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1982-12-13 第97回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十七年十一月二十六日)( 金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次 のとおりである。    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君   理事 小宮山重四郎君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       宇野 宗佑君    上村千一郎君       小渕 恵三君    大村 襄治君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       金子 一平君    後藤田正晴君       塩川正十郎君    澁谷 直藏君       正示啓次郎君    砂田 重民君       瀬戸山三男君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    武藤 嘉文君       村山 達雄君    渡辺 栄一君       稲葉 誠一君    大出  俊君       大原  亨君    岡田 利春君       木島喜兵衞君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       横路 孝弘君    草川 昭三君       矢野 絢也君    渡部 一郎君       竹本 孫一君    永末 英一君       金子 満広君    瀬崎 博義君       不破 哲三君    山口 敏夫君 ────────────────────── 昭和五十七年十二月十三日(月曜日)     午前九時三十五分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 江藤 隆美君 理事 越智 通雄君    理事 高鳥  修君 理事 堀内 光雄君    理事 三原 朝雄君 理事 阿部 助哉君    理事 藤田 高敏君 理事 坂井 弘一君    理事 大内 啓伍君       相沢 英之君    宇野 宗佑君       上村千一郎君    小渕 恵三君       大村 襄治君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    金子 一平君       鴨田利太郎君    倉成  正君       近藤 元次君    笹山 登生君       澁谷 直藏君    正示啓次郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       渡海元三郎君    根本龍太郎君       橋本龍太郎君    原田  憲君       藤尾 正行君    藤田 義光君       藤本 孝雄君    稲葉 誠一君       大出  俊君    大原  亨君       岡田 利春君    木島喜兵衞君       嶋崎  譲君    野坂 浩賢君       武藤 山治君    山田 耻目君       沖本 泰幸君    正木 良明君       矢野 絢也君    木下敬之助君       竹本 孫一君    金子 満広君       瀬崎 博義君    野間 友一君       正森 成二君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         内閣総理大臣  中曽根康弘君         法 務 大 臣 秦野  章君         外 務 大 臣 安倍晋太郎君         大 蔵 大 臣 竹下  登君         文 部 大 臣 瀬戸山三男君         厚 生 大 臣 林  義郎君         農林水産大臣  金子 岩三君         通商産業大臣  山中 貞則君         運 輸 大 臣 長谷川 峻君         郵 政 大 臣 桧垣徳太郎君         労 働 大 臣 大野  明君         建 設 大 臣 内海 英男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     山本 幸雄君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 後藤田正晴君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖縄開発庁長         官)      丹羽 兵助君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      齋藤 邦吉君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (国土庁長官) 加藤 六月君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 谷川 和穗君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      塩崎  潤君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      安田 隆明君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 梶木 又三君  出席政府委員         内閣審議官   林  淳司君         内閣法制局長官 角田禮次郎君         内閣法制局第一         部長      味村  治君         人事院総裁   藤井 貞夫君         人事院事務総局         給与局長    斧 誠之助君         総理府人事局長 藤井 良二君         警察庁警備局長 山田 英雄君         行政管理庁行政         管理局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  新井 弘一君         防衛庁参事官  西廣 整輝君         防衛庁参事官  友藤 一隆君         防衛庁参事官  冨田  泉君         防衛庁長官官房         長       佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 夏目 晴雄君         防衛庁人事教育         局長      上野 隆史君         防衛庁衛生局長 島田  晋君         防衛庁経理局長 矢﨑 新二君         防衛庁装備局長 木下 博生君         防衛施設庁総務         部長      伊藤 参午君         経済企画庁調整         局長      田中誠一郎君         経済企画庁総合         計画局長    谷村 昭一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 大池 眞澄君         国土庁長官官房         長       宮繁  護君         国土庁計画・調         整局長     白井 和徳君         法務省刑事局長 前田  宏君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         外務省北米局長 北村  汎君         外務省欧亜局長 加藤 吉弥君         外務省経済局長 村田 良平君         外務省条約局長 栗山 尚一君         外務省国際連合         局長      門田 省三君         大蔵大臣官房審         議官      吉田 正輝君         大蔵大臣官房審         議官      岡崎  洋君         大蔵省主計局長 山口 光秀君         大蔵省主税局長 梅澤 節男君         大蔵省理財局長 加藤 隆司君         大蔵省銀行局長 宮本 保孝君         大蔵省国際金融         局長      大場 智満君         国税庁税部長 角 晨一郎君         国税庁調査査察         部長      大山 綱明君         文部大臣官房長 高石 邦男君         文部省初等中等         教育局長    鈴木  勲君         厚生大臣官房総         務審議官    小林 功典君         厚生大臣官房審         議官      新田 進治君         厚生省公衆衛生         局長      三浦 大助君         厚生省医務局長 大谷 藤郎君         厚生省薬務局長 持永 和見君         厚生省児童家庭         局長      正木  馨君         厚生省保険局長 吉村  仁君         厚生省年金局長 山口新一郎君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  朝本 信明君         農林水産大臣官         房長      角道 謙一君         食糧庁長官   渡邊 五郎君         林野庁長官   秋山 智英君         通商産業省通商         政策局長    中澤 忠義君         通商産業省貿易         局長      福川 伸次君         通商産業省産業         政策局長    小長 啓一君         通商産業省機械         情報産業局長  志賀  学君         中小企業庁長官 神谷 和男君         運輸省鉄道監督         局長      永光 洋一君         運輸省航空局長 松井 和治君         労働大臣官房長 加藤  孝君         労働省労政局長 関  英夫君         労働省労働基準         局長      松井 達郎君         労働省職業安定         局長      谷口 隆志君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       増田 雅一君         建設大臣官房長 豊蔵  一君         自治省行政局公         務員部長    坂  弘二君         自治省財政局長 石原 信雄君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員異動 十一月二十六日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     正木 良明君 同月二十七日  辞任         補欠選任   後藤田正晴君     渡海元三郎君   瀬戸山三男君     相沢 英之君 同月三十日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     楢崎弥之助君 十二月六日  辞任         補欠選任   塩川正十郎君     田中 龍夫君 同月七日  辞任         補欠選任  小宮山重四郎君     高鳥  修君 同月十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗祐君     倉成  正君   武藤 嘉文君     近藤 元次君   村山 達雄君     笹山 登生君   渡辺 栄一君     鴨田利太郎君   横路 孝弘君     嶋崎  譲君   草川 昭三君     沖本 泰幸君   永末 英一君     木下敬之助君   不破 哲三君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   鴨田利太郎君     渡辺 栄一君   倉成  正君     宇野 宗祐君   近藤 元次君     武藤 嘉文君   笹山 登生君     村山 達雄君   嶋崎  譲君     横路 孝弘君   沖本 泰幸君     草川 昭三君   野間 友一君     正森 成二君 同日  理事小宮山重四郎君同月七日委員辞任につき、  その補欠として高鳥修君が理事に当選した。     ───────────── 十一月三十日  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)      ────◇─────
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  この際、理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。この際、補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、高島修君を理事に指名いたします。      ────◇─────
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)及び昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、審査に入ります。  まず、両案の趣旨について政府説明を求めます。竹下大蔵大臣。     ─────────────  昭和五十七年度一般会計補正予算(第1号)  昭和五十七年度特別会計補正予算(特第1号)     〔本号(その二)に掲載〕     ─────────────
  5. 竹下登

    竹下国務大臣 昭和五十七年度補正予算の大綱につきましては、先日、本会議において申し述べたところでありますが、予算委員会での御審議をお願いするに当たり、その内容を御説明申し上げます。  最初に、一般会計予算補正について申し述べます。  一般会計予算につきましては、歳入面におきまして、世界経済停滞影響等による経済情勢の変化に伴い、当初予算に対し租税及び印紙収入の大幅な減収が避けられない見通しとなりました。また、歳出面におきましても、史上最大規模となった本年の災害復旧に要する経費等緊急に措置を要する追加財政需要が生じてまいりました。政府は、このような状況に対処するため、所要予算補正を行うこととした次第であります。  歳出におきましては、追加する経費を真にやむを得ないものに限ることとし、災害復旧費追加五千二百二十二億円、義務的経費追加二千三百五十八億円、大蔵省証券割引料増加等に伴う国債費追加二千七百五十五億円、交付税及び譲与税配付金特別会計借入金等利子財源繰り入れ三百五十五億円、住宅都市整備公団補給金等一千八十八億円、国際分担金及び拠出金百三十六億円、その他の経費二百九十四億円を計上いたしております。これらを合わせた歳出追加総額は、一兆二千二百八億円となっております。  他方、歳出修正減少としては、まず、国税三税の減収に伴い、地方交付税交付金を一兆六千九百五十七億円減額することといたしております。さらに、給与改善費不用を含む既定経費節減三千二百五十四億円、予備費減額一千二百億円を計上するほか、定率繰り入れ等停止により、国債費を一兆一千九百八十四億円減額することといたしております。これらを合わせた歳出修正減少額は、三兆三千三百九十五億円となっております。  なお、定率繰り入れ等停止につきましては、別途、昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律案を提出し、御審議をお願いすることといたしております。  次に、歳入におきましては、租税及び印紙収入減収六兆一千四百六十億円を見込む一方、その他収入において一千二百二十三億円の増額を計上するほか、建設公債五千二百億円、特例公債三兆三千八百五十億円、合計三兆九千五十億円の公債追加発行することといたしております。  以上によりまして、昭和五十七年度一般会計予算総額は、歳入歳出とも当初予算に対し二兆一千百八十七億円減額され、四十七兆五千六百二十一億円となります。  なお、前述のとおり、地方交付税交付金が一兆六千九百五十七億円減額されることに伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計において一般会計からの受け入れが減少することとなりますが、同特別会計においては、資金運用部資金から一兆五千四百三十三億円の借り入れを行うことにより、所要地方交付税総額を確保して、地方団体財政運営に支障の生じないよう配慮することといたしております。  次に、特別会計予算については、ただいま申し述べました交付税及び譲与税配付金特別会計等十六特別会計において所要補正を行うことといたしております。  なお、一般会計及び六特別会計において、総合経済対策の一環として、一般公共事業に係る国庫債務負担行為総額二千七百七十四億円を追加計上することといたしております。  また、財政投融資計画につきましては、総合経済対策を推進するため、すでに弾力条項を発動して住宅金融公庫の貸付枠追加に要する資金等について機動的に対処し、総額三千三百二十億円の追加を行ったところであります。  以上、昭和五十七年度補正予算につきまして、その内容を御説明いたしましたが、なお、詳細にわたる点につきましては、政府委員をして補足説明いたさせます。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて大蔵大臣説明は終わりました。  引き続き、政府補足説明を許します。山口主計局長
  7. 山口光秀

    山口(光)政府委員 昭和五十七年度補正予算内容につきましては、ただいま大蔵大臣から御説明いたしましたとおりでありますが、なお、若干の点につきまして補足説明いたします。  まず、一般会計予算歳出補正について御説明いたします。  災害復旧費追加五千二百二十二億円の内訳は、災害復旧等事業費五千二百四億円及び公立文教施設災害復旧費十八億円であります。  災害復旧等事業費につきましては、昭和五十七年発生災害早期復旧を図るため、初年度の復旧進度を高めることとし、遺憾なきを期しております。  義務的経費追加二千三百五十八億円のうち、主なものは、国民健康保険助成費一千六百四十七億円、生活保護費三百五十二億円、義務教育費国庫負担金二百二十三億円であります。  大蔵省証券割引料増加等に伴う国債費追加二千七百五十五億円は、大蔵省証券の増発に伴う割引料増加額等国債整理基金特別会計への繰り入れに必要な経費であります。  交付税及び譲与税配付金特別会計借入金等利子財源繰り入れ追加三百五十五億円は、同特別会計において行う資金運用部資金からの借り入れ一兆五千四百三十三億円に係る追加利子財源を同特別会計繰り入れるものであります。  住宅都市整備公団補給金等追加一千八十八億円は、同公団に対し、五十六年度において生じた借入金に係る利息の一部を補給するための補給金等を交付するために必要な経費であります。  国際分担金及び拠出金追加百三十六億円は、外国為替相場の変動に伴う既定経費増額及び国際連合レバノン暫定軍に係る分担金等であります。  その他の経費追加二百九十四億円の主な内訳は、水田利用再編対策費百五十二億円、貨幣交換差減補てん金六十八億円、さけ・ます漁業協力事業費十七億円、大豆及びなたね生産者団体等交付金八億円であります。  既定経費節減三千二百五十四億円の内訳は、給与改定の見送りに伴う給与改善費不用額六百七十億円、その他既定経費節約額及び不用額二千五百八十四億円であります。  定率繰り入れ等停止による国債費減額一兆一千九百八十四億円は、五十七年度において国債整理基金特別会計繰り入れることとしていた金額のうち、前年度首国債総額の百分の一・六に相当する額及び割引国債に係る発行価格差減額年割り額に相当する額の繰り入れ昭和五十七年度における国債整理基金に充てるべき資金の繰入れの特例に関する法律(案)に基づき停止することによる国債費修正減少額であります。  地方交付税交付金減額一兆六千九百五十七億円は、今回の補正予算において国税三税の減収歳入に計上することに伴い、地方交付税交付金修正減少するものであります。  予備費につきましては、当初予算計上額のうち一千二百億円を修正減少することといたしております。  次に、歳入補正につきまして御説明いたします。  租税及び印紙収入につきましては、最近までの収入実績等を勘案して、所得税二兆二千百億円、法人税二兆八千九百五十億円、酒税一千九百四十億円、物品税三千百億円、有価証券取引税二千二百六十億円、印紙収入三千百十億円、合計六兆一千四百六十億円の減収を見込んでおります。  その他収入につきましては、日本銀行納付金追加一千十一億円を見込むなど合計一千二百二十三億円を増額することといたしております。  公債金につきましては、三兆九千五十億円を追加発行することとしておりますが、その結果、当初予算に計上されている十兆四千四百億円と合計すると、五十七年度の公債発行額は十四兆三千四百五十億円となります。  特別会計予算におきましても、一般会計予算補正等に関連して交付税及び譲与税配付金特別会計治水特別会計など十六特別会計について所要補正を行うことといたしております。  以上をもちまして、昭和五十七年度補正予算についての補足説明を終わらせていただきます。
  8. 栗原祐幸

    栗原委員長 以上をもちまして補足説明は終わりました。     ─────────────
  9. 栗原祐幸

    栗原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま説明を聴取いたしました両案の審査中、日本銀行並びに公団事業団等いわゆる特殊法人役職員について参考人として出席を求める必要が生じた場合、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 栗原祐幸

    栗原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  速記をとめて。     〔速記中止
  11. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記を起こしてください。     ─────────────
  12. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより質疑を行います。嶋崎譲君。
  13. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、日本社会党護憲共同を代表して、広く勤労国民立場に立って、テレビを見ていらっしゃる皆さんや、それを見る暇もなく働いていらっしゃる勤労国民皆さん立場から、中曽根内閣がいま目指そうとしている内外情勢の課題にどのように対応されようとしているのか、総理並びに関係閣僚討論を行いたいと思います。  総理は、所信表明の演説で、いまわが国内外情勢は重大な転換期にあるという認識の上に立たれまして、これからのわが国の政治がどのような方向に転換をしていったらいいかについて、各党の党首の質問への答弁ではまだ不透明な部分がたくさんございますが、一定の方向づけを示し始められたように私は感じております。  その方向に対して、国民のある意味では不安もあり、また同時に反発もあるのではないかと懸念するのでありますが、本会議場での各野党の党首総理への発言が、これまでの政権誕生後の本会議討論に比べて非常に厳しいものとなってあらわれているように私は思います。  しかも、中曽根内閣が成立してから、東京都民を初め全国の国民世論調査が行われた結果、総理も御承知のように、大変御不満だとは思いながら、国民世論の不安は、中曽根内閣に対する不支持が歴代の内閣で最高でございます。しかも、その不支持に対して総理は、支持率が大変低いというのは遺憾な事態であろうとお考えと思います。  このような国民世論の動向に対して総理は、まず最初に、いま何をお考えになっていらっしゃるか、率直な気持ちをお聞かせ願いたいと思います。
  14. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 お答えいたします。  鈴木内閣の後を受けまして、私は政権担当の重責を担いました。内外環境は非常に厳しい状態にあることをよく存じております。  特に国際関係におきましては、第二次石油危機のあおりを受けまして、世界各国及びいわゆる第三世界におきましても非常に経済的な苦境に見舞われており、貿易摩擦の問題で日本に対する非難の声も高まってきております。また、国内におきましても、景気は低迷しておりまして、未曾有の九十数兆という国債を抱えまして、財政的にはきわめて憂慮すべき段階にあると思っております。  こういうような内外の苦難を突破するのにはどうしたらいいかと考えましたら、結局は、この事態を国民の皆様方に正直に御説明申し上げてまず知っていただく、そういう意味において、「わかりやすい政治」、国民皆さんに「話しかける政治」、そういうことで国民にまず御理解、御協力をお願いをし、また、国会内における各党各会派の御理解、御支持をいただいて、みんなで手をつないでこの国難を突破しよう、そういう考えを持った次第でございます。  そのためには、やはり政府が責任を持ってある程度方向も示す必要もございますし、また、いかなる困難についてもたじろがないで正面から取り組んでいく、そういう積極的な責任を持った姿勢を示す必要がある、そういう考えに立ちましていろいろお答えもしてきた次第でございます。  世論調査の結果につきましては、いろいろな御意見もあるということをよく承知いたしまして戒めてまいりたい、そう思っておるところでございます。
  15. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本会議での総理の答弁を聞いておりまして、大変自信を持って総理は明快に次の転換に向けての方向づけをなさろうとする、野党の党首はそれに対して大変不信を持つ、日本の将来のあり方をめぐって、総理の意図とそれから世論の動向との間に大きなギャップがあるということが、今日の世論調査支持率の低いその背景でなかろうかと私は感じております。  世論調査の動向の中でも、中曽根内閣に対して不安を抱いている重要な問題は政治倫理の問題でありますし、同時に、東京都民の圧倒的なかなりの部分が、中曽根内閣のもとでは田中総理の支配力がさらに強化されるのではないか、今後自民党に対する田中総理の影響力が強くなって、いよいよ田中総理が、来春並びに来年度予定されている論告求刑やそのロッキード事件の判決を前にして、ロッキード隠しのような布陣を行っているのではないか、こういう国民の批判が渦巻いているやに感ずるのであります。このような金で動かされる政治に対して、金権政治に対する国民の批判が権力で押しつぶされてしまうのではないか、そのような不信があるのではないかという気がいたします。  総理がおっしゃられましたように、「わかりやすい政治」、国民に「語りかける政治」で、そのような疑問にこれからお答えをいただきたいと思います。  総理は、六月八日のロッキード判決、第一審判決でありますが、そこで問題になったいわゆる灰色高官を閣僚に選ばれたのはどういう理由でしょうか。
  16. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、組閣に当たりまして、ともかくこれだけの重大な問題が山積している時局でございますから、これを突破するに必要な人材を結集して、そして、その仕事をやれる内閣をつくらなければ押しつぶされてしまう、そういうように考えまして、ともかく、いままで批判されましたいわゆる順送り人事とかあるいは滞貨一掃とか、そういういままで言われていたような組閣をやりたくなかったのであります。  そこで、いまわれわれが当面している大きな仕事は何かと考えますと、行政改革、財政再建、対米信頼の強化、それから景気対策等がございます。そのほか、文教やそのほか諸般の問題もございますが、これらの仕事を踏まえまして、それにだれが一番適任であるか、そういう考えに立ちまして閣僚の選考をやらしていただいた次第でございます。  したがいまして、そういう性格をある程度内閣に盛ったつもりでございますから、世論調査におきましても、その国民皆さんの反応はかなりよく出てきていると思います。それは第一番目は、賛成と反対がはっきりしてきているということであります。大体各種の世論調査を見ますと、三七%ぐらいが反対であります。ある新聞では賛成が三七%、また別の新聞では、反対三七に対して賛成が四一と変わってきました。また、ある新聞では、反対が三一に対して賛成が三八、最近のある新聞の調査によりますと、反対が三七に対して支持が五一と変わってきております。これは客観的な事実でございますが、反対が三七というのは大体固定しておるのです。しかし、最近の状況を見ると、賛成がぐっとふえてきておる。私は、組閣後の内閣考え方が次第に国民皆さんにおわかりになっていただけたのではないかと思っております。これからいよいよ仕事を展開してまいりますのでぜひ御期待願いたいと思いますし、われわれは一生懸命御期待にこたえるつもりでおります。  いま最終的に御質問いただきました問題につきましては、これは前に国会あるいは記者会見で申し上げましたように、ともかく仕事をやる。具体的には加藤六月君のことを御指定していると思いますけれども、加藤君は、自民党の政調会の中におきまして本当に八面六臂の活躍をしておる実力者であります。不幸にしていわゆる灰色高官とか言われておりましたけれども、刑事事件的にはこれはすでに決着している問題でございます。その後、加藤君は非常に精進努力をいたしまして、そして選挙民の皆さん国民皆さん方に対して真剣な努力をしておる、このようなまじめないい政治家に対しては一回チャンスを与えてあげよう、まだ者い政治家ですから全力投球で国民皆さんの前で働きぶりを見せてあげよう、これで落第すればこれは仕方がない、しかし、本気で一生懸命やって認めていただけば、それは選挙民の皆さん加藤君自体についても非常に大きな幸せになるだろう、そういう政党政治家としての考え方に立ちまして実行した次第であります。
  17. 嶋崎譲

    嶋崎委員 政治家というのは能力がなければ閣僚や総理になれないことはよくわかります。しかし、国民の前に立って一国の政治に責任を持つという場合は、仕事ができる能力だけではなくて、国民から信頼を得た人が閣僚に座らなければならぬと私は思います。したがいまして、そのような単に仕事だけの問題で処理されるような組閣でいいのかどうか、私は大変疑問を感ずるわけであります。  国土庁長官、大変あれですが、長官は、六・八ロッキード事件の構造汚職判決でいわゆる灰色高官として名指しされ、大変不愉快な思いをされたろうと思います。判決直後以来、みずからの潔白を立証するためにはいつでもどこでも出席をしたい、こう述べ続けられておられますが、いまでもその心境にお変わりはございませんか。
  18. 加藤六月

    加藤国務大臣 私は、いまは内閣の一員でございますので、ただいま国会において議院証言法の取り扱いが各党間で真剣に協議されておる現段階では、その点についての発言は差し控えるべきであると考えております。最終的には国会の御決定、御判断にお従いいたしたい、このように考えておるところでございます。
  19. 嶋崎譲

    嶋崎委員 現在、国会でも、与野党の国会対策委員長会談で政治倫理の問題その他の問題について一応の申し合わせが行われながら、議会制度協議会に議院証言法の改正を速やかに行うような段取りが進んでおります。その趣旨は、前国会以来の証人喚問の問題を早く実現をして、自民党の皆さんが御配慮になっているようなことも配慮しつつも、早く国民の前に証人喚問の事態をつくり上げる、そういうことのために国会は努力中であります。  私は、総理にお伺いしたいのですが、本人は、先ほどの答弁では、かつてはいつでもどこでも証人喚問に応ずると言ってこられたのが、閣僚になられたらどうして変わられたということでしょう。まあ、総理に聞く前にもう一度加藤長官にお聞きします。
  20. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほど申し上げたとおり、院において熱心に議論していただいておるわけでありますから、閣僚としてはその問題に対する発言は差し控えさしていただきたいということでございます。
  21. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それはだめですよ。現行法でも証人喚問はできるのです。しかし、いままでの証人喚問の中で、野党は現行法でできると言ってきたのだけれども、自民党の皆さんが人権問題その他もあり、議院証言法の問題云々ということで引き延ばされてきたのじゃありませんか。有権者は、まさか中曽根内閣に灰色高官と言われる人が入閣するなどとは国民考えていないと思います。それだけに、身が潔白であるとすれば、ここでいつでもどこでもとおっしゃったその気持ちだけは変わっていないと言わなければ、国民は不信を残すだけであります。中曽根内閣にとって私は大変不幸なことだと思います。  総理、閣僚になったらなぜ本心を言っちゃいけないのですか。そう思いませんか。そのことを前提にしてお選びになったのでしょうか。
  22. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、本人個人は前と同じ気持ちでおると思います。しかし、国務大臣に任命され、閣僚として行政官庁の最も大きな責任をしょわされたこういう現段階におきましては、個人加藤六月、衆議院議員加藤六月と行政長官あるいは国務大臣としての立場はおのずから変わってまいってきておる、そういう意味におきまして、各党各派の協議の結果に従う、そういう立場をとっておるのだろうと思っております。
  23. 嶋崎譲

    嶋崎委員 閣僚になったのならなおさらです。内閣が国の最高の責任を持って国民に対して責任ある政策を提言をしつつわが国のあり方を決めていかなければならない、その一閣僚が灰色高官と言われたという意味で、確かに不起訴という結果になっているにせよ、政治家としての道義的責任や一切を含めて国民の前に潔白を示してからその仕事にかかるべきだと私は思います。  そういう意味におきまして……(「不起訴とは違うよ、免罪符じゃないよ、事件にならなかった」と呼ぶ者あり)事件にならなかったという意味です。  それで、わが党の大出委員がこの予算委員会におきまして、まさに六・八判決というものが論告求刑どおりの判決であって、その判決に際して重要な記録とされた法廷記録を材料にしながら、すでに今年の六月二十三日に追及をされておられます。  その中で、このロッキード事件に関連して、丸紅の社長室秘書課長の副島さんから加藤六月さんに現金の授受が行われたという点について、前田当時の刑事局長にこの法廷記録の意味をただした後で、次のようにその法廷記録にある点を読み上げられております。「加藤さんの件だけ申し上げますと、午後一時ごろ――これは公判廷が伊藤さんのときとは違います。」「五十三年三月六日、第四十三回公判でございます。ここで、午後一時ごろ、運輸省の政務次官室で加藤六月さんにお渡しをした」と言っております。副島さんは、名前は挙げておりませんが、「秘書官に取り次ぎを頼むと、秘書官は、右側のドアをあけて入っていき、私も招じ入れられました。先生と思われる方に頭を下げ、全日空から預かっているものだと言って渡しました。」こういうふうに証言をされておられます。六・八判決におきましても、現金の授受について述べられております。  この事実について、いままでは、どこでもいつでも証言に立つとおっしゃられていたわけでありますが、では、この事実をお認めになりますか、ならないですか。
  24. 加藤六月

    加藤国務大臣 嶋崎先生のただいまの御質問につきましては、昭和五十一年十一月四日、ロ特において私が申し上げておるとおりでございまして、全く潔白でございます。  なお、副島調書につきましては、検察庁における調書並びに先ほどお読みになりました法廷における証言内容を私自身も詳しく読ませていただき、そしてまた、判決文についても詳しく読ませていただき、勉強しております。
  25. 嶋崎譲

    嶋崎委員 金銭の授受その他についていまおっしゃられていましたように、否定を今日されておられます。われわれ国民からすると、三権分立のもとで、裁判所の一審判決――二審、三審はどうなるかは別としても、そこで判決されたものの中で灰色高官と言われたことを、片一方ではそれとは違うと言う。国民の側からすればこれは大変不審で、わかりにくい話であります。  そういう意味におきまして、いまのような形であくまでこの金銭授受問題について、灰色高官として言われていることに対して御否定をなさるならば、私は、いつでもどこでも証人に立つ、証人喚問に立つと答えておられたその気持ちをいま一度国民の前に披露していただきたいと思います。
  26. 加藤六月

    加藤国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、昭和五十一年十一月四日のロ特委で申し上げたとおりでありまして、私としては全く潔白でございます。ただ、いろいろ言われたことはまことに残念なことでございまして、今後は厳しく自戒し、いやしくも政治家としての疑惑を招くことのないように努力するとともに、閣僚として誠心誠意職務に励んでまいりたい所存でございます。
  27. 嶋崎譲

    嶋崎委員 総理、これ、いつまでもここで議論をしておるわけにはまいりませんが、総理として、もし立法府の方で証人喚問の手続を決めて要請があれば、今度は閣僚でありますから、中曽根内閣の責任において証人喚問に立たせるということになりますか。いかがですか。
  28. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 議院証言法が改正されまして、そして各党各派一致して証人喚問を御要請になれば、これは法律の命ずるところにおきまして本人と委員会との関係になりまして、当然出頭すべきものであると考えております。
  29. 嶋崎譲

    嶋崎委員 立法府の方で、何も議院証言法の改正がなくとも、現行法で証人喚問に応ずるよう要請が出れば、今度は内閣の責任において出すということにならざるを得ないと思います。総理にその点について再度お答え願いたいと思います。
  30. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 この問題は議院証言法の改正との絡みがございまして、議長に一応お預けになっており、また、議会制度の調査会におきましていろいろ検討がなされておるところでございます。したがいまして、それらの結論が出まして、各党各派が一致して、そして証人喚問、出頭ということになれば、これは当然法律に基づいて本人が出頭すべきものであると考えております。
  31. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本来ならば、国民から疑惑を持たれているだけに、閣僚に入閣させるような手続をとるべきではないと私は考えております。しかし、中曽根内閣はそれをあえて行われたのでありますから、今後ともこの政治倫理問題に対してわかりにくい対応ではなくて、国民にわかりやすい、汚れ切った日本の政治を改革するために積極的な政治倫理改革について具体的な行動をとっていただくことを最初に要望しておきます。  私は、政治というのは結果責任だと思います。どんなに理想を述べようが、どんなきれいなことを言おうが、やった行動の結果が政治家として評価されるものであります。それだけに、中曽根内閣国民の信頼を得る第一は政治倫理だとみずから本会議所信表明をなさったのでありますから、今後ともそういう態度を、具体的に結果責任を頭に置いて対処していただきたいということを申し上げておきます。  さて、最近新聞を大変にぎわしております、ある新聞には暴力団、ある組の、大変有力な暴力団の、名前は申し上げませんが……(「言えよ、新聞に出ておるのだから」と呼ぶ者あり)山口組と言われる大変日本でも名高い、そこの最大の勢力である加茂田組長、これが大変な、最有力な資金源だと言われておる中小企業育成連合会の顧問を大野大臣はなさっておられると報道されておりますが、そうでしょうか。
  32. 大野明

    ○大野国務大臣 私の一切関知しないことでございまして、そのような事実はございません。
  33. 嶋崎譲

    嶋崎委員 秘書によれば、金融・不動産の会社に約二十回にわたって額面約一億円の手形の割引を依頼したという事実が報道されております。しかも、これが政治的な資金だと言われているような報道が行われておりますが、知らぬ存ぜぬで済む話ですか。  もう一度御回答を願います。
  34. 大野明

    ○大野国務大臣 ただいまの件に関しましては、私の知らなかったこととはいえ、不徳のいたすところでございまして、お騒がせをいたし、まことに申しわけないと思っております。  ただ、鈴木という秘書は、私が代議士になります以前から、もう三十年来秘書をやっておりまして、一切の事務的なこと、金銭的なことをさせております。私がのんき者というか不器用というか、大変に、金づくりなんかは特に下手でございまして、鈴木に申しつけておるというようなところで、今回のことが明るみに出ましてから、鈴木がこんなに苦労しておったのかと、むしろかわいそうで、本当に申しわけなかったと、私もこの件を契機として反省をいたし、そして、これからは十二分に把握して再びこのようなことが起こらないようにしたいと考えております。  ただ、この件につきましては、すでに本年二月にはすべての決済が終わっております。しかしながら、今後再び過ちを犯さないということが最も大切なことだと自粛自戒しておるところでございます。
  35. 嶋崎譲

    嶋崎委員 まあ聞きおくことにいたしましょう。  まだありますよ。秦野法務大臣。この大阪のゲーム機協会というのは、現に現職警官が汚職問題で起訴されているという事実、新聞で大変報道された大きな事件であります。このゲーム機協会の顧問を秦野法相はなさっていたと、これもまた報道されておりますが、このような事実はありましたか。
  36. 秦野章

    ○秦野国務大臣 お答えいたします。  ゲーム機協会というのは、五年ぐらい前に日本遊園協会というのがございまして、この遊園協会というのは、近ごろ文化娯楽というような言葉が言われているように、いろいろなマイクロコンピューター等を導入して遊技というか娯楽機械を製造する会社がだんだんふえております。一兆円産業とも言われておりますけれども、そういう企業が全国の協会をつくって東京に事務所がございます。この協会に私は顧問を依頼されたことは事実でございます。  ただ、この協会のメンバーの中に、大阪の方で今度の事件に関連した者が出てきたということはまことに残念だし、私も申しわけないと思っております。そういうような遊園協会というものが、その後三つに分かれておりますけれども、そのうちの二つについては引き続き顧問ということになっておりましたが、法務大臣就任とともに一切の利益を目的とした団体の役職は辞任をしております。まあしかし、それにしてもそのメンバーの中にああいう者が出てきたということは大変遺憾に存じております。
  37. 嶋崎譲

    嶋崎委員 このように、国民の側から見ますと、中曽根内閣ができて二週間もしないうちに次次と大臣が疑惑の目をもって見られるようなことが報道される。そしてまた、このような事態の中で中曽根内閣は発足するわけでありますから、まさに政治倫理という問題について国民の信頼を得るようによほど心を入れかえて対処をしていただかないと、国民の不信は高まるばかりでありますし、これはわが国の民主政治にとって大変危険な傾向であると言わなければなりません。このような一連の中曽根内閣に対する世論の次々とする厳しい批判に、総理は、いま一度、どのように対応されようとするか、決意のほどを伺いたい。
  38. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まことに遺憾であると存じております。この上はともかく国民の御期待に沿うように仕事を断行いたしまして、御期待にこたえてまいりたいと思います。
  39. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本来ならば、私は、率直な気持ちとして、国民の信頼を得るために中曽根内閣が出発するんだとしたら、灰色高官と言われる方などをこの場で質問するのは私の気持ちとしてすっきりいたしません。そう思いますが、次々とこのような直ちに内閣総辞職でもやらなければならないような事態が国民世論として渦巻いていることをしかと受けとめて、今後の政治姿勢を確立していただきたいと思います。  さて法務大臣、大臣は昨年の三月十八日に参議院の予算委員会でロッキード裁判の証拠にされた米国での嘱託尋問が違憲、違法であるという観点から、検察庁や法務省を厳しく追及されてこられました。一般には、田中ロッキード判決の援護射撃だと世論は言っておりました。憲法論としては一見筋の通った面はなきにしもあらずでありますが、しかし、当時の田中総理の判決を前にしてのあの質問は、大変国民のひんしゅくを買いました。当時の発言を今日どう考えておられますか。
  40. 秦野章

    ○秦野国務大臣 お答えをいたします。  確かに昨年の三月、そういう質問をしたことは事実でございます。そもそも私は、議院に在籍した、議院におった間は、政府のなさることについて疑義があればこれをただすということは、その職責だと考えておりました。与党といえどもそういう考えでやってまいりました。しかも、いま先生がおっしゃったように、憲法的にはいささかの、無理からぬところもあるというようなおっしゃり方をなさいましたけれども、疑義があるときに、これをただすのは議員の職責だ。これはだれをかばうとかかばわないの問題じゃない、法の運用というものは適正でなければならぬという立場で議員として申し上げたのでございます。いま私は法務大臣でございますから、法務大臣としては、そういういま裁判も係属中でございます。こういう問題についてかつて言ったからといって、そういう問題に具体的に解釈論に触れることは適当ではない、こう考えておりますので御了承願いたいと思います。
  41. 嶋崎譲

    嶋崎委員 閣僚になられますと、前の立場と違うことはわかりますが、かくのごとく中曽根内閣は政治倫理問題についての国民の疑惑を解かないまま、また政治家として筋を通すという形式論理の裏には、元総理のロッキード裁判に対する援護射撃と世に言われるようなことをなさった方が布陣として入っております、組閣されて。まさにいつでも論告求刑や裁判について情報が入手しやすいその立場に法務大臣が座られ、しかも情勢いかんにおいては選挙に対して、衆議院選挙やその他の時期や手続などについて左右し得る立場に官房長官を据えておられます。こういう一連の動きから国民田中直角内閣田中ロッキード判決に対する布陣ではないかという一連の不信、しかも、ロッキード事件に象徴された、わが国の汚れきった政治というものが象徴化されているのではないか、こういう不安を持っているだけに、この問題はこれで終わりますが、総理の、田中支配といわれる世の批判に対しての意見をお聞かせ願いたいと思います。
  42. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自由民主党は公党でございまして、すべて人事も政策も機関決定で運営されておるものでございます。したがいまして、重要問題は役員会なり総務会で決定され、議員総会で決定されていくという手続がありまして、特定の人の影響や特定の派閥の影響で自民党全体が動いているようなものではございません。その点は御了承願いたいと思います。  また、後藤田君を官房長官にお願いしましたのは、私から特にお願いしてなっていただいたのでございまして、これは後藤田君の持っておる力、政治的な手腕、そういう点を考えますと、この重大時局に各省庁の事務次官、事務当局に対して強い指導力を発揮し得る人はだれであるかと考えまして、後藤田君は最適任だと思ったわけでございます。特に行政改革という大事な問題を控えておりまして、各省庁の公務員の指導部、次官以下に対して一番強い指導力を持っておる人はだれか、私は行政改革を非常に重要視しておるものでございますから、内閣のかなめにそういう指導力のある人を連れてきて行政改革を強力に進めよう、そういう考えもございましたし、また、われわれが心配しなければならないのは天災地変でございます。地震のこと等もいろいろ言われておる、もし万一大地震が起きた場合に各省庁を指揮して適切な処理をやれる人はだれであるか、そういう点も考えてみまして後藤田君が適任であると考えてなっていただいた次第でございます。
  43. 嶋崎譲

    嶋崎委員 私は、先ほど申し上げましたように、政治は結果責任ですから、希望やきれいな言葉をいかに述べても、今日までやられたこと、その政治家の行動が問われるのが政治家の結果責任でありますだけに、今後とも中曽根内閣の動向を強く見守ってまいりたいと思います。  総理は、中曽根内閣は仕事をする内閣の大臣を選んだと言いますが、文部大臣は大臣に就任早々、私は教育はまさに無経験であるとおっしゃりながら、謙遜されながらも一定の考え方をすでに述べ始めておられますが、総理は瀬戸山さんを文部大臣に選ばれた理由も仕事だけですか。
  44. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 瀬戸山文部大臣につきましては、かねてから私はその見識、信念、それから政治家としての経験と円熟性ということについて敬意を表しておったのでございます。文教行政はいろいろな行政の中でも最も重要な行政の一つでございまして、そういう意味で、このような見識もあり円熟した方になっていただくことが適当である、そう思って任命した次第でございます。
  45. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文部大臣は自民党の憲法調査会の会長として、改憲積極論者として、総理と同じように今日まで知られております。今年の春には持論の自主憲法制定論をまとめた「改憲論語」という書物を出版されておられます。その考え方でまさか教育行政をなされるとは思いませんが、瀬戸山文部大臣のお考えをお聞きしたい。
  46. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 おっしゃるとおり、私は文教行政そのものには余り深く過去にタッチしておりませんから、率直に言って、素人だと言っていいんじゃないかと思っております。  憲法の問題をお話しになりましたが、私は、憲法というのはまさに国の政治の基本であるし、また国民生活の基本であろうと思っております。したがって、憲法は国民の魂というふうになるべきものであるというのが私の考え方でございまして、教育行政については、御承知のとおり憲法及び教育基本法に基づいて教育がなされるようになっておりますから、それに従ってやるのは当然だ、かように考えております。
  47. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大変御無礼ですが、教育基本法の十条は御存じでしょうね。
  48. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 なぜ私が教育基本法を財布から出して、お笑いになりますけれども、先ほど申し上げたように私は文部行政はまさに初めてでありますから、教育基本法というもの、大きな六法全書を持って歩くわけにはいきません。ですから、ここにわざとコピーして読んでおる。「第十条 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」二項にもあります。(嶋崎委員「二項が大事なんだよ」と呼ぶ)「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」こういうことを拳々服膺するために始終見ておるということでございます。
  49. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文部大臣が文部大臣に就任して教育基本法の十条という一番根本を、何が書いてあるか、前段だけ読んで一番大事な後段を読みましょうかというような程度じゃこれからの教育は心配ですね。だから、記者会見直後に、憲法上の自由や権利が学校教育を通じてゆがめられているという御発言をなさったり、学校でよく教えられるかが疑問だなんという発言をされてみたり、文相としての立場でも改憲論議は許容さるべきだというような御発言をなさっておられますが、本当ですか。
  50. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。  私が学校教育の実態をつぶさに知りませんから、学校教育で憲法をどういうふうに教えられておるという現場を知りません、率直に言って。そこで、ただ、憲法は御承知のとおりに基本的人権を尊重しなければならない、自由をとうとばなければならない、平和な国をつくらなければならないという基本原則を定めておりますが、こういうことがどういうふうに教えられておるのであろうか。もし、基本的人権の本当の意味、憲法で述べております自由の本当の意味がつぶさに細かく小学校、中学校あるいは高校あたりで指導しておいていただいておるならば、現代のような社会で自由奔放になったり、あるいは人の権利を権利と認めないようなこういう乱れた世の中にはならないのではなかろうか、こういうことを考えて、真に憲法の意味が教えられておるのかどうかということについて私はやや疑問を持っておるということを申し上げておるのでありまして、そういう憲法の話を教えておらないとは申しておりません。
  51. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それにしても、これだけ憲法についての学校教育がゆがめられていると言われるような、世論に訴えられるような発言をされているとか、憲法に関連して何が教えられているのか疑問だなんという発言を、もしなさっているとしたら、十条がおわかりでないのと同じように、わが国の重大なこの今日の教育問題について対処されるのには今後とも注意されていただきたいと思います。  最後に、総理、自主憲法の期成議員同盟が十二月一日総会で、中曽根総理に、自民党総裁として憲法改正作業を推進するよう近く要請するという決定を行ったと報道されておりますが、御存じですか。
  52. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 新聞で承知しておりますし、また、その代表の方が内閣の官房副長官かあるいは秘書官のところへ参りまして、そういう申し入れがあったということを聞いております。
  53. 嶋崎譲

    嶋崎委員 要請文はお読みになりましたか。
  54. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 趣旨は聞きましたけれども、文章は正式に読んでおりません。
  55. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その要請文の中には、若いころより自主憲法制定に情熱を燃やしてきた中曽根総裁の誕生を見たのはまことに心強く、総裁が初心をもって、この国家的事業を信念を持って推進してもらいたいと、総理立場とは別に総裁の立場として憲法改正の必要性を国民に働きかけるよう求めている文章と聞いております。このような要請を受けてどのように対処されようとするおつもりですか、お読みになってないのだから。
  56. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が総裁であると否とを問わず、自由民主党におきましてはその政綱において自主憲法の制定をうたっておるのでございます。したがいまして、歴代の内閣のもとにおきましても自由民主党においては憲法調査会がございまして、憲法問題を一生懸命勉強しておるのでございまして、私が総裁になったからといって、特にそれが勢いづいたとか勢いがなくなったとかという問題ではございません。政党としての基本的姿勢としてやっておられるのでございます。  また、私個人に関しましては、私は議員といたしましておったころ、憲法改正論者であることは申してまいりました。それは議員としての立場においてはそうでございます。しかし、内閣総理大臣という公の立場になりますと、これまたおのずから別の問題でございます。したがいまして、憲法の問題についてはほかの法律や制度と同じく自由に勉強しあるいは検討する、それは自由である。われわれは自由主義者でございますから、その憲法、法律の許す範囲内においては自由な論議が行われることは望ましいし、国政上においてタブーがあってはならない、聖域があってはならない。議員としては、あらゆる面からあらゆる問題について自由に研さんをし発言をするということが国民の負託にこたえるゆえんである、そう考えておる次第でございます。  しかし、内閣といたしましては、この問題は国民的合意というものを考えなければできないことでもあり、内閣はいま憲法改正問題を政治日程にのせることはしないと言っておる次第でございます。
  57. 嶋崎譲

    嶋崎委員 わが国の憲法のたてまえは、憲法改正手続を決めているわけですから、憲法改正の運動や言論、集会の自由があることは認めるのは当然であります。しかし、そのような運動のもとで、たとえば教育というものがいまは現行憲法、教育基本法のもとで行われるとすれば、それに対して政治的な圧力などを加えるべきではないと思います。  いずれにしましても、中曽根内閣は、この問題は政治日程としては扱わないということだけはここで確認をさしていただいてよろしいですね。
  58. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 結構でございます。
  59. 嶋崎譲

    嶋崎委員 時間もたくさんありませんのでこの程度にいたしますが、政治姿勢について、憲法の問題や防衛については、いまから議論をいたしますが、わりと総理自身が一定の方向を打ち出されているように思いますが、いままでの討論でもおわかりのように、事金で動かされるわが国の政治という問題については大変わかりにくい、あいまいであるということを私は痛感をいたしております。今後ともそれらに対する行動を見てまいりたいと思います。  さて、次には経済、財政問題に入ります。  今度の国会に提出されております補正予算案は、鈴木内閣のもとで閣議了解され、中曽根内閣の成立とともにこれを形式的に閣議決定したものであります。中曽根内閣鈴木内閣の何を継承し、新しい情勢にどのように対応しようとしているのか、これは補正の中で一定の考え方が出ていると思います。  そこで、総理にお聞きしますが、今度の補正予算にあらわれている中曽根内閣の政策の意図は何ですか。
  60. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 過去の財政政策の後始末という面がございます。それからもう一つは、将来に向かっての景気対策という面もございます。その中には災害に対する思い切った前倒しの政策というものもございます。  大体以上が今度の補正予算の中身に盛られたことであると思っております。
  61. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ちょっと問題を整理しましょうね。  補正予算の中にあらわれている政策の意図を聞いているのです。政策の意図の場合には、たとえば六兆一千億円に及ぶ税収不足というものは、わが国のこれは経済の問題です。同時に、その日本経済をどう見るかによって、今後どのように対処していくかという一つの経済の問題と経済政策の前提が含まれております。また同時に、赤字国債の問題や、それからまた定率繰り入れ問題の中止などを見ますと、これは財政運営にかかわる問題であります。したがいまして、総理は今度の補正予算を提出したときに、五十七年度予算鈴木内閣のしりぬぐいをするというところに力点があるのであって、それは、五十八年度やその後の中長期のわが国の経済や財政運営の展望について、この補正の中身をどのように自覚されているかということをお聞きしているのです。  経済政策の観点と財政運営の現状と中長期の観点、これについての総理考え方をお聞きしたい。
  62. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 一ついままでと変わったところと思われますのは、六兆一千億円に及ぶ歳入欠陥に対する措置を行ったことでございます。いままである程度は行ってまいりましたが、この内閣になりましてから思い切って現実に即した財政経済運営を行わなければならない、そういう観点から、六兆一千億に及ぶ歳入欠陥を認め、将来を展望して、それに対する措置を誠実に実行しよう。大体いままでは、年度が終わるぐらいまで多少の変化があってみてもそのままにしておいた、あるいは若干の修正は行った、年度末になって赤字公債そのほかでその始末をするというような考え方が多かったと思うのです。しかし私は、やはりこれだけの大きな事態になりますと、実際正直に、現実に即した形でできるだけ持っていく、そういう意味で、入るをはかって出るを制す、そういう財政の基本原則にできるだけ早く立ち戻らなければならない、そういう考えに立ちまして、この赤字の計上ということを率直に認めて措置をした、そういうことが言えると思いますし、それがまた来年度予算編成以降の予算編成の一つの考え方になってくると考えておる次第でございます。  今度の補正予算は、多分にいままでの後始末という性格、災害の始末という性格等がございますが、住宅政策その他につきましては前向きの不況対策、あるいは公共事業対策等も不況対策の考えもございます。しかし、五十八年度予備編成というものがやはりわが内閣の経済政策を本質的に、かつある程度はっきり示す段階になってくるのではないかと思っております。
  63. 嶋崎譲

    嶋崎委員 六兆一千億円に及ぶ税収の不足というのは、大変な見込み違いですね。なぜそんな見込み違いが出たとお考えですか。
  64. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは、五十七年度予算編成を行いましたときに比べて世界経済が非常に冷え込んでまいりました、これは第二次石油危機の影響であると思います。世界同時不況が進行して、そして日本もその大きな影響を受けた、そういう結果であると思います。
  65. 嶋崎譲

    嶋崎委員 よそのせいばっかりにしちゃ困りますよ。  五十七年度当初予算から今日までの間に、今年度の経済の見通しについて経済企画庁はもう二度も下方修正したんですよ。二度もやったんですよ。十月の段階でやってみて、つい数日前にまた下方修正している。そんなに下方修正をしなければならないようなわが国の経済の見方、これが大問題じゃありませんか。そういう意味で、五十七年度予算編成に際して、すでに成長率についても誤差がある、税収の見通しについても過大見積もりがある、その結果じゃありませんか。  このような補正を提出した際に、鈴木内閣の閣僚であられた総理が、単に世界経済が冷え込んだというようなことでもって国民の前に説明しても、ちっともわかりません。なぜ下方修正をしなければならなかったかといえば、経済見通しを間違ったのですから。今年の初めには名目成長率を八・四と見て、実質を五・二と見た。それが途中で名目成長率を六・二、実質を三・四に変えた。そして、いままた下方修正をしている。こんないわばいままでの、今年度にあらわれている経済の見通しの誤りというもの、これはまず経済企画庁いきましょうか、企画庁、今年度の経済の見通しはいまやどのくらいと見ていますか。
  66. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 お答え申し上げます。  先般十月八日に、今年度の見通しを五・二%から三・四%に修正したことは御案内のとおりでございます。しかしながら、あのとき決めていただきました総合経済対策、二兆七百億円の公共事業を中心といたしますところの経済の再活性化の政策によって、私どもは現在のところ三・四%程度の成長率は達成可能と考えまして、全力を挙げてこの方向に進みたい、こういうふうに見ております。
  67. 嶋崎譲

    嶋崎委員 日本経済の見通しについては、細かな議論は他の委員に譲りますけれども、大体日本経済の現局面から来春にかけては経済はよくなるのですか、悪くなるのですか。
  68. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 私どもは、経済はこれから回復の方向にだんだん向かってくる、こんなふうに見ております。
  69. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そんな簡単に……。輸出を一つとってみたって、いまも総理が言われましたが、もう今年度の赤、お先真っ暗じゃありませんか。上向き傾向に見えたが、むしろこんなに下方修正しなければならなくなってきたというのは、逆の効果が逆にあらわれ始めてきているということで、むしろ横ばいか底割れしやせぬかというような状況があるのではないかと思いますが、企画庁、どういう条件でどういうふうによくなると、少し具体的に説明してください。
  70. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 確かに経済は、いま足踏み的な状態にあることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、だんだんと在庫調整も進んでまいったと思うのでございます。さらに、最近の情勢は、御案内のように、長期金利の低下の傾向も見られるところでございます。もう一つは、御案内のように、アメリカの金利も低下の傾向を示してまいりました。それにまた、大きな犠牲を払いましたけれども、アメリカのインフレ政策も成功したように見える。こんなようなことから円高の傾向が今後とも見られるところでございます。私どもは、このような一つの傾向を政策的に推進して、足踏み状態から回復の方向に向かうもの、こんなふうに見ているところでございます。
  71. 嶋崎譲

    嶋崎委員 日本経済をまず飛行機とたとえましょうか。そうすると、これを飛ばすのに、まあ供給のサイドからも見なければなりませんが、需要、供給イコールとして、一つのエンジンは国の財政支出、これには公共投資、政府の資本形成を含みますが、財政支出。もう一つ、二番目のエンジンは輸出。第三番目のエンジンは設備投資、これには住宅関係を含みます。第四番目は個人消費。基本的にはこの四つのエンジンで飛行機が飛ぶのです。  この四つのエンジンのうち、後でやりますが、国の財政支出については、大変な財政状態でありますから、公共投資はむしろ四年間据え置きということは、財政は景気に対して中立でありません。景気に対してこれは行革デフレ的対応であります。これが一つ。輸出はもう大変な事態です。設備投資についても、大企業の方はやや堅調だったけれども、いまや日銀の短観もみんな下方修正しています。九電力などは来年度の設備投資について四、五%ぐらい成長しやせぬかと思って四兆円ぐらいの設備投資の計画を考えていたが、みんなこれ下方修正しています。設備投資も大企業と中小企業とを比べてみると大変な違いです。残ったものは個人消費です。この四発のエンジンのうち真ん中二つがだめで、片一方の端っこがもう財政ピンチということになれば、全体の日本経済のこの飛行機がまさに低空飛行になってきている。これが低成長の意味です。  こういう中にあって、いま五十七年度のこの現局面から来年の春にかけての局面というのは日本経済にとって僕は大変重大な時期を迎えていると思うのです。それは世界経済を見ていて先の方でよくなるかもしれぬ、まあ来年の秋から、来年はよくなるような見通しがあらゆるところで言われている。しかし、それまでの間に、いま日本経済がどのような形で動いていくかということについて政策のミスリードをやりますと、日本経済に大変な事態を起こしかねない。だからこそ何度も修正しながら実態に合わせつつ政策的運用の検討をやっているのだ。  そういう観点から見まして二、三説明をお聞きしますが、労働省は最近の失業率の問題や有効求人倍率の問題などを見て、わが国経済の現局面での雇用にどのような御判断をしていますか。
  72. 大野明

    ○大野国務大臣 お答えいたします。  最近の雇用失業情勢は、景気の足取りが力強さを欠いていることを反映いたしまして、労働力需給の緩和、失業者の増加等厳しい状況にあります。全体として見ると、このところほぼ横ばいの動きを示しております。すなわち、完全失業者は前年の水準を十万人前後上回り、完全失業率も二・四%前後の水準が続き、また有効求人倍率も求職者の増加、求人の減少により本年五月以降〇・五八倍の水準で推移いたしております。  政府としては、景気の着実な回復と雇用の安定を確保するため、先般総合経済対策を決定いたしましたが、これらの諸対策の効果が浸透することにより雇用情勢の一層の悪化が回避され、徐々に改善の方向に向かうことを期待いたしておるところでございます。
  73. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの説明はまあ大臣の一般的な説明なんですけれども、いま日本の働いている人の中には、確かに統計数字で見る限り低い失業率で横ばいだし、有効求人倍率も横ばいなんですが、問題はどこにあるかというと、後で中小企業庁に聞きますけれども、中小企業というのは日本の製造業の七五%、付加価値の半分以上を支えています。この中小企業で働いている人たちに対しては、この大変な不景気の中で職をやめさせ、首を切るわけにいかぬ。いま滞留しているのです。だから、賃金は抑える、なるべくパートの人を入れる、残業はなるべくやめるというような形をとりながら、いま雇用問題について精いっぱい努力しているところだと私は思います。  そういう意味では、数字の上では横ばいであるということの裏には、中小企業の経営者も働いている労働者も含めて、失業者を出しちゃいかぬ、しかし経営を維持しなければならぬ、こういう中で必死の努力をしているというふうにこの数字は読み取らなければいけません。ですからこれから来年にかけて、日本の経済がもう少し下方に行くと外に出始めるのです、失業問題が。日本にはそれはできない自動装置みたいなものがあるというよさがあたかも日本の労使関係のように言われているが、そういう背景があるというふうにいまの数字を読み取っておかなければならぬと私は思います。  中小企業庁、中小企業の最近の動向について簡単に説明してください。
  74. 山中貞則

    ○山中国務大臣 数字的なことは役人に答弁いたさせますが、傾向として、やはり労働生産性あるいは賃金格差その他、大企業と中小企業との間には広がる傾向がございまして、大変心配いたしております。しかも、その背景には、いまおっしゃったように、中小企業の固有の強靱にしてかつこのような場合に対処するのに非常に苦しいわが国独特の体質がございますから、それに対して励みを与えるのにはどうしたらいいだろうか。後ほど御質問があると思いますから詳しくは言いませんが、たとえば中小企業投資減税というような構想等もあります。  しかしながら、こういうものは大体赤字企業が多い中小企業の中で、税金を納めてない企業には効かない制度ですから、さて財源も相当要りますし、竹下大蔵大臣もカメノコみたいに首すっ込めているわけでありますから、やはり何かここに決め手がなければならぬと思いまして、昨年実施しましたエネルギーに関連したまあ投資促進減税ですね、例の税額控除か特償かという選択制を導入しましたので、あれの実績がその後どう出てきたか、ずっと調査してみました。そうしたら、それがやはりエネルギー関連のみであっても正常の状態に比べて相当大きく貢献しておるという実績が出ましたので、踏み切るか踏み切らぬかの前に、こういうことは効果がエネルギー関係ではあった、だからそこで、さて中小企業のいまの投資促進減税をどうとらえるかということで大蔵省初め関係者には去年やった実績はこうなっておる、したがって、ことしの投資減税をどう受けとめるかについて共同作業みたいな検討をいまいたしておりますが、何らか中小企業の皆さんに未来に光明を見出して、さあやるぞという気持ちを起こさせるというための手段をあれこれと考えてまいりたいと存じます。  技術的な問題は中小企業庁長官から答弁をさせます。
  75. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いや、実態を聞いているのですよ。では、僕の方から簡単にポイントを言いましょうか。  中小企業の設備投資の年度別の計画と実績を見ますと、五十七年ではマイナス七・一%修正を計画したのです。つまり予定しておったものより設備投資は下がっておるのです。最初修正計画したときはプラスの修正計画をしていたものがマイナス七・一の修正計画をしておるのです。これは皆政府の資料ですから。今度はその設備投資の実績を見ましても、もう中小企業はずっとマイナスです。七―九から十―十二、一―三、五十六年の末期から五十七年にかけて、四―六はちょっと変化が起きていますが、これは海運業の関係で特殊な事情です。ずっとマイナス。マイナス〇・一、マイナス三・六、マイナス四・七というような状態です。実績もそうです。機械の受注に至っては、これまた五十七年度は最初からずっとマイナスの連続です。公庫への申し込みも大変な激減です。五月、六月、七月、八月、九月、十月の、マイナス二三・五%、マイナス二八・五%、マイナス一七・六%、マイナス一四・九%、マイナス二六・五%、マイナス一二・八%。もう中小企業の金融公庫に対する設備資金申し入れなんというのは軒並みマイナス、企業マインドはないのです。  そのほか、生産の指数をとってみてもそうですが、倒産件数は、まあ一千五百件というのは一つのいままでのメルクマールでしたけれども、このごろは少し上げて一千七百いっていますから、まあわりと耐えておるなという数字であるかもしらぬが、一千五百件は超えています。  さらには、生産の売り上げ高に対して、そして、その売り上げの中の収益がプラスかマイナスかを示すDI指数なんというのを見ますと、軒並みマイナスです。大変な数字です、これは。今年の初めから、五三%から始まって六〇%ですから、ずっとこれはマイナスなんです。大変な企業収益です。そしてまた、これからの景気をどう見ているかという中小企業の人たちの企業マインドです。これは、五十六年から今日まで軒並み五〇%をかち割っています。とても先行きは暗いと言っておるのです。これら一連の数字を見て、いまから日本の経済が少しはよくなるんじゃないかなんてのんきなことを言っていたら、先行き中小企業の皆さん立場やそこで働いている労働者の立場からしたら、政府は何考えているんだろう、これが実感じゃないでしょうか。事実、今度は聞き取り調査をやったときはもっとひどいのです。統計上にあらわれているだけじゃなくて、中小企業の現況をヒヤリング調査やってみた。もっとひどい結果が出ています。  そんな事態ですから、数字を見た上で、正確に国民の前で、日本経済がよくなるかもしれぬなんて漠然としたことを言われたんじゃ国民は心配ですから。簡単な説明でいいです。
  76. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 いま中小企業の景気の見通しについてお話がございました。恐らくその中心的な資料は日本銀行の短観だと思うのでございます。短観は、御承知のように、企業の収益を中心といたしますので、確かに収益状況から見ますと、そのような若干悲観的な見方が中心になるかと思います。しかしながら、経済成長は単に企業収益だけじゃありません。いろいろの要素、いまおっしゃった内需、外需、六項目が大きく影響しているわけで、御承知のように、私ども修正いたしましたが、確かに中小企業の設備投資は悪い。しかしながら、大企業の設備投資は、一部に見直しの動きはございまするけれども、大変底がたいものを見出しているところでございます。さらに、御案内のように、住宅投資、住宅建設は百十三万戸のペースをいま維持しているようなところがございまして、こんな面を見なければならない。個人消費は、物価の安定のために非常に堅調である。  こういった要素から見まして、私は、二兆七百億円の総合経済対策が私どものお願いで早目に成立さしていただきますれば、内需を中心とするところの経済の回復に大きく影響する。さらにまた、いま申し上げましたように、大蔵省はいま長期金利の引き下げに大変力を入れておる。さらにまた、先ほども申し上げました円高の傾向、これは大企業ではございまするけれども、企業収益の回復に大きく役立つ、こんなような観点から見て、私はいま申しましたような判断を申し上げたのでございます。
  77. 嶋崎譲

    嶋崎委員 この中小企業問題は、わが国の経済を支えている重要な勢力でありますし、階層でありますし、ここの問題の動向というのは日本経済にとって大変重要だという意味で、ちょっと強調し過ぎたかもしれません。短観で見ましても、日銀の短観も全部下方修正していますが、いずれにしましても、もう一つ重要なのは、労働者の格差が、働いている人たちの格差が進行しております。昭和五十三年を一〇〇として見て、昭和五十五年から五十六年にかけての賃金の上昇率を見ますと、大企業の労働者は一四%ぐらいですが、従業員が百人以下のところをとってみますと一けたです。ですから、そういう意味ではこの新しい格差がどんどん進行しています。それは先ほど言った今日の中小企業の労働者の状態をつくり出していると思います。  こういうような情勢の中で、質問項目がたくさんありますので、この辺で見通しを言いますが、政府は日本経済の今年度の成長は三%台にいくのは必至だというふうに見なければならぬと見ています。私のところではじいたのでは、二・八から三にいくかいかないかぐらいのところです。日本経済はアメリカのGNPの四割で約二百六十兆円ぐらいのGNPなんですから、一%とか〇・五%というのは大変重大な数字を意味しているわけです。そういう意味で、経済の成長率をどれだけ上げるかという問題は大変重要な政策上の視点でなければならぬと思います。だから、簡単に三・三とか三・一とか言うけれども、そこで〇・二違うというのは大変な意味を持つわけです。そういうことを含めてこの経済政策を考えていかなければならぬと思います。  要するに、労働のいわば調整問題を絡めて、不況業種の労働者を含め、不況産業を含め大変な事態にいま入りつつあるということ、それから設備投資が大企業に比べて中小企業は大変冷え込んでいるということ、そして中小企業で働いている人たちは、規模別に見ても賃金別に見ても大変格差が進行してきているということ。こういうことを押さえた上で、実態に合わせて日本経済の成長の議論をやらないと、潜在的成長力をめぐるいろいろな議論がありますけれども、実態に合わせて議論をしないと数字が誤ってくるということを申し上げておきたいのです。そういう経済の状況というのは、われわれ日本経済をそう見たときに初めてどのように経済政策を立てるかということになるわけでありますから。それで補正の中に出ているのは、不況対策として約二兆円の公共投資であります。この公共投資といえども、災害対策やその他にはありますが、来年度のいわば事業として地方自治体などに債務負担行為として追加していたり、地方で金繰りをして勝手にやらせたりするようなやり方で運用されております。  こういうわけで、公共投資の考え方についてですが、どうですか企画庁、いままでのわが国の、五十七年度予算、今度の補正にしても、それから五十六年にしても、公共投資の予算というのは財政に対してどういう位置を持っておりましたか。中立的ですか、デフレ的ですか、成長力に合わせてですか。
  78. 塩崎潤

    ○塩崎国務大臣 公共投資の見方には種々ございまするけれども、私どもは、公共投資は最も成長力を高める効果のある需要項目だ、こういうふうに見ているところでございます。さらにまた、公共投資こそ民間の設備投資と違いまして、政府自体が決定し、政府自体がコントロールできるものだ、そういった意味で今後とも重視していかなければならない内需の最大項目だ、こんなふうに考えております。
  79. 嶋崎譲

    嶋崎委員 行政改革問題が起きて以来の予算の中における公共投資の位置は、景気に対して少なくとも中立ではない。これは財政運営問題と絡んできますから問題はありますが、少なくともデフレ的性格を持った予算だ。物価の上昇にも合わせているか、成長率に合わせた公共投資の予算の上昇であるかなどを考えてみると、公共投資のあり方というのは、財政に対しては少なくとも中立ではない、私はこう見ております。特に昨年の暮れからことしの春にかけてわが国の経済というものが大変危険な方向にあったときに、鈴木内閣は五十九年の特例公債の発行ゼロということを目標にしていたから、それに合わせて税収を見通さなければならぬ、同時に経済成長を見通さなければならぬために少し手抜きをしたということが、わが国の経済の今日の空白に関係があると思う。そういう意味で、中曽根内閣は、経済の今日の空白に対して取り組まなければならない、いままで空白だった部分に対して積極的に取り組まなければならない、そういう課題を背負っているということを申し上げておきたいと思います。  さて、その中で人事院勧告が凍結をされております。この人勧凍結というのは、わが国の今日のこういう経済動向の中でいかなる意味を持つか。総理、いま聞いていてどう思いますか。
  80. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 人事院勧告は、法律的な観点と経済的な観点と二つあると思います。  法律的観点におきましては、国家公務員法等に基づきまして最大限に尊重してこれを実行すべきものであると考えております。しかしながら、財政上どうしてもやむを得ざるという場合には、政府の責任において対応すべきでもまたあります。  また一方、経済的観点から見ますと、消費需要を喚起するという面におきましてこれまた有効需要の一つのもとではあります。しかし問題は、その財源がどうなるかということによりましても違います。増税によってその財源を得るという場合には、増税は景気に対してはマイナスの作用を起こしますし、また赤字公債等でそれを補てんするという場合には、これまた為替の問題とかあるいは物価の問題にも響いてまいります。そういう面からいたしまして、一概には断定できない要素があると思いますが、一般論として言えば消費を喚起する方向に動くと常識的には考えていいと思っております。  しかし、いま行革をわれわれは誠実に実行中でございまして、財政状況等も考えまして、まことに残念でございますが、政府としてはいろいろな力を尽くして公務員の御期待に沿うように努力をしてきたつもりではございますけれども、万やむを得ずこのような措置に踏み切った次第でございます。
  81. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまのわが国の経済は、先ほど言いましたように、財政支出は一定の限界を持っていることは事実だ。そしてまた、輸出がだめ、設備投資がだめという状況の中で残されているのは、日本経済の底割れをしないのは、まさにこの個人消費にかかっていると思います。そういうときであるだけに、簡単に人事院勧告を凍結するというようなやり方で、一兆円以上もする、この景気に対して持つ、経済的な効果は直ちに出ないにしてもその持っている経済を刺激していく意味です、これがいまわが国の経済にとって非常に大事だと思う。そういう意味で、経済的に見てこの人勧凍結はきわめて不当だと思う。わが国経済の今後の見通しを見ながら、いま国民が期待している、年を越すのに、公務員や皆さんが暮れにもらったボーナスで、当てにしている借金も返してもらいたいと思っているでしょう。年を越すに当たって、この公務員賃金というものの凍結が自分たちの商売にどんな影響が来るだろうと大変心配されている。しかも、来年の春には、財界の人たちや経団連の人たちが言っているように、春闘も五%以下に抑えてしまう。こんな状態ですから、そういう意味でわが国の今日の経済がもう三%そこそこ成長ということになりますと、二年連続そういう状態になりますれば、失業という問題、雇用問題は社会問題になってくる時期であるだけに、何としてもこの経済対策の一環として人勧凍結はやるべきでないというふうに私は考えます。したがいまして、この人勧凍結を経済の観点から見て、今日凍結に私は反対の理由を申し上げたかったのであります。  今年の予算補正でもって一%カットされたわけですけれども、総理にお聞きしますが、この一%カットが行政改革の一環ですか。
  82. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 行政改革という点もなきにしもあらずでございますが、財政上まことにやむを得ざる措置である、こう心得ております。
  83. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、では総理に聞きますが、総理は増税なき財政再建と言ってきましたね。増税なき財政再建というのは、まずそこで増税なきというのは何ですか。
  84. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 増税なき財政再建という基本線は守ってまいりますと前から言明しておるところでございます。増税なきという概念はいかに考えるかということでございますが、いわゆる大型間接税というようなものを念頭には置かない。ただ、臨時行政調査会の答申の中には国民租税負担率というものをとらえておりまして、それが大きく変動しない、そういう場合には中のいろいろなバリエーション、変化というものは多少考えてもよろしい、そういうような文章になっておるのでございます。私は増税なき財政再建という場合には、そういう点も将来は考慮してよろしいのではないかと考えております。
  85. 嶋崎譲

    嶋崎委員 では、具体的に聞きますが、増税なきという場合の第一、大型間接税というのは、これは増税なきという対象になりますね。
  86. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大型間接税というものは念頭には置いておりません。
  87. 嶋崎譲

    嶋崎委員 税率のアップはいかがでしたか。
  88. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は行管長官時代、新たな税目を起こすとかあるいは税率を著しく上げるとか、そういう場合はこれは増税に当たるのではないであろうかという答弁をしてまいっております。しかし、そういう具体的な、微妙な問題につきましては、大蔵大臣に答弁していただきたい。私は原則的には先ほど御答弁申し上げたような考え方に立っていると申し上げたいのでございます。
  89. 嶋崎譲

    嶋崎委員 現に五十六年度予算法人税その他いじっていますから税率アップはやったわけです。では、いまの税の仕組みについてはどうですか。増税なきに入りますか。
  90. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これは将来予算編成等に際しまして政策としてどう取り上げるかという問題でございますが、臨時行政調査会の答申の中におきましては、その増税なきという概念の中には租税負担率というものを問題にしておりまして、その一定の租税負担率の範囲内においては中身については考慮してしかるべきという余裕を与えていると解釈しております。
  91. 嶋崎譲

    嶋崎委員 税の仕組みは負担率との関連の直間比率の問題になりましょうが、これはいまのところ増税なきの中には入るんですか、入らないんですか。将来はいじるという意味で増税なきの中に入るんですか。
  92. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私たちは臨調答申を守ってきておるわけでございますが、臨調答申の中におきましては、全体としての租税負担率を大体同じに持っていく、しかし、いままでも租税特別措置法等にはいろいろ手をつけておるわけでございます。また、物品税等についても多少の変化もあったわけでございます。臨時行政調査会の答申を尊重するという立場から見ますと、租税負担率について大きな変化を与えない、その範囲内において租税の組み合わせをどうするかということは、将来政策問題としては許されている問題であると考えております。それをとるかとらぬかということはまだ決めているわけではございません。
  93. 嶋崎譲

    嶋崎委員 つまり、その直間比率問題を含めた税の仕組みをどうするかというのは、ペンディングになっているわけですね。あと今日まで所得税の減税見送りなどで自然増として含まれてきたのは、増税なきの中に含むのですか、含まないのですか。
  94. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 自然増の場合は、一般には増税とはとらえておらないようであります。
  95. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いや、こういうふうにいま聞いたのは、総理の言う増税なきというのは、大型間接税は新税として導入はしない、これははっきりしましたね。その他の率についてはいじったことがあり、負担率の問題は現実に変化が起きてきている、高くなってきております、所得税などは。自然増問題は、これは制度そのものではないにしても、事実上増税的性格を持ってきている。勤労国民はそう思っています。五年間課税最低限を据え置いたり云々のために、言っているような問題を含んでいます。ですから、ここで総理の言う増税なきというのは、大型間接税は導入しないということですね。
  96. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 増税なき財政再建という場合には、大型間接税は念頭にはありません。
  97. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それでわかりました。  では、財政再建にいきます。財政再建というのは何ですか。どうすることですか。
  98. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる財政再建、こういうことの言葉の上の定義、これは私も整理してみました。  まず、高度成長時代の惰性を払拭し、社会経済情勢の進展に合わして歳出の見直し、合理化を行い、あわせて歳入についても見直しを行い、もって特例公債依存の体質から脱却し、また全体としての公債依存度を引き下げて財政の対応力を回復すること、これをまず定義といたします。  そういたしますと、今度は、五十四年より公債の中でとりわけ不健全な特例公債、これを五十九年度までにゼロとするという目標のもとで再建をしてきたではないか。確かに今日までその旗印をおろさなかったわけであります。しかし、これは世界経済の低迷等、とにかく見直さざるを得ない状態に参りましたということは申しております。したがって、長期的な観点から財政の対応力ということを考えますと、最終的には建設公債をも含めた公債全体の依存度を低目に抑えていくこと、こういうことも言えるかと思っております。この問題につきまして、あるいは財政制度審議会、いろんなことから私も整理いたしてみまして、当面財政再建とはそのような定義づけが行われて、ただ特例公債依存ということは一定の時期までのめどであり、最終的には建設国債をも含めて公債依存度が低下していくという方向を志向するのは当然である、このように考えております。
  99. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、いままで五十九年度特例国債の発行ゼロというのは、財政再建の一つのメルクマールだったというふうに理解してよろしいのですね。
  100. 竹下登

    竹下国務大臣 今日まで一つのめどであったことは事実であります。
  101. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうすると、この五十九年の赤字国債の発行ゼロというのは、財政再建の一つの国民に対してはシンボルだったと思います。ああそうか、財政再建というのは赤字国債を発行するのをやめれば、そこで中止すれば財政再建の方向ができたんだな、こう国民考えてきたと思うのですね。ところが、五十九年の特例公債の発行ゼロという鈴木内閣の公約は、もはやみごとに破綻をした。そのときに中曽根さんは閣僚としていらした。五十九年の赤字国債の発行ゼロというのは、実現できるとお考えですか。
  102. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 五十九年度赤字公債脱却というのは、前内閣におきまして国民の皆様方にも、議会でもお約束した一つの線であると思います。しかし、最近の財政状況全般等を見ますと、それは今日の時点においては数字的にきわめて困難になったと申し上げておるのでございます。それに対応して具体的にどういう政策に出るかということは、今後五十八年度予算編成等々以降の問題としてこれから正式に探求すべき問題であると考えております。
  103. 嶋崎譲

    嶋崎委員 国民はさっぱりわからぬですよ。いままでは、昭和五十九年に特例国債の発行をゼロにするということが財政再建なんだな、こう思ってきたわけね。それが見通しが、細かな議論は後での専門の委員にお任せしますから省きます。それが崩れたといったら、今度財政再建とは何ですか。それを四、五年延ばす。二、三年延ばす。たとえば昭和六十二年なら六十二年にまで特例国債の発行を延ばすということが財政再建だと今度は理解するのかですね。それができないということになれば、何を財政再建というのかということは、国民はわからぬと思う。わかりやすくするために、これからの財政再建はどういう考え方で、いえば、たとえば五十九年の特例国債ゼロといわれるわかりやすいシンボルで国民がわかったように、これからの財政再建というのは何を目標にして国民に示せば御協力願えるということになるのですか、具体的にひとつ。
  104. 竹下登

    竹下国務大臣 大変むずかしい問題でございます。  申しましたように、私はやっぱり長期的な観点からは、財政の対応力ということを考えますと、建設公債をも含めた公債全体の依存度を低目に抑えていくということであろうと思います。しかし、建設公債等が、今日までいわゆるわが国の経済のなかんずく成長率に対する寄与度等から考えた場合、有力な手段であった。しかし、その手段をも実行するだけの対応力がなくなったと思います。  したがって、まず当面の目標として、五十九年赤字公債脱却、こういうことを挙げられておったことは事実であります。しかし、これは諸般の情勢でなくなった。されば御議論として当然出ますのは、何年にそれをやるか。あるいは新経済五カ年計画を考えたら、これは六十二年というのも一つのめどになるではないかとか、各方面からいろんな意見もございます。しかしながら、その場合、やっぱりまず経済成長率等をどこに抑えていくかということを前提に物を考えてみた場合に、世界経済がこのように激変するさなかとはいえ、余りにも乖離があった場合には、また政府の経済政策自身にも不信を買うことも事実であります。したがって、この問題につきまして基礎となるであろう経済計画につきまして、目下経済企画庁でお願いしておるところでありますが、これをどういうふうな進め方で、それぞれの指標をどこに設定していくかということにつきましては、政府全体の課題として慎重にならざるを得ない、目下慎重に検討されておる、こういうお答えに尽きるかと思います。
  105. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、余り時間がありません。もうそろそろ時間が来ていますので、細かな議論は省きます。  いずれにしても、企画庁はいま新経済五カ年計画を組んでいます。経済五カ年計画の資料をいただいたけれども、いまのやっている中身は、何もわかりません。何を五カ年でどうする、日本の経済をどういうふうに見通していって、その中で財政金融、特に財政再建についてどんな方策を審議されているのか、中身はわかりません。  そこで、いままで鈴木内閣までの間に公約してきた五十九年の特例国債がゼロということが破綻したとして、しかも今度の補正に出ているように、定率繰り入れ、つまり借金を返すために予算の借金の一定の割合を積み立てておいて、将来借金を返すときにはそれを使うという制度をことしはやめた。去年は一時そこにある金を借りて埋めた。来年はこれを返さなければいかぬことになっている。そうすると、いまの借金を返すために担保にしていたものをやめるとすると、これは借金を返せられぬようになるじゃないか。ぴょっと考えればすぐわかる。借りかえをやらなければならぬことになるでしょう。過去に政府考えた中期の財政再建計画というものは、大体一、二年でみんな早くも破綻してしまいます。これも細かな議論はあと専門委員の方に任せます。  そうすると、増税なき財政再建とおっしゃるけれども、それは増税なきが新型増税ではない、大型新税ではない、大衆課税ではない。その他については、いままでやってきたような何か一種の増税的性格を持ちながら対応しておる、それではとても財政再建はできはせぬわけです。何を国民は協力していいかわからぬじゃないか。したがって、大蔵大臣、いま企画庁がやっている新経済計画とあわせて、これから先わが国の財政をどうするのかについての財政再建の大綱を示してください。
  106. 竹下登

    竹下国務大臣 いわゆる大綱を示せ、こういう御議論であります。私は基本的には賛成であります。  ただ、その大綱をつくるに当たって、しかも、その大綱に基づいて、さすればまた経済企画庁で作業をされておる計画が詰められていくということになれば、大綱も単なるフィロソフィーだけで済むものではないということになりますと、各方面の意見も聞きながら、いままで予算審議に当たっていつも出しておりましたいわゆる財政の中期展望というようなものについての御疑念もまた出ておりますので、どこまで御趣旨に沿えるか、その大綱というものを出す努力は、私はいつまでとは申しませんが、これは政府としてもやるべき時期である、このように思っております。
  107. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いずれにしても、細かな内容は別として、補正があって、そして、もうすでに来年度予算編成に事実上入っているわけですから、大蔵原案が暮れに出るのですから、通常国会前に国民の前で、中曽根内閣はどんなふうに日本の財政再建をするのかということについて示さなければ、国会で審議できはしませんよ。国民はさっぱりわかりませんよ。わかりやすい政治と中曽根さんおっしゃるけれども、わからないのです。僕もわからないのですから。政府の財政再建計画、わかりません。特例国債をなくしたら財政再建か、そう言っていないでしょう。大蔵大臣が言うように、建設国債を含めて依存率をどうするかとか、いろいろ検討せねばいかぬと言っているでしょう。あいまいな話よ。だから、日本経済というものをどういうふうに今後運用しつつ、それにあわせて、財政再建というのはこんなふうに考えるのだということを国民にわかりやすく示す大綱を、通常国会前までに示してください。
  108. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いままでございましたいわゆる社会経済七カ年計画というものは、最近の世界情勢、特に石油危機以後の冷え込んだ世界情勢のもとに適切でなくなった、そういうことで、前内閣の末期からこれを見直そうということで新しい社会経済発展五カ年計画を策定しておるわけでございます。しかし、この五カ年計画をつくるについては、将来の展望等を含めて、そう簡単にできるものではございません。企画庁におきまして、いま鋭意諸般の情勢を踏まえながらこれをやっておる最中でございます。そして、この社会経済新五カ年計画に即応した財政という考えが出てくるわけでございます。したがいまして、社会経済発展の新しい五カ年計画との見合いを考えつつ、財政再建という計画も出てくるのでございまして、若干時間を要することはやむを得ない、そう考えておるわけであります。
  109. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いま、もう時間がありませんから、新経済計画の中の議論はしません。企画庁も呼んで全部聞いています。これについては、大蔵省として財政再建というものの大綱や方向がはっきりせぬから、企画庁は、経済五カ年計画というものは何を示せばいいかわからぬと言っているのです。しかも、経済企画庁が日本の経済見通しを立てるときには、大蔵省は三%という低い成長率を見込み、片一方、通産省は供給サイドから見れば五%可能だと言う。経済企画庁は、真ん中に立って足して二で割ったような計算をしている。日本経済がどっちに向かうかについても、政府の意思統一はないのです。だから、新経済計画というものも企画庁ではいままとまらぬで困っておるのですよ。それは、大蔵省の財政再建のめどとの関連がはっきりせぬからです。みんなわかっておるのです、僕は。だから早く、いいかげんに、もたもたもたもたしていないで、国民の前に、日本経済の五カ年ぐらいの中期の見通しというものはどういうふうに考え、その中で、いま問題になった五十九年の特例国債発行ゼロという、いままでわかりよかったものにかわるものを提出していただきたいと僕は思っています。もうできなくなった今日は、何が財政再建かわからぬのですから、それを含めて、つまり財政再建の大綱を速やかにわれわれ国会に示していただきたい、こう言っておるのです。いずれにしろ、簡単じゃないのです、総理総理はどうお考えか知りません。僕は中身を知っているのですから、簡単じゃない。それだけに精力的にやってもらわぬと困ります。  その提出の時期はいつですか。
  110. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいままで予算のたびごとに、いわゆる財政の中期展望とかいうことについて御議論の糧としていただいて今日までやってきたことであります。したがって、いま今後の財政再建大綱、こういう言葉をお使いになりましたが、その御指摘の今後の財政再建大綱、具体的には中身は一体どのようなものか、こういうことになりますと、それは各方面の意見も聞きながら、もちろん各方面の中にはただいまの御提案者の意見も当然のこととして入るわけでありますが、その上で見定めるべきものである。したがって、ここで大みえを切って、それは通常国会の再開時において出しましょうと言ったものが、これは単なるフィロソフィーであるというようなものであってはならないだけに、これからの対話の中に、私はそういう趣旨自身は認めるわけでございますから、議論を積み重ねた上で、その都度検討していきたい、だから、いつまでにと言えるものではない、このように思います。
  111. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だって、ことしの春の財政の中期計画も狂ってしまっているのでしょう。何もかも狂っておるのですから、その狂っておる今日に、国民やわれわれからすれば何も見えぬのですから、だから、その辺で僕はわざわざ大綱と言ったのです。財政再建について、赤字国債はどう、建設国債を含めての財政はどう、将来累積する借金をどのようにする、そういう一連のものについての基本的な大綱ならば出せぬはずはないと言うのです。そうして議論しないことにはわからぬという意味で、僕はむしろそっちのお立場考えて、簡単じゃないということを知っているから、大綱を示しなさいと言っておるのです。そういう趣旨です。
  112. 竹下登

    竹下国務大臣 いま、政府がいわゆる具体的な経済計画を早期に立案して提示することは困難であろう、何もかにも承知の上で、そこで財政再建大綱、こういうお言葉をお使いになった。だから、その意図されておるところは十分私にも理解できる問題であります。ただ私は、いま少し話を詰めていかないことには、大綱の範疇とはどこまでであるか、こういう議論にもなりますので、きょうの貴重な提言を体して、双方の対話の中で前向きに進めていく、こういうことはお約束できると思います。
  113. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ともかく前向きとかというのは、大変善意に受けとめてくだすったのはよろしいが、とにかく緊急を要している問題だということです。緊急を要していると僕は思います。いまの補正が来年度予算編成に当たってどう連動するか。それが五十九年とどう関連するか。みんな関連してくるのですから、非常に緊急を要する課題でありますから、そういう意味でこの問題の取り扱いについては、委員長理事会で、今後の緊急な課題だと私は考えるだけに、どうするかについてお諮りを願いたいと思います。
  114. 栗原祐幸

    栗原委員長 承知いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ────◇─────     午後一時二分開議
  115. 栗原祐幸

    栗原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。嶋崎君。
  116. 嶋崎譲

    嶋崎委員 午前中の議論の特に後半に関連しまして、鈴木内閣の後を受けた中曽根内閣が公約にしてきた五十九年度赤字国債発行ゼロの破綻の見通しが一方にあり、他方でその財政再建の見通しというものが今日まだ明確になっていない、そういういわば未曽有の財政危機だということを政策の判断とされている内閣が、それについての国民に対して訴えるべき処方せんが明らかでないという状況の中で、憲法違反とも考えられる人勧凍結というものに踏み切ったのは、まさに目標のないまま当面行革という名でそれを実施したというふうにしか、イージーに取り扱ったとしか考えられません。したがいまして、いままで政府がやってきた中期のいわば展望や財政再建の方法が今日新たな段階を迎えているとすれば、その構想を出すことに最大の努力をしていただくことと、人勧凍結についてはこの際取りやめるべきだと私は考えます。  したがいまして、人事院総裁、人勧制度は労働者のストライキ権の代償としての制度であり、今度の人勧凍結は憲法違反の疑いすらあると言われている問題であります。総裁の凍結に対する御意見をお聞きしたい。
  117. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 お答えいたします。  人事院勧告につきましては、御指摘のとおり、これは公務員の労働基本権制約の代償機能として認められておりまする大変重要な制度でありまして、これをめぐって従来からいろいろ御論議がございましたが、しかし、漸次この制度の趣旨というものは各方面に御理解をいただきまして、四十五年以来、人事院勧告については内容、時期ともに完全実施ということで今日までまいっておるのであります。これは私は、労働基本権制約の代償措置として当然のことであるというふうに考えておりまして、したがって、今回の内閣における、閣議における凍結措置につきましては、そのときに申し上げましたように、やはり従来のいきさつから見て、また人勧の意義から見て大変遺憾千万でございますということを申し上げたのであります。  ただ、この人勧につきましては、御承知のように、内閣とともに国会に対しても御勧告を申し上げております。そういうことで、国会におきましてもいろいろ御慎重に御審議をいただきました結果、御判断を賜りたいと切にお願いを申し上げる次第でございます。
  118. 嶋崎譲

    嶋崎委員 人事院総裁は人勧制度について大変明確な責任者としての御発言でございます。それに対して、国会における今後の与野党の国対委員長会談やこの後の対応は対応であるとして、このような憲法のもとでストライキ権の代償措置として決められた制度そのものを否定するようなこと閣議決定しているということになれば、単に立法府の今後の問題ということじゃなくて、今日までの閣議決定そのものがきわめて憲法違反、地公法違反の疑いがあると判断をいたします。したがいまして、総理は、午前中のように財政再建の見通しすらない中で、国民に政策の方針を明確にしてない中で凍結をされたということはきわめて遺憾であります。その意味におきまして、直ちに財政再建計画の見通しなどを出すことと、これを凍結するか凍結解除をされるか、いずれを選択されるか、総理の意見を賜りたいと思います。
  119. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公務員のベースアップにつきまして、これを今回見合わせましたことははなはだ遺憾な措置でございまして、公務員の皆様方のことにつきましては政府としてもできる限りの措置を考えてやらなければならない立場にあると覚悟をしております。しかしながら、いまの財政状況等を見ますというと、まことに遺憾でございますけれども、やむを得ざる措置と御了承願いたいと思うのでございます。  また、いわゆる財政計画につきましては、いままでの社会経済発展七カ年計画を根本的に洗い直しまして新しい財政計画をいまつくろうとして作業に入りつつあるところでございます。この新しい経済計画との見合いにおきまして財政問題というものも出てくるのでございまして、いま直ちにこれを提出せよと言われましても実は困難な状態であります。やはり今後の見通しあるいは諸般の情勢をよく分析いたしました上でしっかりとした経済計画をつくってもらい、それに見合う財政計画をつくってもらおう、そういう考えでできるだけ早目にそれをやってもらおうと思っておる次第でございます。
  120. 嶋崎譲

    嶋崎委員 いまの答弁では、午前中からの討論の結論といま提起している問題との答弁にはなっていないと思います。  今日までここでいろいろ人勧問題その他について発言のあるわが党の藤田議員に関連質問を任せたいと思います。
  121. 栗原祐幸

    栗原委員長 嶋崎君の持ち時間の範囲内において関連質問を許します。藤田君。
  122. 藤田高敏

    藤田(高)委員 昼前の嶋崎議員の質問の焦点は、今日、史上最高ともいうべき五十七年度の歳入欠陥が六兆一千億にも達した、財政事情が六兆一千億というような状態になってきたために、具体的な中身は省略いたしますが、結論的に言えば、前内閣である鈴木総理が政治生命をかけてでも実現をすると言った五十九年度赤字国債発行ゼロということについては、これはもう完全に破綻したわけですね。これは具体的な数字を私はあさっての委員会で質問をいたしたいと思っておりますが、これについても明確でないのですよ。五十九年度の赤字国債発行をゼロにすることはきわめて困難になったという言い方でありますが、まだできるんだろうかというような、考え方によったら可能性をほのめかすようなことを言っておる。破綻したんだったら破綻したとはっきり言ったらどうですか。このことが一つです。  そして、その上に立って、それでは財政再建をどうやっていくんだ。具体的に言えば、政府の方からこの中期展望なるものが出てまいりまして、そのことを土台にして議論をやってきた。ところが、それを土台にするんだったら、来年度五十八年度の当初予算歳入なんかは四十兆円からを計画しておるのですよ、税収が上がるだろうという。それではどうにもならない。実質的にはもう三十三兆円ぐらいが、一番高く見積もってもその程度ではなかろうかという事態が発生して、いわゆる中期展望なるものは、大蔵省から出しておる財政の中期展望、これまた破綻しておるのですよ、ここで。これ自体が破綻しておることを認めるかどうか、これも大蔵大臣総理から二番目としてはっきり確認をしてもらいたい。  そういうことになりますと、それでは、それにかわるべき財政再建は、増税なき財政再建であるか何であるか、それはよろしい。それは中曽根内閣の選択にまたなきゃならぬ。しかし、その財政再建の中身は何なのか、どういう方針に沿って財政再建をやるのか。たとえば三年間ずらすんだったらずらすにしても、その中身は何と何と何という柱によって財政再建をやりたいというものが出てこなければ、これは審議になりませんよ。そうでしょう。そして、いま嶋崎議員が言っているように、事憲法に直接かかわるのですよ、人勧の問題は。これは労働者の基本的権利で、その代償機関としてこういう人勧制度ができた。そして、いま人事院総裁が言われるように、ずっとこの勧告については時期も内容も完全に実施をしてきたというのが今日の経過でしょう。そういう重大な国民の基本的権利に手を触れるところまでこの補正予算案が関連しておるわけですよ。補正予算の中身が、一%を減額する、人事院勧告を完全に凍結するというものが出ておるのでしょう。それとの関連において、予算のこれから先どうなるかということが明確にならないで、この人勧の凍結予算審議しろと言ったってできないじゃありませんか。その点をはっきりしてください。  いま、一、二、三と私は三つ申し上げたが、その点を明確にしなければ、現実の問題として予算の上に数字に出ておるのですから、これは審議できませんよ。  以上申し上げたことについての答弁を煩わしたいと思います。
  123. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいまの御質問、三点でございます。  一つは、きわめて困難と言わざるを得ない、こう言っておる言葉を、もうやめましたと、ここで断言しろ、こういう趣旨であります。五十八年度予算編成に当たりまして、これは困難であるという認識に基づきつつも、やはり私どもはできる限り赤字公債脱却ということを念頭に掲げて進まないことには、これこそ私はイージーになりがちの問題であるというふうに思います。だから、困難になったという事実は認めます。しかし、この旗をおろさないで、一つの当面の目標として五十八年度予算編成に向かって進むという気構えは捨てるわけにはならぬじゃないか、このように思っております。  それから、次の問題でございますが、御案内のように財政の中期展望、これは五十六年度から六十年度、過去ずっと出してまいりました。五十六年一月三十日に五十六年度ベースの財政の中期展望を出しました。五十七年度ベースでは、一月二十九日に本委員会へ提示しております。これは、あくまでも財政の現状を将来に投影することにより、中期的な財政の姿を試算した財政計画試案でありまして、中期的視点に立った財政運営を進めていく上での検討の手がかりを示そう、こういう御了解の上に立って提出したわけであります。したがって、まさに五十七年度予算における制度、施策はそのまま前提に置いた上で、前提に置くという仮定のもとにおいて、将来に投影する後年度負担推計額を基本としております。そして、歳入においても一定の仮定のもとに、税収等については等率、公債金収入については等差の手段によって将来の額を算出する中期的な推計をお示ししてきたわけであります。したがって、将来の予算編成をこれが拘束するものであるというものではないという前提の上において提出し、御議論をいただいてきたわけであります。したがって、いまおっしゃいます午前中以来の議論というものは、その中期展望というようなものは、なるほどそういうものであったことは仮に是認しよう、が、今度は少なくとも、計画策定は困難であっても、その大綱について速やかにこれを提出する努力をしろと。私が申しておりますのは、その大綱というのに対して提出しろという御提言は貴重な意見として受けとめさしていただきます。しかし、その大綱の、されば内容は、こういうことになりますと、一つ一つの指標について提案者との対話をも含めながら各方面の意見を聞いて定めなければならないむずかしい問題でございますから、何月何日、何時何十分までに提出いたしますという性格のものではないということは御理解をいただきたい、こういうふうにお答えをしておるわけであります。  三番目の問題の人勧凍結の問題は、これは私は財政当局としての立場から申しますならば、いわば人事院勧告――凍結という言葉はちょっと取り消します、人事院勧告の実施を見送るという閣議決定に基づいたならば、当然のこととして、計上いたしておりました六百七十億の一%分は補正予算において減額補正さるべきものである、このように理解しております。ただし、これは財政当局からの立場であります。
  124. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は結論から言いますと、この財政再建に関する、再建に向けての大綱であるか、あるいはいままで出されてきておった中期展望にかわるべきものであるか、それはいずれでも結構でしょう。それが今日の段階にこの予算審議に間に合わない。そして、経済企画庁で言えば、新しい五カ年計画か、あるいは経済政策を策定にであって間に合わない、まだ目下作業中だというのが先ほどの答弁でしたね。  そういうことであれば、そういうものが全部できた段階で、人勧に手をつけざるを得ないのかどうかという結論を出したらいいじゃないですか。まずそのことの方が前提じゃないでしょうか、物の順序として。そうしなければ国民は納得しませんよ。どういうような新しい中曽根内閣の新社会経済五カ年計画なのか、あるいは中曽根内閣のもとにおける竹下大蔵大臣の財政再建構想はどういうものかということがわからないまま、憲法に重大なかかわり合いを持つ人勧に全くやみくもに手をつけるようなことは、憲政の常道からいっても絶対できないと思うのですよ。私はこの点をまず結論的にはっきりしてもらいたい。これが一つ。  今度は逆に言いますが、いまさら中期展望の性格を竹下大蔵大臣から聞かなくとも、私も何年も予算委員をやってきて、今日まで本当にそれを土台に議論してきました。ですから、そのことはよく存じております、性格そのものは。しかし、中期展望は、仮に直接的に予算を拘束するものではなくとも、それが財政計画なり予算を組む場合の重大な資料であったことは間違いないのです。これなしに今日までの予算は編成されてないのですよ。ですから私は、言葉のやりとりの問題ではない。それこそ巧言令色何々少なしなどと言っておるけれども、実際うまいこと言うんだ。こういう議論のやりとりをやっておったら、言葉だけ聞いていたら何だかそうかなと思うけれども、ここ何年来の経過からいけば、そんなごまかしはききませんよ。そういう中期展望にかわるべきものをきちっと出して、そして財政再建を今後どうするんだ。私はやはり赤字国債から早く脱却するということは財政再建の大きな目標でなければいかぬ。それが五十九年度絶対できなくなったのだから、そのことをはっきり認めたらどうですか。いまの御答弁を聞いても、きわめて困難だけれども、その赤字公債からの脱却なんてすりかえていますけれども、五十九年度から赤字国債発行ゼロにするということは絶対できなくなってきておるではないですか。できるというんだったらおっしゃってください。できますか、大蔵大臣。できないですよ。  私はきょうは関連質問だからこの程度でやめますけれども、一つだけ申し上げると、あなたが大蔵大臣やっておったたしか五十四年だったと思いますよ。結局、今日、補正の段階で国債発行額についても十四兆三千億。これが五十四年のあなたが大蔵大臣やっておったときは十四兆五百億、五十五年が十四兆二千億、十四兆台に、結局もとへ振り出しに返っているのですよ。ふえておるのですよ。まさにこの国債発行高が絶対額においては戦後最高になっているのですよ。国債発行の財源依存率においても、ことしの当初予算のときは二一%、それがまた三〇%に返ってきた。  こういう具体的な数字からいきますと、まだ細かい数字はたくさんありますよ。あるけれども、五十九年度に赤字国債発行をゼロにすることは絶対できないじゃないですか。そんなことをまだできるような余韻を残すようなことを言うこと自身、これは何もわかりやすい政治でもなければ、きわめてふまじめですよ。無責任ですよ。それぐらいのことは、ただいまのこの補正予算国会で大蔵大臣がはっきり認めた上で、総理もはっきり認めた上で、実はこれは自民党内閣の経済政策なり財政政策の失敗でした、このことがはっきり認められないで国民に痛みを分かち合ってくれ、どっち向いて言うのですか。まずそういう責任の所在をはっきりしなさい。それをしてから私どもは財政再建の方向について協力できるものは協力いたしましょう。そういう折り目、切れ目をつけないで何がわかりよい政治なんですか。責任ある御答弁を願いたいと思うのです。  そういう意味合いにおいて、私は嶋崎議員が要求いたしておりますように、中曽根内閣としての財政再建に向けての具体的なことがいま直ちにできなければ、少なくとも中期展望にかわる程度の財政再建大綱なるものをこの予算委員会にはっきり出してもらわなければ、これから先質問できません。(「約束をしろ」と呼ぶ者あり)
  125. 竹下登

    竹下国務大臣 私も、藤田議員の論理をことごとく否定しようとも思っておりません。が、要するに、いわゆる大綱を出せ、その提案に対しては、私はそれは評価をいたします。ところが、その大綱とは内容的にいかなるものか、そういう問題になると、やはりこの場を通じ、あるいは個々に対話を通じて、およそこういう内容のものだということの合意に達しなければ、それは私はここで軽々に約束をさるべきものではない。この辺は、もう長い間予算委員会にいらっしゃいますから、いわゆる中期展望そのものについての性格も百も承知の上で御議論いただいておる、これも私もわかります。理解していただいたことはむしろありがたいと思います。だが、もう一歩進めて大綱を出せ、されば大綱の内容とはいかなるものか、これらは対話の中で詰めていこうじゃございませんか。その大綱を出せという提言は評価しておる、こういうわけでございますから、この辺は御理解のいただける問題ではなかろうか、このように思います。
  126. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それは理解できませんよ。その程度のものが先に出てから予算審議が始まる、それができないのだったら人勧の凍結を白紙に返しますか。白紙に返しなさいよ。そうしないと、論理的にも、政治論としてもこれは議論できないでしょう。竹下大蔵大臣のように物事を筋道を立てて話をされる政治家にとって、いま私の言っておることは無理ですか。私の言っておることは道理にかなった御相談じゃないでしょうか。どうですか。それをあなたができない、単に大綱を示せという提案については評価しますなんて、評論家みたいなことを言ったらだめですよ。そういうものをつくるのがあなたの責任でしょうが。所管大臣としてあなたの責任じゃありませんか。そういうことをきちっとやらなければだめですよ。  私は、そういう意味で大蔵大臣並びに総理の見解を聞きます。その答弁いかんでは、これは審議は進みません。幾らテレビの関係があっても進みませんよ、これは。テレビは、ある意味において本当にわれわれの審議にとっていいことか悪いことか。いい面もたくさんあるでしょう。しかし私は、この代表質問の中でこういう問題がきちっと責任ある形で明確にならなければ、国民は本当に国政に対しての信頼感がわいてこないのじゃないでしょうか。まだ前段がたくさんあるでしょう。冒頭に言ったように、本当に私は失礼な言い分だけれども、これだけきずものと言われるほどの内閣がそろうておる中でやっておるのですからね。もっと財政問題ぐらいはせめて信頼のあるような答弁をしてくださいよ。
  127. 竹下登

    竹下国務大臣 いまの御提言でこざいますが、過去の提出の経緯を見ましても、私が大蔵大臣でありました五十五年度予算の当時は別といたしまして、五十六年度ベース、五十七年度ベースで、これは確かに本予算審議される段階で財政の中期展望は提出さしていただいております。これが五十六年一月の三十日であり、五十七年一月の二十九日に提出さしていただいておる、これは事実であります。したがって私どもも、この中期展望の提出という作業は、五十八年度予算編成に当たって当然従来と同じようにやっていかなきゃならぬ。が、その上にいわゆる財政再建大綱というものを出せとおっしゃるわけでございますから、その内容、時期を明確にすることは、いまの時点ではできないことが御理解できるではなかろうか、このように申し上げておる次第であります。
  128. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大蔵大臣が答弁したとおりでございますが、ともかく五十七年度単年度の問題としてとらえてみましても、六兆一千億という大きな歳入欠陥を生じておりまして財政のやりくりには四苦八苦しておるという状態でございます。そういう情勢から見まして人事院勧告をどう取り扱うか。八月に勧告がすでに提出され、国会でも御論議していただいておる問題でございます。そういう単年度の処理といたしましても六兆一千億もあるような蔵入欠陥を前にして、やむを得ずこれは凍結、見合わせ、そういう考えに立って、ひとまずこの問題はことしの問題として片づけておく、来年以降の問題は五十八年度予算編成というもの及びそれ以後の展望を踏まえてまた皆様方に御論議をいただく、そういうことになると思っておるのでございます。したがいまして、中期展望というようなものは、いままで大体その年度の予算編成に絡んで提出しておるという状態でございますので、その点御了承願いたいと思う次第でございます。
  129. 藤田高敏

    藤田(高)委員 総理の見解もそういうことでございましたら、私は結論的に言って、憲法に直接かかわり合いを持つような重大な人勧の見送り、凍結は、それまで少なくとも留保したらどうですか。そうしなければ、これは筋が通りませんよ。  一方やるべき作業は、それは四十日か五十日か、総裁選挙で時間を食ったのかどうか知りませんよ。しかし、いま国民が事財政問題、行革問題、それに関連して国民の生活ほどうなるかということについて重大な関心を持っているのは、いまここで私どもが議論をいたしております新五カ年計画かあるいはこの財政再建はこれから中曽根さんの手でどういう方向で具体的にどうやっていくのだろうか、少なくともかちっとしたものが、コンクリート化されていなくても、大体五本の指に入る項目でいくのか三本でいくのか、それぐらいな柱ぐらいはきちっと出ないと、国民は理解しないと思うのですよ。  それが、いまおっしゃるように、五十八年度の予算審議までには間に合わす、これは私はあたりまえだと思う、当然だと思いますよ。それまでどうしてもいかぬというのであれば、この人勧の問題を、予算には出ておりますが、予算から減額補正を留保するか、いわゆるもとに返したらどうですか。そうしなければ審議できないじゃありませんか。お互い政治は、憲法に基づいてやっておるのでしょう。憲法を土台に、憲法の示す方向に政治をやるんでしょう。この土台がないんだったら国政審議はできませんよ。そういう意味合いで、どうですか、これは重大なことですが、余り土光さんの方ばかり顔を見ないで、神経を使わないで、国民の方に顔を向けて、その点の結論を出してくださいよ。そうしなければ、委員長、これ以上審議はできません。これ以上審議はできません。
  130. 竹下登

    竹下国務大臣 これはいま、憲法に基づいてと、こうおっしゃいましたが、憲法、そしてあらゆる法律に基づいて、この人事院勧告の実施を見送るに際しても、昭和二十二年以来の法律の変遷を踏まえて、労使関係等も十分念頭に置きつつ議論した結果、現在の財政状況からしてこのようにしていただかなければならぬ、こういう結論が出た限りにおいては、財政当局としてはその一%分に値する六百七十億を減額補正して御審議に供する、こういうことは必然的にそうなるのであって、憲法を無視したとか法律を無視したとか、そういう前提の上に立って議論したものではございません。したがって、この予算そのものの性格からして、そういう決定がなされた限りにおいては、六百七十億の減額補正、こういうことはきわめて必然性を持った措置と言わざるを得ないと思います。
  131. 藤田高敏

    藤田(高)委員 承知できません。(発言する者あり)
  132. 栗原祐幸

    栗原委員長 私から発言をさせていただきます。  関連質問の時間、それを差し引きますと、嶋崎君の持ち時間は二十六分でございます。  今日の段階におきましては、質疑は進みませんので、これは留保いたします。
  133. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いま委員長のもとで、各党の理事で御相談されましたその結論を尊重いたしたいと思いますが、留保をいたしまして、私の関連質問は終わりますけれども、これは予算案が上がるまでにはその問題がきちっと出ないことには、私どもとしては、この審議が後刻の審議にも重大な影響が及びますので、その点はひとつ私どもから、いま申し上げておることが政府においてきちっと結論が出ますように強く要望いたしまして、留保の取り扱いを尊重いたしたいと思います。
  134. 栗原祐幸

    栗原委員長 次に、原田憲君。
  135. 原田憲

    原田(憲)委員 それでは私は、与党の立場から総理大臣初め関係大臣に質問をいたします。  中曽根総理大臣初め各閣僚の皆さん、大変御苦労さんです。  本会議における各党の代表質問も終わりまして、いよいよ提案されております補正予算案の審議が始められるわけでございますが、代表質問を聞いておりまして、総理に対しては相当辛らつな批判も聞かれました。人間というものは、自分の背中が見えない。人のことなら何とでも言えるものですが、まあ飛鳥田さんも相当なものでございましたよ。ここに私が友人からもらったざれ歌がございます。これはどうも社会党の中でいま流れておるそうでございます。作者はわかりませんが、「ぬかるみの馬場にかけたる石の橋 空飛ぶ鳥のとまり木もなし」、もう一度申し上げますと、「ぬかるみの馬場にかけたる石の橋 空飛ぶ鳥のとまり木もなし」、これは馬場さんや石橋さんや飛鳥田さんのことをそれぞれ歌ってあるのでしょうが、うまく言っておると思います。とまり木もない人の言うことでも、あなたは野党の方々にも御協力をいただきたい、こうおっしゃって、やっていきたいとおっしゃっておるのでございますから、その姿勢はまことに結構だ、その姿勢でやってもらいたい、私はそう思います。  そしてもう一つ、与党でございますから激励の意味で申し上げたいのですが、あなたは自民党の総裁予備選の最中に大阪へ来られて、私は徳川家康が好きだとおっしゃった。私は、徳川家康も結構ですが、大阪ではまず太閣さん、豊臣秀吉なんです。来年は大阪築城四百年で大阪では張り切っているのですから、やはりその所へ行ったら所向きのあいさつをしてもらいたい、こう申し上げたら、あなたは次に岩手県で原敬さんを大変褒めて拍手が多かったそうでございますが、まあ徳川家康結構だ。今川だとか武田とか織田の強豪に囲まれて、幼少のときからあちらへ預けられ、こちらで人質になり、まことに苦労しながら、やがて天下人になって徳川三百年の基をつくった。  私は、中曽根さんがいろいろ批判されて、あっち向いている、こっち向いている、風見鶏だなんて言われておりますけれども、やはり小さいグループからでも一生懸命がんばってこのたびは総理大臣になられた。自信を持ってこれからおやり願いたい、こう思っております。  何かおっしゃることありますか。
  136. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いろいろ戒めの言葉やら御激励をいただきまして、まことにありがとうございます。謹んで承って政治の上で参考にさしていただきたいと思っております。
  137. 原田憲

    原田(憲)委員 そこで、本論に入りますが、このたびは臨時国会で補正予算中心でございますから、私は、かねて国家百年の計として教育の問題を重視しておるのでございますが、この問題はきょうはお聞きいたしません。  そこで、まず最近のニュースですね、これを先にひとつ聞いておきたいと思うのです。  それは、十日の午前十時、日本時間で十一日の午前零時ですか、ワシントンの下院会館内で、ソ連の国家保安委員会、KGBの元スパイ・レフチェンコ氏が記者会見をした。日本人協力者二百人に四万円から二百万円の金を払った、協力者については数ヵ月後に著書で明らかにするという、新聞による、あるいはテレビで報道を聞いておるのですが、これはどういうことなんですか。政府から一遍、どのような情報が入っておるのかお聞きしたい。これはだれですか、山本大臣ですか、答えてください。
  138. 山本幸雄

    ○山本国務大臣 ただいまのレフチェンコ氏の問題ですが、これは先日外務省を通じて、その情報委員会における速記は入手を警察当局はいたしました。内容は、大体新聞に出たようなことでございます。  このレフチェンコ氏というのは、東京に三年有余ですか、いた人で、警察の視線の中には確かにあった人物でございます。東京というのは、こういう国際的な情報戦のかっこうの場所でもあるわけでございます。ただ、この人のやっていたことは、つまりスパイ行動という色合いよりも、むしろ各方面にソ連について有利な雰囲気、情勢をつくり出していくというそういう工作、いわば政治的な工作をやったということのようでございまして、そういう色合いが非常に強いということでございます。大体さような証言の内容になっておるようでございます。
  139. 原田憲

    原田(憲)委員 この問題については、まだ本人が後で著書にその明細を明らかにするなんと言っておりますから、その程度の情報かと思いますけれども、とかくアメリカ側からいろいろな情報が入ってきて、そして今度でもすでに取材活動がありますから、われわれの同僚や政党の代表は迷惑千万だというようなことを言っておられるということもわれわれの目の中に入り、耳の中に入ってきておるわけです。  こういうことはやはり明らかにしていかなければならないとも思いますし、日本がスパイ天国だ、昔――昔というよりついこの間のことになりますけれども、日本の自衛隊の中に高官のスパイ行動をする者がおった。こういうようなことでは、私は国の大事だと思うのです。こういうことについて、何らかの措置を政府は講じようとされておるのか。情報の公開も大事ですけれども、こういうスパイ活動をする者をどうするんだというような問題と両者相まっておると私は思うのですが、政府としてどのように考えておられるのか、そのことをお聞きいたしたい。
  140. 後藤田正晴

    ○後藤田国務大臣 今度の事件が起きまして、率直なところは、またか、こういうのが私の率直な感じでございます。  従来からソ連の工作員が東京を中心にいろいろな活動をしておるというようなうわさも私の耳には入っておりましたが、また過去においても、古い話ですが、ラストボロフの事件であるとか、あるいは宮永の事件であるとか、いろいろの実例もあったわけでございます。  今度の事件というのは、当該人物が、七五年の二月から四年半ばかり東京でKGBの要員として勤務をしておった者のアメリカ議会における証言でございますから、やはりそれなりの受けとめ方はしておかなければなるまい、私はそう考える。  そこで、いつもこういう事件が起きますと、機密の保護をどうすべきであるとか、いろいろな議論がございますが、私は基本的に、今日のこの厳しい国際社会の中で各国が至るところでこういう活動をしておりますね。ところが、日本人は大体は、知って協力している人がおるとすれば、これはもう論外。しかしながら、そうでない、知らず知らずのうちに利用せられておる、こういう例が非常に多いわけですね。つまりは、こういった活動が東京でも盛んに行われておるのだという認識が欠如しておるのではないのか。ここらをやはりしっかり腹に置いて対処していかなければいかぬであろう、かように考えておるわけでこざいます。  まだ本件については、新聞情報、それから議会における証言、これは外交ルートでちょうだいいたしておりますが、それだけであって、実態が果たしていかなるものであるかということは、政府としては承知をいたしておりませんので、それらの推移も見守っていかなければなるまい、かように考えているようなわけでございます。
  141. 原田憲

    原田(憲)委員 これは、いまのところこの程度のことでありますから、これ以上申し上げませんが、いまアメリカにおけるところの証言というものは重視しなければならない、こういう官房長官の発言もございました。これは、ためにするところのことじゃないかと言っておる方もございます。ロッキード事件でも、あれは謀略じゃないかというようなことを言う人もある。これは明らかに司法問題になって、いま裁判が進んでおるところでございますけれども、今度の問題も今後十分明快にされることを私は望んでおきたいのでございます。  さて、次に、中曽根総理大臣に政治姿勢についてお聞きしたいのですが、憲法問題、これは先ほど嶋崎さんのお尋ねに対して総理は明快に答えられておりますから重複を避けたいと思いますが、本会議場でもたびたび申しておられますが、これは自由民主党の立場から、中曽根さんも私も昭和二十二年に初めて当選をして議席を持ったのですけれども、あの当時は占領下であった。しかも、その占領下につくられた憲法という非常に異例な憲法である。わが国が独立しまして、その当時はこの憲法というものを、自民党だけでなしに、各党で盛んに論議されたものであります。  自由民主党は、民主党と一緒になって昭和三十年にできたのですが、この問題は非常に重要な問題であるというので、自民党の政綱の中に、日本国憲法の規定する「平和主義」「及び基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。」こういうように定めてあるわけでございます。以来、わが党においては、党内に憲法調査会を設けて真剣な検討が行われてまいりました。そうして、今日におけるわが党の憲法に関する見解は、今年の党運動方針の基調に掲げておりますように、「「憲法を国民の手に」とのスローガンのもと、引き続き党の正式機関において、平和と自由民主主義を基調として、新時代に応えるよう、」「改正の検討を進めるとともに、憲法論議を高め、国民の間になお一層正しい理解が深まるよう、世論の喚起につとめる。」ということだと承知いたしておるのでございます。  先ほども総理は御答弁をなさっておりますけれども、この現在の憲法の中に改定条項がある限り、また人間の考え方というものが自由である限り、大いに論議を進めていく、こういう立場に立って私どもは進んでおるのですが、総理は、これを政治日程にはのせない、こういう発言をなさっておりますが、ここのところ、重複いたすようでございますが、重要な基本的な問題でございますから、私からも聞いておきたいと思います。
  142. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私が特に申し上げたいのは、わが国は民主主義の国家でございまして、しかも自由主義的憲法を基本法としている国でございます。そういう意味におきましては、国のどの部分にも聖域とかタブーがあってはならない、言論はあくまで自由であらねばならない、特に国会における言論というものは最大限に自由性が尊重されなければならない、それは憲法上も議員については保障されておるところでございます。  そういう意味におきまして、ややもすると一部に、憲法論議をするというとそれがタブー視されて、さわってはならぬものにさわるという印象を与えていることは非常に残念なのであります。そのようなタブー視する考え方を一掃して、よりよきものへ常にみんなが志して努力、研さんしていくという姿勢が民主主義からしても好ましい姿である、そのように思っておるのであります。  したがいまして、憲法の問題も、国の基本法という最大最重要の問題でございますから、自由活発な論議が国会の中に行われてしかるべきである。ある者は改正論を言い、ある者は擁護論を言う、堂々とやり合ったらいいと思うのです。それを国民皆さんがよくお聞きになって判定を下されるのが民主主義である、そういう気持ちでおる。憲法改正論を自民党の議員が言うと、すぐ何か悪いものに触れたような印象をいままで与えておりました。私は非常に残念に思っておったところでございます。そういう意味におきまして、この大事な基本法については、自由濶達に議員としての特権を行使して論議してください、また国民皆さんも、これは主権者でございますから、主権者が憲法をつくるわけでございますから、自由に御論議ください、そういう自由な風潮が国にみなぎらなければ民主主義は前進しない、そう思っておるのであります。  しかし、政府立場はまたおのずから変わった点もございます。九十九条について遵守義務があり、九十六条についてまた改憲の手続も決められております。そういうところもよく踏まえまして、政府立場は一般国民や議員の皆様よりも慎重であるべきであると私は考えておりまして、そしてこのコンセンサスを得、また機が熟するまではそう軽々な発言は政府としては慎しむべきである。  私個人は、前から申し上げておりますように、改憲論者であります。いまでもこの憲法については検討を要する点があると思っておるわけでございます。しかし、総理大臣になりました以上は、やはりこれは国政全般を預かる重要な地位でございますから、影響も考えて、そしてまた、国民の皆様方の合意の情勢もよく見きわめて慎重に発言をしておる。  それで、現内閣におきましては改憲問題を発議することはいたしません、政治日程に上すことはございません、そう申し上げておる次第なのでございます。
  143. 原田憲

    原田(憲)委員 よくわかりました。  そこで次に、私は政治倫理の問題についてお尋ねしていきたいと思うのでございますが、この問題は実は国会の問題でございますから、総理大臣に聞くことはどうかと思う点もございますし、議院運営委員会で議論をされておる問題でございますから、私の考え方も交えながらお尋ねをしていきたいと思うのでございます。  御承知のように、ロッキード問題については五十一年十二月の第七十九国会から五十四年十二月まで続いた、本院に設けられた航空機輸入に関する調査特別委員会におきましてすでに一応の決着がつけられ、今日においては司法の判断にゆだねられている問題なので、裁判が進行中なのでございます。私は、こうした状況下にあって、政治家としては三権分立の精神を厳正に守り、裁判所の審理を見守っていくということが大切である、こう考えておるのでございます。その立場に立って、現在継続されておる議員辞職勧告決議案、このものについて意見を述べ、お尋ねもしてまいりたいと思うのでございます。  すなわち、国権の最高機関である国会議員は、厳しい倫理を要求されることは言をまちません。しかし、その身分は、法によって最高権威機関の議員というものは明確にされておるものでございます。憲法第五十五条は、両院は、「議員の資格に關する爭訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。」五十八条で、両議院は、「その會議その他の手續及び内部の規律に關する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多數による議決を必要とする。」こうございます。これらを受けまして国会法において議員の辞職、退職、補欠及び資格争訟の規定があり、また懲罰規定も別に定められております。懲罰委員会も常設されております。  このような議員の資格の中で、いまだ本院においては個人の議員に対する辞職勧告決議なるものは前例がないのでございます。もちろん、院において争訟が行われて懲罰委員会が開かれて懲罰にかかったというような事例はございます。これは院内の問題でございます。しかし、その場合でも、仮に三分の二以上で除名にされた、こういう方がありましても、この方が選挙によって再び議席を得た、すなわち主権者である国民の裁判を受けて当選をしてきた、こういう場合には、その人を、再び議席を奪うことができない、このように定めてあるわけであります。  いまの辞職勧告決議というものはそういう手続ではないのですね。だから、道徳的、倫理的な立場に立って、現在一審を受けた、有罪である、佐藤議員は執行猶予ですか、こういうことであるけれども、そういうことはどうか、こういうことで辞職を勧告をしようというのでございますが、これはまだ刑の定まっておらない人に対するところの辞職勧告でございます。これは一体どういうことか。  これに対して、議院運営委員会参考人を呼んで審議をされております。それを読ましていただくと、林修三元内閣法制局長官、それから慶谷淑夫東京工大助教授がそれぞれ、この決議案が可決されたならば、第一番に、法的拘束力はないものの、政治的にまた社会的に圧力は相当強い、第二番目に、憲法、国会法、公職選挙法で議員の身分を奪う要件は厳格に定められている、三番として、その見合いから、相当重大な理由がなければ軽々に議決すべきではない、佐藤議員は控訴中で二審判決は未定である、仮に無罪になった場合、名誉回復の措置が非常にむずかしい、五番目に、辞職勧告決議に従わない場合は国会の権威にかかわるなどの理由を挙げて、決議案を議決することは不適当だ、これは林さんの見解ですね。  それから、すぐれて政治問題であり、法律問題として論ずるのが適当かどうか、これは疑問だとしながらも、議員が身分を失う場合には憲法や法律によってきわめて限定されておると指摘して、さらに決議案の議決については、憲法、法律の趣旨からして妥当かどうか、問題が生じる余地があると助教授さんは述べて、慎重に審議すべきだと見解を示しておられます。  私は、非常に具体的な事例として、私の大阪の選挙区で、これは二人とも他界されておりますから申し上げたいと思いますが、いわゆる汚職事件の渦中で、一人は国民の審判を受けて、いわゆる国民の裁判ですね、そして政界から姿を消したまま再びここにあらわれてくることがなく他界をされました。もう一人は、国民の審判を受けて堂々当選された。その後、彼が世を去ったときには、社会党推薦の市長さんは、こんなりっぱな人はないというので市葬をもってしたい、こういうことで、これは自民党の代議士でありますから、私どもの自民党府連と一緒になって合同葬を行ったという事実が存在するのでございます。  法によって守られておる人権という上に立っても、みだりに、議席を得ている国民の代表に政治的に辞職せよと勧告することはどうでありましょうか。刑法は裁判所で、政治裁判は任命者の国民の手で選挙によるべきだと私は思うのでございますが、このことについても総理は質問を受けて答弁をなさっておりますが、これも重要なことでございますので、先ほど申し上げましたように、このことは総理大臣にただすべきことかどうかという点もありますけれども、まあひとつお答えを願いたいと思います。
  144. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国会は国権の最高機関でございまして、いわゆる国の主権、統治権と申しますか、これは司法、立法、行政、三権でできておりますが、その中でも特に国会は国権の最高機関として重きをなしておるわけでございます。したがって、主権を構成する最大重要な機関でございます。その主権を構成するのは、具体的には議員の活動でございますが、この議員を選ぶというのは選挙と選挙民によって行われるわけであります。その選挙民によって選ばれる議員が活動することによって主権という大事な機能が生まれてくる、そういうことを考えてみますと、この議員と選挙民の関係というものは非常に厳粛で、重要な機能を持っていると考えざるを得ません。しかし、また一方において、国会議員は国民代表でもありますから、普通人以上の倫理性が要求されて、国民の儀表たるべき、模範たるべき行動をしなければならぬということも事実でございます。  その場合に、ある議員を、そういう除名とまではいかないにいたしましても、議会の議決で、決議でその地位を去らせようというような問題がもし万一起きたという場合に、どちらを重んずるかという選択の問題になると思うのです。私は、私の考えといたしましては、その場合には、主権を構成するという機能を重視しなければならぬ、そう思っておるのであります。選挙民と代表者とのこの大事な関係を第三者が強制的に切断する権利が果たしてあるのか。状況によってはあるかもしれぬけれども、その場合には懲罰手続とかそういう議院上法律で決められた手続もございます。しかしまた、事案によっては、非常に破廉恥的な行為で、これは常識上当然しかるべきと考える場合もないとは言えないと思います。  しかし、今回のケースを見ますと、いま三審制度のもとで控訴が行われておるという状態で、本人は無罪を信じて法廷で闘いつつある状態で、決着している状態ではございません。そういうような状態の中におきまして、第三者がこの厳粛な主権を構成するという機能を一方的に切断する効力を持つことができるか、私は、こういう問題は本人の決意にまつべきである、本人が選挙民と相談をしてまたやるべき問題ではないか、そういうように思っておるのであります。国会は国権の最高機関であり、かつ、わが憲法は自由主義憲法でございますから、最大限に言論や身分は保障されておらなければならぬと思うのであります。  過去の日本の議会を見ましても、いまから考えるとずいぶんわれわれが悔やまなければならぬケースもあったと思うのです。齋藤隆夫先生を除名いたしました。あるいは西尾末廣先生を除名いたしました。あのときの国会の空気というものは、ほとんど軍の圧力で、満場一致に近い空気で除名ということが普遍化しておったのであります。国民や国会の一時の空気に支配されて除名をやってしまった。それがどれぐらい日本の議会史の上から見て残念なことであったか、いま思い直されるところがあると思うのであります。  今回の事件は刑事事件でありまして、あの事件とは違います。しかし、議員の身分が主権を構成するという意味において重要であるという点については変わりはありません。私は、そういう意味からいたしましても、言論の府である国会におきましては、自由な言論が思う存分行われ、かつ身分の保障が行われているという憲法の本来の姿を維持していきたいと思っておるのであります。あの野党の参議院の有力な方がおりますが、この参議院の方についても除名みたいな、あるいはいろんな議が国会で出たとか出ないとか、議員がそういうアクションを起こしたとか起こさないとかという問題はございます。私は、そういうケースでも、議員同士はできるだけ議員の地位を保全してやるように努力し合う、その方が議会政治全般から見たら好ましいのではないか、そう思っておるのであります。これは、齋藤隆夫先生や西屋末廣先生その他の例を見ましても、最大限に言論と地位を保全するというのが議会本来の機能であり、議員の責務である、そう私は信念を持って考えておりますので、以上のように申し上げる次第なのであります。
  145. 原田憲

    原田(憲)委員 総理は、これは本人の問題であるという答弁を先ごろなさっておると思います。いまお聞きいたしておりまして、率直に私は思いますことは、先ほども私がお尋ねいたしました二つの問題、院内で起きた問題、それから院外で起きた刑事事件、こう二つに分けて私は私の考え方というものを展開したのでございますが、院外で起きた問題といえ、刑事事件に問われたといえ、それは最終審まで至っておらない、こういうものを法によらずして、政治的に辞職勧告することはどうであろうか、こういうことを申し上げたところでございます。私は、議員みずからが、先ほど申し上げましたように、最高の倫理を要求されておる存在であるということは、おのおのがよく認識してかかっておかなければならぬ、こう思って、それを含めながらお尋ねしたような次第でございます。  次に、総理の訪米についてお尋ねしてまいりたいと思います。  総理御自身が所信表明演説において明らかにされておられるように、まさに、米国はわが国にとって広範な分野においてかたいきずなで結ばれた最も重要なパートナーでございます。われわれは、こうした基本的な認識に立って、戦後一貫して日米安全保障体制に基盤を置く日米間の友好協力関係を維持してきたのでございますが、今後ともこうしたわが国の外交基本方針は変わりないと考えます。  しかし、このような強固な日米関係の中でも、現在両国の間には防衛、貿易摩擦等経済問題を中心として幾つかの懸案があります。これらの問題の背景には、激動する国際社会の中で、わが国が自由主義国の主要なる一員として期待されておるにもかかわらず、その責任を十分に果たしていないとする米国民の認識があるのではないか、このように思うのでございます。特に米国における十月の失業率が一〇・八%、この国にとって未曾有の数字を記録しており、米国議会を中心として保護貿易主義に訴えるとの動きが急速に高まっていることも事実であります。  日米の関係がこれらの問題を抱えて非常に深刻な状況に立ち至っておるときに、総理がみずから訪米されて、レーガン大統領を初めとして米国政府首脳と率直な意見の交換を行われるということは、まことに有意義なことであると思います。  ただ、申し添えたいことは、米国首脳との会談に際していわゆるイエス、ノー、これをはっきり申し述べてもらいたい。いままで、ともすると米国との折衝に際して、どうも御意見拝聴式な会談が多くて、米国側は日本の意思がどこにあるかはかりかねて、あらぬ誤解を与えたこともある、こういうふうに聞いております。かつて、沖縄返還の当時、アメリカが抱えておりましたのは繊維問題であった。これらに対する日本側の煮え切らない態度が、ついにはニクソンショックと呼ばれるドルの切り下げ、ブレトンウッズ体制の崩壊ということにつながっていったということも言われております。  私は、市場開放のむずかしい問題があればあるほど、はっきりとわが方の立場を言うことが日米の友好を深めることになると思うのでございます。  日本にとって少々つらいことでも、米側にイエスということを答えたときには、日本国民に対して十分の理解を求めて、そのために起こる国民の受ける不利益に対しては速やかな措置を講ずる。また、アメリカにノーと答えるときは、その理由を明らかにして、堂々と理解を求めていくという態度、イエス、ノーをはっきりする。  防衛の問題につきましても、目下のところ総理大臣はGNP一%以内でもと答弁しておられるようでございますが、これからアメリカとの間にはいろいろな問題が起きてくると思います。たとえばシーレーンの問題等も今後重要な問題になってくると思うのでございますが、これはそれと直接関係がないようでございますけれども、たまたま新聞社の誤報から生じたことでございますが、教科書問題の際に、中国や韓国以外のASEANの国の世論の中に日本に対する一抹の警戒心、これは無視し去ることはできない、このように考え、日米連帯のきずなを強くするためにはそこらのことを十分つかまえて、イエス、ノーをはっきりした交渉、会談をやってもらいたいと思うのですが、今回の総理訪米の意義と、そして、そのときに予想される議題等についてお答えを願いたいと思います。
  146. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま原田議員がおっしゃいました御所信につきまして、私はおおむね同感でございます。その御趣旨を体しまして、一生懸命努力してまいりたいと思っております。  どういう議題を議題としてやるかという点、まだ決まっておりません。しかし、私が今回訪米を思い立ちました背景には、近来日米関係においてややもすれば摩擦やあるいは不協和音が存在をしてきておる。これはいろいろ聞いてみるというと、相当切迫してきているような情勢に彼我の感情が出てきておる。これは速やかに行って、そして日米双方の信頼関係を回復しなければならない、そういう考えに基づきまして決心をした次第なのでございます。  もとより、日米両国はこれだけの経済大国同士でございますから、経済的にもあるいは政治的にもいろいろな摩擦や問題点が起こるのは当然でありまして、ないという方が不思議なのであります。しかし問題は、それを解決する方法を両方が持って、そして、それを解決してきた、また将来も解決していくという双方の信頼性、それが大事であると思うのであります。その信頼性が少し曇ってきておるのではないかということを恐れておるわけでございます。  基本的には、日本とアメリカは太平洋の相互にありまして、太平洋を文字どおり太平洋にしておく運命的な責任を持っておる国でございます。それに自由主義という信条においても同じくしておる国であり、経済的にも膨大な量の往復でつながっておる大事な国、相互の関係にございます。そういう面からいたしまして、また、防衛上は日米安全保障条約で結ばれているという、いわば同盟国の関係にございます。  そういうような情勢を踏まえまして、やはり日本とアメリカが相互信頼でがっちり結ばれているということが、世界平和の一つの大きな大黒柱になっていると思います。日本とアメリカの間が摩擦を起こしたり、不協和音が出れば出るだけ世界の平和は低下してくる危険性があると思っております。また、アジアにおいても不安が増大してくると思っております。また、日本にとりましては、アメリカとの関係ががっちり完全に提携がうまくいっているという状態で初めて対共産圏外交も力強いものになっていくのであろう。アメリカとの関係がばらばらな状態で果たして対共産圏外交がうまくいくか、はなはだ疑問である、そう思っております。  そういう諸般の情勢考えてみまして、アメリカとの関係を完全に両方が善意を持って気持ちよく協力し合うという態勢に立て直していくという情勢にあるのではないかという気がいたしまして、行ってまいるつもりでございます。  話は、ソ連にアンドロポフ政権が出まして、一体この新政権が世界政策をどういうふうにやるであろうか、お互いに注目しておるときです。それらにつきましてもお互いの情報を交換し、観測を交換し合うということとか、あるいは中近東からインド洋あるいは南米に至るまで、全世界的な情勢について情報を交換し、対策を話し合う、おのおのの見解を述べ合うというようなことも大事ではないかと思います。日本にとっては、ASEANの関係とか、あるいは中国の関係とか朝鮮半島の問題とか、重要な問題がございます。それらにつきましても意見を交換し合うということは当然やるべきことではないかと思っておりますし、経済摩擦の問題につきましても率直に話し合いまして、やれることとやれないことはある程度はっきりする、すぐやれることと段階的にやっていくことも明らかにしておく、そういうフランクな考えに立ちまして、しかし、当方も誠意を尽くして、できるだけの努力をしながらそういう快適な状態をつくり出すために努力してまいりたい、そのように考えておる次第でございます。
  147. 原田憲

    原田(憲)委員 総理は、就任早々ASEAN五カ国、韓国、中国の首脳に直接電話を入れられて会談をされたと承っております。アジアの、特にわが国と非常に関係の深いこれらの諸国に対して、総理がこのように直接お話をされるということは、わが国の外交政策がアジア諸国に対する外交を重視している姿勢を明らかにしたことになって、私は非常に結構なことであったと思います。この電話による会談を布石として、今後一層アジアの諸国と友好を深めていかなければならないと考えておりますが、先ほど言いましたアメリカとの関係におきましても、この内閣には、たとえば、いまは通産大臣でございますが、農業問題等について造詣の深い山中通産大臣、あるいは安倍外務大臣、これは前の通産大臣でございます、その他農林大臣等々とよく御相談をくださいまして、この内閣は一体になってやっておるなという形で成果を上げることを期待しておきたいと思います。  次に、五十七年度補正予算と給与問題についてお尋ねしてまいりたいと思います。  最近における景気の問題でございますが、わが国経済情勢を見ると、欧米経済が第一次、第二次石油ショックの影響から脱し切れずに長期的な低迷を続ける中にあって、諸外国と比較すればまだ比較的わが国は良好な状態であると言われておるのですが、しかし、景気の足踏み状態は続いております。  本年度の当初経済見通しの実質成長見通し五・二%を三・四%に下方修正されました。そして、その中身を見ましても、住宅投資は当初見通し百三十万戸、これを百十万戸に縮小せざるを得ない。設備投資もまた当初の見込みを大幅に下回っております。輸出についても貿易摩擦等の影響を受けて減少ぎみである。鉱工業生産は一進一退を続ける中で、雇用情勢も失業率が二・四%と、かつてない水準にあるなど、どれ一つとってみても厳しい情勢でございます。  こうした経済情勢に対処して、政府は去る十月、この苦しい財政事情の中で総合経済対策を決定して景気対策に力を入れておるのでございますが、また、今国会に提出されたこの補正予算は、重要である災害復旧事業、債務負担による一般公共事業が盛り込まれておりまして、総事業費二兆円の公共事業の追加によって景気を刺激するよう期待されるところでございます。特に私は、本補正予算災害早期復旧を図り、また景気の維持拡大のためにも一日も早い成立が国民のために必要であると考えておりますが、総理の御所見を伺いたいということと、また補正予算の時期でもございますが、現下の厳しい景気情勢、雇用情勢にかんがみまして、さらに一段と強力な景気対策が必要と考えます。  たとえば、資源素材産業の構造的不況、中小企業の沈滞、ともに日本の国の国民経済を支えておる大きな力でございますが、今後重大な影響が憂慮されるところでございます。これらについて総理の御所見を承りたいと思います。
  148. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 補正予算の意義と必要性につきましては、私も同感でございます。過般の自民党の総裁選、予備選等によりまして四十日にわたる政治空白ができまして、大変遺憾に存ずるところでございますが、一日も早くこれを取り返しまして、景気やあるいは国民生活安定のために役立たせるというのは、私たち自民党員として最も大事な仕事になっていると思っております。  かかる意味におきましても、今回の補正予算は、この膨大な歳入欠陥に対する処理、あるいは災害に対する急速処理、あるいは将来景気振興のことを考えました住宅政策、あるいは中小企業、公共事業の補給、そういう面につきまして、景気に対しても約二兆円ぐらいの規模の事業を考えておるわけでございまして、できるだけ速やかに国会で御成立あらんことを希望しておる次第でございます。  なお、景気対策につきましていろいろ御指摘をいただきましたが、景気は徐々に回復の方向にはありますが、どうも力がありません。これが来年度に向かってどういうふうに展開していくものであるか。アメリカの金利低下と若干の消費需要が出てきたということは救いでありますが、ヨーロッパはまるっきりまだだめな状態でございます。そして両方とも、アメリカは千二百万、ヨーロッパにおきましても同じぐらい、OECD全体で三千万の失業を抱えておりまして、各国とも非常に沈痛な状況にある。そういう面から、日本に対しても国際化、自由化を非常に強く迫ってきておりまして、アメリカの状態もヨーロッパの状態も非常に切迫してきておるような情勢にあります。過般、その地の大使を召還いたしまして実情を聞きましたが、そういう非常に切迫した状態にあると思っています。  そういういろいろな面を踏まえまして、日本の景気の問題も国際的に考えなければならぬ点もあるのかなという気も若干し出しております。しかし、これらは日本の財政再建との関係もございまして、五十八年度予算以降、きょうも御審議いただきました経済計画とのにらみにおきまして、じっくり考えて答えを出していくべき問題である、このように考えておる次第でございます。
  149. 原田憲

    原田(憲)委員 次に、災害対策についてお尋ねいたします。  わが日本列島は、もう御承知のように、地形や気象等の自然条件のほかに、国土面積の約一割を占める河川はんらん区域に全人口の二分の一に当たる約六千万人が住んでおる。そして、全国の七〇%に当たる約四百三十兆円の国民資産を抱えておるという社会条件も加わって、まことに災害を受けやすい条件下にあります。  しかるに、わが国の治水施設の整備水準は、利根川、淀川等の大河川でも約五八%、中小河川に至っては浸水対策施設で一八%、土砂害対策地域で一四%と全く低く、また、がけ崩れ防止のための施策に至っては一三%と、非常に低い状況にあると聞いております。この間も、岐阜の安八郡の裁判事件は、これは国が一審で敗訴しておるということをよく御承知だと思います。  こうした状況のもとで、本年は五月から台風がございまして、多くの災害に見舞われました。こうして、本年の大きな災害によって公共土木施設、農林水産業施設、農作物等の被害額はすでに一兆六千億にも上り、過去最大の規模となると聞き及んでおります。  私は、まずもって、これらの災害に遭われてとうとい生命を亡くされた方や被害を受けられた方方に心からお見舞いを申し上げます。  それとともに、すでに本院におきましても、その際災害対策特別委員会委員を派遣いたしまして、長崎県、熊本県等々その他において委員会に報告をし、そして対策というものの提案がされておるわけでございます。わが党においても二階堂幹事長がみずから団長となりまして災害地に赴き、わが党としては、政府と一体となって、今後こうした方々が一日も早く安心して暮らせるよう災害対策の万全を期してまいりたい、こう考えておるところでございます。  その具体策として、いま出されておりますこのたびの補正予算大蔵大臣にお伺いいたしますが、五千二百二十二億円の災害復旧費が計上されておるのでございますが、この予算によって、本年発生した災害に係る復旧は、本年度中に総体としてどの程度進展されるのか、お伺いいたしたいと思います。
  150. 竹下登

    竹下国務大臣 いま原田委員御指摘のとおりでございまして、五十七年度発生災害は激甚であり、御指摘のとおり、規模も史上最大の異常災害でありました。  ただ、災害に救いという言葉はございませんが、被災の時期が比較的夏場に集中しておりましたということ、このことはいわゆる着工準備期間がそれなりにあったということに結果的にはなります。そして、いま一つは、御指摘のとおり、いわゆる九州、すなわち雪が降りませんので通年施工が可能な地域であったということ、この二つからいきまして、おおむね進度を高めるという考え方で、次期出水期までの早期復旧、こういうことを念頭に置いて計算いたしてみますと、直轄、補助災を含めておおむね七〇%程度これは可能であるという考え方で補正予算に計上し、御審議をお願いしておるところであります。
  151. 原田憲

    原田(憲)委員 いま大蔵大臣からも御説明がございましたが、これは景気対策だけでなしに災害対策という面からも、この補正予算国民がのどから手の出るほどに待っておるという性格のものであろう。先ほどちょっと話に出ましたが、年末になってようやく国会が開かれて審議が開始されておるのでございますが、言っても返らぬことでございますが、一月ぐらい早くからこれはやりたかった、こう思っておるところでございますから、われわれも、それこそ総理が言われた野党の方々の協力を得てという言葉のとおり御協力を得て、一日も早くこれを成立させたいものである、このように考えるところでございます。  次に、この問題について国土庁長官にお伺いいたします。  中曽根総理は、所信表明において国民生活の安心、安定、三つの安心ということを言われて、その確保を挙げられました。災害から国土、国民生活を守ることは国政の基本でございます。毎年発生する災害による被害を最小限に食いとめるためには、治山治水事業を初めとする国土保全事業の推進、災害に強い都市づくりなどがきわめて重要なことであります。三全総においても定住構想が打ち出され、国土の保全、安全性を高めることとしておりますが、三全総のフォローアップと関連して、国土行政を総括する国土庁長官として、今後の国土、国民生活の安全を確保するための長期的な国土づくりについて御所見を承っておきたいと思います。
  152. 加藤六月

    加藤国務大臣 原田先生御指摘のとおり、治山治水対策、大都市の防災対策など国土、国民生活の安全確保は、これまでと同様、国土政策上の最重要課題であると認識しております。  昭和五十二年十一月の、閣議決定いたしました国土づくりの指針であります第三次全国総合開発計画につきましては、現在国土審議会においてフォローアップ作業が行われております。その成果を踏まえまして、来年度には昭和七十五年、西暦二〇〇〇年を目指す新たな全国総合開発計画の策定準備に入ることといたしたいと考えていますが、これら一連の作業の中でも、先ほどおっしゃいました国土、国民生活の安全確保には最大限の配慮をいたしてまいる所存であります。  私は今後とも、人間と土地、水などの自然との調和のとれた安定感のある国土づくり、地域づくり、さらには災害に強い安全で安心感のある国土づくりを推進してまいりたい所存でございます。
  153. 原田憲

    原田(憲)委員 国土庁長官は、先ほども答弁に立っておられましたが、総理大臣の抜てきにこたえてしっかり、まあ政治家はいろんな批判の的になりますけれども、しっかりがんばられるように希望しておきます。  次に、公務員給与についてお尋ねいたしたいと思います。  公務員給与につきましては、前内閣において、本年度における人事院給与勧告の実施はこれを見送る旨が決定されております。この決定は、常々公務に精励しておられる公務員諸君の姿を見ると、まことに厳しいものと言わざるを得ません。しかしながら、わが国の財政は、本年度末で九十七兆円を超える公債を抱え、さらに本年度は六兆円を上回る歳入欠陥が見込まれ、当初予算額を二兆一千億も減額補正せざるを得ない危機的な事情にあります。また、国民的な課題である行政改革を最優先の課題として進めていかなければならないことは言うまでもございません。  こういうようなわが国の財政事情下にあっては、国民の一人一人にこうした事情を御理解いただき、がまんをお願いせざるを得ない、こういうのでございますが、こうしたときに当たって、われわれは、国政に携わる者はもちろん、行政の改革、財政の再建の担い手である公務員、憲法に言う国民への奉仕者、この公務員が率先して痛みを甘受して事に臨む姿勢が必要であるというこの考え方に立って今度の措置がなされておると思うのでございますが、この人事院勧告について、給与問題について、総理大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  154. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 公務員の給与問題につきましては、国家公務員法において保障がなされております。政府といたしましても、この勧告につきましては、これを尊重して誠実に実行するのが筋であると思っております。  しかしながら、一面におきまして国の財政状況、国民負担の状況もまた考えなければならぬ面もございます。今回見送るということになりましたのははなはだ遺憾千万であり、公務員の皆様、家族の皆様方にはお気の毒で申しわけない次第でございますけれども、六兆一千億円のこれだけの大きな赤字が出ておりまする今日、財政上どうしてもむずかしい、困難な状態にありますので、この際はぜひわれわれの趣旨を御理解していただきたい。  これはベースアップをやめるということなのであって、給与をあげないという問題ではないわけでありまして、去年どおりの給与は差し上げるということになっておるのでございます。その点はぜひとも御理解をいただきたいと思っておる次第でございます。
  155. 原田憲

    原田(憲)委員 先ほどから、この問題については、野党の委員の質問に対して、財政当局の大蔵大臣あるいは総理大臣もただいま御答弁をいただきましたが、まあ大変心苦しいことであるけれども、このようなときであるからごしんほう願いたい、こういう意味で再三申されておるのでございます。  私も党内において、人事院勧告は尊重すべし、仲裁裁定は尊重すべしという態度で総務会等におきましても発言をしてまいったのでございますが、今回は、仲裁裁定はきょうは申し上げません、陰で話がついているようでございますから。人事院勧告についても、本当ならばこれは実施をしてあげたいなという気持ちが私はいたしております。ただ、そういう時期でございますから、藤井さんは勧告をなさいました、これは五%を超えると義務的に勧告をしなければならない、五%以下でありましたけれども勧告をされた。政府予算の中で、一%のこの給与に対するところの予算を持っておったけれども、見送るということになったならばこれは実行できないのであるから、これを削って提案をしておる、こういうことで、このことについて激しい論議がされることは私は当然であると思います。しかしながら、これは本当に現在の財政状況が悪い、だから国家公務員法では、給与、勤務時間等の勤務条件に関する基礎事項は国会により社会一般の情勢に適応するよう随時これを変更することができる、こういう法律をもって、国会においてもこの給与の問題において審議をするということも一方において決めておりますから、憲法の精神もありますけれども、こういうことでいま論議が交わされておる、こう私は承知いたしておるのでございます。だから今年度は、私は政府・与党の一員といたしまして、政府の提案をされておりますところの見送りということは、これは涙をのんで、やむを得ない、しんぼうしなければならぬ、しんぼうしていただきたい、こういうつもりでございます。  これは、五十八年度を見ましても、非常に財政難です。先ほどここで保留をされた、二十六分保留をされたというように、非常にこれはむずかしい状況であって、そして、財源がないものだから、補助貨幣準備金を一兆二千億ですか、これも削って予算の方へ回す。それから納付金の引き上げですね。納付金というのは、この間も電電公社が五年間一千二百億ずつ、約五千億約束させられておるのですが、できればもっと出してくれ、こういうようなことを言っておると私は聞いておるのですが、これは無理言うなという気持ちですがね、私自身は。そういうことを言っておって、そしてまだ九十八兆の国債を利子を払っていかなければならぬ。約九兆ですか、約九兆利子を払うということになったら、この九兆という金は社会保障の予算と匹敵するかそれを上回ってくるという額でしょう。そういうときに、またまたこの人事院の国家公務員の給与問題、これはまたことしもやったから来年もと、こういうことは、正直言って私は、それはそうはいかないという気がいたしております。  来年のことは来年のことということもございましょうけれども、この人事院の給与問題につきまして、先ほど財政当局の大蔵大臣は御答弁をなさっておりました。財政当局から言うとということで、一%削って出したということの説明をなさっておりましたが、このようなことは、来年のことを論議したら、そのときでいいのかわかりませんが、人事院は五%以内でも勧告をした。それはやはり期待感がありますよ、それに対しては、もらう方から言うたら。当然なことだと私は思う。そういうことと、これは三条機関でありますから、政府が干渉することはできません。しかし、こういう苦しいときには、どうしてやっていくかということは、お互いに有無相通ずるような感覚で、公務員も心配ないように働いていく、しんぼうするときはしんほうするが、このようなことでやっていこうというような、知恵を出した行政というものが私は必要であると思うのです。このことについて、これは大蔵大臣に答えていただきたい。
  156. 竹下登

    竹下国務大臣 ただいまの含蓄のある御意見を交えた御質疑であります。何回もここでも本会議でも議論されましたように、とにかくこの際財政再建に当たって、財政状態厳しい折、公務員のお方が率先してその痛みを分けていただく、こういうことで決定をしたわけであります。それが、いま原田委員も、いわゆる五%を限度とする義務勧告、そして義務的勧告ではない、こういう議論も私どももこの過程においてしたこともございます。が、これを人事院がその独自の権限で五%以下でも出された。それを出すべきでないという発言をする立場には、私は、人事院というものの存在を認識する限りにおいてはできないと思っております。それはそれとしての、独自のこの権限に基づいて行われた勧告であるというふうに理解をすべきであろうと思っております。  そこで、いわゆる来年度の問題でございます。これは五十八年度予算編成に当たって各方面の意見を聞いて決断すべき課題でありますが、まず人事院勧告制度に基づいて、来年の八月、しかるべき時期に勧告がなされる。さすれば、それまでの間は私は見送りの状態のもとにおいて予算編成にまず取り組むべきではないか、財政当局の考え方としてはそのような姿勢でこれに、編成の過程においていろいろ議論もございましょうが、取り組まなければならないではないか、このように思っておるところであります。  行政機関が一体化していろいろな知恵をしぼるべきだという御意見に対しては、謹んで拝聴をさしていただきました。
  157. 原田憲

    原田(憲)委員 この給与の問題は、生活の根底をなすものでございますから、十分な配慮がされるべきであると私は常々考えておりますが、しかし民間では、景気の悪いときに本当に減量経営、血の涙、血の汗を流して経営を合理化し、そして事に処してきた。このようなことを勘案しますと、やはり公に務める者も、先ほども申し上げましたように、憲法に言われる国民への奉仕者、こういう立場を十分に考えた措置がとられていくこともやむを得ない、こう思うのでございますが、そのためにはわれわれ政治家がまず率先しなければならない、このように考えて、今後、先ほど言いましたが、何とかいい知恵を出して、対立をするというようなことのないように御努力は願いたい、こう思う次第でございます。  次に、行政改革と財政再建についてお尋ねしてまいりたいと思います。  行政改革は、これは総理大臣が行政管理庁長官を務められまして、引き続いて現在、今度は総理大臣として行政改革に専念をされる、陣頭に立ってされるわけでございます。  第二次臨時行政調査会の設置以来、この三次にわたる答申に対しまして、政府はこれを最大限尊重し、逐次施策として具体化してまいりました。総理は就任以来、先ほど申しましたように、前内閣の方針を受け継いで、再三にわたって行政改革を強力に推進する旨を明らかにされ、組閣早々も土光さんたちと直接お会いになっておるところでございます。  しかし、現下の内外経済情勢が厳しくて、行政改革よりも景気対策を優先させよというような声も一部にございます。しかし私は、行政改革はより長期的な視野に立って取り組むべきものであり、まさにこれからやがて二十一世紀がやってまいりますが、それに向けての明るい展望を切り開いていくためには、どうしてもくぐり抜けなければならない突破口である、こういうふうに存ずるのでございます。  高齢化社会を迎え、また国際化の進展に対応して、簡素にして効率的な行政府、これは実は党の行政の委員長を私がしておりますときに大平総理に申し上げて、この簡素にして効率的な行政府という言葉を使うようになったのでございますが、この行政府をつくることは、わが国の明るい将来のために必ず実現しなければならないと思います。このことについて改めて総理の御所見を伺いたいと思います。
  158. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 鈴木内閣に引き続きまして、現内閣におきましても行政改革は最大の政治課題であると心得ております。具体的には、九月二十四日決定されました閣議決定による行政改革の大綱を逐次具体化していくということが当面の仕事でございます。そして、それの第一といたしまして、国鉄監理委員会設置法案を本臨時国会に御提案申し上げた次第でございまして、でき得る限り速やかにこの法案を成立さしていただきたいと念願しておるものでございます。  なお、それ以降は、いわゆる三公社の問題に対する改革案、あるいは年金の統合問題等が来議会以降出てくる重要課題でございます。  また一方、臨時行政調査会におきまして、中央省庁の統廃合問題、あるいは許認可、補助金の削減問題、あるいは地方出先機関の問題等々について順次いま成案を得つつありまして、いずれ内閣に対しても国会に対しても御提案が出てくるものと考えておりますが、いずれも、提案されましたらこれを点検しました上、従来どおり最大限に尊重して、これを実現すべく努力してまいるつもりでございます。  財政再建、景気対策もございますけれども、この行革をやらずして財政再建も景気対策もできないのだ、この道を通らずしてはできないのだ、そういうふうに私は考えておるのでございます。
  159. 原田憲

    原田(憲)委員 この財政再建は、こうして話をしておりますとまことに簡単、行政改革、財政再建、これだけの言葉でございますが、実際は非常にむずかしいことでございます。     〔委員長退席、高鳥委員長代理着席〕 先ほど交わされておった質疑の問題でも、五十九年度特例公債依存脱却ということも非常に困難になってきた。これはもう実際困難になってきたということでございまして、それは理解ができますが、しかしながら、そう言いながら、またこの補正予算でも再び公債発行を増額せなければならない、このような財政体質ですが、財政体質がまたこれは悪くなる方ですね。悪くなるということでございまして、よほどしっかりした決意で財政再建に取り組まなければならない、私はそう思います。  先ほども問題になっておりましたが、こうした状況で新しい経済五カ年計画を策定しよう、これは経済企画庁でございますか、この新しい五カ年計画を策定していきたい、こういうことでございますが、これもなかなか、いまの世界情勢から見ましても、わが国の中だけでも、とてもとても、すぐには――大蔵大臣は、大綱をつくれと言われておるその趣旨はよくわかるけれども、いろいろなことを総合してみると、ここですぐ約束ができないというような答弁をせざるを得ないこの状況であります。それをなおかつ、五十八年度予算編成を行って、そして、その歳出の見直しと合理化を行って、増税は、少なくとも安易な増税は行わない、増税なき財政再建を貫いていこう、こういうことでございますから、これはよほどしっかりしていかなければならぬと思うのでございますが、もう一度総理の決意を伺っておきたいと思います。
  160. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 御指摘のとおり、非常に厳しい道でこぎいます。特に増税なき財政再建を貫いていくということは非常に厳しいことであると考えております。しかし、やはり五十八年度予算を初めといたしまして、相当の歳出カットを行いまして、そして是が非でもこの増税なき財政再建という試練をくぐり抜けていくように全力を尽くしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  161. 原田憲

    原田(憲)委員 その行財政改革の中の一つの目玉と言うべきものに、日本国有鉄道の問題があると思います。この問題につきましては、日本国有鉄道の経営再建臨時措置法案、これはすでに提出されておるところでございますが、今日、国鉄の単年度の実質赤字は二兆一千億円、長期債務は今年度末で十八兆四千億に達しようとしております。その経営はまさに破局的状況にございます。  このような状況は、一つには、社会経済情勢の変化に伴う輸送需要の変化に国鉄が適切に対応できなかったということも原因でございますが、また、いわゆる親方日の丸的な経営体質があったことも否定できません。現在もまだあることも否定できません。民間企業であれば、会社更生法の適用を受けかねない状況に至れば、労使が一体となって汗を流すべき時期に、国鉄ではやみ給与ややみ休暇というような実態があったことが明らかになりました。また、サービスの状況、非能率な運営についても国民の間に強い不満と批判が起こっております。わが国公共輸送の重要な担い手として国鉄の事業自体の必要性と重要性については高く評価されておるがゆえに、国民の大多数は国鉄経営の現状を非常な懸念と危機感を持って見守っております。  こうした中で、国鉄の改革については、第二臨調において非常な熱意を持って取り組まれて、去る七月三十日の基本答申にはその改革案が提示をされました。そして政府は、九月二十四日の行革大綱にその取り組み方の具体策を定めましたが、この際、まず総理に国鉄の経営に関する現状認識とその改革に取り組む決意のほどをお伺い申し上げます。
  162. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄の現状は、御指摘のとおり、まさに危機的状況にあると思います。最近は国鉄の職員あるいは従業員の皆さんもそういう方向をよく自覚されてきつつあると思いますが、しかし、やはり臨調が示された方向に断を下して、行革を徹底してやらなければ再建は非常にむずかしい状態に来ていると思っております。  当面は、十一項目示されました当面の励行事項を厳重に実行していただく。それと同時に、この監理委員会におきまして、全体的に国鉄をどういうふうに再建していくかという方途について企画立案していただきまして、それを御提出願う。そういう第一段階、第二段階の方法を組み合わせながら推進していく。内閣はこのために閣僚協のもとに推進本部をつくりまして、私が本部長になりまして、所要の閣僚がこれに参加いたしまして、まず当面の励行すべき十一項目の推進、それから監理委員会を設置して、出てくる法案に対する推進等々を実行してまいる用意をすでに整えておるところでございます。この事情を国鉄従業員の皆様にもよく御認識願って、まずとりあえずはこの十一項目を徹底的に励行して推進していただくこと、及びこの監理委員会が提出するであろうと思われる改革案につきまして次に全面的に協力を願う。  また、一面大事なことは、地域の問題にも絡んでまいります。北海道から九州に至るまで各地域の問題に絡んでまいりますので、地域の実業界あるいは労働組合の皆様、あるいはジャーナリストの皆様、住民の皆様方において、自分の地域の国鉄問題についてよく御検討を願っておき、そして、どういう案が出てくるにせよ、それに対応する民間側の態勢もそろそろつくっていただかなければならない、こういう段階に来ておるように考えておる次第でございます。
  163. 原田憲

    原田(憲)委員 ただいま総理から決意のほどを伺ったのでございますが、その改革の方法でございますが、国鉄の危機的な現状は、もはや部分的な手直しや個別的な合理化方策では、とても改善が不可能な段階に至っており、臨調の基本答申では、分割・民営化、これが結論として出されておりますが、直ちに答申どおり分割・民営化することが唯一の方策であるか否かについては論議がございます。要すれば、経営形態の変更を含めた総合的かつ根本的な対策が必要でございます。臨調の答申については、一部に国鉄の解体をねらうものだ、国民の利益に逆行するものだなどの反対の声もございますが、それらは国鉄のこの現状にあえてみずからの目を覆うものであります。国民の利益を確保するためにこそ、経営のあり方を根本的に見直す必要がございます。  今国会に提出された国鉄再建臨時措置法案は、このような国鉄の経営形態のあり方等の抜本的な検討を行うため、国鉄再建監理委員会を設置しようという法案であり、今後の国鉄改革の重要な役割りを持つ法案でございます。国鉄再建監理委員会の設置は、国鉄再建の手法や段取りを決めるための重要な仕組みであり、同法案は一日も早く成立される必要がございます。これについて、先ほど総理から決意のほどを伺いましたが、運輸大臣からも御所見を伺っておきたいと思います。
  164. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 原田委員は元運輸大臣をされておりまして、非常に国鉄問題について御心配をいただきまして恐縮でございます。  このたびの行政改革の本当に目玉と言われるものが、先ほどあなたがおっしゃったとおり、累積債務十六兆円、昭和六十年度には二十四兆円になりゃせぬか、そして年間二兆円ずつの赤字が出てくる、しかも、政府予算がその中に七千億も入っておる。だから、乗る者も乗らない者も、赤ん坊も年寄りも、大体年間二兆円の赤字ということは一人二万円ずつ負担する、こういうところに、みんな危機的な財政状況である。これを臨調初め、ありとあらゆる機関が国鉄の問題について縦横無尽に検討されたことでございまして、この際にこそ、本当に国鉄の再建のために、先ほど閣僚会議で言われた十項目、その中には兼職議員の見直しの問題あるいは無賃乗車の問題、職場規律の問題等々がいささか以上に実行されつつあると先ほど総理も言われたことであります。  そういうことを一方にあわせつつ、今度の監理委員会において、ひとつしっかりとした結論をお出しいただく、こういう中に、明治五年から日本には国鉄が生まれた、そして、おっしゃるとおり、二万一千キロ、それには東海道新幹線、大阪万博を目当てにしてやったものですが、今日なおかつ人身事故が一つもない、こういうふうにして働いている諸君もいる。だから、問題は、三十数万の諸君が本当に働く姿と経営者の経営努力の中に、私は再建をしてもらいたいと念願しながら、この委員会法案の一日も早く皆さんの御協力を得て成立することを期待しておるものでございます。
  165. 原田憲

    原田(憲)委員 国鉄改革のための抜本策は、国鉄再建監理委員会の設置後、同委員会を中心に検討を進められるわけでございますが、これにはこれからまだ日にちが要ることでございます。国鉄の赤字はその間にも増大し、経営の破綻は深刻なものとなってくると予想されるのでございます。政府は、去る九月、国鉄経営改善のための先ほど話が出ました緊急対策、これは十項目にわたる合理化方策を取りまとめられたのでございますが、当面その強力かつ着実な実施が必要と考えます。要員の合理化、新規採用の原則停止、設備投資の最低限の抑制、その他無料パスの廃止、兼職議員の禁止等、いずれも世論に押されてようやく措置が講ぜられたかの感がありますが、果たしてこれは具体的にどのように進捗が見られておるか。いま運輸大臣はこの十項目についてやっていくと言われましたが、どのようにいま進捗しているか、お聞かせ願いたいと思います。
  166. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 先ほど総理から御答弁がありましたその線に沿って、閣僚全体が、十六閣僚がこの問題について非常に御協力願うということと、総理を本部長にし、私並びに総務長官が副本部長、さらにまた、その旨を受けまして、運輸省では、九月二十四日の閣議の決定に基づいて運輸省の中に推進本部をつくり、事務次官が長になって兼職の問題あるいはまたいま言われたパスの問題、それから職場規律の問題、こういうものを一つ一つ見直して、いささか実効が上がっておると私は報告をし、また報告もされ、私もその現場を見てそれを感じ、さらに、その他の問題については、来年度の予算等々に貨物の問題とかいろいろな問題がございますから、新しい乗員の採用はことしはやめる、しかしながら病院とか医者の問題はさにあらずというふうないろいろなバランスを考えながら、具体的に、熱心に、しかも国民が注目するところでありますし、しっかりとやってまいりたい、こう思っております。
  167. 原田憲

    原田(憲)委員 総理大臣に申し上げたいのですが、この国鉄の再建案なるものは、先ほど私が運輸大臣に在職したという話が出ましたが、あなたが私の前任者でございまして、これが最後だという、これが十分討議した国鉄再建案であるというものを引き継ぎまして、そして石田総裁とともにそれは本当に命をかけて取り組んだ。石田さんは俸給も要らない、自分は幸いなことに飯だけは食えるから俸給も要らない、国鉄再建に命をかけるのだ、こういう姿勢で臨まれて、野党の方々でも国鉄の労働組合の方々でも、この石田さんの態度というものには非常に敬意を払われた。一生懸命やっておった。  ところが、率直に私は言わしていただくと、残念なことにこれが変わりましたよ。そして、数次の再建案が持たれて今日に来て、今度こそ最後の、これこそ本当の最後の再建案だというところへ来ておるわけです。この再建案を実行する委員会の人、これが私は大事だと思う。土光さんはりっぱな方である。りっぱな方で、土光さんも石田さんと同じように、私は石田さんというとすぐ土光さんを見ていて思い出すのですが、朝も目刺しとみそ汁だけだ。とても私はそんなまねはできぬし、一億の国民がそうなったらまたこれは別に大問題だと私は思いますが、その精神は、その姿勢はまねしていかなければならぬ行政改革の根本の姿勢だと私は思うのでございますが、この人選については内閣の最も大事な人事でございますから、これは十分配慮されるように申し上げておきたいと思います。御答弁かいただければ幸いです。
  168. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 国鉄再建のめどをつける監理委員会の人事は、最大重要な人事であると思っております。そういう意味におきまして真剣にかつ周到に運輸大臣とも相談をし、行管長官等とも相談をして決めたいと思っております。
  169. 原田憲

    原田(憲)委員 次に、貿易摩擦の問題と中小企業の問題についてお尋ねしてまいりたいと思います。  最近における先進国の経済を見ますと、欧米諸国における雇用情勢の悪化はやはり著しく、アメリカにおいても、先ほども申し上げましたが、十月の失業率が一〇・四%、九月に引き続いて二けた台を示し、ECにおいても九月の失業率が九・八%となるなど、戦後最悪の状況となっております。  こうした事情を背景として、欧米各国においていわゆる保護主義的な圧力が高まりつつあるように思われます。特にフランスにおいては、貿易収支赤字の急速な拡大を背景としまして、ポワチエにおけるVTRの規制に見られるような輸入制限措置を実施いたしておりまして、貿易摩擦問題はすでに危険な水域に達しておりますし、その他欧州諸国も厳しい経済運営を強いられており、保護主義化の懸念が増大しております。また、米国においてもローカルコンテント法案等の保護主義法案が議会に提出されており、その動向が注目されるところでございます。  このような保護主義的な動きに対して、GNPにおいて世界経済の一割を占めるわが国としては、自由主義国の主要な一員として市場開放対策の推進、内需拡大を中心とする経済成長の推進、国際研究開発協力及び産業協力の推進などにより、自由貿易体制を維持強化していかなければならないと考えます。わが国は、御承知のとおり、人口は多く、資源は少なく、世界貿易の拡大均衡を通じてのみ発展ができるのであり、中曽根新内閣としては、世界経済の再活性化に積極的に取り組んでいくことが重要な任務であると考えますが、御所見を伺っておきたいと思います。
  170. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 最近の模様を見ますと、第二次石油危機の影響が最も深刻に出てまいりまして、世界同時不況と言うべきものが進行してきております。これはゆるがせにできないような事態になってきております。その中でもわが国はまだ比較的その影響は欧米ほど重大ではございませんが、欧米におきましては、この影響で保護主義の台頭は非常に顕著になってきております。この情勢わが国としても看過できないことでございまして、自由貿易で生きる以外に日本の生きる道はないのでございますから、この保護主義の台頭を断じて抑えなければならぬ情勢にいまあります。  そのためにはアメリカあるいはEC諸国とよく話し合いまして、お互いにやるべきことをやり合う、そういうことで保護主義の芽を摘む、そして世界貿易を拡大再生産の方向に持っていかないといけない。いまの情勢でいきますと縮小再生産の方向に刻々と向かいつつあるように思うので、それは世界に対して非常に大きな悲劇を生む原因になる危険性があると思っております。そういう意味につきまして、わが国としても応分の努力を果たさなければならぬと考えておるところでございます。
  171. 原田憲

    原田(憲)委員 この貿易摩擦の問題について、簡単で結構ですが、外務大臣と通産大臣にお答えを願いたいと思う。  この前の内閣でも皆うまくやっておられたはずでございますが、とかくどうも外務省と通産省が張り合っておるのじゃないかというようなことが言われたことがございます。先ほど私申し上げましたが、総理大臣が方々の国に電話をかけられること、これは結構なことですが、やはり内閣一体、日本の国は総理大臣以下皆一体になっているな、こういう姿勢が大事だと思うのでございます。この貿易摩擦の点について、簡単でようございます、就任早々でございますけれども、このお二人からそれぞれ御答弁を願いたいと思います。
  172. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私のときだけなぜ簡単にというまくら言葉がつくのかわかりませんが、私と安倍外務大臣とは昔から仲よしで、年も近うございますし、ましてや通産大臣の前任者でございますから。  はっきり申し上げると、外交の窓口は、これはプロである外交官が行う外務省と私は割り切っております。しかし、その実務の問題等についてはよく御相談を願いながら、国内産業の立場とかあるいは外国との個々のいろいろな問題に対する詰めとか、そういうものは私どもかきちっとさしたい。そのことで、いやしくも総理が、あのようにイエスと言えるものはイエスと言い、そして、それは実行する。ノーと言うものはその理由を明確にしてノーと言う。そういう総理が率いられるわけでありますから、その総理に苦労をかけるようなことはしない。その総理の決心に私どもが、恐らく安倍外務大臣も同じ答えだと思いますが、力を添えてあげる、足並みをそろえて総理の動きを助ける、そういう気持ちでおりますから、以上、本当に簡単に御答弁をいたしました。     〔高島委員長代理退席、委員長着席〕
  173. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私が前内閣の通産大臣をしておりましたその際も、御承知のように、貿易摩擦が非常に厳しくて、第一弾、第二弾という市場開放対策をとったわけでございますが、多少事務当局間ではごたごたもあったようですが、しかし、基本的には政府一体ということで、外務省、通産省一緒になって市場開放対策を進めてまいりましたし、また、今回はさらに、いまお話がございましたように、貿易摩擦が厳しくなっております。これに対しましては、まさに政府が一体となってがんばらなければならないと私は考えております。どうしても保護主義の台頭を防がなければ日本の将来というものはありませんし、世界の安定と平和というものはあり得ないと私は信じております。そういう意味で、非常に大事なときになっておりますので、いま山中通産大臣もおっしゃいますように、少なくとも両者の間においては一体となってこれに取り組んでいきたい、こういうふうに存ずるわけであります。
  174. 原田憲

    原田(憲)委員 お二人そろって力強い御答弁をいただきました。どうぞよろしくお願いいたします。  次に、中小企業の対策についてお尋ねを申し上げます。  中小企業をめぐる最近の景況は、内外における需要の低迷に加えて需要不振による製品価格の低迷、輸出の落ち込みによる関連中小企業の受注減等により一段と悪化しております。業種別に見ましても、化学、窯業等素材型産業がさらに低迷色を強めるとともに、比較的に堅調に推移していた電気機械、工作機械等の加工組み立て産業も、電子部品関係を除いて急激な落ち込みを示しております。また、設備投資につきましても、金融機関の調査によりますと、景気の先行きの不透明感から、中小企業の設備投資は五年ぶりに前年度の水準を下回る見込みであると言われております。このような状況のもとで企業倒産もふえております。特に販売不振、累積赤字、売掛金回収難を原因とするいわゆる不況型倒産の割合が増加しており、十月は倒産件数が再び千五百件を超える水準に達しております。中小企業の経営はこのようにまことに厳しいものがあり、この年末に当たって経済運営は中小企業に十分配慮する必要があると考えております。とりわけ年末は資金が繁忙なときであり、政府として金融面において万全の措置を講ずる必要があります。  私は、この中小企業というものについて総理大臣、通産大臣に御答弁をいただきたいのでございますが、いまの駐日英国大使のコータッチさん、あの方は非常に日本通でございまして、先般「正論」という本の中に「日本の友への忠告 誰も書かなかった素晴しき日本人」の一文を呈されて、わざわざそれを私どもに送っていただきました。私は早速お礼とともに、日本の下請企業や流通機構への問題を提示されておる点について私の私見をお届け申し上げました。  私は、日本の特色の一つは、生業と言われる零細な企業まで入れると数百万と言われる中小企業、これが一つの特色であると思っております。製造業あるいは第二次産業、第三次産業、いろいろな業種に分かれておりますが、この中には生活保護費と同額程度の収入で働いておる人たちもおります。しかし、狭い国土、貧しい資源の中に一億一千万人が住んでおる、これが日本の国でございます。  総理は、たくましい福祉国家と言われましたが、福祉国家とは何ぞや。これは、働く能力を持つ者がすべて働く仕事が持ち得る、そして働くすべがどうしても講ぜられないという人たちが希望の持てる社会、これが福祉国家であると私は存じます。たとえ給与は低くても、働く意欲を持って、希望を持って仕事ができる、その仕事場を持つことができる、これをいま実際に実現し支えておるのが中小企業である、これが日本の特色であると私は考えております。  戦時中、中小企業を転廃業させて、そして国家の統制権力をもって大企業に人々を徴用いたしました。これが戦力増強になる、そう思って戦力増強しようと試みましたけれども、それを実行したときに国民の経済は音を立てて崩壊し、一挙に敗戦への道をたどっていったのでございます。  中小企業というものは日本の特色である。これを支えるということは大事な政策課題である。私は、先ほど、年末を迎えておりますので年末の問題を取り上げましたが、中小企業全般に対して、総理大臣、通産大臣、どのようなお考えを持っておられるか、どのような措置を講じていこうとされておるか、お伺いいたしたいと思います。
  175. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 中小企業に対する認識は、原田議員と全く同感でございます。わが国の産業を支えている有力な基盤は実に中小企業にあるのでございまして、アメリカもイギリスもこの点だけはまねできない最大の特色である。しかも、その中小企業が相当近代化してロボットを使うまでに至っているという国は、ほかの国にない現象でございます。この中小企業の積極的意欲をさらに促進さしてあげる。中小企業自体はかなり意欲的な企業体でございますから、この意欲をさらに高進さしてあげるということが大事なことではないかと思っております。  最近、景気の状況から見まして、はだれ状態で、いい面と悪い面との差別がだんだん出てきております。通産省におきましてもいろいろな手当てを講じておりますが、当面の問題としては、差し迫った年末金融について心配をかけないように政府関係機関の資金を十全に調えておくというようなこと、あるいはさらに、来年度にかけまして中小企業の希望の持てるような施策を幾つか展開していく、そういうことを実は心がけてみたいと考えておる次第でございます。
  176. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ついきのうのテレビだったかと思いますが、新潟県三条市で、石油暖房ですね、それの機械が、いまごろはもうシーズンから見て全部操業は終わっているときなんだけれども、アメリカ向けに売れてしょうがなくて、まだフル操業をやっておる。しかもそれが、アメリカではセントラルヒーティングが常識であるのに、最近はやはり必要な部屋の温度だけをとるようにアメリカもなってきつつある、そういうことの証明でアメリカ向けに売れるらしいのですが、それが中小企業であってもロボットを導入してやっているのですね。日本という国のたくましさ、それをしかも、自由主義経済の底辺を支えるのはまさに中小企業者である、あるいは商店街等が倒産するような状態になれば、それはもう自由主義経済の根っこが崩壊するときである、そういうふうに考えておりますが、反面、冒頭に例を出しましたように、やはり日本の中小企業は輸出貢献度が非常に高い。しかし、世界の生産意欲なりあるいはマーケットというものが非常に縮小してしまっておる現状では、円安になったら当然輸出が振興するはずなのに、その定石どおりいかないことが示すように、大変むずかしいし、そして、それが中小企業の上にともすればしわが寄りがちになる。たとえば自動車であっても、周辺関連下請産業等の問題は直ちに中小企業の問題ですし、あるいはまた企業城下町法と言われました、その種の地域の中核の産業が危なくなると周辺の中小企業が危ない、地域の経済が崩壊するということでやりました。  ちょっと蛇足ですが、あの法律で不況と書いてあるものですから、心理的に、不況地域に対策は講じられているが、たとえば不況地域に積極的に入っていって活性化しようという人たちは、不況地域だと二の足を踏む嫌いがあるらしい。したがって、今度の法律をもし拡張、延長しようとする場合には、言葉を、不況の地域だという気持ちをみんなに、腰を後へ引かせるような表現は何か考えてみたいと思っておりますが、あるいはまた御指摘の基礎産業構造不況ですね。これは産業構造審議会の円城寺さんから答申をいただいたばかりで、八業種に対する適切な措置を講ずるべきだという答申を受けましたから、いま各般にわたって、まず、いままで過去にやってきたような甘えの構図で生き延びようとすることはいけないことだ、やはり追い詰められた産業であり、あるいは時代に制約されてやむなく落ち込んできた産業であっても、国家的に見て業種がどこが必要であり、どこまでが国がめんどうを見るべき分野なのかをまず判断をし、そして、その対象になっても企業努力、自主努力――総論賛成各論反対、国におんぶにだっこに、次、表現が悪いからやめますが、そういう姿勢であってはならぬ。やはりみずから立ち上がろうとするものを政府がめんどうを見てあげることで、それが自由主義経済の活性化だというふうに考えておりますので、この構造的に陥っている不況の八業種についても、大蔵省などと相談の上、総理の御判断もいただいて、安心できるような新しい活性の未来をつくり上げてみたいと考えております。
  177. 原田憲

    原田(憲)委員 中小企業は、私は先ほども申し上げましたとおり、日本の特色である、こう考えております。間違いない。これは決して甘えるという意味じゃなくて、これが活力を持っておる国でない限り日本の発展はない、こういう見地に立って不況業種についての手当てあるいは年末についての手当てのことについて、通産大臣から、総理大臣とも相談してあるいは大蔵大臣とも相談してというお話がございましたが、十分今後対策を立てて活力ある中小企業を育てていただきたい、このように思う次第でございます。  最後に、関西新空港問題についてお尋ねいたしたいと思います。(「それだ」と呼ぶ者あり)それだという声がございますが、日本の国は、いまもロボットの話が出ましたが、日本の国が敗戦後、最も先端な技術であるコンピューターでも、アメリカを除いて日本だけが自分の国の国産のコンピューターでもって活動しておる。LSIだとかエレクトロニクスの面におきましても、もとはロイアルティーを払ってアメリカからあるいはその他から持ってきたということでございますけれども、現在は世界の最先端をいっておるということは間違いない。日本の国が現在GNPナンバーツーという実力を持っておる中には、基盤といたしまして、たとえば海の問題をとらえてみると、横浜でも神戸でも依然として戦前から世界一を誇るところの優秀な港であります。また、造船能力も世界のナンバーワンに立っておる。これらをフルに活動させて、日本はエネルギー革命という時代に処して今日を築いてきた、これは間違いのない事実でございます。  しかしながら、航空、飛行機であるとか飛行場だとか、この問題を見てみますと、残念ながら、シンガポール、これは人口にしたら二百万、名古屋くらいの都市ですね。広さにしたら兵庫県の淡路島くらいしか広さがない。ここにりっぱなチャンギの空港がございます。私はそこも現地で見て運輸大臣とも会ってまいりました。それから台湾、これはまたすばらしい飛行場を持っておる。ところが、日本の国は残念なことには代表的な成田の空港があのような状況である。まだ半分しかできておらないし、一体いつになったらでき上がるかわからないというような状況、また大阪の空港は、これはもう非常な制限下にある空港であります。  そのようなところから、これはあくまで世界と結ぶところの空港をつくらなければならぬという見地に立って、公害のない空港をつくろうということから航空審議会で計画を進めて泉州沖を選定され、この日本の発展の基地になる空港を百億以上の調査費をかけていま進めておる最中でございますが、長谷川大臣は、この問題については党の航空政策のトップに立つ方でございまして、現に就任されるまでは調査会の会長を務めておられた。このたびは運輸大臣に就任をされて、この大阪の、関西の空港、このことについては実地も見てよく知っておられるところでありますが、どの点まで調査が進み、どのようになっておるか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  178. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 原田委員お話しのとおり、世界に開かれた日本で、二十四時間空港のないのは日本だけでごいます。ここにおいてか、航空審議会が関西に飛行場をつくろう、いろいろな経過がありましたが、泉州沖というのを選びまして、おっしゃるとおり五十一年度から調査費をつけて、ことしで百四十億でございます。そして、その間いわゆる三点セット、空域の問題とかあるいは空港計画とか環境アセスメントあるいは地域整備、これを三点セットと申しますが、こうしたものをまとめて、御案内のように、大阪、和歌山、兵庫県の方にその資料をお出し申し上げたのです。その間、従来とかく反対しておった地元の方々も全部反対決議は撤回してこれを了承されているわけでありまして、いま私たちは最後に兵庫県のこの三点セットに対する御回答をお待ち申し上げ、そして円満に明年度何とか実施予算、しかも、いろいろな調査をしている間にわかったことは、土質が非常に良好であるために工事予算がときによれば少ないのじゃないか、それが将来また収支決算の良好にもつながるのじゃないか、こういう明るい面などが出ておりますことで、兵庫県の回答をお待ち申し上げながら準備を着々整えておる、こういうことでございます。
  179. 原田憲

    原田(憲)委員 総理にお伺いいたしたいと思います。  総理大臣は、先ほども言いましたように、私の運輸大臣としての前任者でございまして、あなたがソビエトとの日ソ航空協定で、ロギノフという当時の大臣でございましたが、シベリアの空はロシアの飛行機以外飛んでなかった、そのロシアの飛行機にロシアの操縦士が乗って運営されておったのを日本人の手によって運航する、こういう協定を私は引き継ぎまして、このことを就任早々実現したわけでございます。  世界じゅう一番短距離を飛ぶ飛行磯の権利も日本は持っておったときがございますが、いま不況のために、シカゴのカーゴーのなにをとったけれども、それを縮小しながら運航するというような状態でございます。先ほども申し上げましたように、鉄道で世界を結ぶことはできません。船の重要性というものは私は変わらないと思います。しかし、これからは航空の時代が来るということだけは間違いがない。その航空の時代に対処する日本の現状というものを見て、これでよいのかということ、そこから始まっておるわけであります。  私は関西の大阪空港の現場が選挙区でございますから、騒音その他の問題についてはもう本当に初めからしまいまで、いまも苦労しておるところでございます。何とかこのような、世界への飛躍の場所として適当なところはないか、淡路島がよいだろうというので、亡くなった神戸の市長の原口さんと組んでこれに取り組んだことがございましたが、これはアセスメントその他の条件で適当ではない、こういうこと。そこへ騒音問題が出てきたわけですね。それで裁判の問題にもなってきますし、何とか公害のない空港をつくらなければならぬ。私は在職中に長崎空港にゴーサインを出した。いまの長崎空港というものは海の中につくられた空港であって、模範的で視察者が相次いでおります。この空港というものが公害のない空港の標本的なものである。大阪という土地柄が日本の経済を支える拠点である、ここに公害のない空港をつくるということで審議会が熱心に討議をされた結果選ばれたのが泉州空港でございます。そして、調査費が百億以上もかけられまして、いまお聞きのように、ヘドロが多いだとかなんとか言われておったのが、案外これが土質がいいので、正確になりますと、一千億も金がかからないようになるのじゃないかというようなことまで聞かされておるわけであります。そして、いま運輸大臣が言われておるように、四年前までみんな反対だったわけです。その最も激しい地元の大阪で、岸知事が就任いたしましてから今日、全部反対を下げてゴーサイン、そして和歌山もゴーサイン、まだ残っておるのは兵庫県と言われておりますけれども、兵庫県も決して反対ではありません。われわれ、党のこの推進の委員会におきましても、決して反対の意見は述べられておりません。いろいろな条件の話は出ておりますけれども、反対は言っておられません。これは一日も早くゴーサインを出すということが、先ほど総理は、二十一世紀に向けてそのための突破口に行財政改革をやるのだ、こうおっしゃいましたが、われわれはしんぼうしておるが、このしんぼうの後にはこういう光明が来るのだという、新しい、先に見える光明というものを持って進んでいく、政治家はそれを実現すべきである。  いますぐ関西空港のために何千億という金が要るわけではありません。やはり調査費でございます、調査費でございますけれども、運輸省からは実施調査費という予算要求が出ておるのでございまして、あらゆる観点から判断して、私はこれは総理大臣に決断を願わなければならぬというような重要な問題である、日本にとっての重要な問題であるというふうにすら考えておるところでございます。この関西空港について総理大臣の御所見を伺いたいと思います。
  180. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本には遺憾ながら二十四時間連続使用できるような大型の国際空港はないのであります。したがいまして、各国から乗り入れの要求がありましてもなかなか応ずることができません。ウエーティングリストに上っている国が二十ぐらいに上がっているとか聞いております。この間もヨルダンのフセイン王が参りまして、そのお話の中に出てきた問題が同じようなことで、アンマン―東京間、アンマン―成田間の航空路を開設したい、そういう強い御要望がございました。運輸省に検討を命じてありますけれども、やはりそのキャパシティーの問題があるわけであります。  そういう面からいたしましても、関西に大型国際空港をつくる必然性というのはあると思うのであります。また、一面におきまして、関西の地盤沈下ということも言われております折から、あそこへ大型空港をつくるということは関西の住民の皆さん全般に大きな希望の灯を点ずる、そういう効果もあると思っております。そういう諸般の情勢考えまして、財政的にはきわめて厳しい状況ではございますけれども、この希望の灯を消さないように、そして将来の展望を開かせるように予算的にも配慮したい、このように考えております。
  181. 原田憲

    原田(憲)委員 総理大臣の御答弁で大変意を強くいたしました。  確かに世界の国々から日本に来る場合に、それはファーイーストですから、日本に行くのには九時から後にはだめですよ、九時までに来てくださいよ、こんなことで済むものじゃない。幸い総理から十分な御答弁をいただきましたので私は大変うれしく存じます。日本の国のためにうれしく存じます。  この予算に当たりまして十分な配慮を払われるように祈りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  182. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて原田君の質疑は終了いたしました。  次に、稲葉誠一君。
  183. 稲葉誠一

    稲葉委員 私は、最初に政治倫理の問題を中心としてお聞きをいたしたいと思います。  自由な議論というのを私非常に好むものですから、どうぞ遠慮なく皆さん方もお答えくださって結構ですし、私も聞きたいことをお聞きをいたします。それから、眠りたい方は眠ってくださって私は結構だと思います。それは質問者が悪いですからね。質問者の力がないから眠くなるのだから、これはどうしようもないのでね。本当ですよ。どうぞ御遠慮なく。  そこで問題は、私の持っておる資料をまずオープンにします。  五十二年四月十三日のロッキード特別委員会における中曽根さんの証言ですね。それから、五十二年五月十一日のロ特におきまする東郷民安ですね。それから、五十五年七月十八日にあります東京高等裁判所第一刑事部の東郷民安に対します所得税法違反の判決、地裁のものはありますけれども、高裁のものを主として引用させていただきたいというふうに思います。  そこで問題は、まず中曽根さんにお聞きをいたしたいのは、戸栗亨という方ですね。これは御存じでしょうか。どういう関係の方でしょうか。
  184. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 これはいまの殖産の問題に関係しておる人でありますが、富士工務店とかなんとかいう会社の社長であったと思います。  その関係を申し上げますと、これは五十二年四月十三日の国会の証言で私が申し上げましたが、東郷民安社長は私の旧制静岡高等学校の同級生でございまして親しい間柄でございました。それで、同窓会やその他でよく会っておるわけですが、われわれの仲間からも中曽根を応援しろ、当時東郷社長はわりあいに野田卯一さんと仲がよかったのでありますが、それでちっとは中曽根を応援しろと皆に言われて、応援するとは言っておりましたが、ある機会に、私からもぜひ頼む、応援してくれ、一朝有事の際は頼むよ、そういう話もしたことがございます。一朝有事とはどんなことかと聞かれましたが、それは選挙とか新党運動とかあるいは総裁公選とかそういう場合だろう、そういう返事もたしかしたと思っております。  それで、東郷君が殖産の株を上場するというときになりまして、その戸栗という人が私のところに来まして、これはだれかの紹介で来たのです、それが来まして、殖産の株を買いたい、ついては東郷君に、名前は言わないが、あなたは友人だから頼んでくれないか、そういう話がありまして、どれぐらい買いたいのだと聞いたら、二十億でも三十億でも多々ますます弁ずだ、そういう話であったと記憶しております。それで、その旨を東郷君に話しましたら、初め東郷君は名前を聞かないときは考えてもいいとか言っていましたが、だれだと言うから戸栗という人だと言ったら、それはだめだ、自分の会社をねらっておるやつだ、そういう話でその話はだめになった。そういう経緯の人であります。
  185. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお話であなたに紹介したという人ですね、戸栗さんを知るようになったというのはあれじゃないですか、小佐野賢治さんの紹介で知るようになったのか、あるいは東京相互銀行の長田という方の紹介か、どちらかで知り合いになったのじゃないでしょうか。
  186. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは二人とも違います。私の友人の議員であります。しかし、名前は特に申し上げません。
  187. 稲葉誠一

    稲葉委員 私もきわめて紳士的にお聞きをするわけです。  そこで、問題といいますか、昭和四十七年三月九日の「一条」の会合、これは木部政務次官、このことの激励会のときの話、これはあなたはこの前ここでいろいろ証言されました。わかりました。  次の四十七年四月二十八日、「中川」というところで東郷さんと二人で会っておられるのはどういうわけでしょうか。
  188. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 「中川」で会ったという記憶はありません。「千代新」というところで、これは東郷君が自分の会社を防衛したい、何かそういうことで例の児玉譽士夫氏の下部の連中と会っておった。それで困ったような顔をしておったときに、児玉氏に会いたいというような様子でありましたから、紹介してあげてもいいよ、そういうことで紹介をして、会ったのが「中川」であったと思います。私は用事があって行けなかったのですけれども、紹介をしてほっておくのは悪いから、時間があったら駆けつけてあげるよ、そう言って後で駆けつけて三人で会った、そういうことがございます。
  189. 稲葉誠一

    稲葉委員 いま何か「千代新」と「中川」とごちゃごちゃにされておるのじゃないでしょうか。最初「千代新」という話は例の児玉譽士夫のときの話ですね。あなたが上座に座わったとかどっちに座わったとかという話でしょう。いまの最後の方になってくると、何か「中川」で会われたような話をされたのじゃないでしょうか。それは違いませんか。いま言い間違ったのですか。
  190. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは「千代新」で会った。「中川」ではないです。「中川」で会ったという記憶はございません。
  191. 稲葉誠一

    稲葉委員 この点については、「中川」で会われて、そうすると、結局その話は、一体その前にあなたはどういう話をされておったのですか、端的に言いますというと、東郷さんに対してされておったのですか。戸栗さんの名前を出す前の話ですね。
  192. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、ある友人からいまのような趣旨の話を私のところへ持ってこられまして、聞いてくれ、そう言うので彼に聞いた、そういま申し上げたとおりのことであります。
  193. 稲葉誠一

    稲葉委員 結局なぜ戸栗さんという人が出てきて、東郷さんはだめだということを言ったわけですか。これは小佐野さんの名前がそこに出てきたということではないのですか。あるいは、出てきたかあるいは出てこないか、含みがあったということではないのですか。
  194. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私はその小佐野さんという人の関係はまるっきり知りませんでした。その友人が戸栗さんという話を私のところへ持ってきた。それ以外のことは存じておりません。
  195. 稲葉誠一

    稲葉委員 しかし、その判決などを見てみますと、その後話が、あなたの方から株の上場について公開株の前に買ってくれとかなんとかということの話が出てか、何かでつくってくれという話が出て、これは途中で戸栗さんの名前が出たので壊れた、そういうわけですね。その後のことですね、その後、あなたのところに東郷さんが来たことはあるのではないのですか。
  196. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の記憶しておりますことは、たしか木部代議士の政務次官就任祝いが「一条」というところであって、それで大ぜい集まってお祝いをした。その席上、たしか東郷君にいまのような話をちょっとしたのではないかという記憶であります、いまのところは。それで、東郷君が研究するとかなんとか言って、その後その名前が戸栗だということを言ったら、いまのように、それはだめだ、自分の会社をねらっているやつだ、そういう話で、ああそうかということになったわけでございます。
  197. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、結論をお聞きをいたしますというと、あなたが四十七年の十月六日に、あなたの秘書である上和田義彦ですね、この名義で三井銀行の銀座支店に五億円の金が預けられたということをお聞きになられたことはあるのですか。あったとすれば、それはいつごろのことですか。
  198. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは後になって聞きました。たしか週刊誌か何かにそんなのが出た記憶があります。  それで、そのいきさつは、東郷君が株を上場するときに、恐らく自分の会社を防衛するという意味もあったのではないかと思いますが、同級生の名義を借りて株の売買をやったのであります。私の同級生、相当数がそういう名前を使われた。私の場合は、そういう公職にある身分でございますから、秘書が呼ばれて、こういうわけでみんな名前を借りているのだから貸してくれ、そう言われて、結構です、そういうことであったようです。それでその後、上和田義彦の名前で貯金がなされておって、それが五億円であるとか、それがふえたとか減ったとかいう話はその後聞きました。しかし、上和田という秘書はその貯金通帳を見たこともなければ印鑑を見たこともございません。
  199. 稲葉誠一

    稲葉委員 その友人というのは、たとえば高富味津雄さんとかあるいは荻原忠顕さんとか、こういう人ではございませんか。
  200. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう人も入っております。みんなそれは静高の同級生です。
  201. 稲葉誠一

    稲葉委員 この高等裁判所の判決を見ますというと、第一審は、御案内のとおり、この脱税事件については、これはあなたのために東郷君はやったということで、所得の意思がないというようなことで、逋脱の意思もないということで、自分のためにやったのではないということで無罪になったわけですね。検事控訴をして、そしてこれが有罪になった、こういうわけですね。  その控訴審の判決の七十一ページを見ますというと、東郷は「旧制静岡高校時代の同級生であり旧知の間柄にある代議士の中曽根康弘から「総裁選に出馬するためには二五億円位必要になると思うので、殖産住宅の株の公開の機会を利用させてほしい。」旨の依頼を受けていた」、こういうふうに判決の中では出ているのですが、どうでしょうか。
  202. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点は私は前から、一朝有事の際は頼む、そういうことは言った記憶がございます。しかし、特定の二十五億とかなんとかということはないのです。それを言ったのは、その戸栗氏から頼まれた場合に、幾らだと言われたから、確かに、二十億でも三十億でも多々ますます弁ずだ、そういう話をした覚えはあります。
  203. 稲葉誠一

    稲葉委員 その後、結局十月六日にあなたの秘書の上和田義彦名義に五億円が預金された、こういうようなことについて、判決の七十四ページ、東郷民安は「同月六日に」、四十七年の十月六日ですね、「社内の誰とも相談せずに、中曽根に対して、五億円くらいお渡しできそうだ、と話し、その後同人の指示で、」同人というのはあなたですね、あなたの指示で、三井銀行の銀座支店に五億円を預けた、こういうふうに判決ではなっているのですが、そこはあなたとしてはどういうふうにお考えですか。
  204. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の指示でそういうことをしたことはございません。しかし、恐らく東郷君は前から同級生やまた私から一朝有事の際ということも頼まれておりましたから、何かの機会に中曽根を応援しよう、そういうもののファンドとして彼がそういうことをやっておったのかもしれません。それは私の想像であります。
  205. 稲葉誠一

    稲葉委員 また、その中で新聞に記事が出ましたね。新聞じゃない、雑誌、週刊誌に出たことがある。そうして、ところで、その記事が出たことを知って「中曽根と話合いのうえ、同人との話は白紙に戻すこととした」、こういうふうに判決の中では出ているのですよ。そして、東郷証人はロ特の中では、その十月五日の夕方に、前の日の夕方に砂防会館のあなたの事務所を訪ねて、五億円の金ぐらいは献金できる、こういう話をしたということをこの証言の中では言っているんですよ。どうでしょうか、これは。だから、あなたと話し合いの上にこれを解約した、こういうことになっているんじゃないですか。
  206. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 話し合いの上で解約したとか何とかしたということはございません。
  207. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、どういうふうにして解約になったんですか。その点については、あなたに言わせれば、あなたの秘書の名前を使われた、こう言うんでしょう。じゃ、何も秘書の名前ならば、そのことについてそのままにしておけばいいじゃないですか。解約する必要も何もないんじゃないですか。
  208. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 だから、私は解約するとかしないとか言ったことはないと申し上げているのです。
  209. 稲葉誠一

    稲葉委員 しかし、判決の中ではっきり書いてありますよ。中曽根と話し合いの上に解約したと書いてあるんだ、判決の中に。これは事実審ですね。東京高裁は事実審で終わりですから、最高裁はもちろんありますが、最高裁は法律上の判断の問題ですからね。はっきり出ているんですよ、こういうふうに。だから、結局五億円というものも、判決のあれはあなたの指示によって上和田の名義にして、そして週刊新潮に出たからあわててあなたと相談をしてそして解約をした、こういうふうな認定になっているんですよ。私は司法権の独立を尊重します。ただ、法律的にはいろいろあなた自身をこの事件は調べておらないようなんです。調べてというと言葉が悪いかもわからぬけれども聞いておられない、裁判所は事情を。検事も聞いていません。私は確かめた。聞いてないわけですから、あなたを聞かないでこういうふうな認定をしているということについては、司法権のあり方として、純粋な法律的な議論としてはあるかもわかりませんけれども、ともかくもあなたのお名前がこう出て、こういうふうに高等裁判所の判決で認定されていることは事実なんですね。だから、こういうように判決が出ていることは事実として聞かざるを得ないというふうに私は考えておるんですね。いいですか。
  210. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その件につきましては、いまのお話のとおり、私は検察当局から聞かれたことも何もございません。一方的にそういうふうに書かれていることは非常に迷惑であります。
  211. 稲葉誠一

    稲葉委員 一方的に書かれていると言うけれども、ここはちょっとむずかしいところですよ、司法権の独立との関係で。だれかが本に書いたというなら話はわかるけれども、東京高等裁判所の事実審の最終審の判決の中に出ているんですからね、これは、あなた。一方的に書かれたというのはちょっとおかしくありませんか、司法権の独立に対して。それはちょっと筋が通りませんよ。その点については一方的に書かれたという言い方はおかしいんじゃないですか、司法権に対して。
  212. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 裁判を批判する気持ちはございませんが、私がその関係者になっておりますから、やはり一身上の弁明をする権利はあると思います。聞かれもしないそういう問題について、それを書かれたということは、私に言わしめれば、それは一方的に書かれた、そういうことになります。
  213. 稲葉誠一

    稲葉委員 そういう意見も確かにあるんです。ありますね。後で東郷さんの言っていることとあなたの言っていることが余りにも違い過ぎるんですね。後で東郷さんは拘置所から出てあなたのところに謝りに来たとあなたは言われていますね、人を介して。東郷さんは、それは違うんだ、行ったことは行ったんだけれども、済まなかったという気持ちで行った覚えはないんだ、こう言っているわけですね。この間の経過はあなたは御存じじゃないですか。どういうことから東郷が拘置所を出てしばらくたってからあなたのお宅に行くようになったかということは、御存じじゃありませんか。
  214. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 昔の旧制静高時代の友人のことでございますから、お互い余りあばき合うようなことは言いたくないので、その問題については余り答えたくありませんが、彼からある種の手紙が来たということも事実です。しかし、それは内容は余り言わぬ方がいいと思います。
  215. 稲葉誠一

    稲葉委員 確かにある種の手紙が来ましたね。どういうことからその手紙が来たんですか。大刀川の強要事件に関連しているんじゃないですか、その手紙は。大刀川は、東郷の脱税事件について児玉譽士夫が頼んだ弁護士を断ったということが一つ。それから、あなたのことについてマスコミや何かにいろいろ書かれたからあなたのところへまず謝りに行け、なかなか会えないから手紙を出せということで手紙を出している。もう一人は証券会社の人、この人に対して謝りに行っている。大刀川に言われて東郷はあなたのところに謝りに行った。だから、ここに言っているように、自分としては「済まなかったという気持ちで行った覚えはございません。」というふうにちゃんと答えておる。こういうふうになっているのですよ。  だから、事実関係はどちらがいいかというと、第一審における真実の解明であったのではないか。あなたのためにやったというのが東郷氏としての言い分なんで、これが東郷氏としては本当なんだ、こういうふうに言っているわけですよ。あなたは、そうではない、おれは知らないと言っているわけですね。ただ、後になって上和田の名前に五億円が預金されておったのを知った、こう言うわけでしょう。しかし判決の中では、いやあなたと相談の上に、あなたの名前にしてくれということになってあなたの名前になり、そして後から週刊新潮に出て大騒ぎになったので、あわててあなたと相談をして解約をしてもとへ戻した、利息もついていますが、もとへ戻したんだ、こういうふうな高等裁判所の判決になっておるのではありませんか。
  216. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私の名前になったことは一回もないので、うちの秘書の上和田の名前になっておった。しかし、それは私は知りません。それで、その貯金されたということが上和田も何も知らない間に金額が上がったり下がったりしておったと、自分で運用しておったんだろうと、そういうふうに想像いたしました。  それから、大刀川が東郷君に何をしたか、私は全く知りません。いまあなたから聞いて、ああそういうことがあったのかと思いました。それで、大刀川の事件は、たしかあれは強要罪については無罪になった、そう思っております。
  217. 稲葉誠一

    稲葉委員 だれでもみんな自分に都合のいいことは強く主張するものですね。大刀川の事件は無罪になったのは事実です。しかし、これは私に言わせればきわめて捜査が足りない事件です。密室の事件ですからね。密室の二人の事件であって、いろいろなやりとりがあったので、その背景というものを十分調べないでいるからこういう無罪になったのです。  これはここで論議しても始まりませんが、この判決の八十ページを見ますると、こういうふうに書いてあるのですね。「すくなくとも週刊新潮の記事をみて中曽根との話を白紙に戻すまでは、一〇〇万株の売却利益は、法律的には中曽根に帰属するはずであり、」云々、こう書いてあるのです、判決に。書いてあることは事実なんだから。それはいま最高裁へいってますよ。最高裁は法律審でしょう、法律審であって、これは確定してしまえば、事実としてはこれになるわけですからね。そうすれば、いま私の申し上げましたような判決が生きてきちゃうわけです。そういうことになるでしょう。  あなたは五十二年四月十三日のロ特で証言をされた。このときは、率直に言いますと、コーチャン証言の電話の問題でしたね。あの問題が中心でしたから、この殖産住宅の問題についてはほんの少ししか触れてないのですよ。一行というかな、ほんの少ししか触れてない。あなたの証言を読んでみまするとこういうことですな。上和田ですね、で、「自分の会社を防衛するためにいろいろ人の名前を、名義を借りて口座をつくって株式の売買をやったようです。私の同級生もずいぶん名前を使われてやられたようです。それで私の上和田秘書も東郷君に呼ばれて、こういうわけでみんな同級生も名前を貸しておるのだから、おまえのおやじというわけにはいかぬからおまえ貸してくれ、そう言うので、ほかの旧制静高やそのほかの同級生の名前、みんな使ったというので、結構でしょうとそう言って、彼は承知して帰ってきたそうです。しかし、それで判こも見なければ通帳も見たことはない。」確かにそうですね、判こも通帳も見たことはありません。それは会社の方の陽何とかという秘書室長に預けるという話になっているというわけですから、あなたは見たことがない。確かにそのとおりですね。  それで、あなたがここに言われているように「彼は承知して帰ってきたそうです。」というのは、いまのあなたのお話だと、まるでその五億円が解約になってから後にその話を聞いたように言われているのですが、東郷はそうは言ってません。話はずっと流れてます。御案内のとおりですね。三月九日の「一条」、四月二十八日の「中川」、そして八月三十日に、戸栗氏の口ききで東京相互銀行の長田氏が金を出すということがあなたの方から言われた。あなたはその人の名前は言っていない、こういうふうになってきて、そして四十七年の十月の五日の夕刻、あなたのところに、これだけのものはできたと言って指示を仰ぎにいったらば、上和田義彦の名義にしてくれと言うので、十月六日に上和田義彦の名義にしたんだ。その後あなたのところを訪問したのは四十八年の十一月十七日ごろ、こういうふうになってきているのですが、その経過をずっと見、いまの判決を見てみますると、あなたのおっしゃったことが、私はあなたのおっしゃったことがうそだとは言いませんよ、うそだとは言いません。しかし、うそであるかもわからぬという懸念が非常にありますね。ということは、時期的に見て、あなたの方が先にここで証言されているわけですよ。後から、約一カ月たってから東郷ですから、それが一緒にその喚問をされれば、見ておる人から見ても、どちらの言うことが本当であるかということは私はよくわかったと思う。しかし、あなたのときにはコーチャンのあの問題がほとんど中心で、ほんの少ししか聞いていないわけですから。ここまで判決にも書かれて、あなたの名誉が、あなたから言わせれば著しく棄損されているわけですから、あるいはそうかもしれませんですね。私は、ほかのもうお二方のこともお聞きをしまして、後から一つの提言をいたしますけれども、あなたとしても、では、あなた自身の汚名を晴らすために東郷とここで対決をされたらいかがでしょうか。
  218. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 株をどうしたとか、お金をどうしたとかという具体的なことは私は全く関知しておりません。
  219. 稲葉誠一

    稲葉委員 関知してないのがちゃんと書いてあるというのですよ、判決にそういうふうに。判決に書いてあるというのはあなたの汚名でしょう。この書いてあることは間違いならば、あなたの汚名をそそぐために、あなたとしてもここで東郷と対決されたらいいじゃないですか。わからない、東郷の言うことはうそかもわかりませんよ、人間だからみんな自分の都合のいいことを言いますから。それはそうかもわかりませんけれども……(「総理大臣だからやる必要はない」と呼ぶ者あり)総理大臣だって法の前に平等なんですから、ことに政治倫理の確立をあなたが叫んでおられるのですから、そういうことをする必要はあなたのためにもあるのではないか、日本の政治の明らかな倫理の確立のためにも私は明らかにする必要があるのではないか、こういうふうに考えるのですが、これは後の方とまとめていたしましょう。
  220. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 そういう考えはございません。
  221. 稲葉誠一

    稲葉委員 だから、そういう考えがないということを言うから、かえっておかしくなるのですよ。そうじゃないですか。あなたの言うことが正しくて、東郷の言うことが違うなら、ああ結構ですよ、どこへ出ても、総理大臣であろうと何であろうと堂々と言い開きをしますよ、言い開きというと言葉が悪いかもしらぬけれども、堂々とオープンにやりますよ、それが国民にわかりやすい政治じゃないですか。私はそう思うのですよ。わかりやすいというのはそうなんです。あなたのためにやっているんだから、僕は。あなたのために、あなたの嫌疑を、嫌疑と言ったら悪いけれども、汚名か何か知らぬけれども、それを晴らしたいと言っているのですよ。判決に書いてあるんだもの、しょうがない。確定したら、このままになってしまいますよ。あなたが二十五億円をやってくれと言って、結局あなたは五億円を秘書の名義にしてくれと言って、週刊新潮に出たらあわててそれを取り返したんだ、それがなければあなたの名義のものになったんだとはっきり言っているじゃないですか、判決は。その汚名をあなたが晴らすのは当然じゃないですか。自由民主党全体が一体となってそれを晴らすのはあたりまえですよ。(「よけいなことを言うな」と呼ぶ者あり)よけいなことじゃない、大事なことだよ。何を言っているんだ。
  222. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 以上申し上げたとおりであります。
  223. 稲葉誠一

    稲葉委員 それでは、私は、あとツーペアの方のことにお話を進めさせていただきたいというふうに思います。  実は、昭和五十三年の二月十五日に衆議院の法務委員会で私が質問をしております。これは瀬戸山さんが国務大臣、法務大臣だったときですね。結局いわゆる政治的道義的責任があると認定された人のことを私が聞いて、「四名の方は政治的道義的責任があるというふうに、あなた自身も法務大臣としてお考えになるのですか、」こう聞いたときに、瀬戸山さんは、「それは国会で決められた基準に当たると思われる人、こういうかくかくでございますということで出してありますから、現在も変わりません。」こう答弁をされておるわけですね。  そこで、それに関連をいたしまして、当時の刑事局長の伊藤榮樹君が私の質問に対してこういうことを言っております。国会から要望があればということで言っておるのですけれども、そのときに「たとえば、大久保の証言が終わりましたこの段階で大久保の証言の詳細を説明せよ、こういう御要望があれば説明いたしますし、それから仮に副島、伊藤宏が証人に出まして証言をいたしました場合に、そのやりとりの詳細はどうか、こういうことであれば、当然御説明申し上げます。」こう言っているのですね。刑事局長が言っていますよ、これは議事録ですから。瀬戸山先生おられたときですよね。  そこで、刑事局長にお聞きをするのですが、まず伊藤宏が証人に出まして証言をしたことについて、やりとりの詳細はどうかということを聞いてもらえれば当然御説明するというのですから、伊藤宏が証人に出たときの例の五百万円の問題についてどういう証言をしたかということについて、詳細はどうかというふうにお尋ねをいたします。だから、詳細にお答えを願いたい、こういうふうに思います。
  224. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点は、すでにこれまでもお答えをしたことがあるように思うわけでございますけれども、いまのお尋ねに即して申しますと、すでに五十三年のことでございますが、五十三年の四月五日の衆議院のいわゆるロ特委員会におきまして、当時の刑事局長から、伊藤宏証人の証言の内容、これを御説明を申し上げているところでございます。
  225. 稲葉誠一

    稲葉委員 そんなことを聞いているのじゃないのですよ。ここで説明をしてくださいと言っているのだ。もう一遍説明をしてください、わかりやすく。
  226. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 先ほども申し上げましたように、五十三年の四月五日の衆議院のロッキード特別委員会で申し上げておりますので、その議事録にも載っているところでございますので、重ねて申し上げるようなことになるわけでございますけれども、伊藤宏の証言要旨につきましては、昭和四十七年十月三十日、大久保及び松井から前後して、全日空からロッキード社よりの三千万円を橋本ら六先生と田中総理に届けてほしいと依頼されたので、秘書課で配付してもらいたい旨の依頼を受け、これを了承した。  その日副島に、橋本、二階堂両氏の五百万円ずつは私が届け、田中総理への一千万円は別途届けるが、佐々木、福永、佐藤、加藤四氏への三百万円及び二百万円は君が届けろと指示した。松井からの依頼の際、田中総理を含める各氏への配付額は決まっていて、私がこれについて意見を述べる余地はなかった。  次いで、橋本氏への五百万円については、前日アポイントメントをとり、十月三十一日か十一月一日ごろ橋本氏の私邸に行き、応接間で橋本氏と面談し、五百万円を供与しようとしたところ、秘書に渡してほしいと言われ、そのまま持ち帰り、その日の午後茂木という秘書に渡した。  二階堂氏への五百万円については、橋本氏と同じころ、官房長官公邸に二階堂氏を訪ね、応接間で本人に会い、選挙区における丸紅の活動等を話した後、橋本氏の場合と同様、全日空からお預かりしたものを届けにまいりましたというような同様な口上を述べて五百万円を渡した。  田中総理への一千万円については、四十七年十一月十六日「木の下」という料亭で榎本氏と会って渡したというふうになっておるわけでございまして、当時の議事録にもあるとおりでございます。
  227. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、この判決が、一審の判決が六月八日にあったわけですが、いま刑事局長が読んだとおりのことが一審の判決では認定をされておる、こういうふうに理解してよろしいですか。  一審判決の中では、百三十九丁のところですね、「被告人橋本のほか、自己が金員の配付方を分担した二階堂についても、その交付状況等を具体的に供述していること」云々とありますが、「などに徴し、十分信用に値いするものと言わなければならない。」こういうふうに言っておるのですが、これは間違いないですね。
  228. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 お尋ねの点はこの前の国会でもいろいろとお尋ねを受けたところでございまして、稲葉委員は御専門でございますから私から詳しく申し上げるまでもないと思いますけれども、先般の判決は被告人である両氏に対するものでございまして、それ以外の方について事実認定をしたものではございません。
  229. 稲葉誠一

    稲葉委員 事実認定をしたことはない、それはそのとおりですね。しかし、これは書いてあることは間違いないですね。書いてあることは間違いないでしょう。しかも、あなたの方は論告の中にこれを援用しているでしょう。ちゃんと書いてありますね。論告に書いてありますね。論告の百四十五ページにちゃんと書いてありますよ。そして、そのとおりのことがこの判決の中で、認定という言葉かどうかは別として、事実として認められているというか、そういうふうなことになるわけですね。  そこで、法務大臣にお尋ねをするのですが、こういうふうに刑事局長は、この二階堂さんのことにつきましてはそういうふうな論告があってそのとおりのことが判決の中に書かれておる、こういうことを認めておるわけですが、あなたとしては、法務省が国会に報告した、二階堂さんが五百万円をもらわれたということを国会に報告しているわけですからね、それを間違いだというふうにお考えなんですか。それはどうなんでしょうか。いいかげんな報告だというお考えですか。
  230. 秦野章

    ○秦野国務大臣 お答えをいたします。  二階堂さんの点につきましては、これは法務当局としては秘密会で申し上げたのですよね。それはあくまでも秘密が維持されるという前提で申し上げたので、私から、私の口からそのことについて具体的に申し上げることは適当じゃない、こう思うのでございます。
  231. 稲葉誠一

    稲葉委員 秘密会で申し上げたから自分の口から言うのもどうも何とか、何だというのかよくわからぬですな。秘密会で言ったと言ったって、それはあなた、議事録に載っているのですよ。あのとき議事録をとめてないんだ、議事録に載っているんだから本当ととる、あたりまえの話じゃないですか。  そこで、この秘密会で言ったときですけれども、これは二階堂さんの官房長官としての職務権限はないという判断ですね。わかりました。官房長官の職務権限というのは非常にむずかしいのです。むずかしい、わかった。しかし、国務大臣ですね。国務大臣であり、このトライスターの導入全体に含めて、それは閣議の中に話が出ておるわけですからね。この点についてはいま総理大臣の職務権限で争いがあるところですから、そのことは裁判に影響を与えますから、総理大臣の職務権限のことについては私はお聞きをいたしません。しかし、同時にその中で、国務大臣としてはその閣議に出て、そういう話が出たのを拒否する権限ももちろんあったわけですから、だから国務大臣としての職務権限について、捜査当局は二階堂さんの問題について一体捜査をしたのかしないのか、そこのところをお聞かせください。いままで全然そのことは出ていないわけです。知らぬ顔をしているわけですね。
  232. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 実際に起訴されていない事件のことにも関係するわけでございますし、捜査の内容のことでございますから詳しく申し上げるのは差し控えさせていただきたいわけでございますが、当時検察当局といたしましてはロッキード事件の金の流れにつきまして犯罪の嫌疑があるかどうかということをいろいろな角度から検討し、各嫌疑のあるものについてはそれなりの処置をとったということでございますから、そのように理解いただきたいわけでございます。
  233. 稲葉誠一

    稲葉委員 何だかそれは全然わからないよ。だから、国会に報告したのは、官房長官の職務権限についてはなかったという報告をしているでしょう、これは議事録に載っているんだから。国務大臣の職務権限についてはないともあるとも言ってないじゃないですか。国務大臣の職務権限がなかったというなら話はわかるけれども、その点については全然触れてないでしょうが、あなた。捜査をしたと言うなら当然それに触れてなければならぬじゃないですか。いけませんよ、そういうちゃんとしたことをやらなくては。だから、国務大臣の職務権限はいろいろ調査した、むずかしかった。これは昭電疑獄で東京地裁と東京高裁の判決の内容が違うわけですから、むずかしいことはむずかしい、わかります。わかるけれども、その点についても当たってみたけれどもだめだったというのなら話はわかるけれども、全然書いてないのですからね。いまの答え聞いたってわけがわからぬじゃないですか。まああなたの立場もいろいろあるんでしょうし、まあ立場もわかるからな。僕も余り人を痛めつける――痛めつけるじゃない、そうするのは私の……(「武士の情け」と呼ぶ者あり)武士の情けじゃなくて、私の性質に合いませんから、この辺であれします。  そこで、もう一つの問題は、今度は加藤六月さんがいらっしゃるわけですね。これはもうさっき私がお聞きをいたしまして、潔白ですというお話があったんだけれども、潔白だけれども、後で何だか今度はいろんなことを注意しますとかなんとかかんとか言っておられるのですが、それは言論の自由ですけれども、この二百万円ですね、これは副島ですね。副島の二百万円関係についてはこのいまの議事録にありますように、仮に副島が証人に出まして証言をいたしました場合に、そのやりとりの詳細はどうか、こういうことであれば当然御説明申し上げます。だから、副島が証言に出たときの加藤さんとのやりとりの詳細ですね、それを質問いたしますのでお答え願いたい。前に申し上げておるということではなくて、また改めてお聞かせを願いたいと思います。御本人がおられますからいろいろあれがあるかもわかりませんけれども、御本人がおられた方が私はかえってフェアであろう、こういうふうに思います。
  234. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 その点につきましても五十三年の四月五日の衆議院ロッキード特別委員会で当時の刑事局長から御説明をしておるところでございまして、その議事録をごらんいただければわかるわけでございますけれども、重ねての御質問でございますからその要旨を申し上げますが、加藤長官に余り関係のないところははしょるといたしまして、加藤氏については、運輸政務次官室で加藤と信ずる人に渡したというふうになっております。その前に金額が出ておりまして、佐藤二百万円、佐々木氏三百万円、福永氏三百万円、加藤氏二百万円であるというところに加藤氏の名前が出てくるわけでございます。
  235. 稲葉誠一

    稲葉委員 加藤氏の名前が出てきて、それでどうしたのです。よくわからない。加藤さん受け取ったと言うのですか、副島は。
  236. 前田宏

    ○前田(宏)政府委員 ただいま申し上げましたように、証言の要旨で、加藤氏については、運輸政務次官室で加藤と信ずる人に渡したというふうに証言をしているわけでございます。
  237. 稲葉誠一

    稲葉委員 加藤と信ずる人にというのはどうもよくわかりませんが、加藤さんということだというふうにだれが見てもとれる、こういうふうに思いますがね。  そこで、私は全体の三つのことを皆さん方にいまお話しというか質問をいたしたわけです。率直に言いますと、私の質問も舌足らずのところもありまして、十分御理解がいただけなかったところもあるのではないかというふうに考えておるのでございます。  そこで、私はこういうふうに政治家が――私はもらったものはもらったでいいと言うのですよ。二階堂さんなんか、あなた、もらったからと言われて名誉棄損されたといって一億円の訴えを起こしてたでしょう。一億円は印紙をたくさん張るからといって、そのうちの一千万円だけ、印紙が少なくて済むというので一千万円の訴えを起こしたのでしょうけれども、途中何かわからなくて取り下げちゃったでしょう。自分では弁明の機会が与えられないわけですよ。それで弁明の機会を与えてくれ与えてくれと言うのだ。幸い加藤さん、あなたここにおられるし、もうさっきお聞きしますと潔白だと言うんだからね。副島の言うことと違うのですから。いま言うのと違うでしょう。違うのがわかりましたか、どうですか加藤さん。
  238. 加藤六月

    加藤国務大臣 その件につきましては、昭和五十一年十一月四日のロ特で私が申し上げたとおり、今日も変わっておりません。
  239. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなた、そういうふうに言われるのですから、それでは、あなたは副島とここで対決してもよろしいですね。そして、国民の前にやはりその真実を明らかにされた方があなたのためにもよろしいんじゃないでしょうか。対決は言葉は悪いかもわからぬけれども、対決でなくても何でもいいわ。とにかく両方出てきて、両方の言い分を皆さんが聞かなきゃわからないですよ。  なるほどあなたは選挙で洗礼を受けて、りっぱに当選をされた、力量、手腕も非常にある方だ、こういうことは私もお聞きをいたしておりますし、わかりました。わかりましたといっても、これからまだやってみなくちゃわからぬけれども、とにかくわかりました。しかし、それは国民皆さん方はそういう両方の言い分を平等に聞いていないで判断しているわけですから、それではやはり正しい判断にならないし、政治家はうそをつく、ついたと疑われること自身が私はもういかぬと思うのですね。あなたがうそをついたというのじゃないけれども、疑われること自身がよくないですね。これは明らかにしなければいけない。  いいですね、あなた、では証人で出ることについてはオーケーですね。
  240. 加藤六月

    加藤国務大臣 その問題につきましては、本日の午前中、嶋崎委員の御質問にもお答えいたしたところでございます。  それから、先ほど稲葉先生の御主張を承りますと、被告、検事両方とも控訴しておる段階であるようでございます。そうしますと、控訴の段階においてまた事実問題がいろいろ争われるんではないか、こうも思っております。したがいまして、今日の段階におきましては私はそれをするのはどうかと考えております。
  241. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、法廷は法廷なんですよ、あなたの事件が法廷で争われているわけじゃないのですからね。大変失礼な話たけれども、あなたが被告人になって争われている事件ならそれはそうかもわからぬけれども、あなたが争われてないんですから、だからここで、国会の場であなたの政治的な潔白性というものを明らかにするということは、私は、あなたのためにもなるし、自由民主党全体のためにもなるし、日本の政治の倫理の確立のためにもなる、こういうふうに考えておるわけです。  そこで、私はここで、いままで申し上げましたことから大体おわかり願えると思うのですけれども、私は中曽根さんの言うことはうそだと断定するのじゃ決してございませんよ、あなたがロッキードの委員会で言ったことを。しかし、後から調べると、東郷の言うことと余りにも違い過ぎるし、高等裁判所の判決とも全く違う、こういうふうな疑いをかけられているわけですから、それを明らかにすることが私は、あなた自身のためにも日本の政治の倫理の確立のためにも本当に必要だ、心からそういうふうに思います。その他の方についても同じです。  ですから、ここで私は、次の六名の方を当委員会に証人として御喚問を願いたいということを正式に申請をいたします。  中曽根康弘君、東郷民安君、二階堂進君、伊勝宏君、加藤六月君、副島勲君、この六名の方を証人として申請をいたします。  これはもう政治倫理の確立の上からどうしても欠くことのできないことだ、こういうふうに思いますので、委員長において早急に理事会を招集されるなり何なりして、はっきりとした結論を出していただきたい、こういうふうに考えており、委員長のお考えをお聞きしたいと思います。
  242. 栗原祐幸

    栗原委員長 理事会で協議をいたしたいと思います。
  243. 稲葉誠一

    稲葉委員 いろいろお聞きをいたしたい。  中曽根さんが、日本の政治を非常にわかりやすくしたい、国民と対話をしたいということを言っておられる。私はもうそれは本当にりっぱなことだというふうに考えるのです。結構だと思いますよ。  そこで、どうもいまわれわれがわからないことがあるのですよ。私がわからないし、国民皆さん方もまずわからないと思うのですが、どういうふうに言ったらいいでしょうか、まず政治の倫理化を図るためには、あの総裁予備選挙で四人の方が争われましたね。だから、全部とは言いませんよ、あなたなりあなたの派の方があの総裁予備選挙で一体幾らぐらい金を使われたのだろうか。(発言する者あり)いや、これは一番大事なことですよ。これをあなたみずから明らかにすることが一番大事じゃないですか。そして、それを国民の前にさらけ出して、いや実際こういうふうに金がかかったんだ、これでいいのか悪いのかということをあなたは国民の前に明らかにされるべきだと私は思うのですね。だから、ほかの派は幾らかかったとかいうのはそれは別として、少なくともあなたなりあなたの派というか、そこら辺が一体幾らぐらいかかったのか、明らかにしてくださいよ。そうして、予備選挙をやった中において、こういう選挙をやってそれで日本の政治の倫理化のためにいいのかどうか、あなたはどうお考えになったのでしょうか。一人三千円払えば党員になれるのでしょう。そういうような形をしていろいろやっていかれて、それでいいというふうにあなたはお考えなんでしょうか。  私はいろいろお考えになっていると思うのです。あなたは聡明な方ですから、お考えになったと私は思う。座禅を二時間もやられて一生懸命考えられたと僕は思うのです。座禅で何か坊さんから出るのでしょう、公案というのですか、あなたも一生懸命考えられたと思うのですよ。だから、その金が一体幾らぐらいかかったのか、国民の前に明らかにするということが私は先決問題だと思うのです。それが第一点ですね。  それから、この総裁予備選挙をやってどういうことをお考えになったのか、日本の政治はこのままでいいのだろうかというふうにお考えになったのか、その二つの点についてあなたのお考えをお聞かせ願いたいと思います。(「必要ない」と呼ぶ者あり)必要ないと言う方もおられます。必要ないというのなら必要ないで結構です。
  244. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 選対事務局や私の方の事務局がいろいろ差配してやってくださいまして、幾らかかったのか、まだ私報告を受けておりません。  それから、予備選をどうするかという問題は自民党内部の問題でありまして、ほかの会派からとやかく言われるべき問題ではない。内政干渉はお断りいたしたいと思います。
  245. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまのお話を聞いていますと、第一の点につきまして、選挙にいま金がかかり過ぎる、政治に金がかかり過ぎる、そのことが日本の政治を悪くしているのじゃないでしょうか。それを直さなければいけませんよ。だから、何党であろうと、それは直すべきものは直さなければ私はいかぬと思う。だから、あなたがあなたの予備選挙でどれだけの金を使ったかということは国民の前に明らかにするのが、政治倫理化を叫び、国民にわかりやすい政治を訴えるあなたの義務だと私は思うのですけれども、あなたは、おれはそんなこと嫌だと言われる。私は嫌だというふうにお聞きしましたよ。そんなことは必要ないというふうに聞いた。それでいいですか。金は幾らかかったっていいんだ、そんなことかれこれ言うな、そういうふうに私は聞きましたが、それでよろしいですか。それならば私は、あなたがそういうふうにお答えしたということを各方面に行って申し上げる以外にありません。しょうがないですね。
  246. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 予備選につきましては各県ごとでいろいろ運動もありましたが、自腹を切ってやってくれたのが大部分でございます。しかし、東京において、いろいろ連絡とかあるいは多少の文書費とか電話代とか、そういうものも要ったことも事実でございますが、まだ内容は知悉しておりません。
  247. 稲葉誠一

    稲葉委員 では、あれですか、内容を知悉したならばそれを私どもに報告してくださるのですか。いや、そんなことは関係ないと言うのですか。(「どうして社会党に報告しなければいけないんだ」と呼ぶ者あり)いやいや、社会党じゃないですよ。国会議員に報告して……。それは政治の倫理化に一番必要なんじゃないでしょうか、あなた。(発言する者あり)いやいや、それはあなた方の内部の問題だというふうにお考えなんでしょうか。  現実の世界の中で、いま日本の中では自民党の予備選挙に勝った人が実際には総理大臣になるのでしょう。これはそのとおりなんだから、そのために莫大な金が使われているということがいま世間に言われているんじゃないですか。だから、そのことを明らかにすることが必要だというふうに思うのだけれども、あなたの方で、いや、それは困るんだ、だから、そういうことは嫌だと言うんなら嫌で、それはしようがないですよ。私はこれ以上聞きません。嫌だと言うのなら、それでいいですよ。あなたは言わないんだもの、しようがない。
  248. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いずれ、これが政治資金として使われたもので私に関するものであるならば、ちゃんとそれは政治資金規正法に基づいて報告されると思うし、また、それを一々社会党に報告する義務はない、そう思っております。
  249. 稲葉誠一

    稲葉委員 社会党に報告しろと私は言ってませんよ。国会にです。だって、あなたは政治の倫理とかわかりやすい政治だとか透明な政治だとか言われるけれども、一体、根源が金のかかる選挙にあり政治にあって、あなた方の中の派閥のあれにいろんなことがあるんだということはお気づきになりませんか。よけいなこと言うなと言うんなら結構です。それでもいいですよ。それならそれで私は構いません。私はそれが、政治倫理のためにあなたが唱えているんならば一番必要だと思うのですけれども、しようがない、あなたは言わないんだから。まあいいですよ。言わないものを言わせるというわけにはいきませんよ。  そこで、私はお聞きしたいのですが、あなたが憲法についての考え方をいろいろきょうも言われましたよね。わかりました。それで、自民党が憲法改正を党の綱領としていることも私よくわかっている。だから、憲法の改正を主張するのは私はあたりまえだと思うのです、自民党として。主張しない方がかえっておかしいくらいに思っているのですけれども、それはまた内政干渉だと――内政干渉ではないかな。これは違うのかもわかりませんね。  そこで、あなたが五十三年十月に「現代」という雑誌で竹村健一と対談をしているんですね。題は「中曽根康弘・私は改憲を目指す!」こう書いてあるが、これは雑誌社がつけたことですからどうでもいいのですが、あなたの奥さんが竹村健一のファンだと盛んに言っているけれども、僕もこれはおもしろい男だと思っている。ユニークな男で、非常に着想のおもしろい男ですね。日本の経済がここまで繁栄してきたのは、一つは社会党のおかげだと彼は言っているんだから。社会党が再軍備反対、平和憲法守れ守れとやってきたから、これで軍備が少なくて済んで、経済がここまで繁栄してきたんだということも言っているんですね。も、ですよ。それだけ言っているわけじゃないけれども、も言っていることは間違いない。それはよけいなことです。よけいなことじゃない、大事なことですが。  そこで、「現代」という中であなたはこういうことを言っておられるんですね。「どうも憲法問題はスッキリしない。」ということを言っておられる。ということは、これは判決が、統治行為論であなたから言わせれば逃げる、逃げるというわけじゃないでしょうけれども、統治行為論ですね。あなたは矢部貞治先生のお弟子さんですから、よくおわかりだと思いますが。だから、そこで統治行為論とは何ぞやということを言っておられて、結局すべての問題は「国会で決めるということです。自民党は、国会でいつも過半数をとっておっても、」いつもと言えるかどうかわからないけれども、とにかくいままでとっておった。「とっておっても、出生の秘密やら解釈やら、いろいろな関係があるから、どうも憲法問題はスッキリしない。これを国民に問う最高の場所は、解散・総選挙ですよ。解散・総選挙のときに、現憲法は是か非かを主題に問うた選挙は、いままで一回たりともない。」こういうふうに言っているのですね。  私はそのとおりだと思うのです。あなたの立場じゃなくても、私は、憲法の改正をあなたの方が党の綱領としているならば、憲法の改正は是か非かという内容を示して、そして総選挙において国民に信を問う、これはあたりまえだと思うのですね。あなたがここで言っておられることは、私は本当にりっぱだ、本当に正直だと思うのですよ。しかし、あなたの話を聞いていると、ここのところは何か変わっちゃっているような感じを受けるのですが、どうなんでしょうか。
  250. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その質問応答の中でも、たしか竹村さんが、あなたが総裁になったら憲法改正をやるのかと、そういうことを質問されたのに対して、いや国民的合意が大事だ、準備をする必要はあるんだ、たしかそういうようなことを言っていると思います。つまり、こういう重大な問題は、やはり国民的コンセンサスあるいは十分な準備というものをして慎重に扱わなければならぬので、思いつきや何かでぽんぽんとやるべき問題ではない、そういう趣旨のことを言っておるのであります。  私は改憲論者であると何か申し上げましたけれども、しかし、議員として、個人としての考えと、内閣総理大臣になってからの立場というものは、またおのずから違った立場であるということも知らなければなりません。私がそこで申したことは、民主主義の筋を言っておるんだろうと思います。  つまり、砂川判決あるいはその他の判決等におきまして自衛隊違憲論というものが出た。それに対して裁判所はどう答えているか。最高裁におきましても、自衛隊が違憲であるか合憲であるかということは答えていないのであります。しかし、違憲であるとは言っていない。違憲であるとは言っていなくて、これは統治行為であるから裁判になじまない、そう言って、いわば、われわれ下世話な言葉で言えば逃げている。統治行為であるから裁判になじまない。では、統治行為とは何だということをいろいろ分析してみると、つまり、最高裁の裁判所がそう言うんですから、これは国会及び行政府がやる仕事だ、そういうふうに解釈せざるを得ない。そうすると、国会あるいは行政府がこの問題について解決すべき問題ですよということを暗示しているのではないか、私はそう思ったわけです。  もし、そうであるならば、この問題について一つの方法は、解散という手段を通じて民意を問う。そして、どうですか、どっちが賛成ですか、自衛隊合憲だと思いますか、違憲だと思いますか、それを解散に問うて民意を問うというのも一つのやり方だ、それが全部ではないけれども。たとえばそういうような形で国民に問うた選挙はまだ一回もない、そういうことは検討すべき問題ではないのでしょうかという問題提起を私はしておる。私は、それは議会主義、民主主義の立場として理論的に見たら正しい立場ではないかと思うのです。しかし、私がそれをいまやるかやらないかということとは別のことですよ。  以上、申し上げる次第です。
  251. 稲葉誠一

    稲葉委員 あなたはそのときに、確かに竹村さんが、あなたが総理大臣になったらということを五十三年のときに質問していますね。いまから四年以上前にあなたはもう五十七年に総理大臣になるという前提でどうも話をされている。まあ前提みたいなものですね。私は感心しました。そのときにあなたは、五十七年には財政危機が来るのだということを最後のところではっきり言っていますね。私は非常に感心したのですが、ただその中で、いまお話しのように「そのときの政治情勢にもよりますが、まずそのための準備をやります。」こう言っていますね。  そうすると、現在は憲法の改正の是非を国民に問うための準備をやっておる、こういうふうに承ってよろしいですか。
  252. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法改正のための準備をしているということではなくして、この憲法について勉強し、あるいはいままでの経験にかんがみて検討し、論議を大いにしたらいい、そういう意味のことを言っておるのです。
  253. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、論議をしてどうするのですか。
  254. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 大いに論議しているうちに自然に、これはどっちがいいんだろうかと、国民考えがわいてくると思います。一番大事なことは、国民に自然にそういうものがわいてくるかどうかということが大事なんで、無関心が一番いかぬ、そう思っております。
  255. 稲葉誠一

    稲葉委員 自然にわいてくるというのは、国民の間で何がわいてくるのですか。
  256. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法に対する認識、憲法の勉強、中身を知ること、それから、その憲法がどうしてできたかといういきさつ、これを知ること、それから、三十五年間やってみて、いいところはどこだ、悪いところはどこだ、直すところがあればどこだ、にもかかわらず直す必要がないのか、あるのか、そういういろいろな問題について国民の判断が自然に醸成されてくる。それはやはり民主主義としてはいいことではないかと思うのです。
  257. 稲葉誠一

    稲葉委員 自然に醸成されてくるのをただ黙って見ておるわけではないでしょう。政党としては、あなたの党の綱領にあるわけですから、その機運を盛り上げていってそれで憲法改正ができるようにしていく、これがあなたの方の立場ではありませんか。それは、あなたの党としてはあたりまえじゃないですか。
  258. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 党の方向としてはそうです。しかし、国民に向かっていつどうするかという決断はまだ党はしていない。その前提である憲法調査会でいまのようなことをいろいろ討論し、討議しておる、それが現在の段階だと思います。
  259. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、あなたのおっしゃっている中で、どうもよくわかりませんね。「出生の秘密がこの憲法にはありますから。」云々というのはよくわからないですね。具体的にはどういうことを言っておられるわけですか。
  260. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は憲法調査会に属しまして、昭和三十年代の初め及び中期にかけて、この憲法がどうしてできたかということを相当調べてみました。そして、マッカーサーの占領が始まってから、いわゆるスウィンクス、ナンバリングがついていますけれども、そういうワシントンからの指令書、それからマッカーサーのノート、それから幣原さんがマッカーサー司令部へ行っていろいろ論議したこと、いろいろそういう問題について具体的に勉強も相当しております。そういう意味で、この憲法は占領下、外国の非常に強い影響力のもとにつくられた、そういう事実があって、国民に知られない部分がある。それを「出生の秘密」と小説的に言ったのだろうと思っております。
  261. 稲葉誠一

    稲葉委員 私、いろいろお聞きをしていきたいのですが、瀬戸山先生は、今度かわられたわけですけれども、憲法調査会の会長をやっておられたわけですね。この「改憲論語」というのをいただいたのですよ。私は、瀬戸山先生の法務大臣のころから、前からよく知って、非常にりっぱな人柄で尊敬をしております。私はうそを言うのが嫌いなものですから、いつも本当のことを言うのです。(「尊敬しているなら聞いちゃいかぬ」と呼ぶ者あり)いや、尊敬しているからこそ聞くのですよ。  そこで、先生、「憲法に検討を要すると思われる点」というのがあるわけですよ。そこで「第一章 天皇」「天皇を「元首」と規定するか否か。」これがありますね。その次に「解散権を認むる必要ありや否や。」天皇に解散権を認める必要があるかないかということが検討の要項に入っているのですよ。これはいかに何でも国民主権から余りにも離れ過ぎて、検討すべきことには当たらない、もう全然別の問題じゃないでしょうかね。これまで検討するのですか、天皇に解散権を与えるということまで自民党の憲法調査会は。こんなことが検討の対象になるのですか。いかに何でもちょっとこれは理解できませんね。どういうことですか。
  262. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山国務大臣 そこに書いてありますことは、私どもが憲法調査会でいろいろな議論、いろいろな学者の説あるいは文献等を調べて、どういうふうに議論がされておるのかということを詳細に、私は私なりに、調査会は調査会なりに調べておる。その中に、天皇に国会解散の権利を与えるかどうかということは、御承知のように、世間に議論があるわけであります。でありますから、そういう議論があるところをどう判断するかということを並べている。その項目が全部そうなんです。私がそれを取り上げるとかなんとか――こういう問題が世間にいろいろ言われておりますということを十数項目か何かに並べてある、こういうことであります。政府が勝手に解散権があるのかどうか、あるいは不信任案の決議がされたときに解散権があるのかどうかということが従来から論議されております。そういう問題点がありますが、どちらに考えるかということは一つの検討事項、こういうことです。
  263. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、日本の憲法で、いかに何でも天皇に解散権を与えることが論議の対象になるということは私には理解できないですな。そういうことを自民党で検討の対象にしているということは私は全く理解できないですね。これは学者の間にそういう議論があるのかどうか知りませんけれども、これはきわめて特殊な例だと思いますが、これは民主主義体制というものを否定するものじゃないでしょうか。いかに何でもちょっとひど過ぎますよ。私はちょっと納得できません。それは私は理解できませんけれども、検討しているのだと、だから、そんなことになるわけはないと思いますから、私はこれ以上お聞きをしないことにいたしましょう。私はびっくりしました。先生の本を読んで、ここのところを読んでびっくりした。  ここで憲法に関連しまして、英文パンフというものが出ておって、いろいろまた質問があったり何かしたのだと思うのですが、この中で、中曽根さんが書かれたのでしょうけれども、「私は、真の独立は自国の領域防衛を他国の軍事力に大きく依存する道を選んでいる限り不可能だと信じている。」こういうのがありますね。これは具体的にはどういうことを言っておられるのでしょうか。
  264. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 つまり保護国みたいな状態である場合には、本当の意味の独立国家とは言えない。自分で自分の国を守ることを第一原則にして、足らざるところは他の友好国と提携して守る、それが現在の世界全体の防衛のやり方であります。それを自分で守りもしないで、ほとんど外国にのみ依存している、そういう状態は本当の独立とは言えない、そういう意味で言ったと思います。
  265. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうすると、その後に「私は長い間、自衛能力の保有に疑問の余地を残す憲法は改定すべきだと主張してきている。その後も私の考えは変わらなかった。」こう言っていますね。これも間違いございませんか。
  266. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 それは、マッカーサーに占領され、また独立した前後から憲法改正を私は強く主張しまして、その論点の一つにその部分があったのでそういう考えを持ってきました。いまはどうかと言えば、いまは内閣総理大臣という地位にありますから個人的意見は言わない方がいい、そう前から申し上げているところです。
  267. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、だってあなたがそういう考えを持ってずっとやってこられて――これは本当に基本的な問題です。そういう考えを持ってこられて、内閣を組織されて、あなたのその考えに賛同する人々を閣僚として選んだのじゃないですか。あたりまえの話じゃないですか。国の基本的な問題についてあなたの考え方に、憲法について反対の人がいれば、やめさす以外にないじゃないですか。だから、あなたとしては、こういう考え方を持っているならば中曽根内閣としてこういう考え方だとはっきり言われたらいいじゃないですか。どうですか、それは。
  268. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 憲法の問題をそれほど強く意識して組閣をしたのではなくして、もっと当面の行政改革、財政再建、対米関係及び景気等々の問題を頭に強く描いて組閣が行われたのであります。
  269. 稲葉誠一

    稲葉委員 恐らくいまあなたとしては、自分がウルトラナショナリストというふうにあちこちで言われている。だから、それを何とかその印象を消したいということで、外人記者クラブで言われたことについても書いてあるけれども、いや、それは中曽根個人なんだ、中曽根内閣としてはそうではないのだというふうなことであなたの印象というものをソフトにしたい、こういうことで一生懸命になっていらっしゃるのではないでしょうか。それは一つの行き方かもしれませんけれども、そうではなくて、あなたはあなたなりの色彩というものをはっきり出した方がかえっていいのじゃないですか。
  270. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私には外国の一部に誤解がありまして、マッカーサーが占領していたころから、日本は自分で守らなければならぬ、そういうことを芦田先生と一緒に主張したり、その後憲法改正を主張したり、そういう部分的なことがとらえられて、そして軍国主義者じゃないかとか、あるいは右翼ではないかとか、極端なナショナリストではないかとか、あるいはゴーリスト、ドゴール主義者ではないかとか、そういういろいろな誤解があったのです。  そこで、そういう誤解を払拭するために、防衛庁長官のときにはこういう話をしております、外人記者クラブではこういう演説をしております、この本にはこういうことが書いてあります、そういうことで論証しまして、そして非核専守防衛国家、あるいは三原則を守るとか、あるいは核拡散防止条約については私は初めは非常に批判的であった、しかし、その後安全保障理事会等においていろいろな措置も講ぜられるようになったために、もうここで賛成して世界、国際社会の通念に従った国になった方がいい、そういうことで踏み切って、あのころは三木内閣の幹事長時代ですが、参議院へ行って説得してあの核拡散防止条約を批准した。そういう一つ一つのことを本や私の言論で引用しまして、そしてこの誤解は、それは間違っているということを示すためにあれはやったのであります。そういうことをぜひ御理解願いたいと思います。
  271. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、結論をお聞きをいたします。  あなたは憲法九条を改正の必要があるというふうにお考えなんですか、どうなんですか。
  272. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 その点について具体的に私が個人としての意見は言いません、そういうことを申し上げておるのであります。それは、私が一議員中曽根康弘であったら言うかもしれません。しかし、いま内閣総理大臣という別の地位に立っておりますから、誤解を与えてはいけませんから申し上げない。あなただって、内閣総理大臣になったら、そういう立場をおとりになると思いますよ。
  273. 稲葉誠一

    稲葉委員 私、わかりませんね。中曽根康弘個人、議員としては憲法九条を改正する必要がある、こう思っておるけれども、総理大臣としての中曽根康弘はそうは言えないんだ、その点は察してくれ、こういうふうな理解の仕方でよろしいですか。
  274. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 いま私が言ったことについて御想像なさることは、御自由であります。
  275. 稲葉誠一

    稲葉委員 私は、私の想像が当たっているかどうか聞いたのですけれども、あなたは答えませんから、答えたのか知らぬけれどもはっきりしませんけれども、一番のポイントは、中曽根内閣が憲法九条に対してどういう考え方を持っているかということが国民が一番知りたいところじゃないですか。それを国民があなたに期待をしていると言うとおかしいけれども、とにかくある意味で期待をし、ある意味で逆なあれを持っているかもわかりませんけれども、とにかくそれをどうするのだ、日本をどういう――この九条をどうして、どういう方向へあなたが持っていこうとしているかということを国民は聞いているのじゃないでしょうか。それがあなたに対する、「わかりやすい政治」を国民があなたに求めているということではないでしょうか。  それをなぜあなたは言わないのですか。言うと誤解を与える、どうして誤解を与えるのですか。言わないからかえっておかしくなってきたので、言ったってちっとも誤解なんか与えないですよ。どうしてそんなことがあるのですかね。誤解なんかしませんよ、だれも。あなたはあなたなりの考え方を率直に述べなさいよ。述べてごらんなさいよ。それだけの勇気をお持ちなさいよ、あなたは。何のために座禅しているのかわからないじゃないですか。
  276. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 内閣総理大臣として言っていることは、憲法を大いに勉強し、また検討し、そして国民皆さんが憲法というものについて認識をよく深めていただきたい、それが内閣が言っていることであります。したがって、見直しとか検討ということも十分必要に応じておやりください、憲法をタブー視してはいけません、民主主義社会には聖域とかタブーはないはずです、いままで憲法の問題について発言すると、ややもするとこれが何か悪いことを言ったように受け取られているけれども、これは間違いです、堂々と自分の所見を一般の国民皆さんは言い合い、勉強してくださいということを申し上げておる。それは内閣として、総理大臣としてそういうことを言っておるのであります。そして、憲法問題についてこれを政治的日程に上せません、そういうことも言っておる。この二つをよく御認識願いたいと思います。
  277. 稲葉誠一

    稲葉委員 私もさっき聞いておりまして、政治的日程にのせないという意味がよくわからないんですよ。だってあなたは、憲法を発議するのに三分の二がなければなりませんが、いまはその三分の二があるとお考えなんですか。まず、それが第一点。どうですか。  それから、政治的日程にのせないとは何ですか、一体。どういうことです。
  278. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 三分の二はございません。
  279. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、政治的日程にのせないというのはどういう意味ですか、それは。
  280. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 政治的日程にのせないというのも、文字どおり政治的日程にのせないということであります。
  281. 稲葉誠一

    稲葉委員 いけませんよ、ごまかしては。あなた、ごまかしてはいかぬな。  私は、あなたがさっき、政治的日程にのせないというのを午前中答えたのを、そのとき後ろで聞いていたのです。これが一体何を意味しているのだろうか。だって、三分の二ないのですから、発議権ないわけですからね。政治的日程にのせるものせないもないでしょう、のせることはできないわけですから。それをなぜ政治的日程にのせないということをわざわざ言うのか。何か一つの意図があるというふうに考えるのですよね。政治的日程にのせないというのはどういう意味ですか。政治的日程とはまず何なのですか。どうもよくわからない。あなたのおっしゃることはどうもわからぬ。こっちが頭が悪いのかもわからぬ、あなたが頭がいいのかもわからぬけれども、大体僕は頭は同じくらいだと思っているのですよ。これはそんなに違わないよ。  まあそれは別として、だから政治的日程にのせないというのは政治的日程にのせないのだということ以外にあなたは言わないでしょうね。できないのに政治的日程にのせないというのだから、どうもよく意味がわかりませんが、前のことで、憲法を聖域視したりタブー視したりしてはいけないということをあなたは言われましたね。それは憲法九条も含めてのことと承ってよろしいですか。
  282. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 日本国憲法全体であります。
  283. 稲葉誠一

    稲葉委員 大体、話は大分わかってきたような感じがいたします。  そこで、私ちょっと、これは全然別な話ですよ。ちょっとこれは気分をやわらげるためにお話をするのですが、昔アフリカに人食い人種がいたのです。そこへつかまっていったのがいた。人食い人種が聞いたというのだね、おまえの職業は何だと聞いた。おれは政治家なんだよ。それは喜んだ、うれしい、私は本当に長い間待っていたんだ。きょうはうれしい、二枚舌のシチューが食べられると喜んだというのです。二枚舌のシチューが食べられるといって喜んだという話がある。これはジョークですけれどもね。  あなたの方は、何かこっちに言っているときは憲法を改正しろということを言いながら、こっちではそうでもないようなことを言っちゃって、どうも少し私には納得できません。それが失礼だけれどもあなたのキャラクター、キャラクターと言うと語弊がある。ちょっといまの言葉は悪いですね。非常にすぐれた資質であろうかというふうに私は拝見をいたします。  そこで、問題はもう一つございますね。あなた、アメリカに一月十七日行かれますね。そこで、こういう議論が一部にあるのですね。一部の評論家ですよ。たとえばKという評論家、名前は言いませんけれども、こういうことを言うのですね。アメリカは日本に憲法改正の前に安保の改定を要求してくるだろう、こういうことを言う人がいるのですね。  そこで、私ははっきりさせておきたいのです。いいですか。アメリカと韓国、アメリカとフィリピン、あるいはアメリカとルクセンブルクの間でも相互防衛条約を結ばれたとあなたは言っていますね。それと同じような条約にいまの安保条約をすることは、日本の憲法上できないですか。できないならできないとはっきり言ってください。どうなんですか、これは。
  284. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 まず、安保条約を改定する考えは目下ございません。  いまの解釈については、法制局長官から答弁させます。
  285. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 前にも稲葉委員の御質問に対してはお答えしたことがあると思いますが、御趣旨が、集団的自衛権の行使を内容とするようなそういう条約を結ぶということは、いまの憲法の上ではできないということは再々申し上げました。
  286. 稲葉誠一

    稲葉委員 確かに、昭和五十五年二月七日の予算委員会でもあなたは答弁していますね。「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化されるという地位を国際法上国家は持っている、そういうような意味の集団的自衛権というものをわが国は憲法上持っていない、」こういうふうに言われておるわけですね。  そうすると、私の認識では、いま言ったような米韓のような、米比のようなものは日本の憲法ではできない、こういうふうに私はとっております。わかりました。  そうすると、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃というのは、領土、領空、領海、公海、それを分けて言うとどういうことになるのですか。日本の国の中の、領土にある基地に対する攻撃も、その外国に対する武力攻撃に入るのですか。あるいは領空も入るのですか、領海も入るのですか。公海はどういうふうになるのですか。公海を越えたほかの国の領海上はどういうふうになるのですか。これが第一点。  それから、自国と密接な関係にある外国とは一体どこを指しているのですか。これは抽象的に言っているということでしょうけれども、あなたの言う意味は。アメリカを指しているとはちょっと言いづらいでしょうから、抽象的な意味だ、こう言うのでしょうけれども、いずれにしても、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃」と言っておられますからね。一体、具体的にどこを言っているのか。
  287. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 第二の方の質問からお答えをいたしますが、御指摘のとおり、これは抽象的な意味で言っているので、別にアメリカとか特定の国を指しているわけではございません。  それから、第一の方の御質問に対しては、これも前から申し上げていると思いますが、わが国の領域内にある、たとえば領土、領空、領海に仮に外国の軍隊が駐留している場合、その外国軍隊に対する武力攻撃は同時にわが国の領域に対する攻撃でありますから、その場合はわが国はそれを排除することは個別的自衛権の行使として当然なし得る、こういうふうに考えております。  それから、仮に公海上に外国の艦船がございまして、それに対する攻撃があったとしても、それはここで言うまさに外国に対する武力攻撃でありますから、そういうことを理由としてわが国の自衛権を発動するということはできないと思います。
  288. 稲葉誠一

    稲葉委員 わかりました、それは従来からの主張ですからね。ただ、私ははっきりさしておきたかったのです。これは必ず出てくるのですよ。アメリカにその点についてはもっとはっきり説明すべきじゃないですか。だから、安保改定論というのが出てくるのですよ。安保改定論というのは、相互防衛条約にするということ以外の安保改定論というものは考えられるのですか、どうなんでしょうか。これはだれですかな、外務大臣ですか。中曽根さんでもいいですが、理論的に考えられるのですか、どうなんですか。
  289. 角田禮次郎

    ○角田(禮)政府委員 これは前にお答えしたことがございますけれども、安保条約の改定ということを考えていないわけですから、そういうことを研究したことはございませんということを申し上げたと思います。仮に、これも双務化という言葉が、先ほど申し上げましたように、集団的自衛権の行使を内容とするものに変えろということであれば、それはもうできないということだけははっきり申し上げてございます。
  290. 稲葉誠一

    稲葉委員 そこで、防衛費の問題につきまして、GNP一%以内というのは前に決まっているわけですが、当分の間ということですが、決まっていますけれども、私はその防衛費という概念が、これのとり方によっては変わってくると思うのですよ。  そこで、一部に言われていますことは、これは大蔵大臣に聞くのかな、防衛庁長官に聞くのですか、この防衛費の中にいまあるものを防衛費から外して、一般の公共事業費の方に回してしまって、そうすると防衛費は減りますから、そういう形をとるのじゃないかということが一部に言われている。だから、私はお聞きするんだ。たとえば約一千五百億円に上る基地周辺の騒音防止や民生安定助成などの事業を公共事業と認定して、正面整備費などの経費と別扱いにして防衛費から外すんだ、こういうことが大蔵省と防衛庁との間で話が進められているということを言う人もいるのですよ。だから、私は老婆心から、老婆でもないけれども老婆心から聞くわけですけれども、そういうことはありませんか。いいですか。防衛費というのはいまの防衛費と認定の仕方は変わらない。それを、こっちにあるものをほかへ回して防衛費でなくして、一般の公共事業の方なんかに回して防衛費の方を減らして、それで一%を維持するというようなやり方はしないとはっきりできますか、大蔵大臣防衛庁長官
  291. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らくいままで大蔵省部内の議論としてではなく、よく防衛論争の中にありましたNATO方式のカウントの仕方があるとかそういうようないろいろな議論がございましたが、いまの場合、いわゆる基地周辺整備等を公共事業の枠の中に置くという議論をしたことはいまだございません。
  292. 稲葉誠一

    稲葉委員 いまだございませんはいいけれども、今後もしませんね。それははっきりさしてください。
  293. 竹下登

    竹下国務大臣 恐らく稲葉議員の御質問の中に、いわゆる建設国債の対象にすべきかどうか、この議論があったからおっしゃったのではないかと思いますが、私はいまその考えはありません。
  294. 稲葉誠一

    稲葉委員 そうです。赤字国債から外してそうやれば建設国債になりますから、その対象にしようという意見ですね。だから、そういう質問を私は前もってしておいたのです。でないと、後でこれは必ず出てくると思うんだ。GNPの一%でこれは出てくるから、いまのうちにやって封じておいた方がいい、こう思ったのです。  いつか、あなたが大蔵大臣のとき質問しましたときに、そうしたら夜僕のところに電話がかかってきたのです。島根県の人で電話がかかってきまして、僕は島根県は知らないから知らないと言ったら、先生、竹下先生を余りいじめないでくださいと電話がかかってきた。本当だ。決していじめているのじゃないのですが。  そこで、あなたにお聞きしたいのは、税制調査会というのがありますね。これは大蔵省のどこにあるのですか。
  295. 竹下登

    竹下国務大臣 税制調査会というのは政府税調のことでありまして、その所掌事務は大蔵省の主税局、こういうふうに理解しております。正式には内閣総理大臣の諮問機関、それで所掌事務は実質的には大蔵省主税局でこれを行っている、こういうことです。
  296. 稲葉誠一

    稲葉委員 実質的に大蔵省の主税局で行えということは書いてありますか。総理府設置法の十五条で総理府に置くのじゃないですか、政府の税制調査会というのは。大蔵省に置くものではないでしょう。これは山中さん、一番よく知っているよ。しっかりしなさいよ。だからまた電話がかかってくるんだよ。困っちゃうよ。
  297. 竹下登

    竹下国務大臣 それでは、この問題につきましては、正確に主税局長からお答えをいたします。
  298. 稲葉誠一

    稲葉委員 いいです、それは。こっちはわかって聞いているのですから、いいですよ。  私、お聞きしたいのは、いま言ったようなことで、これは山中さん、あなたが一番詳しいのですか、税金のことはあなたが一番詳しいそうです。それは渡辺美智雄君があなたということを言っていました。あなたとは両雄並び立たずだったけれどもこのごろは仲がいいという話を聞いたけれども、それは別として。  そこで、私疑問に思いますのは、自民党の税制調査会と政府の税制調査会とで一体意見が食い違ったことがあるのですか、ないのですか。その点、どうなんですか。違ったことがあるなら、どういう点が違ったかということを、きょうでなくてもいいから、後でちゃんとはっきり出してください。
  299. 竹下登

    竹下国務大臣 これはやはり山中通産大臣は、確かに長い間自由民主党政務調査会税制調査会長であったことは事実であります。しかし、その中で税制調査会長時代に議論された問題を、資料としてここへ山中大臣の責任において提出するということは、これは妥当を欠くと思っております。
  300. 稲葉誠一

    稲葉委員 いや、質問の意味は違うのですよ。私の言うのは、自民党税制調査会というものと政府の税制調査会というのはあるのですよ。あるけれども、自民党の税制調査会というのと政府の税制調査会との意見が食い違ったなんということはほとんどないのですよ。形だけなんですね、政府の税制調査会というのは。いまあなたは大蔵省の主税局の中にあると言ったでしょう。大蔵省の主税局なんかにあるのじゃないですよ。総理府にある筋合いのものなんですよ、本来。それで租税法学者というのは入ってないのですよ。だから、税法的にこれは非常に不備なものなんですよ。そういう点、政府の税調というものは足りないのですよ。  だから、私の言うのは、政府の税調というのは形だけで、実際的な効力は発生してないのじゃないか、こういうふうに私は思っているのですけれども、大蔵省は、いや、そんなことはないと言うでしょうから、そこで、自民党の出した資料を出せと僕は言ってないですよ。違いがあったものがあったら明らかにしてほしいということと、政府税調が税調に出した資料というものがあるはずなんですよ。それをみんな出して、すぐ引っ込めちゃうらしいな。これ、わからぬけれども。その点について、私は資料として出してほしい、こういうことを言っている。  なぜそういうことを言うかというと、これは所得税減税に関係するのですよ、おわかりでしょう。これは山中さん、一番わかるわな。所得税減税に関係してきて、課税最低限というものの理解の仕方なんですよ。理解の仕方が違うのですよ。いいですか。所得税の中で、控除を政府では五つに分けてやっていますね。ところが、基礎的な生活控除でこれを三つに考えるべきだという議論もあるのですからね。そうなってくると、二百一万五千円じゃなくなってくるのですよ、ずっと低くなるんですから、課税最低限が。そういうふうないろいろな議論がありますから、私は、大蔵省にいろんな政府税調の出した資料があるはずだから、それを私どもの方にも出してほしいということを言っておるわけなんですね。どうなんですか。出せる範囲のものは出してもいいのじゃないですか。
  301. 梅澤節男

    ○梅澤政府委員 政府の税制調査会で御議論を願います場合に、大蔵省なり、それから地方税の問題については自治省からでございますが、資料を提出いたしておりますが、これは一貫番号をつけまして公表をいたしております。したがいまして、御要請があればいつでも国会に御提出する用意がございます。
  302. 稲葉誠一

    稲葉委員 じゃ、それは非常に重要な資料になりますから、理事会で諮って出すようにお骨折りを願いたいと思います。これは減税の問題とか税制全体について非常に大きな、いい資料になるわけですね。  そこで、時間もなくなってまいりましたのでちょっとお聞きをいたしたいのですが、実は安倍さん、あなたに大変失礼なことを聞きますけれども、お許しください。  あなたが、反金権、そして党外の人に支配をされているという内閣だというふうに言っておったわけですね。あなたがそういうふうに言って予備選を戦ったわけでしょう。その安倍さんがこの内閣に入ってきてそこに座っておられるということについて、国民の多くの中では割り切れない考えを持っている人がいますよ。(「内政干渉」と呼ぶ者あり)いや、これは内政干渉じゃなくて、むしろ、もう変じゃないか、反金権だということを言っておいて、そういうふうなことであなたが入ってこられたのは変じゃないかということを言う人もいるんですよ。だから、あなたのお考えを、むしろあなたのお立場を御鮮明になされた方がいいと私は思うのですね。それであなたにお聞きをするわけです。
  303. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 私は、組閣に当たりまして、派閥を超越して挙党的体制をつくると言っておりました。安倍さんや河本さんや中川さんも、この選挙戦の末期には、挙党的体制をつくろう、そういうことを言ってきたと記憶しております。それが実践されたのだと思いますし、私もそういう意味から安倍さんに入閣を強く要請した、そういう次第であります。
  304. 稲葉誠一

    稲葉委員 だけど、国民は納得してないんじゃないですか。あなたが反金権を訴えて、挙党的か何か知らぬが、反金権として、そして党外の人にいまの自民党は操られているのだ、そういうふうなのが中曽根さんの一派だと言ってきたんじゃないですか、あなたは。違いますか。そう言ってきたんじゃないの、あなたは。それで国民に訴えて、それで支持を得てきて、それでぱっとひっくり返っちゃって――ひっくり返りはしないけれども、まあとにかくぱっと入っていっちゃって、はいさよならではあなた、国民は理解しないんじゃないですか。だから、あなたのお考えをお聞かせ願いたいと言っているんですよ。言いたいことを言ってくださいよ。言いたいことを言わないからあなたは――まあ失礼だから。
  305. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 予備選挙というのは自民党内の選挙でありますから、自由民主党というのは、御存じのように非常に自由な政党でして、お互いに党内で批判し合う、特に予備選挙を通じてお互いによりよき政治を実現するために批判し合うというのは、私はそれなりに自由民主党に活力をもたらすゆえんだ、こういうふうに考えております。そういう意味で、私は私なりの考え方を述べたわけでありますが、しかし、選挙で決着がついたわけであります。最も民主的な方法で決着がついて、そして挙党体制を組まなきゃならぬということもわれわれも言っておるわけですから、その選挙の結果によりまして、これからの非常に困難な時代に対応してわが自由民主党が挙党体制を組む、そういうことで中曽根内閣ができまして、そして私も内閣に入るということの要請がありましたので、やはりこの困難な時代に取り組んでいくためには、われわれも内閣の一員として挙党体制の中でこれを努力しなければならぬ、こういう判断のもとで入ったわけでございます。
  306. 稲葉誠一

    稲葉委員 それはまあそうだよな。ここで、議事録に残るときにそれ以外のことを言ったら大変なことになっちゃうから、それは言えっこないわ。それはわかりますが、私は、まじめな話として、外務省というのは非常に重要な役所だと思うのですよ。いいですか、重要な役所で、これはインドよりも人数が少ないのですよ。せめてイタリア並みになりたいというのが外務省の悩みでしょう。私は去年ニューヨークへ行きまして、いいですか、あなたは通産大臣をやっておられたからわかりますけれども、ニューヨーク、アメリカの財政金融、経済の中心地ですね。一体、ニューヨークに大蔵省の財務官なり何なり、どこにいると思いますか、どこにいますか。大蔵大臣、どこにいると思います。大蔵省の財務官や審議官とかみんな、大蔵省関係の人はどこにいるのですか、ニューヨークで。――いや、ちょっと待ってよ。そんなの、あなたに聞いているのじゃないよ。大蔵大臣がそんなことを知らないで困るでしょう。(「それはあんた、知らぬことを聞いちゃだめだよ」と呼ぶ者あり)いや、知らぬことって、そんなこと大蔵大臣の常識じゃないの。何言っているんだ、知らぬことじゃないよ。
  307. 竹下登

    竹下国務大臣 これはもちろん、いま本野君、もう発令になるようですが、総領事のもとにおるわけでございますが、いま恐らくその事務所の場所――私どもが行きますと、それは総領事公邸でおおむね一緒に会議をいたしますが、おるのはウォール街の、この財政金融等に対しては情報収集手段として最も適切な場所におる、こういうふうに私は理解しております。(稲葉委員「ウォール街のどこですか」と呼ぶ)どこか、その所番地までは存じておりません。
  308. 稲葉誠一

    稲葉委員 まあどこでもいいです。そのどこにあるか、それは日本銀行の中にフロア借りているのでしょう。  そこで、問題になってくるのは、通産省はジェトロを持っているのですよ。いいですか。大蔵省は日銀持っている――持っていると言っちゃ悪いけれども、日銀とコネクションがあるわけですよ。だから、財政金融全体のいろんな連絡というものは、一方は大蔵省に入り、一方は通産省に入るのですよ。いいですか。それが外務省に入らないのですよ。大蔵省も通産省も、その情報は外務省に入れないのですよ。一〇〇%入れないとは言わぬけれども。それは安倍さんよく知っているわけですよ。ジェトロは各地にあるしね。だから、そういうことのないように今後はしてくださいよ。これは私はニューヨークに行っても困っているのですよ、率直に言って。私の親戚がもうニューョークに十年もいますから聞いて知っているけれども、これは大蔵省に行きましたよ、ジェトロへ行きましたけれども、それはわかりますけれども、だから、それを全部、通産大臣も大蔵大臣もいろんな資料を、やはり外務省に集めて、そうして外務省で、実務は別として一元化をしていくという行き方をとってください。どうですか、大蔵大臣、通産大臣。
  309. 竹下登

    竹下国務大臣 わが国の外交の窓口は、これは外務省であるということは篤と承知しております。そこで、従来ともいわゆるわが方からアタッシェを出すとかいろんなことについて、そうして定員全体についてのその都度の要求とか、場合によってはトラブルがあったこともあるかもしれません。しかしながら、基本的に外務省を中心としてその外交の情報収集等に当たる、そのセクトにおいては大蔵省は財政金融のことについて最善を尽くす、こういうことであろうかと思います。
  310. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ジェトロというのは通産省そのものではございません。でありますから、たとえば逆に言いますと、一番新しい事例では、大河原大使がアメリカの下院の歳入委員長に会ったときの、新聞等でも伝わりましたが、相当重要なことを言われているのですね。それを外務省の方から私の方には、私が何も言わなかったら慣例としていつごろ私の目に触れるんだと言ったら、いや、非常に連携はよくとれていましてということで、翌日、外務大臣が手にされたとほぼ同時、私の方にも参りましたし、したがって出先が、ジェトロの性質も違いますから、情報収集等そういうものは余り能力もありませんし、前は日本の品物の輸出の宣伝みたいなことをしていて、逆にこのごろは輸入宣伝の方に力を入れたり、いろいろ性格は違いますが、要するに、出先に行かれて、そして議員の皆さんが外交が二元化しているのじゃないかというようなお感じにならないようにはこれは配慮をしていかなければならぬと考えます。
  311. 稲葉誠一

    稲葉委員 それは私わざと――わざとというか、ここで言うのは意味があるから言っているのです。それは、去年とかおととし中南米に行きまして、あなた、通産大臣が行った後、一週間たって、同じところに日本の外務大臣が行くのですよ、名前は言いませんけれども。これはもうよしてくださいよ。僕はみっともなくてまいったんだから、中南米で。これだけはやめてくださいよね。よく連絡をとって、仲よくやってくださいよね。  そこで、今度はお願いというか、あれになるのですが、私、中曽根さん、今度はこっちの方が立場が少し下がってお願いなのですが、難病で非常に困っている方が日本にいっぱいおられるのです。次から次へと文明病で新しい病気がいっぱいできてきているのですね。いろんな病気があるのですよ。膠原病というのを知っておられますか。にかわのあれで、皮膚があれになっちゃう病気があるでしょう。それから、リューマチがどうもふえているでしょう。それから、いろいろな病気がふえまして、それで困っているわけです。これに対する、難病対策の問題は、この前、渡辺君が大蔵大臣のときに大蔵省に行って頼みまして、難病対策の費用は削減しないでずっとやってきてもらっている。どんどんふえていますね。非常に困っておりますから、これらの患者の方のためにも、難病対策費については十分な配慮をしてもらうということと、特定疾患の調査研究費、これは三年続いて伸び率ゼロなんです。患者はどんどんふえてきているのです。公費でないとみんなやっていけないのです。自分でやっていけないのですよ。こういう人たち、非常に気の毒なものですから、こういう点について十分考えてもらいたいということと、それから特定疾患の治療研究費ですね。このことについても、対象疾患をふやしてやっていってもらいたい。あるいは小児慢性疾患の医療費の公費負担対象をふやしてもらいたい。  この前、私、難病の相談所に行ったんです。これは大学の先生なんかも来まして、患者の人たちも来るんです。六十人ぐらい来ましたが、三十人ぐらいが重いリューマチなんです。重いリューマチの場合には公費の対象になるけれども、そこまでいかないのは対象にならないのですよ。これについては皆さん非常に困っておられるのですね。それで、いろいろな病気が次から次へ出ておるんで、これに対する対策を十分今後も考えていただきたい。これはやはり命の問題ですから、そこに温かい思いやりのある政治というものをしいてもらいたいと思うんで、これは厚生大臣から一応お答え願って、それから後中曽根さんからひとつ明るい、いいお答えを願いたい、こういうふうに思っております。
  312. 林義郎

    ○林国務大臣 稲葉先生は大変に難病問題に御関心を持っておられることも承知しておりますし、敬意を表する次第でございます。  難病対策につきまして、やはり厳しい財政事情の折でありますけれども、御指摘のように、難病というのですから非常にむずかしい病気である、なかなか原因もわからなければ治癒方法もなかなか確立されないという病気でありますから、当省といたしましてもこれの増額には一生懸命これからも努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。  調査研究費のお話が出ました。調査研究費につきましては定額でやっておりますが、新しい病気を次から次へと取り上げてやっていく、こういうことでやっておりますので、仕事の内容としましては、私は発展をしているのじゃないかというふうに考えております。  それから、特定疾患治療研究費の増額でございますが、これは毎年毎年増額をしてきておりますから、ことしもぜひそういった形で処理を進めたい、こういうふうに考えております。  それから、先ほどリューマチのお話が出ました。私もそう医学に詳しいわけではございませんけれども、リューマチの中で悪性リューマチというのがございます。悪性の関節リューマチであるとか若年性の関節リューマチとかリューマチ熱というようなものがございます。こういったものは公費負担の対象にしておりますが、一般のリューマチ患者ということになりますと、これは非常に範囲が広い。神経痛のちょっとあれしたのもリューマチと言われたりなんかするような話もございますし、そこまでやるということについては、病気が治りましたらわりとよくなることもあるわけでございますし、それからまた、ほかの慢性疾患とのバランスもありますので、さらにその辺の問題につきましては考えていかなければなりませんが、消極的にこれは考えなければならない問題かと思っております。  いずれにいたしましても、この難病の問題は厚生省といたしましても大変重要な問題でありますから、一生懸命これも努力をして御期待にこたえるようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  313. 中曽根康弘

    中曽根内閣総理大臣 厚生省によく検討してもらいまして、難病とか特定の病気については特に心を込めてやるように進めてまいりたいと思います。
  314. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて稲葉君の質疑は終了いたしました。  次回は、明十四日午前九時三十分より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十六分散会