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1982-12-16 第97回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年十二月十六日(木曜日)     午後三時二分開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 麻生 太郎君 理事 奥田 敬和君    理事 川田 正則君 理事 竹内 黎一君    理事 高沢 寅男君 理事 土井たか子君    理事 玉城 栄一君 理事 渡辺  朗君       鯨岡 兵輔君    佐藤 一郎君       玉沢徳一郎君    浜田卓二郎君       松本 十郎君    岡田 利春君       河上 民雄君    小林  進君       中路 雅弘君    野間 友一君       伊藤 公介君  出席政府委員         外務政務次官  石川 要三君         外務大臣官房審         議官      松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      田中 義具君         外務大臣官房外         務参事官    都甲 岳洋君         外務省アジア局         長       木内 昭胤君         水産庁長官   松浦  昭君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      熊谷 直博君         外務大臣官房外         務参事官    佐藤 嘉恭君         水産庁海洋漁業         部長      井上 喜一君         外務委員会調査         室長      伊藤 政雄君     ───────────── 委員の異動 十二月十六日  辞任         補欠選任   井上  泉君     岡田 利春君 同日  辞任         補欠選任   岡田 利春君     井上  泉君     ───────────── 十二月十六日  核兵器持ち込み反対等に関する請願浦井洋紹介)(第一三九七号)  同(中路雅弘紹介)(第一三九八号)  世界連邦実現等に関する請願木村俊夫紹介)(第一五〇四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件(条約第一号)  北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件(条約第二号)  日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件(条約第三号)      ────◇─────
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、北西太平洋ソヴィエト社会主義共和国連邦地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び日本国地先沖合における千九百七十七年の漁業に関する日本国政府ソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の協定有効期間延長に関する議定書締結について承認を求めるの件の三件を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川田正則君。
  3. 川田正則

    川田委員 当初私どもは、日ソ漁業交渉について、新しい政権にかわった直後のことでありますだけに、難航を予想しておりました。いろいろ困難な点があったようでございますけれども、十二月の四日に急遽妥結を見たということにつきましては、関係の皆さんの御努力に本当に心から敬意を表するところでございます。しかし、いろいろなお話を聞きますと、むずかしさは年々増してくるということが言い伝えられておりますし、また報道関係などを見ましても、日本海全面開放であるとかあるいは操業条件緩和をせよと、非常に厳しい要求だということであります。  日ソ関係は、以前からそうでありますように相互主義でありますから、向こうもとらせればこっちもとらせろということになるだろうと思いますけれども長期化を望んでいるソ連、またこちらの方も望んでいるのかもしれませんが、その方面の見通しといいますか、これからだんだんむずかしくなるということで業界も非常に心配をしているところでありますから、まず長官にそのことをお尋ねしたいと思います。
  4. 松浦昭

    松浦政府委員 お答えを申し上げます。  今回の日ソソ日漁業交渉におきましては、十一月の二十四日に交渉を開始いたしまして、幸いにいたしまして十二月の六日に安倍外務大臣とパブロフ駐日ソ連大使との間で署名が行われたわけでございますが、期間は比較的短かったものの、その間においてきわめて濃密な交渉を行い、また非常にむずかしい局面もあったわけでございます。  その理由は、何と申しましても、ソ側はわが方の水域において六十五万トンのクォータを与えられておるわけでございますが、その消化率が非常に低いという問題がございまして、このために、その原因日本ソ連船に課しておりますところの操業条件が厳しいからであるということを主張をいたしてまいりました。このために、十項目にわたりますところの、日本海水域ほとんど全面開放、さらには太平洋水域につきましても大幅な規制緩和ということを持ち出しまして、これが聞かれなければクォータ削減、場合によりましては減船を伴いかねないような非常に大幅なクォータ削減要求してまいったわけでございます。  私どもといたしましては、このようなソ連側クォータ消化率の低さというものはむしろソ側が十分にわが方の水域において漁獲努力をしないからであるということを申しましたし、また私ども操業条件はもうぎりぎりいっぱいの操業条件を課しているということも十分に説明してまいったわけでございますけれども、最終的にはクォータ問題等もこれあり、若干の操業条件緩和をいたしまして、クォータは双方ともそのままということで妥結をいたした次第でございます。  したがいまして、将来の見通しにつきましては、このようなソ側のわが方水域におけるクォータ消化率が依然として悪いという状況が将来続きますと、恐らく操業条件緩和をさらに持ち出すといったようなことが想定されますので、もちろんわが方としては今後の対応につきまして十分に検討いたし、またわが方の国益を守るべく最大の努力は尽くすつもりでございますが、今後とも依然として厳しい交渉があり得るのではないかというふうに考えている次第でございます。
  5. 川田正則

    川田委員 長官のいまのお話で、ソ連側消化率が悪いということで日本側から努力をせよということのようでありますけれども消化率が悪いという本当の原因は何なのか、技術的にまずい点があるものなのか、あるいは一般で言う努力が足りないのか、意欲がないのか、どちらなんでしょうか。
  6. 松浦昭

    松浦政府委員 これは、先方見解と私どもの考えとは食い違うのは当然であると思うわけでございますが、先方は、先ほども申しましたように、わが方の操業条件が非常に厳しくてそのために操業が非常にむずかしい、あるいは、特にソ連漁船がわが方の水域において漁獲したいと考えておるのはイワシが主でございますけれども、このイワシが非常に小型のものでございましてソ連の要望に合わないということがございまして、わが方の水域内において操業をしたがらないということを申すわけでございます。しかしながら、われわれといたしましては、ソ側に課している操業条件はわが方の漁船に課している条件とほぼ同じでございます。場合によってはやや緩和している面もございます。さような同等の操業条件を与え、かつことしのイワシ漁獲量はわが方は太平洋岸において約二百万トンから漁獲をいたしておりますので、操業努力を投入すれば当然ソ側といえども漁獲はできるはずであるというのがわが方の主張でございます。
  7. 川田正則

    川田委員 いずれにしても厳しくなるということは考えていかなければならぬ、そういうことだろうと思います。  そこで、これは報道によるわけですけれども、ことしの七月に日本モーリタニア漁業交渉が決裂をした。報道でございますから、事実かどうかを確かめたい。そしてまたその影響がどの程度わが方にあるものなのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 松浦昭

    松浦政府委員 モーリタニア水域におきましては昭和四十五年に第一次の日モ民間契約締結がございまして、その後この水域におきましてわが方のトロール船が入りまして、主としてタコを漁獲する操業が続いていたわけでございます。ところが、モーリタニア政府が次第に規制を強化してまいりまして、特に入漁料が非常に上がってきたということと、それから日本モーリタニア合弁会社でございますマフコ・セムの協力費につきまして非常に多額の要求をしてまいりまして、事実上経営が成り立たないというような状況に立ち至ったわけでございます。  その状況はかなり常識を超えるものがございまして、この周辺水域操業いたしております各社といたしましては、今後このような国の水域操業を続けることは経営の赤字を増すだけであるという判断に立ちまして、五十七年六月二十一日に書簡をもちまして協定の廃棄の通告をいたしまして、右書簡モーリタニア政府によりまして同年の七月十二日に受理をされました。これによりまして、モーリタニア水域では現在操業が行われていないという状況でございます。  なお、この水域におきましては十七隻の船が操業いたしておりまして、これを目下各社は売却いたしているという状況でございますし、また、この水域においては現行の漁臨法の対象となる船員の方々が八百六十人ほどおられたという状況でございまして、わが方としては非常にきつい影響を受けたというのが実態でございます。
  9. 川田正則

    川田委員 モーリタニアのことでいま非常にきつい影響を受けているという事実が一つあるわけであります。  もう一つインドネシア海域での日本トロール漁業は来年の一月から全面禁止ということも聞いておりますが、これはいかがでしょうか。
  10. 松浦昭

    松浦政府委員 インドネシア水域につきましては、昭和四十三年ごろから西イリアン、マルク、東カリマンタン等海域で、合弁等の形によりましてわが方がエビトロール漁業を行ってまいりました。現在、その事業規模参加各社で十一社、約百二十隻の漁船操業いたし、八千四百トンほどの漁獲を得ているところでございます。  ところが、インドネシア政府は本年二月の経済関係閣僚会議におきまして、五十八年一月一日、つまり来年の一月一日からトロール漁法を全面的に禁止するという決定を行いまして、これが本年八月三日、農林大臣令の公布によりまして確定をいたしたわけでございます。これはスハルト大統領の非常に強い御意思ということで、私どももその行方を非常に心配したわけでございますが、外交ルートを通じ、さらには田澤農林水産大臣渡辺大蔵大臣、櫻内前外務大臣方々が、インドネシア要人と常にいろいろな機会をとらえて接触をしていただきましたし、また特に、去る十月十九日から二十二日まで非公式にスハルト大統領の御一行がわが国を訪問された際に、鈴木前総理及び田澤農林水産大臣に会談をしていただきまして、わが方から、トロール漁業ではどうしてもエビをとってはいけないということであれば、新漁法の採用によりましてエビ合弁等の形でとることはできないだろうかということで御相談し、今後ともこの方式によりましてわが方の漁船操業できるように強く要請をしていただいたわけでございます。  その結果、幸いなことに、十一月十五日、スハルト大統領関係閣僚との間で来年の一月一日から従来のトロールとは異なったエビ網と申す漁法によりましてその操業が継続できるということが決まったようでありまして、ただ、海域イリアンとジャワだけに限定される。もっともこの水域主要水域でございますが、そこに限定されることと、それから漁業基地はソロンとアンボンという二港になるということでございますが、一応従来の漁船がこの水域でほぼ引き続き操業できるという形が実現いたしまして、私どもとしてはほっといたしているという状況でございます。
  11. 川田正則

    川田委員 インドネシアの方はそういうことでありますと非常に打撃が少ないということになるでありましょうから、この点については安心できるわけでありますけれどもモーリタニアの件にいたしましても、またソ連の問題にいたしましてもますます厳しくなってくる。遠洋漁業にとって非常によい漁場と言われるところがだんだん狭められてくるという不安が全くないということは言えない。そういうときのこのたびの日米漁業交渉ということになるわけでありまして、そこら辺を業界もさることながら私どもも非常に心配をしているわけでありますが、最近の傾向として、日ソの場合は非常にむずかしかった経緯はあるけれども、一般的には日ソ交渉よりも日米交渉の方が何か根が深いような印象を非常に受けるわけでありますし、またぎくしゃくしている感じも受けます。これはもちろん漁業問題だけではなくて、防衛の問題にしても貿易摩擦の問題にしてもいろいろあるからなおさらそういう強い印象を受けるのかもしれませんけれども、何はともあれ、十日に米国の議会で協定承認されたということはうれしい話であるわけであります。  そこで、アメリカの二百海里水域内で外国といいますか、日本を含めてですけれども、一体どのくらいとっているのか、資料をいただきましたけれども、ちょっと古い資料だったものですから、最近の数字がわかればお示しをいただきたいと思います。
  12. 井上喜一

    井上説明員 お答えいたします。  一九八二年にアメリカ水域漁獲しております国は日本韓国でございます。日本が百三十七万七千トンでございまして、これは十一月五日現在の割り当て量でございます。韓国が同じく二十八万四千トン。したがいまして、合計いたしまして百六十六万一千トンに相なろうかと思います。
  13. 川田正則

    川田委員 日本遠洋漁業にとって百万トンを越しているということは大変いい漁場であることはわかるわけでありますし、先ほどお話し申し上げておりますように、だんだん海域が狭められてくる感じのときに、日米漁業交渉というのはいかに重大であるかということがはっきりしてくるわけでありますし、特に日本の場合は遠洋漁業のうちの六割がアメリカ水域からとっているということでありますと、なおさらその重大さが認識されるわけであります。  そこで、今回私どもが非常に心配しておりましたのは鯨の関係であります。国際捕鯨委員会で三年後の商業捕鯨全面禁止ということを打ち出したわけでありますが、それに対して日本側異議申し立てを行っている。この異議申し立てという、その度合いがよく認識できませんけれども、この異議申し立て度合いによってアメリカ側はどのような反応を示しているのか、これをひとつ教えていただきたいと思います。
  14. 松浦昭

    松浦政府委員 本年の七月にIWCにおきましていわゆる三年後のモラトリアムということが決定を見ました。私どもはこれに対しまして、このような決定IWC条約にも必ずしも適合していないし、またその決定科学的根拠もなく、わが国の産業に対する影響も非常に大きいという角度から、異議申し立て政府決定として行ってきたわけでございます。  ところが、これに対しまして米国の中には、特に反捕鯨団体動きをバックといたしまして、新日米漁業協定の不承認あるいは対日漁獲割り当て削減といったような制裁措置をとるべしという動きがあったことは事実でございます。かなりこの動きが強かったということを言わざるを得ないと思います。  しかしながら、幸いなことに、新日米漁業協定につきましては、捕鯨問題につきまして今回の異議申し立てというのは、三年後にもなお捕鯨を継続するということを私どもはいまの段階で決めたわけではない、これは立場の留保を行ったわけであるということと、話し合いによってこの問題はぜひ解決していきたいということを先方十分説明をいたしました。現に斉藤審議官を派遣いたしまして、先方政府話し合いを行っている状況にございます。  それからまた、一方で、ことしの夏に話し合いが決まりましたいわゆる洋上買い付け、これによりましてわが方は米国協力をしており、もしもわが国漁船先方水域操業ができないということになりますれば、当然このジョイントベンチャーと申しますか洋上買い付けもできなくなるわけでありまして、その意味ではアメリカ側にも決していい影響がないということが先方の中でわかってきたといったようなことがございまして、米国の行政府もかなり努力をいたしてくれました結果、去る十二月十日に新日米漁業協定米国上下両院で通過を見たわけでございます。大変よかったというふうに思っているわけでございます。  ただ、問題は依然として割り当ての問題でございまして、明年の割り当てにつきましては、目下ワシントンにおきまして斉藤審議官米国と鋭意折衝中でございますけれども、まだ明確な見通しを申し上げることは困難でございます。  ただ、一、二申し上げられますことは、私どもが当初心配をしておりました異議申し立て行為によりまして、いわゆるパックウッド・マグナソン法、この発動がございまして、最初の年は漁獲割り当て量の半分、二年目は全部という非常に厳しい制裁措置が直ちにとられるという可能性があったわけでございますけれども、この点につきましては、直ちにこれを発動することは法律的に無理があるという見解米国においても有力であると聞いておりまして、今回の異議申し立てによりまして直ちに同法が適用されることはまずないのではないかというふうに考えておる次第でございます。  しかしながら、対日割り当てそのものにつきましては、やはり捕鯨問題と絡めて、何らかの形で割り当て量を削ってはどうかという意見が依然として根強いということも聞いておりますし、その点で予断を許さない面があるわけでございます。特に、バスケットクローズという条項を発動いたしまして、これが割り当て影響を及ぼし得るという状況もございまして、私どもといたしましては、できるだけこれを回避いたしまして、わが国漁船安定操業に支障がないように最後まで粘り強く交渉するということで、目下漁獲割り当て量交渉をいたしているという段階でございます。
  15. 川田正則

    川田委員 いま長官お話しパックウッド・マグナソン法、これが削減率といいますかそういうものに影響するということで、業界も実は非常に心配をしておりました。そんな中で、捕鯨業界北洋業界とにトラブルが起こるのではないかとかそういう心配もいたしておりましたし、またその反面、いまお話しのように、法律的見解でこの法律が適用されない、その場合に異議申し立てだけでは法律の適用を受けないんだという人もおりますし、そんなことで理解していてよろしいものでしょうか。
  16. 松浦昭

    松浦政府委員 パックウッド・マグナソン法の規定は、漁獲活動そのものを行っていることあるいは貿易そのものを行っているという事実行為に着目しまして、これに対する制裁措置を規定しているというふうに読み取れるわけでございまして、米国の内部でもそのような意見が一般的になっているというふうに考えられますので、異議申し立てのみによってはこの発動はないのではないかということを先ほど御答弁申し上げた次第でございます。
  17. 川田正則

    川田委員 それでは、次に漁獲割り当てについてでありますが、一九八〇年にいわゆるブロー法なるものができて、米国側漁業保存管理法改正をされて、洋上買い付けだとか、いろいろ先ほどお話しのことが出てきたわけであります。  その中身をいろいろ拝見したりお話を聞いてみますと、割り当てについて厳しさが増してきているということははっきりしてきているわけでありますけれども業界の人が心配しておりますのは、これは将来、日本を含めてアメリカ水域の中に入っている外国漁業を締め出しをするんだ、そういうふうな政策であることは間違いないので、そのことが、米海域に依存している北転船でありますとかあるいははえ縄だとか単船、トロール船だとかいろいろそういうところが、われわれの死活問題だ、大変だということで、ことし全国の漁民大会を開いたわけであります。  そういった見通しというのはなかなかむずかしさが伴うと思いますけれどもアメリカ外国漁業に対する政策、これをどういうふうに水産庁として現時点でとらえていらっしゃるのか、それを質問いたします。
  18. 松浦昭

    松浦政府委員 米国の基本的な漁業政策といたしまして、二つ申し上げたいことがございます。  一つは、いわゆるフィッシュ・アンド・チップス・ポリシーということをよく向こうが申すわけでございますが、対外漁獲割り当てを行う際には、入漁国米国水産業に対する協力度合い等を勘案して行うという考え方でございます。  いま一つは、ただいま先生御指摘のように、いわゆるブロー法改正等に見られますように、終局的には米国漁民による米国漁業を振興するという立場でございまして、これが終局的な目標としてはフェーズアウトということにつながってくるということはしばしば聞かされるわけでございます。また、現にそのような動きが見られるということは事実でございます。そのような意味で私どもは、アメリカ政策というものがかなり外国船に対して厳しくなりつつあるということは事実として認めざるを得ないわけでございます。  これに対しましては、わが国としては、伝統的な漁業実績というものをアメリカ水域で持っているということ、それから、日米の友好な関係というものを前提にすべきである、さらには、わが国米国水産物の輸出の約五割を実は買っておるわけでございますし、また、スケソウダラの洋上買い付け等の実施によりまして、現にアメリカに対しては非常に協力をしているという状況でございます。これらのことはアメリカ側捕鯨の問題を除いては評価をしているという状況でございますので、このような広範な意味での漁業協力をとりながらわが国漁船操業を確保していくという対応策をし、そして粘り強く外交交渉をする以外にないというふうに考えている次第でございます。
  19. 川田正則

    川田委員 だんだん狭められてきている感じはするわけですけれども、私はこの前も御質問申し上げたと思うのですけれども、一般的に、その協力度合いによって漁獲量を決めるという考え方が、新しい制度であるだけになかなかなじめないものがありますし、まして直接漁業参加をしている人たちはなおさらのことであろう。洋上買い付けでも、これは前から申し上げておりますように、おかの水産加工屋さんは本当に大変な状況になるということに通ずるわけでありますし、仕方がない面がある反面、大いに水産庁にがんばっていただかなければならぬ面もある、そういうことになろうと思います。先ほどお話し斉藤審議官がこれからいろいろな情勢を踏まえてクォータの問題に入るということになるわけでありますけれども、もうすでに新聞紙上では、日本を含む対外漁獲量については一〇ないし一五%削減をするんだ、そのような報道が出ております。これはいろいろ理由があろうかと思いますけれども、いまの時点でこのことを長官からお話されるのは非常に無理なことかもしれませんけれども、概況だけでもお話をしていただければと思います。
  20. 松浦昭

    松浦政府委員 まず前段のお話でございますが、確かに、フィッシュ・アンド・チップス・ポリシーというのは、一方においてわが方の協力を求めますが、それに対しましてクォータ割り当てていく、こういうことでございまして、ある意味では私どもにとりましてもろ刃のやいばになるということは事実でございます。したがいまして、洋上買い付け等の規模につきましては、常にわが方もわが方の漁船操業に支障がないということを前提にいたしまして先方話し合い協力はしながらもわが方の操業に支障がないように最大限の努力を払っていくという態度で臨んでまいらなければならないというふうに考えておる次第でございます。  それから明年度のクォータでございますが、これは、いま数字を若干お話しになりましたけれども、まだ交渉中でございまして、そのような事態になるかどうかということはいまの時点では申し上げかねるわけでございますが、ただ、幾つかの要素として考えておかなければならないことは、この水域におけるスケソウダラを中心としました資源の状態そのものは現在悪いとは思っておりません。ただ、アメリカ漁業も進んできてまいっておりますので、自分たちの漁船に対する取り分というものが若干ふえてくるんじゃないかというふうに考えられます。それから、これはまだ定かではございませんけれども、もしもポーランドの問題がアメリカとしてこれを受け入れられるという状態になりますると、ポーランドに従来割り当てておりませんでした分を新たにまた再開するといったようなことが考えられるのではないかというふうに思われます。さような幾つかの要素がございますので、そのようなことを勘案いたしまして若干の減があるのではないかというような報道がなされておりますが、私どもといたしましては、できる限り先方交渉いたしまして、捕鯨の問題がありますけれども、できるだけのクォータを確保して安定した操業を確保したいと思っている次第でございます。  なお、マグナソン・パックウッド法の発動によりますれば五〇%削減というような事態でございますが、さような事態は起こらないというふうに思っております。
  21. 川田正則

    川田委員 ぜひともがんばっていただきたいと思います。  そこで今度は割り当て方式になるわけでありますが、これはちょっと協定の中身に入りますので外務省にお尋ねをしたいと思いますが、実はことしから御存じのように分割割り当て方式ということに相なりまして、当初の時期に五〇%、その後二五、二五ずつあれする、そういう分割方式で、それすらもことしの場合はちょっと守られていなかった。これが協力度合いということで後半のその二五%が一〇%だったか一五%しか割り当てられないということで非常に問題にしたわけでありますけれども、現協定といいますか、新しい協定でなくて現行協定の中で、日本国政府との協議を考慮に入れて決定するということに前といいますかいまの協定ではなっている。それからもう一つは、経済的混乱を最小限度にするという文句が入っていたと思いますが、これが今回の協定の中にはないということから、分割割り当て方式というのを一方的にアメリカ側からやられるのではなかろうか、そういう懸念をする向きもありますので、いま申し上げました日本国政府との協議を考慮に入れて決定する、経済的混乱を最小限度にするという、いままでのというと悪いのですけれども、それらと今度の協定との関係をひとつ教えていただきたいと思います。
  22. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現行協定は、第三条、第四条におきまして、漁獲量決定等の場合にはそれが協議の対象になること、そして決定の際にその協議を考慮に入れることになっておりましたし、それから第五条におきまして、経済的混乱を最小にする必要性を考慮に入れるということが入っていたわけでございますけれども、今回の協定からこれは落ちております。当然政府といたしましては現行協定のこのような枠組みをそのまま入れるように主張したわけでございますけれどもアメリカ側は、これがモデル協定に従って結んだ他国との協定に入っていないこと、そういう意味では他国との協定の横並びの問題があるということ、それから議会に対してこのようなモデル協定にも入っていない、他国との協定にも入っていない条項によることは無用の議論を呼ぶというようなことが主張されましたので、わが方としては実質的にこれが他の方面でカバーされるのであれば特に主張することは必要ないであろうということを考えたわけでございます。  そこで、合意議事録の二項をごらんいただきますと、二項におきましては、第三条における定期的な協議の重要性を強調するとともに、「第四条の規定に基づいて行う決定に関し、合衆国の法律の許容する範囲内において、日本国政府の表明する見解を考慮に入れる」ということが述べられているわけでございます。そういう意味で協議そのものから漁獲量決定ということが必ずしも排除されていないということが読めるわけでございますし、それから経済的混乱を最小限にするという考慮につきましては、第五条をごらんいただきますと、たとえば四項におきまして、「当該国が、漁業保存水域内において収獲される魚類を当該国の国内消費のために必要としているかどうか及びその必要の程度」であるとか、それから六項におきまして「当該国の漁船が、当該漁業資源の漁獲に伝統的に従事してきたかどうか及びその従事の程度」、このようなものが漁獲量決定の考慮要因として明確に規定されておりますし、さらに、合意議事録におきましては、漁獲量決定に当たりましては日本の伝統的な過去の操業実績は考慮するということが規定されているわけでございます。  そのようなことを全体として見ますと、確かに協定文からは横並びの関係もありまして従来の規定ぶりより後退した印象を受けますけれども、実際の取り扱いにおいては、合意議事録等をあわせ読むことにより、十分にわが国に対する配慮がなされている、そういう意味で実質的に実害がないという考慮から、またアメリカ側の事情も配慮して、現在のような案文に合意したわけでございます。
  23. 川田正則

    川田委員 そういう精神は中身に盛られているということになるといういまのお話でありましたが、分割割り当て方式になりますと年間の操業計画を立てにくいということにもなる、このことが一番心配されるわけであります。合意された議事録の三項のところに「その定期的な割当予定日を可能な限り早期に通知することとなろうことを述べた。」ということが書かれてあるわけでありますが、これは水産庁の方がいいのか外務省の方がいいのかわかりませんが、可能な限り早期に通知するということはぜひ守ってもらわなければ困ることでありますし、ことしの場合のように洋上でも買わなかった云々でそれがまた延びるということのないように、これはアメリカ側と十分協議をしてもらいたいということをこの機会にお願いをむしろ申し上げたいと思います。  それから、時間がありませんので最後になりますが、もう一つ入漁料の問題であります。漁獲量がそんなに変わりませんのに入漁料だけがどんどんどんどん上がっていくという傾向にあることは長官も御存じのとおりだろうと思いますが、もうすでに三三%ぐらいアップをしなければならぬのでなかろうかということが報道されておりまして、この辺については、水産庁としては答えにくい、たとえば国としての助成を考えられないかというようなことをこちらでむしろ申し上げたいわけでありますけれども、しかし、余りにも多額になってきているということなものですから、この面について御答弁をお願いいたします。
  24. 松浦昭

    松浦政府委員 まず第一点の年間割り当ての通報の問題でございますが、昨年からいわゆる分割割り当て方式というのがとられまして、年初と四月、それから七月の三回の割り当て、しかもその場合に四月の割り当てがカットされまして、しかしこれは後ほど戻ってきたわけでございますが、私ども、年間を通じましてこの水域操業する漁船が非常に操業を計画的に実施できないという問題に直面したわけでございます。さようなことから、実はこの協定交渉に入ります前からアメリカ側には何とかその点を強く申し入れを行ってまいっておりまして、その結果、先ほど御答弁申し上げました合意議事録の中で、年間割り当て予定量及び割り当て予定日が可能な限り早期に対日通報されるということを確保したわけでございます。  そのようなことで、本年の漁獲割り当てにおきましても昨年と同様に米側は分割割り当て方式はとってくると思いますけれどもわが国としては、合意議事録に記載したとおりに運用がされまして、わが国漁船操業に支障がないように期待いたしておりますと同時に、またその点を強く向こう側に申し入れているところでございます。  それから、入漁料の点でございますが、今回米側から通知がございました明年度における入漁料が、ただいま川田委員御指摘のように三三%程度値上げされる。それから、バイキャッチにつきましての価格の評価、これによりますと三三%以上に値上がりを見るという状況も判明いたしておるわけでございます。この点につきましても、実は斉藤審議官を派遣いたしまして、わが方の立場、特にこのような大幅な値上げがあってはとてもわが方の漁船操業し、経営を安定することができないということを強く向こう側に申し入れておりまして、私ども米国法律の規定によりまして、当該水域に入漁する漁船につきましては、その入漁料についてのコメントを向こう側に提出することができます。この法的な手続をもとにいたしまして、先方と現在強く交渉いたしている次第でございます。  ただ、仮に入漁料が上がりました場合に、これに対する国庫負担というような点につきましては、やはりこれは経営の中で、つまり経常の採算の中で消化していただかなければならぬというたてまえでございまして、この点につきましての国庫補助はなかなか困難であるというふうに考えざるを得ないと思います。
  25. 川田正則

    川田委員 以上で終わりますが、実は先般、水産部会で鹿児島県、宮崎県を視察させていただきました。各漁組に参りますと陳情書が出てまいるわけでありますけれども、どの陳情書を見ましても、かがみには必ず同じことが書かれてある。二百海里の定着、燃油の高騰、魚価の低迷、これは組合へ参りますと、もう口を合わせたようにそういうことであります。悩みが多いいまの漁業でありますだけに、どうか長官初め水産庁の皆さんもひとつ大いにがんばっていただきたいと思います。  これで質問を終わります。ありがとうございました。
  26. 中山正暉

  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただいま議題になっております日ソ日米漁業条約は、いわゆるわが国の北洋漁業に関する協定であるわけです。二百海里時代を迎えて、わが国の北洋漁業も大変困難な事態に直面をいたしてまいったわけでありますが、今日時点で、わが国の北洋漁業の位置はどのように政府として理解をされておるか、この点御説明を願いたいと思います。
  28. 松浦昭

    松浦政府委員 北洋漁業ソ連水域米国水域での漁業及び北洋サケ・マス漁業がその対象になるかというふうに考えるわけでございますが、その漁獲割り当て量をとってみましても、ソ連水域では七十五万トンの割り当て量がございますし、米国水域は百三十八万トン、サケ・マスが四万二千五百トン、計二百十七万二千五百トンということで、わが国の総漁獲量一千万トンといたしまして約二割を超える大きな漁獲をしている水域でございまして、その意味で、いずれもわが国漁業者が永年にわたりました努力により開発された伝統的漁場であります。また、二百海里の本格的な到来以降も、ソ連及び米国との交渉によりまして対日漁獲割り当て量を確保して、多数の漁船、約八千四百四十五隻の操業をしている、そういう水域でございまして、大変重要な水域であるというように考えております。  また、これらの対象魚種でありますが、特にスケソウを中心といたしましてわが国の沿岸あるいは沖合い漁業の対象魚種でない魚種をこの水域で確保いたしているわけでございまして、わが国のたん白食糧の確保ということからも欠かすことができない水域であるというふうに考えている次第でございます。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 十一月の五日に第二十九回北太平洋漁業国際委員会日米漁業委員会が終わっておるわけであります。ここで幾つかのわが国漁業に対する問題点が提起をされておるはずであります。そのうち重要な問題点についてこの機会に御説明願いたいと思います。
  30. 松浦昭

    松浦政府委員 いわゆるINPFCの条約のもとにおきまして日米加の会議が行われたわけでございますが、その間におきまして、特に北洋の底魚の資源評価、それからサケ・マスの回遊調査、さらに規制問題及び財政事項が主な討議の内容として行われたわけであります。中でもその討議の過程におきまして私ども注目をしなければならないと思いましたことは、一つはイシイルカの混獲の問題でございまして、これについては混獲回避を目的といたしました調査を行っておりまして、その進展が非常に注目されるところでございます。  それから、わが国のサケ・マス漁船操業区域違反の問題がやはり取り上げられておりまして、これにつきましては強い米側の要請があったことは事実でございます。特に来漁期から漁期開始とともに米二百海里内の監視船を派遣いたしまして取り締まりを強化していくということが合意されているわけでございます。ただ、今回の会議におきましては、現行の規制に特に変更が生ずるということはございませんでした。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の資料によりますと、イシイルカの混獲の問題は米側がむしろ今回都合によって調査ができなかったということで問題にはなっていないのであって、いま長官が触れられた中型サケ・マス漁船の米二百海里内での操業違反の問題、これは写真を提示されて、十二隻のカラー写真で問題点が提起されておるはずであります。第二には、イカ流し網漁船、大目流し網漁船の北米系のサケ・マスの混獲問題、この点についてが第二点。  第三点は、サケ・マス母船式によるマスノスケの規制問題。この点は、オブザーバーを各独航船に乗せろ、こういう問題も出ておるはずであります。もちろんわが国としては、一昨年四十万匹、昨年は二万匹、今年は三万九千匹というような形で一応改善についての態度も示しておりますけれども、この三点が今回の委員会で非常に問題になった点ではないかと私は思うわけです。このことが指摘をされるという点について、やはりわが国として反省しなければならぬことがあると思うのですが、この点いかがですか。
  32. 井上喜一

    井上説明員 お答えいたします。  確かに日米漁業委員会におきましては、先生が指摘されました三点について主として関心が集中したと言えると思います。  まず違反問題につきましては、一部の漁船アメリカの二百海里水域内に入りまして違反操業したのじゃないかということで、カラー写真を突きつけられてその事実関係の判定を求められたわけでございます。わが方としては、現在その違反事実の有無につきまして調査をしている段階でございます。国際協定といいますのは、約束いたしました事項を完全に守るということでそういった協定が継続していくものでございまして、この点、厳に協定が守られるようにわれわれも関係者に注意し、徹底を図りますとともに、監視その他の方法による取り締まりを一層強化していく必要がある、このように考えている次第でございます。いずれまとまりましたら、その結果をアメリカ、カナダの方に通報いたしたいと、このように考えているわけであります。  第二点の、イカ流し、大目流しの問題でございます。これにつきましては、今回の会議におきましては従来よりはややアメリカ側の疑問点が解明されまして、従来ほどにはしつこく追及されなかったように私は理解するわけでございます。特にイカ流し網がアメリカの西海岸に流れ着くということからどうもサケ・マスを混獲している疑いがあるのじゃないかということをわれわれに申してきているわけでございますが、イカ流し網漁船アメリカ漁民がオブザーバーとして乗船をいたしますとか、あるいはアメリカ側が証拠として出しましたサケ・マスのネットマーク――サケ・マスにネットマークがついているわけでございますけれども、そのネットマークから検討いたしますと、どうもイカ流し網によるネットマークではないのじゃないか、こういうようなことをわれわれは説明いたしたわけでございまして、この点、従来のアメリカ側が持っておりました疑問点が幾分なりとも解けてきたんじゃないか、このように考える次第でございます。  なお、この点につきましては、日本側も十分資料を集めますとともに、アメリカ側からも資料の提供を求めましてさらに疑問点について解明をいたしていきたい、このように考えるわけでございます。  それから、イカ流し網あるいは大目流し網につきましては所要の規制を行いまして、サケ・マスの混獲がないように水域規制を行っていることは先生御案内のとおりでございます。  それから、第三点のマスノスケの混獲の問題でございます。マスノスケにつきましては、昨年から向こう三年間マスノスケの混獲の自主規制を行っておりまして、ことしはその成果が大いに上がったわけでございます。  アメリカ側主張いたしますのは、マスノスケが、ベーリング公海と言っておりますアメリカの二百海里水域のやや北側でございますけれども、ベーリング公海の東の部分でとれるものはどうもアメリカ系が多いのではないか、こういうことでベーリング公海の東の部分の操業規制についてもう少し検討してもらえないか、こういう問題の提起でございます。わが方といたしましては、アメリカ側に約束いたしました自主規制を忠実に守っているわけでございます。またその成果も上がっているという現状を踏まえましてその旨反論をいたしまして、なお、さらに詳細な点につきましては、来年三月に日米の科学者間の会議がございますが、これはマスノスケの会議ではございませんけれども、その場でもう少し詳しく検討をして、果たして現在の規制以上に規制をする必要があるのかどうか検討しようじゃないか、こういうことに相なっているわけでございます。  以上でございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまアメリカは沿岸漁業国家であって、わが国のように遠洋漁業はいたしていないのでありますけれども、いまやその水産物生産量は世界第四位に位置いたしているわけです。漁業者が二十万人、加工、流通関係が三十万人、釣り、その他のレジャーでは二千万人の人が魚を釣る。そして、アメリカ自身の輸入状況を見ますと、アメリカの消費量の七五%を輸入しているわけです。えさ、その他の関係では二一%輸入をしている。したがって、輸入、赤字の面では水産物は第五番目という位置が記されているわけです。また輸出関係で見ますと、先ほど長官が答えたように、全アメリカの生産量の五〇%は日本で輸入をしている、あるいはカナダを含めて北米関係では八〇%の生産物を日本が輸入している、あるいはまた輸出三品目と言われるサケ・マス、ニシン、カニ、これは九〇%をわが国で輸入している、こういう相対関係にもあるという認識に立っていろいろ検討してみなければならぬではないかと思うのです。同時にまた、アメリカの場合には、問題が二百海里に入って、一つの問題が解決すると一つの問題が起きてくる、その繰り返しが二百海里以来の五年近くの間の動向ではなかろうか。先ほど触れられたイシイルカの混獲問題あるいは大西洋においてはカジキとかサメの漁業規制の問題、あるいは今日では混獲カジキの船上保持の禁止とか水面上引き上げの禁止、しかもアメリカの国内法にない補償金を取る。もしメカジキがかかった場合には二百七十二ドルだ。七万三千円も取られる。あるいはカジキの場合には、これは一匹五百ドルで十三万円だ、こういう国内法にない措置もとってきている。こういう点についてアメリカ漁業政策の変化というものをわれわれは注意深く見てみなければならない、こう思うのですが、今回の交渉にも、約二月以来交渉妥結までの間にもそういう背景があったと思うのですが、今日のアメリカ漁業政策の変化について、先ほどちょっと触れられましたけれども、この点伺っておきたいと思います。
  34. 松浦昭

    松浦政府委員 日米漁業関係につきましては、米国アメリカの水産業発展のために対米協力わが国に求めてきている。またこの協力度合いに応じて対日漁獲割り当て量を行っていくという、いわゆるフィッシュ・アンド・チップス・ポリシーという政策をとってきていることは事実でございます。このような政策のほかに、先ほど川田委員に御答弁申し上げました入漁料の引き上げの問題、さらには昨今捕鯨の問題も起こっておりますし、また、ただいま幾つか御指摘になりましたような非常にたくさんの問題がアメリカ側から提起されていることは御指摘のとおりでございます。  このようなアメリカ側考え方の基本には、やはり自国の漁業を発展させよう、そういう意図があることは明確でございまして、特に一昨年制定されましたいわゆるブロー法によりましても、今後とも日米関係につきましてはやはり相当厳しい事態が出てくるということを想定せざるを得ない状況にございます。特に米国漁業の振興のために外国漁船を終局的にはフェーズアウトしていくんだというような考え方もその裏にあるわけでございまして、さような意味では次第にこのような政策の強化が行われつつあるということは、先生御指摘のとおりだというふうに思うわけでございます。  しかし何と申しましても、わが国はこの水域におきまして百三十万トンからの漁獲割り当て量をいまだに確保できているという状況であることは否定すべくもない事実でございますし、ここは日米の友好関係というものを前提にいたしまして、何とかこれを確保していくということを考えなければならない。また同時に、伝統的な漁獲量漁獲実績としてわが方は確保してきたということを先方に十分に認識してもらわなければならぬというふうに考えるわけでございます。  そしてまた、ただいまもお触れになりましたように、米国の水産物の最大の輸出の市場はわが国であるわけでありまして、その意味では非常に大きな協力をしているということは事実であります。また、ことしの夏に決定いたしました洋上買い付けにつきましても、これはわが国漁船の安定的操業を一方で念頭に置きながらも、米国漁船から洋上の買い付けをするという新しい方策もとってきたわけでございまして、このような意味米国の水産業にわれわれは相当な協力をしているということも先方に十分に認識してもらわなければならぬということであると思うわけでございます。  このような事情を十分に米側に説明いたしまして、たとえ米側が、先生御懸念のような、またわれわれも懸念をいたしておりますような新しいポリシーをとってまいりましても、その間におきまして粘り強い交渉を展開いたしまして、米国水域での安定的な操業を確保していくということがわれわれの任務であるというふうに考えている次第でございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 漁業協定締結された直後、九月二十日に、新ブロー法と言われる米国の排他的経済水域法案、これが正式に上程されておるわけです。一方大統領署名による二百海里の主権的権利の宣言、これもいま継続的に議論されていると思うのでありますが、そういう意味で、この行方は非常に注目をしなければならない問題だと私は思うわけです。言うなれば、せっかく海洋法会議条約草案ができて、今回のこの目指しているものの内言を検討すると、これを超えるものである、これ以上に厳しいものであるという内容だと私は思うわけであります。この点について日本側としてはどういう判断を持っておりますか。
  36. 松浦昭

    松浦政府委員 現在米国の議会におきまして議論されている問題といたしまして、ただいま先生御指摘のような、さらに現状の外国漁船に対する米国二百海里内での操業規制を強化するという方向での討議が行われ、また法案等も提出されていることは、私どももよく承知いたしている次第でございます。これは余剰原則に基づきますところの海洋法における漁業の原則というものをある意味では超えているという状況でもあるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、私どもといたしましては、あの海洋法ができましたときに、つまり二百海里が実施されるという時点においてわれわれも納得したその原則に基づいて、米側がわが方に対する割り当て政策というものをとってくれるということを強く期待いたしますし、また同時にさような法案の動きに対しましてはいろいろな手段を使いまして、また外交ルートを通じましてもこのような動きができるだけ実現しないように努力をいたしておる状況でございます。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次漁業協定交渉の背景というものについて注目しなければならないのではないかと思うわけです。いわば先ほどから問題になっております今年度のクォータの問題、五〇%、四月、七月に二五、二五。四月はこれがずれて一五%と、最終的には七月三五%になる、こういう経過をたどっておるわけでございますけれども、このことは漁業交渉の経過とも無関係ではないと私は思うわけであります。同時にまた、これに付随する問題も同時並行的に交渉が行われているわけであります。そういう意味で非常に背景を持った中で今次の交渉が行われた、こう私は思うのでありますけれども、この点は認識はいかがでしょうか。
  38. 松浦昭

    松浦政府委員 御答弁を申し上げます。  確かに去年からアメリカ側はいわゆる分割クォータの方式をとってまいりました。これによりまして一月の割り当て五〇%、四月におきましては二五%のところをカットして一五%ということでやってまいりました。その結果、先ほども御答弁申し上げましたようにいわゆる計画的な操業に支障を生ずるようなそういう事態が生じていたことは事実でございます。私どもとしましては、この点につきまして先方にこのような分割の方式が非常にわが方の漁船操業影響があるということも主張をいたしてまいりましたし、また六月のシアトルにおいて行われました日米漁業者間の話し合いにおきまして、幸いジョイントベンチャー話し合いもつきましたので、その結果七月の割り当てにおきましてその削減分を含めまして全量が戻ってきたという状況でございます。  しかし、この背景におきましては、確かに今回の一連の米側の政策動きから見まして、先ほどから申し上げておりますような外国漁船に対する規制の強化というものが図られていることは事実でございまして、これと交渉とのかかわり合いというものが直ちにどのような面であらわれるかということは問題がありますけれども、しかしながらそのような背景を踏まえての交渉であったというふうに理解をすべきであろうと思います。さような意味で今回の日米漁業協定におきましても、わが方としてはそのような点につきまして非常にコーシャスに交渉をいたしておるわけでございまして、合意議事録等によりましてできるだけモデルGIFAを中心にいたしました漁業協定の内容を実質的にわが方に有利なように展開するように交渉いたしましたのもさような背景をにらんだからでございます。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 一昨年、一九八〇年にいままでのマグナソンの漁業資源保存管理法がブロー議員の大幅修正で漁業振興法ができた、このいわば初年度なんですね。それが先ほど割り当てに実はなっているわけであります。ただ私は交渉の経過をずっと振り返ってみますと、漁業交渉が進んでその中で洋上買い付け額の大幅拡大という問題がアメリカ側から出された。日本側は当初四万トン、それが六方トンに拡大をした、最終的にはそれが倍になって十二万トン、来年度はこれがさらに二十万トンに譲歩をするという形で、そういう背景で交渉が行われたわけですね。第二には、水産物の全面輸入自由化という問題が強く出された。特にニシンの問題は北海道漁連の九〇%を下げる、あるところまでいったんだけれども、他の品目との関係があって一応そういう状態でおさまっておる。第三番目には、漁業協定アメリカ側の案を一方的に日本側が認めるように要求する、こういう三つの課題というものを背景にして漁業交渉が行われた。だから漁業協定の内容もほぼアメリカの当初の原案、表現についてもそうだし、用語についても国内法の用語が全部設けられておる。したがって、後で議事録確認事項でいろいろ言われた。しかしアメリカ側立場から言えば、ある場合によっては今年のような事態が起きないということは言えないのじゃないかと私は思うのです。私は、そういうような背景で今回の漁業交渉が行われ、今回の協定ができたという点について今後の日米漁業関係を考えますと非常に厳しく受けとめなければならぬ面が多い、同時にまた、そういう意味でこういう背景を持った漁業交渉というのは非常に珍しいわけですね。  私は、そういう点で、日米関係が一応今回五年間の枠組みの協定はできたけれども、それは決してぴちっとしたものではなくて常に問題をはらんでいる、また国内法が変われば新しい問題が日本に提起をされてくる、漁業協定はあるけれども、枠組みはあるんだけれども、その内容がきちんと固まっていない、こういう不安定な要素を持った状態が日米関係だ、こう理解せざるを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  40. 松浦昭

    松浦政府委員 米側のここ数年間の動きを見ておりますと、ただいま先生が御指摘になりましたように、ブロー法改正を中心にいたしまして一つ政策が明確になっておりまして、先ほどフィッシュ・アンド・チップス・ポリシーと申し上げましたようなそういう政策のもとに一連の個別の交渉あるいは協定締結交渉が行われていることは事実であろうというふうに思います。私どもとしましては、さような意味で枠組みそのものにつきましても合意議事録の中でできるだけわが方の主張を入れ、安定的な操業を確保できるように努力したわけでございますが、そういった枠組みだけの問題じゃなくて、個別の年々の割り当て交渉あるいは貿易上の交渉、そういったものが次々と出されてまいりまして、それに対応するということ自体が米国との交渉であるというふうに思っておるわけでございます。さような意味先ほどから申し上げておりますように伝統的な実績を確保し、また同時にわが方の安定的な操業を図っていくということを、日米の友好関係の中において個別の交渉のたびにこれを確保していくということが必要であろうというふうに考えておりまして、私どもとしましては枠組みそのものができたということだけではなくて、個別の交渉そのものについて粘り強くやっていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 今後二国間漁業協定が結ばれていくわけですが、特に海洋法条約が批准された後、新たな二国間協定が結ばれていくわけです。その場合に今度の日米漁業協定一つの先例になる。しかし日米漁業協定の流れている内容を見ると、海洋法条約の草案の内容を超えている思想が含まれている、残念ながらこう言わざるを得ないと思うのです。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕  そういう意味で今回の日米漁業協定についてはわれわれとしてはそういうきわめて厳しい重大な関心を持って受けとめておるということを特に指摘をしておきたい、こう思うのです。  時間がありませんから次に移りますけれども、今年の日ソ漁業交渉の場合、問題はソ連側クォータに対する実績が三二%、日本は七〇%程度ということの実績が続いておるわけであります。昨年十二月のモスクワ交渉日本海漁場の一部を開放したわけです。これに対する日本側漁民の反論も強いわけであります。しかし今年はソ連側は未操業なんですね。せっかくあれだけ問題になって漁場協定をしたのだけれども、ここでは操業が行われていない。一体どういう理由操業が行われなかったのか。今度の交渉で確かめられたでしょうか。
  42. 松浦昭

    松浦政府委員 昨年の交渉におきまして日本側日本海水域の一部を開放いたしまして、そのかわりベルキナ岬以北の一部水域につきましてイカの操業を認めるということをソ連側に合意させ、また樺太の東側の水域におきましても一部操業区域を拡大するということで妥結をいたしたわけでございます。この水域につきまして実はことしはソ側操業いたしていない、こういう実態を私どもつかんでおりまして、当然今回の交渉におきましても、なぜこの水域について操業しなかったのかということは問い合わせをいたしました。先方が申しておりますのは、この日本海水域におきましてソ連漁船漁獲しなかった理由として、七月から十一月半ばまで当該水域において調査を行ったけれども漁獲の対象となる魚群を発見することができなかった、このために七月下旬にまき網漁船一隻が二日間入域したものの漁獲はなかったということを言ったわけでございます。しかし、わが方が科学調査船を出しまして七月に調査したところによりますれば、当該水域におきましてまき網の漁獲の対象となる程度の魚群は確認されている状況であります。このような状況でございまして、先方はそのような主張をいたしておりますが、ソ側漁船日本海の自国二百海里内においてかなりイワシ漁獲したという事実は私ども聞いておりますので、このようなこともわが国水域にあえて入域しなかった理由ではないかというふうに推定もいたしております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 今次の交渉で新しく追加された、太平洋の八小海区の一部、七―八月の着底トロール操業、二番目には太平洋の十七小海区の一部、まき網漁船二隻によるマグロ漁業の試験的操業を認めるということで、大体昨年同様のクォータで今回妥結をいたしておるわけであります。この二つの漁場についてわが国漁業に与える影響についてはどうなのかということ。  同時にまた、ソ連側は十項目の操業条件緩和要求を出して、その中で特に北緯三十五度三十分以北の日本海全面開放、私に言わせるとむちゃな要求を出してきたと言わざるを得ないと思うわけでありますが、この日本海の全面的な開放の意図ですね。わが国二百海里の全面的な開放というのは非常にむちゃだと思うのでありますけれども、この意図というものは私は非常に注目しているのでありますが、この二点について伺っておきたいと思います。
  44. 松浦昭

    松浦政府委員 まず第一点のお尋ねの今回のわが方が緩和した水域影響でございますが、御案内のように今回の交渉におきましてはわが方の操業条件緩和してくれということで、十項目にわたるきわめて厳しい要求先方はしてまいりました。これによりますれば、日本海水域はほぼ全面開放、それから太平洋水域はこれまた操業条件について大幅緩和という要求をしてまいったわけでございます。そこで、私どもといたしましては、このような条件は絶対受けられないということで厳しく拒否をいたしたわけでございまして、最後に交渉妥結を図るために二点についてのみ若干の緩和を行ったわけでございます。  まず、太平洋の八小海区の一部におきましてソ連着底トロール漁船を七―八月の二カ月のみ入れるということにいたしたわけでございますが、この水域につきましてはきわめて限定された水域でございまして、しかも期間も七―八月の二カ月ということだけでございまして、わが国漁業との競合が非常に少ないものというふうに考えたわけでございます。と申しますのは、これは東北のかなり沖の水域でございますけれども、この七―八月におきましてはイカ釣り等の浮き魚を対象とした漁船日本側としては操業しているわけでありまして、トロール船あるいは刺し網船は水深大体五百メートルよりも浅いところで操業することが多いわけでございます。ごく一部が五百メートル以深、深い方で操業しているということで、わが方の漁船との競合はほとんどないというふうに判断をいたしたわけでございます。  それから第二に小笠原の沖でございます十七小海区につきまして、これも一部につきまして二隻のソ連マグロ船の試験的な操業を認めたわけでございますが、この規制につきましては当該水域におけるわが方の操業状況は十分考えましたし、またその依存もわが国漁船にとってはそれほど大きくないという実態もございますし、またさらにソ連漁船のマグロの漁獲の能力、性能といったようなことも十分考えまして、二隻の試験操業の程度であれば問題は少ないのじゃないかというふうに考えましてこのような緩和を行ったというのが実態でございます。  それから第二に、日本海の広範な区域と申しますか、ほとんど全面的にこれを拡大してほしいということを言ってまいりました背景でございますが、これにつきましては、私ども交渉いたしております限りにおいて私ども感じ取った点でございますけれども、何と申しましてもソ側といたしましてはわが方の水域においての操業度が非常に低い、クォータ消化率が低いわけでございまして、これを上げるためにはできるだけ多くの水域において操業をさせてほしい。その場合において、日本海の彼らの水域におきましてはことしはかなりの程度の操業をいたしてイワシをとっております。したがって、日本海の接続するわが方の水域においても相当なイワシ漁があるのじゃないか、また大羽のイワシがあるのじゃないかということを考えて、この点については開放してほしいということを言ってきたものというふうに考えておる次第でございます。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 日ソ関係で言いますと、もちろんソ連側もスケトウの最大の好漁場割り当て漁場から外されているわけですね。また、わが国の場合にも最もいい漁場日本漁船がひしめいているわけですから、そういう意味では相互主義でそれぞれの漁場割り当てが行われている。しかし漁業技術その他の関係からいえば歴史的にも違いがあるし、潮流とかあるいはまた魚模といいますか、そういう把握についても日本側は長い伝統がありますし、ソ連側はそういう点では非常に短い時間だ。こういう点でクォータに対する実績が低い。実績が低いとやはりそれを理由にして必ず毎年毎年のクォータ交渉の場合に問題点が出てくるし、漁場の拡大が出てくる。この点についてどうわが国対応するかということが当面来年の交渉も控えて一つ重要な問題ではないのか。  第二の問題は、日ソ関係は枠組みができておるけれども、毎年協定なわけですね。ただ一つだけ今度自動延長に入ります日ソ漁業協力協定は五年間の協定であった。これも今年切れて、来年から自動延長に入る。そうしますと、毎年単年度のような状態にすべての四つの漁業協定がなってしまうわけであります。これを改善するためには、やはり五年間なら五年間、これが来年できるのか、あるいはまた海洋法会議で六十カ国が批准をして、一応効力を一年後に出すという条件の中で新しい交渉が始まるのか。いずれにしても、もうそろそろ日ソ関係も長期的な協定締結しなければならない段階を迎えている、こう言わざるを得ないと思うのですね。今回の交渉でそういう点について恐らく十分話し合いが行われたのではないかと思いますので、この二点について伺っておきたいと思います。
  46. 松浦昭

    松浦政府委員 前段の点についてお答えを申し上げます。  クォータ消化率がここ二年ほどソ連漁船については非常に低い状況でございまして、さようなことからわが方の操業条件に問題があるということで大幅緩和要求してまいったわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、このような日本周辺水域は今後の日本漁業というものを考えますると非常に重要な水域でございます。それからまた同時に、この水域における規制はほぼそのまま日本漁船にも適用されている水域でございます。さらにまた、わが国漁船ソ連側クォータを消化できなかった期間においても十分な操業実績を上げているわけでございまして、操業条件をこれ以上緩和することはとうていむずかしいということを今回も申しましたし、また今後とも言っていかなければならぬというふうに考えているわけでございます。  そこで、先方が来年もまたクォータを消化しないというような状況になりますと非常にこれはむずかしい交渉になるわけでございますが、実は私どもは去年の交渉におきまして、漁況、海況等も十分通報しよう、また、わが国漁船操業状況も通報するから、もう少しきちんととってみたらどうかという話もいたしたわけでございますが、残念ながら向こうは、好意はありがたいけれどもそれには及ばないというのが先方の答えでありました。このようなことで、交渉が進むという状況ではなかったわけでございます。  しかし、私どもとしましては、やはりイワシを中心とした先方漁船が対象としている魚種につきましては依然として今後も豊度は高いわけでございまして、しかも向こうの問題点はわが国周辺水域操業しないというところにあるわけでございますから、その点を十分に先方に納得させるべく今後とも交渉してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はやはり、漁場の問題については一つのぎりぎりぎっちょんの状態まで日ソ関係では来ている、これは恐らく政府も私の認識も一致するんだと思うのですね。したがって、今回の協定漁場及び漁獲量、安定さすことがもう望ましいということはこれも一致するのではないかと思うのであります。しかし、いずれにしても長期的な協定締結できてないというところが問題なんですが、今回、政府はカメンツェフ・ソ連漁業相の来日を今日の日ソ関係のこんな状況の中で正式に招請をしたということが伝えられておるわけであります。この目的と意義について、どういうお考えでカメンツェフ漁業相の来日を招請をしたのか承っておきたいと思います。
  48. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほどのお尋ねの中に、協定の期限の問題につきましてのお尋ねがございましたので、その点について私からお答えさせていただきたいと思います。  御案内のように、現行の日米協定は五年間の期限でございまして、これが十二月三十一日に切れますし、新日米協定も五年間の期限で締結されましたし、またこの協定は、有効期間延長が合意によりなされない限り五年間ということで、延長が合意によりされることも予定されているということで、五年以上を想定しているわけでございます。  当然日ソ間におきましてもそのような長期的な漁業関係の枠組みが望ましいわけでございまして、先生御指摘のように、漁業協力協定自体は五年間の期限を持っておりまして、さらに御指摘のように、今年の十二月三十一日以降は六カ月の予告をもって終了させない限り自動延長という形になるわけでございます。しかし残念ながら、この協定の実体的な意義を有しますサケ・マスにつきましては、御承知のように三条によりまして毎年作成される議定書によって決定されるということになっておりまして、その議定書を四月に日ソ間で合意に達しまして、国会で御承認いただいているという状況でございます。  それから今回御審議いただいております日ソ、ソ日の暫定協定につきましても、一年ごとに延長いたしまして今回が六回目の延長で、御迷惑をおかけしているわけでございます。そういうことで、私どもといたしましてもソ連側に対しまして、やはり長期の枠組みが望ましいということ、特に最近におきましては、二百海里内の漁業管轄権の問題につきましてはほぼ国際法的にも慣習法として確定しているではないかということを強く主張いたしまして、それから日ソ関係の安定という見地からも、ソ連側に対して協定長期化という話を絶えず強く主張しているわけでございますけれどもソ連側はやはり、現在の暫定協定の基礎になっているソ連側の国内法が暫定法であるということ、それから海洋法条約も署名には至ったけれどもまだ批准、発効には至っていないということを主張いたしまして、なお長期化に応じてない状況でございます。  今後とも日本側としては、さらに長期化努力を続けるという所存でございます。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 海洋法条約の署名会議、これが六日からジャマイカのモンテゴベイで開かれたわけでありますけれども日本側は署名を見送ったわけでありますね。しかし条約については賛成をした。アメリカは反対だ。ソ連、東欧圏、イギリス、ドイツは棄権をした。こういう中で今日署名に入ったわけであります。しかし日本は署名を見送ったんですね。何かレーガン特使のラムズフェルド氏が中曽根総理を訪問して、ぜひこれは署名を延期してほしい、署名しないでほしいという強い要請がなされた、したがって見送ったのか。聞くところによると、また一月か二月の早々にわが国はこれに署名をするんだ。署名すれば、当然通常国会にこの批准案件が提出をされると思うのですが、この辺の態度を海洋国家として明確にしなければならぬと思います。私は予算委員会で福田総理に、海洋法会議の帰結のいかんによってこれが一応合意に達した場合には、わが国は海洋国家として率先して署名、批准すべきである、当然そうですと、明快な答弁がなされているわけでありますけれども、どうも最近の政府の態度は不可解な点が多いのであります。この点についてひとつ伺っておきたいと思うのです。
  50. 熊谷直博

    ○熊谷説明員 お答え申し上げます。  海洋法会議に私出席しまして、つい先日帰ってまいりました。先生御指摘のように、あるいは報道その他で報道されていますように、今般日本政府は、ジャマイカでの条約の署名会議において条約署名を見送ることにいたしました。  これは、新しい内閣ができましてから短時日のことであったということがございますのと、それからこの条約が、国際的にもまたわが国自身にとってもきわめて重要な意義を有する条約であるということで、あらゆる側面から十分な検討を行って責任のある決定を新内閣として行うということが必要であろうということで、署名を見送ることといたした次第であります。  しかし、先生御指摘のように、政府といたしましては、この条約は新しい海の法律、法秩序を確立するという非常に重要な条約であり、海洋法条約に対するわが国の基本的態度は、御承知のとおり積極的でございまして、この条約には日本として署名すべきであるという基本的態度をとっております。このような基本的なわが国立場につきましては、今回のジャマイカ会議におきましても、代表である中川大使から明確に発言の中でも発言しております。各国代表に対しても疑問のないほどこの点は明確にいたしております。  署名の時期につきましては、条約の内容についてすでに事務的な検討は十分進めておりますので、いずれ近いうちに署名するということになります。この際検討対象にいたしておりますのは、来年の三月に将来の海の国際機関ができるに当たって準備委員会というものが開かれるわけですが、その三月の準備委員会に正式のメンバーとして参加するためには条約に署名している必要がございますので、そのタイミング等も検討しつつ、新内閣としての検討を進めて、いずれ近いうちに署名するということになると存じます。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 まあ、もっともらしい理由の答弁でありますけれども、九年間かかっているのですからね。しかも、日本の場合には各条項について問題がなくて、しかも最後の深海底資源の問題については、アメリカは率先してイギリス、ドイツ、フランスとミニ条約を結んで、日本は疎外をされておるという経過を持っているわけですね。だから早く批准をしなければならぬという態度を外務省はわれわれに説明をしておったのであります。ですから、もうそのセクション、セクションですべては消化されてきている問題であって、新内閣ができてそんなに時間をかけなければならぬという問題ではないでしょう。外務省では海洋法会議の対策室まで設けて、各省連絡を綿密にやって積み重ねてきた問題でありますから、そういう点でわれわれは非常に不信の念を政府に表明せざるを得ないわけであります。まあ言うなれば一般国民は、レーガン大統領の要請に多少顔を立てた、しかし海洋国家としては限界がある、だから三月以前には署名をする、こういうことになったのではないのかというのが一般的観測である。だから、アメリカの顔を見れば日本の外交政策が大体わかると言われる、こういう点をわれわれは非常に残念に思うということをこの機会に明確に指摘申し上げておきたい、こう思います。  そこで、これが署名されますとわが国もすぐ国会にこれをかけて批准をするわけでしょう。もちろんその段階では、アメリカを除いてソ連の方も批准をするでしょう。中国、韓国、これらの国々は一体どういう処置をするかという問題が残ってくるでしょう。いずれにしても、やはり新しい環境を迎えるわけであります。その場合に、従来の漁業専管水域二百海里という概念が、エコノミックゾーンとして経済水域二百海里に管轄権が及ぶ、漁業協定が従来のスタイルで漁業協定になるのか、一応基本的に経済水域としての協定になってその中に水産物、漁業資源が含まれるのかという点は、私は非常に重要な問題だと思うのです。特に対ソの関係では北方領土の問題があって、鈴木さんが農林水産大臣のときにわれわれもモスクワに行きましたけれども、大変な時間がかかって、一応従来の両国の主張は妨げないという形で、まあ知恵の出るところぎりぎり限界でできておるのがいまの協定だと私は思うのですね。そういう点で私は非常に心配するのであります。  そうしますと、海洋法条約というものを基礎にしながら、今後のこれに基づく発効後の二国間の協定、こういう一つの展望を考える場合に、いま言ったように特に重要な対ソの問題などを考え、あるいはアメリカ条約に批准をしない、国内法が先行していく、こういう北洋漁業の問題を左右する重大局面を迎えつつあるんだ、私はこう認識をするのでありますけれども政府はいかがでしょうか。
  52. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘のように、新海洋法条約が成立いたしますと、現在の二百海里漁業水域の概念は二百海里経済水域の概念に包摂されることになるわけでございます。そうなりますと、当然沿岸国の管轄権の及ぶ範囲は漁業のみならず資源一般あるいはその資源の管理、開発、あるいはさらにそれを超えて人工島の設置であるとか科学調査の問題、海洋汚染の問題等、かなり広範な問題について沿岸国が管轄権を主張し得る立場に立つということは先生御指摘のとおりでございますので、そういう意味では二百海里の水域の経済的あるいは法的な基盤というのが全く違った基礎の上に立つことになるということであろうと思います。そのような中において二国間の漁業協定をどういうふうに取り仕切っていくかということは、その海洋法条約が発効した段階関係国が十分に考慮をして交渉を行い、決めていく問題であろうと存じております。  ちなみに海洋法条約そのものの批准、発効の見通しということでございますが、これはあるいは熊谷審議官にお願いした方がいいかもしれませんが、いま言われておりますことは、この協定に基づきましても六十カ国以上の批准がないと発効しないわけでございますし、海洋法条約のような膨大な条約を、わが国にとってみましても四百条以上ある条約につきましてこれを国内法上いかなる整合性を保たせたらいいか、どのような立法が必要であるか等広範な検討を必要とするわけでございますので、その作業には少なくとも二、三年あるいはもっとかかるのではないかと思っております。そのように各国がこの条約につきまして国内手続を終えて六十カ国以上が批准して発効するというのには少なくとも七、八年はかかるのではないかと言われておりますので、まだ直ちに直面する問題ではないということは少なくとも申し上げられると思うのでございます。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 いまの答弁、私は非常に浅いと思うのですね。そういう認識では大変な過ちを犯すのではないかと思うのです。ということは、わが国がこれに署名をした、また批准をする、そして相手国が署名、批准をすれば、これは六十カ国の批准があって発効しなくとも、そのままお互いに意思表示したわけでありますから、その条約に基づいてどういう協定を結ぶか、相手国からそういう立場で物を言われた場合、日本側として拒否する理由がないでしょう。だから私は、そういう機械的に問題を考えてはならないと思うわけであります。一方アメリカの方は、批准しないかわりに大統領の署名宣言で主権的権利を宣言しようなんて言っているわけです。ですからそういう意味で、もしソ連が署名をした、批准するしないにかかわらず、まあ批准したでもいいでしょう、六十カ国にならなくともわが国も署名をする。わが国も早目に批准をしなければいかぬでしょう。そういうふうにその条約に基づいて相手の方から問題提起された場合に、わが国はいやでもおうでも対応しなければならぬわけでしょう。私は、そういう機械的に考えるべきではなくして、二百海里問題は先取りをしてすでに実施に移されているという認識に立つことが国際常識ではないかと思うのですね。私のこういう考え方は間違いでしょうか。
  54. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 海洋法条約の中に盛られております経済水域の概念というのは、比較的新しい概念でございまして、国家の実行において今後実証されていくべき内容を持っているものであると思うわけでございます。そういう意味で、その中の漁業に関する部分につきましてはかなり実行も積み重なりましたし、各国ともそれぞれの取り決めによりまして漁業の法的な枠組みを二国間あるいは多数国間でつくってきたと思うわけでございます。ですから、当面この漁業に関する限りにおいては、現在の経済水域の中において漁業に関する部分はいままでの協定の内容とそれほど大きく離れていないというふうに考えられますので、漁業条約の枠組みそのものにそれほど大きな影響を直ちに与えるというふうには私ども観念していないわけでございます。  もちろん、現在の海洋法条約漁業協定を超える部分というのは、たとえば遡河性のサケ・マスの問題であるとか、それから回遊性魚の漁業の問題であるとか、大陸棚の資源の問題であるとか、若干ございますけれども漁業取り決めそのものの大きな枠組みについては現在の経済水域の中での漁業問題の取り扱いもほぼ同じであるということが申し上げられると思うのでございます。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 わが国の隣接国家で韓国あるいは中国とか台湾には二百海里暫定法をいま適用除外で推移しているわけですね。それからソ連との間にはお互いに二百海里法があって漁業協定を結んでいるわけでしょう。しかも政府は、対ソ関係で一番最大の課題は北方領土の問題だ、こう言っているわけでしょう。だから漁業協定も大変な時間がかかって、わが国も領海法あるいはまた二百海里暫定法を早急に国会で審議をして、そしてまとまったという経緯があるわけでしょう。相手がどう出るか。わが方の希望的観測だけで、そのとおり相手も対応してくれればいいのですけれども、そうではないだろうと思うのです。ですからその場合に、管轄権の及ぶ二百海里経済水域という点から出発をして、その中でこの水産物の協定をする。そうすると、根っこは経済水域二百海里の問題が問題にされるわけですね。その場合に対ソの交渉というのは、いまの日ソ間の状況では、打開には非常に困難な局面に逢着する可能性ありと認識せざるを得ないのではないかというのが私の主張であるわけです。そういうことについては心配ない、漁業漁業で従来どおりいけるのだ、こうあなたは言っているのですが、それでいいですか。
  56. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  私が申し上げておるのは、心配がないということではなくて、当面漁業の枠組みというものが二国間のこの水域における実態的な必要を満たしているということでございますので、それからさらに、経済水域というものはこれから各国が協定を批准し協定が発効することによって初めて効力を持つ法的な概念でございますので、それまでにはなお時間がかかるであろう、そういう意味では協定が発効する前にある国がその協定に従って、海洋法条約に従って経済水域主張しても、それは日本側としては認める立場にないということになるわけでございます。もちろんその問題を見越していろいろな研究はなされるべきであると思いますけれども、直ちに焦眉の急の問題としてこれに対応する必要があるかというと、実態的にはまだそこまで至ってないという認識であろうと考えております。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 答弁がしづらいという点はわかりますけど、余り自信を持ってすかっと答弁されると、こっちもちょっと意見を言わざるを得ないということになる問題だと私は思うのです。そういう意味で非常に注意を喚起しておきたいと思うわけです。二百海里法は、これはもう全部先取りで来ているわけでしょう。海洋法会議条約ができる前にすでに二百海里法は国際常識でしょう。先取り先取りで問題はないわけでありますから、その部分で日本も署名し賛成をするのだという立場で、相手国もそうであれば、その内容に基づいて協定をしたい、こう言われた場合に拒否する理由はないと思いますね。そのベースで、土俵で、やはり交渉せざるを得ないのではないか、実態論としてこう言わざるを得ないのです。そういうことで、この点特に注意をしていただきたい、こう指摘をしておきたいと思います。  時間もありませんから、この機会に韓国漁船の問題についてちょっと伺っておきたいと思うのです。  最近、韓国側も、日本漁船とそれから海上保安庁の船がわれわれの操業を妨害している、こういうことがソウル発でもしばしば報道されておるわけであります。わが国の方は、日本海の武蔵堆を中心とした韓国トロール漁船の集中操業によって資源状況は壊滅の状態になったという点で、漁民大会も開かれて大変な問題になっておるわけであります。こういう状況で、いままで南北問題、こう韓国問題についてはよく言われてきたのでありますけれども、南においてもやはりいろいろな問題が発生いたしておるわけです。  そうしますと、今日段階で言えば、いま政府間で取り決めている暫定措置は来年の十月で切れるわけでありますから、そのことを目途にして改めて日本韓国の間に二百海里の相互適用という点に踏み切らざるを得ない状況になりつつあるのではないかと思うのですが、こういう国内動向と韓国の動向とをあわせてどう考えられておるか。  特に、私の知っておる範囲では、韓国側の太平洋におけるイカ流し網漁船操業、一本釣り漁船操業は、イカ流し網が三十二社、六十六隻、一本釣りの方は十四社、二十四隻。四十六社、九十隻が操業を認可されている。しかも、秋はサケ・マスの時期に当たるわけですね。当然、サケ・マス混獲の問題もあるわけであります。そういう問題も予想した以外に新たにつけ加わっておるわけであります。いわば日韓の漁業関係の調整はもはや避けて通ることができない、ある程度ぴちっとした秩序を築かなければならない、こういう段階に来ておると私は思うのでありますけれども、その点はいかがでしょうか。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 木内昭胤

    ○木内政府委員 岡田委員御指摘のとおり、日本の近海におきます操業につきましては韓国側に自主規制を求めておりまして、これが八三年の十月末までの話し合いになっておるというのは御指摘のとおりでございます。したがいまして、八三年の十一月以降、この方式をさらに更新いたしまして対応すべきであるかどうか、あるいは御関心の漁業水域に関する暫定措置法との絡み合いで対応していくかどうか、この点は、外務省といたしましては、水産庁とも慎重に御相談申し上げまして、すなわち、韓国漁船日本の周辺で展開していると同時に、わが方の漁船韓国水域に出漁しておるという要素もあるわけでございますので、全体を見まして、どのように対応すべきか、農水省御当局とも慎重に御相談してまいりたいと思っております。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間ですから、これで終わりますけれども一つは、サケ・マス定置漁業の免許の更新が五十九年に行われますから、来年は調整の期間になるわけであります。この点について、前回の第六次切りかえの場合の基本的な方針、いわば資源の配分の問題ですね。そういう点が考慮されて、協業化の方向が指導されたのであります。  ただ、この内容を見ますと、いろいろあるわけですね。Aというところでは、組合の自営であるけれども、実態は出資関係経営されているというのもあれば、許可は六項法人だけれども、実態が全然伴っていない。許可をとるだけの六項法人だ。六項法人の方が会社よりも税金がよけいかかるなんという話がもっぱらであるわけですね。もっとも、きちっと六項法人でやっているところもたくさんあります。あるいはまた、大型の、多数の漁民が入った会社経営という形で処理するところもある。しかし、個人経営がまだたくさんある。あるいは、実質二カ統あるいはまた間接三カ統の経営さえしているのもあるわけですね。ですから、これは問題は解決していないと思うわけですね。さらに、静かなる改革といいますか、漸進的な改革の方向をやはりとるべきである、こう思うのですが、この点についてどうかというのが水産庁に対する質問。  それから、外務省に対して、拿捕された漁民が二十九名現在抑留されて服役いたしておるわけであります。この場合に、抑留したという通報は来るわけですね。ただしかし、刑が一体どういう内容で確定したか、どこのところで刑に服しているのか、こういう点が定かではないし、非常におくれをとるわけです。したがって、家族が大変な心配をしているという問題が発生しておるし、私も外務省に指摘をしておいたところであります。あるいは文通についても、まあハバロフスクだろうと言って手紙をやれば返ってこない。向こうの方から手紙が来ない。いずれにしても、これはわが国の国民が外国に拘束をされて、しかも刑を受けておるわけでありますから、その人間の安全を確かめるということは外務省として積極的にやらなければならない問題だと思うのですが、この海域の場合は領事条約でぴちっとなっていませんから、この点はどう一体これに対応するのかということをきちんとしておいてもらわなければいかぬと思うのですね。この点を伺って終わりたいと思います。
  60. 松浦昭

    松浦政府委員 水産庁といたしましては、定置網の免許につきまして当然知事が漁場計画を樹立するわけでございますが、それに際しましては、漁場の実態の調査を行いまして、漁民の要望を十分把握して行うように従来から指導してまいったわけでございます。  ただ、たしか第九十四回の国会のときに前今村長官に御質問があったと思いますけれども、必ずしも現在の免許をした結果が実態に即応していないという御指摘があったことも私どもよく承知しておるわけでございまして、このような点を十分に頭に入れまして、定置漁業の免許と漁業実態が食い違っているもの等につきましては、今次の免許の切りかえに当たりまして十分にその実態を調査し、適切に対処するように都道府県に対しまして指導してまいっているところでございます。  特に、道東におけるサケの定置の免許と経営実態との関係につきましてもすでに道庁に対しまして私ども指導を行っているところでございまして、次回の免許切りかえの際にはこれを適正化すべく準備が進められているというふうに私ども聞いております。
  61. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 御質問のありました抑留漁船員の問題につきましては、政府としましては、従来から、これらの抑留されている漁船員の早期解放をソ連側に要請するとともに、これらの方々の健康状態とか抑留場所等についてもソ連側に随時照会し、留守家族に伝えるように努力しております。  たとえば、今年の四月の十三日には、ハバロフスク市において在ソ日本大使館員と本邦抑留漁船員との面会を行って、留守家族からの手紙及び慰問品等を手渡したというようなこともしておりまして、このような努力をこれまでもいろいろやってきております。今後とも、留守家族の方々のお気持ちを体しつつ、できる限りの援助をやっていきたいと考えております。
  62. 岡田利春

    岡田(利)委員 迅速にやってください。  終わります。
  63. 中山正暉

  64. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどからの御質疑を私承っておりまして、条約そのもののあり方ということについて少し疑問を感ずる点がございますので、限られました十五分しか時間はございませんから、その点を少しお尋ねをしてみたいと思うのです。  現行協定には、これ、ございません。アメリカ合衆国地先沖合における漁業に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の新協定の第五条についてお尋ねをいたします。  この中身は、もう申し上げるまでもなく、排他的な漁業専管権というものはアメリカ側にあるということを百も承知の上で、それはちょっと横に置いておいてお尋ねするのですが、条約締結する場合に、その条約を行うに当たって、依拠する法律というものが特定化されていない条約を私はいままで知らないのです。この法律に従ってこの条約は行うとか、この部分の取り決めはこの法律によって取り決めるということがみんな明記されているのが条約の通常だと私は思うのですが、この第五条の「合衆国の法律で定められた」と言われているこの「法律」はどういうものを指しているのです。お尋ねをいたします。
  65. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  第五条の規定ぶりからいたしますと、「合衆国の法律で定められた諸要素をその決定の基礎とする。」と書いておりまして、その要素は「次のことを含む。」ということになっておりますので、これは必ずしも特定の法律を基礎とするというふうには読めないのではないかと思いますが、当面、現在アメリカ側にありますこの協定に関連する法律といたしましては、御案内のように、一九七六年の漁業保存管理法、これはその後、三回にわたって修正を受けておりますけれども、現在ありますものはそれらの修正を全部盛り込み、最終的に一九八〇年のブロー修正案によりまして修正を受けましたマグナソン漁業保存管理法というものがその前提になっているというふうに考えております。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 というふうに考えますと言われるのは結構ですが、そんなことはこの条文を読んだらどこにも書いてないんです。よろしゅうございますか。  それで、現行マグナソン漁業保存管理法というのがあることはだれもよく知っているわけですが、現行法によるとも書いてありませんから、したがいまして、いまおっしゃったマグナソン漁業保存管理法ということを特定もしていない。また、現行マグナソン漁業保存管理法だけを指して問題にしているわけでもない。したがって、現在に至るまでこの法は改正されているわけでしょう。さらにこれから改正されないという保証はどこにもないのです。議会の中では中身を改正すべくしょっちゅう論議が沸騰しているということも私たちはかいま見て知っている。そうすると、いかがになるんですか。法律の中身については、改正された場合、その改正は諸要素の中の決定の基礎として読まれるということにも相なるわけでありまして、まことに不確定な中身なんですね。将来にわたってまでこれは、何だかえたいの知れない、合衆国がこれが法律ですとつくるもの全部に左右される中身になる、こういうふうに言わざるを得ないのですが、いかがでありますか。
  67. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この条文の構成ぶりからいたしまして、先生御指摘のとおりであろうと思います。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 そこでちょっとお尋ねをいたしますが、具体的に端的に言うと、白紙委任の状況だと申し上げていいと思う。白地委任といいますか、白紙委任といいますか、こういう条約の決め方をやることに日本がいままでよろしゅうございますと言った例があるかないか、これをちょっとお尋ねしたいと思います。
  69. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 他の条約の先例につきまして、ただいま直ちに思い至らないわけでございますけれども、この協定の五条に関する限りは、先生御指摘のように、決定の基礎として合衆国の法律で定められる要素が置かれるということは、これは受け入れたわけでございますが、その前提といたしましては、やはり合衆国側が漁業に対して管轄権を持っているということ、したがってこれはわが国との協定によってのみそのような要素が決められるという筋合いのものではないとアメリカが考えたこと、それについてはわが方としても異議を唱えるという、国際法の現段階におきましては、漁業に関する、あるいは漁業水域において、沿岸国が漁業について管轄権を有するという前提に立つ以上、それはある程度やむを得ない選択ではないかというふうに考えるわけでございます。  そういう意味で、ここにおいて例示されておりますのはあくまでも例示でございまして、八項には「合衆国政府が適当とみなすその他の事項」ということもございますし、そういう意味ではこれはやはり先生が一番初めに御指摘になられましたように、米国漁業に対する管轄権を認めた上で、その前提に立っての協定という基本的な性格が背後にあろうかと存じます。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 それは百も承知でと私が言ったことにはもう一つ意味があるのです。国際海洋法会議の趣旨からいたしますと、もう申し上げるまでもなく、御承知おきのところでございますけれども、余剰分については他国にその漁獲を認めるということが基本になっているのです。一国のエゴイズムを認めるわけにはいきませんよというのが世界の合意されている中身だと言わざるを得ない。いまこの問題について、あこぎなやり方でどんどんアメリカはやるに違いないなんというふうなことを私は断言いたしませんが、しかし、先ほど言うような意味からすると、歯どめが何か条約になければならない。どこに歯どめがあるかというのをいろいろ私は探索をしてみましたけれども、どうもないのですね。第五条の条文を見る限りにおいて、こんな条約はいままでにあったものではないと私は思っているのです。よろしゅうございますか、これは国際的条理からしても、条約締結する際に、条約の遵守する特定国の法律というのは特定されて明記されるべきだというのが条理ですよ。それからいたしましてこの五条の点は、私はこれはちょっと従来の条約の体裁からしておかしなものである。日本側がどの程度このことに対して疑問を持ち、異議を唱え、アメリカに対して日本側のお考えになった趣旨を徹底させるべく努力されたかということに対して疑問なしとしないと私は思っているのです。いかがですか。
  71. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生が御指摘になられました、いわゆる歯どめの点でございますけれども、生物資源の利用につきまして漁業管轄権が二百海里まで及んでいるという前提に立ちまして、国際法上これをどのように概念すべきかという問題にも関連してくると思いますので、海洋法条約の第六十二条において、海洋法条約自体が生物資源の利用についてどのように考えているかということについてちょっと言及してみたいと思います。  海洋法条約六十二条は、御承知のように生物資源の最適利用の目的を促進するということで、沿岸国は、自国が漁獲可能量のすべてを漁獲する能力を有しない場合には、余剰分を他国に認めるということが書いてあるわけでございますが、その三項におきまして、「沿岸国は、この条の規定により他の国に対し自国の排他的経済水域における漁獲を認めるに当たつては、すべての関連要因(特に、当該水域の生産資源が自国の経済その他の国家利益にとつて有する重要性、」等々、あるいは周辺水域漁民に対する配慮とか「経済的混乱を最小限にとどめる必要を含む。)を考慮に入れる。」と書いてあるわけでございますけれども、この海洋法条約自体が自国のその他の国家的利益というものがどういうものであるかということについて特定していないわけでございます。いわばこれは一般的な概念をこのように定めたわけでございまして、各国がその概念の中に、各国の特殊性に応じましてどのようなものを盛り込むかということは各国に任せているという形になっていると思わざるを得ないわけでございます。そういう意味では沿岸国に管轄権が認められるという前提に立ちますと、やはりその管轄権の行使の態様というものについては、これはこの操業を認められる国としては基本的な異議を唱える立場にないということではないかと思うわけでございます。  たとえば、日ソ漁業関係にいたしましても、ソ連協定に基づきまして日本法律に基づいて操業するわけでございますので、日本法律が変わる場合には、その法律の変わった内容に従ってソ連側操業せざるを得ないということは当然出てくる話であろうと思いますので、国内法に従って操業するということは、やはりかなりの裁量の余地は沿岸国に与えられていて、その裁量の余地の認める範囲で操業がこの取り決めによって認められるという一般的な仕組みになることはやむを得ないのではないかというふうに考えております。
  72. 土井たか子

    ○土井委員 いまのお話からすると、その二百海里を守備する姿勢というのはエゴイズムを押し通してよろしいということが原則となっているという物の考え方だと思うのですが、ただしかし、一たん入漁を認めているという相手国に対しては、こういう法律に準拠をしてお互いの割り振りというものを考えます、漁獲高というのを問題にしますというふうなことでないと、入漁をしているそれぞれの国々に対しては大変不安要素というのは増す一方だということも言わざるを得ないのです。いまの日ソの問題を取り上げておっしゃるのならば、日本側は準拠する法律を明記しているじゃありませんか、何法によってこれは考えるという。この第五条、いま問題にしている第五条は何法というのがないのです。不特定なんです。合衆国がつくる法律、すなわちあらゆる法律をこれは問題にするというかっこうになるわけですね。  時間がありませんからさらに申し上げますが、先ほど川田委員の方からのそういうことに関連する御質問に対して、都甲さんの御答弁を聞いておりますと、いや、それは大丈夫です、合意された議事録の中で、日本政府の側から、この五条に書かれる基準を用いるであろうことに留意しつつ、合衆国政府日本漁業者の過去における操業の実績に妥当な考慮を払うことを要請した、アメリカ側日本政府の代表者による要請に留意して、この要請が合衆国の法律の範囲内で考慮されるであろうことを表明しているから大丈夫であるがごとき御答弁だったのです。都甲さん、あなたぐらい英語に対して達者な人が、これをトランスレートされる場合に、どういう原文であったかということについて、まさにそれこそ留意しつつここはおやりになっているはずだと思うのだけれども、ここの四のところを見ますと、どういう英語が書いてありますか。「イン アコーダンス ウイズ ユナイテッド ステーツ ロー」と書いてあります。日本側操業の過去の実績というものを、向こう法律をつくるときに生かして法律をつくりますという意味じゃないんですよ。すでにもうつくられてしまっている法律の範囲内で、その法律に従ってとか、法律を行う中でとかいうふうな意味になるのですよ。  そうすると、日本側立場とか過去の実績とかいうふうなことはどういうふうに配慮されるのですか。どこまでもアメリカ合衆国がつくるところの法律に万事拘束されるのじゃありませんか。その中で、日本側がとやかく言うことについては、行うときに考えてあげましょう程度じゃないですか。だから、現行協定からすると、今度の新協定の中身というのは、スタートのところにおいて天と地ほどの差が出てくる、そのように考えておりますが、先日外務省の方からいろいろと御説明を賜りますと、大した差ではありません、基本的には現行協定と余り変わっておりませんという御説明だった。いいかげんなものだと私は思っております。この点いかがです。
  73. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 私どもが申しておりますのは、前の協定と全く変わってないということではなくて、アメリカの国内におきまして、アメリカの水産業の促進という観点を全面的に打ち出したブロー法というものが前提になって厳しい交渉を迫られたという前提に立って申し上げておるわけでございます。その前提に立って、各国としては、スペイン、韓国等でございますけれども、その法律に従ってつくられましたモデル協定そのものをのまざるを得なかった。それに対して、わが国は、日本アメリカの間には非常に長い伝統的な協力関係もあるし、実績もあるということを強く主張いたしまして、日米漁業関係は特殊であるということをるる主張した結果、米側がブロー法、修正されたマグナソン漁業保存管理法を前提とすれば、当然モデル協定によって日本側に同意してもらわざるを得ないけれども、しかしその実際的な取り扱いにおいて、日本側の過去の実績等特殊な関係があることは十分わかるので、それに配慮しようということで、合意された議事録の中でそれなりに配慮がなされたわけでございます。そういう意味で、私どもが申し上げておりますのは、全く従来と同じであるということを申し上げているわけではなくて、ブロー法という厳しいアメリカの国内における米国水産業保護の見地からの国内法にもかかわらず、米国としては最大限この枠内において配慮した協定ができ上がったということを御報告申し上げたつもりでございますけれども、私の言葉が足りなければおわび申し上げます。
  74. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃもう一度振り出しに戻りましょう。  第五条のような決め方をする条約というのは――通常はこういう条約の決め方はしない、このことは御確認を願います。
  75. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 ただいまの御指摘でございますけれども協定によりましては、国内法に従って何々するというようなことが書かれている協定がございます。そのような場合には、その国の国内法を特定されていないで、やはりその国の法律に従って特定な活動をするということをその協定で取り決めるわけでございますので、その際に、現存の法律のみを意味するという場合がすべてではないだろうと思うので、いま直ちに具体的な例を思い出せなくて申しわけないのでございますが、一般論としてはそのような取り決め方があるのだろうと考えます。
  76. 土井たか子

    ○土井委員 だろうじゃなくて、この辺は非常に大事なことなんですね。条約の取り決めの上で、ある国内法に準拠してその条約が行われるというふうな場合の準拠する法律というのは、これは何法によると特定化されるのが一般なんです。どういう具体的な法によると名称がちゃんと明記されるのが通常なんです。例を挙げろと言われたら、ここにありますから幾らでも挙げますよ。時間がございませんからあえて私は申し上げませんけれども、こういう決め方をしている条約というのは本当に普通ないのです。今回のこの第五条のような決め方は一般ではないということを私は認識しなきゃならないと思っているのです。都甲さん、それはそうでしょう。それはそうですよ。
  77. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 具体的な例についてはさらに調べた上で御報告申し上げたいと思いますけれども、一般論といたしましては、国内法を特定して、特定の目的について条約を結ぶ場合もございますし、ある活動について、たとえば通商航海条約その他で一般的にある活動を規定する場合に、その活動は国内法の規定に従って行われるべきだというふうに一般的に国内法の規定に言及する場合もあるわけでございます。その際には、現行の法律の規定そのもののみでなく、将来改正されることがあるべき、あるいは新しく設けられることがあるべき法律にも準拠して、特定の通商航海条約等一般的な活動を規定する条約においては、そのような規定をすることによって国内法に従った活動を確保するという取り決め方は各方面でしていると思いますので、具体的な例については追って調べて御報告申し上げたいと思います。
  78. 土井たか子

    ○土井委員 私がなぜこれに非常にこだわっているかというと、都甲さん、あなた、ごっちゃにされているのですね。多国間条約と二国間条約を一緒にしていま答弁されているわけですね。この条約は二国間でしょう。二国間条約について取り決める場合、法律によるといってその法律を特定しない、つくられる法律はすべてその国が主張して、それに依拠すると言えば、全部白地委任のような形になって認めていくなんというものは、いままで二国間においてないですよ。これを私は問題にしているのです。言っている意味がわかりますか。
  79. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先ほど私は通商航海条約に言及いたしましたけれども、たとえば米国との友好通商航海条約でございますけれども、その第九条におきまして、それぞれの国におきまして不動産に対する権利をどのように与えるかという条項がございます。それを見てみますと、「他方の締約国の関係法令で認められる不動産に関するその他の権利を与えられる。」と書いておりまして、ここでは特定の法律を指しておらないのみならず、その法律について特に限定を付してないわけでございます。このような決め方、特定の国の管轄に全く任されていることについてはその国内の法令に従って特定の権利が与えられたり、活動が認められるという決め方をすることは、二国間条約においてもそうまれではないと私は考えております。
  80. 土井たか子

    ○土井委員 これについての論争をやりますと時間がかかりますけれども、いまの通商航海条約なんかについては、オールマイティーを権利としてまず設定しておいて、それからその中身についてどうするかということが条約の中で条文化されていっているのではなかろうかと私は理解しております。この問題はそうじゃないでしょう。したがって、私はこれは非常にひっかかりますね。  これは条約のあり方ということになってまいりますから、別の機会にまたお聞きするとして、私はあと一点だけ聞いて、もう時間が来ておりますからおきたいと思います。  先ほどの合意された議事録の八項というのですか、八号というのですか、ここを見ますと、「合衆国の漁業規則の違反に対する刑に禁錮(こ)刑が含まれないよう勧告するものと了解される。」と書いてあるのですが、これは本来海洋法では体刑をしてはならないと定められている問題なんですね。にもかかわらず、こういうことをとりわけ言わなきゃならないということの理由が那辺かにございますか、何かあったのですか。
  81. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  海洋法条約におきましては、このような違反につきましては、特に特別に合意される場合を除くほか体刑を科さないという規定になっている、体刑を含まないということになっているわけでございますけれども、今回、日米間でこの合意議事録の八項を入れましたのは、わが方としてはこれをもちろんできれば海洋法の条文に合わせるということが望ましかったわけでございますけれども、米側はマグナソン漁業保存管理法の三百九節におきまして、漁業水域内における漁業活動の違反についてはこれを禁錮刑に処するという規定が明確に書かれておりまして、しかし米側は裁判所に対しては禁錮刑を適用しないように勧告するということが米側ができる最大限の措置であるということを強く主張いたしましたので、同じようなことは現行協定にもあったわけでございますけれども、その現行協定のそのままのやり方をここで踏襲するということにせざるを得なかったという状況でございます。
  82. 土井たか子

    ○土井委員 終わりますが、そういう部分的な問題については現行協定を踏襲せざるを得ないですね。大事な点については、現行協定の基本原則と申しますか、大事なその本体というものがどこかに吹っ飛ぶこともこれは仕方がないという姿勢で臨んでおられるのです。どうも私は、この辺は、新協定を見ますと、その辺の整合性と申しますか、日本政府アメリカに対してどういう姿勢で臨まれたかということに対して一貫した姿勢というのが見受けられない。何かそういう点で後わだかまりが残るような気のする協定であります。  先ほど来言われるように、漁業者の立場からすると非常に不安がこの協定自身の中にたくさんある協定だということを言わざるを得ない。向こう五年間の有効期間があるわけですから、その間よっぽど日本側とすれば毅然とした姿勢でこの協定に対して臨むということでなければ、恐らくは私は、本来の趣旨というものが海洋法会議等々で一生懸命に努力をされてきたことも那辺かに消し去られるというふうなこともあり得るのではないかなという危惧を私自身は持っております。  以上、時間の都合がございますからこれで終えたいと思いますが、残余の問題はまた次回に譲ります。ありがとうございました。
  83. 中山正暉

    中山委員長 玉城栄一君。
  84. 玉城栄一

    ○玉城委員 まず最初に水産庁長官に伺いたいのですが、五十六年度の「漁業の動向に関する年次報告」、漁業白書ですね。国会の方で報告されておりますが、その冒頭に、「水産物の供給は、海洋新秩序による多大な影響を受け、いぜん厳しい国際環境下にあるものの」これはよくわかります。その後、「ようやく落ち着きを見せつつある。」という認識が述べられているわけですが、きょうの三漁業協定の御質疑長官の一貫した御説明は、現状においても将来においても大変厳しいのだという認識を一貫して述べていらっしゃるわけですね。もちろん日米関係もあるいは日ソ関係も、あるいはおっしゃらなかったけれども捕鯨条約等のいろいろな問題がありますね。どういうわけで「落ち着きを見せつつある。」という表現がこの白書の中に出ているのか、ちょっと御説明いただきたいのですが。
  85. 松浦昭

    松浦政府委員 白書の中で書いてあります「落ち着き」という表現は、恐らく、二百海里が設定された当時における、全く日本日本漁船が入漁しておる国との関係の秩序がまだできていなかったころに比べれば、相対的に安定しつつあるということを申しただけでございまして、実態といたしましては、そのような枠組みは設定されつつも、その中身というものは依然として不安定な要素を持っているということは事実でございまして、さような相対的な意味での書き方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  86. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、おっしゃっているこの「落ち着き」とは逆、むしろきわめて厳しい状況に向かいつつあるということは言えるわけですね。  そこで、ひとつ日ソ、ソ日漁業協定について、これは長官にお伺いしておきたいわけですが、私、結論から申し上げまして、これは大変な譲歩をし過ぎたのではないか、そういう感じがいたします。これは昨年のこの協定妥結のときにも、ソ連側は、太平洋海域ですね、要求があった。これはもうだめだ、日本としては無理だ。したがって日本海側を譲歩した、一部ソ連側に提供した。そのかわり見返りとして北の方に新たに日本側漁場を確保した、そういう経過があるわけですね。  今回いわゆる三陸沖合い、小笠原沖合い、この二漁場になりますか緩和をされているわけですね。それに伴う見返りはどういうのがあるのですか。
  87. 松浦昭

    松浦政府委員 今回の交渉におきましては、ソ側要求してまいりました事項は、当初の要求は大変厳しいものでございまして、十項目にわたる要求をしてきたわけでございます。  これを一々申し上げますと時間がかかりますので一口で申し上げますれば、日本海水域はほとんど全面的に開放せよ、それからまた太平洋岸におきましても、漁期、漁法等につきましてほぼ全面的に操業条件緩和してくれということであったわけでございます。これを拒否をいたしますると、また現に拒否をしてずっと交渉したわけでございますが、全体のクォータ影響が出まして、減船等の非常な事態が生ずるということも懸念されましたので、その中の二つの事項だけ、それも第八小海区の一部の区域につきましての二カ月間の操業緩和するということと、それから小笠原沖の試験操業をマグロ船に二隻だけ認めるということのみで実は妥結をしたわけでございます。  もちろん、これにつきまして、見返りをとってないじゃないかというお話があるわけでございますが、もしも見返りの要求をいたしますれば、また現に、交渉の過程を余り細かくは申し上げることはできませんけれども、さようないろいろな過程におきまして、わが方が見返りを要求いたしますれば、当然向こう側としてはさらにきつい日本の沿岸に対する条件緩和要求があったわけでございまして、さような状況のもとにおきましては、最小限のわが方の条件緩和によって交渉妥結せざるを得なかったということが実態でございます。
  88. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、私最初に申し上げておりますように、この白書のおっしゃっておる、このいわゆる落ちつきを取り戻しつつあるなんという表現は、これは全く逆なんです。じりじり、じりじり後退していらっしゃるわけでしょう。来年はどうされますか。今回十項目ソ連側要求してきたわけでしょう。仕方がないから、まあ二つの、現実に、実態は、いろんな言い方があるでしょうけれども、いわゆる譲歩したわけです、見返りなしに。では来年はどうされるのですか。恐らくもっと要求してくるでしょう。それをじりじり、じりじり後退していって、だからそれでいいのかと、われわれ国民の側から見てそういう不安があるわけです。  では、この七十五万トンという数字ですけれども、それを維持するためにどんどん、どんどん譲歩する。そのバランスの問題だと思いますけれどもね。その辺はどのように考えていらっしゃいますか。
  89. 松浦昭

    松浦政府委員 実はソ連側日本側との間で非常に認識の相違がございます。向こう向こうで、日本水域におけるソ連操業というのは非常にアンバランスであって、自分たちが非常に損をしているという考え方を持っているわけでございます。  と申しますのは、クォータの消化、六十五万トンが三〇%程度しか消化できないという状況向こうはあるわけでございまして、わが方の七十五万トンの方は七〇%以上消化している。こういう状況で、そういう実態から、先方は、この日ソ、ソ日の両協定の間に非常にアンバランスがある、そういう認識をしている。その上で操業条件緩和ということを言ってきておるわけでございます。したがいまして、先方としては今回の二項目の譲歩によっても、向こう側の中に非常に大きな不満が残ると言って帰っていったという状況でございます。  これに対しまして、私どもの方としましては、沿岸の漁業を守るためにはこれがもうぎりぎりいっぱいであって、これ以上は条件緩和できないというところから出発をいたしまして交渉いたしたわけでございまして、双方の認識というものが非常に開いているというところに、この協定の更新に当たりましての交渉の非常に大きな問題があるわけでございます。  したがいまして、私どもとしましては、今後の交渉におきましても同様な主張をいたしまして、先方操業条件、わが方が先方に出している操業条件が問題ではないんだということをさらに強く交渉していくということ以外には方法はないというふうに考えているわけでありますが、一方、七十五万トンとの関係でございますけれども、七十五万トンにつきましては、何とかこれを維持したいという気持ちは持っており、また、特にそれが特定の魚種がかなりのクォータ減になりますと減船の問題が生ずる。特にわが方の漁船ソ連水域において活動している方々がその経営の基盤を失うということがあってはならないということもまた一方の大きな要請でございまして、その沿岸に及ぼす影響と、それからまたわが方の漁船先方において操業するという利益、これの均衡関係を考えまして処理をしていかなければならぬというふうに考えておる次第でございます。
  90. 玉城栄一

    ○玉城委員 昨年日本海岸のソ連に提供した実績として、ソ連漁船は一隻も来ていないというような状況もあるわけでしょう。とにかく、強い姿勢で、何とおっしゃるのですか、カメンツェフ漁業相ですか、政府が招聘されるということですけれども、そのあたりで再来年だってこれ以上譲歩できないわけですから、それこそ強い姿勢で臨んでいただきたい、そういうことを強く要望しておきたいと思います。  それから次に日米漁業協定についてでありますが、これは先ほど川田先生も、それから土井先生も御指摘ありましたけれども、これは外務省の方なんですが、いわゆる改正協定の四条四項並びに五条ですね。御答弁では、実害がないからということをおっしゃっておりますけれども、これはこういうことでは済まない。今後のわが国漁業政策上非常に重要な問題を含んでいると思うわけですね。ですから、実害がない、そのように合意書にも書いてあるからというのですが、簡単に言えば、アメリカ側日本に対して一方的に通告するわけでしょう、割り当て量というのは。いろんなことは参考にするけれども日本側の言い分もいろいろ聞くけれども、いずれにしても現行協定日米間で協議をして決定するというものが削除されて、今度はアメリカ側が一方的に通告をする、こういうことですから、協定上これはきわめて厳しいものになっていると思うのですが、それは間違っていますか。今後ですよ、あるいは三年後あるいは五年後。
  91. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  現行協定におきましても三条及び四条におきまして、協議の対象とするということと協議の結果を決定に当たって考慮に入れるということになっているわけでございますので、それを前提として決めるというほど強くは書かれていないわけでございます。そういう意味で、現行協定とそれから新協定の差ということでございますけれども、確かに先ほどのように協議の対象として明確に漁獲量決定というものが入っていないということと、それから決定に当たってその協議を考慮に入れるということはないわけでございますけれども、全体としてアメリカが運用においてその協議の重要性を強調し、さらにその法律の許す範囲内において日本側の表明する見解を考慮に入れるということをここに書き込みましたことは、実態においては従来とそれほど法的に言って日本側主張の根拠が強まったとか弱まったとかということはないんではないか。実態におきましては、やはりアメリカが国内法に基づいて国内法に決められた諸要素を考慮に入れて決めるという大きな国内法の枠組みが課されるということは、漁業管轄権をアメリカが有しているという前提に立つ以上やむを得ない。その運用において協議を行うとか考慮に入れるということが決められていることはそれなりに意味はありますけれども、しかし、だからといってそれが国内法をいわば乗り越えての大きな意味を持つというぐらいの実態的な意味を持ち得るかというと、それは運用の問題になるだろうと思うのでございます。そういう意味で私どもは、この両方の政府の了解事項として合意議事録に書かれたことというのはそれなりの意味を持つし、この運用を行うのは両政府の当局でございますから、その当局の了解がこのように規定されたということはそれなりの意味を持つのではないか。そういう意味ではこの法的な枠組みそのものよりも、どのような意図を持ってこの協定を運用していくか、あるいはその運用されるに当たって漁業関係がどのような実態を、今後協力関係漁獲量日本割り当てるという関係がどのような実態を維持していくかということの方が重要ではないか、このように考えているわけでございます。
  92. 玉城栄一

    ○玉城委員 少なくとも現行協定よりはこの改正協定というのはいま申し上げた部分については前進はしていないし、後退している、どうおっしゃろうが、私はそう思うわけです。といいますのは、例の捕鯨条約IWCのいわゆる三年後は商業捕鯨については全面禁止という決議、それに対して政府は十一月に異議申し立てをされているわけですね。  そこで、これは外務省の方になると思うのですが、なぜ十一月二日、これはタイムリミットは十一月四日ですが、なぜこういうふうにあわてて異議申し立てを、いまこの改正協定日米漁業協定交渉中ですよね。なぜそういう感情を害するようなという言い方になりますかね、わざわざそういうことをしなくてはならなかったのか。その理由……。
  93. 佐藤嘉恭

    佐藤説明員 お答え申し上げます。  十一月四日に異議申し立てを通告したわけでございますが、私どもといたしましては、この国際捕鯨委員会における決定そのものにつきまして、条約上の精神あるいはその科学的な根拠を欠いた決定であるというような観点もございますし、また食生活との深いかかわり合いあるいは地方産業との深いかかわり合いがあるということでこの問題について討論をしてまいったわけでございます。そういうような私どもの基本的な考え方は二日の時点においても変わっていないわけでございますから、私どもとしては、本来の考え方に立ちましてこの異議申し立てをいたしたということでございます。
  94. 玉城栄一

    ○玉城委員 すでにアメリカ側ではこの日米漁業協定については議会で承認をされているからいいようなものの、皆さん方の最初の話では、この問題との関連で今回のこの漁業協定は早く日本側でやっていただかないとというような理由もあったわけですが、米側は早目にやったわけです。  そこで、その十一月の二日に日本IWC異議申し立てをした。そのときに米側から、それをやらなければ日本側への漁獲割り当てをふやしますよというような話があったのかなかったのか。いかがですか。
  95. 松田慶文

    ○松田(慶)政府委員 御説明申し上げます。  十一月初旬、委員御指摘の異議申し立てを行うかどうかという間際の段階におきまして、米側から非公式に、それを行えば米国内における環境団体等の反発もあって、この日米漁業協定の審議に何がしかの影響があることを恐れるという行政府部内の懸念の表明がございましたし、その際にあわせて、もし日本がこの異議申し立てをしない結果、仮に捕鯨というものができなくなる、そして関係漁業者にとって非常に困る事態が将来起こった場合に、それを米国二百海里水域内の漁業ということに転換できるならば、その分の漁業割り当てをふやすということは十分考慮に値することであるという非公式の示唆があったことは事実でございますが、先ほど当局者御答弁のとおり、その問題とこれとは別である、捕鯨に関する私どもの基本的な立場はそれとして貫く必要があるということで、ただいまのような示唆にもかかわらず異議申し立てを行った次第でございます。
  96. 玉城栄一

    ○玉城委員 ですから、そういうことも振り切って政府としては早々に異議申し立てをされたわけでしょう。しかし、これはその前にペルーが異議申し立てをやっていますね。ということからすると、あれはまだ九十日余裕があるということですね。なぜそういう――私は、外務省あるいは水産庁も含めてでしょうが、きわめて慎重に対応していらっしゃると見ているわけですが、このことに関してはさっさとやって、むしろわが国がどちらかというと何か不利にならないかというような感じ対応をしていらっしゃる。その点が不思議なんです。  それで、このIWC決議、これは日本としては、三年後に捕鯨全面禁止されるという決議に対しては、非常に大きな問題であるから当然異議申し立てられたのでしょうけれども、これは根回しがちょっと足りなかったのではないかという感じもするのですが、いかがですか。いろいろ当時の報道を見ますと、多数工作の中に、大変拙劣といいますか、変なやり方をしていらっしゃるということですが、そういうふうな対応の仕方で果たしていいのかどうか。私は、先ほど申し上げましたように、三年後、商業捕鯨全面禁止ということをわざわざこの協定――先ほど申し上げましたとおり、そういうことをどんどんこういう方向に持っていっている。むしろ全面禁止という方針でいるのかどうかなという感じすらするわけですが、その辺いかがなんですか。
  97. 松浦昭

    松浦政府委員 まずお答えをいたしますのは、今回の七月に行われましたIWC決定に際しましてのわが方の根回しが足らなかったのではないかというお話でございますけれども、この点に関しましては、私ども考えられるほとんどすべての手段をとりまして、捕鯨国それから反捕鯨国に至るまで、あるいは中立国に対しましても十分な根回しをいたしたつもりでございます。また、現に、決定を行われる寸前におきましても、特定の国につきましては出先のわが方の大使が何回も先方を訪問しまして、わが方の意図を伝えた次第でございます。しかしながら、まことに残念なことでございますが、捕鯨が行われていない国あるいは全く新規に参入した国といったようなものが非常にふえてきておりまして、さような国の票の力がございまして、あのような決定になった次第でございます。  次に、お尋ねの、なぜこのような決定を北洋の問題があるにもかかわらずやったかということでございますけれども、私どもは北洋の漁業の大切さというものは身にしみて感じております。と申しますのは、この水域において百三十万トンからの漁獲を行っているという事実でございます。しかし、一方におきまして、捕鯨に従事している人たちも地域の産業としてございますし、さらに加えまして、従来までやってまいりました捕鯨考え方、これは科学的根拠に立って規制を行っていくという考え方でございます。そしてまた、これはこの捕鯨条約の精神でもあると考えるわけでございますが、それと必ずしも相入れない三年後のモラトリアムということが決定されました場合には、やはり政府としてこれに対する異議申し立てをしなければいけないという御意思がございまして、その結果、このような非常に両立させることがむずかしい命題を抱えながら処理をしなければならないという事態になったわけでございます。  そこで、われわれといたしましては、アメリカ側に対しましても、十分にわが方の態度を説明しながら、この北洋の、特に日米の新条約につきましての対応をやってまいったわけでございまして、幸いにして上下両院を通ったことにつきまして、私ども非常に安堵しているという状況でございます。
  98. 玉城栄一

    ○玉城委員 いろいろ大変努力をしていらっしゃることはよくわかります。それを前提にした上で、最初に申し上げましたように、質問の主題は、落ちつきを取り戻しつつあるなんという認識は、逆ですよ、これは書きかえなくちゃいけないということなんです。  それで、時間がありませんので、もう一つは外務省の方に伺いたいのですが、十月二十四日に日本漁船、第七幸丸がフィリピンのパラワン島沖合いで、フィリピン沿岸警備艇に拿捕されて、きょうで約二カ月近く、正確には五十五日ですが、経過しておるわけです。まだ解決しておらないわけですね。いつ解決するのか、どういう方法で解決されるのか、それを御報告いただきたいのです。
  99. 木内昭胤

    ○木内政府委員 御指摘のとおり、第七幸丸が十月二十四日、フィリピンのパラワン島沖合いで拿捕されまして、私どもといたしましては、早速、乗組員の身柄の安全の確保について、フィリピン当局に申し入れた次第でございます。遺憾ながら、この問題はまだ解決いたしておりませんが、現実には身柄の安全にフィリピン側はかなり好意的に配慮しておりまして、釈放されていないという事態を除けば、比較的自由に行動できるという状況にございます。  いずれにしましても、私どもとしましては、船主の意向も踏まえまして、早期に決着を図るべく引き続き申し入れております。フィリピン当局の結論も近々出るものと想像いたしております。行政処分によって解決できればということで、引き続きフィリピン側と話し合いを行っている状況でございます。
  100. 玉城栄一

    ○玉城委員 それは近々行政処分を期待しているということですが、具体的にはどういうことですか、近々というのは。それから行政処分、たとえば罰金で済まされるとか、船がそのまま没収されるとか、それはどういうことですか。
  101. 木内昭胤

    ○木内政府委員 まだ正式にフィリピン側から通報を受けてない段階におきまして、断定的に申し上げることはいかがかと思われるわけでございます。間接的な私どもの情報によりますれば、地方委員会から国家委員会にこの問題報告が上げられておりまして、国家委員会で現在、御検討中でございます。そういう意味合いにおきましては、早晩、結論が出るものと期待しております。  また、それに関連しまして、大使館で入手いたしております情報では、罰金という行政処分で何とか御決着いただけるのではないか。したがいまして、船体、漁具の没収ということには至らないのではないかと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、断定的に申し上げることはまだ若干、時期尚早ではないかという感じでございます。
  102. 玉城栄一

    ○玉城委員 長官も御存じだと思いますが、このフィリピンのパラワン島海域はマグロ漁場としてはいい方なのか、悪い方なのか、どんなふうな海域になるのですか。
  103. 松浦昭

    松浦政府委員 残念ながら、現在、フィリピンの二百海里の経済水域設定に伴いまして、この水域に入れない状況でございますが、かつての操業の実態から申しますと、マグロはえ縄船が約二百五十隻、カツオ一本釣り船が約九十隻でございまして、昭和五十三年の状況では約五千トン近くのカツオをとっていたということでございまして、かなりいい漁場だったということは言えると思います。
  104. 玉城栄一

    ○玉城委員 一九七八年六月にフィリピンは二百海里経済水域宣言をしているわけですね。四年になるわけですね。あの海域日本漁船、これは沖縄船籍の漁船がわりと多いのですが、二百海里経済水域向こうが宣言して四年、日本とフィリピン、当然そうですが、漁業協定を結ぶ意思というのはもう全くないのですか、あるのですか。あればこれまで交渉があったのですか。どういうわけでいままで漁業協定ができてないのですか。
  105. 松浦昭

    松浦政府委員 先生御指摘のように、昭和五十四年の五月に二百海里の経済水域の設定をフィリピンが行いまして、これが明らかになりました時点で、わが方の問い合わせに対しまして、先方は具体的実施に関しましては、フィリピン政府部内での調整及び関係国との協議等を通じて行っていきたいということを言ったわけでございます。ところが、そのような二百海里の設定に伴いましてトラブルが生じてはいけないということで、同水域から日本漁船を撤退させまして、わが方は入漁についての協議を行いたいということで外交ルートを通じまして申し入れを行ったわけでございます。さらに、昭和五十六年の一月でございますが、当時の鈴木総理がASEANの訪問を行われました際に、同行いたしました当時の亀岡農林水産大臣からも、フィリピンの天然資源相に対しまして、この具体的実施についての協議を行いたいということで申し入れを行っております。これに対しまして、先方では法制度がまだ未整備であるというような理由を挙げまして、現在に至るまでこれに応じていないというのが実態でございます。しかし、明年初めには先方の法制度が整うであろうというような情報もございますので、今後とも入漁協議に応じるように、外務省とも十分に協力をいたしましてフィリピン側に要請をしていくという所存でございます。
  106. 玉城栄一

    ○玉城委員 時間がありませんが、そういう協定にしろ、そういういろいろなことが早期にされておったならば、さっき申し上げましたそういう拿捕事件等も起こらなかったのではないかと当然考えられるわけであります。早急にこれはやっていただきたいし、同時にインドネシアもそうですね。フィリピンとインドネシア、その協定の今後の見通しを伺って質問を終わります。
  107. 木内昭胤

    ○木内政府委員 先ほど水産庁長官から御答弁申し上げましたとおり、フィリピン側の二百海里水域関連法の整備が遅々として進んでいない。したがいまして、亀岡元大臣が申し入れされたにもかかわらず進んでいないわけですが、水産庁長官の御答弁にもありましたとおり、明年早々にはあるいは若干の進展が見られるということであれば、玉城委員御関心の安全操業の問題につきまして遅滞なくフィリピン側と話し合いに入りたいと思っております。  インドネシアにつきましては、これまた二百海里関係法の整備がいまだ完結いたしておりません。ただ、インドネシアの場合にはフィリピンと違いまして、一部に事実上の暫定操業許可を得ておりまして、八十数隻が操業いたしております。この隻数を増大するといったような問題についても随時インドネシア側と話をいたしておりますが、問題の根本的解決となる法整備が実現していないということでは私ども遺憾に存じております。
  108. 玉城栄一

    ○玉城委員 以上です。
  109. 中山正暉

    中山委員長 渡辺朗君。
  110. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 このたびの日ソ日米漁業協定交渉に当たって御努力されました関係者の方々に感謝申し上げたいと思います。  最初に、日ソ、ソ日の協定について一、二お聞かせいただきたいと思います。  長官先ほどから、このたびの交渉の中でソ連側は非常に厳しい十項目にわたる要求を出してきたと繰り返し言っておられました。去年のことを思い出しますと、たしか長官は大変厳しい六点の要求ソ連側は出してきた。今回の場合、その十項目のうちどういう点が本当にソ連側のねらいだったのでしょうか。前回は六点のうち幾つかの点だけは譲歩をしたのですが、これはやはり向こうの方もどうしてもこれだけはというものがあるから出してきたのだと思うのです。そこら辺のところ、あなたの御印象をちょっと聞かせていただきたいのです。
  111. 松浦昭

    松浦政府委員 交渉当事者といたしまして、どこにどういう向こう側の力点があるかということは常に交渉の過程において探らなければならない要諦であると思うわけでございますが、必ずしも交渉の過程で向こうはこの点とこの点ということを申すものではございません。ある意味では交渉の過程でわが方が感知をして処理しなければならぬというようなことでございますので、ただいまの御質問に明確に答弁はできないわけでございますが、去年は日本海水域は非常に強く向こうが言ったということは事実でございます。  それから、ことしは、率直に申しまして、日本海太平洋を問わず全水域につきまして、とにかく自分たちのクォータの消化ができないし、そのためにはどこでもいいからと申しますか、わが方の十項目の要求を少しでも多くのんでほしいという言い方でございました。さような点から、私どもは逆にすべてのめないということで交渉をずっと続けてまいりました。最後に妥協できる点がどの辺であるかなということが、八小海区の一部と十七小海区のマグロ漁船の問題であったというふうにお考えいただきたいと思う次第でございます。
  112. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 昨年末の交渉の結果、日本海の一部にソ連側操業することを認めた。あのときに民社党の同僚の林議員の質問に対して、当時松浦長官は、太平洋側の方においてはもう操業条件というものはどうしてもだめだというふうに、突っ張って突っ張っていかれた。それはわかった。だからぎりぎりの段階で、最後の妥協点として日本海側の方を許したのだ、つまり太平洋側はもうこれ以上認められない、だから今度は日本海側は認めた、それが条件だったというふうな印象で私はあのやりとりを聞いておりました。それでよろしいですね。
  113. 松浦昭

    松浦政府委員 必ずしもそういう御印象を与えるような答弁をしたかどうかはここで定かではございませんが、去年の交渉の過程を通じてみますると、日本海についての譲歩を求める要求が非常に強くございました。それは太平洋岸における要求も強うございましたが、それ以上に日本海の面で非常に強かったという印象を受けて交渉いたしましたので、あるいは委員御指摘のような御印象を与えたというようなことがあったかもしれません。
  114. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 去年の議事録を持ってきましたら、実を言うとそのような言葉になっております。決して私、オーバーに言っているわけではないのです。「最後に残りました問題が日本海の問題であったということが実態でございます。」こういうふうにあなたが言っておられるのですね。つまり、どうもソ連交渉するときには非常に厳しい条件を出してくるが、その具体的なものになってくると、去年の場合は、どうも日本海側に拠点といいますか、一歩踏み込むというのをひとつ獲得する。この次には、今度は太平洋側の方で、試験操業か何かは別として、次に拠点をつくっていくという形の交渉ではないかという気が当事者としてするのです。私の印象は間違っているのでございましょうか。そこら辺、お知らせください。
  115. 松浦昭

    松浦政府委員 先ほどから御答弁申し上げておりますように、去年は日本海水域が非常に大きな問題になりまして、しかもそのときに、交渉が終えましてから私も御答弁申し上げておりますが、もうこれ以上の拡大はできませんということをはっきりソ側に申して帰ってきた経過がございます。さようなことで、ソ側はことしも、日本海操業についてはこれを非常に大きく、ほとんど全面的に開放しろということを言ってきたわけでございますが、この点についてはわが方の決意は相当かたいということは思っていたんじゃないかというふうに思われます。ただし、私ども、そうは申しましても、太平洋岸においても譲るというようなことは絶対申しませんで、太平洋についても非常にむずかしいということをことしも申したわけでございますが、最終段階におきまして、クォータのカット等によりますところの減船の問題、つまりわが方の漁船ソ連側操業する場合の状況も考えまして、そのバランス上、わが方の沿岸の漁業にとっての影響度を勘案いたしまして、太平洋側を今回は若干操業条件緩和をいたしたというのが経緯でございます。
  116. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そのことにつきまして、ちょっとしつこいようですけれども、一、二、また関連して御質問さしていただきたいのは、そのように、昨年の場合は決裂寸前までいって譲歩した日本海域であった。にもかかわらず、なぜソ連漁船操業していないんだろうか、私、素人でございますが、率直にそういう疑問を持ちます。これをひとつお答えをしていただきたいと思います。
  117. 松浦昭

    松浦政府委員 これは、去年あれだけ強く私どもにも言ってまいりまして、その結果、他の水域との代替をいたしまして譲りました日本海の一部水域につきまして操業をことしほとんど行わなかったということは、私どもも不思議でございました。したがいまして、わが方から問い合わせをいたしたわけでございます。これに対しまして、ソ連側は、七月から十一月半ばまでの間に当該水域において調査を行ったが、漁獲の対象となる魚群を発見することができなかった。このために、七月下旬にまき網漁船一隻が二日間入漁したものの、漁獲はほとんどなかったということを言ったわけでございます。これに対しまして、私どもとしましては、わが国の科学調査船は七月に調査をいたしておりますけれども、これによりますると、当該水域におきまして、まき網の漁獲の対象となる程度の魚群は探知されておるわけでございます。したがいまして、なぜかということは非常に私どもはわからない、特にソ連交渉いたしますときには非常にわからないことが多いわけでございますけれども、推測といたしましては、ソ連漁船日本海の自国二百海里内において、特に樺太の西の水域でございますが、沿海州沿岸においてかなりのイワシ漁獲しているという事実を私ども知っておりますので、恐らく、わが国水域にあえて入域する必要性が乏しかったんではないかなという推測もいたしている次第でございます。
  118. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それから、もう一つ関連して。いまのような御説明で納得できるようなできないような、よくわからない。長官もわからないと言っておられますが、そうしますと、たとえばこんな仮説みたいなものも立つんじゃないか。ソ連側日本海への海域に対して入漁を要求するということの真意は、必ずしも資源確保の問題だけではないんじゃないのか、同じように太平洋の方の要求もそういうものがあるのじゃなかろうか、こういう仮説が出てくるわけであります。これに対しては長官はどのようにお考えでございますか。
  119. 松浦昭

    松浦政府委員 その仮説がどういう仮説であるか、私もよくわかるようなわからないような気持ちがいたすわけでございますけれども、私ども漁業交渉をやっております限りにおきましては、漁業以外の問題に触れて向こう側の何らかの意図があるということは、先方はわれわれに全く表示をいたしませんし、また、そのような状態で交渉を行っておりますので、恐らく、委員、頭の中にある仮説につきましては、私どもとしてはそれをそうであるというふうに思えるような情況証拠は全くないわけでございます。
  120. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大変賢明な御答弁でございます。  ところで、もう一問だけ。これはソ連の新指導部、新政権の出現という時期と同じ時期に交渉をしておられるわけですね。ずっと折衝あるいは交渉を続けてこられたあなたとして、従来と何か違ったもの、何か変化というようなものもお感じになりましたでしょうか。対日政策、いささかでも転換、変更あり得るというようなものでもお感じになられたことはありませんか。
  121. 松浦昭

    松浦政府委員 私も海洋漁業部長をいたしておりました昭和四十九年から、ソ側とはずっと交渉をいたしてまいったわけでございますが、少なくとも、今回の交渉を通じまして、新政権の誕生によりまして特にこのような点で異なった対応をしてきたというような感じはありませんでした。少なくとも私が感じましたのは、逆にむしろ、漁業の問題に関しましてはソ側対応は変わっていないという印象を持った次第でございます。
  122. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうしますと、去年が六条件、今度は十項目、来年はもっと厳しい条件が出てくるかもわからぬ、こういうふうにも予測しながら対応しないといけないということになりますね。イエス、ノーだけで結構でございます。あなたのお答えを……。
  123. 松浦昭

    松浦政府委員 明年のことにつきましては、やはり日本水域におけるソ連船クォータの消化状況が依然として問題がある限り、非常に厳しい交渉が予想されると思います。
  124. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 次に、日米協定についてまた二、三お伺いしたいと思います。  いままで、日本政府は官民一体の形で米国に対して漁業使節団などを送ったりしまして大変な努力をしてこられた、米国の理解を求めるという活動をしてこられました。またまた、アメリカの二百海里水域内でのわが国漁船操業を確保するためということで、いろいろな条件、そういったものについてこれを改善するべく政府の方も努力してこられた。それにもかかわらず、今回締結された日米漁業条約の中身、この協定の中身は大変厳しいという印象を持ちます。  そこで、その厳しい条件になった、それが出てきた背景というのは何だろうか。個々のいろいろなことは私は専門外でわかりませんので、非常に背景的なもの、それをお聞きしたいのでございます。先ほども問題、御指摘がありましたけれどもアメリカのマグナソン漁業保存管理法、これが規定しているいわゆる米国漁業の保存水域内でのいかなる外国漁業も認めない、こういう非常に基本的なアメリカ立場があって、そして今回のような厳しい内容が盛り込まれたそういう協定になったのだというふうに理解していいのでしょうか、どうでしょう。そういう印象を私は受けるのですが、この私の印象は間違っているのでしょうか。
  125. 松田慶文

    ○松田(慶)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、米国におきまする漁業の基本方針、基本政策は、自国水産業、自国漁業の振興を図るという基盤がございまして、その枠組みの中で、従来の伝統的な諸外国との関係をも考慮に入れつつ仕事を進めていくということでございます。したがいまして、漁業管理法が年々といいますか改正のたびに自国漁業保護という形で強化されてまいりまして、その過程で五年の現行協定の終期を迎えたわけでございます。この間、二百海里の体系は国際的にも定着してまいりましたし、米側としてはこのような事態を踏まえ、わが方に対してもあるいはその他の入漁国に対しても厳しいと申しますか、自国水産業振興の見地から諸要求を出してきたことは御指摘のとおりでございまして、その意味では冒頭、委員御指摘の厳しい状況になったという点は私どもも共通の認識を持っておる次第でございます。
  126. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その厳しさというのはことしのわが国漁船に対する割り当て予定量、これはどういうふうな形で決定されるのかなということを考えた場合に、本協定の四条、五条、これが出てくるわけでありますが、いわゆる考慮基準、これに基づく査定制度が導入されています。これについてたとえばわが国漁業者の過去の実績というのはどういうふうに配慮してくれるんでしょうかね、考慮基準というものを。何か読んだだけではとても漠然としておりまして、どういうことになるのかなという気がいたします。特に、今度の漁業交渉過程で、政府としてはこの点についてはどういう確約を取りつけてあるのか、そこら辺聞かしていただけませんか。
  127. 松浦昭

    松浦政府委員 漁業の実績を勘案するということでございますが、過去の日本に対するアメリカ割り当ては約百三十万トンの割り当てをしておるわけでございまして、この実績は実は二百海里が施行される前の状態から比較いたしましても、さほどひどく、たとえば対ソ関係に見られるごとき大きな削減を受けていないわけでございます。また、他国との関係、たとえば韓国との関係その他の割り当て量の比較といったようなことから考えましても、百三十万トンの割り当てというのはやはりある程度までわが方の漁業の実績というものを尊重してくれているものというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら、当然それに加えましていわゆる先ほどから申しておりますフィッシュ・アンド・チップス・ポリシーというのがございまして、これはわが国アメリカ漁業協力する貢献度というものに応じまして漁獲割り当てをしてくるという要素がさらにこれに加わるわけでございまして、その要素を今後とも向こう側は勘案してくるだろうということは、これは想定しておかなければいかぬというふうに考える次第でございます。
  128. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはいまおっしゃったんですが、百三十万トンは確保できたわけですね。
  129. 松浦昭

    松浦政府委員 百三十万トン台の割り当てというのは本年の割り当てでございまして、明年の割り当ては目下水産庁からも斉藤審議官が出かけておりまして、鋭意折衝中でございます。
  130. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 これはもし構わなければいまどういう折衝をしておられるのか教えていただきたいと思います。特に、ソ連とそれからポーランドの本年度の漁獲量割り当て量はどうでございましたかね。たとえばポーランド制裁の問題が緩和してくるというような状況になれば、当然私の感じるのはそういうところへの割り当てもふえるだろうし、そうするとこちらの方にも大きくしわ寄せが来るんではなかろうかというふうに思いますが、いかがでございますか。
  131. 松浦昭

    松浦政府委員 目下交渉中でございますので、詳細はお許しをいただきたいと思うわけでございますが、概要について申し上げますと、一つわが国アメリカ漁業の振興にとって協力している度合い、これが一つの大きな問題でございます。この点につきましては、私どもは現在アメリカの水産物輸出の中で約五割の市場になっておりまして、非常に大きな協力をいたしておりますし、加えまして、本年の六月にいわゆるジョイントベンチャー洋上買い付けを取り決めまして、スケソウダラの洋上買い付けにつきましても大きな協力をしているわけでございます。さような点につきましては、アメリカ側はこれを評価しておりまして、日本との関係はその点については十分配慮されるということは言っておるわけでございますが、一方におきまして、漁獲割り当て量決定いたします際の基礎となりますところのアメリカの自分がとる分、これがことしよりもふえる可能性があるんじゃないかというふうに思われます。  それから、ただいま先生御指摘の点でございますが、ことしはソ連及びポーランドに対する割り当て量はゼロでございますが、恐らくソ連については変わらないのじゃないかというふうに思われますけれども、ポーランドにつきましては、ポーランドの戒厳令の処理の仕方いかんによりましては、あるいはそれに対する割り当てがあり得るかもしれないということは想定しておかなければならないと思います。しかしながら、その量は非常に大きくわが方のクォータ削減されるような量ではないというふうに考えられるわけであります。ただ、なお米国におきましては捕鯨問題につきまして対日割り当てについてこれを反映せよという強い意見も依然としてあるわけでございまして、さようなことから割り当て量につきましてはわが方はなお粘り強く交渉いたさなければならぬという状況であるわけでございます。
  132. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまの交渉の過程はもちろんこれ以上突っ込んでお聞きするわけにいかぬだろうと思います。ただ、わが国の水産業関係者の立場から考えてみるならば、そこに身を置いて考えたら、割り当て考慮基準というのが大変不明確だ、割り当て量が不安定だということになりますと、水産業関係だったらこれからの年間の操業計画、そういうものの立案が大変むずかしくなってくるのではなかろうか。この点、アメリカ政府というのはどんな配慮をしているのでしょう。なかなかそこら辺はきちっとしたものはできませんか。
  133. 松浦昭

    松浦政府委員 これは非常にむずかしい問題でございまして、ある一定のクライテリアと申しますか、基準というものを持ちまして、たとえばわが国割り当てに対しまして、わが国アメリカ漁業協力する度合いをかくかくしかじかというような一定のたとえば数値を持った基準といったようなものを向こう側から確保するということは非常にむずかしい状況になっております。これは米側にとりましても刻々の国際情勢は変化いたしますし、また同時に、常に日本協力というものは相対的な関係でございまして、他国の協力度合いとの比較といったようなこともございますので、それを一律の基準を設けてやるということはなかなかむずかしいかと思います。しかしながら、私どもといたしましては、あくまでも過去の操業実績また過去の割り当てというものは伝統的な一つの実績でございますから、これを基礎にいたしましてわが方が漁業の面で協力していく度合いも十分に考慮してもらい、そしてまたそのときどきの変化に対しましても粘り強く交渉していって、それが実績として重なっていくということを期待する以外にないのじゃないかと思います。さような意味で現在においても対米関係交渉を続け、来年度の割り当てにつきまして粘り強い交渉をしておるというのが現状でございます。  なお、年間を通じましての操業の問題でございますが、私ども一番気になりますのは、去年から三回に分割して割り当てをしてきておるということでございまして、今回の協定上も分割割り当てということが前提になっておるわけでございますが、この点につきましては先ほどから御答弁申し上げておりますように、合意議事録の中でできるだけ早期に年間の割り当て量というものがわが方にわかるようなことで通報してくるということになっておりますので、さような面での合意議事録の運用というものを通じまして年間計画に支障がないように交渉してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  134. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 十一条をずっと読んでいていろいろわからぬことがたくさん出てくるのですが、この十一条を読んでいましたら、「指名された合衆国の視察員が、要請により、日本国漁船への乗船を認められ、」云々、こう書いてあるのですね。これは英文の方で見るとオブザーバーとなっていますが、これはどんな資格で乗ってきて、しかも、それはどのくらいの期間かわかりませんが、乗船してずっと一緒にいるのですね。これはどういうことをやるのでしょうか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  135. 松浦昭

    松浦政府委員 この視察員の法的な性格につきましては外務省から御答弁があると思いますが、実態を申し上げますと、米国の視察員はわが方の漁船に乗船をしてきておりますが、その乗船率は漁業種類によって異なっておりますけれども、母船式の底びき網漁業それから大型トロール業、これはほぼ一〇〇%乗船をしてきております。それから、北転船等のいわゆる小型のトロール船につきましては、約三〇%の船について米国の視察員がオブザーバーとして乗船をしてきているというのが実態でございます。
  136. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 視察員の任務について申し上げます。  十一条三項に規定されております合衆国の視察員の任務につきましては、これは一般的にアメリカが排他的漁業管轄権を行使しております生物資源の保存管理の目的を遂げるために、米国商務長官が必要または適当とみなす科学的及びその他の職務を遂行するということになっております。それで、商務副長官承認すれば取り締まり活動も行うというふうに私どもは承知しております。
  137. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ここに書いてあるのは、どのぐらいの期間乗るのでしょうかわかりませんが、その視察員が乗船した場合に負担した費用、これは日本側が負担するのですね。どういう期間で、どれくらいのものを一人当たり補償しなければいかぬのでしょう。
  138. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 期間の実態につきましては後ほど御答弁いたすことにいたしまして、協定の仕組みといたしましては、その費用についてはわが方が米側に償還するという形になっております。
  139. 井上喜一

    井上説明員 オブザーバーの乗船期間につきましては、乗船をいたします船でありますとか、あるいは時期によりまして若干異なりますが、大体一カ月間程度乗っておるようでございます。
  140. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 一カ月乗っている、それから母船式の場合一〇〇%、小型船で三〇%のオブザーバー、つまりちゃんと決められた量をとるかどうか監視するわけでしょう、それがちゃんと一緒に乗っている。で、その一カ月くらい乗っている場合に費用も払う、幾ら払うのかわかりませんけれども、ばかにならない金額であろうと思います。  それに加えて、加えてというか、大変大きな入漁料をどうも払っていますね。しかもそれがどんどん上がっていっている。この一、二年見ましても、八〇年が三十五億、八一年が五十二億、八二年が七十億程度になってきているということになる。どんどん高くなってきて、ついでにお聞きしますが、八三年度は幾らになりますですか。そういうことになってくると、その上にオブザーバーが乗っていたらそれの費用も全部払うというようなことになってくると、商業採算上はアメリカ二百海里水域というのはおもしろみがだんだんなくなるんじゃなかろうか。人ごとながら本当に気になります。政府の方としまして、日本漁業者というのはこの趨勢でいきますと本当に負担に耐えられるのだろうかというようなことについてはどうお考えでございましょうか、ひとつ聞かしていただきたい。特に入漁料の決め方なんかもひとつ聞かしていただきたいと思います。
  141. 松浦昭

    松浦政府委員 五十八年の入漁料でございますが、目下実はこれも交渉中でございます。先方がわが方に通報してまいりました上げたいという金額でございますけれども、基本的に申しまして大体三三%程度上げたいということを申しております。さらにバイキャッチの価格、つまり混獲魚種の価格につきましても変更いたすということを申しておりまして、これも加えますと一・五倍ぐらいの値上げになるという計算になります。  そこで、私どもといたしましては、まさに委員おっしゃられますとおりでございまして、とうていこれでは経営が成り立たないということを先方に申しておりまして、わが方も向こう入漁料決定の際の手続といたしまして、外国漁船も含めまして入漁料のそのような通報があった場合にはそれに対するわが方の意見を言うことができます。これにつきまして、現在すでにわが方からただいま申しましたような、これ以上の負担はできないのだということの意見を申し、斉藤審議官クォータ交渉と同時にこの入漁料交渉もいたしておるという状況でございます。確かに先生がおっしゃいますように、このように入漁料がアップしてまいりますと、魚価は、これは消費者の方々にもできるだけ低廉な魚を供給したいということであれば、魚価を上げることは消費の減退にも非常につながるという問題でございますので、さような面で魚価はできるだけ上げたくないという気持ちがある一方、このように入漁料という非常に大きなコストがかさんでまいりますことは問題でございますので、これにつきましても粘り強い交渉をいたすつもりでございます。
  142. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いろいろそこについてもお聞かせいただきたいと思うのですが、時間もなくなりましたので、あと一つ、二つだけで終わらしていただきたいと思います。  いまのお話を聞いただけでも大変むずかしい交渉だなとは思いますが、先ほどのマグナソン法、これなんか中身を見ていっても許容漁獲水準の割り当てというのはいろいろな項目が基礎になっておる。水産物の輸入に関税障壁があるかないかとか、非関税障壁がどうだとか、捕鯨問題も絡んでくるというようなことになってくると、何かとてもこれからの日米の間の漁業問題というのは雲行きは大変に険しいと思わざるを得ない。ましてこの協定の中身を見ていますと、何か漁獲量にしても経済的な条件にしても、アメリカ側の好意というかフェーバーみたいなものにとても期待しておるような点がたくさんありまして、まともな交渉ではやっていけないような感じがするのです。  そこで、長官にぜひ聞かしていただきたいのですが、個人的な見解でもいいですから聞かしてください。アメリカの二百海里海域遠洋漁業の場合はいま過度の依存度があるんじゃなかろうか。本当にこれでいいのだろうか。ここら辺は考え直さなければいけないのじゃないか。あるいは、いやいやこのままで大丈夫だ、日米関係がうまくいくようになればもっともっと上手にやっていけるというふうにお考えでしょうか。ここら辺どういうふうにあなた自身いま腹の中に思っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  143. 松浦昭

    松浦政府委員 私どもの考えといたしましては、日米漁業関係というものは非常に厳しい状況が続いていくというふうに考えております。と申しますのは、一つブロー法改正等に見られますように、基本的に、アメリカ側としましては自国の漁業の振興ということを基本的な政策の柱にいたしておりまして、究極的には外国漁船をフェーズアウトするという気持ちがありまして、さようなことを私どもに示唆をしてまいっているわけでございます。  また同時に、先ほども申しましたようなフィッシュ・アンド・チップス・ポリシーということをはっきり申しておりまして、ただいま申されましたような米国の水産物の輸入に対する障害の軽減であるとか、あるいは資料、情報、知識の提供であるとか、合弁事業の促進とか、その他もろもろの対米協力を見ながら対日割り当てをしていくという基本的な姿勢を持っているわけでございまして、このような協力にもおのずから限度があるわけでございますから、さような意味でこの交渉には非常にむずかしい要素があるということを言わざるを得ないと思います。ただ、私ども考えておりますのは、このような基本的なアメリカ政策はありますものの、やはり日本の伝統的な漁業実績というものは当然これは主張し、また相手方に認めてもらわなければならないというふうにも考えますし、また同時に、日本はほかの国に比しましても相当な協力をしておるわけでございます。先ほども申しましたような水産物につきましては、米輸出の半分をわが方は輸入をしておるわけでございますし、また合弁につきましても、洋上買い付けをやっている。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕 ですから、一方的に向こうのフェーバーというものを期待するということではなくて、やはりわが方の漁船の安全なまた安定的な操業を害さない範囲において、われわれがアメリカに対しまして漁業協力をしていくという相互の依存関係をつくり上げることによりまして、今後のこの水域における操業を安定していきたいというふうに考える次第でございます。  しかしながら、これは口で申しましても、言うにはやすいですが、実際上は非常にむずかしい問題でございまして、やはり粘り強い外交交渉というものをやっていく以外には方法はないものというふうに考えている次第でございます。
  144. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 相互の依存関係をつくっていく粘り強い努力ということをおっしゃいましたが、ぜひそのような方向でがんばっていただきたいと思います。  ありがとうございました。終わります。
  145. 竹内黎一

    ○竹内(黎)委員長代理 次に、野間友一君。
  146. 野間友一

    ○野間委員 私も同僚議員に引き続きまして、この漁業に関する三条約についての質問をいたしたいと思います。  申し合わせの時間がありますので、できるだけ簡潔にひとつ答弁をいただきたいと思います。なぜなら、答弁のいかんによって私がきょう予定しております質問がこの申し合わせの時間にできないということのないようにお願いをいたしたいと思います。  まず最初に、海洋法条約に関する質問でありますけれども先ほどもどなたか聞いておりましたが、ラムズフェルド米特使が一日に日本に参りまして、中曽根総理と会いまして、署名をしないように、アメリカはこれに反対であるというようなことを前提にしながら要請をしたやに新聞報道はあります。そういう事実があったのかなかったのか、この点についてまずお伺いしたいと思います。
  147. 熊谷直博

    ○熊谷説明員 お答え申し上げます。  十二月一日にラムズフェルド米特使、大統領の特使でございますが、日本に参りまして、中曽根総理それから安倍外務大臣に会いました。この事実はございます。それで、その際、ラムズフェルド米特使は、アメリカ政府の海洋法条約に対する考え方を最高レベルでわが方に説明したい、それで意見交換をしたいということで参ったということでございまして、同特使は、海洋法条約の深海底開発関連の条項がアメリカにとって問題があるということで、条約全体に反対せざるを得ないというアメリカ政府考え方を説明しました。それで、これに対しまして中曽根総理から、新内閣として最終的な検討をまだ了していないけれどもわが国としてはアメリカ政府の持っている問題意識は十分に理解している、しかしわが国としては、条約を全体として評価すれば日本としてこれに署名すべきものであるというふうに考えているという旨をはっきり述べられまして、わが国の海洋法条約に対する基本的な立場を述べたということでございまして、日本も署名をするなというようなこととか、それからアメリカに同調して今回の署名会議において署名するなというインプリケーション、そういうたぐいのいわば要請というものではなかったということでございます。
  148. 野間友一

    ○野間委員 申し上げたように、質問したことに簡潔にお答えいただきたいと思います。もう長々とやられる必要はありませんので。  いま言われましたけれども、私はそれは一つのうそと申しますか、口実だと思うのですね。現に日本もいま署名しておりません。アメリカの要請にこたえていまのところまだ署名しないという現状があるわけですけれども先ほどからの答弁を聞いておりますと、近いうちには署名する、そういう趣旨の答弁がありましたけれども、これは通常国会冒頭に出すべくそういう段取りでいま進められているのかどうか、その点はどうですか。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕
  149. 熊谷直博

    ○熊谷説明員 お答え申し上げます。  海洋法条約は署名のために開放されたばかりでございまして、二年の間に署名すればよろしいということになっているわけです。日本は、今回は見送りましたけれども、いずれ近いうちに署名するということに決めて、そういう基本方針を持っております。  いま、国会にすぐ出すのかという御質問でございましたけれども、この海洋法条約を署名した上で批准いたしますためには、この海洋法条約と関連のある日本国の国内法を整備する必要がいろいろございます。関係省庁、十幾つもございますが、これといまも協議をいたしまして、どの点をどういうふうに整備をしていくかということを検討する必要がございますので、この次の通常国会に直ちにという、そういうことは現在のところ全く考えておりません。
  150. 野間友一

    ○野間委員 次に進みますけれども、これはいま十幾つの省庁という話がありましたけれども、後でどこどこかということをお聞かせいただきたいと思いますが、時間の都合で次に進みますが、早急にそういう手続を進められたいと思います。アメリカの顔色ばかりうかがうことはよろしくないと思います。  次にお聞きしたいのは、五条の「合衆国の法律」ということに関してお尋ねしたいわけですけれども、これは現行法だけではなくて、現行法の修正とか新法、こういうものが出た場合には全部この条約の五条に言う「合衆国の法律」というものに該当するというように土井委員にたしか答弁をされたと思いますけれども、これはそのとおりですか。
  151. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 そのとおりでございます。
  152. 野間友一

    ○野間委員 これは本当に大変な条章というか文言になるわけですね。私もこういう白紙委任したような条約なり法律というものは寡聞にして余り知らないわけですけれども、これは大変なことだと思います。特に、先ほどからもいろいろと質疑があった中でも出ておりますように、最終的にはこの二百海里から外国漁船を締め出すという動きが大変顕著になっておる、こういういまの時勢からしても、これが将来どういうことになるのかということは、私は大変憂うものでございます。  これは水産庁長官に確認をしたいと思いますが、七月九日付の水産経済新聞にもありますが、ゴードンというアメリカの海洋漁業局長、この人が「最終的には外国漁船米国二百カイリ内からフェーズ・アウトになる」とか、あるいはペレイラというアメリカのMRCの副社長、この人は「米国の目的は、米国漁民が獲った魚を米国人によって加工する体制を築くことだ」あるいは「五年以内に米国二百カイリ内で操業する外国船はいなくなるだろう」、こういうふうに述べたと伝えられておるわけですけれども、こういう事実は御存じなのかどうか、これに対してどういう見解を持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  153. 松浦昭

    松浦政府委員 米側としては、先ほどから御答弁申し上げておりますように、終局的には外国漁船米国漁業水域からフェーズアウトしたいという気持ちは持っているというふうに私は思います。そこでそのような発言の内容にもなっているというふうに思います。  したがいまして、私どもとしましては、さような理念は米側が持っているものの、先ほどから御答弁申し上げておりますように粘り強く交渉し、また同時に相互の関係というものを築き上げましてこれをわが方の安定的な操業につなげていきたいということで、実態的に問題を解決するという気持ちを持っております。
  154. 野間友一

    ○野間委員 私お聞きしたのは、いま二つばかりの彼らの言ったことを挙げて、こういう事実を御存じなのかどうかというようにお聞きしたわけで、これはどうでしょう。
  155. 松浦昭

    松浦政府委員 間接的にそういう事実があったことは知っております。
  156. 野間友一

    ○野間委員 さらに例のブロー議員のいわゆる排他的経済水域設置法案、これはいまかかっていますね。この提出に当たって演説を見てみますと、「二百海里内資源は本来的に米国の資源であり、たとえ余剰資源があっても外国に与える義務はない」、こう述べたと伝えられております。」これは演説の中で言っておるわけで、この事実については御存じだと思いますが、いかがでしょう。
  157. 松浦昭

    松浦政府委員 そのような発言があったという事実は私どもも知っております。
  158. 野間友一

    ○野間委員 これは考えてみると本当に大変なことですね。こういう一連の政府当局やあるいは関係の会社の幹部の発言、あるいは現にブロー議員が出しておるこの法案の中では余剰資源があっても外国に与える義務はないんだ、こういう立場に立った新しい法案を出しておるわけでしょう。そうしますと、いま申し上げたようにアメリカのいろいろな動き、意向、さらにはこういう新しい法律がもし通るということになればこれはまさしく合衆国の法律そのものになるわけですね。そうなりますとこの五条について、「合衆国の法律」にという表現、文言そのものが日本及びそこへ入っていく漁業国に対して非常に大きな打撃になることは当然だと思うのです。いま申し上げましたようなものが、こういう見解考え方がそのまま合衆国の法律にもしなった場合、この五条で言う「合衆国の法律」に該当するのかどうか、これはどうでしょうか、都甲さん。
  159. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  この五条におきましては、合衆国の法律で定める要素を決定に当たっての考慮要素とするということが定められているわけでございまして、この協定そのものとしては、やはり協力のもとに長期にわたって日米間の漁業関係を安定して維持していくことが双方の利益であるという概念が明確に打ち出されておりますので、これは今後の努力によりましてこの協定の枠組みをそのような方向に維持していくべき問題であろうと考えております。
  160. 野間友一

    ○野田委員 いま都甲さんも水産庁長官も粘り強いとか外交努力とか、そういう大変苦しい答弁をされたわけですが、そうでなくて、お聞きしたのはこういうたてまえ、論立てをすればこうなるんじゃないかということを私は聞いておるわけです。それに対してはそのとおり認めざるを得ない。つまり、将来出てくるであろう新法であれ、あるいは現行法の修正であれそれはそのまま合衆国の法律である以上そうなるわけですね。そうなったらこれはそんな粘り強いとか外交努力とかいうことで事の済むような問題でない。この点特に厳しく指摘して、後でまた海洋法との関係についてお伺いをします。  次にお聞きしたいのは、いま出しておられますこの日米漁業協定、新しいものの五条に関連して続けてお伺いするわけですけれども、私は、これ自体現行のブロー法の具体化であってけしからぬものだと思うのですね。たとえば、これも先ほどから出ておりますように対日漁獲割り当てに際して具体的にいま八項目が挙げられております。関税障壁、非関税障壁、その程度とかあるいは水産物貿易についての協力の程度、こういうものを割り当ての基礎とするということがこれに明らかに書かれておるわけですね。  そこで、これとの関係でもお聞きしたいのは、これも土井委員の方からも指摘があったのですけれども、海洋法会議における海洋法条約、これはいろいろ推移がありまして最終的なその条文は私は定かではないわけですけれども、第六会期とかあるいは第八会期の資料等によりますと、要するに余剰分については協定その他の取り決めにより、かつ沿岸国が定める条件に従って他国に入漁を認めなければならぬ、こういうことが、若干ながら表現上の差異はあるとしても基本的には定められておるということについて間違いありませんね。
  161. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 先生御指摘の点はそのとおりでございまして、海洋法条約の経済水域における生物資源の利用については余剰原則に基づいておりまして、自国が漁獲可能量をまず決めて、その余ったものについてはこの条約に決めるところによって他国に認めるということで、その際に、先ほども御指摘申し上げました六十二条三項等におきましては「すべての関連要因」を考慮してということになっており、その中には「自国の経済その他の国家利益にとつて有する重要性」等も考慮の要素として入れるということが決められております。したがいまして、そういう意味では沿岸国が余剰をそのような考慮で決めていくという仕組み自体は海洋法条約の経済水域も認めているところであろうと思います。
  162. 野間友一

    ○野間委員 だから、いろいろ言われますけれども、確かにいろいろ推移があることは私も承知しておりますけれども、基本的な仕組みそのものは私が指摘したようなことについて誤りがないということ、そのとおりなわけですけれども。  そうしますと、この六十二条と申しますかそういう、つまり余剰分については余剰資源を外国に与えるということとの関係で言いまして、先ほど私が申し上げたブロー議員の新しい法律案、たとえ余剰資源があっても外国に与える義務はない、こういう考え方は真っ向から海洋法のこの条約に違反する、こういうことになると思いますが、この点どうでしょうか。
  163. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 現在まで国際法、慣習法として二百海里漁業水域がかなり成熟してきてはおりますけれども、その具体的な内容についてはまだ明確な規定はないと言わざるを得ないわけでございます。それで、将来この海洋法条約が六十カ国以上の批准を見て発効いたしますれば、これがこの条約に入った当事国の間でこの明確な規定に従った法律関係に立つということになるだろうと思いますので、そういう意味ではこの規定が全部現行の国際法であるというふうにはなかなか言い切れないのではないかと考えます。
  164. 野間友一

    ○野間委員 聞いておることは、ブロー氏が言った余剰分は与える義務はないということと海洋法条約の、いまあなたも言いました、私も言いました六十二条の余剰分についての、これは人類共通の財産とするという原則ですね、これとは相矛盾するのじゃないかという質問ですよ。どうでしょうか、これは事実でしょうが。
  165. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 私、先生の御指摘の新しいブロー法案の内容を必ずしもよく存じませんですが、先生がおっしゃったような形で余剰原則を全く無視するということであれば、それは現在いわば慣習法として確立しつつある国際法の基本的な考え方には合致しない方向のものであろうと考えております。
  166. 野間友一

    ○野間委員 慣習法であれ、この海洋法条約の六十二条であれ、全く許されない米国のエゴイズムがそのまま出ておる。私はこれは許せないと思うし、同時にこういうものがこの五条の中に入る、それは一体どういうことになるのか。これは大変なことになると思うのですね。  さて、時間がありませんので続けますけれども、その点の指摘をして、もし時間があればまたお尋ねをしたいと思います。  余剰分の問題について、沿岸国が定める条件に従って他国に入漁を認めなければならない、私は第六会期の六十二条を引いて申し上げておるのですけれども、こういう国際的な、恐らく慣習でもあろうかと思いますけれども、こういう原則からして、沿岸国が定める条件、こういう海洋法条約の中での考え方の中に、文言の中に、果たしてこの協定の中にあります、たとえば水産物貿易での協力程度の有無とか非関税障壁、こういうようなものをいまの割り当てに関する考慮の対象にする、基礎にするということは、また私は許されないと思いますが、この点について政府はどうお考えでしょうか。
  167. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 この点につきましては、先生のお手元にある条文に載っておるのではないかと思いますが、六十二条の三項を参照いただきたいと思うのでございます。三項には、「沿岸国は、この条の規定により他の国に対し自国の排他的経済水域における漁獲を認めるに当たつては、すべての関連要因(特に、当該水域の生産資源が自国の経済その他の国家利益にとつて有する重要性、」を考慮するということになっております。そういう観点からしますと、米国の二百海里水域内における資源、米国が管轄権を有している資源について、これが米国の水産業の振興という目的に貢献するような形でこれを外国に認めさせるという考え自体は、これはなかなか否定しがたい考えではないかと思いますし、その具体的な内容としまして、米国の水産物をどのように買っているかということ、その具体的なあらわれとして関税障壁、あるいは水産貿易におけるその他の障壁を設けているかどうかということを考慮するということ自体は、これに反するというふうに断定するのは、かなりむずかしいのではないかという気がいたします。
  168. 野間友一

    ○野間委員 私は、それは大変アメリカの都合のよい立場に立った答弁をあなたはされたと思うのですね。私がここに持っておりますのは「海洋法と海洋政策」という雑誌のコピーですけれども、外務省に川上健三さんという参与の方がおられますね。この方が「国際漁業制度の動向と対策」というタイトルで論文を書かれておるわけです。これは御存じだと思うのですね。これの中でも明確に指摘をされておるわけですけれども、「水産物ないしは他の産品の貿易と外国への漁獲割当とのリンケージの傾向は今後さらに他に波及していく趨勢にあるといえるが、これは本来のEZ内の水産物資源の保存と利用ということからみて、その範囲を逸脱していることは明らかである。」こういうふうに川上さんは明確に言っておられるわけです。私は、これは真っ当だと思うのですね。ですから、沿岸国が定める条件、これは何でもかんでも定めていいというものでは決してない。一定のそういう規範があるはずなんですね。ここまで逸脱していいのかどうか、川上さんはその点の指摘をされておるのですけれども、これとあなたの答弁とは違うわけですけれども、いかがでしょう。
  169. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の論文の中の見解というのは、川上参与が私的な見解として表明しているものと考えますので、政府といたしましては、今協定によって五条に盛られているような内容というものは、現在の国際法の趨勢としてこれはやむを得ない内容ではないかという判断の上に、これを締結をしたわけでございます。
  170. 野間友一

    ○野間委員 私は、政府の主観的な努力、それはともかくとして、この前の、現行の協定に比べても、物すごくこれは後退しておるわけでしょう。しかも、今後彼らの一定の方針からすれば、さらに見通しとして大変暗いと申しますか、まだまだ大きな障害が出てくるということの中で、少しでも日本漁業を守る立場から外務省は物を考えるべきだ。都甲さんの発言を聞いておったら、まるでアメリカ考え方そのものだと言わざるを得ない、私はそう思うわけであります。  さて、また続けますが、ですから沿岸国、アメリカは何でもかんでも定めてよろしい、勝手に定めて勝手に――前は協議というのが条項の中にありましたね。協議は必要がなくなった。協議をしなくて、一方的に日本の要望を考慮するだけで足りるということになったわけですけれども、何でもかんでもこれは無制限に、勝手気ままにしてもいいということでは決してないと私は思うのですけれども、この点どうなんでしょうか。
  171. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 御指摘の点につきましては、先ほどから何回か私も御指摘申し上げたつもりでございますけれども、協議の条項とか、協議の結果を決定の際に考慮するという条項につきましては、これを協定の本文におきましては、横並びの問題もありまして削除されておりますけれども、合意議事録において、実際の取り扱いにおいては協議を重視し、それから日本側の要請についてもこれを合衆国の法律の範囲内で考慮するということが書かれているわけでございますので、これは運用の問題として、合衆国側の意図がどの辺にあるかということでございます。その点につきましては、この交渉の過程におきまして確認されておりますので、そういう意味で、私どもはいまのような表現の仕方で、運用の実態はそれほど変わらないものを確保できるのではないかと思うわけでございます。これは前の協定におきましても、当事者の運用に際しての意図いかんによっては、その実行の態様はいろいろ変わってくるわけでございますので、要はやはりこれだけの枠組みを決めた中でどのような運用がなされるかということであろうと思います。
  172. 野間友一

    ○野間委員 全然違うと思いますね。幾つかの問題があると思うのですけれども、合意された議事録、これは現行協定に比べて新しい協定は相当改悪になっておるわけですね。外務省は、私も部屋に来てもらっていろいろ話を聞いたら、必ずしもそういうことを言わない。ですから、私は善意で努力をされたということについては、これは評価するのです。ただ、客観的に前の協定に比べていまのこの協定、これをどう評価するかということは、善意の皆さんとまた別個の問題として、私たちは厳しく評価しなければならない。  そういう点から考えまして、たとえば割り当て決定についても、従前のような年に一回、これが三回も四回も分けてしなければならぬということにもなりますし、しかもこういう八項目にわたるいろいろな勝手気ままな条件を並べ立てて、そしてこの中で日本と協議をすることなく一方的に決めていく、こういうことになるわけでしょう。しかも、現行協定にあります「経済的混乱を最小にする必要性を考慮に入れる。」という文言も今度の協定の中で消えておるわけでしょう。合意された議事録の中には、幾つか運用の面で救うような表現があることは私は否定しません。しかし、少なくとも基本的な約束事の中身、重要な中身が協定から落ちて、そしてこのような議事録の中に下げられておるということ自体が、この評価において大変な改悪だ、これはあたりまえな評価だと思うのですね。  時間がありませんから、この点について続けて質問をしてお答えをいただきたいと思いますけれども、とんでもないことだと私は思うのですよ。ですから一般のマスコミでも、これはまさに著しく米国本位だ、この種の一方的協定の受け入れは、日本遠洋漁業の死命を制することになりかねない、これは八月十八日付の毎日新聞にも鋭く指摘をされておるわけですね。だから、この点について現行の協定と比べて、合意された議事録はともかくとして、協定そのものを客観的に評価すれば、これは相当改悪だという評価をせざるを得ないと思うのですけれども、この点についての評価を聞きたいということと同時に、まとめてお聞きしますけれどもIWC捕鯨の問題についてであります。私も和歌山でございまして、太地町が中心になりまして、いま背古という町長さんを初め私どものところに陳情にずっと来ておられますけれども、これについて日本政府は断固とした態度をとれということを常に言われておりますし、やっておられます。確かに異議申し立てをされました。ただ、私はこの捕鯨全面禁止に関して大変不安に思いますのは、十一月二日に異議申し立てをされた。その際の外務大臣の談話で、今回の申し立てわが国が三年後も捕鯨を継続することを決めたわけではない、いわば立場の留保のためと、わざわざこういうことを談話の中で言っておられるわけです。したがって、異議申し立てをした、だから三年先にもいままでどおりとれる、こういうことについての保証ではないということを政府みずから言っておるわけです。したがって、異議申し立てをされましたけれども捕鯨についてどのように今後対応し、対策をして、鯨の町、日本捕鯨をどう守っていくのか、この点について、これは二つ質問しましたけれども、お答えいただきたいと思います。
  173. 松田慶文

    ○松田(慶)政府委員 前半の御質問にお答え申し上げます。  新協定を現行協定との比較においてどのように外務省として評価をしているかというお尋ねでございますけれども交渉当事者といたしまして一年間交渉してまいりました私の立場で申し上げますならば、今度の協定に不満があるということは率直にお認めいたします。しかし、その不満は私どもの相手方、米国政府の代表者との交渉の結果の不満というよりは、むしろ米国漁業資源保存管理法が法律として米国の行政府を多々拘束しておりまして、このような枠組みの協定をつくらなければならない、それを義務として行政府に課しておる。そして、協定ができなければ当該国の入漁を認めてはならないというふうに義務規定として置かれている以上、行政府の当事者はその法律的枠組みの中でなるたけ従来の伝統的な関係であるとか日米友好関係であるとかを考慮して最大の努力を払ってくれましたし、私どももまたこの百数十万トンの漁獲が断絶することのないように安定的、継続的操業のためには何としてでも協定をつくらねばならぬということで三回にわたる苦難の交渉をしたわけでございます。先方は、漁業協定に盛られるべき事項が法定されておりますから、その法律に背馳した協定を結べば議会の承認が得られないわけでございますから、多々苦労した結果、お互いに合意議事録で法律の枠組みの中で行政府としての権能上許される最大の配慮をするということで、御指摘のとおり、残念ではございましたけれども協定本文から法律上やむなく落とされて、そしてそれを議事録で政府間の約束事としてあるいは努力目標として定めていったというのが実態でございます。したがいまして、私が冒頭申し上げました不満が残るというのは、交渉の結果というよりは相手のある仕事、しかも先方が排他的管轄権を持っているものにわれわれがそれをとるあるいはとらせてもらう、しかも日ソと違いましてこちらに見返りにやるものがないという状況の中での交渉結果であること、この点を十分御理解賜りたいと思う次第でございます。
  174. 松浦昭

    松浦政府委員 捕鯨について御答弁を申し上げます。  今回のIWC決定に対しましてはわが政府異議申し立てをしたわけでございますが、確かにその異議申し立てをいたしました際に、外務大臣及び農林水産大臣から先ほど野間委員の御指摘のような談話を発表なすったことは事実でございます。これはただいま御審議を願っておりますところの北洋の漁業をどうやって安定させるかということと非常に深いかかわり合いがあるわけでございまして、私どもとしましてはこの北洋の百三十万トンからの漁業も安定させ、かつ捕鯨も継続するというこの二つのむずかしい命題をどうやって処理をしていくかということの上においてこのような対応策をとってまいったところでございます。実際、今回のGIFA、つまり新日米漁業協定米国の議会を通過させることにつきましては非常な困難があったわけでございますが、ようやく先般通過を見たところでございます。  そのような非常に際どい交渉をやっているということは御理解をいただきたいと思いますし、また同時に、私ども異議申し立てをいたしました際に明確に政府考え方を申しましたように、捕鯨についてはこれを存続させていきたいという気持ちを持っておりますことはいささかも変わりはないということを申し上げ、このような立場におきましてアメリカあるいはその他の反捕鯨あるいは非捕鯨の国々とも話し合いの上で解決をつけていきたいというふうに考えていることを御了解いただきたいと思います。
  175. 野間友一

    ○野間委員 時間が参りましたので終わりますけれども、一言いま松田さんが言われたことについてですが、確かに努力されたということについては私も評価しておるわけですよ、相手あっての交渉ですからね。ただ問題は、客観的に見て、いまも言われたけれども、やはり非常にトーンが落ちて改悪、評価をすればそういうことになっております。  と同時に、これはやはりアメリカのエゴイズムが露骨に出ておるというように私は客観的に評価せざるを得ないと思うのです。海洋法条約の精神にも背馳するということなんですね。その点について指摘をして、後でまた続けて大臣御出席のもと質問をしたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  176. 中山正暉

  177. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 三協定について若干の質問をしたいと思いますが、いろいろな質疑がございました。関係者の皆さんがきわめて厳しい条件下でいろいろな御苦労をされたことに対しましては敬意を表したいと思います。  まず、日米漁業協定についてでありますが、ただいまもいろいろな協定交渉の背景について御説明がございました。しかし、いずれの説明にいたしましても、お話がありましたとおり、アメリカの二百海里内における日本漁業は非常に厳しい状況の中に置かれてきた。しかも、新しい状況下に置かれて新たな対応をしていかなければならぬ時代に来たのではないかということを率直に私ども思うわけでありまして、協定の内容について一、二御質問したいと思うわけでありますが、第四条と第五条では非常に丁寧に、いままでの協定の中では「日本国政府との協議を考慮に入れ」るあるいは「経済的混乱を最小にする必要性を考慮」する、こう規定してきたわけでありますが、新しい協定の中では非常に一方的な通告で決まっていく、こういう形に変わってまいりました。しかも、確かにわれわれから言えばアメリカの庭先に行ってとらせてもらうわけですから、しかもアメリカの二百海里という自分たちの主張のできる庭先で魚をとらせてください、しかも日ソ間とは別に一方的に日本はとらせてください、アメリカ日本に来てとるということではないわけですから、日本から言えばそういう非常に厳しい状況の中での交渉だということはよくわかるのです。しかし、いままでのいろいろな日本漁業の歴史がある。そして、日本アメリカとの二国間の協定というものもあるわけですね。その協定は一年に一回の割り当てをする、そういう方向で来たのですけれども、今度は五十七年度、つまり今年度はまだこの協定は生きているわけですよね。にもかかわらず、この五十七年度からすでに年三回も見直されている。これは日本漁業に従事している皆さんにも非常に混乱を与えている。少なくとも五十七年度はいままでどおりでいって五十八年度を見直していくというならまだ若干話はわかるわけですけれども、どうもそういう経過を見ますと、明らかにこの状況は変わってきた。そして少なくともアメリカにはアメリカの国内のいろいろな状況があることも御説明いただきましたけれども日本アメリカ協定がいままであって、しかも五十七年度はそれが生きている、そういうことをやはりアメリカ側ももう少し考慮してもらう必要があったのではないかというふうに私は率直に思うわけでありますが、交渉の中における経過を若干御説明いただきたいと思います。
  178. 松田慶文

    ○松田(慶)政府委員 御指摘のとおり現行協定では割り当ては各年に、アニュアルベーシスとなっております。これは運用上過去四年間年に一回総括割り当てであったことは御指摘のとおりであります。  このたび、ことしから米側の政策変更ということで分割割り当てをしてきたわけでありますが、これが条約違反であるかどうか、この点につきましては検討いたしましたが、私どもとしてそういう制度はなかなか納得はできませんが、条約上に照らすならば、アニュアルベーシスということは年間を一回だけですべて言うのか、あるいは数回に分けても差し支えないかということはなかなか決め手はございませんで、米側としては他年度にまたがって渡すのではなくて、一年は一年として割り当てるのだが、便宜上あるいは政策上分割して示すということそれ自身には必ずしも条約上の違反ということは出てこないやに理解いたしました。  いずれにしても、そのような制度を米側が政府としてとりました以上は、私どもも遺憾ながらそれに従わざるを得なかった次第でございます。
  179. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 そういう状況は私どもも再三言うようにわかっているわけでありますが、この新しい協定の中で、第六条でアメリカ漁業振興への義務づけというのが新しく加えられたわけであります。アメリカ日本協力、貢献ということを要求してきているわけであります。しかし日本側からすれば、アメリカの水産物の輸出の総額の約半分に当たる七百五十億円は日本が賄っている、あるいはスケトウの洋上買い付け問題にいたしましても、ある意味ではむしろアメリカ漁業の不振、不況というもののツケが日本に回ってきておるというような感じもする。相互の協力とか依存、お互いに協力をし合うというものがやはり日本アメリカとの間に、この協定の中にもう少し流れていかなければいけないんじゃないかというふうに思うのですね。日本アメリカの水産物を買うということにかなり協力しているわけですから、だから基本的な考え方として、もうアメリカの二百海里以内における日本漁業はこういう形で押し切られていってしまうということなのか、それとも日本は水産物の買いつけ等の条件を出して、そしてもう少し強硬に、やはりお互いに依存し合っていく、協力し合っていく、そういう関係をもう少し強くわれわれは交渉していく必要があるのか、政府の今後の方針についての基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  180. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに今回の漁業協定の第六条に規定されました対米漁業協力事項はかなり細かな規定がございまして、米国水産物の輸入等に対する障害の軽減であるとかあるいは資料、情報、知識の提供であるとか、あるいは合弁事業の促進であるとか、いろいろな条項が盛られていることは事実でございます。これに対しまして私どもも従来からわが国協力できる分野につきましてはかなり協力をしてきたという感じがいたしておりまして、ただいま委員御指摘のとおり洋上買い付けなりあるいは輸入の面につきましても相当な協力をしているわけでありまして、これについてはアメリカ側もそれなりの評価をしていることは事実でございます。  そこで、私ども今後の方針ということでございますが、もちろん、たとえば洋上買い付けを非常にふやすということがありまして極度にこれがふえました場合には、資源の量は一定でありますから、その中でアメリカの方の洋上買い付けがふえた分だけわが方の漁船がその操業によって漁獲が減少してくるということになりますとこれは大変なことでございます。したがいまして、それにはおのずからのバランスがあるというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、私どもの考えは、いままでのように一方的にアメリカのフェーバーだけにすがるということでは、将来の交渉をこのような厳しい時代にうまく妥結していくことはむずかしいということは考えておりますので、相互依存の関係というものを、わが国漁船が当該水域において安定的な操業ができる限りにおいてこの相互依存関係を築き上げて、それによってこの水域における安定的な操業というものを確保していきたいというふうに考えている次第でございます。
  181. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 それから第六条の協力義務というのがあるのですね。協力義務というのは一体具体的にはどういうことを指すのか。アメリカの非常に強い要請であるスケトウの洋上買い付けあるいは最近新聞紙上にも載りましたけれども、対日輸出の窓口の一本化なんということも一体これからそれに該当するのかどうか伺いたい。
  182. 都甲岳洋

    ○都甲政府委員 お答え申し上げます。  実態的な内容については後ほどお答えがあると思いますので、私は協定の決め方についてお答え申し上げたいと思います。  第六条は合意議事録の第五項とあわせて読んでいただきたいと思うのでございますが、合意議事録の第五項においては、「合衆国政府の代表者は、第六条の規定は求められることのある協力及び援助の種類を記述しているものであることを述べた。」ということが書いてございます。そして「合衆国政府の代表者は、また、合衆国政府が、第四条2の規定に基づいて日本国漁船割り当てられる部分を決定するに当たつて、日本国政府が第六条の規定に基づいて行う漁業の分野における協力及び援助のための努力に適当な考慮を払わなければならないことに留意した。」こういうことが了解として決められております。  これから見ましても、第六条はこれを全部一々具体的な問題について日本国側が協力を行わなければならないということを決めたものではなくて、むしろ第四条、第五条という仕組みの中で協力という問題が決められておりますのがアメリカ側漁獲量決定の基礎になっているという事実を踏まえて一般的に協力義務をここに課したものでございまして、ここに書いてあるようなことを全く行わないということであれば、これは、この条約の規定に反するということは言えると思いますけれども、それぞれの具体的な項目についてこれをやらなければ直ちに条約違反になるというようなものではなくて、むしろ合意議事録の第五項の精神においてこれは理解していただくことが適当であろうと考えております。
  183. 松浦昭

    松浦政府委員 法的にはそのとおりであると思いますので、実態につきまして補足して御説明いたしますと、ジョイントベンチャー洋上買い付けといったようなことは当然大きな協力の内容になっていると思います。  それから、いわゆる輸入の一本化というお話がございましたが、そのような報道がなされたことも事実でございますけれども、私どもが知っておる限りにおきましては、さようなことをアメリカ側から申し出てきた事実はございません。
  184. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 日本漁業をこれからもしっかり守っていただく意味で、どうぞひとつ強い姿勢で、しかもいままでのいろんな経過を踏まえてしっかり交渉を今後も続けていただきたいと思います。  限られた時間でありますので、一点、日ソ協定について伺いたいと思うのであります。  昨年のちょうど同じこの委員会で私は長官質疑をいたしました。そのときの漁業交渉で今度の交渉は今回限りだと、これは松浦長官の答弁でありますが、「私が帰ります際に、妥結を目前にいたしまして、私はソ連のクドリャフツェフ次官に、もうこれ以上の拡大は不可能であるということをはっきり申してまいった次第でございます。」云々とありまして、「わが方としては粘り強くこれに対してできないということを申しまして対応するつもり」だ、こういう答弁になっているわけでありますが、きょうの質疑の中でも明らかになりましたように、昨年は日本海側の一部開放に非常に強く固執をされたんですね。しかし、ここには漁船一つも入らなかったということなんですね。とても昨年の交渉の経過の御説明からすると、われわれ考えられないわけですね。しかも日本側の調査では魚はいたんじゃないか、こういうことでしょう。そうすると、はっきり言えばどうも漁業のための交渉ではなくて、もっとほかにその意図があったんじゃないか、こう言われても仕方がない。しかも、今度は太平洋岸に対しても二つの指定をしてきた。昨年のこういう経過を踏まえて、どういう認識を持っていられるか、伺いたいと思うのです。
  185. 松浦昭

    松浦政府委員 確かに昨年は委員御指摘のような御答弁を私申しまして、これ以上の拡大はできないということを先方にもはっきり申してきたということを御答弁申し上げたわけでございます。さようなことからも、ことしは日本海水域についてはこれ以上の拡大はできないということでがんばりまして、事実また、日本海については非常に大幅な拡大、ほとんど全面開放要求してきたことに対しまして、わが方としては従来どおりのラインで貫いたわけでございます。  しかしながら、確かにこの水域につきまして開放したにもかかわらず、全く操業しなかったわけでございますが、私どもの考えによりますと、沿海州の彼らの二百海里の中でかなりの漁獲量イワシについてあったようでございまして、わが方の水域まで来て操業する必要性がなかったのではないかというふうに推測はいたしておるわけでございますが、必ずしもその実態はわかりません。また、あるいは漁業以外の目的があったのじゃないかという御推測でございますが、少なくとも漁業のわれわれの交渉の過程におきましては、それ以外の問題に触れて彼らが言ってくるわけもございませんし、またわれわれがそれを感知するような発言もなかったわけでございまして、現実にそのような情況証拠と申しますか、そういうものはなかったということは申し上げておかざるを得ないと思います。
  186. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 時間が参りましたので、最後に、日ソ漁業交渉というのは、毎年ソ連のいろんな強い主張に後退、後退、譲ってきたという経過で、これは各委員も御指摘のとおりなんです。こういう形で毎年一年ごとの漁業交渉というのは、双方にとって余りいいことではない、長期のきちっとした漁業協定が必要だということは従来から言われてきたところであります。そこで、政府は、来年の二月にカメンツェフ漁業相を招待をした、二月には来るのではないかというような報道もされているわけでありますが、実際にその状況はいまどういうことになっているのか。答えは返ってきたのかどうなのか。それから、そのとき招待をしてもしこちらに来る、こういうことになったときにはどういう――漁業の問題いろいろ懸案があると思うのですね。かつて櫻内外務大臣が領土問題で二国間の話し合いをと言って訪日を要請したわけでありますが、それについては何の答えもなかった、そういう経過もあります。どういう内容についてお話しになられるのか。また、アフガン侵攻後正式な形で訪日をしたということはない。しかも日本は、政府レベルでの友好親善などを目的とした人的な交流には抑制をする、こういう方針で来たわけでありますが、その関係は一体どうなのか、伺いたいと思います。
  187. 田中義具

    ○田中(義)政府委員 カメンツェフ大臣の訪日につきましては、先般日ソソ日漁業交渉のために来日したクドリャフツェフ次官に対して、政府としての招請の意向を伝えたところでありますけれども、現在までのところまだソ連側からは正式の回答は来ておりません。  それで、カメンツェフ大臣と話し合う内容ですけれども、現在日ソ間には、日ソ、ソ日暫定協定長期化問題等漁業分野の懸案が存在しておりまして、これらの懸案についていろいろ話し合われるということになるものと思われます。  そのほか、日ソ漁業協力の推進、日ソ、ソ日損害賠償処理の推進及び現在ソ連における抑留されている漁船員の釈放問題等についても話し合われることが予想されます。  それからアフガニスタンへのソ連の侵攻との関係わが国がとっている対ソ措置の一つに、対ソ人物交流抑制の問題があるわけですが、これとの関連につきましては、政府としてはソ連との人物交流はすべてケース・バイ・ケースで慎重に対処してきております。今回のこのカメンツェフ大臣の訪日は、これは日ソ間の漁業に関する実務問題を協議するために来日するものでありまして、そういう観点からカメンツェフの訪日を認めるということでございまして、ケース・バイ・ケースで対ソ人物交流を慎重に検討していくという従来の方針を特に変更するものではございません。これはソ連の閣僚のアフガニスタン事件以後の来日としましては、これまでのソ連閣僚の来日はすべて民間等の招待に基づくものでありまして、日本政府の招請に基づいて来日するというのは、この来日が決まれば、アフガニスタン以後のソ連閣僚のそういう意味での来日としては初めてのものでございます。
  188. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 どうもありがとうございました。
  189. 中山正暉

    中山委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後七時十九分休憩      ────◇─────     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕