○
国務大臣(
渡辺美智雄君)
本岡議員に
お答えいたします。
五十四
年度から
公共事業、
防衛費等特別扱いをして、そういうものに
予算が偏り過ぎて、
国民負担を強いて、
政府の
財政運営がおかしくなったのじゃないかというような御趣旨でございますが、実はそういうことはございません。
たとえば、
防衛関係費を見ましても、
予算の中に占める割合というのは、
昭和五十三年が五・五%、五十四年が五・四%、五十五年が五・二%、五十六年が五・一%、五十七年が五・二%、大体その
程度で、
予算の中に占める
防衛費というのは
余り構成比率からいって変わっておりません。
伸び率もこれは一二%、
予算が
伸びれば
防衛費も
伸びるわけですから、そんな極端な
防衛費の
伸びはしておりません。
公共事業の問題にいたしましても、大体一七%から一五、六%前後の
構成比でございまして、
公共事業の
伸び率などはここ三年間ほとんどゼロというような
状態で抑えてきておることは御
承知のとおりでございます。
したがいまして、
財政の悪化というものはこういう問題よりも、全体的に第一次
石油ショック、第二次
石油ショックで
税収がへこんだ。そのときに全体の
伸び率を減らせばいいのだけれども、なかなか現実にはできない。
失業者をつくらぬように、そのために
公共事業を拡大して
雇用の増大を図る、みんながやれと。それは成功したと私は思うのです。それからやはり
昭和四十八年、
福祉元年と言って、これから
福祉を増強しようということでどんどん
福祉を伸ばしてまいりまして、
昭和四十八年と五十五年の
決算を比べるとおわかりのように、これは
税収は二倍にしかなっておりません。しかし、
教育文教は三倍とか、あるいは社会保障費は四・五倍というように、
税収以上にどんと大きなものがふえますから、その差額はどうしても赤字、借金ということになるわけでございます。
これが少し安易に過ぎたのじゃないかと言えば、そういう御批判も私はなきにしもあらずだと思いますが、しかし、それによって一応
国民経済の安定、民生の安定が図られたということも事実であって、ただこれで先進国並みに大体なったわけですから、後は、
負担をふやさないでそういうふうな社会保障や
教育をどんどんふやしていくということはむずかしい。したがって、ここに至りまして、ややもすればまだまだ高度成長時代の体質が
歳出の中に残っておるから、それについては思い切ったメスを入れて、健全
財政の方向に持っていこうというスタートを始めたというところでございます。
それから五十六
年度の
歳入欠陥が二兆円を超すだろう、そこで五十九
年度の
赤字国債発行ゼロというのはむずかしいのじゃないか、果たせるのかという御
質問でございます。
歳入の見積もりというものは、言うべくして実は非常にむずかしい。事実でございます。なかなか残念ながら当たらない。過去におきましても、当初
予算に対しまして大体五、六%から一〇%ぐらいの間を上下行ったり来たり、行ったり来たり。物価が急騰するというようなときには、
昭和四十八年のように二〇%も実は見積もり違い、過小見積もりでどんと
税収が入る。かと思うと、一年半たったら、五十年には二〇%も
予算よりもどんと
税収が減ってしまったというようなことで、上下二〇%の開きがいままでもございます。まことに残念ですが、そういうことがある。
今回は、物価が、たとえば当初見積もりとしては年間五・五%
消費者物価が上昇するであろう、卸売物価も四・一%
程度上昇するだろうということになったところが、
国民の消費節約、
世界的な
不況、そういうようなものから、
消費者物価は三・九とか、卸売物価が一・四とか、これはわれわれが思いもかけないほど実は物価が安定してしまった。これも事実です。このこと自体は大変結構なことでありまして、物価の安定ということが、ことしの春闘というような問題におきましても、いろいろな問題があってもストライキもなくて春闘が
国民の良識の中で解決されるというようなことだろうと私は思います。
したがいまして、これはわれわれといたしましては、そういうことで見積もりに違いがあったことは確実でございますが、しからば幾ら幾らはっきり出るのか。想像としてはわかりますが、実際は数字的にきちんと言うことは、また不用額の整理もできておりませんし、法人税の申告もまだ出ておりませんし、そういうので正確なことはなかなか申し上げにくいという
状態でございます。
それから五十九
年度脱却ということは、こういう
経済情勢の中でこれは非常に厳しい課題であるととは間違いないと私は思いますが、しかしながら、われわれとしては、ここで甘いことを
考えたのでは
歳出カットなどできなくなってしまう。臨調答申を踏まえまして、これからも発想の転換を図って思い切った
歳出カットをやろう、
歳出の節減合理化をやろう、大型増税を念頭になくやるのだという
基本方針がある以上は、やはりそういうようなむずかしい問題にあえて挑戦をしていくということでございます。そういうようなことで、われわれとしてはこれはぜひともやり抜かなければならないということで、最大限の努力を傾けてまいりたいということを申し上げたいと存じます。(
拍手)
〔
国務大臣伊藤宗一郎君
登壇、
拍手〕