定数管理をやっていくというのが私はより現実的ではないだろうか、こういうふうに考えておりまして、昨年から今後五年間に五%の削減を強化していこう、こういう考えで進んでおるわけでございます。
  308. 大内啓伍

    ○大内委員 私は言いわけでなくて、だって東京都だって本当に苦しい思いしてやったのですよ。東京都だっていろいろな需要があってふえているところはふえているのですよ。行政改革というのはふえているところを減らしてむだなところを削るのでしょう。そして、公務員の削減についても相当の実を上げなければ実際には行革にはならぬということはわかり切っているのでしょう。ふえるところがふえる、そんなことばあたりまえです。そんなこと言ったら言いわけじゃないですか。だから、ちゃんとやってください。総理、御決意だけ聞いておきましょう。
  309. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行革は最大の政治課題でございますから、一生懸命やりたいと思っております。  いま東京都のお話が出ましたが、鈴木知事は実によくやっておると思います。しかし、東京は美濃部さん時代に余りにも水ぶくれが大き過ぎたのであります。もう局長あるいは局長に準ずる者を数多くふやし過ぎまして、それで鈴木知事がいま大なたをふるっているところでございますが、いま、ふるった状態でも各府県の平均的水準から見ればまだ東京はふくれている、そういう状況にあると私は報告を受けておりました。給与においてもやや似たところがあるのであります。そういう点からいたしますと、鈴木知事はよくやったとは思いますが、もっとがんばってもらいたい、一般の水準にまでがんばって早く近づけていただきたい、私ら中央で見ておりますとそういう気持ちもいたすのでございます。しかし、中央政府は中央政府としてみずから範を示して、率先してやらなければならぬことが多くございますから、一生懸命努力してまいるつもりでおります。
  310. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、もうちょっと鈴木都政がんばれと言う前に、やはり中央がそれ以上の範を示して言うなら相当の説得力を持つと思うのです。しかし、いま私は公務員の削減についても具体的に提案してみたのです。これをやりますと五年間で二千六百億節約できます。そして、それは決して行政水準を落とすということにはならないという計算です。ですから、さらに一層検討をしていただきたいなと思うのです。  中曽根総理、これ以上経済の問題に突っ込んでいけませんので、まだたくさん聞きたいことはございました。臨調の答申でも決して人事院勧告を凍結せよなどということは言ってないわけです。そうじゃなくて、臨調の答申が言っておりますのは、ここに臨調の答申を持ってきておりますけれども、人事院勧告等の実施に伴う総経費の膨張は、新規採用の抑制、事務・事業の整理、民間委託、定員削減の励行、定員増加をもたらす施策の抑制といったようなことが具体的に必要ですよ、これを先行させよということを言っているのであって、私は行革に名をかりて全く次元の違う人勧の凍結などということはもってのほかだと思うのですよ。働いている人にはやはりちゃんとした給料を差し上げて、そして総人件費という面でいま私が申し上げたようなことを実行することによってこれを削減していくということが臨調が期待している答申の中身だと思うのです。  そこで、いまのような状態では財政再建できないと私は思いますよ。本当にいまのような考え方じゃできないと思いますよ。ですから、ここでさっき申し上げたような言いわけでない行政改革をしっかりやっていただくということが一つと、それから来年度やはり相当の規模の減税を考えていただくということが一つ、この中にはもちろん中小企業の投資減税や中小企業の承継税制という問題も含めてほしいと思っております。そして、三つ目には、公共投資を機械的にただ抑制するというような考え方じゃなくて、もっと公共投資についても増大していく。私は、そういう考え方をとることなくして財政再建というのはできるものではない、つまり、そういう意味で拡大均衡路線というものを真剣に総理としても考えてほしい、こう思っておりますが、それはいかがでしょう。
  311. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 拡大均衡路線をとるというのも、一つの御見識であると思います。われわれもそれは十分検討に値すると思っておりますが、問題は財源なのであります。そういう拡大均衡路線をとろうとする場合に、赤字公債あるいは建設公債に過分に頼ったという状態では、次に大きなツケが国民に回ってくるわけであり、いまですら九十数兆という膨大な公債の国債費に悩んでおるという状態がさらに累積していきましたら、予算も組めなくなるという状態が将来参ってくるわけでございます。  問題は、拡大均衡をみんなとりたいと思っていると思うのです。世界経済全般を見ても、縮小再均衡の方にいくことを防止しなければならぬという課題を各国ともにしょっていると思うのです。アメリカでも同じであるし、イギリスでも日本でも同じ状況なんだ。しかし、問題は財源がどこにあるかという問題なのであります。国債の国民所得に対する比率等を見ますと、日本はもう異常に多い国にいまなってきております。そういう面から、じゃ財源は赤字国債以外何があるんだろうか、そういう面についていろいろ御教示願えれば、われわれも真剣に検討して、そういうことも考えてみたいと思っておるんです。われわれもいまその財源に悩んでおる。いま衆議院におきまして、減税をやろうというお考えから各党が相当長い間御検討いただいておるわけですが、財源問題で行き詰まっておるわけでございます。やはりいま財源でみんな頭を悩まされておるという状態でございますので、そういう点についていい知恵があればおかしいただければありがたいと思うのでございます。
  312. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、政府の五十九年度赤字国債ゼロが破れて、財政再建なき増税、さっき竹下大蔵大臣がおっしゃられた方向をいま現実に歩んできたと思うのです。そして、その議論の中心は、いつでも財源がない財源がないという、そういう消極的な考え方で実はこういう結果を招いているのです。ですから、私はきょうは財源論を本当はやりたいと思っておりましたが、まだ実は外交、防衛問題で重要な問題を残しておりますので、これにきょうは残念ながら入れません。したがって、これからも建設的な提案をしたいと思いますので、どうか経済が拡大均衡の方向に向かうような、そういう積極的な明るい内閣の姿勢をひとつ今後とも示していただきたいと思うのです。  そういう意味では、たとえば十月八日の総合経済対策も、これほとんど役に立ちませんよ、悪いけれども。というのは、たとえば公共事業の四千億、これ債務負担行為でしょう。その補助金を除いた部分は地方公共団体が負担するんでしょう。それから、地方の単独事業の五千億追加と言っておりますが、いま地方で五千億の単独事業を追加してやる能力ありますか。中小企業の設備投資が悪いから何とかひとつ景気対策をやってやろうといったって、投資減税を考えていないんでしょう。融資枠の若干の拡大だけでしょう。融資条件は緩和は図られてないでしょう、ほとんど。しかも、景気の最大の問題である個人消費をどうやって刺激するかという政策はゼロでしょう。これで二兆円出したってちっとも効きませんよ。ですから、もう少し内容を吟味して、もっと責任を感じて景気対策を出してくださいよ。そのことを最後に要望して、次の問題に移りたいと思うのです。  そこで、防衛問題でございますが、これは日米首脳会談も控えておりますから、総理にとっても非常に関心事だと思うのです。私は、防衛費というのは、一つは、やはり財政事情、他の政策とのバランス、憲法一つの限界、国民世論、さらには同盟国の意向といったようなものを総合判断して出さなければならぬ問題だと思うのです。日本だけのセルフィッシュネスは許されないと思うのです。しかし同時に、日本の自主的な立場も踏まえなければならぬ。非常にむずかしい問題です。  そして、この二、三年来を見ておりますと、大体七%台の防衛費というのは確保されてきた。そして、来年度についても七・三%という水準が出ている。これを削った方がいいと総理は思っておられますか。それとも七%台は対米関係からいっても重要な水準だと思っておられますか、端的にお答えいただきたいのです。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 対米関係から見ると、守ってあげたい線であります。
  314. 大内啓伍

    ○大内委員 そのくらいでとめておきましょうか。つまりニュアンスが非常に出ているのでね。非常にニュアンスが出ているのですな。それ以上つくのはやぼですか。  恐らく総理の意向としては、やっぱり七%程度は確保しなければアメリカに行くのも行きにくいなというような、そんなこそくな意味ではなくて、やっぱり日本の自主的な防衛力整備という面から見ればそのくらいは必要であろう、こういうふうに恐らく思われての発言でしょうな。違うというなら後で否定していただけばいいです。  問題は五六中業と一%の問題ですけれども、ここに防衛庁が出した資料があるのです。この資料でいきますと、五六中業はミニマムで十五兆六千億、マキシマムで十六兆四千億、これを均等に六十二年まで引いてみますと、防衛庁が出した数字でいきまして――これは日本の経済の成長率と関係がありますね。これは将来のことでございますから、名目成長率で掛ける必要はない、実質でいいですね。そうしますと、五十九年でミニマムの段階でも一%を超えますよ、前提は経済の成長率を四%に抑えてみても。三%台ならまた多少は変化がありますが、日本の経済の潜在成長力から見て恐らく政府としても四%程度のものは目指すでしょう。新経済計画は恐らく名目で七・五%、そして実質で四%から四・二%程度きっと目指すでしょう。当たらずとも遠からず。したがって、五六中業をやろうと思えば一%を超えますよ。これはやむを得ないと総理はお考えですか。
  315. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 ただいま御指摘のように、確かに防衛費は、財政事情とかあるいは国民理解度とかあるいは防衛体制のあり方とかないしは同盟国との関係、こういったものを配慮しなければならぬことは事実でございます。  それから、先生御存じのように、五六中業に関してでございますが、正面整備の中でも、たとえば耐用命数だとかSAM-Xだとか、いまだ詰まらない幾つかの問題もございますけれども、その中にあって、陸海空自衛隊の正面整備に関する関係に関してだけは相当詳細な見積もりも行うことはできたわけでございます。ただし、防衛費はこれだけでございませんで、当然そのほかに後方関係費だとかあるいは人件糧食費などがあるわけでございますが、これにつきましては、たとえば円・ドル関係だとか石油価格だとかあるいは人件費高騰の度合いだとか、なかなかはかり切れない問題もございます。一方、経済成長率に関してでございますが、GNPの状態は、当然のことでございますけれども、そのときどきの経済の状況によって変化する。したがって、こういう形ででき上がっておる一%の問題でございますけれども、防衛庁といたしましては、五十一年十一月五日付の閣議決定については最大限今後とも努力いたしていきたい。当面この一%の問題につきましては、これを変える必要があるというようなことは考えておらないのでございますが、先ほど申し上げましたような形で、今後の見通しにつきまして、特に五十九年度以降というようなことになりますと、私どもはいまこの段階では、これは予算編成時期において決まることであって、何ともお答えのしょうがない、こういう状態でございます。
  316. 大内啓伍

    ○大内委員 これはかつて閣議決定をした重要な内閣としての政治方針の問題なんです。ですから、私は防衛庁長官に見通しの問題を聞いているのではなくて、総理として――いまいろいろおっしゃっておりましたけれども、防衛庁が出している数字でも、これは普通に、つまり常識的に考えられる経済成長率、私は実質で四%と言っているのです。そして、防衛庁が必要だと言っている五六中業の実行のマキシマムとミニマムの数字というものを当てはめてみて、五十九年度で間違いなく一%をミニマムの場合でも飛び越しますよ。したがって、この方針はたとえば来年度までは一%を堅持すると言い切ったっていいでしょう、それは当面国民をなだめる意味で。しかし、それは内閣としての方針を将来に向かって国民理解させるということに何ら役立つものではない。むしろ疑心を起こさせる。  私が聞きたいのは、一%というこの基準は、私の調査では過去十六年間にわたって防衛費は一%を超えていますよ。しかし、それが五十一年から一つ基準になった、そして、それがまた防衛費の伸び率と経済の成長率とのこの競争の中で五十九年にはまず間違いなく破られる。こういう状況の中で国民が、一%という歯止めが崩れてきた場合に、一体諸外国から言われている、あるいは国内から心配されている軍事大国にはならないという保証を中曽根総理はどうやってわれわれに与えるのであろうかということを心配して聞いているのですよ。私は一%を超えるのが悪いとか、そういう議論をしようとしているのではない。そういう日本が置かれた趨勢、日本がなさなければならない自主的な独立国家としての選択、さらには同盟国との間の責任分担という面から見て、こういう回避できない問題について総理が率直に国民の皆さんに話しかけるということがわかりやすい政治の根本じゃないか、こう申し上げているのですよ。これは内閣総理大臣政治方針にかかわります。いかがでしょう。
  317. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政府は「防衛計画の大綱」を、これを実現しようと考えておるわけで、これは前内閣からも同様でございます。その実現の一過程として五六中業というような作業もしたわけでございます。また、三木内閣の、当座でございましたか、一%というメルクマールをつくったことも事実でございますが、しかし、この「防衛計画の大綱」を達成するということが防衛政策のいま中心線にあるのでございまして、そのために一生懸命努力しておるところであります。  しかしながら、国民生活の関係考え、あるいは他の諸政策とのバランス等も考えながらその割り振りをどういう時間順にやっていくかという点でいままで努力をしてきて、財政当局としてもかなり苦しい算段をしてきておると思うのです。予算外国庫負担契約を膨大なものにして後年度に現金支払いを延ばしてきているというのは、私の見るところではそういう苦労の一つのあらわれではないかと思うのです。それももう限度は来つつある状態であると思います。しかし、日本の防衛を考え、あるいは諸外国との関係、特にアメリカやNATO諸国がやっておる防衛努力というものを見ると、日本の防衛努力が過去において十分であったとは言えない面があると私は率直に考えます。そういう面から、いまのような段階にだんだんだんだん詰まってまいりました現状からいたしましても、できるだけ国民生活あるいは他のバランス等も考えながら防衛政策を考えていかなければならぬことは事実でありますが、その努力にもある限界がある時期に来ればやむを得ない、そう思うわけであります。  一%というのはたしか三木内閣のころできた当面の政策というふうに閣議でも決めておる状態でございまして、その後いろいろ諸般の情勢変化というものが出てくれば、最大限の努力をして、しかも、それが満たされないという状態になればそれまたやむを得ないし、そのときには国民皆様方によく事情を御説明し、御理解もいただいてやらなければならぬ、そう考えておる次第であります。
  318. 大内啓伍

    ○大内委員 新しい歯どめ、つまり軍事大国にならないという歯どめは、しからば総理としてはどういう形で設定されますか。
  319. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう事態が出てきた場合にどうするかということは、そういう事態が出てくるある時間的前からいろいろ検討し、また国民皆様方に事前に御理解いただく努力をすべきものであり、また、そのときにおける歯止めの問題も考えなければならぬと思っております。しかし、歯止めは必要であるということは申し上げることはできると思いますが、いまそれが何であるかというところまでは立ち至って申し上げることはできないと思います。
  320. 大内啓伍

    ○大内委員 私はあと二十分程度でひとつ重要な問題を議論したいので、できるだけ簡潔に御答弁いただきたいのでありますが、総理は、防衛費も聖域ではない、これは厳しく見ていく、この方針には変わりありませんか。
  321. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 防衛費も聖域ではない、そういう考えに立ちまして厳しく見ていくつもりでおります。
  322. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、むだなところがあれば、あるいはぜいたくなところがあればこれはきちっと整理していく、そういうお考えですか。
  323. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 もちろんそのような考えに立って実行いたします。
  324. 大内啓伍

    ○大内委員 私はそういう意味で、いま防衛庁が進められているポストナイキ、つまりいまホーク、ナイキを持っておりますね。この後継機種をどうするかという問題について、たとえば五十七年度予算においては五億円余の調査費をもってアメリカに後継機種の調査に行っていますね。私、これ実は二年ぐらいかかって調べたのです。そして、昨年もアメリカへ行ってワインバーガー国防長官と会談したときに、いろんな質問書も実は出しました。それらを踏まえて見まして、私は前にこの問題を質問をして、大村防衛庁長官のときにできるだけこの問題は公平に取り扱いますという言質をいただいておりますが、最近の防衛庁の傾向を見てみると、どんどんどんどん深入りしてきて公平でなくなってきているように私は思うのです。そういう意味であえて申し上げるのです。  というのは、これは端的に申し上げまして、いま防衛庁が買いたいといって一つ考えておりますパトリオットというこのミサイルは、これは大変な費用がかかるのです。私どもの計算といいましても、これはアメリカ等で公式に出ている計算ですけれども、アメリカの陸軍向け価格で、これはアメリカの専門誌に出ているんですよ。八〇年度価格で一基、これは一FU、ファイアユニットと言いますが、七千八百四十万ドルです。これは三十発のミサイルがついているんです。八一年度価格で九千九百二十万ドル。一基です。これは二十二発のミサイルがついているんです。  そして、防衛庁はこの調査に行かれましたね。ことしの七月十六日、陸幕から伊原二佐、斉藤一尉、七月二十一日には空幕の奥村一佐、稲葉三佐、七月二十六日には陸幕の四名、空幕の五名、そして八月二日から本格的調査に入っております。幾ら使ったかも契約等で見ております。契約額は邦貨に直しまして三億六千三五八十四万円。旅費と滞在費等を合わせまして五億円以上の調査費が使われているんです。  私、これはむだだと思いますよ。というのは、たとえばナイキ、ホークというもの、その代替としてパトリオットを買った場合に、バッジシステムのときに出した計画でも大体最低で四十八基くらい必要なんですね。しかし、いま空幕では大体四十基くらいでいいと言っているのですね。四十基で計算してみたのです、しかも、それは一番低い価格で。一番低い価格で計算してみたら、いまの米陸軍向けの価格ですよ、向こうが公式に出しているもの、これで見まして、最低で一兆五千七百四十六億から一兆六千億かかる。それを買いに出かけているのですね。これは五六中業の中に入っているのですよ。五六中業では一千億から二千億の予算を考えているのですよ。こんな高い買い物をするのですか。  時間がないから一気にいきますよ。こんな高い買い物をする諸外国はどこにもないのですよ。ヨーロッパのNATO諸国もだれも買わないのですよ。ドイツで買おうかと言ったのですけれども、これも一九八七年まで延期したのですよ。なぜ延期したのでしょう。高いからです。余りにも高いからなんです。  それからもう一つは、このミサイルはTVM方式といいまして、これはトラック・バイア・ミサイルといいますが、これは訳し方がむずかしいのですよ。ミサイルを経由した方式ですな。TVM方式というのは世界じゅうにないのですよ、これをおいては。アメリカでこれからこういう方式を採用するかと言ったら、こういう方式は採用しないと言っていました。もちろん前にもないし後にもないのです。  いま差し上げました資料の一番上を見てください。一番上にパトリオットというのが書いてあるのです。開発期間というところを見てみると十六年間かかっています。総計費は八十四億ドルかかっています。真ん中から上のところは戦術ミサイルですよ。下の方は戦略ミサイルですよ。十六年間かかっているミサイルがどこにありますか。八十四億ドルもかかっているミサイルというのは戦術ミサイルではありません。戦略ミサイルの中でも、これからやろうとするMX、一番下のトライデントしかありません。これは下のアメリカの資料から翻訳したものです。  つまり、こんなに開発計画を立てれば、大体いままで二十億ドル開発費がかかっているのです、そして三十億ドル、まだあと十億ドルかけてやる必要があるとアメリカ側は私の質問書に対して答えてきているのです。これはみんな日本が買った場合にかかるのですよ。  重要なことがあるのです。アメリカの陸軍は、いまアメリカが展開しているホークを一九九〇年代まで運用するということを三月二日の声明で出しています。防衛庁知っているでしょう。防衛庁長官知っていますか。アメリカの陸軍、つまり日本の自衛隊にホークを供給したアメリカそれ自身が、そのホークをさらに改良して一九九〇年代まで使うという方針を明らかにしているのです。このことは、日本の防衛庁当局に対しても書簡として来ているはずですよ。私は知っていますよ。そして、アメリカの議会は、そのための一九八〇年度国防予算、これを三千八百万ドルのところを四千二百万ドルに引き上げて、この方向を支持しているのですよ。そして、さっき言ったように、NATO諸国ではどこも高くて買わない、敬遠して、ドイツまでもこれをストップしているのですよ。  そういう状況の中で日本だけが、この財政再建でお金がない、何とかして防衛費を減らさなければならぬ、しかしアメリカに対してある程度の水準を維持しなければならぬ。そのためには、中身を聖域ではないとして真剣にメスを入れなければならぬというときに、有頂天になってこれを買おうとしているのです。そうでしょう。  これからのミサイルというのは三つの要件が必要なんですよ。  一つは、撃ちっ放し、これはファイア・アンド・フォーゲットといいますね、御存じのとおり、そういう特性を持っている。それから、多重目標処理機能、つまり、同時にたくさんの飛行機をやっつける機能。もう一つは、その誘導方式は、ミニコンピューターを内蔵して、撃ちっ放されたら、自分でそのコンピューターでそのターゲットに当たっていくという、アクチブ・レーダーホーミング方式というのがいま世界の趨勢なんですよ。一九九〇年代のミサイルというのはこれでなければ対応できないと世界の各国が見ているときに、このTVM方式、こういう古いミサイルに一生懸命、しかも一番世界で高い物、アメリカでも一番高い物を、あれはいいから買いたい買いたい、一体これはどういうことなんです。  そして、日本の防衛庁の外局で技術研究本部というのがあるでしょう。すでに空幕長に対してもちゃんと報告書を出しているでしょう。そういうミサイルよりか、あるいはそれに匹敵するミサイルを日本でも国産で十分つくり得る、しかも、その費用は数分の一で済むんだ、それを握りつぶしているじゃありませんか。そして、五億円も、それ以上もかけて調査費を、見積書をもらうために五億円かけるばかがどこにいますか。そういうむだなことをやる。五六中業では一千億か二千億かで済んでも、その後の後年度負担は何と一兆数千億にも上る買い物をしようとしている。そんなことを見過ごしていて、どうして皆さん、防衛費の節約なんかできましょう。民社党は防衛力の整備についても理解を持っているつもりですよ。そして、やるべきことはやらなければならぬと思っているわけです。しかし、こういうむだは許されませんよ。防衛庁長官、いかがでしょう。
  325. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まず、現在の状況について最初に御報告をさしていただきたいと存じます。  防衛庁といたしましては、現在持っておりまする地対空誘導弾、ナイキ及び基本ホークにつきましては、性能あるいは補給、整備等の問題がございまして、これをいつまでも今後とも長期に持ち続けていくということは困難でございますので、いつの日にか新しいものにかえていくということを考えていかなければならぬ。つまり、別の言葉で申しますと、早期に後継システムの整備方針を決定いたさなければならぬ、こういうところへ来ております。  それから、いまの御指摘がございました中に二、三点、私といたしましては御訂正おき願いたい問題がございますが、どの後継システムを採用するかということにつきましては目下鋭意検討中でございまして、いずれのものに決まったということになっておりません。  それから、御指摘ございましたが、多く分かれまして大体二つが浮上してまいっておりまして、そのうちの一つは、先生御指摘の、主としてこれはアメリカへわれわれが出かけていって検討しなければならないパトリオットがございます。それからもう一つは、これも後段において先生御指摘になられましたが、われわれの持っておりますナイキを、わが方で懸命に努力して、これをさらに改良をしていくという手だてがございます。いまそれがいずれが決まったという問題ではございません。  それから、もう一点お伝えをいたしておきますが、アメリカがパトリオットの装備をやめてホークの改良に進んだというお話がございましたけれども、少なくとも私どもがいままで入手いたしておりまする資料においては、その事実はまだ確認はいたしておりませんし、それからアメリカ陸軍の話についてもお触れになられましたが、アメリカ陸軍がヨーロッパにおける防空のためには、ここが非常に大事なポイントだと私は思いますが、所要のパトリオット部隊のほかに、アメリカ国内で改良を続ける、そのホークの部隊もあわせ併用して運用することを考えておるという様子であります。  したがって、私どもといたしましても、これから後継の、この種のポストナイキの問題につきましては、この採用につきましては、いずれにしても近い将来に決定をいたさなければならぬと思いますが、現在まで集めておりまする資料をさらに整理いたしまして、わが国として最善のものを決定をいたしていこう、いま現在こういう段階になっておるところでございます。  なお、先生御指摘の問題点につきましては、五十六年の二月の当委員会におきまする大村長官との間の御討議につきましても、私どももこれを十二分に拝承させていただきながらさらに検討を続けさせていただく、これをつけ加えて報告させていただきたいと思います。
  326. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、防衛庁がどっちに決めたとか、そういう断定はまだしていないわけで、むだな選択はしてはならぬということを事前に警告をしているわけなのです。  ここに、たとえば四月十三日のある新聞記事がございますが、このときに鈴木総理が統幕議長以下三幕の幕僚長を招きまして昼食会を開いているのです。私はそのときの模様をいろいろ聞きました。それは、ここに書いてありますように、最近の日米防衛協議では、日本の制服側の非公式な研究データがアメリカ側の提案として日本政府に逆提示されるケースが出ており、これに対して総理はブレーキをかけた、警告を発した。  私は、そういうことをたくさん聞いていますよ。インターナショナル・セールス・マネジャー、一生懸命それを買おう買おう、そういういろいろな動きもあるということも聞いています。私は、公平にやることは結構ですが、兵器だけ見ていられたのでは困っちゃうんですよ。日本はいま財政再建で、いま議論したような重大な段階に差しかかっている。兵器というのは大体使わないんですよ。戦争して使ったらおしまいですからね。採用して消えるまでわからない。ですから、やはりその時代時代の需要に応じ、そしてそれは、その国情に応じてできるだけ経済的なものを選択をしていくという姿勢が防衛庁にないと、私は防衛問題に対する国民理解は生まれないと思うんですよ。  いまアメリカからそういう連絡は受けていない、通告は受けていない。私、証拠を持って言っているんですよ、本当は。ちゃんと連絡はありますよ。しかし、それをまたあらわにしたら問題が起こりましょう。日本の防衛庁も、一九九〇年代にかけてアメリカの陸軍が、いまあるホークを改良して使っていくという方針を決定したということは、あのステートメント一つを見たって知っているはずですよ。そして、そのステートメントを受けて、アメリカから日本の防衛当局に対してきちっとした書簡も入っていることも事実ですよ。防衛庁長官が知らないというのは、まだ新任だからです。そういう状況の中で、いいものがあれば日本がただお金を出して買いたい、そんなような気分で行ったら、これはえらいことになりますよ。  第一、ミサイルを空と陸に二つに分けているところが世界じゅうにどこにあるのです。そんなばかなことをやっているところが世界のどこにあるのです。しかし、日本の場合は、昭和三十七年十二月二十六日の庁議決定、これは防衛庁長官も出ていますよ。その庁議によって、足の長いナイキ大隊は陸上自衛隊で編成し、昭和三十九年四月一日から航空自衛隊に移しかえる。第二次のナイキ大隊については空幕で編成する。二つに分ける。私は行革から言ったら、これは一本にすべきだと思うのです。ましてや足の短いものに限定するなら、二つに分けておく理由なんか、その運用からいって全くないですよ。一体どうするのです、こういう問題を。まだ五十六中業でも、同じこの三十七年の庁議方針を堅持していくのですか。それとも変えるのですか。変えないとすれば、その運用を一本化すべきでしょう。  もう時間が参りましたので、総理、いままでの議論を聞いておわかりだと思うのでありますが、私は決してあいまいな調査でこの問題をこうやって出しているのではありません。私がかつて短SAMの問題を出したときにも、結局あの欠陥の是正に防衛庁は入りました。そうですね。全天候性を付与するために大改良しなければならぬ、あの白煙を上げていくロケットを大改革しなければならぬということで、いま研究しているはずなんです。私の申し上げたことは決してうそではなかったのです。この問題はそれ以上の大きな問題だと思う。私は、防衛庁の防衛費という問題について国民に対して相当の理解を求めなければならぬ段階にあるだけに、むだは許されない、こういう問題を厳しく取り扱っていく必要がある、こう思っているのでありますが、総理の最後の御決意を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  327. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大内さんが防衛問題、特にいまのような新型兵器について非常な御関心を持って警告していただいたことを感謝いたしております。御意見を体しまして慎重に取り扱うようにいたさせます。
  328. 大内啓伍

    ○大内委員 終わります。
  329. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  次に、金子満広君。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕
  330. 金子満広

    金子(満)委員 私は、日本共産党を代表して、差し迫った幾つかの重要な問題について、中曽根総理大臣及び関係の大臣に質問をしたいと思います。  中曽根内閣が発足して半月余りたちました。この短い時間の中に、この衆議院、そしてまた参議院予算委員会あるいはまたマスコミ、国民の中でも、この内閣に対する批判というのはかつてないほど広がってきたと思います。  そういう立場で、まず最初に政治姿勢の問題から伺っていきたいと思います。  すでに両院の審議を通じ、また世間でも言われていることでありますが、中曽根内閣というのは田中支配内閣であるとか、あるいはロッキードシフトであるとか、要所に田中派の腹心を据えたとか、改憲執念のタカ派新首相、こういうようなことが新聞にも大きな見出しで出ています。  そういうようなことを通じていろいろ言われ、いろいろ書かれていることはそれなりに一つの根拠がある、こういうように私も思いますが、その点でまず第一は、総理に伺いますが、組閣に当たっての総理考え方がどういうものであったか、いままで言われている点もありますが、改めて伺っておきたいと思います。  同時に、その中で、灰色高官というのが党や政府の重要なポストに据えられておりますが、その点で、灰色高官ということを認識されての任命であったかどうか、その点もあわせて伺っておきたいと思うのです。
  331. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 組閣に当たりましては、「わかりやすい政治」あるいは国民に「語りかける政治」ということをまず政治のやり方として心がけまして、それから、やる仕事といたしまして、当面は行政改革、財政再建、対米信頼関係の強化、それから不況対策等々を当面の大きな仕事としてとらえまして、それに対応できるような力を持った人材を選ぼう、そういう意味で、いままでややもすれば順送り人事とか派閥均衡内閣とか厳しい批判を受けましたが、今度は派閥を超越して適材適所を簡抜して仕事本位で人を選んだ、そういう考えに立って選考をいたしました。  いわゆる灰色と言われる方々につきましては、いままですでにいろいろな御議論がございましたが、内閣に関する問題といたしましては、加藤君は、前に申し上げましたように、ともかく非常な政策通であり、また非常に国会については精励恪勤でもありますし、かつまた数回の選挙も経てきておりますし、いろいろな情勢を考えてみまして、まだこの若い人を埋もらせるのはこのままでは惜しい、いろいろ問題はありましょう、御批判も受けるでしょう、しかし、一遍チャンスを与えてあげて、そして本当に力を出して働いていただいてそれで合格してもらおう、そういう気持ちもありまして登用したという次第であります。
  332. 金子満広

    金子(満)委員 わかりやすいという点、それから派閥を超越して適材適所という点、仕事をする内閣というその説明はわかります。  確かに派閥を超越したという点で言えば、いままで派閥の均衡の上に閣僚のポストを決めていたのが、今度は超越して田中派閥から圧倒的に多くの人が入ったという点では、超越をしているという点は非常にわかりやすいと思うのですね。  それから、適材適所という問題でありますが、これもわかりやすく言えば、ひっくり返しにして、ああなるほど適所に適材を入れたのかな、法務大臣にはあの人を据えるということになったのかなということも言われておりますが、そういう点では適材を適所に入れた。  これはまた後でいろいろ質問をいたしますが、そういう中で、仕事をする、つまり仕事をする内閣という問題についてひとつ総理にその点の内容、考え方、これを最初に私は伺っておきたいと思うのです。  チャンスを与えるとかあるいは灰色とかいろいろ言われましたけれども、仕事をするとかあるいはいろいろの政策通であるとか能力があれば――政治倫理とかあるいはまたいろいろの点で汚れた面を持っているとか、または人には公表できないようなそういう暗い影を持っているとか、いろいろなことが世間では言われています。そういうような点で、仕事さえできれば政治倫理なんかは問題ではないという形であると、これはえらいことだと私は思うのです。  そこで、一体、政治家というのはどういう仕事をするのか、政治家仕事というのはどういうことなのかという点を考えてみなければならぬ。私は、少なくとも、政治家仕事をするというのは、まず前提は清潔であるということだと思うのです。清潔な政治、そして、その上に国民信頼をおく、この信頼の土台の上に民生の安定、揺るがぬ平和を、そして、その方向に向かって国の基本方向をつくり上げていく、これが私は政治家としての仕事の内容だ、こういうふうに思うのです。  そういう点から見ますと、中曽根内閣組閣の内容、人事の配置などなどを見て、仕事をするという内容については、昨日からいろいろな方々が廊下やその辺でもみんな話をされていますが、あの仕事というのは一体どういうことなんだろうか。ロッキード隠しという仕事はするかもしらぬ、あるいはまた、そういう点では田中復権というようなこともあるかもしらぬ、そして憲法改悪をやる、そういう仕事をする内閣になるかもしらぬ、こういう点が言われておりますが、政治家として仕事をするというその理念、その点について総理はどのようにお考えか、承っておきたいと思います。
  333. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま申し上げました当面の四つの大きな政策につきまして、これを内閣全体を挙げて当面遂行する、そのほか各省大臣あるいは各庁長官等みんなそれぞれ重大な仕事をしょっておるわけでございますから、この非常時局に当たりまして、全力を出してその職務を遂行していただく、こういうことであります。
  334. 金子満広

    金子(満)委員 そういう上で、仕事をするという大前提になるのは清潔な政治、それが当然国民信頼を得る大前提にならなければならない、こういうように思います。  そこで、具体的に灰色高官というものについて総理考え方を最初にただしておきたいと思いますが、この灰色高官というのは、金を受け取ったことがあるかないかの疑いを持たれているものじゃなくて、金はもらっておる、受け取っておるということは明確になっておる、こういうことだと思います。  たびたび出る問題ですが、一九七五年九月、総理、あなたが幹事長をやっておったときに自民党から出されたいわゆる灰色高官として公表すべき基準とは次のものであるというものがあります。  その前提は、「ロッキード事件に関するいわゆる「灰色高官」として一般に公表すべきもの」、これは公表するということが前提であり、灰色高官という名前も自由民主党がつけている名前でもあります。この場合は、氏名と、そして受け取った金品の額と、それから事実の大要を明らかにするものとするというそのことをただし書きに置いて、ロッキード事件の金品を受け取る、授与した、そういう収賄罪その他の犯罪が認められるけれども時効その他で不起訴になったもの、あるいはまた現在の法律では罪にできないというもの、あるいは職務権限その他で起訴できなかった、罪にならなかった、こういうのが自民党の灰色についての定義である、これは間違いないですね。
  335. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 ずいぶん前のことで、そういう基準を果たして正確につくったかどうか、記憶をいま新たに起こしていますが、必ずしも確信は持ちません。しかし、あなたがそういうことをおっしゃるのであるならば、あるいはあったのかもしれません。
  336. 金子満広

    金子(満)委員 これは大変大事な問題だと思うのです。記憶が定かでないといっても、党の責任ある幹事長のポストに中曽根さん自身がいたわけですよ。そして、灰色高官問題は何回も何回も議論になっていることですから、そして党の中にあってもあるいは閣僚のメンバーの一人としても、中曽根さんはずっとこの問題については深い関心を持ってきたと私は思うのです。そして、記憶が非常にいい方だというのも、私も群馬にいたことがありますからよく知っていますよ。だから、こういうことに限って忘れるというのは納得できないわけですけれども、いずれにしてもここにプリントがあるわけですから、これは間違いがないわけです。(「当てにならぬぞ」と呼ぶ者あり)当てにならぬと言ったって、あなた、つくったものを読んでいるのですから、その点どうですか。
  337. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大分前のことでありますから、記憶定かならざるところがあります。しかし、あなたがそうおっしゃるのであるならば、あるいはそうであるかもしれない、そう思っておるところであります。
  338. 金子満広

    金子(満)委員 私は時間を短縮して申し上げたのですが、それでは正確に申し上げます。     記  ロッキード事件に関するいわゆる「灰色高官」として一般に公表すべきもの  (この場合は氏名、受領金品額、事実の大要を明かにするものとする)  一、ロッキード事件の金品の授受による収賄罪その他の犯罪の成立が認められるが、公訴時効の完成により不起訴となるもの(時効不起訴)  二、ロッキード事件の金品授受による収賄罪その他の犯罪の成立が認められるが、軽微又は情状により不起訴となるもの(微罪等不起訴)  三、ロッキード社の売込みに関し依頼を受け、ロッキード事件の金品の授受があったが、職務権限なきため罪とはならないもの(罪不成立)  以上の点ですが、これはあなたが幹事長であったのですから、幹事長が知らないでこういうものは出ないし、国会でも当時これが問題になったわけですから、金子、おまえが言えばこうだじゃなくて、私はいまあなたの方の文章を読んだのですから、その点でいかがですか。
  339. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その書類を自民党が他党に提出したと言うのですか。それとも自民党の内部で、あのころ濱野清吾君が会長で委員会ができましたが、その内部で決めた文書であったのか。ともかく記憶が定かでないところがあるので、他党に提出した文書であるのか、その辺はっきりしていないのであります。
  340. 金子満広

    金子(満)委員 総理、ここに衆議院のロッキード問題に関する調査特別委員会の審議の要録がありますよ。ここに自民党案として出ているのです。だから、それはだれも知らないものはないのです。
  341. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これを見ると、「各党から提出された公表基準案」という中に自由民主党ということで記録されておるようです。「参考意見」として「社会党など野党は右の一、二以外に公表すべき場合として」次のものを挙げている、そういうことであり、また日本社会党案というのもあり、恐らく、共産党案もあるようですから、各党が出したものをここへ列挙されてあるように理解いたします。
  342. 金子満広

    金子(満)委員 だから、私が聞いたのは、自民党がそういう案をつくって出したということで、あなたが幹事長であったんだから、灰色というのはこういうものであるというのを党として、つまり自民党として責任を持って出したんだ、こういうことを聞いているのですよ。
  343. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまの文章を見まして、恐らくそういうものであったろうと思います。
  344. 金子満広

    金子(満)委員 あったろうじゃなくて、あったのですが、そういう中で、それでは灰色高官というものについて一九七六年十一月二日に政府は国会に対して、次々の者は灰色高官であるという形で報告をいたしました。その報告の中に二階堂進氏及び加藤六月氏などが入っていることは総理、御存じですか。
  345. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは先ほど法制局長官が申された秘密会議における発言の内容ではないかと思いますが、それと違いますか。
  346. 金子満広

    金子(満)委員 総理も知っていると思いますし、これはロッキード問題に関する調査特別委員会に政府が報告した中で、ずいぶんもう議事録として公表されております。ですから、その中では加藤六月氏についても二階堂進氏についても、いつ、どこで、たとえば加藤六月氏については十一月一日ごろということで昭和四十七年二百万円ということ、あるいは二階堂氏についても五百万円ということはここに記載をされています。これは政府が国会に報告をした内容でありますから、当然その点については、もらってあるというこの事実は、捜査当局から法務省が、そして国会が受け取ったものでありますから、この点は読んではいるのでしょう、総理
  347. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昔、記録として読んだことはございます。しかし、その性格については法制局長官から答弁させます。
  348. 金子満広

    金子(満)委員 その報告の中には明記してあるわけですから改めて聞くまでもない。これは公式の文書であり、公式の政府が国会に行った報告である、こういう点は明白だと思うのです。同時に、六月八日の判決文の中にもこの問題は記載をされておりますし、その点も知っていることだと思いますが、これは非常に大事なことである。なぜならば、灰色高官というのは、もらったかもらわないかではなくて、自由民主党の原則から見ても、基準から見ても、あるいは国会に報告された内容から見ても、そして六月八日の判決文の中の記載においても、受領したということは明白なんですから、そういう点を総理として十分知っての上でのことなのかどうなのか、閣僚や党の主要ポストにつけるときどうかと、これを私は聞いただけなんです。
  349. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 加藤六月君につきましては、いままでのいきさつ等については調べて任命した次第でございます。
  350. 金子満広

    金子(満)委員 そこで、もう一つそれでは伺いたいと思いますが、これだけ問題ははっきりしてきた。自由民主党の中でのこの灰色の定義、国会に対する政府の報告、六月八日東京地方裁判所での判決文の中にあるということ、そして、そういう点からしても、今度は二階堂氏の方は、天地神明に誓ってもらったことはないとこれは言っておるわけですね。それから、加藤氏の方は、先ほど潔白であるという内容は、もらっていない、受領していないということだということを言われました。片方は受領しているということ、片方は天地神明に誓って受領していないということは、これこそ天と地ほどの差があるわけです。違いがある。この違いをどこではっきりするのですか。政治的道義的責任というのは、これもあなたが幹事長のときの文書にちゃんとあります。「ロッキード事件の刑事々件等法律違反の点に関する解明は当然であるが、それにおいても、この事件政治的、道義的責任」の解明は急いでやらなければならぬというわけですね。  ところが、現に国民が注目をし、そして本院においても事あるごとに議論になってきた灰色高官の問題ですよ。片方はもらわない、片方は受領したということですから、これは政治的にも道義的にもそのことを明らかにするのであれば、現行証言法というのは生きておるのですから、この現行の証言法で国会に証人として出てもらって、さあどちらが本当かうそか、これはやる以外に方法はないと私は思いますが、別にこういう問題を明らかにするところはありますか。どうですか、総理
  351. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 従来、国会におきまして証人喚問等の問題をめぐっていろいろ各党の論議がなされ、そして議院証言法の改正問題という方向に発展してまいりまして、議長がそれを預かることになり、また、いま各党におきましてその問題が論議されておる、こういう状態になっておると思います。
  352. 金子満広

    金子(満)委員 私は、現行法で、つまり現在の議院証言法でやるかどうか。現行証言法というのは存在しておるわけですから、別なものじゃなくて、現にあるわけです。凍結も何もしていない。機能を持っておるのですから、そういう中で、言ってみればこの証言法が制定されてから三十五年間これは修正なしできている。そして、たくさんの証人がこの証言法に基づいて宣誓を行ってやってきた、こういう経緯があるわけです。ロッキード事件についてもたくさんの証人が、それは中曽根さんを含めてこれでやってきているわけです。あなたは個人の主観で、私を最後に云々というのはあったとしても、現行証言法でやるのが当然だ、こういう意味で伺っているわけです。  この証言法を改正するということで、たとえば自民党の側から出してきているテレビの放映を禁止するということとか、あるいは補佐人に異議申し立て云々ということがあります。私はおかしいと思うのです。テレビで放映された方かいいんじゃないですか。天地神明に誓って受領していないんだということであれば、そして私は潔白で受け取っていませんということであれば、全国民に見えるところで堂々とやればいいのですね。これは別に人権の侵害でも何でもないだろう。こういう点で大いにやるべきだ。したがって、現行証言法でやるという点についてもう一度、総理は総裁でもありますから、自民党としてどうか、この点を再度伺っておきたいと思うのです。
  353. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 現行証言法というものは、私は証言台でも申し上げましたが、証人の人権等について著しく不備がある、そして、もし偽証したという場合の罪の重さという面から見れば、もう少し証人のためを思った措置が講ぜられてしかるべきである、そういうふうに私は考えた次第でございます。したがいまして、議院証言法を改正いたしまして、もっとりっぱな証言法のもとにやることが望ましいと考えております。
  354. 金子満広

    金子(満)委員 三十五年間無修正で来たという中には、この議院証言法の持っている現実性というのがあったんだろうと私は思うのです。そういう中で、たとえばこの証言法が基本的人権を侵すというようなことがもしあるとすれば、どういうことなんだろうか。私は、宣誓をして、真実を述べるんであったら何も恐れることはないと思うのです。いろいろな圧力があり、いろいろなことを考えながら偽りのことを言わなければならぬと思えば、私は、手もふるえたり汗も出ると思うのです。しかし、そうでなくて、自分の思っていること、考えていること、やってきたことを率直に言うんだったら、何もこれが人権の侵害とか何か、そういうものにはならない。ですから、そういう点から言えば、現行の証言法でやるというのが最も妥当である。そうでなくて、いま総理が言われるようなことで改正だ改正だ、そして、ある点まで一致するとまた次にハードルをつくって、そして、いつまでもいつまでもごたごた問題が続いていって、ついに証言台に立つ、証人として喚問するということができなくなるわけです。実態はそう来ていると思うのです。ですから私は、そういう点については現行証言法でやるということを再度要求しながら委員長に次の点で証人の喚問を要求したいと思います。  昨日、本委員会の理事会に対して瀬崎委員が提出をいたしましたが、いわゆるロッキード資金三十ユニットの授受に関し、政治的道義的責任を解明するため、六月八日判決でロッキードから金を受け取ったと指摘された国会議員二階堂進元官房長官加藤六月元運輸政務次官、田中角榮元総理大臣の三名と、金を渡した側の証人として伊藤宏元丸紅事務、副島勲元丸紅秘書課長、大久保利春元丸紅専務、若狭得治元全日空社長の四名、合計七名の本委員会への承人喚問を求めます。     〔高鳥委員長代理退席、委員長着席〕
  355. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会の協議事項になっております。
  356. 金子満広

    金子(満)委員 それでは次に、ロッキード事件が重大な政治問題、社会問題となっている、そういうこととの関連で申し上げたいのですが、ここに昭和五十一年の法務省の法務総合研究所が調査した司法統計の資料というのがございます。これは昭和五十一年の収賄事犯についての統計が出ております。起訴または起訴猶予を含めて、国家公務員が三百九名、地方公務員が百七十三名の収賄内容を金額的に分類したものがあります。それによりますと、次のような分類になります。まず、賄賂の額、その次に国家公務員、地方公務員という順序で申し上げます。  五万円未満、国家公務員が四一・九%、地方公務員が一八・五%。十万円未満が国家公務員は一二・九%、地方公務員が一三・三%。五十万円未満、国家公務員の場合二九・〇%、地方公務員は四二・二%。百万円未満、国家公務員一二・九%、そして地方公務員の場合には一一%。五百万円未満が、国家公務員ずっと少なく出まして三・二、地方公務員の場合には九・八。五百万円以上というのは、国家公務員はゼロであります。地方公務員が五・二。  ここで全体として見ますと、国家公務員で十万円以下というのが全体の収賄事犯の五四・八%、十万円未満というのがこれだけの数になっています。それから、五十万円以下ということになりますと、実に八三・八%で圧倒的に多いわけですね。したがって、そういう中で、つまり起訴された者のほとんどかロッキード事件に関連したあの金額から見たら非常に少ない金額だということは、こういう数字の中からもおわかりだと思います。中には一万、二万の百貨店の商品券をもらって起訴される、そして有罪になって懲戒免になる、退職金ももらえない。いろいろ調べた問題の中には、清掃車がごみをなかなか一生懸命集めてくれる、そういうことで奥さんたちがお金を出し合って商品券を上げた、これも収賄になるというようなことでたくさんのことがやられているわけですね。五十一年と言えばロッキード事件の問題でこういうことが世間でも非常にうるさく言われていたその時期でもあります。  私は、刑事局長にちょっとお伺いしたいのですが、この賄賂の罪で五億円というのはいままでどのくらい件数があるんですか、起訴されたのは。
  357. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 他に例はないように承知しております。
  358. 金子満広

    金子(満)委員 一件はあるわけですね。そこで、片方では十万円以下ということで半分以上、五四%も起訴され、そして有罪となり、さらには懲戒免、こういうことがたくさんある。同時に、ことしの一月の衆議院の本会議で、私は代表質問でも申し上げたんですが、総理、アメリカでさえ大統領の補佐官が一千ドル、二十数万円ですね、その二十数万円受け取ったという、ただそれだけ、そのことが追及されたら辞職をしているわけです。  ところが、日本ほどうだろう。五億円もらったということで起訴されているそういう刑事被告人が、現に政界の中では絶大な影響力を行使しているということは知らない人はないし、また総理大臣自身がその刑事被告人から大きな影響を受けているということも言われているわけです。そしてまた、二百万円受領したということでクロの判決を受けた佐藤孝行議員も、辞職勧告という問題がずっと出ているけれども、いまだに反省なくその職にとどまっている。これはとうてい世間の常識では私は考えられないことだと思うのですね。こういう問題を放置しておいて本当に政治倫理の確立ができるかどうか。こういうことを放置しておいて金権腐敗政治をなくすことができるのか。これをそのままにしておいて非行少年の問題を論ずることができるのか。これを聞かれたときに、いろいろの理屈を並べても世間は納得しないと思うのです。私は、そういう点でこの事態をどう考えるか、この点について総理責任ある答弁を求めたいと思うのです。
  359. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、内閣総理大臣としまして憲法、及び自民党総裁として自由民主党の政策綱領に忠実で、その大きな影響のもとに動いておるので、党外の人に中曽根が影響されているというようなことはございません。国民全体の世論、国民考えというものには非常に影響を受けている、こういうことは申し上げられると思います。
  360. 金子満広

    金子(満)委員 証人喚問で要求したものがありますが、私は、佐藤孝行議員の問題についてはたくさん出ていますけれども、もう一つ、この点では総理に伺っておきたいと思うのです。  あなたは、清潔な政治ということを言っておるし、信頼される政治とも言っておるし、わかりやすい政治とも述べていますよ。確かにその言葉はいいと思うのですよ。しかし、佐藤孝行議員はあなたの派閥に属している議員だと思うのです。これもまただれ知らない人は私はないと思う。本人の意思がどうあれ、そういう点では、総理に清潔な政治を望むという良心があるなら、国民の要求にこたえて、あなた自身が佐藤孝行議員議員を辞職するように勧告するのが、私は道理に合ったやり方だと思うのです。そうすれば、清潔な政治というのはああいうことをすることかということになりますが、そうではなくて、逆に弁護の側に回る、こういうことであれば、言っていることとやっていることの違いがそういう点ではっきりするわけですが、あなたは、自分の派閥に属している佐藤孝行議員に辞職を勧告する、そういう意思は全くありませんか。
  361. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 きのう来私は、国会議員責任、選挙民との関係、そういう問題について私の所信を申し上げました。ああいう所信に立っているのでありまして、それが自民党の議員であろうが、社会党の議員であろうが、たとえ共産党の議員であっても、そういう所信に従って私は行動したいと思っております。したがいまして、これは本人がみずから決めるべき問題であり、あるいは選挙民が選挙に際して決断を下すべき問題でありまして、第三者が強制すべきような性格を持ったことは適当でないと考えておるわけであります。
  362. 金子満広

    金子(満)委員 何回も繰り返すようですけれども、佐藤孝行議員が六月八日の判決でクロになったということは、もう天下周知です。そして、あなたが弁護していることもわかりますよ、きょう初めてじゃないんだから。しかし、総理が本当に清潔な政治ということを言葉にするのであったら、言葉ではなくて、態度で示してほしい、これはだれもそう思うと思うのです。ところが、そこのところをいままでずっと伺っていますと、結局は、あなたは清潔な政治を求める国民の側ではなくて、灰色なり黒色なりそれを弁護する側に立って、そして最後は個人の判断に任せるということをおっしゃるわけですけれども、その個人という佐藤孝行議員はあなたの派閥にいて、ずっと一緒にいるんですから、これだけ批判がある、全野党の要求で辞職勧告決議案も出そう、こういうことになっていまやってきているわけですね。ですから、白黒をはっきりさせるとか、あるいは勧告をして、聞く聞かないは本人の問題ですから、私は、国会に自民党総裁としてこの辞職勧告決議案は出す、そして採決をとってみたらいいと思うのです。その点はどうですか。
  363. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の友人だからどうというのではないのであります。きのうからその問題については、憲法に基づく私の民主政治観、代表制に関する私の信念ということから申し上げておるのであります。私は、この際冷静に国会議員立場、あるいは責任というものを考えてみる必要があると思っておるのであります。戦前、齋藤隆夫先生とか西尾末廣先生を国会が除名いたしました。性格は違います。しかし、あのときは全国民がそういうような空気で動いておって、政党も軍部の力でそういう空気で議会全体が動いてああいうふうな除名ということをやってしまったわけです。だから、身分を失わさせるということはよほど注意深くやらなければいかぬ。きのうも、ですから、ある党の参議院の大先輩でいろいろ問題がある方もあった、それで、ほかの政党からいろいろな工作をやろうという動きがあったけれども、私はあの問題についても、そういう点は慎重にやるべきである、議員の身分を失わしむるというようなことは非常に慎重にやらなければいかぬ、議会の中にはあらゆる議論が展開されていいんだ、私はそういう自由主義者としての信念に基づいてそういうことを申し上げておるのであります。
  364. 金子満広

    金子(満)委員 問題をすりかえないように。  そうしますと、総理、あなたのいまの言葉から言えば、佐藤孝行議員の辞職勧告というものを出している野党のすべての党は、民主的な立場ではない、個人の権利を尊重しない、国会という国権の最高の場でそういう態度は誤りだ、そういうことになりますが、どうですか、その点。
  365. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは議員議員一人一人の議会政治に対する認識、所信というものに立脚した問題であると思っております。
  366. 金子満広

    金子(満)委員 この佐藤孝行議員の問題は解決がつきませんから、今後とも私は機会あるごとにこれは追及いたしますが、あなたがそういう態度をとり、あなたの内閣がそれを弁護している限りは、この問題は大きく広く国民の中で議論になる、このことは間違いないと思うのですね。そういう点で、結論的には、あなたは清潔な政治と言うけれども、結局はこういう佐藤孝行議員のようなものを弁護する側に立っている。いまの答弁では、少しもわかりやすくないし、国民は納得しないということを申し上げながら、次に、秦野法務大臣の問題に移りたいと思うのです。  もうこれもたくさん質問がされ、そして本人からもいろいろの弁解がありましたが、指揮権発動の問題だけに限って質問をしたいと思います。  これは御承知のように、秦野氏は国会質問の中でたくさんのことを言っています。検察庁や裁判所を批判する、干渉をしてきた人物だと私は思いますが、そういう中で、たとえば昭和五十六年三月十八日参議院予算委員会での秦野氏の質問があります。その一部ですが、次のように述べているところがあります。  「これは警告しておくよ。たとえば、コーチャンが」、これはロッキードのコーチャンのことですね、「コーチャンがやってきたとするんだよ、これ、京都見物か何かに。もう日本が罰してくれないから。そりゃあこっちばかりやっつけられて、」こっちばかりというのは、田中側のことを言っているのだと思うのです。「こっちばかりやっつけられて、あのやろうが元凶だから、」あのやろうとはコーチャンのことを指していることは明白ですね。「あのやろうが元凶だから、あのやろうやった方がいいという内閣ができたとしたらよ、これはこのことを説明するためにわかりやすく言うんだ。あれは、」コーチャンのことですね、「あれは、縛れ、国民感情からいったらあたりまえだと、こう言う人が出ても、それは絶対できないといって検事が言うのは言い過ぎじゃないか。検察庁法十四条ただし書きというものは政府の態度としてあるじゃないか。」つまり検察庁法の十四条のただし書きというのは、たびたび言われるように、「個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」という点で、一番上に「法務大臣は、」と、こうなっているわけですね。これはいままで答弁で言われるように、一般論として言っているんじゃないのですね。明白に個々の事件について、人の名前も挙げて言っているんです。  ですから、ここで言っていること、質問していることを要約すれば、コーチャンを縛れと言う人が、つまり、そういう法務大臣が出れば、指揮権発動でコーチャンを縛ることもできるということを言っているわけになるのですね。この質問の仕方、この言い回し、性格もそっくり出ていると私は思うのです。  こういうようなやり方、これを明白にやってきたんだから、総理、これは一般論とかあるいは法律的云々ではなくて、明白に個々の事件の問題について触れているわけですね。そこで、コーチャンを縛ることができるんだという、こういうことが指揮権発動であることは言うまでもないし、そういう発言だ。この点について、総理は十分理解した上で任命したのかどうなのか、この点についても答えていただきたいと思うのです。
  367. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その速記録はよく読んだ上で任命したものでございます。
  368. 金子満広

    金子(満)委員 もう一つつけ加えますと、衆議院のせんだって九日の本会議で、わが党の不破委員長がこの秦野議員の問題についてただしました。そのとき総理答弁は次のようになっています。秦野議員ロッキード事件について、国会等で発言したことは、法の適正な運用という面から純粋な法理論的立場から発言をしたので、具体的な事件について指揮権発動せよなどとは言っていないとあなたは明言されたわけです。しかし、私がさっき読んだのは、これも明白な秦野議員発言であります。これは法理論的な立場から、一般的なものでなくて、もう一度見て調べなくとも、これは特定の事件についての発言であるということは明らかじゃないですか。
  369. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そこのところは恐らく宣明書とかあるいはコーチャン調書というものの公平性、攻撃、防御における平等性、そういう点を秦野君はついておるようです。そういう面から見て、そのコーチャン氏の立場というものが、いままでの日本の法体系から見ると便宜が与えられておる、ある意味においては起訴されないという特権が与えられておる、そういうもとにあの調書はとられた、そういう点から見ると異例である、秦野君のあのときの議論を見ると、不平等性と申しますか、そういう点を象徴的に言う意味でそういうことを言ったのだと私は思っております。
  370. 金子満広

    金子(満)委員 ですから、コーチャンの嘱託尋問については、いま総理が言ったような面はありますよ。だから、裁判所がそういう方向を出して、やったわけですね。それに対して批判をしているのだから、個々の事件についての批判であることは明白なんですね。そういう点ははっきりしておかないと、一般論ですりかえすりかえでは、そしてまた開き直りでは、これは答弁にならぬわけですね。  では、もう一つつけ加えますが、逮捕の直後です、これは逮捕後八日目になりますか、五十一年の八月四日に参議院ロッキード問題調査特別委員会で、稲葉法務大臣に対して秦野章氏が次のような質問をしています。それは、短い個所を引用しますと、「外国為替管理法で逮捕しなければいかぬというふうな報告を聞かれたときに、収賄罪の逮捕というんじゃないんだなと、そっちでできないのか、検討してみないか」、こういうように質問を時の稲葉法務大臣にしているのですね。いろいろややこしい言い回しをしているけれども、つまるところは、外為法違反ではだめなんだ、こういうことを言っているのであって、これは個別的な事件に対する明白な指揮権発動の要求ということになると思うのです。この点でも、総理、どう思いますか。
  371. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 秦野君のことを私が言うのは変ですから、秦野君に直接聞いてください。
  372. 金子満広

    金子(満)委員 いいです、後で聞きますから。  結局、詭弁に終わるのですね。結局、秦野法務大臣弁護のあれになるのですけれども。  そこで、それでは秦野法務大臣、ここに週刊朝日があります。私は、こんなことは聞かなくとも間違いだということを認めるかと思ったら認めないからあえて出すのですけれども、これは十二月十七日の週刊朝日です。こういう写真が載っています。これは衆議院の本会議におけるものであります。ここで、秦野法務大臣と刑事被告人田中角榮氏とが握手を笑いながらやっている写真です。これはちょっとひど過ぎるのじゃないですか。片方は刑事被告人である。片方は検察指揮監督のその責任者である。それが衆議院の本会議場において、大臣席と下とでこういうようなことをやるのは、私は異常だと思いますよ。だれが見ても異常だと思うのですね。こういう点について、私は秦野法務大臣の心境の方を聞きたいのです、心境の方。
  373. 秦野章

    秦野国務大臣 金子さんのお尋ねでございます写真の件でございますが、私が大臣席に座っておったら、とっとっと握手を求められたわけでございます。私はだれにでも、握手を求められれば握手をもってこたえる。いわんや本会議の議場でございます。そして、衆議院議員として本会議にいらっしゃる。ああ、あそこに刑事被告人がいるなというふうに、本会議の議場にいる分まで、刑事被告人が歩いたり刑事被告人がしゃべったりしているなというふうに、有罪の判決がまだ出ないうちには無罪を推定されるという憲法原則からいきますと、あそこに刑事被告人が歩いてるとかしゃべってるとか、あるいはまた、刑事被告人と握手しているのはけしからぬと言うことは、ちょっと、この憲法原則からいくと、人権の問題からいくと行き過ぎではなかろうかと私は考えているわけでございます。
  374. 金子満広

    金子(満)委員 あなた、何を言っているのですか。あなたは、議員のときはこういう発言をし、こういう質問をしてもいい、しかし法務大臣になったから私はそれはできない、言いません、差し控えたいと思う。それほど議員のときと法務大臣のときと区分けをし、そして無理に分類しながらこれまで答弁をされてきたわけです。それほど厳格に議員法務大臣という立場が違うのだったら、こういうような点についてもあなたのとるべき態度というものははっきりしておると私は思うのですね。  いまの答弁、だれも納得しないですよ。私は、ここに書いてある方が納得すると思うのです。「これが派閥事務所か、目白の豪邸での出来事であるならば、さもありなんと思う。しかし、国会の議場内で手を握り合うとは、もはや異常な神経としかいいようがない。刑事被告人「オイ、オレが法相にしてやったんだ。わかってんだろうな」  法相「ハッ、すべて承知いたしております」なんて会話が交わされたのでは、と疑われても仕方がない。李下に冠を正さず、である。」私は、この方が感じとしては出ているのじゃないかと思いますが、これはもう答弁は要らないです。  結局、こういう問題については、最終的には国民判断をするということになるわけですね。こういうように「わかりやすい政治」ということを総理が言う中で、違った意味でのわかりやすさというのが次から次に出てくるわけです。そういう点が今度の内閣の、突き詰めて言えば一つの新しい特徴にもなっている、私はこういう点を申し上げておきたいと思うのです。  そこで総理、今度は総理に伺いますが、結局灰色高官とかあるいはいまの秦野法務大臣の問題についてもこれを弁護するというその中曽根内閣、中曽根総理自身について、いろいろ世論調査のことはきのうから総理からも言われますけれども、支持しないという者の一番大きな数字というのは、これは読売新聞に先般出たものでありますけれども、最高は、「首相を信頼できない」からというのが一番多いのです。これはずば抜けて多いのですね。その次には「汚職追及に真剣でない」というのが二番目です。この二つがずっと上になっているのですね。私はそういう点からも、政治姿勢を正す、そして、いろいろの面で、本当に清潔な政治ということを言うのだったら、はっきりさせていくことがいまの政府に課せられた責任だと思うのです。  そこで、次に憲法問題に移りたいと思います。まず憲法問題については、いままでずっと総理答弁もありますから、結論的なことからお聞きしたいと思います。  総理は、昨日この委員会でみずからを改憲論者であるということを宣言されました。戦後、総理大臣の中で、私の知る限りでは、私は改憲論者でありますと言った総理は中曽根さんが初めてだろう、こういうように思います。勇気のあるという評価をする方もあるそうでありますが、そこで、憲法改正という問題を政府としては、総理としては政治日程にはのせないということを言って使い分けをしています。だから自分は改憲論者である、しかし総理としてはその憲法改正を政治日程にのせることはしない、こういう使い分けをしているわけです。さらに昨日は、憲法論議が国民の中でも国会の中でも大いにやられること、それはいいことだ、そういう点で論議することを提唱しておるわけですね。  そこで、総理はきょうの午前中もいろいろ言われましたけれども、結局、憲法を遵守する義務が総理大臣にはある、閣僚にはあるから、個人の発言は差し控えたいということを何回も繰り返しあなたは言われてまいりました。  そこで、私は一つ申し上げておきたいことがあるのです。  あなたが総理大臣になったのは先月、十一月二十六日であります。二十六日にあなたは外国人の特派員の方々に対して、私の政治信条といいますか、経歴というか、それをお渡しになりました。私はそれを翻訳してここに持ってまいりましたが、次のようなことを述べております。これはもちろん総理としての立場から言ったわけでありますから、使い分けをできないわけですね。その総理としての立場で次のように言っております。  「私の願望は、憲法ができるだけ早く改定され、日本が自衛力を持ち、現在の防衛的条約を対等なパートナー間の軍事同盟に変え、われわれの自衛力を強化しつつ日本からアメリカ兵を撤退させうるようにすることである。」いま私が読み上げたところは一九五四年のもので、これは古いわけです。これ自身は古いのですが、その次に総理がつけ足したところがあります。「私の立場はその後も変わっていない。」これは総理大臣中曽根康弘が外国人特派員協会の会員にあてた添え状の内容ですから、総理になってからも、とにかく私の願望は、できるだけ早く憲法を改正することと言っているのでありまして、差し控えているのではなくて、みずから積極的に発言をした。使い分けもきかない。ですから私は、その都度答弁、場所によっていろいろなことを言う、こういうように言わざるを得ない。この点はどうなんですか、これは自分のことでありますから。
  375. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのパンフレットは総理大臣として出したんではありません。個人中曽根康弘あるいは政治家中曽根康弘というものに対して、いままで外国からいろいろ誤解や何かがあったのであります。前から申し上げましたように、軍国主義者であるとか核保有論者であるとかゴーリストであるとか、そういうようないろいろな誤解がありましたから、それを正させるために、直すために、いままでこういう本にこう書いてある、こういう場合にはこう言いましたと論証してずっと書いてあるのは御存じのとおりです。そして、アメリカ軍がおりました昭和二十年代、それから占領直後、そのころにおきましては、一日も早くあの膨大な米軍を撤兵させて、できるだけ日本の国は自分で守る、そういう方向に持っていきたかった。そういう願望でいろいろ努力もし、鳩山自由党、古田自由党、改進党三党の協商によってできたのがいまの自衛隊法であり防衛庁設置法です。私はそれをつくった一人であります。そういうように努力をしてきたその経過を言っているのでありまして、いまそこにあるようなことを直接こうとして言っているというような記憶はありません。
  376. 金子満広

    金子(満)委員 あなた、総理大臣になったからこれを外国人にやったんでしょう。二十六日付でちゃんとなっているんですよ。(中曽根内閣総理大臣「そうじゃない、その前」と呼ぶ)じゃ幾日ですか、その前と言うんだったら。
  377. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 総裁になったときに配るように、そういうことにしてあったんです。
  378. 金子満広

    金子(満)委員 それは一日だけの差ですから、総裁になれば総理になるというのはこれはだれだってわかるわけだし、私はそれは詭弁だと思うのですね。そして、現に衆議院の本会議でこの問題でわが党の不破委員長質問したときにも、総理として出したということでちゃんと通っているんですから、あのときはそういうふうに言わないわけです。きょうは違う。きょうは、それは総裁になったときです。日付はちゃんと二十六日になっている。それは二十六日の、今度は時間でどうかということになれば別ですけれども、いまのは詭弁で、総裁になり総理になったという方向の中で明確に出していることだ。この点だけは私は厳重に指摘しておきたいと思うのです。  とにかく、その都度答弁であり、そして本音とたてまえがいつでも違うのですね。だから、私は改憲論者であるということは、考え方がそうなんだから、それを差し控えるというのは、考えはそうであるけれどもいま出してはぐあいが悪いから出しません、しかし、その思いは、総理になるその日までずっと公表していたのですということでしょう。こういう点の使い分けというのは最もずるいやり方だと私は思うのですね。  そこで、もう一つ伺いたいと思いますのは、九日の衆議院の本会議で、これも不破委員長が代表質問で次のような質問をしたところがあります。中曽根総理は、かつて徴兵制も可能とする憲法改悪を唱えている、これはいまも変わっていないと言っていることについてただしたのに対して、総理は全面的にそれを否定いたしました。  総理、これは見覚えあるでしょうね。見覚えあると思います。これは昭和三十年九月十日です。衆議院議員日本民主党副幹事長中曽根康弘著「自主憲法の基本的性格 憲法擁護論の誤りを衝く」というあなたの本です。この本が出たときは、ちょうどあなたのお住まいである高崎に私もいました。私は共産党だったから、これよく知っています。相当の改憲論者だということはわかりました。徴兵制の問題についても、あなた言ったことがないというけれども、ちゃんと書いてあるのです。この十二ページ、ここにありますよ。「私は、自主憲法に於ては、将来、国土防衛の為に限って、国民が承認したら徴兵もやり得る様にしておいた方がよいと思う。」「軍備や、徴兵の問題について自主憲法に於て、ごまかしや曖昧な点があってはならない」、はっきり述べているのですね。  これはあなた、あの本会議で全面的に否定しましたけれども、あなた自身が書いて、あなた自身の名前で出ているこの本ですから、これを否定されるというのは相当ひどいと思うのです。乱暴だと思うのです。その点で、あなた、これをお認めになるでしょう。
  379. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そのころはいまお読みになったことを言っておったかもしれません。しかし、いま読んでごらんになるように、国民がもし承認したらそういう余地を残しておいた方がよいということを言っておるので、国民に強制してやろうという考えではありません。余地を残しておいた方がよいという、いまお聞きした範囲内でもそういうことである。
  380. 金子満広

    金子(満)委員 総理、あなた、そんなことを言ったらだめですよ。余地を残すのではなくて、いいですか、不破委員長質問というのは、徴兵制も可能とする憲法の改悪を唱えている、あなたはそこのところで、自主憲法において徴兵制の問題についてはあいまいな点があってはならないんだということを明確に言い切っているわけですよ。ですから、言ったかもしれないとかなんとか、恐らく三十七歳くらいのときじゃないですか、私は若げの至りでそう言ったんだというなら、いまは改めましたというんならいいですよ。そうじゃないんだから。そして、いろいろ言い逃れをするけれども、だって疑問の余地はないでしょう。自主憲法においてはとにかく徴兵制というものをやり得るようにしておいた方がいいんだ、そして軍備の問題とか徴兵の問題では自主憲法においてごまかしやあいまいな点があってはならないんだということを言い切っているのだから、徴兵制を言ったことがあるのでしょう。
  381. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまはそういう考えは持っておりません。また、その後の著書においては徴兵制は否定しております。
  382. 金子満広

    金子(満)委員 いまはそう思ってないのなら、それはいまのことでいいわけですよ。しかし、このときはこう思っていたわけだ、書いてあるんだから。これはいかにあなたが弁解しても明白に活字として残っているんですからね。  私はそこのところで総理、いろいろいままでも聞いてきたけれども、申し上げたいのは、やはり政治家というのは、私はあなたと立場は違いますよ。そして、私は高崎であなたの演説もずいぶん聞きましたよ。相当勇ましい演説をやっておったですよ。青年将校と言われる人の演説は、なるほどああいう演説をやるのかと思うぐらい勇ましい演説をやっていたですよ。これを読んでも、なるほどこの方が控え目だったです、これは。だから、私はよく知っているんです。しかし、立場は違うけれども、政治家というのは、総理、自分の言動には責任を持たなければならぬと思うのですよ。それは、間違いを犯したり、そして、いろいろ錯覚で物を言う、そういうことがあるかもしれないです。しかし、事公になったときに指摘をされたら、合理化しちゃいかぬと思うのですよ。みずからの言動に責任を持つというのは政治家のこれは初歩的な道義じゃないですか。イロハだと思うのです。そういう点で、私は総理にその辺をはっきりさしてもらいたいと思うのですね。  同時に、衆議院の本会議でのあのところで、こういうふうにあるのに、そういうことはございませんという、あれは一片の回答しかないのですから、そういう点でここではっきりしてもらいたいと思うのですね。
  383. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その本のその部分は、誤解を与えますから取り消します。
  384. 金子満広

    金子(満)委員 では、本会議答弁もその点は取り消してくれますね。
  385. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 よく相談をしてみます。(発言する者あり)
  386. 金子満広

    金子(満)委員 だって、それは総理、おかしいな。相談するといっても、二人でやったことじゃないので、一人で書いて一人で回答して、そうして記録に残っているのだから、そういうのは淡白に取り消しますと言った方が私はきれいだと思うのですよ。それで政治家としてのあり方だと私は思うのですね。道義が問われるのはそこなんだから。  そういう点で、総理、いまは誤解を与えたことはまずかったと言ったのだから、それは本会議でもそういう立場をおとりになっていただきたいと思うのですね。
  387. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会の記録に関することでございますから、よく検討いたします。(発言する者あり)
  388. 金子満広

    金子(満)委員 ここでは、この本に関してはこの点についての誤解を与えたという点でははっきりしたと思うのです。だから、いまはこういう立場でないということであれば、ここに書いてある記述は間違いであるということははっきりしたわけですから、私は、本会議の方についても、委員長、これは大事な問題ですね。本会議の記録には、このまま、そういう事実はなかったというのが残ってしまう。そして、予算委員会の議事録の方には、あれはその当時誤解でこれは間違いであったというのですから、これは同じ人が同じ国会でわずかの期間の中で全然違った答弁ということになったら、これは通らない話になりますから、そういう点は委員長の方からも、きょうのこの場所での総理答弁を基礎にして、私は、本会議の方はもちろん委員長の権限でありませんけれども見守っていきたいと思いますので、その点は委員長においても明確にとどめておいていただきたい、こういうふうに思います。
  389. 栗原祐幸

    栗原委員長 それはいま総理大臣の方から速記録を見て対処する、こう言っておられますので、総理大臣の対処の仕方を見守るということじゃないんでしょうか。
  390. 金子満広

    金子(満)委員 憲法問題についてさらに伺いたいと思いますが、総理は、本会議あるいはまた予算委員会の席上でも、現在の憲法が果たしてきた役割り、それについては、平和とか基本的な人権、民主主義、そういう点では大きな役割りを果たしてきたという歴史的な評価をしておりますが、それはそのとおり解釈してよろしいですか。
  391. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 歴史的役割りを果たしてきたと思っております。
  392. 金子満広

    金子(満)委員 そういうように現憲法を高く評価をしている面があるわけですが、そこで、これも先ほどのこの本をお出しになった翌年、一九五六年に今度は「憲法改正の歌」というのをあなたはおつくりになった。これは、その歌をつくったという話はずっと出るのですが、内容がどういうものであったかというのはまだ知らない方もたくさんあると思うのですね。  これはうんと長いんですけれども、その短い部分でいきますと  嗚呼 戦いに打ち破れ  敵の軍隊進駐す  平和民主の名の下に  占領憲法強制し  祖国の解体計りたり  時は終戦六カ月 軍歌調なんですが、次なんですね。  この憲法のある限り  無条件降伏続くなり  マック憲法守れとは  マ元帥の下僕なり  祖国の運命拓く者  興国の意気に挙らばや これが、中曽根総理が自分で何かこたつで鉛筆なめなめつくったというこの歌になるわけですね。  こういうことを通じて、いま総理は、現憲法というのは歴史的にも、平和、基本的人権、民主主義というもので大きな意義、役割りを果たしてきたんだと言っておるけれども、昭和三十一年、一九五六年には、「この憲法のある限り」というのでこう言っているわけですね。これも大きなやっぱり違いだと思うのですね。あのときとこのときとはこういうように違うということでありますが、もう一つつけ加えますと、一九五五年には徴兵制は確かに言った。五六年には「この憲法のある限り」でこれをやった。そうして、総理になったら今度はこの憲法を高く評価をした。そして、外国人の記者に対しては、この配った中にもあります。これはあなたが総理としてでないと言っても、二十六日の日にした中には、この憲法が決まったときにはこれは大変なことだと思ったような、ゆゆしい問題であったと私は感じたという意味のことが書いてあります。そうすると、時と場所、それをちゃんとかみ分けながらやるのですけれども、その使い分けの巧みさというのは驚くほかないと私は思うのですね。  こういう点からもいろいろ問題がありますが、私はそれと関連して、一度に聞いてしまいますが、これも先日の衆議院本会議で核問題について触れた中であなたが否定された問題があります。私は核問題ということで言えば、去年の五月の日米首脳会談、共同声明、そして日米の同盟関係、日米同盟というものを約束した。そして、有名な一千海里のシーレーンを防衛する役割りを分担する。そうして、ことしは今月からあのB52に巡航ミサイルが装備される。そして、続いて今度は第七艦隊が巡航ミサイルを実戦配備する。そうしてまた、東京の横田、そして埼玉の所沢や大和田の通信基地がこのB52に最終的な核攻撃の指令を発する通信基地として機能を高めていく。さらには、F16が青森県三沢に配備される等々、アメリカのレーガン大統領が進めている限定核戦争、そういう中に日本がとっぷりと巻き込まれていっている。こういうときに核問題というのは非常に重大な問題だ。なかんずく日本に核兵器が持ち込まれるかどうかという問題は大事な問題だと私は思うのですね。  そういうときに不破委員長が指摘をしたのは、昭和四十五年、つまり一九七〇年の九月八日から九月の二十日まであなたが、総理防衛庁長官のときにアメリカを訪問した、その訪問、視察した内容のこれは記録であります。各ページに四角で秘密の「秘」が全部打ってあります。そして、随行者の名前も全部出ています。防衛庁の防衛局長の宍戸さんあるいは陸上幕僚監部の第二部長、あるいは防衛研修所所員の桃井さん、長官秘書官の池田さんとか、随員として、これは国会議員です、木部さん、森下さん、中尾さん、これは全部載っています。そして、その下に別に、昭和四十五年九月防衛庁長官中曽根康弘とちゃんと入っています。そうして、私どもが指摘したのは次のところであります。  これは長官が、つまり防衛庁長官中曽根康弘という名前で、九月の九日レアード国防長官と会ったときに、冒頭、長官よりの発言としてあります。その発言の中で、「又、これは個人的見解だが、世界各国の誤解を避け、かつ国民のコンセンサスを大切にするためにも、核武装をしないことを明示すべきだと思う。ただし、米国の核兵器の(再)導入については留保しておく方がよいと考えている。これは事前協議の対象となるものであり選択の可能性を残して留保しておくのが賢明と考える。」これがあります。これがあり、最後にもう一つまとめがあります。これも、ここのところも不破委員長が指摘したところでありますが、第四節に「総合成果と所見」というのがあります。その「総合成果と所見」の中に(4)というのがあります。「日本の非核政策については、国務・国防両省とも深い理解を示し、リエントリー」、再持ち込みですね、「について事前協議事項として留保したいという私の考え方を歓迎した。」――「私」というのは総理自身防衛庁長官のとき、自分のことを言っている。だから、中曽根防衛庁長官考え方をアメリカの国務、国防両省とも理解して歓迎されたと、こういうふうに書いてある。  この点について、総理はそういうものはないと本会議で言われました。その点はどうなんですか、ここにありますが。
  393. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はレアード長官に会ったことは事実ですが、そんな文書がつくられているということは全く知りません。そして、レアード長官と私の対話の主眼点は、一つは、沖縄返還の問題でございまして、沖縄の核抜き返還をぜひやってもらいたいと言いましたら、レアードさんは非常にそれはむずかしいと難渋を示したのです。しかし、私は、沖縄の核抜き返還は全国民の要望であるので、これをやらなければ沖縄返還の意味をなさぬと、断じてやってもらいたい、そういうことを言ったこと。それから、アメリカは安保条約を持っておるけれども、いざというときに日本を本当に守ってくれるのかという質問をしたときに、それはあらゆる手段をもって日本を守ります。英語でバイ・オール・ミーンズという言葉を使ったと申し上げましたが、そういう話をしたという記憶はありますけれども、核の再導入云々というようなことは記憶にございません。第一、そういう文書があること自体を私は知らないのです。
  394. 金子満広

    金子(満)委員 総理、そういうことを言ってはいけないです。いいですか。それでは、ここに全部記録があるのです。これは一九七二年の、つまりこのことが出た二年後ですね。七二年の三月三十日の衆議院予算委員会でわが党の東中議員質問に対して、あなたの後を受けた防衛庁長官は江崎さんです。江崎さんはこういうように答えているのですよ。「よく防衛庁部内で調べてみましたところ、当時、中曽根長官は非常に発想の旺盛な人ですから、いろいろ自分の構想について隔意なく私見を述べられた、こういうふうに聞いております。」さらに東中議員が詰めたら、「記録はあるというふうに報告を受けております。」こう言っているのです。これは江崎さんですよ。  今度はあなた自身だ。八一年五月二十二日の衆議院本会議ですよ。それで、これを示して当時不破議員質問したのに対して、あなた自身が今度は答えているのですよ。いいですか。「当時私に随行した者が、部内の資料として私の行動をメモしたその記録文書はございます。」と言っているじゃないですか、自分で。ないと言っているのだから、それを。いいですか。その次に何と言っているか。「もう十年前にできた文書でございまして廃棄処分になっておる、こういうことを聞いております。」と、こう言っている。  あなた、衆議院の本会議でこれ、ないと言ったのです、今度。いまもないと言ったのです。ないと言っても、つくった人、だれが書いたか私は知っていますよ。防衛庁の当時の幹部、みんな読んで知っているのです。あなた、うそ言ったってだめなんです。いいですか。現に存在しているのです。それを廃棄処分にしたのなら、したでいいのですよ。あなたが書いたのでなければ、書いたのでないでいいのです。ここに言うように、随行者が書いたのなら、書いたのでいいのですよ。問題は、政治家として正直に答えてほしいということなんです。あったからどうのと言っているのじゃないのです。まず第一に、正直に答えてもらいたい。内容はこういうようになっているのです。当時の防衛庁の幹部、みんな知っていますよ。あなたが個人的見解、私見として述べたのだから防衛庁の方針でないということは、当時の防衛庁の幹部、みんな知っていますよ。それなのに、あなた、ここにきて、ないとか、開き直って、これは政治家として、私は総理として恥ずかしいことだと思うのですよ。これを認めてくださいよ。
  395. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、私の随行者がつくったメモはありますと、それは多分つくったでしょう、アメリカへわざわざ行ったことでありますから、随行者がつくるということは考えられる、そういうことを言ったことであります。しかし、いまそれを見ますと、中曽根康弘という名前でつくられた文書のようだといま拝見したわけです。私はしかし、自分でつくったこともないし、目を通したこともない。だから、中曽根康弘という名前においてつくった、そういうものはないのです。ですから、それを申し上げたわけです。中曽根康弘と書いてあった文書は、私の了承を得ないでやったことで間違いございません。(「防衛庁のだれがやった」と呼ぶ者あり)それは防衛庁内部において処理すべき問題でありますけれども、遺憾なことであります。
  396. 金子満広

    金子(満)委員 これは重大な問題だと思うのですよ。いいですか。わが国の防衛庁の中には、防衛庁長官のその許可も得ないで、見ないで、その防衛庁長官の名前を使って、しかも、防衛庁の幹部みんな読んでいるんですよ。読んで、いろいろの批判も私は聞いていますよ。それを、私は見たこともない。ちゃんと昭和四十五年九月防衛庁長官中曽根康弘と入っていますよ。これを知らないということは、日本の防衛庁というのはそんなところか。そして、随行者というのは、だれが書いたかもあなた自身わかるでしょう。わからないはずないんですよ。この後の江崎さんだってちゃんと知っているんだから、あるということも。それは中曽根さん、通らないですよ、そういうことは。  私は、総理として日本の政治の中で最高の責任を持っているあなただから、そういうものがあったなら、あったでいいと。あなたは答えているのですから、ありましたと。しかし、そういう点は私としてはどうとかと言うのだったら、どこが違うとか、自分の名前が出て――次の防衛庁長官は知っているのですよ。それで、防衛庁の幹部の人たちみんな読んでいるのですよ。あなただけが読まなくて、当時、現職の防衛庁長官が読まなくて、ほかがみんな読んでいて、そこであなたが開き直るというのは、どう考えても筋が通らないですね。
  397. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 全く私は読んだこともないし、中曽根康弘という名前でそういうものが出ていることもいま初めて知った。しかし、随行者が当時の記録をメモにしたものは多分あるでしょう、そういうことはお答えした。それは、そういうことを見てないから、私はそういうことでお答えしてあるのです。
  398. 金子満広

    金子(満)委員 大変な無責任だと私は思うのですね。先ほどから繰り返し申し上げるように、防衛庁の首脳部はみんな読んでおる。次の防衛庁長官も目を通している。ここにはその後防衛庁長官をやられた方がおりますが、いつ廃棄処分になったか。あなた、自分で廃棄処分にしましたと言っているのだから、いつ廃棄したのです。読みもしない、何もしないで廃棄したというのは通らないですよ。それはあなた、ここで言い逃れをすることは可能かもしらぬです。しかし、あなたの良心が許さないと思うのです。あなたの良心はまずいものがあったと感じていると思うのですよ。それは違いないのです。こういう大事なことを、おれの知らないところで、一緒に行った随行者がつくったんで、そんなこと見たこともない、わしの名前を勝手に使ったのだということが、それで通りますか。私はもっと正直になってほしいと思うのですよ。だから、その点まではっきり、私はだれが書いたって、ここまで出ているんですよ。廃棄処分ということはどういうことかも知っているんですよ。あなたが知っているということを立証する人もいることも私は知っていますよ。それなのに、あなたひどいです、それは。
  399. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、全く中曽根康弘という名前でそういうような書類が出ていることは知りませんでした。これは良心に誓って申し上げます。ただ、随行者がメモをつくったというようなことはあったでしょう、こう申し上げている。これは本当のことであります。
  400. 金子満広

    金子(満)委員 それでは、この問題ばかりやっても時間がなんですが、廃棄処分にしたというのは総理自身が言っているのですから。それから、自分が訪米したときに随行の人が書いた、そういう記録はあるということは知っている。しかし、その記録を防衛庁に残すのに、あるいは廃棄しても、廃棄までは残っている重要な文書ですよ。少なくともアメリカへ行って、それなりの責任ある要人に会った全部の記録ですよ、向こう側の答弁もありますから。そういうものを自分で読まないで記録として置くような防衛庁なのかということは、よくわかりましたよ。大変無責任であるということもわかりました。そういう点で、この問題は機会あるごとに出ますけれども、大変なことですよ、あなた自身答弁を何回も変えているのだから。こういう点で、私は良心に誓ってそういうものはと言うけれども、現にここにあるのだもの。こういう点はもっと素直になって、それこそ、あなた自分で言ったのだから、わかりやすいそういう政治にしてくださいよ。これは非常に大きな問題ですから、その点も繰り返し私は申し上げておきたいと思います。  時間がだんだん迫ってまいりましたので、次に移らせていただきたいと思います。  それでは、経済、国民生活の問題について若干の質問をしたいと思います。  すでに十二月も半ばであります。そして、年の瀬を迎えて深刻な不況の中に全部の国民が陥れられていることは、総理もまた関係閣僚も御存じのとおりであります。倒産は、戦後最高と言われるように、今月は千五百件をはるかに超すだろうと言われています。失業者はたくさんいます。ことし三月、中学、高校、大学を卒業した人たちもまだ就職できないのがいっぱいいるのに、もうすぐ新しい卒業生が来春は出るような状況になっています。  そういう中で、いま商店は売れ行きがよくない。これはひとしくどこでも私どもが生の声で聞くことができます。国民は買いたいものはいっぱいあります。商店は売りたいものはいっぱいある。しかし、実際、物が動いていないというのが現状だと思うのです。特に中小企業や地場産業の倒産というのは深刻な状況に置かれている。大都市、たとえば東京、ここでは印刷屋、製本屋、靴産業の倒産というのは相当な勢いで、中堅のメーカーまで倒産をします。たとえば隅田川を挟んでの浅草の周辺は日本の既製靴の約六割近くを生産している。皆さん、はだしで歩いている人はいないですよ。それなのに、この暮れに来て靴が売れないのです。そして、どんどん倒産していく。だから、関連産業が倒産しないようにどういう防止策をとるか、そして緊急融資をどうするか。こういう問題については、これは言葉じゃないのです。五億、十億の負債で倒産ですよ。そして、焦げつきで倒産ですよ。どこへ皆さんしっぽを持っていきますか。どこへツケを持っていけるのですか。あなたは本会議の所信表明で言いましたよ、一家団らんの話をした。こういうところはどこに団らんがありますか。  そういう中で伺いたいのは、いまこれだけ消費が落ち込んでいる、そして何とか国民の所得を上げなければ買ってくれないのだというときに、政府の方では確かに六項目の景気対策を組んだと言いますよ。災害復旧も景気対策の一つ。これはひどい話だ、ひどい計算だけれども、そういうことを言っておる。それから、住宅をどんどんふやすのだということを言っていますね。しかし、十月から住宅金融公庫の金利を引き上げる。どれだけ利用者がありますか。減っているじゃないですか。こういう状態です。これもみんな景気浮揚策だという、あなた方が六つ挙げた中の一つになるわけですね。こういうときに、国民のふところを豊かにしなければこの現状が打開できないのはわかり切っていること。  そこで、もう端的に伺うのだが、あの人事院勧告の見送り、凍結の問題です。そういう中で、この人事院勧告の凍結を最も喜んでいるのはだれか。だれが喜んでいるか。これで一番喜んだのは私は稲山さんだと思うのです。来年の民間大企業の賃金もこれで上げなくて済むと言っているじゃないですか。しかし、この及ぼす影響は非常に大きいわけです。  そこで、私は人事院総裁に伺いますが、いま政府の方は、財政が非常に危機状態にあるから見送らざるを得なかった。もう一つは、義務勧告ではないからということもつけたりで言っておりますが、義務勧告と任意勧告というのは、勧告によって法的に違いがあるのですか。どうですか。
  401. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 五%の義務勧告については、給与の条件に変動があれば、人事院としてはやらなければならない一つの義務の限界として五%というめどをつけておるわけでありますが、しかし、五%以下でございましても勧告であることに相違はございません。したがいまして、義務勧告といい五%以下の勧告であるといい、これは法的には別に変わりのないものと私は考えております。そういう観点から、従来もすでに三回にわたって五%以下の勧告は行いました。
  402. 金子満広

    金子(満)委員 そこで人事院総裁、あなたはきのう嶋崎委員への答弁の中で次のように言われました。これは大変大事なことだと私も思っています。人事院勧告は公務員の労働基本権の代償措置である、四十五年以来完全実施されてきたのは労働基本権の代償措置として当然のことである、したがって、今回の内閣の措置は人勧の趣旨から見て遺憾千万であるとあなたは言われました。  私は、公務員だけでなくて、多くの方々が遺憾千万と思っていると思うのですよ。これは言われるとおり、憲法で定められたところの労働基本権、これが大きく制約をされているのだから、そのかわりの措置として人事院があり、その人事院の勧告というものがあるのだ。これをもし政府が無視してやったとなったら、これは憲法にも抵触するのではないか。つまり、財政の危機というものが、憲法で認められている労働基本権を制約したのだから、そのかわりに出た人事院の勧告なのだから、これを見たときに、財政危機というのがすべてに優先するということになったらゆゆしい問題だ。こういう財政危機が続く限りどういうことになりますか、こういうことを考えざるを得ません。  そこで人事院総裁、私は率直に伺いたいのです。  こういうように人勧が無視されたということは、憲法にも抵触するのじゃないだろうかと私は思います。そういう点で総裁どう思いますか。大変なことだと私は考えています。
  403. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 ただいまの御質問でございますが、御説のように、給与に関する人事院勧告というのは、これは法律にはっきり認められた労働基本権制約に対する代償措置として設けられておるものでございます。したがいまして、これは勧告をした限りは尊重していただかなければならぬというのがたてまえであることも申すまでもございません。ただ、このことが直ちに憲法違反になるかどうかということにつきましては、これは最高裁判所その他で最終的には御判断いただくことでございまして、私の立場でこの問題についてかれこれ申すべき立場にはございません。
  404. 金子満広

    金子(満)委員 総裁の苦衷を私はよくわかります。察することはできますよ。しかし、これは総理、それから関係大臣、みんなそうだと思いますけれども、この人事院勧告が凍結される、そして、その影響力というのは非常にでかいと思うのですね。  そこで、年金との関連については、午前中の大蔵大臣の答弁にもありましたが、私の聞き間違いでなければ、大蔵大臣、恩給や年金にこれがどういうように影響するかという問題ですね、その点については、大蔵大臣は人勧が凍結されたんだから恩給、年金もこれをアップすることは困難だというような意味発言をされたように私は思いますが、その点どうですか。
  405. 竹下登

    ○竹下国務大臣 恩給、それから年金、それぞれ法的根拠を示しましたが、趣旨においては、金子委員いま御指摘のとおりの趣旨答弁をいたしました。
  406. 金子満広

    金子(満)委員 これは一々数を申し上げなくともおわかりのことと思いますが、国民年金が七百万人、厚生年金三百万、共済年金百六十三万、そして恩給が二百五十万人ですね、福祉年金三百万、そしてさらには、あの遺族年金が五十万を超える人たちがいるんですね。合計しますと二千百万を超えるんですよ。これが年金と恩給で生活をしている人だ。恩給と年金というのですから、そんなに若い人がいないのは御存じのとおりですよ。こういう中で、相当冷血な人でなければ、上げないなんということは言えないと思うのですね。万難を排して私はやるべきだと思うのですね。たとえば、この遺族年金の問題についてどうですか。夫や子供を失った人たち、みんなもう年老いた婦人ですよ。これが上がらないのです。こういう点を考えたら、私はここのところで、人勧も、そしてまた、この年金や恩給についても全部上げるべきだ、このことば結局は国民のふところを潤すという意味からも大変大事なことだと思うのですね。公務員とその年金、恩給、そういう関係者の数はおおよそ三千万人になると思うのです。一兆九千億円になりますよ。いま、この年の瀬で一兆九千億がずっと払われるようになったら、どうだと思いますか。私は、商店も中小企業も、売り上げ不振で悩んでいる多くの人たちも、福の神を呼ぶようなものだと思うのです。  そういう点は政府の方としても、総理、あなたは責任者なんだから、こういう点は本当に、一家団らんか、話のわかるとか思いやりとか言うのだったら、これは私はぜひやってほしいと思うのですね。この点も最後にもう一度総理答弁を聞いて、次に移りたいと思うのです。
  407. 竹下登

    ○竹下国務大臣 私は財政当局の責任者であります。財政当局としては、五十八年度予算編成に当たって聖域を設けてはならぬ、財政当局の角度をもってやはり厳しく予算編成には臨まなければならぬ、このように考えております。
  408. 金子満広

    金子(満)委員 厳しく受けとめて予算編成に臨むということはどういうことなんですか。やるということなんですか、やらないということなんですか。
  409. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いまの金子委員の御質問は、総体的な、年金受給者、恩給等々の問題について総括的にお触れになりました。私は財政当局の責任者として、今日までの予算編成の手法、それらも考慮し、そしてまた今日の、もとより財政事情を考慮したときに、聖域として扱う考えはない、こういうことを申し上げたわけであります。
  410. 金子満広

    金子(満)委員 午前中の答弁も同じなんですが、結局、人勧は凍結したから年金、恩給もそう上げるわけにはいかぬ、そういう点での厳しさという点で言っていると思うのですね。  もう一つは、特に年金生活者、恩給生活者のこと。年配者、高齢者ですからね。そういう点で考えますと、私は、老人保健法、平たく言えば老人医療有料化法だと思いますが、八月成立をして来年の二月からこれが実施になるという運びになりました。これは厚生省の担当者で結構ですから、現在無料であって今度二月から有料化される場合に、対象のお年寄りの数ですね、人口はどのくらいあるか。それから、この有料化によって国がどのくらいお金が浮くのか、浮かそうとしているのか。やってみなければわからないですけれども、推定はどうですか。
  411. 林義郎

    ○林国務大臣 金子委員御指摘のとおり、有料化を二月からやるということになりますが、対象となる人は約七百十万人というふうに見ております。  それから、負担が個人にとりましては非常に少ない負担でございますが、その負担の合計額は、五十七年度の計算でやりますと約四百八十億でございます。老人医療全体の費用が三兆円でございますから、それの中の約一・六%、こういうふうに御認識いただければありがたいと思います。
  412. 金子満広

    金子(満)委員 そこで、今度は総理にまた伺います。  あなたの著書、書いたものをたびたび引き合いに出しますけれども、これは非常にあるのです。今度は、内閣総理大臣中曽根康弘というので、「正論」八三年一月号に「逞しい文化と福祉の国を」という、あなたの署名入りのがあります。これの「「安心」と「安全」と「安定」の政治」という中に、次のくだりがあります。「日本人の平均寿命が世界のトップクラスに延びたのは誇るべきことではあるが、政治と社会制度はまだそれに追いついていない。寿命が延びても「老後の不安」が解消されなくては素直に祝えないではないか。」私はこれは賛成です。総理がこういうように考えているということであれば、これを実際に生かしてもらうことはやってもらわなくちゃならぬが、ここに書いてあることはいいです。  そこで、総理に伺いますが、毎年九月に、老人の日のあの前後に、世論調査というのをやりますよ。これは厚生省、一番よく持っているのですけれども、老後の不安という問いに対して、何が一番毎年多いか、御存じですか。
  413. 林義郎

    ○林国務大臣 お答えいたします。  老後の不安というのはいろいろあると思いますが、私は、一番不安に思うのはやはり健康の問題だろう、こういうふうに考えております。
  414. 金子満広

    金子(満)委員 さすがに厚生大臣でよく知っていますが、健康の問題がずば抜けてこれは多いのです。いつでも半数近くのパーセントまでいくのです。四十数%、五〇%近くいくのですね。  そこで、これは時間がありませんから端的に答えてください。私も続けて質問をいたします。  いま、国が有料化になったために、この法律に合わせて地方自治体もそうせよというようなことが言われている。たとえば厚生省は、十月八日に部長通達で、市町村長は医療の内容、一部負担金の減免等、医療の実施について本法と異なる取り扱いはできないと言っているのですね。これは自治体が独自に七十歳以上のお年寄りの一部負担をなくしていく、あるいは無料化のために独自の努力を一生懸命やっているのですが、そういうのはいけないというようにもとれるのだけれども、そういう法的根拠はないんでしょう。どうですか。
  415. 林義郎

    ○林国務大臣 お答えいたします。  年齢の引き下げ等老人の対策につきましていろいろとやっていますが、これは地方公共団体独自の立場でやっていられることでございます。  ただ、老人保健法の成立に当たりまして、総合的な施策を新しくとることにいたしました。そういった観点もありますし、特に、老人保健法の第四条でございますが、「地方公共団体の責務」という規定がございます。そうした規定から、われわれとしては、地方公共団体にも国と同じようなことでやってもらうということをお願いをしているというのがわれわれの立場でございます。
  416. 金子満広

    金子(満)委員 お願いですから聞かなくてもいいということにはなりますけれども、大臣、これは地方自治体が単独事業としてやるわけですね。そういう点については、これは自治大臣でも厚生大臣でも結構ですけれども、地方自治法の十四条一項で言われるところのいろいろの事業が現にやられておる。そして、老人医療についても、たとえば岩手県の、たびたび引き合いに出されるのですが、沢内村というのは二十年前から六十歳以上を無料にしているわけですよ。全国でもいま無料のところが百万人くらい人口がありますね。  そういうところがあるのですから、ここのところで、いまの厚生大臣のあれですとお願いをしているというわけだが、政府としては、地方自治体がやる独自の事業を禁止したり、あるいは実施した場合に、よしそれならば財政的に制裁を加えてやる、地方交付税交付金をカットしようとか、そういうようなことはあり得ないことだと思いますが、いいですね、それはないですね。
  417. 山本幸雄

    山本国務大臣 ただいまのお話は、筋論としてはおっしゃるとおりだと思います。ただ、御存じのように、いまや地方財政というのは国家財政と同じように非常に窮乏しておるし、五十八年度地方財政計画も非常なむずかしい局面を迎えておるという事情もあります。また、国が考えた場合に、国の政策と地方との整合性という問題もある。そういうことも考えながら地方公共団体はひとつ運営をしてほしいという要請は私どもとしてはやっていきたい、かように思っております。
  418. 金子満広

    金子(満)委員 これは前にも参議院でも議論になっておるわけですが、単独事業は禁止しない。また、できないですね。これはしないということはいま厚生大臣の方から言われましたし、財政上も制裁とか圧迫ということは、自治大臣、これはできないわけですね、それ自体は。そうでしょう。できないということでうなずいておりますから、できないですね。これは大事なことだと私は思うのですね。こういう立場で今後ともひとつ厚生省も自治省もやってほしいと思うのですね。  そういう中で、次は増税問題と大企業の脱税問題についてちょっとお伺いをしておきたいと思うのです。  いま福祉がどんどん切り詰められている。そして、圧迫されている。これとあわせて、国民の多くは増税になるんじゃないかという心配、懸念はうんと広がっていると思うのですね。鈴木前総理は増税なき財政再建に政治生命をかけるということを何回もおっしゃいましたが、中曽根総理になったらそれは基本理念である。政治生命と基本理念というのは解釈はいろいろあるだろうけれども、これはまとめてお伺いしますが、大型の間接税は念頭に置いていないということを総理は何回も言われました。それはそれとして言葉ではわかるわけですが、直接税と間接税、直間の比率を変えるということがあり得る、それは将来考慮してしかるべきだというお話をされました。  そこで、結論的に伺いたいのですが、大型の間接税、一般消費税、これは五十四年で導入しないということは決まっているわけですが、消費一般にかかわる税そのものは、大蔵大臣、やる余地を残している発言をしているように思うのですが、どうですか。
  419. 竹下登

    ○竹下国務大臣 消費一般にかかる税制そのものを否定することは、税制の理論的にも学問的にもこれはできないことである、このように思います。
  420. 金子満広

    金子(満)委員 それで、現にかかっておるものももちろんあるわけですが、新しく一般消費税、名前を変えてそういうような新税を考える、導入したい、こういうようなことは考えておりませんか。
  421. 竹下登

    ○竹下国務大臣 かつてのいわゆる一般消費税(仮称)の手法はとりません。そして、そのいわゆる一般消費税(仮称)の名前が変わって登場する、こういうこともありません。
  422. 金子満広

    金子(満)委員 まだ幾らかいろいろ余韻があるのですけれども、一般消費税、そういう大型の間接税はいまやらない。  総理大臣、中曽根内閣のうちはやりませんか。
  423. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いつまで続くかという問題もありますが、臨調答申を尊重すると言ってきておりますが、臨調答申の中では、当面――当面という言葉であったか、さしあたりという言葉でありましたか、増税なき財政再建を行う、それと同時に、そこに書いてありますのはGNPと租税負担率との関係において、これを変更しないで、そして、その範囲内においてやりくりしなから税制問題を扱うという趣旨のことが書いてあります。ということは、歳入構造についていろいろな見直しの可能性を否定していない、増税なき財政再建ということはそういうことを意味しておる、そういうふうに解釈して進めてまいりたいと思っております。
  424. 金子満広

    金子(満)委員 そこで、済みません、資料を配ってくれますか。  大企業の脱税に甘い税務行政という問題の一つなんですが、これは私ども共産党が、公にされているいろいろのものからピックアップしたものです。七七年からのものでありますが、ここには十大商社その他幾つか拾ってあります。  それで、たとえば三菱商事、三井物産、丸紅、伊藤忠、住友商事などなど十大商社、以下鹿島建設から三越、いろいろありますが、こういう中で、脱税というのがこの表で見るように非常に多いのです。十大商社という点で言えば、申告漏れの金額が四百六十億円、追徴額が二百億。これはもちろん重加算税ということになりますけれども、こういうようなことがずっとやられてきておる。これは十一月三十日、あのロッキード事件捜査中のことでありますが、丸紅、百億円の申告漏れ、五年間で四十四億円の追徴というのがあります。ロッキード事件捜査中にも所得隠しをやっておった。  そこで、ここの表にもありますけれども、大蔵大臣、このうち一件でもいいですが、青色申告を取り消ししたものがありますか。それから、脱税で告発というのをやったものがあるかどうか。これは大臣でなければ担当者からで結構です。
  425. 大山綱明

    ○大山政府委員 お答え申し上げます。  ただいま拝見をいたしましたものですから十分に中身について承知をいたしておりませんが、拝見いたします限りでは、この中で青色申告を取り消したものはないのではないかと思います。また、脱税ということで告発をいたしたものもないのではないかと思います。なお念査をいたしたいと思います。
  426. 金子満広

    金子(満)委員 間違いありません。ところが、昭和五十六年だけでも、税務署関係ですから中小企業一般ですね、これが二万九千七百六十七件青色申告が取り消しになっております。こういう点から見ても大きな違いがあります。  そこで、これは国税庁の十月の調査課所管法人の課税の問題についてその報告でありますが、この中で、細かくはもう申し上げませんが、国税調査課が担当している大法人、資本金一億円以上ですが、約一万九千社のうち五分の一の四千二百社を実地調査した。それだけで税金が、新しく取り立てたのが千三百四十五億円ふえていますね。つまり、五分の一のところだけ調べてもこれだけの金額、全部やれば六千億から七千億円になる計算に私はなると思うのですね。こういう点を見ると、大企業の脱税を許さない、きちんとやるだけでも国民が要求しているこの減税というのも可能になる。そういう点で、とにかく五分の一でもこれだけの大きな千三百四十五億円も出るのですから、こういう点では大企業にも甘くしないという点は、大蔵大臣、いいですね。
  427. 竹下登

    ○竹下国務大臣 いわゆる大企業に甘くするという考えはありません。
  428. 金子満広

    金子(満)委員 そういうことの中で、この税金問題というのは非常に及ぼす影響はでかいし、いま国民が中曽根内閣のもとで税制がどういう形に展開してくるかというのは大きな関心、注目が寄せられていることは事実であります。そういう中で、いまいろいろの税務行政の中では、大企業に対してはいま言ったように青色申告取り消しゼロという中で、中小企業、商店はあれだけの件数がどんどんやられます。数が多いと言えばそうですけれども、片方はゼロであり、片方はたくさんやられる、こういう形ですね。それから、実際の税務調査についても、営業妨害になるようなことがもう随所にたくさんあります。子供の通帳まで見るようなところもいっぱいある。こういうようなこともありますから、それはそれとしてぜひ厳しくやっていく、こういう点で大企業に甘いというそしりを受けないようにしていただきたい、こういうように思います。  行革、国鉄問題について触れることがもうできませんけれども、一言だけお聞きしておきたいと思うのです。  行革の目玉、国鉄。国鉄の内容は、分割して民営に移す、赤字のローカル線は廃止する、こういうことが縮めて言えば言われているわけですけれども、もともと公共性の高い全国を統一した交通機関としての国鉄であります。そういう中で、もともと僻地山間、そういうところに開発した鉄道というのは施設費そのものが赤字なんですね。平たん部の方はトンネルもないし、高い鉄橋もないし、山を削る必要もありませんけれども、山間僻地ほど施設費、建設費がかかっていることは、初めからそのとおりだと思うのですね。だから国鉄、国有鉄道としての機能を果たしてきたということが言えます。そういう中で、いまローカル線が第一次、第二次で七十三線区、これを廃止するという計画が現に進められている。  こういう中で、赤字ということだけで言えば、これはもう時間がありませんから、私ども計算し、そして運輸省でも報告で同じ数字が出ているのですが、上越新幹線つくりました、開通しました、まだ決算はもちろんできませんけれども、推定年間一千億円の赤字が出るというのですね。だから、赤字線をみんななくすということだったら、その上越新幹線もなくさなければならぬわけですよ。そんなばかなことはできるはずもないのですね。  そういうことを考えたときに、赤字ということでローカル線全部なくすということは全くむちゃなやり方だ。この間も、組閣後、山中さんがテレビに出ているのを私は見ましたよ。大変苦しいことを言っているのがわかりますよ。あなたのところは幹線でちょっと駅が残るだけで、あとはみんななくなってしまうのですね。それでも行革結構、赤字線廃止結構とはあなたも言えないと思うのですね。こういうような状態が現実にある。これはどこの地域でも、市町村長、市町村議会で廃止賛成を決めておるところはほとんどないのですね。私の知る限りではありませんよ。  こういう中で総理が先頭に立って、本部長としてクーデターの気持ちでやるというようなことを前には何か書いてありましたけれども、これはとんでもない話ですね。私はそういう点で、この国鉄の赤字線の廃止問題、それから、そういう点については公共性の高い、日本では百年の伝統を持つ国鉄でありますから、ここで国鉄を全部分解してなくすようなことを絶対にしてはならない。私は、むだを省くという点で言えばほかにもずいぶんあるわけだし、国鉄自身のあの計画が、日本列島改造の中で九千キロの新幹線で十兆五千億の予算なんて言ったらもうべらぼうなことですから、そういう中で遊んでおる貨車も線区もある、そして線路もないのに成田の空港の下には駅だけできたというような、百億だという、こういうようなこともありますから、この赤字線の問題については、単純に赤字だから廃止するというようなことはしないし、させないし、そういう点はぜひ今後とも議論していきたいと思いますが、この点で最後に総理見解を承って、終わりたいと思います。
  429. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 金子さんも国鉄のことはお詳しい。まさに百十年の歴史を持っておる国鉄です。しかし、モータリゼーションとかいろいろな経済事情の変化でお客さんがだんだん少なくなってくる、一方では新幹線のように社会のニーズにこたえる、こういう中から地方ローカル線の廃止等々も出ておりますが、これは地元と転換するものはしてもらうようないろいろな協議をしながら、その間の不便のないようにはやってまいりたい、こう思っております。
  430. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて金子君の質疑は終了いたしました。  次に、楢崎弥之助君。
  431. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私で各党代表の質問が一巡をするわけであります。私も国会に出て二十二年間、予算委員を務めること十二年間、予算委員会、ほとんどの各党代表者が自分の持ち時間の半分を割いて中曽根内閣政治姿勢あるいは政治倫理について質問を展開いたしました。異例のことであります。  なぜこのように政治倫理の問題について質問が集中したか。それは、中曽根総理仕事をやる、その仕事の中心は行財政改革でありましょう。しかし、この行財政改革を進めようとすれば国民の皆さんに多大の負担をかけなければいけない、国民の皆さんに多くの点で犠牲を強いなければならない。そういうときに、肝心の政治の姿勢が正されずに、金権腐敗政治体質を正さずして国民に対し説得力があるであろうか、これだと思うのですね。こんなことをほったらかして、国民の皆さんがまんしてくださいなどと言えば、国民の皆さん、恐らく顔を洗って出直して来いと言われるでしょう。こういう気持ちで各党この問題を取り上げたと私思うのであります。  私どもも、あなた方が総裁選挙をやって政治空白をもたらしている間、衆参の有志議員でつくっております超党派の、野党の超党派でございますけれども、政治倫理確立議員懇談会をつくりまして、略して政倫懇と言っておりますけれども、政倫懇あるいは新自連、南は鹿児島から福岡、大阪、東京、北は北海道の函館、一番最後に田中総理の地元中の地元である長岡市に、上越新幹線開通日の十月十五日に遊説を終わりました。  私は、長岡市に行ったときに、駅前の商店街でありますけれども、たくさんの人が集まって、どこでも大変な関心があります、この問題は。それで、私が長岡に行ってお話をし、訴えたことはただ一つであります。  長岡市は長岡市民が尊敬してやまない山本連合艦隊司令長官の生まれた土地であります。中曽根総理も、海軍大尉か少佐か知りません。私も大学から海軍予備学生に引っ張られた。滋賀航空隊時代に、あの安倍晋太郎大臣も予備生徒として来られたでしょう。山本元帥は海軍の中にあっても平和論者であった。日米開戦に反対をした。また、軍縮会議には全権代表として活躍をされた。私は武人として尊敬をいたしております。  山本元帥は、明治十七年に長岡市の玉蔵院町というところで生まれられ、そして同じく長岡市の阪之上小学校に入られて、それから長岡中学校、そして海兵、そして連合艦隊司令長官として戦死をされた。お墓はいまも長岡市の長興寺という禅寺にあるのです。長岡市民の皆さんの関心は深い。  山本さんが戦死をされたときに、尊敬してあたわざる長岡市民は、乃木神社があり東郷神社があるから山本神社もつくりたいと言って、代表が上京してこられた。そうしたら、山本さんのかつての上官である米内光政大将が、いや、そんなことはやめなさい、山本という人はそういう人間じゃない、そういうはでなことを望む人間じゃない、神社なんかつくると山本君の意に沿わないであろう。それでできなかったのです。  昭和十八年四月十八日、敗色濃いあのニューブリテン島のラバウル基地を、山本長官はブーゲンビルの南端のブインというところを視察するために午前七時に飛ばれた。乗っていかれたのは一式陸攻中型攻撃機。知っているでしょう、あの芋型の。これに従うものもう一機、参謀長が乗った一式陸攻。これを守る戦闘機、零戦六機。そして飛び立った。あと十五分で着くというときに、七時四十分、暗号を解読しておった米軍のP38十六機がこれを迎え撃った。ついに撃墜されて、戦死をされた。このP38をつくったのはロッキード社なんです。  私が長岡市民に訴えたのは、あなた方市民の尊敬してやまない山本さんは、ロッキード社製のP38に落とされた。ところが、同じこの長岡にそのロッキードから汚い金をもらった人がおる。しかも、その人たちが支持されておる。一体、山本さんを尊敬する心と田中さんを支持する心と、どちらが長岡市民の本当の姿なんですかと私は訴えたのです。片一方は、まだぴんぴんされておるのに銅像まで立っておる。私は非常にこういう点は、あなたもわかりやすい言葉でと言いますから、わかりやすい話をしているのです。  山本長官は靖国神社へ祭られておるでしょう。私はいまからやりますけれども、まだそのロッキード社との関係が明らかにされていない、総理自身も。だから、こういうものが解明されるまで総理は靖国神社に行くのをやめたらどうですか。加藤さんもやめたらどうですか。地下の山本さんが泣きますよ。それでもなお靖国神社に皆連れていきますか。靖国神社に参られますかと聞いておるのです。
  432. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 靖国神社にもお参りします。私の弟が戦死して祭られております。
  433. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、そういう点で国民の皆さんはやはり釈然としないものがあろうと思うのです。ほとんどの方がやられましたから、重複を避けて、まだやられていない点をただしてみたいと思うのであります。  加藤議員に対してはもう司直の判断が下っているから、さっきも金子委員が言いましたけれども、国会は裁判所じゃない、国会は、灰色というあの定義にあらわれておるとおり、道義的責任あるいは政治責任を追及するためにわれわれはやっておるのですよ。その点を間違えちゃいけないんです。  それから、佐藤孝行議員の問題であります。これも私はあの総裁選挙のさなかテレビを見ておったら、あなたの選挙事務所で隣に佐藤さんが座っておるのを見たですよ。そして、あの佐藤さんの役目は何かというと、田中総理とあなたの連絡係というじゃありませんか。自民党員でもないのですよ。あなたは、そういうことは君やらないでくれ、遠慮してくれ、慎んでくれというぐらいのことがなぜ佐藤議員に言えないのですか。
  434. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 佐藤君も函館市民等の支援を得て国会議員として出てきておるものでございますから、国会議員としては非常に働きたいとも思いますし、また私と長い間友人でありましたから、私のためにこういう機会に一生懸命働いてくれたんだと思います。
  435. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたが頼んだのですか。私は、普通の人間なら――さっき言われておったこと、わかりましたよ、かばわれる気持ちは。しかし、自分の選挙で使われることはないですよ。それが政治の姿勢というものじゃありませんか。いまから総裁になるかもしれない、総理・総裁になるかもしれないという人が、自分の選挙のために佐藤さんを使うことはないじゃないですか。わかりやすいじゃないですか、これは。
  436. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 志願兵で一生懸命やっていてくれる人でありますから、それはありがたく感謝しておったところであります。
  437. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、あなたの政治感覚というものはそのぐらいのものなんだ。われわれの常識と違うのです、それは。世の中の常識とも違うと思うのですよ、私は。  次に、憲法の問題を一つ聞いておきます。  次の選挙であなたは改憲を争点にする気でおるか。改憲について審判を総選挙の争点の中に入れる、そういう気があるかどうか。
  438. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いまのところ、そういう気はありません。
  439. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、ロッキード事件のことについて触れられた点が少のうございますから、一点触れておきます。  あなたを第一委員室に証人喚問いたしましたときに、例の四十七年十月五日の夜の児玉事務所からの電話の件について、みんなが聞きました。私も聞きました。その当時はコーチャン回想録しかなかったのです。ところが、いまはそのコーチャン証言が、尋問調書が東京地裁、五十三年九月二十一日に証拠として採用決定されています。もはやあなたを証人喚問した時点と違うのであります。そしてこの中に、これは小佐野事件についての問題ですから、児玉事件だとまた別に出てくると思いますけれども、この点で、いいですか、証拠採用されて、事業として認定された点がある。  これは別紙一であります。この決定書の別紙一です。裁判所が決定した。この中にこうありますよ。亡くなった福田太郎さんが最初の供述者です。そして、コーチャン氏がその次の供述をやっておる。こう書いてあります。「小佐野氏が言ったような航空機購入を処理する計画は明らかにありました。しかし、彼が」、あなたのことです。「彼がこのことがロッキードにどのようなことをもたらすかを誰かに話をして指摘したところ、彼等はその予定された行動の方針を捨てた」。あなたの名前が出てくるんですね、採用された事実認定の中に。  次に、別紙二。これは原供述者は、最初の供述者は児玉被告です。そして、コーチャンの尋問のやつです。「彼がその午前中、」十月五日です。「彼が」というのはあなたのことです。「彼がその午前中、金曜日の午前中に、先ず第一にこれに関係した沢山の人達に会ってみる。そして事情を彼が調べてみて」、「彼」ってあなたです。「彼が調べてみて既に提案されていることについて誤りを彼が指摘できるかどうかみてみる」。この「彼」もあなたです。  つまり、トライスターを全日空に売り込むような話になっておったのが、それがいきなり日航が買う、そして全日空の方はDC10に変えるという例の陰謀の話であります。朝からこの話は続いているんです。コーチャン氏が小佐野事務所へ行くんです。そして、何とかしてくれと頼むのです。その十月五日の朝ですね。そして、それからずっと続いて、昼過ぎに小佐野氏はハワイに飛ぶんです。それから夜になるんです。そして、児玉譽士夫に、こうなる。そして、亡くなった福田太郎さん、大刀川秘書、児玉被告、そういう人たちが全部で確認しているのが事実として認定されているんです。  ところが、あなたはやはり電話はなかったと言う。これは採用された証拠と違うんですね。そして、この午前中の件については、今度は小佐野判決の中では事実と認められているんですよ。そうすると、これは一連の流れですから、当然夜までそれは事業と恐らく児玉判決のときは出てくると思います。それでもあなたはこれは間違いだ、この嘱託尋問調書は間違いだ、そうおっしゃいますか。
  440. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう事実は全くありません。コーチャン氏が錯覚したか、あるいは芝居でそういうことを本当と思ったのか、その辺は全くわかりませんが、ともかく私に関する限りはそういうことはありません。  翌日の点についても、朝、朝飯会があったり、それから国防会議があったり、たしか閣議があったり、それから記者会見をやったり、それから、たしか小此木君のところへ、横浜へ飛んで演説会か何かに行った記憶がありまして、そんなことをやる余裕なんか全くなかったのであります。
  441. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は事実は知りません。この証拠として採川されたコーチャンの嘱託尋問調書及び小佐野判決の内容について、あなたのおっしゃっていることと違う。違うということは、これが間違いだということになるんですよ、裏を返せば。  きのうでしたか、稲葉委員質問に対して、いわゆる東郷事件であります、東郷さんの国会における証人喚問のときの証言及び東郷さんの東京高裁の判決で認められた点とあなたがおっしゃっている点が違うのです。そうすると、あなたがおっしゃっていることは、判決が間違いだということになる。行政府の長が、それはあなたの事件ではないですよ。それははっきりしておきます。あなたの事件ではないが、そういういろんな情景の中で出てくるそういう認定に対して行政府の長である総理が、判決は違うんだ、間違いだ。これは司法に対する重大な挑戦じゃありませんか。私はそういう気がする。ゆゆしいことだと思う。  あなたが並の大臣ならまだしも、総理大臣ですから、行政府の長ですから、行政府の長としてこの司法の決定に対して、私はこの点はあなたははっきりする必要があると思う。で、これを明らかにする道は一つしかない。もう一度証人喚問に応じてその食い違いを明らかにする、それ以外にない、私はそう思うのです。したがって、稲葉委員が要求をされました六名の証人喚問に対して私も賛成であります。ぜひそれを理事会で決めていただきたい。
  442. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が国会で申したことは真実でありまして、間違いありません。
  443. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、あなたは証人として喚問に応じてはっきりしなさい、それ以外にないんだということを言っておるのですよ。  それで、総理は、ちょうどロッキード事件が起こって、五十二年ですか、中曽根派の政治団体新政同志会、これが五億三千万円のうその支出報告をしていたことがわかったわけです。で、あなたの秘書は罰金刑になっておりますね。で、すぐ訂正手続をとられた。経過はそのとおりですね。ただ問題は、こんなまずいことをしておっても後で訂正すればいいんだろうと――やはりこれは責任があるのです。ばれたら訂正する。現にそういう風潮がみなぎっておる。その例を一つ挙げましょう。  これは昭和五十五年度の日本泌尿器科学会総会、この学会の会長は石神という神戸大医学部の教授であります。この学会が五十五年四月二日から四日まで神戸の文化ホールで開かれました。当番校は神戸大学医学部の泌尿器科であります。この学会に参加するために大日本製薬、明治製菓、塩野義、そういった製薬メーカーがいろいろお世話するのです。これは慣例になっている。私はせんだって名古屋大学の講師の話をしました。これは慣例なんですね。罪の意識がない。  それで、この学会に参加するために大日本製薬のお世話で神戸ユニオンホテルに宿泊した国立の大学、病院あるいは公立の病院あるいは私立大学医学部あるいは病院の関係者。大日本製薬の分を言いましょう。国公立大学及び病院を先に言います。秋田大学関係八名、呉国立病院関係二名、新潟労災病院関係一名、仙台鉄道病院関係一名。私立大学及び病院の方では、福岡大学関係、これはちょっと悪いですね、福岡大学関係五名、佼成病院関係一名、独協大学関係一名、足利日赤関係一名、大原総合病院関係一名、東京医大関係三名、三方原病院関係一名。これだけの人が、二十六名の人がその神戸ユニオンホテルに泊まる。  これ、ちょっと委員部、文部大臣と厚生大臣と運輸大臣にあれしてください。  それで、私は国立大学の分について、秋田大学について九月に文部省に、文部省予算から出張旅費が出ておりはせぬかと調べさせた。それでびっくり仰天して調べたでしょう。それが一部秋田で漏れて、マスコミに秋田の分だけは載りましたね。間違いないですか、文部省。
  444. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。  楢崎さん御指摘のとおり、秋田大学の医学部の一部教授、助教授等も入っておりますが、御指摘の学会出席の際に、航空運賃及び宿泊費を製薬業者に負担させていたということが報じられております。それで調査いたしましたところ、御指摘の問題については、大学側の説明によりますと、業者による航空運賃の支払いは一時の立てかえであり、最終的には学会出席者によって清算をしたということであります。しかし、関係業者に学会出席旅費を立てかえさせることは、それ自体、特定業者との関係について疑惑を招くおそれが十分でありますので、きわめて遺憾なことであると思っております。  そこで、今後そのようなことのないように厳に、最近でございますが、十二月六日に所管課長名をもって国立大学の各医学部長、病院長に対し厳しく指導をしたところでございます。  細かいことについては、また事務当局から必要があればお答えいたさせます。
  445. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最近なられた大臣ですから、あなたに多くを聞くことはやめます。  それで、総理、大学側は急遽製薬会社に金を払ったのですね。私がそういうことを調べさしたから、びっくりして整えたのです。しかも、私は五、六回神戸に調べに行った。いまお手元に渡したでしょう。レジスターカード、あるいは大日本製薬は宿泊決定書、こういう用紙までつくっているんですわ、先生方のために。そして、ここを見てごらんなさい、今川氏というところ、支払い方法、マルP負担になっているでしょう。マルPというのは大日本製薬です。それから、平野という人ですが、明治製菓株式会社の分は売り掛けとなっているでしょう。大きな判が押してあるでしょう、ここに。もう一人の人もマル掛と書いてある。全部これは大日本製薬が払うということです。現に払っているのです。それで私が追及したものだから、あわてて領収書をつくって。しかも、よせばいいのに、立てかえているから立てかえている方に払えばいいのに、払ってもいない神戸ユニオンホテルの領収書を再発行させている。冗談じゃないですよ。こんなでたらめが許せますか。ばれて、後でとにかくこういうことをすればいいだろう、こういう思想です。しかも、文部省が調べた出張者、これは秋田大学のうのみでしょうが。もう二名行っていますよ。これは調べてください。  それから、領収書十五万何がし、ここに宿泊のあれが書いてあるでしょう。泊った日数がこれでわかります。これは十五万などというもので済むものじゃない。再調査をお願いします。よろしゅうございますか。いいならいいだけで結構です。うんと言われても結構です。大臣、そこでうんと言われてもいいです、時間がないから。――では、再調査していただくそうですから、それはぜひお願いをしたい。  そこで、恐縮ですが、後藤さんの問題について、だれも聞いておりませんから、ちょっとお伺いをしたいと思います。  あなたが、四十九年の参議院選挙のとき、このときは徳島地方区で出られましたね。このときに暴力団の心腹会というのが大層応援に来ていますね。そして、最初は小ぢんまりいろいろ手伝っておったが、終わりがけになると、集票活動をやる、あるいは買収活動をやる、これは全部新聞に載っています。そういう事実をあなたは知っていますか、あなたの選挙に暴力団の心腹会というのが加勢をしたということは。
  446. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 四十九年の参議院選挙の際にいろいろな違反者が出たり、これは私自身反省をいたしております。ただ、暴力団の心腹会云々というのは、私の方から選挙応援など一切頼んだことはございません。これは楢崎さん、ああいう人に応援をしてもらえば、千票もらっても二千票失うわけですから、そこらはやはり私どもとしては心得ておるつもりでございます。
  447. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、あなたがよもや頼まれたなどとは思っていないのです。しかし、事務所まで来て応援をしたという事実があったかどうかだけ聞いているのです。
  448. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私自身はさようなことはわかりません。おみこしに乗って走り回っておったわけでございます。
  449. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これは官房長官、あなたが知らないと言えばいいですが、事実なんです。聞いてごらんなさい。事実なんです。  それで次に、恐喝、傷害等で逮捕された例のナミレイの問題、松浦良右という人の問題です。後藤田さんの秘書の川人正幸というのですか、その人が語っておられますね。長官と松浦氏との知り合いは五十二年暮れから五十三年にかけてである、どうして交際を密にしてきたか、松浦という人が大変な情報屋である、これはあなたの秘書が語っておるのです。この松浦氏とともに、強要未遂及び恐喝で逮捕された共栄興業の実質的な経営者と言われる他谷省逸という人が、松浦氏が逮捕されることしの三月十一日の翌日に突然辞表を提出し、元ナミレイ東京本社船舶事業部長であった秋月恵一郎氏があなたの秘書となっていますね。それで、ちょうど秘書となった五十四年末、あなたは自治大臣、国家公安委員長であったわけですね。このころからナミレイが高砂熱学工業に圧力をかけるのですね。事実はそうなっているのです。そして、そういう秘書を雇われるときに、恐らくこれもまたあなた御存じないというか、相手がそういう自治大臣、国家公安委員長というあなたの肩書きを秘書として大いに利用しやしまいかという危惧はなかったですか。
  450. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 大分事実関係が違うようでございますから、御説明を申し上げます。  いまの秘書、これはもちろん正式の秘書ではございません。事務所の職員でございます。ただ、その他谷というのは実は松浦君のところからの推薦ではございません。私は大体事務所には、大学を出てこれから修業をしようという人をいつも一人は必ず置いておるわけでございます。そういう職員の一人でございます。他谷君は大変まじめないい青年だと私思っております。ただ、滋賀県で県会議員に出たいということの実は修業であったわけでございますが、私はそこで政調の部会等には必ず出席させる、そして、その後五分間で全部まとめて私に報告をさせる、こういう訓練をしておるのですが、どうも基礎の学力が不足であるということで、二年間ばかりおってやめてもらった。やめた後に私のところに音信不通でございました。しかし、それが松浦君のところで働いておって事件を起こした、こういう関係でございます。  それから、秋月君というのは、これは大変りっぱなしっかりした人物でございます。これは、私が実は選挙事務に、手伝ってくれぬかと言って、私の方から頼んでこれは来てもらった人物でございます。私、どうも選挙違反がしょっちゅうあるものですから、君がよく見てどこに事務所としての欠陥があるのかをおれのところにひとつ報告してくれぬかということで実は置いてあったのですが、私が考えてこんなことでないかなというのとぴたり合うような実に正確な情報をもらいました。それによって私は選挙事務所の立て直しをやったわけでございます。そういった関係で選挙後もこれにずっと手伝ってもらっておった。したがって、秋月君というのはそういったことで事件には何の関係もございません。  それから、いま一点の松浦君の関係ですが、週刊誌等でいろいろございました。確かに変わった人物でございます。しかし、最初は中国情報、それからエジプト、それから中近東、それからその後は中米、それからアメリカ関係、こういう情報を持ってきておりました。また、国内の政治についてもしょっちゅう情報を時に応じて持ってくる。私もこういう商売をやっていましたから、ときどきは検証をいたしております。確度の非常に高い情報を持ってきておったことは事実でございます。  以上が事実関係でございます。
  451. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうところから情報をいろいろ取られておるわけですね。大いに注意しなくちゃいけませんな。  次に、松浦氏が実質的な経営者をしております会社の役員であった青山光雄という人に対して、松浦氏は五十五年一月十六日にナミレイの東京本社で殴った、足げりした、そこで一週間の傷を負わせた。それで、この青山氏は診断書を添えて被害届を神田署に出した。そして、三月三十一日付で松浦氏を傷害で告訴した。その五十五年ですよ。そして、その翌四月には神田署の取り調べで松浦氏自身が犯行の事実を認めた。ところが、この事件はそのままになっている、二年間。そして、松浦氏が今度逮捕されて、どうしたことか二年ほったらかしておったのに書類送検をすることになった。このときに神田署長がどういうことを言ったか知っていますか。おえらいさんが背後におるのだ。いいですか、それが一つ。そして、松浦氏自身が記者に語っておる。自分の後ろには、警察に影響力のある代議士の圧力を利用した、こういうことを本人が言っておる。そして、不思議なことに、いいですか、三月十一日に松浦氏は逮捕されましたね。そして、普通なら保釈されるのですけれども、裁判が公判中になっても保釈されていないのですよ。証拠隠滅のおそれありとしてずっといままで釈放されていない。いいですか。ところが、中曽根内閣が誕生し、あなたが官房長官になった直後の十二月二日に保釈された。だれが見ても、二年間もほったらかして、そして松浦が逮捕されたからあわてて書類送検した。そして、今度は松浦の方は、公判中にずっと保釈されないということは異例なことですよ。そして、十二月二日に保釈された。  法務大臣、これは何で二年間ほったらかされておったのですか。
  452. 秦野章

    秦野国務大臣 私は何にも具体的に存じませんので、政府委員から答弁させます。
  453. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいまのお尋ねは、傷害事件検察庁への送致がおくれたということのようでございますけれども、正確にはちょっといま記憶しておりませんが、私の記憶によりますと、告訴事件がありまして、それに対する被告訴人からの反対告訴がたしかあったようなことがあったと思います。その関係がいわば表裏一体のようなことでございまして、その逆告訴の方の参考人の一部が所在不明であるというような事情があって、全体的な送致がおくれたというような報告を聞いたように思っております。
  454. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 私からもちょっとお答えしておきたいと思います。  当時、週刊誌等で警察OBがあの事件に圧力かけた、こう出ておりました。どうも警察OBというと僕になるのですよ。私は、全く神田署の事件は承知いたしておりません。
  455. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 恐らくそうかもしれません。あなたが利用されている。だから、官房長官にもなられたし、大いにその辺は気をつけられないと、あんなナミレイのそういう者を秘書として雇い、あなたを利用することはわかっているのだ、これは。いまのような、いま言った経過も普通考えればおかしいですよ、あなた。あんなことを刑事局長が言ってもおかしいですよ。大いに気をつけていただきたいと思います。  次に、あなたはいよいよ一月十八日から訪米をされる。ひょっとしたら大変なお荷物を背負ってくるのではなかろうかという心配があります。私は、あなたが昭和四十五年の夏、防衛庁長官のときに訪米された、金子委員がやりましたくだりの背景について少し明らかにしたいと思うのです。  あなたは四十五年夏に訪米するに際して、その直前に桃井さんを中心にして十名ぐらいでプロジェクトをつくられたでしょう。それで、アメリカへ行ったらどういうことを話し合ったらいいか、そういうことをいろいろ検討するプロジェクトをつくられましたね。
  456. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 何名だか忘れましたが、つくりました。
  457. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そして、そこでまとまったものをあなたに報告し、桃井氏が先にアメリカに行って、そして、そのプロジェクトでいろいろ出た結論を、原案を向こうで根回しをする、そういう先発を桃井さんがされたのは事実ですね。
  458. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 たしか桃井君が先に行ったかあるいは同行したかしたと思います。
  459. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 このときにあなたの同意を得て桃井さんが持っていった案の中に、中国がそのころ核装備してましたから、この中国の核装備に対抗するためインドに核武装させる、そのためにアメリカが技術を供与する、日本が資金を供与する、そういう案を持っていかれましたね。
  460. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういうものは全くございません。私が桃井君及びその他と事前に準備したのは、レアード氏との会談に関するいろいろな知識及びアメリカの情勢等の分析等でありまして、日米の安全保障関係に大体限定したので、インドの話なんてものは全然ありません。
  461. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなた、しらを切ってもだめですよ。これが問題になって、衆議院の加藤陽三さんが、そのとき、防衛庁にその原案があるはずだから見せろと言ったでしょう。宍戸さんが防研所長であったでしょう。それはマル秘だから見せられないと断った。そして、焼却処分にされたはずですよ。この案はさすがにアメリカはのまなかった。のまなかったです。だから、やみからやみに、あなたは知らぬと言える。桃井さんがあなたの承諾を得て持っていった案だから、あなたが直接言ってないことは事実です、この問題は。あなたが言ったのは、日米加でアメリカに濃縮ウランの工場をつくるという案を提案されましたね。
  462. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは別の機会じゃないかと思います。(楢崎委員「いや、違います。このときです」と呼ぶ)あるいはそのときだったかもしれません。濃縮ウランについてアメリカは資金がない。それで、日本は資金もあるから、むしろ日本につくるということよりも、資金を出してアメリカにつくらせる、そして日本の燃料を入手する、そういう構想で話したことはあったような気はいたします。
  463. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これも断られましたね。さっきのインドを核武装させるという案はすっぱ抜かれた。そして、当時のアメリカの新聞に載った。どういう見出しで載ったかというと、日本は核武装用意かと、こう載ったのですよ。いいですか。それで、そのときにはすでに非核三原則があったのですよ。あなたの思想の中には、それはあなたは核をつくるのを手伝うのだから、資金を出す、それは非核三原則に触れる発想なんだ。インドを核武装させて、アメリカと一緒に資金を出す。もう一つは、いま問題の軍事技術協力にもなる。だから、非常にそういう過去の問題があるし、金子委員があのメモを出したのは、あれをまとめたのは恐らく桃井さんでしょう。それでいま防衛庁をやめてあなたのところにおるのじゃないのですか。今度あなたは桃井さんを連れていくのじゃないですか。どうですか。
  464. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 桃井君はよく知っておりますが、連れていこうとは思っておりません。  インドの核武装なんというのは、私の感じでは全く荒唐無稽な話のように思えます。
  465. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その荒唐無稽と言われるその案をあなたは持っていかしたんだからどうしようもない。これは証人もたくさんおるのですよ。迷惑をかける人が出てくるから言わないですけれども。しかも、それは過去のことですから。そういう点があるから、今度の訪米も心配しているんだ。あなたは変なあれを背負ってくるのではなかろうかと。  それで、八五年から三沢に配備されることになっているF16の問題に移りたいと思います。  ちょっと委員部、これは総理と外務大臣と防衛庁長官に。写真が二通りあるから。  防衛庁にお伺いしますが、F16が核ミサイルそのものを積んでいる写真を見たことがありますか。
  466. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私はございません。
  467. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 アメリカも、米軍の方は絶対こういう写真を使わないのですよ。BDUという模擬弾は使うけれども、表へ出すけれども、これは恐らく日本初公開じゃないですか。もう写真は見られたらわかります。総理、見ておってください。いいですか。総理は英語はお得意だから、その写真の下に何て書いてありますか。これはこのF16をつくっているメーカーのゼネラル・ダイナミックスの資料です。何て書いてあります。いいですか、こう書いてある。写真の下に、このF16は、バリアブル・イールドというのは威力を変えることができるのですね、四種類ぐらい、変えることのできるB61を含む三種類のタイプの核ミサイル、核弾頭を積むことができると書いてあるでしよう。  この三種類の核兵器は何ですか、核弾頭というのは。
  468. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 私は直接見ておりませんのでわかりませんが、ジェーン兵器年鑑その他で可能性があるということがあるということは聞いたことがございますので、必要あれば政府委員から答弁させます。私は存じません。
  469. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ジェーン年鑑のようなイギリスのあれを見られないでも、F16三沢配備をよろしいと前の伊藤長官がアメリカへ行って了承するとき、そのぐらいのことはどうしてはっきりさせて了承してこなかったのですか。無責任です。  いいですか。その二枚目のものに赤で囲んでいるところ、B43、B57、B61、これが三種類です。そうして、このB43というのは大型で、もうこれはほとんど使っていない。だから、B57かB61を積むのです。核弾頭。B57というのは、十二キロトンから二十キロトン、広島型より上です。写真に載っているのです。F16に載っているそのB61というのは五百キロトンなんです、総理。五百キロトンといえば、広島型の四十倍以上なんですよ、一発で。しかも、非常に命中精度がいいのです。  そして、このF16のコックピットの中、操縦席の中、丸を書いているでしょう。これはニュークリア・スイッチです。右側の方に赤いあれがある。これを証明するのは、同じくゼネラル・ダイナミックスのこの資料の中に、右側の2のところにニュークリア・コンセント・スイッチと書いてある。ちゃんときちっと出ている。何もジェーン年鑑を読めばなんていうような話じゃないです。冗談じゃないですよ。このくらいのこともあなた知っておって知らぬと言うのか、知らぬで配備を引き受けてきたら大変な責任だ。  しかも総理総理防衛庁長官もやっていらっしゃるからおわかりだと思いますけれども、このF16というのは、これからペンタゴンの計画では二千三百三十三機、今後のアメリカの対地爆撃戦闘機の主力になるのです、これは。ところが、これの爆弾、どのくらいポンドで積めるか、ここが問題なんだ。五百ポンド爆弾二個分しか積めない。いま航空自衛隊にあるファントムは五百ポンド八個でしょう。F15イーグルは十二個でしょう。国産のF1対地支援機は同じく八個でしょう。それに比べてこのF16は五百ポンド二個しか積まない。それでしかも戦闘爆撃機の主力になる。なぜか、答えは一つです。このB61を積むのです。これで照応するのです。しかもそれは、イスラエルがイラクの原子炉をやったときには15が先に行ってエアカバーして、それから16が行きましたよ。あすこいらならそれでいいけれども、三沢に来るというのは、いわゆるアメリカのアジア核戦略体制の中の一環として来るのです。だから、いざというときは核攻撃する。その任務以外にないのですよ。もう一つあるとしたら、海峡封鎖のときに空を守る、上空を守るというぐらいでしょう。いいですか。  だから私は、これはぜひ総理、今度アメリカへ行かれたときに、それは非核三原則はアメリカは承知しています、持ってくるはずはありませんというようなことじゃなしに、このF16に関する限りは、核を装備しなければ、B57なりB61を装備しなければ意味がないのだから、これは日本に配備するものは絶対に核はつけない、核の持ち込みはF16に限ってはだめということを確約してきてください。どうですか。
  470. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 F16配備の問題は、技術的ないろいろな問題もあり、防衛庁とアメリカのしかるべき当局者との間でいろいろ詰めて行うべき問題であります。その際に、そういう話は当然行われると思います。  私がアメリカへ行ってレーガン大統領と会ったときにその話をする考えは、いまありません。そのかわり、防衛庁と先方の当事者の間でよく詰めさせておきます。
  471. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 どうしてできないのですか。いいですか、十月十二日の決算委員会で社会党の井上一成君がこれを詰めた。せっかくの御要求ですから、しかるべきときにしかるべき場所でその確約をとりますと外務省は言ったのです。安倍さんどうですか、安倍大臣。
  472. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これまでの、いまお話しのように、国会議論で、政府としては適当な時期、機会に再確認を取りつけるということについて検討するということを答弁をいたしております。
  473. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、総理、そうおっしゃらずに、あなた自身が確約してきてください。それはできるでしょう。
  474. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 非常に専門的な、技術的なところがあると思うのです。そういう問題は外務省、防衛庁と先方のしかるべき機関との間できっちりやっておいてもらうべきであると思います。
  475. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やはり亡くなられた佐藤さんと違いますね。佐藤さんだったらこういう国是の問題はきちんとするものですよ。  F16の三沢に配備される分はF16の改造型じゃないですか、防衛庁長官
  476. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 この問題については多分に技術的な問題があると思いますので、政府委員から答弁をいたさせます。
  477. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 私どもが得ている情報によれば、今回配備をされることに決まったF16は、F16A型と称するいわゆる量産型である。改造型はまだそういう計画は持っていないというふうに聞いております。
  478. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは聞いておると言うだけで、すでにこれは改造型を入れたい。しかも、驚いたことに、この改造費は日本側で持ってくれという話が進んでいるでしょう。私は日米のしかるところからこの話を聞いておるのです。あなた、隠しちゃだめですよ。
  479. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 隠すも隠さないもないので、そのとおり聞いたことを申し上げておるわけでございます。
  480. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 あなたは隠しているだけの話ですよ。それは表に必ず出てくるから見ていてごらんなさい。  それから、このF16というのは、もともとF15の行動を補完するという任務を持っておるのです。だから、F15との共同作戦はもう当然予想されているのです。現にいまアジアでは群山におりますよ、米軍のF16が。そして、沖縄の米軍のF15と共同作戦しておるのです。だから、必ずや今後自衛隊のF15と三沢のF16は共同作戦します。私はそう思います。どうですか。
  481. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 わが国が戦闘機の機種を採用いたしますときに、14、15、16、それぞれ特徴があることを前提にF15に決定したと私は聞いておりますが、そのときに、F16が三沢に配備された後に、有事の場合に日本とアメリカが両方共同して作戦行動を起こすこと、これは当然あり得ることだ、こういうふうに理解をいたします。
  482. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 これはやるんですよ。これで国産F1の後継機は決まりましたね、F16に。みんなそう言っていますよ。見ててごらんなさい。これも私は予告しておきますよ。  そうなってくると、せっかく国産でF1をつくって、ASM、空対地ミサイルAS1、これはF1に装備されていますね。このASMの国産のAS1はどうなるのですか。アメリカの方は日本の国産を嫌っている。だから、F1をつぶせば国産ASMもつぶせる、こういうねらいなんです。頭へ入れておきなさい。  それからもう一つ、三菱が国産しております空対空AAM、これはすでに開発済みでしょう。正式採用はされていない。そうですね。イエスかノーだけでいいです。
  483. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 そのことは私はつまびらかでございませんので、政府委員答弁に立たせます。
  484. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 やむを得ぬところがあります。いいです。これは調べてください。これは正式採用の寸前でいまストップになっている。いいですか。この国産のAAMはわざわざ金かけて開発して。そして、アメリカはどうしていますか。ファルコンを入れているでしょう、かわりに。売り込んでいる。ファルコンはいま欠陥があるんで、アメリカでは使われていないのです。わかっていますか。欠陥があって使われていないファルコンを日本に買わしている。わざわざ日本ではAAMというものを開発しておって、正式採用寸前になっている。これも調べておきなさい。どうなっているか報告を後でしていただきたい。  それから、三沢基地の今後であります。いいですか。いま三沢基地にはどういう部隊がおるか。米軍の方はP3Cが九機、自衛隊はF1が四十機、T33が十機、E2Cが二機五十七年度に配備される。約六十機。人間の方は米軍が三千人、自衛隊が二千四百人、合計五千四百人。これが今後、自衛隊の方ではE2Cがあと六機来ますね、五十八年から六十年度にかけて。これが人間が約五百人。そして、F16は五十機ほど来る。人間が三千五百人。合計すると飛行機だけで百十五機前後になる。人間は一万人になる。滑走路は三千メートル一本しかない。しかも、七一年に米軍ファントムが撤去してから、七五年から東亜国内航空が一日十往復している。これでF16が来たときにいまの三択基地は拡張しないで済ませると思いますか。確約できますか。
  485. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 三沢は七、八年前まで、七一年まで米軍のF4等が駐留しておった基地でもございますが、今回のF16移駐問題に関連いたしまして、少なくとも現在私どもが米側からあずかり聞いておるところにおいては、基地の面積上の拡張、そういったものは全然話の中にはまだあらわれてきておりません。
  486. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もし拡張問題が出てきたら断りますか、配備を。
  487. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 現時点でのことをお答え申したのでございまして、まだ向こうから何も言ってきておりませんので、その時点になって判断をさしていただきたい、こう考えております。
  488. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 次に、米軍関係が搭乗員と家族で三千五百人くらい来る。一千戸くらい家を建てなければならぬ。金額にして、一戸四千万前後とすれば当然五百億前後の金が要る。これを建ててくれと言われるでしょう。地位協定二十四条二項で新築ができますか、外務大臣。
  489. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 新しい施設の提供は、ただいま先生がおっしゃいました地位協定二十四条二項でできると解釈しております。
  490. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、私はいままで国会で何回も何回もやった。それじゃ歯どめがないじゃないか。二十四条二項ではできない。いいですか。昭和四十八年三日十三日、当時四十八年度の予算審議のとき、岩国にあるいは三沢に新築のための十億の金がついた。これはだめじゃないか、根拠がない、地位協定上。われわれは視察に行った。当時は社会党です。そして国会で、この新築というのは二十四条の二項からは生まれない。新築はですよ、新築は。これは私は過去の行政協定時代からずっとあなた方に言ってそれを導き出したのです。それで、そこで大平さんが統一見解を出した。私の言い分はやはり正しいと思う。歯どめがなくなっては困る。どういうふうに歯どめをかけたかというと、リロケーションです。古くなったもののかわりになるものの程度の範囲を超えない、新築なんてもってのほか、これが国会でわれわれが歯どめをかけた解釈なんです。二十四条の二の地位協定、それを金丸さんのときになって思いやりなんて言い出してる。それも労務費に限って思いやりが出てきたんです、融通をつけるとしても。思いやりというが、融通をつけるとしても労務費なんです。それをさきのF16の改造費を出してくれとか、米軍の関係者の家を新築してくれとか、そんなものは地位協定の二十四条の二からできないんです、安倍さん。これがずっとわれわれが国会で過去やってきた。それがいまのような北米局長答弁では、われわれは何のためにいままでやってきたんだ。そういう統一見解なりそういうものを、約束事を、幾らアメリカから言われたからといって、できますなどということはだめですよ、これは。  もう少し言っておきましょうか。一体この思いやりが、二十四条の二のそういう拡大解釈がどこから起こってきたかというと、これが四十五年、例のそのときの外務大臣の愛知さんとロジャーズがパリで密約して、それが電報になって、沖縄国会のときに密約電報で騒いだでしょう。そのときのその電報の中に何て書いてある、密約は。この地位協定の二十四条をリベラルに解釈しますと約束した。そこから発しておる。だから、われわれはそういうことも明らかにして、この四十八年に大平さんに統一見解を出してもらった。そういう長い経過がある。それを一片の局長ごときが、ここで、いや、できると思います、何を言っているのです。だめですよ、そんなことは。
  491. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 ただいまの昭和四十八年三月の衆議院の予算委員会の審議におきまして、三沢の飛行場とそれから岩国の飛行場における老朽隊舎の改修建築、こういうものに関連しまして、その経費は地位協定第二十四条二項の規定によって、これは政府が負担できるという私ども政府の見解に対しまして、楢崎委員から、地位協定上、かかる経費は同協定第三条の規定により当然合衆国が負担すべきである、こういう議論がなされまして、その国会議論されました。ところが、大平答弁は……(楢崎委員「私が言ったとおりの経過だとおっしゃればいいんです」と呼ぶ)そこで大平答弁がなされたわけでありますけれども、この大平答弁はこのような論議の経緯を踏まえましてなされたものでございまして、リロケーションとかあるいは老朽隊舎の改修築、修復、そういう代替関係のある追加的な施設、区域の提供ということにおいてその代替の範囲を超えないという運用方針でございまして、これは新規の提供、ただいま問題になっておりますような、新しく建物を建てる……
  492. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 違うのです。ちょっと待ってください。あなた、これを読んでごらんなさい。岩国の――知らないんだ、この人は。知らないから言っている。いいですか。新規の提供がいけないと、岩国のときの。新築はいけないんだ。新規のあれはいけないということの論議の結果がこうなっている。それはこの統一見解に新規が含まれていないのに、何を言うのですか、あなたは。
  493. 北村汎

    ○北村(汎)政府委員 私がただいま答弁いたしておりますことは、私がそれから最初に申し上げることではございませんで、すでに昭和五十四年の衆議院あるいは翌年、いろいろな政府答弁が行われたところでございまして、私の申し上げる趣旨は、新規提供について述べたものではない。新規提供の場合には、これは二十四条二項によってできるというのが政府の解釈でございます。
  494. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは全くこの統一解釈を裏切るものだ、あなたは。これを読んでごらんなさい、私のずっと言っていることを。新規のものを中心にして私は論議をしたのです、新規がいけぬということを。新規がいけぬということで、結局代替の範囲内を超えないようにするというのが最後の最終的な結論なんだ、これは。冗談じゃないです。私は、これは承服できません。これは以後引き続いて外務委員会等でやられると思います。この点も総理、しっかと頭に入れてアメリカに行ってください。  それから、時間がなくなりましたが、軍事技術協力の問題、結論が出ましたか、日米の。これが今度の訪米の一つの大きな目玉になると思う。で、結論出ましたか。
  495. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 軍事技術の供与の問題につきましては、武器輸出三原則もありますが、同時にまた、安保条約というたてまえもありまして、こういうものを念頭に置きまして、いま各省庁間で研究をいたしておりまして、まだ結論は出ておりません。
  496. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 訪米までに間に合わせるのですか。
  497. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 なるべく早く結論を出そう、こういうことになっておりますが、訪米に時間を限って結論を出すということを考えておるわけではありません。なるべく早く結論を出す、こういうことで検討を急いでおるわけです。
  498. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いいですか、禁輸三原則は、経済協力問題あるいは低開発国の協力問題、そういうものに関連して、まず外務委員会で決議している。そして、衆参で決議されておる。五十六年三月二十日衆議院、五十六年三月三十一日参議院決議になっておる、総理。  そして私は、どうも怪しいから、雲行きがおかしいから、昨年の十一月二十日に質問主意書を出している。いいですか。どういう質問主意書を出しているかというと、「憲法、条約、法律の執行機関である政府は、これらの決議が国是として国政上に占める位置の重みと権威にかんがみ、その行政を行うに当たっては例外措置も含め、これらの決議に反することのないよう厳粛に受け止めるべきであると考えるが、内閣見解を問う。」よかったですよ、こういう質問主意書を出しておって。そうしたら、お答えはどうなっておる。そのとおりです、一言で言えば。だから、もしこの禁輸三原則に例外措置、アメリカは例外にするなんというようなことを決めた場合には国会決議はどうします。勝手に行けませんよ。国会決議を変えてから行きなさい、行くなら、もしそういう例外措置をとったら。この国会決議との関係総理大臣にお伺いします。
  499. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国会決議があることももちろん承知しておりますし、武器技術輸出三原則もありますし、同時に政府の見解もあるわけでございます。そういうものも踏まえながら、なおかつ一方において安保条約の解釈ということも念頭に置きながら、いま検討を進めておる、こういうことでまだ結論が出てないということなんです。
  500. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、もしアメリカを例外にするなどというようなことを決めたときは国会に相談をしないといけませんよと言っている。国会決議があるんだ、それを言っている。総理、もしそういう例外措置をとるように決める場合は国会に御相談なさいますね。決議があるのです。
  501. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 これは政府として結論を出しまして、その結論につきましては、もちろん国会に報告することは当然であると思います。
  502. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 決議が変わらざる限りはできませんよ。それは御承知ですね、決議を変えないと。あなたの認識はどうですか。
  503. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 国会決議というのは非常に重いものであると私も考えておりますし、同時に基本政策としての三原則があるわけです。政府見解があるわけですから、そういうものはもちろん判断をしながら、しかし一方においては安保条約というものがございます。その安保条約というものも念頭に置きながら、いまの日米間の技術供与の問題についてどういうふうにすべきかということについて、アメリカからも要請があることも事実であります。どういう結論にするかということについてはいまいろいろと検討を続けておるということでありますから、いまお話しのような点は十分承知をいたしております。
  504. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 もう時間がなくなりました。  最後に、私は、F16の問題といい、シーレーン防衛の問題といい、三海峡封鎖の問題といい、いよいよ集団的自衛権の拡大解釈をしなければにっちもさっちもいかないところにいま来ている。いいですか。それで総理の御見解を聞いておきます。  あなたは、今度参議院の本会議で、シーレーン防衛は自衛の範囲内だとおっしゃいましたね。そうですか。
  505. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 当然のことです。
  506. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まあ後ではっきりしますが、それが当然じゃないのですよ、いままでの国会の論議の中では。じゃ、シーレーン防衛は日本にとってバイタルロードと考えますか。(「日本語で言え」と呼ぶ者あり)生命線です。総理は自衛の範囲と言ったから聞きよるのですよ。あなたじゃないよ。大事な問題だから。
  507. 栗原祐幸

    栗原委員長 防衛局長
  508. 夏目晴雄

    ○夏目政府委員 委員長の御指名がありましたので一言お答え申し上げますが、狭い国土、海をもって囲まれているわが国土に非常に多くの人口を抱えております。(楢崎委員「そういう演説は要らないんだよ。わかっているからそんなものは要らないですよ、時間がないんだから」と呼ぶ)資源、食糧その他のものをいろいろの面で海外に依存しておりますので、わが国の安全のためにも海上交通の保護を図るということはきわめて重要なことであるというふうに認識しております。
  509. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それじゃ……(「時間だ」と呼ぶ者あり)そう時間、時間と言わぬでいいじゃないの、ちょっとしかない時間だから、あなた。まだなってないんだよ。  それじゃ、そのシーレーンがもし脅威にさらされた場合、それは日本に対する直接攻撃にも匹敵すると――このシーレーンは生命線だ。そういう判断ができるときがありますか。
  510. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 ただいま楢崎先生がシーレーンという言葉をお使いになっておられますが、そのシーレーンの概念というものを、いわゆるレーン、航路帯というふうにお考えになられて、その航路帯の一部があるとき突然そういう形になったというようなお考えで物を言っておいでになるか、どうもその辺の想定がはっきりしないとお答えできませんが、一つだけここでお答えできますことは、わが方といたしましては、自衛権の範囲の中の問題でございまして、集団自衛権の中には踏み込めない、こういうことでございます。
  511. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 まだ集団自衛権は言ってないんだからあわてなさんなよ。  あなたはシーレーンはどういうことか僕に聞きよるのですか。じゃ教えましょうか。いいですか、シーレーンが最初に出てきたのは昭和四十五年四月二十八日、あなたが長官のときです。工業倶楽部に行かれましたね、小幡さんたちと。そのときにあなたは初めて南西航路、南東航路を言われた。それから、昭和四十六年五月三十一日、経団連の防衛生産委員会に出られた。そして、あなたは同じようなことを言った。そのときのあなたの答えはレーンじゃないのです、面防衛なのです。それが問題になって、あなたはレーンに変えられた。航路帯という言葉にあなたは変えられたのです、千海里と。ところが防衛庁は、その後この中曽根構想を御破算にして、千海里というのを一応度外視して、日本の周辺数百海里にしたのです。そして、四十八年にアメリカとやり合いするときこれが問題になって、もし設けるならば千海里の航路帯と、こうなった。ところが今度、前の伊東外務大臣のころから、グアム以西、フィリピン以北の面防衛をアメリカが要請した。ところが、そのときの伊東外務大臣は断られた。国会ではっきりしている。ところが、このごろだんだんこのレーンというのは、あなたが言ったとおりだ、これはまた面になってきたのです。ところが、あなたはこの前の本会議のあれで、今度は航路帯とまたおっしゃいましたよ。どうなっているのです、この辺は。面なのですか、あの三角の航路帯に囲まれた面全部を言うのですか。それともあの航路帯ということですか。国会のいままでの答弁によれば、千海里で幅は百海里ぐらいだと、こうなっているのです、亡くなった久保さんの答弁では。いまはどっちになっているのです。あなたが答弁したのでしょう。やはり航路帯に戻ったのですか。
  512. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 総理大臣が本会議でこの問題について何度か御答弁をなさっておいでになられますが、少なくとも私が理解をいたしておりますことは、もし航路帯を設けるというようなことがありせば、あるいは南西、南東方面、こういうことがあるかもしれぬというふうにお答えになった、こういうふうに理解をいたしております。
  513. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の質問に正確に答えてない。あなたの答弁は、明らかにいままでの、最近の防衛庁の考え方と違う。これはいずれはっきりしなくちゃいかぬ。  もう時間がなくなったから一遍で言いますよ。  そこで、私がこれを心配するのは、自衛隊法第七十六条は、直接侵害を受けたときのほかに「おそれのある場合」というのが入っている。シーレーンが脅威を受けたとき、シーレーンが妨害されたとき、これは七十六条によるおそれがあるという認定がされることがありますか。絶対ないですか。
  514. 谷川和穗

    ○谷川国務大臣 まさにそこから先になりますと仮定の問題でございまして、いまここでははっきりお答えはできませんが、先ほどちょっと時間の関係もあって私はお話ししたのでございますが、いかなる行動をとるとしましても、私どもといたしましては、個別自衛権の範囲の中で行動をする、こういうことだけは確定をいたしておりますので、改めてお答えいたします。
  515. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、いまの答弁で非常に心配する。それはそのときの情勢による。直接日本が侵害されないでも、シーレーンが妨害されたときは、自衛隊法七十六条のわが国への侵害のおそれありと認定して、ケース・バイ・ケース、場合によっては自衛隊が出れる、こういう解釈になるはずだ。  そこで、いわゆる自衛の三条件、それは急迫不正の直接攻撃を受けたとき、ほかに方法がないとき、そして必要最小限、三つの条件を、いまや自衛権発動の三つの条件のうち、一の、直接侵害を受けないでも、おそれありということで自衛隊が出撃する。そして、総理答弁、防衛庁の答弁でも、三番目の、必要最小限度、シーレーンは自衛の範囲内だと。そうすると、解釈上、直接侵害されないでもいわゆる集団自衛権の発動になるのです、拡大解釈で。私はそれを心配する。  ちょうど時間が来ました。あとは委員会等でこの点は引き続き追及しなければ、いま非常に危ないところへきている、集団自衛権の解釈が。  以上で終わります。
  516. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十五日午前九時開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十八分散会