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1982-03-26 第96回国会 参議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十七年三月二十六日(金曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     宮崎 正義君      馬場  富君     三木 忠雄君      田渕 哲也君     木島 則夫君  三月二十六日     辞任         補欠選任     目黒今朝次郎君     安恒 良一君      対馬 孝且君     鈴木 和美君      近藤 忠孝君     立木  洋君      野末 陳平君     秦   豊君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         植木 光教君     理 事                 井上 吉夫君                 岩崎 純三君                 土屋 義彦君                 松尾 官平君                 竹田 四郎君                 矢田部 理君                 田代富士男君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君     委 員                 岩動 道行君                 板垣  正君                 岩上 二郎君                 亀長 友義君                 木村 睦男君                 藏内 修治君                 源田  実君                 古賀雷四郎君                 下条進一郎君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 谷川 寛三君                 藤井 孝男君                 堀江 正夫君                 宮田  輝君                 村上 正邦君                 八木 一郎君                 山崎 竜男君                 片岡 勝治君                 片山 甚市君                 鈴木 和美君                 寺田 熊雄君                 丸谷 金保君                 安恒 良一君                 山田  譲君                 大川 清幸君                 中野 鉄造君                 三木 忠雄君                 宮崎 正義君                 立木  洋君                 木島 則夫君                 秦   豊君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        内閣総理大臣   鈴木 善幸君        外 務 大 臣  櫻内 義雄君        大 蔵 大 臣  渡辺美智雄君        農林水産大臣   田澤 吉郎君        通商産業大臣   安倍晋太郎君        運 輸 大 臣  小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  伊藤宗一郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       河本 敏夫君    政府委員        内閣法制局長官  角田禮次郎君        内閣法制局第一        部長       味村  治君        防衛庁参事官   新井 弘一君        防衛庁長官官房        長        夏目 晴雄君        防衛庁防衛局長  塩田  章君        防衛庁経理局長  矢崎 新二君        防衛庁装備局長  和田  裕君        防衛施設庁長官  吉野  実君        防衛施設庁施設        部長       伊藤 参午君        経済企画庁調整        局審議官     大竹 宏繁君        外務大臣官房審        議官       松田 慶文君        外務大臣官房審        議官       田中 義具君        外務省アジア局        長        木内 昭胤君        外務省北米局長  淺尾新一郎君        外務省中南米局        長        枝村 純郎君        外務省欧亜局長  加藤 吉弥君        外務省経済局長  深田  宏君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  栗山 尚一君        外務省国際連合        局長       門田 省三君        大蔵大臣官房審        議官       吉田 正輝君        大蔵省主計局長  松下 康雄君        大蔵省国際金融        局次長      大場 智満君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        通商産業省通商        政策局長     若杉 和夫君        運輸省航空局長  松井 和治君    事務局側        常任委員会専門        員        道正  友君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十七年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十七年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十七年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 植木光教

    委員長植木光教君) 予算委員会を開会いたします。  昭和五十七年度一般会計予算昭和五十七年度特別会計予算昭和五十七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  本日は、お手元の質疑通告表のとおり、外交防衛貿易摩擦に関する集中審議を行います。  まず、櫻内外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。櫻内外務大臣
  3. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は、三月二十日より二十五日まで米国を訪問し、レーガン大統領及びブッシュ副大統領を表敬訪問し、会談したほか、ヘイグ国務長官を初め関係閣僚及び上下両院外交委員長等意見交換を行う機会を得ました。  米側との意見交換に際しては、私の基本認識として、第一に、日米両国は、自由と民主主義という価値観を共有する同盟国であり、緊密な日米関係維持・発展を図ることは、わが国外交の基軸としてきわめて重要であること、第二に、緊密な日米協力関係は、単に両国にとって利益となるのみならず、西側全体が一致協力して、現下の厳しい国際情勢に対処する上での前提であること、第三に、わが国としては、西側諸国一員として、二国間はもとより、国際関係の広範な分野において、わが国の国力と国情にふさわしい国際的責任を果たすべく努力を継続する、との三点を踏まえて、東西関係アジア情勢中東情勢、中米・カリブ情勢軍縮ベルサイユサミット等につき幅広い意見交換を行いました。米側は、前記三点の基本認識に基づくわが国外交努力、なかんずく、アフガニスタン問題、ポーランド問題等に関する西側一員としての協調的対応経済協力への積極的対応等についてのわが国政策を高く評価しました。また、来るべき軍縮特別総会については、わが国との密接な協議を約しました。  防衛問題については、米側より、わが国が来年度防衛予算の増額を決定したことを評価するとともに、今後とも、役割りと任務の分担にふさわしい防衛力増強努力を続けてほしいとの期待表明が行われました。  経済関係では、わが国市場開放問題を中心に活発な意見交換を行いました。米側からは、これまでのわが国努力は評価しつつも、米議会における相互主義立法の動き、あるいは、欧州における保護主義高まり等事態は緊迫しつつあり、日本側においては、ベルサイユサミットまでにできる限りの市場開放努力をしてほしいとの強い期待が表明されました。  私からは、保護主義各国経済の不調に伴って生じているものであり、世界経済の再活性化、特に米国経済の再活性化が重要である旨、及びいわゆる相互主義立法は、内容等いかんによっては保護主義につながるものであるので、米側の良識ある対応期待する旨等指摘するとともに、わが国市場開放については、すでにとった一連の措置につき説明するとともに、ベルサイユサミット念頭に置いて、可能な限りの努力を続ける旨明らかにしました。  私としては、このような状況にもかんがみ、わが国としての自主的な立場から、市場開放問題に一層積極的に取り組んでいくべきであると考えます。  日米航空交渉については、レーガン大統領より、同交渉が妥結の一歩手前まで行きながら不成立に終わったことは残念であるとの失望とともに、今後の事態解決へ向けての努力についての期待が表明されました。  私としては、今次訪米の目的は十分達せられ、きわめて有意義であったと考えます。今後、今次訪米を踏まえての諸政策を進めるに当たりまして、各位の御協力を賜りたいと存じます。     —————————————
  4. 植木光教

    委員長植木光教君) それでは、これより質疑を行います。井上吉夫君。
  5. 井上吉夫

    井上吉夫君 外務大臣大変御苦労さまでございました。ただいま報告をいただきましたが、なお若干の点についてお伺いを申し上げたいと思います。  まず第一は、外務大臣は、訪米に出発される前の本委員会における質疑応答におきまして、今回の訪米外務大臣に就任して初の訪米であるから、国際問題一般日米関係全般について意見を交換するつもりであり、貿易摩擦については自分から積極的に持ち出すことは考えていないが、これが話題となった場合には、日本側事情を説明して理解が得られるよう努力するというぐあいに答えられたと思います。伝えられる報道では、むしろ貿易摩擦中心的話題となっておるような印象報道で受けるわけでございますが、この点の事情はどうであったかということをまず第一にお伺いをいたします。  質問の第二点は、六月のベルサイユサミットまでにわが国市場開放に対する態度の決定を行うことを念頭に置いてという意味記者会見をされておりますし、ただいまの御報告にもありました。しかしながら、表現サミットまでということを念頭に置いてという表現でありましても、実質的には六月のサミットまでに具体的な態度を決めるということを、時日を約束したと同じようなことではなかろうかなという感じを持つわけでありますが、このことについての御所見をお伺いをいたしたいと思います。  質問の第三点は、貿易摩擦全体の中で、特に牛肉オレンジ等農産物に対する制限の撤廃あるいは輸入枠拡大要求が強く出されたのか。貿易摩擦全体の中で農産物の問題をどのように議論をされ、そして印象としてどのようにとらえられてこられましたか。  以上三点、外務大臣にお伺いをいたします。
  6. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の会談の際には、当委員会で申し上げましたように、当方からは、国際情勢についての見解とか、あるいは、ただすべきことを相当時間をかけてそれぞれ申し上げております。しかし、二国間問題に当然触れるわけでありまして、その間に貿易問題が取り上げられたことは事実でございます。私も、新聞などにどう報道されておるか、その報道の上では貿易問題が大変クローズアップされておるようでございますが、これは関心度合いが強いためにそういう報道になっておるのではないか。国際問題中心お話しをし、また、二国間問題で貿易問題も出たと、こういうことでございます。  それから、ベルサイユに臨むに当たってレーガン大統領は、日本市場開放がそれまでに努力される必要があるということを言っておられました。また、受け答える当方においても、ベルサイユのことを念頭に置いて努力をいたしますと、こういうことは申し上げておりますが、レーガン大統領あるいはヘイグ長官との会談などを通じてごらんいただくとわかりますが、別にそれまでにすべてやらなければならぬというような、そういう調子のものではございません。また、当方においても最善の努力は払うが、しかし、現に日米貿易小委員会作業部会でやろうとか、あるいは十月以降交渉する、こういうこともあるのだからということを申してございますので、これはベルサイユサミットに臨むに当たっては当然各国関心事であるのでありますから、日本としてせいぜい努力をして、自由貿易体制維持の上に日本市場開放についてたゆまざる努力をしておる姿勢は必要なのではないかと思います。  それから経済摩擦の中で、井上委員より牛肉柑橘あるいは農産物に対しての先方の関心度合いについてお尋ねの御趣旨でございましたが、いま御説明申し上げたように、農産物の方は作業部会で四月中に発足してやろう、それから柑橘牛肉は一九八四年分以降のことを八二年後半に相談というのが十月からやろうと、すでにこうなっておりますので、そのようなかけんであったか、特に強く印象に残るようなこれらの問題についての市場開放の論議はございません。ただ農務長官との会合の折に、農務長官が若干予定の時間からおくれておいでになりまして、副長官との間にある程度時間がございましたので、むしろ私の方から、自分農林大臣当時に、大豆あるいはトウモロコシ、コウリャン等アメリカが出してくれなかったじゃないかと。それは当時国際的に飢饉の状況にある国があって、それを優先するということで、長い間の得意先である日本が後回しになった、こういう苦い経験もあるから、やはり日本としてはある程度の食糧を持っておらないとそういうようなときに対応できないんじゃないかというような話をしておいたような次第で、総じて両国間の経済問題の中でいまお挙げなった柑橘牛肉または農作物については、そう厳しい調子で話があったということではございませんでした。
  7. 井上吉夫

    井上吉夫君 前回は、江崎ミッションが行かれて帰ってこられた後の報告では、市場開放に対してどういう対応をするかということについては日本で考えなさいというような感じ報告をいただいたと思うんですが、けさテレビで、全体申し上げませんけれども、外務大臣訪米されて、貿易摩擦関係につきまして、十四品目についてかなり具体的に品目が提示されたような、そういう意味報道を聞きましたが、いまのお話では、必ずしもそれはきちんと順位とかあるいは品目を明示して、特にこのことについての方向をサミットまでに明らかにされたいということではなかったと受け取ってよろしゅうございましょうか。
  8. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今度の場合、まあ私と見合いになるのがヘイグ国務長官でございますが、ヘイグさんの口からは、農産物とかたばことか先端技術というような言葉は出ております。農産物は言うまでもなく先ほどのお話のように柑橘牛肉もいろいろあるわけでございますが、私の協議のほかに、せっかく向こうに行っておりますから事務当局同士の話もあって、それで、それはどんなことかというのについて、まあいろいろ品目が挙がっておったが、数えてみると十四ぐらいかなというようなことを私は耳にいたしました。だから、どんなふうにその基準とか規制、いわゆる合板の規格のようなもの、そういうようなものとか、あるいは農産物の中で引き続き牛肉柑橘関心があったのだと思うんですが、それこれやると十四ぐらいだろうというのが、けさ新聞を見てはっきり十四品目とこう出ておりますけれども、いまそれじゃこれこれだと、そういうことではなかったんですね。まあ十四ぐらいいろいろ検討されたということが事務レベルでございます。それから、はっきり名前が挙がっておるのは、いま申し上げたような農産物たばこ先端技術等と、こういうことでございました。
  9. 井上吉夫

    井上吉夫君 そこで、農林水産大臣にお伺いしたいのでありますが、いまの外務大臣のお答えと報道との間に、紙面を通しテレビを通して受ける印象にかなりの開きがあるような感じがいたします。しかしながら、いずれにいたしましても市場開放に対しての答えを、表現いかんを問わず、六月のサミットまでの間には何としても自主的に日本自体で決めなきゃならぬという状態にあると思います。こういう状態の中で改めて農林水産大臣に、特に牛肉オレンジに代表される農産物輸入自由化あるいは枠拡大関係農家にとってどれほど大きな問題になるかということ、大変大きな不安を持っているということはもう担当大臣として篤と御承知だと思います。改めてこれに対応する農林水産大臣所信と決意をお伺いしたいのでありますが、この際私は、国民の皆様方にも十分わかっていただくために、若干の私の所見を加えたいと思います。  たとえば、この際牛肉を一例にとりますが、昭和三十年代の半ばぐらいまでは、特に牛肉の場合はほとんど耕作用に使っていた牛、それを、年をとっていよいよもう耕作用には無理だというころに肥育してそして一般市場に回すという、むしろその形が常道でありました。それがだんだんと耕運機等の機械が入って、そしてそれこそ専用の肉生産という形に一生懸命農家が取り組んで僅々二十年そこそこであります。そして、四十年ごろの畜産飼育農家というのはたしか百四十万戸余りだったと思うのですが、現在は三十万戸余り。そして、その飼育頭数というのは、数多くの農家によって飼育されていたころよりも頭数が多くなって二百二十万頭ぐらいにようやく伸びてきたというぐあいに思います。そして、とりわけこの四、五年の推移を見てみますと、基準価格もそう大幅に引き上げられるわけではない。そして大変な赤字を抱えながらも農家が大変な努力をして、累積する赤字に苦しみながらも、牛肉価格上昇率というのは総合的な物価上昇率、たしかこの五年の間に三割程度卸売物価も上昇している。そういう中で牛肉上昇率というのはたしか七%前後だというぐあいに資料で見ております。価格の面でもそういう努力をしながら国際価格に近づく大変な努力をしているさなかにある。  そしてまた、日本年間に食べている牛肉総体量枝肉ベースですでに六十万トンを超えていると思います。部分肉ベースになりますとその〇・七ぐらいでありますが、世界じゅうで貿易のルートに乗ります枝肉ベース牛肉総体量はわずかに百七十万トンである。その中で、いま日本輸出を迫っているアメリカは、実績から見ますと年間五万トン程度輸出であります。そしてみずからは七十二万トンぐらいの輸入をやっている。全体の百七十万トンの中にはEC間の貿易量もありますし、特に主産地であります豪州、ニュージーランドの外国への輸出の流れを見ますとアメリカが十ツブであって、続いてソ連であるとか中近東であるとかヨーロッパというものに大部分を出しておりますから、日本に出している全体の量は、この数年を見ましてもせいぜい十二、三万トンが限界であります。  いま貿易自由化されて、さらでだに赤字に苦しんでいる畜産農家が全部やめてしまったら、一体六十万トンの年間牛肉消費というものをどこが賄ってくれるか。このことを考えると大変な問題であるというぐあいに私は見ております。ようやくこれだけ国際価格に近づく大変な努力を年々年々積み上げながら、そして牛肉の全体の貿易総体量を考えた場合に、この問題にどう対応するかということは自明の理であります。このことを十分念頭に置かれて、私は農林水産大臣の確固たる信念と、農家に希望を失わせない配慮というものをこの際きちんと立てていただきたい、そういう願いを込めて農林水産大臣所信をお伺いをしたいと思います。
  10. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 農産物市場開放アメリカ要求については、いま外務大臣からの御報告にもありましたように、確かに要求は厳しゅうございますけれども、さきの日米貿易小委員会において、いま井上先生指摘のように、牛肉オレンジについては東京ラウンドの合意をいま着実に実施をいたしている段階でございまして、先ほど外務大臣からの御報告にもありましたように、一九八四年以降の取り決めを今後どうしようかという問題なのでございまして、過般の貿易小委員会において、これは一九八二年の十月以降の日米の適当な時期に話し合いを進めようと、こういうことに合意されてございます。  したがいまして、その間、やはり双方で準備の話し合いだけはしていこうということで、作業部会を特につくりまして、四月からでも話し合いを進めていこうと。そのことはお互い対等な立場双方の条件を率直に話し合っていこうじゃないかということにいたしているわけでございますので、私はいま外務大臣訪米されたことによって、日米小委員会におけるこのいわゆる申し合わせは失われるものじゃないだろうと、かように考えておるのでございます。しかしながら、いま外務大臣が事務的にいろいろ話し合いが詰められているようなお話もございました。  いずれにしても、アメリカ農産物要求というのは、あるいは市場開放要求というのは強うございますので、私たち日本農林水産業現状というものを極力アメリカにやはり説明をして、そして理解をいただくということが一番重要だと思うのでございます。  農林水産物アメリカからの輸入というものは、先生承知のように、二千万トン以上やはり穀物で入っているわけです。日本の米が一千万トンなのに、その倍もアメリカから買い入れている。それで、農林水産物全体の輸入総額は百二億ドルなのでございます。しかも、牛肉の面についてはアメリカの需要は、いま御指摘のように八百七万トン。それに対してアメリカ生産は七百四十七万トンぐらいなのですね。それでオーストラリア、カナダ等から七十万トンやはり輸入しているのがアメリカ現状なのです。それをどうして日本牛肉輸出するかということなどは、これまであんまり議論されていなかったと私思うのです。そういう点を考えますというと、私は、もっともっと日本の実情、アメリカ状況等お互い話し合って、そして理解を得ることが一番重要である。アメリカにおいても、いわゆるウエーバー制度である程度保護されております。それから、ECにおいてはもっと課徴金等で九〇%以上保護されて、そのほかに残存輸入品目というものを設けておる。そのことが農業をある程度安定さしておるのだと私は思いますので、そういう意味では日本農業を本当に安定させるためには、農業を、いわゆる残存輸入品目について私たちはこれはできるだけ守って差し上げるということにしてやらなければいかぬ。特に農林水産業は、農山漁民にとっては生産の場であると同時に、生活の場でございます。したがいまして、その地域の安定の基盤でございます。日本の私は安定の基盤だと思うのでございますので、そういう意味では、日本のあらゆる問題を支える基盤であろうと思いますので、これは先生指摘の面を私も極力アメリカあるいはECに主張して、そうして理解をいただくように努力をいたしたい、かように考えております。
  11. 井上吉夫

    井上吉夫君 時間がありませんので、答弁は求めませんが、この際、強く通産大臣に要請をしておきたいと思います。  というのは、通産大臣農林大臣も御経験でございますので、両方の立場が十分おわかりだと思います。私は、通商摩擦の一番大きな原因は、いま話題になっております農産品の話ではなくて、近代工業国家の間におけるまさに競合関係にあります、アメリカにいたしましてもECにいたしましても、そういう中で、自動車を初めとする工業生産品が、日本の大変な努力によって優位に立った。そしてその優勢を、どんどんどんどん日本が大量な自動車やテレビなどの輸出という形によって、それらの国々が貿易上のインバランスをつくってきた。このことに対するいら立ちが、せめて農産物日本への買い入れというものに大きく私はなってきているという、私は、工業から起こった貿易摩擦農業の面で始末をとれという、そんな形と思えてなりません。このことを延長して、もし国際分業論というものを表面に出しながら日本の方向を決めるようなことになりましたならば、私は国際競争力の弱い日本農業というものはまさに壊滅の方向をたどるというぐあいに考えます。このことにしっかりと思いをいたされて、私が言うまでもありませんが、関係経済閣僚として当然この議論の中心的なメンバーの一人になられると思いますので、農林大臣ともどもに、さらに外務大臣とともに、関係閣僚の中で、私は日本農業の将来に大きな禍根を残し国家民族の将来に大きな傷を残すことのないように、十分の御配慮をちょうだいをいたしたいと思います。  希望を申し上げまして、私の質問を終わります。(拍手)     —————————————
  12. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、下条進一郎君の質疑を行います。下条君。
  13. 下条進一郎

    下条進一郎君 外務大臣、このたび御苦労さまでございました。ちょうど外務大臣お帰りになるちょっと前でございましたが、ソ連のブレジネフ共産党書記長がタシケントで発表されました。その中で中国並びに日本に対して、これからいろいろと交渉をしながら関係を整えていこうという趣旨の発表があったわけでございます。  私、これを新聞で知りまして、実は、先ほど来井上委員からもお話がありましたように、アメリカとの間の貿易摩擦あるいはECとの貿易摩擦、これは日本国民の受け取り方としては、大変に外圧を受けているようなときに、ちょうどこの機をとらえてソ連側からいわば一つの救いの手のような外交態度の表明があったということは、いろんな意味でこれは非常に重要なことではないかと思いますけれども、外務大臣としてはこの点どのように受けとめていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  14. 加藤吉弥

    政府委員(加藤吉弥君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、二十四日に行われましたタシケント演説においてブレジネフ書記長は、インド、中国と並んでわが国に対し、信頼醸成措置の申し入れを繰り返してまいりました。同時に、日ソ間の善隣関係及び広範な互恵的協力を進める用意があるということも打ち出しております。  しかしながら、このソ連の提案の内案は、昨年以来しばしば繰り返されております極東における信頼醸成措置の提案と基本的には異なるところがないと、かように、認識しております。  これに対するわが方の立場は、御案内のとおり、わが方固有の領土であります北方領土の問題が未解決であるのに加えて、そこに軍備を配置しておる、こういう状況のもとでわが国はこれに応ずることは困難である、ソ連側が本当に誠意があるのであればまず行動をもって示してほしいと、こういう立場であることも御案内のとおりでございます。  またソ連は、今回中国に対して関係改善を主眼とする呼びかけを行っております。しかしながら、この問題は中国とソ連の両国間の問題でございますので、第三国であります日本といたしましては、この問題に立ち入って議論することは必ずしも適当ではないと思います。  現段階を特に選んでソ連側がこういう主張をしてきたと申しますのは、やはり最近の国際情勢、米欧関係、日米関係、こういうものを頭に置いて、適当なタイミングをねらって一種の平和攻勢をかけてきたものと、かように了解しております。
  15. 下条進一郎

    下条進一郎君 私も、そういうふうな情勢をとらえてのソ連の非常に巧みな外交政策の一端ではないかと受けとめたわけでございますが、その発表の中には、ソ連は中国との間では国境問題も協議するという項目が入っておりますのに、日本に対しては入っておらない。北方領土問題が入っていないということについては、ひとつ外務大臣も、今後機会あるごとにこの点をソ連との間で粘り強く交渉していただきたいと思う次第でございます。  それに関連いたしまして、外務大臣はこのたび訪米の間、向こうの首脳とお会いになりましたが、そういう米ソの間の問題、いま、ことしじゅうに開かれるであろうと言われております米ソ首脳会談はどのような見通しであるか、御感触がありましたら伺いたいと思うわけでございます。
  16. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回のレーガン大統領を初めとする一連の会談の中で、東西関係の問題について論議をいたしたことはございますが、米ソ首脳会談はどうかということについては、元来日本政府として、また米側においても、そういう会談をするについては、そういう環境がつくられる、準備ができた後でなければと、こういうことを言っておりまして、今回の訪米に際しては首脳会談について両方から何ら触れておりません。しかしながら、米ソの間で中距離核戦力の削減交渉あるいはSTARTについての問題があります。これらについては、当方もそういう交渉が行われ成果が上がることを期待する、またアメリカ側はこのSTARTの交渉について前向きな姿勢をとったと、そういうことはございました。
  17. 下条進一郎

    下条進一郎君 そこで今度おいでになりまして、先ほど来伺いますと、全般的なお話もあったけれども、貿易問題がかなり中心的な話題であったというように承りましたが、この日本アメリカの間、アメリカ日本の間については、そういう経済問題、また同時に防衛問題という全般的な問題もあるわけでございますが、昨年の末あたりから、日本が今度の五十七年度予算において防衛予算についてかなり努力したということに対して、アメリカ側はどの程度評価しているのか、それから、それは評価して今度は切り離されて、防衛問題と違う貿易問題が出てきたのかどうか、あるいはいま貿易問題というものが出ているけれども、しかしまだ評価が防衛問題については十分でないから、貿易問題がおさまればまた今度は防衛問題が出てくるのかどうか、そこら辺の御感触はどんなふうでございましたか。
  18. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の訪米に当たっては、当初から、防衛問題について話し合うということにつきましては、御承知のようにワインバーガー長官がもうすでに訪日の日程が決まっておりますので、そういう問題で外務大臣として話し合う必要があればそれは日本でやろう、東京でやろうと、こういうことを言っておったわけであります。しかし、訪米をいたしまして、国防省があるにもかかわらず、外交の中でも重要な分野である国防省の関係が何らないというのはどうかと、こういうことで、カールッチ国防長官代理がおられるということでありますので、日米両方で、それは外務大臣が来訪されて一般的な国防関連で何かお尋ねがあればそれはお答えをしましょうというようなことで、いわば今回の場合は通常の表敬訪問的なことでカールッチ長官代理との話をいたしました。したがって、いまの東西関係の情勢のようなことを主題として話をしました。その間にカールッチ副長官は、日本の五十七年度予算に対する努力については評価するということを言っておられました。それから、今後のことについてもひとつ日本としてできるだけのことはやってもらいたいような趣旨がございましたが、これは私の方から、日本日本自身の持っておる防衛大綱に基づいて着実に努力をしていく考えだと、こういうようなことで、防衛問題はその範囲のことでございます。  いまこの防衛問題と貿易問題と何か関連して御質問がございましたが、私は防衛のことは防衛として考えるべきものであって、現在、貿易問題が日米間においてはインバランスで、それをどうするかということとともに、この貿易問題がただ単に日米間の問題ではなく、国際経済の中で日米間がいま不均衡である、しかし経常収支まで考えるならば、日米ともに経常収支は昨年あたり黒字になっておるので、日米間が緊密な連携をとって努力をすることが国際経済のこの不況を打開する上に役立つのではないか、またそのことが国際間の貿易の上に大いに役立つのではないかというような話をしたわけで、防衛貿易と関連した話はございません。
  19. 下条進一郎

    下条進一郎君 その点は大変明快にわかったわけでございますが、その防衛問題に関連いたしまして、ときどきいろいろなソースで、日米安保条約の改定問題というのがいろいろな形で報道されておるわけでございますが、この問題は日本の安全保障にとっては非常に大事な基本的な問題でありますが、この点については向こうの首脳は大体どんなような態度でおられたか、お会いになったときの御感触を承りたいと思います。
  20. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私どもの立場日本政府の立場としては、現行安保条約がよく機能をしておる、こういうことで、政府としては鈴木総理もこの委員会で御答弁申し上げておるように、そういう改定のことを考えておらないわけであります。ですから私は、今回の訪米に当たりましてどの会談に際しましても、そういうことを私の方から、改定の必要があるのではないかとか、安保についてどう考えておるかとか、そういうようなことを議題に供したことがございません。また先方からも、特段改定問題についての発言はございませんでした。
  21. 下条進一郎

    下条進一郎君 それでは、ちょうど同じような時期に日米航空交渉が実は決裂したわけでございます。これも大変に双方にとって関心の高い問題であったわけでありますけれども、これが今後の日本米国との間のいろんな交渉にどういう影響を持つか、要するに向こうのこれに対する考え方あるいは今後の見通し、そういったものについての外務大臣の御感触を承りたいと思います。
  22. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私が訪米をいたし、そのちょうど空港へおりた途端に、日米航空交渉が不調に終わった報告を受けまして、これは大変なことだということを直感いたしました。幸い大河原大使はこの交渉の衝に当たられておりましたので、どういう点がぐあい悪かったというようなことはすぐ大使から報告を受けまして、一応その実情は私は把握して、そしてレーガン大統領を初め関係者との会談に臨んだわけでありますが、今回の場合、私の記憶に特に残っておりますのは、レーガン大統領がこの問題を取り上げたことと、それから運輸長官が、特に予定がないのにボルドリッジ商務長官の朝食会へ出席をされて、私のばす前に座られて航空交渉のことを取り上げられたということが印象に残っております。  レーガン大統領は、せっかく話が進んで大体いいところまでいっておるのが、わずかなところで不調に終わったことは残念であると。そこで私に対して、帰られましたならば御協議を願い、できれば早期に交渉を再開して何とか妥結を見ることが両国のためによくないかという、そういう御趣旨で御所見がございまして、私も長い間の懸案でございますから、大体話し合いがまとまりかかっておったという認識もありますので、帰国早々総理に、特に大統領もこういう発言であったからということをお伝えをしておいたわけでございます。今後、総理がどのようにお考えであるか、あるいは直接担当をされておる運輸大臣がどうお考えになるか、これからの問題でございます。  先方の運輸長官も非常に関心を持って、航空交渉は残念だということの発言でありましたが、すでにレーガン大統領から聞いておると私が申しをしたところ、長官は恐らくそのことを御承知なかったのではないかと思うのですね。間もなく食事の大体終わりかかったときに、長官は手を振って、もうこれでわしは帰ると、こういうことで、運輸長官は顔見知りのことでもございましたので、まあそれは結構ということで、手を振って別れたと、こういうことであります。
  23. 下条進一郎

    下条進一郎君 問題は今後に引き続いて大事な問題として扱われることでありましょうから、ひとつ慎重に交渉等を続けていただきたいと思います。  そこで、この前の総括質問のときに、外務大臣のお出かけに当たりまして、日本貿易摩擦の中で、いろんな条件がございますけれども、その一つとして円安問題がある、この円安問題もまたいろんな前提条件がありますが、その一つは、アメリカの高金利である、したがいまして外務大臣にお願いいたしまして、ぜひ向こうにいらっしゃったときには、その要路の方にアメリカの高金利引き下げについて具体的に交渉していただきたい、それが米国のためにも日本のためにもなるんだということでお願いしたわけでございますが、その交渉の結果はいかがでございましたか。
  24. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは私の判断であったわけでありますが、高金利問題を直接やるというのがいいか、あるいは国際経済全般でやるがいいかということで、後者を選んで、そのかわりずいぶんくどいほど申しました。  それは、アメリカの経済は最近物価がやや鎮静してきておるのじゃないか、少しよくなってきておるじゃないかと。そこでアメリカとしては、本年後半期以降景気が上昇する、明年は五・二%の上昇率になると言っておるが、それは果たしてそのようにいけるのかと。すると、大体答えはいけると、こういうことで、実は日本は円安で、内需喚起をしよう、輸入拡大をしようとしておるが、なかなか円安が問題なのだと。幸いアメリカのそういう施策がうまくいっておれば、この辺のことが打開されていくのではないかと、こういう表現で大体進めたのでありますが、それに応じて先方が、いまのようなこういう高金利ということがインフレがおさまってくれば大分改善されるであろうと、そういうことを答えておりまして、それとともに、いま経済問題がやかましいが、それは何といっても欧米の不況にある、それを解決すると。そのためには、日米間の六百億ドルからのこの貿易額あるいは両国の占める、国際経済の中でのGNP全体に対して三五%近くなっているのじゃないか、だから日米の間においては非常に大きな責任があると思うと。ついては、世界経済活性化のために自由貿易体制の維持の必要がある、生産性の合理化を図る必要がある、技術の向上の必要がある等々いろいろ話をしてまいりまして、これはある程度先方も理解を深めたものと思っておる次第でございます。
  25. 下条進一郎

    下条進一郎君 それではあと、この前やはり総括質問でこれからの取り組み方ということでお尋ねいたしましたところ、ちょうどあのときは日米貿易小委員会が終わったばかりでございましたけれども、そのときには、要するにこれからの政府の今後の貿易摩擦に対する対処方針は、一つ一つの積み上げである、積み上げ方式でいくというような御答弁をいただいたように私記憶しております。ところが、今度レーガンからいろいろ強い要望が出まして、日本サミットまでに米国に対しても、あるいはヨーロッパに対しても、それ相当の開放の努力をしなきゃならないという要請があったということであれば、それに対して日本としては一括対処するというような姿勢を打ち出すやに報道されておりますけれども、その態度の変化、こういったことは、国内においては方針が絶えず変わるというのじゃ非常に動揺する面もあろうかと思いますので、その点はどういうふうなことになったのか、御説明いただきたいと思います。
  26. 深田宏

    政府委員(深田宏君) お答え申し上げます。  今後の御方針につきましては、近日中に経済対策閣僚会議等をお開きいただいて御検討いただくわけでございますが、ただいまの御質問の点につきましては、実は個別の対策を積み上げてまいりませんと包括的なものもでき上がらないわけでございます。現に、先般設置方合意を見ました農産物等についてのアメリカとの協議は、四月の中旬にワシントンで開かれるということは決まっておりまして、こういう努力を積み上げていく必要があるわけでございます。  他方、このような個別の対策を積み上げてまいりますれば、たとえば、ここ二、三カ月の間に仕切って見れば、それが一つの包括的な姿をとって積み上げができていくということが期待されるわけでございまして、この際、個別か選択かという二者択一の問題ではないのではないかというふうに私ども考えております。最も大切なことは、市場開放につきまして、日本として自主的にできることはどんどん実施していく、その内容の方が大事であると、このように考えております。
  27. 下条進一郎

    下条進一郎君 そういうことなら説明わかりますけれども、やっぱり新聞等に出ていることは何か政策転換のように聞こえますので、その点の説明をいまのようにはっきりやっていただきたいと思います。  そこで、こういう問題について、四月にはブッシュ副大統領が来られる、あるいは近々またヨーロッパの問題ではフランスのミッテラン大統領が来られるわけでございますけれども、フランスはECの中でも特に大きな影響力を持つ国でございます。いろんなまだ懸案の問題がございます。それに加えて、ECの方ではガットの二十三条の適用による協議をやろうと。これはなかなか厳しい協議だと思います。  こういう点について、アメリカのブッシュ副大統領あるいはフランスのミッテラン大統領の来日等に対して、外務大臣はどういう取り組み方を考えておられますか。
  28. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ブッシュ副大統領の訪日につきましては、先般来この訪日の問題が取り上げられておりまして、今回参りました折に、外交チャンネルで大体四月下旬という見当がつきそうだと、こういうことでありますので、あらかじめ総理の御意向も聞いておりましたので、ブッシュ副大統領の訪日を要請をいたしました。これについて、その要請についてはオーケーをするということでございましたが、なお日程等の話を他の国ともする関係上、いまここで何日に行くということは決められないと、こういうことであったと思います。ミッテラン大統領の方はもうすでに決まっておるのでありますが、このように米仏の首脳が来られて、そして鈴木総理と会談をされるということは、現下の国際政治情勢あるいは経済情勢を考えますときにきわめて重要ではないか。下条委員がおっしゃるように、片やアメリカであり、片やECに対して強い発言力があられるフランスの大統領であると、こういうことでありますので、私は、日本でそういう首脳会談が行われまして、腹蔵のない意見交換が行われ、現在の国際政治経済情勢の打開の上に、また特に西側協力の上に大きな成果が期待されるものではないかと、このように見ておる次第でございます。
  29. 下条進一郎

    下条進一郎君 それでは、今度は防衛庁長官に、お尋ねいたしますが、先ほど来外務大臣の御報告の中にも防衛問題もいろいろ御報告がございましたけれども、日本でいまやっております防衛大綱、これの進捗状況、これはなかなかいろいろむずかしいものがあろうかと思います。いままで伺ったところでは、日本防衛のいろんな機種の選定等については一点豪華主義というようなことで、非常にいい物を買うと、しかし数はなかなかそろわないということでございましたら、まあ、ハイ・アンド・ローというんですか、それのミックスの政策で、ある程度の数もそろえていくというようなこと、いろいろその方法の転換も私は必要じゃないかということがあろうかと思いますが、その問題をひとつ伺いたいということ。  もう時間もございませんので、質問だけ先にいたしますけれども、もう一つは、例のF4の改修の問題でございます。この問題については、もうすでに衆議院でもいろいろと御審議がありましたし、参議院でももう一般も終わりかかっておりますし、それからまた集中、いろいろございますが、そういったところの審議の中で国会の中の空気も伝わっておりますし、あるいはまた政府のお考えもわかっておるわけでありますが、本来、私がいろいろ伺ったところによりますと、こういう試改修の内容、これはいろいろ御説明によっても、大変にその性能が上がるということでは、私はこれはもうF15と比べてかなり使い物になるような形で効果的だと思うのでありますけれども、そういったものが今度のように、五十六年度の予算の中では債務負担行為だけでありますけれども、五十七年度では八十億円になんなんとする実際のまた規模のふくらむ形での債務負担行為が入ってくるということであれば、これは私はやはり質的な変化というものもそこに出てくる。そういうことであるならば、初めからこれはもう国防会議にかけてしっかりやればこのような問題は起こらなかったんじゃないかと、私はそう思うのでありますが、そこらの点をはっきりしていただいて、私は防衛庁長官になるべく早くこの執行の凍結を解除していただいて、皆さんの、国民のせっかく期待した予算が通った——もう承認されている問題でございますから、そういうことの態度を明らかにしていただきたいということを防衛庁長官に御質問と要望いたしまして、御回答をお願いしたいと思います。
  30. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) いまわれわれが進めております防衛力の整備は、防衛計画の大綱にのっとりまして、わが国としては平時から本来備えておくべき基盤的なものでございます。しかし、防衛力の現状はこの大綱の水準とはまた相当の隔たりがあるところでございますし、また、現下の厳しい国際情勢にもかんがみますと、大綱の水準をできるだけ早く達成したいというふうに、また達成する必要があるものと考えております。そのための、御指摘の面などもあわせまして、これから防衛力の整備についてなお一層の努力を続けてまいりたいと思います。  F4の問題につきましては、当委員会でも大変御論議を賜りまして、目下その御審議をいただいているところでございますけれども、また、これまでも誠意をもって御説明をしてきているところでございますし、五十六年度予算の年度内執行の期限も迫ってきておりますので、われわれとしては執行の責務を果たすためにも、できるだけ速やかに契約手続が進められますように、なお一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。(拍手)     —————————————
  31. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、寺田熊雄君の質疑を行います。寺田君。
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 外務大臣にお尋ねいたします。大変御苦労さまでございました。  レーガン大統領との会談の模様については新聞紙上に報道をせられておるのですけれども、六月のサミットの前に、アメリカだけでなくて、西側のすべての通商国に対して市場のより一層の開放に努力するよう強く期待するという発言があったと報道せられておりますが、事実でしょうか。
  33. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) レーガン大統領がそのようなことをおっしゃったことは事実でございます。特に、自由貿易体制を維持する上にベルサイユサミットにおけるECについて日本市場開放をやっておくことが必要だというような趣旨を強調されておりました。それで私の方からはそういうことを念頭に置いてひとつできるだけの努力をしますと、こういう応答をしております。
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 市場のより一層の開放というのは、中身はやはりあれでしょうか、オレンジとか牛肉とかたばこなどの農産物中心になっていると考えてもいいようですが、外務大臣の御答弁では、自由貿易全般の見地から言ったようにもとられますが、大臣の受けとめ方はどんなふうでございましたか。
  35. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 市場開放についてレーガン大統領が具体的に何々をと、そういうことはございませんでした。しかし、私と大統領との会談の折には、すぐわきにヘイグ長官が終始おられたわけで、この大統領と私の会談の翌日ヘイグ長官との会談を持ちました。その折に市場開放についてヘイグ長官からはどういうものを口にされたかというと、農産物たばこ先端技術等と、こういうことがございましたから、これを通じて米側関心がその辺にあるからという印象は受けたわけであります。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、外務大臣承知のように、先般の白米貿易小委員会で、この問題では交渉の手順で合意したばかりですね。それが特に六月のサミット前にというように強く求めたというのは、この事務手続をも無視して飛び越えてという、そういう意味を持つんでしょうか。
  37. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は、一連の会談を通じて、ベルサイユサミットで先進国が寄っていろいろ協議をする、それに先立って日本市場開放努力が重要であるという、そういう多少何といいますか、日本はそうされるがいいんじゃないかという気持ちがそこににじんでおると思うのです。ただし、ヘイグ長官との間ではいろいろ対処してもらわなきゃいけないということが強く強調されておりましたけれども、しからばサミット前に何もかもやってくれと、そういうお考えを示したものとはとっておりません。それは期限を切ってそういうことを言うのではないということもヘイグ長官は言っておられるわけで、したがってサミット念頭に置いてわれわれの努力努力でやるんだ、それから、お尋ねのように日米貿易小委員会農産物については作業部会を設けてやる、これはやはり両国の間の約束ですね。それからまた、十月から柑橘、肉についてはいまの取り決めがあるけれどもまあ早目にやろう、八〇年以降のことを話し合おうと、これはこれで私はまともにそのとおりと考えていいと思うのですね。しかし、日本市場開放のためにひとつ努力をするようにという向こうの期待期待であると、こう思うのです。だから、作業部会を四月中旬からやって六月のサミットまでにあるいは合意のできるものがあれば、また、少しでも合意できるように努力する、そういうことは考えていいと思うのですが、別段従来の取り決めが今度の会談でそうでないのだと、そういうふうには私はとっておりません。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 アメリカ大統領アメリカに対する市場開放を求めるというのはわかるのですが、西側の他の通商国に対しての分までそうするように求めるというのはこれはどういう意味なんでしょうか。つまり、西側全体のリーダーとしての自負といいますかそういうものなんでしょうか。それとも、いまちょっと外務大臣のお言葉でそういうようにニュアンスを私感じたんですが、そうしないとサミット鈴木総理が袋たたきに遭うよ、だから早く手を打った方がいいよという老婆心といいますかそういうものがあってレーガン大統領のそういう御発言になったのか、その辺の外務大臣の受けとめ方ちょっとお話しいただきたいと思うのですが。
  39. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 従来、サミットが開かれる場合、それに対しての議題が事前に協議をされる、今度の場合でももう何回かその下相談が行われておるわけであります。サミットは、最近政治問題が取り上げられておる場合がございますけれども、大体がそのときの国際経済情勢に関しての協議をするのが中心でありますから、寺田委員のおっしゃるように、米大統領が、これだけ日欧間、日米間で経済問題がやかましくなっておるときに、日本市場開放努力をせいぜいやっておかぬとそれはなかなかサミットで大変だよと、それはそういうふうに受け取れるところはあると思います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま、下条委員からもお尋ねがございましたけれども、報告によりますと、かなりいろんな問題でアメリカの首脳と話し合ったという御報告のようでございますが、外務大臣からアメリカ側に対して要望したものがあればお伺いしたいのです。いまアメリカの高金利についてはすでにお尋ねがありました。そのほかのことで特に大臣がアメリカ側に要望した事項というのはどういうことでしょうか。
  41. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど御報告申し上げたように、日本側としては三つの点を強調しておる。第一は、緊密な日米関係維持発展を図るのが日本外交の基軸である、これをしましょうということですね。それから第二が、日米協力関係は、ただ単に両国だけでなく、西側全体が一致協力して国際情勢に対処すると、これも日本側の意思表示でございます。それから、日本が国力と国情にふさわしい国際的責任を果たす努力をする、これは、この果たし方については特にその次にいろいろ申しておりますが、経済協力など大いにやるということを申し上げておるわけでありますが、私は繰り返し申しましたのは、世界全体の中における日米経済関係というもの、あるいは日米のGNPに占める大きな範囲ということを考えると、いまの国際経済のこういう停滞を何とか打開をするということは、これは両国が本当に腹蔵のない話し合いをしていく、特に、これからの経済に活性化を与えようとするならば、生産の合理化であるとか、技術の革新であるとか、自由貿易体制の維持とか、そういうようなことについて相互に努力しようじゃないか、こういうようなところを特に米側には強調をした次第でございます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 総括質問のときに私がお尋ねをしましたところ、この問題はよく考えてというような、たしかそういう趣旨の御答弁があった問題の一つですが、アメリカの台湾に対する武器援助ですね、これが米中関係に微妙な影響を与える、この問題で率直にやはり意見を述べるという点が、私は望ましいと考えたのですが、この点はお述べにならなかったんでしょうか。
  43. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 米側は、米中関係、特に現在問題になっておるところの説明がございました。それは、レーガン大統領としても、台湾関係法の制約を受ける、そのことによって米中間でこの話がうまく進んでおらないという説明がありました。  そこで、私からは、日本は中国に対しての最も近い国であって、従来中国に対して何か内政に関係するような、そういうことは控えておるんだ、しかし、アメリカとして米中関係を円滑にやっていこうと、こういうことであれば、日本と中国の間には、本年は国交回復十年のことで首脳交流が行われる。超紫陽首相がお見えになるとか、あるいは鈴木総理が先方をお訪ねすると、こういうことがありますので、きょうのお話はよく念頭に置いておきましょうと、こういうことで、それ以上どうするこうするということは——今回は日米の間の諸問題について協議をするのでありまして、米中問題まで私がとやかく言う立場じゃない、こういうことで、その辺は、せっかくの米中関係の説明でございましたが、日本側の何か積極的な意図を表明すると、そういうことはなく、両国の首脳交流の際によくお話念頭に置いておきますと、こういうことでした。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、これは新聞紙上でちょっと私見たのですが、サハリン沖石油ガス開発事業を対ソ制裁から除外する件で、ヘイグ長官にこの話を、交渉をなさるというようなことがちょっとこれ新聞紙上に出たのですが、この点はいかがだったのでしょうか。
  45. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) サハリンの問題については、アフガニスタン問題のときに、これは日本としてエネルギー問題に対応する大事なことである、こういうことで、当時対ソ措置からは外してもらった経緯がございまして、今回も私から、サハリンの問題についてはこれは事務レベルでよくお話し合いを願うことにしておるが、どうぞヘイグ長官も留意してもらいたいと、これはきわめて、もういま言った程度のことを触れた次第でございます。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 わかりました。  それで、ヘイグ長官の方からは別段それに対する何らかの意思表示はなかったんでしょうか。
  47. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 別段の意思表示はございませんでした。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、この訪米報告を拝見いたしますと、中米・カリブ海情勢について意見の交換をなさったという御報告ですけれども、アメリカのニカラグア、エルサルバドルに対する態度というものはかなり、この間も総括質問で申し上げましたけれども、メキシコ、フランスなど中立的な立場の国々の見方と非常に違っておりますね。それから武力干渉の危険性もあるというようなことが報ぜられておりまして、私どもとしましてもこれはとうてい無関心でおれない問題なんですが、その点についての、やはり何か外務大臣としてのアメリカ側に対する要望のようなものはお述べにならなかったんでしょうか。
  49. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 寺田委員承知のように、すでにアメリカ中心として、中米・カリブ海構想というものが出されておって、そうして日本日本経済協力の方針の中でできる協力があればしようと、昨年あたり多少の実績は持っておると思うのであります。  この中米・カリブ海構想については、お話しのようなニカラグア、エルサルバドルの問題がございますが、現在、アメリカ、カナダ、メキシコ、ベネズエラ等の四ヵ国が中心で、中米・カリブ地域の問題に対処しておる一つの動きのあることも事実でございます。それから、米州銀行そのほかが開発に対しての援助をする、また、日本もそういうものに参加をしておると、こういうことで、米側の一、二この問題に対する発言の折は、日本の現在とっておる経済協力についてのただいま御説明をした行き方について先方が評価をしておったと、こういうことでございます。
  50. 植木光教

    委員長植木光教君) 関連質疑を許します。丸谷金保君。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 外務大臣お話を承っておると、どうもアメリカに承りに行ったような感じが強いのでございますけれども、牛肉の問題はいま話が出ましたので、ECの外相会議でも、貿易摩擦はガットの場で協議したいというような意向が出されております。相互主義が保護貿易につながるという点からは、ガットの場が私も一番いいと思うのですが、たとえばフランスからわれわれはペルシュロンという馬を買っています。ところがフランスは、IQ品目で馬の輸入を制限しておるというように、それぞれの国がみんな農業保護主義をやっておるので、こういう点を踏まえて、元農林大臣としては、もう少しずけずけと日本立場を言っていただきたい。  たとえば、通産大臣、コンピューターでクレイIという非常に優秀な、アメリカが売りたがっております、一そろい五十億くらい。こういうものを買えば、牛肉五千トンくらいになるんです。ですから、牛肉だけでは貿易摩擦解消できないので、工業品は工業品でやっていただきたい。  それから農林大臣、どうも牛肉が高いものですから、アメリカの農民は日本に売ればもうかるんじゃないかということで騒ぎになります。しかし実際は、高い高いというけれども、きのう現在でも産地のホールの価格なんというのはキロ六百五十円くらいです。枝にしたって千円足らずなんです。それがカット肉になると四千円、五千円。デパートに並ぶとキロ一万円以上になると。これは流通の関係にも問題はあるし、それからスネだとかブリスケというようなすそ物は日本は非常に安いんです。だからどうしても上等肉にいく。それからアメリカの連中は、高級デパートや高級スーパーの神戸牛の値段を見て、日本の評論家の中にもそういうのを見て日本牛肉高い高いと言っているけれども、中間でとられるので農民はそんなにもうけていないんです。ここのところをもう少し農林省はしっかり言ってくれないと牛肉牛肉という声がおさまらぬと思いますので、それらについて一言ずつ、三大臣から。
  52. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 本年十一月にガット閣僚会議がございまして、それに向かって寄り寄り相談があるわけでございます。いまおっしゃられましたように、多国間協議自由貿易体制維持の上に非常に大事でございまして、ガットの場へ持ち込むもの、これは当然あると思うのです。特に最近、アメリカのサービスの開放というような問題についてはそういうガットの場を活用したいと、御趣旨を踏まえて大いにガットの場で各国協議をしたいと思います。
  53. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 工業製品につきましても、アメリカの優秀な工業製品を日本はどんどん買っておるわけで、コンピューターなんかは、特にIBMは世界一ですから、日本も大いに買っておることは事実でございます。いまお話しのように、貿易は多国間でなければなりませんから、国際ルールにのっとってやはりガットで協議するということが一番いいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  54. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 畜産物のいままでの生産性向上によりまして、確かに先生指摘のように、日本牛肉価格というのはだんだん国際価格並みになってきていることは事実でございます。たとえば牛肉で申し上げますというと、日本を一〇〇としますというと、アメリカとの関係では確かに四割ぐらいです。しかしイギリスとは九割、あるいはフランスは八割でございますので、ECとの関係では大体価格の面では同じだと、こう言って差し支えないと思うのでございます。ただ、今後流通の面についてはやはり相当検討をする面、また改良する面が多いと思いますので、そういう点は農林水産省としても十分配慮してまいらなきゃいかぬ、かように考えております。したがいまして、こういう事情等についても、アメリカに対して極力作業部会を通じて説明をし理解を求めよう、かように考えております。
  55. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 外務大臣日米協会主催の晩さん会で演説をなさったのもちょうだいしておるのですが、その中で「今日の世界は、平和と安定を危ぐする直接的脅威の克服」など「山積する重大な課題に直面しております。」というお言葉があるんですが、「平和と安定を危ぐする直接的脅威」というのは、日本としては、外務大臣としてはどういう脅威というふうに見ていらっしゃるのでしょうか。
  56. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いまお読みになったように、日本はということよりも、「世界は、平和と安定を危ぐする直接的脅威の克服」と、こういうことを申しました。これは多少感度の差があるかと思いますけれども、アフガニスタンへの軍事介入とか、現に緊迫したポーランドの情勢などを頭に置きながら、「今日の世界は、」云々と、こう申し上げたのでございます。
  57. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 アフガニスタンに対するソ連の軍事干渉それからポーランドの問題、これが世界の平和と安定を危うくする直接的脅威というのは少し大げさに過ぎるんじゃないでしょうか。たとえば中東の一触即発の事態ですね。イスラエルとアラブ、PLOとの関係、レバノンとの関係、それからアフリカにおいてもそうですし、それから中米においても何かこう、われわれ危険なものを感ずる。しかし、それがいま直ちに平和と安定を危うくする直接的脅威というようなところまではちょっと言い得ないように思うのですが、これは少し大げさな表現だと言われてもしようがないのじゃないでしょうか。
  58. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私がいまお尋ねに対してのちょっとお答えが十分でなかったと思うのですが、寺田委員のおっしゃる中東の諸情勢とか、アフリカにおける紛争も一、二ありますね。そういうようなことは、これはやはり念頭に当然置いておいていいと思うのですね。そういうような直接的脅威を克服するということは必要なことだと思うので、アフガニスタンを例にただ挙げたということは、ちょっと私の説明が足りなかったと思います。
  59. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、いまの晩さん会の演説の中に、日米間の同盟関係は「西側の団結と協力の一つの核」であると、これは意見表明があるようでございますね。この「同盟関係」というのを外務大臣としてはどういう点に重点を置いておっしゃったのでしょうか、それをお伺いしたいのですが。
  60. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはお手元の資料でごらんいただいたら御判断をいただくのにいいと思うのですが、私は「日米両国の国民は、自由と民主主義という価値観を共有し、この価値観の上に、福祉と安寧が増進されるような世界を築くことを、等しく念願しております。」と。これが昨年の日米首脳会談の際の、日米の同盟はという、その説明のところに自由と民主主義という価値観を共有するということが出ておると思うのであります。そういうことを、日米協会の席でありますので、思い起こして申し上げたというわけであります。
  61. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは、世界観的なといいますか精神面を重点に置かれたというようにいま御説明があったわけですね。しかし昨年、総理が訪米なさったときには軍事同盟についての問題が出てきて、総理はそれを否定され、外務次官はそういうものがないなんということは考えられるかというようなことを言って、結局辞任するというようないろんな問題があったのですが、これは軍事同盟の面もやはり念頭に置かれていらっしゃったんですか。
  62. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 寺田委員の言われる表現が当たっておるかどうかはちょっと私、判断がしにくいのでありますが、あの首脳会談の折に、たしか連帯と友好及び相互信頼関係を確認したと、こういうことになっておったと私は記憶するのです。その連帯とは何かと、それは安保体制の確認だと思うのですね。だから、私はそれが軍事同盟かというようなところにつながったものと思うのでありますが、これはまあ、とりようで、私はそのときから感知をしておって、僕だったらこう言うんだがなと言ったことがあるのです。それは何かというと、日本は自衛隊とか防衛とか言っておるわけですね。軍事と言うと何だか積極性も持つから、防衛はあの首脳会談の同盟の中に入っていると、まあ私はそんなことを言ったのですけれども、いま防衛もそれは軍事じゃないかというのは、それは全くそのとおりですね。
  63. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 防衛という消極的な表現を用いていらっしゃるわけですね。私は外務大臣のお気持ちはわかるのですよ、お立場もわかるし。ただ、われわれとしましては、同盟関係を深くしていけばいくほど、東西の衝突といいますか米ソの軍事的衝突の際に日本がそれに巻き込まれる公算といいますか、それがきわめて大きい、巻き込まれないという保障はむしろないんじゃないか、そんなふうに考えてそれを心配する一人なんですが、その点外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  64. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 何か紛争に、巻き込まれないかという端的に言ってそういう御心配なんですが、私は、日本は戦後厳守しておる方針がありますね、いまも防衛と申し上げましたが、専守防衛であると。国際紛争について武力行使はしないと、いろいろ明白に打ち出しておる。また、そのことは世界の各国が、日本立場というものはもう三十何年もたっておるのですから、繰り返し言われておることで、これも十分認識されておることと思うのです。そういうことを頭に置いていきますならば、私は何か大変な事態に巻き込まれるというようなことについては、特にそういうおそれはないという判断に立っております。
  65. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 自民党内にも安保条約改定論があることは外務大臣もよく御承知だと思うのですね。それから、自衛隊のキャップの諸君がやめますと、魚が水を得たように一斉に、専守防衛なんていうものはナンセンスだ、それから防衛力整備の大綱なんていうものはなってないというようなことを一斉に言い出します。現に言い出しておりますよ。たとえば大賀良平、竹田五郎、長野茂門というような方々それから栗栖元統幕議長、皆異口同音にそういうことを言っている。そういう情勢をわれわれが見て、全く心配がないというようなことはとうてい言い切れないわけですね。  それからまた、同盟には必然的に責任分担といいますか、それから役割り分担というようなものが伴わざるを得ないと私は考えておるんですが、外務大臣はどのようにこれを理解していらっしゃるでしょうか。
  66. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 防衛庁出身者だけでなく、いろいろ軍事問題についての御議論がある、あるいは御著書を出しておられるということを承知しておりますが、これはこれで、またそういうものに対して批判も出る。こういうことで、いわゆる言論の自由ということでうまく調整がとれておるのではないか、私はそう思うのですね。大変皆さんは厳しく御批判をされておるので、おのずからこう帰結していくのではないか、これはそういう論議があるからといってけしからぬとも言えないんじゃないか、こう思うので、われわれも冷静にそういう御議論に対しては対処していく、批判もするものはする、こういうことでございます。  それから同盟の関係について、お互いに仲よくしようというのですから、自分だけがうまいことをするというのじゃ、それは批判が出るのは当然だと思うのです。最近日米関係で問題が出るのは、どっちかというと日本側だけがうまいことをしているのじゃないかという見地からの御議論が相手側にあることを承知しております。しかし、仲よくしていこうという以上は日本が分相応の、これはここに書いてありますように、訪米報告の一枚目の最後に、「わが国の国力と国情にふさわしい国際的責任を果すべく努力を継続すること、こういうことでございますから。
  67. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そのわが国の国力に応じた相応の責任分担というものが、同盟の軍事面においてどういうようなものをもたらすか、どういうものを意味するかという問題なんです。これは外務大臣だけじゃなくて、防衛庁長官にもお伺いした方がいいかもしれません、まず外務大臣にお答えいただいて。
  68. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど申したように、「国力と国情」というのがつけてございまして、やはり政府としては日本の全体の国情を頭に置いての協力と、こういうことで、まあどういう点を御心配されておるかちょっとわかりませんけれども、まず私どもが皆さんに御批判を受けるようなことでなく、よく国情を考えてやる、こういうことでございます。
  69. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 外務大臣からお答えになったとおりでございますけれども、防衛庁としては、日米安保体制を含むわが国米国との友好関係は、アジアにおける国際的な基本的な枠組みの重要な柱でございまして、このような意味から、日米安保体制を維持するということは、ただ単にわが国の安全保障のみならずアジア、ひいては世界の平和の安定の維持に寄与するものと考えておりまして、このような国際関係の枠組みが崩れないように、そのためには、わが国としては安保体制の信頼性の維持向上のため努力を行うことがきわめて重要であるというふうに防衛庁としては……
  70. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 役割りです、役割りについて伺っているんですが。
  71. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 役割りについても、ただいま外務大臣からお答えがございましたとおり、われわれは自主的に防衛力の整備に努めながら、さらには専守防衛、憲法の範囲内、そういうもので西側陣営の有力な一員としての国力国情に応じた役割りは果たすべきものと考えております。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 さらに、午後にもっと突っ込んだ防衛についての論議を深めていきたいと思います。  防衛庁長官、いまのは軍事面においてどういう役割りを担当するかというお答えじゃないと思うのですが、よく午後にまたお考えいただいて答弁をお願いしたいと思うのです。  それから外務大臣、ちょっと総括質問のときにデタントの問題で、何かこれはソ連の戦略で、その間にソ連が武力を蓄えるということなんだというふうに受け取られかねないような御説明があったようにも思うのですが、あるいは私の受けとめ方が間違っておるかもしれませんが、デタントについては、その必要性といいますか重要性といいますか、そういうものに関してはどんなふうに認識しておられますか。
  73. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) デタントを進める、国際間における緊張緩和をどうするか、これ非常に大事な問題だと思うのですね。現在でも当然その必要性はあると思うのですが、ただ残念なことに、デタントが言われておおよそ十年ぐらいでしょうか、その間におけるソ連の軍事配備を見ると、現実に核兵器が増強されておったと、こういう事実が指摘されておるのですね。これはいろんな角度からの調査の結果だと思うのです。だからその点からすると、緊張緩和と言いながらソ連がそういう軍事配備をしてきたということはどういうものかというところを私が何かの機会に取り上げて申し上げたのではないかと、こう思います。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 今日は、私はデタントはここ十年というのはちょっと短かきに失するように思います。時として、国際緊張の時代はありましても、もろともっと戦後長く続いたと思うのですけれども、しかしこのごろはちょっと、やはりアフガニスタンの問題それから中東の問題等いろいろありまして、やや緊張の時代に入ったように思うのですが、いまはもうデタントの時代は過ぎたような、そういうような時代に入ったような印象を持っておられるのでしょうか。
  75. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは、いま申し上げましたように、東西間を考えるときに、緊張緩和が言われながらも核兵器などが広範囲に配備されたということから、デタントといっても成果が上がらない、逆の現象も出ておるのじゃないかと、こういう現状認識になっておるんですね。しかし、いまも申し上げたように、こういう情勢の中で緊張緩和を考えて努力するという必要性は私はあると思いますね。  だから、そういう意味においては、ちょっと議論が横へそれるようで恐縮ですが、軍縮特別総会のようなものを重視する、こういう面から核軍縮中心とする軍縮が進んで緊張緩和というものが達成されていくなら非常にいいと、こういうふうに思っておるので、ただいままで言われてきたことが現実には批判を要するような状況にあるが、じゃ、もうそういうことは全然必要がないんだと、そういう飛躍した考えを持っておるわけではございません。
  76. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私はもっと積極的に緊張緩和のための努力をしていただきたいと。何か懐疑的な立場でおられるということがちょっと私残念に思うのですね。  それで、その緊張緩和の努力ということを考えますと、この間も鈴木総理とちょっと議論したのですけれども、シュミットが、こういうときなればこそ西ドイツとソ連との話し合いが大事なんだということを申しましたね。西側との協調だけを念頭に置いて行動すればよいというんじゃなくて、日本日本独自の立場で緊張を緩和するためのステップを一つ一つ踏んでいってもらいたいと、私は日本外交にそれを期待するのですが、その点いかがでしょうか。
  77. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは西独の場合だけ考えるのでなく、日ソの間でも先般高級事務レベル間の協議を行って、日本日本として率直な意見も言う、ソ連側もまたいろいろ言っておるという、そういう場面がありますが、またアメリカも、御承知の中距離核戦力の削減交渉を昨年の十一月三十日からやって、いま中断しておりますが、三月以降また再開するのではないか。あるいはSTARTについてもやろうと、こう言っておるわけでございますから、これは、東西間が相互に自制と責任を行使して、そして相互の信頼感を深めていく、こういう必要性は絶対にあると思うのでありまして、全く遮断した姿で進むということでなく、現在でもいろんな角度で対話はされておりますから、これを尊重して本当の対話のできるように進めていきたい、こう思うのです。
  78. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 先ほどレーガン大統領が、老婆心といいますか、サミット前までにもう少し貿易自由化を進めた方がいいよという忠告のような意見を述べた話が出ましたですね。これは、日本に対するいまアメリカECの風圧というのは非常に私は激しいと思いますね。この間も日本の国会議員とEC議員との会議に私行ってそれをつくづく感じたわけです。その後もますます激しくなる一方なんですけれども、こういう諸外国の風圧というものを——片貿易日本が黒字を貿易でどんどん稼いでしまっておる、輸入余りしないと。いろいろなものは原因があるでしょうけれども、もうちょっと日本がこの経済力を人類の福祉の増進に振り向けるということが、最も世界の諸国民の尊敬をから得る唯一の道じゃないかとさえ思うんですね。最も効果のある方法といえばそれしかないのじゃないか。貿易を制限するといったって、そう輸出をやたらに制限するわけにもいきません。輸入を思い切ってふやせといっても、そう自由主義体制でそんなにどんどんふやせるものでもない。しかし、経済協力の幅をふやすということは、これは総理初め閣僚の皆さんの見議でできるわけですね。大蔵大臣が財政面でどういうふうにまたこれをチェックしていくかという問題はあるのですけれども、しかし、日本の経済力を開発途上国や最貧国の人々の生活の向上にうんと振り向けるということぐらい、諸外国に対してわれわれは誇りを持てる問題、また風圧を防ぐに効果的な方法というものはないように思うのです。もっともっと経済協力を強めていったらどうなんでしょうか。いまのようにDACの中で常に最低のような線に甘んじておるということでは、これは鈴木総理がサミットへ行かれても弁明の方法がないじゃないでしょうか。これは外務大臣、どんなふうにお考えですか。
  79. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) アメリカECの風圧が厳しい、これは現状認識は私は一致いたします。だからこれにどう対処するか、その中の一つが市場開放努力、こうなりますが、他面、日本の経済力をもってして国際的にどう寄与するか、こういうことになってくるとこれはお話経済協力。今後五年間過去の実績の倍増をする、こういう一つの方針を打ち出しておるわけでありますが、御批判のように、一体日本経済協力がどの程度かと、こう言うと、見方によって足らざるところがあると思うのですね。しかし、どこにそれじゃ欠陥があるかというと、国際機関に対しての協力というものが一般的協力よりもやや劣っておる。そういうことから、平均して見るとこれじゃ少ないじゃないか。本年度予算の中で一一・四ということになっておるけれども、それはそれで評価されていいと思うんですね。しかし、国際機関に対する協力など平均していくと、たしか——これは記憶で間違っておったら恐縮でありますが、六%ぐらいの伸びということじゃないか。それじゃどうも十分でない、こういうことでございますが、これは謙虚にそういう批判を受けて、そしてこういう貿易上については風圧を受けておるが、そのほかの面で努力をする。  現在、日米間で実際は貿易上のインバランスのことなどありますけれども、私はざっくばらんに話して、君の方も経常収支でいけば黒字じゃないか、日本も去年から経常収支が黒字になったんだから、だからそういう点から考えて、お互いに両国間のことはさることながら、いわゆる再活性化のために大いに努力しようじゃないか、こういうことを言ったのですね。  それから、鈴木総理は昨年ヨーロッパを回られて、寺田委員のおっしゃるとおりの、どういうふうに経済協力やろうか、技術協力やろうか、第三国の協力をやろうか、貿易の上ではどうもインバランスだけれどもそういう協力はしようと、こういうことも言っておられるわけですが、残念ながら十分な実績が上がっておらず、なお国際的にいろんな批判がある。この辺はよく考えて対応していかなければならぬと思います。
  80. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 通産大臣はいかがでしょうか。
  81. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いまおっしゃるように、ECアメリカからの日本に対する風圧というものは非常に厳しいわけでございます。これは、一つは日本からの輸出が超過している、インバランスがどんどん拡大をしている、それからやはり日本の市場が彼らから見ると閉鎖的である、こういうことでますますこの貿易摩擦が厳しくなっておるわけですが、その根本的な要因は、これはやはりアメリカあるいはECの経済の状況が非常に悪い、失業等がどんどん拡大をしている、こういうところにやはり経済の姿がどちらかというと比較すればいい日本に対して風圧が一身に集まっているということであろうと思います。  したがって、いまお話しのように、やはり根本的にはECアメリカの経済が立ち直るということが最も大事なことであろう。そのために、やはり日本としてもこのインバランスの解消あるいは市場の開放等にできるだけ努力するとともに、ECアメリカの経済の活性化を図るための努力はやらなければならぬ。その一つの方法としては、いまお話のありましたような経済協力、産業協力といいますかを積極的に進めていく。ECとの間には相当産業協力なんか民間の産業の中で進んでおりまして、大分EC貿易の責任者等が来ておりまして非常に評価をいたしております。あるいはまたアメリカでも、新聞等でも報道されておるように、日本の産業協力は民間の中で相当いま具体的に進んでおることも事実であります。同時にまた技術協力という面も、ECあるいはアメリカとの間の関係を進めていくということもだんだんと軌道に乗っておるわけでございます。同時にまた、開発途上国に対する経済協力、これはいま外務大臣のおっしゃいましたように、今回の五十七年度の予算でも大きく伸びておるわけでありますし、今後五年間はこれまでの予算の倍増という方向をとっておるわけですから、そういうものを相まってこれから積極的に進めていくということによって日本が世界の中での国際的な責任を果たして、そして日本と諸外国との協調関係というものも大きく前進するのじゃないか、こういうふうに私は考えております。
  82. 植木光教

    委員長植木光教君) 午前の質疑はこれまでとし、午後一時八分まで休憩いたします。    午後零時八分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  83. 植木光教

    委員長植木光教君) 予算委員会を再開いたします。  休憩前に、引き続き、寺田熊雄君の質疑を行います。  関連質疑を許します。片岡勝治君。
  84. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 関連ということで二点質問をいたします。  その第一は、過般私の一般質問指摘をいたしました厚木基地の爆音騒音についてでありますが、最近余りにもひどく、がまんの限界を超えるとして市長が三月六日、引き続いて三月十二日、外務大臣と関係省庁に申し入れをしたわけでありまして、この問題を取り上げまして、米軍は協定を守っていないではないか、このように国会で問題になっているから、再度米軍に交渉せよということを追及いたしました。施設庁も米軍に再度要請をする、こういうことでありましたので、どういう交渉をしたのか。現実に厚木基地はどう改善されたのか。こういうことが何度も繰り返されておりますけれども、恒久対策としてどういうことを考えているのか。  第二は、これも前回できずに割愛した問題でありますが、同じ厚木基地のゴルフ場の問題です。これは、以前から厚木基地、ゴルフ場から飛び出すゴルフボールが付近住宅に飛び込み、窓ガラスや屋根がわらを破損し、時に住民に当たって主婦にけがをさした例がある、こういうことで住民は大変不安を持っているわけです。これまで市を通じて何度か改善措置を要求してきましたが、依然として改められない。ここにも軍事優先、隊員優先の姿勢が見えるわけです。つい最近も上級自衛官によるゴルフボールの飛び込み問題が発生をいたしまして、こんなことではゴルフ場は閉鎖してもらいたい、こういう強い要求になっております。どうしてこういう住民の声に対して心配りができないのか。今後どう対処していくのか。事故防止安全装置ができるまでとりあえず閉鎖して、住民に対する謙虚な態度のあかしとすべきだと思いますが、いかがですか。  以上です。
  85. 吉野実

    政府委員(吉野実君) まず厚木の騒音の関係でございますが、ミッドウェーが長期間横須賀に停泊しているという関係で、着艦訓練を厚木の飛行場でやっていたということはこの間申し上げたとおりであります。そのために、ふだんの場合に比べまして騒音が高くなった、これも先生の御指摘のとおりでございます。  この間、三月十八日に先生から御指摘がありまして、早速私といたしましても米軍の関係責任者にその趣旨を申し入れまして、つまり内容といたしましては、合同委員会の合意事項をよく守るように、決してこれをはみ出してはいかぬということ、それから住民に対して安全を確保することについて抜かりのないようにしてくれと、こういうことを申し上げたわけであります。  事実を申し上げますと、ミッドウェーの関係の着艦訓練は十日以上続いたわけでございますけれども、三月十日をもって終わりました。それ以後着艦訓練はやっておりませんけれども、若干離発着の飛行が行われております。そのために、騒音なしというわけではございませんけれども、私の方で、あそこに備えつけております騒音測定器で、きょう先生から御質問があるということを承知いたしましたので早速取り寄せて調べましたところ、十日までの騒音の程度に比べまして三分の一ないし二分の一、その程度の騒音の状態でございます。これは、言うなれば五十六年度の同じような時期の騒音の程度と同じ程度でございまして、着艦訓練はもちろん行われていない。これが実情でございます。  先生の趣旨は、十八日の直後に申し入れましたけれども、なお念のために機会あるごとにそういうことは私どもとして向こう側に話してみたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。  次に、同じく厚木の基地におけるゴルフボールの飛び出しの問題でございますけれども、申すまでもなく飛び出して人家のガラスを割るとか、あるいは人の手に当たるとかというふうな、非常に困ることでございますので、われわれの方として累次にわたって米側に申し入れをいたしておりまして、そのために、主としてゴルフのボールの飛び出すところは十二番ホールということになっておるんです、先生御存じだと思いますけれども、そこのところに十二、三メートルの網を張ったわけです。にもかかわらず飛び出したということがありまして、去年の、日付はいま正確でありませんけれども、中ホールつまりミドルホールをショートボールに変えさせまして、球が飛び出さないように措置をさせたわけでございますが、にもかかわらずまた三月の十三、四日に球が、幾つか知らぬけれども飛び出したと、こういうことでございますので、こういうことでは安心してわれわれとしても米軍に任せっ放しというわけにはいかない、こういうことを申し入れたところ、相談の結果、ティーグラウンドを六十数メーターに及んで中に入れまして、つまり球が、婦人か何かで下手な人がいまして、こう打ったのがスライスをして、こう飛び出したわけです。ところが、ティーグラウンド、こっちへ六十数メートル入れますと、こうスライスしましてもそこまでは届かない、こういう措置をいまとらしたところでございます。  そういうことで、われわれの方といたしましても、先生の御趣旨を体しましてせっかく努力しているところでございますので、御了承賜りたいと思います。
  86. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 爆音だけじゃなくて球まで飛んでくるということですから、ひとつ大いに気をつけてもらいたい。  この際、私は申し上げておきたいんですが、この厚木基地ゴルフ場問題について、過般私は質問を予定しましたが、取り下げじゃなくて、時間の関係上割愛したのです。ところが施設庁筋では、片岡は質問を取り下げた、だからいままでどおりゴルフ場をやってもいいんだというような意味のことを関係筋の方に伝えているということであります。かかる曲解が事実とすれば、私は議員の名誉にかけてその事実関係を究明しなければなりません。そして、その責任を追及しなければならないと思っておりますので、直ちに調査をして報告されたい。  以上で私の質問を終わります。
  87. 吉野実

    政府委員(吉野実君) 初めて聞いたことでございますけれども、そういうことは私はあり得ないことだと思いますけれども、せっかく先生おっしゃることでございますので、私もそんなことが本当にあったのかどうか、まじめに、それこそ積極的に調査をいたしたいと思います。
  88. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 昨日、公明党の馬場議員の御質問で、三海峡封鎖の問題が出たようでありますが、この三海峡封鎖が現実に起こり得るという事態は、安保条約の第五条の場合のみに起こり得ると解釈すべきかどうか。これ、いかがですか。
  89. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そのときもお答えいたしましたように、日本が攻撃をされる、侵略を受けるという場合に、日本としては三海峡封鎖ということもあり得るということを大臣がお答えしたそのとおりでございます。つまり、日本が攻撃されたという場合ですから、安保条約で言えば五条の事態というふうに考えておるわけでございます。
  90. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは必ず防衛出動が下令されたときと重なりますね。
  91. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そのとおりでございます。
  92. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま局長は、日本が攻撃されたときということを言われたけれども、これは安保条約五条というと、アメリカが攻撃された場合もあるんですね、そうでしょう。海峡封鎖の目的というのは、ウラジオに基地を持つソ連海軍を日本海に閉じ込めて、太平洋に出さないためというのが内外の軍事専門家の常識となっておりますが、この場合もあなた方はそういう目的を持つシナリオを描いておられるわけでしょう。
  93. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほど来申し上げておりますことは、日本が攻撃を受けまして、日本の自衛隊がそのための対処行動をとるというときに、三海峡を封鎖することがあるかどうかと言われれば、状況によってあり得るでしょうということを申し上げておるわけでございます。  いま先生のお尋ねは、日本以外の、たとえばアメリカの戦略といったようなことでそういうことがあるかというようなお尋ねかとも思いますけれども、私どもは、日本防衛のために日本の自衛隊が防衛行動をとる、対処行動をとるという場合に、その一環としまして三海峡を封鎖することもあり得るということを申し上げました。もちろん第五条によりまして、日米いずれかが攻撃を受けた場合には共同対処行動ということになります。共同対処行動の時点におきまして、共同して封鎖するということもこれは当然あり得るわけでございます。
  94. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いやそうじゃなくて、攻撃というんだったら、攻撃だけだったら日本海から日本を攻撃するということもあり得るわけだから、そうじゃなくて、それを封鎖するという目的は、ウラジオに基地を持つソ連の艦隊を太平洋の方に出さない、日本海に閉じ込めるというのがその目的だということは、これはアメリカ日本の軍事専門家が一致して指摘するところで、これをわれわれに隠して、ごまかして通るということは納得できませんよ。これは明らかにしてもらいたい。
  95. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 全然、ごまかすとか隠すとかということじゃなくて、しばしばお答えいたしておりますように、わが国が攻撃を受ける場合に、わが国に対して攻撃をしておる国の艦艇の通峡を阻止するということは、これは状況によってはあり得るということを申し上げているわけです。ですから、通峡を阻止するということでございますから、先生のおっしゃいますように、阻止された艦艇が通れないということにはなるわけでございますけれども、それが目的でございますから、そういう目的の作戦を状況によってやることはあり得るということをしばしば申し上げておるわけでございまして、何も隠しているとか、そういうことではないわけでございます。
  96. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ちょっといまの局長の答弁で、私の言ったことを肯定したことになるじゃありませんか、そういう目的のシナリオを描いているというんだから。それで、ソ連の艦艇以外に日本海で攻撃を受けるということは、ほかの国はないでしょう、韓国の艦艇が日本を攻撃するなんて考えられないし。だから、そこはやはりはっきり考えなきゃいかぬけれども、これは結局シーレーンの防衛、いまの第五条の場合に、シーレーンの防衛というのが主目的ということにならざるを得ないと思いますが、どうです。
  97. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私どもがこの場でこういう議論をいたしますときに、特定の国の名前を挙げるべきでないということは御了解をいただきたいと思います。  で、シーレーンの防衛が主目的ということになるではないかということでございますが、通峡を阻止する、三海峡を封鎖するという目的はそのときの状況といいますか、によりまして千差万別の判断があるだろうと思いますので、どういう目的で通峡を阻止するということを一概に言えないと思います。シーレーンの防衛ということが関連することも当然考えられますけれども、それが唯一でももちろんありませんし、状況によってはそれが主目的でない状況だってあり得るわけですから、それを一概に特定した目的で、こういう目的のために通峡を阻止するだろうというふうには申し上げられないと思います。
  98. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 主目的か一つの目的かという、そこだけのことであれば、現在はそれで私の方は聞きおくという程度にとどめますけれども、それは局長、簡単に言うと、日本アメリカが組んでソ連と戦争を起こすということを意味せざるを得ないんですよね。これ言うと言わないにかかわらず、これははっきりしていること、それはお認めになるんでしょう。
  99. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほども申し上げましたが、戦争を起こすのでなくて起きた場合に、そういう通峡阻止という作戦もあり得るということを申し上げておるわけであります。
  100. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その対象国がソ連以外に考えられますかと言っているんです。
  101. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 特定の国の名前を挙げるべきでないと思いますので、その点は国名を挙げることを御容赦いただきたいと思います。特定の国の名前を挙げるべきでないと思います、不必要な誤解を招くおそれがありますから。われわれは特定の国を敵性視しているわけでもございませんし、仮想敵国視しているわけでもございませんので、特定の国の名前を挙げることは控えさせていただきます。
  102. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 納得できないんですがね。仮想敵国視しないことは当然であって、それはわかりますよ。しかし、そういうシナリオを描く場合に、ソ連以外に対象となる国があり得るかどうかということをお尋ねしている。
  103. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 繰り返しになりますけれども、われわれは特定の国を敵性視したあるいは仮想敵国視したような発言は慎しむべきであるというように考えております。
  104. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは納得できませんよ、あり得るかどうかという問題ですからね。
  105. 植木光教

    委員長植木光教君) 速記ちょっととめて。    〔速記中止〕
  106. 植木光教

    委員長植木光教君) 速記を起こして。
  107. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いま三海峡封鎖の問題についてのお尋ねでございましたけれども、私たちわが国の周辺諸国の軍事情勢といったものは常に念頭に置きながら、いろいろなケースについて対応策を考えておくという立場で平素からおるわけでございます。
  108. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 現在の段階ではそれ以上は申せないということでありますから、きょうのところはこの程度にとどめておきたいと思いますが、最近のアメリカ日本に対するいろいろな要望というものを見ますというと、たとえば今度のワインバーガーの国防報告などを見てみますと、海空の防衛力の整備を強化することと、それから千海里の海の交通路の防衛力を整備することを強く希望するということを言っておるようであります。アメリカの最近の日本に対する軍事的な要望というのは、空と海の防衛にしぼられているような印象を受けるが、そう考えて間違いないでしょうか。
  109. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先生指摘のように、最近の国防報告にも日本の問題につきまして一千海里の防衛という言葉が具体的に入ってきております。そういう意味で、最近のアメリカの一つの対日期待表現の中に具体的にそういう言葉が入ってきておるということは、私は率直に言って最近の一つの特徴ではないかと思っております。しかし、これは何もアメリカ側が言い出したわけじゃなくて、もうもともと日本が言っておることでございまして、日本の基本的な一つの防衛構想として、防衛計画の大綱もそういう考え方でできておりますし、そういうことをアメリカが最近取り上げて具体的に言っておるということで、その点は私どもは特段変わったことを言っておるというふうには思っておりません。具体的にそれ以上にアメリカは、特に日本の場合海空だとか、そういうふうに具体的なことを言っているわけではございません。
  110. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いや、これは防衛報告にはっきり海と空と言っている。
  111. 塩田章

    政府委員(塩田章君) それは千海里の防衛に絡んでそういうことを言っておりますが、それではたとえば陸は要らないとかあるいは切り捨てていいとか、そういうことではなくて、日本の海上航路帯一千海里の防衛ということを確かに言っておることは事実でございますが、それ以上に具体的に私どもに何か言ってきておるわけではございません。
  112. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 だんだん時間がなくなってきておりますので……。  アメリカの見るところでは、ソ連単独の北海道侵攻というようなものは軍事戦略にないということをもう断定していると思うのですが、この点塩田さんいかがですか。
  113. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そういうことを言っておる人がおるかとも思いますけれども、アメリカとしてそういう判断をしておるというふうには私どもは承知しておりません。
  114. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に外務大臣にお尋ねしたいのですが、最近ソ連が、中国に対しても関係の修復を呼びかけておることは御存じだと思うのです、今月の二十四日のブレジネフの呼びかけもその一つでありますが。中国も次第にソ連との関係修復に向かって動いているように思うのですが、この問題はブラウン報告でもワインバーガー報告でも、中ソの対立というものをアメリカの軍事戦略上非常に重要な問題としてとらえていますね、これはアニュアルリポートにはっきり載っておりますから。しかし、それが修復に近づいてきておるということは非常に重要な意味を持ってくるわけですが、外務大臣としては、近き将来中ソの関係修復というものはあり得るとお考えかどうか、この問題。  それから次は、韓国に対する経済援助の問題で、商品借款はしないということを通告したという新聞報道がありましたが、事実かどうか。韓国はそれを了承したのかどうか。また、六十億ドルの総枠というその要求はたてまえ上崩していないのかどうか。もうすでにそれは取り下げておるのかどうか。この点について一括してお答えをいただきたいと思います。
  115. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中国とソ連との間の動きということにつきまして、これが両国の間の関係を修復しつつあるのかどうかということにつきましては、なかなか私の立場では判断ができにくいところでございますが、ある動きが幾つか出てきておるという事実はこれは認めていいと思うのでありますが、これが修復と言い得るものかどうかということについては、残念ながらその判断が少しできにくいところでございます。もう少し経過を見たい、こう思います。  それから、韓国に対しての二回にわたる実務者レベルの協議の後、韓国の方に対しての日本側所見を述べた中に、商品借款がむずかしいということは、確かにこれは入っております。これはこれで日本の見解を表明したものでございますが、これから後十一のプロジェクトについてどう最終的の判断をするかというようなことはまだ残りておるわけであります。  六十億ドルについてどうか、こういう御質問でございますが、これは仮に商品借款はゼロというと、もう二十五億ドルそれはマイナスになるわけです。これからの折衝でございまして、この韓国側の六十億ドルの要望というものは、これはわれわれは前提として頭に置いておるわけでありますが、わが国経済協力の基本方針、あるいは従来国会で申し上げておる積み上げ方式、それらを勘案しながら、最終的にどうするかはもう少し時間的余裕を持ちたい、こう思っております。
  116. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 終わります。(拍手)     —————————————
  117. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、三木忠雄君の質疑を行います。三木君。
  118. 三木忠雄

    三木忠雄君 外務大臣、御苦労さまでございました。  外務大臣伺いますが、特に訪米の前には国際情勢の方の問題が主力にアメリカでいろいろ議論になるだろうという予定で行かれたやに伺っておりますけれども、やはり二国間問題、特に貿易摩擦等の問題が主力になった、こういうふうに報ぜられているわけでありますけれども、国際情勢の問題については、特に訪米報告等にもございますけれども、どういう問題点が一番外務大臣として述べ、あるいは主張し合い、あるいは意見の一致を見たのか、この点についてまず伺っておきたいと思います。
  119. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 国際情勢につきましては、先ほど申し上げたような三つの基本的な立場に基づきまして、そして東西関係アジア情勢中東情勢、中米・カリブ情勢等、それぞれ両国関心のある地域についての情勢について、日本側からアメリカに聞く場合の方が多かったと思います。アジア情勢につきましては、どちらかというと先方の方が日本の考えを求めるという場合がございましたが、東西関係は私から特に関心を持って米側の意向を聞く、それから中東情勢、これは御承知のエジプトとイスラエルの間をアメリカが調整した、そういうこと、またイスラエルの動向というものが非常に注目を浴びておりますので、中東情勢はやはり米側の考え方を聞き、日本側の基本的な姿勢というものは私から申し上げました。中米・カリブ情勢につきましては、これは例の開発構想に基づいての日本側理解を示しておる点などを中心に、米側はそれらの日本立場について非常に期待をしておるような受け答えでございました。  大体それらの地域について具体的にいろいろ話し合ったということでございます。
  120. 三木忠雄

    三木忠雄君 特に中米・カリブ情勢等の問題について、経済援助の問題を外務大臣は前向きに協力を約束された、こういうふうに報道をされているわけでありますけれども、この問題についての外務大臣理解、それから軍縮特別総会についてわが国と密接な協議を約した、こういうふうに訪米報告には出ているわけでありますけれども、軍縮問題、それからカリブ海の経済援助の問題、この点については、外務大臣、もう一歩深くいろいろ論議をされたというふうな意見を伺っておりますけれども、この点についてはいかがでございますか。
  121. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 軍縮特別総会に臨む日本の考えといたしましては、日本が被爆国であるという立場、また鈴木総理が各国に先駆けて首脳として出られる、こういうことで、この軍縮特別総会で核軍縮を初めとする軍縮についての国際間の、より一層の前進を期待するという立場米側との話をいたしましたが、特に強調いたしましたのは、米側との共同歩調をとる、米側がやはりこういう総会に臨んでの発言というものは相当ウエートが高いのでありますから、そういう立場日本の持っておる特殊の立場、そういうものについてでき得る限り事前の調整をしたいというような希望を述べたりいたしました。  それから、中米・カリブ地域につきましては、これはすでに日本のとっておる意向表明、これは遠隔地にはございますけれども、日本の持っておる経済協力の方針のもとに協力をしようということはかねて申し上げておるところであります。また同時に、これらの地域に対してアメリカ、カナダ、それからメキシコ等が相談をして対処するということも聞いておりますので、そういう諸国のとる方針にのっとりまして、ただいま申し上げた日本経済協力の基本の中でできることをしよう、こういうことで、特に米側から具体的にこのようなことをしてくれ、こういうことではなく、そういう基本の話し合いであったと、こういうことでございます。
  122. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、中米・カリブ情勢等の問題に絡んで経済援助を一歩進めたという感じではなしに、従来の路線で経済援助を続けていくという、こういう考え方と理解してよろしいですか。
  123. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そのとおりでございまして、日本の基本の立場を、また姿勢を申し上げて、米側がそれに対して理解をした、こういうことでございます。
  124. 三木忠雄

    三木忠雄君 八〇年代前半に経済援助を倍にするというこういう考え方の中で、やはり経済援助をずるずるずるずる——いままでの経済援助のやり方とは違った戦略的な経済援助に変わりはしないかということが非常に危惧される問題があるわけです。あるいはまた、アメリカのいろいろな影響の中で軍備拡張路線にそのまま乗っていかなければならない、それと貿易摩擦を引きかえにするような考え方に私は立ってはならないと思うのです。貿易摩擦貿易摩擦、経済援助を少し与えるからあるいはそういう意向に従うから貿易摩擦は少し緩和するだろうというような、そういう考え方ではこの貿易摩擦の問題は解決しないのじゃないか。アメリカの考え方というのはやはり割り切っている問題じゃないかと私は理解をしているわけです。そういう意味で、議会に提出をされております相互主義法案に対しての感触、上下両院でいろいろ接触をされた外務大臣の感触はどのようにお感じになっておりますか。
  125. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 相互主義法案の中では、わが国として一番関心を持っておるのがダンフォース法案でございます。それが、ちょうど私どもがアメリカを離れる日に向こうの議会で問題になる。朝食会でブロック代表と懇談をいたしまして、ブロック代表が自分が証言をすると、こういうことでございましたので、相互主義がこれが縮小均衡につながっていくようなことであればすなわち保護貿易的なものになっていく、またダンフォース法案の中にはそういう条項が含まれておりますので、こういうことについては、ひとつ相互主義法案が即保護主義的なものになることを考えてもらいたいということを申しました。また、下院の外交委員会、上院の外交委員会、それらの場におきましても、議会でそういう法案が出ておるのでありますから、皆さん方に、日本としてはこれらの法案の成立について、それが成立の内容に期待しておるということを申し上げ、あるいは中には、どなたということをちょっと記憶いたしませんが、個別の問題についての相互主義は絶対に自分らは考えないということを言われた向きもございます。また、幾つかの会談の中では、大体政府側に立つ方は、保護主義法案の成立については、これは政府としては好ましくないという姿勢をとってお力だわけでございますが、要は、ダンフォース法案のように成立の可能性のあるものについて、またその法案の扱い方がどうなるかということを注意深くいろいろ論議をしてまいりました。  ずばりと申し上げて、果たしてわれわれのとった行動でそれを阻むことができるのか、また法案が仮に成立する場合には、いろいろと最終的に修正が加えられる場合がございますから、そういう際に日本期待が反映するかどうか、いまのところはっきり見通しはございませんが、せいぜい相互主義法案の問題について率直な意見は述べてきたつもりです。
  126. 三木忠雄

    三木忠雄君 ダンフォースのいろいろな意見あるいは一問一答等も新聞紙上でも拝見しましたけれども、これはやはり米側日本に対してアンフェアであると、こう言っているわけですね。この問題についてどういうふうな見解に日本は立っているのか。外務大臣、ダンフォースは公平じゃない、アンフェアである、こういろいろ言っている。私もアメリカから最近帰ってきたいろいろな人たちから聞くと、日本市場開放がある意味ではアンフェアである、この問題を解決しなければだめだといろいろな問題点を挙げておりますけれども、これについての外務大臣の感触はいかがでございますか。
  127. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の日米会談に臨むに当たりまして、アメリカ側の意向としていま御指摘のアンフェアという論議が相当あるということは承知しておりましたが、今回の一連の会談の中では、そういう口ぶりで何か非常に日本が不都合である、不公正である、そういうことは、どういうものかございませんでした。そこで私からは、これは大変恐縮ですけれどもそう言ったのですから申し上げておきますが、ボーイスカウトのマークをつけておりまして、おまえボーイスカウトかということから、ボーイスカウトはアンフェアなんということはしないというようなことを言ったりしてやったのですけれども、幸いそういう失礼——私は失礼だと思うのですね、アンフェア、アンフェア言うのは。アメリカでは一番よくない言葉のようです。今回幸いそういう言葉は出ないし、またそういう気ぶりで、気持ちで接してくるというような、そういう感じはありませんでした。
  128. 三木忠雄

    三木忠雄君 アメリカが求めているのは日本貿易、対日貿易赤字をゼロに、しようという問題、これじゃなしに、やはり市場開放という問題を非常に強く迫っているわけですね。そこで、農林大臣やあるいはまた通産大臣けさほどからいろいろの議論があります。私は、農林大臣としての立場は十分わかるのです。こういう考え方、この主張で果たして外務大臣米側の摩擦解消の問題は解決できると、こう見通されておりますか。この点について。
  129. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) いままでにも腹蔵なく話し合ってきておりますから、それなりに先方に反映はしておると思うのですね。農産物の問題については私も若干の経験を有しておりますから、異常気象のときに君らの方が出さなかったこともあるじゃないかと。これは時と場合には現実には出したくても出せない場合があるのですね。人道上の問題で優先するということになると、港湾の船、港湾作業、鉄道というものがふくそうしてしまいますね。だからそういうようなことを考えれば、日本がある程度の食糧を自給自足しておかなければならないということはこれは理解してもらわなければいけないというようなことを申しますと、これはちょうど八年ぐらい前のことでございますから、いや、あれは失敗であったと。そして、安倍元農林大臣がおられますが、私の後が安倍農林大臣で、そのときに、二度と私のときのような事態を繰り返さない、こういうことから安定供給の約束を当時の農務長官とやった事実があるのです。これはなかなか米側としても、これを押しのけて農産物はすべて自由化と、これはなかなか言いにくいのじゃないか。現にこの問題は作業部会でやる、四月からやる、こういうことになっておりますから、私は今度参りましたときに、そういうふうに日米の間で具体的に合意しておるものはその場でやっていく、ベルサイユサミットまでに日本市場開放をできるだけやったらどうか、やれることはやろう、努力しますとは言っておりますが、農産物のことにつきましては、作業部会を通じて両国の間で大いに論議をして結論を得ると、こういうことではないかと思います。
  130. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、いまの外務大臣の答弁から、感触で、農林問題については日本の主張をはっきり認めさせられるという自信は持っていらっしゃるわけですね。
  131. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 四月の中ごろからこの作業部会が始まりまして、まずその作業部会日米間でどういうやりとりになるか。御承知のように二十二品日ありますから、中にはあるいは米側の主張をわれわれが首肯しなければならない場合も出てこないか。これはいずれにしても協議、会議のことでございますので、いまここで即断して、一切それは作業部会をやってもゼロだと、こう言うことはいま私の立場から軽率のそしりを免れませんから、そういう場でそれぞれ豊富な知識、経験を持っておる方々による論議でございますから、おのずから問題は打開されるのじゃないか、こう思います。
  132. 三木忠雄

    三木忠雄君 サミットまでに市場開放と。これはできるものとできないものといろいろあると私は思うのです。この点についてやはりサミットまで、あるいはそのサミットの前日ですか、にどうするのか。日米首脳会議等で、日本としては具体的にできるものできないもの、そして長期にやるものあるいは中期でやるもの、あるいは関税の問題、非関税障壁等の問題も含めてそういうものを明確にサミットまでに打ち出すという、こういう方針でございますか。
  133. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) サミットまでにできるだけの市場開放米側が求めておると。またいずれECの方の関係も江崎ミッションによってより一層明らかになると思いますが、従来やはりEC側においても市場開放を強く求めておるわけでございますが、米側の姿勢としては日本側が真剣にやってくれという厳しい姿勢をとっておることは事実でございますけれども、ヘイグ長官と私の話し合いの中で、それはできない場合もあるだろうと。何もかも何かやらなければならぬという前提でやるというのじゃなくて、お互いに話し合ってできるものできないもの、それは三木委員のおっしゃるとおりに具体的の処理はそういうことにはっきりなっていくと、こう思います。それで、おっしゃるように長期的に考えなければならないものも出てくると思います。
  134. 三木忠雄

    三木忠雄君 よく、日本外交ははっきり物を言わない、こういうふうな、櫻内外務大臣はそうじゃないと思うのですけれども、玉虫色というような政治的な解決をよく図る関係か、外国へ行ってもそういうふうに読み取れるような発言をしてくるということがよく言われるわけです。したがって、私はめり張りをはっきりしなければいけないと思う。まあ政治ですから、いろいろぶつかったりあるいは妥協したりいろいろしなければならない問題もあろうと思いますけれども、やはり時間をかけて解決しなきゃならない問題もあるだろうし、解決できるべき問題もあるだろうし、こういう点は市場開放の問題としてサミットまでに解決するという強い意向が外務大臣の中にあるのかどうか、もう一度この点を伺っておきたいと思います。
  135. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) この後私がどういう場で論議ができるかは別といたしまして、方針としまして、はっきり言うべきものは言い先方の言うことも聞きと、こういうことでいきたい。特に農産物の問題については、農務長官と話をいたしましたときに、大体日本農業の実態が平均一ヘクタール、あなた方の方は百五十ないし百六十ヘクタールじゃないか、農業経営の形態が全然違うと。それからまた異常気象などを考えていくと、なかなか米側の考えているようにはいかないよと。それからもう一つ私はつけ加えておいたのです。それは、それじゃ百歩譲って、何でも自由化日本はそれで安いものを買えればいいじゃないかという論議をそのままのみ込んだら、その次にじゃ日本の農村はどうすると。私は政党政治家だからそれを真剣に考えなければならないが、それじゃもっと日本は工場をつくり、もっと輸出をやるという、そういうことも考えざるを得ないんだが、現在そういうところも頭に置きながら検討している。こう言ったところが、別段これに対して反発もなく聞いておられるような状況でしたが、しかし、あらゆる角度からこの市場開放については十分な論議をして禍根を残さない、これが必要だと思っております。
  136. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこで農林大臣伺いたいのですけれども、これは非常に大変な立場だと私も思うんです。しかし、この残存輸入制限品目、何品目がありますけれども、これはもう当面自由化はやらないという方針でございますか。あるいは、長期的な見通しに立った場合に自由化をやれるという方向に立っているのか、この点についてまず伺っておきたいと思います。
  137. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 残存輸入制限品目農産物二十二品目ございますが、この品目については農畜産業の基幹的な作物であるということ、さらにはまた、地域の重要な作物であるということ、さらに水産業振興のために非常に重要な品目であるという点からいって、これはどうしても私は開放するわけにいかぬ品目である、ぎりぎりいっぱいのものであるということを申し上げたいと思います。
  138. 三木忠雄

    三木忠雄君 いろいろ見方は違うと思うんですけれども、たとえば私もこれ資料をいただいたのですけれども、農家の世帯数いろいろ大小あり、地域の問題もあろうと思いますけれども、たとえばコンニャクイモなんか約三・五倍ですね、内外価格差が。これだけがいいとか悪いとかいう問題じゃありませんけれども、たとえば一例を挙げれば、こういうものも永久に、永久というと言葉が悪いかもわからぬが、輸入自由化はできないという考え方でいくと、日本はやはり制限品目が多いじゃないか多いじゃないかという一つの、まあ言えば面当てみたいにやられると。それと工業製品とミックスされたような感じになってきまして、ここらの問題が、農民の生産者保護という立場は私は理解できるんですが、しかし、それに甘えてはかりおってはならないのじゃないか。やはり体質を強くしなきゃいけないんじゃないか。それと同時に、流通過程等の問題についても、    〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕 この制限品目の問題についてもっとメスを加えて、生産者に本当に利益が当たるような形にならなければ私はならないと思うのです。そういう問題にもっとメスを入れて、ある時期なら時期を置いて、やはり開放するなら開放するとか、あるいはできないものはどう対応するとか、こういう制度を考えていかなければならないのじゃないかと思うんですけれども、当面は言えないでしょうけれども、そういう考え方に立つというお考えはもう全然ないのですか。
  139. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) いま御指摘のコンニャク玉でございますけれども、この問題は、御承知のように関東あるいはまた南東北の山間傾斜地帯の農村にとっては、これ以上なかなか作付作物がないという地域なんでございます。しかも、これがもし自由化されまして、入ってまいりますところは中国なんでございます。中国は御承知のようにコンニャク玉は自然に野生で栽培されているものでございまして、それと対抗して栽培を進めようということは、日本のこれに従事している方にとっては非常に打撃を受けるということなんでございますので、日本列島全体は北から南まで、かなり気候風土その他農業の面にとって多くの制約を受けている。その中で農業を進めていく。その中で新しい技術を導入して、あるいはまた経営規模を拡大して何とか国際競争力に対応できる農業をいま進めようとしているのです。私たちは、いま単にこれを抑えることによってただ農業を保護しよう、過保護にしようということじゃなくして、新しい農業をつくるために、いましばらくこの点は抑えなければいかぬ、守っていかなきゃいかぬということなのでございます。現に、日本の自給率の確保の面からいって、お米だとか野菜、果物、あるいは畜産物等についてはやや自給できる段階でございますが、御承知のように小麦だとかあるいは大豆、トウモロコシ等についてはどうしても入れなきゃならぬ。それをさらに振興していきたい、こういうことでございますので、そういう点、そういう新しい農業をつくるためにやはりここ当分の間、私はこの点は制限せざるを得ない、かように考えます。
  140. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあ農林大臣の意図しているところはよくわかるのですけれども、やはり都市の消費者もいるということもひとつ念頭に置いていただいて、余りにも価格差が激しい、あるいは体質がいつまでも同じだという点ではやっぱり進歩がないんじゃないかという点を考えますので、私は一例を挙げただけでございまして、コンニャクに憎しみがあって言ったわけじゃございませんので、その点は理解をしていただきたいと思うんです。  それから、通産大臣伺いたいんですけれども、貿易摩擦の解決のために、包括かあるいはまた積み上げ方式かという、こういう問題がいろいろ議論になっているわけでありますけれども、通産大臣、一番先にアメリカへ行かれていろいろ感じられたと思うんですけれども、その問題についてどうお考えになっているか。それともう一つは、通産省としてのこの貿易摩擦解消策はどういうふうに考えているのか。
  141. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま外務大臣からいろいろとお話がありましたが、やはりアメリカは、またECもそうですが、日本に対して相当厳しく市場開放を求めておる、こういうふうに理解をいたしておるわけでありますが、アメリカ日本に対する考え方はインバランスが非常に拡大をしておる、こういうことに対して日本にさらに輸入拡大をしろと。これはインバランスの拡大する原因はもちろんアメリカの高金利にあるわけでありますが、しかしアメリカとしては、日本の市場の状況から見て、もっとアメリカの製品が日本輸入されるべきだ、それにはやはり日本が壁を設けておると。こういうことであろうと思いますし、もう一つは、先ほどからお話がありましたように、やっぱりアメリカにとっては、日本の今日の市場のあり方がアンフェアである、こういう見方をしておるんじゃないか、こういうふうに思うわけです。  ですから、相互主義法案というふうな形でいま法律が議会で論議をされておる。これがこのまま進んでいきますと相互主義法案があるいは成立をする、さらにまたアメリカ日本に対する制限措置をとってくる、あるいはまたヨーロッパが制限措置をとってくるということになると、やはり自由貿易体制というものの根幹が崩れてしまう、こういうふうに私は思っております。それだけに、何としても自由貿易体制を守っていくためには相手に対しても言うべきことはもちろん言わなければなりませんが、日本としてもやるべきことはやらなければならないのではないか。そして私はやはりある程度の方向を出すのは。全部一挙に出せるとは思いませんけれど、やはりサミットの前に一つの方向を出すべきじゃないかという私は考え方を持っております。  これはサミットを成功させるということにもつながっていくわけでありますし、同時にまた高まっておるところの貿易摩擦を収束の方向へ向かわせる一つの転機にもなるのじゃないか、そういうふうに考えておるわけでございますが、政府としてサミットまでにどうするかということはこれから決めていくわけでありますが、私の考えとしては、いろいろといままでやっておりますし、これからもそれぞれやるわけであります。各省それなりにやっていくわけでありますが、そのやっていく中身というのがあるいは途中で表に出ることもあると思いますが、そういう一つの措置を、それぞれの措置をやはりある段階において総まとめをして内外に明らかにする、同時にまだこれからの自由貿易体制を守っていくために日本が今後どうすべきかということも、やはり明らかにしていくことが必要じゃないだろうかと考えておるわけであります。  そういう中で各省それぞれやっていかれるわけですが、通産省としてもいろいろな問題を抱えております。個別品目等もずいぶんあるわけでございます。アメリカ先端技術をどうしろとか、あるいはまたソーダ灰であるとか、あるいは石油化学製品であるとか、ビジネス、観光であるとか、そういうことも指摘をしております。皮の問題もありますし、さらにまた日本輸入を増大するための措置をとれと、いろいろの問題があります。自動車の問題もあります。こういう問題等、やはり通産省としては私は責任のある立場としてこれから鋭意努力をいたしまして、そして積極的に交渉も持ちながらサミット前のある時点までにはその成果を上げ、アメリカにも、貿易摩擦に対してこれだけ日本として誠意を持って努力をしているんだと、こういうことを理解できるような措置を何とかとりたいと思ってこれからひとつ懸命にやってまいりたい、こういうふうに思います。もちろん日本の国内でもいろいろな問題を抱えておりますから、国内対策もそれに並行して進んでいかなければなりませんが、しかし何といいましても、このままで推移をすれば日本が袋だたきになる、スケープゴートにされるおそれもあるわけですから、私の所管をしておる事項につきましてはひとつ力を尽くしてみたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  142. 三木忠雄

    三木忠雄君 大蔵大臣、いま直接じゃないんでしょうけれども、この十一月ですか、ガットで投資金融の問題の自由化の問題がいろいろ言われているわけです。この問題に対する考え方と、それから、いま大蔵省で輸出課徴金制度の問題を何か考えているやに伺っているわけでありますが、この点は検討されているのか。あるいはもう一つ、きょうの新聞等によりますと、通産省がたとえば機械の関税をゼロにしたい、こういう機械の輸入の関税ゼロというような意見がいろいろ出ると、やはり関税の問題になってくると大蔵省は財政再建との問題で収入が減ってくる、こういう問題でいろいろ問題点が出てくる。ここらの調整については、いま進められているのかどうか。関税問題ですね。
  143. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) まあガットでの……
  144. 三木忠雄

    三木忠雄君 簡単で結構です、時間がありませんから。要点を要領よく言ってください。
  145. 渡辺美智雄

    国務大臣渡辺美智雄君) それじゃ簡単に。  ガット提訴の問題はございますが、どういうふうに対応するか、十一月にはガット閣僚会議というものも予定されておりますから、その対応策についてはこれから政府として内部で相談をしていく、まだはっきりした答えは出ておりません。  第二番目は、輸出課徴金の問題については大蔵省で、輸出課徴金というのでなく輸出正常化調整金ということで、ある一定の限度を超えて輸出の伸びるものについて幾らか取ってはどうだという案を実は出したのですが、政府内部でもこれは喜ばれない、それから相手国も喜ばないというものですから、お蔵入りということでございます。  それから、関税の機械等の引き下げ問題については税収が減るからということだけではなくて、関税というのは国内産業保護みたいな方がむしろ優先する場合が多いわけですので、それらとの調整をどうするか、具体的な問題についてはまだよく聞いておりません。
  146. 三木忠雄

    三木忠雄君 余り時間がありませんが、運輸大臣、日米航空交渉の決裂の原因ですね。この問題についてはどう認識をされておりますか。
  147. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 一番根本的なことは、日本アメリカに対しまして以遠権をほとんど持ってない。持っておりましてもニューヨークからだけでございますが、これはほとんど使えない。一つだけでありますが、アメリカ日本に対しましては三つの国際空港から無制限の以遠権を持っておるわけであります。われわれはこの以遠権を少なくとも均衡な状態日本も持ちたいということを一番主眼にして話したわけでありますが、それに対してアメリカ側は、こうした以遠権を日本に与えることにきわめて強烈に反対をしたということであります。そうしたことから、それならば、日本に対して以遠権をこれ以上認めない、あるいは協議をするにしても非常に時間がかかるとするならば、日本においてはこれから、いままで与えた以遠権は仕方がないとしても、これから乗り入れを許すであろう航空会社に対しての以遠権を現状以上には与えませんよと、凍結をしますよということが一番最終の問題で、合意に達しなかった理由であると思います。
  148. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは外務大臣、この日米航空交渉の問題については総理にいろいろ託された——大統領からですか、何か話があるそうでございますけれども、この問題についての解決の糸口をどう見出そうとされているわけですか。
  149. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の日米会談の折には、レーガン大統領あるいはルイス運輸長官から航空協定の話が出ております。    〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕 先方の持っておる認識は、今回の交渉はまあある程度話が進んだ、時と場合ではもう紙一重だった、わずかなことであったというような表現で、これは私の感じを率直に申し上げますと、何かもう少し話せば折り合いがついたのじゃないかと、そういう気持ちを持っておるように見受けられます。それで大統領鈴木総理に、この航空協定の問題をよく考えてもらいたいという、そういう意向表明であったことも事実でありましたから、私はそのとおりを総理に報告をしておきました。ただ、大河原大使ですね。この大使が現地で代表として折衝に当たられたのでありまして、運輸省の運輸次官とともに代表として当たられて事情をよく知っておられるわけでございます。  ただいま運輸大臣から静答えがあったそういう事情も踏まえますと、先方の認識はもう少しのところだったという認識はあるようですが、なかなか今後の見通しはやはり簡単なものではないと思います。しかし相互に歩み寄って話がつくような環境が仮にできれば、これは長年の懸案でありますから、交渉を再開して話を進めるのが適当かと、今度いろいろ交渉するというときには、やはり相当見通しをつけてでないと、いたずらにやり合うだけではお互いの感情を損うだけだと思うので、その辺は慎重にやらなければならないと思います。
  150. 三木忠雄

    三木忠雄君 この日米航空協定の改定の問題は、やはり不平等条約のこれはもう最たるものであると思うんです。こういう点で、貿易摩擦とのセットでこういう問題を解決しようという考え方は恐らくないと思いますけれども、運輸大臣としまして交渉再開の条件というものは、どういうものが整えば交渉再開の条件になると理解されておりますか。
  151. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 先ほど申し上げましたように、端的に申し上げればわが方が非常に不利であるということでありまして、不利であるということに対して先方がよく認識することでありまして、そういうような段階をどのような形で招き寄せることができるかということが交渉再開への道筋ではないかと思いますが、私らとしましては、いずれにいたしましても、非常にいま委員が申されたように航空問題につきまして、言葉が少し強過ぎるかもしれませんが、不平等であるということでございまして、これを改善していく、その端緒を何でつかんでいくか。もちろんこれが経済摩擦とかその他の問題に巻き込まれることは極力われわれとしては避けてまいりたいというふうに思っております。
  152. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、運輸大臣の感触としまして日米航空交渉は当面はできないと、こういうふうなお考えに立っておられますか。
  153. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) われわれは別にそう興奮しているつもりはないんですが、やはり冷却期間が必要であるというふうに思います。
  154. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、要望でありますけれども、これはもう前々から言われてきている問題で、この不平等条約ですね。日本がやはり譲りに譲ることのないような航空協定の改定であってもらいたいということを強く要請をしておきたいと思います。  防衛問題に時間をかけようと思ったのですけれども、あと総理の方に何点か譲ることにしまして、防衛庁長官に、けさワインバーガーとの会談をやられたそうですけれども、そのいきさつと、それからファントム等の問題に絡んで文民統制の問題がいろいろ言われているわけです。その中で防衛庁長官として、これは伊藤構想かもしれませんけれども、防衛庁の改革をやる、シビリアンコントロールの強化と、こういう問題について防衛庁長官いろいろなお考えを持っていらっしゃるそうでございますけれども、どういう改革をしていくという決意なのか。その点についてまず伺っておきたいと思います。
  155. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) まずワインバーガーとの会談はあすでございまして、けさ防衛庁の方に表敬においでいただきましたけれども、会談はあす午前中に行う予定でございます。  F4ファントムの問題で大変皆様方にも御論議をいただいておりますけれども、その間の経緯にかんがみまして、なお一層文民統制の実を上げるようなことをやりたいということでございまして、その一環として国防会議の議長でもございます、また自衛隊の最高指揮官でもございます総理と防衛庁とのなお一層の緊密な連絡が図られることが、シビリアンコントロールの実を上げる意味からも大事だというふうに考えまして、その意味での若干の構想を持って、目下練っておりますけれども、なかなか従来からの経緯もございまして、この実を上げるためには、なお一層先生方の御支援なり御協力もちょうだいしなければならないというふうに考えております。     —————————————
  156. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に立木洋君の質疑を行います。立木君。
  157. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、先ほど来いろいろお話を伺っておったわけですが、大臣の日米貿易摩擦に関する受けとめ方とされまして、午前中は、内容的にはきわめて厳しく感じた、しかし表現としてはアンフェアなどというふうな表現はなかったというお話でしたが、この受けとめ方についてさらに突っ込んでお話をお伺いしたいんですが、アメリカ側の対日要求の内容というのは妥当なものだというふうにお考えになるのか、それとも無理な要求だというふうにお考えになるのか。包括的に見て大臣の受けとめ方を述べていただきたいと思います。
  158. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 貿易のインバランスの状況からいたしますと、百八十億ドルからの米側赤字ということは、米側としてはこれを解消してもらいたい、そういう主張に立つことは理解ができるわけでございます。しかしながら、それが一体原因はどこにあるのか。現在まで両国の間で、また現に激しいやりとりになっておるのは日本市場開放が十分でない、こういうことでありますが、しかし私は、今回の訪米に際してその言い分は言い分として、実際はどこに問題があるかといえば、世界経済の不況、その不況に基づいて米のとっておる諸施策の中でインフレ抑圧ということ、そのことによる高金利を招いておるのも、これは当然原因のうちに考えられるべきであります。しかし私は、米側は現に経済運営をどうとっておるか、こう言うと、高金利をやっておったのでそのために物価が少しずつ鎮静しておる、さらに本年後半期以降景気が上昇する、明年は五・二%の成長率に持っていく、これは米側のとっておる経済運営ですから、私は最近少しよくなっておるようであるから、そういう施策がうまくいって、そしてその面からのインバランスについての影響を期待する。日本は円安で、そして内需の喚起ということ、輸入の促進とか内需の喚起に非常に困っておるということはよく言ってまいったのであります。
  159. 立木洋

    立木洋君 農林大臣、先ほどもお話がありましたが、先日の日米貿易小委員会で、四月にやられますね、これは農産物の残存輸入制限品目に関して。この作業部会に対してどういう基本的な方針で臨まれるのか。先ほどもありましたが、二十二品目のうち一品目たりとも譲らないという基本的な姿勢で臨まれるのか、その点についてもう一度明確に。
  160. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 過般の貿易小委員会においては、まず牛肉オレンジ……
  161. 立木洋

    立木洋君 今度のだけでいい、四月のだけで。
  162. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 四月の十二、十三日に作業部会が開かれるわけでございますが、これについては、この前の貿易小委員会においては、作業部会はお互いその国の、アメリカなり日本なりの状況を素直に話し合おうじゃありませんか、お互い理解がどうも足りぬようです、これまでは話し合いの機会が少なかったものですからどうも双方で誤解が多いようですので、お互い率直に話し合いをしてみようじゃありませんか。特に私たち農林水産業というものの置かれておる現状、あるいは二十二品目まで、ここまで私たち輸入枠拡大をしてきたこれまでの経緯、それで、これがぎりぎりいっぱいのことですよということ等を素直に率直に話し合おうというのが、これに臨む態度でございます。
  163. 立木洋

    立木洋君 外務大臣、いまの農林大臣の御答弁ですね、それでよろしいんでしょうか。つまり大臣も、日本の市場の閉鎖性という点の見方は当たらないということもワシントンの演説の中で述べられているわけで、そういう態度でわれわれとしての態度を十分に説明する、農業状態を十分に相手にわかってもらうように態度を貫くという基本方針で外務大臣もよろしいわけですね。いかがでしょうか。
  164. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 農林大臣農林大臣立場で、また私は私の立場で、きょうずうっと、どういうことを言ってきたか申し上げておるわけであります。作業部会が設けられておりますが、二十二品目の扱いについてきわめて困難性はございます。しかし物によっては、国内対策を立ててある程度の解決をし得る道がないことはないんじゃないかという、そういう意見を言う方もございます。ですからこれは、作業部会というのは……
  165. 立木洋

    立木洋君 わかりました。
  166. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そういうところでひとつやろう、こういうのですから、だから、いま日本日本としての立場をやはり主張する。まあ、話し合った結果がどうなるかということだと思います。
  167. 立木洋

    立木洋君 それで外務大臣、ちょっと話が変わりますが、レーガンが先般、米ソのいずれかが核のボタンを押すことなく、戦場で部隊に対する戦術核の交戦が行われることが可能性としてはあり得るという、いわゆる限定核戦争構想を発表したことについて、大臣は、訪米直前の衆議院の外務委員会で、その発言があったことをお認めになって、そして全面核戦争につながる要素があるので本気でやるとは思わないという趣旨の御答弁がありました。ところが御承知のように、このレーガン発言後、日本では各界の代表が多くの反対表明を発表していますし、先日も広島で二十万の代表が集まって、厳しくこうしたあり方に批判の声を上げているわけです。この限定核戦争構想の問題に関して、この日本国民の声をアメリカに行ってあなたは率直に相手方に伝えて、こういう危険なことはやるべきではない——これはまさに、日本が限定核戦争構想に巻き込まれると戦場になることを意味するわけですから、日本民族の存亡にかかわる問題として、当然向こう側に厳重にお話をなさったと思いますが、いかがでしょうか。
  168. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の一連の会談の中で軍縮問題を取り上げたことは事実でありますが、その軍縮問題の論議の中では、今度の第二回特別軍縮総会が非常に大事であるから、事前に米国とはよく話し合いたい、こういうことを申しまして、いま御質問のような、具体的に日本はこういう考えであるというところまでは細かく詰めておりません。ただ、日本が被爆国の立場として、核軍縮中心とするこの軍縮総会を通じてのそういう軍縮をいたしたい、そういう方向で考えたいという大枠の方針を言っておるわけでございます。
  169. 立木洋

    立木洋君 報道によりますと、レーガンとの会談をなさったときに、レーガン大統領は、西側が十分に強くあるということが前提にあって初めて意味のある軍縮、特に核軍縮が可能になるというふうに述べたというふうに報道されております。これで考えますと、結局、軍縮するためにはまず軍拡だというふうな考え方になるのではないかと思うんですが、このレーガン大統領の発言に対して外相は賛成をされたのですか、あるいはこの考え方に賛成をされたのでしょうか、いかがでしょうか。
  170. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) レーガン大統領との間では、国際情勢あるいはその他の問題で大統領の意向表明、私の意向表明ということがございましたが、いまのような問題を論議をしたのはヘイグ長官の場ではなかったかと。レーガン大統領と話をした後にヘイグ長官が若干の発言をいたしましたが、それは明日さしで話そうと、こういうことでヘイグ長官との話の中で、ソ連の従来外交面でとってきた行動の上からすると、力の差があるときにはなかなかソ連が物事を正当に判断してくれない、ある程度の均衡の上に立たなければ話をするのがむずかしいと、まあそういうようなヘイグ長官の意向表明があったことは事実でございます。
  171. 立木洋

    立木洋君 大臣、賛成されたのですか。
  172. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) それは賛成ということでなく、意向表明があったのでありますから、ただ聞いたということであります。
  173. 立木洋

    立木洋君 これは大臣が発言されたということですが、六月の第二回国連軍縮特別総会について、東側の一方的宣伝の場にならないように西側が事前に対応協議する必要があると述べたとあります。事実述べられたのかどうかということが一つと、こういうことになりますと、大臣が本会議で述べられた立場ですね。この軍縮、それから軍備管理、これを強調して「特に、現下の最大の課題である核軍縮については、米ソ両国を初めとする核保有国の自制と責任が第一義的に重要であり、わが国としても、引き続きこれら諸国に対する働きかけを行っていきたいと考えております。」と述べられていますが、こういうことになりますと、これまでの姿勢、つまり国連軍縮特別総会に対する外務大臣のこれまでの姿勢を変えられたということになるのではないかと思うが、いかがでしょうか。
  174. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) そういう姿勢を秋が変えたというように私自身は思っておりません。この軍縮総会あるいは国連総会が、しばしばその宣伝の場に供せられておる事実を否定することができないわけであります。ですから、私はいま御質問のような懸念を申したことはございます。しかし、今度の総会がそういう場であるとかどうとかということでなく、そういうことになってはいけないと、だからそういうことのないようにわれわれは対応していこうじゃないかと、これは軍縮総会の進め方を建設的にやりたいと、こういう意思表明を私はしたわけであります。
  175. 立木洋

    立木洋君 まあ、この軍縮の問題についてはさらに時間を持って大臣にお尋ねしたいんですが、やはりきょうのところで述べておきたいのは、先ほど申し上げました限定核戦争構想、そういう具体的な小さな問題については話をされなかったというふうな趣旨のことがありましたが、これは日本の民族の存亡にかかわる、日本が核戦場になる問題ですから、そういうことについて米側に何ら申すことがなかったと、また軍縮特別総会に対する対応についても、いままで真に日本の国民の声に、立場に立って進めるんだという点についても、そのような態度を述べてこられたということはきわめて遺憾だったということだけ述べておきたいと思います。  次にお尋ねしたいのは、大臣がアメリカの中米・カリブ開発構想、アメリカのですね、協力されるというふうなお話は相手側からの評価を受けたということですが、このアメリカの開発構想に対する協力ということは、アメリカのニカラグア、エルサルバドルに対する今日の軍事的対応をも含めて全面的に賛成というふうな立場なのかどうなのか、御説明いただきたいと思います。
  176. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中米・カリブ開発構想は立木委員の御承知のとおりに、これはアメリカ、カナダ、メキシコ、ベネズエラの諸国が同じ立場に立って打ち出されておることでございます。これらの地域をごらんいただきますならば、経済的におくれておる、あるいは社会的不安がある、いわゆる後進国的様相を持っておる国が大部分でございますから、きょうも再三お答えを申し上げておるように、日本のとっておる経済協力の基本方針の中でこれらの地域にも協力をすることはやぶさかでないと。まあ、過去におきましてもこの地域では、ジャマイカ、ホンジュラス等に若干の援助をしてまいった実績を持っておるわけでございまして、この四カ国の構想についての協力、あるいはこれらの国に対して世銀などがカリブ援助国会議を持っております。それに現に日本は参加して協力しておると、その事実を申したのであります。
  177. 立木洋

    立木洋君 アメリカがかつてナッソー四カ国大臣会議でカナダ、メキシコ、ベネズエラなどと集まってやっておるものであるというお話ですがね。アメリカのやっておる中米援助構想というのは、基本的には中米に対する軍事介入や圧力などとも結びついた政策なんですね。このナッソーの四カ国大臣会議の内容を見ましても、この中では、軍事的考慮、政治的条件を付きず、かついずれの国をも排除しないと書いておきながら、続いて他方、援助国側は対象国、協力形態について選択する自由を有すると、こう書いてあるわけですよ。だから、軍事的な条件を付さない、どこの国も排除しないということはメキシコなどがとっている立場で、アメリカの場合には援助国を差別して、ニカラグアには援助しないだとか軍事的な条件も付すだとか、こういう態度をとっているわけなんですね。ですから、実際にやるということは、間接的にしろ結局はアメリカの軍事的な政策協力するということにならざるを得ないと思うんです。  いま第二パナマ運河計画が日本アメリカ、パナマで進められていますが、日本政府もすでにこれは調査費を計上しているわけですね。ところが現在のあれは、六万トン級の船舶が通航できるというものですが、今度の計画によりますと、これが三十万トンから五十万トン。そうすると、もちろんこれは石油なんか運ぶタンカーなんかも通航しますけれども、大型の空母だとか戦艦だとかいうことの通航も可能になる。こうすると、こういうアメリカがいま行っている軍事的な中南米にかける圧力等々から見ても、これは重大なことにならざるを得ないと思うんです。この点についていかがでしょうか。
  178. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私は残念ながら立木委員のようにそこまでいろいろせんさくをしておらない、考えておらないんであります。先ほど申したように、アメリカ、カナダ、メキシコ、ベネズエラ等が協力をして、それぞれ違った政治的立場にあるけれども、この中米・カリブの開発をやろうじゃないかと、こう言っておるところに私は価値を認めておるのでありますし、そして中米・カリブ海域の諸国の現状を見ますならば、何人も否定のできない経済的な開発のおくれておる面、また社会情勢が安定しておらないということでありますから、これらについて世銀でもそういう援助国会議を持つというのでありますから、それに日本が応分の協力をするということは、どうでしょう、私は至当ではないかと思うのであります。
  179. 立木洋

    立木洋君 つまり、アメリカにしては、あそこの貧困が、大変な貧富の差別が、いわゆるそこの独裁的な支配の体制下にあるということに原因を求めていないんですよ。この点では、もう時間が来ましたから答弁要りませんが、改めてこの問題は大臣と別の場所で議論さしていただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  180. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、木島則夫君の質疑を行います、木島君。
  181. 木島則夫

    木島則夫君 櫻内外務大臣訪米どちょうど時を同じくいたしまして私どもの同僚議員もアメリカに参りまして、一般市民を含めて広い範囲の人たち意見交換をしてまいりました。それを要約をいたしますと、日本のとった一つ一つの措置についてはわかるけれども、いまや日本は世界に向かってダイナミックに市場開放を宣言すべきである、あたかも想定問答集を渡されたかのような、そういうお答えが声高に返ってきた、こういう印象で帰国をしたわけでございます。先ほど来の外相の御報告を伺っておりますと、表面的な言葉ではさほどきついものはなかったけれども、その内容はなかなかに厳しいものであった、こういうことでございました。お疲れのところ恐縮でございますけれども、ひとつ率直にこれからお答えをいただきたいと思います。  大臣にお伺いをいたしますが、アメリカ要求が無理なものであると受けとめられてお帰りになったか、翻って、経済大国日本がそれ相応の貢献をしているかどうかということを謙虚に考えるならば、アメリカ要求も無理からぬものと受けとめられたか、その辺率直に、端的に御報告をいただきたいと思います。
  182. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 現在、アメリカが相当高い失業率であり、インフレもまだ鎮静の緒につくという程度のところであり、また、経済成長率もなかなか見通しの立っておらない非常に困難な経済状況にある、そういう経済状況の中で日本との貿易関係が大きな不均衡である、そういうところから日本に対する市場開放ということを言われる。これはそのとおり、筋道はわかるのでありますが、私は今度の場合、一体アメリカとして現在、経常収支、貿易外収支を加えるならば黒字ではないのか。だから、日本に対しての不均衡を言われるそのことはわかるが、経常収支については黒字である。こういうことをお考え願いたいし、また、アメリカの持っておる大きな経済力あるいは日米間における六百億ドルからの貿易というものをお互いによく話し合って、それを世界経済の再活性化に向けるようにしていこうではないかというような角度からも話をいたしたのでありまして、当面の不均衡によるいろいろな米側の要望というものは、それはそれなりによく検討し、よく話し合っていきますが、また別途、いまのようなことも米側によく考えてもらう、そのことを訴えてまいってきたわけであります。
  183. 木島則夫

    木島則夫君 重ねてお伺いをいたします。  日本が経済大国としての分相応の貢献をしているかどうかということについての言及はございましたか。これも簡単で結構です。
  184. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) やはり、いまの貿易の現象面からするアメリカの考えは、ヨーロッパを見ても貿易の不均衡でやはり日本が批判を受けておるじゃないか、こういうことで、そういう貿易関係で物事を見ておる上では日本に対しての批判は非常に強い、こう受け取りました。
  185. 木島則夫

    木島則夫君 日米貿易摩擦の一つの目が農産物自由化であることは、先ほどからの議論でもよくわかるところでございます。日本農業が置かれている立場、その環境下にある生産者の立場、また、その代弁者である方々の自由化反対もよくよく私も承知をしておるつもりであります。反面、消費者主権の原則に立ってみずからの立場を眺め直すべきときが来たのではないだろうか、そういうこともはっきりこの際私は主張をしたい。経済安全保障の立場から見まして、自給率をゼロにするわけにはいかないものがたくさんあることもよくわかります。しかし、問題になっております牛肉柑橘類、たばこ、こういったものまでその対象にするのは少々無理ではないだろうか、アメリカ要求するよりも以前に、外圧でない、内圧によって消費者の利益が守られているかどうかを、やはりこの際真剣に見直すべきときではないか、こういう声も、私、東京の出身でございますので、ずいぶん私のところに寄せられるのであります。  先ほどからの農林大臣のお答えを聞いておりますと、何かもう九九%はだめなんだというようなニュアンスでお答えになっているのだけれども、せっかく外務大臣もあらゆる努力を重ねて開放に向かう努力をするとおっしゃっているのでありますから、その辺、たとえばこれこれ、こういう条件を付加すれば農家の方にも安心がいくし、消費者、言いかえれば大多数の国民も納得ができるのだというような、そういうお答えに多少幅を持たして、もう一回言い直していただけませんでしょうかね。だめですか、それは。
  186. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 確かに、木島委員のお考えのような方々が日本の国民の中にもありますけれども……
  187. 木島則夫

    木島則夫君 もじゃなくて、大部分だと思います。
  188. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私たちはこれまでもやはり食糧の自給率を高めなければいかぬ、そのためには何としても生産性の向上を図る、それもやはり国内で生産できるのはできるだけ国内で賄うということが基本であろう。しかも、国民の需要の動向に応じて進めてまいらなければいけない、そういうことで近代化に向かっていま進んでいるわけでございますが、この日本農業現状では私はなかなかむずかしいのではないだろうか。それで、私たち農林水産業としては再生産ができるようないわゆる農業をつくりたい。もう一つは、消費者に対して安定して食糧初め農産物を提供するというこの原則は常に守っていかなければならないのですから、消費者の面というものを十分考えてまいらなければいけませんけれども、現状で、いまの常に新しい農業に意欲的に取り組んでいる農家のためには、いま少し私はこれは守ってやらなければいけない、こういう考えを持っておるのでございますので、この残存輸入品目についてはどうしてもこれを緩和あるいは撤廃するわけにいかないという考えをいま持っているわけでございます。
  189. 木島則夫

    木島則夫君 まあ、お立場上よくわかりますし、また、農家の方々の置かれている立場も私は承知をしているつもりでございます。  これは本当に一例でございますから、このことについてのお答えは要りませんけれども、たとえば、畜産でございますね、牛や豚の飼料の七〇%が外国から輸入をされている。そういうことなども考え合わせますと、私はやっぱりもうちょっと考える余地があるのではないだろうか。残存輸入制限の農産物を論議する作業部会が四月からスタートをいたします。この作業部会がスタートをするその前提として、これは自由化を前提としたものではないのだとか、いついつまでに期限を切ったものではないのだという何か二つの条件がもうついているように思いますけれども、私はこれから自由な話し合いをしていく上でそこに二つの条件をもうすでにつけてしまうそのことが、アメリカ側をして、せっかく作業部会をつくって前進を図ろうとしているのだけれども、そういう枠をつくられてしまってはという失望感と、そこに不信感が起こってこやしないだろうか、この辺ももっとフリーハンドで臨む自由さと、経済大国日本としての度量が必要ではないかと思いますけれども、農林大臣、いかがですか。これ、時間がありませんから簡潔に答えていただきたいです。
  190. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 作業部会の問題でございますが、決して枠をはめてこれから話し合うというのではないのです。私の方では、この作業部会を通じてこういうことを申し上げますよということをお話ししているのであって、最初から枠をはめてそれでやろうというような考えでは毛頭ございません。あくまで私たち話し合いの機会をたくさんつくって、日本農業の実態、あるいはまた農林水産業がこの貿易拡大に最大限努力をしているのだという姿勢を示したいということでございます。
  191. 木島則夫

    木島則夫君 そういたしますと、初めから枠をつくるのじゃなくて、そこで自由に論議をなさるんだといういまのお言葉をもう一度反すうさせていただくと、残存輸入制限の農産物についても、そこでもっと自由に討議をすることができるのだという、白紙の状態に返すということになるんでしょうか、そこを確認をいたします。  さっきあなたはほとんどできないんだ、むずかしいんだとおっしゃった。どうですか。
  192. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 日本立場としては、あくまでも残存輸入品目については緩和するわけにいかぬということをその中で主張するということでございます。
  193. 木島則夫

    木島則夫君 よろしくない立場も消費者の立場としてはあるんですからね、その辺は柔軟にやはりやっていただきたいと思うわけであります。  さて、外相のアメリカ行きを二、三のマスコミは気の重い櫻内外相の訪米というタイトルをつけて送っておりました。こういう重大な時局に外相が訪米されること自体、きわめて意義が大きいと思います。しかし、行かれるからには相手を説得させるだけの中身と申しますか、切り札、そういうものがあってしかるべきであろうと思います。今度の訪米に当たって私が感じましたことは、政府与党内の政策決定の調整がつかないままに、また利益代弁者間の意見調整、コントロールがそのまま、つまりつかないままに訪米をせざるを得なかったという外相としてのお立場は大変苦しいものであったというふうに私は感じ取ったわけでございます。したがって、外交の舞台にお立ちになった櫻内外務大臣といたしましては、常に国内要因の影がつきまとって、お顔はなるほどレーガンさんと向き合っているけれど、気持ちは日本の方に常に向いちゃっていると。失礼な言い方かもしれないけれど、そういう印象を私は持つ。つまりいつも国内の要因、そういうものがつきまどうものですから、それがアメリカ側をして何か言われると渋々出すけれど、また小出しには出すけれど、どうもその辺がはっきりしないという、こういう印象となり、それが誤解に輪をかけていくような、どうもこれが日本外交のいままでの特質のように私には映ったわけであります。  お疲れになってお帰りになったあなたにこういうことを申し上げるのは失礼な言い方かもしれませんけれど、今度のことを一つの契機にいたしまして、日本外交の体質改善というものを私は図っていただきたい。このことを率直に申し上げたいのでありますけれど、外相いかがでございましょうか。これは後ほど本当は総理にお伺いをするべき次元の問題かとも思いますけれど、やはりベテランの、しかも政治歴のお古い大臣に伺っておきたい。そういう意味であえてお尋ねをしたわけであります。
  194. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私が会談に臨むに当たりまして、日本の側で生産者もおる、消費者もおる、いろいろの立場の人がおる。また私は政府与党の自民党の考えも当然念頭に置かなければなりませんが、また野党の皆さんの御意見も頭にちゃんとちらつくわけですね。そういう中での話でございますから、おっしゃるとおりに非常に困難な面がございますけれども、しかしまあ私はちょっとつい口が滑って恐縮でありますが、言いたいことは言ってまいったつもりでございます。そして米側が非常に市場開放に厳しい姿勢はとっておるが、一連の会談を通じまして、また私の言い分なりも恐らく参考にしてもらったものと思うのであります。  しかし、この後どういうことを私はやるべきなのか。それは市場開放を求められておると。それに対する答えを出さなければならないのでありますから、その辺につきましては、ヨーロッパの方はヨーロッパの方で種々御意見があって、党としては江崎ミッションも行っておることでありますので、来週早々に経済対策閣僚会議で私は私なりに、江崎ミッション江崎ミッションなりにいろいろ報告をいたしまして、そしてこの世界の要請に対して公正に対処するというのがいまの私の立場だと思います。
  195. 木島則夫

    木島則夫君 この貿易摩擦問題は、いまが何というか、絶頂期でございまして、先のことを言うのもなにでありますけれど、これがもしサミットまでに一応の解決を見たといたしましても、これからまだいろいろな複雑な形で摩擦というものは起こってくることが予想されるわけでございます。政府は通商オンブズマン制の設置をお決めになっておりますけれど、何せ外務大臣も大変お忙しい、その体質改善と同時に、能率的に機能的に非常に多岐にわたるこういう問題に対応できる新たな制度みたいなものはお考えになる必要があるのかどうか、外務大臣、どういうふうにお考えでございますか。
  196. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 新たな制度というお話でございますが、まず今回とりました、いま御指摘のOTOの制度、これなど今回会談をしてみますと相当評価されております。その上に私から、このOTOがやっておることについて行政管理庁がチェックする、そのことまで考えてやっているのだということを申し上げておるので、非関税障壁の問題についてはこの新制度を活用していくということでいいのではないかと、こう思うんです。  それから今後新たなサービス、貿易などの問題は、すでにガットの場で相談しようじゃないかというように各国の空気、特にアメリカはそういう空気であるし、日本も先般新聞で大きく書かれてちょっと困ったのでありますが、新東京ラウンドというようなことで、これはガットの場でいろいろ協議をして進んでいって、新たにどういうことをやれるか、米側がサービスの部面で非常に建設的に強い意見を言っておられるので、これはレーガン・ラウンドかなという、こう私から口に出るくらい先方も熱心なわけでございます。  そういうことを踏まえてまいりますので、いま特にここで新制度をということについては、外務省としては考えておりません。
  197. 木島則夫

    木島則夫君 とにかく櫻内外務大臣のあちらでのいろいろのお話の資料、材料、そういうものを土台にいたしまして、これから衆知を集めて市場開放の姿勢をお示しになると思うわけでありますが、アメリカ議会での相互主義法案の成立を抑えられるめどは一体あるのかどうか、あるとすれば、それはどういうもので、スケジュール的にはやはりサミット前までにきちっと日本の意思表示、それに伴う態度というものをお出しになることが必要なのかどうか、残り少ない時間でありますけれど、率直に聞かしていただきたい。
  198. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 個別的な相互主義法案についてはアメリカ政府も非常に厳しい批判を持っておるようで、たとえば電気通信法のようなものの成立は予想されません。現在ダンフォース法案が一番成立の可能性を持っておるということでございますが、この法案に対する重言をいたしましたブロック代表ともきのうの朝話し合いましたが、仮に相互主義法案の成立の見通しということになりましても、われわれがこういう法案の成立が保護主義的に持っていくようなそういう悪い事態になるということを指摘しておりますので、恐らくその法案の運用面についてはわれわれの懸念が反映されるものと。いま法案が通るか通らぬかということについては、米議会がどういうふうな意思表示をするか、いま軽率に通らぬとも言えぬし通るとも言えないと思うのであります。     —————————————
  199. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、秦豊君の質疑を行います。
  200. 秦豊

    ○秦豊君 何さま無慮九分ですからね、答弁の方も九分的なテンポに合わせていただきたい。アンダンテじゃなくてアレグロぐらいで願いたいと思います。  外務省にまず伺いますけれども、ODA全体の中で北東アジアへの援助というのは何%くらいになっているのか、それが第一点。もう一つ、また韓国への円借款ですね、それは北東アジアの中でどんな比率なのか、これをまず。テンポを早くやってくださいよ。
  201. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 一九六〇年から八〇年までの累計でわが国二国間のODA実績全体に占める北東アジア地域の比率は一〇・五%、韓国の比率は一〇・四%でございます。したがいまして、韓国がもう大部分になっています。
  202. 秦豊

    ○秦豊君 御協力に感謝をします。  いま日韓双方の作業は現在そのプロジェクトをめぐってどこまで煮詰まっているのか、逆に言えば何がどのように残されているのか、この点はいかがですか。
  203. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 韓国側の十一のプロジェクトに対する言い分はよく把握したわけでありますが、先般、それに対しての中間的な報告はしてございます。その中で一番大事な点は商品借款はこれはいかがかと、応ぜられないという意思表示をしております。
  204. 秦豊

    ○秦豊君 政府には長年にわたって対外援助の基本理念と方針があるわけですよね。さっきの数字が物語るように韓国一辺倒、北東アジアへの援助はまるで韓国に集中し過ぎている、こういう現状を踏まえて、特に慎重に扱わねばならぬというのが私の考えなんだけれども、いま政府の進めようとしている対韓援助の大方向は、政府が長年踏まえてきた援助の基本理念からいささかも踏み外すものではないということを政府としては確信を持って断言できますか。
  205. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 御承知のように、向こうの提案が六十億ドルと、それをいかに処理するかという中で、お話のようにアジアの中のバランスということも当然配慮をしなければなりませんが、しかし一方において、一昨年来の韓国における経済社会情勢を踏まえますと、どこまで考慮するかというところが。問題点であります。
  206. 秦豊

    ○秦豊君 いろいろおっしゃいますけれども、私見によれば、これまでの作業では十一のプロジェクトも具体的な内容というのはほとんど掘り下げられていない。これは園田前外相の言葉ですけれども、一晩で数字を並べたようなものだと、こう言っているんです。この財政難の折から、国会がこれだけ行革に血道を上げているこのさなかに、しょせんは大蔵大臣これ血税を使う話ですからね。  私は要求したいんだけれども、政府としてはあいまいなつかみ金方式は断じて許されないという常識を厳として踏まえる、わかり切ったことだけれども。したがって、国会に対して作業が段落を迎えた場合にはより精細なプロジェクトごとの援助要請の全容をきちっとした報告書にまとめて国会に提出をしていただけますか。
  207. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 韓国の経済協力につきましては、プロジェクト個々に当たっておるわけでございまして、仮にあるプロジェクトについてフィージビリティースタディー等々経まして、双方に合意が至る場合には交換公文を締結する、それは閣議決定によるわけでございまして、その段階では内容が公知の事実になるわけでございます。
  208. 秦豊

    ○秦豊君 それはそうあるべきだと思います。ただ韓国の態度をたとえて言いますと、たとえば家の建築にたとえるならば、設計図も引いてない、建築プランも用意しないで、いきなり銀行へ駆け込んで銀行ローンを申請すると、こういう図式に近いわけなんだ。話にならない、通らない話。  そこで、そういう木内局長の約束があったからそれはそれとして、外務大臣、去る三月十一日に東京で岸元総理なども出席されまして日韓協力委員会が開かれたのを御存じだと思います。あのときに韓国側の代表は韓国的三段論法を展開して、韓国の防衛努力日本の安全に緊要な役割りを果たしておる。その重い防衛負担が韓国経済の浮揚を抑えている。日本の対韓経済協力は北東アジアの安全と平和のために、むしろ日本が積極的に果たすべき国際的な役割りであると、こういうあの人々なりの三段論法を展開しているのだが、特にこの第三項の日本が果たすべき国際的役割りという位置づけに対しては、外相いかがですか。
  209. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど十一のプロジェクトのお話も出たように、今度の経済協力の中はそういうものを、実務者会議を二回開いて、それも向こうが提案してから相当日本側も机上整理をして、それから実務者会議でまた二回話してというふうにきておる経緯をごらんいただきますと、いまのお話のようなことはみじんも入ってきておらないということを御了承願いたい。
  210. 秦豊

    ○秦豊君 河木長官にわざわざおいでを願いましたのは、この程度の応酬ではなかなかデテールに踏み込めませんけれども、特に河本長官伺いたいのは、いま進められているような手法あるいは傾向での対韓援助のまとめ方、進め方というものは対外経済協力のあるべき姿あるいは方針からしてどのようにお受けとめになっていらっしゃるか、経済企画庁のお立場としていかがでしょう。
  211. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この話は昨年から始まったわけでありますが、実は昨年の初めごろの話は、私どもも理解に苦しむようなことが若干ございましたが、その後先方の新五カ年計画もようやく詳細が固まったようでございます。現時点では従来の日本経済協力、その基本路線をずっと守りながら話は進んでおると、このように判断をしております。
  212. 秦豊

    ○秦豊君 木内局長に重ねて伺っておきたいのですが、いまこの十一のプロジェクトを積算していますね、解析していますね、突き合わしている。どの部分で、どのプロジェクトで一番作業が難航しているのか、その煮詰めは一体いつごろまでに終了するか。ということは、櫻内外相が五月に訪韓をされて決着というふうなスケジュールであるように仄聞しますけれども、そうしますとタイムリミットは五月の連休前とすると、作業としては四月のいつごろまでに最終的な援助金額の決定を行わねばならないのか。これが質問のポイントです、いかがでしょう。
  213. 木内昭胤

    政府委員(木内昭胤君) 秦委員指摘のごとく、個々のプロジェクトが煮詰まっておるという段階にはまだ到達いたしておりません。  先般この十一のプロジェクトのうち円借款になじみ得るものはこれこれと考えられると、それから輸銀の資金協力の対象になじみそうなのはこれこれであるというような大まかなことを先方にぶつけまして、なお先方の事業計画の詳細につきまして重ねて質問をいたしておる段階でございます。したがいまして、いまの段階で四月のいつごろになったらどうなるということはまだ即断するのは時期尚早かと存じます。
  214. 秦豊

    ○秦豊君 よんどころなく終わります。(拍手)     —————————————
  215. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武君。
  216. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 外務大臣訪米の対話の中で、米国の対目赤字の原因を日本市場の閉鎖性に求める見方は同意できない、こう言われておるようでありますが、その大臣の御説明で米国側は納得したでありましょうか、どうでしょうか。
  217. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の会談で、赤字がどういう原因だというところから始めて会談をしたと、そういうことではございませんでした。ですから、私の方は、アメリカ側が市場開放を望む、私の方からは世界経済のこの沈滞というものも大きく原因しておるのではないか、またそのことが日本の円安を招いて内需の喚起にも支障を来しておると、そういうような角度から日本日本の角度でお話を申し上げたと、こういうことでございます。
  218. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ですから、その大臣のお話によって相手側は納得したでしょうか、どうでしょうか、感触。
  219. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これはむずかしいんですが、顔色からして、私の言っておることが不当なら、それは間違いだとか、それはどうだという批判があると思うんですが、それはなかったのです。
  220. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 非常に外交問題というのはむずかしいとは思いますけれども、やっぱり言うべきことはずばり言って、そして相手にも理解をさせ、こちらも理解をする、こういうことでないと、あいまいもこの中からだんだんマイペースの、向こうは向こう、こちらはこちらの立場で、結果的にはかみ合わない、こういうことになると思います。  二つにお尋ねいたしたいことは、けさ下さいました訪米報告の中で、第三の柱として、「わが国の国力と国情にふさわしい国際的責任を果すべく努力を継続する」と、こう述べておられます。そこでお尋ねしたいことは、現状は「国力と国情にふさわしい国際的責任」を果たしておると認識しておられるかどうか。
  221. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 国力、国情にふさわしいように努力をしておる、こういうことだと思います。
  222. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 重ねて聞くようでありますが、努力はしておられるが、実際にその責任を果たしておると思っておられますかどうですかということなんです。
  223. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは各国それぞれ日本に対しての気持ちを持っておるんですから、それが満足しておるかどうかということになってくると、今度のようなインバランスに始まる市場開放を求めてきておるということは、そのことを主張される国としては、日本がまだ不十分だと、こう思っておるんだと思いますね。
  224. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まだ不十分であると認識されるならば、どこをどのように力を入れていきたいと、そのことがお聞きできればと思っています。
  225. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは具体的ないろいろ作業をしておるわけですね。日米貿易小委員会におきましていま問題になっているところはどこだということが明らかにされ、そして一つには、農林物資は作業部会でやろう、一つは約束を早くやろう、柑橘、肉類は十月一日からやろう。それからあと、たばことかソーダ灰とか合板とかがいろいろあります。それらのことについても貿易小委員会中心で作業をしておりますが、そこで私が申し上げておるのは、ある程度作業が進めば準閣僚会議を持ちたい、そこで日米で話し合って物事を進めていこう、こういうふうに一つ一つ相当前向きに作業をやっていきたいと、こう思っております。
  226. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 失礼な言い分かもしれませんが、少なくとも外交路線の先頭に立っておられる責任をお持ちの大臣であります。ならば、どれだけの国民世論を、あるいは民主的な手続を経てその結論に立って訪米されたかというところに疑念を持たざるを得ません。そういう意味で、とにかくきちんとした一つの目標とそして具体的なめどを持って、現在及び将来に臨んでもらいませんというと、その場その場で動揺するようでは、これは相手に常に揺すぶられると、こういうことにしかならぬと思いますので、その点申し上げたいと思います。注文いたしたいと思います。  次に、農林大臣にお聞きします。  総理が経済摩擦解消のために市場開放の総括的な措置をとる意向を固めておられるように聞いておりますが、市場開放の問題は農林水産省関係に大きく影響するわけですが、わが国の自給力、いわゆる食糧安保の立場からこの問題にどう対処していくのか。特に生産農家の保護育成にどのように対策をとるつもりであられるのか伺います。
  227. 田澤吉郎

    国務大臣田澤吉郎君) 私たちは食糧安全保障という意味から、国内でできるものは極力国内で生産する、しかも国民の需要の動向に応じて再生産をし、生産力の向上を図ろうということで進めておりますが、しかし何としても、日本国内で生産できるものと、やはり外国に依存しなければならないものがあるわけでございますから、そういう点を調整しながらいま農政を進めているわけでございますが、私はこの日本列島全体を、いろんな制約はございますけれども、その中で日本農業のすばらしい姿をつくるためにいま努力をいたしているというのが現状でございます。したがいまして、農産物の残存輸入制限品目については、いませっかく新しい農業をつくろうとして努力している農家農民が非常に関心を持つと同時に、これに対する不安を感じておりますので、私としては、農産物の緩和あるいは制限については、極力これは支えてやらなければいかぬ。極力この辺は、まあ二十二品目ございますけれども、これはいまの日本農業現状からしてこれがぎりぎりいっぱいのものなんで、これ以上は不可能ですということをアメリカにも主張し、理解をしていただかなければならぬと、こういうことで農林水産大臣としては今後も進めようと、こう思っておるのでございます。     —————————————
  228. 植木光教

    委員長植木光教君) それでは、これより鈴木内閣総理大臣に対する質疑を行います。井上吉夫君。
  229. 井上吉夫

    井上吉夫君 三月二十四日の読売新聞によりますと、「鈴木首相は、二十二日、“米欧連合”による対日批判が鮮明化した事態を「重大な局面」と受けとめ、六月のベルサイユサミット前に牛肉オレンジ自由化問題などについて政治決断を下す決意を固めた。」というぐあいに報じられております。このことを見ました関係農家は、大変大きなショックを受け、深刻な不安に陥れられております。  私は、貿易摩擦の主な原因は、農産物輸入制限にあるのではなくて、その根源は日米欧のいわゆる工業先進国の間で自動車を初めとする工業製品の分野において日本が優位に立ち、ために日本製品が米欧の市場に大量に輸出される、それによって相手国に貿易赤字が累増するという、そういうことに一番大きな根源があると思います。したがって、農産物輸入を大幅にして事態の根本的解決がすべて解消するとはとうてい思えません。のみならず、この際大幅な輸入拡大に手をつけるようなことがあれば、ただでさえ大変な苦境に立っております日本農業、とりわけ多額の赤字を抱えて血みどろの努力を続けている畜産農家や果樹農家にとって大変な打撃を与えることになり、日本農業は将来への目標を失ない、崩壊の一途をたどることが懸念されるのであります。食糧自給力の維持向上が国政の基本としてきわめて重要であるということに思いをいたし、目前の現象にとらわれることなく、この際牛肉オレンジに代表される農産物輸入自由化問題に対しましては、慎重の上にも慎重に取り組みをすべきであるというぐあいに私は考えますが、この際、総理の明確な御所見をお伺いをいたしたいと思います。
  230. 鈴木善幸

    ○国務大垣(鈴木善幸君) 井上さんから、新聞の一部の報道を取り上げられまして、私が牛肉オレンジという具体的な品目を挙げて、そしてこの自由化を決断をしたとか、そういうことが報ぜられておるがどうかと、こういう御質問でございました。  一紙にだけ出たことを見ましても、私がそういうようなことを申し上げておるということはございません。まずこれははっきり申し上げておきます。  私も農林大臣もやった経験がございまして、食糧問題、その食糧生産の任に当たる日本農業というものは非常に重要な基幹的産業である。またそれに従事する農民諸君も、食糧の自給度を高めて、国民の皆さんに食生活だけは安心してもらおうという使命感に燃えて努力をしておられることを私もよく承知をいたしておるところでございます。したがって、この自由化の問題、残存輸入品目の問題は、いろいろ各国からも強い要求等がございますが、政府としては慎重に対処しておるところでございます。  四月には日米の作業委員会を設けまして、日本農業の実情、さらに日本が今日まで農産物輸入等について努力をしてきたその経過等もよく説明をいたしたいし、日本農業の厳しい現状等についても理解を求めるようにいたしておるところでございます。  十月にはいま御指摘オレンジとか肉の問題で協議が行われるということになっておりますが、これは東京ラウンドの決定の際に、八三年までは現在の東京ラウンドでいく、八四年以降新たな角度から交渉をするということに相なっておるわけでございまして、その約束に従いまして十月から話し合いをするという慎重な方針でやっておるわけでございまして、米側においてもその点はよく理解をしておることと、このように思うわけでございます。     —————————————
  231. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、矢田部理君の質疑を行います。矢田部君。
  232. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理に伺いたいと思いますが、外務大臣訪米で幾つかの貿易摩擦をめぐる問題点が出されましたが、大綱的な問題を要約をいたしますと、従来日米間の二国間問題としてとらえられていた貿易摩擦西側全体の問題であるという点が一つ。それからもう一つは、サミット前ということで、事実上期限を切って日本対応を求めたという点が第二点。この二つが柱になろうかと思うのでありますが、いよいよこれを受けて、日本側としていつまでにどうするかと、相応の具体策を出さなきゃならぬ時期に入ってまいりました。  そこで、総理のイニシアなり指導性がいよいよ問われることになってきているわけでありますが、総理としては今後、外務大臣訪米後の日米貿易摩擦をめぐる扱い等についてどういうふうにお考えになられるか、どういう指導性を発揮しようとされておられるのか、その点をまず伺いたいと思います。
  233. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 今回櫻内外務大臣訪米をいたしまして、当面する日米二国間の問題、国際情勢全般、さらにいま御指摘のような世界経済の問題等につきまして非常に友好的な雰囲気の中で率直に話し合いがなされて、相互の理解が深まったということを私は報告を受けておるわけでございます。  そこで、その中におきまして、日米の間だけでなしにヨーロッパも含めてこの経済摩擦の問題は非常に事態が緊張してきておる、日本のこれに対処する責任は重いということもその中で指摘があったように伺っております。  私は、GNP世界の一〇%という大きな経済力を持つに至っておりますし、貿易の分野におきましても、アメリカに次ぐ大きな貿易量を擁しておるわけでございますから、アメリカ指摘されるまでもなしに、国際経済の中における日本の責任と役割りというものは私は非常に大きいと、このように痛感をいたしておるわけでございます。  私は、当委員会におきましても矢田部さんにも確かにお答えをしたと思うのでありますけれども、今日の貿易摩擦日米間にだけ存在をしているものではない、また日本EC間にだけ存在するものではなくしてアメリカECとの間にも同様に存在する、これは各国の経済が今日非常に困難な諸問題を抱えておるというところからきておることであって、世界経済の再活性化を図らなければこの問題は基本的には解決を見ないであろうということも申し上げております。  そういう意味で、私は日本が、先ほど申し上げたように、これだけの経済力を持つに至ったわけでございますから、世界経済の再活性化のために、今後できるだけのことをひとつやっていかなければならない。それにはいろいろございましょう。先進的な工業技術、科学の分野での共同研究開発の問題もございます。また相互投資の問題もございましょう。また合弁その他の問題もあるし、広範な産業協力の問題もあろうかと思います。そういう分野で、日本としてはできるだけのことをひとつやってまいると、また、相互の立場というものを考えながら、特定品目を特定の地域に集中豪雨的にこれを輸出をするということは、その国の経済、産業秩序を乱したり雇用問題に悪影響を及ぼすということも、これは現実のことでございますから、そういう点も十分配慮しながら日本としては対処していかなければいけないと、このように考えておるわけでございまして、米当局が日本に対して、日米関係だけを考えるのでなしに、もっと世界的な国際的な視野に立ってこの貿易摩擦の問題、そして、その中における日本の責任と役割りというものを果たしてもらいたいと、こういう話があったことはこれはまさに言われるとおりであろうかと思いますし、私どももそういう認識で今後取り組んでまいりたいと、このように思っておるわけでございます。  そして、もう一つは期限の問題でございますが、私は、外務大臣から期限について厳格な約束というようなことをしたという報告は受けておりませんけれども、こういうことはなるたけ早いことがいいと、こう思っております。櫻内外務大臣訪米報告、それから、土曜日には江崎ミッションEC諸国と会談をして帰ってまいります。その報告も受けまして、そして、経済対策閣僚会議で、それを踏まえてできるだけ早くこれを、日本政府の方針をまとめて対処していきたいと、このように考えております。
  234. 矢田部理

    ○矢田部理君 後段の期限の問題でありますが、アメリカから明確な期限をつけられたわけではないということでお話伺いましたが、しかし、客観情勢から見ましても六月のサミットは経済問題が相当部分を占める。中でもこの貿易問題はやっぱり重要なポイントになろうかというふうに思われるわけです。アメリカの言い分もさることながら、また櫻内外務大臣サミット念頭に置いて何らかの具体策をまとめて対応していきたいというふうに言っているわけでありますが、サミットとの兼ね合いで総理もそういう認識に立っておられますか。
  235. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私はいま申し上げましたように、日本も早くこの問題を解決をし、あるいは解決の方向に持っていきたいと、こう考えておりますので、サミットを待たないでまとまるものであれば精力的にひとつ国内対策をまとめたいと、こうも考えております。  それからサミットの前にOECDの会合もございます。いろいろ重要な国際会議等もございますから、私は各国に対する理解を得るためにも、早く日本の方針というものを固めたいと、こう思っております。
  236. 矢田部理

    ○矢田部理君 午前中からの論議でありますから、できるだけ内容をつづめて申し上げたいと思うのでありますが、そこで幾つかの問題点と思われるものを私なりに指摘をしておきたいと思うのでありますが、この貿易摩擦をめぐってはどうも政府の方針に一貫性を欠くのではないか。時期によって方針や問題提起が違ってくる。閣僚によっても音の出し方が違う。幾つか例があるわけでありますが、たとえば包括的な市場開放策を出そうじゃないか、サミット前にやろうというような声が通産省筋から出るかと思うと、いやそれは現実的でない、包括的にやるよりも個別的、段階的にやるべきだというような議論にまた変わってくる。あるいは東京ラウンドの問題につきましても新東京ラウンドベルサイユサミットで提唱をしてこの問題に相応の対応をしようという意見が自民党首脳や外務省、外務大臣筋から出るかと思うと、余り日本が先に立つのはよろしくない、できれば、さっきも話が出ましたが、レーガン・ラウンド、こういうものを積極的に受身で受けとめろと、こう言うのですね、積極的に受け身で当たると。そしてアメリカに追随、協調した方がいいというようなことなども言われておるわけでありますし、ベルサイユサミットではなくて、十一月のガット閣僚会議あたりをめどにすべきだという議論なども出てくるわけでありますが、こういう点で政府の方針に大変な動揺がある。一貫性がないというところにこの貿易摩擦解消、解決策に非常に多くの問題点が含まれているのではないかと思うのですが、総理、この点はいかがでしょうか。
  237. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 確かに新聞報道等を追ってみますと、そういう御印象を受けておられるのではないかと、こう思います。これは政府全体としてと申しますよりも、あるいは個々に記者会見等で聞かれた場合の自分のそのときの考え、印象等を申し述べて、非常に大きな関心を呼んでいる問題だけに、それが大きな活字になって報道される。こういうことであろうかと思うのでありますが、政府で閣僚会議等を開きまして方針を決めたことが二転、三転をしておるとそういうことではございませんことは御了解をいただきたいと、こう思うわけでございます。そしてこういう国際的な経済摩擦の問題は、要は、結果としてそういうぐあいにおさまるところにおさまれば私はそれが望ましいと、こう思うわけでございまして、日本が先頭に立たなければならないとか、アメリカが先頭に立った方がいいとか、こういう問題等につきましても効果が関係国との間ですんなりとまとまりやすいようにまとまることが、この貿易摩擦を鎮静化する、解決する道であろうと、このように考えておるわけでございまして、たとえば具体的に申し上げますと、もうすでに御承知と思うのでありますが、サービスあるいは金融とかそういう部門におきましては、かねてからアメリカが非常に熱心にこれを唱えておるところでございます。そういう問題もございますし、いろいろこれを軌道に乗せるためには考えたらよろしいと、こう思っておるわけでございまして、第一弾の東京ラウンド、関税の二年分前倒し、それから輸入手続等の簡素化というような問題は、閣議でこれを方針を決定し、これを推進したところでございますが、まだ第二弾の面につきましては、先ほど申し上げたようにこれから第二弾について考える。それをどういうぐあいにするかということでありますが、私はいま各閣僚等の考え方をいろいろお聞きしまして、それを集約をしておる段階であると、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
  238. 矢田部理

    ○矢田部理君 朝から櫻内外務大臣訪米報告等も伺ったわけでありますが、どうもアメリカの顔色をうかがって、出方が強いか弱いかによって日本対応策がやっぱりぐらぐらすると、そこが一つ非常に大きな問題点だということを私はしみじみと感じているわけでありますが、もう一つは、アメリカに対してきちっと言うべきことを言わない。櫻内外務大臣報告でもアメリカの高金利の問題が出ましたが、どうも余りさえた話になっていないわけです。やはりアメリカの高金利が円安を招き、輸出が加速され、全体としてアメリカの対日赤字がふえると、こういう連関があるわけですね。これはEC諸国にとっても同じような問題点があるわけでありまして、その点でアメリカの高金利に対してやっぱり厳しく物を言う、アメリカにも言うべきことは言うという対応があってしかるべきだと思うのですが、この点櫻内外務大臣少しく歯切れの悪い報告でありましたが、どんなぐあいだったのでしょうか。総理としてのお考えをまた改めて伺いたいと思いますが。
  239. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 歯切れが悪いようにおとりでございましたが、恐らく米側はやんわりやられたなという印象を私は持っているのじゃないかと、こう思うのです。というのは、米側でも、私は、あなた方努力して多少物価下がったねと、それがレーガンさんが持っておる経済見通してこう行けばこうよくなっていく、そうすると円安は大分改善されるんじゃないか、日本は内需喚起ができないで困っているのだと、こう言うと、向こう側が、いやいまの努力をしていれば金利は下がっていきますと、こう言うので、ああそうですか、それは結構と、大体うまく言ってきたつもりです。
  240. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理何かございますか。
  241. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま外務大臣からお話もございましたが、日米の間は、先ほども申し上げたように、非常に友好的ななごやかな雰囲気の中で話し合いがなされておりますから、腕まくりをして、この点はけしからぬと、こういう点を直さぬとそのために日本もこういう目に遭っているのだと、そういう言い方ではありませんけれども、その点は十分意を尽くして話し合いがなされておると、このように私は受けとめております。
  242. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあ、余り深追いはしないことにしますが、同時にもう一つ、この対応策の中で、どうもやっぱり日本対応は対症療法的にすぎて、構造的な問題に対して触れようとしないという感じがしないわけではありません。やっぱりこの貿易摩擦の本格的な解消というか解決策の重要な柱というのは、日本経済が内需の面で非常に落ち込んでいる、景気が後退をしている、したがってなかなか輸入もできないというところにあるのではないかというふうに私自身は感じているわけでありますが、河本長官、この点はどのように受けとめておられるのでしょうか。
  243. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) やはりこの貿易摩擦の問題を本格的に解決するということのためには、日本としては市場の開放体制も当然つくらなければならぬと思いますが、同時に、先ほど御指摘の円安の問題、この問題にも日鼻をつけなければならぬと思いますし、同時に白内の購買力、これも一つの条件だと思います。それから、やはり根本的には世界経済の回復と、こういうこともあろうかと思いますが、すべてのことを並行して進めませんと本格的な解決にはならないと、こう思います。
  244. 矢田部理

    ○矢田部理君 内需の問題は改めて別に集中審議が予定されておりますので、そこでさらに深めていただくことといたしまして、次の問題に移りたいと思います。  最近、地方の議会や自治体などで反核・軍縮決議が次々に行われております。意見書の採択というところもあるわけでありますが。これに対して、三月の二十四日政府・自民党の連絡会議が行われた際、総理からブレーキをかけるような発言がなされた、水をかけるような指導があったというふうに伝えられておるわけでありますが、どのようなお話をされたのか、その真意と理由についてまず伺いたいと思います。
  245. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 反核運動に対して水をかけたりブレーキを踏んだりというような、そういう気持ちは全くございません。と申しますことは、私は日本の置かれておる立場、特に世界における唯一の被爆国であるということ、そしてその核の惨禍ということを一番身をもって体験をしておりますし、またその上に立って非核三原則を国是として推進をしておると、こういうようなことから、これは私は非常に国民的な重大な悲願であると、このようにさえ踏まえておるわけでございます。ただ私は、とかく一部におきましてこの非核運動ということが、すべての核保有国、特に米ソ両超大国がこの核軍縮ということについて自制と責任を持って真剣に取り組んでいかなければ私は実現できないものだと、このように考えておるわけでございます。そういう意味で、この反核運動が米国だけに偏ってこれを要求したり批判をしたりと、そういうようなアプローチの仕方では、これは真の目的に向かってこの運動を進めることができないと、このように認識をいたしておるわけでございます。すべての核保有国、特に米ソ両国に対して私どもはその真剣な取り組みというものを要求していきたいと、そういう運動でありたいという意味で、自由民主党の役員会におきまして私からそのような自分の考えを申し述べたと、こういうことでございます。
  246. 矢田部理

    ○矢田部理君 すでに総理の方にもお渡しをしてあるわけでありますが、ここに広島の県議会の意見書があります。それから長崎県の大瀬戸町議会の決議があります。さらには大阪の府議会の意見書など全国的に幾つか集めてみたわけでありますが、代表的なもの三点を総理にも事前に読んでいただいておるわけでありますが、こういう決議案なり意見書の採択をすること、何か不都合がございますか。
  247. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私も拝見いたしました。特にいま、先ほど私が申し上げたような点に照らして不都合とかそういうものはないように感じております。
  248. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本は国是としても非核三原則を持っておるわけでありますし、総理御自身も軍縮特別総会にお出になるということでありますから、全国的に自治体や各種団体などが非核、軍縮に向けていろんな運動を起こす、いろんな決議案を採択をするという方向性については総理としても歓迎すべきことだと思うのですが、いかがでしょうか。
  249. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま申し上げた趣旨に合致するものであり、そして真に核軍縮が関係国によって共通の問題として、共通の責任の課題としてこれが取り上げられる方向で進められるということであれば大変結構だと、こう思っております。
  250. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、地方自治体や議会の決議案、意見書の採択なども基本的には歓迎するということになりますね。
  251. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) いま申し上げたような内容であれば結構だと、こう思います。
  252. 矢田部理

    ○矢田部理君 すでにお見せした三点等については、こういう内容ならば結構だという趣旨にも受けとれるわけですが、よろしゅうございますね。  ところが、にもかかわらずこの自民党の政調会ですか、の議論として、報道によりますと、非核地帯の設置あるいは非核都市宣言を行うことは望ましくない、非核都市宣言は無意味だというようなことも報道されておるわけでありますが、こういうことでは総理とまた違った対応をしているのではないかと思われるわけですが、この点はいかがでしょうか。
  253. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この非核三原則は日本が国是としてこれを堅持しておるところでございます。また、国会におきましても全会一致でこれを議決をしておる。世界に対しても鮮明に相なっておるわけでございまして、各市町村で個々にそれをやる必要はない、日本全体がこれは非核三原則の上に立っておると、こういうことでございますから、私は、そういう基本的な立場に立って自由民主党の政調会あたりがそういう見解を明らかにしたのではないか、こう思っております。
  254. 矢田部理

    ○矢田部理君 大変なことだと思うのですね。国があるいは国会が決議をした、その国の方針をそれぞれの自治体や議会でもより確認する意味で、あるいはみずからをやっぱり立場を明らかにする意味で、非核宣言なりあるいは非核都市宣言なりをすることは大変結構なことだと思うのですが、それはいかぬということですか。
  255. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) それはいろいろの理由、議論が出てくるところじゃないかと思いますが、日本全体がとにかく非核三原則の堅持の上に立ってやっているわけでございますから、この地域は非核都市である、この地帯はしなかったとか、そういうようなことではいかがかということでございますから、(「交通安全もいけないのか」と呼ぶ者あり)私は、いまの非核三原則を堅持している日本は、全体としてそういう体制下にあると、こういう認識でございます。
  256. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまもちょっとありましたが、交通安全というのは日本全体の方針でしょう。しかし、それぞれの市町村が交通安全都市宣言なんということを盛んにやっている、あれもおかしいということになっちゃいますよ、そうすると。やっぱりそれぞれの自治体が、あるいはいろんな団体や個人が、特に非常に重要な時期でありますから、核問題について関心を持ち、みずからの意向をまとめ、しかも各議会は与野党一致でやっているわけですよ、超党派で。それをやっぱりさっきは歓迎すべきだと言い、今度は非核都市宣言をやるのは歓迎しないということになると、総理の立場も少しく相矛盾するし、後段はおかしくなるというふうに考えられるわけですが、もう一度答弁を求めたいと思います。
  257. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 同じことを繰り返すようになりますが、交通安全とはちょっと違うのじゃないか。まあ各地の自動車が乗り入れてくるわけでございますから、それと日本全体が非核三原則を鮮明にしておって、それが国際的にももう十分徹底をしておる、こういう際でございまして、ある村は非核宣言都市である、そうでないところもあるから、そこは外国軍隊がそれに対する対応が違うとか、そういう性質のものではないと、こう思いますので、私は交通安全とは違うのじゃないか、こう思いますよ。
  258. 矢田部理

    ○矢田部理君 自治体がみずからの意思に基づいてやっぱり非核を誓いたいということは歓迎すべきことなんでありまして、総理も前段はそういう趣旨の発言をされたのですよ。特にやっぱり地方自治という立場から自主的にやるべきなんでありまして、それを総理の立場で、それは困るとか、よろしくないという話になるとこれは大変なことになるのでありまして、もう一度それは答えてください。
  259. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 〔山民主党の政調会等がそういう指導をしておるのではないかと、そういう矢田部さんのお話でございましたから、自由民主党がそういう指導をしておるとすれば、それはいまの日本が国是として非核三原則を堅持している、国全体がそういう体制のもとにあるということであるから、個々の市町村で宣言をする、しないというようなことはそれはいかがであろうか、こういうようなことで指導をしておるのではないかということを私は申し上げたということでございます。
  260. 矢田部理

    ○矢田部理君 自治体ですから、それは自治体の意向として、あるいは議会の意向としてやることは差し支えないわけでしょう。それまでいかぬという趣旨ではないのでしょう、総理総裁として。
  261. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) それはもう自治体にはそれだけの自主的な立場がございますから、それまでも私はどうこうということではございません。
  262. 矢田部理

    ○矢田部理君 まあそういうことであれば次の質問に入りますが……。  そこで、懸案のF4ファントムについて再度伺っていきたいと思いますが、防衛庁に伺います。  F4の試改修、これができた暁には、将来、いま対地支援戦闘機として使われているF1の後継機にする考えは全くないのかどうかというのが一点。  それから、F1との関係で言いますと、今度対地支援、対地攻撃能力がF4改には付加されるわけでありますが、F1との性能、どちらがすぐれているようになるか。  以上二点についてまず伺いたいと思います。
  263. 塩田章

    政府委員(塩田章君) まず第一点の、試改修が将来成功した場合に、これを対地支援のF1の後継機として考えておるかどうかということでございますが、これは今回の試改修はあくまでもF4の要撃戦闘機としての能力アップを図ろうとする試改修でございまして、これはあくまでも現在そのつもりでやっておるものでございます。一方F一の後継機の問題は、これはまだ現在は検討に入っておりませんが、将来の課題としていずれそのF1の後継機をどうするかという問題は出てまいる時期が来ます。そのときに、いまの時点で白紙的に考えれば、F1の後継機をどうするかいま検討に入っておるわけではございませんので、どの機種が候補機だというふうなことを申し上げる段階ではございませんが、そのF1のいわゆるF1改あるいは今度のF4の改修後のF4あるいはF16といったような名前のものが白紙的に候補になるんではないかというお尋ねもかつてございましたが、それに対しては、そういうことはF1の後継機の候補としては考えられるだろうということを申したことがございます。それは別途の問題でございまして、今回の試改修はあくまでもF4の要撃戦闘機としての能力アップを図ろうとする試改修であるというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、今度の試改修後のF4とF1との能力の比較はどうかということでございますが、対地支援戦闘能力ということに、もちろん対艦も含みました対地支援能力ということに限って考えてみました場合には、まあ大体同等の能力というふうにいま私どもは見ております。
  264. 矢田部理

    ○矢田部理君 すでに防衛庁が出した資料にも書いてあるわけでありますが、同等なんてものじゃないでしょう。対地攻撃能力、足の長さ等々、はるかにF1よりはF4改の方が上回るというのがむしろ常識じゃありませんか。あなた方の資料でもそうなっている。
  265. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 非常に概括的に能力の面で大体似たようなものだと申し上げましたが、詳しく申し上げてみますと、いわゆる対地支援のための、要撃でなくて対地支援のための標準支援戦闘武装という点で考えますと、いわゆる最大搭載量でなくて、標準戦闘武装という点で申し上げてみますと、F4は五百ポンド爆弾を八発、F1も同じく八発ということで、その八発積んだ場合の標準支援戦闘武装時の行動半径、これがF4の場合は約二百五十海里、F1の場合は約二百海里ということでございますので、いま御指摘のように行動半径におきまして約五十海里F4改の方が長いという点は御指摘のとおりでございます。
  266. 矢田部理

    ○矢田部理君 この辺はもう表が出ているわけですから改めて説明を聞くまでもないのですが、M61砲の関係でも、F4改の方がすぐれているというようなことにもなるわけだし、最大爆弾搭載量についても同様なんでありまして、言うならば要撃機の方が対地支援戦闘専門の飛行機よりも能力が上になる。それにもかかわらず、要撃機に付与される対地支援能力は依然として付随的だというような説明は私は納得ができないというのが後継機問題の第一点であります。  それから二番目の問題点は価格問題でありますが、これは前回、前々回何度かやってきましたが、どうも防衛庁が価格を出すのは、決して全部説明しないのですね、小出しに出しているのですよ。大蔵省はどの程度わかっているでしょうか。
  267. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 委員長
  268. 矢田部理

    ○矢田部理君 大蔵省。いや、防衛庁はもう聞いたから、大蔵省はどのくらい査定に当たってわかっているのかと、こう聞いている。
  269. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 査定に当たりましては、経費の積算の内容につきまして、詳細に担当官が相手方の説明をお聞きをいたしまして、その上で査定の金額を決定をいたしております。
  270. 矢田部理

    ○矢田部理君 搭載機器の種別と査定の金額、内訳わかりますか。大蔵省。
  271. 松下康雄

    政府委員(松下康雄君) 突然のお尋ねでございますので、私も手元の資料の整理等をいたさずにここへ出席いたしております。いま御説明を申し上げるということはむずかしゅうございます。
  272. 矢田部理

    ○矢田部理君 ずいぶんここで問題にもし、論議にもなっていたんですからね、突然のお尋ねだからわからぬというのも、いかにも解せないわけでありますが、同時にまた防衛庁自身も私は何度かやりました。最初は「搭載機器と価格」というのを持ってきたのですが、そのときに機器として出したのはごく一部でした。全部を出さなかった。そして最後に出したときには、今度は幾つかの機器の種類を出しましたが、搭載機器でありますが、「その他」というところになっている。この「その他」というのは一体何なのかということを聞くと、まあ幾つか列挙するわけでありますが、たとえばレーダー警戒装置というのがあります。このレーダー警戒装置は、対地支援攻撃にとっては非常に重要な装備だと私は思う。値段の点でも二番目に高い値段なんですよ。価格の面でも役割りの面でも非常に重要なんです。それを「その他」ということで隠して出している。恐らく大蔵省もわからなかったのじゃないかと思いますよ、これだけでなしに、全体の価格の積算根拠などは。これで一体シビリアンコントロールができるのかというのを私は実は問題にしたいのであります。総理、いかがでしょうか。
  273. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私はこのF4ファントムの試改修の問題につきましては、防衛当局から、これがもし試改修の結果が所期の目的どおりになるのであれば、十年ぐらい延命することができるであろうと思いますと、それから要撃機としての機能が大幅にアップすることができると思いますと、そしてその費用も少なくて済むと、こういうような説明を聞きまして、こういう財政再建下においては、防衛予算といえどもできるだけそういうぐあいに効率的に、節約ができるのであれば結構だと、こういう理解を示してあったわけでございます。  いずれにいたしましても、これをよろしいということになって、試改修の結果が出て、量産に移ります際におきましては、これは当然国防会議にも付議し、予算として国会に御審議を願い、御承認を得なければならないものであると、そういう意味合いからシビリアンコントロールには支障がないと、こういまでも解釈いたしておりますが、この代表機一機の試改修等の問題は、これは私は防衛庁長官の権限の範囲内で十分やれる問題であるという基本的な実は考えを持っておるものでございますから、そういう了解を与えておったと、こういうことでございます。
  274. 矢田部理

    ○矢田部理君 私がもう再三にわたって指摘しておりますように、シビリアンコントロールはやっぱり国防会議とか内閣とか、最終的には国会とかということになるわけであります。それが、この予算書を見ても、表にしても裏にしても透かして見てもわからない。ようやく探し当てて、今度はお金の中身を聞くと、どうなっているのかこれもさっぱりわからぬ、説明にも矛盾がいっぱいある。ずいぶん追及してもまだ隠している部分がある。これではシビリアンコントロールはできない。恐らく大蔵省もわからないまま予算組んだんじゃないかと思われる節がある。これでは財政面からのコントロールも欠落をするということになるわけでありますが、量産をする際には改めて国防会議にかけるのだからという御説明がありました。その、量産の際には改めて国防会議にかけるという理由は一体何でしょうか。F4改に新たな性能を付与すると、そのことによってF4の性能が変更になる、新しい装備をすることになるからというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  275. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 八十機あるいは百機というようなぐあいにこれが改修をされると、そして、それには多大の予算も必要といたします、日本の自衛隊の装備の、あるいは戦力の大きな変更にもなることでございますから、私は当然これは国防会議の議題として検討すべきものだと、こういうふうに考えております。
  276. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、総理のお話を要約しますと、量的にふえるということと、それから質的にも新しい装備品がつけ加わると、この二つの面でかけるんだと、こういう趣旨でございましょうか。
  277. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) その結果、自衛隊の編成あるいは戦力にも大きな変化が及ぼすと、こういうことでございます。
  278. 矢田部理

    ○矢田部理君 国防会議に対する付議事項というのは法定されているわけですが、同時に最後に一般条項的なものがあるわけでありまして、そこの中で運用していくということになろうかと思うのでありますが、一般的に言って、重要な新装備の採用あるいは装備の変更というようなことは、あらかじめ国防会議にやっぱりかけるというのが原則ではないかというふうに思われますが、その点はいかがでしょうか。
  279. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在国防会議にかける事項といたしまして、御承知のように防衛庁設置法の六十二条二項に書いてございまして、そのうちの第五号に、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」ということが規定されております。いま総理のおっしゃった意味もこういう——先ほど総理のおっしゃったような内容から考えて、この五号に当たるものであろうということで考えるということでございまして、私どもそのようなつもりで、この次に量産開始となれば、この規定によりまして付議いたしたいというふうに考えております。
  280. 矢田部理

    ○矢田部理君 そんなこと聞いてるのじゃないんだよ。重要な新装備の採用とか、従来持っておった装備の重要な変更とかというようなことについては、総理、やっぱりこれは国防会議に改めて付議すべきではないかと。付議の前提としての知識が一般的には総理のところまでには届かないわけですから、考え方をまず確立をすることが非常に大事だと思うのですね。その点で総理から確認を求めたい。
  281. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 御承知のように、これは代表機一機の試改修の問題でございます。そして、これが果たして所期の目的のように試改修の成果が上がるかどうか、あるいは、やったが全然所期のとおりの成果が得られなかったと、こういう場合もあり得ると思うのでありますが、私はそういう意味で、これがはっきり量産するだけの価値があると、こういうような段階におきましてこれを国防会議にかけなければならないと、こう判断をいたしておりますが、前段の試改修の面につきましても、国防会議にはなるほどかけませんでしたけれども、私に対して先ほど御答弁申し上げた程度の内容のものとして報告もあり、了解も与えておると、こういうことでございますから、全くシビリアンコントロールの面からいってそれを外れておるというぐあいには私はならないものと、こう御理解をいただきたいと思います。
  282. 矢田部理

    ○矢田部理君 総理に報告があったというのは、延命とか、要撃機としての能力アップ程度でありまして、問題になってる爆撃装置の復活、新しい装置ということについてはなかったというふうに私は伺っているんです。これではだめなんですよ。それからもう一つは、試改修や研究開発はいいんだと、かけなくていいんだということになりますと、今後、攻撃的な、あるいは侵略的な兵器、場合によっちゃ核兵器、持っちゃいかぬとされている爆撃機等なども研究——実用段階、量産段階はかける必要があるけれども、研究開発段階ならば防衛庁勝手にやっていいんだという議論にも実はなりかねないのであります。その点で、やっぱり総理として、重要な装備の変更、非常に問題になっているような装備の新しい採用というようなことについては、研究開発の段階でもやっぱり国防会議に諮ってしかるべきだと、この原則だけやっぱり確立してもらわなきゃ困ると思うのですが、いかがでしょう。
  283. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、その段階は、いろいろ議論のあるところだろうとは思いますけれども、いま政府がとっております方針といたしましては、その段階は防衛庁長官の所掌権限の中でやれると、このように考えております。
  284. 矢田部理

    ○矢田部理君 じゃ核兵器も、研究開発、防衛庁長官の段階でやれるということなんですか。これは大変なことになりますよ。これは全く納得できません。
  285. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 矢田部さんの御議論に飛躍がございますが、非核三原則を堅持しておる日本が核兵器の開発とか研究はやるわけがございません。
  286. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと納得できませんが、一応時間が参りましたので、終わります。(拍手)     —————————————
  287. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、田代富士男君の質疑を行います。田代君。
  288. 田代富士男

    田代富士男君 今日の未曾有の核の危機によりましていろいろな問題が議論されておりますが、地球の防衛について真剣に考えた数少ない政治家の一人に、ジョン・ケネディ大統領がおられました。彼は一九六一年九月二十五日、第十六回国連総会で次のように演説をされました。「偶発、誤算、あるいは狂気によって、いまにも切り落とされそうな、ごく細い糸で吊り下げられたダモクレスの核の剣のもとで、すべての男、女、そして子供たちが暮らしている」と叫んだのであります。私は、核保有国の指導者は身ぶるいするような最後の決断を下す義務がいつどんなとき必要になるかと、極度の不安な生活を余儀なくされているに違いないと思うのでございます。  本予算委員会の総括質問で、私は総理に核軍縮の問題で質問をいたしました。そのときに総理は、核兵器による惨禍、これは人類の生存にもかかわる非常な脅威であると申されまして、軍縮総会に先立ちまして、出発前に各党首あるいは各種団体の代表のお方の意見やお気持ちを十分に聞きたいと申されましたけれども、これを実行されるのは具体的にどのように実行されるのか、お聞かせいただきたい。  なぜ私がこれをお尋ねするかといえば、ただいまも同僚議員からお話がありましたが、総理は去る二十四日の政府・自民党連絡会議で、特に反核運動が反米運動にならぬよう注意して、反核決議に対しては慎重にというような態度を示されまして、総括質問のときにお伺いいたしました答弁よりも後退の姿勢を私は危惧している次第でございます。そういう立場から重ねてお尋ねをしましたが、また、いろいろ理想と現実との間に悩んでいらっしゃるというような報道記事もありますが、どういうようなお考えでお臨みになるか、お聞かせいただきたいと思います。
  289. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 核の惨禍を再び繰り返してはならない、唯一の被爆国民であるところの日本国民はひとしくこのことを心配をしておるわけでございます。そういう意味で、来るべき六月の国連の軍縮特別総会に出席するに当たりましては、各政党の代表はもとより、各界各層の署名運動等をおやりになっておりますところの代表の各位と私はできるだけお会いをし、御意見伺いまして、そしてその御意見を踏まえて全国民的な立場でこの特別総会に臨みたい、こういうことをこの前、田代さんに申し上げましたが、いまでもそのとおりに実行したいと、こう考えております。来週から実はこの文学者の方々の代表の方々とお会いすることになっておりますが、これは国会の軍縮議連のごあっぜん、お勧めによりましてやるのでありますが、できるだけ国会の軍縮議連等のお力もおかりしながらそういうことを進めてまいりたいと、このように考えておるところでございます。なお、国連におきましては、先ほど申し上げましたように、究極的には核の廃絶を目指して私どもは軍縮を着実に実行可能なようにこれを進めていくということに重点を置きたいと、このように考えております。  そこで、私が自由民主党の役員の会合で、反核が反米ということになってはいけないと申し上げましたのは、この核の廃絶、核軍縮を進めてまいりますためには、すべての核保有国、特にアメリカとソ連という核の超大国、これが本当に責任と自制の上に立って核軍縮に取り組んでくれる、こういうことでないと私は本当の成果が上がらないのではないかへこのように考えております。  そういう観点からいたしますと、一方だけにこれを求めたり、一方だけを非難したりというようなことになりますと、そういうアプローチの仕方では私はこの核軍縮の成果というものは上がらないのではないか、こういうことを心配をいたしておりますために、そういう偏ったことにならないようにということを党の役員の諸君と話し合ったと、こういう経過でございます。
  290. 田代富士男

    田代富士男君 先日の総括質問の際に、ただいまも問題になっております核軍縮の署名につきまして総理にお願いをいたしましたが、この席で、「いつでも署名をさしていただきます。」という答弁をいただきました。予算委員会という公式の場で、当日は国民注目のテレビ放映もされておりまして、全国民が承知しているところでございますが、署名をやるとおっしゃいました点、その後どのようになりましたでしょうか。何か変節されたのか、それとも反核決議には慎重にという御発言はみずからを顧みてお話しになったのか、この席でお伺いしたいと思いますが……。
  291. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この前の予算委員会で田代さんのこの核軍縮、核の廃絶に対する本当に真摯な熱意のこもった御所見に対して、私も深い感銘を覚え、そしてその際に、自分たちが進めておるこの署名運動に賛成をし署名をしませんかと、こういうお勧めがございまして、私もあなたの非常にそういう真摯な御提案に対して、結構でございます、いつでもやりますよということを申し上げたのは、私もあなたに劣らない核軍縮に対する気持ちを持っておるからでございます。しかし、いろいろ考えまして、総理大臣が、どっちかというと署名等をお受け取りする立場にある者がそういうことをやってはどうかというアドバイス等もございまして、実はいまその点を御了解をいただきたい、こう思っておるのでありますが、だからといって私が核軍縮、そして将来の核の廃絶を目指してのこの運動に対していささかの心境の変化なり後退というようなことはないことを明確に申し上げて御了解を得たいと、こう思っております。
  292. 田代富士男

    田代富士男君 この問題につきましてはいま総理からも御答弁がありましたが、お聞きいたしましたが、明らかに前言の取り消してはないかと思うのでございます。  そこで、最後にもう一問まとめてお尋ねしますが、ブレジネフソ連共産党書記長が発表しました欧州戦域核ミサイルの凍結、削減につきまして、米レーガン大統領は無意味であるとソ連案を拒否しました。また、国連事務総長は、問題の解決を大きく前進させるのに寄与するだろうと評価されておりますし、また、米ソの両国意味のある協定に導くあらゆる提案を歓迎すると、このように申されておりますが、総理どのようにお考えであるのか。また、鈴木総理といたしまして国連総会にも参加されますけれども、ただいまも決意を披瀝されたとおりに、あらゆる核軍縮に対して努力するということでございますから、ソ連の提案に対しまして、日本としても欧州地域の問題として受けとめるだけでなく、真剣に検討しまして、ジュネーブの米ソ戦域核交渉中断後、米ソに核ミサイルの凍結、削減の交渉を再開させるよう努力すべきではないでしょうか。  また、去る二十四日、ソ連の共産党書記長がレーニン勲章授与式で、アジア外交について演説をいたしまして、日本、中国それぞれに向けて関係改善を呼びかけました。総理はこの提案をどう受けとめられていらっしゃるのか。また、このような日本に対しての極東における信頼強化措置に関する提案は、昨春に続いて二度目のものでありますが、総理は、日ソ二国だけの交渉の呼びかけに応じて、ソ連のこうした呼びかけに応じないとしたら、そのネックとなっているものは何か、もし、そうした前提がどのように解消されるならば応じるのか、対ソ政策につきまして御見解をお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  293. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 前段の欧州地域におけるこの地域の戦域核の米ソの交渉の問題、また、それに対するブレジネフソ連書記長の提案の問題について私の見解を求められたわけでございますが、御承知のようにブレジネフ書記長の提案というのは、SS2〇その他すでに欧州にソ連が記術しておるものは凍結をする、であるから、アメリカ及びNATO諸国は新たな戦域核の配備を、これをやめるべきであると、こういうことを提唱しておるわけでございます。これに対してレーガン大統領は、ソ連がSS2〇等の戦域核の撤退をするのであれば、巡航ミサイル等の配備はこれはやらないと、ゼロオプションを提案しているということは御承知のとおりでございます。現状におきましては、ソ連側が非常に戦域核については圧倒的優位な状況下にある、それを現状に固定しようと、こういう提案と、両方とも撤去するのであればこれは自分の方もやらない、ゼロオプションでいこうと、こういう、そこに違いがある。米ソの間にはいろんな面でその交渉に当たっての食い違いなり利害の対立、計算の違いというようなものもあるようでございますから、私はしかし、こういう問題は粘り強くさらにこの交渉を継続して、そして冷静な責任ある立場に立って軍縮の方向に進むことを期待いたしておると、こういうことでございます。  それから、ブレジネフ書記長が先般日本を対象とし、あるいは中国の問題にも触れておるようでございますが、日本に触れた中で、この信頼醸成措置の面について重ねての呼びかけがございました。私どもは、この前にもそういう御提案があったのでありますけれども、極東における信頼醸成措置の強化というものは、基本的には私どもは歓迎するのではございますけれども、これをソ連が行動でもってはっきり示してもらいたい。それは、極東からSS20等の核兵器を撤去するとか、あるいは日本の国有の領土である北方領土を返還する、ないしは、いますぐにでもできることは、あそこに軍事施設等を増強するというようなことはやめてほしい、そういうような行動でもって相互の信頼を強化する、醸成するという行動を示してもらえば、これは私どもはそのとおりに受け取り、私どももそういう方向でお互いに協力し合うということはできると思うのでありますが、そういう点は横に置いて、棚上げしておいて、言葉でもって呼びかけても、にわかには私どもはそのとおりに額面とおりに受け取るわけにはいかない。日本国民は、何といっても日ソの真の友好関係というのは、北方領土の問題を解決すること、これを解決しないと、のどにとげが刺さったような形でございまして、本当の恒久的な日ソの友好は確立てきない、こういう考え方でございます。     —————————————
  294. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、三木忠雄君の質疑を行います。三木君。
  295. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間が十三分でございますので、総理も、なるべく簡単に、ひとつ要領よくお願いします。  一つは、けさから外務大臣のいろいろ報告を伺っておりまして、特に市場開放の問題として、これはもう各省私の受ける感じはばらばらだと思うのです。特に農林水産省においては、いろんなやはり生産者との関係の問題があろうと思います。ここでやはり総理がリーダーシップを発揮しなければならないのがこの貿易摩擦の問題ではないかと私思うのです。したがって、サミットまでのこの期間に、総理がどのようなリーダーシップを発揮してこの貿易摩擦の問題を、外務大臣からもいろいろ報告を受けられたと思うのですけれども、どのように対応をされていくと考えられますか。
  296. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) せっかく外務大臣訪米しまして、レーガン大統領初め首脳と隔意のない話し合いをしてまいりました。この貿易摩擦の問題につきましても、率直な米側の考え方というものを伺ってまいったわけでございます。そして、土曜日には江崎ミッションが、EC諸国を歴訪した首脳に会った結果を持ってお帰りになります。その報告を受けまして、早速三十日にでも閣僚会議を開きまして、その結果を踏まえて早急に対応策を固めていきたいと、このように考えておるところでございます。
  297. 三木忠雄

    三木忠雄君 総理は、最終的に日米首脳会談ですか、サミットの前に行われるようですが、このときに総理声明というような形で、やはりできるものできないもの、あるいは長期にわたっていくもの、三段階ぐらいに分けてちゃんと表明が行われるようなうわさも聞いておりますけれども、やはり日米政府との間でいろいろそういう詰めをやっているのですか。それとも、総理がやはり貿易摩擦解消のための最終判断として、どういう対応をすればアメリカ貿易摩擦解消のこの問題が解決できるとお考えになっているか、その点について。
  298. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) レーガン大統領サミットの際にお目にかかるということは、大体両国政府で合意をいたしておるところでございますが、それは、いま貿易摩擦の問題でわが方の声明を出したり伝えたり、そういう場として考えておるのではございません。日米両国関心の問題全般についての話し合いをするということでございますが、私は、この貿易摩擦の問題につきましては、ヨーロッパの問題もございますので、サミットということを待たないで、できるだけ早目にわが方の第二段の方針というものを打ち出したいと、このように考えております。しかし、こういう問題は、私はそれでもってすべて終わるというようなものではないと、こう思います。したがいまして、第一段階は御承知のように東京ラウンドの二年分関税の前倒しをやり、また輸入手続等の簡素化もやりました。見直しもやったわけであります。第二段として今後、いまアメリカEC方面のさらに重ねての要請も伺っておるわけでございますから、そういう点も踏まえて、第二段としてこういうものをいたしたらどうかというものをまとめたい、それで全部が終わりではない、このように考えておりますし、なおサミットの場におきましては、私はこの貿易摩擦の根源は世界経済の停滞にある、非常な不況にある、大変な失業問題の発生にある、こういう点がございますから、その根源である世界経済の再活性化の問題、そういう問題を討議をすることになろうかと思いますし、その前に開かれるOECD、この会議も私は重要な意味を持つものと、このように考えております。
  299. 三木忠雄

    三木忠雄君 世界の経済の活性化の問題で、ミッテラン大統領が今度参りますね。このときにはやはりアメリカの経済運営の問題等についても総理は強く主張し、ベルサイユサミットでいろいろそれを論議しようとお考えになっていらっしゃるのですか。
  300. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) ミッテランさん、私、今度お会いずれは三回目でございます。したがいまして、すでにざっくばらんにお話し合いができる仲にもなっておりますから、両国関心のある諸問題あるいは国際的な問題等について率直な意見の交換をいたしたいと、こう思っておりますが、両国の問題といたしましては、このフランスも非常に先端技術の高いレベルにある国でございます。日本との間にミッテラン大統領は、この先端技術の共同研究開発等に対して非常な熱意を持っていらっしゃるということ、それから両国の文化の一層の交流という問題について、これまた大変な情熱を傾けておられるということでございますから、そういう問題等につきましてもお話し合いを十分したいと、こう思っております。
  301. 三木忠雄

    三木忠雄君 貿易摩擦の問題で、やはり日本の主張すべき問題もいろいろあると思うんですね。貿易摩擦直接関係なくても、外務大臣が行かれて、アラスカ石油の輸入の問題であるとか、あるいは私たちもいろいろ勉強しておりましたバイアメリカン法の問題ですね、市場参入の問題で、いろいろアメリカの連邦政府が補助金を出している問題に対しては非常に規制をされているという、こういう問題があるわけです。あるいはアメリカの船を使わなければ輸出ができないというような、そういうふうないろいろ制限条項が加えられている、こういう問題についてはやはり日本がうんと主張をすべきだと私は思うのですが、この点について櫻内外務大臣ちょっと……。
  302. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) アラスカ石油の日本への輸出問題は、御承知のとおり法律の規制で問題があると、こういうことでありましたので、下院の外交委員会におきましてインバランスのことを言うが、このアラスカ石油が出れば、そのことによって三、四十億ドル違うのだから、真剣に考えてくれということを主張をいたしまして、これは委員長以下が傾聴をしておられました。特に御返事はちょうだいできませんでしたが、相互主義法案について困るということと、それからアラスカ石油については考えてもらいたいということをよく言ってまいりました。また、そのほか、米経済界との会食の折にもそのことを伝えておきました。  それからサハリンの問題でございますが、これはアフガニ人タンの問題のときに対ソ措置の中に含めなかった、そういう実績を持っておりますので、ヘイグ長官には引き続きこのことは考慮してもらいたいと。いずれも機会を得れば、いろいろと当面の問題についても主張をしてまいったのであります。
  303. 三木忠雄

    三木忠雄君 時間がありませんので、一、二防衛問題で伺っておきたいと思うのですけれども、シーレーンの問題ですね、千海里の航路帯の防衛は、防衛計画の大綱に具体的に示されているわけですか。この点についてまず伺っておきます。
  304. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 大綱の中に千海里という数字を挙げて示しておるわけではございません。ただ、三次防、四次防以来の考え方からいたしまして、防衛計画の大綱の中の防衛構想、特に海上自衛隊の任務という構想を記述するに当たりまして、そういう一千海里の航路帯のことを念頭に置いて記述しておるということは言えますが、数字的に明示したものではございません。
  305. 三木忠雄

    三木忠雄君 きのうからワインバーガー長官が見えているわけですね。千海里のこの航路帯の防衛の問題がやはり一番大きな焦点になるんじゃないか、こう言われているわけです。日本は五六中業でこのシーレーンの防衛計画は全部でき上がるとお考えでいらっしゃるんですか。
  306. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五六中業は現在作業いたしておりますが、防衛計画の大綱の線に到達することを基本として作業をするということで現在作業をいたしております。
  307. 三木忠雄

    三木忠雄君 昨年のハワイの会談アメリカ側が相当な要求をされたわけですね。これで日本の五六中業、これから策定するわけでありますけれども、防衛計画の大綱を進めてくると、たとえば五六中業の完成の暁にアメリカが希望しているシーレーンのこの防衛力になっているのかどうか、この点についてはいかがですか。
  308. 塩田章

    政府委員(塩田章君) アメリカもいろいろハワイ会談におきまして、物によりましては数字等も挙げましていろいろな話が出たことはしばしば申し上げておりますが、私どもは終始一貫しまして、防衛庁といたしましては防衛計画の大綱があって、そこに到達するのがいま目標だと、そのための努力をしているのだということを言ってまいりました。そこで、いまお尋ねの、それをすればアメリカの言っていることに到達するのか、あるいはまだ差があるのかということでございますが、しばしば申し上げておりますように、アメリカがどういうことを言ったかということにつきましては、ハワイ会議の申し合わせによりまして公表いたさないということにいたしておりますので、具体的に申し上げることは差し控えさしていただきたいわけでございますが、全般的に言えば、私どもの防衛計画の大綱の線よりももっと多くのものを期待しておるというふうには言えると思います。ただ、内容は差し控えさしていただきたいと思います。
  309. 三木忠雄

    三木忠雄君 内容を差し控えさしてもらいたいと言うのですけれども、装備計画は具体的にどういうふうにこのシーレーンをやるのですか。船団編成方式をとるのか、どういう装備計画を立てるのか、この点について。
  310. 塩田章

    政府委員(塩田章君) シーレーンの防衛は、具体的に考えてみますといろいろな形があると思いますけれども、大きく言えば、一つ、いまおっしゃった船団護衛方式があると思います。それからもう一つは、船団は組まずに、各商船は個々に独航いたしますが、自衛隊におきまして一定の海域をいわゆるクリアしていく、捜索いたしまして、相手が、潜水艦がいないということを確かめて船自体は独航させるというようなやり方、間接護衛方式といいますか、二通りあると思います。どちらというふうにいま決めてかかるわけにはいきませんし、現在の自衛隊の能力で状況に応じて両方それぞれ使うということになろうと思います。ただ、一般的傾向といたしまして、間接護衛方式の方が多くなるだろうということは一般論としては言えると思います。     —————————————
  311. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、立木洋君の質疑を行います。立木洋君。
  312. 立木洋

    立木洋君 総理、時間が大変短いのでかみ合った御答弁をお願いしたいと思います。  最初に、レーガンが先日、西側が十分に強くあることが前提にあって、初めて意味のある軍縮が可能になるというふうに述べておられますが、このレーガン大統領の見解に対する総理の御所見を最初にお伺いしたいと思うのですが。
  313. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) これはアメリカのいままでの米ソの間のいろんな交渉、そういう経験の上から、そういう発言が出てきたのではないだろうかと、このように私は思うわけでございます。  この間、櫻内大臣も参りまして、やはり軍事の面における力の均衡、そういうようなものを保持しないと、ソ連側に幾ら言葉でもって交渉をしても本当の成果は上がらないと、こういうことを、自分がNATOの軍司令官をした経験からそういうことを自分は切実に考えていると、こういうことを言ったということも伺っております。
  314. 立木洋

    立木洋君 これは言うならば、軍縮をやるためにはまず軍拡だというふうな考え方にもなるかと思うので、そういう点に総理が御理解を示したのはいかがなものかと思うのですが、先ほど来問題になっております、つまり非核都市宣言は無意味だというお話ですが、これは本日の、二十六日の自民党の役員会と総務会で党の見解を決定したということが、きょうの夕刊で報道されておりますが、この短い自民党の見解の中を見ますと、「無意味だ」という言葉が三カ所も使われておるのですね。  それから先ほども問題になりましたが、これは今月の三月二十一日に広島で開催されました「82年・平和のためのヒロシマ行動」、これについては「自由新報」の中で、この反核平和運動が左翼陣営の勢力のひもつきの運動であり、反核運動は親ソ的というふうな報道がなされ、それから署名、意見書採択は慎重に、というふうなことが出されております。先ほどは、総理は水をかけるようなことはしていないと言いましたけれども、これはまさに水をかけているのではないかというふうに思わざるを得ないわけです。  第一回国連軍縮特別総会で採択されました最終文書の中では、軍縮については世界の世論を動員するということが決められておりますし、これについては、日本政府も賛成した最終文書であります。この世界の世論を動員するというのは、国民のいろいろな声を、いわゆる核に対する反対の声をどんどん高めていく、それを結集して、第二回国連軍縮総会に向けて高めていくということが当然要望されるべきで、こういう世界の世論の動員に反するような行動が行われるというのはいかがなものか。同時に、総理は各党の意見も聞いてと言っておられる、国連総会に対する考え方として述べられておられるわけですから、国民の代表としておいでになる気持ちがあられるならば、こういう国民の声にも十分に耳を傾けていただくべきではないかと思いますが、    〔委員長退席、理事土屋義彦君着席〕 その点で国連に参加する姿勢と申しますか、こういうやっぱり国民の声に耳を傾ける、自民党の総裁というだけでおいでになるわけじゃございませんから、そういうような形で述べられては非常に困るわけで、この広島における中でも、核大国のアメリカとソ連の良識を求めるということも明確に述べられてあるわけですから、その点についての総理の御見解を。
  315. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 国連の今度の特別総会に出席するに当たりましては、国民全体の声を聞き、そして全国民的な立場で私はこれに臨みたいと、このように考えておるわけでございます。  そこで、私は各党の代表の方あるいは各界の代表の方等と出発前にぜひお会いをして、皆さんの御意見を拝聴して、それを踏まえてそのような行動をとりたいと、このように考えておるわけでございます。  自由民主党の自由新報ですか、がどのような批判を加えておりますか、まだ私、報告を受けておりませんが、私は先ほど申し上げたようなことであれば、私は真に核軍縮に貢献できるものと、このように考えます。一方に偏った、そういう形でのアプローチは、決して私は実を結ばないと、このような認識においては変わりはございません。
  316. 立木洋

    立木洋君 話は変わりますが、先ほど問題になりましたF4ファントムのことで、防衛庁が三月の九日に見解を発表されました。それによりますと、増田答弁の基本的方針を変更する考えはないというふうに述べられてあるわけです。戦闘機に爆撃専用装置を施さないということも基本方針だというふうに理解してよいのか、この点最高責任者であります総理にお答えいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  317. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、増田防衛庁長官当時、政府が基本的な方針として述べております点は、他国に対して攻撃的、侵略的なおそれのある装備はしない、これが私は基本であろうかと思うわけでございます。そういう観点からF4ファントムの爆撃装置というものは、攻撃的、侵略的な脅威を与えるおそれがある、そういう疑いがあってはいけない、こういう意味合いからあの装置は外すと、こういうことに当時なったものでございまして、基本でありますところの専守防衛に徹するわが国として、他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるような装備はしない、この方針はいまだに変わっていないということを申し上げておきます。
  318. 立木洋

    立木洋君 当時の増田防衛庁長官の答弁は、敵地を爆撃するようなことは避けるべきである、憲法に照らして爆撃装置を施すつもりはございませんと、明確に述べられているわけですね。いまの総理の答弁ではやはり重要な点がきわめてすりかえて述べられているのではないかというふうに言わざるを得ないと思うのです。    〔理事土屋義彦君退席、委員長着席〕  それで、先日の新聞でも、このF4ファントム試改修の五十六年分の十六億円の執行停止を解除するというふうな話が新聞報道されておりますが、この際改めてこういう重大な問題に関して、五十六年度予算の執行をやめて、不用額として処理するように、事実上削除するように重ねて要求しておきたいと思います。  最後の質問ですが、今回櫻内外務大臣アメリカにおいでになったときのワシントンでの演説を見てみますと、昨年総理がおいでになったときには、日米首脳会談日米の関係を同盟関係だというふうに述べられました。ところが、今回櫻内外務大臣は「日米両国の、国際社会に占める大きな地位、太平洋をはさんでの緊密な同盟関係にかんがみ、我々が、この西側の団結と協力の一つの核となるべきである」ということが述べられてあります。この「一つの核」というのは、まさに物の中心であります。これはただ単なるいままで西側一員というような表現ではなく、西側の一つの中心としての日米関係。こうなりますと、これは政治的、経済的、軍事的な役割りを、一層これよりもアメリカの意に沿って、国際的に役割りをより大きく担うということになるのではないかと思いますが、この西側の団結と協力の一つの柱、一つの核となるべきであるという点については、総理はどのようにお考えになっておられるのか、そういう外務大臣の発言が正当かどうかという点について、総理に御答弁願って私の質問を終わります。
  319. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 立木委員が御自身で言われたとおり、この一つの中心で、この文字が何か目立つようでありますけれども、それは国語の問題でございますが、別段これは日米協会における私の演説でございまして、この辺に私自身の感覚でアクセントをつけてしゃべったと、演説にはよくそういうことがあると思うので、この辺は大変どうも雰囲気としては受けたようでございました。
  320. 立木洋

    立木洋君 総理、これただ単なる言葉の表現じゃないと思うのですよ。西側一員という、日本で言えば末席を汚しますなんというふうな表現もありますね、へりくだった意味では。しかし、西側一員の一つの核という場合には違うので、この点再度お願いします。
  321. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は西側一員、その核であるというような表現を仮にいたしましても、私はしばしば申し上げておるのでありますが、日本は国力、国情に応じて世界の平和と安定のために貢献をしていく、西側陣営の一員として、これだけの経済力も持つようになったわが国として、国情にふさわしい貢献をしていくのだと、こういうことをしばしば国会を通じて国民の皆さんに明らかにいたしておるところでございます。西側陣営の一員日米はその核にならなければならないと言っても、それは軍事的な意味を指しているものではないということを明確に申し上げておきたいと思います。     —————————————
  322. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、木島則夫君の質疑を行います。木島君。
  323. 木島則夫

    木島則夫君 日米貿易摩擦の問題は、もう一つ西側一員としての日本防衛努力、あるいは防衛分担のあり方と複雑に絡んでいることも事実でございます。アメリカ議会公聴会で述べられる意見の中に一つ注目すべきものがございます。それはソ連の世界戦略、もっと端的に申し上げると、ソ連の脅威についてのアメリカ日本の受けとめ方に差異があり過ぎるところにアメリカのいら立ちがあるんだと、こういうふうな意見であります。この人たち防衛費の対GNP、これが何%であるとか、また予算に占める防衛費の割合、こういった数字も確かに大事であるけれど、ソ連の世界戦略、つまり現在の世界情勢をどう受けとめるかということが基本にならなければならず、ここから日本防衛、中業の問題も出発をする、そういう意見でございます。  ちょうど米中の問題がとやかく言われているときに、中国への修復の呼びかけをソ連がするとか、あるいは日米の摩擦の真っただ中での日本への善隣の呼びかけなど、こういった一連のソ連の呼びかけがある折でもございますので、このソ連の世界戦略についての基本的な認識を確認をする意味で、もう一度総理から承っておきたいと思います。
  324. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日米の首脳の間におきましては、国際情勢の分析を私が五月に参りました際にもいたしました。また今回櫻内外務大臣が参りました際にも、相当時間をかけてこれを行っております。この現在の厳しい国際情勢が東西の力の均衡の上に保持されておる。むしろ米側としては、ソ連がこの連年にわたるところの軍備の増強によって、むしろ西側の方が劣勢に立っておるのではないかという危機感さえ持っておるわけであります。そして、アメリカ西側のトップリーダーとしての責任というものの自覚の上に立って、これに対して真剣に対処をしておる、同時に、同盟国に対しても同調、協力を求めておると、こういうことでございまして、そういう認識においては、私は完全に一致しておると、こう思うわけでございます。ただ、そういう認識の上には立ってはおりますけれども、日本日本の国情がございます。平和憲法のもとに、また去る大戦においてあのような過ちを犯したということから、日本国民は再び戦争というようなことを、過ちを繰り返してはならないという気持ちもまたございます。そういう点からいたしまして、専守防衛に徹する、軍事大国にはならない、そして非核三原則を堅持していく、こういう方針をとっておりますから、そこでアメリカの要請なり、日本に対する安保条約上のこの日本がなすべき役割りというものにつきましても、いろいろ強い希望がございますが、日本としては国民世論なり、あるいは国の諸般の状況等を総合的に勘案をして、共通の認識、共通の目標に向かって着実に日本はやっていく。しかも日本の場合は一定の限界があるということも米国にもるる説明をいたしておるところでございます。
  325. 木島則夫

    木島則夫君 ただでさえ問題は非常に日米貿易摩擦むずかしいわけでありますから、そういったソ連の世界戦略に対する基本認識日米のずれがあって、それがアメリカ人の、アメリカのいら立ちを増幅しないよう今後もひとつ努力を続けていっていただきたい。  何分時間が制約をされておりますので、先ほども農林大臣に伺ったわけでありますけれども、日米貿易摩擦の一つの大きな目が農産物自由化であることはもう論をまちません。日本農業が置かれております立場、そういった環境下にある生産者のお立場、これもよく私承知をしているつもりでございますけれども、反面やっぱり消費者主権の立場に立って、この際ある程度自由化、こういうものをすることによって、消費者の利益が増幅されるような、そういうチャンスにすべきではないかという声もあることは事実でございます。農林大臣としての豊富な御経験の上に立って、現在は総理という広範囲な、グローバルな立場で物がごらんになれ、判断をされるお立場にある総理でありますので、率直に伺います。  農水大臣は、残存輸入制限品目農産物についての自由化はむずかしい、私が御質問をした範囲ではとても立ち入るすきがないというような印象を受けたわけでございますけれども、こういう形をこのまま続けていって、それがアメリカへの納得、説得になるのかどうか、あるいは四月からスタートをする作業部会で、もうちょっとふくらみのある答えも出るという見通しがあるのかどうか、総理の率直な御所見伺いたいのであります。
  326. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) この残存輸入制限品目、この自由化の問題につきまして、二十七品目中二十二品目農林水産物であるわけでございますが、この残存輸入品目米側から見た場合と、日本国内から見た場合と、いろいろ見方があるわけでございます。  私は、日本側から見た場合におきましては、日本アメリカにとりましては最大の農産物、食糧の輸入国である。大豆四百万トン、あるいは小麦も四百万トンを超える、さらに飼料作物は千二百万トンから、多いときは千四百万トンも入っております。そういうようなことでありまして、グローバルな立場におきましては、恐らくアメリカにとっては日本が最大の安定した輸入国である、お客さんであると、この点は評価をいたしておるようでございます。  問題は、関心品目牛肉であり、オレンジであるという点であろうかと思います。この点は、全部そういうものを自由化してみたところで五億ドルか七億ドルということで、日米のインバランスの面から見ると大した問題ではございません。しかし、アメリカの側から言うと、安い牛肉日本の消費者にひとつ食わせるようにしたらどうかと、こういう御意見がございます。しかし一方において、これにつきましては歴代の農林大臣が国会の御了解を得ながら、野党の方もなかなか農村の実情を見ますと厳しいものがございますが、御理解を得ながら、着実に今日まで枠の拡大をやってきておると、こういうことでございます。私どもは、今後なおこれをどこまで広げられるかということを前向きで取り組んでまいりたいと、こう考えています。
  327. 木島則夫

    木島則夫君 農水大臣はお立場上、作業部会においても残存輸入制限品目農産物自由化はむずかしいのだということを主張し続けるというさっきお答えがございましたけれど、いまの総理のお答えは、これを慎重にではあるけれど検討して、前向きにこれを持っていきたいと、何らかのそこに打開策がほの見えるというふうに受けとってよろしゅうございますか、もう一度。
  328. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は国内的な対策を講じながらでも、やはり少しずつでも明るい方向に窓をあげるような方向に持っていきたい。日本の国内の生産者に対しては、それなりのやはり対策が要るであろう、こう考えています。
  329. 木島則夫

    木島則夫君 もう時間があと一分でございます。  先ほどは櫻内外務大臣に申し上げたのでありますけれど、どうも訪米をするに当たって、政府部内の調整がつかないとか、利益代表者間の意見が分かれたまま外務大臣外交の舞台にお立ちになると、いつも国内的要因を背中にしょって、フリーハンドで活躍ができないんじゃないだろうか、そういう日本外交体質をひとつ改めていくその努力をしていただきたい、それには最終的にはやはり総理の政治決断、政治力というものが必要だということを私、お願いと同時に強調したわけであります。  もう赤ランプがつきましたけれど、この点について、外交体質はやっぱり改めていかなきゃいかぬというふうにお思いでございましょうか、率直な御意見伺いたい。  これで終わります。
  330. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 非常にむずかしい内外の諸情勢、しかも、それらの要素が非常にむずかしく複雑に絡み合っております。そういう中において、一つの方向に態勢を持っていくということは、これは並み大抵のことではございませんが、今後、力は十分ではございませんけれども、そういう方向に最善を尽くしたい、こう考えています。     —————————————
  331. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、秦豊君の質疑を行います。秦君。
  332. 秦豊

    ○秦豊君 総理ね、私二通話でございますからよろしく。  最初に、対韓援助についての鈴木総理の基本的なお考え、御認識をちょっと伺っておきたいことがあります。  たとえば、これは韓国のトップの認識は、日本の対韓経済協力というものは北東アジアの安全と平和のために日本がむしろ果たすべき国際的な役割りであるという認識が牢固としてあります。いわゆる安保経協論の支脈に通ずるものであります。それから、アメリカ政府の認識は、櫻内さんとどういうお話になったかわからないが、日本の対韓援助というのは、これは西側一員同盟国としての一種の役割り分担であるべきだと、こういう基本認識アメリカにはあるんです。そのアメリカ、韓国の私の申し上げたような認識に対して、鈴木総理は肯定的に解釈されますか、それとも別な視点をお持ちでしょうか、対韓援助。
  333. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、対韓援助ということよりも、対外経済協力あるいは援助という視点から、この問題を見ておるわけでございます。  日本は世界のGNPの一割国家になったと、また、高度の科学技術力も持っておるという観点から、軍事的には大きなことは日本はできませんから、期待されるようなことはできませんから、経済及び技術協力等で、中進国あるいは開発途上国等に御協力を申し上げていこうと、それには一貫して民生の安定、福祉の向上と、こういう基本的な問題がございます。そういう一環として、韓国との間は最も身近な隣国であり、歴史的にも深い関係がございますから、韓国が全斗換大統領のもとに国づくりにいま非常に努力をしておられる、経済情勢もよくない、また国民生活もインフレその他で困っておるという問題もございますから、そういう点に理解を示しながら、対外経済協力の一つの重要な相手国としてこの問題を考えておる、こういうことでございます。
  334. 秦豊

    ○秦豊君 せっかくの総理の御答弁ではありますが、いま双方でやっておるんです。ところが本質はやはり安保経協、役割り分担が根強いんですね、総理。それから、せっかく作業が行われていても、やはり初めに結論ありきで、十一プロジェクトの積算、すり合わせというのはまあつじつま合わせの印象が否めない。せっかく日本と韓国は新しい関係の構築を目指すと言いながら、私はやはり実態にはまだまだ問題が消えていないとこう思う。  かつての忌まわしい日韓協力のあり方ではなくて、新しい関係を目指すために、またつかみ金にならないために、総理は特にどういう点に留意されて指揮監督をされようとしているのか、対韓援助について。
  335. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 対外経済協力等については日本には一貫した一つのルールがございます。また、そういうことで国会の御了承も今日まで得てきておるわけでございます。そういう観点から、二度にわたって向こうと事務的な折衝をやり、向こうから十一プロジェクトの内容を示してもらって、それをいま検討を進めておると、そういう審査と積み上げの上にどの程度協力ができるかと、こういうことを今後進めてまいりたい、こう思っております。
  336. 秦豊

    ○秦豊君 ところで総理、総理の選挙区たる岩手県の残存輸入制限品目は幾つあるか御存じかと思いますがね、ニシン、タラ、ブリ、ホタテガイ、イカ、貝柱、列挙すると六つあるんです。つまり二十二分の六も抱えていらっしゃるんですよ。だから、したがってお立場はかなり微妙であろうと思う。しかしそのことは伺わない。去る一月十八日きわめて著名な某元総理は、静内某ホテルの講演におきまして、この自由化問題は、いまや日本立場だけを言ってはおられない大変なことである、肉が自由化されれば日本飼育農家は太刀打ちできないし鶏小屋は全滅する、しかし、しかしだ、国が全減しないためにはやらねばだめだ、農家に対しては、税金を使用して農家が立ち行くように、やっていけるようにすべきだと、例の特徴のあるだみ声で述べているんですよ。  総理、私これなかなか一つのアイデアだとは思いますが、鈴木総理の政策判断としまして、いまの某元総理の提言のような、つまり自由化はする、この際断行する。しかしそのかわり税金で補償をするというこの発想は、今後この問題に対処する一国の総理としては検討に値するアイデアあるいは方向というふうにお受けとりでしょうか。つまり、これは計算の基準が違いますが、アメリカなんかは七億ドルと言っているし、日本の一部は五億ドル、少なくとも農林水産行政予算において一千億程度の補償金という政策判断になると思うのですが、どうお考えでしょう。
  337. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 私は、にわかに賛成しかねると、率直に申し上げまして。ということは、いまの残存輸入品目二十二品目、これ食糧であり農林水産物ですが、私は、やはり国民の皆さんに対しては政府は食糧の安定的な供給の責任があると、このように考えております。農民にあるいは漁民に五億ドル、七億ドルのお金を出して補償すればそれで事足ると、そういう問題ではない、私はそう思います。やはり消費者である国民の皆さんに、どういう際においても、どんな凶作、冷害、干ばつ等々があっても食糧に関してはとにかく心配をかけない、最小限度心配をかけないというようなことが必要である。やはり私は、安全保障の大きな柱、これが食糧問題であると、こう考えますので、補償によって問題を解決しよう、そういう手法は私はとらない。     —————————————
  338. 植木光教

    委員長植木光教君) 次に、喜屋武眞榮君の質疑を行います。喜屋武君。
  339. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 政治の世界ではたてまえと本音があると、よく言われるのであります。しかし、一国の総理の御発言ということから及ぼす国民への影響というのはまことに重大なものであると私は受けとめています。そういう立場から私、再確認していきたいと、こういう気持ちでお伺いいたしたいと思います。  それは、鈴木総理は去る二十四日の政府と自民党連絡会議で、地方自治体本会議に広がりつつある反核、軍縮を訴える決議や意見書採択の動きについて、これが反米運動に結びつけられることのないように注意してほしいと発言したと報道されておりますが、この点に関して真意を確かめたい。  その真意という中身でありますが、第一点は、世界唯一の被爆国の総理が、核兵器に反対し軍備縮小を訴える国民の声を反米運動と結びつけられた真意は一体どこにあるのであるか。これが第一点であります。  第二点は、非核三原則と核の傘論は、私は矛盾すると思っております。だが、仮に百歩譲って両立すると見た場合でも、わが国が核廃絶運動に参加し発言しないということは、核戦争に対する無理解、無関心、無責任のそしりを免れないのではないかと、こう私は思うのですが、この点についていかがお考えか。  第三点。米国にも反核、軍縮を訴える市民団体や国民多数が存在しておる。この反核、軍縮の運動を反米と結びつける考え方は、日本政府がレーガン政権の強いアメリカ、すなわちレーガンの軍拡路線に追随するという、こういった懸念もうかがわれるわけでありますが、この三点について総理の真意を聞かしていただきたい。
  340. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 反核と反米の問題について私が言及したことについてお尋ねがございましたが、私は基本的に、われわれが反核、核の廃絶、核軍縮、これを叫んでおるのは、単に叫ぶだけに意味があるのではない、実現をしなければいけない、こう思います。その実現をするためには、何といっても核の超大国であるアメリカとソ連、これが本当に人類の平和と生存のために責任を持ち、自制をしてこの問題に取り組んでもらわなければ困る、このように基本的に考えております。そういう意味で、一方に偏ったようなそういうアプローチの仕方は決して実を結ばない、こう思います。そういう意味で、私は、この反核運動と反米運動が結びつくようなことがないように十分留意してほしい、これは当然のことだと、こう私は信じておるわけでございます。  それから第二点の、非核三原則と核の問題につきまして矛盾すると、こういうことをおっしゃっておる。私は、しばしば申し上げておりますように、これは矛盾しない。日本の領土、領空、領海に核兵器の持ち込みがなくとも、日米安保条約に基づくアメリカの核の抑止力というものは十分機能しておる。こう考えておりますから、非核三原則とこの反核なりあるいは日米安保条約というものはこれは矛盾をしない、このように考えます。  それから第三点の、アメリカでも反核運動があるではないかと。これはいろいろございましょう。私は、そういう運動に対してまで疑問を投げかけておるものではございません。純粋な意味で、究極においてわれわれの悲願である核の軍縮、核の廃絶の方向に、着実に実行の方向で実現できることを願ってやまないものでございます。
  341. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後に、もう一問お尋ねします。  アメリカ側の貿易摩擦の原因として、日本に対するいら立ちは、単に個別商品の貿易不均衡を問題にするだけでなく……。
  342. 植木光教

    委員長植木光教君) 時間が参りました。
  343. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 日本みずから規定した西側の有力な一員としての役割り、責任分担の実行が不明確などの不満に根差していると思われる節があると思います。この貿易摩擦西側陣営の一員としての役割り、責任分担の関係について御所見を承って、終わりたいと思います。
  344. 鈴木善幸

    国務大臣鈴木善幸君) 日本がこれだけの経済力を持つ国になりました。アメリカが世界のGNPの二五%、日本が一〇%、両方合わせますと三五%という圧倒的な経済力を持っておるわけでございますから、世界の現在きわめて困難な停滞をしておる国際経済、世界経済を浮揚する、そして失業問題、インフレの問題、国際収支の問題、こういう問題を解決するというのは、私は日本アメリカに大きな責任がある。このように思うわけでございまして、日本日本としての役割りを果たしていかなければならないものと、こう考えます。ただ、役割り分担という言葉から日本防衛の面での分担というようなことを類推するとすれば、それは私は大きな過ちである。日本は、そういうようなことは、みずからを守る以外は何もできません。そういうことでございますから、この経済力をもって世界の平和と安定に寄与していきたい、そういう方向で貿易摩擦の問題にも取り組んでいきたいと、こう思っています。
  345. 植木光教

    委員長植木光教君) これをもちまして、外交防衛貿易摩擦に関する集中審議質疑は終了いたしました。  明日は午前十時に委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会