○青木薪次君 ただいま
議題となりました
道路運送車両法の一部を
改正する
法律案につきまして、
日本社会党を代表いたしまして、私は
反対の
討論を行うものであります。
今回の
改正は、最近の自動車技術の進歩やマイカーの増加等の使用形態の変化に対応して、運輸技術
審議会の答申に基づき、
国民負担の
軽減を図るため、自家用乗用自動車について、新車車検期間を三年に延長し、新車の六カ月点検を廃止しようとすることを主な
内容とするものでありますが、これは当初、中曽根長官が車検
制度の見直しを言明され、
国民の
拍手で迎えられたときの公約から大幅に後退しており、
国民の期待に十分こたえていない不満足なものとなっているのであります。
新車だけでなく、使用車についても車検期間を延長してほしいという
国民の要望がいまなお強くあり、今日の自動車技術の発達から見て可能であると思うのでありますが、運輸技術
審議会における技術的な検討結果を尊重して不満足ながらも了承するものであります。運輸技術
審議会の答申が述べているように、自動車技術の進歩に対応した今後の適時適切な車検
制度の見直しをすべきであると思うのであります。さらに、走行距離に応じた車検期間の導入や、西ドイツ等で
実施されている
整備前検査
制度の採用等、車検
制度の抜本的な見直しについても今後の検討を見守ってまいります。
以上のように、今回の
改正は、不十分ながら一歩前進であると言いたかったのでありますが、法案作成の段階に入って、運輸技術
審議会の答申にも触れられていなく、また臨時
行政調査会の答申にも述べられていない点検等の指示と
報告義務、それに対する違反者に対する十万円の過料の
制度が突如として挿入されたことにより、断固として
反対せざるを得なくなったのであります。
自動車の定期点検
制度は
昭和三十八年の
改正で導入されることになったのでありますが、ユーザーが自己
責任で自主的に
実施すべきものであるとして罰則なしで今日まで正常に運用されてきたのであり、今回の
改正でもユーザーの自己
責任を一層明確にしているのであります。しかるに、法案の作成段階で突如として罰則が導入され、
国民の猛反発を受けることになったのであります。臨時
行政調査会は異例の抗議声明を出し、マスコミも一斉に
政府の態度を非難しており、役人のあさはかな思慮が
政治家の好餌となったと比喩しているのであります。
国会答弁における
政府の答弁は二転三転し、
国民を十分に納得させるものでないばかりでなく、その背後に不明朗なものがあったのではないかとの疑念を深めたのであります。何ゆえ罰則の導入に固執するのか理解に苦しむのであります。もとより、定期点検の
実施率を高め、車の安全性を
確保していくことには
異議がありませんが、それは罰則による心理的圧力や強権力の行使で担保されるべきものでなく、あくまでもユーザーの自覚にまつべきものであるからであります。
さらに、中小零細事業者が圧倒的に多い
整備業界が、今回の
改正に伴って仕事量の減少を招き、苦難に陥るため、その救済策を講じなければならないことは十分承知しておりますが、このため罰則を導入して法定点検
整備の増加を図ろうとすることは、その方法と手段を誤っていると言わざるを得ないのであります。
整備業界の救済は、構造
改善事業の促進、
整備振興基金の
創設、必要な資金の融資等、別途各種の
対策が講じられるべきものであります。
整備業界も安易に法定点検
整備に依存する体質を
改善していくべきであります。
次に、本
改正法案の
国会審議における
政府・
自民党の独善的な態度に強く抗議したいのであります。
衆議院の
審議では、
修正案の提案理由の説明も聴取せず、わが党委員欠席のまま
採決が強行され、さらに本
会議においてもわが党
議員が欠席する中で
採決が行われたのであります。
参議院の
審議におきましても、衆議院の不正常な
審議に対する反省を求めたのでありますが、
政府・
自民党は何ら反省の色を見せることなく、野党各派が一致して要求した
修正を拒否し続けてきたのであります。
このような
政府・
自民党の態度は、衆議院の行き過ぎをチェックするという
参議院の本来の機能をみずから放棄し、
参議院を衆議院のコピー化するもので、
参議院無用論を増長させ、みずから墓穴を掘るものにすぎません。
参議院の良識を発揮し、
国民の負託にこたえるためにも、
政府・
自民党は謙虚に、野党各党が共同して要求している点検等の指示に対する
報告義務とそれに対する罰則規定を削除する
修正に応ずるべきであります。
遺憾ながら、運輸
委員会におきましては、多数をもって
原案どおり可決すべきものと決定されましたが、次善の策として、ただいまの運輸
委員長報告の中でも述べられました
附帯決議を付して、五十三条の二の点検等の指示
制度の運用について、一般の自家用乗用車については
行政指導にとどめ、過料
制度の対象としないことを明確にしたのであります。
政府はこの
附帯決議の趣旨の周知徹底に努め、善良なユーザーに新たな
負担を課することのないよう万全の
措置を講ずるよう強く要請しておきます。
最後に、今回の
改正により新車車検期間が三年に延長されることにより、自動車重量税等の額が高くなり、ユーザーの一時的な経済的
負担が
増大することになりますが、
国民負担の
軽減を図るという今回の
改正の趣旨にかんがみ、
改正法施行までの間に、金利相当分を差し引いた税額とする等の
負担是正
措置がとられるよう強く要望いたしまして、私の
討論を終わります。(
拍手)